○阿南一成君 自由民主党の阿南一成であります。
本日は、先ほど前の
質問者も触れられましたが、名古屋市における、
少年たちの陰湿ないじめを伴う
中学生五千万円恐喝
事件、それから、愛知県豊川市における、
高校生による人を殺す体験をしてみたかったというたわ言のもとに敢行された主婦殺人
事件、そしてさらに、先日の十七歳の
少年による西鉄高速バス乗っ取り人質監禁殺人
事件など、今日的問題に絞って緊急に
質問をさせていただきます。
まず最初に、これら一連の
少年による
事件によって不幸にも命を落とされました被害者及びその御遺族の方々に対して、心よりその御冥福をお祈り申し上げたいと
思います。
ところで、五月十一日の
教育改革国民会議において、江崎玲於奈座長がこの一連の
事件を踏まえまして提案した緊急アピールをめぐり激論が交わされたと報じられております。
当初の座長原案は、
教育改革国民会議の名のもとに、物事の善悪など、規範意識で
教育にためらいは許されないとして、
少年犯罪に毅然として立ち向かうよう訴えかけるアピールの内容であったと承知をいたしております。
ところが、同会議のメンバーの一部に、短兵急だ、家族や
学校の悩みを共有していないなどと激しく反論する者がおり、結局国民会議は、国民とともに考え歩んでいきたい等と、従前どおりの、この緊急事態に全く波長の合わない、それで何の役にも立たないものとなったと私は考えております。しかも、江崎座長原案のトーンを大幅に落とした上に、さらに、
教育改革国民会議の名のもとではなく、江崎座長個人名によるアピールとなっております。そしてさらに、
出席者の中には、この最初の原案のアピールをどうしても出すというならば、同会議のメンバーをやめるという発言まで飛び出したとのことであります。
そこで、私はまず、
事務局の責任者に事柄の成り行きを事実のまま忠実に報告を願う予定でありましたが、時間の関係もありますので、後ほどレクを受けることにいたしまして、答弁は結構でございます。
座長は既にアメリカに行っておられます。この緊急アピールをめぐるごたによって江崎座長が
教育国民会議の座長をおりることのないよう、
事務局としてしっかりとその補佐をしていただくことを要望しておきます。
次に、警察庁としては、この一連の荒れる
少年非行の原因をどのように分析されておるのか。そして、
事件が発生してから動き出す刑事局とは異なって、生活安全局は未然防止という責任も負っているわけでありまするので、この問題にどのように対処していこうとしておられるのか。そしてさらに、非行関連省庁に警察庁として要望したいことがあるか。なかんずく、当
委員会は文教
委員会でありまするので、特に
文部省に望むことを、官庁間のかばいをやめて、このような非常事態でありますので率直にお聞かせ願うべく
質問通告をしておりましたが、私の後の
質問をする仲道
先生との時間調整もこれあり、後ほどレクを受けたいと
思います。せっかくお見えいただいてありがとうございました。
ここで一言申し上げます。
私は、今国会の冒頭、三月十四日の文教・
科学委員会で、当
委員会のトップバッターとして
質問に立たせていただき、中曽根
大臣の所信表明に対する幾つかの
質問をさせていただきました。
大臣は当
委員会の
出席が難しいとのことであり、私の
質問通告について、
河村総括
政務次官と
大臣との間でしっかりと打ち合わせを行っていただくことを条件に、
大臣への
質問は
河村政務次官に御答弁をいただきました。
私は、このとき、この参議院の文教・
科学委員会は一体何であろうかという疑問を持ちました。政府の責任者に国民の代表である国会議員が
質問をすることは憲法で保障されているものであります。そしてこの文教・
科学委員会は、文教・科学行政を所管する常任
委員会であります。しかも、私は中曽根
大臣が
大臣になられて最初の
大臣所信表明に対して
質問通告をしておるわけでありますので、
大臣としてこれ以上重要な事項が他にあるということは、正直なところ私には理解できず、
河村次官に誠実に御答弁をいただいたことには感謝を申し上げるわけでありますが、私の心のひだには消化不良のものが残ったということを率直に申し上げます。
きょう再び、
大臣は当
委員会の私の
質問時間には御
出席できないということであります。私は、本日、これからの
