運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2000-09-06 第149回国会 参議院 決算委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年九月六日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  九月五日     辞任         補欠選任      松崎 俊久君     朝日 俊弘君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鎌田 要人君     理 事                 鹿熊 安正君                 月原 茂皓君                 南野知惠子君                 川橋 幸子君                 佐藤 雄平君     委 員                 岩城 光英君                 加納 時男君                 佐々木知子君                 佐藤 昭郎君                 中島 啓雄君                 中原  爽君                 松田 岩夫君                 郡司  彰君                 佐藤 泰介君                 高嶋 良充君                 海野 義孝君                 大森 礼子君                 福本 潤一君                 阿部 幸代君                 緒方 靖夫君                 八田ひろ子君                 田  英夫君                 福島 瑞穂君                 岩本 荘太君    国務大臣        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       大島 理森君        郵政大臣     平林 鴻三君    政務次官        文部政務次官   鈴木 恒夫君        郵政政務次官   常田 享詳君        科学技術政務次        官        渡海紀三朗君    事務局側        常任委員会専門        員        島原  勉君    政府参考人        内閣総理大臣官        房原子力安全室        長        木阪 崇司君        科学技術庁研究        開発局長     結城 章夫君        科学技術庁原子        力局長      中澤 佐市君        科学技術庁原子        力安全局長    今村  努君        文部大臣官房長  近藤 信司君        文部大臣官房総        務審議官     本間 政雄君        文部省生涯学習        局長       崎谷 康文君        文部省初等中等        教育局長     御手洗 康君        文部省教育助成        局長       矢野 重典君        文部省高等教育        局長       工藤 智規君        文部省学術国際        局長       遠藤 昭雄君        文部省体育局長  遠藤純一郎君        厚生省健康政策        局長       伊藤 雅治君        資源エネルギー        庁長官      河野 博文君        気象庁長官    山本 孝二君        郵政省電気通信        局長       天野 定功君        郵政省放送行政        局長       金澤  薫君    説明員        会計検査院事務        総局第四局長   渡辺 孝至君        会計検査院事務        総局第五局長   諸田 敏朗君     ─────────────   本日の会議に付した案件平成十年度一般会計歳入歳出決算平成十年度  特別会計歳入歳出決算平成十年度国税収納金  整理資金受払計算書平成十年度政府関係機関  決算書(第百四十七回国会内閣提出)(継続案  件) ○平成十年度国有財産増減及び現在額総計算書(  第百四十七回国会内閣提出)(継続案件) ○平成十年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百四十七回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨五日、松崎俊久君が委員を辞任され、その補欠として朝日俊弘君が選任されました。     ─────────────
  3. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 平成十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、文部省並び郵政省及び科学技術庁決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これら決算概要説明及び決算検査概要説明聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 岩城光英

    岩城光英君 自由民主党の岩城光英でございます。  初めに、文部省にお伺いをいたします。  シドニー・オリンピックの開幕が迫ってまいりました。日本選手団の活躍を大いに期待しておるところであります。そのことに水を差すつもりはありませんが、決算委員という立場上、質問をさせていただきます。スポーツ振興基金についてであります。  スポーツ振興のための助成には二つありまして、一つは、民間スポーツ振興費等補助金、以下補助金と呼びます。それからスポーツ振興基金助成金、以下助成金と呼ばせていただきます。  まず、補助金の方ですが、これは国がJOC日本オリンピック委員会に委託しましてナショナルチームクラス補助をするものであります。それから助成金の方は、日本体育学校健康センター、以下センターと呼ばせていただきますが、このセンタースポーツ振興事業を行う団体等に対し、政府出資金二百五十億円と民間からの寄附を合わせて運用益を財源として援助をするものでございます。  この助成金、それから補助金につきまして、平成十年度決算検査報告によりますと、不当に交付されていた、こういう指摘がなされております。平成六年度から十年度にかけまして、四つのスポーツ団体が実施した大会開催事業及び選手強化活動事業に対する助成金交付については、事業を実施していなかった事例、あるいは過大な請求、また助成金補助金の二重計上をしていた事例等があったとされております。そして、その不当交付額は、助成金補助金合わせまして一千五百五十八万八千八百二十円となっております。  この件に関しましては、センター及びJOC審査体制が不十分であったのではないかと考えられるわけでありますが、そこで質問いたしますけれどもセンター及びJOC審査体制の現状について、また、センター及びJOC助成金交付の際の審査体制充実に向けて今度どう指導されていくのか、まずお伺いをいたします。
  8. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) お答えを申し上げます。  民主社会が成熟化してまいりました今日、私は個人的に申し上げれば、行政というものはますます公平、公正が求められております。そうした行政要請の中で、今、委員指摘決算結果報告につきましての問題は極めて遺憾と文部省として申し上げる以外にございません。  重々これまでも指導をし、監督をしてきたつもりでおりますけれども、これを教訓といたしまして、今後こうしたことのないように十分注意をしてまいりたい。研修会もこれまで以上に進めたいと考えておりますし、交付要綱等関係規定の見直し、あるいは審査体制の改善、こうしたものも可能な範囲、極力整えていきたいと考えておるところでございます。
  9. 岩城光英

    岩城光英君 それと、この助成金それから補助金、どちらの制度も、我が国のスポーツ競技力の向上あるいは国民スポーツすそ野の拡大に貢献するために財政的に支援する、こういう制度である点では共通しているわけでありますが、先ほど指摘いたしました二重計上していた、そういった事例もあるわけでございますので、この両制度の統合も含めましてスポーツ振興基金助成金制度のあり方を検討すべき時期に来ているのではないかと、そんなふうに思いますが、いかがでしょうか。
  10. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) 民間スポーツ振興助成金につきましては、先生指摘のとおり、二通りあるわけでございますけれども民間スポーツ振興費等補助金というものは、JOC日本オリンピック委員会に対しまして、ナショナルチーム編成強化つまり国レベルの、国のトップを走る選手育成強化、このための補助を目的としたものと、こう御認識をいただければと思いますし、一方、いわゆるセンター先生おっしゃるセンター助成金につきましては、もっと幅広く国民スポーツに対するすそ野を広げていくための助成金というふうに、言ってみれば、車輪の大きさは二対一ぐらいでございますけれども、両輪相まってスポーツ振興を進めているところでございます。  ただ、先生の御指摘のもう少し効率的にうまくやれないかという点につきましては私も留意してまいりたいと考えております。
  11. 岩城光英

    岩城光英君 ありがとうございました。  次の問題に移ります。  ことし三月の歯科医師国家試験問題が奥羽大学歯学部で漏れていたとされる問題が報道されております。国家試験問題と類似した卒業試験問題を作成していたのではないかという疑いでございます。  詳しい経緯については省きますが、この問題で奥羽大学学内調査委員会は、八月二十五日に、漏えい証拠を見つけることはできなかった、しかし漏えい疑惑は残る、こういう結論の調査結果を発表しました。  そして、厚生省などの調査によりますと、奥羽大学が公表しました卒業試験原本と実際に出題される予定だった国家試験問題とを比較しますと、口腔衛生分野の二十五問中十七問のテーマが一致していた疑いが強く、厚生省はこれだけ高い確率で当たるのは不自然であるとして解明を進める方針であると、こういう報道がなされております。  私としましては新聞報道のみによる理解でありますが、まず厚生省にお尋ねをいたします。  この問題にこれまでどう対処してこられましたか。また、調査中のことだと思われますが、その状況はいかがでしょうか。
  12. 伊藤雅治

    政府参考人伊藤雅治君) 今回の歯科医師国家試験問題の漏えい疑惑問題につきましては、三月上旬に匿名の電話が厚生省にあったことを発端といたしまして始まったわけでございます。  歯科医師国家試験の信頼に関する重要な問題でございまして、厚生省といたしましては、対策本部を設置しまして事実関係究明に最大限現在も努力しているところでございます。  現在までの経緯についてでございますが、八月十六日に厚生省事情聴取といいますか、学長、歯学部長さんから、この漏えいの事実があったこと及び厚生省提出しました卒業試験問題に改ざんがあったことを認めた歯学部長名の文書の提出がございまして、大学謝罪会見を行ったところでございます。  その後八月十八日に、厚生省卒業試験問題の原本提出を依頼していたところでございますが、奥羽大学におきましては、学内に設置しました調査委員会が、漏えいの認知を撤回するという会見を行ったわけでございます。厚生省は、奥羽大学記者会見によりましてさらに改ざん疑いが生じたために、八月二十一日に、八月二十三日を回答期限とする質問票及び卒業試験問題の原本提出などにつきまして要請書を送付したところでございます。  その後、奥羽大学は八月二十五日に、今、委員指摘のように、調査委員会調査結果の会見を行いまして、漏えい証拠は見つけられない、しかし疑惑は残る、こういう内容会見をいたしまして、厚生省に、卒業試験問題の原本と称しまして、平成十年度、十一年度の口腔衛生問題及び質問票に対する回答書厚生省あてに発送したわけでございます。  厚生省では、引き続き原本提出を要求していたところ、八月二十八日に奥羽大学から送付されてきました平成十年度と十一年度の口腔衛生問題及び質問事項に対する回答書を今現在精査しているところでございまして、引き続き捜査当局連携を図りながら、告発等も視野に入れまして真相究明に努めていきたいと考えているところでございます。
  13. 岩城光英

    岩城光英君 今の説明経緯等について明らかになったわけでありますけれども大臣にお伺いします。文部大臣としまして、この問題をどのように受けとめていらっしゃいますか。また、今後厚生省調査が進んだ段階で、その内容によりましては文部省として事情聴取されるなり、あるいは大学を指導していく、こういったお考えをお持ちでしょうか。
  14. 大島理森

    国務大臣大島理森君) もしそれが事実だとすれば何をか言わんや、まことに遺憾であるという感じが今しております。  それで、八月二十三日に、新聞報道がなされておることについて状況が確定次第御報告しなさい、こういうことを大学に言っております。九月六日現在、きょう現在ではまだありません。  いずれにしても、そういう調査結果を踏まえた上で、私どもとしてもどういう対応をすべきか真剣に考えなきゃならぬなと、こう思っております。
  15. 岩城光英

    岩城光英君 私立の大学にとりまして合格率は死活問題であるとか、あるいは国家試験合格率が経営を左右する、こんなふうにも言われているようであります。また、この問題に関連しまして、試験委員漏えい情報を相互に収集し合っている、こんなことも言われているわけであります。この問題は奥羽大学だけの問題でないのかもわかりません。  いずれにしましても、人命、人の命がかかっている国家試験でありますので、その解明につきまして早急に進めていただくよう要望したいと存じます。  次に、三宅島の子供たち児童生徒避難状況についてお伺いいたします。  九月四日に噴火活動が続く三宅島から、最後まで島に残っていた四百三十二名が避難されました。また同日、都立秋川高校生活しております小中高生三百五十三人の始業式が行われたようです。また、大臣は九月一日に秋川高校を訪問され激励されたと伺っておりまして、その行動力に敬意を表したいと存じます。  そこで、子供たちの勉強、授業状況あるいは生活状況はどのようになっていますか。あと、災害により親元を離れ不安な日々を過ごしているものと思いますが、特に低学年の子供たち心身の、心のケアとか、そういった問題についてどのように取り組まれるおつもりか、お伺いいたします。
  16. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 岩城委員先ほどお話がございましたように、私自身も九月一日、参りました。それで、参りまして子供たちの様子をだあっとこう見ていますと、非常に元気にグラウンドで遊んでいる姿を見て、初めはほっといたしました。そしてその後、各寄宿舎あるいは教室を整備していただいて、地域皆さんも一生懸命お手伝いしていただいたり、そういうことをしながら授業再開に向けて一生懸命努力をしている。  最後に、子供たちと会いましていろいろなお話をしました。そのときに子供たちから次のような率直な気持ちがあったのでございます。  今一番したいことは何ですかと伺ったら、うちへ帰りたいという小さい子供が一年生なんです。つまり、元気で遊んでいるんですけれども気持ちの中はそれが本音だろうと思いました。あるいは、受験を控えている子供たちにとってやっぱりそれが心配だということも言われました。ですから、元気な姿にはほっといたしますけれども、そういう子供たちの深層にある気持ちというものをしっかり受けとめてやらなければいけないなということが総括的にまず感じたことの一つでございました。  まず、教育ですから子供たちに対する対応をあらゆる観点からやらなければならないということ、これは当然でございますが、実はあそこにいる先生方、いわば親のかわりになるわけです。先生方の負担というのは大変なものがあるなと。やっぱり先生方に対する対応もすることが大事なのではないかということを私自身は感じたわけでございますけれども、いずれにしろ九月四日に始業式を実施して、我々としてはそのことに対して、まず都教委が全面的にいろいろな対策を講じていただいているわけですけれども文部省としてもできることは何かということの観点からこれから詰めてまいりたいと思います。  先ほど申し上げましたように、そういう中で第一点は、やっぱりうちへ帰りたいということへの対応としてお父様、お母様とのコミュニケーションを図るということが大事なんだろうと思います。したがって、そういうふうな仕組みと同時に子供たちの心のケアというものにどのように対応するか、あるいは集団生活というのはいろんな意味でまた大変な体験になると思いますけれども、行きますと、やっぱり自由になりたいみたいな、一見そういう気持ちもあるんですね。ですから、リフレッシュさせるということがとても大事なんじゃないだろうか。それから、先ほど申し上げましたように、受験を控えた子供に対して特別な配慮もしていかなきゃいかぬのではないだろうか、そして先生方に対する配慮というものもあるだろう、このように思っております。  いずれにしても、地元教育委員会からの具体的な要望を踏まえて適切に対応してまいりますが、本当に一番の問題は、いつまでこれが続くんだろうかということが一番前提にあるものでございますから、改めて不自由な避難生活を送られている皆様方に心からお見舞いを申し上げながら、先ほど申し上げたようなことを基本にしつつ、地元教育委員会皆様方とよく連携をとり、文部省としてもできるだけのことをしていかなきゃいかぬなという思いでまいりましたし、そのように対応をしろというふうに言っておるところでございます。
  17. 岩城光英

    岩城光英君 ただいまの大臣の話をお伺いしまして心強く思いました。私としましては、一日も早く島に帰る日が来ることを願いますと同時に、貴重な体験子供たちがしていると思うんです。ですから、自分たちがこの体験を生かして心身ともにたくましい人間に成長されるよう、またこの経験自分の人生にプラスにできるようにしてほしいな、こんなふうに願っております。  次の質問に移ります。  昨年の七月にこの決算委員会で、私は自分体験も踏まえまして体験学習とかふるさと教育の大事さを訴えました。  ところで、教育改革国民会議分科会報告の中で、小中高校での奉仕活動義務化が提言されておりまして、私も我が意を強くしているわけであります。しかし、ボランティア強制することは好ましくない、こういった意見もその後出ているようであります。  大臣はきのうの記者会見で、来年の通常国会奉仕活動を義務づける等の法案提出する、こういった予定であるということを表明されているようでございますが、この奉仕活動の問題につきまして大臣の御見解はいかがでしょうか。
  18. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 私が昨日申し上げたのは、奉仕活動充実を一層図るための対策を考えたい、こういうふうに申し上げました。  せっかくの機会でございますから、今、本当に多くの国民皆さん教育問題にさまざまな議論をいただいている。加えて、小渕総理森総理ともども私的諮問機関として多方面の方々にお集まりいただいて国民会議というものを開き、教育論議をしていただいております。政治の場として、その問題をどのように今後考えていかなければならないのか。  その中に奉仕活動義務化という文面が載っていることもございますし、昨日問われましたことは、そのことを中心新聞記者皆さんから問われたのでありますが、私は先週総理ともお会いしまして、いずれにしてもこの国民会議等議論を踏まえながら、そろそろ政治の場においてどのようにさまざまな問題を考えていかなければならないか、総理の御所見も伺いながら文部省として対応していかなきゃならない。  そういう中にありまして、今、中間報告をやがていただきます。中間報告をいただき、最終報告をいただくことに相なろうと思いますが、あの議論を総じて見ますと、今なし得るもの、また中期的に議論していくもの、長期的に議論していくものと、こう考えられるのではないだろうか。今なし得るものはきっちりと私どもとしても整理整とんをしながら、やがて出てくるであろう国民会議報告等もちょうだいしながら、来年の通常国会においてそういうさまざまな教育改革にかかわる法案を整理し、提出し、国会において御議論をいただこう、これが総理思いでもございますし、そのことも踏まえて文部省としても対応していかなければなるまい。そういうものの中に奉仕活動充実という問題も当然入ってまいりますというお答えを申し上げましたし、改めて参議院のこの決算委員会の場でもそういう方向性と決意を申し上げたいと、こう思っております。
  19. 岩城光英

    岩城光英君 ある新聞に次のような投書が載っております。十九歳の大学生の投書ですが、「奉仕活動経験必ず生きる」ということで、十七日付の「ボランティア強制でなく」という投書を読んだが、  最初は義務付けであっても、その中身を知ることで、ボランティアに関心を持つ人が増えることは間違いないと私は思っている。   一昨年から小中学校教員免許を取ろうとする学生に福祉施設などでの一週間の介護が義務付けられているが、この夏休み、私もこの介護体験した。シーツ交換、食事やトイレの介助、車いすの操作の仕方などを教えられたが、どれ一つとっても無駄だと感じたことはなかった。   介護は、利用者の方の話し相手になることが中心で、話すペースを相手に合わせ、聞き取りにくい言葉を一生懸命理解しようとした。ふだん、自己主張ばかりしていて人の話にこんなに真剣に耳を傾けることがあっただろうか、と思うほどだった。   こうした介護体験を通じ、自発的ではなくても、ボランティア活動経験することは必要だと思った。 こういう内容でありますけれども、やはりある程度教育にも強制力は必要だと私は思っておりますので、大臣、自信を持ってこの施策を進めていただきたい、こう思っております。  次に、体験学習の大切さはもう言うまでもありません。文部省も、例えば青少年いきいき体験プランとか、あるいは地域ふれあい交流事業、これらを概算要求の中に盛り込んでおります。  私も、昨年、自分体験からその大切さを申し上げました。いわき市で市長をしておりましたときに、市民講師活用事業といいまして、「市民学校にやってきた」というサブタイトルなんですが、地域のおじいさん、おばあさんに学校に来ていただきまして、地域に伝わる昔話とか遊びとかそれからわら細工のつくり方とか、そんなことを子供たちに教えていただく内容でございました。  この地域ふれあい交流事業もそういった内容を含んでいるものと私は理解しておりますし、老人会あるいは婦人会といった団体の力を得ながら、学校を拠点として地域教育力を高めるためにも役立つのではないかなと大いに期待をしているところであります。  そこで、文部省としまして、この地域ふれあい交流事業でございますが、どのように具体的に進めていかれるのか、また公民館とか学校空き教室とかそれから放課後の児童クラブ、こういったものをどのように活用していくのか、お伺いをいたします。
  20. 崎谷康文

    政府参考人崎谷康文君) お答えを申し上げます。  御指摘のように、最近の青少年問題状況等を見ますと、地域社会教育力が低下をしております。大人社会の規範意識の低下であるとか、地域の人々の連帯感あるいは人間関係の希薄化などということが指摘をされておりまして、地域社会における子供の社会性が必ずしも十分に育っていないという状況にございます。  地域ふれあい交流センターという事業につきまして平成十三年度概算要求をしておりますけれども、これは御指摘のように地域教育力の再生を図ろうとするものでございます。学校の余裕教室等を活用したり、あるいは公民館等の施設も活用して、例えば通学合宿というように異世代で泊まり込んでそこから学校へ通うというようなことなどもプログラムの中で考えております。そのような異世代、大人と子供の交流によってさまざまな、先ほど御指摘ございましたような文化の伝承であるとか、例えば高校生が幼児を育てる体験をするとか、いろんなプログラムを各県、幾つかの地域でモデル事業として展開をしていただきたいというものでございます。  地域におけるいろんな関係者の会議を設けて協議をしていただく、それで、その具体的なモデル事業を実施していただくことになりますけれども、これによりまして大人自体の意識を高め、あるいは子供の豊かな人間性、社会性をはぐくんでいくということを推進してまいりたいと考えております。
  21. 岩城光英

    岩城光英君 いわき市でも、例えばこんな試みもなされました。学校の従来の運動会を見直しまして、学校地域が一緒になって企画をし、運営をし、そして当日も親子一緒に楽しめるプログラムとか地域の方々と一緒になって子供たちが運動する、そういった内容を盛り込んで、要するに地域の交流をより密接に図っていく、こんな試みもなされております。いろんな創意工夫をされながら幅の広い事業の展開に取り組んでいただきたい、こうお願いをいたします。  次に、子供たち体験教育をしていただくだけでなく、教員の体験研修、これも極めて大事なことではないかなと私は思っております。私たちが子供のころは個性の強い、そして人間味あふれる先生がたくさんいたような気がいたしております。意欲と情熱を持って子供たちに正面からぶつかっていく、そういった先生が今求められているのではないかなと思っております。  来年度より、長期社会体験研修を実施する地方自治体に文部省補助をする事業が始まるようであります。また、さまざまな経験を持つ民間人が教壇に立つことのできるよう、専門家会議を発足させて検討を重ねるとも伺っております。これまで一カ月以上の長期社会体験研修を行った自治体は、都道府県あるいは政令市において昨年度は四十六に上ると、こう伺っておるわけでありますが、具体的にはどのような研修を行ってきたのでしょうか。
  22. 矢野重典

    政府参考人(矢野重典君) 教員が社会の構成員としてその視野を広げるために学校外におきましてさまざまな経験を積むことは、委員指摘のように、大変大事なことでございます。このような観点から、教員を民間企業、社会福祉施設あるいは行政機関等の学校以外の施設へ、期間といたしましては一カ月から一年程度派遣して行います、いわゆる長期社会体験研修が近年全国で実施されるようになってきておりまして、平成十一年度では四十六の都道府県、指定都市におきまして総計八百八名が派遣されているところでございます。  本研修の参加者からは、例えばでございますけれども、サービス業等の経験を通じて児童生徒や保護者との接し方の改善の必要性を再認識することができたとか、あるいは社会が求める人材について知ることができ以後の授業に生かすことができた等々のような感想が寄せられているところでございまして、対人関係能力の改善あるいは指導力、マネジメント能力の向上、さらには視野の拡大といったような点につきまして大変大きな成果を上げているものと私どもとしては考えているところでございます。
  23. 岩城光英

    岩城光英君 次に、文部省の唱歌について大臣にお伺いをいたします。  私たちが子供のころはよく唱歌を歌いました。今でも自然の移り変わりを感じるときなど、例えば「春の小川」とか「冬げしき」、こういったメロディーが浮かんでまいります。  いわゆる唱歌の中でも、文部省が編さん、発行した音楽教科書に載っているものが文部省唱歌とされていますが、このすばらしい点は、メロディーもさりながら、歌詞にすばらしい日本の自然や風景、人と人それから家族との触れ合い、そういったものが歌に込められているところにあると思っております。  例えば、「村祭り」という歌が文部省の唱歌にございます。歌詞は「村の鎮守の神様のきょうはめでたいお祭り日」、歌うわけにちょっといかないんです、加納先生なら歌がお上手ですから。そこで「どんどんひゃららどんひゃらら」といくわけで、三番は「実りの秋に神様の恵みたたえる村祭り」と、こういうことで始まります。恐らく森総理子供のころこの歌をしょっちゅうお歌いになられたんじゃないかなと、こんなふうに思っているわけでございますが、今の日本あるいは日本人が忘れつつある原風景というものを語り継ぐ意味でも、引き続き子供たちにこういった唱歌を歌い継いでいってもらいたい、こんなふうに思っております。  きょう午後から質問される佐藤雄平議員が、いらっしゃらなくなってしまった、佐藤雄平さんともよく二人で福島に帰る電車の中で、こういう運動を私たちしていこうかという話をすることもあるんですが、現在なかなか触れる機会のない、よい歌を歌う機会をもっとふやすべきだと思っております。  そこで質問ですが、大臣、「慎吾ママのおはロック」、これもよろしいんですが、ぜひとも唱歌の復権、これをお願いしたいと思います。具体的には、学習指導要領の共通教材として採用曲をふやすことなどについては、大臣はどのようにお考えでしょうか。お伺いをいたします。
  24. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 岩城委員と私は同じ世代ではないか、こう思います。先ほどの唱歌も、私小さいころ歌わされ、歌わされたという言葉はいかぬな、歌った覚えがございますし、そういうものが心に残るんですね。そういうものの中に、きざな言い方をすると自分思い出と同時にアイデンティティーみたいなものを感じたりいたします。したがって、唱歌の大事さというものはよく痛感をいたしております。  私どもも、もう先生御承知のように、例えば一学年では「うみ」、「海は広いな大きいな」というものを初め、それぞれ唱歌として学習指導要領の中でもきちっと豊かな情操を養うためにやりなさいと、こういうことを言っておりますが、新しい歌をつくったらどうかという御意見だと思うのでございますが……
  25. 岩城光英

    岩城光英君 いや、そうではないんです。
  26. 大島理森

    国務大臣大島理森君) より一層そういうものをきちっとやりなさいということでしょうかね。
  27. 岩城光英

    岩城光英君 新しい歌をつくったらではなくて、文部省唱歌というのは数多くあるんですが、今現在指導要領の中で載っている曲数が限られているんです。だから、その採用をもっと広げてほしいということでございます。
  28. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 確かに共通教材として示しているのでございますが、いわばそれ以外にも地方にそれぞれ独特のものもあったりしまして、そういうふうな地域の作曲家がつくった歌とか適切な歌を選んで指導しています。  今の先生の御指摘でございますが、もっと広げろという御意見でございますので、ちょっと勉強してみます。  音楽の先生は、それぞれに判断して子供たちにいい音楽を教えていただいているんですが、余り広げて、何かこれを歌いなさいみたいにたくさんやるより、ある程度基本は押さえながらも、先生方地域の事情や、かといって今の子供は、音楽がこんなにはんらんしておりますので、やっぱりおもしろくなきゃいけないという面もあるわけでございますので、いずれにしても、先生思いというものはよくわかりましたので、ちょっと勉強させてください。
  29. 岩城光英

    岩城光英君 私どもも、先ほどお話を申し上げましたとおり、佐藤雄平議員とともに福島でそういった運動を起こしていきたいと、こう考えておりますので、ぜひともよろしくお願いしたいと存じます。  最後質問になりますが、郵政大臣にお伺いをいたします。  郵便局は、国民に最も身近な窓口の機関としまして地域に密着したサービスを展開し、地域社会にも貢献できる国民共通の貴重な財産だと思っております。地方分権の時代だからこそ地方の市町村の行政とより連携を深めながらさらなる活用を図っていくべきだと考えております。郵政省ではまちづくり協議会等を設け、さまざまな試みもなされておりますし、ワンストップ行政、これも大いに期待をされているわけであります。  そこで質問でございますが、現在、地域社会連携してどのような施策を郵便局は行っていますでしょうか。また、今後、郵便局と地域との連携をどのように進めていくおつもりでしょうか。あわせて、もう一つ、災害の問題につきましても、現在、市町村あるいは県と郵便局の間で災害時の相互協力の協定、こういったものが締結されているようですが、この協力協定についてもできるだけ早く全国展開していく必要があろうと私は思っておりますので、その辺の御見解もあわせてお伺いをいたします。
  30. 平林鴻三

    国務大臣(平林鴻三君) 岩城委員は地方行政に豊富な御経験をお持ちでございますし、これまでの間に郵便局がいろいろお世話になったことと存じます。  ただいまの御質問地域社会との連携の問題というのは、基本的な考え方といたしましては、全国に二万四千七百の郵便局がございます。このネットワークを活用いたしまして、郵便局が情報と安心と交流の拠点としてふさわしい機能を果たすように地方公共団体などとの種々の連携の施策に取り組んでおるところでございます。  若干具体的に申しますと、第一は、過疎地域の高齢者に対して外務職員による励ましの声かけ、あるいは郵便物の集荷サービスなどを行ういわゆるひまわりサービスというのをやっております。これは市町村の数は限られておりまして、百九十一現在やっております。  それから、第二といたしまして、災害の前兆になりますような現象の早期発見あるいは災害時の相互協力を行う防災協定の締結をやっておりまして、これは二千三百四十の市区町村でやっております。  それから、第三番目といたしまして、行政情報端末、これは八つの市や町でやっておりますが、住民票の写しなどの自動交付機を設置する、また住民票の写し等の、ちょっと失礼しました、行政情報端末は八市町村、それから住民票の写し等の自動交付機は大宮と羽曳野の二つの市で実験的にやっておるというような状況でございます。  そこで、今後のことでございますが、来年一月に総務省が発足をいたします。そうなりますと、自治省と郵政省は合体をするわけでございますので、既に本年の四月から自治省との間で地方公共団体と郵便局の協力体制のあり方についての研究会を開催いたしておりまして、この検討を踏まえまして、関係省庁及び地方公共団体との連携協力のもとに、地方公共団体、郵便局相互のさらなる連携施策を制度改正も含めまして検討を進めていきたいと、そう思っておるところでございます。  また、災害の問題に関しましてもその他の問題に関しましても、地域の住民との密接な関係を保つという面におきまして、例えば児童の緊急避難場所として郵便局を提供するいわゆる子供一一〇番とか、あるいは介護の講習会をやりますとかパソコンの講習会をやりますとか、さようなことも積極的に各地の郵便局でやっておるところでございます。  仰せになりましたように、郵政省では、まちづくり協議会という名前で申しておりますけれども、各郵便局で地域の指導的な立場にあられるような方、オピニオンリーダーというような方々をメンバーとしてそういう協議会をつくりまして、その場を通じて地域の要望を把握して連携の施策を一段と推進してまいりたいと、そう考えておるわけでございます。  ちょっと時間がたちましたけれども、もう一つの御質問が例の防災協定の問題でございます。  これも、おっしゃいますように、全国展開をするという方向は私はこれから持っていく必要があろうと思っておりますが、現在、三千三百市町村のうち約七割が郵便局と市町村との間の協定を締結いたしております。また、都道府県につきましては、六つの都県で郵政局との間で協定を締結いたしておりまして、いわば施設、用地の相互提供でございますとか、住民の避難先等の情報の相互提供でございますとか、あるいは避難所への臨時郵便の差し出し口の設置とか、いろんなことを協定に基づいてやっておるわけでございます。今後とも、積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  31. 岩城光英

