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2000-07-17 第148回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年七月十七日(月曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 萩山 教嚴君    理事 大野 功統君 理事 桜田 義孝君    理事 根本  匠君 理事 渡辺 喜美君    理事 上田 清司君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君       大木  浩君    鴨下 一郎君       岸田 文雄君    倉田 雅年君       佐藤 剛男君    七条  明君       砂田 圭佑君    高市 早苗君       中山 成彬君    林  幹雄君       松宮  勲君    宮本 一三君       村井  仁君    山本 明彦君       五十嵐文彦君    岩國 哲人君       河村たかし君    小泉 俊明君       後藤 茂之君    後藤  斎君       末松 義規君    仙谷 由人君       中川 正春君    谷口 隆義君       若松 謙維君    中塚 一宏君       佐々木憲昭君    山口 富男君       吉井 英勝君    阿部 知子君       植田 至紀君    小池百合子君     …………………………………    大蔵大臣         宮澤 喜一君    国務大臣    (金融再生委員会委員長) 久世 公堯君    金融再生政務次官     宮本 一三君    大蔵政務次官       七条  明君    政府参考人    (金融再生委員会事務局長    )            森  昭治君    政府参考人    (金融庁総務企画部長)  乾  文男君    政府参考人    (金融庁検査部長)    西川 和人君    政府参考人    (金融庁監督部長)    高木 祥吉君    政府参考人    (法務省民事局長)    細川  清君    政府参考人    (国税庁課税部長)    村上 喜堂君    政府参考人    (農林水産省経済局長)  石原  葵君    政府参考人    (通商産業大臣官房審議官    )            北村 俊昭君    政府参考人    (中小企業庁長官)    中村 利雄君    政府参考人    (労働省職業安定局長)  渡邊  信君    政府参考人    (建設省建設経済局長)  風岡 典之君    参考人    (株式会社日本興業銀行取    締役頭取)        西村 正雄君    参考人    (預金保険機構理事長)  松田  昇君    大蔵委員会専門員     田頭 基典君     ————————————— 委員の異動 七月十七日  辞任         補欠選任   村田 吉隆君     佐藤 剛男君   山口 富男君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 剛男君     村田 吉隆君   吉井 英勝君     山口 富男君     ————————————— 七月六日  一、国の会計に関する件  二、税制に関する件  三、関税に関する件  四、金融に関する件  五、証券取引に関する件  六、外国為替に関する件  七、国有財産に関する件  八、たばこ事業及び塩事業に関する件  九、印刷事業に関する件  一〇、造幣事業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  金融に関する件(そごう向け債権放棄問題)     午前九時一分開議      ————◇—————
  2. 萩山教嚴

    萩山委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件、特にそごう向け債権放棄問題について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として金融再生委員会事務局長森昭治君、金融庁検査部長西川和人君、金融庁監督部長高木祥吉君、中小企業庁長官中村利雄君、労働省職業安定局長渡邊信君、法務省民事局長細川清君、通商産業大臣官房審議官北村俊昭君、建設省建設経済局長風岡典之君、農林水産省経済局長石原葵君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 萩山教嚴

    萩山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、本日は、参考人として預金保険機構理事長松田昇君及び株式会社日本興業銀行取締役頭取西村正雄君が出席しております。     —————————————
  4. 萩山教嚴

    萩山委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。
  5. 根本匠

    根本委員 自由民主党の根本匠であります。  きょうは、そごう向け債権放棄問題について質疑をさせていただきます。  私は、当初から、この問題は、再建計画妥当性あるいは債権放棄の適否、そして特に、そごう向け債権の買い取り、さまざまな問題がありますので、この問題は白紙に戻すべきである、こういうスタンスで考えてまいりました。一言で言えば、行政ならイエス、政治はノー、こういうことであります。  ただ、このそごう債権放棄問題は、そごう債権放棄取り下げ、民事再生法の申請という形で終わりました。私は、このそごう問題の処理プロセスの中で浮かび上がった問題を中心質疑をさせていただきたいと思います。そごう債権放棄問題を考える上で、私は、やはり日本経済の現状を踏まえて、マクロ的な、大きな前提の整理の考え方が必要ではないかと思います。  今日、日本経済、ようやく設備投資も出てまいりまして、ボーナスも前年を上回る、景気回復の確かな過程をたどってまいりました。今回の不況の大きな原因、今までの不況とどこが違うか。一言で言えば、今までと違った不況の大きな原因は、バブル崩壊に伴う資産デフレ金融不況。株と土地の価格が下がって金融機関不良債権を抱えて、二年前には金融恐慌一歩手前まで来た。実は、このバブル崩壊に伴うさまざまな問題が今までの不況と違う大きな原因であります。  私は、このそごう問題を考える上で二つの背景を前提として考えるべきだと思いますが、一つ金融システムの問題です。  金融機関破綻処理過程で、金融機関不良債権処理対策、あるいは、金融再生法早期健全化法、さまざまな金融の制度的な政策対応をしたわけであります。ここで一番のポイントは、従来は預金者保護が重点だったわけでありますが、破綻処理過程で、善意かつ健全な借り手の保護も必要だという中で国有化スキームまでつくったということ、これが私は、一つ前提として踏まえておくべき要件だと思います。  それからもう一つは、金融システムは安定化いたしましたが、残った問題は、流通、建設分野中心債務超過企業が存在しておりまして、これも産業調整産業構造改革を行わなければならない大きなテーマとしてそこにある問題であります。  私は、そごう問題はこれらの二つ状況の中で浮かび上がった典型的な事例ではないか、こう思います。この問題の論点一つ一つ明らかにしながら議論をさせていただきたいと思います。  まず一つは、この今回の処理を考えますと、一連手続に問題はなかったか、こういうことであります。  この概要一言で申し上げますと、国は破綻した長銀金融再生法によりまして一時国有化した。その後、新生銀行譲渡いたしました。譲渡をするに際して、これが大きな今回の論点になるわけですが、瑕疵担保条項を設けました。譲渡後三年以内に二割以上の価格下落があった債権は預保機構が買い取る瑕疵担保条項、これを盛り込みました。この条項は、二次ロス対策として、円滑な破綻処理のために必要な条項でありました。この条項を根拠に預保は新生銀行そごう向け債権を買い戻して、買い戻したということになると、費用最小原則に基づいて一部を放棄いたしました。これがこの全体の概要であります。  この問題がどう説明されているかといいますと、破綻した金融機関処理する中で、国が取得することとなった私企業向け債権をどう処理するかという問題、金融再生法費用最小化原則に従って処理するのが基本、こう説明されております。  長銀の一時国有化、その後の民間への譲渡一連破綻処理スキームには問題はない、こういうことになりますと、法律にのっとって費用最小化原則で対応したと説明されれば、これは、割り切れない思いは残るがやむを得ないという結論になるわけであります。こういう結論になるのですが、私の考え方から先に申し上げますと、私は、全体の仕組み自体には問題はないと思いますが、制度の運用上問題があった、こういうスタンスでこれから質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、今回の大きな論点一つである瑕疵担保条項は、国有化した長銀民間に円滑に譲渡するために不可欠な仕組みと言えるかどうか、大臣にお伺いしたいと思います。
  6. 久世公堯

    久世国務大臣 長銀処理に当たりましては、金融再生法のもとで譲渡を速やかに実現するということが我が国金融システムの安定と再生を図るために最も適当であると考えております。  御指摘瑕疵担保特約につきましては、このような考え方のもとに、長銀早期譲渡を実現するとともに、譲渡に係る国民負担を抑制するために必要不可欠であったろうと思うわけでございます。ただいま御指摘がありましたように、国民負担最小化原則というものに従って必要不可欠だろうと思うわけでございます。  具体的に申し上げますと、瑕疵担保特約は、米国における破綻銀行処理の際には、多くの場合ロスシェアリング等システムがあるわけでございますが、これと同様の二次ロス対策として、一般に我が国の民法なり商法なりにおける瑕疵担保の法理というものを援用いたしまして、この金融再生法の枠内で可能なものとしてこれを採択した次第でございます。
  7. 根本匠

    根本委員 私もそのとおりだと思います。  金融再生法の制度的な問題点国有銀行から民間銀行譲渡した後に生ずる債権の二次ロス対策、この二次ロス対策のための手当てを欠いていたということで、大臣がお話しのように、アメリカの一連破綻処理スキームの中でもこのロスシェアリングルールというのは明示されておりまして、やはり債権譲渡の段階でどうしても灰色債権が残りますから、そういう点では、二次ロス対策をきちんと制度的に手当てをする、私はこれは必要な事項だったと思います。その意味では、瑕疵担保条項は、私は、円滑に国有銀行から民間に譲り受けする際には必要不可欠な条項だったと思います。  ただ、大事なのは、あくまでも二次ロス対策でありますから、ロスシェアリングという考え方にのっとって、私はこの瑕疵担保条項は厳しく運用解釈すべきだと思います。  次に、買い戻しの問題につきまして質問させていただきます。  私は、今回のそごう債権放棄問題の論点は三つあると思います。  一つは、買い戻しを前提とした場合には二つありまして、一つは、再建計画妥当性百貨店業界が非常に厳しい中で売り上げの見通しが甘いのではないか、いろいろな問題点指摘されておりまして、この再建計画が本当に妥当かどうか、これが一つ論点。  もう一つは、債権放棄条件の問題。やはり貸し手責任は厳しく追及されなければなりませんし、借り主の責任、当然、倒産すれば私財もろもろ持っていかれるわけですから、すべての私財提供のような厳しい条件がないと債権放棄に応ずるわけにはいかないし、株主責任も、減資を行うなどの徹底的な株主責任、こういう三つの責任を厳しくクリアしなければ、国は民間金融機関とは違いますから、国がやる場合には、この債権放棄条件は徹底的な厳しい条件にしなければならない。この債権放棄の問題、これが二つ目論点であります。  この論点につきましては、後ほど渡辺喜美議員からもお話があるかと思いますので譲りますが、私が論点として挙げたいのは、もう一つ論点、この瑕疵担保条項運用のあり方を問いただしたいと思います。  あの買い戻し条項瑕疵担保条項でこれを運用して買い戻したわけでありますが、この瑕疵担保条項要件は、瑕疵があったかどうかということと、二〇%以上の減価が生じたかどうか、これによって瑕疵担保条項運用されるわけでありますが、今回の瑕疵担保条項解釈でどのような解釈をされて買い戻しに至ったのか、その点をお伺いしたいと思います。これは金融再生委員会事務局長にお伺いいたします。
  8. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、瑕疵担保条項を履行するには二つ要件があるわけでございます。一つは、瑕疵に相当する事象が起きておるかどうかという点と、もう一つは、その際に債権価値が二割減価しているかどうかでございます。  本件の場合、そごうから債権放棄要請がございまして、債権放棄要請があった場合には瑕疵と推定されるという推定規定長銀譲渡契約書にございまして、それで瑕疵に当たるとした次第でございます。  問題は二割減価の方でございますけれども、二割減価につきましては、何から何への二割なのかといいますと、あくまで債権の当初価値からその債権放棄要請があった時点での実質価値、その間に二割の減価があるかどうかでございまして、このはかり方は、当初価値であれ、債権放棄申し出の際の価値であれ、すべて額面マイナス引当金という形ではかることになっております。  そごうの場合は、額面簿価は約二千億でございまして、譲渡基準日、すなわち二月二十九日でございますけれども、二月二十九日における引当金破綻懸念先として一千億でございました。したがいまして、価値としては一千億で譲渡したことになります。そして、債権放棄申し出がありましたときにはどうなのかということが問題になるわけでございますけれども、その際、先方監査法人証明書では、二つの点からこれは実質破綻先債務者区分が落ちているということを主張したわけでございます。  二つの点と申しますのは、一つは、新生銀行債権放棄要請を受け入れない。なぜ債権放棄要請を受け入れないかと申しますと、九百七十億の債権放棄要請を仮に受けた場合でも、残った債権残債権が約千億あります。千億に対して引当金を積まなければいけません。その場合の引当金は、債権放棄を含む再建計画が仮に成功したならばどこまで債務者区分が上がるかといいますと、要管理先まで上がる。要管理先の場合の引き当て率は二八%でございます。したがいまして、約千億の残債権に対して二百八十億の引き当てを積まなければいけない。そごう業務純益は二百八十億よりか低いと見られておりますので、したがいまして、来年三月期の経常見通し赤字になってしまう。それは、新生銀行としては出発早々の決算が、経常赤字になるということは耐えられない。そういうことで新生銀行は、まず方針として、経営判断として債権放棄を受け入れないということを決定いたしました。  そうなった場合には、では、そごう債務者区分は何になるのかと申せば、それは、金融検査マニュアルによりまして、「一部の取引金融機関において経営改善計画等に基づく支援を行うことについて合意が得られない場合で、今後、経営破綻に陥る可能性が確実と認められる債務者については、「深刻な経営難の状態にあり、再建見通しがない状況にある」ものとして、実質破綻先として判断」すべきであるということが金融検査マニュアルに書いてあります。ここを先方監査法人解釈いたしまして、新生銀行債権放棄を受け入れない、この際、全体で七十三ある再建計画に参加している金融団は、すべていわば条件つき合意でございました。すなわち、七十三すべてがこの債権放棄合意するなら自分合意するという状況にたまたまあったわけでございます。そういうことで、新生銀行債権放棄要請を受け入れない場合には全体の計画がつぶれてしまう、こういう状況にあるのでそごう実質破綻先だ、こういうふうに先方監査法人解釈いたしました。  その際は、担保アンカバーが今までは約七〇%ぐらいだったのが一〇〇%積まなければならなくなりまして、その場合に、約四百億ほど下がりますので、したがいまして、額面マイナス千億だったのが額面マイナス千四百億ということで、実質価値が千億から六百億に下がる、二割以上減価になる、こういうことになりまして二割以上だ、こういう主張をしてきたわけでございます。  預金保険機構は、それを受けまして、預金保険機構が選任した、先方とは違う監査法人に依頼をいたしました。そして、その意見の結果が、先方主張は合理的である、少なくても不合理とは言えないという結果が出てきたものでございますので、預金保険機構としては、二割以上の減価がある、こう認めざるを得ないということでございました。
  9. 根本匠

    根本委員 大変丁寧な説明で、そういう説明になると、非常にわかりにくくなるのですね。今の説明で、この問題は二つ整理する必要があるのです。今のように包括的に説明されると、何となくそうだなということになるのですね。  この問題の本質は、一つは、新生銀行ノーと言えば再建計画合意されない。つまり、新生銀行というのは、トリガーを引く、トリガー役になるのですね。当事者たる新生銀行債権放棄それから再建計画合意しなければ、結果的にその債権実質破綻先と分類される、こういうことになるのですね。  では、新生銀行がなぜそういうことが可能か。自分合意しないで実質破綻先に陥るのであれば、通常であれば、その原因者引き金を引いた人間は実質破綻たるロスをこうむる。こうむるわけですが、瑕疵担保ルールというのがくっついていますから、瑕疵担保ルールによって実はロスをこうむらなくて済む。ロスは回避できる。これがワンセットになっていますから、新生銀行というのは非常に引き金を引きやすくなっているのですね。  それからもう一つの問題は、ではなぜ再建計画合意しなかったか。これは、追加的な引き当てにたえられない、こういう理由です。実は、この二つの論理をきちんと仕分けて考えないと、これは全部監査法人オーケーと認めましたから実質破綻先に分類される、その結果引き取られるのですよ、こういうことになるのですね。  もう一つのおかしさは、新生銀行ノーと言って実質破綻先に分類される。分類されるが、預保が引き受けた途端、預保は引き当て能力がありますから、預保は再建計画オーケーと言う。実質破綻先と一たん分類されたものが、預保に移った途端に要管理債権に戻る。この矛盾も出てくるのですね。  ですから、これは恐らく、瑕疵担保条項を設定したときにこういう事案は想定していなかったのだろうと私は思います。みずからが原因者となって引き金を引いて、再建計画合意できない。だから、それは実質破綻先銀行会計上解釈されるということになってしまう。それを論拠に買い戻す。  私も、ここはどこに問題があるのだろうと思って考えていたのですね。一つ一つプロセス手続は問題ないのに、どこかで結論が違ってしまう。ポイントはここにあるのですね。実質破綻先と分類されるのなら、それは当然預保に行ったときも法的処理原則で、実質破綻になるべきなんですね。預保に移った途端、これが要管理債権に変わるから、この問題の結論が変わってしまう、こういうことだと私は思います。  金融検査マニュアルから解釈されたと言っていますが、合意しない取引金融機関原因者たる新生銀行であっても、このマニュアル上は、そこは無色であり中立的であり、原因者がだれかは問わないのだ、こういう解釈であると思います。  実は、私は、こういう解釈をするときは、銀行会計上解釈だけではなくて、この解釈によって預保が引き取ったときにどういう問題点があるのか、この問題点も含めて政府解釈すべきだと思います。  要は、預保が引き取ったらどういう問題が起こるか。一つは、企業再建させるかどうかという判断、これは貸し手判断で、本来、国が関与すべきではないと私は思います。民間で、市場の信用力と力で判断すべきであって、国は関与すべきではない。ところが、そごう債権を買い取ることによって、実は、特定企業再建するかどうかの責任が国にゆだねられる。問題の質はここで一つ変わってしまう。こういうことになると、特定企業民間を国が救済するという話にまでなってしまう。その妥当性がどうか、これも大きな問題であります。  それからもう一つは、単なる債権回収という観点から、費用最小原則、それは、その目的、その限りにおいてはそうでありますが、実は、その意味するところは、国が再建計画に関与することによって、その業界構造改革構造調整をどうするかというところまで結果的には行ってしまう。ですから、これは単なる費用最小原則解釈するのではなくて、実は、国が関与するというのはそこまで大きな問題だ、テーマである。ここの認識がきちんとないと、債権回収観点からの費用最小原則ですよということで説明されるから、そこのところが整理されないのですね。  ですから、私は、これは銀行会計上解釈というだけで解釈すべきではなくて、瑕疵担保条項をつくったときに本当にここまでの事案を想定していたのかどうか、ここまで含めて解釈すべきだと思いますが、もう一度答弁を求めます。
  10. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  先生の御指摘大変もっともと思うのでございますけれども、先ほど申しましたように、破綻懸念先から実質破綻先になるかどうかの金融検査マニュアル解釈でございますが、債権放棄要請債権放棄を含む再建計画というものが一つございまして、その再建計画が、一体だれが債権放棄要請に応じなかった場合につぶれてしまうかという問題でございます。  今回の場合は、先ほど申しましたように、七十三行中たった一行ノーと言っただけでつぶれてしまう仕組みになっておりました。ただ、金融検査マニュアル自体はそういう場合以外のこともいろいろ想定しているわけでございまして、今回の場合は、たった一行、つまり、それは自分トリガーを引くわけですけれども、自分ノーと言った場合に全部つぶれてしまうわけですけれども、そうでない場合もいろいろある中で、今回はたまたまそういう場合であった。そのために、この金融検査マニュアルに当たってしまったということではないかと思っております。  契約でございまして、二割の減価につきましては、先方監査法人証明書、そして預金保険機構がそれを了とした場合にそうなるとなっているわけでございまして、契約の履行という観点から今回につきましてはやむを得ないものだと判断しております。
  11. 根本匠

    根本委員 それは、行政側からいえばそういう答弁になるのでしょう。ただ、私は、この解釈については、もっと総合的な要素を勘案しないと、これは想定されなかった最悪のケースが持ち込まれたからこうなってしまったんだと思うのですね。  それから、先ほどの、なぜ新生銀行再建計画合意できなかったか。これは、追加的な引き当て負担に耐え切れない、こういう問題だったのですね。九百七十億円の債権放棄をすれば、追加的な引き当ては二百八十億必要だ、百九十億の業務純益が全部飛んでしまうから、経営判断上それはできない、こういう御説明でした。  ですから、問題は、私がこれは民間に押し戻すべきだと言っているのは、九百七十億の債権放棄額が百億少なくて八百七十億円だったら、追加的引き当て額は百九十億円で、業務純益はゼロ。さらに、債権放棄額が九百七十ではなくて六百七十だったら、追加引き当て額は五十億で、新生銀行業務純益は百四十億残るのですね。  つまり、再建計画合意できなかったのは、再建計画が多分怪しいと思ったのかもしれません。しかし、理由は、追加引き当てに対応できない、体力的な判断だ、こういうことでありますから、それなら、私は、民間へ押し戻して、新生銀行ノーと言ったら全部ばたばた倒れる、全部だめになるわけですから、それだったら、これは民間で議論すればいいではないか、問題点はここなんですね。これに耐え切れなかったから持ち込まれた。  ですから、こういう状況で持ち込まれて、銀行会計上解釈で引き取る。引き取ったら、実は、国の責任になるし、企業向け救済、私企業を救済するのかという問題も出てくるし、ましてやその業界構造改革にまで及ぶような話を費用最小化原則ということだけで判断していいのでしょうか。私は、ここのところが、実は金融再生委員会の機能、役割、能力を超えるところだと思うのですね。そこまで判断を求められてしまうところに陥るところが、私はこの問題の大きな論点だと思います。ですから、仕組み自体瑕疵担保条項自体は私は必要だったと思いますが、実は、瑕疵担保条項の制度上の運用に問題が残っている、こう私は思っております。ですから、この解釈は、私はぜひ再検討をしてもらいたいと思います。  なぜなら問題は、この解釈をこのとおりにやれば、追加的引き当てができなければ債権放棄に応ずることはできない。これになると、新生銀行から預保に第二のそごう、第三のそごうがどんどん持ち込まれますから、問題先送りで、同じ問題が必ず次に起こる、こういう問題点がありますので、制度上の運用問題点としてここは私は厳しく見直すべきだと思います。  それからもう一つ、将来どういう問題が起こり得るかということでありますが、この問題が起こるのは、長銀処理と日債銀処理、この二つだけであります。これから起こってくる問題は、先般の預保法の改正で、ロスシェアリングルールは新法、預保法に盛り込みましたから、これからはセーフティーネットの観点からこの問題は起こらない。この問題が起こるのは、長銀処理、日債銀処理過程だけでありますから、私は、瑕疵担保条項運用解釈、これは厳しく再検討をすべきだと思います。そうしないと、第二のそごう、第三のそごうを防止できない。  ですから、この解釈を見直すべきだという点と、それから、この解釈の見直しと同時に、実質破綻先として預保が債権を買い戻したわけでありますが、第二のそごう、第三のそごうを防止するという観点からは、透明性の観点も含めて、法的処理で行うということを明確に宣言しておいた方がいいと私は思うのですね。こういう宣言をしないと、どんどん持ち込まれます。ですから、私は、実質破綻先として持ち込まれた債権原則として預保は法的処理でやるのですよ、これを明確にしておいた方がいいと思いますが、その点、御答弁をお願いしたいと思います。
  12. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  今回の件で、いろいろな御意見が各方面から出され、再生委員会といたしましても、いろいろ反省すべき点は反省し、その声に真摯に耳を傾けて、今後の運用基準というものをどうしていくのか。今まで経済性、合理性だとか社会的影響とか、あるいは経営責任の明確化等ということで、三原則を掲げてやってきたわけでございますけれども、果たしてそれに明確に加えられるような基準というのがあるのであろうかということについて議論していくこととしております。  いずれにいたしましても、先生指摘のとおり、なかなかいろいろな難しい、モラルハザードだとか公平感だとかそういうものも含んだ問題でございますので、今後の運用につきましては、慎重の上にも慎重を期して対応してまいりたいと思います。
  13. 根本匠

    根本委員 この問題は、銀行会計上解釈だけからしたら今のようなモラルハザードの問題、さまざまな問題に耐え切れないということなんですね。ですから、私も原則法的処理にしますよということを明言しておいた方がいいと思いますが、ただ、ごくごく一部の例外、限定的に債権放棄をする場合もあり得るかもしれない。しかし、その場合には、債権放棄ルールを極めて例外的、限定的にやる、その場合の債権放棄は徹底的に厳しい条件をつける。株主の減資あるいは借り手責任貸し手責任、徹底した追及、こういうものをやった上での極めて限定的、例外的な運用にしないと、行政ではイエスであっても政治的にはノーと言わざるを得ないということであります。  それから、繰り返しますが、そういう点で言うと、金融再生委員会は独立した三条委員会で、私も、これは政治は介入すべきじゃないということでつくったわけですから、独立委員会という性格できちんとやってもらいたいと思いますが、どうもこの問題を考えていくと、結果的には、債権放棄を認めた途端に、産業構造改革産業構造政策まで視野に入れなければならないというようなことにも波及していきますから、金融再生委員会の役割、権能あるいは能力、ここを明確化して、どこまでやれるのか、この辺のところをきちんと見直して確立すべきだと私は思います。  それから最後に、もう時間が参りましたので終わりますが、大事なのは、民事再生法の申請によりましてそごう法的処理に移りました。一万の取引先の九割以上が中小企業でありますし、五万人、正社員一万人ですから、私は、雇用対策を中心にこの民事再生法の申請による社会的な影響には、これは政府・与党一体となって頑張っていかなければいけませんが、万全な対応をするように要請をいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  14. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、渡辺喜美君。
  15. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 日本経済がどれぐらい借金の重圧に苦しんでいるかという数字でございますが、例えば、建設、不動産は一年間の営業利益、本業のもうけですね、これの何年分借金をしているか。どうですか。これはクイズでございますが、質問通告はしておりませんので、私の方から申し上げますけれども、建設、不動産業は、九九年三月期の決算では本業のもうけの六十二・五年分の借金をいたしております。それから、流通、卸、小売でありますが、営業利益の何と八十九年分の借金をいたしております。これは、ちなみに一九八五年、今から十五年前の数字と比べてみますと、建設、不動産においては約二十五年分、流通業界においては約三十二年分、こういう数字がございます。いずれも倍以上にはね上がっておる、こういうことなんですね。  金融、保険業を除く全産業においてはどうか。八五年三月期には十七・七年分の借金だったものが、昨年の三月期においては何と四十・五年分の借金をいたしております。これはもうマクロ的にいうと、借金は返済不能だ、こういうことですよ。  個人の、特にサラリーマン世帯の年収に占める借金の比率はどれくらいかというと、二十年前、一九八〇年には、三八・二%でございました。九〇年、今から十年前においては五三%でございました。九九年、昨年はどれぐらいになっておるかというと、何と七六・五%、大変なはね上がりぶりですよ。特に、この三年間で一〇%もはね上がっておる、こういう状況なんです。  したがって、こんな借金の重圧を抱えているうちは、新しく消費をふやしたり投資をしたりするということはほとんどできない、そう考えなければいけません。結局、この借金の重圧から逃れるためにみんなして一斉に借金の返済に走るわけであって、世の中全体、お金がじゃぶじゃぶ余ってきてしまうのです。ですから、余ったお金を低金利で国が借りてお金を使っている。その結果、国には膨大な借金がこれまた積み上がるという悪循環があるわけです。  したがって、この債務デフレから日本経済を解放するために、我々はいろいろな制度をつくってまいりました。例えば、そごうが申し立てを申請いたしました民事再生法というのもその一つでございます。また、ことしの秋までに、個人の再建型更生手続政府の方で原案をつくるわけでございます。これは多分来年ぐらいから使えるようになるでありましょう。  結局、そごうが今回、民事再生法の申請をしたわけでございますが、民事再生法を適用できるかどうかは一カ月ぐらいかかって審査をするわけですね。二十二社ぐらい出したそうでございますから、中には、これは一度死んでよみがえるということは難しい、では、そのままお亡くなりになってくださいというところも出てこないわけではないのですね。  この民事再生法を扱っている部署というのは東京地裁の民事二十部ですか、これは民事再生法、それから破産法、法人、個人ともに扱っているわけですが、裁判官が九人なんだそうですね。それから、会社更生法の方は民事八部で扱っているのだが、こっちの方は裁判官が七人しかいない、こういうことなんです。  恐らく、ぎりぎりになってしまった会社、上場企業の中でも相当数あると思うのですね。これは私の極めて粗っぽい計算なんでありますけれども、多分、ぎりぎりになって何らかの債権カットをせざるを得ないというところは百社から二百社ぐらいあるんだろうと思うのですね。ですから、これは、殺して債権をカットするか、あるいは一度死んでよみがえる、そういう手続に行くか、あるいはそごうの最初の案のように、延命措置を施して生き長らえさせるか、こういうことになるわけでございますが、裁判所に持ち込まれた場合、一体、百社とか二百社とか、そういった上場企業民事再生法なり会社更生法なりを出してきたときに対応できますか、いかがですか。
  16. 細川清

    細川政府参考人 渡辺先生指摘のとおり、民事再生法は本年の四月一日から施行されましたが、本年四月と五月だけで既に百三十七件の申請があるところでございます。  そこで、御指摘のとおり、裁判所でこれが対応できるかどうかということが問題になるわけでございますけれども、裁判所におきましては、民事再生法あるいは特定調停法等の施行によりまして、再生手続等の利用件数が相当数に上るであろうということを想定しまして、この法律の施行に向けまして、人的体制の整備や運用方針の策定等の入念な準備を行ってきたところであるというふうに聞いております。  したがいまして、現在までのところは円滑に運用されていると思っておりますし、今回のそごうの件に関しましても、早朝に申請して夕刻にはそのように処分が出たという迅速な対応になっております。  私どもといたしましても、こういった実情をよく把握しながら、裁判所と協力いたしまして、よくその体制が整備されるように今後とも努力してまいりたいと思っているところでございます。
  17. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 特定調停というのは私どもが議員立法でつくった制度でございまして、これは調停を使う制度ですから、もっと簡単によみがえりができる、こういう代物なんですね。こういった法的整理というものは非常に透明性が確保できる。民事再生法と会社更生法とでは、若干、手続、強制力において差があるわけでございますけれども、では、裁判所が例えば流通業界とかゼネコン業界とか、そういったところの業界再編までできるのかという問題がございます。  いずれにしても、過剰債務に苦しんでいるところは会社の数が多過ぎる、こういう問題がございます。しかし、会社更生法でもそうなんでありますけれども、小ぢんまりと単体で生き返り、よみがえりを認めるというケースがあり得るわけですね。営業譲渡とか合併とかに至らずに、単独で息を吹き返す、こういうことがあるわけです。そうすると、これは会社の数が減るということにはつながってまいりません。業界再編にまではつながらないのですね。一体、裁判所でどこまでできるのですか。業界再編までできるのですか。
  18. 細川清

    細川政府参考人 再建型の倒産処理手続といたしましては、御指摘のように、民事再生手続あるいは会社更生手続がありますが、これらの手続におきましては、裁判所は、債務者が、あるいは場合によっては債権者が提出した再建計画案について、専ら内容の適法性、遂行可能性、その他法律で定められた事項を判断すべきものとされております。  したがいまして、裁判所が、御指摘のような、業界の再編といった特定の政策的観点から再建計画案の内容を指導するということは法律上はできないことでございます。  もっとも、実際には、過当競争に陥っている業界に属する企業についての再建計画案につきましては、結果的にその内容が業界再編に資する方向での再建を目指すものと評価される場合もあり得るわけでございます。特に同業他社がスポンサーになったような場合にはそういうことが考えられます。ただ、一般論として、裁判所が業界再編といったことを指導するのは難しいことであるというふうに申し上げたいと思います。
  19. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 まさにそういうことなんですね。  昨年、我々は、お金の借り手の方の産業再生を図ろうということで、産業再生法という大変立派な法律をつくったわけでございます。この法律は、事業の再構築、選択と集中、こういうコンセプトに基づいてできているわけでございますが、この産業再生法の適用状況はどうなっていますか。業界再編は進んでいますか。通産省。
  20. 北村俊昭

    北村政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘産業再生法、産業活力再生特別措置法でございますが、昨年の十月の施行後、現在までに既に四十三件の計画を承認いたしております。
  21. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、私はこの法律は非常にピンぼけだと思うのですね。ほとんど業界再編につながっていない、結果としてはそういうことになっております。  建設省、来ていますか。ゼネコンの数が多過ぎるとよく言われるわけですよ。中には会社更生法を申請して、非常に身軽になりますから、もう背中に羽が生えたようになって、公共工事をダンピングして受注をする、そんな話も漏れ伝わってまいります。  一体、ゼネコン業界産業再生法を申請したところはありますか。それから、建設省は業界再編についてはどうお考えになっているのでしょうか。
  22. 風岡典之

    風岡政府参考人 お答えいたします。  産業再生法につきましては、ゼネコン業界で一件申請をしたところがございます。  それからまた、業界の再編についてどのように考えるかという点でございますけれども、建設業を取り巻く環境、先生御案内のように、投資が伸び悩む中で業者数がふえているということで、大変厳しい環境になってきております。  私どもとしましては、こういった中で、昨年の七月でございますけれども、建設省において産業再生プログラムというものを策定いたしました。基本的な考え方というのは、業界が供給過剰な状態になっているという認識を示す中で、基本的には個別企業の経営というのは個々の企業の自助努力、自己責任ということでありますけれども、行政としても各企業がいろいろな再建に向けての取り組みができるような環境整備を行うというようなことにしております。  実際には、個別企業が経営改善計画をつくるなどして必死に努力をしているわけでございますけれども、そうした中で、個々の企業だけの経営改善ではなくて、例えば、得意とする分野が異なる企業同士が合併をしたり、あるいは協業化をする、あるいは資材等の購入についても共同でやろうというようなことで、各企業間だけの判断ではなくて横断的な取り組みというものも出てきております。例えば、会社更生法の中でも、その会社が更生計画の中で合併をしたというような事例も出ているわけでございます。  私どもとしましては、先生指摘のように、個別企業のリストラだけの対応では限界がありますので、業界全体的に横断的な取り組みができるような環境整備というものに努めているところでありますけれども、こういったことについて引き続き最大限努力をしていきたい、このように考えております。
  23. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、借金の重圧から解放されないままオールドエコノミーがIT革命の中に突入をしてまいりますと、どういうことになるか。IT革命というのは革命ですから、倒す人がいれば倒される人もいるということです。アイテー革命と発音する人もいるのですが、あ痛えと言って済むような話ではないかもしれませんね。  例えば、Eコマースなどということが一般的になりますと、これは毎回毎回一般競争入札をやるのと同じことであります。したがって、価格は常に下落圧力が働いてくるということなんですね。よい物価下落と悪い物価下落があるのだという説もありますけれども、物価が下落をしていくときには借金というのは相対的に大きくなっていくのですよ。したがって、債務デフレという問題は、またそのときに膨らんできてしまうという問題を抱えているわけでございます。  結局、今回のそごうの問題が明らかにしたことは、損失処理のルールが非常にあいまいだったということなんです。一つそごうを単体で延命させようとしたところに問題点がございます。  そしてもう一つは、一番劣後するというか、会社がつぶれたときにはほとんど分け前にあずかれないはずの株主さんが自分の権利を持ったまま、そごうの延命措置をやろうとしたところに問題があるのですね。  ですから、例えば会社がつぶれますと、一番最初に分け前にあずかれるのは、日本のルールでは、まず国税庁なんですね。その次が社会保険庁ですよ。三番目が労働者、従業員ですね。四番目が担保のある債権者、銀行です。五番目が一般債権者ですよ。それで残りがあれば株主さんにも分け前がいきますよということなんでありますけれども、そごう再建案は、五千八百億からの債務超過であるにもかかわらず、株主さんの権利はそのまま残して再建をさせよう、こういう非常にピンぼけな案だったわけでございます。したがって、こういうあいまいな損失処理のルールをそのまま残しておいたのでは、絶対よくないと私は思っております。  なぜそごう再建計画が受け入れられなかったのか。いかがですか、西村頭取。
  24. 西村正雄

    西村参考人 ただいま、なぜ株主責任を問わなかったのかという御質問でございますけれども、まず株主責任を最初に問うべきであるというのは、そのとおりであると思います。ただ、私的整理の場合には合意前提となっているわけでございます。  そして、今回の再建計画において、株主の責任を問わなかったのは、三つ理由がございます。  第一番目の理由といたしましては、現実問題として、そごうの株主の中には、お客様、一般個人が非常に多いわけでございまして、そのウエートは五二%に達しているわけでございます。したがって、御承知のように、減資に必要な特別決議自体が困難であったということが第一番目の理由でございます。  それからもう一つは、債権放棄をお願いいたしました高知を除きます七十二行に対しましては、その一部分につきまして、デット・エクイティー・スワップ、つまり、債務の株式変換というものをお願いしたわけでございます。それが大体一行あたり二百万株ということでございまして、トータルで一億四千万株になる。といいますことは、現在のそごうの発行済み株式数とほぼ同じでございましたので、実際に、既往の株主の株式価値は半減をするわけでございます。したがって、実際には半額減資をしたのと同じような効果を生じる、これが二番目の問題でございます。  三番目の理由といたしましては、今回のそごう再建のために、金融機関、それからそごうの仕入れ業者、そごうのお客様、こういう方々に再建に協力をしていただかなければならないわけでございますけれども、大体そごうの株主構成の主体は、金融機関でございますとか、仕入れ業者でございますとか、一般のお客様でございます。したがいまして、こういう方の株主責任を問うということは、そごう再建が順調にいかなくなる懸念がある。この三つの理由から、株主責任ということを直接に問うことはやめたわけでございます。  ただ、もちろん、水島前会長につきましては、持ち株をすべて会社に無償譲渡をさせまして、そういう意味で、水島前会長自体の株主責任は明確にした、このようなことでございます。
  25. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 いろいろ理由をお述べになられたわけでありますけれども、結局、デット・エクイティー・スワップで倍ぐらいの増資をしたことによって、事実上半分減資したのと同じだ、こういうことを今おっしゃられたわけですね。  しかし、債務超過の額は五千八百億、これは回復不能なほどにもう資本が毀損をしているのですね。増資によってここで延命しても、五年後に破綻をもう一度するということだってあり得ないわけじゃないのですね、債権放棄が非常に不十分だと皆さん言っておりますから。  ですから、これは、よみがえりのためには一度死ぬ必要があるのですよ。一度死んで、新しく生まれ変わる。そのときに新しいエネルギーを吹き込んでもらうということは、実は、よみがえりの非常に大事な要件になるのです。あいまいなデット・エクイティー・スワップで株を水増ししてやるようなやり方では、本当に新しくそごうというものがよみがえってやっていけるのかどうか、そのあたりがよくわからないのですね。その意気込みが感じられないわけですよ。ですから、私は、こういうやり方は非常にまずいというふうに思うのであります。  また、これから民事再生法、まあ認められるかどうかは別としまして、興銀はメーンバンク、大口債権者になるわけでありますから、そごうを単体で生き返らせるのか、あるいは合併とか営業譲渡の道を選ぶのか、そのあたりの影響力を行使できる立場にあるわけです。  新聞によりますと、サーベラスとかいうアメリカの会社が経営支援を検討しているなどという報道もなされておりますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  26. 西村正雄

    西村参考人 お答え申し上げます。  アメリカの投資会社サーベラスに関する記事に関しましては、事実関係はまだ確認はしておりません。  いずれにいたしましても、今後、そごう再建は法的な手続の中で進められるわけでございますから、仮にサーベラスからそういう申し出があったといたしましても、グループの各店舗の売却につきましては、基本的には裁判所の認可によって決定されることになるわけでございます。したがいまして、こういう問題につきましては、今後、公正な、かつ適正な手続の中で進められると考えています。  ただ、一般論で申し上げますと、当社の再生に当たりましては、外資であれ何であれ、第三者のノウハウも活用した再建は、それが公正かつ合理的な経済活動である限りは、一つの選択肢であると思っておりますので、私どももそういう方向でこれからそごう再生の中の一つの選択として考えていきたい、このように考えております。
  27. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 結局、法的整理に持っていくことは、先ほども申し上げたように、非常に透明な手続にはなるのですよ。しかし、裁判所というのは全能の神様ではないのですね。したがって、我々が今抱えている、この日本経済の、事業の再構築をやる、そして借金の重圧から解放されていく、そういうことのためには業界再編が避けて通れない、こういう問題までは残念ながら裁判所にはできないわけでございます。  そこで、ピンぼけな債権放棄で延命をするということでない、第三の道がないだろうかと我々は模索をしなければならないと思うのであります。  お手元に、一枚紙で「債権放棄の基準 一度死んで蘇る」という紙を配ってあろうかと思います。私は、債権放棄条件として五つ挙げたいと思っております。  大幅な減資、もう債務超過が明らかな場合には一〇〇%の減資ですよ。とにかく損失処理というのは、利益を吐き出す、含み益を吐き出す、内部留保を吐き出す、それでも足りなければ資本金を吐き出すというのが当たり前の話なんですね。ですから、株主さんに泣いてもらう以前に債権者に泣いてくださいなどというのは、資本主義のルールを全く無視したやり方なんであります。  そして、減資をすれば、当然増資をしなければいけません。したがって、これは民事再生法と同じように新資本の注入という手続が必要になるわけで、これはデット・エクイティー・スワップでも結構だと思います。  第三番目には、業界再編につながる当該企業のリストラ、事業の再構築、これをどうしても欠かせない要件にすべきだと私は思っております。  第四番目には、経営者責任の明確化、経営体制の抜本的な刷新、経営者の民事、刑事責任の追及、経営者の私財の提供などであります。  第五番目には、貸し手責任の明確化、特にメーンバンクの経営関与を検証し、経営者責任と同じような取り扱いに従って対応することが必要であると思います。  こうしたルールを実効あらしめるために、私は二つの提案をしております。  一つは、金融再生委員会の監視下に、債務者企業と大口債権者及び当該業界に精通をした有識者から成る事業再構築委員会というものを設置して、企業再建パッケージ案を作成し、金融再生委員会がこれを承認をするという手続であります。  第二番目に、債務超過が明らかな債務者企業の減資手続を簡略化するために、金融再生委員会が裁判所に減資の申し立てを行い、裁判所の許可によって可能となるよう商法の特例手続を制定するというものであります。  御案内のように、商法には三分の二の特別多数決議という厄介な減資手続がございまして、これが先ほどのそごうの減資のネックになっておったということなのでありますから、このような特例手続をつくるべきではないかということでございます。  金融再生委員長、何か御感想があれば……。
  28. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいまは、委員から「債権放棄の基準 一度死んで蘇る」という非常に貴重な御提案をいただいたわけでございます。  委員がただいま御指摘になりましたように、株主責任をもっと追及すべきではないか、あるいは経営者責任のより明確化を図るべきではないか、さらに貸し手責任の問題、メーンバンクの役割の問題、そして再建計画においては業界全体の再編をどう考えるか、極めて示唆に富む御指摘をいただいたわけでございます。また、これを実現するために二つの御提案をされましたことも、大変興味深く、参考にさせていただきたいと思っております。  今回の問題につきまして、私どもが、預金保険機構が言っております四つの基準というものに基づいて、金融再生委員会でもこれを了承したわけでございますが、その後、各方面から、今の委員の御提案を初めとしていろいろな御意見をいただいておりますので、各方面の御意見に耳を傾けながら、私どももさらなる基準の明確化について真摯に検討いたしたいと思っております。  しかしながら、いずれにしても、今後、国の債権放棄につきましては安易に認めるべきものではございません。先ほど根本委員も御指摘になりましたが、私どもは慎重な上にも慎重に対処してまいりたいと考えております。
  29. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 ぜひ御検討をよろしくお願いします。  質問を終わります。
  30. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、谷口隆義君。
  31. 谷口隆義

