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2000-02-16 第147回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年二月十六日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 島村 宜伸君    理事 久間 章生君 理事 自見庄三郎君    理事 高橋 一郎君 理事 萩山 教嚴君    理事 町村 信孝君 理事 池田 元久君    理事 海江田万里君 理事 太田 昭宏君    理事 西田  猛君       甘利  明君    伊藤 公介君       石川 要三君    稲垣 実男君       小澤  潔君    大野 松茂君       大原 一三君    亀井 善之君       栗原 博久君    桜田 義孝君       下村 博文君    杉浦 正健君       高鳥  修君    津島 雄二君       中川 秀直君    葉梨 信行君       萩野 浩基君    村田 吉隆君       村山 達雄君    森山 眞弓君       山口 俊一君    岩國 哲人君       生方 幸夫君    金田 誠一君       古賀 一成君    五島 正規君       今田 保典君    日野 市朗君       肥田美代子君    横路 孝弘君       青山 二三君    石田 勝之君       佐藤 茂樹君    桝屋 敬悟君       青山  丘君    一川 保夫君       加藤 六月君    鈴木 淑夫君       木島日出夫君    佐々木憲昭君       平賀 高成君    藤田 スミ君       矢島 恒夫君    濱田 健一君       保坂 展人君     …………………………………    外務大臣         河野 洋平君    大蔵大臣         宮澤 喜一君    文部大臣    国務大臣    (科学技術庁長官)    中曽根弘文君    厚生大臣         丹羽 雄哉君    農林水産大臣       玉沢徳一郎君    通商産業大臣       深谷 隆司君    運輸大臣         二階 俊博君    郵政大臣         八代 英太君    労働大臣         牧野 隆守君    建設大臣         中山 正暉君    自治大臣    国務大臣    (国家公安委員会委員長) 保利 耕輔君    国務大臣    (内閣官房長官)     青木 幹雄君    国務大臣    (金融再生委員会委員長) 越智 通雄君    国務大臣    (防衛庁長官)      瓦   力君    国務大臣    (経済企画庁長官)    堺屋 太一君    国務大臣    (環境庁長官)      清水嘉与子君    防衛政務次官       依田 智治君    科学技術政務次官     斉藤 鉄夫君    外務政務次官       東  祥三君    大蔵政務次官       大野 功統君    文部政務次官       河村 建夫君    厚生政務次官       大野由利子君    通商産業政務次官     細田 博之君    運輸政務次官       中馬 弘毅君    郵政政務次官       前田  正君    建設政務次官       岸田 文雄君    自治政務次官       平林 鴻三君    政府特別補佐人    (公正取引委員会委員長) 根來 泰周君    政府参考人    (公正取引委員会事務総局経    済取引局取引部長)    上杉 秋則君    政府参考人    (警察庁長官)      田中 節夫君    政府参考人    (国税庁次長)      大武健一郎君    政府参考人    (国税庁長官官房国税審議官    )            村木 利雄君    政府参考人    (厚生省保健医療局長)  篠崎 英夫君    政府参考人    (通商産業大臣官房調査統計    部長)          吉田 高明君    政府参考人    (運輸省自動車交通局長) 縄野 克彦君    参考人    (日本銀行総裁)     速水  優君    予算委員会専門員     大西  勉君     ————————————— 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   大原 一三君     桜田 義孝君   中川 昭一君     大野 松茂君   中川 秀直君     下村 博文君   岩國 哲人君     今田 保典君   原口 一博君     金田 誠一君   鈴木 淑夫君     一川 保夫君   志位 和夫君     矢島 恒夫君   春名 直章君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   大野 松茂君     中川 昭一君   桜田 義孝君     大原 一三君   下村 博文君     中川 秀直君   金田 誠一君     原口 一博君   今田 保典君     岩國 哲人君   一川 保夫君     鈴木 淑夫君   藤田 スミ君     佐々木憲昭君   矢島 恒夫君     平賀 高成君 同日  辞任         補欠選任   佐々木憲昭君     春名 直章君   平賀 高成君     志位 和夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  平成十二年度一般会計予算  平成十二年度特別会計予算  平成十二年度政府関係機関予算     午前十時開議      ————◇—————
  2. 島村宜伸

    島村委員長 これより会議を開きます。  平成十二年度一般会計予算平成十二年度特別会計予算平成十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  三案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長上杉秋則君、警察庁長官田中節夫君、国税庁次長大武健一郎君、国税庁長官官房国税審議官村木利雄君、厚生省保健医療局長篠崎英夫君、通商産業大臣官房調査統計部長吉田高明君及び運輸省自動車交通局長縄野克彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 島村宜伸

    島村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 島村宜伸

    島村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。
  5. 岩國哲人

    岩國委員 民主党岩國でございます。  民主党を代表いたしまして、政府政治姿勢及び予算選挙との関連等について質疑をさせていただきたいと思います。  まず、四年前の総選挙、このときに最大の争点となりましたのは、消費税を上げるか上げないかという問題でありました。そのときに、自分の党は消費税を上げることに賛成しているけれども自分は賛成しない、こういうことを言って当選された方がたくさんあります。もちろん、それを言ってもなおかつ落選された方もありました。  しかし、明らかに有権者に、消費税三%は据え置きします、行政改革が実現するまでは上げるべきではありませんということを公約して当選された方、これは、自民党二百三十九人のうち百二名、社民党十五人のうち六名、旧民主党五十二名のうち三十二名、合わせて百四十人がそういうことを言って当選されたのであります。  これは私の調査ではなくて、当時新進党におられました小池百合子さんが調査されたものを、他党の批判のための資料として新進党が作成し、それを私はこの予算委員会で引用いたしました。  結果的に人をだましたことになります。有権者をだましたことになります。人をだましてお金を集めた人は、詐欺師と言われて刑務所に入ります。人をだまして票を集めた人は、先生と言われて国会に入る。両方とも立派な詐欺師ではありませんかと私は申し上げましたら、この予算委員会のこの席で、私の発言は中止、そして私の発言議事録から削除、こういう要求を受けたわけであります。それは国会品位を汚すということで、そのような削除要求がありましたけれども、私はそれを受け入れず、議事録にそのまま残っております。  まず、委員長にお伺いいたします。  そのような指摘は国会品位を汚すことになるのでしょうか。私は事実をそのまま言ったつもりでありますけれども委員長はどう判断されますか。
  6. 島村宜伸

    島村委員長 個人的には、私は、品位を汚すと思いません。
  7. 岩國哲人

    岩國委員 ありがとうございます。  私のたった一つの間違いは、そのときの委員長もその詐欺師の一人であるということを私が気がつかなかったことであります。  そのときの百四十人の当選された方々は、今年中にそれぞれの選挙区へお帰りになり、再び有権者審判をお受けになることと思います。個々の政治家審判を受ける日が近づいております。国民が、愚かな民であるのか、あるいは日本人というのは、人のうわさも七十五日、七十五日で忘れてしまうような七十五日民族であるのか、それとも、賢明な選択のできる有権者であるのか。これも、我が国の将来を占う意味で大変大切な選挙であると思います。  果たして、その百四十人の人がそれぞれの選挙区にお帰りになれるような情勢ができておるのかどうか。例えば、自民党はそのときに、最大の公約として、行政改革を断行する、それと引きかえにこの消費税引き上げを認めていただきたい、それを国民に訴えられたわけであります。  自民党は、選挙をする準備ができておりますか。行政改革はできておると、自信を持ってそれぞれの選挙区で党の名誉と権威にかけてそのようなことをおっしゃることができるかどうか。この点について、消費税を担当された大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。  国民消費税引き上げを受け入れていただいた、約束した行政改革は着実に約束したとおりに実行できましたと、政党権威にかけてそういうことをおっしゃることはできると思われますか。宮澤大蔵大臣の御意見をお伺いいたします。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 できると思います。  今、我が国、戦後はもちろんですが、近代国家になって以来最も大きな行政改革が進行しております。
  9. 岩國哲人

    岩國委員 具体的に国民にわかりやすく、実感として、なるほど、政府は約束したとおり行政改革を実行してくれたんだなとわかるようなことは、一つ二つございますでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 くれたんだなという短期的な話ではありませんで、これはかなり長い時間を要することでございますが、例えば、ただいま御審議いただいております平成十二年の予算は、十二月までの分と一月から三月までの分と二つございますために二重の予算になっておりますが、このことは、もうとりもなおさず、大きな中央省庁の再編成が、今御審議を願っておるということです。
  11. 岩國哲人

    岩國委員 審議するだけなら私はだれにでもできると思います。国民が求めているのは、審議審議、先送りではなくて、いつ実行してくれるかということじゃないでしょうか。現に消費税は、審議審議ではなくてもう既に実行されているではありませんか。そういう、国民に約束し、そして約束した商品一般仕事でいえば、約束した商品行政改革であります。  例えば財政改革財政改革は四年前に比べて進んだと言えるでしょうか。むしろ、財政改革を進めたのは失敗である、こういう認識のもとに、今、財政改革は完全に先送りするということで意見が一致しておられるんじゃありませんか。この点をとらえて言えば、決して国民の目には、財政改革は進んだということはとても言えないと思います。  前受け金だけ受け取って約束した商品を受け渡さない商人がいたら、新聞はそれを何と書くでしょうか。悪徳商法と書くんです。大蔵大臣として、約束したものを国民にしっかりと渡したと自信を持って言い切れる御自信はおありですか。今問われているのは政治に対する不信なんだ。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最初お話行政改革でございましたから、明年になりますと、中央省庁の再編成というのは、この予算を通過させていただきますと、法律ともども現実に実現するわけでございますから、これはもう国民はすぐおわかりになる。今現実にそういう予算を御審議いただいておりますから、国会議員はもとより御存じでございます。  財政改革の方は、確かに話が違っております。あのときに、財政改革行政改革両方やろうということを時の政府は考えたわけですが、それが不可能であるということが、平成十年、小渕内閣の発足とともにわかりまして、私どもははっきり、財政改革の方は、申しわけないがこの際ひとつ棚上げをさせていただきます、どうしてもしなきゃならない問題でありますが、景気回復の方が先でございます、こう申し上げて、ただいままたそういう予算を御審議願っておるとともに、財政改革はどうしてもこれは避けて通れない、ある時期になれば必ずやらなければならないということは申し上げております。
  13. 岩國哲人

    岩國委員 ありがとうございます。  財政改革は確実に先送りされた、これが国民の理解であります。行政改革、確かに審議され、来年から実行に移される。しかし、その中身は本当に改革に相当するものだったかどうか。  二十三の省庁を十二の省庁に包み直しただけ。小さなふろしきを大きなふろしきに包み直しただけで、地方分権と言いながら大きな官庁をつくってしまう。地方分権と言いながら、やることは中央集権への逆戻りではありませんか。小さなふろしきを大きなふろしきに包み直しただけ。これを大ぶろしき改革といいます。大きなふろしきに包み直せば、外から見えにくい、風通しが悪い、ばい菌がふえる、汚職がふえる。官僚が高笑いして喜んでいるのではありませんか。この行政改革も、先送りされた上に、中身改革にふさわしくないものであります。  次の質問に移りたいと思います。  近づいております選挙予算との関係、先ほどの消費税もそうでありますけれども、一昨日だったと思いますが、我が党の池田委員質問に対して続総務庁長官が大変率直に答弁していただきました。商品券、その後地域振興券名前を変えましたけれども、この七千七百億円を使って、八百万票を目指したけれども、七百七十五万票というものをいただくことに成功しましたと。  私はこの国会の中で随分、あいまいな答弁とか、わかりにくい答弁にはなれてまいりましたけれども、このように率直でわかりやすい答弁は久しぶりに伺ったんです。はっきり言って、私は自分の席で感動を覚えました。私は公明党の結党の理念に言葉で触れたような思いがいたしました。わかりやすい政治、わかりやすい答弁。そして、幾らお金を使ったら幾ら票が集まったか、そしてキャスチングボートまでいただきましたと。そういうボートまで買って、永田町の中を動きやすいそのボートに乗れば乗り心地もいいでしょう。これほどわかりやすい答弁というのは私はめったになかったと思います。  これほど公明党が胸を張って、その即効性あるいは短期的な効果が既にあったと、集票効果があった政策、最小のコストで最大効果が上がったということであります。  これについて保利自治大臣にお伺いしたいと思います。こういう、選挙のために政府の金を使う、予算を打ち出す、そして直ちにそれが成果となってこのようにあらわれる、このような例というのはこれが初めてでしょうか。公明党が誇りを持って説明されるような成果があった政策というのはそれだけでしょうか。かつてなかったことですか、今度が初めてですか、今までにもあったことですか、それを答弁していただきたいと思います。
  14. 保利耕輔

    保利国務大臣 突然のお尋ねでございますので私見だけで申し上げますが、政治で、いろいろ政策を出したということを選挙民がどう評価するかということは確かにあるだろうと思います。それが直ちに、予算を組んで国で使ったからそれが票に結びついたんだという考え方は、私はしておりません。そういう政策、物の考え方がよかったのかどうかということで票をいただいたと思います。  今の地域振興券について申し上げるならば、続総務庁長官のおっしゃられたことですから御本人からお聞きをいただかなきゃいけませんけれども、私はそう思っておりませんで、公明党さんは公明党さんでずっと長い間それぞれの政策を積み重ねて実績を稼いできておられる、そこにああいった政策も打ち出された。その地域振興券だけによって七百数十万票の票が来た、こういうふうに考えるべきではないと私は思っております。そのうちの一つである、それが評価を受けてその票に結びついたんだという趣旨の発言と私は受け取らせていただきました。
  15. 岩國哲人

    岩國委員 これは月曜日のこの委員会議事録であります。議事録を私は今読み上げます。  この地域振興券のおかげで、「マスコミから取り上げられて、大変ないわば宣伝をしていただきました。どうでしょうか。八百万の票をいただきたい、そうすることによって私どもキャスチングボートを握るんだ、こういうことをお願いをいたしました。どうでしょう。七百七十五万票の票をいただきました。結果は、キャスチングボートをいただいたわけです。そのことが地域振興券に私はつながったと思います。」こういうふうな、非常にはっきりとその点を申しておられるわけです。  保利大臣は、このような例は、これに全く類するような例はなかったという答弁でありますけれども、それでは、一昨年の参議院選挙の直前に橋本総理減税発言をされました。自民党は二千万票の票を当時目指すと幹部は新聞ではおっしゃっていましたけれども、二千万票の票を目指して努力をしておられる最中に、橋本総理は二兆円減税を言われたのです。これは偶然かもしれませんけれども公明党は七千七百億円で七百七十五万票、一票当たり十万円。参議院選挙で……(発言する者あり)委員長
  16. 島村宜伸

    島村委員長 御静粛に願います。(発言する者あり)御静粛に願います。
  17. 岩國哲人

    岩國委員 地域振興券につながったというのは結果であって、商品券から話は始まっておるわけです。(発言する者あり)政策質問しております。  次に、二兆円の個人減税。二兆円を二千万票ということは、これも一票が十万円であります。こうした自民党も一人十万円、そしてこの地域振興券も、使われたお金に対して得たものは一票十万円、結果論としては余りにもでき過ぎた話であります。  こうした一票当たり十万円という価値観を共有しておられる自民党、そして公明党、私はそういう大切な点で価値観を共有しておられるという点で、この自民、公明の政権はかなり永続性があるものではないかと思っております。  もう一つ、三番目の例を申し上げます。  きのうの新聞に一斉に広告された「あなたの「やる気」を、確かな自信に。」ここに深谷通産大臣の顔と、そして予算が使われる。我々は今まだここで予算審議している最中であります。これがすべての新聞に、この予算審議の最中に中小企業対策にこのような宣伝が行われる。税金をもとにした予算を使って、そして選挙に対してのアピールだということは、これはだれの目にも明らかであります。  こうした広告を、公費を使って、選挙に向かって今みんなが走っているときに一斉に広告を出すということは、これは閣議できちんと了解がとられた結果ですか。官房長官にお伺いいたします。こういう広報を全部の新聞に一斉に予算委員会審議をやっている最中にやるということについて、閣議了解がとられた結果かどうか、そのことだけを、官房長官、お願いいたします。
  18. 青木幹雄

    青木国務大臣 広告についてはいろいろなとり方があろうかと思いますが、私は、選挙宣伝ではなくて、中小企業対策を一生懸命やっておりますよという宣伝であろう、そういうふうに解釈をいたしております。
  19. 岩國哲人

    岩國委員 これはまだ委員会審議中であります、予算の大枠について。それから、中小企業対策をどうしようか、これは自民党だけじゃなくてすべての政党関心事であり、そして、それぞれの選挙区の中小企業の皆さんが期待しておられることであります。しかし、委員会審議中にこういうことをわざわざ政府お金を出してやるということは少し控えるべきではないか、私はそのような考えを持っておりますのでお伺いした次第であります。  こうした、お金の使い方が非常に乱暴になってきているなということを、私はこの国会審議を通じて非常に痛感するわけでありますけれども、この言葉と金の問題、国会予算審議の問題。  以前宮澤大蔵大臣にも私は申し上げたことがありますけれども、今、日本ではお金が泣いているんじゃないでしょうか。預金利子もつけてもらえない。銀行お金を持っていっても、給料を払ってもらえない。銀行からもらう給料のことを預金利子と言います、給料ももらえない。日本資本主義を選んだはずですけれども資本主義の世界においてお金対価を払ってもらえない。こういう事態がもう既に定着してきております。  人が働いて報酬を得て自由に使える、これが資本主義のいいところです。人が働くだけではなくて、お金対価を得られる。人もお金両方が働けるから、早く豊かになれる。人が働けなくなった、病気になった、定年になった、そのときにはお金がかわりに働いてくれる、だから安心だ。早く豊かになれる、万一のときは安心だ、これが資本主義の強みであり、多くの国が資本主義を選択したのは、我が国も含めて、そこに理由があったと思います。  にもかかわらず、今お金仕事をしても給料をもらえない。お金がたんすの引き出しや仏壇の引き出しの中で失業をしている。このような状態が今の日本状態であります。預金をしても利子がもらえない。  もう一つ事業投資をいたしましても、資本収益率アメリカ日本を比較した場合に、九八年、これは最も差の激しいときかもしれませんけれども資本収益率アメリカは一五%、日本は〇・二%。向こうが一五%ということは、一歳の誕生日アメリカ人の赤ん坊がもらう一五%の収益を、日本は七十五歳の誕生日になってやっともらえる。一対七十五の差が出ております。  事業投資をしても、余りにもリターンが少な過ぎる。銀行へ持っていっても、限りなくゼロに近い。お金が死んだような状態になっております。  まさにこれは、マルクス、レーニンの説いた共産主義の優等生の国じゃないでしょうか。当時の共産主義の典型とされたソ連、そのソ連と今の日本との違いは、向こうお金のない共産主義、こっちはお金のある共産主義両方ともお金対価をもらえないという点では全く共通しております。  今の日本のこうした景気の一番の問題は、釈迦に説法かもしれませんけれども、将来不安があるから、みんななかなかお金を使おうとしないんです。税金は上がる、利子は下がる、年金支給年齢は上がる、年金は下がる、そういう将来に対する不安、気を使わなければならないから金が使えない。きのう、アイアンの二番の話が出ました。ゴルフに例えれば、木ばかり使っているから金が使えなくなってしまった。これが今の日本状態じゃないかと思います。  税金も泣いています。長期計画という名前のもとに、十五年計画、二十年計画山陰高速道路なんかもそうですけれども、いつまでたっても最初の一メートルのために使った税金がお役に立つ日がやってこない。完成するころには、見事に過疎地帯専用高速道路が完成するわけです。税金も泣かされています。  私は、今こそ金権政治を強調するときではないかと思います。人の権利、人権、大切です。人権政治は一番大切だと思いますけれども、私は、今、お金人権、金をもっと大切にする金権政治が必要ではないかとさえ思います。金権政治というのは嫌なイメージがあります。しかし、私は、いい意味で、お金をもっと大切にする、税金を大切にする金権政治をもっともっと強調すべきではないかと思います。  昔から「お仙泣かすな馬肥やせ」と言われました。今は、お銭を泣かして票を肥やすような動きばかりが目立つではありませんか。大臣、何か御意見ありましたら、お聞かせください。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大体のお話は前にも伺いましたけれども、私も同感するところが多いんです。ただ、最後の部分だけは警句として承っておきます。
  21. 岩國哲人

    岩國委員 次に、二十一世紀懇談会の提言についてお伺いしたいと思います。  官房長官、そろそろまた御退席されるようですから、その前に手短に。二十一世紀懇談会の英語をこれから重視すべきだという意見について。  総理がいらっしゃれば、きょう総理がいらっしゃらないということを私大変残念に思います。こうしたお金のあり方、予算のあり方、選挙のあり方、政治姿勢のあり方、たくさん私は総理に直接お伺いしたい点があります。しかし、かわりまして官房長官に、この二十一世紀懇談会の英語を重視しろ、その一点について、官房長官はどのような受けとめ方をされ、その方向でこれから内閣として努力をされるのか、あれは提言として、英語を重視する気なんか全くありませんというお考えでしょうか、所感をお願いいたします。
  22. 青木幹雄

    青木国務大臣 今の質問は、二十一世紀懇において、日本人も実用的な英語が使いこなせるようにしなければならないという意見が出され、その以前の問題として、やはり日本人としては美しい日本語をまずきっちり話せるようにしなければならないということを総理も施政方針で述べておるところでございます。  そのことについての御質問だと思いますが、私も二十一世紀懇で言われているように、英語をみんなが話せるようになるということは非常に大事なことだと考えております。しかしその前に、日本人として、やはり自分の国の言葉である日本語、美しい日本語という表現をしておりますが、大事だと思っております。  ただ、私はここで一つひっかかるんですが、これは個人的なことなんですが、岩國議員と私は、隣の大社の出身で、隣の市長さん、長らくお務めいただいて本当に御苦労さんでございました。私どもは、生まれたときから、東北もそうですが、いわゆるずうずう弁で育っております。美しい日本語と言われると、それじゃ、ずうずう弁なんか美しい日本語じゃないんじゃないかというような一つのひっかかりがございます。  ですから、私は、英語が話せる前に、まず目上の人と話すときにはどういう言葉を使うべきか、同僚と話すときにはどういう言葉を使うべきか、子供と話すときにはどういう言い方をすべきか。そういうふうな基本的なことから、やはり日本人が、美しい言葉というものがそういうものであれば、そこから始まって、それがきっちりできた時点で、英語が世界の共通語になっておりますので、英語も話せるような時代が来ることを望んでいる次第でございます。
  23. 岩國哲人

    岩國委員 私は、今朝、特に青木官房長官に御答弁をお願いしましたのは、平成元年、私の出雲市長選挙のときに、私は人生で初めての選挙でした、皆さん大変心配していただいて、竹下先生、青木先生、いろいろな方が私に手とり足とり御注意をいただきました中に、英語を使ってはならないということを官房長官はたしか私におっしゃいました。英語なんか使ったらいけんよ、英語を使ったら票が減るもんだけん、こういう御注意をいただいて、私は大変いい御注意をいただいた。そのおかげで当選させていただいたのかもしれませんけれども。  先ほど出雲弁の話が出ました。私は、英語も、あれはあの地域の方言だと思っております。日本語も方言、フランス語も方言。たまたま影響力の大きい方言かもしれませんけれども、その英語をありがたがって、特定地域の方言を日本の第二公用語にまでしようという考えは、私はおかしいのではないかと思っております。ならば、鹿児島弁は第三公用語なのか、出雲弁は第四公用語としてもらえるのか、そういう問題が当然出てくるわけであります。  そしてもう一つ、最近の文部省の教育方針なんかにありますけれども、パソコン教育、英語教育がこれからの近代的な日本人のために必要だ、私はこれもおかしいと思っています。それ行け英語、それ行けパソコン、その結果としてどういう日本人が出てくるのか。今、そういった情報化というのはとうとうとして流れておりますけれども、その情報洪水の中で、精神異常の方がこれからむしろ結果としてふえていくんじゃないか。心の豊かさをつかむのが本当の教育の目的であるならば、パソコン教育、英語教育を重要視しようという動きは私はおかしいと思っております。  例えば、世論調査を見ましても、政府が毎年やっております世論調査で、心の豊かさを求めるのか物の豊かさを求めるのか、これは一九七九年において逆転しております。物の豊かさよりも心の豊かさを求める人が多くなっている。そして、一九九一年、今から約十年前に、心の豊かさを求める人の数はついに五〇%を超えてしまったんです。そういう世論調査の結果を尊重するのであれば、英語教育、パソコン教育ということについても、私はもう少し慎重であるべきじゃないかと思います。  弊害が既に起きております。小学校における国語の時間は、六年間でついに一千時間を割りました。中学校における国語の勉強時間は、二十年前に比べて三割減っております。官房長官がおっしゃった正しい日本語、美しい日本語、私は美しい日本語でありたいと思いますけれども、美しい日本語の一歩手前の正しい日本語でさえも使えない若い人が最近急増しております。敬語の使い方も耳を覆うばかりの現状であります。  そこでお伺いいたします。この第二公用語という提言について、この公用語というのは、日本の公用語は何語ですか。官房長官、お願いします。
  24. 青木幹雄

    青木国務大臣 私も詳しいことは存じませんが、公用語という定義はないというように聞いております。美しい日本語という定義もないと同じようなあれじゃないかと思っております。
  25. 岩國哲人

    岩國委員 私も調べていろいろ聞いてみましたけれども日本に公用語というものはない、どこにも定義されていない。そこへ、この二十一世紀懇談会から、第二公用語と。第一公用語さえもない国で、なぜこの第二公用語という提言が出てきて、そしてそれをそのまま総理大臣が受け取っておられるのか。第二公用語という提言を受け取ったということは、第一公用語がどこかになくてはおかしいんじゃないでしょうか。そういう疑問を感じます。
  26. 青木幹雄

    青木国務大臣 字引の上での定義はありませんが、私どもは、日本語が日本人が使う第一公用語だ、そういうふうに感じております。
  27. 岩國哲人

    岩國委員 ありがとうございます。日本語にも、先ほどから申し上げますようにいろいろあります。東京弁が日本語だとだれも定義した人はおりませんし、竹下元総理、青木官房長官は大変出雲弁を愛しておられる方ですけれども、それでさえも、出雲弁を公用語にしようという話を聞いたこともありません。  この機会に、公用語というのは何語なのか、どこかで定義する。日の丸・君が代でさえもあれだけ一生懸命大騒ぎして決めたわけですから、日の丸・君が代よりもっと大切な我々の言葉の定義、日本というのは言霊の国と私は教わってきましたけれども、その言霊の国によその方言を公用語にしようというのはおかしいし、言霊の国であるならば、日の丸・君が代を決める前に、日本の公用語は何語なのだとどこかでそれは定義することの方が私はもっと意味があると思いますが、いかがでしょう。
  28. 青木幹雄

    青木国務大臣 私は、日本語というのは、日本人にとって定義以前の定義だ、そういうふうに考えています。
  29. 岩國哲人

    岩國委員 定義以前の定義というのは、日の丸のときも君が代のときも随分我々は聞かされました。しかし、言葉の国であるならば、定義以前と言わないで、やはりきちっとどこかで決めて、しかるべきときに第二公用語という時期が、我々がいなくなった二百年、三百年先はあるかもしれません。しかし、第一公用語というのは何なのか、そういう議論をしっかりとすることも決して無意味ではない、私はそのように思います。出雲大社で祝詞を英語で上げるような時期が来るとは私は思いません。しかし、第二公用語を使う時期はどこかで来るかもしれません。そういう思いでお伺いした次第であります。  次に、長銀の問題についてお伺いしたいと思います。  昨日、日長銀の問題についてはいろいろと議論をされたわけでありますけれども、自由党を代表して安倍委員からも質問がありました。四兆円という大きな金額が、一つ銀行日本の一銀行、しかも十五年前に歴史的使命を終わってしまったような銀行、のれん代がわずか十億円でしか評価されないような銀行に四兆円のお金をつぎ込もうという決定を、なぜ国会審議も相談も意見を求めることもなくそのような調印をなされるのですか。これは、安倍委員からもその点について、国会軽視とまではおっしゃらなかったかもしれませんけれども、しかし、四兆円というお金国会に諮ることもなしに、しかも、国内の銀行ならまだともかく、外国の銀行に渡してしまう。  この日長銀の破綻のつい最近の歴史を見ただけでも、最初は、日長銀が危ないから少しお見舞金でも贈ろうか、こういう話でした。ところが、危ないからこれは合併させたらいいんじゃないだろうか、合併させるために悪い仲間との手切れ金も必要だろうから手切れ金も少し払ってやろう。さあいよいよ縁談調ったのだったら、そのときには持参金でもつけてやろうか。それが結局は、御病状はかばかしくなく御仏前に変わってしまった。御仏前に変わったと思ったら、今度は棺おけの中から引っぱり出して、国内ではだめだから外国へ嫁入りさせよう、こういう話になりました。もう一回支度金、手切れ金、しかも持参金だけではなくて、結婚した後今度はまた仕送り金まで送ろう、こういう話になっているというふうに聞いております。  このような大切な、しかも外国の一企業に対して四兆円というお金を、国民の大切な税金をつけてやる、こんなことをやった国がどこにありますか。世界のどこにそんな間抜けな国会があったのか、世界のどこにそういうことについて相談も受けられない間抜けな予算委員会があったのか、世界のどこにそんな大事な決定を国会に諮ることなくやってしまう間抜けな大臣がいたのか、それについてはっきりと答弁していただきたいと思います。
  30. 越智通雄

    ○越智国務大臣 お答えする前に御忠告申し上げます。  委員会の場で人のことを間抜け、間抜けと言うことは大変遺憾であります。間抜けな大臣と今おっしゃいました。(発言する者あり)ですから、その点は御忠告申し上げておきます。議会としての品位に欠ける御質問だと思います。  そして、第二に、かなり、事実をよく御存じないでおっしゃっているのか知っておっしゃっているのかわかりませんけれども、そもそも四兆円なんという数字はまだありません。それから、この数字は、どこの銀行にお渡しする場合でも、今の日長銀の赤字の補てんですから、相手先によって変わる金額ではありません。  そして、現在の日長銀は赤字補てんの前ではマイナスになっているわけなので、そのマイナスの銀行をどう処理していくかで、確かに、おっしゃるように一年半前には合併の話もありました。しかし、皆さんの党でお出しになりました金融再生法に基づいてこの仕組みができて、それらのことを一々国会にかけたり、あるいは行政機関が単独でやってはいかぬということで、再生委員会という仕組みは国会がおつくりになったわけでありまして、その人事は国会が承認されているわけでありまして、そのもとになる交付公債は国会予算で承認を得て渡されているものでございます。私どもはその法の体制に基づいて再生委員会で、たまたま私だけが委員長という格好で国会議員ではございますが、あとの四人の方々はすぐれた見識を持つ方々が入って、その銀行の債権一本一本を調べ、その赤字の額を確定し、そして、世界各国、日本を含めてどこからもこの銀行を買い取るところはありませんかというオファーをした結果がそういうことになったわけであります。  摘要の報告は、再生法で年に二回、半期ごとに報告しろと書いてありますから、そのお決めになったとおりに私どもは報告しておりますから、全く手続的に、私どもの方に間抜けと呼ばわれるようなことは何にもございませんから、お改めいただきたいと思います。
  31. 岩國哲人

