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2000-11-10 第150回国会 衆議院 科学技術委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十一月十日(金曜日)     午前九時五分開議  出席委員    委員長 古賀 一成君    理事 奥山 茂彦君 理事 塩崎 恭久君    理事 高市 早苗君 理事 水野 賢一君    理事 樽床 伸二君 理事 平野 博文君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 菅原喜重郎君       岩倉 博文君    木村 隆秀君       谷垣 禎一君    渡海紀三朗君       林 省之介君    松野 博一君       近藤 昭一君    城島 正光君       津川 祥吾君    山谷えり子君       山名 靖英君    吉井 英勝君       北川れん子君    中村喜四郎君     …………………………………    議員           近藤 昭一君    議員           城島 正光君    議員           樽床 伸二君    議員           山谷えり子君    科学技術政務次官     渡海紀三朗君    政府参考人    (科学技術庁研究開発局長    )            結城 章夫君    科学技術委員会専門員   菅根 一雄君     ————————————— 十一月九日  脱原発への政策転換に関する請願(辻元清美君紹介)(第一〇四四号)  同(土井たか子紹介)(第一〇四五号)  同(日森文尋紹介)(第一一四〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案内閣提出第七号)  ヒト胚等作成及び利用規制に関する法律案近藤昭一君外三名提出衆法第八号)     午前九時五分開議      ————◇—————
  2. 古賀一成

    古賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出ヒトに関するクローン技術等規制に関する法律案及び近藤昭一君外三名提出ヒト胚等作成及び利用規制に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、政府参考人として科学技術庁研究開発局長結城章夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 古賀一成

    古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 古賀一成

    古賀委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村隆秀君。
  5. 木村隆秀

    木村(隆)委員 おはようございます。順次質問をしてまいりたいと思います。  一昨日の質疑を伺っておりまして、クローン人間を生み出すことを禁止するということに関しては、政府案民主党案共通認識であろうと思います。私も、クローン人間を生み出すということは絶対にあってはならないことだと思っています。しかし、ただ気持ち悪いというだけで、懲役という重い刑罰をもって禁止するということはできないわけであります。法律規制をするということは、実際に社会に対して悪影響があるということが必要であると思うわけであります。  そこで、政府にお聞きをしたいのでございますけれども政府案考え方もとになった科学技術会議生命倫理委員会検討の過程において、クローン人間とはどのようなもので、なぜ禁止されなくてはならないのかという議論がなされたと伺っておりますけれども、その経緯をお述べいただきたいと思います。
  6. 結城章夫

    結城政府参考人 科学技術会議生命倫理委員会におきまして、ヒトクローンについてさまざまな角度から検討が行われました。ここでいいますヒトクローンといいますのは、クローン羊ドリーのように、体細胞からでき上がってくるクローンのことでございます。  それで、まず、この人クローン個体をつくるということはどういうことであるかということの分析でございますけれども受精という男女両性の関与なく子孫を生み出す無性生殖であるということ、それから、産生される個体遺伝子体細胞提供者、既に存在する提供者と同一であること、産生される個体表現形質相当程度予見可能であること、よって、特定表現形質を持つ人を意図的に生産することが可能であること、そういう技術であるという指摘がなされました。  この分析に基づきまして、それでは、人の尊厳をどういう点で侵すことになるのかという議論が行われまして、問題点として、人間の育種や人間道具化手段化につながりかねない、それから特定の人の遺伝子の複製ができるという二点により、個人の尊厳が侵害されることがまず指摘されました。  さらに、人の命の創造に関する基本認識両性生殖であるわけですけれども、そういう基本認識から著しく逸脱することが人の尊厳を侵すという指摘がなされております。  このような検討の結果、クローン人間個体産生禁止されるべきという結論になったものでございます。
  7. 木村隆秀

    木村(隆)委員 クローン人間がなぜいけないかということについては、科学的な観点、そして倫理的な観点からよく議論がなされて、詳細に検討が行われたのだ、よって、クローン人間禁止をしなくちゃいけないという結論に達したということだろうと思います。  政府案は、このような生命倫理委員会が明らかにした問題点について、懲役という重い刑罰をもって禁止すべきということになっているわけでございます。  そこで、続けて政府にお聞きをしたいのでございますけれども生命倫理委員会もとに設置されたクローン小委員会中間報告においては、国のガイドラインによる規制法律による規制両論が併記されていたと思います。今回、最終的には法律規制するということになったわけでございますけれども、その辺の経緯をお聞かせいただきたいと思います。
  8. 結城章夫

    結城政府参考人 生命倫理委員会禁止すべきとされました人クローン個体産生を実際どういう形で規制するかということが、クローン小委員会における最大の論点でございました。  小委員会の方におきましては、ガイドラインによる規制で十分な実効性が上がるんじゃないかという意見もございましたし、また、ガイドラインによる規制では、医師や研究者のコミュニティーに属さないアウトサイダーに対しては効力が十分ではない、これらを含むあらゆるものに対して有効であるためには、法律により強制力を伴った形で網羅的に規制を行うことが妥当であるという意見もございました。  そういう両論があったわけでございますが、アンケート調査では約七割の方がクローン個体産生法律に基づいて禁止すべきという回答をしていることなどを受けまして、いろいろ議論した結果、最終的には法律規制すべきという意見が大勢を占めることになったものでございます。
  9. 木村隆秀

    木村(隆)委員 政府案は、今御答弁いただいたような考え方もとにして、体細胞によるクローン人間産生については刑罰をもって禁止するということになっているわけでございますけれども、一方、例えば人工的な一卵性双生児作成するような行為については、その取り扱い指針にゆだねているわけであります。これは生命倫理委員会結論に従ったものだということを伺っておりますけれども、なぜ政府案特定胚による個体産生の一部を指針にゆだねたのか、生命倫理委員会ではどのような議論がなされたのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。
  10. 結城章夫

    結城政府参考人 ただいま申し上げましたように、生命倫理委員会におきましては、人クローン個体、これは体細胞クローンでございますが、これの産生法律禁止すべきという結論になりました。一方、科学的に意味が異なります一卵性双生児の人工的な産生については、その問題点クローン人間産生とは異なるものであり、法律による禁止ではなくて、個体産生が行われないような具体的な措置を講ずる必要があるということになっておるものでございます。  この委員会での結論を踏まえまして、それを政府の方では法律案にしてまいったわけでございますが、この政府案におきましては、実際に相当程度の反社会性があると生命倫理委員会で判断されました人クローン胚母胎への移植法律禁止する、罰則を伴う法律での禁止ということにする一方で、それほど反社会性を持たないと考えられますヒト胚分割胚及びヒト胚核移植胚、これは先ほどの一卵性双生児を人工的につくるということにつながるわけでございますけれども、その母胎移植については、法律に位置づける指針で当面禁止をすることとしたものでございます。
  11. 木村隆秀

    木村(隆)委員 今御答弁を聞いておりますと、政府案クローン人間禁止に関する考え方というのは、やはり生命倫理委員会においてかなりいろいろ検討された結果出てきたものかなと思うわけでございます。  続いて、民主党案についてお伺いをしたいと思います。  一昨日の審議において提案者の方々は、今回、法案においてヒト胚生命萌芽として法的に保護することとした背景として、科学技術庁が行ったアンケート調査もとに、いつの時点から人として絶対に侵してはならない存在考えるかということについて、受精の瞬間からと考える人が三割であり、最も高い割合であることから、国民的な合意があるとおっしゃっておられたわけであります。私も、その後、そのアンケート調査の結果を見てみました。  きょう、ここにそのパネルを持ってまいりました。このアンケート調査では、いつの時点から人として絶対に侵してはならない存在考えるかということについて、受精の瞬間からが三〇・一%、民主党さんの御答弁のあったとおりでございます。そして、人間の形がつくられ始める時点受精後十四日というのが一六・九%です。そして、母体外に出しても生存可能な時点、妊娠二十二週以降というのが一五・一%、出産の瞬間からというのが七・六%であります。また、わからないという方が二九・四%であるわけでございます。  民主党さんは、受精の瞬間からというのが三〇・一で一番多いから、こういうお答えをいただいたわけでありますけれども、逆に言うと、受精の瞬間からではないというところが四割、そして、わからないという方も加えますと七割が、受精の瞬間からではないというふうにも見てとれるわけでございます。国民の大多数が受精の瞬間から人であるとしているのであれば、ヒト胚生命萌芽として保護することについては国民の間でコンセンサスがあるとは思いますけれども、この結果を見る限り、まだその段階には至っていないのじゃないかと思うんです。  提案者にお伺いをしたいんでありますけれどもヒト胚保護については、法律規制を行い得るほどに国民の間でコンセンサスができているとお考えになっておられるのか、改めてお聞きをしたいと思います。
  12. 山谷えり子

    山谷議員 ビジュアルな表を作成され、わかりやすくて、本当に御苦労さまでございました。  確かに、今御指摘のように、科学技術会議生命倫理委員会ヒト胚研究小委員会報告書のことでございますけれども、やはりヒト胚も、人の生命萌芽として、明確な基準を持たないまま研究材料に使われては、人の生命尊厳を損ない、人の物化、軽視につながると私ども考えております。私たちは、ヒト胚を人の生命萌芽であるととらえまして、そのために、その生命萌芽であるヒト胚を人為的に作成したり利用することは、人の尊厳の保持並びに人の生命及び身体の安全の確保に重大な影響を及ぼすおそれがあると判断するものでございます。  その根拠として、先ほどの表があったわけでございますけれども、いつの時点から人として絶対に侵してはならない存在考えるかという質問に対して、受精の瞬間からと回答したものが最も多くて三割を占めている。そして、わからない。このわからないをどうとらえていいかというのは、本当に、このようないろいろな問題が起きてきて、また人々の考えというのが深まっているというふうに思うんですけれども、やはり、わからないという方も三割いらっしゃるということでございまして、そのようなことから、ヒト胚保護というのは必要だというふうに考えております。  また、ヒト受精卵研究利用の是非についても、四割が厳しい条件もとでならばよい、二割が研究利用は認められないというふうにしております。  このように、我が国の国民は、受精に始まるヒト発生初期段階を、絶対侵してはならない人の尊厳の源として考え受精卵研究利用全般に厳しい条件をつけることを望んでいるというふうに考えております。  同時に行われました国内有識者意見調査でも、ヒト胚に対する国の認識を確立する必要がある、ヒト胚全体の研究利用についても規制議論の必要があるという意見が出されております。  また、日本弁護士連合会も、本年四月、クローン技術等に関する規制生殖医療技術及び人間受精研究規制と整合させる必要があるとの談話を発表しております。これは、クローン技術だけでなく、生殖医療も含めたヒト胚全体の取り扱いについて、法律で位置づける必要があると述べていると考えております。  こうした世論調査などの結果も踏まえるならば、ヒト胚を、生命そのものではないけれども生命になり得る可能性を有したもの、すなわち生命萌芽と位置づけ、それにふさわしい取り扱いをするための法規制の必要があると考えます。  厚生省での生殖医療技術規制検討も、同じ民意の背景もとで行われていると考えております。
  13. 木村隆秀

    木村(隆)委員 では、政府は、民主党ヒト胚保護に対する今お答えをいただいた見解に対してどのようにお考えになるか、お聞きをしたいと思います。
  14. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 政府案では、ヒト受精胚というふうに定義をされておるわけでありますが、この取り扱いというものを大切にしなければいけないというのは、国民が共有する共通思いであろうというふうに認識をいたしております。  しかし、現在のさまざまな状況考えた場合に、例えば、ヒト受精胚が成長をして、より人間の形に近づいている胎児の保護というふうな問題、また、女性の生殖に関する権利、リプロダクティブライツというんですか、こういった問題も、総合的に入れた上で検討をする必要があるのではないか。  そういった意味で、民主党からは、コンセンサスが得られないがゆえに法律で厳しく禁止する、こういう考え方が示されておるわけでありますけれども事生命倫理という問題でございますから、そういうことを考えた場合に、やはり国民各界各層、そういった議論が積み重ねられて、十分に議論がし尽くされるということが大切であろうというふうに考えておるわけでございます。  長年積み重ねられてきた歴史的な背景なり、また社会現状、宗教的なさまざまな問題、生命倫理の問題というのは、やはりそういった国民一人一人の生命観なり価値観なりに大変密接に関係をした重要な問題でございます。そのことを考えた場合に、残念ながら、まだまだ議論が収束しているというふうには考えられないわけでございまして、いわゆる委員会での報告も、そういう方向でまとめられているというふうに承知もいたしております。  そういった観点に立って、今後検討していく課題であるという認識は持っておるわけでありますけれども、現時点では、国民的なコンセンサスが十分得られている現在の法律の枠組みの中で、今回の法規制考えているというのが政府の立場、考え方でございます。  また、民主党さんの案、別にこれに反論するということではありませんけれどもヒト胚保護をうたってはおられます。しかしながら、やはり現状というものを考えられて、そして、生殖補助医療を除くということで、そういった意味からすれば、ある部分がかなり実は抜け落ちているといいますか、外されているわけですね。  このことは、先日も大臣が、当初よりは随分近づいてきたのかなという答弁をされておったわけでありますけれども、そういった意味で、考えてみれば同じような問題意識というのは、民主党さんもやはりお持ちなんじゃないか。  そんなことも考えますと、法規制をするのに足り得る議論というのが収束しているのかどうか。ここは見解の分かれるところでありますが、私どもは、まだそこまで行っていない、そういうふうに考えているというのが現在の政府見解でございます。
  15. 木村隆秀

    木村(隆)委員 三年前にドリーが生まれて、逆に言うと、三年で大変な動きに今なっているわけであります。いろいろな科学技術の進歩というのは目覚ましいわけでございまして、どうぞ政府におかれましても、この問題、この法律がもしできたといたしましても、引き続いて議論を深めていただくようにお願いをしておきたいと思います。  一昨日の審議において、民主党側提案者の方は、届け出指針との組み合わせとなっている政府案は、行政の裁量にゆだねるところが余りにも多過ぎるんじゃないかという指摘をなさっておられたわけであります。  民主党案においても、許可基準の大部分指針にゆだねる構造になっている、こう思いますけれども民主党案は、具体的な許可要件をほとんど指針にゆだねているわけであります。これは、法律で明確な許可要件を定めることが通例となっている許可制における規制としては異例ではないのかなと思います。本来、指針に大幅に規制の内容をゆだねるのであれば、政府のように届け出制とすべきではないか、許可制にはなじまないんじゃないかなと思うんですけれども提案者の御意見をお伺いしたいと思います。
  16. 樽床伸二

    樽床議員 少しおかしいんではないかというお話でありましたけれども、私どもは、許可要件が明確でない、こういうことについては、そうでないと考えております。  なぜならば、例えば私どもで言う余剰胚利用とかヒト胚、人の属性を有する胚の作成等々につきましては、一に、ES細胞研究である。二に、余剰胚利用することについて、また人の属性を有する胚の作成等々について科学的必要性合理性があること、これが二番目。三番目として指針に適合していること、この三つを申し上げているわけであります。特に、今申し上げました一、二、三のうちの一、二に対するウエートが非常に高い、こういうことであって、三の、指針に適合しているということのウエートが高いという判断をいたしておりません。  さらに申し上げるならば、少し挑発的な発言をするかもわかりませんけれども、先ほど、我々のものが許可制としては非常に異例である、こういうお話でありましたが、実はせんだっての大臣の御答弁の中で、届け出制であるということにおける政府案の中に、逆に私は、非常に異例なことがあるのではないかというふうに感じた次第であります。  大臣は、せんだっての答弁の中で、届け出制であるという中で、六十日間ではっきりわからないものは、許可しないという表現を使われたのか届け出を取り消すとおっしゃったのかわかりませんけれども、ちょっと記憶がありませんが、これも実は届け出制であって、六十日で判断できないものはだめなんだ、そこでやめるんだ、こうおっしゃった。これは、届け出制というこれまでのあり方の中で、極めて異例なことであります。実は、非常に許可制に近い考え方届け出制という表現の中で、実態は許可制ではないのかと思うような答弁大臣はされているわけでありました。  私ども委員の方から、六十日を超えた場合はどうかとか、いろいろ多くの質問をさせていただいたときに、物理的に審査ができないとかいうことがあってはならぬことだということまで大臣はおっしゃった。つまり、どんな状況であっても六十日以内でわからないものはだめなんだ、こうおっしゃった。  こういうことを考えると、私どもに対して異例許可制ではないのかとおっしゃっておられますが、実質的に、政府届け出制が実は許可制に非常に近いものであるというふうに私ども認識をしているということであって、今委員がおっしゃった御指摘は、当たらないのではないかという結論に達しております。
  17. 木村隆秀

