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参考人(
関根秀一郎君) 東京ユニオンの書記長と、また派遣
労働ネットワークの事務局次長をしております関根と申します。
本日は、
意見を述べる
機会を与えていただきましてありがとうございます。
私どもは、派遣
労働者、あるいはパート
労働者、あるいは有期契約
労働者など、
一般に不安定
雇用労働者と呼ばれる
労働者からの職場の相談などを多く受けております
関係から、本日は、有期契約
労働者への
雇用保険給付の
関連につきまして
意見を述べさせていただきたいと思います。
まず一番目は、派遣
労働者を初めとする有期契約
労働者の
雇用保険給付日数について述べさせていただきます。
改正法案では、
中高年リストラ対象者に対する求職者
給付の重点化を目的の
一つとしております。聞き及ぶところによれば、有期契約の
期間満了による退職者は、
定年退職者と並んで
離職前からあらかじめ再就職の準備ができるものとして自発的退職者と同様の
立場にある
労働者と考えられているとのことです。
私が用意いたしました資料の六ページ、これは
労働基準広報という刊行物に法案の解説が出ていたところで拝見したんですが、六ページの一番右上の解説のところに、イ、これは自発的退職という位置づけだと思うんですが、「自己都合退職者や
定年退職者、契約
期間満了による退職者など
離職前からあらかじめ再就職の準備ができるような者」というふうな形で、
期間満了による場合も自発的退職というふうに位置づけられるというふうに伺っております。しかし、こうした
考え方に基づいて法
改正を行うということになりますと、派遣
労働者を初めとする有期契約
労働者に関する
失業給付は極めて不公平になるということを述べさせていただきたいと思います。
まず、有期契約で働く
労働者は昨今増加傾向が顕著となっておりますが、既に有期契約
労働者として働いて十五年あるいは二十年となる
労働者も少なくありません。これらの
労働者の中には、長期臨時と言われるように、契約を更新して
一つの企業に極めて長期にわたり働き続けてきた
労働者が少なくありません。契約
期間の満了をもって必ずそこで終了するというものではなくて、契約を更新して働き続けているという方が非常に多くあります。こういう場合、通常の
労働者に匹敵する
労働契約
関係の成立が認められるべきであるというふうに考えます。
我が国における有期
雇用は、
労働基準法において上限を
原則一年とする規制があるのみです。業務の基本的な性質が臨時的であるとか、活用の必要が臨時的であるとか、あるいは有期契約とすることが合理的であると認められる場合に限られるといった規制はありません。したがって、使用者が必要であれば通常の
労働者と同じように、場合によっては通常の
労働者よりかなり長期にわたって契約を更新して活用することが広く行われてきました。派遣
労働者を初めとする有期契約
労働者が増加している実態や
雇用継続の実態は、
労働省や東京都
労働経済局などによる調査結果を見ていただければ明らかだと思います。東京都
労働経済局の調査結果につきましては十三ページ以下に添付しました。
このように、長期にわたる活用が行われながら、有期契約
労働者は
雇用調整弁的活用の対象として真っ先に企業リストラの対象になってきました。リストラ対象となる
リスクは通常の
労働者よりもかなり高く、その不合理をめぐって裁判上も争いになってきています。
過去の裁判では、三洋電機雇いどめ事件、この事件においては、裁判所は、長期にわたり契約の更新を繰り返して働き続けてきた
労働者について、勤続年数と業務の内容に照らして通常の
労働者の
労働契約に匹敵する
労働契約
関係が成立していたものとして、
定年までの
雇用が保障される
労働者を中心に確立されてきた整理解雇法理の
適用を認めました。
また、丸子警報器
賃金差別事件判決では、裁判所は、勤続年数や業務内容が正社員と同等であれば、均等待遇
原則にのっとり、一定の勤続年数を経た
労働者については通常の
労働者として取り扱うべきだと述べています。
このような
労働者の場合には、契約
期間満了による
雇用の終了を解雇として余儀なくされた退職者に対する
給付が保障されるべきは当然と考えます。
また、我が国の有期契約が
雇用調整弁として活用することを目的としているために、契約
期間満了をもって必ずやめてもらうという性格を有していないことも考慮に入れるべきです。有期契約であっても、特段の事情がなければ契約を更新して働くことが予定されていることがほとんどです。このような場合には、
雇用継続の可否が特段の事情の有無によって
判断されることになり、通常の
労働者と同じように、
期間満了は解雇に準じた問題となります。
以上のように、契約が長期にわたって継続していたり、長期でなくとも契約の更新があることを前提にしているような場合には、使用者からの雇いどめは
労働者にとって望まないものであることはもちろん、予期しない出来事になるということです。二、三カ月の契約を更新して働いてきた
労働者が契約更新時期の二、三日前になって突然更新しない旨を通告されるという
ケースも少なくありません。
今回、契約
期間満了というのが事前に就職準備ができるというような位置づけをされておりますが、現実に、例えば派遣
労働者が働いている場合には、長期というようなことで仕事を紹介されても、実際には一カ月契約が届いて、その二、三日前まで更新するかどうかがわからないというのが実態としてあるわけです。そうした
期間満了による終了がどうして就職を準備できるというふうに位置づけられるのか、ちょっと私としては理解できないと思っております。
このような有期契約の場合、
定年退職と同じように再就職の準備ができるかといえば、全くほとんどできないというのが実態です。契約
期間満了の可能性があるから再就職準備をすべきだという
考え方があるとすれば、それはそのような実態を余りにも無視していると考えざるを得ません。このような
考え方が通用するためには、有期契約が認められる範囲を、契約
