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2000-09-20 第149回国会 衆議院 厚生委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年九月二十日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 遠藤 武彦君    理事 坂井 隆憲君 理事 鈴木 俊一君    理事 山口 俊一君 理事 金田 誠一君    理事 桝屋 敬悟君 理事 武山百合子君       岩崎 忠夫君    岩屋  毅君       小渕 優子君    木村 義雄君       熊代 昭彦君    田村 憲久君       高木  毅君    竹下  亘君       堀之内久男君    松野 博一君       松宮  勲君    三ッ林隆志君       吉川 貴盛君    吉田 幸弘君       荒井  聰君    家西  悟君       石毛えい子君    江崎洋一郎君       古川 元久君    牧  義夫君       水島 広子君    山井 和則君       江田 康幸君    福島  豊君       樋高  剛君    瀬古由起子君       中林よし子君    阿部 知子君       中川 智子君    上川 陽子君       小池百合子君     …………………………………    厚生大臣         津島 雄二君    厚生政務次官       福島  豊君    政府参考人    (厚生大臣官房総務審議官    )            宮島  彰君    政府参考人    (厚生省保健医療局長)  篠崎 英夫君    政府参考人    (厚生省医薬安全局長)  丸田 和夫君    政府参考人    (厚生省保険局長)    近藤純五郎君    厚生委員会専門員     宮武 太郎君     ————————————— 委員異動 九月十八日  辞任         補欠選任   五島 正規君     牧  義夫君 同月二十日  辞任         補欠選任   西川 京子君     松宮  勲君   宮澤 洋一君     小渕 優子君   吉野 正芳君     松野 博一君   三井 辨雄君     江崎洋一郎君   小沢 和秋君     中林よし子君 同日  辞任         補欠選任   小渕 優子君     宮澤 洋一君   松野 博一君     高木  毅君   松宮  勲君     西川 京子君   江崎洋一郎君     三井 辨雄君   中林よし子君     小沢 和秋君 同日  辞任         補欠選任   高木  毅君     吉野 正芳君 同日  理事五島正規君同月十八日委員辞任につき、その補欠として釘宮磐君が理事に当選した。     ————————————— 八月九日  一、厚生関係基本施策に関する件  二、社会保障制度医療公衆衛生社会福祉及び人口問題に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  政府参考人出頭要求に関する件  厚生関係基本施策に関する件(医原性クロイツフェルト・ヤコブ病問題)  医原性クロイツフェルト・ヤコブ病に関する予備的調査についての報告     午前十時開議      ————◇—————
  2. 遠藤武彦

    遠藤委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 遠藤武彦

    遠藤委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事釘宮磐君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 遠藤武彦

    遠藤委員長 この際、御報告いたします。  去る八月四日、調査局長に命じました医原性クロイツフェルト・ヤコブ病に関する予備的調査につきまして、去る十二日、報告書が提出されましたので、御報告いたします。  なお、報告書につきましては、同日、議長に対し、その写しを提出いたしました。      ————◇—————
  5. 遠藤武彦

    遠藤委員長 厚生関係基本施策に関する件、特に医原性クロイツフェルト・ヤコブ病問題について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として厚生大臣官房総務審議官宮島彰君、厚生省保健医療局長篠崎英夫君、医薬安全局長丸田和夫君、保険局長近藤純五郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 遠藤武彦

    遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 遠藤武彦

    遠藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。熊代昭彦君。
  8. 熊代昭彦

    熊代委員 クロイツフェルト・ヤコブ病の閉中集中審査に際しまして、トップバッター質問の名誉をいただきましてまことにありがとうございます。  最初に、きょうは、厚生大臣閣議でまだお見えになりませんが、やがてお見えになるようでございますけれども、私どもは、委員長もそうでございますけれども国会改革を進めてまいりまして、大臣は第一義的には国政、国務に専念すべきである、総括政務次官が答弁に当たるべきである、八面六臂の活躍をしていただくべきである、こういうことを進めてまいりましたので、きょうは、福島総括政務次官にその趣旨に従いましてぜひ大いに頑張っていただきたいし、私どもも真剣に質問をさせていただきたい、そういうふうに思う次第でございます。  クロイツフェルト・ヤコブ病は大変悲惨な病気でございます。患者皆様は本当に大変お気の毒な状態にあるというふうに思います。したがいまして、現在の対策の中で、あるいは足らざるものがあればそれを補って、あらゆることをしてさしあげるのが一番大切であるというふうに思うわけでございます。患者及び御家族の方々に対しまして万全の対策をする、そういうことが大切であると思いますが、まずもって、現在の対策状況ヤコブ病原因及び患者皆様現状等につきまして、福島総括政務次官から御回答をいただきたいと思います。
  9. 福島豊

    福島政務次官 お答えいたします。  まず、十時から臨時閣議が行われておりまして、大臣が冒頭出席できませんことをおわび申し上げたいと思います。  そしてまた、全国のヤコブ病患者皆様、また御家族皆様は、大変な病気でございまして、大変な御苦労をなさっておられると思います、心よりお見舞いを申し上げたいと思っております。  ただいまの委員の御質問でございますけれどもヤコブ病原因現状は一体どういうものか、そしてまた万全の対策政府としてもとるべきであるけれども、どのような対策がなされているかという御質問であったかと思います。  クロイツフェルト・ヤコブ病につきましては、三つのタイプがございます。一つ孤発性二つ目家族性三つ目感染性というふうに分類をされております。  その原因につきましては、今日では、異常なプリオンたんぱくというものが脳内に蓄積をすることによって発症するというふうに考えられておりますけれども、正常なプリオンたんぱくが異常なプリオンたんぱくに置きかわるメカニズムが一体いかなるものであるかということについては、現在でも明らかではございません。  本疾患症例数が極めて少ないということもございまして、さらに症例を集めて疾患病態を解明するためには、特定疾患治療研究事業対象に指定することが必要であると判断をいたしまして、そのようにいたしております。そしてまた、その中で、医療費自己負担分全額公費により負担をし、患者皆様負担軽減がなされているところでございます。  そして、平成十一年度末におきまして、本治療研究事業対象としております患者数は百八十六名でございます。これは、遅発性ウイルス研究班サーベイランス委員会というものがございますけれども、この委員会におきまして、症例についての病態の解明や患者治療に生かすための分析というものを行っておるところでございます。  対策ということで、ただいまも医療費自己負担分全額公費負担によりまして軽減をするということを申し上げましたけれども、それだけにとどまっておりません。難病患者居宅生活支援事業というものがございます。この事業におきましては、ホームヘルパーの派遣、短期入所日常生活用具の給付ということで、福祉的な観点での支援をさせていただいております。  そしてまた、難病特別対策推進事業というものもございます。この事業におきましては、在宅療養支援計画の策定や訪問相談事業等を行っております。  さらに、先ほどは医療費自己負担分についての対応ということをお話ししましたけれどもクロイツフェルト・ヤコブ病患者さんを治療し受け入れる医療体制というものが極めて大切でございます。これは、平成十年度より重症難病患者入院施設確保事業というものを創設いたしました。これは、なかなか入院ができないではないかというような声がございまして、適切に入院を図る必要があるということから創設をしたものでございます。都道府県ごとに地域の医療機関の連携によりまして、難病医療体制整備をこの事業によって行っております。  そしてまた、入院しました後にも、診療報酬入院日数によって逓減をするということから、なかなか長期入院ができないのではないかというような声もございました。これに対しては、本年の四月から、長期療養を必要とする難病患者等医療を確保する観点から入院日数による逓減のない入院料創設というものを行いました。  さらに、来年度に向けまして——実際にこのクロイツフェルト・ヤコブ病というのはなかなか診断が難しいということも事実でございます、症例数が極めて少ないことから。そういう意味で、一般の医師の皆様と専門的な知識を有するドクターを連携させることが非常に大切だというふうに考えておりまして、この協力関係支援についてその整備を進めるための検討を進めております。  以上でございます。
  10. 熊代昭彦

    熊代委員 総括政務次官、ありがとうございました。  きめ細かい配慮もいただきながら一応の対策をしていただいているということでございますけれども、さらにあらゆる対策をお願いしたいというふうに思う次第でございます。  それでは、次に移ります。  ヒト乾燥硬膜ライオデュラの使用に伴いましてクロイツフェルト・ヤコブ病感染が起こったということでございますが、国を被告にして損害賠償訴訟が現在提起されているということでございます。  患者皆様方が大変お気の毒である、また、犠牲になられた方は大変お気の毒である、それはまさしくそのとおりでございまして、あらゆることをしてさしあげたい。さしあげるべきであるし、政府はしなければいけないというふうに思いますが、これは、ライオデュラをつくった会社がB・ブラウン社という非常に大きなトップクラスの製薬企業であるということもございます。それから、国が責任を負うということは、国民の皆様の税金を使うということでもございます。したがいまして、法的責任問題というのは明確にしなければならない。  本当にお気の毒だという情の問題と法的責任問題というのは区別して考えなければならないというふうに思うわけでございますが、この訴訟問題について、法的責任有無について、どのように厚生省総括政務次官はお考えになるか。それから、諸外国でもこの問題が起こっているというふうに思います、諸外国でのこの法的責任問題、あるいは訴訟問題、賠償問題、特に米国ドイツ状況を中心にまずお答えをいただきたいと思います。
  11. 福島豊

    福島政務次官 私も委員の御指摘に同感でございます。  現在、ヒト乾燥硬膜移植によってクロイツフェルト・ヤコブ病を発症したとする患者遺族等から国等に対しまして損害賠償を求める訴訟が提起をされておりますけれども厚生省としましては、過去の事実を客観的に見詰めた上で国の法的責任有無を議論すべきものと考えております。  私自身は、原因因子細菌でもウイルスでもない、たんぱく質プリオンであるという、これは今までの生物学の常識を覆すものでございましたけれども、この学説が実験で裏づけられたのは平成五年の時点でございました。それ以前は原因因子感染メカニズムも不明な状況にあったと言えます。  そしてまた、このような原因がはっきりしない状況の中で、科学的な判断をするためには疫学的な調査分析というものが必要でございますけれどもヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染につきまして、その疑いのある症例報告昭和六十二年二月までは世界じゅうに全くありませんでした。また、平成元年一月までは一例しかなかった。疫学的な分析をしようと思っても、それに必要な症例数というものもなかったという点から考えまして、客観的に見て、患者皆様手術を受けられた時点においては、ヒト乾燥硬膜クロイツフェルト・ヤコブ病発症関連性を予見することは難しい状況にあったと考えております。  しかし、いずれにしましても、国の法的責任の問題につきましては、現在訴訟中でございますので、裁判所判断司法判断を仰いでまいりたいと思っております。  それはそれとしまして、委員も御指摘ありましたように、国としまして、大変悲惨な病気でございます、患者皆様、御家族皆様に対して、現在の制度の中でできる限りの支援というものをしっかりと行っていきたいと思っております。  そして、諸外国におけるこの訴訟の問題でございますけれども、必ずしも詳細に承知をしておるわけではございませんが、米国ドイツ等におきましては、国に対する損害賠償訴訟というものは提訴されていないというふうに承知をいたしております。
  12. 熊代昭彦

    熊代委員 B・ブラウン社の祖国であるドイツにおいて、国は訴えられていない、B・ブラウン社は訴えられているということでございますね。  今の追加質問でございますが、現在、何か解決して既に賠償が行われているとか、そういうことはございますか。政府参考人でも結構でございます。ちょっとお願いします。
  13. 福島豊

    福島政務次官 国に対しての訴訟につきましては先ほど御説明したとおりでございますが、B・ブラウン社に対しての訴訟につきまして現在承知いたしておりますところは、次のような状況でございます。  まず、米国でございますけれども、一九八五年四月ごろにライオデュラ移植をされた事例につきましては、B・ブラウン社に対して訴訟が起こされましたけれども、訴えは却下されております。そして、八七年、昭和六十二年四月ごろに移植がされた事例につきましては、これは第一例の報告があった後でございますけれども、B・ブラウン社はその責任を認めることなく相手方と和解をいたしております。  そしてまた、英国事例につきましては、一九八五年の十月に移植をされた事例でございますけれども、これに関しましても、B・ブラウン社はその責任を認めることなく和解をいたしております。そして、英国にはもう一件ございまして、八六年四月ごろに移植をされた事例につきましては、現在係属中であるということでございます。  カナダにおきましては、一九八八年の二月に移植をされた事例訴訟がありますけれども、これも同様にブラウン社はその責任を認めることなく和解をいたしております。  スペインにも一例ございますけれども、これは現在係属中であるというふうに伺っております。
  14. 熊代昭彦

    熊代委員 B・ブラウン社というのは、日本医薬品会社でいえば武田薬品の規模に達する、非常に大きな堂々たる医薬品会社であると思います。それに対しまして訴訟が提起されて、第一症例が見つかった以後のものについては責任問題を一応わきに置いて和解をしている、こういうお話でございますね。私企業としてとるべき責任をとるということは大切なことであると思います。  日本の場合は、国が被告の一人に入っている。B・ブラウン社被告に入っているけれども国も入っているということでございますので、国の法的責任については、総括政務次官がおっしゃいましたように、裁判で決着をつけていただくことが非常にいいことではないかと、今の御説明を聞いて思いました。  それでは、次に参ります。  この問題につきましては、第二の薬害エイズというふうな表現もされております。私もビデオをいただいて見ました。しかし、薬害と言われておりますけれども、これは医療用具の害でございまして、第二の薬害エイズということですから、エイズに匹敵する医療用具による非常に悲惨な害ということだと思います。  まず、この問題と血液製剤によるHIV感染の問題との構造の比較でございますけれども、どのように考えたらいいのか、同じであるのか、それとも差異があるのか、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  15. 丸田和夫

    丸田政府参考人 お答えいたします。  委員指摘血液製剤によるHIV感染の問題につきましては、アメリカにおきまして短期間に集中して血友病患者エイズ発症報告がなされまして、血液製剤エイズ感染との関連が懸念される中で、我が国でもエイズ研究班を設置いたしまして、国内における患者実態把握血液製剤の取り扱いについて検討されたところであります。  その後、エイズウイルスの発見に伴いまして、抗体検査法も開発され、血友病患者の方の感染有無特定製品エイズウイルスに汚染されているか否かの確認もできるようになってきたという状況の中で、非加熱製剤から加熱製剤への切りかえの対応が適切であったかどうかが問われたものであります。  これに対しまして、ヒト乾燥硬膜によりますクロイツフェルト・ヤコブ病の問題につきましては、昭和六十二年二月に第一症例報告があり、平成元年一月に第二症例報告があったというように、症例報告は散発的で疫学的な評価を行えるような状況にはなかったわけであります。  また、原因因子につきましては、プリオンというたんぱく質であるというものが定説化いたしましたのは平成五年でございます。それ以前は原因因子もわからなかった。感染メカニズムは現在もわかっていない状況でございます。  さらに、特定製品プリオンで汚染されているか否かを確認します実用的な検出法もいまだ開発されていなかったことから見ましても、両者は全く状況を異にするものと考えております。
  16. 熊代昭彦

    熊代委員 HIVの場合も、あらゆる薬害あるいはそれに類似するものについても、その当時の状況において知られざるもの、知らないことについて過失がないものについては責任を問わないというのが、我が国の法制の一番基本的な問題であります。しかし、怠慢で知らないということは知らないうちに入らないわけでありますので、通常の努力をすれば知り得たものは、知らない方に過失があるということでございます。  そういうことで、ある時点に起こったことが例えば十数年後にこれを追及するという問題は、我が国市民主義社会の法律の体系をしっかり理解して個人の責任云々を問わなければならないというふうに思うわけでございます。  今、HIV感染とCJD、ヤコブ病感染との比較をしていただきました。HIVに比べましても、疫学的調査ができない、非常に散発的であるということでございます。そういうことでございますから、知らざることについての責任は問えない状況ではないかと私も思います。しかし、この問題につきましては、司法権のもとにあります裁判所において明確な判断が下されるであろうということでございますから、これについてはそれ以上この場ではお尋ねいたしません。  次の問題に移らせていただきます。  先ほどのプリオンというたんぱく質がまさか細菌のような働きで異常な害をもたらすといいますか、病気をもたらすということは非常に奇想天外なことであったと思いますけれども、それを見事に発見したということでございます。それにしましても、これまで我が国においてヒト乾燥硬膜が相当に広く用いられていたように思いますが、どれほど用いられて、どのような有効性があってこれが使われたのかということについて御回答をいただきたいと思います。
  17. 福島豊

    福島政務次官 硬膜というのは、脳を包んでおります三つの膜の一つでございます。軟膜、クモ膜、そしてその一番外側に硬膜というものがあるものでございまして、脳組織と直接に接触をしているわけではありません。  なぜヒト乾燥硬膜が必要だったかといいますと、脳外科手術を行いますと硬膜の欠損が生じる場合があるわけでございます。そして、脳を包んでおります脳脊髄液というものが、欠損があるままですと漏れ出すというようなことがあるわけでございまして、そこをふさぐ必要があることから硬膜が使われるようになったということでございます。  ただ、このヒト乾燥硬膜が普及する前はどうしていたかといいますと、その代替としまして、大腿筋膜というものがあります、大腿部筋肉を包んでいる膜、これも線維性のものでございますけれども、それを切開して取り出して、それをもって欠損部に充てていた。大変な作業があったわけでございます。また、患者さんにとっても負担があったということでございます。  このヒト乾燥硬膜が使われるようになりましてから、こういった大腿筋膜の切除のための手術ということが必要なくなりましたので、患者負担も大変軽減された。また、手術時にも、この大腿筋膜を取り出すとなりますとその処置をしなければなりませんから時間がかかる、ヒト乾燥硬膜は直ちに使えるという利便性。そして、これはもともと生体の組織でございますので、移植した後に吸収されてしまって、後は再生をするということでございまして、そういうすぐれた利点がございました。  そういうことがございまして、臨床的にも広く使われまして、当時、年間一万枚から二万枚が使用されていたというふうに承知をいたしております。
  18. 熊代昭彦

    熊代委員 確認でございますが、大腿筋膜は、総括政務次官医学博士でいらっしゃいますからお詳しいわけでございますが、私どもはよくわからないのですけれども大腿骨大腿のここにある筋膜でございますかね。  それから、まとめてお答えいただきたいと思いますが、ヒト乾燥硬膜年間一ないし二万枚使われたということでございますが、これまで総計でどれくらい使われたのか。そのうちライオデュラはどれくらいあるのか。それをお答えいただけたらと思います。
  19. 福島豊

    福島政務次官 大腿筋膜というのは、大腿筋肉を包んでいる筋膜という薄い膜のような組織がございまして、それが線維でできておりますので、それをはがして移植に使ったということでございます。  それから、乾燥硬膜が累計どのくらい使われたかということでございますけれども年間一万枚から二万枚ということで、総計では四十万枚から五十万枚が使われたというふうに考えられております。このうちライオデュラと、もう一社ございまして、その内訳については承知をいたしておりませんけれども、総数としては四十万枚から五十万枚使われたというふうに理解をいたしております。
  20. 熊代昭彦

    熊代委員 総計四十万枚ないし五十万枚。B・ブラウン社ライオデュラともう一つあるというわけですね。そうしますと、ライオデュラが過半数を占めている、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  21. 福島豊

    福島政務次官 発言を若干訂正させていただきます。  この四十万枚から五十万枚はライオデュラだけの数としてということでございます。もう一社ありまして、ですから、実際に使われていた枚数はもっと多いということになります。
  22. 熊代昭彦

    熊代委員 わかりました。B・ブラウン社ライオデュラだけで四十万ないし五十万枚ということのようでございます。それを事実として踏まえて質問を続けさせていただきたいと思います。  一つは、医薬品ないしは医療用具等危険性とその有用性の問題でございます。  あらゆるものは危険性有用性が隣り合わせているわけですけれども有用性危険性にはるかにまされば使う場合もあり得るだろう。そうでもないのに利益のために使ったということになると、これは大変な問題であるわけでございます。しかし、一つの見解といたしまして、有用性が非常に多くまさっても危険性がわずかでもあれば製品の使用を認めるべきでない、こういう意見もあると思います。それは一つの意見であると思いますが、これについて厚生省総括政務次官、いかがお考えでございましょうか。
  23. 福島豊

    福島政務次官 私も臨床医学に携わっておりましたので、医薬品または医療用具というものがリスクと隣り合わせだということはよく承知をいたしております。しかしながら、それにまさる有効性というものが存在するからこそ使われている。この有効性とリスクの兼ね合いをどう考えるのかというところが最も大切なところだと思っております。  医薬品の文献を見ましても、ほとんどすべての医薬品が何らかの副作用を有しているというふうに言っても過言ではないわけでございます。しかしながら、そうした副作用に比較してその医薬品の持つ有効性というものがあるからこそ承認をされているわけでございます。仮に、全くリスクがないものだけに限るとすれば、極めて限定されたものしか使えないということになってしまうのではないか、そのように思っております。  しかしながら、リスクをできるだけ低減をする、また副作用をできるだけ低減をするということは、これは大切なことでございまして、リスクを低くするために、必要に応じて使用上の制限を設けたり、使用上の注意を記載する等の安全対策を講じているところでありまして、これからもこの安全対策については全力で取り組む必要があるというふうに考えております。
  24. 熊代昭彦

    熊代委員 リスクと有用性とは常に併存するんだ、しかし、リスクの大きさをできるだけ小さくして有用性を大きくする、そういう中での医薬品ないしは医療用具の使用があるんだという話でございます。そしてまた、リスクをとことん抑える手だてをすべきだという御回答でございますが、それはまさしくそのとおりであると思います。  ヒト乾燥硬膜移植、この件に関して言えば、これはヤコブ病感染するという危険が結果的にはわかったわけでございますが、これを使用する時点において、使用するといいますか、それを国は輸入許可したわけでございますので、国が輸入許可をしたその後で時系列的に徐々にいろいろなことが起こってくるわけでございますので、それとの兼ね合いで、国にどれだけの予見可能性があったかということが一番の重要な問題だと思うのですが、国の責任の前提としまして、ヤコブ病発症の危険の予見可能性はどれくらいあったか、それについてお伺いしたいと思います。
  25. 丸田和夫

    丸田政府参考人 この問題につきましては、現在、患者さん、遺族の方から国等に対しまして損害賠償を求める訴訟が提起されております。その中で、患者さん方が脳外科手術を受けられた当時におきまして、国がヒト乾燥硬膜移植によってクロイツフェルト・ヤコブ病を発症する危険性を予見して製品の輸入や販売を禁ずる措置を講ずべき状況にあったかどうかが国の責任有無の前提として争点になっているものでございます。  国家賠償法上、一般的に国の法的責任が認められるためには、まず厚生大臣が、具体的には厚生省の担当者になるわけでございますが、職務上求められる通常の注意義務を払っておれば、当時の科学的知見などからヒト乾燥硬膜移植によってクロイツフェルト・ヤコブ病を発症する危険性を予見できたこと、次に、このような予見可能性の存在を前提としまして、製品の輸入や販売を禁ずる措置を講じなかったことにつきまして、厚生大臣に与えられております裁量権の逸脱、乱用という違法性が認められることが必要とされております。  本件につきましては、当時、ヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染の動物実験は行われておらず、ヒト乾燥硬膜クロイツフェルト・ヤコブ病の結びつきを示唆します症例報告は全くないか、唯一あったという段階でございまして、厚生省の担当者が職務上求められる通常の注意義務を払いましても、ヒト乾燥硬膜移植によってクロイツフェルト・ヤコブ病が発症する危険性を予見することは困難でありまして、また、諸外国におきましても特段の行政措置がとられていなかったことなどからも、厚生大臣に裁量権の逸脱、乱用があったとは言えず、私どもとしましては、国の法的責任については認めがたいと主張しているところでございます。
  26. 熊代昭彦

    熊代委員 職務上の通常の注意義務を果たしていれば予見できたということが法的な意味での予見可能性ということである、それはそういうことだと思います。それから、輸入販売の許可で、予見可能性があったのに許可しちゃった、これは裁量権の逸脱だということでありますが、それは、そういうものはなかったということでございます。今までのお話だとそういうことだろうとは思いますが、それは具体的には裁判所で御判断をいただくことになるというふうに思います。  繰り返しになりますが、もう一度確かめたいのですが、昭和四十八年、一九七三年の輸入承認当時に、ヒト乾燥硬膜であるライオデュラ移植によってクロイツフェルト・ヤコブ病感染する危険性は認識できたのかできなかったのか、理由をつけて御説明いただきたいと思います。
  27. 丸田和夫

    丸田政府参考人 ヒト乾燥硬膜ライオデュラにつきましては、厚生省におきまして、輸入承認の時点における医学、薬学的知見に基づきましてその有効性、安全性を審査したものでありますが、その際、無菌性を担保するための滅菌条件が設定されていることを確認するなど、必要な安全確保のための措置を講じたところでございます。  なお、ライオデュラが承認されました昭和四十八年当時におきましては、クロイツフェルト・ヤコブ病につきましては、その発症原因に関するプリオン仮説もまだ提唱されておらず、ヒト乾燥硬膜によってクロイツフェルト・ヤコブ病が伝播するおそれがあることの知見も全くなかったものでありまして、ヒト乾燥硬膜についてクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性を前提とした審査は行い得なかったものと考えております。
  28. 熊代昭彦

    熊代委員 やや回答の声のトーンが平板なのでちょっと私繰り返させていただきますが、要するに、細菌等によって汚染されていない、滅菌されている、そういうシステムといいますかそれをしっかりと確認したということですね。それから、プリオンというたんぱく質が異常を来すということについては全く知られていなかった、たんぱく質そのものが何か起こすというのは当時にとってはまるで奇想天外な話であったということであるから、危険性の認識はできなかったのだということだと思います。  それはそれで一応了承することにしまして、研究班の報告書の話が出ております。今の時点で見ると、ヒト乾燥硬膜移植に伴うクロイツフェルト・ヤコブ病感染の問題に触れているような、関係するような記述、そのように読める記述があるというふうに言われております。この記述によりましてヒト乾燥硬膜危険性を認識することができなかったのかどうか。この研究班の報告書の正式な名前と、その時点で今申し上げました危険性を認識することができなかったのか、これについてお答えをいただきたいと思います。
  29. 丸田和夫

    丸田政府参考人 御指摘の研究報告書の記載がなされた当時は、まだクロイツフェルト・ヤコブ病原因因子感染メカニズムも不明でありまして、病原体の検出もできない状況でありました。また、ヒト乾燥硬膜との関連を示唆する症例報告も、全くないか一例あったという状況であります。それから、研究報告書の内容につきましても、どのような場合に原因因子が混入するかといった具体的な対策を講ずる手がかりとなるような情報も示されていないという状況でございました。  現時点では、ヒト乾燥硬膜クロイツフェルト・ヤコブ病との結びつきは疫学的に相当明確なものではございますが、症例報告も全く存在せず、両者の結びつきが不明であった当時におきまして、ヒト乾燥硬膜につきまして、クロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性を前提とした対策は講じる状況にはなかったということでございます。  これにつきましては、我が国と同様、ライオデュラにつきまして輸入や製造を許可していた英国ドイツなどにおきましても、当時においてヒト乾燥硬膜についてクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性を前提とした対策は講じられていなかったところでございます。
  30. 熊代昭彦

    熊代委員 ちょっとよくわからないのではっきりさせていただきたいのは、研究班の報告書の正式な名称、それから、だれが座長ないしは委員長であって、ヤコブ病感染の問題に関係するように読める記述があったというのは、それはだれが書いたのか。これは議事録にはっきり残しておきたいと思いますので。それから、記述というのはどういう記述であるのか、それをお答えいただきたい。
  31. 丸田和夫

    丸田政府参考人 研究班の正式の名称でございます。  まず最初は、五十一年度に設けられた当時は、スローウイルス感染と難病発症機序に関する研究班ということでございました。それから、昭和五十四年度以降は、遅発性ウイルス感染調査研究班ということでございます。
  32. 熊代昭彦

    熊代委員 繰り返しますが、座長とか、具体的に関係する記述をした人のお名前をはっきり言っていただきたいと思います。
  33. 丸田和夫

    丸田政府参考人 この研究班は毎年度開かれておりまして、そういった中で総括班長という形でまとめておられます。  それで、問題となります報告書として挙げますれば、昭和五十三年度の研究報告書でございます。これは、班長は石田名香雄先生でございます。それから、昭和五十九年度、六十年度、六十一年度の研究報告書につきましては、班長は立石潤先生でございます。
  34. 熊代昭彦

    熊代委員 ヤコブ病感染に関係するように読める記述をお尋ねしたのですが、それについてお答えがなかったと思いますが、くどいようでございますが、それをお願いしたいと思います。それから、座長の名前をお伺いしましたが、座長がその記述を認めたというふうに理解してよろしいわけですね。
  35. 福島豊

    福島政務次官 記述を具体的に御紹介させていただきます。  昭和五十三年の研究報告書、班長の石田先生が書かれておりますが、「CJ病では患者脳組織に直接接することによってのみ伝達が可能なので、脳病理、脳外科関係者に厳重注意を呼びかける。」  昭和五十九年、班長は立石先生にかわっております。「CJDに関しては病因がまったく不明なため有効な治療法はいまだ見つかっていない。感染因子の特性から患者材料の消毒方法も問題となるが、患者の臓器、脳脊髄液、血液などが直接体内に入ることを防止しなければならない。」  そして、昭和六十年でございますが、立石班長の研究報告では、「CJD病原体はあらゆる臓器製剤、血液、尿製剤にも混入する懼れがあるのでCJD病原体の迅速、正確な検出法と完全な除去、不活化法の開発を急がねばならない。」  昭和六十一年でございますが、立石班長の総括研究報告には、「感染性の不活化は困難で、医療機材、血液や臓器製剤、食品などがもし汚染されれば、その排除は至難である。」ということが書かれております。
  36. 熊代昭彦