    木村(隆)委員 政府は、今のことに対して一言ありますか。
  18. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 大臣お話が出ました。後で、多分いろいろな質疑の中でその点はクリアになっていくんだろうと思いますが、異例許可制ということを今実は木村先生がおっしゃったわけでありますが、運用の問題で許可届け出というのは、一般的には、許可制というのは、法律の中で割と要件がはっきりしている場合に許可制という制度をとっているようでございます。  届け出制というのは、むしろその部分が、法律の精神に基づいて、法律の趣旨に基づいて後でつくられるガイドラインによる、そういった意味での大きな違いがあるんであろうな、そんなふうに理解をいたしておるわけでございます。期日等の問題については、先生との間の話ではありませんので今は申し上げませんが、そういったことであろうというふうに思っております。
  19. 木村隆秀

    木村(隆)委員 今の政務次官お話伺いますと、許可制届け出制、一番大きく違うのは、大体今まで、許可制の場合にはその中へきちっとうたわれていた、届け出制の場合は、指針である程度カバーをするようなところがあったのだというふうに私は理解をしたわけでありますけれども、では、今回の民主党さんは、指針の中で具体的にどんなふうに書いていこうとしておられるのか。ちょっとその辺、お伺いをしたいと思います。
  20. 樽床伸二

    樽床議員 先ほど申し上げましたように、私どもは、ES細胞研究に関するという一つの条件をクリアして、そして余剰胚利用する、また、ヒト胚利用することについて科学的必要性合理性があること、これが二つ目条件としてあって、それを乗り越えて初めて指針、こういうことになるわけでありまして、ですから、私どもはこの二つで十分に縛っているという認識をしております。  だったら指針とは何なんだということでありますが、指針とは、私ども考えておりますのは、提供者の同意を得なければならないというようなこと、また当該研究に関して十分な研究実績があるというようなことを想定いたしております。また、配慮すべき手続その他ということにおきまして、科学的妥当性安全性及び倫理的妥当性について幅広い観点から検討がなされるように努めなければならない、また研究に関する情報の、適切かつ正確な情報公開に努めねばならない。つまり、手続的なそういうことを指針で我々はちゃんと縛っていこうと。そして、本来の許可制の根源、理由であるところのものは、指針でなくて、ES細胞研究とかそういうこと、先ほど一、二、三と三つ挙げましたが、その一、二で十分に縛っているという認識を持っているということを申し上げたいと思います。
  21. 木村隆秀

    木村(隆)委員 もう少しあれしたかったのですが、時間がもう五分だと来てしまいました。  パブリックコメントとの関係で、民主党さんの案に、生殖補助医学研究パブリックコメントのときにはうたっていたのが、今回の法案では外れているので、そこをちょっとお聞きしたかったのでありますが、時間がないのでカットさせていただきます。  最後になりますけれどもクローン人間をつくらないということは最低限の倫理だと思いますし、研究者技術者が、その技術を使用する者の責任の自覚でもって、高い倫理観を持っていた時代には、私は、法律による規制というものを行う必要はなかったのだろうと思います。ただ、このごろのいろいろな、宇宙開発にしましても、原子力のことにしましても、そういう倫理観なり、企業に対します思いとか、そういうものがだんだん薄れてきて、今までの当たり前というものがなくなりつつある時代に今なってきているのではないかなと大変思っているんです。  そこで、今回、十年の懲役という刑罰を含んだこの法案をつくったわけでありますけれども、でも、もし万が一、それを犯してクローン人間をつくってしまう人があらわれるかもしれないということを考えますときに、どこかでそれらのことをしっかりと監視していくということが必要になってくるのではないかなと思うんです。例えば、学界や研究者技術者の集団の中で、お互いにチェックをして情報を収集し合うとか、いろいろな考え方があるのだろうと思いますけれども、それに対して、これから政府としてどのように臨んでいただけるかな。お伺いをしたいと思います。
  22. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 大変いい御指摘をいただいたというふうに思っております。  実は、個人名を挙げて恐縮でございますが、おとついですか、津川議員から、本来の科学技術研究開発は、真理の究明ということを考えれば基本的には自由であってという、大変すばらしい御意見が出されたと私は承知をいたしております。  そういう中で、真理の探求というのは、下手をすると、倫理というのは大変これは哲学上の問題でもありますから、どこまでが倫理上許されるのかというのは非常に幅があるとは思うのですけれども、思わぬところで思わぬところへ行ってしまうということが起こり得る可能性を持った問題であろうと思います。  しかし、これがやはり倫理的にも今コンセンサスが得られている上で、人の尊厳なり、社会の大変大きな混乱を巻き起こすということを考えて今回の法案が提案をされていることを考えれば、これをどうやって担保していくか。クローン人間が生まれないように、やはりこの社会をどうやって構成していくかということは、法律をつくるだけでは不十分であります。  委員がおっしゃるように、研究者みずからが倫理性を高める努力をするような研究体制、こういったものも、これは研究者みずからが議論をしていただく場でも考えていただきたいというふうに思いますし、政府としましては、一つの場は、これは一月からは総合科学技術会議というところに移ると思いますが、そういったところで、研究者の皆さん、そしていろいろな分野の皆さんが知恵を出していただいて、いろいろな議論をしていただけるように、またそういうふうにお願いをしていきたいと考えておるところでございます。  その中で、今委員がおっしゃいましたような体制の問題なり、具体的なチェックの問題なり、今予見的にどうなるかということは申し上げられませんが、そのような努力を今後してまいりたい、そのように考えておるところでございます。
  23. 木村隆秀

    木村(隆)委員 一番最初に申し上げたように、政府も、民主党さんの案も、クローン人間を絶対つくり出さないのだという思いは一緒だと思いますので、ぜひこれからその方向へ向かってさらなる議論を深めていただくようにお願いをして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  24. 古賀一成

  25. 樽床伸二

    樽床委員 行ったり来たり、忙しくて申しわけございません。  それでは、そちら側に座っておりますとなかなか質問できませんで、政府案に対して質問させていただきたいと思います。  まず、政府案は、特定胚というものに関して九種類に分類をされております。なぜこの九種類に分類をしなければならないのか。なぜ、何とか胚、何とか胚と、全部読み上げればいいのですけれども、舌をかむような九つの胚に特定胚を分類したのか。一々この胚はこういうものなんですという御説明は、私は科学者でありませんから必要ないのですけれども、分類をするというその動機といいますか根拠、そこを、ぜひともまずお聞かせいただきたいと思います。
  26. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 基本的な考え方として、生命倫理委員会においては、現在想定される技術、そういったものを基本的に想定をして、そして、胚を作成して個体産生した場合に、人の尊厳、生まれてくる個体の安全、社会秩序、ずっと出ている議論ですね、安全性の問題等もありますが、どのような影響を生じるかという形で議論をした。そのときの前提となる想定というものがあって、可能性といいますか、それでこの分類をされたというふうに承知をいたしておるところでございます。  なお、余談でございますけれども、法作成上、生命倫理委員会段階から一種類、これは何になるのですかね、動物性融合胚、樽床議員と同じでございまして、いまだに表を見ないと言葉はなかなか確定できないわけでありますが、これにつきましては、委員会段階では当面余り想定されない、ここまで考える必要ないじゃないかというふうな御意見もあったようでございますけれども、抜け落ちがないように、法技術上の問題も含めて、最終的に追加をされてこの九種類になったというふうに承知をいたしております。
  27. 樽床伸二

    樽床委員 考えられる範囲ということで、科学的にはいろいろわかるんですけれども、そこで一つお聞かせをいただきたいのですが、先日の政府の御意見の中で、最も大きな論点というのは、無性生殖か有性生殖か、ここのことにつきまして政府は非常にこだわっておられる。これが最も大きな壁なんだと。乗り越えるか、乗り越えられないかの最大の壁は、有性生殖無性生殖かということだ、このように繰り返しおっしゃっておられるわけであります。  そうすると、私はちょっとお聞きしたいのですが、この九種類の特定胚、例えばこれを、これは有性生殖です、これは無性生殖ですというふうに分けたとすると、それぞれ九つはどちらに入るのですか、それをちょっとお聞かせいただきたいと思います。どれは有性で、どれは無性だと。
  28. 結城章夫

    結城政府参考人 それでは、九種類の胚それぞれについて申し上げます。  まず、人クローン胚、これは無性生殖でございます。  それから、人間の亜種になる胚として三つございまして、人間なんですけれども動物の要素を持っている人間ができるということでございますが、これは有性生殖とか無性生殖をもう超えた問題でございまして、人間と動物の交雑の問題というふうに私どもはとらえております。  具体的には、ヒト動物交雑胚……(樽床委員「これはこれと言っていただければいいです」と呼ぶ)はい。ヒト動物交雑胚、これは有性生殖無性生殖の問題を超えた問題になっております。(樽床委員「有性か無性か」と呼ぶ)あえて言えば、ヒトと動物の有性生殖。そういう有性生殖というのはあるかどうかわかりませんが、あえて言えば、ヒトと動物の有性生殖ヒト動物交雑胚でございます。  次に、ヒト性集合胚。これは基本的には有性生殖でございます。ヒトの胚に動物の細胞をまぜるものでございますが、基本的には有性生殖です。  それから、ヒト性融合胚。これは両方あり得ます。有性の場合と無性の場合。これも動物と人間のことですから、有性とか無性とかいうのもほとんど意味がないと思うのですけれども人間の核を動物の卵に入れるわけですが、人間の核が有性の場合と無性の場合と両方あり得ます。  次に、ヒト胚分割胚。これは、有性生殖の胚を材料にしてつくる特定胚でございます。有性生殖の胚を材料にするということでございます。  ヒト胚核移植胚。これも同じでございまして、有性生殖の胚を材料といたします。  ヒト集合胚。これは、基本的には有性生殖の胚を主な材料といたしております。  次に、動物性集合胚。これも、できるのは動物でございますから、有性生殖の動物の核が主な材料になって、それに人間の細胞がまじるというものでございます。  動物性融合胚。これも動物の方になりますけれども、有性の場合と無性の場合と両方ございます。  以上でございます。
  29. 樽床伸二

    樽床委員 こういう技術的なことは、また後でペーパーでいただくのが一番わかりやすいとは思うのですが、今そこでお聞きをいたしておりまして、私は、私の中では論理的に政府見解に若干の矛盾を感じる点が一点あります。  それは、有性生殖であるとおっしゃったヒト性集合胚。要するに、ヒト胚に動物の体細胞を入れて、人間の体の中に動物の臓器や組織を持ったものができる可能性があると言われているもの。政府案で言うヒト性集合胚というのは、今、有性生殖だとおっしゃったわけであります。このヒト性集合胚は、政府案では、これはたしか法律の中で明確に禁止をしている四つの中の一つがこのヒト性集合胚というものであります。これは有性生殖だと政府はおっしゃった。  でも、これまでの答弁の中で、政府は、無性か有性かというのが一番大きな壁なんだ、こういうふうにおっしゃっておられる。有性生殖はいいんだ、無性生殖は絶対だめだ、これが政府の統一した根底にある話でありました。そうすると、ここで論理が崩壊をしているわけであります。無性はだめ、有性はいいと言って、その有性の一部はだめだ、こういうふうにおっしゃっている。そうすると、ちょっと論理的に矛盾を来すのではないでしょうか。いかがでしょうか。
  30. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 どうも表現の問題等で一部誤解があったように私は思っております。といいますのは、今、樽床議員が御指摘になったのは、もしそういう言い方におとりになったら、まさに矛盾しております。  一点補足をさせていただきますが、有性、無性というのは、実は、かなり単純には決まらないわけです。これは少し整理をさせていただいて、要は、もともとが有性生殖のものであっても、そこからある種の操作をするという行為、これも有性に含めるかどうかというのは、それで先ほど来局長から、あえて少しあいまいな答弁をさせていただきました。  ただ、有性、無性が問題になるというのは、実は、よく言われているヒトクローンのことについてでありまして、この法全体の話について有性、無性だけで問題を判断して、その四つを禁止したということではないということを、改めて説明をさせていただきたい。要は、あそこで確かに少し強調された嫌いがありましたけれども、あくまでヒトクローン、先ほど来いろいろとお話しになっております九種類の中のいわゆる核移植クローンです。それから分割胚、それから集合胚、このものについて、ヒト胚核移植胚ヒト胚分割胚、これは指針規制しております。要は、人間のコピーですね。  ただし、これは先日も説明が行われましたけれども個体産生禁止しております人クローン胚、いわゆるクローン、これは、現在存在する人間と同じ遺伝子構造を持つ別の存在が生まれる、要は私と同じコピーが生まれてくるということですから。それで、こちらの下の方は、分割はよく御承知だと思いますが、受精胚を分割することによって、人為的に双子なり、幾つまで分けられるかちょっと私は細かいことはわかりませんけれども、双子ができるとか、そういった技術ですから、おのずと違うだろう。しかも、いろいろな意味での社会的な有用性等も考慮して、反社会性という意味からして、そこで線を引いた。そのときに有性か無性かということが非常に大きな判断になった、こういうふうに御理解をいただきたい。  この三つの胚を上と下に分けるのに、このことが非常に大きく影響したということを御理解いただきたいというふうに思います。
  31. 樽床伸二

    樽床委員 最後におっしゃった、ちょっと表現は単語を一々申し上げませんが、人為的な双子を生む胚の問題等々につきましては、また委員会の中で議論が深まっていくであろうと思っておりますから、今は省略をさせていただきます。  今政務次官がおっしゃったことについて、私はさほど異論があるわけではないのです。私も、細かい論理的な話の中でこういう問題をばさっと割っていいのかどうかということについては、甚だ疑問を感じておりますから、あえて問題提起として申し上げた。  それはなぜかというと、政務次官の発言の中でも私は若干かいま見られたといいますか、言外の意味みたいなもので感じたわけでありますが、要は、有性、無性という線引きは、法律案全体の一部分をあえて分けるために使っているんですよ、こういう話でありますね。(渡海政務次官「一つの要素」と呼ぶ)一つの要素ということは、ほかの要素もあるという話にもなるわけであって、ですから私は、このクローン規制の中で有性か無性かということが、これまでの、先々日の委員会の中ではいろいろ議論を六時間にわたってやりましたけれども、基本的に有性か無性かというこの壁が、この間の議論の中の一番大きなテーマであった。でも、有性か無性かという壁は、クローンというものについては実は大した壁ではないのではないかということを私は申し上げたいわけであります。  今政務次官お話の中でも、私は若干そのようなニュアンスを感じ取ったわけでありますけれども政務次官、いかがでございましょうか。
  32. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 いわゆるある部分に限定をして、そしてそこの分かれ目というのに、非常に大きなそこの判断が入ったというふうにお考えをいただきたいということであります。  あくまで法の規制の範囲というのは、何回もこれは繰り返されたことでありますけれども、大変難しい哲学的な、人間尊厳樽床議員質問に対してお答えになっていたようでありますけれども、そういったこと。そして、安全性の問題、反社会性の問題、要するに社会的にこのことが一体どういうことを生み出すか、そういった背景で、やはりこれだけはいけないということで議論の末コンセンサスが得られた。反社会性の問題というものを非常に大きく取り上げて、全体の線引きはした。  そして、その中でも、やはり同じような、まあクローンと呼ぶかどうか、クローンの定義という話もありましたが、どうも厳格にずっと入っていくと、この中で使われているクローンという言葉と一般的な定義と、大変やはり言葉が乱れているようでございます。北川議員が前に御指摘されたことなのでありますが。  今非常に大きく問題になっているクローン人間というのは、現に存在をしている人間のコピーをそのままつくり出すということで、このことが非常に反社会的であり、人間尊厳、要するに生命倫理の問題で非常に大きく取り扱われているわけでありまして、そういった一般的な意味で申し上げているというふうに考えさせていただきますと、少し手法は違う。しかも、私そのものができるということと、例えば親がいて、いわゆる受精卵ができる、そしてそういうところから双子ができる、三つ子ができるということには多少差はあるわけでありますけれども、やはりそこの部分は、自然の摂理に非常に近いもので、これは個人的な私見でございますが、できるものとあれとは反社会性という意味では非常に違うだろう。  もう一点、これも余談でつけ加えさせていただきますと、やはり議論の中を見ていますと、では現実に自然に生まれた一卵性双生児とか、これは自然の摂理なんですね。彼らのことをどう考えるのかというようなことまで考えると、今一概にこのことをすぐだめというふうにするにはまだ議論が尽くされていないというような意見もあったやに聞いておるわけでございまして、そういうことを御理解いただきたいというふうに思います。
  33. 樽床伸二

