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2000-02-28 第147回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年二月二十八日(月曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 自見庄三郎君       中川 秀直君    桧田  仁君       松本  純君    山口 俊一君       大畠 章宏君    小林  守君       五島 正規君    春名 直章君       吉井 英勝君    兼務 鍵田 節哉君 兼務 藤村  修君    兼務 上田  勇君 兼務 保坂 展人君     …………………………………    厚生大臣         丹羽 雄哉君    労働大臣         牧野 隆守君    厚生政務次官       大野由利子君    労働政務次官       長勢 甚遠君    政府参考人    (警察庁生活安全局薬物対    策課長)         折田 康徳君    政府参考人    (外務大臣官房審議官)  赤阪 清隆君    政府参考人    (外務省経済協力局長)  飯村  豊君    政府参考人    (厚生大臣官房審議官)  堺  宣道君    政府参考人    (厚生省健康政策局長)  伊藤 雅治君    政府参考人    (厚生省保健医療局長)  篠崎 英夫君    政府参考人    (厚生省保健医療局国立病    院部長)         河村 博江君    政府参考人    (厚生省生活衛生局水道環    境部長)         岡澤 和好君    政府参考人    (厚生省医薬安全局長)  丸田 和夫君    政府参考人    (厚生省社会援護局長) 炭谷  茂君    政府参考人    (厚生省老人保健福祉局長    )            大塚 義治君    政府参考人    (厚生省児童家庭局長)  真野  章君    政府参考人    (厚生省保険局長)    近藤純五郎君    政府参考人    (厚生省年金局長)    矢野 朝水君    政府参考人    (労働省労働基準局長)  野寺 康幸君    厚生委員会専門員     杉谷 正秀君    労働委員会専門員     渡辺 貞好君    予算委員会専門員     大西  勉君     ————————————— 分科員の異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   石川 要三君     桧田  仁君   中川 秀直君     松本  純君   五島 正規君     大畠 章宏君   春名 直章君     古堅 実吉君 同日  辞任         補欠選任   桧田  仁君     石川 要三君   松本  純君     中川 秀直君   大畠 章宏君     小林  守君   古堅 実吉君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   小林  守君     五島 正規君   吉井 英勝君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   春名 直章君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   金子 満広君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     春名 直章君 同日  第三分科員上田勇君、第七分科員保坂展人君、第八分科員鍵田節哉君及び藤村修君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十二年度一般会計予算  平成十二年度特別会計予算  平成十二年度政府関係機関予算  (厚生省及び労働省所管)     午前十時開議      ————◇—————
  2. 自見庄三郎

    ○自見主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  平成十二年度一般会計予算平成十二年度特別会計予算及び平成十二年度政府関係機関予算厚生省所管について、前回に引き続き質疑を行います。  この際、分科員各位に申し上げます。  質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。
  3. 大畠章宏

    大畠分科員 おはようございます。予算分科会トップバッター質問をさせていただきます民主党の大畠章宏でございます。  予算委員会分科会ということでありますが、厚生省にかかわる質問をさせていただきます。  最初に、今、国会でさまざまな形で論議をされておりますが、年金改正法案については、私自身、余りに唐突な内容であり、現実サラリーマンの一生のライフサイクルからすると、六十歳から六十五歳まで年金受給期間が切れてしまうというのはやはり解せませんで、このことについても今後またいろいろと政府内でも論議をされると思いますが、ぜひ多くのサラリーマンの声を聞き、適切な改正案になるように努力をしていただきたい。現在の年金改正法については、私としては賛同できないということだけを申し上げたいと思います。  そこで本題に入りますけれども厚生大臣にお伺いしたいと思うのです。  私自身、今、日立市に住んでおりまして、私の住んでいる団地等でも非常に高齢化が進んでおります。子供さんが少なくなった、これは一つ社会現象だと思います。この少子高齢化という時代の流れあるいは社会の変化にどう対応するかというので、経済的にもあるいは社会的にも大きな対応を迫られているのは事実ですが、その一つ現象として、小児科医が非常に少なくなっているという新聞報道がございます。  これは、原因をいろいろ聞いてみますと、どうも子供さんを診察するお医者さんの点数大人診察するお医者さんの点数に差がある。小さいから半分とかなんとかという話になっているのかもしれませんけれども、ちゃんと体にはすべての臓器が備わっておりますし、そういう意味では、子供さん一人を診察するのと大人一人を診察するのでは、大人一人を診察した方が、もうかるもうからないでははかれないと思うのですが、こっちの方がたくさん医療診療報酬があるというのです。子供さんが減ってきたというのも一つ原因かもしれませんけれども、そういうことから小児科医が減少している、それも激減しているというような話を聞いております。  中には、小児科看板をおろしてしまったために、ずっと小児科看板をかけているところに子供さんが殺到して、結局女医さんが過労死をするというような報道もございまして、これは私は看過できない課題じゃないかと思うのです。  まず最初に、そういう現実的な課題に対して、厚生大臣は私と同じ茨城県選出の厚生大臣でありますが、丹羽厚生大臣にこの問題に焦点を絞って御意見を賜ればと思います。
  4. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 敬愛する大畠委員に対しまして御答弁させていただきます。  まず最初お話がございました年金法改正でございますが、これはぜひとも御理解をいただきたいのは、若年世代、つまり現役世代に対する将来の不安を解消するために行っているのだということだけを御理解を賜りたいと思っております。  それから、小児医療診療報酬につきましては、これまでも乳幼児加算などの点数を適正に設定してまいりましたが、今回の改定におきましても、国民にとって良質で効率的なサービスを提供するという観点に立って、小児入院救急医療充実、新技術保険導入などについて特に配慮するものと考えており、現在、中医協において検討をいただいているところでございます。  厚生省といたしましては、この検討結果を踏まえまして、適切な改定を行うなど、今後とも小児医療充実に取り組んでまいりたいと思います。  また、小児医療提供体制でございますが、私も同じ茨城先生と同じような話をよく聞くわけでございますが、小児科に従事する医師につきましては近年若干増加いたしております。全国的に見れば必ずしも不足しているという状況にはないわけでございますが、地域においては、今委員の御指摘にありましたような小児救急医療充実の必要があるなど、今後取り組むべき課題もあると認識いたしておりまして、今後とも、小児救急医療を支援するための補助事業などを積極的に行っていきたい、このように考えているような次第であります。
  5. 大畠章宏

    大畠分科員 今大臣からお話がありましたが、冒頭の年金改正法について論議をすると三十分あっという間に過ぎてしまうかもしれませんが、先ほど若年層のことを考えたと言うのですが、その若年層方々から大丈夫なのかと。三十代、四十代の人が年金を受け取るときには五年間の空白が生まれる。一部の労働組合、大手の労働組合の方では六十五歳まで雇用の期間を延ばそうということをやっているわけですが、サラリーマンが五千五百万人としますと、そのうちの二割ぐらいでそういうふうな流れが始まっているということでありまして、ほかのところはほとんどまだ手がついていないのですね。  そういう意味では、逆に若年層方々から、おれたちが入っている年金というのは大丈夫なのかという不安が非常に高まっているということだけ、反論といいますか、大臣に申し上げておきたいと思います。  さて、小児科の問題であります。  私の住んでいる団地等々でも新しい団地が売り出されました。買う方は大体三十代あるいは四十代の前半という話で、そこにはたくさん子供さんがふえるのですね。そして、その周りには小児科医がたくさんできますね。  東京の三多摩なんかでも、小児科医に行く人がいなくなってしまったというので、小児科医がだんだんなくなってきて、お年寄り用病院がふえているという話も聞くのです。そういう社会的な現象現象でしょうけれども、それに輪をかけて、どうも最近小児科医が少なくなってきたのでそこに集中をする、そうすると、小児科のお医者さんが疲れる、そしてダウンするというような傾向があるんじゃないか。  大臣はそこら辺の医療体制を整えるように努力しますと言うのですが、ここら辺は、いろいろ積み上げ方式もいいのでしょうけれども大臣の方から小児科環境を整えなさいと、そして、大人を診るのも子供を診るのも同じ——私のいとこにもお医者さんがいるのですが、私はお医者さんの点数制度というものに疑問を持っているのは、ベテランのお医者さんでも新米のお医者さんでも同じ点数というのはおかしいんじゃないかと思うのですね。  そこら辺も、先生技術、同じドクタードクターでも、ハイレベルのドクター新米ドクターというのは少し点数を分けてもいいんじゃないか。要するに、お医者さんの診療だけで一つの収入が確保できる、それも、著名なといいますか、高名なあるいは経験豊かなお医者さんには、それなりの所得があるような形にすべきじゃないかという考えも私は持っているのです。  それと同時に、子供さんを一人診るのと大人を診るのでは点数が違うというのも、私はこれは電車に乗るのだったらわかりますよ、子供料金大人料金というのは重さが違いますから。これは何となく電車賃が安いというのはわかるのですが、医療については、赤ん坊でも大人でも、一人を診る点数というのは同じでいいのじゃないかと私は思う。  逆に言いますと、新聞等では、子供の血管というのは非常に細くて注射を打つのも大変だ、あるいは赤ん坊は口をきけない、したがって、ここが痛いんだとかあそこが痛いんだとなかなか自分で表現できないわけですよ。それをいわゆる触診とか顔色を見たりなんかして診察するのですが、そういう意味では、大人一人診るよりも子供を診る方が非常に技量は高いのじゃないかという感じもします。  そこら辺、大人子供点数が違うというのはどうも私は解せないのですが、もうちょっと明確にお話しいただけますか。
  6. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 子供さんの場合は、どうしても大人に比べて検査をする回数が少なくなるとか、薬なども過剰に投与するわけにいかないということで、結果的にややもすると診療報酬が少なくなるような嫌いがありますけれども診療報酬そのものは、先ほど私が申し上げましたように、小児科というのは加算をいたしておるわけでございます。それから、そのほかに、先ほど申し上げましたように、小児救急医療支援事業というものを行いまして、こういうような小児科がさらに地域において十分地域医療に頑張っていただけるような環境づくりのために頑張っていきたい、こう思っております。
  7. 大畠章宏

    大畠分科員 加算しているというのは、私の理解が間違っていたのですか。大人一人を診るのと赤ちゃん一人診るのとでは、同じ点数なんですか。
  8. 近藤純五郎

    近藤政府参考人 小児とか新生児は、なかなか手間暇がかかりますので、加算をいたしております。したがいまして、初診料とか再診料とかそのほかも含めまして、大人よりは高く評価をいたしております。  先ほど大臣から申し上げましたように、薬が少ないとか検査が少ないということで、結果的に一件当たりの単価というのは低いのでございますけれども、個々の診療行為評価については小児の方を高くして小児医療の確保を図っている、こういう状況でございますし、現にまた、それでも不十分だということで、現在中医協において御審議を願っている、こういうことでございます。
  9. 大畠章宏

    大畠分科員 私の準備が不十分だったのかもしらぬけれども。  では、小学生とかそういうところはどうですか。小学生診察大人診察というのはどういう点数の差がありますか。
  10. 近藤純五郎

    近藤政府参考人 主として加算をつけておりますのは、三歳未満児でございますとか、あるいは三歳から六歳とかいうことで、学齢前というのを主として対象にしておりますので、それ以外の方については大人と同じ扱いでございます。
  11. 大畠章宏

    大畠分科員 そうすると、なぜ今小児科のお医者さんが少なくなってきたと分析されていますか。
  12. 近藤純五郎

    近藤政府参考人 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、小児科の数そのものは減ってきておりません。徐々でございますが、ふえております。  恐らく、経営的に苦しいという面は、お子さんの数が少なくなって、はっきり言えば、患者さんの数が少なくなったというのが原因ではなかろうか、こういうふうに推察しております。
  13. 大畠章宏

    大畠分科員 多分、それは統計上の話であります。  戦後、無医村地区をなくそうという運動がありましたね。ところが、最近、無医村地区が出てきた。要するに、小児科がいない村とか町というのは出てきていませんか。
  14. 伊藤雅治

    伊藤政府参考人 無医地区につきましては全体として把握しておりますが、小児科医のいない地域というのは、残念ながら把握しておりません。
  15. 大畠章宏

    大畠分科員 私、統計をひもとく場合には、全国平均というのと、あとはちょっと細かな、要するに住民サイドから見た統計の二つが必要だと思うのですね。  小児科医が減ってないと言うのですが、多分、小児科医全体は、今おっしゃった統計上はふえているのかもしれません。しかし、小児科医院とか、市町村レベルのそういうところが減っているのだと私は思うのですよ。  それで、一部の統計からしますと小児科医がいない村とか町が出始めていまして、厚生省もタックスぺイヤーの方から見た医療はどうあるかということを少し調査しておいてください。これは今すぐでなくても結構ですから、後ほどでも結構ですから、そういう統計をとれるでしょうから、教えていただきたいと思います。  いずれにしても、大臣少子高齢化というものをどうするかというときに、やはり子供さんを診るお医者さんがいない村や町ができたのでは困るのですね。全体的にふえていますけれども、そういう乱暴な統計のとり方ではだめなんですよ。いわゆるタックスペイヤー、納税者から見てどんな医療が必要か、そういう視点で考えないと、富士山の上からだけ眺めていたのでは困るわけでありまして、ふもとではどうかということをもうちょっと把握するように努力していただきたいということだけ申し上げておきたいと思います。  二点目の歯科医療の問題の前に、「健保財政厳しさ増す 医療改革先送り」という最近の新聞報道によりますと、大体余り評価されていませんね。医療保険改革案を見たところ、どうも抜本的な医療改革先送りじゃないか。それで、健康保険組合等でも赤字の組合が今年度八割強になっている、大半は二〇〇〇年度の保険料率を据え置くか引き上げを検討している、料率引き下げという厚生省シナリオは画餅に終わる見通しだというような話がございます。  この健康保険組合の問題についても大変大きな問題でありまして、ここら辺の医療改革というものを先送りした、いわゆる健康保険組合経常収支が非常に悪化しているという問題に対しては、どのように厚生省としては認識をされ、対策をとろうとしているのか、お伺いしたいと思うのです。
  16. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 健保財政が大変厳しくなってきておるということは、私も十分認識いたしております。その中で、特に健保組合におきます不満と申しますか、そういうような声としてお聞きいたしますのは、特に老人医療費における拠出金の問題が大変大きいのではないか。  老人医療費というのは、御案内のように、国民医療費の中の三分の一を占めておるわけでございまして、大体十一兆円ということでありますが、現在、老人医療費給付費の全体の七割が保険者からの拠出金によって賄われておるわけでございます。  私も、大畠委員の御出身といいますか、日立健保組合常務理事さんから直接お話を聞いたことがあるのですが、日立あたりでも四〇%ぐらいの拠出金を出しているということが、要するに自分たちと余り縁もゆかりもないところに出しておるということは大変不満だという率直なお話を聞いたこともございます。  今私どもは、この医療改革の中で高齢者医療保険制度をどうやっていくかということが大変大きな問題であると認識いたしておるわけでございます。  この問題につきましては、まず結論から申しますと、意見がそれぞれ分かれておりまして、大体三通りぐらいあります。大きく分けますと、高齢者医療保険制度を独立するのか、それから、連合であるとか健保組合なんかが言っております突き抜け方式ということでありますが、こういうふうに分かれておりますけれども、大体三つぐらいありまして、集約できておらないというのが現実でございます。  それとともに、私かねがね申し上げておりますのは、この四月から介護保険制度が発足、スタートするわけでございまして、率直に申し上げて、片っ方では介護保険、片っ方では医療保険だということで現場において大変な混乱が起きるのじゃないかということをもちまして、私は前々から、これは時間的にもあるいは現場のことを考えますと、二〇〇〇年ではなかなか難しいのじゃないか、こういうふうに考えております。  私どもは、そういう中で、今回の健保法改正の中で高齢者定率制度というものを初めて打ち出させていただきました。これまでは御案内のように定額制度でございまして、今回の健保法の中でお年寄りなんかが定率制だということは、これはかねてからの懸案でございまして、大変な第一歩だと思っています。  この問題は、そのほかに国保財政をどうするか、国保をどうするか、こういう問題が絡んでまいりますが、いろいろな問題を含めまして議論をしながら、厚生省の中でプロジェクトチームをつくりまして、二〇〇二年までに結論を出したい、このように考えております。  ですから、私が申し上げたいことは、決して先送りしているのじゃないのだ、一歩一歩粘り強く進めておるのだということをぜひとも御理解をいただきたいと思っております。
  17. 大畠章宏

    大畠分科員 大臣のそういうふうなお考え一つのお考えなんだと思うのですが、表に出てきているのは、医師会はなかなか経営が苦しいからもうちょっと出せ、あるいは要求された日経連、連合、健保連は、いや、そんなに出せないという、その出せ、出せないというものが表面に出て、結局〇・二%のアップでおさまったというものだけが出ていまして、結局、そういうふうな根本的な改革を本当に政府は真剣に考えてくれているのだろうかというものが伝わってきていないのですね。  今大臣は二〇〇二年までにそういうふうなものをやりたいという話でありますから、ぜひ厚生大臣には、私どもも今政権を目指そうとしていますから、政権をとった場合には別でしょうけれども、この政権が続いているときは二〇〇二年ぐらいまでずっと大臣をやってもらって、そういうものをぜひ実現するようにしていただきたいと思います。  それで、その次に、歯科医療問題についてちょっとお伺いしたいと思います。  歯というのは非常に健康に微妙な影響を与えまして、重大な影響と言った方がいいのでしょう。歯というのが何となく健康問題からすると横の方に置かれがちでありますけれども、歯の問題、歯科医療というのは、私も、乳幼児から含めて非常に重要なんだと思っています。  歯のお医者さん関係から聞きますと、乳幼児医療窓口負担無料化できないのか。そういうことによって就学時までの子供たちの歯の治療をきちっとするということは、大人になってからも健康に大変大きな影響を与える。それから、高齢者までの一貫した歯科保健予防体制が必要だと思うのだが、まだ十分できていないのじゃないか。あるいは、歯をつくる歯科技工士技術評価というものをもっと明確に行うべきじゃないかという、幾つかの要望を受けておるのですが、これについて厚生省のお考えを伺いたいと思います。
  18. 真野章

    真野政府参考人 歯科の受診について、子供さんが就学までの間、窓口での無料化をという御意見でございますが、国民保険になっておりまして、医療費につきましては、医療を受ける者と受けない者との均衡という観点から、医療を受けられた方に一定の御負担をしていただくというのが大原則でございます。  ただ、国といたしましては、小児慢性特定疾患、いわゆる難病の子供さん方でありますとか、未熟児障害児といった手厚い援護が必要な児童の疾病につきましては、既に医療費公費負担を実施いたしておりまして、これ以外のいわゆる乳幼児一般医療につきまして新たな対策を講じるということは、現在のところ考えておりません。
  19. 自見庄三郎

    ○自見主査 厚生省伊藤健康政策局長。手短に。
  20. 伊藤雅治

    伊藤政府参考人 厚生省におきましては、歯科保健を体系的に実施していくことが必要であるという先生の御指摘はもっともでございまして、現実的には、地域におきまして、母子保健対策学校保健対策老人保健対策におきましてそれぞれ行っているわけでございまして、これを今後とも体系的に進めていくことが重要だと認識しております。  そのような観点から、平成十二年度から、八〇二〇運動の中で歯の健康づくりを体系的に進めていくための体制整備を強化していきたいと考えております。
  21. 自見庄三郎

    ○自見主査 近藤保険局長。簡潔にお願いします。
  22. 近藤純五郎

    近藤政府参考人 歯科技工関係でございますけれども義歯に関します製作管理でございますとか実際につくる製作技工というのは一連の行為でございまして、診療報酬におきましては、歯冠修復及び欠損補綴料、こういう形で一体的に評価をいたしているわけでございまして、この方法が適切ではないか、こういうふうに考えております。  今後とも、義歯等製作に係ります技術評価につきましては、一体的に評価すべきもの、こういうふうに考えております。
  23. 大畠章宏

    大畠分科員 あと四分になってしまいましたので次の質問に入りますが、いずれにしても、歯の治療というのは非常に大切なんですね。それで、今甘いものがたくさんありますから、子供さんの歯というのは非常に悪くなっているんじゃないかと思うのですね。もちろんいろいろ弗素を塗ったりなんかしてその体制を整えようとしているのでしょうけれども、今後とも、ぜひ歯の治療歯科についても重視をして、厚生省としても対策をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  最後の質問に入りますが、今回の医療制度改革で、看護基準を四対一から一般病床で三対一としていますが、私どもは、本当に血の通った看護をするためには二対一ぐらいの基準が必要なのじゃないかと考えておりまして、この問題については、一歩前進とはいいながら、まだ不十分と言わざるを得ないと思います。  それからもう一つ、カルテの開示の問題。  これはよくお医者さんがドイツ語でばっと書きますが、患者さんが見ていても何にもわからないのですね。どういうことを書いているのかなと私はいつも思うのですが、ドイツではやはりドイツ語で書いているのでしょうね。だから、ドイツ人の患者さんはどういうふうに書かれているかわかるわけで、アメリカでは英語で書いているのでしょう。そういう意味では、なぜ日本語で書かないのか。あるいは、カルテの開示の問題が、患者の方から、タックスペイヤーの方からすると、非常に注目しているのだと思うのですね。  要するに、患者にわかるようなカルテを書いてほしい、あるいは、カルテはやはり開示すべきじゃないかという要求が来ているのですが、この二つについて厚生省の今の考えを伺って、質問を終わりたいと思います。
  24. 伊藤雅治

    伊藤政府参考人 今回、医療法の改正検討におきましては、現行の四対一を三対一にするというお考え医療審議会から御答申をいただいたところでございます。少数意見がついておりますが、おおむねそのようなことが医療審議会として御了解いただいたものと考えております。  これは、三対一といいますのは医療法上の最低基準としてお示しするわけでございまして、各病院におきましては、患者さんの症状や看護婦の業務量などを見きわめつつ、実際にどの程度の看護の配置状況にするかというのは各病院で御判断いただき、それに対応して診療報酬が払われるという制度になっております。これはあくまでも最低の基準として医療法でお示しするという考え方でございます。  それから、カルテ開示につきましては、昨年七月の医療審議会の中間報告におきまして、インフォームド・コンセントの理念に基づく医療を推進するために積極的に行っていくという点ではコンセンサスがあったわけでございます。  その手段として法制化するか否かという点につきましては、賛成意見と慎重にした方がいいという意見がございまして、具体的な今後の扱いとしましては、今後の患者さんの側の認識なり意向の推移、医療従事者側の自主的な取り組み、それから診療情報の提供についての環境整備の状況などを踏まえつつ、自主的に医療機関において取り組んでいただき、その成果を待って、おおむね三年後をめどにさらに見直していこう、こういうことになったわけでございます。  したがいまして、厚生省としては、自主的な取り組みを見ながらさらに今後検討していくというのが基本的な考え方でございます。
  25. 大畠章宏

    大畠分科員 時間ですから終わりますが、カルテの開示については、そういうことじゃなくて、法制化してきちっとすべきじゃないかと私自身考えておりますので、今後ぜひ検討していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  26. 自見庄三郎

    ○自見主査 これにて大畠章宏君の質疑は終了いたしました。  次に、上田勇君。
  27. 上田勇

    上田(勇)分科員 公明党・改革クラブの上田でございます。  平成十二年度の予算の審議もいよいよ大詰めを迎えまして、この間、大臣初め厚生省の皆様にも、大変御苦労さまでございました。  きょうは、まず最初に、少子化対策、子育て支援の件につきまして、基本的なお考えをお伺いしたいというふうに思います。  現在、厚生省を中心といたしまして、平成十一年度の補正予算におきましても、また今審議をしている十二年度の予算案におきましても、保育事業の拡充や子育てに関する相談体制や情報提供などの整備、経済的な支援の拡充など、各種の少子化対策、子育て支援策を推進してきているわけでございます。  こうした施策は、私たち公明党・改革クラブとしても、将来の国のあり方を考えるときにとても重要な課題であるということで、これまでも強力に取り組んできたところでございますが、現在、非常に厳しい財政事情もありまして、こうした少子化対策、子育て支援のための施策について一部に批判があるのは非常に残念であります。  私としましては、このまま著しい少子化が進行していくとするならば、我が国の人口の減少が続いてまいりまして、まず、将来に本当に活力のある、展望の持てるような産業経済を維持発展させていくということ、また地域社会の発展のためにも放置できない状況であるというふうに思いますし、また将来にわたって安定した年金医療といったような社会保障制度を構築していく上でもいろいろな困難が出てきてしまうのではないかということを懸念しているわけでございます。  また、子供を育てるのには、私も小学生子供が二人おりますけれども、同年代の家庭、友人等を見ているときに、子供がいる世帯、いない世帯を比較しますと、子育てには相当な費用、経済的負担がかかるというのもそのとおりでありまして、子供たちが将来の我が国の経済活動や社会保障制度を担っていくということを考えると、やはり子供のいる世帯といない世帯、これは将来にわたる公平性を図っていくということも必要なのではないかというふうに考えているわけでありまして、私としましては、そういう意味で、今非常に少子化傾向が著しい中で、こうした少子化対策、子育て支援のための事業というのは中長期的な視点に立ったときに必要なものであるというふうに認識しているわけであります。  そのような観点から、ひとつ大臣に、今の少子化の現象、それに対する対策、また、今厚生省で進められておりますさまざまな施策についての基本的な御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  28. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 今、出生率が一・三八ということで、大変大きな社会問題となっております。昭和二十二年の平均出生率、合計特殊出生率でございますが、四・五四人でございます。世界的に見ましても、イタリアとかあるいはスペインとか、そういう国々が大変少子化対策の問題を大きな社会問題としてとらえておるわけでございます。  結婚や出産というのは、あくまでもこれはそれぞれの個人の自由な判断、選択にゆだねられるべきものでございまして、この問題につきましては私どもが口を挟む問題ではない、こう思っております。  ただ、少子化対策の推進に当たって、今委員から御指摘がございましたような、若い男女が、例えば今女性の方々も就労の機会が大変ふえてきておりますけれども、働きながら、そして安心して子供を産んで育てる、こういうような環境の整備を進めるということが何よりも我が国にとって重要なことではないか、こういうような家庭や子育てに夢や希望を持つことができるような社会づくりを進めることが大変重要である、こう考えておるような次第でございます。  このため、政府といたしましては、昨年の末に策定をいたしました少子化対策推進基本方針や、あるいは、これは五年間でございますが、新エンゼルプランなどに沿いまして、保育、特に保育の中でも低年齢児の枠の拡大でございます、十万人の枠を拡大するということでございますけれども。あるいは、雇用であるとか教育、住宅、あらゆる分野におきます環境整備、それから、今上田委員から御指摘がございましたように、公明党・改革クラブさんが大変御熱心に取り組んでいらっしゃる児童手当の充実、拡充、こういうようなものを総合的な少子化対策として掲げておるわけでございまして、私どもも、こうした中でこういった問題の解決に当たっていきたい、このように考えているような次第でございます。
  29. 上田勇