    岩國委員 まあ、そういう大臣は外国にもおられなかったということのようでありますけれども。  仕組みをつくったのは国会でありますけれども、しかし、その金額の大きさ、三兆六千億、あるいはそれをまた上回っていくかもしれない、この金額に国民は大変驚きと不安を覚えているわけです。ですから、仕組みがあったら後は何をやってもいい、どっちの方向へ向かって運転していっても結構ですというその運転を依頼したのではなくて、やはりそのときにはある程度の常識でもって、これだけの大きな金額、しかも、国内でということならまだしも、外国の一企業ということになった場合に、越智大臣、私は決して国粋主義者ではありませんけれども、外国へそのお金が行ってしまうということにはまた二重の不安というか懸念も国民にしてはあるわけですから、当然そういうことについては、そういう交渉の過程なりあるいは節目節目については、そういう仕組みを決めたこの予算委員会に報告なり相談なりされるのがもっと常識的なやり方であったのではなかろうか、私はそのように思う次第であります。  したがいまして、そういう日長銀の売却、新しい日長銀の設立、今まで幾らこの日長銀に、いつ幾ら、いつ幾ら、今まで二回、そして今度の三兆六千億円の補てん、さらには海外へ、できてからの将来の仕送り的なお金、この四つの点について、時期と金額とをここで御説明いただきたいと思います。
  32. 越智通雄

    ○越智国務大臣 まず第一に、もう一遍申し上げますが、四兆円は外国に行くわけではございませんで、日本長期信用銀行の赤字を補てんする、まず補てんしてゼロにするわけですから、これは、日本銀行がお買いになった場合でもどなたがお買いになった場合でも、全く評価に変わりはございません。  それから、これまでに日長銀に対して投入されました公的資金の額は、特別公的管理開始以降、長銀は、預金保険機構の金融再生勘定より、一昨年十月に三兆円、同年十一月に四千億円並びに三千億円と、ピーク時で計三兆七千億円の借り入れを預金保険機構から行っておりましたが、その後順次返済いたしまして、現在の借入残高は一兆七千億となっております。  当該借入残高については、今後、日本長期信用銀行に対して実行される赤字補てん等を原資として、三月一日に予定されておりますクロージングまでの間に弁済されることが予定されております。クロージングのときに大体三兆六千かかると思いますが、それと差し引きになるわけであります。  また、昨年八月の不適資産の第一次資産買い取りの際には、預金保険機構は、特例業務勘定、前の勘定とは別でございますが、それにおいて日本長期信用銀行からの資産買い入れのための資金約五千億を借り入れておりますが、当該資産については、資産に係る回収等、その買い取り資産を処分したときの回収等によりすべて完済される、こういうことになっております。  これからの注入の手続でございますが、債務超過相当額に当たる赤字補てんのタイミングにつきましては、本年二月末時点の暫定的な貸借対照表、これを基準日、予備的貸借対照表と申しておりますが、これで三・六兆円の赤字補てんを実行する予定でございまして、さらに、その何十日か後にこの貸借対照表を同じ基準日で確定いたしまして、その場合にまあ多少の差額が出るかもしれませんが、その過不足の調整はそこでするというのが手続でございます。
  33. 岩國哲人

    岩國委員 新しい銀行が再生し、健全な銀行となって、そしてリップルウッドがこれを、株式を将来売却して、それで投資家は利益を得よう、これが全体の仕組みだというふうに理解しておりますけれども、将来この株式を公開して、そのときの莫大なキャピタルゲインは日本に帰属するんですか、アメリカ側に帰属するんですか。
  34. 越智通雄

    ○越智国務大臣 予定どおりに、日本長期信用銀行が何年か後にうまくいったといたしましたときの話でございまして、現状の日本長期信用銀行は一年間に何百億かの赤字が出る状態でランニングしておりますから、それがすべてうまくいったという段階では、大体三分の二は今のリップルウッド・ホールディング・カンパニーの、後ででき上がるのはパートナーズという会社なんですが、パートナーズという会社の持ち分でございますから、彼らが処分するかどうかはわかりませんし、処分した場合にどの程度のプラスが出るかもまたわかりません。残り三分の一は我が方が持っております。
  35. 岩國哲人

    岩國委員 仮に、そのときにIPO等の手法によって株式が公開され、売却され、利益が一兆円あったとすれば、そのときには、三分の一、約三千億円が日本に利益として返ってくる、こういうことでしょうか。そして、残りの七千億円はパートナーズの利益として投資家に分配される、このような理解でよろしいですか。
  36. 越智通雄

    ○越智国務大臣 どちらの持ち分の株式を売るかの問題でございますから、パートナーズが持っている方の三分の二の中からお売りになれば、そこで出ました利益といいますか、それは当然向こう投資家の方にバックしていくものでございます。
  37. 岩國哲人

    岩國委員 要するに、三分の二も三分の一も、全部売却した、そういう仮定の場合、向こうが三分の二の利益を得る、日本は三分の一の利益を得る、こういうことですね、全部売却してしまったという場合は。
  38. 越智通雄

    ○越智国務大臣 これから新しい、これは株式譲渡の問題でございますから、株式譲渡で株主がかわるだけの話でございますが、したがって、それに伴っての経営陣ができ上がっていくときでございますから、今から全株をどこに売るという話は余りにも大胆な仮定の議論でございますので、何ともお答えのしようがございません。
  39. 岩國哲人

    岩國委員 その程度の認識でと言うと大変失礼ですけれども、やはりパートナーズ、アメリカ側はいろいろな投資家からお金を集めている。そして再生、解体、再生、いろいろな仕事をやりながら、投資家はその利益を手にするわけでありますから、いつまでも未来永劫にその株主として存続するということを考えることの方が私は無理があると思います。  したがいまして、仮定ではありますけれども、いずれ近い将来に順調に回復した場合には、それがキャピタルゲインとなって投資家に分配される。また、投資家にはそのような説明がなされており、投資家はそれは当然の自分たちの権利としている。したがって、将来のこの会社の楽しみ、利益というものは、三分の二はアメリカ投資家に行ってしまうと考えざるを得ないのではないかと思います。そして、そのキャピタルゲインが出たときに、日本側としてはアメリカ投資家が得たキャピタルゲインに税金をかけることもできないはずですね。その点、確認していただきたいと思います。
  40. 越智通雄

    ○越智国務大臣 外国の投資家が持ってはおりますけれども、それをかけられないという法文は今私の頭にちょっと浮かんでまいりませんけれども、何か先生は、かけられないはずだとおっしゃったのは、何条によりという条文をお持ちなんでございますか。
  41. 岩國哲人

    岩國委員 そのパートナーズという会社が持ち株を全部売却して、仮に一兆円なら一兆円というキャピタルゲインが生じた場合に、その一兆円に日本は課税権があって、例えば五〇%とか六〇%とか、日本の大蔵省の税収として入ることになるのですか、ならないのですか。
  42. 越智通雄

    ○越智国務大臣 むしろ逆に今、ここは反論してもいいそうですが、反論というか、聞いてもいいそうですからお伺いしているのは、私どもはかかるべきだと思っておりますけれども、かからないとおっしゃっていますから、何条によってかからないという立論をされているかということを聞いているわけです。
  43. 岩國哲人

    岩國委員 私は確認を今お願いしているわけでありますから。  要するに、将来、アメリカ側の利益、日本側の利益もすべてこちらの課税権があって、そのときの税収も国民としては計算しても、当てにしてもいいということですね。つまり、公的資金が投入されて、持参金はつけたわ、仕送り金は送ったわ、将来その会社が成長して大変な利益をもたらしたというときに、キャピタルゲインがこちらへ入ってくるかどうかということなんです。
  44. 越智通雄

    ○越智国務大臣 ちょっと調べさせますから。
  45. 岩國哲人

    岩國委員 それは主税局とかいろいろなところの担当かもしれませんけれども、こういう大事な売却、しかも外国を相手にしてする場合に、日本の国益という観点。国民お金が使われるんだというのであれば、日本国民に対して将来どういう利益が返ってくるか。それは、見えざる利益とは別に、アメリカ日本の公的資金を使って、アメリカ投資家だけが得をして、アメリカ政府はキャピタルゲインにも税金をかけて、日本側は何も言うことはできないということではないでしょうねということを確認していただいているわけです。  それでは、越智大臣、もし御意見がおありであれば教えていただきたいのですが、宮澤大蔵大臣、この税のあり方について、今回の長銀とのこうした一連の大きな取引、取引によって日本は金も使う、しかし使った分が将来利益として、あるいは税収の面でこれだけ返ってくるんだということを簡潔に御説明いただきたいと思います。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二つの国の課税権が競合することがあるかもしれませんので、そうなりますと、正確に専門家から御説明を申し上げるべきだと思いますが、原則としては、その株式を持っておる人がアメリカ人であって取引がアメリカで行われたという場合には、我が国の課税権には属さないと思います。
  47. 岩國哲人

    岩國委員 私もそのような理解でおりました。  したがいまして、金融再生委員会がこのような大きな取引をお決めになるときに、総合的なバランスシート、どれだけ国は負担をし、その見返りとしてこれとこれとこれがこういう形で返ってくるのだという総合的なそろばん勘定が当然あるべきだと思いますし、長銀売却という交渉を国益の観点から、あるいは市場安定への貢献であるとか将来の金融ビジョンに対する位置づけとかそうしたものを、平成の、まあ侍の意識を持っておられたかどうか、その平成の侍たちがこういう点を考慮して努力されたのかどうか、そういう交渉の経緯がもっと詳しくわかるような情報公開を私は要求したいと思います。  資料請求として委員長にお願いいたしますけれども日本長期信用銀行にかかわる次のような書類を本委員会に提供していただきたいと思います。  一番目に、譲渡にかかわる最終契約書の写しほか、これまでにニュー・LTCB・パートナーズまたはリップルウッド・ホールディングスと取り交わしたすべての覚書と契約書。これはコンフィデンシャリティーアグリーメントも含めます。  二番目。譲渡の交渉を行ったすべての交渉相手との間で取り交わした書類、またはそれらから申し受けた書類。  三番目。長銀の最終資産査定結果。できればラインシート一式も添えていただきたい。  四番目。長銀の有価証券含み益の明細。現在持ち株は二兆を既に超え、また最近、市況が上がっておりますから、持ち株の評価益もふえておりますけれども、この点について四番目。  五番目。最後ですけれども、ゴールドマン・サックスとのファイナンシャルアドバイザー契約書の写し。  以上五点を本委員会に提出いただきますようにお願いいたします。
  48. 越智通雄

    ○越智国務大臣 最終的な合意書などは既に公表いたしております。しかし、途中の経緯につきましては、ファイナンシャルアドバイザーとの契約その他、全部秘密保持条項が入っておりますから、これはできません。したがいまして……(発言する者あり)いえ、終わってもできません。  したがいまして、出せるもの、出せないものありまして、その点は、今おっしゃった二月末日現在の資産の状況等は、当然これはお出しできますけれども、その他のものについてはかなり困難と思われますので、そのようにお考えいただきたいと思います。
  49. 岩國哲人

    岩國委員 そうしたコンフィデンシャリティーアグリーメントによって拘束されるということは私も承知しておりますけれども、そのコンフィデンシャリティーアグリーメントをまず提供していただいて、それでなければ、それのどこに拘束されて出せないのか、いや、拘束しないはずではないか、ないはずだ、そういったようなことは我々としては判断しかねますので、まずコンフィデンシャリティーアグリーメントを提供していただき、また順次それぞれ出せる範囲で御努力いただきたいということを申し添えて、委員長にお願いいたします。
  50. 島村宜伸

    島村委員長 理事会で協議いたします。
  51. 岩國哲人

    岩國委員 お願いいたします。  次の質問に進ませていただいてよろしいですか。  次に、年金の運用について厚生大臣にお伺いしたいと思います。  これは大蔵委員会だったと思いますが、私はこのことについても昨年質問したことがあります。この運用資産がどの程度の利益を国民にもたらしているのか。  あるいは、一時は利益どころか損失が出ておった。今そうした年金の負担というものが国民に対して大変気分的に重くのしかかっているわけです。だからこそ、支給年齢引き上げる、あるいは年金の支給額は引き下げる、ダブルパンチを今国民要求しているときに、この百四十兆円という膨大な運用資産、大蔵省の資金運用部によって、あるいは厚生省の年福事業団によって二十六兆円がどのような利益をもたらしているのか。  そこが市場であるいは一般並みの利益を生んでいるならば、むしろ年金の引き下げというのは必要ないはずですし、支給年齢引き上げということも必要なくなるはずです。それが全く死んだような金になってしまっている。眠っているどころか損を出しているんだ。そして、運用業者に対して厳しいそのような監督がなされているのか。  最後に、そのときに理事長から約束されたクレディ・スイス。日本政府が、訴訟を起こしているようなその業者に今なおお金の運用を任せている。こんな筋の通らぬことがありますか。  以上四点、お答えいただきたいと思います。
  52. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、年金の運用でございますが、これまでの経過、それから、これから先の、要するに自主運用になるわけでございますが、要するにこれまでどのような利益を上げているかということでございますけれども、厚生年金及び国民年金の積立金は、全額資金運用部に預託されておりますし、高金利時代に預託したものでございますので、平成十年度に見ますると、平均利回りは四・一四%となっておりまして、その運用収益は五兆五千億円になっておるような次第であります。  それから、きのうもちょっと申し上げたわけでございますけれども、これまでは要するに保険料、それからいわゆる国庫負担等で賄ってこれたわけでございますけれども、保険料が凍結をいたしまして、平成十一年度におきましては運用収益というものを使用しなければ賄っていけない、こういうふうに考えております。
  53. 岩國哲人

    岩國委員 厚生大臣、クレディ・スイスへ委託した資金は、既に引き揚げは完了しておりますか、いまだに手がつけられていないのか。その一点だけ。
  54. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 この問題につきましては、委員御承知のように、金融監督庁から検査忌避につきましての刑事告発を受けまして、クレディ・スイス信託銀行につきましては、また運用成績も必ずしも芳しくない、こういうような状況がございますので、これまで委託資金の一部を回収したところでございます。(岩國委員「一部というのはどれぐらいですか。二割ですか、五割ですか」と呼ぶ)大体三百十三億円でございます。現在委託資金として残っておりますのが一千五百億円でございます。  その後、このクレディ・スイス信託銀行の方から運用体制の整備、運用方法の改善の措置を講じてきておると聞いておりますけれども、年福事業団におきましては、捜査の進捗や運用状況などを見ながら、今後しかるべきタイミングで、できるだけ早期に資金を引き揚げる方向で検討していきたい、このように考えておるような次第であります。
  55. 岩國哲人

    岩國委員 どうもありがとうございました。  中曽根文部大臣、大変失礼いたしました。  先ほど、英語、日本語の問題について、小学校、中学校において基礎的な国語教育の時間数が次々と、三十年、四十年、むしろ減ってきておる。つまり、私たちの国語教育を犠牲にしてまで英語の時間数をふやしてきているという結果が出ているんじゃないかと思います。  今後もさらにそれが激しくなっていくのか、これは軌道修正をこれからされるのか。その一点についてお答えいただきたいと思います。
  56. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 先ほど議員が御発言されましたように、昨今非常に日本語の乱れというものが生じていると私も思っておりまして、大変心配をしておりました。アクセントもおかしくなっておりますし、字が書けない、読めない、あるいは敬語の使い方もなかなかうまくできない。私自身も反省をしているところもあるわけでありますが、委員お話しになりまして、全くそのとおりだと思っております。  委員のお地元の新聞委員の記事も読ませていただきましたけれども、美しい日本語、正しい日本語というものをきちっと教える、おかしな方向に行きつつあるこの国語、日本語というものを、今軌道修正しなければならないと私も思っております。  議員が学校での授業時間のことを御説明されましたけれども、国語の時間につきましては先ほど、千時間を切られた、そういうふうなお話がありましたけれども、小学校では六年間通じまして、今千三百七十七時間指導するということになっております。そしてさらに、内容的には、やはり丁寧な言葉とか敬語の使い方とか正しい漢字とかそういうものをきちっと教える、そういう基本的な方針は何ら変わっておりません。むしろ、こういう基礎をきちっと教えるということに今後重点を置いていきたいと思っております。  委員のおっしゃりたいことは十分わかっておりますので、私どもも、国語教育、日本語教育についてこれからも力を入れてやっていきたいと思っております。
  57. 岩國哲人

    岩國委員 文部大臣、どうもありがとうございました。  私が文部省の方からいただいた資料によれば減ってきており、それから私が見たところでは一千時間をたしか割ったような受け取り方をしたわけですけれども、少なくともふえてはおらないわけですね。  そして、私が最後にお願いしたいことは、英語教育を重視されることは私は結構なことだと思います。しかし、全員が国連に勤めたりメリルリンチに勤めるわけじゃありませんから、そこそこにして、むしろ、比率からいえば国語教育の方の比率を今よりももっと高めていただきたい。正しい日本語を使えない人は英語の教育を受けることはできないぐらいの指導を私はやっていただきたいということを要望して、私の文部大臣への質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。  次に、ゼロ金利政策について、日銀総裁、そして大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  このゼロ金利政策最初は低金利政策、それが超低金利政策、今はもうゼロ金利政策、限りなくゼロに近づいてきておりますけれども、その結果として、国民が得べかりし利子所得、巨額な利子所得は銀行の方に移転しておる。これは、今までの日本の歴史の中でかつてないぐらいの大きな金額で庶民の預金利子が奪われて銀行の方に行っておる。これをどのように、国民所得あるいは個人消費へのインパクトを分析しておられるのか。  これからもまだまだ続けるんだというお考えを再三聞かされておりますけれども、こういう見えざる負担というものを毎年何兆円も国民の財布にかけながら、それで、個人消費はふえない、景気はよくならない。私は何かが間違っているんじゃないかと思います。お金給料を払わない、お金が生き生きと動き回らない、それは私は間違った社会ではないかと思いますけれども、それはともかくとしまして、このゼロ金利政策はどれだけ国民に負担を与えてきたのか、この十年間に、総裁として、推計、およその金額として何十兆円の所得移転が行われたことになるのか。つまり、それだけの大きな所得移転が行われなかったら効果は産業セクターに出なかったはずですから、どれぐらいの追い風を吹かせられたのか、それを簡潔にお願いしたいと思います。
  58. 速水優

    ○速水参考人 お答えいたします。  国民所得統計で家計の純利子所得を見ますと、平成二年度が十二兆六千億円、近年のピークになっておりますが、その後は金利の低下で減少しておりまして、平成十年度には七兆六千億円、こういうふうになっております。平成二年度と比べた毎年の減少幅を八年分足して合わせてみますと、累計で大体二十七兆円という数字になります。これは、これだけ家計の純利子所得が減少したという試算、結果が出てまいります。  ただし、これはあくまでも家計の純利子所得だけに焦点を当てたものでございまして、実際の家計所得というのはもう少し複雑でございます。多面的にとらえる必要があるように思うんですが、例えば雇用者所得というのを見ますと、この間に利子所得の減少額を大幅に上回って増加しております。  御指摘のとおりに、家計部門の利子所得の減少がゼロ金利政策の副作用の一つであるという点は、私ども十分認識しております。ただ、ゼロ金利政策の評価は、それが株価や企業マインドの面などを含めまして、経済活動全般に与えております好影響とあわせて考えてみる必要があろうかと思います。先ほど申し上げました雇用者所得の増加にしても、これまでの思い切った金融緩和の効果によって経済活動が下支えされてきたということは十分にあったと私は自信を持って思っております。  そこで、当面の政策運営についてでございますが、現在のところでは、景気は持ち直しに転じておりますけれども、なお民間需要の自律的回復というはっきりした動きが依然として見られません。したがいまして、先行きのデフレ懸念を払拭するために、ゼロ金利政策を当面継続していくというのが適当であると、現時点での政策委員会での判断でございます。
  59. 岩國哲人

    岩國委員 ありがとうございました。  私は、このゼロ金利政策は、今や日本の経済にとって、景気にとって、プラスではないのではないかという疑念を持ち続けております。そうした景気を下支えした、それは政府のいろいろな景気対策、借金してまで景気を支えてきた、その効果の方があらわれておるのであって、決してこのゼロ金利そのものが——私の世田谷にしてもそうです。金利が下がったからあしたから従業員を一人採用しよう、そんなことを私は聞いたことがありません。お客さんがふえたから店員を一人ふやす、そういう話は聞くことがあります。  この低金利、ゼロ金利というものが、一般の商業者とか中小企業とか、そういうところにいかほどの恩恵をもたらしているのか、もっともっと真剣に精査されて方向転換をし、景気の下支えどころか景気の足を引っ張っているのじゃないかと私は思いますけれども、その点をもっと国民の立場から、大企業とか金融機関の立場からの分析だけではなくて、そういうことをしっかりと私はやっていただきたいと思います。  もう一つ、総裁においでいただいたついでと言っては大変失礼ですけれども、今問題になっております東京都の銀行に対する課税、課税対象に日本銀行も堂々と入っておられます。これについてどういう所感をお持ちになっておられるのか。これは、日本銀行も喜んでお払いすることが、これからの日本のためにこの課税に対する大きな道を開いていく上で積極的にやるべきだというお考えでしょうか。お願いします。
  60. 速水優

    ○速水参考人 この点につきましては、私の立場から今是非を申すことは差し控えたいと思います。  ただ、私の感想として申し上げてみたいと思いますのは、確かに東京都の財政の赤字というのは巨大なものがあるわけでございますが、そうかといって、銀行がこれまでいろいろ横暴であったといったような世論もございます。しかし、ここ二年といいますか、ここ一年といいますか、銀行がどれだけ苦労して、ぎりぎりの破綻の間際まで来て、その中で国の公的資金の援助を受けながら自己資本をふやし、不良資産を償却ないしは引き当てをし、そしてさらに、内外を見ながら思い切った再編をやっているんですね。それで、リストラを随分やりましたし、日本経済、今構造改革が何よりも大事なんですが、その最先端を行って構造改革をやってきていると思うんです。それには、改革して合併するにしても、今のITにしても、設備投資その他に巨大な金が要るわけで、そういうことを考えてああいう再編が起こりつつある。それで、世界の銀行に対する競争力を持った銀行にしていきたいとして立ち上がったところへああいう思っていなかった課税がかかってきたときに、かなりやはり大きなショックを受けるんじゃないかということは、私は懸念いたしております。そのことは十分考えていただきたい。  そして、税金というのは、公平であり、中立であり、かつ簡素であるべきであるというのが原則でございますから、そこのところも考えて、よく御検討いただきたい。  私どもに対する課税につきましては、税金を払った上で、内部留保とそれから配当金を残して、全部一般会計に納付金として納めておりますので、私どもの方はそれによって特にどうということはございません。ただし、それをどういうふうに扱うのかについては、関係当局でよく話し合っていただきたいというふうに思っております。
  61. 岩國哲人

    岩國委員 是非を言う立場ではないとはおっしゃりながらも、御意見は確かにいただきました。  こうした金融機関に対して今公的資金が大量に投入され、それについては、やり方、金額については私は意見を異にするものではありますけれども、そうした国民の負担において、今一生懸命半病人、病人の状態から健全な銀行へと道を歩んでいるときに、病人の財布に手を突っ込むような、そういう押し込み、つじ切り、まあ江戸時代でいえばつじ切りのようなものですね、こういうふうなことを、私はたとえ地方分権の時代といえどもやってはならないと思うわけです。  十分な予告期間を置いてそれぞれの金融機関が対応できるような、そのような税の迎え方というのをすべきではないかと思いますし、とりわけ、他の業界と違ってこれは影響するところが非常に大きいわけでありますから、そういう世間的に反感の多い業種だから、一般人の、大衆の反感を利用したような、それを扇動するようなやり方でこのような税金が導入されるということについては、私は大変税のあり方としても危惧を覚えるものであります。  次に、最近、ニューヨーク・タイムズに、日本政府は八兆円のお金を市中銀行から借り入れる。これは一昨日だったか、宮澤大蔵大臣からも御答弁いただいておりました。金額は八兆円が正確だったかどうかわかりませんけれども、この市中銀行から政府お金を借りるというあり方がニューヨーク・タイムズではアンユージュアルだ、このような表現で、大変上品ではありますけれども、ちょっと非常識ではないかという感じの論評がなされておりますけれども、日銀総裁として、日銀からの借り入れではなくて市中銀行から、そして今問題の税金はかけられようとしている、あるいは公的資金は使われている、そういう時期において、市中銀行から政府お金を借りるということについて、どのような考えを持っていらっしゃいますか。
  62. 速水優

    ○速水参考人 御指摘の点は、多分、特別会計が資金ショートをして、それをどうやって調達するかという話だと思いますけれども、今民間に金融資金がかなり余っておりますし、特別会計に当面市場調達をするという気持ちがあるのであれば、これから特別会計も変わっていくわけでして、いずれにしても市場調達をしながらやっていかなきゃいけないわけでございますから、そういうはしりとして市場調達をされることは、私は悪いことであるとは思いません。
  63. 岩國哲人

    岩國委員 世界の最も大きな金融市場の中で発行されている一流の新聞がそのような受け取り方をしているということは、やはり日本が今やろうとしている市中銀行からの借り入れよりも、堂々と日本銀行から借り入れる、日本銀行は国債を引き受けることの方が透明度が高いし、私はむしろそれが常識ではないかという意見を持っております。  そういった点について、市中銀行からの借り入れということは、なぜ外国においてアンユージュアルだというふうに言われている、その根拠は何なのか。その点をもう一言補っていただけませんでしょうか。
  64. 速水優

    ○速水参考人 政府に対する日本銀行からの資金供与というのは、これはよほどしっかりした理由があって、しかも短期的なものであれば別でございますけれども、こういうものは一度貸し出しますとだんだん膨らんでいくものであって、なかなか思うように返ってこない。それが、中央銀行政府に資金供与をすること、国債の引き受けをすること、これは私どもの中央銀行日本銀行の歴史から見ても、あるいは各国の中央銀行の歴史から見てもやるべきでないことでございますので、特に国債引き受けは財政法でも禁止されておりますし、これはどういうことがあっても私どもは回避してまいりたいと思っております。  今、市場に千三百兆の市民の金融資産があるわけです。金融市場さえうまくすれば、必ずこれは消化できるものだと思っております。最近出ました五年物の国債にしても十年物の公募にしても、二倍近い応募があるわけです、金利が二%を割っておりましても。そういうものを使っていくべきだ。それと同時に、市場をつくり、拡大し、流動性を持たせ、しかも使い勝手のいい市場にしていくということが、まさに円の国際化でもあり、金融市場をつくっていくことにつながっていくというふうに思っております。それが私どもの当面の課題だと思っております。
  65. 岩國哲人

    岩國委員 ありがとうございました。  私は、国債引き受けを直ちにやれということを申し上げているわけではなくて、市中銀行からの借り入れというのも、歯どめがあるようで、またこれはないものだと思うのです。いろいろな民間銀行が、政府が借りたいというときに、それにどの程度の抵抗ができるのか。ましてや、公的資金を入れられたりなんかしているときに、これは抵抗力が非常に弱いと思います、そういうことに対して、歯どめは。  したがって、今総裁がおっしゃったように、マーケットという一つの距離を置いて、そこで市中消化をしていく。金利はたとえ高くなっても、成長率が高いときには当然長期金利も上がるというのは、これは常識でありますから、いつまでも、元気になっても、まだ体温を下げたままで仕事をしなさいというのがむしろアンユージュアルなことでありますから、やはりマーケットというものをこれから重視して、安易に日銀の引き受けだとか、あるいは市中銀行の引き受けということに依存するべきではないし、また、そういうことをやれば、日本のマーケットは非常におかしなマーケットだという評価につながっていくのではないかと思います。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 交付税特別会計で八兆円を市中から借りることについて、昨日も申し上げましたが、ニューヨーク・タイムズは私も気がついておりまして、これから私どもが市中から借りようとしますのは当然入札で借りますので、その金利は非常に低いものであることが予想されますが、市中としては、今の状況の中で八兆円の金を貸すということは、恐らくかなりな競争状況が起こるに違いないと思っていますので、決して無理をして金を借りるという状況ではございません。  これは御承知のとおりですが、ニューヨーク・タイムズがアンユージュアルだと言いましたのは、そのような日本の金利の状況というものが、これは総裁が御説明になりましたように、十分に意義のある政策だと私も賛成しておるのですが、それがこういう現象になってあらわれたということについて述べたのではないかと思います。
  67. 岩國哲人

    岩國委員 自治大臣が御在席ですので、最後にお伺いしたいと思いますけれども、先ほどの外形標準課税について、残されている時間は少ないと思います。こうした東京都による計算された暴発的な行為に対して、自治大臣としてはどういう御意見をお持ちですか。これは、全国の自治体の利益を守るという立場も私は自治省には当然あるはずだと思いますし、そういう、自治体によっていろいろと不利益をこうむるところが出てくるかもしれない、あるいはよその自治体が順調な形で、スムーズな形で導入したいというときに東京都が先行する、先走るということについて、どういう御意見をお持ちですか。
  68. 保利耕輔

    保利国務大臣 まず、外形標準課税の問題については、私、就任以来いろいろ質問を受けておりますが、基本的な方向性としては、地方における安定的な財源を確保するために外形標準課税の導入というのを考えておるということであります。  ただし、そのやり方、時期等については慎重に税制調査会等で御議論をいただいているさなかである。その中で、東京都がそういうふうな形で急に言われた。しかし、いろいろ技術的に検討してみますというと、いろいろ、先生御承知のように、問題点もある。したがって、私は、今事務当局をして東京都の主税局とよく話し合いをさせて、そしてこういう問題点についての懸念を表明しながら、東京都のお答えを待ちながら、注目をして、そしてできるだけ早い時期に何らかの方法で、私自身、東京都に対しての意見の表明をしなければならぬ。  ただし、考えなければいけないのは、この問題については、課税に対する自主権を東京都が持っておりますから、それに対して自治省が干渉するということはできない。あくまでも東京都の決定でなされることだということをまず第一に立てながらも、今先生御指摘のように、全国ほかの四十六の道府県の皆様方それぞれ注目されておりますし、また先刻の知事の皆様方からのアンケート調査によりましても、方向は是としながらもやり方については問題点がある、そういう結果が出ていますから、そういうことも踏まえながら、十分に私どもとしての意見を固めてまいりたいと思っております。
  69. 岩國哲人