    熊代委員 具体的な記述はわかりました。  私の理解と違うかもしれませんが、要するに、ヤコブ病にかかっている人の血液とかあるいは肉体の一部に触れれば感染のおそれがある、だから注意しなければいけない、そういうふうに書いてあるように思いますが、もう一度確認させてください。
  37. 福島豊

    福島政務次官 私も委員のおっしゃるとおりだと思っております。これは、CJDの患者さんがおる、そして、亡くなられましたときに病理解剖等を行う、そのときに患者組織に直接接するわけであるから、感染性があるので十分注意をしなければいけない。これは脳外科手術の場合でも同じでございますけれども、そういう可能性がある。例えば脳生検というように、診断を確定するために患者脳組織の一部を取るということがございます。そういう場合にありましても、その感染性ということから十分注意をしなければいけないという、患者に基づいた感染性についての厳重注意という認識が主体になった記載だろうと私は考えております。
  38. 熊代昭彦

    熊代委員 医学博士確認いただきましたので、私の理解で正しいのかなというように思うわけでございますが、さらに話を進めさせていただきたいと思います。  一九八七年、昭和六十二年二月の第一症例を受けまして米国FDAが対応したということでございますが、どのような対応をしたのか、お答えいただきたいと思います。
  39. 遠藤武彦

    遠藤委員長 丸田医薬安全局長、質問に明確に的確に答えなさい。
  40. 丸田和夫

    丸田政府参考人 昭和六十二年二月の第一症例報告につきましては、米国医療機関から米国CDCに報告がございまして、CDCの週報MMWRを通じて公表されました。  当時、米国ではライオデュラの輸入承認は行われておらず、カナダの企業を経由いたしまして医療機関が購入したものでありますが、そのような中でアメリカのFDAが行った措置は、昭和六十二年四月に、米国内の医療機関に対しまして、第一症例患者に用いられたロット番号二一〇五の製品関連する特定製品につきまして廃棄を勧告したものであります。これはライオデュラ全体を対象としたものではございません。  それから、六月には、ライオデュラの保管、販売に用いられた方法及び管理がGMPに適合していないことを理由にしまして輸入警告を発して、ドイツとカナダから輸入いたしましたライオデュラの出荷を引きとめるよう通関当局に要請したわけでございます。この際にも、既に国内に輸入されているライオデュラにつきましては、特段の追加的な廃棄勧告は行わなかったという内容のものでございます。
  41. 熊代昭彦

    熊代委員 ロット番号二一〇五ですか、特定のロット番号のものについて廃棄をということでありました。それから、輸入警告等をやったけれども国内の回収は行わなかったというような話でございます。  米国以外の諸外国は、日本も含めて、米国から何らかの連絡があったのではないか。それに対しまして、米国以外の諸外国及び日本はどのような対応を行ったのかということをお伺いしたいと思います。
  42. 丸田和夫

    丸田政府参考人 第一症例報告につきましてアメリカのFDAから連絡を受けましたカナダにおきましては、昭和六十二年五月に、それまでカナダにおきましては規制対象外でありましたライオデュラを、我が国の薬事法上の医療用具に対する規制に相当いたします市販前審査というものの対象として位置づけました。それから、医療機関に対しましては、二または三で始まります四けたのロット番号と、ロット番号のないライオデュラを使用すべきでない旨の警告を出したところでございます。  それから、同じくアメリカのFDAから連絡を受けましたイギリスにおきましては、医療機関に対して米国症例報告を伝達し、製造業者であるB・ブラウン社からの説明を聴取いたしましたが、クロイツフェルト・ヤコブ病原因因子を不活化するアルカリ処理工程を加えることにつきまして承認の一部変更というものを企業に要求いたしまして、平成元年二月に工程変更が承認されるまでの間、アルカリ処理をしていないライオデュラのみの販売を認めますとともに、米国FDAが廃棄勧告をいたしましたロット番号のライオデュラの回収も命じていないと承知しております。  それから、B・ブラウン社のあるドイツにおきましては、業者から説明を聞きまして、アルカリ処理工程の導入や、ドナーからのクロイツフェルト・ヤコブ病患者の方の排除等について確認はしたところでございますが、アメリカのFDAが廃棄勧告いたしましたロット番号のライオデュラやアルカリ処理していないライオデュラにつきましては回収を命じていないところでございます。  ノルウェーにつきましても、国内の医療機関に対しましてロット番号二一〇五のライオデュラの在庫確認を要請しまして、また、B・ブラウン社から説明を聴取いたしましたが、B・ブラウン社が安全な製品を製造するために講じた措置を評価しまして、アメリカのFDAが廃棄勧告しましたロット番号のライオデュラやアルカリ処理をしていないライオデュラの回収は命じていないと承知しております。  それで、日本におきましては、実はアメリカのFDAからこの二一〇五につきましては通告がなかったわけでございまして、具体的な措置はとるに至らなかったわけでございます。
  43. 熊代昭彦

    熊代委員 いろいろと事例を御説明いただきましたが、回収を命じていないということが印象に残りましたけれども、それはともかくとしまして、我が国には通告がなかったということでございます。なぜ通告がなかったかということをお伺いしたいと思います。
  44. 丸田和夫

    丸田政府参考人 米国FDAにおきましては、問題になった症例が二一〇五というロット番号のものでありまして、それにつきましては日本には入っていないということで通告がされなかったと承知しております。
  45. 熊代昭彦

    熊代委員 同じロット番号のものが日本にないので通告がなかったということでございますが、それにいたしましても、第一症例報告を受けて、我が国ヒト乾燥硬膜移植によりましてクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性を予見する、そして必要な対策を講ずることができなかったんだろうか。通告がないので全くわからないというのか、その他の何らかの方法でできなかったんだろうかという思いもいたしますが、これについてはいかがでございますか。
  46. 丸田和夫

    丸田政府参考人 第一症例報告が出されました当時におきましては、まだ原因因子感染メカニズムもわかっておりませず、症例報告が一例のみで疫学的評価も行えない状況でありまして、このような当時の医学、薬学的知見に基づきましては、ヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性を認識し得る状況になかったものと考えております。
  47. 熊代昭彦

    熊代委員 昭和六十三年、一九八八年二月、特定疾患対策懇談会評価調整部会において、遅発性ウイルス感染調査研究班の当時の立石班長が報告を行ったそのレジュメにおいて、保存脳硬膜の移植後にクロイツフェルト・ヤコブ病を発症した症例報告がある旨の記載がありますが、この記載によってヒト乾燥硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性を認識できたと考えていいのかどうか、これについてお伺いしたいと思います。
  48. 丸田和夫

    丸田政府参考人 御指摘の立石氏の報告レジュメにおきましては、保存脳硬膜の使用後に発症したCJD症例と書いてございます。これは、日本語版JAMA、通称ジャマと呼んでおりますが、ここで引用されましたアメリカのCDC週報の症例報告の存在に触れたものでありまして、当該症例について具体的な分析や評価が行われたものではなく、これによってヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性指摘したものとは言いがたいと考えております。
  49. 熊代昭彦

    熊代委員 それでは、その次の年ですが、平成元年、一九八九年一月の第二症例報告を受けて、諸外国はどのような対応を行ったのか、御回答いただきたいと思います。
  50. 丸田和夫

    丸田政府参考人 イギリスにおきましては、第二症例報告の直後におきまして、先ほど申し上げましたように、クロイツフェルト・ヤコブ病原因因子を不活化するアルカリ処理工程の追加につきまして承認変更を認可いたしました。その際に、ライオデュラの製造業者であるB・ブラウン社からアルカリ処理をしていないライオデュラを自主回収することが伝えられておりましたことから、回収状況報告するようにB・ブラウン社に要請したわけでございますが、その回収を義務づけてはおりません。なお、イギリスにおきましては、平成三年にライオデュラの認可を取り消しているという状況でございます。  それから、ドイツにおきましては、平成元年十二月に連邦保健庁命令を出しましてヒト乾燥硬膜の製造にアルカリ処理工程を義務づけましたが、その後におきましても、アルカリ処理をしていないライオデュラの回収は命じておりません。  ノルウェーにおきましては、B・ブラウン社に対しまして、第一症例報告を踏まえて実施いたしましたアルカリ処理工程の導入等以上の措置を要請しておりません。なお、ノルウェーにおきましては、平成三年十月にライオデュラの登録を抹消しているところでございます。  一方、B・ブラウン社につきましては、平成八年六月以降、原料の入手困難ということが理由でございますが、ライオデュラの製造を中止しているところでございます。
  51. 熊代昭彦

    熊代委員 それでは、諸外国はともかくとしまして、我が国で第二症例報告を受けた段階でヒト乾燥硬膜移植によるヤコブ病感染危険性を予見して必要な対策を講じることはできなかったのかどうか、これについて御回答いただきたい。
  52. 丸田和夫

    丸田政府参考人 米国の第一症例報告やFDAの対応状況を早い時点で認識しておりましたイギリスやドイツなどにおいても、第二症例報告が出た段階におきましてもその対応は異なるものでございました。しかも、規制当局として製品の回収を義務づけるものではありませんでした。  それで、我が国におきましては、第二症例報告の後も、ヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性に関して遅発性ウイルス感染調査研究班では研究はされておらず、また、専門家からの具体的な警告や提言もなかったことから、厚生省といたしましては、ヒト乾燥硬膜の安全性を検討するには至らなかったところでございます。
  53. 熊代昭彦

    熊代委員 いろいろと時系列的にお伺いをして事実を確かめてきたわけでございますが、それでは結論的に言いまして、我が国ライオデュラの使用に伴うヤコブ病感染問題についてどの時点で認識し、その認識した時点でどのような対応を行ったのか、お伺いしたいと思います。
  54. 丸田和夫

    丸田政府参考人 我が国では、平成八年春に、イギリスの狂牛病問題をきっかけに、新変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病患者の把握を主たる目的としまして、クロイツフェルト・ヤコブ病患者等に関する緊急全国調査を行いました。この際に他の調査項目とあわせまして硬膜の移植歴の有無を調べましたところ、ヒト乾燥硬膜移植を受けた患者が相当数いることが確認されたことからも、両者内で疫学的な意味での関係が認識されるに至ったところでございます。  このため、厚生省では、同年六月と八月に中央薬事審議会におきましてヒト乾燥硬膜の安全性について検討を行いました。その際、製造業者が既に導入していた水酸化ナトリウムによる洗浄工程を経た製品につきましては、クロイツフェルト・ヤコブ病原因因子とされるプリオンが不活化されているために臨床的には安全との評価を得たところでございます。  これを受けまして、厚生省では、輸入販売業者や都道府県を通じまして、アルカリ処理を行っていない製品の在庫がないか確認するなど、万全の措置を講じてきたところでございます。  しかしながら、平成九年の三月にWHOがヒト乾燥硬膜の使用停止を勧告したことを重く受けとめまして、翌二十八日付で回収命令を発しまして、アルカリ処理工程を経た製品も含めまして、我が国ではヒト乾燥硬膜全体の使用を行わないようにしたものでございます。
  55. 熊代昭彦

    熊代委員 それでは、最後に総括的に総括政務次官にお願いしたいと思います。  これまでの薬害とか医療用具の害を経験して、国はどのように安全対策に生かしてきたのか。それから、いろいろお伺いしましたけれども、やはり厚生省ヤコブ病に関する情報収集体制というのは問題があるんじゃないか、改善すべきではないか。それから、ヤコブ病全般に対する御所感、そしてまた、これからヒトに由来する医療用具医薬品に起因する健康被害について救済の仕組みを検討すべきではないのか、こういうことについて最後に総括政務次官にお伺いしたいと思います。
  56. 福島豊

    福島政務次官 過去にサリドマイド、スモン、HIVの各事件があったわけでございます。こうした反省を踏まえまして、これまで薬事法規制の強化を図りながら、承認審査体制や市販後安全対策の充実など、医薬品による健康被害の再発防止のための取り組みを順次行ってまいりました。  具体的に申し上げますと、昭和五十四年、これはサリドマイド事件、スモン事件というものを踏まえまして薬事法の改正を行いました。その中で、医薬品の再審査、再評価制度の法制化、そしてまた緊急の場合の緊急命令、回収命令を発することができる規定の整備を行いました。また、医薬品の副作用による健康被害の迅速な救済を図る必要がございましたので、医薬品副作用被害救済制度をこの時点創設をいたしました。  次の山は平成八年でございますけれども、ソリブジンによる副作用問題や血液製剤によるHIV感染問題の反省の上に立ちまして、薬事法を大幅に改正をいたしました。この中では、薬物にかかわる治験につきまして、GCP、グッド・クリニカル・プラクティスでございますけれども、法制化をいたしました。  そしてまた、厚生大臣に対しまして副作用・感染報告医薬品製造業者に義務づけました。また、緊急に使用されることが必要な医薬品の迅速な供給を図るために承認前特例許可制度創設いたしました。  そして、情報収集体制につきましてもさらに強化を図る必要があるということから、平成九年以降、医療機関、薬局、諸外国からの副作用・感染症等の安全性情報の収集体制を強化いたしましたし、厚生省の中でもそうした情報の共有化が必要であるという観点から健康危機管理体制の整備を進めたところでございます。同時点では、承認審査につきましてもさらに強化をする必要があるということから、医薬品医療機器審査センターを創設し、審査官の強化が図られております。  これからも、このプリオンということも過去には全く想像のできなかったことでございまして、新たな事態が出現するということは十分にある、その新たな未知の事態に対応するための体制というものをきちっとつくっていかなきゃいかぬと思います。そしてまた、人間のつくった組織でございますから一〇〇%ということはあり得ない、不断の見直しというものを進めていく必要があるとも考えております。  そしてまた、委員の御質問の救済の制度ということでございます。  救済の制度ということについてでございますけれども医療用具医薬品に起因する健康被害につきましては、先ほど医薬品副作用被害救済制度があると言いましたけれども、こうしたヒトに由来する臓器製品といいますか、近年でございますと細胞を培養してそれを製品化するという一つの流れもあるわけでございます、そういうことも視野に入れて考えていく必要があるというふうに考えております。  まずは規制でございますけれども、昨年の四月以来、中央薬事審議会のバイオテクノロジー特別部会におきまして、こうした製品に対しての規制のあり方というものについて検討をいたしております。  そしてまた、このような規制を行った上でもなおかつ未知の病原体ということもあり得るわけでございますので、感染等により生じる健康被害については、通常の感染による健康被害とは異なって、企業に法的責任を一元的に問うことが困難な場合もあるだろうというふうに想像されるところから、今後、医薬品医療用具共通の問題として健康被害への対応のあり方について検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  57. 熊代昭彦

    熊代委員 質問時間が終わりましたので、これで終わらせていただきますが、総括政務次官の大活躍をいただきまして、厚生大臣はただいまお着きになりましたけれども、ぜひ政治主導でこの薬害問題、医療用具による被害問題、そして医薬品の安全問題に大いに御努力いただきますようにお願いしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  58. 遠藤武彦

    遠藤委員長 続いて、江田康幸君。
  59. 江田康幸

    ○江田委員 公明党の江田でございます。  ヒト乾燥硬膜による医原性のクロイツフェルト・ヤコブ病問題につきましては、以前より本委員会で討議が行われてまいりました。それらの議事録を踏まえた上で、私は、少々専門的になるかもしれませんが、また先ほどの熊代先生とダブるところもあるかもしれませんが、事実関係を順を追って整理させていただきまして、その危険性厚生省がどのように認識され、それに対処されたのか、さらに患者支援策をどのようにとられようとされているかについて質問させていただきます。  まず、第一症例報告される八七年以前におきまして、この乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性がどのように認識されていたかについてお聞きさせていただきます。  第一ですが、クロイツフェルト・ヤコブ病原因としましては、原因不明の孤発性、遺伝子に異常がある家族性、そして外部から原因因子が侵入する感染性三つがあります。この中で、感染性としてはどのような症例が知られていたのか、お答え願います。
  60. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 お答えいたします。  感染性症例報告のうちで、これは全体の一%ぐらいと言われておるところでございますが、そのうちの医原性感染につきましては、ヒト乾燥硬膜移植によるもの以前には、角膜移植、それから脳内電極挿入、これは検査あるいは治療のために脳の中に電極を差し込むものでございますが、脳内電極挿入、そして手術器具による感染例及びヒト成長ホルモン製剤による感染例が報告されているところでございます。
  61. 江田康幸

    ○江田委員 では、これらの感染性症例報告では、ドナーがCJD患者であることなど、感染媒体として疑われたものとクロイツフェルト・ヤコブ病患者との関係は明らかであったか、お答え願います。
  62. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 具体的に申しますと、角膜移植に関しましては、そのドナーがクロイツフェルト・ヤコブ病患者さんでありました。それから、脳内電極挿入あるいは手術器具を介して感染した症例に関しましては、クロイツフェルト・ヤコブ病患者さんに使用されたものを使っていたということが確認されております。しかしながら、いずれも、この一例あるいは二例のみの症例報告でございますので、先ほど先生が御紹介をされました孤発例の可能性も否定できないということでございます。  一方、ヒト成長ホルモン製剤に関しましては、原料である脳下垂体のドナーがクロイツフェルト・ヤコブ病患者であったかどうかは不明でございますが、短期間に同様の症例が多数報告されたことで初めて疫学的に感染媒体としての可能性が浮上してきたものというふうに理解をいたしております。
  63. 江田康幸

    ○江田委員 今おっしゃられましたヒト成長ホルモン製剤については疫学的な評価により感染媒体として浮上したということでございますが、ヒト乾燥硬膜について同様な評価は可能であったのでしょうか、政務次官、お願いします。
  64. 福島豊

    福島政務次官 ただいまも参考人から御説明ございましたけれども、ヒト成長ホルモン製剤につきましては、短期間に同様の症例報告が多数把握されたこと。そしてまた、ヒト成長ホルモン製剤は、これは脳組織の一部でございます脳下垂体を原料として製造されるものでありますけれどもクロイツフェルト・ヤコブ病患者さんの脳組織自体が感染性を持つということは当時も知られておりました。この二つの事実を踏まえて、ヒト成長ホルモン製剤というものが感染媒体となっているということが浮上した、そのように考えることができると思います。  しかしながら、ヒト乾燥硬膜につきましてはどうかといいますと、まず、そもそもヒト乾燥硬膜によって感染が起こったということを示唆するような事例は、この時点ではございませんでした。そしてまた、硬膜自体は脳組織とは異なります別の組織でございますから、そういう意味でも、ヒト成長ホルモン製剤と同様のとらえ方をすることはできなかったと考えております。
  65. 江田康幸

    ○江田委員 今、ヒト成長ホルモンまではその危険性が認識されていたということですが、ヒト乾燥硬膜についてはその危険性は認識できなかったということが答えられたかと思います。  当時、八七年の段階で、八七年以前に動物実験等での研究が多く進められていたのは私もよく知っております、この多くの研究報告があった中で患者組織感染性等についてどのように認識されていたか、それについてさらにお伺いさせていただきます。  まず、硬膜は先ほどもおっしゃられましたように脳組織ではございませんが、角膜移植症例報告もあって、また、遅発性ウイルス感染調査研究班でも、動物実験によりクロイツフェルト・ヤコブ病感染性脳組織以外の臓器に認められるとした実験結果が報告されております。これからヒト乾燥硬膜危険性を認識することができたと思うのですが、それに関してはいかがでしょうか。
  66. 福島豊

    福島政務次官 まず、角膜移植による症例報告の件でございますが、これは、現時点でも孤発例なのかどうなのか判断ができないというのが今の考え方だと思います。そしてまた、研究班におきまして、動物実験で脳組織以外の臓器にもその感染性が認められる、それが確認をされたという報告がございますけれども、この実験につきましてはその再現性が確認をされておりません。再現性が確認をされておりますのは脳組織だけでございます。  ということを踏まえますと、ヒト乾燥硬膜危険性というものを当然に認識ができたとは言いがたいのではないかと考えております。
  67. 江田康幸

    ○江田委員 硬膜の予測は難しかったという答弁でございます。  では、硬膜は脳組織ではありませんが、例えば硬膜を取り出すときにはほとんどの場合が脳組織と接触してしまうかと思います。脳組織と接触すれば、その汚染の可能性があったということを普通は考えるべきでございますが、このようなことを予測することはできなかったのでしょうか。また、それに対して必要な対策をとることはできなかったのかについてお答え願いたいと思います。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  68. 福島豊

    福島政務次官 現在のヒト乾燥硬膜クロイツフェルト・ヤコブ病の伝染媒体となるということが非常に明らかになった時点で考えますと、そういう判断も当然出てくるというふうに思いますけれども、しかしながら、ライオデュラが承認された昭和四十八年の当時におきましては、プリオン仮説というのも提唱されておりませんでしたし、さまざまな症例からクロイツフェルト・ヤコブ病がそれによって伝播するおそれがあるということの知見も全くなかったということが言えると思います。  そしてまた、研究班の研究におきましても、ヒト成長ホルモン、B型肝炎のワクチンについてクロイツフェルト・ヤコブ病感染性があるのかということが検討されておりますけれどもヒト乾燥硬膜につきましては全くこのような検討はなされておりません。  そしてまた、諸外国の規制当局におきましても、ヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性というものを前提とした対策もその当時において講じられていないというように私は承知をいたしております。
  69. 江田康幸

    ○江田委員 さらに続けますが、遅発性ウイルス感染調査研究班でも、クロイツフェルト・ヤコブ病の病原体が通常の滅菌方法では不活化されないという報告がなされておりました。このような知見に基づいて、放射線滅菌を用いていたヒト乾燥硬膜ライオデュラの安全性には疑問を持つということはなかったのでしょうか、御答弁をお願いします。
  70. 福島豊

    福島政務次官 私も調査研究班の報告書等は拝見をいたしました。そして、クロイツフェルト・ヤコブ病の病原体が通常の滅菌法では不活化をされないという報告がなされているということも承知をいたしております。  しかしながら、そのことと、ヒト乾燥硬膜の処理、そしてまた安全性ということについて、当時これを結びつけて考える考え方があったかどうかということが問題だというふうに私は思っております。研究班の中でも、クロイツフェルト・ヤコブ病の病原体をどのように滅菌をすればいいかということについて検討はなされておりましたけれども、しかしながらヒト乾燥硬膜についていかにやるべきかという検討は全くなされておらなかったと私は承知いたしております。  ですから、単に原因因子が不活化困難という知見が得られていたということでこのライオデュラの安全性を見直すことに直ちにつながるような認識が当時においてあったかと言われると、それはなかなか難しかったのではないかと思っておりますし、諸外国の規制当局も同様な対応であったというように承知をいたしております。
  71. 江田康幸

    ○江田委員 以上の答弁では、第一症例以前において世界的にもその危険性を予見するまたはそれに対して対応することはできなかったのではないかという厚生省の見解でございますが、では、その症例報告が行われてからはどうだったのか。  例えば、八七年にアメリカで硬膜感染による第一症例報告されました。その第一症例報告の評価とその後の症例の評価によって厚生省がどのように認識されていたのかを幾つか質問させていただきます。  まず、昭和六十二年、八七年二月六日のMMWRに掲載されたヒト乾燥硬膜ライオデュラの使用後にクロイツフェルト・ヤコブ病を発症した第一症例報告は、どのような分析によってライオデュラ感染媒体として示唆されると評価したのでしょうか、それについてお答えいただきたいと思います。
  72. 丸田和夫

    丸田政府参考人 お答えいたします。  クロイツフェルト・ヤコブ病につきましては、百万人に一人の割合で発生する病気であるということであります。冒頭先生がお話しされましたように、その中で孤発性というものが約九割弱ということであります。一割強が遺伝子異常の家族性と言われるものでございます。一%程度が感染性である、こういうことでございます。  それで、第一症例につきましては、まず、患者の方が若年であったということから孤発性は否定されたということでございます。それから、患者家族に変性神経病の病歴の方がいないということから家族性は否定されたということでございます。そのため感染性であることが疑われたわけでございますが、患者の方が過去にヒト成長ホルモン製剤の投与を受けたことがないということ、それから、患者手術の三カ月前までに同じ脳外科手術室で手術を受けたクロイツフェルト・ヤコブ病患者がいなかったというように、既知の感染性の要因が見当たらなかったということから、いわば消去法的な手法によりまして、患者の既往歴であったヒト乾燥硬膜移植クロイツフェルト・ヤコブ病感染媒体ではないかと示唆されるという表現でございますが、そういうものであるということでございます。
  73. 江田康幸

    ○江田委員 今申されましたように、第一症例というのは、消去法でそれが乾燥硬膜による感染ではないかというのが示唆されたということがMMWRに報告された判断であるということでございますが、では、アメリカのCDC並びにFDAは、第一症例報告につきましてライオデュラ感染媒体であるということを確認できていたのかについて、再度お願いいたします。
  74. 丸田和夫

    丸田政府参考人 第一症例報告につきまして、ヒト乾燥硬膜移植クロイツフェルト・ヤコブ病の発症の原因として示唆される、こう書いてあるわけです。そこで、米国におきましては、ドナーを追跡するために、ライオデュラの製造業者でありますB・ブラウン社にドナーの照会をいたしました。また、同様の症例を収集するために、FDAが第一症例と同一のロット番号二一〇五のライオデュラが輸出されましたノルウェー、イタリア、オランダ、カナダ、それに台湾の五カ国に連絡し、またCDCが週報のMMWRに第一症例報告を掲載いたしまして、ヒト乾燥硬膜移植を受けたクロイツフェルト・ヤコブ病患者症例報告をアメリカ国内の医療機関に呼びかけたというふうに承知しております。  しかしながら、B・ブラウン社におきましては、ドナーを確認する記録を保持していなかったため、ドナーがクロイツフェルト・ヤコブ病患者であったかどうか確認できなかった。また、同様の症例報告につきましては、平成元年、一九八九年でございますが、一月の第二症例報告までは確認することができなかったというものでありまして、ライオデュラ感染媒体であることは確認できなかったものと承知しております。
  75. 江田康幸

    ○江田委員 一九八九年に第二症例報告されております。それから、その年の終わりに第三症例がさらに報告されてきております。これらの報告を受けて諸外国ではどのような対応を行っていたのか。これは先ほどの熊代先生の御質問とも重なりますが、再度、順を追って、厚生省の考えをお願いいたします。
  76. 丸田和夫

    丸田政府参考人 英国におきましては、第二症例報告の直後に、クロイツフェルト・ヤコブ病原因因子を不活化するアルカリ処理工程の追加に係る一部承認変更を認可いたしました。しかし、その際に、ライオデュラの製造業者であるB・ブラウン社から、アルカリ処理をしていないライオデュラを自主回収することが伝えられておりましたことから、回収状況報告するようB・ブラウン社に対しまして要請はいたしましたが、その回収を義務づけてはいない状況でございます。  なお、英国におきましては、平成三年八月にライオデュラの認可を取り消しているという状況でございます。  それから、ドイツにおきましては、平成元年十二月に、連邦保健庁命令を出しまして、ヒト乾燥硬膜の製造にアルカリ処理工程を義務づけたところでございますが、その後におきましても、アルカリ処理をしていないライオデュラの回収を命じていないと承知しております。  ノルウェーにおきましては、B・ブラウン社に対しまして、第一症例報告を踏まえて実施いたしましたアルカリ処理工程の導入以上の措置を要請しておりません。  なお、ノルウェーにおきましては、平成三年十月にライオデュラの登録を抹消しているところでございます。
  77. 江田康幸

    ○江田委員 先ほどの答弁と一緒であるかと思いますが、このような各国の対応を見た上で、我が国が、当時、ヒト乾燥硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性を予見して必要な対策を講じることができたのかどうか、それについてもう一度お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  78. 丸田和夫

    丸田政府参考人 アメリカの第一症例報告やFDAの対応状況を早い時点で認識しておりましたイギリスやドイツなどにおいても、第二症例報告が出た段階においてもその後の対応はいろいろと異なっております。しかも、規制当局として製品の回収を義務づけているというものではありませんでした。  我が国におきましては、第二症例報告後におきましても、ヒト乾燥硬膜によりますクロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性に関しまして、遅発性ウイルス感染調査研究班では研究されず、専門家からの具体的な警告や提言もなかったという状況でございまして、厚生省としてはヒト乾燥硬膜の安全性を検討するには至らなかったところでございます。
  79. 江田康幸

    ○江田委員 私は、第二症例、第三症例が出てきた段階では気づくべきだったし、また、厚生省に限らず、世界的にもそれは気づく方向に行っていたと個人的には思っております。  再度、これは一番私が聞きたいことですけれども症例報告が一例であった八七年の第一症例の段階では、それは世界的に一症例であって、その症例から硬膜が感染の危険があるということを断定することは確かにできなかったと言われても仕方がないかもしれませんが、八九年に第二症例が出ています。それから第三症例が出て、そして、九一年にはついに我が国の第四症例報告されてきております。症例数がこのように積み重なっていけば、これはデータが重なってくるということでございますので、厚生省もこの問題に気づいて適切な対応をとるべきではなかったかと私は思います。それについてお答え願いたい。  また、それは九五年の研究報告で初めて記載されてその危険性を認識したというのでは、僕は余りにも遅過ぎたと思いますし、ずさんと言えばずさんな対応であったかと思います。このような場合の情報収集体制の点で反省すべき点はなかったか、あわせて御答弁をお願いしたい。よろしくお願いします。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  80. 福島豊

