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2000-02-28 第147回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年二月二十八日(月曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 西田  猛君       稲垣 実男君    村山 達雄君       岩國 哲人君    川内 博史君       山本 孝史君    青山  丘君       木島日出夫君    兼務 栗原 博久君 兼務 仙谷 由人君    兼務 山本 譲司君 兼務 石垣 一夫君    兼務 遠藤 乙彦君 兼務 若松 謙維君     …………………………………    外務大臣         河野 洋平君    大蔵大臣         宮澤 喜一君    法務政務次官       山本 有二君    外務政務次官       東  祥三君    大蔵政務次官       大野 功統君    大蔵政務次官       林  芳正君    政府参考人    (警察庁長官)      田中 節夫君    政府参考人    (警察庁生活安全局少年課    長)           舟本  馨君    政府参考人    (警察庁刑事局長)    林  則清君    政府参考人    (金融再生委員会事務局金    融危機管理課長)     山崎 穰一君    政府参考人    (法務省刑事局長)    古田 佑紀君    政府参考人    (大蔵省主計局次長)   寺澤 辰麿君    政府参考人    (大蔵省関税局長)    渡辺 裕泰君    政府参考人    (大蔵省理財局長)    中川 雅治君    政府参考人    (国税庁次長)      大武健一郎君    政府参考人    (国税庁調査査察部長)  村上 喜堂君    政府参考人    (厚生省保健医療局長)  篠崎 英夫君    外務委員会専門員     黒川 祐次君    大蔵委員会専門員     田頭 基典君    予算委員会専門員     大西  勉君     ————————————— 分科員の異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   村山 達雄君     木村 太郎君   岩國 哲人君     川内 博史君   木島日出夫君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   木村 太郎君     村山 達雄君   川内 博史君     山本 孝史君   寺前  巖君     児玉 健次君 同日  辞任         補欠選任   山本 孝史君     岩國 哲人君   児玉 健次君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     藤木 洋子君 同日  辞任         補欠選任   藤木 洋子君     木島日出夫君 同日  第一分科員仙谷由人君、第三分科員山本譲司君、遠藤乙彦君、若松謙維君、第八分科員栗原博久君及び石垣一夫君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十二年度一般会計予算  平成十二年度特別会計予算  平成十二年度政府関係機関予算  (外務省及び大蔵省所管)     午前十時開議      ————◇—————
  2. 西田猛

    西田主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  平成十二年度一般会計予算平成十二年度特別会計予算及び平成十二年度政府関係機関予算外務省所管について、前回に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。
  3. 川内博史

    川内分科員 おはようございます。民主党の川内博史と申します。  きょうは、かねてから尊敬を申し上げております河野外務大臣質問をさせていただけるということで、ありがたき幸せであるというふうに思っております。よろしくお願いを申し上げます。  私は、ドミニカという、カリブ海に浮かぶ、九州よりちょっと面積が広いぐらいの国のことに関してお伺いをさせていただこうというふうに思っているわけでございます。  約四十年前にこのドミニカに対して日本人移民方たち入植をされて大変な御苦労をされたということに関しては、国会で過去何度か取り上げられたことがございますから、大臣もよくよく御案内のことというふうに思いますが、私も当選以来、このドミニカ移民方たちの問題に関してずっと取り組んでまいりまして、外務委員会などでも事あるごとにこの問題を取り上げさせていただいているわけでございます。  なぜこの問題に関してしつこく取り上げるのかというと、まず、この移民問題の大きな争点というのが、当時の日本政府あるいは外務省の大変に稚拙な移住政策の結果であった。大変乱暴な交渉を重ねて、見切り発車というか、条件を詰めないままに日本人移民方たちを募り、ドミニカに送り込んだ。その後、ドミニカで政変が起こり、トルヒーリョ大統領が失脚をし、日本人移民方たちは満足に耕作できる土地を手に入れることもできずに、本当に言葉には言い尽くせないような御苦労をされたというふうに聞いております。  そこで、ドミニカ政府が、今般フェルナンデス大統領のもとでラ・ルイーサという地区の土地をこの日本人移民方たち無償譲渡をしましょうという決定をされ、二月十二日の日に対象者七十二名のうち二十二名の方々に仮地権交付をされたということを外務省の方から報告を受けました。  そのこと自体は大変に喜ばしいことであるというふうに思っておりますが、現地マスコミ等土地無償譲渡に関して大変に批判的な報道を繰り返ししていたというふうに私は認識をしております。今回の仮地権交付に対する現地ドミニカ方たち並びにドミニカマスコミ方たちというのがどのような反応をなさっているかということを、まず外務省さんの見解をお尋ねいたしたいというふうに思います。
  4. 河野洋平

    河野国務大臣 川内議員がかねてからこのドミニカの問題に大変誠意を持って取り組んでこられたということを私も伺っておりまして、心から敬意を表したいと思います。  世界各地にさまざまな問題がございます中で、そうした問題一つ一つを私どもも丁寧に検証しながら、確認しながら外交政策を展開する、あるいは外地御苦労されておられる方々問題解決のために努力をしていくということが重要でございますだけに、こうした問題に議員として取り組んでいてくださいますことを、お礼を申し上げたいと存じます。  私ども外務省担当者も、この問題にはかねてから当然のことながらフォローをいたしておりますし、それから、今回、私、外務大臣を拝命いたしましたとき、同時に総括政務次官として東政務次官が就任をされました。この問題については東総括政務次官にいろいろとフォローもしてもらっておりますので、随時東総括政務次官からも御答弁を申し上げたいと思います。  先般、お話しのように、フェルナンデス大統領日本へ訪問をされました。二月のことでございますが、小渕総理とも首脳会談をされました。両首脳、いろいろな話をされたようでございます。ようでございますというのは、私は実は首脳会談外地に行っておりまして、出席できずにおりましたのでこう申し上げるわけでございますが、フェルナンデス大統領日本に対して大変高い評価をしておられるようでございまして、そのときにも、伺いますと、ドミニカはカリブの日本を目指しているんだというような御発言もあったやに伺っております。そういうフェルナンデス大統領日本に対しますお考え、お気持ちというものもあって、こうした問題を何とか解決したいというお考えであったのだろうと思います。  今お尋ねの問題は、昨年来、我が方大使館土地周辺地域ドミニカ方々との話し合いの機会を持っておりまして、地域住民団体代表は、大使館との対話によって、今回の決定周辺コミュニティーへもいずれ恩恵をもたらすことになるだろうということを理解した、そして、結果として日本人入植歓迎する旨述べたというふうに報告を聞いております。  そして、今議員からお話がありましたように、今般の仮地権交付後は、周辺住民方々は、自分たち地域日本ドミニカ親善象徴となるようなプロジェクトがもたらされるという期待を持っておられて、ある意味ではそうしたプロジェクトがこの地にやってくるということは地域の発展のために非常にいいことだ、自分たちは手を携えて協力もしていきたい旨述べておられるというふうに報告を受けております。  また、そうした報告だけではなくて、若干客観的な評価といいますか、昨年、第三者機関が行いましたアンケート調査でも、日本人入植歓迎するドミニカ人大勢を占めている。もちろん、不安を持っておられる方、これに対して消極的な方々もおられるということは私どもも聞いておりますけれども大勢日本人入植歓迎するというのが第三者機関アンケート調査で出ているというふうに報告を受けているところでございます。
  5. 川内博史

    川内分科員 今外務大臣から、現地人たち日本人移民方たち土地を分け与えることに関しておおむね歓迎をしているという御答弁があったわけでございますが、大臣、それは事務当局の勝手な報告であって、それを大臣もそのまま信じるほど、もっともっと賢明な大臣であるというふうに私は思っております。  実は、二十二名の方たち土地の仮地権交付するとした日に、二月十二日、全くマスコミに公開していないんですね。いわばないしょでこの二十二名の方たちを呼んで、こっそりと仮地権交付したということでございますが、この仮地権交付現地マスコミに対して全く公開されていなかったということを、大臣事務当局から報告を受けていらっしゃいますでしょうか。
  6. 河野洋平

    河野国務大臣 二月の十二日という日は、既に大統領日本に来ておられたと承知をいたしております。随行してこられた方々とも若干のお話をさせていただきましたけれども、この問題について特段難しいお話を私は聞いておりませんで、今御指摘がございましたように、マスコミとの対応あるいは外部への発表ぐあい等については、私ども現地での対応ぶりは詳細は聞いておりません。
  7. 川内博史

    川内分科員 フェルナンデス大統領の来日に合わせて、本来であるならば、大臣が冒頭に答弁されたように、日本ドミニカ友好親善象徴としてラ・ルイーサ土地無償譲渡というものがあるとすれば、現地方たち歓迎をしているということなんですから、もっと大々的に扱われてもよかったはずなのに、なぜかこっそりと行われた。私は、ここにドミニカ日本人移民方たちの問題の根の深さというか、問題はもっともっと深いところにありますよということを示唆しているような気がするわけでございます。  続けてお尋ねをさせていただくならば、外務省報告によりますと、今回の土地無償譲渡というのはフェルナンデス大統領政治的決断政治的英断によるものであるというふうに、外務省領事移住政策課のおつくりになられたペーパーの中に出ておりますけれども、その政治的決断根拠政治的英断根拠というものは何なのか。ドミニカという国は大統領決断すれば何でもできる国なのか。決してそうではないと思うんですね。  その大統領政治的決断根拠となっている法律なり条文なり、あるいは条項なりというものをお示しいただきたいというふうに思います。
  8. 東祥三

    東政務次官 私の方から答えさせていただきます。  先ほど大臣からお話ありましたとおり、川内議員がこの問題に対して、本当に深い次元から、また過去の経緯を踏まえながら、いろいろと大変苦労されている日系人のために御苦労をいただいていることに対しては、私の方からもその御尽力に対して敬意を表する次第でございます。  また、私も、平成九年から、日系人移民方々訪日されるたびに、彼らの今までの、四十年前にさかのぼる歴史的な経緯の中で、大変苦しみを味わっていることを直接聞いている人間でもありますし、そういう意味でも、ある部分においては川内議員と共有するものもあるということをまずもって述べておきたいと思います。  そこで、今の御下問に対しては、今回の無償譲渡決定というのは、平成十年七月の本件措置に関する発表の中で、ドミニカ農地庁長官は、大統領決定によって、ドミニカ政府の過去の負い目を解消するために、日本人移住者対象七十二家族に土地無償譲渡する旨、述べております。  この件は、我が国との関係を重視する、先ほど御言及ありましたフェルナンデス大統領の誠意ある政治的決断と我が政府としては評価しておりまして、先ほど外務大臣からお話がありましたとおり、先般、小渕総理より、フェルナンデス大統領訪日の折、大統領に直接その謝意を表明したところでございます。  このことは、また、昨年三月に発せられました大統領令に基づいて、ドミニカ外務省口上書によって確認され、実施されるものであります。  また、権限はどこにあるのか、法的根拠はどこにあるのか、そういう御質問でございますが、我が国はもとよりドミニカ憲法有権的解釈を行う立場にはありませんけれども同国憲法の第五十五条は、大統領大統領令を発する権限を認めているものと理解いたしております。
  9. 川内博史

    川内分科員 今の総括政務次官の御答弁では、大統領決断根拠となるのは、ドミニカ憲法五十五条の大統領令の公布をすることができるというところにあるということでございます。  したがって、次の大統領、例えば八月にドミニカ大統領選挙を迎えるわけでございますが、フェルナンデス大統領の再選というのはないわけでございまして、新しい大統領になったならば、また次の大統領がやはりこのラ・ルイーサ土地の問題に関しては白紙に戻すという大統領令を出したならば、この土地の問題は白紙に戻ってしまうという可能性もないわけではない。政府間の約束である口上書を取り交わしたということでございますけれども、その口上書フェルナンデス大統領政府との口上書であって、次の大統領に継続されるものであるということに関しては、私はいささかの疑問を持たざるを得ないわけでございます。  非常に根拠が薄弱なのではないか。大統領令によって、大統領決定をしたから土地無償譲渡されるのであるというのは、非常に根拠としては薄弱であって、議会も通さない、だからこそ、なぜかマスコミにもプレスにも公開することができずに、こそこそとしなければならないのではないかということを私は思わざるを得ないわけです。  八月までの間に、ドミニカ大統領選挙まであと半年しかないわけでございますけれども、その間に、土地の自由な売買とか、あるいは本当の意味所有権、本地権というものが取得できる可能性、見込みというのは薄いわけでございまして、また四十年前と同じ過ちを繰り返すのではないかというふうに私は思ってしまうんです。六カ月の間にすべてのこのラ・ルイーサ土地の問題を解決できるというふうに外務省として確信を持っているのか、それとも難しいというふうに思われていらっしゃるのかということを次にお尋ねさせていただきたいと思います。
  10. 東祥三

    東政務次官 前者の部分に関しては、まさにこの問題というのは四十年前にさかのぼる歴史があります。そして、昭和三十一年から三十四年にこの問題が起こる根があるわけでございますが、御案内のとおり、ドミニカ共和国はその当時、トルヒーリョ大統領によって政権を持たれていた。トルヒーリョ大統領がその後暗殺される。その結果として、この事態をいかに改善していったらいいのかというてこを失ってしまうわけですね。したがって、そういう事態もちゃんと含んだ上で、同じような、つまり政権交代になったときにこの問題がほごにされないようにという、そういう思い大統領が発布した命であったとしても、我が方としてもちゃんと口上書という、協定、条約に次ぐ公式文書を昨年の四月受領したわけでございます。  この中で、ドミニカ側は、早期の地権交付土地管理責任者を約束しているわけでありまして、このことによって、政権交代があってもドミニカ政府本件措置を履行することが明確になったと私たちは思っておりますし、また、これを踏まえた上でぜひこの問題を解決していきたい、また解決していかなければならない、このように私たちは思っております。
  11. 川内博史

    川内分科員 例えば条約とかそういうものであれば、議会を通さなければならないわけですね。大統領令土地無償譲渡することを決めて、それを口上書によって確認した、担保されたのだというふうに事務当局は思っているかもしれないけれども大臣総括政務次官も、今は政府のお立場でいらっしゃいますけれども、もともとは議会人でいらっしゃいますよね。そうしますと、国有財産を第三国の人々にただで分けてあげますということを、その国の最高の権力者が勝手に決めて、行政措置として勝手にやった場合、議会がそれを、日本であれば私たちは許さぬと思うのですよ。一体何をやっておるのですかということになると思うのです。  その辺に関して、外務省の仕事の進め方というのは非常にずさんだ、その四十年前からのずさんさがまた今日も続いているのではないかということを繰り返し繰り返し私は申し上げているわけですけれども大臣、いかがでしょう。
  12. 河野洋平

    河野国務大臣 過去を振り返りますと、やはり議員指摘の四十年前、すなわち戦争が終わって十年前後という時点でございますから、現在と比べれば情報量も大変違うでしょう。それから国力も大変違うという状況下でされた判断と、現在のように日本ドミニカ関係も言ってみれば大変にいい関係になった。先ほど申し上げましたように、ドミニカの、今議員はもう八月に交代するではないかと。それはもうルールで決まっているわけですから、八月の交代は既定の事実だと思いますが、少なくとも現職の大統領は、あれだけの、大臣その他政府関係者を引き連れて訪日をされて、そして日本ドミニカ首脳会談においても日本側から言及をし、向こうもそれを受けるという状況があれば、この問題はそう軽いものだというふうには私は思わないのでございます。  さらに、移住者方々が、最近そこへ行ってたまたまこういう事態になったというのではなくて、もう相当長い年月、苦心苦心を重ねておられるその状況も、ドミニカ国民の関心を持つ人の中には評価をする人もいるわけでございまして、そうしたことを踏まえて大統領判断をされたというふうに思っておりまして、それが全く根拠のない唐突な判断ということとは違うだろうというふうに私は思っております。  日本ドミニカの、国と国との関係も今後さらに進展をしてまいりますでしょうし、そうした総体的な、総合的な判断をすれば、この大統領令というものが、だれが後継者になるにせよ、そう簡単に覆されるということはないというふうに私は判断をいたしております。  確かに、詰めが甘かった過去があるではないかという御指摘があれば、それは現実にそういう状況が今あるわけですから、そこまで私は否定をいたしませんけれども、少なくとも今回の判断については、つまり今後六カ月、大統領がかわるまでにという議員お話でございましたけれども、今回の仮地権の問題についても、六カ月以内にこれが本地権に変わっていくということも想定をされるわけでございますから、私はこの問題がそう軽い決定というふうには思いませんし、この決定に同意をして積極的に地権者となる方向を選ばれた方々が、必ず、その御判断はいい判断であったという結果をもたらすに違いない、またそうしなければならぬ。この点については我々も積極的にバックアップをしていかなければならぬというふうに思いますし、私はこの判断を支持し、評価したいというふうに思います。
  13. 川内博史

    川内分科員 私も、何も問題が起きなければ、今回の大統領の御決断というものに関してはありがたいことだ、現地方々にとってはありがたいお話であるというふうには思っているわけでございますが、いかんせん、その法律的な根拠あるいは国民的なコンセンサスというものがない中で、ひっそりと二十二名の方が仮地権交付を受けたということを聞きまして、何かこの問題の先行きというものを暗示しているような気がしまして、若干の危惧を持っているものですから、今回、ちょっとしつこく取り上げさせていただいたわけでございます。  三十分などというのはあっという間に過ぎてしまいますから、この土地の問題が、現地日本人移民方たちコンセンサス、そしてドミニカ国民方々コンセンサス、両方のコンセンサスがうまくとれる中で解決をされていくことをこれからも、私、次の選挙に必ずまた当選をして戻ってまいりますので、引き続き取り上げさせていただきますので、よろしくお願いしたいというふうに思うわけでございます。  最後に、河野大臣の前任の高村大臣日本人移民方たちに、外務大臣として初めて面談をしていただいたわけでございますが、そのときに、高村大臣からは、高齢者方々生活が困窮をしていらっしゃるだろうから、そういう方たちについては政府としても何らかの措置を講じていきたいという思いお話しいただきまして、訪日をされた移民方たち代表団方たち、大変お喜びになられました。  この何らかの措置というものが今日に至るまでとられていないわけでございまして、それこそ河野大臣大臣令でもいいですから、その措置というものをしっかりとっていただければ、これはだれも文句を言わぬと思うのですよ。フェルナンデス大統領土地を配ると言えば、いろいろなところで多分これから文句が出るでしょう。だけれども日本人移民方たちが苦労している、この方たちを何とかしてさしあげようということは、もうちょっと迅速に何かしてさしあげたらいかがなものかというふうに思うのです。  最後に、高齢者方たちに対して、一カ月五万円という現地方々からの要望も具体的に出ているのですね。その辺については、外務省の職員の方々ドミニカまでしょっちゅう出張に行く旅費を考えれば、金銭的にはそんなに変わらないですよ。ドミニカに行く出張をやめて、その分現地人たちにしっかり月々の援助をする、サポートをするというような方向に考えていただけないものか。それは恐らくだれも文句を言う人はいないと思いますので、その辺についての大臣の決意というものを最後にお聞かせいただきたいというふうに思います。
  14. 河野洋平

    河野国務大臣 議員指摘のように、昨年八月に、訪日された移住者方々高村大臣と懇談をされました。その際、移住者側から、高齢者対策が喫緊の課題である旨の御発言がございました。これを受けて、前大臣より、在外邦人保護謝金対応したらどうかという旨の御発言があったわけでございます。  外務省は、ドミニカ高齢者対策を検討するため、早急に高齢者実態調査を実施する必要があるということで、その際は協力を願いたいということを移住者側に申し上げまして、現在、その具体的段取りについて作業をしているわけでございます。御承知のとおり、日系人協会、それから日本人会、二つの団体といいますかグループがございます。その両団体とそれぞれ協議を行っているというのが現状でございます。  御承知のとおり、在外邦人保護謝金は、本来、海外に在留する困窮した邦人を援助した相互扶助団体活動を支援する、ちょっと面倒な言い方をして恐縮でございますが、相互扶助団体活動を支援するためのものでございます。昨年十一月に再度移住者方々訪日された際に、東総括政務次官がお目にかかって、移住者方々に対しまして、ドミニカにおいても、他の国の日本人移住社会と同様に相互扶助システムの育成が可能であること、そのため、現地我が方大使館も可能な限り支援していく旨申し上げたところでございます。  現状その他については政務次官から。
  15. 東祥三

    東政務次官 ドミニカにおける在外邦人保護謝金の給付につきましては、平成七年度より既に実施しておりまして、本年度前期分については、十五名分、合計一万三千四百四十八米ドルを、日系人協会日本人会を通じて給付いたしているところでございます。  現在、後期の謝金について、移住者の申請に基づいて給付するよう、日系人協会日本人会、両会と大使館で話し合っているところでございます。
  16. 西田猛

    西田主査 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。  次に、仙谷由人君。
  17. 仙谷由人

    仙谷分科員 外務大臣、御存じだと思いますが、一昨々日、二月二十五日に、サハリン残留韓国人の永住帰国者に対するアパートが完成をいたしまして、入住式というのが行われました。残念ながら、なぜか現職の日本の政治家は、国会の関係があるということで招待をいただけなかったのかどうかわかりませんが、いずれにしてもだれも参加をしていなかったということでございます。  ちょっと話が飛び飛びになるわけでありますが、これに出席をしなかった、できなかったことは甚だ残念なのでありますが、多分河野外務大臣外務大臣になられる前に、FDLAP、ザ・フォーラム・リーダーズ・オブ・イン・ザ・アジア・パシフィックでしょうか、アジア太平洋民主指導者会議の方から御招待をいただいて、外務大臣になられたにもかかわらずというと語弊があるかもわかりませんが、外務大臣になられた後に、昨年の十月二十五日にソウルで開かれたアジア太平洋民主指導者会議に御出席をされました。私も偶然、招請を受けておったものですからソウルへ参りましたら、大臣とお会いして、ある種の感慨といいましょうか、感動をしたわけでございます。  そこで話されておりましたことは、金大中大統領という方は、民主化と人権について、とりわけアジアの中にそういう普遍的な価値観をこれから根づいていかせなければならないし、それはまたアジア本来の思想にも基づくんだという見識といいましょうか哲学があって、大統領になられてからも、この種の会議、アジアにおける人権状況あるいは民主化の動向について、深い洞察と危機感を持ってリーダーシップを発揮しなければいけないというお気持ちであるように私は感じ取ったわけでございます。  大臣も、アジアの中で日本があるいは日本の政治家がリーダーシップをとっていかなければならないというお気持ちは、日本の政治家の中でも相当お強いように思うのですね。そういう観点から大臣が出席されたのじゃないかと思います。  そこで、ちょっとさかのぼりますと、金大中大統領日本に来られて、一九九八年十月八日に国会で演説をされております。  日本と韓国の関係、韓日関係を未来志向の関係に築いていくべきときを迎えた。過去を直視することは、歴史的事実をありのままに確認することであり、未来を志向するということは、確認した史実から教訓を得て、よりよいあしたを模索するという意味である。日本には、過去を直視し歴史を恐れる真の勇気が必要であり、韓国は、日本の変化した姿を正しく評価しながら、未来の可能性に対する希望を見出す必要がありますと演説をされたわけであります。  私はこれを聞いておりまして、時代的に韓国も、これは私の見方でありますが、ある種の、北と南の抗日競争といいますか、これについに終止符を打って、韓国は韓国で、日本に声高に要求するだけじゃなくて、日本現状、いいところといいましょうか、評価すべきところはちゃんと認めていこう。あるいは、経済社会を含め、韓国のいろいろな分野に対する日本の貢献も認めていこう。しかし、過去をきちっと認識して、清算をすべきところは、これは日本の問題、日本人の問題で、それはやはりきちっとやっていただかないといかぬのだけれども、それを声高に要求するということはもうやらないという、ある種の双方の主体性を認め合った上で未来志向の関係を築いていこうというお考えだなということで、感銘を受けながら演説を聞いたわけであります。  つまり、日韓の歴史あるいは北と南の抗争といいましょうか、厳しい対峙の歴史を多少振り返ってみますと、これはなかなか思い切ったことをおっしゃる、あるいは深い洞察に基づいているなという感じがしたわけであります。  したがいまして、日本はこの段階からある意味で、金大中さんといいましょうか、韓国の方から、あなた方はどうするのですか、この問いかけにどうおこたえいただけるのでしょうかねというボールを投げかけられて、日本の方が、まさに日本人の歴史認識と、そしてこれから具体的な行動で何を示すのかということが問われている、そういうボールを投げかけられて、一つ一つきちっとこたえていかなきゃならない時代に入ったのだなという認識といいましょうか、感慨にふけったわけでございます。  こういう金大中さんのお考えに対して、外務大臣はその時点で、あるいは現時点でも結構でございますけれども、どういうふうにお考えでしょうか、あるいは、韓国に対してどうこたえるべきだとお考えなのでしょうか。
  18. 河野洋平

