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2000-04-28 第147回国会 衆議院 労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年四月二十八日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 赤松 広隆君    理事 谷畑  孝君 理事 能勢 和子君    理事 穂積 良行君 理事 森  英介君    理事 鍵田 節哉君 理事 城島 正光君    理事 河上 覃雄君 理事 大森  猛君       大村 秀章君    木村  勉君       小林 多門君    白川 勝彦君       棚橋 泰文君    長勢 甚遠君       福永 信彦君    藤井 孝男君       御法川英文君    渡辺 具能君       中桐 伸五君    松本 惟子君       西川 知雄君    寺前  巖君       青山  丘君    笹山 登生君       塩田  晋君    畠山健治郎君       土屋 品子君     …………………………………    議員           城島 正光君    議員           日野 市朗君    議員           大森  猛君    労働大臣         牧野 隆守君    労働政務次官       長勢 甚遠君    政府参考人    (法務大臣官房審議官)  小池 信行君    政府参考人    (大蔵大臣官房審議官)  福田  進君    政府参考人    (労働省労政局長)    澤田陽太郎君    政府参考人    (労働省労働基準局長)  野寺 康幸君    労働委員会専門員     渡辺 貞好君     ————————————— 委員の異動 四月二十八日  辞任         補欠選任   松本 和那君     御法川英文君   村岡 兼造君     藤井 孝男君   笹山 登生君     塩田  晋君 同日  辞任         補欠選任   藤井 孝男君     村岡 兼造君   御法川英文君     松本 和那君   塩田  晋君     笹山 登生君     ————————————— 四月二十八日  雇用創出対策の実施に関する請願伊藤英成紹介)(第一五二七号)  同(島聡紹介)(第一五三一号)  同(鳩山由紀夫紹介)(第一五四〇号)  同(古賀一成紹介)(第一五四六号)  同(田中慶秋紹介)(第一五四七号)  同(中桐伸五君紹介)(第一五四八号)  同(石井紘基紹介)(第一五六五号)  同(渋谷修紹介)(第一五六六号)  同(中沢健次紹介)(第一五六七号)  同(前田武志紹介)(第一五六八号)  同(前原誠司紹介)(第一五六九号)  同(河村たかし紹介)(第一五七八号)  同(原口一博紹介)(第一五七九号)  同(五島正規紹介)(第一五八六号)  同(中川正春紹介)(第一五八七号)  同(海江田万里紹介)(第一五九六号)  解雇規制労働者保護法制定に関する請願大森猛紹介)(第一五四九号)  同(木島日出夫紹介)(第一五五〇号)  同(中林よし子紹介)(第一五五一号)  同(春名直章紹介)(第一五五二号)  同(松本善明紹介)(第一五五三号)  同(松本善明紹介)(第一五八〇号)  同(石井郁子紹介)(第一六六一号)  同(大森猛紹介)(第一六六二号)  同(金子満広紹介)(第一六六三号)  同(木島日出夫紹介)(第一六六四号)  同(児玉健次紹介)(第一六六五号)  同(穀田恵二紹介)(第一六六六号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一六六七号)  同(佐々木陸海紹介)(第一六六八号)  同(志位和夫紹介)(第一六六九号)  同(瀬古由起子紹介)(第一六七〇号)  同(辻第一君紹介)(第一六七一号)  同(寺前巖紹介)(第一六七二号)  同(中路雅弘紹介)(第一六七三号)  同(中島武敏紹介)(第一六七四号)  同(中林よし子紹介)(第一六七五号)  同(春名直章紹介)(第一六七六号)  同(東中光雄紹介)(第一六七七号)  同(平賀高成紹介)(第一六七八号)  同(不破哲三紹介)(第一六七九号)  同(藤木洋子紹介)(第一六八〇号)  同(藤田スミ紹介)(第一六八一号)  同(古堅実吉紹介)(第一六八二号)  同(松本善明紹介)(第一六八三号)  同(矢島恒夫紹介)(第一六八四号)  同(山原健二郎紹介)(第一六八五号)  同(吉井英勝紹介)(第一六八六号)  労働時間の男女共通法的規制パートタイム労働法抜本的改正等に関する請願山原健二郎紹介)(第一五五四号)  同(木島日出夫紹介)(第一六八七号)  同(児玉健次紹介)(第一六八八号)  同(志位和夫紹介)(第一六八九号)  同(中林よし子紹介)(第一六九〇号)  同(春名直章紹介)(第一六九一号)  同(古堅実吉紹介)(第一六九二号)  ILO勧告に従い、JR労使紛争全面解決に関する請願中西績介紹介)(第一六六〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  会社分割に伴う労働契約承継等に関する法律案内閣提出第六一号)  企業組織再編における労働者保護に関する法律案日野市朗君外四名提出衆法第九号)  企業組織再編を行う事業主雇用される労働者保護に関する法律案大森猛君外一名提出衆法第一六号)     午前十時開議      ————◇—————
  2. 赤松広隆

    赤松委員長 これより会議を開きます。  内閣提出会社分割に伴う労働契約承継等に関する法律案日野市朗君外四名提出企業組織再編における労働者保護に関する法律案及び大森猛君外一名提出企業組織再編を行う事業主雇用される労働者保護に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、政府参考人として法務大臣官房審議官小池信行君、大蔵大臣官房審議官福田進君、労働省労政局長澤田陽太郎君及び労働省労働基準局長野寺康幸君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤松広隆

    赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 赤松広隆

    赤松委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。棚橋泰文君。
  5. 棚橋泰文

    棚橋委員 自由民主党の棚橋泰文でございます。  本日は、内閣提出会社分割に伴う労働契約承継等に関する法律につきまして、幾つかの質疑をさせていただきたいと思います。  国際的な経済環境の激変の中で、大競争時代ということが言われるようになって久しくなってまいりました。我が国経済環境、あるいは雇用を取り巻く環境内外ともにいろいろな要因で大変厳しい中で、今回の会社分割に伴う労働契約承継等に関する法律、これは、一方で企業の機動的な再編といったものを可能にしながらも、一方で一番大事な労働者権利を守るという観点から、今回提出されたものだと思っております。  そこで、まず大前提として労働大臣にお伺いしたいのは、現在四・九%という戦後最悪の失業率も記録した中で、今後の企業再編をどういうふうにお考えであり、御認識されているか。具体的に言うと、今後こういったものがどのようにこれからふえていき、あるいはどのような形態になっていくかということを前提にしながら、その中で労働者雇用も含めた権利をいかに守っていくか、こういうことが本法案の最大の主眼ではないかと思います。  そこでまず、その観点から、本法案提出された御趣旨、それから労働大臣の御決意についてお伺いさせていただきたいと思います。
  6. 牧野隆守

    牧野国務大臣 今、棚橋先生指摘のとおり、産業構造変化等に伴いまして、労働雇用関係も非常に形態として流動化いたしております。そういう点で、私どもとしては雇用の大切さということを十二分に認識しているわけでございまして、例えば、雇用なき繁栄というふうなことがあちこちで流布されておりますが、やはりそうあってはならないし、雇用経済繁栄一体であるべきだ、このような基本的な認識に基づきましていろいろな対応をとらせていただいているところであります。  今回、労働契約承継法案内閣として提出し、ただいま御審議をお願いいたしているわけでありますが、この法律案は、会社分割制度という特定の制度導入に伴いまして、会社分割に際してのきちっとした労働者保護目的といたしまして、労働契約承継等についての特例を定めることとするものでございまして、円滑な会社分割労働者保護の両立を図りたい、こういう趣旨で御審議をお願いしている次第であります。
  7. 棚橋泰文

    棚橋委員 どうもありがとうございました。  それでは、具体的に法案の、特にポイント中のポイントに絞って幾つ伺いたいと思います。  この法案では、例えば企業A部門B部門がございまして、それぞれが分割される、そうしますと、例えばB部門労働者は、そのB部門がもし分割されれば当然にそちらの会社の方へ行くということがこの法案の大原則というかポイントではないかと思いますが、本来、民法六百二十五条の原則に立ち返りますと、会社が、使用者が他の第三者に労働契約を譲渡する場合には、当然労働者同意が必要となるわけでございます。  逆に言うと、おれはこの部門に属している、この部門分割されてよその会社になるけれども、正直言いましてそちらには行きたくない、もとのままに残りたいという労働者気持ちがあるケースもあり得るのではないかと思います。にもかかわらず、本法案ではこれは基本的に同意を必要としないというふうにしておりますが、まずもって、これで労働者保護という観点から本当に十分なのかなという心配の声があることは事実ではないかと思います。  そこで、その点について、なぜ同意を必要としなかったのか。あるいは逆に、労働者同意をどうしても必要とするとこういった問題点が生じて、そして企業分割等がうまくいかなくなり、最終的には本法案趣旨を生かせなくなって、むしろ企業再編が不可能になることによって全体としての雇用が失われる可能性の方が高い、そういうお考えなのか、その点について説明をお願いいたします。
  8. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 まず初めに、会社分割制度そのものにおきまして、会社分割の場合の権利義務承継合併と同様に包括承継という法的整理になっております。合併については民法第六百二十五条の規定が適用されないとする解釈が確立されておりますので、今回部分的包括承継という形で構成されております会社分割制度につきましてもこの民法六百二十五条の適用がないとすることは、法理上問題ないと考えております。  具体的に申し上げますと、私ども労働契約承継法案におきましては、今先生指摘のように、分割される営業に主として従事する労働者につきましては分割計画書等の記載に従いまして当然に承継される、個人の同意を要しないということにしておりますが、これらの労働者につきましては、一つは、承継された場合であっても合併と同様に雇用労働条件維持が図られること、これは明白であります。第二点に、承継後もほとんどの場合分割以前についていた職務、仕事と同じものに引き続きつくということがかなりの程度で想定される、この二点がございます。したがいまして、包括承継されるという法律構成をとりましても実質的な不利益はない、また、円滑な会社分割必要性が要請されているということを考えますと、労働者同意前提とせず当然承継とすることは差し支えないと考えております。  では、同意を必要とするとした場合にどういう問題が起きるかという点でございますが、今回の会社分割制度におきましては、営業を構成する諸要素原則的には一体となって分割されるということになっておりますが、労働者がすべて承継同意しないということになりますと、労働者なしのその他の営業要素のみの分割ということになりまして、営業分割そのものが法的に成り立たない可能性も出てくるという基本的な問題点がございます。
  9. 棚橋泰文

    棚橋委員 ありがとうございました。  私もその点については同感でございまして、何よりもまずやはり労働者権利、あるいは安心感というのを守らなければいけないことは、これは大前提であると思います。  ただ、企業分割がなされるにおかれては、当然のことながら、経済環境からして企業分割をしなければどうしてもやっていけないという情勢のもとですから、例えば、一番わかりやすい例で言うと、鉄道会社バス部門も抱える。バス部門も抱える中で、バス部門だけ分割していく。そのときに個々労働者の方の同意を全部とるということになると、例えば、バス運転手さんの中で、おれは鉄道の方に残りたいという方がいらっしゃった場合には、その方はバス部門がなくなった鉄道の方に残らざるを得ない。そうしますと、今度はその方にどういう仕事をしていただくんだという議論に当然ならざるを得ないと思います。  結局、適正な職がなければ、最終的にはむしろ余剰人員となってしまうということであれば、これは企業側にとっても困ることでしょうし、むしろ、多くの方がバス部門への移転をオーケーして一部の方だけが残るということになると、とても大きな混乱が起きるのではないか。そういう観点からして、私は、今の政府案の基本的な考え方というのは、今日の企業分割というものを基本的に考えていくと、やむを得ないのではないかというふうに考えております。  ただ、とはいえ、一人一人の勤労者からすると、私はもとの、分割される前の会社に入って、そこでの労働条件で働くことを前提に雇われたんだ、それが今回の企業分割によって労働条件が切り下げられるんじゃないかという心配があるのではないかと思います。  そこで、念のためもう一度御確認をさせていただきたいんですが、今回の法案企業分割がなされて、主としてその業務に従事していたわけですから新しい部門の方に行くとなった労働者方々労働条件というのは、当然、原則として変わらないものであるということを確認したいと思います。具体的には、例えば年次有給休暇あるいは年金あるいは退職金、こういったものは分割される新会社に当然承継されるんでしょうか。その点についてお答えをお願いします。
  10. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 会社分割制度におきましては、繰り返しになりますが、合併と同様に、分割計画書等に記載されました権利義務分割会社から設立会社等に包括的に承継されるものとして構成されております。したがいまして、分割計画書等に記載されました労働者労働契約につきましても、労働者としての地位や内容維持したまま設立会社等承継されるということになります。このことによりまして、先生今御指摘雇用とか労働条件維持が図られるという仕組みになっております。  労働条件の中には、当然、年次有給休暇初め労働契約に記載されている事項はそのまま内容としてそっくり設立会社等承継されるということで、御指摘の点は全く問題がないものと思っております。
  11. 棚橋泰文

    棚橋委員 ありがとうございました。  まさに今の点がポイントではないかと思います。多くの方からすると、例えば企業分割によって新しく設立された企業へ行くことによって自分雇用に対して大きなマイナスが生じるのではないか、それは年金あるいは今言ったような年次有給休暇等観点からこういった問題が生じては困るというお気持ちが多いんではないかというふうに考えております。  今局長から御答弁をいただいたように、その点については問題ないということでございますが、まずもって、この法制の実現に当たって、この点を一般の方々が十分にわかるようなPRにも今後とも当局として努めていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  時間が短うございますので、もう一問だけ最後に、できればこれは大臣に御質問をさせていただきたいと思います。  今のお話のように、会社分割制度によって、基本的に雇用あるいは労働条件、こういったものは損なわれないという話でございます。しかし、やはり会社分割をするというのは企業のまさにリストラに関連するものですし、例えば設備等の償却も当然なされていくんでしょうが、残念ながら、今の我が国人件費が世界的に見て非常に高い水準にある、その中で企業が生き残りを図ろうとすると、当然、人件費軽減ということを常に念頭に置いているということを考えていかなければいけないと思います。  こういった人件費軽減における人員整理について、これは一番労働者にとって深刻な問題ですし、心配な問題だと思うんです。基本的には、今までも、人員の再配置やら希望退職、あるいは新規採用を減らしたり、場合によってはなしにする、そういう形で企業内の労働者を守ってきたと思うんですけれども、どうしても整理解雇ということになれば、判例で御承知のように、整理解雇の四要件という非常に限定された厳しい判例法理確認されております。そういう一番厳しい状態においては、最後個々労働者裁判を起こすということになるんでしょうけれども、私も弁護士をしておりますからよくわかるんですが、お一人お一人が裁判を起こすといっても、現実には非常に難しゅうございます。理屈上は裁判を起こして守ることができても、現実自分権利を守るために裁判を起こすというのは、精神的にも経済的にも非常に難しいことで、これじゃ十分に労働者権利を守れないケースも、残念ながらあり得ると思います。  そこで、先般、労働基準法改正で、労働条件関係紛争について労働局長助言指導できる紛争解決援助制度を設けたと思いますが、こういった観点から裁判外紛争解決手続を充実させていくということが非常に大事なんではないかと思います。  そこで、お伺いをいたしたいのは、今までは、労使の交渉、紛争というのがメーンの紛争でしたけれども、これからは多分お一人お一人の勤労者会社という側面が強くなってまいりますので、こういった個別の労使紛争について、裁判だけではない、むしろ裁判外で簡潔に、しかも一人一人ができる限りアクセスしやすいチャンネルで紛争を処理することが必要でございます。今の紛争解決援助制度も大事でございますが、これをさらに充実あるいは強化する必要が私はあると思いますし、そうでない限り、一人一人の労働者利害あるいは立場というのはなかなか救えないんではないかと思います。  そこで、その点について、労働省としてどうお考えかをお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  12. 牧野隆守

    牧野国務大臣 先生の御質疑は、個別的労使紛争に対してどういうような体制で対処をしようとしているのかという御質疑でございます。  御指摘のとおり、企業組織再編人事労務管理個別化に伴い、個々労働者使用者の間の労働条件等に関する紛争が増加していることは現実の姿でございまして、これらの紛争簡易、迅速に処理できる体制整備が求められているところであります。  現在、労働条件にかかわる紛争につきましては、労働基準法に基づき都道府県労働局長による助言指導を、女性の雇用差別にかかわる紛争につきましては、男女雇用機会均等法に基づき都道府県労働局長による助言指導勧告のほか、機会均等調停委員会による調停をそれぞれ行っているところでございます。  今後一層の増加が懸念されます個別的な労使紛争をより簡易、迅速に解決することができるようにするため、この労働局長による助言指導制度を拡充強化するということ、それから調停制度を発展的に拡充したらどうだろうか、また、多様な内容の相談を受けるわけですから、ワンストップサービスで対応できるよう労働基準監督署窓口体制整備、このようなものの検討を前向きに進めているという現状でございます。
  13. 棚橋泰文