    上田(勇)分科員 ありがとうございます。  今の非常に著しい少子化の傾向というのは、将来、二十一世紀の日本を考えたときに、本当に対策を立てていかなければいけない、また、できる限りの対策を講じていかなければいけない重要な課題であるというふうに思いますので、引き続き大臣初め厚生省の皆様方の御努力を期待するものでございます。  次に、薬物の乱用の問題につきまして、何点か御質問をさせていただきたいというふうに思います。  きょうは、厚生省の皆さんのほかに、警察、外務省の御出席をいただいているところでございますけれども、この薬物の問題、非常に深刻になっているというのは、私も地元でいろいろな方々の御意見を聞く中で身をもって感じているところでございます。  私は、二月の八、九と行われました国際麻薬統制サミットに党を代表いたしまして出席をさせていただきまして、薬物乱用の問題がまさに二十一世紀の世界に共通の重要な課題であるということを改めて認識をしたところでございます。  幸い我が国では、アメリカやヨーロッパ諸国よりはそういう薬物のコントロールが比較的これまではうまくいっていたというのは、関係者の方々のこれまでの御努力のたまものであるということは敬意を表するところであります。  しかし、現在、我が国でも覚せい剤の乱用が急速に広がっていて、一部には第三期の乱用期を迎えているというような指摘もあるわけでございます。特に、最近の傾向としては、やはり低年齢化が進んでいる。特に、中学、高校生の乱用が広まっているということが非常に深刻な問題であるというふうに感じております。  これまでも、厚生省を初め関係省庁で、あるいは財団法人の麻薬・覚せい剤乱用防止センターなどによって、さまざまな乱用防止のためのキャンペーン等を行ってきているところでありますし、キャラバンカーの運行だとか各種資料の学校への配布などさまざまな普及啓発活動を行ってきているところでありますが、我が党としても、これまでこうした活動に対しては、必要な予算の拡大等に最大限の御協力をさせていただいてきたところでございます。  そこで、まず初めに、今そういうような非常に深刻な状況になっているのではないかと言われている我が国の現状に対する御認識、そしてまた、これまでもいろいろな取り組みをされてきているわけでありますが、今後これまで以上により一層積極的な対策が必要だというふうに考えておりますが、その辺の基本的なお考えをまずお聞かせいただければというふうに思います。
  30. 丸田和夫

    ○丸田政府参考人 我が国におきます薬物事犯につきましては、覚せい剤事犯が最も多く、薬物事犯の約九割を占めているところでございます。  先生指摘のように、現在第三次乱用期と言われているところでありますが、平成十一年の検挙者数は約一万九千人、前年に比べて約七%の増加であります。  また、覚せい剤の押収量は、十年が五百五十キログラムであったのに対しまして、十一年度は史上最高量の約二トンに増加している、こういった状況でございます。  さらに問題でありますのが、青少年の間で薬物乱用に対する警戒感や抵抗感が薄れまして、ファッション感覚として使われておる、そういうことで薬物乱用が広がっているということは私どもとしましても非常に憂うべき事態と考えているところでございます。  厚生省としましては、政府の薬物乱用防止五か年戦略に基づきまして、青少年に対する薬物乱用防止のための啓発活動の充実に取り組んでおります。  具体的に申し上げますと、麻薬・覚せい剤禍撲滅運動、「ダメ。ゼッタイ。」普及運動の推進、薬物乱用防止指導員による啓発活動の推進、それから先生指摘の麻薬・覚せい剤乱用防止センターによるテレビ、ポスター、薬物乱用防止キャラバンカー等を利用した啓発活動の推進、それから全国の高校等における薬物乱用防止教室への麻薬取締官OBの派遣等を行っているところでございます。  御指摘の薬物乱用防止キャラバンカーにつきましては、来年度より二台増車いたしまして、全国六台の運行体制を確保することとしており、今後とも創意工夫を凝らしながら、青少年に対する効果的な啓発活動に努めてまいりたいと思っております。
  31. 上田勇

    上田(勇)分科員 先ほど私の方から低年齢化が進んでいるというお話をさせていただきました。これは、今、地域の学校の先生方やPTAの関係方々と非常に率直にお話をすると、そういったことが非常に身近なところで起きているというような危機感は皆さん大変お持ちになっているわけでありまして、特に中学生、高校生の中では、自分子供の友達の中にそういうものを使っていると言われている子供がいるとか、あるいはどこどこの駅の近くではそういう覚せい剤等が売られているというふうなことを聞いたことがあるとか、非常に一般の生活の身近なところまで入り込んできているということは、皆さんがそこを身近に感じられているということを私もいろいろなお話の中で感じるわけであります。  先日も、先ほどちょっと御答弁の中にあったキャラバンカー、これも地域の教育関係者、またPTAの関係者の方々といろいろ御相談をして、地元の方に来ていただいたところ、子供たちも大変関心を持って見ておりましたし、また父兄も、親も非常に関心を持っているということがよくわかりました。  ところが、他方で、特に学校の先生方、またPTAの代表の方々お話をすると、何か学校単位とか地域で余り積極的にその防止活動をやると、逆にあたかもその学校にそういう乱用している子供がいるのではないかというような誤解を招く可能性があるので、どうしても消極的に対応せざるを得ない、消極的な対応になってしまうというような御意見も伺います。  この防止活動というのは、そういう乱用している子供がいるからやるのではなくて、つくらないために防止活動をするのでありますので、そういった意識の改革が必要なのではないかというふうにつくづく感じるわけでございます。  そういうことから、今後、教育委員会や学校を初め、自治会、地域子供会などの関係者の方々にも、そういった防止活動というのは、そういう乱用している子供や乱用者がいなくても、それをつくらないための活動なのであるというような趣旨をよく理解してもらうために、関係省庁の方からもそういうような趣旨の徹底、働きかけが必要だというふうに考えますけれども、その辺について御見解を伺えればというふうに思います。
  32. 丸田和夫

    ○丸田政府参考人 先生指摘のとおり、薬物乱用防止活動につきましては、広く地域住民の方々が正しい理解のもとに、地域ぐるみあるいは学校ぐるみの運動としまして展開していただくことが必要と考えております。  厚生省としましては、全国に約二万人の薬物乱用防止指導員の方々がおられますが、この方々を中心に地域に根差した啓発活動を進めていく、あるいは薬物乱用防止キャラバンカーの利用、これは台数がふえるにつれていろいろな箇所で増加してきております。十一年度には約一千カ所の学校等に派遣する予定としております。また、昨年度には中学、高校生の保護者向けの啓発読本を約九百万部作成して配布したりしております。  特に、本年度からは、従来は麻薬だけであったのですが、覚せい剤も含めまして、全国の薬物乱用防止指導員の地区協議会の活動を支援するという計画でございまして、今後とも、いろいろな自治体や学校現場先生方の御意見もお聞きしながら、関係各省と連携いたしまして、地域における効果的な薬物乱用防止対策に取り組んでまいりたいと思っております。
  33. 上田勇

    上田(勇)分科員 先ほど、昨年押収された覚せい剤が約二トン、一年間で三倍から四倍ふえているというお話がありまして、こうした覚せい剤などの薬物類のほとんどは、国内で生産されているわけではなくて、実は外国で生産されて、それが密輸入されているわけでありますが、我が国の場合は東南アジア地域が多く、とりわけ最近は中国や北朝鮮を経由しての密輸入が急増しているというふうにも先日お伺いをいたしました。  そういう意味では、水際や国内で大変な取り組みをして、その成果が多分二トンの押収量ということなのだと思うんですが。一方では、伺うところでは、その末端の取引価格というのはほとんど変わっていないということで、それはどういうことかというと、実は何倍もの覚せい剤、薬物類が国内で流通しているということを裏づけているのではないかというふうに思うんです。  そういう意味では、水際や国内での取り締まりの強化には一生懸命取り組んでいただかなければいけないわけでありますけれども、同時に、その生産国あるいはいろいろな形で貿易で経由してくる国々とも、そういう取り締まりの強化について密接な協力が必要なのではないかというふうに思いますけれども、こうした国々とはどのような協力を行っていかれる考えなのか、また、今後どういうふうに強化をしていくお考えなのか、これはひとつ警察の方から御答弁をいただければと思います。
  34. 折田康徳

    ○折田政府参考人 薬物対策に関する関係国との協力についてお答えいたしたいと思います。  先生指摘のとおり、覚せい剤を初め我が国の乱用薬物のほとんどすべては、海外で密造され、国内に密輸入されております。平成十一年には千九百七十五・九キログラムと、二トンに迫る大量の覚せい剤を押収しておりまして、仕出し地といたしましては、中国、北朝鮮がその大半を占めております。  このような情勢に対処するため、警察といたしましては、税関、海上保安庁等の国内関係機関との積極的な連携に努め、検挙に努めることは当然のことでございますが、諸外国、特に薬物の生産国、中継国等の取り締まり当局との緊密な協力関係の保持が大変重要であると認識しておりまして、その推進を図ってきたところでございます。  具体的には、捜査員の相互派遣、各種国際会議への参加等を通じた情報交換及び外国の取り締まり当局の捜査能力の向上に資するための技術協力等を実施しているところであります。特に中国との間では、昨年末の北京における日中治安当局間協議第一回会合の開催、具体的な情報交換の実施等、実質的な協力が推進されているところでありまして、今後、その実効が上がるよう努力してまいる所存であります。  以上でございます。
  35. 飯村豊

    ○飯村政府参考人 外務省の観点からお答え申し上げます。  私ども、麻薬等の薬物問題は地球的規模の深刻な問題であると考えておりまして、我が国としても、ODAを通じて二国間援助、国際機関への拠出を行い、薬物問題の解決に向け積極的な取り組みを行っているところでございます。  また、国際機関につきましては、国連薬物統制計画、UNDCPへの拠出を通じ、国連の本問題への取り組みにも積極的に協力しているところでございまして、我が国としても、引き続き薬物撲滅へ向けた国際的な取り組みに積極的に協力していきたいというふうに考えております。
  36. 上田勇

    上田(勇)分科員 今ちょうど外務省の方から国連麻薬統制計画、UNDCPについてのお話がございました。実は一月に、このUNDCPのピノ・アルラッキ事務局長がアジア覚せい剤乱用予防対策会議出席のために来日をされまして、その折に我が党の神崎代表とも会談をいたしまして、私も同席をさせていただいたんですが、その際、これまでの党としてのそういう国内での取り組みに対していろいろと評価をいただいた。と同時に、政府としてもいろいろな協力をいただいているということについて大変評価をいただいたところなんですが、ただ、その中で、アルラッキ事務局長の方から、日本からのUNDCPへの拠出金、資金協力について要請をされました。  どうも拠出金について調べたところ、九五年度ごろは我が国から約六百万ドル拠出していたのが、本年度、今審議している予算の中では三百三十万ないし四十万ドル程度というところまで減少しているわけでございます。いろいろと厳しい財政事情の中での策なんだというふうには理解をいたしますけれども、先ほどから、今国内でも覚せい剤の第三期の乱用時代だ、また、それを防止するためには、国内だけの対策ではなくて、やはり生産している国、また経由している国、中継している国、そういったところとの協力も必要だということでありましたので、そういう意味では、我が国にとりましても、また国際社会にとっても、非常に重要な課題でありますこの問題、当然UNDCPへの拠出金についてもっと増額していっていただければというふうに思いますけれども、外務省、その辺のお考えはいかがでしょうか。
  37. 赤阪清隆

    ○赤阪政府参考人 お答え申し上げます。  国連薬物統制計画、UNDCPというこの国連プログラムは、国際的な薬物統制のために総合的な取り組みを行ってきておりまして、我が国としても、九一年の創設以来、積極的に拠出を実施してまいりました。  ただいま御指摘のとおり、一九九六年度まではUNDCPに対する拠出金を増額してまいりましたのですが、近年、厳しい財政状況から減少傾向にございます。我が国といたしましては、財政の状況に配慮しつつ可能な限りの拠出を行うとともに、UNDCPに対して、限られた予算の中で特に効果的な案件に焦点を当てつつ、最大限の効果を上げられるよう一層の努力を求めていくとともに、政府としても、アルラッキ事務局長ほかUNDCPと緊密な協力関係を続けていきたいと考えております。  ありがとうございました。
  38. 上田勇

    上田(勇)分科員 ことしの予算は今衆議院で審議の大詰めを迎えているわけでございますけれども、ちょっと遠い話になりますが、来年度の予算編成に当たっては、また私たちとしてもぜひそれは増額していただけるように協力をさせていただきたいと思いますし、また、外務省並びに関係省庁で、非常に重要な事業であるというふうに私たちは認識しておりますので、ぜひ増額について取り組んでいただけるように御要請をしたいというふうに思います。  もう一つ、先ほどちょっと申し上げましたが、一月に東京でアジア覚せい剤乱用予防対策会議が開かれました。その中で、各国から、そのときの資料を拝見させていただきますと、日本に対してやはりいろいろな協力に対する期待が非常に高かった、それがその会議の決議の中にもよくあらわれているのではないかというふうに思います。そういう意味では、日本がこれまで覚せい剤の問題についていろいろな国内での取り組みを行ってきた、それが比較的うまくいってきているということも含めまして、覚せい剤やその他その原料となる物質に関する効果的な法規制や取り締まりの強化、あるいは乱用者へのケア等、積極的な協力についてアジア諸国からの期待が表明されたわけでありますし、また、我が国としてもそれについては積極的に協力していくという立場を明らかにしたものだというふうに思いますが、今後、具体的にどのような協力施策を進めていかれるのか、基本的なお考えを伺えればというふうに思います。
  39. 丸田和夫

    ○丸田政府参考人 先生指摘のように、アジア地域におきます覚せい剤の乱用防止、これは、やはり一つは効果的な規制ということ、それから厳格な取り締まり、こういう視点が必要だと思います。また、乱用防止のための啓発、それとともに乱用者の治療社会復帰についての取り組みが進められることが必要だと思っております。  そういった中で、先生指摘のように、一月にアジア覚せい剤乱用予防対策会議が開催されまして、その中で、アジア地域として優先して取り組むべき事項について、十四項目にわたる決議が取りまとめられたところでございます。  厚生省といたしましては、この中で、各国の法規制や取り締まり制度の整備を支援するため、研修生の受け入れや担当職員の派遣を行いますとともに、制度を整備する上で必要となります乱用実態把握のためのデータ収集についての技術的な支援、あるいはアジアにおきます地域会合の定期的開催に協力するなど、積極的な国際協力の推進に努めてまいりたいと思っております。
  40. 上田勇

    上田(勇)分科員 もう時間がございませんが、最後に、こういう麻薬作物をつくっているところというのは発展途上国でありまして、その中でも特に貧困な地域が多いというふうに承知しております。そういう麻薬作物をつくるというのは、ほかに収入源がないということが大きな原因になっていると思いますので、これからは代替作物への転換、ほかにもっとお金になるような作物をつくれるような、そういう技術的、資金的な援助、協力というのも必要なのではないかというふうに思います。  伺ったところでは、そういった麻薬作物から、ソバであるとかあるいはいろいろな薬草類であるとか、そういったものへの転換などがごく一部で始まったというふうに聞きますが、そういうことに対していろいろと我が国からも協力をして実績が上がっているというふうに伺っているところでございます。  そういう意味で、そういった代替作物への転換について、我が国からの協力の実績、また、今後一層こうしたことについても二国間で大いに取り組んでいっていただかなければならないわけでありますので、今後の方針につきまして、もう時間でありますが、ひとつ簡潔に一言お答え願えればと思います。よろしくお願いいたします。
  41. 飯村豊

    ○飯村政府参考人 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、我が国としては、開発途上国における薬物問題の背景には貧困問題があるということから、住民が薬物栽培に頼らないで生活できるようさまざまの支援を行ってきております。  例えばミャンマーにおきましては、東北地域でございますけれども、ケシの代替物としてソバの栽培プロジェクトを実施しておりまして、現在、長期専門家四名、これに加えて、草の根無償あるいは食料増産援助を組み合わせまして支援をやっているところでございます。そのほか、ミャンマーの中国側国境地域のワ地域におきましては、UNDCPを通じまして、ケシの代替作物として米等の栽培も行っております。  こういった分野での協力を今後とも活発に行うことを私どもとしては考えているところでございます。
  42. 上田勇

    上田(勇)分科員 時間ですので、これで終わります。
  43. 自見庄三郎

    ○自見主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  44. 吉井英勝

    吉井分科員 日本共産党の吉井英勝でございます。  私は、きょうは、ホームレス、野宿生活者の人々の問題、これは、国民の基本的人権をどのようにしっかり守っていく国をつくっていくか、そういう非常に大事な問題だと思いますので、これを質問したいと思います。  最初に、今月の八日に宇都宮市のアパートで、住んでいた二十九歳の母親と二歳の女のお子さんが、収入がなくなって、水道、ガスなど、すべてをとめられて、食べるものもなく、子供は衰弱した体で凍死をしてしまった、母親の方も衰弱して危険な状態だったという本当に痛ましい出来事がありました。アパート代の滞納で追い出されていたら、文字どおりホームレスとなり、行旅死亡者ということになっていたわけです。  私は、この痛ましい出来事というのは、今日ホームレス予備軍が全国でたくさんいらっしゃる、こういうことを示しているというふうに思うわけです。  そこで、現在、ホームレス、野宿生活者の人々は全国で何人いらっしゃるのか、まずその実態を把握しておられるかどうかを伺いたいと思います。     〔主査退席、山口(俊)主査代理着席〕
  45. 炭谷茂

    ○炭谷政府参考人 現在、全国のホームレスの人数につきましては、昨年十月に各地方自治体から現在把握している直近の数字について集計いたしました。その結果、約二万人でございます。これは、およそ一年間で四千人程度増加しているということになっております。ただ、この中には、大どころの大阪市は一年前と同じ数字を挙げてきておりますから、大阪市はもっとふえておるだろうと推測されますので、その増加分は入っておりません。  なお、独自に人数を把握している東京都の推移を見ますと、平成八年三千五百人、九年三千七百人、十年四千三百人、平成十一年には五千八百人という形で増加しているわけでございます。  また、私ども、ホームレスの状況を把握いたしましたところ、単に大都市だけではなくて、いわば主要な地方都市までふえているというような状況を把握いたしております。
  46. 吉井英勝

    吉井分科員 把握しているとおっしゃるのだけれども、しかし、現在の状況をきちっとつかめていないわけですよ。  これは、大阪市大の木下教授が昨年、毎日新聞の「オピニオン」で述べておられますが、第一に、野宿生活者の実態すらきちんと把握できていない、厚生省は全国で二万人ぐらいだろうと言うだけで、積極的なイニシアチブをとろうとしていない、そこが問題だという指摘がありますが、私は、これを重く受けとめて、早急に本当の状況はどうなのかということをまずつかむということをやってもらわなきゃならぬというふうに思います。  日本でホームレスが急増したのはバブル崩壊後の九〇年代不況の始まりからでありますが、実は、大阪のあいりん地区、西成の状況で見てみましても、これは大臣に見てもらえるように本当はもっと拡大したものを持ってきたらよかったのですが、西成労働福祉センターのデータでは、日雇い(現金)求人数の推移というのが、八九年をピークにして、ここからバブル崩壊後どんと半分に減るのですね。現在、四分の一なんです。  つまり、これはどういうことかといいますと、まず、こういう地域では、これまではとにもかくにも日雇い仕事、現金収入があったから、それで簡易宿泊所へ入れたんですね。収入がなくなったから、そこへも入れなくなった。それがホームレスということにつながっていっているという、九〇年代不況の中での一断面を見ることができると思います。  こういう動きについてはつかんでいらっしゃいますか。
  47. 炭谷茂

    ○炭谷政府参考人 ただいま先生おっしゃられましたように、私ども、地方の実情、いわば数字だけではなくて、もっと実態面というものも把握しなければいけない、そのようにできるだけ努力をしているわけでございます。  そこで、なぜホームレスがふえてきたか。私ども先生のおっしゃいました、いわば日本の経済構造、産業構造の変革がホームレスの増加の主要な一因であろうというふうには把握いたしております。先生今披露されました大阪市立大学の森田先生も私ども委員会の中に入っていただきまして、その分析に努めております。  したがいまして、今先生が言われました西成区の状況、私も現地に行ったり、また西成の住民の中には私の知人、友人がかなりおりますので、そのような人たちを通じてよく実情を把握いたしております。
  48. 吉井英勝

    吉井分科員 今おっしゃった、経済構造、産業構造という点では、この点でも木下教授も指摘しておられますが、「市場原理や規制緩和で社会全体を組み立て直そう、という動きが加速しているからだ。」「つまり“弱肉強食”の競争原理が大手を振ることにほかならない。」その典型が野宿生活者の急増であり、そして最近では、「長引く不況でリストラによる失業が普遍化し、正規の労働者も野宿に追い込まれるケースが増えている。」と。そして、それに対してセーフティーネットをきちっと張るということがされていない、こういう今日のいわゆる市場原理主義、規制緩和万能論で行き着いた一つの問題がここにあるということを指摘しております。  実は、先ほど東京の例をおっしゃいましたが、厚生省の東京二十三区、横浜、川崎、名古屋の合計で見てみますと、九六年、九七年、九八年、九九年と見たときに、対前年比で、九七年は七・九%の増、九八年は二一・四%の増、九九年は三六・四%の増。つまり、これは、九七年で見れば、やはり消費税の増税など国民負担がふえて消費不況が深刻になった、その不況の中でふえてきた上に、九九年からは大企業のリストラがさらに加速をしているということを見ることができます。  大阪市大の都市環境問題研究会の調査中間報告を見ましても、八カ月未満と八カ月未満から一年八カ月未満というのを見ますと、八カ月未満というのは、ちょうど調査をしたのが昨年八月ですから、おととしの十二月末から昨年八月までなんです、それからさらに以前の一年八カ月未満というと九七年四月から九八年十二月末までの間で、この期間を合わせると五八・三%。つまり、六割近い人が、九七年の消費不況が深刻になってからのホームレスの方の急増なんだということを見ることができると思うのです。  この点では、私は、木下教授が言っておられるように、経済構造の問題とあわせて、今日の消費不況が深刻になってからの問題がここにはっきりと出ていると思うのですが、こういう点はきちっとつかんでおられますか。
  49. 炭谷茂

    ○炭谷政府参考人 現在の全国的なホームレスの原因というのは、一つは、経済、産業構造の変化ということが、先ほど申し上げたとおりあろうかと思っております。それと、もう一つ主要な原因というのは、家族の崩壊といいますか、実際、ホームレスの内容を見てみますと、やはり離婚している人もしくは単身の問題という社会的な要因というのが二大要因だろうというふうに、今まで私どもいろいろな学識経験者の方々から御意見をお聞きしますと、主要原因としてはそのようなところにあるのではないかなというふうに思っております。  それに絡みまして、例えば、ホームレスの方々自身がアルコール中毒、依存症の方とか、精神障害等の疾病を有している方とか、また、サラ金に追われているというような他の要因も付随的に絡み合っておりまして、いわば現在のホームレスの要因というのは、大体日本では複合的な要因で生じているのではないのかなというふうに思っておりますので、先生今御指摘されました事項について、直接的なものは私どもまだわかりませんけれども、大体今の識者の意見というのは、このようなところから生じているのではないかなというふうに思われております。
  50. 吉井英勝

    吉井分科員 深刻な不況の中で、経済状況が個々の家庭に直撃してきて家庭崩壊につながっていっている。家庭崩壊というのも、そういう社会的背景をきちっととらえて言わないと、非常に不正確な見方になります。  それから、六割の方は最近なのです。これは特に九七年以降のことであって、それは、アルコール依存だとかなんだとかいうことでは説明がつかない問題です。やはり、本当の原因というのはそこにあるということをきちっとつかんだ上でどういう対策をとっていくかということを見ておかないと……。だから、そこが大事だからここまで議論を進めてきたわけです。私は、家族崩壊が全くないとか、アルコール依存がないとか、そんなことを言っているのではないのです。しかし、そこに至る経済社会の背景というものをきちっとつかまえておかないと、本当の対策はできないよということを申し上げておきたいと思います。  一昨年暮れ、衆議院の決算委員会の大阪・あいりん地区調査に私も行きましたが、冬場に入って赤痢が集団発生しているときでした。地元行政関係者が私たちに、赤痢に感染しないように注意してほしいと言ったぐらいでした。  ところで、ホームレスの中で、病気と冬の寒気による凍死者など、行旅死亡者、緊急入院による生活保護者が今どういう状況になっておりますか。
  51. 炭谷茂

    ○炭谷政府参考人 現在、行旅病人及行旅死亡人取扱法という法律がございまして、このような事項を扱っているわけでございますけれども、行旅死亡人の人数については、正式の統計はございません。ただ、同法の第九条には、身元のわからない行旅死亡人については、市町村が掲示場に告示し、かつ官報や新聞に公告することが義務づけられておりますので、私ども、昨年度、平成十年度の官報に公告されました行旅死亡人の数を数えてみましたら、千百五十二件でございました。ただ、数えただけでは、今先生の御指摘されましたホームレスがどれだけ含まれているかということはわからないわけでございます。  そこで、先生の御質問もございましたので、近県の東京都、千葉県の担当者にどういう感覚なのだろうかということをお聞きしました。そうしましたところ、東京都では二百三十件、これはたまたま偶然なのですけれども平成九年度、十年度とも二百三十件前後の行旅死亡人がいらっしゃったということでございます。この一般的な傾向を見ますと、東京都の感覚は、やはりホームレスの人が、特に台東区、新宿が多うございますので、かなり含まれているのではないか。ただ、奥多摩の方にもいらっしゃる。これは自殺者でございます。そういうものが含まれている。それから、千葉県では十数件でございました。ただ、千葉県の場合は、自殺者などがかなりありまして、ホームレスがどの程度含まれているかということについて、実務者の感覚としては少しわからないというようなことでございました。
  52. 吉井英勝