    河野国務大臣 議員お話しのように、私も韓国金大中大統領日本の国会本会議場におきます演説を非常に感動を持って聞きました。今考えてみると、あの演説と申しますか、あの時点を契機にして、日韓関係は劇的に変化したのじゃないかというふうにすら私は思っているわけでございます。  韓国は非常に率直に、お互いの文化を評価する、排除をするのではなくて、お互いに積極的に相手の文化を評価して、取り入れるべきは取り入れていこうということを韓国側から呼びかけられたということでございました。  今議員お話しのように、未来志向ということを非常に明確に言われて、その後私も大統領にお目にかかりましたときに、未来志向に移るために我々がすべきことは何だろうかということをちょっと伺ったことがあるのですけれども大統領からは一言、それはあなた方がお考えになることです、私の方から申し上げることではありませんということを言われて、非常に恐縮したといいますか、恥ずかしい思いをしたことがございます。まさに我々は今、新しい日韓関係をつくり上げるために日本が何をしなければならないかということを、日本自身が考えなければならない場面にいるというふうに思います。  日本と韓国との過去の長い歴史の中にさまざまな問題があって、そうした問題を我々は一つ一つ正しく認識をする、正しく判断をするということを考えなければなりません。そして、勇気を持ってその歴史に対応するという必要があると思います。子供たちにとっても、そうした正しい歴史を知ることが必ずやプラスになるというふうに私は考えて、このためにいささか努力をしたいというふうに思っている次第でございます。  日韓関係は、長い間、経済的にも相当大きな格差がございましたから、一方的に日本側が韓国に経済的な支援をする、これは人道的な点に着目をするということもございますし、それ以外のいろいろな判断というものもしなければならないという状況でもございました。しかし、韓国は韓国なりの努力によって、今は経済的にも、立派な経済の仕組みをつくり上げ、経済成長率でいえばはるかに我が国を上回る経済成長率を持っているわけでございまして、これからはむしろ、そうした点では対等に考えながら、我々がすべきことをきちんとしていくということが大事だというふうに考えております。
  19. 仙谷由人

    仙谷分科員 そこで、サハリン残留韓国人問題でございますが、ちょっと粗っぽく、外務大臣とこの問題のかかわりを振り返ってみましたら、外務大臣が官房長官のときに、当時の社会党の五十嵐広三議員から質問を受けて、五十嵐議員の認識なりあるいは解決方への議論、これについては、尊敬する先輩大臣の御発言は全くそのとおりと感じておりますというふうにお答えになって、すべて原文兵衛先生や五十嵐先生が切り開いてこられた道筋の中で、政治的にも道義的にもこれは力を入れて解決しなければならないというお気持ちであったと思います。  今申し上げたのは多分九三年の三月でございますが、九五年には、外務大臣がいわゆる自社さ政権の中での外務大臣になられておって、今度は五十嵐さんが官房長官、この九五年に、今回完成しました永住帰国者のアパート、それから昨年の三月に完成して入所が始まっております仁川、インチョンの療養院、特別養護老人ホームのようなものでありますが、私も招待されてオープンパーティーに行ってまいりましたけれども、これに要する費用、両方で三十二億円の拠出が決められて、日韓双方の赤十字社の共同事業体に拠出がされた。  思い起こしますと、これは九五年でございますから、五年間かかってようやくこの三十二億円がまあまあ有効に使われて、箱物が、外側は完成した、こういうことになるわけであります。したがいまして、外務大臣はこの両方に深くおかかわりになっておるのだな、こういうことを改めて私も思い出して認識をしたわけでございます。  そこで、私は、一昨年、九八年の三月十九日に、やはりこの分科会でこの問題について質問をいたしました。当時は今の総理大臣小渕さんが外務大臣でございました。当時は安山のアパートの進捗がはかばかしくないということでございまして、その年の夏に、八月の十四日、十五日に安山まで私参りまして、現地の建設担当者やあるいは統一部の高官等々ともお会いしましてお話をしたり、進行状況を見たりしてきたわけですが、今回は、箱物というか、建物としてはすばらしい住宅が完成したということであります。  問題は、九八年段階からも私は申し上げておったのですが、箱物はできて入居はできたけれども生活ができるのですか、生活が非常に大変なんじゃないですかということを申し上げてきました。そして、九八年の八月に安山を訪問したときに、その足で、当時は登村というところに、永住帰国者がいわば公団のアパートのようなところに分散して入っていらっしゃる方がいらっしゃいましたので、その人たち、それから韓国人でボランティアでその人たちをお世話している人たち、そういう方々とも懇談をして要望やお話を聞いてまいったわけであります。  簡単に言いますと、夫婦で約五万円の生活費が出る、しかし、電気、水道、光熱費を除くと四万円ぐらいだ、これでは生活ができないということであります。特に、今回でき上がった安山のアパートの周辺は、韓国の方に言わせると中の上ぐらいの階層が高層マンション的なところにお住みになっていて、非常なる生活水準の違いが出ておる。例えば、スーパーマーケットとかコンビニのようなところも、そういうところに買いに行くと、物価が高くてなかなか買えないというようなこともあるようであります。  現実に、非常にお年を召して、つまりこの五十五年の歳月というのは非常に長うございますから、お年を召して永住帰国されておりますから、今から仕事につくといっても甚だ難しいわけでございまして、この方々生活費を何らかの仕組みで支援する手だてがないと、一挙にスラム化したり、そしてそのことによって差別的な状況が生まれたりということがあるのではないかということを当時から聞かされておりまして、やはりここは年金とか、あるいは安山のアパート群の一角に特別養護老人ホームのような療養院みたいなものが必要になってくるのではないか。  それで、今までのことを考えますと、予算的にもそれほど無理のないことでできるのではないだろうかなという感じがするものですから、その検討を、つまり、日韓双方の赤十字の共同事業体にその事業をやっていただくという方式で、日本がやはり予算措置をすべきではないか、こういうふうに考えて、小渕外務大臣にもその一部のことについてお願いをしたわけでございますが、検討するといったような話がその当時ございました。  約二年間たっておるわけでございまして、今回安山の永住帰国者用のアパートが完成したということで、新たな段階にこの問題は入ってきたというふうに考えまして、外務大臣にその辺ひとつ政治決断で、ファンドをつくり、金銭的な支援措置を行うという指示をひとつ決断していただきたいと思って、きょう質問に立ったわけでございます。
  20. 河野洋平

    河野国務大臣 御質問をいただきますと、私も大分長いことこの問題にかかわり合いを持ってまいりまして、その中で、かつての参議院議長原文兵衛先生の御人徳というものが非常に大きかったし、それから五十嵐先生の御熱意というものがこの問題を引っ張ってこられたということが思い出されます。  確かに、原文兵衛先生、五十嵐さんの御努力、御尽力というものはあったわけですけれども、何といいましてもこの問題は、ロシア側の判断、ロシア側の決断もなければならぬ、韓国側の決断もなければならぬ、同じように日本側決断がなければならぬということがございまして、随分長い年月を要しましたのは、それぞれの国にそれぞれの国内事情があって、ロシアにはロシアの国内事情もございましたし、韓国には韓国の国内事情もあって、この問題はなかなか進まなかった時期もあるわけでございます。  他方、対象者となるべき方々が一体どのくらいの人数で、しかもそれぞれがどの程度の生活をしておられるかということは、もう本当に一人一人千差万別。ロシアで比較的うまく生活をしておられる方もある、あるいは子供さんがロシア人と結婚したというような事情を持っておられる方もある。そうかと思えば、やはり一日千秋の思いで韓国への帰国を願っておられる方もおられる。さらにまた、その一人一人が、経済力といいますか、経済的な環境に比較的恵まれている方もあれば、非常に困難な生活をしておられる方もある、健康状態もそれぞれということもあって、なかなかこれは難しくて、正直言いますと、当初は一人一人に何かできないかということがあったわけですけれども、それはそれぞれの国の事情で一人一人というのは無理だ、したがって、こういうプロジェクトにどうするかということから、永住帰国者のアパートといいますか住宅を日本側でつくろうということになったわけでございます。  さて、そこで、先生見ていただいたものが、箱物といいますか、建物ができ上がりました。しかし、ここに入れる人の数は限られているわけです。たしか五百人ぐらいの方々を受け入れる、そういう施設でございまして、サハリンというか、ロシア側にはまだ恐らく、そこがうまくいけば帰りたいと思われる方もあるでしょうし、あるいは今でも帰りたいと思っているけれども、受け皿がそれだけの数がなくてお待ちいただくというか、ここまでということになっている部分もあるわけでございます。  そういうことになると、いい施設ができてそこに入れた、戻ってきてそこで生活ができるようになったという状況がまず第一段階で、今議員指摘のとおり、そうした人たちがさらに年金が受けられるかどうかとか、あるいは老後の不安にどう対応するかという問題になりますというと、これはまた韓国におきます政策との整合性、つまり、見ていただいたように、あそこは住宅地の一角にそういう建物をつくって、その周辺にもたくさん韓国の方々が住んでいらっしゃる、そういう方々との間の整合性もあるでしょう。政策的な整合性もあると思いますし、それから生活そのものが交流できるのかできないのかという問題もあるだろうと思うのです。  したがって、先生からの御指摘は、仏つくって魂が入らないではないかということをおっしゃっておられると思うのです。ここまでやったんだからもう一息何とかやったらどうかという御指摘は私個人としてはよく理解できますが、そういうことになると、サハリンの人たちとの間のバランスをどういうふうに考えるかということ、あるいは韓国自体の政策との間の整合性をどういうふうにするかという問題等もございまして、まだまだ考えなければならない点も多いと思います。  そこで、先生から御指摘がございましたから、私は、韓国側の御判断、お考えというものもやはり伺わなければならぬと思いますし、それから、もちろん残された人たちとの間のことも考えなければなりません。  まだ考えるのかとおしかりをいただくかもわかりませんが、少し考える時間をかしていただきたい。私は、必ずしも、その人たちだけが非常にうまくいって、取り残された人たちのことを考えなくていいというわけにもいかない。しかし、取り残された人のこともあるのだから、この人たちのことも余り高いレベルまで支えなくてもいいではないかというのでは、余りに残念な気がいたします。  私としても、長くかかわり合ってきた人間として、もう少しお時間をいただいて研究をさせていただきたいということをきょうは申し上げて、御理解をいただきたいと思います。
  21. 仙谷由人

    仙谷分科員 方向性が、やはり仏つくって魂を入れるという決意のもとに検討させ、あるいは韓国政府と折衝を開始するというふうにぜひしていただきたいと思います。  さらに、時間がございませんので、あわせてお伺いするわけでありますが、今度は、残された人のことをおっしゃいましたけれども、残された人が一時帰国者の親族とかなんとかという人がまだサハリンに当然のことながらいます。今、一時帰国、永住帰国の事業が、拝見いたしますと約一億六千六百万ぐらいの年間予算で外務省が継続してやっていただいているということでありまして、年間約五百人ぐらいの人たちがチャーター便で行き来するということなのかもわかりません。  一時帰国をされて安山でお住まいの方、それからサハリンに残っている方、家族関係があるわけですから、今度、韓国に帰ってこられた方がチャーター便を利用してサハリンに行ける、あるいは一時帰国者、永住帰国者の御家族がそのチャーター便を利用してソウルに会いに来る、そういうこともこの再会事業、帰国事業に含めていただきたい。先般、十六日でございましたか、サハリン老人会とか韓国人会の方がいらっしゃいまして、ぜひそれをお願いしたいという話でございましたので、これはその方向で検討をいただきたいと思います。いかがでありますか。
  22. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほども申し上げましたように、それぞれ個々具体にいろいろなバックグラウンドがあるわけでございまして、一括して今ここで結構ですと申し上げるのはどうかと思いますけれども、しかし、議員の御指摘のとおり、非常に強い御要望もあるというふうに私ども伺っております。外務省として、この問題は検討させていただきたいというふうに思っております。  繰り返して申し上げたいと思いますが、長い歴史があり、そして我々としては人道的な視点に立ってこの問題に対応してきたわけでございまして、あくまでもそうした視点で支援をしてきたということを私としては確認をして、これが韓国の政策を超える、あるいは日本全体のバランスから考えてどこまでできるかということなどについては、やはり十分検討が必要だというふうに考えておりますことを、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  23. 仙谷由人

    仙谷分科員 さっき仏つくって魂入れずの話が出ましたけれども、この問題はそもそも連れていって放置したというところが最大の問題であったわけです。  今度は、一時帰国、永住帰国については協力をする、あるいは歴史認識からして、これは政治的道義的責任の問題としてやるということでここまで来たわけですが、安山のアパート群の中で日本が実質的にまた放置をしたのと同じ状態のことをやっているではないかということになったのでは画竜点睛を欠くよりもひどい話になってくるのではないかと思います。  それから、「日本のフロンティアは日本の中にある」という「二十一世紀日本の構想」懇談会の中を拝見しますと、これは、新しい移民政策をつくるべきだ、一言で言えば、外国人が日本に住み、働いてみたいと思うような移民政策をつくらなければならないというような大胆なことが書いてあるのですね。  私は、アジアの中で日本が共生ということを文字どおり実行しなければならないとすれば、まず過去の問題は、本当は二十一世紀になるまでに解決していただきたかったわけであります。我々世代からいうと、特にそういう気がするわけでありますが、いずれにしても、遅きに失し、まあ遅々として進んでいる唯一の問題かもわかりませんが、遅々ではあるけれども進んでいるこの問題に、実態的に、日本は主体的にここまではやります、やっておりますということだけは、やはりやっていただかなければいかぬと思うのですね。これで打ち切りとか、この程度やればいいだろうなんという話ではないのじゃないか。  特に、さっき申し上げた年金、五百世帯で計算しますと、一世帯五万円として計算しますと年間たった三億円ですよ。引き合いに出すのは申しわけないのですが、吉野川第十堰に調査費でついている予算が年間四億円ですよ。だから、全く何をしているかわからないようなことに四億円も十億円も使っているような例はいっぱいあるわけですから、この三億円ぐらいの金が日本で出せないなんということはあり得ないわけです。  そういう観点からも、河野外務大臣には、河野外務大臣の、この間の韓国、あるいは金大中さん、あるいはアジアの民主化、人権への思いというような観点も含めて、ひとつ政治的な決断をして方向性を出して外務省で作業を進めていただくように心からお願いを申し上げまして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  24. 河野洋平

    河野国務大臣 いろいろ御教授をいただきましたことをお礼を申し上げたいと思います。  外務省としてでき得る限りの努力をいたしますが、年金には年金の仕組みがございましょうし、大蔵大臣もそこでにらんでおられますから、大蔵省には大蔵省のいろいろな御判断もございましょう。いろいろな面から種々検討をさせていただきたいということを最後に申し上げておきます。
  25. 西田猛

    西田主査 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  26. 西田猛

    西田主査 次に、大蔵省所管について、政府から説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  27. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 平成十二年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管及び財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、八十四兆九千八百七十億五千三百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、租税及び印紙収入は四十八兆六千五百九十億円、雑収入は三兆三千四百八十億一千六百万円、公債金は三十二兆六千百億円となっております。  次に、大蔵省所管及び財務省所管の一般会計歳出予算について申し上げます。  大蔵省所管の歳出予算額は二十兆五百二十五億五千九百万円、財務省所管の歳出予算額は四兆三千三百八十七億五千五百万円、大蔵省所管及び財務省所管の一般会計歳出予算の総額は二十四兆三千九百十三億一千四百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、産業投資特別会計へ繰り入れは一千五百九十五億三千三百万円、国債費は二十一兆九千六百五十三億四千百万円、政府出資は三千二百四十四億二千万円、公共事業等予備費は五千億円、予備費は三千五百億円となっております。  次に、大蔵省所管及び財務省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入、歳出とも三百三十四億七千百万円となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  最後に、大蔵省及び財務省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。  国民生活金融公庫におきましては、収入三千四百五十四億五千六百万円、支出三千五百七億七千五百万円、差し引き五十三億一千九百万円の支出超過となっております。  このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省及び財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録におとどめくださいますようお願い申し上げます。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  28. 西田猛

    西田主査 この際、お諮りいたします。  ただいま宮澤大蔵大臣から申し出がありましたとおり、大蔵省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 西田猛

    西田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  30. 西田猛

    西田主査 以上をもちまして大蔵省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  31. 西田猛

    西田主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木島日出夫君。
  32. 木島日出夫

    ○木島分科員 日本共産党の木島日出夫でございます。  私は、今月十四日以来、連日の新聞が大きく報道しております株式会社ネオギルド、いわゆる経営コンサルタントを中心とする一大脱税容疑問題についてお聞きをいたします。  報道によりますと、株式会社ネオギルドグループが関与した所得隠し、脱税総額が十五億円に上ると言われております。国税当局が把握しているこのグループが関与したと見られる所得隠し、脱税は、申告業者数で一体何件ぐらいになるのか、総額にしてどのぐらいの規模になるのか、また、その時期はどのぐらいの時期にかけて行われたのか、現段階で把握している全体像を明らかにしていただきたい。そして、それを前提にして、これからの調査、捜査、処分の見通しについて、まずお聞きしたいと思うのです。  これは、後から時間の許す限り触れたいと思うのですが、この一連の事件には国会議員の秘書がかかわりを持っているのじゃないか、そしてまた、会計事務所の職員がかかわりを持っているのじゃないか、また、大蔵省から国会との窓口として設置されている政府委員室の職員が関与しているのじゃないか、あるいは、当該国税の職員の関与も取りざたされている。本当にゆゆしい、国税、税務行政に対する国民の信頼が根本から問われている、そういう事件になってきていると思うのです。  越智金融再生委員長の発言問題に見られるような、金融検査行政、監督行政に対する国民の信頼が失墜している、また、神奈川県警、新潟県警の問題に見られるような、警察、司法行政に対する国民の信頼が根本的に失墜している、その同時期にこういう事件が噴き出しているということはゆゆしい問題だと私は思いますので、まず国税から、全体像を御報告願いたい。
  33. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 いわゆる脱税コンサルタントにつきましては、納税秩序の維持に及ぼす悪影響を考慮し、積極的に査察調査をしているところでございます。  なお、一般論として申し上げますが、いわゆる脱税コンサルタント事件とは、脱税を依頼する者、脱税を請け負う者、それを仲介する者の三者がおるわけです。全体で数十人にも及ぶケースがございます。  まず、脱税を依頼した者でございますが、そのものにつきましては適正な課税を行い、その中で大口、悪質なものにつきましては所得税法違反または法人税法違反に問うことになります。  次に、脱税を請け負った者、いわゆる脱税請負人と言われるものでございますが、これは脱税行為への関与度合いを勘案し、当該脱税の行為者として所得税法違反または法人税法違反に問うことになります。また、本人が受け取った謝礼金につきましては適正な課税を行い、当該脱税報酬が多額に及ぶ場合には所得税法違反に問うことになります。  さらに、単なる仲介者につきましても適正な課税処分を行うことになります。  今回の事件につきましては、ただいま先生御指摘のように、種々新聞報道等がなされていることは十分承知しておりますが、お尋ねの件は、個別にわたる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、このようないわゆる脱税コンサルタント事件につきましては、厳正に対処していく所存でございます。
  34. 木島日出夫

    ○木島分科員 私もこれまでこの種事案について、いろいろ国税当局の皆さんにお尋ねしたこともございます。個別事案についてはなかなか、守秘義務の関係あるいはプライバシーの関係もこれあるのでしょう。ですから私は、個々の事件について一つ一つ深入りして聞こうということで質問を立てているわけではないのです。それは当然承知の上で組み立てて、配慮して質問をしているわけであります。  まず、脱税依頼者数十社というのですが、もうちょっと具体的に、何社ぐらいなのか、明らかにできませんか。  それから、請負者について、何人ぐらいが具体的に関与しているのか、人数を報告できませんか。  また、仲介者、これがいわゆる国会議員秘書等々重大な立場にある人たちが関与しているのではないか、そういう疑惑があるわけですから、その人数などについてももうちょっと具体的に報告すべきではないですか。  そして今、これからも調査が進展する中で金額はふえるかもしれませんが、現時点で把握している脱税総額、所得隠し総額、大体どのぐらいの金額になるのか、そのぐらいは報告して当然だと思うのです。  もう一度、再答弁願います。
  35. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 お答えいたします。  先生御案内のとおり、税務職員には、通常の国家公務員より重い守秘義務が課されているわけでございます。したがって、従来から、個別事件についての答弁は差し控えさせていただいているところでございます。  今、ややアバウトな件数とか税額というお尋ねもございましたが、特定の事件を指定してそういう関連事項を明らかにすることも、やはり守秘義務に違反すると考えております。
  36. 木島日出夫

    ○木島分科員 大蔵大臣、お聞きのとおりなんですね。特定の事件、この申告納税者の納税について、どう脱税が行われ、どのくらいの金額の規模の所得隠しがあったか、それを一つ一つ根掘り葉掘り聞こうとしているわけじゃないのですよ。しかし、これは先ほど私が言ったように、非常に重大な問題を多々秘めている一大脱税容疑でありますから、その全体像を示すのは決して守秘義務なんかに当たらないと思うのですよ。そんな態度では、私は、国税庁、大蔵省の税務行政に対する国民の信頼は到底回復することはできないと厳しく指摘したいと思うのです。  大蔵大臣が最終責任者なのですが、どうですか。もうちょっと具体的に報告させても全く守秘義務なんかには触れないと思うのですが、大蔵大臣、どうですか。
  37. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 案件のうちには、いずれ明らかになりまして、明らかにしていい段階になりますれば申し上げる部分があると思いますが、ただいまのところは、政府参考人が申し上げましたように、これは守秘義務に当たると思います。
  38. 木島日出夫

    ○木島分科員 大変不満であります。  既に、新聞報道等によれば、東京国税局は、そのコンサルタントグループがかかわった脱税事件について今週中にも東京地検に告発するという方針だと出ております。人数や名前までもマスコミには報道されているわけであります。  改めてお聞きをいたしますが、どういう場合に告発をするのか、その告発の基準をお示しいただきたい。それから、告発の手順ですね。いわゆる検察当局との事前協議等々が行われるのかどうなのか、そういう手順についても、これは一般的なものですからお示しいただきたい。  そして、先ほども抽象的には答えましたが、本件一連の事案の中で大体今何件ぐらいの申告案件を告発対象として検討しているのか、そのぐらいは答弁すべきだと思うので、答弁願います。
  39. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 査察の一応の法律上の構成要件を申し上げますが、一つは、偽りその他不正の行為があること、二番目は、逋脱の結果が発生していること、要するに未遂ではないということであります、三番目は、一般の刑法犯と同様犯意があること、この三つが構成要件でございます。  具体的な査察事件について、特段基準というのはございません。なぜならば、個々の事案ごとに脱税の態様は異なり、非常に個別性が強いものでございますから、告発するに当たりましては、脱税手段の悪質の程度、それから脱税の規模並びにその刑事立証のための証拠収集の程度、そういう問題をもろもろ総合勘案いたしまして、個々の事案ごとに検察庁と十分協議し、告発の容疑を決定しているところでございます。
  40. 木島日出夫

    ○木島分科員 悪質の質の程度というのはなかなか難しくて、答弁が難しいでしょうから、きょうは聞きません。規模は、これは数字で出てくるのですから、答弁できるでしょう。どんな程度の規模に達した場合には告発対象と考えているのか、そのぐらいは答弁してください。
  41. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 規模につきましても、それは例えば所得税あるいは消費税といった税目によって違ったりしますので、過去の判例を見ていただくのも一つの方法かと思いますが、必ずしも規模も決まっているものではございません。
  42. 木島日出夫

