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2000-03-14 第147回国会 参議院 経済・産業委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月十四日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         成瀬 守重君     理 事                 馳   浩君                 畑   恵君                 円 より子君                 山下 芳生君                 梶原 敬義君     委 員                 加納 時男君                 陣内 孝雄君                 須藤良太郎君                 真鍋 賢二君                 足立 良平君                 今泉  昭君                 藁科 滿治君                 加藤 修一君                 西山登紀子君                 渡辺 秀央君                 水野 誠一君    国務大臣        通商産業大臣   深谷 隆司君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君    政務次官        通商産業政務次        官        細田 博之君        通商産業政務次        官        茂木 敏充君        経済企画政務次        官        小池百合子君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君    政府参考人        科学技術庁原子        力局長      興  直孝君        大蔵省国際局長  溝口善兵衛君        資源エネルギー        庁長官      河野 博文君        資源エネルギー        庁公益事業部長  大井  篤君        特許庁長官    近藤 隆彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○経済産業貿易及び公正取引等に関する調査  (通商産業行政基本施策に関する件)  (経済計画等基本施策に関する件) ○アルコール事業法案内閣提出)     ─────────────
  2. 成瀬守重

    委員長成瀬守重君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  経済産業貿易及び公正取引等に関する調査のため、本日の委員会政府参考人として科学技術庁原子力局長興直孝君、大蔵省国際局長溝口善兵衛君、資源エネルギー庁長官河野博文君、同公益事業部長大井篤君及び特許庁長官近藤隆彦君の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 成瀬守重

    委員長成瀬守重君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 成瀬守重

    委員長成瀬守重君) 経済産業貿易及び公正取引等に関する調査を議題とし、通商産業行政基本施策に関する件及び経済計画等基本施策に関する件等について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 足立良平

    足立良平君 民主党の足立でございます。  一応トップバッターということで、きょうは経企庁長官それから通産大臣中心にひとつ質疑を交わしていきたい、このように思います。  私は、細かい数字とか、ある面においては、こういう発言があったからどうとかというような細かい、そういうことでやりとりをしようとは思っておりません。これからの大きな流れとしてどういうふうに考えていったらいいのかということを中心に、ざっくばらんにひとつ質疑を進めさせていただきたい、こう思っております。  それでまず最初に、経企庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。それは、昨日のマスコミ各紙中心にして十月—十二月の経済状況等の発表があったわけであります。それで、これは内容はもう一々時間の関係で申し上げません。それぞれマスコミとしては〇・六%のなには大変難しいというふうなことも予測をいたしておりまして、これはこれからの一月—三月の動向いかんだということもこれまた事実だと思いますが、今日までのこの状況とそれから先行きについての展望を経企庁長官からひとつお聞きをいたしたいと思います。
  6. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 昨日、私どもの方で一九九九年の十二月のQE四半期別のGDPの動向を発表させていただきました。その数値は既に御存じのように実質で一・四%のマイナスでございました。前期七—九月期に続きまして、七—九月期の一・〇%のマイナス、そして今回も一・四%のマイナスでございますので、今年度のプラス〇・六%の成長がどうなるかと御心配をいただいているようでございますが、この内容を見ますと大変改善の見られるところもございまして、〇・六%の成長は可能な範囲可能性がかなり高いと考えております。  といいますのは、現在かなり、九九年の一—三月、これが一・五%、それから四—六月、これが一・〇%の成長でございました。あと一—三月がどれぐらいの成長をすればこの〇・六%ないし〇・五%という政府見通しが成立するのかと申しますと、〇・五%、平成十一年度の成長率がなるためには、この一—三月が一・六%でございます。それから、見直し見通しでございます〇・六%が達成されるためには、二・〇%であります。プラス成長になるためには、大体〇%ないしマイナス〇・二%でもいいのでございますけれども、そういうような状況になっております。  その後、一月、二月の動向を見ますと、一月には消費が一・六%成長しておりますし、また自動車販売、家電の販売ども相当大幅に伸びております。さらに、労働需要は依然として厳しいところがございますけれども求人倍率が〇・五二、これは小渕内閣が成立してから一番高い数字でございますが、それぐらいに来ておりますし、所定外労働、いわゆる残業でございますが、これも増加傾向にある。さらに企業利益も非常に伸びてまいりました。そういうような状況から見まして、一—三月はかなり成長が期待できる。そういうことを考えますと、この〇・五ないし〇・六というのは非常に達成可能性が高いと思っております。  ただ、コンマ以下まできちんと当たるというのは正直言いまして過去の例も少のうございますが、ホールインワンみたいなものでございまして、なかなかコンマ以下まで当たるかどうか、上へ超すか下へ下がるか、そういうことがございまして、その範囲、近辺でございますとグリーンに乗ったということだと考えております。
  7. 足立良平

    足立良平君 最近のグリーンは大変大きなグリーンになっていまして、ですからピンそばのグリーンに乗るのとその端っこに乗るのとは全く意味も違いますから、その点長官十分言葉を使うとき意識して使っていただきたいと思うんです。  私は、〇・六が達成したらどうとかこうとかという問題は、これは一つの政治なり政局問題としての議論がありますので、きょうの段階ではこれを、その問題はちょっときょうは差し控えておきたいと思います。  私はこの経済、今、先ほど長官の方は数字を並べられて、そしてそれで〇・六というものが達成が多分、多分ですね、若干その前後というふうに、コンマ以下は云々とこうおっしゃっていますから、若干自信がなくなってそういうふうな表現を使われたんだろうと思いますけれども、問題は、この〇・五か〇・六とかあるいは〇・七とかという問題もさることながら、私はこの前のときも若干申し上げたかもしれませんけれども経済というのは、経国済民といいますか経世済民というのか、国民の方から見てその生活が一体どうなってくるのか、あるいは将来に対する安心感というものは一体どうなってくるのかという、そういうことこそ一番重要な指標として考えていかなきゃいけないのではないかというふうに私は実は思っているわけであります。  そういう面では、昨日発表された中で若干御指摘のように企業における設備投資というものはふえてきているし、あるいはまたそういう求人倍率もそれは〇・五二、ぐっと上がったかどうかというこれはまた別の判断でありますが、しかし現実的に考えてみて個人消費というものがほとんど動いていない。しかもそれは、九九年の個人所得というものもこれはマイナスになっているわけでありますし、あるいはまた一月の個人所得もこれはマイナスになってきているということ等々を考えてみたときに、私はむしろこれからの経済の一番中心をなすであろう六割の個人消費というものが、一体これがどうなるかということがこれからの我が国の経済動向を決めることになるのではないかというふうに思うわけでありまして、そういう点で長官考え方をさらにお聞かせを願いたいと思います。
  8. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 私は自信をなくしたから言ったわけではございませんで、予測というものの性格について申し上げて、いささかの範囲があると、こう申し上げたのでございまして、予測について私の自信が揺らいでいるわけではございません。  御指摘消費の問題でございますけれども、十二月、昨年十二月の消費支出は大変低うございまして、前年同期、一昨年の十二月に比べまして消費支出実質四・〇%の減少となりました。  この主要な理由は、やはりボーナスが非常に低かったことでございます。そのボーナスがどうして低かったかと申しますと、大体ボーナスというものはその年の春に、四月から六月までの間に、前年の三月期、各企業の三月期の決算を予測いたしまして、それで春闘その他で決められております。それが夏と冬と二回に分けて出されるわけですが、少ないときには、前年に比べて減るときには主に冬で調整される。その結果、冬のボーナスが低かった、これが消費支出にも影響したと考えられます。ちなみに申しますと、公務員でも平均で八・六%冬のボーナスが少なかったのでございます。そういうことが支出に影響した。  そのほか、二〇〇〇年問題で旅行が控えられた、大型の買い物が控えられたというようなこともあったかと思いますが、これで消費が抑えられまして消費支出が減りまして、消費性向の方も余り芳しくふえてはおりません。  それで、そのボーナスというような一次要因を除いたこの一月はどうかと申しますと、前期十二月に比べまして季節修正済みで一・六%回復してまいりました。それでもまだ前年同期に比べますと下回っておりまして、御指摘のように家計は厳しいということが言えると思います。  経済の循環といいますか、こういう景気の波から申しますと、まずやはり最初政府下支え公共事業住宅減税を行いました。これによって、デフレスパイラルに落ち込むかと言われたような経済を九八年から九九年にかけまして支えてまいりまして、ようやく下支えができたというような状況でございました。  それから、いろんな構造改革的な手、例えば金融の問題であるとか、産業競争力の問題であるとか、中小企業政策転換であるとか、あるいは貸し出し保証の問題であるとか、そういったことを支えまして、企業のたまりにたまったバブル以来のうみをだんだんに出しまして、その結果、売り上げ利益率自己資本率ども徐々に改善してまいりまして、ようやく企業の側に動機、前向きの動きが出てまいりまして、雇用の方も少し増加し出したということでございます。  したがいまして、この一月からの消費回復というのは、かなり足元のしっかりした、早くはございませんが、しっかりした裏づけのある回復になってきているのではないか。もう少し御辛抱いただきますれば、個人の方々にもこの経済回復の潤いが実感していただける状況になるのではないかと思っております。
  9. 足立良平

    足立良平君 ちょっと所管外かもしれませんけれども失業率は一体どのように考えていますか。
  10. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 失業率は、実はことし一月に季節修正の改定がございました。その結果、現在四・七%、十二月も四・七%、十一月が四・六%、一番高かったのが七月ごろでございまして四・八%です。実を言いますと、失業率がかなり去年上がるんじゃないか、五%を超えるのは必定だと言われたんですが、四・八%でとまりまして、以後少し落ちたかなどうかなという程度で、ずっと横ばい程度の、高水準横ばいという形になっております。
  11. 足立良平

    足立良平君 問題は、個人消費が拡大、火がついてくるということは、やっぱり将来に対する国民皆さん方安心感といいますか、発展していくであろうという、そういう一つ見通しが明るくなってきているという状態でないとなかなか難しいというふうに私は実は思っているんです。  先ほど長官の話の中に出ていましたように、消費性向にしても、これは一応七〇%前後で、七一%ぐらいでしょうか、もうこれはほとんど動いていない、大変厳しい状況の中で今推移をしているわけでして、そういう面からすると、私は、この個人消費が一体どういうふうになるかということがこれからの経済をやっぱり左右するだろうというふうに思います。  これは数字をきょうは持ってきておりませんから、若干小さな数字は違うかもしれませんけれども、例えば、いわゆる個人金融資産というのは千三百三十一兆円くらいあるんだろうと思います、ざっと見て千三百三十兆円。それで、そのうち預貯金というのは約七百兆円くらいあっただろうと思います。しかもこの預貯金、大体株とかいろんな金融資産というのはほとんど横並びですけれども預貯金というのは、ここ数年といいますか、大変経済環境が厳しいあるいはまた個人所得というものも大変厳しい、そういう中においてすら相当ふえてきているわけです。そして昨年度においても、たしかそういう状態でもまだ預貯金というのはふえてきている。実際のところ、千三百兆円何がしかは一体だれが持っているのか、ちょっと私も正直言って不思議に思うのですが、現実的には統計的にそうなっている。  それを考えてみると、国民皆さん方の例えば資産というものは、そういうものについては全くないとは言えない、けれども個人消費が全く動いていないということは、私はやっぱり将来に対する不安感というものが大変それを大きく左右しているというふうに考えざるを得ないと思うんです。  そういう点をもろもろ考えてみたときに、私は、この個人消費のこれからの動向というものが、いわゆる例えば、これ先ほどいろんな、予算委員会でも今議論されているような、例えば財政上の問題、あるいは年金の問題、あるいは保険の問題、あるいは介護保険の問題、将来に対するいろんな不安感というものが極めてたくさんある。日本国民というのは大変レベルが高い。そしてそれは、今政府予算の中でばらまきでいろんなこうやっているけれども、将来必ず増税という問題もついてくるだろう、あるいはその年金問題についてもやっぱり不安があるだろう、そういうところから、自己防衛的にやはり個人消費というものは全く動いていかない。  そういう面で、政府経済政策なり政府のポイントというものがその辺のところを一体どう考えていくのだろうということがこれからの経済として一番重要ではないかというように私は実は思っているわけですが、その点についてちょっと長官考え方を聞いておきたいと思います。
  12. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 仰せのとおり、将来不安というのは日本国民にいろんな面であろうかと思いますが、例えば今委員指摘になりました経済関係あるいは年金の問題などもその一つかもしれませんし、少子高齢化社会がやってくるというのも非常に重要な不安要因になっている、あるいは技術の問題なども日本確実性が衰えてきたというような不安があって、かなり人々の不安になっているという面もあろうかと思います。  それで、貯蓄率がなぜ高いかということでございますけれども、これはなかなか難しい問題でございまして、じゃ福祉の高い国は貯蓄率が皆低いか、あるいは逆に福祉のばらつきのある国、例えばアメリカなどは福祉の点で申しますと日本よりも確実性が低いと思うのでございますが、貯蓄率は極めて低い。国民性とかいろんな構造にもよるのでございましょうけれども、これはなかなか難しい問題だと思います。  それはともかくといたしまして、日本個人消費を拡大していく方法としてどんなことがあるかといいますと、やはり一番大事なのは日本経済に対する自信ということだと思います。そのためには、九〇年代に入りましてから日本経済が、かつては八〇年代には世界に冠たるジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた日本経済が今は非常に諸外国に比べても見劣りをする、どうも不況が繰り返されるようだ、そういったような日本経済自身に対する、全体に対する不安がといいますか、自信が衰えているんじゃないか。  したがって、ここで日本構造改革をきちんとやりまして、日本経済構造をきちんと改革いたしまして、かつての規格大量生産を再現するのではなくして、新しい知恵の時代にふさわしい技術と活力を持った構造にしなきゃならない。これが今私たちの直面している大きな問題だと思います。そして、そういう中で、人々が楽しく、楽にそして長い年月働けるような形をつくっていかなきゃならない。  そういう観点から考えますと、やはり市場経済を広げて、効率のいい労働配置効率のいい資本配置をつくっていく、そんな構造改革を今景気対策とともに一緒にやっていかなきゃいけない時期だろう、こう考えております。
  13. 足立良平

    足立良平君 今の市場経済効率のいい云々というのは、私も原則的にそういう考え方を実は持っております。ですから、これからの日本経済というのを考えたときに、確かにおっしゃるとおりの必要性が私はあると思うんです。  ただ、正直に申し上げて、一方で大変に実は私不安を感じているんです。それは何かというと、これも昨日でありましたか、三和銀行それから東海、あさひ銀行でしょうか、一応合併といいますか統合の話がちょっと出ております。今、銀行業界はいわゆる金融再編の問題を含めてグローバルの中で競争条件をつくり上げていく。これは自動車産業もあるいはすべての産業がそういう状態になると思います。銀行の方もこれからさらにまたリストラというものがますます強くなってくるだろう。マスコミ等もそういう論調で一応記事を書かれておるわけです。  私は、確かにそういう問題はある。しかし、もう少し考えてみると、今までの日本銀行というものは、例えば住友銀行だったら住友系のいわゆる旧財閥的な各企業がずっと下につながっている、あるいはまたその他興銀なら興銀とか、いろんな銀行系列別に各産業、各企業というのがずっとつながっている。そして、それがお互いに競争関係の中にあったわけです。そのそれぞれの銀行が従来の旧財閥系を乗り越えて大きく統合されていく。それは当然にして各企業、各産業の方まで全部やっぱりこれはつながっていく。  そうすると、私は、これからその失業の問題も含めて、実はいわゆる銀行なら銀行だけのそういうふうなリストラの問題にとどまらずに、それはすそ野の大変広い各産業までそれが及んでいく可能性を持っている。しかも、それは一年や二年のスパンで終わるわけではないということを考えてみると、これからの日本失業率というものは、確かに四・八をピークにして今四・七でずっとほとんど推移している。それは五%になるかならぬかということがあったかもしれないけれども、現実的にこれからの日本失業問題、雇用問題というのは大変に大きな問題として出てくる。それは一方において日本経済に大変にこれまた大きな影響を与えてくるというふうに私は実は思っています。  そういう面からして、効率のいい経済という前提ですべてを律してしまうと、そこに本当に働いている人たち、まじめに本当にこつこつ働いている人たちの問題というものを一体どうしていくかということが実はちょっと横に置かれてしまう、この点について長官考え方をお聞きしておきたい。
  14. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 私どもでは昨年、「経済社会のあるべき姿と経済新生政策方針」というものを閣議決定いたしました。略して「あるべき姿」と呼んでおりますが、その中でもこの議論は重要でございまして、効率的な経済と安心できる社会、これが二本立てだろうと思います。  委員指摘のように、日本では、特に戦後六〇年代から金融中心とした縦の系列大手銀行がございまして、そこに大手メーカー流通がくっつき、そしてその下にまたメーカー下請がくっつき、流通納品業者がくっつき、一つの縦の系列があった。それからもう一つ、役所が指導いたします横の護送船団と言われる業界別のと、縦横の組織の中で安住できる仕組みをつくりまして、どうかこういうように守っているから安心して投資をしてくださいという形でどんどん投資をして規格大量生産型のものをつくり上げた。これが八〇年代になりますと、生産力が過剰になりまして、だんだんと外国へ売り込みに行ったりして円高になり、またそれがバブルの原因になる、こういう状態がありました。  今、この横の規制改革によりまして横の護送船団がなくなると同時に、金融改革によって縦の系列もなくなってまいりました。そうすると、金融系列がなくなりますと、そこに入っておりました企業金融的に保護されないからリストラをやらなきゃいけない、あるいは合併をやらなきゃいけない。どんどんとそうなってまいりますと、さらにまたその下請分野についても合理化が必要だと、こういう形になる。これは競争力を高めていく上で不可避の過程なのであります。だから、それをどのぐらいのテンポでやるかということはございますけれども、やはりそこを避けて通るわけにはいかぬと思います。  そして、今申しましたのがいわばオールドエコノミーでございまして、それを今度雇用の面あるいは経済を発展させる技術の面で知恵の値打ちを生み出すようなIT産業でございますとか介護産業でございますとか、そういった新しいサービス産業技術産業が生まれてきて、雇用の移転あるいは資本の移動が行われる、これが現在の状況だと思います。これはアメリカでも他の国でもある時期は大変な苦労をしてそういう変革をしてきた。日本はまさにそれを九〇年代に実行しておりまして、今その真っ最中でございます。  したがって、これからの雇用問題というのは、終身雇用前提とした系列があり人がその中でずっといけるという形ではなくて、ある程度流動性が出てこざるを得ないと思います。流動性が出てきますと、委員指摘のように、そこに不安もあれば摩擦的な一時的な失業も出てくる。これに対しましては、やはりしっかりとしたセーフティーネットをつくっていく、これが第一の問題であります。  それから第二番目には、だれでも創業できる、これは去年本委員会で御審議、通していただきました中小企業考え方転換でもあるわけでございますけれども、だれでも創業できる、そして創業で一度失敗した人も再チャレンジができるような、そういった創業者中小零細企業から、個人から身を起こそうとする人に資金も人材も技術も情報も流れるような、そういった仕組みをつくることによって新しい創業をふやしていく、そういった流動性のあるダイナミズム社会をつくる以外にないんだろうと思うんです。もちろんテンポの問題がありますから、そういう摩擦的失業がなるべく出ないようにということはあるのでございますけれども、それをじっと守っていればいいかというと、もうみんなで船が沈むような形になりますから、ここはやはりそういうダイナミズムをつくっていかなきゃいけない。  ようやく民間設備投資がふえてまいりまして、新しい技術を取り入れる環境が少し生まれてきた。これが十—十二月、そして今の機械受注増加などに見られるところでございまして、頼もしい動きだなと考えている次第でございます。
  15. 足立良平

    足立良平君 経済ダイナミズムというのは、それは当然必要だろうと思います。  先ほど失業率が五%に行くかもしれなかったけれどもという、いろんな議論があったけれども、四・八か七でおさまる。これは将来わかりません。  問題は、私は失業内容だと思う、あるいはまた現在の雇用内容だと思います。これは長官の直接の所管ではございませんけれども、常用労働がどんどん減っていわゆるパート労働に今変わってきている、雇用内容が変化していく。だから、このことを、特に日本雇用慣行というのが常用労働中心雇用慣行を今日までしてきて、そしてそれはパート労働というのが時間当たりの賃金にいたしましても大変にこれは低い状態に今置かれてきている。だから、相当これは今実質的に内容が変化してきているという、そういう問題が私は現実にあると思うんです。  それは、ちょうど今アメリカ経済というのは、今あそこは大変に活況を呈していますし、そしてまた失業率もたしか四・一%くらいだったんではないかと思います。日本よりも低い。大変これは今までにない状態であります。しかし、考えてみると、アメリカの労働者の賃金というのは大変低い状態に今なってきている。そして、例えば一つの職場でだけ働くわけじゃなしに、大体二つくらい職場を持ってやっている。あるいは女性もどんどんそのまま働いている。そうしないとやっぱり生活ができないというふうな状況になってきているわけでして、ちょうどそれは、雇用が流動化をするということとそれからいわゆる経済の活性化というものとは、そういう面ではいろんな問題を含んでいる。  だから、もちろんこれはまた改めてこれからの雇用の問題なりあるいはまたそういう意味でのこれからの経済のあり方ということは別の場で議論をしなきゃならないと思いますけれども、そういう問題を含んだこれからの活性化ということになると、本当にそれでは日本のこれからの経済というものが一体何を目指していくんだろう。  私は、先ほど申し上げたように、まさに経世済民の概念として経済というものをとらまえてみたときに、一体これから日本国民、今約一億二千六百万の国民が実際的に本当に安心をして暮らしていけるような世の中というものをどうつくるのかということをまず第一義に考えないと、私はちょっと一つ抜けているのではないかという感じがしてならないわけです。  その点について、長官の方にもうちょっと考え方をお聞きしておきたいと思います。
  16. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 先ほどの「あるべき姿」でも書いたのでございますが、まず第一に、人々が自分の一番好みに合った仕事を選んでそして人生を豊かに暮らせる、これが一番の幸せだろうと考えております。そのために、やはり身に合った、自分の能力と好みに合った職が得られる、そういう社会ができたら一番いい。すべての人が自分の好きなことをして十分な豊かさが保てればそれが最良でございますが、なかなかそうはまいりません。  だから、まず職業の選択ができるような状態を、そしてだれでも業を起こしだれでも世の中に挑戦できる、そういったものが一方にありますとともに、他方においては、生活の糧は仕事で得て趣味でも生きられるというような人もつくらなきゃいけない。そのためには安全ネットを十分に張っていかなきゃいけない。それはもちろん失業だけではなしに、病気のときも老後のときも、あるいはそういう競争に参加しにくいようないろんな条件の方もおられますから、そういった方も含めて、人間の尊厳、人権というのは絶対に守らなきゃいけない。ただ、人権を守るのは非常に大切で、第一に大切なことでございますが、これが利権の擁護にならないように、業界とか業者とかいうような利権の擁護にはなるべくならないようにしていかなきゃいけない、そういう世の中ができればいいと思います。  アメリカのお話もございましたけれども、八〇年代、アメリカは大変経済がすさみまして苦労いたしました。大きな自動車会社、ビッグスリーも赤字になる。アメリカじゅうでテレビセットをつくっている工場が一つもなくなる。失業率も上がる。そして、所得の格差が大変そのころ広がった。今も日本に比べるとずっと広いのでございますけれども所得の格差も広がりました。ところが、そのころは経済が復活してもごく特定の大金持ちが出るだけだと言っておりましたけれども、ようやくそれが最近の失業率の低下あるいは底辺の方々の所得増加という形に潤ってまいりました。  日本アメリカのように格差を広げていいというわけではありませんが、そういった競争を通じて新しい産業が生まれる条件のもとで、この安全ネットとの両立、安心して生きられる社会とみずからチャレンジして好みを達成できる、この両方を何とか実現させていきたい、こう考えている次第であります。
  17. 足立良平

    足立良平君 基本的には、私はこれからの経済のあり方というのは、競争条件をさらに強めていかなきゃならないということはもう当然であろうと思います。問題は、その中でセーフティーネットを一体どういうふうにきちんと担保していくのかという、そういう視点でこれから私の方ももう少し具体的に詰めていきたい、このように思います。  それで、きょうは長官の方はこれで終わらせていただきたいと思います。席を外していただいて結構でございます。  あと、通産大臣中心に少し考え方をお聞きしていきたいというふうに思います。  一月のたしか中旬くらいであったと思いますが、急遽サウジアラビアに飛ばれて、アラビア石油の問題で大変難しい交渉をされていたように聞いているわけであります。その会談の内容なり、あるいはまた都内でも再び会談をされたようにもこれまた報道で承知をいたしておりますが、その状況について報告をいただきたいと思います。
  18. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) サウジアラビアは世界最大の石油産油国でございます。また、中東産油国の中でも盟主といいましょうか、大きな力を持っている。我が国に対しては百万バレルという大きな石油の供給国でもあるわけであります。  そういう中で、アラビア石油がいわゆる日の丸石油として今日までずっと営業を続けてきた。それが四十年という期限が二月二十七日をもって終了する。これは普通の契約のような形で単に更新できるというそんな簡単なものでなくて、四十年たちますとサウジに撤収されるという非常に厳しい約束事でございました。そういう中で、アラビア石油は何とかしてこの経営を続けていきたいということで必死に努力をいたしておりました。  本来から申し上げますと、アラビア石油という企業でございますので、企業対サウジアラビアという交渉が専らでございますけれども、しかし、先ほど申したように、サウジアラビアの存在というのが日本にとって非常に大事でありますので、アラビア石油の継続という願いと日サの環境をよくしていくという政治的なあるいは政府としてのやれる範囲の仕事と、ここを一体としてこの事態を乗り切っていこう、こう考えて、昨年、通産省から幹部の者が何回かサウジに渡りましてさまざまな交渉を続けたわけでございます。  その交渉の中には、例えばガス開発の問題、その利用についての協力、支援、また投資に関して言えば、日本の国の企業がサウジに進出する際にどうやってその進出を促進させていくかといったような、そういう問題等々の議論をずっと進めていたわけでありますが、途中からといいましょうか、鉄道に関する先方の要望が非常に色濃く出てまいりまして、なかなか思うように進展しないという状況に相なりました。  ちょうどそういうときにサウジアラビア側から私自身に招請状が参りまして、直接担当大臣と相談をしたいということでございましたので、私は現地に参りましてナイミ石油大臣ほかアブドラ皇太子等々大勢の方々と議論を続けたのでございます。  我々は、ただいま申しましたような事業規模総額で六千億円という包括的な投資促進策を中心にして交渉しました。その間に先方は、千四百キロ、東京から鹿児島ぐらいの距離でありますが、途中は砂漠でありますが、そこに鉄道を敷いて、そしてそこでとれる鉱物を運んできて、石油だけに依存しているサウジの状況から脱皮したいと。この考え方はまことにサウジの国にとっては当然のことでありますが、ついてはその鉄道を日本がつくり提供してもらいたい、こういう話になってきたわけでございます。  私どもといたしましては、もし鉄道を日本企業が開発するという、そういう希望が出てくれば、それも一つかと思って当たったのでありますが、そういう方針の会社は見当たらない。そこで、もしサウジアラビアがみずからこれをおやりになるなら資金的な面での低利の融資を考えてもいいというような提言もいたしたのでありますが、最後まで、これは日本が分担をし提供するものであるという、その主張が変わらなかったものでありますから、私は、国民の税金をこういう形で出すことは国民の理解が得られないというふうに判断をしたものでありますから、そのお申し出にはおこたえができないということで、交渉を中断して帰ってまいりました。それが事実上、この問題について物別れという、そういう残念な結果になったわけであります。  ただ、私どもが一番腐心いたしましたのはサウジの重要性という点でございまして、日サのかかわりが旧来以上に友好的になっていくことが非常に大事でございますから、そこには相当な配慮をいたしまして、交渉事でございましたけれども、その点に関してはまことに円満なというか、そういう状態の話し合いが続きました。  過日、たまたまアジア・エネルギー・フォーラムというのが日本にございまして、ナイミ大臣がお見えになるということで、かねてからそのときはお会いしようということになっておりましたので、東京のさる日本そば屋へ連れていって、そこで食事をしながらさまざまなお話し合いをしたわけでありますが、そのときもナイミ石油大臣から、どのような形になっても日サの関係は影響を受けない、友好的な関係にはいささかも傷をつけないというようなお話があり、この件については公的な場所でも発言をしてくれているようでありまして、その点はまずまずであったかなと、そんなふうな思いを持っております。  以上、ごくかいつまんで今日までの経緯を御報告させていただきました。
  19. 足立良平

    足立良平君 今ちょっと大臣の話の中に出ていましたけれども、一応サウジへ行かれるに当たって、大臣の方と交渉したいというふうに向こうから言ってきたと。これは本来的にいうと、アラビア石油というのは政府とは全く無関係の私企業、全く無関係の私企業政府があるいは通産大臣が直接行って云々ということは一体どういう意味合いを持つのかという問題が私はここに一つあると思うんですね。  したがって、そういう面からすると、これは先ほどの大臣の話の中にもずっとありますけれども、例えば通産省の高官が既にもう昨年は七回くらい行って、直接このアラ石の権益を継続する問題は、一応そういう話はしていたということになると、実際的にはその全く私企業の問題にもう当初から政府が直接的にこのアラ石の問題にかかわってきている。むしろ逆に言うと、サウジの方からすると、アラビア石油という企業は、私企業であったとしても、これはもともと通産省の次官以下全部天下りのずっとポストとしてあるわけですから、四代目社長以下。そうすると、これはもうほとんど、向こうの概念からすると、このアラ石というのは日本の国営ともう大体ニアリーイコールのような感覚で私は受けとめていたのではないかという感じがするんですが、この点いかがですか。
  20. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 冒頭申し上げましたように、アラビア石油は一企業でございます。ですから、本来、サウジアラビアと交渉するということでございます。  ただ、いわゆる自主開発という点からいきますと、アラビア石油の存在が大きいという認識は私どもは持っているわけでございます。我々としては何が一体できるのかということになれば、日サとの関係環境をどう改善していくかという、そういう立場で議論をする以外にはないわけでございます。そういう点で、通産省の幹部の諸君も交渉を続けていたわけでございます。結果的には、私どもに招待状という形で連絡があったわけでありますが、参りました。  おっしゃるとおり、今までの経緯の中でややサウジアラビアはそのような受けとめ方を持っていたかもしれません。だからいろんな要求を出したのでありましょう。しかし、それに対する私どもの回答は、アラビア石油というのはあくまでも一企業であって、我々としては、日本とサウジの関係について何ができるかという議論をしているのであって、それを超えた問題に対してはこたえるわけにはいかない。それが鉄道建設について私どもがノーと答えた理由でございます。
  21. 足立良平

    足立良平君 そうすると、逆に大臣の方がちょっと提起をされたように、六千億ですか、日サの協力、これはどういう形でこれから実施されるんですか。
  22. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) この話については、先方にもよく申し上げたのでありますが、私どもが日サとの関係をよくするという点で話し合いは進めていますけれども、やはりアラビア石油との関係がきちんとされなければ話にならないということも申し上げておりました。だから、この投資をこのまま目下の状態の中で続けていくという思いではございませんし、サウジの方も目下そのような要求を寄せているという状態ではありません。
  23. 足立良平