    岩國委員 自治大臣としては、一東京都だけの問題ではなくて、残り四十六道府県の立場もよくお考えいただいて、そして将来のあるべき税体系の中で一番抵抗がなく、正しい認識を得られるような導入の仕方、そのような立場で、毅然とした態度で臨んでいただきたいと思います。私も地方分権を唱えてきましたし、賛成でありますけれども地方分権だから地方の自治体がやりたいことは何でもできるということではなくて、やはり日本の立場、よその自治体の立場というものを考えなければならないし、ローカリズムとはいってもそれがモーカリズムに誤解されているような向きがあるのではないか、その点を懸念いたします。どうか、その点はしっかりとした明快な態度で臨んでいただきたいということを最後に。
  70. 島村宜伸

    島村委員長 保利自治大臣。簡潔にお願いいたします。
  71. 保利耕輔

    保利国務大臣 そういう点を十分に踏まえまして、今諸問題について当局同士で話をさせておるということであります。
  72. 岩國哲人

    岩國委員 では、質問を終わります。ありがとうございました。
  73. 島村宜伸

    島村委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、古賀一成君。
  74. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 きょうは、平成十二年度予算の中に潜むいろいろな財政問題あるいは経済問題というのがあるだろうということで、私はそれを中心に御質問をさせていただきますが、まず冒頭に、私は、どうしてもこの問題は言っておきたいという問題がございまして、指摘をさせていただきたいと思います。  実は、きのうから問題になっております総理の出席問題、これは質問通告の中で、これこそまさに冒頭で質問したいと申し上げましたところ、総理はお出にならないものですから、官房長官はこの時間は、午前中は都合がつかないということで……(発言する者あり)いや、官房長官はそうでございました。私は潔く、わかりましたといって午後に回しました。  正式には、官房長官には午後に質問いたしますけれども、きょう午後一番でやろうと思ったのは、きょうの新聞を私は見てみまして、産経の「小渕日誌」とか、各紙、「小渕首相の一日」とか、こう出ております。きのう、官房長官が、総理には公務がある、ほかの執務で大変だという答弁の中で、あるいはそういう前提の中で、我々は、この予算委員会をまさに内閣を総理する総理大臣が欠席しても、不満だけれどもという、こういう思いだった。  きのうの一日を見ました。午前中、もちろん閣議という形式的な会議がございまして、その後外部の方は二グループ、そして午後になりましてわずか五グループの接客をされたということしかないのです。そしてその中に、重要なことに、産経新聞の「小渕日誌」でありますが、「きのうもらったバレンタインのチョコレートケーキを開けたら、サミットのマーク入りだった。もりもり元気が出たと言っておいてくれ。」こういう記事もございました。  この二千年紀という新しいミレニアムの予算、総理みずから世界一の借金王とおっしゃるこの予算、そして、先ほども岩國委員から指摘のあった長銀問題、三・六兆円であります。これがアメリカに渡るという話。それから、先ほどございました、地方交付税特会が穴があいて何と財投からの繰り入れ。回してもらうことがままならず、貸し渋りで中小企業がひいひい言っているこの時代に、八兆円ものお金が実は制度的歳入欠陥に入る、もう問題だらけだと私は思うのですね。  だからこそ、内閣を総理する総理大臣が出るべきでありまして、それを一日の答弁だけで、出られない。私はこの新聞、ぜひ今後、我々予算委員会というのは、毎日総理の一日というのは注目して見るべきですね、どんどん見るべきだ。これは公務で忙しいというたぐいには入らない、私はそう思うのです。(発言する者あり)  それで、今クエスチョンタイムの話が出ました。これが一つの理屈になっておったんだろうと思います。これは大変問題だと思います。社民党に至っては、クエスチョンタイム四十分の中のわずか五分です。十回やったって五十分。何でこういうクエスチョンタイムで総理が出てきたということになるだろうか。  我々予算委員会として、別にこれは与党、野党じゃないのです。これだけの予算審議する、国会にとって最大の使命というのは予算のチェックであります。これについて、与党であろうが野党であろうが、やはり国会権威予算委員会委員としてのあるいは理事としての誇りということをまず前提に置くならば、私は、きょうの小渕総理のこの日程を見たときに、我々、与野党を問わず、予算委員会というのはなめられておるんではないか、無視されておるんではないか、私はこう考えるべきだと思います。  これは、午後に官房長官がお見えの折に私は再度見解をお聞きしたい、かように申し上げておきたいと思います。  それでは、質問に入ります。  大蔵大臣質問を申し上げたいと思うわけですが、平成十二年度の抱える問題について、いろいろな角度からきのう、おとといと質問が出ております。私は、総体としての基本問題をまずここで洗い出しをしてみたいと思うわけであります。  平成十二年度予算編成に伴いまして、この当初予算平成十二年度末がどうなるかというのは予想されるわけでありますが、総理が何度も何度も本会議等でおっしゃった世界一の借金王、六百四十五兆円に上る国、地方を通ずる長期債務、これがございます。ちなみに、わずか三年前この数字はどうであったかと見たときに、四百七十六兆円。わずか三年で百六十兆円のいわゆる長期債務がふえたという、歯どめなき債務累増の過程にあるわけであります。  国だけ見ましても、平成十二年度末で三百六十四兆円、GDP比七三%に迫っておる。御承知のとおり、EU加盟は、国、地方、公的セクターで六〇%でありますから、国だけで優にこれを超えてしまっておる。そして、もうこれはくどくど申し上げませんが、公債発行三十二・六兆円、うち建設国債が九兆一千五百億、赤字国債がそれを数倍する二十三兆四千六百億。いわゆる経常経費に充てられる、その日に使ってしまうと言ってもいい赤字公債が、二十三兆四千六百億円を数えている。  こういう歳入歳出の状況でございまして、私は本当に、年々のこのトレンドを見ても恐るべきものだと思うわけでありますが、世界各国との比較を見ても、本当にそら恐ろしい予算であるという現実は、与野党、あるいは内閣、大臣、否定できないものだと思います。  私はこういう大変な危機感を持つわけでありますが、大蔵大臣は、長らく日本財政にかかわってこられた専門家の専門家でもございます。本年度予算をどう自己評価されますか、まずその点、総括的にお伺いをいたしたいと思います。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはもう古賀委員が一番よく御存じのことでございますけれども我が国のような経済大国がこれだけ深刻な不況に陥ったということは、めったに例がございませんし、現に世界では一つもそういう国はございません。したがいまして、それに対応するために、殊に二十一世紀という新しい世紀を迎えますので、それにふさわしい対応をせざるを得ないと考えました。  したがいまして、小渕内閣発足以来、とにかく、財政の問題も金融の問題もございますけれども、この不況を克服することがまず第一でなければ、次のレメディーは生まれてこないと考えましたので、財政におきましても、金融におきましても、まことに異常なことをいたしてまいりました。  ここへ来まして、ようやく最悪の事態を脱したという兆候はございますけれども、ただ、いかにも景気の回復が民需主導でございません。月によりまして、国民消費はなおマイナスでございます、これはリストラの関係もございましてやむを得ないとは思いますが。また、設備投資の動向も非常に弱いということでございますので、昨年度に引き続きまして、補正予算並びに御審議いただいております予算をもちまして、もう一度財政、金融が後押しをする決心をいたしました。  ただ、その中身は、ごらんいただきますように、公共事業についての従来からの批判にできるだけこたえよう、あるいはまた、金融の危機等についての対応は、これをもって打ちどめにするためにすべてをここに予算化するといったようなことで、これをもってこのような異常な対応は終わりにいたしたいという願望を持っております。  その願望の裏づけとして考えておりますのは、恐らく今年のある時期、私は、四—六の経済統計が出ますのが九月でございますので、そのころになりますと民需が始動をし始めるということが起こってくるのではないかということを、半分はこれは願望でございますけれども、そういう兆候もありと考えておりますので、したがいまして、それをもって日本経済がようやく民需によるプラス成長の軌道に入っていく、こういうことも考えまして、ただいま御審議中の予算あるいは金融政策等々を講じておるわけでございます。
  76. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 私は、年々の債務累増だけではなしに、質的に大変、国、地方を通じて体質といいますか、問題が深く、体質が悪くなっているという危機感を大変深く持っておりまして、いわゆる問題を解決する能力がないというよりも、むしろ問題を認識する能力すらないのじゃないか、それほど楽観的にお考えではないか、かように思わざるを得ないほど、実は、この数年の財政の秩序というか規律というものはもう歯どめなく乱れてきたように思うのです。  それで、今大臣の方から、こういう異常なというお言葉もございました。こういうのはこれっきりにしたいという願望もいただきましたけれども、そういう、景気が回復すればそこで財政改革に取り組めるというほど実は事態は甘くないわけでありまして、今言った正規の長期債務のほかに、まだまだあるのですね。  先ほどちょっと問題になりました、例えば、国と地方の借金の分け合いというか、隠し合いといいますか、地方交付税特会の借金だって隠れております。これはたしか去年、私は地方行政委員会理事をずっとやっておりましたのでよく知っておりますけれども、まあふえたものだ、二十九兆と言っておりましたら、ことしは三十八・一兆ですよ。もうざっと九兆円。国鉄のあの隠し長期債務二十九兆、地方交付税特会もそこまで来たかと思っておったら、ほんの数カ月たった今、この数字を見たときに三十八・一兆、もうどうなるんだろうと。  このほかにも、厚生年金特会あるいは国民年金特会、ここにも、だれが貸し借りの責任を持っているか、あるいはどうやって処理するか、不明なままの借金というものが実は残っておるのですね。これも処理しなければならぬ。  これは、容易ならざる覚悟、あるいは、もうすべての知恵を振り絞る、こういう情熱、そういうものなくしてこれが解決されるはずがないのです。だからこそ、先ほど言ったように、そのトップにある総理がこの予算委員会に一日目でもう出ない、それが私信じられないんですね。(発言する者あり)いや、それは決めたにしても、私が総理であるならば、私みずから、来なくていいといっても私は、この予算委員会でこの危機を訴えるというのが当然ですよ。だから私は、問題認識、能力じゃなしに問題認識、能力すら欠いているのじゃないかと心配するわけです。  私は本当に、今の国民もさることながら、あるいは今の中小企業の皆さんもさることながら、今生まれてきた赤ん坊の人たちに、最近見ると本当にかわいそうだと思う。それほど私は問題意識を持っております。これをまず申し上げたいと思います。  それで、第二問目でございますが、この予算の大前提になっておる論理は、ただ一つ、一兎論でございます。二兎を追う者一兎を得ずという言葉を何度聞いたことかわかりません。そして、その一兎というものは、まずは財政出動して景気をよくすることだ、こういう論理に立っているのですね。  ところが、これはきのうの質問でもございました、例の大蔵省の中期財政展望、これを見たときに、この論理は全く成立しない。虚構である、あるいはもっと言えばうそである、私はそう言わざるを得ないと確信をいたします。これは私は、今度の予算最大の問題だと思うのですね。  つまり、説明をいたします。  ここに中期財政展望がございます。試算が四つ出してございます。試算一は、名目成長率を三・五%と見ております。名目成長率三・五、これだけ達成されれば内閣としてはよしとする、景気は回復という話になるんでありましょう。つまり、我々が期待すべき数字なのかもしれません。その三・五%が達成されたとして、二〇〇三年度にどうなるか。国債費、つまり歳出の方でございますが、これが二十二・三兆円になります。今提出されております二〇〇〇年度予算は二十二兆ちょうどでございますから、つまり、経済成長を三・五とした場合、三千億円の国債費が増嵩をいたします。この場合の前提は表面金利四・五ということになっております。  ところが、一方、歳入の方を見ますと、公債金収入、つまり国債発行でございますが、これが三十四・九兆円に膨らみます。二〇〇〇年に比べますと、二・三兆円ふえるのですね。つまり、三・五の経済成長を遂げたとしても、三年後の国債発行は、減るどころかふえるんです。これは大蔵省の試算でございまして、後ほどこれは大臣に、信じられるかどうかは再度聞きたいと思います。  二番目の試算が、成長率を半分にした場合、一・七五%の場合はどうなるかという試算です。これは国債費は減ります。それは表面金利が三・〇に抑えられるだろうという前提でありますから、歳出の方の国債費は減りますが、いわゆる国債発行はどうなるか。見れば、これもまたふえるんですね。ふえるけれども、三・五の場合よりも大分少のうございまして、〇・六兆円、六千億円しかふえない。  あと試算三、試算四ははしょりますが、要するに経済成長をすればするほど公債発行がふえる、そういう実は前提になっているのです。これで何で私は今度の財政出動、要するに世界一の借金王になった、なっても今度この予算において景気回復すれば財政改革に取り組むという、論理の前提がここで崩れておると明らかにだれでも思うと思うのですが、これについてどう理解されて、大蔵大臣はああいう一兎論になるのでありましょうか。ぜひお答えをいただきたいと思います。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この資料は、昭和五十年代からこの委員会の御審議のために提出しておりまして、御承知のとおり、一つの機械的なプロジェクションをやりまして、このままの状態でございますと、仮想のもとでこういうことになりますということをごらんいただくために提出をしております。したがいまして、政府としては、これでよろしいんだというふうに申し上げて提出しておるのではございませんで、プロジェクションをいたしますとこのようになりますので、これでは実は問題はなかなか解決しないということをごらんいただきたいという気持ちでございます。  今ごらんいただいておりますものも、今まさにおっしゃいましたように、景気が少し回復しても金利が上がる、それは国債費の負担が大きくなるということである。また、多少税金がふえるとしても、弾性値が一・一とすればそんなに急にふえるわけではない。その上に、実は、なかんずく社会保障関係について、国民の負担と給付というものについてこれから中期的にどれだけの合意が生まれるかということができておりませんものですから、これがどうしても先々負担になっていく可能性が高いという問題をそのままプロジェクションでごらんをいただいておるわけでございます。  したがいまして、先ほどからなかなか財政再建は容易なことではないとおっしゃいます一つのこれがむしろ資料になるかと存じますが、私どもも、容易なことで解決すると思っておりません。ただ、こういう国債を毎年毎年ふやし続けていくという状況はどうかしなければなりませんから、できるだけ早く財政再建路線というものを構築したい。  ただ、そのためには、これでもごらんいただけますように、財政だけでは事は済みませんで、税制も、中央、地方の関係も、あるいは社会保障も、むしろ二十一世紀における日本経済社会のあり方にどうしても関係をいたしてきて、財政再建路線と申し上げているものの、今からこういうことになったら、いつになったらきれいになりますというほど実は易しい話ではないということは政府はよく知っております。知っておりますが、二十一世紀にかけて、どうしてもこれはしなければならないということをおわかりいただきたい、こう申し上げておるわけでございます。
  78. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 財政と日本の経済につきまして、余り悲観論がこの予算委員会で充満いたしますと、国民に対してもいろいろな影響があると思いますので、私たちの考え方を少々まとめて述べさせていただきたいと思います。  まず、健全な財政というのは健全な経済に宿るのでございまして、経済が健全でなければ財政が健全になり得ない。また、たとえ財政だけが健全でも経済が不健全というのでは、国民に対する目的が達成できません。それで私たちは今、日本の経済を立て直すことが第一だ、こう考えておるわけです。委員から数年来という話がございましたけれども平成九年、一九九七年には財政再建を焦りまして失敗した経験もございます。そういうことも踏まえて考えております。  それで、今大蔵大臣の御指摘のとおり、財政再建は大変なことではございますけれども、今日本が行っておりますのは、四十年来積み上げてきた規格大量生産構造を知恵の時代に変えようという大きな変革でございます。今そのためのコストを我々は払っているんだ、こういうことだと思うんです。  そして、総理大臣の施政方針演説にもございましたけれどもアメリカは同じことを八〇年代にやりました。このときに、膨大な赤字を抱えて、私たちはアメリカ予算が十年後に黒字になるとは考えませんでした。それが今、黒字になっております。  それはどういうことかといいますと、第一にやはり支出削減を大胆にやりました。これは、冷戦構造が終わって国防費が、実額ではそう減っておりませんが、物価の関係、経済の関係から見ると、GNPの四・八%を占めていた国防費を三・〇%まで減らした、これが一つの条件でございます。一部増税もやりましたけれども景気の増大で税収がふえた、これも一つでございます。  そして、今委員御指摘のこの試算でございますが、これは大蔵大臣が繰り返し一つのプロジェクションだとおっしゃっておりますが、この中で税制弾性値が一・一ということがあります。これは、平均的に見ますと決して低くはございませんけれども、今の日本の企業の利益率の低さ、こういうことを考えますと、例えば平成二年から今日までに約十兆円以上税収が減っております。そのうち、減税もございますし増税もございますが、少なくとも不景気で減った分、景気が悪くて減った分が数兆円ある。そういうものも戻ってくる可能性も大いにあるわけです。  また、長期金利が成長率の一%ないし一・二五%上、これも平均的な時代で見ると高いものではありません。しかし、アメリカが回復したときを見ますと、その差が〇・三%、〇・四%になっている時代もあります。  経済は生き物でございまして、景気回復の段階でどんな状況が出てくるか、これを機敏にとらえて回復させるというのが私たちの考え方でございまして、余り絶望的に孫子の代までもうだめだと言われますと、ますます消費が沈みまして、いかがなものかと。これはちょっと十分お考えいただきたいところだと思います。
  79. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 堺屋長官の気持ちもわかりますし、景気は気という面がありますから、そうだと思うんです。ただ、この予算委員会で提出されておるもの、国会へ提出されておるものは平成十二年度の予算、それは先ほど申し上げましたような累々たる債務等々、大変なことがのっておる。  そして、一方で将来どうなるかというのは、大蔵省のこの試算。それはもちろん、弾性値がどうなる、いろいろあるでしょう。でも、プロジェクションとしてはこの四パターンが提出されておるわけでありますから、我々はこれを前提にする。だから、今まさに堺屋長官がおっしゃった、これから工業化社会、それから知恵の時代だと。  ですから、私が言いたいのは、まさに二千年紀最初の年、二十世紀最後の年だから、そしてこれだけ大変な財政難、経済の難局を迎えておるから、まさに政府の知恵が、今は我慢してください、しかし今年度、例えば五つ六つの新しい次の時代へ向けてのシステムの変更あるいは新しい仕組みを設けていますという、それが問われているわけです。だから、知恵の時代になるというのは、まさにそれは内閣そのものに問われておるわけでありまして、これが極めて希薄。だから、国民に期待を持てと言っても、前から同じことをやっている、二〇〇〇年度の予算も債務は累増したけれども知恵としては余り変わらぬらしい、それで何で国民が期待を持つだろうか。  いわば細川政権誕生のとき国民がフィーバーしたのは、何かが変わるというあれがあったからだと思うんですよね。経済に関して言うならば、やはりそれを政府が今まさに提示したときに初めて、日本は変わる、新しい需要も生まれる、国民は私たちもひとつ目標を持とうじゃないかという気になる。そこがない。それがこの政府予算案の今の最大の問題だろうと私は思うんです。いみじくも経済企画庁長官堺屋先生がおっしゃいましたような、悲観論がちまたに満ちている、ならば、政府としてそれを払拭するいわゆる新しい道を示すというところ、それが抜けておるということだろうと思うんです。  だから、この問題に関してはもう余り申し上げませんが、新しいシステムを全然組み込まず、今までのトレンドで、いわば増分主義で、何%減らした、何%ふやしたという今までのやり方でずっといった場合には、二十年後の教科書に必ず、あのとき日本は、これだけの世界一の借金を残しながら、やり方も変えずに、国会もチェックできずにと、このすさまじい高齢化社会、あるいは負担増、あるいは途上国の追い上げに何でこれだけ苦しまなきゃならぬのかということを書かれるだろう、それを恐れるわけであります。  そういう面では、ちょっとこの前、今度の予算を評して、今月号のある雑誌に載っておったある学校の先生の言葉がございました。我が亡き後に洪水は来たれという言葉があるそうでございます。フランス革命前に、ルイ十五世のおめかけさんのポンパドール侯爵夫人が、宮廷で宴会をやり過ぎじゃないか、むだ遣いばかりじゃないか、それによってフランスの国債が累増して大変じゃないかと批判されたときに、このポンパドール侯爵夫人が、我が亡き後に洪水は来たれと。日本の場合は、後は野となれ山となれでしょうけれども、きれいな野原ときれいな山が残る程度のことじゃないですね。洪水です。だから、私は、ほっておけばこういうことにもなると思います。  私は、そういうことを厳しく真剣に指摘して、次の質問に移りたいと思います。(発言する者あり)いや、ですから、国会ですから、将来を憂えることを今指摘し、予見をし、忠告を与えているわけでありまして、国会議員たる者といえば、総理大臣たる者何だと、もう一度私は言いたいわけであります。私は、そういう面でいろいろな知恵があるのだと思います。今までのやり方にこだわるからこそ知恵が出ないのだと私は思います。それは、まさに大蔵大臣なり、とりわけ総理大臣のリーダーシップというものにかかっておると思うのです。  そこで、時間も大分迫ってきましたので、一つ例を挙げたいと思うのですね。  実は今私の母がやはり御多分に漏れず要介護になりまして、介護というのは大変だ、こう思うのですね。私は地元に母がおりますが、東京のサラリーマンのことをつらつら考えたときに、通勤時間が片道一時間半という人はたくさんいます。その人たちも、今までのいわば日本人の価値観というか、政府も推奨してきたわけですが、要するに持ち家推奨という中で家を買ったんですね。往復三時間かかる。そして、五千万円あるいは三千万円、四千万円借りて、右肩上がりで給料は上がるだろう、まさかリストラで四十代で首になることはないという、その前提で、東京都のあるいは都市部の多くのサラリーマンが借金をして持ち家を持ってきたと思うんですね。  ところが、もう一方で、私はしょっちゅう陳情を受けるんですが、うちの息子は一人息子だ、二十年前は東京の大学に行っていい会社に就職したと言っていたんだけれども自分の妻がもう死んで自分一人きりだから、息子を地元に戻してくれという陳情が結構あるんです。本当、これからは長男長女時代。その人たちが、今度、母が老い、こうなってくると、介護保険の問題は別にありますが、こういう時代がもう現に来つつあるんですね。  そうしたときに私はつらつら思ったんです。例えば、世田谷区とか杉並区には消防車が入れない地域というものが四割近くあるんです。それほど昔ながらの町並みが私鉄沿線に広がっております。私は、そういうところをむしろ、十ヘクタール、二十ヘクタール、一定の計画をつくって、ここにオープンスペース豊かなビルを建て、そして高規格の福祉型住宅というものをつくるならば、今まで容積率が七〇〇%だったのを二〇〇〇%にでもしてやるというような、そういった思い切った規制緩和というもので一定の計画でやるならば、財政ではなく、いわゆる千三百兆と言われる個人金融資産を中心に、投資先として民間資金がそっちにシフトしていく、そして、そういうさっき言ったサラリーマンのニーズも、あるいは町並みを美しくするというニーズも、そして日本の富が米国債とかあっちに流れずに国内に残っていく、そして景気回復、こういうことができるんです。  私は、これは政策として非常に重要だと私自身思っておるわけですが、こういった知恵をばんばん出せばいいではないか。ところが、それを総理の一つのイニシアチブで、各省こういう新しい知恵を出せというものをなぜおっしゃらないのか、非常に残念です。その点について御意見があれば、ぜひお答えをいただきたいと思います。
  80. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員御指摘のとおりでございますが、我々もできる限りの知恵は出しております。  まず、景気回復の去年の緊急対策は、とにかく即効性が必要でございました。だから、すぐにできる効果のあるものを選びました。  今度の新生対策では、一方で即効性も必要ですが、他方では構造改革も必要でございますので、九兆四千億円の公共予算のうち二兆円強を新しい四つのプロジェクトに集中的に立てました。  今委員御指摘の、歩いて暮らせる町づくりといたしまして、そういった都市づくりの発想の転換もことしから試みて、今市町村に、そういう住居も商用地域も学校も文化施設も一緒になったようなものをつくるモデル地域の募集をしております。  そういう転換をやっておりますが、これを行いますのに、私自身が各担当者を大臣室へ来ていただいて説得をいたしまして、そして、この十二年度中に百カ所交通渋滞の箇所を解消してくれということを直接現場の方に申し上げてやったような次第でございまして、そういうことは全力を挙げています。  また、通信関係も、委員御指摘のように、各地域でできるように、学校のインターネットを全部開く、あるいは行事を行ってこれを一遍に広げる。また、郵政省さんの方でも、いろいろと料金の問題、郵便局を活用して、教室の問題等も考えていただいています。  これは、今非常にやっておりますけれども、やはり現場の職員とのスピードの関係がございますので、委員がいら立ちを感じられるのもわかるんでございますが、精いっぱいやっているということは御理解いただきたいと思っています。
  81. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 経済企画庁は事業実施権限はないわけで、では建設大臣に、ぜひその点、前向きの発想を。
  82. 中山正暉

    ○中山国務大臣 古賀先生も建設省の御出身でございますから、私もまた大都市から出ました建設大臣として。  先般も首都圏の計画委員会、再開発の協議会がございまして、その際に、森ビルの森社長がおっしゃいました、縦にどういうふうに使うかと。東京でも大阪でも、大体平均二階建てぐらいしかやっておりませんから、都心部においても良質なストックの形成を図るとか、それからまた、民間資金を導入してそういうものを促進していくべきではないか。  地元の話で恐縮でございますが、大阪の阿倍野の再開発でも三十年以上かかっておるような感じでございまして、なかなかはかがいきません。バブルのときは、特に土地の値段が上がりましたものですから、それに対していろいろ思惑が働いた。むしろ、景気が少し悪くなってきてから再開発が促進されるというような皮肉な形にもなっております。  都心部等の再開発を促進するために、これまでも、市街地再開発事業、それからまた密集住宅市街地整備促進事業、そういうような補助制度を通じまして民間による建築物の整備を推進するとともに、総合設計制度、再開発地区計画制度、これは、第一勧銀ビルとか、それからまた霞が関ビルというようなものがその例でございますが、良好な環境の確保や公共施設の整備などに伴う民間の優良なプロジェクトに対する容積率特例制度というようなものの充実を図ってきたところでございます。  これらに引き続きまして、積極的に民間資金の導入を図りながら良質なストックの形成に努めたい、かように考えております。
  83. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 終わりますが、今のような、容積率を七〇〇を七五〇とか、ちまちまとでなくて、まさにダイナミックなものが必要だということを言いたかったのです。若干その点では不満ですが、午後にまた質問時間がありますので、今はよします。  これで終わります。
  84. 島村宜伸

    島村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  85. 島村宜伸

    島村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。古賀一成君。
  86. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 午前中に引き続きまして、予算の問題につきまして質問をいたします。  先ほどもちょっと申し上げましたけれども、例の冒頭処理問題を冒頭にやりたいということでございましたけれども官房長官がおくれて来られました。したがって、午後の冒頭に、再度やはり聞かなければならぬことがございますので、聞かせていただきたいと思います。  もうこの問題については各党からるる指摘がありまして、これは民主主義に関する重要問題だと私は思います。ある面では、これだけ重要な、いわゆる民主主義の枠組みを決める重大法案について、国会内の取り扱いもさることながら、マスコミだってもっと、国民の代表としてこの本質を深く書いてほしかったなと思います。  例えば、今問題になっております例の外形標準課税問題が出ておりますけれども、こういった問題が、おどかすわけじゃありませんが、東京都にあるマスコミに販売額で外形標準をかけるといえば、これは大変な問題だと思うのですよね。それよりもさらに深い重要問題でありまして、私は再度申し上げたいのですが、時間の関係で、今まで指摘のあった部分についてはもう申し上げません。  ただ一点、これは国民の立場から見て、マスコミは書いていないのですが、一つ重要な視点が欠落しておるのじゃないかと私は思うのであります。  というのは、前回の総選挙、初めての比例代表並立制の選挙があったわけですが、あの後直ちに議論沸騰した問題というのは、いわゆる法定得票数に足りない重複立候補者の当選の問題、あるいはくらがえ立候補の問題、それから長らく議論されてまいりました在日永住外国人の地方参政権の問題、こういういわば国民サイドからずっと論議されてきた、期待されてきた問題、あるいは小選挙区を実施して初めて明らかになった、国民が期待する問題もあったのですね。ところが、今回の、まあ野党抜きでございましたけれども委員会議事録を私も全部読まさせていただきましたところ、これについてはもちろん、全く論議はなかったのですね。  そうしますと、降ってわいたように年末出てきた、あるいは年明けて出てきたこの定数削減問題、内容は幾つも変わったのでありますが、最終的には二十削減という問題が、あれよあれよという間に野党抜きで通った。しかし、これまでの、国民が期待しておった、当然この矛盾は許せないといった問題は国会ではてんで置き去りにしまして、二十だけが通っていったわけであります。  今国会において、この同じ公職選挙法についてもう一回改正をやるという話も聞くのでありますが、これそのものが、私は、例の選挙制度改革の論議というものがいわば本当に拙速であった一つのあかしであろうと思うわけでございます。  それで、官房長官に公職選挙法の改正をどうするんだと聞くわけにもまいりませんので、改めて、今言ったような問題も含めて、私は、民主主義の根幹にかかわるこの公職選挙法改正は、やはり国会の場で与野党合意をしっかり積み上げていくべきだったと再度思うわけでありますが、その点につきまして今後の、官房長官も参議院議長に電話した云々という議論は何度もありましたが、一人の総理にかかわる問題として、御感想あるいは反省点をお聞かせいただければと思います。
  87. 青木幹雄

