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内藤正光君
民主党・
新緑風会を代表して、ただいま
議題となりました
金融商品の
販売等に関する
法律案につきまして、
反対の立場から
討論を行います。
金融ビッグバンの進展に伴い、さまざまな
金融商品が開発、販売されている現在、
顧客を保護するための
法整備は喫緊の課題であり、
民主党はいわゆる
金融サービス法の制定を強く主張してまいりました。しかし、英国では
ビッグバンが実施された一九八六年には既に
金融サービス法が制定されていたのに対し、我が国では同法の制定は先送りされ続けてまいりました。
同じ構図は金融機関の破綻処理にも当てはまります。
ビッグバンが進展する中、拓銀や山一証券が破綻に向かっているにもかかわらず、破綻処理
制度を整備せず、ただ手をこまねいていたことが未曾有の金融危機を招き、巨額な公的資金を投入せざるを得なくなった状況をつくり出していったことは改めて言うまでもございません。
さらに、本
法律案を
金融サービス法の第一歩と位置づけるには、それは余りにも小さな一歩にすぎません。本
法律案のたたき台となった金融審議会の議論からは大きく後退している上に、同審議会の蝋山第一部会長が憤慨しているように、縦割り行政の弊害も露骨にあらわれています。まさに、
ビッグバンの進展とは余りにもバランスのとれない欠陥法案だと言わざるを得ません。
以下、本
法律案に
反対する理由を申し述べます。
第一に、対象となる
金融商品の範囲として、
商品先物取引などを除外している点であります。
これは、金融取引を幅広く対象とし、縦割り
規制から機能別
規制への転換を目指した金融審議会の方針からは大きく後退をしています。しかも、報道によれば、これは
商品先物取引を所管する通産省によって骨抜きにされた結果であるとも言われております。そうであるとすれば、これはまさに
金融サービス法の基本精神を踏みにじる行為にほかなりません。
第二に、
顧客に対し
説明しなければならない重要事項の範囲が極めて不十分であるということでございます。
そもそも、
顧客保護という目的を実効性あるものとするためには、ただ単に
説明するだけではなく、商品の仕組みを理解させることが大前提です。重要事項を元本欠損が生ずる旨だけとするのでは、商品の仕組みを理解させることなどはなから考えてはいないと言わざるを得ません。表面的に
説明して事足れりとするのでは、大きな社会問題となった商工ローン被害の再発を防ぐことなど到底望むべくもありません。
第三に、
顧客に対する
説明の方法について何ら手当てがなされていないということであります。現実の紛争処理の多くが、言った言わないの水かけ論に陥ってしまうことを考えると、少なくとも貸金業
規制法のように、書面の交付義務を課し、
顧客に商品
内容を十分理解させるような
措置を講ずべきであります。
第四に、勧誘方針の策定について、販売業者の自主ルールに任せるだけではトラブルが今後も続出する懸念を払拭できないということでございます。ルールの策定に当たってのガイドラインがなければ、公表義務を課したところで意味はありません。英国の
金融サービス法では、電話勧誘や訪問勧誘を
原則として禁止したり、いわゆる適合性
原則も厳格であるなど、ルールが明確に定められています。販売業者の自主ルールのみで問題が解決すると考えているのであれば、認識が非常に甘いと言わざるを得ません。
第五に、金融審議会でも大きな論点となった裁判外紛争処理
制度の創設が先送りされてしまったことであります。紛争があるたびに裁判で解決しなければならないというのでは、利用者の立場に立った
法律とは到底言えません。しかも、この問題が先送りされた背景には、もし公的な紛争処理機関を設ければバブル期に問題となった変額保険やワラントの販売をめぐる訴訟が不利になってしまうと金融業界が強く抵抗したためだと言われております。
金融不安の解消のため、金融業界には既に巨額の公的資金が投入されております。にもかかわらず、経営者はだれ一人として責任をとらないばかりか、これらの問題解決に誠意を持って臨むこともなく、あまつさえ借り主に対して圧倒的に有利な立場を悪用して貸し渋りを今なお続けております。
このような金融業界に手心を加えることは、決してあってはなりません。まさに、越智前金融再生
委員長が見せた手心発言のあの体質が、この法案を全く無意味な骨抜き法案にしてしまったと断ぜざるを得ません。
いつの世も、
金融商品に関するトラブルは後を絶ちません。国民生活センターには、元本保証などについて事実と異なる
説明を受けた、値下がりなどのリスクの
説明がなかった、必ずもうかるといった断定的な情報を提供された、商品
説明がなかったなど、商品
説明に関する苦情が数多く寄せられております。
その中でも最も悪質かつ卑劣とも言えるケースが、国
会議員としては戦後最も重い懲役十年という実刑判決を受けながら、いまだに本院に籍を置く
議員によって引き起こされたことに私は憤りを禁じ得ません。
高齢化のスピードが勢いを増していく中、自民党政権の
経済失政によってもたらされた失業の不安、老後の不安、増税の不安という三つの不安を抱える国民は、この低金利時代に少しでも利率の高い利殖先を求めております。これら善意の国民を金融トラブルから守るためには、真の
金融サービス法をつくることはもちろんのこと、この三つの不安を解消することが何にも増して大切でございます。もはや、時代に適合しないシステムの最たるものである自民党政権にはそのことは到底望むべくもないことを指摘し、また
民主党こそがそれに取ってかわるべき政権であることを強く申し上げ、私の
討論を終わります。(
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