    福島政務次官 情報収集体制というのは、これで一〇〇%ということはなかなかないわけでございまして、厚生省としても、その充実というものに向けて逐次改善に取り組んできております。  先ほども説明させていただきましたけれども医薬品の副作用の報告、これは感染症についての報告というものがなされておりませんでしたけれども平成九年の四月からは感染症の報告もなされるように義務づけられましたし、すべての医療機関また薬局、たくさんございますけれども、そこからの情報収集を厚生省が直接受ける制度医薬品等安全性情報報告制度整備等もいたしました。そしてまた、感染症情報を集約する拠点となる感染症情報センターの設置も行いました。こういうように改善はしてきておる。  ただいまの委員の御指摘でございますけれども、第二症例報告された後に厚生省が直ちに反応すべきであったのではないかということでございますけれども、この間の経緯を具体的にもう少し申し上げますと、八九年の三月に、B・ブラウン社はアルカリ未処理のライオデュラの自主回収というものをいたしております。しかしながら、この時点厚生省に対して報告は全くなされておりません。  世界的に認識する方向であったという御指摘でございますけれども、イギリスにしましても、ノルウェーにしましても、カナダ、アメリカ等にしましても、そしてドイツ、これは本国でございますけれども、それぞれの国におきましては、CDCの第一報、そしてまたFDAの警告以来、ライオデュラに対しての一定の認識の基盤があった、私はそのように思います。  しかしながら、こうした諸外国の当局におきましても、第二症例報告された後におきましても、ライオデュラのアルカリ未処理製品について回収をするというような対応がなされていない、この点は注目をすべき事実ではないかというふうに私は思っております。  そして、先ほども先生御指摘がございましたように、特定疾患の研究班におきましても、具体的に硬膜移植後のCJDの記載が行われましたのもこの八九年から何年かたってからのことでございました。そういう意味では、世界的に非常に認識があったんだという御指摘でございますけれども、こうした一つ一つの事実を踏まえる限り、そのように断定することができるのだろうかという思いがいたしております。
  81. 江田康幸

    ○江田委員 福島政務次官はそう申されますが、確かに、八七年の第一症例の段階では、アメリカがとった廃棄勧告以外に明確な感染に対する対応がなされていなかったのが各国の状況ではあったとも思います。それに対して、日本はそういう対応をとれなかった。そしてまた、第二症例後の対応も、各国ともと申されましたが、日本は当然のことながらとれなかった。これは、いわば厚生省厚生省のそういう危機管理意識のなさをみずから言われているようなことでございまして、ほかの国がどうであろうとそういう体制をつくるべきかと思います。  八九年四月に「病原微生物検出情報」に第二症例報告されております。我が国の「病原微生物検出情報」でございます。そういう報告は一方ではあったわけで、それに対して気づかないシステムがそこにあるというのが問題ではないかなと私は今までの答弁を聞いて思います。  それで、時間がございませんのでさらに進めますが、このように厚生省危険性を予知できなかったというのは非常に残念でございます。しかし、今後におきましては、少なくとも情報収集体制とその早期の対応についてアメリカCDC並みのシステムを構築され、実施されることをぜひ約束していただきたいと思います。  最後の部分になりますけれども、これも大事なところで、お聞きいたします。このクロイツフェルト・ヤコブ病感染して大変な苦痛を強いられております患者さんたちがいっぱいいらっしゃいます。その手記も読ませていただきました。その患者家族支援について、厚生省のお考えをお聞きしたいと思っております。  まず、クロイツフェルト・ヤコブ病患者さん、家族の皆さんに対する支援策をどのように考えられておりますでしょうか、お答え願います。
  82. 福島豊

    福島政務次官 確かに委員指摘のように、クロイツフェルト・ヤコブ病は大変重篤な病気でございまして、御家族の方の御苦労というものも大変なものと私も存じております。現在厚生省医療、介護、福祉のさまざまな制度がございますけれども、その制度の中でできる限りの対応を行っていきたいと考えております。  具体的に申し上げますと、平成九年一月からは、特定疾患治療研究事業対象疾患に指定をいたしまして、医療費自己負担分全額公費負担をいたしました。そしてまた、難病患者居宅生活支援事業によりまして、ホームヘルパーの派遣、短期入所日常生活用具の給付など、福祉面での対応をさせていただいております。さらに、難病特別対策推進事業によりまして、在宅での療養支援するという観点から、在宅療養支援計画の策定、訪問相談事業等を行っております。  医療体制整備につきましても、平成十年度より、重症難病患者入院施設確保事業というものを創設いたしまして、入院治療が必要な患者さんに対しまして適時適切な入院施設の確保が行えるように、都道府県ごと難病医療体制整備を開始いたしました。  そしてまた、先ほど申しましたが、診療報酬におきましても、長期の診療、療養を必要とするという観点から、入院日数による逓減のない入院料創設というものも行いました。  そして、現在、現実に一般の医師等ではなかなか診断が難しいという観点もございますので、専門医が一般の医師の皆様支援するような枠組みをつくるべく検討を進めている途中でございます。
  83. 江田康幸

    ○江田委員 そのような難病対策の延長ということで徹底した対策をとられているという御答弁でございますが、現場では多少違うようなところもあるかと思いますので、いろいろ聞かせていただきたいんです。  クロイツフェルト・ヤコブ病患者さんが医療現場で差別されて、たらい回しをされているような話を多く伺います。厚生省は、クロイツフェルト・ヤコブ病患者さんを受け入れる医療機関をきちんと確保していくべきではないでしょうか、これについてもお答え願います。
  84. 福島豊

    福島政務次官 今委員が御指摘になられました事柄の背景としまして、一つは、クロイツフェルト・ヤコブ病というのが百万人に一人という極めてまれな疾患でありまして、医療現場でもその診断に苦慮する。そしてまた、原因が不明で治療方法が存在をしない。さらには、大変な難病であるということは知られておりますけれども、日常生活では感染のおそれはないんだということについて十分な周知がなされていないというようなところに背景があるんだと思います。  ですから、大切なことは、先ほど申しましたように、各都道府県ごとに、適切な入院施設の確保が行えるような対応をするという意味で、重症難病患者入院施設確保事業というものをきちっと行いまして、その中でクロイツフェルト・ヤコブ病患者さん方も適切に入院をしていただくような体制を進めるということが一つは必要だと思っておりますし、これはさらに進めていきたい。  もう一つは、その背景にありますようになかなか診断が困難で誤解も多々あるということから、一般の医療現場に対して専門医からの支援の体制というものをつくっていくことが必要だ。そして、理解を深めていただいて、適切に対応を進めていただくということが必要だというふうに私は思っております。そういう意味で、来年度に向けまして、専門医が一般の医療現場を支援する体制というものをつくるための検討を精力的に進めていきたいと考えております。
  85. 江田康幸

    ○江田委員 今言われましたように体制は整えられているということなんですが、現実には、もう一つ入院をされても、それが不治の病、治療法がないということで、最終的には追い出されていわゆる在宅看護になっている現状がございます。こういうところについても、先ほどの具体的な例ではどういう具体的な例として挙げられるのでしょうか、よろしくお願いします。
  86. 福島豊

    福島政務次官 在宅で過ごされる場合につきましても、先ほども申しましたように、適切な支援の体制が必要であろうというふうに思いますので、福祉面での難病患者居宅生活支援事業の活用、難病特別対策推進事業の活用によります療養支援をきちっと行っていくことが必要だと思っています。  同時に、医療施設での療養の推進ということで国の担うべき役割も極めて大きいと思っております。  国立病院が全国にはたくさんございますけれども、国立精神・神経センターを中心として、国立病院のネットワークの中で難治性神経疾患医療を推進しているという事実がございます。そしてまた、患者さんの症状に応じまして受け入れ可能な施設、これは病床のあきがないといけませんので、クロイツフェルト・ヤコブ病患者さんの入院治療というものも進めているというふうに考えております。  こうした包括的な施策というものを進めていく必要がある。これ一つでこうなりますというふうにはなかなかいきませんけれども、さまざまな施策を活用して、できる限り患者さん、御家族皆様の御希望に沿うような医療の提供がなされるように努めてまいりたいと思っております。  そしてまた、治療法がないということでございますけれども、発症といいますか経過をおくらせるためには何かできないかとか、そういう研究も進める必要があると私は思っております。研究班でも研究が継続して進められておりますので、その先生方にできるだけ患者さんに福音をもたらすような成果を得ていただくべく、我々も支援をさせていただきたいと思っております。
  87. 江田康幸

    ○江田委員 今の御答弁にもありましたように、厚生省はCJD患者さん、御家族に対して医療的な支援を全力で行うということでございますが、先ほども種々確認させていただきましたように、症例が積み重なっても危険性を認識できずに結果として硬膜による感染を許してしまった。その責任という上からも、患者さん、家族への支援、補償というものについては手厚くお願いしたいと思います。  また、厚生省は、先ほど申しましたように、東京と現場というのは多少違っているということをよくよく考えていただきまして、正確に現状を把握していただいて、その対応を、また、患者さん、家族負担が少しでも軽くなるように手厚い保護をよろしくお願いしたいと思います。  最後に、最初に大臣がいらっしゃいませんでしたので政務次官の御答弁ということになりましたが、総括的に御意見をいただきたいんですが、医原性のクロイツフェルト・ヤコブ病問題に対する厚生大臣の見解をお聞かせ願いたいと思います。
  88. 津島雄二

    ○津島国務大臣 最初に委員会皆様方におわびでありますが、臨時閣議が長引きまして、江田委員の御質問まで参加できなかったことを申しわけないと思っております。  そこで、CJDという非常に重篤な病にかかられた方の問題でございますけれども、大変に重い病気であり、またこれに対する療法もまだ確立されていないということで、患者さん、そして御家族の方々のお気持ちはいかがなことかと本当に想像に余るものがございます。  私どもとしては、患者、御家族の御負担を少しでも軽減できるように、先ほどから総括政務次官から御答弁をいたしましたような医療費の自己負担の公費負担であるとか訪問介護員の派遣等の支援を行ってまいりましたが、今後におきましても、行政の可能な範囲内で何ができるか、これを絶えず真剣に検討してまいりたいと思います。そういう意味で、委員を初め皆様方から患者さん方の抱えておられる問題の御指摘は、私どもも真剣に受けとめさせていただきたいと思います。  それから、問題は医薬品医療用具の安全対策でございますけれども、基本的には、もう既に御答弁があったと思いますけれども、この乾燥硬膜ライオデュラがなぜこれほど広く日本でまた世界で使用されたかということは、もう御承知のとおり、これが使用されるまでにおいては、患者さんの手術の部位を守るために、その患者さんの大腿筋を取り出してそれで補うというような大変に負担の重いことをしなければならなかった。そういう中でこれが利用されるようになって、これまでに恐らく日本では四十万件から五十万件の方がこの乾燥硬膜の処方で裨益をしてきたことも事実でございます。  しかし、その中で残念ながら七十二というCJDの事例が出てきた。出てきたときに、できるだけ、これは日本ばかりでなくて世界の専門家が情報を収集し、これを分かち合って早く事態を改善する、悪化を防ぐということが必要なことでございまして、このことにつき、すなわち情報収集体制の改善についてはこれまでもやってまいりましたが、これからもさらに努力をしてまいりたい。委員の御指摘のとおりでございます。  最後に一言つけ加えますが、しからばこのライオデュラによるCJDの発症についての法的責任いかんということになりますと、これは、法律に照らし客観的な事実をしっかりと把握した上で、法律的な判断をしなければならないと私は思っております。  その法的責任の前提としては、一体これほど広く行われている乾燥硬膜の利用がCJDにつながる危険性というものについて予見があったのかどうかということにつき、けさから御議論がございましたように、当時においては持ち得なかった。その後幾つかの症例が出てまいりまして、一九九三年ごろにプリオンではないであろうかという仮説がだんだんと確立をしてきて、ちょうどそのころ、ゴアテックスという乾燥硬膜にかわる人工的な代替品ができてきて、厚生省はそれに切りかえさせたというのが事実関係でございます。そういう点から申しますと、当時は予見することは不可能であったと私は考えておりますが、今、裁判所判断を求めておりますので、最終的には裁判所判断を待ちたいと思っておるところでございます。  以上でございます。
  89. 江田康幸

    ○江田委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  90. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、小池百合子さん。
  91. 小池百合子

    ○小池委員 保守党の小池百合子でございます。  まず、ヤコブ病感染によりまして命を落とされた方々、御遺族、そして今危険と不安にさらされている方々に対しまして、心からのお見舞いを申し上げたいと存じます。  今、厚生大臣の方からこの問題についての総括的な御所見を伺いました。最後の部分に、予見が可能だったのか否かということについては不可能であったというふうなお話がございました。  しかし、厚生省という国民の健康と命の安全を守る側が、ただ予見は不可能だったということで済ませてしまうならば、一体何のための厚生省なのか。また、今回の問題でも、いろいろな科学者、それぞれの分野の方々がそれぞれ研究なさっているにもかかわらず、先ほどから情報の問題もございますが、それがうまく回っていないということで、結局そこで被害者が出てくる。その被害者の命は一体何なんだという話がここのとどのつまりかと考えているところでございます。  今、大臣のところで、一つ大きな部分で抜け落ちているなと思いましたのは、予見が不可能であったと。であるならば、今厚生省として問題点は一体何なんだ、どの点を分析してどこに問題があったのかということを認識しておられるのか、伺いたいと思います。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  92. 津島雄二

    ○津島国務大臣 大変に要点に触れた御質問であると思います。  まず最初に申し上げなきゃならないのは、新しい医学の処置とか療法とか、あるいは薬とかが開発をされてまいりますときに、常に何らかのリスクがあるわけですね。最初にそれが利用され始めたときにどういう問題が出てくるかというのは、人間というのは残念ながら完全にわからない。わからないので、恐らく小池委員の御指摘は、まず問題が出てきたときにできるだけ早く情報を収集して対策を講じろということが含意として含まれていると思うのですが、私はそのとおりであると思います。  今までもいろいろな過去の薬害等々で、国民もまた厚生省も苦い思いをした。その点についての情報収集体制の充実はこれからも充実をしていきたいということで、かつてのHIV事件の反省も踏まえまして、平成九年四月に感染報告医薬品製造業者に義務づけるとか、七月にはその感染症情報の報告をすべての医療機関及び薬局から直接受ける制度であるとか、それから三月に感染症情報センターの設置をするとか、こういうことをやってまいりましたし、健康危機管理実施要領の制定等も行ってまいりました。また、やはり国際的に情報の交換が必要であるということで、WHOの医薬品副作用モニタリング制度を通じて諸外国当局との安全性情報の随時交換ということもやっておりますが、こういうことについては絶えず改善を図っていかなければならないと思います。  それを申し上げた上で、実は、さらなるリスクというのは必ず生ずる。わからなかったことがある、それは日本ばかりでなくて世界じゅうの人がわからなかった。恐らく今のCJDの問題はその範疇の話であると私は思っておるのでありますが、その場合にどうするかということについて、これまでいろいろな対策を講じてきて、医療費については公費負担にするというところまで来てはおりますけれども、さらに重篤な難病の患者さんに対して、厚生省の行政の範囲内でこれで十分かどうかということを我々は常に自問しながら、改善すべきものがあったら改善をしていかなければならない、こういうふうに思っておるわけであります。
  93. 小池百合子

    ○小池委員 ただいまの大臣の御答弁は、ほとんどのことがこれから改善をするということ、もしくはこれまで改善を図ってきたところについての御報告であったと存じます。やはりこの問題は、いつの時点で何を知り得て、何が伝わって何が伝わらなかったのかということを明確にあぶり出すことによって、それを踏まえて本当の意味の改善策が出てくるのではないかと思うわけでございます。今も、医療、科学の進歩は大変速いというお話でございました。どんどん新しい処方が出てくる。それに対して、プラスもあるけれどもマイナスの点もあるということで、これはよくわかります。  先ほど大臣のお言葉の中に、世界じゅうがわからなかったということでございますが、これまでの御質問者の中でも既に幾つか御指摘がございましたけれども、世界じゅうで、わからなかった国もあるし、アメリカのように既に八七年の段階で廃棄勧告を出している国もある。またそれが医学の専門誌に載せられて、そして厚生省の中にもその雑誌はあったということ。このあたりが、それを察知する感度、もしくは責任感というのでしょうか、ここがむしろ問われてきている。また、そういった情報をどのように分析し、だれが責任を持ってそれを翻訳していくのかというような、そのあたりのシステムの問題。責任の所在とシステムの問題、これは二つセットだと思っているわけでございます。  例えば、国内でも国外からでも結構です、専門家による黄信号、赤信号が、科学的な知見がうまく伝わるシステムがこれまで本当にあったのかどうなのか。そしてまた、そういった研究者が認識した危険情報について、これまで厚生省にちゃんと伝えられる仕組みがあったのかどうか。これまでの繰り返される薬害のその後の流れを見ておりますと、私は、残念ながら、その仕組みがいつもその場しのぎに終わっているのではないかと思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  94. 福島豊

    福島政務次官 私も今回のクロイツフェルト・ヤコブ病の問題でさまざまな勉強をさせていただきまして、官僚の組織というのは、つかさつかさにどのような役割を与えるのかという組み立て方が極めて大切だと私は思っています。つかさつかさの役割、所掌、これがどういう組み立てられ方をしているかによってさまざまな事例が起こってきたときに対しての反応というのは変わってくる。ですから、淵源をたどってみますと、こうしたつかさつかさの役割分担というものをどう組み立てるのかというのは、実はこれは政治の責任でもあるというふうに私は思っております。  どういうような仕組みが果たして必要なのかということについて、どのような提案をなし、組み立てていくのか。  アメリカの事例がございましたけれども、CDCというのは極めて強力な組織でございます。これは一面、裏腹にアメリカの危機管理というものに対しての緊張感がもたらすところではないかというふうに私は思っております。それは安全保障ということとも関連をしておる事柄ではないかというふうに思っております。  そういう意味で、我が国の体制につきまして先生いろいろと御指摘がございましたけれども、そうした組み立てというものを不断に見直してきた歴史であったというふうに私は思います。さまざまな過程でいろいろな事件が起きました。先ほど申しましたように、サリドマイドもございましたしスモンもございました、HIVもございました。そういうことを踏まえて、順次この見直しというものが行われてきているというふうに私は思っております。  一方で、この問題で大切なことは、研究者の中でどのような認識があったのかということも非常に大切なことだというふうに思っております。医学界の中でどのような認識があったかということも大切だというふうに私は思っております。  研究班でいろいろと調査報告がなされておりますけれども、研究班の総括報告書の中でも、具体的に乾燥硬膜による感染ということについて記載がなされたのは大分後段の話でございまして、具体的には平成七年になってからのことでございます。これはある意味で、研究者の中でヒト乾燥硬膜のもたらす影響というものについての認識を指し示す一つの事実だというふうに私は思っております。  また一方で、例えば脳外科学会の中でこうしたことについての指摘があったのかということにつきましても、私自身はそのような指摘があったということは承知をいたしておりません。これが一方では医学界における認識であったのではないかというふうに私は思っております。  ですから、厚生省対応につきましてるる御指摘がございますけれども、こうした一つ一つの事実を踏まえ、そしてまた、先ほども私申しましたが、諸外国の当局がした対応、これはアメリカ、カナダとヨーロッパと大きく分かれるだろうと私は思っておりますけれども、第二症例確認をされた後におきましても、アルカリ未処理製品の回収ということについては、これは具体的に行われなかったというような事実。このことも、ある意味では規制当局におけるクロイツフェルト・ヤコブ病ヒト乾燥硬膜における伝染ということについての認識の水準を示す具体的な事実ではないかというふうに思います。  このように申しましても、こうしたことを含めまして包括的に判断をされるのは司法の場であるというふうに私は思っておりますけれども、先生の御指摘に対して私の考えを述べさせていただきました。
  95. 小池百合子

    ○小池委員 私は若干違った感覚を持っています。ここで国家の安全保障まで出てくるとは思わなかったのですが、むしろ、つかさつかさが、一つ一つがしっかりやっていることがまず第一であって、その次に、どのようにしてお互いに情報をシェアするかというシステムをつくっていくことが肝要だと思います。  ですから、私が先ほどから申し上げている、またこれまでの御質問者の方もおっしゃっているのは、そういった海外で赤信号がともっていることについて、それを受けとめる日本側のつかさの部分が十分その責任を果たしていないのじゃないかということがまず問題であって、その次に、それをどのようにして、よく企業なんかでもホウレンソウなんて言います、報告、連絡、相談ということを言うわけでございますけれども、情報収集と情報のネットワークシステムの構築、この二点で考えるべきではなかったかと思います。  その意味で、英文で第一症例報告が掲載されたのがMMWRということでございますけれども、これは、現在で言うならば国立感染症研究所、当時の国立予防衛生研究所の研究者がまず学会誌に要約記事を掲載している。今、独立行政法人問題など多々ございますけれども、少なくとも冠に国立という名前がついておりながら、なぜ厚生省の方にその情報が明確にメッセージとして伝わっていなかったのか、そのあたりの情報の伝達の仕組みに問題点はないのか、その当時の事実、そしてその仕組みの今後についてお答えいただければと思います。
  96. 津島雄二

    ○津島国務大臣 御指摘のような相互の伝達の仕組みは常に改善しなきゃならないと思います。  今のライオデュラについて申しますと、私が報告を受けているところでは、第一症例、第二症例とアメリカで症例報告がございましたときも、なぜそうなるのか、これはまだわかっていない。プリオンという原因がまだわかっておりません。そこで、例えばイギリスでは、乾燥硬膜を使ってもいいよ、ただしアルカリ処理をしたものを使いなさいと、だから今でも使っているわけであります。それからドイツも、アルカリ処理をしなさいと言ったが、原因がわからないものですから、乾燥硬膜というものを絶対にやめろという議論には実はなっていなかった。でございますから、私は委員の御指摘は当を得ていると思います。ですから、厚生省としてもさらなる努力はしなきゃいかぬと思います。  しかし、この件に関して申しますと、この第一症例、第二症例で仮にMMWRの報告を読んだ人も、恐らく、あれだけ外科手術で利用されているものをここでやめろという決断は出てこなかった、なぜならば理由がわからない、私はそういうふうに受けとめております。
  97. 小池百合子

    ○小池委員 このあたりの判断というか責任感、責任の所在によってそこの判断は出てくると思います。  科学技術、医療技術も大変な進歩をしている。特に日本の薬事法は、外国からいろいろな薬を入れる際に、例えば万金丹なんというのがありますけれども、あれだって薬事法によって日本にはなかなか入ってこなかったりとか、日本の薬事法の厳しさというのは、国内を守るためなのか何かわかりませんけれども、本来は厳しいことで知られているはずであるのに、肝心なことについてはどうも……。ブラックであるものならばそれははっきりノーだと言えるが、シロかもしれないしグレーかもしれないというふうな危険性の度合いのところの判断が、命にかかわる部分の判断の誤りが今回あったのではないかというふうにも私は考えます。  これはその後の法的な処理ということもございましょうが、今の私の質問に対しての大臣の御見解を伺わせていただきたいと思います。
  98. 津島雄二

    ○津島国務大臣 事実に照らして先ほど申し上げましたが、その当時の事情をどういうふうに判断するかは、今、事実を示し、法的機関の判断を求めているところでありますから、その判断を……(発言する者あり)私の考えは申し上げたとおりでございます。
  99. 小池百合子

    ○小池委員 いや、今の私の質問は、法的云々の話もさることながら、原因不明の段階でも対応できる仕組みをつくっておかないと、クロになってからノーだと言っては遅いということです。そこの仕組みをどうするかが今回の問題の解明であり、また、ドッグイヤーと申しまして、これから技術はどんどん新しいものが出てくる。それによって命が救われることもあるけれども、後から気づいて、えっという話が出てくるのが薬害なわけでございますから、原因不明な段階でも対応できる仕組みをつくっていくことが一番肝心なことではないかと思うのですが、大臣、改めてその点を伺わせていただきます。
  100. 津島雄二

    ○津島国務大臣 国民の生命、健康を守らなければならないというのは、私どもの最大の使命であると思っておりますので、絶えず努力をさせていただいておりまして、平成九年一月に厚生省健康危機管理基本指針というものを策定いたしまして、そして、先ほど委員がちょっとお触れになりました、横の連絡なんかも十分にやれという問題、部局横断的な組織として健康危機管理調整会議を設置しておるところでございます。  いずれにいたしましても、五十万件ものライオデュラが利用されたという事実、代替物がなかったということ、それから、全く原因がわかっていなかったと思います、今でも外国ではアルカリ処理をしたものを使い続けている国がある、そういう事実をきちっとお示しをして、私どもは何にも秘匿する事実はございません、そして、客観的に法に照らして御判断をいただきたい、こういうのが私の立場でございます。
  101. 小池百合子

    ○小池委員 大体、手術がなされる場合というのは緊急のときもあったでしょうし、そこで患者さんに、これを使います、こういう危険もありますけれどもいいですかなどというような手術がされたとは、ちょっと私には思えないわけでございます。それだけに、今何を助けなくちゃいけないかという優先権の問題にもなりますが、今お話ございましたけれども、これから、シロかクロか、その中間の点でどこで何を決めるかという、この仕組みはやはりきっちりつくっておかないと、私は、また別の薬害という形で出てきやしないかということを大変今懸念をしたところでございます。  時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきますが、これほどの情報化社会で情報はもう嫌ほどあるわけでございますが、結局、それを判断し察知するのは我々一人一人であり、また、先ほど政務次官がおっしゃったつかさの責任だということを強く申し上げまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  102. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  103. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のためおくれますので、その指名により、私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。家西悟君。着席のままどうぞ。
  104. 家西悟

    ○家西委員 民主党の家西悟です。  本日は薬害CJD、クロイツフェルト・ヤコブ病問題の集中審議ということですが、私自身、今から何年前でしょう、八七年、八八年当時、厚生省に陳情し、そのころエイズ予防法が審議され、当委員会においては、本日も多くの患者さんや御遺族の方、患者家族の方々、そして、支援者や弁護団の方がおいでですけれども、私も傍聴席からそういった審議をずっと見守っていた同じような薬害被害者として質問をさせていただきたいと思います。  まず冒頭、きょう午前中からの審議を拝聴させていただいている中で、私自身の率直な感想を申し上げたいと思います。  エイズ予防法の審議が行われたとき、責任問題が追及されていく中で、当時は原因が不明であったというような説明がるるありました。そして、救済の問題もなかなか難しいというお話も当時あったわけです。救済の問題は後で触れますけれども、そういう御議論されていく様子を傍聴席から見ていて、きょうも当時と全く変わらない答弁ではないのか、同じような答弁、ただ血液製剤が脳硬膜にかわったと言わざるを得ないような状況説明をされているようにしか私には聞こえませんでした。  そこで本質的な質問に入るわけですけれども、まず一番最初に、私は、本当に初歩的な質問ですけれども、非常に疑問に思う点があります。なぜヒト由来の脳硬膜が医療用具となっているのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  105. 福島豊

    福島政務次官 お答えいたします。  ヒト乾燥硬膜は、医薬品と異なり薬理作用を有するものではなく、脳外科手術等で生じた硬膜の欠損部位を補てんするといった整形の目的で直接身体に縫合する材料であることから、医療用具として位置づけられているものでございます。
  106. 家西悟

    ○家西委員 整形するために使用するものであるから医療用具であるというお話ですけれども血液製剤やヒトの細胞を医薬品として扱っていながら、今回のヒト由来の脳硬膜というものが、乾燥しアルカリ処理をしたようなものも含めてどうして医療用具なのか。今整形するものであるというふうに言われますけれども、もともとは人体の体内にあったものを採取し凍結乾燥させたもの、しかし、物自体はヒト由来であるということではないのでしょうか。だからこそ、本来なら医薬品になるべきものではなかったのでしょうか。いかがでしょうか。
  107. 福島豊

    福島政務次官 医薬品の大きな特性は、身体の中に入りましてから薬理作用を発揮するものであるというところに特性があると私は思います。  ヒト乾燥硬膜は、ヒト由来でございますけれども、そのような薬理作用を有するものではなくて、物理的にその欠損を補てんするという特性から医療用具というふうに位置づけられている。そしてまた、先生御指摘ございましたけれども、皮膚につきましても、培養するなど加工等を行って治療目的に使用される材料となる場合には医療用具に該当するというふうに考えております。  ただ、ヒト由来でありましても、例えばヒト免疫グロブリンとか保存血液、ヒト血清アルブミン等々、こういった血液製剤につきましては、法律上は薬事法に規定する生物学的製剤基準に掲載されている医薬品でございます。また、その考え方としましても、一定の薬理作用を人体の中で有すると考えることができると思います。
  108. 家西悟

    ○家西委員 では、もう一つ私が疑問に思っているのは、なぜばんそうこうは医薬品なのですか。そして、脳硬膜はどうして医療用具なのでしょうか。
  109. 福島豊

    福島政務次官 これは、基本的には法律の成立過程に由来する事柄であって、具体的に申しますと、医薬品というのは、薬事法の第二条第一項におきまして、一、日本薬局方におさめられている物、二、人または動物の疾病の診断、治療または予防の目的で使用される物であって、器具器械でないもの、三、人または動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことを目的に使用される物であって、器具器械でないものというふうに定義をされております。  御指摘のばんそうこうにつきましては、日本薬局方におさめられているという経緯から薬事法の中で医薬品というふうに位置づけられている。そういう経緯によるものであるということでございます。  一方、この薬事法の中で医療用具というものはどのように位置づけられているかといいますと、薬事法第二条第四項におきまして、人または動物の疾病の診断、治療または予防の目的で使用される物、または、人または動物の身体の構造、機能に影響を及ぼす目的で使用される物のうち、器具器械であって、政令で定めるものというふうに定義をされております。
  110. 家西悟

    ○家西委員 では、もう一段深くいきますと、ばんそうこうについて医療用語辞典で調べさせていただくと、材質は布とか紙であって、粘着材が使われているもの、そして、チューブなどを固定するものとかいうふうに書かれているわけですけれども、これが医薬品であって、粘着テープの上にガーゼがあって、そのガーゼ自体にリバノールですか黄色い液が浸してあって、それが乾燥させられているカットバンと言われるものは医療用具ですよね、その違いは何なのですか。  どちらかというと、医薬品を浸していたものの方が医療用具というよりも医薬品になる。ただのばんそうこうは、極論を言えば、テープでとめるわけですからガムテープであってもいいわけですね、それが医薬品になっている。そして、医薬品を浸してあるものが医療用具というふうに区別されているのはなぜなんでしょうか。
  111. 福島豊