    岩城光英君 終わります。  ありがとうございました。
  32. 加納時男

    ○加納時男君 加納時男でございます。  ジェー・シー・オー事故の教訓と対策について伺いたいと思います。  ジェー・シー・オーの臨界事故が起こったのは去年の九月三十日でありますから、約一年たつわけであります。あの事故は、違法な作業によるものである、また実験炉用の特殊な燃料の加工工場という特殊なところで起こった事故である、放射能事故ではなくて放射線事故である、いろんなことがありますけれども、私は言いわけはだめと思っております。起こったものは起こった、この事故を真剣に受けとめなければならない。何よりも、我が国で初めて作業を行っていた方二名が亡くなるという事故でありました。また、国際的な原子力の事故評価尺度でありますINESで見ますと、事故と言われているのが四以上でありますが、日本で初めてレベル四の事故でありました。  こういったことを正面からとらえて、この一年間いろいろな対策を私ども国会でも議論し、やってまいりました。  科学技術庁長官、大島国務大臣にお伺いしたいと思いますが、この一年間科学技術庁ではこのジェー・シー・オー事故をどのようにとらえ、これからどのような教訓を学ばれ、そして対策を講じてきたのでしょうか。一年間ちょうどたちますので、総括してお答えいただけたらありがたいと思います。
  33. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 加納先生はその道の専門家でございます。私自身も、むつ小川原開発ということのみならず、原子力発電の予定地があって、原子力問題にはかなり長くいろいろとかかわってきた一人でございます。  先般、行ってまいりました、東海村に。三十一日に行ってまいりまして現場を見ましたときに、改めて強い怒りを覚えました。あってはならない。あの写真で見てここがというふうなことを思っておりましたが、本当にここで起こったその姿を見ましたときに、そのことによって原子力政策、エネルギーに対する国民の不信と不安、あるいは地元皆様方の心配、不安、不信、一気にそこで取り崩してしまったあの事故は許せない。ましてや、先生指摘のように裏マニュアルでやったと。  私は、あのとき見て、なぜこういうことが起こったのかといったときに、改めて第一点、原子力エネルギーにかかわる人たちの、効率を求めるという民間企業の至上命題が僕はあるんだろうとは思いますが、効率を求めるというその最大の基本は、実は原子力の場合は安全性ということをしっかりと踏まえることが効率性を求める結果になるんだ、そういう責任感というものをまず原子力エネルギーに携わる、あるいは研究においても携わる皆さんがしっかりと踏まえていただくことが最も大事だということを痛感いたしました。  あの事故以来、二本の法律をつくって、そしていわゆる今までのチェック体制というのは、今でも覚えていますが、あのときに、事前のチェックに対しては日本の規制というのはもう世界に冠たる私は厳しい規制であったと思うんですけれども、それを運営していく過程の中のチェック体制というのは弱かった。したがって、それを反省し原子炉等規制法の改正を行った。それから、もし何かあった後の防災体制、このことについても手だてをした。法律の手だてはいたした。問題は、これからやはりあの事故というものを忘れることなく、先ほど冒頭に申し上げましたように、原子力に携わる人たちは安全性というものがすべてにおいて基本であるという高い認識を持って行うこと以外にある意味ではないなという思いを持っているところでございます。  いずれにしても、この間お邪魔したのはあの事故というものを私どもは忘れてはならないという思いで行ってまいりましたが、この二本の法律を前提にして、さらに私どもは執行において充実をさせていかなければなりませんし、何といってもその現場で実際に仕事をされる皆さんの高いモラル、こういうものを絶えず絶えず訴えかけていくことが最も大事なことではないか、こう思っております。
  34. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  日本の原子燃料サイクルの拠点であります青森御出身の大臣のお言葉どおり、私は原子力に対する長い間築き上げてきた国民の信頼を傷つける、まことに、怒りという言葉を大臣使われましたけれども、同じ心境でございまして、怒りを感ずる事故でございました。  この一年間、私ども立法府としましても、行政府と連絡をとりながら、直ちに緊急医療、それから住民の健康診断、それから風評被害への補償、さらには今、大臣お触れになられましたこの国会でつくりました安全管理対策、原子炉等規制法の改正、それから防災新法と言っていますけれども、原子力災害特別措置法の制定、そして補正予算、さまざまなことをやってまいりました。  今、大臣は御回答の中で安全性こそすべての原子力の基本であると申されました。当事者がそのことを肝に銘じていくことこそ効率化のまた出発点でもあるとおっしゃいました。全く同感でございます。さすればこそ、原子力事業者が、発電、濃縮、加工、再処理すべてを含め、すべての原子燃料サイクルの関係者が垣根を取り払って、NSネットと言っていますが、ニュークリアセイフティーネットワークを世界に先駆けてつくり、これのもとにピアレビューという仲間内の目で率直に安全性をチェックし合っていこうということ、これは大きな私は前進であろうと、つらい事故であったけれども教訓をしっかり学んできたと思います。大臣の御答弁ありがとうございました。  今のお話伺いながら、残された問題は何だろうかと私は感じました。三つあるような気がします。  一つは、事故後、私、テレビに一カ月間で五回、生テレビも含めて出たわけでございますが、その中で申し上げたことの一つは、安全審査の基準が十分であったのかどうか。特に、この東海村で事故を起こしたものは普通日本でつくっている燃料じゃないんですね。御案内のとおり、ウラン濃縮度九〇%を超えて一〇〇%近い爆弾のようなものは日本はもう絶対つくらないわけでありますが、普通扱っている、つくっている燃料は五%未満のものであります。低濃縮のものであります。この事故を起こしたのは、高速増殖炉実験用常陽のための特殊な燃料を外国で濃縮してもらったものを日本に持ってきて加工する、一八・八%という中程度の濃縮度のウランだったわけです、全く特殊な燃料なんですが。こういった特殊な燃料の加工に関する安全審査の指針がどうだったのかというのが第一点。  第二点は、緊急医療体制であります。これが十分であったのかどうか。  三つ目は、住民不安感。というのは、先ほどの大臣の御答弁にも住民の方に大変大きな不安を残したとおっしゃいましたけれども、この不安が一年たってもなお消えないとすればどうしたらいいのかという、この三つが私は問題だろうと思います。  以下、この三点に絞って少し質問を続けさせていただきたいと思います。  初めに、これは総理府の方に所管が移ったようでございますけれども、安全審査指針の見直しについて伺いたいと思います。  先ほど申し上げましたように、ウラン燃料の加工設備の安全審査指針というのはあるんですけれども、中程度の濃縮、つまり五%超二〇%未満という、そういう特殊な燃料についてのウラン燃料の加工に関する施設の安全審査指針は不十分だったんではないかということを私は国会でも委員会で申し上げましたし、それからまたテレビでも事故後に直ちに申し上げてきたわけでございます。その後約一年たつんですが、その後の検討はどうなっているんでしょうか。進んでいるんでしょうか、進んでいないんでしょうか、総理府の方からお答えいただきたいと思います。
  35. 木阪崇司

    政府参考人木阪崇司君) 御説明申し上げます。  原子力安全委員会におきましては、ウラン加工工場臨界事故調査委員会を設置いたしましてこの事故調査に当たったわけでございますが、その報告を受けまして、原子力安全委員会といたしまして平成十一年十一月十一日より、核燃料安全基準専門部会、これにおきまして核燃料加工施設の関係指針類の見直しの検討を始めたわけでございます。この核燃料安全基準専門部会におきます検討結果につきましては、本年八月十日に原子力安全委員会においてその検討結果の報告が行われたところでございます。現在、一般の方々に対する意見公募を実施中という段階でございます。そういう意味では基準の指針の検討に際する最終段階に現在来ているということでございます。  その主な内容でございますが、この専門部会の報告書におきまして、まず第一点といたしまして、五%以上のウラン加工につきまして、現在、先ほど先生が御指摘の点でございますが、株式会社ジェー・シー・オーにおきます事故を踏まえまして、五%以上のウラン加工について臨界事故を具体的に想定するとともに、溶液状のウランに対しましては全濃度安全形状管理を基本とする等の臨界を起こさないための措置を講じる、あるいは万一臨界が起きた場合にもこれを未臨界にするための措置を講じる、そういうこと等を内容といたします濃縮度五%から二〇%に対応する安全審査指針を整備するというものでございます。  第二点といたしましては、濃縮度五%以下の現行のウラン加工施設を対象とするウラン加工指針について改めて検討いたしました。  濃縮度五%以下のウランにつきましては、物理的に臨界に極めて達しがたい、かつ専ら軽水炉燃料の製造に供され、取り扱いが極めて定常的かつ規則的に行われておるということ等のため、五%以下の現行指針におきましては現在においても妥当であるという結論でございました。  さらに、同専門部会におきましては、第三点といたしまして、臨界事故での教訓を踏まえまして、これらの安全審査指針とは別に運転管理等に属する部分についても臨界事故の発生を防止する上で重要事項というものを新たに取りまとめたものでございまして、それを提示するということがなされたものでございます。  冒頭にも申し上げましたけれども、これらの内容につきましては、現在、安全委員会におきまして意見公募を実施中でございますので、その結果を踏まえまして、反映すべき意見を反映した上で安全委員会として決定するということになっているところでございます。
  36. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。概要はわかりました。  五%以上とおっしゃったけれども、五%超過というのが正確かと思いますけれども、これは細かいことですから結構でございます。  私は、今のお話で、全濃度について対策を講ずるんだということでございますが、液状のものですね、今回の、三つぐらいポイントがあるような気がします。パブリックコメントを今求めておられるという指針を私も読ませていただきました。その上で質問をしたいと思うんですけれども一つは、想定すべき事故に臨界事故を初めて規定して、そして隔離を明確に確保するように規定したというのが指針の3にありますね。それから、指針の10では今おっしゃった溶液状のウランに対する原則としての形状管理、それから指針の12で臨界を想定した措置、未臨界とするための措置ということが書いてあります。こういうことだと思うんです。  ちょっと細かい質問ですが、非常に大事なことなので伺いたいんですが、今のお話で、指針を読んでみますと、私は形状管理、質量管理と、両方の安全基準を設けるべきではないかということを国会でも申し上げてきたわけでありますが、指針の10の(1)というところを見ますと、形状基準を明記しているように読めます。ところが、(2)を読みますと、形状基準が無理ならば、質量、濃度基準でやるんだと、こんなふうに読めるんですが、あらゆるものについて形状基準を適用しないということでしょうか。この辺、ちょっと読み取りにくいので、説明していただきたいと思います。
  37. 木阪崇司

    政府参考人木阪崇司君) 御説明申し上げます。  今、先生申されましたように、今回の「特定のウラン加工施設のための安全審査指針」におきましては、溶液状のウランを取り扱う場合の臨界安全の確保については全濃度安全形状とするということを基本としております。本指針に基づきまして、安全審査では、当該設備、機器が全濃度安全形状とされることを慎重に確認していくということが行われるというふうに理解しております。  御指摘の指針の10の(2)におきまして、(1)、すなわち全濃度安全形状とすることを基本とするというこの規定を適用することが困難な場合というのが規定されております。この趣旨は、仮に全濃度安全形状とすることによりまして作業が煩雑化し、かえって安全性が損なわれるということを申請者が立証した場合には、他の方法による臨界安全管理を例外的に認めるというものでございます。当然ながら、その場合であるか否かにつきましては厳格な審査が行われるということでございますが、あくまでも私どもとして全濃度安全形状を確保するということを基本として安全審査を進めていくという姿勢には変わりはないわけでございます。  例えばということでございますが、臨界事故を起こしましたジェー・シー・オーの施設に例えば今回の特定ウラン加工指針を適用するというふうに仮定した場合には、当然のことながら全濃度安全形状による臨界管理等が必要となるわけでございますので、所要の措置がとられない限り許可されないということになるのではないかというふうに考えております。  いずれにいたしましても、ジェー・シー・オーのウランの加工施設におきます臨界事故は、許認可の範囲を逸脱した違法作業によりまして引き起こされたものというふうに理解しておりまして、このような事故の防止につきましては、先般の炉規法の改正、あるいは設計あるいは運転管理段階におきます安全確認に係る所要の措置全体によりまして確保されるということでございまして、安全委員会として再発防止に向けて万全を期してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  38. 加納時男

    ○加納時男君 今の回答では私は必ずしも十分に納得できないんですね。というのは、全濃度安全形状を基本とするからいいんだとおっしゃったんですが、それは(1)に書いてあることなんです。私はこれは正しいと思うんです。(2)に行くとこれが困難な場合はというから、全濃度安全基準が困難な場合ということに読めちゃうじゃないかというのが非常に心配なことなんです。そうじゃないとおっしゃるならば反論いただきたいと思うんです。  つまり、私が言いたいのは、事故の後、私は直ちに現地に入っています。ジェー・シー・オーの沈殿槽ももちろん見ていますし、ほかの沈殿槽も見ております。現地にある三菱原子燃料の沈殿槽も見ています。全工程を確認しましたけれども、全工程が形状管理されていたというふうに私は三菱の設備は見ました。もちろん、沈殿槽ですから、この間やったような違法な作業のための設備ではないということはよくわかるんですけれども、やはり私は、原則は、困難な場合はというのを書いちゃうと、どうしても困難な場合どうするのかというと、質量だとか濃度等について制限値があればいいんだというふうにこれはなっちゃっているわけですね。まだこの指針は決まったわけじゃないんで、パブリックコメントを求めている最中ですから、回答はもうこれ以上結構ですけれども、私はそういう心配をしているということだけは記録に残させていただいて、これからのさらなる検討をお願いしたいということにこれは、きょうはとめておきたいと思います。  続いて、ジェー・シー・オーに関する責任問題について一言伺いたいと思います。  この事故について、ジェー・シー・オーが悪い、違法な作業だ、裏マニュアルをつくった、その裏マニュアルにさらに違反をした、もうとんでもないことだというのが実は事故の直後の私の第一回目の発言内容でございましたし、今日も変わっておりません。同時に、ジェー・シー・オーだけが悪者、あとは関係ないというのもおかしいのではないか。やはりジェー・シー・オーに発注したところは一体どこなんだということでございます。  これは、実はジェー・シー・オーの経営体質が悪化していたことは後になってみるとよくわかったわけですが、経営体質の悪化していたジェー・シー・オーに中濃度のウラン加工という特殊なものを委託したところはどこかというと、JNC、旧動燃であります。動燃はなくなっちゃったから責任ないと言われても困るんですけれども、核燃料開発機構であります、現在の。そして、JNCというのはだれが監督していたのかというと、これは科学技術庁である。科学技術庁の分身とも言えるところであります。  とすると、こういったところの責任はどうなのか。委託した責任、十分なチェックをしなかった管理責任、それから国民に対する十分な説明ができなかったとすると説明責任、こういったことはどうなのか。大変厳しい質問ではありますけれども、ぜひ、一年間たちましたので、はっきりとお答えいただきたいと思います。
  39. 中澤佐市

    政府参考人(中澤佐市君) ただいま加納先生からございました委託者としての責任の問題でございますが、まさに先生指摘のとおり、サイクル機構はジェー・シー・オーに対しまして昭和四十七年から常陽向けの燃料として委託をしてまいりました。今回のこの転換加工の委託につきましても昭和六十一年からジェー・シー・オーに委託してきたものでございます。  今回の委託に当たりまして、サイクル機構が契約に基づきましてジェー・シー・オーより提出させてもらっている転換加工要領書というのがございますが、この中におきましては、操業は溶解バッチ当たり二・四キログラム・ウラン以下という管理限界内で行うというふうにされておりまして、これまでも同様の転換加工要領書あるいはジェー・シー・オーにおきます品質保証計画書、これを取り交わして委託をしておりましたことから、ジェー・シー・オーにおきまして、品質管理はもとより、当然安全管理についてもしかるべき体制で厳格に実施されているものと認識していたと承知しております。  先生御案内のとおり、各原子力施設の安全確保というものは施設を有する事業者が国の安全規制のもとで責任を持って行うというのが原則でございまして、今回の事故は大変不幸なものでございますけれども、サイクル機構に法的な責任はないものと考えております。  しかしながら、今回の臨界事故の教訓から、先ほど先生お触れになりました、昨年十二月に設立されましたニュークリアセイフティーネットワーク、あるいはこれは茨城県の中でございますけれども、本年一月に茨城県内にあります二十一の原子力事業所の間で締結されました原子力事業所安全協力協定といったものを通じまして、原子力事業者間での安全強化のための協力活動というものをサイクル機構も進めているところでございますので、今後とも万全を期してまいりたいと思っております。
  40. 加納時男

    ○加納時男君 法律的な責任はないけれども、道義的な責任といいますか、そういうことは感じているということの回答かと思いますが、責任をしっかり自覚してやっていっていただきたいと思っております。何よりも再発防止対策をきちんとやっていくということが一番の私は責任を果たすことだと思っております。  これからの質問は極めて重要な事項になりますので、少しゆっくりしゃべらせていただきたいと思います。  ジェー・シー・オー事故が起こって、それに対する影響の科学的評価と説明責任という、抽象的に言うとそういうことでございます。  事故発生後、三百五十メートル以内の方には避難勧告が出され、それから夜に入りまして十キロメートル以内の住民の方には屋内退避が勧告されました。当時、野中官房長官は、たとえ後になって過剰過ぎると言われても構わない、この際、大事をとって徹底的に対策を講じろということで十キロメートル退避が決まったわけであります。  私は、当時のこの野中官房長官の決断といいますか、判断は政治的な判断として極めてすぐれた判断であると今でも思っております。そして、これを尊重して県がとられた措置も私は妥当であったと。これが第一点であります。あの措置が間違っていたということは私は決して言いません。政治的な判断として正しかったというのが第一であります。  しかし、第二に、先ほども大臣が、現地に行かれて、住民があの件で非常に不安を持ったとおっしゃいました。今日でも心の、私も実は茨城に暮らしたことがありますのでよく知っておりますけれども、あの県民性も考えると、あのときに十キロメートル以内に住んでいた方が屋内退避を勧告されて家の中で閉じこもっていた。あれがずっと心の傷になっているというか、ひっかかっているわけです。  確かに安全だ安全だとは後から健康診断して言われるけれども、あそこまで言われたんだからきっと何かあったんじゃないか。そういえば、最近頭のぐあいが悪い、夏になって少しだるいけれども、みんなあのせいじゃないだろうかと何となく不安がある。この心情は私はよくまたわかるわけであります。  そこで、第三、これが質問になるわけでありますが、今になってみると、少なくも科学的、技術的にはあの十キロメートル以内の避難はしなくても済むような放射線のレベルであった。もっと言いかえると、あの避難は政治的に正しかった、けれども科学技術的には必ずしも必要はなかったんだということをはっきり言っていただくと、住民の方が、ちょうど一年たちますけれども、すっきりされると思うんです。これは極めて大事な質問なんで、ぜひ明確にお答えいただきたいと思います。
  41. 今村努

    政府参考人(今村努君) まず、私の方から経緯について若干補足的に御説明申し上げます。  今、先生がお触れになりましたとおり、あの屋内退避の措置は念には念を入れて対応するという方針のもとでとられた措置ではございますが、その背景といたしましては、その時点で、すなわち昨年九月三十日午後八時半の時点で、まだその事故現場において臨界が継続しており、事態が終息していなかったこと、それから周辺の環境モニタリングのデータで、例えば現場から七キロメーター離れたモニタリングポストを含めまして、空間のガンマ線量率が一時的に上昇していたこと、そのレベルは、先生指摘のとおり、屋内退避措置を必要とするレベルではなかったわけでございますが、そうした七キロ離れたところでもモニタリングポストの空間線量率が上がっていた傾向を示していたことといったことが背景にありまして、そのような屋内退避の措置が講じられたということでございます。  そこで、それが現時点で科学的に見てどうかということでございますが、まず、事故の後、周辺住民が受けました放射線量につきましては、科学技術庁事故調査対策本部が専門家の御協力も得まして周辺環境の線量評価をいたしました。その結果によりますと、ジェー・シー・オーの転換試験棟の三百五十メートル以内のところは避難をしておられたわけでございますが、それの外側の屋外におきましては、その線量が一・二ミリシーベルトと極めて低いものであった、それより遠いところはなおさら低いということであったと。したがいまして、この線量は原子力安全委員会が防災指針で示しております屋内退避が必要となるレベルには達していなかったということが後の評価で確認されているところでございます。  その線量評価結果を踏まえまして、科学技術庁といたしましては、茨城県等とも相談をいたしまして、放射線を受けられた方々の健康問題について検討いたしました。その結果、この放射線のレベルでは影響が発生する線量レベルではないこと、長期的に見ましてもその影響の発生の可能性は極めて小さく、それは検知できないであろうということであったわけですけれども、周辺住民の線量を受けたという不安にこたえるために、健康相談あるいは健康診断を行うということにいたしたところでございまして、これを実施いたしております。  この放射線影響の結果につきましては、科学技術庁が茨城県等の御協力も得て、住民説明会の開催、住民相談、健康相談窓口、あるいは広報資料の配布等によりまして説明を行うという努力を続けてきたところでございます。  以上でございます。
  42. 加納時男

    ○加納時男君 今おっしゃったことは事実としてわかりました。  今のお話の中でちょっと気になったのは、一時的に線量率が増加していたということが気になったということをおっしゃいました。七キロメートル離れたところで、科学技術庁それから原子力安全委員会の報告書等を見ますと、〇・三マイクログレイ・パー・アワーというのが出ていたということですね。平常よりも高い。確かに平常よりも高いんですが、屋内退避の基準というのは十ミリシーベルトなんですね。十ミリシーベルトになるためにどのくらいの時間がこれ継続したらなるのかというと、七キロメートル地点のところでいうと約三万三千時間かからないと十ミリシーベルトにはならないから、これだから退避勧告を妥当としたというのは、私は余り正しくないんじゃないかなと思います。しかし、大事をとったということを私は間違っていると言っていないんです。  最後に、大臣にこれを伺いたいと思うんですけれども、今、局長からも話がありましたように、今から考えてみると、退避しなくてもいいレベルのものであったけれども、当時大事をとって、よくわからないこともあったので大事をとって避難勧告したあの判断は正しかったというのが私の感触なんですけれども、つまりもっと言いかえると、あれは政治的に正しかったけれども技術的には不要なレベルだったと、こういうことを明確にしていただきたいと思うんですが、大臣いかがでしょうか。
  43. 大島理森

    国務大臣大島理森君) あのとき、私は衆議院の議運委員長をやっておりまして、亡くなられました梶山先生がもう烈火のごとく怒りまして、君も同じ原発あるいは原子力施設を持っている地域ならわかるだろうと。本人にいたしますと、長い間、黎明の期から東海村で原子力政策に携わってきた大先輩として、あの事故が起こったときの思いというものを私は今でも忘れません。  したがって、当然に内閣危機管理としては、先ほど局長が答弁したように、いわば念のための措置として、また野中官房長官の決断としてああいう措置をしたのは、私はある意味では当然であったろうと思います。  しかし、その後、今、局長お話しされましたように、十ミリシーベルト以上ということについては、三百五十メートル圏外の十キロ以内というんですか、これには達していない。このことが確認されたということだけは事実としてきちっと申し上げておきたい、改めて申し上げておきたいと、こう思っております。
  44. 加納時男

    ○加納時男君 大臣、ありがとうございました。この件については、私も非常にきょうは心がすっきりいたしましたので、住民の方にお会いしたときもきょうの大臣のお言葉をぜひ伝えたいと思います。ありがとうございました。  きょうは資源エネルギー庁にもおいでいただいているので、一言伺いたいと思います。  オフサイトセンターを防災新法でつくることにしていますけれども、その後の進行状況はいかがでしょうか。
  45. 河野博文

    政府参考人(河野博文君) お答え申し上げます。  オフサイトセンターの整備状況でございますが、これは、先ほど先生も御指摘になりましたように、原子力災害対策特別措置法に基づきまして国、自治体、事業者が一堂に会して緊急時対策を講ずるための拠点ということで、先ほど御指摘になりました平成十一年度の補正予算で所要の資金手当てを行ったところでございます。  その後の整備状況ですが、それぞれの地点におきまして発電所周辺、既に建設予定地が決定をいたしております。現在、私どもが決めさせていただいた基準に基づきましてそれぞれの道あるいは県が建設のための詳細設計を行っているというところでございますので、近いうちに順次着工が予定されていると、そういう状況にございます。  また、これはハードでございますが、運営というソフトの面に関して申し上げますと、原子力災害危機管理関係省庁会議で定められました災害時の関係省庁マニュアルなども踏まえまして、発電所関係につきましては私どもの方でオフサイトセンター運用マニュアルを道あるいは県に提示させていただいておりまして、さらに個々のセンターで運用方法について検討するという状況にありますので、私どもの方から派遣をしております現地駐在の原子力防災専門官、これが調整に当たって作成をするという状況にございます。
  46. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。オフサイトセンター、しっかりと建設を進めていっていただきたいと思います。  二つ目のテーマに移りたいと思いますが、原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画、いわゆる原子力長計について伺いたいと思います。  私の残っている時間があと五、六分でございますので、一点に絞って伺いたいと思います。  FBRの問題であります。高速増殖炉、FBRの開発でございますが、自由民主党の中に設置されましたエネルギー総合政策小委員会ではかなり明確な見解をまとめたところであります。五月に発表しましたけれども、それはFBRの商業化は急務ではなくなった、この一行がもう新聞に非常に大きく載っちゃったわけでありますが、ただし、がちゃんとあるんですけれども、ただし高速増殖炉の開発は長期的に見れば発展途上国のエネルギー需要の増大、そして原子力が今アジアを中心に六十二基、現実に建設中あるいは建設準備に入っています。欧米では確かに発注はとまっていますけれども、世界全体では原子力は進んでいる。その中で必ずウランの需給が逼迫することも中長期的にはあり得るシナリオなので、そのときに備えて研究開発は種を消してはいけない、火を消してはいけない、しっかりとRアンドDをやっていくべきだというのがその答申に書いた内容でございます。  そういう点に立つと、現在の原型炉「もんじゅ」をどうするのか。「もんじゅ」についてはこれは原型炉であります。実験炉というのは常陽でありますが、学校に例えますと、小学校が実験炉、中学校、義務教育の第二段目が原型炉、これが「もんじゅ」、その上が実証炉、これが高校で、商業炉が大学、こんな感じでございますが、その義務教育の途中、入った途端に「もんじゅ」がとまってしまったわけであります。二次系、放射能に関係のないナトリウムが漏れたという事故で、国際的なレベルで見るとごく初期的なレベルのレベル一なんですけれども、しかしそれでも日本では大騒ぎになりまして、現在もとまっちゃったままであります。  私は、この「もんじゅ」をどうされるのか伺いたいと思います。特に原子力長計の中で、高速増殖炉については実用化時期を含め柔軟に対応というので、私はこの考え方は非常に正しいと思いますけれども、具体的に「もんじゅ」、これだけお金をかけてつくり、そして長期的にも私は大事な研究の芽だと思うので、将来の炉型は「もんじゅ」に決めなくてもいいと思いますけれども、少なくも安全審査をまずしっかりやって、そして「もんじゅ」の運転を再開し、そしてデータをとって、これからの炉型戦略を考えていくというのが正しいのかなと思いますけれども、科技庁さんの御見解はいかがでしょうか、伺いたいと思います。
  47. 渡海紀三朗

    政務次官渡海紀三朗君) ただいまも先生指摘のように、「もんじゅ」は随分長いこと今までさまざまな試みをしてきたわけでございます。また、費用といたしましても平成十一年度までの二十年間で、既に建設費として約四千五百億円、運転費として約千六百二十億円を政府支出として、これは出資でございますが、支出をしてきております。一方、これまでに得られた成果といたしましては、やっぱり設計、建設及び試運転を通じて、発電設備を有する大型の高速増殖炉ということで一定の知見を蓄積してきているものというふうに考えておるところであります。  現在、原子力委員会で審議中の長期計画におきましても、発電プラントとしての信頼性の実証と運転経験を通じたナトリウムの取り扱い技術の確立という所期の目的、このことを達成するために早期の運転再開が必要というふうにされております。  いずれにいたしましても、あの「もんじゅ」の事故で一番問題だったのは、やはりパブリックアドレスの問題と、そしてもう一つ体制の問題ですね。その後、さまざまな組織の改編等も行われたわけでありますけれども、そういったことをしっかりした上で、今後そういった方針のもとで、まずはやはり地元住民の皆さん、また当局の県なり市なり、そういった了解を得て、国としてこれまで続けてきたことに対して一定の成果を得るという努力をしていかなければいけないというふうに考えておるところでございます。  なお、余談でございますけれども、これからのエネルギー事情というものを考えましたときに、やはりそういう成果を日本として蓄積をしておくということが大変重要であるというふうに考えておるところであります。
  48. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  ほかの国がやめているから日本もやめるべきだというようなことではだめだと思います。日本はやっぱり世界の期待を担って、今、政務次官がおっしゃったように、世界ができなければ、日本はやれる技術と資金がある、人材もいる。ならば、その間に日本はしっかりと蓄積をして、世界のむしろトップランナーとなって貢献していってほしい。そのためにも安全審査の早急な開始とそれから運転の再開を私は求めて、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  49. 佐々木知子

    佐々木知子君 自民党の佐々木知子でございます。  実は、文部省には歴史教科書の問題や英語教育の問題、パソコン教育に関連してなど、聞きたいことは山ほどあるんですけれども、時間が限られておりますので、現在問題になっております少年非行の観点に絞らせていただいて質問をさせていただきたいと思います。  御存じのように、与党の少年法改正原案というのが出されております。少年非行の処遇というのはもちろん法務省なり裁判所なり警察庁なり、また十四歳未満であれば少年法ではなくて児童福祉法ですから児童相談所等厚生省の管轄ということでございますので、専ら文部省に対しては少年非行の予防という観点からお伺いをすることになろうかと思います。  非行を生むのは、基本的には、私は一義的には家庭だと思っております。親のしつけが問題だろうというふうに思っている、私も検事を十五年間やっておりましてますますその感を強くしたわけでございますけれども、いかんせん家庭の機能というのは、喪失とまでは申しません、かなり弱体化している。戦前は家制度というものがございましたし、核家族でもございませんでした。今は親と子が一対一で向き合っている。中にはかなり父親の不存在という家庭もございまして、そして地域社会というのが全然機能していない。そういうような中で親だけが子供に対してのしつけなり教育を担うというのは非常に難しかろうと。それで、その分、非常に残念というか大変でしょうけれども学校にその機能というのがある程度委託なり移譲されなければいけないという事態に至っているのが現状だろうと思うわけでございます。    〔委員長退席、理事鹿熊安正君着席〕  私、このたび、切れる子の背景調査文部省がやることになったという報道に接しまして、ああ、やっとやってくれることになったのかというふうに実は思った次第でございます。成人犯罪の場合は、御承知おきのように、捜査官がどこまで調べられるかわかりませんけれども、どういう生育環境で育ったかというのをもちろん聞きます。そして、それは公判に出されますし、冒頭陳述書なり判決という形で報道されることもございますし、報道されなくてもある程度の事件については、判例時報とか判例タイムズ、一般の方でも入手して調べることはできます。  ところが、少年の場合には、かなり大きな事件でも、御存じのように少年審判は非公開でございます。で、審判決定というものは報道されないのが建前になっております。三年前の神戸児童連続殺傷事件につきましては、極めて特異な例であるということで、裁判官が英断をされまして審判決定の要旨というのが報道されましたが、これは極めて特異な例でございまして、ほかのことに関しては、なぜその少年がそういう特異な事件を起こしたのか、どういうことが問題の背景にあったのか、どういう家庭でどういう育ち方をしたのか、また精神障害というのはどんなものであって、それは治るものなのか治らないものなのか、これが全然わからないというのが実態でございます。  だからこそ、あの少年Aの事件につきましても、少年Aはどこにでもいるというような、私からすれば、ちょっとひどいのではないかと。学校とか社会に問題があるというような論調も、マスコミも非常に責められるべき点は多々あると思いますが、そういう報道も随分なされて、一般国民は不安にも陥ったものなんです。  私はそういう意味で、非行少年につきましては何が本当に問題だったのか、特に最近は切れるとかむかつくというようなことがキーワードになっております。切れる子というのは頭が真っ白になると言います。そのときに全然言葉がなくなって、自分が何をしているのかわからなくなるというようなことも言っております。自己抑制力がないというのは、カルシウムが欠如するとそういうことになるという報告もございますけれども、本当のことはよくわかりません。  切れる子の背景調査をするという報道がありましたけれども、具体的にどういう事件を選ばれて、どういう方がどのような調査方法をされるのか、それについて御説明いただきたいと思います。
  50. 本間政雄

    政府参考人(本間政雄君) この調査研究でございますが、現在社会的に大変憂慮されております子供たちの切れる状況。切れるということの定義は、余り厳密な定義はこの調査研究においては考えずに、一般的に衝動的な暴行の経験があるというふうにとらえまして、この切れる状況について、科学的な事例分析を通じてその原因とか背景というものを明らかにしよう、そういうねらいを持ったものでございます。    〔理事鹿熊安正君退席、委員長着席〕  具体的な調査観点といたしましては、社会との関連を踏まえつつ、家庭や学校での生育過程、その子供の生育のプロセスにおきます親とか学校あるいは先生方のかかわりを究明するということにしております。  具体的な調査方法でございますが、今後、有識者によりまして組織をいたします研究委員会におきまして検討するということになっておりますが、現段階では、まず第一番といたしまして、学校、家庭裁判所、警察、児童相談所といったような関係機関の協力を得ながら、四百から五百程度の切れる子供事例の検討。それから、この事例に関して親に対する聞き取り調査。三番目に、子供の生育歴に関する百程度の事例。四百、五百ぐらいの事例についてその事例の検討をしまして、さらにそこから百程度選びまして詳細な分析、考察を加えたいというふうに考えております。  この調査研究でございますが、平成十三年度中に取りまとめるという予定でございまして、今後の家庭教育への支援、あるいは学校教育充実を図る上で示唆に富んだ有意義な結果が得られるものと期待をしているところでございます。  文部省としましては、この結果の内容を踏まえまして、参考情報の提供をするというようなことを通じまして適切な対応を図っていきたいというふうに考えております。
  51. 佐々木知子