    足立良平君 ちょっと私、理解がしにくいのは、アラ石というのは純粋の民間だと。通産の高官もそれから大臣も何回かは一応話をされたと。この話をされたその姿勢、立場というのは、まず一つはアラ石の権益というものが一応継続をされる環境をどうつくるかという問題であって、直接云々とは関係ない。それから、サウジアラビアという石油大国でありますから、この関係を大切にしなきゃならない。この二つの理由だというふうにお聞きを今しました。  そうすると、アラ石の問題は、それは環境というのは、いろんな向こう側の思惑もあるでしょう、外国のなににはこれはちょっともうだめだという方針も一応持っていたと思いますからまあ別として、サウジアラビアの石油大国としての位置づけは変わっていない。そうすると、サウジと日本とのいわゆるその関係というものをきちんとしなけりゃ、良好な関係を将来にわたってやらなきゃならないという意味においての六千億なり協力云々というのは、これはアラ石がどうなろうと、現実的にはやっぱり大臣が行って言われたことは、これは日本政府として一たん約束したことだと思うんですけれども、それはないですか。
  24. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 先生が御懸念なさるお気持ちはよくわかります。  ただ、交渉の過程の中で、日サの環境を整備するために我々はやっているんだと。そして、結果においてアラビア石油が存続するということがそのまま日サの関係が円滑に進むことなんだと。したがって、それを先方は十分に考慮に入れての話し合いという、そういう前提でずっと続けてまいりましたから、先方の方も、アラビア石油の問題が結果的にだめになった場合には、これをこのまま日本との約束だとして継続するという考え方は持っておりませんでした。そのあたりはかなり折々の話の中で明確に示してまいりました。  ただ、それ以外に日サとの関係は、例えば人材派遣であるとか、あるいは今日まで投資に関して約束したこと等もございますから、十分な形での関係を維持できると、そのように思っています。
  25. 足立良平

    足立良平君 わかりました。  それでは、これ実際的には大臣、失敗、失敗というのかどうなのかこれはわかりませんけれども、なるべくしてなったのかもしれませんけれども、このアラ石のこれが一応ああいう形で交渉が終わったという原因は一体どこにあると大臣として見ておられますか。
  26. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) これは大変難しい御質問だと思いまして、といいますのは、かなりサウジアラビアで基本的に考える事柄があったのではないか。つまり、その交渉の過程を、アラビア石油とサウジとの交渉の過程を聞いておりましても、サウジアラビアとアラビア石油はいろんな煮詰めた話はしているようでございましたけれども、交渉の結果何とかまとめるという、そんな雰囲気はやっぱり終始なかったように振り返ってみると思います。  つまり、サウジアラビアの政府としてはだんだんに国営化ということを意識していたのではないだろうかな、そんな思いもございます。  ただ、これは先方の国の考え方ですから私がとやかく申し上げるべきでないので答弁しにくいと申し上げたわけでありますが、交渉事でございますとお互いに譲り合いながら着地点を見つけるということなんですが、どうもそのような状態でなかったというのがずっと一貫して見てまいりました私どもの印象でございました。それは、アラビア石油とサウジの交渉の中身が折々伝わってくること及び私ども政府環境改善のために話し合ったその経緯を見ておりましても、どうも交渉でまとまるという前提ではなかったような気がしてなりませんでした。
  27. 足立良平

    足立良平君 そこで、私はもうちょっと大臣に考え方を聞きたいと思うんですが、ずばり言って、今日まで自主開発原油というのでしょうか、という姿勢で今日まで日本としてはやってきたわけですが、このアラ石の問題も含めてこの自主開発原油、自主開発原油といいますかね、マスコミはそういう姿勢を放棄するのかしないのか、あるいはまた継続するのか、極端に言ったらもう新たな鉱区の開発というよりも既存の油田を購入の方がいいんだというような、いろんななにが出ているわけでありますが、大臣としてこれから我が国のそういう石油政策について一体どういう考え方を基本的にされようとしているのか、この点いかがですか。
  28. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 何よりも最も残念なことは、我が国は石油という資源を全く持っていない、全くと言っていいぐらいないという、そういう非常に残念な地理的な条件のもとにあります。そして、エネルギー供給に関して申し上げれば、石油依存度というのが圧倒的に多い、その大部分は輸入に依存しています。その状態の中で何らかの形で自主油田を開発するという、その必要性というのは私は依然として変わりなく残っていると思うのです。そこに自主開発の油田があるということは、安定供給という面での重要な意味を持つのみならず、産油国との関係を強化させるということやらあるいは備蓄の確保といったようなことと並んで私は重要なことではないかと考えておりまして、そういう意味では自主開発を求めていくという日本の姿勢というのは変わらないと思います。  ただ、一方で石油の自主開発というのは非常にリスクが多うございます。そのために今までも石油公団等についての批判も相当多い、同時にまた油価とか為替レートとか、それらの周りの変動も非常に多うございますから、大変リスクが多いわけでございます。  そこで、石油公団に関して申し上げれば、さまざまな批判の中から支援対象事業を採択するに当たっては、経済性に関する審査を強化するとかいろんな手だてを講じなければならないというので、目下はそのような対応をさせていただいている次第でございます。  石油の自主開発の今後の政策については、石油審議会開発部会等でも検討中でございますが、我々といたしましては引き続き経済性を考えながら自主開発という目標に向けて進んでいくということに変わりはないと考えます。
  29. 足立良平

    足立良平君 自主開発原油が望ましいということは私は当然だろうと思うんです。  ただ、今石油の関係というのは、市場が大変発達をしてきているというふうな大きな環境の変化、今おっしゃったような大変リスクの多い問題等々を考えてみると、自主開発というものが当初の考え方なりねらいから相当やっぱり変化してきている。そして、しかもそこに実際的にはいろんな石油、今大臣みずからおっしゃいましたけれども、石油公団を含めたいろんな問題を今抱えて出てきているということからすると、日本のエネルギー政策の一つの柱である石油の問題というのは、今までとは違った視点でやっぱり考えていく状態に今来ているのではないかというふうに私は実は思っていますし、そういう面では、自主開発路線に余り固執をするということはいかがなものであるかということを私は実は考えている一人ですので、そのことだけ一応申し上げておきたいと思います。  少しこの問題から飛ぶかもしれませんけれども、ただ一点だけあえて申し上げておきたいと思うのは、自主開発の問題にしろあるいはまたこれから市場からの石油を調達していく問題にしても、日本の今の実態というのが中東に依存をしているというのが極めて高い、八五%ぐらいだろうと思います。かつて第一次石油ショック、第二次石油ショックのときよりも一〇ポイントぐらい実は上回っているんではないかというふうに思います。しかも、それからもう一つは、我が国の第一次エネルギーの中で石油の持つウエートというのは欧米諸国に比べて大変高い。  そうすると、ここで二つの問題点があります。中東に依存し過ぎるということはやっぱり何としても回避しなければならないというのが第一次、二次の石油ショックのときからの教訓だったと思うんです。その教訓が今日全くそれは忘れられてしまっているといいますか、全くこれは実現していないということが一つ。  それから二つ目に、石油の依存体質というものを変えていかなきゃならないということに関しても、若干、当時よりは少し下がったかもしれませんけれども、欧米に比べてまだまだ日本の石油依存率というものは高い。これもほとんど前へ進んでいないということを考えてみると、一体通産省はそういう、第一次石油ショックが昭和四十八年でしたか、以後今日まで一体どういう政策をやっていたか、どういう行政指導を現実的にやっていたのか、この点についていかがでしょうか。
  30. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 足立委員が御指摘のように、石油ショックがありました後、一方の地域に偏した石油の輸入から形を変えていこうではないかというのでかなり改善された時代がございました。そして同時に、シベリアとか中南米とかいろんな地域に石油を求めていったわけでありますが、結果においては、例えば中国などももはや海外から輸入をするという方向に転じていくように、なかなか他の地域からの石油依存という状況がままならないという姿が年々ふえてきているというのが実態でございます。  私もこのたびの一件がございまして、エネルギー庁長官を初めとして、中東に依存度が高過ぎるではないか、何かもっと分散する方法はないかというので相当議論も重ねているわけでありますが、世界全体を眺めた場合に、その運搬も含めてやはり中東というのが一番目下の体制では頼りになる場所であるという、そういう状態がございます。  ただ、これからはガスであるとかあるいは自然エネルギー、新エネルギーであるとか、あるいは最も大事なのは実は省エネでございますけれども、あらゆる角度からこのエネルギーの供給体制というものを再検討していかなきゃならない時期になっているのではないか。原子力発電についても今までのように、やはりクリーンとか供給性、そういうことでは大事でございますけれども、全体像を見詰め直していくということがとても大事ではないかと考えまして、実は過日、私はこのエネルギーの長期見通しも含めた全体像について省を挙げて検討に入るようにという指示を出しまして、一年がかりぐらいでこれらについての対応を考えていきたいというふうに思っております。  委員の御指摘の意味合いは十分に存じ上げているつもりでございます。
  31. 足立良平

    足立良平君 問題はそこなんですが、それでいよいよその問題に入らせてもらいたいと思うんです。  平成十年に現在の長期エネルギー需給見通しというものが一応決定をした。そして、大臣が発表されたのはたしかこの三月十日だっただろうと思います。結局実質は一年ちょっとぐらい。そうすると、私はここでちょっと、大臣がここで需給見通し云々ということで提起をされている。私は確かにそれは大事なことだと思いますが、ここであえて、時間がどんどんなくなっていますから、私の方から申し上げたいと思うんです。  大臣の記者会見の様子を私ずっとマスコミを通じて一応全部読ませていただいたわけです。そうすると、いわゆる需給の関係を見直しをしていこう、検討していこうという理由は、需要の関係からすると、景気が低迷しているということが一つ、それから二つ目には省エネルギーとか、そういう観点でこれから考えていかなきゃならないということが需要の関係からすると言われている。そして供給の側からすると、いわゆる原子力の問題がある、あるいはまた新エネルギーに対する国民の関心が高くなっている、それから石油の云々と、こういうふうに大体大きく言ってこの三つの理由を挙げられている。  私は、確かにそういう問題はあるんだけれども、現実的に考えてみると、平成十年に決定したんですよ。平成十年、一年少し前です、実質的に。そうすると、今日の不況の状況からしても余りそんな実際的には変化しているわけじゃない。それはちょっと底を打ったか打っていないかというような問題は若干あったとしても、現実的には不況の状況というのは変わっていない。それから、新エネルギーなりそういう問題についても、これもほとんど変わっていない。国民の意識はもう急激に今大きく変化していることも事実。原子力問題においても、これまた巻原発の問題もこれあり、あるいはまたそれはたまたま芦浜原発が最近御承知のような動きが出てきたということはありますけれども、原子力の立地問題についても大体二十年、三十年かかっている、立地関係で。そうすると、そう簡単に原子力というものは進んでいっていないということもこれははっきりしている。  等々考えてみると、今大臣が見直さなければならないと言われているような条件は、もう平成十年からずっとそのままあったわけですね。それを今ここで見直しをされようという理由は本当はどこにあるのかなと、どうですか。
  32. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 本当のところは申し上げたとおりが全部本当なのでありますが、今までも長期エネルギー見通しについてはその時代時代に検討を加えてまいりました。近年は四年間ぐらいをあけておりますが、そうでない時代は一年とか二年という、そういう期間で見通しの検討はやっておりました。今ほぼ二年たって、これから検討は一年といいますから、実際には三年ぐらいかかるわけですから、際立って、急にここで極めて短い期間の間にこの見通しについての検討をさせるということになったわけではないわけであります。  しかし、今御指摘が既にお話の中にありましたように、やっぱり需要の面でも随分変化してまいっておりますし、供給の面でいくとやはり大きな変化だと思います。特に、東海村の事故等々で原子力に対する不信感等も生まれておりましたり、あるいはMOX燃料の問題等もあったり、あるいは三重県のあのような形もあったり、その上にアラビア石油の問題がこのような状態になったり、日本のエネルギーの問題というのはやっぱり一つの岐路に差しかかっていると私は思います。  だから、そういう意味では、ここでもう一回きちんとした検討をしていくということは私は政治の流れとして選択すべき道ではないだろうか。そして、できる限り、拙速ではいけませんけれども、一年ぐらいかけて日本のエネルギーの将来について国民の皆さんにきちんとお示しをして御理解と御協力をいただくことが私は今日的な政治的課題だというふうに判断したものでありますから、そのような指示を事務方に命じたところでございます。
  33. 足立良平

    足立良平君 その中で、これは大臣に一回お聞きをしたいと思うんですが、三月二十一日から電力の自由化という、小売の自由化というものがスタートするわけでありますが、このエネルギー政策、とりわけそういうふうな自由化政策との関係というものは大臣として一体どういうふうに認識をされているのか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  34. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 電力の自由化を含めて、やはりエネルギーの供給というのを安定的な形に持っていかなければならないというのは必然であろうというふうに思います。そして、例えば自然エネルギー等についても電力会社に買っていただくとかいうような形で、それは一方においては自然エネルギーの開発を一層広げていくという一つの力にもなっていくわけでございますが、そういうような全体的な問題を考えながら、今日では自由化の時代を迎えて、そしてエネルギーの需要と供給のバランスが全体像としてうまくいくような、そういう方向を求めていくということだというふうに考えます。
  35. 足立良平

    足立良平君 エネルギーの需要と供給のバランスをうまくしていくという、これは口で言うと大変簡単に言えるわけであります。ただ、現実的にエネルギーというのは、特に電力の場合には貯蔵することができない。石油なら一応備蓄というといろんな貯蔵をすることができるわけでありますが、貯蔵することができない。その需給のバランスをきちんとしていくということは、相当長期的な予測というものを持って進めていかざるを得ないという一面性が、実は制約条件があると思います。  したがって、そういう面では、一般のサービス業を含めてこれに対するいわゆる自由化との関係という、需給バランスをとるということとは少し異質のものがあると私は思います。しかし、それは今余り時間もなくなりましたから、議論は後の方に譲っていきますが、私はその前提の中でちょっとこれは考えていただかなきゃならないと思うのは、いわゆるエネルギーの自由化あるいはまた電力の自由化というものと、そして公共性との調和というものを一体どう図っていくかということが、実は私は大変重要なファクターなのではないかというふうに思えてならないのです。  その公共性とは一体何なのかということ、これはいろんな見方が実はありますけれども、現実的には一番大きいのは私はやっぱり地球環境環境問題との調和だろうと。エネルギーをどれだけ豊富にしかも低廉に供給するかということであったとしても、一方で環境問題を惹起するということは、これはやっぱり今日の状況の中で許されない状況だろうというふうに私は思いますので、環境との調整をどう図っていくのか、あるいはまた今原子力問題との調整というものを一体どう図っていくのか、あるいはまたユニバーサルサービスというものとの関係で一体これをどう図っていくのか等々の問題があります。  そして同時に、私は、先ほどちょっと大臣がおっしゃったように、自然エネルギーというものを進めていく、そして先ほどふっと電力会社に購入をさせて云々というふうにちょっとおっしゃいました。電力会社に購入させるといっても、一方で自由化で全くIPPと同じような条件で競争をするときに、それぞれの地域の電力会社に全部それを購入させるという前提で自然エネルギーというもののこれからの進展というものを考えるということは、これはちょっとやっぱり発展性がないというふうに私は思います。  そういう自然エネルギーというものを進めていこうとするなら、仮に高いエネルギーという前提でするなら、これはだれがどういうふうに負担をするかということをやはりきちんと整理をしておきませんと、この自然エネルギー問題というのは解決できないというふうに私は実は思っているんですが、そういう点を含めて公共性とのいわゆる調和というもの、自由化との関係、これについてもう一度ちょっと大臣の考え方をお聞きしたいと思います。
  36. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 電力の小売供給の部分自由化は今月の二十一日からスタートしたばかりでございます。この部分自由化は、今いみじくも議員が御指摘でございましたように、エネルギーの安定供給と地球の環境の保全、この二つにどう整合性を持たせるかということが非常に大事なことであることはもうそのとおりでございます。そういう整合性を保ちながら、自由な競争の導入を通して電気事業全体の効率化を達成していこうということがこの目的でございます。  ただ、この部分自由化は産業活動や国民生活に大きな影響を与えるものでありますから、制度を実施しましたら三年後をめどにいたしましてレビューさせていこうというふうに考えております。そして、そういうような場合も、公益的な課題への影響も適切に検討していかなければならないというふうに考えます。  それから、ただいまの例えば風力発電などでいいますと、風力発電が設置できるところというのは偏っておるものですから、その地域の電力会社に過剰な負担を与えるという、そういうことにもなりかねないわけでございます。目下のところは優遇価格で購入を行っておりまして、これは国の導入支援と相まって、これらの自然エネルギーの導入が進展するということがねらいでございます。  ただ一方で、自然エネルギーの買い取りを義務づけるということによって、議員御指摘のような電力の自由化の流れに逆になっていくというおそれも確かにございます。また、不安定な電力が需要家に悪影響を及ぼすという懸念等もございますから、私は現時点では慎重であるべきだというふうに考えています。
  37. 足立良平

    足立良平君 慎重であるべきというのはどういう意味に解釈をしたらいいんでしょうか。
  38. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 買い取りを義務づけるということを極端な形で強力に進めることは、目下慎重でなければならぬという意味であります。
  39. 足立良平

    足立良平君 はい、わかりました。  これはまたちょっと別の場で議論をしなきゃならない問題があるのは、例えば石炭問題、これは国内炭の一応これからの平成十八年までの方針、別の法律として、これはそのときにまた私は改めて議論をしたいと思いますけれども、これも、自由化の問題というものと、そして一方では、例えば年間三百億くらいじゃないでしょうか、これを一事業者の方に、産業にそれを一応全部負担をさせてしまっているという考え方が、やはり今この法律としても一応そういう前提で今度は提案されているわけであります。  例えば、そういうふうな問題もろもろ考えてみると、このエネルギー問題というのを、私は原則として考えなきゃならないと思うのは、まず第一は、やっぱり環境問題をまずきちんと考えていくということが一つ。それから、自然エネルギーの問題にしてもやはり量が、これからちょっと燃料電池の問題等も少し触れていきたいと思うんですけれども、これから自由化の中で量をどういうふうにきちんと担保できるのか、コストがどういう安いものをできるのか、あるいはまた技術開発が一体これからどういうテンポで進んでいくのか等々の問題をきちんと考えた上で、その上で改めて長期エネルギー需給見通しという問題を考えていかないと、今日までの我が国のエネルギー政策というものが、通産省は需給見通し云々というのはつくられるけれども、現実的には自由化になった段階で各それぞれのIPPも電力の企業も含めて好き勝手にどんどん進んでいってしまうと、全く収拾のつかない状態になってしまうんではないかというふうに私は実は思えてならないわけです。  そういう面で、これからのエネルギー政策を基本的に考える通産省としてのそういう意味合いでの基本的な政策というものについて、これは大臣の方の考え方をお聞きをしておきたいと思います。
  40. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 今、国内炭のお話が出ました。現在も石炭鉱業の構造調整のために十三年度まで引き続いて引き取りをお願いしているところですが、十四年度以降は十八年度末まで炭鉱技術移転五カ年計画というのを立てましたので、それを遂行するために、これは引き取り価格を下げながら御協力をいただきたいというふうに思っているところでございます。  それから、今は部分自由化を電力の場合も始めたばかりでございますが、ただいまのような混乱があってはいけないということも含めて、三年後にはきちっとレビューしていこうということでございますので、当然その流れの中で判断できるような状況が生まれてくると思います。  いずれにいたしましても、エネルギー問題全般を今委員指摘の問題も含めてここできちっと検討していく、そして、見直しという言葉がいいのか悪いかわかりませんけれども、総点検を行って、これから先のエネルギーのありようというものを示していくということはとても大事だと思いますので、私は、エネルギー調査会、審議会でありますけれども、ここでの議論をできるだけ早く始めていただいて、あわせてその過程において国民の意見や他の専門家の意見にも十分耳を傾けた上で、ひとつ一年がかりぐらいでこれらの今後のありようというものを見定めて答えを出していきたい、そのように考えています。
  41. 足立良平

    足立良平君 マスコミ報道を見ていますと、これは大臣がおっしゃったのかおっしゃっていないのかはちょっと私はわかりません。けれども、原子力の十六基から二十基、COP3から出てきた、について、大臣としては否定はしないけれども、これは実際的には無理、そんなものできっこないよと、できっこないよと言われたかどうかそれは知りませんが、というふうに報じられているわけであります。  この原子力の、ちょっとこの点についてどうですか。一体、実際はどういうふうにおっしゃったんですか。
  42. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) エネルギーの今後の問題についての検討を加えるということを申し上げた際に、新聞記者の諸君から今のような質問がございました。二十基、まあ十六基から二十基と言ってきたわけですけれども、これを減らすのかと。しかし、これらを減らすかどうかを含めて検討するんだということでございますが、検討の結果、原子力の二十基というものの数字が変わるということはあり得るということを申し上げました。
  43. 足立良平

    足立良平君 あり得るということは、それは二十基よりもマイナスアルファということはあり得ると、こういうことを意味するわけですね。
  44. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) エネルギーの長期見通しを含むさまざまな議論の中に、原子力発電所が一体この目標に当たってはどのような数になるかという、そういう検討も当然加えられますと、そういうふうな現時点では申し方をいたしております。
  45. 足立良平

    足立良平君 それから、先ほどちょっと私申し上げているんですが、これも明確にしておいていただきたいと思うんですが、これからの自由化問題を考えたときにユニバーサルサービスという問題との兼ね合いが大変重要になってくるように思います。この点に関しては、エネルギーのこれからの基本的な性格の中で一体どういうふうに大臣としてお考えになっているのか。
  46. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 当然のことながら、ユニバーサルサービスは配慮していかなければならない問題だと思っています。委員指摘の御意向を踏まえた形で進めていくということでございます。
  47. 足立良平

    足立良平君 そうですか。そういうふうに、わかりました。  これはちょうどNTTの分割問題というのが数年前に国会において議論されまして、私も実は関与いたしました。そのときの議論としてもユニバーサルサービスという問題が実は大きな焦点になったわけであります。これは情報通信の中におけるそういうもの。ただ、これは技術が急激に発達をしてきて、しかもそれは有線でなしにいわゆる携帯電話を中心にしてユニバーサルサービスというものの質が若干変化してきたということは私はあり得ると思います。  ただ、電力の場合のユニバーサルサービス、つまり電気事業法十八条で言う供給責任という問題は、これはちょっと通信の関係とはいささか異にしているわけでありまして、そういう面では、一方で自由化を進めていくということは、これはそれぞれIPPを中心にしていわゆる利益が出るところ、先ほどもそれは各企業効率化を第一に考えて進めていく、あるいはまた企業はそれだけ利益を出していくというところからすると、この供給責任というユニバーサルサービスというものを達成することは、逆に大変な今度は、自由化とは相反する問題が出てくる。いわゆる公共性の問題との衝突が出てくるわけでありまして、そういう観点で私はこの問題というのは、単に自由化の中でもう一つ割り切ってしまって考えることができるかできないのかということが出てくるわけでありますので、そういう意味合いで私はちょっと先ほど質問したわけであります。
  48. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 例えば全国共通の低料金とか、あるいは安定供給だとか、そういう原則をきちんと守っていくということはもう大変重要なことでございます。私は、いわゆる公益課題としてもユニバーサルサービスというのは重要であって、先ほども申したように、恐らく委員のお考えと一体だと思っております。
  49. 足立良平

    足立良平君 それから、ちょっとこれは、時間も余りないわけでありますが、この原子力で先ほど大臣のこれは一応見直しというか総合的に検討するという中で、ジェー・シー・オーの問題であるとか、あるいはまた原子力に対して国民の皆さんから不信感とか不安感とか云々という話がございました。  私は、今回のジェー・シー・オーの事故というものを考えてみると、あんな一民間企業がああいうふうな事故を起こしたということは大変なことだと。今日まで通産省も含めて国あるいはまたそれぞれの関係事業体を含めて原子力の定着に向かって大変な努力を現実的にはしてきた、あの一遍の事故で原子力に対するもう根底からひっくり返ってしまったということは私は本当にゆゆしいことだというふうに実は思います。  そして、一方で、先ほどもこれも大臣がおっしゃっていたMOXの問題にしても、イギリスのこれは国営会社のああいうふうななにが、ある面においてはそれぞれの、日本の側のそれからすると、本当を言えば一体どこに責任があるのかなという感じがしないわけでもない。けれども、一応そういういわゆる原子力問題に対する不信感というものを醸成する一つのなにになってきているということもあります。  そうすると、今日までの原子力問題に対して政府は、これはあえて通産省とは言いませんよ、政府はダブルチェックをして、そしてもう安全だ安全だというふうにおっしゃってきた。ところが、それ、実際的にはそうではないんだよというムードはもう完全に我が国に今定着してきている。  そういう面からすると、この原子力に対する信頼感というものを、これからエネルギーのいわゆるセキュリティーの観点、地球環境の観点、あるいはまた安定供給の観点を含めて考えてみると、これは私は大変重要なことだというふうに実は思っているわけです。  そういう面で、アメリカのNRC的なものというのを、私はあえてここでは申し上げないけれども、いわゆる推進する側と規制する側というものがきちんとやっぱりやっているんだと。今、国民の皆さんから見ると、政府が安全であるよと言ってもこれは全然、うそつけ、そうではないだろう、こういう感じになる。電気事業者が安全だよと言っても、本当かよ、こういう話になってくる。全部権威が喪失している時代に今入っていると私は思っているんです。  そういう中で、国民の目から見て本当に政府も事業者も含めて原子力が必要なら、必要とするなら本当にきちんとした規制が行われ、そして本当にこれで安心だと、これは。この人たちのきちんとしたチェックをしてもらっているのを見ると、一応これは信頼に値するというふうな気持ちになるようなシステムをきちんとつくらないと、私は逆に言うと原子力問題というのは先ほど大臣がおっしゃったように、そうか、まあ余り進んでいかないよということになりかねないというふうに実は思っているんです。  そういう面で、民主党は三条委員会の安全規制委員会というものの考え方を提起しているわけでありますけれども、そういう意味を含めて、大臣の考え方というものを聞いておきたいと思います。
  50. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 我が国はエネルギーの、石油でいいましてもほとんどを外国から輸入しなければならない。大変エネルギーに関しては脆弱な国であるということは残念ながらそのまま今日も続いているわけでございます。そういう中で、COP3等々で決めた地球温暖化対策、環境改善等々にどうこたえていくかということや、安定供給や経済性からまいりましても原子力の必要性というのは私は依然として続いているものと考えています。  ただ、お話がありましたように、東海村の事故その他ございまして、国民のこれに対する不信感というのは非常に大きくなっているのは事実でございます。ただ、東海村の事故にいたしましても他の事故にいたしましても、原子力発電所そのものがだめだという、ノーというそういうような直接的なつながりのあるものでは決してないわけでありまして、原子力発電所は多重防護で完全な形で今も安全性は保たれていますし、これからもきちっと保っていくようにしていかなければならないと思っているわけであります。  問題は、これに対する国民の信頼感、安心感がどこまできちっと届くかということであるというふうに私は考えますが、今度、今の監視組織のお話もありましたけれども、省庁再編がこれから行われるわけでございまして、内閣に原子力安全・保安院というものができますし、これらの人数もふやしていこうということになっておりますので、そういう意味では、これからの省庁再編の中で、確立した国民の理解がいただけるような、そういう組織、人員を確保して対応していきたいと思います。
  51. 足立良平

    足立良平君 時間がございませんから一言だけちょっと申し上げておきたいと思います。  ちょっとこれは大臣、今おっしゃった保安院なりあるいはまた科技庁からその総務庁ですか、内閣府に移すという話ですね、これは省庁再編に伴ってそれでそっちに移していきましょうという話であって、それを四月までちょっと一応さかのぼって先にやりましょうと、こういう話でありますから、これは従来の延長線上の話なんです。それでは国民の信頼感というものを取り戻していくことは私は難しいだろうというふうに実は思っています。  それは、大臣自身が先ほどその需給計画云々について、平成十年につくったものを一年少したって今状況が変わったからもう変えましょうと、こうおっしゃっている。見直しをしましょうとおっしゃる。ジェー・シー・オーの事故が起きたりいろんな原子力問題について大変ないろんなことが起きているわけですから、本来からするとその保安院の問題を含めて、これは一緒にそういう面でやっぱり見直しをしましょうというふうにしないと、国民の方からすると、これはちょっと信頼感を戻すことはできない、こういうふうに私は思います。これは改めての議論の場に譲りたいと思いますが、そういうふうに私は考えます。
  52. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 省庁再編の流れの中でこのような形になっていくということはそのとおりでございますが、逆に言えば省庁再編のこの機会に、きちっとしたものをつくっていくということは大事なことだと思います。そういう意味では、本日の委員の御発言についてはきちっと受けとめて対応していきたいと考えます。
  53. 足立良平

    足立良平君 終わります。
  54. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  私はまず最初に、企画庁長官にお尋ねしたいと思います。  参議院の予算委員会、三月二日のときでございますけれども、NPOの関係でございます。  その優遇税制の関係で我が党の山本委員が質問したわけでありますけれども、それに対して大蔵大臣からは、「この一年間、世の中のNPOについての感じが大分評価が積極的になってきていますので、できるだけ税制上の特典を差し上げたいと思っております」、こういう答弁をいただいております。さらに企画庁長官からは、「税制その他どういう扱いをするか、発足二年ぐらいで見直すことになっておりますので、」云々と、そういう答弁もいただいております。  寄附金の関係については、一般寄附金と特定寄附金がありまして、法人は一般寄附金でも損金算入限度枠内では損金算入が可能である、あるいは個人の場合は一般寄附金での税の優遇措置は全くない、そういった意味では、一般寄附金の範疇においては個人か法人かで税制上の取り扱いについては非常に大きな差が存在していると私は思います。  こういったことも含めて、要するにNPOについての税制の優遇措置、これをきちっとやっていただきたいと思いますけれども、この辺について積極的な御答弁をいただきたいと思います。
  55. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) NPO、特定非営利法人という制度ができましてからかなり各地でその運動が広がっておりまして、いろいろ既に二千近い申請が出ていると聞いております。その中にはかなり積極的に福祉の問題、文化の問題に活躍しているところもございます。  この制度は議員立法としてつくっていただきまして、国会の附帯決議におきまして、特定非営利法人の活動の実態を踏まえて、税制等を含めた制度の見直しについて、法施行の後二年以内に検討するというようなことが結論としてその附帯決議で得られております。したがって、税制上の優遇措置についての制度のあり方につきましても、今後のNPOの活動の実態等をよく見まして、立法府等各方面で検討されていくものだと考えております。  NPO議員連盟等で既にそういう研究もしていただいていると承知しておりますが、経済企画庁といたしましても、平成十一年度の四月から国民生活審議会におきまして、我が国の経済社会におけるNPOの位置づけと役割につきまして、法の施行状態等の問題点あるいは税制等を含めてこの政策のあり方などを調査審議いたしまして、立法府の御検討のお役に立ちたいと考えている次第でございます。
  56. 加藤修一

