運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2000-02-21 第147回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年二月二十一日(月曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 島村 宜伸君    理事 久間 章生君 理事 自見庄三郎君    理事 高橋 一郎君 理事 萩山 教嚴君    理事 町村 信孝君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 西田  猛君       甘利  明君    伊藤 公介君       石川 要三君    稲垣 実男君       小澤  潔君    大石 秀政君       亀井 善之君    栗原 博久君       杉浦 正健君    田中 和徳君       高鳥  修君    津島 雄二君       中川 昭一君    中川 秀直君       野田 聖子君    葉梨 信行君       萩野 浩基君    船田  元君       村田 吉隆君    村山 達雄君       森山 眞弓君    山口 俊一君       石井 紘基君    岩國 哲人君       生方 幸夫君    古賀 一成君       五島 正規君    渋谷  修君       原口 一博君    肥田美代子君       藤田 幸久君    横路 孝弘君       青山 二三君    石田 勝之君       佐藤 茂樹君    桝屋 敬悟君       青山  丘君    加藤 六月君       菅原喜重郎君    鈴木 淑夫君       米津 等史君    大森  猛君       木島日出夫君    春名 直章君       矢島 恒夫君    濱田 健一君       保坂 展人君     …………………………………    法務大臣         臼井日出男君    大蔵大臣         宮澤 喜一君    文部大臣                   国務大臣    (科学技術庁長官)    中曽根弘文君    厚生大臣         丹羽 雄哉君    通商産業大臣       深谷 隆司君    運輸大臣         二階 俊博君    郵政大臣         八代 英太君    労働大臣         牧野 隆守君    建設大臣         中山 正暉君    自治大臣    国務大臣    (国家公安委員会委員長) 保利 耕輔君    国務大臣    (内閣官房長官)     青木 幹雄君    国務大臣    (防衛庁長官)      瓦   力君    国務大臣    (経済企画庁長官)    堺屋 太一君    内閣官房長官      額賀福志郎君    総理府政務次官      長峯  基君    防衛政務次官       依田 智治君    防衛政務次官       西川太一郎君    経済企画政務次官     小池百合子君    科学技術政務次官     斉藤 鉄夫君    外務政務次官       東  祥三君    大蔵政務次官       大野 功統君    文部政務次官       河村 建夫君    厚生政務次官       大野由利子君    通商産業政務次官     細田 博之君    運輸政務次官       中馬 弘毅君    郵政政務次官       小坂 憲次君    労働政務次官       長勢 甚遠君    建設政務次官       加藤 卓二君    建設政務次官       岸田 文雄君    自治政務次官       平林 鴻三君    政府参考人    (警察庁長官)      田中 節夫君    政府参考人    (外務省経済局長事務代理    )            石川  薫君    政府参考人    (資源エネルギー庁長官) 河野 博文君    政府参考人    (労働大臣官房審議官)  横田  浩君    政府参考人    (労働省職業安定局長)  渡邊  信君    予算委員会専門員     大西  勉君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   甘利  明君     野田 聖子君   大原 一三君     大石 秀政君   日野 市朗君     渋谷  修君   肥田美代子君     藤田 幸久君   青山  丘君     米津 等史君   志位 和夫君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     大原 一三君   野田 聖子君     田中 和徳君   渋谷  修君     石井 紘基君   藤田 幸久君     肥田美代子君   米津 等史君     菅原喜重郎君   矢島 恒夫君     大森  猛君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     甘利  明君   石井 紘基君     日野 市朗君   菅原喜重郎君     青山  丘君   大森  猛君     志位 和夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  平成十二年度一般会計予算  平成十二年度特別会計予算  平成十二年度政府関係機関予算     午前十時開議      ————◇—————
  2. 島村宜伸

    島村委員長 これより会議を開きます。  平成十二年度一般会計予算平成十二年度特別会計予算平成十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  三案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、外務省経済局長事務代理石川薫君、資源エネルギー庁長官河野博文君、労働大臣官房審議官横田浩君及び労働省職業安定局長渡邊信君の出席を求め、説明聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 島村宜伸

    島村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 島村宜伸

    島村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。生方幸夫君。
  5. 生方幸夫

    生方委員 おはようございます。  まず最初に、青木官房長官にお伺いしたいと思います。  総理が今回の予算委員会出席しなかった問題については、たびたびここでも論議をされております。官房長官のお答えは、これは予算委員会の方でお決めになったことであって、官邸サイドが望んだわけではないという御返事でございました。  そこでお伺いしたいのですが、総理は、報道によりますと、昨日お国入りをなさったということでございます。予算委員会の最中に総理がお国入りするというのは、かなり異例なことだというふうに考えております。  それから、その前の日程等を見ますと、たびたび質問がございましたが、やはり総理予算委員会に出るためにほとんどの日程をもともとあけてあったのではないか。したがって、そこにあけてあった時間を勉強に充てたり、梅娘さんに会ったり、毛利さんに電話したりと、いろいろなことをおやりになっているようでございます。  そこで、まず一つお伺いしたいのですが、総理自身が、今回の予算委員会出席しなかったことについて、時間があいてよかったなというふうに思っているのか、あるいは、予算について国民説明をする貴重な時間を総理の側からすれば失ってしまった、それは非常に残念だったというふうにお考えになっているのか、どちらか。長官がお聞きになっていましたら、総理自身が、今度の予算委員会に御自身出席する機会が、少なくとも野党の質問ということに関せば一日しかなかったということについてどのような感想をお持ちか、そこをお伺いしたいと思います。
  6. 青木幹雄

    青木国務大臣 議員も今おっしゃいましたように、当委員会総理出席するかどうかということは、当委員会においてお決めになることである、そういうふうに考えております。  委員会出席をしなくてあいた時間といいますか、どういうふうに考えておるかということでございますが、これはいろいろな見方、とり方によって見解が異なる問題だろうと私は考えております。総理が時間的な余裕を持っていろいろな人に会え、いろいろなことを、やはり国政全般考えていくことも必要なことでないか、私はそういうふうに解釈をいたしております。
  7. 生方幸夫

    生方委員 それは大事なことは、私もよく承知をしております。  しかし、この間も申し上げましたが、私たち国民の代表としてこちらに出ているわけで、来年度予算案について、八十五兆円という非常に規模の大きな予算であって、景気も極めて厳しい状態にある、国民方たち総理に聞きたいことがたくさんあると思うのですね。総理も、逆に言えば、国民皆さん方説明をしたいことがたくさんあると思うのですよ。その時間が大幅に今回の予算で減ってしまったということは、総理の側から見ても、国民説明をする貴重な機会を失われてしまったというふうにも考えられなくもないのですけれども総理自身がそのことについてどのような御感想をお漏らしになっているのか、聞いておりましたら、ぜひ伺いたいと思います。
  8. 青木幹雄

    青木国務大臣 国民の目から見ると、この議会の内部での話し合い委員会決定、そういうふうなものは十分理解が難しいと私は考えております。  それで、総理出席できなかったことをどういうふうに考えておるかとおっしゃいますけれども、私は、総理自身も、恐らく出たいという気持ちもある、また委員会決定に従わなきゃいかぬという気持ちもある。最終的には私は、委員会でお決めになることを守って行動するのが当然の総理の責務だ、そういうふうに考えております。
  9. 生方幸夫

    生方委員 もう一点。  今度の予算委員会では公聴会日程を一日に限ったというふうに決まっていると聞いております。今まで、通例でいいますと、二日間やって、これは公聴会でございますから、国民皆様方がこの予算についてどういうふうに考えているのかというのを我々が聞かせていただくということでございますよね。それが、二日間あったのが一日になってしまったということは、国民予算に対する意見を聞く機会がいわば半分になったということでございますが、そのことについて、官房長官、どのような御感想をお持ちになりますか。
  10. 青木幹雄

    青木国務大臣 公聴会日程につきましては、当委員会で御決定になったことでございますので、総理はそれに従って行動するのが当然だと私は考えています。
  11. 生方幸夫

    生方委員 もう一点、官房長官にお伺いしたいのですけれども、今回の措置によって、国会を活性化させようということで、今回はクエスチョンタイムが導入されたり、予算委員会もいろいろいじったと思うのですが、実際問題として、今度の国会が、まだ始まったばかりでございますけれども、今までのところまで見て、活性化されたというふうにお思いになりますでしょうか。それとも、活性化されなかった、むしろ逆行しているというふうにお思いになりますか。どちらでございましょうか。
  12. 青木幹雄

    青木国務大臣 こういう制度が各党間の話し合いにおいてつくられて、初めてのケースでございますので、やはり自分たち決めたいわゆるケースをよく育てていくという努力をみんながしなきゃいかぬと私は思っておりまして、この一回だけを見てすべてを判断することはどうかな、そういうふうな気がいたしております。
  13. 生方幸夫

    生方委員 ここでるるやりとりしていてもしようがないのですけれども総理も、今青木官房長官もおっしゃいましたように、出たいという気持ちも半分あるのじゃないかというふうにおっしゃっておりましたので、これは、今度の国会しようがないとしても、次の国会からぜひとも……(発言する者あり)では、しようがないは取り消します。次の国会からはぜひとも、総理出席も含めて、これを前例としないで、我々はこれが非常に不満でございますので、予算委員会という大事な委員会が、本当に国民が注目している委員会が、きょうの新聞にも出ておりましたように、やはり議論が国民の目に届かなくなってしまったというところはあるわけでございますから、ぜひとも、これを前例としないで見直しをしていただきたいというふうに、これは政府にお願いすることじゃないのですが、前例としないということを我々も決めなければいけないというふうに思います。  それでは、次の質問に移らせていただきます。  警察不祥事についてお伺いしたいと思います。  きのうのテレビを見ておりましたら、新潟警察庁から調査が入ったということでございますが、警察庁長官、きのうの調査について既に何か御報告を受けておりますかどうか、お伺いしたいと思います。
  14. 田中節夫

    田中政府参考人 委員指摘新潟県の事案と申しますのは、既に御案内のとおりでございますけれども、九年二カ月にわたり少女が監禁されていた事案でございます。  この点につきまして、具体的に、発生当初の捜査の問題あるいは発見時の対応の問題、それから広報の対応問題等につきまして、いろいろ反省すべき点があるというふうに私ども考えておりまして、その具体的な状況がどうであったのかということを確認するために、昨日、官房審議官を長とする調査チームを派遣いたしました。  本日、まだ委員会出席する前に、簡単にその概要については聴取してまいりましたけれども、さらに聴取しなければいけないことがございますし、また国家公安委員会にも御報告申し上げて、そしてその指導を得ながら、さらに詰めるところは詰めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  15. 生方幸夫

    生方委員 どのような報告があったのか、簡単で結構でございますから、お知らせいただけますか。
  16. 田中節夫

    田中政府参考人 具体的な内容につきましては、現在捜査中の事案でもございますので、詳細につきまして御答弁申し上げることはできにくいところもございますけれども、例えば、発見時の報道のありようにつきましては、どのような認識でやられたのか、あるいは事実と異なることがあったわけでございますけれども、それがなぜ速やかに訂正とかいうことができなかったのかということにつきまして、時間もありませんでしたので簡単にしか聞けませんでしたけれども、またきょう、委員会が終了いたしましてから、詳細に報告を求めたい、かように考えているところでございます。
  17. 生方幸夫

    生方委員 神奈川県警不祥事から始まって、京都府警犯人の取り逃がし、そして新潟県警の不手際、このほかにも、私きょういただいたんですけれども平成十一年中の懲戒免職事案ということで、収賄、窃盗飲酒ひき逃げ住居侵入窃盗強制わいせつ覚せい剤と、これは多分みんな警察官が行った犯罪だというふうに思うんですね。  こんなに続いていて、警察信頼というのは地に落ちていると思うんですけれども長官、このように、県警不祥事から始まって、一般警察官不祥事が続く原因は一体何だというふうにお考えになりますか。
  18. 田中節夫

    田中政府参考人 委員指摘警察不祥事の問題でございますけれども、言うまでもございませんけれども、私ども警察使命は良好な治安を維持することにありまして、厳しさを増す治安情勢の中、全国警察職員、そのほとんどが、こういった使命感を持って日夜、職務に精励しているところでございます。  しかしながら、御指摘がございましたように、昨年来、神奈川県警を初め全国不祥事が続発し、国民警察に対する信頼を大きく損ねたことは、まことに遺憾だというふうに思っております。  不祥事の態様、背景は事案によってさまざまでございまして、その原因については一律に述べることは難しいところがございますけれども、基本的には、不祥事案を起こした個々の職員職務倫理意識あるいは幹部の指揮監督能力管理能力の欠如に起因するところが大きいというふうに考えまして、国家公安委員会の御指導のもとに、人事教養制度の改善あるいは組織管理者研修等の実施を初めといたしまして、組織を挙げて不祥事案に対する取り組み、再生の道を歩み始めたところでございます。  しかしながら、今御指摘のように、にもかかわらず国民信頼を損なうというような事態が発生したり、あるいは、職務を離れているとはいえ、言葉を失うような不祥事案が発生していることは、御指摘のとおりでございます。  私どもといたしましては、国民のための警察という警察の原点にもう一度立ち返りまして、職務に邁進するとともに、いささかも信を失することのないよう、一人一人の警察職員にこれを徹底してまいりたいと考えているところでございます。
  19. 生方幸夫

    生方委員 「警察職員の信条」というのがございます。ここの中に五つ書かれておるんですけれども、三番目に、「警察職員規律を厳正に保持し相互連帯を強める」というふうにあるわけですね。二番目に、「警察職員人権を尊重し公正かつ親切に職務を執行する」というふうにあります。どうも私考えるに、この三番目の「規律を厳正に保持し相互連帯を強める」、ここばかりが重視されて、組織を防衛するために、「公正かつ親切に職務を執行する」というところがやや失われている感があるんではないかというふうな気がしてならないわけですが、国家公安委員長、いかがでございましょうか。
  20. 保利耕輔

    保利国務大臣 今御指摘服務規律等については、私からも、これは持っているというだけではなくて、十分にこれをそしゃくして、その精神を理解して職務に当たってもらいたいというようなことを言っております。言うだけではだめでありまして、やはり、現場警察官皆様方がそういう精神を実行に移すという形で規律を保ってもらいたい、こう私は思っております。  今後とも、警察庁を督励しながら、各県警において、あるいは各警察署現場が、先生御指摘のような規律の保持についてきちんとしていただくように、私からも強く要請をしたいと思っております。  なお、警察官は、やはり犯罪と接触をするという非常に微妙な仕事でありまして、犯罪者に近づくとそちらの方の、朱に交わればという話もありますけれども、そういったことで、非常に厳しい環境があるだろうと思います。その中でも朱に交わってなお赤くならないように努めるというのは、よほど精神力の強い人でなきゃならぬ。したがって、警察官に対する、規律正しく努めるという観点から考えれば、他の公務員とはちょっと違う、また、公務員全般そうなければいけませんけれども、特に警察についてはそういうことが求められるということにかんがみて、やはり待遇等で十分考えてあげる必要があるだろう、そんなふうに考えております。  なお、警察庁を厳しく、厳しくというか厳正に指導してまいりたいと思っております。
  21. 生方幸夫

    生方委員 警察が非常に厳しい仕事についているということは、私もよく承知をしております。朱に交わって朱になっては困るわけで、それまでの警察というのは、日本の交番を初めとして、警察システムそのものに対しては国民信頼があったわけですね。もともとから朱に交わってきたわけです。朱に交わらないできちんと職務を果たしてきたのに、何でここに来て急にそんなに不祥事が続いたのかというところで、やはり警察組織防衛というのですか、内ばかり見ていて表に顔を向けてこなかったというのが、私は一つ原因ではないかというふうに思っております。  それで、もう一点お伺いしたいのですが、新潟県警の問題はきのう調査が入りました。私、京都府警の問題も、これは警察に重大なミスがあったのではないかというふうに考えております。  これは、まず第一点は、非常に幼い子供を残虐なやり方で殺した被疑者と思われる人間に聴取をするのに、ただでさえ、うちでやるのが当たり前なのに、公園でやるという、最初事情聴取公園でやるということ自体に、もう私は重大なミスがあると思うのですね。この人は二十一だったからよかったですけれども、もしこの人が未成年だったりした場合、衆人環視の中で、公園ですからだれもが通れるわけですね。実際問題として、何人かの方がその事情聴取をしているところを目撃しているわけですから、これは被疑者人権ということから見ても、衆人環視の中で、そういう重大な犯罪を犯した可能性のある被疑者を、被疑者まで至っていなかったのでしょうけれども、方を聴取するということ自体がまず第一点、私は間違いがあったのではないかというふうに思っております。  それから、その後で被疑者自殺をしたときに、最初に、十三階から飛びおり自殺をしたというふうに報道されておりました。その前に、犯人が脱兎のごとく走っていったので見失ってしまったというような報道もなされておりました。しかし、実際問題、その周りで報道方たちがいろいろ聞くと、犯人を追いかけていった、何人もがスーパーの中で追いかけていったり、アパートの中を追っかけていった姿を見ているわけですね。だから、見失ったというのもこれもうそではないか、十三階から飛びおりたというのもうそではないかということがだんだん明らかになってきたわけでございます。  したがって、身内にやはり厳しくするということが一番でございますから、神奈川県警の問題のときも、本来の事案であれば当然逮捕されてしかるべきような事案であったにもかかわらず、在宅で起訴をしていた。こういうことが積み重なっていくことが、内に甘くなるし、国民警察に対する信頼というのが失われていくということになると思うんですね。  したがって、私は、新潟県警を調べたのであれば京都府警についてもきっちりと調べる必要があるのではないか。あの記者会見を私も見ておりましたですけれども最初に問題はなかったと思うと、何も調査もしないうちに刑事部長が問題はなかったと思うと言っているような体質がそもそもおかしいと私は思うのですが、警察庁長官、いかがでございますか。
  22. 田中節夫

    田中政府参考人 今委員指摘の、新潟事案あるいは京都事案等につきましては、京都事案はまだ現在捜査中でございますので、さらに解明を要する点がございますけれども、ただ、御理解いただきたいのは、京都事案につきましては、大変苦労いたしまして容疑者を絞り込みまして、最終的に容疑者から供述を得ようというところで、任意捜査の限界のぎりぎりのところで任意同行を求めたわけでございますけれども、あのような形で容疑者自殺させてしまったということはまことに残念でございまして、捜査員はもとよりでございますけれども、私どもも大変に残念に思っております。  ただ、その過程で、今御指摘のような問題、何かほかに方法がなかったのかということにつきましては、これは検証を重ねる必要があると思います。  それから、具体的にその犯人行動あるいは捜査員行動等につきまして一部報道がございますけれども、それが報道のとおりであるのかどうかにつきましては、これは詳細調査をする必要があると思いますし、また、必要があればといいますか、ある程度の段階に至りますれば、私どもがまた京都府警に対しても調査をしてまいりたい、かように考えております。  それから、身内に対して甘いのではないかという御指摘がございました。私どもは、具体的な事案が発生いたしました場合に、その事案内容によりましてこれを厳正に対応するように指導してまいりたいと思いますし、また今までもそのように指導しておるところでございます。  ただ、国民皆さんから見て、その対応措置にいささかの疑問といいますか、そういうものがあるとすれば、私どもの今までの対応に問題があったのではないかと思います。  今後とも、国民皆様からの疑問を生じさせないような形で厳正、的確に対応してまいりたい、かように考えているところでございます。
  23. 生方幸夫

    生方委員 警察内部不祥事については監察官調査をするということになっているわけですけれども全国監察官というのはどのぐらいいて、どういう体制になっているのか、そのことをお伺いしたいと思います。
  24. 田中節夫

    田中政府参考人 お答えいたします。  今手元に全国監察官の総数の数字を持ち合わせておりませんけれども、各県の規模によりますけれども監察官の室には、室長と申しますか、監察官には参事官クラスの、相当経験の豊かな警察官を充てておりまして、県によりましては、二ないし三のそういう警視クラスの人間、その下に警部クラスの者を抱えておりますし、また、大きい県では二十名、三十名の体制でもって体制を組んでおるところでございます。  具体的な事案が発生いたしました場合には、その事案に応じてどの人間が対応するのが適当かどうかということも踏まえ、またそれぞれの公安委員会の御指導を得ながら、適正に処理しているところでございます。
  25. 生方幸夫

    生方委員 私も警察法を調べてみたのですけれども監察官についての規定は、第五条の二項の十八に「前各号」、これは犯罪統計に関することとかいろいろございまして、「前各号に掲げる事務を遂行するために必要な監察に関すること。」というのが一行と、それから第二十一条の八号に「監察に関すること。」というのが出ているだけで、監察というのはどういう仕事をするのか、どういう位置にあるのかという、何も定めがないのですね。  こちらの「警察法解説」の方にこの監察について触れておりまして、「「監察」とは、行政監督上の立場から調査又は検査することに用いられ、その調査又は検査は行政機関の行う業務の実施状況についてなされるものであり、公務上の犯罪、非違又は事故に関するものもこれに含まれるのであるが、監察の中には会計検査のようなことは含まれない。ただ会計上の問題であっても、それが公務上の非違又は事故等に関するものであれば、監察の対象となる。」というふうに解説には出ているわけです。  各県警組織を見ますと、県警本部長の下に、警務部の中に監察官室があったりするわけで、県警本部長、警務部長、その下というふうになるわけですね。そうしますと、例えば神奈川県警とか新潟県警でも、うその発表をしたのは新潟県警本部長が認知していたということでございますので、京都府警の場合はよくわかりませんけれども、そうなりますと、常識的に考えて、部下が上司のことを調べるというのは、相当の権限なり地位を与えられていなければこれは難しいことですよ。したがって、私は、この監察官制度そのものが非常に問題があるのではないかというふうに思います。  これは、今申し上げましたように、警察法の中にもほとんど規定がされていないようなものである。そうなりますと、権限もはっきりしないし、地位も本部長より大分下にいるという方が警察全体の不祥事について監察をするというのは、そもそも、どだい無理があるのじゃないかと思うのですけれども、公安委員長、いかがでございましょうか。
  26. 保利耕輔

    保利国務大臣 今御指摘の点については、警察庁内部あるいは公安委員会で随分議論をさせていただきました。  地方行政委員会におきましても御答弁をしたように記憶をいたしておりますけれども警察という一つの命令組織で動いて犯罪を取り締まるという組織体の中にあって、その組織体がきちんとした姿で動いているのかどうかということを監察する、検査するというのは、やはりその組織体の中に置いておくべきだということが今の私の考えであります。  そして、その監察については、やはり本部長がトップに立つ者として、これは県警本部でありますから、県の警察の本部でありますから、この最高、最終の責任者のところへ監察の話が伝わり、そこの御判断をいただくということが必要であろう。それに対して、地域の公安委員会が、やはり本部長と連絡をとりながら、内部体制はきちんとしておるかどうかということを終始注目しておるという体制がよかろうかと思っております。  なお、監察を警務部の下に置いているという御指摘がございまして、それは確かにそのとおりでございます。その点は非常に私も警察庁と議論をしたところでありますが、警務部というのは、警察特有の言葉でありますが、言ってみれば人事部と監査を一緒に兼ねておるわけであります。監査という、規律の厳正化ということと人事というものはなかなか切り離せない問題でありまして、人事関係においてその警察官一々の行動等については把握をしているもの、その情報と監察関係の情報とが相まって内部規律の厳正化に役立っていくものである、ちょっと回りくどくなりましたけれども、そういうふうなことを考えて、現在の監察のやり方はこういうふうにやるべきだ、それで、なお公安委員会との連絡は、本部長をあくまでも通してやっていくという体制を私は想定をいたしております。
  27. 生方幸夫

    生方委員 今まで本部長が特に事件を起こしたりなんかという問題がなかった場合は今の体制でいいと思うのですけれども神奈川県警新潟県警を含めて、本部長に対する信頼が今損なわれているわけですから、本部長にすべてを任せて、本部長が真っ当な、真っ当なというか、あの方たちも真っ当じゃないとは必ずしも言いませんけれども、適正な判断を下してくれるという前提に立っているわけですけれども、本部長が今回のように犯罪を、神奈川県警の場合は犯罪ですね、犯罪を犯すというようなことに対する監察の体制というのはやはり見直さないと、これはどうにもならないのじゃないですか。いかがでございますか。
  28. 保利耕輔

    保利国務大臣 御指摘のとおり、本部長がまずいことをするという前提に立っていない今の警察制度でありますし、先ほど申し上げましたとおり、本部長は最高、最終の責任者であるというふうに県警制度の中では考えております。  その本部長をただすべきはやはり公安委員会であろう、公安委員会が常に本部長と緊密な接触をして、問題はないかということを常に注意喚起し、本部長も、ちょっとそうしたささいな問題であってもやはり公安委員会にきちんと説明すべきというような観点から、今度の警察法改正の中で、公安委員会の権限を強化するという形のものを提案しようと思っておるわけであります。  そういう形で、本部長みずからを公安委員会との関係において律していこうという考え方を持っております。
  29. 生方幸夫

    生方委員 人間だれでも誤りを犯すものでございますので、今の体制が必ずしも適正だというふうに私も思いませんので、ぜひとも変えていただきたいというふうに思います。  それからもう一点、記者会見ですね。これは、みんなもちろん、何か事件があった場合は記者会見をして、記者はそれを聞いて、それから独自に取材をすることもございますが、大体は時間がないのでそのまま発表するというのが普通の事例でございますよね。その記者会見で、今回の場合でも前回の場合でも、うそではないかということが言われているわけですね。記者会見で事実と違う発表をしたことについては、どのようにチェックをしたらよろしいのでしょうか。  今回の場合でしたら、たまたまマスコミも非常に注目している事案でございますから周辺取材をしますので、ここに間違いがあったということがわかったからよかったですけれども、小さい事案ですと、私も昔新聞記者をやっておりましたから、もう発表だけで記事を書いてしまうわけですね。これはもう事実であるという前提に基づいて記事を書くわけです。  ところが、今度のように非常に重大な事件について警察が恣意的に、例えば第一発見者は伏せた方がいいなんて、こんなのは警察の論理であって、我々はそんなことは何にも思っていないのですけれども、そういう論理で勝手に記者発表の内容まで捏造されてしまった場合、チェックしようがないのです。これはこのままほっておきますと、我々は、やはり本当だろうかと一々記者発表でも考えなければいかぬ。この辺はどういうふうに、チェックする体制というのはとれるというふうにお考えになりますでしょうか。
  30. 保利耕輔

    保利国務大臣 御指摘の点は非常に微妙な点であるわけでありますが、今回の新潟県警におきます虚偽の記者会見と思われるものについては、現在調査をしているということは長官からもお答えを申し上げたわけでありますが、まず、これが重大な事件に結びつく、あるいは重大な事柄に結びつくことであったのかどうかという本部長自身の認識、そして、下部から、下の方から恐らくメモでも渡したんだろうと思いますが、こういうことで第一発見者をかばいたいと思うがいいかということに対しての本部長自身の判断、そういった点について、これは誤りがなかったのかどうかということについては、国家公安委員会、先週開かれましたときに、私からも警察庁に対して厳しく物を言いました。私が就任してから一番きつい言い方をしたと思うのでありますが、本部長自身がそういう判断をしたということについては、事情をよく調べろ、そして、もし違法性があったり非常なふぐあいがあるという場合には厳正な処分をすべしということで、かなり強い話を出したわけであります。  今後どうするかということでありますが、やはり本部長自身が認識をまた改めて持っていただいて、正確な報道を期するように、発表をするようにということを心がけるように、部下がそういうことを言ってきても、それはちょっと待てよというぐらいの、少なくともチェックを入れるということを心がけるように、私からも警察庁を通じて督励をしていきたいと思っております。  今回の問題は、神奈川県の問題があった後のことでありますから私も大変責任を感じておりまして、そんなことではだめだということで、今後督励をしてまいりたいと思っております。
  31. 生方幸夫

    生方委員 警察は、我々が日常生活をしていく上に欠かせないものでございますし、そこに対する信頼性がなくなってしまうと、我々が安心して暮らせないということにもなるわけでございますから、ぜひとも警察信頼回復のために御努力をしていただきたいというふうに思います。  警察庁長官も、これだけ不祥事が相次いでいるわけでございますから、きっちりと調査をして、その結果こうであった、それに基づいてきっちりとした処分を出していただかないといけないと思うんですが、最後にその御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  32. 田中節夫

    田中政府参考人 今委員指摘のように、警察官によります不祥事案が続いております。これにつきましては、いろいろ問題、背景がございますけれども、その具体的な状況を十分に検証いたしまして、その反省を生かし、国民が解決を強く望む問題にはこれに敢然として臨み、一つ一つ事件を着実に解決していく、そして警察の責任を果たし、国民信頼にこたえることが何よりも肝要だと思っております。  また、一人一人の職員につきましては、警察官としての基本的なありよう、倫理観につきましてもさらに徹底をしてまいりたいというふうに考えております。その過程におきまして、この委員会でいただきましたいろいろな御指摘を踏まえまして、その信頼回復に努めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  33. 生方幸夫

    生方委員 犯罪というのは必ず犯罪者がいて、被害者がいるわけでございまして、京都事案でも、私も同じぐらいの年の子供がいたりしますので、親にしてみれば、どうしてその子が殺されなければいけなかったのかということは、犯人からやはりぜひとも聞かなければ心の整理がつかないと思うんですね。今さらもう言ってもしようがないことですけれども、それぐらい大事な仕事なんだということを自覚して、ぜひとも警察官仕事に励んでいただきたいということを指摘させていただきたいと思います。
  34. 保利耕輔

    保利国務大臣 委員指摘のとおりだと思います。  それで、やや言いわけがましくなりますけれども、先日も答弁をさせていただいた中で、犯罪が非常にふえてきている。それで、片方、警察官の人員をふやすことができない、そういうしにくい情勢にある。やはり、日本の経済だとか、いろいろな治安関係というのを考えてみると、これを、きちんと治安を維持していくということは日本の国家にとって非常に大事な問題である。日本に行ったら安心して仕事ができるという状態にしなけりゃならぬということを考えますと、単にリストラとか行政改革という観点からだけではなくて、治安維持という観点から、警察官の質の向上を図ることはもちろんでありますけれども、同時に、ある程度の数、特にサイバーテロのような問題が起こってきますと、これまた社会的にも非常に大きな問題になろうかと思いますから、そういった意味で、数についても御配慮をいただくようにお願い申し上げたいという気持ちを私は強く持っております。
  35. 生方幸夫