    棚橋委員 どうもありがとうございました。  特にこれからの労使紛争は、法案審議に限定されることなく、やはりきちんと考えていかなければいけないと思いますけれども、今までのように個別の労働者利害が比較的共通していた時代から、個別の労働者利害が必ずしも共通しない時代になってまいります。そうしますと、今大臣お答えにございましたように、個々労働者利害、これをきちんと反映させるような紛争解決手続が必要でございますし、今、調停手続の発展、拡充というお話もございましたが、ぜひその点、迅速に、しかもできる限り充実した形で、一人一人の勤労者気持ちがきちんとそういった手続の中で反映できるようなシステムの再構築にお努めいただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  14. 赤松広隆

  15. 河上覃雄

    河上委員 きょうは二十分でございますので、早速質問に入りたいと思います。  国際化しております企業競争力を確保することを目的といたしまして、平成九年以来、会社合併法制合理化、あるいは持ち株会社の創設のための株式交換制度などの導入、また産業競争力強化を目指しました産業活力再生特別措置法制定など、企業組織再編成を容易にするための法整備というものが着実に進められてまいっております。  しかし、一方では、企業組織再編などが労働者に少なからず影響を与えることから、これらの問題に対応するための労働者保護に関する法制というものも求められております。  確かに、労働関係承継に関する明確なルールというものの不備によって労働者不利益をこうむるおそれがあることは、私も否めないと考えるところでありますが、こうした状況を踏まえまして、会社分割に関する商法改正に伴いまして、労働省は、労働者保護観点から、今般の法律を国会に提出をしているわけでございます。  そこで、確認のために、政府案に対して何点か質問をいたしたいわけでございますが、まず、今回提出された法案は、商法特例として、対象を会社分割に限定しております。他の企業組織再編の手法であります合併営業譲渡については全くその措置が講じられておりません。  労働大臣にお伺いいたしますが、この合併営業譲渡について措置しなかった理由というものは何なのか、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  16. 牧野隆守

    牧野国務大臣 御指摘の、最初の合併に関してでございますが、合併におきましては、すべての労働者承継されることとなっておりまして、労働者不利益が生ずる場合はほとんど想定されていない、こういうことで、今回は取り上げないことにいたしました。  また、営業譲渡につきましては、労働者承継につき、民法六百二十五条により、本人同意要件とされていること、また、裁判においても、個別承継という基本ルールにのっとりつつ、事案の内容により、具体的に妥当な解決が図られている、こういうことでございまして、今回は、商法の一部改正会社分割に限定いたしておりますので、これに関連いたしまして、労働者保護を図らなければならないという観点から、特別の法案を用意させていただき、御審議をお願いすることにいたした次第でございます。
  17. 河上覃雄

    河上委員 大臣からは、要約いたしますと、合併営業譲渡については現行法によって対応することが適当である、そういう趣旨お話でございます。  それぞれ今御説明がございましたが、それでは、具体的に、どのような法律規定によって労働者保護がされることになるのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  18. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 まず、合併についてでございますが、合併につきましては、商法第百三条等々の規定がございまして、権利義務は包括的に承継されるという法的規定がございます。  それから、営業譲渡につきましては、民法第六百二十五条第一項によりまして、労働者労働契約承継しようとする場合には本人同意を要するということになっております。  この二点について明確になっております。
  19. 河上覃雄

    河上委員 その次に、承継される営業に主として従事する労働者については、省令でその範囲を定めることといたしています。この範囲を定める基準が客観的なものとならない限り、会社分割が行われるに当たりましては、労使間で紛争が生ずることが懸念をされます。  したがいまして、この範囲を定める基準というものをしっかりとつくらなくちゃいけない。この基準につきましては労働省としてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、この点についてお伺いいたします。
  20. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 御質問承継される営業に主として従事する労働者についての基準でございますが、省令で決めることになっていまして、これから当委員会等々におきます御審議を踏まえながらさらに詰めてまいりたいと思いますが、現在のところは二点ほど考えております。  一つは、分割計画書等の作成時点におきましてその労働者が従事している業務、これによって判断するという基準。もう一つは、作成時点における従事業務だけでは足らない面もございますので、分割計画書の作成以前の一定期間において当該労働者承継される営業との関係でどういう業務についていたか、その業務の状況を考える。この二つを基準に決定していくことを今考えております。  また、省令で決めます基準につきまして、できるだけ明確化いたしますが、その基準を実際に運用する場合、事業主がそれを使って判断する場合に、さらに具体的な手がかりとなるような考え方、具体的な方法等々を、労働大臣が別途定めます指針の中において明らかにして、万全を期していきたい、こう思っております。
  21. 河上覃雄

    河上委員 今局長から御答弁がございました。  これは正確に、そして明確に示す以外に、トラブルというものが運用上発生すると思いますので、これはきちっとやっていかないといけない問題だと思います。その意味では、一方ではこういう機会を通じて解雇されるのではないかという懸念も指摘されるところでありますので、この問題等についてはぜひともきちっと、そして極力具体的に、明確に指針等におきまして示すようにしていただきたいことを要望いたしたいと思います。  それでは、会社分割に伴いまして、労働者が解雇されることがあり得るのか、また、仮に解雇された場合には労働者はどのように保護されるのか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  22. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 会社分割におきましては、労働者雇用分割会社または設立会社、このいずれかに帰属いたします。そうした意味で、会社分割自体により解雇されるということはないものと考えております。  また、労働者を解雇する場合には、合理的な理由を必要とし、特に整理解雇につきましては、整理解雇要件を満たすことが必要であるという判例が確立しておりますので、会社分割のみを理由とする解雇はこのような判例法理に照らして許されないということであります。したがいまして、整理解雇やその他の労働者の意に反した解雇が行われることはないと考えております。  仮に、こうした判例法理等々を踏まえずに会社分割の際に解雇されてしまったという場合は、労働者の方からお申し出をいただいて、先ほど大臣が御答弁いたしました都道府県労働局が制度として運用しております紛争解決援助制度によりまして、労働局長助言指導等々も行うこととしておりますが、それでもなお解決しないという場合には、裁判所において判例法理による妥当な解決が図られるものと考えております。
  23. 河上覃雄

    河上委員 会社分割に伴った整理解雇はない、こう考えてよろしいわけですね。ないと。  最後になりますが、EU諸国におきまして企業組織再編時の労働者保護法制というものが設けられていると聞いております。各国ではどのような法制となっているのか、またこの際、アメリカではどういうような法制体制になっているのか、この点についてお伺いして終わりたいと思います。
  24. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先生指摘のように、EU諸国におきましてはいわゆる既得権指令というものがございまして、それに沿って各国法制で指令内容を受容するということで所要の法的措置が講ぜられておりますが、一つ、その法の適用範囲については若干の差異がございます。  そういう前提で申し上げますと、例えばイギリスにおきましては、雇用契約は同一の内容で移転先企業に当然に承継される、労働者が移転を拒否した場合には自己都合退職と扱われるというようなことがあります。それから、労働協約は移転先企業に受け継がれるというような規定がございますし、経済的、技術的あるいは組織編成上の理由による場合を除きまして解雇は自動的に不正な解雇とみなされる、あるいは、労働組合または労働者の代表に企業組織再編に当たって事前に協議をするというような規定がございます。こうした規定は、ドイツ、フランスにおきましてもほぼ同様の形になっているのが基本でございます。  アメリカにおきましては、企業組織再編につきましての特段の労働者保護規定はございません。
  25. 河上覃雄

    河上委員 今申し上げました諸点につきまして、ぜひしっかりとお取り組みいただきたいことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  26. 赤松広隆

    赤松委員長 青山丘君。
  27. 青山丘

    ○青山(丘)委員 私からも若干質問をさせていただきたいと思いますが、大臣は十一時から参議院がおありだと聞いておりますので、先に基本的な点だけ大臣にお尋ねしておきたいと思います。  まず、今我が国経済を全般的に見ますと、国民経済の六割のいわゆる国民消費、需要面での回復がまだいささか弱い、したがって、景気の足取りは非常に厳しい状況であるという認識であろうと思います。しかしながら、各種の政策効果が相当な、一定の成果を上げてきている、あるいはアジア経済が回復してきておる、そういう意味では、いささか緩やかな環境でありますが、徐々に回復の足取りは出てきておる。  さて、なおこれから我々が取り組まなければならない問題は、需要をどう回復していくのか、あるいはまた金融システムの面で、例えば融資の面でどういう環境をつくっていくのか、円滑な環境をつくっていかなければいけない。そこで、問題は、事業活動が活発に進めていけるような、そういう事業環境をつくっていくということが今我が国経済に求められている大きな課題であろうと思います。具体的にはそれはどういう意味かといいますと、生産性の高い分野にできるだけ企業の力を集中していかなければならない、これは当然のことでありますが、同時に、生産性の低い分野はどうしても縮小されていかざるを得ないという問題が出てきます。  問題は、企業組織が柔軟に再編成できるかどうかという段階に今来ておる。私どもは、企業組織が迅速に再編成できるような環境をつくっていくことが必要であるという認識に立っております。そのことは同時に、企業組織という場合に一番重要なことはやはり人材でございますが、働く人々の立場で、生産性の高いところへ集中的に再編成されていく人々は新しい能力開発が求められてくるでしょうし、あるいは進んで、好んで集中していく部分があるかもしれません。しかし、問題は、現下の経済情勢が非常に厳しいということから考えますと、働く人々が雇用の不安がなくて安心感が保障できるのかということが今この委員会では課題になっているのであろうと思います。  そこで、労働省内部の研究会が議論をされてきておると聞いております。今年二月に報告を公表されましたが、企業組織変更に伴う労働関係法制等研究会において、会社分割について法的措置を講ずることが適当であるという考え方になってこられた基本的な考え方を示していただきたいと思います。
  28. 牧野隆守

    牧野国務大臣 ただいま御指摘のとおり、会社組織等につきましても経済情勢の変化に対応して非常にいろいろな形で変更等がなされてきております。そういう意味におきまして、これと関連して、雇用されている労働者の立場というのは十二分に保護されているかどうか、このことは当然の問題点として生ずるわけでございまして、私どもとしましては、研究会に検討をお願いして報告をいただいたわけでございます。  御承知のとおり、会社分割法制は、会社分割計画書等に記載すればある部門、すなわちその営業に属する権利義務をそのまま包括的に承継される、こういうようにいたしております。当然のことながら、それに関連する労働者につきましても、主たる業務部門におきましては当然承継される、こういう前提に立ちまして、それではどこに問題があるか、こういうことまで検討していただきまして、承継される部門に主として従事する労働者であって分割をする会社に残留される者、承継される部門に従として従事する従業者であって設立会社等承継される者、大きく分けましてこの二つの類型に適合する範囲に入ってくる労働者方々についてどうするか、こういう問題点がはっきりいたしてまいりまして、これらにつきまして、労働者保護観点から、自分は行きたいか行きたくないか、残りたいか残りたくないか等々、関係する個々労働者の御意見をはっきり申し述べていただいて、そういう立場から検討して保護するようにいたしたい、こういうように考えさせていただいた次第であります。
  29. 青山丘

    ○青山(丘)委員 不利益を受けるか受けないかはなかなか難しい問題でして、むしろ生産性の高い分野へ人員配置されることが適材適所であると理解できるのか理解できないのかという場合もあったり、それから、企業会社組織を生産性の高い分野に集中していきたい、これは前向きな姿勢ですから客観的に見てよく理解できることですけれども、それは裏を返して考えていくと、生産性の低い分野は縮小されていかざるを得ない。企業も生き残っていかなければなりませんが、そこに働く人々もまた安心感のある中で生き残っていかなければならないと思います。  ただしかし、きょうのテレビを見ておりましたら、四・九%という史上最悪の失業率がなお続いてきている、三百四十九万人の完全失業者が出てきている。有効求人倍率は〇・五二でしたか五三でしたか、こういう状況の中で、雇用不安があってはならないということがやはり一つ私どもの大きな命題であろうと思います。  そこで、実は企業にとって最大の経営資源というものは人材である。このことは、実は私も小さな会社のせがれとして生まれてきまして、その姿を、経営側も働く人々の立場もよく見てきておりますが、問題は、現下の雇用失業情勢の中で、働く人々の雇用が失われることがない、そして安心して働くことのできる保障、安心感が持てるという保障、こういうことがなければ、企業が市場環境の変化に対して迅速に対応する企業組織再編成というのが難しいであろう。  問題は、会社分割法制導入が必要だという一面と、労働者保護をきちっと保障していかなければいけないというこのバランスに対して、今回の法改正はどう対応してこられたのか。
  30. 牧野隆守

    牧野国務大臣 先生おっしゃるとおりでございまして、それを具体的にどのように法制化できるのか、あるいは、それは法律できちっとするということは、手続、実態面を考えますとなかなか難しいという点、その辺はもう千差万別の状況であろうかと思います。  したがいまして、今回のこの法案におきまして、法律的にどの点とどの点に一番問題があるか、こういう点から法律問題として対処方針を決めさせていただいたわけでありまして、根底には企業経営者の社会的責任と申しますか、当然、分割して新会社に行かれる方も、あるいは残られる方についても、やはり雇用に対しては万全を期すという企業経営者としての社会的責任というのは、その根底にぜひあってほしい、こういう私どもの基本的な考え方がございます。  もしこの法律案調停等いろいろな問題が出てまいったときには、先生おっしゃるように、企業の存続性というものも考えなきゃなりませんが、やはり根底に、労働者方々が安心してどちらかできちっと働くことができるような、いろいろな労働省の助成措置も念頭に置きながら、適切な助言指導調停を行わなければならない、こういうように考えております。
  31. 青山丘

    ○青山(丘)委員 大臣の御答弁で、労働契約承継法案は、円滑な会社分割必要性にこたえつつ労働者保護を図っているんだということで、私は今確認をいたしましたが、そうすれば、商法改正がなされれば、それで労働契約承継法案は、あえてといいますか、労働者にとってそれほどの影響はないのかという点でありますが、労働者にとってどんな影響が出てくるというふうに考えておられるのでしょうか。
  32. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 労働契約承継法案は、商法改正案と一体のものとして国会にお出しをしております。具体的には、商法改正案の附則五条におきまして、ちょっと読みますが、この法律、いわば商法改正でありますが、それに基づく「会社分割に伴う労働契約承継に関連して必要となる労働者保護に関しては、別に法律で定める。」という規定商法附則で置きまして、そこで言う「別に法律で定める。」というものが私ども承継法案ということになっております。したがいまして両々相まって一つの完成した形になるという構成になっております。  したがいまして、商法改正案のみが仮に成立したという場合を考えますと、先ほど大臣から答弁もありましたように、企業分割計画書等で記載した範囲で、有無を言わさず承継される労働者の範囲というものが商法の方で明確になります。その場合に、本当にそれでいいのかという観点から、二つの類型の労働者につきましては異議申し立てを認めて、その意思を反映した措置をとるということをこの労働契約承継法の方で規定しておりますので、そこがそっくりなくなってしまうということで、労働者にとって大変な影響が出る、こういうふうに考えております。
  33. 青山丘

    ○青山(丘)委員 時間ですので、最後に一点だけ。労働契約承継法案内容についてでございますが、承継される営業に主として従事する労働者、それから承継される営業に従として従事する労働者の基準というものが、わかりやすいものにならないといけないと思うのです。これは労使ともにわかりやすい基準でなければならないと思いますが、この基準をどのように考えておられますか。
  34. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 承継される営業に主として従事する、従として従事する労働者の基準でありますが、労働省令で明定することにしておりますが、現在私ども考えておりますことは、一点は、分割計画書等の作成時点で当該労働者が従事している業務が承継される営業との関係で何かという点、二点目は、分割計画書を作成する時点ではなくて、それ以前の一定期間におきまして分割される営業との関係で当該労働者がどういう業務についていたか、その他今後詰めようと思いますが、基本的にはこの二点を勘案して基準をつくっていきたいと思っております。  また、省令で定めた基準の適用につきましては、さらに労働大臣が定める指針におきまして具体的な判断の方法等をお示しして、その明確化を図ってまいりたいと思います。  先生指摘のように、この基準につきましては、労使ともにわかりやすいものとして定められなければならないと思っておりますので、そうした点で努力をしていきたいと思っております。
  35. 青山丘

    ○青山(丘)委員 質問を終わりますが、事業環境が厳しくなくても、まして現下のような厳しい経済情勢の中で、企業分割の問題はこれから非常に重要でありまして、これまでの権利がどう保障されていくのかということは、働く人々にとって非常に重要な問題でございます。問題は、その企業会社組織を社会情勢の中で適切に対応、順応できるような再編成の取り組みと労働者保護がきちっと保障されていくというようなバランスは非常に難しいかもしれませんけれども、この基準をきちっと持つことによって、厳しい経済環境の中で、事業の再編成も働く人々の安心感も確保できるという意味で非常に大事なことでございますので、きちっとその基準を設けて進めていただきたいと思います。  終わります。
  36. 赤松広隆