    ○木島分科員 このぐらいにしておきましょうか。  悪質の質の程度の深さと規模、金額とは相関関係だ。どんなに金額が小さくても、その脱税のやり口、手口が本当に悪質な場合には告訴することもあり得る。逆に言うと、金額がちょっと大きくても、その質がそれほど悪質でなければ告発しないこともあり得る。そういう相関関係を持っているというふうに考えてよろしいですか。
  43. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 そのとおりでございます。
  44. 木島日出夫

    ○木島分科員 守秘義務を盾にとって、もうちょっと具体的に答弁すべきかと思いますが、その程度の答弁であります。  時間の関係上、次に進みたいと思うのです。  この一連の事件で最大の重大問題は、いわゆる仲介者の中に、現職国会議員、現職大臣の秘書が関与していたという問題だと私は思うのです。これももう報道等によってある程度事実関係は明らかなんですが、この仲介者には、依頼者、納税者から請け負った請負人に払われたいわゆる括弧つき報酬ですか、その多額の報酬からその一部が仲介料としてバックされていたと指摘をされております。国税当局は、そういう事案をつかんでおりますか。     〔主査退席、青山(丘)主査代理着席〕
  45. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 個別のことでございますので、具体的な答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に申し上げれば、仲介者というものは役務の提供ということになっておりますので、役務の提供の対価を受領していれば、これは雑所得の課税対象になる、こういうことだと思います。
  46. 木島日出夫

    ○木島分科員 仲介者がいて、請負者から金をもらっていれば雑所得だ、それはそういう形で、その人物からは適正な申告をさせる、それはいいでしょう。  ただ、私が聞いているのは、単なる仲介者にすぎないのか、請負人との共謀関係はないのか、そういうことなんです。そこを徹底して国税当局としても調査しなければいかぬ。そこをしっかり明らかにして適正な処分が行われなければ、これは税務行政に対する国民の信頼は回復しないと思うのですよ。  国会議員の秘書が口をきいた、お金ももらった、しかし過少申告の修正申告で終わった。やはり国会議員にかかわる者が関与しても国税当局は手ぬるいんだな、こういう状況国民に残るだけでしょう。それはわかるでしょう。どうですか。その辺の徹底した、仲介者がどういう役割を果たしているのか、調査は進んでおりますか。
  47. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 一番最初に御答弁させていただいたと思いますが、これまた一般論で大変恐縮でございますが、脱税行為の関与の度合い、そういうものを考えまして脱税の行為者になるかどうかを判定してまいります。したがいまして、その仲介者につきましても、そういう脱税行為の関与度合い、そういうものは厳重に調査をするということでございます。
  48. 木島日出夫

    ○木島分科員 具体的に呼んで調査していますか。
  49. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 再三御答弁させていただきましたように、個別のことについては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  50. 木島日出夫

    ○木島分科員 これは政治家秘書、現職閣僚の元秘書もおるんじゃないか。私も法務委員会で質問しましたよ。そういう問題ですから、守秘義務の問題じゃないですよ。大蔵行政、税務行政と国の政治とのあり方が問われている問題ですよ。守秘義務なんと言うこと自体が、政治絡みの問題は包み隠すということになるんじゃないですか。  大蔵大臣、私はそういう性質の問題になると思うのです。国会議員の元秘書が関与していたかどうか、そういうたぐいの問題ですから。これはしっかり報告があってしかるべきじゃないですか。大蔵大臣の所見を求めます。
  51. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 だれが関与していようと、守秘義務は守秘義務であります。それによって守秘義務が守秘義務でなくなるという法理は全くない。
  52. 木島日出夫

    ○木島分科員 守秘義務絶対じゃないでしょう。相当であり必要である場合には、当然それは制約を受けるものでしょう。だから、これまでのいろいろな重大脱税事犯についても、国政上の重大問題だという場合には一定の報告もあったわけでしょう。そういう問題だと私は思いますよ。そんな態度では、この一連の事件に対して国税当局が本当に徹底した調査をやろうとしているのか信頼ができないのじゃないでしょうか。どうですか。
  53. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこの論理のお進めのなり方は少し無理であって、こういう人がいるときは守秘義務が解除されるなんということはあり得ないことだと思います。
  54. 木島日出夫

    ○木島分科員 何のための守秘義務なんですか。
  55. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今、私は法律を持っていませんが、そういうことに当たる公務員が守秘義務を負うことはもう常識でしょう。
  56. 木島日出夫

    ○木島分科員 常識なんという問題じゃないのじゃないですか。行政の目的があるわけでしょう。どういう目的で公務員が知り得た事実を表へ出してはいかぬのか、趣旨があるわけでしょう。その趣旨を上回るような状況が生まれればそれは当然解除される、そういう論理になるのは当たり前じゃないのですか。利益衡量の問題じゃないですか。
  57. 大武健一郎

    ○大武政府参考人 お答えさせていただきます。  現在の守秘義務、特に国税職員に係る守秘義務が重く規定されておりますのは、申告納税制度のもとで税務行政の執行を円滑に行うためには納税者の信頼と協力を得るということが必要であり、もし税務職員が職務上知り得た秘密を漏らすということになりますと、納税者と国税当局との信頼関係が損なわれ、ひいては申告納税制度を基本とする税務行政の運営に重大な支障を来す、そういう点があるからかと存じます。
  58. 木島日出夫

    ○木島分科員 申告納税制度に対する国民の信頼を維持するためだ。そういう国会議員の元秘書なる者が間に仲介に入って、納税申告者を脱税請負人につなぐ、そして脱税をやったのでしょう、そして莫大な利益が脱税請負人に還元され、その金の一部が仲介者に入ってくる、そういう事案でしょう。まさに、このこと自体が申告納税制度が破壊されているのでしょう。  そういう申告納税制度が根本的に破壊されている実態を明らかにして、二度とそういうことをやらせないためにも、許すべからざる重大事犯をやった者に対しては、当然、主権者国民の前に明らかにする、それを代表している国会の前に報告する。申告納税制度に対する国民の信頼を守り、維持するためにこそこういう事案については守秘義務が解除されて当然じゃないですか。守秘義務の存置目的が先ほどのあなたのような答弁だったら、今回のこの事案について、私の質問に対して答弁を拒絶する理由には全然ならぬと私は思いますよ。大蔵大臣、どうなんですか。
  59. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 戦後大変に長い時間の中で、ごくごくたまに、政府の守秘義務と国会の持っておられる国政調査権、どういうことにすればより国益に奉仕するかという議論は、戦後、三、四度でもございますでしょうか。しかし、こんな事件はそういうものには当たりません。
  60. 木島日出夫

    ○木島分科員 こんな事件なんという言葉を今おっしゃられましたが、とんでもないことだと思うのです。この事件がどんなに重大な事件であるか、事犯であるかということを、大蔵大臣の認識がなっていないということを今の言葉から示されたのじゃないかと私は思うのです。  法務省の刑事局長をお呼びしておりますが、私は、この元秘書らの収益は、仮に元秘書らが脱税請負人らと共犯関係にあったということになれば、これは犯罪収益に当たって没収されるべきものじゃないのか。そんなところにも結びつくことが想定される事案じゃないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  61. 古田佑紀

    ○古田政府参考人 個別の事件についてはお答えを差し控えたいと存じますが、一般論を申し上げれば、仮に脱税の共犯が成立する場合に、その報酬を受け取っているという場合には、犯罪の報酬として得たものとして没収の対象になることはあると考えられます。
  62. 木島日出夫

    ○木島分科員 そういう問題ですよ。  続いて、会計事務所の職員が関与をしているのではないかと指摘されております。パチンコ業者に係る脱税事犯で会計事務所の職員の関与が発覚していると思います。こうなりますと、これはきょうの新聞報道によりますと、当人は税理士、会計士の資格はない人物であったということが書かれておりますが、そうだとしても、彼を使用している、税理士資格あるいは公認会計士の資格を持った者の立場が問われてくると思うのですね。  そうしますと、この問題は、大蔵省や国税当局等の監督のもとにあり、公正、厳正な税務処理をすることが法によって義務づけられている、対象はまだ定かにされませんけれども、税理士や公認会計士のかかわりがあったとすれば非常に重大な問題だと思うのです。突き詰めていくと、これは国税庁長官か大蔵大臣の監督責任も問われるような、そういう性格にも発展してくるわけです。会計事務所職員の関与について、そういう面から見て実情はどうなのか、実態調査はどこまで進んでいるのか、御答弁願います。
  63. 村上喜堂

    ○村上政府参考人 今、個別の御質問でございますので、この件につきましての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  64. 木島日出夫

    ○木島分科員 では、もう一つだけ聞いておきましょう。  紹介グループの一員の中には、大蔵省の国会への窓口である政府委員室勤務の大蔵省職員もいたと指摘されております。これが事実とすれば、国会との関係でも本当にゆゆしい問題になると思うのです。これは大蔵省の職員ですから、国家行政組織法上の使用者、大蔵大臣の責任が問われる問題になるわけです。そういう観点から、その問題の調査をされているのか、事実関係はどうなのか、処分等はどうなっているのか、その辺を報告してください。
  65. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 まずお断り申し上げたいのは、本人につきましては既に退職しておるということでございます。それで、もちろん先生おっしゃったような問題がございましたけれども、本人は既にこれは返済しております。それから、本人が相手から何かを頼まれたり、便宜を図ったということは、調査の結果、全くございません。  しかしながら、大蔵省としては、ほとんど面識のないような者からお金を借りるというのは軽率、全くわきが甘い、こういうことでは困るわけでございます。そういうことで、大蔵省職員倫理規程に抵触するために、一月二十四日、出向先から大蔵省に戻し、訓告処分をいたしまして、さらに申し出による退職をさせているところでございます。  このような事態を生じたことは大変遺憾でございます。今後、一層厳正な綱紀の維持に努めてまいりたいと思っております。
  66. 木島日出夫

    ○木島分科員 私は、この問題は退職したから一件落着だ、返済したから一件落着だという性質の問題ではないと思うのですね。訓告処分で済むような問題じゃないと私は思うのです。  私は国会議員の元秘書の皆さんの名前を全部知っていますよ。そして、そういう元秘書たちと脱税請負人の中心人物との関係承知していますよ。一部の元秘書と脱税請負人の中心人物が一緒になって、昨年二月二十六、七日に、山梨の石和温泉に一泊、いかがわしい旅行に行っている、そんな事実ももう明らかになっているのですよね。  そういう秘書グループと大蔵省との窓口、政府委員室というのはまさにパイプ役でしょう、そういうところの職員がかかわりを持っていたという事案ですから、私は全然脱税事犯についてはかかわりはないというような、そういう本人からの申告を、ただ、ああそうですかとうのみにして済まされる問題ではないと思うのですよ。退職してしまった今ですけれども、やはりもうちょっと大蔵省としても、身内から出た問題ですから、厳正に調査すべきじゃないんでしょうか。それをもう一言答弁を求めます。
  67. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 部内調査の問題でございます。  この点につきましては、昨年、大臣官房秘書課に監察官室というのを設けました。そこで厳正に本人からの事情聴取をやっておりますし、また必要な資料を収集したり確認を行って調べました。それが前提でございます。その結果、当該職員が借り入れの相手方から何らかを頼まれたり、あるいは何らかの便宜を供与したりすることは全くなかった、こういう報告を受けております。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、ほとんど面識のない者からお金を借りるという行為は、ちょっと常識から考えても、特に公務員としての姿勢の問題としても、軽率のそしりは免れません。こういうことで、訓告処分とするとともに、本人の申し出により退職した、こういう経緯でございます。
  68. 木島日出夫

    ○木島分科員 もう時間ですから終わりますが、守秘義務を盾にほとんど私の質問答弁されようとしません。私どもは引き続き、少なくとも国会議員元秘書のかかわり、その問題については徹底してこれから調査して、政治に対する国民の信頼、税務行政に対する国民の信頼を取り戻すために事実関係を明らかにしていきたいと思っておりますが、今後とも、大蔵省としても、国税としてもそういう態度を改めて、信頼を回復するためにも出すべき事実は出すという態度になるように期待して、私の質問を終わります。
  69. 青山丘

    ○青山(丘)主査代理 これにて木島日出夫君の質疑は終了いたしました。  次に、栗原博久君。
  70. 栗原博久

    栗原(博)分科員 冒頭、通告しておりましたが、若干変わりまして、警察庁の方にひとつ御質問したいと思います。大臣、よろしかったらどうぞ御退席ください。  まず、警察庁長官にお聞きします。  ちょっと通告とは違いますが、かけマージャンはどういう根拠の違法性がありますか、ちょっとお尋ねします。
  71. 田中節夫

    ○田中政府参考人 今委員御指摘のかけマージャンというのは、内容によりますけれども、刑法の賭博罪に触れる事案が考えられます。
  72. 栗原博久

    栗原(博)分科員 賭博罪ですね。では、今後またちょっとお話をさせていただきます。  実は、私は先般、二月十五日に予算委員会で、私の地元であります三条市の九歳のお嬢さんが十九歳まで拉致監禁されて、そして本当に言語に尽くせない状況であった。私は大変そのことを、きのうも私は地元でいろいろな方とお会いしてお話を承っておるのでありますが、言いようのない、やるせない虚脱感の状況が今地元で続いております。  その事件の経過についてはもう御承知のとおりでありますし、それから、それにかかわる初期捜査の問題とかミス、発見におきますやはり警察当局の不手際、その間の報告におきまして、県警の偽りの報告、あるいはまた、その前の段階ですが、四年前に柏崎警察署に母親が駆け込んでもそれが取り上げてもらえなかったとか、本当に返す返すも残念なことでありますし、実は二月十五日の委員会でも、処分の問題を私は問おうと思ったのでありますが、まだまだ田中長官も一生懸命に頑張っておられますし、そのようなことを聞くこともいかがかと思いまして、そのことについてはお聞きしませんでした。  まず、お聞きします。  小林新潟県本部長、辞職したそうでありますが、並びに中田関東管区警察局長の処分はどのようにされるのですか、お聞きします。
  73. 田中節夫

    ○田中政府参考人 まず、処分のお話をする前に、御指摘のように、私、長官に就任いたしましたのが一月十一日でございますけれども国民の警察に対する信頼の回復を最大の課題として、全国警察を挙げた不祥事案再発防止対策に取り組んでいる、その先頭に立ってやってまいりました。しかしながら、御指摘のように、今回の一連の事態が生じまして、警察に対する国民の信頼を大きく損ねたということはまことに遺憾でございまして、新潟県民の皆様初め国民の皆様に対して、警察庁の長として、極めて事態を重く受けとめ、心からおわび申し上げる次第でございます。  そこで、御指摘の処分の問題でございますが、小林新潟県警察本部長の処分につきましては、二月の二十六日付で既に国家公安委員会から減給百分の二十、一月の処分を受けております。そして、二月二十九日付で職を辞する、引責辞職でございますが、そういうことになっております。  処分の理由でございますけれども、三点ございまして、一が、少女監禁事件に関し、一月二十八日の記者会見において事実と異なる発表を行うことについて了承を与え、結果として報道をミスリードすることとなり、その後も迅速な訂正をすることなく、報道対応に適切さを欠き、警察の信用失墜を招いた責任、二つ、一月二十八日、被害者の発見等を出張先の車中で電話報告を受けた後、あらかじめ手配した旅館に投宿し、電話やファクスで事件処理の指導を行いつつも、来県中の関東管区警察局長と懇親を続け一泊するなど、最高責任者として本件の重大性についての認識を著しく欠くと言わざるを得ない不適切な行動があり、警察の信用を失墜した責任、三つ、神奈川県警を初めとする一連の不祥事案の反省、教訓の上に立ち、警察において再発防止対策を講じてきたところであり、警察本部長は再生の道の先頭に立って歩まなければならず、これまでもその職責の重みとそのあり方について国家公安委員会、警察庁として指導してきたところであるにもかかわらず、その職責を果たせなかった責任、これが小林警察本部長の責任でございます。  次に、中田好昭関東管区警察局長でございますが、二月二十九日、あす付で引責辞職ということでございます。  理由は、一つ、一月二十八日は、新潟県警察に対する特別監察を実施した当日であるにもかかわらず、監察終了後とはいえ、監察を受ける立場の県警側と懇親するという、監察担当官としての立場をわきまえない行為があったこと、二つ、少女監禁事件の被害者の発見等について、その重大性を認識すべきであるにもかかわらず、警察本部長に対し指揮に専念するよう配意しない不適切な行動をとったこと、三つ、これは小林警察本部長の処分と同じような理由でございます。  以上が処分等の概要でございます。
  74. 栗原博久

    栗原(博)分科員 処分はされましたが、今長官、三点のことをおっしゃいました。  その後、新聞報道などによりますと、小林本部長は二十九日ホテルを出まして、それから帰りは瓢湖を通るのですよ、昔の私のふるさとです、今瓢湖は白鳥が飛来しております。通って新潟に行くのはわかるのです。まあ帰り道に寄ったのでしょう。  大変残念です。これは地元の日報です。二十七日にこうやってトップ記事。それから政治欄、かつてない記事です。これは社会面ですよ。今まで新潟日報がこれだけの記事を、政界でも官界でもどんなことでも載せたことはない。これだけ、いかに警察が県民の信用を失墜せしめているか。  私は二月十五日に申し上げました。日本警察の大先輩である、皆さんの恩師である川路利良先生は、一国は一家なり、政府は父母なり、人民は子なり、警察は保傅なりと言った。私、そう言いながら、余り追及は申し上げなかった。  しかし、今三つの点で県警本部長に対する処分をされたけれども、県警本部長は中田局長を新潟駅に送ってから、今度は自宅に帰った。その日は新潟日報、各紙は、全面トップでこの事件を詳細にわたって伝えているのですよ。その新聞を見ながら、県警本部にも帰らないで自宅に帰るとはどういうことですか。それから土曜、日曜は休んで月曜日に出てくる、小林さんに対してはそういうことについての処分はされていない。その処分の撤回を私は求めたいと思います。  今あなたの処分は、三点おっしゃったけれども、四点目。警察の最高の指揮官たる者が、全国でどんどん新聞、マスコミが論じているさなか、県警本部に出てこないで、それも官舎にいて月曜日にのこのこと県警に出てくる。長官も前回の神奈川県警の失態の中で、私はわかりますよ、一生懸命あなたはやっていらっしゃる。全国二十万の警察官がいる、五百人のキャリアがそれを管理していると思うのですよ。範たるキャリア組が、現場で汗水を流して、今の新潟の寒い中で一生懸命捜査をしている、そういう現場の人の気持ちをわからないでそうしている県警本部長が、わずか百分の二十の減給処分だと。これについてもう一度お答えください。
  75. 田中節夫

    ○田中政府参考人 ただいま御指摘のように、今回の一連の行動の中で、小林新潟県警察本部長のとった行動というのはまことに遺憾でありまして、本部長としてのリーダーシップに欠けているところがあったというふうに私どもは考えております。  今御指摘の項目につきましても、私ども先ほど三点を申し上げましたけれども、三点目の、神奈川県警察を初めとする一連の不祥事案の反省、教訓の上に立って、本部長としてはしかるべき行動をとらなければいけないというその中に私どもとしてはこれは込めているつもりでございますし、国家公安委員会、国家公安委員長からも強くそのことは指摘されてこの項目が追加されたものでございます。
  76. 栗原博久

    栗原(博)分科員 ですから、私が申し上げたとおり、処分されたとき、そのころは、新聞報道によりますと、中田局長を送ってから県警に出たような話を伝えていました。しかし、その後明らかになると、四日目に登庁してきたというのですね。私は、警察官は命を賭して、命をかけて県民の生命財産を守っていると思うのですよ。二十四時間勤務だと思うのですよ。それを、どんどんマスコミが伝えている。にもかかわらず、県警本部に来て指揮もとらない。こういう点からも、処分は百分の二十というのは私はおかしいと思うのだ。そう思いませんか。  今私が申し上げたものはまだ発覚していなかったのでしょう、その後発覚したのでしょう。では、処分を撤回してもう一度処分し直しということは、そういう考えはないのですか。
  77. 田中節夫

    ○田中政府参考人 先ほど御説明申し上げましたように、今回の本部長の行動は極めて遺憾でございます。全体としてどの部分がどうかというようないろいろな御意見があるかと思いますけれども、私どもといたしましては、この処分は国家公安委員会の所管でございますけれども、国家公安委員会に事情を全部御説明を申し上げて、そしてこのような処分になったものというふうに考えておるものでございまして、先ほどお話しのように、翌日、公舎に帰りまして指揮をとらなかったという御指摘でございますけれども、ある意味では、そういうことも含めてこの中に入っておるというふうに御理解いただければと思います。
  78. 栗原博久

    栗原(博)分科員 長官、今あなたはおっしゃったけれども、では、自宅に帰ったというのも、そういうものを全部含めての処分なんですね。間違いないですか。その後、処分されてから発覚したのとは違うのですか。  きのうも私は三条市へ行ったのですけれども、県民が、もうこれは懲戒免職だとみんなおっしゃるんですよ。私も、自由民主党の立場でもこれだけ強く言うことは、私の気持ちをあなたもわかってくれると思うのだ。やはりこれだけの大きな事件ですよ。十年間も放置され、その間いろいろミスがあった。厳格なる処分をしなければ、現場で働いている警察官の思いはどうなるかということなんです。また国民、県民の警察に対する信頼というものが揺らいでくると思う。ということで、私は処分は処分として、もう一度精査されて、やはりこれらについて処分をされるべきだと思います。  また、先ほどのかけマージャンでございます。確かに、かけマージャンは、それはいろいろなところでやっているのはわかる、慰労の意味で。しかし今回は、こういう事件が発覚してかけマージャンをやっていたということについては、これはどういうふうになるんですか。
  79. 田中節夫

    ○田中政府参考人 委員御指摘のように、今回のマージャンが刑法の賭博罪で問擬される程度のかけマージャンをやっていたのか、あるいは一般に許される範囲内のものであったのかということはいろいろ議論がございます。  しかしながら、いずれにいたしましても、今回のこのような時期に遊興にふけっているということについては、まことに申しわけない、言語道断であるというような判断で、そのマージャンの形態がどうであろうと今申し上げましたような判断になったわけでございます。
  80. 栗原博久

    栗原(博)分科員 では、そのかけマージャンも含めての判断なんですね。  特別監察についてお聞きしたいと思います。  先般の神奈川県警の不祥事を機に特別監察制度というものがされたわけでありますが、今回、この件について新潟県警に特別監察に来た。しかし、残念ながら、五時までのを切り上げて局長は四時ごろ出て、上川村の現場を見て、それで温泉地に行ったということであります。温泉地は温泉地として、ただ、特別監察をやった場合、その監察に来た人はどういう行動をとらなければならぬことになっていますか。
  81. 田中節夫

    ○田中政府参考人 委員御案内のように、この特別監察は、昨年神奈川県警察を初め全国で不祥事案が発生いたしました、その後の対応策の大きな柱として私どもが実施してまいりました。  この場合、特別監察におきましては、特に不祥事案の防止対策がどのように進められているかということを逐一調査し、その結果を求めるように、また足らざるところはそれを指摘するようにというようなことでやってまいりましたけれども、特にその監察の方法として、受監対象と申しますか、監察を受けることとなる都道府県警察本部の関係者とは、その監察の適正を疑われるような、そういう夜の会食というものをしてはならないという指示を強くしたところでございます。
  82. 栗原博久

    栗原(博)分科員 そうしますと、今回の特別監察におきます中田局長の行動は、この特別監察の趣旨から極めて逸脱している行動であったというふうに理解してよろしいですか。
  83. 田中節夫

    ○田中政府参考人 今回の中田関東管区警察局長の行動につきましては、当日一月二十八日でございますけれども、新潟県警察に対する特別監察を一応終了はしております。終了はしておりますけれども、その後の対応といたしましてやはり不適切、不適正といいますか、監察が適正に行われたということを疑わせる、そういう行動であったという意味では極めて不適切であるというふうに考えております。
  84. 栗原博久

    栗原(博)分科員 終わっているということですが、局長が一時間早く引き揚げたということで、ほかの担当の方は五時ごろまで残ってやったというふうに伺っているんですが、そうしますと、まだ終わっていなかったんでしょうね。そういうふうに解釈できませんか。
  85. 田中節夫