    生方委員 数もさることながら、やはり質ですね。質を高めるような努力をしていただきたいと思います。  次に移ります。  吉野川の河口堰で住民投票が行われました。その結果等についてはもう前回質問させていただきましたので、主に住民投票制度ということについてお伺いさせていただきたいと思います。  私も、住民投票というのが世界各国でどのようになされているのかというのを調べてまいりました。そうしますと、アメリカは、もちろん州政府によって違うんですけれども、きっちりと住民投票そのものを州法あるいは法律で定めて、その結果についても法的な拘束力があるようになっている。ヨーロッパは、ドイツ型とフランス型とやや違うようでございますが、ドイツ型の方は、基本的には、その結果について法的拘束力を持たせるようになっておりますし、ドイツ型もフランス型も含めまして、一応法律で、あるいは憲法で住民投票というのを定めているように考えております。  日本を考えますと、憲法九十五条に、「地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」という、ここに住民の投票という言葉が一言出てくるだけで、これでも住民投票のことを規定したわけでも何でもないわけですね。つまり、法的には住民投票というのは何ら日本の場合は規定をされていない。したがって、各地方自治体が独自に住民投票というのを実施する。  今回の場合も、徳島市の市議会は、過半数に達しない限りこれを開票しないという決定をなされて、それで投票がされたわけです。幸いにして、今回の場合は五五%弱という投票率があったので開票されて、その結果というのが公表されたわけです。  私も、前回も申し上げましたが、徳島市に行って調べてまいりましたが、これに四千数百万円のお金が市側だけでかかっている。これは、住民側のこういうものをつくったりする費用を考えれば、大変な額のお金がかかっていて、万が一これが発表されなければ、何のためにこれだけのお金が使われたのかということになってしまうというようなことにもなりかねないというふうに思います。  私は、住民が今いろいろな思いを持つようになってきて、すべてを議員に託して、一票を投じた議員の判断で、全部私はあなたに任せますよというわけにはなかなかいかない時代になってきていると思うんですね、いろいろな事案がございますから。したがって、間接民主主義を補う手段としての直接民主主義というのも取り入れていくべきだというふうに考えておりますが、その住民投票についての自治大臣のお考え方をお伺いしたいと思います。
  36. 保利耕輔

    保利国務大臣 御指摘のように、欧米では憲法等にきちんと規定をしているという例がございます。その細かい点については私もまだ不勉強でありますけれども、そういう事例があるということはよく承知をしているわけであります。  現在、御承知のように、第二十六次の地方制度調査会というのがございまして、高原委員長のもとで種々、地方制度の問題について御協議をいただいております。その中に住民投票制度のあり方についての御議論もされていることは、委員承知のとおりであります。  それで、その中でのいろいろな論点といたしましては、今御指摘のような間接民主主義というのをどう考えるか、それと住民投票との整合性をどういうふうに持たせるか、そういった観点からの議論。それから、住民投票をやる場合の事項、つまり、住民投票に適する事項あるいは適さない事項、それはどういうものだろうかという具体的な事項の検討。さらに、住民投票を実施する場合に、ある地域に限定してやっていいのか、それとも、もう少し広範な地域でやるべきなのかという地域的な範囲を考える。それと、住民投票がきちんと理屈の立つものになるのかどうかという観点。それから、住民投票を行う場合に、そのテーマについて投票される方が十分な知識をお持ちになっているかどうか、そこを判断しながら、ただいろいろな風説等によって投票してしまうということではなく、正確な知識をお持ちの上で御投票をいただかなければならないのではないかというような観点。そういった観点を総合的に地方制度調査会の中で御論議をいただいておりまして、かなりの学者が入って今検討をいたしております。  私どもとしても、いろいろな観点があると思いますが、その地方制度調査会における学術的な議論というのをよく参考にさせていただいて今後勉強を重ねてまいりたい、このように思っております。
  37. 生方幸夫

    生方委員 重ねての質問で恐縮なんですけれども自治大臣自身は住民投票に対してどういうお考えを持っているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  38. 保利耕輔

    保利国務大臣 私自身は、日本の国家のあり方として、憲法前文の一番最初に間接民主主義の事項について書いてある事項がございます。それが日本の国の一つのあり方を規定しているものだなと思っております。  ただ、住民投票といえども、例えば町名変更のような、本当に住民にかかわるようなわかりやすい問題、それについて、その地域の住民がどういうふうにお考えかというようなことを住民投票にかけるということについては、これは意味があるだろうと思っておりますので、間接民主主義というのを強く念頭に置きながらも、そういった問題についてのある程度の弾力性といいますか、それは持っていた方がいい、こんなふうに考えております。
  39. 生方幸夫

    生方委員 今の御発言を聞いていますと、例えば吉野川河口堰のような問題について、住民投票を徳島市がやるということについては反対だというふうに解釈してよろしいんですか。
  40. 保利耕輔

    保利国務大臣 私は、徳島の市民の皆様方の御要請によって市議会において条例をおつくりになり、それによって投票をおやりになったわけでありますから、それについて否定するつもりは全くありません。  しかしながら、こういう多分に技術的な問題を含んでいる問題について、あの投票で、やり方でよかったかどうか、もう少しいろいろと幅広く検討する余地がなかったのかどうか。  知事は、投票の後も、やはりこの工事は進めていかなければならぬというふうにおっしゃっているわけでございますから、私の立場としては、知事がそうおっしゃっているということは支持をしてまいりたいと思っておりますし、今後、投票をやるときの一つの参考として今度の結果というのは見てまいりたい、こんなふうに考えております。
  41. 生方幸夫

    生方委員 前回の質問のときにも申し上げたのですけれども、技術的な問題がございますよね。当然、住民でございますから、もし川がはんらんをすれば自分たちの生命財産が脅かされるということでございますから、その住民の方たちも、やはり専門家の方たちにいろいろ調査を依頼したり、自分たちで調べたりということをしまして、実際にこれはお金がかかるわけですね。  今、自治大臣おっしゃいましたように、正確な知識を与えるためにどういう広報をしなければいけないかという場合、これは建設大臣お見えになっていますが、建設省はいっぱい、こんな大部な資料をつくって住民の方たちに御説明をした。それまでには至らないのですけれども、反対をしている方たちも、あるいは住民投票をしようという方たちも、やはり同じようにかなり大量の印刷物をつくって、これはみんな自分たちの自費でやっているわけですね。  したがって、その住民投票というようなことをやる場合、自治体側だけに予算をつけるのではなく、いろいろな意見があるのを聴取するためには、こちら側の、例えば広報費、何と言ったらいいのですか、そちら側の広報ということについても配慮をするという必要があると思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  42. 保利耕輔

    保利国務大臣 私は、先ほども御答弁申し上げましたが、例外を除いては間接民主主義を立てるべきだという考え方を持っておりますので、いわゆる吉野川の問題というのは議会の議決を経ていると私は理解をしておりますが、徳島県全体としての意思が決まっているというふうに考えておりまして、国側としては、そうした意思を表明してくださる皆様方には恐らく相当なPRもし、必要性もお話をし、また徳島県側でも、こういうものは必要だという認識の上に立って国との協力関係でこういう計画を進めたものだ、私はそう理解をしているのであります。  そこで、これをやった場合にはいろいろ問題があるということで、いわば市民の間からいろいろな問題が提起をされたということはよく承知をいたしておりますが、政府が行う、いわば事業者が行う、こういう意味なんですよというそれは、当然、事業者としては住民の方々に御説明を申し上げるというのは逆に義務ではなかろうかという感じがいたします。そうなりますと、そこに国費ないしは県費を使ってそういった問題についてお話をよく申し上げるということは必要なんではないかなと。  しかし、一方、問題があるよということについては、本来ならば議会を通じてそういった問題が提起をされ、これに対しての反対動議が出、そしてそれが可決されるというのが今の行政のあり方かな、こう思っておりますものですから、ただしかし、どうにもやむにやまれぬという気持ちでおやりになる、当面は、当面はと申していいのかどうかわかりませんが、やはりそれはボランティア的なやり方でやるのが本当ではなかろうか。仮に賛成派がやるといたしましても、これは政府、事業者ではなくて、住民の中の賛成派がやるといたしましても、そうした問題については、現在、費用を国が持つべきというような考え方は出しにくいのではないかな、そんな感じを持っております。
  43. 生方幸夫

    生方委員 今、法律で別に規定をされているわけではないですから、国が云々ということは言いづらいと思うんですが、今後仮に法的にきちんと整備されるようになったら、そういうこともぜひとも配慮をしていただきたいというふうにお願いを申し上げておきます。  建設大臣にお伺いしたいんですけれども、河川法が改正されて、地域住民、流域住民の意見を聞かなければ、聞くべきだというふうに今度変わりましたですよね。やはり川に対する考え方も、私も江戸川のすぐわきに住んでおりますので、川というものが非常に自然を豊かにするものであるということと同時に、一たんはんらんすればそれは非常な被害をもたらすものである。  前は、やはり被害をもたらすということに対する防備という面が非常に強かったと思うんですね。それに対して治水の予算もずっと積み上げられてきたわけですから、かなり安全度は今増してきていると思うんですね。ドイツなんかを見ると、一回こういう護岸工事をしちゃったものを壊してまた自然に戻そうというような動きもあるというふうにも聞いております。したがって、もちろん非常に難しい問題なんですが、自然を大事にしながら治水をするというのが非常に大事なポイントだと思うんです。  そういうことに関して、やはり私は、地域住民、流域住民の意見を聞くという手段の一つとして住民投票というのは有効な手段ではないかというふうに思うんですが、今度の徳島市に限っての住民投票についてはもう建設大臣の御意見はよく伺っておりますので、河川法の改正に伴って住民投票の位置づけというものを今後どのようにお考えになるかというお考えをお聞かせいただければと思います。
  44. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  河川法の改正がありまして、これ、委員長の許可をいただきたいと思いますが、従来のものは、工事実施基本計画を立てまして、河川審議会をやって、そして事業を実施する、もうこの部分は何となく建設省が独自でやっていたような気がしますが、今度改正がありました後のは、河川の整備基本方針というのを出しまして、それから河川審議会、それから中長期的な目標も含めまして河川整備計画の原案を提示して、それで具体的な計画を出して、学者、関係住民、それから関係知事、市町村、そして計画決定は建設省がやって、事業を実施するという、十六条の二の四項と言われますその改正が行われまして、「河川管理者は、前項に規定する場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。」ということに改正をしております。  私は、例えば、これも委員長の許可をいただきたいと思いますが、これが建設省の方で出しましたゴム式……(生方委員「吉野川については結構でございます」と呼ぶ)それが、いわゆる反対運動をされておられる方々のイメージというのは非常に、自然の方は鳥の目、それから……(生方委員「住民投票だけについてお伺いしたいのですが」と呼ぶ)はい。この可動堰が非常に暗い印象に、何かお城のような感じになっておりますので、それで、住民投票に関しては、正しい情報、物事というのは判断をいただくには正しい情報を流していただく必要がある。  特に、きのう神戸におりましたら、徳島の反対運動の方々が、今度は神戸の市長のリコール運動でともに勉強会を開いていらっしゃるというのをテレビで見まして、私も何かちょっと唖然といたしましたのでございますが、そういうことで、どうも住民投票の問題というのは、これは正しい情報を、こういういわゆる動かせないもの、私は、住民投票をどういうときにするんだというお話がありましたので、例えば、公園をどこへ持っていくかとか町名をどうするかというような、動かせるものは投票の対象になってもいいけれども、河川のように災害をもたらすもので動かせないものは、これは一にかかって技術的な問題、学問的な知識のある方の御判断にゆだねたい、かように考えております。
  45. 生方幸夫

    生方委員 私は今、吉野川のことについて論じているわけじゃなくて、住民投票そのものと新河川法のことについてお伺いしたわけで、とにかく、住民の考え方もいろいろ変わってきておる、その多様な考え方を反映させるときに公聴会という方法もあるでしょうし、それで十分に我々の意見が反映されないというふうに市民の方たち考えた場合は、やはり最終的な手段として、住民投票というのは多分最終的な手段としてとったと思いますので、その辺のことは十分に河川法の改正の精神にのっとって建設省もお考えいただきたいというふうに思います。  公共事業全般についてはもうちょっと後でお伺いしますので、一点だけ建設大臣に確認をしておきたいのですが、前回の春名委員質問に対して、例の五千万円の献金の問題でお伺いしたいのです。  五千万円が党友費として自民党に入ったというふうにこの間お答えになっておりましたけれども、私も、党友費として入った場合は四〇%程度はその紹介した議員のもとに戻るというふうに聞いておるのですけれども、この五千万円の場合もそういうことはあったのでございましょうか。
  46. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  この間も春名議員に御答弁申し上げましたが、故事来歴、いわゆる、九州へ行きまして、私が呼ばれて、党からの命令で講演をしに行った。その関係で、今度は、講演をしに行った側の支部から大阪の支部に協力をするようにということがあったんだと思います。  それで、私の、これは不祥事がございましたのですぐに首を切りましたが、原田という男でございますが、この人たちが党友を集めてもらったというところまでは私は聞いておったのですが、当時私、ちょうど入閣をしておりまして、全く大阪の事務所に関係をしておりませんでしたが、そのときに、その五千万円、これは預かり金でございます。これは銀行で、週刊誌が出るときにも、ちょっと待ってくださいと、十三年前の話でございますので、銀行から資料をとろうと思うと時間がかかります、こういうことでお願いをしましたのですが、そのときに一日で出ておるようでございまして、銀行から。  それで、私のところに政治資金として入ったものではございません。私が党の国民運動本部長をしておりましたので、党に協力をするということをやりましたのですが、ところが、その組織の人たちに抱え込まれてしまったといいますか、それが、私が秘書をやめさせた男が全く勝手にやった話でございまして、その一千万円がどうのこうのという話も、それは私には全くわかりません。多分、その組織の人たちと勝手なことをしたんじゃないかということで、私も検察庁の調書を読んでおりますので、唖然としております。  そういうことでございますので、私のところに入ったものではございません。
  47. 生方幸夫

    生方委員 もう一回確認したい。  五千万円のうち四〇%は、私は自民党員じゃないのでわかりませんが、普通は党友費だと紹介をした代議士のところへ戻るという制度があるというふうに聞いておりますが、この五千万円に関してはそういうことはないということでございますか。
  48. 中山正暉

    ○中山国務大臣 ですから、それが全く入っておりませんので、どうなったのか、大変私もその者に対して、首を切ったのはその理由でございますので、私のところへは全く入っておりません。還元金がどうなったのか、その還元金のことで連携をとったのかどうか、その辺も私には今となっては全く調べようもありません。
  49. 生方幸夫

    生方委員 これは私も話を聞いてきたのですけれども、この五千万円を出した方は、いろいろあったようでございますけれども、中山大臣の方から一千万円戻って、四千万円はそのままになっちゃっているということで、この方は党友費の立てかえだということで払って、そのままになっちゃったということになって、実際、自民党本部の方には党友費として五千万円入っているわけでございますから。この方はあくまでも立てかえだというふうに思っているわけですから、それで四千万円損しちゃったのであれば、道義的には自民党側がこの方に、大分前の話ですからもう時効といえば時効なんでしょうけれども、返す道義的な責任があるのじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。当時、中山建設大臣国民運動本部長でございましたので。
  50. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  実は、これは党友費でございますので、私は、一人一人から集めて納めていただいた分だと全く思っておりました。それを、杉さんとかいう方から東山さんとか西山さんとかいう、本名がどっちかわからないのですが、その人が土地の取引のことで何か恩義があったようでございまして、その人がまとめて払っているのが後でわかったものでございますから、私は純粋に党友を集めてもらったものだと思っておりますので、今から、そういう事態があった、それが私が入閣するたびにそういう要求が出てきて、貸したんだ、返せ。私は、いわゆる民事関係の訴訟でもいただいてもいいくらいだ。  全く、私は、党へ入ったお金を私がお借りしたものとして返済するなんという、そんな妙な話がこの世の中に存在していいのかと思っておりますから。私は借りたという意識は全くありませんし、踏み倒したなんという週刊誌の、これは全くの名誉毀損でございますので、先般申しましたように、これは、相手の方が週刊誌をもって、私どもも選挙が近いものですから、それをばらまいていらっしゃる、その材料に使われていると思っております。
  51. 生方幸夫

    生方委員 私は、建設大臣に返せと言っているのじゃなくて、党友費として自民党に入ったのですから、道義的な責任として自民党が返す責任があるんじゃないか。建設大臣に返せなんということを私は一言も言っているわけではなくて、その前であろうが何であろうが、どういう経過があったのかは私も聞いた限りでございますからわかりませんが、とにかくこの方は、党友費として立てかえて、実際問題として今でも幾らか返ってこないという非常に不満を持っているわけでございます。自民党には五千万円入ったのは事実でございましょうから、その方にしてみれば、自分の意図せざるところで自民党に五千万円入っちゃったのだから、その残った分を返してほしいという気持ちがあると思うのですね。  そこで、道義的ですよ、道義的な責任、返す返さないは別として、おありになるかどうかというのを。自民党本部ですよ、党本部の方で。いかがですか。
  52. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  これは法律論になりますかもわかりませんが、善意の第三者という立場に党を置いたら、私は全く、党友費として個人的に先ほど申しましたように集めてもらったものだと思っております。それを納められた党の方は返済の責任も何もない。  私に対しても、おまえに金を貸したなどという御本人の声は一度も聞いたことがございません。ああいう、全然私の知らないところで借金のようなふうに装われるというのは、大変残念に思っております。その方が道義的に私は問題があるんじゃないかと思っております。
  53. 生方幸夫

    生方委員 これはこれ以上質問をいたしません。次の問題に移ります。  今度の予算のことについてお伺いしたいと思います。  我々は今度の予算で、従来型の公共事業のばらまきではないかというような批判をしておるわけですけれども、この間の議論をずっと聞いておりまして、公共事業そのものの中身も随分変わっているんだという御説明がございました。私も、その変わっている部分については一応承知をしておるつもりでございます。  しかし、省庁別の比率というのを見る限りにおいては、いろいろな項目は別にあるのでしょうけれども、比率を見る限りにおいては大きな変化がないことも事実でございます。公共投資のうちの九〇%以上が建設、農林、運輸の三省で占められているというのもずっと変わってはおりません。  特に象徴的だというふうに思うのが、農業農村整備費だというふうに私は思います。ことしも公共事業のうち一一・七%がこの農業農村整備費というものに充てられております。  私も調べたのですけれども、農業が日本の経済の中に占める割合というのは、もちろん人数もそれから生産高も含めて年々小さくなってきているわけでございますね。四半世紀前の一九七五年の例をとりますと、GDPに占める農業の割合というのは五%を超えておったわけですけれども、現在は一・七%にまで低下している。この一九七五年に、では農業農村整備費というのが幾ら出されていたか。これはGDPの五%を超えていたときですね、幾ら出されていたのかというと、一二・三%だったわけです。ところが、今実際に一・七%まで低下してきているときにも、相変わらず一一・七%がこの農業農村整備費というものに充てられているわけです。  本格的に公共事業を見直すというのであれば、この一一・七%という数字が五%ぐらいまでに減って、国民はやっと中身が変わったんだなというふうに思うと思うのですが、大蔵大臣いかがでございましょうか。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今国会で当委員会の御審議が始まりましてから、公共事業につきまして、従来、旧態依然たるものがあるという国会の御批判を私ども真剣に昨年あたりから現実に補正予算、本予算編成で受けとめておりまして、その点につきましては生方委員がお認めいただいておるようでございますので、なお今後ともいろいろ御示唆をいただいて、さらにその方向を進めてまいりたいと考えております。  今の農業の話というのは、統計的には恐らく今おっしゃった数字が間違っていないだろうと思います。これはある意味で、経済効率だけでなかなか整理していけないいろいろな問題がございます。  我が国の経済が戦後、殊に所得倍増計画以来かなりこういう形で変わってまいった中で、農業がどうなるか、農家がどうなるかというのは絶えず難しい問題でございました。その問題は今日もございますし、また、ほかの観点からいいますと、世界的な食糧の過不足の問題あるいは国の環境の問題、あるいはまた、かつては国民の中の国民精神の問題としても取り上げられたことがございますが、そういういろいろなことに関係いたしますから、必ずしも経済効率的にそれが行われていないという御批判は、私は決して的を外れているとは思いませんけれども、しかし、農水省においてもそのことは十分にお考えであって、新しい農業・農村・食料のあり方というようなことについて数年前から基本的な方針を立てられて、私どもそういう方向で予算編成をいたしておりますので、御批判の点は今後とも十分気をつけながら予算編成をやってまいりたいと思います。
  55. 生方幸夫

    生方委員 食糧の自給の問題とか環境の問題ということを考えれば、農業の重要性というのは非常に高いことは私もよく認識をしております。  しかし、実際、聞くところによると、農道を非常に立派に整備したり、農道空港というものをつくって、実際に使用されるのが年に二回だとか三回だとかというのを実際見ておりますと、今大蔵大臣がおっしゃることはわかるのですけれども、でも、こんなむだもあるのじゃないかというのも事実なわけですね。  農道の中に、私、これは自分で見たわけじゃなくて聞いた話なんですけれども、色を塗ってみたり、そんなことまで本当にする必要があるのかと。だから、やはりむだなところは切るという、自然を守ったり、食糧の自給という観点から、では、これだけの予算がこれにはつきますよという御説明であればわかるのですけれども、残念ながら、今大蔵大臣がおっしゃったような形でこれが使われているとはやはり思えないのですね。  農水省の予算としてもう必ず一一%から一二%の予算がとれるんだ、これを一たん削っちゃうと次からとれなくなると困るからというので、農水大臣としてみれば、あくまでもその予算は抱えておかなきゃいけないという意識が働いちゃえば、これはどこで削ろうといったって、それは大臣になった方は、自分たちの前ずっと大臣が築き上げてきたのが、自分の大臣の代になっちゃって半分に減らされた、これを自分の手柄だと思わないで恥だと思うようだと、やはりなかなか構造の改善というのが進まないと思うのですけれども、重ねての御質問ですが、いかがでございましょうか。
  56. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員指摘のところもございますけれども、もう少し細かく見ますと、今のお話は、農村、農業予算というものの全体でございまして、委員指摘のとおり、七五年には一二・三%だったものですが、九〇年には一四・一三%に上昇しております。これは、一つの産業を整理していくときに、やはり国が援助しなきゃいかぬことがたくさんございまして、そういう意味で、ウルグアイ・ラウンドその他の関係で一時ふえたのです。それで、二〇〇〇年度に一一・六八%に減少いたしまして、九〇年に比べて八三%まで減らしております。  その内容は、大蔵大臣申されたように、自然保護であるとかそういうことに傾斜しておりまして、農村の生活条件の改善等にかなり加わっておりまして、必ずしも農業生産に、農業という産業にそれだけ投入されているわけじゃない。この辺はかなり転換しております。  しかしながら、個々の事業を見ますと、委員の御指摘のような、むだな事業、あるいは過去に計画したままで今は経済性のない事業をやっているというのもございましょうから、なお厳格に執行していくように努めたいとは思っております。
  57. 生方幸夫

    生方委員 経済企画庁長官にお伺いしたいのですけれども、公共投資の経済効果というのが年々下がってきているわけでございますね。この原因についてはどのようにお考えになっておりますか。
  58. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 二つの面がございまして、一つは、実際に工事をしたものの波及効果、これが高度成長のときには二倍以上の波及効果がございましたが、だんだん低下してまいりまして、いわゆる乗数効果というのが下がって、今は一・三六と言っておりますが、恐らくそれを新しいモデルでは割っていると思います。  それからもう一つは、道路ができたら、すぐにその横にビルが建ち、商店が建ち、住宅ができたというのが、最近の人口の低迷、移動が少なくなったこと、そういったことから生まれなくなった、この二つの条件があると思います。  しかしながら、現在のところ、減税その他に比べまして公共事業の波及効果は相対的に高いという位置を依然として保っておることも事実でございます。
  59. 生方幸夫

    生方委員 私は、はっきり言って、むだな公共事業が多いから経済波及効果が下がってきたんだというふうに思います。  公共事業全体について政府も事業評価というのをやるようになった。これは、地方自治体も北海道とか宮城県とか、いろいろやっているようでございますけれども、そのこと自体は私、評価をいたします。  しかし、九八年度の再評価実施状況というのを見ましたですけれども、全対象事業五千七百二十四件のうち、中止になったのが十件、休止になったのが二十六件、全体のやはり一%にも満たないわけでございますね。つまり、九九%以上の公共事業がほとんど問題がないというふうにされたわけでございます。今年度予算で見ても、中止、休止になる事業は二十三事業、削減される事業費はたったの二百四十五億円にすぎないわけでございます。これではとても再評価にならないと思うんですけれども建設大臣いかがでございましょうか。
  60. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  公共事業、いろいろ平成十年からいわゆる見直しをする評価制度というのを入れておりまして、新規事業採択時評価及び再評価に取り組みまして、すべての公共事業を対象に、新規事業採択時における費用対効果分析を含む総合的な評価、それから事業採択後の一定期間を経た事業の再評価、これは全部公表をいたしております。  これにより事業の効率性とか透明性の一層の向上が図られたものと考えておりますけれども、事後評価については、今年度より一部事業を対象に試行に着手しているところでございまして、その試行結果を踏まえて本格的に導入をいたしたい。  特に、事後評価は、事業によっては大変長いものがございます。例えばダムなんというのは二十年、三十年というのがございますし、事業完了後の事業の効果、それから環境影響等の確認を行いまして、必要に応じて改善措置を講ずる、こんなふうに実態に即したものにいたしたい、かように考えております。
  61. 生方幸夫

    生方委員 経済効果がなかなか出てこないというのは、道路なんかの建設を、これは前にも指摘をしたんですけれども、やはり短期間にやらないから、十年もかかっちゃっていたら、道路ができるよというのを予測して何かやろうとしたって、十年後にはもう町がどうなっているのかというのはわからないわけでございますよね。限度もあると思うんですけれども、そういうものについてはやはり優先順位をつけて、早くやるものは早くやるというふうな判断をしなきゃいけないというふうに思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  62. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  先般も石原慎太郎知事が来られて、例えば東京の圏央道に対して、これは昭和四十五年、根本龍太郎建設大臣以来凍結をされておるので何とかしてほしいということでございましたので、私は現場へも行きました。反対の関係の方、例えば九百人が賛成をしていまして、あと十四件の方のうちの一件に六十八人の一坪地主が入っていまして、私の部屋でお話ししてから現場へ入りますまでに二十日間ぐらいしか期間がありませんでしたが、インターネットを使って一坪地主が百十六名に一遍にふえておりました。  ですから、会計検査院の院長がごあいさつに来られましたので、会計検査院が建設省にもっと事業を推進しろというのは、反対をしている方々にも出していただいたらいかがでございましょうかという新提案をいたしておきました。
  63. 生方幸夫

    生方委員 道路に関して、私はやはり、渋滞の問題等考えると、道路をつくることによる自然破壊もあるでしょうけれども、それが渋滞することによる自然破壊もあるのが事実でございますので、もちろん全部が全部ぎゃっとやれというわけではないんですが、なるたけ、私も都市近郊に住んでいる人間としては思いますので。  大蔵大臣にもう一点お伺いしたいんですが、ことしも公共事業の予備費として五千億円が計上されております。これは昨年も計上されました。予備費というのは、財政法二十四条で「予見し難い予算の不足に充てるため、」というふうに規定をしているわけでございますね。昨年の例で見ますと、実際にその五千億円が何に使われたのかというと、整備新幹線や関西国際空港の整備費、農村農業対策費など、およそ予見しがたい予算の不足というようなものではないと思うわけですね。いかがでございましょうか。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 予見しがたいという意味は、事項そのものとして予見しがたい場合もございますし、工事をやっていって、必要以上のコストあるいは必要以上の事業量が必要になる場合も予見しがたい一つケースでございますので、その両方のいずれかということで昨年あの五千億円の配分をいたしました。
  65. 生方幸夫

    生方委員 ことしも五千億円が予備費として計上されているわけですけれども、ことしも同じようなところにこの予算を配分するというおつもりなんでございますか。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ことし、平成十二年度に五千億円を計上いたしましたのは、少なくとも平成十二年度の公共事業費がトータルとして、非常に景気刺激的であった前年度を下回らないようにしたいということから計上いたしておりまして、したがいまして、景気の動向いかんによりまして、この予備費を使わせていただくか、あるいは全体として全部を使わずに済むのか、その点は一切、今一つ考えを十分には持っておりません。一つの予断を持っておりません。経済の動向によりまして決定すべきものだと思っております。
  67. 生方幸夫

    生方委員 それでは、本来の予備費の性格どおり、使わないということもあり得るというふうに解釈してよろしいのですね。
  68. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのようにお考えくださいまして結構でございます。
  69. 生方幸夫

    生方委員 時間が余りなくなってきたので、次の問題に移りたいと思います。  財政改革についてお伺いしたいと思います。  今年度末で、これは国と地方を合わせて六百四十五兆円の公債残高があるというふうに聞いております。これは、私なんかもよく街頭で話をするときに、家計になぞらえて話をするんですけれども、こういうことでよろしいのかどうかというのをちょっとお伺いしたいのです。  年収五百万円弱の方が毎年八百五十万円のお金を使っている、かつ借金が六千四百万円あるという状態である。この年収が年々伸びる見通しというのがあればいいのですけれども、残念ながらそれも大してなさそうである。しかも、この世帯はお年寄りを抱えていて、これから先さらに出費がかさむという状態である。これ、万が一返せるとすれば、この世帯が非常な資産家であるということ以外に、五百万円しか年収がないのに六千四百万円の借金はなかなか返せないと思うんですけれども、実際、国の資産というのは幾らございますんでしょうか。
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう意味では国の資産というものを定義されたことはございませんで、国富というような意味でならばございますけれども。  ただ、今のお話の中で、そういう例えをお引きになること、それ自身に私は十分意味はあると思いますけれども、日本の経済というのを見ておりますと、申し上げるまでもないことでございますけれども、戦後と今とは全くスケールも違っておりますし、恐らくまた今後もそうでなければならないだろうと考えますので、そこを企業会計でない家計と一緒に比喩をつくろうとしますと、やはりそこにいろいろ問題があるのではないか。  つまり、日本経済が大きくなりますと、いわゆるGDPも大きくなります。そのGDPの中からどれだけの負債をしょっていくことが適当であるか、あるいは好ましいかというようなことは、普通の意味での消費の主体である家計と一緒に比べることに問題があるのではないかというふうに思います。
  71. 生方幸夫

