運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2000-02-23 第147回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年二月二十三日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 島村 宜伸君    理事 久間 章生君 理事 自見庄三郎君    理事 高橋 一郎君 理事 萩山 教嚴君    理事 町村 信孝君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 西田  猛君       逢沢 一郎君    甘利  明君       伊藤 公介君    石川 要三君       稲垣 実男君    遠藤 武彦君       小澤  潔君    大石 秀政君       大原 一三君    栗原 博久君       杉浦 正健君    田村 憲久君       高鳥  修君    津島 雄二君       中川 昭一君    中川 秀直君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       藤井 孝男君    船田  元君       御法川英文君    村田 吉隆君       村山 達雄君    森山 眞弓君       山口 俊一君    岩國 哲人君       上田 清司君    生方 幸夫君       古賀 一成君    五島 正規君       原口 一博君    日野 市朗君       肥田美代子君    横路 孝弘君       青山 二三君    石田 勝之君       佐藤 茂樹君    並木 正芳君       桝屋 敬悟君    青山  丘君       加藤 六月君    鈴木 淑夫君       木島日出夫君    中路 雅弘君       春名 直章君    平賀 高成君       矢島 恒夫君    辻元 清美君       濱田 健一君    保坂 展人君     …………………………………    大蔵大臣         宮澤 喜一君    文部大臣    国務大臣    (科学技術庁長官)    中曽根弘文君    厚生大臣         丹羽 雄哉君    農林水産大臣       玉沢徳一郎君    通商産業大臣       深谷 隆司君    運輸大臣         二階 俊博君    郵政大臣         八代 英太君    労働大臣         牧野 隆守君    自治大臣    国務大臣    (国家公安委員会委員長) 保利 耕輔君    国務大臣    (内閣官房長官)     青木 幹雄君    国務大臣    (金融再生委員会委員長) 越智 通雄君    国務大臣    (総務庁長官)      続  訓弘君    国務大臣    (経済企画庁長官)    堺屋 太一君    総務政務次官       持永 和見君    経済企画政務次官     小池百合子君    科学技術政務次官     斉藤 鉄夫君    環境政務次官       柳本 卓治君    大蔵政務次官       大野 功統君    文部政務次官       河村 建夫君    厚生政務次官       大野由利子君    農林水産政務次官     谷津 義男君    通商産業政務次官     細田 博之君    運輸政務次官       中馬 弘毅君    郵政政務次官       小坂 憲次君    労働政務次官       長勢 甚遠君    自治政務次官       平林 鴻三君    政府参考人    (警察庁長官)      田中 節夫君    政府参考人    (警察庁刑事局長)    林  則清君    政府参考人    (金融再生委員会事務局長     )           森  昭治君    政府参考人    (厚生省年金局長)    矢野 朝水君    政府参考人    (運輸省航空局長)    岩村  敬君    政府参考人    (労働省労働基準局賃金時    間部長)         佐田 通明君    政府参考人    (労働省女性局長)    藤井 龍子君    参考人    (日本銀行総裁)     速水  優君    参考人    (日本銀行理事)     永田 俊一君    参考人    (原子力安全委員会委員長    )            佐藤 一男君    参考人    (年金福祉事業団理事長) 森  仁美君    予算委員会専門員     大西  勉君     ————————————— 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   石川 要三君     藤井 孝男君   大原 一三君     田村 憲久君   亀井 善之君     大石 秀政君   津島 雄二君     御法川英文君   中川 秀直君     遠藤 武彦君   船田  元君     逢沢 一郎君   肥田美代子君     上田 清司君   石田 勝之君     並木 正芳君   志位 和夫君     中路 雅弘君   春名 直章君     平賀 高成君   保坂 展人君     辻元 清美君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     船田  元君   遠藤 武彦君     中川 秀直君   大石 秀政君     亀井 善之君   田村 憲久君     大原 一三君   藤井 孝男君     石川 要三君   御法川英文君     津島 雄二君   上田 清司君     肥田美代子君   並木 正芳君     石田 勝之君   中路 雅弘君     矢島 恒夫君   平賀 高成君     春名 直章君   辻元 清美君     保坂 展人君 同日  辞任         補欠選任   矢島 恒夫君     志位 和夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  分科会における政府参考人出頭要求に関する件  平成十二年度一般会計予算  平成十二年度特別会計予算  平成十二年度政府関係機関予算     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 島村宜伸

    島村委員長 これより会議を開きます。  平成十二年度一般会計予算平成十二年度特別会計予算平成十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  三案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁刑事局長林則清君、金融再生委員会事務局長森昭治君、厚生省年金局長矢野朝水君、運輸省航空局長岩村敬君、労働省労働基準局賃金時間部長佐田通明君及び労働省女性局長藤井龍子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 島村宜伸

    島村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 島村宜伸

    島村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。
  5. 岩國哲人

    岩國委員 おはようございます。民主党を代表いたしまして、政府予算及び政府経済運営について質問させていただきたいと思っております。  まず最初に、農水大臣にこれからの農業政策、とりわけ環境農業との関連等について二、三お伺いしたいと思います。  環境サミット会議京都で開かれ、日本の中でもまた世界各地で、こうした森林資源保護と、そしてCO2を減らしていく、そのためにも森林資源保護していかなければならない。  森林資源保護ということは、いろいろな、海にも関係してくることでありますけれども、そうした森林資源保護という中で、農水省林野庁が進めておられる樹木医制度出雲市も一番早くそういうことを採用させていただいたわけでありますけれども、この樹木医について、現在どれぐらいの数に達しておるのか、すべて全国都道府県樹木医制度は既に定着しつつあるのか、それから、ことしはどれぐらいふやすことを目標にしておられるのか、どのような効果があったのかを簡潔に、大臣の所感をお願いしたいと思います。
  6. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 樹木医制度は、今委員がおっしゃられたわけでございますが、岩國先生出雲の市長さんをやられたときに、林野庁に御提言をいただきまして始まったものでございますが、大きな木とか名木とか、そうした木の樹勢回復、保全を目的として、樹木保護に関する高度な知識と専門技術や地域の緑化指導者たる資質を有する方を財団法人日本緑化センター審査、証明するものであります。  平成十二年一月現在、七百一名が証明を受けており、約四年後には一千名に達するものと期待しておるところであります。これは、全国の各都道府県にそれぞれの樹木医がおりまして、一年間に約八十名養成しておるところであります。
  7. 岩國哲人

    岩國委員 これは農水省林野庁大変力を入れておられて、国内の普及が非常に定着しつつあるということで大変喜ばしいことでありますけれども、アジア各国も同じように森林資源保護に取り組んでいるわけでありまして、とりわけ、アジアの国の中には、日本森林資源を破壊したとか、あるいは森林資源にダメージを与えたという印象を持たれていることは、大臣も御承知のとおりであります。  とりわけ、酸性雨問題等もありまして、我が国もよその国のこととしてほうっておくわけにはいかない、そういう面から、中国のみならずアジア各国にこのような、環境外交あるいは資源外交の一環として、積極的に農水省林野庁としてよその国にもこのような制度を広めていくという考えはないのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  8. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 昨年の十一月及び本年の一月にはタイ国から要請がございまして、日本樹木医会調査団を派遣しまして、チークの大木の再生について技術指導を行ったと聞いております。  日本樹木世界各国樹木、それぞれ全部同じとは言えませんけれども、いずれにしろ、樹木医が海外で活動を行いまして、そして森林維持環境維持について役割が高まってくるということは極めて重要なことであると考えております。
  9. 岩國哲人

    岩國委員 アジア外交の面でいいますと、PKOだとかあるいは集団安保だとか、おどろおどろしい言葉もよく飛び交うわけでありますけれども、こうした樹木医を中心とした緑の平和部隊あるいは緑の環境部隊というのは、どこの国からも私は歓迎されるものだと思いますし、ODA予算の中でもしっかりとその予算をとっていくべきではないかと思います。  きょうは外務大臣においでいただいておりませんけれども、もし、農水大臣あるいは大蔵大臣の方で、ODA予算の中でこの樹木医制度についてどれだけの予算が配慮されているのか、お答えいただければお答えいただきたいと思います。
  10. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 樹木医については、先ほど申し上げましたように、各国からの要請があれば派遣して、やるという形になるわけでありますが、そのほかにも、日本としましては、森林再生のためのODA予算等やっておりますので、樹木医のほかにも、いろいろ緑の再生に努力をしていくということは大事だと思います。
  11. 岩國哲人

    岩國委員 ODA予算の中でしっかりととられていないような印象を受けますけれども、そうしたタイに対する技術指導、いろいろな援助にしましても、これからしっかりとODAの中でそういう枠もとっていくという方向で取り組んでいただきたい、そのように思います。  私も、小さいときから農業をやっておりましたから、今でも農業にはこだわりがあります。農水大臣が積極的に森林保護あるいは農政の推進に取り組まれることを希望いたしまして、もう一つ、今度は海の問題、漁業資源確保について、大臣取り組みについて質問させていただきたいと思います。  大臣の選挙区岩手県、私も何度か自分で車を運転しながら回りました。田野畑村、宮古市、大船渡、随分きれいな海岸があり、そして、それぞれのところで漁業を盛んにしようという取り組みが首長さん、議会の方でなされておりますけれども、そうした漁業資源確保ということで、毎年七月二十日に海の日が行われております。その海の日からかなり離れた日に、全国豊かな海づくり大会というものが、相当寒くなってから、十一月とか十月に行われているわけですね。  これは、なぜ海の日の七月二十日に合わせて豊かな海づくり大会というものは行うことができないのか、わざわざ寒くなって人が海に行かないような時期にこういうことをやらなければならない理由は何なのか、簡潔にお伺いしたいと思います。
  12. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 寒いときになぜやるかという御質問でございますけれども、これは主催が各県ということになっておるわけでございまして、今まで平成十一年度まで十九回でございますが、主催地の都合かと思いますけれども、七月にやっておりますのは三回、九月にやっておりますのは四回程度ありまして、いつも寒いときにやっているというわけではないと思います。
  13. 岩國哲人

    岩國委員 私は、農水省に問い合わせて、全国豊かな海づくり大会、それは、ローカルにいろいろなところでやっているのは私も知っております。スイカ割り大会とか、そんなことはしょっちゅう夏休みになったらやっていることですから。しかし、それは海づくり大会とは言わないのです。農水省がちゃんとお金を出して、そして平成十一年は三百五十六万七千円、農水省として支出しておられるでしょう。京都とか徳島とか毎年一カ所を指定して、しかも、それが十月五日とかあるいは十一月十五日とかそのような日に行われているから、私は、かなり寒い時期で、いわゆる海の季節と言われるイメージとちょっと違うんじゃないか、もっと夏休み子供たちが海に親しむようなときにこういうことをおやりになった方が、同じ予算にしても小さな予算で大きな効果が出るのではないか、そういう角度から今質問しているわけです。  全国豊かな海づくり大会、ことしもまた十月か十一月に行われるかもしれませんけれども、これを夏休みに変更するお考えはおありですか、その一点だけお願いします。
  14. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 これは政府が命令してやるわけじゃないわけでございまして、主催県と相談してやる、こういうことでございますね。ですから、望ましい時期に開催をするということが大事だと思います。  予算は、確かに三百二十万、来年度の予算はとっております。
  15. 岩國哲人

    岩國委員 また、漁業資源確保、これは、穀物資源確保も大切ですけれども、食料としての漁業資源確保、これに対して日本はもっと取り組んでいく必要が出てきているのじゃないかと私は思います。  そういう観点から、非常に気になることは、去年の十月の終わりに水産庁の方で、魚がだんだんなくなってきているときに、「釣りバカ日誌」じゃありませんけれども、釣りをする人がふえたから、今度は釣りをする人に一人当たり釣る魚の量を制限すると。  私は、海洋国家日本と言われているところで、人が日曜日に魚を釣るぐらいのことはもう自由に釣らせた方がいいと思う。これは世界でも恥ずかしいことじゃありませんか。これは、チベットかなんかでやっているなら話は別ですけれども、海に囲まれて、これだけ小さいときから海洋国家だとか海の国とか言われているところで、何匹以上魚を釣ったらだめだとか、あるいはライセンスだとか余り魚を釣らないようにしてくれとか、いつからこんな寂しい話になってしまったのか。漁業資源はそんなに枯渇しつつあるのか。ならば、もっともっとそういうことに真剣に取り組むべきじゃないかと私は思うのです。  こういう点について、この漁業資源確保について、どれだけ資源増強に取り組んでおられるのか、それについて大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  16. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 これは重要な問題でございまして、確かに海には豊富に魚がいるように見えますけれども、限られた資源であります。現在、釣り等の、遊漁と言っておりますが、これはやはり資源管理上無視し得ない状況になっております。例えば、遊漁等でとられる魚の量は三万トンないし五万トン、私はそう考えておるわけであります。  したがいまして、種苗放流の行われている魚種について、漁業とともに、遊漁についても小型魚の採捕制限や採捕禁止期間の設定などの適切な管理を実施し、必要に応じて遊漁関係者にも応分の種苗放流経費の負担を求めるなどのモデル的な管理の仕組みを検討するということでございます。  例えば、川の場合においては、アユをとる場合は、これは放流されておるわけですから、当然ライセンスということになりますね。外国でも、例えばシアトルに行ってサケ、マスを釣るという場合においては、ちゃんとライセンスを払って二匹までしかとれない、こういうことになっています。  資源を大事にするという観点からいいますならば、無制限じゃないのですから、そういう観点から資源を大事にしていくということでやっておるわけでありまして、これを無制限に全部認めたならば、ここにも資料がありますけれども、例えば太平洋海域において、神奈川県においては、要するに、釣り客の方がマダイにおいては漁業者よりも多くとっている。静岡県においてもそうですね。数字はもう一回調べますけれども、釣り客の方が専門漁業者よりもマダイをとっているという統計が出ているのですから、そういうことをよく考えていただきたいと思います。
  17. 岩國哲人

    岩國委員 そういう放流したり金のかかった魚をとる場合にはそれぞれの採算ベースというのはあろうと思いますけれども、水産庁考えているのは、広い海域での遊漁、つまり遊び回っている魚、パスポートビザもなしによその国からやってくるような、そういう魚を対象にして魚をとろうというときに、こっちだけはライセンスが要るというのも何かぴんとこないような話だと思うのです。  例えば、島根県で例をとりますと、長い海岸線があり、中海があり、宍道湖があり、隠岐島があり、そういうようなところでは、どこの国の魚だかわからぬのがいっぱいパスポートビザもなしに遊びに来るわけですから、それを対象にして魚を釣ろうというのがこれまた楽しみ一つだろうと私は思います。  小さな海域で、あるいはお金をかけてアユを放流した、それはやはり採算性からいってライセンスを取らなきゃいかぬということはあるでしょうけれども、そういう広いところで伸び伸びと釣りをしたいという人に、わざわざ水産庁が、お役人がそのライセンスを渡したりなんかして役人仕事をふやして、魚は減る、役人はふえる。一体、水産庁は何をやっておるのですか。水産庁としては、役人をふやすことが目的なのか、魚をふやすことが目的なのか。現実に、魚は減って、役人仕事はふえるというのが水産庁考えていることでしょう。この点について回答をお願いします。
  18. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 今、海洋法がなぜ世界各国で条約としてとられたか。これは資源維持していくためですよ。どんなに広い太平洋であっても、私だって漁師やったのですから、それは今まで、例えば私どもの中学生、高校の時代は、目の前でイカを釣ったし、目の前でイワシをとった。今は資源がなくなって、かなり沖合まで行って、島影が見えないようなところでとっているのですから。だから、二百海里体制というのは、資源をいかに大事にして、各国同士でやっていく。  だから、パスポートが魚にあるとかないとか、アユだって、天然のアユもあれば、人工アユもあるわけですから。そういうことを考えれば、あえて言いますならば、要するに、種苗放流経費、つまり適切な資源管理するために現在種苗をやっておるような魚種、例えばサケマダイ、ヒラメ、こういうものはできるだけ遊漁等については制限をする、まずモデル的な方法でやってまいりたい、こういうことです。
  19. 岩國哲人

    岩國委員 要するに、農水省にとって、魚をふやすことよりも役人をふやすことの方に何か熱心に取り組んでおられるような制度の導入は、私はぜひやめていただきたい。漁業資源確保各国それぞれ協調しながらもちろんやっていること、大臣のおっしゃるとおりであります。私もよくその点は理解しておりますけれども、せっかくの週末のそういう楽しみというものを奪わなければならないような、役所仕事がまたそれでふえるということに対して、一般釣り人はどう考えているのか、その辺もよくお考え合わせいただきたいと思います。  漁業資源確保という点が非常に大切だということ、大臣のお考え、よくわかりました。それに関連して、島根県の中海干拓事業、あれは漁業資源の宝庫と言われているところです。そこを干拓して、そして売れもしない、売りにくい干拓地を一生懸命これから、県庁の役人さんなんかも売り込んでいかなければならない。これも、魚を減らして役人をふやす一つの例ではないかと思うのです。  この中海干拓事業について、現在調査審議会検討待ちということですけれども、大臣としては、この中海干拓事業中止とか続行するとか、そういう結論をいつごろをめどに決断される予定なのか、それを簡単に回答をお願いいたします。
  20. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 現在、本庄工検討委員会において御検討をいただいておりまして、平成十一年三月からこれまで九回開催をいたしておりまして、現在代表的な三つの利用案について検討をいただいているところでありまして、その検討を十分いただいた上で、島根県等と協議の上、事業の取り扱いを判断するということになっておりますので、めどといいましても、まだもう少しかかると思います。
  21. 岩國哲人

    岩國委員 もう少し、もう少しで、これはもう四十年も続いている事業でありまして、民主党としてもこの問題についてことしから積極的に、事業の大幅な見直し、できれば中止という方向政府に取り組んでいただきたいという考えを持っておりますので、ぜひとも、魚はふやす、役人は減らす、そういう方向農水省としても取り組んでいただきたい。そのことをお願いして、農水大臣への質問を終わらせていただきます、お急ぎだと思いますから。  続けて、今度は通産大臣にお伺いしたいと思います。  最近、日本資本収益率あるいは株式資本収益率が、アメリカとの比較の上で非常に低下してきておるわけです。例えば九八年の数字でいいますと、これはいろいろなところの調査がありますから単純に比較するというわけにはいきませんけれども、日本経済新聞の調査によりますと、資本収益率が、アメリカでは一五%、日本では〇・二%、これは七十五対一の開きがあるわけです。  いろいろ統計に不備なところがありますから、そしてまた九八年というのは、アメリカが絶好調を続けているとき、日本は最も苦しんだときという、格差の一番ひどいときかもしれません。しかし、格差のひどくないときをとりましても、かなりの差がこの十年、十五年の間に広がってきておる。言ってみれば、日本という国は、同じ資本を投下しても、経営者にとって、投資家にとってリターンの少ない国になるということはもう定着しつつある。それはなぜなのか。  通産大臣として、そういう資本収益率の構造的な格差というもの、あるいは定着した格差というものの原因は、一つ、二つ、何が原因だとお考えになっていらっしゃるのか。  アメリカに対して、労働者の質が急激に低下してきたのか、私はそうではないと思います。あるいは税制が急激に高くなったのか、そうでもないと思います。日本人の経営者の質が急激に悪くなってきたのか、あるいはそこら辺にも少しは関係あるかもしれません。通産大臣として、アメリカ日本とを比べた場合に、産業資本家として、投資家として、利益の上がるアメリカ利益の上がらない日本、この原因は何だと思われますか。
  22. 深谷隆司

    深谷国務大臣 岩國委員指摘のように、我が国の企業の収益率というのがアメリカに比べて非常に低いということは、そのとおりであります。もちろん、今御本人がおっしゃったように、統計の仕方がいろいろありまして、株主資本に対する税引き後の収益率、ROE、あるいはその他ございますけれども、おおむね御指摘のとおりの差があることは、そのとおりでございます。  ただ、日本もかつて一六%ぐらいの時代もあったわけでありますが、振り返ってみますと、石油ショック以降、とりわけバブル崩壊以降に収益率が急激に落ち込んでいった、そんな状況が見られます。ですから、そういう点については十分に思いをいたして収益率を上げなければ、ただいまおっしゃった指摘のような状態になっていくというふうに思います。  一体どこが原因かと聞かれますと、いろいろございますが、例えばバブル期の問題を考えてみれば、将来の収益率を過大に評価し過ぎた、そして、そのために過大の投資を行って、結果において我が国企業の資本収益率は非常に低くなっていった、これも一つの要因だろうと思います。  また、収益率が低い場合に、アメリカなどでございますと、これはもうあなたはアメリカ経営者側におられましたから御存じでありましょうが、直ちにレイオフを行うとか、関連企業を切り捨てるとか、対応が非常に早い。日本の場合には、雇用の確保だとか、下請企業についての、関連企業の存続に配慮するとか、そういうところが思い切った改革が行えないということの一つの理由になっているのではないだろうかと思うのであります。  企業の効率化とか、あるいは資本の収益性を向上させるということは大事ですけれども、単に減量のみを目的とした合理化というのは、やはりこれから考えていかなければならない。そういう意味では、低収益部門の合理化、それにあわせて、今後成長が見込まれるような高収益部門の拡大を並行して進めていく、我々は選択と集中と言っておるんですが、そういうような方向に努力していくことが大事だと思います。
  23. 岩國哲人

    岩國委員 アメリカ経営者といえば、すぐにレイオフだとかペイオフだとか、そういうことをやりそうだという印象がありますけれども、その前に彼らがやっていることは、企業そのもののリストラクチャリングの方に先に手をつけるわけです。それでどうしてもいかないときにはレイオフもやるでしょう。企業そのものの分社化、例えばメリルリンチが一遍に二つの会社に分社してしまった、二十年前の話ですけれども。最近は日本でも、NTT、東芝、いろいろな会社が次々と、思い切って一つの会社を三つ、四つに分割することによって、それぞれの生産性あるいは経営力を高めていこうという取り組み、それが本当のリストラクチャリングというものだ。  会社の構造、組織をいかに変えていくか、あるいは、足りない部門があればよその会社のその部門を買い取ってくるということによって補強をするか。ですから、社員の数、工員の数に手をつけるというのは、二弾目、三弾目の策だろうと私は思います。  こうした資本収益率、それからもう一つは株主資本収益率という考え方もありますけれども、これから日本の大きな長期的な目標として、堺屋長官にお伺いしたいと思いますけれども、日本はいつになったらこのアメリカ収益率に追いつくことができるのか、どれぐらい時間がかかりそうなのか、その辺を端的にお答えいただきたいと思います。
  24. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員指摘のように、利益率という場合にいろいろなことがございます。  委員指摘になりました総資本事業利益率、いわゆるROAで見ますと、日本も九〇年ぐらいまでは大体アメリカとそう差がございませんでした。その後、九二年にアメリカがどかっと下がりまして、これがアメリカのうみ出しをやった後でございましょう。その後、大変差がついてまいりまして、九八年の統計で見ますと、アメリカが五・九四%、日本が三・〇〇%というような数値になっております。  もっと大きな差が出ておりますのは、先ほど通産大臣がお答えになりました株主総資本利益率、ROEの方でございますが、こちらでございますと、大体七〇年代の前半までは日本アメリカ以上にもうかっていた。それが、七〇年代の後半に入りますと徐々に下がってまいりまして、九〇年代に至りまして大変悪化して、九八年にはほとんどゼロ。これは金融機関を除いてでございますが、金融機関を入れたらマイナスになると思いますが、ほとんどゼロという状態になっております。  この原因は、委員指摘のような企業の経営の方法、どんどんと分割するとか合併するとか買収するとか、より合理的に、アメリカ資本を、資源と労働力と資金をより合理的に使うという方法が非常にとられた。これは、日本も今、法改正その他でできるようにしようという努力をしております。  そういうことがありますが、もう一つ、やはり根本に、株主に報いるという精神がアメリカの場合非常に高いと思うんです。日本は、六〇年代、七〇年代の高度成長から、株主に配当するよりも内部留保をして、それで次の投資をする、そして従業員をふやし、終身雇用を維持するというような方向に経営哲学が変わっていきました。  ところが、それはそれでよかったのでございますけれども、九〇年代、あのバブルのときに、過剰投資をして、しかも従業員も終身雇用、過剰施設も抱える、過剰負債も抱える、こういう状態が続いてまいりました。それをアメリカのように明確にうみ出しをしなかった、バブルの処理がおくれたということが今になってどっと出てきている。  したがいまして、ここで日本が経営改革をするようにいろいろな法改正、税制その他いろいろな改正もしておりますが、これが実りまして、この過剰施設、過剰雇用、過剰負債というものが整理をされ、一方で、新しい分野がどんどんと成長してきて雇用を吸収するということになれば回復してくると思います。  九九年の法人季報で見ますと、その傾向はかなりあらわれておりますので、来年、二〇〇〇年度、そして二〇〇一年度ぐらいになれば日本も、アメリカほどいくかどうかわかりませんけれども、現状よりはかなりよくなって、新たな投資を呼ぶようになると期待しております。
  25. 岩國哲人

    岩國委員 かつては、日本の経済は一流、日本の経営方式は世界でお手本だ、こう言われた時代があったことは長官も御承知のとおりでありますけれども、最近の現象を見ますと、山一証券がアメリカの経営の下に入る、日興証券もアメリカの経営の下に入る。あるいは、今度の長銀もアメリカの経営の下に入る。日産自動車に至っては、至ってはと言うと極端ですけれども、フランスの経営の下に入っていく。次々と日本の誇る企業が、有名企業が、外国の経営の助けをかりなきゃならない。私は、経営力、経営者の力そのものも相当劣ってきているのじゃないかな。  物づくりに関しては、物をどれだけ早くつくるか、安くつくるか、多くつくるか、丈夫につくるか。早く安く多く丈夫に、この物づくりの方式だけは世界に冠たる一流だったかもしれないけれども、考えてみたら、日本経営者のやり方、経営者の質というものは、決して一流ではなかったのじゃないかなということを私は感じております。そうした、経済は一流、行政は二流、政治は三流と長く言われてきましたけれども、その経済が今政治と肩を並べているという現状を私は大変残念に思っております。  今長官がおっしゃいましたけれども、三つの過剰ということをよく言われますけれども、問題は三つの過少じゃないかと思っているんです。  まず、お金に給料を払わない。利子が少な過ぎる、だからお金が生き生きと働こうとしない。三つの過少の最初はゼロ金利。つまり、利子が少な過ぎる国にどうやってよその国の金が来るのか、国内のお金が生き生きと動き出すのか。  二番目の過少は雇用です。それは、経営者の立場からいえば過剰の方に数えられているかもしれませんけれども、生活者、労働者の立場からいえば明らかに、失業率が高いということは、雇用が過少、職場が少な過ぎるということです。  三番目の過少は安心です。安心が少ない。外国の文化あるいは気風からいいますと、不安があれば一生懸命働くという国もあると思います。しかし、私はいろいろな国を見てきましたけれども、日本人というのは、どうも不安があるから余計元気を出して働こうというよりは、むしろ安心だという安心感をもらったときの方が能力や努力を余計するんじゃないかと思うのです。安心をもらったら怠けてしまう、安心をもらったら働かないという民族とは違って、日本の場合には、一生懸命努力しても、失敗しても、とにかくセーフティーネットが社会にはあるんだよというものが十五年、二十年前まではあったから、みんなが元気を出して働いたと思うのです。  今、いろいろな生活不安、社会不安、将来不安というものがあって、しかも規制緩和。これにはいい面も悪い面もいろいろあろうかと思います。いろいろな仕事を始めても、すぐに規制緩和で、得べかりし利益はそこでたちまち失われてしまいはしないか。となると、日本人はなかなか元気を出して新しい分野に行こうとしない。この規制緩和も、景気のいいときにはいいのですけれども、今のように景気の悪いときに言い過ぎると、新しい事業を起こそうという人の元気や意欲をそいでしまうという逆効果があるのじゃないかと思います。  いろいろなことを申し上げましたけれども、簡潔に、もし堺屋長官の御所感がありましたら聞かせていただきたいと思います。短くお願いします。
  26. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員各国よく御存じで、いろいろな例を引いて申されましたけれども、最後の一点で、規制緩和は、不景気、景気のよくないときにやめた方がいいのじゃないかという点だけは非常に問題だと思います。私は、こういう時期だからこそ、新しい産業を起こすために、規制緩和をすることによって、新しい分野がどんどん成長して、雇用がふえ、投資対象がふえ、そして給与も出てくる。そして、だんだん資金需給が活発になれば、ゼロ金利も解消する、そう考えております。  日本経営者が今や三流じゃないかという御指摘でございますが、これはまさに、私の申します知価革命、知恵の時代でございまして、日本経営者は、規格大量生産で全員の合意を得て企業を経営するのには向いておったのですが、ちょっと時代の変化についていけなかったという点はあろうかと思います。  私は、日本の経営は一流とは言えなくなってきたと思いますが、政治は三流と思っておりませんから、頑張っていただきたいと思います。
  27. 岩國哲人

    岩國委員 私が申し上げました規制緩和について、規制緩和は全面的にやめた方がいいということではなくて、規制緩和はすべて正しく、規制緩和はすべて経済の活性化につながるという言い方は必ずしもできないのじゃないか。一部の業種、それから規制緩和のタイミングによっては、活性化がかえって萎縮させるようなタイミングもありはしないか、そのように考えるわけです。  例えば、商店街にしましても、酒屋さんが物を仕入れる、あるいは店内の改装をきちっとやる。しかし、免許制が廃止になって、あそこでもここでもみんなやり出すんだったら、もうそろそろ店じまいでもしようかと。私は、個人的には、酒屋さんの免許制はしっかりと守っていくべきだと思います。ああいういい規制は残すべきだと思います。  ディレギュレーションが必要なものとリレギュレーション、もっと規制を強めていくもの、この選別をきちっとしないと、仕事をやりたい人も意欲はわいてこないと思います。そういう酒屋さんにしても、それは、売り方によって、だれでもかれでも酒を売らせるから薬になるはずの酒が毒になったりするわけで、それは飲む人の責任もありますけれども。そういう行政の対応というものも、やはり一般の商店街やそれから経営者に元気を出させるような、引っ張り出すようなタイミングというものが私は規制緩和にも必要だということで申し上げたのであって、私は決して規制緩和反対派でもなければ、民主党は規制緩和に全党を挙げて反対しておるということでもございませんので、その点だけは訂正したいと思います。  次に、通産大臣にお伺いしたいと思います。  今、アメリカの貿易赤字が二千七百十三億ドル、年間でついに最高になりました。去年に比べて六五%という大幅な赤字がふえております。対日赤字を見ましても、去年に比べて一五・五%アップ、これもまた最高です。こういう日米関係の中で、貿易赤字が急激に膨らんできている。こういう現状について、どのようにお考えになっているのか。そして、通産大臣として、対日赤字というものはどれぐらいまでが許容範囲と考えておられるのか。  二年前に消費税を上げるときに、内需がこれでもって下がってしまう、また、我が国からいえば貿易黒字がこれでふえるんじゃないか。そのときに三塚大蔵大臣あるいは尾身経済企画庁長官は、一時的には貿易黒字がふえるかもしれないけれども、それはごく短期的であって、すぐに正常なところに落ちつきますと。それ以後、どうですか。落ちつくどころか、どんどんふえてきておるじゃないですか。あのときの見通しは間違っておったのか。あるいは、通産大臣として、対日赤字の許容範囲はどれぐらいまでが許せる範囲と考えておられますか。
  28. 深谷隆司