    赤松委員長 午後零時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十時五十一分休憩      ————◇—————     午後零時三十一分開議
  37. 赤松広隆

    赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。城島正光君。
  38. 城島正光

    城島委員 民主党の城島でございます。  今回政府が出されました、会社分割に限定をされておりますけれども労働契約承継法について質問をさせていただきます。  先ほどのニュースでも出ておりましたけれども雇用情勢が極めて悪い状況が続いている。失業率四・九%、完全失業者数が三百四十九万人、なかんずく、その中でも男性の失業率が五%に乗って五・二%である。これは最悪の雇用情勢になっている。三百四十九万人というのも過去最高の失業者という状況の中に今、我々日本があるという点は極めて大事なポイントだろうというふうに思います。  まさしく、今、我々政治がとにかく全身全霊を込めてやらなければいかぬのは、こういった雇用の状況を何とか改善していくことに最大限のエネルギーを費やさなければいかぬ、そういう状況に陥っているのだろうと思うのですね。まして、新卒者の就職も、極めて厳しい状況がずっと一貫して続いている。そういった状況も含めて見たときに、今回の労働契約承継法、やはりさまざまな問題があるという観点から私は質問をさせていただきます。  まず、今回の政府提出承継法が出てきた背景は、前回本会議で我々の中桐委員質問をさせていただきましたけれども、九七年の純粋持ち株会社の解禁といったことを皮切りに、金融持ち株会社の解禁、産業活力再生特別措置法制定、あるいは金融再生法の制定、株式交換に関する商法改正、民事再生法などの企業再編法制の一連の制定がされてきた。この数年間の中で、さまざまなまさしく新しい企業再編ができるような改革、ある面で言うと法改正をしてきたわけでありますが、しかしながら、企業組織再編を実施していくという法案がこれだけの短期間のうちに成立をしていけば、そこに働く人たち、組織には当然人がついていくわけですから、働く人たちの雇用とかあるいは労働条件といったものに対する極めて大きな影響があるということは当然であるわけなので、その辺の、労働条件雇用に対しての配慮というものが一方でどうしても必要ではないか。  今までの法案の中では、そうした雇用情勢も見たときに、雇用不安とか労働条件の低下等に対する不安感に対して適切にこたえる内容になっていないのではないかということで、特に、産業活力再生特別措置法案とかあるいは民事再生法案の衆参両院の委員会審議において、企業組織再編に伴う労働関係上の問題への対応ということについて、法的措置も含め検討を行うという附帯決議がされたわけであります。  そういったことを受けて恐らく今回のこういった内容になっているというふうに思われますが、少なくとも、産業活力再生特別措置法案などの論議のときも、中心的には営業譲渡の問題がいろいろある、あるいは、これだけ大きな法案を出すということであれば、そこで働く人たちや労働組合との事前の協議というのがどうしても必要ではないかという論議が随分されたわけでありまして、そうしたことを踏まえた上での附帯決議だったというふうに私は思っているわけであります。  まず最初に大臣、この間の経緯等についての御見解、さらには、法的措置が必要だ、そういう附帯決議が付されたことについて、法的措置必要性についてもう一度お尋ねをしたいというふうに思います。
  39. 牧野隆守

    牧野国務大臣 御指摘のとおり、今企業関係は、企業の発展のために、分割方式も含めていろいろな方策を検討し実行に移しつつあることは御指摘のとおりであります。そしてそれが被雇用者の皆さんに雇用不安を与えているということも事実でございます。したがいまして、私どもとしては、全体として労働者労働条件等をどうやって守るかということは当然根底にあって検討しなければならないことだ、私自身はそう思っているわけです。  この問題は労働省内部でいろいろ審議されてきたわけでありますが、私として、実は具体的な問題として大阪のあの信金問題、あの営業譲渡のあり方、特殊なケースだろうと思いますが、あれで労働者が十二分に保護されているかどうかという点を考えますと、相当審議して改正、改革ということを労働省としては考えなければならない。しかし、今当面の措置として、商法の一部改正を行いまして、分割という一つの企業経営の形態の変化に、どう処理すれば私どもとしては最小限、労働者の皆さんの立場を保護できるか、こういうことで実は審議をさせていただいた次第であります。  したがって、今回は、分割方式に対する手段として労働者をどう保護するかという見地から集中して検討をし、法案を作成して御審議いただいているわけですが、長期的には、今後、では営業譲渡関係をどうするか。合併については、これは一緒になるわけですから合併それ自身は法的にはいいとしても、やはり合併するにはするなりの理由があるわけですから、この場合も当然、雇用の問題は非常に大きな問題になるわけであります。したがって、合併にしろ営業譲渡にしろあるいは分割にしろ、これらをトータルとして十二分に審議しなければならないなという気持ちは私自身は有しております。  今早急にどうするか、これにつきましては、結論が簡単に出てくるというようなこととは違うわけでありまして、今回の法案審議の中でも、労働局長を中心とする調整制度の拡大的な諸般の措置ということを実は申し上げているわけでありまして、さらに大きな問題として審議させていただいて、合併等すべてのそれらに対処できる何らかの方法がないかということは検討させていただき、またその節には先生方から貴重な御意見を賜らなければならないな、こう考えております。
  40. 城島正光

    城島委員 確認ですけれども、今大臣は、今回のものはかなりある面では緊急避難的に分割ということに集中して検討した、中長期的には営業譲渡を含めて課題がある、それは検討したい、こういう趣旨の発言と受けとめていいのですか。
  41. 牧野隆守

    牧野国務大臣 きょう午前中も御質疑ございまして、申し上げたのですが、営業譲渡に対する一応の法的な措置というのは、最高裁の判例等も含めまして幅広く一つの方向が出ておるわけであります。  私どもとしては、先ほど申しましたとおり、調停制度という積極的に解決する手段は検討して方向を出さなきゃならないと思いますが、現行の法体系で一応の救済的な措置というのは法的には確保されている、こういうように実は認識いたしておりまして、そういう点も片方でにらみながら、分割という特殊なやり方に対して労働者の立場の保護というものをどう確立するか、こういうことでございます。
  42. 城島正光

    城島委員 今分けておっしゃいましたけれども、確かに形式的には合併だ、営業譲渡だ、あるいは分割だ。それは、形式上、組織上、そういう分類はあるかもしれませんが、組織には、当たり前のことですけれども、そこで働く人がいるわけです。働くサイドからすると、その形式の違いというのは、基本的にはほとんど差はない、関係ない。  いずれにしても、別の会社へ行くのかとか、営業譲渡された新しい会社へ行くかあるいは残るかということにおいては、まさしく営業の移転という範囲でとらえると、それはそれぞれの分類でしかないわけですから、そういう点でいうと、今回のこの法案分割に限定するということについて見ると、分割営業譲渡は、働く方からすると、組織についていくわけですから、基本的には変わりないわけですね。  しかも、今一応法的にもというふうにお答えになりましたし、午前中もそういう答弁がありました。ただ、今も大臣自身もお触れになりましたし、その他、産業活力再生特別措置法のときもありましたけれども現実的にはさまざまな営業譲渡の中でいろいろな種類の労使のトラブル、あるいは従業員の解雇問題を含めて、かなり多いわけですね。そして、ますますそれはふえてきている。ですから、この現実の実態を見ると、今ので完備しているのだとか、あるいは十分だというようなことは基本的にあり得ない。  そういうことも含めて見ると、働くサイドからすると、営業の移転ということにおいては基本的に同じであり、そしてまた現実この営業譲渡という形でのさまざまな労働上の、雇用上の問題が頻発しているということからしても、これは当然のことながら営業譲渡についてもさらに何らかの法整備が現状を見ると必須ではないかというふうに思っているわけなので、もう一度、その点について大臣のお考えを承りたいと思います。
  43. 牧野隆守

    牧野国務大臣 法形式的には合併とか営業譲渡あるいは分割という形態をとるわけですが、現実の実態を見ますと、これは今後発展するであろうと目されるものもあるし、ここは縮小均衡という考え方もあるでしょうし、業種、業態によって千差万別の状況にございます。したがって、画一的に法律として義務という形で果たしてとらえ切ることができるかどうか。私どもとしては、さらに検討を続けさせていただきたいというのがただいまのスタンスでございます。  しかしながら、今、分割という形を商法の一部改正という形でやる以上は、我々として、この分割が行われた場合に、そこに勤務している労働者の立場はどうなるかといろいろ検討した結果、実は二つの問題点、これらがクリアされても、将来にわたってそれでその企業が永続するかどうかということは、これは経済実態の問題であって、今私どもはそれを念頭に置いて云々することはなかなか難しい。  しかし、入り口として、一応分割の場合は、労働者も主たる営業関係する部分については当然承継されるという前提に立って考えるわけでございまして、そこのボーダーラインで、こういう場合は困るなという点を、二つの点を中心にして、この辺の労働者の立場をどうやって保護させていただくか、こういうことで成案を得て御審議いただいている次第であります。  トータルの問題として、これは今後ともぜひ論議を尽くさせていただきたいし、国会で一つのこういう方向という、千差万別ですよ、なかなかその結論を得るのは難しいと思いますが、そういうことが出ればそれにこしたことはないと思っておりますが、今の状態におきまして、私どもとしては、千差万別であり、そう簡単に結論が出るものでない、分割について差し当たりどこに問題点があるか、その点を取り上げて実は保護措置をとらせていただいた、こういうことでございます。
  44. 城島正光

    城島委員 形態は、形態というよりはいろいろな形式といいましょうか、とり方というのは千差万別だ。それは、その企業の実態とか業種によっていろいろありますから、おっしゃるとおりだと思いますけれども、今言ったように、いずれにしても営業を移転するということにおいては変わりないわけでありますから、営業移転ということの中で法体系の網をかけるということはまさしく可能だと私は思うのですね。恐らくEU指令なんかも、考え方としてはそういう考え方に立っているのじゃないかと思うのです。  そうすると、この法案が出てくる中で、最初に大臣が触れられましたけれども労働省が検討された研究会がありますね。今回の法案の母体となった研究会報告、これはどういうメンバーで、一体何回ぐらいの会合が開かれて、主な論点はどういう論点だったか。この三点について御報告いただけますか。
  45. 長勢甚遠

    長勢政務次官 研究会は、四回開催をされております。  参集者は、大学の教授クラス六名の方々にお願いしておりまして、労使からの意見聴取あるいは裁判例、諸外国の法制、その他専門的な見地から必要な議論をいただいたところでございます。
  46. 城島正光

    城島委員 大臣がお触れになった、いろいろ大変千差万別で難しいということの割には、四回というのは、率直な印象からすると、極めて数が少ない。逆に言うと、短時間の中での研究会報告のまとめだったのではないかなという感じが、回数だけで判断するのはあれかと思いますが、少なくともこれだけの今までの附帯決議の背景を考えると、ちょっと短期間過ぎる、回数が少ないのじゃないかという印象を持たざるを得ないのですね。  やはりこれだけ経済のグローバル化が進む中で、まさしく企業経営が大変だと思いますが、その方向は、最初触れたように、さまざまな組織再編を含めて、ある面ではどんどん時代の変化に合わせながらその法整備が進んでいっている。それに対して、働く人たちに同様の観点からそれに対応するのだけれども、こうした企業組織はどんどん再編していくという変化に対して、少なくとも雇用不安とか労働条件低下がないような法整備をしていく、そういう時代の変化に合わせていくということにおいて見ると、やはりこれは流れとして、働くサイドに対する法整備が極めて、ある面で言うとスピードが遅いまたは不備な点が多いというような感を免れないのですね。  ですから、今回のこの報告書も相当精力的に検討されたかもしれませんが、この報告書の中で、今論議をしております例えば営業譲渡の問題についても、全く同様な分野の研究者からは、今回の最終的な研究会の結論、法的な営業譲渡についての立法措置ということについては不要であるという結論に対しては厳しい批判の声も出ていることも御承知だというふうに思うわけですね。  先ほども触れましたけれども営業譲渡の実態というのは千差万別と、営業譲渡だけではないですけれども大臣そうおっしゃいますが、今の状況の中で言うと、現実的にはさまざまな問題、大臣触れられました以外にもいっぱいいろいろな種類の営業譲渡に伴う問題が起きているということを本当にこの研究会報告は踏まえているのかどうかということについても、かなり疑問なしとしないわけでありまして、こうした研究会報告そのものに対して、十分検討されたかもしれませんが、同様の分野の学者を含めてそうした批判があるということについては、どのような御見解をお持ちでしょうか。
  47. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 研究会におきましては、先生指摘のように、極めて短期間に精力的な検討を行いました。とりわけ、御参集いただいておる専門家が労働法、商法、経営学等々の本当の専門家でございまして、そのベースに立って濃密な議論を行いまして、営業譲渡にかかわります判例ども非常に幅広くかつ深くサーベイをいたした結果、研究会としての結論をおまとめいただいたということでございまして、一部の批判があるということは私ども承知しておりますが、逆に、非常に妥当な報告であるという御意見もまたございまして、そこのところは、私どもも、十分な御議論をいただいた上での結論であるというふうに確信をいたしております。
  48. 城島正光

    城島委員 そうすると、先ほどちょっと触れましたけれども、どちらかというと、ヨーロッパにおけるこうした労働者保護という法的な措置というのはかなり古くから検討が進んでいる、こういうふうに言われておりますけれども、一九七七年に既に企業組織の移転に伴う労働者保護に関するEU指令というのが策定され、各国においても労働者保護法制が整備されてきているということだと思います。  それでは、こういうEU指令では、立法の対象、今言ったような分割とか営業譲渡とかということでありますが、その対象は一体どういうふうになっているのか。今局長が答弁されましたけれども分割で十分とはおっしゃらなかったかもしれませんが、営業譲渡については立法措置が不要だというのは妥当だというふうにおっしゃいましたけれども、この辺は少なくとも欧州においてはいかがでしょうか。
  49. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 EU指令の適用範囲、対象についてでございますが、その要点を申しますと、企業、事業の全部または一部の移転または合併という形になっておりまして、先生指摘のように、ここで言う移転には、日本で言うところの営業譲渡も入るというふうになっております。
  50. 城島正光

    城島委員 我々もそういうふうに理解していまして、少なくともEU指令の中では、そういうふうに営業の移転という全体をとらえた中で法整備を段階的にしてきているのではないか。したがって、いろいろな形態があると思いますけれども現実的にやはりそういう取り組みをしているヨーロッパがあるわけでありますから、我が国においても全く環境的には、経済状況さらに企業が置かれている状況においては基本的には差があるわけではありませんし、そういう点からいうと、先ほど申し上げましたように、企業組織時代に合わせた変化と同じように、企業組織再編が行われるに伴って、そこで働く人たちの働く環境というものもきちっと、ある部分は法的な整備をしていく、そのタイムラグがないように積極的に、労働省として働く者のサイドに立って法整備をしていくということが最低限必要だというように僕は思うわけでありまして、特に営業譲渡については、現状から見たときに極めて強い問題意識を持っている。分割だけではなくて、法整備として、営業譲渡も含めた組織再編に伴うトータルの法体系がどうしても必要だということを強く申し上げたいというふうに思います。  したがって、今の答弁、まだ納得できるわけではないわけであります、強い問題意識を持っているということをぜひ受けとめておいていただきたいというふうに思います。  それからもう一点、次でありますが、これも先ほど申し上げましたように、一連の附帯決議をしようという背景になったのは、こうした営業譲渡に伴うさまざまな今の問題と同時に、これだけの再編をやっていく上においては、労働組合あるいは従業員代表との事前の協議というものなしには、とてもじゃないが、こうした急激な法律改正ということに働くサイドからすると不安感が強い。それを解消するためにも、少なくとも事前の労使協議というものがセットでなければいかぬのではないかという論議を随分やってきたというふうに思うわけでありまして、これが今回欠落をしているということも極めて残念であるし、ここはまた強い問題意識を持たざるを得ないというふうに思います。  そのために、まず、労使協議制、特に法案の背景からすると、民間企業における労使協議制の普及状況について一体今どういうふうに把握されているのか。また、私は、労使協議制が労使の意思疎通あるいはその企業としての組織の活性化というためには極めて重要な役割を果たしているというふうに思っておりますが、そうした点についての御見解を承りたいと思います。
  51. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 私の方からは、民間企業におきます労使協議制の普及状況について御説明いたします。  私ども労働省では、労使コミュニケーション調査というものを何年か置きにやっていまして、最新のものが平成六年でございます。これによりますと、常用労働者を五十人以上雇用する民間事業所におきまして労使協議制は五五・七%の普及割合ということになっております。平成に入りましてほぼ横ばい状況が続いております。
  52. 長勢甚遠

    長勢政務次官 我が国労使関係におきまして、労使協議制は、労使自治の立場に立って、労使間の情報共有、意思疎通、合意形成を行うための手段となっております。御指摘のとおり、労使間のコミュニケーションを高め、企業運営の円滑化と労使関係の円滑化、安定化に重要な役割を果たしておる、このように認識をいたしております。
  53. 城島正光