    佐々木知子君 平成十三年というのは随分先のような話でございますけれども、できるだけ早く有効な調査を行って、それをぜひ現場の教育で役立てていただきたいというふうに思っております。  次に、スクールカウンセラーについてお聞きしたいんですけれども、現在はモデル事業ということで選ばれた中学校にのみ配置されているということですが、次年度からは補助事業ということで正式にどんどんふやしていって、五カ年で小規模中学校を除いて全中学校に一人ずつ配置するというふうに報道では聞いておりますけれども、スクールカウンセラーというのはどういう資格を持っている方で、現在どれぐらいの学校にどの程度配置されて、常勤か非常勤かよくわからないんですが、どういうような形でカウンセリングに当たっているのか、ちょっと現状をお聞きしたいと思います。
  52. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) お答えを申し上げます。  スクールカウンセラーのまず資格でございますけれども一つは臨床心理士と言われる資格を持っている方々、この方々が大体スクールカウンセラーの八割を占めていると御認識いただいて結構でございます。もう一つは精神科の医者、そして心理学系の大学教授あるいは助教授、常勤講師、この三つの資格を持っていらっしゃる方々から選ばせていただいているということでございまして、現在二千二百五十校、小中高に配置済みでございます。  全国に四万校ございますので、まだほんの五%程度の数字でしかございませんけれども、具体的にじゃどういうことをやっているかと申し上げれば、一人のカウンセラーが、例えば精神科のお医者さんの場合、自分の医院の医者のお仕事を終えられて学校に来ていただいて、一週間に二回程度、人によってさまざまなようでございますけれども、八時間程度部屋にいていただいて、そこに主として子供たち、どういうわけか教員も結構おるようでございますけれども、あるいは保護者、そうした方々の御相談を受けている、こういう現状にございます。  やはり悩みや不安を持っている子供たち、あるいは教師、保護者は意外に多いようでございまして、相談相手としてスクールカウンセラーが果たしている役割は非常に大きいと私たちは評価をいたしておりますので、来年度、とりあえず予算措置も伴うものでございますから、ほとんどの中学校に一人ずつぐらいはスクールカウンセラーを配置できないかと。今、そのための努力を続けているところでございます。
  53. 佐々木知子

    佐々木知子君 全中学校ということで、小学校とか高校、また特殊学校のようなものについてはまだ考えていないということでございましょうか。
  54. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) 予算に限りもございますもので、とりあえず中学校を対象に全部やってみようと。しかし、当然のことながら、中学校でスクールカウンセラーをやっていらっしゃっている方でも小学校から御要請があれば機動的に動いていただくと。高校についても同様のことを考えておりますし、その他の特殊学校についてもできるだけ柔軟に対処していきたいと考えております。
  55. 佐々木知子

    佐々木知子君 今、評価はなかなかいいようだというふうにおっしゃいましたけれども、私が接したのでは余りいいように言っていない人もいるようなんですが、どういうような観点から評価がいいというふうにおっしゃるわけでしょうか。
  56. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) さまざまな御相談事があるように想像を容易にできるわけでございますけれども、例えば学校内暴力につきまして我々がつかんでおりますデータを申し上げれば、全国で二九・二%も学校における校内暴力がふえている中で、スクールカウンセラーが置かれている学校では〇・七%減っていると。あるいは、不登校について申し上げれば、全国平均が二二・六%でございますところ、スクールカウンセラーを配置してございます学校では九・二%の増加にとどまっていると。  そうした効果が顕著に数字にも出てきている段階でございます。
  57. 佐々木知子

    佐々木知子君 今、学校内暴力と不登校というのが出ましたけれども、スクールカウンセラーが対象としているのは恐らく不登校とか校内暴力だけではないんだろうというふうに思いますが、ほかに私が把握しているところでは、いじめの問題だとかそれから学級崩壊の問題などがあろうかと思いますが、いじめというのは、非行少年を処遇している方の感覚のいじめと文部省が定義されているいじめというのは多分違うんじゃないかと思うんですけれども、どういうような形のいじめというふうに把握されておられて、今いじめは小学校、中学校、高校、そういうところでふえているのかふえていないのか、どういうふうな問題点が今顕著にあるのか、そういうものについての御認識はいかがでしょうか。
  58. 御手洗康

    政府参考人(御手洗康君) 文部省につきましては、いじめということで学校現場の実態を昭和六十年から全校の調査をいたしているわけでございますけれども、そこでは調査の対象といたしまして、まず一つは、自分より弱い者に対して一方的に身体的あるいは心理的な攻撃を継続的に加えて相手がそれによって深刻な苦痛を感じているものという形で、学校の内外を問わず各学校が把握したものについて、各都道府県教育委員会を通じて小中高等学校及び特殊学校について調査しているわけでございます。平成十一年度の発生状況は三万一千件ということで、対前年度一三・八%減ということで、いじめにつきましては四年連続で減少しているという状況でございます。  こういったいじめがとりわけ深刻に考えられる事態といたしましては、継続的に一方的に加えられるということは、やはり従来の子供同士の人間関係から比べますと非常に深刻な問題として浮かび上がってきているという状況であろうかと思っております。
  59. 佐々木知子

    佐々木知子君 いじめというのは、いじめ非行というのがございまして、究極の場合はいじめて非行をさせる、万引きをさせるとかですね。それから、いじめ非行というのは、この前の名古屋の五千万円恐喝事件に顕著にあらわれておりますけれども、いじめというのではもう済まないような事件になっているというようなものもございます。  ところが、学校は余り把握はされておられなかったようで、学校で把握されておられるいじめというのは恐らくもう本当に一部のものでしかないんだろうというふうに思うんです。かなりそこをすくい上げるような努力をしないと、たまたま上がってきたものだけを把握していたのでは、本当に重大なものは恐らく見過ごされているのだろうというふうに思うんですけれども、そこら辺の認識はいかがですか。
  60. 御手洗康

    政府参考人(御手洗康君) 確かに、各学校が主観的につかんでいるというものを上げていただきますので、教師や校長等が掌握していないということが調査の実態上、当然私どもはあり得るものと承知しております。また、各都道府県から上げられております数字につきましても、各県によりましてかなりいわば発生率といいますか、差がございますので、現場におけるいじめの把握の状況、あるいはそのいじめに対するとらえ方というのは、やはり地域によっても学校によっても随分違うだろうという気は私どもいたしております。  特に、名古屋の事件にいたしましてもあるいは岡山の金属バットの事件にいたしましても、どうもああいう問題が深刻化いたしたケースにつきましての学校のとらえ方を見ておりますと、現場の感覚としてもう少し、からかいというような形で受けとめて、いじめというものが子供にとってどういう形で影響を与えているかということについて担当の教員等が必ずしも十分受けとめていない、そういったところが深刻な事態の発展を招いているというようなケースが見られるわけでございます。  文部省といたしましては、この調査一つ調査でございますけれども、いずれにいたしましても、各学校において教科担任、学級担任、あるいは生徒指導担当、あるいはスクールカウンセラー、あるいは家庭との連携、そういった組織的な対応ができるようにということで、生徒指導の手引あるいは事例集等も各都道府県でつくりながら、具体的なケアができるような指導には努めてまいりたいと思っております。
  61. 佐々木知子

    佐々木知子君 先ほど学級崩壊というのが出たかどうかわかりませんけれども、学級崩壊というのはマスコミの用語がひとり歩きしている感もあるんですけれども、どういうものを学級崩壊ととらえて、どういうふうな問題点があるというふうに認識されておるのか、それについてお伺いしたいと思います。
  62. 御手洗康

    政府参考人(御手洗康君) 学級崩壊につきましては、いじめや校内暴力等の調査文部省はいたしていないわけでございますけれども、先ほども出ましたけれども、国立教育研究所を中心平成十年度に研究委嘱をいたしまして、百五十ほどの事例を克明に分析した研究会の報告書が出されて、平成十二年三月に最終報告書が出されているわけでございます。  ここでの研究会では、いわゆる学級崩壊ということにつきましては、集団教育という学校の機能が成立しない、こういった状態が一定期間その学級で継続している、それからもう一つは学級担任による通常の手法では問題が解決できない状態に至っているということで、従来、どこの学校でもやはりある学年、あるクラスは非常に学級経営が困難だという状況は多くの学校で見られたわけでございますけれども、いわゆる学級崩壊という形で指摘されております近年の状況は、まず一人一人の子供がどうだということではなくて、学級全体が集団として教育が成り立たないような状況になっているということでございます。  これにつきましては、各都道府県におきましてもそれなりの調査あるいは事例集の作成等を行っておりまして、全体、各県の調査結果を見ますと、全学級数のおおむね〇・一%から一%ぐらいの間でそういう状態が見られるということで私ども承知しているところでございます。
  63. 佐々木知子

    佐々木知子君 先ほど、スクールカウンセラーの内訳として八割は臨床心理士で、それ以外には精神科医もいるというようなお話がありましたけれども、神戸の児童連続殺傷事件も、何か親が児童相談所に行ったりとか、いろいろやったんだけれども有効な手を打ってもらえなかったということで、今回のバスジャックの事件も、精神病院にちょっと入ったりとかいろいろしているんですけれども、もっと精神科医との連携がとれれば未然に防げ得ただろうなと思う事件というのもかなりあるんだろうというふうに思うわけですが、とある報道によりますと、都道府県の教育委員会に精神科医を非常勤で配置するというようなことがございましたけれども、これについてはいかがでございましょうか。
  64. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) 二千二百人ほどいらっしゃいますカウンセラーの中で精神科医は現在九十三人でしかございません。精神科のみならず、少年非行あるいは問題児の存在の背景に、極端に申し上げますと、例えば化学物質の影響さえあるんじゃないかという議論もございますほどに、さまざまな角度からの分析も少年非行の問題には出てきております。  したがいまして、このカウンセラーに限らず、もうありとあらゆる機関、子供にかかわる部分が総力を挙げてこの問題に総体的に取り組むということが必要であると考えておりまして、冒頭、委員質問の、少し分析の会を国立公衆衛生院の力もかりて立ち上げることにいたしましたけれども、そこの分析を担当する方々の中に例えば少年院の方とか警察の方とか、あるいは精神科医に限らずお医者さんであるとか、そういう現場の方になるべく入っていただけということを今事務当局には指示してございます段階でございます。
  65. 佐々木知子

    佐々木知子君 次に、薬物教育についてお伺いしたいと思います。  覚せい剤は、御承知のように、今は第三次乱用期に入っているというふうに言われております。少年の占める割合が一〇%に今満つるか満たないかぐらいですけれども、増加しているのではないかと言われておりますし、また特筆すべきことは、中学生、高校生で検挙される者がかなりの数見られるようになったということがございます。  覚せい剤がこれだけ蔓延しているというのは、実は世界じゅうを見ましても日本だけと言っていいぐらいかと思いますが、ほかの国では薬物といえば麻薬なんですね。普通はヘロインであり、コカインであり、ハードドラッグと言われているものなのですが、日本の場合は、なぜか頭すっきり体しゃっきりと言われる覚せい剤が蔓延している。これはハードドラッグではなくソフトドラッグなんですけれども、なぜかといえば、非常に日本人は勤労意欲が高いので、寝ずにずっとその間トラックを運転していたいとか、寝ずにずっと夜中じゅうマージャンをしていたいとかいうのに役に立つので覚せい剤がはやっているというのがまことしやかに言われておりまして、私も本当ではないかというふうに思っておりますが、少年は普通、薬物といえば毒物劇物取締法違反、つまりシンナー等の有機溶剤がほとんどだったのですが、それに覚せい剤がかなりふえてきたというのが特徴的な現象でございます。  これについて文部省の方ではどのような問題認識というのをされておられるのか、まず伺いたいと思います。
  66. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 覚せい剤の検挙者数は、先生が御指摘のように、平成十二年上半期に十一年に比べて倍増しております。大変憂慮すべきことであると思っております。  いずれにしても、そういうことにどのように対応しなければならないかということでさまざまな観点からやっておるところでございますが、意識調査、それからビデオの作成、やっぱり実際に目で見せてそういうことがいかに体に影響あるかということ、それから乱用防止の教室を推進したり、シンポジウムを開催したり、ポスターをつくったり、いずれにしても各般のことをやっております。  私どももこの問題は大変憂慮すべき問題という認識でなお一層そういう対策に努力してまいりたい、このように思っております。
  67. 佐々木知子

    佐々木知子君 薬物教育は、今さっきおっしゃいましたけれども、実際に継続的になされておられるんでしょうか。警察庁からそういう方を呼んで実際に薬物を見せながら、この薬物を使用するとこういうことになるんですよということを教えているのか、それとも学校先生が何らかの形で教えておられるのか、どういうような形なんでございましょうか。
  68. 遠藤純一郎

    政府参考人遠藤純一郎君) 薬物乱用防止の教育につきましては、平成九年の調査によりますと、高等学校では保健体育科あるいは家庭科、理科、ホームルーム、学校行事と、いろんな時間の中で教えている。中学校でも同様でございまして、保健体育あるいは学級活動、理科、道徳、社会科、学校行事と、こういったような中で教えている。小学校でも学級活動、体育科、理科、道徳と、こういうところでも教えているわけでございますけれども、それだけではなくて、今、大臣がいろんな施策を申し上げましたけれども、中学校、高校におきまして薬物乱用防止教育というのをぜひ全学校でやってくださいとお願いをしておりまして、その防止教室には警察官あるいは麻薬取締官のOBの方に来ていただきまして、実際の恐ろしさといったようなものを子供たちに身をもって教えられるようなそういう教室もやらせていただいている、こういうような状況でございます。
  69. 佐々木知子

    佐々木知子君 現在は余りまだやっていないんじゃないかなというふうに聞いたんですけれども、これから本当に各学校、私は、もう小学生の段階から警察官に実際に来てもらって、麻薬取締官でもいいですけれども、実際に覚せい剤ってこんなのですよ、それから大麻というのは、マリファナそれからハシッシュと二つありますけれども、こんなのですよというふうに見せてもらって、例えばハワイに行って、ああおもしろいのがあるからというので、おもしろそうだからやってみるというファッションみたいな形でやることは決してないように、小さい段階から教えていただきたいというふうに思っております。薬物で国は滅びますので、アヘン戦争の事例もありますけれども、引くまでもなく、これは本当に小さい段階からきっちりと教育をしていただきたいというふうに思っております。  そして、他の関係機関、警察とか、今申されましたけれども、いろいろな機関との間の連携というものをきっちりとってやっていかないといけないと思います。  私、これが非常に深刻だと思いますのは、特に女子の間に援助交際などを機縁として覚せい剤というのは簡単に手に入るようになっております。覚せい剤がなぜこれだけ中高生にも浸透するようになったかと言ったら、イラン人が偽造テレカと一緒に販売するようになって、小口になりましたので一個五千円とか一万円とかで手に入るようになったわけです。そうすると、援助交際を一回やると何回分か手に入るというような感じになりまして、非常に手に入りやすくなった。気軽さというのが今、少年非行の一つのキーワードでございます、気軽さ、手軽さというのが。それで手に入るようになったと。  今、少年院に入っている女子、女子に限っていえば二人に一人は覚せい剤なんです。これを成人の女子の場合に見ても、刑務所に入っている二人に一人は女性に限れば覚せい剤なんです。覚せい剤というのは身体的依存度はございませんけれども、精神的依存度が非常に高いと。執行猶予を受けたその足で買いに行くなんというのはもうざらにあるようなことでございまして、やめられない。だから、小さなとき、小さなときというか少女のときに手をつけたが最後、そのときの快感というので、何かがあると、フラストレーションが起こると覚せい剤に逃げてしまうというのが生活体験みたいになってしまって、ずっと成人になっても抜けられない、そして人生をそのままで終えてしまうというようなことになります。  覚せい剤というのは、御存じのように、非常に危険な薬物でして、覚せい剤を常用しておりますと精神分裂病に非常に似た妄想や幻覚が起こりまして、その幻覚、妄想下で通り魔的殺人をやるというのは非常に多いケースでございますので、ぜひ覚せい剤に対しては厳しい処置で、学校段階で取り組んでいただきたいというふうに思っております。  次に、生きる力をつける教育ということで、雑駁な表題を立てさせていただきましたけれども、今、少年非行というのは平成七、八年ごろから第四次の波に入っているというふうに言われております。昭和二十五年ぐらいをピークにしたのは生活型非行というふうに言われておりました。生活に困っているので少年が非行に走る。昭和三十年代後半の非行となりますと、今度は反社会型非行だと言われた。昭和五十年代の後半に非常にふえましたけれども、これは遊び型非行だとか初発型非行だとか言われております。  今は、どう言うんですか、非社会型非行。反社会型ではなく、そういうポリシーがあって非行に走るわけではなくて、何となく適応しにくいから、社会にいづらいから、学校にもいづらいから、何だか家庭にもいづらいし、どこにも居場所がないからというので非社会型非行。そして、精神科医の先生によっては自己確認型非行といううまいつけ方をされておられるのもおりました。つまり、自分というものの生というもの、自我というものが非常に希薄なので、それを確認しようとして非行に走っているというのが今の特徴だというようなことを言っておられました。全体的に当てはまることは決してないと思いますが、確かにそういう傾向というのはあるんだろうと思います。  私、最初の方に核家族化というのを申し上げました。そうすると、おじいちゃん、おばあちゃん、それからそういう年配の方もおられませんので、人が死ぬということを身近に見るということが余りなくなりました。そして、ちっちゃな子というのもそんなにいなくなりまして、少子化でございますので、生と死というものに対する希薄な概念というのが今特徴づけられると思います。それに加えて、ゲームとかが随分はやっておりまして、バーチャルリアリティーの世界で人はどんどんゲームでは死ぬんだけれどもリセットすればまた生き返ると。生と死というものに対して、本当に自分の実感として感じられない子供たちが非常にふえているということがやはり今の非行の特徴としては挙げられるのではないかと思います。  その生きる力をつけるためにやはり一番大事なことは、自然に触れ合わさせる、人間というのはいかにちっぽけなものなのか、生きているというのはどういう意味があるのかということを知らせるということが一つ大事なことであり、そして、これは岩城先生も触れられましたけれども体験教育体験学習ということで、生と死を身近に見る教育、身近に知る教育というのが私は必要なんだろうと思います。本当はそれは家庭教育がやるべき次元の問題だったんですけれども、なかなかそうもいかなくなったので、もう学校とかそういう地域社会にやってもらわないといけないということになっているわけです。  これは非行少年の試験観察、試験観察というのは保護処分とかを決める前の段階ですけれども、老人ホームに行かせたりとか乳児院に行かせたりとかしてそういう方たちの面倒を見させる、ボランティアみたいなのをさせるんですけれども。そうすると彼らは、ありがとうとかおじいちゃんに言ってもらえる、おばあちゃんに言ってもらえる、それがすごくうれしかったと言うんです。だれにも感謝されたことがないと言うんです。そういうようなことを体験させるというのは非常に有益だというふうに言われております。  岩城先生のところのお答えにもあったんだろうと思いますけれども、いま一度そういうようなことをどういうふうに取り組もうというふうにお考えなのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  70. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 佐々木先生は御本も書いたり、実際に犯罪という問題に対して直面し大変御経験がいろんな意味であって、さっきからの議論を聞いておりまして大変参考になりました。  いささか時間がないので、本当は今までずっと先生議論したことにちょっとずつ答えたいと思っておるんですが、私は、実は教育というのはだれでも受けてだれでも苦労している、だから教育論を言うとある意味では国民だれでもできる非常に広範で重要な問題だと、こう言っております。  そして、今時、いろいろな問題を見ますと、私は一言、今の子供の中に孤、つまり孤立の孤の世界が広がって社会性がなくなっているんじゃないだろうか、文部大臣に就任して以来ずっと言ってまいりました。  そうすれば、社会性を身につけるためにどうしたらいいんだろうか。国民会議の偉い先生方の御議論もとても参考になりますし、それからいろんな方々の御意見も参考になりますが、実は夏休み中に小学校、中学校、高等学校の主に生徒指導、養護教育をやっている先生方に集まってもらいました。それで、あなたたちがここで言うことは一切だれだれさんがこう言ったからどうだということは言わないから、もう学校の悪口でもいいから、文部省の悪口でもいいから聞かせてくださいと、こう言いました。そのときに先生お話しされたのと同じようなことを言ったのは、今非常に認識しておるんですが、つまり自己確認ということをやっぱりおっしゃいました。  実は私自身も、鈴木総括はもっといい子だったかもしれませんが、余りいい子じゃなくて、子供の犯罪というのは、私は、ステレオタイプでこれ型、これ型ということを決めるということよりは、やっぱり自己確認というのは昔から根底にあったんじゃないだろうかという気がするんです。  それから、先生方の話を聞きますと、実は子供の成長を親が気がつかない。例えば女性でいうと、女性の体の成長が、変化が意識の変化になっている、親は昔からの子供の姿で子供を見ていく、そのギャップの違いで子供たちは疲れたり切れたりということがよくあるんだ。それもある意味では自己確認みたいなものをしたいということなんだ。  私は、そういう意味で、子供たちに社会性を身につけるために自然体験も必要です、本当に必要だと思います。先般も国立少年自然の家へ行って先生方お話を聞いていたら、四泊五日ぐらいは最低必要だと言うんです。そうすると、初めて自然というものがわかると言うんです。それから、奉仕活動の件もお話しされました。これもやっぱり人と人の中で人間が生きているということを知っていくためにはもっともっと充実させなきゃいかぬと思っております。それから、今、異年間というか、一年生、六年生一緒になって行動する、こういうことを目を輝かせてやる、そういうふうな事例があります。  したがって、先生から御指摘いただいたように、全く同意見でございまして、社会性を身につけるためにある意味では教育をやっているのかもしれない、教育の目的というのはそこにあるのかもしれません。そういう意味で、私どもは総合学習という、ゆとりのあるというと御批判をいただいている部分がありますけれども、まさに社会性を身につけるために自然体験奉仕活動、そしてまたその他あらゆることを充実させていかなければならぬ、こういう思いで来年からの概算要求もやってまいりますし、また来年、通常国会における教育改革の大きな柱の法案として、何らかそういうことを形にしてまいりたいとも思っております。  具体的にどういう施策かということについては、もしあれであればお答えさせますが、方針としてはそういうことをやってまいりたいと思います。
  71. 佐々木知子

    佐々木知子君 もう時間がなくなりましたので、私はあとは先生の質をやはり高めてほしい、岩城先生もおっしゃっておりましたけれども。  ことし四月施行の学校教育法施行規則等の一部改正で、教員免状を持たない民間人が管理職に登用されるということになったのは承知しておりますが、これは現場の先生に聞きますと余り評判が芳しくないんですよ。現場を知らない人が上に来ているから、もう理想ばかりを言って、こうやろう、ああやろうと。実際は本当に大変なんですね、親もひどいし、PTAもうるさくて、教育委員会もいろいろありますし。  大変なので、私はこれはちょっと一概にいいとは思えないので、できたら今度、どんどん教員免状というのを、社会体験をされたような方に現場に携わっていただく、現場の先生になっていただく、本当にやりたい方が、本当に教育に熱情を持っている方がなってもらえるようなシステムにしていただきたいなということと、社会との接点を持たせるためにぜひ職業教育というのを小さなときからやってほしいなというふうに思っております。  今、フリーターが非常にふえております。それ自体が悪いとは決して申しませんけれども、何になりたいかというもののビジョンが描けなければ、それは自分が生きていく質というものに対して非常にこれは問題を持ってまいりますので、ぜひ職業教育というのを小さなときから社会との接点を持たせるという意味でもやっていただきたいなと御要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  72. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 文部大臣お答えになりますか。
  73. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 全く同感で、まさにそういうことでいろいろな事業をやっているのを先生御承知だと思います、今説明しなくても。  ただ、今お話を聞いて、校長先生を全く経験のない者を持ってきて余り評判がよくないよということをおっしゃられて、私どもなかなかいいアイデアだと思ってやっておったんですが、ひょっとしたら、そういう新たな問題提起をされて今どきっといたしまして、ちょっと冷静にその辺も分析しながら、いずれにしても先生方の社会性も身につけなきゃなりません。逆に、そのために、社会の中で働いている人が、よし、おれは教師としてひとつ頑張りたいという者にいろんな制度、二つの制度ですが設けて、来年からも大いにそういう点を、働いて頑張ってもらいたいということを考えております。  最初のまくら言葉にあった、どうも余り評判よくないわよということについては、ちょっと私も冷静に分析してみたいと思っております。
  74. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 我が国のロケットの打ち上げ等についてお尋ねしたいと思います。保守党の月原です。  今後、我が国がどのような計画を持ってロケット打ち上げをするのかを簡潔に説明してください。
  75. 結城章夫

    政府参考人(結城章夫君) 御説明申し上げます。  我が国のロケット打ち上げ計画は、宇宙開発委員会におきましてその妥当性について審議決定を行っております。  今回、平成十三年度の概算要求に際しまして、先日、宇宙開発委員会が審議決定したところによりますと、宇宙開発事業団において開発中のHⅡAロケットにつきましては、来年の二月に試験機一号機によるヨーロッパの先端型データ中継技術衛星、ARTEMISという衛星でございます、これの打ち上げを行います。また、平成十三年度、来年の夏でございますけれども、試験機二号機によります民生部品・コンポーネント実証衛星の打ち上げをそれぞれ計画しております。その後、HⅡAの標準型機体によりまして、平成十三年度には環境観測技術衛星、平成十四年度には運輸多目的衛星新一号機、それから情報収集衛星、平成十五年度には陸域観測技術衛星などの打ち上げを計画しているところでございます。  また、宇宙科学研究所のミューⅤロケットにつきましては、平成十四年度には小惑星探査を目的とした第二十号科学衛星、平成十五年度には赤外線による天文観測を目的とした第二十一号科学衛星、平成十六年度にはエックス線による天文観測を目的とした第二十三号科学衛星などの打ち上げを計画しているところでございます。
  76. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 このロケットは、思い起こすと九七年には連続五回成功したといったときには意気軒高たるものがあって、今度は百九十億かかったのを世界の商業衛星にまさるようなHⅡAをつくるんだというようなことでいろいろ計画をつくられたんですが、悲しいかな、九八年、九九年、そしてまたことしの二月、それぞれロケットは失敗しているわけであります。この失敗の原因については科学的に非常に難しいので、私のような人間には理解できないので、最初質問しようと思いましたが、やめます。  そこで、原因究明の結果、その反省に立って、細かい技術面の問題は除いて、今後の開発の基本的な方針や組織的改善はどうなっているのかということについてお尋ねしたいと思います。  HⅡでは、配管とか燃料センサーが間違えてつけられて、この打ち上げそのものが三カ月も延期されたということも御承知だと思います。また、私が思うのは、たくさん製造メーカーがあるわけではなくて、ロケットは限られた企業が請け負っているわけであります。その企業がそれぞれのロケットの打ち上げに忙し過ぎて、基礎的な研究、そしてロケットの種類が違っても共通の部分が非常に多い、そういう点についてちゃんとした反省に立ちながら一つ一つ積み重ねていくというようなことも私は大切だと思っております。そして、今お話しのように、連続して大変メジロ押しの計画であります。  そう考えていくと、果たして失敗した場合に、その反省点を組み入れて次のロケットを改良していく時間的余裕があるのか、そういうような点も私は問題だと思っておりますが、より高い見地で今後の開発の基本方針や組織的改善はどのように考えられておるのか、政務次官にお願いしたいと思います。
  77. 渡海紀三朗

    政務次官渡海紀三朗君) ただいま先生指摘のように、引き続いて事故が起こりました。大変宇宙開発に対する国民の信頼という意味で我々は危機的な状況にあるというふうに思っておりまして、特にそういった事故を踏まえて、宇宙開発委員会でことしの五月に、単に事業団の組織とか体制のみならず産業界の問題ということも踏み込んで、いろいろと改革方策を取りまとめているところでございます。  これを受けまして、特に今予定をされております、来年二月にHⅡAロケットを打ち上げるという予定をしておるわけでございますが、体制等の整備も踏まえ、特に例えば燃焼試験、LE7Aというエンジンでございますが、このエンジンの燃焼試験の個体数をふやしたり、それから回数をふやしたり、そういったことも行っておるわけでございますし、さらに厳しい条件下での実験というものも行っているところでございます。同時に、体制の上では、宇宙開発事業団、メーカーがより一体となって入念な開発に取り組むようにという体制づくりをしておるところでございます。  また、加えて申し上げれば、製造過程での検査、こういったものをより厳しく、回数をふやしたりより厳しい検査をする、そして検査技術の専門家、より知識のある方々を活用することによって品質を保証していくといったような具体的な改革に鋭意取り組んでいるところでございます。  また、メーカーにおいても、先生先ほど御指摘ございました、数社でございますけれども、メーカーが違うわけでございますから、より情報を一元化するという意味で、宇宙開発事業団とともに合同の開発チームというのを設置いたしまして所要の取り組みを実施しておるところでございます。  いずれにいたしましても、今後、国といたしましても、事業団の運営、またそうした業務内容について適切に報告を求めまして、そして指導監督をしていきたいというふうに考えておるところであります。  今後とも、宇宙に対する国民の夢を実現する意味でも、国民のこの宇宙開発に対する信頼を回復するべく全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えておるところでございます。
  78. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 今、総括政務次官からいろいろお話がありました。  そこで、その一部に属することと思いますが、メーカーはそれぞれ日本でも超一流のメーカーであり、世界においてもその技術は買われているものであります。  しかし、この前の事故の原因の一つに、液体水素ターボポンプというようなものを二つのメーカーがつくった、それを合体したと。その場合に、私が思うのは、やはりプライムコントラクター制をちゃんとつくっておかぬといかぬ。御承知のように、YS11は大変立派な設計者がたくさんおられた。しかし、その一人一人の意見を酌み入れたら飛ばない飛行機になる。だれかが責任を持ってやらなければならない。その目的のために削るところもあるでしょう。そういう意味からいって、両方ともそれぞれは個としては立派であったとしてもそれを合体したときに果たして正しい結論が出るのかどうか。  そういうようなことから考えると、むしろ科学技術庁そのものが一つ一つ指導するのではなくて、製造過程においてはプライムコントラクター制というようなものの導入、もう既にしておると思いますが、そういう点を強く進めていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  79. 渡海紀三朗

    政務次官渡海紀三朗君) 委員指摘の点は全くそのとおりだと認識をいたしております。また、先ほどお話を申し上げました宇宙開発委員会におきましても、そのような方向を今後考えていくべきであるというふうな報告書も出されておるわけであります。  余談になりますが、実は私は建築のスペシャリストでございます。スペシャリストという言い方はおかしいですが、専門でございます。その中で、一括発注にするのかそれとも分離発注にするのかというのはよくある話でございます。やっぱり一括発注にすることのメリットというのは責任体制が非常にはっきりするということでありますし、そういった点も十分考えながら、今後体制というものを整えていきたいというふうに考えております。
  80. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 政務次官は日本の超一流の建設会社で訓練をしておるだけに、そのお話は十分わかります。  さて、国際的競争力を先ほど冒頭に申し上げましたが、商業世界で勝ち抜くんだというようなことでレベルを少し、レベルというか外国から部品を輸入したり、そういうふうなことでコストダウンというようなことを考えておる節があると思いますが、ロケットというのは衛星を上げるための道具にすぎないわけですね、一つの物の見方としては。軍事大国ならばこれは別ですが、そうでなければ、そういう手段にすぎない。それならば、その高価なものを運ぶ船がちゃんとしたものでないといかぬ。泥船だったらもうどんな高価なものにしても海の中に一緒に沈んでしまうということなんですね。  そういうことからいって、私は商業競争に勝ち得るというようなことでなくて、宇宙研のも失敗した、NASDAのも二回連続して失敗したといったときには原点に返って、少々金かかってでもまともに上がっていくというような方向に力を注ぐべきだと思うのです。  そして、コストダウンの話になりますが、先ほど加納先生そして大島大臣お話しになっておったところにも関連するんですが、この間の東海村の事故以降、ある私の先輩が言ったのは、素人にわかるようにその原因を教えてくれぬか、こう言ったら、三代目だ、原点を忘れてしまっておると、それから利にさと過ぎる、何が大切なんだということを忘れて安けりゃいいと。バケツでほうり込んでおったら安いのはわかっておるわけです。そういうふうなことを言われておりました。  私は、そういう点も十分判断されてコストダウンの努力はするべきだと思いますが、とりあえずはとにかく上げると、少々金かかっても。そして国民の信頼に、世界の信頼に一遍こたえると。今度は特によその国が危険覚悟で一応打ち上げてくれと言って持ってきておるわけですから、次のは。それだけに私はそういうことを希望しますが、どういうふうに対処されようとしているか。
  81. 渡海紀三朗