    ○田中政府参考人 監察に行った者のその担当の分野とかいろいろございまして、早く監察を終了する者もございますし、刻限までといいますか、五時というのが定刻であるといたしますれば、それまでやっている者もございます。  したがいまして、今回の中田関東管区警察局長の監察が、最終的に新潟中央署に行っておりますので、その時点で監察が終了した、当人に係るところは終了したという判断だっただろうというふうに思います。
  86. 栗原博久

    栗原(博)分科員 私は、田中長官も一月に着任されて、こうしてたびたびのこのような不祥事が出て、本当にざんきにたえないお気持ちだと思います。ぜひ長官として、全国の警察官に対して叱咤激励し、ひとつ国民から信頼される警察行政をお願いします。  それで、この前も私はキャリアとノンキャリアの話を申し上げました。新潟県警は、従来、捜査二課長それから県警本部長、あとは総務部長ですか、警務部長ですか。刑事部長は地元からのたたき上げだったそうですが、今度は刑事部長さんも準キャリアだそうです。  いろいろ警察の中の皆さんのお話を聞くと、今回のこの事件が発覚してからも、体制について、やはり現場の警察官はやるせない気持ちだというんですね。従来の刑事部長がもうたたき上げでなくなったから、やはり現地がわからぬと。そもそも本部長もキャリアで、キャリアが悪いと私は言っていませんよ、しかしながら、やはり現場がわからないのですね。十年間も拘束されたお嬢さんが発覚したら、すぐさま帰るのは当たり前のことですよ。だから、新潟県にどういう案件があるかということをわからない。刑事部長も着任されて間もなかったと思うんですが、現場をわからない捜査の体制の中に、やはり一つの穴があったと私は思うんですよ。  ですから、ぜひひとつ、キャリアとノンキャリア、まさにキャリア組と現場のたたき上げの方々に疎通があるように、やはりこれは一生懸命警察庁も努力しなければならぬと思うし、また新潟県警に対しても適切な指導というものがされるべきだと思う。  私も、自分のおじが巡査をしておったんですよ。出世など望まないで、本当に現場で働いていた姿を見ておりました。私は、常に自分のおじを尊敬しておりました。もう本当に公の立場でやっておりましたから。ですから、私は警察に大変親近感もあります。私も過去にいろいろと警察にお世話になったこともある、これはまあ私も反省している点はありますよ。  しかしながら、この問題を見ますと、本当に私は、私自身の警察に対する考えも揺らいでおりまして、ぜひひとつ、この問題については厳正なる、処分はされたと言っているけれども、こういう新しい問題が出てくれば、当然県民はさらなる厳正な処分を望んでおりますから、これは終わったと言うだけではまだ済まされないと思う。恐らくほかの委員会でもこの問題は出てくると思いますから、私の今の発言を重く受けとめながら対処していただきたいと思います。  それから、このお嬢さんの件の捜査でございますが、どの程度進んでいるかということです。できるだけ早く社会復帰されるような形で、また警察としてもとるべき方策をとっていただきたいと思いますが、その後どのような捜査が進展しているか、若干かいつまんで御説明してください。
  87. 田中節夫

    ○田中政府参考人 先ほど委員の御指摘のように、現場といいますか、私どもは現場が一番大事でございます。ですから、私一月十一日に就任いたしまして、現場とともにある、現場でどのような仕事がなされ、現場でどのようにして国民との接点がなされるか、そこがやはり一番大事であるということを強調したあいさつをいたしました。その徹底が不十分であったそしりは免れませんので、その辺を十分に徹底してまいりたいというふうに思っております。  なお、捜査の経過につきましては、刑事局長より答弁させます。
  88. 林則清

    ○林政府参考人 現在、被疑者を逮捕、勾留中でございまして、厳正に捜査を進めておるところでございます。日にちは忘れましたが、もうしばらくのところで処分が出る。  それから、被害者の方に関しましては、できる限り女性警察官を充てるというようなことで、大変、心にさらに傷を与えたりしないような、警察としての最大限の心配りをしながら進めておるところでございます。
  89. 栗原博久

    栗原(博)分科員 ありがとうございました。では警察庁、どうぞお帰りください。  次にお聞きしますが、時間の関係で大変申しわけないのですが、きょうは通産省の方とか各省の方お越しでありますが、今ちょっと別の案件を質問して、そこまで質問が行かなかったらひとつお許しいただきたいと思います。  まず、新潟中央銀行の件についてお聞きしたいと思います。  新潟中央銀行が破綻してから五カ月経過しました。その間に、この銀行は昔の無尽から出発しましたから、やはり地域に、地場産業に大変深くかかわっている銀行でございまして、例えば地元の県内最大手の住宅産業の会社が倒産したり、あるいはまた繊維関係の会社が閉鎖しているなど、やはりいろいろの案件が出ておるわけであります。そういう中におきまして、この破綻によって、各取引関係あるいはまた関連の銀行の中継ぎなどについて、どのようにちゃんと対応しているかということをお聞きしたい。一点です。  もう一つ、受け皿の問題でございます。やはり早く受け皿銀行を決めなければならぬわけであります。その受け皿に対して、どのように対応をされているかについてお聞きしたいと思います。
  90. 山崎穰一

    ○山崎政府参考人 お答え申し上げます。  新潟中央銀行につきましては、整理管財人のもとで業務及び財産の管理に関する計画というのがつくられてございまして、この計画におきましては、優良な顧客基盤の維持と貸出資産の劣化防止という観点から債務者区分ごとに融資方針が定められてございまして、善意かつ健全な借り手への融資が行われているというふうに承知しておりまして、金融再生委員会といたしましても、善意かつ健全な債務者の保護が図られますよう努力してまいりたいと考えてございます。  それから、受け皿への譲渡の件でございますが、地域経済への影響を最小限にいたすという観点、それから国民負担の最小化という観点から、一刻も早く早期譲渡が行われることが望ましいというふうに考えてございまして、金融再生委員会といたしましても、その地域の実情を十分に踏まえまして、早期譲渡が行われますよう整理管財人を最大限支援してまいりたいというふうに考えてございます。
  91. 栗原博久

    栗原(博)分科員 では、要点だけお聞きします。  破綻銀行の資産査定はどの程度まで進んでいるか。それから二点目、現段階で資産の劣化が進んでいると思うのですが、これはどの程度見受けられているか。それから、譲渡先の選定のために、皆さん再生委員会とか金融監督庁、日銀あるいは預金保険機構から成るプロジェクトチームをおつくりになっていると思うのですが、現在その作業はどの程度であるか、あるいはまた今後どのようなスケジュールになっているか。この三点を、ちょっとまとめてお願いします。
  92. 山崎穰一

    ○山崎政府参考人 まず第一点の資産査定でございますが、十二月末の状況をもとに今自己査定が行われてございまして、これを整理管財人の方でも精査をしてございます。  それから、資産の劣化でございます。これにつきましては、どの程度劣化しているかというのを定量的にお示しすることはちょっと難しいのでございますが、御参考までに申し上げますと、昨年九月末決算におきましては、現在新潟中央銀行は八百三十五億円の債務超過というふうになってございます。これ以上資産劣化を防止するためにも早期譲渡が必要でございますが、現在、金融再生委員会事務局、金融監督庁、預金保険機構、日本銀行におきまして緊密な協議を行ってございます。金融整理管財人を最大限支援するように緊密な協議を行ってございまして、これは現在のところ、いつというめどをまだお示しできる状況にはございませんが、とにかく、できる限り早期ということで、現在努力しているところでございます。
  93. 栗原博久

    栗原(博)分科員 もう一度お聞きしますが、早期、早期はわかるのですが、受け皿については、検討の視野ですね、どの程度の銀行に当たっているとか、そういうことをちょっと具体的に答弁できませんか。
  94. 山崎穰一

    ○山崎政府参考人 現在、具体的にどこがどうというふうにお答えできるような状況にはございませんが、観点といたしましては、地域の実情を十分に踏まえて行うということで努力しているところでございます。
  95. 栗原博久

    栗原(博)分科員 はい、わかりました。  次に、大蔵省の方に一つお聞きしたいと思います。  私ども三条市は、全国屈指の地場産業の地帯でございまして、今までのオイルショックとかいろいろの国際経済の異変の中でも耐え切ってまいっているわけです。中小企業の町でありますし、また輸出も輸入も大変多くやっているところでございます。そこにインランドデポが、税関の機関があるわけです。今派出所になっておるわけでありますが、どうも派出所では、地元の方はやはり出張所にしていただけないだろうかと。近くに新潟税関がございますけれども、特にここは他の国との貿易量の多いところでありますし、また輸出輸入も年々ふえているわけであります。こういうことで、たびたび地元の市町村長さんからも大蔵省に要請しておりますし、また地元経済界も御要請申し上げているわけですが、三条・燕地区におきますインランドデポの派出所から出張所への格上げに対してのさらなる御検討はどのように進んでいるかということについてお聞きしたいと思いますが、よろしくお願いします。
  96. 渡辺裕泰

    ○渡辺政府参考人 税関の三条・燕地区の政令派出を税関出張所に格上げせよというお話でございます。  先生御存じのとおり、税関の出張所は、大蔵省設置法に基づいて設置される国の機関でございまして、出張所が管轄する地域対象にして、国民一般に対して税関業務に係る行政サービスの提供を行っております。  一方、いわゆる政令派出は、関税法の規定に基づくものでございまして、保税蔵置場の被許可者、つまり一般的には倉庫業等の物流業者からの申請に基づきまして、国民一般ではなくて、当該業者が取り扱う輸出入貨物についての税関業務に係る行政サービスを提供するために、税関長が当該蔵置場等に税関職員を派遣するものでございます。このため、政令派出を要請されました場合には、派出のための手数料を徴収した上で派出を行うということになっております。  格上げの話でございますけれども、官署の配置のあり方につきまして、昨年四月に中央省庁等改革の推進に関する方針というのが出ております。これにおきましても、地方支分部局の整理合理化が盛り込まれておりますとともに、新設に当たりましては、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドの原則を厳しく徹底せよということになっております。  このような厳しい行財政事情のもとで、政令派出を国の機関でございます税関の出張所とするかどうかを判断するに当たりましては、地元の御要望も十分に考慮はいたしますが、あわせて、十分な業務量の存在とともに、行政需要の公益性や行政の効率性等を総合的に勘案する必要があると考えております。  三条・燕地区の政令派出につきましては、現在の業務量等を勘案いたしますと、出張所とすることは困難であると考えておりますが、今後とも業務量の推移等を見守ってまいりたいと思っております。
  97. 栗原博久

    栗原(博)分科員 インランドデポ、もっと前向きにひとつよろしくお願いします。  では、終わります。ありがとうございました。
  98. 青山丘

    ○青山(丘)主査代理 これにて栗原博久君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  99. 西田猛

    西田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管について質疑を続行いたします。遠藤乙彦君。
  100. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 公明党の遠藤乙彦でございます。  大臣には、午前に引き続き、また御苦労さまでございます。  私は、いわゆる酒販免許制度にかかわる規制緩和の問題につきまして質問をさせていただきたいと存じます。  従来、酒販免許制度は、酒税の保全を主目的としまして、人的基準、また距離基準、人口基準と三つの柱を軸に制度が維持されてきたわけでございますが、平成十年三月の規制緩和推進三カ年計画の閣議決定におきまして、この規制緩和をする方針が定められ、ことしの九月から距離基準の撤廃、そしてまた人口基準については段階的に緩和し、平成十五年の九月に撤廃ということは御承知のとおりでございます。  私自身も、基本的には、こういった需給調整にかかわる規制は原則撤廃すべしという論者でございます。当然、市場の原則を重視して経済を透明化、効率化することは最も重要なことでございまして、そのことは私も大賛成でございますが、ただ、市場原理主義者であってはならないと思っておりまして、経済的事情以外の問題、例えば安全とか環境とかあるいはまた文化の問題、さらには、今回のアルコールに関連した問題への対処といった社会的な視点等が必要なものにつきましては、やはりこの規制緩和の問題は慎重たるべしというのが私自身の見解でございます。  特に、お酒につきましては、古来二つの見方があって、一つは酒は百薬の長という面があるとともに、酒で身を滅ぼすという言葉もあるとおり、社会的効用があるとともに、害悪も一たん使い方を間違うと大きいということもあるわけでございます。  この問題は数字にも明確にあらわれておりまして、例えば、お酒を全く飲まない人の死亡リスクを一としますと、毎日四合以上飲む人の死亡リスクが一・三三、約三分の一高い。逆に、二日に一合しか飲まない人は〇・六六、三分の一低いということでありまして、まさにこういったことからも、酒は百薬の長という面と酒で身を滅ぼすということは、数字の上からも明確にあらわれているかと思います。これは一つの例でございます。  そういった中で、今般の閣議決定における規制緩和の決定は、私は、社会的規制の必要性の側面について十分な論議のないままに、いわば御時世だということで規制緩和に走ってしまっている面があるのではないか、若干慎重な検討を必要とするという立場に立っておりまして、そういった視点から質問を進めさせていただきたいと思っております。  まず最初に、基本的なところから出発したいのですが、従来の免許制度の根拠、理由、目的について、改めてこれを御説明いただければと思います。
  101. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 先生の御視点はよくわかりました。ただ、従来、特殊な嗜好品でございます酒類でございますが、酒税というのは、他の税金に比べて大変高い率を課しているわけでございます。しかも、酒税の納付者というのは、いわゆる庫出税、酒をつくる方でございまして、その点は注意をしていかなきゃいけない。その酒税を確保するという観点から我々は行政に携わっているところでございます。  それで、今先生も御指摘なさいましたように、そういう酒税の保全という観点、そしてその役割が極めて重要である、こういう観点から免許制度というのを採用しているわけでございますが、その免許制度の基準については、先生みずから御指摘になっていらっしゃいますので、改めて繰り返すことはいたしません。我々の観点は、酒税の確保、こういう観点から免許制度をつくった、こういうことでございます。
  102. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 今の御答弁、酒税の確保という目的であるということでございます。  それでは、この平成十年三月の閣議決定、そこで規制緩和の方針を打ち出されました。従来免許制度を維持してきたのにここで規制緩和をするに至った理由、事情、今までの目的は消滅したのか否か、あるいは社会的規制の必要性はどうなっているのか、そういう点も含めて、今回の規制緩和決定の背景につきまして御説明をいただきたいと思います。
  103. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 まず、規制緩和というのは、一つは、透明なルールのもとで経済活動を活発にしていく、自由競争にゆだねる、こういう思想でございますが、そのメリットとしては、当然、消費者の便益性の向上という問題がございます。それからもう一つは、酒の流通業界が構造改革をやっていく、あるいはコンピューターを導入して販売の工夫をやっていく。こういうような二つの観点があろうかと思います。それでは、酒税の方はどうか。これはもちろん、酒税の確保は依然として重要な問題でございます。  したがいまして、そういう観点から規制緩和が行われておりまして、その計画については、先ほどから先生御自身が御指摘なさったところでございますけれども、繰り返しになりますが、一つは消費者の観点、それから酒類業者自体の問題、こういう観点からやっておりますが、酒税の確保という観点は残っております。
  104. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 大体理由はわかったわけですけれども、ただ、社会的規制の問題ですね。特に、アルコール関連諸問題というのはよく指摘されております。要するに、医学的、健康上の問題、または交通事故や犯罪等の問題、あるいは産業面での効率の問題等、いろいろな側面が指摘されておりまして、むしろ今世界的には、特に先進国では重要な問題になってきております。  この点について十分な議論がされたのかどうか、また、そういったきちっとした問題意識を持って今回の決定に臨んだのかどうか、この辺につきまして御説明をいただきたいと思います。
  105. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 まず結論から、そういう議論は、酒の観点から、国税庁の立場からも十分考えております。しかし、そういう問題は、例えば交通安全の問題、青少年の健全育成の問題、それからその他の害悪、社会悪の問題でございますが、大変幅広い分野の問題でございます。  例えば青少年の問題にいたしましても、お酒というのは、単に酒類販売店で買って飲むというだけではございません。広く、料飲店とかそういうところで飲まれるものがございます。それから、家庭教育の問題もございます。地域ぐるみで青少年の健全育成という、考えなければいけない問題もございます。  したがいまして、国税庁の立場、審議会から申しましても、そういう害悪の方は十分考慮しながら、しかし、それはやはりもうちょっと幅広い視野で検討していただくべき問題であろう、こういうことでございます。したがいまして、国税庁の分野から取り組めるとすれば、例えば自販機の問題をどうするか、こういうことで工夫を凝らしているところでございます。
  106. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 私は、ここでやはり縦割り行政の弊害が出ているかと思っております。要するに、酒税の観点から、大蔵省の視点からは、その行政責任の範囲からは検討はしたけれども、もっと幅広い社会的規制の必要性という点からは、やはり検討は不十分だということを言外ににじませる今のお言葉ではなかったかと私は受けとめた次第でございます。  例えば、アルコール白書という文書がございます。これは、平成五年に厚生省の保健医療局の監修で出たものでございまして、研究者の方々がいろいろな角度から学際的に取り組んだアルコール関連諸問題に関する白書でございます。  その冒頭の「序文」には、   わが国ではアルコール飲酒量が増加しています。ことに女性、未成年、老人等の飲酒量は医学的にも社会的にも、見逃せない重大事であり、個人にとっても社会にとっても取り返しのつかないさまざまな問題発生が予感されています。アルコール関連問題はあきらかに社会病理であり、二十一世紀に向かって対応を迫られている緊急の課題であります。 こういうふうに大変重い指摘があるわけでございまして、これほど専門家の人たちが重要な指摘をしていることについて十分な検討をしないで過ごすというのは、余りにも不完全ではないかというのが、まず私の指摘でございます。  若干数字を見ましても、間違いなく我が国におけるアルコール消費量は継続してふえておるわけでございます。昭和四十年を一〇〇としますと、平成八年は二三三・七、これはトータルの消費量ですね。成人人口一人当たりの消費量に直しますと、昭和四十年の指数を一〇〇とすると、平成八年が一四八・五ということでございまして、間違いなく消費量はふえております。  また、アルコールの大量飲酒者の数は、やはりずっとふえ続けております。昭和四十年を一〇〇とすると、平成八年が二二九・四という数字になっておりまして、間違いなくアルコールの量はふえている。それにかかわるさまざまな、健康上、医学上の問題、あるいは犯罪や交通事故等の問題は、当然それに比例して増大をしているわけでありまして、社会において大きな問題であると指摘せざるを得ないと思います。  そういった問題に対しまして、やはり今回の規制緩和の決定は、十分な、全体的な視点を欠いている、あくまで大蔵省の視点のみからの検討に終始をしておって、十分な社会的規制の視点を欠いているということを私は感じておりますけれども、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  107. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 大変難しい問題でございますが、私たちはこのように考えております。  つまり、経済面の問題と社会面の問題、これは切り離して考えるべきではなかろうか。経済面では、あくまでも規制緩和、自由競争、そして販売ルートの構造改善あるいは消費者の利便、こういうものがあるわけでございます。しかしながら、社会面では先生おっしゃったような悪があるわけでございまして、社会面の悪については、よく言われますけれども、経済面の規制緩和が社会面でも規制緩和、これは絶対あってはならないことでございます。  社会面でも規制緩和をやる、人生の倫理、人間の倫理というのは規制緩和なんというのはあり得ない。それから、社会や組織の規律、規則というものは規制緩和なんということはあり得ないんです。団体とか組織とか、そういうものの規制はきちっとやっていかなきゃいけない。大変理念的論争になって申しわけないんですが、この二つをまず分けていただきたい。そして、経済面からできることは何か、社会悪を追放するにはどうやったらいいか、これは政府全体の問題として考えていかなきゃいけない。  したがいまして、経済面の規制緩和については、これは従来の方針どおり、私たちはこのように思っておるところでございます。
  108. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 経済面と社会面は分離できるというお話、分離する必要があるというお話ですが、それは観念的な問題であって、実態面においては、これは分けられません。特にアルコール関連の問題というのは、経済的な側面と社会的側面というのは、実際においてはほとんど表裏一体と言ってもいいぐらいで、分けるのはほとんど不可能ということだと思っておりますし、むしろその一体の、重なる中で、どういう総合的なバランスのとれた規制の体系をつくるかということが大事な点ではないかと思っております。  その議論はまた、時間のかかることかもしれませんので、譲るとしまして、いずれにしましても、聞きたいことは、社会的規制の必要性、要するに、アルコール依存関連の問題について社会的管理の必要性、規制の必要性は大蔵省としてお認めになりますねということです。
  109. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 全体として社会悪を追放する、これは当然のことでございまして、真剣に取り組んでいかなきゃいけない。ただ、大蔵省、国税庁サイドとしてやっているのは、自販機の制限をするとか、あるいは販売をするとき相手の年齢を確認する、対面で、お互いに顔を見ながら売っていく、こういう努力は随分としていることを申し上げたいと思います。
  110. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 大蔵省としてもそういった社会的規制は必要だ、努力も応分にしているという回答だったと思います。  それでは、厚生省、警察庁にお聞きしますけれども、まず厚生省、規制緩和の流れが進んでおりますけれども、今私がるる申し上げましたようなアルコールの問題に関連した社会的管理、規制の必要性について、どのように把握され、考えられておるか、その辺につきましてお答えをいただきます。
  111. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 アルコールにつきましては、ただいま先生御指摘なさいましたように、アルコール関連問題、アルコール・リレーテッド・プロブレムズと申し上げているように、いろいろな幅広い対策が必要と考えております。  特に、厚生省としては、健康問題について積極的に取り組んでいかなければならないことになるわけでございますが、アルコール対策を含む健康づくり対策については、個人への取り組み、これはいろいろ知識を普及するとかいうようなことでございますが、それから、個人を取り巻く社会環境づくりが大変重要であると認識をいたしております。  そこで、アルコール対策におきましても、ただいま先生、あるいは御答弁がございましたように、自動販売機の規制ですとか、あるいは対面販売の促進などの社会環境づくりは重要な手段であると認識をいたしております。特に未成年者に対する健康影響が懸念をされておりますけれども、この問題についても、アルコールと健康影響に関する正しい知識の啓発普及に努めているところでございます。
  112. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 ちょっと厚生省の答弁としては迫力に欠けるような感じがいたしております。このアルコール関連問題の、特に二十一世紀における日本の社会構造のあり方等、もっとやはり強い問題意識を持って研究をしてほしいという気持ちがありますが、ただ、スタンスとしては、やはり社会的管理は必要という立場だと理解をいたしております。  続いて、警察庁に同じ質問をいたします。
  113. 舟本馨