    ○谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。  今回のそごうの問題は、いわば私的整理で債権放棄のスキームをということで当初進んでおったわけでございますが、これが白紙になって、その後、民事再生法によって法的処理を、このように最終的に決まったわけでございます。私は、この結論、結果的に申し上げまして、今回のスキームは評価できるというように認識をいたしておるわけでございます。  国による債権放棄は、私企業の、一般企業の経営の失敗のツケを国民に回す、国民に払ってもらう、このようになるわけでございまして、これは大変なモラルハザードが起こる原因にもなるわけでございます。また、今後またゼネコンであるとか流通業界から同様の救済が求められるというようなことが予想されるわけでございます。そういう意味において、モラルハザードの蔓延を阻止し得たという意味において、今回のスキームを評価するものでございます。また、今回のスキームによって透明性ある処理が行われたということにおいても評価できるものである、私はこのように思っておるわけでございます。  今、ソフトランディングだとかハードランディングだとか、このようによく言われるわけでございますが、ソフトランディングにしてもハードランディングにしても、いずれにしてもランディングをしなきゃならないわけでございます。  今回のそごうの問題が、当初言われておった私的整理による債権放棄の方法で行われるというように仮になっておった場合には、先ほど聞いておりますと、預金保険機構の方から費用最小原則でということで、そのような方法が望ましいというようなことであったようでございますが、これは、当面この費用最小原則ということでこのスキーム全体の評価をする場合に、望ましいというようなことは言えるのだろうというように思うわけでございますが、最大のポイントは、そごう再建計画妥当性でございます。  そごう再建計画が、仮に今回債権放棄で一時的に延命をし、その後何年か先にこれが経営破綻をするといった場合の想定を行いますと、より一層の金融業界からの追い貸しと申しましょうか、追加的な貸し出しが起こってくるわけでございまして、金融システムに対するより一層の波及も考えられる。また、国民負担がより一層増大する、このようなことも考えられるわけでございます。  そういう観点で考えた場合に、今、百貨店業界の動向は大変厳しいものがあるわけでございます。個人消費の低迷ということで、最近、百貨店業界が大変苦戦をいたしておるわけでございます。こういう状況の中で、私もこの再建計画を見せていただいたわけでございますが、一部の店舗を休止したり継続をしたりというようなことであったり、どうもあの再建計画で、抜本的にそごうが生き残っていく、現在の業界全体の動向の中でそごうが生き残っていけるだけの果たして再建計画なのかどうかということに対して大変疑問を持っておったわけでございまして、そういう意味において、今回の民事再生法による法的処理は、私が冒頭申し上げましたように、評価できる方法だった、このように申し上げたわけでございます。  そこで、今回のこの問題、当初、債権放棄によって国民にツケが回されるというような事態も予想されたわけでございます。今回の民事再生法においてもそれは当然行われるわけでございますが、追加的なツケがここで抑えられるという意味において私は評価しておるわけでございますが、まず初めに、宮澤大蔵大臣に来ていただいておりますので、国の財政の責任者としての立場で、今回のこのスキームについての御所見、御見解をお述べいただきたいというように思います。
  32. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、今回の事件の処理につきましての直接の行政責任にある者ではございませんが、また、ただいま谷口委員の御質問の前提となるお立場は、このたびの経緯というものは結果としてこれでよかっただろうというお立場で御質問のようでございます。私もその点は同様でございますが、そういう立場から、実は、直接の責任者でございませんので、預金保険機構等々から今回の当初の処理考え方について資料などをもらって、御質問がありますので検討いたしてみましたが、まず、当初、預金保険機構がああいう措置を考えた、私は、預金保険機構の立場としてはその段階において理解ができる考え方であったと思っております。  預金保険機構説明によりますと、本来の債権額面は千九百七十六億円でございますが、仮に九百七十億円を放棄いたしますと、放棄後の残存の債権額面は千六億円になるはずであります。ところで、この千九百七十六億円には九百九十九億円の引き当てがございますから、預金保険機構としての債権の取得価格は九百七十七億円になるはずであって、したがいまして、放棄後の債権額面が千六億円ございますから、取得価格を引きましてもなお残存がある。  そういう意味で、預金保険機構としては放棄した方が納税者の損失を少なくすると考えたことは、私は首肯できることだろうと思います。もとより、これには全体のこの再建計画ができるかとかできないかとかいろいろな議論がございますけれども、少なくともそれを一定と考えた場合、これよりいい方法は納税者の立場からは考えられない。  預金保険機構というのは、申し上げるまでもございませんが、本来、この場合には、国のために、納税者のためにどれだけ最大の回収をするかが仕事でございますから、当初考えたことは首肯できることだというふうに私は思っております。それが結果としてそごうを助けることになるか、さらに助けないことになるかといったようなことは、預金保険機構としては二の次の問題であって、保険機構は国のために、納税者のためにどれだけ回収を大きくするかというのが本来の仕事であると私は思いますので、そういう決断を一遍考えたことは無理なことではないと私は思います。  問題は、谷口委員が言われますようにその次にあるわけでございまして、その結果として、債務者に対して債務免除が行われた限りにおいて、債務者の立場を有利にするのではないかという議論は、いろいろに考えられる、見方によることだろうと私は思いますが、結果として債務者、関係者が、あるいは債権者と申しますか、そういう計画を撤回して民事再生法に戻りましたので、預金保険機構としては、かつて一遍しようとした決断は事案がなくなったということになったと思います。  そこで、今のような世論が起こりまして、なおしかし、再建計画を撤回しなかったときに再生委員会はいかにすべきかという問題は残るわけでございまして、私は、これは預金保険機構の問題というよりは、再生委員会が国民世論全体の動向を考えて決断をすべきものであったろう、自分行政責任者でございませんので、それ以上機微にわたることを存じませんが、起こりましたことから考えますと、そのように判断すべきであろう、まずまずそのような、谷口委員の踏まえておられますお立場とほぼ似たような考えをいたしておるものでございます。
  33. 谷口隆義

    ○谷口委員 ありがとうございました。  今回のそごうの問題におきまして政治に求められておるというのは、そごうの問題が経済に及ぼす影響を可能な限り和らげて、ようやく回復基調の景気の腰折れを防ぐことでございます。これが経済全体に大きく影響を及ぼすということになってまいりますと、大変な事態になってくるわけでございます。  そういうことで、取引先であるとか雇用の問題についてお聞きいたしたいわけでございますが、ちなみに、取引先は約一万社あるようでございますけれども、一万社に上る一般債権者は、地域別に見ますと、関東に五二%、近畿、北陸に二八%、中四国に一一%と分布していらっしゃるようでございます。このような全国的な規模で一般債権者がいらっしゃるわけでございますが、まず初めに、そごう民事再生法による法的処理による結果、資金繰りの問題が出てまいった場合に対する対策についてお聞きいたしたいというように思いますが、よろしくお願いいたします。
  34. 宮本一三

    宮本政務次官 確かに、こうした大きな事件でございますだけに、取引先企業に対しましては大変な影響が出てまいります。特に、中小企業を初めといたしました健全な借り手に対しましては、どうしても安定的な資金の供給ということが不可欠でございますし、その点についても政府としても万全の体制をとっているわけでございます。  御承知のように、政府といたしましても、信用保証協会等の信用補完制度の充実、これは二十兆の枠を三十兆にふやすというような決定をやりましたし、また、そういう影響を受けまして、さらにそごうに関連いたします企業への保証の問題、これにできるだけの配慮をしていただくようにというようなこともお願い申しております。さらにまた、健全化法によりまして資本増強制度の創設をやりましたし、信用金庫それから信用組合等への拡充の問題、そして政府系の金融機関に対しましても融資制度の拡充、こういった点についてさまざまな措置をとっておる次第でございます。  監督官庁といたしましても、これまで金融機関のトップとの意見交換、そういう場を通しまして円滑な資金の供給に向けて要請をしてまいりましたし、またこれからも積極的にやってまいりますが、さらに資本注入行でありますそうした銀行に対しましても、経営健全化計画に盛り込まれておりますように、信用供与を積極的にやっていただきたい、特に中小企業に対する融資をより積極的にやっていただきたいというようなことを申しております。幸い、この一年間の数字を見ておりますと、三兆円の計画に対しまして、四・三兆円というような実績も出ておるようなわけでございます。再生委員会におきましても、毎期ごとの決算の報告、さらにまた四半期ごとに定性的なヒアリングを行う、こういう形で頑張ってまいっております。  今後とも、金融機関の融資態度、これが本当に萎縮しないように、そごうの取引先企業を含めまして、健全な借り手に対する資金供給、これが円滑に進みますように十分注意してまいりたいと思っております。
  35. 谷口隆義

    ○谷口委員 質問の時間が余りないものですから、端的に、具体的におっしゃっていただきたいわけでございますが、通産省として、今この問題で具体的に何かやっていらっしゃいますか。
  36. 中村利雄

    中村政府参考人 通産省といたしましては、そごう民事再生法手続の開始の申し立てを受けました直後に、連鎖倒産を防止し関連中小企業者への悪影響を軽減するために、相談窓口の設置、金融措置の活用等により万全を期しているところでございます。  具体的に申し上げますと、政府系中小企業金融機関の各支店及び各都道府県の信用保証協会におきます特別相談窓口の設置をいたしました。先週末までに約二百件ほどの相談がございます。これは後ほど申し上げるほかの相談も含めてでございます。  それから第二に、そごうへの売り掛け債権等を有することによりまして資金繰りに支障を来しております中小企業者に、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫から資金を別枠で貸し付ける中小企業倒産貸し付けの実施を行っております。  さらに、関連中小企業が別枠で信用保証を受けられる倒産関連保証の対象の指定に向けての作業を実施いたしております。  四番目に、中小企業倒産防止共済に加入します中小企業者への融資の迅速化のための中小企業総合事業団におきます特別プロジェクトチームを設置いたしました。  また、主要商工会議所及び都道府県商工会連合会におきまして、そごう関連の倒産防止特別相談室の設置等の措置を講じているところでございます。
  37. 谷口隆義

    ○谷口委員 あと、雇用対策でございますが、正社員が一万人また派遣社員等が四万人、合計五万人の社員がいらっしゃるということでございますが、これについて、労働省の方から具体的な雇用対策についてお願いをいたします。
  38. 渡邊信

    渡邊政府参考人 そごうは全国的に営業を展開しておりますので、雇用問題に対する影響も大変大きいと思っておりまして、先週、労働省内にそごうの雇用問題への対策本部を設置したところでございます。そごう本体の雇用への影響というものはこれから再生計画が作成される中で検討されると聞いておりますが、当面は、そごう各社と取引のあります関連企業に対しまして、雇用の維持の努力を支援するということで、雇用調整助成金の制度があります、その発動について、近々発動するということで検討しておるところでございます。
  39. 谷口隆義

    ○谷口委員 ありがとうございました。  次に、今回の当初の債権放棄の案では、七十二行に対して債権放棄要請ということのようでございました。これが、民事再生法による法的整理ということで、百五十行余りの金融機関に影響が出てくるというような状況のようでございます。  今回のそごうグループとしての借入金の状況を見ておりますと、地方銀行、第二地方銀行全体で三千九百四十四億円、農業協同組合系統で六百六十八億円、信用金庫、信用組合で百四十九億円と、このように中小金融機関にまた農林系統金融機関に借り入れの残高があるわけでございますが、このような地方金融機関、地域金融機関に対する影響について、混乱が起こるようなことはないのかどうか、御答弁をお願い申し上げたいというように思います。
  40. 宮本一三

    宮本政務次官 確かに、大きな事件でございますだけに、関係金融機関に対しましてもそれなりの影響があるわけでございますけれども、我々の把握している限りでは、例えば今御指摘がありましたような地方銀行そして第二地銀、これにつきましても、与信額が三千九百億、八百億というふうな数字でございましたけれども、大体保全されている部分が一千億ぐらいございます。また引当金も千七百億というふうなことでございますから、全体として、業務純益のサイズから考えましても、それほど大きな影響にはならないのではないかというふうに思っております。また、協同組合組織の金融機関についても大体そんな感じでございます。  以上です。
  41. 谷口隆義

    ○谷口委員 今私が申し上げた中の農業協同組合系統が六百六十八億円あるわけでございます。これは従来住専処理のときに大きな問題になったわけでございますが、報道を見ておりますと、農中が四百十九億円、あと、報道に出ておる限りでございますが、広島共済連が五十三億円また広島県信連が四十八億円でございますか、このような借り入れがあるわけでございます。  きょうは農林省から来ていただいておると思いますが、農協系統金融機関と申しますか、農業協同組合系統のところの経営の問題が、一挙に弱体化するところが出てくるんじゃないか、このようなことも一部言われておるわけでございますが、このあたりの状況について御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  42. 石原葵

    石原政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま委員の方からお話ございましたように、農協系統金融機関の融資残高は六百六十七億円、先ほど六百六十八億円とおっしゃいましたけれども、我々が把握している六月末の数字では六百六十七億円となっております。この六百六十七億円、そごうグループ全体の負債総額一兆八千七百億円のうちの三%程度と思っております。  この六百六十七億円でございますが、その相当程度が担保あるいは引き当てで措置されておりまして、今回そごうグループが法的整理ということになりましたが、農協系統金融機関への影響は限定的なものと考えておるところでございます。
  43. 谷口隆義

    ○谷口委員 限定的なものということのようでございますので、次に移りたいと思います。  今回のそごうのスキームというのは、先ほどからも出ておりますように、ゼネコンまたは流通業界の巨額な債務を抱えたところがあるわけでございますが、このような実質的にいわば破綻しておる、破綻に近い問題企業のモデルケースとして見られておったわけでございます。今回、このそごうの問題が、民事再生法による法的処理が行われたわけでございますが、このようなゼネコン、流通業界の今後の動向について、金融再生委員会委員長の方から御見解をお述べいただきたいというように思います。
  44. 久世公堯

    久世国務大臣 今回のケースにつきましては、そごうが、最近におきますところのそごうを取り巻く大きな変化を踏まえまして、またモラルハザードというものに対する世の中の厳しい批判も考慮の上で、自主的な経営判断として、債権放棄要請を取り下げまして、民事再生法の適用を申請したというケースでございます。  ただいま委員が、ゼネコンや流通業界などの巨額の債務を抱えている、こういう実質的には破綻状態の問題企業一つのケースとして考えられているようだけれどもという御指摘がございましたが、仮に、ある企業が経営が破綻した場合においてどういうような処理方法が考えられるかという点につきましては、まずはその企業自身の経営判断というものが第一だろうと思っております。こういう問題につきましては予断をもって申し上げることはできないわけでございますが、いずれにいたしましても、今後の預金保険機構債権放棄問題につきましては、安易には認めるべきものではないことは当然でございますし、慎重な上にも慎重な判断というものが必要ではなかろうかと思います。  先ほど委員が御指摘になりましたように、経営者の責任でありますとか、あるいはモラルハザードの問題でありますとか、あるいはまたディスクローズ、公開をするというような御指摘が冒頭にございましたけれども、これらの問題につきましてはそういう点が非常に重要な問題になろうかと思いますが、個々の問題につきましては、ただいま申し上げましたように、慎重の上にも慎重な検討が必要であり、また何よりもその業界あるいはその企業自身の経営判断というものが前提になるのではなかろうかと思います。
  45. 谷口隆義

    ○谷口委員 例えばゼネコンの問題で申し上げますと、もう既に債権放棄のスキームがとられて金融機関債権放棄をして、また経営を再スタートしたゼネコンがございます。そのようなゼネコンを見ておりましても、株式市場の評価は一向に変わっておらない。ほとんど当時の状況と同じような株価になっておるわけでございまして、投資家は、債権放棄をすることによってこのゼネコンが再び活性化するというようには評価しておらないのではないか、このように言われておるわけでございます。  そういう状況の中で、今後、先ほど瑕疵担保契約のことがございましたが、新生銀行の融資先のところでゼネコンが、預金保険機構にまた買い戻しを要求してきた場合に同じようなことが想定をされるわけでございまして、これは大変重要な問題でございます。その状況の中で今再生委員長がおっしゃったように厳格に判断していかなければいけないわけでございますが、簡単に、簡単にと申したらちょっと失礼かもわかりませんが、債権放棄の方向には行かないだろうというようなことであるというように、私は今このお話を聞いておって感じたわけでございますが、そのようなことでよろしいのでございましょうか。
  46. 久世公堯

    久世国務大臣 委員がただいま御指摘になりましたのがやはり原則だろうと思っております。
  47. 谷口隆義

    ○谷口委員 わかりました。  それで、最後に、もう時間がございませんので、経営者責任そごうの前会長の水島氏について、今、私財提供云々の話が出てきておるようでございます。御本人からはそのようなことに対する御発言がないようでございますが、新聞報道で見ますと、そごうグループに対する百億円を超す個人保証をしていらっしゃって、預金保険機構と日本興業銀行は、私財提供の強硬策、この会長自身の破産申請もというような報道がございますが、そのようなことにつきまして御見解をお述べいただきたいというように思います。
  48. 西村正雄

    西村参考人 私財提供問題と水島前会長の責任問題につきましては、私どもも大変に重要な問題であると認識しております。  既にそごう自体から、水島前会長に対しましては、私財提供要請する旨の申し入れがなされていると思います。  また、今後につきましては、民事再生法手続の中で、裁判所に選任された監督委員の御指導、御助言を受けながら、一層調査が進められることになるのではないかと存じております。  それから、ただいま先生のお触れになりました個人保証の問題でございますけれども、これは、私どもと前の長期信用銀行、今その債権預金保険機構譲渡されたわけでございますけれども、これが個人保証を徴求しております。そして、その保証履行につきましては厳密に対応させていただきたいと考えておりまして、今後、共同の保証を徴求しております預金保険機構とこの点につきまして協議をしてまいりたい、このように考えております。
  49. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、取引先また雇用の問題は大変重要でございます。万全の体制をしいていただきまして、大きな混乱がないような対応をしていただきますようぜひお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  50. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、若松謙維君
  51. 若松謙維

    ○若松委員 公明党の若松謙維です。引き続き質問をさせていただきます。  まず久世委員長にお伺いしたいのですけれども、今回のこのそごう、救済措置を前提金融再生委員会はお考えになっていたわけですけれども、この金融再生委員会というのは、まさに政治的に、鳴り物入りで、いわゆる三条委員会という、大変独立性の強い、そして政治からも行政からも中立、こういう立場でできた委員会ですけれども、結果としてかなり政治の意見というものが反映したのではないか、そう思うのですけれども、それについてはいかがですか。
  52. 久世公堯

    久世国務大臣 御指摘のように、金融再生委員会は、行政委員会として、三条機関で設けられておるものであることは御指摘のとおりでございます。  ただ、同時に、委員長国務大臣をもって充てるということでございまして、これは、幾つかございます行政委員会の中でも、金融再生委員会と国家公安委員会だけでございます。  この行政委員会、政治的に基本的には中立であって、公正それから中立的な立場におって行政というものを判断していくことというのはそのとおりでございますが、同時に、委員長国務大臣であるということにつきましては、内閣の一員というものがその中に加わって、そして政治的な判断も加えて事を決するということにあろうかと思うわけでございます。  ただ、それは、同時に、三条委員会といえども、いろいろの各界の御意見というものを尊重して、特に国民の意見というものが各界の意見に反映するということを踏まえて対処すべきものであろうと思っているわけでございます。したがいまして、政治の場における意見というものも一つの意見として、政治的な判断というものも尊重すべき意見として考えていきたいと思っている次第でございます。
  53. 若松謙維

    ○若松委員 今のお話で、いわゆる国民の意見も考慮するということですけれども、例えば、金融再生委員会としてホームページ等をお持ちで、それで、パブリックコメントというのでしょうか、そういった手続を今とられているでしょうか。特にこのそごうの件について何件意見があったとか、もしそういうような具体的な、これは質問通告していないのでわかればで結構ですから、そういった観点から御答弁いただきたいと思います。
  54. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいま御指摘の点でございますが、特にパブリックコメントという形はとっておりませんが、今回の問題につきましては、冒頭御意見がございましたように、また他の委員からも御指摘がありましたように、やはり国民にこれをわかりやすく公示するということは非常に大事なことでございます。  ただ、今回の問題につきましては、大変技術的、専門的な要素が多うございましたけれども、私ども、こういうことをいかにして国民に対してわかりやすいように説明すべきかということは、今後これを一つの教訓として考えてまいりたいとも思いますし、その際におきまして、ホームページでありますとか、できるだけそういうものを広く使うことによって行いたいと考えております。
  55. 若松謙維

    ○若松委員 今、パブリックコメントというお話を申し上げましたのは、いわゆる独立性が強い金融再生委員会の救済措置の決定、ところが、世論は、特にマスコミを通じて、長崎屋がだめでそごうがいい、こういう単純な比較で、非常に怒りが充満した、そこで政治も意見を言わせていただいた、こういった結果だろうと思うのですね。  ですから、やはり金融再生委員会としても、そのパブリックコメントなり、もしくは、こういうこれだけの重要な意思決定をするのであれば、例えば事前にアンケートをして、あれだけ選挙の細かいデータも入手できるわけですから、そういった国民の意見を聞いて、それでやるべきだと私は思うのですけれども、それについて何か御意見ございますか。
  56. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいまの御指摘につきましては、一つの御見解として今後参考にさせていただきたいと思いますが、ただ、パブリックコメントの手続につきましては、今政府でとっておりますのは、政令でありますとか府令、省令、告示というような「広く一般に適用される国の行政機関等の意思表示で、規制の設定又は改廃に係るもの」について求められるべき手続であってと、こう示されておりまして、これは昨年の三月に閣議決定を行ったものでございますが、今度のそごうの問題でありますとか長崎屋の問題でございますのは、まさに個別の案件でございまして、この個別の案件につきましては、それぞれの会社、企業の内部的な、内部秘密の問題もありましょうし、またこういう個別問題につきましては、やはりこの点は慎重に考えていかなければいけないと思っております。  ただ、できるだけ、そういう限界の中において国民に広く開示をするということは、あらゆる行政について必要でございますけれども、こういうような国民に負担を及ぼす関係がある問題につきましては、特にそのようなことを考えております。
  57. 若松謙維

    ○若松委員 今回の一連金融再生委員会の救済措置、そして最終的にいわゆる民事再生法の申請を見届けた、こういう前提には、基本的には当初の救済措置は、いわゆる金融再生委員会も、制度的には独立でありながら、その実際の運用面で、発想面で、従来の護送船団方式、やはりこれが実態としてあったのではないか。また、それが結局、長崎屋のときよりもさらに、あのときの方がもっと経済状態が厳しかったわけですけれども、今回のそごうにおきましては、国民の意識も大きく変わってきた、税金のツケというものに対して厳しいチェックが入ってきた、そういった状況の変化に金融再生委員会はかなり疎かったのではないか、私はそう思うのですけれども、委員長はどうお考えですか。
  58. 久世公堯

    久世国務大臣 金融再生委員会といたしましては、一番基本にございましたのは、金融再生法三条に定めるところの費用最小化原則、これがあくまでも基軸でございます。  しかし、御指摘の市場原理でありますとか、あるいは透明性といったような観点も含めましていろいろな見地から慎重に審議を行いまして、その結果、この債権放棄要請というものを拒絶してそごう法的処理に追いやるよりは、この債権放棄要請を受け入れた方が費用が極小化できる、また同時に社会的混乱も回避することができるというようなことを考慮して、この債権放棄要請というものを受け入れたこともやむを得ない苦渋の判断であったと思うわけでございます。  しかし、先ほども申し上げましたように、今後の預金保険機構債権放棄につきましては、安易にこれを認めるべきでないことは当然でございまして、慎重な上にも慎重に対応すべきものと考えておるわけでございます。
  59. 若松謙維

    ○若松委員 同じような発想でやりますと、護送船団方式という批判が恐らくまた起きると思いますので、そういうことのないように、ぜひお願いしたいと思います。  総括として申し上げますと、長崎屋がだめでそごうが今回救済措置という話があったというのは、結局、そごうの方がある意味でバブル経営が強かったのですね。ですから、バブル処理はなぜか救済措置が入って、長崎屋みたいなある意味では地味に仕事をしているところはだめ、私はここに大きな矛盾点があろうかと思います。  ですから、バブルも早期に整理しなくちゃいけないというのも大命題でありますから、私は、金融再生委員会として、その自己責任というものをこの際しっかりと意識として各委員が持たれて、今度の二十一世紀の新しいやり方、また国民の大きな意識の変化というものを受けとめて、これからも対応していただきたいと思います。  そこで、一言、先ほど谷口委員からもお話がございましたが、今回のそごう民事再生法の法的整理によりまして、信用金庫とか信用組合、こういった地方の零細の金融機関にもかなり影響があるわけですけれども、本質的に、今回の民事再生法におきまして、これは見込みなわけですけれども、特に日本の金融システムに対して、また中小金融機関に対しての大きなシステムの危機とか混乱とか、そういうものは予想されておりますか。それについての意見はいかがでしょうか。
  60. 久世公堯

    久世国務大臣 大企業が破綻をした場合の金融システムの影響につきましてはいろいろなものがあるわけでございますが、ただいまは信用金庫とか信用組合等も含めてというようなお話でございましたが、これまた一概に申し上げることは非常に困難な問題でございますけれども、いずれにしても、金融再生法やあるいは早期健全化法等を活用して、金融システムに大きな影響が生ずることがないように対処をしていくことが重要であろうかと思っております。
  61. 若松謙維

    ○若松委員 それでは、今回議論になりました二次ロスということですけれども、特に、当初の金融再生法、これには、特別公的管理ですか、いわゆる国有銀行となった、これが当然買い手先に売るわけです。そのときに、今回の場合には、リップルウッドとのいわゆる売買契約の中で二次損失を入れた。こういった一つの経緯から、ことしの通常国会で、預金保険機構に、六十四条の五項ですか、いわゆる二次ロス、当然、反対に益が出た場合の還付もあるわけですけれども、そういった条項が規定されたわけですね。  よくよく考えてみますと、債権買い戻しの責任、いわゆる二次ロスですけれども、いわゆる特別公的管理、いわば国有化、これは実は当時も議論になりました。たしか民主党さんがこれを提案されて、それで、我が公明党はどちらかというと自己責任でRCCの方に優先するべきだ、そんな議論があったわけですけれども、そのときは皆さんでお互いに意見を出し合って今のスキームにした、こういう状況です。  この二次ロス負担につきましても、やはり金融再生法ですか、いずれにしても、国有化して、そしてさらに買い手先に売るわけですけれども、そこには何らかの法的ないわゆる工夫というのでしょうか、改正というのでしょうか、そんな必要性はお感じになりますか。御意見としてお聞きします。
  62. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいまの御指摘でございますが、委員も御承知のとおり、前国会におきまして、預金保険法を改正いたしまして、一定の二次ロス負担を法制化させていただいたわけでございます。  ただ、この施行は平成十三年四月一日ということになっております。そうなりますと、十三年の三月以前に国民の権利義務に影響を与えるような二次ロスに関する規定を遡及して適用するということについては、相当慎重に考えていかなければならないと思います。  したがいまして、私どもといたしましては、こういうようなこともあり、また、預金保険法の改正までにつきましては、この二次ロス補てんにつきましては、ロスシェアリングのような制度は日本には、金融再生法には置かれていなかったわけでございますので、金融再生法を改正してという御意見もあるやに承っておりますけれども、これは、現実に国家的な管理に移されております長銀なりあるいは日債銀につきましては明年の三月三十一日という期限もございますもので、また、到底今までの過程においてそういう法律改正をする手続の期間もなかったわけでございますので、そこで、私どもといたしましては、民法なりあるいは商法なりのいわば法理として考えられております瑕疵担保責任条項、この特約をつけることによって、この対応をそごうの場合もいたしましたし、そうせざるを得なかった。また、こういう瑕疵担保特約というものがその効力、効果というものを発揮していただけるものと信じているわけでございます。
  63. 若松謙維

    ○若松委員 私個人としては、余り法律に細かくいろいろな想定される事項を書きますと、法律が本当にかなり細かくなって、いわゆる現実対応ができない、臨機応変に対応できない。そういう意味で、預金保険法改正のみでいいという自分の考えを用いながら今の問題提起をしたわけで、これについてはこれで終わりにしたいと思います。  それでは、西村頭取にお聞きしたいのですけれども、現在の日本興業銀行の自己資本の金額と比率、これをちょっと教えていただけますか。
  64. 西村正雄

    西村参考人 お答え申し上げます。  現在の興業銀行の自己資本金額は、平成十二年三月末で一兆六千六百七十四億円でございます。自己資本比率は一二・一九%でございます。
  65. 若松謙維

    ○若松委員 そして、今回のそごうからこの民事再生法によって発生するであろうロス、これについてはいかがでしょうか。
  66. 西村正雄

    西村参考人 これについては、既に引当金を立てておりますので、今後の決算には関係ございません。
  67. 若松謙維

    ○若松委員 先ほど質問通告したのですけれども、もうちょっと詳しく説明してくれますか、せっかくの閉会中の大蔵委員会の機会なので。
  68. 西村正雄

    西村参考人 今回の債権放棄額は千八百九十三億円でございまして、それにつきましては既に引当金を積んでおりますので、これにつきましては全く今後の決算には影響ございません。  それから、今度、民事再生法の方に移りましたので、この場合に損失見込み額が若干ふえる可能性はあるわけでございますけれども、それにつきましては、いろいろな推定はされておりますけれども、実際の数字というものは、今後の法律の手続にのっとって策定される再生計画に基づきまして決定されることになりますので、今のところはその金額につきましては不明でございます。
  69. 若松謙維

    ○若松委員 そうしますと、よくこれも報道されておりますゼネコン、特に株価五十円以下のゼネコン、今、日本興業銀行としてどのくらい債権額がありますか。貸出金ですね。
  70. 西村正雄

    西村参考人 私どものゼネコンに対する債権額は相対的にそれほど多くないわけでございますけれども、今先生のおっしゃいました株価五十円以下のゼネコンにつきましては、一社が八百六十七億円、もう一社が七百八十三億円、二社合計で約千六百億円の残高が、これは三月末の数字でございますけれども、ございます。
  71. 若松謙維

    ○若松委員 いわゆる二社というのは、これはもう見ればすぐわかる話ですから、関係者が見ていただければいいでしょうけれども。  そのほかに、まだまだ会計基準が時価会計になっておりませんので、恐らくことしの三月期決算でも、いわゆる貸借対照表ですね、自己資本に計上されていない含み損とかまたは引き当て不足とか、そういった金額がありましたら、この際教えてください。
  72. 西村正雄

    西村参考人 この三月末の有価証券の含み益でございますけれども、これは千五百七十一億円の含み益がございます。  それからもう一点、引き当て不足があるかどうかというお尋ねでございますけれども、金融再生法のもとの開示債権、これにつきましての信用部分に対する引き当て率でございますが、破綻債権につきましては、標準どおり一〇〇%引き当てております。また、危険債権につきましては、これは標準は七〇%でございますけれども、私どもは九一・三%引き当てております。また、要管理債権につきましては、一五%の標準に対しまして四二・二%引き当てておりますので、引き当て不足は全くない、このように思っております。
  73. 若松謙維

    ○若松委員 大体状況としてわかりました。  そうしますと、約一・七兆円の自己資本、それがあるということで、先ほどのいわゆる四%以下とか八%以下、そういったことには恐らくなりにくいということだと思うのですけれども、これは日本興業銀行さんはどうなるのかという不安も非常にありますので、この委員会でその財務内容について、重要な点について把握させていただきました。  それではもう一つ、こういった意見があるわけですけれども、先ほどの、そごう前会長が十年間に四十四億円報酬を得ていた、いずれにしても私財提供を求めていたということですけれども、反対に、この十年間に経営者として取り過ぎじゃないか、そういう指摘というのはなされましたか。
  74. 西村正雄

    西村参考人 実は私どもは、この十年間に四十四億円という数字は全く把握しておりませんでした。  と申しますのは、株式会社そごう、これは上場会社でございますので、そこの全体の役員賞与とか役員報酬につきましては、私どもも承知しておりますけれども、今のお話の全体の報酬は、それ以外の非上場の各地の地方のそごうの会長、社長に就任されておりましたので、そこから幾つか分かれてきて、そのトータルでございます。したがいまして、その非上場の会社の中の役員の賞与でございますとか報酬というものは未公開でございまして、私どもは把握しておりませんでした。したがいまして、その事実は新聞等で知ったということでございます。
  75. 若松謙維

    ○若松委員 やはり貸し付け側、もしくはいわゆる株主として、経営者と会社の関係というのを非常に重視するのが本来のチェックの立場だと思うのですね。そういう意味で、これはこじつければ、前会長の水島氏は興銀出身ということで、六二年ですからもう大分前ですけれども、いずれにしても、そういった関係から、ここまでいわゆるバブルの放漫経営を見逃してしまったのではないか、そういう批判があるわけですけれども、それについては、頭取、どうお考えですか。
  76. 西村正雄

    西村参考人 ただいまの先生の水島前会長が興銀出身であるというようなお尋ねでございましたが、出身であるということは事実でございますけれども、水島氏がそごうに参りました経緯としましては、これは興銀から派遣をしたということではなくて、水島氏がそごうの一族でございまして、たしか三十三年ごろ、そごう状況が悪くなりましたときに、一族の要請によりまして、興銀をやめてそごうの副社長に就任をされ、そしてその四年後の昭和三十七年に社長に就任されたわけでございます。  したがいまして、よく水島氏と興銀との関係を言われておりますけれども、これは興銀から水島氏をそごう再建のために派遣をしたのではなくて、一族の要請そごうに行かれた。現に、その時点におきましては、そごうと興銀と取引はなかったわけでございます。そして、そごうと興銀との取引が始まりましたのは、その十年ぐらい後の昭和四十六年からでございますので、水島氏が興銀出身であることは事実でございますけれども、興銀から派遣をされたというのは、これは世間の誤解でございます。よろしゅうございますでしょうか。
  77. 若松謙維

    ○若松委員 わかりました。  実はこの水島氏というのは、中央大学で私の先輩でありまして、大宮にも先輩がございます。そういう中でこういう質問をしているわけですから、恐らくしかられると思いますけれども、これは大事なお話ですので、しっかりと事実関係は話させていただこうと思っております。  そこで、では頭取として、この十年間の四十四億、いろいろなマスコミの報道がなされておりますが、それは個人的にはどうお考えでしょうか。
  78. 西村正雄

    西村参考人 これはあくまでも私の個人的な考えで申し上げますと、私もあの数字を見て大変びっくりいたしましたし、残念に思いました。まさに再建中のそごうの経営者としてのモラルが問われるべき問題である、このように考えております。
  79. 若松謙維

    ○若松委員 最後の質問ですけれども、いずれにしても、長銀政策が大きく変わるわけですから、これはしっかりと対応していただきたいというのをまず久世委員長にお願いしたいわけです。  最後の質問として、今回の民事再生法ですけれども、これはいわゆる中小企業の早期の立て直しとか機動力を高めるということですけれども、中小企業を想定したというのが大体大方の認識です。ところが、これだけ大きいと、いずれにしても裁判所が決定するわけですけれども、やはり管財人とか、国民にもある程度信頼をいただいているような、そんな方の任命もあろうかと思うのです。これは裁判所が決める話で、委員長が決める話じゃないと思うのですけれども、そういった観点から、委員長の個人的な見解で結構ですけれども、そんなことはあり得る、またはあるべきかどうか、それについてはいかがでしょうか。
  80. 久世公堯

    久世国務大臣 民事再生法手続につきましては、何分とも前国会において成立をした法律でもあり、日本の破産法制の中におきまして、従来からございました破産法なりあるいは会社更生法に加えて今度民事再生法ができて、そして民事再生法の場合は、株式会社も適用になるけれども、同時に個人経営の、それこそ個人商店から中小企業から零細な企業にもこれが適用になっておりますし、従来の会社更生法なり破産法の手続というものをよく眺めた上で、広くかつ迅速に、効果的に使えるように仕組んだものと承っておりますので、これからはこういう新しい事態に対応して、特に中小企業や零細企業についてまでこの手続が行えるよう私どももこれを見守っていきたいと考えております。
  81. 若松謙維

    ○若松委員 これで質問を終わります。宮澤大蔵大臣、済みません、ちょっと質問を予定していたのですけれども、大体話の中で整理できましたので。  いずれにしても、私が強調したいのは、護送船団方式はもう完全に終わったということを、またそれが国民の声だということをしっかりと受けとめていただいて、これからも一つ一つの案件について対処していただきたい、それを要望して質問を終わります。ありがとうございました。
  82. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、鈴木淑夫君。
  83. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  今回のそごう事件、すなわち、一度は金融再生委員会で血税を使った債権放棄を決めておきながら、与党の政策責任者が直接そごうに働きかけて債権放棄の申請を取り下げさせて、民事再生法の適用を裁判所に申請させた、これを私はそごう事件と申しますが、この本質というか、これをどう解釈するかという点から始めたいと思います。     〔委員長退席、根本委員長代理着席〕  きょう最初に質問に立たれました自由民主党の根本委員は、これは行政が間違った判断をしたのに対して政治が正したのだと、行政と政治の対立のような解釈をされましたが、私はそれは違っていると思います。  日本は御承知のように議院内閣制でありますから、内閣と与党は一体のものでございます。しかも、その内閣の中の久世国務大臣が、金融再生委員会委員長として五人の中の一人に加わって、それで決定したわけでございますから、この決定は行政が勝手にやったという言い分は通らない。政府・与党一体で責任を負うべきものだと思います。  したがって、これは間違えたのだ、あるいは、私ども野党あるいは国民世論の強い批判、いわば怒りを浴びて、これはしまったと思ったのなら、本来なら政府・与党の中で処理していかなきゃいけないことですよ。つまり、与党の政策責任者はそのことを内閣に言い、そして、内閣の一員である久世大臣金融再生委員会で堂々と所論を述べて、内閣はこう考えるので、さきの決定を変えたいと言ってあとの四人の委員を説得しなければいけなかったと思うのですね。それを、与党の政策責任者がいきなり民間の私企業であるそごうに圧力をかけた。これはとんでもない社会的なコストを伴っているということにお気づきではないですか。  つまり、民間の市場経済において、私企業の経営の立て直しをどうするか、これは関係した人たちが協議すべきものですよ。そこに対して与党の責任者が働きかけた。これは、海外から見たら、何だ、市場経済、市場経済と言っているが、日本経済というのは、相も変わらずルールなんかなしで勝手に政府が市場経済に介入する、いつ何どき介入で変わるかもしれない、そういう経済だなと思われた。この社会的コストは非常に大きいものがあると思います。  私は、先ほど宮澤大臣のお話を伺っていて、さすがと思ったのは、宮澤大臣は御答弁の中で、預金保険機構は役目柄ああいう案を出したとしても、本来なら金融再生委員会がもっとしっかり考える、ないしは考え直さなければいけなかったことじゃないかとちょっとおっしゃいました。そうであるならば、これはやはり久世大臣が、金融再生委員会の中で、政府・与党を代表して、決定を変えてくれという主張をすべきだったと思いますが、その点について、宮澤大臣は先ほど、本来なら金融再生委員会が変えるべきだったのでしょうなと。それは、裏を返して言えば、与党の政策責任者がいきなり民間企業に介入するということは望ましくないという意味でおっしゃったのでしょうか。宮澤大臣にお伺いしたいと思います。
  84. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 詳しい事情を存じませんので、政府の立場、あるいは必ずしも正確でないかもしれません。  私の見ておりましたところは、たまたまその間に選挙があり、内閣改造がありというような事情がございましたことは御承知のとおりでございますが、恐らく、再生委員会が谷垣委員長のもとに一つの決断をした、そのことに対していろいろな批評が起こってまいって、預金保険機構のしたことはそれ自身で最小費用の原則は間違ってないし、再生委員会はそれをイエスと言ったということであったと思いますが、その立場からいえば、世間的にいろいろな批判が起こってきた。納税者の金で私企業を救うのか、そう短絡しますと問題はあると思いますが、しかし、そういうふうに世間が受け取ったということは結果として事実であったのだろうと思います。  そういう状況の中で、総理大臣としてこの事案をどうすべきかということをお考えになられたのだと思います。たまたま改造直後であったこともありますし、時間的な要因もございましたので、総理大臣は与党の政務調査会長に対して、何か考えはないものかという指示をされた、考えてみろという指示をされたと承知しております。  それに対して与党の政調会長は、御一緒の与党の方々とも御相談の上で動かれたのだと思います。私はどういう動きをされたかは存じませんが、恐らく、一般的に言われることは、債務者に対して、あるいは銀行に対して、何か考えられないものかということを言われたのだろうと、そういうふうに伝えられておりますから、それ以上の真相は存じませんが。  それに対して、一番大事な部分は、債務者であるそごうが、あるいは主たる債権者である日本興業銀行が、殊にデパートというのは、大衆、消費者に一番つながるものであるので、これだけ世間の批判を浴びてくると、現に売り上げが減るわけですから、自分の立場として、こういう再建案を皆さんにお願いすることは自分の利益にならないというふうに債務者は考えられたようであります。また、主たる債権者である興業銀行もそういう意味の声明を出しておられます。  したがって、どのような動機であれ、債務者が、または主たる債権者である興業銀行が再建案を取り下げられたということは、だれに言われたからでもない、基本的には御自分の利益に基づいてされたことに私は間違いないと思いますので、そういうこととして、再生委員会は、考えるべきもとの議案を失ったという状況であったのだ、私はそう思っています。いわば政府・与党の中でそういう討議が行われたということは別段恥ずべきことではないし、また、それを聞いて債務者あるいは銀行が自分の利益としてこういう行動をされたということも別段不思議なことではないし、再生委員会としては、したがって、再議をしようにもすべき議案がなかったというのが事の大体の真相だと思います。
  85. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 政府・与党の中で議論するのは一向に差し支えないのですよ。ただ、それは、最後には内閣として久世国務大臣金融再生委員会で議論すべきであったのに、そうでなくて、与党の責任者がいきなりそごうに電話を入れた。今大臣は、興銀とそごうが自主的に取り下げたとおっしゃった。それは形の上ではそうですけれども、あの電話がなきゃ、あの時期にああいう形では解決しません。ウルトラCとみずから言っているのですから、その与党の政策責任者が。このウルトラCは政府・与党の責任の所在をぼかすウルトラCであって、日本経済の信用失墜、そういうコストがかかっていることを皆さん方は全然考えてない。これは重大な問題点だということをまず自由党としてはっきり指摘しておきます。  次に、久世委員長国務大臣に、例の金融再生法にあるコストの極小化ですね、この考え方についてお伺いをさせていただきます。  もう既に与党さんの中からもやんわりと出ておりますが、私も、あの再建計画、本当に大丈夫なのだろうか、あるいは法的処理のコストは正しく計算されているのだろうかとか、なぜ株主責任を追及して、できれば一〇〇%減資ぐらいの思い切った手を打たないのだろうかとか、あるいは四十四億円を十年間でもらった経営者責任はどうするのだろうか、そういう一連の問題は考えておりますが、今はこのことを質問するのではありません。ここに問題があると私は思っていますが、今このことを議論するのではない。もっと大事なことです。  それは、金融再生委員会において、久世委員長以下五人が議論したときに、このコストの中には社会的コストが入っているのじゃなかろうかということについて議論しましたか。そういうことに考えが及ばなかったですか。私は、社会的コストというのは、このことを指しているのですよ。  つまり、市場経済では、借金したら、金を借りたら返さなきゃいけない、返せなくなった人はそこからリタイアしなきゃいけない、退場しなきゃいけない、倒産しちゃう、これは当たり前のルールです。もう少しきちっと言えば、企業の経営が困難になれば、関係者で一生懸命再建の協議を自主的にやるのだ、それがどうしてもだめだということになったら、ごめんなさいで法的手続で整理するのだ、それでリタイアするのだ。これは市場経済の基本原則ですよ。みんな中小企業はそれを守っているわけですよ。  ところが今度、そごうについてだけ目先の非常に小さな費用最小化原則、つまり債権放棄してあげて、そして十二年間で再建させて返してもらった方が今ここで整理しちゃうより国のコストは小さくなるよという、ほんの目先の小さな、それもさっき言ったように僕は非常に怪しいと思っていますよ、再建計画その他の前提は怪しいと思っているけれども、百歩二百歩譲ってそれが正しいとしても、そんな小さなコストの概念で物事を処理してよかったのかということです。  中小企業の人はみんな怒っている。その他、倒産した経営者はみんな怒っていますよ。金が返せなければリタイアするのが市場経済の原則じゃないですか。それをこういった形で救うということになりますと、さっきからちらちら出ています、私は具体的に名前は言いませんが、ゼネコン二社がいる、他の流通グループもいる、この経営者たちの間に物すごいモラルハザードを発生しますよ。あ、この手を使えばいいのだなと、瑕疵担保特約にひっかけて国の債権放棄を頼めばいいのだなと、物すごいモラルハザードが発生する。  さらに言えば、国際的評価は下がりますよ。国際的な評価は下がります。日本経済というのは、ちゃんとした市場経済かと思っていたら、ひょいと市場経済の根本的なルールを変える、それも政府が介入して。  こういった一連の社会的コストについて、久世大臣委員長としてほかの方々と議論しなかったのでしょうか。これが非常に私には不思議。何であんな視野の狭いコストミニマム原則でこんな大事なことを決定したのですか。これは日本経済にとって大変な信用失墜ですよ。そしてモラルハザードの発生ですよ。そして、中小企業、国民全体が物すごく不公平感を持ちますよ。政治の不信だって起こりますよ。何でそういう一連のコストを考えなかったのですか。どうでしょう。
  86. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最初に、私に関する部分だけお答えをさせていただきますが、日本興業銀行あるいはそごうにおいて与党から働きかけがあったことはそれといたしまして、そのゆえに明らかに自分に不利な決断を強いられたと、私はそういうふうには見ておりません。
  87. 久世公堯