教育行政にとって極めて重要であると思われる、
教育改革国民会議の緊急アピールを初めとする
教育改革国民会議のあり方及び当文教・
科学委員会との関係について直接に
大臣にそのスタンスをお尋ねし、確認をさせていただきたかったのであります。
そこで、前回同様、
大臣と総括
政務次官の間で私の
質問通告についてしっかりと打ち合わせをしていただくという前提のもとに、私も与党でありますので、以後、私の
大臣に対する
質問については
河村政務次官に
お答えいただくということで一応了解はいたしましたが、極めて不完全燃焼であることを申し添えておきます。そして、官房長から一言ぐらいあいさつがあってもいいのではないかというのが率直な私の
気持ちであります。
ところで、
教育問題のこの負の部分を論ずるときに
教育の専門家、
文化人と称する人々から必ず出てくる議論といたしましては、その原因は複合汚染であり、そんなに単純な問題ではないという議論であります。そして、
先生が悪い、
家庭が悪い、
地域社会が悪いと、ダイナマイトのおしりに火をつけて、責任をたらい回しにするだけで何らの
効果的な対策を持たず、その
うちにマスコミ、世論の鎮静化を待つというパターンの繰り返しであると私は
認識をいたしております。そして、何年か後に大きな
少年事件が起こりますとまた同じような大騒ぎをして、世の評論家や
教育専門家と称する人が出てまいりましていろいろと議論をして、結局は対策も打ち出せず、その繰り返しで今日に及んでいるのであります。
そこで、私は
文部大臣に申し上げたいのであります。
文部省の中に、事務次官を責任者として、
審議官以上全員をメンバーとする緊急プロジェクトチームをつくり、毎日でも会議を開き、八月の概算要求に向けて、予算に伴う緊急対策を打ち出すべき事態であると
認識をいたしております。
文部省も伝統のある組織のしっかりした官庁でありまするので、
局長、
審議官以上がこの
教育の負の部分の対決に没頭いたしておりましても、つかさつかさで十分に機能をしていくと
認識をいたしております。
私としては、
大臣が、この
教育の負の部分に対して
文部省が省の英知を集めてしっかりと
効果のある対策を打ち出すまでは、国際交流、
文化交流その他、たくさんの予算を伴う行政の執行は認めないといったぐらいの強い姿勢で臨むならば、役所の組織は本気で政治家の
大臣のもとに動き出すと思うのであります。私は、訴願前置主義のごとく、
文部省としてはまずこの
教育の負の部分に対する緊急対策を固めた後に他の文部行政にかかれというぐらいの強い
大臣の
指導力が必要であると考えております。
文部大臣の決意をお伺いしたかったのでありますが、
大臣不在でありますので次の
質問に移ります。
そこで、私はこの緊急事態に対して数点ほど提案をさせていただきます。先ほど
大臣に御提案申し上げた、
佐藤事務次官を責任者とした緊急プロジェクトチームで緊急対策を打ち出すときの参考にしていただければと
思います。
私は、困難な問題に立ち向かうためにはソフト、ハードの両面作戦が必要であると
思います。そして、さらに重要なことは、その目的を実施するための具体的な施策が特に重要であります。
そこで、第一点目でありますが、中教審の答申にもありました心の
教育の問題であります。私は、中教審から問題の本質を突いた心の
教育の
充実というすばらしい答申をいただいたと思う者であります。しかしながら、行政におけるその後のフォローが見えてきません。私は、心の問題は幼児
教育が極めて重要であると考えております。
社会の手あかにまみれていない純真無垢な時代に美しいお花を育て、そしてそのお花と会話をすること、もし仮に手を抜いて毎朝上げていたお水を上げることを忘れていたら、そのお花が悲しそうにしおれていること、しかし気がついて慌てて水を上げますと、そして頑張ってねとお花に声をかけますと元気になってくることを学ぶことは、その幼心に対して立派な
情操教育になると思うのであります。
そこで申し上げます。
文部省は、八月末の予算概算要求に向かって予算をセットし、全国の小
学校低学年の全学級に花壇を設けて心の
教育の実践をしていただきたい。私の事務所でざっと試算をしてみましたが、
文部省全体の予算から見ればさほどの額ではありません。必要であれば私がこの文教・