期間を設定することが合理的であると認められる場合にのみ
法律で厳格に規制すべきですし、有期契約を締結した場合には契約
期間を超えて活用することを許さないという厳格な規制が行われている場合に限られるべきです。
端的に言ってしまえば、有期契約で
期間満了で終了した場合には、基本的には非自発的退職と考えるべきであると。そして、
期間満了によってそもそももうこれは更新しないんだということが事前に定められている
ケースについてのみ例外的に自発的退職というふうに考えるべきであるというふうに思います。
現行
制度のもとでは、長期臨時といった矛盾した実態が
一般化しています。そのような実態の中で、
期間満了による
雇用終了については、契約更新の可能性を含んだ契約
関係にあり、しかも
労働者が望まない
事業主都合による
雇用打ち切りについては、通常の
労働者の解雇と同様、余儀なくされた退職として
給付日数重点化の対象とすべきです。
非
自発的離職の範囲については省令で定めることとされているようですが、契約更新を予定していた
労働者が
事業主の都合で
期間満了により
雇用打ち切りに至った場合には、非
自発的離職として取り扱うことを明確に定めることを強く求めます。
二番目に、派遣
労働者への
雇用保険給付の差別的な取り扱いについて述べさせていただきます。
今回の法
改正では、登録型派遣
労働者にも広く
適用拡大していくということが盛り込まれておりますけれども、実際には、せっかく拡大されても登録型派遣
労働者は非常に受給をするときに不利益をこうむるというような実態にあります。
例えば、ここに記しておりますのは
労働者派遣終了証明書というものです。
労働者派遣終了証明書は二十三ページに添付いたしました。
解雇や契約更新拒絶など
事業主都合で
離職した派遣
労働者が
雇用保険給付を受けようとする際に、
労働者派遣終了証明書の提出を義務づけています。これは、他の
雇用形態で働く
労働者の
雇用保険給付と比較して著しく差別的な取り扱いになっています。様式二号は派遣
労働者のみが提出を義務づけられているもので、この様式に関するトラブル相談が非常に多くあります。相談の内容は、
事業主都合で
離職したのに
労働者都合にされてしまったというものや
離職票をなかなか発行してくれないという内容のものです。
様式二号を見てみますと、たとえその退職が契約中途解除や契約更新拒絶など
事業主の都合による
離職であったとしても、一番「今後、派遣就業しないため」、二番「今後、被
保険者となるような派遣就業をしないため」、三番「
最後の
雇用契約
期間の終了日から一月
程度以内に次の派遣就業が開始しなかったため」の中から「該当するものを○で囲むこと」とされています。
1にあります
事業主の都合で「今後、派遣就業しないため」とは、二十二ページのヘ、(イ)のcに記されておりますが、「
事業主が以後派遣就業を指示しない旨を明らかにした場合」とされております。派遣会社が本人の希望にかかわらず今後派遣の仕事を紹介しないというような場合にはどのような場合が考えられるのかというのを想定してみますと、派遣
労働者の年齢など差別的な
理由によってもう今後仕事を紹介しませんよというようなことが考えられます。
また、2にあります
事業主の都合で「今後、被
保険者となるような派遣就業をしないため」については、「
事業主が以後被
保険者とならないような派遣就業のみを指示することとした場合」とされております。派遣会社が本人の希望にかかわらず、今後、
賃金額が極めて低い仕事か、所定
労働時間が極めて短い仕事か、あるいは所定
労働日数が極めて少ない仕事しか紹介しないこととする措置をとることを指しています。
1の場合も2の場合であっても、派遣
労働者が平等に仕事にアクセスする権利を不当に奪うものであって、このような選択項目が選択されることを認めることはできません。
自己都合で
離職する場合であっても、1か2を選択することは、
労働者が今後どのような形態で働いていくかを事前に表明することを求めることになり、職業選択の自由を不当に規制するものと考えられます。
また、二十四ページの3の(3)にありますけれども、
事業主の勧奨に応じて退職した場合であっても
労働者の都合に丸をつけるようにというふうな取り扱いになっています。
これは、正社員の場合、
事業主の勧奨であれば当然
事業主都合ということで支給制限、
給付制限を受けずに受けられるわけですが、派遣
労働者の場合はこういった不利益な取り扱いも受けています。
そして、1か2に該当しない場合には、たとえ当該
労働者が
離職票の発行を希望しても一カ月
程度は
離職票を発行しないという取り扱いになっており、派遣
労働者が
失業してもしばらく
離職票をもらえないというトラブルの
原因になっています。
以上のように、派遣
労働者は、契約解除や契約更新拒絶など
事業主の都合で
離職した場合であっても、通常の
労働者と同様に
離職後直ちに
離職票が発行され七日間の待期を経てすぐに
雇用保険給付を受けるということがなく、そうした措置は廃止すべきですし、その
原因となっている様式二号は廃止すべきです。
改正法案において、短時間
労働者、登録型派遣
労働者への
雇用保険の
適用拡大を図ることとしている以上、
給付に関する差別的な取り扱いの廃止は急務です。
三番目に、派遣
労働者を初めとする有期契約
労働者の
教育訓練給付について述べます。
期間の定めのない
雇用と異なり、有期契約、とりわけ派遣
労働者は、市場のニーズに見合った技能の習得が
雇用と
生活の確保にとって極めて重要です。コンピューターの
関連業務などにおいて端的に言えますように、三年
程度で技能の陳腐化が進む最近の
労働市場の実態にかんがみますと、派遣
労働者が一定の
労働条件を確保する上では、企業内
教育訓練の
機会が保障されやすい通常の
労働者とは異なって、少なくとも加入
期間三年の条件を満たしたときには
訓練給付金が支給されるよう
見直しが検討されるべきだというふうに考えます。
以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。