    城島委員 そういうことも含めて見ると、先ほどお尋ねしました労働関係法制等研究会、この報告書を見ると、労使協議、特に事前協議について何らかの検討をしたような形跡がちょっと見当たらないんですね。この研究会では労使の事前協議というものについては論議されたんでしょうか。
  54. 長勢甚遠

    長勢政務次官 分割あるいは合併営業譲渡等についての労働契約関係の現状等々については十分な議論をされたと聞いておりますが、労使協議についての議論は特になかったように伺っております。
  55. 城島正光

    城島委員 やはり、先ほど言ったように、一連の経過からすると、労使協議、事前の労使協議ということは当然検討されなければいけなかったんじゃないかというふうに思います。今回の研究会の中でこの点についての検討がされなかったというのは極めて残念であるし、問題だなというふうに思わざるを得ません。  やはりあれだけ、特に再生法のときには、これでは本当にリストラは、極端に言うと勝手にできるんじゃないかという不安感が横溢したわけでありまして、そのためにも、少なくともきちっと、今政務次官がおっしゃったように、労使協議のあり方、労使協議のある面で果たしている役割というのは大きいわけですから、そうした観点からしても、労使協議制を活用した事前の協議というのは私は不可欠だというふうに思いますね。  事前の協議ということでいうと、今でも労使間の協議を規定している労働法が幾つかありますけれども、例えば三六協定なんかもそうですけれども考えてみますと、そういうことと比較しても、自分が働く企業とか組織がこれだけ大きく再編になっていくというのは、これはまさるとも劣らないというか、場合によってはそれと比べ物にならないぐらい大きな変化でありますから、それが少なくとも事前にきちっと、そういうことにおいてどの対象、どういう範囲を論議するかというのはありますが、少なくとも労働条件とか雇用に物すごく大きな影響を与える、場合によっては自分の人生にも影響を与えることですから、それぐらいは事前協議をきちっと義務づけるということがあっても全くおかしくはないと思うんですけれども、その点は本当にどうでしょうか。
  56. 長勢甚遠

    長勢政務次官 今回の労働契約承継法におきまして、我々としては、主たる業務に従事している人たちは自動的に承継されるということを含めて、労働者の身分について不安のないようにするという観点から御提案申し上げている次第でございます。この法の運用において、労使においていろいろなことも実態として起こるというか、またそういうこともあり得るだろうと思っておりますけれども、法制度としてはこの体制で法に欠けるところはない、このように思って提案させていただいておる次第でございます。
  57. 城島正光

    城島委員 要するに、特に働くサイドの立場に立って、政府というか、労働大臣であり労働省にそういう面で僕は期待しているわけですけれども企業組織再編に伴って、そこに付随して当然人が移動していくといったときに、人材、そこで働く人というところに光を当てて見たとき、今の政務次官の答弁では、なるほどなという共感的理解をするにはちょっと距離があるな。  これだけのものになりますと、やはり人生をかける場面が出てくるわけですね。そうすると、本当の意味で自立した組織人、自立した企業人、自立した勤労者という観点からしても、きちっとやはりそういうものに対して正確な理解をして、積極的に転籍するならするというようなことの判断を、個人であれ、あるいはそれが集まった労働組合という組織であれ、していくというのは、一般的な社会の中において、しかも大人の社会ですから至極当然なことじゃないか。特段そのことによって何かハードルを高くするというようなことではなくて、そういう社会のあり方ということが望ましいんじゃないかというふうに私は思っているんですね。望ましい社会のあり方であり、企業経営のあり方でありという観点からしても、やはりこういったことが完備する、あるいは社会のあり方として制度化している社会というのが、よい意味で成熟化した社会だというふうに私は思うんですね。  ですから、そこに働く人たちのことも考えたときに、やはりどう見ても事前協議というのは、大人として扱う、変な表現ですけれども、そういう信頼をして見たときに当然ではないかというふうに私は思うんですけれども、さらにどうでしょうか。
  58. 長勢甚遠

    長勢政務次官 労使間において意思疎通等が十分に行われるということは極めて大事なことでございますし、望ましいことでございます。また、実態としてもそういう労使関係が存在をしておるということは、先ほど労政局長からも答弁申し上げたとおりでございます。  ただ、労使協議は、当然のことながら、労使自治に基づいていろいろな事項についていろいろな態様で行われ、それもそれぞれ個々労使間の信頼関係に基づいて行われているのが実態でございますし、そういうことは企業組織再編に当たってもいろいろな場面で行われるということは当然でありますし、また望ましいことかもしれません。  しかし、そのことを一律に法律でどうこうするということが果たしていいことなのかどうか。また、その内容等についても、団体交渉との関係手続その他、法制度化するということになりますと検討する点が多々ございます。そういう点で、一律に法律で義務づけるといったようなことはいかがなものなのであろうかという趣旨で先ほど御答弁申し上げたところでございます。
  59. 城島正光

    城島委員 理想的かつ望ましいことでいけば、例えば、分割営業譲渡だという決断をしよう、あるいは計画しようという経営者が、みずからのところで働いてくれている従業員に対して、こういう法律があろうがなかろうがきちっと説明する、本来はそういうものだと私も思いますよ。あってもなくても、やはりそれが経営者としての普通の姿だと思いますね。ですから、望ましくは、こういうのがなくてもそういう事前協議がされている、また、恐らく一般的に多くのところはされているんだと思います。  しかしながら、これだけこうした法案が次々と来ている中で、先ほど申し上げたように、残念ながらいろいろなところでいろいろな問題が生じているということからすると、規定しなくても今普通にかなり広範囲に事前協議しているところはいいとしても、そうじゃないところはいっぱいあるし、また、こうした法案ができればそういうのがふえてくることも考えられるわけですから、今やっているところは、仮にこれを法規制しても全然問題なく今までどおりやればいいわけで、そうじゃないところがあるからこそ、ある面では法として明文化していくことが必要だし、社会にとってもそのことの方がより活力が出てくるし、経営者としての資質も上がってくる。そういう観点からも、私は、今普通に事前協議制をやっているところについては何ら問題ないわけですから、法的にやってもそういうところに特段大きなマイナスの影響はない。どちらかというと、そうじゃない経営者に対する対処を含めて、日本社会全体にとってはプラスのことしかないというふうに思います。いかがでしょうか。
  60. 長勢甚遠

    長勢政務次官 労使関係のありようとしての先生の御意見はそのとおりだと思いますし、ぜひそういう方向で労使間の意思疎通が行われ、円満な安定的な労使関係維持されていくべきものと私も思っております。  繰り返して申し上げますけれども、それを法律上一律に義務づけるということになりますと、労使協議のあり方そのもの、いろいろな形態もありますし、また団体交渉等との関係、いろいろな点もありますので、これを一律に立法化するということはいかがなものであろうか、このように思っておるところであります。
  61. 城島正光

    城島委員 そうしますと、これも先ほどお尋ねした、企業組織再編における法整備の中で、EU指令においては労使協議制というのはどういう規定になっているんでしょうか。
  62. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 EU指令の中におきましては、先ほど申し上げましたが、営業譲渡を含む企業、事業の移転をする場合であって、労働者に関する措置をとることを企図する場合につきましては、自分雇用する労働者の代表者に対して協議を行うものとするという定めがあります。したがいまして、EU諸国におきましては、企業組織再編時において労働条件の変更等が行われる場合には労使協議を行うことが各国の法令でほぼ標準的に定められていると思います。  それはなぜかということを一言御説明させていただきますが、そうしたEU諸国での法制の背景には、一つは、EU諸国では少数組合については使用者に対して団交応諾義務が課されていない国がある。日本の場合には、多数組合であれ少数組合であれ、労働条件に関すれば使用者は団交応諾義務がありますが、そこが若干違う国がある。それから、個別企業におきましては、団体交渉ではなくて労使協議によることが一般的である国がかなりあるというような背景があろうかと思います。
  63. 城島正光

    城島委員 背景の違いというのは私も理解しているつもりでありますが、それにしても、一般的には、今おっしゃったように基本的な姿勢としては、EUの共通の指令として、法体系の前提として労使協議制というのが位置づけられているということは極めて重要なことだというふうに思うわけでありまして、国際的に見ても特にこういうEU指令というのは影響が大きいわけでありますので、私は、この問題についても、労使協議制、事前の労使協議制というものを何としてもやはり規定すべきだということを強く申し上げておきたいというふうに思います。  時間がありませんので、次に移らせていただきます。  分割するとき、この法案によると、承継される営業に主として従事していた労働者、これが設立会社で同様の業務を行うときには本人同意というものは不要だということになっておりますが、改めてお尋ねしますが、どういう理由で民法六百二十五条で保障されている本人同意権を消してまでこの法案になったのか、その根拠をお尋ねしたいと思います。
  64. 牧野隆守

    牧野国務大臣 承継される営業に主として従事する者が本人同意なく承継されることとしたのは、会社分割合併と同様に包括承継である、こういうことでございまして、これらの労働者の皆さんについては合併と同様に雇用及び労働条件維持が図られるということ、二番目に、承継後もほとんどの場合に分割以前についていた職務と同じ職務に引き続きつかれる、このように想定されていること、このような情勢から、実質的な不利益はないのではないか。また、円滑、容易な会社分割必要性が要請されている今の事情をかんがみますと、労働者同意前提とせず、当然承継として差し支えない、このように考えてしかるべきだ、こう考えております。     〔委員長退席、鍵田委員長代理着席〕
  65. 城島正光

    城島委員 率直に言って、最初のころの大臣答弁とここはちょっと矛盾しているところがあると私は思うんですね。特に労働条件について、保障されるというふうにおっしゃいましたけれども、それはそう願っていますし、多くのところではそうかもしれません。でも、先ほど大臣おっしゃったいろいろなケースがあるんだという中では、今の部分でいけばそうじゃないケースというのも結構あるわけですし、しかも、どの段階で、あるいはどれぐらいの期間そういう不利益変更にならないということが大臣がおっしゃったように言い切れるのかどうかということにおいても、これは一人一人きちっとやはり判断を求めてもおかしくないことだと思うんですね。  瞬間的に、例えば一カ月とか半年とか、まあせいぜい一年後ぐらいまではそういう大臣がおっしゃったようなことは保障されるかもしれないけれども、どう見ても将来的にはそうじゃないんじゃないかと思われるケースも当然出てくるし、起こっているわけですね。ですから、そういうことも労働条件のところについてはやはり不安感が出てくるケースというのもいっぱいあるケースの中ではある。  それから今度は、午前中も論議になりましたけれども、では、営業に主として従事している者というのはどう規定するか、これは具体的にはこれからということでありますけれども、日本の場合は御承知のように、一般的に言うと、幾つかの部署あるいは分野を体験していくというのが、少なくとも大手の企業の中ではそういうローテーションを組まれているところも結構あるわけですね。そうしますと、たまたまじゃありませんが、一年前から今度分割しようと思う分野に来ていたというような人で、本来は自分はもうちょっと違う分野でのプロになっていこうと思っている人がいるかもしれないじゃないですか。その辺、営業に主として従事している者と言うときに、どうそれを認定するかという論議にもかかわってきますけれども、そうしたこれまたいろいろなケース考えられる。  ですから、大臣おっしゃるように、一括して、そのことも含めて不利益にならないというようなことについては、それこそ同意しかねるなというふうに思います。
  66. 牧野隆守

    牧野国務大臣 合併は一緒になるわけですし、分割は分かれるということでありますが、その根底に、非常に常識的な言い方をしますと、包括的に承継される、こう申しますか、中身は一緒じゃないですか、こういうことから見ますと、確かに、先ほど申しましたように個々企業個々の業種、あるいはその仕事のやり方等で千差万別でありますが、基本的なところは包括的に承継されるということで、まず基本をきちっとしておくのがいいのではないか、それが普通なのではないかなと。  そうしながらも、では労働組合はどうするんだ、事前に聞くのか後から聞くのか、あるいは適当な時期に、一定期間前に通知したり、相談して行うのか、いろいろありますが、基本にある包括的に承継される、これは極めて正しい認識だ。それを中心にしていろいろな問題が発生するわけですが、それは具体的な事例に対して対処すればいい、こう考えております。
  67. 城島正光

    城島委員 いや、そのことは理解しているのですけれども、したがってということで、本人の不同意権まで消すということはないんじゃないですか。
  68. 牧野隆守

    牧野国務大臣 包括的に承継されるということと、その場合に一人一人の労働者同意を求めるということとは、本質的に合併あるいは分割に対する認識が違う、私はこう考えます。
  69. 城島正光

    城島委員 そうすると、少なくとも、労働組合とか従業員代表との事前の協議もこの法案でいけば義務づけられていない。  今言ったように、いろいろな日本の今までのローテーションのあり方も含めて見ると、営業に主として従事している者ということをどう規定しているかによりますが、そういう人たちが包括承継で、それはいいとして、しかし、民法六百二十五条で保障されている同意を求める、逆に言うといわゆる不同意権を剥奪される、それをなくす。少なくとも組織労働組合との事前の協議も規定されていない。まして、今度は、本人がひょっとしたら希望していないかもしれないのにもかかわらず、営業に主として従事しているからということで移行してしまう、転籍が自動的に決まり、本人に対しての同意を求める必要はない。  これだと相当厳し過ぎるんじゃないですか。組織に対しての事前の協議もなければ、本人に対してのいいかどうかの同意権もない。組織再編、あるいは、先ほど二点目の理由でおっしゃいましたけれども、できるだけ分割をスムーズに、容易に移行したいというところのウエートが一〇〇%に近いというふうにしか受け取れないですけれども
  70. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 今いろいろ御質問ございましたが、一点申し上げたいことがございまして、民法六百二十五条第一項で、労働契約が譲渡される場合に、譲り受け人、譲り渡し人の間の契約だけではなくて本人同意が要るというのは、これは営業譲渡が特定承継の積み重ねであるという法的性格にリンクしております。  今回、会社分割制度は、合併と同じように法的性格が包括承継であるということでございますので、合併の場合に民法六百二十五条が適用されないという解釈が確立しておる、これを企業分割の場合にも同様に使って法理上問題がない、法律の構成の面でこういう仕組みにそもそも会社分割制度がなっておるという点がかなりございまして、実質的に不利益がないということが唯一の理由ではないということを御理解いただきたいと思います。
  71. 城島正光

    城島委員 いや、ですから、僕はさっきから再三基本論に立ち返るわけですね。  それはそのとおりだと思うのですよ、今の法体系。だけれども、本当にそれでいいのですかということを最初に申し上げたわけですね。労働省であり、働く勤労者のところに光を当てたときに、そういう法体系だからこれでいいんだというふうなことではないんじゃないか。  確かに法体系は今そうかもしれないけれども、今、そこにメスを入れていくときに少なくとも来ているのではないか。合併のときはそうだ、分割もしたがってそういう法的な形式ではそうだ、それはそのとおりだと思いますよ。だけれども、そこを超えて、時代の変化の中でこれだけ組織再編が進もうとしているときだから、一方で、それに歩調を合わせて労働の法体系も変えていく、メスを入れていくところは入れていくということをすべき点の一つがここにあるのではないかという観点で私は申し上げております。
  72. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 今回提出しております労働契約承継法案は、再々申し上げておりますが、商法改正一体のものでございまして、法的構成を整合的に図るということが当然の前提であると思います。  今委員指摘のいろいろな課題、論点等は、私も否定はいたしません。しかしながら、今回は、商法改正案と一体となってということでございますので、企業分割というものに本承継法案の土俵を限定し、かつ、先生御批判のあるような今の包括承継部分的包括承継という仕組みでの措置ということを逸脱するわけにはいかない、まさにそこが商法改正一体となった承継法案というところの基本でございますので、今御指摘の御議論があるとすれば、本法案の中で結論を得るということではなくて、別途議論を重ねていく課題ではないか、こう思っております。
  73. 城島正光

    城島委員 いや、商法改正とセットというのもわかりますが、これもまた先ほどの論議に立ち返るようでありますけれども、最初大臣に御質問したような、もう繰り返しませんが、こういう一連の幾つかの法案審議の中で、これだけ組織再編が進んでいくとすれば、雇用の問題とかあるいは労働条件に対して、働くサイドからすると大きな不安感が出てくるのではないか。したがって、法的な対応ということも今後検討すべきじゃないかという流れが、一つ底流にあるわけですね。  今回の商法改正というのは、ある面では、よく言われるように組織再編の集大成として出てきているわけですから、私から見ると、本来でいけば、その基本的な流れに対してどうしていくかというのが一つあって、さらに、その中の一つとして、この商法改正に対してどうするかというのは当然重要な点でありますけれども、全体の雇用不安とか労働条件の問題に対して労働者保護をどうするかという、もともとのことが本来は求められているのではないかなというふうに思います。  ですから、それが今回はそうじゃなくて、この商法改正に限定しているんだということであれば、これまでの基本的な附帯決議を受けた流れというのは、あるいはそれに対する検討というのは、やはり早急にまた継続してやっていかなきゃいかぬというふうに思うのですけれども、それはいかがですか。
  74. 長勢甚遠