    ○加藤修一君 まだこの件についてもう少し質問はしたいんですけれども、申しわけございません、別の機会によろしくお願いしたいと思います。  これで企画庁はお下がりになって結構でございます。  それでは、通産省にお願いしたいんですけれども、先ほど来、足立委員の質問なんかを関心を持って聞いておりまして、とりわけエネルギーの長期需給見通しの見直しということも非常に重要な問題だと私も思っております。  たしか大臣は、三月十日ですか、九時三十分から九時五十三分、記者会見室で会見されておりまして、その中で、報道によりますと、このエネルギー問題について小渕総理も深い関心があって通産大臣に示唆に富んだ話があったと、そういうふうに言われておりますが、その示唆があったという話はどういうことでしょうか。
  57. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 当然のことでありますが、一国の総理大臣としてエネルギー政策に関して非常に深い関心を払っておられて、常々私どもにその対策についてのお話がございます。また、御本人も、昨年十二月は伊方原子力発電所を視察なさったり、積極的な行動をしております。  そういう小渕総理から、安全確保を大前提とした原子力発電の利用の促進とかあるいは石油の安定供給の確保、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの活用など、そういうエネルギー政策全般について折々に私どもにお話がございまして、これらを踏まえて総理の示唆に富んだ話を聞いているということを申し上げました。
  58. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほどからもこの辺議論になっているわけですけれども、九八年六月に立てた長期需給見通しが二年を経ずにして見直すというのは、過去に一年か二年ぐらいで見直したケースもあるとは思いますけれども、ある意味では私は非常に異例だなと思っておりまして、こういう見直しをしなければいけない、そういうふうになった要因を、今、総理の話もございましたけれども、その要因をどういうふうに考えていられるか、そしてその要因を、仮に優先順位といいますか、そういったことを考えた場合はどういうふうにお考えか、その辺についてよろしくお願いいたします。
  59. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 先ほども足立委員にお答え申し上げたのでありますが、エネルギーの問題に関していいますと、需要と供給面でこのところかなりさまざまな変化があったというふうに考えます。  例えば、景気の低迷の影響で九八年度のエネルギー消費というのは産業部門が大きくマイナスになった、そのために第二次石油ショック以来十六年ぶりという形のマイナスになっているということやら、あるいは省エネルギーの問題でいいますと、石油ショックの後、省エネというものがかなり活発になってまいったのでありますが、昨今はどうも余りそういう状況ではありません。ただいまも申しましたように産業部門では省エネというのはかなり行き届いておりますけれども、民生とか運輸の部門の需要は右肩上がりで非常に伸びています。これらはよほど考えていかなければならない問題ではないだろうか。  さらに、供給の面で申しますと、先ほども申し上げましたような原子力発電所の新設に関しての知事の判断等がございましたり、あるいはいろいろな原子力の安全性にかかわるような議論というものもなされて、これらに対する対応というのも原子力の立地という問題も含めて十分検討していく必要がある。  それから、新エネルギーの問題については、これは国会でもしばしば議論がなされました。日本の新エネルギーは開発がおくれているではないか、そういうような議論がございました。実際に申しますと、ヨーロッパと同じように水力とか地熱などを計算に入れますと、我々の将来像、十年後というのは七・五%で決して遜色はないのでありますが、もっと新エネルギーを開発すべきではないか。特に、石特の委員会等でもジメチルエーテルの開発であるとかあるいはメタンハイドレートの開発とか、いろんな新しいエネルギーについての貴重な御意見が出されました。これら全体を考えますと、やっぱりこの機会に、エネルギー政策、特に長期見通しについて検討を行うべき時期ではないだろうか、そんなふうに考えたわけであります。  どれが重要な順位かというふうに問われるとお答えしにくいのでありますが、これら全体を考えてと御理解いただきたいと思います。
  60. 加藤修一

    ○加藤修一君 今、全体を考えるという観点の話になりますけれども、記者会見の中では総合エネルギー調査会とは別の組織で検討するようなおっしゃり方をしているように私は思っているんですけれども、この辺についての、今までの調査会をある意味で使わないで新しい組織のようなものをつくり上げるということを考えていきますと、今までの調査会、総合エネルギー調査会それ自体が問題があったのかという見方もできますし、もし新しいものをつくるとしたらどういう委員の人選をするのかとか、あるいは事務局の問題ということも出てまいりますし、あるいは国会に対してどういう報告のシステムを考えるか、そういった点もいろいろと議論しなければいけない部分があると思うんですけれども、この辺についてはどういうお考えからそのような発言をされたんでしょうか。
  61. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 記者会見のときの言葉足らずだったかもしれませんが、私はエネルギーの今日までのいわゆる審議会として大臣が諮問しておりました総合エネルギー調査会をそのまま考えておりました。ですから、とりあえずはまず政策の検討に向けた準備作業を直ちに開始する、その後は関係の有識者の幅広く集まっている総合エネルギー調査会を四月にでも開催して一年がかりで検討していこう、このように申し上げたつもりでございました。
  62. 加藤修一

    ○加藤修一君 そういうことですか。  それでは、今、総合エネルギー調査会の話が出てまいりましたので、これは総合エネルギー調査会設置法というものがございますけれども、私は、先ほど来の足立委員からのいろんな議論を考えてまいりますと、この設置法それ自体も私は改正すべき点が多々あるのではないかなと思います。例えば環境大臣に意見を言えるような場所を設定する、そういう項目を入れるとか、あるいは出てきた報告書について国会に報告しなければいけないというそういう義務を課すということも、やはりこれからは環境問題というのは、単に環境問題及びエネルギーの問題というのは通産省が専管的にやるべき、そういう範囲の狭い問題ではないと私は理解しておりますので、その辺についてはどういうふうにお考えですか。
  63. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 重要なエネルギーに関する調査とか審議を意見具申していただくということで、私どもはこの調査会の御活躍を今までもいただいてまいったわけであります。  一方、エネルギー政策を立案して実施に当たりましては、エネルギー安定供給の確保とか地球温暖化への対応等々を十分に考えてそれらの要請にこたえていくという意味で、総合エネルギー調査会の審議に加えて国会での御議論を十分にさせていただいているところでございます。  また、環境庁長官というお話がありましたけれども、総合エネルギー対策推進閣僚会議、これは当然のことながら環境庁長官も参加しているわけでありまして、その閣僚会議を通じまして政府一体として取り組んでまいっているところでございます。  これからも、国会での議論を十分踏まえまして、それぞれの要請にこたえ得るように政府一体となってエネルギー政策を進めていきたいと考えます。
  64. 加藤修一

    ○加藤修一君 いや、私は法律という形できちっとした形で入れていくべきだと思うんですね。そういうふうに改正すべきだと思います。その辺については大きな私は関心を持っていますので、今後とも別の角度でやっていきたいと思います。  それでは、次の質問でございますけれども、全体的ないわゆる長期需給見通しを考えていくと、さまざまな点を考慮しながらという話でございましたけれども、いわゆる総合エネルギー政策基本法、そういったものを考えていく必要もあるのではないかなと思います。単なる理念法とかそういった問題ではなくして、政策について、例えば具体的に原子力をどう位置づけるとか自然エネルギーをどう位置づけるか、そういった面を明確に私はしていく必要があるのではないかなと思います。今の体制ではなかなか国民の方に向かっても説明しづらい状況になっておりますので、その辺については大臣はどのように御所見をお持ちですか。
  65. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 基本法の制定についての御意見がありました。これは一つの貴重な御意見としては承っておきたいと思いますが、要は国会での議論を十分に尽くすということが非常に大事であり、それを踏まえて各種の要請にこたえるようなエネルギー政策の検討を進めていくということが大事ではないかというふうに思います。自然エネルギーの活用等をも含めて、必要な政策についてはこれからも幅広い意見を聞きながら十分に進めていきたいというふうに考えます。    〔委員長退席、理事馳浩君着席〕
  66. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは、ちょっと質問を時間の関係で飛ばしたいと思います。  自然エネルギー促進の取り組みということについて伺いたいわけですけれども、公明党には自然エネルギー促進法プロジェクトチームがございまして、自然エネルギーのいわゆる地方の取り組みと意識について調査をするために、四十七都道府県プラス十二政令指定都市、合わせて五十九の自治体に対してアンケート調査を行いました。  その結果、最近記者会見させていただいたわけでありますけれども、回収率は一〇〇%ということで、とりわけ自然エネルギーについて関心がありますかという質問に対して「非常に関心がある」というのが四四・一%、「関心がある」というのが五五・九%。そういった意味では、対象すべての自治体にわたって関心があることが非常にわかったわけでありますけれども。  あるいは、自然エネルギーを導入している自治体が五十八自治体で、一自治体を除いて自然エネルギーを導入している。太陽光が八五%、小水力が三七%、風力が三三%、バイオマスがかなりおくれておりますけれども五%となっているわけでありまして、今後の拡充計画が六一%になっている。そういった意味では、自治体の関心は極めて強い。導入に対しても非常に積極的にやっていこうという姿勢が私は見受けられるのではないかなと思います。  それから、今後拡大すべきエネルギー源として、四十六の自治体が第一に自然エネルギーと答えている。原子力は四つの自治体である。化石燃料については一自治体が回答しておりますけれども。原子力を拡充すべきとした県が原子力発電所の立地の県よりは少ない、大変少なくなっている、あるいは、新規立地ですけれども、その新規立地の予定の県より少ない結果が出たということは、非常に私は一つの驚きを持って受けとめているわけであります。  また、自然エネルギーに関して自治体独自の補助金を持っているところは十八ございます。それから、自然エネルギー促進のための条例を持っているところが三自治体、予定が一自治体。そういった意味を踏まえても、やはり地方の取り組みが極めて積極的である。    〔理事馳浩君退席、委員長着席〕  こういった結果が出ているわけでありますけれども、これはほかの調査結果を見ましてもこういった傾向が極めて強い。そういった点を考えていきますと、こういった面についての、つまり自然エネルギー促進の取り組みについてやはり相当の角度をつけてやっていく、そういう期待がある。こういうことに対して大臣はどのように認識を深めたのでしょうか。
  67. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 自然エネルギー促進議員連盟、加藤委員が事務局長をお務めで、大変活発に調査その他、活動されていることに敬意を表します。  お話しのように、近年、地方自治体で新エネルギー導入の取り組みというのはかなり加速しているというふうに思います。例えば庁舎あるいは学校などの公共施設における太陽光発電システムの設置、これは二百五十件を数えていると聞いています。地方自治体が主体となった風力発電施設の導入が五十件を超えている。国としても、こうした取り組みに対しまして、その設置費の二分の一を補助して導入を支援しているところでございます。これは、事業者に対しましては三分の一でございますが、このような地方自治体に関しましては二分の一の設置費を使っております。  また、一部の地方自治体では独自に新エネルギーの導入支援策というのを講じております。例えば、全国四十三の地方自治体が住宅用太陽光発電システムの設置者に対して補助や融資を行っているという制度、あるいは三十を超える地方自治体がクリーンエネルギー自動車を導入する者に対しての補助や融資を行う制度を設けていると。これは国の補助制度と相まって、地域における新エネルギー導入が一層加速されるという意味では非常に効果があるというふうに思います。  北海道では新エネルギー導入促進のために今度条例を制定するというので、多分これからの道議会にかけられるのではないでしょうか。  いずれにしても、これらの地方自治体の取り組みというのは地方分散型エネルギーとしての新エネルギーの特色が生かせるものだと。そして、さらに地域の新規産業を創造させていったりする、それは同時に雇用創出にもつながっていくという点では非常に大事でございまして、これからも地方自治体のこのような動きに対して国ができる限りの応援をしていくべきだと考えています。
  68. 加藤修一

    ○加藤修一君 風力発電についての国家目標値が二〇一〇年で三十万キロワットということになっておりますけれども、この設問に対してももっと高くすべきだと、そういう回答が三十四自治体あったわけでありますけれども、やはり目標値が大きいか大きくないか。既に大臣御存じのように、北海道においてはこれからの計画を含めて五十五万キロワットということで二〇一〇年の国家目標を既に超えているという、そういうビジネスチャンスに向けて走っているように私は聞いております。  そういった意味では、風力発電だけを上方修正すべきだということよりは、それを含めて、自然エネルギーにかかわる目標値については今回の見直しの中で上方修正を強力にやっていくべきだと私なんかは考えているわけですけれども、この辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  69. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 新エネルギーの導入目標というのは二〇一〇年度で一次エネルギーの供給の三・一%、数字としてはそんなにびっくりするような大きさではありませんが、水力とか地熱などを計算に入れますと七・五%で、これはヨーロッパに比べても遜色のないものになっていくのではないかというふうに思います。  現在の見通しでいいますと、太陽光発電は二〇一〇年度時点で目標策定時点の九十倍の導入を目指すと、かなりこれは高い目標だと思います。また、風力発電の三十万キロワットという導入目標についても、おっしゃるように、最近の動きを見るとやはりもう一回精査する必要があるかなと、そういう感じはいたします。  いずれにいたしましても、昨今、自然エネルギー、新エネルギーに対しての国民的な関心というのは非常に高まってまいりました。私は通産省において、これらの背景を大事にしながら新エネルギーについては加速させていくべきだ、このような指示をいたしておりまして、そういう意味では目標についての数値は精査されていくべきものだと考えます。
  70. 加藤修一

    ○加藤修一君 積極的な答弁をいただきまして、ありがとうございます。  日本に限らず、そういった面についての期待は非常に大きいわけですけれども、例えば各国の自然エネルギー導入の政策目標、それを考えていきますと、例えばデンマークでは、これは電力供給に占める割合でありますけれども、デンマークでは二〇〇三年までが二〇%、二〇三〇年までには約八割、これはエネルギー21という計画の中でうたっております。英国は二〇一〇年までに一〇%、これはブレア政権における自然エネルギー一〇%宣言、これは二年前に発表されたものであります。あるいはアイルランドは二〇一〇年までに一九・七%、あるいはオーストリアでは二〇〇五年までに三%等々含めて、例えばEUでありますけれども、これはもう御存じかもしれませんが、二〇一〇年までには一次エネルギーに占める自然エネルギーの比率倍増を、一二%へ急角度に増大させていくという話になっているわけです。先ほど大臣がおっしゃったように、国もこういった面についてサポートしていかなければいけない、あるいは財政的な支援のことについても考えていかなければいけないという話がございました。  それから、先ほど足立委員からも電力の買い取りの関係について質問あるいは疑問というのが投げかけられたわけでありますけれども、今紹介いたしました各国におきましても例えば主要な政策手段がなされていると。例えばドイツやデンマーク、既にそれを含めて十カ国に及んでいるわけでありますけれども、自然エネルギーからの電気の買い取りを、電力会社に強制的に買い取らせる、そういった法律がございます。それから、化石燃料課徴金制度、FFL、あるいは非化石燃料購入義務づけ、NFFO、これは英国で行われている話でございますけれども、そういった形で、従来英国の場合は原子力を支援するために導入されていた制度でありますけれども、それを自然エネルギーに今は当てている。あるいはグリーン証書の関係もございますし、さらにクオータ制、EUが導入していることでありますけれども、あるいはそれから米国で導入しております自然エネルギー・ポートフォリオ・スタンダード、こういった形でかなり急角度に物事が進んでいるように思います。  先ほど自由化の観点から話が出ておりましたけれども、自由化というのは確かに供給サイドにとっても自由化でありますけれども、これは需要家側にとっても自由化という話を考えていかなければいけない、つまりエンドユーザーにとって選択の幅がなければいけないというふうに、これもやはり自由化の観点だと私は思います。  こういった点を含めて、もっと総合的にこういった自然エネルギーの仕組みというのを十分検討していかなければいけないと思いますけれども、この辺について大臣はどのようにお考えですか。
  71. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 先ほどもお話がありましたように、自然エネルギーというのは、地球の環境問題、それからエネルギーの安定供給の確保等々、さらに地域における新規産業の創出、雇用関係の確保といったようないろんな点でのプラス面が多うございます。したがって、大変重要だと思います。  国としてはこれまでも、民間事業者とか地方自治体に対して、新エネルギーの設備投資に対して設備費の二分の一から三分の一の補助とか、あるいは電力会社の余剰電力購入制度と相まって新エネルギーの導入を進展させてきたというふうに考えております。  電力会社における自由化の問題及び電力買い取りの義務づけ等の問題に関しては、先ほど足立委員にも御報告申し上げたのでありますが、おっしゃるとおり、自由化というのはユーザーにとっても選択という意味の幅が広がってまいります。適切な競争原理というのが導入されることはいいことでありますが、同時に、電力買い取りの義務づけということに関しては、先ほども申したように、私はやや慎重な考え方を持っております。  いずれにしても、総合エネルギー調査会の新エネルギー部会というところで、海外の導入政策の動向ども調査しながら、今おっしゃった海外の状況を踏まえながら議論をしておりまして、その結果がエネルギー政策全体に何らかの回答を与える、そういう意味を持って検討を進めていきたいと思っております。
  72. 加藤修一

    ○加藤修一君 それでは、次の質問に参ります。  報道によりますと、高レベル放射性廃棄物処理に関する法律が今国会に提出されるというふうに聞いておりますけれども、これ最終処分ということで、地層処分の安全性、そういう処分のあり方については当然安全性ということが十分検討されてしかるべきだと思いますけれども、科学技術庁、この辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  73. 興直孝

    政府参考人(興直孝君) 御説明申し上げます。  地層処分の安全性につきましては、かねて昭和五十年代よりその研究開発に関係機関の総力を挙げて取り組んできたところでございます。最近では、平成四年に旧動燃事業団がそれまでの地層処分の研究開発成果を取りまとめ、高レベル放射性廃棄物地層処分研究開発の技術報告書としてこれを明らかにしたところでございます。  また、この報告をもとに、原子力委員会におきましてこの報告書が評価され、我が国における地層処分の安全確保を図っていく上での技術可能性が明らかにされているとされ、その上で、今後の研究開発の進め方を示す方向づけの議論も原子力委員会で進められたところでございます。  この旧動燃の報告をもとに動燃事業団は関係各機関の総力を得る形でさらに研究開発を続けてまいりまして、昨年の十一月、この新しい核燃料サイクル開発機構がこれまでの研究開発の成果を取りまとめ、その技術報告書を原子力委員会の方に提出したところでございます。  この報告書では、地質環境について、我が国にも安定で地層処分にとって好ましい地質環境が広く存在すること、また、地層処分の工学技術について、現在の技術あるいは近い将来実現可能と考えられる技術をもとに実施できることを示すとともに、また、将来起こり得る地質環境の変化、さらには人工バリア機能の変化等を想定しまして、地層処分において考慮すべきシナリオを作成し、地層処分システムの安全評価の体系を提示したところでございます。  現在、核燃料サイクル開発機構から提出されましたこの報告書は原子力委員会で評価を行っているところでございまして、この評価結果に基づいて、我が国における地層処分の安全確保の可能性に関して一定の見通しが得られることになるものと考えてございます。  なお、具体的な処分とかあるいはその安全規制に当たりましては、現在、具体的な処分のタイミングを、二〇三〇年代から二〇四〇年代の半ばに処分の事業が行われるよう、その処分事業主体の設立など通商産業省でいろいろな検討が進められているわけでございますが、この具体的な処分や安全規制に当たりましては、今後さらに技術開発や検討、データの整備等がなお必要でございます。  今後とも、深地層の研究施設や地層処分放射化学研究施設、こういうものを活用いたしまして、地層処分技術の確認、安全評価手法の確立に向けましてその研究開発を着実に実施し、これらをもとに原子力安全委員会等において安全規制の検討に適切に反映していくことが求められているものと考えてございます。
  74. 加藤修一

    ○加藤修一君 要するに、安全か安全でないか。安全だという表現ですか。その辺、もうちょっとわかりやすく言ってくれませんか。随分言葉を使ったようですけれども、なかなか頭に入ってこない表現だったので。お願いします。
  75. 興直孝

    政府参考人(興直孝君) 御説明申し上げます。  私、先ほど御説明の際、地質環境の問題とまた地層処分の工学技術の問題について御説明を申し上げましたが、地質環境の問題につきましては、過去数十万年程度の間の火山あるいは火成活動などのいろんなデータ等から見まして、十万年程度の将来について現在までと同様の活動が継続するものとして、火山・火成活動や地震・断層活動を評価することが妥当と考えられる。また、火山・火成活動や地震・断層活動の影響範囲を推測することができる。したがって、その著しい影響範囲を避けることが可能である。こういう観点から、我が国にも安定で地層処分にとって好ましい地質環境が広く存在すると、このようにこのサイクル機構の報告書は結んでございます。  また、地層処分の工学技術につきましても、先ほど申し上げましたこれから具体的に実施されるであろうタイミングというものを考えてみれば、このいろんな現在進めてございます技術開発、その将来可能となるようなものをもとに十分安全確保が図り得る、そういう工学的なバリアを設定することは可能だと、こういうことでございまして、今の先生の御質問につきましては、十分安全確保が図り得る、このように考えているところでございます。  現在、この点については、先ほど申し上げましたように、サイクル機構の報告をもとに原子力委員会で評価をやっているところでございまして、その評価を取りまとめるに当たりましては、国民の方々のいろいろな御意見をいただきながら、最終報告を取りまとめるということでございます。
  76. 加藤修一

    ○加藤修一君 ちょっとあえて確認しますけれども、「地層処分研究開発第二次取りまとめ」の「地球に学び、人の英知を集めて」というところを読んでまいりますと、「「地層処分」は安全なのでしょうか」というふうに書いています。それに対しては、「もし、こうなったらどうなるというシナリオを世界中の専門家の協力を得て作成しました。」と。要するに、地層処分の安全にかかわるさまざまな要因についてはすべて網羅し、つまり洗い出したと。そういったものについて、さまざまなシナリオをつくり上げて、コンピューターを駆使して解析してそれに対応する新しいシステムも活用して安全性を確かめましたと。「この結果は、考えうるさまざまなケースに対しても安全であり、」、「遠い将来にわたって生活環境に影響が及ばない」と。そういう理解でよろしいんですね。
  77. 興直孝

    政府参考人(興直孝君) 御説明申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、地質環境について地層処分の工学技術についての検討の上で、ただいま先生がお話しございましたとおり、諸外国で行われております安全基準というものとの比較におきまして、その地層処分システムの安全性評価についてもこのサイクル開発機構が検討したところでございます。  この過程の中で、地層処分における考慮すべきシナリオを作成し、またそのシナリオに従いまして、起こり得る現象を物理・化学法則に基づいた数式で具体的に表現し、これらをもとにその個々のモデルを統合し、線量を指標とした地層処分システム全体についての安全性を評価したところでございまして、ただいま先生お話しございましたとおり、その諸外国で提案されております安全基準を下回ることがこの報告では確認されてございます。したがいまして、原子力委員会の方で現在この結果についての評価をやっているところでございます。
  78. 加藤修一

    ○加藤修一君 こういうことについてはどう思いますか。これは昨年の一月七日の新聞に出ていた話ですけれども、読売等含めて出ていた話です。  これはあるアメリカの研究者のグループでありますけれども、地層処分の関係について調査した結果だと思いますけれども、要するに、地下埋設の放射性物質については従来の予想より早く拡散するという話なんです。同グループは、プルトニウムが地下水の中に含まれる大きさが一ミクロン以下のごく小さな浮遊粒子である流動性コロイドになって運ばれたためと考えられるとしていると。つまり拡散のスピードはそういった原因によるものであると。  これまでプルトニウムなどの放射性物質は地下水に溶けにくく岩石などに吸着しやすいため、埋設後の移動はほとんどないとされていた。しかし、こういう研究成果があるわけですけれども、この辺についてどう思うかということと、先ほどシナリオをさまざま組んで検討を行ったという話がありましたけれども、回収方法は考えているかどうかということです。途中で当初の予定とは違って危険な状態になったときに回収する方法も考えた上でのシミュレーション、シナリオを組んだかどうか、その辺についてはどうでしょうか。
  79. 興直孝

    政府参考人(興直孝君) 御説明申し上げます。  先ほどのプルトニウムコロイドに関連する問題でございますけれども、コロイド状の問題については検討の対象としてございます。しかしながら、我が国の高レベルの固化体、処分のための固化体にはプルトニウムが含まれておりませんので、プルトニウムについての検討は対象の外でございます。  また、先生がお話しになられました、今度は再回収についての考え方でございますけれども、この点につきましては、国際原子力機関におきます物の考え方で、処分というものが許可され、指定された施設に再取り出しの意図なく廃棄物を設置することとされてございまして、また地層処分とは、地質学的に安定した地層中数百メートルの深さに人工及び天然バリアシステムを使用して廃棄物を隔離することとされてございます。  また、これらをもとに我が国は原子力委員会におきましていろいろな検討を行いました上で、高レベル放射性廃棄物をガラス固化体という安定な形態として、人の生活圏から離れた深地層中にそれを安全に埋設することによって人間環境に有意な影響を及ぼさないようにする措置としてございます。  しかしながら今、今回いろいろな検討の上で、先生が御指摘になられた点につきましては、例えば原子力委員会の検討の中で、主坑を埋め戻さずに維持するのは、処分された廃棄物が予測どおりの動静を示すのかどうかモニターするとともに、万一の事故の際の廃棄物の回収などの対応が容易であるという点で周辺住民の安心感が増大するという考え方によるものであり、また安全、安心のバランスを考慮することが必要とされてございますので、こういう点を考えますと、実際に主坑の埋め戻しを行うか、あるいはそれともそのままの状態でなおも管理を続けるかどうかは、その時点での技術的な水準に照らしまして、その時点の世代に判断をゆだねることが必要だろうというふうなことまで原子力委員会の方で指摘されてございます。  これらをもとに、これから処分場の閉鎖前に廃棄体を再取り出しするか、この点につきましては、その判断された場合にそれまでの手順を逆にたどることによって措置をしていきたい、これが方法論としてはあるかと考えてございます。
  80. 加藤修一

    ○加藤修一君 もう時間が来ておりますのでやめますけれども、私は、現在の原子力発電所が五十一基稼働していて、そこから出る廃棄物について責任を持って対応しなければいけないことは重々認識しておりますから、例えば直接処分とかあるいは再処理処分とか、二つの方法が大きくありますけれども、そういった面については十分検討して最終処分を行わなければいけないということについては十分認識しております。  いずれにしましても、きょう時間がございませんので、別の機会に十分やらせていただきたいと思います。  以上でございます。
  81. 成瀬守重

    委員長成瀬守重君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      ─────・─────    午後一時十分開会
  82. 成瀬守重

    委員長成瀬守重君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、経済産業貿易及び公正取引等に関する調査を議題とし、通商産業行政基本施策に関する件及び経済計画等基本施策に関する件等について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 馳浩

    ○馳浩君 自由民主党の馳です。よろしくお願いします。  本日は、原油価格高騰問題とそれからアラビア石油の問題を通じて、日本のエネルギーセキュリティー問題について質問をいたします。午前中の同僚議員とダブる点があるかと思いますが、よろしくお願いいたします。  まず、原油価格の高騰問題について質問いたします。  ニューヨークの原油先物相場が現在、湾岸戦争以来九年ぶりに高値をつけております。一バレル約三十二ドルとなっております。これは九八年十二月の最安値一バレル十・三五ドルに比べて三倍の高値であります。しかも、一年三カ月というわずかな期間での急騰とも言えます。また、国内価格に影響の大きいドバイ原油も九年ぶりに一バレル二十五ドルになっており、これも一バレル約十ドルだった昨年二月に比べて二・五倍の急激な高値と言えます。  そこで、この急激な高値の原因はどこにあるのでしょうか。特に、ヘッジファンドの影響が価格上昇にどの程度寄与しているのでしょうか。また、当面の景気への影響はどうなるとお考えでしょうか。以上、大臣に答弁を求めます。
  84. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 最近、石油の価格が上がってきておりますことは委員指摘のとおりで、私どもも心配しています。昨年、OPECで一六%の減産というのを決めて、それが確実に守られているということや、あるいはアメリカの寒波その他が原因になっているようでございます。  ただ、幸いにといいましょうか、石油の我が国のエネルギーの中で依存する度合いがこのごろは五二・四%というぐあいにかなり落ちついておりまして、かつては七七%ぐらい日本のエネルギーの中で石油が占めていたんですが、そこまで抑え込んでいるということで、目下は物価には直接影響がないというような状態になっておりますことは本当に辛うじて幸いなことだと思いますが、これが長く続いてまいりますと、あるいは一層上昇してまいりますと、大きな影響を与えることは必定であろうというふうに思います。  産油国への働きかけにつきましては、今アメリカ中心となりまして積極的に働きかけを行っておりまして、また、先般の二月二十四日、IEA、国際エネルギー機関の理事会でも石油需給の不安定な状態に対する懸念というのが表明されているところでございます。私どもといたしましても、IEAの加盟国でございますので、この理事会の議論を踏まえつつ、引き続いて深い関心を持って注視していきたい、そう思っております。
  85. 馳浩

    ○馳浩君 当面の物価には直接影響はないという現状には一つ安心いたしますが、しかし、現在の価格で例えば一年も高どまりされてしまうと、そのうち価格転嫁が起こり物価の上昇を招き、結果、個人消費の落ち込みがさらに進み、景気に冷や水を浴びせてしまうということにもなりかねないと思います。  一方、産油国側も、日本などの輸入国の景気が悪くなり、需要が落ち込み、結果、原油価格が暴落してしまっては元も子もないと考えていると思います。したがって、いずれは増産をして価格の適度な下落を誘導してくると考えられます。事実、サウジ、メキシコ、ベネズエラが増産の提案をOPEC総会で行うとの報道もあります。反対していたイランも増産に賛成したとも報道されております。しかし、早急かつ大規模な増産体制に入ることはないと専門家も見ております。早急な大規模増産はヘッジファンドの資金流出を意味し、価格暴落を招くからです。  そこで、いつごろまで高どまりが続くのかとお見通しですか。また、一年ほど高どまりした場合の景気への影響はどうなるとお考えですか。関連して、石油価格の上昇と卸売物価の上昇の関係を過去と比較をして数字で示してください。
  86. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 石油の価格がこれから先どういうふうな推移をするのか、一年後の予測というのは正直申し上げて全く難しくて、軽々に申し上げることはできません。ただ、三月二十七日だと思いましたが、OPECの総会が開かれます。ここでどのような話になるのか相当注目していかなければならないと思いますが、委員もただいま御指摘のように、サウジを初めとして幾つかの国がこのままでは産油国の方も大変だという懸念も表明しておりますし、アメリカもかなり積極的な働きかけをしているようでございますし、我々も当然そのような声を機会あるごとに申し上げていくという、そういう背景の中で私はある程度の落ちつきを見せてくれるのではないかと期待をしておりまして、目下はそれらの推移を注意深く見守っていきたいというふうに考えます。  それから、値段がどの程度で落ちつくかということについての問題と物価の問題の比較は、ただいま申し上げたように価格の方の判断ができかねますので何とも申し上げられませんが、先ほどもお答えをいたしましたように、幸いに石油そのものに対する依存度をかなり下げてまいりまして、二十数%以上下げてきましたので、現在のところでは直接的な影響はない。もちろん円高その他の背景もあったことでありますが、ただ、この価格が下がらないまま時間がたっていくということになれば、当然卸売物価その他にも影響してくるであろうというふうに思います。
  87. 小池百合子

    ○政務次官(小池百合子君) 先ほどからの原油価格の上昇の影響でございますけれども、先ほどから通産大臣がお答えになっておられますとおり、今後の一年間の原油価格を予想することは大変難しゅうございますけれども、高どまりした場合におきましても、現在の我が国の原油輸入量のGDP比率、以前と、いわゆるオイルショックのころから計算いたしますと、かなり低下しているということもございます。ということで、日本経済構造そのものが原油価格の変動の影響を受けにくい体質に変わってきているという点は一つ指摘しておきたいと思います。  そしてまた、原油価格の上昇と卸売物価の上昇との関係数字でということでございましたので、私どもの方からお答えさせていただきます。  原油価格でございますけれども、原油価格上昇の影響を国内卸売物価の最近の動向で見ますと、おおむね横ばいが続いております。これは今私が申し上げましたことが背景ということが言えると思っております。  数字で申し上げますと、二〇〇〇年一月で前年同月比でマイナス〇・三%、二月で同月比でございますがマイナス〇・一%ということで、落ちついた状況が続いております。  そして、今後の影響は産業連関表というのを使って試算をするわけでございますが、原油の輸入価格が一〇%上昇したときの国内卸売物価への効果、これは一九八〇年の産業連関表を用いた試算では一・二%程度であったのに対しまして、九五年の産業連関表を用いますと、その試算では〇・二%程度の効果というような形になっております。  先ほど通産大臣がお答えになりましたように、OPEC総会がこの末に開かれるわけでございまして、このあたりはやはり注視はし続けてまいりたいと思っております。
  88. 馳浩