    生方委員 実際問題としては多分これでいいのじゃないか。だから、やはり国民皆さん方は、非常な大きな借金を我々は背負っているんだ、しかも、これからは少子高齢化社会になって収入がそれほどふえる当てもないということが個人消費を抑えることにもつながっていって、政府がいろいろな景気対策を打っても、なかなか景気に火がつかないということになるんだと思うのです。  前回の臨時国会のときも大蔵大臣にお伺いしたのですけれども、やはり国民の多くは、ざっくりこういうふうに解釈をすると、これは大変なことだ、だけれども、では、これはどうしたら解決ができるんですかというのは、大蔵大臣総理の言葉も、まず景気回復だ。景気が回復して歳入がふえるのを待つのがまず第一だというふうに考えたとしても、仮にこれ、年収五百万円の人が年収一千万に倍になったとしても、まあこれから倍になるなどということはそんな短期に考えられないのですけれども、倍になったとしても、六千四百万円の借金はさらにその間にもふえていくわけでございますから、そう簡単に返せるものでないというのは、国民の多くは実感としてわかっていると思うんです。  今大蔵大臣がおっしゃったようなことも私もわかりますけれども国民皆さん方に、さはさりながらこうなんだよという中長期的な安心感を与えるような政策というのを、こういう政策を今後実施しますでも結構ですから、打ち出すことがやはり国民皆さん方に対する私は責任だと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろな観点がございますけれども国民のお立場からいえば、国の債務を背負っておる結果として国民負担がふえるということが一番国民としての御関心だろうと思います。したがいまして、国が非常な大きな債務を背負った結果、何かの意味での毎年の国民負担が必要以上にふえてはならないということは、政府として守らなければならない一つの大切な原則だと思っております。  それからまた、日本経済が成長していきますと、その結果として債務がふえるということはあり得ることであって、私どもとしては、その国債が国内的にも国際的にも十分な信用力を持つということが大事でありますし、その裏側は実は、一人一人の国民にとってはそれはまた金融資産を持っているということでもございますから、それが信用を持っている限り、そして国民負担が必要以上ふえない限り、国民のお立場からいえば非常に憂慮をされるという問題ではないのであろう。  それから、私どもの立場からいいますと、もう一つ申し上げなければなりませんのは、そうやって国の債務がふえる結果、国債費が非常に増大するといたしますと、一〇〇の歳入がございましても、国債費が例えば二〇あれば八〇しか金が使えないという問題に展開いたしますので、そこは、実は私ども自身にとっての非常に警戒しなければならない一つの制約であるということは心得ております。  ただいまの日本の現状を御心配いただいておりますことは、私どもも同じように考えておりますが、一番大切に考えておりますことは、国債費がこれ以上どんどんふえていって、毎年の国債収入と国債費とが逆になっていった場合には、これは非常にやはり憂慮すべき状況でございますし、また、そういう危険はなしといたしませんので、そこでやはり財政改革というものをどうしても考えなければならない。そういう点では、生方委員のおっしゃることと私ども、憂いを同じくしている点が幾つかございます。
  73. 生方幸夫

    生方委員 時間がないので話を先に急ぎたいと思うのですけれども、やはり歳出をカットするということも非常に大事なことだと思います。来年の一月から省庁の再編がなされますよね。一府二十二省から一府十二省に変わっていくわけですが、これは非常に歳出構造そのものを見直すチャンスだと私は思うのですね。  これまでやはり、さっきも申し上げましたように、いろいろな省があれば、その省の大臣は、前の省の方からなかなかそれをカットするというようなことはできなかったわけで、今度は省も変わるわけでございますから、歳出構造を変える非常なチャンスだと思うのです。  歳出全般を見直すような方向、これは前も一度申し上げたことがあるのですけれども、アメリカの企業がよみがえった裏にはリエンジニアリングという手法があって、とにかくゼロからすべてを見直そうじゃないかということをやったことが企業の再生につながった。企業と国が必ずしも同じだというふうに私思いませんけれども、この一府二十二省を一府十二省に変えるという非常な大きな転換をするとき、歳出全体、予算の編成の仕方そのものも含めて、この際ですからゼロから見直すという必要があると思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、平成十二年度予算を編成いたしましたときに、十二月までの分と後の三カ月分、二つの編成をいたしておりますが、後の三カ月分につきましては、要求官庁というものが、実は想定しなければならないのです、存在していないものでございますから。一緒になる官庁の中から、どこが要求の主体となるかということを実際に決めていただきまして、やりとりをいたしました。  今度は本当にもう要求官庁が変わっていくわけでございますから、そういう場合にはまず要求官庁の側において、内部の問題としてゼロベースから物をお考えにならざるを得ないだろう。各省今まで幾つかになっておりましたのを一つにしてしまうわけですから、そういう機会である、我々としてもまた、そういうチャンスだと思っております。ただこれは、非常に、ちゃんとやりませんと、逆に全部足すとふえるということになりかねませんので、そこを一番大事に考えなければならないと思っております。  それからもう一つ、せっかくお話しなので申し上げたいと思いますのは、やはり年金であるとか介護であるとか医療であるとかいう、そういう社会保障についての、これから何年間かの国民負担とそれから給付との関係が全部合わせましてどういうことになるかということをやはり国民的に決めていただきませんと、これが一番今後の歳出の増加の要因になりやすい、これはもう御案内のとおりでございますが、これが一番大きな項目になろうかと思います。
  75. 生方幸夫

    生方委員 堺屋長官にお伺いしたいんですけれども、私も、今の組織を変えていかなければいけない。アメリカも社会が、長官は知価社会というふうにお呼びになるかもしれませんが、私は情報社会というふうに考えておるんですけれども、移っていくに従って企業の組織そのものが非常に大きく変化をしているわけでございますよね。  日本の企業は、御承知のように縦割りのピラミッド型組織であって、官庁もまさにそれに基づいた縦割りのピラミッド型組織である。これから情報社会に移行してくれば、知価社会でもいいんですけれども、言葉は何でもいいんですけれども、移行してくれば組織そのものも変えていかなければいけないと思うんですね。  今、省庁再編が行われるときに、やはり組織そのものも、業務もそうですけれども組織も見直していかなければいけないというふうに思うんですが、堺屋長官がお考えになるこれからの官庁の組織というのはどういうものでなければいけないというのか、お考えがございましたらお伺いしたいんですが。
  76. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員再三申していただいておりますように、日本の組織、官庁組織もかなり硬直化しております。そのことが、予算の編成に当たりましても、各省それぞれの持ち分を変えにくいことと関係があると思います。  今度新しくなります組織の中でやはり重要なのは、総理大臣を中心とした総合調整機能、これが十分機能いたしまして、各省の中で最も必要なところ、そのときそのときに重要な部分に機能的に配分できる、こういう組織が必要だと思います。  その意味で、このたびの改革の中で内閣府ができまして、そこに総理大臣を長とした経済財政諮問会議というのが置かれます。ここで財政の問題も、経済財政諮問会議でございますから、閣僚と政府機関の長と民間の委員を含めまして、第三者の目も含めて総合調整していく、この機能がきちんと働いて、そのときそのときの総理のリーダーシップが発揮され、そういう硬直的な組織を乗り越えられるような機能を持たすことが大変重要なことだと考えております。
  77. 生方幸夫

    生方委員 時間がなくなっちゃったので、もう一点だけお伺いしたいんですが、ここに、平成十一年度国民生活選好度調査というのがございまして、経企庁が去年の六月に実施したアンケートでございます。これを見ますと、この中に、十五歳以上の国民のうち、暮らし向きはよい方向に向かっているという人が、たったの二〇・六%しかいないわけですね。生活全般についての満足度について聞いてみた項目についても、満足しているまたはやや満足しているの合計が四四・二%で、これも過去最低である。それから、約五〇%の人が失業に不安を感じているという結果が出ております。これが昨年の六月に実施したアンケートでございます。  その後の七—九は前年比マイナスでございました。十—十二も恐らくマイナスだろうということが言われております、一—三はわかりませんけれども。そうしますと、この六月にアンケートしたときよりもさらに国民の生活実感としては悪くなっていると思うんですね。経企庁の発表はよくなっている。この間の長官も、萩の花が咲くころには云々というようなことを言う。やはりそこの違いですね。  これは、二極分化しているのは私もよく承知をしておりますけれども、余りに国民の生活実感と離れた景気見通しというのをお話しになることは、国民はやはり神経を逆なでされているようなものだと思うんですよ。国民は、ここの時点でも悪かったのにさらにその後はマイナス、マイナスですから、これはもっと悪くなっていると思うんですよね。いかがでございますか。
  78. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおり、昨年の五月末から六月初めにかけて行いました国民意識調査では、過去にないほど厳しい結果が出ております。現在の満足、やや満足を入れて四四・二%。それに対して、満足とは言えない、あるいはどちらかといえば不満であるという人が二四・一%。これは、この調査を始めました七八年からでは最低でございます。  ちなみに言いますと、一番よかったのが八四年、その次が九〇年でございまして、やはり景気のいいときはこの調査はよく出ているということが言えると思います。その前の九六年、これは四・四%成長した年なのでございますけれども、そのときに比べますとかなり悪化しております。  さらに、問題なのは、これからどっちへいくか。よくなると思うか、悪くなると思うかという調査でございますが、これで見ますと、よくなるという人が二〇・六%、悪くなるという人が二三・三%で、悪くなる方が若干多いというような結果になっております。その中で、特に多いのは四十代、五十代の女性なのですね。だから、この方々にやはり不安を与えているのは、政府といたしましても、よほど考えるべきことだと思っております。  先ほど申されました景気動向は、非常に短期的な問題でございまして、三年刻みのこの調査とは必ずしも連動しないと思いますけれども、我々といたしましても、現在の景気動向は、やや緩やかに改善しているけれども非常に厳しい状況を脱していない。そういう意味で、なおこの景気を支えていくこともしなければいけないし、構造改善も用心深く急がなければいけない、こう考えている次第でございます。
  79. 生方幸夫

    生方委員 余り国民の生活実感と離れた見通しを出されると、国民の政策全体に対する信頼性の問題があると思いますので、私は、やはり国民の生活実感にできるだけ近い見通しを語っていただくようにお願いを申し上げます。  以上で終わります。
  80. 島村宜伸

    島村委員長 これにて生方君の質疑は終了いたしました。  次に、原口一博君。
  81. 原口一博

    ○原口委員 民主党の原口一博でございます。  きょうは以下六点にわたり、予算並びに基本的な政策課題についてお尋ねをしたいと思います。  まず、大蔵大臣にお尋ねを申し上げます。  いよいよ現行憲法及び憲法調査会で始まった憲法論議に対して、私たち政治家の姿勢が問われています。そこで大蔵大臣、長い間政権の中枢におられ、そしてこの国を引っ張ってこられたその立場で、現行の憲法に対して、そしてこの始まった憲法調査会についてどのような御所見をお持ちか、まずお尋ねを申し上げます。
  82. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 所管のことではございませんけれども、それを御承知の上でお尋ねであると思いますので、憲法調査会ができまして現行の憲法についての諸種の調査審議をなさるということは、私は基本的に賛成でございます。  次に申し上げたいことは、戦前から生きてまいりました、また軍隊にも参りました人間として申しますことは、日本は自衛隊を外国に派遣するようなことがあってはならないということは、今日まで続けて考えてまいりました。自衛のために何をしてもいいということは、もちろん当然のことでございます。しかしながら、そうではあっても、自衛隊を外国に派遣するということは、言い直させていただきます、日本が外国で武力行使をするということは、私はどういう理由であれ、決して国のためにいいことではない、国外で、外国で武力行使をするということは、決して日本のためにならないということは、いまだにその考えは変えておりません。  ただ、最後に申し述べますことは、そういうふうに今まで考えてまいっておりますけれども、新しいジェネレーションが誕生されて、日本の将来についてまた別の考えを持ち、別の決断をされることは、それはあり得ることでございますけれども、それは恐らく自分がもうこの世の中にいないときのことであろう、それについては私は何も申すことができませんので、ただ、私が聞かれれば、日本は外国で武力行使をすることがあってはならないということは、私はやはり大切なことだと思っています。
  83. 原口一博

    ○原口委員 ちょうど大蔵大臣とは四十違います。倍の年齢差があるわけでございますが、今の率直な御感想、私は、みずからの国の憲法をみずからの言葉で語る、このことは大変大事なことだというふうに思います。しかし、今大蔵大臣がお話しになりましたように、そこにも一つの、一定ののりがある、ここから先には進んではいけない、そのことを自重しながら憲法論議をしていかなければいかぬというふうに思います。  また、私は、九十九条、まずそこの部分をやるべきだというふうに思います。九十九条は憲法の尊重擁護義務でございます。幾らすばらしい憲法をまた別につくったとしても、それが守られなければ、それはまじめな議論とは言えない、国の基本法とは言えないというふうに思います。  御自身の生のあるうちは、武力行使を日本が外国でするということは、どういう理由であれ、国のためにいいことではないということでございますが、今大変な財政赤字でございます。この財政赤字を解消するまでは努力が必要です。ぜひ元気でいていただきたい、このことを申し上げます。  私は、続いてPKOについて議論を申し上げます。  PKOの、今ゴラン高原に展開をしている部隊、七次にわたり大変な御努力をされているわけでございますが、これについての評価、それからPKFの凍結解除についての基本的な見解を、官房長官、そして、きょうはまだ外務大臣がアメリカから帰ってこられている途中でございます、そういう意味で、外務統括政務次官に、同じ質問をお二人にいたします。
  84. 青木幹雄

    青木国務大臣 お答えをいたします。  我が国は今日、国際社会の中で重要な地位を占める国になっておることは、議員も御承知のとおりであります。これに伴い国際社会に対する責任もまた増大いたしております。このような地位と責任に見合った貢献を行うということは、国際社会の一員として私は当然の責務である、そういうふうに考えております。  また、PKF本体の業務の凍結解除につきましては、目下、与党三党・会派の中で行われております凍結解除に向けた真摯な議論がさらに積極的に進むことを強くお願いを申し上げますとともに、その上で、政府といたしましても、我が国が国際社会に対して応分の貢献を行うことは当然であるとの認識のもとにしっかりとした対応を行っていきたい、そのように考えております。
  85. 東祥三

    ○東政務次官 お答えさせていただきます。  委員指摘になりましたとおり、今外務大臣がアメリカに出張しておりますので、かわって答弁させていただきたいと思います。  御案内のとおり、PKO活動というのは、一九四八年以来五十年を超える形で、国際社会全体が平和と安全のために、ある意味で世界全体の知恵を結集して、国際社会から紛争をなくそう、そしてまた紛争があったところでも、それに対して今後平和を回復し、そしてまた復興のために全知恵を結集して活動している問題だというふうに思います。  その上で、今まで約五十三のPKO活動があるわけでございますが、現在日本が、いわゆる国際平和協力法案をここで通していただいて、そして現在十七のPKO活動が世界で展開されているわけです。そのうちの一つが、御指摘になりましたいわゆるゴラン高原での活動に日本の部隊も派遣させていただいている。今日まで九つのいわゆるPKO法に基づく要員の派遣を行い、そして世界各国から御案内のとおり多くの、また大変高い評価を受けているものでございます。  現在は、PKO法に基づいて派遣しているのはゴラン高原だけでございますが、先ほど官房長官からお話ありましたとおり、日本が国際社会の平和と安全に対してより積極的に行っていく、また行っていくようにしていく上での一つの重要な示唆を投げかけてくれているのではないのかと積極的な形で評価させていただいているところでございます。  以上です。
  86. 原口一博

    ○原口委員 外務政務次官に重ねてお尋ねをしますが、現地に派遣されている部隊の皆さんは、先ほどの武器の使用のことで大変な御不便と、そしてその指揮官の任に当たる人たちも多くの苦痛を感じている。そして、実際に他の部隊が、その隣に展開している部隊が攻撃を受ける、そういったときも我が国のPKO部隊は一定の制約がある、その中で私たちに何をしろというのかという御指摘がございます。  政務次官は、昨年、一緒にあるところでディベートをさせていただきましたが、そのときには明確に言い切っておられます。政治家が判断していないんです、総理大臣の諮問機関にすぎない内閣法制局長官という官僚の言葉、これがすべての判断になっている、そうではない、憲法九条で禁止している武力行使には、国連の平和活動に参加することは含まれていないという明確な判断をしている。  私は、これは逆ですね、国連の平和活動をすることを憲法九条は禁じていません。そして、今のような状況でPKOを送ることによって我が同胞の命が大変厳しい状況になっている、このことを百も承知なんではないかというふうに思いますが、政務次官、現地のPKO部隊の状況をどのようにとらえておられるか、お尋ねを申し上げます。
  87. 東祥三

    ○東政務次官 私は今まで、政治家ですから、いろいろな場でいろいろな自分自身の信念、そして考え方、また国際社会の現状を踏まえた上で、この場でもいろいろと発言をさせていただきました。  ただし、昨年の十月の五日、第二次小渕内閣におきまして、政府の一員として外務総括政務次官を拝命いたしました。当然、小渕総理も外務大臣も、私が今まで言ってきている主張、意見、考え方、これはすべてわかってくれた上で登用してくださっているというふうに理解いたします。  そして、ここで、もちろん個人的にはいろいろな形でもって委員と議論させていただきたいと思いますが、今は政府の一員でございます。そして、行政をつかさどります。したがって、それぞれの具体的な活動に関しては当然その上で動いていかなければならない、したがって個人の発言は控えさせていただきたい、そのように思います。  その上で今のことに関して申し上げれば、ゴラン高原における活動についての御言及だと思いますけれども、個々の活動それ自体については、今私は掌握しておりませんので、詳細にわたっての答弁はできませんけれども、一般論として言えば、あくまでも私たちが国際平和協力法にのっとって要員を派遣するためには、いわゆるPKO五原則に基づいて派遣しているわけでございますから、当然、今御指摘なされたような、五原則に基づく任務を遂行していく上での何らかの阻害要因があるという形での報告は受けておりません。
  88. 原口一博

    ○原口委員 政府に入った途端に、やはりお立場はある、そこは私も認めます。しかし、現実に展開している人たちがどのような状況になっているか。もうこの法律ができてから随分な時間がたちました。そして、途中で見直しをするということもそのままになってきた。一部の改正はありました。しかし、そういうことがずっと行われてきて問題が先送りされてきたこと、しかし、現地で生身の人間が展開をしていること、これも事実なわけであります。  ある方の御報告によると、携帯する火器が限られているために、我が国のPKO部隊は、他国の同部隊からも、あるいは現地での行動も大変な制約を受けている、いつまで手足を縛るんですかと。そういう現状を政務次官は百も御承知ではないですか。そういったことに怒りを持って行動をされてきたんではないですか。  今、個々の事案を自分はつぶさに知らぬというふうにおっしゃいましたが、果たしてそうでしょうか。今政治が信頼をされていないのは、立場が変わった途端に全く今までとは逆のことを言う、あるいはメッセージが非常にあいまいになってしまう、こういうことだというふうに思います。  政務次官、御自身がおっしゃっていたことをここで全部おっしゃってくださいと言う気はありません、内閣の一員でいらっしゃいますから。しかし、現状のそご、これは、あるという報告を受けていないということだけでは私は納得ができないわけでございますが、もう一回御答弁をいただきたいと思います。
  89. 東祥三

    ○東政務次官 委員、大変恐縮なんでございますが、ポイントを私がちゃんと理解しているかどうかわからないんですが、国際平和協力法案におけるどこのポイントが問題なのかということについておっしゃってくださればより議論がしやすくなるんだろうと思うんですが、もし私が誤解がなければ、いわゆる国際平和協力隊員以外の国連ボランティア、あるいはNGO等の我が国国民、あるいは外国の要員の生命等を守るために武器を使用できるのかどうなのかということについて質問されているのかどうか。その辺のことをまず明確にしていただきたいというふうに思います。
  90. 原口一博

    ○原口委員 いや、ポイントは御自身からおっしゃったわけですから、今の武器の使用の点についても、あるいは全体でこれまでやってきたPKOの議論、私は、このスタートについても大きなそごがあったというふうに思っています。  例えば、我が国は世界最大の貿易国であり、世界から大変大きな利益を受けている、だから、我が国は経済面だけではなくて人的な貢献もするのが当たり前だ、こういう議論がされました。この前提についても、本当にそうであろうか。あるいは、当時PKO法ができたときに、世界のPKOはまた別のステージに移っていました。そのステージに移っているときに、私たちは、まだ古い冷戦時代の枠組みでこのPKO法を議論がされていた、そういう認識をしています。  私は、この前段で申しましたことについても、本当に正しいんだろうかというふうに思います。我が国はお金だけ出して血を流さない、こんな強迫観念からPKOが出ているとは私も思いませんが、それに対しては敢然と反論をすべきだというふうに思います。アメリカを除く自由主義社会の中で、我が国の同胞がどれだけ世界の経済協力あるいは海外協力という中で傷つき、命を失ってきたか、このことを政府はしっかり言うべきであるというふうに思います。  また今、東政務次官がくしくも御指摘をされた、他の部隊に対する武器の使用、このことについてももう明確にしなければいけない、そのように思っています。  二点、PKO法のそもそもの基本の姿勢、もう一点は、今御自身指摘をされた点についてどのようなお考えをお持ちなのか、重ねてお尋ねをします。
  91. 東祥三

    ○東政務次官 これまで、約九回のPKO活動に対して日本は要員を派遣してまいりました。  その実態を踏まえた上で申し上げれば、もちろん、議員は国際平和協力法案が通ったときはまだ議員でなかったかもわかりませんけれども、ここで徹底的な議論を展開して、初めてのことでございました。当然、そのときにいろいろな議論がここでなされ、それを踏まえた上で国際平和協力法案が通り、そして、それに基づいて今日まで九回にわたる活動を展開してきている。それを踏まえた上で、多くの世界各国からも多大な評価が寄せられてきて、そして、日本は日本としてそれまでの経験を踏まえた上で今日に至っているということなんだろうと思うんです。  そして、御指摘のいわゆるPKO五原則の問題については、今現在、三党間においても、また原口委員も種々の御意見を持っていると思いますけれども、そういう議論を踏まえた上で、どうするのかということを決断していかなければならないんだろうというふうに思います。  現在までのところ、もう既に、総理そしてまた官房長官、さらにまた外務大臣がこの場でいろいろな形で答弁をしてくださってきておりますけれども、基本的には当然皆様方のこの国会における議論を踏まえた上で、その問題について決断していかなけりゃいけない、そういうときが来るのかもしれませんし、政府としては、武器の使用を含むPKO五原則に関しては、現在までのところ変更するという考え方はない、そういうことだと私は思っております。
  92. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどお尋ねがございましたので、所管外のことでございますが、何かお役に立つかと思って、発言をさせていただきます。  PKOの法が成立いたしましてカンボジアで自衛隊が活躍をされました時代に、私は総理大臣でございました。そのときに考えましたことは、派遣された自衛隊の諸君が仮に火器を使用するということになった場合は、それは基本的に自衛のためであるから、したがって、指揮官が命令をして一斉に火器が使用されるというようなことはあってはならない、基本的には自衛の問題である、こういうふうに考えて、自衛隊諸君にも行動をしていただきました。  その後、幾つかPKF、そういう派遣の問題がございまして、この部分は私はやはり現実的でないという意見を持っております。  現実に派遣された自衛隊の諸君は、実際それでは行動ができないという経験をいたしましたし、したがって、その持っていく武器も機関銃一丁というような、その後に村山内閣のときにもございましたけれども、そういうふうに極端な制限をいたしました。そして、自衛隊の諸君は、絶えず隊長の命令に従えと教えられているのに、この場合には命令に従うのではない、君自身の自発的な意思でやれという教え方は、いかにも自衛隊の諸君に受け取りにくいことであったと思います。  したがって、この点については、私は、自衛隊の諸君がその任務を執行する上において自衛のためであるということ、これを外すわけにはまいりません。外すわけにはまいりませんが、あの部分は私はやはり改めた方がいいのじゃないかという感想を持っておりますことを御参考のために申し上げます。
  93. 原口一博

    ○原口委員 今、当時総理であった宮澤大蔵大臣から、やはり現実とのそごが出てきているというお話がございましたが、官房長官も同じ御意見ですか。
  94. 青木幹雄

    青木国務大臣 五原則を守るという政府の方針は、何ら変わりがありません。  しかし、法で定められたことと現地の状態と、いろいろ食い違ってくることが私は現場ではいろいろあろうと思います。そういうことも含めて、今後十分に検討していかなければいけない問題であろう、そういうふうに考えております。
  95. 原口一博

    ○原口委員 私は、国際社会が求めている日本の協力は何かということからやはりスタートをすべきだというふうに思います。外に出すものが自衛隊で自己完結をしている。そのPKOのあり方もあるでしょうが、そうでない、NGOやさまざまな緊急援助あるいは緊急救助、こういったものを中心とした外への貢献の仕方もあるだろうというふうに私は思います。隊員の命にかかわるようなことが、一部の政治の決断で、もしそごがあるとすれば、これを改めるにはばかることがあってはならないというふうに思います。  過去のPKOを見てみると、例えばカンボジアの状況を見ても、施設大隊がそこで展開をする、そういう必要があるであろうか。むしろここは民間のNGOやさまざまな人たちが有機的に協力をし合う、こういうことも考えなければいけないだろう。また、ルワンダについては、ここは医療援助を中心とした大変な貢献をしていただいたわけでありますが、三百六十八人の中で実際の医療従事者は七十人である、一日の診療に当たる人は五十人である、これは部隊の性質上当然だと思います。部隊という中には、やはり一線が倒れたときに後どうするか、つまりバッファーが設けられている。  私たちは限られた財源の中で有効な国際貢献をするために、ぜひこれはまた、与党三党で議論をしたからということではなくて、実際にこの自自公三党合意の中にも、きっちり政治・政策課題合意書としてうたわれておるわけでございます。「PKOのうちPKF本体業務の凍結を解除するための法的措置を早急に講ずる。PKO訓練センター等の誘致を図る。」これが自自公三党の政治・政策課題合意であります。  私は、これがこれで正しいということを言う気はありません。しかし、この国会ではない、全然別のところで合意がされて、そして短い審議時間でまた大変大事な問題が前に進む、こんなことがあってはならないし、特にこの海外援助については、強くここで私たち考え方を申し上げておかなければいけない。それは、一九九二年の六月の議論とまた別のステージでもう議論をしていかなければいけない。PKO第一世代ではなくて、第二世代、第三世代とPKOも変質をしてきています。その中で、多くのNGOを中心としたPKO、私たちはその射程の中で議論を進めていきたいというふうに思っています。  時間が限られていますので、文部大臣にお尋ねをします。  今、子供たちをめぐる環境はとても厳しい。二年前の予算委員会で、フランスの刑法の二百二十二条を引きました。子供たちがしっかり守られているのか、子供たちをはぐくむ環境は一体どうなっているのか。そして、子供をめぐる陰惨な事件は続発をしています。この原因は一体どこにあるのか、文部大臣の御所見をお尋ねいたします。
  96. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 子供たちをめぐるいろいろな陰惨な事件が起きていて、その背景といいますか、原因はどこにあるかというお尋ねでございますけれども、いろいろ考えられると思います。  一つは、いろいろな青少年の健全育成を阻害するような有害な情報あるいは玩具等がはんらんしているということも言えるのではないかと思います。  昨今のメディア、特にテレビ等の番組におきましては、性描写や暴力やあるいは刃物を使った殺傷シーンなどが随分多いわけでありまして、私ども大変心配をしているわけであります。放送業界においても自主的にこれらに精力的に取り組んでいただいておりますけれども、我々は、番組をつくる方はもとより、一人一人がこの問題を本当に真剣に考えなければならないと思っております。  これはテレビだけではありません、雑誌等についても言えることでありますが、雑誌であれば雑誌の編集者の皆さん方が、テレビであればテレビ番組をつくるディレクターの方々が、その番組を自分の子供に見せることができるか、この雑誌を家に持って帰って子供に見せられるだろうか、そういうような、本当に子供の行く末を考え仕事もやっていただきたいと思っております。  また、番組等のスポンサーになる企業の皆さん方も、実は先日、経済団体を訪問いたしたときに私お願いしたのですけれども、経済団体ではいろいろ教育の問題について、いい提言をしていただいております。いい提言をしていただいている一方で、俗悪な番組のスポンサーになっているというのはどういうことなんですか、本当に教育のことを団体として心配してくださっているのなら、そういうスポンサーになる際にもいろいろ配慮していただきたいということを強くお願いをしてきたところでございます。  また、PTAの皆さん方によるこういう俗悪番組等のモニタリングも行っておりまして、今後、そういうような番組については私どもは積極的に、提供者にも通知をすることはもちろんでありますが、そういう番組のスポンサーになっている企業等の名前も公表することもやむを得ないかなと。ここまで子供たち犯罪事件に巻き込まれ、あるいは犯罪を起こしているということを考えますと、私は、そこまで考えなければならないこともあるのではないか、そういうふうにも思っているところでございます。  そういう環境の問題がありますけれども、要は、家庭でお父さん、お母さん方が、子供さんが幼児期からいろいろしつけの面、あるいは人への思いやり、他人とのいろいろな相談事に乗って仲よくやる、お年寄りを大切にする等々、きっちりとしつけていくことが大事だ、私はそういうふうに思っております。
  97. 島村宜伸

    島村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  98. 島村宜伸

    島村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。原口一博君。
  99. 原口一博

    ○原口委員 午前中に引き続き、子供をめぐる環境について若干お話をさせていただきたいと思います。  文部大臣からお答えをいただきました。私は、メディアにだけその原因を求めるわけではありませんが、やはり自主的な規制。そして、アメリカでは、中学校を卒業するまでに一人の中学生が十万件の暴力シーン、一万件の殺人シーンを見ている。日本においてもほぼ同様の状況だと思います。また、サイバー化してしまっていて、その中でさまざまなゲームや多くのシミュレーションが子供の心に大きな影響を与えている。これはおっしゃったとおりだと思います。  一方で、午前中、生方委員の方からも質問をされましたが、核家族化している、そしてカプセルの中で親と子が子育てにもがいている。  資料を委員長のお許しをいただいて配付させていただきましたが、資料の六をごらんいただきたいと思います。これは、子どもの虐待防止ネットワーク、CAPNAという団体の本の中から抜粋をしてきたわけでございますが、育児疲れで心中を図る、あるいは、先日の新潟の事件のように、長い期間親と子だけで問題をカプセルの中でだれにも相談できずに苦しんでいる。  こういう事案に対して、私たちは真正面から取り組んでいかなければいけない。精神障害の問題というよりも、私は人格障害の問題が起こっているんだというふうに思います。自分を導く自分をつくれない、あるいは自分をコントロールする自分をつくれない、こういったことに政治が真正面から取り組まない限り、同様の事案は後を絶たないというふうに思います。  そこで、国家公安委員長に御質問させていただきます。  この新潟の監禁の事案についても、警察も親権や民事介入等の問題により十分対応できていない。社会の秩序を守る立場から、こうした問題に対応するために専門の警察官あるいは専門官を増員すべきではないか。さまざまな問題についてきめ細かなカウンセリングや、私は警察の権力が介入すべきだとは言っていません。しかし、そうではなくて、これは文部省や政府に対しても、さまざまなステージでもって、二人っきりで子育てに悩んでいる人たち、また人格の障害、ゆがみでもって多くの人の人権を侵害する、こういう事案に対して総合的な対処をすることが必要だ。  橋本内閣のときにも私は、橋本総理に対して、もうパートタイムで働く人が一千万人を超えました、そういう中で子供の目の前から親が消えている、この事実に対して目をつぶるべきではないということを申し上げました。  国家公安委員長として、人格障害の深刻化から引き起こされる問題についてどのように対応していくのか、御所見をお伺いいたします。
  100. 保利耕輔