    吉井分科員 行旅死亡人というのは、もともとどういう方かわかっておれば、家族の方が行ったりして、割ときちっとわかるわけなのです。これは基本的にはやはりホームレスの方を中心とした死亡者であるわけです。  今全国で、年間千百五十二名とおっしゃいましたが、大阪における推移というのは、大阪市民生局資料などをもとに見てみても、行旅死亡人の数と、行旅病人で緊急入院して生活保護をかけたのだが亡くなられたので保護を廃止した、この数を合わせた方が、本当はもっとホームレスによる行旅死亡あるいはそれに類するものをきちっと把握することができると思うのです。これで見てみますと、最近、大体年間四百人台ですね。これは大阪市だけで見ることができるのです。  これは新聞等でも紹介されておりましたが、寒い日の夜は寝たら危ない、一晩じゅう歩き続けることがあると。実際この冬も、大阪だけでも、二月八日、九日の雪の積もった日に三人の野宿者の方が亡くなりました。一月十九日には五人亡くなり、二月二日には四人が寒さの中で命を失っていっている。  憲法二十五条では、生存権の保障を定めておりますが、私は、基本的人権の中でも重要な一つだと思うのですね。  そこで、厚生大臣、このようなホームレスの凍死などということは、これは厚生省が、ホームレスになった方の一人一人の状況をつかんで、健康管理を、厚生省が直接でなくても地方自治体と連絡をとってやっていった上でなおかつ凍死という事態になってしまったのか。それとも、手を尽くし足りなかったという問題がやはりあるのか。その上に立って、厚生省としては、やはり大臣としてはどういうふうに臨んでいかなければいけない、こういうホームレスの方の凍死とかを防ぐためにどういうことをやっていかなければいけないというふうにお考えなのか。この点については、大臣のお考えというものをここで聞いておきたいと思います。
  53. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 近年、東京とか大阪とか大都市を中心にいたしまして、路上生活者、ホームレスが大変ふえております。私も、地元が茨城県でございますが、高速道路から隅田川のところのずっと青いテントを見ていまして、これが最近になって大変ふえてきておる状況について、大変大きな社会問題である、このように認識をいたしておるような次第でございます。  それで、要因がどこにあるかということは、ただいま局長の方からお話を申し上げましたように、確かに主要な要因は今日の経済不況というものを受けていると思いますが、どうもさまざまな形で、私などもこれまで新聞であるとかテレビなどで拝見いたしておりますと、必ずしもそうとばかり言い切れないという面もなきにしもあらずだ、こう思っております。  ただ問題は、先ほど冒頭に委員が御紹介なさったような痛ましいことがあるということは、社会の大きな病巣の一つだ、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、この問題につきましては、関係省庁とも十分に協議をしながら、どういうような様子か、まず原因がどこにあるのかということ、それから、それに対して私どもがどういうような対策が講じられるかにつきまして、率直に申し上げてこれというものがなかなかないような気もしますけれども、しかし放置しておくわけにいかないわけでございますので、ひとつきめの細かな調査というものを検討していきたい、このように考えているような次第であります。
  54. 吉井英勝

    吉井分科員 まず、ホームレスの急増、六割は本当に最近だということを御紹介しましたが、これは失業とか自営業者の場合は経営の行き詰まり、それから商工ローンその他の追い込みをかけられてということなどもあって住宅家賃も払えない、家を出てホームレスということになるわけです。あるいは簡易宿泊所に入る日雇い現金さえ入ってこなくなってホームレス。  しかし、本来こういうときに、最後のセーフティーネットというのは生活保護であるはずなのですね。二歳の女の子が凍死したり、ホームレスの凍死。なぜ生活保護法が機能しないのか。私は、今そこが、根本が問われていると思うんですね。  その点では、八一年の百二十三号通知、八五年の保護基準算定方式の見直し、八六年の補助金等臨時特例法、保護費の国庫負担率を削減していったこと、この結果、生活保護受給者が一九八五年の百四十三万人から八十八万人へと、その後の十年間とっただけでも五十万人以上、四割の人が保護を打ち切られていっているわけですね。  その中で、この運用については、住所が不定だったらだめだ、住民票がないとだめだよと。それから稼働能力のある者、働く能力はある、働く気もあるんだが働く場がないんだ、そういう人たちに対して現行の運用によってセーフティーネットがなくなっちゃっている。これは私は本当に深刻な問題だと思うんですよ。  そこで、厚生大臣、ホームレスの人が凍死したり行旅死亡者とかあるいは緊急入院となる前にやはり救出して自立できるように是正する。一番基本的なところは、まずセーフティーネット、生活保護によってでも緊急にホームレスにならなくても済むようにする、あるいは凍死する女の子が生まれるようなことのないようにする、私は、このことについては厚生大臣として基本的なところできちんと方向を打ち出して取り組んでもらう必要があると思うんです。これは大臣に伺いたいと思います。
  55. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 ホームレスの方々につきましては、先ほど来議論があるところでございます。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、ホームレスの方々にも自立をしていただいて、そしてホームレスの方々が自立できるための相談体制というものを整えながら、そして今委員から御指摘があったような、職場がないのか、あるいは率直に申し上げて就労意欲がないのか、その辺のところも含めて、やはりきめ細かくその実態というものを調査する必要があるんではないか、このように考えております。  いずれにいたしましても、大変こういう方々がふえておりますことはゆゆしき事態でございますし、この問題につきまして、ひとつ総合的に検討、調査をしてみたい、このように考えているような次第であります。
  56. 吉井英勝

    吉井分科員 先ほど御紹介しました大阪市大の調査ですが、ホームレスの人たちは怠け者とかやる気がないなどという偏見は全く当たらないことを示しております。  それは、ホームレスの八割の人が現に仕事をしているんです。仕事の九割近くは廃品回収です。厚生省が今力を入れている環境、資源リサイクルに一番貢献しているわけですよ。一番か二番かはおいておくとして、本当に貢献しているんですよ。約八割の人が月二十日以上就労しているんです。それから、仕事の時間帯というのは、夜間でないと今は凍死してしまいますから、午前一時から午前九時が最も多いんですよ。夜間凍死しないように起きて働く、そして朝早く回収業者のところへ持っていって生活費を得ている。  昼間は背広に着がえて職安へ行ったりする人も多いんですよ、仕事を求めて。住所がホームレスで、求職難の時代ですから、見つからないんですよ。中には、子供さんがテントから通学するという家族もいるわけです。月収は大体、一日アルミ缶を集めても千円になるかならないかという方が多いものですから、三万円未満が半数、五万円を超える者は二割未満だ。食事は圧倒的多数の方、六割の方は自炊をしていらっしゃるんですよ。だから、その点では本当に自立しているんです。自立意欲もあるんです。転職希望者は八四%で、仕事を探しているという人は四六%、その四人に三人は公共職安や労働福祉センターを利用しているんです。しかし、求人減で仕事がないんですよ。  だから、そのときに、私は調査はしっかりやってもらいたいと思うんだけれども、しかし調査すると同時に、セーフの制度がどんどん切り縮められてしまって、ネットが破れちゃって、セーフティーネットにならなくなっている、ここをやはりきちっとセーフティーネットにするということと、労働省の職業あっせんじゃだめなんです、就職がないんだから。だから、例えば環境、資源リサイクルとか福祉の分野でやはり公的就労事業を具体的に起こしていく、このことに取り組まないと、現実には解決できない。  そして、国の方でも一応、自立支援センターというお考えはあるんですが、おおむね一カ月という考え方ですね、最長六カ月になりますが。しかし、これじゃ職場も住宅も解決できないんです。それから、これは全国八カ所で定員千三百人という予算ですが、二万人という見積もり、本当はもっと数倍規模でいらっしゃると言われているんですが、ホームレスの方二万人としても六、七%なんですね。全然実態に合わないわけです。  フランスでは約三万人のホームレスに対して一万三千世帯のセンターを用意している。構成も内容も随分進んでいるわけですね。  私は、海外の研究もし、国内の調査も進めるとともに、やはり住宅とか基本的に凍死しなくてもいい暮らしについては生活保護などでセーフティーネットをきちっと張る。それから、仕事については公的就労を起こしていく。厚生省が取り組んでいる資源リサイクルとか環境、循環という問題、現にやってもらっているわけですから、それをもっと大規模に進めていくということなどをして、本当に一人たりとも凍死する人が出ないように、行旅死亡人が出ないように全力を尽くすというのが、これは憲法二十五条に立った厚生大臣の責務ではないかと私は思うんですね。  もう一度、大臣に伺いたいと思います。
  57. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、こういうようなホームレスの方々が大変ふえておるということは大きな社会問題であるという認識に立ちまして、ただいま委員からもさまざまな御提言、御意見を拝聴したわけでございますが、そういうことを踏まえまして、できるだけ早く、関係省庁とも相談をしながら具体的対策というものを、なかなか難しい面もございますけれども、打ち立てていかなければならない、こう考えているような次第であります。
  58. 吉井英勝

    吉井分科員 それで、私は今の事態を見ていますと、大震災のときのように、あのときのように政府が本気で取り組んでいくということが必要だと思っているんです。少なくともセーフティーネットという点では、これはいろいろな運用によって実際にセーフティーネットを張っていくことができるわけですから、まず緊急には生活保護法を生かしてやっていくということ、それから厚生省の分野でも公的就労の分野がありますから、これは早急によく研究して取り組んでいただくということが大事だと思うんです。  もう一度、大臣に伺っておきます。
  59. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 御意見として承りまして、先ほどから申し上げておりますように、このまま放置しておくような問題ではない、こういう認識のもとに、この問題につきまして前向きに検討させていただきたいと思います。
  60. 吉井英勝

    吉井分科員 次に、財団法人結核予防会結核研究所の森亨所長が、最近の結核患者の急増には二つのタイプがあると指摘しておられます。一つは糖尿病など発病を促しやすい病気を持つ人や高齢者、もう一つがホームレスなど社会的、経済的弱者なんだと。実際に、特に大阪の西成の方では、全国平均の五十倍の結核の罹患率という状況が示されております。  そこで、結核というのは栄養状態の不良とか集団的劣悪環境の中で感染が進んだり、あるいは罹患した人が治癒しないという問題がありますから、この点でも、全国二万人、本当は数倍と言われるホームレスの人たちの中で、厚生省としては、まず住宅、生活環境、健康管理、栄養と暖かいところでの休養ということを保障して、この国の中から結核を本当になくしていく、とりわけ今問題になっているこのホームレスの人たちの中ではなくしていくということで取り組む必要があると思いますが、現在、厚生省として、ホームレスの方たちに、約二万人の中で何人の人にこのような対策をとっておりますか。
  61. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 今先生が御指摘のように、結核についてでございますが、我が国は結核の有病率、人口十万対三十四という数字で、先進国の中でも極めて高いということでございまして、昨年、結核については厚生大臣の名前で緊急事態宣言を発したところでございます。  それで、今先生指摘の数字はちょっと持ち合わせておらないのでございますが、大都市における結核の治癒率の向上のために、特に、直接監視下投薬、DOTSと言っておりますが、WHO等でも推奨している事業でございますが、それを平成十一年度から実施しているところでございます。
  62. 吉井英勝

    吉井分科員 私は、マハティールさんがことし一月十日付の毎日新聞に書かれたのを読みまして、大臣も読んでいらっしゃったら本当に胸をつかれた思いかと思いますが、私も思いました。「マレーシアがルック・イースト政策を採用したのは、戦後の荒廃から立ち直った日本のやり方に感銘を受けたからだ。」「ところが、日本は西側システムに合わせようと、こうしたこれまでの長所を突然、すべて捨てた。 日本をたびたび訪れ、目覚ましい発展ぶりを見てきた。しかし、前回の訪日時、青いビニールシートの下で暮らす失業者の姿に胸をつかれた。これが終身雇用を廃止した終着点だ。外国企業が日本の会社を買って、まず最初に手をつけるのが合理化と称する、解雇と工場閉鎖である。」  マハティールさんも胸をつかれたと言うのですが、私は、本当に大臣も同じように胸をつかれると思うのですが、この問題の解決の基本は憲法二十五条にあるし、また、憲法二十七条の勤労の権利を有しているわけですから、これを保障すること。我々は、国会議員も国務大臣も九十九条で憲法尊重の義務を負っているわけですから、この立場に立って、私は、この問題について本当に全力を挙げて取り組んでいかなきゃならぬということだけ申し上げまして、ちょうど時間になりましたので、質問を終わりたいと思います。
  63. 山口俊一

    ○山口(俊)主査代理 これにて吉井英勝君の質疑は終了いたしました。  次に、藤村修君。
  64. 藤村修

    藤村分科員 民主党の藤村修でございます。  厚生大臣におかれましては、医療、介護あるいは年金と、本当に庶民の暮らしに非常に重要な課題が山積でございまして、大変たくさんの問題を抱えていらっしゃる。そういう中で、病気の問題で遺伝子解析ということがこのところ大変注目を浴び、あるいは、世界でもこれは時間の競争で研究開発が進んでいる。こんなことで、これはひょっとしたら年金医療、介護に次ぐぐらいの大変大きな国民課題、問題だ、そういう観点から、きょうはこの件について御質問をさせていただきたいと思います。  私、大阪の吹田市でございまして、ここに御承知の国立循環器病センターがございます。千里ニュータウンという地域の、地域におきましても大変信頼される、そういう病院でもございます。ここで、つい先般、これは多分御承知だと思いますが、健康診断の受診者の血液を、その本人、皆さんの了解を得ていなくて、無断で遺伝子解析などの検査を行っていた、こういうことが、これは大阪の紙面でございますが、二月の初めに報道でそれぞれ相当大きく取り上げられました。  どういうことかというと、遺伝子解析は、平成八年五月から十年二月にかけて行われた健康診断の受診者約五千人を対象に実施。その際、健康診断用とは別に五ccの血液を採血した。この採血は、一応の了解を得て、これは高血圧に関連する酵素の遺伝子を検査するということであったのですが、さらに同年の五月から去年の八月にかけて追加で計十三種類の遺伝子を解析した。  このことは全く受診者は知らないままでございましたので、むしろ循環器病センターの中でも、これはえらいことだ、まずいということで、例えばことしの一月二十七日付で予防友の会という受診された方々の会全員にいわばおわびを書面で出しておりまして、これには、生活習慣病と遺伝子とのかかわりを明らかにするため、書面による御承諾をいただいた上でアンジオテンシン変換酵素の遺伝子型を調べる検査を実施させていただいた。これは一応とりあえず、生活習慣病と遺伝子のかかわりを明らかにするためという断りがあったのです。その後、その検体を用いて生活習慣病と関連のありそうな十三種類の遺伝子検査を行わせていただいた、これについては御了解をいただかないまま検査したことを深く反省し、おわびする。こんなことで皆さんにお知らせをした。  考えてみると、健康診断、これは実は吹田市の協力で無料で受けられるものですから、ある意味では、五千人の方々はありがたく受けられた。その際、五ccの血液をそういうことで若干検査に使いたい、それは承諾した。しかし、その後、十三種類の遺伝子解析をした、これは驚きでありまして、私ども地域からも声を聞いておりますが、これはえらいことではないだろうか。  そういう遺伝子解析によって病気の治療をする、あるいは薬の開発をすることは非常に重要な研究ではあるけれども、その際に重要なことは、やはり人権の保護とかプライバシーの保護、これは非常に今後とも重要な課題になってくるはずだ。そういう思いで、私は、このニュースなり、あるいは吹田市からも事情聴取もいたしました。あるいは、説明会を受けた方の声も聞いてまいりましたが、現時点で厚生省大臣はこの件についてどんな御認識、御見解をお持ちか、まずお伺いしたいと思います。
  65. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 受診者の方々から同意を得ないでこのような集団検診で採取した血液を用いて遺伝子研究を行う、こういうことは、手続で大変不適切であり、遺憾に思っております。  先般、国立高度専門医療センター、国立病院・療養所に対しまして、このようなことが再び起こらないように指導を徹底いたしました。  現在、厚生省におきましては、遺伝子解析研究に関する倫理ガイドラインを検討いたしておりますが、そこでは、遺伝子研究のために血液などの提供を受ける際には提供者にあらかじめ説明を申し上げて了解を得る方向で検討いたしており、このガイドラインをもとに、今後適切に対応していきたい、このように考えているような次第であります。
  66. 藤村修

    藤村分科員 今、大臣のお答えの中で、ガイドラインというものについて説明をいただきました。  それは遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対応するための指針、こういうものだろうと思います。これは、昨年末のいわゆる小渕総理大臣のミレニアムプロジェクトの中で、病気の予防、治療法などの確立、あるいは画期的な新薬の開発などの推進を目指して遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業を実施する。その研究の中で、まずは人権の保護などは非常に重要ですから、指針を研究者がそれなりにまとめられているものというふうに認識しております。  それで、遺伝子解析研究に付随する倫理問題に対応するための指針が出ておりますので、これについて、概要だけ簡単に説明いただきたいと思います。
  67. 堺宣道

    ○堺政府参考人 厚生省のミレニアムプロジェクトとして来年度から開始される遺伝子解析による疾病対策、創薬の研究ということでは、多くの方々から血液等の試料の提供を受けて遺伝子の解析を行って、その成果を研究機関の間で相互に活用するということが予想されるわけでございます。  一方、生命倫理の観点から、研究を進める際には、まず試料提供者への十分な情報提供と同意、いわゆるインフォームド・コンセントでございます。次には個人情報の保護、さらには重要事項の審議を行う倫理審査委員会の拡充強化ということなどについて参加研究機関の間で適切かつ統一的に取り扱う必要があるわけであります。  このために、倫理的観点から、研究者及び研究機関が遵守すべき事項について統一的な指針を定めるべく、昨年の秋から、遺伝子解析の専門家に加えまして、生命倫理の専門家あるいは法律家などによりまして、遺伝子解析による疾病対策・創薬に関する研究における生命倫理問題に関する調査研究というものを行いまして、その中間的な取りまとめ意見を本年二月に厚生科学審議会に提出したところでございます。  厚生科学審議会においてそれをもとに審議を行いまして、最終的な決定に際して参考とするために、二月から三月までおおむね一カ月、広く一般国民の方から指針案に関して現在意見の募集というものを行っているところでございます。今後、寄せられた意見を厚生科学審議会に御報告いたしまして、さらに御検討いただく予定でございます。  以上でございます。
  68. 藤村修

    藤村分科員 今、そういう指針が中間の段階で公表されて意見を聞いている、これはこれでやり方として正しいやり方だと思います。ただ、厚生大臣、多分これはお読みになっていないと思うんですが、今どんなものが公表されているかといいますと、相当たくさんの字が書いてあるんですが、例えば、「はじめに」から読み出しますので、「はじめに」と書いて、「遺伝子の本態解明とヒトゲノムの全塩基配列の解読が進む中で、個体の持つ遺伝学的な多様性と様々な」云々と、これが最初の文章でございます。ある意味ではずっと専門的なことでありますから、こういうことになる。あるいは、法律をつくるときでも、最初は法文というのはこういうものである。  ただ、これを公表して多くの意見を聞こうというからには、いわゆる要綱があって、それでさらに大くくりでは概要があって、これらをつけて、もちろん専門的にはこのような細かいところをちゃんとつけて、それで意見を聞く、いわゆるパブリックコメントを求めるという姿勢でないと……。  これは、厚生大臣、お読みになったかどうかと、今の出だしの言葉を聞いて、まずどうお考えになりましたか。
  69. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 ちょっとまだ読んでおりませんけれども、いずれにいたしましても、例えば解析用の細胞であるとか血液であるとか、その試料を提供していただいた方やその御家族の方々のプライバシーや人権の保護に万全を期すということが何よりも大切だ、こういう認識を持っております。
  70. 藤村修

    藤村分科員 それが大切であるからには余計、つまり試料を提供いただく一般の方々あるいはその御家族の方々が広くこれを読んで、うん、そうだなと納得していただくというか、あるいは、ちょっとこの点はこうじゃないですかということを求めるためのパブリックコメント。公表したわけですね。ところが、一般的にはまだ十数件しか来ていないそうです。だから、余り難し過ぎるというのがまず最初の私の印象でございます。  中身に入っていきたいと思います。  過去に採取した血液などを、今の大阪の吹田の循環器病センターの例でもございますが、提供者に断りなしに十三種類の遺伝子解析をしたということで、これはやはりよくないし、地元大阪でも大変な問題になりました。でも、なかなか難しいんですが、これをずっと何回も読んでみたりした範囲では、どうもそれができることになっているんじゃないか、倫理委員会の承認などがあれば解析可能性が出てくるんじゃないかと思われるんですね。その点いかがですか。
  71. 堺宣道

    ○堺政府参考人 指針におきましては、過去にいただいた血液などの試料につきましても、遺伝子解析研究に用いることの同意が得られていないものについては原則として研究に利用できないということにしているわけであります。しかしながら、既にいただいた試料が貴重な研究資源というふうになる場合があることもあるわけでございまして、例外的に、過去に採取した血液等の試料の提供者が特定できない状況にある場合、それから試料の提供者が特定できる可能性はあるけれども試料の提供者に危険あるいは不利益が及ぶ可能性が極めて小さいなど、外部の委員を加えた倫理委員会で確認された場合などは、プライバシーの保護が確保されると考えられるために、遺伝子解析研究が行えるとしたものでございます。  なお、これらの研究計画というものはすべて外部委員を加えた倫理審査委員会で事前に審議が行われる、その審議概要というものも公表されるということとしているわけでございます。  ちなみに、これらは、米国での国家生命倫理諮問委員会の報告書についても同様の取り扱いを提言しているというものでございます。  以上でございます。     〔山口(俊)主査代理退席、主査着席〕
  72. 藤村修

    藤村分科員 大臣、今審議官のお答えのように、さっきの国立循環器病センターでのケース、つまり、許可を得ていなかったけれども後から十三種類の遺伝子解析をやった、このことは今回の指針では非常に可能性としては残るんですね。それは、倫理審査委員会が、なかなか厳格な基準をはめて、しかし認めればいいということになっちゃうんです。でも、今回、地元の皆さんは、それは私聞いていなかった、そんなことを解析したんですかという、これは大変な人々の怒りに近い驚きがあったわけで、私は、この指針で、過去に採血した血液などについて、提供者の同意がなくても倫理委員会の承認などがあれば可能という道を残したことは非常に問題が大きいと思うんですね。  例えば、担当者が、いや、ガイドラインにこう書いてあるからといってやった、しかしいわゆる法律的にどうかということで訴えられた、そのときに本当に裁判に勝てるか。だから私は、これは今パブリックコメントを求めている段階ですから、相当今から修正していただかないといけないと思うんです。これは危ないと思うんですよ。  確かに、不連続の匿名化されたものというのは、これはだれも訴える人はないですよ。でも、リンクされていて人がわかっていて、その方から来た、それで、事前に聞いていなかった遺伝子解析をした場合、この方がどう考えるかによっては裁判になる。これは民事上で勝てますか。
  73. 堺宣道

    ○堺政府参考人 裁判に勝てるかどうかというのは司法の結果でございますから、それはコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、でございますから、この倫理審査委員会というものが非常に大きな役割を担うというふうに思っているわけでございます。  それで、この倫理委員会の構成というのを先ほどちょっと申し上げましたが……(藤村分科員「それは結構です」と呼ぶ)よろしいですか。
  74. 藤村修

    藤村分科員 大臣、さっきの審議官の説明でも、全米生命倫理諮問委員会は、これは実は科学技術庁がまとめてくれた資料でも、いわば、集めた試料をあらゆる種類の研究に期限なしで適用することができるものとは考えてはならない。つまり、過去にとったものはある意味ではそこで一つ区切りを終えていて、その後にまさに期限なしでこれが適用することができるものとは考えてならないと割に厳密にアメリカの基準なんかでも言っています。といいますのが、御承知のように、例えば「政府職員の採用や昇進 遺伝子情報の使用禁止」ということで、クリントン大統領は、連邦政府職員の採用や昇進に際して個人の遺伝子情報を使うことを禁止する行政命令を出した。日本ではまだこういうことが起こっていませんが、これは十分に今後起こる可能性があるわけですね。  そうすると、まさに個人のプライバシーというか人権の問題、それから、研究に必要だからもちろんこれはこれで私も重要性を十分に認めながらも、そのチェックが甘いと、さっき審議官は、裁判は法廷の問題だと言われたけれども、今パブリックコメントを求めている段階でそれだけの声があるのです。  これは、倫理審査委員会がいかに認めたとしても、それも非常に厳しい条件で認めたとしても、やはりそこにその本人の、検体、試料を提供する方の同意というものをちゃんと盛り込むべきではないか、こういうふうに思うのですが、これは大臣のコメントがございましたらお願いしたい。
  75. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先ほど来申し上げておりますけれども、指針案につきましては現在パブリックコメントを求めているところでございます。  それから、先ほど先生から御指摘されて、読んでいるかということでありまして、今こういう資料を見ましたけれども、なかなか難しくてとても私の知識では読み込めないな、率直に申し上げて、こういう印象を持ちました。  そういうようなこともありまして、これはあくまでも専門的な方々に対するそういうようなきっちりしたものを出そうじゃないか。それからもう一つ、ホームページなどを通じまして、こういうポンチ絵などで国民の皆さん方の御理解を得るように今努力をしておるところでございます。  いずれにいたしましても、先ほど私申し上げましたように、基本的な考え方といたしましては、解析用の試料を提供していただいた方やその御家族などのプライバシーや人権の保護などに万全を期すことが重要だ、こう考えております。そういうような認識の上に立って今ちょうどパブリックコメントをやっておるところでございますし、先生の御指摘というものも十分に踏まえながら、いずれにいたしましても国民の皆さん方に御理解いただけるようなことをまとめていきたい、このように考えているような次第であります。
  76. 藤村修

    藤村分科員 つまり、まだ今から変えられる、我々の意見を入れて。そういうお答えだったと思うのですが、もう一つ指摘しますと、今パブリックコメントを求めている全体の中で、実は提供者に同意を得る際の具体的な説明文書例を別添で示すとあるのです。それで、別添が示されていないのです。これは一番大事なところですよ。提供者に本当にちゃんと理解いただいて、それで科学研究に使うわけですけれども、その提供者に理解を得る際の具体的な説明文書、それから同意文書はどういうふうにするかなど、これも別添と書いてあったままで、別添が今公表されていない。  これはちょっと、パブリックコメントを求める今の段階で、拙速に過ぎませんか。つまり、三月の何日かにこれを上げないといけないから急いでいる、どうもそういうところがあるのですが、審議官いかがですか。
  77. 堺宣道

    ○堺政府参考人 別添につきましては、できるだけ急いで、参考資料としてホームページの方に掲載できるようにということで今作業を進めているところでございます。
  78. 藤村修

    藤村分科員 できるだけ急いでじゃなくて、今聞いている範囲では、パブリックコメントは、さっきおっしゃったように二月—三月の一カ月でしょう、それが終わってから公衆衛生審議会で何か別添をつくるというふうに聞いているのですけれども、それじゃ間に合いませんよ。いつやるのですか。
  79. 堺宣道

    ○堺政府参考人 今週中にというふうに思っております。
  80. 藤村修

    藤村分科員 つまり、一般の方が一番心配する、どういうふうに説明してくれるのかな、そこのところの説明文書が頭からなしで、さっき申しましたように、こんな難しいもので、それで一般の御意見をいただきたいというやり方自体、非常にこれは拙速にやっているのじゃないか。  つまりは先ほどのミレニアムプロジェクトの問題ですね。これはたしか去年の十二月十九日に総理大臣が決めて、それでミレニアムプロジェクトで、私は研究の方向とか内容とか非常に評価をしております。ただ、今度平成十二年度四月からは、ある意味ではそれで予算をつけてやり始める、その前に何か指針が要る、だからということで、これは短い期間でちょっと無理をしていないか、し過ぎていないか。  例えば、ミレニアムプロジェクト、これに参加の機関に対する指針ですが、この四月から参加しない、参加はしないけれども、その間血液をいろいろな検査でとった、例えば来年度から参加するというときには、過去の採取試料という扱いにすればできるのですね。さっきの国立循環器病センターで起こったことがまた来年起きる可能性がある。その抜け道があるのですが、抜け道じゃないですか、これは。
  81. 堺宣道

