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2000-11-15 第150回国会 衆議院 科学技術委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十一月十五日(水曜日)     午後一時開議  出席委員    委員長 古賀 一成君    理事 奥山 茂彦君 理事 塩崎 恭久君    理事 高市 早苗君 理事 水野 賢一君    理事 樽床 伸二君 理事 平野 博文君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 菅原喜重郎君       岩倉 博文君    木村 隆秀君       栗原 博久君    高木  毅君       谷垣 禎一君    渡海紀三朗君       林 省之介君    平沢 勝栄君       松野 博一君    村上誠一郎君       吉田 幸弘君    近藤 昭一君       城島 正光君    津川 祥吾君       山谷えり子君    山名 靖英君       吉井 英勝君    阿部 知子君       北川れん子君    中村喜四郎君     …………………………………    議員           近藤 昭一君    議員           城島 正光君    議員           樽床 伸二君    議員           山谷えり子君    国務大臣    (科学技術庁長官)    大島 理森君    科学技術政務次官     渡海紀三朗君    政府参考人    (科学技術庁長官官房審議    官)           素川 富司君    政府参考人    (科学技術庁研究開発局長    )            結城 章夫君    政府参考人    (厚生省児童家庭局長)  真野  章君    政府参考人           (通商産業省基礎産業局長    )            岡本  巖君    政府参考人    (特許庁長官)      及川 耕造君    科学技術委員会専門員   菅根 一雄君     ————————————— 委員の異動 十一月十五日  辞任         補欠選任   岩倉 博文君     高木  毅君   田中眞紀子君     平沢 勝栄君   城島 正光君     佐藤 敬夫君   北川れん子君     阿部 知子君 同日  辞任         補欠選任   高木  毅君     岩倉 博文君   平沢 勝栄君     栗原 博久君   阿部 知子君     北川れん子君 同日  辞任         補欠選任   栗原 博久君     吉田 幸弘君 同日  辞任         補欠選任   吉田 幸弘君     田中眞紀子君     ————————————— 十一月十五日  脱原発への政策転換に関する請願(横路孝弘紹介)(第一三八八号)  同(赤嶺政賢君紹介)(第一四四二号)  同(大幡基夫紹介)(第一四四三号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一四四四号)  同(塩川鉄也紹介)(第一四四五号)  同(重野安正紹介)(第一四四六号)  同(東門美津子紹介)(第一四四七号)  同(春名直章紹介)(第一四四八号)  同(藤木洋子紹介)(第一四四九号)  同(矢島恒夫紹介)(第一四五〇号)  同(山口富男紹介)(第一四五一号)  同(横光克彦紹介)(第一四五二号)  同(吉井英勝紹介)(第一四五三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案内閣提出第七号)  ヒト胚等作成及び利用規制に関する法律案近藤昭一君外三名提出衆法第八号)     午後一時開議      ————◇—————
  2. 古賀一成

    古賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案及び近藤昭一君外三名提出ヒト胚等作成及び利用規制に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、政府参考人として科学技術庁長官官房審議官素川富司君、科学技術庁研究開発局長結城章夫君、厚生省児童家庭局長真野章君、通商産業省基礎産業局長岡本巖君及び特許庁長官及川耕造君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 古賀一成

    古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 古賀一成

    古賀委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山谷えり子君。
  5. 山谷えり子

    山谷委員 長官質問させていただきたいと思います。  生命科学発生科学に関する人類の知見、技術は、今大変なスピードで進んでおりまして、これに伴いまして、クローン技術等について、その安全性が確認されることもあるとは思いますけれども、他方で、その危険性についても次々と明らかにされていくことも考えられるわけでございます。クローン技術等に対する規制については、こうした技術の進歩に沿って絶えず見直しをしていく必要があるのではないかというふうに考えております。きのう、参考人としてノンフィクションライターの最相葉月さんがいらっしゃいましたけれども、毎年場所を設けて話し合う場が必要ではというふうにも言われました。そのくらいの、やはりスピードに対する責任感が必要ではないかというふうに考えております。  政府案検討条項にあります五年以内という、以内だからいいじゃないかという御発言もございましたけれども、五年以内という検討期間は、三年以内に改めるべきというふうに考えておりますけれどもいかがでございましょうか。
  6. 大島理森

    大島国務大臣 昨日の参考人質疑も、全部ではございませんが、さまざまな先生方の御意見がこうであったということを拝見いたしましたし、また、先生方意見をこの場で議論していただきながら考えますことは、法律というのは、不磨大典のものはないのが法律であろう、だから国会があるんだろうとは私は思います。  しかし、おっしゃるように、この世界はこれからどんどん、進化という言葉がいいのか変化というのがいいのか、未知なゆえに、いろいろな現実、事実を我々に突きつけてくるような気がいたしますし、また、そうであろうと思います。したがって、そういう思いを込めて、私どもは五年以内、こう申し上げました。  ただ、法律をつくるに当たって、そういう方針を国家意思として、国会意思としてもう少し詰めたらどうか、そして改めてきちっと国会の中で議論するというのはどうかということでありますが、私は、そういうことについては、それを全く否定するものではございません。どうぞ各党各会派におかれまして、そういう必要性国家意思としてあるということであれば、それも一つ方法かなとは思います。ただ、つくった法律を、あしたすぐまた変えるという国家意思も、国会意思も、余りまたそこは褒められたものでもありますまい。  したがって、そういう状況の中で御判断いただければ、私どもはそれに対応してまいりたい、このように思っております。
  7. 山谷えり子

    山谷委員 さらに長官になんですけれども政府案は、ヒトクローンの禁止等を規定するのみで、ヒト胚取り扱いについて触れるところがございません。しかし、これでは何らの法的規制もないまま、いわば無秩序ヒト胚生殖医療研究に用いられている現状が放置されることになります。国民の不安にこたえるためにも、生殖補助医療におけるヒト胚取り扱いを含めた包括的な規制あり方について、早急に検討して、適切な規制を講ずる必要があると考えます。  とりあえず、クローン禁止に関しては与野党とも合意しているのだからいいじゃないか与党クローン禁止法を成立させて、その後また議論するということでもいいじゃないかというお考え、こういう姿勢は私、おかしいというふうに考えております。こうした姿勢こそが、研究を暴走させたり無秩序にさせたり、あるいは生命倫理の問題を顧みなくさせるということにもなるというふうに思っております。ヒト胚取り扱いについても検討対象として、その結果に基づいて必要な法規制を行うべきだというふうに考えておりますけれどもいかがお考えでございましょうか。
  8. 大島理森

    大島国務大臣 これも一回目の委員会のときに、多くの先生方から御議論をちょうだいしました。今、ヒト胚に関して、いわば法規制していないから、政府としても全く野方図にほうっていいということで書いていないのではないということも申し上げたわけです。  ヒト胚の問題であるからこそ、今、ある意味では政治のリーダーシップで、えいやっと、こうやったらいいじゃないかという考え方の人もあるかもしれません。しかし、ヒト胚がゆえに、そこにかかわる、ある委員のお話でございますれば、産む権利、また産まざる権利、そういう権利というものも世界的に一つの概念として認識が一つになっているんではないだろうか。そういうことにもかかわるヒト胚の問題について、やはりこれからさまざまな議論をしていただいて、そしてそういう中にあって、この点は国民合意がおおよそ得られたんじゃないだろうか、そしてその上に立ってこういう体制整備というものが必要ではないかという、将来的なそういうふうなあり方というものも私の頭にもございます。  ですから、ヒト胚については、今後もう規制とかそういう問題については全く触れないということじゃなくて、ある意味ではそこの利用あり方研究あり方秩序立ててやっていかなければならないという問題が一方にある。そして一方には、人の産む権利、産まざる権利と非常にかかわる範囲でもあるがゆえに、まず、もう少しその世界国民合意をつくっていく、那辺にあるか合意を探っていくという必要性を私どもが今認識しているわけでございます。  そういうことにかんがみながら、いずれの時期にかそういう必要性があれば、当然に政治意思としてそこはきちっとしていかなければなるまい。あるいは行政の立場でも、必要があれば皆様方に御相談をいたさなければなるまいという思いでございますので、現在、きちっと明確に書いて法規制をがちっとしてというには、ちょっと準備がなさ過ぎる、議論ももう少ししていかなきゃならぬという思いでございますので、これからそこの世界においては多くの方々の御意見を賜りながら、むしろ研究をしていくといった方がいいのかもしれません。そして、そういう中で、必要であれば、それはそのときはあるべき姿を法律として御提案しなければならないところもあるだろうし、ガイドラインで処しなければならぬところがあれば、ガイドラインで処していくというふうなこれからの道筋というものを想定しております、考えいかなければならない世界でございましょう。このように御理解いただければと思うのでございます。
  9. 山谷えり子

    山谷委員 この審議の席で何度も出たことでございますけれども科学技術会議の委託で行われた生命倫理に関する世論調査の結果、その結果によれば、いつの時点から人として絶対に侵してはならない存在かという質問に対して、受精の瞬間からという回答が最も多くて三割を占めていた、あるいはまた、ヒト受精卵の研究利用の是非についても、研究利用禁止及び厳重に規制すべきとの回答が六割を超えていたということは、何度もこの審議の中でデータが出されました。特定胚取り扱いのみを規制する政府案においても、特定胚作成に当たってヒト胚を使用する場合があるわけでございますので、今の長官お答えではございますけれどもヒト胚というのは他の人体の細胞とは異なるわけで、それ自体で一つ個体に成長し得るものであることから、ヒト胚は人の生命萌芽であって尊重されるべきだという旨を今政府案目的として書き込むことはいかがお考えでございますか。
  10. 大島理森

    大島国務大臣 たびたびの御質問でございますが、まず基本論お答えをしたいのでございますが、改めて、私どもとしては、まさに人の尊厳の保持、このことに重大な影響を与えるクローン個体等産生を防止する、まずそこを目的にしたというのがこの法律一つの趣旨でございます。  さはさりながら、先ほど申し上げましたように、ヒト胚という問題については、これからどのような国民皆様方合意形成というものが生まれてくるのかな。そのためには、率直に申し上げて、やはりもう少し幅広い国民議論をしていただく、そういう中から考えいかなきゃならぬ。倫理的にもちろん尊重すべきものでございます。  したがって、そのヒト胚というものにどのような保護を与えるべきか。これは繰り返して恐縮でございますが、さまざまなそれ以外の要件もそこにかかわってまいりますから、もう少し国民合意をつくるために私ども努力し、また各党間においてもさらに御努力いただきながら、そして一つ合意形成ができ、ある程度どうもこういうことだな、そのときに当たって私どもは、その問題はその問題として、その世界における秩序というものを考えいかなければならない、このように思っております。
  11. 山谷えり子

    山谷委員 ヒト胚取り扱いそれから研究利用における規制あり方なんですけれども、それでは、政府としては具体的にどのようなタイムスケジュールで、どのような場で、どのような体制で、どのような視点審議を行っていこうというふうにお考えでございましょうか。
  12. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 ヒト胚の問題というのは、生殖医療で扱われる部分、そして研究開発というか研究で扱われる部分というふうに大くくりできると思うのですが、研究開発部分につきましては、既に科学技術会議生命倫理委員会で報告がされております。委員承知だと思いますが、先ほどからお話しのように、「ヒト生命萌芽としての意味を持ち、ヒトの他の細胞とは異なり、倫理的に尊重される」、私どもはその同様の考えのもとに今後規制あり方について考えていきたいというふうに思っております。  具体的には、研究材料として新たにヒト受精胚作成しない。これは、よく言われております余剰胚等だけが対象になるということ。科学的な必要性妥当性が認められること。また、インフォームド・コンセントが適切に取得されること、提供が無償で行われること等でございまして、こういう要件が既に生命倫理委員会で提示をされております。  なお、社会ヒト胚ヒト受精胚取り扱いについての意見を広くくみ上げつつ、今後議論を進めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。  また、スケジュールのお問い合わせがございましたが、この全般の議論というものを早急に深めていくこととするというふうに、これも生命倫理委員会で既に決定が行われております。そういうことを踏まえて、年内にも科学技術会議において検討を開始したいというふうに考えておるところでございます。  また厚生省が、厚生科学審議会生殖医療等のいろいろな議論をほぼ結論づけたというふうにも言っていいのじゃないか。そういった動きも踏まえながら、研究の分野でも早急にその議論を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  13. 山谷えり子

    山谷委員 次に、卵子の問題なんですけれども不妊治療のための卵子採取、これは、いろいろな女の方たちに聞きましたけれども、何日にもわたって排卵誘発の注射をして、吐き気とか目まいとか痛みとか、あるいはまた卵巣がはれたり腹水がたまるなど、身体的な負担が非常に大きいというふうに聞きました。また、精神的にも金銭的な面でも非常に大きな負担がかかるわけでございます。  こうした負担のもとに得られた卵子余剰胚同意なしに研究に用いることは許されていないにもかかわらず、インフォームド・コンセントとおっしゃいましたけれども現実には十分な説明同意がないまま現場では研究利用されていることもあるというふうに聞いております。  女性卵子採取、使用は現在、当人の生殖補助医療目的以外には行われないことになっておりますけれども、にもかかわらず、女性たちが不安を持っているというのが現実ではないかというふうに思います。やはり密室で行われていることですので、そしてまた、医者に対して何か物を言いにくいというようなこともございまして、そのようなことでございますけれども政府案ではこの点どのような配慮がなされているのでしょうか。  政府案第四条では、「特定胚取扱いに関する指針を定めなければならない」として、また第四条第二項に「提供者同意が得られていること」と、あることはあるのですが、同意が自由な意思決定に基づくものであることや、またそのための十分な説明の実施が必要であることについて、明記がされていないということで不安を持つ方がいるわけですが、その辺はいかがでございましょうか。
  14. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 先ほどの御質問の中でもお答えをさせていただいたところでありますが、生殖補助医療現場、この中で今議論が進められておりまして、ただし、この余剰胚の問題につきまして深い議論がされているのか否か、ここのところはちょっと不明快な部分がございます。  しかしながら、研究開発という意味におきましては、この胚を用いて研究開発をするというときに必ず届け出が必要になるというのがガイドラインで書かれることになるわけでございますから、その中において、きっちりとした様式、手続を定めて、そして、インフォームド・コンセントがしっかりと実施されるように政府としては考えていきたいというふうに現在考えておるところでございます。
  15. 山谷えり子

    山谷委員 続いて、ガイドラインの問題です。  ガイドラインの策定に当たっては、広く国民の声を聞いて、その意見を反映していくということが必要だというふうに考えておりますけれども、第十二条で、「特定胚取扱い指針に適合しないものであると認めるときは、その届出をした者に対し、特定胚取扱いの中止又はその方法の改善その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。」というふうにありまして、第十五条に適合しない場合は立入検査を行うということもあるというふうに書かれてはいるのですけれども、そもそも届け出しなかった者に対しては立入検査もできないわけでございまして、どのようにして届け出をしないで研究を行う者を見つけるつもりか。  もちろん、皆さん届け出をするという紳士的なことに立ってのことではありますが、そうではなくて、やはり届け出をしないで研究を行う者をどのように見つけるかということも考えていらっしゃるのか。届け出をしない者に対して罰則をかけることは事実上できないわけでございますから、許可制でないと本当に実効的な規制はできないというふうに考えているのですけれども、その辺はどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
  16. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 きのうの参考人質疑の中で、西川先生ですか、いろいろとお答えになっていたと思いますが、まず基本的には、やはり研究者の間でしっかりとした秩序といいますか、モラルをつくっていただく。ピアレビューが基本だというふうにお答えになっていたと私は理解をいたしております。  これは、許可制であっても、見えないものは実はこれは見つけられないわけでございまして、そこのところをやはりしっかりしていただくような研究体制をつくっていただくべく、政府としてもきっちりと、指導というのは研究者に対して失礼かもしれませんが、努力をすべきであろうというふうに思います。その上に立って、なお、やはりできるだけネットワークといいますか、情報開示ということを原則にさまざまな物事を行っていくことで、これはあくまで隠れてやられるという方は、実はどうやって見つけるかというのはいろいろな方法があろうかと思います。  ただし、研究現場、確かに従来から議論されておりますように、現場が非常に場所がかかったり、お金がいっぱいかかったり、そして大きな装置が要るというものでないだけに、委員がおっしゃる心配ももっともだというふうに思いますが、情報公開なり、そして研究現場におけるお互いの規律、モラルというものをしっかりつくっていただくような、こういった体制をつくり上げていただく。と同時に、監視する方としては、しっかりとした日ごろからの情報収集を心がけて、そういうことが起こらないように努めるというのが政府考えることではないかというふうに判断をいたしております。
  17. 山谷えり子

    山谷委員 それから、第十三条におきまして、胚または細胞提供者個人情報保護が規定されておりますけれども、これも罰則のない努力義務規定ということで、個人情報保護が確保できないおそれがありますけれども、その辺はいかがお考えでございましょうか。
  18. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 確かに、大変難しい問題だというふうに考えております。むやみに罰則をかけるべきか否かというのは、御承知かと思いますが、実は現在、個人情報保護法の制定といいますか、制度が検討されておるところでございます。これは、今のIT革命に絡んでということで、個人情報といいましても種類は少し違うかというふうには思っておるところでございますが、その辺の結果をちょっと待たなければいけない部分もあるな。やはり法体系として、全体としてバランスのとれたものをつくらないと、社会の納得がなかなか得られないということであろうと思いますから、そういう必要性があるというふうに考えておりまして、現在のところは努力義務とするのが適当ではないかなというふうに考えておるところでございます。
  19. 山谷えり子

    山谷委員 質問はこれで最後にいたしまして、感想なんですけれども政府案、本当にクローン人間を禁止する法ですというふうに言われたときに、国民の多くは、ああ、そうか、そういう法なのかというふうに理解したと思うのです。私も前回申しましたように、例えば動物細胞核を脱核したヒト卵子に移植することにより作成される胚、動物性融合胚、これはヒト細胞質を持った動物の誕生が可能であるということとか、あるいはヒト集合胚ヒトの胚にその胚と一体となって分裂、成長することが可能なヒト細胞を結合させることにより作成される胚、これは体の一部が別人由来細胞となるというヒトヒトキメラ。ヒトヒト集合胚を子宮に戻すことは法律で禁止されていないなんということが出ますと、多くの普通の人は、え、そうなのというような不安をお持ちになられる。  やはり命をもてあそぶことの恐れというものは本当に大切なものだと思いますので、これからも国民皆様に私たち情報を公開して説明していく、そして合意を形成する努力を常に常にしていくというような、そういう時代に私たち政治家として働いているんだということを考えいかなければいけないというふうに思っております。  人間の胚、卵、ヒト受精胚取り扱いあり方研究あり方規制など、生命倫理視点から包括的にとらえていく必要は私は感じております。さらに、検討をいろいろしていく総合科学技術会議は、日本の社会生命科学技術の人への適用についてどこまで容認するかという問題に深い議論をして、そして国民の声を聞いてこたえていくという役目があるというふうに思いますので、本当にこれから、特定胚をつくることについてはどういう意味を持っていて、それによって何をしようとしているのか、情報を出して説明をして、広く意見を聞いていく。公聴会とか交換会とか、そういう場を設けていく必要があるというふうに思いますけれども、それに対しては、簡単で結構でございますが、いかがお考えでしょうか。
  20. 大島理森

    大島国務大臣 今先生の御意見をさまざまに聞いて、基本的には同感をいたします。特に、科学技術というのは、全般的に今のような議論が普遍的に根底にあるものだと私は思います。  すばらしい研究でも、それを悪用すれば、それは人類の発展にならない、むしろ人類の福祉を阻害していくということ、両面を持っているのが科学技術政策でございましょう。ましてや生命科学というのは、人間尊厳、そういうものに深く密接にかかわる問題であればあるほど、今先生が言われたような多くの皆さん意見ができるようにしたり、情報公開をきちっとしたり、しかし一方、プライバシーの尊重というものをきちっと守ったり、こういうことが一層求められる世界だ、このように思っております。
  21. 山谷えり子