    久世国務大臣 今の点の前に御指摘になりました点につきまして宮澤大蔵大臣がお答えしたわけでございますが、私も所管でございますので、一言申し上げたいと思います。  今度のそごうの件に関しましては、あくまでもそごうが自主的な判断によってこれを決定したわけでございまして、それを預金保険機構に伝え、預金保険機構がそれを了としたわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、私どもは、三条委員会の特性というものを尊重しながら、広く国民の声を聞きますとともに、私自身この再生委員会委員長として国務大臣がその中に入っているわけでございますので、それも含めて、この議院内閣制における与党そして政府の意見も反映すべく委員長国務大臣になっているわけでございますので、その趣旨を尊重してこれからも運営をしたいと思います。  今回のことにつきましても、とにかく、私はその与党の政策責任者の発言も一つの政治的な発言の要素だったと思いますけれども、基本はあくまでも、そごうが世論の声というものを、特に六月三十日以降いろいろと急速に変化した世論というものを踏まえて自主的な決断をしたものだろうと思います。  それから、今二点目に御質問のございましたそごう向けの債権の放棄は、費用最小化原則にのっとって判断したと私どもは申し上げました。また、金融再生委員会においては、私が着任いたしましてからは、この議論は済んでいて、決定を見た後でございますが、まだ速記録はできておりませんけれども、要点筆記で金融再生委員会の議論は承知をいたしております。六月二十七日と六月三十日、二回にわたってこの問題について議論をいたしております。もちろん、見識の高い、法律、経済を代表する四名の委員でございますので、いろいろ多角的な検討を行っていることは間違いのないことでございますけれども、決定といたしましては、今申し上げました金融再生法三条に基づく費用最小化原則、それがこの問題を決する基本であるということを全員が了知をして決定をしたわけでございます。  私、就任いたしましてから、これは非常に重要な問題でございますので、時間はほとんどございませんでしたけれども、二十分足らずの時間でございましたが、四人の委員に集まっていただいてこの問題について議論を一回したわけでございますが、結論につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。  そこで、今鈴木委員は、国民の不信感というものやあるいはモラルハザードというものを含む社会的コストというものを御指摘になったわけでございますけれども、私どもは、これは金融再生法の趣旨というものが大事な点でございますので、先ほど来申し上げました、この破綻処理に係る最終的な税負担につながるような費用というのがこの費用最小の費用の意味であるということを考えております。したがいまして、社会的コストはそういう原則の意味においては含まれておりませんけれども、金融再生委員会としては、今回の問題につきましては、この費用最小化原則を基軸としながら、さまざまな観点から慎重審議を行った上で、かつ苦渋の決断をしたのが今回の決定でございます。
  88. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 私はその金融再生委員会のコスト最小化原則解釈は狭きに過ぎると思います。社会的なコストに考えが及ばないというのは、特に政治家としては私は非常に問題だというふうに思いますが、これは見解の対立でございますので、先に進みたいと思います。  最後に、例の瑕疵担保特約、民法の中にある瑕疵担保特約を引っ張ってきた、欧米でもコストシェアリングがある、こういう話でありますが、これが、新生銀行あるいはこれから旧債券信用銀行を買い取るグループ、現に大変なモラルハザードを発生させている、それは御存じのとおりだと思うのです。それは、新生銀行にとって取引先が倒れちゃった方が得するという、とんでもない結果を招く。  欧米の場合は、これはシェアリングですから、一方的にそんなになっていないでしょう。これが日本では、シェアじゃなくて、ただ国がかぶる格好になっていますから、新生銀行は、問題取引先企業が倒れた方が得する。関連の、そこに貸している金融機関やあるいは取引先なんか、それと国がかぶっちゃうというこの瑕疵担保特約の援用というのはもうとんでもない話で、こんなものは契約から外せと私は主張したいところです。主張したいが、契約しちゃったものは簡単に直せないかもしれないが、できることなら、こんなものは外せと言いたいところです。  そもそも、なぜこんな無理な形で何が何でもあの大きな旧日本長期信用銀行あるいは債券信用銀行を外へ売り出さなきゃいけなかったのか。これは私は、さかのぼりますと、金融再生法の欠陥だと思います。二年前の金融国会のときです。あのときも既に宮澤大臣大蔵大臣で、そのときの政府責任者でございました。私はその当時野党で、民主党と公明党と自由党が野党として野党案を出したのですね。  野党案というのはどうなっていたかといえば、破綻した金融機関原則として整理する。その整理の仕方として二つ一つ金融整理管財人が整理しちゃう、もう一つはずうたいがでかかったり、その影響が大き過ぎるようなときは、しようがない、株を全部国が買い上げちゃって、そして管理する。こういう思想、二つの整理の仕方が入っていた。だから、野党案というのは、本来は破綻した金融機関原則として整理するよ、整理の仕方に二つあるよという野党案。  それに対して政府は、ブリッジバンク法案というのを出してきたのですね。これは整理じゃないのですよ。破綻した金融機関を、資産を買って、それで整理して、いいところを元気にしてまた出す。生きたまま入れて、生きたまま出すというブリッジバンク法案。  この二つが相対して金融国会でやんやんともんだ。あげくの果てに政府・自民党は、野党案丸のみと称してこの二つをがちゃんと一緒にしたのですが、実は何をつくったかというと、我々は整理を原則としていたのに、何と、がちゃんと一緒になったときには、我々野党案の国営銀行を、整理するための国営銀行を国営ブリッジバンクに変質させた。その法律を出してきたのですね。  それで、私どもは、これは長銀を生きたまま入れて、お化粧して、いいところだけ残して、生きたまま受け皿銀行を探して出す法案だ、これはだめだと言って、宮澤大臣は御記憶だと思いますが、党首会談で私ども自由党は、これはだめだ、整理しなきゃだめなんだ、生きたまま出すといったらいろいろな問題が起きちゃうと言って、党首会談決裂。それで、我々自由党だけが、この合体した今の金融再生法に反対票を投じたのですよ。共産党も反対。だけれども、そのときに、野党三党の中で私たちだけが抜けたのですね。そのときの危惧が私は当たったと思います。  とにかく、資産買い取りなんというのは入れていなかった。それから、受け皿銀行に資金援助してよろしいなんというのは野党案にはないのですね。それをどんどん忍び込ませてきた。最後に、覚えておりますが、津島議員が自民党さんの総務会で、これは生きたまま長銀を国家管理にして、治して、生きたまま出していく仕掛けを上手に埋め込みましたと言ったのですよ。僕らは、それを聞いてかんかんになって怒って、それで離脱したのです。反対に回ったのですね。  実は、この瑕疵担保特約をつけてまで何でもかんでも出していく、それで今度のような、瑕疵担保特約を盾にとって債権放棄しろと迫られてしまう、こういうひどい状況、そして私企業に対して国が債権放棄しなきゃいけない、こういう状況をつくっちゃった根本的な原因は、二年前の金融国会におけるあの自民党案、これを我々野党案の中にするっと忍び込ませることによって、国営ブリッジバンク法案に変質させたのですよ。我々はそうじゃない、整理するための法案だったのに、国営ブリッジバンク法案に変質させた。そこにそもそもの原因があると私は思っております。  何か自由党だけが正しいぞと言うようで恐縮でございますが、我々自由党が二年前に反対した、まさにそのことが今出ている、それをはっきり御指摘申し上げたいと思います。あのとき、私は自由党の責任者でした。公明党は石井さんが出ておられて、民主党は仙谷さんとか池田さんが出ておられた。それで、対する自民党さんは、最初は政策新人類さんでありましたが、後半から津島さんなんかがお出になった。それで、最高の指揮官は宮澤大蔵大臣でいらっしゃった。  宮澤大臣、今私が申し上げましたこと、つまり、丸のみと称しながら我々の整理するための法案を国営ブリッジバンク法案に変質させて、それを今フルに使っているためにこういう問題が起きているということについて、御感想がございましたらお伺いしたいと思います。
  89. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ぼつぼつあれから二年でございますので、あのときには各党いろいろな御主張を持っておられましたし、政府一つの考えを持っておりましたが、何十年かたちましてまたこの話はさせていただくことにしまして、政府は決してブリッジバンクを国営と考えていたわけではございません。ただ、一つ鮮やかに覚えておりますのは、鈴木委員が信用保証協会を使えとおっしゃったことがある。これは御卓見だったと今でも思っておりますが、また時間がたちましてから御高見を伺いたいと思います。
  90. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 時間でございますので、交代いたします。
  91. 根本匠

    根本委員長代理 次に、中塚一宏君。
  92. 中塚一宏

    ○中塚委員 自由党の中塚一宏でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  今我が党の鈴木淑夫議員からお話がありましたとおり、やはり問題は二つということで、まず一つは、やはり再生委員会というものの問題点。独立性を持っているとはいうものの、委員長国務大臣である。それは、先ほど委員長みずからがそのようにおっしゃっておられたわけでございます。しかも、委員長は与党の一員である。この手の話にいつもつきまとうのが、政府と与党の使い分けということでございまして、これでは、民間企業再建というときに、政府はこうだけれども与党はこうなんだという話では、恐らく民間の皆さんも企業再建というのはできない、ほとんどどうしていいかわからないというふうな状況になるのだろう、そのように思うわけでございます。  そういった意味におきまして、また後ほど御質問させていただきますが、瑕疵担保特約というのがある以上、これからまた同様のケースというのはどんどんと起こる可能性があるわけでございますけれども、今後のこのような債権の買い戻し、そしてまた債権放棄への要請、そういったときへの対応につきまして、委員長にお答えをお願いしたいと思います。
  93. 久世公堯

    久世国務大臣 先ほど鈴木委員からの御指摘もあったわけでございますが、今御指摘のありました瑕疵担保特約をつけた点につきましては、もう委員も十分御承知のとおり、長銀でありますとか日債銀とか、ああいう大きな銀行というものを整理するためには、相当の期間と費用とがかかるわけでございまして、このためには、アメリカ等におきましてはロスシェアリングシステムというものが法制度上確立しているわけでございますが、我が国におきましてはそういう制度がございません。前国会において預金保険法ではできましたけれども、金融再生法のもとにおいてはそういうシステムがないわけでございますので、そこでいろいろ考えた上で、民法ないしは商法にいわば法理として存在しております瑕疵担保条項というものを活用いたしまして、今度の瑕疵担保特約になったわけでございます。  いずれにしても、ある限られた期間でなるべく早くああいう大型の銀行を整理するためには、どうしてもそういう条項がなければ、どだい金融再生法の趣旨を生かすことができないということで判断をしたものでございますので、その点は御了解を賜りたいと思います。
  94. 中塚一宏

    ○中塚委員 それでは、今後、そういった形でまた預金保険機構債権が戻ってきた場合、あるいは債権放棄要請を受けた場合の対応というのはどのようにお考えですか。
  95. 久世公堯

    久世国務大臣 これからどういう問題が起こるかというものは、個別企業の問題でありますし、これは予断を持ってお答えするわけにはいかないわけでございますが、いずれにいたしましても、債権放棄要請というようなことは、これは私は慎重に判断をしなければいけない問題であろうと思います。  今回の問題につきましても、まさに金融再生委員会としては、いろいろと論議を行った末に苦渋の決断をしたわけでございますので、個々の問題については、これから起こるかもしれません、しかし極めて慎重に、かつ慎重な論議を重ねて判断をしてまいりたいと思っております。
  96. 中塚一宏

    ○中塚委員 今回も、一度は慎重にお考えになって債権放棄の御決定をされたのだろうというふうに思うわけですね、慎重に慎重にというふうにはおっしゃいますけれども。  債権放棄による再建ということになりますと、民間のうちでやっておる分には私的整理ということで、いいとか悪いとかいう話ではないのでしょう、というのは国の方からという意味ですけれども。いいとか悪いとかいう話ではないと思うのですが、一度債権預金保険機構に移ってしまえば、今後、幾ら債権放棄による再建が私的整理だということであっても、債権者が国である以上、これはもう私的整理というふうにはなり得ない。同様に、税金投入だ、税金による企業救済だという批判は必ずついて回るはずなんですね。  ですから、慎重にというふうにおっしゃいますが、ここはやはり何か明確な基準というのをおつくりになるべきではないのでしょうか。委員長、いかがでしょうか。
  97. 久世公堯

    久世国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、これは極めて慎重に判断をしていかなければいけない問題であると思います。  そこで、先ほど来基準はどうかというお話があるわけでございますが、この基準の設定に当たりましては、やはり各方面からの御意見も聞き、また今、きょうもいろいろと御示唆を賜りましたような問題を参考にして考えていきたいと思っておりますけれども、ただ、何分とも、債権放棄というものは本当に慎重に考えなければいけない問題でございますので、その基準といっても、これも十分検討をして考えてまいりたいと思っております。
  98. 中塚一宏

    ○中塚委員 それでは次に、先ほど鈴木委員からもお話がありましたが、公的管理方式ということについてちょっと伺いたいと思います。  民主、公明、自由で提出いたしました再生法というのは、破綻金融機関を整理、清算するための法律であった。ところが、修正等ございまして、長銀を生きたままきれいな形にして外へ出していく、こういう法律になったわけでございます。そういうことになりますと、借り手というのはいいところもあるし悪いところもあるのでしょうけれども、なかなかそうなると国が借り手に引導を渡すわけにはいきませんので、そうすると今回のようなことになってしまうということなんだろうと思います。  再生委員会の森事務局長にお伺いをさせていただきます。  昨年の二月ですか、資産判定をされたということで、そのときには、そごうというのは要注意先債権であったということです。そごう、流通業界ということで、その当時から、やはり流通業界というのは非常に厳しいのじゃないか、構造的な問題を抱えているのじゃないかと言われておったわけでございますけれども、そういったことも加味した上での要注意先債権という判定だったのかどうか、お答え願えますか。
  99. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、昨年の三月の長銀、旧長銀でございますけれども、長銀の決算におきましては、当そごうは要注意先Aと判定されております。要注意先Aと申しますのは、繰越利益がございますとともに、貸し出し条件も緩和されておりませんし、元利金の支払い延滞も発生していない場合が要注意先Aでございます。  先生の御指摘は、それではこれがどうして要注意先Aになったかということでございますけれども、旧長銀が一昨年の十月に破綻いたしまして、そして一昨年の十二月に金融再生委員会が発足いたしました。そして、法律の定めによりまして、金融再生委員会が旧長銀債務者につきまして、適と不適、すなわち新しい受け皿に引き継いでいい債務者と、むしろRCC行きに持っていくべき債務者に資産区分をすることになりました。  結局、その資産区分でどのようにしたかということでございますけれども、その際には、国が選任した新しい長銀の経営陣のもとで、その前に入っておりました金融監督庁の検査等も踏まえまして、新たにそごうという会社の査定を長銀が自己査定いたしました。その自己査定等に基づきまして、さらに金融再生委員会では二月のそごうの決算期における状況判断しながら、先ほど申し上げたとおりの要注意先Aと判定した次第でございます。
  100. 中塚一宏

    ○中塚委員 そういうことで瑕疵担保特約というのがついたということですが、先ほど久世委員長からもお話がありましたとおり、大きい銀行であるということの御説明がございましたけれども、瑕疵担保特約をつけなければ買い手があらわれないということであると、これは公的管理が失敗だったのではないかというふうに思わざるを得ない部分もあるわけでございます。  続いてまた森事務局長に伺いますが、譲渡契約は、ずっとLTCB・パートナーズとお話をされていたのでしょうけれども、譲渡交渉中にロスシェアリングルール契約の中に盛り込むというふうなお話はなかったのでしょうか。いかがですか。
  101. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  旧長銀が特公管銀行になってすぐに、フィナンシャルアドバイザーを使いましていろいろな受け皿先に接触したわけでございます。その中から幾つかの、五先、六先、昨年の三、四月時点では接触をして強い関心を持つものとして出てきたと思います。  そうした受け皿候補先が一様に申していたのは、とにかく旧長銀、大変ずうたいが大きゅうございます。すなわち、取引先数といいますか債務者数でいけば七千も超えますし、債権の数でいけば何万という債権の数でございまして、受け皿候補先としては、金融再生委員会が仮に適としたもの、ただいま申し上げましたのは、適としたものの中でも債務者が七千を超えるということでございますけれども、適としたもの七千を一つ一つデューデリジェンスをかけるというのは大変なことであると。したがって、むしろ、そこから譲渡後に出てくる二次ロスというものについては全額補てんしてくれぬか、あるいはアメリカにあるようなロスシェアリング契約に盛り込んでくれぬか、こういう話はございました。
  102. 中塚一宏

    ○中塚委員 それこそ瑕疵担保条項であってもロスシェアであっても、二次ロスが発生をすれば国民負担がふえるというのはもう当然な話でありまして、そうなってきますと、特別公的管理、生きたまま長銀をきれいにして出してしまったということが、今回の血税によるそごう救済、結局そごう自体は民事再生法ということになったわけですが、それでもやはり税金というのは使われていくことになるわけです。  これも森事務局長に伺いますが、当時の特別公的管理下の長銀に要注意先債権というのはあと何社ぐらいあるのでしょうか。
  103. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げますと申しますか、件数は基本的に公表してございません。金融再生法によります開示基準によりまして、御承知のとおり更生債権や危険債権や要管理債権は、額としてはお示ししておりますけれども、大変申しわけございませんけれども、債務者区分別の件数は公表しておりませんので、御勘弁いただきたいと思います。
  104. 中塚一宏

    ○中塚委員 いずれにいたしましても、これからの瑕疵担保条項の買い戻しの予備軍ということになっていくわけでしょうから、そのあたりは今後また委員会でもいろいろとお話をさせていただきたい、そういうふうに思うわけでございます。  今回、債権放棄から法的整理ということになりまして、そういう意味では、有権者にしてみればすごく高い授業料についたなというふうに思うわけでございますけれども、これも、民事再生法による再生は、成功しなければ今度は破産に移ってしまう。そうすると、ますますこれでまた国民の負担がふえていくということでございますので、今度はそごう再建のお話をちょっと伺わせていただきたいというふうに思っておるわけです。  預金保険機構さん、松田理事長、預金保険機構債権者として再生計画に今後どのようにかかわっていくことになるのですか。教えてください。
  105. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  去る七月の十二日に、そごう御自身の自主的な経営判断として東京地裁に民事再生法の適用を申請しまして、裁判所がそれを受理しまして、それで保全命令も既にかけられました。  そうなりますと、後は先生御案内のとおりで、更生手続開始の決定があった後に、債権者が集まりまして、裁判所の管理のもとで再生計画案が作成されて、それがのまれて初めて手続がきちっとした形で行われていく、こういうことになろうと思います。  私どもといたしましては、私的整理はもうできないことでございますし、銀行自体ではございませんので、いろいろ立場に制限はございますけれども、今後、民事再生法の法的な手続の枠内で債権者、特に公的な立場の債権者としてそれに参加をして、まず回収の拡大化に向けてできるだけの努力をしてみたい、またしなければいけない、また手続がきちっと公正にいくようにウオッチもしていきたい、また経営責任の明確化についても引き続き強力に働きかけていきたい、このように考えております。
  106. 中塚一宏

    ○中塚委員 先ほど水島会長は、一九六二年からそごうの方に行かれたというお話で、私は一九六五年生まれなものですから、私が生まれる前からずっとそごうにいらっしゃるわけです。  次に、日本興業銀行の西村頭取、再生計画について、今後、それこそ今お話ありましたとおり裁判所も関与することでございますので、まだいろいろこれからお話が始まることだとは思うのですけれども、そごう再生させていく自信といいますか、そごう再生計画がかけられれば、恐らくニューマネーを引っ張ってくるというのもなかなか容易な話ではないはずでございますので、そこはやはり興業銀行さんが全面的にバックアップをしないと、そごうはなかなか立ち行かないのではないかな、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  107. 西村正雄

    西村参考人 お答え申し上げます。  当行といたしましては、引き続きそごうグループの主力銀行として同グループの再生に最大限の協力を行う所存でおります。  当行は、民事再生法手続の枠組みの中で速やかに再生を図るべく、円滑な営業継続による事業基盤並びに企業価値の維持に向けて、具体的に以下の協力を行う用意がございます。  まず、当社の事業継続に不可欠な資金につきましては、裁判所または監督委員の許可を得た上で対応させていただく用意がございます。また、人的資源につきましても、今後の再生手続の円滑な遂行に必要となるスタッフ等の人材派遣にも積極的に対応いたします。さらに、今後、関係各方面との調整を図りつつ、そごうグループの事業再建全般につきまして最大限の協力をいたします。  以上申し上げましたことは、七月十二日に文書でそごう並びにそごう債権者の方にも通知をしてございます。
  108. 中塚一宏

    ○中塚委員 それでは次に、松田理事長と西村頭取にそれぞれお伺いいたします。  民事再生法というのは、債権者が民事、刑事上の責任追及もできる、もちろん再生計画中ではそごうが一番の責任があるというふうには思うのですが、お二方、その責任追及についてはお考えはいかがですか。
  109. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  先生御案内のとおり、民事再生法になりますと、再生債務者に当たるそごう自身が役員に対して有する損害賠償請求権の有無について審査をして、請求権があるときは、その額を決めて、かつ当該役員にその支払いを裁判所が命じるという審査の制度がございます。したがいまして、第一義的には、そごうみずからが旧役員らの責任の有無を調査し、その有無について裁判所に報告する義務を負う、こういうことになっております。  したがって、そういうそごうの動きにつきまして、私どもとしてはそれを見守りながら、それが厳正に行われるようにしていきたいなと思います。その意味では、先般、そごう自身が私どもの要請を受けて部内に経営責任調査委員会を設けるということになっておりますので、その活用にも期待をしているところでございます。
  110. 西村正雄

    西村参考人 ただいまの松田理事長のお答えとほぼ同様でございますけれども、今後につきましては、民事再生手続の中で裁判所に選任された監督委員の御判断で、その責任追及の問題につきまして調査が進められることになると考えております。  また、そごう自体、既に発表しておりますように、外部の弁護士、公認会計士等で構成する経営責任調査委員会を設置し、そこで経営責任の有無を調査するとのことでございますので、その調査結果もあわせて判断をしていきたい、このように考えております。
  111. 中塚一宏

    ○中塚委員 法的整理ということになって透明度が増したということではあるのですけれども、やはり税金が使われるということについては、これは変わりない。それが何でそうなるのかということになると、これは金融再生法、そういう枠組みの中で処理をして、そのまま長銀をきれいな形にして新生銀行として売っ払ってしまった、やはりそういったことのつながりになっていくのだろう、こういうふうに思うわけでございます。  今後も、やはりこの金融再生法問題点、この法律自体時限ですし、今あるのが長銀を除けば日債銀だけということではあるのですが、今回のこの話というのは、恐らくもう完全にモデルケースになっていくのだろう、借り手の破綻というものについてはモデルケースになっていくのだろう、そういう意味に私は思っております。  最後ですが、そごうには恐らく、一店舗一法人ということで、出先にたくさんの金融機関が貸し出しをしておるわけでございまして、こういったところへも被害は及ぶ。地銀、第二地銀等、系統等の話もあるようですが、こういったものについて、早期健全化法の適用というのを委員長はどのようにお考えになりますか。
  112. 宮本一三

    宮本政務次官 これだけの大きな事件でございますので、どうしても関係金融機関には大きな影響が出るわけでございますけれども、我々としては十分その動向をウオッチしているわけでございます。  地方銀行それから第二地銀につきまして言いますと、与信額三千八百億程度でございますけれども、そのうち、保全されている分が約一千億円ぐらいございますのと、また既に引き当てがなされているのが千三百億円ぐらいございます。そういう意味で、残り債権といいますか、一千億程度でございますし、地方銀行それから第二地銀全体としては業務純益がかなりございますので、そういう意味では、それほど大きな経営上の問題になるような事態はないというふうに見ておりますし、また協同組合組織の金融機関につきましても、六百三十億ぐらいの与信に対しまして、保全それから引き当て、そういうことを考えてみますと、残りは百億程度でございます。純益がかなりございます。そういう意味で、いずれも、それほど大きな心配が地方それから中小の金融機関に及ぶというふうには考えておりません。  以上です。
  113. 中塚一宏

    ○中塚委員 どうもありがとうございました。
  114. 根本匠

    根本委員長代理 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後零時五十分開議
  115. 萩山教嚴

    萩山委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。仙谷由人君。
  116. 仙谷由人

    仙谷委員 いわゆるそごう向け債権放棄問題と言われている問題でございますが、松田理事長を含めて大蔵大臣あるいは再生委員長、いずれでも結構なんですが、六月三十日に記者会見をなさって、再生委員会が了承した、つまりそごうに対する新生銀行債権の引き取りといいましょうか、これを了承、さらに加えて、政府として、国としてといいましょうか、そごうに対する債権預金保険機構のものとなった暁にはこれを一部分放棄するという発表をなさっておるわけでありますが、これは多分法律上の意思表示だと思うのですね。この意思表示は現在どうなっているのでしょうか。
  117. 久世公堯

    久世国務大臣 大変失礼いたしました。ちょっと聞き取りがたかったもので、今承りましたので、お許しをいただきたいと思います。  今御指摘の点でございますが、金融再生委員会といたしましては、そごうが自主的に判断をいたしましたその決定を一応了承したわけでございます。
  118. 仙谷由人

    仙谷委員 全然質問に答えていないじゃないですか。了承しようがしまいが、法律行為をなさっているのですよ、再生委員会は。その法律行為はどうなったのですか。撤回をするとか効力がなくなったとかなんとか言わなければ、法律上の問題じゃないのじゃないですか。極めていいかげんな話になるのですよ。  もう一問聞きましょう、時間がありませんから。  再生委員長そごうが自主再建の道という、きれいごとを言えばそういうことになるのだけれども、国に債権放棄をお願いするのを断念した、こういう意思表示をされておるわけでありますが、この時点に至っても再生委員長は、この債権放棄あるいは新生銀行からの対そごう向け債権の買い取りということは正しかった、債権の放棄も正しかった、こういうことを新聞記者さんの前でおっしゃっておるようですが、今もそのお気持ちは変わらないのですか。
  119. 久世公堯

    久世国務大臣 前委員長時代でございますが、再生委員会として決定をいたしましたことは、苦渋の決断をされたことにつきましては、私はそれは正しかったと思っております。
  120. 仙谷由人

    仙谷委員 これは大蔵大臣も関係あると思うのですが、一体こんなことがどこでどのように決まって、この問題についての内閣の責任はどこにあるのか、これが大問題だと私は思っているのですよ。  つまり、内閣に何か説明されたというふうな報道を見ますが、この債権放棄に内閣、政府はどこまでかかわって、どういう責任を持っているのですか。  大蔵大臣、当時の金融再生委員長とこの点について、財政当局者として、つまり資金の出し手として何か相談を受けなかったのですか。あるいは、受けたけれども、いや、これは正しいと、ずっとインタビューに正しい正しいと言っていますよ、大蔵大臣も。このことについて、政府としては何らかの意思決定をしているのですか、していないのですか。どういう責任を持つのですか、こんな重大なことを決めたときに。
  121. 久世公堯

    久世国務大臣 六月三十日に、預金保険機構が行った債権放棄につきまして金融再生委員会は了承したわけでございますが、その後の閣議におきまして前委員長が報告をしたと承っております。
  122. 仙谷由人

    仙谷委員 内閣では、了承とかそういう行為はないのですか。
  123. 久世公堯

    久世国務大臣 午前中も答弁をいたしましたが、金融再生委員会は、三条委員会としての組織でございますが、国務大臣委員長の地位にあるわけでございます。そこが、議院内閣制のもとにおける内閣と行政委員会としての金融再生委員会の接点になろうかと思うわけでございますが、了承いたしましたのはあくまでも金融再生委員会でございます。それを、国務大臣としての前谷垣委員長が、閣議におきまして内閣の一員として報告をしたわけでございます。
  124. 仙谷由人

    仙谷委員 政治の責任というのは全くないじゃないですか、今の議論だと。行政府責任もないですよ。だからこんなことを与党の政調会長にやられて、何かいいことが起こったみたいな平気な顔をしていられるのじゃないですか。どこに行ったのですか、政府責任は。  あなた方が正しいと思って決めたことが、与党の政調会長が一言相手に言っただけでひっくり返る、そんなことが起こっていいのですか。世の中には、政治とか行政というのは筋がなければいかぬじゃないですか、原則が。情けないことを言いなさんな。私は本当に、自民党の与党としての統治能力は全くなくなった、その象徴だ、そうとしか思えない、こんなことは。  行政府が堂々と責任を持って、いいか悪いかはこれから私が議論してあげますから、こんなことが許されるはずはないということは、もう八カ月も前から私は言っているんだ。ところが憶面もなくやった。ところが国民の批判が、この債権放棄という言葉に対する感性的な批判、それがうわっと巻き起こったらこれに迎合して、まさにポピュリズムですよ。  あなた方、正しいと思ってやったのだったら、国民が何と思おうと、これでなければだめだ、そういう政治じゃないと困るのですよ、今のような日本のこんな局面では。だれが責任を持つのですか、この恥ずかしい事態を。恥ずかしくないのですか。どうですか、再生委員長大蔵大臣政府が決めたことが、民間企業の単なる意思の変更によってひっくり返った。与党の政調会長が慫慂してひっくり返った。与党と内閣の関係はどうなっているのか。こんな筋の通らない政治が行われていいのか、そういうふうに思われる方はいらっしゃらないのですか。どうですか、大蔵大臣
  125. 久世公堯

    久世国務大臣 先ほども申し上げましたように、これを決定いたしましたのは、あくまでも企業としてのそごうが、世論それから六月三十日以降に取り巻く環境が本当に著しく変わった、それをいろいろ熟慮の上決定したわけでございまして、ただいま御指摘のありました、与党の政策責任者が一つの意見として言われた、しかし私は、そごうはいろいろと六月三十日以降も、特に国民の声というものをどのように受けとめるべきかということについて熟慮をしていたのだろうと思います。  それで、政策責任者の御意見というのも、それは聞くべき一つの大きな意見であったことは間違いないわけでございますが、今委員が御指摘になりました政治と行政との関係につきましても、これは先ほど申しましたように、三条委員会という、独立性が非常に高くて、中立公正な立場で委員がいろいろの議論を経た後に決定したものでございますので、再生委員会預金保険機構債権放棄という意思決定を了承したわけでございますので、その政府としての了承をした責任は、あくまでも金融再生委員会に了承した責任はございます。  しかし、それを前委員長は内閣の閣議におきまして報告をされましたのも、内閣の一員としての国務大臣である金融再生委員長として内閣にそれを行政としての報告をし、政治の場における内閣、かつ行政と政治との一致点であります内閣というところにおいて報告をしたわけでございます。
  126. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま久世国務大臣答弁されたとおりと承知しております。
  127. 仙谷由人

    仙谷委員 政治の責任民間企業に押しつけて話は済むものじゃないですよ。本当に情けないと思います、私は。これは本当に、まさに日本の政治の衰弱を示して余りあるんじゃないか。宮澤大蔵大臣が総理大臣のころだったら、こんなことは許されないと思いますよ。一人ででも宮澤さんは抵抗したんじゃないですか。こんなことが起こって、平然と何かいいことが起こったように与党の皆さん方は思っている。与党と内閣の関係というのを考えれば許される話ではない。こんなものは議院内閣制のイロハのイじゃないですか。  時間が過ぎていきますので、次の問題に移ります。  もう一遍久世委員長にお伺いするのですが、そごうあるいは新生銀行から債権を引き取ってくれ、さらにそごうから放棄してくれ、このことを了承した、この再生委員会の決定は正しかったのですか、間違っていたのですか。
  128. 久世公堯

    久世国務大臣 再生委員会の決定は正しかったと思います。
  129. 仙谷由人

    仙谷委員 そうすると、それが覆ったわけですから、だれかが責任をとらなきゃいかぬですね、正しいことをしてそのことが通らないのであれば。そういうことになるんじゃないですか。だれが責任をとるのですか。
  130. 久世公堯

    久世国務大臣 先ほども申し上げましたように、そごうが自主的な企業としての判断で取り下げたわけでございますので、問題の事案そのものがなくなった。それが事実でございます。
  131. 仙谷由人

    仙谷委員 今のはお答えになっていない部分があるのですよね。  それじゃ、ある種瑕疵担保特約に基づく債権の引き取り要求に対して、再生委員会オーケーと、意思表示は合致しておるわけですが、この合意は法律的にどうなっているのですか。
  132. 久世公堯

    久世国務大臣 新生銀行は、解除権を行使するに当たっての判定日、これは六月二十一日だったと思いますが、そこでそごうからの債権放棄要請を既に受けておりまして、これを瑕疵の発生原因として二割以上の減価が生じたとして、解除権行使を通知してきたものでございます。  この解除の通知に対しまして、預金保険機構は解除権行使に同意する旨の通知をしており、解除の効力はその時点において発生をしたものだと思います。一度発生をいたしました効力はその後の事情の変更によって影響を受けるものではございませんので、そごう債権放棄要請を取り下げたといいましても、新生銀行の解除権行使に影響を及ぼすものではないと思っております。
  133. 仙谷由人

    仙谷委員 そうすると、合意解約が成立した、こういう法律構成になるわけですね。  そうすると、再生委員会の事務局の方から説明に来られたときに書面を持って来られましたけれども、こういうことになるわけですね。同グループ向け債権を引き取ることとし、実質価値一千億を新生銀行に支払い、額面二千億円の当該債権を取得する、こういうふうに書いてあるわけですよ。  これはそのまま生きているわけですね。いつ履行なさるのですか。
  134. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま大臣答弁されましたとおり、解除権行使は六月二十一日に行われまして、預金保険機構がそれに同意した以上、その効力は生きております。ただ、債権の移転手続はこれからいたすことになります。
  135. 仙谷由人

    仙谷委員 いつするのですかと聞いていることに全然答えていないじゃないですか。いつするのですか。
  136. 松田昇

    松田参考人 新生銀行の方から解除権行使に伴って申請のありましたのは三十八社ございます。解除権の行使の通知を受けて、私どもは再生委員会の御了承を得た後で同意の通知をいたしておりますので、ただ、その解除権行使について同意はいたしましたけれども、実際の債権の対抗要件である登記の移転その他はこれからかかりますので、八月いっぱいぐらいはかかるのではないかなと思っております。
  137. 仙谷由人

    仙谷委員 そうすると、そごう向け債権については既に一千億円の引当金を積んである、さらに一千億円を国民の税金から支出をして新生銀行に支払う、これを八月中にやる、こういうふうにおっしゃるのですね。
  138. 松田昇

    松田参考人 日時が八月中になるか、ちょっとはっきりいたしませんけれども、合意ができている以上、その契約にのっとって実質価値はお払いいたします。
  139. 仙谷由人

    仙谷委員 先ほど読み上げた中に、実質価値一千億円を新生銀行に支払い、額面二千億円の当該債権を取得するというふうに書いてあるところに、正確に言えばごまかしがあるですね。つまり、既に一千億円の引当金は積んである、だから二千億円の債権を二千億円で買う、こういう話ですよね。  そして、別のところにこう書いてある。引当金計上での一千億円の損失は、公的資金により損失補てんを既に実施済みである。これは三・六兆円の一部である。  つまり、長銀処理に要した三・六兆円の一部、その一千億円。これは、長銀そごうに対する貸し金の二千億のうちの半分。そして、今度は残りの半分を国民の税金からまたまた新生銀行に損失補てんする、こういう話になっているのですよね。このことにできるだけ触れないようにして、いや二百億円損失が多いだの少ないだのという議論をされているというのは、私は解しかねるのですよ、今回の議論で。  端的に言えば、新生銀行、旧国有長銀そごう向け債権、二千四十四億円だったと思いますが二千億円と言いましょう、二千億円については、この段階では国民の税金から丸々二千億円損失補てんをしてしまった。国民の税金から二千億円出捐された、これはそういうことになるのじゃないですか。違いますか。
  140. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  先生最初に言われた引当金相当の一千億、あれは、旧長銀破綻処理をするときに、新生銀行に渡すときに新生銀行に引き継いでもらいました預金とか金融債、全額保護の制度でございますから、それの支払い原資に充てるということで、いわゆる資金援助として贈ったものでございます。その三・六兆の中に、いわば個社別に見ていきますと、そごう関係では二千億の債権に対して一千億の引当金が積まれた勘定になる、こういう話でございます。  それで一たん処理が終わりまして、そうすると新生銀行には依然として金融債もあれば預金も残っているわけですから、我々がロス補てんに入れた第一次の資金援助で使った一千億は残っていると思います。我々は、名目が二千億である債権を一千億で今度購入したわけですね。そうしますと、ただ単に、前にやった一千億は資金援助ですから、穴埋めですから、これは完全に税金の投入でございました。しかし、今度は一千億をやることによって二千億の債権を我々は引き取ったわけです。今度はそれをいかに回収していくか、こういう問題が今我々に課されている課題だ、こういうことでございます。
  141. 仙谷由人

    仙谷委員 松田さん、どうして私が言っていることと同じことをそういうわけのわからないような言い方をするのですか。いいですか、現にあなたのところに書いてあるじゃないですか、金融再生委員会から持ってきたペーパーに。一千億の損失は公的資金による損失補てんを実施済みと書いてあるじゃないですか、引当金計上で。そうでしょう。だから、今度一千億出したら二千億になるじゃないですか。都合二千億じゃないですか。  問題は、こういう債権の全額を新生銀行に渡すことにした、瑕疵担保特約なるもののいかがわしさなのですよ。どこの国に、破綻懸念先、さっき森さんは、僕はテレビで見ていたら要注意先なんということを言っていたけれども、破綻先債権として七〇%の引当金を積んだから一千億になっているのでしょう、無担保部分について。それは谷垣さんが言っていたじゃないですか、この間、四月に私が聞いたときに。これはその一千億じゃないですか。それはもう堂々と言っているじゃないですか、公表して。それなのに、そういう無理なことを言わないでいいのですよ。  ついに二千億払った、全額を払ったことと同じじゃないですか、新生銀行に。払ったことになっているわけでしょう。こんなことになぜなるのか。仮にRCC送りにしておれば、一割だったら二百億円入ってきていますよ。二百億円少なくて済んだかもわからない。一割となぜ言ったかというと、長銀のRCC送りにした債権の売却価格は大体一割だったじゃないですか。それは先般のこの委員会の私の質問に答えていますよ。問題は、やはりこの瑕疵担保と資産査定のところへ行くのですよ。  そこで、再生委員長、改めて聞くのですが、今我々の目に見えているのは、第一ホテル、ライフ、エルカクエイ、それとそごう、こういう借り手が新生銀行のやはり借り手、債務者になって承継されているのですよ。そもそも、公刊物を見ますと、ライフは千二百五十二億円の債務が新生銀行にある。そごうが九百七十億、全部で二千五十億、第一ホテルが百五十一億、エルカクエイが九百五十六億、旧長銀にあった、それが新生銀行に引き継がれている、こう言われておるのですね。この各債権に対して引当金をどのぐらい積んであるのですか。
  142. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  第一ホテル、会社更生は五月二十六日になっておりますけれども、単体で申しまして、貸出残高は先生指摘のとおり百五十一億円でございます。それに対する引当金は四十一億円積んでございます。  ライフ、これは五月十九日に会社更生法の申請になっております。貸出残高は御指摘のとおり千二百八十九億、それに対する引当金は三百五十一億積んでおります。  エルカクエイでございますけれども、二月十五日に会社更生法を申請しておりまして、単体で貸出残高は九百五十七億、引当金は五百六十五億でございます。
  143. 仙谷由人

