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2000-05-11 第147回国会 衆議院 本会議 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年五月十一日(木曜日)     —————————————  議事日程 第二十八号   平成十二年五月十一日     午後零時三十分開議  第一 悪臭防止法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第二 国等による環境物品等調達推進等に関する法律案環境委員長提出)  第三 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 砂糖価格安定等に関する法律及び農畜産業振興事業団法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第六 就業が認められるための最低年齢に関する条約(第百三十八号)の締結について承認を求めるの件(参議院送付)  第七 社会保障に関する日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定締結について承認を求めるの件(参議院送付)  第八 商法等の一部を改正する法律案内閣提出)  第九 商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案内閣提出)  第十 社会福祉増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案内閣提出)  第十一 浄化槽法の一部を改正する法律案厚生委員長提出)  第十二 海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第十三 港湾運送事業法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第十四 郵便貯金法等の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  杉浦正健君の故議員福岡宗也君に対する追悼演説  日程第一 悪臭防止法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第二 国等による環境物品等調達推進等に関する法律案環境委員長提出)  日程第三 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 砂糖価格安定等に関する法律及び農畜産業振興事業団法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第六 就業が認められるための最低年齢に関する条約(第百三十八号)の締結について承認を求めるの件(参議院送付)  日程第七 社会保障に関する日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定締結について承認を求めるの件(参議院送付)  日程第八 商法等の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第九 商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案内閣提出)  日程第十 社会福祉増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案内閣提出)  日程第十一 浄化槽法の一部を改正する法律案厚生委員長提出)  日程第十二 海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第十三 港湾運送事業法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第十四 郵便貯金法等の一部を改正する法律案内閣提出)  少年法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後零時三十三分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御報告することがあります。  議員福岡宗也君は、去る四月十一日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  福岡宗也君に対する弔詞は、議長において去る四月二十八日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。     〔総員起立〕  衆議院は 議員正五位勲三等福岡宗也君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます     —————————————  故議員福岡宗也君に対する追悼演説
  4. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) この際、弔意を表するため、杉浦正健君から発言を求められております。これを許します。杉浦正健君。     〔杉浦正健登壇
  5. 杉浦正健

    杉浦正健君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員福岡宗也先生は、去る四月十一日、入院先名古屋記念病院において逝去されました。  先生は、本年一月二十日、今国会召集日に上京された後、体調を崩されて入院し、療養されておりました。  一時病状は持ち直されたと伺って、一日も早い御回復と議員活動の再開をお祈りしておりましたが、その願いもかなわず、御家族関係者の御尽瘁も天に通じず、ついに不帰の客となられました。まことに痛惜の念にたえません。  私は、ここにありし日の先生の面影をしのび、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)  福岡先生は、昭和七年十月、愛知名古屋市で呉服商を営まれていた父修一郎氏の長男としてお生まれになりました。  五人兄弟の長男として、御両親の期待と愛情に包まれて健やかに成長された先生は、愛知県では名門でございます県立一中に入学され、学制の改革に伴い、県立旭丘高校に進学され、昭和二十六年四月、明治大学法学部に入学されました。  この当時の我が国は、申すまでもなく、敗戦、それに続く新憲法の制定など大激動期にあり、先生は、こうした時代の若き法学生として、家業を継がれることなく、「人権擁護」、「社会正義実現」を目指して法曹への道を選ばれたのでございました。  先生は、昭和三十一年に司法試験に合格され、同三十四年四月に名古屋弁護士会に入会、登録され、以来四十一年余りにわたり弁護士活動を続けてこられました。  この間、昭和五十六年四月から翌五十七年三月まで、名古屋弁護士会会長日本弁護士連合会会長を務められたほか、平成二年四月には日弁連業務対策委員会委員長に就任するなど、日弁連各種委員会委員長を歴任され、我が国弁護士会中枢部分を担われたのであります。  先生は、礼記大学の「十目の見る所、十指の指さす所、其れ厳なるかな」との言葉を座右の銘としておられたとのことであります。このことは、先生の一生を通じて随所にあらわれております。現在、先生福岡法律事務所実務を学ばれた多くの弁護士、そして裁判官、検察官が、司法界の各分野で立派に活躍しておられるのもそうであります。  こうしたすぐれた法曹先生事務所から多数輩出されたということは、先生が、弁護士の職務である「人権擁護」と「社会正義実現」という理念を、個々の法律的紛争事件処理の中に反映され、実践されていたからにほかなりません。  先生事務所では、多くの民事、刑事労働等事件を手がけておられましたが、先生は、刑事事件については、軽微なものでも必ず御自身で担当されたということであります。  また、「民主主義を維持、発展させるためには、主権者である国民一人一人の人権が確実に保障されることが不可欠であり、これを守るのが司法、とりわけ弁護士の使命である」との強固な信念をお持ちで、企業やその他諸団体の法的問題の処理のほかに、「市民個人の身近な法律問題の解決」に特に力を尽くされました。  昭和四十年代からは全トヨタ労連の顧問に就任されましたが、自来、同組合員を対象とした「無料法律相談」を実施され、雇用問題を初め、組合員が直面するさまざまな法律問題について懇切丁寧に御指導に当たられました。その相談件数は、今日までの三十年間で実に一万一千件にも上ったとのことであり、労働者人権擁護福祉増進に果たされた御功績は、高く評価されているところであります。(拍手)  このように、法曹界ではいわば功成り名を遂げられた先生が、還暦を過ぎられた六十三歳で政治の道に入る決意をされたにつきましては、奥様の佐保子さんの、「やってみたら」という温かい御同意の御意見があったと、これは奥様から伺ったところでございます。  奥様は、かつて本院に一期三年三カ月在籍され、活躍されました故平田ヒデ先生のお嬢さんであられますが、御母堂平田先生と故春日一幸先生とがごじっこんの間柄であられた関係で、福岡先生には、そのお若いころから、しばしば春日先生などから政界入りのお話があったと伺いました。福岡先生は、その人生重要事項決定に際しましては、いつも奥様の御意見を求めておられたとのことでありますが、奥様は、事政界入りに関しましては、幼いころ御母堂選挙活動の苦労を身近に経験されたこともあって、絶対反対の姿勢を崩されず、福岡先生もその御意見を尊重されて、断り続けてこられたとのことでございます。  奥様は、今回の御同意されたについては、「主人が常々、法律実務には限界がある、立法が大切だと申しておりましたので」と申しておられますが、私も同じ法曹の一人として、先生のお気持ちは痛いほど理解できるわけであります。と同時に、お二人のお子さんたちが、それぞれ立派な学歴を得て成人され、長女の理恵子さんは一橋大学東京外語大学、埼玉大学外国人留学生に対する日本語講師として、長男の英明さんはゲームなどコンピューターソフト制作の会社を経営されるベンチャーとして活躍されているという事情も、後顧の憂いなく、残る人生政治の道にささげようという決意につながられたのではないかと拝察しております。  かくて先生は、平成八年十月に行われた第四十一回総選挙に、新進党の比例代表東海選挙区に、トヨタ労連初め広い支持母体からの御推挙により立候補されました。この選挙は大変に厳しい状況の中で戦われましたが、御家族支持団体の熱意あふれる御支援により、見事に初当選の栄誉に輝かれたのであります。(拍手)  平成八年十一月七日、初登院された先生は、「法律専門家の視点から市民本位政治実現を目指していきたい」と抱負を語られ、第一に「労働者権利の拡充」、第二に、「ガラス張り行政実現を図るため、完全なる行政情報公開制度実現行政監視制度整備」、第三に、「国民権利実現を図るため、法的救済に万全な司法実現を目指すこと」の三つの課題に全力で取り組んでいきたいとの決意を述べておられました。  先生は、衆議院に在職された三年七カ月の間、法務委員会労働委員会内閣委員会及び予算委員会等の各委員会において、真摯かつ精力的に御活躍になりました。  私は、法曹界の後輩として、かねがね先生の御高名は承知しておりましたが、直接の知己を得たのは本院においてであります。昨年の国会で成立を見た組織犯罪対策三法の政党間協議で、自民党の協議チームの一員として、民主党から協議チームに加わられました先生と相対したのが初めてでございます。その後、法務委員会において、委員長、今は理事としてでございますが、先生には御指導をいただいてまいりました。  先生は、常に豊かな学殖と御経験をもとにして、冷静で緻密な論議をされましたが、その論旨には、人権に対する配慮と法手続の厳格さと透明性を希求される精神が貫かれ、正論をひっ提げて一歩も引かぬ気概に満ちておられました。  先生は、法務委員会を初め各種委員会で、議員立法に、閣法の修正に縦横の御活躍をなさいました。しかし、その先生の情熱と誠実さ、責任感が少しずつお体をむしばむことになっていたかと思うとき、何とも言い知れぬ複雑な思いと寂しさを覚えるのでございます。先生は、この一月に病に倒れられて病床にあられても、常に国会情勢に気を配られておられたとお伺いしております。  今日、二十一世紀を目前に控えて、我が国政治経済システムは大変革期に差しかかっており、幾多の困難に直面しております。とりわけ、司法改革が待ったなしの課題として政治のテーブルにのり、司法制度改革審議会のもとで進もうとしていることは御案内のとおりであります。  このようなときに、法曹としての豊かな学殖経験を持たれ、誠実で正義感にあふれ、一般市民の生活と心情を肌で理解されていた先生のような有為の政治家を失いましたことは、地元の皆様はもとより、民主党にとっても、本院にとっても、国家国民にとっても大きな損失であり、惜しみてもなお余りあるものがあります。(拍手)  ここに、謹んで福岡宗也先生の生前の御功績をたたえ、そのお人となりをしのび、心から御冥福をお祈り申し上げまして、追悼言葉といたします。(拍手)      ————◇—————
  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一とともに、日程第二は、委員長提出の議案でありますから、委員会審査を省略し、両案を一括して議題とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。     —————————————  日程第一 悪臭防止法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第二 国等による環境物品等調達推進等に関する法律案環境委員長提出
  8. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一、悪臭防止法の一部を改正する法律案日程第二、国等による環境物品等調達推進等に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。  委員長報告及び趣旨弁明を求めます。環境委員長細川律夫君。     —————————————  悪臭防止法の一部を改正する法律案及び同報告書  国等による環境物品等調達推進等に関する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔細川律夫登壇
  9. 細川律夫