    深谷国務大臣 日本は貿易立国でありますから、できる限りの貿易の活動を拡大するという一方においては、必要性があります。他方においては、日米関係で申し上げますと、このような赤字の問題がしばしば日米関係の大きな問題になっておることも、そのとおりであります。どこが限度かというのは、これはもうアメリカ日本との外交問題の上で落ちつくところと言うしか言いようがありませんが、いずれにしましても、国内の消費が高まらないことにはこれらの解決策になりません。ようやく経済の明るみが出てまいりましたから、ここをしっかり考えて、何とか景気回復をして国内の消費を高めていく、それが最大のポイントではないかと考えています。
  29. 岩國哲人

    岩國委員 この貿易赤字の問題と並行して今国際的に問題になっておりますのが原油価格、これが三十ドルになってきた。これはこの委員会でも何人かの委員質問されたわけですけれども、堺屋長官、日本のこれからの順調な景気回復のためには、原油価格は何ドルまでだったら許容できる範囲と考えておられるのか。既に三十ドルはもう完全に、これからの順調な、あってほしい筋書きに障害を来すのか、三十ドルが定着した場合に。あるいは、三十ドルまでは許容できるとお考えになっておられるのか。〇・六%という宮澤大蔵大臣の見通しもあります。来年はできれば一・〇%、そういう筋書きにとって、この三十ドルというのは既に阻害要因になりつつあるのか、そこまでは許容できるとお考えになっておられるのか、その点を端的にお願いいたします。
  30. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 経済見通しを立てる場合には、為替のレート、原油の価格など一定の水準を想定しておりますが、それをかなり上回っていることは事実でございます。  しかしながら、現在、日本の経済に与える石油価格の影響は、石油ショックの当時に比べますとはるかに小さくなっております。一九八〇年ごろでございますと、八〇年のモデルで計算をいたしますと、大体、石油価格が一〇%ほど値上がりいたしますと卸売物価が一・数%上昇するというような関係にありました。それが今、〇・二%。消費者物価に至っては〇・一%でございます。為替と石油価格と両方の動きがございますので、最近ちょっと円安に引かれておることも原因ではございますが、現在の状態でございますと、ガソリン価格はやや上がっておりますが、灯油とか軽油はむしろ需給の関係で上がっておりません。  そういうこと全体で考えますと、これより幾分上昇しても日本経済に破壊的な打撃を与えることはあり得ない、石油ショックのようなことはあり得ないと考えております。
  31. 岩國哲人

    岩國委員 次に、日長銀の売却問題についてお伺いしたいと思います。  越智長官の最近のいろいろな御発言の中で、私は決してすべてを同感するわけじゃありませんけれども、日本の銀行にも劣後債を発行させて、その結果としてマーケットに格付を出させてはどうかと。私は、こういう考えは非常に新しい発想であり、すばらしいことだ、そのように思っております。もう一つ、外形標準課税についても敢然として、東京の国会議員でありながら、はっきりとそういう懸念を一番先に表明された。私は、この点についても大いに賛意を表するものであります。  しかし、この日長銀の売却については、幾つかの大きな疑念が残ったままで今進められつつあるのじゃないかと私は思います。  そうした外国へ売却した一つの理由として、そのときの記事あるいは説明等の中で、こういう外国の資本、外国の経営というものが入ってくることによって、我が国の銀行にはないようないろいろなノウハウとかそういうものが習得できる、そういうプラス効果、見えざる効果もあるんだという御説明がありましたけれども、具体的にどういう金融技術がこのリップルウッドから期待できますか。  例えば、三菱銀行とモルガン・スタンレーとを比較した場合、私がおりましたとき、三菱銀行から研修生がモルガン・スタンレーに毎年来ておりました。三菱銀行はそのほとんどを習得し、レベルは、全部同じとは言いませんけれども、今、三菱銀行のアニュアルレポート、モルガンのアニュアルレポート、両方を比較して、もちろんそれは印刷された段階ですけれども、三菱銀行はもうモルガンのやることは全部できるぐらいの品ぞろえを持っておるんです、金融サービスにおいて。  これに加えて、ニュー長銀、新生銀行はどういうものが持ち込めると期待しておられるのか、それをお話しいただきたいと思います。
  32. 越智通雄

    ○越智国務大臣 長銀の破綻した後、御存じのとおり、多くの方が一応候補として名乗りを上げられました。それを選別していく中で、やはり、国際的に注目されている案件でございましたので、国際的に評価されるような相手を選びたいというのは、当時の選考条件の四つほどの一つに入っておりました。  その当時、金融再生委員会としては、いろいろな条件の絞り込みをしていった結果、最後に、日本の二つの銀行による連合と、そしてリップルウッド・ホールディング・カンパニー。これは、御存じのとおり銀行ではございません。そういう出資者を集めてくる機能を持った、ファンドマネジャーみたいなものでございますが、それが入ってきまして、そして私が着任する直前の九月二十八日に、リップルウッド・ホールディングの会社が中心になってつくるパートナーズになりました。そのパートナーズの中に、ドイチェバンクとかメロンバンクとか、十数社が出資者になる中に銀行が幾つか入っております。そういうところから、総合的な、新しい銀行経営についてのノウハウあるいは人材、そういうものをもらえるのじゃないか。  結果としましては、頭取は、シティバンクの頭取の経験のある八城さんが入りましたし、彼の意見を聞いておりますと、今先生のおっしゃった日本にないやり方としては、やはり機械投資がかなりふえると思います。今までの日本の銀行のように人件費が非常に多いという格好じゃなくて、機械の投資をしたいと。また同時に、日本の銀行の機械投資は、従来、どちらかというと勘定型でございました。勘定を合わせる方の機械が多うございましたが、彼らの場合には、インフォメーションのそういう投資を広げたいと。現実に、経営陣と申しますか執行部と申しますか、そこら辺にはそうした外人の方、インド人を含む外人の方々が入ってきまして、インド人は今機械に非常に強うございますから、そういう格好で新しい経営をすると。  そこに、日本の銀行が拝見していて、参考になるものが出てきてくれるんじゃないか、刺激になるんじゃないか、そういう期待を持って今見守っているところでございます。
  33. 岩國哲人

    岩國委員 金融再生委員会から取り寄せてもらった三菱銀行のいろいろな金融サービスのメニューと、それから外国の銀行、例えばモルガンあたりの金融サービスのメニューとを比較して、日本の銀行は遜色が全くないところにもう既に来ておると私は思います。ですから、そういった外国の経営を持ってきたから、あるいは外国の資本が入ったから、ここに日本の土壌に育っていなかったような新しい芽、新しい苗が育つだろうと期待する時期は、もう既に終わっていると私は思います。  むしろ、約四兆円ですね、いろいろなお金を投入して、それだけのお金をかけてこういう銀行を残さなければならなかったんだろうかという疑問の方が一般国民の間に非常に広がっているわけです。  我々だから長銀というのは知っています。本店がどこにあるかも知っています。しかし、一般国民の中で、長銀の本店はどこにあるのか、どういうサービスをしているのか、取引したこともない、口座を持ったこともない、行員に会ったこともない、そのような銀行のために、みんなが四万円ずつお金を出して、五人家族で二十万円も出して、二十万の預金をしたこともない人が二十万円のお金を負担する。まあ、これは公的資金を拡大解釈した場合にはそういうことになるわけですけれども、そういう印象でとらえた場合に、本当にこの銀行は残してよかった銀行なのか。ましてや、この銀行を外国に渡したから外国からいろいろと見えざるメリットも出てくるんだという説明は、余りにも甘いと私は思うのです。  例えば、資料提供をいただきましたけれども、この中で、合意書の中で、二千五百から二千七百五十億円の含み益というものが、昨年の九月、ここに掲示されていますけれども、これは一月末でどれだけの含み益に変化しているのか。  それから二番目に、この中で、長銀が持っている株式を市場あるいは預金保険機構へ売却する、そのときに、政策上必要な、あるいは営業上必要な株式というグループがあって、それについてはいろいろと縛りがかけられています、売却について。この営業上、政策上必要な株式という認識は外国にはないものです、銀行は株式を持たないというのが一つの常識になっておりますから。その株式保有について、政策上必要とか営業上必要という言葉がここへ出てくる。  政策上必要というのはどういう政策なのか。あるいは、営業上必要な、日本では、営業するためには株式が必要だという認識がここへ出てきている。これは、政府の公式文書では初めてじゃないかと思います。この点について簡潔に、よろしくお願いします。
  34. 越智通雄

    ○越智国務大臣 今幾つかの御質問がございましたが、一番最初のところの、この銀行を残さなきゃいけなかったかどうかという御質問というか所感がありましたけれども、これは再生法では、日本長期信用銀行並びに日本債券信用銀行は、特別公的管理になりました段階で清算の手続はございません。必ずどこかへ売却と申しますか渡すことになっておりまして、完全に破産、清算するという手続はないわけでございますので、それも、集中的にやれと書いてありますので、急いでやれと。そういう意味ですから、残すということは再生法では前提になって、やっているわけでございます。  それから、二千五百億から二千七百五十億という数字を去年の九月に使いました。そのときには、ここのいわば含みがあるということが、結果的には最終的に引き受ける契約の一つのポイントになったと思いますが、今幾らになったかと言われますと、最近の株価の上昇のおかげで、約千九百億ぐらい上がって四千四百億ぐらいになっていると思いますので、二千五百億分は資本に入れるわけでございまして、新生長銀の資本に入れる。千四百億円分は、その後に膨らんだ赤字あるいはその他のいろいろな問題を消しまして、三兆六千、これは九月現在での負担をしなきゃならない金額と思っておりましたが、その金額を全く変えることなく、約三兆六千というそこら辺の線を崩すことなく最終合意書にまで至ったわけであります。  なお、保有株式を二手に分けてとおっしゃいましたが、営業上必要な株式というのは、当然銀行が特定の企業に金を貸しておりますと、日本のことでございますから、お互いに株式の持ち合いその他をしておりますので、殊に長期信用銀行でございますから、期間の長い金を貸している。その相手先の株などは持っているわけでございますので、これを市場に出すのではなくて、預金保険機構に委託いたしまして、何と言えばいいのでしょうか、塩漬けにして当分の間売らない、そういうことと、投資目的で、全然そういう融資関係はないけれども持っていたものは処分していく、そういう区分けと御理解いただいていいんじゃないかと思っております。
  35. 岩國哲人

    岩國委員 ニュー長銀、新生長銀が払うべき税金について、東京都の法人事業税あるいは日本の法人税というものはこの方程式の中に書いてありますけれども、今話題になっております外形標準課税、銀行課税がこの方程式の中に書かれておりませんですね。それは想定されておらなかったからこの契約書の中には入っていない、このように理解してよろしいですか。その点だけ確認させてください。
  36. 越智通雄

    ○越智国務大臣 二月九日に最終合意書をいたしました。二日前の二月七日の午後の御発表でございました。もちろん、想定はいたしておりません。  しかし、直ちに試算といいますか、いたしましたところ、大きな変化は出てこないで済むという判断で、それはいずれにいたしましても、最終合意書に決めました数字は、もう一遍予備的貸借対照表を二月二十九日現在でつくりまして、それから二月たって最終確定的な貸借対照表をつくる過程において吸収でき得る範囲の数字だ、このように思っております。
  37. 岩國哲人

    岩國委員 その吸収し得るという認識は、そのときにあったかどうか。もしそのときにそういう吸収し得る範囲であるという認識があるとすれば、政府、大蔵省、あるいはいろいろな関係、経団連から全銀協からおっしゃったことと、随分認識が違うように思うのですね、これは経営再生に大きな支障があるということを根拠に反対しておられたわけですから。それが、この大きな取引が同時進行しておった。外国に長銀を売り渡す、その売り渡し値段が十になるか八になるか六になるか、この銀行のこれからのサバイバルに、生き残りの計画にこれは大きな影響が私はあるはずだと思うのです。大きな影響がないならば、全銀協がそれほど経営に支障があるとか、あるいは経団連その他が銀行にだけ負担をかけるのはおかしいと言っておられる、その口裏と合わないわけです。その点をどうぞ。
  38. 越智通雄

    ○越智国務大臣 これは全く別個の話でございまして、外形標準が最も影響を食らうのは、例えて言えば三菱さんとか住友さんみたいなところ、粗利の大きいところでございまして、実は日長銀というのは、特別公的管理の間は、ちょっと責任持っては言えませんけれども、業純ではマイナスになっているわけですから、粗利もほとんどないぐらいかもしれません。ちょっと数字は確かめていませんが、だものですから、私どもの方で影響はないと。  それから、四月一日からの条例公布でございますと、平成十二年度の問題について、平成十三年の春におかけになるのじゃないんでしょうか。そういう意味では、本件と外形標準の話は大きな関係はございません。
  39. 岩國哲人

    岩國委員 この外形標準にしても、これから五年、あるいはさらにもっと長い年限をかけていこうというスタンスのようですけれども、この新生銀行、ニュー長銀にしても、これに投資をしたニュー・LTCB・パートナーズの投資家たちは、三年後、五年後あるいは十年後に大きく価値が膨らんでいくということを想定しているわけであって、これから五年、十年、粗利が全然出なくて、この東京の銀行課税がほとんど影響を与えないような段階でいくとすれば、これは経営的に失敗している状態がこれから長く続くというだけの話ではありませんか。買い手の側からいえば、およそ矛盾した話だと思うのです。  それから、政府が今度持とうとする優先株、この優先株について、その配当率はだれが決めることになっていますか。この点もあわせてお願いします。
  40. 越智通雄

    ○越智国務大臣 まず第一には、ちょっと私の説明を正確に理解していただきたいと思いましたのは、私どもは、現状において日長銀を判断しているときに、幾ら公的負担をするかという、計算上は今度の外形標準の御提案によって大きく差はないと言っているので、五年先まで見通してどうだという話を申し上げたわけではございません。  一たん引き渡しました後は、新生長銀としての経営がされるわけでありまして、当然、実は新株の方は四百円で引き受けるわけでありますから、それ相応の数字維持できるように頑張られると思います。ほどほどの経営をされていたころの日長銀さんは大体五百円がらみでございまして、平成九年ぐらいまでですね、そういうとこら辺を頭に描いて運営される、このように思っております。  その場合に、これは五十円株でございますから、どの程度の配当という判断をするかは新執行部の話だ、このように思っております。(岩國委員「銀行の幹部が決めるということですか。だれが決めるのかということです」と呼ぶ)新執行部が決めます。銀行の新経営陣がお決めになります。
  41. 岩國哲人

    岩國委員 そうすると、私がいただいた資料の中に、「配当率は早期健全化法に基づいて再生委が決定するところによる。」と、この優先株式について。これは違うのではありませんか。  それからあわせて、新生銀行が外国資本の経営として大きくなったときに、これは外国籍の外国銀行、シティバンクと同じように。そこを新規公開して一兆円の利益が、キャピタルゲインが上がったときに、先日もお伺いしましたが、越智長官は、それにも税金はかけられる。私に対して、かけられないという法律はどこにあるかと逆に聞かれたぐらい、それにはかけられるという認識でこの取り決めをしておられると。私は、それを聞いて非常に意外に思ったのです。  そこからキャピタルゲインの税金が、二割でも三割でも四割でも、キャピタルゲインとして大きく成長したら、その成長の税金をまた国民が返してもらえるのであれば、お金をかけた幾分かの意味はある、日本側の国益に立てば。  そして、宮澤大蔵大臣がお調べになったら、これはかけられないという答弁をいただいたわけです。閣内意見不統一というほど大げさな話ではありませんけれども、しかし、税金をかけられる銀行なのか、かけられない銀行なのか、これは非常に大きな問題じゃないですか。相手にとっては、どこから税金をかけられても、税率が同じならいいと。しかし、相手は構わなくても、こっちが構うわけです。  日本政府として、国民として、キャピタルゲインタックスという形でもって回収できるのか。それさえも放棄した前提でこれをお売りするのか。これは、値段についても、我々の方の評価というのは違ってくるはずです。この二点、確認していただきたいと思います。
  42. 越智通雄

    ○越智国務大臣 私がお答えしましたのは、普通株式の配当について当然決めるということを申し上げたので、実は、普通株式が二十四億株あって、優先株は一億株でございますけれども、そのうちの七五%だけが残るので、例のさざ波株ですが、その七五%の配当率に関しましては、これは再生委員会に御協議いただくことになっております。  それから、税に関しましては、先生の御指摘もありましたので、あのときにここでお答えしましたように、お調べ申し上げますとお答えしました。実は、銀行に対する課税じゃございませんですね、先生のおっしゃっているのは。株主の株式譲渡益の話ですけれども、お売りするのはパートナーズというオランダの任意団体でございます。ところが、これはパススルーをしてしまって、課税自身はそこに出資しているところに行くわけで、出資者の中には法人もあり個人もあり、それから、国籍からいうと少なくとも六つか七つの国に分かれております、外国は。それに、租税条約のできているところとできていないところがありますし、OECD条約に入っているか入っていないか、OECD条約に入っていれば課税しない。それから、例えばカナダなんかはどうなのか、正直言いましてよくわかりません。アメリカなどは、もちろんOECD条約に入っていますから、課税できない。  ですから、その例で宮澤大臣のおっしゃったのは、非常に正確な意味は、アメリカ人がアメリカで個人として売った場合はかかりませんとおっしゃった。それはそのとおりなんですが、パートナーズ社の中には国籍が幾つもあるという意味で、それから法人の場合には、ここの日本に支社があった場合なども、パーマネントエスタブリッシュメント、PEというのがあった場合はまた変わるものですから、私は、たしか海江田先生の御質問にだったと思いますが、大変複雑でございます、細かくはどうぞ国税局なりなんなりに、済みませんがもう一遍答えさせてくださいと申し上げたのは、そういう意味でございます。
  43. 岩國哲人

    岩國委員 このパートナーズの国籍、それから名前については、この資料の中に含まれておりませんでした。引用されている箇所はありましたけれども、私の方にいただいた中に入っておりませんでした。  越智委員長、それから再生委員会として、当然それも見た上で、その中に日本人がいたのかいないのか、いないならいない、それから国籍を見た上で、どれぐらいキャピタルゲインタックスとして返ってくるのか、もっと的確に答えるだけの資料を持っておられるはずだと思うのです。何かえたいの知れない、国籍も不明、名前も不明、そういう人が金を出したパートナーズに、こういう大事な取引をされるわけはないと思いますから、その点は機会があればもっと的確な、国籍から何から見た上で私は御返事をいただきたかったと思います。  それから、普通株の配当について経営者が決める、これは常識であります。私がさっき質問したのは、優先株の配当率、これは再生委員会が決めると意外なことが書いてあるがゆえに、私はそれを確認したかったのです。再生委員会と協議するとは書いてなくて、再生委員会が決定すると書いてありますから。先ほど長官がおっしゃった、協議するではなくて、再生委員会自身が決定するということで間違いないわけですね。  時間が来ましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  44. 島村宜伸

    島村委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、古賀一成君。
  45. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 それでは、民主党を代表しまして、予算委員会二回目の質問でございますが、質問をさせていただきたいと思います。  前回の質問でも申し上げたことを、きょうも残念ながら再度言わざるを得ないという思いでいっぱいでございます。  実は、我々野党が参加しまして、きょうで予算委員会、たしか十日目の審議であると思いますが、初日の二月十四日、総理がお見えになって以来、その後は全然実は総理に対する質問というものができない状況で今日を迎えました。私は冒頭にまず、予算というものを所管されておる一番総括的な立場にある大蔵大臣に、この十日間の感想をお聞きしたいと思うのです。  一番長きにわたりまして予算委員会を見てこられた大蔵大臣であろうと思いますので、その論点は、このような予算委員会のあり方で、我々国民の代表として国会議員が、あるいは議院内閣制における国会の立法府としての役割が十分義務を果たし得たのか、得ているのか、そういうものについて、後ほど私は私の評価というものを申し上げますが、本当に謙虚なところの御感想をぜひ大蔵大臣にお聞かせをいただきたいと思います。
  46. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 かねて、総理大臣のお仕事というのを見ておりましたし、また私自身も実は経験したこともございますので、もちろん国会が第一の責務でございますけれども、そのほかにも国政を考えられなきゃならない立場でございますから、そういう時間もできるだけ総理大臣は持っておられる方がいいということは考えておりました。今度クエスチョンタイムというようなことがありましたりして、国会の運営について国会の方でいろいろお考えになられて、また委員会においてもこういう御決定をなすったということでございますので、それはそれなりの御判断に基づくものであろう。  私ども閣僚としては、総理大臣がおられませんでも、できるだけ閣僚同士でその責めをふさぐように努力をしなきゃならない、こういうことで務めておるようなわけでございます。
  47. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 今の大蔵大臣の御答弁は、いわゆる経緯の説明あるいは状況の説明に終わったと思うんですね。  ところが、確かに総理大臣が勉強しなきゃならぬ、それは一見、聞けばそのとおりでありますけれども、では何のために勉強するのかといえば、まさに総理が預かっておる一番重要な任務を全うするために勉強されるわけでありまして、その最大のテーマは何かといえば、予算というものは、国会が行政から出された案の中で最も重要な審議すべき案件であるし、向こう一年の国家をどう動かしていくかというのはまさに予算に凝縮をしておりまして、予算委員会のために勉強をするというのは当然の姿であります。私はそう思います。  日程表をずっと、私は、総理の一日というのは今まで余り関心がございませんでした。これはずっと民主党なり各関係者は見ておりますけれども、その中で、前回申し上げたことはあえて申し上げません。しかし、その後のことで申し上げますと、予算委員会が開会中に総理がお国入りというのはなかなか例がない。たしか私の記憶するところ、細川総理は一度もお国入りをされなかったというようなことも記憶しておりますが、この予算委員会、しかも未曾有の難問を抱えた、単に難問であるだけではなく、この審議を通じてわかったのは、本当に先のシナリオが見えない。それはもう各省庁の皆さん方とも私、話してひしひしとわかります。  いわゆるこの閉塞状況をどういうシナリオで突破したらいいかわからない。当面、この二〇〇〇年度予算というのは、まあやむにやまれずというか、あるいは緊急避難的に矛盾を隠したというか、そういう問題がたくさんあるんですね。そういう予算において、審議真っ最中のとき、まさにど真ん中であります、私は、総理が異例のお国入りをされたということ自身も解せない。まさに日曜日、土曜日勉強する時間はあるではないですか。  私は、こういう面から見ると、これはある新聞にこう書いてあったんですね。今度の国会の予算委員会審議は野党の完敗、こういうくだりがございました。私は、これは極めて国対的な発想であろうと思います。国会対策の観点からいうとこういう皮相的な言葉が出てくるんだろうと私は思いますが、我々が預かっておるのは、国会が預かっておるのは、予算を国民の立場からいわゆるチェックすることでありまして、そういう面から見るならば、これは野党だけではない、予算委員会という与野党を含めた国会議員の立場というものがないがしろにされた。そういう面では私は、与党を含めた国会の敗北だと思うんです。私は、そういう気持ちでずっとこの審議を聞いておりました。  私は、言葉をかえるならば、総理なり与党は、ゲームには勝った、新聞が野党の完敗と書いてありますから、ゲームに勝って勝負に負けたのだという気がしてなりません。  神聖なる予算委員会審議という土俵を崩してまで総理を土俵に上がらせなかった、これは極めて重要なことでありまして、私は、そういう面で、今度のこの取り扱いというものは真剣に反省をしなければならぬと思います。土俵に上がらなければ普通は不戦敗なのですね。土俵に上がらずして不戦勝を得ようとしたこの国会運営に対して、私は、国会議員という立場から、再度この問題を冒頭に指摘させていただきたいと思って、あえて、くどいようでありますが、質問させていただいたわけでございます。  次に、金融再生委員長にお伺いをいたします。  ただいま岩國先生の方から、長銀問題について質問がございました。るる今まで質問があったわけでございますが、長銀売却に関しまして、いわゆる今度の契約には、瑕疵担保つきという概念がございます。私が大学時代勉強した記憶によりますと、瑕疵担保というのは物権でございまして、こういう債権譲渡について瑕疵担保というのはあるのだろうかと極めて不思議な感じを持ったわけであります。  これまでの経緯をざっと洗えば、三月一日、ちょうどきょうから数えれば一週間後でありますが、国有化処理が終了し、そして二月末の長銀の債務超過三兆五千八百七十九億円、預金保険料からの支払い分を差し引いた国民負担は三兆五千七百三十三億円、国有化期間中の損失補てんは三千四百八十九億円、不良債権処理のため長銀へ贈与する金額は三兆二千二百四十四億円、そして預金保険機構が持つ交付国債を財源とする七兆円の公的資金枠から、このたび三兆二千二百四十四億円の交付国債が取り崩される、こういう巨額な数字が並んでおるわけでありまして、これで長銀はいわゆる他国に渡る、十億円のお金で渡るわけでありますが、その点についてはこれまでも申し上げましたので。  その瑕疵担保というのは、どういう経緯で、どういう意味を持ってこの契約についてきたのか。そこら辺のところは、私は、こんなことが許されるなら、いろいろな国内の今後の事案についても瑕疵担保という話になるのではないかという懸念を持つわけでございまして、物権でございます瑕疵担保という概念が、今回の長銀譲渡というものに際して導入されたその意図と経緯というものを御説明いただきたいと思います。
  48. 越智通雄

    ○越智国務大臣 日本長期信用銀行の売却と申しますか、これは株式の譲渡の形式をとっております。営業譲渡ではありません。株式の譲渡ではございますが、金融機関の株式の中身、裏打ちは何だといったら、金融の貸付金しかないというか、それが大半でございます。  したがいまして、売買に当たりましては、買い主の方から、よくデューデリジェンスという言葉が使われておりますが、早く言えば、どこへ幾ら貸しているのか全部見せてくれ、全部調べさせてくれ、その上でなければ、おたくの銀行を幾らと考えるか、それを株数で割って一株幾らと考えるかというのはできないよ。まして、これはもう債務超過になった状態でございますから、向こう側が見たい。しかし、国会でお通しいただいた一昨年の金融国会の再生法では、再生委員会がそれをやれと書いてあるわけですね。一つ一つの債権についてどれだけ腐っているかを再生委員会がやれと。  だから、再生委員会には、お役人でもない方が四人入っていらっしゃる。公認会計士協会の会長さんとか、高裁の長官とか、それから実業界からそれぞれお二人入られまして、かなりの経営者の方が入っている。この方々が、去年の一月から二月いっぱいぐらいだったと思いますが、一本一本見られてやられたわけです。  今度は買う方からいうと、見せてくれないなら、もしそれの見立てが違ったときはどうするんだということになるわけですから、大勢、来られた方に一々お見せするわけにいかない。したがって、もし見立て違いがあったときには再生委員会が責任をとります、すなわち国が見ますと。  ですから、瑕疵担保というのは、先生おっしゃるとおり、商法と民法にそれぞれ五百何十条ぐらいのところに書いてあります。そのものの条文を適用したのではございません、いわばその法理を使ってであります。再生委員会の責任でもって鑑定しろと法律に書いてあるからしました、しかし、それが本当に見立て違いだったらそれは責任をとります、要するに継ぎ足しますよ、あるいはそのお値段で買い取りますよ、こっちへ引き取りますよと。あるいはじゃない、それが主でございますね、引き取りますよという格好をとったわけでございます。  したがいまして、見立て以後の状況によって生じたものについては責任を持ちません。その状態の段階での見立て違い、といったって、去年のあれというよりは、引き渡し時点までのことでやってまいります。そういう意味で御理解いただければありがたいと思います。
  49. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 今の御説明を聞いておりますと、十億円というお金が大変安いな、何でこれだけの公的資金を注入した銀行が十億円だという疑念を持っておったのですが、どうも、いわゆる新長銀の価値というのは貸付金にその価値の源泉がある、それがよくわからない、だから十億円と低く見積もって、それでもわからないこの債権の本当の回収可能性というものをさらに将来補てんするために再生委員会が買い取る、要するに買い取りですね、そういうさらなる仕組みを付加した。  それは、民間同士だったら私はこういうことがあるのかなと思うのですね。それは買う方、売る方の言い値と、買う方が精査をする、そういう厳しい交渉の中で生まれるのでしょうけれども、ここに行政が絡んだ。まあ、最終的には国民が負担するんだと。相手がそう言うならば、この際、負担するのは将来は国民だから、いわゆる瑕疵担保ということで、将来、二割ですか、穴があいておったら再度買い取ろうという、行政が絡んだゆえに、国が関与した処理ゆえに、国民負担を担保に非常に甘く処理したのじゃないかという感じも今の説明を聞いて受けるのですが、それに対して何か御説明がありましたら、再度お願いを申し上げます。
  50. 越智通雄