    長勢政務次官 商法改正一体のものであるということはそのとおりでございますが、同時に、当然、合併と同じような包括承継であれば、最も労働者の地位の承継が完全なものになるわけでございますから、それに対しまして、特定承継といいますか、個別同意というものもあわせてやったらどうかという御意見のように聞こえますけれども、両体系ミックスしてやるということが必要なことかどうかということは、合併と同様の仕組みにしておるわけですから、それによって実質的にほとんど労働者方々不利益が生じない。また、あわせて企業分割等必要性といったものも考慮いたしますと、私どもとしましては、今回の法制労働者方々に不安を与えることはないと思って提案を申し上げておる次第でございます。  なお、今後についてさらにいろいろな面での検討が必要ではないかという点については、いろいろな実態も将来生ずることもあり得るでしょうから、そのことは否定するものではございません。
  75. 城島正光

    城島委員 これも最初に触れましたように、今や失業率が四・九%、高どまりして、過去最高の失業者数、約三百五十万人だ。男性の失業率は五%を超している。そういう状況の中で、この一連の企業組織再編のさまざまな法案制定され、それが実行に移されていこうとしている。マスコミ等で、みずほグループの件も何度も取り上げられる。テレビで解説もされる、こういうふうになっていくんだと。  そうすると、長勢政務次官はその不安感はないというふうに言い切られましたけれども、それは相当な不安感がありますよ、働くサイドからしますと。今や失業率が高い中で、さらに、これからうちの会社分割してどうなっていくんだろう、そのときに本当に肩たたきはないのかな。あるいはまた、組合があるところはいいんですけれども、組合がないようなところは、午前中も論議がありましたけれども、解雇の四条件、そういうものがあるにしても、それにしても現実的にはどんどん解雇も起こってくるというような状況の中で、今回のこの会社分割、今そういう大きな金融部門だけが象徴的に当てられておりますけれども、今、やはり働くサイドからすると、大変大きな雇用不安、そしてまた労働条件一体どうなっていくのかなと、特に世帯主を含めて中高年層は特に大きな不安があるわけであります。  そういう点からすると、やはりここは、今までの法体系上はそのとおりだとわかりますけれども、だからといって、それに準じた流れの中で、今回のこの分割についても、例えば営業を主とする者については本人同意は得る必要はないということについては、その不安感を解消するんじゃなくて、やはり不安感のまま進んでいくということではないかというふうに思います。  幾つかのポイントについて論議をいたしましたけれども、ちょっとまだ得心いかない点、多々ありますが、さらに論議を重ねさせていただければというふうに思います。  以上で終わります。
  76. 鍵田節哉

    ○鍵田委員長代理 中桐伸五君。
  77. 中桐伸五

    中桐委員 民主党の中桐です。  私は、企業再編に伴う解雇の問題について、その一点について質疑を行いたいというふうに思います。  最近の週刊誌に、東証一部上場企業で調査をしたら、リストラで三十九万人のサラリーマンが解雇をされたというふうな記事がございます。また、日本労働研究機構の調査したリストラの実態に関する調査研究報告書という結果によれば、これは九八年十二月ですから九七年の調査なんでしょうか、過去一年間の組織再編による間接部門の縮小、間接部門、つまり営業が入ると思うのですが、これが四二・三%で、三年以内のデータよりもふえているという実態がございます。  さらに、経済企画庁調査局が平成十二年四月十一日に発表した、平成十二年一月、ことしの一月の、東京、大阪、名古屋の証券取引所第一部及び第二部上場企業のうち金融・保険業を除く企業二千百九十社に対して行った調査、これによりましても、雇用の過剰感というのが特に中高年で強くて、この適正化には二年以上かかるだろうと予測をしている。これは経営者の予測であります。五十歳代になりますと二年以上かかるというふうに答えた企業が六二・九%に達するという結果が出ております。さらに、雇用減少がこの間進んでいるわけですが、その雇用の減少の理由は何かと。過去三年間を見ますと、五十歳代で解雇が半分。今後三年間では三〇%ぐらい。解雇が主流になるだろうというふうに事業者自身が答えている。  こういう状況の中で、今、企業組織再編成ということが一つの大きなリストラの方法として進められていく、先ほどの話でいけば二年以上かかる。ここ数年間そういうリストラの進行に伴って営業譲渡やあるいは会社分割などが進められていくのではないかというふうに考えるわけですが、それに伴って解雇や雇用問題というのが起こることは必然ではないか。そして、それにかかわる紛争が頻発をする、そういうことも予想されると思うのです。  さて、この問題に対して、大臣、どのように労働省としては対処をしていくおつもりなのか、お聞きしたいと思います。
  78. 牧野隆守

    牧野国務大臣 企業組織再編成に伴う解雇問題に関しましては、解雇権の行使を制限する判例法理が既に確立しておりまして、大方の方は承知いたしておるところでありますが、私どもとしましては、この周知の徹底にはさらに努めなければならない、こう考えております。  他方、解雇や雇用問題に関するトラブルなど、個々労働者使用者の間の紛争が生じた場合に、これらの紛争簡易、迅速に処理できる体制整備することが片方で求められていることは当然でございまして、私どももきちっとしなきゃならないな、こう考えております。  現在、労働条件にかかわる紛争につきましては、労働基準法に基づきまして、都道府県労働局長による助言指導、また、女性の雇用差別にかかわる紛争につきましては、男女雇用機会均等法に基づき、都道府県労働局長による助言指導勧告のほか、機会均等調停委員会による調停、ただいまこれらをそれぞれ行っているところでございます。  今後、今申しましたとおり、どうしても個別的労使紛争がふえる傾向にありますので、これを簡易、迅速に解決するために、一つは、今やっております労働局長によります助言だとか指導制度をさらに拡充したいな。それから第二点は、ただいま機会均等調停委員会による調停というのを男女雇用機会均等法に基づいてやっておりますが、これを一般的な制度としてさらに広げることができないだろうか。それから、こういう問題の解決というのは、窓口があちこちに散らばっておりますと何とも言えない気持ちになるわけでございまして、私どもとしましては、たとえその内容が多様で複雑であるにしましても、ワンストップサービス、こういう形で対応できるように、監督署等の窓口の体制整備を図りたい、このようなことをただいま検討しているところでございます。
  79. 中桐伸五

    中桐委員 先ほどのお答えですと、解雇に対する解雇規制というか解雇の問題に対しては既に判例がある、そういう判例に基づいて処理をする、対処するというお答えがあったかと思います。  そこで、今回の法案内容とも関連する問題で取り上げたいのですが、営業譲渡に伴う解雇の問題については、今回労働省がおつくりになった研究会でも、今日までの判例によって対処して、立法措置は現時点では不要という判断を下している。  先ほど大臣は、これまで解雇の問題についての対処の一つの判断基準として判例というものがある、そういう形で、営業譲渡に関しては研究会の判断を踏まえて今回の法的措置では会社分割に限って対処するというふうに判断をされたというふうに私は理解をしておりますが、さて、営業譲渡に関しては判例にゆだねるという判断をした理由、簡単で結構ですから、理由を伺いたいと思います。これは政務次官でも。
  80. 長勢甚遠

    長勢政務次官 営業譲渡に伴う解雇の問題につきまして、先生指摘の研究会報告でも今おっしゃったような趣旨が述べられておるわけでございますが、御案内のように、整理解雇については、合法というためには、有効というためには、四要件が必要であるということが確立された判例でございます。  これについて、これを立法化すべきではないかという御意見もあるように伺っておりますけれども、解雇の具体的な事情というものは千差万別でございますから、判例が積み上げられておるという事情はあるにしましても、それを具体的に立法化するということは極めて困難な作業でございますし、また、それによってその他の事情は逆に解雇してもいいということになってしまいかねない問題もあるわけでございます。むしろ、千差万別の状況でございますから、この判例の事理を、法理をきちんと周知徹底させて、裁判等にならない実態を早急につくっていく、そのために我々も行政努力をするということが先決ではないか、また一番大事なことではないか、このように思っておるところでございます。
  81. 中桐伸五

    中桐委員 解雇の背景は千差万別というのはそのとおりだろうと思うんですね。千差万別であるのですが、法律による最低のルール化というのは、つまりはあまねく解雇の問題に直面した労働者、特に労働者だと思いますが、経営者も使用者でもそうですけれども労使というものがルールを知って行動する、つまり普遍性ということから見て、複雑であっても基本的に大まかなルールというものをつくっていく努力というのは必要だと思うんです。そうしなければ、裁判を起こせる人たちだけがその恩恵をこうむるということになるわけですから、それでは困るわけです。  そこで、最近の動きとして、今回の企業再編に伴って、働いている労働者の立場からすれば、労働契約承継するという重要な問題がございますが、それをめぐる法解釈もいろいろあります、弁護士や法学会の解釈もあります、しかし、働いている人にとって一番重要な問題は、解雇の問題なんですね。したがって、この法案においてルール化するのかどうかということは、当然これは検討しなきゃいけなかったはずだし、しているんだろうと思うんです、政府でも。しかし、今のところ、いろいろ複雑だから、多種多様だから、それは判例にゆだねているんだと。これは、私は一種の逃げだと思う。  そういう逃げた状態から一歩踏み込まなきゃいけないということなんですが、今回の法律の範囲を一たん離れて、規制緩和推進三カ年計画という閣議決定が平成十二年三月三十一日に行われております。  この閣議決定で、解雇規制という事項について、所管庁は労働省となっておりますが、平成十二年度に実態把握をするべしという閣議決定が規制緩和推進三カ年計画の内容の一つとして行われている。かつ、相談窓口の整備、つまり紛争処理の問題でありますが、これも平成十二年度、労働省が所管庁としてやりなさい、検討しなさい、実施というふうになっています。  その根拠になったものはというと、平成十一年十二月十四日、行政改革推進本部の規制改革委員会という委員会が、内部労働市場、つまり、今正規に雇用されている労働者の市場、「内部労働市場をめぐる規制改革」というところで「解雇規制の見直し」という項目を起こして、私が指摘している「裁判に訴える資力に欠ける者は、いかに不当な解雇が行われようと救済を受けることができないという問題もある。」という指摘を既にしている。「第二次見解を踏まえ、」となっておりますから、その規制改革委員会の方向性を受けて閣議決定が行われて、解雇規制の問題について、相談窓口の整備等の問題について、平成十二年度に行う、こうなっている。  そのことについて労働省はどのように今対処をするおつもりなのか。これは一体何を目的として、どのような内容の調査を行うのか、簡単で結構ですからお答えをいただきたいと思います。     〔鍵田委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 長勢甚遠

    長勢政務次官 議員指摘の規制改革委員会の指示といいますか、見解に基づきまして、現在、労働省におきまして解雇の実態を把握するための調査を行っております。  具体的には、労働基準監督機関等に持ち込まれた解雇に関する紛争事案等について、解雇の理由、整理解雇か懲戒解雇かその他の理由かといったようなこと、あるいは解雇を行った事業場の規模や労働組合の有無、整理解雇においていわゆる四要件の具備状況等々について調査を行っておるところでございます。
  83. 中桐伸五

    中桐委員 そこで、これから調査なんでしょうが、ここに非常に重要なことが指摘をされております。  先ほども私、一部申し上げました。解雇規制判例のみに依存する状況のもとでは、多くの労働者がその救済の恩恵を受けることができないのではないかという問題、したがって、それを受けて「解雇規制の在り方について立法化の可能性を含めた検討を行うことが適当であると考える。」という規制改革委員会の第二次見解が出されております。  私も、この方向性という点については、こういう姿勢で今後臨まないと、先ほどの解雇をめぐる情勢からいっても大変深刻な状況が労働者雇用状況にあるわけですから、ここを十分考える必要があると思うんですが、そこで、関連しておりますので、ちょっと次の議論に進めます。  先ほど一番最初に大臣も、それから政務次官もお話しになられたかもしれませんが、これまでに、オイルショックのときに整理解雇の問題が発生したときに、整理解雇の四要件というものが確立をした。四要件が確立した判例法理となっているというふうに私も認識しております。  さて、日本のオイルショックのときに、いろいろな事件が起こって、そこで裁判所の判断が出された。その整理解雇要件というものは、インターナショナルに見て一体どういう解雇法制という特徴があるのか。この点については国際的な調査も当然政府はおやりになっておるでしょうから、その点についてまず政府はどう評価しているのか。整理解雇要件というのは、これは労働者にとっては物すごく保護が強いですよとか、いや、使用者にとってはその反対で大変困っているよとか、そういう評価をちょっとしていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
  84. 長勢甚遠

    長勢政務次官 先ほど来整理解雇についての四要件の立法化という御議論もされておられるわけでございますが、いずれにしても、千差万別でございますから、これを仮に立法化をするということがあっても、どれを立法化するかということも困難でありますし、その具体的な適用そのものは、細部を書けない以上は、いずれまた判例にまたなきゃならないというようなことになるんではないかと思っております。  整理解雇の四要件は、そういう意味で累次の裁判の積み重ねによりまして、ここに来て確立されてきました。これによって整理解雇についての歯どめの効果を持ってきたと思っておりますし、これをあらゆる企業労使に御理解いただいて徹底をしていかなきゃならぬ、これが我々の役割である、このように思っております。  なお、欧米等の状況については、政府参考人から答弁をさせたいと思います。
  85. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 欧米の状況でございますけれども、基本的にヨーロッパ型とアメリカ型では少し違っておりまして、欧州型、例えばイギリス、ドイツ、フランスあたりは、制定法によりまして、まず正当な理由のない解雇を一般的に禁止している、こういう体制でございます。一方、アメリカの方は、御案内のとおり解雇は基本的に自由という体制でございます。いわば日本はその中間的な状況、こういうことになるわけでございます。
  86. 中桐伸五

    中桐委員 国会図書館が調査をした国際的な解雇規制の状況というかなり厚い資料もございます。先ほど政府のお答えになった、日本は欧州とアメリカの中間ぐらいにあるということなんですが、その是非はさておきまして、先ほどの政務次官の御答弁だと、これはいろいろ多様なので判例にいくんだと。この規制改革委員会指摘は無視されるんですか。
  87. 長勢甚遠

    長勢政務次官 四要件についての評価はどうかというお話でございましたので、現時点における私の感覚を申し上げました。  規制改革委員会の報告は報告として、今調査を進めておるところでございますし、それを踏まえて措置するようにというのが報告でございますから、その方向で今後作業を進めたいと思います。
  88. 中桐伸五

    中桐委員 政務次官、複雑なのを微に入り細に入り全部ルール化するというのは難しいと思います。  ただ、基本的なことについて、整理解雇要件というけれども、これは裁判判例の中からそうしたものでしょう。それを、全体の条件を今までの経験の上に立って、法律はその都度変えればいいんですから、その上に立って、微に入り細に入りというのはまた別として、大きなというか、基本的なルールを設定するというのはあっていいんじゃないかと私は思うんです。  そのときに、今回の争点になるわけですけれども、例えばEUの指令ですが、企業組織再編に伴い、特に重要なのは解雇の問題ですから、その解雇の問題について、先ほど城島委員質問にもありましたように、このEU指令というのは、第四条で、今の会社分割に伴う労働契約承継法の範囲だけではなくて、営業譲渡合併企業分割、全部含めて、そういう企業組織再編それ自体が解雇の理由とならないものとする、こうなっています。しかし、と、この定めは、雇用に変更をもたらす経済的、技術的または組織的理由により行われる解雇を妨げるものとはならないものとするとなっています。つまり、いろいろな複雑なケースがある。あるけれども、例えばEU指令で見れば、経済的、技術的または組織的理由により行われる解雇を妨げるものではない、こうただし書きをつけている。  こういう規定というのは、別に、千差万別だからルール化できないという話にはならないんじゃないですか。例えばの話、EU指令を見ても、そういう大きな枠の規定の仕方をしているわけです。それについていかがですか、政務次官。
  89. 長勢甚遠

    長勢政務次官 いろいろな書き方は、技術的には議論の対象になるかとは思いますけれども、私が申し上げましたのは、それを具体的な事例に当てはめるとすると、その実効性を上げる段階は、抽象的であればあるほど具体的な千差万別の事例に照らして判断せざるを得ないということになるのではないか。また、その基準自体も、今の段階でどの程度集約できるか、また社会的なコンセンサスが得られるかという問題もあろうと思います。  そういう意味で、当面はですが、これからの調査その他もありますけれども、四要件が確立した判例としてあるわけでありますから、この事情を十分に周知徹底することが我々の大きな役割である、そのように思っておるということを申し上げた次第であります。
  90. 中桐伸五