    ○馳浩君 当面に影響ないということは、石油への依存度も五〇%に低下しておるということでもありますが、長く続きますとどこかにしわ寄せが来ると。当然、石油元売の企業決算に恐らくしわ寄せが来るのであろうと思いますが、政府としてもただ手をこまねいているわけではないと思いますので、改めてお伺いいたします。  問題は、急激な価格暴落が起こらないように配慮をしつつ、価格の高どまりを防いでどう適正価格に軟着陸させるかというその対策が問われていると思います。  そこで注目されますのが、三月二十七日に開かれる予定のOPECの総会です。日本としては増産を要望していくべきと考えますが、どのような働きかけを考えているのですか。例えばアメリカは、先月二十六日にリチャードソン・エネルギー長官がサウジを訪問して増産を強く要望しております。  また、国際的連携も必要と思いますが、いかがでしょうか。関連して国際エネルギー機関、先ほどちょっと話がありましたが、IEAの動きはどうなっているのでしょうか。
  89. 河野博文

    政府参考人河野博文君) 御指摘のとおり、三月二十七日のOPEC総会の成り行きが大変注目されるところでございます。  これまでも産油国の日本における大使館あるいは日本に訪問します産油国関係者と種々意見交換を行ってきておりまして、合理的で安定的な価格レベルが産油国にとっても消費国にとっても望ましいということで基本的に理解をするものは多いというふうに思っておりますが、こういった働きかけあるいは関係国との意見交換をさらに続けてまいりたいというふうに思っております。  同時に、先ほど触れましたように、IEAの理事会では二月二十四日に現下の石油情勢についての懸念を表明し、また増産の必要性についてプレスリリースという格好でメッセージを発しているということでございますけれども、もちろんこのIEAの参加国の中に当然日本は重要な位置を占めているわけでございまして、日本考え方もこの理事会の声明に反映されているというふうにお考えいただけたらと思います。
  90. 馳浩

    ○馳浩君 大臣にお伺いいたしますが、今回の原油価格高騰、あるいは後ほどお伺いいたしますがアラビア石油の問題と、どうも日本の国としては中近東、サウジアラビアを含めてですが、この国々との外交のパイプがいささか薄いのではないかという懸念を持っております。  向こうの側の国も日本の外務大臣よりは日本通商産業大臣とのパイプの方をやはり期待しているのではないかとも思いますし、日本の立場からすれば当然通商産業大臣の役割が多くなってくると思うんですが、その辺を踏まえて、通産大臣に外交の問題を伺うのも失礼ではありますが、大臣個人としては中東諸国に対するやはり関心の高さ、認識、こういったものの所見も披瀝していただきたいと思いますし、今回の問題を考えれば、まだまだ市場商品化しつつあるとはいえ石油は戦略性の高い商品であると考えざるを得ない。この後にヘッジファンドの問題も聞きますが、そういう観点でとらえていく必要もあると思いますが、いかがでしょうか。
  91. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) エネルギー安定供給の角度から考えた場合に、サウジアラビアの日本に対する石油百万バレルでございますが、大変高い依存度でございます。そういう意味では特に中東産油国の中でもサウジは目立っておりますけれども、中東産油国との協力関係を一層強力なものにしていくということはもうお説のとおりでございます。今、中東産油国に八五%頼っているという現状でございますから、なおさら委員指摘のような対応は必要なことだと思っております。  ただ、一時は中東と我が国の外交はお留守ではなかったかという批判も随分あった時代がありましたが、近年はかなりサウジアラビアとの交流というのは進んでおりまして、例えば九七年の橋本総理大臣の同国訪問、あるいは九八年、今のは九七年ですが、アブドラ皇太子がその翌年に日本を訪ねてきていただいている、あるいは私もそうでございますが、このところ歴代の通産大臣がサウジアラビアを訪ねていくというようなことで、両国の関係の強化には最大限の努力を尽くしてまいりつつございます。  また、中東産油国との間で石油開発・精製分野の技術協力あるいは幅広い分野での研修生の受け入れ、その他専門家の派遣、人的交流、投資ミッション、可能な限りの配慮をいたしまして、その協力関係を強化しつつございまして、一層努力をしなければならぬと思います。
  92. 馳浩

    ○馳浩君 次に、大蔵省にお伺いいたします。  今回の原油価格高騰の問題の一つの背景でありますヘッジファンド、いわゆるアメリカの好景気に浮かれた、浮かれたと言っては失礼ですが、ある部分余剰の金が先物取引市場に流れてくるという中で、非常にこういう原油価格の高騰を招いているという見方がされておりますけれども日本としてこのヘッジファンド対策をどのように考えているのか。  アジアの通貨危機もそうですが、国際的投機資本の短期の流出入は秩序ある健全な資本主義にとって脅威であると思います。早急に規制をするのか、またはこれに備えた国際的セーフティーネットを構築するのか、またこの問題に限ればヘッジファンドの活躍の場である先物取引市場を縮小させるとか、いろんな議論がしていかれなければいけないと思います。この点に関する政府内の検討状況といったものをお伝えください。
  93. 溝口善兵衛

    政府参考人溝口善兵衛君) 御指摘のように、ヘッジファンドの急激なかつ巨額な資本移動というのがいろんな通貨の危機をもたらしたわけでございまして、こういう問題にどう対応するかにつきましては、我が国はもちろんでございますけれども、先進国が協調していろんな場で検討いたしております。  一つは、BISと称します国際決済銀行の場でどういう対応をしたらいいかというのを勉強しておりますし、昨年二月にG7、先進七カ国によりまして、大蔵省でありますとか中央銀行でありますとかあるいは金融監督当局が集まりまして、ヘッジファンドの問題にどう対応していくかということを検討を続けております。我が国も参加しておりますけれども、その報告が近々まとまる予定でございます。  そこでどういう議論がなされておるかということでございますが、これはやはりヘッジファンドの性格からくる問題が非常に多いということが言われているわけでございます。  一つは、ヘッジファンドというのは、御承知のように、プロの投資家から資金を集めましてそれをまたプロの投資家が運用するというようなことでございまして、一般の大衆の方から資金を集めましてそれを運用するというような形でないものでございますから、いろんな政府の規制、監督がなくてもいい分野で活動しているわけでございます。それが一つでございます。  それから、そういうことでプロ同士の取引でございますから、一般大衆の方々に対してディスクロージャーをしなきゃいかぬという要請もこれは低いわけでございます。さらに、そういう利益を求めての行為でございますから、非常な少額の資金で、これを借り入れ等によりまして規模を大きくして投資をするというようなことをやっていますから、非常に利益ももうかったときは多いかわりに損したときは非常にリスクが多いという問題があるわけです。  しかし、これを放置しますと、金融システムにいろいろな問題が起きますから、そこで今考えておりますのは三つ対応がございます。  一つは、そういうヘッジファンドに金を貸す種々の金融機関あるいは投資をする投資家がいるわけですが、そういう人たち自身がリスク管理を徹底する。特に金融機関が投資する場合には、金融機関は規制、監督当局のもとにありますから、そういう手段を通じてリスク管理を徹底するように指導する。これが一点でございます。  第二点は、先ほど申し上げましたように、ディスクロージャーが十分なされないわけです。それはプロ同士ですから構わないんですけれども、一たん問題が起きますと金融システム全体に問題を起こしますので、そういう観点からディスクロージャーを拡充しなきゃいかぬということが次のポイントでございまして、これが今の対応の核心であろうかと思います。アメリカどもそういう方向で議会の法案なども出しておるわけでございますけれども、我が国としてもそういう方向を見ながら検討してまいりたいというふうに考えております。  三番目は、直接に規制するということでございますが、これは、ヘッジファンド自身の定義が難しゅうございますし、直接規制しようと思いましてもオフショアに逃げたりしますのでかえって監督ができないという問題がございますので、先ほど申し上げました三つの中では間接的な規制、ディスクロージャーを徹底することによって投資をする人はどのぐらいのリスクがあるかをよく知ってやりますし、それからヘッジファンドから投資を受けている人たちはそれがどういう性格のものであるかをよく承知するということによって対応策をとるという方向で検討を進めているわけでございまして、基本的に我が国もそういう方向で検討しているところでございます。
  94. 馳浩

    ○馳浩君 溝口局長、重ねてでありますが、その二番目の対策であるディスクロージャーの拡充についてアメリカでは法案も準備されているような話がありましたが、それを見ながらじゃなくて、日本としてはじゃどうする方向ですかということをもうちょっと踏み込んでお伝えください。
  95. 溝口善兵衛

    政府参考人溝口善兵衛君) アメリカでは議員立法として出ておりますが、実はヘッジファンドは日本にはほとんどございません。日本にはごく少額のものがあるかないかぐらいでございまして、いろいろな推計がございますけれども、世界で大体三千億ドルとかいろいろ言われていますけれども、そういうものは大体アメリカにあるわけでございまして、まず所在国で規制をするということが大事でございまして、ほかの国につきましてはやはりその動向を見ながらやっていくべきことかなというふうに考えている次第でございます。
  96. 馳浩

    ○馳浩君 わかりました。次の質問に移ります。  次に、国内対策を伺います。  そもそも国内における石油の安定供給の確保策は大きく分けて三つあります。石油の国家備蓄であり、自主開発であり、産油国協力であります。このうち、自主開発、産油国協力については、アラビア石油問題と関連するので、後でお伺いいたします。  まず、国家備蓄について質問をします。  新聞報道によりますと、通産省は、石油価格急騰などの緊急時の対応策として、従来の民間備蓄分の市場への優先的放出を改めて、国家備蓄分の五%、すなわち二百五十万キロリットルに限り先行放出する方針に改めたと報じられております。この事実の確認と、あわせてなぜ国家備蓄先行放出に方針転換をしたのか、お伺いしたいと思います。
  97. 河野博文

    政府参考人河野博文君) 私どもこれまでは、石油供給途絶のような緊急事態が発生した場合、いわば最後の手段ということで国家備蓄の取り崩しを考えておりました。  他方、国際的には、過去のオイルショックのような大規模な供給途絶だけでなくて、近年、特に緊急時の初期段階には、市場の過熱を予防しあるいは安定化することの重要性に対する認識が高まってきている、そういう環境にあったと思います。  こうした状況を踏まえまして、昨年八月の石油審議会石油部会報告におきましては、緊急時の初期対応として、適切な情報提供とあわせて、市場への石油供給を確実に増加させ、かつ市場安定化のためのアナウンスメント効果の高い国家備蓄を機動的に放出することが必要であるという御意見をちょうだいしたところでございます。  この御報告をいただきましたことを踏まえまして、IEAにおける国際協調による備蓄放出の場合を含めまして、我が国においては緊急時の初期段階において国家備蓄を機動的に放出するということを考え、そのための手続の整備を行ったところでございます。  ちなみに、二〇〇〇年問題でもし仮に緊急時がありますれば、こういった準備が発動されたということになろうと思いますが、幸いそういう事態はなかったわけでございます。  それから、御指摘の五%でございますが、実際の放出量につきましては、放出時におきます原油供給の状況などを総合的に判断して決定するといったのが方針でございますので、特段何%という上限が定められているわけではございません。制度的には、緊急時の初期対応として所要の量を入札によって迅速に放出するという仕組みをとっているところでございます。
  98. 馳浩

    ○馳浩君 では続いて、国家備蓄放出の発動要件についてお伺いします。  産油国を巻き込んだ戦争あるいは産油国の政変のために石油の供給が途絶したときに放出されることがあるということはわかりました。今回のような産油国の減産調整や投機などにより原油価格が急騰し、その後も高どまりし続けた場合も国家備蓄の放出があるのかどうか、お聞きしたいと思います。  関連して、今回の方針の転換がOPEC総会に向けての減産維持体制への対抗的アナウンス効果があるのかもお伺いしたいと思います。
  99. 河野博文

    政府参考人河野博文君) 備蓄放出の考え方でございますけれども、基本的には、あくまで我が国へのあるいはIEAという国際機関加盟国全体におきます石油供給の支障あるいはそのおそれのある場合に放出をするという考え方でございます。  したがって、原油価格高騰の背景に石油供給の支障ですとかあるいはそのおそれがあるということであれば、備蓄の放出ということもないとは申せないわけですけれども、ただ現状について申し上げますと、我が国においては確かに値段は上がっておりますものの、必ずしも原油ですとかあるいは石油製品の調達が困難になっているという状況にはないわけでございまして、またOPECも事態を認識して三月末の総会に向けてさまざまな原油増産の話し合いも含めた話し合いが行われるのではないかと思っておりますので、現時点でこれが直ちに供給支障に当たり、したがって備蓄原油の放出につながるというふうには考えておりません。  ただ、石油の供給につきましては、それが日本経済活動、国民生活に非常に大きな影響を与えるものでございますので、今後ともその状況については引き続いて注視をしていくことが必要だというふうに認識をしております。  それから、国家備蓄放出のアナウンスメント効果と現在のOPECの減産体制との関係でございますけれども、国家備蓄を機動的に放出するというのは、昨年八月、先ほど申し上げました石油審議会の御意見をちょうだいしたことで考え方をそういうふうにしているわけでございますけれども、現在のOPECの減産体制への対抗を企図したということではもちろんないわけでございます。一般論として、緊急時における備蓄放出の市場へのアナウンスメント効果を期待したということは申し上げられると思います。  こういうことでございますので、国家備蓄の放出に当たりましては、迅速に手続を終了して放出を行う仕組みを整備しているということでございます。
  100. 馳浩

    ○馳浩君 関連して、現在の国家備蓄分の先行放出を決めたのでありますから、その減少分の増加は少なくとも必要ではないかと思います。アラビア石油の権益失効もあわせるとなおのことではないでしょうか。また、国家備蓄の増加もOPEC等へのアナウンス効果もあると思いますが、いかがでしょうか。
  101. 茂木敏充

    ○政務次官(茂木敏充君) IEAにおきましては、加盟国の協定上の備蓄義務が九十日ということになっていますが、先ほど来の答弁の中にもありますように、IEAで協調行動をとっていく、この初期段階の機動的な放出のための協調行動に使うのがこの九十日分を超えた部分と、こういうことであるわけでありますが、この超えた部分の備蓄量を各国比較してみますと、我が国の備蓄水準はIEA加盟主要国の平均を若干、季節によって違いますが、五日から七日ほど下回っております。  したがいまして、石油審議会の報告におきましても、IEA加盟主要国平均と我が国との差、この五日から七日の差を埋めることを当面の目標とすることが適当であり、具体的な積み増しの方法やスケジュール等につきまして財政状況等々を踏まえて検討を行っているところであります。
  102. 馳浩

    ○馳浩君 じゃ、次の質問に移ります。  今回、日本の自主開発政策を根底から揺さぶる問題が起こりました。それがアラビア石油の権益更新問題です。御承知のように、結局問題となっていたカフジ油田の採掘権の更新はなりませんでした。サウジ側の要求する更新料いわゆるサインボーナスは、採算がとれない二千四百億円の鉄道事業の建設とその事業運営の全面負担、これは年間百億円かかるそうでありますが、であり、余りに不合理なものであったと思っております。一方、日本側の提案であるアラビア石油による贈与も含めた日本側の総額八千億円の投融資は譲歩に譲歩を重ねた最大限の支援策であったと思います。これをサウジ側が拒否する以上は決裂もやむを得ない、こう考えますし、むしろ国民に説明のできる税の使い方を最優先しての決断は、政府の透明性、信頼性を高めた決断であったとも評価できます。  そこで、この問題で大変な交渉の現場におられた深谷大臣にこの問題の総括をしていただきたいと思います。また、このような決断をした背景として、この権益を失うことの影響の小ささもあったと思いますので、この点も説明していただきたいと思います。  あわせて、日本側が拒否をした二千四百億円の鉄道建設事業は、総額八千億円の投融資よりも一見その額がかなり低いだけに、私のような素人には、八千億を使う覚悟をしているのならば二千四百億ぐらいはまあいいじゃないかと思えてしまいますが、この点も踏まえた鉄道建設事業の不合理性も説明をしてこの疑問を払拭していただきたいと思います。反対に、相手の立場に立ってではありますが、サウジはなぜ八千億より二千四百億の方を選んだのか、こういった相手国側の事情もお伝えいただければと思います。
  103. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) サウジアラビアは、中東産油国の中の盟主と申し上げていいのではないかと思います。大変力を持っているのみならず、日本は百万バレルという非常に大きな石油を輸入している、そういう相手国でございます。したがって、日サ関係の強化というのは先ほども申し上げましたけれども大変大事なことだと、まず大前提がございます。  そういうときに、アラビア石油のちょうど契約の期限が切れる。先ほども申し上げましたけれども、通常の契約と違いまして、一たん撤収されて、契約の問題について話がついたらもう一回買い取るという、そういうまことに難しい内容でございましたが、その時期を迎えた。当然のことながら、アラビア石油は一企業としてサウジとの交渉を始め、いろいろな経過があったわけでありますが、一方で、我々としても日サ関係環境を整備するという立場から少しでもプラスに結果的にはなるようにというのでいろんな提示もしたのでございますが、ただいまお話がありましたように、先方が鉄道建設を行ってそれを無償で供与せよということでありましたので、これはどう考えても国民の納得できるところではないというので、残念ながら物別れに終わって帰ってきたというのが実際であります。  交渉事でございますから細かい中身を申し上げるわけにいきませんが、サウジアラビアにはサウジアラビアの考え方があったと思います。それはどういう理由かということについてつまびらかにはいたしませんが、アラビア石油を通しての今までの取引の中でいわばサウジが損失をした部分がある、そういう点の補てんだといったような考え方もあったようでございます。  日本にしてみれば、ただいま申し上げたような次第で、環境を整備するということでありますから、採算性が少なくとも見込めない鉄道に二千数百億を提供し、また毎年百億以上かかると言われておりますから、それらを野放しに出すということは到底容認できないことでありますから、それで残念ながら決断をせざるを得なかったという状態にあります。  また、先ほどの質問の中に、すべて総額でいうと八千億を提示したという話でありますが、六千億は投資促進に関しての融資であります。つまり日本側が、いろんな投資をサウジに行う、そういう企業がありました場合には、その枠組みの中から融資を行い、金利については当然考えますけれども、そういうことでサウジへ行って投資をし企業として進出をしていく、それは日本の利益になりますし、同時にサウジの利益にもなるという、こういう考え方でございました。  それから、あとの分は正確には千四百億円でございますが、これはサウジアラビアが仮に鉄道をみずから敷く場合には国際協力銀行等からこれらの融資を考えていこう、その場合には金利についても考えましょうという、そういう提示をしたわけでございます。  したがいまして、明確に言えることは、我々が提示したのは専ら融資でございまして、無償ではございません。それが、先方の求めるものは鉄道を敷いてそれをプレゼントせよということでございましたので、額はともかくといたしまして、性格が全く違うわけでございます。そういう意味では、先ほど申したように、残念ながらそれはできないと答える以外にはなかったというふうに考えます。  それからもう一つ、アラビア石油の権益を失ってもその被害が少ないからだと、こういうお話もありました。それも一つではありますが、本来自主開発としていわば最も知名度の高いアラビア石油を存続させたいという気持ちには大きい強いものがございました。  せっかくでございますからその影響についてもう少し詳しく申し上げれば、このアラビア石油の権益というのはクウェートとサウジアラビアとそれぞれ二分の一ずつでございます。仮にといいますか、もう既に始まりましたが、当時としては、サウジの権益の延長ができない場合はサウジ側のアラムコという会社の一〇〇%子会社がその分を担当する、残りの二分の一のクウェート分は旧来どおりアラビア石油が担当する、こういう話のようでございました。そして、それらの経過の中でそのアラムコ側の動きを見ておりますと、従来から日本に売っていた分については引き続いて売りたい、買う意思があるかという、そんな動きもございまして、結果的にはアラビア石油が供給していた分については格別後退をするというような状況ではないのではないか、そんな判断もございました。  アラビア石油の日本に対するいわゆる供給量は、エネルギー総需要の三・五%ぐらい。ですから、大事でありますけれども数字の上ではそのような状態にあったということでございます。
  104. 馳浩

    ○馳浩君 続きまして、今回の交渉決裂の中で反省すべき点もあったのではないかと思いますので、この辺の質問を続けてしたいと思います。  すなわち、今回の決裂は確かに石油権益の国有化というサウジ側の戦略があり、初めから決裂という結論が用意された交渉であったとも考えられます。しかし、それだけではないとも思います。サウジ政府が抱いた抜きがたい日本政府への不信感もあったのではと推測できます。  というのも、九二年に両政府が一時合意しながら御破算になったサウジ・アラムコと複数の日本企業の石油精製合弁事業の件、そして今回の採掘権交渉においても、九七年末にサウジ側から提案された鉄道建設事業において、一年後、アラビア石油の社長が自前の調査をもとに積極的に取り組むことにやぶさかでないと発言し、その後サウジ政府は鉄道建設を閣議決定してしまった点、いずれも日本側には言い分があると思いますが、過度の期待を抱かせて、二階に上げておいてはしごを外したと言われても仕方ない面があるように思います。この点、どう率直に考えているのでしょうか。  特に、一民間会社の社長でしかない人の意見を政府を代表する意見であるがごとくサウジ政府がとらえたのではないでしょうか。それも、その社長を七六年以来官僚の大物OBが務めていたための誤解からきたものではなかったのでしょうか。日本政府への不信感の原因がこの辺の誤解にあるのであるならば、社長を含めた役員人事の見直しも検討されるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。  つまり、相手国政府にとって、交渉相手のだれが政府を代表しているのか、官僚OB社長か現役官僚か非常にわかりづらかったのではないのでしょうか。特に、両者の見解に相違があればなおのことであります。サウジ政府が鉄道事業にこだわり続けた一因として、OB社長が大丈夫と言い張ってのことであったとしたら大変な問題であります。この点はいかがでしょうか。  というのも、二月二十九日の読売新聞に、このOB社長がラスト交渉で、通産省にも相談せず鉄道建設にこだわり、費用二十一億ドル中七億ドルの国費投入を提案して通産省に事後了解をとろうとしていたという記事があったからです。  この読売新聞の記事の確認とあわせて伺いたいと思います。
  105. 河野博文

    政府参考人河野博文君) 確かにサウジアラビアとのいろいろなやりとりには歴史がございます。  先ほど御指摘がございました日本の石油精製会社との合弁事業でございますけれども、これは先方はアラムコ国営石油会社でございますが、日本側は民間企業でございます。民間企業との間でさまざまな話し合いがなされまして、通産省もある種の触媒機能ということで御相談にもあずかりましたけれども、最終的には企業の判断としてそれぞれの意見が合わずに合弁事業の達成に至らなかったというのが実態でございます。  それから、鉄道建設につきましては、アラビア石油の社長がさっきおっしゃったようなコミットをしたのではないかというような報道等々ございますけれども政府としては一貫して先ほど大臣が申し上げたような態度で累次にわたって話し合いをしてきたわけでございまして、政府の態度にいささかの揺るぎもないというふうに思っておりますし、政府の態度をサウジアラビア側が誤解するというふうには私どもは思っておりません。  また、アラビア石油とサウジ政府の間でどんな交渉があったかということでございますけれども、これはアラビア石油も守秘義務のもとで交渉しておりますので、私どもからはコメントを控えさせていただきたいというふうに思います。  いずれにいたしましても、先ほども大臣がお答え申し上げましたように、サウジ政府は鉄道の無償供与ということを最後まで強く主張していたというのが事実でございまして、私どもはこれには応じられなかったということでございます。
  106. 馳浩

    ○馳浩君 今ほどは報道もされておりますので細かい交渉過程の話も質問させていただきましたが、より大きなこれは政府の姿勢という観点から質問したいと思います。  すなわち、今回の採掘権失効の裏には国家備蓄と並ぶ原油自主開発戦略の見直しがあったのではないかということです。つまり、より開発コストや市場を意識した開発政策に転換する考えであり、具体的にはリスクが極めて高い探鉱事業への偏重を見直し、開発済み油田の市場価格での買い取りや権益の部分取得を促進する考えであります。これは初期投資は大きいが確実に原油を確保できるもので、トータルベースで非常に効率的な方法と言われております。この点の見直しはいかがでしょうか。  また、一般論として油田の買収はどのぐらいかかるのでしょうか、海外の事例から教えていただきたいと思います。もちろん、油田買収の際は十分採算が合うようにすべきであるとも思いますが、いかがでしょうか。
  107. 河野博文

    政府参考人河野博文君) 一次エネルギー供給におきます石油依存度が非常に高い、またその大部分を輸入に依存しているということでございますから、石油の自主開発を進めるということは、御指摘のように、産油国との関係強化あるいは備蓄の保有と並んで引き続き重要な課題だというふうに思っております。今後、石油自主開発を進めるに当たりましては経済性を一層重視して政策を進めることが重要だと考えておりまして、現在、石油審議会の開発部会でも検討していただいておりますが、石油自主開発のより効率的、効果的な推進に努めてまいりたいというふうに考えております。  御指摘の開発済み油田の買収でございますけれども、確かに探鉱リスクがなく確実に埋蔵量を得る手だてといたしましては欧米の石油開発会社においてもしばしば用いられております。御指摘の点も含めまして、施策のあり方について検討を行っているところでございます。  なお、御質問でございます油田買収の価格は、そのときの経済情勢あるいは油価、さらには油田に関係します権益の条件などによっていろいろさまざまでございます。ただ、米国の専門誌によれば、平成十年におきます欧米企業による油田買収の単価は、油田から生産される石油から販売収益をちゃんと得られるということはもちろん前提でございますけれども、埋蔵量一バレル当たり七ドル、それから大型企業合併に伴うものを除いた場合には四ドルというような指摘がございます。  具体例で申し上げますと、一昨年、モービルがアルコの米国カリフォルニア州に所有いたします一億六千万バレルの埋蔵量があると言われます資産を五億ドル近くで買収したという例がございまして、これを計算いたしますと、埋蔵量一バレル当たりの単価は約三ドルというような数字になります。
  108. 馳浩

    ○馳浩君 続きまして、関連して石油公団のあり方について質問いたします。  原油の探鉱段階に限られている公団の出融資の対象を油田の買収や権益の部分取得による共同操業などにも拡大し、こちらに重点を置くべきであると思いますが、いかがでしょうか。また、探鉱段階の出融資の限度額も現在の七割から五割程度にすべきとも考えますが、いかがでしょうか。  また、こういう採算重視路線に変更するのには、何よりも自主開発路線の数値目標である総輸入量の三〇%という数字自体を撤廃すべきとも思いますが、いかがでしょうか。
  109. 細田博之

    ○政務次官(細田博之君) 世界的に見ますと石油の探鉱開発はオイルメジャーが中心に行っているわけでございまして、彼らは既存の油田の収益をさらに新しいリスクに投入するということでお金も回っているわけでございますが、我が国企業には残念ながらそういったものはございませんし、また現下の経済状況下では非常に厳しい状況でございます。石油開発には探鉱の成否、油価、為替レートの変動など極めて高いリスクがありますので、その点は引き続き石油公団による政策支援を行っていく必要があるわけでございます。  今後の石油自主開発につきましていろいろな面での検討をすべきであるという御指摘、まことにそのとおりでございまして、石油審議会開発部会基本政策小委員会におきまして昨年三月から検討を行っております。そして、これまでの段階では自主開発の意義とか我が国の石油開発産業の現状などについて分析を行っておりますが、さらに政策のあり方について議論されておることを五つばかり申し上げたいと思いますが、それは一つは、これまで掲げてきました二十一世紀初頭百二十万バレルを確保するというような石油自主開発の目標のあり方をどうするか。これは、おっしゃいますように、大変大事な目標をどう考えるかということを再検討しておるわけでございます。  それから、石油公団出融資制度運用のあり方でございますが、むしろ支援対象を重点化して有望なものを中心にやるべきであるという意見もございますし、それも含めまして出融資制度の運用をどうするか検討しております。ただ、日本企業の実態と昨今の景気の実態から見ますと、出融資比率を下げれば下げるほど新しい案件に取り組みにくくなりますので、むしろ私どもとしては重点化ということが大事なのではないかという観点で取り組んでおることを申し添えたいと思います。  また、生産中油田の買収につきましては、確かに、先ほど長官からお答えしましたように、メジャー間などで取引されているものはかなりコスト的に見て割安なのかなという案件もあるわけでございますが、油田開発というのは、御高承のとおり、次々と探鉱をし開発の施設を更新していくという、相当コストがかかる。日本においてはまだそういった要因の問題等もございますので、買収価格が見合うだけのコストになるかという問題、あるいは今後の為替リスク、日本は絶えず円高に悩まされてきましたが、そういったこととの関係で、できるかどうかという点については、もちろんフィージビリティーの高いものについてはやるべきだと思いますが、こういった面での支援拡充をさまざまな観点から検討しておるわけでございます。  その他、天然ガス開発プロジェクトに対する支援をもっと考えなければならない、あるいは石油公団保有株式の売却についても積極的に考えていこうと、これらについて政策の見直しを行っているところでございます。
  110. 馳浩

    ○馳浩君 アラビア石油に関連する問題の最後の質問ですが、クウェート問題を質問したいと思います。  すなわち、二〇〇三年一月にカフジ油田のもう半分が更新の時期を迎えます。クウェート政府は九五年に更新の閣議了解をしておりますが、専門家の話によれば、クウェートは議会の力が強く、その議会で更新反対を唱えている一部勢力があると聞きます。特に、日本人従業員との待遇の格差を批判しております。また、今回の日本のサウジに対する投融資案も見ております。  以上を前提にすれば、更新は難航が予想されると思います。早目早目の情報収集と対策が不可欠であり、何よりも、この問題をアラビア石油一企業の問題ととるか日本の国策として政府が前面に出ていくか、はっきりさせて交渉に臨むべきではないかと思います。  クウェートというのはまさしくイラクと国境を接しておるわけでありますから、軍事的な背景のない日本にというよりも、国連の常任理事国に、フランスやイギリスやあるいはアメリカのメジャーにやっておいた方がクウェートとしても安心ではないかという声もあるそうでありますが、このクウェート問題について今後どのような姿勢で臨まれるのか、お聞きしたいと思います。
  111. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) アラビア石油のクウェートとの契約は、お話しのとおり二〇〇三年の一月まであるわけでございます。この採掘権の更新の問題については、先ほどから何回も申し上げましたように、基本的にはアラビア石油という企業がクウェート政府と行うべき筋合いのものでございます。  ただ、今までも申し上げてまいりましたように、自主開発の石油会社ということで、これが存続するということは一方においては大変重要なことでもございますから、クウェートとの間で一体政府として何ができるのか、目下は格別な動きはございませんが、これらの動きをきちっと見据えながらできる限りの対応はしていかなければならないというふうに思います。  さきのサウジの鉄道無償提供をお断りしたということは、逆に言うと、これをもし実現していたらそれがあらゆるところに波及するということ等もございますので、一層その点にも配慮を入れたというふうに御理解いただきたいと存じます。
  112. 馳浩