    ○堺政府参考人 現在検討中の指針というものは、厚生省がミレニアムプロジェクトとして行う遺伝子解析研究に参加する研究機関に適用するということを目的としているわけでございます。  それ以外の一般的な遺伝子解析研究においては、倫理面で守るべき指針につきましては科学技術庁において検討中というふうに聞いておるわけでございますが、厚生省におきましても、ミレニアムプロジェクト用の指針を適用して明らかになった事項をもとに引き続き検討し、指針の改定など必要な措置を講じていきたいというふうに思っております。
  82. 藤村修

    藤村分科員 ですから、厚生大臣、短い時間聞いていただいた範囲で、まず第一に、皆さんの御意見を求めるこの指針案なるものが、我々国会でいいますと、新しくつくる法律そのものをだあっと流したのですね。まずこのやり方が、じゃ、本当にそれで皆さんのお声をちゃんと聞けるのですかということが非常に重要なポイントである。  それから、今中身についても幾つかの例を言いましたが、抜け道があったりするのじゃないか。もう一回蒸し返すようですが、過去に採取した血液などは提供者の同意がなくても倫理委員会の承認などがあれば解析可能な道を、ほんの狭いですが残している点。これは残すべきでないのではないだろうかという意見も寄せられるかもしれぬが、しかし、今一般の人がこれを読んだって、そんなこと全然わかりません。  今の話は「C群ヒト由来試料等の場合」ということで、このC群というのが、何の承諾も得ないで集めた血液とかの分析をする際の指針が出されておって、原則としてこれはできないことになっている。「ただし、」とあって、次の要件でと。このただし書き以下は取るべきではないか。ただし書き以下が非常に危ないですよ。  私が先ほど法律的にどうかと言ったときに、厚生省は、いや、裁判のことは法廷だとおっしゃるけれども、事実この国立循環器病センターで起こったことはこのことなんですよ。これはうちの地域、地元大阪全体も、非常に困ったことだ、えらいことだというふうな認識をしておりますし、だからこそ循環器病センターはその後の対処におきましては割に親切にし始めた。つまり、最初はアポリポたんぱくEの遺伝子を解析していたが、受診者に出したおわびの手紙では、高血圧と関連性を調べるとの説明しかせず問題になった。国循はこれを反省して、今後は解析予定の遺伝子についてすべて事前にきちんと対象者に説明すると表明した。このことでやっとそれなりに理解が得られ始めたのですよ。  ところが、それをさせないことに、あるいはそれをしなくていいことになっていますよ。これでよろしいか。
  83. 堺宣道

    ○堺政府参考人 同意がとれていない過去のものについてでございますが、その同意をとるべく最大限の努力をするということがまず前提になっているということでございます。
  84. 藤村修

    藤村分科員 指針にはそうなっていませんよ。提供者に問い合わせ及びヒト由来試料等の研究利用の拒否の機会を保障するための措置が講じられていることを、倫理審査委員会がよろしいと言ったらできるのですよ。今おっしゃったこと、間違っていますよ。
  85. 堺宣道

    ○堺政府参考人 その利用できるという条件でございますけれども、遺伝子解析研究により採取……(藤村分科員「全部言わなくて結構です、ありますから」と呼ぶ)そうですか、はい。一番、二番……(藤村分科員「その4のことを言っているわけです」と呼ぶ)「(6—3)C群ヒト由来試料の場合」ということで、(1)、(2)がございまして、(2)の1から4でございますが、これはすべて、かつということでくくられることでございます。
  86. 藤村修

    藤村分科員 いや、ですから、審議官もやはり全体をよく理解されていないと思うんですよ。本当に難しいんですよ。この前吹田で起こったことは、考えてきたら、ここに集約されて、こう書いてあるんですよ。「提供者に問い合わせ及びヒト由来試料等の研究利用の拒否の機会を保障するための措置が講じられていること。」だから、提供者に拒否の機会を与えるけれども、こうこうこういう検査をしますけれどもどうですかということは決して聞かないんですよ、これは。聞かなくてよいし、この措置が講じられておれば倫理委員会は認めるわけです。倫理委員会が認めたからといって担当者はやる。やったときに、そんなの聞いていないと言われたときに、裁判ざたになったら厚生省は恥かきますよ。これはやはり修正すべきだと思います。
  87. 堺宣道

    ○堺政府参考人 多少の答弁の重複をお許し願ってという前提でございますが、(6—3)のところでございますが、原則として、既採取のヒト由来試料等の提供者または代諾者がこの研究に用いることの同意を与えない限り、研究に利用できないというのがまず大前提でございます。そして、そのほかでできる場合ということで、以下の厳しい要件というものをつけたものでございます。
  88. 藤村修

    藤村分科員 そこのところは、すなわち「遺伝子解析研究に用いることの同意を与えない限り、」というところは、必ずしもインフォームド・コンセントという形で一つ一つ——さっきの循環器病センターはそうですね、十三種類やったんですけれども、これは一つも聞いていなかった。これ全体を通していえば、目的として解析研究に使わせてもらうという同意は得るんですよ。でも、細かく、遺伝子解析のこれとこれとやります、これはそれぞれこうこうこうですと、資料全部ありますけれども、国循吹田のセンターは十三種類やったんだから、やはりそこまでやるべきではないか。  そのぐらい慎重に判断しなければ、遺伝子をそれぞれ提供いただいて分析する、問い合わせればその本人まで行くわけですから、連続匿名化という何か難しい言葉で。となれば、先ほどの、これは将来の話として、クリントン大統領も心配しているような、やはり個人の就職とか昇進とかあるいは結婚とかいうことの差別につながってきますよ。そういう道を残してはいけない。このことを、一言だけ、厚生大臣にきっちり決意を述べていただきたい。  もう一つ大臣、これが余りに難し過ぎるし、コメントを求める期間が一カ月で、さらに別添がついていないことは私は不手際だと思います。期間を少し延ばし、別添をつけた上で一カ月はやれということを要望したいと思います。
  89. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先生も、いわゆる遺伝子分析における国民の皆さん方の理解といいますか協力といいますか、そういうことが大変重要であるけれども、プライバシーというものをきちんとしなさいよ、インフォームド・コンセントというのはきちんとしなさいよ、こういう立場で御質問をいただいておるわけでございますが、私も全く同感でございます。  国民の研究に対する信頼を確保するということがまず何よりも重要だ、そういう前提に立つわけでございますけれども、一方で、既に集められて、例えば亡くなってしまって、改めてインフォームド・コンセントをできないような試料が研究資源として重要であった場合にはどうするか、専門家の中には、こういう問題については大変重要な場合もあり得る、こういう意見があることも事実でございます。  いずれにいたしましても、今回のこういうような事件やパブリックコメントを踏まえまして、生命倫理に適切に配慮して研究を進めたいと思っております。慌てて国民の皆さん方の御理解の得られないものをつくってみても、これは先生が御質問のように要するに意味のないことでございますから、十分に内部で検討させていきたい、このように考えているような次第であります。
  90. 自見庄三郎

    ○自見主査 これにて藤村修君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  91. 自見庄三郎

    ○自見主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管について質疑を続行いたします。松本純君。
  92. 松本純

    松本(純)分科員 自民党の松本純です。早速質問に入らせていただきます。  本年四月からいよいよ介護保険制度がスタートするという重要なときに当たり、先日の厚生委員会における所信において、丹羽厚生大臣は、「豊かさの中の不安の時代とも言われる現在、国民が真に豊かに暮らせるよう、社会保障制度について、国民の新たなニーズに対応し、将来にわたり安定的なものにしていくことが必要であります。」とお述べになりました。  大臣の言う、国民が真に豊かに暮らせるとはどのようなイメージなのか、基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  93. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 我が国の社会保障は、昭和三十六年にいわゆる国民保険、皆年金が達成をいたしまして以降、社会保険方式を中心として、国民一般を対象とした制度定着を図ってきており、現在、社会保障に要する費用は年間六十九兆円に達しております。  今後、少子高齢化社会の進展に伴いまして、社会保障に必要な費用の増大が避けられない中で、社会保障制度が今曲がり角に来ていることも事実であり、大変難しい問題ではございますが、避けて通れない課題考えておるような次第であります。その改革のためには、国民の皆様方の御理解をいただきながら、一歩一歩進めていかなければならない、こう考えております。  このため、社会保障制度を、国民の新たなニーズにも対応しつつ、将来世代の負担が過重なものにならないようにしていくことが何よりも大切である、こういう前提に立ちまして、年金制度を将来にわたって安定し、安心して信頼いただけるものにしなければならない。それから、だれもがいつでもサービスを受けられる、効率的な、世界に冠たる医療保険制度を今後とも維持していかなければならない。  さらに、長寿化により深刻化した介護問題に対応するため、委員も御指摘がございましたけれども、この四月から介護保険制度がスタートするわけでございます、この介護保険制度について国民の皆さん方の理解と合意を得られるように努力していかなければならない。こういうような、国民生活の安定を図り、安心をもたらすためのセーフティーネットとしての社会保障制度の構築に取り組んでまいりたいと考えております。  さらに、二十一世紀の社会保障制度につきましては、制度横断的、総合的に検討する必要があるのではないか、こういう御指摘がございまして、総理のもとに設けられました社会保障構造の在り方について考える有識者会議の御議論も踏まえまして、私としては、国民に信頼され、将来にわたって安定的、効率的な制度とするよう努力してまいる決意でございます。
  94. 松本純

    松本(純)分科員 次に、医療サービスの質の向上のための診療報酬上の評価についてお尋ねします。  医療及び医療保険制度の抜本改革の柱の一つである医療提供体制の見直しについて、医療審議会の答申が出ました。この答申に基づいて第四次医療改正の準備が進められていると思いますが、医療提供体制の整備、強化、合理化のためには必要な改革であると思います。  しかしながら、審議の経過、例えば医療従事者の配置問題について見ると、医療の高度化、保険財政の厳しさが増す中での医療経営者の考え方と、医療サービスの充実のために懸命に努力を続けている勤務医、看護婦、薬剤師などの医療従事者との考えには大きな隔たりがあるように思われます。  医療保険制度の抜本改革のため医療提供体制の効率化、合理化を急ぐことも大切ですが、国民医療ニーズに適切にこたえるため、医療サービスの質の向上という観点からも検討が必要と思いますが、いかがお考えでありましょうか。
  95. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 今、医療改革というのは、委員指摘医療提供体制を含めまして四つの柱を中心にして議論が進められているところでございます。この中で、国民にとって、患者にとって一番身近な問題は医療提供体制ではないか。このような意味において、まず、この医療提供体制充実させていくということが大変重要なことである、このように私は認識をいたしておるような次第でございます。  同時に、この医療提供体制の中でも、先ごろ審議会の答申を得まして、そして与党の皆さん方の御理解を得ながら、今度の国会に提出を予定いたしておりますのが医療法の改正でございます。  その中で、看護職員の配置の問題等につきまして、率直に申し上げて、審議会の中で少数意見が出されたことも事実でございますけれども、私どもは、五十年ぶりの改正となるわけでございますけれども、良質な医療を確保しながら、そして、今後の国民の皆さん方の療養環境を改善するという立場から、ぜひとも御理解をいただきながら、今国会の提出を目指しているところでございます。
  96. 松本純

    松本(純)分科員 次に、診療報酬におけるリハビリテーションの適正な評価についてお尋ねをします。  私の地元の横浜では、昨年、全国で初めて、急性期から治療とリハビリテーションを行う脳血管疾患の専門病院がオープンされました。この専門病院では、病院に質の高い医学的リハビリテーションを導入することで、患者の予後の状態も向上し、後遺症も最小限に抑えることが可能となったと聞いております。このことにより、社会的費用についても、寝たきりや片麻痺の患者を最小限に抑えることも可能となりました。しかしながら、現在の診療報酬では、リハビリテーションの評価が低く、リハビリテーションを行っても収支のバランスがとれない状態とのことです。  したがって、診療報酬でリハビリテーションについて適正な評価を行い、導入する病院をふやす検討をしていただきたいと考えるのですが、当局の見解をお伺いさせていただきます。
  97. 近藤純五郎

    近藤政府参考人 診療報酬関係でございますけれども診療報酬上、リハビリテーションにつきましては、総合リハビリテーションを初めといたしまして、理学療法でございますとか作業療法、言語療法等に対しまして評価を行ってきておりまして、逐次引き上げ等の評価充実を図っているところでございます。  脳卒中でございますとかあるいは大腿骨頸部骨折等の入院患者につきましては、早期に急性期リハビリテーションを開始いたしまして、引き続いて機能の回復を目的とした回復期のリハビリテーションを集中的に行いたい、こういうことで、先生指摘のように寝たきり老人とかの要介護者を減らす、こういう目的を持ちまして、現在、中医協で御議論いただいているわけでございますけれども、回復期のリハビリテーションにつきまして病棟の入院料みたいなものを設けたらどうか、こういうことで最終的な詰めを行っているところでございまして、その結果を踏まえまして対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  98. 松本純

    松本(純)分科員 次に、療養型病床群への転換促進について医療観点からお尋ねをします。  高齢化が進む中で、介護保険制度平成十二年度から開始されますが、医療サービスを提供する療養型病床群が都市部で不足しています。これは、療養型病床群とするためには、患者一人当たりの病室面積が、一般病院でそれまでの四・三平方メートルに比べ六・四平方メートル、また廊下幅も、それまでの一・二メートルに比べ一・八メートルと広く、かつ機能訓練室や食堂なども配置しなければならないことになっています。しかし、大都市圏では土地が高く、建物を建設するコストは非常に高額となっており、また一方で、収入は全国ほぼ一律となっていて、病床が不足することが確実な状況であると思われます。  そこで、一般病床から療養型病床群への転換を促進するための補助制度をさらに充実強化し、療養型病床群への転換促進を検討していただきたいと思うのです。なお、新規の建設は、医療法により病床過剰地域においては病床規制があるためにほとんど不可能な状態であるということを踏まえて、お答えをいただきたいと存じます。
  99. 伊藤雅治

    伊藤政府参考人 療養型病床群の整備につきましては、我が国は、全体としては病床が過剰であるという前提を踏まえまして、さらに、都道府県におきまして医療計画上の規制を行っていることを前提といたしまして、平成五年度より医療施設の近代化整備事業の中で、介護保険制度の実施に向けまして療養型病床群の転換整備を図る観点から、平成九年度より療養型病床群の転換整備事業を補助対象に追加したところでございます。  さらに、平成九年の医療法の改正によりまして診療所の療養型病床群が制度化されたわけでございまして、平成十年四月からは病院のみならず診療所におきましても療養型病床群の設置を可能としたところであり、診療所が療養型病床群を設置する場合もこの補助対象としたところでございます。  さらに、平成十年度の補正予算におきましては、療養型病床群の転換整備に係る面積要件の緩和を行ったわけでございまして、これは病棟一床当たり十八平米という要件をここで緩和したわけでございます。  今後とも、これらの補助制度を活用いたしまして、都市部、地域のそれぞれの整備状況を見ながら、不足地域におきましては、この制度を利用いたしまして転換整備の促進を図っていくべく都道府県を指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  100. 松本純

    松本(純)分科員 次に、国立病院の統廃合についてお尋ねします。  国立病院が統廃合を行う場合、廃止する病院については、国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法律で資産の減額譲渡を行うなど促進を図っています。  地方都市では、購入価格も低く、耐震補強工事や介護施設への転換工事についてもその分対応が可能となっていますが、大都市圏では地価が高く、仮に五割引きになっても相当の金額となり、引き受ける側にとっては財政負担が大きくなってまいります。  促進するためにも、この法律のほかに、新たに大都市圏に対する補助制度の創設をしていただく必要があるのではないでしょうか。それは、例えば耐震補強や大都市圏で不足している療養型病床群等の介護施設に転換するための補助制度や、あるいは受け入れやすい状況になるような施策の充実考えていただきたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  101. 河村博江

    ○河村政府参考人 国立病院等の再編成に伴う特別措置法では、国立病院・療養所を移譲する際に、職員の引き継ぎ割合に応じて、資産を譲渡価格の一定割合で減額した形で譲渡をいたしておるところでございまして、これによりまして、地価が高い都市部におきましては多額の減額がなされるわけでございますし、地価が低い地域においては低額の減額が行われるという実態がまずございます。  それから、移譲後においても医療を行うのに支障を来さないように、譲渡前に施設整備予算の範囲内で必要最小限の改築あるいは修繕を実施いたしますとともに、譲渡後におきましても同様の補助制度があるわけでございまして、これらを療養型病床群への転換に活用されているケースも、これまで聞いている限りでは十六ケースほどございます。  ただ、本格的には、建てかえ整備でございますとかあるいは対震補強など、そういう意味での機能強化を図るということは、国立病院・療養所の機能を引き継ぐという移譲の趣旨に合わないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  102. 松本純

    松本(純)分科員 次に、インフルエンザ予防接種についてお尋ねをします。  昨年の今ごろ、全国の老人ホームなどでインフルエンザにより高齢者の方が多数亡くなられ、問題となりました。今シーズンは厚生省でも早い時期に対策を呼びかけられたようですが、昨シーズンに引き続き今シーズンも予防対策の中心となるワクチンが全国的に不足したことが大きく報道されておりました。  私の地元横浜市でも、昨年二月に、市内の老人病院で高齢者の方がインフルエンザにより亡くなられました。このような事態を受けて、市内の病院では、市の呼びかけに応じて、院内感染を防ぐために、老人病院などを中心にインフルエンザの予防接種が広く行われました。このほかに、希望される方には医療機関の外来で予防接種が行われましたが、今シーズンのワクチンの生産本数では十分に対応することができずに、横浜市でも、病院や診療所を初め市の衛生局や保健所などに問い合わせが殺到するとともに、予防接種を希望しても接種できなかった方が多数いらしたと聞いております。  厚生省では、現在、予防接種法の改正検討されており、その改正の中で、高齢者に対して法律に基づき公費でインフルエンザワクチンの接種を行うようにするとのことですが、そうした場合、今まで以上に接種を希望される方がふえると考えられます。  今シーズンは三百四十五万本と、昨シーズンの百五十三万本に比べ大幅な増産を行ったものの、乳幼児児童を中心に不足が発生したと聞いております。来シーズンは、高齢者はもちろんのこと、乳幼児児童についても希望者には接種できるようにワクチンの確保を検討すべきだと考えますが、その対応をどのように考えていらっしゃるのか、お尋ねします。
  103. 丸田和夫

    ○丸田政府参考人 先生指摘のように、高齢者のインフルエンザに伴います死亡や重症化が増加いたしまして、接種希望者の増加が見込まれたため、今シーズンは昨年の二倍以上の三百四十五万本のワクチンが製造されたところであります。しかしながら、予想を上回る需要の急増が見られましたため、厚生省といたしましては、医療機関あるいは卸売業者、都道府県などにワクチンの有効利用、活用が図られますようにいろいろな依頼をしてきたところでありますが、現に十分なワクチンが確保されていないという面があったところでございます。  ワクチンにつきましては、御承知のように、製造から供給に至るまで四、五カ月かかりますことから、その需要を製造前の段階に適切に見込むというのはなかなか難しい面もございますが、来シーズン以降は、予防接種法の改正方向も踏まえまして、より需要に見合う量のワクチンをできる限り円滑に供給できますように、関係者の方を入れた検討会を設置いたしまして、ワクチン製造業者、卸売業者、医療機関などの関係者の方々とともにその方策について検討を進めてまいりたいと思っております。
  104. 松本純

    松本(純)分科員 次に、高齢者健康づくりについてお尋ねします。  とかく暗いイメージで語られがちな高齢社会ですが、それを打破して明るく活力ある高齢社会とするためには、高齢者自身が元気で社会を支える一員として活躍できるような施策を積極的に展開することが必要であると考えます。  与党三党の申し入れを受けて、昨年末に丹羽大臣のリーダーシップのもとで策定されたゴールドプラン21においても元気高齢者づくりの観点が強く打ち出されているものと評価していますが、このゴールドプラン21が、二十一世紀初頭の高齢者施策の大きな全体的な方向性を示すものとして老人保健事業第四次計画が挙げられるのではないかと思います。  高齢化に伴い老人医療費のさらなる増大も予想される中で、こうした事業を地域において積極的に展開することが、高齢者を健康にし、ひいては老人医療費の伸びも抑えることにもなるのではないでしょうか。医療保険の抜本改革考える際には、かかった医療費をだれがどう負担するかという観点だけでなく、いかにして医療費がかからなくて済むようにするかという観点も大事であり、この老人保健事業第四次計画にもそうした役割が期待されるのではないかと思います。  そこで、老人保健事業第四次計画においては高齢者健康づくりのため具体的にどのような取り組みを行うこととしているのか、お尋ねします。
  105. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 ただいまお話がございましたように、昨年末に策定をされましたゴールドプラン21におきまして、今後の行政施策の基本的な方向の一つが活力ある高齢者像の構築ということだろうというふうに考えまして、それを基本に据えておるわけでございます。  このために、健康づくりあるいは介護予防事業といったものを積極的に推進するということが大事になってくるわけでございますけれども、その柱の一つといたしまして、平成十二年度を初年度といたします老人保健事業の第四次計画というのを策定いたしました。今後これを推進するということにいたしております。  具体的に少し内容について触れますと、がん、脳卒中、心臓病、あるいは糖尿病といった生活習慣病の予防のために、その危険性の大きい方につきまして個別の健康教育というものを導入する、これを実施するといった生活習慣の改善の支援というのが一つございますし、また、要介護状態となることを防止するという観点から、機能訓練事業にも積極的に取り組むことといたしております。  さらには、疾病に罹患をするあるいは要介護状態になる危険性なり、あるいはサービスの必要性を把握し評価するといった健康度評価といったものも実施する予定でございます。  こうした老人保健事業第四次計画の推進に当たりましては、現在検討中の健康日本21計画との整合性なども視野に入れ、また、さまざまな自治体の協力も得るということで健康保険組合などの実施する保健事業との連携というのも図りながら、全般的に、総合的に施策を進めてまいりたいと考えております。
  106. 松本純

    松本(純)分科員 次に、高齢者医療制度改革についてお尋ねします。  安心感を持って国民が生活し、仮に病気になっても不安にさいなまれないようにするためには、現在の国民保険体制を維持することが必須であります。その一方で、少子高齢化が進化する中で、医療費国民がどのように支え合うかは、我が国における二十一世紀の社会保障のあり方を考える上で避けて通れない問題であります。  丹羽大臣におかれましても、このままでは我が国の国民保険制度は座して死を待つのみとでもいうべき危機感を共有されており、これまで、また、これからも医療保険改革に取り組んでいかれるものと確信いたしております。特に、引き続き増大が見込まれる老人医療費をどのように負担するかは、高齢化のスピードを考えると焦眉の課題であり、丹羽大臣の強力なリーダーシップが期待されております。  ここで、高齢者医療制度改革に向けての丹羽大臣の御決意を伺いたいと存じます。
  107. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 今、国民医療は我が国でざっと三十兆円でございますが、そのうち三分の一、十一兆円を高齢者の皆さん方が占めておる、こういうことでございまして、制度全般の見直しというものが指摘されておるわけでございます。これにつきましては、これまでさまざまな意見がございまして、まだ意見の集約に至っておらないことがまず第一点でございます。  それから、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、この四月から介護保険制度がスタートする。片っ方で介護保険、片っ方で高齢者医療保険制度だということは、現場の混乱などを考えますと現実的になかなか難しいのではないか。そういうこともございまして、いずれにいたしましても、省内に検討チームを設けて、平成十四年を目途にいたしまして精力的に検討を進めていきたいと思っております。  なお、今回の平成十二年度の予算で、これは健保法改正の中でお願いをすることになりますけれども、懸案の高齢者の定率負担を、上限つきでございますけれども導入することができたわけでございます。これは、いわゆる高齢者医療改革に向けての環境整備の第一歩とお考えいただければ幸いだと思っております。
  108. 松本純

    松本(純)分科員 高齢者の一部負担についてお尋ねをします。  今回の見直しにおいて、老人保健制度のスタートした昭和五十八年二月以来続いてきた定額負担制から十七年を経て定率一割負担が導入されることとなるわけであり、お年寄りの患者の方々にとっては大きく仕組みが変わることに違いなく、お年寄りに納得して負担をしていただくためには、どうしてこのような見直しを行うのか十分に納得してもらう必要があると思いますが、改めてこの見直しの趣旨をお尋ねします。
  109. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 御案内のとおりでございますけれども、現在の高齢者に関する一部負担につきましては、いわゆる定額負担に別途薬剤に関しても定額の負担をお願いしているところでございますけれども、これまで関係審議会あるいは各方面から、例えば、率でございませんので、若年者に比べますとコスト意識という面でどうだろうか、あるいは薬剤一部負担につきましては、制度的にもあるいは事務的にもいささか複雑ではないかといったようなさまざまな御指摘がございました。  このため、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、今回、高齢者医療制度の見直しのための環境整備の第一歩ということで、薬剤一部負担を廃止いたしまして、あわせて定率負担を導入することとしたわけでございます。これも大臣から申し上げたことでございますけれども、導入に当たりましては、高齢者に過度の負担にならないように定額の月額上限というものを設けるというような措置を講じようと考えているところでございます。
  110. 松本純

    松本(純)分科員 次に、高齢者の実効負担率についてお尋ねします。  今回の定率一割負担制の導入に際しては、高齢者に過度な負担がかからないよう上限を設けるとのことではありますが、お年寄りの間には、定率負担の導入ということで急激に負担がふえるのではないかという不安もあると思います。この見直しの後の高齢者の実効負担率がどのようになると見積もられていらっしゃるのかをお尋ねしたいと思います。  また、引き続きもう一点、周知徹底、広報についてもお尋ねをさせていただきたいと思います。  法案審議もまだ始まっていない段階ではありますが、これまで伺ったような今回の見直しの趣旨や内容について、施行までにお年寄りへの広報を怠りなく行うべきと考えますが、その御所見もあわせてお答えをいただきたいと思います。
  111. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 今回の見直し案におきましては、高齢者方々に多大な負担を生じないようにということでございますが、確かに仕組みが変わるものでございますから、そういう意味での不安が生じないように私どもも十分注意をしてまいります。  まず第一点目の御質問の実効負担率でございますが、現在の制度、すなわち、定額負担プラス別途の薬剤負担を合わせまして、私どもの試算では、実効負担率が七・七%程度と見積もっております。今回の改正案によりますと、〇・二%程度の上昇はございますけれども、七・九%ということでございますので、現行制度と大きな変化はないものというふうに考えております。  また二点目の御質問でございますが、高齢者方々に対する周知徹底、PR、これは不安を生じないようにという点でも大変大事なことだと思っております。実施までの間には、関係団体などとも十分に相談をいたしまして、また行政的にもさまざまな工夫をいたしまして、改正の趣旨あるいは具体的内容などにつきまして御理解をいただきますように最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  112. 松本純

    松本(純)分科員 ありがとうございました。  質問の時間が終了いたしましたが、今回の改正法を医療改革の第一歩と位置づけるとしても、なお残された課題も多く、かつ、重いと存じます。内閣を支える与党議員の一人として私も努力を惜しみませんが、丹羽大臣が機関車となって強力に議論を引っ張られ、二十一世紀においても国民が安心して頼れる医療保険制度の構築へと導かれますように、政治的手腕と実力に御期待を申し上げ、質問を終わります。ありがとうございました。
  113. 自見庄三郎