    中桐委員 時間がありません。  では、若干発展させて、欧米では、解雇の場合の日本との一つの違いは、一定の正当な理由があれば、補償金を使用者が支払って一たん雇用を切っちゃうという整理解雇が可能だというふうに聞いておりますし、また、不当な解雇でも金銭賠償で解決するというふうな例が多いと聞いていますけれども、そういうシステムというのは日本のシステムとどう違っているのか。また、こういう方法を導入するということは労働省はどう考えているんですか。
  91. 長勢甚遠

    長勢政務次官 欧米におきましては、解雇に当たって、労働者を復職させるという方向ではなくて、金銭的な補償によって労使関係を解消するとか紛争解決をするといったような例も多くあるというふうに承知をいたしております。  しかし、このような解雇に関する欧米の制度というものは、我が国の社会経済、あるいは国民性といいますか文化といったようなものに照らして適切な、受け入れられるものであるのかどうか、あるいは安易な解雇を誘発するようなことが生じないか等々、問題も多いんじゃないかと私は思いますから、今後慎重に検討すべき問題ではないかと思います。
  92. 中桐伸五

    中桐委員 それでは、大臣にお伺いします。  今まで議論いたしましたことをまとめてお答えいただきたいんですが、解雇紛争は、現在の経済状況や、歴史的な産業構造の転換期でございますので、これからもしばらくたくさん発生するおそれがありますね。そういうものについて、やはり基本的なところで、解雇規制に関する、あるいは紛争処理のルール、そういったものを法的に透明であり、かつ明確なものにする必要があると考えますけれども大臣、その見解はいかがですか。
  93. 牧野隆守

    牧野国務大臣 こういう雇用情勢でございますから、先ほどから御指摘のように、雇用不安を醸成するというようなことであっては絶対ならないわけであります。  したがって、私どもとしては、先ほども御答弁いたしておりますが、何とか調停制度を差し当たり確立できないだろうかということを考えております。特に、組合がしっかりした会社では、労使関係で今まで長年友好的な対応策が積み上げられておりますから余り心配しなくても済むのですが、いわゆる中小企業で未組織雇用者にこういう問題が出てまいりますとやはり裁判あるいは弁護士さんか、こういうことになりますと、なかなか御本人自身が対応できないということになることも想像できるわけでありまして、私どもとしては、今の制度では、出先の局長がいろいろな相談窓口を設けてお伺いして、何とか調停制度という形に持っていけないかな、こういうように実は考えておるところです。  今、法律で書いたらどうだというお話がございましたが、では、法律に書くときどう書くんだということになりますと、今の四条件をそっくりそのまま書きまして、さあそれがどのように適用されるかということになると、また同じことになってしまうわけでありまして、私どもは、裁判所で確立されたこの四条件を、いろいろな具体的なケースがありますから、これらも含めて関係者に周知徹底することも非常に大きい効果があるのではないかなと。それがちゃんと頭に入っておりますと、こういうことをしたらこういうことになるぞ、これは大変だなということで、やはり判例ケースも含めて十二分に周知徹底方を片方で進めていきたい、こう考えております。  それ以上立法化するかどうかは非常に大きい問題がありますので、さらに関係者の皆さんを中心にして貴重な御意見をもしいただくことができれば、平行だったらどうしようもないわけですが、得られればそれにこしたことはないな、ただいまはこんな気持ちでおります。
  94. 中桐伸五

    中桐委員 時間が来ました。  今回の商法に関連して、この法律の処置の中に、解雇規制とか個別的な紛争処理というもののあり方について、労働者保護を十分踏まえながら検討するという検討項目をぜひ入れていただきたいということを、これはあくまで個人的な要望として要望します。とりあえず、全体の解雇規制ということにいきなり広げないで、合併だとか会社分割、あるいは営業譲渡、そういったものがこれからしばらく大変大きな課題になるだろう、そこで、そこに関係して、労働者保護に十分配慮しながら、解雇の規制のあり方、あるいは個別的紛争処理のあり方について検討が必要だ、そういうことをぜひ入れていただければありがたいということを申し上げて、私の質疑を終わります。  どうもありがとうございました。
  95. 赤松広隆

  96. 大森猛

    大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  きょうは第一回目の審議でもありますので、最初に、今回の法改正案の立法、提出の背景等についてまずお伺いをしたいと思います。  まず、大もとになっております商法改正案について法務省にお聞きをしたいと思うのですが、今回の商法改正提出については、規制緩和三カ年計画に基づいて、会社分割法制導入については平成十二年度結論と本来なっておりました。この結論が繰り上げられて今回商法改正案となったわけでありますけれども、その背景には、産業競争力会議からかなり強力な要請があったというぐあいに聞いております。  この産業競争力会議からの要請内容、あるいはその理由はどういうものであったのか、まず簡潔にお聞きをしたいと思います。
  97. 小池信行

    小池政府参考人 委員指摘平成十一年三月三十日の規制緩和推進三カ年計画、これは閣議決定を見たものでございますが、ここにおきまして、会社分割法制整備を検討すべきであるということがうたわれております。同時に、ここでは、その整備平成十二年度をめどとして所要の措置を講ずるというふうにされていたわけでございます。  その後、産業競争力会議におきまして、会社分割法制の早期の整備についての要望がされました。もう少し具体的に申しますと、これは平成十一年五月二十日の第三回産業競争力会議においてでございまして、産業界の委員から、企業組織形態の多様化を進めるための法制、税制の整備については、会社分割法制の創設、会社分社化法制整備をお願いしたいという要望がございました。  それから、続きまして、産業構造転換・雇用対策本部の決定が十一年六月十一日にされております。ここにおきましても、産業競争力対策の一環といたしまして会社分割制度導入がうたわれております。読み上げますと、「会社の資産・負債を複数の会社分割し、経営資源の効率的な活用を可能とするために、次期通常国会において、会社分割制度の早期導入を図る。」というものでございます。  こういう要請を受けまして、私ども法案作業を急いだ結果、今国会に商法改正法案提出させていただいたものでございます。
  98. 大森猛

    大森委員 現在でも既に大企業等においてすさまじいリストラが行われている、そういう中で改めて、産業界の強い要請のもとに、今回の会社分割法制導入、創設ということになってきているわけであります。  今、大企業のリストラは、銀行などの大型合併が次々と発表されたり、あるいは営業譲渡、子会社化なども含めて、非常に大規模に進められております。こうした大企業のリストラ計画では、例外なく数千名あるいは万単位の人員削減計画、あるいは賃金、退職金等の労働条件の引き下げというのも今共通の特徴となっているわけですね。  そうした中で、これはもう既に先ほどまでの議論でも多く指摘をされておりますように、多くの労働者雇用と将来に対して本当に強い不安を持っておられます。これが今の個人消費低迷を促進する一つの大きな要因になっておりますし、さらには、リストラを苦にした自殺の増加、男性における平均寿命の前年度より後退という深刻な社会現象まで今生まれているわけであります。  そういう中で、あえて法務省の方で産業界の要請に応じて、私どもはやはりリストラ促進法、そういう性格を持つこの会社分割法制導入に当たって、こういう広範な労働者の不安をどのように受けとめられたのか。言いかえれば、労働者雇用の問題、労働条件の問題、こういう問題を企業の一方的な都合任せにしないできちんと完全に承継させる、そういう規定をこの商法の中になぜ盛り込まなかったのか、この点、ちょっとお聞きをしたいと思います。
  99. 小池信行

    小池政府参考人 先生指摘のとおり、今回の商法改正法案におきましては、会社分割に伴う労働関係承継につきましては、少なくとも明示では示してはございません。  ただ、会社分割におきましては、その分割前に、分割内容となる重要な事項を分割計画書という書面に明らかにするということになっているわけでございますが、その書面の記載事項の中の一つに、これは新設分割の場合を例で申し上げますが、設立会社分割会社から承継する権利義務を明らかにすべきであるということが規定されております。具体的には、この改正法案の三百七十四条の第二項の第五号でございます。この権利義務の中には、承継の対象となっております営業を構成する労働者にかかわる労働契約上の地位、これも当然に含まれる。これは解釈上、全く疑義がないものというふうに私ども理解しております。  この分割計画書に労働契約承継関係が記載をされますと、分割の効果の発生と同時にその労働関係が、この新設分割を例にすれば、設立会社の方に承継されるということになっております。この根拠規定は、この改正法案の三百七十四条ノ十第一項でございます。
  100. 大森猛

    大森委員 今の御答弁との関係ではまた後でも述べますが、先ほどの質問労働大臣に対しても同様に伺いたいと思います。  会社合併営業譲渡、子会社化によって、先ほども申し上げましたように、人減らし、賃金、労働条件の改悪が至るところで今行われているわけであります。こうした労働者の不安が高まり、全労連や連合、全労協から、労働者保護してほしいという趣旨の署名も国会や政府に、これは数百万規模で大量のそういう署名が出されているわけであります。これも当然、労働大臣も、その趣旨などはもう既にごらんになっていると思うんです。  今回の労働契約承継法案は、こういう広範な労働者の強い要求に本当にこたえた法案になっているのか。連合、全労協あるいは全労連の労働者保護法制の制定を求める署名等は、合併あるいは営業譲渡、そして分割等、こういう企業組織再編全体を対象にしたものになっておるわけなんですが、今回の労働省法案会社分割だけに対応するという点で、こういう数百万規模の労働者の署名等の要望にこたえるものになっていないんじゃないかと思うわけであります。  端的に大臣にお聞きしますけれども、今回の労働契約承継法案で、こういう労働者の多くの不安が解消し、労働者雇用労働条件が従来どおりにきちんと守れる、このように大臣は断言できるでしょうか。
  101. 牧野隆守

    牧野国務大臣 労働契約承継法案、今御審議いただいておりますが、私どもは、会社分割に伴って必要となる労働者保護を図る、こういうことで出しているわけであります。  合併営業譲渡に伴う労働者承継につきましては、合併についてはすべての労働者承継されること、営業譲渡については、労働者承継につき、民法第六百二十五条により本人同意要件とされていること等から、現行法制で対応することが適当ではないか、こういうように考えております。  また、整理解雇につきまして、四要件を満たすことが必要であるとの判例法理は確立されている、これは関係者の皆さんのお認めになるところでありまして、現在でも、企業組織再編のみを理由とした解雇は、この判例法理に照らして許されないこととされているわけであります。  以上のことから、労働契約承継法案整備することにより、企業組織再編の際における労働者雇用不安にこたえることができるもの、こういうように私ども考えております。
  102. 大森猛

    大森委員 合併営業譲渡等においては現行法あるいは判例等で対応できるという大臣の答弁でありますけれども、これは、余りにも今の実態を知らなさ過ぎる御答弁じゃないかと思います。  先ほどもお話がありましたけれども、例えば金融の大型合併が次々に発表されているわけであります。個々の職場で今どういうことが起こっているのか。あさひ銀行、東海銀行、三和銀行の三行合併統合は、全部で三万六千人従業員がいる、これを一万人削減してしまおうというわけであります。こういう人員の削減計画が大前提になって、今、職場でどういうことが起こっているのか。すさまじいリストラ、大変な労働強化等が行われているわけであります。  例えばある労働組合に対して、この三つの銀行の労働者からどんどん一一〇番、ホットラインの電話がかかってきている。大変深刻な声が寄せられております。もともと体が弱く、肝臓を患っている。上司と相談して一週間休暇をとって出勤したら、もと仕事はなく、他の部署に回された。やめさせるために無理難題を押しつけてくるかと思うと、不安でたまらない。  もう全部紹介しませんけれども、こういう合併前提にして、そういう一万人削減計画の中で、今ちょっとでも何か無理を言ったら自分はやめさせられるんじゃないかと、どんどん不安が高まっていく。こういう状況があるんだということを、今、金融大型合併幾つも出ておりますけれども、私は、労働省としても、労働大臣としても、ぜひ知っていただきたい。合併においては不利益変更は一切ありませんなどとぬけぬけと言えるような状況じゃないんだということをぜひ知っていただきたい。私は、強くこれは要求をしておきたいと思います。  加えて、先ほど来議論がありましたように、分割だけになった。ヨーロッパのEU指令、これはいろいろ紹介があったように、営業譲渡等、対象を非常に幅広く持っているわけであります。  このEU指令がつくられる際に参考とされたのが、いわゆるフランスの労働法典。これはもう御存じだと思いますけれども労働法典の中では、「使用者の法的地位において、とくに相続、売却、合併営業財産の移転、会社設立によって、変化が生じたときには、その変更のなされた日に効力を有するすべての労働契約は、その企業の新使用者と従業員との間に存続する。」と明確に述べてあって、これがEU指令の大もとになった、こう言われているわけですね。  フランス労働法典のこの部分はいつつくられたかといいますと、一九二八年七月十八日の法律であります。以来、それは修正を加えられることなく今日まで維持されている。今回の労働省分割に伴う労働契約承継法案は、フランスの労働法典から七十年以上おくれた、大変おくれた内容であるということを私はやはり指摘しなくてはならないと思います。これは、法務省に対しても同様に申し上げておきたいと思います。  法務省に再度お聞きをしたいわけなんですが、商法改正案では、先ほどお話があった民法六百二十五条の権利義務の一身専属性の規定や、これに基づく労働者本人同意がなければ他の会社への転籍はできない、こういう最高裁の判例を事実上排除することになるわけでありますけれども、もしそうだということであれば、その合理的な根拠をどのように法務省は考えているんでしょうか。
  103. 小池信行

    小池政府参考人 御指摘民法六百二十五条の規定、これは雇用に関する規定でございまして、その第一項におきましては、使用者労働者の承諾がなければその権利を第三者に譲渡することができないというふうに規定されてございます。この規定は、使用者労働者という雇用契約の当事者間で、個別の契約によりましてその使用者の地位の権利の移転をする、つまり特定承継の場合の要件を定めたものでございます。  これに対しまして、今審議をお願いしております商法改正による会社分割、この分割によります権利義務承継の効果は、既存の制度であります合併と同様に、分割の登記があればそれによって法律上当然に生ずる、いわゆる包括承継に当たるものというふうに理解をしております。したがいまして、この営業を構成する労働関係は、個々労働者方々同意なくして当然に新しい会社に引き継がれていくもの、そういう性格のものでございます。
  104. 大森猛

    大森委員 法務省に、最後にもう一点だけお聞きをしておきたいわけです。  今回の分割法制によって当然考えられるのは、不採算部門だけを分割して切り離していく、労働者と一緒に切り離していくというようなこの法制の活用ということが現実に危険性として指摘をされなくてはなりませんけれども、先日の本会議で、臼井法務大臣は、分割会社、設立会社、いずれも債務超過となるような会社分割を認めないとする趣旨規定があると答弁されております。  そこで、この点に関して二点お聞きをしたいわけですが、一つは、どういう分割は認められないのか、これとの関係でどうなるか。もう一点は、分割会社、設立会社のそのいずれかが債務超過の場合は、全く規制はないんじゃないかということですが、二点、いかがでしょうか。
  105. 小池信行

    小池政府参考人 まず第一点でございますが、この改正法案におきましては、分割に先立って事前に開示すべき書面といたしまして、各会社の負担すべき債務の履行の見込みあること及びその理由を記載した書面を備え置くべきということを規定をしてございます。  ここに申します債務の履行の見込みの有無ということでございますが、これは具体的に申しますと、特定の債権者の債権につきまして、弁済期に履行することができるかどうかということの判断にかかわるものでございます。この意味での債務の履行の見込みがあるかどうかを判断する上におきましては、承継される財産の価額及びその債務の額が重要な要素になるわけでございまして、分割の結果、分割会社が債務超過に陥るというような場合には、基本的には、債務の履行の見込みがないものとして分割は許されないということになろうかと思います。  もっとも、債務の履行の見込みを判断する上では、今申し上げた財産と債務の額との比較だけではありませんで、この会社の将来の収益予測ということも重要な要素でございます。したがいまして、分割の時点でたとえ債務超過ではないといたしましても、過去の実績等から判断いたしまして、大幅な収益の落ち込みであるとか、そういうものが予測される場合には、これはやはり弁済期における債務の支払いの見込みがないものというふうに判断されることになろうと思います。
  106. 大森猛