    ○馳浩君 資源を持たざる国の悲しいところであるかもしれませんが、やはり外交上の問題もありますから、毅然とした日本の姿勢をとっていっていただきたいと思います。  続きまして、日本のエネルギーセキュリティー問題について質問をします。  まず、短期的な問題として、石油の中東依存度を低くする必要があると思います。現在の中東依存度は約八五%であります。余りにも高過ぎると思います。  しかし、これは容易ではない問題でもあります。なぜなら、輸入をする国内業者にとって中東産が最も安くコストも小さい。また、原油は市場から調達する、しかもこれが安定供給につながるという原則とも矛盾してしまうからです。  高過ぎる中東依存度についてどう対処するお考えか、伺いたいと思います。
  113. 河野博文

    政府参考人河野博文君) 先ほど石油価格の上昇の影響のところで大臣から御答弁申し上げましたように、過去の石油危機前の中東依存度に比べまして、現在八五%でございますので、かなり高まっているのはそのとおりでございます。一九八〇年代後半には一時七〇%を下回る水準まで低下したこともあるのでございます。  その後、原油調達先の国の数といたしましては、一九七〇年の十五カ国から最近では二十数カ国ということで、国別には多様化が進んでいるわけでございますが、中国あるいはインドネシアさらにメキシコといった非中東産油国からの輸入が伸び悩んでおります。御案内のように、中国は輸入国化し、インドネシアも輸出余力が乏しいという状況になっておるわけでございます。  また御指摘のように、需要の伸びに応じて、距離的に近く豊富な生産量を誇る中東からの輸入量が、これは商業ベースではある意味では当然だということかもしれませんが、増加したということでございまして、中東依存度が再び上昇してきているわけでございます。これを商業ベースの取引を前提として引き下げることはなかなか難しい、それは御指摘のとおりだろうと思います。  したがいまして、私どもといたしましては、基本的にはエネルギー政策全般としてこういう事態に対応するべきものではないかというふうに考えるわけでございまして、まずエネルギーについては、商業ベースでの調達を基本とする一方、省エネルギーの推進あるいは原子力の推進、さらに新エネルギーの開発導入などによりまして石油依存度の低減に取り組むということも基本的に重要なことだと思います。また、約百六十日分ございます石油備蓄の保有、先ほどはこれをふやしてはどうかという御指摘もいただいたわけでございますけれども、これも安全確保対策ということになります。  また、御指摘のような産油国協力あるいは自主開発原油政策の確保、可能であれば極東地域での自主開発等々多様な安定供給確保策を講じていくというのが政策であろうというふうに思っております。また同時に、我が国が原油の大半を輸入しておりますこの中東産油国との関係を一層強化していくということは、申すまでもなく重要なことだろうというふうに思っております。
  114. 馳浩

    ○馳浩君 中東関係の国の中で、特にイランとの関係でありますが、これについてお伺いいたします。イランへの依存度を上げることが現実的に可能ではないかという指摘です。  改革派のハタミ政権と西側諸国との関係改善が進んできており、我が国も昨年の円借款に続く長期貿易保険の再開方針を一月に明らかにしたところです。イランとの関係改善のチャンスだと思いますし、日本企業のイランでのビジネスチャンスもふえると思いますが、いかがでしょうか。
  115. 河野博文

    政府参考人河野博文君) 御指摘のように、イランにおきます選挙の結果、これは西側諸国にとりましてもある種ポジティブなサインというふうに受けとめられているのではないかと思います。こういう事態も受けまして、また私どもにとりましての原油供給国の多角化、多様化という観点からもイランとの間でも種々情報交換を行っていくという考え方でございまして、先日も、私自身イランの大使とも若干の御相談を申し上げたというような状況にございます。
  116. 馳浩

    ○馳浩君 次に、先ほど長官も言及されましたが、石油依存度を低くする対策についてお伺いをいたします。  現在の一次エネルギー供給源の石油依存度が九八年で五二・四%、二十五年前の七七・四%に比べ二五%も下がっておりますが、欧米の四〇%前後に比べるとまだ高い。これを下げることが最重要課題と言えます。つまり、エネルギー政策の総合的見直しが不可欠ということになります。この点大臣は今月十日の閣僚懇談会で政治的決断をなされて、エネルギー政策の見直しを表明されました。この決断は高く評価されるものと思っております。  問題は、石油への依存度を下げるための代替エネルギーとしての切り札であった原発が一歩後退した中で、何を代替エネルギーの中心として考えるかであります。大臣がおっしゃるように、省エネも重要でありますが、石油代替エネルギーの確保が最も重要であると思います。その中でも最も有望なのは天然ガスであり、今後は天然ガスの開発しかないと思います。天然ガスの活用に関する大臣の御所見をお伺いいたします。
  117. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) エネルギー政策につきまして、最近、私どもが長期的なエネルギー政策について検討を事務方に指示いたしまして、一年ぐらいかけながら全体像をきちっと示していこうというふうにさせていただいたのはお話しのとおりでございます。国民の理解が得られるように、拙速でなくてじっくり十分な時間をかけて検討を進めてまいりたいと存じます。  そういう中で、天然ガスはおっしゃるとおり石油代替エネルギーとしては非常に有望でございます。何よりも中東地域以外にも相当の埋蔵量が期待されるということ、そしてそれを導入することによって安定的な供給が図れるということ、あるいは他の化石燃料に比べて地球環境問題に関しても非常に優位性があるといったようなことから、天然ガスはこれからますます重要になってまいるであろうというふうに思います。  私どもは、今後のエネルギーの政策の検討に当たりまして、こうした観点を踏まえながら、天然ガスの活用に関しても十分に検討かつ努力をしてまいりたいと思います。
  118. 馳浩

    ○馳浩君 最後の質問になります。  天然ガスの開発に関する件と北東アジアの天然ガスパイプライン構想について、あわせてお伺いをいたします。  天然ガスの輸送形態の一つであるパイプラインについてです。  私自身、サハリン、シベリアのヤクーツク、中国のタリム盆地等を産出地とする北東アジア天然ガスパイプライン構想を平成九年から主張しております。  この構想を推進する理由は、エネルギーセキュリティー問題のほかに三つあります。  第一の理由は、外交・安全保障に資するからです。パイプラインの建設により、オイルタンカーの安全航行というシーレーン防衛のための各国の海軍力の維持増強の根拠が少なくなるからです。また、パイプラインを共同管理していくわけですから、相互の信頼醸成にも役立つと思います。  第二の理由は、北東アジアの安定的経済発展に資するからです。日本の需要の大きさから考えて、輸出国に莫大な利益をもたらしますし、日本にとっても、天然ガスは発電・発熱効率が高く、また、液化天然ガスのタンカーでの輸入よりコストの面でも輸送距離が五千キロまでなら安く済むと計算されているからです。陸上輸送の場合でも、輸送距離が二百キロだとタンクローリーに比べて三分の一との試算もあります。  第三には、地球環境に優しいからです。天然ガスはほかの化石燃料に比べ地球温暖化ガスであるCO2の排出量が少ない、NOxやSOxの排出量が少ないという観点から、天然ガスの開発、そしてこの北東アジアにおける供給の構築ということは必要であると思っておりますが、この点、政府においては北東アジアの天然ガスパイプライン構想をどのように考えておられるでしょうか。民間でもサハリンにつき事業化調査が本格的に行われており、近い将来、天然ガス開発と同様に国家プロジェクトとして支援していくのか決めなければならないと思いますが、いかがでしょうか。あわせて、この事業化調査の概要も教えていただきたいと思います。  関連して、このパイプライン構想の課題について、いろいろ課題もありますが、問題は価格であり、また国内の需要先の確保でもあります。より安い価格設定をするためにも、国家プロジェクトとしての支援が不可欠であると思いますが、この点もお伺いしたいと思います。
  119. 細田博之

    ○政務次官(細田博之君) 若干実務的な問題については後で長官から答えることといたしますが、まず、天然ガスの開発の重要性につきましては先ほど大臣がお答えしたとおりでございまして、特に我が国周辺におきましては、サハリンの天然ガス開発プロジェクト、既に大規模な埋蔵量が確認されているわけでございます。販売先の確保につきまして見通しが立ち、ロシア政府との調整が済み次第、開発が行われることになるということで、積極的に取り組んでまいりたいと思います。  また、サハリンとか北東アジアの天然ガスパイプライン構想につきましては、大規模な埋蔵量を持つ天然ガス田から日本にどのように持ってくるか、あるいは中国その他の大規模な消費地においてどのような消費を行うべきかということについて、国際的パイプラインを敷けば多くの人類に裨益する大きなプラスがあるんだがということで構想が提起されているわけでございます。将来的にエネルギー需要はこのアジア全体においてまだまだ大きくふえてまいるわけでございますから、このようなパイプラインプロジェクトが成功すれば非常に有意義なことだと考えております。  現在、サハリンからの天然ガスパイプラインプロジェクトにつきましては、民間企業が事業実現可能性調査をやっておりますが、その内容は後で申し上げますが、これについて政府としても大変大事なものであるということで、結果を踏まえて取り組んでまいる所存でございます。  また、東シベリアの天然ガスをパイプラインで中国等に供給する構想につきましては、中国政府、ロシア政府中心関係者の間で話し合いが行われておりまして、我が国も石油公団がこの話し合いに参加しております。  我が国としては、本構想につきまして、関係国との意見交換を進めるとともに、将来の事業化の際にどのようなかかわりを持つことが適当かを積極的に検討してまいりたいと考えております。あとは長官の方から。
  120. 河野博文

    政府参考人河野博文君) サハリンからのパイプラインプロジェクトに関します企業調査について簡単に御説明をさせていただきます。  平成十一年、昨年の四月二十八日に、石油資源開発株式会社、伊藤忠商事、丸紅が出資をいたしまして日本サハリンパイプライン調査企画株式会社が設立されております。これにエクソンが協力をして約四分の一ぐらいの資金負担をするということで、いわばこの株式会社とエクソンの間のコンソーシアムのような形でサハリンからの天然ガスパイプラインについての企業調査が現在行われつつあるということでございます。  具体的な調査内容といたしましては、海底地形の調査ですとかあるいは潮流などの情報収集、そういったことをもとにいたしましてパイプラインルートはどのようなものが最適であるかというようなことを見きわめ、最終的に経済性評価を実施するということでございます。  これにつきまして、仮にフィージビリティーがあるということであれば、将来は事業化に進みたいという意向を持っているように聞いております。
  121. 馳浩

    ○馳浩君 終わります。
  122. 畑恵

    ○畑恵君 自由民主党の畑恵でございます。馳議員に続いて、大臣所信に対する質疑をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず第一点目は、深谷通産大臣も所信の中、一番最初に政策として掲げられました中小・ベンチャー企業の振興策について伺いたいと思います。  特にまずベンチャー税制について伺ってまいりたいと思うんですけれども、昨年の暮れに税制改正がございました折に、私自身ももう本当に悲願と思ってかなり昼夜問わず力を尽くしたつもりなんですけれども、各議員、皆さん方の御努力でエンジェル税制の抜本改正がなされました。  個人投資したベンチャー企業の株式について、株式公開後一年以内に売却した場合は譲渡益を四分の一に圧縮して税負担を軽減する。つまり、譲渡益の四分の三が非課税になるという非常に画期的なもので、他国にも、あのベンチャー先進国の米国にも本当にまさるとも劣らない税制だと思うんですが、そうした税制ができまして、一方で株式市場の方もマザーズがスタートし、そしてナスダック・ジャパンもこれから立ち上がる。新たなベンチャー向け市場のこうした動向とあわせて非常に活気づいてきているとも思えますし、これからさらに予想もされると思うんですけれども、大体の概観というところをまず大臣からお教えいただけますでしょうか。
  123. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 畑委員がエンジェル税制で党の税調等で頑張っておられることに敬意を表します。  昨年の臨時国会で、与野党を問わず皆様方の御協力をいただいて、中小企業政策の各般にわたりまして実現をいたしたわけでありますが、その中の一つとして、創業・ベンチャー企業の育成ということを一つの柱として立たせていただいたわけであります。  やはり我が国は廃業率が高くて創業率が低い、これが経済の活力をなかなか生み出さない背景になっているのではないか。そういう意味では、新しいものに挑戦するベンチャー企業の育成等は極めて大事だ。その場合に、制度やあるいは予算や税制面でお手伝いをしていくということは当然のことで、一体何ができるかという一つの手法の中にエンジェル税制というのがあったわけでございます。  アメリカでは、国民的にもベンチャー企業というのは認知されていますから、直接金融の道という形で企業にリスクを承知で資金提供する、その場合に税制で優遇をしていくということで一層それを促進するというやり方でした。  我が国の場合もエンジェル税制を始めたのでありますけれども、損をしたときに税制の方で面倒を見るという形でございました。これは説得する側も大変言いづらい話でございまして、資金を投資してくれたら、エンジェル税制で損したら何とか少しはしますよというのでは勧誘することすらもできないわけでありますが、今度は利益が上がったときの税の対応というので四分の一という数字が挙がったわけでございまして、私は、この両面からエンジェル税制が活用されていけば、創業・ベンチャー企業に対する直接資金手当てというのも活発になっていくのではないだろうかというふうに思います。また、マザーズ等のベンチャー向け市場の創設も資金供給の円滑化に資するものと思います。  こういうような状態の中でいろんな施策を進めてまいりますと、ベンチャー企業が次々と生まれていくという、そういう背景をつくり上げるわけでございまして、恐らく新規株式公開企業数はこのことで大幅に増加していくのではないだろうかと期待をしております。  通産省としても一層ベンチャー企業の育成あるいは創出について施策を通じて応援をしていきたいと考えます。
  124. 畑恵

    ○畑恵君 ぜひ頑張っていただきたいと思うのですが、既に今お話しの中にもございました、もうかったときに今回非常に大きく減税をする。これまでは確かに株式譲渡益と損失との通算ができて、そちらでも要するに失敗したときにリスクヘッジしてある、これで両方そろったという、そのロジックは確かにそのとおりだと思うんですけれども、ただやはり、当初税制改正の折に目指しておりましたのは、株式譲渡益のみではなくて所得と損失との通算ということで、やはりもし両輪そろえていただけるとなるならば、株式譲渡益だけではなくて所得との損益通算ということも認めていただけると、少し虫がいい話かもしれませんけれども大変ありがたいと思います。  特に私など、どうも株をまだやったことはないんですけれども、やってみようかというときにも、失敗したらどうしようかという、どうしても割合と楽観的に物事を考えられないたちの人間が日本人にはメンタリティーとして多くいるような気がいたしますので、個人投資家のすそ野を広げるという意味では所得との損益通算というのも今後の課題として取り上げていただけないかと思うんですが、この点についてはいかがでございましょうか。
  125. 細田博之

    ○政務次官(細田博之君) 昨年以来あるいは一昨年以来、畑委員のおっしゃることは通産省でも非常に強い意識を持って要求もしてまいりまして、日本人の国民性から見まして、なかなかリスクマネーに投資するという人が少ない。そこで普通の預貯金にお金が流れて、本当に二十一世紀に必要なベンチャービジネスにいわばリスクマネーが行かない。最近ようやく、先ほど大臣申し上げましたような、新しい市場におきましてそういう人気がどんどん出てくるという事態も出ておりますので、できれば所得との通算ということは非常に理想的な税制であると思うわけでございます。  ただ、このたびの税制改正、現在衆議院は通過いたしまして、参議院の財政・金融委員会でも御審議中でございますけれども、これをぜひ通していただきまして、損失が発生した場合の優遇措置だけではなくて利益が発生したときにも恩典が受けられるこのような制度は、畑委員も非常にこの実現に御貢献をしていただいたわけでございますので、速やかに成立させていただきたいなと。そしてまたさらに、今後の税制改正でさらに投資環境がよくなるような工夫をしていかなければならないのではないかと考えております。
  126. 畑恵

    ○畑恵君 確かに、まだこれから法案を通すところでございますから、ちょっとさらにその次のステップを言うのは気が早過ぎるかもしれませんけれども、ぜひ次期税制改正に向けても頑張っていただきたいと思います。  御存じだと思うんですけれども、昨年、日米欧の主要七カ国にデンマーク、イスラエル、フィンランドを加えた十カ国のベンチャービジネス研究者らがグローバル・アントレプレナーシップ・モニター、GEMという研究調査組織を設けたんだそうですけれども、そこの調べでも、ベンチャーを支援するという場合、補助金のような形で支援するというよりは、やはり税制優遇という形で支援する、インセンティブをきかすというのが非常に効果が上がっているという客観的な数値も報告されておりますので、ぜひもう一段、税制に向けては優遇措置を御勘案いただければありがたいと思います。  もう一点、前回のベンチャー税制の抜本改正の中で行われました留保金課税の一部停止という、一部と言ってもほとんどでございますけれども、こちらについてもあわせて伺いたいと思います。  これはちょうど私が生まれたぐらいのころにつくられた税制でございまして、同族会社が家族の中でやっているような時代のそのままの状況を引きずっている。明らかに時代環境にかんがみてアウト・オブ・デイトだなというようなもので、これは撤廃すべきだという声が特にベンチャー関連の方々から多くございまして、その声を受けてなされた措置だと思います。  これも悲願でございましたので大変ありがたいことではあるんですけれども、やはり停止措置であくまでもあるわけで、停止ということはいつかまた始まるのかなということになってしまいます。  私としましては、現在でも留保金課税の対象となっている一部の企業、これは何かしらの措置が必要だと思いますけれども、そうでない企業に関しましてはもうなくしてしまったらどうかと思うんですけれども、今、法案を審議しているところでなかなか言いづらい部分もあるかもしれませんけれども、通産省としてのお考えを伺いたいと思います。
  127. 細田博之

    ○政務次官(細田博之君) 畑委員指摘のように、この留保金課税問題につきまして、まず制度について申し上げますと、同族会社につきまして、各事業年度の所得のうちの留保金額から留保控除額を差し引いた残額に対しまして一〇ないし二〇%の税率で追加的に課税するという制度でございます。  これは中小・ベンチャー企業の自己資本の充実を妨げ、成長の足かせとなるのではないかということで大議論が行われたわけでございますが、来年度税制改正におきましては、創業十年以内の中小企業、そして新事業創出促進法の認定を受けたベンチャー企業につきまして、留保金課税を適用しない特例を設けることを法改正をいたしまして提案しておるところでございます。これは昭和三十六年の制度創設以来の抜本改革でございます。  また、中小企業と申し上げるときに、この委員会でも御審議いただきました中小企業の定義拡大によりまして、全法人五百十数万の企業のうち九九%、これは法人でございますからちょっとあれですね、すべての法人の九九%以上をカバーする定義になっております。  ただ、このことでまだ不十分ではないかと。例えば恒久的措置にしろとか、もっといい制度にしろという御指摘があったわけでございますけれども、これはまたさらに今後の制度改正の問題として取り組ませていただくこととして、現在御審議中の法案が成立するように願っているところでございます。
  128. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございました。  一応、税制に関しましてはこのくらいにいたしまして、先ほど既にマザーズとかナスダック・ジャパンの言葉を出しましたが、ベンチャー向け市場の動きについてあわせて伺いたいと思います。  こうした新興企業向けの株式市場ができるということ、これ自体は今何度もそれぞれお話がありましたようにリスクマネーの供給を円滑に行うという意味で大変すばらしいことだと、これはもちろん評価しておるんですけれども、ただ、最近の動向を見ておりますと、特にIT関連企業中心としたベンチャーブームがかなり過熱ぎみで、やっぱりちょっとバブルではないのかなというような雰囲気は否めないと思います。  私もよくビットバレーという非常にこのところ人気の、さまざまな企業が集っている場所といいましょうか、そういうお仲間の方々のパーティーというのか交流会のようなものに出させていただくんですけれども、恐らく政務次官などはよくお見えだと思うんですけれども、どうもやっぱり数多くのジャンクディールがこれは出てくるだろうなと。余りジャンクディールが多くなりますと、日本人というのは熱しやすくさめやすいので、ちょうどかつてのバブル崩壊時にクラッシュのような混乱が起きたような、こういうことが起きて、もうベンチャーそのものに対する不信感ということが定着してしまうんじゃないかと、そういうおそれも昨今時々頭をよぎるのでございます。  難しいことだとは思うんですけれども、市場の信頼感を一方で維持して、もう一方で伸びるものは伸びて、きちんと投資家がある程度安全に投資が行えるという、こういう現状をつくるためにはどういうことが措置として必要か、またどういう対策をなさっているのか、お教えいただけますでしょうか。
  129. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 昨今のベンチャー企業への投資の活況というのは本当にびっくりするぐらいでございます。ある種のネットのバブルかなと感じることもあるくらいです。  それは、情報関連投資の増大したこと、インターネットの利用者が増加したこと、あるいは新市場の創設等が一気に進んだからでございますが、私は今委員が御指摘のように、これを一過性のものとしないように、むしろこの状態を根づかせていくということがとても大事なことではないかと考えます。根づかせていく場合に大事なことは、投資家の自己責任原則を大前提とするのは当然でありますけれども、それから株式市場の透明性とか効率性をきちんとさせていく、そういうことを重ねることが市場への信頼につながっていくのではないか、こんなふうに思います。  マザーズ等の新市場では情報開示の充実を通して市場の信頼性の確保に努めているとは思いますけれども、通産省としても、ベンチャー企業への円滑な資金供給というものが進むような観点から、これらの透明性とか信頼性確保のために努力していかなければならぬと思っています。
  130. 畑恵

    ○畑恵君 ぜひ頑張っていただきたいと思うんですけれども、今大臣おっしゃられたとおり、本当に一番は自己責任でリスクを判断するという、その状況をきちんと、環境としてもそうですし、一人一人の心構えとして日本人の中に定着させることが一番大事だと思うんです。  さはさりながら、やはり例えば先ほどマザーズですとかナスダック・ジャパン関連、ビットバレー関連のそういう会に出ますと、どこからかお勧め銘柄のようなものが発表されて聞こえてくるわけです。そこはかとなくというか、かなりはっきりと証券会社の姿というのが映るわけでございまして、これまでも果たして証券会社の値決めというのがきちんとしていたのかどうか。米国でしたらば、値決めを証券会社がした、引き受け時にしたその金額から三倍になれば会社側が訴えるし、三分の一になったら投資側が訴えるというような、そういうきちんとした原則がありますけれども日本の場合は盛り上げるだけ盛り上げて、証券会社が栄えてベンチャー投資家がついえるというような危険性もないわけではないので、ぜひ、お忙しいと思うんですけれども、そういういろいろな会にも各大臣、政務次官、またたびたび足を運ばれて、実態を調査されながら御指導いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  では、変わりまして、今度はやはり所信の中に振興していくとうたわれております情報化政策について伺いたいと思います。  一点は、大臣も早期実現に向けて力を尽くすとおっしゃられております電子政府でございますけれども、特にセキュリティーの問題について伺いたいと思います。  先般の省庁のホームページ改ざん事件で問題点はいろいろと露呈した、指摘されたと思うんですけれども、やはり政府の情報セキュリティーというのはまだまだ未整備だと言って過言でないと思います。しかも、セキュリティーが未整備だと、安心してそこに重要な情報を出せない、秘匿に対して非常に不安があるということで、関係者の方もおられて恐縮ですが、せっかくあれだけ苦労してつくられた霞が関WANも、どうも一般のインターネットとさほど変わらない形で今使われている、余り重要な情報はあの中に載っていないんじゃないかという話もございます。  やはり一番肝要なのは、政府全体として、何が重要で、だからそこにはどれぐらいの秘匿をかけていかなきゃいけないかという全体としてのセキュリティーポリシーというのを策定して、それに基づいていろいろな予算措置、ガイドラインということがなされていく。ですから、一日も早くセキュリティーポリシーを全体として決めなければいけないと思うんですけれども、この点については大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  131. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 二〇〇三年度までに電子政府をつくろうと考えて、その電子政府の構築を目途として努力をしている最中に今般のような一連の政府機関のホームページ改ざんという事態というのは、まことに残念で、ある種の重大な警告だと、警鐘だというふうに私は受けとめております。  高度情報通信社会の実現のためには情報セキュリティーは最も大事なことでございまして、これを確保するためにいろんな角度から努力をしていかなければなりません。適切な情報セキュリティー対策を講じていくに当たっては、今お話がありました情報セキュリティーポリシーをいかにするか、これは大事なことでありまして、あらかじめ明確にそれを定め、組織内部で徹底した上で進めていくということが必要だと認識しています。  政府はさきにハッカー対策等の基盤整備に係る行動計画というのを立てました。また、あなたも参加されております自民党のプロジェクトチーム、ここでも緊急提言というのがなされまして、この面についての重要性ということが指摘されているところでございます。各省庁の参考となる情報セキュリティーポリシーガイドラインを早期に確立していくようにしていきたいというふうに思います。  通産省の情報セキュリティーは割といいぞと、この間、外部の調査の方々の点数ではまあまあ良好であったのでちょっとほっとしていますけれども、しかし、何といっても通産省は先頭に立って、これまでの知見を生かしながら、追加して講ずべき対策を含めて情報セキュリティーポリシーを我が省で率先してまとめていくようにしたいというので、プロジェクトチームを先般省内につくったばかりでございます。  御指摘の意味、大変重要ですから、頑張るつもりでいます。
  132. 畑恵

    ○畑恵君 今、大臣がおっしゃられたとおり、もう既に通産省というのは、IPAですとかJPCERTという形で、まさに日本の情報セキュリティーをリードしてきた唯一の機関であると言っても過言ではないぐらいの働きをしていらっしゃるわけですから、さまざまな蓄積がおありだと思いますので、ぜひ政府全体を引っ張っていっていただきたいと期待いたしております。  いろいろ伺いたいこともさらにあるんですけれども、時間の都合がありますので次の情報化に関する問題に移らせていただきますと、今度は教育のお話を伺いたいと思います。  文部省に伺わなければいけない部分もあるんですけれども、大臣の所信の中にも教育の情報化について力を尽くされるというお言葉がございましたので取り上げさせていただきました。また、本来教育現場の話であるにもかかわらず、これまで百校プロジェクトですとか、こちらも非常に先駆的な動きを通産省はなさってきておりますので、これまでの積み重ねに基づいてまたお話を伺いたいと思うんです。  やはり、もうこれで十全とは申しませんけれども、インフラの整備の方というのはかなり整ってきた、少なくとも計画はできた。いよいよ、じゃそのインフラを使ってそれぞれの教室、教育現場で何をどういうふうに教えていくのかという、その問題に焦点というのは移りつつあると思うんですけれども、実際、じゃそこでどのようなコンテンツを教材として使うのかとか、あるいはどういう形で指導者を育成したり確保するのかという問題になると、どうもやはりまだまだ全体のスケジュールにのっていないといいましょうか、このままだと、せっかくラインは整った、物は整ったのに、教える人、教えるものがないということになりかねないんじゃないかという危惧をいたしております。  例えば、情報教育の教材をつくる企業、特にベンチャーなどいろいろ志高くやっているところがございますので、そういうところを助けていく、サポートしていくとか、あるいはいきなり専門家に各教員たちになれといってもこれはもともと無理でございますので、やはりどこかしらから専門家を連れてきて指導に当たらせる。専門家というのは、大体各企業の中にエンジニアがいらっしゃいますので、一番手っ取り早いのは各企業の中からボランティアとか出向とか、何か制度を改革してそういう教育に当たっていただける、こういう形ができたら大変にありがたいなと思うんです。  これまでにも幾つか措置をとられているとは思うんですけれども、それも含めましてこんなことを考えているという政策をお教えいただけますでしょうか。
  133. 茂木敏充

    ○政務次官(茂木敏充君) 教育の情報化におきましては、畑委員今御指摘のとおり、コンピューターであったりとかインターネット、こういったハードインフラの整備もさることながら、ソフト面での取り組みというのは大変重要でございます。  例えば、今委員指摘いただきましたように、日本の学校とアメリカの学校を調べてみますと、インターネットに接続している学校、今アメリカが八九%なのに対しまして日本は三五・六%であります。ただ、この分野につきましては、二〇〇一年には日本においてもすべての学校がインターネットに接続する、こういう明確な目標をつくっております。  しかし、ソフト面での取り組みとなりますとこれからという形になってくると思っておりまして、通産省といたしましても、文部省を初めとした関係省庁と連携をとりつつ積極的に取り組んでいるところであります。  例えば、教育用のポータルサイト、こういったものを考えてみますと、何にしてもそこにいかにコンテンツを入れるか、もしくはほかからのコンテンツをどう引っ張ってくるか、こういうことが非常に重要になってくるわけですが、例えば御指摘がありましたコンテンツを制作していく企業に対する支援措置に関しましては、平成十一年度の補正予算におきまして八億円をお認めいただいたところでありまして、教育用の画像素材の作成支援を現在行っておりますほか、今度の平成十二年度の予算案におきましても、先進的な情報教育の実験等を支援するため約十億円の予算措置を国会の方にお諮りしておりますところでございます。  また、専門家による教育、こういうことを考えてみますと、例えば今学校で指導にコンピューターが使える教員の割合はどれぐらいかということなんですが、大体二六%ぐらいということでありまして、なかなかそういう先生方がすぐにできるかというと難しいところがある。そこで、委員指摘のように、教育の現場からのニーズを踏まえて、学校に企業のシステムエンジニアを派遣して支援するための事業、これも文部省と協力して引き続き推進してまいりたいと考えております。
  134. 畑恵

    ○畑恵君 ぜひ、大変いい試みをたくさんしていただいておりますので、量的に、規模的に拡充というのを今後も図っていただけたら大変ありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。  もう一点だけ、情報化の政策について伺いたいと思います。  このところ、やっと人口に膾炙し始めたかなという言葉でございますが、ASP、アプリケーション・サービス・プロバイダリーという、このシステムが私自身は本当にことしのキーワードになるのではないかと思いますぐらいに、多分日本の情報化のある意味で起爆剤になるんじゃないかと期待いたしております。  説明するまでもないとは思うんですけれども、顧客企業の業務に必要なさまざまなソフトをネットで期間貸しするという、買わなくても貸してもらえるということで、配信してもらえるわけです。それ以外に、そのシステムの保守や運用まで手がけてしまいますので、いわゆるソリューションというのを全部丸抱えで、マネジメントもやってもらうというような時代に入りつつあります。このASPというサービスが普及することによって、これまでコスト的な余裕がなくて情報化投資がおくれていた特に中小零細、こうした企業が情報武装をより容易にできるようになるのではないか、私自身は今その点に一番期待を寄せております。  一方、情報通信産業としましても、それぞれの企業が今生き残りをかけて、自分が主眼とする分野以外はほとんどアウトソーシングをしている時代ですので、当然このASP市場は非常に拡大することがこれから予想される。  ちなみに、米国のデータクエスト社というところの調査によりますと、ASPの世界市場規模が、九八年は約八億九千万ドルだったものが九九年で二十七億ドル、二〇〇三年には一気に二百二十七億ドルへ急拡大する、そういう予想も出ておりますので、やはりこの分野で日本が情報通信産業として世界に伍していくという必要は非常に大きいものがあると思います。  さて、ではそのASPを利用する企業側また供給する企業側双方の発展のために、日本としてASP促進に向けてさまざまな環境整備を怠りなくするべきだと思うんですけれども、現在どのような取り組みを実施していらっしゃって、今後またどのような施策を予定していらっしゃいますでしょうか。
  135. 茂木敏充