    ○越智国務大臣 先生も今御存じでお話しいただいたようでございますが、期限は三年に限っております。それから、発生した差の限度は二割以上の場合のみでございますので、したがいまして、かなり厳格に執行している。まして、国民の負担になるのはということで、ルーズにやった覚えは全くございません。
  51. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 それでは、私は次の質問に移らせていただきたいと思います。  これも、総理がおられる前で、たしか私どもの菅政調会長が質疑をやったと思うのですが、政治資金規正法と公的資金投入金融機関の政治献金の問題についてでございます。今お話が出ました長銀について、平成八年、九年、千八百四十八万円の政治献金があった、こういうことでございます。  この政治献金と金融機関との関係を、ちょっと最近の動きを復習してみますと、九八年の三月に、金融安定化法を受けた大手二十一行にいわゆる資本注入が行われました。一兆八千百五十八億円でございました。それで、その年の十月に、自民党の方から公的資金投入銀行からの献金を当面自粛するという決定がなされたとの報道がございました。当然だろうと思います。そして、翌年九九年、昨年の三月に、早期健全化法により、大手十五行にさらに七兆四千五百九十二億円の資本注入が行われた。それで、その年の十二月、国会におきます質疑の中で、小渕総理が、長銀からの献金千八百四十八万円の返還の検討を表明するという報道がございました。ところが、この月、これも質問がもう今までなされてきたところでありますが、自民党が十一月上旬に、つまり総理が答えられたちょっと前に、銀行業界に献金要請と報道がされたわけですね。  これは党の問題でありますから、本当を言うと私は小渕総理に聞きたいわけですが、おられませんので、今金融機関というのが公的資金注入等々でもう大問題になっておるわけでありまして、これは御存じなければしようがございませんが、長銀からの献金千八百四十八万円、返還を検討すると総理が去年の十二月おっしゃったんですが、これのてんまつというか、具体的な始末というのは、金融再生委員長、これは金融機関にかかわることなんですが、何か御存じでございましょうか。もし保利大臣……。
  52. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 正確を期しますためにちょっと議事録を参照してみたいのでありますが、せんだって、菅直人議員から御質問がありました件につきまして、その後開かれました予算委員会におきまして、「確認しますが、この千八百四十八万は返却されたのですね。」という御質問に対して、「そのとおりでございます。」と小渕内閣総理大臣がお答えになっていらっしゃいます。二月十四日月曜日の速記録からそのように承知をしております。
  53. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 それはそれで結構でございます。  それで、今後の話も絡むわけでありますが、政治資金規正法の二十二条の三という規定でこういうのがございます。国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金を受けた会社その他の法人は、当該給付金の交付の決定の通知を受けた日から同日後一年を経過する日までの間、政治活動に関する寄附をしてはならない、こういう規定があるわけですね。  実は私は役人時代にある融資制度を創設したことがございまして、極めて政策的な、政策誘導のために、いわゆる国費の無利子融資を駆使して、いわゆる長銀関係ですね、長期信用関係三行と、いわゆるあわせ融資をした政策融資システムをつくろうということで、つくった経緯があるんですね。  そのときの私の経験からいいますと、これは補助金じゃないですからね、融資ですから金利はつきます。しかし、国の方の半額のあわせ貸しは、これは誘導するために無利子にしようといった論議の中で、大蔵省といろんなやりとりがございました。無利子融資は一種の補助金なんだ、だから個々の、この制度の融資の対象として考える会社は政治資金を出している会社だから無利子融資はまずいという論議をかなり重ねたことを覚えております。そういう点から見ると、いいですか、いわゆる国からの無利子融資を受けてもこれは政治資金規正法二十二条の三に引っかかる、実はこういう慎重さというものが求められておったんですね。  これはもう三兆何がしだという巨額なものを、しかもいわゆるバブルのツケというか、とんでもないツケとして国が資金を注入するという銀行、いわゆる金融システムそのものが今問題になっておるわけでありまして、今は表に出ていないけれども、来年の今ごろは公的資金の注入を受けるかもしれぬという不安がいろいろあるわけですよね。いわばそういう金融機関について、この政治資金規正法二十二条の三という規定からしても、献金は違法行為に該当するんではないかと私は思いますが、その点、はっきりと見解をお聞かせいただきたいと思います。
  54. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 再三この委員会の場でも御答弁申し上げておりますが、自治省は、収支報告書をお受けして、それを管理し、閲覧に供している、そういう仕事をしております。一方、行政が政治に対して余り関与をしてはならない、余りというか、ある意味では絶対に関与してはならないという観点から、できるだけ形式的な審査だけをやっているというのが自治省の実態でございます。  そういう意味で、二十二条の三の第一項及び第二項等を見てみますときに、「政治活動に関する寄附をしてはならない。」という条項のところに、国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金を受けている者、こういうふうになっておりますが、今回の銀行の場合につきましては、国から直接ではございませんものですから、私どもとしては、形式審査上、これは違法とはしておりません。
  55. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 この政治資金規正法二十二条の三の解説書がここにございます。今大臣がおっしゃいましたように、国から補助金等の給付金の交付というこのくだりについて、国が直接やっていないものはいい、だから違法ではない、こういうふうにおっしゃったと思うんですね。  それでは、きょうの朝のテレビでもやっていましたが、いわゆる外形標準に絡んで銀行会長が、要は、我々もやはり世間の評判が非常に悪いのを身にしみて感じたというような記者会見も、私は朝見てきましたけれども、本当にバブル崩壊、金融崩壊、あるいは退職金の問題もあった、もういろいろな意味で銀行に不満もある。その中で、金融システムの安定が経済の安定につながるいわば土台だということで、これだけ膨大な公的資金の枠を用意して、これだけ借金を負った我が国財政がしょい込む形で、実はこの長銀に対しても金を出した、十九行にも出した。  こういうときに、一兆円あるいは数千億円公的資金の注入を受けた銀行が、この法律上の解釈でいうと、国ではない、預金保険機構は国ではないということで、では献金を二千万、三千万していいということは、私は、法律の解釈はこんなことを想定していなかったと思うんですよね。国民感情として、あるいは法治国家の常識として考えられるんでしょうか。  私は、解釈は当然変えるべき、あるいは解釈が変わらないというのであれば法改正をしてでも、公的資金の注入を受けた会社が政治資金を出すなんということは、国民感情から見たらとんでもない話だと私は思います。  法改正の必要性を含めまして、再度私は、そういう役所の解説書の解説ではない本当の、国民の代表としての大臣という立場から、御感想、御見解、御方針をお伺いしたいと思います。
  56. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたとおり、政治の問題に行政が関与をしてはならないという観点から、できるだけ政治活動の自由を保障しようということで、私どもは幅広く解釈をしておるわけであります。  政治の問題でありますから、行政が関与できないとなれば、政治、つまり議会の中で、各党各会派において疑問を提起され、そしていろいろお話し合いをされることがよろしいのではないか、私はそのように考えております。
  57. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 確かに、政治資金規正法という問題ですから、これは本当にそういう解釈論だけで放置して、国会が、このままでしようがないだろうということには絶対してはならない事柄だと私は思います。  それは国民の感情が許さない、あるいはこれからの孫子に私は申しわけないと思うので、それは確かに政治が受けとめるべき問題だというのを、立法府の問題だということはしっかり肝に銘じて、今後、党内でのアプローチにしていきたいと思います。それはわかりました。  質問がたくさんございますので、次に移りたいと思いますが、教育改革について文部大臣にぜひお聞かせを願いたいと思います。  昨年の年末の予算委員会から私もぜひ質問したいと思っておったテーマでございますが、まず、日本の英語教育の問題、あり方、あるいは日本人の英語会話能力の問題というものは、文教委員会あるいはこの予算委員会でも質問になってまいりました。  その中で、平成十二年度、来年度予算におきまして、地域で進める子供外国語学習の推進という新規施策が打ち出されまして、一億八千万の予算が計上されておるやに聞きますが、この概要というものはどういうものでありましょうか。
  58. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 国際化が急速に進展している中で、学校はもとより、学校の外におきましても子供たちが英語に触れる機会をつくるということは大変大事でありまして、そういうことから、委員今お話ありました、地域で進める子供外国語学習の推進という言い方をしていますが、こういう事業平成十二年度予算で計上しているところでございます。  これは、各地域でいろいろな関係者から成る協議会をつくっていただきまして、地域の自治会の方やPTAの方や、あるいは若い方々や海外から帰ってきた英語に堪能な方々や、そういう方々から成る実施協議会を設けまして、地域のそういう人材を結集して、土曜日や日曜日あるいは平日の夜あるいは放課後などを利用いたしまして、地域の子供たち楽しみながら英語を勉強できる場をつくろう、そういうものでございます。
  59. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 そうした場合、例のTOEFLですか、一昨年がアジア諸国で日本はびり、北朝鮮と並んでびり、去年がびりから四番目、こういうことになってきたわけですが、大臣として、では地域における外国語学習を進めれば、いわば日本の外国語教育の隘路というものは解決するのでありましょうか。学校教育における外国語教育のあり方というものに対してはどうお考えでありましょうか。
  60. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 委員指摘のとおり、TOEFLの成績につきましても、日本の受験生がTOEFLを受験した成績は余り芳しくありません。  今、学校での授業の方法についてのお尋ねがありましたけれども、自分の経験から照らしてみましても、中学から大学まで英語は勉強いたしましたけれども、十分な外国人との英語によるコミュニケーションができないという点、大変に恥じておりますというか、これから勉強しなければならないなと反省しているところでございますが、これから学習指導要領の改正によりまして、小中高校におきましては、授業時間を約三割程度短くするかわりに、総合的な学習の時間等を設けて、その時間においていろいろな体験や、あるいは地域の文化との触れ合い、あるいは英会話の授業をやっていただいてもいい、そういうようなことに改正をしているところでございます。そういうように、英語を勉強する時間はふえていくと思います。  しかし、大事なことは、委員も御心配になられていると思いますが、教え方だと思うのですね。何時間やっても、教え方、指導方法が余り適切でなければこれは身につかないというふうに思っております。  実は、先月、一月ですが、文部大臣の私的な懇談会として、英語の指導方法についての研究会を発足いたしました。そこで、英語の指導方法、小学校、中学校、高校レベル、あるいは高校、大学での英語の入学試験のあり方、あるいは英語の先生の採用の方法等々、英語の教育のいろいろな面について今検討していただいているところでありまして、今後、そういうような観点からも英語教育について研究をし、そしてより身につく英語の授業になるように努力をしていきたいと思っております。
  61. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 私は英語だけに実はこだわっているわけではありませんで、英語の教育を一つの典型として、文部行政のあり方というのは根本的に考え直すべきだと思います。  私はこの前地元のいろいろな人と話してびっくりしたんですけれども、ホームステイを、一生懸命子供たちの交流をやっている町がございまして、私の後援会の人もそのリーダーでおるんですが、最近、オーストラリアとかホームステイをやり合っている相手方が、日本人の子供たちは来て困ると言うんです。なぜかというと、単に英語ができないだけじゃないんです。まず、話題がない。話題がないんです。行儀が悪い。本当にこれは、単に英語ができないという問題ではなくて、日本人の子供の教育そのものだと思うんです。これが私は問われていると思います。  それで、別に英語のボキャブラリーが少ないだけじゃないのです。これはよく言われることでありますけれども、まあ総理みずからボキャ貧とおっしゃるから、私はそういう面では大変教育上悪いと思うのでありますが、日本語のボキャブラリーも大変今の子供たちは乏しゅうございます。そこまで踏み込んで私は考えるべきだと思う。  公民館の皆さんに子供たちの英語の勉強を、英会話の勉強を、金をやるからひとつ考えてくれというのは、私は言語道断だと思いますよ。まさに問われておるのは、日本の小中高における、あるいは大学における語学の勉強というものは何を意味するのか、どういう意義づけをしたら子供たちが元気になるのか、楽しくやるのかという、その本質から説き起こさずして、学校がだめなら今度は公民館に頼もうという発想そのものが、私は日本の教育をおかしくしていると思う。  私は、きょうは、自慢するわけじゃないんですが、ここの予算委員会に二人証人がおられますから、あえて恥ずかしながらで申し上げますが、去年、私は地方行政委員会で外国に行きました。私は英語が下手なんです、本当に。何でこんなに下手だろうと思うぐらい下手。しかしながら、去年地方行政委員会でフランスに行ったときに、私は二十年ぶりにパリに行った。私は大学時代に、本当に九州の男ですから英語じゃ東京の高校生にはかなわぬと思いまして、フランス語はちょっとやってみようということでNHKのラジオ講座を毎日聞いたんですね。(発言する者あり)ごめんね。優秀な人もいますから。私はそう思ったんです。  それで、あのオープンリールのガチャガチャ音がするテープで本当にまじめに聞いて、私は自慢じゃないですけれども、法学部でありましたけれどもフランス語は十二個全部優でありました。そして、二十年ぶりに行っても、フランス語は通じるんです。そして、日本に帰ってきて新聞を見たら、朝日新聞でありましたけれども、文部省、外国語教育を補うために、要するに英語塾に補助金と書いてあったから、私は本当に何事だ、こう思ったんですね。  まさに私は、ここで論争してもしようがないですけれども、文法半分、会話半分と。そして、赤ん坊でも、動物の本能、人間の本能として会話をしたいという本能はもう宿っているわけですよ。あとは楽しく覚えるという、コミュニケーションのやり方をちょっと考えれば簡単にこれはできるんです。私は、ぜひ、北朝鮮と並んでびりとかアジアでびりから四番目とか、こういうことをこんな補助金でごまかすということじゃなくて、人間の子供たち、そこに根差した本当の意味での教育改革というものを真剣に考えないととんでもないことになると思います。  この戦後教育が正しかったかどうかという問題はありますけれども、世界第二の経済大国で、これだけ知的レベルが高いと言われている日本で、恐らくこの中で英語がべらべらと思われるのは、私は宮澤大蔵大臣だけだと思うのですよね。いや、本当にそうだと思います。  もう一点申し上げますと、ちょっと長くなりましたけれども、私は英語が下手で、外務省に出向させられたことがあるのですね、二十五歳のころ。あのとき、国連の会議に行きますと、私は汗水垂らしていましたけれども、タイと韓国と日本の各省庁から来た人たちは、英語はすこぶる下手でした。それは被占領国じゃなかったからということもあったでしょう。もちろん、インド、フィリピンはうまい。日本と韓国とタイの人は、外交官を除けば大変下手だったのです。ところが今や、ビジネスマンも政治家も、もうほとんどの人たち、あるいは一般市民の人たちも、はるかに日本人をしのぐ英会話能力を持っているのですね。日本だけなんです。  これは文部省の方で、審議会も結構ですが、私はむしろ審議会行政に頼ることなく、文部省の若手官僚に留学した人もいる、英語がうまい人もいるわけですよ。どうしたらいいかというのをまさに省内で徹底した真剣な論議というものをやらずして、こんな補助金でごまかすようなことはやめていただきたい。それは我々にとってもこれからの子供たちにとっても大変な不幸だと私は思います。これをぜひ厳しく指摘しておきたいと思います。  これは嫌みったらしく言うわけじゃないのですが、私は最近疑い深くなっておりまして、補助金をつけるといったら、あっ、将来そこに天下り先を見つけるつもりだな、こういうふうに私はすぐ思うのです。まあ公民館に天下ることはないでしょうけれども。  将来、例えば駅前語学の何とかとか、そういう塾に拡大するということはゆめゆめ私はないのだと思うのですが、そこら辺はちょっと歯どめをかけるわけじゃないのですが、公民館がだめだったから今度は塾に補助金を出そうなんていう話にはまさかならないと思いますが、その点、大臣の言明をお願いしたいと思います。
  62. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 先ほど私、ちょっと説明が不足であったと思います。  この調査研究事業でありますが、もうちょっと御説明させていただきますと、ちょっと重複いたしますけれども、地域で実施協議会を設けて、ネーティブスピーカーの方とか、それから外国語の指導が可能な留学生とか、あるいは一般市民の外国駐在経験者を初め、地域の人材を結集して、土曜日や休日や平日の夜あるいは放課後等に、公民館等を利用して、子供たち楽しみながら生きた外国語学習に取り組めるようなプログラムを実施しようというものでございます。  補助金のお話が出ましたけれども、そういうところで講師をしていただく先生への謝礼的なものとして補助金が出されるわけでありまして、公民館等の施設等に出されるものではありません。それから、学習塾等にこういうものが出されるものではありません。あくまでも学校での英語の授業が中心でありまして、その学校での英語の授業をいかにより効果があるようにしたらいいかという懇談会を今設けて勉強もしているということでございます。  英語はこれから、委員も本当に御承知のとおり、国際社会の中で、あるいはインターネット時代になっていく中で、日本人としてさらに身につけなければならないものだと思っておりまして、いろいろな方の御意見をいただきながら、あるいは調査研究等もやりながら、より身につく、効果のある英語学習方法を考えていきたいと思っております。
  63. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 ぜひ短い期間で研究を進められまして、日本人の子供あるいは我々中高年も、これならやってみようじゃないか、できるというシステムというものを早急に構築していただきたい。これではそういうイメージは全然わきません。ぜひそれを私はお願いを申し上げておきます。  時間も迫ってまいりましたので、急がせていただきます。最後になると思うのですが。  行革が進んでおりまして、来年の一月六日に中央省庁再編ということに相なるわけであります。これは、これまで臨時国会の予算委員会等でも私申し上げましたけれども、どうも、国民にとっても、あるいは私が触れ合う中央官庁の皆さん方から見ても、何かこれで世の中変わる、よくなるというイメージがわかないんです。  そこで、中央省庁再編によりますところの行政改革の最大の目的というのは、やはり行財政改革というねらいが根底にあったんだと思うんですね。これについてどれほどの行財政改革効果、中央省庁を再編しました、省庁の数を減らしましたというだけじゃ、それは私は本当の説明にならないと思うんですね。中央省庁再編、来年一月六日スタートしますけれども、どれだけの行政改革効果があるんだというその御説明について、ひとつ総務庁長官にお願いをしたいと思います。
  64. 続訓弘

    ○続国務大臣 ただいまの御質問は、省庁再編によってコストがどのくらい軽減されるのかという具体的な質問だと存じます。古賀委員はかつて官僚の経験もございます。したがいまして、この計算が大変難しいということは御承知だと存じます。そういう前提の中で私が試算申し上げますことを御理解賜りたいと存じます。  例えば、ことしの人員査定で四千七百六十五人の削減をいたしました。純減でございます。この純減の四千七百六十五人を、仮に年間六百万円の給料だとすれば、年間約三百億円の節減になる。同時に、御承知のように生涯賃金というのは二億円ぐらいあると存じます。あるいは二億五千万ぐらいかと存じますけれども、仮に二億円と計算をしても、一兆円の効果が将来あるというふうに私は試算しております。  御理解を賜りたいと存じます。
  65. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 私は、大蔵大臣にぜひ質問を兼ねて私の所見を申し上げたいと思うんですが、この中央省庁再編という、このときは、これまでの予算編成方針、その基本的な仕組み、スキームを変える私は最大のチャンスだと思うんですね。中央省庁が変わる、合併する、なくなるものもある。二十一世紀初頭のこの中央省庁再編、確かに今総務庁長官の人件費の話がございましたけれども、私は今のところどうもイメージがわかない。果たして本当の行財政の改革あるいはシェイプアップになるんだろうかというのは、私はまだなかなか合点がいかない。人員の削減問題だって、独立行政法人の問題だって、この前聞きましたけれども、なかなか合点がいかない。  ただ、もう一つ、今まで余り指摘がないところでありますけれども、二十一世紀初頭のこの省庁再編を期に予算編成の基本的な仕組みというものを真剣に考える。つまり、省庁の縦割りを超えた政策融合型というか、そういうもの。それでコストが削減されるならばそういうものを優先的に別枠でもつくってやるとか、そういう仕組みをつくる私は最大の好機だと思うんですが、大蔵省は、予算編成、この八月に概算要求が始まってくるわけでありますが、そういう問題視点があって何か作業を進めておられるのか、大蔵大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 公共事業に四つの柱を立てまして、いわゆる新生政策がほぼ公共事業費の二割を超えたということ、それから、ミレニアムにつきましては、各省庁を横断してチームをつくって、そして、単年度でない計画を推進し始めたことなどはそういう我々の努力のあらわれでございますが、このたびの概算要求につきまして、十二月までとあとの三月という問題がございまして、あとの三月については要求官庁をどうするかという問題がございました。そういうことから、私どもも、この時期はおっしゃいますようなチャンスであると思っております。  これは、要求側もそういうお気持ちがありますので、下手をやりますと、これは全部が膨れる機会になってしまう。そうでありませんで、それを締めていく機会にぜひしたいと思っております。
  67. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 これで終わります。
  68. 島村宜伸

    島村委員長 これにて古賀君の質疑は終了いたしました。  次に、池田元久君。
  69. 池田元久

    ○池田(元)委員 池田元久です。  連日熱心な審議が行われております。問題も大変多くございます。そうした中にあって、毎回出ておりますように、総理大臣がいらっしゃらないということは極めて残念でございます。いかなる理由であれ、やはり総理大臣はこの委員会に出席をして、説明責任を果たしていただきたいと思います。  官房長官が後ほどいらっしゃいますので、その節にまたお尋ねをしたいと思っております。  さて、前回に引き続きまして、財政と金融、とりわけ国債の発行と長期金利、さらにそれをめぐる日銀の対応等について、きょうはお尋ねをしたいと思います。  二〇〇〇年度以降の国債発行額、つまり、新規発行の国債と借換債の発行額はどうなるのか。差し当たり向こう三年間ぐらいはどういうふうなことになるでしょうか、大蔵大臣
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 試算をいたすにもちょっと材料を欠いておりますので、正確な答えを申し上げられませんが、十二年度予算編成に際しまして、御存じのように一遍限りの経費をかなり計上いたしておりますので、その上で予算を組みましたから、次の年度にはこれらのものはかなり落としていくことができる。そして、これは希望的な話ですが、経済が好転しますれば失業対策関係のものも多少は落とせるかもしれないといったようなことから、十三年度における公債の発行というものは、きちっと申し上げるのには不確定要素がございますけれども、多少減らすことができるのではないかと考えております。  それからあとは、要するに民間主導の経済がどれだけ興ってきてくれるかということ、それは税収の面にも関係いたしますが、によりますので、まだ確としたことが申し上げられません。
  71. 池田元久

    ○池田(元)委員 大蔵省のつくった「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」という資料がございますが、二〇〇〇年度は、新規国債が三十二・六兆円、借換債が五十三・二兆円、合計八十五・八兆円が発行されることになるわけです。二〇〇一年度になりますと、新規が三十一兆円、借りかえが六十二・六兆円、二〇〇二年度には、新規三十四兆円、借りかえ六十六兆円とふえていくわけです。二〇〇二年度には、合計百兆円にもなる。  この国債が急増する理由は何か、端的に大蔵大臣にお答えいただきたいと思います。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま中期展望の数字をお挙げになっておられましたので、中期展望につきましては、そこにも書いてございますし、かねて御説明申し上げておりますが、一つの機械的なプロジェクションであるということは、池田委員もよく御承知のとおりでございます。  それにもかかわらず、中期展望の意味しておるところは幾つかございまして、一つは、一般歳出、中でも医療、介護、年金等々の社会保障関係につきまして、負担と給付のコンセンサスが生まれておりませんために、こういう人口動態からいいますと、どうしてもこれが歳出増の要因になる可能性が高い。それから、租税の弾性値というものが一・一であるということが過去の経験でございますために、多少景気がよくなりましても、税収の増の限度というのは、仮に五十兆といたしましても、せいぜい一兆とか一兆五千億円であるということ。それからもう一つは、景気がよくなりますと、公債の発行高は多少減ることになると思いますが、金利が上がりますために公債の利子がどうしても上がる。そういう三つの要素がございますので、ただいまおっしゃいましたような長期的な展望がなかなか避けられないということでございます。
  73. 池田元久

    ○池田(元)委員 この三年を取り上げて急増する理由は何かというふうにお尋ねしたわけでありまして、まさに国債が累積する理由はおっしゃるようなことでありますが、急激にふえる、これは今お答えいただけなかったのですが、大蔵省が、長期金利抑制のねらいで十年物の国債の発行を抑えて期間の短い中短期債をふやす結果、借換債の回転が速くなっている、いわば自転車操業の状態になっているということを示していると私は思います。  次に、二〇〇〇年度に発行される政府保証債はどのぐらいになるのでしょうか。これは本予算にかかわる話なのですが、二〇〇〇年度は、財投機関、預金保険機構などから昨年度の倍の五・一兆円の政府保証債が発行されます。これはよろしいですね。  それでまた、政府借り入れということになりますと、既に話題になっておりますように、資金運用部の資金繰りの悪化によって、地方交付税特別会計が民間金融機関から八兆円を借り入れることになりまして、こういう中で、二〇〇〇年度は、国債と政府保証債で見ますと、八十五・八兆円と五・一兆円、合わせて九十一兆円を発行することになるわけですが、これを消化する見通しについて大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどおっしゃいました十二年度の政府保証債の発行予定額、五兆一千億円、そのとおりでございます。それから、その他のもの八十五兆八千億円、これもおっしゃいましたとおりでございます。  新規発行の消化につきましては、シンジケート団等々とは常に話し合いをいたしておりまして、発行条件はその時々によって違うわけでございますが、私どもも、シンジケート団その他による消化ということを考えまして発行条件を定めてまいっておりますので、ただいま見ますところ、この消化につきましては大きな問題はないというふうに考えております。  将来、もし金利がいろいろな関係で上がってまいりましたときには、それに即応した発行条件を考えなければならないとは思っておりますが、ただいままでのところ、まず消化は余り問題がないだろうと考えております。
  75. 池田元久

    ○池田(元)委員 ごく目先は金余りで消化できるかもしれません。しかし、二〇〇一年度以降、財投改革に伴って財投債が発行されます。二〇〇一年度はどれだけ発行が見込まれるか、激変緩和の措置もございまして、少なくとも大体十兆円は出されるのではないかと言われておりますが、いかがでしょうか。
  76. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 財投債につきましてはまだ正確に申し上げられませんが、今おっしゃいましたように二つの要因、すなわち預託を受けております金と貸し付けております金の期間にギャップがございますので、返す方が早く参ります。その間のギャップについて財投債を何とかお願いできないかということと、それから、自主運用をされる場合に財投債の引き受けをお考えいただけないかということを郵政大臣にお願いをしてございまして、原則としては御承諾を得ておりますこともございまして、ちょっと正確に数字は申し上げられませんが、かなりの財投債を発行いたすことになることは事実でございます。
  77. 池田元久

    ○池田(元)委員 推計すると大体十兆円を超すのではないかと関係者は見ておるのですが、そうなると、先ほどの九十三・六兆円プラス十兆円で百兆円を超える、まさに国債、公共債の大量発行ということになるわけです。  端的にお答えいただきたいのですが、これは金利上昇の大きな要因になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  78. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 理屈だけで申しますと、財投債を発行する部分がネットの発行増になるわけではございません。国債という名前でそれが発行されるわけでございますが、ただ、おっしゃいますように、そういうことは考えておかなければなりませんで、恐らく、財投債というのも一種の国債でございますから、その発行条件等々にも多少の影響があるかもしれないといったようなことは、郵貯の吸収能力が定期貯金の関係で二年度にわたって落ちますので、それとの関連で考えておかなければならない問題だと思います。  したがいまして、郵貯のはげ落ちます分を、できるだけ国債を窓口でも買ってもらいたいといったようなことについても、郵政大臣にはいろいろ御考慮をお願いいたしておるわけでございます。
  79. 池田元久

    ○池田(元)委員 金利上昇の大きな要因になるということは、直接お答えにならなかったですけれども、お認めになると思いますね。  次に、資金需要の点から話を進めたいのですが、財政の危機にシグナルを出すべき国債市場では、御存じのように、史上まれな低金利が続いております。低金利は、企業部門の資金余剰と日銀のゼロ金利政策を初めとする金利抑制策に支えられていると言ってよいと私は思います。  まず企業部門の資金余剰ですが、政府はここへ来て、景気について緩やかな改善が続いていると見るようになりました。このまま政府の期待と見通しどおりにいけば、企業部門の資金余剰は縮小していくと見るのが普通だと思います。景気が上向いて資金需要が出始めると、金利は上昇局面あるいは急ピッチな上昇局面に入るのではないかと思いますが、端的にお答えをいただきたいと思います。
  80. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 ごく一般論として申しますと、景気が回復いたしますと、当然設備投資が増加いたしますから、投資資金が必要になってまいります。あわせて、景気がよくなるということは、消費も活発になるから個人貯蓄も減少するという意味で、資金はショートする。したがって、金利は上がるというのが常識でございます。  しかし、これからの日本の局面でそれがどうなるか、これはそのときそのときでいろいろ違います。したがって、ことしの後半どのように動くか、今から金利の状況を推測することは困難だと考えております。
  81. 池田元久

    ○池田(元)委員 堺屋経企庁長官も、新聞ですか、インタビューで、景気が上向いて民間の資金需要が出始めると金融市場が逼迫するという想定もあると述べています。私はそうだと思います。まず企業の資金余剰が縮小してくる可能性があるということですね。  次に、ゼロ金利政策についてお尋ねするのですが、まず堺屋経企庁長官にお尋ねをいたしますが、最近の卸売物価の動きはどうなっているでしょうか。
  82. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 過去十年程度、また最近も、卸売物価はどちらかというと下落傾向にございます。九八年の国内卸売物価を見ますと、国内の景気が低迷し、需要が緩和しております。その上、国際商品も低迷しておりまして、円高傾向等もあり、七年連続の下落となりました。  最近の動向を見ると、原油が上昇してきていること、あるいは、ちょっと最近になって為替の方も円安に動いていることなどがございますけれども、それでも九九年の十—十二月、前期でございますが、これで前年同期に比べて〇・七のマイナス、そして一月は〇・三のマイナスということで、ずっとこのところ卸売物価は下落傾向にございまして、絵で見るとこんな格好になっておりますけれども。
  83. 池田元久

    ○池田(元)委員 ここのところ、この一年は、五月から下げどまって、横ばいに推移している。その動向の幅が違う。
  84. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 いや、ごく最近はちょっと横ばいになりまして、国際商品の値上がりなどございますけれども、長期に見ますと大体こんな格好でございます。
  85. 池田元久

    ○池田(元)委員 一月の月例経済報告では、国内の卸売物価はおおむね横ばいに推移している、消費者物価は安定していると述べています。卸売物価の指数も、経企庁の調査では、昨年の四月を底に緩やかに上昇または横ばいと言っていいと思います。昨年の十二月は九六になっている。卸売物価は下げどまったと言ってよい、これは多くの人が言っておりますので、私の独断的な偏見でも何でもございません。  そこで、日銀総裁にお尋ねをいたしますが、日銀では、去年の四月九日の会合では、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまでゼロ金利政策を継続する、何度も何度も言われている言葉ですが、まさに日本語の正確な理解として、これはデフレ懸念が払拭されたと見てよいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  86. 速水優

    ○速水参考人 我が国の経済情勢、景気につきましては、私どもは、足元は持ち直しておりますけれども、そして企業収益も回復しておりますけれども、設備投資、個人消費といった民間需要がまだ自律的に上がってくるという確認ができないわけで、その点がありますので、民間需要とか賃金の軟化傾向がまだ続いているといったようなことから、物価の方ももう少し様子を見ていく必要があると思いまして、日本銀行は、デフレ懸念の払拭が展望できる情勢になるまでゼロ金利を続けていくということを政策決定会合で決めておるわけでございます。
  87. 池田元久

    ○池田(元)委員 今の御発言であれば、それはデフレ懸念の払拭ではなくて、新しい条件をつけて、景気の上昇とかそういうことを言うべきではないですか。デフレ懸念の払拭というのは、日本語の正確な理解では、下降しない、デフレ懸念の払拭ですから。今の答弁には僕は納得できませんね。  あなたは、いつまでも今のゼロ金利でやっていくつもりはない、金利がゼロというのは異常事態であることは間違いないとおっしゃっているわけです。ゼロ金利政策を実施して一年、当時のデフレ懸念の払拭というのは、あの状況の中でこの言葉が必要だ、必要だというか、まさにそれに適合する言葉として使ったわけでしょう。しかし、デフレ懸念の払拭はもう済んでいるのではないですか。払拭されたのではないですか。
  88. 速水優

    ○速水参考人 ただいま申し上げましたように、デフレ懸念の払拭が展望できるまで今のこのゼロ金利政策を続けていくということを先般の決定会合で決めたわけでございます。それには、十分いろいろな資料を見ております。  私は、それは、ゼロ金利というのが異常な金利であることは確かだと思っております。これは、やはり景気がよくなる、特に民間需要が上昇してくるということがもう少しはっきりしませんと、今の消費の動きなどを見ておりましても、まだ上がってきているというところまで言えないと思うのですね。  ここのところはもうしばらくこのままでいきますが、また、月に二回決定会合をいたしておりますので、そのときそのときの情勢を見て政策を転換してまいりたいというふうに思っております。
  89. 池田元久

    ○池田(元)委員 ゼロ金利政策のマイナスがもう既に相当あらわれている。企業の利子負担は二十兆円減ったのに、国民の利息は三十兆円も消えたという批判も出ております。また、日銀の会合でも、非効率な企業を温存して構造調整をおくらせるリスクがあると認めているわけですね。構造改革、大事なはずですね。  去年の十一月二十六日の日銀の会合では、複数の審議委員から、インフレ率が上がり始めてから政策変更をするのでは遅く先を見た政策運営が必要だという、ゼロ金利解除の意見が出ているわけですね。もうその時期が来たのではないでしょうか。端的にお答え願いたい。
  90. 速水優

    ○速水参考人 まだ、今の時点では、来ていると思っておりません。これは、また近いうちに決定会合がございますから、そこでみんなで現在の数字を見ながら決めていくことだというふうに思っております。
  91. 池田元久