    大森委員 これは委員長にちょっと要望したいんですが、これは本来理事会で協議すべきことでありますけれども、実は私まだ法務省に対して幾つ質問も用意をしているわけなんですが、法務省への質問ばかりしているわけにはいきませんし、法務委員会においては商法の修正案も出されたやに聞いておりますので、ぜひ連合審査について理事会等で御協議をいただければと思いますので、このことをお願いして、具体的な労働契約承継法案についてお聞きをしたいと思います。  労働省法案では、分割計画書に記載されれば労働契約承継される、こう書いてあるわけですが、労働契約についての法律上の定義、これはありません。現行法でも労働契約に関する明文の規定はなく、労基法第十五条の労働条件の明示義務規定では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」こう規定しているわけですね。この労基法十五条の規定を受けた労働基準法施行規則第五条では、使用者労働者に明示しなければならない労働条件として、一、労働契約の期間に関する事項、二、就業の場所及び従事すべき業務に関する事項、三、始業及び終業の時刻、残業の有無、休憩時間や休日、休暇、交代制労働などの労働時間に関する事項、四、賃金の決定、計算及び支払いの方法や締め切り、支払いの時期並びに昇給など賃金に関する事項、五、退職に関する事項などなど、こうした主な労働条件は書面で交付しなければならない、こう規定されておるわけですね。  そこで、お聞きをしますけれども、この法律で言う労働契約という法概念の具体的内容は何なのかということで、今引用しました労基法第十五条と規則の内容、これが当然記載されるべき内容となると考えますけれども、そういう解釈でよろしいかどうか、お答えいただきたいと思います。
  107. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 今回の労働契約承継法案におきまして使っております労働契約の概念は、今先生指摘になりました労基法の契約概念と同じでございまして、分割計画書の記載に従って労働者設立会社等承継される場合には、現行の労働契約内容がそのまま承継されるという構成になっております。
  108. 大森猛

    大森委員 現行の労働契約内容、明示されているそういう内容がそのまま承継をされるということですね。そうすると、分割計画書にはどういう記載になるわけですか。そのまま書くわけじゃないんでしょう。
  109. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先ほど法務省から御説明ありましたように、分割計画書におきましては、権利義務に関する事項という形でその中に労働契約が入るということになりますので、分割計画書に具体的に書く事柄としては、承継される労働者の範囲、これを明確に書く。その書き方はいろいろございますが、分割計画書本体あるいはそれの附属、別添の文書等々のいろいろな形で、範囲が確定するような形で明確化するということでありまして、労働者の範囲を書くということで労働契約承継されるということが代表されるという構成になっております。
  110. 大森猛

    大森委員 労働者の範囲、権利義務の範囲、そういう形で記載されると。労働契約内容についてはそのままということですから、先ほど私が申し上げたことは本来明示されるべき、書面で交付されるべき内容でありますから、それがそのまま承継されるという解釈になるとも思います。これはもう答弁は求めません。  次に、事前協議の問題で、これも先ほどまで何度か議論をされました。これまでの答弁では、まとめて申し上げれば、そういう事前協議について労使間で行うことはまず拒まない、禁止はしない、むしろ行うことが望ましい、しかし、法律でこれを一律に義務化することについてはどうかというような御答弁だったように聞いておりましたけれども、そういうことでよろしいでしょうか。
  111. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 労使間の自治に基づいて事前に協議されることは、何ら差し支えなく、望ましいことであろうと思います。
  112. 大森猛

    大森委員 一律に法律で義務づけることは望ましくないということですか。ということは、事前協議を行ってはならない、そういうケースがあるということでしょうか。
  113. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 再三にわたりまして法律で一律に事前協議を義務づけることは適当ではないと申している趣旨は、事前協議をしてはならない事項があるということではございませんので。事前協議を法律で義務づける場合に、その範囲だとか手続だとかその効力などを厳格に概念確定しなければならないということでありますが、現実労使協議は、先ほど来申しているように、労使自治に基づき労使の創意工夫で千差万別であるということからしますと、一般原則、共通原則を抽出して法律化することは極めて技術的にも難しいし、した場合にも、ぎりぎりの判断になれば、最終的には裁判所に行ってそこで判断をするということになりますので、そうした面からも、一律に義務づけることは、多くの検討すべき課題があるという観点で申し上げております。
  114. 大森猛

    大森委員 もし単なる技術的な理由で事前協議の義務づけを回避するということであれば、やはりこれは可能な方法で義務づけを検討すべきだと思うんですね。  特に、私は、労働組合の存在、これは労働者権利義務労働条件を守る、そういう役割だけではなくて、その会社における、企業における社会的な、道義的な、健全な活動、そういうものを担保する労働組合の役割というのも非常に重要なものがあると思うんです。そういう際に、今リストラ至上主義ともいうような風潮がずっと広まっている中で、こういう会社分割法制における事前協議制を法律できちっと義務づける意義は大変大きいものだと強く思うものであります。そういう点で、事前協議について、あるいは事前説明、こういう面では本当に法的な義務づけについてぜひ検討をしていただきたい、こう思います。  次に、分割計画書との関係の問題でありますけれども分割計画書は分割会社が勝手に作成できると。労働組合法の第七条二号では「使用者雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。」は不当労働行為に当たるとして、使用者の団交応諾義務が定められているわけですね。この規定は、労働組合の規模やその会社の中での組合員の比率などにかかわらず、少数組合も含めて団交応諾義務となっているわけです。  労働組合が会社分割のうわさなどをつかんで、分割によって労働条件に重大な変更が生ずる懸念がある場合、団交を要求する、当然これは応じなければならないと思います。しかし、分割計画は会社の経営上の問題だということで団交には応じない、こういうケースも予想されるのではないかと思いますが、こうした会社側の理由、態度は、労組法からどういうぐあいになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  115. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 労働組合法上は、労働組合員が多数であろうと少数であろうと、ひとしく団体交渉を要求する権利を保障しております。  御指摘ケースでありますが、会社分割によって労働者雇用労働条件に影響があるという場合につきましては、いかなる労働組合といえども、その組合員にとって影響があれば、団体交渉をその限りで要求することができるということでございます。
  116. 大森猛

    大森委員 流れを少し急ぎまして、次に、労働組合法十七条との関係についてお聞きをしておきたいのです。  十七条では「一般的拘束力」として、その会社労働者の四分の三以上の労働者に適用されることになった協約は他の労働者全員にも適用される、こうなっているわけです。  例えば、分割される会社部門に百人の労働者がいて、七十六人が組合員、そして協約があって、全員適用されているという場合、そのうちの非組合員の二十四人だけが設立会社に転籍された場合、これまで適用を受けていた協約は適用されなくなるのか、あるいは適用されるのか。この点、具体的な問題でありますけれども、お聞きをしていきたいと思います。
  117. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 御指摘ケースでありますが、一般的拘束力のもとに少数の方々に拡張適用されている労働協約は、その方々労働契約の中に溶け込んでおります、言い方はいろいろありますけれども。ですから、当該労働者会社分割により設立会社に移った場合には、労働協約の内容はその労働契約の中に溶け込んで承継されますから、協約内容は従前どおり労働契約内容として維持され承継されるということになります。
  118. 大森猛

    大森委員 最後に、本人同意の問題であります。  設立会社は別法人になるわけですね。ここに転籍されるということは本人同意が求められないということで、最高裁の判例にもこれは反することになるわけであります。  雇用契約は、労働者使用者との自由な意思に基づく契約自由の原則に立って結ばれているわけですが、これを排除する形になるわけです。新たな会社との雇用契約、これは本質的には転籍であるのに、本人同意を消してしまう。  これはいろいろ議論をされたわけですけれども本人同意をもし付与した場合に、澤田労政局長は、仮に全員が同意しないことも予想される、そうすると、法律的には、営業としての法律的な構成を欠くことになるというような答弁をされましたけれども、これは現実にはあり得ない話だし、もし本当にそういうことがあれば、そういう労働者全員が拒否をするような分割はやはりやるべきじゃない、こういうことが言えると思うのです。ですから、澤田労政局長が言われた、本人同意導入して何が問題になるのかという質問への答弁は認めがたいと思うわけであります。  改めて、こういう本人同意をなぜ消してしまったのか、明確な答弁をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  119. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 再三申し上げておりますが、会社分割制度は、合併と同様に、包括承継という法律構成を基本としております。したがいまして、労働契約承継法におきます、承継される営業に主として従事する労働者労働契約承継につきましても、部分的包括承継という法的性格を会社分割制度全体との整合性という形で明らかにし、個別の本人同意は要しないとすることは、何ら法的に合理性がないということではなくて、むしろあるという点を申し上げてまいりましたし、もう一面、実質的な不利益はないという点も申し上げてまいりました。  先ほど私が百人全員が同意をしないというケースを申し上げましたが、これは極めて極端なケースでありますが、全員とは言わずとも、同意権を付与した場合には、包括承継という法的性格と営業譲渡の場合におきます民法六百二十五条の適用、この両方がかぶることになりまして、法的には極めて不整合な仕組みになってしまうということは、立法化に当たっては大変な問題であり、そういうことはあり得ない、こういう立場でございます。
  120. 大森猛

    大森委員 終わります。
  121. 赤松広隆

    赤松委員長 塩田晋君。
  122. 塩田晋

    塩田委員 私は、兵庫県第十区選出の自由党の塩田晋でございます。  自由党はこの国会におきましていわゆる自自公の三党連立を組んでやってきたところでございますが、今月の五日の森内閣の成立をもちまして、これが自然消滅したというふうに理解をしております。また、自自公三党連立のもとで提案をしてまいりました法案、この委員会にかかっております労働契約承継法案につきましてもそうでございますが、ともに協議をし審査をし、そして了承を与えて閣議決定に持ち込み、また、これを国会に提出したものでございますので、我々といたしましては、予算あるいは法案につきまして、そのような経過を経た、手続を経たものについては、これに責任を持つものと認識しておるところでございます。  したがいまして、この法案につきましては、基本的に賛成をするものでございます。  そこで、まずこの会社分割制度導入、このことは、やはり経済の国際化、グローバル化ということの中で起こってきている問題でありますし、会社経営が国際競争力を向上し維持するという上に立ちまして、機動性を発揮する上でどうしても必要なものだと考えておりまして、その観点に立ってこの法案が出されておる。労働者権利義務を確保しながら、労働者保護をしながら、会社分割に当たって会社の経営が機動的に行われるということのためにこの法案は役立つものと思いますが、牧野労働大臣のお考えをお聞きします。
  123. 牧野隆守

    牧野国務大臣 本法案は、分割される部門で働く労働者もと会社に残留させる場合及び分割される部門以外の部門で働く労働者を新会社承継させる場合に、労働者異議申し立てを認めるなど、会社分割に伴って必要となる労働者保護を図ることを目的としつつ、同時に、承継される営業に主として従事する労働者原則として承継されるとするなど、商法改正案における会社分割法制との整合性を図っているところでございます。  したがいまして、商法の一部改正法案は、現在の変動する社会の変動に的確に反応しよう、こういうのが基本的な動きでございまして、これによって労働者が阻害されては困る、きちっと安心して適用されなければ困る、こういう観点から立案されているものでございます。  したがって、先生考えのとおり、円滑な会社分割を必ずしも阻害するものではない。両方一緒になって、産業構造の変化に対応していくことに大きく貢献することができればよい、こういうように考えております。
  124. 塩田晋

    塩田委員 次に、政府の労働契約承継法案におきまして、会社分割に当たり、承継される営業に主に従事する労働者については、分割計画書等において承継することとされた場合には、当然に承継することとされております。  これらの労働者につきまして、承継する場合に、同意要件にするとか、あるいは拒否権を与えるといったこととすれば、特に営業実施に不可欠な労働者というものが承継されないということもあり得るわけでございまして、このようなことによりまして、事実上、労働者会社分割を阻止することになりかねない。言うならば、残ってもらいたい人、行ってもらいたい人と分ける場合、必要でない人も抱えなければならないという場合も起こり得るわけでございます。そうなりますと、そのような状態を法律が強制するということにもなりかねない。そういう不合理が起こるのではないかと思われまして、危惧するわけでございます。  そのような不必要な労働者といいますか、そのような労働者を抱えるということを法律で許すことはできないのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  125. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 御指摘のように、承継される営業に主として従事する労働者に拒否権を与えた場合どうなるかという点でございます。  先生お話しのように、会社分割に当たって、使用者側が、労働者を移そうと分割計画書等で範囲を確定する場合には、必要な労働力として移ってほしいということで確定するのが通常でありますから、そこで労働者が嫌だと拒否した場合には、設立会社で必要な人材が確保できないという面もございますし、逆に、分割会社の方に予定以上に労働者が残るという形で、いろいろな経営上の不都合などが出てくるだろう。特に、労働者が移りたくないという形で大量に出てきますと、分割そのものが阻止される可能性があることは御指摘のとおりであります。
  126. 塩田晋

    塩田委員 労働者に対しまして、この法案では、異議を唱えるということを規定しておりますし、また、その範囲につきましては非常に限定的にしてございますので、これは合理的だと思います。  それ以上のことは、場合によっては、いわゆる経営者の円滑な分割のための経営権、これを侵害するというような事態になり得ると思うのですが、いかがでございますか。
  127. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 私も同様に考えるところであります。
  128. 塩田晋

    塩田委員 これは、労働者権利義務労働者保護という観点からと、経営権との競合関係、これになろうかと思うのです。これは実は労使間においては大きな問題でございますし、昔から、あるいは世界各国においても、これが大いに問題になり、その競合関係、その調整関係、これが追求されておるところでございます。  これにつきましては、考えますのに、欧米諸国にあります制度、いわゆる共同決定法、あるいはEU等でも研究されております会社法の関係、こういったものを我が国においてももっと研究をして、取り入れていくという方向があってしかるべきではないか。労使が協調をして、労使が運命共同体としてその企業を育成し、維持して発展させていく、その責任をともに分かち合うという観点からは、共同決定法といったものはもっと研究をすべきではないか。  また、解雇制限法というものもあるわけでございますが、この趣旨も、我が国におきましては裁判等での判例が重ねられておるところでございますが、こういったものを法定化する、そういうことも考えていいのじゃないか。  他国の解雇制限法等を見ますと、かなり自律的といいますか、限定的にやっておりますし、必要なものは取り入れていいのじゃないか。あるいは、会社の中での経営の共同決定という関係、あるいは労使協議制度というものも外国にあるわけでございますが、こういったものをもっと取り入れていっていいのじゃないかと思うわけでございます。法制的に社会の仕組みとして取り入れていっていいのじゃないか。  現に、労働組合法上の組合の中でも、そういった方向で、事実上労使協議をやり、経営に双方で責任を持つ、こういうことも多数の例があるわけでございます。これを組織として、あるいはまた法制化して、制度の仕組みとしてつくり上げることはいかがお考えでございますか、お伺いいたします。
  129. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先生から、労使協議制のお話と、ドイツのような共同決定法、システムのお話が出ました。  まず、日本の現状を申し上げますと、労使協議制が行われている事業所は六割弱、これは労使の自治という基盤の上に、それぞれ創意工夫を凝らして、それぞれの企業の実情に合った形でやられておられます。  労使協議制を法定化するという話になりますと、例えば、労働組合のあるところにとりましては、労組法上の団体交渉権、これとの関係をどうするか、両方とも法律権利として認める場合にはそういう問題が起きます。この点につきましては、労働法学者の間でも意見が種々ございまして、なかなか収れんしていないという問題もございますし、具体的に、労使協議の範囲を法律上どうするか、あるいは、労使協議のレベル、深度をどうするか、多々議論すべき課題がございます。  したがいまして、こうした諸課題については、多少時間をかけて議論をし、かつ現実労使協議制がどう発展していくかを見る必要があろうかと思っております。  ドイツの共同決定法は、さらにその先の課題になるのではないかと思っております。私どもも、諸外国の、労使が経営に責任を持って、パートナーシップを組んで取り組むという点につきましては、望ましいことであろうと思いますので、諸外国のそうした仕組みがどう現実に機能し効果が上がっているのか、どういう問題があるのかは、引き続きしっかり研究、調査等はやっていきたいと思っております。
  130. 塩田晋

    塩田委員 これはドイツだったでしょうか、会社における最高の意思決定機関としての取締役会の上に監査役会というのがあるわけですね。そこに労働者の代表が入って、そして、ともに会社の経営に、最高の意思決定機関の決定に参画する、こういう例があるわけでございますね。こういったことを取り入れることができれば、我が国においてもこれを入れていっていいんじゃないか、このように思うわけでございます。  そもそも労働組合というものは、労働者の社会的、経済的地位の向上、具体的には労働条件の向上、雇用の確保といったこと、また、現在の不況の中におきましても、賃上げをどういうふうにして達成をし、また消費を拡大していくか、これは大きな課題であると思うのですが、こういったことには労組法上の労働組合は非常に熱心に取り組んでおられると思うのです。厳しい経済状況の中で、なかなか難しい状況にあることは御承知のとおりでございますが。  労働組合を取りまとめているある種の団体におきましては、そういった労働組合の本旨、使命を忘れてとは言いませんけれども、そちらに余り力を入れないでというか、成果を上げないで、政治に盛んにくちばしを入れている。具体的には、だれだれは候補者であることをやめろとか、あるいは比例に上がれとか、小選挙区でいけとか、こういったことまでくちばしを入れているケースがあるわけであります。  私は、それは政治活動の一環として否定するものではございません。労働組合運動の任務としまして、経済的要求とともに政治的要求というものがあり、政策的な要求実現のためにいろいろやられることはいいわけで、これは認めるものでございますけれども、余りにも本末転倒しているんじゃないか。やるべきことをやらないでということは言いませんけれども、余りにもそういった、やるべきでないとは言いませんが、主たることでないことに力が入り過ぎている面があるんじゃないか、このように懸念するわけでございます。私はむしろ、会社の意思決定で、労使の共同決定に向かって仕組みをどう変えていくか、こういったことがやはり真剣に取り組むべき問題だと思います。  政治と労働組合との関係、これにつきましてはいろいろ御議論があるところでございますし、またいろいろな問題も出ていることは御承知のとおりでございまして、これはある段階におきまして一定の整理をしなければならぬ。言うならば、政教分離とともに政労分離というものも考えないといけないのじゃないか。余りにも目に余るものがあるということを私は痛感いたしております。  この会社分割に伴う労働契約の継承に関しましても、労使の問題、すなわち労働者権利保護の問題と会社の経営権の問題との競合関係におきまして、やはりそれがマッチするような形で、あるべき姿というものを求めて、労使ともに、また我々政治、また労働組合団体とともにそういった問題にもっと真剣に取り組んで、雇用の問題、そして生活向上の問題にともに力を合わせて取り組んでいくべきではないか、このように思いますが、労働大臣の御所見をお伺いいたします。
  131. 牧野隆守