    福島政務次官 お答えいたします。  この点につきましては、中川智子委員質問主意書につきましても御指摘をいただいていることでございます。これは、再度繰り返しになりますけれども日本薬局方において従来からの沿革的な理由によりばんそうこうの性状及び品質の規格を定めていることから、当該規格に適合するものは同法に言うところの医薬品とされているということでございます。
  112. 家西悟

    ○家西委員 私、余り理解ができないのです、正直言って。納得できるような答弁とは思えない。  経緯があったとおっしゃいますけれども、その経緯というものはどういうことなんでしょうか。
  113. 福島豊

    福島政務次官 これは、日本薬局方そのものが薬事法よりも古いものでございます。そして、その日本薬局方そのものを薬事法の中に位置づけるという形をとった経緯からこのようになっていると存知いたしております。
  114. 家西悟

    ○家西委員 では、古いからそのままにしてきたということですか。古くからばんそうこうはあったから、薬事法がつくられてもそのままになっていた、新たな法律が施行されていく中でそれを入れかえる作業はせずにそのまま放置してきたというふうに判断してよろしいのでしょうか。
  115. 丸田和夫

    丸田政府参考人 ばんそうこうということですが、創傷面を物理的に覆う目的の材料ということで考えました場合に、薬局方に収載されている物は医薬品として規定することになっております。  それで、それ以外に……(家西委員「薬局方になぜ入れたのですかということを聞いている」と呼ぶ)薬局方というのは、先ほど総括政務次官の方から話がありましたように、明治時代につくられまして、当時は医薬品という概念しかなかったわけでございます。その中で取り入れられまして、そういった沿革的な理由で今日まで来ております。  先ほど先生の方から医薬品を浸したものということでございますが、これは、そういった薬局方の規格に合っておりますれば医薬品に該当することになります。
  116. 家西悟

    ○家西委員 該当すればというふうにおっしゃいましたけれども、ばんそうこうは明治時代につくられた法律に乗っかってきたということですね。そして、今のカットバンというものは薬事法ができてからの商品ということでそちらの方に入ったということですか。ばんそうこうというものは、もともとは固定したりそういうふうに使うものであったけれども、当時の医学的見地からいえば医薬品だった、だから、医薬品ということで今まで来ていると判断していいのですか。  それはそれとして、厚生省はこれを疑問に思うこともなかったのですか。これを医薬品という形で置いておくことについて疑問視はされなかったのでしょうか、省内で。
  117. 丸田和夫

    丸田政府参考人 今お話に出されましたカットバンとばんそうこうということでお話し申し上げますと、いずれも創傷面、傷口を物理的に覆う目的を有しております。そういった中で、日本薬局方にはいろいろな規格基準がございます、これに合致しておれば医薬品……(家西委員「その合致するというのはどのことをいうのですか」と呼ぶ)今手元に薬局方の内容を持ってきておりませんが、そこに書かれているような性状、品質、そういった規格に合致すればということでございます。そういうものであれば医薬品として規定しているということでございます。  繰り返しになりますが、ばんそうこうというのは、沿革的な理由により、そういった薬局方の中で先ほど申し上げました性状とか品質の規格を定めているということになるわけでございます。
  118. 家西悟

    ○家西委員 はっきり言って、お答えになっていることがよくわかりません。私は、疑問に思わなかったのだろうかということもお尋ねしました。それで、薬局方に基づいてということをしきりにおっしゃいますけれども、薬局方で見たら逆じゃないのですかということをお尋ねしている。それを疑問に思われたことはないのでしょうか、国として厚生省として今までそういう問題提起もなかったのでしょうかというのをお尋ねしたわけです。  次の質問に行きたいと思いますけれども、その辺も含めて、医薬品医療用具と臓器の違いについて、そのアウトラインを教えてください。
  119. 福島豊

    福島政務次官 先ほどの答弁に重なりますけれども医薬品につきましては、薬事法第二条第一項に、一、日本薬局方におさめられている物、二、人または動物の疾病の診断、治療または予防の目的で使用される物であって、器具器械でないもの、三、人または動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことを目的に使用される物であって、器具器械でないものとされております。  医療用具は、同法の第二条第四項におきまして、人または動物の疾病の診断、治療または予防の目的で使用される物、または、人または動物の身体の構造、機能に影響を及ぼす目的で使用される物のうち、器具器械であって政令で定めるものと定義されております。  臓器につきましては、一般的な定義はございませんけれども、仮に、心臓、肺、肝臓、腎臓等につきましても人または動物の疾病の診断、治療または予防等の目的で使用されることがあった場合には、医薬品医療用具となるものというふうに考えております。
  120. 家西悟

    ○家西委員 では、骨とかはどうなるのですか。これは臓器でしょうか。  いろいろあると思います。例えば骨肉腫の場合、骨を削っていったときに、その穴埋めとして、牛の骨らしいですけれども、骨の粉を使う。こういう場合は医療用具ですか、医薬品なんですか。
  121. 福島豊

    福島政務次官 骨の欠損を補てんする場合にも、動物由来のもの、そしてまた人工のものもございますけれども医療用具というふうに位置づけられております。
  122. 家西悟

    ○家西委員 私、昨年の十一月十六日に丹羽厚生大臣に御質問をさせていただいたときに、こういう動物由来やヒト由来のものについては新たなものを設けるべきではないか、考え方をということで御質問をさせていただいたように覚えています。そして、今議事録を読ませてもらうと、「私は、従来の医療用具とは異なる被害をもたらす可能性があり、単純に同一視することはできない」というようなことで今後検討するみたいなお話を伺っていました。昨年の十一月です。今はもう九月です。この検討というものはされておられるのでしょうか。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、坂井委員長代理着席〕
  123. 福島豊

    福島政務次官 委員指摘のように、医療用具という位置づけをしたとしましても、ヒトの細胞や組織に由来する製品や動物由来の製品につきましても、従来の薬事法における品質、安全性及び有効性についての必要な審査は行っておりますけれども、さまざまな新しい製品についての研究や検討が進められているという事態を踏まえまして、昨年の七月から、こうしたものを治験するという場合におきましても、その実施前に、治験依頼者が厚生省に対してその安全性や品質の確認を求めるシステムを整えました。  そしてまた、さらにもっと検討が必要ではないかという御指摘であろうかと思いますけれども、昨年の四月以来、中央薬事審議会のバイオテクノロジー特別部会におきまして、こういった製品の規制のあり方について審議を進めております。その結論を踏まえて、厚生省令の改正等の必要な措置を行う考えでございます。
  124. 家西悟

    ○家西委員 ぜひともこれはきっちりしていただきたいと思います。  ヒト由来や動物由来のものが医療用具であったり医薬品であったり、物によったら臓器になってしまうとかいうのは、私はおかしいと思います。血液は、血液製剤もそうですけれども医薬品であって、ある見方をすれば臓器であったり、状況によっていろいろ変化をしたとらえ方をされるということで、やはり問題は出てくるんだろうと思います。今回のヤコブの問題にしても、危険性が言われていた、警告も発せられていた。八七年ですか、そのような状況の中で、それをしっかりと受けとめる器がなかったのかというのは非常に危惧するところです。  私、その当時、八七年、八八年ごろは、国会、厚生省、そういったところをうろうろしていた、まさしくエイズ予防法を審議されようとしているときでしたので。ヤコブの問題を所轄する課は、同じような課でした。それで、私たちの対応をするのに苦慮していたというようなお話もある方面から伺うこともあるわけですけれども、私たちにとったら心外ですね。そういうことを言われた。  確かに私たちの問題はあった。しかも、調査報告の内容を見ている中で、当時MMWRを見ていなかったとか記憶にないというようなお話もありますけれども、私たちが薬害エイズの問題で生物製剤課、血液事業対策室、当時の結核・感染対策室、医薬品副作用被害対策室、こういったところを回っているときに、MMWRの話はるる伺いました。私たちはこういうところから情報を得ていますというようなお話を伺っていたわけですから、ヤコブに関しては全然知らなかったみたいなことを言われているのは、私は非常に疑問を持たざるを得ない。  あれだけ、私たちはこういうものを持っています、JAMAも見ています、MMWRも見ています、ランセット、ネイチャー、そういったものはしっかりと端から端まで見ていますと、御自慢をされていたように記憶をしています。その中には、今厚生省の幹部になっておられる方もおられます。そういう人たちが、漏れていたということを平気で言われたというか、関心がなかったのかもしれないとか記憶にないというようなお話も、私には理解できない部分であることをまず申し上げておきたい。  そして、ぜひともその救済の問題についても御議論いただきたいという思いがあります。救済の話になるわけですけれども。  私自身、当事者として今ここでこういうふうに発言できます。しかし、ヤコブの被害者というか患者さんは発言することももうできない人たちが多い。それで、御遺族が代弁者として訴えておいでです。こういうような声をしっかりと受けとめていただきたい。  そこで、大臣及び総括政務次官、この本をお読みになられましたでしょうか。「薬害ヤコブ病 見過ごされた警告」という本ですけれども。お一人ずつ、まずお読みかどうかをお答えいただければ……。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  125. 津島雄二

    ○津島国務大臣 まだ読んでおりません。
  126. 福島豊

    福島政務次官 残念ながら、まだ目を通しておりません。
  127. 家西悟

    ○家西委員 お読みになっていないということは、非常に残念です。  私、この本を読ませていただいて非常に思ったのは、責任追及という前に、御遺族とか御家族の方が証言されている内容に非常にショックを受けた部分が幾つもあります。それは、薬害エイズと全く同じような状況の中で、医療の現場において差別され——医療の現場といっても、医師だけじゃありません。私も経験したことが書かれています。  これは冒頭の方で、滋賀県の谷さんという原告の方が言われている部分です。困ったことがあったらということを言われて、困ったことはいっぱいあるけれどもと。そして、部屋の掃除も毎日してほしいとか、自分の妻の病室を避けて通られるとかいうようなことがるる書かれています。  私も、薬害エイズの被害者として、病院へ患者さんの見舞いにも行きました。同じようなことがありました。病室を避けて通る。病室へ行くとほこりがかぶっている、部屋がほこりだらけなんです。どうしたんと言って私が尋ねたときに、掃除のおばちゃん、おれの部屋避けて通るんや、掃除もしてくれへんねんと。何で。自分の病気を知っとんのやろ、だから、嫌がって掃除もしてくれへんのやろ。でも、感染症なんやで、ほこりがこんなに舞うてていいんやろかというようなことを言うと、うん、と黙ってしまう。そして、おれが掃除してあげるわと言って、何度掃除したことかわからないという経験であります。こういったところもぜひとも改善していただきたい。  きのうですか、新聞報道もなされています、日経新聞だったと思いますけれども、今度専門スタッフを訪問させるみたいなことを書かれている内容がありました。そういうようなことをしていこうという姿勢はわかりますけれども、現実問題としては、そういった声もしっかり受けとめていただきたい。  そして、なぜ自分がこういう被害に遭わなければならなかったのかということを非常に悔しく思うというようなことも言われています。私もそうです。私は血友病として血液製剤治療のために使った。脳硬膜は脳外科手術のために使った。しかも、その脳硬膜や血液製剤というものは厚生省が認可をし、当然それなりに監視され管理されているものというふうに私たちは思ってきた。それが何年か後にこういう事態になるなんということは、ゆめゆめ思わなかった。  ある種、患者さんの気持ちというものは、自分たちの声をしっかり聞いていただきたいという思いがすごくあると思います。少しでも早く楽にしてほしい。それは、裁判の判決もあったりとかいろいろすると思いますけれども厚生省にはその非を早く認めていただきたいというのが率直なところあると思います。  しかし、薬害エイズのことでもう一度戻って言いますと、一九八七年、八八年当時、厚生省は非はないと言われました、予見はでき得なかった、情報もなかったということをしきりに言われたわけですけれども、九六年の和解のときに膨大な資料が出てくる。その資料は、裁判において、あるなら出してほしいということを七年間要求し続けたものです。裁判所では、ありません、廃棄して、ないと。国会でも言われました。  当時の資料、本当にこういうような情報は知り得なかったのかどうかということをいま一度調査するおつもりはありますか。まず、その調査の件についてお尋ねしたいと思います。するおつもりがあるかどうか。あわせてその救済もありますけれども、ちょっとそこだけ教えていただければ……。
  128. 津島雄二

    ○津島国務大臣 薬害の被害を受けられた家西委員からのお話でございまして、私ども、本当に身につまされる思いで拝聴させていただいております。  今回のCJDにつきましては、私としては、すべて資料は公開をして、皆様方あるいは関係者、また裁判所、全部共有した上で議論をしようという方針で事務当局にもきつく言っておりますから、その点は信頼していただいてもいい。今ございますこの資料をもとに十分御議論いただけると思っております。
  129. 家西悟

    ○家西委員 突然で済みません、大臣に申し上げて。質問になかった部分で申しわけないんですけれども、ぜひともそうしていただきたいと思います。  救済問題ですけれども薬害エイズの問題のときには医薬品副作用被害救済基金の準用という形で行われました。救済基金には入っていなかったところを、枠を超えて、附則をつけていただいて救済を図ったという経緯がありますけれども、今回のCJDに関して同じようにしていただくことはできないものか、お尋ねしたいと思います。
  130. 津島雄二

    ○津島国務大臣 HIVの問題で多くの方の御努力、わけても家西委員のお力もございまして、ある意味では、医薬品副作用被害救済制度をかりながらあの問題の解決を図ったことは御承知のとおりであります。  しからば、同じように今回のCJDについてもできないかということについて、我々悩みを持っております。  それは、まず第一に、医薬品副作用被害救済制度というのは、本来は医薬品製造業者からの拠出により医薬品の副作用による健康被害を救済するためにつくられた。その場合に、感染というのは副作用ではない、こういう解釈になっておるものですから、HIVの場合もそこがとても困ったわけですね。そこで、先生方のお力もございまして、附則として別途救済措置を講じた、これはもう先生よく御存じのとおりでございます。  このことについて、それでは今度のCJDの場合に同じようにできるかという御議論でございますけれどもHIVの場合は血液製剤の製造業者等がまず合意してくれた、やはりこれは何とかしなきゃいかぬと。それで、その共同の拠出によって医薬品副作用被害救済制度と同様の、今までのあれから言うと入らないけれども、同様の給付をやろうではないか、こういう合意があった。そして、その運用を機構が受託して、今こういうことになったわけでございます。  しからば、今度のCJDの場合はどうかと申しますと、まず第一に、今その製造業者、しかも、これは非常に限られた数のものに対して損害賠償請求訴訟が出てございますので、したがって、その企業が法廷に出て争っている状態になってしまった。それからまた、関係するのは特定の一社の製品であるというようなことで、HIVのときに先生方の御努力が実を結んだようにはどうもこれはいかないな、そこが悩むところでございます。  お話にもあるように、非常に重篤な難病でございまして、患者さんや家族の方の御苦労はよくわかるわけでございますけれども、今の段階では、HIVの場合の措置をそのまま生かせる状況にない、どうも訴訟の方が先に進んでしまっている、こういう現状でございます。  なお、先生御提起の問題については研究はいたしておるところでございます。
  131. 家西悟

    ○家西委員 ぜひともその辺は研究と言わずに実行していただければと思います。  いま一度その件についてもう少し私の経験から言わせていただくと、あの当時は複数の企業があるから難しいと言われました。今回は単独の一社しかないから難しいと今大臣は御答弁になりますけれども、当時は逆だったんです。複数の合意が得られるのかどうかというのがわからないという御判断でした。  それと、こういう例えをされました。交通事故を起こしてしまった、そのときに任意保険に入っていなかった、それで、後から任意保険代を払うから交通事故の補償をしてほしいと言われているようなものですということをしきりに厚生省の担当者の方から言われました。それはそうかもしれないけれども、人道的に考えても、この被害の救済を図るべきだという議論がどんどん広がっていってあのような形にしていただいたという思いが私はありますけれども、今回も同じではないのか。  そして、重篤な難病であって非常に大変だということを大臣も御認識いただいているわけです。これは自然になられたわけでもないし、この病気を持って生まれてこられたわけでもありません。医療を介在してこういうヤコブ、CJDという難病を——難病というよりも、本当に重篤ですよね、死の宣告をされるわけです。私も同じようにされました。当時の記憶では、HIVエイズですということを告知されたとき、治療法もなく延命薬もないときに言われたときの衝撃というものは本当にすさまじいものでした。  今、ヤコブの人たちも同じ思いをし、家族はそれを受け入れて必死になっておやりだと思います。強いて言うならば、毎日付き添って、よりよいもの、こっちの治療がいいというお話をお聞きになったらそこへ走る、これは、わらをもすがるということもよく言いますけれども、人として当然だと思います。そして、経済的な負担もかなりされているのではないか。そういうものを軽減するためにも支援をしていただけないか。それは難病対策でおやりだと。今の行政の枠の中で最大やっているというふうに胸を張って午前中言われていますけれども、被害はその範囲をもう超えているのではないか。そこら辺のところを重々踏まえていただいて、救済措置というものを考えるべきではないでしょうか。  ましてや、附則でつけるということになれば国会で議論をされればいいわけで、これは委員長にもお願いを申し上げたいと思います、そういう議論をぜひとも行えるような場を提供いただければなと。これは各党の先生方にもお願い申し上げます。  そして、そういうことが可能であるのか否かというものをやはり厚生省としてやるべきではないでしょうか。B・ブラウン社に対して、幾らかの寄附金を出せないかと。現在訴訟中であるからというお答えではなくて、実質的にこういう努力をしました、厚生省としてこういうふうにドイツ会社に打診をした、しかしながら、B・ブラウン社が乗ってこなかったという話になれば、次の手を考えるべきではないでしょうか。それをやらずして訴訟が今行われているからとおっしゃるのは、どうかなというふうに私は思います。  その辺について、大臣、いま一度御答弁いただければと思います。時間がありませんので、できるだけ質問に答えていただきたいと思います。
  132. 津島雄二

    ○津島国務大臣 先ほども申し上げましたように、訴訟がまず出てきたという点がHIVのときの処理と違う形になった、これは委員に御理解をいただきたいわけです。当事者としては、訴訟でやはりきちっとした考え方を示して、その判断を待つ、それに従って処理をする、これが日本司法制度の本道だと思います。  まずそれを申し上げた上で、しかし、委員のおっしゃる点は私は一個の人間としては理解できるわけでございまして、それをどうするか。これは行政のルールもございますし、立法府の方の御判断をいただかなければならない。何かいたすにしても、我々にとって大事な、国民からいただいた税をどうするかという話になるわけでございまして、そういうことを含めて、気持ちの上では委員の御指摘はしかと受けとめておりますが、もう少し研究させていただきたいと思います。
  133. 家西悟

    ○家西委員 それも薬害エイズのときに言われました。要はやる気だと思います。当時、同じことを当時の厚生大臣は言われました。訴訟は起きていませんでしたけれども、私たちに対して同じような答弁で、国会での議論もそういうような答弁をされていました。そして、最後には、ある種訴訟までしてくださいというようなお話も聞きました、厚生省の幹部の方ですけれども。言われて訴訟へ踏み切っていったというのが私たちの経緯でした。  しかし、今回は先に訴訟が起こっているからというふうに言われますけれども訴訟したら救済はされないんですか。訴訟しているために、国として手を出さないんですか。それはおかしいんじゃないでしょうか。今そこに病んでいる人たち、そして重篤な病気であるということ、そして家族負担というものは大変であるということを重々認知され承知されているにもかかわらず、それはできないというふうに訴訟を理由に言われるのならば、気の毒というよりも余りにも非情じゃないでしょうか。それでいいんでしょうか。私は、ある種そういうような門を開くことも必要ではないのかなというふうに思えてなりません。どうぞ、そういうふうにしていただければと思います。  時間が余りありませんので、次の質問をさせていただきます。  一昨日の報道で、イギリスの方でヤコブの母子感染というのが伝えられた。それとあわせて、血液によるヤコブ感染についても羊を使った実験で立証されたということを言われていますけれども、この辺は厚生省として認知されているんでしょうか、もう承知されておられるんでしょうか。
  134. 福島豊

    福島政務次官 一昨日の新聞の報道では、ヤコブ病、新変異型でございますけれども、これが母子感染をするのではないかということが英国のマスメディアで報道されたわけでございます。この症例につきましては、まだ学術論文という形で掲載されておりませんので詳細はわかりませんけれども、研究班を通じて詳細な情報の収集中でございます。  なお、この母子感染の可能性ということにつきましては、古くは平成二年度の遅発性ウイルス感染調査研究班の報告書の中で、クロイツフェルト・ヤコブ病の妊婦の方が出産をされるという経緯がございまして、その中で感染因子がどこに存在するのかということについての検討がなされたというような経緯もございます。  いずれにしましても、こうした形の母子感染が新変異型に限るような形であったにしても起こるということであれば、これは十分な注意を要することでございますので、詳細な情報の収集を早急に進めたいと思います。  そしてまた、こうした事例がありますと、血液製剤によってヤコブ病感染をするのではないかという心配が当然出てくるわけでございます。現状では、まだこのプリオンの検出を行うことができません。ですから、予防的な措置というものをきちっとすることが必要であるというふうに考えております。  その一つが、平成六年十二月に設置された血液問題検討会で翌年六月に取りまとめを行いましたけれども、その中で、プリオンについても、輸血による感染危険性については完全に否定できないことを踏まえて、問診事項の中でヒト由来成長ホルモンの注射の有無脳外科手術有無等を広く確認するということの提言が行われ、七月から全国的に統一した新たな問診票の使用を開始しました。  さらに、平成九年の三月、これは全国の緊急調査ということを踏まえて、これをより改善いたしまして、本人及び血縁者のクロイツフェルト・ヤコブ病及び類縁疾患有無、角膜移植有無、硬膜移植を伴う脳外科手術有無等について確認をすることとしたところでございます。  また、新変異型につきましても、イギリスでの問題がございましたので、昭和五十五年一月から平成八年十二月までの間に英国に通算六カ月以上の滞在歴がある者からの献血は念のために排除をするという措置を講じております。  現状では、こうした予防的な措置がとり得る最大の措置であろうというふうに思います。
  135. 家西悟

    ○家西委員 質問の時間が終わりましたけれども、最後に委員長の方にお願い申し上げます。  私も、薬害エイズの問題で当委員会に参考人として呼んでいただいて、発言する機会もありました。通算で考えますと四回ですか、衆議院二回、参議院二回というような形で私たち証言することができました。患者の生の声を当委員会の各委員の先生方にもお聞きいただいた経緯がございます。今回も、ヤコブの方々の御遺族初め家族の方々に、御本人は無理としても、ぜひともそういった方々に来ていただいてお話を聞く機会を設けるようお願い申し上げたいと思いますけれども委員長、これをお計らいいただけますでしょうか。
  136. 遠藤武彦

    遠藤委員長 理事の皆さんとよく相談をしたいと思います。
  137. 家西悟

    ○家西委員 ぜひともよろしくお願いします。  質問を終わります。
  138. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、金田誠一君。
  139. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。  この薬害クロイツフェルト・ヤコブ病は、文字どおり薬害でございます。厚生省が一九七三年に輸入承認をしたヒト乾燥硬膜ライオデュラに起因するものであり、厚生省責任は極めて重いと私は思います。もちろん、B・ブラウン社あるいは日本ビー・エス・エスの責任は免れるものではないわけでございますけれども厚生省責任もこれまた免れるものではない、こう思います。  そこで伺うわけでございますが、厚生省は本件について被害者や遺族の方々に公式に謝罪をしたことはおありでしょうか。
  140. 津島雄二

    ○津島国務大臣 現在、ヒト乾燥硬膜移植によってCJDを発症した患者さん、遺族等から、国等に対して損害賠償を求める訴訟が提起されていることは、御承知のとおりでございます。  この病気は大変な難病でございまして、患者さん、そして御家族皆様方の御苦労は本当に大変なことである、そういう気持ちは私どもはみんな共有をしておると思っております。  そこで問題は、厚生省の行政としてこのことが生ずるに至るまでの責任、主として今問われているのは法的責任でございますけれども訴訟になっている中で責任をどうするかという問題は、私はまず客観的な事実をしっかりと見詰め、みんなで共有した上で、法律的に結論を出すべきことだと思っております。既に訴訟もかなり進んでおりますので、私ども裁判所が適切な判断責任問題については下していただけるというふうに期待をしておるところでございます。  このような状況になっております上に、午前中からの御議論でもございましたように、これまで海外を含めて、初めて症例が発表されてから今日まで、果たしてどの段階でこの乾燥硬膜とCJDとの関係が合理的、科学的に推論できるか、これがポイントになるわけでありまして、そのことについての結論を出した上で、責任有無ということは結論を出すべきだと思っております。  私どもとしては、今、患者さん、家族皆様方のお立場を十分に御理解いたしまして、難病対策として何ができるか、そういう角度からの検討は行政当局として真剣に誠実にしなければならない、そういう立場でございます。
  141. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 謝罪をしたことがあるかどうかということをお尋ねしたわけでございますが、るるお話がございましたけれども、せんじ詰めれば謝罪はしておらないという御返事かなと思うわけでございます。  厚生省責任の程度はいろいろあろうかと思いますが、まさか大臣、全く責任はない、真っ白だというわけではないと思うわけでございます。真っ黒なのか、どの程度の灰色なのかという話はこれからいろいろあろうかと思いますが、厚生省が認可したヒト乾燥硬膜原因になったということだけは確かなわけですから、大変申しわけないという謝罪をする、そして丁重にお見舞いを申し上げる、その上でその謝罪の趣旨をどのように形にするかという問題に進んでいくのが普通の人間のやるべきことではないか、私はそう思います。  今回の予備的調査においても明らかになったことは、過去において厚生省が措置をとるべき契機は何度となくあった。にもかかわらず、何らの検討も、何らの具体的な対応も全くなされなかったということが予備的調査で明らかになったと思うわけでございます。  このことについて、実は先ほど家西委員も示されたこの本なんですけれども、非常に興味深い会議録が載ってございます。  「九七年五月六日、衆議院厚生委員会。新進党・福島豊議員」 政務次官のことだと思います。  「福島豊議員は、医師として薬害ヤコブ病の問題を取り上げた。厚生省対応を批判した新聞記事を読み上げた後、ずらりと並んだ厚生官僚を見据えて質した。——情報の何が大切なのか、をすくい上げていく機能が鈍感であれば、いくらいろいろなことがあったって分からない。分かりませんでしたということで、責任がないということとはイコールではないはずです。」 というのが福島委員の御発言として紹介をされてございます。  私は全く同感でございます。政務次官も恐らく今もこういうお考えだと思うわけでございます。にもかかわらず、先ほど来の答弁を伺いますと、意に沿わない答弁をせざるを得ないお立場になったのかなと大変お気の毒にも思いますし、そこを意を決して、この本来のお立場で、腹を決めて答弁をしていただきたかったという思いでいっぱいでございます。  大臣に再度お尋ねをするわけでございますが、政務次官はこういうお立場、お考えであるにもかかわらず大変御苦労された答弁をしておられる、そういうことも大臣はぜひおもんぱかっていただいて、きちんと厚生省としての責任を認め、謝罪をすべきではないか。その程度はどの程度なのかなんということは、これから話し合えばいいことではないでしょうか。  とにかく責任があったことは確かでしょう。厚生省が認可しなければ、こういう事件は起きなかった。そのときにわかっていたかわかっていないかとか、いつの時点からわかったのかというのはいろいろあるにしても、まず行政としての責任を認め、謝罪をし、お見舞いをし、その上で具体的な、先ほど家西委員の方から取り上げられた補償の問題、救済の問題も含めて進んでいくというのが筋道ではないか。ぜひそういう本来の筋に立ち戻っていただきたい。大臣の御答弁をお願い申し上げる次第でございます。
  142. 津島雄二

    ○津島国務大臣 けさの御答弁でも最初に申し上げましたが、私ども、まず人間として、難病にかかられた患者さんや御家族皆様方の御苦労に対しては、もう言葉で尽くせないと思っております。これは恐らくみんな共有をしておると思います。  それをまず申し上げた上で、私や総括政務次官がここで御答弁いたしますのは、一個の人間であるとともに行政の長としての立場がございます。  行政の長としての立場から申しますと、医学の技術がどんどん進歩してまいります中で、新しい処方を始めるときには必ずリスクがあるわけであります。これは、人間の歴史で数々の経験を私どもはしているわけでありまして、すべて先に起こるべきことを予見することは不可能でございます。しからば、そういうことがあるからそういう処方を認めるなということになると、新しい処置や処方や薬は採用することはできなくなってしまいます。そこは、やはりリスクとメリットの両方を私どもは考えてやっていかないと医学の進歩はない、これは冷厳な事実なのでございます。  そういう中で、この乾燥硬膜がこれまでに我が国だけで四十万から五十万枚使われたという事実、これは我々にとって否定できない重みのある事実でございます。そして、この方法が始まるまでは、けさも申し上げましたように、患者さんの大腿筋膜を別の手術をしてちょうだいをして、しなければならないという状態にあったわけでございます。  そして、これだけたくさんのケースの中で、不幸にして七十二件のケースが出てきた。それを歴史的にさかのぼってみますと、原因因子細菌でもウイルスでもない、たんぱく質プリオンであるということが、生物学の常識を覆すものではあるけれども、おおむね学説として裏づけられたのは、一九九三年、平成五年でございまして、それ以前は原因因子感染メカニズムも不明であったということも、これまた事実でございます。  これから委員いろいろ御詮議があれば、事務当局、私どもともどもお答えをいたしますけれども、それ以前にありましたことについて責任があるかないか、厚生行政が誤っていたかどうか、これは、私は行政の責任にある者として、やはり法に照らしてきちっとやらなければならないと残念ながら申し上げざるを得ないわけであります。
  143. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大臣、できれば答弁は短目にお願いをしたいと思います。  大臣の答弁の中で非常に気になることが一つございまして、原因がわからなければ対策がとれないようなおっしゃりようでございますけれどもプリオン学説が定着する前であっても、プリオンであろうがウイルスであろうが、予防的措置をとろうと思えばとれたということは申し上げておきたいと思います。お役人からそういうふうにレクチャーされておっしゃっているんだと思いますが、それは違うということだけははっきり申し上げておきたいと思います。  そこで、本当に予測不可能であったのか、可能であったのか、その辺の事実について、おっしゃるように逐次明らかにさせていただきたいと思うわけでございます。  私は、まず、一九七三年の輸入承認審査時点から重大な欠陥があった、最初のボタンのかけ違いがあったというふうに思います。  まず一点目お尋ねをいたしますが、一九七三年時点で、ヒトの死体から製造する死体由来の医療用具、これは初めてのケースで前例がなかったと思うわけでございますが、そのことを確認させていただきたいと思います。
  144. 丸田和夫