    山谷委員 ありがとうございます。以上で結構です。
  22. 古賀一成

  23. 近藤昭一

    近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。  今回の閣法、そして私ども民主党が出させていただきましたクローンの技術に関する規制の法案を議論させていただいておりますけれども、前回の私の質問の中でもちょっと触れさせていただきましたが、とにかくクローン人間というものをつくることを大変に危惧している、まずこれの規制だというところでは一致できるのかもしれませんが、私たちが対案を出したというのは、やはり一致できないところがある。そして、かなりその部分については重要な問題があるからということで対案を出したわけであります。  それで、特に危惧をしている問題について幾つか質問をしたいわけでありますが、やはり特に心配をしておりますのがES細胞についてであります。  私どもは、ES細胞の樹立については、ヒト胚受精卵を使うということについて、人権といいましょうか倫理観から考えて、とにかく慎重であるべきである。まず、法律規制して、その目的が合理的であり、人類の発展といいましょうか、人々の、皆さんの理解も得られること。そして、それが合理的、つまり十分な実験をした後、安全性も確認されて、もうあとは人で実際に受精卵を使ってES細胞をつくって実験するしかない、そういう非常に厳しい規制のもとでのみやるべきだ。  しかしながら、政府案では、これについては行政指針規制するにとどめている。このことについて、改めてその理由をお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  24. 大島理森

    大島国務大臣 近藤委員から改めて、民主党の基本的な考え方を踏まえた御質問がございました。  一つだけ、その点は意見が違う、こうお話をされましたが、ES細胞の扱いについても、私ども野方図にしていいという考えを持っていないがゆえに、そういう意味では、ある意味では何らかの秩序というものが必要であるというところにおいては、私は共通しているような気がするのでございます。  ただ、ES細胞は、まさにヒト胚と密接にかかわる議論でございます。そのヒト胚のいわばあり方というものについて、国民合意が私どもはもう少し必要であろう。それで、そういうことを得てから、ヒト胚の扱いに対する、あるいは必要とすれば法律による規制というものも私は全く否定するものではございません。また、それとかかわるES細胞の問題である。一方、ES細胞からの個体産生に関して、個体産生というものが全く不可能ではございませんけれども、そういうことはそう簡単ではありません。したがって、今のところガイドラインということによって規制をしていこうという考え方に立ちました。  そういうふうなことで、ヒト胚に対する国民合意形成、そういうものを見詰めつつ、ES細胞についてのまた御議論もそれに関連した形で出てくるものであろうし、このES細胞が今研究としてスタートしたばかりでございますし、どういうふうに規制したらいいのだろうかということを、余り今からがんと法律でやるということが本当にいいのかどうか。そういうふうな思いを持って、ガイドラインという形にいたしました。  しかし、繰り返して恐縮でございますが、ヒト胚の扱い方、そういうものとかかわって、将来的にES細胞の扱い方も、結果として法律による規制、あるいはそういうものが必要であるとすれば、そのときはそのときで我々が判断をしていく必要性があるであろう、このようには思っております。
  25. 近藤昭一

    近藤(昭)委員 私どもも、先ほど申し上げましたように、法律規制をして、許可制という厳しいもとでやる。ある種、入り口というか門は狭いながらに開いているわけでありまして、ただ、繰り返しますと、門の開き方の、どう門を開くかという認識だと思うのです。  今の長官お答えの中にも、ES細胞ヒト個体産生にまだつながらないだろうというような御答弁があったわけでありますが、本当に科学の進歩というのはまさしく日進月歩でありまして、クローン羊ドリーについても、みんな、まさかその技術が、こんなに早く羊ができ、牛ができ、豚ができ、そしてそれが人間に応用できるというふうには、思っていなかったのではないか思います。  そういう意味で、ES細胞については、これは大臣も御存じだと思いますが、カナダでの実験で、マウスのES細胞を使う、そしてそれを特殊な細胞の中に包み込んでやる、そういう技術を使ってある種の環境をつくってやると、その包み込んでやることによって、ES細胞から個体ができたというような報告を出した研究者がおられる。  そうすると、人間についても、ある種の環境、その環境をつくる技術を開発することによって、大変に近い将来に、ES細胞由来の胚をつくることによってヒト個体産生できてしまうのではないか。しかしながら、これは、閣法によりますと門戸が緩過ぎるのではないかというふうに心配をしておるわけでありますが、いかがでありましょうか。
  26. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 基本的な考えは、今大臣がお答えしたとおりであります。  ES細胞から個体に移る段階において、例えばさまざまな技術、今近藤委員が御指摘になった技術も仄聞はいたしております。基本的に今考えられている科学的知見としては、必ずまたその核移植なり、それから融合なり集合なりという技術を用いなければいけないというふうに報告をされておるところでありまして、そういうことになってきますと、政府案規制対象に入ってくるわけでございます。  その規制か法かということになりますと、これは随分この委員会でも長いこと議論をしてきたことになるわけでありますが、そういった意味では、野方図に、野放しにこのことが日本において行われる体制であるということは言えないというふうに考えておるところでございます。  また、このES細胞に関して、個体産生の問題と、それからもう一つ、今まさにおっしゃったES細胞に由来した分化細胞とか分化組織、これを実際に人に適用していくという問題があろうかと思いますが、その問題についての安全性なり、また臨床における手続なりについては、これは大変やはり問題があるという意識でございます。  ただ、現在のところ、まだ研究がそこまで至っていないという状況の中で、今後、当然さまざまな科学的予見も踏まえて、科学技術会議の中できっちりとしたガイドラインをつくらせていただきたいというふうに考えておるところでございます。
  27. 近藤昭一

    近藤(昭)委員 今御答弁の中にありました、ガイドラインの中でということでありますが、繰り返しになってしまうわけでありますが、ES細胞につきましては、今申し上げたような生殖細胞等々の技術を使うことによって、本当に個体産生さえあるのではないか。  今、カナダのことを申し上げましたが、実は日本の国内の研究所でも、もともとES細胞は何にでもなる、だからこそ実験をということなのでありましょうが、やはり何にでもなる中で、ES細胞から精子、卵子もつくることは原理的に可能である。そして、国内の実験でも、それが精子になり得る細胞、まだ精子ではないのですが、精子になり得る細胞をつくるところまではいったというような国内の実験もあります。  つまり、その実験を担当された研究者の方自身も、これは報道によりますと、動物実験以外でやるつもりはないけれども、ルールづくりを自分自身、研究者自身としても非常に言っている。このルールが、ガイドラインなのか、私どもが申し上げた、まず法で規制許可制なのか。この辺の認識は本人に直接確認したわけではありませんが、私は、やはり基本的な認識としては、とにかく厳しくする中でということを考えております。  これはこの委員会の中でも何遍も出ました、ES細胞から臓器をつくり得る可能性がある。ただ、それは本当に、だれしも、自分が臓器の機能を失う、移植をしなくちゃいけない、なかなかその欲望にかてないかもしれない。しかし、そこでできた臓器の安全性というのは、まだまだ心配があるというふうな認識でおりますので、今御答弁の中にもありました、危険性は十分問題意識としては持っておられるということでありますので、私としては、より厳しい形でやるべきだというふうに申し上げたいと思います。  続きまして、次の質問でございますが、先般の参考人質疑の中で参考人のお一人から御指摘がありました、科学技術会議生命倫理委員会委員長の人選ということであります。  私も、あのときにお話を聞きまして、改めていかがなものかと思いました。確かに、それぞれがそれぞれの立場を持っているわけでありますから、委員あるいは委員長、その方の立場を持っている、その人の意見委員会の中でどんどん言っていくということは当然のことであります。しかしながら、特定の利害を持った方が委員長という立場につかれて、やはり委員長というのは会議をリードしていくんだと私は思うのです。  ですから、この間の御指摘の中ではイギリスの例を挙げておられましたけれども、利害を持った方は、委員となることはできて、もちろん議論には参加をして意見も言うことができる。これは当然であります、その人の立場、その人の考え方があるわけでありますから。しかしながら、たしか採決には参加しないような、そんなことだったと思います。  私は、その話を聞いておりまして、どういう方法でそれを具現化していくかは別として、やはりそういった非常に利害が絡んでいる方が委員会をリードしていくことはいかがなものかなというふうに思ったわけでありますが、この点についてどうお考えでしょうか。
  28. 大島理森

    大島国務大臣 今近藤先生が利害という言葉を使われたのでございますが、この問題における利害というのは何だろうかなとふと私は思ったのでございます。  例えば、ある許認可事項があって、それを検査するあるいは判断をする委員会があれば、その利害はかなり明確にあると思うんですね。この問題の利害というのは、人類にとって利なのか害なのかという判断をするのが利害なのかなと私は思ったんです。そういう観点から考えますと、私自身、現委員長は本当に長い間、私も何度か先生のお話を伺ったり判断を伺ったりしておりますが、豊富な経験と知識を持っておられる立派な先生だ、こう思っております。  参考人のある方がそういうふうに、人は見方の部分がございまして、大島理森も顔かたちがいいなと思う人が見ていればいいのかもしれませんが、しかし、客観的に見て、私は余りいい男じゃないんですね。そういうふうに、なるほどな、そういうふうな見方から御批判というか御意見を出されるのもあるのかなと思いましたけれども、改めて、大臣として私は、委員長は豊富な経験と知識を有した、識見を持った立派な方である、そして人類のために何がよくて何が悪いかという判断ができる人だ、こういうふうに確信をいたしております。
  29. 近藤昭一

    近藤(昭)委員 もちろん、利害と申しましょうか、今長官の御答弁なさった中で申し上げますと、大事なことは、その方がどう考えていらっしゃるか、どう行動されるか、御本人だと思います。そういう意味ではちょっと私の言葉の使い方が悪かったのかもしれないという反省をしておりますが、利害というと、まさしく益があって、それをやることによって物が得られるというようなことになってしまうわけであります。  先般の参考人質疑のときに、参考人の方がどういうお言葉をお使いになったのかなと改めて思い返しているところですが、ちょっと思い出せないのですが、関係するという言葉をお使いになったかどうかわかりませんが、ただ、あのときの議論は、参考人の方がおっしゃったのは、つまり、生命倫理委員会基本的に答申を出して、そのことに基づいて法案がつくられていくだろう、その法案の結果が、御自身が関係なさっている、あのときはたしか神戸のことが出ていたと思いますが、そういった生命科学技術の先端都市を目指す都市の中でそういったプロジェクトの責任ある立場におられる。つまり、先端都市を目指すということでありますから、これは失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、わかりやすく申し上げれば、なるべく厳しい規制でない中で進めていった方が、先端都市を目指す都市としてはやりやすい。ちょっと語弊がある言葉かもしれませんが、進めやすいという中で、委員長をやっていらっしゃるというのはいかがなものかという議論だったと思います。  その点はいかがでしょうか。
  30. 大島理森

    大島国務大臣 近藤先生、改めて私ども会議員とは何ぞやということを共通の認識にしたいと思うのでございますが、例えば各省庁にいろいろな委員会、諮問会議がございます。私どもは、すぐれて国家法律をつくる場所国会だと。もしそこで、私はそういうことは絶対ないというふうな思いで今確信を申し上げておりますが、我々が法律審議しているのであって、その先生方が出されたものを全部国家法律としてでき上がる、していくということではないわけでございますので、どうかそういうふうな高い責任感を持ち、民主党さんも立派な対案をお出しになって議論しているわけでございますから、そういう観点で立派な法律議論し、結果として生み出すことが国会の役割だと私は思います。  改めて申し上げますが、ありていに言えば、地政学的にそういうふうな観点から自分の判断を左右するような方ではございません。私は確信を持って、いわゆる客観的な議論をいただける、そういうチェアマンとしての役割を立派に果たせる先生だ、このように思っておりますので、むしろ信じていただきたい、こう思います。
  31. 近藤昭一

    近藤(昭)委員 疑うとか疑わないとかということではもちろんございません。もちろん委員会から出た答申どおりにではなくて、あくまでそれを基礎に、あるいは参考に、私どもがこの国会という場で議論をさせていただく、そういう過程を経るわけであります。  しかしながら、委員会に諮問をするというか意見を聞くというのは、やはりそこを参考にするというのが大前提だと思います。そういう意味では、そこの議論というのは大変重要になってくるわけでありますし、やはり公平性、何が公平かはなかなか難しいところであると思います。  その方が出した議論が非常に公平である、結論としては公平であると判断をだれがするかということだと思うんです。確かに、百人の人が百人公平と言えば、それはきっと公平なんでありましょう。しかしながら、百人のうち九十人が公平と言っても十人が、ではこれは公平なのかどうか、なかなかこれは難しい議論であると思うのです。  ただ、ここで問題になるのは、そういったある種疑いを持たれないように、あるいはさっき私が申し上げた利害という言葉はよくないのかもしれませんが、そういった関係のある方が委員長についていても、ついていなくても、結論としては余り公平でないものが出てくるかもしれない。そういう意味では、関係があるから委員長についてはいけない、関係がないか委員長についてもいい、そういうものでもないと思うのですが、ただ、これは外から見たときには、ルールとしては、ある種の認識としては、やはり私はブレーキというか、そういった仕組みとしてはより慎重であるべきだというふうに思うのです。  ですから、どうでしょう、長官としてはできる限りこういう状態はない方がいいのではないかという御認識をお持ちなのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  32. 大島理森

    大島国務大臣 立派な方であればあるほど、あちこちの要職につかれて、さまざまな御活躍をしておられる例がございます。それから、今までいろいろな、先ほど先生がお話しされた審議委員なんかもやっていただきながら、今日まで参って、まさに今先生がお話しされたようなことも、我々は、いろいろな先生方に諮問する委員会議論していただくときに、先生がおっしゃられるようなことも心配しながらお願いをしているところでございます。出された、あるいは御心配なそういうふうな問題提起もしっかり踏まえた上で、そういうことではない方を選んできた、そしてまたお願いしてきたということでございます。  改めて、私は国民皆さんに、先生質問を通じて明確に申し上げたいと思いますが、委員長としてまことに中立、公正、公平な、そして多くの結果をこうして御議論いただいているわけでございますので、職責をきっちりと全うされた、御信頼をしていただいていい先生であるということを申し上げたいと思います。
  33. 近藤昭一

    近藤(昭)委員 これ以上は申し上げませんが、さっき申し上げましたように、委員長が利害を持ってこの委員会をリードしたと申し上げているわけではないわけであります。そういうふうに思われてしまうかもしれないということが大変に問題だということを申し上げたいわけでありまして、そのことをぜひお踏まえいただきながら、しかし、私は、やはりできる限り、外から見たときにそういうふうに思われないような仕組み、それがある種の規制となって、よりいい議論ができるのではないかというふうに思っております。  それでは、私どもの対案の中で、これも大切だと思ってきたこと、実は、このいわゆるヒト胚の扱いについては、やはり生殖補助医療という大きな中でとらえていくべきである。もちろん私どもも、この三年以内の見直しという中で生殖補助医療との関係をしっかりと議論していくべきだということでやってまいったわけでありますが、この点、厚生科学審議会の専門委員会では、不妊治療目的での第三者への胚の提供や卵の提供を認める方向と聞いております。  その場合、科学技術庁が認めようとしている、ES細胞研究のための胚提供やクローン胚等の作成研究のための卵提供と、どちらが優先するでしょうというのは、優先というか、これはかなりぶつかってくると思うんです。そうした場合、それをどう判断していくのか。それをどういうふうにこの法案では明記、明記というか記載しているのかということをお伺いしたいと思います。
  34. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 御案内のように、ヒト胚は実は法案では対象外でございますから、明記しているのかと聞かれても困るわけでございますが、私は、今近藤委員のお話を聞いておりまして、まず、このヒト胚の扱いは、いずれにしても、先ほどから話題になっておりますインフォームド・コンセント提供者意思というものが最優先するわけですね。  ですから、第一義的には、そこで対立をするとかそういうことではなくて、提供者が、子供が欲しいけれどもできない、では私の受精卵を使っていただいてもいいですよという、この意思があって、提供をするかしないか。もしくは、研究者に対して、人類研究のために役に立つのであれば、私はもう要りませんからこれをどうぞ使っていただいていいという、この意思が確認されない限り、先ほどからの議論からしても、そこでまず交通整理がされるんじゃないか。私は、今の議論を聞かせていただいて、そんなふうに思いました。  そして、その上で、当然それぞれのルールにのっとって、今厚生科学審議会であるルールをおつくりのようでございます。これは、やはり問題としては、子供が欲しいけれどもできないという、人間を誕生させるという行為をどういうふうに補助するかということを議論していただいているのが今の厚生省審議会ですね。そして、私どもの方の生命倫理委員会においては、もちろんそのことを視野には入れてではありますけれども研究としてヒト胚をとらえて、どういうふうにしていくかということを、その審議会の審議も踏まえた中で、これからきっちりと早急に、先ほどもお答えさせていただきましたけれども、これから決めていこうというのが今の交通整理じゃないかというふうに考えておるところでございます。
  35. 近藤昭一

    近藤(昭)委員 その意味で、今総括政務次官がお答えになったことの確認ということになるんですが、十三日付のある新聞に、ヒトクローンの規制法案について、閣法と民主党案が審議をされている、それぞれの案がぶつかる中で、大きな見出しで、生殖補助医療で歩み寄りと。歩み寄りという言葉がふさわしいのかどうか、ちょっとわかりにくいところもあるんですが、ただ、この中で記事として出ていることは、総括政務次官が十日のこの科学技術委員会で、生殖補助医療、これについては厚生省議論が詰まってきている、ですから、厚生省検討が整理された段階で検討したいとお答えになっているという報道であるわけであります。  私もその委員会におったわけでありますが、ここで確認をしたいというのは、つまり、厚生省議論が深まってきた、それを待って、科学技術庁と厚生省規制の仕方を、一定のルールを持ってやっていくと。私どもの民主党案については、両者を統合した形でルールづくりをしていく必要があると考えておるということで対案を出したわけでありますが、いかがでありましょうか。
  36. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 記事をきょう初めて実は見せていただいたわけでありますが、このとおりお答えをさせていただきました。そして現在も、先ほどからお答えをさせていただいておるように、考えは変わっておりません。そういった状況を踏まえながら、先ほど山谷議員質問にもお答えをさせていただいたとおり、ヒト胚の問題、ヒト受精胚の問題として、科学技術会議で早急にこの検討に着手をしなければいけないというふうに考えておるところでございます。  この記事を書かれた方が、歩み寄りと書かれた。私は、歩み寄ることは決して悪いことではないと思います。大臣もおっしゃいましたように、当初、生殖補助医療も法案の中に完全に含まれていたものを、ある意味、やはりいろいろ問題があるということで、民主党さんの中から、この場合は別とするというふうにされたことは本当に大英断であり歩み寄りであり、また、現場の状況の理解というものを民主党さんがされたからこそ、そういうふうになったと理解をしておるわけであります。  そういった意味での歩み寄りであれば、我々も、この委員会を通じて皆さんが出していただいたさまざまな議論をベースにして、先ほど言いましたように、生命倫理委員会がお出しいただいた結論は大変重要な指針ではありますけれども国民の代表たるこの国会の場で皆さんにお決めをいただくというのが一番正しい民主主義の手続ではないか、そのように考えております。
  37. 近藤昭一

    近藤(昭)委員 私の質問時間が終了いたしましたが、今の件につきましては、やはり私どもは、当面は除外するけれども、当面ということであります。厚生省審議を待って、きちっと生殖補助医療という中で大きくとらまえていくこと、これが大切だということの認識を、ぜひ歩み寄らせていただければなというふうに思います。ありがとうございました。
  38. 古賀一成