    ○池田(元)委員 デフレ懸念の払拭という言葉を使う以上、まさにその言葉どおりの解釈をしていただきたい。我々が、あの日銀法をつくるとき、日銀の独立性と同時に政策の透明性ということを言って、それが大きな二本の柱の一つになっているわけですから、その辺の言葉をちゃんと使っていただきたいと思います。  以上見てきましたように、長期金利上昇の要因はメジロ押しです。国債、政府保証債、財投債の大量発行、景気の上向きの兆しによる企業部門の資金余剰の減少、さらにゼロ金利政策の解除あるいはそれが視野に入ってくること。  小渕さんは、二兎を追う者は一兎をも得ずなどと言っております。しかし、長期金利の上昇は日本経済を暗転させることになる。そのような発言をしているうちに一兎は逆に遠ざかってしまう。危機が迫っているのではないか。危機を回避するために今から始めなければならないのではないかと私は申し上げたいと思います。  さて、日銀の国債引き受け等についてお尋ねをしたいと思います。  昨年二月に、長期金利が急騰した際、当時の野中官房長官は、日銀による国債引き受け構想について、積極的に道を見出す努力をすべきだと述べたわけですね。長期金利が上昇してくると、小渕内閣は何でもありですから、非常識なことでもやらなければならないことがあるというようなことでございますから、日銀による国債の直接引き受けをやるのかどうか、まず大蔵大臣にお尋ねをしたいと思います。
  92. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 以前にも申し上げておりますが、そういう方針は全く持っておりません。
  93. 池田元久

    ○池田(元)委員 小渕総理大臣の景気対策を指南していると言われている大原代議士は、財政再建を実現するためには徹底的な規制緩和と日銀の国債引き受けという二つのサポーターが必要だ、日銀が国債を直接買うようにすればゼロ金利政策を続けるより景気を刺激すると述べております。  ここはやはり小渕さんに聞かなきゃいけないところなんですが、出席されませんので、青木官房長官にお尋ねをいたします。官房長官は、野中前官房長官と同じように日銀の国債引き受けというものを考えるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  94. 青木幹雄

    ○青木国務大臣 先ほど宮澤大蔵大臣がお答えになったとおりの考えでございます。
  95. 池田元久

    ○池田(元)委員 ということは、やはり小渕総理大臣考えをぜひ聞かなければならないと思います。  速水日銀総裁の考えはいかがでしょうか。
  96. 速水優

    ○速水参考人 国債の引き受けにつきましては、これまでの考え方と全く変わっておりません。  中央銀行が一たん国債を引き受けますと、財政支出の拡大とか通貨の増発に歯どめがきかなくなります。将来、悪性インフレを招くおそれが生じてくるわけでございまして、そうなりますと、日本銀行はもとより、日本全体の政策運営や円という通貨に対する内外の信認も失われていくと思います。このことは、我が国を含む主要国の歴史から得られる貴重な教訓でございます。したがいまして、新規の国債を引き受けるという考えは全く持っておりません。  長期金利につきましても、先ほどからお話がございましたが、日本銀行が今ゼロ金利政策のもとで豊富に潤沢な資金を供給しておりますし、流動性に関する安心感というのは金融・資本市場全体に浸透していると思います。  また、家計が千三百兆円あるということは、これは大きな金融資産でございまして、アメリカは全く貯蓄率ゼロだと言っているのに対して、この千三百兆がまだまだ稼働できるということは、私どもの課題でもございますし、国債市場を拡大して流動性をふやして、いろいろな種類をふやし、内からも外からも投資しやすいようにしてまいりたいと思っております。
  97. 池田元久

    ○池田(元)委員 日銀の国債引き受けは、言われているとおり禁じ手であります。財政法の第五条で禁止されているわけですね。要するに、今おっしゃったように、歳出増加に歯どめがきかなくなる、悪性インフレにつながるおそれがあるということであります。  去年の二月、野中官房長官は、国債の直接引き受けを言った後、ちょっと旗色が悪くなって、今度は長期国債の買い切りオペの増額を言い出しました。  日銀の長期国債買い切りオペというのは、経済規模の拡大などに合わせて必要な資金を供給するという点から、市場で流通しております国債を買い取るというものです。しかし、この長期国債買い切りオペの増額、この増額が大変問題がある。国債を消化するためだとか長期金利を抑制するためという目的で国債を買い増ししようというものであります。  野中さんは、直接引き受けはだめだから、今度は長期国債の買い切りオペの増額を求めたわけですが、宮澤大蔵大臣、長期金利が上昇してきたら国債の買い増しをおやりになるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 民間の経済活動が幸いにして活発になりましたら金利が多少上昇することは、これは考えておかなければならないことですが、日銀の国債引き受けということは、まさに池田委員がおっしゃいますとおり、これは麻薬でございますので、仮に麻薬でいっとき痛みがとれたとしても、それは必ず将来健康を害することになることは、私ども自身の日本の経験でもよく知っていることでございますので、絶対にやってはならないことだ。  この不況は脱出したいと思いますが、しかし、さりとて我々には二十一世紀という大変大切な将来がありますので、そのことの方を忘れてはならないと思っていますので、実質的にそういう効果を生むようなことは、私は一切やってはならないと思っております。
  99. 池田元久

    ○池田(元)委員 最近、日銀の委員の中にも、このオペの増額を肯定する意見があるようです。日銀総裁、この長期国債の買い切りオペの増額について、どうお考えになるか。
  100. 速水優

    ○速水参考人 国債買い切りオペにつきましては、長期金利が上がらないようにとか財政の資金調達を円滑にするため、そういった目的でふやし始めてしまいますと、結局切りがなくなってしまいまして、引き受けと同じ悪影響が出てくるものだというふうに考えております。  もしも、財政運営のあり方自体が問われているときに日本銀行が国債の買い切りオペをふやしたりいたしますと、市場では、中央銀行が買い支えなければ消化できないような国債は信用できないということで、格付も下がりますでしょうし、長期金利はかえって上がってしまう可能性があることを恐れております。
  101. 池田元久

    ○池田(元)委員 ぜひ堅持していただきたいと思います。  去年、日銀は、十月十三日の会合で、短期国債を対象とするアウトライト、買い切りや売り切りのオペを導入いたしましたが、簡単にその目的をおっしゃっていただきたいと思います。
  102. 速水優

    ○速水参考人 昨年十月に買い切りオペを始めましたのは短期国債でございまして、今、御承知のように、国債三百七十三兆円のうち、短期国債が市場でもう既に六十六兆出ているわけです。政府短期証券三十八兆、トレジャリービルと言われる割引短期国債二十八兆、こういうものを私どもは金融調節の手段に使って売買をしておるわけです。  これは市場でも自由に売買できるわけでございますから、税金もかかりませんし、これを調節、今のゼロ金利を、ゼロ金利というのは何もしないというわけじゃありませんで、〇・〇二%という今の水準を維持するために金融市場局は毎日非常に大きな努力をしているわけです。そういうものに使う手段として、道具として、この政府短期証券の売買というものをやっているわけです。これはまさにオペレーション、各国がやっているオペのやり方でございます。
  103. 池田元久

    ○池田(元)委員 金融政策の手段の機能向上というようなことをおっしゃりたいんでしょうが、日銀でも、短期国債のアウトライトオペというのは、ゼロ金利政策の効果の浸透を一層確実なものとするようにやるんだと言っています。  やはりこれは当時の状況を考えなければいけない。順序からいいますと、まず九九年の二月のゼロ金利政策、それから九九年十月十三日の短期国債の買い切りオペ。  まず、ゼロ金利政策は、その前年の暮れから債券相場が急落して、今、野中さんの発言も御紹介したように自民党などから強まった日銀による国債引き受け論がありました。それをかわすための苦肉の策であったのではないかとマーケットは見ております。また、円高が進行した中で、九月二十一日の政策決定会合で金融政策を変えなかったことに対する不満が続出しまして、次の十月十三日の会合で短期国債のアウトライトオペを導入することになりました。  私は、中央銀行として日銀は大丈夫かなと大変心配をしております。日本銀行は、その独立性そして政策の透明性、それを当然確保していかなければならない。いろいろ、官房長官の政治的な圧力とか、秋には量的緩和論の包囲とか、大変御苦労ではありますが、政治的な妥協はしてはいけないと私は思いますよ、新生日銀法の趣旨に反しますから。大変心配している。大丈夫ですか。
  104. 速水優

    ○速水参考人 その点は、私ども、政策は政策決定会合で決めるということでございます。  それで、短期証券の売買というのは、先ほども申し上げましたように、どこの国でもやっていることで、今まで、むしろ日銀引き受けで外為証券等を持っていたことが問題だったのであって、市場に既に六十六兆円も出ているのに、これを自由に売買して調節するというのは当たり前のことなんです。  一方で、そうやってゼロ金利が十分浸透して、株価などもああやって上がっていくわけでございますし、長期金利も比較的低いところで維持されているということでございますので、その点は御心配いただく必要はございません。
  105. 池田元久

    ○池田(元)委員 では、御心配な点をはっきり申し上げましょう。一年物短期国債、TBの買い切りを十年間続ければ、結果的には十年物国債についての輪番オペを実施したのと同じ効果があるわけですよ。そんな、のうてんきなことを言っていられないのではないか。  時間がないので、以上見てきましたように、長期金利の上昇を抑えるためにさまざまな対策がとられている。国債の中短期シフト、資金運用部の国債買い入れの継続、また金融面ではゼロ金利政策、そして今の短期国債のアウトライトオペ等、あるいは郵貯の満期対策もありますよ。  ここまで財政危機が進行している今、市場の声を聞くべきだと私は思います。市場の警告を受けとめるべきだと思います。国債の金利を上がらないようにするためにいろいろと人為的な、理に反することをするのはおかしいのではないか、まさにPKOではないか、そう思います。病気であるのに根治治療をしないで、解熱剤でシグナルを抑えてしまうのはやめるべきだ、金利抑制策というびほう策をやめるべきだと申し上げたいと思います。  官房長官にあれこれ質問をしたいんですが、私は、今回のこの予算委員会の総理欠席の審議、大変残念です。総理出席委員会でお決めになることということを何度も何度も繰り返していらっしゃる。そして、きょうの新聞によれば、官房長官はいつもと違って倍以上当委員会に出席をされている。この異常な事態を打開するのは小渕総理の決断一つなんです。みずから進んで説明責任を果たすことです。国会改革は、太宰府の梅の使節や閥務で連日、野中さんと雑談をするような事態は全く描いておりません。  まさに今求められているのは、小渕総理大臣委員会に関係なく進んでここへいらして、我々受け入れますから、堂々と所信を表明していただきたいということを強く求めまして、質問を終わりたいと思います。
  106. 島村宜伸

    島村委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ————◇—————     午後一時開議
  107. 島村宜伸

    島村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  三案審査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長佐藤一男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 島村宜伸

    島村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  109. 島村宜伸

    島村委員長 質疑を続行いたします。海江田万里君。
  110. 海江田万里

    ○海江田委員 民主党の海江田でございます。  幾つかお尋ねをしますが、総理がお出ましになっていないということでございますが、青木官房長官はそうだ、そうだというふうに頭を下げております。税制改正の問題を私はきょうは一つのテーマにしたいと思いますが、やはり総理が出てきませんと、これからどういう日本の税制をつくっていきたいのかという方向性でありますとか全体像というのはなかなか見えてこないと私は思うんですね。  官房長官、総理のそばにおられて、総理は日本の税制といったものを一体どういう方向に持っていきたいというふうに考えておられるか、官房長官の理解でよろしゅうございますので教えていただきたいと思います。
  111. 青木幹雄

    ○青木国務大臣 私も、総理と税制について今の時点で詳しい意見交換はいたしておりませんので、この場で軽々に総理の考え方を申し上げる立場にないと考えております。
  112. 海江田万里

    ○海江田委員 青木官房長官が総理のお考えをわからないということでありますから、野党の私どもなんかはもっとわからないわけでございまして、税制というのはとりわけ国の政治の一番基本でありますし、やはり議会が、もう諸先輩方ですので多くを語りませんけれども、そもそも議会ができた経緯というのも、これは実はどういう税制というものをつくっていくかということなわけでございます。もちろん、所管は大蔵大臣でございますが、ただ、その上にやはり総理がしっかりといて、やはり日本の国の税制というものをこっちの方に持っていくんだというような方向性を、まさに議会を通して納税者に対して理解を求めるというのが私は筋ではないだろうかというふうに思っているわけでございます。  そこで、総理がいないわけでございますから本当に困りまして、ただ、質問をしないわけにいきませんので大蔵大臣にお尋ねをします。  私、この平成十二年度税制改正の要綱を読ませていただきましたけれども、平成十二年度、二〇〇〇年度に何をしなきゃいけない、これはしなきゃいけないということは書かれているわけです。もちろん、やらなきゃいけないことで残っているものも、ここに盛り込まれていないものもあります。それから、こんなことをやっていいのかな、こんなことを続けていいのかなというようなことも、この中に盛り込まれております。  だけれども、これを通して、少なくとも二十一世紀の初頭でよろしゅうございますけれども、これからやはり五年でありますとか十年ぐらい、日本の税制というのは一体どういう方向にやっていかなきゃいけないのか、今の税制をどういうふうに変えていかなきゃいけないというふうに考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 役不足で申しわけございませんけれども、どうも、いかに海江田先生のお尋ねでも、こればかりはお返事ができません。それは、事が大きいからということもございますけれども、実際、やがて近いときに、財政、税制、地方財政、全部いろいろなことをレビューしなきゃならないと思っておりますけれども、その前提になりますのが、二十一世紀の少なくとも前半あるいは初頭における日本社会のあり方というものをどうしても議論しまして、そこから考えませんと本当のことは出てこないだろうと思っておりますものですから、そうしますと、これは、ただ税制調査会とかなんとかいう小さな場ではございませんで、私ども、党なら党を挙げて、あるいは各党を挙げてという、そういう御討議の結果としてしか私は生まれ得ないだろうと思っております。  財政は非常に苦しいとかなんとかでございますけれども、それはある意味では全体の大きな絵の中の問題でございますので、そういうことを、恐らく国会の御議論が中心になって進んでいくのだと思いますが、その趨勢に従って税制というものも考える。  どうもそれだけ申し上げるのがせいぜいでございまして、これはそういうものとして、それだけのお答えしかできないことを申しわけないと思いますが、御了解いただきたいと思います。
  114. 海江田万里

    ○海江田委員 まさに宮澤大蔵大臣が今おっしゃったことはそのとおりであろうと思いますので、やはり日本の国のリーダーが出てきて、自分の考え方を話をして、そしてまたこの議会でもって議員の意見を聞いて、そしてそれをやはり自分の考え方にも反映をさせるというのが当然のあり方であるわけでございますから、そういう意味では総理がこの場所に出てこなければいけない。  あと大蔵大臣一つだけ私ちょっと今気になりましたのは、役不足だとおっしゃいましたけれども、あれは日本語の間違った使い方ですからね。全く違いますから、これだけはちょっと。最近日本語が大変乱れておりまして、官房長官も御答弁と、自分の言い方に御答弁なんというような発言がきのうもありましたし、細かく言ったら切りがありませんけれども、文部大臣はいませんけれどもまず国会が一番本当は日本語が乱れているのですね、これは。やはり一つ一つ注意をしなければいけないわけでございますが、ただ、それはいいのです。  その意味では、やはりこの平成十二年度税制改正の要綱というのを見ておっても、税制を通して、税金を通してどういう日本の国づくりをするかということが全く見えてこない。だけれども、しようがありませんから、私はこの中から幾つか、こういうことを考えておるのじゃないかなということをそんたくをしまして、そして、本当に何か暗やみを手探りで進むようで非効率的でもありますけれども、そういう議論をやはりするしかないわけでございます。  一つ大きな、私も何年か国会に籍を置いておりまして、この税制の議論に加わらせていただいておりますけれども、この間、例えばさきの総理大臣であります橋本総理などは、我が国の税制の中で、やはり課税最低限がだんだん上がってきていると。課税最低限が上がることによって所得税を、消費税が片一方でできましたから皆さん間接税は払っているわけですけれども、直接税というのがやはり一番納税の痛みもわかるわけでございますから、この直接税、とりわけ主幹税であります所得税を払う人の人数がだんだん減ってきた。これを何とかしなきゃいけないのじゃないだろうか、つまり課税最低限の引き下げなんかをある程度しなきゃいけないのじゃないだろうかというような議論、これはまさに前の総理大臣であります橋本さんから、私は直接当委員会で聞いた。  だから、ああなるほど、そういう考え方があるのかなということでございますが、ただ、残念ながらそういうお話というのは小渕総理からはただの一度も聞いたことがありませんし、そういう議論をまさにしたいわけでございますが、全くできないということでございます。  宮澤大蔵大臣は、この課税最低限の引き下げの問題、確かに今回のこの平成十二年度の税制改正の中では、私は、本当に偶然かもしれないけれども、きのうもちょっと議論になりましたけれども、児童手当の創設によって、これまでの扶養控除の割り増しの十万円がなくなりましたよね。あれがなくなったことによって、結果的にではありますけれども、例えば夫婦子供二人の場合、この二人を、一人が特定扶養控除に該当する子供と、それからもう一人が十六歳未満の子供がいる、こういうふうにして計算をしますと、現行ですと夫婦子供二人の所得税の課税最低限が三百八十二万一千円である、それが今度は三百六十八万四千円という形で、二十万弱、これで十四万円ですか、これは若干でございますけれども課税最低限が引き下げになるわけですよね。  これは、私はまさに扶養手当が出てきたことによる一つの結果だろうと思うのですが、ただ、ここで課税最低限がこういう形で下がったのだから、今後もこの課税最低限の引き下げという方向に持っていきたいのか、それとも、いやいや、たまたまこれは扶養手当との関係で出てきた話だからというふうなのか、どっちなんですか、これは。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 閣内でも党内でもそういう問題を相談しておりませんので、自分の考えとしてお聞き取りをいただきたいのでございますけれども、まず最初に、今回四十八万円から三十八万円に十万円下がりましたことはそのとおりでございますけれども、これは、長期にわたって課税最低限を下げたいとか下げるとかいう方針の結果ではございません。そういう控除と児童手当との、昨日も御議論がございましたけれども、振りかえをいたしました結果、そういうことになりました。なりましたのは確かでございますが、そういう長い方針の一環として行われたということではございません。  それから、それは一つの問題としまして、もとのことでございますが、その橋本さんのおっしゃいましたこと、私自身は、もう少したくさんの国民に少なくてもいいから所得税を納めていただきたいという気持ちがございますので、したがいまして、課税最低限を下げて、そのかわり最初の、初度の税率も非常に低いものにして、そしてできるだけたくさんの方に少しでもいいから所得税を納めていただきたい、こういうことを自分としては理想と考えております。  御承知のように、我が国が、長いこと賃金が毎年、好況時代に上がってまいりましたものですから、御承知のように世界で最も高い課税最低限の国になってしまいまして、そこで賃金上昇がストップしてしまいましたので、その後の所得税の伸びというものはなくなっておりますが、いまだに世界で一番高い課税最低限を持っていて、かなり裕福な暮らしをしていらっしゃる方が所得税を納めていらっしゃらないということになっております。  消費税は納めていらっしゃいますから税金を納めていらっしゃらないとは申し上げませんけれども、やはりこの場合の税金というのは所得課税であろうと思うので、なるべくたくさんの国民が、初段階は少なくてもよろしゅうございますから所得税を納めていただきたい、理想としては私はそう思っております。
  116. 海江田万里

    ○海江田委員 大蔵大臣のまさに個人的なお考えというのはよくわかったわけですが、やはりそれは総理が、本当に自分も大蔵大臣と同じだという答えであってもいいわけですし、それからあるいはそれとは違うという答えであってもいいわけです。やはりそこが全然出てこないということは本当にけしからぬことだと思うわけでございますが、ここの考え方というのは本当に、非常に日本の国をどういう国にしていくのかという一番根っこのところでありますので、これはぜひいずれまた総理にも来ていただいて、この議論をしなければいけないと思うわけでございます。  あともう一つは、個人的なお考え方でよろしゅうございますけれども、課税単位の、個人単位なのか、それとも世帯単位なのかということも実は大きな問題でありまして、これもやはりそろそろ答えを出しませんと、今日本では少子高齢化の問題がある。  少子高齢化で一つ考え方は、少子高齢化なんだから、とにかく女性に子供を産んでもらわなきゃいけない、女性に子供を産んでもらうためには、むしろ職業なんか持たない方がいいんだということを言う人たちもいるわけですよ。家庭に入っていれば、結婚をしてそのまま結婚をした時点で家庭に入ってもらえば、大体何年かたつと子供が生まれる。しかも、第一子だけじゃなくて第二子も生まれるから、むしろ女性は家庭にいてもらった方がいいんだという考え方も一つあります。この考え方でいくと、やはり世帯単位の課税になった方が、特別に配偶者控除でありますとか配偶者特別控除なんかを設けた方がいいという考え方。  だけれども、そうではなくて、やはり女性も、もうこれは大きな流れで、とりわけ二十一世紀というのは女性の時代だ、女性の世紀だとも言われるわけですから、まずやはり職業を持ってもらわなければいけない。  職業を持つということになれば、当然のことながら、これはやはり個人単位になるわけですよ。職業を持って、それから先でもって、実は職業を持ちながらお子さんを産んでいただいて、そして夫婦そろって育てるような日本の国づくりをしていかなければいけないということになれば、やはりそれに適合した課税のあり方、これはどちらかというと世帯単位であるよりも個人単位の方がいいだろう、こういうことになるわけですよ。  だから、ここのところをやはり、総理も口では少子高齢化を何とかしなければいけない、少子化対策を何とかしなければいけない。そのときどういう形で一番政策的に誘導していくかといったら、税制が一番初め、基本ですよ、私は本当のことを言うと。そこのところの考え方が、一体何を考えているのかということが全く伝わってこない。  だから、しようがないからこれは大蔵大臣のお考えをお聞きするしかないわけですけれども、この問題をどういうふうにお考えですか。
  117. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総理の口からとなりますと、今私が申し上げているようなことはとても総理大臣のお立場では影響が大き過ぎますので、私はおっしゃらないだろうと、余計な話ですけれども。  それで、今の世帯の話です。これもまことに、次回大きな抜本改正をするときに問題にならざるを得ないと思うのですが、実態として、世帯というもののあり方が変わってきておるということが一つございます。それから、別にツー・インカム・ファミリーのようなものがまたございますから、夫婦合算というようなことについてもいろいろ新しい問題がございます。それからパートのような問題も、御存じの問題がございますから、どうもここらは一遍、この次にはその問題を取り上げざるを得ないだろう。その結果、しかし、その決め方いかんによってまた世の中のそういう世帯のあり方に影響を及ぼしますから、そこも考えなきゃなりませんで、これはやはり次回避けて通れない問題であろうと思っています。
  118. 海江田万里

    ○海江田委員 本当は、今まさにやるべきであって、次回というのがまた場合によっては再来年になったり、どんどんどんどん、これを先延ばしというわけでございますから。  あと、幾つか具体的な話もしたいんですが、住宅ローンの税額控除制度がございますよね。ことしの目玉というのは、平成十二年度税制改正の要綱を見ましても、一番初めに、とにかく「民間投資等の促進」ということで、真っ先にこの住宅ローンの税額控除制度。これは、現在ですと平成十二年で終わってしまうわけでございますけれども、平成十三年に入りましてから居住をした、入居をしたという場合は、今の法律のままですと、そこで従来の六年間の税額控除に戻ってしまうわけですよね。今、十五年間の税額控除にしているわけですから。これを平成十三年の、二〇〇一年の六月三十日まで入居分については新しい、つまり十五年間税額控除をしますよ。あれは、最高額で計算しますと、たしか五十万円になるわけですよね。所得税で五十万円の税額控除ですから、これは本当に、多くの人たちは所得税をほとんど払わないで済むということになるわけですよね。そういう大盤振る舞いの、税額控除による住宅ローンの控除の制度を半年延ばしましょうというのがことしの税制改正の真っ先に、何を見たって真っ先に書いてあるわけですから、恐らく一番の目玉だろうと思うのです。  ただ、私は、まさに住宅ローンの税額控除というもの、昔はローンだけじゃなくて、これはよく御存じだろうと思いますけれども、自己資金でやっていても控除があったわけです、今は全部ローンになりましたけれども。だけれども、税額控除というのは、まさにこの制度は、経済が右肩上がりで、収入も右肩上がりで、それからそういう住宅の購入資金が、購入金額が右肩上がりで、ことし買ったけれども、来年になればその住宅の価値がもっと高くなるとか、給料だってことしよりも来年の方がもっと高くなる、ボーナスももっと高くなる、そういうときに、住宅を取得してからたしか最初は三年だったんですよ。それが五年になって六年になってと伸びていったわけです。  これは、若いうちに住宅を手に入れる、そうするとなかなかきついだろう。ローンの返済もあるだろうし、きついだろう。だけれども、それが、最初のうちの何年間そういうふうに税額でもって手当てをすれば、五年たち十年たっていくうちにこれからあなたの給料も伸びていくだろう、そうすれば、毎月返済するローンの負担というのはそれだけ軽くなりますよ。それから、購入をした住宅だって、その住宅の価値がこれからだんだん上がっていくだろう。だから、一生のうちでまさに一番厳しいのは住宅を買ってから三年であるとか五年であるとか六年だとか、この期間が住宅を取得する人たちというのは一番厳しい。返済がきついから、生活が一番厳しいから、だからこの三年とか五年とか六年、何とか税制でもってこの人たちの負担を軽くしようじゃないだろうかというのが基本的な考え方ですよね。  そもそもそれを、そういう制度に乗っかっていて、全部右肩上がりの経済のところで仕組まれた制度を、私は本当のことを言って十五年に延ばすのも反対ですよ、これは。十五年間はいいけれども、段階的になっていますけれども、では、十六年目からどうなるんですか。今の時代というのは、これはもうるる説明をしませんけれども、そういう時代じゃなくて、最初に買ったときもつらいけれども、十年後もつらければ二十年後もつらければ、三十年後だってつらいんですよ。それから、買った住宅が上がっていかないんですよ。そういうときに、何でこんな旧来の形の減税を、しかもローンの税額の控除を、何でそんな十五年なんか続けるのですか。時代が変わっているのだから、新しい、例えば金利の負担分を所得控除するとか、何でそういう制度に改めないのですか。教えてください。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この制度は別の意味も持っておりますけれども、この際、特にいわゆる景気刺激策と申しますか、需要喚起策と申しますか、そういう意味で私ども重点を置いて考えております。  したがいまして、余り長い先までこれを置くことはそういう意味での目的を達しませんし、今回も着工時期とするか入居時期とするかとかいろいろございましたが、結局、おっしゃいますように十三年六月までに入居ということにいたしまして時限を限りましたのは、やはりなるべくこの機会に国民がそういう気持ちがあれば住宅をつくってほしいという、それによって経済活動が刺激される、景気が刺激されるというねらいでございます。  税額というのは、おわかりのように、いろいろな方法がございますけれども、比較的所得の低い人にとっては税額の方が有利でございますから、したがって高額所得者を利するというよりは低額所得者のために有利な方法がいいだろう、そういうことでこういう制度を採用いたしております。
  120. 海江田万里

    ○海江田委員 さっき私が言いました、買った当初の負担がきついんだ、だから何とか買った当初の期間に限定をしようというような考え方、これは私はあったと思うのですね。そういうことをそのまま続けていいのですか、どうなんですか。どうでしょうか。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 片やかなり濃厚に景気対策の色彩がございますので、一定の期間で切りたい、こういう考えでございます。
  122. 海江田万里

    ○海江田委員 つまり、私が言っておりますのは、その意味ではやはり税制の中においても経済構造の改革をしなきゃいけないんですよ、これは。  今、先ほど来お話のありますこの住宅取得控除の制度というのはまさに旧来型のインセンティブ、一種の税制なんですよ。だから、それをやはり新しい形の税制に改めなきゃいけないということで、こういうことが実は二兎を追うことなんですよ。片一方で、やはり住宅取得を促進させる。だけれども、その住宅取得というのも、最初の数年だけじゃなくて、経済構造が変わっているわけですから、それに応じた税制をやはり組んでいかなきゃいけないということであります。  それができていないということは、その意味ではまさに経済構造の改革というものが税制においても全くできていないということ。旧来型の住宅促進の制度、本当は社会の構造そのものが変わってしまったのでして、旧来型の促進税制をやって、しかも十五年という本当に、税額で十五年ですから、最終的には少しずつなだらかになっていきます。先ほどは、五千万円借りた場合、初年度が五十万円ですけれども、最後になっていくと二十五万円まで、半分までになります。だけれども、これは所得税なんですよ。所得税で二十五万円といったらかなりの額ですからね。大きいです。そうすると、ここもやはり、まさに所得税を払うべき人が払わないで済んでしまう。まさに納税者の数が減ってしまうということで、どう考えたって、これは金額が大きいわけですから、これまでの古い制度に乗っかったままやっている。  問題は、これが何で今度来年の六月三十日まで延びたかというと、余りに膨らませ過ぎたから、それをぴたっと切ってしまうと住宅が冷え込んでしまうのじゃないだろうかというおそれがあるからですよ。やはりこれは、その意味では、一日も早く本当の構造改革を伴った税制改正をやらなきゃいけない。これも先延ばしだということ。私の批判というか、私の意見は違っていますか、どうですか。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 攻守ところを変えた感もありますし、違っていないと思っているのですが、この際のインセンティブとしてのところを見ていただけないかと思います。
  124. 海江田万里

    ○海江田委員 困りましたな。  それから、あとはちょっと、本当に、もう少しきめの細かい減税といいますか、これも必要なんですよ。  例えば、今の住宅取得控除、住宅取得促進税制というのは、住宅取得促進ということになると、新規に家を建てなきゃだめですよという話ですけれども、ただそれだけ。最初はそこからスタートしたわけですけれども、増改築もいいですよという制度になりましたよね。  増改築という定義なんですが、増築というのは、床面積が広がれば増築ですよ。ところが、改築というのは、私が昔聞いた話なんですけれども、税務署で認めるいわゆる増改築の場合もこの取得控除が受けられる、ローンを借りていなきゃいけませんがね。ローンを借りていれば受けられるのですよ。だけれども、税務署が決めます、あるいは国税庁が決めます、この改築の定義というのは。私が昔聞いたのですけれども、たしか住宅の、住居の主要構造物に手を入れなければ改築だとは認めないと。だから、今一番必要とされております、例えばバリアフリーにしなければいけないとか、それから家族の形態が、数が変わってきましたから、例えばマンションの中の壁を取っ払って、そしてもっと住みやすいような形にしなければいけないとか、こういうところにも実は大変大きな需要があるわけですよ。とりわけ、バリアフリーなんかの場合は、絶対これから必要なんですよ。だけれども、そこにバリアフリーをやったって、主要構造物を変えるわけじゃないですから、これは。第一、マンションなんかで主要構造物を変えたら大変ですよ、がたがた崩れ落ちちゃうわけですから。  だから、実際に増改築で、増築なんかでどのくらい件数があるのか。ちょっとそれは通告していなかったので申しわけないけれども、実際には使えないのですよ、これは。だから、そういうところはやはりきちっとした手当て、本当にきめの細かい手当てで、そういうバリアフリーの改築をやった場合はこれは税制で何らかのインセンティブを与えようじゃないだろうか、そういうことを考えてもいいのじゃないですか。いかがですか。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 多分おっしゃるようには運用されていないだろう、なるべく厳しく、この減税は殊に大きいものですから、行政になっているかもしれません。よく調べますし、しかしまあ、改めて、バリアフリーというようなことまでをやっていってうまく定義づけられるものかどうか、ちょっと勉強いたしませんとお答えできませんので、お許しいただきたいと思います。
  126. 海江田万里