    仙谷委員 ようやく世間に明らかになっているものの引当金のお話をされました。  私は四月十四日に、大体七〇%も引当金を積まなければならないような債権が何で適債権なんだという指摘をしました。あるいは、こういう適債権に無理やりして引当金を七〇%も積んでいるような、いわば破綻懸念先債権ですから不良債権の最たるものですよ。こんなものを適債権、保有するのが適当な債権として新生銀行に承継させる。当然のことながら、一月たったかたたないうちに、そごう、第一ホテル、あるいはエルカクエイに至ってはその以前だ、どんどん債権放棄なり法的な整理の手続が始まる。  そもそもこの資産査定とは何なのか、こういうことを私は指摘したはずです。そしてさらに、そのことによって瑕疵担保責任を当然問われることになるのじゃないのか、瑕疵担保責任を問われたときに国が新生銀行に一体あとどのぐらい追い銭をやるのか聞きました。全然お答えにならない。  それで私は、大体国民の税金を使うのにその中身を明らかにしない、そんなふざけた話があるかと言ったのですよ、久世委員長はいらっしゃらなかったけれども。それでも明らかにしない。こういうことの繰り返しだったわけです。  先ほどテレビを拝見しておりましたら、中塚さんという自由党の方が質問をされて、まだ新しい方だからおずおずと聞かれて、森さんが、いや、それはお答えできません、勘弁してくださいと言っていた。  つまり、今引き当てで積んであるお金というのは約九千億と言われている。一般の引当金総体九千億、個別引き当てが六千億、こうなっているじゃないですか。これがそごうと同じように、平均して五〇%の引き当てならば、つまり、担保のあるなしにかかわらず引き当ての金額を、そごうのときちょうど五〇%だからその当て推量で言うと、あと一兆二千億最大限新生銀行に追い銭を渡さなきゃいけなくなるじゃないですか。まさにこの点については、少なくとも件数と、何件の債務者について七〇%とか五〇%とか、私が申し上げているのは二〇%以上の引き当てを積んでいるのか。反対に言えば、破綻懸念先債務者なのに無理をしてこれを適債権にしたのか。それを明らかにしてくださいよ。国民は危なくて眠れない、幾ら金がかかるのかわからないなんというのは。どうぞ。
  144. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  ポイントは、適資産として判定いたしましたのは、昨年の二月、二カ月かけまして金融再生委員会は、七千をはるかに超える中から判定をいたしまして、承継するのに適した取引先として七千少し選んだわけでございます。そごうについて言えば、そのときは要注意先Aでございましたと申し上げました。  しかし、実際に長銀が最終的に譲渡されましたのは、それから約一年たったことしの二月でございます。そして、そのときの引き当てというのは、国側の監査法人がデューデリジェンスをいたしました。そのときには、確かにそごうのように破綻懸念先になったところもございました。しかし、当方といたしましては、破綻した金融機関はできる限り早期に処理するという金融再生法の趣旨に従いましてできるだけ早く資産判定を行いまして、それから後は、最後の譲渡のところでデューデリジェンスをして適正な引き当てを積むということで先方との交渉を行ってきたわけでございます。  その間になぜ見直しを行わなかったかというところがポイントかと思いますけれども、もう一度見直しを行うとなると、全体の資産判定のし直しでございますから、やはりまた大変な時間がかかりまして、できるだけ早く譲渡するという趣旨に反してしまうということ。それから、受け皿から見ますと、売買の対象になっているものの内容が変わってしまうということで交渉が非常にやりにくくなるという点。  そして、最後に言わせていただければ、我々は、それは瑕疵担保という枠組みの中で解決しようとしたものであって、それをわざわざRCCに持っていってしたとしても国民負担という観点からは、実は、RCCに適としたものを不適と判定し直して持っていった方が国民負担は大きくなるというふうにも思えた点もございます。そしてさらに、経済が立ち直ればまだ生きる可能性のあるところをわざわざRCCに持っていって回収一本やりということにするのが適当か、そんなような観点から、この大量処理の枠組みの中では、一たん一年前に適資産としたものにつきましては、基本的にはその状況のままで先方にいわば売り渡して、そして、後は瑕疵担保条項によって、もし瑕疵になり二割減価したら預金保険機構が買い戻す、こういう仕組み先方合意したわけでございます。
  145. 仙谷由人

    仙谷委員 そんなもの、あなた、全然言いわけにならないじゃないの。  譲渡基準日というのがあるんだから、譲渡基準日の資産内容を判定して、それをもとに売買というのが行われるのでしょう。もしそうじゃなかったとすれば、これは本当に、国民の税金を扱う官僚としては失格だ。許されない、そんなことは。どちらが高くなるとか安くなるとか言ったけれども、私がさっきやったように、RCCに行った方が国民の負担が安かったかもわからないじゃないですか。結局のところは二千億出すんでしょうが。  それともう一つ、私の質問に答えていない。七〇%の引当金を積んだ適資産、何件あるのですか、そしてどういう金額なんですか。ちゃんと答えなさい、これを。
  146. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  適資産に係る貸倒引当金でございますけれども、予備的基準日貸借対照表、すなわちことしの二月末におきまして、先生御承知のとおり六千億弱、五千八百九十九億でございます。これは個別貸し引きの数字でございます。一般貸し引きは三千百十八でございまして、合計で九千二十八億でございます。  先ほどの件数でございますけれども、これまでの国会でも何度も件数を開示しろという話がございますけれども、非常に件数が少なくなった場合には、いろいろ世の中の憶測によって、ここがこうだとかこうだとか、第三のまだ生きている取引先に対していろいろ悪影響を及ぼすおそれもあるということで、当方といたしましては、件数は御勘弁いただきたいということでこれまで来ております。お許しくださいませ。
  147. 仙谷由人

    仙谷委員 ここまでそごうの問題が債権放棄ということで大きくなったけれども、事は、国民は、こういう不透明な形で税金がどのぐらい使われるのかわからない、このことを怒っているのですよ、実は。つまり、金融システムを保全するために必要な資金であればやむを得ないと思って辛抱したんじゃないですか、六十兆のときには。ところが、やみからやみに、だれが決めたのかわからない、あと残り幾らかかるのかわからないということに不安を持っているんじゃないですか。  これは、件数と資産の総額、債権総額を明らかにされない限り、こんな審議できないですよ。とめますよ、委員長
  148. 萩山教嚴

    萩山委員長 久世国務大臣。(発言する者あり)  だから、私は国務大臣と呼んでいるのです。国務大臣久世公堯君
  149. 久世公堯

    久世国務大臣 今までは全体の件数につきましては開示をしておりませんので、この開示につきましてはいろいろ問題がございますので、その方針を踏襲したいと思っております。
  150. 仙谷由人

    仙谷委員 これ以上質問できませんから、問い方を変えます。  では、この瑕疵担保責任の履行を迫られて、最大限あとどのぐらいの金額を新生銀行にプレゼントしなければいけないのですか、国民は。
  151. 久世公堯

    久世国務大臣 瑕疵担保特約に基づく追加の損失がどのくらいあるかという御指摘でございますが、どの程度の債務者瑕疵あるいは特に二割減価要件を満たすことになるかという見通しが難しいわけでございますので、その見込み等について計算することは困難でございます。
  152. 仙谷由人

    仙谷委員 では、蓋然性の問題でいいですよ。だから七〇%引き当てをした破綻懸念先の件数とその金額を聞いているのじゃないですか、債権総額を。それがまさに瑕疵担保責任履行の非常に懸念のある金額じゃないですか。そのぐらいのことわからないのですか。わからないのだったら資格ないですよ、あなた。このことを昨年の十二月から、ことしの四月も、大蔵委員会指摘してあるのですよ。ちゃんと指摘してあるじゃないですか。だから、こんなでたらめな契約を結んじゃだめだということを言ってあるじゃないですか。国民が幾ら国民の税金が損失補てんに使われるのかわからない、底なし沼のような契約をするのは許されないと申し上げてあるじゃないですか。  ところが、何かあたかも大発明でもしたかのようにはしゃぎ回って、瑕疵担保特約をつけてついに契約できた、ばかなことを言いなさんな。国民はそこに怒っているのですよ。明らかにしてください。明らかにしないと、質問しない。
  153. 森昭治

    森政府参考人 先生の御質問に対して、個別貸し引きの額は五千八百九十九億と申しましたけれども、それにぴったり合う債権額、ほとんど一致すると思うのですけれども、金融再生法開示債権というものを我々は発表しております。それで申しますと、五千八百九十九億円に相当する額面債権額は、二千八百九十億円が更生債権でございまして、七千七百四十億円ぐらいが危険債権でございます。この二つを足すわけでございますので、一兆六百億円ぐらいが額面でございまして、一兆六百億円に対して五千八百九十九億円の引当金が積んである、そのように御理解いただければよろしいかと思います。
  154. 仙谷由人

    仙谷委員 そうすると、先ほどの更生債権については一〇〇%積んである、こうおっしゃったわね、前のあれで。  いずれにしても、あと五千億とかそういうオーダーで国から持ち出さなければいけない可能性が多々ある。既に、先ほどあなたがおっしゃったそごうとエルカクエイとライフと第一ホテル、これを合計しても二千億近くなるじゃないですか。そうすると、あと三千億ぐらいまだこれから持ち出さなきゃいけない、こういうことになるのですね。その可能性があるということになるのですね。
  155. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  先生の仮説の中に一つ大きく抜けているのは、私は担保だと思うのでございます。担保については、こちらが一つ一つまだ調べておりません、今言った数字に立ちまして。もし担保がないとすれば、確かに一兆六百億に対して五千八百しか引き当ててないのでしたら五千億ぐらいになりますけれども、その中からどれほどを担保でカバーしているか。  先ほどの話、もう一度ちょっと言わせていただきますと、確かにそごうを例にとりますと、一千億、これは金融債保有者等を保護するために、もう既に売り渡すときに損失が出ております。そして、今度新生銀行が解除権を行使しまして、我々は二千億円の額面とともに、最初に三・六兆の中からつぎ込んだ千億も一緒にもらってきました。したがって、今預金保険機構にありますそごう債権価値は千億でございます。したがって千億払ったわけです。  したがって、預金保険機構の勘定、これは金融再生勘定でございますから、金融再生勘定の資産項目のところには、キャッシュが新生銀行に行きまして、それにかわって二千億マイナス千億という引当金、このうち千億は、最初に金融秩序維持のために国民に損をかけた三・六兆の内訳の千億でございますが、二千億から千億引いた一千億という実質価値債権があります。あとはこの債権をどう預金保険機構が回収していくかでございますけれども、仙谷先生はその千億も損だとおっしゃいますけれども、我々は、その中で六百億の物的担保、これは必ずとれるというふうに考えておりますので、したがって、破産の場合であっても追加的な損失というのは四百ぐらいだと我々は見込んでおります。  すなわち、もともとの千あるではないかといえば、その千に四百足して千四百が精いっぱいでございまして、今度民事再生法手続の中でこの四百がどれほど縮まっていくか、二百になるか、そこら辺が預金保険機構の方の回収の努力による面もありますし、全体の民事再生法の中でどういうふうに再建策が策定され、それを裁判所が認定していくか、それによるものかと思います。
  156. 仙谷由人

    仙谷委員 そんなことは当たり前の話じゃないですか。RCCに行ったって、担保分はちゃんと回収するのですよ。そんなこと自慢そうに話したってしようがないじゃないですか。  ところで、再生委員長、ちょっと瑕疵担保責任の履行に関することを聞くのですが、金融再生法上、この瑕疵担保責任の履行を迫られたときにお金を払わなければいかぬのですね。そごうの場合だと一千億払わなければいかぬ。これはどういう法律的な根拠があるのですか。
  157. 久世公堯

    久世国務大臣 金融再生委員会金融再生法に基づいて講ずる長銀の特別公的管理を通じた破産処理施策の一環として預金保険機構が行うものであるというところから、金融再生法の六十条六号の附帯業務というのがございまして、その十二号に、「前各号の業務に附帯する業務を行うこと。」こう書かれております。六十条は、御承知のごとく、この機構の業務の特例ということで書かれているわけでございますが、その中に、「三十九条第一項の規定により特別公的管理銀行の株式を取得すること。」となっておりまして、それに関する附帯業務ということで十二号に書かれているわけでございます。これに該当するものと私どもは思っております。
  158. 仙谷由人

    仙谷委員 勝手に思われたら困るのですよ。何で特別公的管理銀行の株式を取得することに附帯する業務としてこの瑕疵担保契約の履行ができるのですか。私は、こんな拡大解釈というかむちゃくちゃな解釈を無理やりこじつけてやるというのは、とんでもない話だと思うのですね。裁判所に持っていってくださいよ、こういうことができるかどうか。  さらにあえて言うと、五十三条を見てください、委員長、五十三条。五十三条は、「機構は、金融機関その他の者の資産を買い取ることにより第一条の目的を達成するため、次の業務を行うことができる。」それで、一号で資産を買い取ること、ハ、特別公的管理銀行、ニは、特別管理銀行じゃない普通の銀行からも買うことができるということになっているのですよ。新生銀行はもう特別公的管理銀行ではありませんわね、新生銀行という名前のとおり。そして、次の二項を見てください。「前項に規定する資産の買取り及びその委託は、次の各号に掲げる金融機関等の区分に応じ当該各号に定める場合に限り」、限りですよ、「行うものとする。」となっているのですよ。この二つの条文との関係で、新生銀行から一〇〇%お金を払って資産の買い取りができるなんという解釈は絶対に出てこない。法律をつくった我々が言うのだから間違いない。そこで池田さんもうなずいているから間違いない。  特別公的管理が終わった後の、ある種の代金を払って承継された銀行から資産の買い取りをするについて、一〇〇%の代金を払って買い取るなんて、そんなことができるはずは、この金融再生法上はどこにもない。これは金融再生法違反なんですよ、こういう買い取りをするのは。いかがですか。
  159. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいまは金融再生法の五十三条の条文を挙げられたわけでございますが、私が先ほど申し上げましたように、この債権買い取りの規定につきましては、六十条六号の附帯業務、その十二号のところで読むというふうに法律解釈上は承っております。
  160. 仙谷由人

    仙谷委員 だれから承っているんですか。冗談じゃない。承るなんて冗談じゃないよ。  あなたのおっしゃることだと、法律に書いてなくても、ほかの事柄についてはすべて限定的にとか、こういう場合にだけ許されると書かれておって、こんな大事なことが、瑕疵担保特約を結ぶこと、その履行をすること、国民の税金から新たな出捐を行うこと、こういうことが何でもできる、法律に書いてなくても何でもできるという話になるじゃないですか。そんなことが、この重大な金融行政、ましてや国民の財政的負担につながることについて何でもできるような、そんな解釈がこんな一般条項で行われるなんという法律はどこの国探したってないですよ。
  161. 萩山教嚴

    萩山委員長 事務局長から答弁をさせます。
  162. 仙谷由人

    仙谷委員 事務局長はいい。事務局長はさっきから不必要なことばかり言うから、委員長やってください。
  163. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいま申し上げましたように、この法解釈としては六十条六号の附帯業務だと考えておりますけれども、なお沿革のあることかと思いますので、技術的な問題でございますので、事務局長答弁させたいと思います。
  164. 仙谷由人

    仙谷委員 事務局長は必要ないです。  五十六条を見てください。一般的に、さっきの「第五十三条第一項第一号の規定により金融機関等の資産を買い取る場合の価格は、当該資産が回収不能となる危険性等を勘案して適正に定められたものでなければならない。」こう書いてあるじゃないですか。  そごう債権新生銀行から買い取るときに、債権回収可能性、回収不能となる危険性を勘案すれば、全額払うなんてことはできるはずがないじゃないですか。
  165. 森昭治

    森政府参考人 お答えさせていただきます。  五十三条、五十六条については仙谷先生のおっしゃるとおりでございますけれども、本件につきましては、瑕疵担保条項が履行されたわけでございまして、新生銀行が解除したわけでございます。解除と申しますのは、やはりもとの状態に戻すということで、千億円で新生銀行に売ったものを千億円で買い戻すということでございます。ただ、その買い戻すという言い方が、非常に俗っぽい言い方で買い戻しと言いましたけれども、正確には解除でございまして、五十三条の買い取りとは違う枠組みで我々は考えているわけでございます。これは解除でございまして、いわば買い取りではないわけでございます。
  166. 仙谷由人

    仙谷委員 そもそも、瑕疵担保特約を結ぶ権限がないのにやるからこうなるんじゃないですか。では、瑕疵担保特約のような、原状回復義務でもいいですよ、そういうことができる、そして全額支払うことができるという権限はどこで付与されているのですか。  そもそも、もっと言うと、この種のお金が新生銀行に一千億も払われる。何の勘定から払われるのですか。まさか金融健全化勘定なんてことは言わないでしょうね。特例業務勘定でもないでしょうね。再生勘定でだってないですよ。再生勘定というのは、特別公的管理銀行時代の、そしてそれを終了するについての出捐について賄う勘定なんですよ。こんな、もう既に特別公的管理銀行が終わって、別の民間銀行になっている銀行との交渉において、お金が必要だからなんといって金融再生勘定なんか使えませんよ。
  167. 久世公堯

    久世国務大臣 瑕疵担保特約をつけました経緯につきましては、既に委員十分御承知のとおり、旧長銀というものを速やかに売却をしなければいけない、しかし、外国のようなロスシェアリングの法律上の制度がありますれば問題は別なんでございますけれども、我が国においてはその当時、今は預金保険法の方に入れられたわけでございますけれども、まだ施行にはなっておりませんが、当時としてはこういう規定がなかったわけでございますので、やはり目的を達成するためには、民法には法理として瑕疵担保の規定もあれば、また一般に民法、商法の世界においては瑕疵担保契約を結ぶことになるという法理がございますので、その法理に従ってこの瑕疵担保条項を入れたわけでございます。  これは、当時の旧長銀というものを、できるだけ速やかに、かつ、段取りよく、ある程度の期間内においてこれを売却するためには、こういう条項なくしては契約ができなかったという事態がございますので、御了承賜りたいと思います。
  168. 仙谷由人

    仙谷委員 これは、十二月三日のこの委員会での質問で、つとに指摘してあるのですよ。そういういいかげんな話は困る。たった十億円で売っているのですよ、言っておきますけれども。  そういう何か瑕疵担保特約が民法の瑕疵担保の法理に基づいているとか基づいていないというのは、私がちゃんと、これは全く民法と関係ない、似て非なるどころの騒ぎじゃない、全く関係ない、交渉によって押しまくられただけだと。  とりわけ、今新たにどんどん問題が膨れ上がっているように、本来は適資産にすべき資産じゃない債務者に対する貸し金を適資産にどんどん潜り込まそうとするから、足元を見られて、こんなむちゃくちゃな瑕疵担保特約なんか結ばされたんじゃないですか。それ以外考えられない。全部RCCにお引き取り願えばよかったんじゃないですか。何で七〇%も引き当てるのですか。  そこまで無理をして、さらに無理をして瑕疵担保特約を結んで、何でリップルウッドと契約を結ばなければいけないのですか。たった十億円ですよ。  そして、聞くところによると、ゴールドマン・サックスに十億円の報酬を払っているというじゃないですか。何をやっているのですか、国は。  いいですか。この瑕疵担保特約、いかに民法の理論と背馳しているか。ちょっとした弁護士に聞けばすぐわかりますよ。ほう、こんな便利なものがあるんだねとだれも言いますよ。裁判官に聞いたってわかりますよ。  法律的にはこれは非常に大問題がある。幾ら私的自治の原則で、当事者同士が何をやってもいいという理論があるにしても、片や国が税金を使って一私人たる投資組合と結ぶ契約としては大問題だ、こんなことがあってはならぬということを申し上げたはずです。今もそう思っています。  そして、今大きく問題になっていることは、そのことがあるがために、皆さん方は二百億円多くなるとか少なくなるとか言っているけれども、非常に不透明な格好で、国民負担がどこまでふえていくかわからない、こういうことですよ。  瑕疵担保特約に基づいてそごう債権の引き取りについて合意はしたというけれども、直ちにこの合意を破棄して、そごう債権の引き取りをやめてください。一千億円払うのをやめてください。どうですか。
  169. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  先ほども申し上げましたとおり、解除条件は充足いたしておりまして、解除権の行使に同意をするという通知を私ども発しております。今さらそれを破棄するということは、契約の信義上からいってもできないと私は思っております。
  170. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは、今度反対にこれをやってください。  こういうとんでもない事態。国民の費用最小の法則に従っていないとおっしゃるわけでしょう、そごうが法的整理に移ったために。こういう事態を考えなかったゴールドマン・サックスの責任は大きい。何のためのアドバイザーだったんだ。何のために十億円払ってアドバイザー契約を結んだんだ。何のために瑕疵担保特約のような契約のついた契約を結んだんだ。何のために十億円の売買代金でこんな契約が結ばれたのか。三兆六千億プラス一千億の三兆七千億、国民の税金がとりあえず出ていっているのですよ。それをたった十億円で売買契約した。そのアドバイスをしたゴールドマン・サックス、何ですか、これは。だれかゴールドマン・サックスの責任を問おうという政府関係者はいないのですか。こんなのは忠実管理義務に反するアドバイザーですよ。どうですか。
  171. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  まず、こういう前例のない大きな銀行が破綻いたしまして、金融再生法のもとで処理するというときに、当時の委員会で、どういう手法を使ってやるかということを議論した末に、やはり、世界のMアンドAのいわばグローバルスタンダードになっておりますFAというものを活用すべきだということで、FAを公募いたしまして、その中から、いろいろな観点再生委員会で審査した上に、先生指摘のゴールドマン・サックスを選定いたしました。  ゴールドマン・サックスの仕事というのは、まずは受け皿探しでございまして、日本を含む世界の買い手先に当たり、買い手候補をそろえ、その条件を整備して、こちらとの交渉の土台づくりをしたということでございまして、例えば、瑕疵担保条項などをゴールドマン・サックスが考え出したわけじゃなくて、瑕疵担保条項はあくまでも当委員会で、法律の専門家もおりまして、そういう中から、二次ロス対策金融再生法にはない中で、この二次ロスについて何か手を打たなければ買い手が出てこないといいますか、買い手は一様に二次ロス対策を求めておりましたので、何らかの対応をしなければ交渉はまとまらないという状況にありましたもので、委員会の中で法律専門家で考えまして、さらにリーガルオプチューンもとりまして、民法の法理を使って、いわば民法の趣旨のもとで瑕疵担保条項というのは有効であろうということで受け皿候補に対して提示したということでございまして、先方から要求されたわけでもございませんし、フィナンシャルアドバイザーが考えたものでもございません。
  172. 仙谷由人

    仙谷委員 反対のことを言っているんですよ。フィナンシャルアドバイザーがせっかくおるのだったら、ゴールドマン・サックスは、国民、つまりタックスペイヤーの、税金の支払い者の損失を最小化するために、こんな条項を結んではいけませんよということを忠告する義務があったんじゃないのですか、善管注意義務というのはそういうものじゃないですかと私は言っているのです。そんなことができていないんだから、ゴールドマン・サックスに損害賠償の請求をしなきゃいかぬじゃないですか。極めて、ゴールドマン・サックスに対しても、リップルウッドに対しても、新生銀行に対しても甘いのですよ。国民に対しては厳しいのですよ。  三兆六千億が、あなたのさっきの話だと、四兆一千億になってもそれほど痛痒を感じないというふうな議論にしか聞こえないのですよ。つまり、国民の負担で税金を金融システムの保全とかシステミックリスクの回避とかいうことに使う緊張感が薄いのですよ。森さんじゃないんですよ、私が言っているのは久世さんとかそこに並んでいる政治家の皆さん方を言っているんだ。役人の方々は、しょせん政治家の顔を見て、背中を見て仕事をするのだろうから、だから言っているのですよ。本当に私は情けないと思います。  もう一点だけ、本当にあなた方の議論でよくわからない議論を、これは宮澤さんもおっしゃっているし久世さんもおっしゃっているが、債権放棄した方が国民の損失が少なくなると一生懸命言っています。しかし、問題は、新生銀行そごうに対する債権の現在価値、現在価格が幾らかということで決まるのであって、机上の空論の、経営再建計画か何かわからぬけれども、それがあるから必ず払ってもらえる。水島さんの個人保証がついているのかどうなのかもわからない、日本興業銀行が銀行としての保証をつけたのかどうかわからない、日本興業銀行がどこまで生き延びられるのかもわからない、そういう時代において、果たして、現在一千億円を放棄した方が回収額が高い、どうしてそんなことが言えるのですか。  現在この債権を売るとすれば幾らか。それは、新生銀行の方は八百億円以下だと思っているわけでしょう。そう思ったから債権放棄に応じなかったんじゃないですか。二割減価している、引当金を除いて、担保部分を含めて八百億円以下になっている、こう計算したから新生銀行、言ったわけでしょう。それを再生委員会は認めたわけだ、二割以上減価しているということを。値打ちが減っているということを認めたわけだ。自分で二割以上減っているということを認めておきながら、いや、法的整理になったらこの二割の二百億円以上損するんだと。債権放棄したら、減ったと自分が認めた二割の二百億円が生き返ってきて、国民の負担が少ないんだと。どういう論理的な計算でそうなっているのかよくわからない。素人をたぶらかす議論にしか聞こえない。どうですか。
  173. 久世公堯

    久世国務大臣 私どもも、金融再生法の趣旨をわきまえて、何よりも、費用最小化の原則と申しますのは国民の税金をできるだけ少なくする、負うところは少なくするという方針のもとに債権放棄の預保の考えに同意をしたわけでございます。それは、今御指摘もございましたけれども、あくまでも日本興業銀行がメーンバンクとしていろいろな角度からこの問題に携わっておられるわけでございまして、九百七十億にしました経緯につきましても、興銀自身が、メーンバンクとして自分の銀行についてのあれはもろにかぶりながら、この再建計画というものをつくっているわけでございます。その再建計画をやはり一つの基礎として、かつ、私どもも、再生委員会議、これに基づいて厳密にこの検討をいたしました。  今いろいろ御指摘がありましたけれども、その後の事情の変更によりましてもいろいろ考えているわけでございますけれども、それによりますと、国民の税金としてはやはり債権放棄をすることが最善ということで決定をしたわけでございます。その後、そごうが自主的な考え方に基づいてこれを白紙に戻したわけでございますけれども、それによって、確かに国民の税金というのはふえることが予想されますけれども、これはこれとして今後努めていかなければいけないと思いますが、私どもも、正確な試算ではございませんが、一応のめどとして二百億から二百六十億ぐらいはこの方法を採用しない限りかかるということを申しましたのも、私どもとしても、国民の税金を最小にするという、絶えずそのことを念頭に置いてやってまいったわけでございます。
  174. 仙谷由人

    仙谷委員 時間が参ったようですから終わりますが、いいですか、再生委員長、歴史的な経緯として、長銀も三兆七千億もかかるなんということはだれも思っていなかったんですよ。そごうも、法的整理になったら回収率はもっと低くなるかもわからない。あるいは債権放棄で当面その行き先をしのいで先送りしても、あと三年後、五年後にどかんといったらもっと大きな穴があくかもわからない。そんなことはわからないのですよ。  今の業態から見ると、百貨店業界の全体から見ても、あなたがおっしゃるような、こんな、今の高島屋と売り上げが同じで利益が三倍も出るなんという再建計画をつくったって、だれも信用しませんからね。マーケットからも信用されない、消費者からも信用されない。そういうことを前提債権放棄などということを決めるのは、本当に何も知らない無知か、国民の税金のことを何も考えていない、本当に緊張感を欠いた仕事かどっちかですよ。  それで、先ほどから申し上げているように、瑕疵担保特約、これの解約をひとつ、今から考えて遅くないから、新生銀行とどういう訴訟になってもいいからやってください。それから、新生銀行からの引き取り請求なんということがあっても、全部裁判にかけてください。司法の場で堂々と、こんなものが通用するのかどうなのか、国民の前でやってください。私はこれは無効だと思う。あり得てはならない契約をして、あり得てはならない支払いをしようとしている。このことはもとに戻って考え直さないと、自民党政権は吹っ飛びますよ。  終わります。
  175. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、五十嵐文彦君。
  176. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。  本日、私は、大づかみにそごう問題の本質を政治論議してまいりたいと思うのですが、その前に、同僚委員の質問を聞いていまして一つだけ気になることがありますので、最初に質問させていただきます。  森さんにお伺いをしたいと思うのですけれども、先ほどのお話では、そごう債権が要注意先のA債権というお話で、最初からそういう判定だったというふうに伺っていますけれども、実際には要注意先B債権だったのではありませんか。
  177. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  昨年の二月に再生委員会が資産判定を終えた時点、そのときにどういう債務者区分であったかということでございますが、これは間違いなく要注意先Aでございます。要注意先Aでございまして、ただ、その一年後のデューデリによって破綻懸念先まで落ちたということでございます。
  178. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 いや、再生委員会の関係者の中に、実はB債権だった、B債権には実は債権放棄要請がなければ瑕疵担保条項の発動に至らない、そういう話があって苦労したという話が漏れ伝わってきたものですからお伺いをしたわけですけれども、決してごまかしがそこになかったというのであればいいのですけれども、私は実際にはそういう話があったのではないかという疑いを持っているものですからお尋ねをしたのですが、もう一度確認させてください。
  179. 森昭治

    森政府参考人 ただいま先生再生委員会事務局の者とおっしゃいましたけれども、確かに私も報告を受けておりまして、勘違いでそう言ったようでございまして、チェックしたところ、要注意先Aでございました。
  180. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 そちら側の勘違いというのであれば、それは認めざるを得ないと思います。  それで、本題に戻りますけれども、私は、このそごうの問題については三つの本質的な問題があると思います。  一つは、バブル的な手法で急成長した大企業でありますけれども、この破綻処理の問題で、大きいからつぶせないんだということでこうした処理がスタートをされたということだろうと思います。二つ目は、準メーンバンクが旧長銀であったために金融システム不安が再燃をした、この問題がやはり二つ目の大きな問題。これは、さかのぼりますと、長銀処理が正しかったのか、そしてまた、強いて言えば、金融再生法金融機能早期健全化法という今般の金融危機に対するスキームが正しかったのかどうかという問題にもつながってくると思います。三つ目が、債権放棄とたびたび話題になっておりますけれども、公的資金注入の正当性という問題が本質的にあると思います。  この議論を進めていきたいと思いますが、最初に、単に大きいからつぶせない、関連企業一万社、そして従業員、関連を含めると五万人、あるいは直接的には一万五千人とも言われておりますけれども、連鎖倒産のおそれがある、雇用不安が起きる、地域経済に深刻な影響があるというようなことで、債権放棄に国も応ぜざるを得ない、そのような考え方で最初の決定がなされた、そう思うわけでありますけれども、現時点では国民の側から、それだけでは血税を使って私企業を救うことには賛成できないと否定をされたということになると思います。  単なる先送りにすぎないのではないか、構造改革をおくらせて不況を長引かせるだけ、また、救済しても、債権放棄をしたとしても結局は過酷なリストラは避けられないわけでありますから、法的な再生スキームをやっても同じことではないかという国民の側の反論があったと思うわけであります。これについてどう思われますでしょうか。  一時的には確かに国民負担最小化というのがあると思うんですが、実際にはこれは結果責任で、結果的に見てみると同じことになってしまって、一時的にそれを先送りするだけで、そごう再建計画が完全に履行されない限り結局は同じことになってくるし、あるいは履行されていったとしても、それは一定程度のあるいはかなりな程度の地域経済への深刻な影響だとか、あるいは関連会社、雇用への影響というのは出てくるはずだと思うわけですが、その点についてどうお考えになっているのか、伺いたいと思います。大臣
  181. 久世公堯

    久世国務大臣 そごうが大企業であるからとか、あるいは国民に直接接しているデパート業だからとか、そういうような基準で私どもはこの債権放棄をしたわけでは全くありません。  今委員指摘になりましたように、費用最小化の原則と申しますのは決して一時的なものじゃなくて、金融再生法運用する立場の私どもといたしましては、これがやはり一番重要な原則であって、国民の負担というものをできるだけ最小限にするということがあくまでも基本でございまして、決してそれは先送りではありません。  したがいまして、大きいからとか業種はこうであるからとか、そういう基準は全くとっていないわけでございます。
  182. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 いや、そうはおっしゃっても、皆さんが私どもに持ってきた中には、関連企業が一万社あるからとかあるいは雇用不安が五万人に及ぶとかという資料が入っていたではないですか。それは、やはり一部分を取り出して議論をすることになると思いますので、皆さんがそうは思わなかったと言っても、通らない話だと思います。  それから、問題なのは、そごう再建計画がいわゆるオールドエコノミーの再建であって、その信用力がなかったというところが問題なんだろうと思います。  そして、実はこの再建計画は興銀の処理能力から逆算されて出てきたものではないだろうか。すなわち、興銀は業務純益が今非常に上がっている、少し時間稼ぎができれば二次ロスにも対応できる、だから、しばらくの間時間稼ぎができるような仕組みをつくればいいということで起きたのではないか。これはまさに典型的な、宮澤大蔵大臣おられますけれども、宮澤大蔵大臣の得意なソフトランディング路線に乗った、いわゆる時間稼ぎをして体力の回復を待つ、消耗を防ぐということに乗った話なのではないか、こう思われるのですが、どうでしょうか。
  183. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  再建計画の確実性といいますか実効性、合理性、これは非常に極めて大事なことで、私どもが先般、六月の三十日に債権放棄の方針を決めたときの根底にある重要な事柄は、先生の御指摘のとおりです。  ただ、興業銀行の立場は、今西村頭取はおられませんけれども、この間我々はいろいろ折衝いたしておりまして、興銀としても、一般債権、つまり債権放棄ができる枠内の九九%を放棄して、それを、他の弱小の金融機関の分を負担する、そういうこともやっております。それから、再建計画の当初三年間のリストラ資金、三百億を超えると思いますが、その融資も約束しておりますし、あわせて公的な立場で我々の回収を支援するということで、十二年間に一般返済分の三百一億と、残ります大体二百五十四億ぐらいは何かの形でリファイナンスをしてお支払いするようにいたしましょう、ここまで言っておられますので、私は、相当の犠牲を払われた上で、興銀も覚悟の上でやっておられたことだ、このように了解をいたしております。
  184. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 いや、興銀の犠牲というのは別に私は否定しているわけではなくて、しかし、一時しのぎで時間稼ぎをしようとした気配があるではないか、それがその再建計画のいいかげんさというものにつながっていったのではないかと私は思うわけであります。  特にこの業界というのは今大変な過当競争に見舞われているし、また、業態そのものは、先ほど申しましたようにオールドエコノミーになりかかっている、世界的に百貨店経営というのは非常に難しくなっている。また、そごうについては、そのブランド力が非常に弱い、喪失をしてきているということを考えると、これはなかなか生き残りが難しい状況にあるな、常識的に見てみんなそう思うわけであります。  そごうの問題はそれとして、同様に、今同じような環境にあるゼネコン、特に準大手のゼネコンが新生銀行に債務を持っております。この準大手のゼネコン、これに対する債権放棄問題がもう既に起きている。新生銀行に申請しているところもあります、ハザマのように。あるいは、これからしようか、そういううわさが出ている熊谷組のようなところもあるわけであります。そうしたところについて、公的資金の注入は今回のそごう問題と非常に似通ったところがある。すなわち、再建が難しい、過当競争の業界であるというようなことを考えて、先行きが必ずしも明るくないという状況から見て、債権放棄は非常に難しくなった。そして、債権放棄した後に公的資金の注入問題がまた再燃してくると思うのです。債権放棄が難しくなったのではないかというふうに考えるわけですが、それについてはどう考えられますか。
  185. 久世公堯

    久世国務大臣 個々の業界の問題あるいは個々の企業の問題につきましては、予断を持って申し上げるわけにはいきませんけれども、先ほども申しましたように、この業界だからどうの、このくらいの規模があるからどうのという判断基準は一切ございませんで、私どもは、国民の負担にならないようにという費用最小化の原則が、この場合の唯一の尺度でございます。  ただ、これからこういうものを判断する場合におきましては、私どもは慎重な上にも慎重に検討しなければいけないと考えております。
  186. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 たびたび慎重の上にも慎重にという答弁があるわけですけれども、政界の用語で慎重にというのはやらないということが通例でありますから、これはやりにくいということをみずから告白しているというふうに解釈をさせていただきたいと思います。  次に移りますけれども、そもそも旧長銀処理は正しかったのかという問題に移らせていただきたいと思うのです。  公的資金を注入するということは金融システム崩壊を防ぐためであり、なぜそれが必要かというのは、さらに言えば、銀行、金融機関というものがそもそも公的な性格を有しているからだ。知識のない一般預金者から上限のないお金を預かっているという面から、その預金者保護が重要である。また、経済の血液として企業産業の活動を維持し育成をしていく、そういう機能が銀行に課せられているから、金融機関に公的資金を注入してでもそのシステムを守る必要があるということだろうと思います。そういうことをするということは、金融機関の公的役割や性格を軽視する銀行経営というのを想定していないからであります。  ところが、投資会社が銀行経営に当たるということは、投資会社は三、四〇%のパフォーマンスを必要とすると言われております。利益追求が第一になってくるわけで、今申し上げましたような公的な役割を十分に想定できる適正な銀行経営者なのかという問題がやはりあると思うのです。これについてどのような判断をされたのかということを委員長に伺いたいと思います。
  187. 久世公堯

    久世国務大臣 今の御指摘でございますが、旧長銀の経営をしていただくことになったのはリップルウッド社というようなアメリカの会社でございますが、五十嵐委員はただいま、こういうような投資会社は本当に適正な銀行の経営ができるだろうか、銀行に金融二法においていろいろと公的な援助を加えておりますのは預金者保護であり金融システムの安定だ、それはおっしゃるとおりでございますけれども、私どもは、したがって、旧長銀の売却に当たりましては、相手方がどういう企業であるかということを念には念を入れて審査をしたわけでございます。  そのときの金融再生委員会といたしましては、幾つかの基準がございます。一つは、公的負担の極小化が図れるかどうか。二番目には、受け皿への譲渡によって我が国金融システムの安定化に資するかどうか。三番目には、受け皿への譲渡によって我が国金融システムの効率化、さらには再編、活性化に資するだろうか。四番目には、世界から注目されている案件であり、国際的な評価が得られるかどうか。そして、候補先が提示する条件金融再生法等の枠組み及び一般に公正妥当と認められた企業会計のルールに反しないかどうか。こういうような五つの要件を基礎にいたしまして、譲渡先の選定を行ったわけでございます。  そして、具体的には、預金保険機構金融再生委員会が密接な連絡をとりながら、今申し上げましたような五つの基本的考え方にのっとり、受け皿候補の提示条件をもとに、リップルウッド社が設立をいたしましたパートナーズ社を適正な譲渡先として決定をしたところでございます。  以上でございます。
  188. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 しかし、その後を見ますと、例えば信販大手のライフに対する態度等を見ますと、債権価値をみずから下げて預金保険機構に引き取らせ、二束三文にして、その後また優良部分をGEキャピタルを通じてつまみ食いをするという、いわばマッチポンプ的な役割を果たしているわけです。これは瑕疵担保条項原因があるわけですけれども、瑕疵担保条項の悪用、乱用という可能性を、私はこれはそのたぐいだと思うわけですけれども、気づかなかったのか。気づかなかったとしたら、私は責任は重大だと思うわけですが、これについてどうお考えになっているのか。
  189. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいま御指摘瑕疵担保条項の点でございますけれども、これは、新生銀行が意図的に融資管理を行わないで、その結果、二割減価が生ずるようなことがあり得るということが初めからわかっておれば、このような場合は新生銀行の責めに帰すべき事由として瑕疵には該当しないことは明らかでございますが、そのときに置かれております条件上では、それはそういう点はないということで瑕疵担保条項を認めたわけでございます。
  190. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 しかし、みずから債権放棄を拒否して再建計画をつぶすことによって破綻の危険性が出てくるわけですから、適正なリスク管理をしているとは言えないわけであります。  それから、先ほども同僚委員が申し上げましたけれども、ゴールドマン・サックスの影響がどの程度この選定にあったのか。私はやはりおかしいと思うわけであります。また、このゴールドマン・サックスが、不思議なことに、その次には長銀側じゃなくて今度買い手側のソフトバンク連合の方のアドバイザリー契約をしている、これはまさにおかしなことですね。弁護士が両側の代理人に立つようなものではないでしょうか。  こういうのを安易に認めてしまうというところにも、弛緩した再生委員会の姿勢というものがうかがえると私は思うのです。これは大変重大な責任だと思うのですが、これについてどうお考えになりますか。私は、責任は本当に重大だと思いますよ。
  191. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいま、ゴールドマン・サックス社、FAでございますけれども、これは売り手側のアドバイザーとして長銀の買収に係る交渉をまとめるべく最善を尽くしていただいたものと承知をいたしております。  たびたび申し上げるところでございますが、金融再生委員会は、金融再生法が定める費用最小化の原則から見て、ほかの候補者よりもゴールドマン・サックスが非常にすぐれているという判断に基づいて措置をとったわけでございます。
  192. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 たびたび公的負担の極小化というような話が出てくるわけですけれども、これはその瞬間ではそうであったかもしれないけれども、実際にはそうなっていないじゃないですか。  例えば三井信託、それから中央信託のグループも手を挙げていた。彼らのグループは瑕疵担保条項ではなくてロスシェアを要求したかもしれませんけれども、一方では引当金の積み増しを要求したと思うのですね。それは、その瞬間では額が出てくるわけですから、確かに公的負担はふえるわけです。しかし、瑕疵担保が出てくれば、それは結果としては、後になってはどちらが得かわからない。場合によっては、引当金の積み増しで対応した方が安上がりであったというケースも想定できるわけでしょう。それはどうなんでしょうか。     〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
  193. 久世公堯

    久世国務大臣 これは、契約をいたしますときに、債権者になっておりますのは七千社ぐらいあったわけでございますので、個々の問題について検討することは非常に大変だったと承っております。  そういう過程におきまして、引当金の問題というのはまさに個々の債権に対してどれだけ引き当てるかという問題でございますが、それに対して、契約者となる相手方は、やはり全体として価値が二割以上下がった場合というような条項をつけない限りにおいては、なかなか当時としては短期間にかつ早急にこの問題を解決するためには即さなかったわけでございまして、そういう見地から民法の瑕疵担保条項というものを採択して特約をつけた次第でございます。
  194. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 矛盾しているのですよね。早急に処理をしなきゃいけないし、早急に担保の審査が正確にできない。だから、引当金を積むか、あるいはロスシェアリングを決めて、腰だめといいますか、それで手当てをしておくというやり方をとるのか。あるいは、厳密に債権を審査して二次ロスが出ないように、あるいは後でそうした二次ロス対策が極力必要にならないようなことをやるか、どちらかなんです。両方ごっちゃに合わせて、結局、買い手に都合のいいように決めてしまったという印象が非常に強いわけであります。  しかも、瑕疵担保責任条項だけではなくて偶発債務の損失補てん条項、五十億円を超えた損失については国が払うという条項もついているし、あるいはデリバティブの損失補てん条項までついているというふうになっているわけですけれども、これだけお土産がつけば、実際には手を挙げるところがなかったとか二次ロスの規定がなかったからどこも引き受けてくれないと言ったけれども、こういう条項まで出しますよということが先にわかっていたら、みんな出てきたはずでありますし、私はこれは言いわけにすぎないと思うわけですね。  最初からこういう契約だったということであれば、もっと手を挙げるところはあったはずだし、あるいは、先ほど申し上げましたように、積み増しをすれば受けたところはあるわけでありまして、これは時点をきちんと追っていけば、皆さんのおっしゃることはその場その場の場当たり的な言い逃れをされているとしか思えないわけであります。どうでしょうか。
  195. 久世公堯