    丸田政府参考人 お答えいたします。  一九七三年当時に、既に生体由来の埋め込み型の医療用具として、動物由来の腸線縫合糸、これは動物の……(金田(誠)委員「動物のことなんて聞いていないでしょう」と呼ぶ)そういうものは承認されておりましたけれども、ヒト死体から製造する医療用具は承認されておらず、これが初めてのものでございます。
  145. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 当時も初めてだったわけでございますけれども、現時点においてもヒトの死体からとった医療用具というのは実質的には使われていないと言える状態だと思います。  ヒト乾燥筋膜というのが九二年から使われたようでございますけれども、九七年に自主的に出荷停止に至っている。あるいは関連するヒト臍帯由来の、これは多少違うのかもしれませんが、この臍帯由来の人工血管も八四年から承認になったようでございますが、ほとんど使われた実績はないということでございます。  したがって、現時点においても、ヒトの死体からとる医療用具というものは実質的にはないに等しいということを確認していただきたいと思います。
  146. 丸田和夫

    丸田政府参考人 今先生が御指摘になりましたように、ヒト大腿筋膜につきましては現在は使われておりません。それから、ヒト臍帯血管につきましても利用は少ない、こういった状況でございます。
  147. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 したがって、非常に特殊な、特異なケースであった。全く前例のないものを一九七三年に審査した。にもかかわらず、中央薬事審議会の意見を求めることもなく、専門家の意見を求めずに事務方だけで承認審査を行ったということでございます。考えにくいことだと私は思うわけでございますが、なぜこのような判断になったのか、お聞かせください。
  148. 丸田和夫

    丸田政府参考人 ライオデュラにつきまして審査が行われた当時は、既に生体由来の埋め込み型の医療用具として動物由来の腸線縫合糸、これは傷口を縫う糸でございますが、これが認められておりましたことから、特に新規性の高い医療用具には該当しないと解しまして、中央薬事審議会には意見を求めなかったものでございます。  また、ライオデュラが承認された昭和四十八年当時におきましては、クロイツフェルト・ヤコブ病に関しましてプリオン仮説もいまだ提唱されておらず、ヒト乾燥硬膜によってクロイツフェルト・ヤコブ病が伝播するおそれがあるとの知見もないわけでございましたことから、感染危険性を前提として特に中央薬事審議会及び専門家に意見を求めるには至らなかったものであるということでございます。
  149. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 腸線縫合糸というのは、聞くところによりますと戦前からあったもののようでございます。昭和二十三年の旧薬事法によって薬事法上の扱いになった。非常に使用の歴史も古い。そういう意味では安全性も実証されているのかな。にもかかわらず、この腸線縫合糸に関して殺菌方法が完全かどうかという形で幾つかのレポートが出されている。このことについては後から触れたいと思いますけれども。  そういう古くからの歴史を持つ、それも動物由来の腸線縫合糸というものと、脳の頭蓋の中に埋め込む、それも死体からとったヒト乾燥硬膜、何で死んだかわからないわけですよ、どういう感染症を持ったドナーかもわからない、そういうものを同一に扱ったことがそもそもの間違いではないですか。  事実に基づいて、間違いがあったかなかったか、責任があったかなかったかということを議論しようという立場から申し上げますと、そもそも事務方だけで承認をしてしまうというような扱い自体が考えられない。全く新しいケース、非常に危険を伴うことが常識的にわかるケースであるにもかかわらずこのような扱いをしてしまった。そのことがそもそもの間違いであった。専門家の意見を聞いていれば、こうならなかったかもしれない。いかがでしょうか。
  150. 丸田和夫

    丸田政府参考人 ヒト乾燥硬膜の前に先ほど申し上げました動物由来の腸線縫合糸が認められていた、そういうことで新規性はないという判断をしたところでございます。  ただ、ライオデュラ審査に際しましては、国立衛生試験所で実施されました無菌試験結果も得まして、当時の医学、薬学的知見に基づきまして、安全性、有効性等の十分な審査を行ったものでございます。
  151. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 ぜひ大臣、今指摘した点についても厚生省内部で十分に検討していただきたい、こう思うわけでございます。  この七三年の時点でもし専門家の意見を聞いていれば、私は、違う結果になった可能性が高いというふうに思うわけでございます。なぜならば、この時点では既にヤコブ病の伝達性、感染をするということでしょうか、伝達性については知られていたということでございます。一九六九年と七二年には、当時国立予防衛生研究所に在籍されていた甲野礼作先生のチンパンジーの伝達実験の紹介がなされているわけでございます。  このことについては当時は検討さえされていなかったと思うわけですが、どうでしょう。
  152. 丸田和夫

    丸田政府参考人 御指摘の甲野礼作先生の報告でございますが、これにつきましては、一九六八年にギブスさんという外国の方がサイエンスに発表された、患者脳組織をチンパンジーに接種いたしましてクロイツフェルト・ヤコブ病が伝達できたとの報告を引用しているものでございまして、ヒト乾燥硬膜危険性について述べたものではないと思っております。
  153. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 述べたものでないかどうかも含めて検討もされなかったということでしょう。そのことは確認をさせていただきたいと思います。  次に、国立衛生試験所の一九七一年の報告書には、「滅菌にはエチレンオキサイドガスによる低温滅菌法が行われているにもかかわらず、時に細菌や真菌の残存がある。」というような記載がある。こういうことについても検討もされていませんでしょう。イエスかノーかだけで結構です。
  154. 丸田和夫

    丸田政府参考人 御指摘報告でございますが、これにつきましては、内容としましては、腸線縫合糸の滅菌というものでありまして、ヒト乾燥硬膜のものではないということでございます。それと、放射線滅菌との比較において腸線縫合糸のエチレンオキサイドガス滅菌後に細菌や真菌の残存があるとの一般的な記述が考察の部分としてあるわけでございまして、具体的な試験結果を示したものではないということでございます。  そういったことから、この報告をもって、特にライオデュラ審査において、現時点でも十分効果があるとされるエチレンオキサイドガスによる滅菌方法について検討すべきとは考えられないと思っております。
  155. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 当時、脳の頭蓋の中に埋め込む、全く前例のないヒト乾燥硬膜というものが、もし議論の俎上にのっていて、専門家同士の議論が闘わされていたとすれば、こうしたものも当然参考にされる可能性はあった。全く検討もされない中で、今そのような御答弁をされても何の意味もなさないということを指摘しておきたいと思います。  さらにまた、翌一九七二年の国立衛生試験所の報告には、ガンマ線でも二・五メガラッド、三メガラッド以下を照射した場合、生存菌数は五掛ける十の一乗個及び一掛ける十の四乗個であったという報告もあるわけでございます。ガンマ線についても菌が残存するということが既に報告されている。これについても承認時点では全く検討さえされていないということを確認させてください。イエスかノーかで。
  156. 丸田和夫

    丸田政府参考人 イエスかノーかということではなくて、いきさつもございますので、ちょっと申し述べさせていただきたいと思います。  御指摘報告は、放射線滅菌につきまして、血清ブイヨンというものの有無、湿度の差等による効果の違いにつきまして、あらかじめ指標となる細菌を大量に、一億個ということでございますが、添加して殺菌効果を検討したものでございます。その中で、一定の悪条件下では十分な殺菌がなされなかったという記述はございます。しかし、放射線滅菌全体の有用性を否定するものではないと考えております。  したがいまして、特にライオデュラ審査におきまして、現時点でも十分効果があるとされる放射線滅菌の条件下においては、改めて滅菌方法について特に検討すべきものではないと考えております。
  157. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大臣にお聞きをいたします。  一九七三年の輸入承認申請書の中には、滅菌条件としてエチレンオキサイドガスとガンマ線のいずれかを標準とするというふうに記載をされているわけでございます。実際はガンマ線が使われていたようでございますけれども。  しかし、そのエチレンオキサイドガス、ガンマ線のいずれもが、当時既に、国立衛生試験所というのは厚生省の機関のはずですけれども厚生省自身がこれでは滅菌は不完全であるということをレポートとして出しているわけですよ。にもかかわらず、このことは検討もされず、事務方だけで処理された、専門家の方々の意見も聞かれることがなかったわけでございます。  それも、ヒトの死体から、何の病気で亡くなったかもわからない、どういうドナーかもわからない、何の感染症を持っているかもわからない死体からとる硬膜、前例がない。そういうものを承認しようとするときに、このような承認審査における重大な欠陥があった、私はそう思いますけれども大臣、どうでしょう。簡単に。
  158. 津島雄二

    ○津島国務大臣 この七三年の承認審査におきましては、国立衛生試験所で実施された無菌試験結果も得て、当時の医学、薬学的知見に基づき、その安全性、有効性等の審査が行われたものであり、承認審査における欠陥はなかったと考えております。  ちなみに、その後も我が国以外でもこの乾燥硬膜は利用をされております。午前中も御答弁をいたしましたが、アルカリ処理をされたものではあるにしても、今でもアメリカやドイツでは使われているということを付言させていただきます。
  159. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 お役人の書いた答弁の丸読みというのは非常に残念でございます。本当にお調べいただいて、事実に基づいて、ぜひリーダーシップを発揮していただきたい、御要請を申し上げておきたいと思います。  このライオデュラのようにヒトの死体から製造される医療用具などの場合、確保されるべき安全上の原則は、何よりもヒト組織を媒介とした病原体の伝播、感染を防止することであります。これは当然のことであります。  そのためには有効な滅菌法の研究開発が重要なことは言うまでもないわけでございますけれども、今申し上げたように、既に七一年、七二年において、厚生省の機関である国立衛生試験所において滅菌されない細菌があるということが報告をされているわけでございます。私は、そのこと一つでも大変重大な欠陥があった、こう指摘せざるを得ないわけでございますが、それだけではございません。  この滅菌方法が、十分滅菌すればいいというだけでは極めて不十分なわけでございます。この完全な滅菌に加えて、ドナーの選択、それを担保する記録の保存、これをルックバックというようでございます、さらにまた、混合処理の禁止、プール処理の禁止でございます。このことが安全上不可欠の原則であるというのが常識でございます。  承認審査に当たり、ドナー選択、これを担保する記録の保存、プーリングの禁止、これについてどのように当時検討されたのか、端的にお答えをいただきたいと思います。
  160. 丸田和夫

    丸田政府参考人 まず、ライオデュラの輸入承認に際しまして私どもが検討したことを申し述べたいと思います。  一つは、承認書に記載されております規格及び試験方法による滅菌条件が、十分な効果が見込めるレベルにあることを厚生省確認いたします。また、滅菌が確実に行われているかどうかを確認するため、企業が無菌試験を実施いたしました。さらに、先生御指摘の国立衛生試験所におきましても、この無菌試験を実施し、その結果を確認しております。  それから、承認申請に際しましては、二つの大学病院におきまして臨床使用結果の提出がありまして、その中に問題となるようなデータはなかったとされております。  しかし、当時におきましては、ヒト乾燥硬膜によってクロイツフェルト・ヤコブ病が伝播するおそれがあるとの知見もありませんでしたし、クロイツフェルト・ヤコブ病に関しまして、その発症原因に関するプリオン説もいまだ提唱されておらない、こういう状況でございました。そこで、この感染危険性を前提としました、先生御指摘のドナーの入手方法、あるいは病歴調査の実施状況、混合処理の状況についての審査は行い得なかったと思っております。
  161. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 一九七三年に先立って、一九六七年にはR・メッツという方がドナー記録の保存の重要性を報告しております。さらに、一九七〇年には、W・アボットという方がドナー選択の必要性を強調しておられるわけでございます。  当時は、背景としてベトナム戦争があり、このお二方ともアメリカの軍医さんのようでございますが、そういう時代状況の中で、既に七三年に先駆けてドナー記録、ドナー選択、こういう指摘があった。これは常識であったと言われているわけでございます。こうした指摘は検討されなかった、知らなかったということでよろしいですね。
  162. 丸田和夫

    丸田政府参考人 御指摘のR・メッツさん、W・アボットさんの文献につきまして、先生から御指摘ございましたので、私どもの局だけでなくて関係の研究所も含めまして探したわけでございますが、あいにく手にすることができませんでした。そういう意味では、知らなかったということになろうかと思います。
  163. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大臣、先ほどは滅菌の方法についてお聞きをしましたけれども、今度はドナー選択、どこからドナーを入手するか、病歴調査をどうするか、その記録をどうするか。あるいはプール処理にするのか。これは非加熱製剤のときもそうでしたね。さまざまな方の血液をプールに入れて、相当量を一括したためにすべてにウイルスが蔓延した。同じことが硬膜でも言えるわけで、プール処理などはすべきでない。考えてみたら、当たり前の話でございます。  それについて検討さえされなかったという答弁が今あったわけですが、これでもまだ、当時十分な判断のもとに承認をしたということが言えますか。この単純な、我々素人でもなるほどと思うことがされていなかった。これについてどうですか。
  164. 津島雄二

    ○津島国務大臣 当時のCJDに対する世界全体の医学の認識の状況を背景として御理解いただかなければならないのであって、今委員が御指摘になるようないろいろな論文はあったかもしれません。しかし、どの国も、このことについて何がしかの知見があるからやめなさいというようなことは、それこそ一九九〇年代になるまではなかったんですよ。  そして、先ほどから私は重ねて申し上げておりますように、これが出てくるまでは、脳手術のときに大変重い負担患者さんに課したということもあって、一年に二万枚、今日まで五十万枚近くも使われたという事実。このことは我々は否定することのできない事実なんですね。  ですから、クロイツフェルト・ヤコブ病に関して、外国でいろいろな知見が明らかになってきて、その発症原因がバクテリアでもウイルスでもなくプリオンであるということがわかった時点、それから、ヒト乾燥硬膜がそれを伝達するおそれがあるということがわかっていなければ、そのようなことを提起してもこの乾燥硬膜の販売をとめるとか承認をしなかったとかいうことにはならなかったと私は思っています。また、外国にもそのような例はございません。
  165. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 アメリカのこの二人の学者が六〇年代に指摘をしている。その文献が手に入らなかったということでございますが、当時どういう学識上の常識になっていたのか、学識経験者の方々にもおいでいただいて、この場で御意見をお聞きする必要があると思います。委員長に、理事会の場で参考人の招致についてぜひ協議していただければと思いますが、よろしくお願いいたします。
  166. 遠藤武彦

    遠藤委員長 理事会の場で検討させてもらいます。
  167. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 ありがとうございます。  それでは、時間がだんだんなくなりましたので、次の質問に入らせていただきます。  非常に不自然な形で輸入承認がされた、どう考えても不思議だというふうに思います。  まず、申請者の山本和雄氏という方でございますが、申請時点では単なる個人の申請でございます。会社でもないようでございます。後に山本商会になり、さらに日本ビー・エス・エスになったということでございますが、この山本和雄氏なる人物はどういう人物なのか。どういう実績があって、この危険なヒト乾燥硬膜というものを輸入するに足る信頼が担保できるのか。この辺について簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  168. 丸田和夫

    丸田政府参考人 現在提起されている訴訟におきまして、山本和雄氏について明らかにされているところを申し上げたいと思います。  山本和雄氏は、一九二四年生まれでございます。一九五一年ごろから貿易会社に入社されまして、B・ブラウン社製品を取り扱うということがありまして、その会社には四十年ごろまで勤務されておられました。それから、四十二年に山本商会として独立されたということでございます。ここでは、理化学機器とか医療用具の輸入販売の仲介、あるいは注射針などのB・ブラウン社日本での買い付けをやっておられたということであります。そういった中で、四十三年に個人で医療用具の輸入販売業の許可を得られた。それから、四十八年にライオデュラの輸入承認を取得して販売を開始されたということでございます。  それから、山本商会は、昭和五十二年に輸入販売業の許可を得て、ライオデュラの承認を株式会社に承継した。その後、六十二年に日本ビー・エス・エス株式会社ライオデュラの承認を承継した、そういうことでございます。
  169. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 この山本和雄氏なる者がどのようにその信頼に足る実績があるのか、それを示す資料がおありのようでございますから、後ほどで結構でございますから、ぜひお示しをいただきたいと思います。それはよろしいですね。
  170. 丸田和夫

    丸田政府参考人 調べた上でまた御相談に参りたいと思います。
  171. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 いいということですね。  非常に不思議に思うわけでございます。医療用具輸入承認申請書のコピーをいただきました。申請書が一枚あって、その裏に判こが押してあって、別紙一、別紙二、試験検査成績書、臨床試験報告書などがあって、わずか九枚のペーパーでございます。  その中で、「製造方法、貯蔵方法及び有効期間」には具体的な記載が何もない。製造方法、例えばどういうドナーからどういうふうに硬膜を摘出してどうするのかみたいな、一番重要な情報が記載されていない。この「製造方法、貯蔵方法及び有効期間」の欄には何て書いてあるか。「輸入先国名及び製造業者名 西ドイツ B・ブラウン社」と書いているだけなんです。これでは何のことか、どうやってつくるのか、皆目わからない。  こんなものがわずか九枚のペーパーで通っていくものなのか。ヒトの死体からとった医療用具はこのときが初めて。にもかかわらず、こういう形で通っていくものなのか。何なんだと、ここで疑問がわくわけでございます。  この山本氏のコンサルタントとして、厚生省薬務局審査官のOBであった竹内何がしという方が仲介をしたというふうに言われている。こういうことが事務方だけの審査で右から左、専門家の意見も聞かずに前例のないものが通っていく。わずか九枚のペーパーで、製造方法も書いていない。非常に不自然で、どう考えてもおかしい。背景にはこんなことなのかな、疑うとすればこのぐらいしかないのかな。ほかに理由があればお聞かせいただきたいと思うのです。
  172. 丸田和夫

    丸田政府参考人 お尋ねの竹内勝さんという方でございますが、この方は昭和二十三年の十二月に薬務局製薬課に雇われまして、二十四年九月に厚生技官として任官ということでありまして、昭和四十二年十二月末に退職、こういうことでございます。  それで、お尋ねの山本氏のコンサルタントとして竹内氏が個別の品目の仲介を行ったかどうかについては承知していないところでございます。  それから、先生が先ほど申されました承認申請に当たっての資料でございますが、これは既にお手元にあると思いますが、別添一のところに、承認の様式に基づいて、原材料とか成分、分量、あるいは性能、効能または効果、用法、用量というものを掲げてございまして、こういうものを簡潔にまとめてある。それで規格とか試験方法、これは別添のとおり、先ほどのエチレンオキサイドガスとか滅菌のそういったものについて触れてある、こういうものをもとに審査したところでございます。
  173. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 竹内氏がこの件について仲介したかどうかというのは調べていただけませんでしょうか。どういう役割を果たされたのか。承知していないでは腑に落ちないものですから、ぜひお願いしたいと思います。
  174. 丸田和夫

    丸田政府参考人 私どもの局に在籍した方でありますので、いろいろ調べたのですが、竹内氏自身を知っている人ももういなかったという状況でございます。調査はいたしたいと思います。
  175. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 先ほど局長は製造方法について一枚目に書いてあるじゃないかとおっしゃいましたが、「原材料又は成分及び分量」には「ひとの硬膜(脳と頭蓋骨の間にある膜)」、これが原料と書いてありますよ。当たり前といえば当たり前なことで、これしか書いていない。「ひとの硬膜(脳と頭蓋骨の間にある膜)」を、どういうドナーからどういうように採取をするというところが製造方法になるんじゃないですか。その次のページの「製造方法、貯蔵方法及び有効期間」のところには「輸入先国名及び製造業者名 西ドイツ B・ブラウン社」としか書いていない。これで通るのかということを指摘したところが、そういう反論だったものですから……。  もう一度お尋ねをすれば、「製造方法、貯蔵方法」のところは「輸入先国名及び製造業者名 西ドイツ B・ブラウン社」だけでいいんですか。どういうドナーからどうやってとって、どういう加工をしてというのはあるでしょう。
  176. 丸田和夫

    丸田政府参考人 承認審査は最終製品審査することになっておりますので、こういった様式で出していただいているということでございます。
  177. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 本当に、先例もあり、このたぐいのものはよく出てくるわいと、輸入承認審査がそういうものであれば、百歩譲ってそういう答弁でもそうなのかなと思うこともできると思うのですが、前代未聞ですよ。どういう患者さんの硬膜をとったのかもわからない。今現在だって、実際死体からとったものは使われていないぐらいまれなものですよ。そういうものをやるときに、「西ドイツ B・ブラウン社」だけで通ること自体が不思議だ。これは大変な問題だと私は思います。  まだまだ不思議なことがたくさんあるわけでございます。  事前に通告していなかったので申しわけないのですが、ドイツにおける製造承認年月日、一九七八年九月一日という資料をいただきました。ドイツでは七八年に承認されている。その前に輸入承認しているのは、一九七〇年にベルギー、イギリスは七六年。ノルウェーでは八五年。にもかかわらず、日本は、ドイツが製造承認する前の七三年に前例のないものを輸入承認している。これもまた不思議ではないですか。どうでしょう。
  178. 丸田和夫

    丸田政府参考人 先生御指摘のように、ドイツにおきまして承認されましたのは一九七八年でございますが、それ以前に使われていたというふうに聞いております。
  179. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 この輸入承認申請書にも、製造承認がドイツでされているのかどうかも、どこにも記載されていないですよね。こういうことも調べないでやるものなのでしょうか。恐らく、申請から承認まで三カ月という非常に短時間で出ているわけですが、事前面談というものがつぶさにあっただろう。その証拠といいますか、この申請書に添付されている試験検査成績書、これが昭和四十六年、七一年の検査書なのです。検査書をとって申請まで丸二年かかっている。二年前の検査書をつけてそのまま有効だということで、受け取る方も受け取る方だと思うのですが、この二年間にいろいろなことがあったのではないですか。  そのいろいろなことがあったもののメモでも何でも出してくださいと言ったのですが、ないと言うのですよ。本当にないですか。ありそうな感じですよ。出してください。
  180. 丸田和夫

    丸田政府参考人 二年も前の検査成績が添付されているということでございますが、医療用具等の承認申請におきましては、検査成績や試験結果が得られてから申請書を作成するということでございます。検査や試験の時点と申請時点に一定の時間があるからといって、私どもは申請を拒否するものではございません。  また、当該申請において、検査成績が得られてから申請までに二年間を要している点につきましては、その試験結果がその時点の医学、薬学的見地から評価し得る限り、承認審査においては特に問題となるものではないわけでございます。  それから、短い期間で承認審査がおりたということでございますが、私ども、当時の同じようなものにつきましても三、四カ月で承認しておる例が多々あります。
  181. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 本当に不可解です。不可思議でございます。  もう一つの不思議なことがこの承認申請書なのです。昭和四十八年の申請書がA判になっているのですが、この当時はA判でしたか。この時代はB判ではないですか。全部A判でそろっているのですが、四十八年だと、それはB判ではないか。拡大コピーしたのですか。それで、現物そのものを見せてくれませんか、現物の閲覧をさせてほしいというのが一つ。  もう一つ、もう時間がないので一緒に聞いてしまいますが、四十万枚から五十万枚と先ほどから数字が出ております。恐らくこれは百億円ぐらいの取引なのですか。四十万枚から五十万枚というと、値段にすると幾らぐらいになるものか、幾らで仕入れて幾らで売ったか、わかれば教えてください。
  182. 丸田和夫

    丸田政府参考人 最初の資料のA判かB判かということでございますが、これについてはB判でございまして、A判に拡大したものでございます。現物については、後ほど先生の方と御相談を申し上げたいと思います。  それから、どれぐらいかというのは、実は私どもつまびらかに聞いてはおりません。
  183. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 一箱二万円とか、あるいは大きな膜であると十万円とか、そういう話を実は伺っているわけでございます。そうしますと、一万円にしても四十億から五十億、二万円にすると百億。わずか九枚のペーパーで百億の商売ができるという、世の中にそんな甘い話があるのだろうか。それで値段を聞きたかったわけです。もう一度答えてくれませんか。
  184. 丸田和夫

    丸田政府参考人 先生がおっしゃいますように、大きいものから小さいものまであって、一枚がどれくらいというのは私どもも把握していないところでございます。
  185. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 用意した質問の半分ぐらいしかできませんでしたので、委員長にはまた改めて集中審議をお願いしたいと思います。  これで終わります。
  186. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、武山百合子さん。
  187. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子でございます。  きょうは集中審議ということで、私は、三点のことに対して集中的に質問したいと思います。  まず、先日、八月に出ました厚生省調査報告についての意見書についてです。それから、新聞報道等について。三番目に、一九八七年の状況から現在に至る対策から検討、そしてどういう方向性を、厚生大臣並びに厚生行政はこの問題に対して国民に説得力を持って青写真を示すのかという点について。国民が聞きたい立場から三点お聞きしたいと思います。  今回、遅きにという意味合いもこの集中審議はあると思います。七十人からの犠牲者も現に出ておりますし、本当にもう少し早くこういう機会があれば、もっと早く対策を講じられたのではないかと思いますけれども厚生大臣にまずお伺いいたします。  先日、この予備的調査書が出て、厚生大臣も目を通されたと思いますけれども厚生省としまして、裸の王様にはなっていないだろうと私自身判断しておりますけれども、今どんなお気持ちでしょうか。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  188. 津島雄二

    ○津島国務大臣 クロイツフェルト・ヤコブ病は大変に重篤な病でございまして、まず最初に私が感じておりますのは、その病を得られた患者さん、そして家族皆様方のお苦しみ、御労苦は大変なことであろうということ、これが第一でございます。  そのために、難病対策という意味で、国としては、できるだけのことを患者さんや家族皆様方にしてさしあげて、御負担をできるだけ軽減することは当然のことでございますから、これまで医療費の自己負担全額公費で賄わせていただく、訪問介護員の派遣等の支援をするというようなことをしてまいりましたけれども、これからもさらに改善の余地があれば絶えず努力をしていかなければならないと思っております。  一方、今訴訟になっております行政の責任、国の法的責任の問題につきましては、これは客観的な事実に照らして法のもとでどういう判断をすべきであるかという問題でございます。ここをきっちりいたしませんと、先ほどからも御答弁いたしておりますように、新しい医療技術が出てきたときに常にリスクを伴いますから、似たような問題が起こるではないかという御指摘もありますけれども、ここのところはしっかりと判断をしていかなければならない。  今訴訟になって法的手続が進められておりますから、私ども法的責任の前提となるヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病発症の予見可能性があったかどうかということについて、私は、これまでの事実に照らして、一九九〇年代の半ばまでは予見可能性はなかったと考えておりますが、最終的には裁判所判断にまちたいと思っております。
  189. 武山百合子

    ○武山委員 今のお話は、司法判断に任せるということだと判断いたします。  それでは、津島厚生大臣は運がよかったか悪かったか、現時点で、ちょうど二〇〇〇年のこういう集中審議のときに厚生大臣をしているわけですけれども司法判断だけではなく、厚生大臣として道義的に——一九七〇年代から二十七年、三十年近くたっているわけですけれども、第一症例報告されて、日本ではその間七十人からの人がヤコブ病にかかってしまった、そしてもう亡くなっている人がほとんどである。こういう現実的な問題で、厚生省が輸入承認をして現実にこういうことになった現在でも、厚生大臣として司法判断にゆだねると、司法にゆだねるというだけの責任を感じていらっしゃるのか。厚生大臣として何の責任を感じているのか、お答えいただきたいと思います。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 津島雄二

    ○津島国務大臣 毎度お答えを申し上げておりますように、この問題は、基本的に難病対策に対する行政のあり方という立場で対応するのが筋である。  行政責任の問題になりますと、これはおのずから法的にきちっと結論を出すべきで、私どもは、日進月歩の医療技術の進展の中で一体どこまでリスクが許されるのかという問題として、この問題に結論を出していただきたいと思っております。  それは、何度も申し上げましたように、既に今日まで四十万枚から五十万枚、脳外科の医療現場で行われていた治療でございまして、不幸にしてそのうちの七十二例というものが今出ているわけでありますけれども、そのことの評価というのは客観的にやっていただきたい。  私は、一九九三年に人工硬膜ゴアテックスが輸入承認をされますまでは、恐らく代替手段はなかったであろう、かように考えております。
  191. 武山百合子

    ○武山委員 津島厚生大臣のお話を聞いておりますと、行政の状況説明のみで、国民の代表として、厚生大臣としてリーダーシップをとって政治主導で決める、政治が一歩リードして決める部分に対して一言もお答えになっていらっしゃらないと思います。今までの医療行政の中でのヤコブ病状況説明しているだけで、先生個人の、厚生大臣としての責任、何らかの形で感じていること、そこを私はお聞きしたいのです。今先生の説明には全然ないと思います。
  192. 津島雄二

    ○津島国務大臣 率直にお答えをしておるところでございまして、私は、人間として、政治家として、行政が難病の方に何ができるかという立場で誠実に対応すべきだ、かように考えております。
  193. 武山百合子