    細川律夫君 ただいま議題となりました両法律案のうち、まず、悪臭防止法の一部を改正する法律案につきまして、環境委員会における審査経過及び結果の御報告を申し上げます。  本案は、最近における悪臭問題の実態に的確に対処するため、市町村長は、事故により事業場から悪臭原因物が排出される場合に、応急措置を講ずべきことを命ずることができることとするとともに、臭気指数等測定業務従事者に関する制度整備を行うものであります。  本案は、参議院先議に係るもので、去る四月二十八日同院から送付されたものであります。  本案は、四月二十八日本委員会に付託され、清水環境庁長官から提案理由説明を聴取した後、去る五月九日に質疑を行い、規制地域外における事業活動等に伴う悪臭防止対策必要性悪臭が発生する物の野外焼却に対する実効ある措置必要性臭気指数測定体制の充実、快適なにおい環境づくり推進等について議論が交わされましたが、その詳細につきましては会議録を御参照いただきたいと思います。  こうして、同日質疑を終了いたしましたところ、日本共産党から、悪臭が生ずる物の野外焼却の禁止に関する措置内容とする修正案が提出され、採決の結果、修正案は否決され、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  次に、国等による環境物品等調達推進等に関する法律案につきまして、提案趣旨及び内容概要を御説明申し上げます。  御承知のように、今日、深刻化している廃棄物問題や地球温暖化問題など、その原因経済社会活動のさまざまな分野から発生する環境負荷の増大に由来する問題を解決するためには、経済社会あり方環境負荷の少ない姿に変革していく必要があります。  そこで、環境の保全に大きな責任を持ち、かつ、購入者としても大きな地位を占める国等公的部門が率先して、低公害車、低電力型のコピー機再生コピー用紙などの環境物品等調達を進め、これを呼び水として我が国全体の環境物品等への需要転換促進することは、持続可能な社会への変革を図る上で、また循環型社会の形成を推進するためにも極めて有効な施策であります。  しかしながら、政府平成七年の閣議決定により実施している率先実行計画による取り組みは、いろいろな制約からいま一つ十分な成果が上がっていない実情にあります。  これらの状況にかんがみ、国等公的部門による環境物品等調達推進するとともに、情報提供等を通じ環境物品等への需要転換促進することを目的として本法律案を提出した次第であります。  次に、本案内容概要を御説明申し上げます。  第一に、国会、裁判所、各省庁独立行政法人等の各機関は、国が定める基本方針に即して毎年度調達方針を作成し、具体的な環境物品等調達目標等に基づいて調達を行うとともに、その実績概要を公表することとしております。  さらに、環境大臣は、各省庁の長等に対し、調達推進上特に必要な措置を要請することができること、各機関は、環境物品等調達推進理由として物品等調達量の増加をもたらすことのないように配慮することとしております。  第二に、地方公共団体については、地域実情に応じて、毎年度環境物品等調達方針を作成し、それに基づき物品等調達を行うよう努めることとしております。  第三に、環境物品等に関する情報提供に関し、物品製造等事業者環境ラベル等情報提供を行う者に対し、物品等に係る環境負荷の把握に必要な情報等、適切な情報提供に努めるよう求めることとしております。  また、国は、環境物品等に関する情報提供状況を整理、分析し、その結果を提供するとともに、適切な情報提供体制あり方について検討することとしております。  この法律全面施行平成十三年四月一日からとし、その準備のための国の基本方針策定等施行は同年一月六日からとしております。  本案は、去る九日の環境委員会において、全会一致をもって委員会提出法律案とすることに決したものであります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第一につき採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第二につき採決いたします。  本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。      ————◇—————  日程第三 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 砂糖価格安定等に関する法律及び農畜産業振興事業団法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付
  13. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第三、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案日程第四、砂糖価格安定等に関する法律及び農畜産業振興事業団法の一部を改正する法律案日程第五、食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。農林水産委員長松岡利勝君。     —————————————  加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案及び同報告書  砂糖価格安定等に関する法律及び農畜産業振興事業団法の一部を改正する法律案及び同報告書  食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔松岡利勝登壇
  14. 松岡利勝