    ○海江田委員 ただ、これをやりませんと、融資なんかは、最近国民金融公庫なんかいろいろな融資が出てきたわけです、お年寄りが住むときの様子ですとか。その意味では、国民金融公庫なんかの方が先行しているのですよ。そこがやるようになって、なおかつ国税の方がまだだというのは、それはおくれ過ぎているのですよ。今検討するのでは、本当は遅いのですよ。この問題というのは昔からあった話なんですから。ただ、バリアフリーの問題なんかはすぐれて今日的な問題でありますけれども、やはりそういうような問題意識というものはいつも持っていなければいけない。  それから、控除額が大きいというけれども、控除額が大きいのは、まさに先ほど来私が話をしているように、十五年間も税額控除でもって、最初五十万円なんかにしてしまうからがぼっと抜け落ちてしまうのですよ。そこのところをもう少し合理的な数字にしておけば、バリアフリーにして、しかも借り入れの場合の何%かという計算はそんなに大きくないのですよ、工事費が何千万円もするわけじゃありませんから。百万、二百万ぐらいの金額で済む単位ですから。だけれども、みんながやはりそうなのかといって、こういう新しい税制もできたんだということで、特に今二月というのは納税のシーズンですから、みんながありがたがって、やはり政治家もちゃんと、与党、野党を問わずに私たちのことも気にしてくれているんだ、こういうような意識になるわけですよ。今、この二月に新聞なんかに出る話というのは全部、やれ脱税請負人がいて、しかも国税庁のお役人がいるとかいないとか、これはきのう否定をされましたからいないのだろうと思うけれども、そんな話ばかり新聞に出ているじゃないですか。そうしたら、今この時期に納税意識はどうなるのですか。やはりそういうようなことをやる必要があると私は思う。  それからもう一つだけ。これも実は、さっきの住宅ローンの時代が変わったという話ともつながってくるのですけれども、譲渡損の場合、住宅を売却した場合、いろいろな税金の本なんかを読んでおりましても、それから大蔵省なんかも一緒になっていろいろ資料を提供して本をつくっております、税金の本なんかもありますけれども。あれを見ても、とにかく書いてあるのは、圧倒的な分量を占めておるのは譲渡益が出たときの話ばかりなんですよ。それで、譲渡損が出たときの話なんか、一生懸命読もうと思ったってほとんど出ていないのですよ。  確かに、昔のようにどんどん右肩上がりで上がっていったときは、譲渡益はどうなるのか、何%の課税かというのは大きな話なんですけれども、今住宅を売って譲渡損が出たときの扱いなんというのは、まずやはりみんなに対してもっとしっかりと知らしめる必要がありますし、そこで調べてみると、譲渡損失が出ると、その年と、たしかその先々二年ぐらいにわたっては繰越控除という制度があるのですよ。だけれども、本当は実際にそうやってマンションなんかを買って売った人たち、売って損を出してもしようがないから、いろいろな事情変更がありますから、売った人たちの話を聞くと、繰り越しを控除してもらうよりも、やはりそこで売って損が確定をした時点で、しかもこの損というのはどういう期間に出てきたかというと、これまでに住居を、マイホームならマイホーム、マンションならマンションを持っていた間にだんだん減価していって損失が出るわけですよ。そうしたら、やはり売ったところで繰り戻し還付ですよ。過去に戻って、そしてその過去の、自分が納税をしているわけです、サラリーマンですから。その過去の何年分かの税金がまとめてそこで戻ってくると、そのお金が実は、大抵今売って損をした人というのはローンが余り減っていませんから、まだ自分のお金を持ち出さなきゃいけないんですよ。そのときに税金が、多少その一部でもまとまったお金が入ってくれば、自分のこれまで納税をしたお金ですけれども入ってくれば、それによって新しいところに移っていこうとか、これでもう全部きれいになったから、ああ、これからもう一回出直して頑張ろうとか、そういう気持ちになれるんですよ。  この間の中小企業国会のときは、まさに中小企業なんかから出ました損失については繰り戻しの還付の制度というのができた。それから、昔からこの制度はあったんだけれども、凍結されていたんですよ。だけれども、今みたいなときこそ、まさに個人のそういう住宅の譲渡損失なんかについても、過去の、さかのぼって過去に納税をしておった分についてのやはり繰り戻しの還付という制度ができた方がいいんじゃないだろうかと私は思うわけですけれども、いかがでございましょうか。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これが法人とかあるいは営業でありますと、一定の帳簿がついておりますし、計算もできておりますから、今のようなことがやりやすいのですが、個人なんかの場合になりますと、今のお話は簡単に、税務署、国税の方からいいますと、先々取れるはずのものを取らずに欠損にいたしますということと、既にいただきました税金をお返しするということはやはり違うんですね、実は。大変うまくおっしゃいますから、けちなことを言うなというふうに私の申し上げることが聞こえるかもしれませんが、過去にちょうだいしたものの中からお戻しいたしますというのはやはりなかなかつろうございまして、そのかわり将来は通算いたしますと申し上げるのとは大分違うものですから、その辺のところもひとつお考えをいただきたい。
  128. 海江田万里

    ○海江田委員 私は、けちなことを言うななんて言いません。私と宮澤大蔵大臣が違っておる立場というのは、宮澤大蔵大臣は税金を集める立場の論理なんですよ、それははっきり言いまして。一度取っちゃったものだからもう二度と返さないよと。そうじゃなくて、やはり納税者の立場に立って考えるかどうかだということなんですよ。大蔵省のお役人でありますとか国税庁のお役人でありますとか、この方たちは税金を取る側の立場に立ったっていいんですよ。だけれども、大蔵大臣だとか、あるいはきょういらっしゃらないけれども総理大臣だとか、こういう人はやはり納税者の立場に立って事柄を運んでいかなきゃだめじゃないですか、それは。  その意味で、やはり大臣もこういうところを、本当だったら、総理大臣も来て、今何をやっているのか僕はわかりませんけれども、本当に大事なんですよ、こういう議論は。取り巻きばかりの話で、選挙がどうのこうのとか、そんな話ではいけないんであって、だから、今度僕は必ず総理大臣とやるつもりでいます。だけれども、やはり一つ一つの議論を聞いていて、それでもって、そうなんだ、あんたの言うことは間違っているんだ、正しいんだと、そういうような議論をやらなきゃいけないんで、私は本当に、質問をやればやるほど残念になって、悔しくなってしようがありません。だけれども、やはり大蔵大臣も、もとは大蔵省のお役人であったかもしれませんけれども、大蔵大臣なんですから、やはり納税者の立場に立ってこの税制の仕組みというのを、これからいろいろ考えていかなきゃいけないということなんでしょうけれども、やはり納税者の立場に立ってそういう仕組みを考えていく、やはりそういう決意表明といいますか、それをやっていただきたいと思います。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お話はよくわかりましたし、また、確かに納税者の立場というものを考えなきゃならぬと思っていますが、結構わかっているつもりですが、まだわかりが悪いというお話かと思います。よく反省いたします。
  130. 海江田万里

    ○海江田委員 では、少し話を変えまして、厚生大臣。  きのうも若干話が出ましたけれども、確定拠出年金が、企業型は二〇〇一年の一月から、個人型は二〇〇一年の三月から導入ということが決まったわけですけれども、この確定拠出年金をそういう形で二〇〇一年の一月あるいは二〇〇一年の三月から導入する一番大きな目的というんですか、何のためにその時点で確定拠出年金を導入するんですか。一番基本のところです。
  131. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 御案内のように、現在の確定拠出型はもう既に多くの企業の間で定着しておるわけでございますが、この確定拠出……(海江田委員「給付型の間違い」と呼ぶ)失礼しました。確定給付型については定着しておるところでございますが、幾つかの問題点が提起されておるわけであります。  一つは、例えば、中小企業であるとかあるいは自営業者になかなか普及が進まないではないか、こういう問題でありますし、もう一つは、近年の、まさに今委員が御指摘の、いわゆる労働力の流動化が進む中において、転職の際にいわゆる年金資金の移管、ポータビリティーが十分に確保されていないんじゃないか、こういうようなことに対する対応が必ずしも、困難、難しい、こういうことで、これまでずっと議論をされていたところでございます。  そういうことを含めまして、御案内のように、これはアメリカでは大変人気があるということも聞いておるわけでございます。それぞれの国の事情があると思いますけれども、この間も申し上げましたけれども、より選択肢をふやしていくんだ、こういうような前提でこういうようなものを導入を決めさせていただいた、こういうことでございます。
  132. 海江田万里

    ○海江田委員 幾つかお話がございましたけれども、一つ、中小企業や自営業には確定給付型が行き渡っていないという、これは全くそのとおりだろうと思います。いわゆる企業年金、それから、企業年金とは別に、企業年金は大企業ですから、五百人以上いないと年金基金がつくれないということがありますから、もうちょっと小規模になるといわゆる税制適格年金というのがあるんですが、だけれども、これも本当の意味で中小企業だとか何だとかはなかなか利用していないんですよ。  今回まさに確定拠出型で個人型をつくったということは、その意味では、自分がよし、やろうということになれば、これは企業の負担は要りませんから、自分で毎月毎月お金を出していって、積み立てをやっていけば個人型に入ることができるんですよ。  ところが、これは大蔵大臣に関係してきますけれども、例えば個人型で拠出をします。そうすると、当然その拠出をした額が所得控除になるわけでございますが、個人型でやったときの本人拠出の限度額というのが月一万五千円でありまして、もう片一方で企業型がありまして、この企業型というのは、実は個人は拠出できないんですよ。企業が拠出をするわけですよ。企業型で拠出をする場合の企業の掛金というのは、月三万六千円まで企業が出したお金というのが損金扱いになるんですよ。  そうすると、この三万六千円と個人が出した一万五千円が限度だというのは、もし厚生大臣が言うような、確定拠出型の年金の制度が、そういうこれまでの企業年金なんかから締め出されている人たちをこれでもって何とか救ってやろうじゃないか、そういう人たちの自助努力を後押ししようということであれば、当然この一万五千円はもっと高い額であってしかるべきだと私は思うんですよ。何でこれはたったの月一万五千円なんですか、教えてください。
  133. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 委員指摘のように、この確定拠出型の年金の中には、企業型といわゆる個人型に分かれておるわけであります。  まず、企業型でございますけれども、これは今御指摘のような、要するに税制上の意味合いから考えまして一万八千円、こういうふうになっておるわけでございます。それから、要するに、個人型の中で、基礎年金があって、そして厚生年金、二階建ての部分があって、そしてその部分については、残りの部分に一万五千円でございますが、例えば、いわゆる自営業者等で、要するに二階建てがないとか、あるいは国民年金基金がございますけれども、これは六万八千円でございますけれども、ない方に対しましての限度額は六万八千円、こういうふうに税制上の優遇措置というものを現に受けておるわけでございます。要するに、こういうことを考えまして整合的にこのような限度額を決めさせていただいた、こういう経緯がございます。
  134. 海江田万里

    ○海江田委員 今厚生大臣は、私が言ったことをそのままなぞって、言わなかったことを若干つけ足しただけで、私がお尋ねをしたのは、むしろ私が聞いておりますところは、最初に労働省だとか厚生省だとかが話をしたときは、もうちょっと額が多かったんですよ。だけれども、これは拠出をした金額に対して税制上の恩典を与えなければいけないというので、最後に大蔵省のところで額を削られて、そしてこういう額になったという話を聞いておりますものですから、私は、これは厚生大臣にお尋ねをするよりも大蔵大臣にお尋ねをした方がいいと思って、それで大蔵大臣を指名したわけでございますが、わざわざ出てこられて、余り答えにならない答えをされたわけでございます。  私が聞いておりますのは、中小企業の対策だというのならまさに、要するにでもいいですよ、要するに——要するにということを言うとわからなくなるからいけませんね、人のまねをするといけませんね。企業年金のない零細なところに勤めている、あるいは中小に勤めている人、こういう人たちが自分で出すお金、拠出の限度額が、これは税制上の恩典が得られますけれども一万五千円で、そして企業年金がある場合は、さっき厚生大臣が言ったように拠出の限度額は月一万八千円なんですよ。企業年金を実施していない、だけれども企業の場合は、これはさっき私がお話ししたように月三万六千円になっているんですよ。  どうしてここの個人が、そういう零細なところの人たちが出すお金が一番少ないんですか。企業年金の上に、つまり四階建てで出すところだって、これは拠出限度額が一万八千円あるんですよ。だけれども、その四階はおろか三階もない、厚生年金、二階があるけれども三階がない人たちの方が何で一万五千円が限度になっているんですか。その理由を教えてくださいということを言っているんですよ。
  135. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、三階であります厚生年金基金の一般的な平均が、これは一万円弱でございます。このことの実績を踏まえまして、現に基金の大部分、九割相当ぐらいでございますが、カバーされる掛金の水準が大体一万五千円だ、こういうことで年間十八万円ということを設定させていただいた、こういう経緯がございます。
  136. 海江田万里

    ○海江田委員 企業年金のあれ以外は、本当に月平均一万円ですか。違いますでしょう。企業年金の部分は代行部分もあるんだけれども、大体年金のあれでいくと、企業年金のところの上乗せ分というのは平均二万八千円ぐらいですよ、これは。一万円なんか低くないですよ。また違う話になっちゃったから……(発言する者あり)掛金のことですか、掛金のことを言っているわけですね、なるほど。では、それならいいですけれども。  ただ、やはりここのところの話は、もう一つ、もう少し、むしろ皆さん方からすれば、自分で出すわけですから。片一方には、全くの自営の人たちは、御案内だろうと思いますけれども、国民年金基金があって、これは月六万八千円ですよ。ただ、これをやっている人たちというのは、どちらかというと商工自営でもお金のある人なんですよ。一番問題なのは、まさに今議論をしておりますそういう商工自営じゃない、勤労者である。勤労者であるけれども、だけれども企業年金がないんだ、厚生年金、二階建てまでには入っているけれども企業年金がないんだという人たちのところには、もしこの目的がそういう人たちに対する老後の資金の備えなんかのバックアップをしようということであれば、ここのところをやはり厚くしなければいけないんですよ。自分が出すんだから、拠出の額の限度額なんだから、実際に稼ぎがない人はもっと少なくたっていいわけだから。  だから、そこを、片一方の会社が出しているのが一万円だから、平均が一万円だからそれと同じで、一万円にもう少し五千円乗せたんだということは、ちょっとこれは厚生省の言い分としては、大蔵省がそれを言うんならそれはまさに税金を取る理屈でもってそういうこともあるかもしれないけれども、私は厚生省はここのところはもっと大きな額にするべきだというふうに思うわけでございますが、ただ、これは時間がありませんので。  大蔵大臣、だから、どうしてここで抑え込んだんですか、これは聞いておきます。
  137. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど厚生大臣も言っておられましたけれども、厚生年金基金の平均拠出額が大体月一万円足らず、現行の厚生年金基金の大部分、九割ぐらいと聞かされておりますが、それをカバーされる水準が一万五千円であろう、それで十八万円ということですが、この思想は恐らく、今やっておられる人とのバランスを考えて、それで決めたというのが議論の中心だったように聞いております。不公平を生じたくないという。
  138. 海江田万里

    ○海江田委員 あと幾つか問題点があるんですが、マッチング拠出、企業も出すけれども本人も出すという。きのうの当委員会での厚生大臣のお答えの中には、自助努力を促すというような言葉もあったんです。きょうはその自助努力という言葉が出てこなかったんです、たまたまだろうと思いますけれども。だけれども、やはりこれは、一つは自助努力を促すということが大きな導入の目的になっているんですよ。それから、今厚生大臣は、アメリカにもこういうのがあって大変人気になっておる、ただ、国も違うからというお話をしましたけれども、私はアメリカのものとは似ても似つかないものだと思うんですね。  アメリカはまさに、何で個人が自分の口座の運用の指図をするのかといえば、自分のお金を出しているから、その自分のお金に対して自分で運用の指図をするんですよ、これは。そして、それにマッチング拠出といって企業も出す。だけれども、日本の場合は、企業型に入ってしまうと自分はお金を出さないわけですよ。企業がお金を出す。もちろんその企業というのは、いわば給料の別の形であるとか、あるいは本当は退職金の前払いなんですよ、これは。退職金の前払いだからそれは自分のお金考えてもいいんだけれども、基本的な思想が、自分のお金を出すから自分で運用の指図をするんですよ、これは。それに企業がマッチング拠出をするんですよ。我が国の場合は、今お話をしている個人型は別で、肝心の企業型では自分のお金を出すというところが全く抜け落ちちゃっているんですよ。これは本当にアメリカの四〇一Kプランなんかとは似ても似つかないものであるということ、このことはやはりきちっと指摘をしておかなければいけないと思うんですね。  何でこうなったのかということを言うと、またこれも実は四省庁の案のときは、新聞報道なんかもありましたけれども、個人の拠出もあったんですよ。だけれども、最後になって出てきたのを見たら、個人の拠出がなくなった。私は一瞬目を疑いましたよ、これは。だけれども、最後に出てきたら、全然なくて、企業が出すものだけだ。  こんなんじゃ本当は、それで何で企業が出す分の、退職金の先払いのものを個人が運用指図をするのか。それだったら、企業がいわゆる退職金の債務を今のままの会計制度だったら表に出さなきゃいけないから、だからそうじゃなくて、この確定拠出にすれば退職金の債務が消えてなくなるからとか、そういうふうに思われてもしようがないんですよ、それしかないんじゃないかと。  それから、今までの確定給付型を、本人の同意を得て確定給付を確定拠出に組みかえをすることができるなんという案も入っているんですよ、今度の中には。アメリカなんかはそんなことありませんよ。截然と区別……(発言する者あり)いや、区別していますよ。だけれども、ほとんど区別をしているんですよ、これは。それを区別して、確定拠出は確定拠出、確定給付は確定給付でやっているんですよ、これは。だから、何でああいうのが出てきたのかというのも、私は不思議でならない、これは。そういう問題もやはり、来年の一月からあるいは来年の三月からスタートをするということは聞いておりますけれども、かなり不十分なものである。  それから、一体どういう思想のもとでやっておるのか、これも本当は総理に聞かなきゃいけないんですが、総理に聞いてもお答えが返ってくるかどうかわかりません。  あともう一つ、大変大事な視点ですけれども、ERISA法という法律、アメリカでは一九七四年にその法律をつくって、それで四〇一Kプランのスタートになったわけですよ。我が国の場合は、いろいろな議論がありますけれども、例えば私も何度も指摘大蔵大臣にしておりますけれども、随分おくれていますよ、金融サービス法の作業が。来年の一月までに間に合うんですか、来年の三月までに間に合うんですか、これは。そこのお答えを下さい。そういうアメリカのERISA法のような法律なしでスタートをさせるんですか、この制度
  139. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、前段の御質問でございますが、この企業型年金において従業員本人の拠出を認めないというのはなぜか、こういうことでございます。  これもいろいろな議論がございまして、従業員本人が拠出をした上で、しかも運用方法までみずから選択等をするということではまさに貯蓄そのものではないか、こういうような指摘もございました。  そして、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたけれども、三階建て部分の、年金制度の中のあくまでも一つの選択肢である、このことを要するに位置づけなければならないということと、そして、税制上の優遇措置を講ずる、このためにこのような形にさせていただいたような次第であります。  なお、余計なことかもしれませんが、アメリカの四〇一Kにおいては、要するに、従業員の拠出分につきましては税制上の優遇措置がないということは先生も御存じだと思います。
  140. 海江田万里

    ○海江田委員 本当に申しわけないけれども、時間がないので、金融再生委員長にもちょっと場合によっては質問ができないかもしれません、どうしても質問しなければいけない郵政大臣にわざわざ来ていただきましたので。  総理周辺の株取得の疑惑にまつわる話でございますけれども、これはもう御案内のように、移動体通信のNTT本体からの分離の話があるわけでございますが、時間的に追って、いつごろからこの移動体通信をNTT本体の経営から切り離しをするかという話が出てきたのか、その経緯について郵政大臣にお話をいただきたいと思います。
  141. 八代英太

    ○八代国務大臣 海江田委員にお答え申し上げます。  NTTは、昭和六十年、一九八五年に民営化されましたが、その経営形態をめぐってはさまざまな議論がございましたために、NTT法附則第二条におきまして、民営化後五年以内にNTTのあり方について検討を行い、必要な措置を講ずるものとされました。  その後、昭和六十五年というのはないから、これは平成元年になるのでしょうね、一九八九年十月二日に、NTT法附則第二条に基づきまして講ずるべき措置、方策等のあり方について電気通信審議会に諮問しまして、平成二年、一九九〇年三月二日に同審議会から、電気通信市場における構造上の問題、つまり独占的分野と競争的分野の一体的経営を解消して、NTTの経営の向上と公正有効競争の実現を図る観点から、講ずるべき措置の一つとして、「移動体通信業務をNTTから分離した上で、完全民営化する。」との答申が出されたわけでございます。  その答申を受けまして、九〇年三月三十日、NTT法附則第二条に基づき講ずる措置、いわゆる政府措置の中で、移動体通信分野における公正有効競争を実現するために、移動体通信業務を一両年内を目途にNTTから分離し、移動体通信業務を営むことになる会社については、これを完全民営化するという決定がなされたわけですね。  この政府措置に基づいて、平成三年、一九九一年になるのですが、二月二十日、地域に密着した機動的、弾力的経営販売体制を構築することによりまして、販売力、競争力を強化する等の基本的考え方のもとに、移動体通信事業分離後の新会社の会社形態については、中核となる会社とその子会社である地域会社によって地域別運営へ移行することを前提として行うものとする、もう一つは、受託会社の扱いについては、移動体通信業務の一部を委託している現在の受託会社については新会社と地域ごとに一体化を図るなどの移動体通信事業分離の基本的枠組みが、郵政省とNTTの双方から公表をされたわけでございます。  そして、基本的枠組みを踏まえて、平成四年七月一日に、NTT移動通信株式会社、現在のNTTドコモというのが事業を開始しまして、翌平成五年、一九九三年七月一日には、地域分割された地域NTTドコモ各社が事業を開始しまして、さらに同年十月一日には、地域ドコモ各社が地域の移動通信受託会社と合併をいたしました。それから現在に至っておるわけでありますが、つまり、NTTの民営化から八年の歳月が流れておる、こういうことでございます。  大体経過はこんなところでございますが、いかがでございますか。よろしいですか。
  142. 海江田万里

    ○海江田委員 ありがとうございます。もしあれだったら、そこにいていただいても結構です。  民営化から八年ということでございますが、一つの移動体通信を分離するという動きが出始めましたのは、今お話がありましたけれども、平成元年の十月から動き始めたということでありますが、この平成元年の八月というのは、小渕さんがまさに自民党の電気通信調査会の会長になった年であります。八月にその調査会の会長になった。それまで、この五月まで、小渕さんは実は官房長官をやっておられたわけでございます。そして、その前の年の一九八八年の六月二十一日というのが、まさに古川秘書に名義の書きかえ、それまでの石井さんという方から古川秘書への名義の書きかえがあった。このときは、小渕さんが内閣官房長官であったということでございます。  平成元年の十月から実は表向きの議論は始まって、そして平成二年、翌年の三月二日にNTTから移動体通信の分離答申が出た、こういうことになっておりますから、その意味では、平成元年の十月から平成二年の三月ですから、非常に短い期間なんですよ。五カ月なんですけれども、ここで移動体通信の分離についていろいろな議論が行われたということでございます。  実は、小渕さんが、この間、私が当委員会でも引用しましたけれども、月刊通信ジャーナルというところで、小渕総理自身の講演の中で、例えば、「今、電気通信問題調査会長をおおせつかっており、先般のNTTの見直し問題につきましても党としての立場での責任を果さしていただきました。」という発言があるわけでございますけれども、この「先般のNTTの見直し問題」というのはどういうことを指しているんですか。
  143. 八代英太

    ○八代国務大臣 海江田さんにお答えいたしますが、NTTから移動体通信事業を分離することを政府が決定したのは、平成二年、一九九〇年三月の電気通信審議会の答申を受けた、その三月ということになるのですが、移動体通信事業の分割や受託会社との合併を決定したのは、平成三年ですから一九九一年でございます。  したがって、昭和六十三年というお話が今出ましたが、六月当時においては、NTTの経営形態のあり方やNTTから移動体通信事業を分離するということは、何ら決まってはおりませんでした。まして、分離された移動体通信事業と受託会社とが合併するといった事態は当時は想定されておらなかった、こういうことでございます。
  144. 海江田万里

    ○海江田委員 今私がお尋ねをしたのは、これは一九九〇年の七月の雑誌でございますから、今私がお話をしたのは、まさにここで、一九九〇年の七月にお話をしております「先般のNTTの見直し問題」ということですから、昭和六十三年のことじゃないですよ。昭和六十三年は古川さんが株の名義を書きかえたことでありまして、その後、一九九〇年、平成二年の七月に「先般の」ということを言っているのですから、これは何ですか、このときに問題になっていたのは何ですかということです。
  145. 八代英太

    ○八代国務大臣 それは私に聞かれてもわかりません。それはいろいろな御意見があったことだとは思いますけれども、それは今私が申し上げた中におきまして、私ども郵政省として、そういう問題、分離される移動体通信と受託会社が合併する云々というのは、既に民営化されたNTTのことですから、私たちが関与する立場ではない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  146. 海江田万里

    ○海江田委員 今、私に聞かれてもわかりませんということをおっしゃいましたね。では、だれに聞けばわかるのですか。
  147. 八代英太

    ○八代国務大臣 当時の郵政大臣は、もう御他界されてしまいました片岡清一先生とか、あるいは、どなただったでしょうか、中山先生も当時は大臣だったかな。そういうことを踏まえると、いろいろな方々がおられますが、私は、そういう郵政省としての流れを今海江田さんにお知らせをしているということで、だれがどういう発言をどこでやったなどということを私がお答えする立場ではございません。
  148. 海江田万里

    ○海江田委員 私が今申し上げているのは、いいですか、郵政大臣なんですから、ちゃんと通告もしてあるわけですから、これは。私の言うことをよく聞いて、そしてお答えをいただけばいいんですよ、これは。わからない話じゃないでしょう、これは。  いいですか。少なくとも、小渕さんは、一九九〇年、平成二年の七月の段階で「先般のNTTの見直し問題につきましても党としての立場での責任を果さしていただきました。」とおっしゃっているのだから、中身はわからないけれども、ここで言っている「先般のNTTの見直し問題」というのは、今郵政大臣がおっしゃった移動体通信の問題でしょう。違うんですか、それは。
  149. 八代英太

    ○八代国務大臣 私が経緯を今申し上げましたが、一九八五年にNTTが民営化されて、それから何年かたって、そして移動体通信の問題を、分離分割するということがそれぞれ議論されたということは、今申し上げたとおりでございます。
  150. 海江田万里

    ○海江田委員 では、もう一回聞きますね。  いいですか。一九九〇年の七月の段階で、だれが言ったとしてもいいです。だけれども、少なくとも、小渕さんは自民党電気通信問題調査会の会長でありますけれども、この方が「先般のNTTの見直し問題」ということを言っておるのですよ。この「先般のNTTの見直し問題」というのは、さっき郵政大臣がおっしゃったまさに平成元年、一九八九年の十月から始まった、そして一九九〇年の三月二日に答申があった移動体通信の分離の問題じゃないですかと言っているのです。違うんですか、ほかのことなんですか。
  151. 八代英太

    ○八代国務大臣 それは、年数を絡めながらその背景をいろいろやれば、つなげようとすれば海江田的発言になるでしょうし、私どもは郵政省の立場で、そのような流れの中で私たちがこの問題に取り組んだわけではない、こういうことを申し上げているんです。
  152. 海江田万里

    ○海江田委員 もう時間がありませんから、この続きはまたやります。  では、私の邪推かもしれぬけれども、もし私のが邪推であるなら、ほかに何なんですか、教えてください、このときの話は。何なんですか、ほかに。先般のNTTの問題というのは何なんですか。見直し問題というのは何なんですか。
  153. 八代英太

    ○八代国務大臣 平成二年三月、これは電通審の答申の中にございまして、これは言ってみれば、政府ということではなくて、政府外でのいろいろな議論というものは、我々郵政省として今私が申し上げたことがすべてでございますから、御理解をいただきたいと思います。
  154. 海江田万里

    ○海江田委員 改めて古川さんの証人喚問、それから各種の資料の提出を要求いたします。  以上です。
  155. 島村宜伸

    島村委員長 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。  次に、上田清司君。
  156. 上田清司

    上田(清)委員 上田清司でございます。  閣僚の皆様、御苦労さまです。時間がございませんので、早速、長銀譲渡の問題について金融再生委員長にお尋ねをしたいと思います。  まず一点確認ですが、ゴールドマン・サックスというこの投資銀行というのは、日本流に言えば、いわば仕手集団というような考え方に立ってもよろしいんでしょうか。
  157. 越智通雄

    ○越智国務大臣 仕手集団というのは売買を中心としていると理解できますけれども、ゴールドマン・サックスはむしろ投資を中心に多少期間の長い金融のアクションをまとめている、このように考えていいんじゃないかと思います。
  158. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございます。  それでは、ファイナンシャルアドバイザーとして業務契約をゴールドマン・サックスと結ばれたと伺っておりますが、この契約料というのは幾らだったんでしょうか。
  159. 越智通雄

    ○越智国務大臣 ファイナンシャルアドバイザーは長期信用銀行が契約しておりまして、そして、ファイナンシャルアドバイザーを公募いたしましたときに、それぞれどういう事業を幾らでやったということは公表しないでもらいたいというふうに言われておりますので、私どもも聞いておりません。
  160. 上田清司

    上田(清)委員 それでは、委員長、こういうことは御存じですか。例えば、ゴールドマン・サックスがいわばリップルウッドに決定をする過程の中で一番中心になったユージン・アトキンソンという方が、既にリップルウッドの副社長になっておられるということは御存じですか。
  161. 越智通雄

    ○越智国務大臣 そのようなお話を前にも、先生からでございましたか、言われまして、どうもそういうことらしいというのは知っておりますが、お目にかかったことも、また詳細にどういうことをされているかも伺ったことはございません。
  162. 上田清司

    上田(清)委員 それでは、ゴールドマン・サックスの元会長にルービン前財務長官が在職されておられたことも御存じですね。
  163. 越智通雄

    ○越智国務大臣 財務長官のルービンさんは、財務長官になられる前がゴールドマン・サックスでございまして、財務長官をおやめになってからは御縁が切れているように了解いたしております。
  164. 上田清司

    上田(清)委員 現在、ルービンさんはシティバンクの会長になっておられますが、実は、リップルウッドが新生長銀の事実上のオーナーとしてやっていく場合に、この新生長銀の社長に八城政基さんという、前シティバンクの日本社長が就任されることになっていることも御存じだと思いますが、いかにもこの流れからして、私は、この後必ずと言っては失礼かもしれませんが、多分何年かたった後にシティバンクに譲渡されるのじゃなかろうかというふうな、勝手な推測をしております。  もしこのような過程になったとき、この人脈上の流れからして、これはあたかも仕組まれた中身になってしまうのじゃないかというような危惧をしておりますが、まさに危惧ですよということを委員長から御指摘ができるのか、あるいは、私も危惧していますとかというお話ができるのかどうかわかりませんが、勝手に私はそういうふうに、こういう人脈上の流れからすると、いかにもこれは不透明、いかにも仕組まれているというような感じがいたしますが、この点について御感想だけ伺いたいと思います。
  165. 越智通雄