    古賀委員長 平野博文君。
  39. 平野博文

    ○平野委員 残り時間、質問をさせていただきたいと思います。  私は、この委員会でクローン問題を議論するということで、五十歳にして初めて、生命とは何なのかということを非常に考えるようになったわけであります。特に、生命の誕生並びに細胞分裂、分化、さらには個体化し、老化をし、死に至る、こういうプロセスでございますが、その中で生きている我々が、本当にそのことを認識しながら、この生を得ていることの大切さを知って生きていたのかなということを、私、この委員になったということで、またこの法案を審議する中で、改めてこの大切さを知った限りでございます。  そういう中で、クローン技術ということが、そういう自然の生命の摂理の中で歩むプロセスで、どんなものをそこに与えていくのか。このことを基本考えなければなりません。そのことによって、一つには生命倫理上問題がある、生殖医療上問題がある、我々が今まで歩んできた生活観、家族観、そういうところにも弊害が出てくるのだと。そんな多面的な中から、クローン技術科学技術の進歩によってもし何かがなし得るとしたら、そういう視点でやはり禁止を、あるいは法律によって規制をしていくんだということでなければならないと思うのであります。  そういう意味で、今回、閣法、政府提案、そして我が党の衆法を出したわけでございますが、ある意味では私、どちらがいいとかどちらが悪いとかいうよりも、とらまえている次元が、あるいは時間軸が違うのかなという気がいたしてなりません。したがって、どちらも否定するということにはなかなか至っていかないのかな、こういう気がしてならないわけであります。  そこで、十分議論されている中ではありますが、確認という意味合いもあるわけでありますが、改めて質問をさせていただきたい、このように思うところであります。  まず、指針というところ。法律で禁止という考え方、あるいは指針によってそのことを運んでいきますという二本立てにこの法律体系はなっているわけでありますが、改めて、この指針にゆだねられている部分の問題について御質問したいと思います。  まず、政府案による人クローン胚を胎内に移植した、こういうことを仮定したときに、政府案は、どの条文の適用によって罰則を決めていくのでしょうか。
  40. 結城章夫

    結城政府参考人 政府案におきましては、規制対象となる胚を九種類、特定胚として定義しております。  そのうちの四種類、これは人クローン胚その他、非常に問題の大きい胚でございます。これは法案の第三条におきまして、母胎に移植してはならないというふうになっておりまして、これで禁止をいたしております。
  41. 平野博文

    ○平野委員 罰則は。
  42. 結城章夫

    結城政府参考人 ただいまの第三条に違反した者に対しては、罰則の条文は第十六条でございまして、十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金に処する、またはこれを併科するということになっております。
  43. 平野博文

    ○平野委員 そうすると、例えば、今言われた九種類に分けていますね。それで、十年以下の懲役、一千万円というのは、全部それになるんですか。
  44. 結城章夫

    結城政府参考人 母胎に移植した場合に十年以下の懲役になりますのは、第三条に列記してございます人クローン胚、ヒト動物交雑胚、ヒト性融合胚及びヒト集合胚の四つでございます。
  45. 平野博文

    ○平野委員 そうしますと、三条に列挙していないヒト胚分割胚、ヒト胚核移植胚、動物集合胚などを胎内に移植した場合には、どの条文が適用になりますか。
  46. 結城章夫

    結城政府参考人 政府案におきましては、第四条で指針を定めることになっておりまして、この指針の中で、ただいま御指摘のございました三条で禁止されていない五種類の胚については、この法律に基づく指針において母胎への移植を禁止することといたしておりまして、その指針に従わない場合には、今度は一年以下の罰則ということになってまいります。
  47. 平野博文

    ○平野委員 そうしますと、三条に列挙した以外の胚については懲役一年、三条については十年、こういうことになっているわけです。  民主党案は、これらは同じ条文の適用により同じ罰則規定を適用する、こういうことになっていますが、同じでよろしゅうございますか。
  48. 樽床伸二

    樽床議員 平野委員のおっしゃるとおりでございます。
  49. 平野博文

    ○平野委員 そこで、これは確認なのですが、政府案では体細胞クローンをつくれば懲役十年という、科学技術の中で罰則規定を適用するという本当に今まで初めてのことでございますが、受精卵クローンや動物性のキメラをつくっても、本来十年でなければならぬと私は思うのですが、一年ということですね。今、政府の答弁はそういうことになると思うのです。  しかも、指針でどういうふうにするというのは、この法律の中には明記されていない。罰則規定は一年ということになっていますが、胎内に入れた場合に一年、同じことですね。先ほど言いました、三条の部分で胎内に入れた場合は十年、それ以外の項目については胎内へ入れても罰則規定は一年ということについて、再度確認したいのですが、そういうことでよろしいですね。
  50. 結城章夫

    結城政府参考人 そのとおりでございます。  なぜそういうふうに仕分けておるかということでございますが、懲役十年という重罰をもって禁止するには、単に倫理的な問題があるだけでは不十分であり、実際に相当程度の反社会性のあることが必要でございます。  例えばヒト胚分割胚については、これは一年の方でございますけれども、仮に母胎に移植され産生に至った場合でも、これは、自然に生まれることのある一卵性双生児を人工的に生み出したことになります。このことは、クローン人間産生と同様の社会的弊害があるとは言えないということで、人クローン胚の移植の場合と同様の十年という刑罰をもって禁止することは適当でないというふうに考えております。
  51. 平野博文

    ○平野委員 しかし、法律上では、受精卵クローンなどの胎内移植に対する禁止は明確にはされていないですね。法文の中には入っていませんよね。それはいいですね。  そうすると、懲役一年としますというのは、指針に反したら一年ですよ、こういうことですね。ところが、指針に違反したらというけれども指針の中身が明確にないのに、何で一年などという法律をつくれるのですか。
  52. 結城章夫

    結城政府参考人 指針に違反したらというのは、ちょっと私、言葉足らずでございました。  指針に対しては遵守義務がございまして、こういった特定胚を取り扱うという場合は、まず国に届け出をしていただきます。それが指針に合っていなければ、計画の変更命令あるいは廃止命令を国が出します。そういった国の命令に従わなかった場合、それに違反した場合は罰則が来る、そういうことでございます。
  53. 平野博文

    ○平野委員 懲役ですよ。普通の罰金刑云々ということじゃなくて、懲役刑まで科すにもかかわらず、指針の中で明らかにされない、これは本当に合意がとれるのでしょうか。私、そこが非常に悩ましい問題であるし、過日の委員会でも同僚議員もそういう指摘をされておったと思うのですが、非常にあいまいになっています。  そこで、改めて私、懲役刑を科すというにもかかわらず、指針の中身が明らかにされないで、指針で決めますと。指針に違反したときには懲役一年。一年も十年も私は懲役という意味では同じ重罰だというふうに理解をしているのですが、その点は大臣、どうですか。
  54. 大島理森

    大島国務大臣 今平野先生がお話しされている部分について、私も、この議論を実は長官となってずっとして、率直にかなり議論したところなんです。  そういうふうなことの中で、次のようにお答えをしたいと思いますが、いずれにしろ、無性生殖でできてきた胚であろうが、有性生殖でできた胚であろうが、基本的に、それを母胎へ移植するということは、人間尊厳という観点から、拍手をして褒めてやるということではないと。特に、そこはむしろ基本としてはやはりよくないことなんだというふうなことを押さえながら、さらに、反社会性の強いものと。  しかし、一方、ずっとこの委員会が始まってからの議論の中で、今後、人類のさまざまな尊厳を維持していくために、研究開発という分野が残り得るとすれば、やはりそこの道は残しておくべきだ、またライフサイエンスというのはどんどんいくと。  したがって、まず、基本的にはそれはやってはいけないことだけれども、反社会性というところでまずしっかりと押さえよう、それが法律で禁止事項でありますと。これはどんな研究であろうが何であろうが、やってはいけないことだと。  しかし一方、やってはいけないことだけれども、逆に、そういう人類あるいは人間の本当にいい意味での尊厳を維持していくために必要な研究という分野がありとすれば、そこはガイドラインで押さえて、結果として一年の懲役というぐらいに抑えていこう。  先生おっしゃるように、ガイドラインがまだ見えてないのにそこのところはどうだろうかという質問は、私はある意味ではもっともな御質問のところだと思うんです。しかし、今日までの議論の中で、ガイドラインの骨子だけはある程度お話をさせていただきました。私からもお話ししましたし、また事務局からもお話ししました。政務次官からもかなり先ほどもお話ししました。  したがって、ガイドラインがしっかりできた暁には、もちろんこれをすぐに、速やかに公表いたさなければなりませんし、私は、皆様方のところに速やかにお届けするようにしてまいりたい。そして、そのガイドラインを踏まえて、何らかの形でもって国会で大いに御議論をいただくのは結構だと思いますので、ガイドラインをそういう形で先生方にお見せしたいとも思います。  いずれにしろ、法律規制する分野とガイドラインで禁止する部分のその根底には、ある意味では、基本的に先生方と同じように、胚という問題を、移植をするということに国家が全部オーケーですということではなくて、むしろ非常に慎重であるべきだ、ましてや反社会性の強いものは絶対いけないという中で考えているというふうに御理解いただきたいと思うのです。
  55. 平野博文

    ○平野委員 ただ、大臣、今の政府案では指針で決めますとしか書いてないのですね。指針で禁止しますという言葉をなぜ入れないのでしょうか。指針で決めますですから、決めるということは、禁止する場合もしない場合もあるんじゃないでしょうか。  だから、片一方は法律で禁止します、片一方はガイドラインで、指針で決めますというのですが、決めますじゃなくて、指針で禁止をしますということが基本にあってしかるべきだと思うのです。
  56. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 法文上、指針でもって禁止をしますというのは、私はおかしいと思います。これは平野委員、多分おわかりだと思いますが、それなら初めから法律で禁止していれば別に構わないのであって、要するに、指針というのはあくまでもガイドラインですから、そちらで決めますということが法律で決められていて、その法に基づいてガイドラインがつくられるというのが基本的な構造だと理解するべきなんじゃないでしょうか。  ただし、生命倫理委員会ではかなり議論が進んでおりますから、指針においても当面はこういう方向で考えるということが今議論されているのであって、先ほど来大臣がお話をしましたように、これはやはり大事な問題ですから、ガイドラインの姿が全然見えないというような状況の中では、この議論は恐らく進まないと思うのですね。  そういう中で、いろいろな考え方が示されている。既に、少なくとも生命倫理委員会で示されている考え方について、政府としてもどう考えるかという姿勢をはっきりさせていただいているということだと理解をしていただきたいというふうに思います。
  57. 平野博文

    ○平野委員 いや、今政務次官が言うのはおかしいよ。法律に基づく指針で禁止ということを言っているんですよ、この説明の中には。政府の答弁の中にも。法律に基づく指針で禁止ということを言っているんですよ。(渡海政務次官「だから、指針で禁止」と呼ぶ)いや、だから、それだったら、指針で決めるというところに指針によって禁止をするということを入れたらどうですかということを言っているんです。
  58. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 いや、それは、指針の内容はあくまで指針で書くべきものでしょう。ですから、この間から議論になっているように、やはり現在の考え方としてというのがあるわけです。  それから、これはちょっと私が越権行為で答えているかもしれませんが、研究開発というもののスピードなりそういうものを考えて、原則的に指針にゆだねたいという法律をつくったわけですね。ここの部分が当初から、ある意味考えが違うといえば、似ているようで非常に違うところなんですね。  ですから、禁止するかしないかは、これは指針であくまで書く。ある状況が整って、先ほど来説明をしておりますような、例えば安全性なり科学的知見なり有用性なり、そういうものが整った段階では、これは要するに、指針で禁止というものの、ガイドラインを変更することだってあり得るんです。それはあり得ますよ、当然。  ですから、法律で何でもかんでも禁止する方がいいと考えるのか、それとも、やはりコンセンサスがとれているこの四つを早急に、今の段階では禁止をするという法律がいいのかという議論を延々実はしてきたわけでありまして、そこのところをよく御理解いただきたい。私の先ほどの発言は、そういうつもりで申し上げておりますので。
  59. 大島理森

    大島国務大臣 今、総括のお答えでいいんですが、私が申し上げていることをもう一度申し上げるならば、この法律の趣旨をおわかりだと思うんです。  やはり、胚というものをみだりに人に移植してやることがまさに人類あり方論としておかしいじゃないかという思いは、これは私は共通の認識だと思うんです。  そういう状況の中で、社会性にもう絶対許しちゃいかぬものは法律で禁止しました。一方、人類尊厳人間尊厳にとって医療上どうしても必要な研究の分野が、ある意味では胚の移植をすることによって得られるという可能性がある場合には、その移植そのものをずばっと禁止ということよりは、その手続過程に違背したときに一年以下の罰則を設けますよという法律になっているわけですね、先生御存じのように。  そこは、研究施設のあり方あるいは研究の仕様のあり方等で、やはりこれから詰めて皆さんに、国民の前に明らかにしなければなりませんが、ただ、そういう中で、今までも御答弁いただいたようなイメージ、イメージというか要件は、かなりもうお答えをしてまいりました。骨子は変わらないと思いますので、細部にわたってさらに詰めて、先生方に御報告をする。国会に報告するというより、指針ができたら、私は、御論議いただいた先生方には、委員長を通じて、皆さんにお配りするのは当たり前の話だ、これは行政としての当然のことだと思いますので、そういうものを見ていただきながら、また御議論いただきたい。  根本的な仕組みの仕方、法律の仕組み方はそうなっておりますので、そういう点を御理解いただきたいと思います。
  60. 平野博文

    ○平野委員 大臣、政務次官の言われる意味はよくわかりますが、ただ、いみじくも大臣言われましたように、報告義務違反なんですよ。これで一年なんですよ。個体をつくったといっても、つくったことに対して罰せられるわけでなくて、報告義務違反で罰せられるだけなんです。僕は、ここが大きな問題をはらんでいると思うのですね。だから、何で一年という懲役まで科して、報告義務違反で懲役というのはこれは重たいのです。個体をつくったからというて、そのつくった行為に対して罰せられるわけじゃないでしょう。これが問題だということを僕は言いたいわけです。  したがって、体細胞クローンの個体をつくることと、受精卵クローンや動物集合胚個体をつくることに、そんな差があるんでしょうか。ないとしたら、なぜ十年、片一方は一年と、行政指針違反という報告義務違反による量刑の差を設けておるんですか。我が党の申し上げております、十年という統一した部分にすべきことが本来正しい認識じゃないでしょうか。  簡単でいいですよ、もう時間がなくなっていますから。
  61. 大島理森

    大島国務大臣 時間がないんですが、もう一度同じことをお答えするんですけれども、反社会性という観点から見ますと、大島理森の皮膚からとったコピー人間が生まれることと、大島理森の有性生殖から生まれるそういうものという観点から見ましても、そこは私どもは、反社会性という観点からそういうふうにしました。  一方は、やはり研究という観点から、そこの研究の有用性が考えられる余地が残っているというふうな中で、そういう差を設けました。片っ方は、いか研究であろうがそういうふうな道は一切だめですという強い気持ちをあらわした差である、このようにお考えいただきたいな、こう思います。
  62. 平野博文

    ○平野委員 大臣の申されたことはわかります。それならば、動物性融合胚とか動物集合胚、こういうところなんか、これは本来、個体産生をしてはいかぬのですよ。こんなのを行政指針にゆだねているところに問題があるんですよ。今、政務次官が言われた一卵性が云々ということについては、まあ百歩譲って、いいですが、キメラとかそういうところまで行政指針にゆだねる、反社会的行為ですよ、こんなものは。それを、科学技術の進歩によるから、これは行政指針だと。  何か、穴を見透かしたようなあり方では、私は納得いかないところがあるのです。もし答弁が必要であれば言ってください。
  63. 結城章夫

    結城政府参考人 人の亜種をつくるようなこと、つまり、動物の部品を持った人間をつくること、これは絶対にやってはいけないことで、法律で禁止しております。一方、今御指摘の、動物集合胚あるいは動物性融合胚、これは人間の要素を一部持った動物でございますので、そういった動物をつくることが、反社会性ということにおいて、先ほどの人間の亜種をつくることとは大分意味合いが違うということで、その差を設けておるわけでございます。
  64. 平野博文

    ○平野委員 見た目でいったら、それはもう間違いなく反社会性の物体ができますよ。しかしその亜種は有用だとか、こういうことを言い出したら、もっとこれは議論を深めないといけない点がある。  もう時間がありませんから、特に要望、結論的なことを申し上げますが、要は、指針ということでくくってもらうことなく、きちっともっと明確に、この点については、この点については、この点についてはということをやはり明確に、禁止するんだ、それ以外についてはよく見て判断しますとか、この辺がないものだから、ばくっと指針、あとは行政にお任せ、これは余りにも、大臣がいみじくも言っていますように、コンセンサスがまだとれていないからというけれども、ここが明らかにコンセンサスをとる場ですから、国民のコンセンサスをとる場ですから。やはりそこに披瀝をしてもらう。その上で審議をして決めていくんだ、こういうことに余りにもこの法律はなっていないなと。それだけ不透明なんだろうということに思うのです。  それで、もう一つ。これは実務的な、行政手続的なことなんですが、行政手続法第二条によれば、届け出とは、行政省庁に対して一定の事項を通知する行為なんですね。そもそも、申し出に対してオーケーかノーかを行政省庁が判断するものは、届け出とは言わないですよね。今回、ここで言う届け出規制というのは、実態については極めて許可制に近い届け出制になっているんじゃないでしょうか。だから、非常に不明確な規制の仕方をしているように思えてならないのです。  本来、行政の部分で言う届け出とは、一定の事項を通知するだけでいいのです。そこに判断を仰ぐものではない。判断を仰ぐということは許可制許可制というのは判断を仰ぐ。したがって、非常に中途半端な手続論になっているのではないでしょうか。その点は、政府の見解はどうですか。
  65. 大島理森

    大島国務大臣 平野先生が、許可と届け出の行政手続的な基本論としての違いを今鋭くお話しされましたが、ある意味ではそういうところがあるのかもしれません。届け出制によって、計画をちゃんと我々もチェックする。ですから、ある意味では、届け出をしながら行政がそこにコミットしていく。まさにそれは、この法の精神に基づいてそこをチェックしていくという責任を行政がそこに追加しているという意味では、先生がおっしゃることは、ある一面指摘が正しいのだろうと思います。  そのぐらいに、一方、研究開発という問題と人間尊厳、反社会性との接点をどのように考えていくか、そういう結果として生まれたやり方だ、このように私は御説明申し上げたいと思いますし、先生が盛んに指摘されている問題は、根幹的にはずっと残っている問題意識と認識して、この法律を運用するときに考えいかなければならない問題だ、このように思います。
  66. 平野博文

    ○平野委員 ぜひとも明確なる指針というものを出してもらわなければならない。私は元来、これは指針であろうが何であろうが、禁止すべき行為の中での区分であって、研究の自由のためにだとか、ある特定のために区分を分けるべきものではない。禁止は禁止なんだ、その上でどうなんだということでなければ、禁止はこれ、これ以外は別裁量でやれるのですよ、何かこういう逃げ場をつくっているような気がしてならないわけであります。したがって、ぜひともそういう誤解の起こらないように、明確にやはり指針づくりをしてもらわないといけないなというふうに思っています。  ヒト胚の扱いにつきましては、先ほど同僚議員が、胚の大切さを含めて取り扱いについて申し上げましたから、私は割愛をさせていただきます。  最後に、この胚の問題というのは、とりわけクローン技術、さらにはこれからの科学技術の進展、生殖補助医療等々の分野におけるこの位置づけというのは、何をおいてもまず卵子、いわゆる母性の立場に非常に負担なり課題が出てくるのではないか、このように思っています。そういう意味で、特に女性の立場から申し上げますと、やはり個人の尊厳、人権の問題、情報提供、そのことについてはとりわけ大切に取り扱っていただかなければならない、こういうことだと思うのであります。  政府の原案の方には、余りそのことについては、十分に配慮をするというところまで克明に書かれていません。したがって、今後の取り扱いについては、そういう視点でも十分に、具体的には情報公開の問題あるいは個人の問題、そういうところも配慮したガイドライン指針もその中に含めてつくっていただきたいな、このように思うところであります。  いずれにいたしましても、この法案は、さきの国会からの重要な法案でございます。とりわけ、日本国だけよければいいということでもありません。地球の問題から発した生命体でございますから、全世界の、人類の問題だ、このように考えておりますので、そういう意味で、いろいろな包括的な議論のもとにすばらしい法律ができますことを心より祈念申し上げ、私としては、不十分ながら、今政府から御答弁いただいたことに対しては一定の理解をしたい、こういうふうに報告をし、回答しておきたいと思います。  ありがとうございました。
  67. 大島理森