    青木国務大臣 議員と私と、解釈が非常に違っておりまして、私は、この二十名削減の法案は、法案提出以来、三回の国会にわたり十分議論をされ、正規のルールに従って処理されたものであると承知いたしておりまして、御指摘は当たらない、そういうふうに考えております。  また、いま一つ、議員おっしゃいましたような重複立候補の問題、または供託金を没収された者が当選できる組織、それから政党の離合集散によって投票のときの政党と変わったときにはどうするかというような問題、そういうふうなまだ解決されておらない問題が多々ございますので、引き続き各党各会派において議論を深められて、早急に結論を得られるのが非常に重要なことであろう、そういうふうに私は考えております。
  88. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 もうくどくど申し上げませんが、でも、三回にわたる国会とおっしゃっても、政権の枠組みはその間に大いに変わっております。内容も二転三転をしておりまして、結果として、法案として通るか通らないかという形で出されたのは、まさに与党の中の合意、しかも年をまたがっての中であたふたと提示され、やられたことは事実でございまして、しかもこれが、単なる経済政策ならともかくも、国会の院の構成、つまり、国民の代表者をどういう形で、どこにウエートを置いて、どれだけの数を選ぶかという本当の民主主義の根幹の部分でありまして、私は今でも、この点については納得できないと申し上げておきたいと思います。  それで、もう一点であります。  これは先ほども、午前中に申し上げたんですが、私は本当に、総理にいろいろな基本問題、あるいは総理ならではの問題をいろいろ聞きたいというような思いで、実は去年の臨時国会から予算委員になったんですね。さあ一日目が終わった、あしたから総理にこの委員会で論戦を挑もうと思ったところ、去年の九月十七日のころに国対の合意があったと。(発言する者あり)去年の末あったんですが、そして、それはちょうど民主党の代表選挙の真っ盛り、自民党さんの方も総裁選で大忙しのときの話であったんですね。それが結局、その合意とやらで、私はついに、去年の臨時国会二日目に立ちましたけれども、総理に質問することができなかった。そして今度の国会、今自民党の町村理事の方からありましたけれども、一月にもあるということ。  しかし、そこで問題になっておりますのは、基本的な質疑について一巡となっておりまして、私はゆめゆめ、一日で終わるなんというのは、私もさることながら、皆さんも思っていなかったんです。例えばですよ、予算委員会前後に国政にかかわる重要問題、大震災が起こった等々あって、それで一日食っちゃいますよ。そうしたら、それをもって一巡終わり、こんなばかなことはないわけであります。  先ほど私が提示した問題の中でも、あるいはこの二日間、三日間で提示された問題でも、先ほど言いました長銀問題であるとか、いろいろな重要課題があるんですね。それを総理にまだ全然質問していないんです。総理がそれについて、基本的にはこう認識する、こういうふうにしようと思っていると言うべき重大課題は、一日目、総理がおられたときで恐らく十分の一も私は消化していないんではないかと思うんですね。  そうなりますと、世界の借金王だけじゃないですよ。この国会が、もし総理の気持ち、総理の都合から、できるだけ予算委員会は勘弁してくれよという話が官邸筋からあったんだとすれば、小渕総理は、いわば民主主義の極めて重要な部分を破壊した張本人だと後世言われてもいたし方ないと私は思うんです、これがもしルールになればですよ。  そういう面で、大変この点について、だれがこういうことを、もちろん野党の我々が総理は一日でいいですよなんて言うはずはないわけでありますから、強い強い実は、国対筋かあるいは官邸筋かわかりませんが、恐らく与党あるいは官邸の方からそういう意向が働いたんだと私は思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  89. 青木幹雄

    青木国務大臣 総理がこの予算委員会にきょう出席しておりませんのは、決して総理の都合によるものでは一切ありません。また、この決定は委員会においてなされたことでありまして、決して官邸がそれにタッチした覚えはございません。
  90. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 そうなりますと、いわゆる去年の臨時国会前後に小渕総理が確定をして、新しい政権の枠組みができて、今後、臨時国会、通常国会がある、そういう中で、総理の方から、おい、もうできるだけ答弁する場は減らしてくれよという話はなかった、全く国対筋というか、国会の院内での与野党の合意の中で生まれてきた、そういうふうに理解してよろしいのでしょうか。
  91. 青木幹雄

    青木国務大臣 そのように理解していただいて私は結構だと思います。官邸においては、何らこのことに対して意見は述べておりません。
  92. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 これ以上言っても実りがあるものになるとは思いませんが、それで、きのうも官房長官に対する質問がある中で、まさに今おっしゃったように、総理の都合ではありません、公務でありますとおっしゃったのです。  これは、私は委員長にお願いしたいのですが、予算委員会というのは極めて重要な重責を担っていると思うのです。しかし、さっきも言いましたように、各紙の小渕総理の一日を見れば、私はそう見えないのです。(発言する者あり)いや、これは恐らくすべてですよ。今までの経験からいっても、かつて私が政務次官をやったときに、ほんのわずか行ったときも必ず官邸番が、小渕日誌というのは一人残さず来客は書くものでございまして、各紙見ても、一分、二分の違いは各紙によって違っても、全く、よくも正確に時間をはかって、人の名前を把握して、各紙書いているものだなと思うぐらい正確なんです。  そこで、私はこれを見たときに、この切実なる日本の経済あるいは社会問題、予算の問題をやっているときに、一番僕がかっときたのは、本当に、バレンタインチョコレートケーキをあけたというくだりがある。恐らくきのうあけられたんでしょう、我々がここで論戦をやっているときに。  私は、これは新聞記事じゃなくて、今までの長い長い前例を破って、この重要問題で、総理が一番責任ある立場のこの重要予算問題の答弁に立たれないというならば、国会としては、与野党を問わず、それだけの理由があると見るべきだと思うのですね。私は、正式の文書として、きのうどうだった、総理はどうされたというのを当分の間資料でもらうべきだと思います。これも理事会でひとつ御検討いただきたいと思います。  我々が一生懸命国家を思い、予算の勉強をし、質問をしよう。最高の責任者が実は官邸で、何をしておられるかわかりません。私が推測する限り、重要な公務とは、少なくもきのうの感じでいえば思えない。それはもうはるかにはるかに予算委員会の方が重要であります。私はそれを、ひとつ理事会で、そういった資料をぜひ毎回当面出すことをお諮りいただきたいと思います。委員長、いかがでございましょうか。  委員長、今のことはお取り計らいを、ひとつさばいていただければと思います。
  93. 島村宜伸

    島村委員長 理事会でもいろいろ議論のあるところですから、続いてそれらについては検討していくことになると思います。
  94. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 こういう問題があるということを全体の委員会の場で再度くどく申し上げておきたいし、おくべきだと思って、発言をしたところでございます。  次に、予算に戻りたいと思うのでありますが、先ほど午前中の質疑で、私は明らかに、いわゆる一兎論といいますか、あれは成り立たない。中期財政展望というのは決して、三・五の成長を遂げたとしても、財政の累積が減るどころか、むしろ年々、単年度の発行額すらふえていくという指摘をいたしました。私はこうなると思うんです。  そこで、このまま、先ほども申し上げました抜本的な、いわゆるパラダイムの転換と言ってもいいぐらいのいろいろな仕掛けを打たなければ、恐らく国民も、日本の国が変わるはずがない、小手先で変わるはずがない、こう思っているわけでありますから、私は、日本経済の行く末というのを本当は明るく見たいけれども、実際は冷徹になればなるほど暗くならざるを得ない、こういう状況だと思うんですね。  そういう中で、どうするんだろう、こういう疑問を思うし、かつて、私は五年前ぐらいに「日本破局のシナリオ」という本をみんなで書いたことがあるんです。あのとき銀行がつぶれると書いたら、まさかそんなことと言われましたけれども、物の見事に、もうことごとく、実は予言の書というか警鐘の書であったと思ってつくったんですが、当たったんですね。  私は、今の状況はもっと厳しい、これは恐らく大変なことになるんじゃないかと思うんですが、そのシナリオの一つとして、最近、いわゆる調整インフレですね、こういう話がちらほら聞こえる。いわゆる新しい知恵、パラダイムの転換と言ってもいいいろいろな改革、そういうものが全然提示されないままに、実は、調整インフレ論というのが、あきらめともいうべきといいますか、あるいは悪魔の手というか、そういう本当に知恵なき調整インフレ論というのが台頭しつつあるんじゃないかという気がするんです。  去年の十月十九日、これは新聞記事でございますが、自由民主党の「梶山氏、財政赤字解消策示す」ということで、「政府、大蔵省、財界はインフレを心の中で期待している。国、地方で六百兆円という債務を解決するにはインフレしかない。」こういう本音ともいえる記事が新聞に載ったところでございます。  私は、今のままのトレンドでいけばこの結末しかないんじゃないかと思うぐらい心配をするわけでありますけれども大蔵大臣、ここのところ、景気が回復するかしないかは別です。したとしても、先ほど言ったように、財政の赤字解消は容易なことではないわけでありますから、景気を外して、要するに、今後、経済政策及び財政政策というのをどう持っていくか。何もない、そのとき考えるでは済まない問題だと思います。今の時点で考えられる大きい政策というものは何であるのか、どういうものを今後検討していこうとしておるのか、ぜひこの際、お聞かせをいただきたいと思います。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど、パラダイムの転換ということをおっしゃいましたが、私も、実はほとんどそういう感じがいたしておりまして、きちんとした日本語がありましたらぜひと思いながら、パラダイムという言葉がやはり一番当たっているのかなと思います。  それで、これだけ大きな重病をいたしました上に、二十一世紀という新しいものに対応していかなきゃなりませんので、この対策というのは容易なものでないし、今とっております対策が将来に及ぼす影響というのはそう簡単に解決できるものでないだろうというふうに思っております。その点は、恐らく委員も同じように思っておられると思いますが、ただそこで、しかし我々国民はこれだけの力がありますから、これに負けることはない。時間がかかり、苦労してもこれは克服できるという、基本的にそういう立場から私は考えております。  それで、これからしなければならないことは、ともかく日本経済が自力でポジティブな成長ができる軌道に入りましたときに、財政、税制、地方、中央等々ばかりでなく、全体の経済社会のあり方も実は今変わりつつあると思いますけれども、それに制度が即応していかないところが多々ございますから、全部を見直すような、それこそパラダイムの転換に私はなるのだろうと。それは、時間もかかるし、非常に苦労も多いことだし、国民にそういう覚悟と負担も入り用かもしれませんが、しかし、それを乗り越えまして初めて日本が二十一世紀にまた非常に力のある国になっていく、そういうプロセスであろうというふうに考えておりまして、私は、決して安易に考えておりませんが、悲観はいたしておりません。
  96. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 私もパラダイムの転換なしにこの大きな隘路というのは突破できないと思いますが、恐らく、今まで長くこの方式で政権をとってきたというそのやり方を脱し得ない、むしろ私は政治の方にパラダイムの転換を阻むものがあると思うんですよ。そういう面で、野党の我々は日本のためにも頑張らなきゃならぬと思いますが、やはり官僚組織のいわゆる前例踏襲主義というのもあるだろうけれども、それとともに、あわせもう一つの統治の頂点にあります与党というものの従前どおりという体質、これまでの流れは変えたくない、これで権力を持っている、私はそこに一番の、日本の体質が変わっていかない、新しいパラダイムを実際具体化できない根本原因があると思います。  時間も限られておりますので次の問題に移りたいと思うのですが、ことしはサミットがございます。  私は、サミットについて、まず、本当に、これも総理に聞きたかったんですね。聞きたかったんですけれども、総理がおられないので非常に困るのですが、私はサミットに関する報道しか余り情報がございません。それを見る限り、本当にこれで大丈夫だろうかと。きのう、おととい、総理の奥様が首里城に赴かれたというのがテレビで出ておりました。それはそれで一向に構いませんが、この前、いわゆるサミットの歌をつくるんだということで、小渕総理がみずから小室哲哉さんに電話をかけた、こういう話がかなり大きくいろいろな新聞に載っておりました。  私は、サミットとは何ぞやと思ったときに、世界各国から、一千名を超えるでしょう、恐らく経済あるいは政治新聞記者とともに蔵相あるいは大統領、国家元首が来て、次の時代の経済、財政、その国家間の利害を調整する、格好よく言えば利害調整、厳しく言えばある面では戦争という場なんですね。  私は、今まで世界じゅうでサミットが行われてきましたけれども、そういうテーマソングをつくったという例は聞いたことがない。何か、万国博覧会というふうな印象を持っておられるんじゃないか。この現下の、後ほど申し上げますけれども、サミットのテーマ、大変な問題があると思うのですが、私は、総理官邸からうかがわれるそのサミットのイメージというのは、そういったお祭りのイメージしかないと思うのです。  私は、そこら辺、サミットで日本にとって何が最大の問題か、どこがアメリカとの調整の最大の課題か、それをどう処理しようとしているのか、そういった点、これから外交交渉が事務レベルで始まっていくと思うのですが、今のところ、政治の場あるいは総理官邸の立場からいって、どの点を、今度のサミットの意義といいますか、問題点を理解しておられるのか、それをぜひはっきりお答えをいただければと思います。総理に聞きたいんですけれども、総理がここにはおられませんから、どなたに聞いていいんだろうかと思えば、やはり大蔵大臣でしょうか、官房長官でしょうか、お答えいただきたいと思います。
  97. 青木幹雄

    青木国務大臣 サミットに対する我が国の心構えについてお尋ねがあったと思います。  議員御指摘のとおり、沖縄サミットは万国博覧会とは根本的に筋の違う問題であろう、そういうふうに考えておりまして、議員おっしゃるとおり、まさに真剣勝負の場である、そういうふうに解釈をいたしております。  そして、九州・沖縄サミットは本年の我が国の最重要外交課題であり、沖縄での首脳会談が円滑に行われ、二〇〇〇年という節目の年に行われるこのサミットにおいて二十一世紀に向けた明るく力強いメッセージを発信できるように、政府を挙げて努力を続けていくつもりでございます。
  98. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 私は、このサミットに関連して、政治部の皆さんとかあるいはこのかいわいでいろいろな、ちまたで聞こえてくることは、いわゆる解散・総選挙の時期とサミットの関連というのは、もう田舎の人もみんな知っています。小渕総理はサミットの議長をやりたいはずだ、そうらしい、そういううわさもある、だからサミット前には絶対解散しないとか、いや、そうもいかぬだろう。そういうふうに、サミットのいすと総理のいすというものが絡められて、もう世の中いろいろなところで実はこの総選挙の実施時期も論じられている。だから、今官房長官がおっしゃったような、日本にとってこのサミットの中身は何だという議論は一切今まで聞こえてこない。  そして、私は前臨時国会で聞きましたけれども、総理みずからの発案によって二千円札をつくる。あれは一枚二十数円かかるそうです。とりあえず一億枚刷るそうです。そう聞きました。それはそれで、とやかく言いません。恐らく、ミレニアムだ、二〇〇〇年だ、二千円札だ、何か記念切手とよく似ておもしろいだろうという発想だったんじゃないかと私は思うんですが、それもおかしいと思うんですが、ただそこで、守礼の門を選ばれた経緯について聞きました。  守礼門というのは、四百年前、何度も言うようですが、明の使節がいわゆる琉球国王のところに赴くときに、首里城からまさに琉球国王が出て、守礼の門で中国、明国に忠誠を尽くすという、土下座したかどうかは知りませんが、少なくも服従の意を表した、まさにその門なんですよね。それが今度は中国が来るかどうかという問題になっていますけれども、いわゆるアジアのまさに雄たるこの日本の総理大臣が出て、しかも日本でやって、沖縄でやったときに、あのデザインがよかったかという問題を、本当に今でもちょっと疑念に思う。でもそれは、二千円札、何かデザインはないかという感じであれが決められたように思う。そして、今のテーマソング。  私は、どうしても総理の口からこれを聞きたかったんですけれども、まず、本当に小室哲哉さんにテーマソングをつくってくれとみずから電話されたのか、ぜひこれ一点だけはちょっと聞いておきたいと思います。
  99. 青木幹雄

    青木国務大臣 私も総理が直接電話をしたと承知をいたしております。
  100. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 わかりました。  それをどう評価するかというのはもう……(発言する者あり)それは、私はサミットの歌というのは今まで聞いたことがないから、恐らくないんじゃないかと思います。でも、総理がブッチホンという有名な電話でみずから電話されたということは事実であるということがわかったわけで、私は中身について本当に遺漏なきようやっていただきたい、かように思います。  それで、次に、そのサミット関連といいますか、幾つかの点をお聞きしたいと思うんです。  最近、日本の財政赤字の累増とは打って変わりまして、アメリカのいわゆる経済の絶好調、かつては三つ子の赤字、もうどうしようもないだろうと言われたあのアメリカ財政が、家計の赤字も入れて三つ子と言ったのですが、何と十年間でざっと三百兆に近い実は黒字を生み出し、クリントンさんの話によると、二〇〇一年、来年は千八百四十億ドルの財政黒字で、ざっと二十兆円近いですよね。これをいわゆる償還していくということになると思うんですね、米国債の。そういう勢いがある。  そうした場合、かねてから私はこの米国債の行方について、実態について大変関心があったわけでありますが、どうも日本が稼ぐ貿易黒字の半額を米国債で投資し、アメリカにそれだけのお金が還流しているんじゃないかとか、この前、ある雑誌を読んでおりましたら、日本が保有する累積の米国債残高というのは二百兆とか百五十兆とか、こういう話もあったんですね。まあ少なくも、膨大なるその米国債を日本が保有しておるということ、これが今後、日米関係あるいは世界の関係でどういう意味を持つのだろうというのは、私は少なからず重要だと思います。特に、財政黒字ということで、アメリカが米国債の償還をしていくわけでありましょうから。  この点、米国債というのは、実際のところ日本という国はどれだけ持っておるんでしょうか、ひとつお示しをいただきたいと思います。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よく、大体三千億ドルと言われておりますと思いますが、ちょっとお待ちください。——米国財務省の統計によりますと、昨年十一月末の時点で三千百三十九億ドルと記されております。そんなものだろうと思います、大体。
  102. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 そうしますと、三千億ドルですから、もう三十兆を超える額ですよね。世に言われている、憶測されている数字よりは相当小さいなと思うのですが。たしか、米国の財務省証券残高といいますか、いわゆる日本でいう国債残高、これが五兆六千億ドルだそうでございまして、ざっと六百兆、そのうちの三十兆強を日本が保有しておる。(発言する者あり)いや、これも民間は入っているんじゃないかと思うんですが、これは政府保有というか公的部門保有ですか、民間も入るわけでしょうか、先ほどの三千億ドルは。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 外為会計は短期のものを保有しておりますけれども、それは除きまして、実際の中長期の債券を恐らくここで言っておると思いますが、そういたしますと、政府はほとんど持っておりませんから、まず民間のものかと思います。
  104. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 そうすると、日本の国富、つまり、先ほど貿易黒字の話をしましたけれども……(発言する者あり)では、追加があればお願いします。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 失礼いたしました。  それでは、三千百三十九億ドル、この中には財務省のビルは入っておるそうでございます。財務省の証券はこの中には入っておる。そういたしますと、その限りでは、政府が持っておるその部分は入っておることになります。
  106. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 今の三十数兆円に上る、アメリカでいえば三千百億ドルですか、これは、政府、民間合わせての日本のいわゆる米国債保有と。米国債というのは、財務省証券というふうに理解していいんだと思うのです。  そうしますと、先ほど、貿易黒字が半分還流しておるだとか、日本の誇るべきは千三百兆と言われるいわゆる個人金融資産だ、こう言われておりまして、先ほど午前中は、それを活用する大パラダイム転換の政策をつくったらどうか、こう申し上げたのですが、これも相当部分が米国債の方に回っておる、こういうことです。これは政府として、米国債の保有あるいは売却、購入、そういうものに対して全くノータッチなんですか。極めて重要ないわゆる富の日本アメリカのやりとりになるわけですが、この点が何か消えていくというか、そういう感じがしてならない。  政府の関与というか、政府の戦略的な主導というか、そういうものはあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的にはございません。  米国側で日本からの入札を希望しているということは私どももよく知っておりますが、しかし、それを特に勧めるというようなこともございませんし、とめるというようなこともございませんし、まあ今のような金利状態でございますと自然にそうなると思いますが、政府は全く中立でございます。
  108. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 そうしますと、関連してもう一つ質問に移りたいんですが、最近は全く下火になりましたけれども日本経済がいわゆるバブル前というか、非常に金融資産も債券市場もあるいは株価も、あるいは円の強さも絶好調のときがあって、ちょうど、東京都を売ればアメリカ大陸が全部買えるみたいな話が出ておったあのころでもあったと思うんですが、いわゆるアジア経済圏というものをつくるべきじゃないか、あるいはつくろう、あるいは研究しようという構想もあったやに印象を受けております。  一方でユーロ、一方でひとり勝ちとも言えるアメリカというものがあって、そこに今アジアの勃興がある。一時期、アジアの経済危機はありましたけれども日本も依然世界における第二位の経済大国。こういう中で、あと十年後、二十年後を考えたときに、本当に、日本が旧老大国、借金だらけの老大国、子供がめちゃくちゃ少ない高齢化社会ということに終わるのかどうか。その中で細々といくのか。  いわば、これまでの日本の技術力あるいは国際貢献、そんなものを一切含めて、いわゆる経済的なアジアのコーディネーターとして、アメリカと対抗して、アメリカに伍して、あるいはヨーロッパに伍していく経済圏のいわゆるコーディネーターであり得るのか。そういう問題が今ちょうど問われておる、もう、ちょっと遅きに失しましたけれども、私はそういう感じがしてなりません。  ここでひとつそういう仕組みに挑戦しないと、日本は単なるお人よし、単なる老大国というふうになりかねないと思うんですが、こういった大きい、アジア経済圏構想を初めとするマクロでの日本のいわゆるビジョンといいますか、経済戦略というものを政府は検討したことがあるんでしょうか。
  109. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員御指摘の点につきましては、昨年七月、経済審議会で、日本経済のあるべき姿とその実現する政策方針いかんという諮問にこたえまして答申を出しまして、日本経済のあるべき姿を描いております。  その中で、委員御指摘のように、日本は今後も世界経済の主要なプレーヤーの一人にとどまらねばならない、そのためにはどういう方策をとるべきかということをるる述べております。そして、その最も重要な部分が、午前中にも申し上げました知恵の時代を出そうということで、一人一人、個を重要にした社会をつくっていく。そしてまた、少子高齢化、環境対応、技術開発、特に情報技術の問題等、十二項目にわたりまして、具体的な方策を追求するという政策を立てております。  その中では、議員御指摘のように、アジアの問題ももちろんございます。  日本にとって一番重要なのは、やはりグローバルな世界経済の成長であろうかと思います。そのために、WTOを中心とした新ラウンドの立ち上げを積極的に推進しなければならないと思います。あわせて、経済政策の運営におきましても、アジアとの連携というものを強く意識してこれから運営していくべきだ、従来はグローバル化一本やりでございましたけれども、やはりアジアとの連携というものもそれとあわせて重要だということを指摘している次第でございます。
  110. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 今、堺屋長官の方から、昨年できました新経済計画のくだりがありました。  経済計画はこれまで何度も見てきましたし、私も、細川政権、羽田政権、二つにつきまして経済企画の政務次官をやらせていただきました。当時の経済計画は、宮澤大蔵大臣が総理のときのいわゆる生活大国五カ年計画でもございました。  私がそこで感ずるのは、やはりあの経済計画というのがいわば本当に政府を動かす指針になっていないわけですよね。私はなっていないと思います。では、それが具体的に金融機関、あるいは大蔵、あるいはシンクタンク、それだけの本当に動く戦略をつくり、稼働させておるかというと、そういう面は全然うかがい知れないわけです。  まさに日本の財政なり経済が、これだけのポテンシャルを持ちながら現状としてはこうであるからこそ、この米国債保有の話もしっかり頭に置きながら、アジア経済圏構想というものをつくれないものかという問題意識も持ちながら、もっと大きいマクロの経済戦略というものを、本当に動いていく経済戦略というものを具体的に論議すべきだと私は思うのです。  それが決定的に、日本の縦割り行政機関の中で、あるいはどちらかというと官主導の中で、本当にすき間として、ブラックホール、要するに国家の一番重要なその部分というのが実は日本政府に欠落していると私は思うのです。  それで、今度、経済企画庁は来年の一月六日からなくなるのです。こういうマクロの経済戦略、財政戦略、本当に日本の富をどうするか、どういうシナリオを描くか、そういう問題を、じゃ、大蔵がやるのと言ったら、ないですよ、いや、証券局はやはり証券ですな、国金は国金でやはり縦割りですねと。そこが実は今の日本の一番危うい部分。エネルギー問題もそうです。もう中東依存率がこれだけ高い。今、どんどん原油は上がっていますね。私の地元でも、石炭産業はついに火を消した。石炭産業も風前のともしび。  一方でアメリカは、本当に石炭をじゃんじゃん増産しているのです。今、アメリカは十億トン掘っているのです。日本は、昭和三十五年、五千五百万トンというのが最高。今はもう百何十万トン。ある資源も掘らなくなった。ところが、アメリカは、何と自己の石油を年々採油量を減らして温存し賦存させ、そして石炭を掘り、現下において石油のいわゆる調達先を、中東依存をどんどん低める戦略を持っている。食糧については、もう言うべくもない。自国の生産量の五倍する生産余力を持って、戦略物資としてはっきりと位置づけているのです。食糧輸出禁止法だって今持っているのですから、アメリカは。  それだけしたたかな、アメリカというのは、あの大きい国を、統治が大変難しいであろうあの国を維持するためにそれだけの工夫をして、ついに世界の覇者になった。日本はやはりのんびりし過ぎていたと私は思うのです。  それで、私はもう長くは申し上げませんが、たくさん、この日本の富、ジャパンマネーが、政策さえ間違えなければもっと日本国内で、そして次の子孫に残せたであろうそれが、いわゆるマネーゲームで、結局、一番いいタイミングにその戦略がなかったゆえに日本の富が消えていったという話がいろいろなところに指摘をされています。  私は、単なる経済計画での、各省庁の作文を調整して印刷するのじゃなくて、本当に政府として、国家戦略として統率の形で対外的に日本が打って出る、しかけていく、そういう部分の計画、そういうものについて、経済企画庁の仕事なのかなとは思いますが、手を挙げておられますので、大蔵大臣とお二人にお聞かせいただきたいと思います。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 背景としましては、今お話しになられましたような背景だと思います。日本政府が一緒になって一生懸命そのことを推進してきたかといいますと、必ずしもそうは言えない。多少の理由もありまして、戦後のいろいろな関係とか、いろいろなことがございますけれども。  ここに来まして見えます変化の一つは、先年の為替危機のときに、各国がドルにペッグをしておりました。ドルだけにペッグをすることが非常に怪しいということを実感しましたものですから、多少バスケットにペッグしようかというような柔軟な考え方が出てきているという点がある。バスケットは当然円を含みますので。それが一つと、それから、あの為替危機のときに、日本から三百億ドルほど金を使ってもらおうとしまして、これは割に上手にニーズに合ったと言うことができると思います。  それと、もう一つは、これは我が国自身の問題として、従来、円を持ってくれと言いましても、持った円を投資する場がなかったわけでございます。東京市場というものはなかったわけでございますから。それをようやく開きまして、そして、短期の証券については源泉所得税も取らないということになりましたから、初めてここで、持っている円の資産の活用の場が、ようやくと申し上げることになりますが、東京にできたといったようなことが、多少問題がポジティブに動き始めたということだと思っております。  ただ、日本経済も、今こんな状況なものでございますから、十分思うこともできずにおりますけれども、この間の石油危機を契機にいたしまして、かなりそういう動きが出てまいったことは確かでございます。  したがって、おっしゃいますように、日本の経済とこの地域の経済は、もう切っても切れないものだというところまでは大丈夫でございますが、さて、その円というものを共通の通貨にしようとかなんとかいう話は、これはまた御承知のように違う問題でございまして、だんだんそうなっていけば、それはいいことだなというぐらいに思っております。
  112. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 このたびの「あるべき姿」は、計画時代でないというので、そういう「あるべき姿」という名にしたのでございますが、私自身が全ページ執筆いたしました。決してよその官庁のものをとじたわけでございません。その点、御承知をいただきたいと思います。  それから、今後でございますけれども、今度の省庁編成では、総理大臣の直属のもとに経済財政諮問会議という大変強力な機関ができます。そこで、関係大臣、それから政府機関の長、例えば日銀総裁のような方かと思いますが、それから民間の方を入れまして、総合調整機能を内閣府として非常に強くする、総理官邸とともに内閣府として非常に強くするということが一つの目標になっております。  したがって、委員御心配のような、エネルギーの問題、農産物の問題、さらには通貨、為替の問題、そういったものの総合調整機能が強くできるというのが今度の目標でございますので、その点、御理解いただきたいと思っております。
  113. 古賀一成

    ○古賀(一)委員 私はいろいろな国際関係の中で日本の富が消えていくという話を先ほどしましたけれども、要するにかつての経済のグローバル化によって実物経済をマネー経済が支配してしまった。日本は、実物経済で勝者だった、しかし、いわゆるマネー経済で敗北。バブルの崩壊で、これはよく言われたことでありますけれども、三年間で日本は八百兆円の金融資産を失った、あの三年間、八九年から九二年ですよ、と言われているんです。  これは要するに太平洋戦争で失った物的損害とどっこいどっこいの数字。それほど実は経済戦争というのは、煙は出ない、死者は出ないかもしれないけれども、それだけの国富の損失を、やり方によっては残していくんだ、傷を残していくんだ。これはもっと真剣に考えてほしいし、まさにこのサミット、このときだからこそ、私は、この二〇〇〇年は総理にとって日本をパラダイム転換させる絶好機と思ってやってほしいんですよ。  それが、そういう気迫は、気迫というか、出てこられないから全然そういうことを聞きようもないということが極めて私は残念であると再度締めに申し上げまして、あと質問通告は大分残っておりますが、まだ来週も今週も再来週もあるのであろうと思い、きょうは第一回目を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  114. 島村宜伸

    島村委員長 これにて古賀君の質疑は終了いたしました。  次に、肥田美代子君。
  115. 肥田美代子

    ○肥田委員 民主党肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、小渕総理の施政方針演説に関連して質問させていただきます。きょうは総理がいらっしゃいませんので、官房長官にお尋ねすることになりますが、どうぞよろしくお願いいたします。  総理は、我が国を、教育立国を目指すと強調されました。この教育立国は、教育基本法でうたわれている、人格の完成や平和的な国家及び社会の形成者の育成という理念を前提とした構想だと考えていいんでしょうか。
  116. 青木幹雄

    青木国務大臣 そのとおりだと考えております。
  117. 肥田美代子

    ○肥田委員 それでは、続いて文部大臣にも同じ質問をさせていただきます。お願いします。
  118. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 今官房長官からもお答えされましたのと同じでございます。  大変申しわけありません、もう一度ちょっとおっしゃっていただけるとありがたいのですが。いや、聞いていましたけれども、正確にお答えしなければ失礼と思いまして。
  119. 肥田美代子

    ○肥田委員 総理は、教育立国を目指すとおっしゃっていますね。その教育立国というのは、教育基本法でうたわれている、人格の完成や平和的な国家及び社会の形成者の育成という理念を前提としておりますか。
  120. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 教育基本法に書いてあります、人格の完成、それから平和的な国家及び社会の形成者としての、自主的精神に満ちた健康な国民の育成を行わなければならないという、これに基づいて行うということでございます。
  121. 肥田美代子

    ○肥田委員 臨時教育審議会は、教育改革に関する第四次答申、最終報告ですが、そこにおきまして、教育基本法の精神を我が国の教育土壌にさらに深く根づかせ、二十一世紀に向けてこの精神を創造的に継承、発展させ、実践的に具体化する必要があると述べております。  歴代の内閣はこの臨教審答申を尊重されてまいりました。小渕内閣も、今後ともこの答申を尊重されますか。お願いします。
  122. 青木幹雄