    ○越智国務大臣 そういうストーリーは、きょう初めて先生から伺いました。  八城さんは、かねてより、昨年九月から新生長銀の社長になる予定でございまして、それぞれの覚書以来の書面も全部彼がサインの当事者になっておりますが、彼は、個人的なことを申しますと私と同い年でございまして、自分はこの引き継ぎだけやって、三年ぐらいして落ちついたらもう引きたいと言うぐらいで、彼は、そういう、先生のおっしゃるような大きなもくろみを持ってこの任を引き受けたのではないと私は思っております。
  166. 上田清司

    上田(清)委員 多分、八城さんはそうじゃないと思いますが、もっと大きなところの流れがあるかもしれません。  そこで、先ほど、契約料はわからない、あるいは教えられないというような話もございましたが、御承知のとおり、公的資金三兆五千億、追加で四千億、そして出資で二千五百億の予定がなされているわけでございますが、こういう国民負担のことを考えれば、この契約料が幾らだったんだろう、その中でどういう契約内容があり、どういう過程を経てこのリップルウッドに決まったのか、これを明らかにする責任があるんじゃないでしょうか、金融再生委員会に。
  167. 越智通雄

    ○越智国務大臣 昨年の一月ごろ、再生委員会が発足当初でございます、再生委員会はおととしの十二月の半ばでございますから。そのときに基本方針をお決めになりました、再生委員会として。その中で、FAを使うということが明瞭に方針として決まりました。それで、先ほど来申し上げておりますように、公募をされました。  その段階から、FAの契約並びに料金といいますか、そうしたものは伺わないことになっていることでございまして、そのこと自身は、私は、決まった方針として仕方がないのじゃないかな、このように思っておりました。
  168. 上田清司

    上田(清)委員 理事会で諮っていただきたいと思いますが、ぜひ資料として要求させていただきたいと思います。
  169. 島村宜伸

    島村委員長 理事会で協議いたします。
  170. 上田清司

    上田(清)委員 越智大臣に伺いますが、御承知のとおり、我が党の仙谷議員などが民法の瑕疵担保の理論でいろいろ議論させてもらいましたが、今後、損失を生じる場合、さまざまな形で国民の税金が使われるということもあり得るし、また逆に、大化けして大変な利益を出す可能性もある。損をしたときだけ面倒を見るという話じゃなくて、得をしたときにどういうふうな利益を返していただけるんだという特約事項を設けても別におかしくないのじゃないかなと私は思います。  例えば三〇%は、特約事項の中で、これは自由党の安倍先生から教えていただいたのですが、サジェスチョンをいただいたのですが、ぜひそういう特約事項を設ける必要があるのではないかと私は提案いたしますが、いかがでしょうか。
  171. 越智通雄

    ○越智国務大臣 実は、旧長銀では、普通株二十四億株、並びに佐々波委員会のときの優先株が一億株、この一億株の方のうちの七五%は預金保険機構が今後も持ち続けるわけでありまして、一たんゼロになっておりますが、これがもし新しくでき上がった新生長銀がそれなりの営業をきちんとやりまして収益を上げてまいりましたならば一株四百数十円あるいは五百円ぐらい、大体これは、長銀が平成九年ごろまで順調に走っていたときのレベルでございますが、そこら辺まで行きましたときには、預金保険機構の持っておる七千数百万株、これを売りますと、二千五百億円の資本に充当した保有有価証券含み益の分だけは返ってくる、こういう計算でございまして、その他の、今おっしゃいましたような基本的な、もう九月から積み上げてきた契約条項の中へ、改めて今のこの段階で、何かの格好でもうけが出たら銀行の収益から日本政府に返せという条文を入れることは、到底今はできない、このように思っております。
  172. 上田清司

    上田(清)委員 私は、やはりこういうことを考えるべきではなかったかということを申し上げますし、このような流れになったときに、私は、三年後、五年後に、これは歴史的にやはり犯罪であったということを後世の人から指摘を受ける可能性があるということだけ御指摘させていただきます。  それでは、次にお伺いいたしますが、いわゆる資本増強行における中小企業向けの貸し付け、私どもこれを大変気にしておりまして、御承知のとおり、佐々波委員会の意を受けて一兆八千億の経緯がございました。このときには貸し渋りを大名目にしておりました。当時、今井敬経団連会長が委員の一人として記者会見されたときに、二十兆の枠がこれで理論的に広がった、こんなお話もされておられましたし、その後、国民の理解を得て、別に貸し渋りだけではなくて、金融システム全体の問題として七兆五千億に近いお金資本注入した経緯がございます。その経緯の中身は、御承知のとおり、経営健全化計画に基づいてと、つまり、さまざまなリストラをやる、そしてきちんとした貸し付けをやる、いろいろなことをやった上でその資本注入の決定額が決まった経緯がございます。  したがって、お金は出したわ、貸し付けは行われていないわというのじゃ、これでは踏んだりけったり、詐欺だという話になりかねませんので、この貸し付け状況を私はずっといわばウオッチしているわけなんですが、九月の時点で六千八百何十億かという金額だけだ。総枠で二兆九千九百億ぐらい用意しております、約三兆円。その四分の一しか半期で処理をしていない、貸し付けていないということだと、この調子でいけば半分もいかないぞ、こんな危惧を持っておりましたから、この九月の数字が出た時点でもいろいろと御指摘をさせていただきました。  ところで、直近の数字で、中小企業向けの貸し付けが、この資本増強十五行、総額で幾らになっているか、委員長にお伺いしたいと思います。
  173. 越智通雄

    ○越智国務大臣 まことに申しわけありませんが、直近と言われますと、例えば一月とか十二月の数字はとれておりません。仕組みとしましては、年二回の報告をしておりまして、ただ、先生のおっしゃるように、九月期の数字が出てきたのでも十一月ごろでございますけれども、二カ月おくれぐらい。  それで、大変低いというので我々も心配いたしまして、年末に金融機関を集めまして、私からも要請の集会をいたしました、十二月に。殊に年末融資がございましたから。この年末は、その前の年の年末に比べると、それほど大きな騒ぎにはならずに年が越せたかなとは思っておりますが、もちろん通産省の方の打ったいろいろな手もありますから。  ただ、全体としては、下期の方は伸びると思いますので、単純に九月決算を二倍という話ではなくて、もうちょっと行くと思いますが、まことに申しわけございませんが、今の数字と言われましても、持ち合わせはございません。
  174. 上田清司

    上田(清)委員 日銀にお伺いしますが、日銀では、貸し付け状況について、十二月末の統計が二月十七日に調査統計局で出ておりますね。これは当然、中小企業向けあるいは中堅企業向け、大企業向けというような形での貸し出し状況、あるいは業務分野別に出ておりますので、月々の各銀行の貸し出し状況というのを把握されておられるわけですね。これをお伺いしたいと思います。
  175. 永田俊一

    ○永田参考人 お答え申し上げます。  今御指摘の預金貸出金調査というのをやっておりますが、これは四半期ベースの数字でございまして、直近のものは十二月末時点のものを先ほどおっしゃられましたように二月の十七日に公表しておりますが、この中身につきましては、おっしゃられたように、個別の数字をいただいて集計しておるわけでございます。事実はそういうことでございますが、私どもとしては、公表は集計したものを出しておりますということでございます。
  176. 上田清司

    上田(清)委員 越智大臣、今聞かれましたように、日銀では月々各行からの貸し出し状況、預金状況というのを把握されているそうであります。したがって、金融監督庁なりが、再生委員会なりが御努力されればわかるのです。そうしてくれないと困るのです。  昨年の十二月に、金融再生委員会事務局という形の中で、「資本増強行の中小企業向け貸出状況等の公表について」という文書の中で、きちっとこのように述べておられる。「金融再生委員会としては、各銀行の履行状況を踏まえ、残された期間内に計画目標を達成できるよう、引き続き、努力を促していく」。数字も何もわからないでどういう努力を促せるのですか、お伺いしたいと思います。
  177. 越智通雄

    ○越智国務大臣 監督庁の方では、年二回の報告徴取のほかに、定期的にいわゆるヒアリングを行っております。それを通じまして各行別の状況についての融資の慫慂はいたしております。
  178. 上田清司

    上田(清)委員 それを出していただきたいということをお願いしているのであります。資本増強に関しては、結局国会が決めたことになります。我々は国民に対して責任があります。もし中小企業の皆さんから、全然出ないぞお金は、どうしたんだ三兆円は、あれは約束じゃなかったのか、計画じゃなかったのか、それを前提に資本注入をしたのではなかったのかと言われたとき、我々はどう答えられますか。委員長、どう答えられますか。
  179. 越智通雄

    ○越智国務大臣 考えてみますけれども、私どもの方が何か隠すという意味ではございませんで、個々の金融機関の状況を心配してそういう取り扱いになっているんだと思いますが、どこまでどういうふうに公表して差し支えないか、金融機関ともよく相談してというか打ち合わせてというか、説得をして、できるだけのことをさせていただきたいとは思います。
  180. 上田清司

    上田(清)委員 大臣のお心は多といたしますが、日銀のこの十二月の指標はぱらぱらっとめくられたことはございますか。
  181. 越智通雄

    ○越智国務大臣 数字は覚えておりません。出ておることは聞いておりました。
  182. 上田清司

    上田(清)委員 それでは心と体が離れているような気がいたします。気持ちはあるけれども、追っかける気持ちがないと思います。この結果は、大臣が思っておられるような結果ではありません。まるっきり違います。  申し上げます。中小企業向けの貸し出し状況は、前年比でいきますと、例えば、九九年三月はマイナス二・七、六月がマイナス三・四、九月がマイナス四・一、十二月がマイナス五・五です。一%ずつマイナスになってきているんですよ。これが現実なんですね。  だから、各行ごとに取り出して、この銀行はうまく、うまくという言葉は適切じゃありません。きちんと、健全化計画に基づいてきちっとやっているね、この銀行はきちっとやっていないね、じゃ、もう少し頑張ってくださいと。実際どうなのか、いや、貸す相手がなかなかいないんです、こういう話もあるかもしれません。そういうのをきちっと公表されればいいんですね。  そういう実態把握ができないで、どうしてこのような文章が書けるんですか。今後も引き続きフォローアップしますと言って、現にやっていないに近いじゃないですか、委員長がよく知らないということは、大変失礼ながら。もう多岐にわたった業務をやっておられますので、個々の数字はともかく、ずっとマイナス基調だよということぐらいは把握してくれないと困る、大臣として。それで事務当局に指示をしなきゃだめですよ。これを見られたのはいいんですけれども、マイナスの傾向だということを確認できなかったというのは、大臣として失格ですよ。反省の弁を聞きたい。
  183. 越智通雄

    ○越智国務大臣 今おっしゃっていますのは、前年比の数字で比率をおっしゃっています。毎年毎年いろいろ状況は変わりますものですから、前年比のマイナスというものと、全体を通じましては、ちょっとベースは覚えておりませんが、全国銀行ベースだったと思いますが、大体貸し出しの五割ぐらいまでを中小企業向けにというのが私どもの、私どもというか、私の頭の中にあるわけですが、今のところは恐らく四割ぐらいにとまっているわけです。  それをどう五割まで持っていかせるかということでございまして、それぞれの期の前年比がマイナスであるということはわかっても、それがすべての指導要件でもない。むしろ、銀行によって、それは実は相当差があるんです。ですから個別ヒアリングを優先してやってもらっている、こういうことでございまして、監督庁の担当課の方は十分心得てやっているものと考えております。
  184. 上田清司

    上田(清)委員 私も間違えまして、先ほど申し上げたのは中堅企業でありまして、中小企業はもっとひどかったんですね。例えば、十二月期なんかではマイナスの八・六とかという数字も出ております。  先ほど私が申し上げたのは中堅企業の数字でありまして、中小企業はもっと少ない数字が出ておりまして、ちなみに申し上げますと、中小企業では、九九年の三月期ではマイナス六、六月期ではマイナス七・二、九月期ではマイナス七・三、十二月ではマイナス八・六というような数字でもっと高いレベルの、それは、大臣が言われるように、個々の銀行が違うということは私もよく存じております。  だからこそ公表していただくか、むしろ委員長にお願いをしたいんですが、資本増強行十五行全部頭取に来ていただいて、じかに我々からヒアリングをさせていただきたいということを要望いたしますが、いかがでしょうか。
  185. 島村宜伸

    島村委員長 理事会で協議いたします。  越智金融再生委員長
  186. 越智通雄

    ○越智国務大臣 一応、金融監督庁並びに再生委員会としましては、その部分の行政を担当している者として、私どもで各行の状況はしっかりヒアリングして、報告すべきものは国会に報告させていただきたい。  先ほど来の説明で、あえて申し上げれば、私ども個別行のをやっていますと、実はかなり無理して償却その他をしておりますと、貸し出しがふえていないけれども、実は全然とれなくなった中小企業貸し出しを落としている、オフバランスしている。こういう状況のときにはマイナスが立つものですから、そういうことで個別の話をしなきゃならない。  だけれども、それを全部国会に報告するといいますか公表することには、銀行サイドの方で、あるいはそれを受けていた企業の方からいっても、借り主の方からいってもいろいろ事情が出るかなということを心配して今申し上げているわけでありますが、どこはもうだめだということでオフバランスしたというのは、言ってしまったら困ることがあるんじゃないか、こういう意味であります。
  187. 上田清司

    上田(清)委員 逆らうわけじゃありませんが、国会は貸付先の話を聞こうとしているわけではありません。資本注入を受けた銀行が経営健全化計画に基づいてきちんと貸し出しができているかどうかを確認したいと言っておるのであって、相手先がどうのこうのなんという話は一つもしておりません。  過去にいろいろな事例があるから心配して申し上げているんです。幸福銀行においては、平成八年度に実質的に債務超過であるという銀行検査がありながらも、あのような破綻になってしまった、それから三年、四年たってしまって破綻したという現実がございます。また、なみはやについても、当初から、当時の福徳となにわ銀行は問題銀行で、特定合併するには問題があるということを再三再四指摘されながら、いわば強行採決で特定合併をして、結局は破綻したという現実。あるいは富士銀行においても、戦後最大の不正融資事件で、六千億から不正融資があって、二千七百五十億も損失を行った、にもかかわらず、いろいろな議論の中でやみからやみに葬り去ったというようなことがありますから、そういうことがあってはならぬということを私は申し上げております。  今たまたま富士銀が出てきましたけれども、私の得意分野でありますが、花田さんという話も出てきましたけれども、もし花田というのだったら、小林豊機さんだとか主犯であった中村さんとかをきちっとやはり呼んで考えた方がいいなということを、私は、もし本当に金融行政のいわば暗黒部分を明らかにするのであれば、そういうことをした方がいいというふうに申し上げます。  金融担当大臣、私はこの後は多分ないと思いますので、もしあれでしたら、どうぞお休みください。  厚生大臣にお伺いしますが、たまたま厚生大臣とはこの席で初対面ということで恐縮ですが、大蔵委員会で年福の理事長や矢野年金局長にも質疑をさせていただきました経緯がございますので、大臣にも幾つか確認をさせていただきたいと思います。  まず、十二月一日に大蔵委員会で、年金福祉事業団の運用実績が大したことないじゃないかというようなことを私質問したところ、矢野年金局長が、そのまま文章を読み上げますが、現在でも四%を超える財投金利を支払い、なおかつ四・四%の総利回りを出している、これは信託銀行等々よりいい成績を上げている、こういう事実でございますという、このような御答弁をいただいたんですが、大臣としても同じような御認識かどうかを確認させていただきます。
  188. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 これは、私は局長の答弁を聞いておりませんが、認識というよりは、その直近の数字を述べたものと考えております。
  189. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございます。  年金の金利等々については細かい話もございますので、大事なところだけ大臣に以後お伺いしますので、それは以後は理事長や年金局長にお伺いしたいと思いますので、御安心いただきたいと思います。  先般、矢野年金局長に、運用実績と受託機関との関係で、運用実績の悪いところが大いに採用されているというのが実情ではないかというようなことでお尋ねをしたんですが、そうじゃないということを年金局長は言いましたが——失礼しました、資料の二の1、2、3、4を御配付してください、今でもその考えには間違いありませんか。
  190. 矢野朝水

    矢野政府参考人 変わりございません。
  191. 上田清司

    上田(清)委員 それでは、実は大蔵の調査室にお願いをして、試算をさせていただきました資料を、今ちょっと御配付がおくれて申しわけありません。一番わかりやすいのは——まだ回っていませんね。では、いいです。  矢野局長、ずっと運用手数料、信託銀行あるいは生命保険、住友とか三菱だとか第一勧銀だとか東洋とか、こういう銀行が上位に並んでおりますが、実際、五年なら五年の単位で私、試算をし直したら違う数字が出てきましたけれども、この事実に関してはどうですか。  その前に通算で申し上げましょう。通算で申し上げますと、年金財源強化事業で、例えば二の3の資料になりますけれども、昭和六十一年から平成二年の平均を出したり、平成三年から平成十年の平均を出したりして、通年で出しても、ドイチェ銀行だとかシティトラストとかが上位の一、二位を占め、そして、一番手数料を稼いでいる三井だ住友だ大和だといったところが下位にあるというこの現実に対してはどう御返答されるんでしょうか。
  192. 矢野朝水

    矢野政府参考人 お答え申し上げます。  この市場運用事業が始まりましたのは昭和六十年でございます。しかも、当初は信託銀行だけがその運用機関として認められておった。それから生命保険会社が追加されたわけでございます。信託銀行といいましても、外資系の信託銀行というのはその後徐々に日本に進出をされたということでございまして、この年金運用機関といたしましては、当初は日本の信託銀行がメーンでございました。そういう中で運用を開始し、新しい信託銀行なりができてきたときには、定性評価とか定量評価とか、いろいろ年金福祉事業団の方で調査をいたしまして追加をしていった、こういう経緯がございます。
  193. 上田清司

    上田(清)委員 経緯は私もよく知っているんです、資料もいただいておりますから。二の1で見られますように、最初から今の機関が全部あったんじゃないということは御承知のとおりであります。  問題は、二の4がわかりやすいと思います。私どもがつくらせていただいた資料です。大蔵の調査室に御依頼をさせていただきました。特に、二期に分けてやったり、あるいは通期、そして右側の二とか八とか三とかというのが、これは運用の実績の順位であります。したがって、例えば通年でいっても、住友などは、手数料だけは二番目に稼いでおりますが、実績では九位、八位という惨たんたるものがあります。  こういうところに運用を任せて、わざわざ国民の財産である年金資金を減らすようなことをしたのは、何なんですか、これは。答えてください。
  194. 矢野朝水

    矢野政府参考人 これは、今申し上げましたような経緯をたどりまして運用資産がふえていったわけでございます。そういった場合に、毎年の新たに追加される資金というのは、年によりますけれども、一兆円を超える、こういうことも多かったわけでございます。  したがいまして、限られた運用機関の中でそういったニューマネーといいますか新しい資金を追加する場合に、先ほど申し上げましたようないろいろな調査をいたしまして、やはり成績の悪いところは追加財源は回さないとか、そういう形で運用機関のめり張りをつけたといいますか、そういうことでこれまで進めてまいったわけでございます。  そういうことで、要するに、市場運用の年金資産が非常にふえていく、しかも運用機関が限られておる、投資顧問なんかが認められたのはごく最近でございます。そういう中で、ふやす場合にも成績なども考慮して、新規資産は回さないとか、ふやす量を減らすとか、そういう形で成績に応じた資産配分ということを心がけてきたということでございます。
  195. 上田清司

    上田(清)委員 大臣、私どもがつくらせていただきました二の4とか、まだほかにもあります、細かい資料が。わかりやすいのだけ出しました。今、成績の悪いところをかえたりしていると言ったけれども、前年度八位で、そのまままた一位の状況は何回でもありますよ。  どういう位置づけかというと、はっきりしましょう。資料の三、配ってありますね。三を見てください。  あなた方が、年金保養協会の中にある年金資金運用研究センターの常勤研究員の派遣を金融機関から受けているでしょう。この金融機関ばかりが上位なんですよ。そうでしょう、現実に。三菱信託銀行、第一勧業富士信託銀行、住友信託銀行、東洋信託銀行、三井信託銀行、こんなところにただで運用を任せているじゃないですか、この人たちに。給料を払わないで出向で来てもらって、そして運用をこの人たちにお願いして、そして運用先は、この人たちが勤めているところに出している、こういうのを癒着というのですよ。犯罪ですよ。どう責任をとるんですか、大臣。(発言する者あり)
  196. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 自主運用に当たりましては、資金運用に関する調査研究体制を充実させることが大変重要でございますが、その一環として、現行の年金資金運用センターにつきましては、自主運用の開始の時期までを目途にいたしまして廃止をいたします。公的年金、企業年金などを含む年金運用に関する総合的な調査研究の組織のあり方を検討いたしたいと思っております。  当然のことながら、官民の透明性の確保という視点に立ちまして、委員の御指摘のような誤解を招かぬように、厳に慎んでいかなければならない、このように考えております。
  197. 上田清司

    上田(清)委員 久間筆頭理事の御指摘をいただきまして、余り犯罪だと言うと身構えて、心がかたくなるんだというようなことでありますが、大変な問題を起こしていることは事実であります。誤解ではありません。  厚生大臣が丁寧に、この過去の実績を、年度別あるいは通年別あるいは年度を五年ずつぐらいに切っていただいても結構です、いろいろな切り方がありますが、それでやりました。それ以外の資料も御提出させていただきますから、見てください。全然だめですよ、これは、本当に。二の4が特にわかりやすいと思います。左側の数字がいわゆる運用手数料であります。そして、丸の数字が運用実績の順位であります。  そういうことでありますから、ぜひ大臣、もう時間がありませんので、改めてこのことについて研究をしていただきたいと思います。年金運用基金に衣がえするにしても、自主運用という現実を見るときに、本当に自主運用で大丈夫なの、こういう議論をしなければなりませんし、これについても基本方針を定めると言って、その基本方針も、審議会だと言っておられますが、まだその審議会の中身も我々は見ておりません。  過去の実績がこんなに悪くて、そしてこれからどんな運用をするかについては何も知らされない。それで法案を、賛否をとれというのは無理な話であります。だから強行されたということでしょうけれども、参議院ではそういうわけにはいかない。そういう意味で、私は御指摘をさせていただきます。  時間が参りましたので、また改めて機会をつくらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  198. 島村宜伸

    島村委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後二時四十分休憩      ————◇—————     午後四時開議
  199. 島村宜伸

    島村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平賀高成君。
  200. 平賀高成

    平賀委員 日本共産党の平賀高成でございます。  私は、東海の比例代表ブロックの選出でありまして、今東海地方には、国際的な問題にもなりました愛知万博を初め、中部国際空港や、また岐阜に行きますと徳山ダム、さらには三重県でも伊勢湾口道路、静岡は静岡空港というように、今どこに行きましても、数千億円から数兆円の規模の大型の公共事業がメジロ押しであります。  今多くの皆さんから伺うのは、老後の死活問題でもあります年金や介護の問題が立ち行かないのに、なぜ大型の公共事業をやらなければいけないのかとか、また、公共事業などに莫大な予算を使って、財政が大変だから、そういう理由で子供の教育や医療の予算を削らないでほしい、こういう声や、さらには、戦後最悪のこの不況を何とか解決をしてもらいたい、こういう声が、どこに行っても痛切な声が上がっております。私も全く同感であります。  今、国と地方で総額でも六百五十兆円の財政赤字が生まれているもとで、大型公共事業を中心としたプロジェクトの中止や見直しが重要な問題となっております。きょうは、その焦点ともなっている中部国際空港の問題で質問をしたいと思います。  まず指摘をしたいことは、中部国際空港の建設は、歴史的に見ますと、これは中部財界の主導による開発まずありき、こういうプロジェクトであったことは明らかだと思います。  同空港建設の構想が初めて明らかにされましたのは、これは一九六九年の十二月です。名古屋空港に初めて国内のジェット便が就航した、そういう時期から構想してきたもので、中部経済団体連合会が、国際貨物空港、こういう構想で、場所は一色沖につくる、こういう構想でありました。八二年には、中部経済連合会が、二十一世紀の中部ビジョン、この中でも中部国際空港の整備構想が改めて公表をされたわけです。  このような構想が具体的に採択をされたのは、現在の第七次の空港整備五カ年計画の中でありますが、構想が明らかになってから実に三十年目のことであります。  この間、さまざまな経済問題を見ましても、高度経済成長や、さらにはオイルショックや、九〇年代になりますとバブルの崩壊というような問題がありましたけれども、しかし、この中部国際空港の建設の構想は、どんなに状況が変わったとしましても、基本的には二十九年前のこの構想が具体化をされるわけであります。ですから、これは国民の皆さんから見れば、これは最初にもう開発ありき、空港建設ありきだと思われても私は仕方がないと思いますが、大臣、この点についていかがでしょうか。
  201. 二階俊博

    ○二階国務大臣 お答えいたします。  中部国際空港については、現在、名古屋空港の処理能力が既に二十一世紀初頭を待たずして限界に達するであろうということが予測されるわけでありますが、中部圏の航空需要の増大に対応するため必要となるものでありまして、今委員からも御指摘のように、三十年間確固とした方針で進んでおるということでありますが、これは中部圏の大きな経済圏としての評価、そして、そこに空港の必要性ということを十分念頭に入れているものであります。  例えば、御承知でございますが、東海三県だけでも人口約一千万人、そして、中部圏では二千百万人というわけでありまして、域内の総生産は東海三県で約五十兆円、中部圏で約九十兆円という、高度な人口及び産業の集積の状況であります。したがいまして、OECDの資料等から換算いたしましても、世界経済の中でこの中部圏は優にベストテンに入る、そういう大きな規模を持っておるわけであります。  七次空港整備七カ年計画におきまして、最優先課題として整備を推進することを位置づけるとともに、大都市の拠点空港として、このことを積極的に推進してまいりたいと考えておるものであります。二〇〇五年の開港を目指し、平成十年から第一種空港として事業に着手しているところであります。
  202. 平賀高成

    平賀委員 現在の名古屋空港が二十一世紀の初頭に限界に達するという見解につきましては、私はこの後で十分時間をとってやりたいと思います。  それで、今大臣が言われましたので、歴史的にこの中部国際空港がどういう経過をたどって現在に至っているのか、このことについて少し言いたいと思います。  この中部国際空港の建設を初めて公式に検討を開始するべきだと言ったのは、これは八五年の二月に、第五次空港整備五カ年計画のための航空審議会の総会で、新しく委員長になった、経団連の副会長をやっていました、当時トヨタの会長をやっていました豊田英二さんです。同氏は、航空審議会総会の後の記者会見で、中部国際空港について、これは当時の日経新聞ですね、どういうふうに言っているかといいますと、国際化の時代に東京と大阪にしか国際空港がないというのは問題だ、中部が新しい拠点として考えられてもいいのではないかと具体化に意欲を示した、こういうふうに日経新聞でも書かれております。  その後、この建設計画が具体化をされていくわけでありますが、八五年の十二月、中部国際空港の建設等の調査を実施する中部空港調査会が運輸大臣認可のもとの財団法人として認められ、さらに、八六年十一月の第五次空港整備五カ年計画決定の際には、運輸省の資料の中で、二十一世紀の初頭における我が国の国際航空需要に対応するため、国際空港のあり方について調査を行うという表現で中部国際空港が盛り込まれ、そして、九〇年八月の「第六次空港整備五箇年計画の基本的考え方」へと方向づけられていったわけです。  こういう経過は御承知でしょうか。
  203. 二階俊博

    ○二階国務大臣 中部国際空港の出発に際しての調査会等についての御質問でございますが、中部圏における新空港の整備については、全国的な空港整備の基本計画である第六次及び第七次の空港整備計画の策定時において、その整備の検討を進める上で、基本的な方向性について航空審議会からの御意見を賜ったところであります。  航空審議会からの御意見を踏まえながら、当然、中部国際空港の整備の必要性、諸課題等について検討を進め、平成九年七月から八月にかけての合計三回開催されました航空審議会の空港整備部会に、空港計画案、空港整備にかかわる諸課題の検討状況を説明し、プロジェクトの緊急性を確認していただいた上で、平成十年度に事業に着手する、そして予算要求を行った、そういう経過でございます。
  204. 平賀高成

    平賀委員 こうした運輸省の動向に対応した形で、財界の方は、中部国際空港建設計画を念頭に置いた研究会を続々と発足させ、八九年六月の三菱商事、三菱銀行など六十一社での空港プロジェクト研究会を皮切りに、九〇年の五月までの一年以内に十一のプロジェクト研究会が発足、この発足に参加した企業数は、すべての財界グループを中心に千八十九社にも上っているわけです。まさに、中部国際空港の建設は、財界による財界のためのものだと言われても仕方がないような状況ではないでしょうか。
  205. 二階俊博

    ○二階国務大臣 委員もお地元の関係でよく御承知でございますが、中部圏の持つ我が国の経済力の中での大きな役割、人口等考えまして、先ほども申し上げましたように、世界でベストテンと申し上げましたが、正確には第八位ぐらいの、国家と匹敵するだけの能力を持っておる、そういう地域であります。  この地域に空港が必要である、二十一世紀に向かって、空港を中心にこれからの中部圏の開発、発展を図ろうということで各界の皆さんが御協力をなさったということは、私は、それはそれで評価すべきことだと思っております。
  206. 平賀高成

    平賀委員 中部圏にはいろいろな、産業の面からいいましても人口の面からいいましても、そういう潜在力はあるんだという趣旨の答弁だったと思いますが、私は、そういう状況であったとしても、今の中部国際空港建設に当たっては需要見通しの問題でも非常に問題があるんだということを、この後引き続きやっていきたいと思うんです。  例えば、豊田会長が第六次空整で調査費がつくまでずっと委員長を務められてきました。財界が建設促進への並々ならぬ力を入れた結果、紆余曲折はありましたけれども、この中部国際空港をつくるということになっていくわけです。  しかし、その過程の中で、いろいろな問題がこの間発生してきたと私は思います。  大臣も御承知だと思いますが、例えば九五年の九月三日付の朝日新聞を見ますと、愛知県の航空対策局が、半年間で五十四回、一千四百万円、中央官僚や地元の財界と飲み食いをやっていると。これは運輸委員会でも以前問題になったことなんですが、そういうふうなことをやって一元化という方向に行くんですね。  名古屋空港は、これは定期航空便はやめて、新しい中部国際空港に一元化するんだ、こういうことを突然県知事が表明をしまして、大きな問題にもなりました。しかし、中部国際空港に一元化したとしましても、これは航空需要や採算性について問題があって、中部国際空港の建設については時期尚早だとする意見が政府の部内にあったと思うんです。  ここで大蔵大臣に私は伺いたいと思うんです。  例えば、九八年度の大蔵原案に中部国際空港の事業費が計上されなかったのはなぜでしょうか。それは、航空需要の見通しと採算性に問題があったからこそ大蔵省は原案の方に計上しなかったんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今お話がありましたように、この空港は平成八年ごろに閣議決定を一遍受けているのですけれども、そのときは、現在のような発想でなく、いわば中部圏における拠点空港というようなことで閣議決定を受けております。ところが、平成十年ごろになりまして、今おっしゃったように、日本の事情も変わりますし、世界の航空事情も変わってきて、名古屋空港とその定期航空路線を新空港へ一元化して、中部国際新空港を新規着工した方がいいということが地元からお話になって出てきました。  それについて、大蔵省としては、中部国際新空港というものは相当大きな金がかかることで、大プロジェクトでございますが、そういうような世界の情勢に合うのか、またそういうための費用はどのぐらいなものであろうか、採算性等々いろいろなことを検討しておりまして、そういう点について運輸省と大蔵省との事務当局の折衝がございましたけれども、結局、この一元化問題についてのはっきりした最終的な判断が生まれてこなかった、それから採算性についても問題があるというようなことでございましたので、そこで、先ほど申し上げましたように、さらに検討を加えるということになったわけであります。  そういうことでございましたから、大蔵原案の内示の段階では、新規採択を認めるのにはなお問題があるということで内示を差し控えたわけでございますけれども、大臣折衝の段階になりまして、大臣から、名古屋空港との一元化問題についての明確な御方針がありましたし、また採算性、スキーム等についても合意を見ることができました。そういう段階がございまして、大臣との間でそれを認めることになった、そういう経緯でございます。
  208. 平賀高成