    松岡利勝君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、農林水産委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、需要の動向に応じた加工原料乳生産の確保を図るため、加工原料乳に係る生産者補給金制度について市場評価生産者手取りに的確に反映される仕組みに移行するとともに、生乳生産事情及び流通事情変化にかんがみ、都道府県の区域を超える生乳生産者団体の指定を農林水産大臣が行うこととする等の措置を講じようとするものであります。  委員会におきましては、四月二十六日玉沢農林水産大臣から提案理由説明を聴取し、五月九日政府に対する質疑を行いました。質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。  次に、砂糖価格安定等に関する法律及び農畜産業振興事業団法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、最近における砂糖をめぐる諸情勢変化にかんがみ、輸入に係る砂糖価格を安定させるための指標である安定上下限価格を廃止するとともに、国内産糖価格支持について、農畜産業振興事業団国内産糖について買い入れ及び売り戻しを行う方式交付金を交付する方式に改めるほか、農畜産業振興事業団に当分の間砂糖生産振興資金を置く等の措置を講じようとするものであります。  委員会におきましては、四月二十六日玉沢農林水産大臣から提案理由説明を聴取し、五月九日政府に対する質疑を行いました。質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。  次に、食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、最近における食品流通をめぐる諸情勢変化にかんがみ、食品流通部門構造改善促進を図るため、構造改善事業の範囲を拡大し、食品の原材料となる農林水産物生産からその食品製造または加工に至る一連の流通行程改善食品流通円滑化等に資する新技術の研究開発推進等を図る事業を追加するとともに、これらの事業を円滑に実施するため、農林漁業金融公庫からの資金貸し付け等支援を拡充する等の措置を講じようとするものであります。  本案は、去る四月十九日参議院から送付され、四月二十五日本委員会に付託されました。  委員会におきましては、四月二十六日玉沢農林水産大臣から提案理由説明を聴取し、昨五月十日政府に対する質疑を行いました。質疑終局後、採決いたしましたところ、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告を申し上げます。(拍手)     —————————————
  15. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第三及び第四の両案を一括して採決いたします。  両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  16. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第五につき採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第六 就業が認められるための最低年齢に関する条約(第百三十八号)の締結について承認を求めるの件(参議院送付)  日程第七 社会保障に関する日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定締結について承認を求めるの件(参議院送付
  18. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第六、就業が認められるための最低年齢に関する条約(第百三十八号)の締結について承認を求めるの件、日程第七、社会保障に関する日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。外務委員長井奥貞雄君。     —————————————  就業が認められるための最低年齢に関する条約(第百三十八号)の締結について承認を求めるの件及び同報告書  社会保障に関する日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定締結について承認を求めるの件及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔井奥貞雄君登壇
  19. 井奥貞雄

    ○井奥貞雄君 ただいま議題となりました両件につきまして、外務委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、就業最低年齢条約について申し上げます。  国際労働機関は、大正八年の第一回総会以降、昭和四十年の第四十九回総会までの間に、特定の経済部門において就業が認められるための最低年齢を定めた十の条約を採択しました。その後、すべての経済部門について就業最低年齢に係る一律の基準を適用する必要性が認められたことから、昭和四十八年の第五十八回総会において、これまでの関連条約を統合する一般的な条約として、本条約が採択されました。  本条約の主な内容は、加盟国は、自国の領域内及びその領域内で登録された輸送手段における就業が認められるための最低年齢を明示し、当該最低年齢は義務教育終了年齢及び十五歳を下回ってはならないこと、年少者の健康、安全または道徳を損なうおそれのある業務については、就業が認められるための最低年齢は十八歳を下回ってはならないこと等であります。  なお、我が国は、この条約の批准に際して付する宣言において、最低年齢を十五歳と明示する予定であります。  次に、英国との社会保障協定について申し上げます。  我が国政府は、平成十年十一月以来、英国政府との間で、両国間の人的交流に伴って発生する両国の公的年金制度への二重加入等の問題の解決を図ることを目的とする協定締結するための政府間交渉を行ってきました。その結果、協定案文について最終的合意に至ったので、平成十二年二月二十九日、東京において本協定の署名が行われました。  本協定の主な内容は、年金制度への強制加入に関しては、就労が行われる締約国の法令のみを適用することを原則としつつ、一時的に相手国に派遣される被用者の場合には、原則として、派遣の期間が五年を超えるものと見込まれないことを条件として、自国の法令のみを適用すること、また、両国で同一の期間に別個の就労を行う被用者等の場合には、通常居住する締約国の法令のみを適用すること等であります。  就業最低年齢条約は去る三月二十二日に、また英国との社会保障協定は四月の十四日に、それぞれ参議院より送付され、両件とも四月二十五日外務委員会に付託されたものであります。  外務委員会におきましては、翌二十六日河野外務大臣から提案理由説明を聴取し、五月十日質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、両件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告を申し上げます。(拍手)     —————————————
  20. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 両件を一括して採決いたします。  両件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。      ————◇—————  日程第八 商法等の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第九 商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案内閣提出
  22. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第八、商法等の一部を改正する法律案日程第九、商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。法務委員長武部勤君。     —————————————  商法等の一部を改正する法律案及び同報告書  商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔武部勤君登壇
  23. 武部勤

    ○武部勤君 ただいま議題となりました両法律案について、法務委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、商法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、会社が組織の再編成を行うことを容易にするため、会社がその営業の全部または一部を他の会社に承継させる会社分割の制度を創設しようとするものであります。  次に、商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案について申し上げます。  本案は、商法等の一部を改正する法律施行に伴い、民法ほか百四十九の関係法律について規定の整備をするとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。  商法等の一部を改正する法律案については、去る四月二十日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日両案は本委員会に付託されたものであります。  委員会においては、四月二十一日両案を議題とし、臼井法務大臣から提案理由説明を聴取した後、質疑に入りました。同月二十八日、商法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党民主党、公明党・改革クラブ、保守党及び自由党の共同提案による修正案が提出され、提出者から提案理由説明を聴取いたしました。原案及び修正案について参考人から意見聴取する等慎重に審査を行い、昨十日質疑を終了し、討論採決の結果、商法等の一部を改正する法律案賛成多数をもって修正議決すべきものと決し、商法等の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備に関する法律案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、商法等の一部を改正する法律案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  24. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 両案を一括して採決いたします。  日程第八の委員長報告修正日程第九の委員長報告は可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  25. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり議決いたしました。      ————◇—————
  26. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第十とともに、日程第十一は、委員長提出の議案でありますから、委員会審査を省略し、両案を一括して議題とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。     —————————————  日程第十 社会福祉増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案内閣提出)  日程第十一 浄化槽法の一部を改正する法律案厚生委員長提出
  28. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第十、社会福祉増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案日程第十一、浄化槽法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。  委員長報告及び趣旨弁明を求めます。厚生委員長江口一雄君。     —————————————  社会福祉増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案及び同報告書  浄化槽法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔江口一雄君登壇
  29. 江口一雄