    大島国務大臣 先生から今、数々の問題提起をされました。そして、御心配もいただきました。私どもは、そのことを貴重な御意見として心して承って、生かせるものは生かしてまいりたい、このように思います。
  68. 平野博文

    ○平野委員 終わります。
  69. 古賀一成

  70. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 きのうの参考人質疑では、クローン技術規制に関するさまざまな論点について専門家の方々から非常に多くの意見を聞くことができ、有意義なものがありました。きょうの質疑では、きのうの議論を踏まえ、要点と思われるところを整理するつもりで質問させていただきます。  クローン人間は、基本人権の尊厳の根拠にかかわることであり、絶対につくられてはいけないし、クローン技術規制は不可欠であると思います。この点に関しては、政府案も民主党案もともに合意している部分であり、私も異議のないところであります。ただ、衆法が主張する、ヒト胚研究生殖医療などを取り込んだ生命倫理に関する規制を設けることについては、その規制あり方も含め、議論が一致しておりませんでした。  それで、いま一度この点について、これまでの議論を踏まえての答えを政府にいただきたいと思うわけですが、クローン個体産生を禁止することとヒト胚規制することについては、政府はどのような考えを持っているのか、このまとめたところの答弁をお願いしたい、こう思います。
  71. 結城章夫

    結城政府参考人 クローン人間、これは体細胞クローンでございますが、クローン人間産生することは、既に存在する人と同じ遺伝子を持つ人を生み出すことであり、これは男女両性がかかわることのない無性生殖を意味いたします。このことは、特定の目的のために人間産生しようとするいわば人間の道具化につながるなど、人の尊厳の保持、人の生命及び身体の安全の確保並びに社会秩序の維持に重大な影響を及ぼすおそれがあり、これは絶対に許されるものではございません。  なお、このクローン人間産生を禁止することは、科学技術会議生命倫理委員会において国民各界各層の多様な意見を反映しつつ議論された結論でありまして、また、デンバー・サミットなどの国際場裏においても合意がなされるなど、国内外において明確な合意が存在する問題であります。  一方、ヒト受精胚ヒト胚全般につきましては、具体的にいかなる保護を与えるべきかなどについて十分な国民合意がなく、密接に関連する生殖医療規制あり方についても、現在、厚生科学審議会において検討が行われている状況でございます。政府としては、現時点でヒト胚取り扱いについて法律で定めることは適切でないと考えております。  ヒト受精胚研究利用全般の枠組みにつきましては、今後、科学技術会議生命倫理委員会において国民意見を十分に聴取しつつ、また厚生科学審議会での議論とあわせまして、結論が行われていく予定でございます。     〔委員長退席、平野委員長代理着席〕
  72. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私としては、衆法が主張されていることも理解しているつもりです。重要な論点もありますし、真剣に考えいかなければならないことだと思います。  まず一点目に、緊急性の問題があると思います。クローン人間がつくられることを禁止すること、これは非常に緊急性が高いものであり、この点については異論はないわけです。これに対して、ヒト胚取り扱い規制については、クローン個体産生禁止ほどの緊急性があるのか。ヒト胚取り扱い規制することは、ヒト胚研究全体の規制体系をつくるものであり、ヒト胚提供者保護といった側面もあるなど、緊急に行うというよりは、むしろ時間をかけて論議してもよいのではないか、そういう制度設計の問題だと思っております。しかし一方で、衆法がうたっているような意見をいつまでも放置してよいはずはありません。  そこで、政府に、このヒト胚取り扱い規制することの緊急性をどのように認識しているか、このことをお伺いします。
  73. 結城章夫

    結城政府参考人 科学技術会議生命倫理委員会のもとに設置されましたヒト胚研究委員会において、ヒト胚は人の生命萌芽としての意味を持ち、慎重に取り扱わなくてはならないものであるとされたわけでございますが、ヒト胚研究全般に関する規制の枠組みについては、今後の検討課題であるとの結論に達しております。  この結論を踏まえますと、ヒト胚取り扱いに関する規制につきましては、拙速な規制を行うのではなく、ヒト胚研究全般のあり方についての生命倫理委員会におけるこれからの検討や、厚生科学審議会生殖医療に関する検討など、十分な国民議論を経た上でそのあり方を定めていくべきと考えております。  なお、ヒト胚研究利用一つでありますヒトES細胞研究でございますが、これは二年ほど前に技術が確立いたし、今大変注目されている研究分野でございますが、生命倫理委員会において詳細な検討を行った上で、ヒトES細胞それだけでは個体にならないため、法規制が不可欠とは言えないこと、技術的発展が著しい分野であって、適切に対応していく必要があることなどから、柔軟な対応が望ましいとされたわけでございます。現在のところ、法律によらないガイドライン規制を行うべきであるという結論に達しておるものでございまして、今後、そのための具体的な指針づくり、ガイドラインづくりを進めてまいる予定でございます。
  74. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 ヒト胚取り扱いが行われる場合のほとんどが生殖医療に関するものでありますが、既に体外受精技術が一般的な技術になっており、質問もし、また答弁にもあったように、五万人にも上ると言われる体外受精技術で生まれた赤ん坊がいることを考えましても、生殖医療は既に確立された分野との見方ができます。  その点を考慮されて衆法では、ヒト胚規制法律で規定しているものの、ヒト胚取り扱いを行う最も重要な分野である生殖医療及びその研究の分野は除外しておられます。このことは、逆に、ヒト胚取り扱い規制することは、クローン技術規制に比べると緊急性を幾らか低くしている面ではないか思います。しかし、ES細胞研究については、その適正な取り扱いが必要であります。  それで、現在のところ、ガイドラインでもこのことは対応できるのではないかと私は考えるわけです。ただ、ES細胞研究も含めたヒト胚研究全般については、非常に重要な問題があります。今後、規制をかけるかけないという点も含めて、議論を深めていく必要があります。今回、最も緊急性の高いクローン技術についての規制を行い、さらにじっくり時間をかけ、議論を続け、さまざまな国民意見を取り入れ、合意を形成した上で、ヒト胚研究のあるべき姿を考えていくべきであるとも思います。  そこで、この点に関して、また政府考えをお伺いします。  ヒト胚取り扱いについて、そのあり方をより深く議論していく必要があるということについて、政府として今後どのように対応していく予定なのか、このことをお伺いいたします。
  75. 大島理森

    大島国務大臣 今の菅原委員の御質問でございますが、改めて申し上げたいと思います。  ヒト胚は、科学技術会議生命倫理委員会におきましても、まさに人の生命萌芽である、倫理的に尊重されるべきだ、このようにありますし、私どもも、その基本、原点をしっかりと踏まえなきゃならぬと思います。  したがって、ヒト胚研究あり方、まずそこのところのあり方検討、あるいは、先ほど総括も御答弁されましたように、これは生命倫理委員会でできるだけ速やかに議論に入っていただく。一方、厚生科学審議会生殖医療に関する検討、これもまた、そんなに遠くなく御結論をいただける。  そして、初めてこのクローン技術等研究開発等における御論議がこの国会の場で、民主党さんを含めて御提案もあったり、今、菅原委員からも御論議があったり、皆様方から数々の御論議がありました。そういう御論議も踏まえつつ、十分な国民的な議論を経た上で、そのあり方を定めてまいりたいと思います。  その結果として、やはりここは法律で押さえておかなければならぬという場面が出てくれば、それはやらなきゃならぬことだと思います。私どもは、そういう考え方で今後対応してまいりたい、このように思っております。
  76. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 丁寧なお答えをいただきました。  本当にこのことについては、委員会での真摯な議論を踏まえ、しっかりと行っていく必要がありますので、ひとつ政府としてもそのような努力をお願いしたいと思います。  きのうの参考人質疑で町野参考人のお話を聞いて、大変よく納得した部分がございます。それは、行為が反倫理的であるという理由だけで規制を行うことはできず、行為に反社会性が存在することが必要であるという点がございました。  やはり法律による規制、しかも罰則を伴う規制というものは国民生活に大きく影響を与えるものであります。法律及び罰則というのはそれだけ大きな意味を持つものでありますから、不用意な規制法律で行うことは避けたいものであります。これは国会という立法府がしっかりと判断していかなければならない部分だと思います。  この観点から、もう一度確認の意味質問をさせていただきますが、クローン個体や人と動物の亜種等の産生罰則をもって禁止しているわけですが、このクローン個体等産生行為の反社会性について、具体的に、また国民にもわかりやすいような政府説明、答弁を再度お願いしたいな、こう思います。
  77. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 確認の意味ということであろうと思いますが、個体産生の行為は、これまでの議論でも明らかにされましたように、人の尊厳の保持、人の生命及び身体の安全性の確保、さらには社会秩序の維持に影響を及ぼす、この大きな三つの論点で、反社会性が非常に高いというふうに考えておるところでございます。  時間があれでございましょうから簡単に申し上げますが、人の尊厳という問題では、やはり特定の遺伝形質を持った人、既に存在する人がコピーとして存在をするということで、人間の手段、道具化につながる。また、人クローン個体は、体細胞提供者と別の人格を有しているにもかかわらず、常にみずからと提供された方との間で、この人格の問題を意識して、固有の人格が侵されかねないこと。  また、安全性の問題では、今まで動物実験等でクローン個体がどうも非常に大きく育つというふうな報告もあるわけでございますし、そういった意味で、母体に対してどうかというふうな問題もございます。  社会秩序は、通常の社会行為によって想定されております親子関係等の通常の社会秩序を乱す、こういったことが非常に社会の混乱につながるということでありましょうし、また、先ほど委員お話しになりました動物人間とのキメラ、こういったものができますと、いわば種としての尊厳といいますか、種としての人の存在そのものを危なくする危険性もある。こういった観点から、反社会性が非常に強いという判断をさせていただいておるところでございます。
  78. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 ヒト胚作成、使用されることは、方法次第では反倫理的と言える面も出てきます。しかし、ヒト胚作成、使用されただけで反社会性があるということではないわけで、ヒト胚がつくられただけで社会秩序が乱れたりするようなことはないと思います。要は、倫理観に関するルールがいかにしてつくられるべきかという点であります。  この点を含めて、国民合意できるところを丹念に探っていく必要があります。それぞれの背景、現状、将来予測を考慮し、この面でも議論を深めていってもらいたいことを要求し、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  79. 平野博文

    ○平野委員長代理 吉井英勝君。
  80. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  私は、まず、人クローン個体産生を禁止する理由について、法律の第一条目的のところで、人の尊厳の保持、人の生命及び身体の安全の確保、社会秩序の維持に重大な影響を与える可能性があるとしている、この問題から質問に入っていきたいと思います。  クローン人間産生について、人間尊厳をどう考えるか。前回に続いて、人間尊厳について医学や生物学、倫理の世界でどのように定義ないし議論しているかということを見ていきたいと思うんです。  それで、人間尊厳については、まとまって論じられてきたというのはルネサンス期のことのようなんですね。西洋思想大事典では、ルネサンス的観念としての人間尊厳というのが随分議論され、紹介されてもおります。岩波哲学・思想事典では、イタリア・ルネサンスの思想家ピーコ・デッラ・ミランドラの説など、人間はあらかじめ本性が決定されている他の被造物とは異なって、自由意思に基づいて自己の本性を選択し決定する存在である、そういう紹介どもなされております。  そこで、このクローン人間産生の禁止という理由の一つ人間尊厳について、いわばルネサンス以来の立場からすると、一つのまとめ方としては、自己の本性にかかわる遺伝情報を、他人の手で、誕生前にあらかじめ意図的に操作されることがあってはならない。両親の二つの遺伝子の組み合わせによって多様な発展の可能性を持つ個人が、あらかじめ特定個人と同じ遺伝的形質を持つことを決定されてしまうことがあってはならない。そういう面から、人間尊厳ということに照らして、やはりクローン人間産生というのは禁止しなければならない。  人間尊厳という問題については、こういういわばルネサンス的まとめ方といいますか、一つのまとめ方ができようかなと思うのですが、最初に、この点についての大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  81. 大島理森

    大島国務大臣 今、ルネサンス以来の個人の尊厳あるいは人の尊厳ということについての吉井先生の御開陳がございました。憲法でも、十三条で個人の尊重と公共の福祉という項目があるのですが、この背景は、ある意味では、そういうふうな背景をもとにして哲学的に概念として書いている部分もあるのであろうと思います。  一方、個人の尊厳生命尊厳というものを別に議論をされる方もあるやに伺っておるわけでございまして、いろいろな、そういう法理学的な議論とか、あるいはまた哲学的な議論とかというものがあると思いますが、私は私なりに、非常に雑駁かもしれませんけれどもお答えをあえてしようと思えば、やはり一人の人間がそこに存在している、それは唯一無二の存在である、だからこそ、お互いに人間が尊重し合うという覚悟を決めて近代社会があるんだ。そこのところを押さえないと、民主主義社会も成り立ち得ないんだということで、この間、そういうことを聞かれましたものですから、大島理森は大島理森しかいないということが個人の尊厳ということではないでしょうかとお答えしたところでございます。唯一無二、これが私は、ごくわかりやすく言えば、なるがゆえの尊重ではないだろうか、こう思います。
  82. 吉井英勝

    吉井委員 人間尊厳ということについて、個人という面に着目しますと、一つは、各人の存在は独自性を持っている。独自のものという、今大臣もおっしゃったことが一つ当たっていると思うのですね。それから、人間の存在は一回きりのものであって、一度人生終わってまた二度目が始まるというものでもありません。それから、他人によってあらかじめ決定されていない。そういうところが、やはり個人に着目すれば大事なところである。そういう点では、これはまさにイタリア・ルネサンス期の、あらかじめ本性が決定されている他の被造物とは異なって、自由意思に基づいて自己の本性を選択し決定する存在、こういう考え方というのは、今の大臣の、個人というものに着目しても、これは貫いているものになろうかなと思うのです。  それを別な表現で言えば、自己の本性にかかわる遺伝情報を、他人の手で、誕生前にあらかじめ意図的に操作されることがあってはならない、そういう問題でもありますし、そこは、ルネサンス的まとめ方をすれば、さっきのようなことになろうかなと思うのです。  別な角度から整理してみますと、これは昨日の、先ほども菅原議員からお話があった町野参考人、町野さんの方は、今大臣おっしゃったように、人間尊厳については、使う人によってさまざまだが、コピー人間をつくることは憲法十三条に違反するという趣旨の御意見を述べられました。まさにそのとおりであって、憲法十三条は個人の尊重の原理を明言したものであり、十三条、二十四条の規定から、二十四条というのは、法律は個人の尊厳ということを基本としてつくられなければならないという部分ですから、憲法は個人の尊厳ということを基本としている。  個人の尊厳とは、個人の価値を承認し、個人をどこまでも尊重しようという原理のことだということ、これは大体、先ほど大臣おっしゃったことも、個人に着目したときにはそういうことであって、これは、青柳幸一さんという横浜国立大学の法学部の教授の「個人の尊重と人間尊厳」という著書なり、あるいは宮沢俊義さんの「憲法大意」や「憲法入門」、「憲法」その他に大体示されている、共通したものであると思うのです。  ですから、今度の法律の第一条の人間尊厳は、憲法上の規定としては憲法十三条、二十四条に置いているものなんだ、こういうことで考えておいていいですね。
  83. 大島理森

    大島国務大臣 すべての法律は、憲法を基本法として、その範囲の中で考えることだと思っております。もちろん、そういう中には十三条も二十四条も存在すると私は思います。  加えて、今般皆さんの御議論をいただいているこの法案は、生命という問題に非常に直接的にかかわる問題でございます。ですから、個体として個人が持つ権利、あるいはそういう尊重、そういう相対的な、個人主義論的なものと同時に、生命をどう考えるかという問題にもかかわるものですから、そういう大きな基本法である憲法という範囲の中での法律であると同時に、生命というものに対して考え法律でもあるという意味で、私どもはつくらせていただきました。
  84. 吉井英勝

    吉井委員 生命の問題は、また後ほど触れていきたいと思います。  同じく、学者の田口精一氏は、ドイツ基本法の詳細な分析の上に立って、日本国憲法十三条とその趣旨においてドイツ基本法は同じだということを指摘した上で、尊厳の価値の主体である人間は、共同社会の生活関係の中にある生きた人間でなければならない、それは動物的な存在としての単なる生命体を意味することではなく、みずからの意思の自由のうちに自己を決定し形成し、自己を取り巻く環境の中でみずからを完成する人格の主体としての人間をいうというふうに要約しておりますが、ルネサンス期以来の議論も、大体憲法の議論の中に生かされているというふうに私は思っておるわけです。  憲法制定過程の議論や、それから教育基本法、売春禁止法、四七年につくられた警察法などに、警察法は今は変わっておりますが、共通しているのは、個人の尊重、個人の尊厳、人格の尊重、人間尊厳というのを同じ意味で、同義でとらえていた、そういうとらえ方がされていたということを、これもまた青柳教授などが論文などで指摘しております。  憲法上のそういう見方とあわせて、今度は医学の面から見たときにどうなのかという点で少し見ておきますと、日本で最近、医学分野の研究者自身から、かつての帝国陸軍七三一部隊の犯罪を歴史的にきちんと総括しようという取り組みが始まっております。この点で、前田達明氏らを代表執筆とする「医事法」という本がありますが、そこでは、ドイツでは、憲法の人間尊厳条項がナチスの暴虐への深い反省から規定されるに至ったこともあり、生殖医療等先端医療研究及びその臨床応用の規制を正当化する根拠として、人間尊厳を持ち出す考え方が有力であると。これはドイツにおける基本法から出発しての考え方です。  ですから、私は、今大臣がおっしゃった生命の問題とか、その根底に、これは憲法と別々な話じゃなくて、日本の場合もやはり憲法を基本として、生命の問題あるいは生殖医療とか先端医療をどうとらえていくかということが基本としてこの点でも据わっているものだと思います。  先ほど挙げました「個人の尊重と人間尊厳」というのを書いた青柳氏の中でも、ナチスという合法性を装った不法国家の克服、阻止という問題は、ドイツの特殊な戦後的課題にすぎないのではなくて、常に至るところで我々にとって普遍的課題である、だから、それゆえに人間尊厳は、第二次大戦後、人権の理念的基礎として普遍的に承認されるに至ったのであるというふうにするとともに、引用論文の紹介の中で、人間尊厳の言明というのは、全体主義の否定という過去志向ばかりでなく、現在及び将来の問題に対しても重大な意義を有する、これは例えばバイオテクノロジーと人間尊厳である、こういう考え方というものを示しております。  私は、ヒトクローン問題や生殖医療考えるときに、これは我々が非常に人類として痛切に反省し、総括の上に立って取り組まなきゃいけない一つが、七三一部隊の誤りやナチス犯罪だと思うんです。戦後の憲法を初めとする法律体系の中から生まれた人間規定に従うものが、ヒトクローン問題や生殖医療考えるときの根底にやはり存在するものだというとらえ方というのは、これは一つの大事な考え方の切り口といいますか、考え方としては、ヒトクローン問題や生殖医療考えるときには、この人間尊厳規定に従っていくというのが大事なことなんだということをベースに据えて、いろいろな問題に取り組んでいくことが大事だと思うんですが、改めて伺っておきたいと思います。     〔平野委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 大島理森