    ○自見主査 これにて松本純君の質疑は終了いたしました。  次に、桧田仁君。
  114. 桧田仁

    桧田分科員 自由民主党の桧田仁でございます。  本日は、丹羽厚生大臣に、骨と関節の十年並びに国立大竹病院の統合についての二点に絞って御質問したいと思います。  国会法では、私たちはお互いに書類を見ずにやりたい、こういうことがございます。大臣は本当に私がとても尊敬する、医療は隅から隅まで数字もみんな御存じですし、どんなこともお答えになりますから、何とかきょうは大臣としてのお気持ちと同時に政治家としての大臣のお気持ち、お考えを聞かせていただきたい。  それは、何も細かい数字を聞くとかそういう意味じゃありません。私どもが政治をやっております中で、医療福祉の問題はともすれば制度や法律が非常に複雑多岐です。数字も非常にばらばらしています。細かい数字は恐らく省庁のお方でもわからないかと思います。いつの間にか、その制度と数字とシステム、ちょっと言いにくいのですが、法律や政省令でどんどん変わるものですから、聞いている国民は結局わからないままになっている。  ですから、せめて短い質問時間、私、きょうは資料は用意いたしておりますが、見ずにどれだけできるかやってみたいのです。大臣も、何とか大臣のお気持ちで、あるいは大臣の今までの御経験で可能な限りお答えいただけぬだろうか、こういう気持ちでございます。これ以上無理を言ってもいけませんから、ここからは大臣の御判断でございます。  といいますのは、私は、聞いている者が一つ一つ見なくてもわかる質問をさせていただきたいし、大臣の答弁もわかる答弁でお願いしたいと思うのです。そうしませんと、聞いている者は、数字や制度がばらばらしてよくわからぬ。私は、わからなければ、しつこいようですが何度も質問しながらでも、やはりこの問題は国民にとってわかる議論をさせていただきたい。本会議でもそういうふうに言われています、あるいは委員会でも言われています。ぜひひとつこの点は重ねて大臣にお願いしたい。これはお願いでございますから、大臣のお気持ちで御答弁いただければ結構でございます。全く数字や物を見てはいかぬというような失礼なことはよう言いませんが、私は、自分の頭の中で考え自分の頭の中でできることの質問をさせていただかないと、結果的には聞いている者は何もわからぬようになる気がして、重ねて、前置きが長くて失礼でございますが、お願いします。  まず第一に、骨と関節の十年のことでございます。  大臣御存じのように、私は整形外科医でもございます。私、小学校一年のときに発病いたして、この疾患、ことしでちょうど五十年の闘病生活でもございます。政治家ですから、立っていることがつらいということは最大のハンディでございます。  自分は患者として五十年、はっきり言いますと、前半の二十年は医療費との闘いでございました。保険ができていない時期でございますから、とにかく親兄弟は私の医療費のために苦しんでまいりました。当然、整形科疾患といえども敗血症を併発し、またどんどんうみの出る病気でございますから、抗生物質のない時代には、あるいは特別高い時代には、とにかく医療費との闘いでした。お医者さんが、いい薬があるよ、でも、高いよと当時おっしゃっておられました。  私にとっては、この医療費の問題は私の終生の課題でもございます。ましてや患者さんや御家族のお気持ちを思うと、何とか患者さんの医療費を少ないものでいいようにやってあげたい。それから、日本の医療は世界の第一といいましても、大臣のお立場では難しいかもしれませんが、まだまだ医療のシステム、制度には課題があると思います。そんな中で、全部言っても切りがありませんから、まず骨と関節のことだけでも、一生懸命私なりに考えたことをきょうこの分科会で述べてみたいと思います。  実は先進国で骨と関節疾患というのは、六十五歳以上の高齢者では約半分の疾患になっております。先般もちょっと申し上げましたように、国会議員といえども、実は私は国会議員になって三年六カ月でございますが、国会で松葉づえをついたり、ギブスを巻いたり、あるいはお休みになったり、一部車いすになったり、元総理もそのような御病気と聞いておりますが、整形科疾患、関節疾患というのは、私たちはついつい命に関係がないと思いますけれども、大変大事な疾患でございます。その上、骨粗鬆症は、この十年間に骨折の原因として二倍もふえております。それだけじゃありません。生きておればいいといいましても、寝たきりになったり骨が折れたり、自分たちがギブスを巻いたり松葉づえをついたらだれでもわかりますけれども、本人の尊厳、自立は大変なことでございます。  お年をとったから寝ていればいい、命にかかわる病気でないから寝たきりでいい、そういう考え方もあるかもしれません。でも、骨と関節というものは、命も大事ですけれども、個人の尊厳と自立のために絶対大事な疾患と私は考えています。大臣も恐らく御理解いただける話だと思います。  そこで、私ども整形外科医は、スウェーデンのすばらしい整形科のチームが——去年までの十年は脳の十年でございました、ゲノムを含めて。確かに脳疾患はすばらしい医学の進歩で克服してまいりました。しかしながら、その脳疾患の次に、この二〇〇〇年から二〇一〇年までを骨と関節の十年として世界全体のキャンペーンをして、命にかかわる病気ばかりではないけれども、個人の尊厳が高齢者に大事だということでやらせていただくことになりました。  ことしの一月十三日には、御存じのように、WHO、赤十字国際委員会、さらには多くの関係者三百団体もジュネーブに集まりまして、これからの十年は骨と関節の十年だから、ぜひみんなで頑張ろうということで発会式がございました。日本でも、日本整形外科学会、日本臨床整形外科医会、勤務医部会、おのおの世界的なキャンペーンを、日本として世界に冠たる日本の医療を示すためにもやろうということになりました。  去る二月八日には、桧田がつきまして小渕総理にお会いさせていただきました。とにかく、頭の病気、命にかかわる病気も大事だけれども、骨と関節の病気もとても大事なので、ぜひよろしくお願いしますと、日本整形外科学会の黒川理事長、日本臨床整形外科医会の安部理事長、さらには勤務医部会その他おつきいただいて、お話をさせていただきました。総理は大変御関心を持っていただいて、うん、桧田君、これはとても大事なことだ、ぜひやろう、厚生省ともよく相談して、みんなでこの運動を頑張ろうと、大変ありがたいお言葉をいただきました。  勇気百倍、先般の厚生委員会でも大野政務次官に質問させていただきました。きょうは大臣がおられますので、骨と関節の十年に関することを、ぜひ国民運動として頑張りたいという桧田の気持ちでございます。これから二、三御意見を聞かせていただきたいと思いますが、大臣のお気持ちで結構でございます、大臣としてはどう考えるということをぜひお聞かせいただきたいと思います。  まずその第一は、やはり骨と関節の十年の運動について、何かお考え、御感想がありましたらお聞かせください。
  115. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 骨と関節の疾患に長い間大変御研究また御尽力を賜っております桧田委員に対しまして、心から敬意を表する次第でございます。  実は、骨粗鬆症でございますか、私の身内にもおりまして、もう亡くなりましたけれども、大変つらい病気でございます。見た目にはわからないけれども、実際問題、私もそばでその介護をお手伝いさせていただいて、大変大きな問題であるなと。そういう中で、要するに骨粗鬆症を検査できるようなものを保健所に入れるとか、さまざまなことを行ってきておるような次第であります。  これまでの十年間は脳の十年、これからは骨と関節の十年間だというお考え方は一つ先生の識見である、このように評価いたします。
  116. 桧田仁

    桧田分科員 そこで、例えばこのたびいよいよ始まります介護保険におきましても、どうも国民は寝たきりというと頭の病気か大病気と思いますけれども、骨折とか関節、骨の病気のために寝たきりになるのが、本当に詳細な統計はまだできておりませんが、約三割を占めると言われております。私は、介護保険の費用を少なくするためにも、骨と関節の疾患をしっかり予防し、研究し、治療し、そして対応し、ここに医療費をかけていくことは、介護保険とか医療費を節減することに十分なると思います。  そこで、私は、まず最初には、骨と関節の病気がどんな実態なのかひとつ調べてみてはどうかと思うんですが、大臣、いかがでございましょう。
  117. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 突然の質問でございますが、調べてみろということか、もう既に現に調べてあるのか、私は具体的な数字は持っておりませんので、お許しいただければ政府参考人の方からお答えさせます。
  118. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 とりあえず、私どもが現在のデータで持っております状況だけ御報告させていただきます。  先生案内の患者調査でございますが、最直近が平成八年ということになりますので若干古うございますけれども、入院については高齢者人口十万人当たり二百三十四人、外来につきましては十万人当たり二千九百九十八人という数字でございます。  ちなみに、医療費ということでございますれば、これも別の調査になりますけれども、一定の前提を置いた推計でございますが、約八千億円程度で、高齢者医療費のうち約一割弱ぐらいの感じかな、こういうのが私ども今承知をしておる計数でございます。
  119. 桧田仁

    桧田分科員 今局長のお答えになったことでいいんですが、実はその統計というのは、あくまで疾患としての、レセプトとかそういう統計でございます。そこで波及する寝たきりだとか、あるいは療養型病床群、老人病院に入っている者は、表向きは当然高齢者でございますから、骨が折れても内科疾患があるとかその他の併発病気のために統計が交錯してわからなくなっています。やはり真剣にこの問題は検討すべきだと私は考えておりますが、ぜひお願いします。  例えば、具体的にどうかというと、大腿骨頸部骨折というのは骨と関節の病気の一番代表のもので、これで寝たきりになります。ちょっと例が悪うございますけれども、この大腿骨頸部骨折は、私ども、患者さんが来られますと、患者さんには治りますよ、頑張りましょうと言いますけれども、御家族は別の部屋に呼んで、何々さん、大腿骨頸部骨折ぐらいと思われるかもしれませんが、残念ながらこの骨折をしますと統計上十人に一人は約二、三年で亡くなられます、もう少し詳しく言うと、半年後まで生きられぬ方があります、ただ親やおばあちゃん、おじいちゃんの骨が折れただけと思いましょうが、命にかかわる病気です、ぜひよく見てあげてください、よくよく見舞いに来たり、おじいちゃん、おばあちゃんの好きなことをしてあげてくださいねと必ず整形外科医はお話しします。  一方、寝たきりになる確率は、さっき言ったように三割でございます。寝たきりの三割も骨・関節疾患でございますが、同じ数字で恐縮ですが、大腿骨頸部骨折になって元気に歩いて帰られる方は、申しわけございませんが三割しかございません。そんなの医学がつまらぬじゃないか、整形医学がつまらぬじゃないかとおっしゃるかもしれないけれども、やってもやってももろい骨粗鬆症、やってもやってもうまくいかない方、それから、三カ月余りリハビリをしているうちにどんどん合併症を併発したりする方もたくさんございます。  私どもは、大腿骨頸部骨折だけはキャンペーンをし、徹底的に調査をする、このことだけでも介護保険に大きな影響がある、また医療費の節減にもなると。新しい研究も、人工骨頭、人工股関節、いろいろやっていますけれども大臣御存じのように、まだまだ医療費の中で、人工骨頭置換術なんというのは点数は二十二万円ですが、骨頭とか器械だけで百万もかかるという、技術と物が逆転しておる状況でございます。そういうことも含めて真剣に検討しませんと、予防だけではありません、大事な治療ということをもっと真剣に考えませんと、これからの医療費は、いつの間にか医療費を後にわあっと寝たきりで膨らませていく、入院医療費で膨らませていくことになります。  この点も、特に大腿骨頸部骨折に関しては特別に調査をしていただく方が、今後の医療費縮減にも、また寝たきりをつくり出さないためにも大きな効果があると私は見ておりますので、ぜひこれは要望でお願いしておきます。  その次へ行きます。やはり骨と関節の十年に関しては、私は、総理も頑張ろうということでございますから国民的キャンペーンをしたいと思うんですが、丹羽大臣、いかがでございましょうか。
  120. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 大変結構な試みの一つではないか、このように考えています。
  121. 桧田仁

    桧田分科員 したがって、このためには、やはりそれに見合う厚生省の予算、このたびの平成十二年度の予算の中にはこの骨と関節、高齢者の問題について大変ありがたい御配慮をいただいておりますが、その具体的なものはどのようになっていますか。ただ予算額というのではなくて、その予算の中でどんなことをしようとしているか。あるいは文部省とかその他の省庁とも関係して、大学病院なんかは文部省で研究費を出しますので、それもわかれば、局長でも結構ですから、この研究費がどうなっているか教えてください。
  122. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 御案内の、さまざまな疾病に対する治療などの私どもの主要な経費は厚生科学研究費ということでございます。大きな枠の中で、その年々の重要課題について配分をしていく手法をとるわけでございますが、平成十二年度からは骨・関節をその中の重要な柱と新たに位置づけまして、重点的な配分ができるように、執行は今後の問題でございますけれども、こういう取り組みをしておるところでございます。  また、他省庁との関連でございますが、現在他省庁でどのような経費を計上しているか、手元にはございませんけれども、当然、連携を密にいたしますし、必要なデータは今後も交換をしたり、あるいは情報交換などにも努めてまいりたいと考えております。
  123. 桧田仁

    桧田分科員 骨と関節の十年、恐らくこの部屋におられる方も、そう何人も御関心がなかったかもしれません。しかし、私たちは、実はここにいる者はみんな、一生に一度も腰が痛くならぬ、ひざが痛くならぬ、あるいは骨と関節の疾患に遭わない方は残念ながらほとんどございません。全員我が事として骨と関節の疾患になります。それはなぜかというと、私たちはもともと四つ足動物でいたものが、頭を維持し手を使うために立って歩き、火を使い、手で操作するという人類の大きな進化のために、もともと四つ足なら無理が来なかった脊椎や手足、関節に無理が来た。人間の知恵と英知の宿命でもございます。  何としてでも、人間の英知のためにも、今度は逆にこれを頑張っていくことこそ私は大事なことだと思いますので、大臣初め関係局長、骨と関節の十年をぜひ頑張っていただきたい、このように要望して、この項は終えます。  次へ行きます。  次に、国立大竹病院の統合についてお伺いします。  まず先に、少しいろいろ考え方を述べてみたいと思います。  国立病院は、非常に大事な地域医療を特に戦後やってまいりました。特に結核疾患に関しましては、国立病院や療養所なくしては、もう一回ぶり返しておりますけれども、結核疾患のここまでの撲滅はなかったと思います。  そのような大きな使命を負いましても、当然、結核疾患の変化やその他医療システムの変化で大きく機能が変わり、またその中で特に療養所は、御承知のようにサナトリウムということで、小説を見ても、いつも山の中、海のそば、そういうようなことでございます。あるいは特殊疾患は、疾患によっては当然都市部から離れています。しかしながら、医療で都市部から離れるときに、まず外来治療がほとんどない、あるいは入院といいましてもほとんど長く入院になる。あるいはまた、疾患によってはどうしても難病あるいはいろいろなことで、医療費、採算ということを考えますと、本来採算ベースに乗らそうというのが無理なのは当然でございます。しかしながら、私どもは、国は国なりに国としての大事な医療の使命がございます。  一つは不採算医療だと思います。一つは難病とか特殊な医療、つまり、民間医療ではとてもできないから国立病院でやろう、あるいはそこをセンターにして、そのセンター機能でその患者さんを日本じゅうから集めて研究したり治療したり、あるいは専門家の医師やスタッフを擁してやるという大事な機能がございます。もちろんこれも大事なことです。  しかし、一方、今までの戦後の医療は、地域の住民にとりましても、例えば山の奥の療養所にしましても、その周辺の者にとりましては、たった一つの大事な医療機関でございます。それどころか、ある意味ではそこの先生が、ちょっと言いにくいのですけれども、何代も自分の親や兄弟をみとってもらった大事な主治医でもございますし、また地域のかかりつけ医でもございます。  何だ、それなら開業医がやれ、ちょっと町まで三十分で行けるんだから町に行けとおっしゃいますけれども、国立病院というものに対する信頼というのは、皆さんの御想像以上だと思います。  それはなぜか。三つあると思います。一つは、何といっても医療に対して国が応援しているという、お金、人、システムでございます。二番目に大事なことは、少々苦しい状況であっても患者を見捨てられないということでございます。  やはり医療の中にはどうしても採算ということを考えますから、ついつい、患者が少ないとか、例えば小児科などは患者が少ないし点数が低いものですから、どんどん小児科医がなくなっていく、救急医療ができなくなってくる。そういうときでも、国立病院の小児科は、たった二人、三人で毎日のように夜勤交代をして、小児科医はやっております。  そのような地域と密接になった国立病院でございますから、このたびの統廃合、特に国が真に担うべき医療をやるということはわかります。しかしながら、大臣、私たちは、医療の中におりますときに、日本の医療というのは、国立病院も公立病院も開業医も、町の病院も田舎の病院も、すべてが整って頑張ればこそ、世界一の長寿の国、世界一のすばらしい乳児死亡率の低下、あるいは世界に冠たる医療の制度だと私は思います。どのシステム、制度にとっても、みんなでお互いに特徴を補完し合いながらやっている。  したがって、国立病院の統廃合は、国の大きな行革の一環の中でそれなりに理解はいたしておりますけれども、少なくともその地域の住民が納得する形での移譲、統合をしていただかないと、私たち国民にとっては、ちょっと言いにくいのですが、本当に国に税金を払っていいのか、保険料を払っていいのか、もっと言えば私たち国会議員を選んでいいのか、疑念を抱くところでございます。  御承知のように、私、ちょっと口が過ぎるかもしれませんが、国立大竹病院の整形外科医長を四年半ほどさせていただきました。たった一人の国立病院OBの国会議員でございます。それだから、国立病院を大事にせいとむちゃを言おうとは思いませんが、私は自分の仕事場でございました。仲間と一緒に、ボイラーマンの方々検査技師さんもレントゲン技師さんも、夜昼なく、朝から晩まで、大竹地域あるいは周辺地域医療をやりました。遠くは九州、大阪、東京からも患者さんが来られました。それは、国立大竹病院だから大竹だけというものじゃありません。その医師医療施設への信頼。しかも、今でこそデイケアといいますと古いぐらいの言葉になっておりますが、私が就任したときにはデイケア病棟を、日本でわずか三カ所の病院を、国立大竹病院につくっていただきました。  そのような由緒と歴史ある病院が、このたび隣の原療養所と統合になります。これはそれなりに大事な一つの一環で、理解はいたしております。それをお迎えするのに、大竹市は土地も出し、原病院の療養学校もお受けし、教育環境もつくり、そしていろいろなことをやってまいりました。  そこで、大事なことを大臣にどうしてもお伺いしなければいけません。  きょう現在、国立大竹病院はどんなような状況なのか。例えば許可ベッドは幾らで、患者数は幾らで、収支状況はどうなのか、あるいはまた、どんな疾患を一生懸命頑張っているのか、あるいは救急医療をどうしているのか、その実態をどのように大臣理解しておられましょうか。
  124. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 理解と申し上げますよりも、私どもが国立大竹病院の現状について把握していることでよろしゅうございますでしょうか。  病床数は、一般二百床で運営がなされております。がんを中心にして、成育医療、循環器病、免疫異常などを担っておるわけでございます。  平成十年度の患者数は、入院におきまして一日平均で百七十九・七人、外来につきましては四百三十三・六人となっておりまして、収支につきましては、平成十年度が一〇八・三%となっているというふうに報告を受けております。
  125. 桧田仁

    桧田分科員 今聞いておわかりのように、国立大竹病院というのは一〇八%、すなわち、収入が二十六億円で支出が二十億円、経営は決して悪くない。それはなぜかというと、入院患者も満床、救急も一生懸命やっている、さっき言った機能も一生懸命やっている、外来も十分頑張っている、そういういい形ですから、私は、とても地域の信頼を受けている国立大竹病院にこの機能を十分残した上で原病院をお迎えすべきと思いますが、いかがでしょうか。
  126. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 桧田委員もこの国立病院・療養所のあり方については、党の方の医療基本問題調査会あるいは社会部会で十分に御議論をしたところでありまして、十分に御承知をいただいていると思いますけれども、これからの国立病院・療養所の果たすべき役割といたしましては、地域における医療供給体制の中で、基本的、一般的医療の提供は私的医療機関及び地域における公的機関にゆだねて、そして国立病院・療養所はいわゆる政策医療を行うということに特化していくべきではないか、これがこれからの医療のあり方ではないか、こういうような基本的な方針のもとに大竹病院と原病院の統合というものが今進められておると承知をいたしております。
  127. 桧田仁

    桧田分科員 医療というのは、まずは地域の皆さん方と一生懸命一緒になって育てていくものです。医者とか国とかそういうものじゃありません。地域の住民の方が、これだけ長く、うまく、しかもその大竹病院は経営も問題ないのです、患者も山ほどいる、救急も一生懸命やっている、一般医療も一生懸命やっている。この病院の機能は十分残しながら政策医療をやるべきと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  128. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 国立病院あるいは療養所の再編成の問題というのは、率直に申し上げて、総論は大方皆さん方賛成でありますが、それぞれの地元に戻りますと、地元の住民の方々から強い要望がございまして、なかなかこれまで遅々として進まないのが現実であります。  そういう問題を私も幾つか経験をさせていただいておるわけでございますが、この大竹病院と療養所原病院でございますけれども、がん、神経・筋疾患、重症心身障害の専門医療施設として統合した上で整備をしたい、こういう考え方に立つものでございます。  それから、現在の国立大竹病院の医療機能は、がんを中心にして成育医療、循環器病あるいは免疫異常などを実施いたしておりまして、統合後におきましてもこれらの医療機能を維持する必要があると認識しておりますが、統合後の新病院の具体的な病床規模、診療科目につきましては、まだ検討中でございます。  いずれにいたしましても、先ほど先生から御指摘ございましたように、地元の実情というものを十分にお伺いしながら進めていかなければならないものだろうと考えております。
  129. 桧田仁

    桧田分科員 大臣の一番最後の答弁を私は自分の胸に、国立病院のOBとして、大竹出身の議員として、持って帰らざるを得ません。  いろいろな政策医療は大事です。しかしながら、地域の住民に愛され、地域とともに生きる医療でなかったら、どんな医療もだめになりますので、何とぞよろしく大臣にお願い申し上げまして、質問を終えます。  ありがとうございました。
  130. 自見庄三郎

    ○自見主査 これにて桧田仁君の質疑は終了いたしました。  次に、春名直章君。
  131. 春名直章

    春名分科員 日本共産党の春名直章でございます。  今のお話に続いて、国立病院の統廃合の問題について議論をしてみたいと思います。  昨年の三月に、再編計画の見直しが出ましたね。そこの中で、国立香川小児病院の国立善通寺病院への統合が発表されました。今、この発表を受けまして、地元では大変大きな衝撃と不安が広がっております。  この香川小児病院には、児童生徒数百三十五名という、病弱児童の学習と成長を保障する県立善通寺養護学校が併設をされております。厚生省は、この統合計画を発表する際に、このような養護学校が併設をされていることをそもそも御存じだったのかどうか。これが第一点。  第二点は、ことし一月二十日と二月一日に、二回にわたって、四国医務支局の方々とあわせて現地を御視察されていると思いますが、どのような御感想をお持ちになったのか。この二点、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  132. 河村博江

    ○河村政府参考人 まず第一点でございますが、国立療養所香川小児病院に隣接して香川県立善通寺養護学校が併設されていることは、昨年三月の国立病院・療養所の再編成計画の見直しの時点から承知をいたしておるところでございます。  それから、第二点でございますが、香川小児病院を、現地を見てどうだったのかということでございます。  平成十一年三月、昨年三月に公表した再編成計画の見直しにおきまして、国立善通寺病院と国立療養所香川小児病院を国立善通寺病院の地で統合する、そして、四国ブロックの高度総合医療施設、それから、これもやはり四国全域をカバーします循環器病あるいは成育医療の基幹医療施設として機能強化を図るということを決めたわけでございます。  こうしたことのために、先生指摘のように、ことしの一月二十日に、私自身、今後の統合の進め方の検討を行うために、国立療養所香川小児病院、それから、隣接しております香川県立善通寺養護学校を視察いたしたところでございます。  それで、国立療養所香川小児病院というのは、現在も既に、四国地域を中心に小児科救急など高度の小児専門病院としての実績があるということは、従来から承知をしておるところでございます。また、隣接の香川県立善通寺養護学校におきましても、国立療養所香川小児病院の入院患者である児童、それから在宅児童の教育に熱心に取り組んでいただいている、そういう印象を持っております。
  133. 春名直章

    春名分科員 まさに私も、その印象のとおりです。  ここにパンフレットもあるのですけれども、この香川小児病院が、国立香川療養所から小児の専門病院として出発したのが、一九七五年四月二日なんですね。そのときに、こういう理念だったそうです、大臣。「もう一度幸せをつかんで帰れる子供たちの愛の城をつくろう」、これが理念だそうです。故大平元総理大臣も尽力をされて、この小児病院をおつくりになったとお聞きしています。その成果はすごいものでした、今お話がありましたけれども。  二十四時間の救急受け入れ体制、二十四時間ドクターズカーというのをつくりましたね。最新の医療機器を備えたドクターズカーに医師看護婦さんが乗り込んで、いつでもどこでも迎えに行って、二十四時間の集中治療室に運び込む。一九七五年当時、香川県の乳児死亡率は全国最悪だったそうですが、この小児病院ができることによって大きな成果を上げて、一九七九年には全国最少になったという状況だそうです。  このドクターズカーの出動ですけれども、九八年の一年間だけで百五十三件、善通寺市はもちろんですけれども、香川県下、四国各地から子供の専門病院として親しまれて、頼りにされている、大変かけがえのない病院だということを私も実感してまいりました。  そこで、なぜわざわざ善通寺病院にこれを統合しなければならないのかということが、どうしても私にはわからないわけです。今お話が出ました、成育医療のセンターにして機能を強化するということをおっしゃるわけだが、小児の専門病院だからこそ、その役割を存分に発揮できてきたのじゃないでしょうか。成育医療の拠点として充実させると言うけれども、その保障がどこにあるのでしょうか。そのことが率直な疑問ですので、お答えください。
  134. 河村博江

    ○河村政府参考人 国立病院・療養所につきましては、行政改革の一環といたしまして、一般的な地域医療については民間や地方公共団体等の公私立の医療機関にゆだねまして、国立医療機関にふさわしい、広域を対象とした高度または専門医療を行えるように機能の質的強化を図る、そのために経営移譲あるいは統廃合による再編成を推進するということでございます。  こうした考え方のもとに、昭和六十一年から再編成計画を推進してきたわけでありますが、さらに、平成八年十一月に改定された再編成・合理化の基本指針、あるいは同年十二月に閣議決定された行革プログラムにおいて、六十一年度当初の再編成計画において統廃合または経営移譲の対象となっていない施設についても、その果たすべき役割を適切に遂行するという観点から見直しを行って、統廃合あるいは経営移譲の対象施設の追加を検討するということとされたところでございます。  国立善通寺病院と国立療養所香川小児病院については……(春名分科員「短く言ってください」と呼ぶ)近接して所在しております。二キロという非常に近接したところに国立医療機関が二つ存在するということでございまして、統合によって一層の機能充実が図れると判断いたしておりまして、これを統合して、先ほど先生指摘のように、四国ブロックの高度総合医療施設なり、あるいは成育医療の基幹医療施設として整備をする。そういうことを昨年三月に公表した見直し計画に統廃合計画として位置づけたものでございます。     〔主査退席、山口(俊)主査代理着席〕
  135. 春名直章