    舟本政府参考人 特に少年非行の観点から御説明申し上げたいと存じますけれども、最近の少年非行情勢につきましては、少年が飲酒、喫煙、深夜徘回を初めとします問題行動というのを繰り返すうちに規範意識が低下しまして、それで重大な非行に走るケースが少なくないというようなことから、非行防止を図るためにも、問題行動の段階で適切な対応をとることが極めて重要であるというふうに考えております。  警察におきましては、少年の飲酒を初めとする問題行動に対しまして積極的な補導活動を行いますほか、特に飲酒防止の取り組みとしましては、関係機関と連携をし、酒の販売業者等に対しまして、少年の飲酒防止に配意した販売方法等の措置を促すとともに、悪質な業者に対しては積極的な検挙措置を講じているところでございます。  また、警察庁におきましては、現在、有識者や業界の代表者等で構成する研究会を設置しておりまして、少年による飲酒、喫煙、深夜徘回等の問題行動を助長する社会環境の問題ということにつきまして鋭意検討を進めていただいておるところでございまして、その検討内容も受け、非行防止の観点から、社会的規制のあり方をも含めて、少年の飲酒問題の対策についてさらに検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  114. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 今、大蔵省それから厚生省、警察庁、関係三省庁の御意見を承ったわけですが、いずれも、アルコール関連問題への対処の必要性、社会的管理、規制の必要性は、それぞれベクトルの方向は一緒だというふうに理解をいたしました。  しかも、私は、実際の専門の研究者等の話あるいはまたWHOの勧告等を見ますと、もっともっと強い意識で取り組んでいるということであって、むしろ、二十一世紀のこれからの日本の社会の問題を検討していく上において極めて重要な一つのテーマではないかと考えておりまして、もう少し学際的といいますか、全省庁が関連をし、総合的な取り組みが必要ではないか、もう少し強い問題意識と洞察を持った取り組みが必要ではないかというふうに感ずる次第であります。  そういうことで、いずれにしても、社会的管理、規制の必要性は強いコンセンサスがあると私は考えておりますが、問題は、従来の税の保全を目的としたいわゆる酒販の免許制度、特に距離基準それから人口基準が、やはり社会的規制の面でも一定の役割を果たしてきたと私は考えております。決してこれは経済的目的のための手段としてのみ位置づけられるのではなく、やはり社会的規制の手段としても役割を果たしてきたという認識に立っておりまして、そういったことからすると、今回、経済的理由だけからこれを規制緩和することはバランスを欠く。したがって、閣議決定については、やはり、総合的な検討、国民的な論議を踏まえた上でもう少し慎重に見直す必要があるのではないかというのが私の意見でございますが、これにつきまして、これは大臣にお答えをいただければと思います。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非常に難しい問題だと思うのでございますね。  大蔵省は、従来からいえば、酒税の確保というようなことを中心にやってまいりましたが、結果としては、それがどこでもだれでも買えるといったような状況を制限しておったわけでございますから、その限りにおいて、遠藤委員の言われる社会的な目的に奉仕していたということはあろうと思います。あろうと思いますが、いわゆる規制緩和推進計画の中で、大蔵省としてはそちらの面を主として規制したわけではございませんから、したがいまして、距離の基準であるとか人口の基準であるとかいうことに従ってディレギュレートするということを専ら主張してきた、あるいはそれに対しての行政をしてきたと思います。  そのときに、厚生的観点あるいは警察的観点を十分に考えていたかといえば、それは行政の、それこそ遠藤委員のお話でしたら縦割りということになるのかもしれない。そちらの方について十分な考えを払ってきたかどうか、それは確かに問題のあるところでございましょう。きちんと結論を出せないような難しい問題でございますけれども、そういう観点からの見方は確かにあろうと思います。
  116. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 大変見識の高い宮澤大臣の御発言、私も大変評価をさせていただきたいと思っております。やはり問題があると率直にお認めになられたわけであります。  まず縦割りがあるわけではありません。まず縦割りがあって、そこで物が決まるというのは、これは政治としては誤りであって、まず問題があって、どうそれに各省庁が協力して取り組むか、総合的な視点があってこそ初めて政治と言えるわけでありまして、そういった意味での政治の機能の回復ということが大変重要であるかと思っております。単純な縦割り型、中央集権型、官僚支配構造とマスコミ的には言うのでしょうけれども、そういったものだけでこれから二十一世紀の日本社会を見ると、それは見誤ってしまうのだろうというふうに私は思っております。  また、アルコール関連問題の社会的費用ということで、これも研究者の調査があります。これは、中村、田中、高野という三人の研究者が、アルコールに起因する例えば健康上の問題、あるいは死亡による間接的費用、あるいはまた事故、犯罪等、あるいは社会保障費用の増大と、いろいろな要素を積算した結果、我が国におけるアルコール乱用による社会的費用は六兆六千三百七十四億円という数字をはじいております。  日本のGDPが五百兆円程度とすれば、一%強にも当たる数字でありまして、これは非常に大きな社会的な問題、あるいは政治的な課題でもあるというふうに言っていいかと思っておりまして、こういった社会的費用を軽減していくためのさまざまな体制というものはぜひとも確立をしなければならないのではないかと私は思う次第でございます。  一つ、他国の例をちょっと引いてみます。これはソ連の例をちょっと申し上げますと、一九五〇年代、六〇年代は、ソ連はかなり経済的にも発展をし、士気の高かった時代なんです。ところが、ブレジネフ体制に移行してから、非常に社会が停滞し、経済も停滞した。また、さまざまな社会問題も発生し、また社会の価値観等もいろいろ弛緩を来して、非常に社会問題が多くなったわけです。  そんな中で、ブレジネフ政権が、国民の人気取り政策の一環としてお酒の規制緩和をやった。価格を引き下げ、売り場をふやし、販売時間を延ばしたわけですね。その結果、何が起こったかというと、急激なアルコール依存症の増大、アル中の増大、それから生産現場における事故、非能率等が蔓延をいたしまして、ソ連経済はさらにこの衰退に拍車をかけたということがあります。  特に象徴的な数字を申し上げますと、六〇年代におきまして、男性の平均寿命が六十六歳だったのです。それが、ブレジネフ政権末期、八〇年代初頭には、何と六十二歳に下がった。要するに、平均寿命が四歳も下がっておるのですね。これはゆゆしき事態だと思うわけですね。  もちろん一番大きな要因は、何といってもアルコールの問題なんです。その他、乳幼児死亡率の上昇という点もありますが、最も大きく貢献した要因はアルコールの問題であります。アルコールを多用することによる健康上の問題。特にロシアは気候が寒いので、ウオツカでもひっかけないと、なかなか体が温まらなくて仕事ができないという面もある。また、社会的にも非常に建前と本音が乖離した社会であって、そういった社会的ストレスを解消するために限りなくウオツカを飲み続けるといったところもあるわけです。そういったところから、一たん規制緩和をしたことによって大変な社会的費用を払ったわけでありまして、そういった例もある。  したがって、ゴルバチョフ体制になって真っ先に手をつけたのは酒の規制なんですね。売り場所面積の限定、販売時間の限定等々、そういったアルコール対策は真っ先に手をつけたということがあるわけで、ぜひ他山の石としなければならないかと思っております。  特に今、日本の社会では、社会問題が非常にいろいろな形で地殻変動しておりまして、単に経済的な視点だけで物を見ていると誤るということを私は強く指摘したい。  例えば、ピーター・ドラッカーという日本でも有名な経営学の先生がおられますけれども、最近の発言の中で、今まで四十年間は経済問題が主流だった、これからは社会問題が主流となる、特に日本においてその傾向は顕著であるという発言をしておりまして、私は非常に深い洞察に富んだ発言であると思っております。特に、経済問題にとどまらず、価値観の変動とか社会のいろいろな問題、特に未成年者、女性、高齢者の置かれたいろいろな社会的、心理的環境を見ると、大変ストレスが増大する社会になっておりまして、当然、これがアルコール問題と結びつきますとさらにこの悪化に拍車をかけるという構造になっております。  ぜひとも、この問題は、二十一世紀の日本社会のあり方を考えるという視点の上から、早急に、かつ総合的な検討を各省間でお願いをしたいと思っておりまして、ぜひそういう問題意識に立った上で、もう一度閣議決定の見直しを強く私は迫りたいと思っております。  そういった十分な議論がされた上での結論であれば私は当然理解しますけれども、そういった作業がなされないままでの安易な市場原理主義的な、御時世だからといって何でもかんでもやってしまうことは問題がある。産湯を流すつもりで赤ん坊まで流しちゃったという言葉がありますけれども、まさにそういったケースに当たるんじゃないかと私は思っております。  ぜひとも、宮澤大蔵大臣の強いリーダーシップと御見識のもと、もう一度この点につきましては慎重な再検討をぜひお願いをしたいと思っております。これにつきまして、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  117. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おっしゃいますように、今の行政というのがそういう仕組みでできておりますからここまで来たわけですが、私もピーター・ドラッカーがこの間新しい本をくれまして、確かに彼はそういうことを言っております。ですから、社会というのは何でもかんでも自由であればいいという時代を我々はちょっと再反省しているのかもしれません。そういう意味では、御発言は大変にいろいろな含意を含んでいるなと思いまして、ただいま承りました。
  118. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 大臣のお立場もあり、なかなかそれ以上は言いにくいかもしれませんが、大変率直な見識の表明として、私も大変感銘を受けるものでございます。  では、若干具体的な問題を申し上げたいのですが、そういったアルコール関連問題の社会的管理、規制の必要性、これは二十一世紀の日本において極めて重要という視点に立ちまして、今までの縦割り型の行政、これを乗り越えて関係省庁が集まって、アルコール関連問題の対策連絡協議会といったものをぜひ早急に設置して検討を開始すべきではないかと思っております。その中には、例えば国税庁や厚生省や警察庁、あるいはまた法務省、また教育の関連から文部省、さらには労働省等々が参加すべきだと考えておりますけれども、そういった対策協議会の早急な設置ということにつきましては、大臣はどのようにお考えでございましょうか。これは質問を言っていなかったのですが、ぜひ関連としてお聞きしたいと思います。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、最初から今おっしゃっているところまではずっと一つの筋道で、おっしゃっていらっしゃることはもうはっきりして筋道が立っていますが、片っ方で規制緩和という従来の政府のポリシーがあって、それが何年計画でだんだん進んできている。この問題についても、人口基準は平成十五年までとか、あるいは距離基準は十二年までとか、それを進めてやってまいっておりますから、酒の問題だけに事はとどまらない可能性がございます。  今までの規制緩和について、必ずしもみんな賛成ばかりでやってきたわけじゃございませんから、それをある意味でメリットとデメリットを勘案しながら推し進めてきた、基本的にはそういう格好でございますから、ここに来て一種のその間の価値観の変化があってこれを改めるかということになりますと、規制緩和そのものが、もう一遍レビューするかということになりかねない可能性がございます。酒関係でなくて、全般に。  そういうことがございますから、一つ懇談会をつくりますと、ほかのことについてももう一遍考え直すかということに大変になりやすい問題がございますので、そこはまたその部分も慎重に考えなければならない問題だと考えております。
  120. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 質問時間が終了しましたので終わりたいと思いますが、やはり私は、規制緩和それ自体を否定しているのではなくて、むしろやるべきだと。特に、経済的な需給調整はぜひなくさなくてはいけないという大原則に立った上で、それと全く違う視点の規制については選択的にきちっと、特に社会的な問題につきましては、これはやはり国民の健康や生命にもかかわってくる話でございますから、ぜひ慎重に、選択的に検討する必要があるだろうということを改めて申し上げておきたいと思っております。  また、これ以外に、酒の不当廉売の問題につきましても質問を用意しておりましたが、これにつきましては、従来の方針をさらに強化して、そういった個別の問題につきましてはぜひ調査し、適切な対処をしていただきたいということを強く要求したいと思っております。  ぜひこの点につきまして一言お答えをいただければと思っております。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろな、この場合の規制緩和に伴いましてだんだん取扱量が多いところが力を持つようになりますと、その間にどうしてもメーカーとしてはリベートを出したがるといったように、それはその方が有利でございますから、一種の乱売になりやすいということは、これこそ今度はまた酒税確保ということになります。  国税庁はその点は十分に気をつけておるようでございますけれども、仰せはごもっともでございますから、十分注意いただきます。
  122. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 ありがとうございました。  以上で私の質問を終わります。
  123. 西田猛

    西田主査 これにて遠藤乙彦君の質疑は終了いたしました。  次に、石垣一夫君。
  124. 石垣一夫

    石垣分科員 公明党の石垣一夫でございます。  今回、私の質問の趣旨は、近年欧米諸国で多く採用されております国家財政を把握するバランスシートを我が国も採用し、一般会計、特別会計、特殊法人、地方政府等に流れている資金をわかりやすく貸借対照表にまとめ、そしてまた、これらを連結した財務諸表を作成し、我が国の財産と借金はどのくらいあるのか、したがって将来日本国民生活はこのような姿になるという国家像を国民に説明する責任がある、こういうふうに私は考えるわけであります。  一昨年、私は特殊法人の問題を取り上げて、特に、石油公団の不透明な会計から不良債権三千七百二十億という実態を突き詰めて、その改善策を提言しました。  当時、担当の堀内通産大臣は、この質疑のやりとりを聞いておられまして、みずから石油公団の問題に手をつけられ、そして、当時の十一月の文芸春秋に発表されました。その非常に真摯な大臣の姿勢に私は改めて敬意を表したのですけれども、特に、この石油公団の業務内容やそれから財務内容が国民の前に情報公開されて、特殊法人のいわゆる情報公開に大きな前進を見た、こういう経過があります。  昨年は、ちょうど予算委員会大蔵大臣に、いわゆる国営土地改良事業の特別会計の問題を取り上げて、そして、先般申し上げましたけれども、膨張する特別会計のあり方について、膨張する特別会計は決して好ましくない、また、特別会計にも一般会計同様ある程度のシーリングが必要ではないか、こういうことについて賛意をいただきました。  そういう経過を踏まえて、私は今回、三十八ある特別会計について全部ヒアリングいたしました。一つ一つを聞くと制度や業務内容がよくわかるのですけれども、どうも三十八全体をまとめると、まとめた資料がないのでわからない、こういう認識をいたしました。  特別会計の見直し論については、昭和五十八年の三月十四日の第五次臨調答申、最終答申に、特別会計のあり方ということで指摘をしております。  その当時、特別会計制度について指摘をしておりますね。特別会計制度の合理化の必要性、第二点としては特別会計の設置の抑制と見直しの推進、第三点としては特別会計の運営の改善、第四点は特別会計の会計経理の明確化、以上四点にわたって細かく指摘をしておるのですけれども、十七年経過した今日、そのほとんど、九割方がこの指摘についてこたえておられない、こういうふうに私は考えているわけであります。  そこで、宮澤大蔵大臣は財務当局として、この三十八ある特別会計の実態について、総合した業績評価や政策改善評価、こういうものについて説明していただけるでしょうか。恐らく、これはもう各省に聞いてくれということになるのじゃないかと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は終始石垣委員が取り上げておられまして、私も、いわゆる石油関連で堀内通産大臣が大変な決心をして整理に取りかかられ、事柄はまだ続いているわけですが、これはやはり、そういう御指摘があり、また大臣そのものが実業人であったがために積極的に物を進めることがおできになったのだと、大変に敬意を表しております。  でありますが、しかし、まさにおっしゃいますように、臨調などでは指摘があるのですが、なかなか期待されているほどの分析あるいは改革は進んでおらないというのは、率直なお返事だと思います。  ただ、それは当然のことでありますが、中には費用対効果の分析がはっきりしているものもありますし、石油なんかは、事業会計でございましたからある意味ではやりやすかったかもしれませんが、そうじゃないものがたくさんあるということが、ある意味でちょっと言いわけになりまして、徹底的にどうも物が進んでいないという過去の傾向がございました。  それで、私どもでは、やはりそれは、言われてみればもうそれに違いないことでございますから、最近主計局に、次長が専担をいたしまして、そういってもできるものはあるだろう、できるものはできる方法でやはり詰めていかなきゃならないし、できないのはなぜできないのかということもしなければなるまいと。それは言ってみれば非効率をなくすという意味であるし、費用対効果を分析するということでもございますので、長年後回しにしておったがいよいよどうもそうもできなくなったというのが、もうごくごく最近の状況でございます。  したがって、私自身も、長いこと大蔵省に関係してまいりましたが、正直言って特別会計というものはなかなかわかりません。国会でもそうしょっちゅう御質問のあることでもないものですから、正直を申しまして十分わかっていない。そうでないかとおっしゃれば、そうだと正直に申し上げますが、しかし、どうもこういうことではいけないなというのが最近のこの問題についての大蔵省の取り組み方でございます。
  126. 石垣一夫

    石垣分科員 ここでは大臣みずから率直に現状をお述べになったんですけれども、いろいろ聞いていくうちに、大体これをまとめるそういうセクションが必要でないかということを聞きますと、それもわからないということなんですね。  そこで、この点についてはいかがですか。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それで、まさにそういうぐるぐる回り、堂々めぐりになりますから、主計局の次長を一人この問題の総括的な責任者に指名をいたしました。やはりしかし、各省庁がその気になってくれませんと、実態はあちらの方がわかるわけでございますから、共同でこういう作業をしようということでスタートをいたしました。
  128. 石垣一夫

    石垣分科員 今、大臣からスタートをしているというお話を聞きました。  そこで、具体的にお聞きしたいと思うんですけれども、いわゆる事業報告書があるという特別会計もあるんですね、それから、ないという特別会計もあるんです。  そこで、三十八ある特別会計の中で十二会計だけがいわゆる事業報告書に類するものがあります。二十六特別会計には報告書がありません。お手元に今資料を配付しているんですけれども、事業報告書の有無というところでずうっと調べていきますと、ありが十二で、なしが二十六、こういうふうにデータが出ております。決算報告書に似たものはあるんですけれども、これを見ましたら数字の羅列ですね。前年に比較した金額とか人数、いわゆる歳入歳出の収支報告、決算であって、私の求めた意味の事業や業務内容を記した報告書ではありません。決算報告書であれば全特別会計が出しております。これは報告書と言わないんですね。  そこで、特殊法人においては事業報告とか業務年間報告があるんですけれども、これによってある程度その特殊法人の実態が見えるんです。しかし、特別会計は、平成十二年度予算で三百十八兆、重複の百四十一兆を除いても純計額は二百六十二兆あります。毎年こうした膨大な特別会計は、非常に不明朗なんです。事業をそれぞれまとめた報告書がありません。これは、国民に対して極めて不親切だと私は思います。  そこで提案があるんですけれども、一つは、特別会計ごとに報告書のある特会もあれば、ない特会もあるということを先ほども申し上げましたけれども、その報告書の作成自体もばらばらなんですね。それを一つにまとめることができないか。もう一つは、この際、全体の業務報告書または業務年間、こういうものを作成させて国民に情報公開をされてはいかがなものか、こう思うんですけれども、いかがですか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当然そういうお話になってくるのだと思いますが、今の程度でどれだけ実体のある報告ができるかですね。おっしゃっていることは私はまさにそのとおりだと思いますが、ごく最近になってこういう問題を正直言って検討し始めました段階で、どれだけのデータが実際意味のある形で報告書になれるかという、そこのところの問題があるんじゃないかと思いますが、ちょっと主計局次長からお聞きくださいますか。
  130. 寺澤辰麿

    ○寺澤政府参考人 特別会計につきましては、先生の御指摘と若干数字が違いまして、私どもは、三十八特別会計のうち二十三特別会計が損益計算書を作成しております。二十四特別会計が貸借対照表を作成しているということだと集計しております。若干数字が違うと思います。  それで、作成していないものはどういうものかといいますと、交付税及び譲与税配付金特別会計のように、毎年度の収入を分配整理して支出する、そういうことを目的とした特別会計につきましては、これは帰属する収益という概念がございませんので、それについて損益計算書、貸借対照表をつくっておりません。  それから、国が行います特定の公共事業につきまして区分整理をいたします特別会計につきましては、これは、主に一般会計からの繰入金を財源として支出を行い事業を行っているということで、基本的に企業の会計とはその性格が異なっているというふうに理解しておりまして、企業的な会計をもとにした損益計算書等々の作成になじまないというふうに理解しております。  いずれにいたしましても、各特別会計におきます財務諸表の作成につきましては、今後それぞれの所管省庁において検討がなされて、よりわかりやすくなるように検討されると承知しておりますけれども、それぞれの特別会計の性格を踏まえて、どのような新たな情報提供ができるか、勉強してまいりたいと考えております。
  131. 石垣一夫

    石垣分科員 今、主計局の方から貸借対照表の話が出ましたけれども、これは後ほど私が述べるつもりで、今の数字、私が申し上げた数字は若干指摘の項目が違うんですよ。それで、この業務報告書の数字については、私のところは全部調べて、確信を持ってきょうそれを出しているわけです。今話のありました貸借対照表、これについては、今おっしゃった数字でいいんです。これは後ほど申し上げたいと思ったんですけれども。  この貸借対照表についても、今話が出ましたように、ある会計もあるし、ない会計もある、こういうことなんですね。とにかくばらばらなんですよ。それで、例えば国有財産特別会計のように、法律で義務化されていないのにみずから作成して公表しているところもあるんです。例えば、国有財産法には第三十八条で、「適用除外」ということで、「本章の規定は、公共の用に供する財産で政令で定めるものについては、これを適用しない。」ということで適用除外があるわけです。にもかかわらずこれをきちっと作成しておられる。そういうところもあるわけです。  そこで、この貸借対照表の作成については、やはりこれは義務化をしなければいかぬのと違うか、こう私は思うんですけれども、これはいかがですか。
  132. 寺澤辰麿

    ○寺澤政府参考人 お答えいたします。  先ほどちょっと私誤解をいたしましたんですが、先生おっしゃっております業務報告書というのが、財政法二十八条の国庫債務負担行為の実施計画その他の進捗状況に関するものということでございましたら、それは先生がおっしゃるとおりでございまして、これは、国庫債務負担行為を行う特別会計についてはそういう報告をしておりますが、国庫債務負担行為がないものについては出していないということでございます。  それから、次の御指摘でございますが、おっしゃるとおり、公共用財産でございます道路、河川、湖沼、海浜、港湾等につきましては、国有財産増減及び現在額総計算書の報告対象外とされております。  まさに予算が、国の支出を国会において統制するという観点から一種のフローの統制といたしますと、こういったストックの国の財産についての現状が現在までのところ国会に出されていないということで、先ほど大臣から御答弁いただきましたけれども、国のバランスシートをストックに着目してどうやって出せるかということを現在検討しているところでございます。
  133. 石垣一夫

    石垣分科員 そこで関連して、今度はストックの問題なんですけれども、いわゆる公共用財産の評価基準というのは非常に難しい、そういうことでよくわかるんですけれども国有財産法の第三条の第二項二号、いわゆる公共用財産ということで、「国において直接公共の用に供し、又は供するものと決定したもの」という中で、今指摘がございましたように、河川、道路、海浜地等、それから港湾、それから漁港、土地改良財産、それから国営公園等、いろいろと書かれております。  それぞれ所管が違いますから、所管をまとめてこれを一つのものに、私が指摘しましたそういう方向に持っていくということについて、先ほど大蔵大臣から、主計局を窓口にして何か立ち上がり始めた、こういう話なんですね。その主計局としては、今この見通しはどうですか。
  134. 寺澤辰麿

    ○寺澤政府参考人 お答えいたします。  御指摘のように、国有財産のうち道路、河川等々、各省大臣が管理をされている財産について、現在国会に報告をされておりませんけれども、それぞれについてどのように評価するかというと、なかなか難しい問題がございます。  例えば、海浜というようなもの、河川というようなものにつきましては、その価格、価値をどういうふうに見るかはなかなか難しい問題がございます。また、道路につきましても、底地の道路用敷地の面積で評価するのかどうか、また、これは明治維新以来の長い歴史の中で道路の供用にされているわけでございまして、それの財産価値をどうやってやるかということについて、今各省にいろいろお願いをして、どこまで推計できるものか、御検討をお願いしております。  そういう状況でございまして、なるべく一定の割り切りの中で試作品をつくってみたいと思いますけれども、現在各省にお願いしている段階でございますので、確たることをちょっと申し上げられない状況でございます。
  135. 石垣一夫

    石垣分科員 今答弁ございましたように、いわゆる評価の手法がやはり確立されないと評価ができない、したがって貸借対照表もできないということにつながってくるんですけれども、この評価制度にどう取り組むかというのが最大のこれからの課題であろう。  さりとて、これは難しい難しいと言っていて、いつまでもこのままほっておけないと思うんです。既に諸外国でこういうものをクリアして貸借対照表をきちんとつくっているわけですから、そういう点についての今後の見通しはどうですか。
  136. 寺澤辰麿

    ○寺澤政府参考人 私ども、現在いろいろ作業をしておりますけれども、この作業の中から、では具体的に今後、例えば道路の敷地についてはどういうふうに評価するのか、河川についてはどういうふうに評価するのかといった問題点がわかってくるんだろうと考えておりまして、一応、試作品をつくった中で、現在の経理、会計制度の中でわからない点についてどういう補強をしていくか、検討してみたいと考えております。
  137. 石垣一夫

    石垣分科員 では、十分、鋭意ひとつ努力していただいて、一日も早くそういう一つのガイドラインをつくっていただきたいということを要望しておきます。  それから、先ほど業務報告書のことを申し上げましたけれども、十二があって二十六がないということを申し上げました。いわゆる業務報告がなければそれぞれ特別会計の行政評価もできない、私はこう思うんです。行政評価というのは、いわゆる施策の効果、有効性、それから経済的評価、こういうことが問われるんですけれども、この行政評価は特別会計といえども私は当然その範疇に入ってくる、こう思うんです。  したがって、その前段にある業務報告、行政評価、こういうものを早く全特別会計にきちっとつくり上げる、これが行政評価につながってくる、こういうふうに私は思うんですけれども、いかがですか。
  138. 寺澤辰麿