    大島国務大臣 先生の御指摘いただいている論理の中で、合意できるところがかなりございます。なるがゆえに、私どもは、人間を道具として使わせてはならぬとか、あるいはまた、そういう意味社会がいわば秩序として成り立ってきたことに違背する姿をつくってはならぬとか、そういうふうなことがあって、いわゆるクローン人間は絶対だめよ、こういう判断に基づきました。  一方、先生がおっしゃるところ等をまた考えてみますと、個人の尊厳、それは人間尊厳基本にある。そして、個人の尊厳人間尊厳というのは違うんだという論を持つ人もいることはいるんですね。  どちらにしろ、例えば日本の憲法をつくるときにおきましても、日本人は人間であるがゆえに尊重されるんだということで個人の権利の尊重ということを書いたんだ、そういうふうなことを何かちょっと耳に、私の記憶の中にあるんです。人間尊厳を保つためにライフサイエンスという存在がそこに生まれてきたということも、また事実なわけですね。そこで、人間尊厳人間尊厳、あるいは個人の権利と個人の権利の相克をどう乗り越えていくかという問題は、このライフサイエンスの世界では絶えず問われていかなければならない。  実は、私自身、臓器移植の議論のときに、人類考えた臓器移植という議論は、これは非常に大きな一歩を踏み込んだ手法だなと思ったんです。今クローン人間をやっていますときに、人類はここまで来たなと。私にとっては、もろもろを考える上であれが非常に大きな問題提起でございましたが、人間尊厳の壁に、やはりああいう臓器移植という問題も一つの結論を出していく。また、今議論していただいている法律も、実はそういう問題もあるというふうに私は考えておるわけです。
  86. 吉井英勝

    吉井委員 人間尊厳のために臓器をどう扱うかということ、それは、その臓器を受ける側の尊厳の問題と、臓器を提供する側の尊厳の問題という両方問題がありまして、これは簡単になかなか議論のし切れるところではないというのが当時の議論の中で、それで私たちは私たちの立場をとりました。  さて、憲法制定過程の議論とか教育基本法、売春禁止法や四七年警察法などでは、当時のとらえ方としては、個人の尊重、個人の尊厳、人格の尊重、人間尊厳というのは、法律によっていろいろな使い方はしても、同義として扱っていたというのがこの時代の大事なところだと思っています。  私は次に、ですから、ヒトのクローン問題、生殖医療考えるときに、人間尊厳、まさに今大臣がおっしゃったように、人間尊厳という考え方に立ってと。法律上の規定としては、人間尊厳規定というのは書きぶり、表現はいろいろあっても、そこから始まってくるものであって、そういう立場に立ってヒトクローン問題、生殖医療考えていくということでよろしいねということで、この点だけはごく簡単に確認しておきたいと思います。
  87. 大島理森

    大島国務大臣 そのことは、私ども基本にしてまいるところでございます。
  88. 吉井英勝

    吉井委員 次に、クローン人間産生禁止の理由の次の問題としては、人の生命及び身体の安全に重大な影響を与える可能性があるということであります。  そこで、これは政府参考人の方で結構ですが、クローン人間について、生まれてくる個体安全性の問題という面と、クローン人間が誕生したときに他の人間に与える遺伝的影響や、あるいは場合によっては、他の動物などから取り込まれたウイルスなどによる人類への影響などをどう考えていくのか、こういう幾つかの角度からのとらえ方があるかと思うんですね。  そこで、まず、誕生したクローン人間あるいはクローン動物安全性とか安定性とか突然変異の可能性について、どういうふうにとらえているかということを伺っておきたいと思います。
  89. 結城章夫

    結城政府参考人 クローン技術ヒト個体産生に応用した場合に、通常と比較して正常に発生し成長するかどうかということについては、十分な知見がなくて、安全性に関して問題が生じる可能性は否定できないというふうに思っております。  科学技術会議生命倫理委員会のクローン小委員会の報告におきましても、安全性の問題として、正常な発生が行われるか、細胞の寿命に関連すると言われているテロメアの変化がどう影響するかなど十分な知見がないこと、仮に移植される体細胞の遺伝子に損傷が存在する場合に、未知の影響がある可能性も否定できないことといった問題点が指摘されております。  現実に、家畜の牛などにおいて体細胞クローンがつくられておりますが、特に過大児となる傾向や死産、出生後死亡の多発が報告されております。例えば、クローン牛におきましては、本年四月の農林水産省の発表によりますと、国内でこれまでに誕生した体細胞クローン牛百五十頭中四十七頭、約三割でございますが、これが死産もしくは出生直後に死亡しているということでございます。  これらの原因といたしまして、胎児の大きさを調節したり胎児の呼吸系を発達させる働きを持つコルチゾールというホルモンの一種の血中濃度が、クローン個体において低くなっているという報告も、ことしの三月になされているところでございます。  クローン個体の寿命につきましては、昨年、テロメアの長さがクローン羊のドリーでは一歳時で通常よりも約二〇%短くて六歳時の羊並みであるとの報告がなされたわけですが、ことしになりまして、牛においては逆にこのテロメアが長くなっているという報告もなされております。また、マウスでは通常よりも長命で死亡したとの報告もございます。  このほか、クローン個体の生殖能力につきましては、牛、マウスなどで幾つかの事例が確認されておりますが、まだデータ数も少なくて評価は定まっておらないわけでございます。  このような状況では、生まれてくる個体安全性の確保は保証できず、よってクローン技術ヒト個体産生に適用することには安全上の重大な問題があるというふうに考えております。
  90. 吉井英勝

    吉井委員 私も、もちろんクローン人間等は禁止というのは大前提の上での話なんですが、現在の人類は、太古の時代からの宇宙放射線とか大地放射線とか、さまざまな影響を受けてもきたし、温暖化の時期もあれば氷河期の時代を迎えたりとか、それから地球の酸素濃度、炭酸ガス濃度が今とは異なる時代など、さまざまな環境の中を生物としては生き抜いて、その中で淘汰され、残ったものでもあり、環境変化に耐える中で、突然変異によって環境に適合して生き延びてきたという刻印を、我々は遺伝子の中に刻み込んでいるわけです。  それを、細胞を操作する、遺伝子を操作する。そのことによって異常を来したときに、そのクローン人間に対してだれが責任をとるのか、だれが責任をとれるのかという問題があります。そういう面からも、ヒトクローンなどというのは禁止は当然だと考えておるのですが、仮にこういうことをやったときに、仮の議論は変かもしれませんが、そういう遺伝子操作などで異常を来したときに、だれが責任をとることができるか、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  91. 大島理森

    大島国務大臣 もしできた場合にだれが責任を持つのかということですね。そうさせないために、十年間監獄に入ってもらいますという法律を今御提案している。  ですから、私たち国会の場で、できたらだれが責任を持ち、できた場合にそれがどういう存在になるのかということについて、私個人的には、そこの議論は入らぬ方がいいと。絶対あってはいかぬのだ、この意思だけは、憲法の最高機関である立法機関で明確に国民に対して意思を表示しておかなきゃならぬと思っております。
  92. 吉井英勝

    吉井委員 人の生命及び身体の安全に重大な影響を与える可能性がある、だから禁止なんだ、まさにそのよって立つところは、そんなことを万々が一やってしまったときには、本当にこれは、異常を来したものに対してだれも責任をとれないということ。刑務所に入るのは一つの責任のとり方かもしれませんが、とんでもない重大な問題を引き起こすことになりますから、私は、そういう角度からしても、人の生命及び身体の安全に重大な影響を与える可能性があり、クローン人間産生を禁止することは当然なんだ、そのことを明確にしておくということが大事だと思っているのです。そこは私も、万々一そんなことはあってはならぬという立場で物を申し上げておりますので。  クローン細胞あるいは使用する核と、ミトコンドリアなどその核以外の物質が、人類に影響を及ぼすことが全くないと言い切れるほど研究結果が確立しているのかどうか。あるいは、遺伝子食品その他で見られるような問題と同様に、影響を及ぼすことはある、人類や環境への影響など広く安全研究も必要だということか。私は、実験をやる方じゃなくて実際の影響については、安全の研究というのは深く検討しておくことが大事だと思うのですが、この点、安全研究必要性というものについてはどういうふうに考えておりますか。
  93. 結城章夫

    結城政府参考人 先ほど少し詳しく御説明したように、このクローン技術人間に適用した場合、非常に安全性の問題があると思っております。したがいまして、クローン胚の研究におきましても、直ちにヒトの胚を使うわけではなくて、あらかじめ動物その他で十分な実験を重ね、ヒトの胚の研究に至る段階になるまでには十分慎重な研究を重ねるべきだと思っております。
  94. 吉井英勝

    吉井委員 次に、社会秩序の維持という問題について伺っていきたいと思います。  社会秩序の維持というのは、先日来、主に親子関係ということを中心にして語られておりますが、社会秩序の維持とは何を指すのかということについて、大臣はたしか、人間尊厳人類秩序人間秩序ということをあわせて言っておられましたが、いま一度確認の意味で伺っておきたいと思います。
  95. 大島理森

    大島国務大臣 まさにクローン人間というものを手段に使う場合がある。それは、非常に優位性のある人間ばかりつくるという思想のもとでそういう技術利用する場合もあり得るかもしれない。そういうことは、これも人間秩序を壊すことでしょう。  それから、先生が先ほど、人間秩序ということをいろいろお話しされる中にあって、人類が今日まで来た長い歴史の中で、さまざまな地球の環境というものが影響している。私もいささか環境庁長官をやった経験から、要するに、人類社会というか地球社会は多様性が絶対必要なんですね。その多様性の中で生まれた一つ秩序というものもあります。だから、そういうものを総合的に、秩序を壊してはいかぬと。クローンという世界が生まれたときに、この技術秩序を壊しかねない、そういうことを総称して申し上げております。
  96. 吉井英勝

    吉井委員 地球の秩序までさかのぼって考えていきますと、私も今ぱっと思いついたのですが、宇宙放射線なり大地放射線ですね。生物が全く放射線のない世界で生きたとするとどうなるか。一番最初の、ゾウリムシなんかの単細胞は増殖しないのですね。やはり適度な、バックグラウンドになる放射線の環境の中で、その中で我々は生きてきて、これまた強烈過ぎますと全部滅びてしまうわけです。実際、国際線の飛行機に乗れば被曝線量がふえるわけですし、ですから、人類はそういう生きていける適度の環境の中で、ずっと営々として遺伝子を引き継ぎながら引き継ぎながら進化してきたということで、そういう点では秩序の中にまさにあるわけです。  社会秩序の維持という場合に、私がなぜこれを取り上げたかといいますと、少し厳密にしておいた方がいいかなというのは、もちろん、ここで言っている社会秩序というのはかなり明確なわけです。ただ、戦前の治安維持法というのは、当時の社会秩序の維持を口実として、国民の自由とか民主主義とか、あるいは侵略戦争反対だ、そういう声を抑圧し、じゅうりんしてしまった、そういう歴史的経過があります。  ですから、社会秩序の維持という場合、この言葉の定義というのはある程度厳密にしておいて、つまり、大臣が今おっしゃった親子関係とか、そういう意味での人間秩序。その定義の上でもなければ下でもない。そういうある程度の限界というもの、限界といいますか、フレームですね。法律ができたときに言葉がひとり歩きすると、悪くすると、これは学問、研究の自由を侵害することになったりとか、そうなっちゃいけませんから。  ですから、社会秩序の維持というのは、大臣が先日も答弁された、親子関係を中心として、そういう人間秩序といいますか、そういう関係の中にあるものとしての社会秩序の維持だ、そういうふうに理解しておいていいですね。
  97. 大島理森

    大島国務大臣 親子関係の家族秩序だけではないと思います。まさに人間尊厳というものが、個人の尊厳というものが基本にあり、そして、その中で生まれる親子の関係もまずございます。それから、ある意味では、言葉はちょっと語弊があるかもしれませんけれども人間の多様性が壊れていくということもあるでしょう。同じ人間がたくさん生まれていくということは、まさに人間人類としての多様性を失っていくことです。そして、三点目として、先ほど人間尊厳と言いましたが、道具に使われる可能性がある。そういうふうなことが社会秩序の維持ということだと思います。
  98. 吉井英勝

    吉井委員 今大臣は、法律で言う社会秩序の維持という言葉の範囲を示されました。こういうのは、この国会議論というのが、将来法律ができたときの逐条解説に当たって非常に大事なことですから、そういう点で、今の大臣の答弁は非常に大事なところだと私は思っているのです。  次に、クローン人間であっても子供が欲しいという親の欲望についての問題が、これは生殖医療にもかかわってあろうかと思うのです。  一部の学者の中に、たとえクローン人間がつくられても、法と倫理基準に照らして不正でない、こういう考えを持っていらっしゃる方もおります。例えば、子供が二歳で死んだとする。両親の嘆きは深く、その精神的苦痛を解除する唯一の手段は、死んだ子のクローンをつくることと主張する。そういう考え方も、考えとしてはあるわけですね。  そのときに、親に子供が欲しいという欲望が、どういう形でどこまで許されるのかということ。これは生殖医療の分野ともかかわってくるかと思いますが、私は、その点についてどういうふうに見解を持っておられるかを伺いたいと思います。
  99. 大島理森

    大島国務大臣 そこに、いかなる願望があれ、いかなる願いがあっても、クローン技術によって人間個体をつくることはあってはならないことだ、ここだけは毅然とさせておきたいと思っております。
  100. 吉井英勝

    吉井委員 私はその点で全く同感なんです。  有性生殖の場合は、生まれてくる子供への責任を果たすということを前提にして許されるわけですし、試験管ベビーであっても有性生殖であれば、両親になる者の卵子と精子を使えば許されることになるかと思うのですが、厚生科学審議会の答申はともかくとして、両親と異なる他人の卵子、精子の組み合わせによって受精した卵を胎内に持ち込むということには、これはいろいろな議論があって、単純に問題なしというふうにはならないと私は思います。  それで、やはりこういう場合に、親の許される欲望とはどこまでなのか。子供が欲しいということが中心になってどんどん広がってしまうということについてはやはり問題があるわけで、少なくとも出生時には、子供の親は、子供の間は親が丸ごと責任を持つ、責任を果たすというそのことが必要だと思います。しかし、クローン人間ということになってしまいますと、出生そのものが実験材料なわけです。だから、親が子供の出生前に子供の人権や幸福追求の権利を奪うということにもなるわけで、こういう親の欲望というのは絶対に認められない、私はそういうふうに考えております。  この点で、大臣もクローン人間は絶対認められないと明確にされましたので、私もそのとおりであります。  ですからこの点では、しかし万々が一クローン人間が生まれた場合、そのときは、それは人としての憲法に基づく人権、尊厳、これは保障されなきゃいけないわけです。その他人の人権を、親といえども、全く独立した別人格になるわけですからね。生まれてきてしまったら、それを侵害するということは絶対許されないし、そして研究者もそういうことは絶対できないんだ、そういう侵害をすることは人道に対する犯罪というべきものだということで、これは罰則規定もあります。  これはもう人道に対する罪ともいうべきものだと私は思いますが、改めて、この点についても大臣の考えを聞いておきたいと思います。
  101. 大島理森

    大島国務大臣 私どもは、今この法案で、クローンの個体産生という問題について、十年という重い罰則規定を決める。倫理と法というのはいつも問われる社会論としてあるのですが、倫理の最低限が法律だと言う人もおります。私も、ある意味ではそれに近い考え方を持っている人間でございますが、そこのミニマムのところで、十年という罰則規定を設けたということは、その根底の倫理社会部分においては、もうこれは絶対あってはならぬことだという思いをまず共通認識に持たなきゃいかぬ、常識として持たなきゃいかぬということが、今逆に問われていることだと思います。  ですから、私は、先ほどもちょっと申し上げましたが、もしそれでもできたらという論議すら、むしろそういう論議をさせないためにこの十年というものをつくった、国会の場ではこういうふうに答えているところでございますし、そのぐらい重い倫理の常識を持った上で、我々はこの世界に当たっていかなきゃならぬ、こう思っております。
  102. 吉井英勝

    吉井委員 次に、法案の第一条では、人クローン個体とは「特定の人と同一の遺伝子構造を有する人」と定義しているわけで、そのことを受けて、生まれてくるクローン人間の立場からしたときに、どういう面で人権が侵害される存在か、そういう議論ども行いました。そのときに、クローン人間は、生まれながらにして唯一の遺伝的特性を持っていると言えないという観点から、産生を禁止するという趣旨の答弁も先日ありました。  そこで、体細胞クローン人間の場合、核と、細胞質のミトコンドリアなどの遺伝子が異なる。その相互作用が働いても、核の方の親と一〇〇%同一の遺伝的特性を持つ個体となるのか。あるいは、クローン人間といえども、生物学的には核の親とすべてが同一の遺伝的特質、特性を持つということにはならないのか。この点で、どこまで解明が進み、どのように考えているのかという点について、これは政府参考人の方に聞いておきたいと思います。
  103. 結城章夫

    結城政府参考人 まだ完全には解明されていない点があるかとは思いますけれども人間の遺伝情報というものは、核の中の染色体の中に、DNAという形で全部しまい込まれておるということでございますから、その核が入ったクローン胚においては、その核の体細胞の人とほぼ一〇〇%同じ遺伝情報を持った個体ができ上がるというふうに思っております。
  104. 吉井英勝

    吉井委員 きのう西川教授からもその点についてのお話があって、DNAの上では一〇〇%伝わるであろう、ただし、体細胞クローンなんかの場合、染色体の開いたところ、閉じたところの問題などもあり、後遺伝的な面からは、同一になるかどうかについて、ここは少しまだ未解明といいますかペンディングな部分があるということでした。  実は、私がこれを伺いましたのは、法律第一条の中では、人クローン個体を特定の人と同一の遺伝子構造を有する人と定義しているわけですが、これは法律上の定義であって、生物学上、厳密に言い切れるのかどうか。現時点での学問的到達点といいますか、そういうものを踏まえて言い切れるのかどうかというところがあるものですから伺っているのですが、この点は、しかと大丈夫だ、こういうことですか。
  105. 結城章夫

    結城政府参考人 第二条の第十号の定義でございますけれども、人クローン胚を定義しておりますが、「ヒトの体細胞であって核を有するものがヒト除核卵と融合することにより生ずる胚をいう。」ということで、必ずしも遺伝情報が同一ということは、この定義の中では書き込んではおりません。
  106. 吉井英勝

    吉井委員 次に、生命の始まりをどことするかという問題です。  この点では、宗教的立場のものとか生命倫理からの考え方、生物学的な立場からとか医学的判断のものとか、いろいろあると思うんですが、法律上の判断はどういうふうに扱っているかということを伺っておきたいと思います。
  107. 大島理森

    大島国務大臣 法律的に、これが生命の始まりだということの定義は明確には書いていないだろうと思います。これも先般も御質問いただきました、生命の始まりというのはどこから考えるべきだろうかと。非常に議論があるところでございまして、私どもは、今のところ、生命の始まりを法律で書き込むということにはなかなか処し切れないな。ただ、要するに結果としての、胚でありますとか、あるいは細胞的に言えば核でありますとか個体でありますとか、そういう共通した常識の言葉、そして解釈、そういうことを重ね合わせた上での法律にいたさなければならないということで、そういうふうな内容にしたわけでございます。  なかなかこの生命の始まりというものを法律に定義するということは、残念ながら、できるほど統一された、まさに形成された合意というものが今ない。私の中にも、一体どこが始まりなんだろうか、深く心の中に今自問自答してみるのでございますが、明確にここだということについては、どうもまだお答えできるところまでまとまっておりません。
  108. 吉井英勝