    春名分科員 ですから、統合したら必ず機能が強化できるという根拠がどこにあるのかというのを聞いておるのです。簡潔に答えてください。
  136. 河村博江

    ○河村政府参考人 再編成の推進によって生じた施設の定員等を、医療スタッフを中心にいたしまして再配置をする、そういうことを通じまして、存続する国立善通寺病院の機能強化を図りたいというふうに考えておるところでございます。
  137. 春名直章

    春名分科員 総合病院の一小児科になったら大変だという思いがみんな強いわけです。この計画は非常に非現実的だということを議論してみたいのです。  統合するとなりますと、今国立病院部長がおっしゃったけれども、併設されている養護学校を一緒に移設するか、それとも養護学校だけはそのままにして、スクールバスなどで子供たちを通わせるか、その二つに一つしかありませんが、一体どうするつもりですか。
  138. 河村博江

    ○河村政府参考人 医療施設の入院患者であります児童が教育を受ける必要があるということは、当然のことと認識をいたしております。厚生省としては、一義的には入院患者の医療の質の向上に最善を尽くすべきだという立場でございますけれども、入院患者が教育を受けられるような環境が実現できるように、現在、地元自治体関係者と連携をとりながら検討をしておるところでございます。
  139. 春名直章

    春名分科員 今検討中だというお話でしたので、大臣、ぜひちょっと聞いていただきたいと思っておりまして、私も視察に行って非常に感じたことなんですけれども、百メートルのスロープで結ばれているのです、善通寺病院とその養護学校というのが。養護学校には百三十五名の子供たちが通っているのです。そして、ベッドから通っている子もたくさんいるのです。そして点滴を受けながら通っている子もたくさんいるのです。授業を受けながら急に容体が悪くなって、すぐに帰ってまた治療を受ける、そういう行き来をしているのです。百メートルのスロープは命綱だとみんな言っています。  その高等部に通っているAさんという女の子がおりまして、三年生の子の作文、厚生省の皆さんにぜひ届けてくださいということで、きょうここに持ってきたのです。一つだけちょっと聞いてほしいのです。ここでは彼女はこう言っています。   途中で体調が悪くなると、保健センターで休んだり、病院に帰って、処置をする生徒もいます。病院から車椅子で登校したり、点滴をつけて登校する生徒もいます。   急にたおれる人もいます。それでも看護婦さんの協力をえて、大急ぎで病院に帰って治療をします。   病院と学校がもし離れてしまってはすぐに治療ができません。病気なんて時間や都合などに合わせてくれないんです。 こういうふうに書いてあるのです。   それから養護学校にはベッド学習という授業もあります。病棟で学校にいけない生徒のために先生が体調の良い日に病室にまでいって授業をしてくれます。   私は中学校一年の秋に養護学校に来るまでは、地元の小学校、中学校に通っていましたが、養護学校の先生みたいな心づかいをしてくれる先生は少なくて、登下校は送りむかえで、体育の授業も一日も出たことがありませんでした。 ところが、養護学校に来て、小児病院に入院し、そこから通学することになりました。   養護学校にきて六年間が人生のなかで一番成長できて、一番大切な場所の学校と病院になりました。 こういうふうに言われて、最後に、絶対に病院の統合は取りやめてください、切り離すことはできません、よろしくお願いしますと書いてあります。  こういう作文がいっぱいあるのです。そのうちの一つだけ持ってきたのです。切り離すことはできないというのが私の実感ですし、国立病院部長が直接見に行かれているのでどういう御実感かというのはありますけれども、今の子供たちの思いを聞いていただいて、率直に、大臣どうお感じになりますか。
  140. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 今の作文をお聞きいたしておりまして、私なりに大変感ずるところがあるわけでございますけれども、今度の国立病院と療養所の統廃合の中で出てまいっております、今委員指摘の香川小児病院と善通寺病院の統合問題というのは、やはり将来に向かって、二十年先、三十年先に向かって、国立病院あるいは療養所の役割のあり方、そういう観点から進めているのだということをまず御理解いただきたいと思っております。  確かに、現に今そこに通っていらっしゃる児童さんにとっては大変大きな問題でございますので、もし仮に、統合によっても機能強化を図ることを基本といたしておりますし、あるいは入院患者の教育の確保ということは当然のことながら大前提となっておるような次第でございます。  再編成の計画につきましては、どこの地域でもさまざまな問題が起きておるわけでございます。そういう中で、従来から、地元関係者と十分に話し合い、地元自治体、議会、医師会理解を得ながら進めていきたい、このように考えているような次第であります。
  141. 春名直章

    春名分科員 理解を得ながらというのはごく当然だと思うのですけれども、私は一般論を聞いているのじゃなくて、今の実態から、私、少し具体的にお伝えしましたけれども、養護学校とこの小児病院というのは医教一体施設、医療、教育、生活が一体化しているのです。だから具体的に聞いているのです。切り離すことは絶対に私はできないと信じております。そのことを私は、ぜひそういう方向で頑張るということを言っていただきたい。そうすることによって、お医者さんも親御さんも子供たちも安心することができるのですね。そこに一つの大きな心配があるのです。この点、いかがでしょうか。
  142. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 まだ、このことにつきましては現在進行中であるというふうに聞いております。ただ、委員が御指摘のような御懸念というものは、当然のことながら統合の際にはきちんとクリアをして、住民の皆さん方、そしてそこで学ぶ入院患者の皆さん方の十分な御理解を、ああ移ってよかったと言われるような状況でなければならないと思っております。
  143. 春名直章

    春名分科員 ぜひ厚生大臣、ちょっと古い附帯決議で申しわけないのですが、一九八七年九月三日、衆議院社会労働委員会の附帯決議があります。そのときの三項に、「再編成対象施設に併設されている養護学校等については、児童の教育に支障が生じないよう十分配慮する」、このことが決議として決められています。御存じだと思います。その手段というのは、私は厚生大臣も一度ぜひ時間があれば見に行っていただきたいと思っているのですけれども、切り離さないで一体にやっていくということがこの決議を生かす唯一の道だと私は信じております。  それから、その点でもう一点だけ私が危惧していることを聞きます。国立善通寺病院に小児病院と養護学校を移転する、これは物理的にできるのだろうかというのがみんなの疑問です。これは具体的な話になってしまいますので、国立病院部長に聞きますけれども、物理的に本当にできるのですか。その辺はどうお考えですか。
  144. 河村博江

    ○河村政府参考人 養護学校の設置につきましては、厚生省としては、基本的に学校教育法によりまして都道府県が設置をいたすわけでございます。  お尋ねの、国立善通寺病院の敷地の中に今後予定しておる統合新病院の建物以外に養護学校用地を確保することができるのかどうかという点については、なかなか難しいという感じも持っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、統合に伴います養護学校の取り扱いについては、香川県を初めといたしまして地方自治体関係者と連携をとりながら、入院児童の教育に支障を来さないような方法を検討してまいりたいというふうに考えております。
  145. 春名直章

    春名分科員 今、なかなか物理的には難しそうだというお話がありまして、大臣、これもぜひ聞いていただきたいのですけれども、敷地面積、国立善通寺病院は八ヘクタールなんですよ。小児病院は四ヘクタールなんです。善通寺病院の方が八ヘクタール、統合してもらう方が。小児病院が四ヘクタール、養護学校が一・二ヘクタールなんです。国立善通寺病院の周辺には、老人ホームがある、市営住宅がある、民間住宅があって、市役所も用地確保はできないと、こういう状況なわけです。今おっしゃったとおり、なかなか難しいというのは事実です。  その上、善通寺病院内に昨年小児病院にあった看護学校が持ってこられました。去年のことです。校舎が新築されました。駐車場が狭くなって苦情が出ています。それから、行かれて御存じのとおり、養護学校には、校舎だけではなくて体育館、プール、運動場もありまして、この養護学校は見事な施設なんですね、百三十五名の、最大規模の養護学校ですから。もしこれを全部廃棄をして善通寺病院に持っていくというような話が本当にできるのか、みんな、そんなことできるわけがないと言っているのです。その養護学校も、実は五年前に大改修したばかりなんです。だから、もしそれで実行するということになれば、率直な疑問を言っています。善通寺市長さんも、そんなことをやったらそれこそお金のむだ遣いになるんじゃないかいと言っています。  それぞれの地でしっかりと充実させていくということこそ、将来に向かってとさっき厚生大臣はおっしゃったけれども、将来にわたってよくしていく、国立病院の役割を果たしていく、そういうことの方が私は本当に現実的なものだということを実感するわけです。  そういうことも込めて、厚生大臣にはぜひ現地を見ていただきたいということをお願いしたいということと、最後にこの点で一言聞いておきますけれども、二月の十日に香川小児病院と善通寺養護学校を守る会というのができたのです。ここには、病院関係者、学校関係者、PTAの方々、病院の院長さん、大学の教授さん、香川小児科医会長さんなどなど実に広範な方々がそこに参加をして、その将来を憂えておられます。  現在、やめてもらいたい、統合しないで充実してほしいという願いの署名が六万人集まっているそうです。あと一カ月ぐらいしたら十万人にして丹羽厚生大臣に持っていきますというふうに言っておられましたので、そのときはぜひお願いしたいと思うのですが、善通寺の市長さんも、先ほど言いましたように、絶対に養護学校と切り離すことはできないというふうに私どもに語っておられました。周辺の多くの議会での反対決議も上がっているのです。  先ほどの御答弁でもありましたけれども、見切り発車は絶対しない、当然のことだと思うのですけれども、本当に地元の意見を聞いてもらいたい。とりわけ、子供たち意見、親の意見、実際にそこで命を守ってもらっているそういう方々意見にも率直に耳を傾けて、そして話し合いで胸襟を開いてほしい、そのことを私は強く要望しておきたいと思うのですが、厚生大臣、どうでしょうか。
  146. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 この国立病院・療養所の再編成の問題は、総論が賛成の方も各論になるとどちらかというと反対だ、こういう中で、委員は総論も反対のようでございますが、非常に難しい問題でございますが、私どもは、今後の国立病院・療養所のあり方としては、統廃合を進めていって、そして民間の医療機関の圧迫にならないように政策医療に特化していくという基本の中で進めさせていただいておるわけでございますが、なかなか、率直に申し上げて、地元の皆さん方の御理解が得にくい部分があるわけでございます。  いずれにいたしましても、一つ一つ問題をクリアしながら、地元住民の皆さん方と十分に話し合ってこの問題を進めていきたい、このように考えております。
  147. 春名直章

    春名分科員 十分に話し合ってという御答弁をいただいていますので、ぜひそのことを肝に銘じていただいて、お願いしたいと思います。  もう一点、同じく三月の見直し計画の中で、国立南愛媛病院の民間社会福祉法人への移譲、三つのモデルケースの一つということで上がりました。私がこれを聞いてから、繰り返し厚生省方々に、なぜ民間への移譲をするのですかということを聞いてまいりましたけれども、一番の原因、理由は、患者のニーズにもっとこたえられるようになるのだということでありました。  そこで、私はお聞きしておきます。現在、南愛媛病院のどこがニーズにこたえていないのか、具体的に私にわかるように、これは国立病院部長の方がいいと思います、南愛媛病院のどこがニーズにこたえていないのか、具体的に答えてください。
  148. 河村博江

    ○河村政府参考人 現在、国立療養所では、七十九施設八千床で重心、重症心身障害の医療を担っておるわけでございますが、近年におきましては、社会福祉施設におきましても、重症心身障害に関する福祉、生活面の充実に重点を置いた施設の機能強化が図られているところでございます。  このような状況の中で、厚生省といたしましては、重症心身障害の医療を政策医療の一分野という形で位置づけておるわけでございますが、その中でも、やはり今後は、重度化あるいは呼吸管理が必要な者であるとか、あるいは合併症を有する者、医学的管理が高く求められる患者さんに対する医療を担っていくこととしたい、このような観点から、平成十一年三月に、再編成計画の見直しにおきまして、重症心身障害については、将来における患者の望ましい処遇を見据えつつ、社会福祉法人等への経営移譲をモデルとして実施すると位置づけたわけでございます。  今回の重心モデル移譲につきましては、国が行う重心医療についてはより高い医学的管理というふうに考えておりますが、そうではなくて、福祉的ケアの必要が高い患者さんが多くおられる施設につきまして、重心施設の地域的配置状況も勘案した上で、モデル的に社会福祉法人にその経営を移譲するということでございます。
  149. 春名直章

    春名分科員 私の質問に答えてください。今の病院が患者さんのニーズに十分こたえていないとあなた方は私に言っているのです。どこがこたえていないのかと聞いているのです。  しかも、医学的なケアに特化していくのだ、福祉的ケアでいくのだ、それだったら社会福祉法人でもいけるのだというお話なんだが、南愛媛病院の重度心身障害者あるいは障害児方々は、非常に高齢者が多くて、糖尿病や骨粗鬆症などの成人病がふえているという状況です。そのほか、気管切開とか栄養チューブを入れて治療を受けている人も十名いらっしゃるということです。全体として抵抗力が弱くて、いつ急変して医療が必要になるのかわからないという方が毎年毎年ふえている。ほとんどだ。だから福祉的ケアで済むのだということにならないんだということを、私は実態調査で聞いております。  そして、ニーズにこたえていないのかということを私は聞いているので、そのことに答えてほしいのだが、私が調査に行きましたら、南愛媛病院の現地の広見町の町長さんはこう言っていましたよ。南愛媛病院に不満を持っている人は一人もいません、地域、文化まで支えてもらっています。看護婦さんは、地域にもたくさんの病院ができたけれども、お金がないとだめ、付き添いがないとだめ、さまざまな条件がある。ここでは患者さんたちも受け入れて、二十四時間体制の訪問看護もやってきた。地域の人たちに必要とされている病院で、誇りを持っています。実際、二十四時間訪問看護をやられておりました。こういう努力をやられているわけです。  ニーズにこたえていないから、もっとよくしてほしいから変えてほしい、民間社会福祉法人に行ってほしい、そんなことを言っている方は一人もおりませんでした。その根拠を聞いているのです。
  150. 河村博江

    ○河村政府参考人 先ほど来申し上げていますとおり、国立病院・療養所というのは、限られた資源を集約することによりまして、国立医療機関としてふさわしい重心医療が提供できるように機能強化を図りたい。そういう一方で、福祉的ケアを中心とする重心医療については、社会福祉法人等の設立主体にゆだねることによって機能分担を図りたいということでございます。
  151. 春名直章

    春名分科員 結局、機能分担で、自分たちの線で引っ張っているという話なんですけれども、私は、南愛媛病院の充実ということで言うとすれば、重症心身障害の施設について、保育士、指導員、看護助手、看護婦の厚生省基準を調べてみましたけれども、八十床当たりで、保育士は基準三人に対して二人、一人不足しております。指導員は二人に対して一人、一人不足しております。看護助手は基準が十七人、それに対して六人、十一人不足しております。看護婦は基準四十四人に対して三十八人、六人不足しております。  厚生省がみずからお決めになった最低基準を達成していない。それでいて、今は不十分だから民間移譲の方に行った方がニーズにこたえられる、そういうふうに言ってもだれが納得できるでしょう。真っ先に充足をさせて患者の要求にこたえていく、国立病院がそれだけ愛されているのですから、そういう方向に努力をすることこそが厚生省のやるべき仕事じゃないのでしょうか。私はそのことを実感しているわけでありますが、いかがでしょう。
  152. 河村博江

    ○河村政府参考人 厳しい定員事情の中で、私ども増員に努めてきておるところでございますが、法的な基準というのは当然クリアいたしております。医療法の基準でありますとか、あるいは措置費上の基準であるとか、そういったものはクリアしておりますが、厚生省がもう少し高い目標を持ってやっている基準については、まだ九割程度の基準にしか到達していないということも事実でございます。引き続き、定員の増員には努めたいと思っておりますし、特に存続施設につきましては、再編成によって機能強化を図っていきたいというふうに考えております。
  153. 春名直章

    春名分科員 再編成によって機能強化するのではなくて、今もっともっとこたえていこうと思うのだったら、その基準をクリアするために努力をされて、そして住民の、今でも期待して非常に頼られているのだから、それにこたえていくというのが厚生省としてのあるべき姿ではないかと私は実感をするわけです。  最後に、もう時間が来ましたので、一言だけ聞いておきます。  結核病棟を五十なくすという方針で、国立では一県一病院にするということなんですけれども、御存じのとおり、今、南愛媛病院、愛媛の南の方はそこしかないのです。南愛媛病院の五十床しかないのですね。それがもし廃止をされたら一体どうなるのかという不安が大変あるのですね。この点は、一県一つにしてしまってもういいということで既定の路線にしないで、これをもっと実情に合わせて、厚生省も緊急非常事態宣言をお出しになっている、毎年五十人ぐらい南宇和の方の地域で新しく患者さんがふえている、受け入れる施設は一つしかない、それが廃止をされる。えらいことになるのです。これに対する不安もすごくあるのです。この点、もう一度見直していただけないかということを、私は大臣にお聞かせいただきたいと思いますが、どうでしょう。
  154. 山口俊一

    ○山口(俊)主査代理 時間ですので、簡潔に。  厚生大臣
  155. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 私も数々の事例を見ておりますけれども、国立病院ですと、こういうことを申し上げていいか悪いかはわかりませんけれども、制約があるということと、どうしても親方日の丸的な依存体質が残ってしまうということで、国立病院と民間病院を競争させた場合には、はるかに民間病院の方が、すべてではございませんけれども、要するに、より質のよいサービスを手際よくやってくださる、こういう問題が実は指摘されていることも事実であります。  要は、その地域住民にとって、国立病院であろうが民間病院であろうが、より効率的で良質な運営ができるような病院を目指していかなければならない。こういう観点からこの問題についても取り組んでいただければ、地域住民の皆さん方の理解が得られるものと確信いたしております。
  156. 春名直章

    春名分科員 宇和島圏域十二市町村で全部なくなっちゃうのですから、そういう事態になるのだということを知っておいていただきたいということです。  以上で質問を終わりたいと思います。
  157. 山口俊一

    ○山口(俊)主査代理 これにて春名直章君の質疑は終了いたしました。  次に、小林守君。
  158. 小林守

    小林(守)分科員 民主党の小林守でございます。予算委員会分科会でこのような質問の機会を得られましたことに、まず感謝を申し上げたいと思います。  廃棄物リサイクルの問題、循環型社会をつくっていこうというような基本法制定に向けての政府、それぞれの与党の取り組みも連日報道されているところでございますけれども、この循環型社会づくりのための基本的な課題というのは、より現実的な、具体的な問題として考えるならば、廃棄物リサイクルの問題をどうするかということにかかっているのではないか、このように考えるわけであります。  実は、私の出身県であります栃木県の小山市内の産業廃棄物の中間処理業者であるニッソーが、昨年の十二月ごろでしょうか、フィリピンのマニラ港にコンテナが百二十二個放置されているというような問題が生じまして、不法輸出というような形で、大変な外交問題と同時に日本の恥をさらすような状態になってしまったというような、大変不名誉な問題が明らかになったわけであります。  現状では、原状回復というような形で、とりあえずほっておくわけにはいかないからということで、政府の方でこれを、強制送還と言っていいかどうか、取り戻すというか日本に持ち帰って、それぞれの自治体の焼却施設にお願いをして処分をしたというような状況でありますが、その不法輸出を行った当事者であるニッソーの伊東社長の行方がわからぬ、そしてその会社も倒産同然であるというような形で、原状回復のための代執行の費用負担については二億八千万と言われておりますけれども、それがそのままの状態で残っている。国民の税金によって代執行されたというような状況でありますけれども、この辺の状況について、今日どのような対応状況になっているのか、事実経過も含めて、まずお知らせをいただきたいと思います。
  159. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 フィリピンへの廃棄物の違法輸出問題につきましては、事の発端は、昨年の十二月十三日に、バーゼル条約に基づきましてフィリピン政府から我が国の政府に対しまして通報があったところから始まっております。栃木県の産業廃棄物処理業者、先ほど御指摘のあったニッソーでございますが、再生紙の原料用の古紙と称して、使用済み紙おむつや点滴用のチューブがまざった廃棄物を現地に輸出したということでございます。  現地からの要請を受けまして、十二月十九日には、環境、通産、厚生及び外務の四省庁から職員と専門家を派遣いたしまして、現地で物の確認をいたしております。その結果、この物がバーゼル条約の対象としている廃棄物であるというふうな認識を持ちまして、輸出者に対して昨年十二月三十日までに日本への回収に着手するように命じたところでございます。  しかしながら、この回収命令が期限までに実施されなかったために、国によって回収の代執行を行うことといたしまして、十二月三十一日、マニラからこの荷物を積み出しまして、ことしの一月十一日に東京港の大井埠頭に運び込んだところでございます。  また、関係省庁の間で、輸出者に対しましては、これを一月十八日までに適正な処理に着手し二月八日までに処理を完了するようにということで措置命令を発しましたが、これも守られなかったために、国によって代執行をすることといたしまして、一月十九日から、東京都、横浜市、川崎市及び民間の産廃処理業者の処理施設において処理を行いまして、二月六日にこの処理を完了させております。  以上でございます。
  160. 小林守

    小林(守)分科員 ありがとうございました。経過については、そのような状況だろうと思います。  今の経過の御説明の中で、コンテナに詰められて輸出されたその名目が再生用古紙というような、再生原料としての古紙という名目で輸出されたということですね。実際に、この再生用古紙という名目で輸出することについては、どのような規制があるのでしょうか。
  161. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 バーゼル条約では、特定の経路から排出された廃棄物であって、有害な性状を有するものを有害廃棄物等として規制をかけておるわけでございまして、国内の実施法におきましても、その条約の趣旨を受けて、特定の経路から出てくる特定の廃棄物についてだけ輸出の許可にかからしめているわけでございます。  これにつきましては、病院から出てきます感染性廃棄物は当然にバーゼル条約で言う有害廃棄物に該当いたしますが、ニッソーが輸出の申請書類に書きましたのは、専ら古紙の原料となるおむつなどの物品だということでございまして、これはバーゼル条約で言う対象物に該当いたしませんので、この条約の国内実施法の規定も受けずに、つまりバーゼル条約の規制を全く受けずに輸出されるということになったわけでございます。
  162. 小林守

    小林(守)分科員 そのとおりだと思うのですが、要は、名目再生資源であるというときには全く野放しの状態で輸出ができるということでしょうか。
  163. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 バーゼル条約上は特定の廃棄物しか規制の対象にしておりませんので、それに関しては、再生利用を専ら目的としたものの輸出であればバーゼル条約の規制はかからないというふうに言えると思います。  ただ、国内法では、廃棄物について輸出入する場合には厚生大臣の許可を必要としておりまして、これは、廃棄物に該当するかどうかによって、つまり厚生大臣が許可をするかどうかということになるわけでございますけれども、国内法におきましても、再生利用を専ら目的とする有用物につきましては廃棄物として規制を行わないというふうに考えておりますので、もし仮にこれが本当に再生利用されるものであれば、国内の廃棄物処理法の規制も受けないということになるかと思います。
  164. 小林守

    小林(守)分科員 輸出の場合で有害廃棄物でない場合、これは厚生大臣の許可を受けるということなんですね。それでよろしいですか。
  165. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 バーゼル条約上は、特定の経路から排出される特定の性状を有するものを限定して、これを輸出入しようとする場合には規制の対象にしております。  国内法では、その場合に、その廃棄物というのは、有価であろうと無価であろうと、つまり有償であろうと無償であろうと、輸出される行為についてはバーゼル法の規制がかかります。国内法では、廃棄物の輸出入について厚生大臣の許可が要りますけれども、これは有価である場合には、つまり有償で売却される、有価物として売却されるのであれば、廃棄物としてそもそも該当しないということにしておりますので、国内法の規制もかからないということになります。
  166. 小林守

    小林(守)分科員 結局、有価物であるという名目で輸出したり輸入するような状態に対して、全く今の法体系は無防備ではないかというふうに言えると思うのですね。それは事実でしょうか。そういうことでよろしいのですか。無防備であるということをお認めになりますか。
  167. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 規制の対象になっていないということは事実でございます。  ただ、これは国際的な議論の中でも、例えば、日本の中では有効にリサイクルされないようなものでも、ほかの国に行けばそれが有用な資源として活用される場合があって、そういう国際的なリサイクルの分業まで否定することではあってはならないというふうな議論がございまして、こういう整理をされているわけでございます。
  168. 小林守

    小林(守)分科員 再生資源として、何もこれは、国際的にそれぞれの地域で、日本ではどうしても資源だけれども余っている場合に、ぜひ欲しいという国があるならば輸出をすることについては何らこれは問題はない。これは地球的な規模での資源の有効活用ということになるでしょうし、結構だと思うのですよ。  しかし、それを名目にして輸出するなり輸入するならばノーチェックであるというところに、私は、今日の不法な、悪質な業者を生んでしまっているシステム上の問題があると言わざるを得ないのですけれども、欠陥であるということについてはどうでしょうか。今回の例えば廃棄物リサイクル、廃掃法の問題も含めて、循環型社会をつくるんだというような形で取り組まれていますね。そういう実定法の中でこういう悪質な業者または行為を生んでしまう、そういう無防備なシステム上の欠陥、これをお認めになりますかということです。
  169. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 国内でもできるだけ廃棄物はリサイクルをして、資源として再生利用するということができるだけ望ましいというふうに考えておるわけでございまして、一方では、そうしたリサイクルを推進するために、いたずらな規制はかけない方がいいというような議論もございます。  ただ、先生指摘のように、有価物であれば法律の規制をくぐり抜けて自由に動けるではないかという議論もあるわけでして、その辺のところがなかなか兼ね合いの難しい問題であるというふうには理解しておりますけれども現実政府部内で、最もリサイクルの促進をしながら、かつ最低限の必要な規制はかけるというようなことで整理したものがこういう形になっているものでございます。
  170. 小林守