    ○江口一雄君 ただいま議題となりました社会福祉増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案について、厚生委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げますとともに、浄化槽法の一部を改正する法律案について、提案趣旨及び内容を御説明申し上げます。  まず、社会福祉増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案について申し上げます。  社会福祉制度につきましては、少子高齢化、核家族化の進展等、社会構造の変化に対応して、だれもが家庭や地域の中で自立し、尊厳を持った生活を送ることができる制度の構築が求められております。本案は、こうした状況を踏まえ、措置制度等、社会福祉の仕組み全般にわたって見直しを行おうとするものであります。  その主な内容は、  第一に、利用者の立場に立った社会福祉制度の構築のため、身体障害者等の福祉サービスについて、行政が内容決定する制度から利用者が選択をして利用する制度へ改めるとともに、利用者に対し直接支援費を支給する方式を導入すること、また、利用者からの苦情を解決するための仕組みの導入等、利用者保護のための規定を設けること、  第二に、社会福祉事業の充実及び活性化を図るため、福祉需要の多様化に対応し、福祉サービス利用援助事業、手話通訳事業、盲導犬訓練施設を経営する事業等の九事業社会福祉事業として追加すること、また、社会福祉法人の設立を容易にするため、政令で定める社会福祉事業について人数規模要件を緩和すること、  第三に、福祉サービスの質の向上と事業経営の透明性を確保するため、社会福祉事業の経営者は福祉サービスの質の向上に努めなければならないこととするとともに、社会福祉法人の財務諸表等の開示義務、国、地方公共団体による福祉サービスに関する情報提供の責務等の規定を定めること、  第四に、地域福祉の推進を図るため、市町村地域福祉計画の策定手続を整備するとともに、社会福祉協議会、共同募金会、民生委員及び児童委員について機能の強化を図ることとするほか、社会福祉施設職員等退職手当共済制度を見直すとともに、関係法律について所要の規定の整備を行おうとするもの であります。  本案は、去る四月十四日本会議において趣旨説明が行われ、同日付託となり、同月二十一日丹羽厚生大臣から提案理由説明を聴取した後、質疑に入り、二十七日には参考人から意見を聴取し、昨日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、自由民主党、公明党・改革クラブ及び保守党の三派共同により、施行期日についての修正案が提出されました。討論の後、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも多数をもって可決され、本案修正議決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  以上、御報告申し上げます。  次に、浄化槽法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、多量の雑排水が処理されないまま放流されている現状にかんがみ、生活環境の保全及び公衆衛生の向上の観点から、今後設置される浄化槽はすべて合併処理浄化槽とし、合併処理浄化槽で処理した後でなければ雑排水の放流をしてはならないものとするために必要な措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、浄化槽の定義から、し尿のみを処理する浄化槽を除外すること。  第二に、何人も、し尿を処理して終末処理下水道以外に放流するための施設等として、浄化槽以外のものを設置してはならないものとすること。ただし、下水道の予定処理区域内については、この限りではないものとすること。  第三に、この法律は、平成十三年四月一日から施行すること。  なお、既存の単独処理浄化槽について所要の措置を設けるとともに、既存の単独処理浄化槽を使用する者は、合併処理浄化槽の設置等に努めなければならないものとすること。  本案は、昨日の厚生委員会において、全会一致をもって委員会提出法律案とすることに決したものであります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上であります。(拍手)     —————————————
  30. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第十につき採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  31. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり修正議決いたしました。  次に、日程第十一につき採決いたします。  本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。      ————◇—————  日程第十二 海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第十三 港湾運送事業法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付
  33. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第十二、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案日程第十三、港湾運送事業法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。運輸委員長仲村正治君。     —————————————  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書  港湾運送事業法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔仲村正治君登壇
  34. 仲村正治

    ○仲村正治君 ただいま議題となりました両法律案について、運輸委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約附属書IIの改正に伴い、有害液体汚染防止緊急措置手引書を船舶内に備え置き、または掲示することを義務づけるとともに、当該手引書について検査を行うこととする等所要の措置を講ずるものであります。  次に、港湾運送事業法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、コンテナ貨物の積みおろしの用に供する港湾のうち国民経済上特に重要な特定港湾における一般港湾運送事業等への参入に係る需給調整規制を廃止して事業への参入を容易にし、運賃及び料金の設定または変更について、認可制から事前届け出制に改めること等により特定港湾一般港湾運送事業者等による多様なサービスの提供促進するとともに、港湾運送に関する秩序の確立を図るため、免許または許可の欠格事由の拡充等所要の措置を講ずるものであります。  海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案は四月十二日に、また、港湾運送事業法の一部を改正する法律案は三月三十一日に、それぞれ参議院より送付され、いずれも四月十七日に本委員会に付託されました。  本委員会においては、四月十八日二階運輸大臣からそれぞれ提案理由説明を聴取し、昨五月十日質疑を行い、質疑終局後、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律の一部を改正する法律案は、採決の結果、全会一致をもって、また、港湾運送事業法の一部を改正する法律案は、討論を行い、採決の結果、賛成多数をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、港湾運送事業法の一部を改正する法律案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  35. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第十二につき採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第十三につき採決いたします。  本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  37. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第十四 郵便貯金法等の一部を改正する法律案内閣提出
  38. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第十四、郵便貯金法等の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。逓信委員長前田武志君。     —————————————  郵便貯金法等の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔前田武志君登壇
  39. 前田武志

    ○前田武志君 ただいま議題となりました郵便貯金法等の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、中央省庁改革基本法第三十三条第二項の規定に基づき、郵便貯金資金等を自主運用するために必要な措置を講じ、また、財政投融資制度改革に伴い、簡易生命保険特別会計の積立金の運用について所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、郵便貯金または郵便振替として受け入れた資金の全額を自主運用とするために必要な措置を講ずることとし、郵便貯金資金の設置及びその運用範囲、運用計画の策定等について定めるとともに、郵便振替資金の設置及びその運用範囲を定めるほか、簡易生命保険特別会計の積立金の運用範囲の見直しを行う等の措置を講ずることとしております。  本案は、去る三月十四日本院に提出され、二十四日本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日本委員会に付託されました。  委員会におきましては、四月十三日八代郵政大臣から提案理由説明を聴取し、昨五月十日質疑を行い、討論採決の結果、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  40. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  41. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  少年法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会内閣提出)の趣旨説明
  42. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) この際、第百四十五回国会内閣提出少年法等の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。法務大臣臼井日出男君。     〔国務大臣臼井日出男君登壇
  43. 臼井日出男