    牧野国務大臣 会社の経営形態労働組合あるいは労働者の代表との関係、御指摘のとおり、典型的なのがドイツの共同決定法でございます。私は、当時ドイツの大使館に勤務いたしておりまして、アデナウアー内閣のときに国内が大議論であったことは実はよく承知いたしているわけであります。  そして、現在は、雇用の不安をなくするためには、やはり最善の方法を追求しなきゃいけないわけでありますが、時にはいろいろな関係の調整ということも考えなければなりません。  そして、今回の労働契約承継法案につきましては、会社分割に際しての必要な労働者保護は図らなければならない。これによって会社分割の際に労働者雇用が不安定になるような事態は、どんなことがあっても避けなければならない。  これは、単に法律という形で規制するだけでなくて、私どもとしては、企業の社会的な責任も十二分に果たしていただけるようにお願いしなきゃなりませんし、また、そのためにいろいろな措置が講じられているわけでありますが、あらゆる雇用政策を駆使いたしまして、法律の最低限の規制は規制として、最低限、労働者雇用が不安定になる、これだけは全力を挙げて避けていきたい、こう考えています。
  132. 塩田晋

    塩田委員 ありがとうございました。
  133. 赤松広隆

  134. 畠山健治郎

    ○畠山委員 しんがりになりましたから委員会をとめるつもりはございませんが、委員長、苦言を呈しておきたいというふうに思います。  国会改革元年だとか議員同士での議論をしようなんというようなことを盛んに言っておきながら、審議にも参加をしていただけないような実態、このことには、どうかひとつ委員長からもしっかりと何らかの手だてをしていただきますように、まずもってお願いを申し上げておきたいというふうに思っております。  この法案労働者の基本的な権利にかかわる重要な案件でありますことは、今さら申し上げるまでもございません。したがって、きょうが審議の始まり、これからどういう順序で審議が進んでいくのかわかりませんが、きょうが始まりでありますから、私は基本的な問題につきまして、各省庁間の問題についてお尋ねをしておきたいというふうに思っております。  まず、商法改正案の提案に至るまでの経過についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  昨年三月末に閣議決定された規制緩和推進三カ年計画では、「会社分割制度整備について、平成十一年中に検討に着手し、早期に結論を得る。」こうされておるところであります。これを見る限りでは、今国会に提案するなどとはどこにも書かれておりません。ただ、一つあるとすれば、昨年六月、前総理の私的諮問機関である産業競争力会議が、次期通常国会において分割制度の早期導入を図る、こういう言い回しをしておるだけであります。  閣議決定に反して、あえてどうしてこんなに前倒しをしたのか、法務省の見解をお尋ねいたします。
  135. 小池信行

    小池政府参考人 委員指摘のように、平成十一年三月三十日の規制緩和推進三カ年計画の閣議決定におきましては、この会社分割法制整備平成十二年度を目途として、そういう提言があったわけでございます。  この時点で平成十二年度を目途としてということになっておりましたのは、この会社分割法制といいますのは、欧米には既に制度があるわけでございますが、我が国におきましては全く新しい制度でございますので、果たして短時日の間に具体的な成果を得ることができるのかどうか、私ども、その時点では確たる見通しがなかったものでございます。それを考慮して平成十二年度目途というふうにされたものと承知をしております。  ところが、その後、御指摘の産業競争力会議等におきまして、早急に会社分割法制整備をすべきであるという、特に産業界を中心に強い御要望がございました。それにこたえる形で私ども作業を急いだ、それで今度の国会にこの法案審議をお願いしておるところでございます。  蛇足になりますが、目途といいますのは、このように非常にテンポの速い時代でございますので、言うなれば、できるだけ早くという意味を言外に含んでいるものというふうに私ども理解をしておりまして、それで作業を急いだということもございます。
  136. 畠山健治郎

    ○畠山委員 ただいまの説明でだれが一体納得できるんでしょうか。少なくとも、この間の経緯を見れば、閣議決定より産業界からの要請を優先させたことは間違いないというふうに言わなきゃいけないと思うんです。閣議決定より産業界の意向がこれほど露骨に優先される国は一体どこにあるんでしょうか。事柄の重要性を考えれば、少なくとも、当初の決定のように少しは自制すべきであったのではないだろうかと考えますが、再度見解を求めます。
  137. 小池信行

    小池政府参考人 先ほど、規制緩和推進三カ年計画の後の産業競争力会議の提言、これを御説明申し上げましたが、もう一つ、昨年の六月十一日に産業構造転換・雇用対策本部の決定がございました。ここにおきましては、産業競争力対策の一環といたしまして、会社分割制度導入ということがうたわれております。具体的になりますが、「会社の資産・負債を複数の会社分割し、経営資源の効率的な活用を可能とするために、次期通常国会において、会社分割制度の早期導入を図る。」そういう提言がされていたわけでございまして、私どもの今回の商法改正法案はこの要請にもこたえるというものでございます。
  138. 畠山健治郎

    ○畠山委員 だって、それは私的諮問機関であるんでしょう。それを閣議決定よりも優先するなんということになるんですか。時間がございませんから、その議論は改めてまたやらせていただきたいというふうに思います。  産業活力再生特別措置法並びに民事再生法において、企業組織再編に伴う労働関係上の問題への対応について、法的措置をも含めて検討を行うという附帯決議がついておりますことは御案内のとおりかと思うんです。企業組織再編に伴うと言っているように、法務省にも向けられておるはずであります。  商法改正案作成過程においてこの附帯決議をどのように生かされたのか、再度法務省からの見解を求めます。
  139. 小池信行

    小池政府参考人 商法は、会社組織のあり方等、民事法上の規律に関する事項を定めるものでございまして、労働者保護について直接規定するものではございません。しかし、今先生指摘の附帯決議の趣旨を踏まえまして、今回の商法等の一部を改正する法律案の中には、会社分割制度内容といたしまして次のような事項が盛り込まれておりまして、これにより労働者権利が不当に害されないように配慮をしているところでございます。  まず一つは、会社分割の対象を営業単位としたことでございます。つまり、営業を単位とすることにより会社の財産が切り売りされ、それによって会社が解体されることがないように、つまり労働者雇用の場が確保されるように配慮した、これが第一点でございます。  第二点は、今申し上げましたように、分割の対象を営業といたしまして、分割計画書等に、分割により承継されます労働契約上の地位、これを記載するということにいたしました。これによりまして、営業を構成する労働関係に従事する労働者の契約上の地位が、その営業承継する会社の方に当然に承継をされていくということになるわけでございまして、これも労働者保護の一環というふうに考えております。  さらに、各会社分割によって債務の履行の見込みがなくなるような分割は認めない、そういう手当てもこの中でしているところでございます。  なお、もう一つ申し上げますと、労働者でありましても会社債権者の立場に立つということもございます。例えば未払いの賃金債権があるとか、そういう場合には会社に対する関係では債権者でございますので、会社分割に伴う債権者の保護手続労働者も債権者として参加することができるという手当てもしているところでございます。
  140. 畠山健治郎

    ○畠山委員 確かに、商法改正案では附則の五条で、労働契約の継承に関しては別に法律で定めるとされております。労働者権利義務にかかわる法制定の根拠を定めておりますが、これをもって附帯決議の意を体しておるとは、とてもじゃないけれども考えられません。ただ商法と継承法のすみ分けをしておるんではないだろうか、そう考えても仕方がないんではないだろうかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  141. 小池信行

    小池政府参考人 ただいま申し上げましたように、商法改正法案におきましては、分割の対象となる営業に従事しておりました労働者に係る労働契約といいますのは、他の権利義務と同様に、分割計画書等に記載されました場合には当然その設立会社などに承継されるということになっているわけでございます。  ところが、会社分割法制導入され、現実に運用される場面におきましては、会社分割に伴う労働契約承継につきまして、今申し上げましたような商法改正法案が予定しているところとは異なる事態が生じまして、個々労働者不利益をこうむるということも予想されないではないわけであります。  そこで、先生指摘のこの改正案附則第五条におきまして、このような労働者保護するために別の法律による措置が必要であるという認識を表明いたしまして、この法律商法とが一体となって、会社分割に伴う労働契約承継に関する取り扱いが規律されるべきであるということを明らかにしたものでございます。  今御審議の、労働省から提出されておりますいわゆる労働契約承継法は、この特別な立法措置に当たるものでございます。
  142. 畠山健治郎

    ○畠山委員 事はそればかりではございません。  これを検討した法制審の商法部会の委員のうち、学識経験者に至りましてはほとんどが商法学者、言ってみれば労働経済なり労働法研究者は皆無であります。経営者や商法などの学者、研究者ばかりで検討することは、会社分割がもたらす影響に配慮を欠いておるというふうに言われても仕方がないのはここにあるんではないだろうかというふうに考えられるわけでありますが、いかがでしょう。
  143. 小池信行

    小池政府参考人 今回の商法改正法案は、御指摘のように法務大臣の諮問機関であります法制審議会の審議を経たものでございます。  法制審議会がこの商法改正法案もとになりました法律案要綱を答申したわけでございますが、この法制審議会のメンバーには、日本労働組合連合会の鷲尾会長が委員として加わっております。また、法制審議会の下部機構であります商法部会、それからその下の会社法小委員会審議におきましては、労働省からも担当官に関係官として参加をしていただきましたほか、日本労働組合連合会の担当局長に参考人として御出席をいただきまして、その御意見を伺ったところでございます。  このように、法制審議会における審議におきましても、御指摘の附帯決議の趣旨を踏まえまして、労働者保護に配慮しているものでございます。
  144. 畠山健治郎

    ○畠山委員 商法改正や、いわゆる継承法を見ても、会社分割法の全体像はいま一つ不鮮明でございます。といいますのも、分割に伴う税制が全く示されておらないからであります。そこで、大蔵省にお尋ねいたしますけれども分割に伴う税制についての検討状況を具体的にお示しいただきたいと思います。
  145. 福田進

    福田政府参考人 お答え申し上げます。  会社分割法制を創設する商法改正法案に対応いたしまして、会社分割に係る税制上の取り扱いについて、現在鋭意検討を進めているところでございます。想定される会社分割形態や方法は極めて多様でございまして、これらに係る税制の検討に当たりましては、商法における具体的な会社分割内容や、さらには会社の資産それから負債の分割の際の取り扱いの詳細、さらには会計処理の詳細なルールの明確化が必要と考えられるところでございます。  会社分割に係る税制につきましては、合併、現物出資等の資本等取引と整合性のある課税のあり方や、各種引当金等の資産、負債の引き継ぎのあり方、さらには所得税法や法人税法を通じます株式譲渡益やみなし配当課税の取り扱いなどについて十分検討する必要がございまして、所得税法や法人税法などの各税法の広範にわたる見直しが必要と考えているところでございます。したがって、会社分割に係る税制につきましては、商法あるいは企業会計の検討の動向などを見きわめつつ、平成十三年度の税制改正において対応すべく、現在鋭意検討を進めているところでございます。
  146. 畠山健治郎

    ○畠山委員 ただいまの説明では、いまだ検討段階というよりも、それ以前の調査の段階に近いと言われてもいたし方ないというふうに言わなければなりません。分割のみが先行し、税制は後追いでは、十分な審議はできません。本来ならば、税制も具体的に示され、両者ワンセットで審議すべきものではないかというふうに考えます。  大蔵省はいつまでに税制案を取りまとめるのか、お示しいただきたいというふうに思います。
  147. 福田進

    福田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、今回の商法等の一部を改正する法律案におきまして、会社分割形態、新設分割、吸収分割それぞれについて分割型、分社型というふうなケース考えられ、かつ新設会社または吸収会社が株式を分割会社とその株主の双方に割り当てる、いわゆる一部分割も認められるところでございます。また、複数の会社が共同で新設分割を行うことも認められるやに聞いております。  今申し上げましたように、想定される会社分割形態、方法は極めて多様でございまして、これらに係る税制の検討に当たりましては、今回提出されている商法改正法案規定だけではなくて、改正商法もとで認められます会社の資産、負債の分割の際の取り扱いの詳細、あるいは会計処理の詳細なルールの明確化が必要と考えられるところでございます。  したがいまして、会社分割に係る税制の検討につきましては、商法会計、あるいは企業会計の検討の動向などを見きわめつつ、極めて広範な税法における検討が必要でございまして、相応の時間を要するものでございます。  先ほど申し上げましたとおり、平成十三年度の改正において対応すべく、鋭意今検討を進めているところでございます。
  148. 畠山健治郎

    ○畠山委員 税制が提示されていないのは、私は必ずしも大蔵省の怠慢とは思っていません。そうした重要問題に目をつぶり、産業界の要求に沿い、当初の閣議決定さえも前倒しをした内閣の責任を問われるべきものと思っておるところであります。産業界にとっても、税制が定まらなければ、商法を幾ら改正しても、実際の使い勝手は極めてよくないはずであります。この点については、総理並びに大蔵大臣出席を得て、内閣の統一見解を求めるべきものと考えますが、この点、委員長、善処されるようにお願いをいたしたいというふうに思います。  差し当たり、大蔵、法務両省の見解をお伺いいたします。
  149. 小池信行

    小池政府参考人 会社分割制度導入するに当たりまして、これに係る税制をどのようなものにするか、これは極めて重要な問題であるということは、私どもも認識しているところでございます。先ほど大蔵当局からの御答弁もありましたように、この点につきましてはさまざまな問題があるようでございますけれども、私ども、この商法改正法の施行日に合わせる形で税制関係法律の施行ができるように、大蔵当局の方で並行して検討をいただいているものと承知しております。
  150. 福田進

    福田政府参考人 今法務当局の方から御答弁ございましたように、私どもといたしましても、この商法改正法の施行日に合わせる形で税法の施行ができますように、鋭意検討していきたいと考えております。
  151. 畠山健治郎

    ○畠山委員 時間になりましたが、通告しておる関係もありまして、最後にもう一問だけお尋ねをいたしたいというふうに思います。  この労働契約の継承の場合、会社が積み立てている退職給与引当金は、規範的なものである以上、労働契約の継承とともに当然分割会社に引き継がれるものと考えられるが、この点の確認をまずさせていただきたい。  それから、この継承法を見る限り、法運用上労働大臣が定める指針は極めて重要な位置を占めることになろうかと思います。規範的なもの、債務的なものの具体的内容が示されなければ十分な本案審議はできません。そこで、次回委員会までに指針の基本的な考え方とその内容委員会に示していただく、そして審議をさらに促進されるように補うべきものと考えますが、この点お約束を願いたいというふうに思いますし、委員長からも十分御配慮を賜りたいというふうに思います。  この二点をお尋ねいたしたいと思います。
  152. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 まず、退職給与引当金についてでありますが、この引当金は企業会計処理の一つのルールでございまして、法律により強制されているものでもなく、会社分割制度に言います承継される権利義務には当たりません。  ただ、退職給与引当金は、労働者退職金を確実に払うという観点からの会計処理上のルールだろうと思っておりますので、労働契約の一部を構成いたします支払い条件の明確な退職金、これについては当然承継されることになりますので、設立会社におきましては、承継した退職給与支払いの義務、これを全うするために、その会社で引当金処理をして必要な会計的手当てをするとか、あるいは先ほど法務省から御説明がございましたように、債務超過の会社分割はないということでございますので、通常の場合は設立会社等におきます承継された労働契約としての退職金の支払い義務は保証されるといいますか、企業において責任を持って担保するということが行われるものと考えております。
  153. 畠山健治郎

    ○畠山委員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。
  154. 赤松広隆

    赤松委員長 畠山健治郎委員から御指摘をいただきました件につきましては、法案審議の取り扱い、及び、冒頭御指摘がございました当委員会出席状況のあり方等々については、理事会等で改めて審議をお願いをするということにしたいと思います。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十分散会