    政務次官渡海紀三朗君) 月原先生おっしゃるのは全くそのとおりでございまして、とにかくやっぱり上げなきゃいけない、それもしっかり上げなきゃいけないということだと思います。  私も、今回の改造によりましてこの職につきましたときに、実は同じ疑問を持ったわけであります。要はコスト削減をするというHⅡAの目標そのものが事故につながっているのではないか、そんな疑問を持ちまして、厳しく当庁の中の議論なり、そして宇宙開発事業団の技術者の皆さんとも議論をさせていただいたわけでありますが、現在行われておる計画においては、そのことによって実は事故の原因があるんだというふうには思っておりません。  HⅡAロケットというのは、御承知のように、今後人工衛星の打ち上げに柔軟に対応していこうということでは、やっぱり大幅な輸送コストの低減が一つの大きな目標としてあるだろう、そのもとでHⅡの技術をベースにHⅡAというこの新しい機種を開発したわけでございます。そして、開発の過程で、むしろこのHⅡの技術、失敗も含めたですね、これが大変生きておりまして、例えばシステムを簡素化することによってコストの低減を図るとか、また、私は割と細かいところも聞いたんですけれども、例えばエンジン全体でいいますと、溶接の量は十分の一ぐらいに減っているわけであります。要は継ぎ目が少ないということですから、熱がかかっても非常に実は応力が均一につながるというふうな、そういった利点もあるわけでございます。  そういうことで、むしろある意味、信頼性、そして運用上のさまざまなコストというものを改善してきたという経緯でございまして、コストで実は性能を落としているということはないということだけははっきりと申し上げた方がいいというふうに思っておるところでございます。  いずれにいたしましても、冒頭も申し上げましたように、HⅡAロケット、来年二月でございますけれども、これまでの我が国の宇宙開発の最高技術を結集して成功を図り、そして国民の宇宙開発に対する信頼というものを回復するように今後とも全力を挙げて努力をしていきたい、そのように考えておるところでございます。
  82. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 先ほど政務次官がおっしゃった中に、検査というものをもっと徹底していく、こういうお話がありましたが、事業団が検査できる人間を常時雇うというような形ではなくて、やはり私は、このごろはもう高齢化社会になって、民間で早く会社をやめておるが大変技術を持っておる人がおる。しかし、会社では偉くなれない、品質管理なんかやっていて文句ばかり言って、これはだめだ、製品としてだめだと。本当は売ったらもうかるのになということで、なかなか偉うなっていないと、それで早う会社をやめておるという人もたくさんおるわけであります。  そういうような人をちゃんと見つけて、そういう人たちをグループとして一時雇うという形でそういう方々に検査をお願いする。そうすれば、事業団というか科学技術庁そのものもスモールでちゃんと能力を発揮できる。下手に今いかぬからといって焼け太りみたいに変な形で抱えるということは考えていないと思いますが、そういう点も注意して、考慮して臨んでいただきたいと思います。  時間がありませんので最後大臣にお尋ねいたしますが、今までの議論で十分おわかりのことと思いますが、次の打ち上げが十三年二月に予定されておる、こういうことでありますが、後顧のないテストと検討を尽くすべきであって、万一もっと研究すべきであると思ったら少々の打ち上げの私は延期はやむを得ない、こういうふうに思うわけであります。  冒頭にも申し上げましたが、メジロ押しにその計画がある。じゃ、反省をどうやって組み入れていくんだと。一つ一つが試作品ですとこう言いながら、今のお話でも、今、政務次官が言ったすぽっとしたものと、この間の失敗したやつは曲がっておるわけでしょう。そんなのわかっておったら何でちょっと待ったと言ってそれを直さなかったんだと。まあこれはやめます、この議論は。  そういうふうないろいろなことがありますが、とにかく今までの反省というものすべてに立って、そして、打ち上げることが最大の問題で、日にちに追われるんでないんだと。衛星だって、絶対その日に打ち上げておかなければ何かに故障があるというなら別として、そういうような点も含めて十分検討して打ち上げていただきたい。  そのことを含めて大臣に答弁願いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  83. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 月原先生とは同期で、久しぶりに先生の今までの経験からする御所見を伺って、大変勉強になりました。本当に委員会というのはこういうことをいろいろ教えていただくんだなと思います。  私が科技庁長官に拝命を受けましたときに、科技庁側としては二度もうここのところ失敗しておるわけでございます。前大臣、中曽根大臣のときから、失敗の研究というものもきちっとしなきゃならぬというふうなことの継続をやりながら、HⅡAは絶対これは打ち上げなきゃいかぬと。  委員指摘のように、二月を私どもはタイムスケジュールとして考えております。しかし、二月にすべてを合わせるという考え方よりは、打ち上げる、こういう考え方に重点を置いた取り組みをしていくというのが今の方針であります。もちろん二月というのも一つの目標ではあります。しかし、委員の御指摘のように、打ち上げるということが今最も私どもに課せられた課題である、そういう認識で取り組んでまいりたい。  全力を尽くしてまいりますので、またお気づきの点がありましたらいろいろ御指摘をいただければありがたい、こう思います。
  84. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 最後に、意欲的な大臣のもとで、また技術には自信のある政務次官で、この問題を乗り切っていただきたいと思います。  終わります。
  85. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ─────・─────    午後一時二十分開会
  86. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十年度決算外二件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  87. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 佐藤雄平でございます。  きょうは、文部省関係、文教政策についてそれぞれお伺いをさせていただきます。  まずその前に、大臣政務次官、そしてまた郵政大臣、御就任本当におめでとうございます。  二十一世紀を見据えたときに、私はさまざまな重要な政策があると思いますけれども、その中でもやっぱり最も重要な政策というのは、まさに森総理大臣教育改革ということでまた国民会議を諮問として開いておるとおり、教育が一番大事であるかなと。  また、きのう、きょうとこの決算委員会、きのうは労働省、厚生省、そしてきょうは文部、郵政、それぞれやっているわけでありますけれども、その所管、また質疑の中でも、きのうの雪印の問題、そしてまた医療の問題、そしてまたいろいろ薬物混合等の問題、きょうもまた科技庁のジェー・シー・オーの問題、こんなことを考えますと、私はやっぱり基本は、人としてしちゃいけないこと、まさにある意味では道徳以前の問題であるかなと思うんですけれども、しかしこれもある意味では人の道の道徳であろうと。  そんな中で、実は京都大学の中西輝政という教授がおられるんですけれども、この方がいろいろお書きになっている中で、戦後、それから二十一世紀にかける三つのキーワードがある。それは、一つは物と心、そして進歩と文化、そして個と共同と。まさに心、文化、そして共同体意識、この欠如が今日のさまざまな問題を起こしている大きなもとになっているんではないかなと思います。  特にまた、教育の問題というのは、結論がすぐ出ることじゃない。五十年、百年、やっぱり戦後の義務教育法、アメリカから強いられたということもありますけれども、しかしながら、あの義務教育の総則等を読んでみると、決して間違ったことは書いてないんです。しかし私は、中西輝政さんが言っている物と心、戦後の特に特徴的な教育というのは、物質文化と精神文化が相まって成長すればよかったんでしょうけれども、残念ながら物質文化が進んで精神文化が何か後ずさりになってしまって、人の幸せ観というものは何だろうと改めて今問う、そんなのが今の現況であるかなと。そんなことを思った中で、教育改革をするまさに中心大島大臣、そして鈴木総括が、次の時代にどんな国づくりをする、どんな国をつくるんだろう、そのための教育とは何であろうかと、これを本当に確固たるものをつくらなきゃいけないと思うんです。  私は、時代が変わったから教育基本法も変えなきゃいけない、これは余りにも短絡過ぎる。やっぱり世の中には変わっちゃいけないもの、変えなきゃいけないもの、それぞれあると思うんです。ですから、まさにその峻別というのが、私は、この新しいミレニアムに向かった今の内閣が、戦前、戦中、戦後を含めて二十一世紀にわたって変えなきゃいけない、また残さなきゃいけない、そんなことを見据えながら基本法等、また教育改革を進めるべきであろうと。  そんな前提の中で私は文部大臣に、今日までのいわゆる戦後教育のある意味では功罪と申すか、確かに物の文化、戦後の非常に厳しい状況の中からこれだけ豊かになったわけですから、すべからく罪というふうなことではありません。認めなきゃいけないところはたくさんありますけれども、しかしながらその弊害というのが生まれてきたことも事実でありますので、その点から戦後教育を振り返ってどのようにお感じになっているか。そしてまた、次の時代に向けて特に重要な文部政策は何だと。  さらにまた、特記しなきゃいけないということはいわゆる少子化、さまざまな政策の中でも少子化というのが大きな壁になっていることは間違いないんです。年齢構成からいって逆三角形になってしまったとき、高齢者に対する青少年気持ちが、単に予算的な面だけじゃなくて、やっぱり精神もきちんと入った中で、親を大事にする、先輩を大事にする、そんな気持ちがなければ、少子高齢化の次の時代を生き抜くことはできないし、また世界からも私は信頼される国になっていかないと思うんです。  そんなことを踏まえて、文部大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  88. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 佐藤委員から、戦後の教育のいい点あるいはまた反省すべき点というものをおまえなりに話してみろということでございました。また、中西教授のお言葉も引用されながら佐藤委員のお考えをお話しされたものと思います。  互いに戦後生まれでございますから、佐藤委員が受けられた教育と私が受けた教育というのはほとんど同じであったろうと思います、もちろん青森と福島の違いがあったかもしれませんが。  私は、今みずからのことを考えてみてよかったなという点は、やはり憲法に書いてあるとおり、教育の機会均等ということを徹底したということが戦後の教育の仕組みの中では評価されてよいことであった、このように思います。それともう一つ、行き過ぎてはいけませんけれども自分自身考えてみると、個人の権利というものを私の耳に、今、小学校、中学校を考えてみると、かなり権利ということを教えていただいたような気がするんです。そういう点。こういうものがある意味では日本の戦後教育の中でよかった点ではないか、このように思います。  振り返ってみて何が足りなかったのかな、あるいは何が問題であったのかなというと、私たちは受験戦争という言葉を付せられたある意味では最初の世代ではなかったか、このように思うんです。非常に人数が多うございまして、競争ということが絶えず中学生のあたりから入り込んでいって、そこには高校受験、そして高校に参りますと大学受験というものが当時の教育の中にかなり仕組みとして入り込んでおったという点が、一つ振り返ってみるとつらい、ある意味では問題のある点であったのかなと。  第二点は、そういう状況の中でやはり詰め込むという作業になっていったんだろうと、こう思うんです。知識を詰め込むという形の教育であったのかなと。このことは逆に言いますと、実はむだなことはやらないという教育があったような気がするんです。  先ほども議論がございましたが、また今私たちが問題としている、ひょっとしたら日本の今の問題につながりますけれども、教養という側面の薄さをつくったことになっていないか。つまり受験のためにならないものは勉強しないという、そこからくる点ですね。そういう点の、受験、詰め込みというものの結果として個性が失われてきたのではないかな。  それぞれの、例えば卑近な、卑近というか大島理森というこの五十三年過ぎて振り返ってみますと、実は私、音楽の才能があったかもしれない。でも、才能があったかもしれないというんですが、その音楽に興味を示し、音楽を一生懸命やるということに、非常に何となく高校時代、中学時代にそういうふうなことに異質性を感じた世代で、多様なそういう個性というものを伸ばすということに欠けておった戦後の教育でなかったのかなと、このようにも思います。  もう一つ、先ほど私は権利というものを教えていただいたということを申し上げましたが、逆に権利と同時に、そこには権利を志向するには全体というものがあって、全体というものの中にルールがあって、そのルールの上にどの世の中も権利というものもあるし自由もあるという、そこのパラレルに、というよりベースにある全体というものに対する気の使い方、あるいはそういう物の考え方というものが逆に薄れてきたのかなと。  最後に、私個人として言えば、実は率直に申し上げますと、第二次世界大戦の生々しい歴史というものを、私どもが受けた歴史教育というのは年表である意味では教えられた教育であって、日本の歴史というか、歴史というのは人間と人間が織りなすいわば積み重ねでありますから、そこにおける過程、あるいはこれも受験からくるところでございますが、生きた歴史というのは教わったんだろうかという個人的な思いというものも一つございます。  あれこれ申し上げました。よい点は機会均等の教育を受ける、それから人間には権利というものがある、自由というものがあるということを盛んに教えられたような気がしますし、問題点としては先ほど申し上げたように、逆に個性、あるいはまた詰め込み、そういうことによっての幅広い厚みのある教養、あるいは権利と自由を教えていただいたがゆえに、しかしそれが存立する社会というのは社会全体というものがベースにあるという、そういう点が薄れておったのかなと。  あれこれ申し上げましたが、私としてはそのように思っております。
  89. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 そのとおりだと思うんです。戦後教育中心というのは、やっぱり機会均等のいわゆる義務教育であろうと。私は、その義務教育の中で、義務教育とは何ぞやと、こう読んでみますと、世の中に出る準備と。ですから、単に知識だけじゃなくて徳育も体育も受けた中でこれでもう世の中に出ることができますよという位置づけだと思うんです。  今、こういう時代になってからこそ、学校教育がかつては中心であった、今も中心ではあるんですけれども、そういうふうな中でいろんなことを余りにも求められているのが現況かなと。  その中で、三つの育を達成するというのはなかなか容易じゃないと思うんですけれども、いみじくも大臣の方から受験の話が出て、いわゆる受験科目だけに集中してしまって今日のような状況になっている、結果にもなっているという話でありますけれども、私は特に局長にお伺いしたいんですけれども、義務教育の役割、そして高等教育の役割、これは、現段階での文部省の考えている義務教育と高等教育というのはどういうふうな峻別をしているのか、お伺いしたいと思います。
  90. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) お答えを申し上げます。  義務教育は、先生に申し上げるまでもございません、人間としての基本的な部分を幼少期に満遍なく身につけさせる、一言で申し上げれば、この一語に尽きることでございます。とりわけ、戦後教育の、先ほど大臣が申し上げました問題点も我々は勘案いたしまして、みずから問題を発見してみずから学ぶ力をつける、そして豊かな人間性を身につけさせながら、たくましく生きていくための、文部省用語でございますけれども、生きる力を基本的に身につけさせようというのが義務教育の基本でございます。  一方、高等教育は、すさまじい勢いで社会が進歩をし、国際化が進み、そうした科学技術の進歩が進む中で、大学のあり方も極力個性の強い、つまり、あの大学はこういう特色がある、そこにそういう意図を持った生徒がまた集まる、個性輝く大学という言葉を我々は盛んに今キーワードとして使っておりますけれども、それと同時に、これから先、資源のない国はさらに知的存在感のある国を目指さなければなりませんから、そのための世界の最先端を行く水準を持った高等教育をしなければならない、こう二つ備えて、今、教育改革を推し進めているところでございます。
  91. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 義務教育なんですけれども、今、政務次官お話しのとおりだと思うんですが、しかしながら、今の現況を振り返る、また現実を直視するに当たって、本当にカリキュラムそのものをずっと数えてみると、いわゆる知育ということがどうしても中心になっているような気がするんです。  ですから、義務教育は、私は、政務次官の今のお話の中で、知育、徳育、体育のバランスをきちっととるという理解をしたわけでありますけれども、今の現況からすると、まさに義務教育は何たるかという総論に欠けた部分が現実問題としては出ているんじゃないかなと。だとすれば、今、教育基本法云々という話がありますけれども、その辺も将来的には義務教育の位置づけをまた変えるというような構想でも文部省としてはあるのか。  そしてまた、週五日制という、実はこれは余り私は賛成できないんですけれども、そのバックグラウンドとしては、子供が余り忙し過ぎるから、もうちょっとゆとりを持った方がいいだろうというような話も聞こえますが、しかし一方では、二年前ですか、文部省が塾を認めるようになった。何であそこで認めるような発言をしなきゃいけない、この話があったんです。  こういうふうなことを考えると、今のいわゆる義務教育に対する文部省、我々の考え方というのは今までと違うものにならなきゃいけないのか、それともやっぱり今までのとおりなのか、そしてまた、将来的にはいろいろまた義務教育をも変えなきゃいけないのか。  週五日というのと塾についての見解をお伺いしたいと思います。
  92. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 今、教育基本法の議論がある中で、義務教育という問題を変えるのか変えないのか、それも対象にしているのかという御質問で、非常に文部行政の基本にかかわることですから一言だけ申し上げますが、義務教育という仕組みは憲法で書かれている内容でございます。したがって、義務教育という、そこで行われる中身をどう変えるかというのは一つあるとは思いますが、義務教育というその仕組みは私どもは変えるつもりはございません。問題は……
  93. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 義務教育の役割の骨子。
  94. 大島理森

    国務大臣大島理森君) だから、問題はその教育の中身であろうと思うんです。そういうふうなことの議論は当然いたさなければなりませんし、佐藤委員が先ほど来、戦後教育の欠陥、問題点というものをいろいろお話しされ、中西さんのお話も引用されて提起された。つまり、我々はまさに戦後教育の反省というものから、一つはやはり個人のいわば意思というもの、意思というか個人のそういう創造性というものを大事にしていかなければならないとか、あるいはまた自分で答えを出す、そういうふうな国民になってもらわなければならないとか、あるいはまたそういう多様性の中における対応をどうしたらいいかとか、そういうことで新しい指導要領をつくり、そしてまさに佐藤委員が御指摘のようなことをあらゆる施策、例えば体験学習奉仕活動あるいはまた地域子供プラン、そういうものの中でそういうことを考えていこうということでの新しい学習指導要領でございますので、どうかその辺もまた御理解いただき、御指摘をいただければと思います。
  95. 御手洗康

    政府参考人(御手洗康君) まず学校五日制でございますけれども、これにつきましては、文部省といたしましては、現行の学習指導要領のもとで平成元年から実は調査研究を設けまして、その実情を見ながら、平成四年の九月から月一回そして平成七年の四月から現在の月二回という形で現場の反応等あるいは教育指導のあり方等を見きわめながら、また土曜、日曜日におきます子供たちの、大臣が先ほど申し上げましたような地域社会における受け皿づくりというようなことも踏まえながら順に段階を追ってきたところでございますけれども平成十四年の四月から小中高等学校を含めまして、一斉に毎週学校を土曜日休ませていただくという形で新しい指導要領をつくらせていただいたところでございます。  内容的には、できるだけみずから考え問題を解決する、そういった時間的なゆとりあるいは指導上のゆとりを生み出すという工夫もさせていただいているわけでございます。  また、塾につきましては、これは文部省制度的にこれを認める、認めないというようなことではございませんで、大学予備校につきましては各種学校というような形で認可されている学校もございますけれども、大部分は私的民間教育事業という形で行われているわけでございます。これは文部省が認める、認めないということではございませんで、それぞれ地域のさまざまな子供学習上あるいは発育上のニーズに応じて親御さんと子供が選択をしてやっているということでございます。  文部省といたしましては、子供たちのそういう現状を踏まえた上で学校教育をできるだけ、先ほど申し上げましたように基礎、基本の充実とそれでみずから考える力を養っていく、そのために多くの体験的な活動、奉仕的な活動あるいはボランティア活動、こういったものを取り入れながら知、徳、体、バランスのとれた教育内容を実施していきたい、こう考えているところでございます。
  96. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 その五日制については、みずからの考える時間をということでありますけれども、これも何かもう都市と地方ではかなりこれ違うかなと。都市部に住んでいる、私も市谷薬王寺に住んでいるんですけれども、広いところなら別としても、二DK、三DKで子供と一緒に住んでいる家庭というのは相当私は多いと思うんです。  現実問題として、そういう現況の中で、うちの中で子供が二人部屋、三人部屋で、そんな自分なりにいろんなことを思うこと、また一週間を省みながらいろいろ思い出してなんという、現実問題としては私はそれはもう非常に難しい環境条件だと思うし、であればむしろ学校を開放しておいて、その中でも自由な時間で、午前中でも午後でもそれぞれ友達と遊びなさいよという方がむしろ良であろう、そんな思いをしております。  次に、やっぱり今日の最大のいわゆる問題というのはモラルの欠如、ここからくるものがいろんなことを、先ほどと重複しますけれどもくると思うんです。  昨年、中坊公平さんのお話を聞きました。そのときにちょうど銀行の不祥事がいろいろあったときなんです。中坊さんが言った話が、いわゆる先ほどの知育、徳育、体育が今日までの順番だったけれども、このいろんな今の不祥事を考えるとまさに徳育、体育、知育だ、そんな話をまずしました。  それは、戦後のいわゆる教育の中で画一の教育と言いながらも私は専門家の育成、これが中心だったのかなと。文科系、理科系あります。理科系というのは、これは今まで専門官を養成してきた。文科系というのは、ある意味ではもう少し幅広いさまざまな事物、人文学的なことも含めて、即戦力じゃないものを、私は相当その部分はあったと思うんですけれども、それも最近のいわゆる文科系になってくると、金融論とか経済学とかいわゆるそっちのスペシャリストを養成して、その者が一流会社に入っていったと。金融論、経済学ではすぐれておるけれども、その人がいざ部長になって役員になって専務になって頭取になったときに、人事管理をすること、また一つのドグマというか道徳の勉強、その部分だけしなかった、そんなことが今日のいろんな問題を呈していることの原因にもなっている、そんな話を聞いて、なかなかこれ的を射た話だなと感銘した部分もあったんですけれども。  本当に徳育、道徳教育、この方針、これは本当に難しいと思うんです。三位体制云々というふうな中で難しいと思うんですけれども、どこにどんなふうな形の中でこれから文部省は求めていくのか、その件についてお伺いしたいと思います。
  97. 御手洗康

    政府参考人(御手洗康君) 学校におきます道徳教育は、基本的な目標といたしまして、人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を学校教育活動全体を通じて、そしてまた家庭、学校その他の社会における具体的な生活の中に生かすことができるようにということで指導しているわけでございまして、特に小中学校におきましては週一時間の道徳の時間というものを設けまして、学校におきますさまざまな教科や活動等を通じて得られた価値というものにつきまして、子供たちに討論をさせたり発表させたりというような形で行っているところでございます。  具体的には、小学校低中高学年ごとに、それぞれ自分自身に関する道徳的価値、他人とのかかわりに関するもの、それから三番目に自然や崇高なものとのかかわりに関すること、それから集団や社会とのかかわりに関することを小学校低学年で十五の項目、中学校になりますと二十三の項目に分けまして示しておりまして、これを一つ学校教育におきます道徳の指導の目標としてさまざまな教科や活動の中で生かしていただき、そして道徳の時間ではそれらの活動を生かしてこれらの価値そのものに気づかせて、内面的な倫理観まで高めていく、こういう指導を基本的にしていただくということになっているところでございます。
  98. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 道徳というのは、私は教えるというよりは半分以上は身につける教育だと思うんですね。ですから、カリキュラム全体の中で、私は、知育はもちろんですけれども、やっぱり体育というのもうんと大事で、その中で、一つのサークルで、先ほど同僚の岩城委員からもありましたけれどもスポーツの重要性というのは、ある意味では今の時代というのは知識というのはいろんなところから収穫できるんですけれどもスポーツというのは、私は、スポーツで身を挺しながら、体で覚えながらというふうなことはなかなかその機会がないのかなと。  そんなことを思うと、やっぱり体育と道徳というのはある意味では共通性があるので、そんなことも、単にカリキュラムの中で道徳の時間をとって意見発表とかそういうのじゃなくて、もっと身に迫ったというか、体をお互いにぶつけ合うような、そんな中で一つの道徳心が、体で覚える、考えて判断するんじゃなくて体がおのずと動いていくような、そんなものをどこかの方法でひとつ養成してもらえるようなことも考えてもらえればと思います。  次に、これもまた道徳の話になると思うんですけれども、こういうことがあるんです。  これは、東京のある学校で統廃合の問題があると。A校がB校に今度統合される。ですから、A地域の人は、自分の娘、息子が最初からA校に入るんじゃなくて、統合されるB校に最初からじゃ入れちゃおうということで、今度はA校の方の地域の方がその存続運動を始めた。私はこれは大変ないろんな意味を呈しているのかなと。まさに学校、家庭、地域社会という、どこへ行っても今その言葉が大はやりなんですけれども地域の中の学校か、学校の中の地域か。  私は、やっぱり特に都市部においては学校というのは共同性の唯一の場所だと思うんです。ですから、その地域の中で父兄がお互いの子供を、一年生を共有している、二年生を共有している、そういうふうなことによってそのPTAの集まり、また運動会、学芸会で一緒に集まることによって、だれの子か、御手洗さんの子供佐藤雄平の子供もお互いの地域子供なんだなということでたまには注意したりするような、それがやっぱり一つの私は地域社会学校と家庭の共存の中で道徳をも醸成することだと思うんですけれども、ところが今、少子化に伴って学校の統廃合がいろんな話題を呈している。  ですから、統廃合というのは、これは物理的にしようがないところもあると思うんですけれども、しかしながらそれが地域社会を崩壊してしまう、こんなことがあるというふうなことも十分に考えられますので、そういうふうなこと、いわゆる統廃合がどんな影響を及ぼすかということも十分考えながら、統廃合について、また学級編制等も含めて考えていただきたいと思いますが、その件について御所見はいかがでございましょうか。
  99. 御手洗康

    政府参考人(御手洗康君) 学校の統廃合につきましては、特に最近は都心部の過疎化現象がございますが、かつてはいわゆる過疎地の統廃合という大変大きな課題がございました。  文部省といたしましては、いずれにいたしましても学校を設置しておりますのは市町村でございまして、市町村が地域の住民、あるいは議会、あるいは御父兄、そういった方々の意見を取りまとめて責任を持って教育委員会が進めていくということをお願いしておりまして、特にかつての通知におきましては、とりわけ通学距離あるいは通学時間の児童生徒心身に与える影響、あるいは児童生徒の安全あるいは学校教育への影響等を十分に検討していただくとともに、学校統廃合の計画の場合につきましては、御指摘のございましたような学校の持つ地域的な意義ということを踏まえて、十分に地域皆様方の御理解、御協力を得る、そういう手順を踏んで行っていただくように、これは文部省としては強くお願いをしているところでございます。  今後とも、地域の責任ではありますけれども地域の住民の御意見を十分伺いながらやっていくということが必要であろうと思いますし、また、統廃合に伴います経過的な措置といたしまして、通学区域の弾力化というようなことを活用して、今行っている子供たちが、機械的に通学区域を割り振ることなく、ある程度友達と一緒に同じ学校に行ける、あるいはお兄さんやお姉さんと同じ学校に行けるというようなことも、これも通学区域の問題でございますので、市町村が責任を持ってやっていただく。その際に、そういった住民の御希望等を踏まえながらやっていただいているものと私どもも思っているところでございますけれども、そういった事例も最近あらわれているところでございます。
  100. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 ぜひそういうふうな点にも配慮しながらお願いしたいと思います。  次に、これもまた午前中、岩城さんの方からあったんですけれども、本当に情操教育というか、童謡、唱歌、民話、猛烈に私はこれは大事だと思うんです。  それは、去年の十月ですか、天皇陛下の在位十周年を御省の所管である国立劇場でやったんですね。あのとき東京児童少年放送合唱団が「みかんの花が」というのをまず歌ったんですね。次に、「夏がくれば思い出す」、これは我が県の歌なんですが、「夏の思い出」。それから、「誰かさんが誰かさんが誰かさんが見つけた」、「小さい秋見つけた」。それで、「かあさんが夜なべをして」というのを歌っているんです。これはみんな春夏秋冬なんです。あのときはもう本当にみんな涙が出ました、私は。多分、大臣も出たと思うんです。やっぱり詰まる思いがあったんです。  私があのとき思ったのは、実はこういう歌を、「みかんの花咲く丘」、「夏の思い出」、「小さい秋見つけた」、「かあさんの歌」、これは四季折々とみんなの感情がうんと入って、詞もひもといてみるとこれが教育にうんとつながるんです。私は、こういうふうな歌を今の子供たちが口ずさんだら、荒廃している学校崩壊、学級崩壊なんてなくなるんじゃないかなと思いました。  それはなぜかというと、考えてみると、自分で歌っているからなんです。歌うからなんです。教えられることじゃないんです。自分で歌って詞を吟味するからなんです。また、その詞がわからないと歌えないはずなんです。  かつて、森繁久弥翁が言ったことで、詩は歌えというんです。歌は語れというんです。まさに私は、今の義務教育というか道徳教育というか、その前提としてこういうふうなことがうんと大事であろうと。  そんなさなか、またこれカリキュラムの問題になってまことに恐縮でありますけれども、音楽の時間がだんだんなくなって、しかも、これは私的なことになっちゃうかもわかりませんけれども、「荒城の月」がなくなるなんという話もあるんですけれども、最も大事なところが何か別な方向に、今、世の中で求められているところと逆の方向に何か教育の骨格が行くような気がしてしようがないんです。  その辺も踏まえながら、ひとつ大臣に、この情操というか、民話も含んだ、童謡、唱歌。民話、民話なんて特にこの語り部、これはNHKで、ゆうべかな、またいろんな昔話をやっているんですが、これはまさに地域の私は文化になると思うんです。なかなか今継承する人がいないといってこわがって、文化庁もいろいろ苦心惨たんしていると思うんですけれども、何のことはない、語り部というのは各地域にそれぞれいます。あの人たちをうんと大事にして、あの人たちに場合によっては小学校、中学校で先輩のお話を聞こうとか、語り部の話を聞こうということであれば、おのずとその地域の文化というのは流れていくと思いますので、この件についてもぜひ力を入れていただきたいと思いますけれども文部省の方からお答え願います。
  101. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 十七年の経験の中で、質問の中でまことに見事なメロディーが流れたのを初めて経験しました。  しかし、そのように佐藤先生思いの中にきれいな歌、日本の歌というものが今日の佐藤先生のパーソナリティーをつくっておられるということはよくわかりました。  情操教育がまことに大事である、こういう認識は同感でありますし、決して我々は音楽を排除しているということではなくて、むしろ総合的学習の中でそういう時間帯もきちっと設けながら、なお一層そういう情操教育充実に努力してまいりたいと思います。  なお、唱歌の問題等々についてはまた鈴木総括の方からお答えさせていただきます。
  102. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) 佐藤先生ほど私は声はよくないんですけれども、歌は大好きでございまして、今、大臣のおっしゃったのを補足する意味で申し上げれば、私は環境教育という側面からもこの童謡あるいは民話、これらの重要性はふえることはあっても減ることは絶対ないと思っております。  先生、福島でいらっしゃるので、例えば今お歌いになったお歌の中で中田喜直さんの作曲の曲が二曲ございました。私はよく申し上げるんですが、先生の学ばれた福島なんかはまだ例えばメダカはたくさんいるでしょう。ところが、私は横浜でございますけれども、横浜などはもうメダカは絶滅のおそれのある魚でございまして、私の娘なんかはメダカを水槽の中でしか見たことがありません。川の中のぞいてみろ、学校のお遊戯して遊んでいるじゃないかという、ああいう歌の持つ意味をやっぱり我々は本当に大事なものとして子供たちに、生きているものを手にとる瞬間が少なくなっている分だけ重要性は増していると考えますので、文部省事務当局を督促いたしまして、おろそかにならぬように厳重に注意をしてまいります。
  103. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 次に、体験学習に入りますけれども、今いみじくも鈴木政務次官が神奈川と言いました。大臣は青森。  今、いろんなところで都市と地方の対立、公共事業の話も含めてあるんです。これは私は昔はなかったと思うんです。東京と福島、東京と山形、都市と地方の対立はなかったんです。それはなぜかというと、みんな地方から出てきて、おじいちゃん、おばあちゃんが田舎にいるまでは私は多分都市と地方の対立がなかったのかな、公共事業についてもなかったのかなと。冷静に今考えてみると、三分の二は中央で集めて、三分の二を地方で使っていることに対する一つの感情的な高まりというのはあるのかなと。  それは、やっぱりおじいちゃん、おばあちゃんがふるさとにいる、盆と正月になるとふるさとに帰って我が育ったところを感じながら帰ってくると、やっぱり地域と都市も平等でなきゃいかぬというふうな感覚の中で私はそういうふうな感覚が生まれていったと思うんですけれども、残念ながら今もう三世の時代になって、ひいじいちゃんになっちゃって、お盆と正月も都市部から行くにつけても観光地に行って自分の実家になんてほとんどもう行かないような状況になっているんです。  私は、そこでこの体験学習、もうそれぞれ何か今の行政は省ごとにやっている。国土庁、建設省、自治省あたりも含めて今の都市と地方の問題を考えるのであれば、私はその体験学習なんというのは、これは一過性のものではなくて、神奈川県の人が例えば福島に行く、例えば青森に行く。そういうふうな中でのどうせなら体験学習にして、まさに子供たちのふるさと、単に小学校、中学校のときに行ったんじゃない、大人になってからも何か青森に行ってみたいな、福島へ行ってみたいなと、みずからのふるさとをつくるような意識の中で私は体験学習をやってもらいたいと思うし、特にまたこの体験学習の中で最も大事なのは私は農業だと思うんです。教育の中で最も大事なのは私は農業だと思うんです。それはなぜかというと、種を植えて水をやって草を取ってそれで収穫、それぞれのやっぱり喜びが全部あるんです。この辺の喜びを子供が感ずるようであれば、私はもう本当にすさんだ子なんてできてこないと思います。  ですから、そういう意味で、時間がなくなりましたけれども体験学習思い切って、本当に文部省なんという幅じゃなくて自治省にもほかの省庁にも中心として、これが地方と都市のいわゆる均等な、仲間意識を持った都市の子供がふるさとを持つ。例えば今度の噴火の問題だってそうなんです。あれがそういうふうな関係を持っていれば、何もこわごわして東京に噴火の避難だって来ることない。  今、子供たちにも私は危機管理というのは相当あると思うんです。特に都市部の子供たちに危機管理があって、何か大惨事が起きそうだな、そうやってやっぱり今まで多少なりとも地縁のあったり知人のいるところに行くのと全く別天地に行くのでは全然違うと思いますので、体験学習の中でももっと広義に考えてもらえれば非常にありがたいかなと。  時間が参りましたので、あと二つほど通告しておりましたけれども、ここで閉じさせていただきます。最後大臣の答弁を聞いて、質問にかえます。
  104. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 佐藤委員の、体験学習が第二のふるさとづくりという意味で、都市と地方の、あるいはもっと言うと都市と農村と言った方がいいんでしょうか、そういうふうな交流、均衡ある自分気持ちの中に育つためにもそういう体験が大事だという御主張は、私は全く同感でございます。  佐藤委員も御承知かとは思いますが、文部省も子ども長期自然体験村ということで、約七十カ所ぐらいで今やっております。私のところでも、実は私は知りませんでしたが、この間久しぶりに帰ったときに、その地域で大阪のお子さんたちを農家が受け入れているんです。それはまさにこういう子ども長期自然体験村ということでやっていただいておりまして、福島も東白川郡の鮫川村、南会津郡のこれは檜枝岐でやっていただいておる。  名川の町長に聞きましたら、私のところの、実は三町村ぐらい一緒にやっていたんですが、他の一町一村が大変なんですと、だんだんドロップアウトしまして、ドロップアウトというと大変失礼なんですが、名川だけになってしまいました。  もう少し私どもも何か支援体制、補助金は出しておりますが、もう少し何か考えられぬかなと。自治体ともよく相談もしなければなりませんけれども、いずれにしてもリアリティー、つまり今の子供たち体験をさせるというのは社会のリアリティーを知ってもらうことです。その中での農業、農村の中に行って体験してもらうというのは大きな手だてだと思っております。  委員の御指摘のように、一層充実するよう努力してまいりたい、このように思っております。
  105. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 ありがとうございました。
  106. 郡司彰