    ○寺澤政府参考人 お答えを申し上げます。  先生の御指摘の業務報告書というものについては、現在、国会に提出しておりますのは、国庫債務負担行為、つまり数年間にわたる契約の事業の進捗状況を国会に御報告しているものでございます。現在、その国庫債務負担行為があるものにつきましては出しているということは先ほど申し上げました。  なお、もっと広い意味で、各特別会計の業務全体について報告書を作成すべきではないかという点につきましては、二十八条書類の中で指摘されているものが一応全体として財政の状況を明らかにする書類というふうに考えておりまして、それになじむものについては出しておりますし、改善すべき点があれば改善していきたいと思っております。
  139. 石垣一夫

    石垣分科員 時間がございませんので、最後に結論めいたことを大蔵大臣にお聞きいたします。  やはり、一般会計、特別会計、それから特殊法人、地方政府に流れる資金、いわゆる国家財政を把握するバランスシート、こういうものについて私はつくるべきだ、こう思うんですけれども、いかがですか。
  140. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大変率直に申しまして、国の財政というものは必ずしもコストとベネフィットで判断できないという、それはそのとおりでございましょうけれども、そういう先入観がございますものですから、また、国の財産にしましても、行政財産なんというのは評価が難しいとか、いろいろいろいろ、言えばたくさん言いわけがありまして、今まで横へ置いてまいりました。  しかし、どうもここに来て、いかに政府でも何かもう少しちゃんと国民に中身をわからせる方法があるのではないか、石垣委員のようなそういう具体的な御指摘がありまして、正直申しまして重い腰を上げたというところでございます。  上げまして、それは当然いろいろ問題があるのはわかっておりますから、先ほど説明を申し上げましたように、ともかく一つ試作品をつくってみよう。その上で御批判をいただいたり、また、各省庁からも意見があって、だんだんそれを少しずつわかりやすいものに、趣旨の一貫したものにつくり上げていく、それしか方法はないだろう。どっちにしても、いきなり完全なというか、十分なものができるわけがありませんから、それをまずやってみます。その上でまた御批判を仰ぎまして精度を高めてまいりたい、こう思っております。
  141. 石垣一夫

    石垣分科員 国家財政を把握するバランスシートというのは世界各国の大きな流れなんですね。やはり、こういうグローバルスタンダードの中で日本だけが取り残されていくということでは私は相済まない、こう思います。したがって、今大臣が仰せになったように、ひとつぜひ一日も早くそういうモデルをつくっていただいて、広く論議を起こす、こういうことにされることを望んでおきます。  以上。
  142. 西田猛

    西田主査 これにて石垣一夫君の質疑は終了いたしました。  次に、山本譲司君。
  143. 山本譲司

    山本(譲)分科員 民主党の山本でございます。  早速質問に入らせていただきます。  先ほど来、石垣委員から会計制度についての質問がございました。私も公会計の制度について、この制度に関連をして幾つか質問をさせていただきたいと思います。  先日来、銀行への外形標準課税導入の問題で注目をされております石原東京都知事が、知事選の公約として東京都のバランスシートをつくるんだ、こういうことを掲げていらっしゃいました。この石原さんの提案だけではなくて、国や地方自治体の会計、いわゆる公会計に複式簿記の企業会計方式の導入を求める意見というのは、これは以前から結構あったわけです。  そして最近では特に、地方議会議員の皆さんでありますとかあるいは公認会計士、税理士の方々によって、公会計改革に向けての動きがますます活発になってきていると思います。また、これまで幾つもの自治体の議会におきまして、公会計に発生主義の複式簿記の導入を求める、そんな陳情書も出されているところであります。さらにまた、昨年の二月二十六日ですか、経済戦略会議によって出されました「日本経済再生への戦略」、こういうタイトルの答申の中にも公会計制度の改善という項目が盛り込まれているわけであります。  そこで、まず宮澤大蔵大臣に伺いたいと思います。こうした公会計改革に向けての動きをどう受け取っていらっしゃるのか、お願いいたします。
  144. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどまで石垣委員のお尋ねにお答えいたしてまいりましたけれども、いろいろ問題はあっても、とにかく可能な限り、また何かの約束事は不可避かもしれないけれども、それでもやはりバランスシートに近いものをつくり上げていくというのは、これは避けて通れない一種の大勢であろうと思っております。
  145. 山本譲司

    山本(譲)分科員 国、自治体も含めて、現在の会計制度は基本的に、現金主義に立った単式簿記という仕組みで行われているわけでして、これは予算に基づいた資金の出入りだけを記帳する方式です。例えば税収も借金も同じ資金の入り、つまり歳入ということになり、そして、例えば職員の給料の支払いといった人件費でありますとか、あるいは今後将来的に財産となり得る省庁の建物の建設費、さらには借金の返済、こういったものもやはり資金の出である歳出ということになってしまうわけですね。これではどうも財政状況を正しく把握して、かつ、わかりやすく国民に開示をするということは大変困難だと思います。  こうした公会計制度の欠陥はどうも予算の単年度主義と結びついているんではないかと思うのです。年度年度の予算は年度内に何が何でも使ってしまおう、これはまさに現金主義でありますね。その延長線上に、予算の分捕り合戦でありますとか、さらには年度末になりますと、公共工事の消化のために道路を掘り起こすというような現象にもつながっているんではないかと思います。結局、会計上からいくと、現在の公会計制度ではどうも予算の執行の効率性やその結果に対する国民の満足度というのには余り関心が払われていない、そんなおそれが多分にあると思うのです。  こうした考えから、やはり公会計に企業会計方式を導入しようという声が高まってきているわけですが、実はこれは、調べてみますと今に始まった話ではなくて、今から多分三十七年前ですね、一九六三年の第一次臨時行政調査会の専門部会が出しました予算及び会計制度に関する報告書にも、国の会計制度に複式簿記を取り入れるということが検討されていたということもあります。もっとも、どうも我が国の会計を振り返ってみますと、明治八年以降は複式簿記を採用していたようでありますが、明治二十二年の明治会計法の制定によって、どういうわけか単式簿記に切りかえられたようでございます。  そこで伺います。この一九六三年の第一次臨調の報告以来、この間の政府の公会計改革に向けての取り組みについて御説明をいただきたいと思います。
  146. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 山本先生御指摘のとおりでございます。  昭和三十九年の第一次臨調あるいは昭和五十八年の臨調の答申におきまして、事業の成果、これをやはり適正に把握していかなければいけない、こういう考え方から、きちっと事業の実態に即した会計処理をしていこう、こういう御提言がありました。国、政府としましては、一般的行政、いろいろな仕事がございますけれども、そういうことをつかさどっております一般会計につきましては債権債務をはっきりさせておこう、物品の状況をはっきりさせておこう、国有財産等にかかわる資料、こういうものをきちっとしていこうということで、資料をはっきりさせる、こういう努力をしてまいっております。  また、特別会計というのは、先ほども御議論がございました、単に交付税として入ってくるお金を仕分けするというような仕事、それから印刷とか造幣のようにきちっと一般の企業と同じような仕事をしているところ、いろいろな仕事があるわけでございます。事業があるわけでございますが、その事業の実態に即して、やはり企業と同じような仕事をやっているところはストックとしての概念を取り入れて、きちっと貸借対照表をつくっていこうじゃないか、こういうことで、先ほども御議論がございましたけれども、二十四の特別会計につきましては、財務諸表と申しますか、BSをはっきりさせているところでございます。
  147. 山本譲司

    山本(譲)分科員 今の政務次官お話を伺って、政務次官の意気込みといいましょうか、そういったものは感じるわけでありますが、どうもこの間の経緯ということになるとすぽっと抜け落ちているのじゃないか。やはりこの間、これまでの政府が積極的にこの問題に取り組んできたとはどうも受けとめがたいという印象を今の説明では持ってしまうわけであります。  一方で、むしろ地方自治体の方が意欲を持って、本当に真剣に実証的な研究を重ねているというぐあいに私は認識をしているわけでございます。古くは熊本県あるいは神戸市などで貸借対照表などを作成するといった試みがされていましたが、最近では、財団法人の社会経済生産性本部による研究がございます。  ここでは四年前から、神奈川県藤沢市をモデルにしまして、現行の公会計制度によります決算データを利用して、貸借対照表など企業の決算財務諸表に近いものに加工して分析をするという研究を行っているようであります。その後、全国で今三十を超える自治体がこの手法で決算の分析を行っているということであります。中には、大分県の臼杵市というところのように、市役所の中にバランスシート係という役職を設けているようなところもあるようでございます。また、都道府県においても、三重県のように発生主義会計の試みを行っている県もございます。  こうした努力を積み重ねることによって、やはり貸借対照表の意味やその必要性というものを痛感したという自治体職員の皆さんの声も実際お聞きをいたしております。そして、やはりこのことによって納税者の皆さんに理解をされ、より透明性の高い、よりわかりやすい財政運営と行政事業の評価ができるようになってきたというような、それぞれこういう分析をやっている自治体の皆さんの評価でございます。  これらの自治体では、実際のところは、複式簿記、発生主義の会計を正式に採用しているわけではなくて、あくまでも現行の制度の中で、複式簿記や発生主義を実際に導入した場合はどうなるのか、こういうデータを出しているにすぎないわけでございます。実際、法治国家の日本の中にある地方自治体でありますから、法律で認められていない制度を採用するというわけにはいかないわけでございます。やはり制度を変えるには法律を変える必要があると思います。  そこで、自治体の公会計に複式簿記、発生主義の公会計方式を正式に導入するにはどの法律をどのように変えなくてはならないのかということを伺いたいんですが、実はこれは多分自治省の所管ということで、お答えにならないでしょう。答えられますか。
  148. 寺澤辰麿

    ○寺澤政府参考人 お答えいたします。  公会計と一言でおっしゃいますとちょっと誤解があるといけませんので、少し詳しく申し上げますと、国の予算制度、予算をどういうふうにつくるかということにつきましては、これは財政処理権限の国会議決主義という考え方で憲法が規定しておりまして、これを踏まえました財政法におきまして、国会による予算の統制を健全かつ確実に行うということで現金の支出を統制するという考え方でございます。したがいまして、これは法律を直しましても、憲法上、支出統制ということでございますので、現金主義的にならざるを得ない。  その中で、具体的な事業、施策について、どのように複式簿記的、発生主義的考え方を導入してその事業を評価するかというのが次の問題だろうと思います。  それにつきましては、例えば公共事業につきましては、費用、便益を分析するBバイCの分析をいたしましたり、国も予算の編成過程で評価をしております。また、今先生御指摘の地方が行っておりますのは、例えば社会福祉法人でございますとか箱物をつくる場合に、この事業をやった場合に、この事業が将来どのようなコストがあるだろうか、どういう便益があるだろうかということを、例えば減価償却がどれぐらいで人件費がどれぐらいでということを企業会計的な考え方でやっているということでございまして、そういうものについては、国も法律を改正しなくても分析としては使えると考えております。  そういう意味で、法律を改正しなければそういう手法が導入できないというものではないんではないかというふうに理解しております。
  149. 山本譲司

    山本(譲)分科員 いや、国についてはこれから聞こうと思っていたんですが、地方自治体の公会計を企業会計方式に変えるには、正式に導入するにはどうしたらいいのかというのは、やはり自治省じゃないと答えられないんじゃないですか。大蔵省は答えられますかとお聞きしたんです。
  150. 寺澤辰麿

    ○寺澤政府参考人 地方におきましても、現在実行しているところは、法律改正、条例改正ではなくて、そういう個々の事業の費用を分析する手法として企業会計的なものをやっておりまして、別に条例とか法律改正しなくても手法を導入することは可能だと思います。
  151. 山本譲司

    山本(譲)分科員 多分、並立して使っていくということを想定しての御説明だと思います。  そこで、諸外国なんか見てみますと、やはりこの複式簿記、発生主義の公会計にかなり変えていっているというようなところがあります。正式に変えていっている。これを今の日本の国あるいは地方自治体の公会計に導入するとした場合、どのようなハードルやあるいはデメリットというのがあると認識をされているんでしょうか。一九六三年、三十七年前の第一次臨調の中でも検討したらどうかというようなことがうたわれているわけです。この間かなりの時間がたっているわけですから、そういった研究というものも当然やられているわけでしょうから、その辺について御説明をいただきたいと思います。
  152. 寺澤辰麿

    ○寺澤政府参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のような臨調の答申があっていろいろ議論をしてきたところでございますけれども、国の場合にそのまま導入できない点が幾つかございます。例えば、国が補助金をもって支出する場合、地方公共団体に補助金を支出する場合でございますが、これは広い意味では国民の資産形成に貢献するということになろうと存じますけれども、これは企業がある資産を取得するということと同じような意味での資産取得にはなりません。  と申しますのは、国が地方に対して対価なくお金を給付して、その補助金によってできたものは、例えば補助事業者、地方公共団体であれば地方公共団体の財産として運用されるということでございますので、そういう場合の国の補助金が、国の資産とならないわけですけれども、それをどういうふうに評価したらいいか、なかなか難しい問題がございます。  また、河川とか海岸、先ほど申し上げましたが、原始取得的な財産がございまして、これを企業の財産と同じように考えていいのかどうか等々、企業会計とは違う側面がございます。また、国につきましては、例えば道路、公園等をつくりましても、企業と違いましてこれを売却するということができません。  そういうことで、国にそのまま企業会計的考え方を導入することにはやや疑問があるということで、検討はしておりますけれども導入していないところでございます。
  153. 山本譲司

    山本(譲)分科員 幾つものハードルが存在して簡単ではないということも承知はいたしております。また、企業は結局は営利の追求が第一の目的でありまして、企業の会計はそのために使うものだ、国や自治体は企業と違って営利を目的としているものではないので企業会計をまねる必要はないというような反論もあろうかと思います。しかし、企業の会計に複式簿記、発生主義という手法をなぜ使うかといいますと、やはり数字が正確で使いやすく、そして対象である企業の財政状態や成績を包括的に客観的にわかりやすくとらえることができるからではないかと思います。  そこで、規模がこれだけ巨大化した国や地方自治体の財政にとって、また、ますます財政状況が厳しくなっている国や自治体の財政運営にとっても、企業会計に用いられている手法を応用することによって、やはり全体像が把握しやすくなると思います。そして何よりも、今本当に理解と協力を求めていかなくてはならない納税者の皆さんの目にわかりやすく、正確に説明できるようになると思います。  国会におきましても、二年前の六月に議員立法で行政評価基本法案というのが衆議院に提出されまして、残念ながら審議はいまだされておりませんが、その法律案によりましても、法施行後三年以内に国の会計制度を改革して、貸借対照表などを作成し、公表することを国に義務づけるというような内容にもなっております。ぜひ政府としてもみずから率先して、いろいろな関連法律の改正なども含めて公会計に企業会計方式を導入するよう、強く要望をいたしたいと思います。  そこで、財政全体の責任者として、宮澤大蔵大臣の決意をぜひもう一度伺いたいと思います。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大体お話が基本のところに戻ってきたと思いますが、結局、国というのは企業の一種だと割り切ることには大変に大きな抵抗がある。恐らく山本委員もおありになるし、公務員諸君がみんなその点は大変抵抗を感じると思うんです。  それがあるものですから、なかなかコストベネフィットといったような物の考え方はもともとなじまない、バランスシートも本当はなじまないというようなことをずっと今までやってきていて、だから大福帳でいいか、それもいいとも思っていないということから、なるほど、国は企業ではないけれども、しかし、国のやる仕事の中でも一定のベネフィットを求める場合に、どれが一番コストが少なくて済むかという考え方はあってもおかしくないだろうと。  それはそうですよね。そうだとすれば、そういう場合にはコストベネフィットのアナリシスというのはあるじゃないの、それをやろうとすれば、やはり大福帳じゃなくてバランスシートをつくって、そうやって検出するしかないじゃないの、それでだれも悪いことはないだろうということぐらいまでは頭が進んできたわけです。  ですから、今おっしゃることは、私は大変ごもっともだと思っています。国政の全部がそういうふうに割り切れるとは思っていませんけれども、しかし、殊に特別会計なんかには企業会計に似たものがたくさんありますから、かなりのところではそれはやれるじゃないかというふうにやはり考えていくべきだ、私もそう思います。
  155. 山本譲司

    山本(譲)分科員 国際的に見ても、先進国の中でこういった企業会計方式を導入した改革がどんどん進んできておりまして、今や、現金主義、単式簿記にしがみついているのは日本だけという少数派になってしまうんではないかと思います。  特に、行政改革の先進国としてニュージーランドという国をよく挙げられますが、ここでもやはり、このニュージーランドの改革を裏で支えたのは、こういった発生主義、複式簿記に基づく決算制度の導入だったと言われています。  改めまして、宮澤大蔵大臣に、公会計に企業会計方式の導入ということの実現に向けて力を発揮いただきますよう強く要望を申し上げまして、次の質問に移ります。  先ほど来お話をさせていただいておりますこの会計制度の改革は、これはあくまでもやはり手段であって、道具だと思います。やはり道具を使いこなすというのは私たち人間でありますし、幾ら優秀な道具でも、使いこなせなければ何の効果も発揮をしないわけです。現下の状況の中で行政に求められているのは、限られた財源や財産をいかに有効に活用するか、効率的に使うかということだと思います。  私は、今の財政赤字が累積する中で、それを解消する手段として、国有財産を処分したり有効活用するということも一つ不可欠な、大変重要な問題だと思います。経済戦略会議の答申でも、こういった国有財産の有効活用についても答申の中に盛り込まれているわけであります。  一昨年の十二月十七日に、売却可能な国有財産のリストというものを公表されたわけでありますが、このリストアップされた財産というのは、その後、売却に向けてどのような具体的な取り組みが行われてきたのでしょうか。
  156. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 全体で件数が三千二百九件ございます。台帳価格、土地面積、建物延べ面積と分けて仕分けしておりますが、平成十年度において用途廃止、売却等の処理が完了した財産でございますが、これが七百九十九件ございまして、土地価格、台帳価格でございますが、土地につきましては千二百三十億円、それから建物の方でございますが、台帳価格で百五十六億円、それから、今申し上げました処理が完了したという財産でございますが、そのうち売買契約等に至った財産、つまり、売却、交換等国と国以外の者との契約により国の歳入に計上されたものが、件数で五百四十二件、土地の方が千九十一億円、そして建物の方が三億円、こういう状況でございます。
  157. 山本譲司

    山本(譲)分科員 それでは、私も具体的な数字を挙げて質問をさせていただきたいと思います。  大蔵省からの資料によりますと、未利用国有地の一般競争入札における契約金額の推移を見てみますと、平成六年から十年まで、この五年間で、一般会計分、特別会計分を合わせた契約は、件数でいいますと二千七百十六件、契約額でいいますと四千四百十六億円ということになっております。  この中で多くを占めるのが、最近の御時世ですか、相続税にかわって不動産で納付をする、いわゆる物納の土地であります。不動産の取引が停滞をしている現状の中では、こういった傾向はますます顕著になってくると思います。  そこで、今示した入札状況ですが、実は、平成十年の一般会計分の入札件数の中で、晴れて契約を結ばれたという成約率、これが五七・五%という数字であります。あとの四二・五%は、どうもこれは不調に終わってしまったのではないかと考えられるわけでありまして、一体どうしてでしょうか。  よく不動産業界の人からもお話を聞いたりしますと、どうも国有地の売却は民間の取引より高いのじゃないかというような話も聞いたりするわけです。あるいは、地価下落が続く現状の中ではどうもおくれているんじゃないかと。まだまだ、大蔵省からの資料によりますと、この物納不動産の未利用国有地は、平成十年度末でいっても三万二千六百八十一件、国有財産台帳価格でも二兆千五十億円もあるわけであります。  やはりこうした国有地の売却に関して、もっと一工夫必要なのじゃないかなという感を強く持つわけでありますが、その件については、こういったデータも踏まえて、どうお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  158. 中川雅治

    ○中川政府参考人 私ども、未利用国有地の売却につきましては積極的に進めているところでございますが、今日の不動産市況等を反映いたしまして、今先生御指摘のような成約率になっているわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、いろいろな形で工夫をして成約率を高めるように努力しているところでございまして、例えば、一般競争入札参加者の利便性の向上及び事務の効率化を図るために、昨年一月に、従来の一般競争入札、期日入札ということになっておるわけでございますが、このやり方に加えまして、郵送による入札、これを開始いたしました。  この郵送による入札と申しますのは、入札参加希望者が、指定の期間内に入札保証金、これは購入しようとする金額の五%以上でございますが、これを指定金融機関に振り込みの上、入札書に入札金額を記載し、郵送または持参する、こういう方式をとることを認めておるわけでございます。  また、未利用国有地の情報提供、これは未利用国有地全部の物件を既にインターネットで公開いたしておりまして、こういった情報を提供することによりまして広く全国から需要が喚起できるということを期待しているわけでございます。  こういったいろいろな政策をとりまして、鋭意、売却促進に努力しているところでございます。
  159. 山本譲司

    山本(譲)分科員 大蔵省は、こういった「くらしに役立つ国有財産」というパンフレットを発行されております。単に土地の提供という、行政からのサービスなんだというだけの発想ではなくて、やはり国家の財政にも役立つんだという側面も強く意識して取り組んでいただきたいと思います。  最後に、大蔵大臣、この件について何か決意がありましたら。
  160. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思います。  当然、国が不用なものを持っていてということは経済的にも間違いですし、そういう不用なものは民間にお渡しすれば有用に使ってもらえるんですから、それはもう当然だと思います。
  161. 山本譲司

    山本(譲)分科員 終わります。
  162. 西田猛

    西田主査 これにて山本譲司君の質疑は終了いたしました。  次に、若松謙維君
  163. 若松謙維

    若松分科員 公明党・改革クラブを代表して、三十分間質問させていただきます。  まず、私の質問はかなり専門的になるかもしれませんけれども、しかし、宮澤大蔵大臣の、五十年を超える大蔵行政を見られた、まさに超人たる方からすれば、子供を操るようなものではないかと思いますけれども、ひとつ前向きな、積極的な御理解をお願いしたいと思います。  まず、手元にお配りをさせていただいておりますが、「会計制度の進化」という表ですけれども、私、難しい話をするつもりはありません。ぜひ、大野総括政務次官も聞いてください。  まず、会計制度というのは、ベニスの商人じゃないんですけれども、もう十五、六世紀から単式簿記、収支報告書というのがやられておりまして、これが残念ながら今の日本の国の行政の決算の程度。ところが、御存じのように、欧米は複式簿記、アメリカですと、独立行政法人とか特殊法人も連結でちゃんと決算書を出している、キャッシュフローも出している、時価情報も出している、こういう状況でございます。  そして、複式簿記というのがありまして、これが貸借対照表。やっとことしになって、恐らくあと三、四カ月ぐらいでしょうか、大蔵省として何らかの前進の作業を発表されると思いますけれども、特殊法人等にはこれが使われている。  それで、三番目の段階といたしまして、連結会計、いわゆる連結財務諸表ですけれども、これも十数年前、二十年前ぐらいからやってきたんですけれども、やはり、日本の重要性基準とかという、五%未満の場合は連結基準に入れないとか、非常に抜け道が多かった。  ところが、諸外国であれば、重要性は何%でいいとルール化するんじゃなくて、重要性があるものはすべて連結すべきだということで、私も一九八四年からイギリスにおりました、八三年はアメリカにいましたけれども、彼らの連結を見ますと、今、この九九年四月施行、いわゆることしの三月、第一回目の決算期からやろうとしているところが、欧米では、少なくともアングロサクソン系ではもう二十年前から始まっていた。  さらに、その一年後、本年四月以降、時価会計ということで、なぜ連結会計が必要になってきたかというと、一つの会社としての法的な実体としての決算書というのが意味をなさなくなってきた、いわゆる経済的実体を反映しないから、では連結会計という手法を持っていこう、こういう時代になってきたんですね。  それから、今度は市場の時代になりました。いわゆる株式の投資価値の価値基準として、連結会計でもだめだ、今度は時価会計というものが必要になってきたということで、これも、私が八四年、イギリスにいたときは、いわゆるマークアップ方式というんですか、時価会計は当たり前でした。二十年前から、実はアングロサクソンでは当たり前だったんですよ。  では、これから何になるのか。さらにどういった会計という考え方が出てくるのか。特に、環境会計という言葉が、これも町のところでちらほらと出てまいりましたけれども、環境会計というよりは、環境コストをどう把握するのか、内部管理システムで行うのか、ディスクロージャーとして行うのか。ではということで、この環境会計も、一、二年の間にかなり世界のグローバルスタンダード化が決まってくると思います。  さらに、その次の先となるとどうなるのかという話から、LCAという言葉までありますけれども、ライフ・サイクル・アナリシス、いわゆる環境会計の環境負荷を量的、金額的にさらに把握しようという物すごいメソドロジーが今発達している。それをこれからいわゆる会計という観点からやらなくちゃいけない。今、非常に時代の流れは速いということをまず御認識いただいて、質問に移らせていただきます。  まず、質問の最初なんですけれども日本の会計基準が、はっきり言って世界におくれました。私もちょうど環境委員会、六年前でしたけれども、当時、ISO9000という国際品質管理規格、この導入におきまして、日本工業規格、JIS、これがどちらかというと、通産省の外郭団体によって、いわゆる行政がやっていて、世界のISOのグローバルスタンダード化に数年間乗りおくれた。ISO14001でかなり一生懸命私も指摘したから、キャッチアップしましたけれども、それでも、国民一人当たりのISO14001の取得はまだおくれている、世界的に十数番目。  ということで、やはり今回の日本の会計基準、少なくとも、さっきの時価会計とか連結会計とか、実質的な連結会計とか、そういういわゆる世界のグローバルスタンダードで常識的な情報が今の大蔵行政の中でおくれたというのは否定できないと私は思うんですけれども、なぜおくれたかという理由を総括的に、反省的にお聞きしたいのです。
  164. 林芳正