    久世国務大臣 今委員が御指摘になりましたように、一つ一つ債権についてその価値がどうであるかということを全部チェックしていけばというお話でございましたが、先ほども申し上げましたように、この契約につきましては、限られた期間にできるだけ早く非常に大規模な破綻銀行というものを措置してもらわなければいけない、そのための契約条件は何であるかというところに基本があるわけでございますので、一々チェックをしておりましたら、一年や二年でこれができるものではございません。したがいまして、私どもは、そういう見地から瑕疵担保条項というものを採用したわけでございます。  また、今五十億円云々という御指摘がありましたのは、あるいはデリバティブに係る契約かと思うわけでございますが、デリバティブのマーケットの混乱を回避しながら長銀譲渡を実現するためにこの条項は必要であったろうと思うわけでございます。
  196. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 世界に例を見ない、恥ずかしい契約だというふうに私は思うわけであります。  それから、そこまでおっしゃるのだったら、時間がなくて一つ一つきちんとした債権の審査ができなかったと言うのだったら、それはロスシェアリングの規定を入れればよかったと私は思うのです。ただ、私は興銀の皆さんにも伺いましたけれども、これは個別契約の中でいかようにでも対応ができるはずであって、私自身の立場としては、ロスシェアリングはあってもよかったと思いますけれども、絶対これがなかったからこの再生法が機能しないんだ、あるいはしなかったんだというのは、言いわけにすぎないと思っているわけであります。  時間がありませんので、次に移ります。  金融再生法の立法趣旨というのは、預金者と善意かつ健全な借り手の保護を目的とするということでありまして、不良取引先を処理することが前提であります。審査がなかなか難しかったと言うけれども、適債権を残して、それを新生銀行に譲り渡すということをしたはずなのでありまして、その中に、先ほど仙谷委員がお話をしましたように、必ずしも適債権でないものをどんどん潜り込ませて、丸抱えで譲り渡したからこういう不透明な瑕疵担保条項というのを無理やりこじつけて持ってこざるを得なかった、こう思うわけであります。  ここがやはり問題なのであって、きちんとしたリストラ計画を出させて、そして適債権をできるだけ絞って譲り渡すということをすべきであったのではないでしょうか。そこがやはり欠けていたと言わざるを得ないわけでありますけれども、この点についてのお考えを伺います。
  197. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  先ほども申しましたように、確かに適資産の判定というのは去年の二月に終えました。その時点ですぐに受け皿が見つかり、すぐに売れたならば、今先生が御指摘になられたような問題はなかったかと思うのですけれども、そこはいろいろ、二次ロス対策等をどうしたらいいかというような問題もありますし、また、率直に申しまして、そもそもそんなに引き合いがたくさんあるようなものでもございませんでした。  そういう苦しい状況の中で、結果的にはその一年後に譲渡ということになったわけでございますけれども、譲渡時はデューデリを、国側が資産査定をして、適切な引当金をついで相手に渡すということにこちらもしておりましたし、先方もそれで合意しておりましたものですから、そうなったわけでございます。  ただ、例えば破綻懸念先になれば適資産ではないというわけではございませんでして、メーンバンクの強固な支援とかあるいは親会社の保証とかいろいろな場合に破綻懸念先でも適資産として判定しておりましたので、仮に要注意から破綻懸念になったとしてそこで資産判定を見直しても、あるいは適資産になるということは大いに考えられることかと思います。
  198. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 個別にはそういうケースも当然あるだろうとは思います。  問題はトータルな話でありまして、ロスシェアリングの問題に戻るのですけれども、要するにロスシェアリングがどうしても必要だった、だけれども、なかったから仕方なくこれだったと言うのだけれども、実は長い交渉過程があって、その間に債権がどんどん劣化していったわけでありますから、その間に必要であればロスシェアリングの規定を与党に働きかけてあるいは野党に働きかけて、本当に実務的な交渉の中でそれは緊急にでもつくればよかったじゃないですか。その当時のロスシェアリングに対する皆さんの考え方と現時点あるいはその前とではかなり違ってきているのじゃないかなと思うのです。  ただ、ロスシェアリングも使いようでは、私は、リスク管理をおろそかにすればロスシェアリングだってモラルハザードにつながっていく問題だろうと思っているわけですが、そのロスシェアリングの規定に関する考え方、これについてどういう変遷があったのか、どういうふうにその時点で考えたのか、なぜこの瑕疵担保条項を持ってきたのか、私はいま一つ納得ができないわけですが、いま一つというかたくさん納得できないのですが、どういうお考えなのですか。
  199. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  確かに、昨年の一月ぐらいからロスシェアリングというものが、アメリカではアメリカのSアンドLを処理する際には使ったということをFDICのシードマンが元再生委員長のところにいろいろ言ってきたり、そういう二次ロス対策がなければこういう大きな銀行はなかなか売りにくいという声はいろいろ聞こえてきました。  そういう中で、それではロスシェアリングというのは再生法に規定がなくてもできるのかということを真剣に法律専門家を交えまして検討したわけでございますけれども、ロスシェアリングにつきましては、譲渡時の前後を問わずそこに二次ロスが起きた場合には売り手八割、買い手二割でシェアするということでございまして、事後的に出てきた二次ロスについて、それに対して税金が出ていく、それに対してやはり明文の規定が再生法にない以上できないのではないかということで、いわば法律的な解釈としてもとの再生委員長は国会でそれができないということを明言されました。  そうした中で、では瑕疵担保はなぜできるかというところは、債権の売買の国の私契約でございまして、もともと民法の適用があるわけでございまして、民法の範囲内での瑕疵担保というのは、もともとこういう破綻金融機関の売買には仮に契約になくても瑕疵担保はつくわけでございます。要するに、民法の趣旨をはみ出さない限りでそれをどこまで具体的な手続要件として明文化するかという作業に入ってああいう瑕疵担保条項をつくったわけでございまして、それが民法の趣旨からはみ出さないというリーガルオピニオンをとり、法律専門家の意見をとり、ああいうものを入れたわけでございます。
  200. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 民法の瑕疵という考え方はもともとこういうようなものに当てはまるようなものじゃないわけでしょう。それは、製品に隠れたあるいは隠された瑕疵があった、それが後で発覚をしたというときにそれをどう処理するかという問題で出てくるのであって、本来、私は金融を担保として出てくる筋合いの民法上の条項ではないと思うわけであります。  それから、こういうことをする以上は、私は、事後的でいいですから交渉の中身をもっと公開すべき、明示すべきだったと思うわけですが、なかなかこれが出てこない。どうもやみの中でこっそりとこうした条項が盛り込まれてしまったという感じがするわけですが、これについてはどうお考えになりますでしょうか。
  201. 森昭治

    森政府参考人 交渉の中身と申しますのは、最終的に決まりましたニュー・LTCB・パートナーズ社との交渉、そういうのは逐一といいますか、相当程度再生委員会でも取り上げておりますし、また、個別名は第三者の信用を害するおそれがありますので言えませんけれども、ほかのところとの交渉につきましても相当程度再生委員会で取り上げていまして、再生委員会の議事録は三年後に公表することになっておりますので、そういう面では最終的にはきちっとディスクローズできるものと思っております。
  202. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 再生委員会の議事録は三年後に公表ということですけれども、これはできるだけ早く公表をしていただきたいと思います。  次に、債権放棄、そして公的資金注入という国民が非常に関心を持っている問題について話を進めさせていただきたいのです。  預金保険機構、すなわち国による債権放棄というのは、私は税の支出と同じような性格を持つものだというふうに考えます。ですから、それはそれなりに厳しい手続というものが必要になってくるはず。国民の大切な財産、税金を使うことに直結をしていく問題ですから、手続上はもっと厳格な基準、そして手続というものが必要だと思いますけれども、これについて委員長のお考えを伺います。
  203. 久世公堯

    久世国務大臣 預金保険機構債権放棄をするに当たりましては、預金保険機構自身が慎重に検討いたしました上で、金融再生委員会の方に諮られて、これを了承したわけでございます。  先ほど来申し上げておりますように、金融再生委員会におきましては、それぞれの専門家の先生方が四人おられますので、その専門家の先生方は慎重にこの問題を検討されたわけでございまして、今委員指摘のように債権放棄するということは国民の税金を使うことに等しい、そのとおりでございまして、そういう見地から慎重な上にも慎重な検討を経た末に決定をした事項でございます。
  204. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 いや、その慎重な上に慎重というのはどういうふうに担保してくれるのかという話をしているわけであります。ですから、例えば、これからは預金者保護のためだけにしかこうした税金は使わないんだというような原則を示すとか、そういうことが必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
  205. 久世公堯

    久世国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、個別の問題が出てきた場合は、これをちょっと予断を持って申し上げるわけにはいかないわけでございます。  今、何か基準をつくれという御指摘でございますけれども、私ども、今回の問題につきまして広くいろいろの御意見を拝聴いたしまして、その中においてこの問題を考えていきたいと思っておりますけれども、どこまで基準を明確化できるか、非常に困難な問題もあろうかと思います。しかし、何とかこの基準を明確化するべく、真摯にこれから検討を続けてまいりたいと思っております。
  206. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 前向きなように聞こえるけれども、かなり抽象的で不満が残ります。  それから、そごうは法的な処理になるわけですけれども、これに伴って中小の金融機関等にいろいろな問題が出てくる。また、再生委員会もあるいは預金保険機構も忙しくなる可能性があるわけですけれども、七十兆の公的資金で足りなくなるおそれはないのかという問題が出てくると思うのですが、このそごう問題だけに限りませんけれども、これから全般的な、もう一度金融システム全体の不安というものがここで再燃をしてくる可能性がある、あるいは、どんどんと新生銀行が国の買い戻しを求めてくるというような状況の中で、用意した公的資金の枠だけでは足りなくなるおそれがあるのではないかと思うのです。それは大丈夫なら大丈夫で結構なわけですが、どういう見通しを持っておられるか、伺いたいと思います。
  207. 久世公堯

    久世国務大臣 現在のところでは、特に考えておりません。
  208. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 金融システムの危機を再燃させないということがお仕事なわけですから、ぜひそういうことが起こらないように頑張っていただきたいわけであります。しかし、最悪の事態に備えるのが政治家の役割であります。必ずしも市場や国民の間では自信を持って金融危機は去ったと言い切れる状況にないと思うのですけれども、最悪の事態に備えるのが政治でありますから、一生懸命やっていただきたいと思うわけであります。  それから、長銀の問題について残した問題が幾つかありますので、ちょっとお話をさせていただきたいのですが、そもそも、先ほども委員席の方から意見がありましたけれども、長信銀についてはもう歴史的な役割が終わった。かつての基幹産業、重厚長大型の産業、そして、日本の国全体が資金不足がどうしようもなく覆っていて、これは国策としてもこうした資金の需要にこたえる必要があったという時代から大きく変わって、今や、銀行よさようなら、証券よこんにちはと、直接金融で集められる時代にもなり、また、日本の金融業界がずうたいの上では大変育って、むしろオーバーバンキングの状態にあるわけであります。  こういう時代に、本当に大きく性格を変えないで、長銀新生銀行ですが、これを残す必要があったのか。まあ、実態的には変わってきていたわけですけれども、例えば国際決済を伴うBIS規制八%の基準をクリアしないドメスチックな金融機関として残してもよかったのではないかという説もあるわけであります。この長銀新生銀行への転換、残し方について、現時点でどのようなお考えを持っているかということを伺いたいと思います。
  209. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいま委員から金融全体の問題の中における長銀の問題について御意見があったわけでございます。  長信銀が過去において果たした役割はそれなりに評価をすべきものがあると思いますし、やはり日本経済の実態というものが大きく変わっているわけでございまして、これからそれぞれの金融機関が果たすべき役割は私はあると思いますけれども、この新生銀行と申しますか長銀の問題につきましては、今、新生銀行として新しく再出発をいたしますので、当面これが順調にいくことを願っているわけでございます。その上で、また日本の金融全体の中における位置づけというものを考えてまいりたいと思っております。
  210. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 これだけに限らず、日本の金融政策の上で、どうも理念あるいは大きな構想力というのが欠けていたのではないか。場当たり的に起きてきた事象に対してばんそうこうを張るように対応してきた、これが問題であり、また、私は最初に申し上げましたけれども、いわゆるソフトランディング路線というものの限界と問題点があるのではないかと思うわけであります。  長い間金融行政のかじ取りをされてこられた大蔵大臣に、日本の金融行政のあり方について御感想があったら伺いたいと思うわけであります。     〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
  211. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま御指摘の、殊に長期銀行の問題は、前にもいろいろに御意見のあったところでございました。殊に債券の発行の問題がありましたので。が、今、久世大臣の言われますように、新しく銀行が生まれたところでもあります。それは、恐らく制度があるという前提の上に立って生まれておるかと思いますので、そういうこともございますので、特に急ぐことでもないと思いますので、もう少し様子を見ていたらどうかな。私も、深く考えておるわけではございませんけれども、特に急がなければならぬこともないのではないかという思いをしております。
  212. 五十嵐文彦

    ○五十嵐委員 いや、場当たり的というのは本当に危険なことだと思います。特に、与党がペイオフを一年間延期してしまった。これによってまた新たなモラルハザードが生まれるのではないかと私は思っているわけであります。  ペイオフの期間中、全額預金者保護する、そして丸ごと、できるだけこれを保証していくという考え方に立って金融再生法ができたわけでありますから、大変強力なセーフティーネットなわけであります。このセーフティーネットに寄りかかり過ぎると、これがモラルハザードにつながっていく。これは当たり前のことでありますので、このペイオフの延期を思いつき的に行われた、これは中小の金融機関に対する保護だ、あるいは激変緩和の措置だとおっしゃるわけでありますけれども、こうした見通しのない、その場限りの場当たり的なやり方が実は大変大きな禍根を残している。  先ほど鈴木委員の方からもお話がありましたように、モラルハザードということに対する危機意識というものが欠如している、ここに大きな問題があるし、政府側は責任を大きく感じてもらわなければならないということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  213. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、上田清司君。
  214. 上田清司

    ○上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。  参考人西村頭取には御苦労さまでございます。  早速ですが、先ほどから金融再生委員長は、先般の債権放棄の決定の手続は最善であった、このようにお答えをしておられますが、私ども、行政のルールからすると、与党の政調会長がそれを覆すような決定に大きくかかわり、森総理もそれを黙認されておられるということであれば、閣内において統一されておられない、総理と金融再生委員長と、金融担当大臣としての閣内不一致があると思いますが、これはいかがに思われますか。
  215. 久世公堯

    久世国務大臣 私は、先ほど来、前委員長がこの債権放棄につきましての預金保険機構考え方金融再生委員会として了承したことについては、それなりに正しいということを申し上げておるわけでございます。  それで、三条委員会でございますところの金融再生委員会の了承に対していろいろと御意見のあることはわかっておりますが、私どもはまた今回の問題についても広く御意見というものを承って、それをいろいろと参考にしていきたいということは申し上げたとおりでございますが、与党の政策責任者がこれについてそごうに対して一つのアドバイスをしたということは、これはあり得ることでもあり、またそれに対して、そごうがいろいろと自分自身としても考えていた、いろいろなことを考えていたから、たった一日にしてああいう決断ができたのだろうと私は推測をいたしております。  手続的にも内容的にも、たった一日でああいうふうにでき上がったわけでございますから、それは恐らく、いろいろな検討をしていたところに、たまたま一つの意見として与党の政策責任者からの示唆もあったということで決断をしたのだろうと推測をするわけでございますけれども、そういう意味合いの政治的な一つ判断であったと私は思います。それを、政府におきましても、総理も、また金融再生委員長として閣内の一員でございます私も了承して、それに従ったということは、それが事実でございます。
  216. 上田清司

    ○上田(清)委員 本来ならば、行政側で事務スタッフもいまして積み上げた議論の中で決定をされたことに与党の政策責任者から異議を唱えられ、これが覆されるのであれば、部下たる者たちはなかなか仕事ができないのではないかと私は勝手に同情をしておりまして、席をけって、再生委員長辞任した方が行政のルールには的確じゃないかなというふうに勝手に私は思ったりしております。  大蔵大臣にお伺いしますが、当日二十八日の定例記者会見で、きのうその話を聞いた、債権放棄をせずにそごうがつぶれては元も子もない、預金保険機構債権者の立場から何が一番有利かを考えるのではないか、こんな感想を定例記者会見で述べておられますが、元も子もないと。  つぶれる仕組みそごうの方が提案したことは事実ですが、それをサジェスチョンしたのは与党の政策責任者ですが、この点については大臣はどのようにお考えですか。元も子もないということですが、元も子もあるのでしょうか。
  217. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最初の、二十八日というのは、いわゆる解除権の問題につきまして、二十六日に預金保険機構松田理事長が電話で知られたそうですが、私は、そのことは二十七日に事務当局から聞きました。それは二十七日でございます。それでそういうことを申したと思います。  その点は、けさも申し上げたところでございますけれども、預金保険機構としては、千九百七十六億円から九百七十億円の放棄がございますと千六億円になるわけでございますが、他方で九百九十九億円が引き当ててございますので、実態は九百七十七億円であって、したがいまして、千六億円から九百七十七億円引きました二十九億円あるわけでございますが、とにかく保険機構としては納税者にかわってベストを尽くして債権を確保する、これが保険機構の仕事でございますから、こういう決心をされたことは私は首肯できることであるということを申したわけでございます。  その後いろいろな展開がございまして、総理大臣としては、いろいろ国民的な批判があるということにかんがみて、自分の党の政調会長に何か解決方法はないものかと言われたように承知しておりますが、政調会長は与党の方々とも御相談があった。そして、そごうなり日本興業銀行に何かの接触をされたようですけれども、しかし、そごうにしても日本興業銀行にしても、人から言われて大変損なことをぜひやりましょうとおっしゃるはずはないので、そごうの社長も声明で言われましたし、興業銀行の頭取も言われたようですが、やはり、殊にデパートのようなものは国民的な支援がなければとてもやっていけない、国民的な反感を受けたような案を推進することは結局自分たちにとって賢明なことではない、結局そういう自発的な意思から再建計画を放棄された。こういう経緯だと思いますので、それは別段、政治家が何か不当に地位を利用したとかプレッシャーをかけたとか、そんなことで決まる話ではございませんので、私は、その点は別段余り気にすることはないと思っております。
  218. 上田清司

    ○上田(清)委員 今大蔵大臣がいみじくも言いましたように、国民的に反感を受けるとか国民に支援がないような判断はできないと、まさに再生委員会はそういう判断をされたのですけれども、最善だったのですか、もう一度聞きますけれども。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこは少し時間がたちますとわかることでございますが、これは、税金によってどうも余り感心しないデパートを救ったんだ、そういう問題として国民の目に映った。そのこともまた、時間がたちますといろいろな見方があるのではないかと私は実は思っていますけれども、しかし、ともかくそういう世論が形成されたということについては、再生委員会の立場は立場として、総理大臣として対応する必要がある、こう考えられたというふうに私は判断しております。
  220. 上田清司

    ○上田(清)委員 揚げ足を取って本当に恐縮なんですが、このケースは急転直下して民事再生法によるいわばそごうからの自発的な仕組みという形になったわけですが、この間の金融再生委員会あるいは預金保険機構、この決定に係る過程はこれからの金融行政に極めて大きな、重要な意味を持つものがたくさんございますので、相当検証をして、これからの教訓にしていく必要があるというふうに思っておりますので、その点を含めて確認を少しさせていただきます。  まず、預金保険機構松田理事長に聞きますが、預金保険機構では、六月二十八日に買い戻し請求を受けて、そして三十日に買い戻しをするという決定をして再生委員会に上げて了承を得た、この経緯がございますが、この間に理事会は何回、そして何分なされましたか。
  221. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  理事会という形で会議を開きましたのは三十日、つまり方針を決めた日の朝でございました。ただ、私どもの機構には理事会という組織はあるのですが、それは理事長を補佐するときの意見の交換みたいなところでして、何かそこで機関決定ができるということではないわけなんです。  ただ、この話はその日だけであったかということでは決してございません。その前々からいろいろ検討の都度都度、担当の理事はもちろんですけれども、他の理事も交えましていろいろと検討を重ねてきた、こういうことでございます。
  222. 上田清司

    ○上田(清)委員 理事長、前々からいろいろと検討をしていたと、それをこの公式の大蔵委員会で言われても困るのですね。やはり正式な機関決定をなされるその過程が国民に見えなければいけない、こんなふうに思うのですね。わずか一回の理事会でこういう決定をされたのか。二日間で物事を決められたのか。  二日間でいわゆる買い取り債権が二割減価したことが査定できるわけないでしょう。当然、それ以前に何らかの措置がされていた可能性があるわけですね。あるいはまた、そごう再建計画のよしあしが大きなファクターを持っているわけですから、そごう再建計画がわずか一時間の理事会で決められるようなものでもない。であれば、それに関連する何らかの機関決定をするしかるべきプロセスが当然あるべきなんですね。それがないとすれば、極めて拙速な決定をしたと我々は糾弾しなきゃならない形になりますので、どういうプロセスを経てこのような機関決定になったのか、教えていただきたい。
  223. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  この問題は二つございまして、解除権の行使をどうするかという問題がまず一つあるわけですね。もう一つは、解除権の行使が認められたときにどうも債権放棄要請がありそうだ、それにどう対応すべきかという問題と、こう二つあるわけです。これは事実としては同時並行的に起こってまいりました。六月の初めころに、いろいろと情報もありましたけれども、預金保険機構としては、上旬以降、新生銀行の方から、どうも解除権を行使する、そういう気持ちを持っているというのが内々の情報として入ってきましたので、それについて事務方として、瑕疵担保条項に基づく買い戻しの初めてのケースでございますから、まだ意思は向こうも決めてはいない、機関決定はしていないのだけれども、仮に戻ってきたときにどう対応するのか、どういう解釈でやったらいいのかというようなことで、我々も内々の検討をしていたところでございます。  それが大体、二十日ごろになりまして、どうも本当に解除権を行使しそうだと。そのときの考え方は、二つ要件がございまして、瑕疵が認められるか、それからもう一つは、二割減価が認められるか。これは非常になかなか複雑な思考過程を経て考えるものでございました。そこで、それについての考え方について向こうにお聞きしまして、全くそれと関係のない、当方から独立している監査法人にも、これはどうも金融検査マニュアルに係る判断であるから、仮にこういうものが出たときに、そういう判断は正しいものだろうか、あなたの独自の立場で御検討くれませんかということで考え方についてまず検討の依頼をしたわけでございます。  それからずっと内々我々やってきまして、六月の二十六日に新生銀行の頭取から私のところに、いろいろ考えたけれども、結局正式に、旧長銀の株式譲渡契約瑕疵担保条項に基づいて、そごうに向けた債権については解除条件が成立すると思われるので、三十八社分について、これは一千九百七十七億、それは結局現実には回収がありましたので一千九百七十六億円になるのですが、それについて解除権を行使することを新生銀行として機関決定いたしました、ただ、監査法人の意見書がちょっと事務的におくれているので、それは二日ぐらい後になりますけれどもという通告がございました。  それを受けて、これはもう完全に来るという機関決定をしているわけでございますから、当機構もそこからは改めて、今までの検討の結果もいろいろございますけれども、監査法人の意見も聞いたりいろいろしまして、翌二十七日に再生委員会でその状況を御説明申し上げました。検討の経過ではございますけれどもそれを御説明申し上げまして、二十八日の日に新生銀行から、グループ三十八社のうち三十五社分についてとりあえず正式に解除通知をいたしますと。残り三社については、解除条件は成立しているのですけれども、もともと債権放棄要請に入っていない部分ですので、これは契約書条項がございましてちょっと判定日が後ろにずれるのですね。それで数日ずれますが、合わせて三十八社いたしますので、こういう正式の通告がございました。  それを受けて私どもとしては、可及的速やかにそれについてどう対応するか、本当に悩みながら最終的な検討をしたわけでございます。そして、最終的には、どうも当機構としては、この三十八社については、個別案件を見ても、それぞれ瑕疵の発生とそれから二割減価という要件を満たすことになるという判定をいたしまして、監査法人からも内々に意見を聞きまして、それで二十九日に監査法人の意見書を出させて、いろいろ検討したあげく、これは解除には同意せざるを得ない、契約上の義務であるという方針を決めまして、その旨を六月三十日に再生委員会にこの判断でいたしますと御報告した上で記者発表をした、これが解除条件の経緯でございます。
  224. 上田清司

    ○上田(清)委員 松田理事長、監査法人に三十八社分の査定をしていただいたのはいつなんですか。
  225. 松田昇

    松田参考人 前々からいろいろ考え方の検討などお願いしていましたけれども、正式に文書として返ってきたのは二十九日でございました。
  226. 上田清司

    ○上田(清)委員 松田理事長、回答はわかっているのですけれども、いつお願いしたのですか。二十六日の日にしたのですか。
  227. 松田昇

    松田参考人 今、記録を見ましたら、二十三日でございます。
  228. 上田清司

    ○上田(清)委員 それもちょっとおかしいですけれどもね。二十六日に新生銀行の頭取が三十八社分の、三社を残して実質的に三十五社の分を持ってこられているにもかかわらず、二十三日に監査法人に査定をお願いする。三十日以内に回答すればいいことになっているのに、なぜそんなふうに急いでいるのですか。何か特別な意味があったのですか、内々にやらなきゃならないような。
  229. 松田昇

    松田参考人 これは、ただいま申し上げましたように、解除条件の行使の話と債権放棄を含む再建計画の話と二つ抱き合わせになっている話でございます。  それで、債権放棄の話は、興銀がまとめ役になってずっと来られたのですけれども、新生銀行の立場がはっきりしなくて、五月末が第一回の締め切りだったのですが、それが六月末まで延びたのですね。そこで、六月末までにやるかどうか決めないと、どうも再建計画の成り行きが不安定になって、そごう自体がその場で公的処理に移るかもしれない、そういう信用リスクもあるのではないだろうかということで、六月末を目途に我々としては最大限努力した、こういうことです。
  230. 上田清司

    ○上田(清)委員 再生委員長にお伺いしますが、今、松田理事長が言われましたように、場合によっては六月末までに処理しないとそごう再建計画がほごになってしまう可能性が高いと思って、超スピードで処理をする仕組みになったのですが、どう見ても拙速だと我々は思う。そういうニュアンスを感じるのですが、再生委員会でこの問題を具体的に、委員長を含めて五人の再生委員の方々で何時間、何日検討されたのですか。
  231. 久世公堯

    久世国務大臣 経緯のことにつきましては後に森事務局長の方から答弁いたさせたいと思いますが、私が着任をいたしましてからは、たしか私どもは火曜日と木曜日が定例の会議をやることになっておりまして、ほぼ毎回二時間ずつぐらいやっておると承っております。  私が着任しましてから二、三日後に、ちょっと正確な日は覚えておりませんが、二十分ぐらい、私も非常に重要な了承をしたそごうの問題でございますので、それについて二十分ぐらいしか時間がとれなかったのですが、それぞれの四人の委員からそれに至った経緯についての考え方を承りました。それは全員了承した考え方で一致をいたしておりました。それから、そごうが自主的に自主再建の方途をとったわけでございますので、その翌日の十一日に、この件につきましては一時間余り、このような事態が大きく変換したことについての感想と申しますか、それについて考えたことについて各委員の発言を承ったわけでございます。  それから、この問題の決定の経緯につきましては、午前中も答弁申し上げましたが、私は六月の二十七日と三十日に金融再生委員会を開いて論議を行ったと聞いておりまして、それについてはまだ速記録は出ておりませんけれども、要点の筆記をもとに報告を聞いたわけでございます。ただ、先ほど来御質疑がありましたように、長銀との契約等につきまして、資産判定の問題から始まり、その経緯につきましては、経緯を聞くだけでも驚くほどの時間と慎重な審議を再生委員会としては取り組んでおられるということは詳しく報告を聞いているわけでございまして、大変慎重な審議をする行政委員会だというふうに理解をいたしております。  今委員指摘の点につきましては、森事務局長の方から報告をいたしたいと思います。
  232. 上田清司

    ○上田(清)委員 森事務局長は結構です。そんな細かい話は要りませんから大丈夫です、裏方の方で聞いておりますので。  今担当大臣は慎重にということですが、現実に再生委員会が開かれて委員の五人の皆さん方が協議されたのは二回しかない、この問題に関しては。六十分強を二回やっただけですね。この六十分強を二回やっただけで、査定の話は監査法人やあるいは預金保険機構に任せるにしても、少なくともそごう再建計画というのは極めて重大なファクターですね。これはお認めいただけますね。この再建計画が正しいと思われるからこそ債権放棄に応じるわけですよね。これは確認しますけれども、間違いありませんか。
  233. 久世公堯

    久世国務大臣 私も今再生委員会事務局にございますところの再建計画なるものの全体を見せてもらいましたが、大変膨大なものでございまして、これを全部委員がどの程度説明を受けているかということを事務局に聞きましたところ、非常に詳細に、日時も相当の日時をかけて全部一件一件審査をしたと聞いております。  したがって、この債権放棄に係る一番基礎になりますのは興銀が立てた再建計画でございますので、各委員はそれについて基礎的な検討は慎重にやっておるわけでございますので、その放棄の決定につきましても十分議論をしたものと私は推察をしているわけでございます。
  234. 上田清司

    ○上田(清)委員 できるだけ大臣一言で言える話だったので短くお願いします。  それでお伺いしますが、大臣は今再建計画をお持ちでしょうか、そごう再建計画書は。七枚のペーパー、お持ちでない。(久世国務大臣「今ここには持っておりません」と呼ぶ)では、お持ちでないなら申し上げますが、この再建計画で特に一番ポイントは、今後売り上げがどうなっていくか、つまり経常利益がどうなっていくかということで有利子負債の返還が可能になっていくという、これで再建計画が成るわけですから、売り上げがどうなっていくかというのが一つポイント一つポイントというよりも最大限のファクターですね。  これを見ていますと、平成十二年度、十三年度、十四年度三年間分だけ、売上高、営業総利益、販売管理費、営業利益、経常利益、資本勘定という項目で数字が出ているのですよ。それで、一気に十五年度からはなくて急に二十三年度が来て、それぞれの数字が書いてあるのですよ。なかなかこういうのは珍しいのですよ。頭三年だけ書いて、あり得べき平成二十三年、つまり処理をし始めてから十年後にはこうなるという、そのプロセスはないのですよ。こういうのを普通あんちょこというのですよ。  それから、松田理事長にも再生委員長にも両方とも聞きますが、これらを他の百貨店グループの売り上げだとかそういうものと比較検証されましたか。それぞれ聞きます。
  235. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  まず売上高の関係ですけれども、間が抜けていますけれども、これは総論部分でございまして、再建計画書自体はもっと分厚い、詳細なものでございます。当然ながら各年度の積算がございます。それが第一点。  それから、他のグループとの関係、もちろんいろいろな資料がございまして、比較いたしました。それによって、営業力からいけば、そごうは決して他の百貨店に劣らない。ただ、借入金が一・七兆と過大なので、その利子負担にあえいでいるという特徴があるということは改めて確認したわけでございます。
  236. 久世公堯

    久世国務大臣 私も再建計画については一応話は聞いたわけでございますけれども、それによりますと、そごうは売上高の一・六倍という過大な借り入れをしているわけでございまして、それに伴う利子負担というものによって経常赤字の体質となっているけれども、百貨店事業をとりますと、現在でも営業利益は、同じような形態をとっているものと比較をいたしまして遜色はないと聞いております。十二年の二月末期の数字によりますと、百貨店事業をとりますと営業利益は黒字だと聞いております。  また、債権放棄なり不採算事業、不採算店舗の処理等を内容とする興業銀行がつくりました再建計画が実行に移されるようになりますと、そごう経常利益黒字体質になることが期待できるというふうに承っております。
  237. 上田清司

    ○上田(清)委員 とらの巻ではだめなんですよ。私が質問したのは、他のデパート、百貨店と比較検証されたかを聞いたのです。聞いておりますじゃだめなんですよ。検証したかというのは本人の話なんですよ。国務大臣としてちゃんと検証されたんですかということを聞いているのですよ。それだけ、したとか、しないとか、そういうお答えをしてもらいたいのです。
  238. 久世公堯

    久世国務大臣 高島屋との比較について一応説明を聞きまして、私なりになるほどそうかなという理解を得ました。しかし、この問題につきましては、私は終わってからの経過を聞いたわけでございますので、それに伴って私の判断を下したわけではございません。
  239. 上田清司

    ○上田(清)委員 少なくとも、私どもに提出されておられます資料、十二年、十三年、十四年度分、これは毎年売り上げが伸びていく仮定になっておりますし、経常利益も上がっていく、それから営業利益も上がっていく、こういうふうになっておりまして、販売管理費は下げていく、そういう事態になっております。二十三年度の最後のところも、当然売り上げも伸びているし、経常利益もふえていく、全部プラスになっていますが、御承知のとおり、経済企画庁の月例経済報告でチェーンストアや百貨店の前年比、前月比の動向をずっと見ますと、ここ数年ずっとマイナスですね。うるう年の一カ月だけちょっとプラスになりましたけれども、それ以外は全部マイナスですよ。これがまず基本的な現状認識ですね。極めて構造的不況に陥っている業界だ、こういう認識をするのがまず普通ですね。  では、現実に今のそごうはどうなんだ。三、四、五だけを見てみましょう、直近の三カ月だけ。これは計画の五%を下回っていますね。それから、九九年度の前年比を見てもいいですね、一つの傾向ですから。三店舗以外全部マイナスですね。ことしでも、一番稼ぎ頭の横浜そごうでも、五月の売り上げは前年比の九一%ですよ。九%マイナスになっている。  こういう数字を比較されてこの再建計画が妥当な再建計画だと思われるのだったら、私はちょっとおかしいのじゃないかと思いますよ。いいと思われたのですか、再生委員長
  240. 久世公堯

    久世国務大臣 私は、就任をいたしましてからの事務の引き継ぎに際しましての説明として聞いたわけでございますので、今委員が御指摘になりましたように詳しい数字を一々説明を聞いたわけではございませんが、そのときも、大体の傾向とそれからほかのデパートと比較をした場合、それから今委員が、百貨店業界全体の問題につきましては、毎月の月例経済報告におきまして、百貨店業界、チェーンストア業界というものはやはり個人消費の項目の中では注目すべきものでございますので、大体は承知をしておりましたし、また、私どもが説明を聞いた段階において、これからの百貨店業というものの将来というものは必ずしも明るいわけでもないという点も聞いたことは記憶をいたしておりますが、何分とも慌ただしい就任とその後の引き継ぎ説明でございますもので、詳しくは私は聞いておりませんので、これからはよく承って判断をしてまいりたいと思っております。
  241. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、そごうグループに対する債権放棄についての六月三十日の金融再生委員会から出されたこの文書は一体何なんでしょうか。これは重要なファクターなんですよ、そごう再建されるということが。それを大臣そごう再建計画は私は余りよく知らない、それでよく責任を持ってこういう文書を出せますね。とんでもない話じゃないですか。これはどういうことでしょう。
  242. 久世公堯

    久世国務大臣 私は七月四日に任命をされたわけでございますので、六月三十日時点の書類とか七月一日の書類は、私にとっては後で報告を聞いたものでございます。
  243. 上田清司

    ○上田(清)委員 行政は継続しておりまして、谷垣前委員長が決めたことでも、今の委員長が決めたことと同じことでありまして、まさか大臣からそういうせりふを聞くとは夢にも思いませんでしたけれども、今のは間違いですね。
  244. 久世公堯

    久世国務大臣 もちろん行政は継続でございますし、この問題につきましては私として十分承知をしていなきゃいけないわけでございますけれども、今のところ、その程度の説明を聞いただけでございますもので、十分に理解していないということについては申し上げたいと思います。
  245. 上田清司

    ○上田(清)委員 担当大臣にお伺いしますが、今でも債権放棄は正しかったと、その中身は一体何なんですか。
  246. 久世公堯

    久世国務大臣 債権放棄は正しかったと思います。  その理由といたしましては、再々申し上げておることでございますが、金融再生法の三条に規定されております、国民の負担というものをできるだけ少なくするという最小化原則、これがやはり一番の大きな物差しでございまして、そのほかに、預金保険機構としては四つの原則を立てておられますし、私どももそれを敷衍いたしまして、ほぼ似た基準でございますけれども、三つの原則を立てておるわけでございます。  そういうものに照らしますと、債権放棄というものは正しかったと思いますし、それは今日でも同じ考えでございます。
  247. 上田清司

    ○上田(清)委員 債権放棄、最小費用の原則を出されるのはいいのですが、それだけが原則じゃないのですね、金融再生法原則というのは。  一番大事なのは、預金者保護、あるいは金融システムをきちっと守る、あるいは金融仲介機能、これらがむしろ先に出ていて、費用最小原則というのは三番手か四番手でしょう、どちらかといえば。  そういうことも含めて、費用を最小化するためにそごう債権を放棄して再建させた方がいい、そういうスキームを考えられて、つくられて、それを実行しようとされた。まさにそごう再建計画妥当性があるかどうかというのは極めて大きなファクターなんですよ。そのファクターが全然、余り検討されていないというのだったら、大変なことじゃないですか。九百七十億というお金を使う。  いいですか、私なんか、ODAでたったの十億五千万、ウナギなんですけれども、浜松まで行ってきたのですよ。資金計画が正しいかどうか、私には判断ができませんから、養鰻業の親分のところへ行ってきたのですよ。全国の組合長のところへ行って、この資金計画は正しいですかと言ったら、膨大だ、中国ではこんなに高くない、建設費、シラス代、さまざまな費用がどうもおかしいと。委員会で質問してもよくわからない。何かわけのわからぬ答弁をされる。余りにも善意な人が多過ぎるから、金をばんばん出しちゃう、日本のお役人さんは。私は、もったいないと思っているから、中国まで調べに行った。そうしたら、現地に一円も届いていないということがわかった。  それはいいとしても、お金を使うときには、そういう検証をしないと心配で使えないのですよ、我々は。何で簡単に九百七十億、債権放棄しようとしているのですか、そごう再建計画妥当性があると言って。全然妥当性がないじゃないですか。  まだ言いましょうか、数字のおかしなところを。よく聞いてください。  平成二十三年になりますが、このとき売り上げが一兆二億ですか、約一兆。営業利益は五百六十二億。経常利益が四百五十三億。たまたま九九年度の高島屋の売り上げの数字に近いですよ。高島屋の売り上げは、ちょうど一兆二百十億、極めて近似値。営業利益はたったの九十億、これはそごうは五百六十二億。経常利益は、高島屋はたったの百十七億、そごうは四百五十三億。  べらぼうじゃないですか。どうしてそごうだけがこんなにもうかるの。こんなにもうかるんだったら、とっくの昔にもうかっているのですよ。もうからないからこういう事態になっているわけでしょう。どうしてそういうことが妥当性があると思われているのですか。そういう数字と比較されましたか、本当に。していないとしたら、これは大変な失敗ですよ。大臣、もうやめた方がいいですよ、そんなのだったら。九百七十億も使うのに、こんないいかげんな数字を出して、それでよしとするような預保や再生委員会だったら、即やめてほしい。  大臣、どういう数字を見たのか、答弁してください。とんでもない。
  248. 久世公堯

    久世国務大臣 先ほどから申し上げましたように、私なりにこの問題につきましては検討をさせていただきました。  それは、この再建計画が一番基本であることは私も了承しておりますが、私のできる限りのことは聞いたわけでございますが、なおこの問題につきましてはさらに理解を深め、それについて説明も受けたいとは思っております。  ただ、この問題については、過去の沿革がいろいろございます。きょう、しばしば問題になりました瑕疵担保の問題につきましても、やはり私としては十分理解ができるように時間をかけて説明も聞きましたし、私なりにも判断をしていったわけでございますけれども、そういう限られた時間の中においては、私としては真剣に取り組んだつもりでございますが、なおそれはもちろん十分とは申せませんもので、これからも相努めたいと考えております。(発言する者あり)
  249. 上田清司

    ○上田(清)委員 今場内から背任だという言葉が出ましたけれども、九百七十億という国民の税金を使う予定だった、それにしては余りにもずさんな判断じゃないでしょうか。まさに重要なファクター、先ほど申し上げました二割減価の買い戻しの査定が極めて大きなファクターの一つ。  それからもう一つは、社会的混乱とかなんとかといろいろつけ足していましたけれども、さっき全く違うことを宮本総括政務次官は言いましたよ。自由党の中塚議員の質問に対して、今までの金融再生委員会の立場と全く違うことを答弁されておられましたよ。いろいろ連鎖倒産とかを防ぐためにきちっとした手だてをするように、そういうことは大丈夫かという問いに対して、宮本総括政務次官はこんなふうに言っていましたよ。要するに、地銀関係は三千億、しかし、引き当てだとかそういうのをやっていますから残り一千億だ、比較的地銀は現況がよろしいので、さほど心配することはないと。それから、農協系統、六百五十三億という数字でしたか、数字の細かいところはお許しをいただきたいと思いますが、百億だけは引き当てをしていないけれども、それらは引き当てやその他があるので保全ができているから大丈夫だと。  ところが、今までのお立場は違うのですよ。これがあると地方銀行以下地方の金融機関に多大な損失が生じ、中小企業の資金供給にも影響するおそれがありますとか悪影響があるとか。きょう日経新聞の、帝国データバンクの方でも出しましたね、さほど心配はない、影響は極めて小さいと、この法的処置で。あなた方は不安をあおっていたのじゃないですか、これを一つ理由にして。  しかし、問題は、これはやはり瑕疵担保理論に基づく買い戻しが国民にとって本当にいいことかどうか、あるいは国民の税金をたくさん取られていくというこの仕組みにきちっと遮断をすることができるかどうかということと、もう一つは、そごう再建計画というのが本当に妥当性があったのかどうか、生き長らえさせるだけの意味があったのかどうか、この二つがキーポイントであって、あなたたちはそれに幾つかつけ足しをしただけなんですよ。だから宮本政務次官はぽろっと言われたのですよ、大したことないと。非常に心強い言葉でありますが、しかしそれにしても今まで言ったことと違うなというのが実態ですね。  そこで、参考人でおいでいただいております西村頭取にお伺いしますが、あなたは常務時代からそごうを担当されておられまして、特に九四年には週刊ダイヤモンドで、当時二千億からの債務超過だという特集記事が連続して出るようなことがあって、当時からこの再建計画を当然一生懸命やってこられたわけであります。まさに貸し手責任がここで問われるわけでありますが、この再建計画も興銀が基本的につくられたものだというふうに私どもは伺っております。この再建計画はあなた自身がつくられたのですか。
  250. 西村正雄