    ○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司でございます。  私の選挙区は茨城でございまして、その東海村で昨年の九月三十日、起こってはいけない、起こしてはいけない事故が起こってしまったわけであります。過度の被曝をされました三名の方のうち二名がお亡くなりになったということもございました。  国の原子力の行政を進めるに当たって、まさに安全こそがその基本にあって、そのことによって多くの方々の理解もまた得られるというふうなことに、国としてもそのような考えだと思っております。  そこで、最初に長官の方にお尋ねをしたいと思いますが、八月三十一日、茨城の方に向かわれました。知事にお会いになって、村長にお会いになって視察をなされたということでございますが、感想につきましては先ほど午前中、加納委員の方の答弁の中にも若干ございましたので簡潔で結構でございます、知事、村長との話し合い、どのような中身でございましたでしょうか。
  107. 大島理森

    国務大臣大島理森君) お邪魔したのは、あの事故はもう遺憾以上の怒りを覚えたわけでございまして、忘れてはならない事故だということの思いを持って行きましたが、知事との会談ではいろいろお話ししました。なるほどなと思うこともありましたが、やはりジェー・シー・オー事故の影響や安全規制体制の強化、知事からはそういうお話、あるいはそれがためにもなるほどなと思ったのは、原子力教育あるいは人材確保が必要だよというお話。私からは、私どももこの原点をしかと踏まえて安全性に対してもろもろの対策をとってまいりましたが、一層努力してまいります、ぜひサイクル機構東海処理工場の運転再開についてもお願いを申し上げたいという思いで参りましたということをお話ししたわけであります。  それから、村の村長さんでございますが、やはり同じような内容お話し申し上げまして、そして特に村長さんからは、東海村は今までの原子力政策の黎明の時代から我々としては今日まで頑張ってきた、しかしあのジェー・シー・オーの事故というのはまことにもう何とも言いようもない怒りを覚える、我々は今そのことを乗り越えているけれども、そういう歴史があるからこそ、ある意味では安全性というものにまず最善の努力を、あるいはまた後始末についての努力もしてほしい、さらに、そういうふうな歴史を踏まえているから、我々としてはこの地域を先端科学の町にもしていきたいんだ、こんな思いも率直にお話をしていただき、私からは再開のまたお願いも申し上げたところでございます。
  108. 郡司彰

    ○郡司彰君 今回の事故に関しましては詳細な報告書がつくられておりますし、また白書の方にも同じような文言が出てくるわけであります。  それは、国の対応のまずさがあったというような文言でございまして、このまずさというのは何がまずかったのかといいますと、一つはやはり危機管理の関係でございますから、情報の伝達がスムーズに行われなかった、それから指揮系統そのものが若干の乱れを来したのではないか、そのようなことがあろうかと思っております。  そこで、九月三十日の事故発生の時点から総理まで第一報が届いたのが十二時半ごろだというふうに報告書等には書いてございますけれども、何段階を経て、どの時間で総理のところまで届いたのかということの具体的なこと。  それからさらに、今回規制法が改正をされ、あるいは新法が成立をしたわけでございますので、それに伴って、これはシミュレーションとしての話でございますので、もう一度こういうことが起こるということを想定しているわけではございませんが、万が一そのものが起こったという場合に、新法ができた以降の総理への第一報というのは、どういう手順でどのぐらいの時間で届くというふうに想定をされていらっしゃいますか。
  109. 今村努

    政府参考人(今村努君) お尋ねの二点についてお答え申し上げます。  昨年九月三十日のジェー・シー・オー東海事業所において発生いたしました臨界事故につきましては、同日午前十時三十五分に臨界事故が発生いたしました。同日午前十一時十九分に事業者から科学技術庁に事故発生の第一報が連絡されております。さらに、午後零時半過ぎ、科学技術庁から官邸総理秘書官に第一報を連絡し、それを受けて、小渕前総理には事故発生から約二時間後の同午後零時四十分ごろに総理秘書官から報告がなされた、こういう段階を踏んでおります。  そこで、お尋ねの第二点でございますが、このジェー・シー・オー臨界事故への対応の教訓から、事故発生の通報連絡が迅速に行われますように、原子力災害対策特別措置法におきましては、原子力施設の敷地境界におきまして一定以上の放射線が検出されました場合、原子力事業者に対し直ちに主務大臣及び自治体への通報を義務づけております。  この直ちにと申しますのは、防災基本計画におきまして、特定事象発見後、あるいは通報を受けた場合十五分以内、いわゆる十五分ルールということになっております。主務大臣がその連絡を受けますと速やかに官邸を含め関係省庁に連絡が行われることになります。さらに、これを受けまして主務大臣は、放射性物質または放射線が異常な水準で放出される、いわゆる緊急事態であると認められる場合には直ちに総理に緊急事態宣言のための報告を主務大臣が行うこととされております。  こうした措置によりまして、事故発生の通報連絡が迅速かつ確実になされるものというふうに認識しているところでございます。
  110. 郡司彰

    ○郡司彰君 十五分以内に通報がなされる、いわゆる十条と十五条に対しての細かい説明になったかと思いますが、アメリカの方の、やはり十五分以内に通報を行う、そして同じく十五分以内に州知事が一般大衆に対して通告を行うというそういうふうな決まりがありまして、ただ、その場合には、オペレーションセンターの方でもってエグゼクティブチームと言われるものが判断に必要な情報として与えるわけですね。  今のお話をお聞きしますと、例えば総理のところに届くときに、総理が判断をする情報として整理をした上で行かれるまでどのぐらいかかりますか。
  111. 今村努

    政府参考人(今村努君) 通報事象あるいは原子力緊急事態などの事故レベルの基準とその判断についてのお尋ねであると思いますので、その点について御説明申し上げます。  原子力施設の異常事象に係る通報基準あるいは緊急事態の判断基準は、それを判断するために時間を要していますといたずらに時間が経過するという反省がございます。したがいまして、ジェー・シー・オー臨界事故への対応の反省なども踏まえまして、できるだけこの通報基準あるいは緊急事態の判断基準については明確なものをあらかじめ決めておくということにいたしております。  原子力事業者につきましては、例えばモニタリングポストにおいて一時間当たり五マイクロシーベルト以上の放射線量を検出した場合は直ちに通報する、主務大臣及び自治体に通報を行うということになっております。さらに、原子力災害対策特別措置法の十五条通報ということでございますが、十五条の事態、明らかに緊急事態が発生したと認められる場合におきましては、これもその判断基準はあらかじめ数字で決められておりまして、モニタリングポストにおきまして一時間当たり五百マイクロシーベルト以上の場合といったようなことが明確であれば直ちにそれを総理報告し、総理が緊急事態宣言を行うということでございまして、極力その間に介在する各人の判断がないようにする、そういう考え方でこの体制を構築したというところでございます。
  112. 郡司彰

    ○郡司彰君 せっかく十五分以内ということ、直ちにということが十五分以内だということが決められているわけでありますけれども、本当にその形が可能なのかどうかということになると、非常にちょっと心もとないんではないかなと。  それから、何といいましょうか、通報をする、通告をする、そのような形の中で、いわゆるアメリカの場合にも、例えば何十年も前からこのような体制がとれていたわけではない。しかしながら、TMI事故以降、この規定をつくることによって相当程度の頻度のシミュレーションを行っているということが言われておりますけれども、このようなシミュレーションというのは事故後何回かなされておりますでしょうか。
  113. 今村努

    政府参考人(今村努君) 原子力災害対策特別措置法によりまして総合的な防災訓練を行うということが法律で定められたところでございます。この総合的な防災訓練の中で今のような通報連絡ということが行われるわけでございますが、これは、この原災法が成立いたしまして現在その準備を進めておりまして、秋に通産省等と協力して実施するということで今準備を進めているところでございます。これに先立ちまして、春には福井で、実際の法律に基づくものではございませんけれども、防災訓練も行っております。  今後とも、こういう防災訓練、それに基づきますシミュレーションの訓練を重ねて、このシステムが有効に動くように努力したいと思っております。
  114. 郡司彰

    ○郡司彰君 九月一日が震災の日ということもございましたけれども、防災の日ということがございまして、各県、各地で訓練が行われております。  例えば、九月三十日には東海村でも行われるということになっておりますけれども、住民を参加させてということの意義は一つはあるんだろうと思いますが、どうも住民が参加をする、いろいろな車両や何かが参加をするということに、そちらの方に目がとらわれてしまって、実際に起きた場合のシミュレーションというものがかなり厳密に行われるということが少ないんではないかな。こういうものを、何人が出ましたよ、何千人が出て参加をしてやりましたよと、そのことだけにとどまらないようにひとつシミュレーションの方をよくやっていただきたいなというふうに思っております。  それから、次の質問でございますけれども、先ほども言いましたように、一九七九年のTMIの事故以降、NRCでありますとかFEMAとかという形でもっていわばオンサイトとオフサイトの区分けというものが相当なされてきたかと思っておりますけれども、日本の場合、規制法の改正あるいは災害対策特別措置法、この関係によってその辺はどのように強化をされておりますでしょうか。
  115. 渡海紀三朗

    政務次官渡海紀三朗君) 今御指摘ございましたように、スリーマイルの事故以降、カーター大統領の声明が出されまして、かなり原子力規制委員会、NRC委員長の権限を強化したり、そしてまた連邦緊急事態管理局、FEMA、フィーマと通常言っております。実は、災害対策ということでは地域中心の作業をする、そういう意味で非常にこの機関が評価されておるというふうに承知をいたしております。地震災害なんかの場合にも出動をする機関だというふうに私は理解しておるところでございますが、こういうことを中心に、特にこのFEMAを中心に州の緊急避難計画の見直しというものが行われたというふうに承知をいたしておるところでございます。  我が国におきましては、一方、ジェー・シー・オー事故を踏まえまして、ことしの四月に原子力安全委員会の事務局の機能を現在の科学技術庁から総理府に移管をいたしております。そして、専門スタッフを含めて人員を大幅に拡充するなど、強化策、独立策を図ったところでございます。  また、科学技術庁及び通産省におきましては、ことしの六月から、先ほどからお話が出ております原子力災害対策特別措置法の制定を行い、同時に原子炉等規制法の改正を行いまして、保安検査等を行う原子力保安検査官、また防災のかなめとなる原子力防災専門官を国内各地に配置をしたほか、それぞれの地域において緊急事態が発生した際に現地対策本部となる、これはいわゆるオフサイトセンターに相当するものと考えておりますが、緊急事態応急対策拠点施設、オフサイトセンターと言った方がわかりやすいと思いますが、を全国二十一カ所に実は指定をしたところでございます。  このほかにも、原子力の事業者に対しましても、従業員の保安教育の強化、また原子力防災業務計画の作成、原子力防災組織の設置、放射線測定設備その他の必要な資機材の整備などを義務づけまして、原子力災害に対しての対策の強化を図っているところでございます。
  116. 郡司彰

    ○郡司彰君 総理府の方に移られ、あるいは充実強化をされたということでございます。確かに、当初の、事故当時の陣容から見れば、現在九十名でしょうか、予算後は百名の体制になるということでございますから、格段のということにもなろうかと思いますが、しかし一方で、同じような経験をしたNRC等の陣容から比べるとまだまだ力が小さ過ぎるんではないかなということがございます。  それから、村の方の話の中でも出てまいりましたけれども、推進をする側とそれから規制をする側というものがもう少し明確に分離をされてしかるべきではないか、そのような意見がございますけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  117. 渡海紀三朗

    政務次官渡海紀三朗君) ただいまの先生の御意見は私も全く同感でございます。推進とやっぱり規制というものはきっちりと独立をしている必要があるというふうに考えておるところでございまして、従来からもできるだけそういうふうな形をとるということでやってきたわけでございますが、さらにそのことをより担保する意味においても、先ほど申し上げました、まずは独立性を高めるという意味で総理府に事務局を移管したということがございます。  その上に、この一月の省庁再編時に新たに設置されます内閣府の方に独立をした事務局を設けるということで、安全委員会はそういった意味ではより独立性を高めてチェックをするというふうに承知をいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、まずは、日本の原子力行政というのは、研究開発を推進いたしております科学技術庁、来年一月から文科省になるわけでありますけれども、主に産業面を監督いたしております通商産業省、この二つの省庁が法令に基づいてまず安全審査を行うということで、第一段階をクリアした後に独立した安全委員会がダブルチェックを行うということで、より安全性の高い原子力行政が行われるというシステムになっておるわけであります。
  118. 郡司彰

    ○郡司彰君 事故が起こった場合に、管理機関、管理者が十五分以内に通報をするということになっております。その際、事故のレベルの基準というものを一定程度判断するんだろうと思いますが、十条、十五条によりますところのものと、実際に二つぐらいのレベルということに今なっているのかと思いますけれども、例えば発電所の事故が起こった場合のレベルというものも二つなのか、それから燃料施設、この前のジェー・シー・オーのようなところではそれも二つなのか、その辺のところについては特に区分があるんでしょうか。どこが判断をするんでしょうかということも含めてちょっとお答えをいただきたいと思います。
  119. 今村努

    政府参考人(今村努君) 今、二つとおっしゃいましたのは、十条の通報の場合と十五条の緊急事態の場合かと思いますけれども、各原子力施設によって違いがあるのかどうかということでございますが、これは違いがある部分と共通の部分がございます。例えば、施設周辺における放射線モニタリングのレベル、これが五マイクロシーベルト・パー・アワー、毎時五マイクロシーベルトに達すればこれは通報事象であるということは共通の一つの基準でございます。  しかしながら、それぞれの施設によりまして、例えば臨界事故を想定しなければいけない施設あるいは炉心溶融というような事故を想定しなければいけない発電所の施設によって、それぞれの個々の特定事象については違いがございますが、それもそれぞれについて明確に定めているわけでございます。以上でございます。  それから、どこで判断をするのかということでございますが、できるだけ判断の基準は明確にあらかじめ決めるということを前提に、端的に申し上げますと、最初の通報事象につきましては、原子力事業者、特に原子力事業者はこの法律に基づきまして防災管理者というのを置くことになっております。防災管理者がその責任でもって通報するということになります。  一方、緊急事態の場合でございますが、これは主務大臣が判断をし、その判断に基づいて総理に緊急事態ですよという緊急事態宣言の意見具申をする、こういう仕組みでございます。
  120. 郡司彰

    ○郡司彰君 さらに、前回の事故以降施設について抜き打ちの検査等を行ってきたと思いますけれども、今後も規制法の強化によりまして定期検査等の実施をきちんと行っていこうということが決まっているかと思いますけれども、これについても発電所あるいはそれ以外の燃料加工施設、それらの区別によって定期検査が違ってくるのか、あるいは頻度、常駐体制というものがとられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  121. 今村努

    政府参考人(今村努君) 基本的には、それぞれの施設に応じた検査内容になろうかと思います。  今御質問の点の定期検査ということでございますが、これは施設定期検査というものにつきましては、この事故の前にも旧来の原子炉等規制法に基づいて実施しておりました。  この事故を踏まえまして改正されました原子炉等規制法によりましては、いわゆる保安検査というものが新たに設けられることになりました。これは事業者が緊張感を持って運転管理を行うよう現場の日常の監視を強化するということを目的としているところでございまして、事業者が決めております保安規定、その保安規定に基づいて行っております運転管理の実情を保安検査官が現場へ行って確認するということでございます。  そのために保安検査官を、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、現地にも常駐させまして、本年七月よりこの保安規定の遵守状況にかかわる検査を開始したところでございます。この検査は各施設について年四回行うことになっておりまして、現在、この七月から第一期の保安検査に入っておりまして、その法律制定後、第一回目の保安検査を今各施設について順次行っている途上というところでございます。  以上でございます。
  122. 郡司彰

    ○郡司彰君 済みません。先ほどのその他のところの施設についてはどうでしょうか。
  123. 今村努

    政府参考人(今村努君) 原子力発電所につきましては通産省の方からお答えいただいた方がいいかと思いますが、私どもが所管しておりますいろんな施設がございます。これは原子力発電所以外の、例えば研究炉あるいは研究開発段階の原子炉、さらには再処理施設、加工施設、使用施設等がございますが、基本的には枠組みは同じでございます。  ただ、もちろん、それぞれに持っております保安規定の内容は、運転管理の実情がその施設によって特徴がございますので、個々の検査項目についてはそれぞれの特徴に応じて実施するということにはなるわけでございます。
  124. 郡司彰

    ○郡司彰君 お聞きをしまして、大分強化をされているのかなというふうに思っております。  ただ、NRCの方の説明によりますと、原子力発電所と濃縮燃料プラントには常駐する形で行っている、そのほかは年に二十五回行っているというような形で述べられておりまして、回数だけで質まで規定をするわけではございませんけれども、かなり頻度を高めて行っているということでございますので、それらについても検討をいただきたいなというふうに思っております。  それから次に、昨年の秋口、新法ができ上がるころまでには、IAEAの国際的な評価については暫定レベル四というようなことでございました。その後、影響度評価委員会が開かれて、レベル四ということに確定をしたんだというふうにお聞きをしておりますが、このレベル四の部分をちょっと見ますと、スリーマイル、TMIの方が、所外へのリスクを伴う事故ということでの五になっている。一方、今回の事故については、所外への大きなリスクを伴わない事故ということで四ということになっているわけでありますが、これもちょっと調べてみましたら、TMIの方も、実際に被曝をしたのは所内だけだということだそうでありまして、しかしレベル五としたのは、五歳以下の児童、それと妊婦を対象に避難命令が出たことを考慮したというふうに一般的に言われていると思います。  今回の場合を、私は、レベル五ではないかというようなことではないのでありますけれども、そこのところからただ推測をすると、東海も五であってもおかしくなかったのかなというような感じを受けます。  そこで、委員会の中で話が出されたのかどうかわかりませんが、安全性に対する文化というものが一つのこの議論の的になってまいりまして、そこの事象をとらえた中で、アメリカの方は今後の戒めとするということも含めて五というような形をとりながら強化をしていったのではないかな、日本の場合にはこのTMIと同じような影響であったんだけれども四という形にしたのかな、その辺のところを委員会等の議論の中で出されたことがございましたらばお聞かせをいただきたいと思います。
  125. 今村努

    政府参考人(今村努君) お答え申し上げます。  ジェー・シー・オーの事故につきましては、事故の原因究明結果などを踏まえまして原子力施設事故・故障等影響度評価委員会を設けていただきまして、そこで最終評価値をレベル四といたしております。これは放射性物質の少量の外部放出と従業員の致死性の被曝ということを根拠といたしましてレベル四ということにいたしました。このINESの評価につきましては、あらかじめ評価基準もございまして、その評価基準に照らしてこのような結果になったところでございます。  また、このレベル四とするという評価につきましては、実は本年三月開催されましたIAEAにおけるINESの諮問委員会及び技術委員会に科学技術庁から出席をいたしまして、その考え方、レベル四とした根拠等について説明をし、適切であるという評価をいただいております。それを踏まえまして正式にIAEAに通報を行ったというところでございます。  それで、今御指摘の点、スリーマイル島、いわゆるTMI事故においてはレベル五である、これはいわゆる避難命令との関係でレベル五になっているのではないかということでございました。そういうお尋ねでございましたが、私どもはこのように理解いたしております。  TMI事故は一九七九年に起こりました。このINESの評価は一九九二年、その後九二年から行われておりますので、その時点でさかのぼってTMIを評価してみたらどうなるかということでレベル五ということになったわけでございますが、その根拠となりましたのは、原子炉炉心に深刻な損傷があったということが根拠になっているということでございまして、今お話しのございましたような、児童、妊婦などを対象とした避難命令といったようなこととの関係でレベル五になったものではないというふうに理解いたしております。  このINESのレーティングにつきましてはマニュアルがございまして、そのマニュアルなどを見ますと、例えば事故に対する緊急対策の規模、このことが分類の基準になり得ないということをむしろ指摘いたしております。つまり、事故の対策はどうしてもその地域の特性によって大きくもなるし、むしろ念には念を入れてということにもなります。  そういうようなこととは別に、やはりその事故の程度を科学的に技術的にきっちり評価するということでございますので、必ずしも今お話しのような意味での避難命令との関係でTMIがレベル五にレーティングされたということではないのではないかというふうに理解いたしております。
  126. 郡司彰

    ○郡司彰君 そのようなことをFEMAの方のブリーフィングの中でFEMAの方がおっしゃっていたというようなことでございました。そして私の方は、先ほど加納委員の方から午前中ありましたけれども、今回の事故が四か五かということも含めて、先ほどの線量が本当に避難に値するものだったかどうかということも含めて、実は地元の方ではいろんな意味での誤解といいますか、放射能というものと放射線ということの違いというものもよくわからないといいますか、理解をされていない方もたくさんいらっしゃるわけですね。そういう意味で、本当は五だったんだけれどもというふうな話をする方もいらっしゃるわけでございまして、その辺のところについてはきちんとした見解を出していただきたいなというふうなつもりでございます。  それから、このIAEAの報告書の中にも先ほどの関係で、今回のものは汚染事故ではなく本質的に照射事故だと。残留汚染はありません、地域住民や彼らの子孫の健康及び環境に対して放射線による影響を及ぼすことはないでしょう、この地域の生産物は普通であり、完全に安全ですというふうな文言も届いているわけですね。このようなこと自体もなかなか周知としては、東海村の村内は結構されているかもしれませんけれども、まだまだ近隣、隣々接の、茨城県内においても少ないわけでございますので、その辺のところについても広報活動もしっかりと行っていただきたいなというふうに思っております。  それからまた、例えばこのIAEAの報告書の方にも、みずからの政府の報告書の方にも、白書の中にも書いてありますけれども、被災に遭われた方、この方に対する健康診断その他というものはきちんと行っていかなければならない、そのようなことが出てくるだろうと思っています。  地元住民への健康診断でございますけれども、基づきまして四月にも実施をしていただいた。件数は思ったよりも少なかったという報告もあるそうでありますけれども、行っていただいたと思います。  その前に、十月の時点で希望をする方あるいは三百五十メートル以内の方々に対して健康診断を行いました。その際の健診のフォーマットを、今こちらにあるわけですけれども、十六歳以上、十六歳以下、二種類あるようになっていますが、中身はまるっきり同じでございます。  当時、いろんな方々が心配をしましたのは、今回のこの事故によって、染色体であるとかDNAであるとか、そのようなことに対するものの心配というのが非常に強かったと思うのでありますけれども、いわゆる普通の私どもがドックや何かに行っていただくものと同じフォーマットでそのような不安を解消することができたのかどうか、あるいはなぜ染色体あるいはDNAに関するような記載というものがなかったのかをお知らせいただきたい。
  127. 今村努

    政府参考人(今村努君) 今回の事故で放射線に被曝されました周辺住民の方々に対する健康管理の問題でございますが、これにつきましては原子力安全委員会に健康管理検討委員会が設けられまして、その報告に基づいてとり進めております。  その報告によりますと、この放射線のレベルから見て確定的な、つまり身体的にすぐに影響が出るようなレベルではないこと、長期的に見て晩発あるいは遺伝的な影響が見出せるようなレベルではないということが、そういう認識のもとに放射線の身体的な影響の有無を確認するための特別な健康診断は考えられないけれども健康に対する不安に適切な対応をとることが必要と、こういう考え方でございました。この考え方のもとで、健康に対する一般的な助言を実施するという目的で健康診断の項目を決めて、健康診断が科学技術庁と茨城県の協力のもとに実施されたところでございます。  今お尋ねのDNAの損傷あるいは染色体ということでございますが、これを項目に含めるべきかどうかということについては健康管理検討委員会の中で議論が行われたというふうに承知しております。その議論によりますと、例えばDNA損傷、微量な放射線によるDNA損傷については、損傷が放射線によるものかどうかであることの区別、あるいはDNAが損傷した後それが疾病につながるかどうかということの問題、これらについてはまだ学問的に確立していないものであって、行政が行うようなこういう健康管理項目に含めることは適当ではないという、そういう考え方のもとにそれは含まれなかったということでございます。  いずれにせよ、今後の研究開発の課題といたしましてそうしたことがあろうかと思いますけれども、現時点においてこの健康管理の目的、健康診断の目的といいますか、そういうことに照らして今申し上げたような結論になったということでございます。
  128. 郡司彰

    ○郡司彰君 今の説明は、大体、健康管理の取り組みの中にも出ておりまして目にしております。  今、最後に言われましたけれども、今後こういうことが起こった場合の検査方法についてやっていくと。私どもとすると、余り今後このようなことが起こっては困るわけでありまして、実は今回起こったときのサンプルを今どのようにしているかということが一番大事だろうと思うんですね。  例えば、十月二日の日に三十六世帯八十四名の血液と尿の採取を行いましたけれども、この血液について特に現段階では学問的に確立をされていないということになっていると。しかし、十年後、二十年後はゲノムの解析その他を含めて可能なことになるかもしれない。しかも、このような事故が二度と起こらないということを仮定して考えれば、今回の三十六世帯八十四名の本人たちの了解を得て採取をした血液というものは、これは保存されてしかるべきだと、しかしながら現在のところにおいては血漿と血清を除いて廃棄をしたということになっているそうであります。  これは、血漿とか血清については大体マイナス七十度ぐらいで保存可能だ。だけど、血球については保存の方法も若干あるかもしれない。しかし、同僚の松崎議員、お医者さんでございますからお聞きをしましたところ、しかしながら相当長い時間可能であると。しかも、血球がそのような場合の放射線に関するダイレクトな結果が出るものであって、血漿とか何かにそんなものが出るときというのは、もうほとんど生命の危険を伴うようなことになってしまうと。  だとすれば、村の全員協議会でつくっております調査委員会の方でもこの血液の保存を県の方にも要望してきたわけでありますけれども、結果としては廃棄をされてしまった。こういうことがあったわけであります。それで、廃棄をされてしまったことの責任問題は私の方で言うつもりはございません。しかしながら、結果として大事な試みの材料をなくしてしまった。  本来、このようなあり得べからざる事故の場合の健康診断、特に三百五十メートル以内の方については国が主体として行うべきではなかったのではないかという疑念を持っておりますが、どうですか。
  129. 今村努

    政府参考人(今村努君) 茨城県が事故直後に行いました健康調査経緯については、今、議員の方からお話しになったとおりだと思っております。  私どもも茨城県の方にサンプルの保存状況について改めて今回問い合わせましたところ、血液については、血清は生化学検査を行った後、全員分ではないが残った分は冷凍保存しているものがある。血球は血球検査ですべて使用してしまった。尿については、一部冷凍保存しているものもあるけれども大部分は処分をしたと、こういうことでございました。  私どものこれについての考え方ということでございますけれども、まず茨城県の調査は、DNAということでなくて、直接白血球の状況がどうかということを調べるための血液検査ということだったと思いますけれども、茨城県が急性影響を調査する目的で行った調査結果については放射線の影響と考えられるものはなかった、そういう結論がまず得られたということが第一点であろうかと思っております。  これを踏まえまして、今御指摘のような形でこれをサンプルとして置いておくかどうかということでございますが、先ほど来申し上げておりますように、例えばDNA損傷の検知、損傷と疾病との関係ということも必ずしも明らかにされていないこと、それから、この放射線のレベルが非常に低かったものですから、特別な健康診断は考えられないということから、将来に備えて血液や尿を保存する必要があるというような御指摘はこの健康管理検討委員会からはなされなかったということでございまして、私どももそのように受けとめておるところでございます。
  130. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、るる説明をされましたけれども、私の方もまだ門外漢でございますから正しいかどうかわかりませんが、いずれにしても十年後、二十年後にそれがあれば、今回のことをもう一度調査することができるかもしれないというものについて、国がやっぱりきちんとそういうところまで見越した形でもって行うべきではなかったのかなという感じを持っておりますし、大変に貴重なものが失われてしまったというような思いを持っております。  時間がございませんので、まだ半分も質問できていなかったのでありますけれども地元の方は、まとめた要望について、大枠について国にいろいろ努力をしていただいたというような感謝を申しております。しかし、まだ映像システムがもう少し、要望のときには時間がなくてまとまらなかったけれども、テレビの威力というものはやっぱり大変なものだと、そういうことについての具体的な支援を国の方にも要請していきたいということもあるようであります。  それから、廃棄物の問題等もちょっとは質問したかったのでありますが、最後に、先ほど長官が最後の感想のところで申しておりましたけれども、サイクル機構の再開も含めて、東海村の今後のあり方についてそれぞれの長官の方からお考えをいただきたいと思っております。  一つは、これまでの歴史の中で日本の原子力行政の中に大きな役割を占めてきた、共存をしてきたというふうな形でありますけれども、東海村自体が今後東海村として存続をするために、これまでと同じようなことだけでよいとするのか、それともほかにいろんなことも含めながら東海村の発展というものを考えていこうということがあれば、お聞きをして終わりたいと思います。
  131. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 先般も、東海村にお邪魔して村長さんとお話をしました。まさに委員お話しのように、原子力の黎明期、つまり日本に原子力というものが必要であるということを決定して以来、研究施設あるいはその他の施設、原子力にかかわるいろいろな諸施設に対し、本当に村民の皆様方がいろいろな問題を抱えながらも乗り越えて今日来たところにあのような事故が、今さまざまな問題点が挙がった、御指摘いただいたジェー・シー・オーの事故があった。  私は、そういうふうな状況等を踏まえて、村としては、基本的には村自身が村民の意思を受けとめお決めになることだと思いますが、高度科学研究都市にしていきたいという御希望がございます。その中には、原子力科学技術のすそ野の広い活用、あるいは先端的な研究という意味もございますし、その中で先般は、具体的に言うと大強度陽子加速器計画の問題もございました。私どもとしても、これは文部、科学の融合政策の一つであるという認識を持っておりますし、この加速器の研究開発という面においてアメリカとむしろ対等以上に今やっているわけでございます。この大強度陽子加速器の必要性というものを私どもも非常に強く思っております。  ぜひそういうものも含めて、村長の言われている将来性というものを大事にしながら、いわば先端科学都市としての村というイメージだなという感じを持っております。
  132. 河野博文