科学委員会の諸
先生方に陳情し、御賛同を賜り、お願いをして
先生方の署名入りで大蔵省主計局にかけ合うこともやぶさかではありません。ぜひ
河村総括
政務次官の前向きの答弁を期待いたします。
なお、わび、さびの世界の茶道、そしてすばらしい芸術品を鑑賞し情操を高めるための
学校外の美術館、博物館の見学も、課外授業ではなく小
学校低学年の正規の授業
カリキュラムの中に組み込むことを、地方分権の時代ではありまするが、全国の都道府県、市町村の
教育委員会に
文部省は
指導してほしいと思うのであります。
第二点目、教師の資質の向上と教師の支援体制の確立についてであります。
子供たちを健やかに育てるために教師の果たすべき役割は極めて大きいものがあり、その重要性は幾ら強調してもし過ぎることはないと思うのであります。
学校は、知識や技能を教えるという役割だけでなく、
子供たちの健全で豊かな心を育てる上でも、
家庭、家族と並んで大変重要な学びの場であると私は
認識をしております。
子供たちが大きな問題行動を起こす前には必ず何らかのサイン、前兆があります。その段階で親や教師が
子供たちのサインに気づき適切な対応をすることができれば、大きな悲劇を事前に防ぐことも可能であろうかと思うのであります。
そのためには教師の力量が極めて重要であり、単に頭がよいというだけではだめで、
子供たちの心や行動の変化に敏感に気づき、
子供たちの心を開かせ、相談に乗ったり、悪いことは悪いとはっきり
指導し、
子供たちを正しく導くことのできる能力と見識、
人間性を備えた教師が求められると
思います。
そして、さらに私が重要と思うことは、
学校をまとめて引っ張っていくべき立場の校長、教頭の前向きの姿勢であります。残念ながら現状は、
事件が発生した場合になるべく穏便に済ませようとして、みずから処理することが不可能なことまで
学校の中で抱え込もうとする体質が管理者の中にあると見ております。そうしてそれは、正義を実現しようとしてやる気のある正統派の教師に泣いてもらうという処理の仕方につながると思うのであります。私は、生徒が教師の言うことを聞かず我が物顔に振る舞うということがあれば、そもそもその時点で
教育は成り立たないと考える者の一人であります。校長、教頭の猛省を促すとともに、いじめや校内暴力に対応できない校長、教頭には職を去ってもらうシステムを構築するべきであると考えております。
私は、
学校の中が、強くて悪いものに巻かれるといった退廃的なムードができていることを恐れます。
子供たちの前で、正義が勝つ、正義が強いということを教えることが今一番重要であると思うのであります。そのためには、前向きに頑張る教師への支援体制をしっかりと
文部省で構築していただきたい。そして、
大臣には、教師の一層の質の向上と教師の支援体制の確立の方法をお示しいただきたいと考えております。
第三点目でありますが、続発する
少年事件に対して、私は、運輸省の航空事故
調査委員会のような、常設の専門家から成る
委員会を
文部省の中に設置すべきであると考えます。既存の
委員会があることは承知をしておりますが、失礼ながら今までの
やり方では機能しないと考えております。
そこで、今回のような大きな
事件が発生した場合には、その都度、その
事件に専門家から成るプロジェクトチームを編成し、そのチームを現地に派遣されたいのであります。そして、数カ月にわたってあらゆる角度からその原因の究明と問題解決の処方せんを検討し、それを報告書にまとめて、この文教・
科学委員会にもその報告書を提出すべく義務づけてほしいのであります。そして、その
委員には、既成の
教育専門家などは排除していただき、
事件に巻き込まれた御遺族や、いじめによりかわいい我が子を自殺に追いやって反省しきりの御
両親などをぜひ登用していただくことを提案します。
第四点目でありますが、江崎座長が極めて強く御主張なさっておられる全小中
高校へのスクールカウンセラーの配置と二十四時間対応の電話相談、
子供の悩み一一〇番はぜひとも実現してほしいと要望いたします。
時あたかも、各省庁とも来年度の予算概算要求の準備に取りかかったところであります。
大臣の前向きな答弁を求めます。
なお、大変恐縮でありますが、持ち時間の都合もありますので、要点のみを簡潔に
お答えいただくことをお願い申し上げます。