    ○政務次官(茂木敏充君) 委員指摘のとおり、アプリケーション・サービス・プロバイダー、これは産業の情報化、そして情報の産業化、その両面から現在急速な成長が見込まれているところであります。  ASPを利用しますと、中小零細企業のようにハードに係る情報化投資が比較的重荷となる事業者でも、より安価に最新のサービスを受けることが可能となります。また、大企業におきましても、最近はコアコンピタンス、集中と選択という中で、業種によっても違うわけでありますけれども、かなりこういった部分に頼って、自分が得意なところには投資をするけれどもそれ以外はほかから期間貸しでも何でも持ってこよう、こういう動きが大変強まっておりまして、ASP市場の振興というのは大変国としても重要だと考えております。  そこの中で、委員もよく御案内の点でありますが、ASPにおきましては、ほかの電子取引等も同様でありますけれども、ネットワーク上の取引の信頼性の確保、これが大変重要となりますことは言うまでもないことでございまして、これにかかわる問題点につきまして調査を行ってまいりたいと考えております。  また、特に中小企業を念頭に置いて、経営の効率化支援を目的としたASP等の技術開発を促進するために、既にお認めをいただいております平成十一年度の補正予算に基づき、提案公募方式による技術開発支援、大体七十億円程度でありますが、これを行っているところであります。
  136. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございました。  ぜひ、なかなかこれからの事業でございますのでどういうふうに発展するのか見えにくいので、支援の仕方というのも難しいと思うんですけれども。  私、先日、館林にあります富士通のデータベースセンターというのを視察させていただいたんですけれども、非常に大きな規模で進められている。  この中で指摘されましたのが、電気代が非常にかかるんだそうです。物をつくるとこれは軽減措置がある、ところがソフトだとないということで。そういうことで、これから目に見えるハードではなくてソフトに世の中が移行していく中で、ソフトを生産する側にも何かしら、電気に限らないんですけれども、そうしたインセンティブを与えるような措置というのもお考えいただく。  また、なかなか難しい問題ですけれども、それぞれのコンピューター自体が古いものをそのまま使っていますと、せっかく中央のデータベースセンターというのは最新のものを配信しようとしても、端末が古くて受け付けないということでは、これは何にもなりませんので、語られて長い話ですけれども、耐用年数の問題ですけれども、また次期税制改正でぜひこの点についても、耐用年数の短縮について実現をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。  では、情報化に関しましてはこの程度にとどめまして、次に、知的財産権の問題に移らせていただきたいと思います。  知的財産権についても所信表明の中でかなり言葉を割いて力を入れていらっしゃる様子が伝わってきたんですが、本日はビジネスモデル特許についてお話を伺いたいと思います。  余りまだ耳なじみのない言葉でありながら、このごろは新聞を開きますと、特に日経などを開きますと、必ずどこかには出ているというぐらいかなり話題になっておりまして、例えばプライスライン・ドット・コムの逆オークション方式ですとか、シグニチャー社のハブ・アンド・スポーク方式といった新たなビジネスモデルの特許申請等が相次いで論争を巻き起こしております。  その論争というのは、多くはなるべくビジネスチャンスを逃さないために、他者に先を越されないためにビジネスモデルについて積極的に取り組んでどんどん特許申請を行いなさいという、そういう記事が多いんですけれども、その一方で、果たしてどんどん特許申請を出して特許合戦のような状況を呈している昨今ですけれども、それでいいんだろうかと。  このまま米国に追い立てられるようにしていたずらに知的財産権の囲い込みのような特許合戦を進めてしまうと、今、バイオ業界に見られていますような、遺伝子情報という、これ人類共通の財産ではないかという、そういうものにまで一個人ですとか一企業の権利というのが非常に声高に主張されて、結果的に人類共通の公共の福祉というものを阻害しかねないですし、またそういうものだからどんどんとにかく問題があったら訴えていくんだという、何でも権利侵害ということで訴訟を起こしていくんだという、そういう米国主導の流れというのをこれは日本側が助長することにもなるのでビジネスモデル特許については慎重にというお考えと、どうも二つ考え方があるようなんですけれども、通産省の情報政策にかかわっている方、また特許庁の方、いろいろな方からお話を伺うんですが、国としてどういうふうに、どちらにスタンスを置いていらっしゃるのか、どういうふうに国家戦略的に今後ビジネス特許政策について当たられるのかというのがちょっといま一つなかなかわからないものですから、きょうこの機会をいただいて、国家戦略的にどう取り組まれるのか、伺いたいと思います。
  137. 近藤隆彦

    政府参考人近藤隆彦君) 御質問いただきましたビジネス特許でございますけれども、確かに今大変注目されておりまして、また広範な影響があるんではないかということでいろいろな面でおっしゃいましたような懸念も持たれているんだということにつきましては十分承知をいたしております。  今、例をお挙げになりましたとおり、インターネットを活用しました電子的な商取引とかあるいは資産の管理をコンピューターを使ってやるといったようなものでございまして、こういうものは技術そのものを見てみますと一種のソフトウエアの技術でございまして、従来からソフトウエアというものを特許制度で保護するということは定着しておりまして、一九七〇年代初めからいろんな形でソフトウエアというものを特許制度で保護してきております。  そういうふうに考えますと、非常に新しい形態ではございますけれども、これもソフトの一形態であるということで、ソフトウエアのいわば権利と、技術というものに対する特許という観点から審査をすべきものというふうに考えております。  そういった点と、それから、実際のビジネスに非常に応用ができるという点で、日本企業にも大変関心を持っている企業もございますが、おっしゃいましたとおり、懸念もございます。  特に、比較的小さい投資で、ちょっとした思いつきで大変な影響が大きなものに至るんではないかとか、そういう意味でいろんなところがいろんなアイデア合戦で収拾がつかなくなるんではないかという点がございます。  私ども、こういった状況を考えますと、これから国としてぜひともすべきことは、現在まで積み重ねてまいりましたソフトウエアに関します技術の審査というものがございますので、そういったものを十分踏まえた上で、新しい技術をさらに勘案しながら、大事なことは国際的な調和といった点と、もう一点は運用を明確にしてできるだけ示していくということではないかというふうに思っております。  このような対応をすることによって、何が特許となり何がならないかといった点を、できるだけ運用例のような格好で明らかにしていくということによりましていろんな関連の企業の方も余り不必要に不安にならないような、そういったことが一番いいのではないかというふうに考えておりまして、この点に関しましては幸い日米とも同じような思いでございます。  そういった点から、昨年秋に日米欧のいわゆる三極の特許庁長官会合というのをしました。それまでの専門家のいろんな議論を踏まえました上、日本が積極的に働きかけまして国際的な事例研究をしようということをまとめております。この事例研究をしまして、アメリカとか日本の審査のいろんな態度をできるだけ比べてみる、そういうものをできるだけオープンにしていこうという方針でございまして、今現在専門家のレベルで事例の研究、これはハードウエアとソフトウエアのいろんな組み合わせをいろいろ事例を立てまして、それを審査してみてどう違うかということをいわば研究するわけでございますが、こういったことをしております。  こういったことを踏まえて、国際的な調和、それから運用の明確化、そういったこと全体としまして産業界の方々にできるだけ御理解を得ていきたい、このように考えております。
  138. 畑恵

    ○畑恵君 今お話しの中で特に重要だと思いますのは国際的な調和ということだと思います。調和を保ちつつも、やはり国益にフォーカスして考えた場合、どういうふうに政策を打っていくのかという問題になっていくと思うんです。  要するに、ビジネスモデル特許を攻めとして考えられますか、それとも守りとして考えられるのか。両方だとおっしゃられるかもしれませんが、これはやはりなかなか日本がどんどん訴訟を起こしてそれに勝ってということを一つのビジネスにしていくというのは、余りこれまでのカルチャーからすると考えられないかもしれないですけれども、中にはビジネスモデルをどんどん生産していくベンチャー企業を立ち上げつつある起業家が日本にもいるという話を聞きます。  やはり、攻め、守り両面で考えていかなければならない大変難しい問題であるとは思いますが、引き続きウオッチしていただいて、アメリカとヨーロッパと両方を見合わせながら、ぜひ日本の国益にかなった政策をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  ちょっと時間が迫ってまいりましたので、おしまいにNPO税制について経企庁長官に伺いたいと思います。  もう既に加藤議員の方から先ほどお話がございましたけれども長官の方から議連の御案内もございましたが、議連と並行しまして私ども自民党もNPOに関する特別委員会というのがあって、大体メンバーは、幹部は全部ダブっているんですが、こちらの方が昨年、税制改正に向けまして要望書というのを提出させていただきました。長官もお目通しいただいたのではないかと思うんですけれども、この中で、いわゆる特定公益増進法人そして一般寄附とあと公益法人、こういう分け方とは別に認定NPO法人というものをつくってはどうかということを私どもの方は提案させていただいて、これに認定されれば、同じNPOの中でも幾つか条件はございますけれども、認定されれば法人、個人ともかなりのこれは税制優遇が受けられるということで具体的な数値も入れて要望を出させていただきました。  ぜひ、私どもとしてはこういうような形、これに類する形でNPO税制の優遇措置というのを実行していただきたいと思っておるんですけれども長官としてはこれをお読みになってどのような御所見をお持ちであるか、評価していただいているか、お聞かせ願えますでしょうか。
  139. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 一般的に言いまして、寄附税制というのはもっと広がっていいものだと、私は長官になる前、税制調査会の委員にいたときにはそういう考えを持っておりました。善意で人々が判断をして寄附をする、それが世の中のためになる。寄附者の意思というのをもっと尊重されていいんじゃないかという個人的な意見は持っておりましたが、NPOにつきましては議員立法でつくっていただきまして、一応二年間の後にいかがにするか、見直すような規定も議員立法の中でつくっていただいております。  私どもといたしましては、国民生活審議会の中でそういう立法府の御判断にお役に立つような調査どもしていきたいと思っておりますが、そういう中でどのように考えていくか、また立法府の方で御判断いただけるところだと思っております。  これからの多様な社会になりますと、やはりそういった善意の活動というのは重きをなしてまいりますので、ぜひこういったことも含めて寄附活動あるいは善意の活動というものも日本社会全体として考えていくことが大切だと思っております。
  140. 畑恵

    ○畑恵君 理念としては今長官がおっしゃられたことに尽きると思うんですけれども、そうした高邁な精神だけではなくて、より効率的に、同じバリュー・フォー・マネーを考えていくという意味でも、すべてお上がお金を税金として召し上げてそれをまた割り振るということではなくて、それぞれ現場を一番知っている者がここに使ったら世の中のため、公益のためというような、その視点に基づいてお金が直接に回るということは非常に効率的なシステムだと思いますので、ぜひそうした面からも評価していただきたいというのが一点ございます。  その精神を形にするために、手前みそでございますけれども、私どもが提案した認定NPO法人の要件の中にパブリックサポートがあることというのが入っておりまして、要するにどおんと大きな一企業であるとか一団体からサポートを受けているのではなくて、広く浅く多くの方々から支持されているということが立証されればそれが一つの認定基準になっていると。アメリカ方式に準拠しているんですけれども、そうした精神も入っておりますので、もしこのパブリックサポートを含めて、あと、先ほどの効率的なバリュー・フォー・マネーという意味で何か御所見ございましたら、ぜひ税制について前向きな御答弁とともに、締めのお言葉をいただきたいと思います。
  141. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 日本では公益というのが、公益法人を政府が認定する、認可するというようなことがございまして、役所が決める、民法の定めにそんなところがございます。アメリカ、イギリスなどは、むしろ人々が決めるんだと、それで後で調べて特におかしくなかったら認めていく。寄附の範囲、善意の範囲を非常に大きくとっております。また、寄附するときにも、日本では広告にならないかとかあるいは関係者の利益にならないか。例えば、学校法人に寄附しますと、それが入学のための運動ではないかと。厳しくいろいろございます。  そういう点もこれから、どんどんと時代が進み、知恵の時代になってまいりますと一人一人の判断というものが大事になってくると思います。だから、方向といたしましては委員のおっしゃるように考えるべき、寄附というものを善意のNPOなどに大いに認めるような方向に考えるべきだろうと思います。ただ、認定ということになりますと、そのまた基準もいろいろございまして、見直し規定もついておることでございますから、この法律を立法府の方でお見直しになるときにぜひまた御検討いただければ、できるだけ、事例など、そういう調査、協力は存分にさせていただきたいと思っております。
  142. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。  あくまでも議員立法でございますので私どもがまたつくっていくことではございますけれども、何分にも長官から一言やるべきだというお言葉がありますと世の中に対する波及効果は多いものですから、ちょっと無理強いをしたところがございますけれども、御支援のほどよろしくお願いいたしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  143. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  きょうは、私は政府のエネルギー政策についてお聞きをしたいと思うわけです。  大臣は、所信表明で、原発立地の円滑な推進を図っていくというふうに述べられております。午前中からもずっと他の委員の方も質問されているんですが、去る三月十日に政府がエネルギー政策の見直しを発表されたと。その新聞報道と大臣の真意というものについて少し乖離があるんじゃないか。ずっと大臣の御答弁を聞いておりましても、私はどうもよくわかりません。歯切れが悪いと申し上げても失礼ですが。  三月十日の一般新聞はいろいろな大きな見出しが躍っておりまして、「政府、原発新規立地縮小へ エネルギー政策見直し」、これは日経です。それから毎日の夕刊、「原発立地計画を縮小」、大臣は「十六から二十基は変えざるを得ないと下方修正する考えを示した。」と報道をされているわけです。朝日の夕刊は、「原発増設目標削減も」という大きな見出しがこれまた躍っているわけです。  私の地元は京都ですけれども、京都新聞という地元の大きな新聞がございますけれども、その新聞の見出しは、「原発計画縮小 「逆風」で立地困難 増設目標十三基に 政府方針」という、こういう非常に大きな見出しが躍っているわけです。  私、大臣の真意をお伺いしたいと思います。  この十六基から二十基という二〇一〇年の目標を下方修正するというお気持ちがあるのか、あるならばその理由をぜひ述べていただきたいと思います。
  144. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 私は、先日、十日に記者会見をして申し上げたのは、先ほどからしばしば申しておりますように、エネルギーの需要と供給の関係において最近さまざまな出来事が起こっている、こういう状態の中で一体エネルギー政策はどうあるべきか、その全般的なあり方について幅広く検討する時期が今来ているとそう思う、そのために事務方に対しましてこの検討を指示したということを申し上げたわけでございます。  それで、このときに新聞記者の間からいろんな質問がありました。例えば、供給サイドの検討項目として原子力についても取り上げるのかと、こういう質問がありました。私は、検討項目として原子力についても取り上げることは当然のことですと、こういう答え方をいたしたのでございます。したがって、そう申し上げたことをどのように受けとめるか、新聞の報道でまちまちになったのではないかと思います。  私は、たしか共同通信であったと思いますが、十六基から二十基を見直して十三基云々のニュースが配信されたときに、翌日の記者会見でも、そのようなことを申し上げたつもりは全くない、あらゆる角度から検討を加える、その中に原子力も供給サイドの検討項目として当然取り上げるけれども、その検討の結果がどのようになるのか約一年かけて答えを出していこうというわけでございますから、現在の段階で導入目標の削減を決定したという事実もそのようにするという方向性を示したこともないと、こういうふうに申し上げたわけでございます。  なお、平成十二年度の供給計画につきましては、各電力会社から届け出が三月末までに順次通産省に対して出されるようなことになっています。  いずれにしても、私が申し上げたのは、エネルギー供給全般を検討してくれということでございまして、現時点で具体的な原子力発電所の規模について申し上げるという、そういう状態ではありません。
  145. 西山登紀子

    西山登紀子君 マスコミが記者会見でいろいろ御質問をなさって、そして大臣は、やはり芦浜の事件、白紙撤回をされたというような状況もお話しになったと思うんですが、そういうことをお話しになって、そして一斉にマスコミが下方修正あり、十六から二十基を見直すんじゃないか。東海村の村上村長は、その報道に対して、今までは見直さないと言っていたけれども選択の幅を広げたという点で評価をしたいというようなコメントまで出しておられます。しかし、この国会で真意をというふうに聞かれますと、大臣はもう非常にかたくなと言ったらあれでしょうか、言わないんですね、下方修正の方向を。そんなのはもう一般論として検討の中の一つなんだというような。  事務方にその作業を命じたというけれども、どういう方向でその検討をしろというふうに、政治家としての判断を加えたとおっしゃるんですけれども、それがわからなかったら検討のしようがないと思うんです。    〔委員長退席、理事馳浩君着席〕  私は、衆議院で我が党の吉井議員の質問に対して大臣が「今日の状況の中で十六基から二十基を今見直すという思いは持っておりません。」と、このときは二月二十四日でございました。はっきりと御答弁されているんです。ところが三月十日になって一斉に新聞にこういう報道がされたら、少しは下方修正の方向でお考えになっていくのかなと思いますよ。ところが、今違うんですか、どうですか。
  146. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 御質問の趣旨はよく私もわかって、ごもっともだと思うんですが、エネルギー政策全体について検討しようという指示を大臣として出しまして、これから事務方が準備をして総合エネルギー調査会で専門家の方々が議論をして、一年近くかけて答えを出していこうというのが私の方針でございます。  その際に、私が何々をどういうふうにしようかというところまで指示を与えるのでは、エネルギー調査会の議論にそれは何か指示を与えてしまうということになりかねませんから、そういう意味では私どもは明確に出していないということでございます。
  147. 西山登紀子

    西山登紀子君 やはり大臣でございますから、何も言えないというわけではありませんし、また言わなきゃいけない立場に私はあると思うんです。  国民の世論はでは何を求めているかということなんですが、ジェー・シー・オーのあの痛ましい事故が起こった東海村、この東海村が昨年の十二月からことしの一月にかけて住民のアンケート調査を行っているんです。「「防災とまちづくり」 アンケート調査結果」というものを発表されています。私は、ああいう事故が起こった東海村、また日本最初に原子力の火がともった東海村のこの住民の意識の変化というのは、国の原子力政策を考える上で非常に重要なアンケート結果だと思っているわけです。    〔理事馳浩君退席、委員長着席〕  その結果を少し御紹介いたしますと、住民千四百二十六人の方を無作為で抽出して、回収率は三八・三%。そこで、事故後と事故前でどういうふうに変わったのかという質問でございます。事故前は原子力を積極的・慎重に推進すると考えていた住民は五二%、早急に・徐々に廃止すると答えた人は一一・七%でした。しかし、事故後は、廃止が四〇%、実に三倍にふえています。そして、推進するという三二・三%を上回っているわけでございます。  原子力施設の安全性についてどうかといいますと、事故前は六二・六%が安全・まあまあ安全かなと考えていたけれども、事故後はそれは一四・六%に大きく落ちまして、危険・少しは危険と思っていた三二・二%、これは事故前です、それが事故後は七八・二%が危険だというふうに意識が変わっております。  東海村のアンケート調査だけではございません。毎日の昨年十月二日、三日に電話調査をされた千五十二人の電話調査では、「他のエネルギー開発を急ぎ、原子力から切り替えるべきだ」というのが三八%、「原子力開発を一時ストップし、安全策を講じるべきだ」が三一%、「原子力開発をいまのままでストップし、新たな開発はしない」、五%。合わせますと、慎重、批判派が七四%を占める結果になっているわけです。  こうした世論の動向を大臣としてどのようにお受けとめになりますか。
  148. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 東海村で起こったあの痛ましい事故については、本当に私どもも住民の皆さんがどんな思いでおられるかということは痛いくらいにわかるつもりでございます。  ただ、東海村の事故がイコール原子力発電所の安全性を否定するものではないというふうに私は考えています。原子力発電所につきましては、多重防護ということで徹底した安全性を確保されていることは現状でも変わりがあるわけではありません。  ただ、あのような事故が起こりますれば、原子力発電所の問題も大変不信感を抱くような状態になるということは、一つの流れとしては必然であろうかとは思っております。  しかし、アンケート調査と、こう言われましたが、東海村のあの事故であの地域の皆さん方のお気持ちというのはもう全くそのとおりわかるわけでありますが、各般のアンケート調査というのは、その出し方、とり方で随分違っているという、そんな感じを一般的に持っております。
  149. 西山登紀子

    西山登紀子君 この東海村、事故が起こったその東海村でこういうふうに大きく変化しているというこの事実、やっぱり重く受けとめていただきたいし、いやアンケートというのはいろんなとり方でいろんな結果が出るんだよというようなそういう見方ではなくて、今私が御紹介しました毎日新聞などでは、もうこれ以上つくってくれるなという、切りかえてほしいんだという意見が七割以上出ているということ、これは私はきちっと受けとめて、それこそそういう方向での検討を指示しなければ大臣としてのやっぱり見識を疑われるんじゃないかとちょっと申し上げたいなと思うわけですね。  それで、次にですけれども、客観的に電力需給の状況がどうなっているのかということで、電力各社の設備投資の推移がどうなっているか御説明ください。
  150. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 電力各社の最近の設備投資につきましてお尋ねがありました。  私ども得ております数値でございますが、平成六年度におきまして四兆六千八百五十九億円、それから平成七年度四兆四千四百二十一億円、八年度四兆三千九百九十二億円、九年度四兆百七十八億円、十年度三兆五千五百三十一億円ということになっております。
  151. 西山登紀子

    西山登紀子君 そういう設備投資の推移を見ましても年々減っているということ、それから大口の電力需要というものもエネルギー経済研究所の報告ではやはり一九九七年度比でずっと落ち込んできているということで、二〇〇〇年度予測においても九七年度レベルを回復されないというふうに報告がされているわけでございます。  ですから、電力の客観的な需給から見ましても、原発をさらに増設するという必要はございませんし、国民のコンセンサスを得るという点におきましても、やはり国民の世論というのはもう原子力発電所を切りかえていこうというふうになってきている、この重要な二つの点からやはり私はこれ以上の新増設はやめるべきだというふうに考えるところでございます。大臣もそのような方向で、ぜひ下方修正の方向で御努力をいただきたいと思うわけです。  さて、そういう原発の新増設を見直すということに関係いたしまして、政府は長年原発の立地促進のために重要電源等立地推進対策補助金というものを出してまいりました。この補助金のあり方を伺いたいと思います。補助金の交付対象はどうなっているか、御説明ください。
  152. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 今お尋ねの重要電源等立地推進対策補助金でございますけれども、これにつきましては、電気の安定供給上重要な発電用施設の立地が計画されている地点につきまして、発電用施設の立地を契機とした地域おこし等を支援するという目的のために行われているものでございます。  したがいまして、例えば、原子力発電所設置の必要性に関する知識の普及に係る事業に要する費用について交付しております。また、交付要件といたしましては、要対策重要電源に指定されていること、あるいは立地可能性調査を行っていること等がございます。
  153. 西山登紀子

    西山登紀子君 要対策重要電源という、この地点というものは、電力会社の供給計画にのっている地点だということですか。それから、先ほど二項めの御説明があったそれ以外の地点というのは、電力会社の供給計画に明確にはのっていない地点と、こういう理解でよろしいですか。
  154. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 要対策重要電源、現在二十六カ所ございますが、これにつきましては総合エネルギー対策閣僚会議におきまして重要電源というふうに指定がなされているもの、こういうことでございます。
  155. 西山登紀子

    西山登紀子君 その交付対象の全国の補助金の交付実績、例えば九八年度は年間幾らの補助金が使われていますか。
  156. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 現在、平成十年につきましてでございますけれども、要対策重要電源に指定されております二十六地点について申し上げますと、総計で六億二千百万円というものが交付の実績になってございます。
  157. 西山登紀子

    西山登紀子君 それ以外の地点の合計、それから全体の合計。
  158. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 要対策重要電源以外の十四地点でございますが、平成十年について申し上げますと、一億七千六百万。総計で平成十年におきましては七億九千七百万、こういうことになっております。
  159. 西山登紀子

    西山登紀子君 全国で四十カ所、そして年間およそ八億円補助金として原発の立地推進のために使われている、こういうことだと思います。  それでは、十年間の、平成元年から平成十年、その増減はどのようになっていますか。
  160. 大井篤

    政府参考人大井篤君) まず、十年間の総額でございますけれども、総額につきましては要対策重要電源の二十六カ所合計で約五十二億円、それからその他の十四カ所合計で約十億円、総計四十カ所で六十二億円。  また、この期間の増減の傾向でございますが、概略で申し上げますと、要対策重要電源の二十六カ所合計及びその他の十四カ所合計ともに、ここ数年はおおむね横ばいないしは減少の傾向ということでございます。
  161. 西山登紀子

    西山登紀子君 十年間で最初から補助金の増額、最近は横ばいとおっしゃったんですけれども最初平成元年から比べて平成十年は何倍になっていますか。
  162. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 四十地点の合計で申し上げますと、平成元年につきましては一億八千四百万、それが二年、三年と進みますにつれまして二億一千七百万、二億二千万、五億、七億六千三百万、六億四千百万、九億四千万、それから十億千五百万、平成九年におきまして九億二千万、十年において七億九千七百万、合計六十一億九千八百万、こういう推移をたどっているわけでございます。
  163. 西山登紀子

    西山登紀子君 結局そういう数字なんですけれども、何倍になっているかということで計算されていますか。こちらで計算いたしますと約四・三倍ということなんですが、それでいいですか。
  164. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 直ちにちょっと計算できなくて申しわけないんですが、七百九十七を百八十四で割れば四・数倍になろうかというふうに思います。
  165. 西山登紀子

    西山登紀子君 つまり、全国的な原発の立地を推進するためのPA費と言われている補助金のこの十年間の動態というのは、四十カ所、六十二億円が総額として使われておりまして、平成元年からこの十年間を見てみますと四・三倍にふえているということでございます。年間約八億円が使われているというのが今の現状として把握されるところでございます。  これはPA費ということですけれども、地元の住民に対してそういう原発の設置の必要性に関する知識の普及のための事業を進める、そういう補助金であるということであります。もちろん、この補助金というのは国民の皆さんがお払いになっている電力料金の中から出されている。大変な額でございます。私は少し調べてみて本当に驚きました。四十カ所、十年間で六十二億円という額がこういう原発の立地、それも最近では明確に国民、住民の皆さんがなかなか望まないという方向の立地を進めるために使われているというこの現実について大変私は驚きました。  問題は、この補助金がどのように使われているかという問題でございます。  私の地元、京都ですが、京都の北の端に丹後の久美浜町というところがございます。この久美浜町は、実は二十六年前に関西電力の原発の立地の調査の申し入れがありまして以降、やはり長い長い住民の反対運動がございまして、私も当委員会で質問のときに御紹介したことがございますけれども、金はいっとき、放射能は末代までという、行かれたらわかりますけれども、大きな立て看板が立っておりまして、住民の粘り強い抵抗が今なお強くなっておりまして、今住民の中でほぼ選挙のたびにこの原発の問題は大きな争点になっているわけでございます。そこの自治体では、一九八〇年以降、この補助金は毎年じわじわと額がふえておりまして、九八年以降、補助金は倍増しているわけでございます。  この久美浜町が実はこの二月に海外視察の募集をいたしました。ここにこういう募集のビラがあるわけですけれども、(資料を示す)これは一目でタイというのはわかりますね、王宮の写真が載っておりますので。この「タイ国電力視察団募集」という、こういうビラが配布をされまして、この募集は何もJTBとかそういうところではございませんで、役場でございます、久美浜町。久美浜町長吉岡さんの名前で昨年の九月二十八日にビラが出されたものでございます。  実施はことしの二月十日から十五日、五泊六日、募集人員は二十人、参加料はといえば三万円です。これが大きな問題だと思います。使われる補助金は四百二十万円です。二十人募集します。およそ一人当たり二十万でしょう、かかる費用は。ところが、参加料は三万円でございます。  その目的は何かということなんですけれども、この目的、説明が書いてございますけれども、ここにはこういうふうに書いてございます。   私たちは空気や水はあって当たり前という気持ちで毎日生活しています。しかし、空気や水が地球上に無くなれば、人類を初め、全ての生物は絶滅してしまいます。 るるありまして、   町では、国の補助金を得ながら町民の方々に発展途上国の電力事情についてご視察をいただき、安定した電力供給の必要性を身を以て体験していただくため、「タイ国電力視察」を企画させていただきました。   この機会を通してエネルギーの重要性を十分認識するとともに、排出される二酸化炭素による温暖化現象など、地球環境問題に対しても学習を深めていただきたいと思います。 強行スケジュールとなっていますがふるってご参加ください。 という説明書きのこういうチラシなんですね。  これを見まして、まず飛びついた方の中には、三万円でタイ旅行ができるということでまず募集に申し込みしようという、そういう方もございます。私も直接参加をされた方のお話、数人の方からお話を伺ってまいりました。  この視察に通産省はどのようにかかわってきたのか、御説明ください。
  166. 大井篤

    政府参考人大井篤君) この視察に関しましては、政策目的にも合致するということで、先ほど御説明いたしました交付金を先生御指摘のとおり交付しているわけでございます。  私ども、今回の久美浜町のタイ視察につきましては、日常生活を通じての電力の不安定供給の状況日本においてはなかなか体験することができない、よって、電気の安定供給の重要性を身をもって検証する機会を創造することが可能なものとして町長みずからが企画されたものと承知しております。  この点につきましては町の方からもいろいろかねてから御相談を受けておりまして、私どもとして補助金交付の対象、交付金交付の対象になるということで判断をし、四百数十万の交付金を交付したと、こういうことでございます。
  167. 西山登紀子

    西山登紀子君 通産省は、これちゃんと認めて、最初から相談に乗っていたんでしょう。
  168. 大井篤

    政府参考人大井篤君) この件につきましては前から御相談がありまして、中でいろいろ検討した結果、補助金の交付の目的にかなうということで補助金交付をしたということでございます。
  169. 西山登紀子

    西山登紀子君 私も現地に行って参加者の方からいろんな資料をいただきましたけれども、これ大臣、ぜひ知っていただきたいんです。通産省、近畿通産局ですね、ずっと最初から、去年の三月からずっと相談に乗っているんです、このタイの海外視察について。で、許可を与えているんです。  ですから、町の方は通産省のお墨つき、それでこれをやるんだということで町長は、いろんな方の抗議やいろんな、タイ国からわざわざ久美浜町議会に傍聴まで来ている、NGOの方が。つまり、タイ国をべっ視していると。タイ国が電気のないおくれた国だと。それをわざわざ身をもって体験に来るなんというわけですから、タイ国をばかにしているということで、タイのNGOの方がわざわざ来て町長にもいろいろ言うんだけれども、町長は頑として聞かないんですよ。その背景には通産省がやっぱりバックアップしているということがあるからなんですね。  私、実は驚きましたのは、去年の四月、こういう「久美浜町タイ電力事情視察団」の計画案が通産省に出されているんです。それは、五泊六日ですけれども、「タイ、ラオス、ミャンマーの国境地帯の送電状況を視察頂きその後チェンライ市内の大型商業施設、」いろいろ見て、「自家発電体制」を見て、その後、翌日は「タイ山岳民族と生活を共にして頂き電力事情を視察して頂きます。現地、ジャレー村にてご宿泊」、翌日、「終日、タイ山岳民族と生活を共にして頂き電力事情を視察して頂きます。現地、アカ族ヤオ族の村にてご宿泊」という、こういうことになっているんですが、これについてはさすが、そんな村に泊まったら危ないということでタイの領事館の方からこれはクレームがついたと。でも、この時点から通産省は相談に乗り、いいだろうというふうになっている。  最初は、別の資料をいただきますと、トレッキング、山を登って、そして民泊をする、そして「電気もガスもない生活を体験して頂き」、「ロウソクの火の中での夕食」、すばらしい自然の語らいをともに体験していただく、こういうふうな資料が配られているわけですね。  これはおよそ観光であり、観光といってもトレッキングなどを含めた物見遊山、観光であって、それに四百万円がかけられ、個人負担は三万円と、こういうことになっているんです。これに通産省が承認を与えて、いろいろな人の意見を聞かないでもう実行に移されてしまったという問題でございます。  聞きますけれども、なぜタイなのか。タイに原子力発電所があるんでしょうか。また、過去五年間、政府のこの補助金で海外視察に行っている実態がありますか。説明してください。
  170. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 海外視察につきましては、例えばヨーロッパであるとかあるいはアメリカという、いわゆる原子力の施設を持っているところに対して原子力の立地県、市町村が出かけるということはかねてございました。
  171. 西山登紀子