    政府参考人(河野博文君) 基本的な考え方は今、科学技術庁長官がお答えになられたとおりでございますけれども、今、先端科学技術と長官がおっしゃいました中に、私ども関係いたしますエネルギー分野でも御協力できる分野があるのであれば、村のお考えを伺いながら、科学技術庁と協力しながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  133. 郡司彰

    ○郡司彰君 終わります。
  134. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。  決算委員会初めてですので、指摘する数値等、間違いがありましたら御指摘いただきたいと思います。  まず最初に文部省の方に、その前に、郵政省に対しまして郵便局におけるワンストップサービス、ひまわりサービスについてお尋ねする予定でしたけれども、午前中、岩城委員質問のところで既に御説明いただきましたので、これはカットさせていただきます。  まず最初に文部省の方に、国立学校特別会計における施設整備費等について質問したいと思います。  私は、議員になる前、仕事柄といいますか、よく国立大学、何カ所か仕事で行ったことがございます。行く先は法医学教室ということになるわけなんですけれども、そこでいろんな大学の方が、国立大学の施設といいますか、これが非常に老朽化しておって使い勝手が悪い、日本の国立大学の施設がこのようでいいものだろうか、仕事がしづらい、こういう声をいろんなところで聞いておりました。また、実際建物等キャンパスとかを見ましても、何か私立大学に比べまして国立大学というのはもう汚いのが当たり前みたいな、こういう印象も受けたことがございます。  そんなことが一つの動機になりまして、今回この決算委員会で国立学校特別会計における施設整備費等について調べてみました。そこでいろいろ疑問が生じましたので、きょうはそれをお尋ねいたします。  平成十年度、これは二回にわたりまして景気対策として補正予算が組まれました。これによりまして国立学校特別会計の施設整備費も増額されたわけですけれども決算の結果を見ますと、これが大きな割合で不用となり、翌年に繰り越しがされている、こういう問題がございます。  それで、平成十年度の国立学校特別会計における施設整備費、これについては、前年度からの繰り越し、これが二百九十八億、話をわかりやすくするために億単位で話をさせていただきます。それから当年予算額、これは当初予算が千七百五十九億、それから補正第一次が三千二百十二億、二次補正千九百八十七億円と理解しております。そして、それを合わせた歳出予算現額が七千二百六十億円となります。  それで、この中でどれだけ使われたかといいますと、支出済み歳出額は三千九百五十五億円、そして翌年度に三千三百四億円繰り越しております。支出済み額の歳出予算現額に対する割合、予算執行割合といいますか、これを計算しますと五四%、こういう数字が出てまいります。  それから、特別施設整備費になりますと、歳出予算現額四百六十八億円、これは内訳は、当初予算が三百六億円、それから前年度からの繰り越し百六十二億円となるわけですけれども、これに対しまして支出済み額というのは百二十二億円、繰り越ししたのが四十一億円で不用額三百六億円となっておりまして、支出済み額の歳出予算現額に対する割合は二五%であります。  この特別施設整備費というのは何のための費目かというと、国立学校施設の老朽化、狭隘化が特に著しく、かつ緊急に整備を要する大学の学部、研究所等の施設について緊急かつ計画的に改築等の整備を行う事業の中で認められるものでありまして、平成四年度に設けられたと。老朽化、狭隘化が特に著しく、かつ緊急に整備を要すると、この費目として挙げられたわけですから、この二五%という数字が異常に少ないように思うわけであります。  それから、平成十年度の、なぜこの予算を計上したか、この予算の説明の中では、国立文教施設については、老朽・狭隘施設の改善整備、大学改革への対応、整備、それから先端医療に対応した大学病院の整備等を推進する、また特別施設整備事業を計画的に推進すると説明されてこの予算が計上されたわけなのですけれども決算の結果を見ますと、ちょっと説明と現実とが随分かけ離れているのではないかなと思うわけです。  ただ、前提として申し上げておきますけれども、私は一たん予算が認められたら何が何でも全部使い切れ、こういうつもりは全くございません。残ればそれにこしたことはないと思うわけですけれども、しかしそうだとしましても、やはり予算というのはそれなりの根拠があって、そして調査も当然あって、その上でつくられるわけですから、予算の半分ちょっととか四分の一しか使わないということはちょっと普通の感覚として理解しがたいわけであります。  まず最初に、なぜこのようになっているのかをお尋ねしたいと思います。
  135. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。  特別施設整備費につきましては、国立学校特別会計に属します特定の土地の売却、例えばある大学が移転をする、そして不用となったようなそういう土地を売却する、そういったことによって生ずる多額の処分収入を単年度で使うことなく特別会計の資金としてプールをいたしまして、これを安定的な財源として事業を実施する、こういう性格の経費でございます。こういった資金の仕組みを活用して実施をする事業であるために、その財源であります特定学校財産処分収入が予定に比べまして入らなかった、こういった場合はそれに見合います経費の執行を見合わせる必要がある、こういう仕組みを現在とっているところでございます。  もう少し具体的に申し上げますならば、平成十年度の事例お話がございました。この十年度におきましては、大阪大学の医学部跡地の処分収入百六十二億円を見込んでおったわけでございますが、実際の売却額が百八億円、五十四億円減と、こういうことになったことに伴いまして資金計画の見直しを行ったわけでございます。結果として、当該年度の大阪大学跡地処分収入につきましては、この基金は借入金もあるものですから、借入金の償還等に充当をすることといたしまして、新たな事業には着手せず、前年度から繰り越した事業だけを実施すると、こういうことにいたしたわけでございます。  これが委員指摘のような支出済み額が低くなっていると、こういう理由でございます。
  136. 大森礼子

    ○大森礼子君 今、特別整備費の方ですかね、今どちらの部分でとおっしゃいましたか。これは、今おっしゃったのは特別施設整備費の関係ですね。  そうしますと、こういういろんな売却等がうまくいかない、その関係でと、ちょっと詳しい仕組みはわからないんですけれども。しかしこれは、例えば平成七年以降の数字を見ますと、特別施設整備費については、執行済み割合でいきますと平成七年が三四%、八年は七%なんですね。九年が四〇%で十年が二五%と。そのような事情があるにしても、それにしても数値が少ないのではないかという、こういう疑問を持つことはおかしなことなのでしょうか。御説明いただきたいと思います。
  137. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えを申し上げます。  一つは、施設整備費につきましては、その事業の性格上、計画変更あるいは設計変更等により年度内に支出を完了することが難しくて経費が繰り越しにならざるを得ない、こういう場合があるわけでございます。  そして、今御指摘のように、確かに特別施設整備費につきましては、おっしゃるような支出済み歳出額の比率が大変今、年度によっては低うございます。これは先ほども申し上げましたように、この制度の仕組みが国立学校特別会計に属します特定の土地の売却によって生じたその処分収入をその年度だけで使うことなくプールをしておきまして、その安定的な財源として国立大学施設の老朽・狭隘化対策を進めていく、こういう制度の仕組みでございます。  したがいまして、文部省といたしましては、その特定学校財産の処分に毎年期待もし努力もしたわけでございますが、先ほど大阪大学医学部の例を申し上げましたけれども、ほかにもあるわけでございます。結果として、予定収入が上がらなかったということでその見合いの経費も執行を見合わせたと、こういうことでございます。  例えば、翌年度につきましても、そういうことでぜひそういった土地の処分による収入を上げたい、そしてそれを財源として老朽・狭隘化対策を進めていきたいと、こういうことで期待もし、努力をしてきたわけでございます。結果として、今申し上げたようなことから、実際の歳出額が当初の予定していた予算額よりも少ない、こういう状況になっておるわけでございます。
  138. 大森礼子

    ○大森礼子君 ちょっと余り専門的なことはわからないんですけれども、では端的に聞きますけれども、特別施設整備費というのが平成四年度に設けられた目的があるわけですね。そのために、その目的に向かってお金が要るということで予算が組まれて支出をされると。  それで、これが平成十年度の繰り越しがあるんですね。四十一億円が平成十一年度に繰り越されて、あと予算がついていないと。ということは、これはこの事業が一応完了したというふうに御説明、実は伺ったわけなんですけれども、そうしますと、端的に聞きますが、平成四年にこのような事業で特別施設整備費が設けられたと。その目的とするところ、これは一応達成できたというふうに考えてよろしいのですか。できたと多分おっしゃるんでしょうけれども、この結論をお尋ねします。いかがでしょうか。
  139. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 国立学校の施設整備につきましては、当初の予算で文教の施設整備のために予算を計上し、またここ数年、補正予算を措置させていただいておりますから、そういったものであわせて整備を図っておるというのが一つございます。そういった制度とあわせまして、先ほど来るる申し上げておりますように、特定の財産の売却によるそういった処分収入でもってそれをプールし、老朽・狭隘化対策をさらに進めていくという、こういう制度を設けておるわけでございます。  その後段の特別施設整備事業につきましては、今、委員指摘のように、土地の売却収入等がございませんので、全体としてなかなか進んではいないわけでございます。ただ、例えば一例を申し上げますならば、平成九年度からこの平成十三年度まで、一応五カ年で一千五百億ほどの事業予定しておったわけでございますけれども、この特別施設整備事業とは別に平成十年度、十一年度の補正予算を活用いたしまして、約一千二百億ほどになるわけでございますが、ほぼ当初予定した計画どおりの整備ができるのではなかろうか、このような見込みをはじいておるところでございます。
  140. 大森礼子

    ○大森礼子君 それで、特別施設整備費、これ自体はもう一応終わったと考えてよろしいのでしょうか。イエス、ノーで結構ですが。
  141. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) これは平成四年度から第一次の五カ年計画を実施してまいりました。また、平成九年度から五カ年間、この特別整備事業を今進めておるわけでございます。  同じような事柄の繰り返しになって恐縮でございますけれども、特別施設整備につきましては、今言った歳入が特定学校財産の処分収入、それを安定的な財源とするということでございまして、これは当初のあれからすれば十分ではないわけでございますが、その他、この当初予算あるいは十年度、十一年度あるいはそれ以前の補正予算等で、所期の予定をいたしておりました事業はほぼ達成できるのではなかろうか、こういうことでございます。十三年度に第二次のこの特別整備計画が終わった暁に第三次をどうするか、これがまた今後の検討課題であろうかと認識をいたしております。
  142. 大森礼子

    ○大森礼子君 いろいろ説明はあるんですけれども、しかし執行は例が少ないというのは、もともと売れるかどうかの計画も含めまして、少し通常の感覚とは離れているなという気がいたします。  それで、施設整備費の方なんですけれども、今言ったように、歳出予算現額に対する支出済み歳出額の割合でいきますと、これ平成四年ぐらいからずっと調べてみますと、大体平成五年が七三%、六年は九三%なんですね。平成九年あたりは八八%なのに、十年度になって急に五四%と落ち込んでいる。これは何か特に理由があったのでしょうか。
  143. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) 先ほども少し申し上げましたが、施設整備費につきましては、その事業の性格上、計画設計変更等によりまして年度内に支出を完了することが難しく、繰り越しにならざるを得ない経費が多いわけでございます。特に、大学の場合ですと、建物を建設している途中に、この建物はぜひ保存をしてほしいというような要望が学校の内外から起こってくる場合がございます。  それから、例えば一例を挙げますと、東京大学の生産研、先端研、これが駒場にございますけれども、これもまた工事をやっている段階で近隣の住民の方々から振動があるじゃないかというようなことで、結果として翌年度に繰り越し、その翌年度で事業を完成した、こういうような事例があるわけでございます。  そういったようなことがございますので、結果としてこの予算の執行割合が当初のあれからいたしますと低くなっておる、このように御理解をいただきたいと思います。
  144. 大森礼子

    ○大森礼子君 事業というものは予測を含むものですから、多少の状況の変化というのはあると思うんです。それから、予算を執行しているときと決算のときといわゆるタイムラグというのがありますので、その執行例一〇〇%というのは難しいということもわかるわけですね。  それで、今御説明伺いました。その上でもう一度さらに質問させていただくんですが、今おっしゃったように、例えば平成十年度決算説明を見ますと、国立学校特別会計のところで、「翌年度繰越額は施設整備費において計画に関する諸条件等により、事業の実施に不測の日数を要したこと等のため年度内に支出を終わらなかったものであり、」と、これが今の御答弁だと思うんですね。  ついでに言いますと、この後に不用額についての説明があって、これは「退職者が少なかったので、退職手当を要することが少なかったこと等のため生じたものである。」と、この説明があるんです。これは平成十年度決算説明で見ました。  それで、では前はどうだったのかなとずっとさかのぼってみますと、実は平成四年から平成九年まで、だから十年を入れますと七年ですか、ここがいつもそっくりそのまま一言一句も違わない同じ文言が入っていることに気がついたんです。  そうしますと、「事業の実施に不測の日数を要したこと等のため」と、この「等」がいろいろかぎなのかもしれませんけれども、不測の日数を要することが毎年続くんだったらこれは不測ではないんではないかなと、こういう素朴な疑問が起こるわけですが、これは毎年毎年同じ文言になっているというのはこれでよろしいのかどうか、それともこの「等」という中にすべてが凝縮されているのかどうか、そこら辺はいかがでございましょうか。
  145. 近藤信司

    政府参考人(近藤信司君) お答えをいたします。    〔委員長退席、理事鹿熊安正君着席〕  歳出予算の翌年度への繰り越しにつきましては、委員御案内のとおり、財政法第十四条の三、これは繰越明許費の規定でございます。それから第四十二条、事故繰り越し、こういったところに規定がなされておるわけでございまして、国立学校特別会計におきます施設整備費の各年度の歳出予算の繰り越しはいろんな事由に基づきまして発生しているわけでありますが、すべてこの財政法の規定に基づき繰り越しがなされているわけでございます。  特に、今御指摘平成十年度におきますならば、これは例えば具体的に申し上げますならば、埋蔵文化財の調査の必要性に伴う計画変更でありますとか、近隣住民への対応に伴う計画変更、あるいは敷地の狭隘な場所に建設するために高層化を図る必要性による設計変更、その他気象の関係、資材の入手難、いろんな理由があるわけでございまして、例えば十年度におきます翌年度への繰り越しのうち主なものを挙げますならば、神戸大学の医学部附属病院病棟新営工事、あるいは東京大学生産技術研究所研究実験棟の新営工事、これにつきまして埋蔵文化財の調査が必要となったことなどの計画に関する諸条件により事業の実施に不測の日数を要し繰り越しを生じた、こういうのが実情でございます。
  146. 大森礼子

    ○大森礼子君 この説明のところは、要するに、字数にも限度がありまして、これはどうなっているのと言えば、そのように具体的なお尋ねをすれば具体的にお答えをいただける、そういう仕組みかもわかりませんけれども、しかし文言が毎年毎年同じだと、要するにこの説明を読んでもわからないということにもなるわけでありまして、何か工夫していただきたいな、このように思います。  それで大臣にお尋ねするのですが、先ほど十年度について五四%と低いではないですかとお尋ねしたんですが、実は平成十年三月の日付で、今後の国立大学等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議という長い名前ですが、ここが平成十年三月に報告書をまとめております。それで、その第二章の中で「国立大学等施設の現状」、こういう章がありまして、「国立大学等の施設整備は未だ不十分な状況にあり、老朽・狭隘施設の解消はもとより、新たなニーズに対応した施設整備が必要な状況にある」と、まさにこの十年三月の報告書の中にこう書かれているわけでありまして、それからほかの科学技術基本計画の方での基本計画とそれから実施状況の推移とか、そこで申しますとまだまだ十分でないと私は認識しているわけであります。  それで、この点について、大臣としては国立大学の施設の整備等についてどのように考えておられるか。老朽化ですと、やっぱりお金は無限にあるわけではありませんけれども、老朽化の場合は早く改修なりする、早いほどコストが安くつくという、こういう考え方もできると思います。ほうっておけばほうっておくほど、例えば建てかえなきゃいけないとかという事態になると。  それから、やはり私は、研究する大学等、学ぶということについては環境というのがとても大事だと思うわけでありまして、例えば同じ勉強をするにしても、きれいに整とんされたところで勉強するのと雑然と散らかったところでするのとは違うと。それから、やっぱり国立大学というのはある意味で日本の英知のシンボルという、こういう場所でもあります。また、地域の方にも開放される場所であることを考えますと、ちょっと日本の国立大学、全部見たわけではありませんけれども、その中がちょっとお粗末過ぎるのではないかと。  ですから、こういう部分にはやはりお金をかけるべきではないかなと思うのですが、この点について大臣のお考えをお尋ねいたします。    〔理事鹿熊安正君退席、委員長着席〕
  147. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 先ほど来、官房長に対しての大森先生のいろんな御意見を伺って、実は私も大臣に就任して、各大学の学長、先生方がおいでになると必ずこれが話題になる。そして、私も幾つかの大学を見ました。国会議員の会館もまことに立派な会館でございますが、研究施設のひどいところはひどいなと、目で見てそんな感じをしたわけです。  そこで、今、いろんな御議論をいただいたような状況でございますが、二十五年以上経過して一般的に大規模な改修等が必要な建物は五百九十万平米、全体の二六%、先生指摘のとおりでございますし、したがって、平成十三年には一千十三億円を概算要求、特別枠を含めて要求しております。しかし、それでもなかなかこれは大変だねと。  ですから、これはどういう結果になるかわかりませんが、今、文部省に対して、国の予算だけでこの改修を全部やろうとするとなかなかきつい面もあって、できるかできないかわからぬけれども、PFIという手法をもってやる方法もないのかと。つまり、今、特別会計つくって、売って、売った金を使って何かしようという、これもある意味じゃ民の力を何とかしようかという一つのアイデアなわけですが、そういうこともちょっと研究してみろと、こう申し上げておるんです。  しかし、いずれにしても、今、公共事業の見直しという議論一つあるんですが、学術研究というものに力を入れなきゃならぬ、こういう政策の与党三党の考え方もこれあり、森内閣としてもそういうこともあり、私どもはそういう政治の流れをつかまえて、できるだけ、まず平成十三年度の要求は一千十三億を要求しておりますけれども、それらをしっかり予算づけするなり、補正予算の議論が出てまいりますれば私どもとしてこの問題をきちっと重要であるというふうな位置づけでお願いしたりしながら、おっしゃるように、やっぱりいい施設でいい研究をしてもらう、こういうことが基本であろうと思って、また先生方のお力もかりてやっていかなきゃならぬ、非常に強い問題意識を持っております。
  148. 大森礼子

    ○大森礼子君 ここに、手元に、ことしの五月八日付日経新聞ですが、「サイエンス・アイ」というコラムのところに「改善進まぬ「狭・古」大学施設」と、こういうのがありまして、ここでも大学施設の貧しさということが書かれてございます。それで、昨年の十月の段階でも日本学術会議、それから国立大学協会の方からもこういうふうな要望があるわけでありまして、このコラムも言っているように「老朽化・狭隘化は研究開発を阻害することにもなりかねない。」と。  私は、教育の現場におきましては施設の重要さというのを特に訴えておきたいと思います。  よく少年院なんか矯正施設でも視察しますと、非常に壁も灰色で汚れていて、もうここへ入れられたら気分がめいっちゃって余計何か悪くなるんじゃないかと思ったことがありました。それで、例えば愛光女子学園とか新しく建て直しになったところは、やはり入る子供のことを考えて、もちろん新築できれいなんですけれども、例えば壁も少しピンクにするとかいろんな配慮があると。  私は、環境というものは、これはちょっと少年の事案でパラレルには考えられないかもしれませんけれども、やはり環境の大事なところはそれなりに充実させていただきたいと、このように思います。  続きまして、奨学金返還免除制度についてお尋ねいたします。  平成十年、日本育英会法改正によりまして、大学学部生、この教育職の奨学金返還免除制度が廃止となり、それから大学院生の教育職、研究職についてはこれが維持されたわけであります。  それで、これについて私は今自分自身で、続けるのがいいのか廃止するのがいいのか、これまだ結論が出ておりません。そのためにもきょうは御質問しようと思うわけなんですが、この法案審議のときに、平成十年三月三十一日の文教・科学委員会になりますけれども、公明党の松あきら委員、それから本岡昭次委員の方からもこの免除制度について質問がありました。そして、この免除を続行することについて、この日の委員会の答弁の中で、研究職については学術研究分野にすぐれた若手研究家を確保することが極めて重要、教育職については児童生徒の問題行動への対応学校教育には従来以上に専門性が求められている、こういう観点から存続させることにしたと、こういうふうに答弁されておられます。何か答弁を私が言ってしまっちゃったんですけれども。  それで、ただそのときに、これは本岡委員質問に対してですが、答弁中に、大学院の返還免除のあり方については今後検討していくと。ですから、多分文部省側も胸を張ってこれで絶対間違いないんだということでも、やはり検討課題があるということだと思うんですね。  それから、平成十年十二月十八日の財政審議会の報告がありまして、この中で、育英奨学事業についても、奨学生間の公平の点と、それから財政資金の効率的使用、この観点から廃止の方向で見直す必要があるのではないか、こういう指摘があります。これはその審議会の目的によって見方も違ってくると思うんですが。  こういうことを踏まえまして、その後の大学院の返還免除のあり方について今後検討していくということですので、検討状況はいかがなのか。それから、まだその検討結果が出ていないのならばいつごろ結論を出すおつもりなのかについてお尋ねいたします。
  149. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) 先生指摘平成十年度の財政制度審議会の報告につきましては承知をしておるところでございます。財政的な見地から見直しの必要があるという指摘がございます。  しかし、我々文部省側からいたしますと、かつての答弁の繰り返しになりますけれども、高度の専門性を有する教員の養成がどうしても不可欠である、あるいは学術研究分野への若手研究者の確保、これもまた学術水準の維持、さらに向上を目指すという意味からも必須条件であると考えておりますので、当面はこれまでの方針を変える予定はございませんけれども、さはさりながら、財政当局からの視点に立った指摘もございますので、現在検討を進めているところでございます。なるべく早く結論を見出すべく作業を進めたいと考えております。
  150. 大森礼子

    ○大森礼子君 今のが検討している内容なのかなと思うのですが、本当にどれほどの効果があるのかどうかということですね。  それから、やっぱり時代状況も違ってきますので御検討いただきたい。私たちも検討していきます。  きょう奨学金返済の滞納額を質問するつもりでしたけれども、時間の関係で割愛させていただきます。  それで、この返還免除制度ということで、例えば若手研究者確保、一つにそれが人材育成の呼び水となるということも言われております。そうであるならば、これからの時代、理科系もそうなんですが、もっと力を入れなきゃいけない分野が出てくるのではないかなと私この現場にいて思うわけです。  それは、これからは精神的ケアといいますか、午前中の質問にも出ていましたが、カウンセラーといいますか、この養成が本当に必要になってくるのではないかと思うんですね。心の問題が大きくクローズアップされる。そうすると、その心というものをどのようにケアしていくかということが必然的に出てくるわけです。スクールカウンセラーの問題もある。  それから、例えば児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律、昨年これは法律ができました。その中の十六条でも「心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備」、こういう一つの項目、条文がございます。  「心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上」等とか、この体制に努めようとあるだけですね。こういう問題はいろんなところで必要となっています。カウンセラー、いろいろ種類はあるにせよ。  今、共生社会調査会の方で、もう党派を超えまして女性議員が中心となりましてドメスティック・バイオレンス防止法、これを今いろいろ作業をしております。その中でもやはり被害者に対してどのような精神的ケアができるか、いいカウンセラーを用意できるかということが大きな問題になってくる。  それから、少年のいろいろ凶悪犯罪が強調されますが、これは少年法だけの問題ではありませんで、やはり少年に対するそういうカウンセリング的なことも必要であろうと。  そこで大臣、こういう分野、人材の必要性についてどのようにお考えになるか、そこら辺について文部省はどのように対処していかれるかお尋ねいたします。
  151. 鈴木恒夫

    政務次官鈴木恒夫君) スクールカウンセラーにつきましては、けさほどもいろいろ御議論がございました。  まだまだ整備を進めていかなければならない大事なポイントの一つと考えておりまして、平成十三年度におきまして、現在二千二百五十校に配置してございますスクールカウンセラーを三千七百校ぐらいにまでふやしたい、将来は一万校全部に配置をしたいということも考えておりまして、そうしたスクールカウンセラー制度充実のために奨学金の返還免除も含めてという御議論はかねてからあるわけでございますけれども、当面返還免除につきましては財政的な側面がございまして難しゅうございますが、何とか他の面でスクールカウンセラー制度充実を図っていきたい、この方針には変わりはございません。
  152. 大森礼子

    ○大森礼子君 済みません、質問の仕方が悪かったでしょうか。何もスクールカウンセラーに限ったことではありませんで、カウンセリング一般といいましょうか、こういう人の養成が必要となってくるんではないですかと。  これは、今「ウェッジ」の二〇〇〇年のジューン、ジュライ、七月号が手元にあるわけなんです。この中で、評論家の雑賀孫市さんとおっしゃるんですが、「少年犯罪の「米国化」とカウンセラー不足」というこういう記事があるんですが、これは五月の連休の十七歳の少年のバスジャック事件、このお母さんが、「いままでも心療内科、精神科、児童相談所、教育センターなどいろいろ回りましたが、動いてくださる先生は一人もいらっしゃらなかった」と、非常に孤立していたという状況がございます。  こういう状況を解消することもやはり犯罪防止になると思いますので、これ以上質問しませんが、いろんな種類のカウンセリングがあると思いますが、ぜひこの人材養成という、これはもう時代が要請するものですから力を入れていただきたいと思います。  時間の関係ではしょって質問しますが、科学技術庁、気象庁どちらになるのでしょうか、HⅡロケット八号機のことについてだけ質問いたします。午前中もロケットの問題が出たのですが、一問だけにします。  平成十一年十一月でHⅡロケット八号機が失敗して、MTSAT、運輸多目的衛星、これも載せていたけれどもパアになったということなんですね。  それで、現在の静止気象衛星ひまわり五号、これは設計上の寿命がことし三月となっている。今は綱渡り的運用が続いているとされているわけですが、この関係で、次のあれが失敗した場合どうなるか。そこら辺の、失敗しちゃいけないわけですけれども、でも失敗した、これまであることはこれからもあるかもしれませんから、そのときも万全の体制でしなくてはいけないと思うので、この点を簡単に御説明いただけますか。
  153. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 失敗しないように最善を尽くしております。
  154. 山本孝二

    政府参考人(山本孝二君) お答えいたします。  現在、ひまわり五号の後継機については、平成十五年の夏の運用開始を目的に開発しているわけですが、現在働いておりますひまわり五号は、太陽電池パネルの部品等に大きな問題はない、あるいは軌道保持のための燃料はあるということでございますので、現時点では、次の打ち上げまでの間、観測及び撮った画像の配信には問題がないのではないかと考えております。  なお、先生が御指摘のとおり、ひまわり五号は本年三月に設計寿命が終わったわけでございますが、私どもといたしましては、現在の運用を慎重に行うことで平成十五年夏までこの「ひまわり」は何とか延命策はとれるのではないかというふうに考えてございます。  万が一「ひまわり」に障害が発生した場合のお尋ねでございますが、米国の極軌道気象衛星NOAAというのが六時間ごとに日本周辺を飛んでございます。この画像を作成いたしまして台風中心位置あるいは強度の解析、実況監視、予報業務などに利用することとしておりまして、万が一の場合に備えていきたいというふうに考えてございます。
  155. 大森礼子

    ○大森礼子君 いずれにしろ、必ず成功させていただきたいと思います。  次に、郵政大臣、済みません、お待たせしましたけれども、時間がなくなったので、またはしょった質問をしなくてはいけません。郵政三事業決算の今後の見通し、何本かしようと思ったんですけれども、限定させていただきます。  まず、平成十年度決算検査報告関係について、関係職員の不正行為によるものが二十八件不当事項とされておりますね。これは、業務上横領とか背任とか、要するに集金する人がお金を領得した、こういう事案だと思います。それで、十年度が二十八件で、損害額が、当初の損害額ですが、四億三千四百九十万九百六十三円という数字が出ています。平成四年あたりからずっと調べてみて、こういうことがあってはいけないわけです、国営企業ですから。一件当たりの平均が一千三百万とか非常に大きいんですね。その集金の一件当たりの数とかを計算しますと、かなり長期的にやっているようなことがうかがえます、間違いがあるかもしれませんが。この点しっかり職員の指導、引き締めを図るべきであると考えますので、しっかり取り組んでいただきたいということをお願いします。  それで、郵便事業についてだけの質問になりますけれども、十年度は六百二十五億円の欠損と五年ぶりに単年度赤字になりました。平成十一年度の決算もやっぱり五百五十三億円の赤字であります。一方、郵政審議会の答申では、二〇〇五年までは郵便料金は据え置くべきだということが出ております。これはよほど経営努力をしていかないと持ちこたえていけないと思うわけですが、大臣は、郵便事業財政の今後の見通しと経営努力についてどのようにお考えなのでしょうか。  それで、この郵便事業について郵政省平成十年度郵政事業決算、ここでは景気の影響により、郵便事業収入が減ったとしか書いていないんですけれども、これはやっぱりパソコンとかインターネット、Eメール、これを抜きにしては考えられないだろうと思うのです。  その点も含めて最後大臣にお尋ねして、質問を終わります。
  156. 平林鴻三

    国務大臣(平林鴻三君) 郵便局の職員の犯罪でございますが、これは所管大臣としておわびを申し上げなければなりません。お客様の郵便局に対する信頼を裏切るものでありまして、遺憾至極のことでございます。  御指摘のように、郵便、貯金、保険などの業務を通じて多額の現金を扱っておりますので、その点は日ごろから防犯指導の徹底を図っておるところでありまして、郵政省には昔から監察制度というものが確立されてこれを運用してやっておるところでございます。  具体的には、各種の試験、会議を通じて防犯意識の高揚と生活指導の徹底を図ること、業務遂行に当たって正規取り扱いを徹底させること、現金や切手あるいは重要式紙類など、要するに形式の決まった、金額を入れたら使えるような紙でございますが、重要式紙類などの検査、監査を徹底すること、業務考査や会計監査を実施して防犯上の遺漏を是正改善することなどに取り組んでおります。  今後とも、不正行為の防止に向け、職員指導にさらに一層徹底してまいりたい。特に、職員の生活と申しますか、飲酒、遊興にふけるとかあるいはギャンブルに走るとか、そういうような傾向の者がやはり時折あるわけでございまして、そういう方面の生活指導に至るまで注意をしなければなるまいと思っておるところでございます。  次は決算でございますが、郵便事業決算につきまして、御指摘のように平成十一年度も前年度より赤字幅は縮小はいたしましたけれども、二年連続で、十一年度は五百五十三億円の赤字になってしまいました。  これは景気の動向によりましてやはり郵便物の減少と申しますか、そういうようなこともございます。けれども、御指摘のように新しい通信手段、そういうようなものが発達をしてまいりまして、いわば競争相手が強くなってくるというそういう問題も確かにあると私は思っておりますので、これからの郵便事業の運営につきましては一層その経営努力をしなければいかぬ、そのような気持ちを持っておるところでございます。  今後の郵便事業財政の見通しにつきまして、確たることは申し上げかねますが、これもお話にありましたように平成九年に郵政審議会から答申をいただきまして、現在の安定的な経済状況を前提に、手紙、はがきの料金を二〇〇五年まで据え置くように努めると、こういうことを提言をいただいておるところでありまして、これを努力目標といたしましてこれからの郵便事業の経営努力をさらにいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
  157. 大森礼子