    保利国務大臣 今御指摘新潟の件等については、先ほども御答弁申し上げておるところでありますが、非常に深刻に受けとめております。特に、委員が御指摘になっておられます人格障害等に基づく警察の関与ということでありますけれども、ここは非常に難しい問題を提起していると思うのであります。  それは、民事不介入と一言で言われておりますが、例えば、大変この場で申し上げにくいことでありますが、夫婦げんかをして片方から連絡があったから警察がすぐ飛んでいくというようなのはやり過ぎではないかという議論に必ずなるであろうと思います。そこのところを、どこのところに限界線を引いて警察が出ていくのかということになるのではないかと思いまして、この点は、警察庁と国家公安委員との間で一遍いろいろ議論をしてみたいと思っております。私自身がしたいと思っております。  さらに、民事不介入ということについては、ただいま申し上げましたとおり、いろいろ議論を深めてまいりたいと思っておりますが、同時に、例えば今例に引きました夫婦げんかのようなものについては、警察というところではなく、別のところでの何か相談をするという窓口をやはり設けていく必要が今の時世ではあるのかなという感じがいたしております。  ただ、少々時間をいただければ、これは非常に大きな教育問題を提起していると思いますし、子供さんの教育ということにスポットが当たっておりますが、親御さんの教育も必要である。私自身も小さいアパートで子供二人を育てた経験がありまして、家内が随分苦労をしておったのはこの目で見ておりますが、そういったこともよく念頭に入れながら、親御さんがやはりある程度我慢をする、そして忍耐強く子供を育てていく、そういう方向へ社会全体をやはり持っていく必要があるのではないか。  このことは、生涯学習とかいろいろなことを言われておるのですが、その中の非常に大事なポイントではないかな、こう思っておりまして、忍耐強く子供を育てるということの重要さというのをやはり生涯学習の中で学んでいくべきである、こんなふうに私は感じております。
  101. 原口一博

    ○原口委員 あわせて文部大臣にお尋ねをしますが、私は、子供をはぐくむことを親に教育すること、今国家公安委員長がお話しになりましたが、そのこともあわせて必要であるというふうに思います。  学校で、大変知識を中心とした教育、これも大事なことかもわからない。しかし、その前に、みずからをはぐくむ、あるいはみずからの子供をはぐくむ。これは核家族化でだれも教えてくれない。そういう中で文部省としてどのような御所見をお持ちか、お尋ねを申し上げます。
  102. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 最近の、特に都市部におきましては、核家族化が進み、また少子化が進んでおることは大きな問題となっているわけでございます。地方の方は、まだおじいさん、おばあさんと一緒に生活していたり、あるいは子供も兄弟も多いということもありますけれども、核家族化になりますと、兄弟げんかのやり方もわからなくなってくる。兄弟で取っ組み合いのけんかをしていても、本当にぎりぎりのところはかげんをするのが兄弟げんかなのではないかと私は思っております。あるいは、おじいさん、おばあさんと一緒に住んでいないということなどによりまして、お年寄りを敬うとか、あるいはおじいさん、おばあさんからいろいろ教えてもらうとか、そういうような昔のよい慣習がなくなってきたということは大変心配されているところでございます。  子の教育につきましては、委員も御承知のとおり、家庭が基本でありますけれども、社会、学校全体が取り組まなければならないわけでありまして、子供たちに幼児期から、先ほども申し上げましたけれども思いやりの心あるいは正義感あるいは倫理観、そういうようなものをきちっと植えつけるということが大切であろうと思っておる次第でございます。
  103. 原口一博

    ○原口委員 私は抽象的な施策をお尋ねするのではなくて、むしろ、さまざまな人格障害を起こしている、そういうものの原因と結果を解析する時期にもう来ているということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  経済企画庁長官、先日は、菊の花の咲くころに景気が実感されると私の質問にお答えいただきましたが、菊の花が咲くころには私たちの衆議院の任期も切れているでしょうから、それまでにはまた別の選挙があるのかなというふうに思っています。  先日経済企画庁がお出しになった指標で、国民の間に不安が広がっている、多くの皆さんが将来に対する不安を持っている。これは一体どういうことに起因をしているのか、どのように分析されているのか、企画庁長官の御所見をお尋ねします。
  104. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今委員お尋ねの、企画庁が出しましたデータで、不安が広がっているというのは、多分、九九年の六月に実施いたしました生活実感調査のことだと思うんですけれども、これは九九年の六月に実施いたしまして、現在の状況が悪くなっているかよくなっているか、悪い状態かいい状態か、それから、三年前に比べて悪くなっているかよくなっているか、それから、将来よくなるか悪くなるか、こういう調査をいたしましたところ、過去に比べまして悪くなっている、あるいは悪くなるだろうという数字が非常に多うございました。午前中もお答えいたしましたように、これは少子化の影響、景気の影響、いろいろなことが絡んでいると思いますが、特に五十代、六十代の女性の間で将来不安が悪くなっている。  これはやはり、景気をしっかり立て直すとともに、長期的に、人口問題等も含めまして、国が政策の方針をはっきり立てる必要があるなと感じております。
  105. 原口一博

    ○原口委員 私は、国民の間に不安が広がっているのは幾つかの理由があるというふうに思います。  今お手元にお配りした資料一、これは、平成十二年度の予算一つの絵にしたものでございます。公債発行額が三十二・六兆円、税外収入三・七兆円、これを除いたものが真ん中のグラフでございますが、ここから特定財源関係、地方交付税交付金等を除いてしまうと、実際に、もし公債発行がゼロであるというふうに仮定した場合には、二十三・四兆円、これは、消費税の中で基礎年金や老人医療、介護、これも実際に使えるお金の中に入ってきていますから、二十三・四兆円しかない。公債発行が三十二・六兆円で、現実に政府が政策的に使うお金、これが二十三・四兆円しかない、こういう状況になっています。私は、不安に対して政治がしっかりそうじゃないんだということを示すべきだというふうに思います。皆さん、不安に思わないでいい、大丈夫だというメッセージを出すべきだというふうに思います。  しかし、現実に政府・与党の中から出てきているものは、例えば、手元に梶山元官房長官の論文を持ってまいりました。今の小渕内閣の経済政策は「“付け焼き刃”的で、患部を根本的に治療しているのではなく、上から絆創膏を貼っているにすぎない」「このままでは国が潰れる」、「国が潰れる」とまで言っておられます。一つ一つの根拠を見てみると、さすがに官房長官をされた方だけあって、的確に御指摘をされているというふうに思います。  これは梶山元官房長官だけではありません。先日までこの予算委員会の場で財構法のときに議論を交わした大蔵省の高官さえも、破局に向かう膨張政策ということを言っています。きょうのこの資料一を見ると、まさに私たちは破局に向かっているのか。私たちの税金は、将来、この五年間、十年間増税になるのか。私たちの年金でさえも、今国が借金をして賄っているような状況であります。このことに対して、私は、政治は自分の言葉で答えを出すべきだというふうに思います。  橋本内閣のときに財構法をおつくりになった。橋本総理は御自身の言葉で、大変痛みを伴うけれども皆さん、これは必要なんですということを、この委員会でも何十時間にもわたって御議論をされました。そこで、私は逃げないというキャッチフレーズを付されました。本来であれば、国民の不安を考えるのであれば、官房長官やさまざまなリーダーがそれに対してきっちりとお答えをされるべきじゃないでしょうか。  御所見をお伺いしたいと思います。
  106. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘の梶山元官房長官の論文も熟読玩味させていただきました。確かに、御指摘の中には傾聴に値する部分もたくさんございますけれども、何度も繰り返し申しますように、現在の日本経済はいわば病気上がりといったところでございます。  そこで、委員お示しのこの資料でございますけれども、これは正確でございますが、まさにそういう病気上がりで、非常に税収が減ったときの状況を示しております。  例えば、平成十二年度の一般税収でございますけれども、これは四十八兆六千五百億円ぐらいを予定しております。十一年度はもっと少なかったのですが、ややふえました。ところが、平成二年度でございますと、五十八兆円ございました。それに比べますと、税収の方が約十兆円ぐらい減っている。その中には、減税による減少が約九兆円、それから消費税等を増税しているのが六兆円。景気が回復すれば、やはりここにお示しの数値も変わってまいります。また、支出の方で出しておる部分につきましても、不景気のための特別の支出もございます。  そういったことを、どういう状況になるか明確に、その時点で、日本経済がしっかりと病み上がりから立ち直ったときの状況を判断して、そして、そのときの産業構造や経済構造に向いた対策を議論していかなきゃいけない。今病み上がりの状態で、一方では医療費がかかっている、一方では働けないから収入が減っている、これをもって、将来ずっと伸ばして、日本は大変だ、孫子の代まで大変だと言うと、非常に国民が未来に対して暗い予測を持ちます。  したがって、今この議論をするよりも、日本の構造転換が行われた後にどういう形になっていくかということを見きわめてから、この議論はもう一度、全体的に、歳入歳出両方にかけてやってみる必要があるんだろう。今はまず景気を立ち直すこと、そして経済を健全化することが第一だと私ども考えております。
  107. 原口一博

    ○原口委員 官房長官にお尋ねをしたのですが、経企庁長官がそういうことをおっしゃるので、資料二を持ってまいりました。  これは何かというと、税収の弾性値です。景気がよくなったときには、一・四八とか一・九六とか三・三三。昭和から平成十年にかけての税収の弾性値をお示しさせていただきました。本当に財政が組めない状況、あるときにはマイナス五・二一。今まで大蔵省の主計局からは財政の基本見通しというものが出ていましたが、ことしからはそれが財政展望という形になりました。  去年大蔵大臣と議論をさせていただいたときは、こういう数字にどんな意味があるのかというお言葉をいただいたわけでありますが、まさに税収が読めない。経済がよくなったからといって、また税収がふえるか、あるいは財政が健全化できるか。税収の弾性値が一・一ですら、この委員会の中で議論をした、年間一兆円ぐらいふえる、それぐらいの状況です。私は、こういうことについて、リーダーが、大丈夫なんだということを言うべきだというふうに思います。  前の橋本総理であれば、自分が出てきて、そうじゃないんだということを、経済企画庁長官じゃなくて御自身のお言葉で語られたんじゃないかというふうに思います。総理は、真空総理ということを言われて、たくさんの皆さんの御意見を聞く。これも大事なことかもわからない。しかし、大丈夫だというメッセージをこの委員会やさまざまなところに、集中審議にもお見えになって、そして、自分はこう考えるから大丈夫だということを言うべきじゃないでしょうか。官房長官、いかがでしょうか。
  108. 青木幹雄

    青木国務大臣 再三皆さんから御議論をいただいておりますように、この委員会総理出席すべきかどうかということが一番の今の議員の問題だと思います。  私もお答えを続けておりますように、委員会出席するかどうかはこの委員会によって御決定なさることだ、総理はそれに従って行動している、そういうふうに考えております。
  109. 原口一博

    ○原口委員 何回お尋ねしても、私はこれは党利党略で申し上げているのではありません。今の国民の不安、経済企画庁長官からもお話しになったように、増大している。どこの国の政治家も、そうじゃないんだ——予算を提案されていないんだったらわかります。これが最善の予算だということで提案をされているが、この一ページ目を見ると、とてもそうは思えないのです。二十三・四兆円政府が使うお金があって、公債発行残高はそれをもう超えている。  そして、後でお尋ねをしますが、先週、御質問させていただいて、いわゆる八兆円問題、あのとき政府皆さんは何とおっしゃったか。一週間前ですから、今でも覚えています。市中も好感しているし、格下げにはならないし、国債もそんなに上がらない、利率も上がらないということをおっしゃいました。おっしゃったその数日後に、我が国の格付は下がっているんじゃないでしょうか。  私は、もう出てこられるべきだ。あるいは、これは七割の大きな与党ですから、リーダーが決断すれば、ここにいらっしゃる皆さんに、いや、この委員会に自分も出させてくれと言えば、出られる問題じゃないですか。いかがですか。
  110. 青木幹雄

    青木国務大臣 再三申し上げておりますように、総理自身の都合で欠席しておるわけではありません。委員会決定に従うのが当然総理の姿勢だろう、そういうふうに考えております。
  111. 原口一博

    ○原口委員 今まで真空総理というふうに言われていましたが、このままだと空席総理と言われますよ。ここ空席なんですよ。この状況は好ましくない。多くの皆さんが、今の予算について真摯な説明をトップのリーダーから聞きたいと思っている。このことは民主主義の基本じゃないでしょうか。  ちょうど二年前の予算委員会の議事録がございます。二年前、何をやっていたか。政治倫理の問題を随分やっています。二月の二十四日には、残念なことに同僚議員である代議士がみずから命を絶たれました、その問題について、これだけ議論をしています。政治改革を語り、政治改革を前に進めたいと思ったそういう人たちが、あの疑惑が、真実がどうであったか、結局は私たちにはつぶさにわかりませんでした。しかし、その中でも真摯に答えをしている。ここにいらっしゃる皆さんでも、こんなことは政治を国民から遠ざけるからしっかりと議論をすべきだ、公開性と自由討論が民主主義の基本であるということを、こんなにも多くの時間をかけてやっているわけです。  私たちは、この大事な予算が、今経済企画庁長官がおっしゃっただけではやはり納得できない。今は病み上がりだから、とりあえずたくさんの財政出動をしますということでは、納得ができない。子供たちや孫にまた同じような国債発行を続けさせるのか。もうこの一の資料が如実に物語っているんじゃないでしょうか。私は、この問題についてさらに皆さんと議論を続けていきたいと思います。  そこで、郵政大臣にお尋ねします。  資料三、いわゆる郵貯の二〇〇〇年問題、これは前から指摘をされていたことですが、ことし十年満期のお金が郵便局から大量に出ていく、この問題についてどのような見通しをお持ちなのか、お尋ねを申し上げます。
  112. 八代英太

    ○八代国務大臣 原口委員にお尋ねをいただきまして、ありがとうございます。  平成二年度及び三年度の高金利の時期に預けていただきました定額貯金が、十二年度と十三年度で満期を迎えるわけでございます。その元利合計金額は、十二年度と十三年度合わせて全部で百六兆円と、まことに大きなお金でございます。  このうち、平成十二年度におきましては、満期の元利合計金額、五十八兆円でございますが、これから利子課税を引きますと、利子課税の方が四兆五千億円。及び、その限度額を超過するために再び預けることができない、つまり、引きおろしてもらわなきゃならないお金というのが約九兆五千億。こういうことを除いた四十四兆円の七割の再び預け入れを、今すべての郵便局で一生懸命お客様にお願いをいたしているところでございます。結果として七割、もし皆さんが再び預けていただくということになりますと、二十七兆円の流出を見込んでいるところでございます。  それで、十三年度につきましては、同じように計算をいたしますと約二十二兆円ぐらい流出が見込まれます。  そんなふうなわけでありますけれども、十年という長い間、本当にこの定額貯金に皆様方が御協力をいただいて、それがいろいろな形で国の施策にも役立ってきたということを考えますと、心から感謝を申し上げつつ、そしてなるべく、また郵便局でいろいろなメニューを出して、再び預けていただくような努力を今しているところでございます。そういうことでございます。
  113. 原口一博

    ○原口委員 では、来年もまた同じように、交付税のいわゆる手元の資金が足りないということで銀行から同じようにやるのか。  ここに保利自治大臣と宮澤大蔵大臣の合意書がございます。私は、今の経済状況は、タコが自分の足を食べているような状況だというふうに思います。大蔵省は、今回のいわゆる八兆円問題について、地方交付税特会の八兆円不足の問題については、今おっしゃった集中満期の問題が原因説明していますが、私は、これの責任と結果、だれがこの見込み違いをしたのか、そしてその責任はどこにあるのか。資金運用部のトータルの見込み違いではないか。  あるいは、これは大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、今まで一体どれぐらいの金利で資金運用部から借りていたのか。その資金運用部が、今回八兆円分銀行から借りるわけですけれども、恐らく国債の金利プラスの〇・二ぐらいだった、ですから〇・二ぐらいで借りているものを、市中から借りるとしたら、もっと低い金利で借りることができるんじゃないでしょうか。その辺、どのような考えをお持ちなのか、再度お尋ねしたいと思います。
  114. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これからのことでございますけれども、八兆円は入札で借りるつもりでございます。今の金利から想像いたしますと、かなり低い金利でございます。  言ってみれば、銀行側としても、これは大変にいいお得意さんでございますから、入札は当然満額になることは間違いないので、その限りではそれで経済法則は成り立つわけですが、来年もそうするかとおっしゃいましたときに、諸種の条件が一緒であるかないか、まず来年地方財政がどういう状況になるかとかいろいろございますし、何よりも、私ども考えておりますような経済の回復がございますと、そんなに安い金利は再びないかもしれない。  そういうこともいろいろ考えてみませんといけませんので、来年のことは今からちょっと何とも申し上げかねるということでございます。
  115. 原口一博

    ○原口委員 まあ来年のことは申し上げかねるということですが、ここに一枚の資料を持ってきました。訳文を皆様に渡していますが、大蔵大臣には、ちょっと原文を差し上げます。  資料四、「日本政府、国内銀行から直接借り入れ」、私はこれは、今回の状況は日本経済にとって正常なことなのか、それとも緊急避難なのか。あるいは、政府の財政運用にとって、本当にこういったことが常態化していいのか。あるいは、今回だけはしようがない、郵便貯金の運用、それを中心に、たまたま穴があいたからしようがないというふうに思っておられるのか。ここはしっかり明らかにしておかなきゃいけないというふうに思いますが、大蔵大臣、御所見をお伺いします。
  116. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろ書いてございますけれども、お尋ねで申せば、少しも正常なことではございません。極めて異常なことであると申し上げざるを得ない。それは、ここにもございますけれども、第一、こんな大きな借金を日本経済がしょっているということは極めて異常なことでございますし、また、地方財政がそういう状況になっているということも異常でございます。  そして、資金運用部の金が、今おっしゃいましたような理由はあるにしても、従来地方財政をファイナンスしていたのが難しくなって、市中で借りるということも、これもまことに異常なことでございます。しかし、何よりも恐らく一番異常なのは、そんな安い金があるということ、これが一番異常なことだと思います。ですから、ここに言っていることは、まとめて言えば、ゼロみたいな金が日本にはある、そういう経済状況は極めて異常であると申し上げなければなりません。  そういう中で、しかし、政府としては、そういう安い金がございますから、それを政府のファイナンスの中に持ち込んだということ。そのことからだれかが迷惑を受けるかといえば、それは、こういう状況の中では、別に迷惑を受ける人があるわけではなくて、多分入札した銀行は、ビジネスとしては、それはもうかるビジネス。それ全体が普通の話ではないねとおっしゃれば、もうそのとおりだと思います。
  117. 原口一博

    ○原口委員 本当にこれが異常だというお話で、これを正常だと言われるよりよっぽどましだと思います。  しかし、ここで、本当に苦労をしている、そして将来に不安を感じている、それはだれなのか、そこはきっちり押さえておかなきゃいかぬというふうに思います。年金でお暮らしの皆さんであったり——これだけお金が稼がない。岩國委員はかつてお金が失業しているというふうに言われましたが、まさに失業している。そうすれば、たくさんのお金を老後のために積んでおかなければいけない。皆さんが幾ら経済対策をやろうとしても、私たちが消費を喚起してくださいということを申し上げても、これだけの異常な事態が起こっていれば、私はそんなに簡単に戻ってこないというふうに思います。  そこで、こういう政策の責任と結果、責任は一体だれにあるのかということを押さえておかなければなりません。  これは経済企画庁長官が大臣になられた当初のことでございますが、そのまま読ませていただきます。私は党名を言うのは余りあれですが、「自民党をこれほどの大惨敗に陥れた原因は何か、」その二つ目に挙げるものとして、「経済の不況である。 特に昨年四月、消費税の引き上げや特別減税の停止など七兆円の増税を行った失政の責任は重い。」大変明瞭に言われています。  失政をすれば、その責任をとるのが当たり前だというふうに思いますが、この考えは今もお変わりありませんか。
  118. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 変わっておりません。  それで、失政であったと認めて橋本内閣は退陣されたものと認識しております。
  119. 原口一博

    ○原口委員 私は、今の言葉を一生覚えておこうと思っています。  というのは、今回の小渕内閣がおとりになったこの財政政策、経済政策も、恐らく将来、十年、二十年、三十年後、そんな後ろからではなくて、もう目の前に破綻が来ているということを言われる。この政治責任というものを私は争点にしなければいけない。  ただ、不幸なことは、これは本委員会でございますが、またちょっと読ませていただきます。  結果責任、厳粛な結果責任でありまして、失政によって多くの国民が苦しい目に遭っている、耐えがたい状態に追い込まれている、そのような自殺をした人あるいは失業している人本人だけではなくその御家族の心情を思うときに、将来に対する希望を失い、また現在の生活において塗炭の苦しみをしていられるその人たちに対する陳謝の意が表されなかったことは非常に残念でありますが、もう一言ありますか、総理。 これは今連立与党に入っておられる政策責任者が当時の小渕総理に対して言われた言葉であります。  結局、だれも陳謝しない、だれも責任をとらない、そういう中で、高齢者の方や弱い立場の皆さんが追い込まれている。  私は、今回の予算の責任、一体だれにあるのか、この政策が失敗すればだれにあるのか、ここではっきりさせておかなきゃいかぬというふうに思いますが、その責任者はここにいらっしゃいませんので、大蔵大臣、お答えをお願いします。
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 こういうふうに考えております。  そういう後を受けて小渕内閣が一昨年の夏に誕生をして、そして財政再建というものはここで一遍棚上げをせざるを得ない、とにかくこの不況を克服しなければ失業者がますますふえる心配がある、そのことが一番問題でございますから、思い切ってこういう政策をとって、補正予算、本予算、補正予算、本予算と、かなり明確な景気刺激策を現在とりつつございます。  私どもは、ことしのある時期、恐らく秋ごろになりますでしょうか、日本経済は恐らく正常な正常軌道に乗り始めるであろうと考えておりますが、ただいままでのところ、ともかく一年半続いたマイナス成長という日本経済の下向傾向が歯どめがかけられて、そして、ともかく今年はゼロポイント何がしでもプラスにはなるというところまでは、皆様も大抵そう思っていただけることになった。これまでのところは、不況の深さからいえば、私どもは失敗していると思いません。そして、さらにその次に一%程度の成長が重ねられるならば、これも私は失敗だということは多分申し上げずに済む。  他方で、非常に大きな負債を背負っておりますから、これの回復は容易なことではありません。政府は挙げて財政再建を、あるいはすべてのことの再建になると思いますが、やがてしなければならないと思っていますけれども、その前途というものは極めて極めて遼遠であると申し上げなければならないと思います。  簡単にこれだけの借金が楽になってしまうなんということはない。しかし、それだけの重い病気を克服するためのこれはコストであったわけですから、これによって二十一世紀に日本という国がもう一遍ちゃんと世界の中で雄飛をすることができるならば、これは一種の不幸中の幸いであった、みんな苦しかったけれどもというふうにぜひなってもらいたいと私どもは努力していますが、短期的に見て、しかし、日本経済がこれで回復の軌道に乗らなかったら、それは私どもは責任がございます。その責任はとらなきゃなりません。
  121. 原口一博

    ○原口委員 私は弁解を聞いているわけではありません。結果責任、厳粛な結果責任であります。これは今与党に入っておられる方、名前も言いましょう、冬柴委員指摘をされている。これに対して何の陳謝もない。また、今回、本来であればその責任を問うべき人たちが、また同じような政策をやっている。  私は、例えば〇・六という数字にどんな意味があるのか、今おっしゃった一%という数字にどんな意味があるのか。多くの人たちが路頭に迷い、そしてたくさんの自殺者を出して、その犠牲の上に立ったその数字にどんな意味があるのか。これを真摯に受けとめなきゃいけないというふうに思います。  私は、一つのポイントは、一人一人を大切にするスウェーデン型の不況の克服なんじゃないのかなというふうに思います。  今、アメリカで大変職業がふえている。大変職業がふえているかもわからないけれども、こんなジョークがあります。職業はふえているよ、私自身がもう三つも職業を持っているから。一人一人の賃金は減って、一人一人の生活環境は苦しくなっている、そういうことを指摘する人もいます。  先日、衆議院の委員会でスウェーデンに行ってきました。超党派の沖縄北方対策特別委員会でございましたが、そこでサムハルという企業を訪問いたしました。  サムハル、人口九百万人のスウェーデンで三万人の雇用をしている企業でありました。三万人のうち二万八千人がいわゆるチャレンジド、障害を持った皆さんでありました。そのサムハルの社員の皆さんの、チャレンジドの平均年収は、一般のスウェーデン人の九割でした。皆さんが税金を払い、そして約五千億の補助金が入っていますが、年間六千億の収入を上げている。何でこんな会社が成り立つのかということで、与党の皆さんとも話し合って、視察に行ってまいったわけであります。  答えが返ってきました。それは、組織が大事なんではありません、人間が大事なんです。できないことが大事なんではありません、できることが大事なんです。首から下に大変な障害を持った方も、さまざまな皆さんの心の悩みを聞いて、それで所得を得ておられました。  私は、今日本を覆っているのは、数字だけはそうやっておっしゃるけれども、一人一人が大切にされていないのではないか。今そういうお話をされるんだったら、先ほど与党席の方から預金者が問題なんだというふうに言われました。預金者の中でも、なぜ年金や医療の改悪で最も苦しんでおられるところを直撃するような政策をやるのでしょうか。私たちはそこに多くの問題があるというふうに思いますが、御反論をいただければというふうに思います。
  122. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その部分についてだけ申し上げますならば、先ほどもそういうお話がございました。  確かに、金利生活者、預金をされている方、これはもう非常に異常な状況に長いこと置かれておられて、いかにもいかにもそれは申しわけないということは明らかでありますけれども、ここでしかし、今問題なのは、そのような低金利政策を日本銀行が、昨年の二月でございますか、もう一年になりますが、ずっととってこられて、そして、こういう経済状況に、いろいろ含めまして、なっていることのメリットと、預金者に御迷惑をかけていることのデメリット、これは明らかに御迷惑をかけておるわけですから、それについてのうまい弁解はあるわけがございません。  しかし、マクロの政策として、そのメリッツとデメリッツを比べた場合に、つらいけれども、やはり今の金利政策というものは続けていた方がいいというのが中央銀行の判断でございますし、また私どもの判断であるわけです。  それによって、その預金者にかけている迷惑の説明ができるわけではありません。そうではありませんが、しかし、それがやはり今の不況というものの実態であろう、その中での政策選択ということであろうというふうに考えています。
  123. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 〇・六%とか一%という数字が特に意味があるわけではなくして、それは結果として、経済政策をこのように運営し、経済動向がこうなればそれぐらい達成できるだろうという意味で申しておるのでございまして、それ自体を目的としているわけではございません。  委員指摘のように、まず、小渕内閣といたしましては、一昨年、緊急経済対策によって下げどまりをする、とにかくデフレスパイラルから逃れるということが第一でございました。そして、去年になりまして、ようやく経済新生対策として、構造改革と景気下支え、両方の足に体重をかける状態になってまいりました。次には、これを構造改革の面によりウエートをかけて本格的な軌道に乗せていきたいと思っております。  この経済政策はもちろん内閣全体として責任をとるわけでございますが、経済政策を担当する者としてこの重責は一日も忘れたことはございませんし、十年後、二十年後、どのように評価されるか。私はきっと、このときあれだけ赤字を出してやったことがよかったと言われると信じております。  また、金利の問題でございますけれども、物価が下がっている状態でございますから、卸売物価、消費者物価まで今下がっている状態でございますから、やはり金利をこの水準にしばらく置いて、確かに預金者には御迷惑をかけておりますけれども、やむを得ない状態で、これによって、やはり景気を回復し、産業構造の改革を可能にするということが必要だと考えております。
  124. 原口一博

    ○原口委員 信じていると言われれば、あとはもう議論することはないわけであります。  私は、そうではない、幾つか数字を——先ほど大蔵大臣は大変誠実にお答えになった。迷惑をおかけしている。迷惑をかけているという認識があるのであれば、またそこにさらなる負担、さらなる不安を与える政策をどうしてやるのか、私はそのことについてはなかなか納得がいきません。  橋本財政構造改革のときに、なぜ七%公共事業を減らすのか、この根拠についてもこの委員会で聞きました。結局、七%というその根拠を示されなかった。これぐらいやれば何とか財政がキャップがかかって、悪化に、きょうの堺屋長官と全く同じ、あれはブレーキでした、あのときはアクセルでしたけれども、全く同じことをおっしゃっている、結果的には根拠も何もなく。際限のない財政出動、そういうふうに見ている人もいる。しかし、病み上がりのときにはあんなことをやるべきではないということを私たちも申し上げました。  しかし、一方で、それは財政構造改革を伴ったものだ、構造改革のビジョンを伴ったものだ、それがなければ、国民の多くは、また大増税が来るだろうと。単なる歳出削減だけだと、次に来るのは大増税だということを申し上げたわけであります。  信じるという先の議論をさせていただきたいと思います。  もう時間がわずかになりましたので、郵政大臣、これから財投改革があるわけでございますが、きょうの議論の中では、郵政省の資金運用、自主運用、こういったものについても、これから私たちはしっかり一つの結論を出していかなきゃいかぬというふうに思います。特に、今まで二・〇というような大きな金利で貸し出している。これが常態でないにしろ、銀行というものに対して、今回八兆円銀行から借りるということになると、そもそも財投そのものは一体何だったのか、あるいは財投債、政府保証、財投機関債、どれぐらい発行できるのか。もう二〇〇一年に財投改革が迫っているわけでございますが、基本的なお考えを、郵政大臣、御所轄の分だけで結構ですから、お尋ねを申し上げます。
  125. 八代英太