    平賀委員 当初の大蔵原案で予算がつかなかったのは、採算性の問題でもいろいろ問題があったからだということを今大臣はお認めになりました。  それで、同時に、九八年の予算案というのは、これは緊急経済対策として、景気対策としてこの予算をつけたのではないですか、大蔵大臣
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただ景気対策のために予算をつけるというようなことは本来あり得ないことでございまして、我が国はこういう非常な不況の中にありますから、なるたけ新しいことは差し控えていきたいというのは当然でございますけれども、しかし、二十一世紀を展望して、国際国家として持たなければならないものは持たなければならない。不況の中にあっても、やはり将来必要なものは用意をしておかなければならないということは、これは変わりのないことでございます。  したがいまして、財政当局としては、厳しい判断ではありましたが、そういうことを決断したものであります。
  210. 平賀高成

    平賀委員 緊急の経済対策ということで、景気対策としてやったことははっきりしているんですね。  今、大臣言われましたけれども、例えば、必要なものについては、幾ら財政が大変でもやらなければならないものはやるんだというふうなことを言われました。しかし、この中部国際空港というのは、これは完全な直轄事業とかそういうことじゃないんですね、ちゃんと採算が成り立つような、新会社がやる事業ですから。  ですから、本当に必要な事業が実際に成り立つかどうかをきちっと判断しないで、そういうやり方でやることが、今のいろいろな公共事業にまつわる財政問題などが起きている一番大きな理由じゃないですか。私は、そういうやり方をやはり見直すべきだというふうに、今お話を伺っていて思いました。  さらに、これにまつわるいろいろな問題もあるわけですけれども、そういう今のお話を聞いていまして、一たん決まった問題というのは、もうどういう状況になっても計画は計画どおりやっていくんだというふうなやり方というのは、まず開発先にありきだということを、私、今答弁を聞いておりましても、そういうことを痛感いたしました。  さらに、先ほど大臣が言われましたね、二十一世紀の初頭に名古屋空港の処理能力が限界だと。この問題についてただしていきたいと思います。  九五年の第七次空港整備五カ年計画の基本的な考え方の中で、現在の名古屋空港の滑走路等の処理能力が二十一世紀初頭には限界に達するからだということで具体的に動き出しました。先ほど大臣が御答弁されたとおりです。  それで、私が伺いたいのは、空港建設の必要性として処理能力が限界に達するということは、これは着陸能力が限界に達するということで理解をしていいんですか。
  211. 二階俊博

    ○二階国務大臣 空港の処理能力は、滑走路、エプロン、旅客取扱施設等の各施設の能力により定まるものであります。名古屋空港の処理能力については、年間の離着陸回数十二万回程度と考えられておりますが、既に、平成十年の離着陸回数は速報値で約十一万七千回に達していることからも、中部国際空港を早急に整備する必要があると考えております。
  212. 平賀高成

    平賀委員 今、空港の処理能力というのは、滑走路等の処理能力ですね。これは、滑走路の着陸回数だけではなくて、いろいろな収容能力が関係しているんだというお話がありましたけれども、滑走路等の処理能力といった場合、より根源的な問題というのは、着陸回数がやはり一番のかぎを握るわけですよ。  なぜかといいますと、これは、収容能力を幾らふやしたとしても、滑走路の着陸体制が満杯だということになったら意味がありませんから、ですから、滑走路の処理能力といった場合、これは着陸回数が問題なんだということをはっきりさせた上で、私は議論をしたいと思います。  それで、今大臣が、この名古屋の空港はもう満杯状況だというお話をされましたけれども、果たして大臣が言うように着陸回数が限界になるのかどうなのか、私も調べてみました。  そうしますと、九八年と九九年を比較しますと、国内線もそれから国際線も、それぞれ定期便のジェット機の着陸回数は、国内線は三万三百二十三回から二万七千六百八回に減り、これは九%の減です。国内線の定期ジェット便は九%の減です。それから、国際線の方も一万三百十回から一万三十九回に減り、こちらの方も三%の減です。国際線も国内線も、両方が減っているんじゃないですか。
  213. 二階俊博

    ○二階国務大臣 その時々の経済状況も影響するわけでありますが、私どもとしては、それでは着陸回数が急速にふえたから直ちに空港を用意するというわけにはまいりませんので、将来の見通しをきちっとして、審議会等の専門家等の御意見等も十分お聞きし、さらに国会でも御審議をいただいた上で予算を執行しておる、こういう状況でございますから、運輸省がごく簡単に将来の着陸回数等を考えてこの空港に着手したというようなことではないことを、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  214. 平賀高成

    平賀委員 今、実際に国内線、国際線、両方とも定期ジェット便は着陸回数が減少しているということをお認めになりました。  さらに、それだけではないのです。九五年から九九年の五年間をとってみましても、九六年と九九年の二回にわたって、国際線の着陸回数は対前年実績を下回っているわけです。  しかも、それだけではなくて、今後、名古屋空港の場合、着陸回数やそれから着陸便がもっともっと低下していくというふうに私は思わざるを得ないのです。  現時点でも私はそういう問題が二つあると思いまして、そのうちの一つは、名古屋空港の座席利用率が全国平均よりも低いという問題があります。九七年と九八年度の比較をしてみましても、国内定期便の全国平均が六三・二%から六一・七%に下がっています。それから、名古屋空港の国内定期便の座席利用率も五六・三%から五四・七%に下がっています。ですから、着陸回数でも減り、座席の利用率でも低下をしている。これが今の名古屋空港の実態じゃないんですか、大臣
  215. 二階俊博

    ○二階国務大臣 名古屋空港の発着の国内定期便の平均座席利用率は、九七年度の実績で五六・三%、九八年度の実績では五七・四%でありました。また、全国の国内定期便の平均座席利用率は、九七年度実績で六三・二%、九八年度実績では六一・七%でありました。  ただし、利用率は、使用する機材の大きさに左右されるため、名古屋空港発着の国内定期便の輸送実績を申し上げますと、九七年度は六百二十万三千五百八十六人、九八年度は六百二十二万六千五百六十四人となっております。
  216. 平賀高成

    平賀委員 実際に座席の利用率は私の調査でも下がっている。しかし、今利用人数のことを言われました。それで、利用人数の場合は、これはより根本的には、さっきお話ししたように、着陸回数ですよ。滑走路等の処理能力といった場合、着陸回数です。ですから、利用率が四〇%、五〇%という場合、幾ら利用客がふえても利用率が上がっていくだけの話であって、別に空港そのものは限界にも何にもならないというのははっきりしている問題だと思います。  それで、もう一つ問題があります。これは、昨年の航空の規制緩和、これで不採算路線を撤退するということが自由にできるようになりました。ですから、そういう点からいいましても、発着枠は今後さらに余裕が出てくるということも私は可能性が非常に大きいと思います。  それから、もう一つ大きな問題があるのは、これは事業スキームの問題があると思います。  今、中部国際空港の計画で、空港建設資金等の内訳や事業スキームから、着陸料は、運輸省航空局が九七年の八月二十七日に出しました中部新空港に係る平成十年度の概算要求の考え方についてによりますと、着陸料は関西国際空港と同一の水準で、国内線はトン当たり一千九百円、国際線はトン当たり二千三百円と明記をされています。そうしますと、新空港の着陸料は現名古屋空港の着陸料に比べて大幅に高くなるんじゃないですか。大臣、いかがですか。
  217. 二階俊博

    ○二階国務大臣 中部国際空港の着陸料については、基本的に、空港の建設、運営コストや他の空港の料金水準を考慮して中部国際空港株式会社が設定することになっております。空港会社においては、効率的な空港の建設、運営に努め、二十一世紀にふさわしい利便性、経済性にすぐれた、競争力のある空港づくりに努めることとしておりますので、運輸省としては、関心を持って見守ってまいりたいと思っております。  なお、名古屋空港の着陸回数の問題につきまして、先ほどからのお話の中で細かい数字を申し上げて恐縮でございますが、国内定期便ジェット機、平成十年二万六千九百四、平成十一年二万七千六百八、国際定期便ジェット機、一万三百十、平成十一年一万三十九、このようになってございますので、参考までに申し上げておきたいと思います。
  218. 平賀高成

    平賀委員 今の回答は、それはおかしいですね。  私は、現名古屋空港から空港管理状況等の報告書というのをもらいました。これは九八年と九九年をもらいました。それで、例えば今言われた国際便につきましても、国際線のジェット便が一万三百十回から一万三十九回に減っていますよね。ですから、国内定期ジェット便、それ以外というふうにやりますと、私たちが普通に乗るジェット機は国内の例えば定期ジェット便ですよ、そういうものときちっと比べてみますと、明確に減っているんです。  私は再三にわたって運輸省に対して、こういうふうな国内、国際の定期便について、ジェット便について資料を求めておりましたけれども、結局出ずじまいです。ですから運輸省がやっているのは、定期便、それ以外を全部合算してそういう資料を出してきているわけですから、事実をリアルに見るべきだと私は思います。大臣、いかがですか。
  219. 岩村敬

    岩村政府参考人 お尋ねの名古屋空港の着陸回数でございますが、ただいま大臣から答弁申し上げましたように、平成十年、一昨年でございますが、国内定期便、ジェット機だけで二万六千九百四回、昨年、平成十一年でございますが、二万七千六百八回、すなわち七百回ほどふえております。  また、国際定期便につきましては、先生御指摘のように若干減少しております。このほかに国内のジェット機以外の定期便もございまして、これは三千九百三十回が四千五百回にということで、ふえております。  その他民間機等々を入れまして、平成十年、着陸回数で五万七千四百五十一回、これが平成十一年には五万八千四百八十三回ということで、増加をいたしておるところでございます。
  220. 平賀高成

    平賀委員 私が名古屋空港からもらった資料は、民間機の国際線、国内線、それぞれジェット便、その他、国内線もジェット便、その他と、ちゃんと区別をして出ていますよ。名古屋空港はこういう形で整理していますよ。ですから、定期便については国際線も国内線も両方減っているんだという資料ですよ。  ですから、私はこれに基づいてやっているわけですから、そうじゃないと言うのだったら、ちゃんとした資料を出してください。これはお願いしておきます。  それからもう一つ、着陸料について、これは関空並みだということになりましたけれども、いろいろ努力をして使いやすい空港にされていくと言われました。しかし、これはいろいろな会社や自治体や国が出資金を出しているわけです。それでもなおかつ関空並みだ。それ以上安い着陸料にしようと思ったら、今度は国や自治体がさらに出資金をふやすとかいうことをやらないと安くならないんだ。このことは、毎日新聞の九八年の十二月十八日で、これは当時の楠木航空局長が、航空事業費八千億円を目安にするなら関空の着陸料が上限だが、無利子貸付資金をふやすなど財源措置がなければ困難だというふうに言っているわけです。  関空並みとなりますと、これはボーイング747—400でいいますと、国際便の着陸料が、現在の名古屋空港の七十二万五千六百円から関空の九十万八千五百円と同じ水準になって、これは名古屋空港が、今運輸省が支援をして着陸料を値下げしましたけれども、値下げの前の着陸料と関空を比べますと、名古屋空港の一・二五倍、これによって世界一高い着陸料の空港になっていく、こういうことになるわけです。  今運輸省は、第二種のAの国が責任を持つ空港に対しては着陸料の支援をしまして、三分の一引き下げをしていますが、これによって、名古屋空港に乗り入れをしている旅客機が新しい中部国際空港に、一元化ですから引っ越しをするということになると、もうそれだけで着陸料が現行の二倍になるということになるわけですね。  ですから、これは、今政府がやっている、着陸料を値下げしてさらに乗り入れをもっと多くしてもらう、こういう政策からいっても、中部国際空港をつくればそれに逆行する事態が生まれるんだということについて、大臣はどのように考えているわけですか。
  221. 二階俊博

    ○二階国務大臣 中部国際空港の着陸料につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、中部国際空港株式会社が設定することになり、その際、基本的には、空港建設、運営コストや他の空港の料金水準を考慮してということを申し上げましたが、実はこれからは、韓国の空港等も念頭に入れて、国際的な視野で着陸料の問題を当然考えていかなくてはならない。そういう制約も一方あるわけでありますから、そうした面で、空港建設の際あるいは運営コストを考える場合に、他の空港との料金水準を考えながら、できるだけ安い着陸料になるべく関係者が一層努力をすることが重要だと考えております。
  222. 平賀高成

    平賀委員 努力をするといいましても、今でさえも、例えば、愛知県でいったら三兆四千億近くの借金を抱えているわけですね。それで、企業だってなかなか大変ですよ。さらに国だって、合わせて六百四十五兆円の借金を抱えているわけですから、そういうところがさらにお金を負担しない限り安くならないというのも、これは事業スキームからいっても明らかです。  私は、これまでの議論を考えまして、現状でも名古屋空港はまだまだ定期ジェット便については余裕があります。それで政府自身の需要見通しとも違ってきています。それから航空の規制緩和によって、まだまだ着陸回数の枠も余裕が生まれる可能性が今後あります。それから、さらに名古屋空港は、昨年の春に、これは国際線のエプロンや駐車場や、さらにはターミナルビルの拡張工事で、合わせて五百六十億円も予算を使って拡張工事をやっております。  ですから、こういう状況を考えてみまして、例えば九九年度の名古屋空港の着陸状況は、全体の着陸回数五万八千四百八十三回のうち定期ジェット便は三万七千六百四十七回で、定期便の着陸回数は全体の大体六割程度です。これは、何の制限もつけないで定期ジェット便や自衛隊機や小型機などが着陸した回数ですから、そうであるのでしたら、これはやはり政治的な判断をして、定期ジェット便優先で使っていく、こういうふうな判断をするならば、二十一世紀の初頭になっても現行の名古屋空港で十分対応することができる。特に財政状況を考えましても、こういうふうなことを検討することこそが今求められていると私は思いますが、大臣、いかがですか、この点について。
  223. 二階俊博

    ○二階国務大臣 かねてより、航空審議会等で専門家の皆さんから御意見をちょうだいし、中部圏関係県、そして同時に中部経済界等の御意見等も十分承った上で、政府として判断をし、国会にお諮りをしてこのような措置をとっておるわけでございまして、二十一世紀に向けての我が国の航空界の問題、そして中部新国際空港がそれを担当する、受け持つ分野というものは十分我々は必要であるという認識のもとに推進をしているわけでございます。  若干見解を異にいたしますが、私どもとしては、この空港は、先ほど大蔵大臣も御答弁にありましたように、国際化社会、国際的にはやらなくてはならないものは、やはり財政困窮の折であってもこのことについては積極的に対応するという財政当局の御方針のとおり、我々も今後とも努力をしてまいりたい、このように思っております。
  224. 平賀高成

    平賀委員 私は、国の財政状況からいいましても、それから、現名古屋空港が現状でも満杯になっておりませんし、さらに国際ターミナルの方は五百六十億円もかけて拡張工事をやっている、こういうふうな状況をとってみても、やはり現状の名古屋空港というのは十分二十一世紀の初頭にもたえることができると私は思うんですが、なぜそういったことを検討しないんですか、大臣検討にも入っていないんですか、対象にも。
  225. 二階俊博

    ○二階国務大臣 我々は、常に公共事業全般にわたって費用対効果ということを念頭に入れて、それぞれの事業について常に検討を加えながら推進を図っていく、これはもう今運輸省におきましてもあらゆる事業にそういう感覚で取り組んでおるところでありますが、中部国際空港につきましては、先ほどからも申し上げてまいりましたように、政府予算案の閣議決定を経て、政府全体の方針として中部国際空港の事業化が決定され、さらに、国会の場におきまして、予算案について御審議をいただき、事業着手をお認めいただいたものであります。  そして、ここに至るまでの経緯は既に委員御承知のとおりでございますが、航空審議会におきまして、航空分野について高度なかつ幅広い専門的な意見を有する関係者から成る委員会におきまして、それぞれ専門的な御意見、公正中立な審議を行っていただき、それらの議事要旨の公開等により、運営の透明性等も確保しております。  したがいまして、委員会の御審議、そうしたことも十分尊重しながら、運輸省として判断し、政府全体で決定し、このことに取り組んでおるところでございます。
  226. 平賀高成

    平賀委員 こういう名古屋空港の状況を十分分析もしないで、財界などの要求があるからと、一回決めたことはどんな状況になっても改めない、そういう姿勢が今の財政状況をつくり出している、財政危機をつくり出しているということを私は強く批判をして、次の公共事業のあり方の問題で質問をします。  特に空港整備の公共投資が大幅に増加した背景には、九〇年六月の日米構造協議の問題があります。ここの最終報告には、社会資本整備については、それが歴史的におくれて始まったこともあり、我が国は、毎年、GNP比で米国の約四倍に上る公共投資を行い、社会資本の整備水準を高いペースで上昇させてきたが、依然として主要国よりもおくれている分野であることは否めない、こういうとんでもない考えが示されております。  これは、空港整備が需要に基づいて下から積み上げていくということではなくて、まず整備計画が先にありきというのは明らかだと思います。  それで、総滑走路延長指数でおおむね一〇〇〇程度として、第六次空港整備中に八八〇を達成することが掲げられていますが、この八八〇という数字は日米構造協議の報告書に盛り込まれたものでありまして、運輸省は、総滑走路延長指数でおおむね一〇〇〇程度を整備目標に空港整備の公共投資を行ってきたのではありませんか。
  227. 二階俊博

    ○二階国務大臣 お答えをいたします。  本年度末における総滑走路延長指標は約九一一となる見込みであり、当該目標は達成されているところであります。
  228. 平賀高成

    平賀委員 第七次空整もこれでやっておりますか。この総滑走路延長指数でやっていますか。
  229. 岩村敬

    岩村政府参考人 御指摘のように、第六次の空港計画では、総滑走路延長指標という指標を用いました。そしてその結果、これは当時まだ全国的に航空ネットワークを展開するという時期にございましたので、全国的な空港整備の総量をマクロ的に図る尺度としてこれを用いたわけでございます。  ただ、第七次の計画策定におきましては、全国の航空ネットワークの形成の中でも特に大きな役割を果たしております大都市圏の拠点空港を最優先課題といたしまして、全国のマクロ的な尺度としての総滑走路延長指標というものは用いなかったところでございます。
  230. 平賀高成

    平賀委員 これは少なくとも下からの必要性を積み上げていくということじゃなくて、とにかく総滑走路延長指数だとかそういうものを設定して、それに間に合わせるということでずっとやってきた経過でありますから、私は、そういうやり方はやるべきではないというふうに思います。  それから、特に、こういうふうなやり方、これが本当に今の雇用や景気対策にも役に立っているのかどうなのか、この点で私もいろいろ調べてみました。  そこで、大蔵大臣質問しますが、これは私も調査をやりましたけれども、日建連加盟の六十四社のうち有価証券報告書のあるもの四十九社をちょっと統計をとりました。  この四十九社の統計をとりますと、手持ちの工事高のうち公共事業に関して、一体幾らの手持ちの公共事業仕事を持っているかといいますと、八兆四千七百八十三億八千七百万、こういう仕事量を持っています。それから、完成工事高に占める公共工事の額は五兆四千六百八十一億九千八百万、それから、そのうち完成工事の総利益は幾らかといいますと、これは一兆三千七百六十七億六千百万、それからバブルの処理額の合計は一兆六千四百六十億というように、とにかく公共事業の中で手持ちの分だけでも八兆円近くある。それから、完成工事高でも五兆数千億ある。さらに、利益だけでも一兆数千億ある。ところが、それだけの業績を持ちながら全部バブルの処理の方に流れていくわけです、一兆六千四百六十億。  ですから、こういうふうな状況を見ますと、これは幾ら公共事業の積み上げをやったとしましても、全然その影響があらわれてこないという状況に今なっているわけです。こういう実態を大蔵大臣は認識されているのでしょうか。
  231. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御質問の意味は、各会社とも相当の手持ち工事を持っているので、幾ら公共事業が出てもそれは——そこのところ、どう言われましたでしょうか、バブルの処理と言われたのは。
  232. 平賀高成

    平賀委員 バブルの処理に利益が全部回っていってしまって、これは景気対策にもならないし、雇用の確保にもなかなかつながっていかない、そういうふうな状況を御存じでしょうかということを質問いたしました。
  233. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 失礼いたしました。わかりました。  実際問題といたしましては、公共工事が出ますと、そういう大手が直接請け負うこともございましょうし、それは、しかし下請がとっていくということが事実でございましょう。また、その中に入りませんような会社も直に受けることもあるかもしれません。  ですから、工事が出た限りにおいて、それだけの工事が行われ、また雇用が行われるということは、その部分は間違いないと思うのですが、ただ、大手そのものは長い間の不良債務、不良債権を背負っておりますから、そのリストラをしなければ会社としての正常な姿に戻れませんので、出た工事そのものがそれらの会社の経営改善に即数字になってあらわれるというわけにはとてもまいりませんで、まだかなり大きないわゆる不良債務を抱えておるというのが現状であると思います。  したがって、詳細には存じませんけれども、それらの会社がいわば当期利益を間違いなくちゃんと計上する、過去の負債を償却して、その上での利益を計上するというのにはやはりかなりの時間がかかるというのは事実ではないかと思います。
  234. 平賀高成

    平賀委員 大蔵大臣もそのとおりだという事実はお認めになりましたので、私は、こういうふうなところにどんどん予算を使うのではなくて、やはり公共事業が大型になればなるほど下請中小業者の方たちになかなか仕事が流れていかない。ですから、国と地方の借金の合計が六百四十五兆円にもなりまして、財政的にも本当に破綻をするような状況になるわけですから、財政再建の上でも、私は、公共事業に五十兆円、社会保障に二十兆円という財政の枠組みを、公共事業を削減して社会保障の方に切りかえていく、こういうことを強く求めて、次の労働問題の方に質問を移らせていただきます。  次に、大手楽器メーカーのヤマハが、九八年度決算で戦後初めて経営赤字を出したことを理由に、五十億円の人件費の圧縮とそれに見合う六百人の人員削減を打ち出しました。  ヤマハは、昨年の七月十五日から八月三十一日を期間として、早期退職優遇制度による希望退職を募集しました。その結果、一千四十名が応募をしました。雇用が深刻な問題になっているもとで、企業が利潤を上げることだけを目的にして大量解雇を行うことは容認できません。  そこで、労働大臣に聞きますが、ヤマハは過剰人員で赤字になったのではなくて、電子デバイス事業における経営判断の失敗によって赤字の原因をつくったわけです。経営者が責任をとらずに一方的に労働者に犠牲を転嫁することは許されませんが、こういうふうなリストラを放置していいのでしょうか。
  235. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 御承知のとおり、ただいまリストラあるいは合理化の風が吹いておりまして、各分野において行われております。今御質疑のヤマハの問題も、その顕著な事例の一つだ、こう考えております。  一般的に、今四・七%という非常に高度の失業がずっと続いているわけですが、まず第一に、私自身としましては、会社も労働組合もひとつよく相談して頑張っていただきたい、やめていただくというのは最後の手段であって、それまでにいろいろなベストの方法もありますから、それを努力してやってください、こういう社会的責任があるのではないか、そういうことで、日産の問題も、あるいはNTTの問題等も含めまして、日経連の会長なりあるいは連合の会長に、そこをきちっと、雇用の安定ということでベストを尽くしてほしい、こういうようにお願いをいたしたわけであります。  しかし、ヤマハの例もありますように、会社として存続するためにもうこれ以外に方法がないというような場合には、労働省としては、救済措置、失業保険の給付はもちろんのこと、いろいろな措置を講じて対策をとっている次第でございまして、さらに、第二次補正予算あるいは今度の予算においても、それぞれ対策を講じて、御審議をお願いしよう、こういうことになっているわけであります。  ヤマハの具体的な内容につきましては、例えば勧奨してやるとか、あるいは世帯主の関係とか、取り扱い等々いろいろなことがあるようでございますが、これらについては、参考人を招致しておりますので、それから答弁させていただきたいと思います。
  236. 平賀高成

    平賀委員 リストラについては、余りやるべきでないように労働省としても頑張るという趣旨の答弁がありました。  特に、ヤマハが実施しました早期退職優遇制度、これは希望退職とは名ばかりで、本人の自由意思を尊重するという労使間の合意にも反して、やめませんと言っている労働者の方たちに対して、面談とかカウンセリングということで、あなたの働くところはない、こういうふうな退職の強要がこの間行われてきたわけです。  さらに、募集人員の六百人を超えても、それで打ち切るということじゃなくて、どんどん募集を受け付けて、大量解雇を強行するという無責任な対応を会社はやってきました。  さらに、四十歳以上の十年以上勤続の全職員に早期退職優遇制度による退職金等の明細を配付し、この制度の中で、退職金と特別付加金を支給するとしながら、特別付加金については、非世帯主は世帯主基準の六〇%しか支給をしないとしています。主たる生計維持者でない者は、退職金の特別付加金分の四〇%もカットされて支給をされました。私のところにも、これは明らかな男女差別だという訴えが来ているわけです。  ヤマハが職員に配付をした早期退職優遇制度の内容を見ますと、これは労使間で合意をされたものでありますが、この特別付加金は、基本給プラス資格手当に年齢に応じた月数を乗じた額を支給するとなっています。政府参考人に聞きますが、この特別付加金というのは労働の対償であって賃金の一部と考えますが、どうですか。
  237. 佐田通明

    佐田政府参考人 労働基準法におきましては、賃金の定義がございまして、退職金もその賃金になっております。  今お話しのように、付加金につきましては、それぞれ支給要件等はっきりして、事業主の支払い義務が認められるということでございますので、労働基準法上、賃金の一部であると考えます。
  238. 平賀高成

    平賀委員 そうしますと、明確な賃金だということですから、労働基準法第四条の男女同一賃金の原則に定められた「女性であることを理由として、」とはどういうことを指しているんですか、政府参考人に聞きます。
  239. 藤井龍子

    藤井政府参考人 労働基準法第四条では、「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」と定めておるわけでございます。  ここに言う「女性であることを理由として、」といいますのは、文字どおり、単に労働者が女性であるということを理由とする場合のみならず、一般的、平均的に、女性は能率が悪いとか勤続年数が短い、あるいは主たる生計の維持者ではない場合が多いといったようなことを理由として、賃金について、女性労働者を差別的に取り扱うというような場合も言うというふうに解釈をしているところでございます。
  240. 平賀高成

    平賀委員 これは、一九四七年の九月十三日の労働基準法の施行通達によりますと、女子であることを理由として差別扱いするとは、労働者が女子であることのみを理由として、あるいは社会通念としてまたは当該事業場において女子労働者一般的または平均的に能率が悪いこと、勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者でないことを理由とする意味である。これは今言われたとおりです。  そうしますと、主たる生計維持者でないことを理由として、賃金である退職金、特別付加金を差別することは労働基準法の第四条に違反をする疑いがあるのではないでしょうか。
  241. 藤井龍子

    藤井政府参考人 先ほどお答えいたしましたとおり、一般的には、女性は主たる生計の維持者ではないということをもって、女性一般について男性に比べ賃金について差別取り扱いをする、こういう場合は労働基準法第四条に違反するというものでございます。  さらに申し上げれば、個別の労働者について、その職務、能力、能率あるいは勤続年数等により賃金に格差を設けるというのは労働基準法違反ではないと申し上げておきたいと思います。
  242. 平賀高成

    平賀委員 これは、ヤマハの早期退職優遇制度によって、非世帯主という理由で退職優遇制度の付加金の部分を六〇%に下げる、こういうふうな差別がされているわけですね。それで、浜松の労働基準監督署に本人が告発しました。そうしましたら、女性の百八十二名の退職者のうち六十一名の方はカットされていないという説明でありました。  この説明で明らかなように、残りの百二十一名の女性労働者が四〇%カットされているわけです。非世帯主、主たる生計維持者でない者として、賃金であるこの特別付加金を四〇%もカットされたのはすべて女性なんですね。これは明確な男女差別じゃないですか。住民票上では、ほとんどの世帯が男性が世帯主になっていますから。  ですから、ヤマハの場合でも、男性にも六〇%にカットされるというふうなことがあれば、これは男女差別でないということが言えるかもしれませんけれども、しかし、実際にカットされているのはすべて結婚されている女性ですから、明白な男女差別だと私は思うのです。  私は、藤井女性局長に聞きたいと思いますが、男女平等からいって、こうした実態は好ましくないんじゃないでしょうか。
  243. 藤井龍子

    藤井政府参考人 男女雇用機会均等法という法律で、雇用の場における性による差別待遇を禁止するということにしておるわけでございますが、ただいまお尋ねの早期退職優遇制度におきまして、世帯主か否かによって退職金の支給額等について差を設ける、ヤマハの場合もそうかと存じますが、私どもいわゆる世帯主要件と呼んでおりますが、そういったものを設けること自体は、家計を維持する責任のある方々については、生活費への配慮から一定の増額といいますか、そういう形で支給をするという趣旨で設けられる場合が通常であるかと思いますので、これは一定の合理性があるものとして、直ちにそれ自体が均等法の趣旨に違反するというものではないと考えているところでございます。  ただ、実際の運用におきまして、例えば女性が世帯主である場合というのもかなりあるわけでございます。ただいまのヤマハの場合も、女性の三分の一の方が世帯主として増額される付加金を支給されているわけでございますが、そういう女性が世帯主である場合に、例えば女性だけについて、夫の所得についての証明を要求するとか、あるいは夫の所得が一定の額以上であると支給しないとか、そういう男女異なる取り扱いを行うというようなケースも見受けられる場合、そのような場合はやはり男女の均等な取り扱いを定めた均等法の趣旨に違反すると申し上げられると思います。  また、そんな取り扱いに基づきまして、現実に女性であることを理由として賃金について男性と異なる取り扱いをしているような場合は、先ほどの労働基準法第四条違反にもなり得ると考えているところでございます。
  244. 平賀高成

    平賀委員 もう一回ちょっと確認しますけれども、この場合について男女の差別になるんじゃないのかと私は言いましたけれども、これはまずいことだというふうにお考えなんですか。
  245. 藤井龍子

    藤井政府参考人 世帯主であるか否かによって差を設ける、そのこと自体は均等法に直ちに違反するものではないということでございます。  ただ、その運用において、女性であることを理由にして差別的な取り扱いが行われるということであれば、これは均等法の趣旨に違反すると申し上げざるを得ないということでございますので、こういった世帯主要件について、均等法の趣旨に違反しないような運用が行われるよう、私どもとしては、周知徹底に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  246. 平賀高成