    ○大森礼子君 終わります。
  158. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 日本共産党の阿部幸代でございます。  初めに、埼玉県の大宮市にある三菱マテリアル株式会社総合研究所の放射能汚染問題と、汚染された施設や建物の撤去、解体に伴う安全性の確保について質問したいと思います。  最初に、この放射能汚染の実態をどう認識するかという問題です。  科学技術庁の認識について言いますと、昨年の三月二十六日発表と、同じく四月二十三日付発表によって知ることができます。  ただ私は、四月二十三日付の科学技術庁の発表で存在が明らかにされている平成八年度調査、けさいただいた「三菱マテリアル株式会社殿 Kプロジェクト事前調査報告書 平成九年三月 株式会社セルナック」、これです。(資料を示す)私は、実はこのもとになっているものを事前に入手してあります。こちらですが、これは株式会社セルナック殿、Kプロジェクト事前調査報告書です。これは株式会社日本電研システムエンジニア、ここがセルナックから仕事を受けて実際には測定作業をしているんですね。その大もとの資料です。違いが少しありまして、大もとの資料の方には生々しい写真も添付されています。  この二つ、つまり科学技術庁の発表と、それからこの事前調査報告書とを比較する必要があると私は思うんです。  例えば、この事前調査報告書では、建物内部の表面汚染について、施設P、この施設Pというのはこの研究所で核燃料の試験棟として八八年まで使われていたものですが、この施設P内部の表面汚染による線量率はマックス百二十マイクロシーベルト・パー・アワーあるいは二十三マイクロシーベルト・パー・アワーとあります。この空間線量率の職場で年間毎日八時間、百日働くとして計算してみますと、それぞれ年間被曝が九十六ミリシーベルト、それから十八・四ミリシーベルトとなります。放射線の管理区域内で働く職業人、この人たちの年間線量限度が二十ミリシーベルト、これは国際放射線防護委員会が定める国際基準です。これと比べても非常に高い数値であるというふうに私は思うんです。  また、施設P並びに施設E、このEの方は実験棟として八八年度まで使われ、それから実験に伴って出てくる汚染された機器類を保管する、そういう施設でもありました。この施設Eとも、内部の表面汚染が室内の壁面とか天井とか、それから排気系、排水系の至るところに検知されています。私は、これらの事実は汚染がグローブボックス内部だけではなくて室内区域全体に及んでいるということを示していて大変問題だと思うんですが、科学技術庁としてはどのように認識しますか。
  159. 今村努

    政府参考人(今村努君) お答え申し上げます。  今、先生が御指摘になりました三菱マテリアル、大宮にあります総合研究所の土壌汚染問題につきまして……
  160. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 聞こえないので、もう少し。
  161. 今村努

    政府参考人(今村努君) 失礼いたしました。  総合研究所の汚染問題につきましては、この問題が明らかになりました平成十一年、昨年の三月以来、科学技術庁といたしましても、現地の調査等によりまして周辺環境に及ぼす影響は認められない、あるいは土壌の回収、撤去に関する安全対策、周辺環境のモニタリングに係る計画について三菱マテリアルから説明聴取をいたしまして、その説明聴取するとともに現地調査等を実施し、一、二、放射線管理の面から改善を要する事項がございましたが、基本的にはその時点で安全上問題となるものはない、このようなことを確認いたしております。  そこで、今、先生が御指摘になりました資料につきましては、これは私どもは三菱マテリアルから説明はございません。今初めて伺ったものでございます。  私どもは、三菱マテリアルから、その時点でKプロジェクト事前調査報告書というものの説明を受けました。この事前調査報告書によりましても、今、先生が御指摘になりましたような建物の内部のいろいろな部分での汚染その他のことの指摘がございました。そうした事前調査報告書をくまなくつぶさに検討いたしました上で現地調査をいたしまして、それの問題点があるかないかを確認し、その結果を平成十一年四月に報告申し上げたところでございます。  科学技術庁といたしましては、三菱マテリアルに対し、それ以来、土壌の放射性物質の撤去、管理の作業につきまして安全確保に万全を期すように、あるいはまた適切な情報公開に努めるように指導してきたところでございます。また、毎月一回、三菱マテリアルから周辺環境モニタリングの結果等についても報告を受けておりまして、それによって周辺環境に影響がないということも確認をいたしております。また、同社内に立ち入りの調査もことしの四月にはいたしまして、安全性の確認を行っております。  今お話しの屋内の空気の汚染ということでございますが、これにつきましては三菱マテリアルは、これは使用事業者としての責務でございますが、施設関係の各部署における放射線管理記録をとどめておかなければならないとされております。その放射線管理記録の中には管理区域の中における空気の濃度、放射能濃度の測定も含まれておりますが、そのデータも私どもとして過去五年間にわたってチェックをいたしまして、法令上の違反はないということも確認したところでございます。  以上でございます。
  162. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 いろいろやってきましたというお話を伺ったんですが、この物は見ていますね。
  163. 今村努

    政府参考人(今村努君) 今お話のありましたその物とはどちらのことでございましょうか。
  164. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 同じです、これ、写真がないだけで。
  165. 今村努

    政府参考人(今村努君) Kプロジェクト事前調査報告書、これは持っております。平成十一年の三月に三菱マテリアルからこの内容について説明聴取し、各部にいろいろな問題があるということを把握いたしました上で現地調査に臨んだものでございます。
  166. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 三月の末に入手しているんですよね。  それで、私が言ったのは、その中をよく見てほしいんです。ここでは、先ほど言ったのを繰り返しますと、表面汚染による線量率、最大百二十マイクロシーベルト・パー・アワーとか二十三マイクロシーベルト・パー・アワーとか、こういうのがあるんです。これは法令上大丈夫だというふうに片づけてしまうんですけれども、私はそれはとても危険だと思うんですね、行政チェックをする姿勢として。  というのは、これは放射線管理区域で働く職業人が年間ここまではという許容されている範囲ですね。その国際基準と比べたときにも決して少ない値じゃないんですよ。二十ミリシーベルトに対して、この資料の中に出てくるのは九十ミリシーベルトとか十八・四ミリシーベルト、これも一日八時間、百日働いたとしてという計算をしたときですね。  それだけではなくて、この中につぶさに書いてあると思いますけれども、床とか壁とか天井とかほこりとか、そういうところでも検知されているわけなんですよ。ということは、放射能汚染が要するに部屋全体に及んでいるということで、これは問題だと私は認識するんです。  そういう認識はしないんですか。
  167. 今村努

    政府参考人(今村努君) 今お話のございました点の数値の一つ一つについて今つぶさにここで御返事を申し上げることはできないわけでございますが、私どもの認識は以上でございます。  この建屋内における表面汚染という問題につきましては、この報告書に記載されております。それで、私どもは、同社からこの調査結果、この資料でございますが、に基づきまして、管理区域内の建屋の内壁、それから床、天井、機器における表面汚染密度を調査しております。  当庁においては、調査結果を検証いたしましたところ、最大のものでも管理区域内の人の触れるおそれのあるものにかかわる表面汚染限度は下回っておると。しかし、汚染はしております。しておりますが、人の触れるおそれのあるものにかかわる表面密度限度は下回っているということ。  科学技術庁といたしましては、汚染が確認されている箇所を含め、容易に人が立ち入ることのないように、その実態を踏まえまして、同社が建屋の出入りについて施錠による管理を実施しているといったようなことについても確認をいたしております。
  168. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 私は、イエローケーキや放射線が飛び交うこういう環境で働く人たちは、それを吸い込む危険にさらされているから、またさらされたからこそ問題にしているんですね。本当はそういうことがあっちゃいけないわけですよ。作業者の被曝状況記録を調べる必要があると思うんです、率直に言って。これは要望いたします。  それから、もっと言いますと、この事前調査報告書に掲載されている写真の中には排気系の空調設備が、例えば建物の壁面との接合部分がありますね、通るところ、ここで亀裂を生じていて、そこから汚染した中の空気が明らかに外に出る、つまりフィルターが意味をなしていない、こういう例などもあるわけなんです。つまり、建物の外にも放射能が出ていたということなんです。このことを認識していただきたいということです。  次に、排水系です。この事前調査報告書では、施設Pの酸洗浄室裏の十五平方メートル、マックス八十センチメートル、深さ八十センチですね、ここで八十二ベクレル・パー・グラム、これは科技庁の報告ではキログラム単位でやっていますから、換算しますと八万二千ベクレル・パー・キログラムになります。こういうのが検出されているんですね。施設Pの周辺のほかの土壌を採取したけれども、そこからは検出されていないんです。  ところで、科技庁の測定結果は、三月二十六日付発表によりますと、施設Pの酸洗浄室裏の対応する地点、この事前調査報告書と対応する地点、P五、P六、P三の地点の汚染は百八十ベクレル・パー・キログラム、百七十ベクレル・パー・キログラム、二百五十ベクレル・パー・キログラムと、この事前報告書の数値の数百分の一という小さな値になっています。これは汚染土壌を撤去した後だからだと思うんですけれども、違いますか。
  169. 今村努

    政府参考人(今村努君) 後の方の御質問からまずお答え申し上げます。  今御指摘のP三、P五、P六の土壌汚染の値、これは調査時点において、汚染された土壌を撤去した後ではないかということでございますが、そのとおりではないかと私どもも考えております。  この土壌汚染の問題につきましては、三菱マテリアルはこの問題が明らかになる前から取り組んできておりまして、平成十年から土壌汚染の回収等を進めていたということを私どもは三菱マテリアルからの説明で把握いたしております。すなわち、同社研究所施設の整備のための調査を開始したところ、敷地の一部にウラン等によって汚染された土壌があるということが判明し、その汚染土壌についてはドラム缶などに詰めて保管する作業をその時点で既に開始していたということを私どもはその調査によって把握いたしております。  私ども科学技術庁が昨年三月に行った調査は、その土壌のウラン濃度を分析するために試料を採取したわけでございますが、幾つかポイントがあったわけですが、今御指摘のポイントの点については、今申し上げましたような、それまでに土壌を回収し保管しているという、そういうところであった可能性があるというふうに私どもはその時点でも認識していたところでございます。
  170. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 汚染した土壌を撤去した後測定したということですね。  私が前段に言ったところは、結局この施設Pの酸洗浄室裏のここの部分が非常に汚染濃度が高くて、それ以外は実はこの事前調査では検知されなかったんですね。ということは、排水系から土壌に浸透したことが私は推測できるんですね。  もっとこの事前調査に目を通しますと、排水系の例が出てくるんですけれども、施設Eの貯留槽について、「防水アスファルトが剥がれて流入槽のように明らかに地下に浸透している貯留槽があった。」とあります。また、同じ施設E周辺の中央部エリアでは、一点だけ二メートルまで、これは粘土層だそうですが、コアサンプリングした結果、二メートルの深さで三千四百ベクレル・パー・キログラムの土壌汚染が検出されています。  排水系からの浸透による深刻な土壌の放射能汚染だというふうに思えるんですが、違いますか。
  171. 今村努

    政府参考人(今村努君) 土壌が汚染した原因ということでございますが、私どもが三菱マテリアルから聴取等をして調査したところによりますと、土壌汚染の原因はウランの付着した廃棄物を昔地中に埋設した、そういう原因によるものであると、このように説明を受けております。  一方、排水ピット等につきましては、科学技術庁といたしましても調べておりますが、その内壁に亀裂または剥離が確認されております。ただ、その当該部分から排水が漏えいしたということを確認する確たる事実は見出せなかったというところでございます。  私どもといたしましては、その原因が排水でないということを一〇〇%申し上げるあれもないわけでございますが、いずれにいたしましても、土壌汚染の原因が何であれ、それはきっちり回収してきれいにする必要があるという認識に立っております。  三菱マテリアルといたしましても、所要の部分は回収する方針であり、これまでに所要の回収は相当進捗していると、このように理解をいたしております。  また、マテリアルが環境モニタリング結果を報告いたしておりますが、それによりまして、この土壌の汚染が敷地外一般環境の方に広がっているというふうな兆候も現時点で見出されてはおりません。
  172. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 科技庁の四月二十三日付の報告によりますと、今おっしゃったことですね、施設Eの排水系の槽、排水ピットに亀裂が生じていることを確認しつつも、操業していたときの水位の変動幅の上限よりも上の方にあるから漏えいしなかったという同社の説明を追認しているだけですね。  これをきちんと読めば、事前調査報告書を読めば、水位の上の方にひびが入っていたから問題ないし、操業をやめてからひびができたものだなんてことを言っておれなくて、この底の方にアスファルトがあって、それがはがれているんですよ。そのことを指摘しているんです。  防水アスファルトがはがれている貯留槽の現場確認しましたか。
  173. 今村努

    政府参考人(今村努君) お答え申し上げます。  今御指摘の点は、その排水ピット、これは私の記憶では六カ所あるというふうに思いますが、そのうち三カ所において補修をしたというふうに聞いております。それ以前の段階で大規模な漏えいがあったかどうかということについては確認ができなかったわけで、それを追認したということではございません。  ただ、その時点において現場の確認はいたしておりますが、それがいわゆる埋設したものによるのか、あるいは排水によるのかということについて、大規模な排水漏えいという事実を事実としてその場で確認することはできなかったということでございます。  一方、三菱マテリアルは、その土壌汚染については、かつて子細にいろいろな試験研究を行いました廃棄物を地中に埋めたということもございます。それ自身も決していいことではないわけですけれども、そうしたこともあったということでございますので、私どもとしては、まず現場の安全確認、それからそれの安全な改善、そういったことを中心にこの問題に対処してきたということでございます。
  174. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 追認したわけではないということなので、私は、二メートルの深さまでのコアサンプリングをしたらよいと思います、科技庁も。  E施設の中央部のエリアで一点だけこの事前調査では二メートルまで掘って、そしてその二メートルの深さで三千四百ベクレル・パー・キログラムの土壌汚染を検出しているんですね。  こういうのを、肝心なこれが指摘していることを確認しないで、ますの上の方にひびがあったんだから水位の関係で大丈夫だとか、それから汚染した土壌を撤去した後はかってそれで大丈夫とか、これでは私は行政チェックの意味がないというふうに思うんです。  雪印乳業や山崎製パンの衛生管理のずさんさや、それから三菱自動車工業のクレーム情報隠しなど、今、人の命や安全にかかわる、こういう問題での企業の社会的な責任が厳しく問われていると思います。そうした一環で、私は、埼玉県大宮市の三菱マテリアル株式会社総合研究所のこの放射能汚染問題を取り上げているんです。  実は、この問題の発端となったのは、先ほどのお話の中にもありましたけれども、昨年三月にこの研究所の敷地内の土壌から放射能の汚染が発覚して報道されたんですね。それで、私は即現場に行ったんです。  この段階での同社の説明は主に二点ありました。一つは、敷地を別の用途に利用できるようにするために土壌などの自主的な調査を行っていたら汚染が発見できたと。それからもう一つは、土壌汚染の原因は一九五八年五月より前ですね、要するに放射性廃棄物の地下埋設が認められていたころの汚染した廃棄物によると。この二つを言っていたんですよ。この説明は、国会議員である私だけではなくて、周辺の住民に対しても行っていたんですね。  その後の経緯に照らして、私は、三菱は事実を隠そうとする姿勢が強いものだったというふうに言わざるを得ないんですけれども、科技庁としてはどう思いますか。
  175. 今村努

    政府参考人(今村努君) 今、累次御説明申し上げておりますとおり、私どもは、この問題が明らかになりましてから現地調査をし、その段階で環境への影響ということを中心調査をするとともに、三菱マテリアルからそれ以前の状況等についてもヒアリングを行ったところでございます。  その三菱マテリアルが何かを隠すというようなことがあるのかどうかということについては、私どもはそういうことはもちろんあってはならないというふうに考えているところでございますが、三菱マテリアルといたしましてもこの問題については、実際のモニタリングの結果の公表でございますとか、事業の進捗状況等についても説明会を累次行っているというふうに思っておりまして、その三菱マテリアルを丸ごと信用するのかと言われればあれでございますけれども、私どもとしても、今後とも三菱マテリアルがこの問題にきっちり対処していくようによく指導してまいりたい、このように考えております。
  176. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 報道によりますと、三菱マテリアルが核燃料物質を隠ぺいしようとしているという匿名の手紙が科学技術庁に寄せられて科学技術庁の知るところになったということなんですね。たとえこの三菱マテリアルが隠すつもりはなかったと、その後そう言っていますが、言っても、その後の科技庁の調査と四月二十三日付発表でも明らかにされたように、三菱マテリアルは設備等の撤去・除染工事に際し、汚染状況等を把握する目的で実施した調査平成八年度調査ですね、これを既に実施していたわけです。三年前ですよね。三月時点の土壌放射能汚染問題というのは、この平成八年度調査に基づくいわば撤去・除染工事の一環ですよ。  お聞きしたいんですけれども、この平成八年度調査というのは、「撤去・除染工事に際し放射能等による汚染状況を把握するため、建屋内、外壁及び建屋周辺土壌の汚染マップを作成する。建屋内、外壁及び建屋周辺の材質も併せて調査する。これらの資料に基づき、実施計画(廃止シナリオ、撤去・除染解体計画、廃棄物等の措置等)を作成する上での検討材料の基礎とすることを目的」として行われた総合的な調査ですよね。
  177. 今村努

    政府参考人(今村努君) 私どもが理解しておりますところでは、この三菱マテリアルの総合研究所は、三菱マテリアルは幅広い仕事をしておりますけれども、昭和三十年代以降、いわゆる核物質、ウラン等を使いましていろいろな研究開発をしていた、しかしその研究開発も、昭和六十三年だったかと思いますが、に終了いたしまして、これはきっちり別の目的に転用していこう、別の形で、特に地域の、埼玉の都心開発にも協力していこうというような考え方のもとでこのプロジェクトに着手したというふうに私どもも理解いたしております。  それで、これを隠してやったかどうかということにつきましては、現時点について考えますと、土壌汚染が明らかになりました段階でやはり明らかに三菱マテリアルが公表してよかったのではないかというふうに私どもも考えております。ただ、三菱マテリアルのそのときの説明によれば、その土壌の汚染、土壌の放射能のレベルが例えば管理区域の基準等に比べても低いものであるから、そういうことをするところまで考えなかったというふうな説明も受けております。  いずれにいたしましても、このプロジェクトは、御指摘のとおり非常に総合的なプロジェクトでございますが、段階的に法令上の許認可を経て施設を撤去していくというプロジェクトの途中でございますが、その時点時点において私どもも三菱マテリアルの安全管理を確認していきたい、このように考えております。
  178. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 何か的確に答えていただきたいんですが、この事前調査というのは、三菱マテリアルのその放射能で汚染された施設やあるいは建物等を除染したり撤去したり解体したりする、それに向けた総合的な調査ですよねと聞いているんです。
  179. 今村努

    政府参考人(今村努君) 私どもが昨年三月に三菱マテリアルから説明を受けたところでは、そのとおりでございます。
  180. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 それなのに、平成十一年の三月時点、去年ですよ、この総合的な調査とは切り離して、敷地を別の用途に利用できるようにするために土壌などの自主的な調査が始まったみたいに言ってみたり、それから土壌の放射能汚染は放射性廃棄物の地下埋設によると思われると特定してみたり、こういうことを、とぼけたことを言っていたと思うんですね、私は。  念のために、昨年三月十九日、私が三菱マテリアルから直接聞いたときの説明文書があるんです。これは、住民に対してもこれで説明されていたんですね。それは、「今回問題になっているのは、」「四十年以上も前に、現在の総合研究所内にありますE施設の敷地に埋設された廃棄物に起因するものであります。」、「E施設整備のための調査を開始したところ、敷地の一部にウラン等によって汚染された土壌等があることが判明いたしました。その場所は現在までに把握している範囲では、添付図面の①、②、③の三箇所であります。」、「土壌の汚染レベルが、封入したドラム缶の表面を直接測定して最大一・四五マイクロシーベルト・パー・アワーであり、管理区域を定める際の基準である六・二五マイクロシーベルト・パー・アワーよりはるかに低い」、だから報告する必要はないと考えたと、科技庁にこういうふうに説明していたんですよ。  これ、一つ一つチェックすれば本当にひどいですよ。あたかも今から調査を始めるかのような言い方、それから土壌汚染を四十年以上も前の埋設廃棄物に起因すると特定する言い方、汚染箇所を三カ所に限定する言い方、どう見ても私は事実を隠そうとする、そういう三菱の姿勢を感じるんですけれども、ひどいと思いませんか。これ、長官。
  181. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 今、先生からいろいろ、先生先生のデータ、データというか解析というんですか、それに基づいていろいろ質問したり、またうちの局長の方から答えておりますが、原子力問題というのは本当に今いろんな問題で問われているところがあって、一番大事なことは、事実を隠ぺいすることはもう絶対だめです。今議論している、隠ぺいしているのか、しているんじゃないか、いや我々が調べたということですが、そういう中でマテリアルに対してさらに指導してまいりたい、こう思っております。  いずれにしても、住民の皆さんの信頼を得られなければ、あるいは国民皆さんの信頼を得られなければ事業ができないというのが今の時代であり、そういう覚悟を持って仕事をしてもらわなきゃなりません。私たちが今日まで調査したことは、私はそれは一つの事実だと、こういうふうに認識はしておりますが、いずれにしろ事実を隠ぺいすることなく公開すること、こういうことの基本に立って、マテリアルに対して何か機会を見つけて、もし必要であれば指導してまいりたい、こう思っております。
  182. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 事実を隠ぺいすることは許されないという長官の基本的な考えを伺いました。  それで、実は、私はこの三菱マテリアルの放射能管理が非常にずさんだというふうに思うんですけれども、同社は最近、環境基準値の三百六十倍のカドミウムや、それから二百十倍のセレンで地下水を汚染していた事実も明らかになりました、これは公表しているんですけれども。それから、大宮以外の北本製作所、桶川製作所などの敷地内からはトリクロロエチレンとテトラクロロエチレンが検出されているんですね。大変こういう危険なものを扱っている会社にしては管理がずさんだということなんです。これまでの土壌汚染に始まる経緯からも、それから今日の実態からも、やっぱり地域の人たちの不信が募るのは当然なんです。  私は、今の、うそがあってはいけない、情報を隠してはいけないという長官の基本的な考え方を受けとめて、ぜひ科学技術庁として三菱マテリアルに対して過去の放射能管理記録の公開、具体的には核燃料物質使用変更許可申請書、昭和六十三年二月十六日、この参考図面の第四図、排気処理系統図のM、五カ所のダストサンプラーによるモニタリングデータです、これと第五図、廃液処理系統図のチェック、再チェックのデータ、つまり大事なところのデータじゃないと意味ないですから、これをぜひ公開させるようにしていただきたいんです。  それから、これから撤去と解体の作業が始まるわけです。その作業に当たる労働者と、それから付近の住民、この人たちの安全を確保する必要があるんです。それを担保するためにも住民への適宜説明、それから住民の立ち入り、これを認めさせていただきたいんですが、その三点、どうですか。
  183. 今村努

    政府参考人(今村努君) 今お話のございました放射線管理記録、これは法令に基づきまして、許可を受けた使用者は事業所に備えつけておくことが義務づけられております。この記録を公開するかどうかということにつきましては基本的には使用者の判断によるものというふうに考えておりますが、特に公開して問題があるというふうには私どもは考えておりません。  それから、使用許可申請書の件でございますけれども、実は使用許可申請書は、例えば昭和六十三年二月六日付の使用許可申請書等がございますけれども、これも基本的には公開することができますけれども、ただ核燃料物質の貯蔵施設の構造あるいは位置というものがわかる、これはまた別の観点で、いわゆる核物質防護の観点でその点については公開しないということになっておりますが、そうしたことが全体の公開をしないことの口実にならないように、できるだけそこは限定して対応していくというのが私どもの考え方でございます。  第三点目でございますけれども、これから御指摘のとおり施設の解体撤去というようなプロジェクトが始まることになるわけでございますが、もちろん私どもとしては、これは法令上の許認可も必要でございまして、その時点における対応も必要でございますが、まずはやはり住民に対するきちっとした説明と理解を求めるということは当然必要であろうかと思っております。  三菱マテリアルも、私ども聴取したところでは、もう毎月のように地域の住民を施設内に招いて見学会を開くなり説明会を開くなりというような努力はしているようでございますが、私どもとしても、そうした努力はこれからもさらに一層進めていく必要があるものと、このように考えております。
  184. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 説明会と立ち入りの件も。
  185. 今村努

    政府参考人(今村努君) 失礼いたしました。  立ち入りを認めるかどうかということにつきましても、これも最終的には事業者が判断する問題だということでございまして、私どもが立ち入りを認めろとかというふうなことを申し上げる立場ではむしろないと思いますけれども、私どもが立ち入りをむしろしないように指導するとかそういうことは全くなくて、事業者の判断で対応する必要があろうかというふうに考えております。
  186. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 行政チェックが私は非常にずさんだったというふうに思います。住民の厳しい目は、三菱マテリアルのその放射能管理のずさんさと同時に、やっぱり科技庁にも批判的な目が向いています。力を発揮していただきたいわけです。そういう意味では、過去の放射線管理記録の情報公開と、それから適宜の住民への説明と、それから住民の時には立ち入りで、大丈夫ですよと、その目で見ていただく、そういう機会をつくるために尽力していただきたい、これを強く要望いたします。  次に、字幕放送の拡充について質問いたします。  最初に郵政大臣の方、郵政省の方ですが、聴覚障害者の社会参加と情報保障に不可欠なテレビの字幕放送、この拡充を私は願っています。きょう問題にしたいのは、NHKではなくて民放の方なんです。  郵政省は、二〇〇七年までに字幕付与可能な番組のすべてに字幕をつける、こういう字幕放送普及行政の指針、こういうのをつくっているんです。努力されています。ところが、民放の方を見ますと、まだ字幕放送をつけている番組の割合が九七年度で三・五%、九八年度で五・三%、九九年度で七・一%にすぎないんです。このままで二〇〇七年までに一〇〇%の字幕をつけることができるのかどうかというのはとても心配なんですけれども、どうなさいますか。
  187. 平林鴻三

    国務大臣(平林鴻三君) 時間の関係もございましょうから、私から申し上げます。  おっしゃいますように、民放も字幕をつけるように、こういうことで放送法には努力義務規定を既に定めてございまして、郵政省としても民放としても、ともにこの字幕番組の普及に努めてまいりたい、そう考えておるところでございます。  随時要請を行っておりますが、これはもう御承知かと思いますけれども一つは民放に補助金交付して字幕放送の経費の一部を国で出しておる、こういうこともやってきておるわけでございます。したがいまして、そのような助成とか字幕番組の自動制作技術の開発、そのようなことに引き続き努力をしてまいりたい、そういうことでございます。  目標は、二〇〇七年に字幕でやれるものは全部やれと、こういう目標になっておりますので、それの達成に向けて今後さらに我々は努力をしてまいらなければいかぬと考えておるところでございます。
  188. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 郵政省の方も本当に努力しておられて、助成金というのが出されているんです、民放にも。それで、九八年と九九年を比べると一・九五倍ふえているんです、およそ二倍。  それで、助成金つきの字幕放送、それが当然ふえるわけで、番組の方も本数で一・八六倍、それから時間数で一・九四倍ふえているんですが、ただ見る人にとってはそれが助成金つきかどうかというのは全然関係ないわけです。要は見たい番組が字幕で見られるようになればいいわけなんです。そういう意味でいいますと、民放は、総時間数、字幕がついている、それ一・二二倍にしかなっていないんです。  ですから、どういうことが行われているのかというと、民放もそれなりに自主的に字幕つきの放送をやっていたけれども、この際助成金がついたらその分に助成金をつけていて、字幕つき番組全体をふやしていこうというところにまだ向かっていないんです。これは何か、放送事業者のモラルというか、そういうものをちょっと疑ってしまうんですけれども。  やっぱり一つは民放に年次計画、これをつくらせるとか、もう一つは努力目標を義務にしていくような方向性が考えられるんじゃないかと思うんですけれども、この二点、どうですか。
  189. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) ちょっと待ってください。  阿部君、時間が過ぎておりますので……
  190. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 時間、ありますよ。(「十七分」と呼ぶ者あり)
  191. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 十七分まで。  ということで、一応御注意だけ申し上げておきます。
  192. 平林鴻三

    国務大臣(平林鴻三君) おっしゃるようなことを十分参考にいたしまして、今後努力をいたしたいと思います。  アルファベットで簡単に字幕ができるんならいいんですけれども、日本語というのは字幕にするにはアメリカのように簡単にはいかないという話を私聞きまして、そういう技術開発をちゃんとやって、民放のキー局がどんどんやれるような体制をつくっていかなければいかぬな、そういう感じを持っております。
  193. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 じゃ、最後
  194. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) もう時間がない。次に譲りなさい。
  195. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 じゃ、どうもありがとうございました。次の機会にします。
  196. 田英夫

    ○田英夫君 シドニー・オリンピックも近づいてきましたので、きょうは文部大臣スポーツ談義をしたいと思うんですが、しかし国会というところは、実はスポーツのことを取り上げる場が非常に少ない。文教委員会が唯一と言っていいかもしれません。しかし、一方で国民生活の中に占めるスポーツの比率といいますか重さというのは大変なものでありますから、もっともっと我々は、国民の立場から、あるいはスポーツを愛する人たちの立場からどうあるべきかという議論をしなくちゃいけないと思うんです。  早い話が、政治スポーツというテーマ一つとってみても、オリンピック政治が侵してしまった。モスクワ・オリンピックは、日本とアメリカなど西側がボイコットした。これはオリンピックの歴史に大きな汚点を残しました。そのオリンピックが、今度シドニーですけれども、最近は商業主義という汚染に侵されていると言わざるを得ないと思います。こういう状態、スポーツがそういう形で侵されているのをどうするかということを考えるのも、我々の、政治にかかわる者の一つの重要な仕事じゃないかと思います。  IOC委員の汚職の問題、国内の汚職の問題ももちろん重大でありますけれどもスポーツにまつわるその最高の責任者たちの汚職というこの問題は放置できない。どうあるべきかと議論しなけりゃいけないし、アメリカの議会などはサマランチIOC会長はやめるべきだということを一致して大きな声を上げました。我が国会は残念ながらそういう議論すらしなかった。  今そういう意味で、もっともっと国民の立場からスポーツを考えるという場をつくりたいと思いますが、あるいは青少年の、特に子供たちの、小中高校の生徒たちの体育の教育の問題、これは体育の教育だけじゃないと思いますよ。そういうこともこれは当然文部大臣はお考えと思いますけれどもスポーツをどういうふうに考えるかというスポーツの哲学というものがきちんとしていないと考えられないんじゃないかと思うんですが、最初に、文部大臣スポーツというのは、一言で言うのは難しいでしょうけれども、どういうものだとイメージしておられますか。
  197. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 人間というのは基本的に体を動かすものだと私は思うのでございます。体を動かすことが、ある意味では自分の考えていることの実体験として感ずることに相なるだろうと思います。そういう意味で、スポーツというのは人間にとって私は不可分のものであるような気がします。  逆に、スポーツに、私自身も含めて考えますと、余り教育の意義をそこにぐっとつけ過ぎて、何かスポーツ教育だと、こう言い過ぎてしまいますと、本来持つスポーツの楽しさみたいなものを失っていくような気がしますが、教育機能もあり、体をつくる機能もあり、そして人間にとって不可分な体を動かすということでもあり、とても大事な、人間が人間として生きていくための大事な分野だと、私はこのように思っておりますし、自分も大好きでございます。
  198. 田英夫