    ○八代国務大臣 郵便貯金におきましては、現在、資金運用部から借り入れを行いまして、金融自由化対策資金として自主運用しておりますが、その運用額は、平成十年度あたりで五十五兆一千五百億円でございました。そういう中で、非常に健全な運用をしておりますので、約三千五百九十七億円の運用利益を確保した、こういう実績がありますことをまず申し上げておきたいと思うのです。  郵便貯金の資金運用につきましては、これは中央省庁再編に基づいていよいよこれから、十三年度からは全額自主運用を行うということになっていくわけですが、今国会にそのための法案というものは出すことになっております。  やはり確実、有利にかつ公共の利益になるように運用することといたしまして、具体的運用対象や運用手続を定める検討を今進めておりますが、新資金運用システムの開発とか、それから本省、地方運用組織体制の整備、人材の育成につきましても今鋭意検討いたしておりまして、この分におきましてはかなりの実績と経験がございますし、先ほど申し上げましたが、非常に健全な資金運用というものに我々は徹しておりますし、この百六兆円の大きな定額貯金も、これが二十七兆円、本年市場に出てまいりますが、それがそのまま郵便局から他の銀行へ移るのじゃなくて、債券に変わるのじゃなくて、我々はそれがより消費の中で経済の効果の中に使っていただくようなことも祈りながら、これから健全な自主運用、そしてまた郵便貯金を愛好している皆さんのそういうものに対しては信頼を裏切らないように努力をしていくことが大切だ、こんなふうに思っているところでございます。よろしいでしょうか。
  126. 原口一博

    ○原口委員 信じているとか祈っているとか、大変、御趣旨はよくわかりました。私は、きょう限られた時間ですから、郵政大臣にあと二点だけお尋ねを申し上げます。  一点目は、放送のデジタル化、これは多くの委員皆さんとも議論をしてきましたが、地上波のデジタル化はNHKや民放局にとって莫大な投資と手間を強いるものであります。その割には、メリットについてどれほどお考えなのか。あるいは、放送のデジタル化が衛星放送をもって進んでくると、地上波に莫大な資金をかけて、そしてそのことが実は将来には何も役に立たなかった、こんなふうになるのじゃないかと指摘する向きがございますが、本当にこの放送のデジタル化というものが今必要であるのか、この問いに対してどのようにお考えなのか。  それからもう一つは、よく放送の中で、先ほど中曽根文部大臣がお話しになりましたけれども、国という言葉が使われます。裁判において国が敗訴をした、こういう表現の仕方をしている。私は、少しおかしいと思う。国は、国民すべての皆さんのものでありますから、何々政府、例えば厚生省だったら厚生省が敗訴をしたという表現は私は正しいと思いますが、国が負けた、国が敗訴をした、こういう使い方をしている国は、世界の中では私たちの国が非常に特殊な事例であるというふうに思いますが、この二点について、郵政大臣にお尋ねを申し上げます。
  127. 八代英太

    ○八代国務大臣 私も、かつては放送の仕事をしておりましたので、この放送のデジタル化には大変興味を持っていると同時に期待を持っております。  ラジオが五千万視聴者を獲得するまでには三十八年かかった、テレビの場合には十八年ぐらいかかった。しかし、インターネットとか情報通信、今のモバイルのようなこういうブームというのは、あっという間の四、五年でなし遂げた。それでも、まだまだ新しい技術開発によって新しいものをだれしも好む、そういう時代でありまして、特に映像に関して、放送のデジタル化というものも、二〇一〇年度を目途に私たちも取り組んでいるわけです。  確かに、今おっしゃるように、それぞれの放送局の負担ということもいろいろ出てまいりましょう。今、NHK、郵政省、民放連等々でこれから同じテーブルに着きながら、このデジタル化というものは、既にアメリカやイギリスやスウェーデンでも実施されているように、日本でも避けられない、この方向に進むということはやはり国民の大きな期待でもあるという思いに立って、実は、このデジタル化ということを推進するために我々は頑張っているんです。  まず一つは、高品質の画像、それから、音声が多重化されていきますから、非常に音声サービスも出てまいりますし、データ放送や通信網と連携した高度な双方向サービスとか、高齢者やあるいは障害者、テレワークなんということは、一々タイムカードを押さなくても、自分の車いすの上にパソコンを置いて、雇用関係、仕事ができるというような、そういう夢のことも含めて、このデジタル放送というのは私たちはぜひ推進したいと思っているんです。  もし御懸念があるとしたら、どういう点が御懸念があるか、また原口委員の御意見を聞かせていただければありがたい、こんなふうに思っております。  それからもう一つ、今、国、訴訟の問題が出ましたが、実はこれは、国家賠償法というのがあるんです。したがって、国家賠償法では、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する」責任があるということですから、いろいろなものが出ると、国が負けた、こういうことに、これは当然のことでなると思うんですね。  それから、行政事件訴訟法の中では郵政省とか自治省とか大蔵省とかということが出てまいりますが、しかしそれも、放送はいろいろなことを勘案しながら、それぞれの訴訟の事実、経過に基づきながら、広くその辺はそれぞれの各放送局の判断によってアナウンスしていただくことがいいのではないか、そんなふうに思っているところでございます。
  128. 原口一博

    ○原口委員 法律があることは私も存じ上げています。しかし、この表現が、いわゆるお上意識を醸成し、そして中央政府に対して何か事をする、そのことをはばからせる、民主主義の土台にかかわる問題だというふうに思いますものですから、きょう質問をさせていただきました。  デジタル化の問題についても、私はデジタル化がいけないということを申し上げているのではなくて、地上波を今このような時期にデジタル化して、衛星から飛んでくるその先の進んだ技術が開発されたときに二重投資になるのではないかという意味で、きょう申し上げたわけでございます。  時間が限られてきましたので、私は、資料五を最後にお示ししたいと思います。  これは、当予算委員会で、先日、西川委員が御指摘になったものでございますが、「公明党との連立内閣に関する意見書」ということで、「現在、政局は公明党との連立に向け、急速に動きつつある。参議院で自由民主党が過半数を割っている現状から政策ごとに公明党の協力を得るべく努力することは政党としてやむを得ない。 しかし、」云々というふうに書いてあります。  私は、こういう意見書をお出しになる、政治家ですから、その自由はある。しかし、西川委員が御指摘になったように、内閣の中に、私もつぶさにどなたが内閣の中にお入りかということをここで指摘する能力はないわけですけれども、お入りになっていますね。やはりこういう問題については、しっかりとした回答をしてもらわなくては困る。与党の中からでさえ疑義があるということが言われておいて、そしてあるときには別のスタンダードでもって物事が進んでいるとすると、これは問題であるというふうに思います。  また、あす戦後最大の、イトマン事件、いわゆる大きな疑獄が、司法の中でさまざまな解明がされるというふうに思いますが、二年前の予算委員会の議事録を読んでみて思いました、政治家の威を利用して、政治家の大きな特権を利用してさまざまな利益に結びつけている人たち、私たちはそういう人たちを許すわけにはいかないと。  先刻も、毎日のように報告をされていますが、脱税コンサルタントを政治家の周辺の人たちがつくっている。政治家に頼めば税金が安くなるんだ、こんなことを、この厳しい不況のときに国民皆さんがもしも誤解されるとしたら、これは大きな政治に対する禍根を残すというふうに思います。  そこで、官房長官にお尋ねをしますが、この意見書についてどのようにお考えになっているのかが一点。  それから二点目は、いやしくも小渕内閣の閣僚あるいは過去の閣僚の中において、さまざまな、イトマン事件に関する疑獄、あるいは関連会社に名前を連ねた方はおられないというふうに思います。もしおられるとすれば、これは大変なことでありますが、その辺、おられないという仮定のもとで私は今質問をしているわけですが、今度調査を受けている秘書の多くの皆さんは、やはり古い政治の中にとっぷりつかっていた人たちだというふうに思います。代議士本人がそれを知っていたかどうかというのは、それはわかりません。しかし、秘書が、秘書がと言って言い逃れをする、こういう政治に国民が不信を持っているのも事実でございます。この巨額脱税事件については、秘書の脱税グループについてはどのような所感をお持ちなのか、この二点についてお尋ねをいたします。
  129. 青木幹雄

    青木国務大臣 お答えをいたします。  「公明党との連立内閣に関する意見書」、これは私も今初めて見させていただいたのでございますが、それぞれの政治家が、それぞれの立場で、いろいろな考えをお持ちになるのは、私はこれはいたし方ないことだと考えております。  ただ、内閣に入られたからには内閣の一員として、個人の意見はありましょうけれども、内閣の方針に従ってもらわなければいけないし、現在の閣僚、政務次官の皆さんはそういう方針をきっちり踏まえた上で現内閣に参加していただいている、私はそういうふうに解しております。  また、議員今御指摘ございました秘書のいろいろな不正行為、そういうものは、非常にこれは遺憾でございまして、私どもは、ただ秘書という問題じゃなくて、国会議員としてやはり一番大事な倫理はしっかりと守っていかなければならないし、また秘書も当然そういうことだ、そういうふうに解釈をいたしております。
  130. 原口一博

    ○原口委員 私はなぜ冒頭に憲法の問題をお話ししたかというと、ここには、憲法に定める政教分離の原則に照らし疑義があるとまで書いてあるわけです。これは、それぞれの政治家の個人的な意見と言うには余りにも大き過ぎるというふうに思います。  また、もう時間が参りましたので、これで終わりにさせていただきますが、こういった問題について説明をする、国民に向かって説明をする、このことを強く求めて、私の質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。
  131. 島村宜伸

    島村委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田幸久君。
  132. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 民主党の藤田幸久でございます。きょうは、瓦防衛庁長官にいろいろとお話を伺いたいと思います。  私は、国の防衛というのは大変重要なことである、これは長官も御存じだろうと思いますけれども、その防衛に関しまして、やはり内部がどう固まっているかということが非常に重要ではないかというふうに感じるわけでございます。  私の選挙区が東京の北区にございまして、十条駐屯地というのがございます。自衛隊の方々が地域の方々との信頼関係醸成に随分努めていらっしゃる。例えば、夏は盆踊りを一緒に地域の方としたり、あるいはもちつきをすることもある。そして、地元の町会、商店会と恒常的な交流もされておられる。私も自衛隊懇話会というのに入って、月に一回ぐらいは自衛隊の中で皆さんと交流をしておりますし、いろいろな基地の見学、視察というようなものもございます。そうしたわけで、私自身は、自衛隊の方々の地元に対する信頼醸成を大変多としているものでございます。  それから、私は初当選以来、対人地雷の禁止に取り組みまして、自衛隊の方々も大変前向きに取り組んでくださった。それから、例えば一昨年はカンボジアの選挙監視に参りましたが、そのときに、PKOの日本側の団長は西元さんという前の統幕議長でございまして、私も監視団で行ってまいりまして、西元統幕議長の場合には、自分で率先をして匿名で申し込まれて、そして団長で行かれたということでございます。この答弁のあれに入っておりませんので、お読みいただかなくて結構ですが。  そういうわけで、私が申し上げたいのは、二十五万人の中に大変すばらしい自衛官の方々がたくさんいらっしゃる。しかしながら、残念ながら大変最近は不祥事が多い。  まず長官にお伺いしたいのは、十年ほど前でございますが、長官が以前長官であったときに「なだしお」事件というのがございまして、防衛庁のいわゆる航海日誌の改ざんというものがあったわけですが、その改ざん、隠ぺい体質というのがその後本当に改善されたのか。その後いろいろな事件も起こっておりますけれども、そういう改ざん、隠ぺい体質といったものが改善されたのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  133. 瓦力

    ○瓦国務大臣 藤田委員にお答えいたしますが、ただいま藤田委員がお述べになりましたように、防衛庁、自衛隊に対しましていろいろ御心配を賜っておりますことに敬意を表します。  また、今御質問は、自衛隊のいわゆる体質に触れる問題でございますが、改ざん、隠ぺいという問題につきまして、振り返って十数年前、「なだしお」という問題に触れまして御質問でございますが、私は、委員がお述べになりましたように、広く国民から信頼される、そういった自衛隊でなければならぬと思っておりますから、常々、改ざんであるとかそういったことがないように、また透明度を高くして信頼性を確保していく努力は重ねていかなければならないものと考えております。  私は、個々の問題はともかくとして、相当これらの問題の意識が自衛官におきましても深まってきておると思います。さらに一層努力をして、これらの問題につきまして国民の理解が得られるような、そういうことに努めてまいりたいと考えておるところであります。
  134. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ところで、ここ二、三年をとってみましても、例の調本の水増し請求の問題、それからジェット燃料の談合の問題、それから私も去年随分取り上げましたが、技術研究本部のいろいろな不祥事等々がございました。例えば、報告書が全く出されていない。不合格品でありながら合格の判こを押した。  そういった不祥事が多々ございますけれども、私は、そのいろいろな不祥事の問題といわゆる天下りの問題というのは不可分ではないかという認識を持っておりますが、最近の不祥事の例で、天下り問題が背景にないと長官が断言できる事例があったら、お答えいただきたいと思います。
  135. 島村宜伸

    島村委員長 もう一度質問を。
  136. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 最近の不祥事で天下り問題等が背景にないと断言できる事例があったらば、お答えいただきたい。
  137. 瓦力

    ○瓦国務大臣 具体的に御指摘をいただきますればお答えもしてまいらなければならぬと思いますが、今御指摘のような質問ではちょっとお答えのしようがございませんので、思い当たる節というものは持ち合わせておりません。
  138. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今の思い当たる節がないというのでは、私は大変認識が甘いのではないかと。これはすべて、今私が三つ四つ申し上げたことは、天下り問題そのものが本質ではないかという気がしておるわけで、天下りの関係がなければやはりこういった不祥事は起こらなかったのではないかと思いますが、そういう聞き方の質問に対してはどうでしょうか。全く天下りというものが関係ないと言えるんでしょうか。相当あるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  139. 瓦力

    ○瓦国務大臣 藤田委員の御質問はなかなか、どういうぐあいにお答えすれば御納得がいただけるのかと思うわけでございますが、天下りの問題と今幾つか御指摘のありました不祥事、これらの問題につきましては、これはこういうかかわりだということを率直に申し上げるだけの材料を私は持ち合わせません。
  140. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 材料ではなくて認識の問題であって、非常に基本的な問題であると思います。したがって、質問を続けたいと思います。  私の方で昨年、防衛庁の方に資料請求をいたしました。そして、防衛庁と過去十年間、一番契約高の高い企業五十社に対する天下り、再就職状況の資料提出をいただきました。その資料がきょうお配りしております資料一、これはページを少し継ぎはぎいたしましたけれども、回答をいただきました目次でございます。その結果、下に新聞の方から表を使っておりますけれども、天下りの多い企業とそれから契約額というものが非常に整合性を持っているという点がはっきりするわけです。二ページ目、三ページ目、これは、そのいただきました五十数ページの中の三ページほどをつづっておるわけでございます。  これを見ますと、ほとんどの方が顧問とか嘱託とかいうことになっております。この中で、ほとんどの方がいわゆる制服組でございまして、内局の数字が実はほとんど反映されていない。私、制服の方にこれをちらっとお見せしましたら、何だ、内局がほとんど入っていないじゃないかということなんですが、こういういわゆる情報開示のときに内局を余り出さないということ自体が非常に問題ではないかと思うんですが、まず、これについてお答えいただきたいと思います。
  141. 瓦力

    ○瓦国務大臣 藤田議員の資料要求に基づきまして、委員御指定の五十社への自衛隊員の再就職状況につきまして、昨年十一月に防衛庁から資料を提出いたしておるところであります。  同資料の中で、平成元年度、一九八九年度から平成十年度、一九九八年度に離職した一佐以上の自衛官及び行(一)十級相当以上の事務官等で離職後二年以内に同五十社へ再就職した者は、当庁で把握しているもので、平成十一年八月一日現在、七百五十六名でございます。これらの再就職は、いずれも再就職手続の法令に従って行われているところでございます。けさほども、新聞報道するところ、委員のこれらについての報道がございましたが、御指摘のように七百五十六名でございます。
  142. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 質問は、なぜ内局が少ないのかということを聞いたわけで、それについてお答えをいただきたいと思います。長官
  143. 依田智治

    ○依田政務次官 お答えいたします。  防衛庁といたしましては、大体これまで、去年の八月、自衛隊法改正になって、今後できるだけ国会等へ報告するという義務がついたわけです。それまではついておりませんが、お尋ねがあれば一佐以上の方々の数字をお答えしておるというのが実態でございます。  そして、一佐以上、及び行政職(一)の十級以上というのは大体室長以上くらいが相当でございまして、それは他の省庁と比べて非常に少ないわけでございますが、決して隠しているわけでございません。自衛官と比較して数が少ないということでございまして、以上の状況でございます。
  144. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 私は、三佐以上という資料請求をしているんです。ところが、一佐以上しか出てきていない。そして、内局の方がほとんど反映をされていない。三佐以上を請求したということは、防衛庁からの資料で明らかなんです。ですから、ちょっとそういう答えは筋違いでございますので、ちょっと事実をはっきり把握していただきたいと思います。  時間の関係で、この資料の私が右下に打ちました七ページ、八ページをごらんいただきたいと思います。これは一昨年の「現代」という月刊誌に出ている記事でございますが、たまたま昨年十一月に防衛庁から取り寄せました資料とかなり似ております。違っておりますのは、この「現代」の方は少し前の年次から平成九年までのもの、去年防衛庁からいただいたものは過去十年、昨年、つまり平成十一年までですから、若干違っておりますが、実はこの「現代」の方に出ておりますのは、まさに一佐以上ではなくてもう少し下の階級の方も含めてこれは実名入りで出ておりますけれども、実はこういう資料が存在するわけですね。  こういう資料が存在をいたしますし、それから別の資料によっても、「防衛庁OB企業別就職先名簿」というのがあるそうです。それから、「防衛庁OB就職状況」、これは調本の総務課が九四年に作成をして、その後も毎年更新をしている。これは、ある報道によると、調本の田中総務課長という方が業務の参考資料としてつくっているというふうに言っております。  ですから、存在するわけです。私は、三佐以上という資料請求をしているんです。にもかかわらず、これしか出てきていない。これは情報公開の観点からしてもおかしいのじゃないですか。なぜ出せないんですか、長官長官、答えてください。
  145. 依田智治

    ○依田政務次官 三佐、二佐以下とか、実際上膨大な数でございまして、実は、やめた後それぞれが個人的なつてとかその他で行っていることもありますし、詳細な数字は防衛庁としてつかんでおるという状況ではございません。
  146. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 つかんでいるわけですよ。この「防衛庁OB就職状況」というリストがあると答えているわけですから、総務課長が。それから、「防衛庁OB企業別就職先名簿」というのが存在するわけです。つかんでいないのじゃなくて、存在しているわけですよ。それをなぜ出さないんですか、長官
  147. 瓦力

    ○瓦国務大臣 藤田委員からの御質問は突然でございますので、私も三佐以上とかそういうぐあいには伺っておりませんで、今申し上げましたように、一佐以上の数につきまして、また就職状況につきましてお伝えをしたところでございます。  よって、さような質問でございますれば、極めて実務、事務的な御質問になりますから、時間をちょうだいすればさような答弁もできますが、今そのようなものが存在すること自体も私は承知をいたしませんので、そのとおりに答弁をさせていただきます。
  148. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 三佐以上の資料請求をしたというのは、私は文書で出していますし、防衛庁から文書でそれに対して返事が来ています。ですから、三佐以上について資料請求したというのは間違いなくあるわけです。ですから、突然の質問というのは、この天下り問題について質問通告しているわけですから、当然、資料を請求して出したということは、防衛庁の方で、長官の方で把握をされておられるわけでしょうから、突然の質問ということに当たらないと思います。  それで、九八年の八月二十四日の朝日新聞で、調本の田中満雄総務課長は「業務の参考資料として名簿を作っている。」ということをはっきり答えているんです。「防衛庁OB就職状況」、当時は、これは九四年作成ですが、百三十五社に千四百二十人天下りと出ています。ですから、田中さんは、これは調本の総務課長ですが、ちゃんと持っているわけです。  私は三佐以上ということをちゃんと資料請求した、にもかかわらず出てこない。これは、長官、出してもらえませんか。
  149. 瓦力

    ○瓦国務大臣 お答えいたします。  さような資料要求と、具体的に御指摘がありました三佐以上というようなことでございますので、また、今せっかくの質問でございますが、調査を命じたいと考えます。
  150. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 調査ではなくて、基本的な考え方として、透明性向上ということ、それから信頼性の向上ということを長官もお考えだろうと思いますから、そういう観点から、依頼をしたというのは事実でございますから、名簿があるというのも、これはあるわけですから、要はそれを開示する、公開する。私は固有名詞を要求しているわけじゃありませんので、最終的な職名が何であって、いつ、どこに再就職をしたかということを明らかにしてほしい。私はあら探しをしているんじゃなくて、防衛庁の信頼度からいいましても、そういったものを明らかにするのは当然のことではないか。  例えば、アメリカなんかの場合には、ペンタゴンにインターネットでアクセスできます。それで情報が開示できる。では、アメリカの方が防衛力と安全保障に関して信頼度が低いかというと、私はそんなことないと思うのですね。むしろ、いろいろな意味で、再就職についても、いろいろな知恵を得ながらペンタゴンといろいろな機関がやっているというのが実態じゃないでしょうか。  そういう意味で、開示をしていただけますか、公開をしていただけませんか。国会議員としての資料請求ですが、出してもらえませんか。それは基本的な考え方の問題です、長官
  151. 瓦力

    ○瓦国務大臣 資料の御要求でございますが、私は、三佐以上になりますと、秘匿をするとかそういう意味合いを感じませんが、恐らく膨大な数になりましたり、それをまた、その後、間を置きますと異動もありましょうから、どの程度整理されて保管されておるものか。これらも含めまして、今、田中課長と言いましたか、それらもどういう御返事をいたしておるのか。私は、開示することは一向に構わないと思いますが、数の問題でありますとかそういったことで手間がかかるのではないか、かようなことで理解をいたしておりますので、今御質問を受けとめまして、また御返事をいたします。
  152. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 とりあえず、時間がないので、私、審議官以上の資料は取り寄せましたけれども、実は、内局の場合でしたらばむしろ課長以下の方ぐらいからいろいろな天下りで出ているわけですから、内局の方もあわせてそういう開示をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  153. 依田智治

    ○依田政務次官 お答えさせていただきます。  防衛庁として責任を持ってお答えできるのは、やはり、再就職等をする場合に、離職者就職審査会等において責任を持って審査しておるというのは一佐以上及び行政職(一)十級以上というところでございまして、その数字はしっかりと把握しておりますが、それ以下の部分は、先ほど調本の数字がございましたが、調本の方で、会社にこんな人が何人ぐらいいるかなという程度で、具体的にやめた後それを追跡しているという状況はございませんので、ちょっと責任持った数字なり名簿というのはお出しできないかと。  援護協会というのは自衛隊にもございますが、それはまた就職支援等をやっておりまして、そういうところで就職の世話になった人は把握しておる、こんなような状況でございます。
  154. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 離職者就職審査会というのは、今まで開かれたことはありますか。
  155. 依田智治

    ○依田政務次官 これは必要な都度開いております。
  156. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今まで開かれましたか。
  157. 依田智治

    ○依田政務次官 これは開いております。
  158. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 どの程度開かれましたか。
  159. 依田智治

    ○依田政務次官 現在、年に一回程度開かれておると。今後恐らく、今まだ施行していない、昨年八月成立して一年以内に施行するという改正法がありますが、そうなってくると、もう少し頻繁に開くことになるかと思います。
  160. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 再就職の問題というのは、多くの自衛官の方々で、若い年齢でいわゆる再就職をするそういった方々、大変重要なことだろうと思いますが、むしろ若い方々ではない、幹部の方々がいろいろな形で天下りをするということの方が非常に重要ではないかというふうに私は思っております。  そんな意味で、この資料の中の九ページからをごらんいただきたいと思いますが、実は、これは主に内局の、主にというか全員が内局ですが、審議官以上の方々がこの十年間に再就職をしたリストでございます。これを見ますと、かなりの方々が複数の企業あるいは公益法人、主に防衛庁の外郭団体ですが、就職をされておるということがこの九ページ、十ページ、十一ページにあるわけでございます。  例えば、この資料の三、つまり右側のページでいうと九ページでございますが、平成二年七月に防衛事務次官の方が離職をされた。それで、その後かなり多くの企業あるいは団体等に勤めておるわけでございますけれども、この方の場合に、例えば平成七年に五カ所退職されているわけですが、これは退職金の合計というのは幾らぐらいでしょうか。
  161. 西川太一郎

    ○西川政務次官 ただいまの方が具体的にどなたに該当するかはよくわかりませんが、当庁の調べにおきましては、この方と想定される方の退職金は四百九十一万円ほどでございます。(藤田(幸)委員「合計です、企業も含めて」と呼ぶ)合計、ちょっとお待ちください。今もう一回調べます。  ただいまのお尋ねでございますが、平成二年七月に退職をいたしました事務次官経験者の場合は、平成七年十二月に防衛庁顧問、財団法人平和・安全保障研究所理事長など五つの職を退職いたしておりますけども、そのうち、退職後、防衛庁顧問及び公益法人の理事それから民間会社等、六つの職につきましたが、退職金につきましては、その多くから退職金は支給されておりません。このように調査をいたしております。
  162. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 合計額は幾らですか。
  163. 西川太一郎

    ○西川政務次官 防衛庁顧問につきましては、この方は平成二年から七年まで在職をされましたのでございますが、退職金の手当支給の対象外でございます。  それから、公益法人のうち、財団法人平和・安全保障研究所理事及び理事長、ちなみに平成二年から四年が理事、四年から七年が理事長、そして社団法人全国自衛隊父兄会副会長、これは平成三年から六年、及び社団法人安全保障懇話会理事、これは平成三年から七年につきましては、退職金に該当するものは支給されていないと承知をいたしております。  なお、財団法人防衛生産管理協会理事長、会長、これは、平成三年から五年が理事長、五年から七年が会長でございますが、これにつきましては、個人の退職後の収入にかかわるものでございまして、防衛庁としてはお答えを申しかねるわけでありますけれども、近年の同協会の退職理事の退職金は、平均でおおむね三百五十万円と承知をいたしております。  なお、民間会社の顧問、平成二年から七年でございますが、個人と民間企業の関係によるものでございますので、当庁としてはお答えを申し上げる立場にございませんことを御了承いただきたいと思います。
  164. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そういった答え方ですけれども、やはりもっと透明な答え方をしていただきたいと思います。  十ページに移りたいと思いますが、十ページの上から二つ目のコラムですけれども、調達実施本部副本部長、この方がいわば水増し請求の本人だったと思います。この方が、平成五年の十月に、伊藤忠、日本電気、日本電気システム建設、三つの会社の実は顧問になってしまった。  それから、その六つ下ですけれども、技術研究本部長、この方は、平成七年の三月に、三菱重工業及び三菱電機に再就職をしている。  この二件の場合は、二人とも、つまり、退職後二年間の間に、退職するまでの五年間影響のあった企業に就職をする場合には、もちろん役員の場合には先ほどの審査会に該当するわけですが、役員という概念をどこに置くか。つまり、取締役会とか、そういう意味の役員ではなくても、顧問というのはやはり相当の、一般の市民から見れば、高額のお金をもらい、車つき、秘書つき、そういう形で顧問になることがかなりあるわけですね。  そうしますと、まさに水増し請求の張本人であったこの調本の副本部長は、退職をした平成五年八月の二カ月後に三つの企業の顧問になっている。それから、その下の技術研究本部長、五つぐらい下ですが、退職をしてから三カ月後に二つの大きな企業の顧問になっている。  ですから、審査会の対象の役員という規定が、いわゆる顧問とか嘱託が対象になりませんけれども長官、今までいろいろな天下りの問題、癒着の問題が指摘をされてきておりますけれども、やはり顧問なんかは審査の対象に入れるべきじゃないですか。実際にこういった形で、調本の副本部長が、こういう三つも一緒になっちゃっている。私はやはり、一つは、顧問もその対象に入れるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  165. 依田智治

    ○依田政務次官 私は去年、外交・防衛委員会でこの改正にタッチしましたので、私の方からお答えさせていただきます。  現行法では、役員についてということで、役員ということになっていましたが、この間の調本の事件等もございまして、去年の八月、改正になりまして、今度は、すべての地位について承認を得る、こういうことに改正いたしております。
  166. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そうすると、これからは顧問も入るわけですね。  それでは、次にもう一つ、過去五年間の影響のある企業についてということがありますけれども、私は、企業だけではなくて、まさに防衛庁の外郭団体あるいは公益法人もその審査の対象にすべきではないかというふうに思います。  と申しますのは、この資料の五ページをごらんいただきたいと思いますが、「過去十年間における防衛庁所管公益法人への就任状況」、これを見ておりますと、十年間で百六十名の方が公益法人、つまり外郭団体に再就職をされている。これを見ておわかりのように、下を見ていただくとわかりますが、自衛官と事務官が半々です。ですから、先ほど来申し上げておりますように、内局の人々はかなり公益法人に行っているわけです。  したがいまして、内局がさっき数字が出てこなかったというのも一つはこの辺にあると思いますけれども、公益法人もやはりその審査の対象にしなければ、これは意味がないと思います。  長官、今度、政務次官じゃなくて、長官にお答えをいただきたい。つまり、五年間影響があったのは、企業ばかりではなくて公益法人も影響があると思うんです。そういった意味で、公益法人、外郭団体も対象にすべきと思いますが、いかがでしょうか。
  167. 瓦力

    ○瓦国務大臣 お答えいたします。  自衛隊法第六十二条等の再就職手続は、自衛隊員の営利企業への再就職を幅広く審査にかけることで、在職中の地位や職権を利用して特定の営利企業に便宜を与えるといった弊害を防止する等により、適正な再就職を可能にするものでございます。自衛隊法第六十二条等の再就職手続でございます。  また、今お尋ねの公益法人についてでございますが、営利を目的とする企業でないために、この再就職手続の対象外となっております。これは一般職公務員についても同様であると承知をいたしております。  公益法人の健全かつ継続的な管理運営のため、その理事のうち、所管する官庁の出身者が占める割合については、公益法人の設立許可及び指導監督基準、これは閣議決定でございますが、ここにおきまして理事現在数の三分の一以下とするよう定められておるわけでございます。現在、防衛庁所管の公益法人につきましても、その基準を達成しているところでございます。  なお、委員お示しの公益法人でございますが、実は、それぞれ、これらのお世話をするに至りましては、公益法人は、率直に言いまして資金に乏しい団体でもございますから、多分にして、その報酬また給与につきましては、ない中で奉仕的作業としてやっておる分野もございます。この分野は私は防衛庁、自衛隊には数多く見受けておるわけでございますので、今委員指摘のようなことも、質問としてありますれば、これらの法人につきましても、防衛庁、私は天下りという言葉は使いたくございませんが、そういった専門的な知識、知見を活用して、あるいは防衛出動につきまして広く国民に理解を求める運動等をしておる方々の処遇につきましても、どういうぐあいになっておるかを、もし御必要とあればお示しをさせていただいても構わないと思います。
  168. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 長官、六ページをごらんいただきたいと思います。六ページの上から五行目ぐらい、例えば平成六年度であれば第五位に財団法人防衛技術協会五億三千四百万円と入っています。それから、この防衛技術協会は、平成七年度、八年度、九年度、十年度、約五億円ぐらいの受注があるんです、技術研究本部から。この前のページをごらんいただければわかるように、財団法人防衛技術協会、十六番ですが、十年間で九名天下りが行っております。この九名のうち八名は事務官です。つまり、内局の事務官が八名天下りをして、今公益性のことをおっしゃいましたが、五億円も、防衛庁の技術研究本部から防衛技術協会はこれだけ仕事を得ているのです。これは公益性じゃないのじゃないですか。これは、私が知っている限りではいわゆる労務借り上げです。労務借り上げというのは、今までも国会でも審議がされておりますが、例えば多いときには一人一日十万円の日当で、実は防衛庁が民間から労務借り上げをしている。ところが、民間だけじゃない、財団法人、これは公益法人から。そして、この防衛技術協会のかなりの役員は技術研究本部からの天下りの人です。ですから、私は、公益法人も入れなければこれは公平性が出てこない、透明性が出てこないと思いますが、どうですか。ちゃんとこれは数字に出ているわけです。五億円ぐらいとっているんです、毎年。長官、お願いします。
  169. 依田智治