    西村参考人 ただいまの上田先生のお言葉の中で、大変申しわけないのですけれども、一つだけ間違いがございまして、私はそごうを常務時代から担当したことはございません。私が担当したというような記事が出ておりますけれども、それは間違いでございます。担当といいますのは、常務、部長、課長のラインでございます。  それで、あえて申し上げれば、九四年に第一次のリストラ計画ができましたときに水島社長が会長に退きまして、興長銀から常務が副社長になりました。その段階で、たしか九四年の十一月だったと思いますけれども、当時の黒澤頭取と長銀の堀江頭取と水島会長の三者会談がございまして、その際に、そのリストラ計画の完遂と、それから同時に経営会議というものをつくりましたので、経営会議というものを中軸として、経営体質というものを抜本的に刷新してほしいというふうなことを申し入れたわけです。その際に、私は副頭取だったわけでございますけれども、頭取から呼ばれまして、このそごうの問題について、特に経営体質の刷新のところについて担当常務の相談相手になってやってほしい、こんな頭取からの指示がございました。  したがいまして、正式に言いますと、私がそごうにかかわりましたのは九四年の十一月ごろから頭取になりました九六年六月までの大体一年半でございますが、その場合も担当ラインは別にございましたので、したがいまして、担当常務で以前からかかわっていたということではございません。それだけちょっと御理解をいただきたいと思います。  それでただいまの、再建計画妥当性というものがこの際の再生委員会等の御判断中心だったわけでございます。確かに上田先生がおっしゃいますように、そごうから提出されました再建計画、それだけの資料ではなかなか、それを見る限りにおきましては、こんなものが本当に実現可能性があるのか、そういったような御疑問が出るのは、ある意味では余りにも簡単過ぎますので当然かもしれませんが、だれがつくったかという御質問がございましたけれども、これはそごうと私どもの担当ライン、営業十一部というのが担当しておりますけれども、主として営業十一部の部長とか課長がそごうの担当ラインといろいろ相談しながら共同してつくり上げてきた。以前でございましたらそこに長銀が加わるわけでございますけれども、現在は長銀がございませんので、その両者の共同作業というようにお考えいただいて結構でございます。  それで、結論から申し上げますと、そのそごう計画だけごらんになりますと、確かに妥当性についていろいろ御疑問があると思います。先ほどもお話がございましたように、売上高の伸びの前提でございますとか、営業利益がどうだとか、あるいは高島屋と比較したかとか、あるいはまた百貨店業界の将来性がどうかとか、そういうことをすべて織り込んだのかといったような御質問がございましたけれども、そういうことはすべて織り込んでおります。したがいまして、これは、そごうの場合には二十数店それぞれ別々に店がございまして、その中で黒字店も赤字店もあるわけでございますけれども、そういう店別にすべてを積み上げて、その結果の数字が全体の一兆円とかそういったような数字になっているわけでございます。  どこまでこの場で細かい御説明をしてよろしいかわかりませんけれども、結論から申し上げれば、私どもといたしましては、この再建計画妥当性ある、このように考えています。したがいまして、その線でもって預金保険機構にも、たしか六月二十日以降だったと思いますけれども、御要請がございまして、その詳細を御説明申し上げて納得していただいた、こういうことでございます。
  251. 上田清司

    ○上田(清)委員 西村頭取、例えば金利が一%上がったときにはどうなるかというような試算とかはなされましたか。
  252. 西村正雄

    西村参考人 私どもはそういう、センシティビティーアナリシスというのをやっておりまして、この前提条件は、金利は隔年〇・二五%上がるという前提でつくっております。仮にもし一%上がるようなことがあっても、これは平成十四年度の経常利益の範囲内でございますので、そのときにおいても黒字である。  さらに一つつけ加えれば、金利が一%上がるような状況というのは、今のアメリカのように非常に消費が過熱している状況でございますから、そういう状況においてはデパートの売り上げというのは急増している、あるいは小売業というのは全部急増しているわけでございます。したがいまして、そういう悪い面だけではなくて、当然よい面もあるわけでございますから、そういうふうにも考えて、ただ、前提条件としては、一応一年置きに〇・二五%ずつ上がる、こういうことでもって計算をしております。
  253. 上田清司

    ○上田(清)委員 私どももデパート業界については全くの素人でございますが、どう見ても数字の部分では信じがたい。とりわけ、九四年に再建計画を現実に興銀が中心になって立てられて、それでこのざまなんですから。現実はもっとひどくなっているのですよ、最近の傾向は。それで信じろと言ってもにわかに信じがたい。極めて都合のいい数字を集められておると私は思いますし、それから、現状においても、粗利益、そごうと高島屋では、そごうが二四・八で高島屋が二八%、こういう差がある。  いろいろ御反論もおありかもしれませんが、どちらかというと、私どもは参考人と討論するために委員会をやっているわけじゃなくて、まさしく参考意見を聞くために御登壇いただいているという経緯がありますが、むしろ問題なのは、こういう再建計画を十分検証しないままに、まさに重要なファクターとしてこのスキームをつくられて国民の金を九百七十億使おうとした、この金融再生委員会の罪は重い、大変大きいというふうに私は言わざるを得ません。本当はこれはすぐにでも辞任してもらいたいのですが、なかなかそういうわけにもいかないのでしょう。  それで、時間も来ておりますので、幾つか確認だけをちょっとさせていただきますが、これは森事務局長でも結構でございますよ。先ほど仙谷議員が質疑応答いたしました、資産の買い取りは再生法の義務ではない、こういう一つ結論、重要な意味をこの議論の中で引き出したわけでありますが、要するに、瑕疵担保特約条項というのは、金融再生法の特有の意味のあるものではなくて、たまたまつけられたものだというふうに理解することが可能なんですね。譲渡契約を結ぶために、なかなか譲渡できないから、おいしい話を全部上げた、しかもデリバティブまで補てんするという本当にノーリスク・ハイリターンですね。そういうのは政府ノータリンと言うのですよ、本当に。そうでしょう。受ける側は全くノーリスクなんです、しかもハイリターンですから。これはまさに政府ノータリンとしか言いようがない。  そういう状況でありますから、私が確認したいのは、まず、資産の買い取りは再生法の義務じゃない、このことは確認できますね。
  254. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  今回の上田先生のおっしゃる資産の買い取りというのが、新生銀行から預保への債権の戻りと申しますか、解除に伴う戻りということでおっしゃるのであれば、それは五十三条に基づくものではございませんで、あくまで譲渡に際してつけた特約、すなわち瑕疵担保条項に基づくものでございます。  そして、今ノータリンと言われましたけれども、なぜ瑕疵担保条項をつけたかというと、先ほども申しましたとおり、これはやはり物あるいは債権の有償契約でございまして、基本的には民法が適用になる分野でございます。その中で、民法の趣旨を逸脱しない範囲で売り手と買い手をどれだけ公平に保つか、これが瑕疵担保でございまして、先方にリスクがないとおっしゃられましたけれども、先方のリスクは、分析してみますと、一つは、千二百十億円という投資でございます。もう一つは、いわば債権の中身について国側の資産査定を信じて買う、この二つ先方のリスクでございます。  これに対して、平等に保つためのものとして我々が考えましたのが、瑕疵担保あるいは表明保証、おっしゃられたようなデリバティブの問題、そういうのもすべて我々は売り手と買い手がフィフティー・フィフティーのリスク、リターンになるように工夫したものだと理解しております。
  255. 上田清司

    ○上田(清)委員 最後に一点、担当大臣にお伺いしますが、日本債券銀行のそごう向け債権、これは放棄をしないということを谷垣前委員長は言っておられます。日本債券銀行が持つそごう向けの債権を放棄しない理由は何ですか。端的に。
  256. 森昭治

    森政府参考人 再生委員会で議論いたしまして特別公的管理下にある、これは国の銀行でございます。その債権放棄を認めるというのは税金の直入だという物の考え方から、債権放棄には応じないという議論を再生委員会においていたしました。
  257. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、私どもの同僚議員も言いましたように、瑕疵担保特約条項をこれから新生銀行と解除するための戦いをぜひやっていただきたいということを強く要望して、少し早目なんですが、同僚議員の時間が少ないもので譲りますので、民主党の枠であとを使わせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  258. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、中川正春君。
  259. 中川正春

    ○中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。続いて質問に入らせていただきます。  基本的なところでまず二点ほど問題提起をしたいのですが、一つは、我々この何年か、金融改革に取り組んできました。その流れの中で、一つの基本的な指針といいますか目標というのが、やはりルール行政を確立していこうじゃないか、いわゆる護送船団方式、その当時は官僚ということが前に出ていましたが、大蔵省の恣意的な行政で引っ張っていくのじゃなくて、オープンでルールを基本にした行政というのが最終的にはこの国にも取り入れられなければならない、国際的にもやはりそうした流れが大切なのだ、これでやってきたわけなんです。  今回のそごうの問題の最終的な決着、まだ最終的な決着まで行っていない、その途中のプロセスなんですが、このプロセスを見ていると、これは全くルール行政じゃないですね。ある日突然亀井さんが電話をかけて、やめとけと言って、おろしたというような話になっちゃった。こういうプロセスに対して、いつまでたっても、大臣それぞれお二人の答弁を聞いていると、何やかんやと言い繕って、これでよかったんだ、これでよかったんだ、こういう話が続いていますね。これはやはり、腹をくくってもらわなきゃいけないんじゃないかというふうに思うのですよ。この体質が海外にも情報発信されている。このままでやはり日本はいくのかな、そういう感じになっていくんだろうというふうに思うのです。  もう一回改めてお尋ねをしたいのですけれども、今回のこうしたプロセス、本当にこれでよかったんだと思っておられますか。
  260. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいま委員が御指摘になりました金融行政全体のあり方につきましては、それこそ住専国会あるいは金融二法を制定いたしました二年前の金融国会というものを通じまして、従来の護送船団方式の行政から大きく転換をいたしまして、金融の安定と再生のために今その道を歩んでいるわけでございまして、その点につきましては御指摘のとおりだろうと思います。  私どもは、そういう中にあって、このそごう問題については金融再生委員会としては、先ほど来たびたび申し上げておりますように、預金保険機構が御判断をされた、その御判断に対しましてこれを六月三十日に了承したわけでございまして、そのときの考え方は正しいものと判断をいたしております。
  261. 中川正春

    ○中川(正)委員 ちゃんと質問に答えてください。その話ではないのですよ。その後に亀井さんがもうやめておけと言って、やめさせて今の状況になったということ、ここなのですよ。
  262. 久世公堯

    久世国務大臣 今回の問題は、あくまでもそごうが、いろいろと六月三十日以降に世論その他各界の意見というものを判断されまして、また、そごう自身の売り上げなり営業というものの実態というものにかんがみて、そごうが自主的に判断をされた結果だと思うわけでございます。  与党の政策責任者がそれについて一つの意見を言ったということは、これは事実でございましょうけれども、しかし、私は先ほど推測と申しましたけれども、それは新聞等で読んでおります限りにおいては、やはりそごう自身も、一夜にしてこの決定をしたものではなくて、いろいろなことを考えてきた総合的な判断だろうと推測するわけでございます。  私は、そういう過程において、与党の政策責任者の意見というものも一つの大きな意見として受け入れたものと了承しているわけでございまして、私ども政府・与党といたしましても、このような自主的な判断をされたことについて、それについてまた与党の責任者が意見を言ったことについては、了とするものでございます。
  263. 中川正春

    ○中川(正)委員 だから、そこがルールじゃないでしょう。そごう自体も、債権放棄という手法じゃなくて違った道を選ぶという発表をしたときに、亀井さんから電話があったからということをはっきり言っているのですよね。国民もそういうふうに理解をしている。亀井さん自身もそういうふうに理解をしていると言っている。  もう一つは、本来は、内閣というのとそれから政権与党というのは一体でなければいかぬ。これは議院内閣制の鉄則ですよ。その中で、亀井さんが勝手にやったということではないはずなのです。ところが、さっきの答弁を聞いていると、亀井さんが勝手にやったのだと言っているわけですよね。そんな中で実際の事象が動いたということ、こういう日本のシステムについてどう思うかということを言っているのです。  それを肯定されるということであれば、これは我々がこれまで積み重ねてきた努力というのは、完全にあなたによって否定されるわけでありますし、そんな形で大臣についているということ自体が、これは資格がないということだと思うのです。
  264. 久世公堯

    久世国務大臣 金融再生委員会は、五人の委員によって構成されておりますところの行政委員会でございます。行政委員会は、中立公正な行政を決定するというのがその任務でありますが、同時に、委員長国務大臣であるということは、そこにおいて、議院内閣制のもとにおける政府の一員としての委員長がこの行政委員会委員長になっているわけでございますので、そこは御指摘のとおり、政府の一員としての判断をしているわけでございますので、また、金融再生委員会の決定したことにつきましては、政府の中においてその責任を持つという立場に立っているわけでございます。  そういう建前になっておりますので、今度の問題につきましても、これはもちろん政調会長のところに、この問題を党として解決をするという政治的な判断が下されたわけでございまして、それは一つの高度な政治判断として私は尊重をしたいと考えております。
  265. 中川正春

    ○中川(正)委員 ということは、これはルール行政でなかったということをお認めになるのですね。そうでしょう。党としての判断で今回の結論を導いたということ、それについては肯定するということなんですね、大臣としては。
  266. 久世公堯

    久世国務大臣 それが党としての判断でもございますし、同時にこれは政府としての判断でもございます。
  267. 中川正春

    ○中川(正)委員 その政府としての判断というのはどういう意味なのですか。どうもわからないのですね。
  268. 久世公堯

    久世国務大臣 議院内閣制は、やはり与党が内閣をつくっているわけでございますので、与党の政策というものは同時にそれは政府の政策として遂行するバックになるわけでございますので、政府と与党というものは一体のものだと理解をいたしております。
  269. 中川正春

    ○中川(正)委員 ということは、さっきの答弁とは違ってくるのですね。というのは、これまでの答弁は、亀井さんは亀井さんのやり方でやりましたよ、引き下げなさい、こういうことでしたよ。ところが、委員長としては、委員会のこれまでの決断、それは債権放棄でいきましょうということですね。これを支持しております、今でもそういうふうに考えておりますということなんですね。これは完全に食い違っているわけですね。それがさっきの答弁では、いやこれは同じなのですよ、こういう答弁ですね。これはどういうことなんですか。
  270. 久世公堯

    久世国務大臣 与党の政策責任者がそごうに対してその意見を言われました。そして、その意見を言った翌日、新聞によりますと総理にも御報告があったようでございますし、また、私も御報告を受けたわけでございますが、それでその意向を受けてそごうが決定をしたことに基づいて、それを政府としても了としたわけでございます。
  271. 中川正春

    ○中川(正)委員 それだからこのやり方はおかしい、こう私は言っている。どっちにしたっておかしいのですよ。これは袋小路なんです。だからそれはおかしいと認めて、まずそこから出発するということから始めないと、そんな矛盾した答弁二つ繰り返していたってどうにもならない。どっちかに統一して、悪かったら悪かった、これはルール行政じゃなかった、本当はそういういわゆる政府の統一見解というのが私は必要なのだと思うのです。両方が責任逃れのためにこんな手法でやって、そのままこれからもこんな手法が通じていきますよ、こういうような見本を、前例を残したらだめだというふうに思うのですよ。その総括をやはり政府はすべきだと思うのです。
  272. 久世公堯

    久世国務大臣 与党の政策責任者のアドバイスがあって、そごうはそのアドバイスも一つの有力な意見として、最近におけるそごうを取り巻く環境の大きな変化を踏まえ、また、モラルハザードに対する世の中の厳しい批判も考慮の上で、自主的な判断として再建計画というものを断念して、十二日の日に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請したものと私は承っているわけでございます。  そこで、そごうが自主的な経営判断として債権放棄要請を取り下げたことによって、金融再生委員会預金保険機構からの御意見に対する了承というものは、その前提がいわば消滅したわけでございますので、実質的にはなかったものと同じになっておるというふうに認識をいたしております。
  273. 中川正春

    ○中川(正)委員 いや、これはそんな手続論でごまかしたってだめなんです。そんなものはみんな理解できませんよ。  そういう話じゃなくて、亀井政調会長がそうした判断をした時点で、本来は大臣のところにその話が届いて、事前にそうした中で再生委員会に議論があって、その議論に基づいた中で次の行動が行われてくるという、そうしたはっきりオープンな形でのものが必要なんだというのがこれまで我々が求めてきた話じゃないですか。それに対して、いや、そうしたら、これまでの再生委員会がやってきたことを否定していかなきゃいけない、そこの責任問題が問われる。その責任を回避するためにということで亀井さんが電話をかけたわけでしょう。ここに手続の間違いがある、ここに我々が求めてきた本来の行政のあり方、金融行政のあり方とは逸脱した形があるのだということなんですよ。  これを認めてしまったら、では、これから先どんどんそんな手法というのはやっていけるのですねという話になるじゃないですか。それをやっていってもいいのですか。どうなんですか、大臣としては。
  274. 久世公堯

    久世国務大臣 委員の御意見は私も承りましたけれども、私が先ほど来申し上げていることは、今それをまとめて申し上げたわけでございますが、政策責任者の一人が意見を言ったのは、別に私どもに連絡があったわけでもなし、ましてや再生委員会とは関係が全くないわけでございまして、それは高度の政治判断として意見を言われたのだろうと思うわけでございます。それで、この与党の政策責任者の示唆というものは一つの高度な政治的な判断であって、それが今回のそごうの自主再建断念に影響したとは思われますけれども、基本的には、そうした示唆というものを含めてそごうをめぐる環境の変化を考慮して、そごう自身が自主的な判断ということで民事再生法の適用を申請したものと考えておるわけでございます。  私の考え方はたびたび申しておりますが、これが政府考え方でございます。
  275. 中川正春

    ○中川(正)委員 どっちにしても、それでは納得ができないということであります。  亀井さん個人が電話したのじゃなくて、これは与党三党の話し合いの上でやっていることですよね。そんな公的な中でのプロセスをとりながら、あなたの方に全然話がないというのは、これもまたおかしな話ですよ。これは本当は腹を立てなきゃいけないのです。そんなばかなことがあるかと行政責任者としては怒らなきゃいけないのですよ。それを、もらったものを棒読みにして、これで当たり前なんだ、これでいいんだという、その姿勢というのが私はわからないということです。  そこのところを、改めて私は政府統一見解をまとめるべきだと思うのですよ。それで、それをもとにしながら、これからの日本の金融行政のあり方はこうしていきますよ、ルール行政でやっていきますよということを謙虚に情報発信していく必要があるだろう、こんなふうに私は思います。そこのところをひとつこれからも追及をしていきたいというふうに思っております。  それからもう一つ、先ほどの答弁の中でも、新しく大臣になられて過去のことは余りわからないというふうな話に逃げられるのですが、継続なんだという答弁も出ましたので、その継続なんだということを踏まえて確認をしていきたいと思うのです。  実は、この瑕疵担保特約の議論を平成十一年の十二月三日に仙谷委員がやっております。その中で、その当時の大臣は越智さんなんですが、この瑕疵担保というのはどういうことなんだというたびたびの質問に対して、何回も何回も答えているフレーズがあるのですね。それは端的に言うとどういうことかというと、二次ロスというのは瑕疵担保の中に認めていかないんだと。  ちょっとこの一部を読みますと、契約を結んだ「当時として見立て違いがあったということになると、二次ロスが出るのじゃないかというのが先方の言い分で、二次ロスは認めないけれども、その見立てが全然狂っていたというか、何か大変重大な間違いがあった、そのために二割以上の差が出たというときには考えましょう」。もう一つ違うところでは、「二次ロスは認めないということで御報告していると思います。」  こういうことで、この瑕疵という言葉の中には、二次ロス前提にしているものじゃないんだ、これは法理論からいって、もともとそこに隠されたきずがあって、それが出てきたときに初めて交渉の対象になるんだ、そういう前提でやっていきますよ、こういう答弁を何回もしているのですね。  それから考えていくと、さっきから何回もやりとりの中で出てきている答弁では、今回の話は確実に二次ロスなんだ、二次ロスの補てんをするためにこれだけの公的資金を考えていかなきゃいけないんだ、あるいは買い取りというか解約を考えていかなきゃいけないんだということを何回も何回もおっしゃっているのですよ。ここのところがどういうふうに変遷してきたのか、どう変わってきたのかということなんですが、これは改めて説明をいただけますか。
  276. 久世公堯

    久世国務大臣 過去の細かい経緯につきましては、後ほど森事務局長説明をさせたいと思いますが、今御指摘瑕疵担保条項というものは、やはり二次ロス対策であることは間違いございません。  きょう午前中にも御説明したとおりでございますが、旧長銀のような大きな破綻をした銀行というものについて、どういう相手に対してこれを引き取ってもらうのか。これは期間も急がなければいけないし、また、非常に多くの債権者のいるものでございますので、それをチェックもしていかなければいけない。そして、およそ買い手という方の立場に立つならば、やはり二次ロスの対策なくしてはこれは引き取りがたいというような情勢もあったやに聞いております。  そこで、アメリカの政府等におきましては、御承知のとおり既にロスシェアリングの制度があるわけでございまして、これはある意味においてはグローバルなスタンダードだと私は思うわけでございますが、そういう制度が我が国におきましては金融再生法に書かれておりませんし、また、法改正をしろという御意見もありましたけれども、そんなに早急に法改正というものができるものでもありませんので、そこで、この瑕疵担保特約というものをつくることによってこれに対応するという方策をとったわけでございます。  一昨年の十一月という御指摘でございますが、その点につきましては森事務局長から答弁をいたしたいと思います。
  277. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  二次ロスというかどうかという、いわば二次ロスの定義の問題かと思います。当時の越智大臣の議事録を見させていただきますと、瑕疵譲渡前に内在していたものが顕在化したものというのは、越智大臣は二次ロスとは言わなかったかと思います。  ただ、我々からすれば、譲渡後に出てきたロスを一般に二次ロスと言っております。その二次ロスは、売り手の責めに帰すべきロスと、買い手の責めに帰すべきロス、あるいは不可抗力によるロス、いろいろございます。瑕疵担保責任は、売り手の責めに帰すべき事由による、それが内在していたものが譲渡後に顕在化して出てきたもののロス、そこだけは見ましょうというのが瑕疵担保責任でございまして、いわば、我々一般的に言えば、二次ロスといえば、譲渡後に出てきたロスは、売り手の責めに帰そうが、買い手の責めに帰そうが、それ以外であろうが、すべて二次ロスと一般的には呼んでいるものかと思います。
  278. 中川正春

    ○中川(正)委員 越智さんのその当時の説明とさっきの森さんの説明と大分違うのですよね、これは。もう一度話を過去にさかのぼって整理してみるとわかるのですが。  少なくとも当時の担当国務大臣が答えている話ですよね。ここにちゃんとあるのですよ。「もともと瑕疵担保のときでも、将来売却後に生ずる損失については何にも保証するつもりはございません。」こうして越智さんははっきり答えているのですよ。ここのところはさっきの森さんの答弁と全く違うところで、二次ロスというのは、後から出てきた、いわばリスク、リスクが内在されていたものが顕在化されたものについても見ていきましょう、こういうニュアンスですね。  我々にかつて説明したもの、これを前提に議論をしておったのが、ふたをあけてみてこうして現実のものになってきたら急遽この前提が全く翻って、これは合法化されたものなのだ、こういうことなのですね。これは大変な責任問題になるし、これは我々をだましていたということになるのではないですか。
  279. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  当時と今とで再生委員会の物の考え方が変わったということは全くございません。越智大臣にあるいは御説明不足があったことがあるかもしれませんけれども、当時、越智大臣の話でも、越智大臣は同じ認識だったと思います。  要するに、譲渡後に出てくるロスの中で、売り手の責め、買い手の責め、それ以外、そういうものを分けながら、どれが瑕疵担保責任でカバーするものか。それは売り手の責めに帰すべきもの、そしてそれは言葉をかえれば、譲渡前に隠れた瑕疵があり、それが譲渡後に顕在化したもの、そこのところについて、瑕疵担保特約で国がいわば瑕疵に対する責任をとる、そのとり方としては、解除という形で、売った債権を売った価格で買い戻す、買い戻すと言うとまた誤解を生みますが、解除して預保に戻る、こういう仕組みを考えたわけでございます。
  280. 中川正春

    ○中川(正)委員 それにしても納得ができないですね、この問題も。私はこう理解していたのですよ。三年間について瑕疵が顕在化した場合には買い戻しますよというのは、瑕疵だから一方的に買い戻すということだと思っていたのですよ。二次ロスで、それぞれリスクを背負いながら、そのリスクが顕在化したときにどういうふうに解決をしていくかというのはリスクシェアリングなんです。だから、一方的に、こっちの方だけが全額を負担して、それこそ定価どおり買い戻しますよという話は、これはリスクということを前提にしていく限りはこんなものは成り立たない話なんです。でたらめな話ですよ。瑕疵だからまだ、そのときもう既に実在していて隠れていたものが、ふたをあけてみたらやはりそうだったのだということで、ではこちらが保証しましょうかという話は、これは民事の話ですよね。それで納得したのです。だけれども、そうではないでしょう、さっきの話だと。こちらがリスクまで背負いましょうと。だからこれは法律違反ですよ。それをやったらだめなんですよ、これは。  大臣、どう思われますか。
  281. 久世公堯

    久世国務大臣 今、委員と森事務局長の、かつての答弁に係る問題についてのあれを承っておりましたけれども、この瑕疵担保特約と申しますのは、二次ロスの中で、売り主の責めに帰すべき事項だけを負担するものだろうと私は考えております。  したがいまして、いわゆる民法に言う瑕疵担保という法理は、売ったものについてきずがある場合において、それが顕在化したときにそれを補てんするというのが瑕疵担保の法理の原則だろうと私は思うのですけれども、この瑕疵担保特約の場合におきましては、二次ロス対策そのものではないのでありまして、その中で、売り主の責めに帰すべき事項を負担するというのがこの瑕疵担保特約だろうと思います。
  282. 中川正春

    ○中川(正)委員 今回の経過を見ていましても、一〇〇%売り主の責めに帰するということだけではないと思うのですよね。それに内在していた、瑕疵ではなくてリスクなんですよ。リスクが時間的経緯の中で顕在化してきたということですから、これは全く話が違うということであります。  時間が来てしまいましたので、しかし、この議論は、もっとしっかりと詰めた上で、その上で、これから瑕疵担保をどうするか、どう解釈していくのかということ、これを議論していかなければいけないというふうに思うのです。  そこで最後に一つだけ聞きますが、これまでどおり大臣はやっていくつもりなのですか。この買い受け、いわゆる解約というものについては、そのまま、向こうから言ってくるものに対して受けていくつもりなのですか。これまでのやり方というのは間違っていない、何回も何回も間違っていないとおっしゃっていますが、本当に間違っていない、そのままでやっていくつもりなのですか。
  283. 久世公堯

    久世国務大臣 今の問題につきましては、契約の内容に従ってやるべきだろうと思います。
  284. 萩山教嚴

    萩山委員長 もう時間がございませんので、また次回によろしくお願いします。
  285. 中川正春

    ○中川(正)委員 また次回にさせていただきます。     —————————————
  286. 萩山教嚴

    萩山委員長 この際、お諮りいたします。  本件調査のため、政府参考人として金融庁総務企画部長乾文男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  287. 萩山教嚴

    萩山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  288. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、岩國哲人君。
  289. 岩國哲人

    ○岩國委員 民主党の岩國哲人でございます。  そごう問題を中心に、長銀譲渡、そういった点について幾つか質問させていただきたいと思います。  まず、委員長にお尋ねします。  再生委員会の位置づけというのは、来年の省庁再編の結果、金融庁長官の上にさらに重なることになるのか、どのような位置づけを想定しておられるのか、その点をまずお尋ねしたいと思います。
  290. 乾文男

    ○乾政府参考人 お答えいたします。  来年、平成十三年一月六日に行われます中央省庁の再編におきましては、金融再生委員会は廃止をされまして、新たに設置をされます内閣府の外局として金融庁が設置されるということに法律上なってございます。
  291. 岩國哲人

    ○岩國委員 そうすると、再生委員会の機能というものは金融庁の中に吸収され、金融庁長官が責任者となる、今の久世長官の立場に立たれるのは金融庁長官である、このように理解してよろしいですか。  つまり、委員長という形で大臣を設置するのは、金融行政の政治からの中立性確保といった点からは問題があるように思いますが、この点について長官の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
  292. 久世公堯

    久世国務大臣 中央省庁の再編に伴いまして、金融再生委員会はその時点でなくなるわけでございます。ただ、今度の内閣法の改正によりまして、内閣府には担当大臣というのが幾つか置かれるわけでございます。現在の法律におきましても、その中で例えば金融担当とか沖縄担当とか、まだあと一、二あったと思いますが、そういうことが既に法律上で示されておりますので、金融再生委員会というのはなくなりまして、そして、金融を所管する国務大臣として金融担当大臣が内閣に置かれまして、その事務を所掌する部局は内閣府の中に位置づけられることになっております。したがって、金融庁は内閣府の中に位置づけられる外局になろうかと思います。
  293. 岩國哲人

    ○岩國委員 金融行政の中立性ということをこの二年間、我々、国会で大変重視し、議論をしてまいったわけでありますけれども、省庁再編の結果、内閣の一員である政治家の下にこの金融行政は置かれる。ということは、中立性を確保するという点からは、前進ではなくてむしろ後退ではありませんか。この点について、長官の御意見をお伺いいたします。
  294. 久世公堯

    久世国務大臣 私は、内閣の中に置かれる金融担当大臣、あるいはそこに置かれる金融の組織につきましては所管ではございませんので、お答えするのを控えたいと思っております。
  295. 岩國哲人

    ○岩國委員 それでは、現段階においてという前提でお伺いいたします。  金融再生委員会判断というものを総理大臣が間違いだと判断した場合、そのときには、まず長官と相談をするのではなくて、総理はまず自民党と相談すべきだというふうなことを規定した条文はどこかにありますか。
  296. 久世公堯

    久世国務大臣 それはないと思います。
  297. 岩國哲人

    ○岩國委員 また、そういうものがあってもらっては大変困るわけですけれども、しかし長官は、前委員長の決定を覆すことについて、総理または自民党の幹部から相談を受けられたのはいつでしたか。
  298. 久世公堯

    久世国務大臣 三条委員会の決定したことにつきましては、内閣総理大臣はこれを覆すことはできないと思います。
  299. 岩國哲人

    ○岩國委員 今の御答弁はよくわかりませんけれども、結果的において、総理は、委員長が正しいと思われて下され、そして引き継がれた判断というものが覆されたわけですね。今の御答弁をもう一度繰り返していただけますか。
  300. 久世公堯

    久世国務大臣 先ほども御答弁しましたが、今回のそごうの問題は、あくまでもそごうが自主的な経営判断として債権放棄要請を取り下げたことでございますので、金融再生委員会の了承というものはその前提が消滅して、実質的になかったものと同じになったわけでございますので、これを覆すとか覆さないということではございません。もともとなくなったわけでございます。
  301. 岩國哲人

    ○岩國委員 もともとそういうものがなかったとおっしゃいますけれども、前委員長判断は正しかったと何度も繰り返しておっしゃっているじゃありませんか。なかったものに対して正しいということは言えないわけですから、あったわけです。  そして、それは正しかったと今でも長官は信じておられるし、にもかかわらず、債権放棄を依頼してきたそごうが、政府に直接その事情を説明することもなしに、政府にあれだけ苦渋の決断をさせておいたそごうがなぜ自主的判断という名のもとに、一晩にしてその申請を引っ込めるのですか。
  302. 久世公堯

    久世国務大臣 この点につきましては、あくまでもそごうの自主的な判断、今一夜にしてと言われましたけれども、私は、推論でございますけれども、あのような民事再生法に、いろいろな破産法制がある中で、特に会社更生法との選択においては長短さまざまでございますけれども、あえて民事再生法を選んだというような記事を読んでおりますと、やはり、そごうというのは、六月三十日に債権放棄することを預金保険機構が決定したのを受けて再建しようということになったわけでございますけれども、そこには、世論その他の声というものによっていろいろと判断をしていたものの結果出たと思うわけでございます。  たまたま一つの高度な政治判断としてのこの発言が引き金になったことは事実だろうと思いますが、そういうことで、もともとの、金融再生委員会が了承したものがなくなったわけでございますので、このなくなったという事実というものについて、これを覆すとか覆さないとかという問題ではないと思っております。
  303. 岩國哲人

    ○岩國委員 先ほどから、自主的判断ということと高度な政治的判断という言葉を長官は、巧みにしょっちゅうしょっちゅう、入れかえて使っておられるのですね。答弁のたびにそれが非常にぶれているわけです。  どちらが本当なんですか。そごうの自主的な判断がまずあったから、再生委員会の苦渋の決断なるものが結局一晩であっと変わってしまったのか、あるいは、そごうの自主的判断などというものはもともとなくて、政党の高度な政治的判断があったからこそ変わったのか、どちらなんですか。我々、朝からずっと座っていて、さっぱりわからないのです。
  304. 久世公堯

    久世国務大臣 私は、あくまでも企業であるところのそごうの自主的判断だと思います。  ただ、先ほど来申しましたように、一夜にしてでは決してなくて、この六月三十日以降に、そごう自身の売り上げでありますとか、新聞によりますと、不買同盟というのも起こった、あるいはそごうの百貨店のある地域においてはいろいろな問題があった。そういう声というものを、やはりそごうも客商売でございますから、そういう意向というものを十分に体して、本当に迷っていたんだろうと思います。その中においては、もし自主的な判断自分たちが断念することになれば、どういう問題が起こるだろうというのも検討していたからこそ、あの民事再生法による選択があったのだろうと、これはあくまでも推論でございますが、推論をいたします。  今度は、政党の政策責任者が与党三党とも議論をいたしまして、そして一つの高度な政治判断を下したことも間違いのないことだろうと思います。それによって、事実がこのように展開されたものだと了知をいたしております。
  305. 岩國哲人

    ○岩國委員 それでは、そごうの問題から日長銀、日債銀の譲渡契約に質問を移したいと思います。  日債銀の譲渡契約は既に合意に達しておりますか。それはいつ付で契約がなされる予定ですか。
  306. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  六月三十日で最終契約書に署名がされております。
  307. 岩國哲人

    ○岩國委員 六月三十日、そごう債権放棄が発表されたのも六月三十日ですね。そごう債権放棄の発表の時間、場所はだれが発表したか、日債銀の譲渡契約合意はだれがいつ何時に発表したか、簡潔に答えていただけますか。
  308. 森昭治

    森政府参考人 日債銀の最終契約につきましては、六月三十日の再生委員会で議決をいたしまして、午後四時半に当時の谷垣大臣が会見で発表しております。  一方、預金保険機構債権放棄要請の受け入れについての了承も同じ委員会で了承いたしまして、これは預金保険機構理事長が別途預金保険機構の方で会見をいたしておりまして、ただ、日債銀の最終契約の発表の大臣会見の際、これは預金保険機構の発表するべき事項という仕分けで、当方からはそのことについては特に発表いたしませんけれども、前谷垣大臣は記者の質問にはその際答えております。
  309. 岩國哲人

    ○岩國委員 再生委員会で同じ六月三十日の会議で決定し、あるいは債権放棄については了承、同じ会議だった、そういう答弁でしたね。  細かいようですけれども、どちらを先に会議に諮り、どういう順序でその議事録が残っているのですか。
  310. 森昭治

    森政府参考人 日債銀の譲渡契約についての議決の方が先でございました。
  311. 岩國哲人

    ○岩國委員 日債銀譲渡契約について、私はその資料を残念ながらいまだいただいておりませんけれども、日長銀の方はいただいております。この日長銀譲渡契約の内容と日債銀の譲渡契約の内容と、何か実質的に違っているところはありますか。一〇〇%同じと考えてよろしいですか。特に瑕疵担保条項等々の問題について。
  312. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  もちろん日長銀と日債銀は、規模も違いますし中身も違う銀行でございますので、いろいろ違いはございますけれども、基本的なところは同じでございます。特に、先生が御指摘瑕疵担保につきましての仕組みは全く同じでございます。
  313. 岩國哲人

    ○岩國委員 瑕疵担保についても、それからデリバティブという金融商品の損失補てんについても、両方とも同じというふうに理解してよろしいですか。
  314. 森昭治

    森政府参考人 仕組みは同じでございます。ただ、規模が違いますので……(岩國委員「金額の点で」と呼ぶ)金額の点で申しますと、例えば表明したものについては保証する、先方が五十億までは持って、五十億以上は一件一億円以上のものについて当方が持つというふうに長銀はなっていましたが、それが七掛けになっています。失礼しました。三十億だったと思います。(岩國委員「では六掛けか」と呼ぶ)数字は、ちょっと済みません、三十か三十五、どちらかだと思いますけれども、違いはございますけれども、仕組みとしては同じでございます。
  315. 岩國哲人

    ○岩國委員 これはゴールドマンの立場についてまた後ほど質問いたしますけれども、こうしたほぼ同じフレームで、そして、この瑕疵担保条項が本当に発動できるものかどうかについて、第二の買い手である日債銀の買い手は、それは一番注目しておったことに違いないと私は思うのです。  六月三十日、これを政府は本当に決定できるのかどうか、これは絵にかいた空文なのか、瑕疵担保条項で大きなものを持っていったときに実際にはそれが実行できないものなのか、それとも実行できるものなのか、それを日債銀の買い手にしっかりと見せつけることが必要だったのじゃありませんか。六月三十日にその発表が行われた、そして六月三十日、その決定を待つかのようにその合意がなされたというのは。それはそのとおりですとおっしゃるはずがありませんから、この点については答弁は結構です。  次に、実質的なフレームワークが、A、B、二つの取引、日長銀、日債銀、同じような取引で、瑕疵担保から、そしてデリバティブという、俗な言葉で言えば鉄火場の取引のような怖い取引の損失補てんまでくっつけた、世界でもまれな、間抜けと言っては失礼ですから、間を抜いて抜け抜け契約をつけた、二十世紀で私はこれは一番おいしい取引だったと思います。専門の西村頭取は恐らくわかっておられると思います。二十世紀、世界のどこでこんなおいしい取引が行われたか。  その上、利益が上がれば免税になる。これが長銀の場合です。抜け抜けの三点セット。返品自由、しかももとの値段で、定価で、新品同様の値段で引き取ってくれる、三年以内まで返品自由。しかも、デリバティブという、損も出れば得も出る、ばくちというのは小さく買って大きく負けるものです、負けの方の損失をしっかりと補てんしているデリバティブ保証。損失補てん、返品自由、税金免除、こういう世界でまれなおいしい取引をつくり上げている。  しかし、もう一つの買い手が必要だったのでしょう。それは日債銀もどこかで買ってもらわなきゃいけない。しかし、日債銀を買ってもらうときに、先行した組のこの何とか三点セットが本当に効き目のあるものなのかどうなのか、それを見ないとうっかり二番目の買い手は合意に達することはできないはずじゃないですか。  そして、そこにまたゴールドマンの役割もあったと思います。ゴールドマンは第一の取引においては売り手の側に立ち、そして買い手がどういうことを期待しているか、それはもう一〇〇%、一二〇%承知の売り手側のアドバイザーを務めた。そのアドバイザー、投資銀行は、第二のディールにおいては今度は買い手側に立った。当然、でき上がるものは第一と同じように、あるいは第一の取引以上においしいものをつくってくるでしょう。全くこれは投資銀行の使い方のイロハさえも私はわかっていないと思います。  私は、決してゴールドマンのようにすぐれたバンカーではありませんでした。しかし、三十年間、ヨーロッパで十年、アメリカで十年、東京で十年、私はそういう世界だけは見てきました。まさにこれはいいようにされている。私は日本国民がかわいそうだと思います。まるで何かそういうおかしな取引が次々と出てきたら、ツケを取りにやってくるつけ馬にストーキングされているような、これが日本国民の哀れな姿でしょう。こういう取引をつくってしまった責任は大変私は大きいものがあると思います。また、鈴木委員もおっしゃったように、これは社会的コスト、その中には外国に対する恥ずかしい思いというものも我々は十分考えなけりゃならないのです。  そして、ロスシェアリングという言葉が朝から随分使われています。ロスシェアリングというのは売り手と買い手とが、例えば半々に損失を補てんし合うということでしょう。どこに半々に損失を分け合っているのですか。損失は全部日本の納税者だけじゃないですか。何がシェアですか。ロスシェアリングじゃなくて、ロスカブリングだけでしょう。全部かぶっているのですから。  あえてシェアするといえば、現時点と将来時点をシェアしている、現在のロスを将来と分け合う、これならロスシェアリングと言えるかもしれません。しかし、現存する損失を将来と分け合うというのは、もっとわかりやすく言えば、損失の飛ばしと言うのです。将来偶然出てくるロスではなくて、今もうほとんどロスが出てきそうなものだけを集めて、そしてそれを将来のある時点で損が出たら持ってきてくださいというのは、これはいろいろな証券会社、企業がやった損失の飛ばしとどこが違うのですか。損失の飛ばしを、ロスシェアリングといういかにも確立された立派な商慣行であるかのごとく報道させ、実質は、何のことはない、将来の納税者に今の損失を飛ばしているだけじゃありませんか。何か御意見がありましたら、長官おっしゃってください。
  316. 萩山教嚴

    萩山委員長 久世国務大臣、御意見ありませんか。
  317. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいまは岩國委員から大変御高説を拝聴したわけでございますが、私どもは、瑕疵担保特約というものについては、これは私が理解しておるところによりますと、銀行の問題に限らず、売買の対象に何らかの欠陥があって、それが買い手の責めによるものでない場合においては、売り手が一定の責任を負うというのが必然のものであり、それが民法の瑕疵担保の法理ともいうべきものではなかろうかと思っております。したがいまして、長銀のような大きな銀行を売買するに当たりまして、融資先についてすべてを調査するというのは非常に膨大な時間とコストが必要でありまして、これは極めて困難なことだろうと思います。  片や、旧長銀の売買につきましては、なるべく早く、ある限られた時間にこれを完結しなければいけない。そういう一方におきまして、預金者債務者保護、そしてひいては、一番大事なことでございますのは、金融システムの安定や再生のためにはできるだけ早くこれを売却する必要がある。こういうような状況のもとにおきまして、金融再生法の範囲内で、売り手の一定の責任を認めるこの瑕疵担保特約を設けることはやむを得ないものであったと考えておるわけでございまして……(岩國委員「わかりました。繰り返しになりますから、もうそれは結構です」と呼ぶ)  以上でございます。
  318. 岩國哲人

    ○岩國委員 では、次に、興銀の西村頭取においでいただいておりますので、幾つか、限られた時間の中で質問させていただきたいと思います。  私の大学の同級生三人も興銀に入り、みんな優秀な同級生でした。そして、私も興銀の、今もう亡くなられた湊副頭取、そして内山副頭取、あるいは、お元気でありますけれども、渡邊省吾常務に大変かわいがっていただいて、社会のためのよき金融業とはどういうものかということを私は教えていただいて、大変いい勉強をさせていただきました。また、興銀の証券部から独立した日興証券の中で、私は企業のための証券業の実務も勉強することができました。  私が尊敬し、そして海外の銀行と比べるときに、いつも、興銀とどこが違っているか、興銀よりいい銀行か悪い銀行か、私はそういう物差しにさせていただいておりました。その興銀が、今は劣化し老化しているか、いや、そうではない、昔の興銀と同じように立派なのか、失礼ではありますけれども、役目上幾つか質問させていただきたいと思います。  西村頭取は、先ほど、そごう問題の特別な委員会の相談役に就任されたということを答弁しておられました。そごうの株主総会に出席されたことはおありですか。
  319. 西村正雄

    西村参考人 ただいまの岩國先生の御質問でございますが、私、別にそごう問題の相談役に就任したということを申し上げたのではなくて、要するに、副頭取時代に、九四年の十一月ころから九六年の六月の頭取になるまで、当時の頭取から、ちょうどそのときは第一次のリストラ計画が始まったわけでございまして……(岩國委員「いや、この十年間で結構ですから、出席されたことはありますか」と呼ぶ)したがいまして、そのときの経営問題について担当常務の相談相手になってくれ、そういうことでございますから、別に、そういう担当でも何でもない、すなわち担当常務のアドバイザーになったと。  それで今のお話にお答えいたしますけれども、私はそごうの株主総会に出席したことはございませんけれども、そごうの株主総会には、私ども、大体担当ラインが出席しております。
  320. 岩國哲人

    ○岩國委員 興銀の貸し出し状況等資料をいただきましたけれども、そうした貸し付け状況がこの十年間トータルとしてはほとんどふえていない。むしろ貸し出しの総額はすべての企業について一〇%減っている、この十年間に。にもかかわらず、そごうにだけは五〇%この十年間に貸し出しがふえている。これは、そごうという会社が非常に収益が上がり、いい貸し手であったのかどうか。この十年間に総額は下がり、そごうにだけは五〇%上がった、この点を御説明いただけますか。短くひとつお願いします。
  321. 西村正雄