    ○林政務次官 お答えを申し上げます。  まず、もう御専門でいらっしゃって、また、ISOの規格もお取りになっています若松先生からの御質問で、多分私が、この職につく前に、党内でいろいろ企業会計についての小委員会をつくって検討しておったそのメンバーなので、多少はわかったふりぐらいできるだろうということで御指名があったと、ありがたく思っておるところでございます。  そこで、日本の会計基準が世界の動きにおくれた理由ということでございましたが、先生のこの表をずっと拝見させていただきまして、動物が進化するようにだんだんいいものになっていくという見方も、先生のおっしゃるとおりであろう、こう思いますが、一方で、もう先生が御専門ですけれども、例えば時価会計と取得原価主義というのは、どちらが本当にいいのかというのはいろいろな議論があるところでして、どっちが進化した形でどっちがおくれているというのは、一概に言えないところがあるのかなと。  そういった中で、各国の会計基準といいますのは、やはりその国の経済とか企業の実態に応じて定められていくということがまずあるのではないかと私は思っておりまして、その中で、先ほど来御指摘があるように、グローバライゼーションが進んできたものですから、やはり国際基準というものに合わせていかなければならない、そういう背景で、米国の会計基準を中心として国際的な会計基準の見直しが急速に進められてきた。その米国に合わせていくという過程で、米国に合わせていくということですから、日本の方がアメリカよりも少しおくれをとったということでございます。  例えば、イギリス等はかなり昔から時価会計をやっておりましたけれども、米国でも、御存じのように、時価会計は二十年前はなかった。今委員が御指摘のように、デリバティブでは、二、三年前から検討してことしぐらいの導入でございますし、有価証券でも四、五年前から入っているということでございます。  そういう意味で、我が国といたしましても、一つは、今まで余りニーズがなかったのではないかなと率直に反省をいたしておる点があるわけでございます。それは、いわゆる直接金融と間接金融のバランスが非常に間接金融に寄っておりましたので、一般投資家に会計をしてディスクローズをして、そして直接金融の中に入ってきてもらうということが余りニーズがなくて、その辺が国際化ということに対して余り積極的でなかった理由ではないか、こういうふうに率直に思っておるところでございます。  そういう意味で、国際的な動向を踏まえて、ここ数年はかなり我が国の得意とされますキャッチアップの過程をやってまいったわけでございまして、会計基準の整備、今おっしゃった時価会計や連結会計等も積極的に進めてまいったわけでございます。そういった中で、やっとキャッチアップできましたから、今度は同じ位置に立って一緒に基準をつくっていく、今後ともこんなような気持ちでやってまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  165. 若松謙維

    若松分科員 きょう、特に林政務次官答弁をお願いしたわけですけれども、彼は、日本の国会議員でもまれな、私もISO14001は世界第一号ですけれども日本人の国会議員としてはアメリカで議員立法したのは林さんぐらいじゃないかと思うのですけれども、そんな状況も御理解いただいていると思いますので、林政務次官にお願いしたわけです。  今おっしゃったように、日本は間接金融だということで、ここ一、二年、キャッシュフロー会計という言葉がはやってきているわけですけれども、事業をやるにはキャッシュフローは当然会社がやるべきなんですね。それが、なぜ改めてキャッシュフロー会計なんという言葉が出てきたのかなと思うと、結局、今まで間接金融で、日本の経済は右肩上がりですからまず倒産はなかった、ですから、実質のキャッシュフローはだれがやってきたかというと、金融機関がやってきたんですよ。中小企業の社長はそんなことはやらなくていいと。それで、銀行を呼んできて、これだけ足りないんだからやってくれということで済んだわけですけれども、今、市場の時代、そして株価という観点から企業が評価される時代になった。結果は、甘やかしてきたのです。それは、間接金融主導の大蔵省の責任なんですよ。  その延長で、先ほどの会計、キャッチアップしていながら——二十年前にキャッチアップしたのですよ。でも、彼らはすぐ次の、どういったスタンダード、どういったメジャーでやるかという、本当にいろいろ試行錯誤をしているわけですから。では、国際会計基準、特にヨーロッパの大陸系は結構遅かったではないかといいますけれども、オランダは結構早かったし、国によっても随分違う。いずれにしても、やはり日本というのは遅かったと思うのですよ。だから、バブルの清算のときも、結局、日本の会計基準、従来みたく取得原価主義みたいなものが、商法にも書いてあるし、これは後で触れますけれども、ずるずると——資本経済というのは、当然、バブルというのは起きるわけですよ。また、バブルがはじけるときもある。  大事なのは、資本経済というのはそういう価値が市場価値から見ると上がったり下がったりするわけですから、下がったときの損切りを早く出させる、これが実は会計の役割なんですよ。それを、大蔵省が護送船団方式で、会計士協会も巻き込んじゃって、企業会計審議会も巻き込んじゃってバブルの損切りがおくれてしまった、そういうことなんですよ。  それで、やっとことし、来年にかけて時価会計、連結をやるからキャッチアップしたと。とんでもない、体質は変わっていません。新しい時代の変化に対して、今の体制で私はキャッチアップできるとは到底思っておりません。また近いうちに、三年か五年のうちに反省が来ます、今のままやっていれば。  その具体的な例が、具体的な評価が今、会計基準の設定のあり方が、各国でやるのじゃなくてグローバルスタンダードで、いわゆる国際会計基準、IASC、これがこれから会計基準をつくってそれを各国におろすという時代になってきました。  というところで、では、日本はキャッチアップしてどうのこうのということでその成果を見ますと、お配りしました二枚のペーパーのうちの二枚目、これは日経の二月の十七日の「だれが作る 日本の会計基準」というコメントが非常に端的に示しているのです。  去年からことしにかけて、このIASC、国際会計基準委員会が、新しく会計基準の設定のあり方も含めて大きく組織がえをしようとしております。大事なのはこの指名委員会七名、この指名委員会の人たちが新しい世界の会計基準のあり方をつくる大事な人なんですよ。それで、この七名を見たら、見てください、アメリカ二名、イギリス一名、ドイツ一名、豪、オーストラリア、これだってアメリカ人ですよ、フランス一名、香港、香港はイギリスと同じチャータードアカウンタントの世界ですから、会計基準も一緒です。結局、アングロサクソンで五名、そしてドイツとフランス。  なぜGNP世界二位の日本が入れなかったのですか。これこそ大蔵省の、キャッチアップしたといいながら、現時点での日本のインフラの低さ、日本から出た人は信用できない、頼りにならない、かつ大蔵が仕切っているからこういう状況になっているのだ、そういうことじゃないんですか。それについてどう思いますか。
  166. 林芳正

    ○林政務次官 今、若松委員から、今度新しくできますIASC、IASCというのは今までもあったわけでございます、一九七三年以来あったわけでございますけれども、これをさらに強化していこうという中で、まず、これは三段階ぐらいあるわけでございますけれども、七名の指名委員会をつくりまして、その指名委員会の七名の皆さんに評議会、これは十九名でございますけれども、それを指名していただこう、そしてその評議会が、今度は理事会や基準助言委員会を指名していく、運営していく、こういうことになるわけでございまして、その一番最初の段階の指名委員会に我が国から残念ながら入れなかったということでございます。  この組織改革については、今申し上げましたように、このIASCというのは国際会計基準委員会ですから、各国の、我が国でいいますと日本公認会計士協会のようなものの国際団体でございまして、一義的には、加盟をしておられます公認会計士協会、先生ももちろんメンバーだろうと思いますけれども、ここが中心になって、我々もバックアップをしてやってきたわけでございますが、率直に申し上げて、日本人が入らなかったというのは大変残念なことであるというふうに思っておるところでございます。  さはさりながら、今申し上げましたように、この七名が今度は十九名を選びまして、この十九名が今度はパーマネントな機関でございますから、ここに何とか我が国から適切な人材を送り出さなければいけない。当局としても最大限の支援を行ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  167. 若松謙維

    若松分科員 今、これからできる評議委員会の御説明もなされました。日本から、本当は名前を公表しないということですけれども日本側から出ているのでしょうけれども、会計士の方お一人、民間から、経団連の方からお一人ということで、今名前が挙がっております。  結局、国際会計基準というのは、おっしゃったように二、三年前まではどちらかというと甘い方、世界の会計基準も緩かったから、アングロサクソンみたいにきついところから、大変失礼ですけれども、フランスとかドイツとか、どちらかというと甘い方、幅があったわけですけれども、去年まで、アメリカとしては、SECとしては、恐らく国際会計基準は甘いからグローバルスタンダードにならないのじゃないか、そう思っていたわけですけれども、ふたをあけてみたら、この国際会計基準がどんどん厳しい方に、ヨーロッパの大陸系も理解し始めて、それで、ではこういった形でやろうということで、アメリカは慌ててSECがこのIASCに乗り込んで、まさにアングロサクソンの主導でやろうとしたわけですよ。それで、結果的に日本ははじかれちゃった、こういうことなんですね。  それに対して、では、ドイツはどうしたかというと、九八年ごろにそういう動きが実はあったのです。私もその当時、どこかの委員会で、こういった動きがありますからちゃんと乗りおくれないようにと言いました。だけれども、乗りおくれたじゃないですか。乗りおくれたんですよ。ドイツはちゃんと方向転換して、そこで国内法も変えて、それでちゃんと指名委員会に入っております。  ですから、本当の意味で反省してもらいたいのですよ。反省を生かして、なぜこうなったのか。基本的には、企業会計基準というのは、行政からも政治からも独立すべきなんですよ、経済ですから。そういった観点から、現在、企業会計審議会があるわけですけれども、早急にこれは民営化していただいて、それで、当然経費の負担があります。  ですから、今までの大蔵省のデスクを借りているのじゃなくて、かつ審議会の会長を大蔵大臣が任命するのじゃなくて、あくまでも企業会計審議会もしくは新しいそういったボディーは各界からの人を、まさに民間団体としてやっていただいて、その経費負担は当然行政、会計士協会等の専門機関、さらには経済界に三分の一ずつ負担していただく。そういった形で、特に、どれだけ独立性を保てるかというのが、ある意味で世界の企業会計基準設定主体として信頼されるかどうかという観点ですから、大蔵省が、行政が企業会計基準までいつまでも抱えているような状況ですと、世界はいつまでたっても日本のディスクロージャーは信用しない。この悪循環は変わりません。  そういった面でお聞きしますけれども、ぜひ、この審議会の体制を強化するに当たって、まず大蔵省からも独立させる、かつ資金的にも、行政、会計士等の専門機関、そして経済界に三分の一ずつ負担させる、そういった形で体制を強化すべきと考えますけれども、いかがですか。
  168. 林芳正

    ○林政務次官 今、独立民営化という観点からいろいろな御指摘があったところでございます。先ほどちょっと御紹介申し上げました自民党の方の企業会計小委でも、そういうような論議も含めまして種々いろいろな勉強をしたわけでございますが、そういった中で、今先生が触れましたように、政治とか行政から独立する、会計基準というのは、まさに民間の方がおやりになっていることですから、一番早く世の中の動きにキャッチアップしていくという意味では、いろいろなところから独立して自主的にやるという観点が非常に大事である。これはまさに大事なポイントでございました。  それからもう一つは、そこでできました基準というものが、ほかの方もいわば基準としてこの基準を使えるというような力も一方で持つわけでございまして、独立性を担保しながら、でき上がったものに正当性をどうやって付与していくか、このバランスを各国は非常に苦労しながらやっておるわけでございます。  例えば、アメリカにおきましても、FASBというところが先生御存じのように大変な権威を持ちましてあらゆる基準をつくっておりますが、これは手続上はSECが拒否権を持っておりますから、SECの判断でこれが不当であると認めた場合は、いかにFASBがつくったものであっても会計基準としては通らない、最終的にこういう担保があって、いわば細い糸で一本つながっておるところがあって、その糸は普通は動かないのですけれども、そこで正当性が担保されておる、こういうような形になっております。  イギリスにおきましても、産業省、DTIが同じような機能を持っておりますし、今御指摘がありましたドイツでもDRSCというのをつくりましたけれども、ここも司法省と同じような形を持っておるということでございますから、全く民間の独立した団体がやるということは、先生御理解いただけると思うんですけれども、なかなか難しいということでございます。  そういった観点から、いろいろな行政当局と民間機関の関係をどう整理するか等、この辺を十分に今から検討してまいらなければいけませんし、余り検討ばかりしておって結論が出なくても困るわけでございますけれども、その辺はいろいろな御議論が、我が省内でも、またこの国会の先生方の間でもなされておるようでございますので、必要に応じていろいろな意見交換を図りながらキャッチアップに努めてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  169. 若松謙維

    若松分科員 ちょっと済みません。皆さんにこの資料を見ていただきたいのですけれども、いいですか。  そういうことで、行政も何らかの接点ということですけれども、私もアメリカとイギリスに六年間おりまして、彼らの行政のこういった会計基準設定主体なり、また会計士協会なりに対する関与を見てまいりましたけれども、御存じのように、去年の中央省庁の設置法の法案の中で、明確に行政の権限規定、裁量行政はなくなりました。以前は、何かやるところには必ず行政は監視しなくちゃいけない、関与しなくちゃいけないという前提があって、それを明確に国会で法律とともに否定されたのですよ。  そこで、関与させないという、ちょうどこれは構想日本の加藤さんという大蔵省OBの方です。あの方も、自分たちがどれだけ罪を犯したかということも反省して、今までの裁量行政、権限規定を認めてきた考え方は、すべての、日本の一〇〇%の生活に、どこかに官僚が入るという考え方をやめて、あくまでも関与しないところをいかにふやすかというのがこれからの時代だ、これが市場の時代だ、事前チェックから事後チェックだと明確に確認したじゃないですか。  だから、そういう形で、では、先ほどの会計基準設定主体なり、SECが最終的に拒否権——拒否権だけでいいのですよ。ここについて運用は任しちゃっていいのです。よっぽどひどい場合にそれはだめだということで、これをやっちゃいけない、これをやっちゃいけないと手とり足とりやっちゃいけないのですよ。そういった意味の何らかの接点なら私は理解できますよ。そういう理解でいいわけでしょう。
  170. 林芳正

    ○林政務次官 今、新しい行革の基本的な考え方について先生からお話がありました。まさに先生おっしゃるとおりでございまして、今検討している中には、これは党内の議論ということでちょっとお聞きいただきたいのですが、まだまだ行政の対象になる主体を、例え話で言いますと、小学生ぐらいなのか高校生ぐらいなのか大学生ぐらいなのか、この見方によってそれぞれ御議論があるところでございまして、もう大学生なんだからこの白い部分をふやせという方もおられますし、もうちょっと若いようですからもう少しという方もありまして、その辺は議論を今やっておるところでございます。  私は、個人的には、どちらかというと、もう大学院ぐらいのことでいいのではないかと思っておりますけれども、そういう議論を踏まえながら、この白いところと、それからかかる灰色のところ、これは灰色と言ったらあれかもしれませんが、色がついているところのバランスをどうしていくかということを早急に検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  171. 若松謙維

    若松分科員 特に今、御党、自民党の中で、十二月二十一日の企業会計に関する小委員会ですか、私は、私の意見もありますけれども、今の日本現状を考えれば、かなり的を得ている議論ではないかと思います。少なくともそういった形の、いわゆる見える形での企業会計審議会の設定主体の強化並びに独立性というものを早急にやる。本当にことしじゅうに形にしないと、予算化も含めて。  経団連にも実は私はお願いしました。会計士協会もこれからやっていくと、中地会長以下、かなり決意を強く表明しております、経団連も、私たちも負担していいですよと。あとは行政が適正な負担と、いつまでも子供じゃないのだ、大学院ぐらいだというふうに認めて、市場の時代なんだから自分たちでやりなさい、そういうことができるかどうかということです。それを早急にやっていただきたいのですけれども、できたら年内ぐらいに見える形でやってください。どうですか。
  172. 林芳正

    ○林政務次官 今、期限についてのお話がありましたが、これも今御指摘のあった自民党の小委で、お褒めいただきまして、今は私は外れていますけれども、大変ありがたく存じますが、これにも今まで二人で議論させていただいたようなことが書いてあります。  ここには、「こうした方針に基づき具体的な作業を急ぎ、国際的な潮流に遅れることなく、新たな会計基準設定主体の具体的な骨格が二〇〇一年初までに内外に示される」、こんなような絵を描いておるわけでございますが、これはまだ先生御承知のように小委員会の中間取りまとめの案といった性格のものでございまして、今後この議論がどのように進んでいかれるのか、また、我が党のみならず、いろいろな国会の場での議論がどういうふうになっていくのかということを踏まえながら、なるべく早く努力をしてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  173. 若松謙維

    若松分科員 それで、具体的に、では、この企業会計基準の設定主体の独立性を高めるということで一番大事なのは、この審議会の会長ですか、現在は大蔵大臣の任命ですね。ところが、例えばアメリカのFASBとかイギリスのアカウンティング・スタンダード・ボード、ASB、そういったところは、基本的に財務省とかそういう特定の機関じゃないんですよ。例えば彼らですと、独立性を求めているから、まず、お金をいろいろなところから集めて、それでクッションを置いて、独立性を高めるためにそのファンドが、トラスティーがその企業会計基準の設定主体にお金を提供する、そこが指名するということなので、大蔵省は関係ないんですよ。  少なくとも新しい形に移行する場合は、早いうちにですよ。もう本当は春ぐらいまでにやってもらいたいんです、もう春ですけれども。企業会計審議会、新しい会長さんは、やはり大蔵省任命じゃなくて、私は、そういった意味で本当に独立した、ある意味で内閣府とか、もしくはそれにさらに国会同意人事を入れるとか、そういった形で一つの省庁に偏らない、それが失敗のもとでしたから、やはり偏らない形の同意人事、これをやるべきだ。国会同意人事も含めて、また大蔵省が任命するんじゃなくて、もっと上の立場でやるべきじゃないかと思うんですけれども、それはいかがですか。
  174. 林芳正

    ○林政務次官 今、会計審の任命についてのお話がございましたけれども、先ほど来御議論になっておりますように、独立性というものとそれから正当性を付与するための、先生は拒否権だけあればいいではないかという御意見かとも存じますが、その辺のバランスの中でどうしていくのかということを今から検討していくべき課題だというふうに考えておるところでございます。  そして、よく御存じのような話でございますけれども、先ほどから大蔵省、大蔵省と名前が出るものですから、御確認までに申し上げますと、この七月から、行革の先行の第一段として、我が省の今の金融企画の部門は金融庁に移ることになっておりますが、これと同時に、今あるものも向こうの方へ行くということでございますので、大蔵省ではなくなるということだけは申し添えさせていただきたいと思います。
  175. 若松謙維

    若松分科員 もう時間もかなりなくなってきたんですけれども、いずれにしても、監査法人も悪いんじゃないかと。確かに悪いと思います。これは、二月十七日に「住専問題 監査法人の責任不問」という言い方をしておりますけれども、このときに、大蔵省は住専をつぶさないと言っているわけですよ、会計士業界に。だから、行政が言っているものを監査法人が不適正なんて言えないでしょう。やはり護送船団方式を本当に直前までやってきたんです。それをなかなか、先ほどのように大学生扱いしなかった。いわば自分の権益の確保なんですよ。先ほどのいわゆる行革の流れにまだまだ気づいていないんですよ。  最後質問になりますけれども、ちょっとこれは説明だけですが、まず、商法三十四条にいわゆる資産の評価について基準がありますけれども、やめてほしいんです。商法学者は会計を知らないんですよ。ですから、商法には会計の基準を入れない。少なくとも、会計慣行にゆだねると三十二条にあるわけですから、三十四条はそれでいいんです。要らないんです。そういった形で整理してほしい。商法、計算書類規則と証券取引法、財務諸表規則ですよね、このダブルスタンダード、やめてほしい。これはいつまでも官の中で会計の議論を商法で引っ張っていると、本当に日本の会計というのはおかしくなっちゃいますから、それをぜひやっていただきたい。  そして、最後質問なんですけれども、先ほど林政務次官がおっしゃいましたけれども、金融企画局、金融庁に行きます。公認会計士協会の所管も金融庁に行きます。  ところが、さっき言いましたように、アメリカのAICPA、そしてイギリスのインスティチュート・オブ・チャータード・アカウンタンツ、これは民間団体なんです。どこかのひもつきとか監督を受けているというんじゃない、民間団体なんです。独立しているんです。自主規制団体なんです。  ですから、公認会計士協会を、金融庁に行ったら金融庁が管轄する、そういう考え方はもうやめてほしいんです。独立させてほしいんです。黙ってほしいんです。そして、監査法人が不祥事を起こしたら、司法の場で損害賠償の訴訟を受けて、そこで負ければ、立証ができなければ、監査法人は負担をすればいいんです。林政務次官、そうじゃありませんか。  恐らく年内、規制緩和等で士業の規制緩和が行われまして、公認会計士法もやはり改正が必要になってきます。これはもう完全に大蔵省の呪縛の法律になっていますよ。そうじゃなくて、先ほど言いましたように、少なくともアングロサクソン並みに公認会計士協会はもう民間団体にしてほしい。触れるな。触れて、またいつまでたっても大人にならなければ、あなたたちの責任だ。そういうことだと思うんですけれども、林政務次官、いかがですか。
  176. 林芳正

    ○林政務次官 時間も参ったようですから簡潔に御答弁申し上げますけれども、先ほど来議論があるように、大学生ぐらいになったかという認識と、それから、なった場合に糸でつながったところを残すか残さないか、その糸がどういう糸であるべきかということについては、いろいろな御議論があるところでございまして、私は、今リーガルなところでやればいいという御意見もあったようでございますけれども、やはりそこだけでは足りないところがあるんではないかな、こういうふうにも思っております。  いずれにしても、いろいろな御議論がありますから、これは我々だけで決めるということではないと思いますし、いろいろな方々がいろいろなところで議論されて、その結果、なるべく皆さん納得が、今の日本現状にかんがみて適切であるというような結論を得る努力を、今からも我々も我々サイドでしてまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  177. 若松謙維

    若松分科員 ぜひ各種団体と同じ立場での議論をしていただき、世界の動きに決して誤解のない認識を持って、新しい形の企業会計基準の設定主体のあり方、また、それをチェックする会計士協会のあり方、行政の関与の仕方等も進めていただき——本当はもう進めなくていいんですよ、何にもやらなくて。
  178. 西田猛

    西田主査 若松君、予定の時間を過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。
  179. 若松謙維