    西山登紀子君 ここ五年間、何回ぐらいありますか。
  172. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 手元に平成六年からのものがございますが、平成六年におきましては二回でございます。これはヨーロッパ方面でございます。それから、平成七年につきましても二回、これもヨーロッパでございます。平成八年度ですが、これも二回で、ヨーロッパとそれからアメリカ、カナダの方。それから、九年度におきましては計二回、これはヨーロッパということでございます。
  173. 西山登紀子

    西山登紀子君 その中に原子力発電所のない国はございますか。
  174. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 出かけている先の国から見ますと、原子力発電所をほとんどの国が保有しておるというふうに思います。
  175. 西山登紀子

    西山登紀子君 原発のない国には行かれておりません。  また、行かれている場合にも、国全体でとられる海外視察に各参加市町村が一名ないし二名の代表を出すと。自治体職員だとかあるいは商工会の役員さんだとか、地域を代表する方にそれに参加をしていただいて、十名か二十名の団体で視察に行くということはありますけれども、こういう久美浜のように、町が主催をして公募をする、住民を。二十万円かかるところを三万円で行けますよと。こういうようなことをやっている自治体はありますか。
  176. 大井篤

    政府参考人大井篤君) 先ほど平成六年から九年まで二回ずつ出かけているというお話を申し上げました。これは基本的には日本立地センターというところでアレンジをして、募集をして、それで海外へ出かけていくというものでございます。  久美浜町につきましては、むしろこれは町長みずからが企画をし、かつ、大阪だと思いますけれども、タイの領事館の方にも御相談をし、いろいろアドバイスをしながら実行に移したというふうに理解をしております。  私どもとしても、補助金の交付の目的にかなう限り市町村等の創意工夫というもので電源立地に役立つというものがあれば、こういうものについて取り上げていきたいというふうに思っているわけでございます。
  177. 西山登紀子

    西山登紀子君 それが目的に沿ったものなんでしょうか。山岳でトレッキングをやって、そして電気のないところで体験をすると。つまり、そういう何か電力事情という名前をつければ、どんな国に対しても、どこにでも行ける、格安ツアーだと。中身は物見遊山、観光ですよ。そういうことに公金が非常にたやすく使われる。通産省がお墨つきを与える。地元の申請主義と言いますけれども、それで通産省がいわば何でもいいやと。これでは国民はたまったものではありません。  私は大臣にお伺いしたいんですけれども、通産省がこうやって非常にずさんなといいますか、非常に不明朗な、一見住民の皆さんから見れば、二十万かかるところを三万で行ける、しかもそれが公金だと。これはいかにも原発を推進するために住民を、言葉は悪いですよ、買収する、そこまで意見を言っている人だっているわけですよ。こういう使い方をするならば、私はやっぱり原子力行政に対する信頼を失っていくと思うんです。  大臣、どうですか。こういうふうなツアー、こういうふうな海外視察、許されるとするならば、これは歯どめがかかりません。どこの自治体でも、じゃやろうかと。歯どめがかからない。やはり調査をして、省内でも厳正に対処をしていただきたい、そのお約束をしていただきたい。どうですか。
  178. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 何事でもそうでありますが、見方、受けとめ方、考え方、それぞれ違うようでございます。  私どもは、この件については事務方から報告を再三受けましたし、ただいまも皆様に答弁をさせていただいているわけでありますが、要するに、電気の安定供給の重要性というものを体験していただこうということで、この久美浜町長が考えて、これを実行したというケースであります。  私どもとしましては、交付金の趣旨に反するものでないと認められた場合にはできるだけその地域の主体性にお任せするというのを原則としています。  私は、このたびのこの視察について、その後のいろいろ様子も聞いてみたのでありますが、この計画が具体的な形になったときに大阪のタイ領事館を町長が訪問して、この趣旨についてあるいは目的について詳細に説明をし、そして領事館の了解も得るとともにこの視察についての助言ももらってきたと。大変まじめにやってきたという報告を受けているわけであります。  そういう意味では、私は、このたびのこの行事というものは少なくとも交付金の趣旨に反するものではない。そして主体的に町長が考え、そしてその結果についての報告もきちんと受けているというふうに聞いておりますから、今改めてここで調査をして糾弾をするという思いを持っておりません。
  179. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、それはやはり住民の理解を得られるものではありません。電力の必要性を身をもって体験するためにわざわざタイの山岳民族のところに出かけていって、五泊六日のツアーを組む。その費用に四百万円使う。一人二十万円かかるところを三万円で結構ですという参加料で募集をする。こういう公金の使い方が何ら恥じるところがないと大臣がおっしゃるのは、私はこれはもう住民にとって非常な挑戦だというふうに受けとめます。  調査に行きましても、タイのNGO、いろんな抗議の仕方もやっておられますし、また、久美浜の現地の議会でも大問題になっているわけでございます。町長の答弁に対して納得いかない。住民が大いに反発をし反目をし、大きな亀裂が起こっているわけです。参加者の名簿も公表することができない。そういう視察団がどうして恥じることのない視察団と言えるでしょうか。大いに私は大臣に対して、この問題についてのその御意見は納得いかないというふうに申し上げたいと思います。  さらに、この久美浜町は、過去五年間、国内でもいろんな視察を組んでいるんですけれども、非常に回数が多いです。また、過去五年間、その補助金がどんなふうに使われているか。町からいただいた資料をずっと見ましても、例えばいろんなイベントにずっとその補助金を使っております、何とか祭り、何とか祭りという形で。  その中の一つ、その祭りでどんなことをやるかといえば、百二十万円使って、試食用の生ガキ百キログラム、二十万、試食用の殻がついたカキ六千個、一個当たり六十円、三十六万円というような形で、祭りに来た人に試食という形ですから無料提供している、食べさせている。原発を立地するその理解を深めるために、その住民の皆さんに、この場合は、飲ませ、食わせ、飲ませというところは、ビールとか、そういうことは書かれておりません。しかし、ただでカキを食べさせる、たくさん食べさせる。毎年のようにこういうことがこの町では行われているわけでございます。海外旅行だけではありません。  この交付金の目的でこういうふうに住民に物を食べさせる、あるいは格安で海外旅行に連れていく、これで本当に電源立地への理解を深めることになるのか。私は、大臣に対して、こういう補助金は即刻見直すべきときではないかと。原発の全体の見直しの中で、やはりこの補助金もきっぱりとやめるべきときではないかというふうに思うんですけれども、最後に大臣の御意見を伺って、終わりたいと思います。
  180. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 冒頭の御質問の点にも関連しますからもう一回申し上げますが、エネルギーの需要、供給の最近の変化を考えて、エネルギー政策全体を見直そうという決断をして事務方に指示をし、一年間の期間をもって精査させるという考え方というのは、私は私なりの判断として自負した思いを持っております。  それから、原子力発電ということに対して、例えば三重県であのような状況になりましたけれども、三重県の知事も、原子力発電所ノーと言っているわけではなくて、一つ目はその重要性というのを支持しながら、二つ目には三十数年かかったということに対して白紙に戻そうではないかという、こういう御意見を言われているわけであります。  私は、今日の状況の中で、なお原子力発電というものが日本のエネルギーにとって安定供給、経済性あるいは地球温暖化等の問題を考えた場合には必要であるということは変わっていないと思っているんです。そして、そのことに対する理解を求め地域で交付金や補助金等をお出しする場合には、それぞれの趣旨、目的に沿った形で執行される、そのような状態で有効にこれが活用されている、そのように思っておりますから、これからも交付金、補助金を活用しながら、各計画地点の状況等を踏まえながら、地元の御理解をいただき、一歩一歩着実に原子力立地の推進を図っていかなければならない、そう思っています。
  181. 水野誠一

    ○水野誠一君 まず、深谷大臣に伺いたいと思います。  大臣は、さきの所信表明演説の中で、今後の通産省行政を行うに当たって六つの課題をお挙げになりました。その中に、第三の課題として、総理の指示によって立ち上げられたミレニアムプロジェクトの推進をうたっておられるわけであります。  情報化、高齢化、環境対応、示された三つの政策分野は、いずれも二十一世紀の我が国の経済構造、生活環境をデザインする上で大変重要な視点だと思いますし、またいずれも通産行政と密接な関係を持つ分野のことでありますことから、ひとつ大臣のより積極的な取り組みを期待しているところでございます。  また、情報化分野に関連する法案として、電子署名及び認証業務に関する法律案が関係省庁とともに今国会に提出予定であると聞いておりますが、この認証に関する環境整備は、電子商取引を促進するに当たって非常に重要なポイントになると考えておりまして、私自身も強い関心を持っておりますし、また改めて勉強させていただき、また質問もさせていただきたいと思っております。  さて、その日本の電子商取引の市場規模でありますが、これについてはさまざまな予測がございます。例えば、財団法人日本情報処理開発協会の調査といいますか、発表によりますと、BツーB、企業企業では九八年の規模が九兆円だったわけですが、これが二〇〇三年には六十八兆円、約八倍になるだろう、こういう予測もしておる。そしてさらに、BツーC、いわゆる企業消費者では九八年がわずか六百五十億円だったわけですが、これが二〇〇三年には三兆一千六百億円、何と五十倍に拡大する、こういう予測もございます。  これは、機関によってその予測値というのはかなり違うのでありますが、それはともかくとしても、この急速な拡大が予測されている電子商取引の普及が我が国の経済に与える影響というのはどんなものがあるのか、この点について伺いたいと思います。既存の流通業、サービス業、ここに大きな多大な影響を与えるであろうということ、この辺も含めて通産大臣のお考えをまず伺えればと思います。
  182. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 電子商取引の普及は、産業の生産性を向上させたり、企業組織の改革を通じて我が国産業競争力を向上させるという意味で非常に重要であると私は考えます。電子商取引にかかわる新規の起業の増加雇用の創出、経済全体としての投資増加など、活性化に大きく役立つと思います。  今、水野委員指摘された電子商取引の市場規模についてどうだということについて申し上げると、お話しのようにいろんな推計がございますが、今後五年程度の間に十倍前後の成長を遂げるという点ではおおむね一致しているのではないか。そして、ちなみに通産省の推計で申しますと、一九九八年に約九兆円の取引規模が五年後の二〇〇三年には七十兆円に拡大するのではないかというふうに見込んでおります。  これらの成長過程で日本経済にどのような影響を与えるかということについては、ただいま申し上げたような新しい産業経済の活性化につながりますけれども、同時に雇用への影響というのも極めて大きいのではないかというふうに思います。通産省による試算では、今後五年間で情報化の進展で二百四十九万人の総雇用の創出が行われると考えます。他方、情報化はいわゆる中抜き、途中で必要なくなる人たちがいますが、雇用削減の効果も有しておりますが、これを加味しても八十六万人のネットの雇用が創出されてプラスの影響が出るものと思っています。  また、具体的に私どもが注目しておりますのは、例えば紀伊国屋書店なんかでもそうですけれども、実際に本屋が持っている数は三百五十万冊だと、しかし本屋さんではせいぜい多くても数万冊しか並べられない。これをインターネットを通じてPRをしてくると数を全部示すことができて、そしてお客は、さらにもっと具体的な注文も考えれば、例えばアマゾンの魚に関してといえばそれにふさわしい本が提示される。まことに大きな革命的な変化になっていくのではないだろうかというふうに思います。そういう意味では、これからの経済の活性化には相当な影響をしていくだろう、プラス影響していくだろう、そう思っています。
  183. 水野誠一

    ○水野誠一君 今お話しの中にあった雇用の創出という部分、これは、いろんなこれも見方があると思います。通産省の予測数値と郵政省の予測数値では約倍ぐらい違っていたというようなことがありますし、私は、なかなかこの部分というのは、いわゆる省力化、人間の合理化をする技術でありますから、そこまでの雇用創出というところに結びつくかと。いや、むしろそれよりも、そこで余ってくる余剰人員をもっと違う、それこそ介護でありますとか、いろいろな高齢者対策であるとか、そういう分野で使っていくような本当のシフトが必要になってくるんじゃないかな、かように思うわけであります。  しかし、いずれにしても大きな影響を流通業あるいはサービス産業の分野で与えることは事実でありまして、それにつけても私は、非常にやはり重要な点はインフラ整備、まさに先ほど申し上げました認証の問題もそうでありますが、セキュリティーなどの決済をめぐる問題、それからこれも昨今新聞でちょっと書かれましたが、電子商取引課税をどうするのかというふうな問題、あるいは個人情報保護の問題、犯罪対策あるいは国際協調をどうするかというように多面的な課題をはらんでいると思います。特にこの課税問題については、私はまたいつか日を改めていろいろ質問もさせていただきたいと思っております。  そこで、きょうお尋ねをしたい点は、その電子商取引の円滑な普及を目指す上で政府の役割というのは一体どういう点にあるのか。これは特に、いわゆるインターネットの世界に行政が入り込むということに対しての片方では強いアレルギーもあるわけであります。しかし、昨今よく言われるネット上の犯罪というものがこれだけふえてくるということになると、やっぱりある程度政府がそれに関与してリーダーシップを持っていかなければいけない面というのも出てくる。  こういう中で、非常に難しいこれは問題かと思うのでありますが、特に優先順位をつけるとすればどの分野なのか、この点について伺いたいと思います。
  184. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) これから電子商取引が拡大されていく場合の政府の役割というのは、本当に多岐にわたると思います。  今、委員指摘のように、順位をつけるということは非常に難しいと思いますが、例えば電子商取引の制度の環境の整備、これは大変重要なことであります。あるいは中小企業やベンチャー企業の支援とか技術共通基盤の整備等々も必要でございますし、さらに小渕総理の提唱されたミレニアムプロジェクトの推進等もございます。これらいずれも重点的な施策と位置づけて、私たちは積極的に取り組んでいかなきゃならぬ、こう思います。  具体的にもう少し申しますと、電子商取引の制度環境の整備ということでいけば、電子署名を従来の手書きの署名とか押印、判こを押すのと同じような法的な効果を与える。そういうことになれば、電子署名及び認証業務に関する法律案を今度の国会に提出するということが大事になってまいります。そのほかに、お話もありました個人情報の保護、セキュリティー対策あるいは消費者保護策などを適切にやっていくということがとても大事なことで、私たちはそういう面では相当積極的な対応をしていかなければならないというふうに思っています。  いろいろやらなければならないことがありますが、情報化政策の中核を担う通産省という意味で、諸施策をひとつ積極的に講じていくように努力したいと思います。
  185. 水野誠一

    ○水野誠一君 ネットワークの世界の変化スピードというのは、いわゆるよく言われるドッグイヤー、つまり普通の時代の一年がインターネットの世界では七年に匹敵するとよく言われます。それほど速いスピードで技術進化が進んでいく。こういう世界でありますので、やはり行政の対応というのも今までのようなスピードではなくて、やはり相当インターネットイヤーに対応できるスピードというものをひとつお願いしていきたいと思います。  それから、大臣がもう一つ所信表明の中で、知的財産制度を活用することはこれからの知恵の時代における重要な経済インフラを整備することであるとおっしゃっております。これは全く同感であります。そしてまた、今国会には弁理士法の一部改正、これが提出されるということでありまして、これも私は大変評価をするところであります。  先ほど畑委員から質問がありましたビジネスモデル特許、私もこれについて若干意見と質問をさせていただきたいと思います。  先ほど畑委員からもビジネスモデル特許については詳しく御説明もあったわけでありますが、最近になって非常に新聞等でも確かに取り上げられる機会がふえてきておりますし、また見出しを見ると、米国でビジネスモデル紛争続発、日本企業も臨戦態勢とか、サイバー空間に国境なし、新たな黒船襲来か、などと非常に衝撃的な見出しが躍っている、こういう状況があります。  先ほどもお話がありましたけれどもアメリカでもアマゾン・ドット・コムの例であるとか、あるいはプライスライン・ドット・コムがマイクロソフトを逆オークション特許の侵害で訴えたというような事例を見ても、今後ますますこういった訴訟がふえていくことだけはもう明らかだと思っております。  そのビジネスモデル特許の問題については、橋本前総理も日経ビジネスのインタビューの中で、特に金融に関する特許のおくれなど、これを指摘されまして、今ここで対応がおくれるとアメリカにのど元の動脈を押さえられるような大変な怖い事態になると強い懸念を持たれております。私もこの点は非常に大事なポイントだと思います。  先ほど、畑委員の質問に対して、日米欧三極特許庁長官会合で、ビジネスモデル特許について特に事例研究を始められたというような御説明もあったので、この部分については先ほどの御質問あるいは答弁で結構だと思うのであります。  私は一つ伺いたいのは、つまりインターネット、まさに情報通信の世界というのは国境なき世界であるということになったときに、今までの国内特許の概念等これからの特許概念というものはもう完全に変わっていくんじゃないかなと思うわけであります。すなわち、今までのように、国内ではこれは許されるということがもう成立しなくなってくるんじゃないかなと。こういうことも踏まえて、どんな取り組みを今後お考えになっているか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  186. 近藤隆彦

    政府参考人近藤隆彦君) ビジネス特許の点でございまして、大変御関心をいただいております。  ソフトウエアの技術という点を考えてみますと、この歴史は、ハードウエアとソフトウエアの組み合わせの関係が随分変わってきているというふうに感じております。最初はハードに全く一体としまして、ハードにいわば本当に付随するものとしましてあったものが、次には、今度はハードを制御するものとしましてだんだん出てきました。これもあくまでもハードがあってのソフトでございますけれども、そうなりました。さらに、制御を超えまして、いろいろ付加価値的な新しい機能が出てきたわけでございまして、最近はさらにCD—ROM等でソフトが独立しまして、これだけで流通するということでございまして、そういう意味でいいますと、むしろハードとの組み合わせでいいますと、ソフトウエアの技術といいますものが非常に特異なものでございまして、そういう意味でいいますと技術考え方も、またそれを踏まえた特許にするかどうかという考え方も大いに変遷が必要だというふうに考えております。  一九七〇年代半ばから、この点につきましては、ソフトウエアといいますものを特許で保護するということは国際的に確立しておりまして、今申しましたような技術の発展に応じまして考え方を変えてきております。現在は、日本の場合には、平成九年に最新の状況を踏まえましてソフトウエアの特許の審査の基準といいますものを公開しておりまして、これをさらに最近の状況で、審査基準がないのではないかといった御心配もあるものですから、ごく最近、昨年末には、ホームページでこういった基準がありましてちゃんと審査していますということを公開しているわけでございます。  こういうふうに、大変ソフトウエア技術という中身の性質上、随分いろんな新しい考え方を導入する必要があると思っておりますけれども技術考え方としましては、ソフトウエアの一形態としまして、おっしゃるとおり国際調和を十分図りつつではございますけれども、新技術、そういう考え方で対処できるというふうに考えております。
  187. 水野誠一

    ○水野誠一君 よく日本アメリカの特許摩擦というのが目立つわけでありますが、とりわけハードウエア、製品特許でもよく言われるサブマリン特許、これはアメリカの特許制度の一つの特徴とされているわけですが、グローバルスタンダードではなくてアメリカンスタンダードじゃないか、こういう問題というのがいろいろ出てくるところであります。  特に、アメリカでの出願ラッシュ、そしてまた日本でもこれからどんどんこういうビジネスモデル特許が連発されるようになっていくわけでありますが、まさに国内それから国際間のこういった特許にかかわる訴訟というものがもう明らかにふえていく。そうなったときに、一番これから育っていこうという中小・ベンチャーにそういった影響が出てくる、ダメージが大きく出てくるというようなことになると、本当にこれからベンチャーの発展というものをこのビジネス特許、つまり権益を守るべきビジネス特許がかえって阻害要因になるということもあり得るわけでありまして、これは先ほど畑委員からの質問の中でも、非常に難しい、これはどちら、どういう立場でこれにかかわるべきかということは大変難しい問題ではあると思いますが、ともかく今言われている日米欧の特許庁長官会合、こういう場を利用して大いに語り合って、また協調を図っていただきたいというふうに思っております。  それから、先日の所信表明演説の中で、深谷通産大臣、堺屋企画庁長官ともに、我が国経済を本格的な回復軌道に乗せるためにさまざまな施策を通じて公需から民需へのバトンタッチを円滑に進める、こういう姿勢を強調されたわけであります。  さて、この一週間ほどの間に幾つかの重要な経済指標が発表されました。昨日発表の九九年十月から十二月期のGDP速報値は、先ほどからも指摘をされておりますように、前期マイナス一・四%減、年率換算で五・五%の減ということでございました。  これを受けて、堺屋長官の御説明として、二期連続のマイナス成長とはいえ景気後退とは考えていない、一時的な要因が重なったもので景気そのものは明るい方向に向かっていると、こういう見通しを昨日来の報道でもおっしゃっている。また、きょうの委員会でもその辺のお話を伺ったところであります。  確かに中身を見ますと、民間設備投資が三期ぶりにプラスに転じて四・六%という大幅な増がありましたし、また先行指標であります一月の機械受注も前年同期比で二一%と大幅なプラス。日経新聞などは、不思議なことに発表に先駆けて日曜日の時点で、一面に、十七日発表の月例経済報告に景気自律回復宣言を明記といった大見出しが書かれるというぐらいでありますから、なるほど指標の面からはまさに民需主導の回復基調に入ったと言えなくもないのかなと思います。  私自身もプラス傾向の指標が見られることは無論歓迎すべきだと思いますが、しかし、残念ながら私は、長官がおっしゃるほどこれを楽観的にとらえることはできないんじゃないかな、こういう感じも持っております。  政府はこれまでたび重なる景気対策によって莫大な額の公共事業を行ってきました。また、平成十二年度予算においても、公共事業は前年度当初予算と同程度の規模を確保するとされているわけでありますが、こうした公共事業に主軸を置いた、軸足を置いた政策スタンスが果たして過去の投資効果を正しく評価した上でのことなのかというと、私はいささか疑問を感じざるを得ないところがあります。  例えば、公共投資の民需への波及効果については、よく減税かあるいは公共事業かという、どちらがその乗数効果が高いかといった議論、これを繰り返しされてきたわけでありますが、公共事業官庁と民間シンクではその試算の数値に当然大きな隔たりがあるわけでありますが、特にバブル崩壊後について公共事業の乗数効果が年々薄れているということについては経済企画庁も過去にお認めになっている、こういう事実もございます。  そこで伺いたいのでありますが、財政で引っ張る景気には遠からず行き詰まりが来ること、これは長官も当然よく御存じのはずでありますが、本当の意味で公需から民需への転換を進めるに当たっては、長官もこれもおっしゃっております痛みを伴う構造改革、これが不可欠なはずであります。一部の目先指標を過大に好材料視するのは構造改革の推進という観点からむしろマイナスに働くのではないか、こう私は思うんですが、その点について長官のお考えを伺えればと思います。
  188. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 小渕内閣は発足いたしましてから一年七カ月たつわけでございますが、発足いたしましたときは大変不況が進んでおりまして、デフレスパイラルの危険があるということで、まず下支えをしなきゃいけない。そのときには、公共事業を発動いたしまして、特に即効性を重視しておりました。即効性、それから新規性、未来性とこう申し上げたのでございますが、まず第一に支えなきゃいけない。したがいまして、最初の緊急経済対策などでは公共事業で不況を支えるということが重要でございます。  ところが、ようやく去年一年間、ゆっくりとではございますけれども景気回復してまいりまして、次第に構造改革の方に移動してくる。それで、金融改革から、その次には中小企業対策を変え、そして情報技術を変え、次々とそういうような構造改革に手を打って民需にバトンタッチをしていこうという政策をとっておるわけでございます。  今御指摘のございました十—十二月のQEでございますけれども、これは残念ながら消費需要が非常に少なかった、これが一番の理由でございまして、結果として実質マイナス一・四%になったんですが、消費需要の寄与率で見ますとマイナス一・〇、それから公共事業がちょうど端境期に入りましたのでマイナス〇・五、それから輸出入が、十一月ごろにY2Kの事情もございましてどっと通関されたことでこれがマイナス〇・五の寄与率、それに住宅も少し減りましてマイナス〇・二でございまして、全部合わせて大体二・二ぐらいのマイナス要因はあったんです。  それに対しましてプラス要因として、設備投資が〇・七ぐらいの効果を上げました。これは、ボーナスが少なかったこと、何度も申し上げておりますが、消費では、前年の企業の経営状態によってボーナスが決まっておりましたので、それが少なく出てきた、その結果消費が下がった。これが一番大きな理由でございますが、この設備投資が、公共事業マイナスにもかかわらず設備投資が非常に出てきたということは、やはり公需から民需への転換が考えられる。そして、設備投資が出てまいりますと、これは従来の形のものをもう一遍再現しているわけではございませんで、新しい技術、新しい業態をつくり出している部分が多いわけでございますから、そういったものが、芽が出てまいりますと、またそれに対応した職場が出てきて、仕事が出てきている。  そういうことを見ますと、機械受注あるいは建設受注等を見ますと、今年度の後半には本当に民需を主体とした自律的な回復過程に入るんじゃないか、そういう期待を抱いているわけでございます。そのことを示しますように、ことしに入りまして、一月、二月あたりの動向は決して悪いものではないと考えております。  日経新聞の報道でございますが、これ、やや先走ったことでございまして私たちの真意を必ずしも十分伝えているわけではございませんけれども、私たちの中でも、次の月例ぐらいではかなり前向きな、この新聞報道のとおりではないにいたしましても前向きな評価ができる事態に来ているのではないか、こういうふうに考えております。
  189. 水野誠一