    ○国務大臣(臼井日出男君) 少年法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  少年審判において、的確に非行事実が認定され、事案が解明されることは、非行のある少年に適切な保護処分を施し、その健全な育成を図るという少年法本来の目的を実現する上で不可欠であり、一方、非行のない少年についてこれを誤って処分することがないようにし、かつ、その判断が国民に信頼をもって受け入れられるようにすることが、裁判制度あり方からも、また、その少年の利益のためにも肝要であります。  しかるに、近時、いわゆる山形マット死事件を初め、少年審判手続における事実認定が問題となる事件が相次いで生じたことなどから、少年審判における事実認定手続のあり方が問われるに至っております。また、犯罪の被害者に対する配慮を求める声が高まりを見せており、このような声に誠実にこたえることが関係各方面に求められているところであります。  また、家庭裁判所で取り扱う家事審判についても、近年、法律上及び事実上の争点が複雑多岐にわたるなど、解決困難な事件が増加しております。  そこで、この法律案は、このような状況を踏まえまして、少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図り、被害者に対する配慮を実現するための法整備を図るとともに、あわせて家事審判についても所要の法整備を行おうとするものであります。  この法律案の要点を申し上げます。  第一は、少年法の改正であり、次の点を主な内容としております。  その一は、少年審判における事実認定の手続に検察官が関与した審理を導入することとし、検察官が審判の手続に関与する場合において、少年に弁護士である付添人がいないときは、家庭裁判所が弁護士である付添人を付することであります。  その二は、一定の場合には、観護措置の期間の更新を、現行の一回を超えて、さらに四回を限度として最長十二週間まで行うことができることとし、あわせて、観護措置及びその更新の決定に対する不服申し立て制度整備することであります。  その三は、検察官に事実認定及び法令の適用に関する抗告権を付与することであります。  その四は、保護処分終了後において、審判に付すべき事由の存在が認められないにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見した場合の救済手続を整備することであります。  その五は、家庭裁判所が被害者等に対し少年審判の結果等を通知する制度を導入することであります。  第二は、裁判所法を改正して、家庭裁判所に地方裁判所と同様の裁定合議制度を導入することであります。  第三は、家事審判法を改正して、家事審判について、合議体で審理する場合の受命裁判官に関する規定を設けることであります。  その他所要の規定の整備を行うこととしております。  以上が、この法律案趣旨であります。(拍手)      ————◇—————  少年法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  44. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。笹川堯君。     〔笹川堯君登壇
  45. 笹川堯

    ○笹川堯君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました内閣提出少年法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。  近時、少年による凶悪重大事件の発生は後を絶たず、山形マット死事件、神戸の児童連続殺傷事件や五千万円恐喝事件愛知県における主婦殺害事件、九州のバスジャック事件など枚挙にいとまがありません。  特に、昨年四月、山口県光市で十八歳の男性が二十三歳の母親、弥生さんを殺害の上強姦し、生後十一カ月の娘さん、夕夏ちゃんを殺害するというまことに痛ましい事件が起きました。少年法改正に関心のある方は、被害者の夫である本村洋さんが書かれた「天国からのラブレター」という本をぜひ読んでください。  これらの事件は、本当に少年によって起こされたものかと耳を疑いたくなるような重大事件であります。国民に対して深い衝撃を与えました。もはや無策のままいることは到底許されるものではなく、早急に適切な対策をとるべき必要があることは当然であります。  そこで、少年審判のあり方について、以下の点について質問をいたします。  一、まず、裁定合議制度の導入について、法務大臣の所見を伺います。  二、次に、本法律案は、一定の事件につき、検察官及び弁護人たる付添人が関与した審判制度を導入していますが、この点について、法務大臣の所見をお伺いいたします。  第三に、観護措置期間の延長についてでありますが、本法律案は最長十二週間としているところ、現行少年法では最長でも四週間の身柄拘束しかできず、これを超える場合には少年を釈放しなければなりません。一たび釈放してしまえば、罪証隠滅行為に及ぶ危険性もあると考えますが、この点について、法務大臣のお考えをお尋ねします。  四、また、本法律案は検察官に抗告権を付与いたしております。現行少年法では少年側にのみ抗告権が認められておりますが、これは少年事件の被害者にとって到底納得できないと思われますが、法務大臣はいかにお考えでございますか。  五、本法律案において、被害者に対して少年審判の結果等を通知する制度を導入しております。例えば、最愛の我が子が殺害された御遺族にとってみれば、少年審判においてどのような事実が認定されたのかを知りたいと思うのは当然であります。法務大臣のお考えをお尋ねします。  六、さらに、少年審判は非公開でありますが、せめて被害者やその遺族については審判の傍聴を認めることはできないでしょうか。この点について、法務大臣のお考えをお伺いします。  七、最後に、年齢問題について質問いたします。  近年、少年事件は凶悪化、重大化、低年齢化の傾向にあります。そもそも少年と成人とを区別して、少年を特別に取り扱う必要があるのか。また、少年の健全育成といっても、十八歳、十九歳という年齢の者はもはや成人と変わりがないという議論もあります。  また、刑法では、十四歳以上の者の行為に対して刑事責任を認めているのに対し、少年法では、十六歳に満たない少年はいわゆる逆送することはできないとされております。したがって、十六歳未満の少年に対し刑事責任を問うことはできないのであります。刑法と少年法とで刑事責任を問い得る年齢に差があるというのもおかしなことであります。ここで真剣に検討すべき問題であろうと思います。  年齢問題に関し、法務大臣の御意見をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)     〔国務大臣臼井日出男君登壇
  46. 臼井日出男

    ○国務大臣(臼井日出男君) 笹川議員にお答えを申し上げます。  裁定合議制の導入についてのお尋ねがございました。  現行法上、少年審判は常に一人の裁判官が取り扱うこととされておりますが、少年事件においても複雑困難な事件が見られることにかんがみ、事案に応じ三人の裁判官による合議体で審判を行うことができるようにし、判断の客観性を高め、各裁判官の知識、経験を活用することを可能とすることが適当であると考えております。  検察官及び弁護士たる付添人が関与した審判制度の導入についてお尋ねがありました。  現行法上、少年審判には検察官の関与はなく、事案の真相が的確に解明されるのかという疑念も見られるところでありまして、事実認定手続を一層適正化することによって、少年審判における事実認定手続に対する被害者を初めとする国民の信頼を確保することが必要であること、第二に、証拠の収集、吟味において多角的視点を確保するとともに、裁判官と少年側との対立状況を回避させる措置が必要であるという見地から、一定の事件については少年審判に検察官を関与させるとともに、その場合には弁護士である付添人が関与した審理を導入する必要があると考えております。  観護措置期間の延長についてお尋ねがございました。  少年事件においても、多数の証拠調べが必要であるなどの、相当の審理日数を要する事件があります。そのような審理を現行の最長四週間で終えることは極めて困難であります。このような場合には、やむを得ず身柄を釈放して審理を続けることになりますが、御指摘のとおり、少年が逃亡したり、自殺、自傷行為に及んだり、あるいは証拠隠滅行為を行ったりすることがあります。そのような事態を防止しつつ、的確な事実認定を行い、少年に最もふさわしい処遇を決定するためには、観護措置期間を最長十二週間まで延長する必要があると考えております。  検察官に対する抗告権の付与についてのお尋ねがございました。  御指摘のとおり、現行少年法では、抗告権は少年側にのみ認められ、検察官には認められておりません。しかしながら、裁判所の判断に重大な事実誤認等がある場合において、これが是正できなければ真に非行のある少年に対して必要な保護を加えることができず、結局、少年の健全育成を図れないこととなるばかりではなく、少年審判に対する被害者を初めとする国民の信頼を確保することが困難であります。したがって、検察官に抗告権を認め、上級審である高等裁判所により家庭裁判所の審判の当否が審査され、その誤りを是正する機会を設けることが、少年審判における事実認定手続の一層の適正化のためには不可欠であると考えております。  被害者等通知制度についてお尋ねがございましたが、少年事件においては、その審判が非公開とされていることなどから、被害者が審判の結果について十分な情報を得ることができないという指摘がございます。そこで、少年法の目的である少年の健全育成の観点を踏まえつつも、事件内容やその処分結果等を知りたいという被害者の正当な要求に対して配慮をすることが必要であると考えられることから、家庭裁判所により少年審判の結果等を通知する制度を導入することとしたものであります。  被害者等による少年審判の傍聴についてお尋ねがありましたが、被害者や遺族のお気持ちは理解いたしますが、これらの方々が少年審判手続を傍聴できることとした場合、審判廷において少年や保護者等がプライバシーに関する事項等について発言をすることをためらい、裁判所が必要な情報を得にくくなり、ひいては適正な処遇選択をすることが困難になるおそれがあることなども考えられるため、なお慎重に検討すべき問題であると考えます。  年齢問題についてお尋ねがございましたが、近時、少年による凶悪重大事件が発生したことなどを契機として、少年司法における年齢区分のあり方国民の重大な関心事となっていることは十分認識をいたしております。  この問題については、刑事司法全般において少年をいかに取り扱うべきかという基本的な考え方にかかわるものでありまして、種々の議論があることから、これらの議論も踏まえつつ、重要な課題として早急に検討していく必要があるものと考えております。  以上であります。(拍手)     —————————————
  47. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 佐々木秀典君。     〔佐々木秀典君登壇
  48. 佐々木秀典