    若松分科員 そういうことで、最後に要求して終わります。ありがとうございました。
  180. 西田猛

    西田主査 これにて若松謙維君質疑は終了いたしました。  次に、山本孝史君。
  181. 山本孝史

    山本(孝)分科員 民主党の山本孝史でございます。分科会最後質問者のようでございますが、きょうも一日、大蔵大臣、お疲れさまでございます。  きょう、私は、たばこ事業法を所管しておられます大蔵大臣に、たばこの問題について御質問をさせていただきたいと思っております。  まず、端的にお伺いをさせていただきます。  宮澤大蔵大臣は、たばこと健康被害という問題についてどのような御認識をお持ちでいらっしゃいましょうか。
  182. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 きちんとしたことを存じませんけれども、世界の、殊にアメリカはそうでございますが、かなりこの問題についての認識は高まっているように思います。かなり難しい問題まで惹起しているようでありますけれども大勢というものは、やはりたばこというものは健康にいろいろな意味で害があるという認識が高まっているのであろうと思います。  その認識の度合いは国によって多分違っておりますでしょう。我が国の場合には、まだそこまで行っておるようではありませんけれども、しかし、一昔前と比べますと大分変わってきているようである。ただ、意外に若い人の喫煙率がふえておる、減っていない、女性も減っていないというようなことが見えるようで、それはごく短期間のことなのか、あるいはまだまだそういう認識の浸透が十分でないのかわかりませんけれども大勢はもうそうであるように察知しております。
  183. 山本孝史

    山本(孝)分科員 察知しておられるということですが、国際派でいらっしゃいます大蔵大臣ですから、いろいろな会議にも行かれることが多いと思います。外国の動きも、たばこをめぐるさまざまな各国の取り組みの状態はよく御認識されておると私は思います。きょうはそういう意味でいろいろお教えもいただきたいと思っているんです。  各国によって取り組みが違う、こうおっしゃいました。アメリカの取り組みと日本の取り組みを比較してみて、私は、日本は世界の中でもとりわけ取り組みが遅いと思っておりますけれども、これは大臣の認識は違うのかもしれません。諸外国の取り組みと日本の取り組みを比較した場合に、どのような認識をお持ちでいらっしゃいますか。各国が違うというのは、そんなに違っていいものなんでしょうか。
  184. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 アメリカの場合ですと、もうここへ来まして、アメリカ全州のいわば検事総長といいますか、そちら側とたばこ会社とのコンフロンテーションのようになって、その間、議会にもこれで決まるかと思ったほどの法案も出たりしましたが、まだ決着はしない。しかし、もう明らかに、たばこ側が何年にわたってどれだけの負担をするかといったようなあたりに問題はあるわけでございますから、いわば政府もそういう意味では一つの立場をはっきりとったと言うべきであろうと思います。よく存じませんけれども、それが常識の見方でございましょう。  日本の場合はそこまでいっているようには思いません。政府として、そういう、アメリカ政府が、あるいはアメリカのかなりの国会議員たちが、あるいは各州がとっているようなはっきりした立場日本政府はまだとっているようには思いませんので、そこは違いがあるように見ております。
  185. 山本孝史

    山本(孝)分科員 政府なり議員なりがたばこの健康被害に対してどう取り組みをするか。大変アメリカは一つの方向として進んでいる、あるいは厳しいというのでしょうか、取り組みをしている、こうおっしゃったわけです。  御承知だと思いますけれども、今、日本の中でも肺がんの死亡率が実は胃がんの死亡率を超えまして、がんで亡くなるときは、肺がんで亡くなる方が一番多いのですね。そういう意味では、たばこによる疾病や死亡で九三年には年間一兆二千億円の医療費が費やされているという調査もあります。いろいろな数字を見ておりましても、たばこによる健康被害というのは大変大きいということは世界の常識だと思います。  どういう形で取り組みをするか、各国によって違いがあるのかもしれません。しかし、人間というものは、実はアメリカ人であっても日本人であっても同じであって、たばこから、健康被害から守ろうという姿勢に、アメリカ政府あるいはアメリカの議員の皆さんが取り組んでおられる姿勢と日本政府が今取り組んでおられる姿勢に彼我の差が随分大きいのではないかと思うのです。もう一度、いろいろとお聞きになっておられる中で、日本の姿勢は生ぬるくありませんか。
  186. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろ理由があることだと思いますが、今アメリカにおける政府のこの問題についての認識、対応の仕方と、我が国における政府のそれとは確かに違っておると思います。しかし、それは恐らく理由のあることでございましょう。あることでございましょうが、アメリカ側の方がはるかにその点は先へ進んでおると申しますか、大変違っておるということは事実と思います。
  187. 山本孝史

    山本(孝)分科員 何でも御承知大蔵大臣ですので、ぜひお伺いしておきたいのですが、日本での取り組みがこんなに生ぬるいのはどういう理由があるというふうにお考えなんですか。
  188. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一般的に、そういうアメリカの政府の態度を支持するような強い国民的な認識あるいはコンセンサス日本の場合にはまだ存在していないということが基本だろうと思います。
  189. 山本孝史

    山本(孝)分科員 国民コンセンサスをつくっていくのは議員の仕事の一つでもあると思いますけれども、これは政府、行政の側の仕事の一つでもあると思うのですね。  このたばこの健康被害というものについて、それはあるのだということを認識しつつ、国民コンセンサスを事業法を所管しておられる大蔵省としてもつくっていこう、そういうお気持ちはありませんか。
  190. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国民の嗜好品でございますから、そういう意味で、それをある程度以上に政府がコミットするかしないかというところはやはり決断の難しいところだろうと思います。  大勢としては、かなり前に比べますと、そういう国民の認識も少しずつ高まり、したがって、政府の姿勢も少しずつそういうふうに変わっていっておるようには思いますけれども、しかし、それがアメリカのようなところに至っていない。大体の動いていく方向は見えるような気がいたしますけれども、今かなりアメリカとはそこは径庭があると申し上げるべきでしょう。
  191. 山本孝史

    山本(孝)分科員 先ほど御答弁の中で、若い人の喫煙率が上がっているというか下がらない、こうおっしゃったわけですね。  若い人とたばこということを考えますと、学校教育であったり、あるいは地域でのさまざまな、たばこの被害をちゃんと子供に教えてあげるということもあります。あるいは、たばこ事業法の中にあります広告規制という問題、どういう形で規制をするか。日本ではテレビのコマーシャルができる、アメリカではできません。いろいろな広告媒体への規制の強化があります。あるいは、たばこのパッケージへの健康被害の書き方にしても、日本の場合は諸外国と比べてはるかに文字は少ない。健康のため吸い過ぎに注意しましょうとしか書いていない。外国のたばこのパッケージは、ごらんになったことがあると思いますけれども、これは死にますよと書いてある。そういう意味でも随分と取り組み方が違うわけですね。  それはなぜ違うか。たばこ事業法を所管している大蔵省がそういったものをきっちり子供たちにあるいは社会に情報として出していかないからじゃないですか。そういう意味コンセンサスは出てこないんだ。  我々として、これは厚生省の問題あるいは政府全体の問題だと思いますけれども国民の健康を守るという視点に立てば、そこでたばこというものが健康被害を及ぼしている、先ほど数字を申し上げたようなこともある、健康被害はある、世界各国はそれを認識している、だからしっかりとした規制に今乗り出してきている。なのに、日本の場合は、コンセンサスがないからまだ大蔵省は何もしない。いや、大蔵省が邪魔しているからですよ。あの事業法を、中でやるべきことをやっていないから国民コンセンサスはできないんだと私は認識しているのですけれども大蔵大臣はそういう認識ではないのですね。
  192. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 必ずしも山本議員とその点は同じ認識ではありません。
  193. 山本孝史

    山本(孝)分科員 私は、ここはやはり認識を変えていただきたい。外国に出ていかれて、どれだけたばこが吸いづらいか、いろいろな会議に出ておられる中でよく御存じだと思います。  たしか橋本総理がアメリカに行かれたときに、カンターさんや何かとお会いになるときに、たばこを吸いたいと思ったら、ない。仕方がないから、コーラの缶をアメリカの方が持ってこられた。アメリカの建物は、御承知のように中は全館禁煙でございますから、吸うには外へ出ていかなければいけない。  マレーシアに行かれて、たばこを吸いたいと思われたので、あなたが来られるんだから、では会議は中でやらないで外でやりましょうと、テントを張って会議をされる。それは橋本さんがたばこが好きだからですよ。  そういうことがあることを考えても、日本人のたばこ好きというのは非常に有名で、それは日本のレベルなんだ、文化だ、あるいは個人の嗜好だ、それを規制するのはどうだとおっしゃっていますけれども。  私は、実は、毎回こういうふうに大蔵大臣にお聞きするのですが、宮澤大蔵大臣ほど外国のことをよく御存じで、そしてたばこというものに対する諸外国の取り組みを御存じのはずの大臣だからこそ、今の日本のこの取り組みは生ぬるいのではないか。それは、私が申し上げるまでもなく、さまざま見聞される中で十分に肌で感じておられるはずなんじゃないのですか。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、この問題で議論のできるほど、この問題についての哲学を持っておりませんので、せっかくお尋ねがありましても御満足のいくようなお答えができないかと思いますけれども、恐らく、健康とか生命とかいうものからいえば、喫煙というものはマイナスに働いているということは、我が国でもそれに関する限り多分コンセンサスがあるのだと思います。  しかし、それだけがすべてではないだろう。喫煙というものを楽しむ、そういう自由というものは個人に属するものであって、そんなところへ政府が必要以上に出る必要はないという考え方がまたかなり根強くあるのだろうと思います。  ですから、前段に関する限り、死にますよ、あるいはかつては非常にハザーデスであるといったような、そういうところについて政府がどこまでやっていいのか。しかし、喫煙というものをエンジョイする、それも一つの、人一人一人の考え方であって、それを否定するところまで政府が出ていくことは問題ではないか、そういう議論というものが我が国の場合かなり存在している、また、する余地があるのではないかというふうに、私は、十分この問題についての物を知りませんので十分なお答えはできませんけれども、そういう感想は持っております。
  195. 山本孝史

    山本(孝)分科員 ぜひここは認識を持っていただいて、大蔵大臣大臣なりに考えていただきたいと私はお願いをするのがきょうの質問の趣旨なのですね。  たばこと同じように、アルコール、酒類の販売というものもいろいろございます。実は、これも規制緩和の中で、酒類販売は規制を緩和すべきだ、もっとどこでもアルコールが売れるように、お酒が売れるようにというのが議論としてあります。しかし、これは新聞でしか私は存じ上げませんが、自民党の中の議論で、アルコールの販売を規制緩和することには反対である。それはなぜかといえば、アルコール依存症がふえるから、あるいは、先進諸国は酒販売に何らかの規制を設けているからだという理由で、酒類の販売規制の緩和というのには反対なのですね。  実は、同じことがたばこに言えるのではないでしょうか。たばこは、明らかに健康被害をもたらしている。しかも先進諸国は、たばこというものに対しての規制を今強化しようとしている。アルコールの販売は規制緩和してはいけませんよという理屈とたばこの規制を強化するということは、全くこれは同じで、実は健康被害という点からしても同じことが言えるはずなのですね。片っ方で酒類の販売に対しては、そういう理屈を立てて販売の規制は緩和しないと言う、たばこの方は野方図にしておいていていいと言う。考え方の中でこれは明らかに矛盾していますね。そういった意味でも、酒やたばこから、国民の健康被害から守るという観点に立つ、私はそれは政治の一つの仕事だと思います。  そういう意味で、今回の健康日本21、厚生省がおつくりになって、残念ながら途中で腰砕けになりました。これも新聞情報でしか存じ上げませんが、その理由として、たばこ業界あるいは自民党の農林部会などからの大きな反発があって、それを受けてこの健康日本21の計画は、残念ながら、たばこの喫煙率半減ということについては挫折をしたという新聞報道になっております。  大臣も、これは厚生省がやっておられることなので御承知でないのかもしれませんが、この健康日本21で、成人の喫煙率半減という目標が、まさにたばこの煙のように消えてしまったということについて、どのような御感想をお持ちでいらっしゃいましょうか。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 恐らくああいう立場で、全体を制するだけの国民の中でのコンセンサスがつかめなかったということであろうと思います。  それは例えば、今もう既に山本委員がおっしゃいましたけれども、たばこの耕作者であるとか、あるいはいろいろな考えを持っている議員さん方の物の考え方であるとか、具体的には詳しく存じませんが、そういうものがあって、その21というものの変更が行われた。特に大蔵省が何かその間に行動をしたというふうには私は思っておりませんけれども国民全体の中でそれを十分にサポートするだけの推進力がなかったということではないのかと思います。
  197. 山本孝史

    山本(孝)分科員 少し観点を変えてお伺いをさせていただきたいと思うのですが、禁煙をすることでがん患者を減らせる、あるいは医療費を抑制できるということはもう明白だと思います。そういう意味で、たばこの値上げというものは、税収を上げるという部分と医療費を抑制するという部分の両方の効果を持っていると私は思います。  昨年、たしか亀井政調会長が、一本当たり二円上げたらどうだというお話があって、たばこ産業の水野社長の方からも、大蔵大臣にじきじきに、その案は受けないようにという反対運動を受けて、陳情も受けられたというふうにこれも聞いておりますけれども、たばこ二円上げたらどうだということで、あるいは、たばこ産業の方から陳情を受けられた、それに対して大臣はどのような御回答をされたのでしょうか。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 あのときのケースはそんなに難しくありませんで、既に前の年に上げておりますから、こういうものはそう毎年毎年上げていいものではなかろうということを考えました。やはり、嗜好品であるとは申せ、かなりの多数の国民が嗜好品としてこれを嗜好しておりますから、そのための税金は、毎年毎年上げていっていいというほど簡単なわけにはいかないと昨年は思いました。
  199. 山本孝史

    山本(孝)分科員 今大臣、いみじくもおっしゃいました。たばこというものは税収にかかわっている。したがって、国が税金を確保するためにたばこは売り続けなければいけない。片っ方で健康被害という問題があって、諸外国が一生懸命規制をしているにもかかわらず、日本の場合はやはり税収ということを考えて、たばこは売り続けなければいけないのだ、こういうお考えなのですね。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいままでの答弁で一言もそういうことを申しておりません。
  201. 山本孝史

    山本(孝)分科員 では、今私が申し上げたような考え方については、どういうお考えでいらっしゃいますか。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 財政需要というものもあることは確かでございましょう。しかし、だからたばこというものを国民にのんでもらわなければならないというようなことは私は申しておりません。
  203. 山本孝史

    山本(孝)分科員 そうすると、増税ということはお考えになる余地はございますか。
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 少なくとも、国民にたばこを吸うことをやめてもらいたい、だから、税金を高く取ろうという考え方は持っておりません。
  205. 山本孝史

    山本(孝)分科員 そうすると、先ほど来からの御答弁の中で、国民コンセンサスがないからだ、こうおっしゃいました。健康被害があるよということの国民コンセンサスを形成していくために、たばこ事業法の中に持っている広告の部分ですとか、いろいろな仕方があると思いますが、そういったところを見直ししてみようというお考えはありませんか。
  206. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 少し私が申し上げていることは違いまして、健康被害というコンセンサスは私はあるのだと思うのです。ですが、それはそうとして、しかし、自分は嗜好品として、たばこというものを吸いたいという相当多くの意見があるのだから、あなたの健康のためにおやめなさいというようなことを政府は言っていいのか、そこの問題を言っているわけです。
  207. 山本孝史

    山本(孝)分科員 そこまで踏み込んでもいいのではないですか。国民の健康を守るという意味合いで、これは政府が何ができるか。今の法律の中でやれることがあるわけですから、国民の嗜好品といっても、それによって社会は大きな損失を受けている。吸う人だけではなくて、周りの人も大変大きな被害を受けている。そのことに着目して、諸外国はたばこの規制に今乗り出しているわけですね。  そういう意味でも、日本も一流国になろうとするのであれば、こうしたたばこというものに対しての、今、税収を離れているとおっしゃいましたので、そういう意味でいけば、国民の健康という部分で、これは実は厚生省ではなくて大蔵省がたばこ事業法を持っているものですから、法律の中にありますので、大蔵省として、この取り組みをもっとしてみよう、今何ができるかを考えてみよう、そういうお考えがないのでしょうか。
  208. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国民にかなり強いそういう嗜好がある。体のためにいいと思って吸っている人は恐らくいないのだろうと私は思いますけれども、しかし、自分の生涯というものは自分なりに生きたいということは、これはだれにでも与えられている自由ですから、麻薬はともかくとして。そうでない限り、やはりそれは国民にそれをおやめなさい、またやめなければならないような状況をつくり出すためのコンセンサスは今できていない、こう思っているわけです。
  209. 山本孝史

    山本(孝)分科員 私は、そのコンセンサスをさらに高めていくといいましょうか、より多くの皆さんが同じコンセンサスを持てるようにしていくという仕事は、やはりたばこ事業法の中で、大蔵大臣としてやれるものだと思いますし、やらなければいけないものだと思っているのです。コンセンサスづくりというのは、市民がそうやって気持ちが持てるようになるまでほっておけばできるものではありません。これは、ある意味では国が一つの方向性に持っていく。先ほどのアルコールの販売規制の緩和の話だって、アルコール依存症がふえるからだめだといって規制の緩和を今とめているわけですから、そういう意味でいけば、いろいろな考え方が私はあるのではないかと思うのですよ。  たばこ事業について、大蔵大臣が実は一番の株主でいらっしゃいます。この点については、経営にタッチをしないようにということになっているのだ、こうおっしゃるわけですけれども、例えば、ナビスコを買収しましたよね。大変に大きなリストラが今起きようとしている。もしこの日本たばこ産業が、アメリカと同じように大きな訴訟を起こされて、大変大きな賠償金を払わなければいけない、ナビスコを買収したことでそういうリスクもより大きくなってきていると私は思うのですね。そんなことも当然含めた上でお考えになったのだろうと思ったのですが。  この日本たばこ産業株式会社の、ナビスコが持っていたたばこ部門の買収について、事業法上、事前認可を要する事項ではない、こうおっしゃるのですが、日本たばこ産業株式会社法では事業計画は事前承認制になっていますので、こんな大きなことがなぜ承認なしにできるのか、御説明をいただきたいと思います。
  210. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 先生御存じのとおり、昭和六十年だったと思いますが、専売が民営化された。そのときに、なるべく事業というのは自主的にやってもらおう。それによりまして、活性化あるいは経営の活発化、こういうことをねらっていこうということで、そういう方針でずっとやっているわけでございます。したがいまして、大蔵省としましては、JTの株主総会には出席いたしておりますけれども、JTの経営方針に今までは異を唱えたことはない、こういう形で推移しております。  したがいまして、そういう基本的な方針が水面下にあるということを御了解いただきたいと思います。
  211. 山本孝史

    山本(孝)分科員 方針があることはお話を聞いてわかりましたけれども、申し上げましたのは、たばこ産業株式会社法の第九条、事業計画は事前承認制になっております。事前承認制になっているにもかかわらず、こういう大きな買収をするということについて何ら事前の協議はしていないというお答えをいただきましたので、そんなことでいいのでしょうかと申し上げたのです。
  212. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 当然、事前に話は伺っております。  それから、なお誤解がないように申し上げますけれども本件自体は事前承認事項ではございません。
  213. 山本孝史

    山本(孝)分科員 なぜ事前承認事項でなくていいのでしょうか。
  214. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 基本的に申しますと、事業計画に関するヒアリングを通じて本件事業取得というのがJTの経営に与える影響等を注視しているという形になっておりますので、全くもう無視して全然影響がないよとか、そういう形にはなっておりません。やはり行方はきちっと見ているということでございますが、冒頭申し上げたような大きな姿勢の問題として、要するに自由濶達にやってもらおう、こういうことがあるわけでございます。
  215. 山本孝史

    山本(孝)分科員 去年の三月十六日の参議院財政・金融委員会の議論の中で、宮澤大蔵大臣の御答弁で、「今回の買収は株主総会の議決事項ではございませんから、したがいまして株主であります私は、水野社長からこのお話の中途の段階において進行状況お話しいただきました。」こうなっているのですね。それで、私は「たばこの会社をやめることはできない」「今後のたばこ会社としての運命というものはなかなか切り開けないのではないか」、すなわち、ナビスコを買収しないと日本JTはこれからたばこ会社として生きていけないんだという御認識を示しておられて、「やっぱり世界市場における寡占体制の中でおくれてしまうということを考えますと」今回の買収は妥当だ、こういうお話なんですね。  したがって、先ほど、民間企業なので国の関与はできるだけしないんだ、こうおっしゃりつつも、税収をそこで当てにしているわけではないとおっしゃりつつも、実はたばこ産業の経営というものについてこうあるべしだということは大分お話しされているのですね。事前の協議の中でいろいろと御議論しました、事前認可ではないけれどもしていますということは、日本政府が実はJTというものの経営に大変深くかかわっている。  私、ここで問題にしているのは、先ほど若い人の喫煙率がとおっしゃいました。実は、今たばこ産業がどこをねらっているかというと、アメリカの産業もそうですけれども、若い人なんですよ。若い人と女性、それから低開発国、開発途上国の人たちにとにかくたばこを、もうアヘンと同じですから、売って売ってという形になっている。  日本JTが同じことをやるということに私は余り賛成ではないのです。はっきり言って反対なのです。そのことに政府は、民間企業と言いながらも、御答弁を拝見しましても、実は深くかかわっておられるのです。  その意味でも、私は、JTというものに国がこれ以上関与すべきではない。民間企業なんですから、民間企業としてやってもらうということにならないといけないのではないか。税収というものが頭の中にあるから、この産業というものに対して考えていく、あるいはたばこ事業法をずっと国が持っていかなければいけないのだと思うのです。  時間がだんだんなくなってきますので、ここは何回も申し上げました。国民コンセンサスをつくるのは行政であったり政治の役割だと私は思いますし、私は私なりに努力をしておりますけれども、税金を去年上げたからことしは上げられないんだというような形でたばこ税というものに日本の財政を依存しておられるという体質も、決していいことではないと思います。  できるだけ早くたばこというものから日本政府が手を切っていただきたいというのが私の思いなんですが、そんな大きいことを言ってもだめだとおっしゃるかもしれませんが、そんなふうにはなりませんか。
  216. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何事もそうかもしれませんけれども、たばこはかつて大蔵省専売局に属して専売事業でありました。それが公社に分かれる。大変長い経緯がございますが、その間、日本のたばこ耕作者というものは、かつてはかなり多うございましたが、かなり減ってまいりました。かなり減ってまいりましたが、現在まだ相当の数がおって、簡単な転業ができるわけでもない。長い間のいわば専売事業に頼っておった人たちでございますから、その専売がなくなるというときに、卒爾として、あなた方にはもう御縁はない、おやめなさいというようなわけにも実際問題としていかない歴史があります。  その人たちは数においてはかなり減りつつありますし、新たに葉たばこを耕作しようという人がたくさん出てくるようにも思えません。そういう背景がございますから、したがって、専売、JTというのですか、ああいう全量買い入れの、いわば事実上義務を負っておるということがございますね。そういうこともありますから、JTはどうなってもいいんだよ、つぶれてもいいんだというわけには私の立場としてなかなかまいらない。  そうしますと、世界が寡占状態に入っている中で、あの程度のJTの規模ではなかなか太刀打ちはできないだろう。したがって、あの際買収をするということは、企業としてはやはり一つの方針であろうなと。政府として、こんなものはなくなってもいいんだと思っておればそういうふうにも思いませんけれども、そういうふうに見ておりますと、やはり政府が株を持っている理由もそこにあるんだろうと思います。  したがって、私は、正直を申しまして、JTからあの買収について相談を受けた覚えはありません。これは正直申しまして、こういうことをいたしますという報告をしてきただけでございます。ですから、それはあれこれ申しておらないのですけれども、JTがそういう決断をしたことは理解のできることでありますので、国会でそういう御説明を昨年いたしたと思います。
  217. 山本孝史

    山本(孝)分科員 時間になってしまいましたので、もう一回、たばこの健康被害を防ぐという観点から、たばこ事業法をもう一度読み直してみよう、見直してみようというお考えはありませんか。
  218. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 恐らくたばこを吸っておられる人のほとんどは、若い人は別かもしれませんが、これは健康に何がしかの害があるであろうということは知っておられるのではないのでしょうか。そのゆえをもってそれをおやめなさいということを政府が言っていいものかどうかというあたりの問題だと思います。
  219. 山本孝史

    山本(孝)分科員 残念ながら議論がかみ合いませんでしたけれども、その点は政府としての責任が外国から問われているんだということを大臣はよく御存じのはずですから、そういう意味でもしっかりとした見直しをしていただきたい、私はもう一度御要望申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  220. 西田猛

    西田主査 これにて山本孝史君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして大蔵省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後四時九分散会