    平賀委員 私は、本当に男女雇用均等法の精神からいったら、全く外れていると。女性局長がそんなことを言ったらだめですよ。私は、どういう実態にあるかというのをもうちょっと言いたいと思います。  ちょっと大臣に資料を一枚渡したいんですが。——資料を大臣にお渡ししましたけれども、例えばAさん、これは五十六歳で、世帯主の場合、本来もらえる額は一千八十一万八百円です、ところが、非世帯主になりますと六百四十八万六千四百八十円ということで、約四百三十万減額されてしまいます。それからもう一人、Bさんという方は、五十一歳の方ですけれども、本来、世帯主扱いされるとすれば一千五百四十八万三千六百円です、それが非世帯主になるために何と六百十九万三千四百四十円というように、大体四百万から六百万差が出てくるわけですね。差別されているわけですね。ですから、長年ヤマハで働いてきて、それで実際に退職する段階になりましたら、こういう屈辱的な差別をされるわけです。  ヤマハでこの四〇%をカットされた女性労働者は百二十一名で、六億円を超える退職金、特別付加金が支払われていないことになるわけです。  しかも、リストラによって職を解雇されて、退職に応じた女性が、早期退職優遇制度が実施される中で、主たる生計維持者でないという理由だけで、これだけ大規模な、大規模なといいますか高額な賃金差別がされるわけでありますから、私は、これは明確に男女差別であって、これだけひどい差があるわけですから、大臣、よくヤマハに対して調査をしてほしいんです。少なくとも、これだけの額、六億円の退職金のいわば不当な未払いがあるわけですから、調査していただけますか。
  247. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 ヤマハの件で、特別付加金の取り扱い、勧奨退職にかかわる部分ですね。これを見ますと、女性であっても六十一人の方は世帯主として、正規の計算された退職金がきちっと支払われている。  そういうことで、私としましては、この世帯主の認定ということが適正なのかどうなのかという基本的な問題があるというのを認識しておるんですが、しかし、生活への影響を考慮し、家計維持の責任を負っていると考えられる世帯主についてそのような措置をすることは、その限りにおいては一定の合理性があると考えられますし、いいのではないかなと実は思っているわけです。  しかしながら、世帯主の認定に際し男女で異なる取り扱いをすることは、均等法の趣旨からいって、これは絶対に許されない、こう考えておりまして、また、そのような取り扱いに基づいて、女性であることを理由として賃金について男性と異なる取り扱いをすることは労働基準法第四条に違反するものであり、この場合には絶対そういうことがあってはいけないという周知徹底を図っていきたい、こう考えております。  このヤマハの場合、私は、労使間で一応の話し合いがついているというように実は聞いております。したがって、この四〇%の取り扱いについて、この額が多いのか少ないのか、その辺は労使間で十二分に論議されたのではないかなと。合意に達したとすれば、私どもはこれはいけないとかこうすべきだというのは、今答弁いたしましたとおり、合理的な根拠もあるじゃないか、また、量的な問題は労使間でひとつ相談していただきたい。もしそれで合意しているのであれば、私の方からあれこれ言う必要はないのではないか、こう考えています。(平賀委員調査はするんですか」と呼ぶ)何ですか。
  248. 平賀高成

    平賀委員 労働組合との間で合意をしたとしましても、そういう合意に基づいて退職金は賃金になるわけですから、これは、女性だからといいまして、能力や体力やそういったことで明確な差があるんだということを立証しない限り、主たる生計維持者でないということだけで差別をするということは許されないじゃないですか。調査を要求します。
  249. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 私自身は、労働基準法には、賃金として取り扱われておって、違反するものではない、こう考えています。  もし必要があれば、さらに私どもの立場からもう一回調査をさせていただきます。
  250. 平賀高成

    平賀委員 調査を要求して、質問を終わります。
  251. 島村宜伸

    島村委員長 これにて平賀君の質疑は終了いたしました。  次に、辻元清美君。
  252. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。本日のトリの質問をさせていただきますが、トリの一番は、相撲問題からいきたいと思っています。  青木官房長官と中曽根文部大臣にまずお聞きをしたいと思います。  私、大阪選出の議員ですが、今回大阪には女性の知事が誕生されました。それで、この知事が記者会見で、恒例の、三月から始まります春場所、この場所で、大阪府立体育館で行われますけれども、授与式ですね、知事賞の授与式に御自身が出向いて堂々と賞を渡したいというようにおっしゃったこと、これは御存じのとおりかと思います。  ところが、相撲協会の時津風理事長は、相撲という伝統文化を守るんだということで、この意思表明を軽くいなして拒否されています。議論の土俵にも上ってきていただいていないんです。  私は先日相撲協会の方にも、ぜひどういう伝統か議論しましょうと伺ったんですが、理事長にはお目にかかれませんでしたけれども、理事長も元大関ですね。何だか横綱が序ノ口を張り倒すような感じを受けまして、または、私には何か塩をまいて不浄なものを取り扱うような感じで、土俵にのってきてもらっていないというのが非常に不満で、きょうはこの質問を国会で取り扱わせていただきます。  さて、この取り組みというのは、私は、日本相撲協会と大阪府知事の取り組みとか顔合わせという問題ではないと思います。大阪府知事賞の授与式というのは知事の公務だと思うんですね。ですから、公務員が公務を行うのに、その公務員が女性であるということだけの理由で拒否するのは、先ごろ成立いたしました男女共同参画社会基本法の理念にも反するのではないかと私は考えています。  ただ、ちょっとお断りしておきたいと思うんですが、これは土俵に上って相撲をとりたいとかそういう話ではありませんよね。公務として、職務として、今まで知事が行われていたことを、自分も知事になられたので、普通に、自然に授与式に出たいと。ところが、特に春場所の会場も大阪府立体育館ということで、大阪府は勧進元というか、この府立体育館も管理しているという中で今回の問題が起こっています。  今まで、相撲の伝統文化と言われるものも随分変わってきているというのも御承知のとおりだと思います。私は、今相撲で外国人力士が活躍されているのはすごく喜ばしいことですし、二十一世紀に向けて相撲の伝統に新しい一ページを加えるということで、今回の授与式、堂々と女性の知事がなさってもいいのではないか。前向きな発想でこれにぜひ相撲協会も考えていただきたいと実は思っています。  そういう中で、官房長官は男女共同参画社会、これを実現する担当大臣でいらっしゃいますので、ここはしっかり、日本じゅうの女性、国民もかなり注視している問題ですので、がっぷり四つに組んだ返事を、答弁をいただきたいと思って、まず御質問させていただきます。
  253. 青木幹雄

    ○青木国務大臣 お答えいたします。  今回の大相撲大阪場所における太田府知事の知事杯については、男女同様の取り扱いをすべきであるという意見があるとともに、一方ではこれまでの伝統や慣例を維持すべきであるという、両方の意見があるということは私も十分承知をいたしております。この件につきましては、こうした国民の議論の動向を踏まえて、日本相撲協会が自主的に判断されるべきものであるということが原則だろうと私は考えております。  しかしながら、男女共同参画を担当する大臣として私個人の意見を申し上げますならば、知事というものは県民が選ぶものであり、大阪の場合は府民が選ぶものであり、それが男性である場合もまた女性である場合もございます。知事の性別によって取り扱いが異なるということはいかがなものか、そういうふうに個人的には考えております。
  254. 辻元清美

    辻元委員 今、個人的な御意見も含めて御答弁をいただきました。  実は私、これにこだわっておりますのは、昨年六月に男女共同参画社会基本法ができる折に、当時は野中官房長官でしたが、この問題を取り上げさせていただいているんです。そのときの野中長官のお答えも、例えば女性の総理大臣が出るという可能性は十分あるかと思います。そういう中で、私は、女性総理大臣が授与式に行かれてもいいのではないか、相撲協会においてもそういう意識改革をしていただくことがあってしかるべきではないかというような御答弁をいただいておりまして、昨年からこの問題に取り組んでいますので、今改めて官房長官にも同じような趣旨の御答弁をいただいたように思います。  そういう中で、きょうは文部大臣にもお越しいただいておりますけれども、この相撲協会は財団法人ということで、文部省の管轄であると思います。  私は、今手元に、文部省が出していらっしゃる公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針というのを持っています。この中には、「公益法人は、積極的に不特定多数の者の利益の実現を目的とする、非営利の法人であり、日本の社会経済において重要な役割を担うとともに、相応の社会的責任を有している。」というようなことが明記されております。やはり社会的責任、ここをどのように考えるかということになるかと思います。大相撲中継も、国会中継を中断しても大相撲中継を優先するというようなときもあるぐらい国民には認知されておりますし、関心が高いと思います。  文部大臣、この大阪府知事賞というのは、賞金は五十万円なんです。そして賞金相当額の特産品なども出すということになっておりますが、私、調べましたら、相撲協会の方から、知事賞をぜひ大阪府の方からいただくというようなことで、相撲協会からむしろ積極的に働きかけて例年行われていると聞いております。ということは、相撲協会がそう言っておきながら、知事は来ていらぬという、これはちょっと私は通用しないのではないか、非常識ではないかとすら言わざるを得ないような事態になっていると思います。  こういう中で、監督官庁の文部大臣は、元締めと言うたら変ですけれども、勧進元といいますか、しっかりチェックしていただく立場になるわけですが、男女共同参画という立場からごらんになりましていかがお考えでしょうか。
  255. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 男女共同参画社会の形成を促進するということは大変重要なことであると私も認識をしております。  官房長官からも御答弁ございましたけれども、今回の大阪場所における太田府知事の知事賞授与につきましては、お話ありましたとおり、男女同様の取り扱いをするべきであるとの意見があるとともに、これまでの伝統や慣例を守ってもよいではないか、そういうさまざまな意見があるわけであります。こうした国民の議論の動向を踏まえて、やはり財団法人日本相撲協会が、私は自主的に判断すべきものと考えております。  ただ、私といたしましては、この件は大相撲の長い歴史と伝統にかかわるものでありまして、また国民の間にもいろいろな意見があります。新聞にもいろいろな意見がありますし、テレビでも、女性の方もいいじゃないかというような意見もあったように思いますし、相撲協会においてできる限り広範な国民の意見を聞くように努めていただきたいと考えておりまして、先日も、文部省といたしまして、法人を所管する立場から、日本相撲協会に対しましてその旨をお伝えしたところでございます。
  256. 辻元清美

    辻元委員 今伺ったわけですけれども、手続としまして、私は堂々と授与式を挙行されるべきだと思いますが、しかし、相撲協会がもうどうしても嫌だと言っているんだったら、相撲協会から普通、御辞退するのが筋である、私はそうすら思うわけですね。  府知事賞とか総理大臣賞というのは、もとから、そういう役職は男性しかつかなかったというような社会の仕組み、日本にもあります、まだ残っています、たくさん。そういうことで、あちこちで矛盾、衝突が出てきている。それを一つ一つ、やはり男性も女性も平等であるという理念のもとに、伝統をリニューアルするところはリニューアルする。  そして、この男女共同参画社会基本法の第四条にあります、これは「社会における制度又は慣行についての配慮」。特にこの「慣行」というのが、ちょっと言葉は悪いですが、くせ者といったらくせ者なんです。制度だったらはっきりわかりますが、慣習、慣行というのは、文化とか伝統ということで女性を排除してくるということは、まだまだ日本には残っていると思うんですね。  今、文部大臣が指導されているというお話がありました。私は、三月十二日に大阪場所が始まります、千秋楽まではまだ時間がありますので、寄り切られないように、しっかりもう一度きっちり指導していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  257. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 この相撲協会は公益法人でありますから、やはり、国民のいろいろな意見を聞くということは私は大事ではないか、そういうふうにまず思っておりまして、過日、法人を所管する立場からその旨をお伝えしたところでございます。  知事賞につきましては、いきさつは私知りませんけれども、しかし、これは相撲協会と大阪府の両方での御判断でこういう知事賞というものが贈呈されるということになっていたものと思います。政府が関与すべきことでもない、そういうふうに思っております。  また、個人的な意見といいますか、私は、やはり、公益法人を所管する、指導する立場にあるわけでありまして、個人的な意見というようなものも申し上げることも差し控えた方がいいんではないか、そういうふうに思っております。
  258. 辻元清美

    辻元委員 所管する立場ということもありますが、この男女平等の問題の場合は、個人的とか公的ということを問わず、やはり人間の根本にある問題ですから、ぜひ文部大臣、この際私はお聞きしたいと思うんです。いかがでしょうか。
  259. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 繰り返しになりますが、やはり国民の中にいろいろな議論がありますし、長い歴史、伝統もあります。そういうことから、広くいろいろな方の意見を聞いて相撲協会が自主的に判断していただきたい、そういうふうに私は願っていることでありますし、所管する立場から、やはり意見を大臣として申し述べることは差し控えた方がいいんではないか、そういうふうに思っております。  ただ、男女共同参画社会の精神というものは大変大事でありまして、相撲に限らず、いろいろな面でこれからも世の中がこの促進に向けて努力をしていかなきゃならないとは思っております。
  260. 辻元清美

    辻元委員 この問題は引き続き委員会等でも、私は三月まで何とか、横からうっちゃりというお話もありましたけれども、今徳俵で踏ん張っておるというような状況で、何とか押し返していきたいと思っておりますので、引き続き国会の場でも取り上げていきたいと思います。  引き続きまして、ジェー・シー・オーの事故について話を移させていただきたいと思います。  このジェー・シー・オーの事故について、この委員会でも責任問題というのが議論されてまいりました。これもまた、先ほどは文部大臣としてお答えいただきましたが、今度は科学技術庁長官兼務ですので、中曽根長官と、それから佐藤原子力安全委員会委員長に御答弁を願いたいと思いますが、科学技術委員として私はずっとこの問題に取り組んできました。  それで、まず佐藤委員長にお伺いしたいんですが、これは昨年の十一月十日、事故があって一カ月ちょっとしたときの委員会で、私は、今回の責任の所在をどのように、どこで判断されるのかというような議論をさせていただきました。その中で、佐藤委員長は、「責任の所在というものはおのずと明らかになるであろうというふうに私どもは考えております。また、それを判断するのは安全委員会の役目でございます。」という御答弁でした。議事録です。  それで、私は、そうしましたら、今の御答弁の中に、責任はここにあるんだという判断をするのも安全委員会の役目であると、もう一度確認させていただきますと申し上げましたら、佐藤委員長が、「そのとおりに考えます。その責任の所在は、安全委員会も含めてでございます。」という答弁をいただいております。  あれから大分日がたちまして、五カ月たちましたが、報告書も出ております。委員長は今回の事故の責任の所在はどこにあるとお考えか、まずお伺いしたいと思います。
  261. 佐藤一男

    佐藤参考人 この事故の原因と申しますか、あるいはその背景にさかのぼってまで、御承知と思いますが、政府の御決定に従いまして安全委員会に設置いたしました事故調査委員会におきまして、非常に熱心な議論がされたところでございまして、昨年の暮れにこの最終報告書が提出されたわけでございます。この報告書をお読みいただければ、どこが、だれがどういう責任を負うのかというのは、私は、おのずと明らかになるはずだという趣旨のことを十一月にお答えしたと思っております。  まず、この事故の原因を見れば、これは、株式会社ジェー・シー・オーのおよそ常軌を逸したと言ってもいいほどの多数の違法行為が原因である。したがって、その直接的な責任というのはこの事業者が負うというのは、これはもう当然のことかと考えております。  これを私どもの方の立場で言わせていただきますと、このようなジェー・シー・オーの違法な行為等にかんがみまして、今後、例えば国の規制体制がいかにあらねばならないかというような御提言も非常に数多く承っているところでございます。  私ども安全委員会といたしましては、行政庁が法律に基づいて行う安全審査のいわゆるダブルチェックを行う立場にあるとともに、原子力の安全確保に関しまして包括的な責任を有する立場にあると考えております。  その立場から、今回のような重大な事故が発生してしまったということに関しましては、これを非常に重く、厳しく受けとめているところでございます。(辻元委員「行政責任は」と呼ぶ)行政責任そのものの追及は、例えばだれがどうしたというようなところまでは、これは私、必ずしも安全委員会の所掌とは考えませんが、これは行政庁御みずからがまず御判断になった上で、それについて私どもの方で適切とは思えないというようなことがもしありましたら、それは、必要に応じて意見を申し上げるということになろうかと思います。
  262. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、包括的な責任があるという今御答弁がありましたが、原子力安全委員会委員長として、御自身も責任があるというようにお考えであるということを確認させていただけますか。
  263. 佐藤一男

    佐藤参考人 私ども原子力安全委員会は、御案内のとおり、いわゆる八条機関でございますが、だからといって私どもの——私どもは国民の期待にこたえ、国民の信頼を受けて仕事をする、そういう立場にございます。したがいまして、今回のような事故に関しましては、その国民の期待と信頼にこたえることができなかったということについては非常に重い責任を感じているところでございます。
  264. 辻元清美

    辻元委員 重い責任を感じていらっしゃるとおっしゃったわけなんですけれども、原子力安全委員会でこの原子力関係の安全、これについての責任があるという、もとからのこの委員会の名前ですよ、八条機関だとおっしゃっても。それで、今、私は御答弁で、原子力安全委員長として御自身に責任があるというようにはっきり断言されたと受けとめさせていただきたいと思いますが、よろしいですね。
  265. 佐藤一男

    佐藤参考人 先ほど八条機関云々というようなことを申し上げた理由は、私どもは執行機関ではございませんから、その意味での責任の範囲というのは、そういう意味ではおのずと限界がございますけれども、先ほど申しましたように、私どもは国民の期待と信頼にこたえるという責務がある、そういう意味で、国民に対して重い責任を感じているということを申し上げたわけでございます。
  266. 辻元清美

    辻元委員 それでは、引き続き長官にお伺いします。  二月十八日のこの委員会の御答弁の中に、長官が、結論から申し上げますと行政責任はないというように言い切っていらっしゃるわけなんですけれども、どういう根拠で行政責任はないというようにおっしゃっているのか。  それともう一つは、御自身が長官でいらっしゃるわけですから、御自身には責任があるとお考えなのかどうか、もう一度確認させてください。
  267. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 事故が発生した原因は、先ほども安全委員長からお話がありましたとおり、ジェー・シー・オーが違法な作業を行ったということが、これがまず第一であり、最大の原因でございます。  科学技術庁といたしましては、このジェー・シー・オーの施設に対して原子炉等規制法に基づく法律上必要な行政行為は実施をしてきておりまして、こういう趣旨から、科学技術庁の行政責任はないと私は申し上げたわけでございます。  しかし、重大な事故が発生したということから見れば、科学技術庁といたしましても、これは重く受けとめておりますし、審査それから検査の過程、あるいは事故後の初期対応等がもっと工夫や改善ができなかったのか、あるいはすべきであったのか、そういうふうにも反省をしているところでございます。  そういう観点に立って、さきの国会で原子炉等規制法の改正をお願いし、また原子力災害対策特別措置法の成立をお願いしたところでございます。
  268. 辻元清美

    辻元委員 今の御答弁を聞いている限り、私は、そういう御答弁を繰り返しているからこういう事故が起こると言わざるを得ないと思います。  といいますのは、私は、監督官庁として行政責任が、事故が起こる以前と事故対応に分けましょう、事故が起こる以前の監督官庁としての行政責任は、これは大ありだと思いますよ。そして、事故が起こってからの対応についても、私は行政責任をきっちり果たしているとは言えないと言わざるを得ないと思います。いかがですか。  今おっしゃいましたけれども、そうしましたら、ちょっと角度を変えて御質問させていただきますが、今まで原子力関係所管の科学技術庁の御答弁、原子力は安全だとずっとおっしゃってきたわけです。安全だとおっしゃってきて、これだけの事故が起こっているわけです。では、安全だと言ってきた責任はだれにあるんですか。答えてください。
  269. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 原子力につきましては、安全対策を、万全な安全対策をとって事業を行っているわけであります。リスクもありますし、それから危険性、当然ありますが、そういうものを考慮した上で安全対策をとっておる。したがって、これをとっている以上は安全性の確保ができている、そういうふうに認識しているものでございます。
  270. 辻元清美

    辻元委員 今の御答弁は矛盾していますね。そうしたら、なぜ事故が起こったんですか。いかがでしょうか。
  271. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 安全委員会あるいは科学技術庁等におきまして、法律に基づいて安全審査を行って、例えばジェー・シー・オーの燃料加工の事業の許可をしたわけでありますが、その審査で許可されていない違法な行為を行ったわけであります。それが事故の原因であります。
  272. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、監督官庁というのは何をする官庁ですか。見抜けなかったということをはっきり認められたらどうですか。見抜けなかったということですよね。いかがでしょうか。  それはもう答弁書を見なくても、どうぞ長官御自身の言葉で答えてください。
  273. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、原因は現場にあります。  それを見抜けなかったというふうに言われておりますけれども、当加工所に対しましては、現場の当庁の係官が何回か訪問をしております。ただ、そのときは作業をやっておりませんでした。この調査、訪問は法律で義務づけられたものではなくて、むしろ法律で義務づけられたいろいろな事業所のところを回らなければならないということもありまして、不意に行くといいますか、あるいは事前に通告をするんでしょうけれども、行ったところ作業をしていなかった、そういうことがありまして見抜けなかったということがあるわけであります。  私、責任問題、責任が全然ないということを申し上げているんではなくて、やはり事故が起きたということを重く受けとめて、どういうところに問題があったんだろう、そういう点は私たちも反省をしておりますし、まだまだ十分万全でないということがあったわけでありまして、法律の整備をして再発防止にとにかく全力で取りかかろうということでやっているわけであります。
  274. 辻元清美

    辻元委員 監督官庁が行ったときに作業していなかったからとか、そういうレベルのことを言いわけに使うというのは、それも長官がお使いになるというのは、どう思いますか。官房長官いらっしゃいますけれども、これは非常に重大な問題ですよ、行政責任はないというような答弁をこの予算委員会で長官がおっしゃったわけですから。いかがですか、官房長官。
  275. 青木幹雄

    ○青木国務大臣 この責任問題については、今、中曽根担当大臣が議員の質問に答えていろいろな角度からお話をしたとおりでございまして、私は、中曽根長官がそういう御返事をしたということは、現段階で初めて聞きました。
  276. 辻元清美

    辻元委員 議事録がここにありますから後でお渡しして、これは政府の、小渕総理に答えていただきたいですね。あのときも対策本部長でいらっしゃいましたから。  先ほど、行ったけれどもわからなかったと。でも、この議論の中でも出ていましたよ。七年間、ジェー・シー・オーについてはチェックしていなかったということも明らかになってきたじゃないですか。  そして、事故後の対応です。事故後の対応については、三百五十メートル圏内の被曝された方が、余りにも対応がひどいということで今回被曝者の会をつくられました。私は、十日ほど前にこの人たちが初めて、科学技術庁に自分たちの声を直接聞いてくださいということで国会にいらっしゃったときに、立ち会いました。  ところが、この方は、百数十メートルのところで工場を営んでいらっしゃる、この被曝者の会の代表になられた方ですが、いただいたのはこの二枚の紙だけですとおっしゃっているわけですね、この二枚の紙。そして、調査にいらっしゃったときには、おたくは鉄筋で塀があるからねえとか言いながら、これはモルタルらしいのですけれども、そして、同じ工場内でも、窓をあけていたところ、あけていなかったところ、さまざまなことがあるのでしっかりチェックしていただきたいと、百数十メートルのところの人ですが、申し上げたら、時間がないので次に行きますと。そしてその後、健康については心配だということをずっと言い続けていらっしゃいますけれども、科学技術庁から出先の役場に来ていらっしゃる方はたらい回しのような状況で、話もしっかり聞いてもらえないと、現場の方が十日前におっしゃっているわけです。  これで、事故後の対応について行政が責任を果たしていると長官はお考えでしょうか。
  277. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 今の、委員が御指摘調査の状況については、私は詳しく承知しておりません。現地でどういう話し合いがあったかは、この件について承知しておりませんので、申しわけありませんが、これについてのコメントはできません。  私どもは、再発防止、それから安全確保、これは当然でありますが、それとともに住民の皆さん方の健康問題、それから被害の賠償の問題、風評被害の問題等、これらにも全力で取り組んできておりまして、大変な御迷惑を受けた住民の皆さん方が一日も早くもとの生活に戻れるように、そういう観点から全力で取り組んできたつもりでございます。
  278. 辻元清美

    辻元委員 全力で取り組むことと責任問題は別じゃないですか。全力で取り組むのは当たり前です。ところが、先ほどから文部大臣としても御答弁いただいていますけれども、例えば子供に、最高責任者というのはどういう義務を果たす人かという質問に答えられるでしょうか。東海村の三百五十メートルからちょっと離れた五百メートルのところに小学校があった、そこも子供たちは遊んでいました。そして事故後、数時間放置されたままでした。そこの小学生に、今文部大臣も兼務されている長官が、その説明で子供が納得されるというように思いますか。私は非常に情けないと思います。  さて、そういう中で、その後MOX燃料のデータ改ざん事件も出ておりますし、MOXの中にねじが入っていた、それが見抜けなかった。洗濯機でもねじがぽっと入っていたら、ごろごろ回したら壊れますよ。これは原発の中で使おうとしていたわけですから、これも科学技術庁、どう考えているのか。  そこで長官にお伺いしたいのですが、これはきょうの朝刊です。三重県の芦浜原発の話です。ここで知事が、今回の立地については計画を白紙に戻すというような見解を出されました。これはやはり、原子力というものにこれからは頼っていられない、地元の住民の皆さんの理解も得られないという、その一つの大きなあらわれです。長官はどのようにこの件はお考えでしょうか。
  279. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 原子力発電所の立地等につきましては、直接的には通産省の所管であろうかと思いますが、北川知事のそういう御決断は、知事としていろいろな点を配慮した上でお決めになられたことだと思います。  私どもは、このジェー・シー・オーの事故あるいはそれ以前のいろいろな原子力関係の施設の事故等によりまして、原子力に対する国民の皆さんの信頼が本当に著しく失墜したということは大変に残念に思っておりますが、しかし、原子力のエネルギーとしての、あるいは電力源としての重要性というものは委員御承知のとおりでありまして、一日も早い信頼の回復を行い、そしてまた原子力発電事業等をやっていかなければならない、そういうふうに思っているところでございます。
  280. 辻元清美

    辻元委員 信頼の回復はまず責任をはっきり認めるところからしか始まらないということを、私はしっかり申し上げさせていただきたいと思います。  もう一問、別の観点から責任問題について議論させていただきたいのですが、警察の不祥事です。  国家公安委員長もお越しいただいておりますが、この予算委員会で、あの新潟県の女性監禁事件につきまして何人かの方が質問されている御答弁の中で、本部長がはっきり言えば虚偽の会見を行っていた、発表を行っていたということについて、こういうことをおっしゃっております。  これが重大な事件に結びつく、あるいは重大な事柄に結びつくことであったのかどうかという本部長自身の認識、そして、下部から、下の方から恐らくメモでも渡したんだろうと思いますが、こういうことで第一発見者をかばいたいと思うがいいかということに対しての本部長自身の判断、そういった点について、これは誤りがなかったのかどうかということについては、国家公安委員会、先週開かれましたときに、私からも警視庁に対して厳しく物を言いました、私が就任してから一番きつい言い方をしたと思います、どういうことをおっしゃられたのでしょうか。
  281. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 今委員がお読み上げになりました中に警視庁というのがありましたが、警察庁だと思いますので、御訂正をいたします。  その上で、先週の木曜日に国家公安委員会がございまして、予算委員会が開かれておりましたが、私はたまたま出席要請されておりませんでしたから、国家公安委員会に出席をいたしました。そして、そのときに、この新潟県の問題というのはテーマになっておりました。大きな問題として委員の間でいろいろなやりとりがありました。どうなっているのだということで、警察庁の方からいろいろ御説明があったわけでありますけれども、そのときに、第一発見者を報道からもかばわなければいけないというような、いろいろなことがありました。  私は、その説明を聞いておって、待ってくれ、これは、保健所側から警察に対して要請があったのは事実だし、警察がそのときに直ちに出動しなかったことも事実だ、その事実に即して、実態をよく調査をして、そして私どもに報告をしてもらいたいというようなことを申し上げたと記憶をいたしております。  厳しい言い方というのは、表現が正しいかどうかわかりませんけれども、私としては、自分はおとなしいつもりでおりますけれども、そのときは、この事件の重大性にかんがみまして、かなり強い言い方をした記憶がございます。  その後、たしか私が発言をしたのは十一時前後だと思いますが、その日の午後二時ごろ、新潟の県警本部長からおわびの会見があっておるということを私は記憶をしております。  厳しく申したといういきさつは、そういう点でございます。
  282. 辻元清美

    辻元委員 この県警本部長は記者会見も拒否していた。しかし、これはきょうの朝刊ですけれども、昨日、この小林本部長が県議会で陳謝をしたという記事が出ております。  そこで、先ほどの責任問題に引き続いてですが、私は、明らかにこの小林本部長には責任がある、こういう行為をとったことは責任重大であると考えますが、委員長はいかがでしょうか。
  283. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 責任を考えます場合には、まず事実関係を正確に把握をした上で考えていかなければならないことだと私は思っております。  そういう意味で、警察庁は、先週日曜日に新潟県警に参りまして、実情聴取をいろいろいたしております。その報告書は、明日が公安委員会の定例日でございますけれども、そこにはお示し願えるもの、私はそう期待しております。  その上に立って物事を考えていかなければならないと思いますが、今回の事件では、いろいろな対応を私なりに判断してみますというと、県警本部長として、果たしてこの問題の処理に当たって正しい処理をしたのかどうかということについて疑念を持っておりますけれども、しかし、その報告書を見て、事実関係を見て、それに即して判断をしてまいりたいと思います。
  284. 辻元清美

    辻元委員 私はその質問を昨日用意しておりましたら、またきょうの朝刊なんですよ。これは北海道で、北海道の前警察署長がセクハラ問題で自殺したという記事をごらんになりましたでしょうか。なっていると思いますね。これは旭川方面本部監察官室長への転任が決まっていた人なんです。  この監察官室長という立場は、これは田中参考人にお伺いした方がいいかもしれませんが、どういう立場の人でしょうか。
  285. 島村宜伸

    島村委員長 田中警察庁長官。質疑時間が終わっておりますから、簡潔にお願いいたします。
  286. 田中節夫

    田中政府参考人 委員指摘の監察官室長と申しますのは、具体的な業務の推進状況あるいは職員の非違等につきまして、厳正公平な立場で調査する、そのチームのリーダーでございます。
  287. 島村宜伸

    島村委員長 これにて辻元君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後五時五十一分休憩      ————◇—————     午後六時開議
  288. 島村宜伸

    島村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。  平成十二年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は  第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(ただし北海道開発庁、経済企画庁、科学技術庁、環境庁、国土庁を除く)並びに他の分科会の所管以外の事項  第二分科会は、法務省、外務省、大蔵省所管  第三分科会は、総理府(科学技術庁)、文部省、自治省所管  第四分科会は、厚生省、労働省所管  第五分科会は、総理府(環境庁)、農林水産省所管  第六分科会は、総理府(経済企画庁)、通商産業省所管  第七分科会は、総理府(北海道開発庁)、運輸省、郵政省所管  第八分科会は、総理府(国土庁)、建設省所管 以上のとおりとし、来る二十五日、二十八日の両日分科会審査を行いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  289. 島村宜伸

    島村委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  290. 島村宜伸

    島村委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  次いで、お諮りいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席説明の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  291. 島村宜伸

    島村委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  次に、分科会審査の際、政府参考人出席を求める必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  292. 島村宜伸

    島村委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  次回は、明二十四日午前九時から公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会