    ○佐々木秀典君 私は、民主党を代表して、ただいま議題となりました少年法等の一部を改正する法律案について、森総理及び関係大臣に質問をいたします。  なお、質問に先立ち、さきの愛知、佐賀などの、少年による犯罪事件でとうとい命を奪われた被害者の御遺族に対し心からお悔やみを申し上げますとともに、心身に傷害を受けられた皆さんの一日も早い御回復をお祈り申し上げます。  また、民主党の少年法小委員会の座長としてこの問題に全精力を傾けておられた福岡宗也議員が、去る四月十一日に逝去されました。心より哀悼の意を表するとともに、先ほどの杉浦正健議員のお心のこもった追悼演説に対して心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  福岡先生は、だれよりも少年たちの置かれた現状に心を痛め、少年犯罪の防止とはかけ離れた方向にこの少年法の改正論議が進むことに強い危惧を抱いておられました。そして、座長メモとして、政府の少年法改正案に対する詳細な見解を残されておられます。私は、福岡先生のこの思いを引き継いでこの質問を行いたいと存じます。  まず、総理にお伺いをいたします。近年、相次いで起きている不幸な少年による凶悪犯罪の原因は何なのか、これについての総理のお考えをお聞かせください。  私は、現在の少年による犯罪について本来検討さるべきは、少年法を刑罰法として見直すのではなく、現代社会の中で多くの青少年が現実にどのような問題を抱えているか、これをあらゆる角度から検証し、その病根が少年たちをして犯罪に向かうことを防止する対策を社会全体として真剣に考え施すことであると考えております。  日本精神病院協会の仙波会長は、新聞紙面で、近年、精神障害に起因したと思われる若い人の凶悪事件が多発するのは、初期の段階で彼らが発したシグナルを周囲が見逃し、症状が悪化するまで放置してしまっているからではないかと述べておられます。心を病んだ子供たちについては、偏差値や学習成績だけでなく、子供のすべてを見るようにすることが大切なのではないでしょうか。総理のお考えはいかがでしょうか。  また、少年による犯罪に限らず、あらゆる犯罪により傷つけられた被害者について、その権利を確立し、国として支援する体制づくりをすることが重要であることは言うまでもありません。かかる見地から、民主党は、本院に犯罪被害者基本法案を提出しております。今こそ、この法律必要性が真に問われていると考え、その成立につき議員各位の御協力をお願いする次第です。この犯罪被害者の権利を確立する基本法の制定について、森総理の見解をお聞かせいただきます。  次に、法務大臣にお伺いいたします。臼井法務大臣は少年法の理念をどのように考えておられるのか、改めてお答えをいただきたく存じます。  国連の市民的及び政治権利に関する国際規約、人権規約は、刑事裁判手続における人権保障の条項の中で、子供に対しては、教育的、福祉的視点に立つ対応を求めています。子どもの権利条約ではこの人権規約をさらに発展させています。  今回の改正は、この条約の精神に背馳する改正にならないか、法務大臣及び文部大臣の見解を求めます。  少年事件の捜査経過における警察の対応にも重大な問題が指摘されております。九七年に制定された少年非行総合対策推進要綱は、基本方針として、少年の健全育成を図るために、少年を非行から守り、これを保護するための諸対策の積極的な推進をするという理念をうたっています。  しかし、先日の愛知での少年による五千万円恐喝事件という驚くべき事件を見ても、警察の対応については大いに疑問とせざるを得ません。同事件では、加害者の両親が警察に出頭し、いわば自首してきたにもかかわらず、警察は、被害届が出ていないから事件にならないとこれを追い返したというのであります。  警察官の職業意識の欠如、要綱はあってもその趣旨内容が現場の警官に徹底していないという事実を保利国家公安委員長はどのように考えておられるのか、お伺いいたします。  そこで、改正案の具体的内容に即して臼井法務大臣に伺います。  まず、第十七条の観護措置期間の延長についてでありますが、本改正案では、措置期間を最長十二週間としています。どのような理由からこの期間延長を是とされたのか、お伺いをいたします。  従来も事案の事実認定が争われる事件については在宅審判が行われており、それによって何らの問題はありませんでした。長期の身柄の拘束は、その処遇が長期にわたり、不確定になることで、少年の人格に対して悪い影響を及ぼすことも考えられ、更生を目的とする少年法の理念に大きく反するのではないかと思いますが、いかがお考えですか。  次に、本改正案では、少年審判について裁定合議制を導入することとしています。この合議制の導入は、すべての事件に導入すべきものとされているのでありましょうか。事実認定手続の明確化と合議制の導入とはどのような関連があると考えておられるのか、お尋ねをいたします。  合議制を導入することで、従来以上に慎重な結論が出るということにならないと私は思います。裁判官が複数で少年と対峙することにより、少年を萎縮、緊張させることは、弾力的な審判により少年の更生を促すという少年法の理念に反する結果になるのではないかと恐れますが、いかがでしょうか。  次に、少年事件の事実認定のための審判手続における検察官の関与については、いかなる範囲で検察官を関与させようとするのかについてお伺いをいたします。  現在の審判においては、保護観察官、保護司及び少年鑑別所に勤務する法務教官、法務技官などが裁判所の許可を得て意見を述べることが可能です。成人より防御力の弱い少年に人権保障手続を外したまま検察官の弾劾を認めることは、子どもの権利条約にも反し、憲法の保障する公正な裁判を受ける権利をも侵害するのではないかと危惧するのですが、いかがでしょうか。  続いて、検察官に対する事実認定及び法令の適用に関する抗告権の付与についてお伺いいたします。  検察官の抗告権を認め、裁判所の手続が繰り返されることは、憲法三十九条にある二重処罰の禁止に反するおそれがあり、また処分の早期確定を求める少年法の保護主義の理念に反するのではないかと考えますが、いかがですか。  ところで、去る五月二日、山口最高裁判所長官が、本少年法改正案の早期成立を求めるかのごとき発言をしたと報道されております。  司法の長である長官が、みずからの役職を超えた極めて政治的な発言をされたことに私はむしろ大きな憤りを覚えます。今回の改正点である事実認定の問題にしても、裁判官の能力が大きな問題となっており、それは家庭裁判所を軽視してきたこれまでの司法行政によってもたらされたものではないでしょうか。裁判官の配置のあり方、家庭裁判所調査官や少年保護の社会的バックアップ体制を充実させることにより、改善できることは幾つもある。それによって少年法の目的の実を上げることが、真の司法の使命と役割ではないのでしょうか。(拍手)  元最高裁判事として高名な団藤重光氏は、保護手続における人権の保障は、どこまでも少年の健全育成の熱意に出るのでなければならない、それは、高い次元において、少年法の初心に立ち返ることであると述べておられます。少年法論議が、昨今の少年による凶悪犯罪の続発している事象に目を奪われ、その厳重処罰を求める世論に迎合し、法の中に脈打つ理想と熱意を忘れ、単なる手続論議に陥るとき、私たちは次世代に対し大きな誤りを犯すことになるのではないでしょうか。  現在、この少年法の改正により、多くの少年犯罪が抑止されるかのような誤った論議が一部に起きています。しかし、見せしめあるいは応報の刑罰法として少年法を改正しても、それは少年犯罪防止の抜本的解決に何ら有効な手段となり得ません。少年が、自分及び他の人々の生命と権利をとうとび、未来に希望を持ち、犯罪に手を染めることのない社会をつくることは大人の責任であり、社会全体の問題であり、国の責任であることは言うまでもありません。わけても政治責任は極めて重いことを私たちは肝に銘じなければなりません。  民主党は、党を挙げ、少年犯罪を根絶するため、多くの視点から総合的な青少年対策を検討し、提案をしていく決意であることを表明して、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣森喜朗君登壇
  49. 森喜朗