    青木国務大臣 当然尊重してまいります。そういう中で、いわゆる教育改革を進めていかなければならないと考えております。
  123. 肥田美代子

    ○肥田委員 小渕総理は、一月三十一日の衆議院本会議で、教育基本法の改正問題につきまして、「制定以来五十年余りを経ており、家庭教育や生涯学習の観点も含め、幅広く議論を積み重ねていくことが重要である」とお答えになっておられますが、これは五十年余りたったから改正したいという主張と受け取っていいんでしょうか。
  124. 青木幹雄

    青木国務大臣 改正したいという考え方で申し上げたものではない、そういうふうに考えております。  これはあくまでも非常に重いものでございますので、これを守りながら、先ほど申し上げましたように、教育改革国民会議というものを、現在たくさんの皆さんにどういう問題を議論していいかということを投げかけておりまして、それが二月末には集まってまいります。その上で、できるだけ早い機会に教育改革国民会議を設けまして、そこで十分な議論をしたいと思っておりますが、基本的な考え方を変えようという問題ではございません。
  125. 肥田美代子

    ○肥田委員 それでは、教育改革と教育基本法の改正は全く別問題と今おっしゃったんでしょうか。
  126. 青木幹雄

    青木国務大臣 教育基本法を変える考えはございません。しかし、五十年以上たっておりますので、やはりいろいろな問題について十分な議論をすることは非常に大事なことではないかと考えておりまして、その議論をするためにいわゆる教育改革国民会議というものを設ける次第でございます。
  127. 肥田美代子

    ○肥田委員 官房長官のお言葉を繰り返させてもらいますが、教育基本法を変える考えはないと。  例えば、そうしたら、先ほど申し上げた家庭教育や生涯学習は、教育基本法の改正がなければ実効性がないというふうには受け取らなくていいですね。
  128. 青木幹雄

    青木国務大臣 私が申し上げましたのは、教育基本法の基本的な考え方を変える必要はありませんと申し上げたわけでございまして、五十数年たっておりますので、その中に加えるべきものは加えていかなきゃいかぬ、そういうことを申し上げている次第でございます。
  129. 肥田美代子

    ○肥田委員 基本的な考え方とおっしゃいましたので、文部大臣にお尋ねしたいと思います。  教育基本法の改正について、文部大臣の今の御所見を伺いたいと思います。
  130. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 教育につきましてはさまざまな議論があるわけでございます。そして、ただいまの教育基本法につきましても、戦後五十年たって、教育基本法の果たしてきた役割は大変大きいものがありまして、日本の教育水準もこれによりまして世界のトップクラスにもなりました。しかし、いろいろな現場でさまざまな問題もあることから、今回、総理も教育改革というものを内閣の大きな柱、教育立国という言葉をお使いでございますが、最重要課題として取り上げているわけであります。  そして、この教育基本法がもちろんベースでありますけれども、しかし、戦後五十年たって、教育のあらゆる面をもう一度点検する中で教育基本法についてもまた議論が出てくるんではないか。いろいろな会派の中でも、そういうことから今議論が行われているということでもございますし、お話ありましたような、生涯学習についての記述がないとか、あるいは日本の歴史とか伝統、道徳教育についての記述がないとか、あるいは男女共学、今当たり前の世の中になっておりますけれども、第五条には男女共学の規定があるとか、いろいろな御議論があるわけでありまして、こういうような点について、各党であるいは国民の皆様の中で議論が出てくるんではないか、そういうことでございます。
  131. 肥田美代子

    ○肥田委員 そうしたら、先ほどちょっと官房長官にもお尋ねしましたけれども、教育改革と今回の教育基本法の改正は、同時進行で考えられていくというふうに私どもは受けとらせていただいたらいいんですか。
  132. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 教育改革は非常に幅広いわけでありまして、教育の制度とか、あるいはさまざまな現場での問題点とか、いろいろあるわけでございます。そういう議論をする中で教育基本法についても幅広い議論が出てくるんではないか。今申し上げましたような、いろいろ指摘をされているわけでありますから、そういう幅広い議論が出てくるということは、また議論されるということは、私は大変結構なことだと思っております。  そして、教育基本法につきましては、官房長官お話ありましたように、この基本というものは、これは、先ほど人格の形成以下お話ありましたけれども、大変立派な、重要なこともあるわけであります。ただ、これが時代に合ったものかどうか、また、日本の教育基本法として本当に今の時代に合ったものかどうか、そういうようなことについて議論がなされるということは、私はこれはよろしいんじゃないかと思っておるわけでございます。  ですから、必ずしもどちらということではなくて、同時進行ということだと思います。
  133. 肥田美代子

    ○肥田委員 これは言わずもがなと思いますけれども、教育基本法を改正される場合には、あくまでも子供たちが中心というか、主人公という考え方でいいんでしょうか。
  134. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 これは、子供たちといいますか、教育全般についての憲法的なものでございますから、子供たちということだけではなくて、あらゆる面について総合的に議論をし、そして、時代に合ったものかどうか見直すということだと思います。
  135. 肥田美代子

    ○肥田委員 私がちょっとしつこくお尋ねしておりますのは、教育基本法を私は今改正する必要はないという立場に立っております。ただ、もしどうしてもとおっしゃるならば、今の子供たちのすべての苦しい現状でありますとかメッセージが解決される、そういう立場でもって改正に踏み込んでいかれるんでしょうねということをお尋ねしているんですが。ちょっと尋ね方がまずいですかね。
  136. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、学校現場とかそういうところでさまざまな問題があります。委員御案内のとおりの、いじめの問題とか学級崩壊の問題とか不登校の問題とか校内暴力とかあります。こういうものはこういうものできちんと対応していかなければならないと思っておりますし、また一方で、法律的な面とか制度的な面も議論しなければならないということでありまして、子供たちのためではもちろんあるのでありますけれども日本の教育全般の基本的な方針について、これでいいのかどうかという議論をされるということは大事なことだ、私はそういうふうに思っているわけでございます。
  137. 肥田美代子

    ○肥田委員 ですから、教育基本法というのは、教育の基本的な形でございますね。それを今子供たちが受け入れられなくなっているとおっしゃるならば、その子供たちの今の状況に合った改正の仕方が必要なわけですね。それ以外に教育基本法をさわる理由があるとしたら、何なのでしょう。今、子供の状況を是正する以外に教育基本法をどうしても改正しなきゃいけないという理由がほかにあるとしたら、何ですか。文部大臣が先ほどちょっと羅列されました、あのあたりでございますか。
  138. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 これは議論がなされる中でいろいろ指摘が出てくることと思いますし、また、先ほど申し上げましたように、いろいろな会派の中でいろいろな問題点も議論されているようでございます。  私ちょっと申し上げましたけれども、生涯学習の規定が、終戦直後にできましたから当時そういう考え方もなかったんだと思いますが、記述がないとか、それから、現在では当たり前になっているような男女共学の規定があるとか、あるいは……(発言する者あり)あってもいいのですけれども、当時は終戦直後で、そういう規定をあえて入れられたことと思います。そういうこととか、それから、個人と公というような問題についての考え方が反映されていないとか、いろいろ議論があるわけでございます。
  139. 肥田美代子

    ○肥田委員 アメリカの大統領は、一般教書の中で、学齢期前の幼児教育に十億ドルを投資する、また新教員の十万人採用計画という具体的なイメージを描いていらっしゃるんですね。小渕総理は、「文化と伝統の礎である美しい日本語を身につける」と演説されました。これを具体的に実現するために何をなさろうとしていらっしゃるか。これは官房長官、お答えください。
  140. 青木幹雄

    青木国務大臣 午前中にも岩國議員から質問がございましたが、美しい日本語といった定義がございませんで、私は、やはり一つは、自分の考えたことを相手に正確にわかってもらうような伝え方、いわゆる話し方ということが一番大事だろうと思います。  その上で、やはり目上の人にはどういう言い方をしたのがいいのか、同僚にはどういう言い方をしたらいいのか、自分の子供たちにはどういう言い方をしていいのか。正確に伝えるということが第一であって、伝えるための言葉は、やはりそういうことを考えた言葉でなければならない、それが美しい日本語じゃないかな、そういうふうに解釈いたしておりますが、別に決まった定義がございません。
  141. 肥田美代子

    ○肥田委員 今官房長官に、美しい言葉官房長官のお考え方を伺いました。  ただ、私がお尋ねいたしましたのは、具体的に実現するためには、では何をなさろうとしていらっしゃるか、その辺を伺わないと、ただ漠然と美しい言葉、もちろん賛成でございますけれども、だから何をなさろうとしていらっしゃるか、そこのところです。
  142. 青木幹雄

    青木国務大臣 学校教育の場でそういう問題を真剣に教えることも大事でありますし、また、家庭教育の場でやはり毎日毎日そういうことを教え込んでいくことも大事だろう、そういうふうに考えております。
  143. 肥田美代子

    ○肥田委員 言葉って、教え込むのかどうかという、ちょっと私は疑義があるのですが。  文部大臣、具体的に何かお考えございますか。
  144. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 まず、今官房長官からもお話ありました、午前中も質疑がございましたけれども、最近の言葉遣いといいますか、特に若い方がそうでありますけれども、大変に乱れている、そういうことから、多くの方々が、この言葉ということ、日本語教育、国語教育について心配されているわけであります。  私も全く同じでありまして、日本人である以上は正しい日本語を使うということが当然であります。そういうことから、国語教育におきましては、丁寧な言葉とかあるいは敬語の使い方、そういうものをきちっと身につける、それから、正しい漢字や送り仮名、そういうものも正確に覚える、あるいは、我が国の文化や伝統についての関心を深めるために古典を勉強するとか、そういうような方策に対する指導を行っているところでございます。  また、一環として、いろいろ本を読むということが私は大変大きな効果があろうかと思っておりまして、委員が一生懸命中心になって御努力いただきましたけれども、ことしは子ども読書年ということでもありますし、そういう意味でも、私どもも、どんどん子供さんたちが本を読んでいただくように、これも指導していきたい、そういうふうに思っております。
  145. 肥田美代子

    ○肥田委員 昨年、衆参の両院で、平成十二年を子ども読書年にすることを決議いたしました。これはやはり、本を読むことで、人は言葉を学び、創造力を高め、人格を形成する上で限りない力を養うことができるという、私は議会の良識を示したものであると考えております。  総理大臣も、施政演説の中で実はこの読書年に触れていただいております。本当に私は、ありがたいと感謝申し上げたいと思います。  私は、この決議を受けて、いじめや不登校、それから校内暴力などで荒れる日本は、世界に先駆けて、子供が本を読む国の未来は輝く、そのぐらいの標語を掲げて、理念を掲げて進んでほしいと思うんですね。美しい日本語もやはり読書との出会いから生まれるのではないかと、私は確信いたしております。  ところで、一つ御提案を申し上げたいんですが、人が最初に出会う活字文化は絵本ですね。その絵本に関しまして、実はイギリスでおもしろい試みをしているんですね。  ブックスタートという試みでありまして、新生児が六カ月健診に行きますと、その子供に絵本を二冊と、それから、どうやって本と親と子供が三者で結びついていくか、そういう方策まで書いたガイドブックを渡しているんですね。それが一九九二年から始まっておりますけれども、実は、最近、一九九八年、イギリスが読書年を宣言いたしましたときに、これを全国に広めようとしております。  それで、文部省の総括政務次官であります河村政務次官も、大変この子ども読書年につきましては中心的になって動いていただいておりますので、この文部大臣とそれから政務次官とのしっかりしたチームワークでいけば、いい仕事をきっとしてくださると思うんですけれども、このブックスタートなどのように、日本でも、やはり今、子供たちの就学時前の心の問題がいろいろ云々されておりますので、文部大臣としてはどういうふうにお考えになるか、ちょっとお考え聞かせてください。
  146. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 御指摘のイギリスのブックスタートでございますけれども、これはイギリスのある食品会社が関係する慈善団体との連携によりまして、委員お話しのとおり、一九九二年に始められた事業でございます。  乳児を持つすべての両親に本を無料で配布するとともに、適切なアドバイスを与えて、家庭教育の一環として、両親と新生児がともに本に親しむようにすることを目的としている。そして、家庭内での教育のために乳児に本を与えることは決して早過ぎるものではなくて、将来の成長にとっても有意義である、そういう信念に基づいた事業である、そういうふうに聞いております。  大変すばらしい事業で、これは民間の企業や財団によって運営されているわけでありますが、イギリス各地に広まりつつあるということで、大変私ども参考になろうと思います。  私ども文部省といたしましても、昨年、家庭教育手帳、委員御承知と思いますが、これをずっと全国のお母さん方に配布させていただいておりますが、その中にも、「幼児には親が本を読んで聞かせる、と決めよう。」こういう項目がありまして、「親のぬくもりを感じながら優れた絵本に接し、一緒に共感し合うひとときは、子どもの感性や心を豊かにする貴重な時間になります。」ということで、文部省といたしましても、幼児が本を読むように、あるいは親が読んで聞かせるようにということを推奨しているところでございます。  家庭におきまして本に親しむということは、そういうことで極めて有意義でありまして、家庭におけるしつけのあり方等も織り込んで、乳幼児を持つ親に配布しているこの家庭教育手帳、これをぜひ、私ども多くの方に見ていただきたいと思っておりますし、このイギリスの事業も参考にしながら、今後の政策にこれを反映していきたいとも思っております。
  147. 肥田美代子

    ○肥田委員 ぜひ美しい言葉をすべての国民が話せるように努力していただきたいと思います。  それでは次に、健康保険法の一部改正案に関連しまして厚生大臣にお尋ねしたいと思います。  平成九年に導入された薬剤費の別途負担は、患者のコスト意識を高め、必要以上に薬が処方されることを防ぐという目的がございました。ところが、今回の改正案では、高齢者の薬剤費別途負担が廃止されようとしています。厚生省は、高齢者の薬剤費別途負担が廃止された場合、約二千二百億円の保険財源の不足が生じると試算しておられますが、その計算の根拠について御説明いただきますようにお願いします。
  148. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 薬剤の一部負担が廃止された財政影響だと思います。  今先生が御指摘のように、お年寄りの場合、二千二百億円でございます。それとともに、薬剤が、一部負担が軽減されることによりますいわゆる医療費の波及効果というのがございます。こういうものを含めまして全体的に二千二百億円、こういうものが決められたものでございます。
  149. 肥田美代子

    ○肥田委員 今大臣がおっしゃいました波及効果なんですが、多分八百億円ぐらいですね。つまり、厚生省の試算によれば、抑制効果が薬剤費の別途負担によって出ていたわけですね。それを今回、老人について薬剤費の別途負担を廃止するとしたのはどういう経緯なんでしょうか。
  150. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 かねがね薬剤費のあり方につきまして、先生御指摘のように、薬剤費、薬剤にむだがないかどうかとか、もうちょっと減らすべきではないか、こういうような御意見があったわけでございます。それと保険財政、こういうさまざまなことを勘案いたしまして薬剤費の一部負担というものを設けたわけでございますけれども、率直に申し上げまして、薬剤費の別途負担のあり方につきまして、現場で非常に煩雑で複雑である、こういうような御意見であるとか、一部で医療費の中に薬剤費が入っている、それからまたさらに薬剤費を取るということは、言葉が適当かどうかわかりませんけれども、いわゆる二重負担をお願いすることではないか、こういうような趣旨から、お年寄りの分につきまして薬剤の一部負担を廃止した、こういう経緯がございます。
  151. 肥田美代子

    ○肥田委員 今厚生大臣がおっしゃったとおりなんですね。平成九年の衆議院の本会議場でも、私はこのことを申し上げたつもりでございます。二重負担であるとか、それから現場で本当に煩雑になりますよという御警告は申し上げたのですが、あのときはそのとおり強行されました。  では、今回、その反省に立ってなされるわけでございますけれども、廃止をしますと、薬剤費を含めた医療費が押し上げられるということにはなりますね、波及効果がなくなるわけですから。どうですか。
  152. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今回、御案内のように、お年寄りの薬剤費につきましては、今度はお年寄りを定額制から定率制の導入、上限つきでございますが、その中に薬剤費の一部負担というものを含んで、あわせて計算をいたしておるような次第でございます。
  153. 肥田美代子

    ○肥田委員 医療費を押し上げる要因になりませんかとお尋ねしたんですが。
  154. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 これは率直に申し上げて、今の段階で、私どもがこの薬剤費を廃止することによってどの程度、先ほどは波及効果ということは申し上げましたけれども、直ちに今どれだけということを申し上げる段階でないと思いますけれども、いずれにいたしましても、私どもは、いわゆるお年寄りの財政負担という観点からは中立的な措置をとらせていただいた、こういうことでございます。
  155. 肥田美代子

    ○肥田委員 医療費を押し上げる要因にはなっているというふうにお聞きしていいんですね。その辺ちょっと。
  156. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 お年寄りの皆様方にも、我が国国民医療の資源を有効に配分してもらう、こういうことでお願いをいたしておるわけでございますが、率直に申し上げて、若干の医療費の押し上げにはなるんじゃないか、私は個人的にはそう思っております。
  157. 肥田美代子

    ○肥田委員 今回の健康保険法改正案に係る厚生大臣の諮問内容に対しまして、社会保障制度審議会は、患者負担の仕組みが複雑で、国民の理解が得られるかどうか疑問であるという懸念を表明しております。医療保険審議会でも反対意見がほとんどであったと聞いております。  新しい高齢者の患者負担制度は、自己負担の上限額が幾通りもありますね。本当にわかりにくい内容になっております。先ほど大臣が、前のはわかりにくくて現場で混乱したからとおっしゃいましたけれども、今度はさらに混乱することが予想されることをまずもって申し上げたいと思います。  例えば院内投薬の場合です。患者負担の上限は、二百床以上の病院では五千円、それから二百床未満では三千円です。診療所におきましては、定率を選択した場合は三千円で、定額を選択した場合は三千二百円です。さらに、院外投薬の場合の患者負担の上限は、二百床以上の病院では二千五百円、二百床未満の病院では千五百円。診療所で定率を選択した場合は千五百円、定額を選択した場合は三千二百円となっております。  どうしてこんなに複雑な方法で実施されるんでしょうか。
  158. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今回の改正におきまして、高齢者医療制度の見直しの第一歩として、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、お年寄りの皆様方にも、上限つきでございますけれども、過度の負担にならないという配慮をした上で定率一割、これを導入した、こういうことでございます。  さまざまな是正がございますけれども、例えば診療所におきましては、お年寄りの皆さん方があらかじめ自分が持っていく治療費を決めておいてもらった方がいいんだ、こういうようなことがございまして定額制にさせていただいた、こういうことでございますし、また、定率におきます上限が、二百床以下の場合には三千円でございます。これは中小病院でございます。それから、二百床以上につきましては五千円となっておるわけでございます。  これは、これまで患者が、例えば軽い風邪という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、何でもかんでも大病院に行って、東京のある有名な病院では一日五千人もの方が殺到するんだ、こういうことであって、真の意味で重症な方々がそのしわ寄せを受ける、こういうことがございまして、かねてから病院間の流れということが大変大きな課題になっていたわけであります。そういう中でいわゆる病診の連携を図る、その一環としてこのような措置をとらせていただいたような次第でございます。
  159. 肥田美代子

    ○肥田委員 私が先ほど申し上げた、これほど複雑なお金の取り方についてちょっと御答弁いただいていないように思うんですが、ちょっと例示をさせていただきます。  あるおばあちゃんが東大病院に行きました。そして医療費は一万円かかりました。それで、一割の負担ですから千円を払いました。そして処方せんを持って、外の薬局に行って、五千円分の薬をつくってもらった。ところが、上限はこの場合は二千五百円ですから、このおばあちゃんは五千円の一割ということで五百円の負担をしたのですね、窓口で。ですから、東大病院に行ったおばあちゃんは五百円のお金を払った。それが近く、近くじゃないけれども、虎の門病院に行ったとしますね。そうしますと、医療費は一万円ですから、同じですから、一割の負担で千円をおばあちゃんは払います。ところが、同じ処方せんを持って薬局に行きますね。そうしますと、そのおばあちゃんは窓口で払わなくていいのです。これをおばあちゃんにどう説明されます、大臣
  160. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 虎の門病院も大病院でございますので、私の理解では、東大病院と同じようにこれを払っていただくということでありまして、ただというのはどういうことか、ちょっと御説明いただければと思います。
  161. 肥田美代子

    ○肥田委員 そこにトリックがございまして、東大病院は、九五%医薬分業しておりますので、主として院外で処方するという病院なんですよ。虎の門病院は、ほとんど分業しておりませんので、主として院内で投薬するという病院なんです。その二つの違いが、実は末端でおばあちゃんが五百円払わなくていいか払うかの差になってくるんです。  これをもし説明しろと言われたら、私は、虎の門病院と東大病院の違いをそもそもから説明されたら、窓口は混乱すると思いますよ。
  162. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 要するに、先生がおっしゃっていらっしゃることは、医薬分業が行われている医療機関と医薬分業が行われていない医療機関でございまして、私どもは、医薬分業が行われている医療機関につきましては、これまでの実績からかんがみまして、半分ずつをいただく、こういうことでございまして、負担においては同じことだ、このように考えております。  つまり、虎の門病院を私はよく知りませんけれども、医薬分業が行われていなければ当然薬代というものが取られるということで、要するに、東大病院と虎の門病院とのお年寄りの負担は同じことになる、こういうふうに考えております。
  163. 肥田美代子

    ○肥田委員 大臣、そこが違うのですよ。  主として院内投薬をする病院と、主として院外投薬をする病院は、最初から届け出るんですよ。届け出るんです。ですから、二百床以上の病院であっても、二つに分かれちゃうんです。だから、先ほどのように、窓口で払わなくてもいいおばあちゃんと払わなければいけないおばあちゃんが出るんです。ですから、主として院内投薬か主として院外投薬かということで二つに分かれてしまうことがそもそも混乱のもとなんですよ。  私は、大臣、これ以上この場所で申し上げたって、聞いていらっしゃる方が多分……(発言する者あり)そうですか。  ですから、この辺の、私は余りにも煩雑で複雑過ぎるということを申し上げたのですが、もし大臣が、抗弁があるならおっしゃってください。
  164. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 大変失礼な言い方かもしれませんが、肥田委員がどういうような経過でそういうことをお聞きになったかわかりませんけれども、私の答弁が正しいと思っております。
  165. 肥田美代子

    ○肥田委員 そうしたら、私も私の申し上げ方が正しいと思っておりますので、これはこの場でどうということもありませんけれども、後ほど、では、ペーパーをお渡ししましょうか。
  166. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まだ健康保険法改正案も趣旨説明も行われていない段階でございますが、ぜひとも先生にも、薬剤師出身の先生でいらっしゃいますので、御理解いただきたいのは、先ほども申し上げましたけれども、これはいろいろな議論がありました。しかし、お年寄りの場合には、医療費と薬剤の部分というものが大体フィフティー・フィフティーと見るのが正しいのではないか、こういう観点から、例えば二百床以上の病院の場合は五千円、その場合には二千五百円と二千五百円。それで、もし例えば院内処方だけでする病院につきましては、その部分を上限の五千円も取られる、こういう解釈でございます。このように御理解をいただきたいと思っています。
  167. 肥田美代子

    ○肥田委員 これはもう根本的に大臣と私の認識の相違があると思いますので、後ほどこれはしないと……。
  168. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 認識というよりは、こちらが法案をつくって御提案申し上げるものですから、また改めて十分に御説明を申し上げますが、私どもはこういう方針で臨むつもりであります。
  169. 肥田美代子

    ○肥田委員 そうしましたら、私も質問させていただいた立場から、私が先ほど東大病院と虎の門病院のお話をしましたのは、私は絶対間違いはないと思っております。ですから、もしこれが間違いであるとおっしゃるならば、それをおっしゃってください。
  170. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まだ法案が提出されていない段階でございますし、基本的に昨年の予算編成の段階で与党と政府の間で決めた問題でございますし、どういう経過で肥田議員の方にそういうような御理解が回っているのかわかりませんけれども、私どもは、あくまでも、院内処方せんだけで行っている場合においては限度額が五千円である。しかし、医薬分業というものを推進しなければならない、こういう立場で、医薬分業が行われております、要するに院外で行われているところにつきましてフィフティー・フィフティーにするということで、治療費につきましては上限が二千五百円であって、薬剤については二千五百円だ、こういう考え方でございますし、また改めて十分に御説明をさせていただきたい、こう考えております。
  171. 肥田美代子

    ○肥田委員 どこから出てきたというよりも、これは審議会でお話しなさっていることですから、当然だれもが知っていることでございまして、このままもしどんどん進められていくと、先ほどのようなことが起こりますよ。絶対に混乱が起こらないというふうに大臣が断言なさるなら、この場でしてください。大丈夫だ、本当に煩雑な手続にならない、おばあちゃんを悲しませないとおっしゃるなら、この場でおっしゃってください。
  172. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 ですから、先ほども申し上げましたように、いわゆる身近な診療所においては、おばあちゃんを悲しませるとか悲しませないという問題じゃないのですけれども、あらかじめ、これまでは五百三十円でございますけれども、一定のお金を決めていただいた方がよろしい、こういうような御意見もありますものですから、いわゆる定率制と定額制の選択制というものを用いたわけでございますし、これは非常にわかりやすい制度だ、こういうふうに考えております。  それから、ぜひとも先生に御理解いただきたいのは、これから少子高齢化社会を迎えていく中において、国民医療費のあり方というものは大変大きな問題になっておるわけでございますが、国民医療の中の、三十兆円の中の三分の一がお年寄りである。こういうこともありまして、これからは、いわゆる国民年金を三万円、四万円しかもらっていないお年寄りの方々からは、たくさんの負担をしていただくわけにいきませんけれども、例えば一千万円、二千万円もらっていらっしゃる七十歳以上のお年寄りの方も、三万円、四万円の方もみんな一律同じである、つまり、お年寄りというものは社会的弱者であり、一律に経済的弱者であるという考え方というものは改めていかなければならない。そういう中において、国民の皆さん方とともに、これからの医療制度を初め社会保障全体について考えていこう、こういう発想で私たちは臨んでおるのだということをぜひとも御理解をいただきたい、こう考えているような次第でございます。
  173. 肥田美代子

    ○肥田委員 今大臣がおっしゃったことは、私も理解いたします。  ただ、一番卑近な例を申し上げたのですよ。先ほど、前の制度では窓口が混乱した、薬代を二重に取るからまずかったのだと。その反省でもって新しい方法をなさるわけですね。ところが、その新しい方法を私が幾ら一生懸命考えてみても、この頭でわからないのですよ。そして、卑近な例で東大病院と虎の門病院と二つに分けてみて、そして考えてみたら、こんなに誤差というか混乱が出たのですよ。矛盾ですよね。この矛盾を私は、今回このままお進めになると大変なことになりますよという御忠告を申し上げただけです。  ですから大臣、これは、大臣のお考えはわかります、全体的なお考えはわかります。ただ、この東大病院と虎の門病院、たまたま名前を挙げて恐縮なんですが、この差について、私の言っていることが本当に間違いで、御自信があるならおっしゃってください。
  174. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 水かけ論とかそういう話ではございませんで、法案がまだ通っておりませんから、その前段階であるということをまず御認識いただきたい。  昨年の予算編成の段階でそういうことが決まったということでありまして、どういうことでそういうふうに先生が御理解なさっていらっしゃるかわかりませんけれども、私どもは先ほどから申し上げているようなことで、調剤薬局がある場合とない場合とでは、当然のことながらそういうような扱いをしていくということで、複雑な制度ではないんだということを、ぜひとも御理解をいただきたい。
  175. 肥田美代子

    ○肥田委員 私は間違っていないと思いますので、ここで誤ってとか間違ってとかおっしゃられると困りますので、ちょっと確かめてください。
  176. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 敬愛する肥田先生にここで、間違っているとか間違っていないとか申し上げることを、水かけ論を言ってもしようがありませんから、私どもはこういう方針で臨むということで御理解をいただきたいと思っております。
  177. 島村宜伸

    島村委員長 ちょっと委員長から申し上げます。  肥田委員の考えられたケース、それを何かペーパーでお出しをいただいて、厚生省から確たる御回答をなさるという形が一番時間のむだにならないと思いますが、いかがですか。
  178. 肥田美代子

    ○肥田委員 そうしたら、私、これはすごく単純な話だと思うのですよ。ところが、単純でありながら全く基本的な話だと思いますので、もう一度繰り返してみます。  あるAおばあちゃんが東大病院に診療に行きました。医療費が一万円かかりました。そうしますと、定率ですから一割で、おばあちゃんは医療費を千円払いました。そして、処方せんをもらって薬局へ行きました。病院の外の薬局です。そこで五千円の薬剤及び調剤料がかかりましたけれども、一割負担ですから五百円でした。東大病院へ行ったAおばあちゃんは、窓口で五百円を払いました。  そして次にです。虎の門病院に行ったBおばあちゃん、同じく医療費が一万円かかりました。一割の負担ですから千円を払いました。処方せんを持っていきました。そして町の薬局に行きました。そうすると五千円の調剤料及び薬剤料がかかりました。ですから、また一割で、本当ならば五百円取ってもらうべきところですが、このおばあちゃんはゼロ円でした。受付でおばあちゃんは払わなくていいと言われたんです。  Bおばあちゃんは払わない、Aおばあちゃんは五百円払う、この違いを私はいいかげんな情報で言っているんじゃないのです。ですから、この場で白黒決着をつけるなんて、そんなおこがましいことは申し上げませんが、ただ、そういうややこしいこともあるということを、私は、厚生大臣、頭の中に入れておいてほしいと思うのです。
  179. 島村宜伸

    島村委員長 厚生大臣に申し上げます。  肥田委員の御発言の趣旨をペーパーで。  肥田委員
  180. 肥田美代子

    ○肥田委員 もしここに事務方がいらっしゃるならば、御説明していただいてもいいと思うのですよ。(発言する者あり)
  181. 島村宜伸

    島村委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  182. 島村宜伸

    島村委員長 速記を起こしてください。  ただいまの質疑につきましては、肥田委員から御質問の趣旨をペーパーでお示しをいただいて厚生省から確たる回答をしていただき、両者の解決を図ることを基本にしたい。よろしゅうございますか。  なお、厚生大臣から、肥田委員の御質問が間違いであると言ったことは、まだお互いに意見の食い違うところでありますから、この言葉だけは御訂正を願いたい、こう思います。よろしゅうございますね。  次の質問に入ってください。
  183. 肥田美代子

    ○肥田委員 それでは、次の質問に参ります。  国家公安委員長にお尋ねいたします。  新潟県で、小学校四年生のときに連れ去られた女性が、九年二カ月、三千三百六十日ぶりに監禁生活から保護されました。この事件に遭遇した女性の傷ついた心を思いますと、本当に胸がつぶれる思いがいたします。九年間も発見されなかった事実をどう認識されておられますか。
  184. 保利耕輔