    ○武山委員 それは行政が国民に対して。では、先生は行政の一人なんでしょうか、それとも、先生は国民の代表なんでしょうか。政治主導で……。国民の代表である先生は、直接選挙で国民の代表として選ばれているわけですけれども、先生は政府の一員でもあり、また行政のトップでもあるわけですね。両方のトップでもあるわけです。先生のお話を聞いていますと、やはり行政寄りなんです。国民の代表としての厚生大臣責任というものに対して、もう少し責任をとっていただきたいと思います。
  194. 津島雄二

    ○津島国務大臣 重ねて申し上げますが、政治家として、また個人として、本当に難病の方は大変であろう、お気の毒だ、このために行政上可能なあらゆることをしてあげなければならないという責任を感じております。
  195. 武山百合子

    ○武山委員 そこはもう少し突っ込みたいところですけれども、何回お聞きしてもきっと同じ考えだと思いますので、次に移ります。  それでは、何を教訓とすべきか。三十年近く続いたこのヤコブ病の一連の状況、報道、それからこれに対応した検討会。そして、今まさにその検討の結果、すなわち、教訓として先生は何を明らかにすることができますでしょうか。
  196. 津島雄二

    ○津島国務大臣 教訓といたしましては、医療というものが絶えず大きなリスクにさらされているなということでございます。  そのリスクを完全にゼロにするためには、新しいことは一切禁止、これしかないわけでございます。ですから、その辺のところはどこまでリスクをかけて新しい技術に入っていくことができるのか、それから、仮にそのような技術に問題が出てきたときに、できるだけ速やかに情報を収集して問題が広がるのを避けるということ、そういう努力はこれからもやっていかなければならない。そして、当然、伴ってくるリスクから生じた非常に不幸な事例に対しては、行政上できるだけの配慮をしてあげる必要があるなというふうに私は受けとめておるところであります。
  197. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、ちょっと細かい部分も中に入ってお聞きしたいと思います。  一九七三年に第一症例厚生省は知ったわけですけれども、この第一症例を知って、厚生省は警告を結果的には見過ごした、そう国民はとらえておるわけですけれども、これを見過ごした結果に対して、今後どのような対策をおとりになろうと考えておりますでしょうか。
  198. 福島豊

    福島政務次官 先生、一九八七年の第一症例のことでよろしゅうございますか。  この第一症例報告につきましては、今回の調査によりまして、厚生省の内部におきまして承知をしておらなかった、把握をしておらなかったということが報告をされているところでございます。  しかしながら、こうした諸外国からの情報の発信に対して、適切にそれを受けとめるということが必要でございまして、現在におきましては、国立感染症研究所のセンターにおきまして、そうした感染症のさまざまな情報を、海外の、例えばWHOというような機関とも連携をしながら収集する体制を確立いたしております。
  199. 武山百合子

    ○武山委員 教訓として大きく変わったところはどんなところでしょうか。
  200. 福島豊

    福島政務次官 教訓として当時と比べてということでございますけれども、厚生行政の中におきまして、医薬品医療用具も含めました安全性ということについての危機管理体制というものについては不断の見直しを行ってきている、私はそのように思います。サリドマイド、スモン、HIV、いずれの時点をとりましても厚生行政が一〇〇%完全であるとまでは申せないと思いますけれども、常に改善を進めていくべきであると私は思っております。  そして、何が一番大きく変わったかといいますと、現在の確立された体制の中では、厚生省の危機管理、各部局を横断する形での危機管理をする体制、そしてまた情報を一元的に収集する体制、そのようなものが確立をされているということでございます。
  201. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、今のお答えの中をもう少し詳しく国民に御説明いただきたいと思いますけれども、危機管理体制がどう変わったか、情報公開がどう変わったかという、大きな変わり方のところをきちっと説明していただきたいと思います。
  202. 福島豊

    福島政務次官 まず、情報収集体制の改善ということでございます。  HIV事件で得られた大変大切な教訓というのは、感染症というものが大変広範な被害をもたらすことがあるということだったと私は認識をいたしております。そういうことを踏まえまして、従来は医薬品等につきましても単に副作用ということだったわけでございますけれども厚生大臣に対する副作用・感染報告医薬品製造業者等に義務づけるとともに、製造業者等による医療医薬品の情報収集・提供の体制、社内教育等を規定する市販後調査の実施に関する基準を制定したというようなこと。  そしてまた、広範な医療機関が実際に副作用や感染症等で被害を受けられた患者さんに接触をするわけでございますから、そうした医療機関からの情報の集約体制というものも極めて大切なことだと私は思っておりますけれども、この点につきましても、すべての医療機関及び薬局からの副作用・感染症情報の報告厚生省が直接受ける制度医薬品等安全性情報報告制度整備いたしました。  先ほど申しましたけれども感染症情報の集約化ということが非常に大切なことでございますけれども、これは国立感染症情報センターを設置いたしました。  そしてまた、危機管理体制ということでございますが、横断的な危機管理体制というものが大切だということを申し上げましたけれども、これについては医薬品等健康危機管理実施要領を制定し、これはさまざまな部局におきまして実施要領というものを制定いたしまして、厚生省の中の情報の共有化と迅速かつ総合的な対応を図っている。  情報の発信も必要だというふうに今先生おっしゃられましたけれども、私もそのとおりだというふうに思っております。それは、国立感染症情報センターにおきまして週報を出しておりますし、インターネット上でのホームページの開設ということもいたしております。そこには全国から寄せられました情報が閲覧できるように随時書きかえを行っておりまして、そういう意味での情報発信というものも行っております。  そして、諸外国の機関——このクロイツフェルト・ヤコブ病の場合にはアメリカのCDCから我が国には報告がなかったわけでございます、そしてまた、実際に輸入業者、製造業者からも報告がなかったわけでございますけれども、しかしながら、諸外国の機関と連携をとることによって未然に防ぐということは当然必要なことでございますから、WHOの医薬品副作用モニタリング制度というものがございますけれども、そういうものを通じた諸外国当局との安全性情報の交換を随時行っております。
  203. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、今まではそこの部分は休眠していたのか、全く行われていなかったのか、新しくつくったのか、今までのものを充実させたのか、その辺を短い言葉でちょっと語っていただけませんでしょうか。
  204. 遠藤武彦

    遠藤委員長 宮島総務審議官、武山さんからは御指名がなかったけれども、いいですか。  審議官、どうぞ。
  205. 宮島彰

    宮島政府参考人 厚生省の危機管理体制についての御質問でございますので、私の方から現在の状況を御説明申し上げたいと思います。  厚生省におきましては、平成九年一月に健康危機管理基本指針というものを策定いたしました。これに基づきまして、医薬品、食中毒、感染症、飲料水の四分野におきまして、それぞれ実施要領を設けました。  さらに、国立病院あるいは国立感染症研究所など国立試験研究機関におきましても、それぞれ独自の実施要領を策定して、健康危機情報の収集、伝達体制を構築したところでございます。例えば、国立感染症研究所の場合ですと、先ほど出ております感染症情報センターのセンター長が厚生省への伝達の責任者ということで、健康危機情報管理者ということで指名しております。  それから、健康危機管理対策室という専任のセクションをやはり平成九年に設置いたしまして、トータルとしての窓口の一本化を図ったところでございます。  それから、これとあわせまして、平成九年度から、厚生省所管の研究費の交付を受けている研究者、主任研究員、サブ研究員を含めまして約一万人ございますけれども、これらの研究者に対しましては、健康危機情報を把握した場合には速やかに厚生省に通報するよう文書で周知徹底しているところでございます。  それから、これまで各部局が縦割りで、横の連絡が不十分であったという御指摘もございましたので、関係部局横断的な組織といたしまして健康危機管理調整会議を置いております。この会議は、毎月一回、定期的に本会議と幹事会を開いています。都合、月二回定期的に会議を開いて情報交換を行っております。もちろん、緊急の事態がありました場合には、随時同会議を緊急招集いたしまして情報交換を行うという体制をとっておるところでございます。  以上でございます。
  206. 武山百合子

    ○武山委員 このたびの予備的調査報告書の中には、厚生省の研究班の貴重な研究報告を全く生かしていない、厚生省が研究報告を生かしていれば多数の国民が死の病に感染するという悲劇は未然に防止できたのではないか、予備的調査はこのことを問題にしていると出ているわけですけれども、悲劇を繰り返さないために、研究者の提言を積極的に施策に活用する努力をしなければならない、反省を謙虚に行うことがまず必要であると書いてありますけれども、この研究者の報告はどのように生かすように取り入れたんでしょうか、福島政務次官
  207. 福島豊

    福島政務次官 ただいまも御説明をさせていただいた点でもございまして、重複になると思いますけれども厚生省は、厚生科学研究費というのがございまして、さまざまな研究をしていただいているわけでございます。当然、その研究の中で、研究者の方々はこれは行政として対応が必要であるという事例に直面することも多々あり得るという観点から、そうした健康危機管理に関しての情報があった場合には、研究の報告を行う際に記載をしていただいて、厚生省に確実にその情報が届くような仕組みをつくった次第でございます。
  208. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、以前は全然報告の義務はなかったという意味ですか。
  209. 福島豊

    福島政務次官 それは、行政上明確にそのような形で定められていたわけではなかったということでございます。
  210. 武山百合子

    ○武山委員 安全性に対する危機管理という意味では、やはりそこの点が非常に灰色でグレーだったというところに大変問題があると思います。  それでは、アメリカの厚生省が、「FDA安全警告 汚染硬膜の可能性」ということで、これはアメリカの厚生省が病院長に報告するよう要請している資料が私の手元にあるんです。これはアメリカの厚生省、FDA、食品医薬品局というところから出ている資料ですけれども、お願いの要請書を先日手に入れました。非常にわかりやすく、簡潔で、大体普通の一般的常識を持った方だったら、子供でもきちっとわかるような文書なんですね。  こういう文書がアメリカでは病院長あてに送られているわけですけれども、先ほどの宮島さんの説明によりますと、国立病院、国立感染症研究所、いわゆる国立しかやっていないわけですね。その中には私的な部分というのはどうして欠けているんでしょうか。
  211. 宮島彰

    宮島政府参考人 今御指摘ありましたように、主として厚生省の体制と国立病院なり国立試験研究機関等の体制は先ほど御説明申し上げましたが、もう一つ、先ほどもちょっと触れましたけれども厚生省の研究費の交付を受けている研究者、これは大半が厚生省の外部の研究者でございますけれども、そういう研究者につきまして、約一万人ぐらいおりますけれども、研究の過程で健康危険情報を把握した場合には、速やかに厚生省に通報するよう文書で周知徹底しているという対策もあわせてやっているということでございます。
  212. 武山百合子

    ○武山委員 こういう安全警告なんというものは、病院関係者、保健所、各市町村の健康管理をするところには全部に通達するものだと思いますけれども、どうして日本の場合は危機管理がそういうところまで行っていないんでしょうか。  危機管理という意味では、今お話しされたところだけに行っているのでは危機管理にならないと思いますけれども、なぜ一般的に常識で考えられるところに行かないんでしょうか。それとも、この硬膜の移植をしているところだけに行っているという意味にとらえてもよろしいんでしょうか、政務次官。
  213. 福島豊

    福島政務次官 先生、特定のところだけに情報を発信するということではないと私は存知いたしておりますけれども、より詳しくは参考人の方からお答えさせていただきたいと思います。
  214. 丸田和夫

    丸田政府参考人 先生御指摘のものが、FDAの安全警告というものを御指摘ということであれば、私どももいろいろな副作用安全性情報についてはいろいろな形で出しております。  例えば、非常に緊急を要する場合はドクターレターということでファクス等を通じまして医療機関あるいは薬局等に迅速にお知らせする、こういうこともあります。また、いろいろな副作用情報について取りまとめましたものは、二カ月に一回、医薬品医療用具等安全報告という形で一般に幅広くお伝えしている、こういう状況でございます。
  215. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、先ほどの宮島さんと意見が違いますけれども、どちらが正しいんでしょうか。今、丸田さんは、安全警告という形であらゆるところに行っている。先ほどの宮島さんは、国立病院並びに国立感染症研究所などということですけれども、どっちが事実なんでしょうか。  私が聞いているのは、「安全警告 汚染硬膜の可能性」ということでアメリカではきちっとわかりやすく病院すべてに出しているという……。アメリカの場合、病院が地域で営まれておりますから、大体、人口五、六万に一つで、十万以上になると二つとか、二、三十万の人口になりますと三つぐらいという割合で、日本のように個人開業の病院が多くあるわけじゃないですね。ですから、大きな病院になっているわけですから、そこの病院へ行くことによって全体に周知徹底できるというようなシステムで、日本の場合と状況が違いますので、その辺は比較できませんけれども、ある面参考にはできるわけですね。ですから、この安全警告という意味で、今のお話は、これだけで時間をとりたくないんですけれども、どちらが正しいんでしょうか。
  216. 福島豊

    福島政務次官 宮島参考人からの御説明は、さまざまな健康危機情報を収集するという、集める側の話でございます。そして、さまざまな警告を発する、すべての医療機関に対しまして緊急情報というような形で提供し得る、これは丸田参考人からの御説明であったと思います。
  217. 武山百合子

    ○武山委員 安全警告というのは、やはり危機管理だと思うんですね。  もう一つ、ここに「輸入品警告」ということで出ておりますけれども、これもアメリカで出たものですね。これは私のところにある資料に出ておりますけれども、アメリカがすべていいとは思いませんけれども、第一症例ですぐ調査にかかって、疑わしきロットは全部廃棄処分にするようにという指示が出ているわけです。そういう一つ一つの本当に網の目のような小さな部分でも、人の命、安全性に対するものには常にぴっと神経を張り立てて見逃してはならないというのが厚生行政でもあるし、人の命、健康を預かる厚生省責任だと思うんですね。  それでは、今の厚生省の行政の対応の仕方、そして厚生大臣お答えだと、国民は何に安心感を持って生きたらよろしいんでしょうか、厚生大臣
  218. 津島雄二

    ○津島国務大臣 今、本件についてのアメリカの対応と比べてのお話でございましたね。午前中も御答弁があったと思いますが、アメリカで第一症例が出ました一九八七年の段階は、何が原因であるかはっきりわかっていなかったが、特定ライオデュラとCJDの関係が疑わしいということになって、特定ライオデュラの製造番号に近いものについて回収をさせた、これはもう先生御承知のとおりだと思います。  たまたまそうではあったけれども、そのロット番号のものについては日本に輸入されていませんから、日本には全く連絡がなかった。アメリカで方策をとったとおっしゃるけれども、あのときにアメリカでやったのはそれだけであった。  その後、第二症例、第三症例が出てきて、それからだんだんと本当はどうもプリオンであるということがわかってきた。そして、最後に、WHOはこれはやめた方がいいという話になり、日本も全面的に禁止し、そのときには人工硬膜ができていた。こういうプロセスであると私は受けとめておりますから、私は、アメリカと日本が天と地の差があったというふうには受けとめておりません。
  219. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、アメリカは何例ぐらい症例があったんでしょうか、教えてください。
  220. 丸田和夫

    丸田政府参考人 御指摘症例でございますが、まず第一症例が一九八七年ということでございます。その後、アメリカ以外のところで症例が出てきた、こういう状況でございます。
  221. 武山百合子

    ○武山委員 今のお話ですと、二例だけという意味なんでしょうか。数をお知らせいただきたいと思います。天と地の差の議論をしたいと思いまして。  結局、数が何かあやふやで、二例だけなのか、アメリカだけが二例なのか、全世界で、日本以外で二例なのか、ちょっと教えてください。
  222. 丸田和夫

    丸田政府参考人 安全警告が出されたときのものとしては、アメリカでは一例でございます。私が申し上げましたのは、その後、第二例がニュージーランドで平成元年に、第三例が同じく平成元年に出た、そういうことでございます。
  223. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、もう一度丸田さんにお聞きしたいのですけれども、二例だということ、そして、日本は七十二例ですか、それだと数の上では天と地だと思いますけれども、どうして日本だけこんなに多いのでしょうか。
  224. 丸田和夫

    丸田政府参考人 それにつきましては、平成八年に、イギリスにおきまして狂牛病事件で新変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病というものが発生いたしましたので、我が国におきまして全国的な実態調査をしたわけでございます。そういった中で、クロイツフェルト・ヤコブ病患者さんの中でヒト乾燥硬膜を使った人の例ということで、当時は最初九名、それから二十七名、それで四十三名だったと思います、そういった形で実態が把握されたということでございます。  全国的な調査をやったのは世界的には日本だけであったと思います。
  225. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、厚生大臣にお願いいたします。  諸外国では二例で済んだものを、日本だけ七十二例ということは、それだけ人の命が失われたという意味では、人の命はお金にかえられないわけですし、それは天と地の差だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  226. 津島雄二

    ○津島国務大臣 事務当局から答弁してもらいますが、アメリカでは日本のような悉皆的な調査はしていないと思っております。
  227. 丸田和夫

    丸田政府参考人 世界的な症例の数でございますが、一九八七年に第一例が出まして、その後、年を経まして世界各地で症例が出されております。それで、平成九年にWHOにおきまして使用停止の勧告が出たとき、WHOが世界的につかんでいる数字は五十例を超えるということでございました。  そういった中で、既に我が国におきましては全国調査をやっておりましたので、WHOの五十例の中に相当数の割合で含まれていたということで、現在におきましては、我が国におきますヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病患者さんは七十二名ということでございます。
  228. 武山百合子

    ○武山委員 アメリカでは調査がなされなかったということが事実か事実でないかはわかりませんけれども、現実的には、日本ドイツから全体の三五%も輸入しているということで、そこの部分に対して危険性が多かったというのは、結果的に事実なわけですね。  全体を一〇〇とした場合、三五%も日本に輸出されていた。その輸出された硬膜の移植自体に問題があったということでありますので、これは他の国が症例がなかったとかあったとかという問題よりも、それだけ日本に多かったという事実を把握して、そして、現実はこうなわけですから、今後どういう対策をしていくのか、その辺を厚生大臣にお聞きしたいと思います。今後の国内対策
  229. 津島雄二

    ○津島国務大臣 先ほど家西委員にもお答えをいたしましたけれども、基本的には、大変に苦労しておられる患者さんと御家族のために難病対策として何ができるか、行政上可能なぎりぎりまで研究をし模索をしていかなければならないということで、今いろいろと研究をさせていただいております。
  230. 武山百合子

    ○武山委員 今のお話ですと、国民はほとんど満足しないと思います。国民が望んでいることは何か、国民がどういうことをしてもらったら、どういうことを述べていただいたら安心するかという視点で厚生大臣は答えていただきたいと思います。  私、委員長に資料提出をお願いしたいと思いますけれども宮島総務審議官がお答えになりました国立病院、国立感染症研究所に出している通達、どのような中身か。それと、丸田医薬安全局長がおっしゃっていた、一般的に危機管理で出している書面がきっと違うんだと思います、その二点をぜひ見せていただきたいと思います。  これをもちまして私の質問を終わります。ありがとうございました。
  231. 遠藤武彦

    遠藤委員長 引き続き、瀬古由起子さん。
  232. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  厚生省は、今回の調査の中で、「患者ヒト乾燥硬膜移植を受けた当時においては、ヒト乾燥硬膜によるCJD発症の危険性を予見し、ヒト乾燥硬膜の輸入や禁止を行うべき状況にはなかったものと考えている。」こういう見解を明らかにしております。本当に予見できなかったのかどうか、予見するための努力や検討が厚生省によってどのように行われたのか、この客観的な事実についてお伺いいたします。  まず、承認時の問題なんですけれども、先ほどもお話がありましたように、この承認に当たっては試験検査が国立衛生試験所によって行われております。これを私は持ってまいりましたけれども、その検査をした結果、菌の検出は認められない、こういうものがつけられているわけですね。そして一方では、同じ国立衛生試験所の報告がされていて、承認するためのいろいろな検査の条件があるわけです、一つはエチレンオキサイドガス滅菌の問題、それからもう一つは放射線滅菌の問題があるわけです、しかし、この問題は、先ほども指摘されておりましたように、国立衛生試験所自身が、大変問題でこの検査では不十分だということを明らかにしているわけですね。  これは、厚生省が承認するに当たって、同じ試験所から、これでいいですよという結果が出されていて、もう一方の研究結果の調査ではライオデュラの認可条件であるこの滅菌条件では大変不十分だと書いている。これはおかしいなというように、研究所の中か、もしくは厚生省が認可に当たって検討されなかったのかどうか、この点、いかがでしょうか。
  233. 丸田和夫

    丸田政府参考人 先生御指摘の国立衛生試験所の試験の結果ということでございます。承認審査に当たりましては、先ほども申し上げましたが、滅菌につきまして国立衛生試験所できちんとチェックした、こういうことでございます。  それで、先生は同じ試験所の中での報告ということでありますれば、先ほど金田先生が御指摘になった一九七一年あるいは七二年の試験報告ということであろうかと思います。御指摘の二つの報告ということでありますが、エチレンオキサイドガス滅菌につきましては、滅菌後に一般細菌の残存の可能性に触れている、こういうものでございます。
  234. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 いえ、検討したかどうか。詳しいことはいいです、検討したかどうかです。今私が聞いたことにきちっと答えてください。それだけでいいです、この二つの事実がずれていないかということで検討したかどうかです。それだけ言ってくださればいいです。
  235. 丸田和夫

    丸田政府参考人 同じ衛生試験所の試験報告ということでありますが、性格は全く異なるものと思っております。  私どもは、承認審査に当たりまして、具体的に衛生試験所が検査した結果をもとに認めている、こういうことでございます。
  236. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 では、二つの報告の違いについては検討されなかったということでいいですね。それだけ言ってくださればいいです。イエスかノーかです。
  237. 丸田和夫

    丸田政府参考人 二つの試験報告につきましては全く性格が異なるものでありますし、条件というものも検査結果というのも異なるということであります。  私どもとしては、具体的には、国立衛生試験所に提出して、そこで検査結果が出たものに従って判断しております。
  238. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 検討したかどうかです。両方について検討したかどうか聞いているだけなんです。何遍も同じことを言わせないでください。ちゃんと答えてください。二つの問題を目の前にして検討したかどうかと聞いているんです。ちゃんと答えてくださいよ。
  239. 遠藤武彦

    遠藤委員長 瀬古委員に申し上げますが、指名を受けてから。
  240. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 はい。
  241. 遠藤武彦

    遠藤委員長 今度は指名しませんよ。
  242. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 委員長、でも、ちゃんと答えさせてください。
  243. 遠藤武彦

    遠藤委員長 ちゃんとかどうかはあなたが判断することです。
  244. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 いえいえ、全く答えていないです。
  245. 丸田和夫

    丸田政府参考人 そういう意味では、検討したということはないと思います。
  246. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 端的にお答えいただきたいと思うのですね。  あなたたちは、このライオデュラの認可に当たっては、腸線縫合糸という前例があるのである意味ではきちっと薬事審議会にかけなかったというように先ほど言われましたね。  しかし、国立のこの試験所では二つの条件とも大変問題があるというふうに警告をしているわけですね。大体ヒト由来と動物由来を一緒くたにするということもむちゃくちゃなんですけれども、たとえそれを参考にしたと言われても、それが参考にならない条件を前提として承認をしたんじゃないかと思われるのですが、このことについても検討したかどうか。ひょっとしてこの腸線縫合糸の認可条件はちょっとずれているのではないか、これは前提にしたらまずいなというふうに御判断されるような検討がされたのかどうか。これもイエスかノーかで結構です。していなければしていないで結構です。
  247. 丸田和夫

    丸田政府参考人 イエスかノーかということではございますが、最初の二つの試験報告に立ち返るとこういう問題がありますので、お答えさせていただきます。  七一年と七二年の二つの試験報告というものは、エチレンオキサイドガス滅菌につきましては……
  248. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 時間がありませんので、イエスかノーかで。  両方並べてこれはおかしいな、腸線縫合糸とライオデュラを一緒の条件でやるというのは前提が狂っているんじゃないか、こういうことをそのときに検討したかどうか、イエスかノーかだけで結構です。していないならしていないと言ってください。ちゃんと答えてくださいよ。
  249. 丸田和夫

    丸田政府参考人 二つの試験報告というものは性格が異なるということでございます。そういうことをもとに考えましても、いずれの滅菌方法、これにつきましては通常の条件下で行われれば現在でも十分に効果のあるものと私どもは考えております。
  250. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今考えているということであって、そのときに検討してそういう結果になったのかと聞いているんです。今の判断は、それであなたたちは考えているんでしょう。そのときにそういう判断をしたんですか。
  251. 丸田和夫

    丸田政府参考人 性格の異なるものでありますので、そういう面では判断はしておりません。
  252. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 性格が異なるということだって、これは異なるなというふうにそのときに判断したかどうかが問われるわけですよ。それだってあなたたちはやっていないのでしょう。二つを合わせてこれは違うななんという論議もされていないということがよくわかりました。  二つ目ですけれども、先ほどこのライオデュラ日本で初めてのヒト死体の製品だということが言われたわけですけれども、その当時、世界で輸入をしていたのはベルギーだけだったというお話がございましたね。そうしますと、普通、死体からつくったそういう製品調査する場合には、ベルギーはこの輸入をしたときどういう条件をつけていたんだとか……。先ほどアメリカの例なんかも出されました。アメリカももっと前から使っていたんです。しかし、アメリカは、この脳硬膜を使う場合には、感染性のあるドナーからは、それからがんなどの病歴のあるドナーからは一切使わないということで、かなりドナーのチェックがされていたんですね。  ですから、輸入を承認するかどうかに当たって、当然そういう世界のいろんな情報を集めて検討されたというふうに私は思うのですけれども、そのときに外国に問い合わせをされたでしょうか、いかがですか。
  253. 丸田和夫

    丸田政府参考人 私どもとしましては、承認審査に際しましては、当時の医学、薬学的な知見に基づきまして、いろいろな滅菌条件等に合致するかどうか、また、衛生試験所におけるそういった調査結果というものを踏まえてやっております。そういう意味では、当時外国の例まで調べたかどうか、現段階ではまだはっきりしておりません。
  254. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 調べたかどうか、外国に聞いたかどうかというのは、厚生省はわかっていないのですか。調べていたのか調べていないのか、それぐらいわかるでしょう。何でそんなことが厚生省は今わからないのですか。  常識で言えば、日本に初の輸入で、それも死体からつくったものを、せめて外国でいっぱいどこでも使っているのならともかく。少なくともベルギーしかやっていないわけですよ。あと使っている国は、いろいろな慎重な条件をつけてやっている。調べれば、直ちにこれは慎重にやらないといかぬぞというふうに普通はなるわけです。  外国に問い合わせをしたのかどうかと聞いているだけです。イエスかノーかでお答えください。
  255. 丸田和夫

    丸田政府参考人 承認時にこれを参考としたかどうか、現在のところでは不明でございます。
  256. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 本当にひどい話です。私は、直ちにそれについてはちゃんと照会したかどうかぜひ調べて、報告していただきたいと思います。  承認時は大変ずさんだ、いろいろな条件が出てきたのに全く検討もしていないということがよくわかりますね。  二つ目の問題について聞きたいのですが、一九七八年度の研究班の研究報告書の「厳重注意を呼びかける。」という問題です。研究班が設置されて、石田班長は、この病気では「患者脳組織に直接接触することによってのみ伝達が可能なので、脳病理、脳外科関係者に厳重注意を呼びかける。」このような記述があるわけですね。これについて厚生省は当然この時点で脳病理の関係者だとか脳外科の関係者に対する対策を検討されたと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  257. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 御指摘の研究報告書のことでございますが、この研究班につきましては、学術的な観点から当該分野にかかわる研究者や一般の臨床医への普及が期待されていたものでございます。したがいまして、この研究班の研究成果の普及方法といたしましては、いわゆる民間学術団体を通じて自主的に行う形が適当とされていたところでございます。実際に、研究報告書は全国の大学の医学部あるいは医師会などに広く配布されていたほか、当該研究班においても一般研究者向けの研究発表会を開催しており、一定の周知が図られていたと考えております。  御指摘のその部分でございますが、脳解剖や脳外科手術を行う脳病理あるいは脳外科関係者に対して注意を促したものでございますが、その内容は、脳病理あるいは脳外科関係者を初めとして、クロイツフェルト・ヤコブ病に限らず感染性のおそれがあるものの取り扱いにおける一般的な考え方であったこと等から、この研究報告書の作成、配布などによりまして周知が想定されておったわけでございまして、私どもが行いました予備的調査によりましても、当時の関係者に確認したところ、厳重注意を呼びかけたあるいはそれを検討したというような事実は確認されておらないわけでございます。
  258. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 一般的に研究発表会で、そのうちにそれぞれその文献を通じてみんなが知るだろう、そういう警告じゃないんですよ。ある意味では、脳病理や脳外科の関係者は今なおその危険性にさらされている。そのことについて厳重注意を呼びかけるといえば、本来なら厚生省は今それに携わっている人に直ちに連絡するとか通知するとか、そんなことは当たり前じゃないですか。それをやっていなかったということがよくわかりました。  そうしますと、直接接触する関係者が危ないということですから、頭の中に埋め込まれる患者にとって危険だということは当然で、私が素人で考えても、これは大変なことだなというふうに思うと普通は思うのですけれども厚生省はこの脳硬膜の移植の問題については検討されましたか。
  259. 丸田和夫