    樽床委員 今政務次官から、クローンという表現にいろいろみんな思うことが違う、こういうお話がありました。  その発言に対して、私はまさに同意をするわけでありまして、この問題をこの国会の中で担当するに当たりまして、一番最初この法案を読んだときに、これはまことに申しわけないですけれども、さっぱり意味がわからなかった。一生懸命勉強をした。ちょっとはわかり始めると、なるほど、何となく大体わかったかな、こういうふうに思った。それでさらに、よしもっと勉強しようとそこからさらに勉強すると、今度はまたわからなくなる、こういう大変ややこしい内容であろう。  それは、今政務次官がおっしゃったように、クローンという言葉で我々はすべてを代表させようとしておりますが、果たしてそれを一概にクローンという言葉だけで全部言ってしまっていいのかどうかというところまで、何かだんだん我々は考えなければいけないような状況になってきているのではないかというように、私はこの質疑の過程でもどんどん感じていっているわけであります。  そうすると、これ以上政府から答弁を求める必要はないのかもわかりませんが、私はもう一回確認させていただきたいんです。反社会的というものの線引きをどこでするのか。反社会的と言葉で言うのは簡単だが、その線引きというのは非常に難しい。それを政府は、これまでの中では、有性か無性かという線で、これが反社会的かどうかということにかえますよ、このような言い方をされてきたようにずっと私は受け取ってきたわけでありますが、今の政務次官お話は、いや、そうではないんだ、反社会的という線引きというものが一番大きいわけであって、無性か有性かというのはそれよりは少し順位が劣る壁だ、一部のものを分ける壁だ、こういうふうなことで整理をされたというふうに私は認識してよろしいのでございましょうか。
  34. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 だから、法律の線引きとして、いわゆる法規制それから指針にゆだねるものというところの境目の判断は、それでやらせていただいている。その中に、クローンというのが正しいのかどうか、先ほどから非常に細かい話になっておりますが、例えば双子ができた場合に、同じ遺伝子構造を持っているわけですから、クローンの定義からすると、このクローンはこの子だということはできるわけですね。しかし、これはいわゆる体細胞クローンとはまた意味が全然違う。ここでは、やはり有性、無性という意味が非常に大きくなってきて、そのことによって反社会性という意味も違う、こういう整理をしていただかないといけない。  だから、従来の言っていたことがうまく伝わっていなかったという意味では、樽床委員がおっしゃるように、今そういう理解をしていただいて結構だと私は思いますが、従来からも、私は全部検証しました、正直言いまして、大臣答弁も。どういいますか、やはりここの部分を、ヒトクローンの話でしたから確かに非常に強調しておられた部分もありますけれども、我々は、ヒトクローンというのはこの分け方の表でも、ここでは人クローン胚と使っていますが、だからこれが無性生殖なんだということで、非常にこちらの部分とは違うんだという意味で申し上げたわけでありまして、ぜひその点を御理解いただきたいというふうに思っております。
  35. 樽床伸二

    樽床委員 この法案の性質上、政府案衆法と出ておるわけであって、実はそこが最も大きな、有性か無性かということではなくて反社会的という線引きをどこでするのかというところが、踏み込んだところまでいっているのか、踏み込まない、まだちょっと議論があるところはここら辺にしておきましょうということの違いということであろうというふうに、私は今のお話を聞かせていただいても感じたわけでありまして、私どもは、有性か無性かということに、これが最大のハードル、物事を決める壁ではない、こういうことで今御理解をさせていただいたところであります。  要は、クローン技術という技術をどうするんだという観点からもっと考えていきたいというふうに改めて思ったところでありまして、この話を議論いたしますと何時間時間が必要になるのかわかりませんので、このあたりで非常に気になる問題についてもう一点、全く別の話でありますが、質問させていただきたいと思います。  それは、せんだっての質疑の中でも出てまいりましたけれども、今外国で規制のない国がある、例えばアメリカであります。そこでいろいろな団体がクローン個体をつくるという動きが、非常にある意味では加速をしている。インターネットの中にもホームページとして出てくるような状況がある。これに対して、日本人が外国へ行ってそれをもし行った場合には、政府案としては罰則等々はどうなるんですか。前回質問が出たと思いますが、もう一回確認したいと思います。
  36. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 前回も出ましたが、我が国の刑罰の適用に当たって、領域外の行為については、法体系としては幾つかの例はありますが、特別な場合を除いては刑罰法規の適用がないのが原則でございます。したがって、これはこの場合の特別の場合という方を今つくっておりませんので、先生指摘の事例を政府案の第三条の違反で処罰するというのは海外ではできません。  政府としては、この法律をまず成立させていただいて、そして我が国の個体産生というものに対する姿勢をまず明確にし、国際的な世論というのは、大臣が随分お答えになっておりましたから繰り返しませんが、各国がそれぞれの社会背景なり歴史なり、また宗教観がありますから、簡単にはまとまらないだろう。そういう前提で、まず我が国としては我が国の姿勢を示す、そんなことによって世界に対して発信をしていきたいというのが現在の政府考え方でございます。
  37. 樽床伸二

    樽床委員 ですから、非常に言葉が過激になるかもわかりませんが、そういう観点でいくと、国境を出ていくとまさにざる法になってしまう、こういうことになるわけですよね。  そうすると、我が国としましては、これだけ大きな問題について国会でこういう議論をして、少なくとも政府案衆法も、クローン個体をつくるということは絶対ならぬ、これはまさに人間尊厳にかかわるんだということでは、ここの部分では一致しているわけであります。そうであるならば、少なくとも我々の思いとしては、クローン個体をつくったらこれは人類の、これは大変なことになるんだという動きを、世界の中でリードをしてそういう流れをつくっていく、そういう決意が我が国の政府にあるやなしや、いかがでしょうか。
  38. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 もちろんございます。日本は、みずからがある意味でまだ議論が非常に足りない中で、限定的な法律というのを今回つくったわけですね。それは、やはりこの問題についての認識といいますか、重要さというものを十分認識しておるわけでございまして、本法案を成立させていただいて、そういったことを、要は、内をつくっていても外でということがないような働きかけというのをやっていきたい。リードできるかどうかはその後の我が国の態度だと思いますけれども、そのように考えておるところであります。
  39. 樽床伸二

    樽床委員 ちょっと通告をしていない話で、今のお話からどうしてもさらに突っ込みたい話がありまして、それは、先ほどの木村委員質問にもありましたが、ドリーが生まれてから三年だ、こう先ほどおっしゃった。  三年の間にこれだけ大騒ぎになって、我々はいろいろなことを考えなきゃいかぬ、政府も手をつくっていかなきゃならぬ。こういう技術は恐らく加速度的に進行していくであろうということが予測をされる。そうすると、ドリーが生まれてから三年、これから政府は五年間かけてその他のことをまたいろいろ検討しましょう、このように法文の中におっしゃっている。ドリーが生まれて三年、これからまた今度はそれ以上長い五年先までという姿勢が、世界に対して日本はリードしていきますということにつながるのでしょうか。
  40. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 見直し期間の問題につきましては、一昨日も実は御質問のあったところでございます。私は、五年以内であっても、当然社会状況変化に応じて見直すべきところは見直していく。これはこういった問題に限らず、すべてそういった責任は政府にもありますし、議会にもあるというふうに認識をいたしております。  政府法案でございますが、先日は後ろからペーパーが大臣から飛んでまいりましたが、五年以内にと書いておりますので、当然政府としても、全体の議論状況、そして議論も早めていかなければいけないという認識を持っておりますし、そういった状況を踏まえて、適宜対処をしてまいりたいというふうに思っております。
  41. 樽床伸二

    樽床委員 今まさに政務次官がおっしゃいましたように、五年以内、こういうふうに書いてございます。五年以内というのは、一日でも五年以内でありますし、一年でも五年以内、三年でも五年以内、五年でも五年以内ということでありますから、今私が申し上げましたように、この技術の、予測される非常に速いスピードの進歩、そして当然社会の大きな流れの中で速い社会の変化、そして日本が、そういう問題で世界でちゃんと主導権をとってリードしていくんだ、人の尊厳を守っていく、その先頭に我が国は立つんだ、こういうことでいくと、この五年以内という以内に大変大きな思い政府としてはお持ちいただきたいということを、ぜひともこの委員会の場においてお願いを申し上げ、お訴えをさせていただくところであります。  さらに、私はせんだってのこの質疑の中でも何度か口にさせていただきましたが、最後に一点だけ、政府がどういう認識を持っておられるのかをお聞きしたいのです。  こういう技術的な話もさることながら、このクローン技術は、私は、我々人類の進化というものを早める可能性があるというふうに思っております。  進化論を肯定するのか否定するのか、これは人によっていろいろ意見が違いますが、私は進化論の立場に立つ者であって、我々の祖先は、それでいくと猿であります。猿から人が進化をしてきた。これは気が遠くなるような長い時間の中で、山に行った猿は猿になって、草原に出てきた猿は人になった、こういう話もあるわけであります。実はこういう話は私は大変好きでありますけれども、そういう長い地球の自然の中で我々は営々と進化をしてきた、人も自然の一部である、こういう観点から、私は、この進化というものに対して非常に関心を持ち、またこれは大事なものだと。そして、我々が自然に打ちかつということが本当にいいのかどうかという根源的な疑問も感じているわけでありますが、そういう私の考え方を整理するに当たって、政府はこのクローン技術がそういう人類の進化を早めると、私は早めると思いますが、それについてどういう御認識ですか。
  42. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 政府はと言われてもちょっと困る質問なんですが、進化というのを一体どういうふうに考えるかということが言われておるわけでありますが、進化の仕組みというのは、まだ依然解明をされていないと言われているのが一般的であります。通常言われているのは、遺伝子の突然変異と有性生殖による遺伝子の多様化及び環境要因による選択が進化のかぎとか、こういうことが言われておるわけであります。  今は、この技術によってということですから、一体何が起こるんだろうかということを考えたときに、やはり負の面といい面、両方あると思います。そのことをもって果たして進化と呼ぶのかどうか。例えば、さまざまな面で、医療分野なりで有用な効果があらわれたときに、それを進化と呼ぶのか。  例えば、今までいろいろな疾病を持っている方がいた、ところが地球上にはその疾病はなくなってしまったということになったときに、それが進化なのかどうか。樽床議員も言われたように、何億年もかかって多様化して、先ほど言ったような有性生殖と突然変異でなってきたわけでありますから、動物でなくて恐縮ですが、例えば遺伝子組み換えで大豆が三倍収穫された、これは進化なのか。  むしろ、多様化ということからすると、動物は均質化していくのじゃないか。ジュラシック・パークの作者のマイケル・クライトンがこの間来て、テレビで言っていました。これは私の勝手な意見ですが、均質化したときに、一瞬にして、何かの細菌にやられるような人間が、人類が滅びるのじゃないかということだって予想されるのですね。  そういうことを考えた場合に、私は、これは政府見解ではありません、政府はそのことについては見解を持っていないと思います、はっきり言いまして。でも、政府の一員として私が言わせていただければ、なかなかこの問題は、何をもって進化とするかということを、猿から人間になって、これは多分進化なんでしょう、だけれども非常に難しい問題だと思うのです。  いずれにしましても、医療に有用だとか、人間の命を救う、また苦しみを救うという意味ではプラスの面があるわけですから、頑張らなきゃいけないけれども、負の面というものが出てこないように、このことをしっかりと考えながら、今後我々はこういった政策を進めていくことが大事ではないかな。答えになっておりませんが、そんなふうに考えておることをお答えとさせていただきたいと思います。
  43. 樽床伸二

    樽床委員 まだまだたくさん聞きたいのですが、時間となりましたので、またこの委員会質疑の中で議論を深めていきたいな、このように思っております。ありがとうございました。
  44. 古賀一成

    古賀委員長 平野博文君。
  45. 平野博文

    ○平野委員 民主党の平野博文でございます。  与えられました時間の中で質問をさせていただきたいと思うのでありますが、この前の審議、さらにはきょうの仲間の議員質疑政府の御答弁を聞いておりまして、やはりこの問題というのは非常に難しい問題であるということを本当に感じておるところであります。私も、今委員としてこの審議に当たるについて、毎日のように悩んでいるわけであります。  そういう中で、先ほど樽床議員が非常に含蓄のある指摘をしておったように私は思えてなりません。私もその関連の質問をしようと思っておったのですが、多少重複するところがございますが、今回の審議の中で、政府が御答弁されている中で少し理解できない部分を、改めて確認ということも含めて質問したいと思うのであります。  まずは、法案の理念、我が党から出しております衆法における生命萌芽である、こういう視点、さらには指針の問題を含めて、時間の許す限り質問してまいりたいと思うのであります。  まず初めに、改めて、クローン人間をなぜ規制すべきなのか。これはもう再三御答弁をいただいております。これは政府民主党、両方に確認をさせていただきたいと思うのであります。  まず、先日の審議におきまして、これは樽床議員指摘にも多少かかわるわけでありますが、クローン無性生殖であって、自然の摂理に反し、人間尊厳社会的秩序の維持に重大な影響を及ぼすからであると答えをされていたと思いますし、たびたびそういう御答弁があったと思います。ただ、きょう樽床議員が、無性生殖という分け方が本当に好ましいのか好ましくないのか、そういう分け方ではないのではないか、こういうことを御指摘されておりました。改めまして政府に、クローン無性生殖であって、自然の摂理に反し、人間尊厳社会的秩序の維持に重大な影響を及ぼすからであるというこのことに対して、補足がございますか。なければ、そのとおりだということで結構でございます。御答弁を簡潔に。
  46. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 要は、今の文章は平野先生もお読みのように、無性生殖というのは、無性生殖であるからだめなのだというふうに、短絡的にそれだけでは考えておりません。やはりその後ろの部分が非常に重要であります。しかし、無性生殖というものも、先ほど来、樽床議員が細かく指示をされましたように、考えていく上での一つのかなり重要な要素であることは申し上げたいというふうに思っております。
  47. 平野博文

    ○平野委員 民主党はどうですか。今の視点について、政府答弁と同じでいいですか。なぜクローン人間規制するか。
  48. 近藤昭一

    近藤(昭)議員 この委員会で何回も御答弁させていただいておりますが、なぜクローン人間規制すべきかについて簡単に申し上げますと、特定の目的のために特定の形質を持った人間を意図的につくり出そうとする育種、こういった人間を育てていくのだということ。あるいは、人間特定の目的につくっていくという手段、道具化につながる。また、個人の尊厳、尊重という憲法上の理念に反し、人間尊厳を侵害するということ。そしてまた、安全性のことを私ども申し上げております。クローン個体が正常に発生し成長するか十分な知見がなく、動物での研究結果を見ても、安全が確保されているとは言えないということであります。  本当に、人間というものは、個の尊厳というものが確保され、尊重されるべきである。ところが、産む人間が意図を持って、その人間が生まれてくる前に意図を持っているということは、本当に問題だというふうに考えております。
  49. 平野博文