    保利国務大臣 私もこのニュースに、報道に接しましたときに、非常にびっくりいたしましたのと、今までの犯罪史上余り例を見ないような、ある意味では大変残酷な事件であったというふうに認識をいたしております。  なお、この事態については国家公安委員会としても重大に受けとめておりますし、また警察庁としても、これは重大なことであるというふうに受けとめておりまして、今後、これらの問題点がどの辺から起因してくる問題であるかというようなこと等について十分調査をさせたい、このように思っております。
  185. 肥田美代子

    ○肥田委員 これは新聞報道ですが、前歴者の捜査ができていなかったとか、コンピューターに入力されていなかったとか、いろいろなことがあるわけですけれども、そのいろいろなことについて、今御検討というかお調べ中だそうでございますが、具体的に幾つか、ありましたらおっしゃっていただきたいと思います。なぜお聞きするかと申しますと、あすにもまたこういう事件が起こるかもしれませんので、お願いします。
  186. 保利耕輔

    保利国務大臣 具体の問題につきましては、警察庁の田中長官が参っておりますので、そちらの方から具体的な問題については述べさせたいと思いますけれども、今後こういった事件が万一仮に起こったとしても早期解決を図るように、私どもとしてはこの件を教訓にいたしまして、今後のいろいろな捜査に十分生かせるように、警察庁を私は督励をしてまいりたい、こう思っております。  具体の例につきましては、田中長官から答弁をいたさせます。
  187. 田中節夫

    田中政府参考人 委員御指摘の、新潟の三条市の事件につきましては、まことに残酷、極めて私どもとしても言葉もないというような状況でございます。  新潟の具体的な事案につきましては、今全体の事案の解明中でございますけれども、あわせて、現在のところまでにわかっておりますことは、例えば捜査の初期の段階で、前歴者の経歴が入力されていなかったこと、あるいは巡回連絡と申しますか、地域警察官の活動が必ずしも十分ではなかったことなどが現段階では指摘できるところでございます。
  188. 肥田美代子

    ○肥田委員 犯人の母親が、男の暴力行為について二回にわたって保健所に相談に行っておりますね。その段階で保健所、それから市役所、警察などの公的機関の連携ができなかったのは私は不思議だと思うのですが、何らかの横への連携があれば早期発見も可能であったと思うのですが、今後の教訓として何が残されたと考えられますか。
  189. 保利耕輔

    保利国務大臣 保健所から警察に対して連絡があったということは事実でありますが、両者の認識が若干違っているというような問題があると私は聞いております。  この具体の問題については、やはり田中長官から答えていただきたいと思います。
  190. 田中節夫

    田中政府参考人 委員御指摘の事案につきましては、九年二カ月余、何といいますか、かくまわれていたという実態がございます。  その過程におきまして、例えば保健所からどのような情報が警察に伝えられたか、あるいは発見の際にも、どのような形で警察に情報が伝えられたか、あるいはそれに対して我々がどのように対応したかにつきましては、若干時間をかけまして調査を要するところがございます。  具体的に、一月二十八日の段階につきましても、私どもの出動がおくれたというようなことにつきまして、新潟県警につきましてはそういう認識はございませんでしたけれども、少なくとも相手方であります保健所の方では、対応がおくれた、こういう御認識でいらっしゃいますので、その辺も、どういうことでそういうふうになったのか、あるいは当事者間のやりとりにつきまして不十分な点があったのかどうかということにつきましては、これは詳細検討いたしまして、正すべきところは正し、今後の捜査に、あるいは教訓として生かしていきたいというふうに考えているところでございます。
  191. 肥田美代子

    ○肥田委員 新潟県警の広域犯罪の初動ミスが指摘されております。神奈川県警の不祥事、それから犯人の飛びおり自殺を許してしまった京都府警の事件で警察に対する国民の信頼は大変失われているわけでございますが、巨大化した警察組織のたるみに原因があるのじゃないかという厳しい指摘がありますけれども、この指摘をどういうふうに受けとめられますか。
  192. 保利耕輔

    保利国務大臣 警察は、もとより御承知のとおり、国家の治安を守るという重大な、ある意味では崇高な役割を持っていると思います。大部分の警察官は、大変犯罪の種類もふえてまいりました中で、人員も十分ではないという中でいろいろな各種の犯罪に真剣に対応しているということは事実でございますが、一部に先ほど御指摘のような京都府警のような問題が起こったことは、大変残念であると思っております。  ただ、あの事件についても、いわゆる任意捜査の難しさというのがひしひしと感じられまして、強い捜査をやり過ぎますと、警察は行き過ぎではないかという御非難をいただく、それから、手ぬるいと、これは手ぬるいといってしかられるというようなことで、大変難しい道を歩きながら、苦労して捜査をしている中で一つのすきが出てしまったということで、私は残念に思っておりますが、今後こうした問題を参考にしながら、今後の捜査に必ず生かしていくように、私は督励をしてまいりたいと思っております。
  193. 肥田美代子

    ○肥田委員 年齢十三歳未満の所在不明の事案がまだ六つございますね。それは今どのような捜査状況になっているか、ちょっとお知らせくださいますか。
  194. 田中節夫

    田中政府参考人 委員御指摘の、年齢十三歳未満の幼児等の所在不明事案でございますが、平成元年以降現在まで、警察庁の捜査一課で把握しているものとしては、全国で六件ございます。  具体的に発生年月日を順を追って申し上げますと、一件目が、平成元年三月、当時四歳の男の子が母親の実家に帰省中、家人が目を離した間に行方不明となった徳島県の事案、二つ目が、平成三年三月、当時八歳の女の子が小学校の校庭で遊んでいる姿を最後に所在不明となった三重県の事案、三つ目が、平成三年七月、当時七歳の女の子が自宅から姿を消し所在不明となった福島県の事案、四件目が、同年平成三年十月、当時八歳の女の子が自宅から姿を消し所在不明となった神奈川県の事案、五件目が、平成八年七月、当時四歳の女の子が両親とともにパチンコ店に来店し、家人が目を離している間に所在不明となった群馬県の事案、六件目が、平成九年六月、当時六歳の女の子が自宅庭先で一人で遊んでいる姿を最後に所在不明となった岩手県の事案の六件でございます。  事案の態様はそれぞれ異なりますが、これらの事案を認知いたしました各関係の県警察におきましては、事件性の強いと見られるものにつきましては、捜査本部を設置して鋭意捜査を継続しております。また、付近の環境や所在不明者の平素の状況等から事件、事故の両面の可能性がある場合には、対策本部を設置するなどして、捜査とあわせて幅広い検索を行うなど、多面的な活動を推進してまいりました。  さらに、時期に応じまして、特別体制をとったり、あるいはビラを配布するなどして市民の関心を維持しながら、息長く情報収集活動を継続しているところでありますが、残念ながら、現在までのところ、いずれもその所在を発見するに至っておりません。  警察庁におきましても、今回の新潟での事件を踏まえまして、本件と同様のこれら所在不明事件の発生しております関係県警察に対しましては、見落としているところはないか、さらに工夫を重ねる余地はないかなど、これまでの取り組み状況を見直すなどして、所要の捜査及び発見活動を強力に推進するよう改めて指示したところでございます。
  195. 肥田美代子

    ○肥田委員 新潟県で保護された女性は、監禁生活の長い間に大変心がもう砕かれてしまっていると思うのですね。この前例のない事件で、人格の形成に一番重要なその時期を監禁という異常な環境に置かれたわけですから、この女性に対して、私は本当に、国から特段の何らかのことをすべきだと思うのですが、官房長官、いかがですかね。
  196. 青木幹雄

    青木国務大臣 急なお尋ねで私もよくわかりませんが、この事例だけを一つのあれとして特別な処置をとることがいいのか悪いのか、今までのいろいろな事件、これからも、起きちゃいけませんが、起きるかもしれない、そういうふうなことも考えてそういうことは決めていかなければいかぬ問題だと考えております。
  197. 肥田美代子

    ○肥田委員 もしもこれが本当に捜査ミスであるというはっきりした原因追及ができたときには、どうなさいますか。
  198. 青木幹雄

    青木国務大臣 もし捜査ミスであるということがはっきりすれば、その時点で、議員おっしゃるような前向きな対応をしなければならないだろう、そういうふうに考えております。
  199. 肥田美代子

    ○肥田委員 子供のことに関しましては、文部省、それから厚生省もそれぞれお考えであろうと思いますが、今回の事件に関しまして、文部省はどのように考えていらっしゃいますか。どういうことができると。
  200. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 文部省の方の関係では、日本体育・学校健康センター、こちらで災害共済給付制度というのがございます。登下校時を含む学校の管理下における児童生徒の災害に対しまして、医療費とか障害見舞金とか、あるいは死亡見舞金を支給する、そういう制度でございます。  今回、三条市におけるこの女性の監禁事件につきましては、このセンターが今、新潟県の教育委員会から災害共済給付についての相談を受けて検討しているところだ、そういうふうに承知をしております。  今までのセンターにおける検討では、放課後か下校途中か現段階では不明でありますけれども、いずれにいたしましても、学校管理下で誘拐され、そして九年余にわたり監禁されたために、当該女性が入院をし療養が必要になったことが認められるとのことでございます。このため、現在このセンターから新潟県教育委員会に対しまして、さらに詳細な資料の提出を求めているところであると聞いております。  今後、センターにおいては、提出されました資料等を踏まえて検討の上、災害共済給付について方針決定を行うこととしていると聞いておるところでございます。
  201. 肥田美代子

    ○肥田委員 厚生省はいかがでしょうか。
  202. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 新潟県を通じまして状況を把握するとともに、厚生省としてどのようなお手伝いができるのかどうか、こういうことを含めまして、十分に連絡をとっていきたいと思います。  このPTSDの問題でございますが、率直のところ、これまで余りこういう問題について十分な対策というものは講じていなかったわけでございますが、最近、災害であるとか、またそれから東海村の事故のこととか、いろいろな問題で大変大きな問題となっておるところでございますので、今後、こういう問題につきまして私どもも十分に研究していきたい、このように考えているような次第でございます。
  203. 肥田美代子

    ○肥田委員 今回の少女監禁事件にしましても、それから宮崎県加江田で起きたミイラ化遺体発見事件、それから東京文京区の少女殺害事件、いろいろな、形は違いますけれども、やはり大人による子供虐待として認識すべきだと考えておりますけれども厚生大臣はどうお考えですか。
  204. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 大変異常な事件でございまして、これが虐待だけで済む問題かどうかということにつきましては、また大人の子供に対する虐待、先生大変御熱心にこれまでこの問題に取り組んでいらっしゃいますので、ちょっとその範疇から逸脱したような大変深刻な問題ではないか、こういうふうに考えております。
  205. 肥田美代子

    ○肥田委員 今、厚生大臣がお答えづらかったのは当然なんですよね。というのは、現行の児童福祉法では虐待の定義がないんですよね。ですから、虐待の定義がないために実務の指針がないし、虐待を見逃してしまうということにもなりかねないんです。  法律で虐待の定義を明確にしなければならないときにいよいよ来たと思いますけれども大臣はどうお考えですか。
  206. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 この虐待の問題につきましては、いろいろな経緯がありまして、さまざまな意見があるところでございますけれども、十一年の三月に、厚生省といたしまして、専門家の意見を集約して作成いたしました「子ども虐待対応の手引き」におきましては、虐待は、親の意図とは関係なく、子供自身の苦痛の観点から判断することによる、こういうことにいたしておりまして、親によります身体的な虐待、それから性的虐待、心理的虐待、それから保護の怠慢や拒否、こういった分類を行ったところでございまして、この手引というものを周知徹底していきたいと思っております。  ただ、これを直ちに法制化するかどうかという問題につきましてはさまざまな意見があるところでございまして、今後皆様方の御意見を十分にお聞きしながら考えていきたい、このように考えているところでございます。
  207. 肥田美代子

    ○肥田委員 さらに、虐待の通告についても、法的には誤認であったという免責規定がないものですから、通告をちゅうちょしてしまうんですね。ひょっとしたら薄々わかっていたかもしれない人でも、やはり通告をちゅうちょするということはいろいろな事例であることでございます。  それから、立入検査にしましても、具体的な権限があるわけではありませんね。厚生省は、虐待と思われる家庭への立入調査権を活用すべきだという通達はしていらっしゃいます。しかし、親が現場の職員に刃物を差し出すことさえある現実の中で、これはやはり運用には限界があると思うんです。  ですから、医師とか教師とか、子供にかかわる人々が後難を恐れて通告をしないという状況を変えるためには、やはり専門家の通告義務を法律の中に明記する必要があると考えますが、いかがでしょうか。
  208. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 子供への虐待に関する通告の義務というのは、国民一般に義務づけられているといいますか、奨励されているところでございまして、一部の専門家だけではないわけでございます。  そういう中において、それを法的に義務づけて、何かこれによる処罰であるとかということが果たしてなじむかどうかということと、それから、虐待の定義というものが、またこれは率直に申し上げまして時代時代によって変わりつつある、こういうことまで法律でやることがいいのか、あるいは政令で定めることがいいのか。そういうことを含めまして、とにかく一番大切なことは、いわゆる虐待を防止するという観点に立って考えていきたい、このように考えているような次第でございます。
  209. 肥田美代子

    ○肥田委員 大臣、今私は大臣のお答えを聞きながら、ちょっと気が長過ぎるなという気がするんですよ。  というのは、もう本当に専門家たちは困っていらっしゃるんですね。例えば、全国児童相談所の相談所長会の調査で、全国の児童相談所の八割以上が、今現在の児童福祉法では子供虐待に対応できないと答えていらっしゃるんです。昨年は衆議院の青少年問題特別委員会で、もうたまりかねて、超党派で児童虐待の防止に関する決議をしたわけですね。市民社会においても立法府においても、本当に今真剣に取り組まなければ立ちおくれるという、そのぎりぎりのところへ来ているわけですよ。  ですから、やはり新しい千年紀の始まりに、未来志向の考え方からするならば、児童福祉法にこだわらずというか、その不備を補完する子供虐待防止法をぜひつくるということに、私は、大臣、前向きになっていただきたいと思うんです。いかがでしょう。
  210. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどの答弁と繰り返しになりますが、果たして有効的に働くことができるかどうか、そして子供の虐待を防止する観点から考えるべきである、こういうふうに考えておるわけでございまして、何か問題が起きればすべて法律によって事足りるという考え方は、私はこれはちょっと誤りではないか。要は、さまざまな形で国民一般がこういう問題について大きな関心を持っていただいて、そしていかにして防ぐか。  そしてまた、これまでどちらかといいますと、保健所であるとか児童福祉のセンターであるとか、そういうところがややもすると十分な連携がとれていない、警察においても連絡がとれていない。こういう問題をきちんとすることが、まず子供の虐待を防止することに役立つことではないか、私はこのように考えております。  決してこの問題で私は、消極的であるとか後退である、こういう観点から申し上げていないということを、ぜひとも御理解をいただきたいと思っております。     〔委員長退席、久間委員長代理着席〕
  211. 肥田美代子

    ○肥田委員 それでは、ちょっとまた卑近というか近い、身近に起こる例を申し上げたいと思います。  例えば、免責のところで、一歳半の子供が病院にやってきた。お医者さんは、脳内出血であったからおかしいなと思いながら治療した。しかし、これを虐待と言って、もしもそれが間違いだったら大きな責任をとらされるからということで、ほうっておいたんですね。そして、六カ月後に、その子が今度は足を骨折してやってきました。しかし、そのときもお医者さんは悩んで通報しなかった。ついに、その後その少年のおばあちゃんがほかの病院に連れていって、その病院が通報したわけですけれども、そういう免責がないために起きている子供たちの苦しみはあるんです。  それからもう一つ、しつけと虐待の概念が整理されていないんです。ですから、虐待だと人が思っても、いやいや、うちは結構です、これが体罰でしつけですからと言われたときには、これは手も足も出ませんね。ところが、子供たちにとっては小さな体なんですよね。日々つらいんです。  それからもう一つ、立入検査も、十一歳の子供を学校にやっていないものだから、児童福祉司や生活保護担当者が行きました。しかし、うちは学校へ行かせないのがうちの方針ですということで、かぎを閉めて応対しない。  こういうことはいっぱいあるんですよ。これが本当に現行の児童福祉法、そして厚生省の今の運用で解決できるかどうか、大臣、お答えください。
  212. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほど申し上げましたように、これはまず基本的なこの手引の中で、要するに虐待は親の意思とは関係なく子供の苦痛によるんだということで、先ほどの個々の問題というものもおのずと御理解をいただけると思っておるわけであります。  ただ、今の中で、子供の虐待が防げるかどうかという問題でございますが、率直に申し上げて、これは家庭内の問題でございますし、実際問題として、どこまで行政というものがこういうものに介入していくべきなのか、こういうような問題も含まれておりますし、なかなか厄介な問題でございますけれども、大変大きな問題でございますので、ひとつ十分に今後検討させていただきたいと思っております。
  213. 肥田美代子

    ○肥田委員 もう家庭内の問題じゃないと思います、私は。社会に引っ張り出してくる問題だと思うんですが、違っていますか、大臣
  214. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 家庭内の問題ではなくて、いわゆる大きな社会的な問題になっておるという認識は同じでございます。  ただ、実際問題として、私、先ほども申し上げましたように、個人、いわゆる家庭内におけるプライバシーの問題であるとか、その辺をどういうふうに配慮していくかという大変厄介な問題、こういうふうに考えておるような次第であります。
  215. 肥田美代子

    ○肥田委員 それで、私はこの委員会で提案を申し上げているのは、児童福祉法の改正ぐらいではもう追っつかないだろう、ですから子供虐待防止法というようなものをつくってやっていきましょうという提案をしているんですね。  先ほど大臣も、僕は後ろ向きじゃないよとおっしゃってくださいましたね。青少年特別委員会でも、やはり超党派で決議しているんですよね。私は、もう機は熟したと思います。ですから、もう大臣の御決断次第で私は子供たちが救われるというふうに今思うんですけれども、いかがですか。
  216. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 肥田委員がこの問題につきましてかねてから大変御熱心に取り組んでいらっしゃいますし、そしてまた、衆議院の段階で、青少年特別委員会で決議されたということも十分に認識いたしております。  いずれにいたしましても、ひとつ先生の御意見として私は十分に承っておきたいと思っております。
  217. 肥田美代子

    ○肥田委員 今回の新潟の事件、まさにここなんですね。少女監禁事件が典型的だと思うのです。  というのは、虐待防止のためにはまず予防ですね。それから発見、通告、介入、保護、指導、治療、この一連、まさに今回の新潟の事件に当てはまるのですね。これがなければ虐待は防止できないし、幾ら厚生省の方で頑張られても、私はもう本当に限界、ほころびが見えていると思うのですね。  ですから、本当にしつこいようですが、大臣も今ここの場所でお答えしにくいかと思います。しかし、私は、今はっきりと大臣が決断されないと、この三千三百日の監禁された少女、また次の少女の事件が起きる、あしたかもしれないし、あさってかもしれないと思うのです。ですから、私は、この法整備は一日たりとも、一時間たりともおくれると危ないなという気がいたしますが、大臣、いかがですか。
  218. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 率直に申し上げて勉強不足でございまして、今先生がおっしゃった新しい虐待防止法というものができることによって、どれだけ虐待防止というものが、要するに少なくなってくるかということにつきまして十分な理解ができておらないわけでございます。ちょっとお時間をいただきまして、この問題について取り組ませていただきたい、このように考えているような次第であります。  いずれにいたしましても、今大切なことは、今の実際にある中で、いかにして連携を保って、有効的に実際問題として虐待をなくすということが最優先であって、そのために虐待防止法というものがどうしても欠かせないということがあれば、当然のことながら新しい法案というものが必要になってくる、こういうふうに私は考えております。個人的な考えでございます。
  219. 肥田美代子

    ○肥田委員 大臣のお立場もございますから、これ以上はお答えづらいと思います。ただ、個人的にはとおっしゃってくださいましたので、私は個人的にはと承りますが、実は、厚生省の方にこの種類の質問を幾らしましても、今の福祉法で役に立っております、運用で頑張っております、これでいけますという、それの一点張りなんですよ。超党派で実は困っているんです。ですから、このことを本当に大臣、御認識いただきたいと思います。  それでは、あと数分残しておりますが、一つだけ、先ほどの医療制度のところでお聞きすることを残しておりましたものがございますから、戻らせていただきます。  実は、病院で二つの事件がございましたね。広尾病院とそれから大阪の循環器病院ですが、輸液の調製の間違いで死亡者が出ておりますけれども、この二つの病院につきまして、薬剤師が薬を調製しておりましたでしょうか。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕
  220. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 委員御指摘の病院の事故、都立広尾病院と国立循環器センターにおきますいわゆる看護婦さんによるミスであるとか、要するにそういうことだと思います。こういう問題につきまして、私どもは、こういうことが繰り返されないように、医療に対する信頼をきちんと確立するためにも、当然のことながら、きちんとしたチェック体制のマニュアルをつくっていく、そういう中において、専門分野であります薬剤師の方の参加というのは、当然、検討の課題になってくる、このように考えているような次第であります。
  221. 肥田美代子

    ○肥田委員 当然そうなんですよね。  その医療体制の問題ですけれども、実は今回の医療体制の改革に当たっては、療養病床では患者百五十人に薬剤師一人ということになっているんですね。百五十人といいますと、病棟が三つなんですよ。三つの病棟を一人の薬剤師でもって管理して、服薬指導をしながらこういう薬も調製できると大臣はお考えですか。
  222. 島村宜伸

    島村委員長 丹羽厚生大臣。簡潔に願います。
  223. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 この服薬指導というのは大変重要な問題であるわけでございます。医薬分業が推進する中におきまして、いわゆる病院内における服薬指導というものの役割がますます大きくなってくる、こう考えているような次第でございますし、国立病院におきましては、こういった問題につきまして先駆けて取り組んでいく、こういう覚悟でございます。
  224. 肥田美代子

    ○肥田委員 私の調査では、全国の国立病院三十一を調べましたら、その中で、調製する場所が薬剤科となっているのはわずか十一病院なんですね。ですから、これからも広尾病院それから循環器病院のような、本当に痛ましい事故は起こります、起こると思います、この状況では。  ですから、何としてもやはり薬の調製は薬剤師にさせる、看護婦にはさせない、それから臨床工学士というような方々にはさせないということをもう一度認識していただきたいと思うんですが、最後にそれだけ。
  225. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 当然、それぞれの職種の皆さん方が有効的に働くように、それぞれの役割というものを分担して、そして連携を保ちながらやっていくことが大変重要だ、このように認識いたしております。
  226. 肥田美代子

    ○肥田委員 そしたらあれですね、十四年の改正までにはそれはもう少し、三病棟に一人の薬剤師なんて言わずに、もうちょっと配置するという方向で検討してくださるということでいいですか。
  227. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先生の貴重な御意見として承っておきます。
  228. 肥田美代子

    ○肥田委員 ありがとうございました。
  229. 島村宜伸

    島村委員長 これにて肥田君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木憲昭君。
  230. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  我が国中小企業は全企業の九九%を占めております。生産、流通、サービスの各分野で大きな役割を果たしております。また、勤労者の七八%が中小企業で働いております。さらに、物づくりの基盤を形成し、日本経済を支え、地域経済、地域社会を支えるという意味でも中小企業は大変重要な役割を果たしていると思います。  初めに、通産大臣に確認をしたいと思います。  中小企業日本の経済と国民生活にとってなくてはならない重要な存在である、当然そういう認識を持っておられると思いますが、まず確認をしたいと思います。
  231. 深谷隆司

    深谷国務大臣 ただいま委員御指摘のように、その数において圧倒的に占めているのが中小企業であります。この中小企業日本経済の活力の源泉にならなければ経済の安定とか発展はないと心得ております。  そういう観点で、昨年は御党の御協力もいただいて中小企業国会という国会を開いて、数々の政策も立たせていただいて、ことしはそれを実践、実行する年だというふうに思っております。
  232. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 重要な存在である中小企業、主役ともいうべきこの中小零細企業が、現在次々と廃業、倒産に追い込まれるという深刻な事態が生まれております。例えば、地域社会を支える商店街、これも同様でありまして、小売業分野の大部分を占めておりますのは一人から四人の、その程度の小さな個人商店でございます。これは商店の数の上で七割以上を占める、圧倒的な多数でありますが、今ここで深刻な事態が生まれております。  まず通産省に実態を確かめたい。九一年と九七年を比較しまして、一人から四人の規模の商店数は何件減少しているか、減少数と減少率を示していただきたい。
  233. 吉田高明

    吉田政府参考人 商業統計調査における一人から四人規模の商店数でございますが、一九九一年には百二十七万四千五百件でありましたものが、一九九七年には百五万九千三百五件となっております。件数で二十一万五千百九十五件、率では一六・九%の減少となっております。
  234. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 わずか六年で大変な減り方であります。二十一万五千件も商店の数が減っております。通産大臣は、この原因はどこにあるというふうにお考えでしょうか。
  235. 深谷隆司

    深谷国務大臣 ただいま担当者から御報告しましたように、商店数の変化を規模別に見ますと、従業員数の規模が一人から四人という小規模の小売店が大変減少幅が大きい。逆に、従業員規模が五人から四十九人の中小小売店及び五十人以上の大型小売店は商店数がふえているという状態にあります。  このような小規模な小売店の減少の背景としましては、やはり経済の動向が大きく影響しております。特に消費不況、これは大変深刻であろうと思います。また、価格競争が激しくなって、どうしても大量に買って大量に売るところの方が価格が安いといったような、そういう背景もありましょう。あるいは、消費者ニーズが随分変化してきているということもございます。また、新業態小売業の出現なども指摘されていますが、一方では、高齢化が目立つ、それから後継者が少ないといったような多くの厳しい背景があるというふうに思っております。
  236. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 確かに消費の低迷は大変大きな原因でありまして、昨年の全国全世帯の消費支出は実質でマイナス一・二%であります。七年連続で対前年比でマイナスになっている。しかし、それだけではなくて、今お話にありましたように、大型店との競争、これが大変重大な影響を与えております。大型店、量販店が次々と進出して商店街に大変な打撃を与えている、これがもう一面の実態だろうと思います。  そこで、調査統計部にお聞きしますが、大型総合スーパー、それから専門スーパー、この量販店の売り場面積は九一年から九七年の間にどのようにふえましたか。
  237. 吉田高明

    吉田政府参考人 商業統計調査におけるスーパーの店舗面積でございますが、大型総合スーパーの店舗面積は、一九九一年から九七年にかけまして、四百三十九万二千七百九十四平方メートル、五三・九%増加いたしました。また、専門スーパーの店舗面積は、同時期で、一千六十六万三千二百十七平方メートル、八一・九%増加いたしております。
  238. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の数字でも明らかなように、大型総合スーパーは五四%ふえております。また、専門スーパー、量販店、これは八一%もふえている。わずか六年でこれだけの大変なふえ方であります。  消費が一方で低迷している、それなのに大型店の売り場面積ばかりがふえている。巨大な商圏を持つ大型店が郊外にどんどん進出をして、町の中心部が空洞化する。これでは中小の商店はひとたまりもないという状況であります。次々と店を畳むという事態が生まれ、商店街は歯の抜けたような状態になり、シャッター通りと言われるような極めて深刻な事態が進んでいるわけです。特に、日常の生活に欠くことのできない八百屋さん、魚屋さん、肉屋さん、こういうところが、統計で見ましても個人商店は半分以下になっております。  例えば、一例を挙げますと、三重県のある大型店であります。これはジャスコですが、津の中心部分からことし七月に一方的に撤退する、こういう計画が発表されまして、大変な衝撃を与えております。一方、郊外では大型店の売り場面積をふやす、新たな郊外に出店をする、こういう状況でありまして、四日市では、町の真ん中の紡績工場跡地に出店を計画して、逆に周辺の商店街、住民の猛反発を買う、こういう状況であります。  これに対して、三重県商店街振興組合連合会の理事長は、大型店の郊外出店は目に余る。大型店の出店や撤退の影響で中心部から商店がなくなると、交通弱者のお年寄りや子供たちにも不便を与えます。かつて大型店は、中心市街地に進出するときに、地元商店と共存共栄などと言いました。結局、土地が安いなどと外に出ていく。都市の破壊者だ。私らはそれを知らずに、大企業だからと信頼していた。共存共栄を願った。その信頼を裏切ったらいかぬと、県の商店街振興組合連合会の理事長がこのようにおっしゃっているわけです。  通産大臣は、今私が述べましたように、大型店の進出、あるいはいきなり撤退する、これが先ほど統計で確認したような商店街への深刻な打撃、あるいは中小商店への大きな圧迫になっている、それが商店数の減少の原因になっている、こういう認識はお持ちでしょうか。
  239. 深谷隆司

    深谷国務大臣 先ほど申しましたような小規模小売店が後退していく背景には、景気の動向を含め、さまざまございます。その中の一つに大店舗の進出や撤退ということがあることは、委員のおっしゃるとおりだと思います。  かつて、私たちは、大店舗法という法律をこしらえて、大店舗が進出する際の中小商店街等が生きられるような環境をつくったのですけれども、その後しばしば改正が行われて形骸化しつつあった。そこで、私どもは新たに町づくり三法というのを皆さんと御一緒につくり上げて、いわゆる改正都市計画法、大店立地法、それに中心市街地活性化法といったようなものを組み合わせながら、何とか活性化をしていくような体制を整えつつあるところであります、まさにこれからでございますが。
  240. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 町づくり三法というお話がありましたが、一番の問題は、大店法を撤廃して大型店が自由に進出できるような状況をつくったことにある。私は、そこに最大の問題があると思います。  この町づくり三法を見ましても、これはヨーロッパと違いまして、大型店の進出に対して、例えば生活環境、都市計画に悪影響を与える、そういうことが明らかな場合に、肝心なのは出店を拒否できるかどうかなんです。ところが、出店を拒否できるという条項はございません。大型店の出店については、フランスなどでは中小小売業の保護のための許可制というふうになっておりまして、日本では原則自由、こういうことで、ヨーロッパと全く違うわけであります。  私どもは、少なくとも、大型店の出店を許可制にする、それから自治体独自の規制ができるようにする、そして中小小売商あるいは消費者代表も加えた大規模小売店舗審議会をつくって、そこでしっかりと規制ができるようにする、そういうことを主張してまいりましたが、今後ともこの点は強く主張していきたいと思っております。  次に、具体的な事例として、酒屋さんの問題に絞ってお聞きをしたいと思います。  まず、統計を確認したい。商業統計で、販売小売業の個人商店数、これは酒販小売業ですね、これの個人商店数は九一年から九七年の間に何軒減りましたか。
  241. 吉田高明