    ○依田政務次官 この技術協会というのは、調本等から委託を受けて技術的な面でアシストするということを主としてやっておりまして、やはりその道の、内局の人も若干いますが、主として調本等経験の技術者がそこに入っている。そして、本来、公務員の定数として技本等がふえればもっと多数の人件費等も要るわけですが、こういう技術協会等でそれをアシストしてやっておる、こういう性格のものでございます。
  170. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 長官、答えてください。防衛技術協会は、これだけの実は受注をして利益を上げているわけですね。それで、ここに天下りが相当行っている。これは、やはり公益法人も審査の対象にすべきじゃないですか。
  171. 瓦力

    ○瓦国務大臣 今御質問の点につきましては、いわゆる公益法人としての防衛技術協会でございますか、これにつきまして、ある面では人事体系でありますとか、それらにつきまして従来から横とのバランスの問題もありましょうから、承りますが、私、今いかなる状況にあるかをもう少し研究させていただきます。
  172. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 いや、防衛技術協会の中身じゃなくて、実際にこれだけ受注をした公益法人に天下りがこれだけ出ていて、そして公益法人であって、この公益法人が審査の対象になっていないのはおかしいということを言っているわけです。  それについて、公益法人も審査の対象——しかも、今の規定の中にある、五年間影響のあった営利企業というのが今までの規定ですけれども、五年間に、もろ影響のあった関係がこの技術研究本部と防衛技術協会の中にあるわけです。つまり、防衛技術協会は技術研究本部から仕事をとっている、そしてその技術研究本部から天下りが実際に行っているわけですから、非常に直接的な関係があるわけです。直接的な関係があるところは、営利企業でなくても、公益法人であっても当然審査の対象にすべきではないかという、これは政治判断の問題、それを聞いているわけです。長官、答えてください。
  173. 瓦力

    ○瓦国務大臣 先ほども答弁させていただきましたが、公益法人につきましては、営利を目的とする企業ではございませんので、再就職手続の対象外となっております。これは一般職公務員についても同様であると承知をいたしております。  公益法人の健全かつ継続的な管理運営のため、その理事のうち、所管する官庁の出身者が占める割合につきましては、公益法人の設立許可及び指導監督基準、これは閣議決定におきまして、理事現在数の三分の一以下とするよう定められておるわけでございます。現在、防衛庁所管の公益法人につきましても、その基準を達成しているところでございます。
  174. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 理事の数の問題ではないわけで、実際に仕事をとっているわけで、しかもその仕事内容が、技術研究本部のいわば下請とまでいかずとも、実は労務借り上げでこれは相当の職員が、防衛技術協会の職員がいろいろ検査なんかをやっているわけです、技術研究本部に行って。労務借り上げですね。  そもそも、労務借り上げというものが実際に公益法人から行われているわけですから、であるならば、理事の数の問題ではなくて、仕事と人事の関係です。天下りの問題というのは仕事と権限と人事の関係ですから、であるならば、理事の割合ではなくて、実際に契約をとっているわけですから、公益法人もその対象にすべきではないかということを申し上げているのです。
  175. 瓦力

    ○瓦国務大臣 御指摘のことを踏まえまして、調査をしてみるといいますか、調べてみたいと思います。
  176. 西川太一郎

    ○西川政務次官 藤田先生、先ほど来から、公益法人でございまして、癒着という御心配は、利益を目的としていないものですから、まず頭から私ども考えておらないということを大臣が申し上げるわけですけれども、具体的に言うと、私ども過去に防衛技術協会に九人ほどの方々を調べてみましたけれども、俸給は月額二万円でございますとか、それから大体ずっと二万円の月額でこの職に当たっていただいているという事実がまずございます。  それから、退職をして、こうした者につきましては、どだい内局は十分の一ほどの数しかおらないという事実もございまして、退職金のみならず給与も支給されていないというケースも間々あるわけでございます、特に公益法人でございますので。  したがいまして、御心配のようなことはないということでお答えをしているわけでございますので、御了解いただきたいと思っております。
  177. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 防衛技術協会の場合には、理事の数よりも、つまり内局から協会の役員で行った人よりも、実際に検査に通っているいわゆる職員の人が相当おるのです、防衛技術協会からこの技術研究本部に。ですから、労務借り上げの数が相当多いのです。月額二万円とかいうのじゃなくて、労務借り上げですから日当幾らのような計算で、相当多くの職員が技術研究本部に労務借り上げで行って仕事をしている、検査等々。  ですから、それは実際お調べになれば、理事とは別に相当数の防衛技術協会の方々が労務借り上げで行っているというのは、去年私が野呂田長官の時代に質問をして、実際にそれだけ労務借り上げがあるということは認めていらっしゃる。それから、当時の装備局長だったろうと思いますが、労務借り上げの日当の平均額が一日十万円というのも認めているのです。この防衛技術協会の場合にはそれほど高くはないと思いますが、これは国会のこの場で、労務借り上げ一人一日平均十万円と認めておるわけです。  例えば、この技術研究本部の場合には、技術研究本部の職員全体の一年間の給与に対して、労務借り上げの割合というのは、私うろ覚えですが、たしか五対三ぐらいの、そのぐらい労務借り上げで実際に技術研究本部はやっているのです。  ですから、理事の数というのじゃなくて、実際に防衛技術協会がこれだけ仕事をとっているのです、人を貸しているのですから。ですから、私は、その対象にすべきだと。理事の数で、理事の月々二万円というのはそれとは別の次元で、実際に人を貸してお金を取っているのですよ、この協会は。ですから対象にすべきじゃないのですかと、一般論として申し上げているわけです。長官
  178. 依田智治

    ○依田政務次官 お答えさせていただきます。  今十万という数字が出ておりましたが、これは全部借り上げている数字を割った場合に十万になるということで、個々が十万というわけではないということでございます。
  179. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 長官質問に答えてください。  要は、公益法人も対象にすべきではないか。つまり、五年間、退職前に影響があった公益法人等に関しては、民間、つまり営利企業でなくても対象にすべきではないかということを聞いているのです。十万円が平均値だというのはよく存じ上げています。
  180. 瓦力

    ○瓦国務大臣 今委員からの御質問につきましては、私も存分に承知をしている分野でないものもありますから、承りまして、さらに部内で整理をいたしましてから御返事をさせていただきます。
  181. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 整理をして御返事ではなくて、しっかりと調査をして、そして透明性と公平性の向上にしっかりと対応していただいて答えていただくということを、もう一度はっきりおっしゃっていただきたい。
  182. 瓦力

    ○瓦国務大臣 御指摘の趣旨で御返事を申し上げておるものでございますから、透明性の確保でありますとか将来どうあるべきかにつきましての問題指摘であるというぐあいに理解をいたしまして、それは検討をして御返事をいたします、こう申し上げておるところであります。
  183. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 時間がありませんので、この天下りと関連をして、防衛庁の現役の方々とOBの方々との交流会について質問をさせていただきます。  これは、私は去年も取り上げたわけでございますが、そして、やはり防衛庁の方に資料請求をいたしましたところ、これは昨年の秋でございますけれども、防衛庁の方から資料で得たものでは、OB会といったものが大体五十以上あるということが資料として出てきております。実際にはもっとはるかに多いのではないかというふうに理解をしておりますが、その一部をこの十二ページと十三ページにつづったわけでございますけれども、この資料を見ておりましてかなりはっきりしておりますことは、いわゆる単なる懇親だけではなくていろいろな、例えば研究会が行われている。  例えば、昨年も指摘をした、これもたまたま技術研究本部でございますが、伊豆の長岡温泉で一泊でこの勉強会をやった。しかも、単なる懇親会ではなくて、この技術研究本部の中の一年間の事業、それから計画、項目についても資料として相当厚手のものが配られておる、そういった中で行われた研究会でございます。  これは去年も、別の委員会でございますが、国会説明をいたしましたが、長官見られるかどうかわかりませんが、概況説明資料といったものを長岡温泉で現役側の方が配って、そしてOBの方々を呼んで、この第五研究所というところですけれども、どういう予算で一年間やっていくか、それからどういう研究試作を行っていくか、それから各部署の人員配置等について説明をしながら、実は交流会をやっておった。  この交流会は、当然のことながら、OB側は天下りをした方々が参加をされておられる。そして、その天下りをされた方々と現役の方々が交流をしながら、頻繁にこういった会合を持っておられる。これも、資料請求に対して、防衛庁の方から出てきたのは五十程度でございますが、実際にはもっとあるのだろうと思うのです。  こういう交流がなされているということに対して、まず長官、どういうふうにお感じになるか、お答えをいただきたいと思います。
  184. 瓦力

    ○瓦国務大臣 お答えいたします。  研究内容でございますとか予算の概要について意見交換という場で紹介をするということは、企業との癒着にすべて当たるとは私は思いませんが、今御指摘のように、個別事業にかかわる予算額を説明するということに至りましては、これはまことに遺憾でございまして、これは慎重に扱ってもらわなきゃ困る問題でございます。  今後、研究会を開催する場合には、予算案説明について概要にとどめることを前提に実施するということを私は申し上げたいわけでございまして、かような、今委員が御指摘のように、どうも何々温泉でこういうことがあるといいますと、非常に癒着部分というのがどうしても残りますので、そういう疑惑といいますか、そういうことが防衛庁あるいはそれぞれの分野におきまして誤解を生むことになるわけでございますから、私は、委員指摘のような形ではない形といいますか、そういうことによって信頼を増していかなきゃならぬと思っております。  今、企業との癒着構造の温床になっておるのではないかという御指摘ではございますが、直ちに企業との癒着に当たるかどうかという問題は、私は遺憾とするところもありますが、さらに、個々の問題につきましてはまさに慎重に取り扱うべきであるということで、今後姿勢を正していくように強く指導してまいりたいと思っております。
  185. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 その姿勢を正すという一環でございますが、これは昨年の十二月ですか、海幕の航海会という、自衛官が宴会に出席したということに関して、防衛庁長官の方でしかるべき措置をとる、徹底調査を表明したということがございますが、どういう調査をしてどういう対応をされたのか、お答えをいただきたいと思います。
  186. 依田智治

    ○依田政務次官 航海会というのは、海上幕僚監部の関係で、航海機器に関連するのに担当したOBとか現役等が懇親の意味でやっておるということで、三十名ぐらいの会員じゃないかというように承知しております。これ自体は、OBと現役が情報を交換し、互いに防衛基盤の強化、整備を図る、一般論としては結構なんですが、今回の場合、たまたまよく調べてみましたら、翌日ゴルフに行ったとか、その中にOB以外の業者が入っておったということが判明しましたので、少なくとも内規としても倫理規程によって、そういうことは一切避けるべきだ、業者との飲食等は避けるべき、しかし、会費等によって、どうしても有益でやるという場合は届け出てやれということになっておりましたが、届けもなかったということで、当時これは、ちょっと向こうに置いてあるんですが、関係者十数人を処分したということでございます。
  187. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今度の四月からですか、自衛隊員の倫理法というものが成立するというふうに聞いておりますけれども、今政務次官の方からお話がありましたが、例えばOBではない業者を入れないとか、それから届け出の徹底とかいうことが言われております。今度の四月からどう倫理法が変わるのか、それについて長官からお答えをいただきたいと思います。
  188. 瓦力

    ○瓦国務大臣 その前に、委員から私に対する質問として、どういう措置を講じたかという質問がございましたのでお答えをいたしますが、各機関の服務担当官を集めまして、航海会事案の概要及び防衛庁職員倫理規程との関係等を説明いたしまして、再発防止について所属機関等の職員に徹底するよう指示したわけでございます。また、各自衛隊におきましても、服務指導会議等を実施いたしまして、各種事案の再発防止の徹底を図ったところでございます。  その後の指示につきましては、以上の措置を講じたことを申し述べさせていただきます。
  189. 依田智治

    ○依田政務次官 倫理法というのは、これから株の取引とかその他やるわけでございますが、防衛庁職員倫理規程というのが現にございまして、これによりますれば、「関係業者等との接触に関する禁止事項」というのがありまして、一、職員は関係業者との間で次に掲げる行為をしてはならないということで、接待を受けること、会食(パーティーを含む。)をすること、遊技、スポーツ等、また旅行をすること、こういうのがありまして、その他として、対価の支払いを伴う会食、職務として必要な会議等における会食等で、例外として服務管理官に事前に申請してその承認を得たものはよろしい、こういうことになっているわけです。  今回の航海会についてはこれを履行していなかったということで、内部規律違反、こういうことでございます。
  190. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 長官、よろしいですか。今伺っていまして、たまたまとか、たまたま今回の場合には翌日ゴルフをしたとかいう、私はその程度の問題じゃないと思うんですね。つまり、一部しか資料が出てきておりませんけれども、これだけ会があって、そしてあるときには内部資料のようなものまで使って勉強会、交流会もやっておる。そして、会費制だといいながら、実はいろいろな付加価値を伴う会合も実際に行われている。  これは、ただ単に全部を把握していないとかたまたまとかいった問題ではなくて、せっかく長官、御自身、「なだしお」の事件以来再び長官として防衛庁の改革に尽力をされておられる。思い切って変えていくためには、むしろ積極的に、どういった実態であるのかみずから調査をして、つまり、把握をしていないとか、わからないというんじゃなくて、自分から積極的に調査をされて実態を把握されて、そして予防外交的に、これは単なる倫理規程じゃなくて、予防外交というのは、起こり得るべきところ、疑わしいところは事前にチェックをしていくということがやはり防衛の基本ではないかとそういう意味では思います。そういう意味でも、例えばこの倫理規程にも、第七条「自省自戒と率先垂範をし、併せて相互の注意喚起を促さなければならない。」なんというのがあるんですが、実際にそういうふうに機能していないわけですね。  ですから、これは全部調査をされて、単なる言葉だけの訓戒というようなことではなくて、実際に対応ができるような、そういう思い切った、まず一つは、実態調査をされて、単に事件が起きた後に処分というのじゃなくて、実態調査をしっかりする。交流会についてみずから積極的に把握をする、そして、いわゆる再就職、天下りについてもみずから積極的に調査をされて把握をされる、そういった姿勢で臨んでいただきたいと思うんですが、どうですか。そういう決意を長官の方からお言葉としてお聞きしたいと思いますが、いかがでしょう。
  191. 瓦力

    ○瓦国務大臣 藤田委員からの御質問、並びに防衛庁、自衛隊に対する期待をまた込めてのお話でございますが、大変強い願望がございますし、私も、二十八万人防衛庁、自衛隊の職員がおりますが、彼らには、規律を重んじながら、また公明にして透明性の高い、信頼できる、そういう組織にならなければならないと常に言っておるところでございます。  私は、決して委員の前に甘くこれらを申し上げるものでもありませんが、ある面ではよく努力をしておる集団だと思っておりますし、また、他の方々との交流というものも旺盛にして、何が今防衛庁に求められておるのか、また自衛官は、どういう知見を通じてそれがより精強な自衛隊になり、国民信頼を得るのかということにつきましては、それぞれの分野で接触することは、私は結構なことだと思っておるわけでございます。  ただ、委員が、これらの中で、特により透明度を増し、姿勢を正しながら信頼できるものに仕上げてほしいという強い熱意に対しましては、私も同様に考えておりますので、いよいよ五十年という大きな節目を自衛隊も迎えるわけでございますから、この五十年の節目に、より国民から信頼をされる、こういう集団たるべき努力を一層続けなければならない、こう念じておりますので、私なりにさらに調べ、厳しく対処をしていくものは厳しく対処をしてまいりたい。一日も早く、信頼に足る自衛隊であるということで、藤田委員からもお褒めをいただくような努力をしてまいりたいと私は思っております。
  192. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ありがとうございます。  それでは具体的に、したがって、天下りの実態、その中には公益法人を審査の対象に入れるということと三佐以上、それからこの交流会の実態について、長官の方から調査をしていただく、そして答えていただく。つまり、把握をしていないということじゃなくて、長官みずからの方から調査を指示していただくということはいかがですか。
  193. 瓦力

    ○瓦国務大臣 藤田委員から幾つかの御質問をちょうだいしておりましたが、大変広い分野にわたる質問でございますので、実は、ちょうだいしたときは、相当に分厚い、電話帳くらいのものを用意して検討したわけでございますが、きょうはいずれも的外れでございまして、いかに藤田委員からの質問はその時折に手厳しいかということを承知をするわけでございますが、今、具体的に幾つかの質問についての要領をまとめて次の委員会にお答えするようにということでございますから、それを受けとめてお答えをさせていただきたいと思います。
  194. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 あと数分残っておりますので、もう一つ質問したいと思いますが、一昨年来、これは野呂田前長官質問してまいったことでございますが、いわゆる航空自衛隊の初等練習機の選定問題についてお聞きをしたいと思います。  この件は、一昨年、当時、富士重工に選定が決定をしたわけでございますけれども、その選定過程についていろいろな不透明な問題、それから、価格がほぼ同じ初等練習機が、海上自衛隊で実は今使っておるわけですが、ほぼ同じものが半額以下の価格で航空自衛隊の方では選定が実質内定をしてしまった。その、なぜ半分以下になっているかということについても、説明が非常に不透明な形で来ておるわけでございます。  そして一方、富士重工自身が、一昨年の十二月から昨年の十二月まで一年間、契約停止ということになりまして、この選定問題については、昨年、野呂田当時の防衛庁長官が、選定プロセスを白紙にする、そして新たにことしから、あるいは去年の十二月から新しい落札方式に変わって、選定のプロセスが始まっておると聞いております。そして、ことしの一月にも説明会が行われて、早ければ四月にも本格的な説明会が開かれるというふうに聞いておりますけれども、どこがどういうふうに変わって新しいやり方で今進行しているのかということについて、お答えをいただきたいと思います。
  195. 依田智治

    ○依田政務次官 簡単に御説明申し上げます。  これまでは、予算要求する前に一応資料等を集め、機種を選定してやるという方式、随契によって処理するという方式をとっていたのですが、富士重工等の、これは別の機種の飛行機ですが、事件もあったということで、一年間、この初等練習機については延ばした。  今度延ばして、これは、通常のF15とか、相当高度な運用を要するようなジェット機でございませんで、最初に航空自衛隊の操縦士が訓練する飛行機ですから、できるだけ公開して、そして透明性を発揮した入札方法にしようということで、先ほど先生から御指摘がありましたような総合評価落札方式ということで、まず各社に呼びかけていろいろ基礎資料をとっていただき、今いろいろ手続を進めておるという状況でございます。予算が決まった段階で、それらに基づいて今度は、各社にさらに具体的な基準等を持って透明性を発揮した資料等を出して、そしてこの要求性能等でやってくれるところはどうぞ出てくださいということで呼びかけて、一般競争入札にしよう、こういうことで今準備を進めている、こういう段階でございます。
  196. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 非常に今度重要なことは、いわゆる空自がやるのではなくて調本が今度は担当するということの確認と、それから原価計算と契約が別組織になるということ、これも大きな点だろうと思います。原価計算と契約が別組織になること、それから調達本部が今度は担当するんだと。それから、概算要求で二機で大体七億四千万円ぐらいですか、というふうに今度下がっておりますけれども、それはどういう経緯なのか、その確認と経緯について答えていただきたいと思います。
  197. 依田智治

    ○依田政務次官 契約と原価計算分離、これは新たな省庁再編、来年スタートしてから発足するということでございます。従来から調本等で資料を集め、契約等をしておるという状況でございます。
  198. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 調本がやるんですか。
  199. 依田智治

    ○依田政務次官 契約は調本がやるというように承知しております。
  200. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ですから、説明会それから入札そのもの、今までは例えば説明会は空自がやっていましたが、今度はどうなるんですか。一月の説明会はどうしたんですか。
  201. 依田智治

    ○依田政務次官 説明会等も調本がやるというように承知しております。
  202. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 調本が一月にやったんですか、説明会。
  203. 依田智治

    ○依田政務次官 正確を期しますと、資料招請というのをやったわけですが、これは空幕の方でやりまして、これから入札ということになりますと調本でやる、こういうことになります。
  204. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そうしますと、おととしの選定方式と今回の選定方式と違っている点をもう一度言ってください、長官
  205. 依田智治

    ○依田政務次官 私もそれほど専門ではありませんので、これをちょっと御説明しますと、これまでは、予算要求をする前に機種を選定して、そしていよいよ予算等が通って実行する段階では随契ということでやらせていただく。そのかわり、予算要求に至るまでに防衛庁内部としてもあらゆる資料をとり、機種選定委員会等をやって公正に機種を決定する、こういうことにしておったわけでございます。  今度、現在やっているものは、資料を招請して、そしてそれに応じたものに対して我々としてしっかりとした資料をつくって、そして予算が通った暁に今度は一般競争入札でやる、こういうことでございます。
  206. 島村宜伸

    島村委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。(藤田(幸)委員「まだ紙が来ていません、ここに」と呼ぶ)時間です。(藤田(幸)委員長官、今度は」と呼ぶ)いや、藤田君、発言を許可しておりません。時間です。  次に、大森猛君。(藤田(幸)委員「答弁が長かったのです、紙が来ていませんよ」と呼ぶ)発言を許可しておりません。時間を経過しましたので交代してください。時間は時間ですから。(藤田(幸)委員「いや、だって紙が今来たのですよ、委員長」と呼ぶ)では、一言発言して、やめてください。
  207. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 つまり今度は、長官あるいは政務次官でも結構ですが……
  208. 島村宜伸

    島村委員長 質問はやめてください。発言をしてやめてください。答弁の時間がありません。
  209. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 国として、契約ですから、入札ですから、しかも国際入札ですから、国としての責任が——初めてこの機種選定に関して日本の防衛庁として行われる、画期的なことでございますので、その意味をはっきりと認識をして、国際的な公約を守っていただく方式であるということを確認していただきたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  210. 島村宜伸

    島村委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、大森猛君。
  211. 大森猛

    大森委員 日本共産党の大森猛です。  私は、まず第一に、日産のいわゆるリバイバル計画、大リストラ計画について質問をしたいと思います。  昨年の秋にこのリバイバル計画が発表されて以降、今日大きな社会問題になっております。なぜこれほどの大きな社会問題になっているか、これが日本の産業史上かつてない規模の大リストラ計画になっているからであります。五つの工場の閉鎖、販売部門の大幅削減、宇宙航空事業の売却等々の規模縮小で、現在いる十四万八千人のうち実質三万五千人を退職させる空前のリストラ計画であります。  今、この瞬間にも、通勤不可能な工場に異動するか、移転するか、あるいは退職をするか、真剣に悩んでいる労働者が何百、何千といるような状況であります。  あわせて、下請や取引の企業を千百四十五社から六百社に減らす、設備とサービス関係六千九百社を半分以下の三千四百社に削減をする、コストも三年間で二割ダウンを図る計画になっております。  こうした整理縮小の計画が下請企業の経営と従業員の雇用に深刻な打撃を与えている。関連企業の従業員やその家族を含めると、その影響は約二百万に及ぶのじゃないか、こうまで言われているわけであります。したがって、今後の日本の経済にも、あるいは現下の深刻な不況下で生き残りをかける企業のあり方にも、深刻な影響を与える。  そういう意味で、財界からもこの問題では、例えば関経連の会長は、社会的責任の中で利益を追求すべきだ、隣の家を壊してまで火を消すようなやり方は受け入れられない、こういう批判まで財界から出されているような状況であります。  十月二十日のニューヨーク・タイムズでは、青木官房長官の、日産は雇用問題など社会にもたらす影響で企業責任を忘れている、こういうコメントを報道し、そのことはエコノミスト誌でも、青木長官が不満を表明したと紹介をしております。  同じニューヨーク・タイムズの中では、小渕首相が雇用の影響について調査報告を指示した、こう言っておりますけれども青木長官、これは指示をされたかどうかということとあわせて、私も、日産の社会的責任、これは極めて大きいものがあると考えますけれども、改めて日産リバイバルプラン、この大リストラ計画についての青木長官の見解をお聞きしたいと思います。
  212. 青木幹雄

    青木国務大臣 お答えをいたします。  日産自動車のリバイバルプランが今後実行に移された場合には、日産自動車の下請企業や取引先企業はもとより、地域の労働者の雇用にも重大な影響を及ぼすおそれがあると認識をいたしております。  したがいまして、政府といたしましては、日産自動車や経営者団体に対して、従業員の雇用の安定や関連下請企業への配慮について最大限の努力を求めるとともに、雇用の安定等の面から必要な指導、援助を行うなど、雇用対策に万全を期してまいりたいと考えております。  今、議員から御指摘がございましたニューヨーク・タイムズの話でございますが、私が申し上げたのは、個別の経営判断に介入する立場にはありませんが、選択と集中という雇用や関連下請企業への影響についてできる限り対処していただくことが必要である、また、確かにリストラは必要であるけれども、それによって生ずるいろいろな失業の問題等についてはやはり社会的会社として大きな責任を持ってもらわなければならない、そういうことを申し上げたような次第でございます。
  213. 大森猛

    大森委員 労働大臣に指示をされたかどうか、いかがですか。
  214. 青木幹雄

    青木国務大臣 指示はいたしておりませんが、そういう指示をいたす前に、既に労働大臣としてはできる限りの対応をなさっておりますし、いろいろな場所でそういう発言もなさっておりますので、私として直接指示をする以前に、十分な対応を、労働大臣としてできるだけのことはなさっている、そういうふうに理解もいたしております。
  215. 大森猛

    大森委員 一企業の経営判断に介入しない、もっともな言葉でありますけれども、私は、これがもたらす社会的責任との関係からいっても、あるいは国内法にあるさまざまな下請関連あるいは労働法制、これらとの関係で本当にこの計画が妥当であるかどうか、そういうことは政府としてしっかり検証する必要があると思うのです。  深谷通産大臣も、これまでの商工委員会などでの我が党の質問に答えて、下請や雇用の問題についてはしっかり申し入れなどを行うけれども、一企業の経営判断には介入しない、こう言われているわけなんですが、先ほども申し上げましたように、こういうような日産のリバイバル計画がどういう影響をもたらすのか。大企業、多国籍企業の企業のあり方、こういう面からいっても、あるいはそういう身勝手なやり方を許さないというような点からいっても、こういういわば不介入の立場じゃなくて、しっかりとした検証をすべきだという点で、深谷通産大臣はどうでしょうか。
  216. 深谷隆司

    ○深谷国務大臣 自動車産業をめぐるさまざまな環境の変化の中で、日産自動車が何とか再建をしてきちっとした土台をつくっていこうという、いわば、先ほどもありましたけれども、集中と選択という経営判断に基づいてのこのたびの計画は、恐らく相当苦渋に満ちたものであるというふうにまず私どもは理解をいたします。  ただいまもお話がありましたように、本来、個々の企業の問題に通産省が介入するということはできないことでありますが、しかし、それによってもたらされる、例えば雇用関係、下請関連企業への影響等々は極めて重要な課題でございますので、私どもといたしましても、日産自動車に対して、これらについては十分な配慮をするようにという指示をいたしました。  同時に、これから起こるでありましょう下請関連企業に対しては、通産省としてはあらゆる対応を惜しまない覚悟でございます。
  217. 大森猛

    大森委員 この日産リバイバル計画というのは、単なる日産の再建計画にとどまらない、あるいは企業の社会的責任だけにとどまらない、多国籍企業としての活動のあり方、ここにもかかわる重要な問題であると思うのです。  大体、日産は既にフランスの多国籍企業ルノーの支配下にある。ルノーが六千四百三十億円で買収している、ヨーロッパではこういうぐあいに報道されているわけなんですが、今回の計画の策定、決定に当たっても、ルノーから最高執行責任者であるカルロス・ゴーン氏以下数十人の役員が乗り込み、計画を決定した。計画の中身も、ルノーによるルノーのための日産下請企業化、こういうぐあいに言われる状況であります。  実際、計画は、生産、販売、研究など各部門、ルノーにとって必要なところは残してあとは切り捨てる、これはそういう計画になっているわけであります。  多国籍企業の活動についても、今日、単なる社会的責任にとどまらない国際的な制約もあるわけですね。  一九七七年、ILO理事会は、多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言、こういうものを採択いたしました。ここでは、多国籍企業の規範、国際的な規範、活動の規範あるいはルールについて明確に述べているわけであります。この三者宣言の中で、「雇用の安定」という項目の二十六項、この中ではこういうぐあいに言っております。   多国籍企業は、雇用に重大な影響を及ぼすような事業活動の変更を検討するに当っては、悪影響を最大限に緩和するために、共同して検討を行いうるよう、適当な政府当局、当該企業が雇用する労働者及びその団体の代表に対して、かかる変更についての合理的な予告を行うべきである。 こういうぐあいに多国籍企業の活動のあり方、規範を示しているわけであります。  この点で、それでは労働大臣、ここで言われております「かかる変更についての合理的な予告」、これは今回、ルノー日産社から日本政府に対してあったでしょうか。
  218. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 実は、日産自動車によるリバイバルプランの発表がございまして、私、着任早々でございましたが、二万一千人という数字を聞きまして、これは企業の社会的責任をしっかり考えなきゃいけないなと。報告がある前に日産自動車の副社長を招致いたしまして、私の方から労働省としての意向を正確に伝えました。
  219. 大森猛