    丸田政府参考人 御指摘の一九七八年度研究報告書の記載というものは、ただいま保健医療局長が申しましたように、クロイツフェルト・ヤコブ病患者の脳の解剖や脳外科手術を行う脳病理、脳外科関係者に対しまして汚染防止の注意喚起を行うことの必要性を記載したものでございます。ヒト乾燥硬膜危険性について述べたものではないと考えております。  そういったことから、脳組織でもない硬膜を原料といたしますヒト乾燥硬膜について、クロイツフェルト・ヤコブ病感染危険性を前提として検討するには至らなかったと考えております。
  260. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 要するに、ここでも検討していなかったということなんですね。  しかし、一九七八年に石田班長の書かれたことは研究班員の中では常識的なことだった、ある意味では、脳硬膜の危険性、CJDの患者の臓器の危険性については本当に常識的なことで、一九八七年に第一例がアメリカで発表されても、当然起こり得る悲劇として我々は受け取ったと思いますと、特定疾患対策懇談会評価調整部会で班長であった立石さんが証言している。その当時、直接厳重注意を呼びかけるとか、これは何とかしなきゃ犠牲者が出るぞということは、関係者なら当然十分知っていたということが証言をされているわけですけれども、ここについても厚生省は何も検討しなかったということがわかりました。  次は、一九八四年から八六年の研究班の研究報告書、臓器製剤等の危険を指摘するという問題の期間なんですけれども、一点お聞きしたいと思うのです。  一九八五年に、アメリカ及び英国を中心にヒト成長ホルモン剤投与によるヤコブ病症例が多数報告されて、国際的にも大変問題になったことがございます。当時厚生省は、成長ホルモンについてヤコブ病感染の被害の生ずる危険性について、製造方法がこれでいいのかどうかという検討を行われているわけですね。そのときに、同じヒト組織であるライオデュラの製法に対する安全チェック、それに似たものが大変危ないということが指摘されていたら、同じようなヒト組織であるライオデュラについても果たして製造方法がどうなのかというのは普通だったら検討するんじゃないかなと思うわけですけれども、その点、厚生省は検討されましたか。
  261. 丸田和夫

    丸田政府参考人 ヒト成長ホルモン製剤につきましては、短期間に同様の症例報告が多数把握されたということ、それから、ヒト成長ホルモン製剤は脳組織である脳下垂体を原料として製造されるということで、脳組織クロイツフェルト・ヤコブ病感染媒体となることは当時の動物実験結果から判断できたわけでございます。そういう意味では、クロイツフェルト・ヤコブ病感染媒体として認識されたわけでございます。  これに対しまして、ヒト乾燥硬膜につきましては、ヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病を示唆するような症例報告昭和六十年当時にはなかったということと、脳組織ではない硬膜を原料とするものであったことから、ヒト成長ホルモン製剤と同様に考えることはできなかったというものでありまして、これで検討したということはございません。
  262. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 研究班は、このとき、毎年臓器製剤等に係る感染危険性の警告をしているのですよ。それは脳組織そのものからつくる臓器製剤に限定はしていないのですね。そして、その当時でも、ノーベル賞受賞者のガイジュゼック博士が、有名な論文で、すべての患者組織感染の可能性があることを考えなきゃならない、それは中枢神経に限ったことではないという警告も発しているわけですね。  それを、あえて脳硬膜だけは違うんだというか意識的にそれだけ排除して考えていたということで、意識的に排除してというか、そのときに脳硬膜は関係ないという検討をされた経過もないわけですね。いや、検討した結果脳硬膜は別だと言われるなら別ですよ。だけれども、そのときに検討もしていないわけですから、これは別だなんて言えないと思うのです。  では、次のところで伺いたいと思うのですけれども、アメリカでは、ライオデュラ移植による第一症例が明らかになったために、アメリカの疾病対策センター、CDCが、一九八七年二月の週報で世界に向けて発信していますね。六月には輸入禁止措置をとった。症例は、米国医師会雑誌日本語版、一九八七年の八月号に出ております。日本臨床ウイルス学会誌も、同年十月号で紹介しております。厚生省は、これらの報告を検討しましたか、いかがでしょうか。
  263. 丸田和夫

    丸田政府参考人 一九八七年二月のMMWRに掲載されました第一症例報告に用いられたヒト乾燥硬膜は、ドイツのB・ブラウン社製造の、ロット番号二一〇五のライオデュラであったことから、当時FDAは同一のロット番号の製品が輸出されていた五カ国に対しましては連絡したものの、我が国には二一〇五のロット番号の製品は輸出されていなかったため、FDAからの連絡はなかったわけでございます。  それから、第一症例報告と、これに関連してFDAが講じました安全警告の措置につきましては、その後もFDAから我が国に連絡はなく、また、ライオデュラの輸入販売業者からも報告がなかったことから、厚生省では把握し得なかったわけでございます。  それから、MMWRに掲載された症例報告につきましては、当時の厚生省本省の職員で認識していた者は確認されておりませんが、当時、クロイツフェルト・ヤコブ病が百万人に一人の割合で発生している病気ということ、それから、クロイツフェルト・ヤコブ病原因因子感染メカニズムも不明であった、こういうことを考えますと、唯一の症例報告が紹介されました時点で、直ちにヒト乾燥硬膜クロイツフェルト・ヤコブ病の関係を認識できる状況にはなかったものと考えております。
  264. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 それも私は問題だと思いますよ。関係についてその当時認識がなかったのでと言われるのだけれども、関係があったかどうかは別に、その当時、少なくともこういういろいろな雑誌のものは見て検討していなかったということがわかるわけですよね。  アメリカから連絡がなかったといったって、それはちゃんと世界に向けて発信されているわけですから。まじめに厚生行政をやって、世界の情報をどうやってつかむか、その一つによって国民の命がかかるわけですよ。そういう点では、アメリカから報告がなかった、もちろん会社責任もありますよ、しかし、少なくとも厚生省はその当時は世界的にも報告されていることについてはつかんでいなかった、これが言えると思うのですね。  今言われたロット番号二一〇五が日本に入ってきていなかったということなのですけれども、当時FDAが廃棄対象にして警告したのは、ロット番号二千番台とロット番号がわからないものすべてということになるのですね。二で始まる八二年製造のものはすべて大変危険性があるということなのです。そういう点では、当然二のついているものは入ってきていたと思われるわけですけれども、その点での検討はどうだったのか、実際二のものはどれだけ入ってきていたのですか。
  265. 丸田和夫

    丸田政府参考人 FDAが警告したものは、先生御指摘のように二千番台と番号不明の製品ということでございます。二一〇五のロット番号のものについては入ってきていないということでございますが、御指摘の二千番台のものにつきましては、現在から見ますと入ってきていたと推測されます。
  266. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 そうしましたら、二千番台のものについては入ってきているということがわかっていれば、それについて大丈夫か、ある意味では使用禁止の措置をとる、廃棄処分をする、こういうことをやるのが当たり前だったわけですね。しかし、厚生省はその検討もしなかったということがこれでわかると思うのです。  そういう点では、ある意味では厚生省がそのときの重要ないろいろな情報を本で見ることもなかったし、たとえ見ても、あなたたちはその当時の状況で言えば多分予見できなかっただろうなどと言われていますけれども、予見できたかできないかの前に、きちんとそのときに検討したかどうかが問題なのですね。その結果、予見できないという結論を出したなら出したで、それはまたいろいろな判断があるでしょう。しかし、少なくとも厚生省としては、いろいろな情報があるのに、二千番台が入ってきているのに、そのときに措置をとったら助かる人たちだってたくさんいたと思うのですよ、それも放置したということが今問題になっていると思います。  そこで、何と一九七三年から、一九九七年三月二十七日にWHOが勧告して、翌二十八日に使用禁止と回収の緊急命令が出されるまで、実に二十四年間も要しているわけですね。この間に使用されたヒト乾燥硬膜、一体幾つの医療機関に納入して、各年ごとの納入数は一体どうなっているのでしょうか、医療機関数と回収数について教えていただきたいと思います。さらに、ヤコブ病の発症者が何人で、そのうち生存者は何人でしょうか。
  267. 丸田和夫

    丸田政府参考人 輸入承認以降の詳細は承知しておりませんが、我が国におきますライオデュラの販売につきましては、一九八八年から一九九六年までの間に、約千八百五十の医療機関に対しまして、約七万三千八百箱が納入されたと輸入販売業者からは聞いております。  それから、平成九年三月の回収命令の結果につきましては、七百七十六の医療機関から二千八十四箱と九百九十枚が回収されたと輸入販売業者から報告を受けているところであります。
  268. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 生存者についてのお尋ねでございますが、クロイツフェルト・ヤコブ病類縁疾患調査によりまして把握をしておりますヒト乾燥硬膜移植歴のあるクロイツフェルト・ヤコブ患者数は六十七例でございます。また、平成十一年四月一日からは、いわゆる感染新法によりますサーベイランスを実施しておりますが、そこで十一年十二月三十一日までに五例の報告がされておりますので、六十七と五を足しますと七十二例ということになるわけでございます。  しかしながら、CJDは発症してから死亡まで平均十八カ月という大変重篤な疾病でもございますので、今申し上げた数字のうち、現時点での生存者数ということについては把握していないということでございます。
  269. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 大半の方が亡くなっているわけですね。実際に自分の病気が何だったかわからずに亡くなっている方も多い。今でも、そういう生存されている患者さんの家族の方が本当に必死の懸命な介護をなさっているわけです。  私が今お話しさせていただきましたように、厚生省がこのときに検討していれば、それはそのときにひょっとして、まだちょっといいじゃないか、まだ使い続けてもいいじゃないかという結論が出たかもしれない、しかし、これは見直してほかの事例も調べようじゃないかという事態もあったかもしれない。私は、幾つかの契機があって、そのときに厚生省が、ちょっとでも関係者が集まって検討していれば、もっと早い段階でこういう被害を食いとめられる可能性は十分あったというふうに、今お話を聞かせていただいて思ったわけです。  その点、厚生省があらゆる機会に、ある意味では検討さえしなかった、何もしなかった、こういう経過を見れば厚生省が当時予見できなかったというのは認めるわけにはいかない。そういう点での厚生省責任、こういう重い事実と責任があると思うのですけれども大臣、いかがでしょうか。
  270. 津島雄二

    ○津島国務大臣 これまでの経緯について数々のお話を伺ってまいりましたが、毎度申し上げておりますように、この大変な難病にかかっておられる患者さんと御家族に対しては、私ども行政の方でできる限りのことをしなければならないと思っておりますし、それが私ども責任の所在であるというふうに思っております。  その一方、それでは、今お話のございましたこれまでの経緯において我が国の行政当局がどこで回収命令を出せる状況にあったか、その背景にある知見が蓄積されておったかということについては、私は毎度申し上げておりますように、例えば第一症例が一九八七年に出ましたときに、アメリカはライオデュラの輸入差しとめをしましたけれども、カナダ当局は勧告にとどめ、B・ブラウン社のある肝心のドイツではさらに使用を容認し続けた、あるいはイギリス当局も使用を容認し続けた。そういうふうに各国で大変にばらばらな対応になったのは、結局せんじ詰めれば、クロイツフェルト・ヤコブ病というものの感染の機序についてはっきりした認識がなかったのは、これは残念ながら事実でございます。  その原因因子細菌でもウイルスでもないたんぱく質プリオンであるということが、ようやく生物学の常識を覆すような学説として確かめられたのが平成五年、一九九三年の時点でございますから、これは非常に難しい状況にあったと言わざるを得ない。  その上、今先生お聞きになった、どのくらい使われたということについて事務当局は控え目な数字を申し上げましたが、私の与えられている資料では、一九七三年から九六年までの輸入量は四十万から五十万枚である。そのうち半分はアルカリ処理で、半分はアルカリ未処理であったというような事実がある。それが脳外科の現場では盛大に実は使われていたことは事実なんでありますね。そして、ようやく一九九三年の段階でゴアテックスという人工硬膜が入手可能になった。  こういう事情を背景にいたしまして予見可能であったかどうか、裁判で今判断を待っているところでございますから、私としては、客観的な事実と法に照らしてその判断を待ちたいというふうに思っておるところであります。
  271. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 当時予見できたかどうか、感染原因についてもまだよくわからなかった事例は幾つでもあるわけですよ。例えばスモンの問題でも、原因確定以前の責任も認めて厚生省は謝罪されていますから、はっきりしない限りは、原因がどこにあるか、何が原因かということがわからなければそれを食いとめるわけにいかないという理由は成り立たないと思うのですね。これは危ないな、こういう危険性というか、菌が殺菌できない状況があるんだとか、感染するんだという事例が山ほど出ているわけですから、そういう場合には原因がはっきりしなくても中止するということは、当然今まででもやってきたし、それは十分可能だと思うのです。  そして、今大臣が言われた四十万、五十万が使われた場合に、その事実をと言われるのだけれども、ヤコブの場合は物すごく潜伏期間が長いですから、十年後、十五年後にその四十万、五十万の方が丸々発症するかどうかわからないにしても、しかし、WHOは全部廃棄ですよ、アルカリ処理の分もみんな廃棄するというふうに勧告しているわけですから、そういう点では、四十万、五十万の人たちが将来どういう影響が起きて発症するかわからないという場合には、これは危険だと思った場合にはストップしなきゃならない。これだけ使われたから認めて当然だなんという発想は、これは私は厚生大臣の言葉としては捨ておくわけにはいかないというふうに思うのですね。  それと同時に、私が大臣にぜひ言いたいと思うのは、その当時、いろいろな文献が出ている、いろいろな結果が出たときに厚生省が議論して、いろいろな資料を取り寄せようじゃないか、外国の例はどうだろうかといって検討して、その結果、ほかの外国もみんなやっているから輸入するのはやめておこうとか、これを使うのはやめておこうという結論を出したんじゃないのです。その検討をしなかったということに私は本当に怒りを感じるわけですよ。した上でこういう結論を出しました、この時点はこういう結論を出しましたと言われるならまだいいですよ。その問題が出たときに全然検討もされなかった、ここに今問われる問題があると思うのです。  もう時間がありませんので余り言えませんけれども、例えばサリドマイド事件のときにも、スモンの問題でも、HIVの問題でも、先ほどお話ありましたように何度も同じ議論をやってきて、厚生省は何度も同じような言いわけをしてきて、最終的には、二度とこういう薬害が起こらないようにという反省も幾つかされているわけですね。反省も謝罪もされている。  それから、スモンのときの金沢地裁の判決では、厚生大臣医薬品の安全性の確認についての注意義務は、その時代における最高の学問的水準によったものでなければならないと。衆議院の七九年の薬事法の改正のときの附帯決議でも、製造承認、再審査及び再評価の資料は公表学術文献によるとの原則をさらに徹底させると。その当時の最高の水準で常に情報をキャッチしてやらなければならないということをこの薬害の反省からわざわざ国会の決議にもされている。裁判所の判決にも出ている。  ところが、また同じようにその当時予見できなかったといって、まじめに議論をしないでそうやって居直るという姿勢は、この間積み上げてきた薬害事件についての反省が本当にあるのかということが問われざるを得ない。こういう点では、それこそ、クロイツフェルト・ヤコブの患者さんや家族の人だけじゃなくて、今まで薬害で被害を受けて裁判に追い込まれざるを得ないような人たちをも含めて、何度もその願いを踏みにじるものだというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。大臣、お願いします。
  272. 津島雄二

    ○津島国務大臣 いろいろ御意見でございますが、やはり国民の健康を守る立場の薬務行政担当者は、議論もしないでというお言葉は受け入れることはできないと思います。常に、そのときに入手可能なデータを基礎に議論をした上で結論を出しているというふうに私は確信しております。
  273. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 そのときに入手可能だといっても、自分の、厚生省の管轄の研究者が出している、研究班が毎年毎年警告までしている、それが何で入手可能でないのですか。まじめに考えたら、そんな資料は見ようと思えば幾らでも見られるわけですよ。それを見ないで、検討もしないで今日まで引きずってきたという責任は本当に重いと思うのです。  私は、裁判はもうやむを得ずというか、今の患者さんの状況家族状況、そして遺族の皆さんの状況を考えたら、裁判をやるなんていうのは大変なことですよ、そういう思いを本当にしっかり受けとめて、同じ薬害事件の今までの教訓をしっかり学んで、再びこのような被害を発生させないという決意をぜひこの中で大臣も含めて反省していただきたいというふうに思っています。  以上質問を終わります。ありがとうございました。
  274. 遠藤武彦

    遠藤委員長 次に、中川智子さん。
  275. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  委員長におかれましては、閉会中のこの薬害クロイツフェルト・ヤコブ病の集中審議に対しての御理解を賜り、努力をいただいたことに心からお礼をまず申し上げたいと思います。  委員の方々もありがとうございますと言いたいところですが、割と席があいていることが非常に残念です。  まず最初に、大臣、ちょっと耳を傾けていただきたいと思いますけれども、午前中からの大臣の御答弁を伺っておりますと、言葉の中に、難病にかかられた方々、その方々が非常にお気の毒だという気持ちは共有していると。その難病にかかられた方々ということが、まず認識として少し、少しどころか大きく違うのです。これは、孤発性というか自然発症的にかかられたクロイツフェルト・ヤコブ病の方々を問題にしているのではなくて、医原性クロイツフェルト・ヤコブ病脳外科手術を介して汚染された乾燥硬膜移植されて発症された問題についてこの間ずっと議論がされているということをまず御認識ください。  そして、私は本当に一生懸命耳を傾けていましたが、いわゆるスモンのこと、サリドマイドのこと、繰り返された薬害エイズの問題にしても、厚生省は苦い思いをしてきたというような表現をなさいました。そのような表現をされる方を国民のトップとして、厚生行政のトップとしていただいているということに対して、私は悲しみよりも本当に残念です。大臣、先ほども本を読んでいらっしゃらないということを伺いました、これに対する報道もなされています、この医原性のクロイツフェルト・ヤコブ病がなぜここまで被害を甚大にさせてきたか、多くの方々を苦しみの渦に巻き込んでいるかということをぜひともしっかりと勉強していただいて、そしてもう一度、改めての質疑を冒頭大臣に本当に心からお願いいたします。  そしてまた、大臣や政務次官の御答弁の中にも、裁判で係争中だ、そのことが何度も何度も繰り返されました。市民が裁判まで持っていくというのは並大抵のことではありません。一生懸命厚生省にも医療機関にも助けを求めていったでしょう。そしてまた国会議員にも助けを求めていって、福島政務次官質問が最初の時点であったと思います。でも、行政の監督責任があるこの立法府としての厚生委員会でずっと問題にされることもなくどこも助けてくれなかったら、今はほかにどんな手段がありますか。裁判以外にはありません。ですから、裁判で司法判断を仰ぐというのは一方ですればいいです。でも、この場では行政の監督責任がある立法府として責任大臣に求めているわけですから、それに対しての的確な御答弁をお願いしたいと思います。  薬害ヤコブ病の場合は、ほとんどの方が亡くなっていらっしゃいます。存命中の方も無言、無動ですから、この場に来てそのことを訴えることは一切できません。患者家族、そして遺族、遺族という言葉もきっちりとつけ加えてください。  まず最初に質問させていただきますが、これは端的にお答えいただきたいのですけれども、午前、午後の質疑で、大臣の答弁の中で、ライオデュラに関しては代替品がなかった、そして必ず新しいものはリスクが生じるというふうに繰り返しおっしゃられました。四十万枚から五十万枚使われていた硬膜の有用性について大臣は強調されてきましたが、いわゆる化学物質による副作用と病原体の汚染というのを完全に混同されているということを指摘しておきます。薬の副作用についても最大限防がなければいけないのですけれども、百歩譲ってリスクを伴うことも避けられない場合もあるかもしれませんが、この医原性のCJDは、承認時の審査やドナーチェックで防ぎ得た問題だということをまず認識していただきたいと思います。  そして、脳外科手術において補てん材料が必要となる病例は全体の一〇%にすぎない、これは医療機関の先生がおっしゃっています。その補てん材料が必要な手術の中で、約九割は大腿筋膜を切り取らずに手術が可能である。大腿筋膜が必要となるのは全体の一%だ。大臣、ここのところはしっかり調べてください。  そして、今回のクロイツフェルト・ヤコブ病の脳外科学会の中心人物で、厚生省ヤコブ病専門委員会委員である札幌医大の教授は、厚生省が承認していたので安全には問題がないと考えていた、大腿筋膜を使う手術は極めて簡単な手術で、少なくとも一例でもこれが危険だということがわかっていれば絶対に使わなかった、そのようにおっしゃっています。そしてまた、ライオデュラがなくても脳外科手術は十分に可能だった、ライオデュラは必要不可欠なものではなかったということを明確におっしゃっています。そこのところをきっちりと指摘しておかなければいけないと私は思っています。  そして、特に医療現場では、交通事故、三叉神経、脳腫瘍、さまざまな病気手術したときに医師は本当に手術がうまくいってよかったと成功を喜ぶ。福島先生など特におわかりだと思いますが、喜ぶ。そして安全だと言われたものを使ったことによって、後年、長い潜伏期間を経てこれを発症することは、医療機関としてはもう痛恨のきわみだということをおっしゃっています。そのことに対しての大臣の御認識、勉強してくださいますね。それは指摘しておきます。  それともう一つ福島次官の御答弁の中に角膜移植のことがございましたが、角膜移植のところも事実と照らしてちょっと違うところがございます。今まで一例報告されていると言われましたが、これは四例だと思います。このこともしっかりと調べて、後日必ず集中審議をしていただいて、これについて調べた後での御答弁を改めてお願いします。  それに関しましてお願いをした後で、質問の第一番目は、まずロット番号、先ほど瀬古先生がこの問題で質問されましたが、ここはとても大事な部分ですので改めて質問をいたしますので、簡潔に答えてください。  これも事実をしっかり調べていただいて御答弁いただきたかったのですが、大臣の答弁の中に、特定の二千番台のものは日本に輸入されていなかったと。これに似た答弁が以前の私の質問に対してもありました。一九八七年にCDCが発症例報告をしたのは、二一〇五のロット番号のライオデュラ移植クロイツフェルト・ヤコブ病を発症したということなんですね。この二一〇五の二は一九八二年に製造のもので二です。一〇というのは十週目ということ。最後の五というのは金曜日を意味しているわけです。  昨年の十一月十六日の厚生委員会で、当時の大野政務次官は「特定のロットについて廃棄を勧告したにすぎないということで、日本にはもちろんその連絡もありませんでしたし、そのロットの関係というものは全くなかった、」これは日本に入ってなかった、先ほどの大臣の答弁と同じです。そして、先月の厚生委員会でも、福島政務次官ですが、FDAは「感染危険性ということでロット番号を特定して廃棄を命じた。」そのように答弁されています。FDAが全米の医療機関に廃棄勧告をしたのは、二千番台とロット番号が不明のライオデュラですね。  ただいま委員皆様の席の方に資料を渡しました。これは先ほど厚生省の局長が答弁されたのと同じ資料なんですけれども、その数がその年代に入ってきています。毎年かなりのライオデュラが輸入されています。特に、八一年以降は一万箱以上が毎年輸入されています。これは一箱に二枚入っていたり五枚入っていたりというような形ですので、箱に一枚のライオデュラではないわけです。少なくとも二倍あるというふうに考えていただきたいと思います。  二千番台、つまり八二年製のライオデュラ日本に輸入されていますね。これはもう一度確認の意味で、局長、お願いします。
  276. 丸田和夫

    丸田政府参考人 ライオデュラの輸入業者であります日本ビー・エス・エスの説明によりますと、二千番台のライオデュラにつきましては、日本に輸入されていたものと推測しております。(発言する者あり)
  277. 中川智子

    ○中川(智)委員 局長、大事なことですから、はっきりお話ししてください。  これはお手元にございます。私、非常にびっくりしました。何かだまされそうだったなと思っています、二千番台、特定のとか。一九八二年のいわゆる危険だと言われたものは日本には入っていなかった、だから連絡もなかったし、こっちもそのときには知りようがなかったみたいな答弁が繰り返しされてきていました。それに、きのう厚生省に、どれだけ入っていましたかという資料を下さいと言ったら、一九八二年というのは隠された。私は、やはりこういうところでも心配なんですね。  こちらではもうちゃんと一九七三年からの「山本和雄作成」というサインの資料をとっていたんですけれども、やはり厚生省がしっかり出してくれたということが大事だと思って聞きましたら、この辺は全然資料がありませんということで、二枚目につづっている一九八三年からのものが厚生省からいただいたペーパーです。上の方はこちらの方で取り寄せたペーパーです。明らかに厚生省は一九八二年のそのロット番号のことは皆さんにわかってもらいたくなかったというのが、そういう資料の出し方でも……。非常に不利なものは出さないということ、きのうも確認しましたので、ぜひともそのあたりは大臣も政務次官もしっかりと認識してください。  そして、これは資料としてお渡ししましたが、日本が六十五例、ほかは一けたなんですね。そうしたら、厚生省は、日本はしっかり調べたから多いんだと言われますけれども、あれは狂牛病のことがあって初めて動いた、そのような認識は当然大臣も持っていただきたいと思います。  今、八二年のロットが入っていたということをしっかりと確認しました。そこで、承認時の問題は金田さんが質問いたしました、そこのところは十分その承認時のずさんさということが浮き彫りにされた、私たちも共通の認識として持てたと思いますので、私は、厚生省が研究班を設置した一九七六年のことについてまず伺いたいと思います。  私は、なぜ七六年に研究班ができたのかということをいろいろ資料を読んで自分なりに考えてみました。ノーベル賞をもらいましたガイデュセック博士は、先ほど出てまいりましたギブス博士と共同でCJDの研究をしています。そのガイデュセック博士を日本にお呼びしてシンポジウムを開いた。  ポール・ブラウン博士やギブス博士の言葉をちょっと聞いてください、井本さんが書かれましたこの本の中にございます。このギブス博士というのはプリオン病の世界的な権威です。  ポール・ブラウン博士は井本さんたちのインタビューに対してこういうふうに答えています。  「(硬膜移植による薬害ヤコブ病の)最初のケースが報告されて以降、二、三年の間にアメリカだけでなくさまざまな国で多くの症例が出されました。   私は日本でもこの情報は流れていたと思います。少なくともこういうことに関心をもっている人なら誰でも気付いたでしょう。   日本政府が最近になるまでこの問題を知らなかったとしたら驚きですね。この問題を知らなかったなどと弁解できる者はいないと思いますよ」 というふうに答えていらっしゃいます。  ギブス博士はこのように答えています。  「日本の人口を考えると、そしてこれ(薬害ヤコブ病)が医原性で引き起こされた問題だということを考えると、(日本での)六〇例以上の症例は多いと思いますね。   CDCが週報(MMWR)を作成して世界中に配ったのですから、その時点で関心をもつべきでした。その時点でなぜ認知されなかったのか、そしてなぜ予防措置が取られなかったのか、とても理解に苦しみます」 というふうにおっしゃっています。  七六年に研究班が設置されましたが、そこの甲野礼作先生はとてもこの研究に関してはガイデュセック博士と交流をしっかり図っていて、スローウイルスの研究についてはこの先生たちと並ぶほどの非常に世界でも一流のレベルに達していた人だというふうに考えています。この方がかかわった、七六年から発足した研究班の目的について今回の予備的調査報告を一生懸命目を皿のようにして探しましても、厚生省がお金を出した研究班ですが、この研究班の目的が明記されていないんですが、これはどこを読み取れば目的がわかるんでしょうか。
  278. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 研究報告書のどこにということではありませんが、この遅発性ウイルス研究班は、科学研究費補助金の一つであります特定疾患調査研究費補助金というもので研究を行っているわけでございますが、この研究費補助金等の交付目的というのがございます。もともとの補助金の交付目的というところでございますが、そこに書いてありますのが、「研究者が行う特定疾患調査研究事業に要する経費の全部を補助することにより、その原因の究明及び治療方法の確立を図る。」となっておりまして、さらに、具体的なところにおきましては、「大学等における、先端的・独創的な研究の発展を図り、学術の振興に寄与するため、所要額を計上すること」ということが書いてございます。  このようなところから考えますれば、ただいまの先生の御指摘は、昭和五十一年、一九七六年の石田班のことだと思いますが、遅発性ウイルス研究班につきましても、学術的な研究というものがその目的であろうというふうに理解をいたしております。
  279. 中川智子

    ○中川(智)委員 少なくとも税金を使って、そのようなきっちりとした専門家にお願いしてやっていたわけですね。当然、その研究成果というのは国民の健康を守るというところに基軸を置いて、医療機関に対して——ここのところに書いているんですね、目的は。今おっしゃったのは、お金は出すよ、勝手に研究してちょうだいよ、何かわかったら勝手に皆さんに教えてあげてよというふうに聞いたんですけれども。一九七六年、設置されて間もなくの評価調整部会について報告書の五十ページにこういうふうに書いてあります。  「厚生省の研究としての特徴を生かすように努め、病因究明の基礎的な追求に」、そこで厚生省の今の御答弁は終わっているんですが、「追求に止まらず、臨床の場と直結した患者に直接に成果の還元できるような研究の推進を図る。」と書いています。そして、その少し後に、「今後の方向としては、早期発見、早期治療に資するような研究の推進及びその結果についての一般の臨床医への普及に関する方策の具体化」。私はこっちが目的だと思いますよ。幾らどんなものがわかっても、お金を上げるから勝手に調べておいてというふうな形の研究班の設置ではないはずです。それに、その議事録なんかは一切ないと今度の報告書にはありました。このような形で、目的というのはあったというふうに認識していいのでしょうか。簡単に言ってください。
  280. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 今先生が報告書をお読みになった部分についてはそのとおりでございますが、先ほどから申し上げておりますような学術的な観点からこの病気の本態解明を目指しているものでございまして、その研究対象として治療法や予防法の開発も視野に入っていたものでございますが、先ほど来議論になっておりますが、特定製品の安全性に関する研究が行われていたわけではないというふうに考えております。
  281. 中川智子