    ○内閣総理大臣(森喜朗君) 少年による凶悪犯罪の原因についてお尋ねがございました。  今月に入り、愛知県における高校生による主婦殺人事件や無職少年によるバスジャック事件が発生し、国民に大きな衝撃と不安を与えていることはまことに遺憾であり、犠牲となられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、負傷者の方々の一日も早い御回復を願う次第であります。  ただ、こうした事態の中で私は、滞在先のアメリカのテレビを通じて、人質となっていた少女が親族の皆さんと明るい表情でおられた姿を見たときは、何かほっと救われた、そういう気持ちになったことも申し添えたいと存じます。彼女を含めた被害者の皆さんの心の傷の回復も祈念いたしたいと存じます。  最近続発している少年による凶悪な犯罪の原因としては、少年の規範意識の希薄化や、家庭、地域社会の少年問題への無関心、少年を取り巻く環境の悪化等が複雑に絡み合っているものと考えているところでございます。  また、少年問題に対する取り組みのあり方について御意見をいただきました。  少年非行の問題は社会全体で取り組むことが不可欠であり、家庭、学校、地域関係機関等が連携し、心の状態も含め子供の状況を十分把握して、重大な非行の前兆段階で的確に対処することが極めて重要であると考えております。  犯罪被害者基本法に関するお尋ねがございましたが、被害者保護の問題は、まずもって個別具体的な施策を積み重ねることが肝要であり、政府といたしましては、刑事手続における犯罪被害者保護のための二法案を今国会に提出したほか、犯罪被害者対策関係省庁連絡会議を設置するなど、既に一定の施策を講じ、さらに検討をいたしているところでございます。  基本法の必要性は、こうした種々の施策を積み重ねていく中で、総合的な見地から検討するのが適当であると考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣臼井日出男君登壇
  50. 臼井日出男

    ○国務大臣(臼井日出男君) 佐々木議員にお答えを申し上げます。  少年法の理念についてお尋ねがございましたが、少年法第一条に定められている少年の健全育成が少年法の理念であると考えております。  国連人権規約等についてのお尋ねがございましたが、少年審判において非行事実が的確に認定され、事案が解明されるということは、少年に対し適切な保護を施し、その健全な育成を図るという少年法本来の目的を実現する上で不可欠であり、本法案は、御指摘の条約の精神に何ら背馳するものではないと考えております。  観護措置期間を最長十二週間まで延長した理由についてお尋ねがございました。  少年事件においても、多数の証拠調べが必要であるなど相当の審理日数を要する事件があり、そのような審理を現行の観護措置期間である最長四週間で終えることは極めて困難であります。的確な事実認定を行い、適切な処遇を決定することができるようにするため、事案によっては観護措置の収容期間を最長十二週間まで延長できるようにする必要があると考えたものであります。  観護措置の長期化が少年の人格に対して及ぼす影響についてお尋ねがございました。  もとより、すべての事件で観護措置期間を最長の十二週間まで延長するというものではなく、現行の一回を超えて行うことができる更新は、真にやむを得ない場合に限定しており、しかも二週間ごとに更新の要件の有無が審査されることとなっております。  少年に対する影響についても、裁判官が更新の審査を行う際に当然考慮されるものであり、観護措置期間は適切に決定されるものと考えております。  裁定合議制の導入についてお尋ねがございました。  合議体での審理は、事案の複雑さ等を考慮して、必要な場合に合議体で審判すると決定された事件について行われることとするものであります。このような事案に応じ、合議体で審判を行うことができるようにするということは、判断の客観性を高め、各裁判官の知識、経験を活用することを可能にするもので、事実認定手続の一層の適正化が図られるものと考えております。  裁定合議制度は、少年を萎縮、緊張させ、少年法の理念に反することにならないかとのお尋ねがございました。  合議体による審理を行ったとしても、少年法の趣旨、目的を踏まえ、それぞれの事件にふさわしい審判が行われるものであり、少年法の理念に反する結果になることはないと考えております。  検察官が関与する範囲についてお尋ねがございました。  本法案において、検察官は、十四歳以上の少年による死刑または無期もしくは長期三年を超える懲役もしくは禁錮に当たる罪の事件のうち、非行事実を認定するための審判の手続に関与する必要があると認められる場合にのみ家庭裁判所の決定により関与することといたしております。  検察官関与と児童の権利条約及び公正な裁判を受ける権利との関係についてお尋ねがございました。  検察官は、刑事訴訟における訴追官としての立場ではなく、家庭裁判所の主宰する審判が適正に行われるための協力者として、的確な事実認定に寄与するために関与するのであり、かつ、検察官が出席する場合において、少年に弁護士である付添人がいないときは国選で弁護士である付添人が付されることとされておりますので、少年側が著しく不利益になることはなく、検察官が関与するからといって、何ら御指摘の条約に反したり、憲法が保障する公正な裁判を受ける権利を侵害するものではないと考えます。  検察官の抗告権と二重処罰の禁止等の関係についてお尋ねがございました。  憲法第三十九条後段は、刑事裁判とは異なる少年審判にそのまま適用されるものではありませんし、刑事事件においても、確定していない下級審の判決に対する検察官の上訴は同条に違反するものでもないと解されているところであります。  また、実際の運用上も、検察官において事案の内容を十分検討し適切な抗告権の行使がなされると考えられる上、抗告審は原決定の当否を審理するものであって、少年法の趣旨を踏まえて迅速に判断がなされるものと考えられることから、少年の早期保護の要請に反することはないと考えております。  以上であります。(拍手)     〔国務大臣中曽根弘文君登壇
  51. 中曽根弘文