    西村参考人 私どもの貸し出しだけを見れば確かに五〇%近くふえておりますけれども、そごう全体の借り入れの中における私どものシェアは大体二〇%程度でございまして、全体のそごうの借り入れの伸びと比例して私どもの貸し出しがふえている。シェアは二〇%程度で変わっておりません。
  322. 岩國哲人

    ○岩國委員 これは、メーンバンクが二〇%というシェアを維持する、全体としてふやせば、結局よその銀行は横並びで、それぞれに、比率を維持するために貸し出しせざるを得ないというのが一般の慣行ではないかと思います。  次に、興銀として、今まで借金棒引きの前例というのは幾つかおありだと思いますけれども、この四、五年の間に大体総額で何件ぐらいありましたか。そして、その中で立派に再生されつつあるのがそのうち何割ぐらいですか。二つの数字だけを端的にお答え願いたいと思います。
  323. 西村正雄

    西村参考人 今ちょっと数字を調べておりますけれども、最近やりましたので大きかったのは、青木建設と長谷工でございます。青木建設の場合には、これはメーンバンクはあさひ銀行でありまして、私どもは準メーンでございます。それから、長谷工の場合は、メーンバンクは大和銀行でございまして、私どもと三井信託銀行は準メーンでございまして、メーン、準メーンがかなりの部分ということでもって債権放棄をいたしまして、他のグループ、何行かの金融機関もそれに同調いたしました。  それで、かつて、かなり前になりますけれども、私どもはジャパンラインという会社に対しまして千七百億円という当時としてはかなりの額の債権放棄をしたわけでございますけれども、それはその後、ジャパンラインは山下新日本汽船と合併をいたしまして、そして昨年は商船三井と合併をいたしました。したがいまして、千七百億の債権放棄をいたしましたが、結局、合併を繰り返すことによりまして見事に立ち直りまして、この二〇〇〇年三月期の商船三井の経常利益は史上最高の利益になっておりますから、ジャパンラインの株主についても、当時八割の減資をいたしましたけれども、結局報われたというような成功例もございます。
  324. 岩國哲人

    ○岩國委員 この五年間の間に、自由民主党に対しての貸し付けというのは行われたかどうか、その貸し付けは返済されたのか、債権放棄の形で終わっているのか、その点をお願いいたします。
  325. 萩山教嚴

    萩山委員長 もう時間がありませんので、端的に。
  326. 西村正雄

    西村参考人 自由民主党さんに対する貸し出しは一切ございません。
  327. 岩國哲人

    ○岩國委員 では、時間が参りましたので、質問を終わります。
  328. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、小池百合子さん。
  329. 小池百合子

    ○小池委員 そごう問題に関係いたしまして、私、小池の方から何点か御質問をさせていただきます。  午前中から、共通した問題点がかなり浮かび上がっております。その意味で、重なっている部分は省かせていただくと同時に、改めて確認しておきたいこと、これについては、重複いたしますがお答えを願いたいと存じます。  今回のそごう問題でございますが、まず二つの切り口があると考えております。法と理にかなっているのかどうか、そしてまたこれは、客商売であるこのそごうという、小売業というその特殊性もあるかと思いますけれども、やはり世論、そして感情問題、この二つの点から考えていかなければならないかと存じます。  まず、その感情論というのは、余り私は好きではないのでございますが、しかし、これは人の心でございまして、やはり税金のお世話になる、また、非常に業績が悪いということが世の中にも知られているにもかかわらず、この経営者である水島さんが大変な収入を得て、年収を得ておられたなどという点は、まさに国民感情からすれば許しがたいというふうに思われるのは、これはいたし方ないところかと存じます。  この辺につきまして、国税の方から、例えばこの過去三年間の水島さんの納税額、また、これは推定しかわからないと思いますが、現実には新聞等々で取り上げられている数字でございますので、当局の方からお答えをいただきたいと存じます。
  330. 萩山教嚴

    萩山委員長 この際、申し上げます。  小池先生の質問の前に一つ漏れておりました。お許しください。それをこれからお諮りいたしますので、よろしくお願いいたします。     —————————————
  331. 萩山教嚴

    萩山委員長 この際、お諮りいたします。  本件調査のため、政府参考人として国税庁課税部長村上喜堂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  332. 萩山教嚴

    萩山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  333. 萩山教嚴

    萩山委員長 村上課税部長。
  334. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 お答えいたします。  お尋ねの水島氏の件につきましてでございますが、三年分とお尋ねでございますので、平成九年分から所得公示の税額を申し上げたいと思います。平成九年分は二億三百七十八万円、平成十年分は二億五百七十四万円、平成十一年分は一億三千四百三十六万円となっております。  なお、所得金額につきましては、公示の対象ではございませんので、具体的に答弁することは差し控えさせていただきたいと思いますが、一部新聞報道がございます。この新聞報道を申し上げますが、平成九年分は四億一千万円、平成十年分は四億二千万円、平成十一年分は三億七千万円となっております。こういう報道がなされておりますが、これは恐らく税務署の公示税額、公示は税額でございますので、税額をもとに不動産譲渡や株式譲渡に関する所得はないものとして推計したものと考えられます。  以上であります。
  335. 小池百合子

    ○小池委員 今の数字を聞いて、一般庶民の方々からすれば、やはりそんなところに税金をと。どのみち税金を使われるというのが、ここが厳しい究極の選択なわけでございますが、やはりこのあたりは経営者としての姿勢というのがあらわれてきているのではないかというふうに考えるわけでございます。また、今最後にお述べになりましたように、株式譲渡等々は含まれていないということでございます。  興銀の西村頭取におかれましては、これからそごうの方で内部的に調査委員会ができるということでございますが、これまでの日本の各地にありますそごうからのさまざまな水島前会長の所得でございますね。そのほか、忘れていけないのは、そごうはアジア各国で幾つか海外展開もされておられます。非常に業績のいいところもあるというふうに伺っております。この調査委員会の際には、こういった海外の所得ということもしっかり把握されることをぜひお願いをしておきたいと存じております。  そして、この情の問題のところでございますが、私も、この大蔵委員会におりまして、残念ながら何度か、例えば日銀問題のときは理事がお亡くなりになりました。また、金融関係の問題についても必ずどこかで実際の担当者の方々がみずから命を絶たれるという例が頻繁に起こった。そして、それを大変私も苦い思いとして記憶にとどめているわけでございますが、このそごうに関しましても、たしか四月だったと思いますが、実際にこの再建関係の御担当をされておられました副社長がたしか自殺をなさったということもよく覚えております。  そういう意味で、こういったある意味で経営者の一角におられたわけでございますから、経営の責任も負っていかなければならない方々ではございますが、そうやって最期を遂げておられるということもよく心にとどめておきたいというふうに思っております。  それだけに、きっちりとした経営責任、これの明確化、これはこのそごう問題、これからの展開に関しましてもぜひきっちりとしていただきたい、また、そうする必要がそごうにはあろうかというふうに思っております。  それから一方で、この情の問題はおいておきまして、次に、法と理にかなっていたのかどうかという点でございます。  けさほどからロスシェアリング、そして、この瑕疵担保条項についてもるる御説明がございました。この瑕疵担保条項については、やはり世界のMアンドAの条件契約等を見ますと、まことに世界に類を見ない形のものではないかと存じております。そして、なぜ瑕疵担保という条項を盛り込まなければならなかったのか、それぞれ御説明もございました。  私は、具体的に、この条項の中で、三年間という期間、それから、その資産劣化の二割という数字、この数字は、どっちが提案をして、どういう形でこの数字にそれぞれ決まったのか、御説明いただけますでしょうか。
  336. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  まず、三年間の方でございますけれども、双方の提案の妥協点のところがたしか三年ぐらいだったと記憶しております。  一方、二割の方は、こちらが提案いたしまして、先方にのんでいただいた点でございます。
  337. 小池百合子

    ○小池委員 今の二割の点でございますが、その二割ということを提示すると、相手方は、当時の交渉相手でございますけれども、即それをのんだということなんでしょうか。
  338. 森昭治

    森政府参考人 先ほどの御質問にもお答えいたしましたけれども、瑕疵担保条項というのは、あくまで売り手と買い手の立場を公平に保つ、リスク、リターンをフィフティー・フィフティーにするためのものだ、こういうふうな観点から当方から提案したものでございますけれども、その際、民法の瑕疵担保の法理というものを援用しているわけでございます。民法の瑕疵担保の法理からいきますと、いわば、少しでもロスが出れば、それは内在した瑕疵が顕在化するということにもなるわけでございますので、我が方からそれを、少しでもロスじゃなくて、さらに二割下がったところでなければだめだと言ったことに対しては、先方は相当抵抗いたしました。ただ、国民負担最小の観点から、当方は最後までそれを維持した次第でございます。
  339. 小池百合子

    ○小池委員 その辺の交渉、攻防というのは大変御苦労があったというふうに思います。  ただ、この数字の設定というのが、後で生死を分かれたりするものでございますから、これはたらればの話でございますが、その瑕疵担保条項というものを置かねばならなかったというその当時の状況からしても、カーペット売りではありませんけれども、もう少しやはりみんなが今となっても納得がいくような形にできなかったものなのかというところが悔やまれるところでございます。  そして、今回、私、そごうの問題について御説明いただいたときにも、再建計画を拝見させていただきました。抜本的再建計画というふうにタイトルが打たれていたようでございますが、しかしながら、私にはどこが抜本的なのかということ——今百貨店業界は大変冬の時代でございます。個人消費の冷え込みに加えまして、一方で業態の変化が実際には出てきている。消費者の嗜好というのもどんどん変わってきている。そしてまた、百貨店がいつの間にか不動産屋さんのように、テナントのための、そういう業態を選んでしまったところもあられる。そういった意味では、どこの百貨店も今や血の出るようなリストラをやっておられるにもかかわらず、今特殊な状態にあるそごうとしては、これで抜本計画と言えるのかどうか、私は大変疑問があったわけでございます。  大き過ぎてつぶせないというのでツービッグ・ツーフェールといいますけれども、私は、このそごうの場合には、ツーバッド・ツーセーブ、救うには悪過ぎるというような結論が結局出たのではないかというふうに思っております。  この再建計画について、松田理事長はどのようにお考えになっておられるのでしょうか。これで本当に抜本的という言葉に資するとそのとき思われたのかどうか、御所見を伺わせてください。     〔委員長退席、桜田委員長代理着席〕
  340. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  先ほどもお話ししたんですが、そごうの体質としては、営業成績は他のデパートと比べて遜色がない、むしろ営業利益はいい方だと思います。ただ、過大な借り入れがありまして、それが一・七兆ございますので、その支払い利子にあえいでいる、こういうことでございます。  そこで、今回のものがなぜ抜本かと申しますと、再建計画の骨子になりますものが、一つは、赤字をつくっている不採算の店をそれこそ抜本的に撤退するということから始まっておりまして、それがまず第一次のことといたします。第二次として、海外からは原則撤退をいたします。それから第三点としては、営業成績がやや似通っているところは集約化を図るということで、その集約化、不採算事業からの撤退に伴ういろいろなかかる損失について、関係の金融機関から債務免除を得て、利子負担を身軽にした上でさらに再建に入っていく、こういうことでございます。  それで、細かく言いますとたくさんあるのでございますが、当預金保険機構としてはこの再建計画につきましては抜本的なものと受けとめておりまして、これはそごうがメーンバンクの興銀とともに練り上げたものであって、私ども拝見しまして、その時点においては合理的な計画である、このように認識をいたしました。  その理由は、やはり再建計画の根幹をなしております、先ほど申し上げました不採算の店舗の整理統合、撤退等。それと経営体制の見直し。つまり、水島色の一掃、それから各社ばらばらな資本系で営業しているのを取りやめて一体化するという経営体制の見直しの問題。それから合理化の推進策。リストラは既に、例えば人員の削減は既に行われておりますし、そのリストラ策の推進。それから営業力の強化。そういうものがおおむね順調に取り組まれているということが見受けられる、こういうことを前提にしまして、例えば一番大事な収益計画につきましても合理性があるものと認めたわけでございます。  前にも御質問ございましたが、売り上げについても、当初二年間はむしろ下がるのですよ、こういう計算をしておりまして、それから上がっている部分も、各店各店の金利、債権放棄によって利子負担が浮いた部分をもって、それまで手当てできなかった各店のリニューアルのような資金が生み出せる、それをもって埋めていく、そういうことにおいて売り上げの増を図るということで少しずつ上がっていくという、前半六年については積み上げをきちっと各店ごとにさせている計画でございます。  したがいまして、そういうことをいろいろ考えてみますと、これは合理性があるものと認めたわけでございまして、最も大事な、歩調を合わせなければいけない他の金融機関についても、これは再建計画に協力してそれを支持するという考えはおおむね認められておりましたので、これは各金融機関とも株主に対する責任がございますから、それぞれの経営判断で、この再建計画をごらんになった上でそれぞれ債権放棄をされるのであろう。それに加えまして、メーンの興銀が運転資金とか人材派遣とか全面的に支援するという態勢を示されていることなどを総合的に判断しますと、当時として再建計画は実現可能であろう、このように判断したわけでございます。
  341. 小池百合子

    ○小池委員 そごうの経営の失敗でございますが、私どもはやはりなかなか腑に落ちない点が、結局は、売り上げはいいけれども、しかし負の遺産が大き過ぎる、その支払いの利子が大き過ぎる。今回の再建計画でもその部分を百十億円と見積もっておられたというふうに思いますが、要は、そごうの経営者の方々、また、そこに貸し込んでおられた方々も、これはある意味で共通の問題点だと思いますけれども、無謀な店舗展開をしたその失敗のツケを国民が税金で払わなければならない、やはり一番この問題で理解できないのはそういうことだと思います。  また、金融の危機のときなども含めて、よく私は「失敗の本質」という本が大好きで、大好きでというのもおかしいのですが、どうも日本の問題点をすべて凝縮しているなというふうに思って、そしていつも読み返している本でございます。  大東亜戦争、太平洋戦争での日本軍の戦略、戦術がいかにして間違って我が国が敗戦に陥ったかということを一つ一つ細かく学術的に分析したものでございまして、上の方には真実を伝えない、情報に偏りがあって、イエスマン、いい情報しか行かない、そして全体的な戦略が欠けている等々ですけれども、まさに今回のそごうの問題を見ておりましても、同じような失敗の本質は共通しているのではないかなと感じたところでございます。  さて、先ほどの瑕疵担保条項のことに戻らせていただこうと思うのでございますけれども、とにかく旧長銀をどのようにして処理をしていくか。時間をかけていれば資産が劣化をする、そしてまた、それは慎重という字とともにやらなければならないけれども、スピード感も必要だったということではないかと存じます。  しかし、その中でしっかりとしたデューデリジェンスがなされていない、つまり資産劣化の見通しの悪さというものが根底にあったのではないかと思いますが、この点について、森事務局長、お願いいたします。
  342. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  一昨年の十月に長銀が破綻いたしまして、再生委員会が十二月に発足して以降、すぐに資産判定に再生委員会はかかりました。その際、破綻直前でございましたか、破綻前の金融監督庁の検査、これが破綻のいわばきっかけといいますか、中身が悪いことがわかった検査でございますけれども、それに基づきまして、新しく選任した長銀の経営陣のもとでの自己査定というものが始まりまして、それを再生委員会に上げていただきまして、ラインシートを、いわば債務者ごとで債権をくくりまして、さらにそれをまたいろいろな類型化したもので整理しながらも、基本的には一本一本の債務者について、ラインシートで委員の皆様にいわば査定していただいた次第でございます。  それが甘かったかどうかということでございますけれども、現実に、二月に再生委員会の判定が出まして、三月に決算で、それぞれ適資産の七千ばかりでなくて不適の方の債務者につきましても、すべて査定と債務者区分引き当てが行われたわけでございます。そのときのそごうは、先ほど来話が出ていますように要注意先Aだった。それが一年後に破綻懸念先になったということ、これは遺憾なことでございますけれども、経済のその後の推移との絡みもあると思います。  そんな中で、判定が甘かったかどうか、我々は最も適切な判定を委員の皆様にしていただいたと思っておりますし、仮に出口のところでそごうをもう一度判定し直したとしても、恐らくと言ってはたらればの世界に入ってしまいますけれども、破綻懸念先であってもメーンバンクの強固な支援とかそういうものがございますと適資産になりますので、あるいは結果は同じになったかとも思っております。
  343. 小池百合子

    ○小池委員 結果として、資産劣化の見通しが悪かったということにならざるを得ないのではないかと残念ながら思うところでございます。  そもそもなぜこのような瑕疵担保条項を設けなければならないのか、そしてまた資産劣化の見通しが悪かったのかというと、私は、根本問題として日本の会計制度というのがやはりまだその時点でもグローバルスタンダードに達していない、世界じゅうがメートルもしくはインチでやっているのに日本は鯨尺でやっているということに対して、やはり買い手側であったアメリカの金融グループというのが、一体どうなっているんだということで、日本の企業会計に対して信頼を置いていなかったのではないかというふうな基本的な問題があるのではないかと思います。  もしこれまでに会計制度も、そしてまた各企業のディスクロージャーの姿勢がもっと明確であったならば、例えばこの買い物をするにおいて、中に何々が入っていますよと外に書いてある、そしてそれが世界の基準で書いてあるならば、ふたをあけて全部調べなくとも、信頼という目安でもってもう少し全体像、そして個別の姿がスピーディーに明らかになったのではないかと思うわけでございます。  今、会計制度も大きく変化をし、そしてまた各企業も、そのために年金、退職金などの引き当て等々の新しい会計制度に適合した形に持っていくために、本当にまた血の出るような作業もしておられるわけでございます。ちょうど古い会計制度から新しいところに移るというその間際のところでの問題でございましたので、今回は間に合いませんでしたが、今後、この会計制度を、もっとトランスペアレントで、かつ世界に通用する会計制度にするというその意思について伺いたいと思います。
  344. 宮本一三

    宮本政務次官 小池先生指摘のように、グローバルスタンダードに則した会計基準、これは本当に急いで我が国としても整備をしていかなければいけないというふうに思っておりますし、また現にそうした作業の展開を既にやっております。これからも全力でこの国際化に対応するようなスピードで会計基準の見直し等をやってまいりたい、このように思っております。
  345. 小池百合子

    ○小池委員 さて、もう一つお伺いしておきたいことがございます。  今回、最初に債権放棄という案を再生委員会、そして預金保険機構の皆様方はそれぞれ意思決定責任者の方に御説明に回られたかと存じます。しかしながら、例えば閣議で報告されたのが、あれが六月何日でしたかしら、その閣議のメンバーから聞きましても、本当に短い説明で何が何だかわからない、だけれども、結果の上では閣議で了承というような形になってしまう、しかし、事の次第はまことに重要という意味で、この辺でもまさに瑕疵があるのではないかと思うわけでございますけれども、アカウンタビリティーは十分だったと再生委員会、そして預金保険機構、それぞれお考えでしょうか。
  346. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいまは今回の債権放棄につきましてのアカウンタビリティーについての御質疑でございますが、小池委員の御指摘のように、決定をいたしました六月三十日の前後に、与党の幹部を初めといたしましていろいろ説明に上がったわけでございますけれども、必ずしも十分でなかったことは私ども反省をしている点でございます。  ちょうど時期も選挙が終わりました直後であっただけに、なかなか時間をとっていただけない、また御承知のとおり、この問題は経緯がいろいろございますのと、手続瑕疵担保特約を初めといたしまして非常に複雑でございますので、非常に時間をとったということも事実でございますが、小池委員からの御指摘も私も承っておりましたけれども、十分な説明ができなかったことにつきましては申しわけないと思っております。  しかし、これを一つの反省といたしまして、むしろ国民の皆様方に、この債権放棄に至った経緯、そしてその債権放棄というものの中身、あるいはその後ろにこの瑕疵担保条項というものがついているというようなことについて、できるだけわかりやすく説明をするということは、これからあらゆる行政にとって必要でございますけれども、特にこのような国民の負担にかかわる問題については説明をする必要があるということは痛感をしているわけでございます。したがいまして、ただいま御指摘がありましたような説明責任というものは今後は十分果たしてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  347. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  私どもとしては、解除権行使それから債権放棄という方針を決めましたのは六月三十日でございましたので、再生委員会の御了承を得ました後、理事長談話を公表いたしまして、また記者会見をやりまして、いろいろと当方の事情をお話ししたわけでございます。その後、ホームページへの掲載、それからマスコミ等への積極的な説明等に歩きました。そのように努力は払ったところでございますが、急転、七月十二日にああいうことになりましたので、ここでも記者会見を実施して、預金保険機構の立場を説明したところでございます。  引き続き、我々執行機関である預金保険機構がどういう形で党や政府とかかわりを持っていくのか、再生委員会ともよくよく相談しながら、今後適切に対応していきたい、このように思います。
  348. 小池百合子

    ○小池委員 事は大変重大だったわけでございまして、また選挙後間もなくということでなかなかつかまらなかった、それも事実ではございましょう。しかし、これまでの金融当局等のバブル崩壊後のさまざまなディスクロージャーの癖を考えますと、どうもその時期をねらったのではないかというようなことも言われるわけでございます。そういうふうに思われてしまっているということがむしろ問題なので、そのアカウンタビリティーは徹底して行わなければ、先ほどの瑕疵担保条項もなぜ設けなければならなかったか。法の不備もございましょう。しかしながら一方で、そういった日本に対しての疑念というか疑惑、本当だろうか、そういうことの全体がそういう条項という象徴で出てきているのではないか。私は、そういうふうにもっと心がけておかなければならないと思っておりますので、それぞれ心していただきたいと存じます。  さて次に、今回の民事再生法適用ということになりますと、地銀、第二地銀等の負担がまた増大するわけでございますが、一体それぞれどれぐらいの額になるのか。また、特に今ちょうど再編の最中であります農協系の金融機関負担はどれぐらいふえるものなのか。耐え得るものなのか。それぞれ数字でお答えいただきたいと存じます。
  349. 宮本一三

    宮本政務次官 御質問のポイント、確かに大きな問題でございます。それで、こうした民事再生法による対処ということになったわけでございますけれども、やはり金融機関に対する影響はどうしても出てまいるわけでございます。  今小池先生指摘になられたように、特に中小の金融機関、また農林系の協同組織の金融機関に対する影響はどうかという御質問でございますが、数字でいいますと、地方銀行それから第二地銀、これについて言いますと、貸し出しが三千八百億円程度でございまして、これに対して保全されている部分が約一千億ございますし、また引き当て額が一千七百億、そういうことで、残としては一千億ぐらいになりますが、一・二兆円という程度の業務純益が出ておりますので、影響はもちろんありますけれども、それほど深刻な影響にはならないというふうに見ております。  また、農中を含む協同組織の金融機関につきましては、全体で六百七十億の債権でございますけれども、このうち、やはり保全されている部分、また引き当てされている部分が五百五十億ございますので、残が百十億、これも三千百億円の純益というところから見ますと、確かに負担はありますけれども、乗り切れない問題ではないというふうに見ております。  以上です。
  350. 高木祥吉

    高木政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま金融庁の方からお答えがあったとおりでございますが、農協系統は、先ほど委員の方から御質問ございましたように、現在組織整備を進めております。これは農協合併と、それから組織二段と言っておりますけれども、基本的に県段階の組織とそれから全国段階の組織を統合しようという二つの動きをしておりますが、先ほどの答弁にもございましたように、今回のことでは農林系の負担はそれほど大きなものではないというふうに考えております。基本的に、これまでとっております担保それから引き当て、これで十分措置されておりますので、大きな影響はない。したがいまして、現在農協系統が進めております組織整備についても大きな影響はないものと考えているところでございます。
  351. 小池百合子

    ○小池委員 その延長でちょっと伺いたいのですけれども、六月二十八日の段階でしょうか、協同組織金融機関の資本増強について発表なさっておられますね。この中身について教えてください。
  352. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、預金保険法等の一部改正によりまして優先出資法が改正されまして、信用組合あるいは信用金庫、協同組織金融機関に対して、単位組合あるいは単位金庫に対して国が資本注入をできるようになりました。それを受けまして、どういう考え方で基本的にこの法律を運用するのかという点につきまして、金融再生委員会で一カ月ほど議論をいたしまして、それを基本的考え方として発表した次第でございます。  基本的には、その地域において必要不可欠であるというふうに認定できる協同組織金融機関、あるいは資本注入が再編に資する、二つあるいは三つが一つになる、そういうことに資すると認められる場合、そういう場合には資本注入の面で優遇を与えましょうということが書いてあるポイントでございます。
  353. 小池百合子

    ○小池委員 これからのタイミングと申しましょうか、スケジュールについてもお触れいただけますでしょうか。いつごろ結論が出て、いつごろ資本注入というアクションにつながるのか。
  354. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  もう法律は施行になっておりますし、再生委員会でその運用の仕方についての基本的考え方も、六月二十九日でございましたか、公表しておりますので、そういう面ではもう既にいつでも準備が、これは資本注入でございますから、申請主義でございますから、あくまで申請を待ってということでございますけれども、もう既に準備はできているわけでございます。ただ一つ、その基本的考え方ポイントとして挙げましたのは、やはり公的資金を、これは早期健全化勘定からの投融資でございますけれども、注入するからには公的資金は毀損されてはいけないという考え方はかたく持たなければいけない。そうなりますと、やはり検査、直近の検査、これは都道府県の検査でもよろしいのでございますけれども、原則としてはやはり国の検査、あるいは国の検査の順番が回ってくるのが遅い場合には外部の公認会計士を入れてきちっとしているとか、いずれにしても検査等の前置を原則としております。  そういう意味におきましては、信用組合につきましては、ことしの七月から来年の三月にかけまして検査が一巡するわけでございますので、そういうところから、おいおい自己の財務体質に対して不安があって、それでまず地域で優先出資証券の引き受けを頼み、そしてさらに国へもというところがおいおい出てくるのではないかな、そういうスケジュール感を持っております。
  355. 小池百合子

    ○小池委員 その信組の中には、いわゆる北の、朝銀系も含まれることになるわけでございますね。
  356. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  先生指摘の朝銀系信用組合におきましても、我が国の法律に基づき設立された信用組合でありますので、ほかの信用組合と特に違った扱いをする法的根拠はございません。
  357. 小池百合子

    ○小池委員 どこの信組にかかわらずしっかり検査を行っていただきたい。また、その必要なディスクロージャーはしっかりやっていただきたいということを要請しておきます。  最後に、今回のそごうの問題からあぶり出されてくる、またこれまでのバブル崩壊後の、もしくはバブルができたというそもそも論のところから起こるわけでございますけれども、やはり資本市場のあり方ということを大きく変えていく必然性に迫られているということが明らかになったと思います。  やはり、銀行という金融機関で間接的な金融が行われてきた、また、時には金融機関の経営者の好みによってバブルが増幅され、そしてその分けがが大きくなっているということなどがあるわけでございます。そしてまた、これまで日本の金融市場というと間接金融ということがもうほとんどでございまして、その意味で、ほかにチョイスがなかった、オルタナティブがなかったということも金融の面でのリスク分散ができなかった一番大きな部分になってくるのではないかと存じます。  直接金融の部分も、今さまざまな証券取引所などの新設、そして新しい取引なども、最近では電子取引なども起こってきているわけでございます。ゼロ金利であるのにもかかわらず、まだまだ証券市場というのは個人の投資家も十分取り戻せていないということで、まだ未整備、発展段階にある、やり直しの段階にあるとは思いますけれども、こういった金融の市場のあり方そのもの、根本をもう一度腰を据えて我が国は考えていかなければならないと思いますが、金融庁の方針はいかがでございましょうか。
  358. 宮本一三

    宮本政務次官 先生指摘のように、確かに日本の金融市場、非常にユニークでございます。極端に間接金融に偏っているということは確かでございまして、アメリカなどの例と比較いたしましても、例えば日本の場合は間接金融が六二%、アメリカの場合は一三%、こんな状況でございますし、特に証券のウエートを見ましても、アメリカは株式市場が八七%というふうな資金調達のベースになっております。  そういうことから申しましても、確かに、バブル原因あるいはそれを助長したのは間接金融ではないかという御指摘はごもっともだと思いますし、また、崩壊過程でもそういった害が見られたわけでございます。そういうこともありまして、何とか、金融市場のあり方の中でも特に資本市場のあり方、これについてはよりウエートを高めていくように当局といたしましても努力を重ねておりまして、これからの方向として、御指摘のような方向へ全力で持っていきたい。  具体的に、今、証券市場をより育成するためにいろいろな努力をいたしておりますけれども、取引所への集中義務の撤廃、あるいはまた取引所内の複数市場の設置、例えば大証のJ—NET市場とか名古屋証券取引所のN—NET市場、または大阪証券取引所のナスダック・ジャパン市場、そういった形で、新しい魅力ある市場をつくっていこうということの努力もいたしておりますし、また、株式の上場承認の事前届け出制への変更というふうに自由化をどんどん進めてまいっておる次第でございます。  ぜひ、魅力的な市場として大きなウエートがかかってまいりますように願って、努力をさせていただきたいと思っております。
  359. 小池百合子

    ○小池委員 ありがとうございました。質問を終わらせていただきます。
  360. 桜田義孝

    ○桜田委員長代理 次に、吉井英勝君。
  361. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  森内閣は、六月三十日に、そごうの二千億円の債権新生銀行から買い取って、そのうちの九百七十億円分の債権を放棄すること、すなわち、そごうという一私企業の乱脈経営の後始末のために国民の税金を投入するということを決めました。その後、事態の変化は生まれましたが、そごう問題で大事なことは、任意整理による自主再建であれ、民事再生法を使った法的整理であれ、民間企業の乱脈経営の後始末に国民の税金を使おうとすることはけしからぬというのが国民の怒りであります。  私は、その立場で順次聞いていきたいと思います。  そこで、乱脈経営の後始末に税金が使われるのか使われないのかという、この点を最初に法務省に伺っておきたいのですが、民事再生法手続でいくと、債権者集会を開いて、そしてそごう再生計画案を決議して、裁判所の認可を得て正式な再生計画となります。その中で、それぞれの債権者が債権放棄を求められることになる、こういう形になりますね。
  362. 細川清

    細川政府参考人 民事再生法におきましては、債務者等が再生計画をつくりまして、何年間に何割の配当を払うというような計画を提出いたしまして、それが法律上適法なものであるということで、債権者集会で決議に付されまして、債権者の多数の賛成を得られるということになれば、その計画に従って弁済がなされるわけでございまして、弁済がなされるとされたもの以外のものについては、これは債務が最終的には免責される、これが一般の再建のやり方でございます。
  363. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、要するに債権放棄がなされるわけです、出てくるわけです。  そこで、新生銀行から預金保険機構が引き取った二千億円のそごう債権のうち、その相当部分が放棄を求められる。それで、引当金を超える場合には新たな負担が求められる、こういうふうになると思うのですが、森事務局長の方に伺っておきたいと思います。
  364. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘のとおりかと思います。二千億円の額面に対して、今回、民事再生法のもとでの再建計画、そして、それに対して裁判所が認可を出すといった場合に、どの程度債権者である預金保険機構に対してカットが求められるか、それが二千億のうち千億円以上になった場合に追加的な負担が出るというのはそのとおりでございますけれども、あと、一方におきまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、六百億円程度の物的担保がそれとは別にある、それとは別と申しますか、カット対象外に預金保険機構は持っておりますので、そこは確保できるのではないか。ということは、最大限でも、追加負担の最大限は四百億、民事再生の法のもとではもっと、かなり小さなものになるんじゃないかと期待しております。
  365. 吉井英勝

    吉井委員 今お話ありましたように、要するに、預金保険機構の方が引き取った二千億の債権のかなりのものが、結局は放棄ということになっていく。  それで、これは法務省にあらかじめ伺っておいたところで、民事再生手続の開始から再生計画の認可まで大体どれぐらいかというと、約半年だというのですね。ですから、金融再生委員長に伺っておきたいのですが、問題が六カ月ほど先送りされるだけの話で、債権放棄の場合も民事再生手続の場合も、国民の税金によるそごうの借金棒引きというこのやり方は変わらないのではありませんか。
  366. 久世公堯

    久世国務大臣 ただいまの点でございますが、六月三十日に決定したのはいわば私的処理でございますが、今回、民事再生法に基づいてそごうが自主的な申請をやったわけでございますので、これは法的な処理段階に移ると思うわけでございます。  しかし、預金保険機構債権を放棄した場合におきましては、それは国民の負担になることは両者とも変わらないわけでございまして、特に、私的な処理を行うよりは公的な処理を行う方がその負担が増加することは大体間違いないところでございますので、預金保険機構債権放棄につきまして再生委員会が了といたしましたのも、そういうことで国民負担を少しでも少なくするという意味で了解をしたわけでございますけれども、結果的には、法的な処理に移りましたので、それは結果としては若干ふえることになろうかと思うわけでございます。
  367. 吉井英勝

    吉井委員 この問題は、手続の問題とか、あるいはそごうをつぶすかつぶさないかということに基準があるんじゃないのです。また、その透明性がどうのこうのという話でもないのです。このままでいくと民間企業の乱脈経営の後始末に税金投入をするという、この本質には変わりはないということですよ。ここが一番の問題なんです。  大臣に引き続き伺いますが、そごうの乱脈経営に責任があるのはそごうと興銀の方じゃないのですか。一体国民にどんな罪があるのか、どんな責任があるというのか、この点を伺っておきたいと思います。
  368. 久世公堯

    久世国務大臣 このような措置をとりましたのは、あくまでも金融再生法に基づいて預金者保護するために、金融再生法三条に掲げておりますところの、できるだけ国民の負担というものを最小化するというのが、あくまでも、目的は決して民間企業を救うわけでも何でもございませんで、預金者保護の立場からこのような規定を設け、また、それに従って措置をしているわけでございます。
  369. 吉井英勝

    吉井委員 私が伺っておりますのは、国民の負担が重いか軽いかの議論じゃないのですよ。一番の問題は、民間企業が乱脈経営をやって破綻した、その後始末に、あるいは破綻までいかなくても乱脈経営の後始末に税金投入するという、ここの本質は変わらないわけですよね。それに国民がなぜその負担を負わなきゃいけないのかということが出てくるわけですから、そうすると、そごうの乱脈経営に責任があるのは、そごうや興銀の方は責任があっても、国民には何ら責任がないのじゃないですか。私はそこを聞いているのです。
  370. 久世公堯

    久世国務大臣 これは委員も御承知のとおり、金融国会におきまして金融再生法早期健全化法金融二法をつくりました経緯につきましては御承知のとおりでございますが、あくまでもこれは日本の金融システムの安定と再生のためでございまして、その一つの方法として、非常に大型の金融機関でございますところの長銀なりあるいは日債銀の処理の方法としてそのシステムがつくられたわけでございます。  これは、先ほど申しましたように、趣旨としては、あくまでも経済の動脈とも言われるところの金融というものの安定と再生にあるわけでございまして、ほかならぬここに費用最小化の原則を立てましたのは、あくまでも預金者保護する、国民を保護するという立場から、法律の形をもってこれをつくった趣旨にほかならないわけでございます。  その派生として、結果としては、旧長銀が持っておりました債権そごうでありあるいはほかの民間企業であった、それが経営が失敗してこういう結果になったということでございますので、本来の趣旨というものはそこにあるわけでございます。
  371. 吉井英勝

    吉井委員 この議論は金融システムの話じゃないのですよ。そごうというこの一百貨店の乱脈経営の後始末をなぜ罪のない国民が責任をとらされるのか、この問題なんですよ。民事再生手続に変わったといっても、問題の先送りをしただけの話で、何の責任もない国民に、税金を使って一私企業の乱脈経営の後始末をさせる、この本質には全く変わりはないのじゃないですか。  だから、一体国民にどんな責任があるというのか。責任があるというなら、そこのところをお聞きしておきたいと思います。
  372. 森昭治

    森政府参考人 お答えを申し上げます。  なかなか説明しにくい問題でございますけれども、大臣が申し上げたかったことをもう一度私なりに御説明させていただきたいと思います。  そごうの例をとりますと、長銀が破綻し再生をして、そごうを善意かつ健全な借り手として、新生銀行にその貸出債権を承継したわけでございます。今の御議論は、先生は、それが瑕疵担保としてまた国に戻ってきてしまって、そして法的整理ということになりますと、国の債権もいわばカットを受ける、それは国民の負担ではないかと。何で国民が何の責任もないのにカットを受けるのか、いわば預保にロスが出るようなことになるのかという御質問かと思うのですけれども、申し上げたいのは、基本的には旧長銀そごうに貸していたところが一番の出発点だと思います。  そして、これは仮にの話でございますけれども、そごうを善意かつ健全な借り手じゃないと判定した場合はどうなったかといえば、これは新生銀行に移しませんでした。そのまま、RCCという預保の下の国の回収機関になりました。そうなった場合も、今日そごうが法的整理になれば、結局そのRCCの回収が少なくなるわけでございまして、やはり国民の負担が出るところは同じだということを申し上げたかったわけでございます。
  373. 吉井英勝

    吉井委員 長銀であれ興銀であれ、どこがどう幾ら貸したとかなんとかいう話じゃないのですよ。そのことにしたって、国民には何の責任もないのです。  今あなたが冒頭におっしゃった、説明しにくい問題だと。まさに説明できない問題なんですよ、こんなことは。そういう先送りをするだけで、何の責任もない国民に、税金でもって、乱脈経営をやった一私企業の後始末をやらせよう、このことが間違いなんだということをまず申し上げて、次に移っていきたいと思います。  私、委員長に、あらかじめ理事会でお願いしております資料の配付の方をお願いします。  今度は興銀の西村正雄頭取に伺いたいと思います。  確かに水島マジックと言われるものの責任もあるかもしれませんが、しかし、その水島氏にオーナー経営者的専制支配を許し、それを支えたのは、潤沢に資金を供給した興銀と長銀でした。幾ら専制支配といったって、その社長なり会長にそれを支えて資金を回してくれるところがなかったら、資金を断たれたら、すぐ首は飛んでしまうわけですから。  とりわけ、そごうと興銀の二人三脚の乱脈経営の後始末になぜ国民の税金投入かという根本問題があります。そごうは、駅前の出店予定地の地価上昇で含み益を確保する、そして増大した担保力をバックに、興銀との太いパイプを生かして金融機関から資金を借り入れ、さらなる出店を図る、こういう図式を繰り返してきたというのがあるマスコミが指摘しているところですが、まさに典型的なバブル型経営でした。  また、別なマスコミは、興銀と長銀そごうの主力行の座をめぐって激しく争ったと。八〇年代に入って興銀は融資攻勢を強め、長銀そごう向け融資残高で抜くことになる。担当部は歓声が上がったということを紹介しておりました。  そこで、頭取、そごうの拡大戦略を資金面で支えて、事実上二人三脚で進めたということは、これは事実として理解していいですね。
  374. 西村正雄

    西村参考人 まず、お答えをする前に誤解を解いていただきたいと思うのですけれども、乱脈経営のそごうを救うために国民の税金を使ったというのは、はっきり言って誤解でございます。  これは、別にここで新たな税金が生じたわけではなくて、それは、長銀処理する際に既に千億の引当金が積まれていたということでございます。したがって、私的整理をする場合には全く国民の税金が使われるということではなかったわけでございまして、たまたまそのような誤解が生じましたのは、新生銀行の持っているそごう債権預金保険機構譲渡をして、そして契約に従って譲渡をしたわけでございます。したがって、既に税金というものは長銀処理する際に積まれていたわけでございます。ですから、あくまでも私的整理する場合にはそのようなことはなかったわけでございます。預金保険機構に移したためにそういったような誤解が生じたということを最初に申し上げておきたいと思います。  それから、ただいまの御質問でございますが、私はその記事を一々見ておりませんけれども、結果的には、興銀と長銀そごうに対してメーン、準メーンというふうなことでやってきたわけでございます。確かに、そごうの多店舗展開というのがございました。それで、それに対して、当時はまだ非常に消費が好調なときでございましたし、また、地価も上がっておりました。そごうの業績も絶好調でございました。そしてまた、そごうが店舗展開するときにすべてが興銀とか長銀に来たのではなくて、そごうの方でそれぞれの店舗の主力銀行というものを選定してきたわけでございます。  まさに、そういうバブルのような時期には銀行と企業の関係は全く逆転しているわけでございますから、例えば、メーンバンクといえどもそれをやめておけというようなことは言えなくて、仮にやめておけと言っても、結局はそごうの場合にはほかの銀行から調達できる、あるいはまた、現に外債も発行しておるわけでございますけれども、資本市場からも調達ができるということでございますから、結果的に、興銀と長銀がメーン並びに準メーンであったわけでございますけれども、そこで特に競争をしたということでもございません。  ちなみに、私どもとしては、一店ごとのお申し込みに対してきちっと審査をしております。そごうは現在二十五店ぐらいございますけれども、私どもが主力銀行を務めておりますのは大体十一社でございます。それで、十一社の中の八社は実は黒字店でございますので、確かに、バブル期に一般的に申しまして銀行の審査のあれが甘くなったという反省はしなければなりませんけれども、何でもかんでもそれは興銀と長銀がやったということではございません。むしろ興長両行は、九四年以降、そごうの経営が悪くなってから、それこそ真剣にそごう再建のためにそれぞれ寝食を忘れてその再建のために協力をしたということを御理解いただきたいと思います。
  375. 吉井英勝

    吉井委員 私、あなたのところにもこのグラフをお渡ししておきましたから。遠くからひょっとして見にくいかもしれないからお手元に渡してありますけれども、これを見れば一目瞭然なんですよ。そごうは、一九七〇年四店が九九年二十九店と、これはもう七倍強ですね。それから、西武の方は八店が二十二店で三倍弱、高島屋が約三倍、三越が二倍強というふうに、これはよその大手百貨店と店舗数の伸び方が全然違うのですね。  店舗面積の推移で見ても、これは、八〇年代半ばにこの百貨店大手四社は大体同じぐらいの店舗面積になっております。それで、いわゆるバブル期ですね。他の三社については、このグラフを見たら明らかなように、横ばいなんですね。これがそごうについては急拡大です。店舗面積で見れば、九九年で大体他社が五十万平方メートルぐらいの店舗面積に対して八十八万平方メートルを超える、一・八倍という状態ですね。これはバブル期にこういう状況が生まれているわけです。  そこで、私は、今いろいろ言いわけをしていらっしゃったのだけれども、一店一店の出店計画を厳密に審査するとともに、他社に類を見ない急拡大の経営で百貨店として大丈夫かと考えるのが普通だと思うのですね。このグラフにあるように、同業他社に比べても異常な急拡大の状況にあること、まずこのことは認識しておられたのかどうか。もう簡潔でいいですから、一言それを聞いておきたいと思います。
  376. 西村正雄

    西村参考人 そごう経営判断といたしまして多店舗展開をしていたということは知っておりました。
  377. 吉井英勝

    吉井委員 実は、同業他社と比べてみて、二〇〇〇年二月末期で、一番新しいので見てみても、百貨店業界は皆消費不況で大変という点では一緒なんですが、そごうが売上高で九千五百六十四億、高島屋が一兆一千六百七億、三越が九千五百七十二億と、大体売上高が今は同じぐらいなんですが、有利子負債は、そごうが一兆七千百十八億円に対して高島屋の二千八百六十八億、三越の三千百十九億と、つまり、売上高では高島屋、三越と同じぐらいなんだが、有利子負債は六倍も多いのですね。  そこで、債務超過に至る状況にあるということはかなり早い段階で認識していたのではないかと思うのですが、この点はどうですか。
  378. 西村正雄