    ○平野委員 今、政府民主党、それぞれ改めてなぜ規制をするか、こういうところを聞かせていただきました。  そういう中で、私はまた悩むわけでありますが、改めて、無性生殖、有性生殖ということに対する定義、どういう定義で無性生殖なのか、どういう定義で有性生殖なのかということがあいまいになっているような気がしてならないわけであります。私がちょっと辞書を引いて調べてみたら、有性生殖とは、配偶子の合致したものから新個体が発生する生殖方法であります。無性生殖は、配偶子によらない生殖方法と記載されているわけであります。  そういう中で、人間生殖方法は有性生殖であり、確かに無性生殖というのは自然の摂理に反するというふうに私自身も理解をいたします。しかしながら、自然の摂理に反するということだけで、禁止をするという理由は不十分だと私は思います。また、人間尊厳に反するというだけでも、なぜ反するのかということが明確になっていません。したがって十分ではないと思うのであります。したがって、無性生殖であることが人間尊厳をなぜ侵害するかというところをもっと明確にしていく必要があるのだと思うのであります。  といいますのは、私がクローン禁止する理由を改めて伺っていますのは、我が国では大変重い懲役十年という強い規制をかけるに当たり、当然ながら、法的な確固たる裏づけがやはり必要だと思うのであります。今政府規制をするということに対するお答えの中に、確固たる法的な理由づけがあるのでしょうか。その点についてはどうでしょうか。
  50. 結城章夫

    結城政府参考人 科学技術会議生命倫理委員会議論を御紹介させていただきたいと思います。  人クローン個体産生、これは無性生殖によって既に存在する人間と同じ個体を新たにつくり出すということでございまして、それが何が問題かというところは二点指摘されております。  それは、人間の育種や人間道具化手段化につながる。またもう一つは、特定の人の遺伝子が複製される。この二点において個人の尊厳が侵害されるのだということ。さらにそれに加えまして、人の命の創造に関する基本認識から著しく逸脱することが人の尊厳を侵すというふうに指摘されておるところでございます。したがって、法律をもって禁止すべきという結論になっております。
  51. 平野博文

    ○平野委員 そうすると、民主党が申し上げている背景、理由とは、政府は同じ考え方に立っているというふうに理解してもよろしいのでしょうか。
  52. 結城章夫

    結城政府参考人 民主党考え方がきちっと私、把握できていないのですけれども科学技術会議生命倫理委員会では、今のような考え方ヒトクローンには問題がある、したがってそれは法律で禁ずべきということになっております。
  53. 平野博文

    ○平野委員 いや、今政府並びに我が党に、なぜ禁止するかということの背景を改めて聞いたわけでありますから、それをお聞きになって、私は基本的に変わっていないというふうに理解していますが、どうでしょうか。  政務次官、どうですか。
  54. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 先ほど来、人の尊厳なり、そして社会秩序なり、本来の社会の姿といいますか、そういったもので、非常に反社会性の強い、倫理に触れるような、そういった行為を規制しようということで、そういった背景といいますか認識というのは、民主党さんも政府も同じだ、私はそのように思っております。
  55. 平野博文

    ○平野委員 私は、今政務次官が言われたけれども、要は、無性生殖であるから、自然の摂理に反するから、人間尊厳社会的秩序の維持に影響を及ぼすから、こういうことだけ言われて法律規制するということにはならぬと思うのですね。やはり、憲法に触れてくるから法的に規制をするんだということをきちっと明確に、これは中身は書いてあるんだろうけれども政府から答弁される答えが、そこまでわかっているから言わないのかどうかわかりませんが、個の尊厳を侵されるのですよ。だから、憲法に触れるから法律規制をするんだ、こういうことで、きちっと同じ認識にまず立っていますな、ここを私はまず一番目に確認したかったわけでございます。
  56. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 こちらの理解がちょっと不十分でございました。平野議員のおっしゃっているとおりで結構でございます。
  57. 平野博文

    ○平野委員 そういうことで、なぜ禁止するかということの基本的考え方は同じということで御理解をいただいたと思います。  さて、その審議の中において、長官よりたびたび、ヒト胚規制をする、いわゆる有性生殖を一緒に規制することはできないという御答弁がございました。これも先ほど樽床議員がいみじくも指摘されたところ、これはどうなんだ、有性生殖なのか無性生殖なのかということを指摘されておりますが、まずそこで、確認のために質問します。  政府案には、ヒト胚分割胚ヒト胚核移植胚などの規制が含まれております。これは人為的な一卵性双生児にすぎず、明らかに有性生殖であります。法律による禁止指針による禁止など、規制の形態は異なるとはいえ、同じ法律の中に同居させている点においては、有性生殖と一緒に規制するという考え方についてはおかしいというのは、先ほど樽床議員指摘した矛盾点、矛盾点というか少し異なる答弁ではないか、これは私も同じように理解しているのです。  したがって、私は、ヒト動物交雑胚と定義されている胚、ヒトの配偶子と動物の配偶子を強制的に受精させてつくるものでありますが、これは、配偶子の受精によるための有性生殖なのか、それとも、ヒトとしては片方の性しか関与していないから無性というふうに定義するのか。厳密にこれは定義でき得るものなのかどうか。これはぜひ政府の方からお答えをいただきたいな、このように思います。
  58. 結城章夫

    結城政府参考人 政府案におきましては、大きく二つのことを防止しようとしております。  一つは、特定の人と同一の遺伝子構造を有する人をつくること、これはクローン規制でございます。これはいずれにしてもヒトの問題でございます。もう一つは、人と動物のいずれかが明らかでない個体ヒトと動物の交雑個体をつくること、これは人間と動物のまじり合いの問題になってまいります。この二つのものをぜひ防止したいということで考えておるわけでございます。  有性か無性かという議論は、前者の、クローンの方のヒトの中をどう線引きするかというときに考えたクライテリアでございまして、ヒトと動物が交わる場合は、これは有性とか無性とかいう問題を超えて、まさにそういう交雑の問題ということで、むしろそちらの反社会性でもってこれは禁止すべきという判断になっております。
  59. 平野博文

    ○平野委員 そこをもっと明確に言っていただいたらわかりやすいのですが、なぜか無性、有性とかそういう格好でしか議論されないところが非常にわかりにくいものだというふうに思います。  したがって、無性生殖と断定し得るクローンと、有性やヒト、動物の混合胚などどちらにもつかないような胚、クローン以外の胚とは、別々の法体系で禁止していくことの方が正しい議論ができるのじゃないでしょうか。いろいろ混雑して、いろいろな種類が中に入っている、こういうことで今まとめておるところに一つこんがらがる要因があるのかな、このように私自身は思います。  そういう中で、実は長官が無性生殖、有性生殖にこだわっておられたので、きょうはおられませんが、それは分類ではないというお答えだったらいいのですが、分類の仕方には、やはり私は何としても、有性、無性ということではこんがらがっていますから、同意はできません。しかし、問題のとらまえ方は、人間というところについては云々ということについては、共感でき得る部分があると私は思うのです。  したがって、有性生殖が自然であって無性生殖が自然の摂理に反する、ですからクローン規制するという議論自身は、大臣自身がクローンの問題をまさに人間生殖の問題として考えておられるから、そういうことになってくるのかな、このように思うわけであります。  あとの混在している、動物との混合胚とかいろいろなことになっていますが、これは別の法体系でやらないといけない。やはり人間としてどうなんだというところが、いろいろな議論の中での一番中心的な軸の議論になっていると思うのですね。だから、そこを改めてここに一緒にしているところが非常にわかりにくい。キメラであるとか何であるとか、七種類にも八種類にも分かれてしまっている。ここが非常にわかりにくい。すっと国民の皆さんが理解できにくい議論になっているのかな、このような気がいたしてなりません。  したがって、人間生殖補助はどのような範囲で許されるのか。生殖医療全体の中でクローン規制を位置づけていこうとしているのがやはり海外の大体の流れなんですね。民主党案でも、今回、生殖医療に具体的規制を現時点ではかけておりませんが、やはり生殖医療を通じた包括的な規制を我が党としてもしていかなければならない、こういう立場に立っているわけであります。  アプローチこそ違いますけれども生殖医療の中の問題として規制すべきという立場にも、ある意味では政府の方は御理解はいただけるのでしょうか。その点についてお伺いしたいと思います。
  60. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 我々も、その問題をないがしろにしているという意識はございません。委員も御承知のように、現在、厚生省の厚生科学審議会の議論もかなり煮詰まってきておるわけであります。  そして、基本的な生殖補助医療の問題というものが交通整理された段階で、いわゆる我々が今扱っている法律にかかわる問題、私ども法律では実はその範囲に入っていないわけであります。民主党さんの中では、余剰胚というものを法律の中に入れておられるわけですね。そこのところは正直ちょっと不明快な部分がありますが、これは私が皆さんに質問をするべきことではないと思います。そういった問題も含めて、まずいわゆる川上といいますか、生殖補助医療の一つの結論が出た中で、その胚をどう扱うかという問題が恐らくクローズアップされてくるのだろう。当然そういったことの結論を見ながら、同時に全体の枠組みというものも実は考えていかなきゃいけない。  一方で、委員指摘になった生殖補助医療というのは、もう年間一万人ぐらい、そのことによって子供が生まれている。こういった現実の中、現場の状況等も考えれば、今すぐ国民コンセンサスを得るというふうな結論を得ることが非常に難しい。そのことも考えながら、今回は、そこまで踏み込んでいないといいますか、全体的な、包括的な枠組みまで決めて、その中でクローンということになりますと、私は議論はいいと思いますが、法律上は間に合わないなということで、早急の課題でありますこのクローンの問題を法案化させていただいた、そこを御理解いただきたいというふうに思います。
  61. 平野博文

    ○平野委員 今政務次官から御答弁いただきましたが、やはり生殖医療の中での規制というのは、していかなきゃならない、こういう考え方には賛同してもらえそうだ。しかし、今はまだできていない、今、鋭意検討中だ、こういうことであります。  そこで、そのときに何が問題になってくるかということでございますが、やはり胚という問題をどういうふうにとらまえていくのか、こういうことになるんです。ヒト胚生命萌芽であるというのが、我が党の基本的な部分に立っているわけであります。  しかし、生命萌芽であるという、この萌芽というのも私、随分悩みました。何をもって萌芽だというところの範囲が非常にわかりにくい。先ほどの議員質問の中にもありましたが、受精をしたときからだ、こういうこと、萌芽に対するいろいろな認識、これは国民の皆さんのコンセンサスがとれていない。萌芽という言葉を使うからとれていないのか、こういうことが本当に自分の生活感の中に実感としてないものですから、わからない。またコンセンサスを、みずからそれを求めてとろうという意識も立たない、ここが非常に難しいところであります。  したがって、政府は、コンセンサスがとれていないものは法制化すべきでない、こういうことを言っておられますが、コンセンサスがとれるものなのか。とれないとするならば規制をしないとすると、現象面で何か出てきたときに後追いの法律規制としてしていくのか、こういうことになるわけであります。  私は、そういう意味では、可能性を持っているものについてはやはり先んじて規制をしていく、先んじてこれを国が、国会が取り上げて、網をかぶせて、やっちゃだめですよと規制をしていくという考え方に立っていかないといけないのかな、このように思うんです。少年法の問題にしても、犯罪が非常に多い、だから対症療法として法制化すべき、こういう問題もあると思う。ただ、この問題は、起こってからこれを禁止するということではなくて、起こる前にきちっとしなきゃならない。これは我が党も、私自身もそうあるべきだと思うんです。  そういう視点に立ったら、ヒト胚生命萌芽であるということに対して、いや、わからぬ、生命の始まりだということについてわからないから、これは別のところに、コンセンサスが得られるまで、生命萌芽であるということについてはこの法制の中に組み込めないという考え方というのは、私、いまいちかな。やはりそれを先取りして組み込んでいくべきだ、こういうことに立っていくべきだ、このように思っております。そういう意味で、民主党は、ヒト胚生命萌芽と位置づけて、ヒト胚は慎重に取り扱われるべきものである、こういうことでヒト胚規制を盛り込んだものと私は思っています。  そういう中で、科学技術会議生命倫理委員会報告においても、ヒト胚生命萌芽として明確に位置づけておると思いますが、これは会議のところで位置づけられておりますが、政府としてはこのヒト胚政府の言葉で言えば受精胚ですね、これをどのように位置づけておられるのか。政府としての見解をまずお伺いしたいと思います。
  62. 結城章夫

    結城政府参考人 科学技術会議生命倫理委員会もとヒト胚研究委員会におきまして、ヒト胚は人の生命萌芽としての意味を持ち、慎重に取り扱わなくてはならないものであるというふうにされております。しかし同時に、ヒト胚研究全般に関する規制の枠組みについては、今後の検討課題であるというふうにもなっておるわけでございます。  政府といたしましては、ヒト胚取り扱いに関する規制については、ヒト胚研究全般のあり方についての生命倫理委員会におけるこれからの検討や、厚生科学審議会の生殖医療に関する検討など、十分な国民議論を経た上でそのあり方を定めていくべきものであるというふうに考えております。
  63. 平野博文

    ○平野委員 今の質問にプラス生命萌芽ということに対して、政府はどういう認識にいますか。科学技術会議のあれはわかりました。政府としてはどういう認識に立っていますか。
  64. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 認識といいますか、この法案をつくっていく上での一つの認識は、科学技術会議見解を尊重してつくらせていただいております。それは、先ほど結城局長も答弁をいたしましたが、重要でないとは言っていないんですね。だから、その認識はあります。しかし、保護をして、今回の中で規制をかけていくということについては、今後の議論を待たなければコンセンサスはまだ得られていないだろう。  平野議員がおっしゃいますように、確かに、コンセンサスなんというのは簡単に得られないというのは、個人的に私もそういうことだと思います。しかしながら、やはり最低限のベースとなるコンセンサスというのは要るのではないかな。そこがまだ、例えば医療の現場でありますとか、そして科学技術会議議員の中でも、これは専門家の集団でございます。経済学者から何からすべて入っている、社会全般の有識者の意見の中でも、ちょっとまだ一致を見ていないという状況でありますから、やはりもうしばらくは議論を見なければそこまではできないだろうというのが現在の政府認識であり、この法律に取り組んでいる姿勢でございます。姿勢といいますか、この法律の扱いでございます。
  65. 平野博文

    ○平野委員 くどいようでありますが、ヒト胚生命萌芽であると、ヒト胚研究委員会ですか、そこでやっています。それは、政府としても同一の認識に立ちますか。それは科学技術会議議論された結論であるけれども政府はそういう認識に立っていますか、ここを聞きたい。
  66. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 私がお答えするんですから、認識はそういう認識に立っているというふうにお考えいただいて結構です。  ただし、その認識に立った上での現状考え方は、その認識に立ったからといって、これは私個人の責任でお答えさせていただきますが、生命萌芽ということ自身が、では現実に平野議員生命萌芽自身は生命そのものなのか。そうでしょう、そういったあたりがまだ非常にクリアになっていない。  だから、言葉で、生命萌芽ということですべてがくくられるというふうには、私は個人的に、この語、言葉を聞いたときに実はぴんとこなかったんですね。ですから、やはり生命萌芽というものを単に言葉でとらえるのではなくて、要するに、そんな認識もある。萌芽というのはこういうことなんだと。  例えば、ローマ法王庁はしっかりと、これは命の始まりだと言っているわけですね。そういう意味なのか。萌芽というのは命の始まりの一歩手前なのか。こういった点は、私は言葉の意味にとらわれるつもりはありませんが、共通認識としてきっちりと定義されているとはちょっととても思えない。そういうことでいえば、萌芽だからすぐ保護しなきゃいけないというふうには、突っ込んで申しわけないですけれども、簡単にはつながらないんじゃないか。  ただ、そういった意味合いを持って非常に大事にしなきゃいけないものだよ、こういう認識は、政府としても持っているということを、私の責任でお答えをさせていただきます。
  67. 平野博文