    吉田政府参考人 商業統計調査における個人酒販商店数でございますが、同調査による酒小売業に属する個人商店数は、一九九一年には八万二千四百二十八軒でございました。九七年には六万一千七百二十四軒ということでございまして、軒数で二万七百四軒、率では二五・一%の減少となっております。
  242. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 大変な減り方であります。六年間にまさに四軒に一軒の酒屋さんが消えた、こういう状況です。これは大変な事態でありまして、なぜこのような状況になったか。不況の影響もあるけれども最大の問題は、大型店や量販店に酒販免許を与えるという規制緩和を行ったことにあるのではないか。  例えば、一九八九年六月には、一万平米以上の大型店舗には、どんなに近くに酒販の店があっても、免許を与えるという規制緩和をやりました。九〇年六月には、日米構造協議最終報告を受けて、平成五年秋までに開店する大型小売店舗に対して免許を付与するということを決めました。九一年五月には、一千平米以下なら、周囲の小売店との調整なしで、大型小売店舗内に輸入品専用の売り場を設けてよい、こういうことが行われました。九三年七月には、大型小売店には、開店日に合わせてすべてに免許を与えるということにした。九四年七月には、大型店における輸入ビールの販売を免許当初から自由化することを決めて、九月から実施をした。  これらの一連の九〇年代の規制緩和の流れ、つまり、大型店に次々と酒販免許を与えてきた、ここに大変大きな影響が生まれた原因があるというふうに私は思います。  通産大臣にお聞きします。このような、大型店への酒販免許を与えた、このことが酒屋さんが次々と消滅していく大変大きな原因となったんじゃありませんか。そのような認識はお持ちでしょうか。
  243. 深谷隆司

    深谷国務大臣 商業統計のデータによりますと、酒小売業の個人商店数の減少と、酒小売店を含む諸小売業全体の個人商店の減少というのは、ほぼ同じ数字になっております。ですから、酒小売業だけの格別な減少という形では必ずしもないわけでありますけれども、ただいまの免許の問題が影響を与えるということは否定しがたいことでございます。  私どもも身内に酒小売店がございますが、大変苦労しながら、しかし、小回りのきいた特徴を生かしながら、お客様のニーズにこたえてしっかり頑張っているところもございます。
  244. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 酒屋さんの減り方というのは、一般の商店の減り方と比べまして大変大きな減り方をしていると私は認識をしております。  大蔵大臣にもこれは当然お聞きしなければならないわけでありまして、酒販免許を与えてきたのは大蔵省所管の仕事でございますが、やはり通産大臣と同じような認識をお持ちでしょうか、大蔵大臣
  245. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今通産大臣のお答えは、一般の小売店の減少の度合いと、特にそれが酒類免許に関係したものとの減少のぐあいは、特段の違いはない、際立った開きはない、ただしかし、免許の問題が関係しているということも事実であろう、こういうお答えでありました。そうだろうと思います。
  246. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 先ほどの統計でいいますと、一人から四人の一般的な商店の減少率は一六・八八%、約一七%ですね。しかし、酒屋さんは二五%減っているわけであります。ですから、酒屋さんの減り方の方が大変激しい。  東京商工リサーチという倒産を調べているところの情報によりますと、九四年当時、いきなり酒屋さんが次々とつぶれるということがありまして、酒類流通業の倒産が小売業を中心に急増している、規制緩和による量販店の台頭に打ちかてずと、規制緩和倒産という言葉を使ってこのように報道しております。  大型店でお酒を自由に販売できる、そういうふうにしただけではありません。問題はその売り方であります。大型店は価格が不当に安いのではないか、酒屋さんから大変な批判が出ております。周辺の酒屋さんは、大変大きな打撃を受けて、価格競争に勝てない、こういう状況になっているわけです。  公正取引委員会にお聞きをいたしますが、酒類の不当廉売として注意を受けた件数、平成十年、平成十一年について報告をしてください。
  247. 上杉秋則

    上杉政府参考人 お答えいたします。  平成十年度におきまして注意等の措置をとったものが五百九十九件ございますが、そのうち酒類は、ビールが中心でございますけれども、三百三十九件ございました。それから、平成十一年度、これは十二年の一月末現在の数字でございますけれども、五百九十一件の注意等を行っておりまして、そのうち酒類が三百七十五件あったわけでございます。
  248. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 公取は、周辺業者から訴えがあって初めて対応するというやり方をしておりまして、しかもその是正措置は注意をするというだけでありまして、不当廉売は一向になくならない。一体、どんな体制でやっているのか。不当廉売に専門に対応する担当者の人数、これはどのぐらいいますか。
  249. 上杉秋則

    上杉政府参考人 公正取引委員会では審査専門官制をとっておりまして、必要な事件の調査に当たっておりますけれども、現時点におきまして、専ら不当廉売等の調査を行う担当官というのは、本局、これは関東甲信越地方を担当いたしておりますが、そこに八名、それから各地方事務所に七名ということで、全体で十五名でございます。
  250. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 たった十五名で何万もある酒屋さんの訴えに対応することは極めて困難であります。  大蔵大臣にお聞きしますけれども、このような中小企業の訴えに対応する、例えば不当廉売に対して対応する、そういう専門の担当者の人数をふやすような方向に予算をつけるべきだと思うのです。この体制強化について、大蔵大臣考え方をお聞きしたいと思います。
  251. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国税庁の執務体制につきましては、現場を知っております者が参っておりますので、委員長のお許しをいただきまして後から御説明をさせていただきますが、その前に、酒類の販売が免許である、免許行政であるということについては各方面からいろいろな意見が寄せられて、これは大変長いことで、きのうやきょうのことではございませんが、消費者から申せば、大型量販店でビールを売ってくれる、酒を売ってくれれば、これは当然便利でございます。お酒だけはないんだってねといったようなことはよく聞かれますから、不便ではございましょう。  他方で、しかし大蔵省としては、一つは、やはり致酔飲料であるということ、致酔飲料であるから、どこでもだれでも売ってもらっては困るということと、もう一つ、非常に税金分が高い品物でございますので、これが毀損されますと普通の品物の毀損と違う状況が起こります。取り扱いに注意をしなければならないという、これは伝統的にそういう問題がございました。  そういう中で小売屋さんというものが生まれまして、かつては酒だけで商売できるような時代もございましたが、だんだんコンビニや何か出てまいりますと、酒だけではやれない。商品の知識を相当持っていなければならないが、それなら僕は後を継ぐのは嫌だなというような後継ぎの問題があったり、幸いなことは、割に目抜きの場所に店を持っているということがあったわけですけれども、そういういろいろなことで、結局、消費者のニーズと、致酔飲料であるとか、あるいは税金がたくさん入っているとかいうことの免許行政の主張とがだんだんに折り合ってきている中で、後継者も少しずつ少なくなってきたというようなところが現状だと思うのでございます。  ですから、両方になかなか主張のあることだという感じが私はいたしますのですが、それはそれとして、今の現場のことを御説明させていただきます。
  252. 村木利雄

    村木政府参考人 御説明申し上げます。  私ども国税庁も、厳しい定員事情の中で、例えば平成十二年度につきましては百八十名強の減員が課せられているところでございますけれども、その中で、国税局、税務署合わせまして約千二百名ばかりの酒税担当者がおります。  そういたしまして、私ども、規制緩和の一方で、公正な競争環境の整備に取り組むことは酒類行政の重要な柱の一つと受けとめておりまして、その観点から、平成十年四月には、公正なルールとしまして、公正な競争による健全な酒類産業の発展のための指針というものを出しまして、その周知啓発に努めるとともに、従来から、これは数年前から行っておりますが、取引実態調査というものがありますが、この充実を図っておりまして、酒類業者を積極的に指導しているところでございます。
  253. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 大蔵大臣に先ほどお聞きした私の質問のポイントは、こういう小売店、酒屋さんの要望に対応した公取ですとかあるいは大蔵省の人員配置をきちっとやるべきだ、その予算をつけるべきではないかという御質問をさせていただいたんです。それにはお答えにならなかったんですけれども、その点はいかがですか。
  254. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、公取法の違反であるとかあるいは酒税確保とかいう見地から申しますと、答えはもとよりイエスでございまして、今担当官がその人数を申し上げるかと思ったんですが、おっしゃることはそうだと思っております。
  255. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 先ほどの大臣の御答弁で、ニーズもあるが致酔性の飲料である、この点を指摘されて、どこでもだれでも売っていいものではない。その問題は後でまた議論をしたいと思います、それが本当に守られているかどうかについては。  そこで、先ほど国税庁の答弁の中にありましたように、公正な競争による健全な酒類産業の発展のための指針、いわゆるガイドライン、このガイドラインに基づきまして、昨年十月に酒類の取引状況等実態調査を行って公表されていますね。その結果、ガイドラインに示された公正なルールに沿っているとは言いがたい取引、これが相当数認められた、こういうふうに指摘されております。  平成十事務年度のこの調査件数と、そのうち、総販売原価割れ、これが認められたものの数、仕入れ等価格割れが認められたものの数、取引先を公正に扱っていないと考えられるものの数、それぞれの件数と比率、これを示していただきたい。
  256. 村木利雄

    村木政府参考人 御説明申し上げます。  平成十年七月から平成十一年六月までの平成十事務年度におきまして、メーカー、卸売業者、それから小売業者を対象としまして実施いたしました調査件数は七百八十七件でございます。これは、前年の二百四十九件に対しまして約三倍の調査を実施したところでございます。  お尋ねの、調査対象となりました取引のうちいずれかが、総販売原価、これを割って販売をしていたと認められたものは七百十五件でございまして、調査件数の約九〇%になっております。同様に、仕入れまたは製造原価割れの販売と認められたものは百二十一件、それから、取引先等の公正な取り扱いが行われていないのではないかと認められたものは百十七件でございまして、いずれも調査件数の約一五%になっております。  なお、実態調査当たりましては、効率的な調査を行う観点から、私どもさまざまな情報を収集した上で対象者の適切な選定を行っていること、さらに、一定の調査対象期間におきます多数の取引のうち一つでもこのような問題がある取引が認められた場合には一件としてカウントしていることから、公正なルールに沿っているとは言いがたい取引として計上された割合が高くなっている面もあろうかと思っております。
  257. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 原価割れで売られている、これが九〇・九%もあるわけであります。大変な比率です。しかも、仕入れ価格割れが一五%。この仕入れ価格を割り込むということは、その裏にリベートがあるんじゃないか、こういう指摘もあります。  全国小売酒販組合中央会の平成十二年度の事業計画、ここにありますが、これはインターネットでとったものですけれども、この文書にはこう書いてあるわけです。国税庁からガイドラインが出されたものの、いまだ、売上数量を求めるだけの競争や特定の商品を取り扱うことを条件として過大な利益を供与する、つまりリベート、こういった取引が見受けられると指摘しております。  私たちが酒屋さんや酒販組合の幹部の方々と懇談をいたしますと、必ず出てくるのは、酒屋の仕入れ値よりも安い価格でディスカウントストアが売っている、こういう話であります。  具体的な事例でいいますと、例えば静岡県のある市では、酒屋さんの三百五十ミリリットル缶のビール二十四缶の仕入れ値は四千百九十四円であります。ところが、一部の量販店やスーパーでは、三千八百八十円で売っている、三千六百八十円の店もある、こういう状況であります。この酒販組合の話では、これが一般化しているというのです。酒屋さんは、とてもそんな状況では太刀打ちできない。  大蔵大臣にお聞きしますが、こういう状況というのは、これは公正、対等、平等な競争というふうに思われますか。
  258. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 思いません。
  259. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 思わないと。  国税庁の調査でも、公正なルールに沿っているとは言いがたい取引としていろいろな事例が挙げられておりますけれども、例えばこういうのがあります。  合理的な価格の設定をしていない事例としてメーカーの事例が挙げられておりまして、「A社は大容量のしょうちゅうについて、競合他社との関係から、顧客を確保し取引数量を伸ばすため、基本リベートに加え、大きな販売力を持つ小売業者との取引関係にある卸売業者に対して、スポットリベートを支払ったことから、一部の取引について製造原価を割るものが認められた。」これは大蔵省の調査。  また、取引先等の公正な取り扱いが行われていない事例として、「A社はリベートの支払金額について社内的な基準を設けているが、量販店とのビールの取引数量を伸ばすために、特定の量販店に対してのみ社内基準を採用せず、取引条件の差異に基づく合理的な理由がない多額のリベートを支払っているものが認められた。」と書いております。  さらに、透明かつ合理的なリベート類の提供が行われていない事例として卸売業者の例が挙げられておりまして、「A社は大きな販売力を持つ量販店Bからの要請に応じて、顧客を確保するために、算出根拠のないリベート類を支払い、その結果一部の商品について仕入価格割れ取引となっていた。」  これらは、大蔵省が示したガイドラインに違反している。それだけではありません。独禁法十九条の不当廉売あるいは差別対価などに違反する重大な問題であります。  この根本に、量販店と酒屋さんの間の価格差が生まれる根本に、不当なリベートの存在がある。このリベートの存在を是正しないと、公正な取引が成り立たない。先ほど公正ではないと言われた。それを是正するには、リベートそのものにメスを入れる必要があるのではありませんか。いかがでしょうか。
  260. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこもおっしゃるとおりだと思っておりますし、国税庁としてもそういう行政を一生懸命やろうとしておりますし、また、公正取引委員会でもそこは非常に丹念に調査をして行政をやっていただいておるのですけれども、このことがなかなか直ってこない。今、基本的には過当競争があるということであろうと思いますし、大きな荷物でございますから、たくさん荷物を扱ってくれればそれだけコストが安くなりますので、リベートの財源が出てくるとか——いいと申し上げているのじゃありませんよ、いろいろな状況からなかなかそういう過当競争というものがやまないというのが、これはきのうきょうに始まったことではございません。この行政にはつきものだと言っていいくらいございます問題でございますが、行政は、しかし、それを一生懸命正すために努力をしておるということでございます。
  261. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 大量に取引するとコストが安くなるということは、確かにあると思います。しかし問題は、その理由によって価格の差がついているのではありません。ここで問題にされているのは、大蔵省の調査でも明らかなように、リベートの存在によって大きな価格差がついている、それが中小の酒屋さんを痛めつけているという問題なんです。  そこにどうメスを入れるかというのが最大の問題でありまして、昨年十二月九日に開催された酒販組合中央会臨時総会で、この記録がありますけれども、次のようなやりとりがあったわけです。  問いとして、ビールの販売についてだけれども、ディスカウントストア等は、我々の仕入れ価格を下回る価格で販売しており、ビール四社の差別的な取り扱いがなければできないものだ、こう質問がありました。  それに対する答え、公正取引委員会は安く販売することへの取り締まりが緩いようだ、こう答えまして、大手コンビニエンスストアのビールの安売りについては、ビール四社、国税庁、公取委に対し、大手コンビニエンスストアによるビールの大幅値下げに関する要望書を提出した。その後、ビール四社を訪問したが、明確な回答は得られなかった。缶ビールの価格体系については、ビール四社、国税庁に対し要望していく。販売時の出口論ではなく、仕入れ時の入り口論を議論しており、来年四月からはメーカーを含めて議論したい。これからは裁判も辞さない態度で考えることが必要だ。こういうふうに酒販組合の中央会の幹部の方は答弁をされているわけです。  そこで、公正取引委員会にお聞きしたい。  リベート問題というのは大変大きな問題であります。メーカーや卸売が特定の量販店に対して合理的な理由がない多額のリベートを支払う、こうなると、酒屋さんに流れるルートとの間で大きな格差が生じることは明らかであります。結果として、酒屋さんの仕入れ値よりもディスカウントストアの販売価格が安い、こういう事態も生まれるわけです。末端の小売店は、ここに問題があるんだ、差別的な不当なリベートが問題だ、こういうふうに言っているわけです。しかし、末端の場合には、これはなかなか実態がつかめないのです。  この問題は、公取に対してもいろいろと要望が出たり、声も聞いたりしていると思いますけれども、この点について、公正取引委員会自身が乗り出して調べてみなければ実態がわからないと思うのですが、直ちにこれは調査すべきだと思います。いかがでしょうか。
  262. 根來泰周

    根來政府特別補佐人 一般論を申し上げますと、リベートとか販売奨励金というものは、その取引額によって左右されるものであるということでございます。その限度におきましては問題にならないわけでございますが、御指摘のように、不当にとか、やたらにとかいう言葉が上にかぶりましてリベートとか販売奨励金が交付されるということになりますと、やはり独禁法違反になりますし、またそれが不当廉売につながるということになりますと、私どもも黙視するわけにはまいらぬわけでございます。  そういう御意見が一方にございますから、私どももそういう意見を正面から受けとめまして、その判断する前提として、調査が必要とあれば十分調査をするつもりでございます。
  263. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 必要とあれば。今必要ではないのですか。
  264. 根來泰周

    根來政府特別補佐人 先ほど担当者が申しましたように、まず不服申し立てがいろいろあるわけでございまして、御承知のように、先ほど申しましたけれども、年間三百件ぐらいあるわけでございます。そういう点も処理しながらかつ調査をするわけでございますので、必要とあらばというのは、そういういろいろの現象を踏まえまして、判断する必要があれば十分調査する、こういうことでございます。
  265. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 まさに今判断して実態を調査するということが必要だと思います。公取の担当者のお話を聞きますと、もう既に調査を始めているというような発言もございました。これはしっかりと最後まで追及をしていただきたい。その決意を述べていただきたい。
  266. 根來泰周

    根來政府特別補佐人 この酒類に限らず、ガソリンの問題もございますし、そういう問題はすべて決意を持ってやっておるわけでございますので、ひとつ御了解願いたいと思います。
  267. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 しっかりやっていただきたい。  次に、未成年の飲酒問題についてお聞きをしたいと思います。  お酒は百薬の長と言われまして、多くの方々に親しまれてきたわけですけれども、同時に、先ほど大蔵大臣の御答弁にもありました致酔性を持っている特別な飲料でございます。したがって、他の飲み物とは区別して扱わなければならないと思います。飲み方によっては、さまざまな社会問題が引き起こされるわけであります。アルコール精神病やアルコール依存症で入院、通院する患者は二万人、アルコール性の慢性肝硬変の患者が三万人とも言われております。  特に、未成年の飲酒は大変問題でございまして、我が国には未成年者飲酒禁止法、こういう法律もあります。ところが、この問題での全国調査はほとんど行われておりません。その意味で、厚生省が一九九六年度に行った未成年者の飲酒行動に関する全国調査、これでありますけれども、この調査は大変貴重なものだというふうに私も思っております。それによりますと、週一回以上飲酒する者の割合、中学一年では、男子が四・四%、女子三・一%、高校三年になりますと、男子一六・八%、女子七%に上っております。  問題は、一体これはどこからこのお酒を入手するかという問題であります。  厚生省にお聞きしたいんですけれども、未成年者が家庭以外でお酒を手に入れる方法で一番多いのは何でしょうか。
  268. 篠崎英夫

    篠崎政府参考人 今先生御指摘の件は、平成八年度の厚生科学研究事業におきまして実施されました調査でございますが、その報告によりますと、これは複数回答が許されておりますけれども、家庭以外で一番多いのがコンビニの件数でございまして、九千六百九十一人の回答人数のうちの、これは複数回答、今申し上げましたように、六千八十七ということでございますので、六一・五%ということでございます。
  269. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 コンビニが一番多いということですね。高校三年では、先ほど言われたように、六割強がコンビニでお酒を買っている。これは大変大きな問題であります。  国税庁にお聞きをしたい。酒屋さんが加盟している酒販組合では、未成年の飲酒につながる酒の自動販売機を廃止するために大変な努力をされているというふうにお聞きしましたが、どのように進められていますか。
  270. 村木利雄

    村木政府参考人 御指摘のように、業界でも、未成年者の飲酒防止の観点から自販機問題に取り組んでおりまして、全国の小売酒販組合中央会におきましては、平成七年五月、今から五年前になりますが、この時期に、平成十二年五月を目途とします現行の酒類自販機の撤廃決議を自主的に行っております。また、国税庁としましても、こういった決議を受けまして、平成七年七月に通達を出しまして指導を行ってきているところであります。この結果、現行の酒類自販機の台数につきましては徐々に減少傾向にありまして、国税庁としては、引き続き指導に努めてまいりたい、このように考えております。
  271. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ことしの五月で撤廃をするという決議が、酒販組合では努力をして決議をし、撤廃の方向でやっているそうであります。酒屋さんの場合は、個人店、個人の酒屋さんの場合には、深夜営業はもちろんやっておりません。今言ったように、お酒の自動販売機も廃止する、こういう努力をしているわけです。未成年への販売規制を熱心にやっております。しかも、コストはだれが負担しているのか。すべて自己負担でやっている。これに対する補助金もない。そういう中で酒屋さんは努力をされているわけです。  ところが、未成年が入手する経路で一番多いコンビニは二十四時間営業で、いつでもお酒が買える。しかも、未成年の者がアルバイトに携わり、未成年が未成年に売っているという事例まであります。中央酒類審議会が平成六年十月に出した報告、ここにありますが、「アルコール飲料としての酒類の販売等の在り方について」、この中でこういう書き方がなされております。「一部のコンビニエンス・ストアにおいては、酒類の特性に関する理解が乏しい未成年者アルバイト等が未成年者に酒類を販売している事例がある」、こういうふうに書いているわけであります。酒販組合加盟の酒屋さんと違いまして、明らかにコンビニを通じて未成年への販売が野放しになっている。  昨年十一月一日付の酒販ニュース、業界紙でありますけれども、この酒販ニュースによりますと、大型店や主要なコンビニエンスストアの酒販免許店の比率、コンビニの店数のうち何店が酒販免許を受けているか、その比率が載っております。それによりますと、サンクスが最高で七三・四%、セブンイレブンが六〇・六%、ローソンが四四%などとなっております。これでは、未成年がどこでも容易にお酒を入手できることになるわけです。こんな野放しなのは日本ぐらいなものでございます。  例えばアメリカでは、酒の販売に際しては身分証明書の提示を求めるなど、未成年への販売は厳格に規制されております。平成六年のこの中央酒類審議会の報告によりますと、「フランスのエヴァン法の制定やアメリカの法定飲酒年齢の引き上げにみられるように世界的には酒類に関する規制を強化する傾向にある。」こういうふうに指摘されております。  ところが、日本は逆行しているというふうに言わざるを得ません。未成年への酒の販売を野放しにするのではなくて、適切な社会的管理のもとに置くのは当たり前だと思いますけれども、国税庁はこの点についてどのように対処していますか。
  272. 村木利雄

    村木政府参考人 御説明申し上げます。  国税庁におきましては、致酔性、依存性を有する酒類の特性にかんがみまして、よりよい飲酒環境を形成しまして消費者利益と酒類産業の健全な発展を期する観点から、先ほど申し上げましたように、現行の自販機の撤廃等につきまして酒類販売業者に指導するとともに、従来から、酒類業界に対しまして未成年者飲酒防止に配意した販売や広告宣伝を行うよう要請するなど、いろいろな措置を講じてきたところでございます。  また、平成十年四月には、年齢確認の徹底あるいは販売責任者の設置など、酒類販売におきます未成年者飲酒防止のための具体的な取り組みを関係団体に要請するとともに、国税庁、局、所を挙げましてこれらの取り組みの実施につきまして酒類小売業者を指導してきております。未成年者への酒類の販売の防止につきましては、今後とも、事業者において適切な対応がなされるよう積極的に指導してまいりたいと思います。  また、コンビニにつきましては、一昨年秋に出しました通達の実施状況をフォローアップいたしまして、問題点をピックアップした後、さらに個別に、特に深夜販売を行っておりますコンビニ、スーパー等につきましては、税務署等に集合資料という形で集めまして、指導の徹底を図っているところでございまして、より一層こういったことに努めてまいりたいと思っております。
  273. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今幾つかの対応策を述べられましたけれども、そういうことをやっても、実際にはなかなかこれは規制がかかっていかないんです。規制緩和を一方ではどんどん進めて、コンビニに免許をどんどんふやしている。この間、ずっとコンビニの免許取得件数、比率は上がっております。そういうことを一方でやりながら多少の手だてを打っても、これはもうほとんど効果がない、これが実態であります。規制緩和が進めば進むほど、こういう未成年者への飲酒の面でも重大な後退を招いていると言わざるを得ません。  そこで、酒販制度の規制緩和というのは一体だれの要求で進められるようになったのか、これが問題だと思うんです。財界の要求としてはこれは根強くあったと思いますけれども、同時に、外圧として、出発点は九〇年の日米構造協議だったというふうに私は思います。  一九九〇年六月の日米構造協議の最終報告、ここにありますが、ここでは、「とくに、輸入酒類の販売比率が高いと見られる大型小売店舗の免許については、中間報告を踏まえて前倒しすることとし、一九九三年秋までに全て免許を付与する。」こういうふうに述べられておりまして、大型店でどんどん酒が販売できるという状況がつくられていった。  NHKがまとめた「日米構造協議議事録の記録」という本があります。ここにそのコピーがございます。これによりますと、日本側がこういうふうに言っているんですね。「大型店の酒類の販売は小規模小売店にとって大きな脅威となるもので、こうした事態に対応する時間が小規模店に必要なのです」という説明をしております。つまり、大型店でお酒が売られると小規模店舗が危機に陥るという認識をしている。それでもなお受け入れるという姿勢なんですね。これはまことに及び腰の対応だと言わざるを得ません。  当のアメリカでは実際にどんな規制が行われているか。一橋大学の中里実教授の研究によりますと、アメリカでは、酒類の規制は州の固有の権限であり、三十四の州で免許方式を採用し、十六の州で専売方式を採用している。そしてこう書いているんですね、「アメリカにおける酒類販売に関する規制が日本よりもかなり厳しい」と。  外務大臣にここでお聞きをしたいわけであります。アメリカは、国内では厳しい規制を現に行っております。それでいながら、日本に対して大幅な緩和を要求し、実行させているんです。では、そのアメリカはヨーロッパに対して酒販制度の緩和を要求した事実はありますか。
  274. 河野洋平

    ○河野国務大臣 アメリカがヨーロッパに対して酒類販売の規制緩和を申し入れたという事実は、承知しておりません。  一方、ヨーロッパがいかなる規制をやっていたか。これは、ヨーロッパは必ずしも一つではないというふうにも思います。
  275. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 アメリカはヨーロッパに対して要求していないわけです。外務省に私どもも確かめました。  アメリカは、酒販の自由化について、日本には要求するけれどもヨーロッパには一度も要求したことがない。それなのに日本にだけ要求するというのは、極めて不当だと私は思うのですよ。それを受け入れるというのは屈辱的だと思うのです。国際水準に合わせるというなら、アメリカの不当な要求を拒否して、国内の中小零細酒販業者を守るべきだと私は思います。それを唯々諾々と受け入れる、これは、国際的な流れにも逆行する姿勢だと言わざるを得ません。  大蔵省が平成七年三月に出した「内外からの規制緩和要望等に対する検討状況」、こういう中間公表されたものがございます。この平成八年の部分について見ますと、いろいろな要望が各方面から出されていることが書かれております。見直しを要望している。これは大企業もそうであります。経団連なども上がっております。同時に、米国政府というのが書かれていますね。  それに対して、緩和反対であるというのは、酒類業中央団体連絡協議会、全国小売酒販組合中央会、日本ワイナリー協会、日本洋酒輸入協会、アルコール問題全国市民協会、これは規制緩和に反対だと言っている。さらに、規制を強化してもらいたい、こういう要望を出しているのは、全国卸売酒販組合中央会、アルコール問題全国市民協会、消費科学連合会、こういうところがもっと規制を強化してもらいたいと言っているわけであります。  大蔵大臣にお聞きしますけれども、この緩和反対あるいは規制強化、これを求める団体の意見がこのように出ておりますが、これは、どんなにこういう意見が出てもそれは聞きおくだけである、そういう姿勢なんでしょうか。
  276. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 長い年月にわたっていろいろ複雑な事情がございますけれども、日米のいわゆる自由化交渉の中で、酒ももとよりその一つのアイテムになりました、たばこなんかもそうであったわけでございますけれども。それは、アメリカ産の酒を日本産の酒と平等に扱ってくれ、そういう要求でございますから、その限りにおいて、日本の酒がいいのならアメリカの酒もいいということは、これは自由化の、平等の主張として通ることである。ただ、そのために大型販売店を開いてアメリカの酒をたくさん売るようにという部分は、私はどうもそういうことが公の交渉になったとは思いません。その点はそう思いませんが、ただ、アメリカの酒に自由なアクセスを与えるということは、これはございました。  そこで、今アメリカの例をおっしゃいましたが、やはりその国、ヨーロッパも今外務大臣言われましたようにそうでございますが、その国、その国に伝統がありまして、アメリカのようにかつては禁酒国であったり、あるいはヨーロッパも含めまして、日曜日教会に行く日はどうとか、選挙の日はどうとか、各地域によっていろいろな規制がございますのは、やはり彼らの気持ちの中に、酒に対して時によっては厳しくなければならないという伝統がどこかあるんだろうと思います。それに比べますと、我が国は酒に対しては概して寛大でございますので、したがって、それについて、そっちの面からくる規制というものは我が国は非常にやりにくいというか、少ないのだと思います。  でございますから、私、結局何を申し上げようとしているかといいますと、酒に伴う社会悪みたいなものをできるだけ小さくするためにどうしたらいいかということになりますので、そのために法律が要るのか。また、そうなりますと、それはそれで問題があるのかもしれませんが、コンビニに子供が買いに来たときに、お使いだと言っても、さあどうかなというぐらいのことはなきゃいけませんし、そういう行政の取り締まりがしっかりしなきゃならないことはまず確かでございます。  もう一つは、国税庁というものは長いこと日本の酒類業の行政をいたしておりますから、そういう意味で酒類業に対する一つのポリシーがございます。逆にしかし、今度は社会悪の方が問題になっているわけですから、国税庁の行政というものがその社会悪の防止にもっとウエートを置かなきゃいけない、こういうことではないかと思います。
  277. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 その国、その国の伝統があるとおっしゃいました。日本には日本の伝統があります。日本のやり方があります。アメリカ、財界、スーパーなどの言い分を聞いて、国内の中小の酒販業界、消費者団体の声も無視するということになりますと、これは極めて重大でありまして、一方の意見は入れるけれども、一方はもうどうでもいいということになってしまうのですね。これはやはり私は大変重大な問題だと思います。もうこれ以上規制緩和をするのはやめてほしいというのが酒屋さん、酒販組合の強い要望であります。  全国小売酒販組合中央会は、昨年の十月、これはコピーですけれども、読売新聞意見広告を出したのですね。「だれでも、どこでも、いつでも、お酒が買える——それは本当に良いことですか?」「管理をせず野放しにすると危険です。」こう書かれております。これに対して、全国からたくさんの意見が寄せられたと言われておりまして、約千通の意見が寄せられた。規制緩和反対七七%、賛成九%、どちらでもないが一四%であったそうであります。  昨年三月に決まりました規制緩和推進三カ年計画では、酒類小売免許に係る需給調整規制について、人口基準については平成十年九月から緩和して、十五年に廃止するとされている。距離基準についてはことしの九月一日をもって廃止するとされております。私は、これ以上の規制緩和はやるべきではない、この計画は中止すべきだというふうに思います。  自民党の中にも、規制緩和を見直す会、こういうものがつくられているそうであります。メンバーは約百五十人ということで、びっくりいたしましたが、現職閣僚であります河野外務大臣、玉沢農水大臣、中曽根文部大臣も入っております。  河野外務大臣にお聞きをしますけれども、あなたはこの政府の酒類の規制緩和計画をどうするおつもりでしょうか。規制緩和計画はもう絶対に動かさない、こういう姿勢なのか、それとも再検討をすべきだと考えているのか、どちらでしょうか。
  278. 河野洋平