    吉井委員 これは小委員会などでも、ヒト胚というものについては生命萌芽と。萌芽は始まりなのか何なのかということがまた始まるかもしれません。ある宗教団体などですと、その教義からすると、受胎の前、ですから受精の段階から生命の始まりというふうになるところとか、あります。  これは本当に、宗教上の立場とかいろいろなところによって考え方はまだいろいろあるかもしれませんが、精子も卵子も生きていても、それだけでは新しく生まれてくる人の細胞ではないわけで、受精卵になって初めて別の人格を持つ人の細胞であり、人の生命の始まり、出発点。萌芽といいますか、始まりといいますか。  そうすると、卵子から核を除いて、そこへ皮膚などの細胞から取り出した別の核を入れて、そして皮膚などの細胞核を含む細胞と融合させてクローン胚をつくるということは、これはそもそも生命の始まりなのか何なのか。これはどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  109. 大島理森

    大島国務大臣 そのことに答えるためにも、実は生命はどこから始まるかということに一つの基準を持たないと答えられない御質問ではないかと思うのですが、御承知のように、アンケートをとりますと、受精の瞬間からというのが三〇%ぐらいございますし、人間の形がつくられた時点というのが、一六・九%ですから一七%、母体外に出してもまず生存可能な時点、これが一五%、出産の瞬間からが七・六%、そういうふうなアンケートの形はあります。  ですから、クローンの場合にも、一体どこからが人間であるかというふうなことに対して答えるには、そこのところにきちっとした答えを持っていないと、なかなか答えづらい問題だな、こう思っております。
  110. 吉井英勝

    吉井委員 実は、生殖医療、クローン技術のことになりますと、生命倫理ということが出てくるわけですね。そうすると、そもそも生命萌芽なり人の命の始まりはどこからなのかということをやはりきちんとある程度定義してかからないと、今のヒトの体細胞クローン胚、これをどの段階から生命とみなすのか、そのこと自体がまた生命倫理ともかかわってくる問題が出てこようかと思うのですが、次に進みたいと思います。  民主党案で、ヒト胚は人の生命萌芽と定義があり、政府見解では、ヒト胚生命萌芽と見る生命倫理委員会の見解をとりながら、その規制については今後の議論を受けて規制ということで、これは前回、双方からお聞きしたところです。  その規制について、人クローン胚の研究規制するその根拠をどこに置くかということについて、政府指針、民主党提案者の方は基準という表現をされて、いずれにしてもガイドラインをつくるということです。そうしたら、ガイドラインをどうするか。  この間、ES細胞特定胚研究に必要なヒト胚またはヒト配偶子の提供についての条件、ガイドラインを伺ったときに伺ったあのガイドラインの御答弁が、この今の人クローン胚等の研究規制するときのガイドラインと大体同じものだと考えておられるのかどうか。  これは政府参考人の方から伺っておきたいと思います。
  111. 結城章夫

    結城政府参考人 この法律に基づきまして、特定胚作成研究取り扱いについてのあり方について指針を定めることになっております。この内容と、この法律とは直接は関係ございませんけれどもヒトES細胞、これはヒト胚ヒト受精胚をその材料として用いるということで、倫理上の問題がありますので、この法律とは別に、法律に基づかないガイドラインを別途定めることにしております。  この指針ガイドライン、かなり共通するところがございますけれども、それぞれの性格に応じて、これからきめ細かく中身を詰めてまいりたいと思っております。かなり重なる部分はあるかと思っております。
  112. 吉井英勝

    吉井委員 本当は、これはなかなか大事な法律議論だけに、指針とかガイドラインというのは、法案審査審議の中できちんとやはり示していくというのが私は本来議論の出発点じゃないかと思っておりますので、これから詰めるということですが、法律にする前の詰め方が足らぬなということだけは申し上げておきたいと思います。  次に、政府案では、クローン技術または特定融合・集合技術によって胚をつくることは認められる。その胚を人または動物の胎内に移植することは禁止するということですから、そうすると、人クローン胚を作成し、胎内に戻さないで胎外で培養した場合、その胚盤胞からES細胞を得ることは、この間の答弁では、指針でできるということになれば法律上は可能という答弁でした。  胚盤胞というのは、子宮に着床する胎盤形成開始の寸前の胚の姿であるわけですが、そうすると、受精卵から生命としては成長した段階だが、胎児となる寸前までは実験が許される、こういう立場に立つのかどうか。ここは生命倫理のかなり大事なところじゃないかと思うのですが、この点を伺っておきたいと思います。これは大臣でも政府参考人でも、いずれでも結構です。
  113. 結城章夫

    結城政府参考人 規制対象となります特定胚、九種類ございますけれども、これは生命倫理その他いろいろな問題をはらんでおりますから、作成取り扱いもさせないことが原則でございますけれども、中には非常に有用性がある、これからの生命科学にとって、あるいは医療技術にとって非常に有用なものがあるというものについては、厳しい条件のもとに、その作成研究取り扱いを認めていくつもりでございます。その管理の条件を指針という形で決めたいというふうに思っております。  ただ、そのうちの特に問題のある四種類の胚につきましては、これは、母胎に戻すということは厳罰をもって禁止することにいたしております。
  114. 吉井英勝

    吉井委員 有用性の中には再生医療とかさまざまなものをお考えなのかと思いますが、ただ、では有用性についてということでかなり議論が煮詰まらないまま、そこが残っているというのは、私はもう少しきちんとしておくべきところだと思っているのです。  通常、着床の開始される時期は、受精後六日目からというふうに、これは法案のセットの中でも説明がされておりますが、答弁によりますと、この間のガイドラインの方では、凍結期間を除外して十四日以内のヒト胚の使用を認めるという立場に立つということになっているわけですね。  そうすると、受精卵を胎外で培養して、きのうの西川教授のお話では、その場合でも卵割が四分割ないし八分割まででとまるという御説明でしたが、いずれにしても受精卵を胎外で培養して、胚盤胞のままではこれ以上は卵割不可能となる、それ以上ずっと続けておったのでは細胞の死に至るまでの期間というのは、どれぐらいと見ていて、そういう段階からES細胞を取り出すということについてどういうふうな考え方を持っているかということを伺っておきたいと思います。
  115. 結城章夫

    結城政府参考人 ヒト受精胚、あるいはクローン胚を培養する場合でございますけれども、大体二週間までやる。それ以上やりますと、だんだんと胎児に近づいてくるわけでございまして、その辺までを認めるというのが大体国際的な慣例でございますし、我が国の産科婦人科学会のガイドラインでもそのようになっております。  先ほど四分割あるいは八分割しかできないというのは、人為的な分割胚がどこまで分けられるかという議論だったように思います。二週間培養すれば、もっともっとたくさんの細胞に分化していくことになるかと思います。
  116. 吉井英勝

    吉井委員 まさに、私はそこのところを実は聞きたかったのです。人為的にやれば四分割、八分割であっても、今おっしゃったように、限りなく胎児に近づいてくるのですね。大体六日目から着床して、そしてそこからは、皆さん説明でも、着床開始から胎児と見るわけですね。しかし、片方は、着床を延ばして培養液でということですから、育ってはくる。そうすると、かなり胎児という性格を既に帯びている。その胎児からES細胞を取り出すということに近づくわけですから、そこをどのようにきちんと仕切りをしていくかという点ですね。これはどういうふうに考えていますか。
  117. 結城章夫

    結城政府参考人 二週間ぐらいまで可能であろうということにしてあるわけでございますけれども、実際の培養では、胚盤胞ができる五日目ぐらいまでが大体順調にいって、それから先へ持っていくことは技術的に非常に難しいというのが現状のようでございます。
  118. 吉井英勝

    吉井委員 ただ、この間の御説明でも、法律ガイドラインの方では、凍結期間を除外して十四日以内、こういう説明だったわけです。それで、受精後五日目からは、通常であれば着床開始、つまり胎児となっていく時期ですね。そこで、人クローン胚を作成して、着床する段階まで胚盤胞は育っているが、受胎に至る期間六日より長く着床させずに、胚盤胞の形で置いておいて実験するということは許されるのか。あるいは、どこまで生命として育った胚の利用は禁止されるのか、逆に、どこまでしか育っていない胚の利用については認めるという立場なのか。ここのところをもう少しよくわかるように説明してほしいと思います。
  119. 結城章夫

    結城政府参考人 胎外でのヒト胚あるいはクローン胚の培養でございますけれども、人の形ができかかるのが大体二週間と言われておりまして、国際的にもこの辺でとどめる、それ以上は分裂させないというのが国際的な、標準的な考え方でございます。
  120. 吉井英勝

    吉井委員 私、そこが、生命倫理という言葉がずっとよく使われてきているわけですが、非常に大事なところだと思うのですね。つまり、ガイドラインで言うのは十四日、それはもう明らかにヒトの形ができかけてくる段階だ。だからこそ、最初の出発点に戻って、大体どこからが生命の始まりかということにもなってくるのですが、生命としては始まっていて、非常に限りなくヒトに近づいてきている。そういう段階で胚の利用というものが、これは生命倫理という議論をしていく上でどこで線を引くのか。私は、今答えが出ないのならば、それはしかるべき検討をして、やはりそこはきちんと示さなきゃいけないと思うのですが、この点は大臣の方に伺っておきたいと思います。
  121. 大島理森

    大島国務大臣 十四日たてばそういうふうな姿にどんどんなってくるので、それじゃ、そこから人間として、人間生命として認めるか。なるほどな、本当に難しいなと思っているのですが、先ほど申し上げましたように、倫理という世界の中で、思いをさまざまにしながらモラルというものを考えるということと、やはり法律ということに相なりますと、本当にその中で共通した認識の言葉を使い、共通した、合意された認識のもとにおいて、そこは哲学や宗教やそういうもので解釈が違わないようにしておくというのが、法律というものの一番大事なところなんだろう。  そういう意味で、今私は、先ほど申し上げましたように、法律の中で、命というものがここからだよということは、なかなか書き込めないということを申し上げたわけですが、これ以上、なかなか答えられないところでございますので、お許しいただきたいと思いますが。
  122. 吉井英勝

    吉井委員 大臣が答弁に困るようなところに来ている。  しかし、いずれにしても、本当にヒトの形ができかけているところという今の答弁なんですけれども、その段階で、ES細胞の段階がどこからか、またはどこまでかということも、そこはまたそれで、しかし、これはもうかなり進んだ段階であることは間違いないですね。そこで、それが実験に供されるということは許されるのか。  これは、生命倫理の観点からもそうですし、まさに人間尊厳という角度から見ても、今大臣は答弁に困ってはるわけですが、私は、この法律をつくるとともに、先ほどのガイドラインでは十四日ということなんですが、それは国際基準だからということでいいのかとか、あるいはどこまでかというのは、直ちにやはり専門家の皆さんのかなりきちんとした議論検討を得て、こういう点であいまいな形にならないようにしていくべきだというふうに思います。  次に、ES細胞について伺いますが、ES細胞といえば、これは、受精卵が分裂を開始して間もない初期段階の胚において、胚細胞のもととなる始原細胞で、さまざまな役割を持つ細胞をつくりながら自分自身増殖を図るというもの。これは一九八一年にネーチャーで発表されたものですが、今このES細胞について必要な研究は何か、どこまで研究が進んでいるのか、この点については政府参考人の方に伺っておきたいと思います。
  123. 結城章夫

    結城政府参考人 ES細胞でございますが、万能細胞とも呼ばれておるものでございまして、いろいろな条件次第で、体を構成するどのような細胞にもなることができると考えられておる特別な細胞であります。  この特徴を利用して、現在は、ES細胞から特定の細胞、組織、臓器をつくろうという研究がマウスなどを使って行われており、この技術が確立いたしますと、移植用臓器の慢性的な不足を解消することも可能ではないかと期待されているものでございます。  実際に、マウスのES細胞を用いた研究では、これまでに、心臓の筋肉の細胞、神経細胞、血管の細胞などに分化させることに成功しております。これらの研究ヒト細胞において進めることにより、脳神経系の疾患であるパーキンソン病や心筋梗塞などの病気の治療への応用が具体的に想定されております。  パーキンソン病でございますけれども、脳の中の線条体と呼ばれる部分において、ドーパミンという神経伝達物質を産生する細胞が脱落することに起因する疾患でありまして、これまでは薬物治療が中心的に行われておりましたが、近年になりまして、流産した胎児の組織から採取したさまざまな神経系の細胞のもととなる神経幹細胞、これはES細胞とまたちょっと違いますけれども、神経幹細胞を移植する治療法が開発されました。これは失われた神経細胞を補充する療法でございますが、移植用細胞の供給、これは流産した胎児からとりますので、これには限度がございます。  ヒトES細胞を自由に分化させることが可能になりますと、同様の補充療法を行うことが可能となります。実際に、マウスにおいては、ES細胞からドーパミンを産生する神経細胞をつくり出すことにも成功しておりまして、近い将来にこういった治療法が可能になるものと期待されております。  このような細胞治療は、パーキンソン病のほかにアルツハイマーなどの神経疾患や、あるいは脊髄の損傷による麻痺、心筋梗塞、糖尿病及びやけどなどによる皮膚の損傷といったことの治療においても期待されておるものでございます。  このように、ヒトES細胞研究は、これから研究を進めていくことによって、さまざまな応用分野が広がることが期待されている分野でございます。
  124. 吉井英勝

    吉井委員 脳死であれ何であれ、人の死を待ってその臓器を移植する、それよりも、それは今のようなやり方で新しく再生医療として進んでいった方が、合理的という点では合理的だと思うのです。  ただ、そのときに、こういう可能性があるということとともに、だからこそ、どこに線引きをして限界を設けておくべきかということも、やはり研究を始めるときにはそこをきちっと検討して進めるべきだと思うのですが、その点ではどんな検討をしていますか。
  125. 結城章夫

    結城政府参考人 ただいまのES細胞は、ヒト胚を材料に使いまして、結果的にそのヒト胚をつぶしてしまうということがございますので、その取り扱いは倫理的な配慮が必要でございます。したがいまして、この法案とは全く別に、法律に基づかないガイドラインをつくっていろいろな行政的な指導をしていこうということで、そのガイドラインを今つくりつつあるところでございます。
  126. 吉井英勝

    吉井委員 これは今、「四十八兆円市場へ」とか「臓器再生狙え」とか、この間も新聞でも紹介されておりましたが、実は私が非常にこの点で心配になってくるのは、バイオ産業のあり方の問題です。バイオ産業とまで大げさな世界にならなくても、既に例えば東京都内に精子バンクがあって、百五十万円支払って精子を買った方がいるとか、そういうふうにヒトの生殖細胞ヒト受精胚も売買されるというふうなこと、生命にかかわることが売買の対象になってしまう。  ガイドラインでは、ヒト胚の対価が無償でなきゃならないということなどを定めておりますが、ヒト胚の対価が無償ということとともに、やはりこういう生殖細胞の売買についても、無償というふうなことなどを含めて、割と身近なところの問題の規制。バイオ産業がもうけ中心になってしまって、それがクローン技術の活用などで本当に、生命倫理であれ人間尊厳であれ、侵すようなことになってはいけませんから、私は、その点についての国としての取り組みも非常に大事なところだと思いますので、これは大臣に伺っておきたいと思います。
  127. 大島理森

    大島国務大臣 このごろ、科技庁長官として、文部大臣としても、ライフサイエンスにかかわるいろいろなフォーラムあるいは会合にお招きをいただきます。まことに活況を呈しております。ITの次はライフサイエンスだ、ゲノムが解明され、今度はたんぱく質の解明だと。そういう意味で、この世界は大変な活力を持って今研究もされ、また産業としても勢いを増していっている感じを肌で私は持つものでございます。  これは、ライフサイエンスだけではなくて、すべての問題において、企業というものが倫理性を欠如した場合においては、必然的にその企業が淘汰されていくという部分もあるし、法律で押さえていかなきゃならぬ部分もあるのだろうと私は思います。ましてや、それが生命ということに相なりますと、すぐれて人間尊厳にもかかわることでございますし、先ほど来申し上げた人類秩序人間秩序にもかかわる問題でございます。  医療あるいはまた福祉、そういうものに貢献するすばらしいプラスの面と同時に、そういう逆の、負の部分というのでしょうか、そういうことをしっかり押さえていくことが政治のまた大きな役割であるという認識に基づいて、この分野の発展を期していくことが我々の責任ではなかろうか、このように思っております。
  128. 吉井英勝

    吉井委員 時間が参りましたので、最後に一言だけ。せっかく座っていただきましたので、民主党の方と政府の方にお聞きして終わりにしたいと思います。  学問研究の自由との関係で、政府の関与をどう考えるかということがあると思うのです。ヒトクローンの産生法律によって禁止するのは当然のことだと思うのですが、禁止以外の研究分野について、研究することを規制するということについて、国家権力での禁止や規制とするか国家機関への届け出にとどめておくかということは、学問研究の自由の尊重という立場から、どういうふうに今後考えていくかということが大事な点だと思いますので、この点、双方からお聞きをして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  129. 大島理森

    大島国務大臣 研究国家権力のあり方というのは、基本的に、研究という分野において国家が入っていくということに大変なちゅうちょを持たなければならぬ、私はこう思っております。  さはさりながら、すべての権利は、やはり社会福祉、公共の福祉という大きな前提のもとにおいて存在するということも忘れてもらっては困る、こう思っております。
  130. 近藤昭一

    近藤(昭)議員 今回は、ES細胞とそこからつくられる可能性のある臓器などに代表されるように、これは非常に大きな市場を持つ可能性があるだろうという技術議論対象になってきたわけであります。  しかし、そのES細胞から作成される臓器の移植を例にとっても、移植を受けるレシピエントの安全性、あるいはES細胞のもととなるヒト胚に対する保護などの観点から、適正な管理というか厳しい管理のもとでそういった作成利用がなされるなど、公的な規制、管理がなされることが安全性、倫理性で大変に重要だと私ども考えてまいりました。  ですからこそ、私どもの案では、余剰胚研究利用については許可制をとった。ES細胞の樹立についても、非常に厳しい規制を置いていくということ。また将来的には、医療材料として薬事法等の厚生省所管の法律などでの対応が、関係して必要になってくるだろう。また、産業利用ということであれば、通産省による対応も必要になってくるだろうというふうに考えております。  そういう中では、どうも残念ながら政府案は、そういった総合的な視点に欠けているだろう。科学技術の育成を促進させる、私どもも決してそれを否定するものではないのですが、その点について心配である、問題があるということであります。こういった産業に対する規制は、科学技術庁単独では管理し切れない大きな問題だというふうに考えております。
  131. 吉井英勝