    ○平野委員 渡海さんの責任じゃなくて、政務次官の責任において、こういう理解をしておきます。
  68. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 間違っておりましたら、辞表を出しますから。
  69. 平野博文

    ○平野委員 ただ、政務次官がおっしゃるように、萌芽とは一体何ぞやというところについては非常に議論のあるところであるわけですが、しかし、何らかの規定を決めないことには、ロジックが運ばないし、物事が突き進んでいかないわけですね。  したがって、この部分については、政府は、大事だということはよくわかるけれども、これについてはコンセンサスだと。こういうこともないものですから、まだ土俵にのってこないということ。私は、コンセンサスというものはとり得ないだろう、だから、ほっておいたら危ないと。本当に大切なものだというのは科学技術会議の中でも出ているわけですから、何としてもそこは、保護という言葉が正しいかどうかわかりませんが、大事にする取り扱いをいろいろなところにルールとして、規制として決めていかなければならないのではないか、このように思っているのです。  通告しておりませんが、今私が言いましたような生命萌芽ということについて、民主党の方でもし補足があれば御答弁いただいたらいいですが。こう認識している、それにプラスこうしているということがあれば。同じ認識であれば結構です。
  70. 城島正光

    城島議員 基本的には同じ認識だと思いますが、あえて補足いたしますと、この前の委員会でも御答弁しましたけれども、この生命萌芽、いわゆるヒトの発生という中で、どこからまさしく人間というのかという問題は、どこで人間が死ぬかという問題とある面で同じでありまして、医療の技術の進歩と同時に起こってきている問題でありまして、人工中絶という技術を手に入れた瞬間から、実は人間とは一体どこからいうのかという問題が新たに起こっている。  しかし、いずれにしても、人間になる生命のプログラムがスタートするということにおいては、この受精という瞬間であるということは、これはまさしく真理でありまして、そこをどう表現するか。そのときに、まさに人工中絶という技術の中で、これをどうやって正当化していくかということも含めて苦吟しているのが今の状況である。  したがって、一体どこから人間というのかということにおいて、さらには、今政務次官もおっしゃいましたけれども、より正確に言えばどこから人間生命といえるのか。だから、あえて生命萌芽というのには、そういう意味で非常に含蓄があるわけであります。必ずしも生命そのものとは言っていない。しかし、発生学的には間違いなくここが人間の始まりであるということも事実であります。  そこについては、命という点において見ると、ここがまさにスタートを切る源であるということを極めて重要視した考え方に立っているというのが、民主党の基本的な考え方であります。
  71. 平野博文

    ○平野委員 ありがとうございました。  それでは、そのことは非常に私クリアになってきたと思いますが、どちらにしてもやはり大事なものなんだというところについては、同じ認識に立っていただいたと思うのです。  政務次官は違ったら辞表を出すということですが、そんなに政務次官の辞表とは軽いのですか。そんなに軽いものではないと思いますが。いや、答弁は結構ですよ。(渡海政務次官「発言が重いから」と呼ぶ)わかりました。  それでは、時間もないものですから、ES細胞研究という視点から少し伺いたいと思うのです。  私は代表質問でも指摘をさせていただきましたが、ES細胞の樹立につきましては、胚盤胞期にまで成長したヒト胚をつぶして細胞を取り出すことが一つの大きな要件になっています。ヒト胚作成利用規制の枠組みの中で考えることが必須であるというふうに私自身は思っています。  こういう視点で、民主党提案者に、ES細胞研究規制ヒト胚規制関係をどういうふうに位置づけておられるのか、まず見解をお聞きしたいと思います。
  72. 城島正光

    城島議員 お答えしたいと思います。  民主党案では、ヒト胚そのものを、先ほど申し上げましたような理由によって、すなわち生命萌芽であるということを極めて重要視し、それを根幹としておりますがゆえに、ヒト胚利用しての研究は原則として禁止ということに明確にしております。したがいまして、余剰胚となったヒト胚利用しての研究許可制ということにいたし、その中で唯一許可し得る利用として、今御質問ありましたES細胞を樹立する研究ということを位置づけている、これはすべてを法文上明確にさせていただいております。  こうした厳格な態度をとっている理由は、今申し上げましたように、まさに生命萌芽であるというふうに位置づけておりますヒト胚を使うわけでありますし、まさにつぶすわけでありますから、しかし、そうであってもES細胞研究に道を開いていますのは、御案内のとおり、この研究にはどうしてもヒト胚を材料とするしかないということと、あわせて、拒絶反応のない移植用臓器の作成など大変に有用な成果をもたらす可能性を秘めているということも、これは周知の事実でありますので、そういう点から唯一このES細胞については道を開こうとしているわけであります。
  73. 平野博文

    ○平野委員 そこで、政府にも少し。  ヒト胚生命萌芽である、大切にしなきゃならない。しかし、今ES細胞をつくっていく過程の中においては、萌芽である胚をつぶしていくわけであります。そういう意味で、政府ES細胞研究規制という立場に立って書かれていないわけでありますが、ES細胞についての規制というのは必要ではないでしょうか。
  74. 結城章夫

    結城政府参考人 お話しのように、ヒトES細胞ヒト胚ヒト受精胚からつくりますので、倫理上の配慮が必要であると考えております。  それで、生命倫理委員会におきまして、このヒトES細胞取り扱いについて議論がなされまして、一つは、それだけでは個体にならない、ES細胞からすぐ個体にはならないということから、法規制が不可欠なものとは言えないということになっております。もう一つは、国際的にも研究が端緒についたばかりのものでありまして、今後の技術的進展に適時対応していく必要があるというこの二点から、柔軟な対応が望ましいとされまして、ガイドラインという法律によらない規制が妥当であるというのが生命倫理委員会結論でございました。  なお、ヒトES細胞からさらに進めて個体産生を行うためには、クローン技術または細胞の融合・集合技術といったことを使いまして、政府案で言います特定胚段階を経る必要がございます。その段階になりましたら、これは当然、政府案法規制の対象となってまいります。
  75. 平野博文

    ○平野委員 ここが少し先ほどの認識の違い等にもかかわってくるのですが、生命萌芽である、大事にしなきゃいけない受精胚、ヒト胚を、ぶっ壊してES細胞をつくっていくんです。先ほど、ヒト胚受精胚、これは生命萌芽である、大事にしなきゃならないと。しかし、今政府答弁ではそういうことになっていない。ここに私は寂しさをすごく感じるわけであります。  大切なんだ、尊重しなきゃならない、こういうことは政府も同じ認識なんだ、しかし、それは外している、この点についてはどうですか。
  76. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 今も局長の方からお答えをさせていただいたと思うんですが、いわゆるガイドラインできっちりとそのことについて基準をつくっていくわけでございますから、大切にしていないということではないと思うんですね。  私は少し考えが甘いのかもしれませんが、平野議員お話なり民主党さんのお話を聞いていて、法で縛るかガイドラインで縛るか、これは確かに大きな意味の違いがあるといえばあります。しかし、ガイドラインだから効果があるのかないのかという議論は、また別にありまして、これは科学技術会議とか生命倫理委員会でも、むしろ、ガイドラインの方が即応性があり、時代の要請に応じて対応し得るという意味では、こういったことには適応性はいいんじゃないかという議論すらあるわけでございます。これは、津川先生が実はおっしゃっていたことで、いろいろな研究開発も、ある種の自由度みたいなものも含めて柔軟に対応していくという意味で、むしろ規制はできるだけやわらかくしておく方がいいという意味も、私はあると思うんですね。  ですから、大事にしていないということには決してならないわけでございまして、保護をしないと言っているわけじゃないんですね。ただし、その方法論として、法でまで縛るということではないだろう。そして、きっちりとそういうものをつくる。確かに、中身がわからなければそれはオーケーと言えないじゃないか、ガイドラインというのは担当行政庁が勝手につくる、恣意的につくるじゃないかと言われます。そういう嫌いも多々あるわけですが、特にこの場合は、科学技術会議なり生命倫理委員会なりという、ここが権威がないとか言い出したら、もうすべて崩れると私は思います。  ですから、さっきからの答弁をお聞きいただいたらおわかりのように、局長がお答え申し上げておりますのも、生命倫理委員会のこういう結論を経てということで、我々は非常に参考にもし、なおかつ尊重もし、ほぼ忠実に法案にしておるわけでございますから、そういう恣意的なものではない。今後もそういうことで図っていきたいと思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  77. 平野博文

    ○平野委員 今政務次官の方からありましたが、指針ガイドラインで柔軟に対応すると。柔軟に対応するということは、マイナスにもプラスにも振れるわけですね。プラスの方に振ってくれておるんだったらいいんですが、マイナスにも振る可能性がある、ここを危惧しているわけです。  決して、科学技術庁の行政のあれが絶対間違いないということでは、僕はならぬと思うんですね。だから、より明確にしておかないといけない、私はそういう論理です。柔軟に対応するというのは、いや、信じてください、絶対間違いありませんと。そんなことを言ったら、ジェー・シー・オーの事故が起こったじゃないか、こうなるわけですよ。だから、やはりそこは、プラスの中での柔軟に対応はいいんですが、マイナスの柔軟もあるんだから、やはりより明確に出してもらわないと困るのではないかな。  そういう視点で、時間がないものですから、次に指針問題点について指摘をしておきたいと思うんです。  今回の政府案については、卵子の提供ルール、配偶子の提供ルールも含めて、規制の相当の範囲がガイドライン指針にゆだねられておるわけであります。  科学技術庁は、この問題については社会的合意を重視して決めておられるようでありますが、国会の場で審議するに当たって、規制の内容がはっきりしない問題をどうとらまえていくのか。国会審議の場を通じて社会的合意を得るという貴重な機会をやはり失っていくんではないか、このように思うんですね。  したがって、ガイドラインといえども、もっと具体的に、明快にしておくべきだ。先ほど樽床議員が言いましたように、こういう観点をクリアしない限りはガイドラインには行かないんですよということをやらないと、今のは、包括的にもう決めちゃって、あとは行政サイドで決めますから任せてくださいと言わんばかりの法律になっておるんじゃないでしょうか。そういう意味で、私、今回、規制の内容の大半を指針にゆだねているというところを指摘をせざるを得ない、これが一つであります。  したがって、大半がそういうふうになっていますから、指針実効性という観点においても、本当に担保ができ得るのかどうか、こういうところを疑問視せざるを得ない。すなわち、逆に言いますと、指針で決めたことすべてに罰則規定が課せられるわけでもないわけであります。あくまでも、報告義務が課せられているものについては六条で報告義務違反、七条、十二条を含めて、改善命令違反に当たって初めて罰則規定、こういうことになっているわけであります。  そうすると、私はこういう適用の仕方というのは、コード自体に不合理性を問うものではありません。しかし、指針の中には、特定胚取り扱い個体産生禁止など大変重要なことも含まれています。問題が起こってしまったら、改善命令を出しても遅いことがたくさんあるのではないでしょうか。この場合、届け出義務に係る部分であれば罰することはできるけれども届け出内容に含まれない場合、指針を破っても処罰をされない、こういうことだって起こり得るわけであります。しかし、指針に関することはすべてに、届け出義務を課すことなど、現実的な対応にはなっていかないんじゃないかな、ここが非常に危惧されてなりません。  したがって、法制化してもっと明確にすべきというのが私の基本の考え方にありますが、ガイドラインの中にも、このことだけはきっちりと明確にうたって、ガイドラインとはするけれども法体系の中にきちっとうたうことが、やはり必要ではないでしょうか。法文にきちんと明記してもらいたい、このように思うのであります。  私は、行政に広範な裁量権という言い方をすると政府は怒るかもわかりませんが、マイナスの幅まで与えてしまう可能性を生むような広範な範囲を裁量権にゆだねるということはよろしくない、こういうふうに思うわけでございます。  そういう意味で、時間がなくなってきましたから申し上げませんが、毎日新聞に、行政指針あるいは許可制禁止、この中にいろいろな特定胚の分類項があります。例えば、ヒト胚分割胚とかヒト胚核移植胚、これは行政指針であります。そうしますと、行政指針に違反するということは、一年以下の部分で済んじゃうのです。しかしできちゃった、これについては、ではどういうふうに取り扱うのか。これも私、非常にこの点は疑問にせざるを得ない。  したがって、もっと明確に、このものはだめよということを明確にまず書いていただきたいな、このように思うわけでありますが、御答弁いただけますか。
  78. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 多少繰り返しになって恐縮でございますが、ガイドラインを策定するに当たっては、従来から申し上げておりますように、一月からは総合科学技術会議ということになるわけでございますが、内閣府の中にある日本の科学技術政策を決めていく有識者の会議、ここは自然科学だけじゃなくて人文社会科学、こういう方々もお入りになる予定でございますけれども、そういう会議の場で十分意見を聞いた上でつくっていくということでございます。さらに、その上にパブリックコメントを求めて、さまざまな国民各般の意見を集めていく。こういう手続でやらせていただきたい、やるということに、法律でもそれは手続論としては書いています。  一つ言えますことは、先生の御質問にちょっとクリアなお答えになるかもしれませんが、そこは非常に悩んでいる部分であろうと思います。要は、先ほど来議論になっておりますように、研究開発のスピードが非常に速い。指針という形じゃないとなかなか対応していけないんじゃないか。おっしゃっているのは、それでもやっちゃいけないという負の部分だけは、きっちりと法律段階で書いたらどうかという御提案だと思います。その辺のところは先生の御意見もよくわかりますし、そういうふうにならないように、ガイドライン作成する段階で注意をさせていただきたいというふうに思っております。
  79. 平野博文

    ○平野委員 もう時間が来ましたが、しかし、ここは大事なところですから再度申し上げます。  来年から科学技術会議とか、そういう新しいところでガイドラインの内容を決めていきます、こうしますと、私は、国会で議論しておる中にこういうものがもう明確に入っているんだということがないと、通ってしまいましたから、あとは勝手にやりますよ、勝手というのは見識があるからいい、こういう理解でスルーしてしまったら、ここの審議で、皆さん方がこれだけは絶対だめよと、十分条件か必要条件かというと必須条件、これだけは絶対に我々は明確にしておいてほしいというところがあるんです。でないと、余りにも広過ぎるということです。ぜひこの部分についても前向きにとらまえていただきまして、何らか明確にしていただきたいな、このように思います。
  80. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 今国会で御議論をいただいておるわけでございますから、平野議員がおっしゃるように、ここにいらっしゃる議員の皆さんがそういうことにしようということであれば、国会で御決定をいただいたことには我々は従わせていただきます。
  81. 平野博文

    ○平野委員 もう時間が参りましたので終わりたいと思いますが、この問題というのは、本当に真摯に議論をして、これは与党だとか野党だとかいうことじゃなくて、本当に日本の国民のために、あるいはもっと言えば地球の人類のためにも、規制をしていく、こういうことに立っていかなければだめだと思います。国内だけでも逆にだめな問題が絡んでいますから。  そういう意味では、ここだけはとりあえずやる、これも一つの考え方かもわかりませんが、生命体のあるべき姿、尊厳ということを含めて、我が党の申し上げておりますように、より包括的に考えていただくことが非常に大事ではないかな、このことを申し上げまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  82. 古賀一成