    ○中川(智)委員 特定製品ではないということは、それはわかりますよ。でも、危険性に対して、そして、いろいろな病気メカニズムとかそういうことを調べるために設置したいと。その報告は毎年あったわけですね。研究班の報告というのは毎年あったわけです。  最初に、どうしても不思議なのでちょっと伺いたいのですけれども厚生省は研究班を設置して専門家にいろいろ研究してもらう、それを患者医療現場に反映する。厚生省はこの真ん中にいるわけですね。そうしたら、その研究班のいろいろなものを厚生省がしっかり受けとめて還元するということが普通です。非常に単純に考えて、そういうふうに思うのです。そうしたら、その研究班が研究して報告書に載せたことに対してどのように検討されたかということが非常に大事になってきます。  もう一つ確認したいのですが、この研究班のようなものは当時日本にほかにありましたか。あったかなかったかだけ言ってください。
  282. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 難病研究班というのがございまして、ほかの研究班も大体こういうような目的でやっております。
  283. 中川智子

    ○中川(智)委員 ほかにこのような研究班はあったかということを聞いているのです。あったかなかったか、教えてください。
  284. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 今申し上げましたように幾つかの難病研究班がございますので、ございました。
  285. 中川智子

    ○中川(智)委員 それはどこの機関としてあったのですか。民間ですか。
  286. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 昭和五十一年当時、先ほど先生御指摘の石田班のあった当時でいえば四十三班ございました。
  287. 中川智子

    ○中川(智)委員 厚生省が設置したその四十三のもの以外にですよ。民間とか、外に。
  288. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 申しわけありません。今申し上げましたのは、先ほど議論になっております石田班と同じような厚生省の科学研究費補助金でやっていたものを四十三班と申し上げたわけでございまして、それ以外のものについては把握しておりません。
  289. 中川智子

    ○中川(智)委員 把握していないというのは、ないというふうに理解していいと思いますが、あったら教えてください。  そのように研究班の中でちゃんと議論されているのですよね。これはウイルス研究をするものだから危険なものだ、だから、ガイデュセックとか世界のいろいろな方たちと交流のある日本で第一人者の方も入れて、厚生省の研究事業として、またそれを患者医療機関に反映するものとして研究班を設置したということでよろしいと思います。  そして、一九七六年から七八年、研究班の研究成果に対して、その研究の成果を医療機関患者に反映するためにこの研究報告をつぶさに読むのは厚生省のどこが担当していましたか。
  290. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 先ほどから申し上げましたように、たくさんの研究班がございまして、また研究テーマもたくさんございます。そのようなことから、研究班の中に調整部会というのを設けておりまして、そこである一定の期間にその研究成果の評価をして次につなげるというようなことを行っておりますので、御指摘のつぶさに報告書について検討していただいているのはその調整部会だと考えております。
  291. 中川智子

    ○中川(智)委員 その調整部会には厚生省がちゃんと事務方として参加していたのですね。していたかどうかだけ。
  292. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 厚生省は事務局として何らかの職員が対応しておりました。
  293. 中川智子

    ○中川(智)委員 この予備的調査報告書で、どのように座っていたか、どこの席にだれが座っていたかというのも資料として出されていたのですけれども、大抵厚生省の方が四、五人座っていらして、議事録は一切なかったという報告でした。  こういうふうに厚生省がちゃんとお金を出してやるところで議事録がないというのは、通常そうなんですか。そうかそうでないかだけ答えてください。
  294. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 当時のことでございますが、通常はなかったものと思っております。
  295. 中川智子

    ○中川(智)委員 だから、厚生省は本当に、保健医療エイズ疾病対策課、いらっしゃいますけれども、そういう責任のあるところが座っていても、それをしっかりと生かそう、患者医療現場、臨床医にこちらの情報をつなぐという認識がなく、議事録もとらず、ただ評価部会で座って報告を受けていたって全く危機管理などできるわけはない。いろいろなところから発信をされても、それをキャッチすることをしなければいけないと思っていたというふうには到底思えません。大臣、ここの部分がとても大事だと思います。  今、八四年、八五年、八六年、この三年度に研究班の報告がされていることに対して検討したかしないかだけを伺いますので、簡単明瞭に答えてください。大臣、聞いていてください。  八四年度の研究班の報告書の中で、「患者の臓器、脳脊髄液、血液などが直接体内に入ることを防止しなければならない。」と書かれていることに対して、医療現場で年間二万件近く使われているライオデュラ、そういう臓器のヒト乾燥硬膜医療用具に思いをはせ、それに対して検討をしたかどうか。それだけでいいです。
  296. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 衆議院調査局からの調査依頼に基づきまして私ども調査をいたしました。その結果でございますが、今先生御指摘のような、具体的な対策を講じる手がかりとなるような情報は示されておりませんでした。
  297. 中川智子

    ○中川(智)委員 情報を示されていたというのは、今私が言った言葉が情報なんですね。私は、これが情報は示されていたという認識で聞いているわけです。ですから、示されていなかったということは、それをキャッチしなかったから検討しなかったということとイコールだと思いますから。そのような形で次も伺います。  八五年度の報告の中で、ヤコブ病の病原体はあらゆる臓器製剤、血液、尿製剤にも混入するおそれがあるという報告書の文面がございます。これに対してはどうでしょう。
  298. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 これにつきましても、先般来の調査依頼に基づきます私ども調査で、立石班長ほかその研究班の班員全員に、あるいは当時の担当課の職員に調査をいたしましたけれども、そういう認識があったという者はございませんでした。
  299. 中川智子

    ○中川(智)委員 では、八六年、「感染性の不活化は困難で、医療機材、血液や臓器製剤、食品などがもし汚染されれば、その排除は至難である。」と書かれてありますが、この情報に対してはキャッチして何らかの対応をしましたか。
  300. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 これにつきましても、先ほどから申し上げておりますように、一般的な注意事項というふうな認識がございましたので、特定製品の安全性に関するものではございませんので、そういう認識はございませんでした。
  301. 中川智子

    ○中川(智)委員 私が特に問題にしたいのは、一九八四年から、研究班というのは本当に世界でも高いレベルの研究者が集まってスローウイルスの研究をしていて、毎年報告をし、このような報告書厚生省が作成していたわけですね、事務方としてちゃんといたんですから。そして、今言った三年間は、毎年、これはもう明らかに、ヒト乾燥硬膜は臓器製剤です、臓器製剤等によるヤコブ病感染危険性指摘して警告を発していたわけです。  その証拠に、立石班長はこのようにおっしゃっています。今回の予備的調査で立石班長が書かれていたことですが、「CJD患者臓器の危険性については、一九七八年度研究報告書に石田名香雄班長が書かれたことは、研究班員の間では常識的なことで、私も繰りかえし病原因子の感染性やその不活化の研究を行い、研究報告書その他に発表しております、一九八七年に硬膜移植CJDの第一例が米国で発表されても、当然起こりうる悲劇として我々は受け取ったと思います。」と書いていらっしゃいます。  また、インタビューで立石班長がこうおっしゃっています。ヤコブ病患者さんのものは使ってはいけないというのはその当時からもう常識的なことで、自分たちは言っていたと。厚生省にも報告義務がありますから、研究費をもらって、それに対する成果報告などという形で報告します、年間二万件もの硬膜を使っていたことを知っていたらということで、涙ぐまれたインタビューをテレビで私は見ました。  班長も研究者も医療現場でヒト乾燥硬膜ライオデュラが使われていたことは知らないわけです。そして医療現場は、安全だと言われて承認されたから一生懸命使っているわけです、健康保険もきくんですから。この両方の間にいるのが、国民の健康と命を守る厚生省なんです。厚生省が唯一両方の情報がわかって、しっかりとそれを伝えて被害を防止する責任があったんです。大臣、どうでしょう。
  302. 津島雄二

    ○津島国務大臣 委員のいろいろな御指摘、やりとりを今拝聴しておりまして、その中に大変に建設的な問題点の指摘があるなとまず感じさせていただきました。  それは、私自身感じておりましたけれども、研究班というものをつくって、それこそ二十も三十もつくって、そして最高の方の知見を集めているんだけれども、一体それを本当に生かしているのか。それから、そこから出てくる情報について本当に感度がいい対応をしているのか、それをするために改善、工夫の必要はないか。この御指摘は、私は非常に鋭い御指摘だと思います。  これからもいろいろ医療技術が進歩していく中で、大変に厳しい、リスクのあるものについて承認しなければいけないときに、また、承認した後で、このことについては私どもは今までよりもさらにさらに心してやっていかなければならない、そういう御指摘と受けとめました。  その上で申し上げますけれども、第一症例が出てきた、そして第二症例が出てきた、その八〇年代までの状態で、果たして感度をうんと上げても、これは我が国で一年に二万件もやっておるような脳外科手術の現場を前提とすると、それをやめろということは出てこなかったのではないかと私は推測をいたしております。また、外国においても、乾燥硬膜の使用を全面的に禁止をするということは、WHOのあれがあるまでは実は出てきていないわけであります。  そういう意味で、御指摘はよく私は理解をいたしますけれども、当時の厚生省ヒト乾燥硬膜危険性を認識できたとは残念ながら言えない、かように思っております。
  303. 中川智子

    ○中川(智)委員 それでは大臣大臣のおっしゃるその予見可能性について伺いますが、いつも外国のいい例はひた隠しにされて、悪い例をしっかりとお話しになりますが、アメリカはドナーチェックがしっかりできないからといって承認をしませんでした。そして、アメリカはよそから医師が購入したものを使って第一症例が出たわけですが、アメリカ、カナダは一例でも、次の被害を防ぐことが大事なんですね、防ごうと規制をしました。私は、これが予見だと思います。そして、イギリスでは上級裁判所が一例の被害も出ていない一九七七年に予見可能として、これは成長ホルモンですが、保健省の責任が認められました。  ところが、厚生省は、今の大臣の御答弁をずっと伺っていますと、八七年でもし情報をキャッチしたといたしましても予見できないと主張しています。八七年ではだめ、そして八九年の二例目、これでも予見できない。そして、初めて新潟で九一年に第一症例が出ましたが、これでも予見できない。九三年の滋賀県でもだめ、九四年の虎の門も予見可能ではなかった。  そうしたら、大臣、九六年の七月、二十八例、そのときに二十八人の方たちを犠牲にしてなおかつ予見不可能であったとおっしゃるのですか。大臣のおっしゃる予見可能というのは、日本クロイツフェルト・ヤコブ病ではどこですか。
  304. 津島雄二

    ○津島国務大臣 専門的な補足をしていただきたいと思いますが、私はやはり難しいと思っております。まさにそれゆえに、今裁判所判断をしていただくということになろうかと思います。  私は専門家ではございませんが、専門的な補足をしてもらおうと思います。
  305. 福島豊

    福島政務次官 最終的には予見可能性ということは司法判断を下されることであろうというふうに私は思っております。  ただ、先ほどからるる御指摘ございましたので申し上げておきますと、第二症例が出た時点でも、イギリスの当局にしましてもドイツの当局にしましても、アルカリ未処理製品についての自主回収ということにつきまして、報告を受けるということはありますけれども取り組みがなされていない。これをもってすると、その時点で果たして予見可能であったとするのが妥当なのかどうかということは残ると私は思っております。  また、先ほど委員から御質問といいますか御指摘ありました点について若干お答えしたいのですけれども、角膜移植の話につきましては、一例と言いましたのは、その当時一例ということでありまして、その後三例報告されておる、全体で四例ということのようですけれども、動物実験では再現されていないということから、その感染性ということについて明確に立証されたわけではないということがあると思います。
  306. 中川智子

    ○中川(智)委員 大臣の今の御答弁は、これからも薬害というのは繰り返される、もうしようがないんだと。たくさん症例が集まって、特にこの薬害ヤコブ病治療法もなく一〇〇%死に至る病としてあります、どんどん死んでもある程度の症例を重ねないと厚生省としては手を打てないという意味ですか。もう一度はっきり御答弁ください。
  307. 津島雄二

    ○津島国務大臣 申し上げますけれども、予見可能性という意味において、確実に何が起こるかわかるという状態、これは法律的にも非常に判断が難しいと思うのです。  そこで、私が申し上げておるのは、行政上の責任の基礎になる予見可能性というものは、やはり客観的事実と法に照らして判断してもらうべきである。そうでないと、ある新しい新薬なり処方について承認をするときに、一〇〇%何も心配ありませんよということでなければできなくなってしまうのですね。そういう世界というのは、少なくとも私の理性からいうと、これはもうほとんど想像できない世界だ。  それをまず申し上げた上で、私が申し上げたいのは、難病で苦しんでおられる方の問題に対しては、行政の責任がどうこうということよりも、その前に、私も行政の長として、行政上何ができるか、最善の努力をするということが本道であろう、法律の議論の前にその方が本道であろう、こういうことを申し上げておるわけであります。
  308. 中川智子

    ○中川(智)委員 何ができるかではなく、何をし得たか。防ぎ得たものに対して防げなくて、これだけ被害を拡大しておいて、そして大臣の本当に開き直ったようなその答弁に対しては、委員長、これは日本の国民の命と健康を守る厚生大臣の言葉として見過ごすことのできない答弁を繰り返しされました。私は、参考人を呼んで、専門家も呼んで、予見可能性についてのことも議論し、もう一度しっかりと参考人質疑とこの集中審議を開いていただくことを委員長に心からお願いします。委員長、いかがでしょうか。
  309. 遠藤武彦

    遠藤委員長 中川委員の貴重な御提言を可能な限り早い機会に理事間で協議をしたいと思っています。
  310. 中川智子

    ○中川(智)委員 ありがとうございます。  大臣がおっしゃるのは議論のすりかえなんですよ。一〇〇%安全だとわかっているものだけ承認するとか、そういう話をしていないのです。  七六年からしっかりと研究班というのがあり、厚生省が補助金を出して患者医療機関に還元するためにそれを設置して、その責任がある厚生行政が何をしてきたか。一九八七年の第一症例を十年間ほっておいて、九七年にWHOの勧告で初めて日本は行動を起こしたということに対して、私は、七六年から、基本的なところでは七三年の承認から厚生省責任が生ずる、このことで一貫して質問しているわけです。大臣が御答弁された一〇〇%云々は議論のすりかえです。  何ができるかというのは、難病だからこんなふうに医療費もただでとかということじゃないのです。なぜあの方たちがそういう不治の病を得てしまったのか。それは、みずからではなくて、つくられた薬害だという認識に立ってこの問題を議論しないと、いつまでたっても救われませんし、いつまでたってもこの国は薬害を繰り返すということを最後に訴えさせていただきまして、私の質問を終わります。
  311. 遠藤武彦

    遠藤委員長 最後に、上川陽子さん。
  312. 上川陽子

    ○上川委員 21世紀クラブの上川陽子でございます。  最後の質問ということで、よろしくお願いを申し上げます。  今回、私にとりまして、初めてクロイツフェルト・ヤコブ病に関する一連の報道あるいは調査データ、さらに患者さんとその家族の皆さんの様子を紹介したビデオも拝見させていただきました。本当に深い悲しみとやり場のない憤りを感じた次第でございます。  この間、苦しみの中で無念のうちに亡くなられた患者の御家族皆様、そして今なお必死に闘っておられる患者とその御家族の皆さんの精神的、経済的な重荷が一日も早く軽減されますよう、また薬害の根絶に向けて責任を有するすべての関係者が最大限の努力を傾けられますよう心から切望するものでございます。  過去に脳外科手術を受けたことのある人の多くが、自分の手術に際しヤコブ病に汚染された硬膜が使用されたのではないかと現在も不安に感じています。ヤコブ病の場合、感染から発症までに二十年を要するケースも見られるだけに、感染の事実や発症の可能性を検証するには困難を伴います。患者確認のため手術を受けた病院に問い合わせると、既に当時のカルテが廃棄されているケースが少なくないとのことです。  この点に関し、現行の医師法ではカルテの保存期間が五年間と定められています。現在、患者サイドから医療機関に対し、既に五年以上経過したものも含めカルテの長期保存を求める要望が出されています。  そうした長期保存を確実にするためにも、厚生省の方から、脳外科手術を実施しているすべての医療機関に対し、ぜひとも保存延長を指導していただけますようよろしくお願いを申し上げます。いかがでございましょうか。
  313. 丸田和夫

    丸田政府参考人 先生御指摘のように、カルテの保存期間は医師法上五年とされているわけでございます。そういう中で、継続的治療など医学的に必要と判断される場合、これは五年間の保存期間を超えても医療機関において適切に保存される、こういうことになっております。  また、裁判や補償など治療以外の目的のためのカルテの保全というものは、通常は医療機関患者さんとの間の話し合いにより行われるものでありますので、一律に国が指導を行うというような性格のものとは考えておりません。
  314. 上川陽子

    ○上川委員 再度、今回のそうした問題についてカルテの保存を要求していただけますでしょうか。御指導いただけますでしょうか。改めて、そのような行動をしていただけますでしょうか。
  315. 丸田和夫

    丸田政府参考人 先ほど来話が出ておりますが、使われたヒト乾燥硬膜は約四十万枚から五十万枚という莫大な数でございますので、そういうことを踏まえましてもなかなか難しいと考えております。
  316. 上川陽子

    ○上川委員 手術をなさった患者さん、御家族の方にとりまして、大変深刻なカルテでございますので、ぜひともカルテの保存を御指導いただきたいというふうに思います。  次に、厚生省が作成したクロイツフェルト・ヤコブ病の診療マニュアルによりますと、医療機関における患者への対応として、患者は原則として個室の必要はないとしているものの、吐・下血や重症の下痢、気道感染症などの症状が重い患者については個室が必要な場合があると記述されています。しかし、医療現場ではヤコブ病と診断された時点で病状の程度や患者の意思にかかわらず直ちに個室に移され、その分の差額ベッド代を自己負担させられるケースがあると聞いています。  差額ベッド代の徴収に関し厚生省に問い合わせましたところ、差額ベッド代の徴収には患者本人の同意が必要であること、また、治療の必要上あるいは院内感染のおそれがある場合は差額ベッド代を徴収してはならないと御指導いただいている旨回答がありました。  現場の実情とこの厚生省の御指導との間にはギャップがあるように思いますが、厚生省として、こうしたケースにつきましてどのような指導を行っていますでしょうか。
  317. 近藤純五郎

    ○近藤政府参考人 いわゆる差額ベッドの関係でございますけれども、この室料の徴収に当たりましては、先生御指摘のように、患者の自由な選択と同意が必要であるというふうに私ども考えているわけでございまして、この同意の確認というのは、これはできれば御本人でございますけれども家族の同意ということで明示した文書に署名をいただく、こういうふうに私ども指導しているわけでございます。  治療上の必要から差額ベッドへの入院をした、こういう場合には差額室料というのは徴収できないというふうに考えておりますが、私どもの考え方といたしましては、一般的に、先生もおっしゃられましたような合併症みたいなケースでありますと個別認定ということになろうかと思いますけれどもクロイツフェルト・ヤコブ病そのもので即治療上の必要があるということは難しいのかなというふうに考えているわけでございまして、いずれにいたしましても同意が文書で必要である。  そういうこととか、治療上の必要がある場合につきましては、私ども、一般的な指導あるいは個別指導によりまして十分徹底してまいりたいと考えておりますし、まだ不分明な面もたくさんあるわけでございますので、それの明確化というものを図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  318. 上川陽子

    ○上川委員 ただいまの厚生省の方の御指導と現場の間にはかなりのギャップがあるようにお見受けします。私も、患者さんの方の代弁の皆さんの声を聞くところによりますと、確かにそうした指導はあるけれども、現場では徹底していないというように理解しています。その点につきまして、これからどのように対応していかれますでしょうか。そのギャップを埋めるのにぜひとも具体的な活動をしていただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  319. 近藤純五郎

    ○近藤政府参考人 私どもの考え方を明確にする、これは中医協でもさらに明確にするように審議をしたいというふうに考えております。それを明確にした上で徹底した指導を行ってまいりたいと考えております。個別ケースについては、治療上の必要性という点になりますといろいろケース・バイ・ケースで異なってくる場合もあろうかと思いますけれども、原則的なものにつきましては十分な指導をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  320. 上川陽子

    ○上川委員 今の御発言の中に、いつごろというところでまだはっきりしていないのですが、いつごろそうした明確な方針を決められるのでしょうか。
  321. 近藤純五郎

    ○近藤政府参考人 基本的な考え方というものはもう既に出ているわけでございまして、ケースの積み重ねが既に出てまいっておりますので、そのケースの積み重ねの上でそれを中医協に諮りまして、より明確といいますか個別ケースについてある程度指針になるようなものをお示ししたいということでございまして、近いうちに中医協におかけしたいというふうに私ども考えております。
  322. 上川陽子

    ○上川委員 今、ヤコブ病患者の御家族の皆さんにとりまして、この差額ベッド代を含めまして、治療、介護にかかる費用の負担は大変大きな重荷になっています。受け入れ機関であります医療機関が住まいから遠く離れている場合が非常に多いということで、毎日介護する御家族にとりましては、滞在費や交通費も含めますと経済的重荷は想像を超えるものがあると言わざるを得ません。現在の公費負担対象を、医療費あるいは在宅介護サービスにとどまらず、おむつ代や差額ベッド、さらにはさまざまな介護にかかわる費用につきましても厚い支援策を講ずるべきと考えますが、この点につきましていかがでございましょうか。現在検討をされているものも含めてお答えいただければ幸いです。
  323. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 クロイツフェルト・ヤコブ病は大変重篤な病気でございまして、患者さん方や御家族の御苦労は大変なものと察しております。先ほど来大臣も答弁されておりますように、私どもも、現行の医療、介護、福祉の枠組みの中でできる限りの対応を図っていきたいと考えております。  先ほどの差額ベッドにつきましては、クロイツフェルト・ヤコブ病に限らず、療養上必要性を認めるものについては差額ベッド料を徴収しておりませんが、他の四十五の難病についても、療養上必要が認められないにもかかわらず差額ベッドを希望した場合には、クロイツフェルト・ヤコブ病に限らず公費負担としていないわけでございまして、おむつ代等についても同様に公費負担をしておりません。  その他のことについてのお問い合わせもございました。先ほど先生も御指摘になりましたが、平成九年一月から特定疾患治療研究事業対象疾患クロイツフェルト・ヤコブ病を指定いたしまして、医療費自己負担分全額公費負担といたしております。それから、難病患者居宅生活支援事業によりまして、ホームヘルパーの派遣、ショートステイ、日常生活用具の給付を行っております。それから、難病特別対策推進事業によりまして、在宅療養支援計画をつくることとか訪問相談事業等も行っております。  また、医療体制につきましては、平成十年度からでございますが、重症難病患者入院施設確保事業というのを創設いたしまして、入院加療が必要な患者に対し適時適切な入院施設の確保が行えますよう、都道府県ごとに地域医療機関の連携による難病医療体制整備を開始いたしました。また、診療報酬におきましても、平成十二年の四月から、長期療養を必要とする難病患者などの医療を確保する観点から、入院日数による逓減のない入院料創設等を行っているところでございます。
  324. 上川陽子

    ○上川委員 私自身の家族ヤコブ病患者が発症したということではないので、どの程度ということについては第三者的にはなかなか実感がわかないわけでありますが、本当に患者の皆さんと御家族の方の立場に立って、今どの程度の経済的な負担を抱えながら頑張っていらっしゃるのか、ぜひとも個別に具体的に細かく聞いていただきまして、できるだけ負担のなくなるようにきめ細かな対応をとるべきではないかというふうに思うわけでございます。  その点につきまして、患者の皆さんのケースごとの具体的な経済的な重荷がどの程度になっていて、どう対応すべきかということについて御検討いただけますでしょうか。
  325. 津島雄二

    ○津島国務大臣 けさほどからの御議論で私は一貫して申し上げておりますが、まず我々の責任は、厚生行政の中で、この難病で苦しんでおられる、しかもある意味では医原病の方々のためにやれることはできるだけやる、こういうふうに申し上げたところでございまして、今のこの御指摘に対しては個別の方の事情を含めて誠実に対応させていただきたいと思います。
  326. 上川陽子

    ○上川委員 ぜひとも、その点につきまして、精神的にも経済的な負担にも耐えられるように厚く対応していただきたいというふうに思います。  現場のいろいろな声の中で、病院がヤコブ病患者の受け入れを渋るケースがあるということでございますし、また、長期入院の場合に暗に退院を促されたケースがあるということも承っております。こうした状況の中で、医療関係者の中にまだ病気に対しましての偏見とか知識不足があるのではないかというふうに感じるわけでございますが、ヤコブ病に対しましての啓蒙活動をどのように徹底してやっていらっしゃいますでしょうか。  また、長期入院といった場合に、病院の経営上の問題ということで、先ほど診療報酬点数の逓減ということについては一定にするような対応もとられているということでございますが、ヤコブ病患者の場合に診療報酬上どのような対応を通常の疾病と比べてとっていらっしゃるのか、その二点につきましてお伺いさせていただきます。
  327. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 クロイツフェルト・ヤコブ病患者さんに対して、医療機関等において偏見や差別等あるいは受け入れ等に問題がないのかということでございますが、私どもは、病気に対して偏見や差別があってはならないものと考えております。ただ、その背景には、やはりこのクロイツフェルト・ヤコブ病というのが百万人に一人というような極めてまれな疾患でありますので、医療現場において診断に苦慮をすること、原因が不明で治療法が存在していないこと、あるいは日常生活では感染のおそれがないというような事実がまだ周知徹底されていないというような事柄があろうかと思います。  私どもといたしましては、先ほども説明をいたしましたが、平成十年度から事業を開始しております。こういうような難病の医療体制整備を開始することによりまして、またこの施策が一層活用されますれば、自然にそういう意識の啓発も行われるものというふうに考えております。  さらに、今お尋ねでございますが、今後の話でございますけれどもクロイツフェルト・ヤコブ病ヤコブ病と思われる患者さんを診療した医師が診断に苦慮する症例につきましては、専門医が相談に応じるような体制ができないか、それを今検討したいと考えております。
  328. 近藤純五郎

    ○近藤政府参考人 診療報酬上の措置につきましては、私の方からお答えしたいと思います。  クロイツフェルト・ヤコブ病等を含みます難病患者等に対しましては、これまでも一定以上こういう患者さんを抱えている病棟単位に、通常と異なります特別の入院料とか加算制度というものを設けていたわけでございますけれども、病棟単位では対応できない病院もたくさんあるわけでございますので、ことしの四月からでございますけれども、病室という単位で、こういう難病患者さんを抱えている病院につきましては、これについては逓減制がない、したがって病院経営もやりやすくなるような形の特別の入院料を設定いたしまして、こういう長期療養を要します難病患者を収容されている、入院させている病院について配慮した、こういう次第でございます。
  329. 上川陽子

    ○上川委員 啓蒙活動あるいは診療報酬のいろいろな制度等の変更ということでありますけれども、一たん決めた後、それで制度ができたあるいは政策ができたということで済むのではなくて、その後その政策がやったことが効果があるかどうか、あるいは現場に照らしてそれが十分に意味のあるものであるかどうかということを絶えず追跡をしてフォローしていただきたいというふうに思います。  今回、本当にいろいろなやりとりを見てみますと、やったやらない、あるいはそのことについてやったらもうそれで責任がなくなるというようなたぐいのものではないんじゃないか。現場の中でそれが実際に生きたものとして動いているかどうかということについて対応していかないと、問題がいろいろなところで発生しているというふうに感じるわけでございますので、最近取り組んでいることにつきましては、その効果、実際の現場での動きにつきましてぜひともきめ細かなフォローをお願いしたいと思います。  時間がないのですけれども、最後に、大臣にお伺いさせていただきたいと思います。  本日、厚生委員会におきましての集中審議を通じまして、私は、この問題が非常に根の深い、非常に重いものであることをさらに強く感じた次第でございます。こうした大きな犠牲が二度と起こらないためにも、問題の徹底究明と責任の所在を厚生大臣みずから先頭に立って積極的に調査をされますよう、また、さらに大きなリスクが予想されるとおっしゃいました最先端の医療分野に本当に対応するためにも、ぜひとも危機管理あるいは安全管理システムの抜本的改革をお願いしたいというふうに思うわけでございます。ぜひとも大臣みずから先頭に立って頑張っていただきまして、この問題が繰り返されないようにお願いする次第でございます。  そこで二点。日本医療安全情報についての情報収集と医療機関に対する情報提供及び危機評価システムの問題につきましてはいろいろな質問がございました。一言で言って、どこに問題があるのか。また、アメリカとかほかの国々の状況も出てきましたけれども、仮にアメリカの状況が今の世界の中では非常に高い水準であるとするならば、そのレベルに持っていくために何が最も必要であるのかということにつきまして、最後に大臣のお考えをお聞かせください。
  330. 津島雄二

    ○津島国務大臣 今後の課題として一番大きい問題点の一つを御指摘いただいたと思っております。  これからはこういうケースを皆無にしたいという願いは、委員各位と私は共有しておると思いますけれども、そのためには、何をおいてもしっかりした情報収集、そしてその情報を関係の医療機関に提供する、それから情報が入ってきたときにきちっと評価をする、こういう仕組みをさらに完備していかなければならないと思っております。  こういう立場から、平成九年四月に国立予防衛生研究所を国立感染症研究所に改組いたしまして、感染症情報センターを設置したところでございますが、この研究所におきまして、国内外の感染症情報の収集、分析、提供、感染症発生時の専門家の派遣、感染症に関する研究等々を手がけているところでございます。私としましても、今ミレニアム事業の中で、一番新しい科学的な知見をどうやって国民の健康を守るために生かすかという議論が行われておりますので、そういう非常に高い次元の問題意識を持ちながら、この体制の整備を図ってまいりたいと思います。例えばアメリカでは膨大な予算を使って、また多数の人が参加して、国立研究所、NIHという仕組みを持っておりますが、残念ながら日本にはそういう仕組みはございません。そういうことを含めて真剣に取り組んでまいりたいと思います。
  331. 上川陽子

    ○上川委員 裁判の行方ということにとどまらず、ぜひとも、厚生大臣みずから先頭に立ちまして、過去のこの問題に対しまして徹底した積極的な調査をお願いしたいというふうに思う次第でございます。  以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  332. 遠藤武彦

    遠藤委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時十分散会