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政府参考人(
登誠一郎君) ただいま御
紹介いただきました
軍縮担当大使の登でございます。
実は、私、
外務省に入りまして一番初めに配属された部署が当時の国連局軍縮室というところでございまして、私の
外務省の人生は軍縮に始まったということでございます。このたび三十年ぶりに今度は
大使として軍縮問題を担当させていただくということになりまして、大変感慨深いものを覚えております。
一月の末に発令になりまして、いろいろな友人に、今度軍縮担当の
大使で
赴任するという話をしましたら、今は軍縮というのは何が動いているのかね、何をやっているんだということを聞かれることが多かったわけです。この軍縮問題というのはその
重要性に比して
国民の間で
理解が薄いと言わざるを得ませんので、そういう
観点からも今回、参議院の
外交・
防衛委員会でこの問題を取り上げていただくということは大変私にとってもありがたいことだというふうに考えております。
御
承知のとおり、現小渕内閣は総理あるいは河野外務大臣もこの軍縮問題を大変重視しております。
総理は今国会の施政方針演説におきまして、「私は二十一世紀を平和の世紀と位置づけ、二十世紀に繰り返された」「戦争の廃絶に向け、
我が国として力を尽くしていきたいと考えるものであります。」というふうに言われまして、これを受けまして、
外交演説におきまして河野外務大臣から、
国際の平和と安定のためには、軍備管理・軍縮、不拡散の
分野における
努力も重要であります。
我が国は二十世紀において広島と
長崎の被爆により核の悲惨さを体験した国家として、包括的核実験禁止条約の
早期発効、米ロ核軍縮
交渉の進展の働きかけを
強化するとともに、本年四月の核兵器不拡散条約の再検討
会議において核不拡散・核軍縮の追加的目標につき合意が得られるよう
最大限
努力をいたします。
というふうに、河野外務大臣も述べておられます。
したがいまして、当面のこの軍縮問題におきます
我が国の
課題は、ことしの四月にニューヨークで行われます核不拡散条約、NPTの再検討
会議にどう取り組むかということでございます。私自身も着任いたしてから一カ月ぐらいでニューヨークに出張いたしまして、この
会議の
日本政府代表として尽力させていただくというふうに
承知いたしております。
そこで現在、核軍縮、不拡散問題を取り巻く
環境でございますけれ
ども、これは残念ながら大変厳しいと言わざるを得ないと思います。
御
承知のとおり、インドとパキスタンが一昨年核実験を行いましたし、それからアメリカの上院におきましては、包括的な核実験禁止条約、CTBTの批准が失敗に終わりましたし、またロシアはアメリカとの間の戦略兵器削減
交渉、STARTⅡの批准をまだ行っておりません。そういう中において、アメリカの国家ミサイル防衛計画との
関係で、アメリカとロシアの間にきしみ、ひずみが生じているということでございます。こういう中において、今回の核不拡散条約の再検討
会議をどういうふうにして意味のあるものにするかということは大変重要な問題だろうというふうに考えております。
この条約、NPTでございますけれ
ども、これは一九七〇年に発効いたしまして、五年前、九五年に無期延期という決定が行われました。それを受けて、ことしは五年ごとに行われる初めての
会議でございます。
外務省といたしましても、私が
承知しておりますところでは、この
会議を成功させるためにいろいろな
対応をいたしております。
例えば、この
会議までに包括的核実験禁止条約、CTBTでございます、これの署名国、批准国をできるだけふやす。署名していない国で重要な国はインドとパキスタンでございます。この
両国に対しては繰り返し働きかけております。それ以外に、署名はしたけれ
ども批准していないという国が、先ほどのアメリカを初め中国、ロシア、それからそれ以外の国でもエジプトであるとかインドネシア、トルコ等多々ございます。こういう国に対して特使を
派遣する等働きかけを行いまして、この四月の再検討
会議までに一国でも多くの国が包括的核実験禁止条約の締約国になるということに側面から
努力をしております。
この再検討
会議自身でございますけれ
ども、これについての成果がどういうことかといいますと、これはやはり今後のNPT、不拡散体制を維持発展させるために、
世界各国が全会一致で五年前の成果を基礎にして追加的な目標を打ち立てていく。先ほどの河野外務大臣の国会演説にもございましたけれ
ども、追加的な目標について合意するということが極めて大事であるというふうに考えております。
例えば、今問題になっております包括的な核実験禁止条約、これを早期に発効させる、あるいはその次の
交渉のテーマとなっております兵器用の核分裂性物質の生産禁止条約、いわゆるカットオフ条約、このカットオフ条約の
交渉の
期限と申しますか、
交渉の目標を設定していく。さらには、その条約ができるまでは現在保存している国がその生産を自発的に中止するといういわゆるモラトリアムについて合意を求めていく。さらには、アメリカとロシアの間の戦略兵器削減条約でございますSTART、これの進展を
強化していく。こういうようなことを四月のNPTの再検討
会議でぜひ合意にこぎつけたいというふうに考えております。
ふだんの軍縮の
会議は、私はジュネーブに
在勤いたしますけれ
ども、ジュネーブで軍縮
会議というのが年三期、三つの期間に分かれて開催されております。そこにおきまして、今後の軍縮の
交渉の基礎となるような合意の作成、あるいは
交渉が始まりますれば、多くのものはそこで
交渉が行われるということになると思います。
現在、今は第一期、
最初の会期がそろそろ終わりに近づいておりますけれ
ども、ここで今申し上げましたようなカットオフ条約をどうやって進めていくのかという問題。さらには、核軍縮について核兵器国に核軍縮をどう求めていくのか。さらには、新たな
分野として宇宙における軍縮ということで、宇宙関連の軍縮の
促進。こういう問題が今後
課題として取り上げられるというふうに
承知しております。
それからさらに、ジュネーブにおきます
交渉以外にも、毎年国連総会の際には第一
委員会で軍縮問題が
中心的
課題として取り上げられております。そこでは何十という決議を通しております。
日本も毎年軍縮に関して多くのイニシアチブを発揮して重要な決議を通しております。またことしもそれに引き続いて行っていきたいというように考えております。
軍縮は幅広い
分野でございまして、今
中心になるのは核兵器、核不拡散の
分野でございますけれ
ども、それ以外の通常兵器の
分野でも重要な進展を遂げなくてはならないと思っております。これはいわゆる小型武器、小火器でございます、これに関する条約、将来の条約締結に向けて今いろいろな準備作業が行われているという
状況でございます。
こういう中におきまして、私は今度軍縮担当の
大使として多くの国際
会議で
日本の主張を行う立場にあるわけでございますけれ
ども、非核三原則を国是として、みずからの判断で核を持たない、そういうことを決定している
我が国でございますので、この
我が国の政策を全
世界に向けて、いかなる国に対しても正々堂々と主張して、
世界が究極的に核のない
世界になる。さらには、通常兵器の
分野でも人類の平和と福祉に貢献できるような形で軍備がどんどん削減されていく。そういう
世界をつくるということは、まさに
日本にとっての国益であろうというふうに私も確信いたしております。
これからますます国会の先生方の御
指導、御
鞭撻を得ながら、また
国民の声をよく聞いた上で、軍縮を通じて
我が国の国益を増進させるというために全力を尽くしていく所存でございますので、今後とも引き続きよろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。