    吉井委員 質問を終わります。
  132. 古賀一成

  133. 阿部知子

    阿部委員 社会民主党の阿部知子と申します。  私は、本来厚生委員会所属でございますが、本日、この科学技術委員会に場をおかりいたしまして質問の機会を与えてくださいまして、大変ありがとうございます。  と申しますのも、このクローン技術をめぐる諸問題は、とりわけ科学技術庁関連の先端科学技術として論じられておりますが、実際には、卵子、精子等々の発生する場は医療現場、すなわち厚生省も深く関連した分野でございます。  そして、聞き及びますところによりますと、きょうにも採択かということで、私といたしましては、まだまだ国民的論議も、あるいは医療の現状等々にかんがみましても、屋上屋を重ねるような論議になっていはしまいかという懸念がございまして、実は北川委員にもお願いいたしまして、私に二十分をちょうだいいたしました。  私は、この法案に関しまして、きょうは三つの御質問をさせていただこうかと思います。  第一は、この法案の動機にかかわる部分でございます。  私はこの委員会にずっと出席しておったわけではございませんので、たび重なる質問になって恐縮やもしれませんが、クローン人間等々の作成を禁止するという一点目についてはどなたも御同意があろうかと思いますが、特に、提出されました政府の方の案の中に、第三にというところで、クローン技術等により作成される特定胚の適正な取り扱いの確保のための措置であるという一文がございます。これは民主党の対案とも一番異なる部分かと思います。  この部分に関しまして、実は二年前に文部省が出された通達、平成十年八月三十一日に同じような通達がございますが、あえて読まさせていただきます。ここでは「ヒトのクローン個体の作製に関する研究の禁止」となっておりまして、第三条というところで、まずはクローン個体作成を禁止した上で「前項の趣旨にかんがみ、ヒトの体細胞由来核の除核卵細胞への核移植は、研究においてこれを行わないものとする。」簡単に言えば、二年前には文部省の通達においても、本日言われますところの特殊胚等々の取り扱いについては、そこから人クローン個体が生成されるおそれもあるから、これもあわせて禁ずるという法律でございました。  はてさて、この二年間に何が起こり、何を動機として、この第三の、とりわけ特殊胚というところにおきます取り扱いを、あえて言えば解禁なさいましたか。その背景にございます大きな理由について、まず認識をお聞かせください。  大島科学技術庁長官、お願いいたします。
  134. 大島理森

    大島国務大臣 阿部委員は、現場の小児科の先生を長い間経験されて、小児科の医師としてのいろいろな御意見、また医師としての倫理も、また科学技術への造詣も深いと思います。  この二年間でなぜこのように変化したのか。私は、かくさようにライフサイエンスの世界研究開発というものが大変な速度で進んでいるわけでありまして、そういうときに、少なくともやってはいけないことを明確にしつつ、そして今後研究開発ということだけがひとり歩きをして、そこが、こういう文部省の平成十年に出された告示第百二十九号という行政の判断というだけではなくて、いずれにしろ国会という国権の最高機関で御論議をいただいて、そこできっちりルールをつくる必要がある、そういう中でこの法律を出させていただいたところでございます。  そして、その中では、国民的、あるいは国際社会の中においても、最低限のルールをまず今急いできっちりとつくっておかなきゃならぬという部分については、もう何回も御説明申し上げましたが、十年の罰則規定を設けるような形での禁止と。  そして、この世界における研究開発という側面においては、人間の尊重あるいは人間社会秩序という視点からも考えつつ、いわば慎重に事を処していかなければならない。刑罰で十年とか五年とかということを決めるという反社会性はないけれども、しかし、ここは、そういう観点から、研究と同時に、いわゆる倫理あるいは規制をきちっとしていかなければならないところはガイドラインという形で押さえていこう、そういう形で今回出させていただいたということでございます。
  135. 阿部知子

    阿部委員 私のお伺いしたかったのは直接の動機でございますが、今のお答えは動機に触れるものではないと思います。  そして、動機を憶測いたしますと、民主党の皆さんも提案の中に込められました、ES細胞現実ヒトにおいて作成されるようになったというこの事実は、非常に大きなものがあると思います。やはり事実認識の上に立って法案の作成考えられなければならないと思います。  引き続いて、二点目でございます。  その事実認識、一つは、かかる研究分野での新たな発見、技術の進展があったと同時に、さはさりながら、実際に卵子、精子、受精卵等々が発生するのは、先ほども申しましたように間違いなく医療現場でございます。そして、このことを提供するのも、間違いなく一人一人の個人でございます。  そして、非常に残念なことに、実は科学技術関連の会議におきまして、本来、提出者である、これは法案ではございません、卵子とか精子、受精卵の提出者である御本人たち、とりわけ体外受精を経験された方たちから直接にお話を伺う場がなかったことは、私は非常に、この審議における、ちょっと差別用語ですが、片手落ちになると思います。なぜならば、その方たちがどういうお気持ちで現在の体外受精医療をお受けになり、また、どういう点に不安ないしは不満をお持ちになり、とりわけ受精卵の扱いにおいてどのような不安をお持ちであるかということについての認識が薄いように思います。  体外受精を経験された方たちがつくられた患者会がございまして、皆さんのお手元にもきっとファクス等々で届いておりましょうが、フィンレージの会と申しまして、そこでの諸アンケートを拝見いたしましても——会の方では送られたというふうに私にはファクスがございましたが、もしまだでしたら、大島科学技術庁長官のお部屋に恭しく持ってまいります。フィンレージの会という、八百五十九人の体外受精を経験された方たちの会がとったアンケートでございます。  御自身たち受精卵がどのような形で保存されているか。凍結保存の期間あるいは現状について、約六割はわかっているが、四割の方はおわかりないとお答えになったり、あるいはまた、産婦人科学会のガイドラインによれば、受精して胎内に戻す受精卵は三個までというガイドラインがございますが、現実には四個以上戻されている方が四割ございましたり、なかなか医療現場ガイドラインどおりにはいっていない現状がございます。そして、そのことに大変不安を抱いておられます。  この法案が通ったならば、例えば、あなたの受精卵は人クローン胚の生成に使いますよとか、あるいは動物の精子とかけ合わすことがあるかもしれませんよとか、あるいは凍結保存してどなたか第三者に譲り渡すことがございますよとかいう説明をきちんとしてくださいという要望が出されております。  これらは、非常に当然な、いわば自分たちの遺伝的情報を持った受精卵が、あるところでどのように利用され、また、どなたかに、せんだっての厚生省審議会を経ますれば、これからは凍結卵を違う夫婦に提供することも可能になったわけであります。提供した側も知らずして実際にそこに生命として誕生したり、提供した側が、例えば本当に動物との、もちろんそれを胎内に戻しません、キメラ、ハイブリッドではございませんが、胎外でも交雑しますよということに、本当にイエスと言っているか。そのお一人お一人に、あなたの受精卵、あなたの胚はこう使いますよというふうな同意がとられる必要があるものだと思います。  現代という時代は、人間の身体というものが非常に重要な意味を期せずして持ってしまった。いいことばかりではない、受精卵から臓器移植まで、非常に不思議な時代になってしまいました。そして、そのことを幾重にも歯どめしていく上でも、まずは当事者たち同意、それから社会的な合意の形成、二段階、かてて加えて大切と思いますが、実は一段階目も、体外受精を経験された女性たちにとっては達成されていないのが現状でございます。こういう中で何かが決まりましても、本当にそれは、先ほど申しました屋上屋を重ねる非常に抽象的な論議、大体この論議は難しゅうございますから、そして国民には浸透しないという事態が発生すると思います。  あわせて、大島科学技術庁長官が指摘されましたように、私は医療現場ですが、大変情けないことが起きております。と申しますのは、ヒトの組織等々の取り扱いにおいてです。  例えばですが、平成十一年五月十九日、八十一病院に調査いたしましたヒト組織の取り扱いということにおいて、その中で、例えば、あなたからいただいたこの組織はこういうふうに使いますよという説明をしているのは、わずか一割から二割ということでございます。これは朝日新聞の一九九九年五月十九日の発表でございます。  あるいはまた、東北大学で、患者さんたちに無断で、二千五百人から採取した血液で遺伝子解析を行ったという報道がございまして、これが平成十一年十一月の二十六日。  引き続いて、平成十二年二月三日には、同じように、循環器病センターが地域の患者さんを検査して、フォローアップと称して遺伝子解析をしていた、しかし患者さんには何ら言っていなかったというような報道も、多々ございます。  これがまた医療現場であることは大変に悲しゅうございますが、はたまた厚生省にお伺いいたします。  このような御自身の身体、人体に対する利用について患者側がほとんどインフォームされていないという現状について、厚生省はどのように認識しておられるのか。  そして、ヒト胚委員会におきましても、同じような記載がございます。これはヒト胚を扱う研究についてですが、産婦人科学会のガイドラインどおりに、例えば、受精後二週間以内の使用、医師による取り扱い研究開始の学会への登録などを要件として認めているのでございますが、実施状況等のフォローアップはこれまで行われておらず、今後の課題となっておると。  厚生省については、実施状況、産婦人科学会のガイドラインがある、ただ、どんなふうにフォローアップされているかは御存じないとみずから吐露しておられますが、このような現状下で、受精卵の取り扱いが非常に広く研究利用されていく可能性があるということについての厚生省担当官の認識をお知らせいただきたい。
  136. 真野章

    真野政府参考人 私ども生殖補助医療の実施状況、これはすぐれて医学的な問題もあるということで、日本産科婦人科学会が登録する仕組みをしいておるわけでございまして、いわば専門家としての御判断による実施ということにお願いをいたしております。  それで、私どもといたしましては、現在、精子、卵子、胚の提供等による生殖補助医療あり方についての議論厚生科学審議会の先端医療技術評価部会の中で、生殖補助医療技術に関する専門委員会というところで二年ほどかかって議論をしていただいております。  この中では、先ほど来先生が御指摘の、インフォームド・コンセントでありますとか提供者の書面による同意、そういう議論が行われまして、そういうある程度の条件整備のもとで生殖補助医療をどうするかということを今御議論いただいており、我々としては、年内にもある程度の御意見の集約がなされるというふうに期待をいたしております。
  137. 阿部知子

    阿部委員 私の申しますのは、幾らガイドライン指針をつくりましても、それが現実にどのように運用されているかの点検なくしては、やはり人権は守られていかないと思います。  例えば、凍結精子の保存期間についても、期限を教えられた方が六割、明示なしが四割でございます。これは患者さんたちの実際の生の声でございます。やはり厚生行政がもっとしっかりしていただかないと、これからの研究体制にも差し支えると思いますので、私もこの資料を厚生省にもお届けいたしますから、ぜひぜひ我らは何をなすべきかを厚生省はお考えいただきたいと思います。  最後に一点だけ。  先ほどの民主党の提案者の方のお話、それから吉井さんの御質問にもありましたが、私は、この二年間、いわば片一方でクローン人間作成を禁止し、片一方でクローン技術にはアクセルをかける向きになった大きな原動力はES細胞だと思います。そして、これが医薬品としても再生医療の現場でも有用なことも存じております。  はてさて、現在はまだこれは商品利用ないしは商業化の道はとっておりませんが、今科学技術庁の長期にわたるお考えの中で、めどとして、どれくらいの期間でそのような現実性をお考えであるのか。当然問題になってまいりますので、そのめど、それから、何年くらいは少なくとも基礎研究にとどめておくのかを大島科学技術庁長官、お願いいたします。
  138. 大島理森

    大島国務大臣 私も、このES細胞の将来について、さまざまな方に御指導をいただきながら議論をしてまいりましたが、残念ながら、今先生に対して明確に、何年後にはこうだということが、共通した認識でまだ浮かび上がってこない。したがって、長官として、何年先だ、こういうふうに明確に言うことは、逆に大きな問題を起こすような気がします。  いずれにしても、今先生御自身がおっしゃっていただきましたように、ES細胞研究そのものの有用性は認めるというふうなことをおっしゃったかと思いますけれども、そういうことと、生命倫理というものが基礎になければいけないということを、先生が一生懸命おっしゃっていただいたと思います。  先ほど来、厚生省がちょっとお答えしておりましたが、今までの内科医の先生方だけの問題としてでなくて、法律を決め、法律に基づいた指針をこれからつくっていくということは、まさに一つ国家意思です。だからこそ、そういうことがないように、そういうことはガイドラインできちっと決めていこう、あるいはまた、これからES細胞のいろいろな議論をしたときに、それに基づいたさまざまな規範というものもつくっていこうということでございまして、私どもは、そういうことを大事にしながらこれから運用をしてまいりたい、こう思っております。
  139. 阿部知子

    阿部委員 私の見解は、多少手順が違いまして、やはり生殖医療現場のきっちりした規制、そこから人クローン胚の規制、そして有用であるやもしれないES細胞については、国民合意公聴会等々をきちんとやっていただきたいというのがお願いでございます。  今回、社会民主党は、時期尚早ということでこの法案に反対をさせていただきますが、引き続いて、北川れん子さんの方にかわらせていただきます。
  140. 古賀一成

    古賀委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  141. 古賀一成

    古賀委員長 それでは、速記を起こしていただいて結構です。  北川れん子君。
  142. 北川れん子

    ○北川委員 社民党・市民連合の北川れん子です。よろしくお願いいたします。  きょうの中にも出ておりましたが、人の尊厳に関してもう一度お伺いしたいと思います。  人の萌芽である卵子や胚を、有用であるからといって、ガイドラインだけに頼り、特定の研究者のみが使用することこそが人の尊厳に反する行為に当たるのではないか思いますが、いかがお考えでしょうか。  また、ある卵子から核を抜き別の核を埋め込むということを人間の手でするということは、これが幾ら有用性があるかもしれないからとはいえ、操作するということ自体が人の尊厳を侵すことになると思うのですが、この点もあわせてお答えいただけますでしょうか。
  143. 大島理森

    大島国務大臣 ヒト胚を無秩序に使うことは人間尊厳に反する行為ではないかということだと思いますが、まさに、無秩序に使うことはいけませんということでございますから、人間尊厳性を大事にした法案だと思っております。
  144. 北川れん子

    ○北川委員 きょうの議論を聞いておりまして、私のきのうお伝えした文とちょっと変えまして、勝手、無秩序という言葉を削りまして、ガイドラインだけに頼り、特定の研究者のみがというふうに入れました。ここのところをポイントでお伺いしたつもりだったのですが、いかがでしょうか。
  145. 大島理森

    大島国務大臣 ガイドラインというものも、いわば国家一つ意思として、国民皆さんにそこは秩序として提示するものですから、私は、これは人間尊厳を大事にしながら、まさに人類の、また福祉の向上。逆に、人間生命尊厳に対して、できるだけこれから一つの知恵を出していこうという分野に研究をしていくということとの、いわば整合性を持った意思である、このように思っておりますので、先生が言われたようなことでもって、人間尊厳を無視した法律ではない。むしろ人間尊厳というものを十二分に考え法律だ、このように思っております。
  146. 北川れん子

    ○北川委員 そうしますと、操作をすることが人の尊厳を侵害することにはならないという定義から進むというふうに理解させていただき、次の質問に移りたいと思います。  きのう参考人のお話の中にもありましたが、体細胞クローン人間は遺伝子は同一かもしれない。そして先ほどの御答弁の中に、これも完全には解明されていないと。確かに、ミトコンドリアの核やゲノムの問題もあるので、核だけの移植でもって九九・九%同一というふうには言えないというのが今の技術の見解であろうと思いますが、もう一面、人間というのは社会に生きる人であります。  そこが、多くの人がクローン人間をコピー人間と間違える大もとであると思いますが、コピー人間、つまり、例えば多くのヒトラーがつくられるわけではないとのお言葉をきのう参考人からいただきましたが、この点については、いかがお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  147. 結城章夫

    結城政府参考人 体細胞クローンは、遺伝的にはほぼ一〇〇%その体細胞提供者と同じものになりますけれども、もちろん生まれてくるのは赤ちゃんでございますし、それからの教育とか後天的な経験によって、遺伝的には同じですけれども全く同一の人間になるわけではない。それが、ヒトラーが何百人もできるわけではないという意味だと思います。
  148. 北川れん子

    ○北川委員 人間にとって後天的な環境や状況、教育が必要であるということをお答えいただいたということを、深く受けとめたいと思っています。  そこで、もう一度、私がこだわっておりますクローンの定義の方に戻りたいわけですが、クローンの定義、クローンの技術がこの法律のみに通用するものになっていることに対して、私は深く疑義を感じてきているわけです。  クローンの定義を、ドイツの法律にありますように、ほかの胚、胎児、ヒトと同じ遺伝情報を持つヒトの胚が生まれる事態を人為的に引き起こすこと、これだと全世界に通用する定義になると思うのですが、この定義を採用するというふうなお考えは、この時点ではいかがでしょうか、おありになりませんでしょうか。
  149. 結城章夫

    結城政府参考人 生物学的には、今先生おっしゃったようなことがクローンの定義かと思いますが、この法律では、法律で直罰をもって禁止する体細胞クローンと人為的に一卵性双生児をつくるようなことになります胚、これは区分けする必要がございました。そこで、体細胞クローンの方をこの法案では人クローン胚と定義し、いわば受精卵クローンの方はヒト胚分割胚あるいはヒト胚核移植胚というふうに書き分けたわけでございます。  そういうことで、クローンの定義が純粋生物学の定義と異なった法律的な定義になっておるということで御理解いただきたいと思います。
  150. 北川れん子

    ○北川委員 今の御答弁で、純粋生物学的な定義ではないということを明言していただいたことも、受けとめておきたいと思います。  次の質問に移りますが、クローン小委員会が、人クローン個体産生だけしか審議をせず、そのもととなりますクローン胚等の試験管の中での研究についての議論がなされていません。さらに、次いで設けられた同委員会ヒト胚研究委員会が、ヒトの胚性幹細胞、これは今ES細胞と言っているわけですが、それの研究を専ら審議対象にして、ヒト胚研究全体のあり方審議しなかったのは、重要な誤りと思うのですが、いかがでしょうか。  また、ES細胞研究法律のらち外に置くことで、生命操作を広範に認めるおそれがあると思うのですが、この点もあわせてお答えください。
  151. 結城章夫

    結城政府参考人 この法律では、ヒトクローンなどの個体産生が人の尊厳の保持、社会秩序の維持等に重大な影響を与える可能性があり、その防止をする必要があるということで、そのための法律による規制が必要だということででき上がったものでございまして、この点については明確な国民的コンセンサスも得られておると思っております。  一方、生殖医療につきましては、生殖を補助し人の誕生を目指す技術でございまして、クローン問題とは同一に取り扱うべきものではありませんし、また、これをいか規制するかということについても、現在議論が進行中で、その規制あり方はこれから決めていくべきものと思っております。  また、ヒトES細胞研究でございますが、これは、科学技術会議生命倫理委員会において、それだけでは個体にならないことから、法規制が不可欠とは言えない、あるいは、国際的に端緒についた研究であって、これからの技術的進展に適時に対応していく必要があるということから、柔軟な対応が望ましいということで、本法律案対象とはしないで、別途ガイドライン規制を行うべきという結論になったものでございます。
  152. 北川れん子

    ○北川委員 今、まだ海のものとも山のものともわからないES細胞に関して、熱いエールとそして柔軟な態度を政府が持つということに、多くの人たちは、逆に危機感を持っているということをぜひお知りいただきたいと思います。  次の質問なんですけれども、これは厚生省にお伺いしたいと思います。  厚生科学審議会先端医療技術評価部会の生殖補助医療技術に関する専門委員会の報告書案というのが、去る十一月十二日に出たということが新聞で報道になっておりましたが、そこでは不妊治療目的での胚と卵子の第三者への提供を認める内容になっています。  それをこの法案と照らし合わせてお伺いするわけですが、研究目的、特に、クローン胚作成研究やES細胞作成研究への提供をお認めになるのかどうか、明確にお答えください。
  153. 真野章

    真野政府参考人 厚生科学審議会の先端医療技術評価部会の中の生殖補助医療技術に関する専門委員会で、約二年近くもう既に御議論をいただいております。  ただ、この中では、親子関係の確定、それからまた商業的な議論というようなものに対してどういう判断をすべきかというところから議論をされておりまして、いわば不妊治療という面から行われております。その委員会でも、生殖補助医療の観点から議論をするので、胚のいわゆる実験利用に関してはこの専門委員会では議論対象としない、そして他の検討機関において別途検討されることが望まれるというような議論を行っていただいております。  先ほども御答弁申し上げましたように、今まさに、どういう条件下でどういうことが不妊治療の観点から認められるかということを、この専門委員会で御議論をいただいている状況でございます。
  154. 北川れん子