    大森委員 このILOの理事会の三者宣言、これに規定されているような合理的な予告、こういうものはなかったということははっきりしたと思うのです。  大体、ルノーといえば、つい最近までフランスの国営企業、今でも株式の四四%を持っている筆頭株主、そういう意味で準国営企業と言ってもいいわけなんですが、そういう意味で、こういう三者宣言などで確認された国際的な規範、ルール、これをきちんと守るべきだということを、ルノー日産社に対して、政府としてはっきり言うべきことは言うべきだということを私は強く要求しておきたいと思います。  今回のリストラ計画、こういう手続すら政府に対しても行われなかった。加えて、労働組合に対しても、日産には労働協約に労使協議制があるにもかかわらず、当該労働組合には何の相談もなく、一方的に発表された。そして重大なことは、こういうルノーのやり方というのは今回が初めてじゃない、いわば前科があるということであります。  一九九七年、ルノーのベルギー工場の閉鎖の問題であります。これは、スペインの方にベルギー工場を移転する、どうもベルギー工場は社会保障の負担が高いとか、そういう理由でもって移転する計画で、工場の閉鎖計画をやはり突然発表した。このときも責任者はカルロス・ゴーン氏であったわけであります。  このルノーのベルギー・ビルボールデ工場閉鎖計画が発表されたときにベルギー政府はどうしたか。当時のデハーネ首相は直ちに欧州委員会に書簡を送って、同国政府、欧州委員会などが、こんな突然の工場閉鎖に対して何らかの措置をとるべきだと強い要求をした。あるいはその後、欧州委員会あるいは欧州議会、ここでもルノー批判決議が行われるとか、欧州委員会委員長がルノーを批判する見解を発表するとか、もう民間企業への不介入どころか、鋭くこれに抗議する、批判する、そういう態度を明確にしたわけであります。  こういう点とか、あるいは、ルノー日産の計画が発表された直後に、イギリスの日産の工場に対して三百六十億円設備投資を行うことを発表いたしました、ルノー日産ですね。これは、イギリスのブレア労働党政権が多国籍企業を規制するその立場の、指導との絡みでやはりこういうことをやっているわけですね。イギリスでは、こういう形で三百六十億円の新たな設備投資を行い、雇用を拡大する一方で、介入しないという日本政府では、こういうような大規模なリストラ計画がやられているわけであります。その結果、地域の経済、下請切り捨て、あるいは労働問題、雇用問題、こういう政府の態度のもとで今深刻な事態が起こっているんだ、こういう関係にこの問題はあるんだということも申し上げておきたいと思います。  そこで、その中で、私は、さまざまに引き起こされている問題の一つ、労働問題、これについてお聞きをしたいと思います。  労働大臣は、ことしの一月、村山工場を視察されました。その際、リバイバルプランにより日産の労働者がどのような働き方をすることになるのか、こういう点で何か具体的なことをお聞きになったでしょうか。もしあったとすれば、計画による年間の総労働時間、これはどのぐらいになるのか、こういう二点について簡潔にお答えいただきたいと思います。
  220. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 リバイバルプランの内容につきまして、私が労働省に副社長を招致したときにその内容について説明がございました。しかし、今先生がおっしゃるような労働時間等々についての言及はございませんでした。ただ、私としては、まず日産内部で労働組合と十二分に協議するように、こう申し上げまして、その際、今後のスケジュールとして、ことしの三月まで三回にわたりまして個々の従業員とどうするか話をする、そうしてことしの五月から具体的にスタートいたしたい、こういうことは私ども説明がございました。  かつ、日産内部だけの問題じゃございませんで、下請関係、関連企業、地域経済に大変な影響を与えますので、本年一月十一日に私が武蔵村山へ参りまして、まず工場長からそういう具体的な計画について十二分に意向をお伺いいたしました。労働組合としっかり協議するように、これが第一であります。それから、武蔵村山市長及び議会の代表者とも意見の交換を行いました。また、市の商工会長、それから日産村山工場の協力企業、取引先企業の方々ともお会いいたしました。  この席で私からは、労働省が現在用意している雇用対策について十分説明した上で、これらの対策を活用する等により、あらかじめ日産村山工場の閉鎖に伴う対策を考えてほしいと私からお願いをいたし、かつ今後ともいかなる相談にも応ずるということを皆さんに申し上げてまいりました。  今、具体的に工場内で進行中でございまして、いずれ近いうちにこれらの報告があろうかと考えております。以上です。
  221. 大森猛

    大森委員 労働大臣が日産の視察に行かれて労働者の代表とお話をなさらなかったような感じで今御答弁を聞いたんですが、私がお聞きしたことには何一つお答えになりませんでした。どういう働き方になるのか。この点で、これはカルロス・ゴーン氏が最初記者会見の席上でかなり詳しく彼自身説明をしているわけですね。  それによると、これまでの国内の工場での生産能力の算出の基礎となった稼働時間は三千六百六十時間。これを、今後は稼働時間四千四百時間として計算をする。そこから見ると、現在の設備の稼働率は五三%、低い率になるわけですね。したがって、設備、人員を削減するなどという説明をしているわけです。  その中身については、四千四百時間とは、完全稼働のツーシフトという意味で、例えば朝勤務に三十分、夕勤務に一時間、月に六シフトを加えるということで、具体的に言うと、これまでも恒常的な残業はあったわけでありますけれども、この計画によると、早番に毎日三十分、それから遅番で毎日一時間の残業、加えて月平均三日の休日出勤ということになるわけであります。これによって、つまり労働者の残業を大いにふやして稼働率を高める、こういう計画になっているわけであります。こうすると平均年間の残業時間はどのぐらいになるか、これはおのずから出てくるわけなんですが、四百三十八時間であります。これは会社も事実上その中身は認めている。  もう一つは、全日産労組の方も労使協議会で、この計画では組合員一人当たりの年間総労働時間は二千二百時間から二千三百時間になる、千八百時間を超えて極めて負荷の高い水準だと、問題点を全日産労組も指摘をしているわけですね。  ですから、こういう四百三十八時間というような大変な残業時間、年間の総労働時間が二千三百時間というような、そういう大変な労働時間を前提にして今後の生産計画を組んでいるということで、労働大臣は、さっきおっしゃらなかったんですが、日産視察の後、日産を大企業のリストラのモデルケースにしたい、新聞報道によればこんなこともおっしゃったそうですが、こんな働かせ方を念頭に入れて、もしこれをモデルケースにするとしたら、これは大変な問題だと思うんです。この点、労働大臣、いかがですか。
  222. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 今の労働時間と雇用条件の問題につきましては、日産自動車の労使相互間で真剣に議論をしていただきたい。  一般的に、個別企業につきまして、法定労働条件を遵守した上で、雇用との関係で労働時間などの労働条件をどのような水準とするかについては、まず第一に、関係労使の話し合いを見守り、その結果を尊重したいというのが我が省の態度でございまして、ただいまは、実は日産内部の労使間の円満な交渉結果を注視いたしているところであります。
  223. 大森猛

    大森委員 いきなり労使間の協議を言うのではなくて、労働大臣であれば、政府の掲げている国際公約、年間労働時間の目標、これについて明確にまず言うべきじゃないですか。国際的にも長時間労働が日本は批判され、時間短縮の努力を、国際公約を日本政府は行った。一九九五年十二月の時短推進計画では、来年、二〇〇一年三月までに千八百時間を達成する、こういう計画になっているわけであります。  今回の日産の計画、政府の掲げる年間総労働時間の目標を大幅に上回る、そういう労働時間を前提にして人員削減を今やっているわけですよ。こういうことについて、こういうやり方が大臣は好ましいやり方だとお思いですか。  政府自身の目標をはるかに上回る、そういう年間総労働時間で計画を立てて、前提にして、それをもとに今人員削減計画をやっているわけであります。そういうやり方を労働大臣はモデルケースと言うのであれば、こういうやり方が好ましいとおっしゃるんですか。好ましいか、好ましくないか。
  224. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 私どもとしては、年間千八百時間の実現に向けて最大の努力をいたしているところで、そういう観点からも、労使間の交渉の結果を注意いたしているところであります。
  225. 大森猛

    大森委員 労働大臣、先ほど申し上げたような、こういうやり方が望ましいか。これは日産だけじゃないですよ。これでいいということになれば、どの企業もやりますよ。こういうやり方は好ましいか、好ましくないか、しっかり答えてください。
  226. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 私どもとしましては、一般的な基準というものをはっきりいたしておりますので、これに抵触するような結果になればそれは好ましくありませんし、そのために私どもは、現在のいろいろな諸制度を通じて基準が守られるように最大の努力をいたしたい、こう考えています。
  227. 大森猛

    大森委員 千八百時間という基準、それに抵触するような中身であれば好ましくないとおっしゃったわけですが、となると、もしこういう二千二百あるいは二千三百という年間総労働時間をこのまま前提にして計画を進めることがあれば、労働大臣として、それは好ましくないとルノー日産社に対して言いますか。
  228. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 私としましては、労使間の協調、協議が一番前提でございまして、もしそういうことになれば、なぜそういう結果になったか、労働組合サイドの意見も十二分に聴取して、その後に判断をいたしたいと思っています。
  229. 大森猛

    大森委員 国際的な公約であるこの千八百時間は、昭和六十三年、一九八八年以来、一貫して一定の期間を定めてそれを追求してきたけれども、その都度達成できない、それから十数年たって改めて立てた計画も来年末になっているわけです。そういう中で、政府は、そうしたみずから立てた目標を断固守れということをやはりルノー日産社に対して言うべきだ、好ましくないということをはっきり申し入れを行うべきであります。  それで、四百三十八時間の時間外労働についても、これも同様であります。これは九八年労働基準法改正時に大変大きな争点の一つになりました。とにかく今回の改正案では残業時間の規制が青天井になるのではないかという指摘を私どもはしました。それに対して、労働省もるる説明を行いました。その結果、労働基準法の改正案の中に措置もとられたわけでありますけれども、こういう三十六条の規定が、残業時間の上限規制という点では青天井ではないかという指摘に対して、労働省はどのように答えたでしょうか。
  230. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 残業につきましては、今先生御指摘、おっしゃったとおり、三十六条並びに三十七条において規定がございます。一応時間の制限の基準も決まっており、労使間で決められるわけでありますが、これについて、私どもの一番大きな関心点は、残業手当がきちっと払われているかどうかという観点からきちっと規制をいたしております。
  231. 大森猛

    大森委員 全くとんでもない、ちんぷんかんぷんの答弁なんですが、私がお聞きしたのは、三十六条、残業の上限規制が青天井ではないかという指摘に対して、政府はどう答えたか。この点で、私の方から申し上げますと、日本共産党は百五十時間の上限時間を法律の中に設けるよう要求したわけでありますけれども政府の側は、大臣告示の形で法律上根拠があるものとしてガイドラインを示し、その上限を三百六十時間とする、こういうぐあいに言われたわけであります。  その際、労働省が本当に強調したのは、法律に基づく委任告示という形で労働大臣が定めますので法的効果は全く変わらない、こう大いに強調をされたわけであります。それが定められたのが三百六十時間。今回日産が時間外労働、会社が認めている四百三十八時間、三百六十時間をはるかに超える。これは法律上、法的効果が全く変わらないとする三百六十時間を大きく超えている、こういうことを前提にしていることも極めて問題だと思うわけであります。その点、いかがですか。
  232. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 ただいま御指摘のように、時間外労働の限度基準の範囲内で労使が協定をしてきちっとそれをやりましょう、その時間に対しては割り増し賃金を適正に支払わなければならないこと等について、集団指導等のそれを基準にいたしまして、私どもとしては違反の是正に全力を挙げる、こういうことでございます。
  233. 大森猛

    大森委員 委員長、ちょっと注意していただきたいのですが、私が質問していることに何で答えられないのですか。割り増し賃金のことを私は今聞いているんじゃないのです。政府が法律で決めたと同じぐらいに等しいそういう厳しい内容になっているという、三百六十時間を超える四百三十八時間の時間外労働を前提とするのは、率直に言えばこれは労基法違反の計画じゃないかということを言っているわけであります。  大臣、しっかり答弁してください。
  234. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 私どもとしましては、今先生御指摘のとおり、一年間で三百六十時間を基準にして行政指導をいたしております。したがいまして、先ほどモデルケースというようなことを申し上げましたけれども、この基準を守るよう私どもとしては慫慂いたしたい、こう考えております。
  235. 大森猛

    大森委員 一般的な話ではなく、今、ルノー日産社がこういう四百三十八時間という労基法違反に等しいような計画を立てている。ルノー日産社に対して、それは基準を超えるから是正しなさいと労働大臣が言うということでありますか。確認しておきたいと思います。
  236. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 先ほどお答えいたしましたけれども、日産の労使間でどのような協議が行われ、どのような結果をもたらすかということをまず第一に私は注視いたしたいと思っています。なぜこのようになったか、経営者サイドは何か、それを労働組合サイドは受けたのか受けなかったのか、受けたとすればいかなる理由か、その結論をまず第一に注視いたしたいと思います。それをもとにして、三百六十時間を基準にして私どもとしては主張をいたしたいな、こう思っております。
  237. 大森猛

    大森委員 三百六十時間を基準にして厳しく対処していくということをおっしゃいましたので、ぜひそのようにしていただきたいと思います。  これは日産のJMIU支部が計算をしているわけですが、こういう残業や休日出勤、これをやめれば工場閉鎖と人員削減は必要ない。残業、休日出勤の総労働時間を年間の所定労働時間で割れば、大体三千百五十三人新しい労働者が必要になってくるわけです。そうなると、こういう工場の閉鎖やあるいは人員の削減、これは必要でないということになるわけであります。  フランスでは御存じのように、二月一日から週三十五時間労働。千六百時間から千五百時間、そういう年間労働時間になっている。ルノー社も恐らく例外じゃない。ところが、ルノーによるルノーのための日産の下請企業化、そういう計画の中で、日本の労働者は二千数百時間も、それよりも八百時間、一千時間も多いような労働時間を強要される。私は、本当に日本の労働大臣であれば、こういう点、毅然たる態度をやはりとるべきじゃないか、見直しを迫るべきじゃないかと思うわけであります。  多国籍企業、先ほども言ったわけなんですが、そういう国際的な三者宣言、ILOの宣言の場合にはまだそれこそ最低限の倫理、ルールであると思うのですが、それすらも無視して今やっている。しかも、多国籍企業の利益第一に労働者や下請を切り捨てる。残った労働者には、日本政府の国際公約やあるいは国内労基法、これにも違反するような長時間過密労働を押しつける。そして、下請の方にも二〇%コスト削減とかいう形で単価の切り下げを押しつける。もしこんなやり方が今後まかり通るようなことになれば、公正で自由な経済競争はどうなるだろうか。本当に、強い危惧を持つのは私だけではないと思うのです。  労働時間の国際公約も残業規制なども全く空文化する。ルールなき経済戦争、こういう方向に走っているわけであって、ルノー日産社に対して、通産省の方も労働省の方も毅然たる断固たる態度をとるよう重ねて要求をしたいと思います。  次に、昨年に続いてサービス残業問題について質問をしたいと思います。  戦後最悪の雇用失業情勢と大企業のリストラ強行の中で、サービス残業がますます蔓延しております。最近の新聞でも、悪徳商法で有名な商工ファンド、あるいは全国チェーンの白木屋などのサービス残業が報道をされました。しかし、新聞などで報道されているのは、これは氷山のごく一角であります。全国の大企業でサービス残業が蔓延し、定着しているんじゃないか。  ある職場では、定時と残業の境もなくなってしまった、ただ、子持ちの女性労働者がみんなに気兼ねをしながら席を立っていくことで定時だなと気づくぐらいだ、こう労働者は語っておりました。本当にこれ以上看過できない、そういう状況に今なっているわけであります。  きょうは、このサービス残業がどうして蔓延するのか、その手口あるいは原因、とるべき対策、これについて質問をしたいと思います。  私は、昨年七月十五日の当委員会において、小渕首相に対してサービス残業問題について質問いたしました。  質問の要旨の第一は、こういうような所定内労働時間を超えて労働者を働かせながら、労働時間の対価としての基準賃金あるいは割り増し賃金を支払わない、これは基準法の二十四条あるいは三十七条違反だということが一つ。  加えて第二番目に、サービス残業が、賃金不払いという極めて重大な犯罪、しかも繰り返し行われている、そして意図的に故意に行われている、こういう犯罪であり、労働省内の労働基準行政、従来の立場でいえばこれはもう即時司法処分の対象になる、それほど悪質で重大な犯罪行為である。こういう点を指摘したわけであります。こういう重大な犯罪を蔓延させている政府の責任というのは極めて大きい、こういう犯罪行為をなくしていくことが雇用の拡大にもつながる、こういうような点を指摘しました。  小渕総理は、こういう指摘を認めて、「サービス残業をなくすため、今後とも法の趣旨を徹底して図ってまいりたい」、こういう答弁を行われました。  そこで、その後、サービス残業をなくすために政府として具体的にどのような特別の対策をとられたでしょうか。
  238. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 サービス残業につきましては、三十六条、三十七条の誠実な執行が一番大切でございます。しかしながら、現実に実態を統計的に的確に把握するということはなかなか難しい状況にございます。  したがいまして、私どもといたしましては、賃金台帳あるいはタイムカード、作業日誌等、これらの確認を行いまして、正確な残業時間の把握に努め、法違反の事実が認められる場合にはその是正に努めなければならない。こういうことで、これらの違反が年間大体七千件程度あるわけであります。このときには、監督機関から是正するようにという警告を発し、これらに従わない場合には罰則を適用するという形で、きちっと法律が守られるように最大の努力をする。  特に最近は残業時間がふえる傾向になっておりますので、なおさらその監視体制を強めるよう指示いたしております。
  239. 大森猛

    大森委員 どうも、小渕総理がサービス残業をなくすために全力を挙げると言明されて以降、一般的なことをおっしゃいましたけれども、新たな特別な対策はとっておられないような御答弁でありましたけれども、なぜサービス残業が蔓延するのか、この点はどういうことかというので、一つの事例を紹介したいと思います。  最近、私の国会事務所に若い女性労働者が相談に参りました。話を聞いてみますと、残業しているのに残業代が一切支払われておらない、サービス残業になっているのにどうしたらよいかという相談だったのですね。  この女性労働者が働いているのは都内にあるアパレル産業。これは最大手の会社でありますが、会社の名前を言えばだれでも知っているような、そういう有名な会社であります。資本金が二百六十七億円、売上高は五百四十億円、経常利益八十億円、借入金なし、従業員六百人、立派な大企業なわけですね。この会社では、以前三六協定はあったけれども、三年前に会社のトップが、今後は我が社はノー残業にする、こう宣言した。その後、残業代は支払われなかったというわけですね。  労働大臣、一般論としてお聞きしたいのですが、どこかの企業で、社長が今後はノー残業とすると宣告さえすれば、残業をしていても、これは残業代を支払わなくて済みますか。
  240. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 今先生は一般論ということで御質問なさいましたけれども、明らかに三十六条、三十七条違反に該当する、こう考えます。
  241. 大森猛

    大森委員 委員長、大臣にちょっと資料をお渡ししたいのですが、いいですか。
  242. 島村宜伸

    島村委員長 どうぞ。
  243. 大森猛

    大森委員 これが、今申し上げたアパレル社のFさんという女性の残業記録と残業日誌と給与明細です。これでいいますと、一番上の表が、この彼女自身がつけております時間外勤務及び休日勤務の時間の明細であります。それから二枚目が、これは、会社の出勤カードを利用して、彼女自身が毎日毎日つけているいわば私製の残業日誌であります。そして、三枚目が給与支給明細書、こうなっているわけであります。  一番上の一覧表を見ますと、これでありますように、四百二十四時間サービス残業、休日出勤十六時間、これで合計未払いの賃金が、賃金額はここに書いてありませんが、六十万六千七百六十円になるというわけですね。ところが、この給与明細書、この支給額の下の段にありますけれども、時間外勤務手当、ここは全く空欄のままになっているわけであります。  そこで、ほとんど全員が恒常的に残業をやらされている。それだけ仕事の量もあるわけです。しかし、上司は一々残業しろとは言っていない。労働者が残業に従事していることは管理職も百も承知しているわけですね。こんな場合の労働時間の扱い、あるいは割り増し賃金の支払い義務、これは当然生ずることになるわけですね。つまり、はっきり残業の指示がなく、黙示であったとしても、それは労働時間であり、残業代を払わなくてはならないということであるわけなのです。これはもう明確だと思うのです。  労働大臣、今紹介した事例もそうでありますけれども、会社が残業時間の管理をしていない多くの大企業では、もはや出退勤のタイムカードなどはありません。残業時間は労働者の申告制となっている。言いかえれば、残業時間の管理は労働者任せになっている。これが今、一つの大きな特徴であると思うのです。  そこで、現行労働基準法では労働時間管理、これは使用者の責任であるという条文上の規定が労基法上あるかどうか、この点、大臣いかがでしょうか。     〔委員長退席、久間委員長代理着席〕
  244. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 ただいま法律上はそういう責任を問う規定にはなっておりません。しかし、先ほど申しましたとおり、三百六十というのを基準といたしておりまして、これ以上を超えるものにつきましては、労使間できちっと協定に基づいて決めるべきである、こういうことは指示いたしております。
  245. 大森猛

    大森委員 今大臣は、非常に重要な答弁をされたと思うんですが、労基法上は使用者の労働時間の管理責任、これが明文化されていないということですね。大臣、それは今そのとおりなんです。  労働時間の把握は、こういうぐあいに、労働基準法上、労働時間管理が使用者の責任、義務であるとの明文の規定がない。これは本当に明確だと思うんです。そこに私は、今こういうサービス残業がはびこるその要因の大きな一つがあるんじゃないか。もっとありていに言えば、正確に言えば、労働時間管理の法律的責任が明定されていない、このことに企業側は今日つけ込んでサービス残業を蔓延させている、そういう関係であると思うんです。  いいですね。そういう私の指摘は間違いないと思うんですが、イエスかどうかだけでお答えください。
  246. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 使用者は労働者の始業、終業の時間などを把握し、労働時間を算定する、これが労働基準法の規定に違反しないようにすることはもとより当然期待するところであります。したがって、原則として一日八時間なら八時間、こういうことで、これに違反するような場合には、これをオーバーするような場合には、所定外として当然労使協定に基づいて決められるべきである、これがなされていない場合には明らかに法律違反だ、こういうように考えております。
  247. 大森猛

    大森委員 いや、だから、労働時間の管理責任、使用者に義務づけられていないという点は、これはもう今確認されたわけでしょう。そのとおりだと思うのです。その後の問題はこれからまたやりますけれども。  このことは、もう労働省自身、今認めているんですね。これはかつても紹介を、例えばこれは、平成八年、当時の松原労働基準局長が日経連に対して短い文書を、手紙を出しているわけなんですが、この短い文書の中にサービス残業という言葉が三回も出てくるわけなんですけれども、最後のところに、これは、「貴職におかれましては、労働時間が過重なものとならないよう所定外労働の削減を図るとともに、サービス残業等が行われることのないよう適正な労働時間管理を行うことにつきまして、傘下の企業に対して、改めてこの趣旨を徹底していただきたく、御協力をお願い申し上げます。」  労働時間管理の使用者の責任が法律上きちんとあれば、こんなこと一々お願いしなくてもいいわけです。ですから、私は、労基法上で使用者の労働時間管理責任、これが明確にされていない、このことが残業をはびこらす、蔓延させる大きな要因になっているということを改めて指摘をしておきたいと思います。  次に、もう一つ、このサービス残業を蔓延させる手口の問題についてお聞きしたいと思います。  労働時間の管理について使用者の責任が規定されていない、これは明らかに労基法の不備、欠陥であると思うんです。これに加えて、今のやり方、この法的不備を悪用して大企業などはどうやっているかといいますと、今月の残業代請求の上限時間の枠は二十時間だということを上司から部下に徹底させ、月末に労働者に自主申告させる、ということで、仮に六十時間残業をやっても二十時間以内でしか請求できない、こういう形になっているわけですね。残業代の請求抑圧、これが公然と組織的に今行われているわけであります。  しかも、これは残業代請求の単なる抑圧じゃない。労働者が申告した残業時間数が会社側によって改ざんされる、あるいは不実記載されている、こういう問題だと思う。このサービス残業の蔓延、その背景には、大臣、おびただしいこういう改ざんや不実記載、こういうものが行われていると容易に推定できると思います。ところが、こういう不実記載あるいは改ざん、これについて労働省は、これまで司法処分をただの一回もやっていない。私が調べてはっきりしているわけなんですが、こういう状況であるわけです。  そこで、勇気のある労働者が実際の残業時間数を提出しても、今言いましたように、二十時間で勝手に改ざんされるということになっているわけですが、こういうような手口がはびこっている、これも政府の責任だと思うわけです。  そこで、この改ざん、不実記載、これを禁止する、そういう条文や規定はありますか、労働基準法の中に。
  248. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 先ほども答弁させていただきましたが、時間外労働時間数について虚偽の記載をした等々のことをした場合には、労働基準法違反として三十万円以下の罰金の適用が行われております。きちっと法律的に、違反は違反として、現実に違反があるかどうかということはいろいろな台帳等から調べて、それを明らかな事実として把握して、起訴すべきものは起訴する、こういうことで対処いたしておるところであります。
  249. 大森猛

    大森委員 労働基準法のどの部分か、じゃ、明確に示していただけますか。
  250. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 労働基準法第百八条に基づきまして、「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他命令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。」こういう形で法的に、またこれに基づいて監督署が十二分にチェックする体制をとっております。
  251. 大森猛

    大森委員 この百八条は、賃金台帳の調製、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他命令で定める事項を賃金支払いの都度遅滞なく記入しなければならないということで、労働時間についての改ざんあるいは不実記載、これについて一切何ら述べていないんじゃないですか。  私がお聞きしたのは、こういう残業時間の改ざん、不実記載を禁止する条文があるかと。これはそういうものじゃないですよ。
  252. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 労働基準法の第百二十条に基づきまして、第四号でありますが、帳簿書類の提出をせず、または虚偽の記載をした帳簿書類を提出した者につきましては、はっきり三十万円以下の罰金に処するということで、こういう罰則も含めて厳正な執行に最大の努力を払っている、こういうことであります。
  253. 大森猛

    大森委員 大臣はしっかりこの条文を見ていただきたいと思うんですが、今おっしゃった百二十条、ここでおっしゃったのは、帳簿書類の提出をせず、虚偽の記載をした帳簿書類を提出した者と。改ざん、不実記載については何ら触れていないんじゃないですか。
  254. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 ここには、帳簿書類を提出せず、または虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者ということで、きちっと把握……(大森委員「百一条ですね」と呼ぶ)そうです。
  255. 大森猛

    大森委員 そう、おっしゃったとおりですよ。虚偽の記載をした、提出した者ですよ。  しかも、申し上げますけれども、百二十条の四号というのは、百一条に決められた監督官の臨検、これとの関係でこれは定めていることであって、このような労働時間の不実記載、改ざんについてこれを規定したものではないんです。したがって、残業時間の改ざん、不実記載を禁止する条文や規定はないんだということは、これはお認めにならなくちゃだめなんです。どうですか。
  256. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 先ほども答弁いたしましたが、賃金台帳、それからタイムカード、あるいは就業日誌等々をチェックいたしまして、監督署としては、正しい残業時間、それに対する手当てがなされているかということを監督署の方から積極的に調査をして、これに違反する者は摘発する、こういうことでございます。
  257. 大森猛

    大森委員 お答えがありませんでしたけれども、残業時間の改ざん、不実記載を禁止する条文や規定がないということはもうはっきりしているでしょう。だからこそ、もう勝手に、六十時間残業やっても、今月は二十時間だから二十時間と勝手にできるわけですよ。この責任は何ら問われない。こういう関係があることがサービス残業を蔓延させているもう一つの大きな理由であるわけであります。ここは大臣、率直に認めなくちゃだめなんですよ。  じゃ、答弁に立たれるのであればもう一つ。タイムレコードとおっしゃいましたけれども、それは大臣が今ここで言ったってだめなんです。タイムレコードを本当に設ける必要があれば、法律上そういうことをきちんとすべきじゃないですか。
  258. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 私どもといたしましては、現在の法制化、賃金台帳、タイムカード、作業日誌等をチェックすれば十二分に対策がとれるという前提に立っておりまして、そこまでしなきゃならないとは考えておりません。
  259. 大森猛

    大森委員 大臣はどうも聞いていることをお答えにならないのですが、先ほど言いましたように、使用者側に労働時間を管理する、そういう責任が義務づけられていない、この点が一つ。そして、今申し上げたように、残業時間の改ざん、不実記載を禁止する条文、規定がない。したがって、蔓延しているにもかかわらず、ただの一回も司法処分がやられていないわけですよ。やりようもないのです。禁止されていないからです。  そこで、私はそういう二つの点を明確にして、ぜひサービス残業をなくすための私どもの提案を申し上げたいと思います。  一つは、こういう現行労働基準法の不備、欠陥がある、こういう点が悪用されているということから、先ほど申し上げた労働者の協力、私的な残業日誌、こういうものをもっと認めていくということでありますね。労働者みずから、作成している残業日誌や調査結果を提出しているわけです。  私ども、いろいろ調べている中で、今のようなアパレル会社の女性労働者がみずから残業日誌をつける。あるいは静岡県のスズキ自動車、ここはもう駐車場をずっと深夜遅くまで監視をして、労働者が何時に帰るか全部チェックして、そういう一覧表をつくる。あるいは北九州の安川電機でも、労働者有志が残業日誌をつくって監視や調査を行う。こうやって資料をつけて申告をしても、残念ながら労働者のメモや日誌、調査結果が活用されていない、そういう状況であります。  法違反の事実を確認できなかった。それはもう、会社の記録はそのように改ざんあるいは不実記載が行われているわけでありますから、当然法違反の事実を確認できないという点で、こういう労働者の残業日誌とかそういうものを監督、摘発活動に生かし、活用する態度、そういう姿勢をぜひ労働省として持っていただきたい、このことが提案の一つであります。いかがですか。
  260. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 先ほど答弁しましたとおり、あらゆる手段で現状をチェックし、違反を防止しておりますが、特に、労働基準法違反にかかわる申告事案として私どもが受理する場合には、申告者から事情を聴取するとともに、申告者から提出のあった労働時間等にかかわる各種の資料についても、これが正しいかどうかということの説明をいただいております。  その上で、監督指導を実施し事業主からも事情を聞くと同時に、私の方からは、タイムカードや賃金台帳を含めた関係帳簿等についても十二分に調査して、そこで労働基準法違反の事実が認められた場合には、事業主に対してその是正を求め法律的な措置をとる、こういうことに決めております。  大体先生のおっしゃることに沿って被害者の救済はできるもの、こういうように考えます。
  261. 大森猛