    古賀委員長 斉藤鉄夫君。
  83. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 先ほど樽床委員、それから平野委員から有性生殖無性生殖議論が出ましたので、この点につきまして、ちょっと最初に、特に樽床提案者議論をしてみたいと思っております。  先ほど、今回の規制の中には無性生殖の範疇に入るもの、それから有性生殖の範疇に入るもの、いろいろあるではないかと。政府案におきましても、特に法律できちんと禁止をする中に、いわゆる体細胞クローンと、それからもう一つが人と動物のいずれであるかが明らかでない個体、この二つがあって、特にこの二番目の、人と動物のいずれであるかが明らかでない個体、これは有性生殖無性生殖議論じゃないだろう、だから有性生殖無性生殖という立て分け方による議論はおかしいのではないか、こういう議論がございました。しかし、私はちょっとその議論に納得できないわけです。  今回、こういう法律案が準備をされるに至った過程を考えますと、これは体細胞クローンというものが現実に哺乳類で出てきて、人間への適用も可能な状況になってきた、こういうことがあるかと思います。生命倫理委員会、またその下のクローン小委員会でしたでしょうか、クローンという言葉が入った小委員会議論をされているということは、やはりこの体細胞クローンというものの技術について、我々がどう考えるかというのがこの法律案の最大のテーマなんだろう、このように思います。  その体細胞クローンはなぜいけないのか。私も、自分で夜になく昼になく一生懸命考えて、体細胞クローンが許されない根拠は、やはり無性生殖であるという私なりの結論に至りました。  子供のころ、なぜこの世の中に男と女があるんだろうか、別に悩んだわけじゃありませんが、純粋に疑問に思って、親に聞いても確かな答えが得られなかった。別に単一の性でぽこっと子供が生まれてきたって、人類は続いていくんだし、生命は続いていくんだし、いいじゃないかと思ったことが思い出されますけれども、まさに、この体細胞クローンが許されないのは、先ほど平野議員との議論もございましたけれども生命尊厳特定の人のコピーである。同じ遺伝子配列を持った人間が生まれてくる。その生命尊厳、個の尊厳という憲法に抵触するからでございますけれども、だから我々は、これを禁止しようとしているわけでございます。  すなわち、このことは、私の思考の結論としては、無性生殖と同一である。だから、そういうものを非常に重く思って、今回、政府でも議論を重ねられ、法案ができた、民主党さんも同じような考えでつくられた、このように思うんですが、樽床さん、いかがでしょうか。     〔委員長退席、平野委員長代理着席〕
  84. 樽床伸二

    樽床議員 今の斉藤委員の御質問でありますが、私は、今斉藤委員がおっしゃった点については全く同感であります。つまり、体細胞クローンがなぜいけないのか、その理由は無性生殖だからいけないということについて、私は何ら異論を挟むものではありません。  ただ、我々はそこからもう一歩進んで、無性生殖、有性生殖ということと、クローン技術というものをもうちょっと考えた方がいいのではないか。つまり、ちょっとこれも何かややこしい話で恐縮なんですが、体細胞クローンがだめな理由はそれはそれでいい、でも受精卵クローンについては、では、どうなんだということも、御質問意味の中に入っているだろうというふうに思うのです。  斉藤委員が、本会議のときに代表質問をされた。その言葉の中に、全部を読み上げる時間はありませんけれども、結局、無数にある組み合わせの中から、偶然と言ってもよいでしょうか、一つの組み合わせの遺伝子が選ばれ、新しい生命が生まれてくる、どんな遺伝子を持った子供が生まれてくるかわからない、これは親から見れば不安ですが、この予測のつかない多様性にこそ、生命がこの地球上で何億年も生き延びてきた強さの源泉がある、このように斉藤委員が本会議の場で御主張をされた。私は、まさにそのとおり、そのことについても異論がございません。  実は、こういうことについて、体細胞クローンについては先ほどおっしゃった無性生殖ということで片づけられるんですけれども受精卵クローンについても、私どもは、この斉藤委員の趣旨が当てはまるのではないかというふうに考えるに至っているということであります。
  85. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 私は、体細胞クローン受精卵クローンは根本的に違うと思っております。先ほど私の質問を読んでいただきましたけれども体細胞クローンというのはまさに人間のコピーです。ところが、受精卵クローンというのは、受精をした段階で、どういう遺伝的形質を持った、どういう遺伝子の組み合わせを持った新しい受精卵ができてくるかはわからない。つまり、遺伝子そのものを予測することが不可能なクローン受精卵クローンです。  そういう意味で、私は、受精卵クローン無性生殖と言っていいかどうか疑問に思っておりますけれども、そういう意味体細胞クローンだけは、この受精卵クローンとはまた違った、特別な意味のある、反社会性、反人間性を有すると思っております。  この点についていかがでしょうか。
  86. 樽床伸二

    樽床議員 基本的に、さほど見解の差はないわけでありまして、体細胞クローンは非常に反社会的であるということについては、私どもも何ら異論がない。  ただ、受精卵クローンについても、体細胞クローンまでの激しいというか高い社会的な問題があると考えるかどうかというのは個人の差がありますが、私は、受精卵クローンであっても、結局は体の中で一卵性双生児になるのか、人工的に一卵性双生児になるのかという違いが実は存在をする。しかも、その卵が別人のものでも構わない、こういうことになるわけですね。核を除いた卵は、ほかの人のものでもいい。  こういうことになってくると、これは先ほど斉藤委員の本会議の話の中で、すべてがまさに無限の可能性の中でできてきた。それは、一卵性双生児という結果になるにしても、全く我々が手をつけられない中でそういう結果になった。これは尊重しましょうと。しかし、人工的にそれをするということについては、かなり手を加えている。これは生命尊厳にかかわるのではないかというふうに思っております。  程度の差はあれ、クローンということでは同じではないのか。ただ、体細胞クローンがより反社会性が強いということについては、私は同意をいたします。
  87. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 より反社会性が強いと言いますが、私は、ある意味では絶対と相対という言葉を使っていいかどうかわかりませんけれども、かなりそこに大きな隔絶があると思っています。  その理由は、繰り返しませんが、本会議でも言わせていただきました。地球ができて四十五億年、その中で命の歴史が三十数億年あるわけですけれども、その三十数億年の中で、我々地球上の生命が培ってきた最も偉大な、一つの生き延びていくためのすべが、この有性生殖である。どういう組み合わせで遺伝子が組み合わされるかわからないという多様性の中にこそ、私は、人間生命、また地球上の生命として、一番大きな大事な点がある。それを侵しているという意味で、この体細胞クローンは特にいけないという思いが強い。私が私なりに考えて、体細胞クローンが絶対許されないと思った結論はそうでございます。  ちょっと質問を変えまして、民主党さんの法案の中には、いわゆるクローンという言葉が全く出てきません。体細胞クローンは、そういう意味ではどの規定で禁止されるのでしょうか。     〔平野委員長代理退席、委員長着席〕
  88. 樽床伸二

    樽床議員 体細胞クローンは、私ども法案の中では、人クローン胚、これが体細胞クローンであります。それから、今斉藤委員がおっしゃった受精卵クローンというのは、政府案で言うところのヒト胚分割胚ヒト胚核移植胚。斉藤委員がおっしゃっておられる受精卵クローンというのは、今、後で申し上げました二つ。もう一回繰り返しますと、ヒト胚分割胚ヒト胚核移植胚、これが受精卵クローンだと認識をいたしております。体細胞クローンは、人クローン胚だというふうに考えております。
  89. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 民主党さんの法律案の中に、人クローン胚という言葉は出てきません。
  90. 樽床伸二

    樽床議員 頭が混乱いたしておりまして、失礼いたしました。  要するに、民主党案で言う二条五のイ、「その細胞の核の遺伝情報の総体が、人、人の胎児又は他のヒト胚の細胞の核の遺伝情報の総体と同一である胚」と我々の案では定義をしておりますが、これが実は、政府の言うているところの人クローン胚ヒト胚分割胚ヒト胚核移植胚。このイの中に全部、政府案の言うところの三つ、斉藤委員があえて二つに分けられたその三つが全部含まれるというふうに認識をいたしております。
  91. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 「人の属性を有する胚」という定義の中にたくさんございます。その中の一番最初に出てくるイ、「その細胞の核の遺伝情報の総体が、人、人の胎児又は他のヒト胚の細胞の核の遺伝情報の総体と同一である胚」ということで、大変難しい表現になっておりますが、要するに、体細胞クローン、それからいわゆる受精卵クローン受精卵クローンの中にヒト胚核移植胚ヒト胚分割胚が入りますけれども、この三つがこの中に入る。そういうことで、私が感じましたのは、いわゆる受精卵クローン体細胞クローンを全く同一に論じている。  私、先ほど、受精卵クローン体細胞クローンの間にはかなりの大きな隔絶がある、このように申し上げました。その理由は、繰り返しになりますからもう言いませんけれども、そういう意味で、体細胞クローンということが契機になって今回この大きな論議が巻き起こっていたにもかかわらず、民主党案は、この体細胞クローンということに対しての危機感が薄いのではないか、こういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  92. 樽床伸二

    樽床議員 私どもは、体細胞クローンに対して危機意識が薄いとは思っておりません。なぜならば、それは先ほど私もそちらの席で政府質問させていただきましたが、無性か有性かということとクローン技術ということを分けて考えた方がいい。クローン技術を論じるときに、無性か有性かというのは一つの考え方ではあるけれども、それがすべてではない、このように考えているわけであります。  つまり、クローン技術と有性生殖とが合体をして、また別の、政府規制法律でしないと言っている個体ができる可能性もあるわけでしょう。私が先ほど政府側に質問いたしました政府で言うヒト性集合胚、これは、人の体の中に動物の臓器ができる可能性がある胚ですね。これは、有性生殖ヒト胚クローン技術をくっつけてつくるということになって出てくる可能性がある。  ですから、こういういろいろなバリエーションが考えられるということでいくと、クローンクローン。有性、無性、こういうことでやると、クローン技術そのものがひとり歩きをしたり、おかしな方向に行ったりするのではないか。だから、先ほど言いましたように、ヒトに関するクローンは、体細胞クローンであっても受精卵クローンであっても、程度はあるけれどもクローンということでは同じ範疇で議論した方がいいのではないか。クローンという技術については無性、有性で分ける必要がないという考えに立つものであります。
  93. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 この議論をしておりますと延々と続きますので、もう終わりますが、しかし受精卵クローンについては、ある意味では、自然界にございます一卵性双生児とか、そういう自然界に、現在に存在をしているもの、その再生技術的な部分がございます。  先ほど言いましたように、体細胞クローンは、無性生殖という、これは人間にとってというか地球上の生命全体にとって非常に大きな財産、それを侵しかねないものである。そのものについての議論を一緒くたにされて、私は、民主党さんの案には本当の意味での危機感がないんじゃないかな、こう思います。  先ほどの五のイの「細胞の核の遺伝情報の総体と同一である胚」というのは、たしかドイツの定義に大変似ている、このように聞いております。このドイツの法律ができたのは、いわゆる体細胞クローンというものがまだまだ遠い先の世界の話、遠い未来の話という時代につくられたもので、いわゆる無性生殖体細胞クローンという問題意識がなかったときの表現だというふうに聞いております。  そういう意味で、この体細胞クローンに対する意識。クローンという言葉が一切出てこないということもあって。
  94. 樽床伸二

    樽床議員 繰り返し申し上げますが、体細胞クローンに対して危機意識がないということではなく、むしろ、政府よりもさらに我々の方が強いというふうに私は認識をしております。  また、有性か無性かという考え方体細胞クローン受精卵クローンを分けるという見方もありますが、別の考え方でいくとこういう見方もあるということで、ちょっと一つ紹介します。  体細胞クローンは、極端なことを言えば、無限のコピー化が可能なんですね。受精卵クローンというのは無限ではないんだろうと思います。ただ、それが二なのか四なのか八なのか、十六なのか三十二なのか、これはわかりません。例えば、三十二でも可能性はあるわけでしょう。  それで、大体普通は想定するのは三つ子ぐらいまでですけれども、六人でもこれは母体に大変な影響が出るわけであって、例えば三十二、どういう表現をしたらいいかわかりませんが、三十二人の人が生まれて、これは人の体でいったら考えられないことでしょう。私では考えられない。人間の体が物すごく大きければそれはわかりませんけれども、三十二人。例えばもっと、ひょっとしたら六十四になるかもわかりません。  そうすると、やはりそういう点からいくと、有限だけれども実は普通には考えられない数の、親のコピーじゃないんですが、それぞれが同じ遺伝子を持つ人が自然では考えられない数が出てくる可能性がある。しかも人工的にということも、やはりこれも危険だ。  ですから、我々は、それも危険だし、体細胞クローンの怖さというのはより大きい。より大きいと思っているがゆえに、実は、ひょっとしたら、政府よりもより強い危機感を持っているのではないかというふうに私は考えているところであります。
  95. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 また議論をさせていただきたいと思いますが、ちょっと視点を変えます。  民主党さんの案の第一条、目的、この「目的」を何度読み返しても、私はよくわからない。  ここに二つのことが書いてございます。「人の生命萌芽であるヒト胚の人為による作成及び利用が人の尊厳の保持並びに人の生命及び身体の安全の確保に重大な影響を及ぼすおそれ」、これが一つです。もう一つは人の属性を有する胚。この人の属性を有する胚というのは先ほど定義されたものですけれども、「人の属性を有する胚が人の尊厳の保持並びに人の生命及び身体の安全の確保に重大な影響を及ぼす個体の人為による生成をもたらすおそれ」と、二つのことが書いてございます。この二つ目はよく理解できるんです。ところが、最初の、「人の生命萌芽であるヒト胚」続きまして「重大な影響を及ぼすおそれ」ということが私はよく理解できないんです。  今回、私たちは国会でこの法律をつくって、法律をつくるということは、国民の皆さんの権利義務を規定するということでございます。特に、五年以下の懲役という非常に重い刑罰になっていますが、刑罰を科してまで避けなければならないこの重大な影響を及ぼすおそれとは、具体的にはどんなことなんでしょうか。
  96. 山谷えり子

    山谷議員 まず、人の尊厳の保持に重大な影響を及ぼすというのは、ヒト胚が人の生命萌芽として位置づけられまして、将来人となり得る存在であることから、これを人為的に作成し、または利用することは人の生命が軽く扱われることになり、人の生命の尊重、保護という倫理ないし価値観が脅かされること、さらには、ヒト胚が成長し人となった場合のそのものの尊厳を侵すおそれがあるということを言います。  また、人の生命及び身体の安全の確保に重大な影響を及ぼすとは、ヒト胚が人の生命萌芽として将来人となり得る存在であるところ、これを何らの規制なしに人為的に作成及び利用することを認めることとすれば、人となった場合のそのものの生命及び身体に対する安全を確保できないとの意味です。  以上の事態を回避するために、違反者には五年以下の懲役もしくは五百万円以下の罰金またはこれらを併科するとしているわけでございますけれども、いやしくも、人の生命萌芽が実験材料として野放しにやりとりされ、破壊され、変造されるような事態を放置すれば、人の命を単なる物と考え、これを軽視する態度につながり、社会に与える影響は非常に重大であると考えております。人の命は尊重されるという社会秩序の根幹を脅かすことにつながりかねないというふうに考えております。  まさにそのことのために、欧州先進諸国では、体外受精技術が実用化した一九七〇年代以来、ヒト胚作成と使用に関する公的規制のあり方が生命倫理上、公共政策上大きな課題として認識されまして、少なからぬ国々で刑罰を伴う立法が行われました。日本社会も、同じ現代高度科学技術社会といたしまして、こうした諸国と公共政策上同じ課題を共有しているのは当然のことだというふうに考えております。  したがいまして、このようなヒト胚作成及び利用により生じる問題を放置しようとする政府案の方が不適切ではないかというふうに考えているわけです。
  97. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 山谷さんのその説明はよくわかるんです。私も、人の生命萌芽であるヒト胚を軽く扱っていいなどと思っているわけではありません。しかし、法律の目的として、ヒト胚をそのように研究等に使って、軽く扱って人の生命尊厳が侵されるという、要するにそういうことだと思うんですけれども、そのおそれと、それから二番目に書いてある、人の属性を有する胚が個体の人為による生成をもたらすおそれ、全く次元の違うレベルの話だと思うんです。それをここに二つ並べていらっしゃることが論理的によく理解できないんです。
  98. 城島正光