    ○水野誠一君 もう時間がないので終わりますが、一言だけ申し上げておきたい。  つまりそれは、今大臣の御説明にあったGDPを大きく引き下げた要因になった個人消費の部分、これはひとえに私は将来不安だと思います。企画庁が今度まとめられた九九年度の国民生活選好度調査でも、暮らしよい方向に向かっていると答えた人は二割ということで、過去最低だった。やはり将来の生活に対する不安感というのがもうここに如実にあらわれているということをひとつきっちりととらえていただきたいということ。  そして、きょうの朝日新聞の社説にもそのことが書かれているんですが、最後に、「明るい話を強調するより、政府の同僚や政治家たちに、消費が伸びない理由をよく講義してほしい。」と長官に対して期待が述べられておりますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。  終わります。
  190. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 二十五分間でありますから、多分通産大臣のところまでは入り得ないんじゃないかと思うんです。あした委嘱審査のようでありますので、もし入れない場合はあしたやらせていただきたいと思います。  最初経企庁長官にお尋ねしますが、昨日発表されました国民所得統計速報によりますと、九九年の十—十二月期のGDPが実質一・四%マイナスになった。今年度の経済成長率の見込みを〇・六%ということで、私は、これはやっぱり修正したとはいえ公約でありますから、これはなかなかそう簡単にいかないんじゃないか、今説明があったけれども、そう思うんです。どういうところからそう思うかというのをまた後から少し申し上げますが、そう言われる以上はやっぱり個人消費の伸びが相当高くならないと大臣の言うようなことにはならない。  そこで、個人消費の伸びを大体一—三月期にどれぐらい見てそう言われるのか、お尋ねいたします。
  191. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 私どもの立てました経済見通しでは、個人消費の伸び率、これを十二年度では一・〇%ぐらいに見込んでおります。現在それを下回っておりますが、一月になりましてから個人消費は一・六%前月を上回りました。  それで、この後どうなるか、ちょっと予測のことになるのでございますけれども、私は大体そのぐらいの調子で、この十二月の落ち込みをカバーしてくれるぐらいの調子で伸びるんじゃないか、こう考えております。
  192. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そこが、ほかの民間の設備投資とかあるいは公共事業あたりの、言われるようには恐らく進んでくるんだろうと思いますが、分かれるのは、GDPの六割を占める個人消費が、これがどうなるかによって、当たるも八卦当たらぬも八卦ですが、そこのところが変わってくるだろうと。よっぽどのことがない限り、そんなに大きな個人消費の伸びというのは一—三月に期待できるのかなと。我々やっぱり、選挙区を回ったり、あるいはあっちこち歩くたびにそういう、どうですかということを投げかけて聞いておるんですが、そこが非常に心配であります。  私は、余りここに来て経済成長とかあるいは景気とか、これはそう一喜一憂してもしようがないんじゃないかと思うんですけれども、思い出していただければわかるんですが、狂乱インフレ、第一次オイルショック、一九七三年、七四年、これはこのときはもう本当に私ども九州の田舎まで大手資本が土地を買いに来まして、ゴルフ場をつくるやら何やらつくるやら、いろいろやりました。あのオイルショックの後、引き締めをやってぱたっととまりまして、傷跡のようにそういうところがずっと残ってきたんですが、今回の、バブルのあの燃え盛るころ、また同じようなことをだあっとやりまして、そしてまた今ぱたっととまって、大変また傷跡を残しておるんですけれども、非常に似ているんです。あの当時と条件、情勢の違いというのはあると思うんですが、非常に似ている。  私は一九八三年に国会に来たんですけれども、商工委員会へほとんどずっと出まして、景気対策やあるいは内需拡大をどうするかという議論をずっとしてきた。なかなかうまくいかないんですね。そして、うまくいき出したら、もうバブルの方へ走っておったんです。この間、一九八五年のプラザ合意もありました。円高にもなりまして、いろいろ産業界も苦労して、当時の商工委員会とか、大分いろんな議論をしました。  考えてみますと、十五年ぐらいかかっているんですよね、景気が本格的によくなるまでに。十五年かかったんですよ。今回のバブルがはじけまして今日まで約十年か十一年ですね。だから、やっぱりバブルの後遺症というのは非常にあっちこっちに出ておりまして、特に金融に出ておりましたから、もっと傷跡が第一次オイルショックのときよりもひどいんじゃないかと思うんです。ですから、私は、やっぱり本格的な景気回復というのは、ここ一年とか二年とかいう短いスパンで見るんじゃなくて、もう少し時間をかけて長目に見ておく必要があるんじゃないか。  そこで、やっぱり何を政府にやってもらいたいかというと、きょうも皆さんからお話がありましたように、各種の不安ですね、雇用不安、それから年金、年をとったときの生活の不安、それから日本の少子化問題や、これは幾ら厚生省が年金をどうやこうや、安心できる年金をつくると、こう言ったって今の若者は信用しておりません。今のような少子化の時代が続いた場合には、これはだれが負担するかということを考えれば、これは先でまたうまくいかなくなるともう一回やりかえだと、こう思いますから、なかなか消費に結びつかない。そういう少子化の不安とか、あるいは米国、アメリカの株高、あれがいつかバブルがまたはじける、そのときの不安もある。  こういう幾つかの不安に対して、厚生省任せとかあるいは通産省とか一つの部署じゃなくて、政府挙げてやっぱり取り組んでもらうような、ちょっと長いスパンで今はやっぱり対応してもらう、そういう時期ではないか。確かに政府の公約とかこれはあるでしょうけれども、今やってもらいたいのは、私はやっぱり、そういう幾つかの不安に対して国を挙げてどのように取り組んで、着実にこうしていくということを国民の前に示す必要があるのではないか、このように思うんですが、所感をお聞かせいただきたいと思います。
  193. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) お説のごとく、バブルが崩壊してから日本経済にはさまざまな不安があります。  今、第一次オイルショック、あの日本列島改造論のブームの後のお話と対比して申されましたけれども、規模はバブルの方がはるかに大きい。しかも、あのオイルショックのときにはまだ日本規格大量生産でどんどん成長する段階でございましたから、オイルショックから立ち直ったときにはアメリカ市場などに規格大量生産品をどっと輸出して立ち直ることもできました。その結果、円高も起こりましたけれども日本企業の力が非常に大きくなったわけであります。  ところが、今回は、世界的に日本が得意としておりました規格大量生産がうまくいかなくなった、むしろ多様な知恵の時代、先ほどから議論のございましたようなソフトの時代になってきたものですから、日本の得意とするところが余り伸びなくなってきた。まさに構造的な問題があります。  その上に、何よりもやっぱり重要なのは、あのころと違いまして、人口が高齢化しておりまして若者たちが減っている、中高年が非常にふえていると、そういうことがございますので、委員指摘のように、日本には大変大きな不安があります。  一つは、日本経済が今後も成長するんだろうか、だめになっちゃうんじゃないか、これがまず第一の不安だと思います。そして第二番目には、やはり年金とかそういうものが本当に続くんだろうかという不安をお持ちの方が大勢おられます。厚生省の調査でも、年金が続くかどうかというので、八〇%近い方が実はこれは続くかどうか不安だという答えがあります。それから三番目には、後継者、技術日本技術や人手というものが続くんだろうか。中小企業をやっておられる方々は、自分の事業を本当に息子が継いでうまくやっていくだろうか、息子を補佐してくれる人材はいるだろうかというようなことから、ロケットやトンネルの事故に至るまで、技術的な面でも日本が衰退していくんじゃないかと、こういう不安があります。私たちはこれにきちんとこたえなきゃいけない。  それで、まず第一に経済でございますが、経済の面でいいますと、バブルの後遺症が銀行金融機関にも各企業にも相当ございました。それを金融再生法でかなり処理いたしましたし、九九年の一年間、自己資本比率の増加というようなことで、企業でもかなり努力をされて大分よくなってまいりまして、自己資本比率などは改善しております。それを受けて、最近の求人倍率増加とか、あるいは所定外労働時間の増加とかいうような改善も見られているものだと思います。しかしながら、なお日本経済全体に対する不安が大きいことは事実でございまして、これにきっちりこたえていくように、社会保険の問題、これも有識者会議をつくって開いておりますし、ものづくり懇談会もしております。  そういったこととあわせて、私は経済の将来、それから年金の将来、それから技術、人手の将来、この三つの不安を解消するとともに、国民に対して一つの夢を与えなきゃいけない。不安を解消するということと同時に、やはり夢を与えなきゃいけないと考えております。  そういう意味で、設備投資がふえてまいりまして、IT技術中心として日本に新しいモバイル社会のようなものが生まれるのではないか。そして、先ほどからも議論のございましたように、日本発のソフト、コンテンツがどんどんと生まれるような社会ができてくるのではないか。今そういうような構造転換の大変産みの苦しみのところだろうと思います。  委員、十五年とおっしゃいましたが、これまことに、アメリカなどの例を見ますと、大体カーター時代から今のクリントンの初め、ブッシュさんのころまで十五年かかっておりますが、十五年かけていいというわけではございません。一日も早く立ち直らなければいけません。だから、日本は十年でございますが、その間に大胆な構造改革を今やっております。これで諸外国の例なども参考にしながらここで下支えをして、そして次には構造改革、同じ公共事業といいましても、九兆四千億の中で今回の予算では二兆強のものが、二兆三百億のものが新しいミレニアムプロジェクトなどに投入されておりまして、同じ公共事業の中でも質的な変化をつくっております。  そういったことが実りを上げて、やがて今度の立ち直りには本当に構造改革した日本にしようというのが私どもの決意でございます。このことを国民皆さん方にもぜひ知っていただきたいと思っている次第であります。
  194. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 熱意を感じましたが、少し肝心なところを、雇用問題ですね。  これももうこの段階に来ましたら競争力云々というよりは、政府を挙げまして、ヨーロッパでも言っていますようにワークシェアリングというのか、仕事を分かち合って何とか雇用を維持するような形のものというのを政府挙げて打ち出して指導してもらいたいと思うんです。  女房、子供がおって仕事がないほど不安になることはないわけですから。これはもう本当に、女房、子供のことを考えて後々うまくいくために鉄道に飛び込む人もおりますですね。それは極端な例ですが、やはり一番悲惨なことですから。ここのところは、政府としては労使関係雇用問題というのはそれは言えない。言えないけれども、大きな流れとしてやはり雇用というのは大事だぞと。ワークシェアリングしてでも何とかもっと雇用を維持するような、希望を与えるような、そういうことを考えたらどうかというようなことを政府でぜひ考えていただきたいと思います。  次に、株価ですね。これはちょっと大臣や小渕総理のお話を聞いておりますと、自分が初めに来たときは一万三、四千円の株が二万円近くなったというような表現が多いんですが、調べてみますと、小渕内閣が発足したときは当時一万六千円ぐらいやっておったわけですから、一万二千、一万三、四千円というのはちょっと出が少ないわけですから、初めが少ないわけですから、これはぜひ実態というものを国民に知らせていただきたいと思います。  今の日本の株価の上昇の傾向というのがもしわかれば、こういうことで株が上がっているんじゃないかというような指摘をしていただきたいと思います。
  195. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 株でございますけれども、きょうはちょっと軟調でございまして、一万九千百四十一円でございますけれども小渕内閣が発足したときは、お説のように一万六千円、その後どんと落ちまして、十月の九日でしょうか、一万二千八百七十九円という値をつけて、それから大体一万九千円台に戻ってきたということでございます。  株価について問題点を指摘するとすれば、値上がりしている銘柄と値上がりしていない銘柄が非常に極端に開いている。これは日本だけではなしにアメリカもそうでございまして、最近アメリカのダウ平均、三十種産業株平均というものでございますが、これは一万ドルを大分割りまして年初以来十数%下げておりますが、NASDAQという新興銘柄の多いところは指数で五〇〇〇を上回ったというような動きをしております。  日本の株価で、特定の銘柄と言ってはちょっと語弊がありますが、五十ぐらいの銘柄が非常に引っ張っている。これはバブルではないかというような指摘日本についてもアメリカでもございますが、考え方によっては新しい産業資本が、資金が流れる状況を示しているものとも言えなくはありません。  必ず一つ産業が興るときにはこういう現象が起こります。そのすべての、今値上がりしているような注目株がすべてそのまま大企業に発展するわけではなしに、その中でまた淘汰が起こるでしょう、多分起こるでしょう。今までの例で見ますと、新しい産業が出てくると、その産業の属する企業が一斉に人気がつきますが、やがてそれが大きくなる段階で淘汰が行われ、吸収合併になったりなくなったりする、こういうような過程を経ております。私は、今、景気回復期、構造の改革期において、こういった一種の偏った現象というのは当然起こるべくして起こっている大きな転換期の象徴だろうと思っております。  そういった中で、先ほども議論がございましたが、情報技術というのがどのように雇用を生み出していくか、これがやはり一番大きなポイントだろうと思います。  昔からよく言われるんですが、自動交換機ができたら電話交換手が失業する、これは事実でございますが、電話が発達したことによってビジネスがいろんなところで広がっている。情報技術というのはそういうものでございまして、情報技術そのものに雇用よりも、それを使って輸送も販売も生産もあるいは娯楽も盛んになることによって経済全体が燃え立ってくる、そういう状態に一日も早く持っていきたい、これが今の段階だと考えております。
  196. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 よくわかりました。  それで、ただ、株価を支えているものをマクロ的に見ますと、外国人の買いと個人の信用買いというのがふえておるんですね。  ちょっと申し上げますと、投資家別差引売買金額という表があるんです。これは証券界の人から手に入れたんですがね。それによりますと、外国人買いが一九九四年は四兆一千億強です。それから九五年が四兆一千億、これも少し強です。それから九六年が三兆四千億強、それから九七年が約一兆五千九百億。ところが、九八年には二千九百九十三億なんです。それで、九九年には急にふえておりまして九兆一千二百七十七億なんです。  それで、個人の信用の買いが、九四年には五千八百五十二億、九五年には一兆六百六十四億、九六年が七千百四十一億、九七年が三千二百九十三億、九八年が三千四百五十六億、ところが九九年は三兆三千億、十倍ぐらいですね。だから、外国人買いと個人の信用の買いがどっと出て、そして逆に法人の売りと、それから法人の中には金融法人と、それから損保、銀行、それから事業法人、それに個人の現金とこれを入れますと、売りの合計が十一兆三千億。それで、買いは外国人の買いと個人信用の買いと、先ほど言いました数字が、合計しますと十二兆四千億になるんです。差し引きしますと、四千億買いの方が多いんですね。  ですから、何が起こっているかというと、九九年では外国人が日本の株を買って今の株価の上昇の大きな原因になっている、個人の信用も急にふえておる。この二つの要因が、今言われましたように、長官が言われた側面、違う側面から見ますと、マクロで見るとこういう形になっているんではないか。その外国人の株の買いあたりはきょうあたりは動いておるんじゃないかと思うんですが、この見方についてはいかがなものでしょうか。
  197. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) まず、法人の売りでございますけれども、これは持ち合い解消という現象でございまして、日本金融機関を中心とした系列というのが崩壊していく過程でございまして、これは私は、日本経済全体が流動化する、市場化するという意味で、決して悪いことではないと考えております。金融系列でどれでもこれでも企業を支えていたという現状がむしろ流動化するのは健全な方向が多いんではないか、両面あるんですが多いんではないかと思っております。  そのものを、法人から出るものを、個人信用とおっしゃいましたが、投資信託なんかも結構最近はお金が入っておりますけれども、そういったもので買い取り、それから外国の人が買い取っている。日本の資金も外国へ相当流れておりまして、これはグローバル化の一環として相互にこういう資本の交流が多くなるという現象で、今の時代の流れということであろうかと思います。  ただ問題は、委員御心配のように、何かのときに外国人は売り逃げてどっと下がるんじゃないか。これはアジア危機のときに起こった現象でございますが、そういうような危険も、これは別に外国人だから売り逃げるわけで、日本人だから売り逃げないということはございませんけれども、そういう、その流動化した世の中の危険というものはやはりあろうかと思います。  しかし、これだけ九九年になりまして外国人の買いがふえたということは、日本経済に対する世界の評価が高まったと、そのことが株価にも反映して回復しているんじゃないかという気もいたします。これはいろいろと、市場関係の見方になりますと余り私も詳しくございませんし、またいろんな見方がございまして、論評いたしますといろいろまた利害のあることでございますので、一般的に申しますと、やはり外国から日本に資金が流れてくるというのは決して悪い現象と言えるものではないんじゃないかと思っております。
  198. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 時間が来ましたからやめますが、私は、日本貿易黒字等のマネーがアメリカの債券を買って流れていく、その金がやっぱりアメリカ景気を支え、経済を支える。そうであったが、今アメリカの株価は非常にバブル状況である、それがアメリカを通じて逆に還流してきた可能性もあると。ここらで、日本アメリカに対する債券を買ったり株を買ったりする問題は大変先でまた日本経済に大きな影響を及ぼしますから、あしたまたお尋ねするようになると思いますから、これで終わりたいと思います。
  199. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 どうも両大臣お疲れでございます。  きょうは、私が一番最後の質問者でございまして、できるだけ簡潔に、今まで各同僚議員の質問をお聞きいたしておりましたり、あるいはまた御答弁を聞いておりまして、若干ダブる面が今回あるのかなと思っておりますが、あしからずお許しをいただきたいと思います。  その前に、両大臣の所信表明を伺いまして、大変行き届いた、しかもまた新しい意欲が感ぜられる所信表明で、かなりそれぞれ大臣、いわゆる官僚の皆さんの上げてこられた中から手を加えられたなというのも実は非常に敬意を表しながら、感じた次第でございまして、この不況における日本経済日本産業、これはもう本当にことしは正念場だと私は思うんですね。もうことし、これは小渕内閣の問題ではなくて、国家としてのまさに正念場であるという感じがいたしておりますので、両大臣のぜひ十二分なリーダーシップを御期待申し上げておきたい。  また、いわゆる時間に制限があるきょうの質疑でありますから、それぞれ法案が出てきたところでその都度またいろんな角度から御質問もさせていただき、御意見も承っていき、私も浅学ながら自分の考えも述べてみたいというふうに思っております。  きょうは、冒頭申し上げたように、やっぱりあの所信表明の中で、特に通産大臣から先にちょっと御意見を承りたいのでありますが、各同僚議員もそれぞれ質問がありましたが、ことしの通産大臣のすばらしい所信表明の中でも、注目しますのは、景気対策あるいは中小企業対策その他もありますが、やっぱりエネルギー政策の見直しをおっしゃった。私は、ある意味においては時宜は得ているかなと。また、ある意味においてはちょっと時期がどうなのかなという感じもする。  それはどういうことかというと、いわゆるこの原子力政策に関して極めて国内世論あるいはまた立地市町村等々が不安感にもあり、あるいは日本の原子力技術というものに対する信頼感から若干の危惧の念が出てきている。そういう中で、大臣がタイミングよくと言いたいんですけれども、ある意味ではタイミングがいいんですよ、いいんですけれども、ある意味においては若干の政治的な問題として、私はちょっともう少し丁寧な発言であってほしかった。  きょうもずっといろいろな質疑の中にありますとおりでありまして、私はこの原子力エネルギー政策を過去二十年強力に推進をしてきた一人でありますから、そういう意味では、大臣がエネルギー政策の見直しと、原子力による電源開発、いわゆるエネルギー、電力というものとの、どうもそれが一緒くたにみんなとられている、そこがちょっと残念だったところかなというふうに思うんです、率直に申し上げまして。特に、芦浜原発の取り消しの、あるいはまた取り下げの話もあったりいたしまして、私もいささかの感がいたしました。特に、電力会社が簡単に、知事がこれは立地不可能だと言うならば、今の段階での法律的には無理なのかなという感じはします。  しますが、しかし、電力会社自身がさはいっても数十年間やってきているわけですから、それをただ一遍のそういったことで撤回をするというようなことは、果たしてこれから原子力電力というものに期待をし、あるいはまたそれによってかつ地域の開発と発展をしていこうと期待をしている人たちに対してどういう心理状況を与えたかということは、これはちょっとそうそう、これはエネ庁自身にも言えることですが、やっぱりきめの細かな、こういった国策に対する取り組む姿勢というものが若干私は緩んできているのかなという感じがしてなりません。そうでなければ結構なのであります。  そういう意味で、こもごも申し上げているとまた時間がなくなってしまいますので、端的に幾つかのことをお聞きいたしてまいりますが、大臣の今の発言、私が申し上げたような原子力発電、エネルギー全体の需給問題、見直しに関してはこれと別の問題だと。しかし、原子力発電の必要とする容量は、それは多少減ってもいいという面もあるかもわかりません。しかし、どっちが一体主体だったのか、そこをもしも今お考えがまとまっているのであれば、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  200. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 先ほどもしばしば申し上げたのでありますが、昨今のエネルギーに関する内外の情勢の変化というのは極めて大きいものがあります。需要とか供給の状況を見ながら、より正確なエネルギー政策を立てていくというのは、私は政府の責任だと思います。  そういう意味で、そういう変化がありながら、そのことに耳を傾けないで、今までどおりただ進めるんだと、やみくもに行くことが本当に正しいことなんだろうかという、そういう思いを率直に私は持ちました。持っておりました。  そこで、ただいま申しましたような需要と供給の問題点を整理しながら、国民の皆さんに本当に理解していただくためのエネルギー政策を一年がかりできちっと検討しようではないかというふうな結論を得まして、通産省の中でも相談した上で、まずその取り組みを事務的に始めて、四月以降から総合エネルギー調査会の手にゆだねて、そこで徹底した議論を行う。あわせて、国民の声も聞きながら、拙速に走らずに一年ぐらいでその方向を示していこうということになれば、おおむね三年ぐらいの経緯になるわけですから、この前の政策の見直しと。そういうような、そのときそのときの実態に合わせた内容というのをきちんと整えていくということが、私は政治家としては真摯な姿勢ではないかと、こう思っているわけです。  一方、渡辺委員が御指摘になったように、原子力の発電というものについて、それでは後ろ向きになったのかと言われれば、やはり今日の状況を考えた場合に、原子力エネルギーの重要性というのは変わっているわけではない。同時に、安全性についても、東海村その他の事故はあったけれども、これは原子力発電そのものの問題点では必ずしもないわけでありまして、そういう意味では、原子力発電所の安全性というものをもっともっと多くの方に明確にお伝えしていかなければならない、それは従来といささかも変わりはないと思っています。  同時に、そのようなことを理解していただいている地域の皆さん方が、一生懸命原子力発電の発展のために御協力いただいたそのことにも心から感謝を申し上げながら、その人たちの期待にもこたえていかなければならない、そのように思っているわけであります。  さきの三重県の知事の御発言も、詳細を聞いてみますと二つありました。一つは、原子力発電の重要性についての認識が変わったわけではない。二つ目は、ただそうはいっても、三十何年という長い間係争が続いて見通しが立たないという状態なら、一たん白紙に戻して再検討していく必要があるのではないか。これも筋としては通った話ではないかなと、そういうふうに思うわけであります。  いずれにしても、日本の脆弱なエネルギーの状況を考えますと、原子力発電についてのこれからの重要性というのは変わっていくわけではありませんが、いずれにしても全体のエネルギー対策というものを現状を踏まえてきちんと立て直す、あるいは正確に検討させて、そして方向を国民の前に示す、これはとても大事なことだと考えながら、このような指示をしたわけでございます。
  201. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 よくわかります。また当然だと思うんです。  私は一々のことをとらまえて申し上げるつもりはありませんが、問題は、後ほど経済構造改革のことを時間があったら経済企画庁長官、両大臣にお聞きをしたいと思うんですけれども、今の不況の中で需給関係を見たり、あるいはまたいわゆる原子力、ちまた言われている原子力発電の立地が極めて世論的に厳しくなったからというようなことであってはならないということで、私はあえて申し上げておきたい。  大臣のエネルギー政策に対する新しい角度から取り組もう、新時代に取り組もうということは、これはまさにエネルギーは産業の血液でありますから、そういう意味においては、私は、見直しをする、再検討をするということよりも、言うならば精査をするということだろうと思うんです。  言葉じりを言うわけじゃありませんけれども、そういう角度からぜひ一年かけて、いや、場合によっては一年以上かけても立派なまとめができるようにしてほしい。  ただその際に、あえて申し上げますけれども、私も手元に持っていますが、実はどの審議会も、これは経済企画庁もイコールですが、私は、今度の警察の問題もそうなんですけれども、要するに今まで、この分野から選んだからこの人、あるいはこの分野から今まで選ばれている、これが役所の通例なんです、人選をするのに。今度は新しい角度でおやりになるというならば、やっぱり新しい角度からの人選もこれは絶対に出てこなかったらおかしな話なんで、そのことを私はぜひ、よい考えをいただいた、新しい酒は新しい皮袋ですよ。そういう意味で、ぜひ今後の、今の人たちはみんな悪いとか、もうみんなよく知っている人たち、また大変恐縮ですが、一人一人のことを言うんじゃなくて、そういう角度でこれからのせっかくの新しい諮問についてぜひ考えていただけると、すばらしいものが出てくることかなという期待を申し上げておきたい。老婆心ながらであります。  それから、今のこのことが、私はもう一つ心配するのは、電力事業者が設備投資、あるいはまた設備投資でもいろいろあります、原子力の設備投資もあれば火力発電の設備投資もありますが、同時にバリアフリーとか地中化、こういった問題もこれは電力のいわゆる事業者の負担にもなっていくわけです。そういうことについて、いわゆるエネルギー全体の見直しの中で、そういうことを国策としてやってきたものが、まあいきなりとは言わないが、そういう見直しの方針に入る。我々の方もそれならばというので見直しの方針に入るというようなことがあったら、まさに経済に逆行していくことにもなるんではないか。  そういうことも懸念しながら、あるいはまた電力事業者自身がリストラ、あるいは先ほどから出ている雇用の問題、そういうことなどにも、これを一つのとっかかりみたいなことにしては、まさにこの電力というのは、お互い経済関係をやってきた人間として一番、公共事業設備投資もさることながら、電力の設備投資というのは欠くことのできない分野ですから、そういう意味で私は、電力事業者に、別にこの場で注文をつけるつもりはないけれども、監督官庁として大臣の適切な指導指針というのがあってしかるべきという感じがいたしますが、いかがですか。
  202. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 今、渡辺委員のお話を承りながら、一つ一つそうだなと思いながら承っております。  今度のエネルギー政策の検討の課題の中に専ら原子力発電だけがぐっと前に出てきている感じがあるんですけれども、やっぱり思い切った新エネルギー、自然エネルギーの開発とか省エネとかいったような問題までもっともっと力を入れていかなければならないというそんな判断があることをぜひ御理解いただきたい。また、調査会のメンバーについても、御意見として受けとめさせていただきたいと思っております。  それから、電力会社がそれぞれ全力を挙げてやってまいりましたこと、今当面そのことを後退させろという思いなどは全くありませんで、大いにきちっとやってこられたものは推進してもらいたいし、そしてその推進することが経済の万般にわたってプラス影響していくということについては通産省も適切な対応をしていきたいと考えます。
  203. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 どうも時間がなくなってしまいますが、私は、さっきの同僚議員の発言と立場を変えた中で、せっかくですから。  さっきの原子力発電の推進のためのいわゆる地域振興策による補助金の問題等は、大臣も役所の立場でそのお答えはやむを得ないかと思いながらも、しかし、開発途上国に原子力発電あるいはまた電力のことに視察に行くなんということはどう考えたってそんなもの常識じゃない話であって、そういう点をエネ庁はやっぱり誤解を招かないようにすべきであると。これはもうどの党が言っているという問題じゃない。そういう意味において、私はあえてちょっと先ほどの質疑の中で自分として納得いきませんので、今、一言申し上げておきたい。  それから、アラビア石油の件について移ります。あともう数分しかなくなってきましたが。  今回のアラビア石油の権益延長問題で大変御苦労されました。本当にそれは通産大臣、御苦労さまだったと思います。  これは考えてみますと、この話を質問していくと私は経済構造改革の話に移れないで、きょうは久しぶりに堺屋長官にすばらしいあなたの計画プランのあれを少し申し上げようと思ったんですが。  ちょっと一言このアラビア石油のことに関して申し上げると、やっぱりこれもいきなり今の問題じゃないのであって、初めから期限は決められているのにどうも、歴代通産大臣とは言いませんよ、だけれども、たまったところで深谷さんが通産大臣になって、これはまあお気の毒だとは思うし、大変だったと思うんです。しかし、どうしても私はこの問題については非常に思いがありまして、これからアラビア太郎と言われた山下太郎さんの話あるいはまた経団連の石坂さんやあるいは開発銀行の小林中さんやそういう人たちの大先輩のことを思い浮かべながら実はちょっと質問をしようと思ったんですが、しかしながらもう時間が参りましたので、あえて何かの機会に譲ります。  しかし、少なくとも当時外貨が十億ドルぐらいしかなかった中に五十億も資金を集めてこの仕事に人生をかけた、あるいはまた人生の仕上げをかけたという当時の先人というのは、これはやっぱりすごいものだと思うんですよ。しかも、またそれを政治がバックアップしたんですね。癒着でも何でもないわけですね。それが今日の日本一つの国策会社としてやってきた背景になっているということ。しかも、この山下太郎という人は満州太郎と言われて、財産全部なくして帰ってきてからそこから始めて、日本航空もつくるのに参画したり、すばらしいこういった人たちのことを思うと、私は実は極めて今度の問題は、五%の原油輸入量のいわゆる減であると、減ることだというようなことだけで片づけていいのかという感じがいたしてなりません。  我が国の自主的な開発油田の確保を図ってきた歴史の過去を振り返りながら、石油公団の問題も問題点もあります、ありますが、しかしこれはやらなければならない。エネルギーのいわゆる最貧国である我が国でありますから、石油の最貧国である我が国でありますからやらざるを得ないことでありますが、我が国の石油開発、利用に対して大臣がぜひひとつしっかりした信念を持って取り組んでいただきたいと思うんですけれども、大臣自身のこれからのこの石油開発について若干お考えがあったらお聞きしておきたいと思います。
  204. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) アラビア石油の古い古い歴史を渡辺委員が今お話しなさいましたが、この間の日の丸原油については深い感動を若き時代に味わった一人であります。ですから、このたびの交渉の結末については、現地を離れるときに万感の思いがあったということは率直な私の気持ちでございます。そして、この交渉によって例えば石油供給量は変わらないぞとか、あるいは変わってもわずかであるぞといった、そんな甘い感覚は一切持っておりません。  ただ、交渉事でありましたので、どこが限界だという点からいきますと、鉄道の敷設を全額プレゼントするというのは限界がある、こういう判断をせざるを得なかったわけであります。  また、石油の自主開発につきましては、先ほども申し上げましたように、やはり石油供給量の外国に頼らざるを得ない日本の現状を考えますと、可能な限り自主開発の石油というものを目指して努力をしていくということはとても大事なことであります。しかし、この場合も、リスクが非常に多いために誤解も招かざるを得ない、そういう面もございますが、何とか効率性をよくして、そして明朗な形で国民の皆さんと自主石油を開拓していくんだという、そういう流れができますように一層努力をしなければならぬと思っております。
  205. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 もう時間がなくなってしまいましたので残念なんですが、このアラビア太郎の本を読みますと、やっぱり本当に現地の人と心を一つにしているんですね。やっぱり僕は、そういう努力が足りなかったと思う、我が国に。それは結果として今大臣が言われたように鉄道を全部出せと、こういうことになったらそれは無理だと、そんなものはもうそのとおりなんです。しかし、私は、自分でも石油の関係でかつては自民党の中で責任を持ってやってきた一人として、だれかをそれに備えて十年計画ぐらいで人間関係あるいはまた信用というものをつくるべく、これは国策ですから、やっていくべきだったんだなというようなことを、外交は人なりといいますから、まさにそういう感じがしたということを申し上げながら、今後に対処していただきたいと思います。  経済企画庁長官、まことに残念ですけれども、ちょっと私、こうなっちゃいかぬと思ってまとめてきていますので、ちょっと、演説をやると長くなっちゃいますから。  経済企画庁長官の所信表明で、平成十二年度の経済運営に当たっての目標の一つとして「揺るぎない構造改革の推進」が挙げられていますが、私はこれまでの経済構造改革は中途半端に終わっている点もあるなと思いながら、なおこの理由は若干後ほども具体的に申し述べたいんですが、恐らく時間がないでしょう。  しかし、長官は、民間人から請われて大臣になられた人です。また、我々も期待している。思い切ってこの経済構造改革産業政策のあり方について、特に、もう時間がありませんので、もう来年からとにかく総理大臣の直結の中で経済政策をやっていく、行政改革の中でこの経済企画庁は。非常に重要なポジションなんです。  私はかつて小渕総理と、これは余話ですが、余談ですけれども、内閣に、日本経済全体を掌握するというのは大変だから、せめて予算権ぐらいは内閣直轄でやったらどうかと。小渕さんが幹事長、私が全国組織委員長のときにある研修会で話し合いまして、小渕幹事長は当時それを言いまして、新聞にこんなにでっかく載ったことがある。  しかし、今度は行政改革で、橋本行革で、経済企画庁は経済政策を総理府の中に、総理直轄に持ってくる。まさにこれは役所間の調整ではなくて、本当に総理と直結した経済の運営がなされてしかるべきというふうに思います。  経済企画庁長官のこのすばらしいまとめをされたものを私も読ませていただいて、極めて今までにないすばらしい取りまとめができている、かつ方針が述べられているというふうに思いますが、どうぞひとつ遠慮なく、閣僚の中であなたは選挙がないんだから、だから思い切って私はやっていただきたいと。先ほど申し上げたように日本経済の正念場だと、そんな感じがします。  一言、所信にもう一つ上回った決意をひとつお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  206. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 渡辺委員、どうもありがとうございます。  御指摘のように、来年から行政改革が行われますと、内閣府の中に経済財政諮問会議というのができます。これは総理の直轄で、経済関係の閣僚と国の重要なポストの機関の長、それから民間人が入りまして、全体を取りまとめるという仕掛けになってまいりまして、従来以上に首相の主導権による総合調整ができるのではないか、できるようにしなきゃいけない、大変かたい決意を持って今そういう準備を進めているところでございます。  そして、そこで何をやるかというと、まさに委員おっしゃったように、日本構造を従来の規格大量生産型から知恵の時代にふさわしくする。それで既に、例えば金融問題、これも今まで護送船団でございましたけれども小渕内閣発足以来大きく変えまして、この間も発表がありましたけれども、今やもうどんどん銀行合併して、それに基づいて、先ほども指摘がありましたように、法人が株を売って自由市場になっている。あるいは中小企業政策にいたしましても、労働政策にいたしましても、あるいは情報通信の関係でも、非常な勢いで変わっております。  世界におくれないように日本がやっていくためには、そういった改革を大胆にやらなきゃいけない。そのときにはやはりある程度の痛みも伴うわけでございますけれども、それは安全ネットで救うようなことを考えながらやっていかなきゃいけない。これはまさにおっしゃるように経済財政諮問会議というのを内閣府の中につくった趣旨であり、またそのようにやっていきたいと思っております。
  207. 渡辺秀央

    ○渡辺秀央君 ありがとうございました。
  208. 成瀬守重

    委員長成瀬守重君) 本件に対する質疑はこの程度といたします。     ─────────────
  209. 成瀬守重

    委員長成瀬守重君) アルコール事業法案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。深谷通商産業大臣
  210. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) アルコール事業法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  六十年以上の長きにわたって存続してきたアルコール専売制度につきましては、昨年四月の国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画において民営化が閣議決定されたところでありますが、アルコール専売制度の廃止後においても、アルコールが広く工業用に使用され、国民生活や産業活動に不可欠であり、かつ酒類と同一の特性を有していることにかんがみると、我が国のアルコール事業の健全な発展及びアルコールの安定的かつ円滑な供給の確保を図るため、アルコールの製造、輸入及び販売の事業の運営等を適正なものとするための所要の措置を講ずることが必要であります。  このような要請に対応するため、今般、本法律案を提出した次第であります。  次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、アルコールの製造、輸入もしくは販売の業または使用を行おうとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければならないこととするなどの必要な規定を設けることとしております。  第二に、新エネルギー・産業技術総合開発機構は、酒類の原料に不正に使用されることを防止するために必要な額を付加したアルコールを特定アルコールとして販売することとし、これを扱う者には許可を受ける義務を課さないこととしております。  第三に、許可者以外の者へのアルコールの譲渡などの違反行為を行った許可者に対し、納付金を国庫に納付することを命じることとしております。  第四に、緊急時においては、アルコール製造事業者等に対し、アルコールの製造予定数量の増加など、必要な措置をとるべきことを勧告することができることとしております。  第五に、アルコール専売制度の廃止後五年間については、暫定措置として、新エネルギー・産業技術総合開発機構がアルコールの一手購入を行うこととし、また、この法律の施行後五年を目途に、新エネルギー・産業技術総合開発機構の行うアルコール製造業務の全部を引き継ぐ株式会社として政府がその資本の全額を出資するものを設立するとともに、その会社をできる限り早期に民営化するため、必要な措置を講ずることとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  211. 成瀬守重

    委員長成瀬守重君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時七分散会