    ○河野国務大臣 規制緩和とか構造改善というのは、一つの時代の要求というものがあるというふうに私どもも承知をしております。しかし、すべての規制緩和がそのまま一〇〇%、社会を支え、日本のよき伝統をそのまま支えることがいいかどうかという問題提起があれば、それは見直すべきところは見直すということも、また時に必要であろうというふうに私は考えております。  今議員がお話しになりました、規制緩和をおまえは見直すつもりかどうかというふうに言われますと、私は、一般論からいって規制緩和は進めなければならない、しかし、その規制緩和の中にも今申し上げたような問題点は含まれているのではないか、そういう認識を持っているわけでございます。
  279. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 この酒の規制緩和については見直す、そういう対象となるというふうにお考えでしょうか。
  280. 河野洋平

    ○河野国務大臣 まだ個々具体の問題について私がすべてを承知しているわけではございませんので、御担当の方々の御判断というものをよく聞かなければ、にわかにここで御返事はできません。
  281. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 宮澤大蔵大臣にお聞きしますけれども、あなたの場合は規制緩和の見直しについてはどのようにお考えでしょうか。
  282. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 佐々木委員の御質問は、いつもは大体お答えするのに易しいんですが、きょうのは非常に実は難しいんです。  基本的には、ここまで私も規制緩和を、やむを得ないな、やむを得ないと思いつつ進めてきたというのが実は正直なところなんでございます。そうして、やはり消費者の立場からいえば、何でも致酔飲料だからとか税金が入っているとかいうことで押し切れるわけでもあるまい。  しかし、おっしゃるように社会悪の問題が確かにかなり大きく出てきていて、酒屋さんは良心的にそれを何とか対処しようとしているのに、そうでないところは、酒というものに対してそれほど責任を持っていない、そういう人たちが売っているという問題がありますから、やはりそこはそこで、行政がしっかりしなきゃいかぬのじゃないかと思っております。
  283. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 行政はしっかりしていただきたいというふうに要望をしておきたいと思います。  私は、日本の将来のために、圧倒的多数の中小企業が安心して営業ができる、そういう政治が必要だと思います。青少年に明るい未来を保障できるような政治、これが今求められているというふうに思うのです。政府の規制緩和計画の根本的な再検討を求めたいと思います。  次に、時間がなくなってまいりましたが、タクシーの規制緩和の問題について一言お聞きをしたいと思います。  この分野でも規制緩和が重大な問題を引き起こしておりまして、運輸大臣にお聞きしたいのですが、タクシーというのは公共交通機関として重要な役割を果たしております。タクシーの最大の使命は、言うまでもなく、人命を安全に目的地まで輸送するということであります。安全輸送、これが最大の使命だと思います。この安全輸送という使命を果たす上で、需給調整が大きな役割を果たしてまいりました。タクシーの供給と需要がバランスよく保たれてこそ、タクシー会社の経営が安定する、良質な労働力の確保もできる、こういう関係にあると思います。  そこで、運輸大臣にお聞きをしますけれども、この間、タクシーの乗客はどの程度減っておって、タクシーの台数がどの程度ふえているか、この点を踏まえて今後どうするつもりか、お聞きをしたいと思います。
  284. 二階俊博

    ○二階国務大臣 お答えいたします。  一般的には、事業の活性化のためには、事業への参入や事業規模の拡大等を、経営判断によってこれを決定することにより、よりよい意味での競争が行われることが基本であると考えております。  平成九年以降の需給調整規制の弾力化措置は、このような考え方に立ち、平成九年三月の政府の規制緩和推進計画に基づいて、タクシーについても、現行制度のもとにおいてできるだけ競争を促進し、事業の活性化を図る観点から、新規参入及び増車の枠を事業者に示したものであります。この増車の枠の中で、事業者はそれぞれの経営の判断によって増車等を行ったところでありますが、その後、景気の低迷が続く中で、輸送需要が低迷し、今日の厳しい経営状況や歩合制賃金体制のもとで、運転者の皆さんの収入の低下等があらわれているものというふうに考えております。
  285. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 いわば、タクシーの業界は供給過剰状態であります。タクシーの乗客は、十年前と比べまして二四%マイナスであります。その中で、今言われたように、タクシーの台数は、新規事業者、既存事業者にこの間ふやしてきた。そのために、一層供給が過剰となり、慢性的な供給過剰状況をつくっております。そのために、大臣のお答えにありましたように、運転手の労働条件が一層悪化している。九一年に三百八十二万円だった平均年収は、九八年に三百二十七万円に激減しております。まさに極限状態という状態でありまして、ハイヤー、タクシー産業の廃業、倒産は大変な数に上っており、急増しております。  運輸大臣にもう一度お伺いしたいわけですが、規制緩和によってこのような深刻な事態が拍車をかけられようとしておるわけでありますが、外国では、需給調整を廃止したために、例えばアメリカのアトランタ、シアトル、スウェーデンのストックホルム、こういうところでは、規制緩和によって逆に長時間労働による過労運転あるいは乱暴運転で事故がふえて、遠回り、乗車拒否、不当料金請求、こういうことが横行したということが言われております。  その後、アトランタでは、規制を撤廃したけれどもそういう事態になったので、利用者から苦情が寄せられ、八一年に再規制に復帰をした。シアトルやストックホルムでも、規制撤廃の失敗から再規制、運転者資格の強化、こういうものに乗り出しております。  運輸大臣にお聞きしますけれども、規制緩和一辺倒というのが大変危険だというのは、国際的な経験からも明らかであります。再規制に乗り出したところもある。この外国の教訓に学ぶべきだと思いますけれども、その点のお考えはありますか。
  286. 島村宜伸

    島村委員長 二階運輸大臣。簡潔に願います。
  287. 二階俊博

    ○二階国務大臣 御承知のように、タクシーは年間二十五億人もの旅客を輸送しておるわけでありますから、極めて重要な公共交通機関だという認識を持っております。  したがいまして、今御指摘のようなことに今後我々も十分配慮してまいらなくてはならないことでありますが、同時に、タクシーが足りなくて乗車拒否等が横行し、最寄りの駅までは電車で行ったが、そこからタクシーを待つ行列が深夜ずっと続いておるというような状態が続いた日のことも、先生も御承知であろうと思いますし、私もそういう経験を持っておるわけであります。  そういう状況から、最近のタクシーが、例えば東京駅を見ましても、東京駅全体を空車が一回り取り囲んでおるというふうな状況を見るにつけまして、今御指摘のようなことも十分理解できるわけであります。  今後、高齢化社会の中で、例えば車いすのままで乗車できるリフトつきの車であるとか、あるいはまた福祉タクシーとか、さまざまなタクシーに対する利用が拡大しているところでありますが、そうした面につきましても、十分これから競争の中で、サービス、また新しい分野を開拓していく等の御努力が業界の中でもなされておるわけであります。バリアフリーの法律等も今提出をさせていただいたところでございますが、タクシーがそういう新しい面での公共交通機関として大きな役割を果たしていただけるように、我々も一層努力をしてまいりたいと思っております。
  288. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。
  289. 島村宜伸

    島村委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  290. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 社会民主党・市民連合の濱田健一でございます。  本日は、国会の仕組みが変わったというか、予算委員会が開かれながら並行してほかの委員会も開催をされていくという状況の中で、幾つかの委員会に関連する課題を、たくさんの大臣に来ていただきまして、わずかな時間でございますけれども、基本的なところを質問させていただきたいと思っているところでございます。  まず最初に、二十一世紀は環境の時代という言葉も使われているようでございますけれども、環境問題は、今、すべての世界、すべての国家で、地球規模で考えなければならない課題だ、重要なテーマであるというふうに位置づけることができると思います。  先般マスコミをにぎわせまして、日本全国が唖然としたわけでございますけれども日本の産業廃棄物処理業者が医療産業廃棄物をフィリピンに不法に輸出をしていたという、日本及び日本国民にとってまことに不名誉な出来事が生じたというふうに思っているわけでございますけれども、当然、世界に対して恥ずかしい思いを政府もしておられるというふうに思いますし、こういう業者の存在は許すことはできないというふうに思うわけでございます。  顧みますと、小渕総理も言っておられるようでございますけれども、大量生産、大量消費、大量廃棄という現在の日本の社会経済システム、これが存在する限り、ごみ問題は解決しないということでございまして、今回のような問題は、よっぽどしっかりとした取り締まりといいますか、規制をしていくシステムをつくっていかなければ、ややもすると繰り返し起きていく事態ではないかというふうに私は思っております。  現在のシステムをどうすればいいのかと、産廃の問題については、本当に政府だけではなくて、各党頭を悩ませておりますし、各地域で不法投棄を含めた問題点が指摘をされ、争い事にもなっているわけでございますけれども、社会民主党は、この深刻なごみ問題に対応するためにも、生産から廃棄に至るあらゆる過程で発生する環境への影響について、生産者がすべての責任を負うという制度、すなわち生産システムに根本的変革を促すという法律を制定すべきだというふうに考えているわけでございます。非常にきつい言い方かもしれません。今や、製品をつくるだけつくって、後はどうなろうと知らないという資源の浪費型、生産第一主義の思想から脱却をすべきときに来ている、それが時代の要請でもあるというふうに思っているわけでございます。  ヨーロッパに目を向けてみますと、ドイツでは、この生産者責任、もう少ししっかりした言葉で言いますと、拡大生産者責任制度というもので、あらゆる工業製品にこの制度を適用することによって、二〇二〇年には最終処分場をゼロにするという目標を立てているようでございますけれども環境庁長官にお尋ねをしたいと思うのですが、我が国もこのドイツを見習ったらどうでしょうか。  政府も与党も循環社会法というようなものを御検討中だというふうにお聞きをしているわけでございますけれども、それはどういう中身で、どういう時期までに国会に出して、世間にも問うて、つくっていかれようとしているのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  291. 清水嘉与子

    ○清水国務大臣 先生御指摘のように、廃棄物の問題につきましては、大量に廃棄物が出ておりますにもかかわらず、発生抑制でありますとかリサイクルが十分でないために、最終処分場が逼迫しておりますとか、不法投棄の問題でありますとか、燃やせばダイオキシンの問題でありますとか、さまざまな問題を提起しております。  この問題を解決いたしますためには、今までのような資源のむだ遣いをよしとしているような経済社会をどうしても改めなきゃいけないという認識でございまして、御指摘のように、製造から流通、消費、廃棄に至るまで、その過程で物質の効率的な利用でありますとかリサイクルを進めまして、そして途切れのない物質循環の輪をつくらなきゃいけない、こんな認識を持っております。  この小渕内閣におきましても、平成十二年を循環型社会元年と位置づけまして、そして基本的な枠組みとしての法制定を図るという方針が示されているところでございまして、この方針に従いまして、ただいま政府の部内におきまして、廃棄物リサイクル対策についての施策の総合的、計画的な推進の基盤を確立するための基本的枠組みとなる法律を検討しているところでございます。  その内容でございますけれども、循環型社会の構築に関します基本理念、あるいは、国、地方公共団体、事業者、国民の責務の明確化、これには当然のことながら、先生御指摘のような拡大生産者責任の問題もありますし、排出者責任の問題もございますけれども、そういった責任を明確化すること、あるいは、基本計画の策定とそのフォローアップ、国が講じようとする施策、こういったものを明らかにすることを考えておりまして、成案を得まして、今国会にぜひ提出したいと考えております。  この法案は基本的枠組みとなる法案でございますので、このほかに、各関係省庁におきまして、廃棄物の処理の法案でありますとかあるいはリサイクル関係の法律、今検討しているものがございますものですから、そういったものと一体となって整備をいたしますことによりまして、循環型社会の構築に向けた取り組みを実効あるものにしたい、こんなふうに考えているところでございます。
  292. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 つまり、日本の高度経済成長から今日まで、先ほど申し上げました、大量にいろいろなものを生産し、それを大量に消費し、そしてそれを大量に廃棄していくというこの日本の経済の成長過程の中で、一時期はよかった姿かもしれないのですが、今起きているそういうひずみというものを、このつくられようとしている法律では、根本的に変えていこうという思想性が脈々と流れるものをつくっていかれるというふうに理解してよろしいでしょうか。
  293. 清水嘉与子

    ○清水国務大臣 そのような法律となるように頑張ってまいりたいと思っております。
  294. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 一九九五年にバーゼル条約の締約国会議で採択された決議がございます。これは、リサイクル目的のものを含めて有害廃棄物の輸出を全面禁止するという決議でございますけれども日本はまだこの決議を批准しておりません。不法な産業廃棄物の輸出という事態を引き起こした日本が、その責任を痛感していることを示すとともに、こうした不法な行為には毅然とした態度で臨むのだという姿勢を示すためにも、今こそこの決議の早急な批准をすべきときではないかというふうに思うのでございますけれども、有害廃棄物を担当される当然中心である環境庁長官と、決議に関するものでございますので外務大臣、お二人に御見解をお聞きしたいと思います。
  295. 清水嘉与子

    ○清水国務大臣 先生御指摘の一九九五年の第三回バーゼル条約締約国会議におきまして、OECD加盟国等の先進国からそれ以外の諸国への有害廃棄物の移動を輸入国の同意の有無にかかわらず禁止にするという改正が行われました。しかし、この改正が発効するためには六十二カ国の締結が必要でございますけれども、今締約国の中で引き続き国際的な議論が行われていることもございまして、これまで、二月一日現在でございますが、条約を締結した国は十七カ国、一機関、ECにとどまっておりまして、まだ発効のめどは立っておりません。  これは、先進国の中にどういう国が入るのかとか、あるいは資源の有効活用の点からいろいろ問題がございまして、まだそこまでいっていないわけでございますが、環境庁といたしましては、こうした国際的な議論の進展も勘案しつつ、その上で必要な取り組みを関係省庁とも連携しながら検討してまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。
  296. 河野洋平

    ○河野国務大臣 環境庁長官お答えのとおりでございます。  あえてつけ加えることもございませんが、目下のところ、国際的にもいろいろな議論がございまして、有害廃棄物の処理能力につき一定の基準を満たす国であれば附属書へ追加を認めるというような考え方一つの考えではないか。つまり、リサイクルで有効利用という意義を考えているわけでございますが、そうした考え方を含めまして、まだかなりの議論がなされている途中でございます。  しかし、先ほど議員お話しのとおり、我が国の立場としてここは相当積極的に考えるべきではないかという御指摘については、私もそうした考え方が今国内でだんだん高まってきているというふうに感じております。  しかし、現在のところ、今環境庁長官お話しのとおり、なかなかこれ、発効するまでに相当な時間がまだかかりそうだという状況もございまして、なお若干検討する時間があるというふうにも思っておりますので、しばらく研究を続けさせていただきたい、こう思っております。
  297. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 環境庁長官外務大臣も、検討を続け積極的にかかわっていきたいというお言葉ではあるんですが、一方の見方からすると、横にらみをまだ続けていくというような解釈もできるようでございます。  きょうはこれ以上やりませんけれども、先ほど申し上げましたような日本の状況の中で、先進国をぜひ引っ張っていくような気持ちで対応していただきたいというふうに思うところでございます。  次、WTOの農業交渉の件につきまして、農林水産大臣にお尋ねしたいと思います。  振り返ってみますと、昨年の十二月でございますけれども、シアトルで行われました第三回のWTOの閣僚会議、反ダンピング措置をめぐって各国の意見が対立したまま、それが解消できずに事実上決裂をしてしまったというふうに考えております。  農業分野については、前回のウルグアイ・ラウンドの合意に従って、ことしから再交渉がスタートをするということになっているわけでございますが、社会民主党は、これからのWTOの農業交渉、これはほかの政党もそうだというふうに思うのでございますけれども、農業と農村の多面的な機能を重視して自国の食糧は自国で生産をしていく、それを基本としました新たな農産物の貿易ルールをつくっていくということが基本ではないかというふうに思っているのですが、農林水産大臣の基本的な御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  298. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 昨年のシアトルのWTOの閣僚会議におきましては、アンチダンピングの問題ばかりではなく、農業問題もありましたし、あるいは市場アクセスの問題等もあったわけでございますが、いわゆる時間切れで、何らの結論も得られないままに閉会をしたわけでございます。  そういう中におきまして、全体の会合がまた開かれるように努力をしていくということが大事であると思いますけれども、農業交渉におきましては、農業協定の第二十条に従いまして本年から交渉を行うということになっておるわけでございますので、現在、加盟国間で交渉のあり方等について議論が行われておりまして、三月下旬に開催されるWTO農業委員会に合わせて、その特別会合として第一回目の協議が行われるということになっておるわけであります。  したがいまして、この交渉におきましては、各国の農業の特性を十分踏まえた議論が行われ、いずれの国にとっても公平で、かつ各国の農業が共存できる国際規律の確立を図ることが重要であると思います。  このため、農業の多面的機能や食糧安全保障の重要性への配慮、輸出国と輸入国の権利義務バランスの回復などが確保され、各国の多様な形態の農業が将来にわたって共存できるような農産物貿易ルールの確立を図るべく、強力な主張を行っていきたいと考えております。  この場合、我が国と立場を同じくする国々との連携を強化しつつ、農産物輸出国や途上国とも積極的に意見交換を行いまして、我が国考え方に対する国際的理解のさらなる浸透が必要であると考えております。
  299. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 大臣が今答えていただいたとおりに、少なくとも私たちは、二十一世紀がアジアの人口爆発の中で私たちが金を使って農産物を輸入できる時代ではなくなるという意味合いからして、農産物の自給率を高めていくということが非常に大事だということはみんなわかっているわけでございますけれども、そのための国内の、農業だけではない、林業も水産業も含めた活性化というものを進めていかなければならないというふうに思っているわけでございます。  今、強い決意で玉沢農林水産大臣から言っていただきました。各国との交渉に臨む態度といいますか、この辺がやはり共同歩調をとれないとなかなかこれも厳しい状況にあるのかと思うわけでございますけれども、アジア各国、ヨーロッパ、アメリカ、この辺との連携を含めた方向性といいますか方針、先ほどのお話の中で大体触れられていると思うのですが、大臣としてはその辺はどのようにお考えでしょうか。
  300. 玉沢徳一郎

    ○玉沢国務大臣 シアトル閣僚会議に臨むに当たりまして、我が国としましては、いわゆる多面的機能フレンズ国、こういうよしみを通ずる国々と相連携いたしまして、会議にもそう臨んだわけでございます。その国は、例えばEU、ノルウェー、スイス、韓国、また我が国であります。  グリーンルームという首脳国会議があるわけでありますが、その中におきましては、それぞれ各国が連携いたしまして、多面的機能の重要性について、それに対する配慮をすべき宣言案、そういうものの確立に向けて努力をしたところでありまして、今後ともこうした国々との連携を強めると同時に、今回は特に、百三十四カ国参加いたしまして、その四分の三が開発途上国である、それぞれの国々の思いがあるわけでございます。そういう意味で、この会議におきましては、宣言案に対して五十五カ国の国々が、いかなる形で宣言案が出されようとも反対をする、そういう決定が一方において行われました。  そういうことを見ますと、もっと会議の透明性というものを高めて、各国が同意できるようなものにしていかなきゃいかぬ、こう思うわけでございますので、会議の手続等も含めまして、今後、途上国の国々とも話し合いをしながら、この目的達成のために頑張っていかなければならぬ、このように考えております。
  301. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 頑張っていただきたいと思います。  普天間の名護移設問題についてお尋ねをしたいと思います。  普天間飛行場の代替施設の移設を名護市が引き受けることになりました。これは、既に去年の暮れ、そしてこの予算委員会の中でも、多くの委員がいろいろな形で触れておられます。  決定的にこれまでの沖縄問題と違うことは、これまでは、沖縄に基地がアメリカから要請されてずうっとこの間置いてあるということでございますけれども、今回は、その基地の整理、統合、縮小という日本の方向性の中で、基地を沖縄自身が自分たちの県の別な場所に移すということを決定された。引き受けるということでは、これまでの基地を引き受ける状況とは根本的に違っているということは、すべての国民の共通的な理解だというふうに思っているところでございます。  政府は、ことしの夏の九州・沖縄サミットを控えて、沖縄県内の移設の年内決着というものをバックアップしてこられたようでございますけれども、今私が申し上げましたとおりに、今回の決定は、これまでの移転先をめぐる沖縄の経緯と全く違うものでありまして、ある意味において、沖縄県民の思いを踏みにじった部分もあるというふうに思うわけでございます。  しかも、新しい基地がどのくらいの規模、どのような工法で行われるのかまだ何も明らかになっていない。検討委員会ですか、それがスタートをしたようでございますけれども。現地では既に反対運動も起きているようでございますし、私たちから見ると、この拙速な判断によっての沖縄の問題、新たな混乱と対立が持ち込まれたというふうに思うわけでございますが、こういう状況の中で、ことしの夏の九州・沖縄サミット、特に沖縄で行われる本サミットについて、外務大臣、成功するという確信がおありでございましょうか。御見解はいかがでしょうか。     〔委員長退席、町村委員長代理着席〕
  302. 河野洋平

    ○河野国務大臣 日本で開かれるサミットを沖縄でという小渕総理の決断の前には、沖縄県からの非常に強い誘致の意思表示があったことは御承知のとおりでございます。これは、沖縄の県知事を初めとして各自治体からも、沖縄でサミットをという非常に強い声がございました。これは、沖縄県のみならず、全国幾つかの都市で誘致のお話があったわけですけれども、その中から総理は、沖縄で開催をということを決断されたわけでございまして、小渕総理の決断の前には沖縄県の非常に強い誘致の声があったということもまた、ひとつぜひ、議員十分御承知とは思いますけれども、思い出していただきたいと思うのでございます。  他方、今議員がお話しになりましたように、普天間飛行場の移転につきましては、県内移転という、沖縄県民の皆様方からすれば大変苦渋の御判断であったに違いない。日本にございます米軍基地の四分の三を抱える沖縄県が県内移転という判断をなさるにつきましては、それはさまざまな思いがあったに違いない。しかし、その中で、普天間飛行場が、周辺が住宅地として、大勢の住民がその周辺に居を構えているというようなことから、安全あるいは騒音、そういった問題を考えて、普天間周辺からは一日も早く基地を、飛行場を移転してほしいという、これまた強い念願であったと思います。  そうした声を受けて、普天間の移転については、サミットがあるからとかサミットまでにということをおっしゃる方もありますけれども、私どもが承知をいたしておりますのは、かねてから普天間飛行場の移転という声があって、それは一日も早く普天間から飛行場を移転しようという声になっていたというふうに承知をいたしておりまして、これはことしの夏までに云々ということではなくて、これはもう一日も早くということが我々の気持ちであるわけでございます。  そうした二つの問題を抱えて、まず、とりあえず七月にはサミットが開催されるわけでございます。小渕総理は、所信表明演説の中にも、これは絶対に成功させなくてはならぬということを発言しておられるわけでございまして、私どもといたしましても、是が非でもまずサミットの成功ということを考えております。  しかし一方で、沖縄県民のお気持ちを考えれば、この基地問題も、ないがしろにするどころか、これこそ沖縄県民の非常に強い願いというふうに受けとめて、きちんとした手順を踏んで移転ができますように、これも全力を挙げたいと考えております。
  303. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 外務大臣が非常に丁寧に、大臣の御心情も含めて話をしてくださったことは大変ありがたいと思っているわけでございますが、それゆえに、今の沖縄の抱えている問題、苦渋の選択から始まった県民の皆さん方の思い、これが本当に七月のサミット成功に向けて一丸となる状況にあるのかということの、外務大臣自身の苦渋の思いがにじみ出ていたように私は感じたところでございました。  国土の〇・六%に、先ほど言われたように、七五%、四分の三ですか、基地が集中するというところでございます。沖縄の人たちとお話ししたときに、自分たちの県にある基地を、本土という言葉がいいのかどうかわかりませんが、ほかのところに持っていってほしいなんという、そういう形での解決はほとんどの方が望んでおられません。しかし、どうなんでしょう、外務大臣。閣僚の皆さん方の中で、おれたちのところで引き受けようじゃないかという話なんかは出ないのでしょうか。     〔町村委員長代理退席、委員長着席〕
  304. 河野洋平

    ○河野国務大臣 日本の国の安全、つまり安全保障の問題、防衛の問題というものは、どこでもいいというわけにはいかないわけでございます。  今回の普天間飛行場の移転ということになりますと、沖縄におります米軍、海兵隊に所属しているわけでございますが、海兵隊がその機能をできるだけ瞬時に、機能的に果たすということもまた移転先を選ぶ上で大事な条件になってくるわけでございまして、さまざまな条件があるということがこの問題を非常に、深く考えなければならない問題にしているということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  305. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 とにかく、整理縮小というのが沖縄の新しい時代を発展的に、沖縄県がといいますか日本の国がといいますか、生きていくために必要な取り組みであることは、今の与党、今の野党である私たちを問わず、共通する認識だというふうに私は思っているところでございます。  沖縄県知事と名護市長、新たな基地を移転した場合に、その使用期限を十五年とすることが移転の条件ですよというふうに強くおっしゃっておられます。既に、この委員会の中でも、そのことについて政府はどういうふうに担保するのかという話が出されているわけでございますけれども、新しい二千円札に守礼の門が描かれる。  きょうは、その守礼の門がどういうふうに使われてきたかという意味合いも午前中出されたようでございますけれども、やはり沖縄の皆さん方が、約束事をしっかり守るという意味合いでのこの守礼という言葉の使い方もお聞きするわけでございますが、では、政府として、沖縄県知事と名護市長が十五年という形での使用期限、条件ですよと言われたことに対して、現政府としてはそのことをきちんと担保される御努力を当然しておられるというふうに存じ上げております。  防衛庁長官外務大臣の双方の御意見、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  306. 河野洋平

    ○河野国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、沖縄県知事あるいは名護市長の御決断というものを非常に高く評価をし、敬意を表しているわけでございまして、こうした地元の知事、市長の御判断というものは重く受けとめるというのが内閣の姿勢でございます。  こうした地元の責任者の御判断を受けまして閣議決定というものをいたしまして、私ども防衛庁長官も私も、その閣議決定に基づいてこれから作業をするということにいたしているわけでございます。先ほど申し上げましたように、日本の国の安全、日本の国の安全保障という観点を最も重要に考えてこの問題の処理に当たりたい、こう考えております。
  307. 瓦力

    ○瓦国務大臣 濱田委員の御質問にお答えをいたしたいと思いますが、既に外務大臣からいろいろ御答弁もございましたから、多少重なる部分もございますが、お答えいたします。  多年にわたって、沖縄県民は確かに苦労が重なりました。何とかこの苦労を軽減したいということがSACOでございまして、このSACOを着実に進めてまいりたい、こう考えておるところでございます。  先般、私、訪米いたしました折に、今外務大臣からお話ししたとおり、閣議決定の線に沿いまして、アメリカでコーエン長官にもさようなことを申し上げさせていただきました。  国際情勢もあり、厳しい問題があるとの認識を有しておるわけでございますが、稲嶺沖縄県知事及び岸本名護市長から要請がなされたことを重く受けとめておりますこと、さらに、今後、国際情勢の変化に対応いたしまして、本代替施設を含めまして、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事情勢につきまして米国政府と協議していくことといたしておるわけでございますが、この点につきましては、先般の日米防衛首脳会談におきまして、コーエン長官より、日米安保共同宣言を念頭に置きつつ、日米両国政府は国際安全保障環境の変化に対応して、両国政府の必要性を最もよく満たすような防衛政策、並びに日本における米軍の兵力構成を含む軍事情勢について緊密に協議を続けるべき旨の発言もございました。  これらを通じまして、国際情勢が私どもといたしましても肯定的に変化していくよう努力をしてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  308. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 政府として、いろいろな形で思いを伝え、交渉といいますか、沖縄の思いを代弁される努力はしておられると私は信じます。  しかし、しかしといいますか、稲嶺沖縄知事と岸本名護市長には、お二人の言っておられる十五年使用期限は、現時点では担保はとれませんというふうにおっしゃっておられるのか、今瓦防衛庁長官おっしゃったような形で、今はとれないけれども将来に向けてはというような話ももう既にしておられるのか、その辺はいかがなんでしょうか。
  309. 河野洋平

    ○河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、現時点では、私どもとしては、閣議決定をお示しして、この閣議決定に従って作業をしますということを申し上げているわけでございまして、それ以上のやりとりにはまだなっておりません。
  310. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 閣議決定どおりにお話をさせていただいているということは、十五年というその沖縄、現地の県の代表者と移転先である市の代表者の思いというものについて、それは、それが閣議の決定ではないわけでございますから、違った形でしかお伝えいただいていないということになるのでしょうか。
  311. 河野洋平

    ○河野国務大臣 地元責任者の大変に厳しい状況の中での御判断は、内閣として重く受けとめます。これは重く受けとめます。  しかし、一方で、国際情勢を考え、日本の国の安全を考えるということもまた当然考えていかなければならないわけで、今そうした日米間のさまざまなレベルでの意思の疎通を図りながら進めていくという段階だというふうに御理解をいただきたいと思います。
  312. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 外務大臣の今の御答弁、米国との交渉そして地元の皆さん方の思い、そこの中で、非常に慎重な言葉の使い方と、苦渋にというか、本当に、国益をどう守るのかということと外国との関係、安保条約との関係を含めて非常に苦労なさっていることは理解をさせていただきたいというふうに思いますけれども、地元の皆さん方がそういう形で、私は移転するということについても問題点ありというふうに基本的に申し上げておきたいと思うんですが、十五年ということをベースにして決断をされたことに対して、言葉の使い方としてよくはございませんけれども、決してうそをつくことのないように対応していただきたいというふうに思うところでございます。  ほかの閣僚の皆さん、申しわけございません。準備をしたわけでございますけれども、本当に御丁寧な答弁をそれぞれの閣僚にしていただきましたので、全部済ますことができませんでした。次回に回させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  313. 島村宜伸

    島村委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十七日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会