    城島議員 まず、結論から申し上げますと、こういう法体系の方が今は一般的ではないかなというふうに思っております。  というのは、先ほどからの論議でもありますけれども、先ほど斉藤議員がおっしゃっていますけれども体細胞クローンというものと分割卵のあたりからのクローン、あるいは、特に一卵性双生児等を中心としたものは本質的に違うのじゃないかと。それは確かにかなり違う部分もあると思いますが、どちらにしても、特定の目的で人為的につくろうという行為は、ヒトクローン個体作成の範疇としては、その分野においては全く同じじゃないかというふうに思います。  したがって、今回の民主党案の中では、そういう点で、特に、なぜクローン禁止するかということが先ほどから論議になっていますけれども、人の尊厳、では人の尊厳とは一体何なんだというところをずっと掘り下げていったわけですね。  そうしますと、体細胞クローンであれ、分割卵等を含めたクローンであれ、人の尊厳という面においては極めて重大な問題がある。すなわち、我々は人の尊厳というのを、具体的に言えば、それぞれ各個人が独自の存在であって、しかもそれは一回限りのものであって、しかも他者から何らかのことで、まさに人為的にということですけれども、授けられるものではない。それが個人の尊厳であるとすれば、そこにおいては、極めて重大な個人の尊厳を侵すものが、一卵性双生児、自然として出てくるものはいいとしても、仮に人為的にあえてそこで遺伝的に同質な集団をつくっていくということにおいては、同じことではないか。したがって、そういう点でいうと、いわゆる体細胞クローンを含めてかなり強い問題意識を持っているわけであります。  そういう点からいうと、この法律案そのものは、今御指摘がありましたけれども、第一条でありますけれども、この目的規定にあるように、ヒト胚作成及び利用により生ずる問題というものと、いわゆるクローン人間が生まれる、産生するということによって生ずる問題とは、規制の根拠がまず違う。規制の根拠が違うと考えているので目的規定の第一条にそういうことを置いたわけでありますし、ヒト胚作成等に係る規制、これは第二章でありますが、それと、人の属性を有する胚の作成等に係る規制、第三章、これで異なった規制をまず施している。しかし、ヒト胚作成等に係る規制、人の属性を有する胚の作成に係る規制、この第二章、第三章も、何度も繰り返してきましたけれども、いずれも人の生命の源を操作するという点において、そして今申し上げました人の尊厳の保持、あるいは人の生命及び身体の安全の確保に重大な影響を及ぼすおそれがあるということにおいて、生命倫理にかかわる共通のものを含んでいるというふうに考えているわけであります。  したがって、民主党案では、ヒト胚作成及び利用と、人の属性を有する胚の作成及び利用の双方に係る基本的理念、第三条を掲げるとともに、両者の規制というものを同一の法律の中で規制することにした。これは一般的に、今世界的にはそういう法体系になっているのだというふうに思っております。
  99. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 予定していた質問の五分の一も終わらないうちに終わってしまいました。  今の城島先生の御答弁、確かにわかります。共通部分はある。しかし、共通部分はあるけれども、明らかにその背景なり論理的根拠が違う部分、まさにそこが決定的な部分もある。そういう議論が一緒くたにされているような気がしてしようがないのですが、残りの五分の四も含めて、また次回、質問をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  100. 古賀一成

  101. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 自由党の菅原喜重郎でございます。  まず、政府案について質問をしていきます。  生命科学については、近年になって目覚ましい発展を続けており、特に医療技術の向上などを通して我々の未来に明るい希望を投げかけてくれると期待しています。一方で、技術が進歩すればするほど、我々の生活や社会と密接不可分の関係になり、深刻な倫理問題を次々発生させることが危惧されます。  この六月に一応の解読宣言が出されたヒトゲノム計画に関しても、ヒトゲノムのことが明らかになり、疾病の原因遺伝子が突きとめられればられるほど、特定の人物の遺伝情報が漏えいして、社会から不当な差別を受けるなどの側面が心配されるようになってきてもいます。民主党が、クローン技術規制は必要不可欠であるが、もっと幅広い規制をつくるべきという趣旨に私は解して今回の衆法を見ているわけですが、このような法案を示してきたことにも、私は意味があると思っております。  今まで論議を尽くしてきた部分以外にも問題はないのか。フランスでは生命倫理法も制定しているわけです。それで、ヒト胚研究生殖医療などを取り込んだ生命倫理に関する包括的な規制を設けることについて、政府はどう考えているのか、また考えるのかをまずお聞きいたします。
  102. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 生命倫理上の問題について包括的な規制を行うべきという御意見があることは、我々もよく承知しているところでございます。  しかし、先ほどから議論になっておりますように、クローン人間個体産生という問題については、国の内外において既にある程度合意ができているというふうに思っておるところでございますが、ヒト胚研究とか生殖医療、既に先生も御承知のように、我が国では年間一万人以上が体外受精で誕生しているというふうな現状を踏まえて対応しなければいけないということを考えますと、まだまだ合意形成には、残念ながらしばらく時間がかかるであろうというふうに考えております。  したがいまして、今回の法律では、包括的な規制をするというよりも、喫緊の課題であります、いわゆるやってはいけないこと、このことをしっかりと我が国の意思として決めなければいけないということで、喫緊の課題への対応が現実的であろうという科学技術会議生命倫理委員会意見も踏まえて、このような法案を出させていただいたところでございます。
  103. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 包括的な規制がある方がないより安心でありますが、反面、一つ一つの技術について、その技術がもたらす負の側面もありますので、国民がどう感ずるか、よく考えて対応するよう国の姿勢を望んで、次に、衆法についてお聞きしたいと思います。  衆法は、ヒト胚規制対象にするとしながらも、現在の案では、具体的な規制対象から生殖医療生殖医療関係研究が除かれています。しかしながら、これまでの答弁を伺っておりますと、将来的には生殖医療をも規制もとに置くということを明言しておられます。ここは、今回の審議において今までたくさん論議されてきたわけですが、閣法と衆法の最も大きな相違点です。国民生活に大きな影響が及ぶ点でもございます。  今回の案では、具体的な規制が及んでいないとしても、その先がいつの間にか決められているというのでは、国民に対して専断的にもなると感じますので、この点を論議させてもらいたいと思います。  昭和五十三年のイギリスにおきまして、試験管ベビーと呼ばれる、実際には試験管の中で生まれたわけではございませんが、体外受精児が世界で初めて誕生いたしました。我が国におきましても、昭和五十七年に初めて行われましたが、現在の我が国では体外受精技術はすっかり一般的な技術になっておりまして、数百といった産科で施術されている技術であります。これまでこの方法で生まれた赤ん坊も五万人ぐらいに達すると聞いています。  ヒト胚が大切であるという見方に立てば、現在ヒト胚がつくられ、使用されている唯一の場面であります生殖医療の現場でのヒト胚取り扱いを中心として規制体系を考えるのがむしろ当然のように思いますが、片や、実態が大きく先行しているこの分野に規制をどう組み入れるのか、よくわからないでおります。  現在行われている生殖補助医療は、日本産科婦人科学会のガイドラインに沿って、かなり厳格な自主規制もとで行われているように聞いています。  衆法では、生殖補助医療の何が問題で、具体的にどんな規制をかけることがあると考えて、将来の規制に含めることを明言されているのかをまずお伺いいたします。
  104. 山谷えり子

    山谷議員 生殖補助医療も、人の生命萌芽であるヒト胚を人為的に作成利用するものであるので、その方法等によっては人の尊厳に反するものとなることも考えられます。また、もし十分に安全性を確立していない技術を用いるようなことがあったとすれば、生まれてくる子供の生命及び身体の安全にも重大な懸念が生じます。したがいまして、生殖補助医療だからといって自由に行っていいものではなく、その方法等について規制を行うことは必要であると私たちは考えております。  ただ、生殖補助医療は、子供を持つことを望む不妊の夫婦にとって非常に有益なものでありますし、また現在実際に広く行われているものでございます。規制のあり方については、厚生省の審議会で検討が大詰めを迎えているところで、その結論を待って、整合性を持たせるように配慮しながら、医療から研究までそれぞれに見合った総合的なヒト胚作成利用規制を、さらに次のステップとして時間をかけて行うべきであると考えております。  そこで、この法律では、生殖補助医療については、その研究も含めて、規制のあり方について総合科学技術会議での多様な観点からの議論を踏まえて早急に検討を行い、三年以内に規制を行うこととし、現段階では、生殖補助医療及び生殖補助医学研究にかかわるヒト胚作成利用について許可の対象とはしないこととしています。  しかし、今回対象としないからといって、一切規制なし、無規制ということを許すことにするのではなくて、将来適切な規制をかけることを本案は想定しているわけでございます。
  105. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今も答弁の中にもありましたように、体外受精技術を使って、我が国だけで年間一万人を超える子供たちが誕生しています。この技術倫理的な問題があると感じている国民は少ないと思います。この技術を取り巻く事柄をある日から国が規制するということは、体外受精で生まれてきた人々に負い目を与えることになりかねないことになるのではないかという気もいたします。  それで、生殖医療の現場に何が問題があるのか。生殖補助医療規制は、クローンの問題と関係づけるよりも、医療のあり方の問題として別の観点から取り扱うべきではないか、また扱えるのではないかとも思うわけなんですが、この点はいかがでしょうか。衆法についてお聞きいたします。
  106. 山谷えり子

    山谷議員 医療から研究までそれぞれに見合った総合的なヒト胚作成利用規制は、さらに次のステップとして時間をかけて行うべきであるというふうには考えております。ですから、今回、生殖補助医療及び生殖補助医学研究にかかわるヒト胚作成利用については、許可の対象とはしないことにしておりますけれども、さまざまなことを考えながら、ステップとして時間をかけて考えていきたいというふうに思っております。
  107. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしても、現実に行われている医療に少なからず影響を与える問題でございますので、このことはともに慎重に考え議論し合っていかなければならないなというふうに思っております。  次に、政府にもお伺いします。  閣法でも規定しているヒトのキメラをつくる技術などには、やはりヒト胚を用いるはずです。ヒト胚取り扱いが全く視野に入っていないわけではないようには思うのですが、ヒト胚との関係について閣法はどう整理になっていると考えればよいのか、お伺いいたします。
  108. 結城章夫

    結城政府参考人 政府案では、人クローン個体ヒトと動物の交雑個体など、人の尊厳の保持などに重大な影響が及ぶおそれがある個体産生を未然に防止することがねらいでありまして、これらの個体産生につながる胚を特定胚と位置づけて規制の対象にしているところでございます。  一方、ヒト胚ヒト受精胚と言っておりますけれどもヒト受精胚は、そのまま母胎移植されれば我々と変わりのない人に育つものであり、個体産生観点からは、ヒト受精胚であることをもって直ちに規制対象に含めることはしておりません。  ただし、特定胚作成する際の材料としてヒト受精胚を使用する場合は、その特定胚規制の中で、それが適正な方法で入手されたものであるかなどの諸要件を確認することが必要と考えておりまして、その旨をこの法律に基づく指針の中に盛り込む予定にいたしております。
  109. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 閣法は、これから我々の社会に影響を与えそうな技術について前もって適切なルールを引いておこうというもののようにも感じます。既に行われていることを規制するというのは大変なことですので、今度は衆法についてですが、衆法には対応面で少し心配にならざるを得ない点もあります。  現場では、最新の、やや不確実かもしれないという技術を使って、医師と患者の責任のもとで治療が行われているわけです。そのための研究も日々行われています。余ったヒト胚は捨てることもあります。どこまでが普通の治療行為で、どこからが厳しく監視しなければならない行為かという区別は容易でないように思います。  それで、生殖補助医療規制もとに置かれたら、現在広く行われている治療行為も許可制になるのではないか。この点はいかがですか。
  110. 山谷えり子

    山谷議員 いろいろなことはもう少し議論していかなければいけないというふうに考えておりますけれども、むしろそうした何か適正な規制のない現状の方が、今現在では国民の、とりわけ不妊患者の混乱とか不安を招いているのではないかというふうに考えているわけです。
  111. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 ヒト胚に法的な地位を与えるということは、胎児に対して現在刑法で堕胎罪を定めていることと対比できるかと思います。  堕胎罪は、意図して胎児を死に至らしめたときにすべからく適用されるのが原則です。そのうち、特定条件に当てはまる場合について母体保護法でその適用を除外しております。いわゆる人工妊娠中絶であります。これから見ますと、ヒト胚に法的な地位を与えるとしたときは、ヒト胚を人の手によって壊してしまったり、また生き延びられない形で捨ててしまったりすることは、既に犯罪ということになるのではないかということが考えられます。これは、人間生命の開始を受精卵の着床から見ている現刑法との線引きの問題とも関連があるわけです。  それで、産科で体外受精技術を使うときや体外受精のための研究を行うときに、日常的に行われる行為が犯罪になってしまうということにならないか。衆法では、ヒト胚のうち余剰胚にだけ法的地位を与えるわけですが、法律の基本からすれば、そのような方法はとれないのではないかと思います。  また、そのうち、余剰胚を捨てることはほったらかしにして、ごく一部の研究のためのヒト胚の破壊だけを取り上げて規制するというのもどういうものなのか。さらに、人工中絶が国の許可をとらないのに、ヒト胚研究に使うことになぜ許可が要るのか、難しい解釈が出てくると思います。  申し上げたいことは、ヒト胚法律できちっと保護しようという考え方に立てば、産科の現場で体外受精のためにつくったヒト胚を捨ててしまうようなことも規制しなければ成立しないと思うことが一つと、既に産科でいろいろな治療が行われているのに、今はやりませんが将来は規制の対象になるということでは、こういうことを法律に盛り込むのもどうかという点がございます。日常的になっている医療行為に複雑な手続が必要となって、不妊治療を望んでいる患者さんたちに混乱が起きないかということも心配されるわけです。  しかし、ヒト胚の問題については、生殖の権利など人権問題にもかかわってくるので、慎重な議論が求められる課題と考えております。拙速に結論を出さずに、国民意見をまとめていきたいなというふうに私は考えているわけです。  最後に政府に問いたいわけです。  クローン技術に関して、中には有用な利用方法もあり人類の福祉を向上させることもあるということであれば、研究の道は絶対にふさぐべきではない。問題は、規制すべきものとのバランスをどのようにとるかという点にあると考えます。有用な研究まで抑制して国民の損失になりかねないわけです。それでお伺いしますが、研究規制するに際しての政府の基本的な考え方をまず述べていただきたいと思います。
  112. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 ライフサイエンス、生命科学の研究というのは、今菅原先生がおっしゃいましたように、一つ間違えば、反社会性の強いクローン人間をつくり出してしまうというような危険性もあるわけでございます。ただ、だからといって危険なものばかりじゃない、医学的に非常に有用なものも予見されるわけでございます。  そこで、今回の政府法律案では、その前者の部分、反社会性の非常に強いクローン人間個体産生等については厳しく禁止をするということ、また研究開発については、できるだけ柔軟な規制にとどめて研究開発の道をきちっと残しておく、そのような方針に基づいてこの法案作成させていただいているところでございます。
  113. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 最後に、まさにこれからの生命倫理に関する規制の規範として、今回の法案も出てきているわけでございます。規制が複雑であるとか部分的であるとかではなく、真に我が国国家が、我が国国民が必要としている規制をつくるという観点が貫かれるようにしなければならないことを主張して、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  114. 古賀一成