    小林(守)分科員 何ら問題の解決にはならないのではないかというように思うのですよ。  例えば、廃タイヤ。これを業者が、資源なんだ、今は無価かもしれない、しかし、これをちゃんと燃料に使ったりいろいろなリサイクルをすれば資源なんだという形で、数十万本の廃タイヤが野積みされている。実際に、管理状況からいえば、廃棄物の不法投棄だと言っても過言ではない。しかし、資源だということになると法的な規制がかけられないのですよ。これは廃棄物の不法投棄ですよという認定を行政がすることによってしか、撤去してくださいと言うことはできない。しかし、撤去命令までなかなか難しいのじゃないでしょうか。現実に、国内問題でも既にそういうことなんですよ。  しかも、輸出の場合には、税関のチェックとか、それから、途上国にと言っていいかどうか、そういう賃金が安い、処理コストの安い国に資源として輸出して、実質的には焼却処分という形で、国内ではごみとして処分することと同じことを、資源として輸出して、ごみとして処分するというやり方が、当然のごとく今行われているという実態なんですよ。それに対して何ら具体的な実効性のある措置がとられようとしていない、そこに私は大きな問題を考えるのですが、それについてはいかがでしょうか。
  171. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 リサイクル物、有価物につきまして法律の規制から外しているということは、排出者がある物を持っていて、その物を使用したいという者が確実にいて、つまり、私がその物をこういうふうに利用しますよということが確実になったときに、それはリサイクルされるものだ、つまり廃棄物処理法の枠の中から外れていくものだというふうに整理しているわけでございまして、とりあえず利用する価値があるからといってだれかが保管している状態では、これはまだ廃棄物の状態ということで、我々の方としては、それは廃棄物の処理、まだ適正処理が終わっていないという状態で法律の規制をかけております。  ですから、今回のフィリピンへの輸出の場合も、商取引として相手方がこの物を買って使いますというふうに言っている以上、そういうふうに契約書が成立している以上は、私どもとしては、それが廃棄物ではないかというふうに疑いを持って見るという話にはなかなかならないというふうに思っております。
  172. 小林守

    小林(守)分科員 なかなかならないというところを何とかきちっとさせていかなきゃならないのですよ。本当に何とかならないかということですよ。  今度の政府法案の中ではそのように、一たん排出されたもので、資源かごみかわかりませんけれども、資源にもなる、場合によってはごみにもされる、そういう一たん排出されたものについて、循環資源という概念を用いて法体系を組み立てようとしているということをお聞きしました。政府の基本法案の中で循環資源という言葉を使う。  基本的に資源なんですよ。しかし、場合によってはそれはごみにもなって廃棄物処理法の適用にもなる、あるいは再生資源利用促進法、通産省所管のものになる。この二つの範疇に、物そのものがごみになったり資源になったりするんですよ。しかも、それによって規制が全然違ってしまう。おっしゃるように、資源という形になった場合に、これが野放し状態であるというふうに言わざるを得ない、チェックできない。そこをかいくぐって輸出したり輸入したり、また国内でも不適正に管理しているという状態が、今日の私は廃棄物リサイクルの大きな問題なんだろうというふうに思うのですよ。  ですから、ごみの問題、廃棄物という概念あるいは循環資源という概念をきちっと整理しないと同じ問題を繰り返していくことになりませんかということなんです。今度の、いわゆる資源だという形で業者が輸出した、それに対してノーチェック体制である。おっしゃるように、かけようがないのですよ。そこをどうやったらいいかということを明確にしてもらいたい。  例えば、では、資源だか廃棄物だかよくわからない、名目は資源なんだからといって輸出された、これについては、例えばマニフェストみたいなものというのはかかっているんですかということになりますね。万一これが廃棄物で不法輸出になったならば、それを委託した業者も責任があるのですよぐらいまでさかのぼってかけられるような規制が、資源であろうとごみであろうとかけられますよということを担保できるシステムができていないのですよ。それをどうするかという問題なんですよ。専門にこれだけやってきているのに、そのことが解決できないというはずがないじゃないですか。
  173. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 有価物と廃棄物とについては、やはりリサイクルをある程度積極的に推進する立場から、一定の整理をすることは必要だろうと思っています。  しかし、今回の事件については、もともとこういう構造的な話があったというよりは、本来廃棄物であったものを有価物と偽って輸出したということでございまして、法律の仕組みというよりは、むしろうそをついて出そうとしたものを十分チェックできなかった、そこのことが問題ではないかというふうに思っております。  私どもは、このバーゼル条約の国内法は、厚生省のほか環境庁、通産省と三省の共管でございまして、これ以外にも大蔵省とか運輸省とか関係省庁がございまして、関係省庁の間で、このバーゼル条約の国内法の運用をめぐってもっと何かすることがあるのではないか、この条約の趣旨を踏まえつつ、これが抜け駆け利用されることのないように何か対応ができるのではないかということを検討しておりまして、近くそれについてはまとめていきたいと思っております。  また、国内でも同じように廃棄物の不適正処理というものがあるわけでございまして、この国会で私どもも廃棄物処理法の改正というものを考えておりまして、これは産業廃棄物の不法投棄等が非常に頻発しておりますので、それを防止するために何らかの措置が必要だというふうに考えてやっているわけでございますが、その中でもマニフェスト制度の強化等も視野に入れて検討しておりますので、そうした国内的な措置の強化も、こうした廃棄物の違法輸出の抑制にはきいてくるのではないかというふうに考えております。
  174. 小林守

    小林(守)分科員 今回の問題の中で、私は、ポイントになるというものは、いわゆる再生資源、古紙ですよというふうに偽ってごみを輸出したということに一つ問題がありますね。なおかつ、そのごみの中にバーゼル法違反、有害廃棄物である医療系の感染性の廃棄物がまじっていたということだから、無承認輸出という形で直罰をかけられるわけでしょう。  これは、医療系廃棄物なんて入っていなかった、医療系廃棄物は発見されなかったけれども、資源じゃなくてごみだったといった場合はどうなんですかということをお聞きしたい。そこを整理してもらいたいと思います。  医療系の廃棄物があったから直罰で厳しい措置ができるのは事実なんだと思うのですよ、バーゼル法にかかるから。しかし、バーゼル法にかからない場合、例えば、ごみであって、その中に医療系廃棄物がなかった、しかし輸出した人は資源として偽って出したわけですよ。ところが、不思議なことに、日本では廃棄物だけれども向こうでは資源であるというふうに言ってみたり、向こうでは廃棄物だけれどもこっちでは資源だと言ってみたり、国によって資源かごみかというのが変わっちゃう、こういう問題もある。  たまたま医療系廃棄物が入っていたから直罰ができたということなんでしょうが、入っていなかった場合にはどうなりますかということです。
  175. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 今回のケースでは、医療系廃棄物が入っていなかったとすれば、これはバーゼル条約の対象とする廃棄物ではありません。しかし、廃棄物処理法におきまして廃棄物の輸出入の規制をしておりますので、これが廃棄物に該当するのであれば、国内法、つまり廃棄物処理法によって規制を受けるということになります。  ただ、これが廃棄物かどうかについては、つまり有償で売却されているかどうかということにかかわるわけでございまして、つまり、それをお金を出して買いたい人がいるというときには、国内法ではそれを廃棄物として規制をしないで有価物という認定をしているわけでございます。
  176. 小林守

    小林(守)分科員 よくわからないんだよ。要は、名目再生資源ですというふうにして輸出したのにごみだったんでしょう。ごみじゃなかったのですか、あれは。
  177. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 ごみかどうかは、物の性状を見て一概になかなか判定しがたい場合がございます。というのは、国内で古紙のリサイクルのための原料として物を集める場合には、かなり日本の古紙というのは品質がすぐれておりますので、比較的集めるものもいいものを集めるのですが、途上国では、もっとグレードの低い品質の再生紙というものもかなり利用されておりまして、その中にはプラスチックだとか、それ以外のわらくずのようなものもまざって再生される場合がございます。  ですから、今回のケースでも、フィリピンの輸入業者があの原料で再生するのだということであれば、紙をつくるのだということであれば、それを原料としてフィリピンの業者が購入するということであれば、それはやはり商取引というふうにみなされるわけでございまして、廃棄物にはならないというふうに考えております。
  178. 小林守

    小林(守)分科員 結局、たまたま三カ月も放置されていたからコンテナを開いて、何だこれはということで調べていったら医療系廃棄物が出てきた。ああ、これはバーゼル法違反だということになったのだけれども、あれが医療系廃棄物でなかったら、三カ月間放置されている、引き取り手がない、これはごみの不法投棄じゃないのですか、おっしゃるように。あれがそのうち、例えば一年先でも二年先でもいいからちゃんとお金が払われて売れればごみじゃなかったということになるのですかということです。よくわけがわからぬですね、それは。
  179. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 個別のケースに即して申し上げますと、あそこでは、例えば仮に点滴のチューブだとか針というものが入っていなかったとしてもということでございますけれども、現地の業者が、これは自分たちが購入しようとしたものではないというふうに言っておりますので、現地の輸入業者から見て不要物だというふうに認定されているようですので、そういうことであれば商取引は成立していないわけでございますので、あの何カ月か放置された後の段階では、あれは廃棄物になっているというふうに思っております。
  180. 小林守

    小林(守)分科員 ここでごみの談義をしてもしようがないんで、ごみだか資源だかわからぬというようなことで、よくわかりません、本当に。今度廃棄物処理法をよく整理してくださいよ。  それでもう一つ、では、医療廃棄物の問題でちょっとお聞きしますが、たまたま医療廃棄物が混入していた、しかし、これがどこから出たのだかわからぬ、ただ、値札か何かちょっとした伝票みたいなものが、どこどこの病院というのが具体的にあったものだから、そこから出たのではないかというような話がありました。  しかし、廃掃法の中では、こういう特管物、特定管理一般廃棄物、産業廃棄物にしてもマニフェストをきちっとつけることになっていますね。今回は、少なくともそれがちゃんとついているならば、どこから出たものかはわかるはずなんですよ。わからないというのは何なんだということなんです。
  181. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 御指摘のように、マニフェストがついておりますので、基本的にはどこの業者から納入されたか、それから、その収集運搬業者にどこの事業者が処理の委託をしたかということは大体把握できると思います。  県を通じまして、どういう経路でどういう廃棄物が集まっているかにつきましては、私どもの方で調査しておりますが、警察の方が今書類を押収しておりまして調査しておりますので、それがある程度明らかになりませんと、ちょっと私どもの方の最終的な判断はできかねるかと思います。
  182. 小林守

    小林(守)分科員 そうしますると、いろいろなことをたどりながら、医療廃棄物が混入されてきた、たどっていったらばどこの病院だったということになるならば、原状回復のためにいわゆる二億八千万円の代執行の費用がかかっていますね。それに対して基本的に一定の負担を求めるということになりますでしょうか。
  183. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 原状回復の措置命令の対象は、現行法では不法投棄者あるいは違法輸出者でございまして、ニッソーに費用負担を求めることになります。ニッソーに持ち込んでいた業者が加担していたということになれば、その業者も同時に措置命令の対象に含めるということになります。  ただ、今のところ、私どもの調査の限りでございますけれども、ニッソーに廃棄物の処理を委託していた排出事業者等が、ニッソーが不法輸出することを承知してニッソーに処理を委託したというふうな事実はございませんで、加担していたということには必ずしもなっていないのではないかというふうには感じております。
  184. 小林守

    小林(守)分科員 結局、責任をさかのぼれないのですね。要は、倒産するなんてわからなかったとか、資本金なんか全部調べてその処理業者にお任せするなんということはわからなかったということになれば、一応代価はちゃんと払っているわけですね。ところが、ほかの業者に比べて、不法投棄する、不法輸出する業者は格安の値段でそれは引き取りますよ。競争力が強いと言ってはおかしいんですが。それはそうですよ、ただで違法投棄をやっちゃえば丸々もうかるわけですから。  きちっとした処理業者を選択して、これだったら心配ない、責任が持てるな、なおかつその業者が不法投棄なりをしたらば自分も責任があるんだよという縛りがあれば、相当厳しくきちっとした業者を育てることになるだろうし、選択することになるのだろうと思うんですよ。それが今の制度ではないのですよ。それはお認めになりますか。今の制度ではとてもじゃないけれどもそういう不法業者を排除することはできないということになるのじゃないですか。
  185. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 御指摘医療廃棄物の中には感染性を有するものもあるわけでございまして、この適正処理が厳しく確保されなければならないということは御指摘のとおりだと思っております。  医療廃棄物につきましては、平成三年の廃棄物処理法の改正の際に特別管理廃棄物というふうに位置づけまして、特別の注意、管理のもとで処理をしなければならないという義務づけを行っております。  また、感染性廃棄物処理マニュアルをつくりまして情報提供をいたしましてこの周知を図るなど、医療関係者に対してもその適正処理の推進に努めるよう要請しているところでございます。  また、今国会で、先ほど申し上げましたように、廃棄物処理法の改正で排出者責任の徹底強化等も含めて改正考えておりますので、これによっても医療廃棄物を含む産業廃棄物全般の適正処理のより一層の確保に資するのではないかというふうに考えております。
  186. 小林守

    小林(守)分科員 最後になりますけれども、とにかく医療系の廃棄物についてはマニフェストをきちっとつけて、なおかつ処理業者に対しても、委託処理基準というのがありますよね、これを無視して委託した場合には現行法でも排出事業者は責任を問われますよということですよね。そうですよね。そういうことになると、今回の問題についてはそこをきちっと押さえて、医療機関についてもそれを押さえないでやったということになるならば、きちっと原状回復の責任の一端を担わせなきゃいけないと思うんですよ。  二億八千万についてこれからどうするのか。国民の税金でとりあえず負担しておくわけですよ。これに対してどういうふうに回収するのか、考え方をお示しください。
  187. 岡澤和好

    岡澤政府参考人 これは行政代執行しているわけでございまして、本来この処理の費用については輸出者であるニッソーが負担しなければならないものでございます。私どもの方で処理にかかった費用が確定いたしました段階で、ニッソーに対してこれを支払うように求めるということになると思います。  また、関連した収集運搬業者あるいは排出事業者の責任の問題でございますが、現在警察などが捜査中でございまして、全貌が必ずしも明らかになっておりませんけれども、その調査の結果、排出事業者あるいは収集運搬業者に法的な責任があるというようなことがありましたら、それはまた廃棄物処理法の枠の中で適切に対応してまいりたいと思っております。
  188. 小林守

    小林(守)分科員 終わりますけれども、やはり今回の大きな、基本法も含めて廃掃法の改正考えられているということなんですが、要は排出事業者責任というものの実効性をどう確保するかという形で、例えばニッソーの事件、例えば廃タイヤの問題、例えば豊島の問題、あの辺の教訓をしっかりと踏まえた法改正を行っていただきたい、私たちはそこをきちっと点検していきたい、このように考えております。  終わります。
  189. 山口俊一

    ○山口(俊)主査代理 これにて小林守君の質疑は終了いたしました。  次に、保坂展人君
  190. 保坂展人

    保坂分科員 社会民主党の保坂展人です。  今回の予算審議に当たりまして、何度か丹羽厚生大臣に伺ってきたところなんですが、ごく簡単に復習といいますか確認をしておきたいと思います。  一つは、二つの法律。一つは解散法、年福事業団の解散、承継。新しい基金の方を基金法と簡単に略しますと、先般から指摘しているとおり、基金法の方で規定しているところの、すべてこれはディスクロージャーするんですという部分がありますよね。事務所に備えておいて、厚生省令で定める間、一般の閲覧に供しなければならない。ところが、解散法の方の十八条の二項には、この規定にかかわらず、厚生大臣が承認したときには、公認会計士または監査法人の監査報告書の事務所への備え置き及び一般への縦覧は要しないというふうにある。これは矛盾しているんじゃないでしょうかということを何度か伺ってきたんですね。  そのたびに御説明いただいているんですが、この条文を計十回ぐらい見比べたんですが、外部監査の問題なども言われているんですが、そこは条文上どこから読み取れるのかよく理解ができないんですね。この点についてもう一度明確に答弁いただけないでしょうか。
  191. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 この年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案の第十八条第二項でございますけれども、これは、年金資金運用基金法の第三十五条三項に規定する書類のうち、同項に規定する外部監査報告書は事務所への据え置き及び一般への縦覧は要しない、こういう規定でございます。  これは端的に申し上げますと、今回新しい法律でもって、年金積立金の運用につきましては外部監査を受ける、こういう仕組みに改めようとしているわけでございます。ところが、それ以外の例えばグリーンピア事業、こういったものは、新しくできます年金資金運用基金の附帯業務として当分の間管理運営をしつつ自治体等への売却を図るということで、当分の間の事業としてグリーンピア事業とかこういうのもあわせて実施をする、こういうことでございまして、こういった積立金の運用以外につきましては外部監査を要しない、こういうことにされておるわけでございます。  したがって、これも当たり前のことでございますけれども、外部監査報告書を作成しないものについては公表できないわけでございますので、事務所に据え置いて一般の縦覧に供する、こういう対象からは除外されたということでございます。     〔山口(俊)主査代理退席、主査着席〕
  192. 保坂展人

    保坂分科員 まさに今言われたグリーンピアの問題ですよね、たびたび国会でも問題になっている。これは千九百億円でしょうか、それだけの赤字があるばかりでなく、毎回毎回の運用の中でも、施設一つ一つ見ても赤字だというふうに言われています。そういう実態があるということが、年福事業団の解散、そしてこれから新しい基金への移行につながる一つの要因だったんではないか。  とするならば、そのグリーンピアの実情を、新しい基金に移行した後にすべからく明らかにして、全部公開する、これが筋じゃないかと思いますし、丹羽大臣予算委員会で、私の最初質問に対しては、基本的に公表すべきだと思います、こう答えているんですね。これについては大臣の答弁どおりというふうに我々は受け取ったんですが、違うんですか。
  193. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 グリーンピアの事業につきましては、現在も財務諸表等あるいは業務の実績、こういったものは公表いたしておりますし、新しい体制に移行してもこれは公表するというのは当然でございます。公表いたします。
  194. 保坂展人

    保坂分科員 そうすると、何を公表しないということになるんでしょうか。
  195. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 外部監査報告書を公表しない、外部監査報告書はそもそもつくらないわけでございますので、公表のしようがないということでございます。
  196. 保坂展人

    保坂分科員 それはもう何回も聞いているんですね。  では、この条文の中のどこにそれが読み取れる記述があるんですか、はっきり示してください。
  197. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 ただいま申し上げましたとおり、年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案第十八条第二項、それと年金資金運用基金法案の第三十五条の第三項でございます。
  198. 保坂展人

    保坂分科員 それはもう何か同じところをぐるぐる回る話で、これは何回読んでも今の答弁のようなことは確認できないわけですよ。ありますか、具体的に。原則全部公開だ、ただ、外部監査は、それはしていないわけだから公開できないんだ、ないものは公開できないんだという趣旨ですよね。だったら、それがどこから読み取れるんですか、この条文の中で。ないならないで、言ってください。
  199. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 ただいま申し上げましたとおり、年金福祉事業団の解散及び業務の承継等に関する法律案の第十八条第二項でございます。これは、「基金は、基金法第三十五条第一項の規定により承継一般業務に係る財務諸表について厚生大臣の承認を受けたときは、同条第三項の規定にかかわらず、同項に規定する公認会計士又は監査法人の監査報告書の事務所への備置き及び一般への縦覧は要しない。」こういう規定でございます。
  200. 保坂展人

    保坂分科員 大臣、これはもうこれ以上やりませんけれども、ここを読んでも言われるようなことは出ていないんですよ。  ですから、今厚生省が言っているとおり、グリーンピアの内容、すべからく公表するならするで、はっきりもう国会答弁で、予算委員会最初に聞きました、年金局長も言っていますから、このグリーンピア事業なども、どういう実態になっているのか、これは国民に広く公表するというふうにおっしゃっていただけませんか。
  201. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 予算委員会でもこの問題については御質問をいただきまして、私の方から答弁を申し上げたと思いますが、年金福祉事業団から基金に承継されるグリーンピア事業については、業務報告書や財務諸表などとともに、監事の意見書を公表してまいります。  こうした事業についての外部監査については、特殊法人全体の問題として、今後の検討課題とする。たしか申し上げたのは、国民金融公庫であるとか、そのほかの特殊法人との横並びの問題として考えさせていただく、このように答弁しております。
  202. 保坂展人

    保坂分科員 大臣年金局長は財務諸表等も一切公表するんだと言っておられるわけですから、それはもう確認させていただいていいと思うんですね、そういうふうに今言われましたので。年金局長が公表すると言っておられるので、どうです。
  203. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 繰り返しになりますけれども、公表いたします。
  204. 保坂展人

    保坂分科員 それでは、例の、昨年末の時点で七千五百億円が黒字になった、こういう御答弁があったわけです。これは二月十七日の予算委員会なんですけれども。私、この点について、何度かしつこくお聞きをしました。この黒字は実現収益ベースなのか、つまり、厚生省の用語で言うところの簿価ベースなのかどうかと質問したところ、大臣は、年度途中の運用収益につきまして、簿価ベースの集計というのは行っていない、つまり実現収益ベースではないというふうにお答えになったわけなんですが、これはちょっと十七日の一番最初に聞いた答弁と矛盾するんじゃないか、こういうふうに思うんですね。  ここのところをもう一度確認したいんですが、こういった答弁も含めても、やはり黒字だった、収益を出しているということで答弁はよろしかったんでしょうか。
  205. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 私が予算委員会保坂委員にお答えを申し上げましたことは、昨年の十二月の時価ベースでございますが、時価ベースにおいては、今年度だけで二兆七千億円程度の収益を上げている、この間の資金運用部への利払いなどのコスト、これを差し引いても、赤字を解消して、七千五百億円の黒字に転じた、このように御報告をしたところであります。
  206. 保坂展人

    保坂分科員 その点を、先日、これは含み益も含んだ数字であって、株価の上下によって膨らんだり消えたりする額だということも確認させていただきました。  二十二日の大臣の答弁で、運用実績の評価は、保有資産の価格変動を反映させた時価で行うものでございますということで、事実関係を私は述べただけだというふうにも答弁をされているんですが、そうだとすると、いわば昨年十二月の末の数字として発表された、ことしだけで二兆七千億程度の収益があるというのは、収益ではなくて、それはその時点での評価だったのではないか、こう思うんですね。少なくともその点、確認できるでしょうか。
  207. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 ですから、十二月末時点での要するに瞬間的な収益だ、こう見ております。
  208. 保坂展人

    保坂分科員 収益と評価というのはやはり厳密に使い分けて考えていかなければならないと思うんですね。今も収益というふうにおっしゃいましたけれども、そしてまた黒字ということもおっしゃいましたけれども、運用実績の評価は、保有資産の価格変動を反映させた時価で行うものでございますというのは、これはきっちり確保された収益ではなくて、あくまでもピンポイントの評価にすぎないんじゃないかと思うんですね。やはり収益じゃなくて評価というふうに思うんです。その点はいかがですか。
  209. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 収益であっても評価であっても、私は変わりないと思っています。
  210. 保坂展人

    保坂分科員 では、ちょっと年金局長に伺いますが、収益と評価、これはつまり、実際に収益と言える場合は、売却をして、実際にこれだけの実現収益ベースで利益が確保できたというのを収益と普通言うと思うんですが、厚生省ではそういうふうには言わないんでしょうか。
  211. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 もともと年金の運用の評価は何で行うべきか、こういう議論があるわけでございます。  従来、我が国は簿価で評価をしてきた。これは年金福祉事業団だけでなく、例えば厚生年金基金、こういったものもすべて簿価で評価をしてまいりました。簿価で評価した結果、どういう問題が起きたかといいますと、実現収益を上げるために、例えば含み益のある資産を売却して決算だけをよく見せつける、こういうことが実はかなり行われておったわけです。これは例えば厚生年金基金の世界でそういうことをやっておりました。  その結果、いいものから売却して実現収益を上げる、悪いものは塩漬けにして資産内容がどんどん劣化する、こういうことは長期的に見て非常に問題があるということで、年金の運用、これは外国では昔から時価評価が原則でございますし、日本でも時価評価に改めるべきだということで、厚生年金基金も時価評価に改めております。年金福祉事業団におきましても、時価評価を原則とするということで近年はやっておるわけでございます。  したがって、評価損益を含めた実現収益だけでなくて、評価損益を含めた総合収益という概念で運用成果を評価すべきものだと思っております。
  212. 保坂展人

    保坂分科員 これはちょっと納得できないということを再三指摘しますけれども、含み益も含んで、つまり株価の変動によって膨らんだり収縮したりするものを、そこの断面で切って、収益が出た、黒字だというのはやはり正確を欠いているんじゃないかというふうに思います。この点は納得がいく御説明をなかなか得られないので、ぜひきっちり検討していただきたいということを指摘させていただきたいと思います。  さらに、ではグリーンピアの具体的な運営についても二、三質問をしたいと思います。  昨年来、この点について質問をしまして、矢野年金局長は、グリーンピアの各基地によって収支というのは相当異なっているんだ、黒字のところも赤字のところもあるんだというふうに言っておられます。しかし、この黒字のところも赤字のところもあるという財務内容、大変御苦労いただいて相当分厚い資料を、それぞれのグリーンピアの財務内容などを出していただきました。つぶさに検討したところ、これはランニングコストの部分を並べて一覧表化したものなわけですね。実際に建物を取得したり土地を買ったり、あるいは修繕をしたりという部分のイニシアルコストも含めた赤字、黒字の算出ではない。ここに何か非常に奇妙な会計のからくりがあるのじゃないかと思うのです。  このあたり、要するに、土地を取得し建物を建て、そこまで全部含めれば、そして、従業員の方、あるいはコックさんが食事をつくったり、ランニングコストもすべて含めて、民間のホテルがそうであるように、そういう財務諸表をつくった場合に、これはやはりすべてが赤字になるというふうに考えていいのじゃないでしょうか。
  213. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 これは、土地建物代、設備投資、こういうのを全部ひっくるめてやりますと、もうほとんどの施設が赤字だと思っております。
  214. 保坂展人

    保坂分科員 そうすると、土地建物も含めてトータルの収支というものを一度出されてみてはいかがでしょうか。もう既に出されているのでしょうか。  これは国民の大切な年金財源を使った事業ですから、厚生省、このグリーンピア構想というのが始まったのは相当前ですから今とレジャーの状況国民の休暇の状況も違いましょう、しかし、全体を通してみて、赤字がどれだけあるのかというのがまだまだつまびらかにならない。各施設ごとにトータルな収支を出されていますか。これから出す用意はございますか。
  215. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 検討してみたいと思います。  ただ、年金福祉事業団でやっておりますグリーンピア事業というのは、これは被保険者あるいは年金受給者への還元事業という趣旨でやっているわけでございます。民間企業と違いまして、収益を上げる、こういうことではございません。現役の方にも年金に対する理解を深めていただく、こういう趣旨で、ある意味では損得抜きでやっておるわけでございまして、民間と同じように、土地建物をすべてひっくるめて赤字、黒字ということを判断するというのは、制度の趣旨からいいますと若干違うのじゃないか。御指摘の点は十分検討してまいりたいと思います。
  216. 保坂展人