    大森委員 そういう労働者の側からのいわば協力でありますけれども、その材料となる残業日誌等、労働大臣、その意向に沿って対処するとおっしゃったので、それはぜひ現場の方にも徹底していただきたい。  第二番目の提案でありますけれども、先ほど言いましたように、労基法上の欠陥、これを改める必要がやはりあるんじゃないかということであります。  第一線の監督官は、とにかくサービス残業は苦労して摘発してもすぐ息を吹き返してくる、まるでモグラたたきみたいだ、大変な苦労をしながらこういうことをおっしゃっているわけですね。  サービス残業を根絶するためには、先ほど申し上げた労基法上の欠陥、これを是正することがやはり重要ではないかと思います。具体的に労基法を改正して、賃金台帳はありますが、労働時間管理台帳、そういうものの作成義務、真実の記載義務、条文上これを明確にすることが必要じゃないか。これを労働大臣、ぜひ御検討をいただきたいと思うんです。  労働省の毎勤統計、毎月勤労統計で、労働時間の動向を調査し発表しているわけなんですが、この統計数字の根拠自体が先ほど言ったように企業からの報告数字だ。したがって、この数字を根拠に労働時間短縮が確実に進んでいるなどと発表されても、国民、労働者はやはり信用できない、そういう面もあると思うんです。  ですから、労働行政の信頼を回復するという点でも、労働時間の管理の使用者責任を法的に明確にしていく。正確で真実の労働時間を記録するようにするために、労基法を改正して、労働時間管理台帳の作成を独立の条文で使用者の義務として明確にする必要があるんじゃないかと思います。私は、それがサービス残業を本当に根絶していく極めて重要な道であるということで、このことをぜひ検討していただきたい。検討の提案であります。
  262. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 今先生が御指摘になった件に関しましては、使用者が把握した労働日数、労働時間数や時間外労働にかかわる延長時間数などについては、労働基準法第百八条において、賃金計算の基礎となる事項の一つとして賃金台帳に記入することが使用者に義務づけられております。  これにより労働時間管理について最終的に確認できる制度となっておりまして、かつ、違反の場合には、先ほども説明申しましたとおり、罰則を科す、こういうことになっておりますので、これに重ねて、労働時間管理にかかわる義務を労働基準法上設けることはいかがなものか、今の段階では必要ないのではないかな、こういう考え方でおります。
  263. 大森猛

    大森委員 今答弁されたのは、単なる記入義務なんですよ。私が申し上げたのは、労働時間の管理義務、それを使用者に明確に義務づける、独立の条文で設けるべきではないかと。今おっしゃったのは反論にも何にもなっていないんです。単なる記入義務であって、不実記載か改ざんの問題でいえば、全くこれは関係ない、そういう条項であります。  したがって、ぜひ、労働省の役人の言うことじゃなくて、労働大臣自身の言葉として、労働時間の管理責任、使用者にそれをきちんと義務づけることが必要じゃないかと、重ねて私はお聞きしたいと思います。
  264. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 使用者が労働者の始業、終業の時刻などを把握し、労働時間を算定し、これが労働基準法の規定に違反しないようにすることは、当然この法律の予定いたしているところでございます。
  265. 大森猛

    大森委員 答弁が歯切れが悪いので次に移れなくて大変往生しているんですが、私が言ったのは、あなたがまさにおっしゃった、始業時間を記録するとかそういう当然のことが行われていないから今問題になっているわけでしょう。そうなんですよ。  重ねて私は大臣に、こういう労働時間管理台帳、それを労基法上独立の条文で設けて、改ざんやあるいは不実記載をやってはならない、このことを条文上明確にして、今多くの職場で、あなたは六十時間だけれども二十時間にしておくというようなことが簡単にできない、罰則も当然設ける、そういうことを行うことがサービス残業根絶につながっていく大きな道であると私は思うんです。
  266. 牧野隆守

    ○牧野国務大臣 先ほど答弁いたしましたとおり、私どもはそう考えておりますが、しかし現実、先生が御心配になるようなことがあちこちで行われているというのが実情であれば、さらに監督署を通じて、現在の実情は具体的にどうなのかということを再度調査させていただき、検討いたしたいと思います。
  267. 大森猛

    大森委員 調査し検討するとおっしゃいましたので、私の提案の方向でぜひお願いをしたいと思います。  第三番目に、私は、労働者保護立法についてテーマを準備しておりましたが、時間が大分迫ってまいりましたので、法務大臣にもせっかくおいでいただいているのでぜひお聞きをしたいんです。  会社分割における労働関係の承継法制等について、労働省から研究会の報告が出されました。この中では、例えば、合併やあるいは営業譲渡などについては、労働契約の承継について立法措置が必要ないとか、あるいは整理解雇四要件、従来の解雇規制の法理あるいは判例法、こういうものを否定するかのような大変重大な問題も盛り込まれているわけでありますけれども、この点で、今後労働省が検討する際、これは何よりもヨーロッパなどで当然のように今行われております既得の雇用契約、権利、それは当然、合併であろうが、あるいは分割であろうが、あるいは営業の譲渡であろうが、その雇用は最大限保障するということとあわせて、本人の意思を尊重する、その二つの点が私は大変重要だと思うわけですが、労働省の検討の中にその二点をぜひ貫いていただきたいということを、これは申し上げるだけにしておきます。  この間、私ども日本共産党は国会質問の中でも、今進められているリストラの中で大変な人権じゅうりん、隔離部屋に労働者を押し込んで早期退職やあるいは転籍、こういうものを迫っていく、人権を根本からじゅうりんするようなやり方が行われていることを指摘してまいりました。実際、労働者の側もそれを裁判所に訴える、こういう闘いなども行ってきたわけでありますけれども、法務省にも、ぜひ、こういうリストラが起こっている事案について、労働省とも連絡をとりながら、相互通報制度で本当に労働者の人権が守られるような制度をきちんとつくるべきではないかという点と、加えて、私ども、この間具体的に調査を要請した点について、その進行状況について御報告いただけたらと思います。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕
  268. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 委員さきに御指摘をいただきました相互通報制度の件についてでございますが、一般的に、雇用におきまして、雇用関係で労働者の人権というものが尊重されなければならないというのは、これは当然のことでございます。法務省の人権擁護機関におきましても、労働者の人権擁護は重要な課題であるということは認識をいたしております。  法務省の人権擁護機関におきましては、これまでも労働省等と、人権侵犯の処理に当たっては、必要に応じまして労働省の担当機関とも、いわゆる労働基準監督署ということになるわけでありますが、情報交換をいたしまして、そうした協力関係というものを図ってきているわけでございます。これらの種の事件の性格にかんがみまして、その解決に当たっては、委員指摘をいただきましたとおり、労働省の担当機関と連携をさらに図ることは極めて重要だと考えておりまして、今後とも引き続き十分な連携協力を図ってまいりたい、このように考えている次第でございます。  また、次に御指摘をいただきました、いわゆる人権擁護の関係でございますが、昨年の十一月に、リストラ等の労働関係をめぐりまして労働者側から六件の人権侵犯の申し立てを受けまして、現在その調査をいたしているところでございます。  現在調査中でございますので、詳細については答弁を差し控えさせていただきたいと思っておりますが、これらの人権侵犯事件につきましても、人権侵犯事実の有無等につき必要な調査をいたしまして、その結果に基づきまして適切に対処いたしてまいりたい、このように考えております。
  269. 大森猛

    大森委員 外務省においでをいただいたのですが、時間の関係で質問が及ばなかったことをおわびして、質問を終わりたいと思います。
  270. 島村宜伸

    島村委員長 これにて大森君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  271. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 景気の浮揚と雇用の確保というこの二つの命題は、どの政党においても同じでございますし、政府もこのことに一番配慮をしておられるというふうに存じ上げているわけでございますが、やはり、財源が非常に厳しい中での大型予算という主張でございますけれども、時代の要請にこたえる分野へ適正な財源の配分をいかに図っていくかということも、非常に重要な課題であると私は考えております。当然、とりわけ、急速に進展をしております高齢化社会に的確に対応していくための施策というものは、持続性と波及性を兼ね備えた景気浮揚対策という観点からも、私は最も理にかなったものであるというふうに考えているわけでございます。  それで、例えばハード部門に限って言わせていただきますと、今後の公共住宅の供給に当たって、その力点を高齢者や障害者の皆さん方の快適性を重視したユニバーサル型の住宅に置くことや、駅舎等を初めとする交通起点や交通手段のオールバリアフリー化、これらの抜本的な交通弱者対策を早期に実現するということも、だれも否定し得ない中身でございますし、当然積極的に進めるべき課題だというふうに思っております。  また、暮らしに直結する問題として、生活の基盤型ライフライン、生命線をどのように守っていくのかというところでございますけれども、これらの全国的な整備も喫緊の課題だというふうに思っているわけでございまして、社民党は、その本命の一つになり得るのが、テレビ電話ネットワーク等の迅速かつ量的、質的な整備だというふうに一つの視点として持っているところでございます。  これは、高齢者も操作が容易なテレビ電話やケーブルテレビなどのネットワークで自治体内の各世帯を結ぶものでありまして、各種行政サービスが在宅で利用できることになります。利用者はこの通信端末を活用し、介護等の福祉、保健、教育などに関する相談が受けられるようになっている自治体がございます。  このネットワークの仕組みというものが完備されますと、地域的な過疎の問題も、福祉過疎、情報過疎というような観点をなくしていくことができていくというふうに思いますし、生きがいのレベルアップにもつながっていけるというふうに私は申し上げたいと思います。  要は、この委員会の中でも、財政の問題が破産状況にある、将来どうしていくのかということが絶えず言われているわけですが、そういう財政のもとであっても、選択と集中した財源の使い方というものが本当に大事になっていくというふうに思うんです。今申し上げた住宅の問題、交通のオールバリアフリー化の問題、そしてライフライン、生命線をしっかり守っていく、こういうテレビ電話等のお取り組みに対して、建設大臣運輸大臣、そして郵政大臣の御所見を伺いたいと思います。
  272. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  バリアフリーを超えましてユニバーサルデザインという問題は、これは高齢化社会、また妊婦の方、子供さん方、そういう方々すべてに適合するような住宅建設とか、それからまた製品を設計するという考え方があるようでございまして、本格的な高齢化社会の到来を目前に、高齢者すべての人が安全かつ快適に生活する住宅整備、そういうものをこれから進捗させてまいりたいと思っております。  特に、極めて重要な課題と認識いたしまして、公共賃貸住宅については、手すりの設置、それからまた段差の解消、それから高齢者等に対応した仕様の住宅の供給を促進してまいるために、本年度の予算でも、これは大蔵大臣にお願いをして大臣折衝までしていただきましたが、高齢者向け優良賃貸住宅等を一万五千戸、内訳は高齢者向けの優良賃貸住宅七千戸と、それから公営住宅の高齢者向け改造というものなどを本年度の予算にも入れております。具体的には、公営住宅、公団賃貸住宅等については、平成三年度より、もう新設住宅をすべて高齢者等に対応したものとすることとし、これまで約四十二万戸を供給いたしております。  それからさらに、民間の土地所有者等による高齢者向け優良賃貸住宅の整備を促進することとし、先ほど申しました一万五千戸を計上いたしておるところでございまして、以後も積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  273. 二階俊博

    ○二階国務大臣 お答えいたします。  交通手段のオールバリアフリー化についてでございますが、いよいよ本格的な高齢化社会の到来を控えまして、高齢者及び身体障害者の皆さんが安全でかつ円滑に移動できるように、公共交通機関のオールバリアフリー化、こういう御提唱でございますが、基本的には、私は、極めて委員のおっしゃるとおりであるというふうな認識を持っております。  交通事業者に対し、今後、バリアフリーの交通機関を実現するために積極的に協力を呼びかけていくと同時に、義務づけをすることが必要であると認識しておりますので、今度の国会に法案を提出させていただいたわけでございます。  ちょうど法案の提出をさせていただきました二月の十五日、アメリカでこの問題につきまして大変御活躍をされております著名なバリアフリー化推進の専門家といいますか、お力をいただいておりますマイケル・ウィンター、アメリカ運輸省の都市交通局次長がお見えになりました。  これは、郵政大臣の長年の友人であられて二十年以上にわたる御交際の上、国境を越えて、このバリアフリー化の問題につきまして国際的に御両者が御活躍をされておるわけでありますが、そうしたアメリカの専門家からも、我が国に先立つこと十年でありますが、バリアフリー化の法案につきましての御意見等も伺いました。日米間が協力し合ってこの問題に対応できるという状況ができたことを高く評価をされておりました。  今お尋ねの件でございますが、いわゆるオールバリアフリー化というのは理想でありまして、極めてそういう方向に向けて努力をしてまいらなくてはならないことは当然でありますが、国及び地方公共団体の予算、交通事業者の投資余力にも限界があるわけでありますから、本法案では、二〇一〇年までに延べ利用者数の九割をカバーする駅等のバリアフリー化を実現することを目標に置いております。さらにまた、新規購入のいわゆるノンステップバス等のバス車両の導入の義務づけを行い、今後十年ないし十五年をめどに目標を達成したいというふうに考えております。  今、与野党におきまして、この法案に対して大変御声援をいただいておりますので、一層御協力をいただいて立派な法案に仕上げると同時に、これからの五年、十年の間に、一層国民皆さんの声とともに各党の御協力をいただいて、目標を一日も早く達成できるようにいたしたい、このように考えております。
  274. 八代英太

    ○八代国務大臣 お答えを申し上げます。  今建設大臣からハートビル法の説明があり、そしてまた、運輸大臣からは交通バリアフリーの法案の提出について御説明がございました。まさにバリアフリーという風が日本にも大きく吹き荒れてきておりまして、当事者としては大変歓迎しているところでございます。  そういう中にありまして、郵政省でもバリアフリー懇談会を私も設けさせていただいて、障害者団体やあるいは老人クラブ代表の方々、また家電メーカー、あるいはまた放送事業者、こういう人を招いて、もう何回か議論をしてまいりました。二月中には何とかまとめたいと思っているわけですが、特にそういう中におきまして、生活基盤型ライフラインの中において情報通信というのは大変大きな役割をこれから当然持っていくだろう、このように思っております。  今テレビ電話のお話もございましたが、福島県葛尾村というところはその実践的なことをやっているわけですが、これがそこだけではなくて、二十一世紀は恐らくあまねくすべての各家庭でそういう時代はやってくるであろうと予測はいたしますけれども、現段階におきましては、地方公共団体とか、あるいは郵便局を窓口にしたワンストップ行政とか、あるいはイントラネットとか、いろいろな仕組みを考えながら、国と地方公共団体をどう結ぶか、また、地方公共団体は、図書館、病院あるいは施設、そういうものをテレビ電話等々を通じながらどうしていくかということを、今基盤整備にも私たちもいろいろ予算を駆使しておりまして、二分の一補助とか三分の一補助とかいろいろな仕組みがございます。  まさにこれからは情報化時代でございますし、四月から介護保険サービスも始まってまいりますが、遠隔介護なんという時代が来ると思いますね。介護する方のおうちのテレビとヘルパーさんとをつないで、そういう時代も恐らくやってくるだろう。こういうことを思いますと、いかに情報通信というものがこれからの生活の中で大変すばらしい役割を果たすかというのは、私たちも期待をしているところでございます。  しかし、パソコンとかそういうものを専門家の人だけがやったんじゃしようがないというので、やはり高齢者にもこの辺は習ってもらおうというので、四月から全国の郵便局で、高齢者のため、あるいは障害者も含めてパソコン教室をいよいよ始めるんですね。みんなでパソコンファミリーのようなものをつくりながら、いろいろ新たな時代の情報通信、生活ライフラインというものを一生懸命やっていきたいと思っておりますので、よろしくお力添えをいただきたいと思います。  よろしいでしょうか。
  275. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 丁寧な説明、大変ありがとうございます。瓦長官に厳しい質問をするのに時間をとっているんですから。  建設大臣、阪神・淡路大震災が終わった後に災害特で調査に行ったときに、もう既に新しいマンション型の公共住宅を建てる準備をしておられました。一般公共住宅とシルバーハウジング併用型だとおっしゃいましたので、どういうふうにしてつくられるのと私問いましたら、一階は駐車場でございます、二階、三階、四階ぐらいまでがシルバーハウジングで、残りが一般公共住宅。一緒に同じ箱の中につくる、それはそれでいい発想だけれども、二、三、四がシルバーであとが一般公共。普通の人たちは、若い人たちというか、一般公共住宅に入る人たちはエレベーターで素通りしちゃうじゃないですか。  そうじゃなくて、一般公共とシルバーを一つのフロアにまぜ合わせて、そうすることによって高齢者の皆さん方と若い人たちの交流があって、隣のおじいちゃん、おばあちゃんはどうなのというふうにバックアップできる、いろいろなことを若い人たちが先輩たちから勉強するという環境ができるんじゃないのという話をして、多分そういうふうにしてもらったと私は思っているんですよ。  だから、そういう面も、厚生大臣いらっしゃいますけれども、建設省と一緒になって、一般公共住宅、シルバーハウジングというようなものをつくる場合の一つの環境的な整備というものをしていただきたい。僕は鹿児島の田舎でそういう話をするときに、平家の住宅であっても、周りが一般公共住宅で、真ん中にシルバーハウジングを集めてつくればいいじゃないのという話をよくするんです。  二階運輸大臣、例えばエスカレーター、ややもすると、同じホームに上がるときに上りのものだけがこっち側にあって、一方は階段しかない。山登りをする人はよくわかるんですが、登るよりもおりる方がきつい、危ない。そうしたら、やはり上りと下りというかおりるエレベーター、二方から、ホームに上がるときにはそこまでつくっていくという配慮がなされてこそ初めてオールバリアフリー化ということになるんだろうと思います。一つの視点として当然運輸大臣考えだと思うんですけれども、心がけて対応していただければというふうに思うところでございます。  次の質問でございますが、東海村の臨界事故とエネルギー政策についてお尋ねをしたいと思います。  科学技術庁長官にお尋ねしたいと思うんですけれども、既に事故から四カ月近くが過ぎておりまして、事故原因の解明や事故処理、住民や関係者との補償の交渉も相当に進んでおりますけれども、その内容は地域の皆さん方に対して十分納得のいくものとしてなされているのかどうか。  私たちがお聞きするところで言うと、事故処理や補償についての対応がもう少し不完全というか、物足りないのじゃないかという話が聞こえてくるんですが、大臣、いかがでしょうか。
  276. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 東海村の臨界事故に対しましては、原因究明に基づく再発防止策の確立、それから今お話ありました周辺住民の皆さん方に対する健康問題、それから損害賠償問題、これを私どもは第一として取り組んできたところでございます。  お尋ねの補償についてでございますけれども、これは原子力損害の賠償に関する法律、つまり原賠法でございますが、これは、被害者保護の観点から、一つは無過失それから無限の賠償責任を原子力事業者に集中させるとともに、賠償責任の履行を迅速かつ確実ならしめるために、原子力事業者に民間責任保険契約、これの締結による損害賠償措置を講ずることを義務づけているものでございます。  このジェー・シー・オーにつきましては十億円の損害賠償措置が講じられているわけでございますが、これを上回る損害につきましても、みずからの資力で賠償しなければならない、そういうふうになっておるわけでございます。  なお、損害額が十億円を超えまして、ジェー・シー・オーの支払い能力等にかんがみ政府が必要と認める場合は、国会の議決により政府に属させられた範囲内において、事業者による損害賠償を政府が援助することとなっております。  ちょっと御質問に直接お答えしていないようで申しわけございませんが、賠償の状況につきましては、昨年、ジェー・シー・オーそれから茨城県等との話し合いによりまして、既に五十四億円の仮払金が支払われております。現在、引き続いて最終的な額の確定のために県が大変御努力いただいて、間に入りまして、今その最終額の確定のために関係当局が御苦労いただいているところでございまして、住民の皆さん方との話し合いも進んでおります。  なお、東海村分については、東海村に近く相談所が設けられまして、同じく最終額の確定に向かう予定でございます。
  277. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 補償が幾ら手厚くても、この種の事故は、最終的に一人のお命がなくなったわけでございまして、絶対に起こしてはならないことでございます。  法律の枠内、枠外といいますか、いろいろな手法を通じての補償の対応というものを大臣もこれからも検討いただき、いろいろな形でバックアップいただきたいというふうに思います。  厚生大臣にお尋ねしたいのですが、確認をされている百五十人ぐらいの被曝者といいますか、これ以外にも被曝の事実が確認できなくなっている被曝の住民が多数存在するのではないかと言われているわけでございます。長期にわたって事後的に影響が出てくる放射線の被曝の特徴、特性からいって、被曝した可能性のある周辺住民の健康を長期にわたって調査し、健康を守るための施策、例えば広島や長崎の被爆者援護と同様の措置が必要ではないかというようなことも考えられますけれども厚生大臣のお立場から、いかがでしょうか。
  278. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 お答えいたします。  今回の東海村の事故でございますけれども、地域住民の健康管理として、茨城県において、私も茨城県民の一人でございますが、事故直後から、保健所を中心といたしまして、健康診断であるとか、PTSD、いわゆる心的外傷後ストレス障害でございますか、こういったような対策などのケアをも含む健康相談というものを実施したわけでございます。  御指摘のように、この地域でございますが、現場から大体半径五百メートル以内の居住者に対しまして血液検査を行い、リンパ球が正常かどうかチェックした千八百十四人のうち八名が、実はリンパ球が少なく、再検査が行われておるわけであります。  厚生省といたしましては、これらの事業に対しまして、国立病院からの医師などを派遣いたしまして、健康診断、さらに心のケアを含む健康相談について必要な費用について、財政面からも支援をいたしました。  先生御指摘のように、今後でございますが、この教訓を踏まえまして、平成十一年度の第二次補正予算では、国立病院・療養所における被曝者の受け入れ、さらに地域住民の健康被害への対応に万全を期さなければならない、こういうような観点から、国立の水戸病院を初め、まさに御指摘の、周辺に原子力関係施設のございます全国で国立病院八カ所でございますが、例えば放射性の物質を洗い流す除染室であるとか、それから重度の被曝者の治療に対します無菌室の施設であるとか、さらに放射線の被曝量測定装置などの設備を整備することになっております。また、それから全国百四十五カ所の国立病院、さらに療養所に放射線測定器の整備を図っていきたい、こういうことでございます。  なお、この被曝住民の長期的な健康問題につきましては、厚生省といたしましては、先ほど科学技術庁長官からもお話がございましたけれども、科学技術庁を中心とした関係行政機関等の取り組みにおいて、必要に応じて全面的に御支援をしたい、このように考えているような次第でございます。
  279. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ありがとうございます。時間がございません。  この数年間見ましても、高速増殖炉の「もんじゅ」ナトリウム漏れの火災事故、旧動燃の再処理工場の爆発、敦賀二号機一次冷却材の大量漏えい事故、想定外の事故というものが引き続いて起こって国民の不信を増大しているということについては、これは政府もしっかり認識をしておられるというふうに思います。  そこで、世界の国々が、COP3の関係でクリーンエネルギー、日本は原発という政府考えを捨てておられないようでございますけれども、グリーンエネルギー、クリーンエネルギーというんですか、二つの使い方があるようでございますけれども、世界の国々がそこにどんどんシフトをしていくときに、日本だけがやはり原子力発電、高速増殖炉等々に固執をしている。ほかのグリーンエネルギーにも予算をつけてはおられますけれども、例えば太陽光発電、これもモニター制度を取り入れて進めておられるようですけれども、やはり原発に力を入れるという国のこの政策が変わらない以上、こういう事故はもっともっと起きていく可能性というものは私は否定し得ないと思います。  私は、鹿児島に川内原発というのを持っております。去年の台風十八号の災害で、地域の人たちからこういう声が上がってまいりました、濱田さんが言っているとおりでしたと。原発のすぐ近くの町が停電が回復するのが一番遅いんですね。川内でつくった電気は最初北九州、福岡の方に送られて、そして鹿児島に帰ってくるという形になっている。ああ、やはり本当だったんだと。そんなに安全だったら、国会移転が考えられているけれども国会議事堂が移転したところに関東の電気を発電するのをつくったらいいですねという、笑って話をされる方がいて僕はぞっとしました、正直言って。  そういう意味からいって、「二十一世紀日本の構想」懇談会も、脱原発のエネルギー政策、安全保障を高めていくことが必要だというふうに提言もしているようでございますけれども科学技術庁長官資源エネルギー庁長官の御見解といいますか、二人の今のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  280. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 委員がお述べになりましたような原子力施設関係の事故がたびたび起きたということは、大変に残念なことであり、深く反省をしなければならないと思っております。また、この安全確保に全力で取り組み、国民皆様方信頼を一日も早く回復することが大切だと思っております。  非常に資源に乏しい我が国が経済的発展を続け、そしてまたこの地球環境の保全を図るためには、クリーンエネルギーの長期的な安定供給が欠かせないわけでございます。そのためには、石炭とか石油等の化石燃料の使用を増大させるわけにはいかないわけでございますし、新エネルギーの導入とか開発、また普及に努めるとともに、また、現在行っております原子力エネルギーの安全性の確保と安定的供給、これを図ることが重要と考えているところでございます。  原子力政策のあり方につきましては、原子力委員会で現在審議をしております原子力長期計画がございますけれども、ここで二十一世紀の原子力の全体像と長期的展望を示すために今審議中でございますが、単に従来の原子力長期計画の改定ではなくて、今後は、例えば今お話ありましたような、新エネルギーでどれだけのエネルギーを賄えるか、そういうようなことも含めて、他のエネルギーの状況等もよく検討した上で、今後のエネルギーとしての原子力の必要性や位置づけについて広く国民皆さんに明らかにしていくことが必要であろう、そういう基本的な立場に立って今審議を行っているところでございます。  そういうことで、今後も、十分に国民皆さんの御理解をいただきながら進めていきたいと思っております。
  281. 河野博文

    河野政府参考人 資源エネルギー庁でございます。  事故の反省あるいは安全に対しての考え方、科学技術庁長官が御答弁のとおりでございます。  エネルギー供給につきましては、日本は輸入に頼っているということで、脆弱でございますし、また地球温暖化防止問題もあるわけでございます。こうした状況を踏まえまして、具体的には、エネルギー政策といたしましては、需要面でまず最大限の省エネルギー対策を実施する、これが重要と考えております。さらに供給面では、原子力、あるいは先生御指摘の新エネルギーなどの非化石エネルギーの導入に積極的に取り組んでおります。  特に原子力について申し上げますと、先般の臨界事故も踏まえまして、さきの臨時国会におきまして、原子力関係の二法を制定していただきました。また、必要な補正予算についても御手当てをいただいたところでございますので、原子力発電の安全性の確保に万全を期すとともに、原子力発電に関する国民皆様の御理解を得ながら、この政策の円滑な推進に全力を挙げてまいりたいと考えております。
  282. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 エネルギー問題、いろいろな観点からの論議が必要なんでしょうが、やはり私たちは生身の人間だ、有機的な存在だということを考えてのエネルギー、どういうエネルギーが必要なのかということを十分論議しなければならないというふうに私は思っております。  瓦長官にお尋ねをいたします。  十六日のこの委員会で、普天間の移設問題について外務大臣と瓦長官にお尋ねをしたところでございました。稲嶺沖縄県知事、岸本名護市長、新しくできる基地は十五年間の使用で終わらせていただきますよ、終わらせていただきたいのですよと、使用期限について政府に伝えてあるというふうに私は思っておるわけでございますが、それについて、私は非常に残念でした。その私が質問している当日の地元の新聞に、「アメリカ、十五年使用期限を否定」という新聞記事が出ておりました。  一月のワシントンでの日米防衛首脳会談、コーエン国防長官が瓦長官に対して、この前私の質問に答えていただいた中で、「日米両国政府は国際安全保障環境の変化に対応して、両国政府の必要性を最もよく満たすような防衛政策、並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事情勢について緊密に協議を続ける旨の発言もございました」、「もございました」と言っておられます。この新聞記事では、同じようにして、「予見できない国際情勢の中で、あらかじめ期限を設定することはできない」「期限設定には応じられない」というふうにアメリカ側は答えていると書いてありますが、この新聞記事は間違いでございましょうか。
  283. 瓦力

    ○瓦国務大臣 濱田委員から先般も御質問をちょうだいいたしました普天間飛行場の代替施設の使用期限の問題でございますが、先般の日米首脳会談におきまして、私より、日米安保共同宣言に従い、国際情勢の変化に対応して日米間で協議していきたい旨申し上げたところでございます。これにつきまして、稲嶺知事の十五年使用期限を強く主張されましたことを強く受けとめてまいらなければならない、このこともその節答弁をさせていただきました。  また、コーエン長官より九六年の日米安保共同宣言を念頭に置きつつ、日米両国政府は国際安全保障環境の変化に対応して、両国政府の必要性を最もよく満たすような防衛政策並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事態勢につきまして緊密に協議を続ける旨の発言もありましたことも、その節御答弁をさせていただきました。  その後、今ほどの新聞報道等も踏まえてのことでございますが、私は、従来から申し上げておりますように、稲嶺知事の御発言というものを重く受けとめてまいりたい、政府全体もさように重く受けとめてまいるわけでございますが、これは、御承知のとおり戦後半世紀を経て二十七年間にわたる沖縄の県民の方々の御苦労や、また、復帰後二十七年を超えてのいろいろな課題に対しまして、私ども政府としてはしかとなすべき問題もあるわけでございます。  そういうことを踏まえると、県民の心を大切にしながら、また国際情勢の変化というものも目前にいろいろあるわけでございますから、これらを踏まえて使用期限の問題につきましては、先般のやりとりで御理解いただけるかと思うわけでございますが、これからもよく情勢の変化を見つつ協議をしていきたい、こう考えております。
  284. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 前回も、外務大臣にも瓦長官にも申し上げました。非常に努力をいただいているという姿勢はわかるけれども、私の今の質問は、そのときの質問をした日に、十五年使用については「予見できない国際情勢の中で、あらかじめ期限を設定することはできない」、期限設定には応じられないという考えを明確にしたというふうにここでは報道されております、前段は前段であるけれどもということです。それは、この新聞記事は瓦長官としては、いや、こんなことはアメリカ側から、コーエン国防長官からは言われたことはないということであれば、言われたことがない、あるならあると答えていただきたいというのが一点。  もう一点、その同じコーエン長官は、日本政府が地元と調整してこの問題は国内で解決するように要請をしたということも書かれておりまして、それに対して長官は、それに答えずに、沖縄の要望を重く受けとめていますよということだけをコーエン国防長官に言われたということが書かれているんですが、その二つ。もう時間がございませんので、明確にお答えいただきたいと思います。
  285. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいまの御質問もたびたび答えさせていただいておるわけでございますが、先般の日米防衛首脳会談で、使用期限の問題につきまして先ほどのやりとりがありましたことをお答えをさせていただきました。また、コーエン長官は明確に拒否したのではないか、発言をされたのではないかというようなことにつきましても御質問にございますが、御指摘のような事実はございません、かように私からお答えをさせていただきます。
  286. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 もう一問。この問題については、日本政府が地元と調整して、問題を国内で解決するように要請した、コーエン長官が。
  287. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいまの御質問につきましては、コーエン長官からさような発言はございませんでした。
  288. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 これで終わりますけれども、今の御答弁では私たちは納得できません。引き続きこの委員会等々で質問をさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  289. 島村宜伸

    島村委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会