    ○北川委員 ということは、クローン胚とかES細胞に関しての議論は全くされていないので、今の段階では、第三者の卵子や胚の提供はこの研究には持ち込まないという段階であるということなんでしょうか。
  155. 真野章

    真野政府参考人 私どもは、不妊に悩んでおられる方々に対して、不妊治療という観点から議論が行われております。  ただ、今のところ、第三者の精子の提供によるものは産婦人科学会でも認められておりますけれども、それ以外の方法につきましては、産婦人科学会のガイドラインというところでいわば自主的な規制が行われているわけでございますので、それに関して、卵子提供した受精ということもどういうふうに考えるべきか。そして、それを認める場合のいろいろな条件がございます。その条件整備としてどういうものが考えられるかということから御議論をいただいているわけでございます。  実験的な利用ということについては、この専門委員会では、先ほど申し上げましたように、さらに別途の検討が要るということを今議論していただいているわけでございます。
  156. 北川れん子

    ○北川委員 厚生省はさらに別途の議論が要るということは、逆に言えば、科学技術庁の方にボールを投げ返されたというふうに受けとめますが、では、ついでですので科学技術庁の方にお伺いします。  今投げ返されたボール、ES細胞研究や人クローン胚の研究に第三者の卵や胚を使うということはなさらないという前提でこの法案を組み込まれているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  157. 結城章夫

    結城政府参考人 この法案の規制対象となります特定胚をつくる際に、生殖細胞あるいは胚を材料として提供いただく場合でございますけれども、この法案の第四条で、法律に基づく指針を定めることになっております。  この指針に従っていただくわけですが、指針においては、特定胚作成に必要な胚または細胞提供者同意が得られていることその他必要なことを書き込むというふうになっておりまして、提供者同意が得られた上でその特定胚作成することが、この法律に基づいて担保されることになります。
  158. 北川れん子

    ○北川委員 科学技術庁の法案の提出が先で、十一月十二日、それにあわせて厚生省ガイドライン指針ができたということは、無限に卵の提供者の幅を広げるという意味で、この法案が体細胞クローンのみを禁止している面に偏って重点が置かれていることに、私はなお一層の強い疑問を持ったということをお伝えしておきたいと思います。  次の質問に移りますが、先ほど近藤委員の方からも、きのうの最相参考人のお話の中から持ち出されてお聞きになっていた点を、あの議論を聞いていて、もう一度お伺いしたいと思います。  科学技術会議生命倫理委員会委員長の井村裕夫氏が、神戸にできます神戸医療産業都市構想の中にあります、今建設中の先端医療センターの責任者になられる。私も、先ほど聞いていて、きのうやはり利害関係と言われたのですね。それで、利害関係というのは何ですかという御答弁があったと思うのですが、私は、その利害関係というのは、先端医療センター長になる、そういうポストに、片やで生命倫理委員会のリーダー、委員長という立場の人がまさにその場に来た、そこが利害関係を生み出す。  御議論を聞いておりまして、私は井村裕夫氏の人格云々を言っているわけではないのです。井村裕夫氏でなくても、例えば北川れん子でも、立派であろうが立派でなかろうが、第三者が、環境を整えて、一定程度外から見て透明性が高い人材の確保をしているということが客観的に理解でき得る要素をあらかじめ持っておかなければいけない。そういうことが、きのうの最相参考人のお話の中にあった、ほかの国の状況であるという意味の中に含み込まれていたと思うのです。  やはりそこから裏返して点検をいたしますと、同一人称を持つ方が、片やで生命倫理委員長をされ、片やで一番この部分を担う先端医療のセンター長の実権を握るということに対しては、もう一度お伺いするわけですが、これは明らかに違反、違反といって何の法律に違反をしているというわけではなくて、やはり人材の選択を間違えているというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  159. 大島理森

    大島国務大臣 おっしゃっていることがよくわからないのです。  というのは、このルール、ガイドラインに基づいて研究あり方をチェックする人がその人であって、そしてやっている場所がまたその人の場所でやっているという、自分がチェックしながら、自分がやっていることをチェックするような形のことを想定して利害関係があるということをおっしゃっているのなら、それは甚だ誤解だなと。先生がおっしゃる客観性、透明性というのは、何をもって客観性とおっしゃりたいのかな。  いずれにしても、私は、この人選と、この先生に今御指摘いただくようなことは一切ないと信頼をし、そして、こういうさまざまな多くの方々に参加していただいて、公明正大な中での客観的な議論をいただいています。  もう一つ申し上げたいことは、大島理森も先生も、多分この委員長をやれといってもできないでしょう。それは、すぐれて科学技術的な議論をしていただかなければならぬ。そうしますと、そういう専門家の方々に多様にお集まりいただいて議論をしていくということも、判断の材料の一つにしなければなりますまい。  こういうことで、御指摘のようなことは一切ない、このように思っております。
  160. 北川れん子

    ○北川委員 御指摘のことというのは、委員長とセンター長を兼ねるというところから出てくるいろいろなふぐあいというのはこれから出てくるわけですから、私は何も御指摘していないわけで、指摘をしているわけではなくて、あらかじめストッパーをかける機能を持つということが大事ではないか。  もう少し具体的に言いますと、卵子提供であれ胚の提供であれ、無償で始まります。そして、このガイドラインが後から、この法案が出ていった後からいろいろ後追いをして出てくるわけでありまして、そこのところで、後の方の質問でも聞きますが、ES細胞が有用株を持ってふえていく。その株をどういうふうに分けるか、それもすべて、やはりリーダーであるセンター長等々が決めていく立場にあられる方であるというふうになっていくわけです、具体的に言えば。  そういう具体性を持たせたことを念頭に置いていくと、やはり分けた人材をお選びになった方がよりベストであるという意味で、お話ししているわけです。
  161. 大島理森

    大島国務大臣 ですから、それは誤解をしておられるんじゃないかと私は指摘したのです。  先生、恐縮でございますが、科学技術会議生命倫理委員会が、つくった法律に基づいて、あるいはガイドラインに基づいてそれぞれの研究所をチェックするのではありません。これはおわかりですね。(北川委員「それはわかっています。中の、センター長になったところの部分で」と呼ぶ)それは、申しわけありませんが、文部科学省がそのガイドラインに基づいて、どちらの研究所であろうが公正に適正にやる。そういう意味で、今の委員長先生が自分で自分のところをチェックするんじゃないのです。法律に基づいて文部科学省がやるのですから、その先生が行ってチェックするのではないわけでございます。そこまで疑われると、世の中はだれも信じられないということになりませんか。
  162. 北川れん子

    ○北川委員 だれかを信頼する、殊に多くの人たちの命を預かる立場に立つ人を、だれかが悪いと言っているわけではなくて、より一層ベストな方法へ持っていくことは可能ではないかということでお伺いしていたのですが、そこのところをどうも理解していただけないということで、ちょっと次の質問に移りたいと思います。  同じヒト胚研究でありながら、クローン、キメラ、ハイブリッドのみを法規制して、ES細胞研究を行政指針による規制としています。さらに、生殖補助医療領域の受精研究等のヒト胚研究は学会などの自主規制にゆだねて、ある意味ではやりたい放題、野放し状態と言ってもいいと思います。このような規制の使い分けは極めて不適切であると思いますが、いかがお考えでしょうか。  また、ES細胞研究法規制対象とすべきであると考えておりますが、いかがでしょうか。
  163. 大島理森

    大島国務大臣 先ほど医業の現場の大変な経験を持っておられる阿部先生質問の中に、ES研究の有用性というものを全部は否定していない発言がありました。だとすれば、人類の福祉の増進あるいは人間尊厳というものに対する観点からも、ES細胞研究が必要であるということは、委員もある程度御理解いただけるんだろうと思うのです。  だとすれば、それを初めから全部ノーだというお考えになっておられるのかというと、そうじゃないと思うのですね。そういうことを明確にした上で御質問いただくと意見がかみ合うような気がしますが、私どもは、まさにES細胞は、私どもの今の法律の最もねらいとするクローンの個体をつくってはならぬという視点から見て、ES細胞のそこの部分だけでは、今すぐに個体を生成するということはもうほとんど不可能に近い状況です。ですから、それはこれからいろいろな形の中で皆さんの御議論をいただきながら、有性生殖という世界は、まだある意味では、こういうふうにしようという人の産む権利に対する大変大事な結果を出している分野でもございますので、いろいろな皆さんの御意見を聞きながら、国民合意をいただいた時点において、必要であれば法律というものでそこは規制するということもあり得るでしょう。今しばらく、ガイドラインという状況の中でその分野に規制をしながら、国民合意を得た時点において、大きなその世界に対して、国家がどういう秩序を保つかという結論を出していかなきゃならぬ分野ですという意味で、このような法体系にしたということでございます。  ES細胞研究を全く否定します、有性生殖の世界も全く否定しますというお考えをもし委員がお持ちなのであれば、そういうこともある意味じゃ明確にしていただいた上で議論していただいた方が、国民の前に明らかだ、こう思いますが、むしろ私からお聞きしたいと思っております。
  164. 北川れん子

    ○北川委員 今の御意見をお伺いしていまして、私と大島大臣とがかみ合わない点、それはひとえに、ある法律をつくるということに関しての観点が違うんだろうと思います。  私は、ある法律というのがつくられたら、そこに書かれてあることだけには罰則を持たされたり、禁止ということがされるわけですが、法律に書かれていない分野、そこは逆に言えばスタートしていいというふうに、私は法律がつくられる過程をそういうふうに見るわけです。ES細胞研究や胚の研究、それから生殖補助医療研究に関して私が今どういう見解を持っているかという以前に、私と大島大臣の距離感というのは、多分、法律をつくるということに対しての見方の違いであろうと思います。
  165. 大島理森

    大島国務大臣 法律なしで罰則を科したら、これはもう法治国家じゃありませんので、法律罰則のない世界は、それは個人の自由の中で物事を処していくというのは、ごくごく基本的な民主主義の、何にも違わない、あなたと私と違わない。もしそれが違っておるとすれば、憲法や法律に対する考えが全く違うということじゃないでしょうか。  ですから、あなたに私はお伺いしたいのは、私どもも、ES細胞研究についてはガイドライン等でやっていきましょう、全体としてさらに議論していって、法律が必要であればそのときやりましょうと言っているのでありまして、質問者は、ES細胞研究は日本には要らない、やってはいけないという考えをお持ちなのか。あるいは、有性生殖の研究世界もすべて国家が管理して、そこですべて国家がイエスと言ったらやりなさいという世界がいいのか。また、絶対やらせてはいけないという思想や根底に立って御質問しているのかなと思うのですが、法律ガイドラインでやってはいけませんよということ以外のことは、当然いろいろ自分の努力の中でやっていくというのが民主主義であるし、私どもの法治国家としての当然のことではないでしょうか。
  166. 北川れん子

    ○北川委員 私の今の言葉が具体性を持たなかったので理解をしていただけなかったと思うのですが、では、例えば今回の法律に関しましても、体細胞クローンは禁止をしています。けれども受精卵クローンは三角、あるいは研究治療であればマルというふうになっている、この点が一つあります。私が具体的に先ほど言いたかったのはこういうことです。もう一つ言えば、動物性融合胚の人または動物の子宮への移植は禁止対象とはなっておりません。いわゆるヒトの除核卵に動物核を移植後、人の子宮に戻すことも禁止対象とはなっていない。  この法案を少なくともいろいろな方面から読んでいけば、禁止対象にはなっていない面の方も浮かび上がってくるということで、私は、ES細胞研究云々を北川がどう思っているかという以前に、法律を読みこなすときの姿勢に対して、今、私と大島大臣とでは距離があるということをお伝えしたつもりなんですが、もう時間がないようですので、最後の質問にさせていただきたいと思います。  ES細胞研究は広範な産業応用が期待されていますが、無償で提供される女性卵子や胚を用いた研究で企業が上げる利潤、そこから生じる特許の扱いなどの問題に対しては、通産省が別に責任を持って、研究から生み出される成果や利潤の適切な社会還元など、指針もしくは法律をつくるべきではないか考えますが、いかがでしょうか。  また、無償の卵子や胚から得られたES細胞株を分けるときには、提供先は限定されてお分けになるのかどうか、この辺なども通産省にお伺いいたします。
  167. 岡本巖

    岡本政府参考人 お答え申し上げます。  先生御案内のように、一般にバイオの分野というのは、研究開発スピードも速いですけれども、基礎的研究の成果が実用化に結びつくというそのスピードも、往々にして速いという場合がございます。  今御指摘のES細胞について、まだ基礎研究がこれから始まろうという段階でございまして、その成果が実用化ということで見えてくるにはいま少し時間がかかるのではないか思います。  私ども、バイオの関係で、通産大臣の諮問機関であります化学品審議会の中に個人情報保護部会というのを設けて、今現在は、遺伝子の機能の解析を中心とした研究なり、その延長線上での実用化研究というものをにらんで、それと生命倫理なり個人の情報保護との関係ということで勉強していただいているところでございます。  基礎研究が、今この法律に基づいて一定の指針のもとで進むというようなことが進展をして、さらにその実用化というものが見えてくるような段階になりましたら、私ども厚生省を初めとする関係の省庁と十分に御相談をして、よるべきルールというものを勉強していきたいというふうに考えております。
  168. 北川れん子

    ○北川委員 時間が来ましたので、どうもありがとうございました。
  169. 古賀一成

    古賀委員長 以上で、ただいま議題となっております両案中、内閣提出ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  170. 古賀一成

    古賀委員長 この際、本案に対し、高市早苗君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び自由党の四派共同提案による修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。平野博文君。     —————————————  ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  171. 平野博文

    ○平野委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び自由党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  本修正案の趣旨につきましては、既に当委員会質疑を通じ指摘されたものでありますが、附則第二条に規定されている検討を行うに当たり、最近のクローン技術等の急速な進展、これらを取り巻く状況の変化等にかんがみ、その検討時期を早めること、ヒト受精胚の人の生命萌芽としての取り扱いあり方に関する総合科学技術会議等における検討結果を踏まえることなどを内容とするものであります。  それでは、案文を朗読いたします。     ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案に対する修正案   ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案の一部を次のように修正する。   附則第二条中「五年以内に」を「三年以内に、ヒト受精胚の人の生命萌芽としての取扱いの在り方に関する総合科学技術会議等における検討の結果を踏まえ」に、「特定胚取扱いに係る制度について」を「この法律の規定に」に改める。 以上であります。  何とぞ本修正案に御賛同賜りますようお願いいたします。
  172. 古賀一成

    古賀委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  173. 古賀一成

    古賀委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。北川れん子君。
  174. 北川れん子

    ○北川委員 以下に反対討論を述べたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  一つ、クローン、ES細胞生殖補助医療を統括する視点が抜けている。  二つ目、クローン及びクローン技術の定義が、この法案にのみ通用するものとなっており、あいまいである。  三つ目、体細胞クローンのみを禁止しており、受精卵クローンに関しては認めている。  四つ目、卵子受精卵、胚を採取される女性の体の保護規定が必要。採卵による死亡事故や脳血栓といった重大事故も報道されており、後遺症に苦しむ人たちも少なくないと聞いています。女性の体への保護規定がこの中に盛り込まれていないこと、女性に対しての視点が抜けているということが私の一番の反対の理由でもあります。  五つ目に、日本産科婦人科学会によるガイドラインという自主規制のみで体外受精技術不妊治療として承認してきた現状の検証が必要であり、これまでのヒト胚研究利用に関しては、提供者である不妊治療者の同意を得て行われていることがほとんどなく、凍結保存の期限を超えたために廃棄されたと思っているものが研究に用いられているというのが実態であるということを、当事者、不妊治療をしている人たちからの告発を受けています。  六つ目、ES細胞は、体外受精胚だけではなくて、体外でつくられたどんな加工胚、特定胚からでも理論的には作成可能であるだけに、倫理的検討のないままES細胞の樹立、ES細胞を用いた研究を容認し、産業、商業化への道を広げてしまうのは、国民議論が尽くされていない現段階では時期尚早と考えます。  七番目、日本では、人の命の始まりについては議論が十分なされておらず、合意形成はされていません。また、生命倫理の観点から、クローン、ES細胞、胚についてももっと議論が必要だと思われます。  八つ目、法案成立過程で幅広い女性意見が反映されないまま法案が成立されていきました。  九つ目、複数回の公聴会を開くなどして、社会の関心と理解を深めた上で立法化を行うべきであると考えます。  十番目、時間をかけ議論を尽くした上で恒久法案とするべきものであると考えます。なぜなら、これが生命倫理の問題に深く触れるものであり、私が一番この法案に対して疑問を抱いた発端は、この法案が人をあらわす場合に、「人」そして「ヒト」という書き方で分けています。それを分けて読むとすごくわかりやすい法案でもありました。それを私の身に置きかえますと、自分の中に「人」と「ヒト」が混在した新たな北川というものが生まれる、そういう感じを持ちまして、逆に言えば、個と個の尊厳として自分が温めてきたものが侵害されたような気持ちになったものです。  そして、先ほども言いましたように、この法案は生命倫理に深く関与する法案でありますので、各会派、各党派ともに、やはり党議拘束というようなものなどはない形で、慎重な判断をそれぞれ個人がするということがうたわれるものではないかということを最後にお伝えし、私の反対討論とさせていただきます。ありがとうございました。
  175. 古賀一成

    古賀委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  176. 古賀一成

    古賀委員長 これより採決に入ります。  内閣提出ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、高市早苗君外六名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  177. 古賀一成

    古賀委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま議決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  178. 古賀一成

    古賀委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  179. 古賀一成

    古賀委員長 この際、ただいま議決いたしました本法律案に対し、高市早苗君外八名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び日本共産党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。平野博文君。
  180. 平野博文

    ○平野委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び日本共産党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に際し、次の事項に関して特に配慮すべきである。  一、法第四条第一項の規定に基づき、本法施行後早急に指針を策定することとし、その指針には以下の要件が盛り込まれること   ア 法第三条に掲げる胚以外の特定胚についても、人又は動物の胎内に移植された場合に人の尊厳の保持等に与える影響が人クローン個体若しくは交雑個体に準ずるものとなるおそれがあるかぎり、人又は動物の胎内への移植を行わないこと   イ 特定胚を取り扱うことができる場合としては、事前に十分な動物実験その他の実験手段を用いた研究が実施されており、かつ、特定胚を用いる必要性妥当性が認められる研究に限ること   ウ 特定胚の材料となるヒト受精胚ヒトの生殖細胞提供者同意は、研究目的利用方法等についての十分な説明を受けた上での理解に基づく自由な意思決定によるものでなければならないこと。特に卵子提供については、女性の身体的・心理的負担に配慮し、提供者に不安を生じさせないよう十分に措置を講ずること   エ 特定胚及びその材料となるヒト受精胚ヒトの生殖細胞の授受は無償で行うこと  一、指針の策定、変更に当たっては、国民意見を十分聴取すること  一、ヒト受精胚は人の生命萌芽であって、その取扱いについては、人の尊厳を冒すことのないよう特に誠実かつ慎重に行わなければならないこと  一、ヒト胚性幹細胞については、ヒト受精胚から樹立されるものであることにかんがみ、その樹立に用いるヒト受精胚余剰胚に限定するとともに、その樹立及び使用も必要性妥当性が認められるものに限ること 以上であります。  各事項の内容、趣旨につきましては、委員会の審査を通じ、十分御理解いただけることと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  181. 古賀一成

    古賀委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  182. 古賀一成

    古賀委員長 起立多数。よって、本法律案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。大島国務大臣
  183. 大島理森

    大島国務大臣 ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案につきまして、慎重な御審議の上、御可決をいただき、まことにありがとうございました。  また、ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、皆様方のこの論議を通じての意思が込められていると思っております。政府として、本法の施行に当たり、その御趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。     —————————————
  184. 古賀一成

    古賀委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 古賀一成

    古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  186. 古賀一成

    古賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時八分散会