    西村参考人 お答え申し上げます。  そごうの非常に経営の特殊性というものは、上場しております株式会社そごう、これは東京と大阪と神戸店だけでございまして、その他の二十数カ店というものは、水島前会長が支配をしております千葉そごうというところが実質的に持ち株会社になって店別な会社になっていたわけでございます。したがいまして、そごう本社自体の全貌を把握することがなかなか困難であったわけです。私どもも一生懸命努力はいたしましたけれども、なかなか全貌の把握ができませんでした。ただ、その多店舗展開についてはかなり懸念をしておりました。  そして、今お尋ねの、債務超過をいつごろ知ったかというのは、実は、先ほども申し上げましたけれども、九四年の五月から興銀と長銀からそれぞれの常務をそごうに副社長として送りまして、水島社長が会長に退いた。それ以降、そごうの全体の実態というものがある程度わかるようになったわけでございますから、結論的に申しますと、私の方で全体として債務超過と認識したのは九四年ごろでございます。  ただし、株式会社そごうについて言えば、それは債務超過の状況じゃなかったということでございます。
  379. 吉井英勝

    吉井委員 端的に伺いますけれども、先ほどのグラフを見ても明らかなように、バブル期に他の大手百貨店と逆転するわけですね。それで、いかに急拡大したかということ、あるいは、有利子負債が同業他社の六倍というこういう状況を見ても、興銀の貸し込んだ責任、これは私は明らかだと思うのですが、その責任というのを感じていらっしゃるのかどうかだけ一言聞いておきます。
  380. 西村正雄

    西村参考人 もちろん、結果といたしましてはその多角化というものが、結局、その後のバブル崩壊、土地の極端な値下がり、消費不況ということによってそれが裏目に出たわけでございます。しかしながら、先ほどもございましたように、私どもはそれぞれ一件一件きちっと審査をして貸し出しをしております。  ですから、結果論として、バブル期にその辺のわきが甘くなったということを反省することは必要であると思っております。
  381. 吉井英勝

    吉井委員 九四年に、興銀は副社長も送り込んだわけですね。財務内容も経営上の問題もよくつかんで、もちろん既に一兆七千億近い有利子負債が存在することも知った上で、リストラ計画などをつくられて推進されたわけです。  しかし、興銀の方からいただいた再建計画の経緯という中でも、九四年のリストラ計画の中では、グループ取引金融機関の残高維持を取りつける、つまり、余りにも異常な債務、これをどう解消するかということじゃなくて、とにかく借金残高をどうして維持するか、こういうことを中心に考えていったということなども示されております。  そして、バブル期に生じた債務超過の状態を解消するための再建計画をつくってバブルの後始末をつけるということに取り組まないままに、その面では先延ばしをやっておるし、また、バブル崩壊の後も、例えば錦糸町そごうの出店、取りやめた方がという問題はあったとしても興銀がバックアップしてこれを出店されたりとか、バブル期までの話だけじゃなしに、バブル崩壊後だってこういう問題が出ているわけですから、興銀とそごうと二人三脚で経営責任を負う、このことは本当に重要なことであって、私は、この点での興銀の責任は極めて重大だということを指摘せざるを得ないと思うのです。  一言でいいですから、その責任というものをお感じになっていらっしゃるのかどうかだけ聞いておきます。
  382. 西村正雄

    西村参考人 ただ、先生の方に誤解がございますので、はっきり申し上げますと、錦糸町そごうの問題でございますけれども、これは既に九〇年に錦糸町の開発計画そごうが入っておりました。しかしながら、神戸の震災の後に、その出店を取りやめるということを墨田区に申し上げまして、墨田区から、それまでの納付金の百二十五億、これを返せというようなことを要求されたわけでございます。  したがいまして、私どもは、当然錦糸町の出店には反対をしていたわけでございますけれども、墨田区が法律に基づきまして百二十五億の返還を請求してきたわけでございますから、それでは、その百二十五億を払うか、あるいはそこで出店をするか、その……(発言する者あり)だから、言っておりますのは、バブル崩壊の後に錦糸町出店を認めたということでは全くないのです。そこのところをはっきりわかっていただきたい。  ですから、そういうことがいろいろあって、共同責任だと言われていますけれども、私は、共同責任だとは思っておりません。
  383. 吉井英勝

    吉井委員 これだけ乱脈経営、バブル的経営をやってきたところを支えて、二人三脚でやってきて責任を感じないというのは、驚くべき発言だと思いますよ。  日経金融の四月号に、興銀のそごうグループに対する融資残高というのが、帝国データバンクのものとして、百貨店本体、子会社、海外のもので、債権総額三千六百九十八億円というのが出ておりました。  しかし、さきのそごうグループ抜本再建計画による試算で示された興銀の債権放棄計画は千八百九十三億円。債権総額の半分しか放棄しない。これが法的処理になった場合どうなるか。興銀の債権放棄は確実に多くなるわけです。だから、債権放棄という当初の手法は、これは興銀の負担最小化する原則に立ったものであったと言わざるを得ないと思うわけです。  興銀は、そごうグループ抜本再建計画をつくって、そごうと一緒に各金融機関債権放棄要請に回ったわけですが、この計画をつくるときに、あるいは回っていったりいろいろ議論している中で、新生銀行からは、債権放棄了解しました、債権放棄オーケーだという内諾は得ていたのかどうか、この事実関係について伺っておきたいと思います。
  384. 西村正雄

    西村参考人 債権放棄の内諾は受けておりません。  それから、先ほど、全く責任がないというような感想を受けられたかもしれませんが、そうではなくて、私どもの責任というのは、そごう再建をするということが私どもの責任だというふうに感じていたわけでございます。事実、先ほどおっしゃった、九四年から始まりました第一次のリストラ計画の場合には、収益が約五百億ほど向上いたしまして、第一次は成功したわけでございます。
  385. 吉井英勝

    吉井委員 成功した成功したと言うけれども、債務は全然減っていないわけだから、これだけひどい中で逆にふえているのだから、成功ということは言い過ぎだということを言っておきたいと思います。  それから、国民の税金を使う抜本再建計画というのは、国民の皆さんからノーという答えが示されたわけです。ですから、私は、興銀は、税金を使った不良債権処理ということを当てにしないで、みずからのそごうへの貸し込み責任、経営責任、メーンバンクの立場を踏まえて、興銀の責任で解決に当たるべきだと思いますが、責任ある対応をするという意思をお持ちかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  386. 西村正雄

    西村参考人 ただいまの先生のあれは、大変誤解だと思います。  私どもは、税金を使った再建計画をつくった覚えは全くございません。私どもは、あくまでも私的整理という形でもって、民間債権放棄をするという形でございます。ですから、債権放棄をする場合は、当然、主力と準主力行がかなり負担をするということでございます。私どもは信用部分の九九%を負担したわけでございますから、初めから国民の税金を当てにした再建計画などというのは私どもは全く意図しておりません。     〔桜田委員長代理退席、委員長着席〕
  387. 吉井英勝

    吉井委員 税金を使う気はないとおっしゃるわけだから、民事再生手続に基づいて再生計画をまとめるための債権者集会が持たれて、話し合いの中で債権放棄額が決められていくのですが、既に、ゼネコン準大手のハザマ向け債権については、新生銀行の融資残高を全額、第一勧業銀行がメーンバンクとして肩がわりすると伝えられております。  もともと新生銀行の方にある中の引当金は公的資金ですから、そこまでおっしゃるのだったら、これまでの経過はいろいろあったにしても、とりあえず、この二十六日でしたかの通知を新生銀行の方がみずから自主的に撤回するということで話をもとに戻していくということをすればまた事態は変わるわけですから、そのときには、新生銀行の融資残高全額、第一勧銀がやったように、では興銀が責任を持ちましょう、そういうことを含めて、税金に負担をかけないということを言っておられるのかどうか、これを伺っておきたいと思う。
  388. 西村正雄

    西村参考人 何度も申し上げますけれども、私どもは、初めから税金を当てにした債権放棄計画あるいは再建計画をつくったわけではございません。そこのところは十分御理解いただきたいと思います。  結果的に、もし、新生銀行がこの債権放棄案をのめないということをある時点ではっきり宣言をすれば、その時点で、今のような民事再生法に行くというような選択があったかと思います。ただ、そうではなくて、結局新生銀行がそれを預金保険機構に持っていった、その場合に、それは長銀譲渡契約との絡みであのような結果になったわけでございますから、そこのところを十分御理解賜りたいと思います。  私どもは、何も税金を使ってそごうを救済するなどとは思ったこともございませんし、今でも全く思っておりません。
  389. 吉井英勝

    吉井委員 そごうと興銀の二人三脚の乱脈経営の後始末に何の罪もない国民が税金で負担するなどとはもってのほかですから、新生銀行のお話をされたけれども、その問題も含めて、やはり興銀がメーンバンクの責任を果たす、このことをきっちりされるように申し上げて、時間がありませんから、次の問題に入ります。  次に、そごう再建計画債権放棄というのは、もともとこれは民民の問題なんですね。本来国の関与することじゃないわけです。それなのに、なぜ国が関与して、国民が税金で負担させられるのか。  これは、国が、瑕疵担保特約そごうの二千億の債権を引き取るからですよ。新生銀行債権を持っているとみなしていて、しっかりもうけるときはそのままで、損するときは譲渡したものとみなすという、このみなし扱いを解除して債権預金保険機構に引き取らせるという、新生銀行にとって一方的に有利な、世界に例を見ない不平等契約となっています。ですから、これは、株式売買契約書第十四条により、第八条の瑕疵担保特約を削除するという修正の協議をまず行っていくということが私は必要だと思うのですが、大臣、こういう考えはありますか。
  390. 久世公堯

    久世国務大臣 そういう考えはございません。
  391. 吉井英勝

    吉井委員 全くこれはとんでもないことだと思います。  預金保険機構が銀行業界の保険料だけで運営されておれば、もともと預保は絶対こんな契約は結ばないと思うのですよ。公的資金や税金で処理されるからという安易な考えでこういう不平等契約を交わしたと思うのです。預保自身がモラルハザードを起こしていると言わざるを得ない。  今回のそごう債権買い取りの原資は金融再生勘定からですから、今の仕組み政府保証を行うことで国民の税金で賄う仕組みになっておりますが、政府保証の履行でなくて、何年かかけて預保が預金保険料で金融再生勘定の負担をすべて返済するようにさせる、必要な場合には法律の改正を考える、私はここまでやはりきちんと筋道の通ったやり方を考えていくべきだと思うのですが、これも大臣に伺いたいと思います。
  392. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  瑕疵担保責任に基づく解除によって返ってきた債権ロスをどこが負担するかということかと思いますが、瑕疵担保責任が、長銀譲渡契約において売り手の、ある意味で当方の、再生委員会の資産判定に見立て違いがあったということから始まっていることでございますので、再生勘定で受けるのが、法律からいってそれしかないものと思っております。一般勘定等というのは、民間金融機関の一千万円以下のロスのためのコストでございますので、そういうものを使うわけにはいかないと思います。
  393. 吉井英勝

    吉井委員 言っているのは、金融再生勘定から出すということは国民の税を使うわけですよ。だから、その税の負担にならないようにするには、そこへ預保が預金保険料などによって金融再生勘定から一度出た分を負担してすべて返す、そういうふうにさせるならば、これは国民の負担というのはなくなるわけです。やはり銀行業界の自己責任原則破綻処理をやらせるというこの原則に立ち返らない限り、幾らでもこんな問題は出てきます。  私、当初、二十分までの予定だったのですが、何か変わってきたようで、あと五分だということですから、もう質問をやめて、最後にその分だけ締めくくりに入ります。  それで、金融再生法などで銀行の乱脈経営の後始末に税金を使う仕組みをつくったからこういう問題が次々と出てくるわけです。このような一般企業の破綻まで税金投入が行われるわけです。銀行業界の自己責任原則破綻処理をやらせる、私はこの原則に立ち返るべきだと思うのです。そして、これまで国民負担にされた九兆円の公的資金についても、全額銀行業界負担で国に返済させる法的仕組みを考えていくべきだと思うのです。そうでない限り、銀行や不良債務を抱えているゼネコン、大手流通企業などのモラルハザードはなくなりませんよ。そごう問題というのは興銀の責任で解決するべきだし、税金はどんな形でも使うべきじゃない、私はそのことを申し上げておいて、そして最後に大臣一言だけ。  これら企業の破綻のときに、債権放棄にしろ民事再生法や会社更生法などの法的整理をやるにしても、一民間企業の乱脈経営の後始末には国民の税金は使わない、この原則だけははっきりさせておかないと、主な大口融資先にゼネコン、大手流通企業の名が新生銀行にも、日債銀などにも次々出てきているわけですから、私は、この原則だけはきっちりつくっていく、この立場を踏まえるということが必要だと思うのですが、これは、最後に大臣に質問をして、時間が参ったそうですから、終わりにしたいと思います。
  394. 久世公堯

    久世国務大臣 吉井委員の最初からの質問に、私は、吉井委員独特のお考えのもとに質問が構成されていると思います。(発言する者あり)
  395. 萩山教嚴

    萩山委員長 静粛にしてください。
  396. 久世公堯

    久世国務大臣 それは、一番最初の、国民は何の責任もないのにというところで始まるくだりでございますが、私は、あくまでも金融の危機に際しまして、一昨年の国会において金融二法をつくることによって我が国金融システムの安定、再生というものを図ったわけでございます。それは、ほかならぬ、先ほども申し上げましたように、経済にとって金融というのは動脈に当たるものでございますので、かつ預金者というのを保護しなければいけないというのが大きな眼目でございます。そして、この金融二法につきましては、国会において与野党ともに賛成のもとにできた法律でございます。したがいまして、国民は、あくまでもその代表者を通じてこの法律をつくり上げたわけでございますので、この法律の趣旨に沿って運営をすることが望ましいわけでございます。  その中には、あくまでも金融再生法の三条に、国民の税金を、できるだけ負担を少なくすることによって解決をするという原則があるわけでございますので、私どもは、その原則を忠実に守りながらこの法律の運営に当たってまいりたいと思っております。
  397. 吉井英勝

    吉井委員 一言。各党皆一致じゃないです。金融再生法は、我が党は反対しました。そして、乱脈経営にまで税金をどんどんじゃぶじゃぶ使うということは、決して国民負担最小化することになりません。  以上申し上げて、時間が参りましたので終わります。
  398. 萩山教嚴

    萩山委員長 次に、植田至紀君。
  399. 植田至紀

    ○植田委員 では、早速始めさせていただきます。社会民主党の植田至紀と申します。今回、初めて当選してまいりました、いわば新入生でございますので、初歩的なところからいろいろと質問させていただきたいと思います。社民党の植田、よろしくお見知りおきくださいませ。  さて、今回の公的部門のそごう向け債権放棄問題、今回、そごうの東京地裁の民事再生法申請受理という展開で、債権放棄路線は白紙に戻ったわけでございます。当然ながら、預金保険機構新生銀行から一民間企業であるそごう向け債権を買い取り、債権放棄に応ずるという手法が、国民の納得が得られるということは到底ないわけです。もしこうした前例を認めるとするのであれば、やはり深刻な経営状態にある大手ゼネコンやノンバンクからも同様の救済を求められるようなおそれもあった。そういう意味で、筋の通らない国家救済に道を開いて自由経済の原則を、結果として回避したというのはこれは当然の帰結であろうと思うわけですけれども、しかし、この間の迷走劇、余りにも今後に対する教訓や影響を残した、この点は厳しく総括しなければならない、そういうふうに考えます。  そごうの当事者責任は言うまでもないわけでございますけれども、国まで巻き込む形で、後でお話も伺いますが、興銀またそれに応じた金融再生委員会預金保険機構責任というのは厳しくやはり問われなければならないだろう、そういうふうに私も考えるわけでございます。また、債権放棄から法的処理に至る過程で、金融行政の独立性にも禍根を残す結果となった、そういうふうに私考えるのですけれども、まず、恐らくきょう一日、金融再生委員長債権放棄了承というのは正しい判断だと何遍も何遍もおっしゃったと思うのですけれども、幸い大蔵大臣がお越しでございますので、今回のその判断がいかに正しいのかということ、そしてそれが内閣の総意としてそういうふうに認識されているのか、もし御意見がありましたら、お伺いしたいと思います。
  400. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、子細なことを存じませんし、また、けさほどもちょっと申し上げましたが、重ねておっしゃいますので、先ほどの御質問の中に、自民党あるいは政府というもののシステムはこんなものか、まことに恥ずかしいというお尋ねがありました。  私は、結局、システムが働かなかった結果だというふうに思っております。フェールセーフでなかった。事の初めは、関係者が全部このシステムを正しく運用しようとされたように思います。預金保険機構もそうでございますし、再生委員会もそうでございますし、そごうもそうであったし、興業銀行もそうであったと思います。皆さんがシステムシステムどおりに動かそうとされたのだと私は思っているのですが、その結果として、思わない反応が国民に出た。それは、預金保険機構というところが税金を使ってそごうという私企業を救おうとした、そういう印象を根強く国民が持った。  そういう意外な反応を国民が持ったわけですが、しかし、国民の皆さんは恐らく、預金保険機構というのは何のことか、大抵の方は御存じありません。それから、なぜ預金保険機構そごうに対する債権を持ったのか、これも大抵の国民は理解しておられないと思うのです。また、それをわかってもらうのにはかなりの苦労が要りますけれども、おまけにもっと国民がわからなかったのは、その預金保険機構というのが債権を少し向こうへ投げてやると、かえって取る金がふえるんだ、この論理は、またもっと国民にはわからなかったと思うので、皆さんが制度を正しく利用しようとされたけれども、それが全く国民に受け付けられなかったというところが我々の反省点ではなかったかと思っています。  したがって、システムが動くはずのものが動かなかったものですから、総理大臣としては、これはシステムをとめるしか仕方がなかった。一つ一つシステムはちゃんと動いているものですから、動かしたのではだめで、とめられたんだと私は思います。  ただ、とめられる、その表に見えたところは余り格好はよくなかったけれども、しかし、私は、そごうや興業銀行が再建計画を中止されたのは、プレッシャーがかかったからではなくて、動くはずのシステムが動かなかったからだろう、それを強いてやることはそごうにとっても興業銀行にとっても不利益である、こういう判断をされたというふうに私は全体として考えております。  したがいまして、もし今度のことがそうであったとすると、このシステムは動かそうとすると必ず全体が熱を持ってしまって、思ったとおりに動かないであろうということが、再生委員長に対して、今度どこかで同じことがあったときに債務免除をするか、こういうお尋ねになるわけですね。  とすれば、必ず前のようにシステム全体が熱を持つということになるのではないだろうか。もとのところは非常に、二年来の経緯がありまして、精緻にシステムはできておったように私は思いましたけれども、それが動いた結果、思わず国民の受け入れるところにならなかったというのが今度の反省点ではないか、どうも変なことを申しましたけれども、私はそういう感想を持っております。
  401. 植田至紀

    ○植田委員 さて、ではそれを受けまして、まず、今回債権放棄から法的措置に至る過程で、いわば金融行政の独立性に禍根を残す事態が起こったということについて、今度は再生委員長にお伺いしたいわけですけれども、当然ながら、私は、今回の受け入れ、了承という判断は容認できない立場に立つわけですけれども、やや皮肉をも込めて申し上げるのであれば、何よりやはり憂慮すべきことは、金融行政の独立を侵す事態に対して金融再生委員会が毅然たる対応をとったのかどうかということが問われるんじゃないかと私は考えるわけです。  というのはどういうことかと申しますと、当然ながら、十二日間あったわけですけれども、正しい、正しいとおっしゃられる判断がいわば政治の介入によって覆されたという、これは明らかな事実でございます。私が仮に金融再生委員長であるとするならば、そうした政治の介入に対して、何してんねやと、まず厳しく抗議するでしょう。そして、まず、それが入れられないのであれば、先ほども辞任辞任という話が出ていましたけれども、引責辞任ではございません、抗議の辞任を私はすると思います。  その辺のところ、抗議するおつもりがあるのか、そして、引き続きそうした金融行政の独立性を守る意味で、やはりここは委員長の矜持をお示しになるような局面があろうかと思うのですけれども、委員長の御答弁をお願いします。
  402. 久世公堯

    久世国務大臣 預金保険機構がこの判断をされましたことについて、金融再生委員会として了承をいたしましたことは、きょうたびたび申し上げておりますように、正しかったと私は思います。  これは、金融再生委員会、五人の委員及び委員長で構成しているわけでございますが、四人の委員は経済、行政、法律のそれぞれ専門の方ばかりでございまして、それなりに適切な議論をされ、適切な判断としてこの金融再生委員会で決したわけでございます。しかし、同時に、たびたび申し上げておりますように、委員長国務大臣をもって充て、これは内閣の一員として、政治の場におけるそこが結節点になっているわけでございます。  したがいまして、金融の中立公正な立場を決定いたしました委員会、それから内閣の一員でございます委員長、これが、内閣の中において、政治の判断ということも含めてこの方針を出しているわけでございますので、このあり方を今後とも続けてまいりたいと思っております。
  403. 植田至紀

    ○植田委員 それはそうなんですよ。午前中も三条委員会の中立性について若松議員から御質問があったところで、同じことをたしか申されたと思います。  今私申し上げているのは、正しかったかどうなのかという話はまた別途質問させていただきますけれども、正しいと信念を持っておられる委員長にお尋ねしているわけですけれども、当然ながら、公正中立であって、なおかつ内閣の一員としての政治的判断も加えながら正しい選択をしたという信念をお持ちなんだろうと思います。それが、午後の質問の答弁の中で、金融再生委員会のあずかり知らないところで高度な政治的判断があった、そしてその高度な政治的判断、当然ながら、これは与党の政策責任者の判断を指すことだろうと思いますけれども、高度な政治的判断が有力な契機となってそごうが自主的に判断をされたというふうなことをおっしゃっておられたわけです。  そもそも、当然ながら、内閣の一員としての政治的判断も含めて担当大臣がなされたにもかかわらず、それを超えるような高度な政治的判断というのが存在し得るのかどうか。金融再生委員会のあずかり知らないところで、三条委員会の独立性を脅かす、いわばアンタッチャブルとしての高度な政治的判断が存在するのでしょうか。いかがですか。
  404. 久世公堯

    久世国務大臣 私は高度の政治判断ということを申しましたが、それによって結論がひっくり返ったということは一言も申しておりません。また、それによってそごうが一夜にして考えを変えたとも思っておりません。  これは推論でございますが、そごうもそれを非常に重く受けとめて、それがあるいは引き金になったかもしれませんが、そごう自身もいろいろと検討、そして考えておられたところに一つのそういう政治的な判断が下されたので、それが引き金になってできたかもしれませんけれども、私はそれによって今回の結論が覆されたということは一言もこの場で言っていないわけでございます。  したがいまして、今申し上げましたように、前委員長がこの中立公正の委員会の了承をとられたわけでございますので、私はその過程を引き継ぎの過程において十分承りまして、その判断は正しかったということを申しているわけでございます。
  405. 植田至紀

    ○植田委員 そうおっしゃるしかないだろうと思うのですけれども、それぞれの方がそれぞれのことをおっしゃった、そして結果として、結果が出ました、ただしそれぞれの御発言はその要因にはあらずということなわけですよね。そうしか言いようがないと思うのです。  改めてもう一度この三条委員会の意義について申し上げた上で次の質問に移らせていただきますけれども、そもそもこの金融再生委員会というのは、財政と金融の分離を制度的に担保するために、社民党が強く求めて創設されたものでございますし、また、政治からの中立性を維持するために三条委員会として設置されているということですから、くれぐれも今回のような事態が起こらないような、批判を受けないような、独立性が侵されないように引き続き御努力願いたい、そういうふうに思っております。  さて次、二点目になるのですけれども、確かに、債権放棄了承から一転、法的処理に至ったわけですけれども、今も何度も正しい判断とおっしゃいましたけれども、預金保険機構、また金融再生委員会が正しい判断であったと強弁される、その債権放棄を了承したという事実は残るわけです。  そのことについて幾つか問題点指摘しながら質問をしたいわけですけれども、一点ちょっと技術的な問題について、委員会事務局長の方からお伺いしたいのですが、そごう処理に関する政府・与党の迷走を招く要因となったのは、昨年二月の、リップルウッド社に旧長銀譲渡するに当たって、そごう向け債権を適資産として含めた金融再生委員会判断にあるわけでございますね。そして、金融再生法には二次損失規定というものが欠けていたために、譲渡債権は損失のおそれがない適資産に限定することが要請されていた。しかし、今回の失態で、当時の委員会における資産選別基準というものがあやふやであるということが明らかになったのではないか。  そごう問題というものを他山の石とするためにも、破綻金融機関債権分類、またそれに応じた引き当て額の水準等々を早急に見直すべきではないか、そう思うわけですけれども、御見解をお伺いしたいと思います。
  406. 森昭治

    森政府参考人 お答え申し上げます。  資産判定基準は、再生法の告示として定めまして、公表しておりまして、財務内容の健全性と債務の履行状況とを縦軸、横軸に分けまして、そして原則を述べております。  ただ、善意かつ健全な借り手というものを保護するという一方の精神があるわけでございまして、そういう意味から、原則は、正常先が適資産である、それから要注意先債務者につきましては、要注意先Aは無条件で適資産である、要注意先Bにつきましては二年後の期末までにAに移行するのが適当である、そして要注意先C以下を不適資産としているわけでございますけれども、一方、その原則に対しまして、債務者の特殊事情、親会社の保証だとか、あるいはメーンバンクの支援とか、そういうことがある場合には適資産にしています、そういう基準を世の中に発表して、それに従って資産判定をしたわけでございまして、その際におきまして、そごうは要注意先Aに昨年の二月時点ではなったわけでございます。  これを見直すと申しましても、この資産判定基準、何も特別公的管理銀行だけではなくて、将来起こり得るブリッジバンクの資産判定基準でもあるわけでございますけれども、当委員会としてはこれを見直す必要があるというような認識は、委員の皆様は今持っておられないと思います。
  407. 植田至紀

    ○植田委員 では今度、参考人預金保険機構松田理事長にお伺いしますけれども、初歩的なことから、そもそも預金保険機構というものは預金者保護が最大の使命でございますよね。
  408. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  おっしゃるとおり、最初の発足はそうでございました。
  409. 植田至紀

    ○植田委員 とするのであれば、預金保険機構の任務として、一民間企業再建計画を審査して、それが仮に妥当であれば債権放棄をするということまで期待されているのでしょうか。いかがでしょうか。
  410. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  先ほど先生がおっしゃいましたように、預金者保護が第一原則、そのためにペイオフあるいは資金援助というのを私どもやっておりますが、そのほかに、住専問題から端を発しまして、いろいろな特例業務がついてまいりました。そのうちの一つ不良債権の回収というものがございます。  現在はRCCを下に置いて不良債権の回収をやっているのですが、今回のものは、金融再生法の枠組みの中で長銀処理をされたときに、旧長銀から新生銀行に渡された資産部門の中の、約八兆円だったと思いますけれども、その中の債権の一部、その中にそごうが含まれていたわけですね。もちろん旧長銀は銀行ですから、貸し出す先は主に私企業に貸しているわけで、それは当然のことでございます。その債権が、今度の瑕疵担保条項によって私どもに戻ってまいりました。  そうしますと、預金保険機構の立場というのはどういう立場になるかと申しますと、ここはもう渡された今目の前にある二千億の債権元本で実質価値一千億で買い取る、我々買いましたから、その買い取った二千億の債権をどうやっていくか。そうすると、一千億が原価ですから、私どもの簿価ですから、これまで回収すれば、国民に一銭も負担を与えないわけですね。それで一生懸命やって、できれば私的整理で、再建計画の合理性とともに、私的整理でやればむしろ三十億くらい飛び出るので、国民に税金をお返しできる、こういうことで我々はやったわけであります。  九百七十億の債権放棄は、税金を出すわけじゃないのですね。いわば、二千億ありますけれども、その一千億は既にある意味では腐っているというか、なかなか回収が困難になっている債権なんです。そこで、皮を切らせて肉を切るといいますか、そこはそれで上げましょう、そのかわり残りは全部下さいなと。そうすると、税金は使わないどころか税金が返ってくる、こういうのが私どもの考え方であったわけです。  それが公的整理に移りますと、もともと債務超過ということははっきりしていますから、与える資産は小さいので、それをどうやって分配するかということになりますと、当然のことながら負担が大きくなります。それも民事再生法ならともかく、また破産に行きますともっと小さくなりますから。  そういうことで、私どもは国民のために税金を使わないためにどうするかということで、回収する立場から本件を担当していた、こういうことでございます。
  411. 植田至紀

    ○植田委員 ただ、今回の一件、そごう問題で債権放棄をするという判断が極めて困難だということは明らかになったと思いますけれども、十二日の理事長の記者会見の要旨を見ておりますと、この債権放棄を決めたということは正しい判断だ、苦渋の選択でもあるが正しい判断であるというふうにおっしゃっておられます。マスコミ等の取材に対して、今まで以上により一層慎重に対処するというふうにおっしゃっておられるのですけれども、その慎重に対処するということの具体的な意味内容についてお聞かせ願えませんでしょうか。
  412. 松田昇

    松田参考人 今回の債権放棄を決めるときの条件、四つほど私ども申し上げました。一つは、何といっても、回収の立場でございますから、国民に税金の負担をかけない、国民負担最小化する、回収を極大化するという点、それが認められますかということで、それはいろいろシミュレーションしましたけれども明らかに認められますと。あと三点ほど申し上げました。  ただ、これは最低の要件を申し上げたわけでありまして、なおかつ、その私の理事長談話をよくお読みになればわかりますが、全部の方が再建計画合意をして、再建計画が動き出すこと、実行に移されることを条件に私は債権放棄をいたしますよというくらいで私どもの方針を固めているわけでございます。  そうしますと、今度は前提がそこで崩れてしまいまして、民事再生法に行きました。そうすると、その前の段階で、今後、では同じような問題が起きてきたらどうするかという記者の質問もございましたので、少なくとも、あの四つの要件とプラス再建計画が実行に移されることを条件にするという点は最低の条件ですから、今度いろいろなことで私たちもたくさんのことを学びました。自分たちの預金保険機構が置かれている法令上の立場を乗り越えるようないろいろな御意見があることも肌身にしみました。そのことを踏まえて、もっと慎重にやらなきゃいけないな、こういう気持ちを述べたものでございます。
  413. 植田至紀

    ○植田委員 判断は正しかったのだけれども慎重さを欠いていたということなんでしょうか。判断は正しかったのですよね。しかし、検討課題として足りない部分もあったということなんですか。そうでもないのですか。
  414. 松田昇

    松田参考人 足りないといえば足りないということになるのかわかりませんけれども、要するに、あの四条件だけではとても足りないな、それは今後もっと慎重にいろいろなことを考えていかなきゃいかぬな、そういう思いを強く持ったということでございます。
  415. 植田至紀

    ○植田委員 では、今度担当大臣にお伺いするのですけれども、先ほどとやや重なる部分があるのですけれども、少なくとも、今回の件に関して、国民の理解を十分得られなかったということは当然あるのじゃないか。特に今回、費用最小原則にのっとり対応をしたと言いますけれども、その妥当性であるとかを含めまして、少なくとも国民に対する十分な情報開示がなかった、行政に求められている説明責任を怠ったのではないかというふうなことがあろうかと思いますけれども、改めてちょっとその点について御認識を伺いたいのですが。
  416. 久世公堯

    久世国務大臣 今回のことにつきまする国民に対する説明責任の問題でございますが、このケースは問題としても非常に複雑かつわかりにくい問題であることは事実でございますが、これをいかにして国民の皆さんに情報を開示して適切に説明するかということは、私も、これは今度の教訓の一つであり、また今後考えていかなければいけない問題だということは自覚いたしております。  あらゆる行政にとって情報の公開、情報開示、そして説明責任ということが大事なことであることは言うまでもありませんが、特に国民の負担をお願いしなければいけないものでございますし、それを十分に理解してもらうことは必要でございます。  したがいまして、今後は、もちろんインターネット、ホームページを開いておりますけれども、そういうインターネット等によってできるだけわかりやすく多くの国民それから多くの関係者、これに情報公開を進めたいと思いますが、同時に、私どもも与党を初めとして関係者の皆さん方に十分な説明を行いたいと考えております。
  417. 植田至紀

    ○植田委員 担当大臣の感想だけで結構なんですけれども、死んだ子の年を数えるような話ですけれども、仮に十分に情報開示をし、説明責任を果たしておれば、今回の債権放棄を了承したという件について十分国民の支持が得られたというふうにお考えでしょうか。
  418. 久世公堯

    久世国務大臣 何分とも大変難しい仕組みでございますので、十分にはこれは御理解の段階には至らなかったと思いますし、私どもは今後においていかにそれを解決していくかということについて努力をしてまいりたいと思っております。
  419. 植田至紀

    ○植田委員 では、引き続いて、今度は興銀さんの頭取さんがお越しですのでお伺いいたします。まず、メーンバンクとしてのガバナンス、責任についてお伺いしたいと思います。  特に、このそごう問題に関して主要取引銀行の責任、とりわけやはり興銀の責任が重いわけですからきょうもお越しいただいているんだと思うのですが、メーンバンクというのは企業の内実まで把握してその企業を統治する立場にあるわけですね。そもそもコーポレートガバナンスこそ、従来銀行が掲げてきたメーンバンクの存在意義の一つであった。そごう法的処理に追い込まれるに至る過程で、興銀さんがメーンバンクとしてのガバナンスをどう働かせてきたのかということは見落とせない問題であろうというふうに思うわけですけれども、そのガバナンスや責任についてどう御認識か、お伺いできますでしょうか。
  420. 西村正雄

    西村参考人 ただいまの先生の御質問でございますけれども、まことにごもっともな御質問だと思っております。ただ、メーンバンクに対する認識につきまして、いろいろ時代の変遷とともに変わりがございますので、ちょっと二、三分だけ私の考えを申し述べさせていただきたいと思います。  やはり高度成長期の資金不足期はメーンバンクが非常に力を持っておりまして、まさに企業のコーポレートガバナンスを負う役割を果たしてきたわけでございますけれども、昭和五十年代ころからだんだん直接金融へシフトするとか、あるいは慢性的な資金余剰期になると、特にバブル期は、むしろ企業と銀行の関係が全く逆転をしてしまったわけでございます。ですから、そのころから、以前のメーンバンクと違いまして、企業の実際の経営にタッチし、それを指導する立場にはなくなったわけであります。さらに、現在の状況では、今はまさに企業が銀行を選ぶ時代になっているわけでございますから、従来メーンバンクに期待されていた機能を果たすことは、実は非常に困難になっております。  ただ、一つだけ例外がございまして、企業再建過程に入った場合、その場合にはやはりメーンバンクとしての、その企業を指導、管理する、そのような責任があるわけでございます。ですから、そういうことにおきましては、私どもは九四年以降、先ほども申し上げましたように、そごうが言ってみれば興長銀を主体とする銀行管理に入ったわけでございますから、メーンバンクとしてのそういう管理責任があったわけであります。  ここで一つ御理解をいただきたいのは、そごうという会社は非常に特殊な会社でございまして、水島前会長は完全なオーナーであるということでございます。株式会社そごう以外の二十数社の株式は非公開でありますので、すべて水島会長が握っておられる。それが第一点。それから第二点は、水島会長の求心力というものが非常に強かったわけであります。これは組合員も含めて非常に強かったわけですね。特に神戸大地震のようなときにそういう力が発揮されるわけでございます。  したがいまして、私どもも、九四年に副社長を長銀と一緒に送り込みまして、全体を把握して、そして経営体制の刷新を図ってきたわけでございますが、肝心の水島体制というものから脱皮するのは、やはりオーナーであり求心力が強かっただけに非常に難しかったのです。  決して私どもは水島さんの言いなりになっていたわけではございませんで、例えば、出店に対してそれを拒否するとか、あるいは経営会議中心の経営をやっておる。といいますのは、経営会議というのは水島さんは入っていないわけでございます。それから、人事権は全部社長に渡してくれ、そういうふうなことをすべて直言したわけでございますけれども、やはり、仮に水島さんが会長の職を退いたとしても、今のような株式構成の中にあっては依然としてその支配力を持っていたわけです。  結局、水島体制から脱皮させるにはやはり債権放棄ということで、その債権放棄には三条件ございますけれども、その一つに経営責任の追及というのがございます。したがって、債権放棄を含む再建計画をやる場合には、この場合には、完全にすべての会社の会長、社長を退いていただいて、しかも持っている持ち株も全部無償で株式会社そごうに譲ってくれということをお願いいたしまして、それで初めて、水島さんの支配といいますか、いわばそういったワンマン体制から脱皮することができたわけです。  したがいまして、私どもがもっとなぜそれを早くできなかったかということでございますけれども、実際には、今申しましたような非常に強い求心力と株式構成ということでできなかったわけです。その点は私どもとしては力不足というように感じておるわけでございますが、ただ、今度の再建策が抜本策であるゆえんは、先ほど小池先生からも抜本策ではないのではないかという御質問がございましたけれども、その抜本策であるゆえんは、その最大のところは、水島体制から脱皮した新しい経営体制でやっていくというところにあるわけであります。  したがいまして、私どもの力不足ということは認めるわけでございますけれども、これからは法的サイドの中でそごう再生を図るためにメーンバンクとして十分な協力をしていくということが、私どもに課せられた使命だと考えております。
  421. 植田至紀

    ○植田委員 続いて頭取さんに伺いたいのですけれども、巷間よく言われますのが、そごうと興銀の関係に関して、いろいろな形で、どれだけ根拠があるのかどうかも含めて後でお答えいただければいいのですけれども、批判があるわけですよね。例えば、それはもともと水島そごう会長も興銀の出身だ、そごうと興銀は車の両輪の立場にあったと言えるんじゃないかと。そして、金融関係者の間では、この間そごう周辺で何か起こるぞというのは十分予想されていたじゃないかと。  しかし、そこまで、破綻に追い込まれるまで、じゃ興銀さんは知らぬが半兵衛を決め込んでいたんですかというふうな批判もあろうかと思うのです。また、興銀が行っているのは自社の御都合主義ではないかという金融関係者の方々、これはマスコミ等々でもそういう関係者の批判もあるように聞いておりますけれども、こうした批判に対する御感想なり御所見をお伺いできますでしょうか。
  422. 西村正雄

    西村参考人 マスコミのコメントにタッチすることは必ずしも適当ではないと思っておりますけれども、これは午前中申し上げたことでございますけれども、水島氏は、確かに興銀出身ではございますけれども、そごうの一族でございまして、そごう再建のために三十三年にそごうの副社長として入社されまして、三十七年に社長になられたわけです。その当時、興銀との取引は全くございませんで、興銀との取引が始まりましたのは四十六年でございます。ですから、水島氏は確かに興銀の出身ではございますけれども、興銀から派遣をされたというのは明らかに誤解でございます。  それからまた、水島氏と興銀とがそういうようなことでもってそごうの拡大戦略に同調したのではないか、こういったような批判も存じておりますけれども、先ほどもお答えいたしましたけれども、特にバブルの時期は非常に消費も好調でございましたし、土地も非常に値上がりしておりました。また、そごうの業績も非常に好調でございましたので、私どもが一店一店プロジェクトを審査して、それで融資をしたわけでございます。  したがいまして、二十五店のうち私どもがメーンになっています十一社でございますけれども、そのうちの黒字店は八社ということで、これは決して言いわけのために言っているわけではございませんけれども、そのようにプロジェクトごとにやってきた。むしろそごうさんの方でプロジェクトによっては銀行を選んできたわけでございますから、私どもと長銀以外の都地銀でメーンを務めているところが八社あるわけでございますから、興銀とだけでそごうがやってきたということではございません。
  423. 植田至紀

    ○植田委員 意外と時間というのは早くたつもので、やはり初戦ですので、お許しください。  さて、そろそろ、もう五十七分で終わりということでございますので、最後の質問になるのですけれども、やはり今回の債権放棄というのは正しい判断だとずっと言い続けられるのでしょう。恐らく墓場に行くまで、あのときは正しかったと皆さんおっしゃるのだろうと思いますけれども、ただし、やはりこういうケースというのは例外的な事例なんだということをおっしゃっていただきたいのですよね。やはり本来的にはあってはならないことなんだというふうに、それはこの間の議論の中でもあったと思いますけれども。  いずれにいたしましても、公的資金を入れるということは国民の税金を使うということなんですから、今回の事例に関してはやはり例外的な事例というふうに理解していいのでしょうか。再生委員長にお答えを求めます。
  424. 久世公堯

    久世国務大臣 今回の措置につきましては、たびたび申し上げておりますように、金融再生法に定める国民の負担最小化原則を一番の基準といたしまして、また預金保険機構におきましては四つの原則を立てておりますが、それに照らし、また私どもの金融再生委員会におきましても、この四原則とほぼ同じの三原則というものを立てておりますが、それに基づいて決定をしたわけでございます。  きょうの大蔵委員会におきましては、たびたび今後の個別問題についてどのように対応するかという御質疑があったわけでございまして、植田委員の御質疑もそれに連なるものだろうと思いますが、私どもといたしましては、債権放棄の基準というものはやはり極めて慎重の上にも慎重を重ねて取り扱いたいと思っておりますし、また、基準の明確化というものは、困難な面もありますけれども、できるだけ多くの関係者の皆様方の御意見に耳を傾けて、さらなる基準の明確化について真摯に検討してまいりたいと考えております。
  425. 植田至紀

    ○植田委員 最後に一言だけ申し上げて、五十七分で終わりだそうですので、終わらせていただきます。  やはり忘れたらあかんことは、公的資金の投入というのは、金融機関が信用創造と決済機能を備えているといういわゆる金融機関の公的役割に着目して初めて可能になる、いわばぎりぎりの選択であるということであろうと思います。そのこと一つをとってみても、一私企業を救済するために債権放棄などへ公的資金を使うことへの国民の拒否反応というのは、恐らく幾ら説明してもその拒否反応というのは薄まらないだろうと思います。今度そういう事例があったとしても同じことだと思います。説明責任を果たしたとしても、恐らく納得していただけないでしょう。  多くの国民が今こういうふうに不況の中で呻吟する中で、ダブルパンチとして、大企業に生殺与奪の権を握られている多くの中小企業の現状から見ましても、単に社会的影響が大きいことだけを理由に大会社が救済されるという悪例を設けるということは、単にモラルハザード以上の傷跡を国民の間に残すのではないか。  少なくとも、今後こうした議論をしなくてもいいように、こういう委員会の場で閉会中審査をやらなくてもいいように、もっとベストな選択をやはりこれからよりより慎重に検討していただきたいということを申し上げまして、私の初めての質問でございます。ありがとうございました。
  426. 萩山教嚴

    萩山委員長 以上で質疑は終了いたしました。  参考人におかれましては、長時間にわたり御出席いただき、まことにありがとうございました。  次回は、明十八日火曜日午後零時五十分理事会、午後一時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十六分散会