    ○田英夫君 大変いいお答えをいただきましたが、私は子供のときから大好きな方ですが、スポーツというのは一言で言えば苦しいものだと思っています。苦しまなくちゃいけないものだと、逆に言えば。楽しむだけじゃいかぬと思っていますよ。それは体験上そうなんですけれども、ところが最近、若い人たちのスポーツ観というのを見ておりますと、楽しむということが優先するというより、苦しいのは嫌だ、苦しいことはしないよという、それが大勢じゃないかと思います。  私はスキーをやっておりますけれども、全国で四万ほどおります指導員、準指導員という制度の今、会長を仰せつかっておりますから、非常に関心を持って見ていると、最近スキー不況という言葉が関係者の間で言われている。スキー場が、往年の混雑で、大変でリフトを待つのに何十分待ったというような、これはもう昔の話になりました。最近のスキー場は閑古鳥です。スキー場関係者は最近本当に不況、そういう意味でも不況ですけれども、若者がスキー場に行かなくなってしまっている。じゃ、スノーボードに変わったのかと一時思っておりましたら、スノーボードももう伸びなくなった。一体なぜだろうというのは、指導員の会議などで今議論をしてもわかりません。  若者が、スキーという本当に自然の中で、しかもある意味で非常に楽しいスポーツです、それに来なくなってしまった。例えばスキー学校、昔はバスを連ねて四台も五台も来てくれて、そしてかなりハードな練習をしてもみんな一緒になってやってくれた。最近はバス一台ようやく来て、激しい練習をすれば午後は出てこなくなっちゃう、こういう状況ですよ。  一体それは何なのか。これは文部省で、体育局長もおいでですが、あるいはもっとスポーツ関係のない部署の皆さんもぜひお考えいただきたい。最近の、朝からもお話がありました少年の非行の問題、犯罪の問題、そういうこととも無関係じゃないんじゃないだろうかと私は思うんです。  ですから、私が言うように、苦しい本当のスポーツ子供のときから我慢をしてやるという、それをまた嫌だ嫌だと言いながら我慢してやるんじゃしようがないんで、やっぱり自分から一生懸命やるようなそういう雰囲気を学校や親や周囲がつくっていってあげるという、そういう経過がないから、最近みんな苦しいことはやらない、寒いところへ行ってやるなんて嫌だと、こうなってきちゃったんじゃないかと思えるんです。  これはまさに重大な教育の問題だと思いますよ。いかがでしょうか。
  199. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 田先生が、スポーツは苦しいものだという言葉は非常に含蓄のあるお言葉だと思います。私の次の世代ぐらいから大学の体育会系がだめになってまいりまして、要するに同好会がふえてきた。それがいわば、今、田先生がおっしゃったことに相なるんだろうと思います。  そこで、我々としては、ありていに言えばスポーツ振興という観点に立って、これから地域のリーダーですね、今まで何となくスポーツ振興というと企業に、先ほどその問題を出されましたが、企業だけにアマチュアの世界の財源を求めるという時代は終わった、日本がもっとそういう意味で、地についたスポーツ振興という意味で地域のリーダー、今度はコミュニティーがスポーツを盛んにしていくという仕組みと考え方を持っていかなければいけないのじゃないだろうか。  そういうふうな考え方で今具体的な政策を進めておりまして、もしあれであれば局長の方からその辺を御説明させていただきます。
  200. 田英夫

    ○田英夫君 それは、私もここに持っておりますけれども、最近の答申の中に地域クラブを二〇〇七年までに各自治体につくるという、これは一つの考え方だと思いますが、欧米ではそれはもう十分普及していますけれども、むしろスポーツ活動はそこでやるということが常識になっていますが、日本の場合は残念ながらまだそこまで行っていない。  しかし、東京などは既に、例えばスキークラブは数百の単位でありますよ。それから、私は陸上競技の方も東京陸協の会長というのをしていますが、以前は学生中心だったのが、文部大臣言われたように企業中心になりました。それが今もっと市民中心になりまして、地域のジョギングクラブというようなものがみんな陸上競技連盟の傘下に入ってきている。そのかわりその世話は大変ですよ。もうお年寄りで、ようやく走るか歩いているかわからないような方も含めてジョギングクラブのメンバーとして楽しんでおられる、また体のためにもなる。これは本当にいいことだと思いますので、今、大臣言われましたことは、確かにその方向に向かってみんなで努力するということが大事だと思います。  これから先は苦言を呈する方になるんですけれども、もう体育局長は、前にも私はこのことを取り上げましたから御存じだろうと思いますが、昭和六十二年に文部省が社会体育指導員制度というのをつくられて、各スポーツ団体、ひとつこの基準で指導者をつくれという指導をされた。これは文部大臣告示という形でしたかね。これは確かに一つのいい御提起だったと思いますけれども、そこで問題が起きましたのは、例えば私のやっているスキーの場合は、もう昭和十五年から七十年近い歴史のある指導員制度を持っております。といいますのは、これはスポーツによって指導者が必要かどうかの度合いがうんと違うと思います。陸上競技なら障害がない限り人間は走ることができるわけですから、その中から速く走れる能力のある者を育てていって競技者に育てていく。これはコーチの仕事になりますよ、指導者といっても。  ところが、スキーの場合は、あんな長いものを足にくっつけて雪の上を滑るというのは生まれながらにしてできるわけじゃありませんから、最初からきちんとした指導者がついて教えた方が正しいスポーツとしてのスキーを覚えることができる。ですから、指導員あるいは指導者の必要性が非常に高いんです。ですから、もう七十年も前から先輩たちがその制度を確立してくれました。私は、実は昭和二十四年にその制度の指導員の資格をいただいたんですけれども、全日本スキー連盟というのが与えるわけですね。全日本スキー連盟公認指導員制度、そういうものが確立しております。指導員、準指導員、一級、二級、三級、こういうランクもちゃんとあるわけです。次々に上がっていく。指導員を受けるのにやっぱり二日間かかって学科試験までありますよ。  これは、文部省の今度御提起になったのと大体同じですが、やや文部省の方がある意味では厳しい点もあります、学科などは。スポーツ経営学まで必須科目にあるんですね。これはどういうことか私よくわかりませんけれども、それもそれで一つのあれでしょう。それから、医学でスポーツ医学とか、そういうこともカリキュラムにあるというふうな、それは確かにいいことかもしれませんが、費用がかかる。私どもの既存のものに比べるとかなり受験者の負担は高いんです、文部省から御提起になった方が。これは逆さまみたいですけれども、実際そうなんです。  以前に、小杉文部大臣のときに私からお願いをして、スキーについては文部省の御提起の指導員制度は適用しないということをひとつ明言していただきたいと。それでないとスキー連盟は、スキー連盟の人というのは、これはスポーツ団体の人は皆さん大変純粋ですから、お上という言葉を使われてびっくりしましたよ。お上からおっしゃったことですから従わないわけにいきませんと言われたから、私は、何を言っているんだ、我々には既に立派な指導員制度があるじゃないですか、その上にこれをまたやる必要は毛頭ありませんと言って拒否しました。そのまま拒否し続けております。  ぜひひとつ文部大臣からこの点を確認していただきたい。
  201. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 昔々その昔、ボーゲンから教わったことがございますけれども、小杉大臣お答えしたことは今も変わっておりません。
  202. 田英夫

    ○田英夫君 その一言を指導員の人たちに伝えると、彼らは本当に安心してこれからも活動すると思います。ありがとうございます。  あと時間がわずかしか残っておりませんが、郵政大臣にお伺いをしたいことがあります。  平林さんは、自分が大変な権力者だなどと全く思っておられないと確信をしますけれども、実は日本の法律によると郵政大臣は大変な権力を持っておられる。といいますのは、今、国民生活の中でテレビが占める位置というのは物すごいものでありますが、そのテレビ局を認可する権限を郵政大臣が持っておられる。電波法第四条によって「無線局」はと書いてありますけれども、今やテレビ局ですね。これが実は私は大変問題だと思っているわけです。  先進国の中でこういう制度をとっている国は余りないだろうと思います。一番典型的なのはアメリカのFCCだと思いますけれども、私から申し上げてもいいですけれども局長の方が詳しいでしょうから、FCCというのはどういう機構なのか、ちょっと言っていただけますか。
  203. 金澤薫

    政府参考人(金澤薫君) 先ほど御説明ございましたように、我が国におきましては郵政大臣が電波法に基づき放送局免許の付与を行っておりますが、米国では連邦議会に対しまして直接責任を負う独立行政機関であるFCC、フェデラル・コミュニケーション・コミッションが実施しているところでございます。それぞれの仕組みは、歴史的な経緯とか政治体制等がございまして、各国が最も適切なものを選定しているというふうに考えているところでございます。  FCCの具体的な任務でございますけれども、非政府通信サービスのための周波数管理、これを行っております。それから、無線局の免許と規制、それから州際・国際通信事業者に対する規制、このようなことを行っております。それから、準立法的機能としてのFCC規則の制定、それから異議申し立てに対する裁定等の準司法的機能というものも行っております。  それから、FCCは委員長を含む五名の委員とスタッフ部門から成っておりまして、その五名は同一政党に属する委員は限度三名というふうになっているところでございます。  なお、委員の任命でございますけれども、上院の助言と同意を得て大統領が任命するということでございまして、そのうち一名を大統領が委員長に指名するということでございます。
  204. 田英夫

    ○田英夫君 今言われたように、五人の委員から成る連邦通信委員会と日本語では言っていますが、それがテレビ局、無線局の認可をすると。日本は郵政大臣ということで、私があえて郵政大臣が権力者と申し上げたのは、やはり政府、大臣という立場を日本は免許を与える権限を持った人としている。アメリカの場合は、五名ですけれども、慣例上三名を時の与党、今でいえば民主党ですね、それから二名を共和党が推薦して、それを議会で承認して決めていくというふうに私も聞いております。  どこが違うかといえば、全く独立行政機関という、局長のおっしゃったとおり、日本でいうと、だから公正取引委員会なのか、ちょっと独特の、政府にも属さない、行政府にも属さない、もちろん議会とも承認を得るだけで独立しているんですね。これが非常に民主主義の原理からいって大事だと。  つまり、電波というのは国民の共有物だから、それをだれがどう使うかということを決めるのは権力を握った人が決めてはまずいぞと。そうではなくて、国民の代表である議会が承認をした行政府とは関係のない人、独立した機関が決めるということに意義があるわけでありまして、ヨーロッパの方でも大体みんなそういうやり方をとっている、こういうふうに理解をしております。  日本の場合は、実は戦争が終わった直後にアメリカ、GHQですね、によってつくられた電波監理委員会というのがあったと思いますけれども、これはどういう機構だったのか、局長から言っていただけますか。
  205. 天野定功

    政府参考人(天野定功君) お答え申し上げます。  戦後におきます我が国の電波監理行政は、昭和二十四年六月に一たん逓信省から電気通信省の外局としての電波庁に移行したわけでありますが、翌二十五年六月に電波法、放送法施行と同時に、ただいま委員が御指摘のとおり、総理府の外局として電波監理委員会が設立され、電波監理行政は電波監理委員会の所掌となりまして、無線局を開設しようとする者は電波法第四条に基づき電波監理委員会の免許を受けなければならないとされました。  その後、同委員会は、昭和二十六年の、行政委員制度は、能動的に行政目的を追求する事務については責任の明確さを欠き、能率的な事務処理の目的を達しがたいことから原則として廃止するとの行政制度の改革に関する答申に基づきまして昭和二十七年八月に廃止され、電波監理行政につきましては郵政省に移管され、今日に及んでおります。  なお、電波監理行政郵政省に移管されたと同時に郵政省に電波監理審議会が新たに設置されまして、無線局の免許を行う場合には同審議会が軽微なものと認めるものを除きまして郵政大臣は同審議会に諮問を行い、その議決を尊重して措置しなければならないとされております。
  206. 田英夫

    ○田英夫君 まさにそういうことなんですが、この戦後すぐにできた最初の電波監理委員会という方、これは民間の方が委員になっていて、例えば荒畑寒村さんなどという、左派と言ってはあれですが、そういう方も。委員長をやったうちの一人は、当時、共同通信の編集局長をやった松方三郎さんという明治の松方太公の息子さんですが、そういう方も委員長をやられたことがあります。それは、私が実はその下にいましたからよくわかるんですけれども。  そういう民主的な、私から言わせれば民主的なことをやっていたにもかかわらず、それをやめて今の郵政大臣という電波法第四条、そして十三条で再免許を与える規定がありますね、五年ごとに。そういうことになってしまった。これはまことに残念なことでありまして、せっかく民主的な構造になっていたのを変えてしまったわけです、佐藤栄作さんが郵政大臣のときにおやりになったようですけれども。  私が申し上げたいのは、民主主義の原理からすれば、国民の共有物である電波をどう使うかということを決めるのはやはり国民の代表という形で決めていくべきだと。もし権力を握っていると、まあ郵政大臣はそう思われないだろうけれども、結果的にそうなるとどういうことが起きるかというのを申し上げておきたいと思うんです。  私自身がかかわるものですから余りこういう場で言いたくありませんけれども、民主主義という大事なことのためにあえて申し上げると、私はテレビの仕事をしていたことがありますけれども、一九六七年に、折から激しかったベトナム戦争の取材のためにハノイ初め北ベトナムに行きました。その状況を帰ってからテレビを通じて報道いたしました。その結果として、私は、それまでは日本のテレビの報道というのはほとんどアメリカ側の情報をもとにしたニュースであったと。  これは実は、東大の新聞研究所が一九六六年に調査をした結果として、朝日、毎日、読売、三つの新聞の紙面に載ったベトナム戦争のニュースのニュースソースを全部調べ上げたところが、APとかUPIとかいうアメリカのニュースが八〇%、モスクワとか北京とか、そしてハノイとかいう側のニュースは五%、こういう結果が出たということを新聞関係報道関係の集まりで東大新聞研究所の人が発表しました。  それを見て、私は、これは一度北側から見たベトナム戦争を報道しなければならないということで、一年がかりで北ベトナム側に工作をして、西側のテレビとしては初めて向こうへ入ったわけです。それで驚いたことは、アメリカが負けているということを発見をいたしました。私はそういう言葉は使いませんでしたけれども報道は結果としてその実態を示したと自負しております。  そうしましたら、帰って、その放送があってから間もなく、あえて名前を申し上げますけれども、田中角栄さんや橋本登美三郎さんといった自民党の幹部の方が私のおりましたテレビ局の幹部を呼んで、なぜあんなことをやった、あんな放送をやったんだと、こういう話になってきた。  途中は省きますが、最後、全く私は関係のない別の仕事でTBSが、TBSにいたんですけれども、TBSが成田の反対闘争のドキュメンタリーをつくっている中で、反対集会に行こうとする農家のおかみさんたち、反対派のおかみさんたちをマイクロバスで運んであげた。それを警察は、集会をやろうとしているから検問をして、報告がまた振るっているんですが、その隊長の報告は、TBSは凶器を持った農民を運んでいたと。凶器というのは小さいこのくらいのプラカードですよ。それをおかみさんたちが割烹着着て持っていた。  そうしたら、その日の夜、時の自民党幹事長の福田赳夫さんがオフレコの記者懇談で、このようなことをやるTBSには再免許を与えないこともあり得るということを言われたんですよ。これは十三条ですよ。それが決め手でした。翌日、私はすぐにTBSの社長に呼ばれて、きょうでやめてくれ、このままいくとTBSがつぶれると。  こういうことになるんですよ。これは事実の話であります。ですから、あえて関係者のお名前も申し上げました。  こういうことが起こってはならないというのが民主主義の原理じゃないだろうかと思います。郵政大臣、いかがですか。
  207. 平林鴻三

    国務大臣(平林鴻三君) 田委員は私どもの先輩でもあられますし、また通信、放送、報道の方面におきましては極めて豊富な経験と高い御識見をお持ちの方でございますから、ただいまのお話は私も謹んで承りました。  私は、責任、権限、この権限を有する者は必ず責任を伴うんだというのが民主主義の社会における、あるいは政治組織における通則であろうと思っております。したがいまして、私は与えられた権限はそれこそ全責任を持って取り扱う、こういう覚悟でおりますことを申し上げまして、以下申し上げることは今日の制度説明でございますので、一応お聞き取りをいただきたいと思います。  放送法におきましては、放送番組編集の自由を保障した上で、放送事業者がみずから番組基準を策定する等、放送事業者の自律を基本として放送番組の適正を図る仕組みになっております。  また、放送局の免許につきましては、第一に、審査基準が明確に定められ、公開されていること。第二に、個別の免許付与に当たっては、軽微なものを除き、両議院の同意を得て任命された委員から構成される電波監理審議会に諮問して、その議決を尊重して措置しなければならないとされていること。第三に、免許の拒否処分を行う場合には拒否理由を提示していること。第四に、郵政大臣の処分についての異議申し立ては電波監理審議会の議に付さなければならず、審理の手続が法定されていること等、公正かつ適正に行われる仕組みになっておるところでございます。  以上、申し上げます。
  208. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  209. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 最後の時間をいただきました無所属の会の岩本でございます。よろしくお願いをいたしたいと思います。  本日は、文部省郵政省科学技術庁審査ということでございますが、私は常任委員会は郵政省所管のに所属しておりますのでいろいろとお聞きする機会がございますので、きょうは特に文部省を主体にちょっとお話伺いたいなというふうに思っております。  私自身、しばらく地方行政をやっておりまして、それからまた選挙のときも地方の立場を国政に反映するということを約束してまいりました身でございますので、そういう視点からの質問をさせていただきたいなと思っております。  いわゆる地方の活性化、最近特に地方分権、地方主権とも言っておりますけれども、地方が本当に実感して感じる豊かさをどう確立していくかというのがこれからの時代ではないかと思っておるわけでございます。  そういうことで、私がちょっと質問させていただきたいのは、いわゆる地方の高等教育といいますか、たくさん大学がございますし、私の県なんかも高等教育機関が非常に多いということで言われている県でございますが、そういう中で、公立短大といいますか県立短大の問題について。  いわゆる県立短大というのは、農業短大というのが昔たくさんあったと思いますけれども大臣のところにもあったかどうかちょっと私も失念しましたが、隣の県には両方の県にたしかあったというような記憶がございますし、これはこれでいわゆる農業の指導者を育てるということでそれなりの役割をずっと果たしてきたわけでございますが、やっぱりどこにおきましても、昔のままではどうも大学の魅力に欠けるとか、新しい時代に沿ってやはりカリキュラムをもっとしっかりしたものにしなきゃいけないというような、ある意味では四年制への移行というような格好の検討が随分なされてきていると思います。  そういうことで、私も幾つか知っておりますが、いろいろ検討した結果、四年制に移行しているところもございますし、今検討しているところもあるわけでございますが、私なりに考えますと、地方の公立大学、地方の大学というのも、いわゆる文部省所管の大学というのも大事かと思いますけれども、県のといいますか地方自治体、公立大学の位置づけというのもある意味で非常に重要じゃないかなと。ということは、地元との密着度が非常に大きいわけでございまして、産業の面から考えても地元のニーズに合った教育ができるわけでございますし、今盛んに言われている生涯学習というような面でもその場の提供ができるということで、大変大事なものではないのかな、そんな気がいたしまして、私はこれの推進というのは非常にいいことだなというふうに見ておるんです。  そういう意味で、今そういう検討をされて、その結果どんなふうになっているのか、その現状と、できれば、文部省としてはどういう立場でどんなふうにされているのか、お答えを願いたいと思います。
  210. 工藤智規

    政府参考人(工藤智規君) 今御指摘のとおりでございまして、全体のことを申し上げますと、国公私を通じまして四年制大学それから短期大学の数を申し上げますと、既に御承知かと思いますが、四年制大学は全国で六百五十校になってございます。それに対しまして短期大学は五百七十二校でございます。他方、学生数を見ますと、四年制大学が二百八十二万人を擁しているのに対しまして短期大学は三十三万人でございます。  したがいまして、学校数の割には学生数が少ないわけですが、それだけいわば小ぢんまりとして、教員と学生との関係も割と密着してございますし、それから、それぞれの地域におけるニーズにこたえながらこれまで教育研究をしていらっしゃったその意義は大変大きいものと思っております。  ただ、他方で学生の進学のニーズあるいは地域のニーズ、いろいろ変化してまいっております。それに対して各設置者の側でいろいろ御検討いただいているわけでございますけれども、公立短期大学につきましても、従来のままということよりは、その教育内容教育体制をいわば改組という形で改善しながら新しいニーズにこたえるとか、あるいは学生ニーズにこたえて四年制大学を志向するとかという状況が見られるところでございます。
  211. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 文部省としては、要するに、そういう地方の検討に大体多くを任せるというふうに理解してよろしいわけですね。
  212. 工藤智規

    政府参考人(工藤智規君) 基本的に文部省が、国立の場合もそうでございますけれども、公立大学、私立大学も含めて文部省が何か指示をするとか一定の方向性強制的に導くとかということではございませんで、四年制大学、短期大学、それぞれ持ち味があるわけでございますから、それぞれの大学が個性輝く立派な教育をしてくださればこんなにうれしいことはないわけでございまして、その方法として改組したり四年制大学を志向したりというのは、私どももいろいろな御相談に乗りながら助言を申し上げたり、可能な限りの御支援を申し上げたりしているところでございます。
  213. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。  そういう場合はよく検討するように申し述べさせていただきます。  それともう一つ、いわゆる地方の大学と地方の国際化との関連で、私はこれは前に去年の決算委員会で外務省所管のときにちょっとお聞きしたんですけれども、今盛んに地方の国際化というのも言われているわけでございまして、これはいろいろな手段があるかと思いますけれども、特に教育面といいますか、大学関係でいきますと、やはり留学生を受け入れるというのが地域にとっても学校にとっても一つの大きなことになると思うんです。  ところが、現実、私のところでももう既に名の通った大学なんかはたくさん留学生がおりますけれども、それ以外の、例えば今申し上げました公立の大学みたいなところで受け入れる方法がないのかなと。私も地方行政をやっているときにそんなことをいろいろ考えたわけですが、やっぱりそういう地方の公立大学というのはやっている科目が農業とか環境とか、いわゆる地方のものを特性とした教育が多いわけですね。  といいますと、世界的に言って留学生を受け入れるとなりますと発展途上国の人がそういうのに関心を見せる人が多い。今盛んに来ている留学生の方々はむしろそうでない工業とか科学とかそういうものに関心を持たれているからそれは中央でやれるけれども、地方のそういうところの受け入れというのは発展途上国の学生が来ると受け入れやすいんじゃないのかなというような気がするわけです。  ところが、御存じのとおり発展途上国の人はお金がないんですね。留学しようにもできない。そういう状況の中ですと、日本の援助といいますか、ODAを見ますと研修員というのを受け入れているわけですね。あれと留学というのが結びつかないかなと随分前から考えていたんですが、日本のセクショナリズムというか、なかなかうまくなくて、私は国会に出てきてそれを一つの私の課題にしようかなと思って昨年聞きましたら、去年から外務省は始めたんですよ、そういうものを。  大変いいことだなと思いまして、去年は外務省にそういうことをお伺いしましたけれども、ことしは文部省質問する機会を得ましたので、文部省もその点についてどういうような認識をされているか。たしかまだ数十人の単位だと思います、受け入れが。それが、去年予算的な受け入れはございましたけれども、数字はございましたけれども、どんなふうに今進んでいるか。人数が少ないから余り把握されていないかもしれませんが、もしおわかりになりましたら教えていただきたいと思います。
  214. 遠藤昭雄

    政府参考人遠藤昭雄君) お答えいたします。  文部省では、御承知のとおり、昭和五十八年から留学生受け入れ十万人計画というものを立てておりまして、鋭意努力をしてきておるところでございます。昨年の五月現在で数は約五万六千ということで、まだもう少し努力をしないといけないというふうに今思っておるわけでございます。  御指摘のように、留学生はどうしても都市部に、大学がそもそも都市部に多いものですから、そちらの方に集中するという傾向もあるわけでございます。  お話ございましたJICAの方で、十一年度から長期研修員制度というものを立てまして、発展途上国の人材養成に貢献するプログラムというものを動かしております。それで、これについては文部省も中に立ちまして、どこの大学がいいかという相談を受けて、あとは個々の大学と話をしてもらうということで進めております。我々としては、できるだけ研修の成果が上がるように、適切な受け入れ大学を確保するように努力、協力をいたしておるところでございます。  この受け入れ大学につきましては、そうはいいましても相手国とか、あるいは留学生の希望に沿うというのがまず第一でございまして、その上で、御指摘のように地方のいろいろなことをやっている大学もあるわけでございますから、そちらのことも念頭に置いていかなければいけないということで進めております。
  215. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 大変なことはよくわかっておりますし、どうやったらいいかということでございますけれども、日本の官庁の中で両省が合わさってやるというのは、同調してやるというのは非常に画期的なことだと私は思っておりまして、そういう意味では前向きなのかな、後ろ向きなのかなと思いましたら、今のお話で前向きのようだと思いますので、それでこの質問はやめさせていただきます。  両方の件について大臣お話もお聞きしたかったんですが、時間も時間で、私は実は教育問題、全く専門外でございまして素人でございます。きょうも岩城委員佐藤委員から盛んにそういう御質問がございまして、私もそれで勉強させていただいたわけでございますが、先ほどどなたかの質問に対しまして大臣は、教育論議国民だれでもできる重要な問題だと、こういうようなお話ですので、私も国民の一人として、私なりのふだん気持ちに抱いていることをちょっと申し述べさせていただきたいなと。したがって、論理としてぴしっと教育論議に合っているかどうかわかりませんが、話を聞いていただいて、何か御感想をいただければと、こう思っている次第でございます。  どうもいろいろと議論されておりますけれども教育とは何たるかということはちょっと私自身の疑問でもあるんですけれども、やはり教育というのは次代の社会をしっかりしたものをつくる、いわゆる社会の基盤を築くという物すごく大切な、そういう意味で大切なことであって、そこに生きる人間はやはり今いる我々と同じレベルの人格なり教養なり持っているものであり、あるいはそれ以上のものでなければ次の世代というのはうまくいかない。その辺の認識がどうも社会的に余りはっきりしていないんじゃないのかな。単純に言えば、動物だって種の保存のために自分と同じかそれ以上のものまで教育をして、産み落とすだけでなくて、そこまでやって外に出している。見方によってはそう言えると思うんです。  そういう面の物の考え方ということができないのかな、そういう面の何か施策ができないのかな。これは簡単に施策でできる問題ではないと思いますけれども、少なくとも、いろんな現象があって、それに対する対症療法ということをやるだけでなくて、基本的なそういうことをやらない限り、もう全体が、教育そのものがしっかりと機能しないんじゃないか、本来目的とするものにならないんじゃないのかなというような気がするわけでございます。  申しおくれましたけれども、実は私は新教育法施行の一期生でございまして、これはそんなことを言っても胸を張って言えるほどの人物になっておらないですけれども、したがって新しい教育学校で勉強してきた。同時に、周りを見ると古い人間がまだおった。折衷したような時代であったわけでございまして、そういう点からの御質問でありますので、見解でございますので、その点はお酌み取りいただきたい。  それともう一つは、私、常々感じますのは、社会全体といいますか、それぞれ大人なり他人といいますか、そういう人が子供に対しての関与がないんです、少な過ぎるんじゃないか。やっぱり教育で何か価値観を教えるというのでは、それは本当の教育じゃないんじゃないか。価値観をはぐくむのが教育じゃないのかなというような感じが実はするわけでございまして、それにはやはりいろんな面からの、いろんな大人がおり、いろんな社会があり、そういう人たちからいろんな関与をされて、その中で子供がまともな道を自分で見つけていく、そういう方法をとらなきゃいけないんじゃないのかなという気がいたします。これも、だからといって、じゃ、どういう法律をつくればいいかというような簡単な問題ではないんですけれども、どうもそういうような感じがいたします。  それともう一つ、これはもう少し具体的なんですけれども、先ほど初等中等教育等のお話もございましたけれども、義務教育、これも私、義務教育を受けてまいりまして、確かに戦後の日本をこれだけにしたのはその義務教育制度のおかげだと思います。とする一方で、先ほど大臣も、長所なり短所があったと。これがそれなりに持ちこたえてきて今に至っているという感じがするんですが、それが今持ちこたえられなくなったというのが現状じゃないかな。そういう意味の何か改革が必要、前の制度が悪いということじゃなくて、時代が変わったという認識を持たなきゃいけないんじゃないかなというような感じがいたします。  そういう意味で、義務教育について考えますと、確かに国は義務教育を、国民教育を与える義務を負わなきゃいかぬ。初等中等教育のときは義務を負わなきゃいかぬ。しかし、子供にしろ親にしろ先生にしろ、ちょっと義務教育ということで主体性を失っているんじゃないのかな。子供も、学校に行かなきゃいけない、学校は行かされるものだと。親は、人に任せておけばいいと。教師も、何の努力をしなくても自分学校には生徒が来ると。地域分けというんですか、決まっちゃうわけですよね。そういうところに何か今の弊害が出てきているんじゃないのかなというような感じがしてならないわけでございまして、したがって義務教育から権利教育という言い方もおかしいんですけれども、もう少し主体性を持った義務教育というか、その期間の教育、当然、六歳から十五歳までの間ですからすべて一律には考えられない、それぞれによって考えなきゃいけないと思いますけれども、その辺の変換が必要じゃないのかな。  私が思いつくのは、例えば学校も、全部最初にもう自分がこの住所に住んだらここだということでなくて、もう少し自由度を与える。学校先生にしても、もう少し自分がこうやったらもう少し人が来るかもしれない、そういう緊張感といいますか、そういうものが今必要になった時代じゃないのかなという気がしてならないわけでございまして、どうも雑駁な意見で、考え方で、大臣お答えいただけるかどうかわかりませんが、ちょっと今の私の思いに対しまして御回答いただければと思います。
  216. 大島理森

    国務大臣大島理森君) 岩本先生のずっとお話しされたことは大変御立派な御意見のように伺いますが、教育とは何ぞやというのは、教育学の本を読んでも、あるいはまた論者の意見を聞いても、結局、社会に生きていくそのためのすべと価値観、そしてある意味では体力、そういうものを育てる、それを組織的に育てる、これが教育だと、こういうふうな定義みたいなものがあるわけでございまして、そういう意味では先生のおっしゃる一面は全くそのとおりであろうと思います。  そういうことの中で、多分先生が言わんとすることは、学校の変化ということに目をつけて、学校の果たす役割あるいは学校の義務というものがあるから、いわば競争原理が少しちょっと足りなくて、そこに学校内でのひょっとしたら先生方の努力も少し足りないんじゃないか。と同時に、学校に行かせる親の選択、これは子供が選ぶわけじゃありません。子供が選んでいるんだと言う人もいますが、私はそうじゃないと思います。結局、親が選ぶんですね。特に小学校ぐらいの場合はそうだと思うんです。そんなに子供に大変な能力があって、子供に主体性があると思っては私は逆にいかぬと思うんです。子供というのは少なくともそういうものだと思って、結局は親が選んでいるんです。  そういうことの中で、選ぶ自由も少し与えたらどうかという発想ではないかと思いますが、少なくとも通学区域は基本的にそこの市町村の教育委員会で、かなりそこは弾力的に文部省も考えておりまして、東京都内の中では品川区なんかはそういう弾力化をかなり進めておられます。  私もそこの学校へちょっと行ってみましたが、地域先生方が一緒になって努力していくという姿が見えます。しかし、それはまた一方、先生の御出身の県の方に行きますと、なかなか選ぶ学校がないような状態もあるかもしれません。だから、すぐれてやっぱり教育委員会、その地元教育委員会の実情に合わせて適切に行われるようにしていくことが大切ではないか。もうがんじがらめという考え方は文部省には余り今そんな昔のようながちっとした考え方はありませんけれども、やっぱり主体的に考えていただくのは地方教育委員会であり、そういう弾力化の実践をしておられるところもあるということでございます。  ですから、私どもは新しい時代の新しい学校の役割というものを多分いろいろ考えなければならない。そこで、総合的学習であるとか週休二日制、そういうものにしつつ、知識を教えるだけの学校ではなくて、例えばそこに空き教室を利用してコミュニティーのコアの場にしていったりするとか、そういう地域との関係を持てる学校というふうなものもこれから模索してやってまいりますし、そういう今までの学校の機能というものの変化というのは少しずつは出てくると思います。  しかし、基本はやはり知識をまず教えることが基本であり、そういうことを基本にしつつも新しい時代に合わせた学校の役割というものをさらに研究し、努力してまいりたいと思っております。
  217. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 どうもありがとうございます。  大変いいお話伺いました。これからもまた機会がありましたら議論を深めていきたいなと思っております。  一つだけ、私も子供に余り自由度を与えろというのは反対でございます。それだけはお断りしておきます。  どうもありがとうございました。
  218. 鎌田要人

    委員長鎌田要人君) 他に御発言もないようですから、文部省並び郵政省及び科学技術庁決算についての審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十四分散会