    保坂分科員 厚生大臣、ちょっとお疲れと思いますが、大事な点なので。  問題はごく単純なんですね。グリーンピアの中で一応厚生省の方で千九百億円のいわば赤字があると言っている部分については、土地の取得、建物の建設、その他本来は返済していかなければならないお金、そこが赤字になっている。それ以外のところでも、今年金局長もおっしゃったように、土地や建物の部分を含まない、運営といいますか人件費、さまざまなランニングコストの部分でも赤字になっているところが多いですね。今、年金局長の話によると、土地の取得や建物の建設なども含めたイニシアルコストも含めて収支を出してみたら、これは全部赤字になるでしょうということなんです。  そうしたら、これは事業の失敗ということを我々チェックをして、これからどうしたらいいのかというのは、まさに先ほどからダブルスタンダードにこだわってお聞きをしていたのも、グリーンピア事業などが一体どれだけ赤字を出して、そしてどの程度に今財務内容があるのかというところがまだわからないわけですね。会計が分かれていますから、土地の取得や建物の建設は別だという形でランニングコストだけの収支が出てきているので、これはやはり一括して洗いざらい公開をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  217. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 いずれにしても、譲渡先を今探している最中でございますけれども、公開するべきものと考えております。
  218. 保坂展人

    保坂分科員 では、グリーンピアがどれだけ使われているかというところで、これは高知県の方の土佐横浪、こちらの方の利用状況ということをいろいろ調べてみたのですけれども、官庁関係といいますか公務員関係、役所の関係で約千人という利用者がいるのですね。さらに、このカウントの仕方なんですけれども、事業団の指導によって四歳未満の幼児入園者についても計上するようになったので、無料入園者がふえた。無料入園者がふえてもカウント上数字はふえるわけですね。ですから、いろいろ利用されているんだということを示す努力だと思うのですけれども、こういう努力も、結果として本当の財務内容を表になかなか出さないということになったんじゃないか。  グリーンピアは、やはり年金に加入している皆さんの保養施設であって、県庁とかあるいはそれぞれの役所がわざわざグリーンピアに行って会議室を使って会議するためにつくられた施設じゃないですね。このあたりはしっかりした実数を出すべきじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  219. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今でも、私ども年金白書というような形で、利用者数とかそれから財政の状況とかいったものも公表しておるわけでございまして、こういった情報公開というものは今後さらに充実していきたい、こう思っております。
  220. 保坂展人

    保坂分科員 グリーンピアが大変な実態に陥っているということをこの間議論されてきましたね。この中で、平成七年に、橋本大二郎高知県知事にあてて財団法人グリーンピア土佐横浪の理事長さんが陳情書を出しておられるのですが、これは、ホテル増築等の施設整備を要望して、平成七年から二カ年間で整備できることになりました。つまり、なかなか利用者が伸びない中でホテルの増築もした、そして道路を二車線化するとかあるいはトンネルを早期に完成するとかという陳情もされているのですね。これは実際でき上がったそうですよ。  だから、こういう実態、利用者はそんなに伸びていないのに、そして官公庁の会議などを開いてなるべく数をふやしたいと努力をしている傍らで、そこへのアクセスということで道路を充実させたりとか、そういうところで予算をどんどん請求するということ自体も、グリーンピア事業からの撤退ということを決めるに至った一つ原因として、実際に走り出したらとまらないという体質があったんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  221. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 これは、各施設におきまして、利用者をふやすための努力というのはいろいろな形で行っているわけでございます。そういう中で、地元のいろいろな陳情などを受けましてその整備を図ってまいったということでございます。  ただ、これは年金福祉事業団の廃止が決まる前の話でございまして、平成九年の閣議決定で、グリーンピアはもう撤退をする、こういう方針が決まったわけでございまして、今は、そういう整備というようなものにつきましては、例えばボイラーを取りかえるとか雨漏りを防ぐとか、そういった必要最低限の整備に抑えて、地元自治体との移譲の交渉を行っているというのが現状でございます。
  222. 保坂展人

    保坂分科員 では、年金局長に続けて伺いますが、質問主意書を出しまして、答弁書を先日いただきました。その中で、交付金のそれぞれの使い道についてお尋ねをして、この別表三という一覧表をいただいているのですよ。  この中で、大沼、津南、三木、指宿、ここの四カ所は年金保養協会が直接運営するという形になっていますね。恐らくそうですね。そうなると、年金保養協会に対してもそれなりに交付金がおりている。そして、この四カ所については、昭和五十三年から平成二年まで、計算してみるとちょうど二十億円というお金が整備計画や花壇の維持などに使われているのですね。これは年金保養協会からもこの四カ所に行きますから、予算の二重使いじゃないか。  実際に花壇や施設の整備などに二十億円も必要だったのか、このあたり、きちっと報告していただけますか。きょう、今一瞬で言うのは難しいと思いますが、後ほど資料を出していただいて、お答えいただきたいと思うんです。
  223. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 資料については出すようにいたします。
  224. 保坂展人

    保坂分科員 ですから、そんなにお金がかかったのかということと、年金保養協会という太いパイプから四カ所運営するようになっているのに、なぜ四カ所にまた別途こういう形で交付金がおりているのかということについて、簡潔にお願いします。
  225. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 これは、それぞれの施設が、何とか経営をよくしたい、あるいは地域の皆さん方にもっと利用していただきたい、こういうことで、それぞれの施設施設でいろいろな計画を立て、努力をしてきたわけでございます。そういうものの一環として、四施設については年金保養協会が直営をいたしておりますので、今申し上げたような交付金を支出したということでございます。  それ以外の施設につきましては、運営につきまして各県で第三セクターなどをつくってやっていただきますので、そちらでいろいろな整備を図ってきた、こういう面がございます。
  226. 保坂展人

    保坂分科員 同じく質問主意書の答弁書で、資金運用部から借りている資金の利息は運用資金及び運用収益の一部が充当されていると。これは厚生省に、一体どのぐらいの区分けになっているのかというのをお聞きしましたが、お金に印がついていないので判然としないということなんですね。  また、資金運用部への償還等における収益額の内訳という書面もいただきました。これははっきり言って、平成三年度以降は実現収益よりも利払いの金額の方が多いわけですね。ということは、資金運用部に利払いをするより下のところにあるわけです、実現収益が。そうすると、その格差というのは借入額の中に入っているというふうにも思えるわけで、しかし会計処理上は元本を割り込んでいる、こういうふうに考えるしかないのかなと思うんですが、その辺はいかがですか。
  227. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 利払いは確実に行わなければいけませんので、利払いと実現収益に差ができる、マイナスになるということは、運用元本がその分減っておる、こういうことでございます。
  228. 保坂展人

    保坂分科員 大臣、一問だけで指摘にとどめますけれども、この内容、要するに利払いが実現収益より多いんですよ。その部分も借入金で充当しているわけです。こういうのを俗にタコ足返済と言うらしいですね。ですから、今年金局長が言われたように、元本を削っていっているわけです。だから、要するに国民年金の資産がそれだけやはり減っているわけですね。ここらについて真剣な検討を加えて、必要な資料をぜひ出していただきたい。御答弁お願いします。
  229. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 十分に検討いたしまして、必要な資料につきましては積極的に公開したいと思います。
  230. 保坂展人

    保坂分科員 時間になりましたので、これで終わります。
  231. 自見庄三郎

    ○自見主査 これにて保坂展人君質疑は終了いたしました。  以上をもちまして厚生省所管についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  232. 自見庄三郎

    ○自見主査 次に、労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。牧野労働大臣
  233. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 平成十二年度の労働省関係予算について、その概要を御説明申し上げます。  平成十二年度一般会計予算につきましては、中央省庁等改革に伴う新体制移行を反映させたものとなっており、労働省所管に計上しました予算額は四千三百七十七億円でありまして、新体制移行後は厚生労働省所管の予算として所要の予算額を計上してあります。  また、労働保険特別会計は全体で五兆六千九百五十億円であり、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定の労働省所管分は百四十三億円となっております。  平成十二年度の労働省関係予算につきましては、現下の厳しい雇用情勢の中で、新規雇用の創出と迅速な就職の促進、職業能力を高め、これを十分に発揮できる社会の実現、健康で安心して働ける環境づくり少子高齢化への対応など、国民の雇用不安を払拭し、一人一人の意欲と能力が生かされる社会を実現するという観点に立って、必要な予算を計上したところであります。  以下、その主要な内容について御説明申し上げるべきところでございますが、委員各位のお手元に資料を配付してございますので、お許しをいただきまして、説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、委員各位の格別の御審議をお願い申し上げます。
  234. 自見庄三郎

    ○自見主査 この際、お諮りいたします。  労働省所管関係予算の重点項目につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  235. 自見庄三郎

    ○自見主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  236. 自見庄三郎

    ○自見主査 以上をもちまして労働省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  237. 自見庄三郎

    ○自見主査 この際、分科員に申し上げます。  質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。鍵田節哉君
  238. 鍵田節哉

    鍵田分科員 民主党の鍵田でございます。  予算も労働委員会でお聞きしておるのですが、何か決まりのようでございますから、またお聞きをするわけでございますが、先日の委員会では三十分しか時間がございませんでしたので、補完の意味で幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  それにしましても大臣、これから本格的な審議が始まるわけですし、労働委員会も重要法案がたくさんございますので、お風邪を召されておるようでございますが、一日も早くよくなられて、ひとつ本格的な審議に備えていただきたいとお願いをしておきたいと思います。  先日、特に雇用問題につきまして、現在労働省が取り組まれております諸施策につきましての実効性がどのように上がっておるのかというふうなことでいろいろお聞きをしたわけでございますけれども、その辺の細かい分析については御答弁をいただくことができませんでした。目標だけは述べられたようでございますが、若干それらにつきましてお聞きをしたいというふうに思っております。  企業倒産が非常にたくさん起こっておりまして、深刻な事態が起こっておるわけでございますけれども、特に平成十一年の企業倒産は一万五千三百五十二件ということでございまして、年間では平成十年から比べますと一九%ほど減少しておるというふうになっておるわけでございますが、しかし、十一月の前年比は四・七%増、十二月には千五百二十六件で三五・八%と年末に急増しておる、こういうふうな状況にあるわけでございます。  件数だけではなしに、この企業倒産によってどの程度の労働者が解雇されたのだろうか、また、どういう賃金の未払いが起こっておるのだろうかというふうなことについて、その期間でありますとか額でありますとかというふうな具体的なことについて掌握をされておれば、それについてまずお聞きをしたいと思います。
  239. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 企業倒産によりまして解雇されました労働者の数でございますが、民間の信用調査機関による調査でございます、平成十一年一月から十二月の一年間におきまして、一千万以上の負債を抱えまして倒産した企業によって解雇された労働者の総数は、約十三万人でございます。  また、倒産した企業の労働者に係ります賃金について未払いがある場合には、労働基準監督機関におきましてその立てかえをしているところでございますけれども、この場合、退職した労働者に対して未払い賃金の一部を国が事業主にかわって立てかえ払いを行って、その実績は、平成十年度で、四万二千人に対しまして立てかえ払いの総額が百七十三億円でございます。一人当たりに直しますと約四十一万円という数字でございます。
  240. 鍵田節哉

    鍵田分科員 それは民間での調査で、労働省の調査ではないわけですね。
  241. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 倒産の方は直接労働省の方で把握できる状態になっておりませんで、こちらは民間の調査でございますが、立てかえ払いの方は、これは公でございますので、監督署で掌握しております実数でございます。
  242. 鍵田節哉

    鍵田分科員 労働省で掌握されておるということでありますが、掌握漏れもかなりの数があるのではなかろうかというふうに思いますので、それらにつきましては、特に件数などにつきましては、民間の調査であるとはいえ、やはり、そこにどれだけの人数が介在しておるのかということについてより正確な把握をして、雇用対策を立てていただかなくてはならぬのではないかというふうに思っております。  それで、時間がございませんから先を急ぎますけれども、私自身も、実際にそういう事案に接して、労働債権の回収に当たる、そういう労働者の運動にかかわってまいったわけでございますけれども、実際に回収を行うということは大変困難でございます。まず民法上の債権順位から見ますと、一般債権に対しては確かに優先権はあるわけでございますが、公租公課などに対しては下位に位置をしておるわけでございまして、私自身が、例えば社会保険の未払いを、自分で確保をして、売掛金を回収してきて、そして労働者に分配をしたというふうなことがございました。何か公租公課の方が優先しておるというふうな実態のために、労働者のそういう労働債権の確保が非常に難しいというふうな状況にあるわけです。  外国では、社会的な意味からしましても、公租公課よりも労働債権の方が優先をしておる国があるというふうに聞いておるわけでございまして、たしかフランスなどは公租公課より労働債権の方が優先をしておる、ドイツでもせいぜい同じ権利を持っておるというふうなこともお聞きしておるわけでございます。そのほかにも、特にEUあたりでは労働債権の方が優位にあるというふうな国があるのではないかと思いますけれども、それらのことをどのように把握されておるのか、お聞きしたいと思います。
  243. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 外国におきます状況でございますが、例えばフランスにおきましては、今先生指摘のとおり、一般労働者の過去六十日間の賃金については、国の方の税金を含めまして、ほかの債権に優先しております。ドイツも、先生お話しのとおり、ほぼ同じでございます。イギリスは公租公課と同順位ということでございます。また、アメリカにおきましては、一定の範囲の賃金でございますが、優先されているというふうに聞いております。  その他の国については、まだ十分把握しておりません。
  244. 鍵田節哉

    鍵田分科員 もちろん、日本の場合には、こういう債権の順位については民法上定められておるわけでございますから、まず民法の改正も必要であるというふうには思いますけれども、労働者を保護するという立場から見ますと、労働省としてこの問題についてどのようにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  245. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 企業が倒産した場合等の労働者の賃金、退職金の未払いということになりますと、働く方々にとって唯一に近い生活の糧でございますから、これを何としてでも、他の債権に優先してでも確保するということが大変必要なのではないかと私どもは思っております。  各種の債権の優先順位につきましては、今先生おっしゃられるとおり、民法、国税徴収法等、それぞれの実体法によって定まっておるわけでございますが、こういう倒産手続における各種の債権の優先順位について、倒産法制の見直しの中で、どうしたらいいかということにつきまして、法制審議会でこのことも含めて議論をしていただいておるところでございます。  労働省からもその議論に参加をして、私ども、今私が申し上げました観点から、その方向に進むようにお願いをしておる、議論に参加しておるということでございますし、労働省におきましても、こういう観点での研究会を設けまして議論をしていただいておるところでございます。
  246. 鍵田節哉

    鍵田分科員 それでは、ぜひとも、そういうことで法制審議会の方は頑張っていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。  同じような観点から、最近の企業というのは非常にボーダーレス化して、世界的な企業になってきつつあるわけでございまして、外国にも行っておりますし日本にも多くの外国企業が来ておるわけでございますけれども、そういう債権債務というふうな問題になってきますと非常に複雑な問題を抱えておりまして、こういう事案で倒産をしたというふうな場合には非常に苦労するわけでございますけれども、これらに向けての法整備につきましても同じように研究をしていただいておるのでしょうか。その辺についてお答えいただきたいと思います。
  247. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 今おっしゃられたようなケースにつきまして、当該企業の国内資産のみではなかなか支払いが不十分であるというような場合に、御指摘のように、当該企業の海外における資産によってその支払いを確保するということは大変必要なことだと思っております。  このことにつきまして、現行の破産法等におきましては、裁判所の破産宣告等の効力というものの及ぶ財産の範囲は国内に限定されておるという状況でありますので、今後、倒産法制全体として国際的協調主義にのっとった制度を構築する必要が高まっている、こういう観点で、現在、法制審議会におきましてもこの面での検討を進めていただいておりまして、早急に結論を出さなければならないという状況になっておると認識をしております。  ただ、この問題は、当然、他の国との関係の中でも決着をつけていかなければならない難しい問題だと思いますが、その間、我々としてもできる限り、制度は制度として、労働者のそういう債権が確保されるように指導してまいりたい、このように思っております。
  248. 鍵田節哉

    鍵田分科員 では、労働省としては非常に前向きに検討していただいておるということでございますので、ぜひとも頑張っていただきたいし、我々も頑張らなくてはならぬと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。  次に、ホームレス問題についてお聞きをしたいと思います。  特に、大阪のホームレスの問題は非常に深刻でございまして、東京などに比べましても倍ぐらいの人数がおりまして、それも全国から集まってきておるというふうな実態がございます。  当初は、ホームレスの方々高齢化ということが問題になりまして、例えば体力も落ちてきて、そして病気になられる、結核の罹患率も非常に高いとか、そういう深刻な問題が言われておったわけでございますが、最近ではむしろ、若年化とは言いませんけれども、随分若い人までホームレス化してきておる。これはやはり雇用問題が非常に深刻であるということの証左ではないかというふうに思っておるわけでございます。  そこで、昨年、ホームレス問題連絡会議が設置をされました。いろいろ対応策の取りまとめも行われておるところでございますが、昨年に比べましても、また現在ホームレスの人数はどんどんふえつつある、こういう実態でございます。  今、自立支援に向けまして、いろいろな施策が取り組まれておりますけれども、しかし、今の緊急対策というのも三年間という限定つきでございますので、これを三年間で限定せずにさらに期間を延ばしていく、こういうふうなことにつきましても積極的な努力をしていただかなくてはならないのではないか。今、大阪市、大阪府などが協力し合って一生懸命雇用問題に取り組んではおりますけれども、しかし平成十三年までという今の緊急対策の措置になっておるわけでございます。  これをやはり早い時期にさらに延長して取り組んでいく。当分、この問題が一定の解決という方向に進んでいくまで、そういう道筋が見えるまでの間はひとつ延長してもらうようなことで頑張っていただきたいというふうに思うわけでございますが、それらにつきまして、いかがなものでしょうか。
  249. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 緊急地域雇用特別交付金事業についてのお尋ねと思いますが、先生に御理解をいただきたいのは、この事業は、深刻な雇用情勢の中で、情勢が好転するまでのつなぎの雇用機会を確保するために、地方公共団体の創意工夫に基づいて臨時的な雇用就業機会の創出を図る、このことを目的にしておるものでございます。したがって、これは臨時応急の措置でございますので、一応は平成十三年度末までということにいたしております。  大阪市におきましては、この制度の趣旨にのっとって、臨時の、つなぎの雇用を確保する場として、ホームレス対策にも活用されておられる、こういうことでございまして、ホームレス対策のためにこの事業を実施しておるわけではないということは御理解をいただきたいと思います。そういう意味で、この交付金事業は、現時点ではこの限りというふうに一応考えておるわけでございます。  また、今後大阪市において、ホームレス対策をどうなさるかということは別途お考えになるでしょうし、国としても、先生お話しになりましたような連絡会議に基づく決定に基づいて、その対策はこの事業とは別に進めていかなければならぬ、このように思っております。
  250. 鍵田節哉

    鍵田分科員 確かにこれは雇用問題全般を改善するために、特に大阪などの雇用問題が深刻だということでやられていることは間違いないのです。しかし、ホームレスになる寸前の方々もやはり何とか救済をして、仕事についてもらおう、こういうことでやっているわけですから、やはりホームレス対策にもなっておるわけでありますし、では十三年になったらそれは解決するのかというと、恐らくそんな簡単に解決するものではないというふうに私は思いますから、見通しが立つまでの間はそういうことを真剣に考えてもらいたい。これはやはり大阪府や市の関係者も同じ思いだというふうに私はとらえておりますので、ぜひともその辺は考えていただきたいというふうに思います。  それともう一つは、ホームレス対策というのは主に厚生省それから労働省が中心でございますけれども、どうも所管がもう一つはっきりしないということでございます。ホームレス問題の予算は幾らですかと聞いたって、片方のあれでは厚生省に聞いてくれ、片方は労働省に聞いてくれというふうなことで、結局ばらばらに予算なんかも出てくるというふうなことでございまして、いろいろな施策にしましても、一応協議会ができてはおりますけれども、しかし、やられていることはばらばらにやられているというような傾向もあるわけでございます。  来年から厚生労働省ということで一本の省庁になるわけでございますけれども、ホームレス問題について、これはこの局だ、これはこの局だというふうなことではなしに、やはり一本の窓口になってやっていただけるというふうなことが大事なのではないかなというふうに思いますので、その辺のことにつきまして十分配慮をしてこれから進めていただきたいというふうに思っておりますが、それらにつきまして、いかがでしょう。
  251. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 御案内のとおり、ホームレス問題連絡会議におきまして、ホームレス問題に対する当面の対応策というものを取りまとめまして、地方公共団体が行う自立支援事業について国が一定の補助を行うということで進めさせていただいております。現場におきまして、先生もいろいろ御指摘の点があろうかと思いますが、もちはもち屋でございまして、生活の支援、相談、宿泊その他のお話と、その中で職業相談なり就職援助という部分を労働省も一緒になって連携をとってやっているのが実態だと思っております。できる限り、ばらんばらんという印象を与えないような、連携をとった流れの中で、それぞれの行政の特色、役割を果たしていくように指導してまいりたいと思います。
  252. 鍵田節哉

    鍵田分科員 この問題につきましては、法律的な根拠というのですか、そういうものももう一つ、一体となった法律の体系があるわけではありませんで、厚生省厚生省なりの法律的な根拠に基づいてやられるでしょうし、労働省もそういうことでありまして、現状においてはやはりばらばらにならざるを得ないというのはわからないでもないのですが、しかし、将来の問題として、これは二万人そこそこの問題だから、そんな法律をつくったりなんかしなくても、予算の措置さえすれば何とかなるのだというふうな議論もあったやに私は聞いてはおるのですけれども、その中心になってやらなくてはならない都市の人たちに非常に大きな負担が来ておるわけでありまして、その人たちがもっといろいろな施策をとりやすい方策を考えた場合には、やはり法律というものが整備をされているということが大切なのではないか。  そういう意味では、特別立法というふうなことも視野に入れて考えていただきたいなというふうに思っているわけです。これらにつきましては、特に自民党の皆さんでも、地域の人もおりますし、関係する地域の選出の議員の方もいらっしゃって、議員立法ででもやろうかというふうな話も出ておるやに聞いておるわけでございまして、私は、できればそういう人たち協力をして、これはもう与党とか野党とか言わずに、一体になってやらぬといかぬ問題だと思っておりますが、やはり政府の方においてそういう特別立法というふうなことをぜひともやっていただければ、それぞれの関係する地元といたしましても大変助かるのではないかというふうに思っております。  そういうホームレス問題に対する一つの法的な根拠というものをきちっと位置づけるということが大切なのではなかろうかと思いますが、それらにつきまして、いかがでしょうか。
  253. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 ホームレス対策を強力に、また一体的なものとして実行していくためには特別立法が必要なのではないか、こういう御意見だと伺いました。  そういう御意見も十分根拠のあることだと思いますが、果たして、例えば今ある制度をただ屋上屋を積み重ねるという立法だけで十分であるのかないのか、また、そうであるとすれば、どのような内容のものを考えていくのか、まだまだ議論のあるところだと思っております。  当面は、政府としては、先ほど申しました連絡会議で決めました当面の対応策を着実に、また先生指摘のような連携、ばらんばらんということのないように実行していくことが必要なことだと思っておりますし、その推移を見ながら、また議論の成果を見ながら、先生の御意見も十分承ってまいりたいと思います。
  254. 鍵田節哉

    鍵田分科員 もちろん、いろいろ法律をつくる場合には関係する法規との調整などもありましょうし、簡単にはいかないのはよくわかってはおります。しかし、やはり関係する市町村なり、また都道府県なりがいろいろな施策を進めていく上において、その根拠となる法律が一本化してくるということは、施策を進めるに当たって非常に必要としておる内容でございますので、これは関係省庁とも連携をとって、ぜひとも特別立法ということで支援をしていく、そういうことを早急にひとつ研究をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  最後に、これも私、労働委員会でも、また建設委員会でも取り上げさせてもらってやっておるのですが、建設労働者の退職金共済制度の問題でございます。  中小企業退職金共済法第六十二条に、特定業種ごとの運営委員会の設置が定められておりまして、他の業種でも退職金共済制度があるわけでございますけれども、特に建設労働者の共済制度は非常に多くの対象者を抱えておりまして、同条の二項に、共済規程の変更、毎事業年度の事業計画、それから業務の運営に関し特に重要な事項などについては運営委員会の議を経なければならないというふうに定められておるわけでございます。  この運営委員会の委員の人数につきましても、この法律の六十三条で、二十人以内ということで、選出につきましても、同法六十四条によりまして、「共済契約者及び機構の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、労働大臣が任命する。」というふうになっております。  実際には、共済契約者というのは建設事業者ということになっておりまして、労働省所管の法律に基づきます運営委員会でありますけれども、そこに入っておるメンバーというのは全員が建設業者で、いわゆる有識者というのですか、そういう方も入っておられない。  そして、共済の原資というのは、政府が行います公共事業の土木事業とか建設事業の請負金額に一定の率をかけた共済金が積算をされて事業者に払われておる。それを原資としてこの共済制度があるわけでございますけれども、それが適正に労働者に交付されておらないということで昨年も大変問題になったわけでございまして、それらを建設委員会や労働委員会でも私も指摘をさせていただいたわけでございます。やはり、この運営委員会の健全な運営ということが大変重要ではないかというふうに思います。  そういう意味で、この運営に向けての委員会の構成の問題として、労働者の代表をぜひとも加えていただきたい。そういうことを今までも指摘をしてきましたし、またこの委員会の運営なり、さらには制度そのものの改善についてもいろいろ見直しをされてきつつあるわけでございますけれども、その見直しの重要な目玉として、やはりそこに労働者の代表を入れていくということが大切なのじゃなかろうか。ゼネコンさんの会長さんとか社長さんとか、おおよそこの運営委員会に余り関係のないような人たちが名前を連ねておるというような委員会では、実際に実効は上がらないわけでございます。  証紙の貼付から今度はIC化に向けて、また掛金の先払いといいますか、そういうものの実施をずっとしていくためにも、やはりそれらの見直しが必要でありますから、運営委員会のあり方を見直すという意味で、ぜひとも労働者の代表を入れていただくようにお願いを申し上げて、もう一問お聞きしたかったのですが、時間も参っておるようでございますので、その辺のお答えをいただいて、終わりたいと思います。
  255. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 建設業退職金共済制度のあり方についての御質問でございます。  この制度の枠組み、大筋というものは法律によって定まっておるわけでございまして、それについては、中小企業退職金共済審議会で審議をして定めております。その審議会には、当然、労働者側の代表者にも参画をいただいておるわけでございまして、個々の労働者側の代表者を通じて、労働者の御意見を制度に十分反映させていただいておるものと今は考えております。  運営委員会につきましては、原資を出すのが事業者側ということもありますでしょうし、具体的な運営について、例えば、資金の運用計画ですとか加入促進ですとか履行確保ですとかという具体的な運営についての議決を行うという仕組みとしてつくられておるわけでございまして、事業主の相互共済という立場から、法律でこのような仕組みになっておるわけであります。  これから、どういう方がいいかということについていろいろ御議論もあろうかと思いますので、とりあえず、当面はこの審議会の場を活用しながら労働側の御意見をこの制度に反映させていくとともに、今後の問題として考えさせていただきたいと思います。
  256. 鍵田節哉

    鍵田分科員 今の答弁、ちょっといろいろ問題がありまして、今までにもそういう答弁しかいただいていないのです。それではだめだ、実効が上がらないということで何回も質問をさせていただいておるので、ひとつぜひとも改善策をよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  257. 自見庄三郎

    ○自見主査 これにて鍵田節哉君質疑は終了いたしました。  以上をもちまして労働省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後四時九分散会