  115. 北川れん子

    ○北川委員 社民党・市民連合の北川れん子です。  きょうは、産む側の性を持っている立場で質問をしていきたいと思います。  十一月八日の御答弁では、クローン無性生殖なので法律禁止する、有性生殖であるヒト胚法規制を及ぼす必要はない旨の御答弁がありました。けれども、先ほど、初めの方の議論を聞いていますと、十一月八日との違いが幾ばくかは感じられた御答弁が出てきているわけです。有性か無性かは法の線引きには関与していないというふうに理解してよろしいのかどうか、再度お伺いいたします。  これは政府の方にお伺いします。
  116. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 先ほどからの各委員質疑の中でもお答えをしたわけでありますが、関与していないということではないと思います。  例えば、今クローン人間というものを考えた場合には、法律上でいいますと三種類の胚ということで整理をさせていただいておるわけでありますけれども、この中で考えたときに、有性であるか無性であるかというのは、先ほどこれは公明党の斉藤議員からも御指摘があった点でありますが、反社会性の判断の非常に大きな一つの要素となっていることは、生命倫理委員会の答申にも書かれておりますし、政府としてもそのような意見を尊重してこの法案をつくらせていただいております。ですから、委員お尋ねの、関与していないということではないというふうに申し上げたいと思っております。
  117. 北川れん子

    ○北川委員 きょうの議論の中で問題になったのは、関与はしていないけれども、そして、答申の中にある無性であるというところを浮き立たせた表現が十一月八日に多かったところに、きょうの各委員の主張の集中があったと思うんです。  次の質問に移りますが、有性生殖なら胚の操作を行っても人の尊厳が侵されることがないとお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  118. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 尊厳が侵されないとは申し上げておりません。  しかしながら、先ほど来お答えをいたしておりますように、この点につきましては、例えば分割胚なんかの問題は、これは自然界に存在する一卵性双生児、形態上はそのことと変わらないわけです。それで、これは考え方の問題だと思いますが、そのことによって、例えば人工的に胚を分割することが果たしていいことなのか悪いことなのか。この辺のことについて、まだはっきりとした合意形成がなされていないという前提のもとで、絶対につくってはいけない人クローン個体産生というものとは少し意味が違うのじゃないか、そういう意味で、今回は区別をさせていただいているというふうにお考えをいただきたいと思います。
  119. 北川れん子

    ○北川委員 ここがやはりすごく難しいところだろうと思うのですが、次の質問に移らせていただきます。  これは政府、民主の両案ともにお伺いすると思うのですが、生殖細胞供給源、体細胞供給源などは、提供側の女性を無視してもらっては困るというか、特に卵子の提供側の女性の尊厳が最大限に尊重されることが第一義だと思っています。現在、女性の卵子の採取、使用は、当人の生殖補助医療目的以外には行わないことになっていますし、不妊治療の場合でも女性には大きな負担を強いています。  そこでお伺いするのですが、体外受精での余剰卵、余剰胚を使用するとのことなんですが、聞くところによると、体外受精において余剰卵、胚はほとんど出ない。それはなぜなのかというところを、現実に今不妊治療をした方等々のお話を聞き合わせると、自分が受精した卵や胚はもったいないと。その人にとって、何個そのときうまくとれるかどうかもわからない。そして、そのとれた幾ばくかの、十個内外だと聞いていますが、それでも使えるものがそのうちの何個かと、数が少なくなっていく。だから、少なくとも、自分がそのときベターで使えると思ったものはすべて使いたいという立場に立つのが、不妊治療をされているせっぱ詰まった女性たちの意見でありまして、ほとんど余剰卵、胚は出ないのではないかと推察するのですが、ここのところは一体どうなっているのでしょうか。  また、卵の凍結保存施設は、凍結保存すれば永久的にできるらしいのですが、国内には余りないと聞いているのですが、具体的には何カ所ぐらい全国にあるのか、教えてください。
  120. 結城章夫

    結城政府参考人 まず、二つ目の凍結保存胚でございますけれども、凍結保存施設を持つそれぞれのクリニックにおいて保存されているわけですが、そういう施設が何カ所あるかという集計をしたデータはあるとは聞いておりません。  それで、一点目の、余剰胚が実際どういうふうに今出ておるか、どの程度あるかということについても、ちょっと私ども今データを持ち合わせておりません。
  121. 北川れん子

    ○北川委員 先ほどから体外受精児が年間一万人というふうに数でぱっとあらわされるのですが、それも成功率というのは、ほとんど一〇%内外だというふうにも聞いているという背景を、ぜひその数字からも読み取っていただきたいと思うのです。  そこで次に、では卵をどのように入手されるおつもりなのか、お伺いいたします。
  122. 結城章夫

    結城政府参考人 政府案規制対象になっております特定胚クローン胚等の特定胚作成ヒトの卵子を用いる場合には、卵子がその採取のために女性に多大な負担がかかるということや、受精を経れば個体へと発生していく可能性を持っているものであることを考慮しまして、この法律に基づき作成される指針に厳格な要件を定めることにしております。その際に、現在はヒトの精子、卵子などの生殖細胞を用いた研究は日本産科婦人科学会のガイドラインもとにあるわけでございまして、そのガイドラインとの整合性についても検討していくことにいたしております。
  123. 山谷えり子

    山谷議員 女性の身体への負担が非常に大きいと言われる卵の摘出が、容易に行われることがあるならば、非常に問題が大きいというふうに考えております。このような女性の身体の安全の問題などを考えますと、卵子の研究利用は可能な限り避けるべきだと考えております。  そこで、民主党案では、研究利用されるヒトの精子、卵子の提供に関する規則を法律で明確に定め、提供に際しては同意、無償、匿名の原則を守ることを罰則つきで課しています。したがいまして、民主党案ではこういったクローン技術等にかかわる規制についても総合的、体系的にとらえようとしている点で、政府案よりもすぐれているのではと考えております。
  124. 北川れん子

    ○北川委員 不妊治療、生殖補助医療の現場でインフォームド・コンセントがなされていまして、廃棄をする云々はすべて女性が意見を出しているというふうにも言われているので、余剰胚、余剰卵の数の認定がないということに関しては、政府の今までの対応に疑問を抱かざるを得ないのですが、次に、政府にお伺いします。  二〇〇〇年三月六日に出された、ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究に関する基本的考え方の十六ページの四、その他1に、ドナーにより、凍結保存胚の破棄の意思決定が別途明確になされており、また研究利用する可能性があるということが破棄の意思決定に影響を与えないよう留意するとあります。体外受精が八三年から始まっているわけですが、現在までに破棄の意思決定された凍結保存の胚は一体幾つあったのか、お答えください。
  125. 結城章夫

    結城政府参考人 先ほど凍結保存施設の数がわからないというふうに申し上げましたが、申しわけございません、データがございまして、日本で百二十五カ所の凍結保存施設がございます。  ただ、実際に破棄の意思決定がなされた胚が何個かという点については、集計データがございません。
  126. 北川れん子

    ○北川委員 集計データがないということでありますので、以降の質問は、とりあえず余剰胚というのはほとんど日本にはないという前提でお伺いをしていきますが、これは政府、民主、両方にお伺いします。  当人の生殖補助医療以外での卵子の採取、使用には反対なんですが、もし仮に卵子の提供があったとしてお尋ねをします。この場合、卵子の商業利用、産業利用などに厳しい規制をかけるべきだと考えますが、御見解をお伺いいたします。
  127. 渡海紀三朗

    渡海政務次官 委員指摘のように、卵子の採取は女性の体に大変負担がかかるというふうに私どもも承知をいたしておりまして、卵子の商業利用は認めるべきでないというふうに考えております。したがって、クローン胚を作成するときにヒトの卵子を用いる場合には、先ほど来お話しになっておりますような方法で、しかも無償とすることなど、これは法律が上がりましたら当然ガイドライン作成するわけでございますけれども、そのガイドラインの中できっちりと方針を定める所存でございます。
  128. 城島正光

    城島議員 卵子の商業利用についてでございますが、先ほど山谷議員の方から述べましたとおり、卵子の安易な摘出というのは、女性の身体の安全を考えますと可能な限り慎むべきであり、卵子の安易な摘出につながるおそれのある卵子の商業利用、産業利用については、必要な規制を行っていくべきだというふうに考えております。  民主党案におきましては、これも先ほど申し上げましたように、この商業利用、産業利用について歯どめをかけるために、卵子の提供については無償の原則を法律において罰則つきで定めております。また、生殖補助医療及び生殖医学研究について三年以内に必要な制限を講ずることも定めておりまして、商業利用、産業利用につながる生殖医学研究についても、早急に議論を行い規制することといたしております。  政府案は、先ほども申し上げましたけれども、総合的な視点に欠けており、科学技術研究を促進することを中心に考えている点で問題があるのではないかというふうに思っております。生命倫理にかかわる問題は、科学技術庁単独では管理できない重要課題であるために、我々民主党案に定められているように、関係省庁との協議、連携を法律で定める必要があるのではないかというふうに思っております。
  129. 北川れん子

    ○北川委員 ありがとうございました。  次に、政府、民主、両方にお伺いしたいのですが、先日の御答弁の中にも、これはヒト胚研究の第三章の方をガイドラインとして使うのだというふうに政府の御答弁もいただいたわけですが、この法案が成立すればES細胞研究の道が開かれるとの御答弁でした。ES細胞研究により、人の細胞や臓器に関してオーダーメードの医療ができるということです。御答弁では、研究をしてみないことにはどのような有用性あるいは危険性があるかわからないとのことでしたが、しかし反面、研究成果がすぐに産業化に結びつくのがこの分野だとも思われます。それを行う企業や民間の研究機関が、利益追求のために研究結果を利用し特許などを取得し、情報技術を囲い込むことが考えられます。  そこでお伺いします。研究の有用性についてお聞かせ願いたいのと、企業や民間の研究機関が特許を取ること、技術情報などの囲い込みの危険性について、いかがお考えになっているかをお伺いいたします。
  130. 結城章夫

    結城政府参考人 政府案におきましては、ES細胞研究規制対象にいたしておりませんので、この法案ができたからといって、その研究に道が開かれるということには当たらないわけですけれどもES細胞研究は、行政ガイドラインをこれからつくりまして、それに基づいて実行させていきたいと思っております。  それで、その有用性でございますが、ES細胞は万能細胞とも呼ばれるものでございまして、体を構成するどのような細胞にもなることができるというものでございます。この特徴を利用しまして、現在、ES細胞から特定の細胞、組織、臓器をつくろうという研究が動物のマウスなどを用いて行われておりまして、この技術が確立することになりますと、移植用の臓器の慢性的な不足を解消することも可能だろうというふうに期待しております。  マウスのES細胞を用いた研究では、これまでに、心臓の筋肉の細胞、神経細胞、血管の細胞などに分化させることに成功いたしております。さらに、このESの技術クローン技術を組み合わせることによりまして、免疫拒絶反応の起こらない移植医療、再生医療といった医療面への応用が期待されているところでございます。  それで、特許その他との関係でございますけれども、特許制度は、そもそも技術利用を促進することも目的としております。善意により提供されたヒト受精胚を用いた研究によって、新たに有用な技術が発見、開発された場合には、それが医療などに用いられることによりまして、広く社会に還元されることが提供者の善意にこたえることになるのではないかと思います。特許制度は、こうした技術利用を促進するための制度との側面もございますので、一概に否定すべきではないと思っております。  しかしながら、ヒト受精胚そのものの商業化、これは厳に禁止されるべきものと考えておりまして、この法案ができました後に、この法案に基づいて指針を策定する際には、その点を十分配慮していきたいというふうに考えております。
  131. 城島正光

    城島議員 ES細胞の有用性については、今の御答弁と同じですから省略させていただきして、特に特許等に関する考え方について、民主党考え方を述べさせていただきます。  御承知のように、今、ヒトES細胞研究についてはかなり有用性があることも事実であります。ただ一方、現実を見ますと、ヒトES細胞の特許は、例のアメリカのジェロン社がかなり多くのものを持っておりますし、同社は、先ほどからずっと論議になっておりますクローン羊のドリーに関する特許も取得している会社でありまして、こうした一連の特許のまさしく囲い込みをやって、ヒトゲノム解読レースで有名なアメリカのベンチャー、ジェノミックス社と提携することで再生医療の商業化をねらっているというふうにも言われておりまして、こういう現状があるかというふうに思います。  したがいまして、我々としては、人類全体の医療活動の進展を阻害するような事項については特許の例外とすべきではないか、そういう国際的なルールを何としても確立すべきではないかというふうに思っております。ES細胞にかかわる研究につきましても、こうした視点を重視して、特許のあり方について国際的なルールということを含めて検討していくべきであると思っております。  しかし、この問題については、特許の是非という以前に、ヒト由来のいろいろな材料の商業化というものをどこまで認めるのかという問題が先にあるのではないかというふうに思っております。したがいまして、原料というのですか、材料になる胚等の授受というのは、先ほど申し上げましたように無償というふうに定めておりまして、我々としてはそこに第一の歯どめをかけさせていただいている。その先の、人類に共通する生命科学を基本とした応用研究については、特許というインセンティブを一〇〇%排除するというのはやはり難しいのだろう。一〇〇%排除することではなくして、しかし、有用性のある研究が進んでいくということは図るべきではないかというふうに思っております。  したがって、第一段階での公開、協調、第二段階での自由競争、これを生命科学特許の基本ルールとすべきであるというふうに思っておりまして、こうした原則に立ちつつ、ES細胞における研究についても、実情、実態を見きわめて、その商業化の暴走と特許のあり方について慎重に検討していくべきであるというふうに思っております。  民主党案は、先ほどから述べているように、これは科学技術庁、そういった一省庁、あるいは一手でできることではありませんので、全体の関係省庁との綿密な連携を法によって早急に求める課題であるというふうに思っております。
  132. 北川れん子

    ○北川委員 時間が来たのですけれども、お二方の御意見はわかったのですが、無償で始まるものに対しての特許の取り方というものは、先ほどおっしゃったように、まだまだ世界でも統一見解は出ていないし、ここはすごく大きな問題点になっていくと思います。  それで、最後にお聞きしてもよろしいでしょうか。そうしましたら、ヒトゲノムと同様に、研究成果やそれから得られた情報公開を原則とすべきではないかと考えますが、これも政府、民主、両案にお伺いしたいのですが、お答えいただけますでしょうか。
  133. 結城章夫

    結城政府参考人 こういった研究につきましては、国民理解、支持が得られなければいけませんので、可能な限り情報は公開すべきだと思っております。
  134. 城島正光

    城島議員 ことし七月の九州・沖縄サミットで採択されましたG8首脳宣言の中にも、人間のDNA配列に関するすべての基礎的な生データの迅速な公開がさらに行われるよう要請する、ゲノム配列解析に続く研究を多数国間の協力に基づいて追求することが重要だ、遺伝子に基づく発明について、可能な限り共通の慣行及び政策に基づいた均衡のとれた公平な知的所有権保護が必要だというふうに盛り込まれているわけでありまして、クリントン大統領あるいはブレア首相は、ヒトゲノムを人類共通の財産だというふうに発言をしておりまして、ゲノムが人体に直接かかわる基礎的な情報であることから、特許取得や産業化の競争に一定の歯どめをかけていると思います。  一方、ES細胞の樹立にかかわる研究については、拒絶反応のない移植用の細胞、組織、臓器等の作成など、非常に有益な成果を生む可能性がある研究でありまして、将来あらゆる臓器の細胞に育つ可能性を持つとされ、医学研究の注目を浴びているわけでありまして、このES細胞ヒト胚を使用するしか方法がありませんので、ゲノムと同じく、各人の生命や健康に基本的な関連性を持つものと考えております。  こうした情報について、情報公開をせず独占的な排他性を認めた場合、人類全体の医療活動の進展を著しく阻害する可能性があるというふうに思いますので、これにつきましても、情報公開をし、人類共通の利益を確保する国際的ルールの確立が必要だというふうに思っております。
  135. 北川れん子

    ○北川委員 どうもありがとうございました。
  136. 古賀一成

    古賀委員長 次回は、来る十四日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十分散会