    ○国務大臣(中曽根弘文君) 今回の法改正は、子どもの権利条約の精神に背馳するのではないかとのお尋ねでございましたけれども、このたびの少年法改正につきましては、政府部内において、国際人権規約及び児童の権利に関する条約との関係も踏まえた上で、少年法を所管する法務省において検討されてきたものでありまして、文部省といたしましては、ただいまの法務大臣の答弁を尊重したいと考えております。(拍手)     〔国務大臣保利耕輔君登壇
  52. 保利耕輔

    ○国務大臣(保利耕輔君) 佐々木議員お尋ねの、愛知県下で発生いたしました少年による恐喝事件につきましては、厳しい御指摘をいただきましたけれども、相談を受けた警察署において不適切な対応が見られ、まことに遺憾に存じております。  この事件につきましては、具体的な反省事項を抽出し、全国の警察に対して指導を徹底する必要があると考えております。あわせて、警察官にその職務を一層自覚させるとともに、少年非行総合対策推進要綱の趣旨内容が、現場の警察官にさらに徹底されるよう、警察当局を指導、督励してまいりたいと考えております。  なお、今後、既に設置されている学校警察連絡協議会の場などを通じ、子供の状況を十分把握し、非行の前兆段階で的確に対処してまいりたいと考えております。  以上でございます。(拍手)     —————————————
  53. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 倉田栄喜君。     〔倉田栄喜君登壇
  54. 倉田栄喜

    ○倉田栄喜君 ただいま議題となりました少年法等の一部を改正する法律案につきまして、公明党・改革クラブを代表して質問いたします。  まず、森総理にお尋ねいたします。  この五月の連休に十七歳の少年が起こした二つの事件を総理はどうお考えになったのか、その御認識をお聞きしたいと思います。  少年犯罪において、凶悪、粗暴事犯が増加している原因はどこにあるのか、その抜本的対策は、単に少年法改正の問題のみでは済まされず、根本的、総合的対策が必要なことを、この二つの事件を検証するだけでも明らかであると思いますが、総理はどうお考えでしょうか。  最近の少年犯罪の原因をどう見るのか、少年非行の深刻さは何が原因なのか。市場原理、競争原理が強調される社会にあって、優勝劣敗、弱肉強食社会がつくり出す病理的弊害と強度のストレスが弱い者に対する虐待となり、いじめとなり、この悪循環が結果としての少年事件を引き起こしているのではないでしょうか。  そうだとすれば、私たちは、国際的大競争時代における市場原理、競争原理を肯定しても、他方で、もう一つの原理、ともに生きるという共生の理念からくる共同原理、協力原理も社会システムの中に組み込まなければならないと思います。  私は、大競争時代とIT革命とも言われる情報化時代の大波の中に翻弄される親と家族が、子供を教育するゆとりと能力を持ち得ない現況があると考えています。  そして、学校もまた、この時代の大波に対応できず、結果として子供の非行に対する責任はとり得ず、極力、事なかれ、問題が露見しないように努めるという現状があるのではないでしょうか。  総理、子供に対する教育の責任、非行に至らせた責任はだれにあるとお考えでしょうか。  文部大臣、学級崩壊やいじめ、そして事件が起こるたびに繰り返される、気がつかなかった、知らなかった、いじめはなかったと認識しているという学校側の対応は、何が問題なのだとお考えになりますか。  学校は、そもそも社会生活に必要な知識を教えるところであって、人格的な教育に携わる場所ではないということでしょうか。  また一方で、父兄と教師のあつれきの中で、先生自身が命を絶つということも起こっています。  これらの点について、文部大臣の御所見をお聞かせください。  郵政大臣、IT革命が喧伝される中、セクシャル、バーチャルの過激な映像が少年に与える影響に、どう対策をとればよいとお考えになりますか。表現の自由が民主主義を支える重要な権利であることを確認しても、インターネット映像等情報伝達手段の急激な変化と少年を対象とする商業主義に、親も学校も防御でき得ないという現実をどう認識されますか。  法務大臣、今回の少年法の改正が、少年犯罪の凶悪化、集団化に対応しようとするものであっても、少年犯罪の発生の原因と未然防止に十分に対応するものでないことを認める必要があります。  私は、現行少年審判の目的が、少年の可塑性に着目した保護育成であること、結果として審判の対象が要保護性であることに変更を加える必要はないと思いますが、しかし、要保護性の前提として、事実の認定が重要であることもよくわかります。少年の本当の更生と健全な育成のためには、少年が起こした非行事実の意味と、その結果の重さに少年自身が真正面から向き合える審判の方式でなければ、少年の反省と更生もあり得ないと思うからです。  少年法二十二条は、審判方式として、親切を旨として和やかにと規定していますが、果たしてこれで少年は、犯罪事実とその結果を正確に認識して、処分結果を受けとめているのでしょうか。  また、裁判官の合議制の導入と検察官の関与が、どのような目的で導入されようとしているのか。単に、少年事件の凶悪化と集団化によって事件処理が困難になったための便宜上の対策にすぎないのではないのか。法務大臣のお考えをお聞きします。  私は、少年の更生と被害者の被害回復のためにも、前回法務大臣に指摘させていただいたリストラティブ・ジャスティス、いわゆる回復的正義という考え方、加害者、被害者の当事者が向き合って少年の更生と被害回復を図る、同時に、被害者、加害者を取り巻く地域住民の三者間で問題を解決するというシステムを、少年事件にこそ、導入も含めて検討してほしいと思うのです。この点、改めて法務大臣の御所見をお尋ねいたします。  そして、これは最も大切なことですが、新しい方式の導入が少年に虚偽の自白を強制しないかどうか、冤罪の防止に必要な手段が講じられているかどうか、十分に検討する必要があります。  また、少年の年齢の問題も議論する必要があることなどを考えると、少年法の改正は、現在提出されている内容のみでは、現在の事態に十分対応できないのではないでしょうか。法務大臣の現在のお考えをお聞きします。  最後に、再度、森総理大臣にお聞きいたします。  私は、「友の憂いに我は泣き、我が喜びに君は舞う」という一節が好きであります。先ほど、市場原理、競争原理に対応して共同原理、協力原理のことを申し上げました。公明党が掲げる人間主義、ヒューマニズムの政治を、私自身は、他者の痛み、苦しみを自分の痛み、苦しみとして同苦することと考えて、今日まで個々の課題に取り組んできました。  しかし、大競争時代と言われる社会の中に、そして犯罪少年の心の中に、他人の心と体を傷つける痛みと苦しみを同苦し得る精神的構造があるのかどうか、不安であります。  冒頭、十七歳の少年が起こした二つの事件について、総理の御所見をお伺いいたしました。あと四半世紀たつと、この世代が日本を背負わなくてはなりません。日本の危機で最大のものは、これらの世代が、私たちの遠い祖先の代から営々と受け継がれた日本を本当に背負うべき人材群たり得るのかということだと指摘する識者もいます。  森総理、教育という問題に、ハード面のみならずソフト面の体制も含めて、根本的な対策と予算が必要なのではないのか。総理の御所見をお伺いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣森喜朗君登壇
  55. 森喜朗

    ○内閣総理大臣(森喜朗君) 先般発生いたしました少年事件についてのお尋ねがございました。  これらは、何よりも、理解困難な動機によりとうとい人命を奪うという極めて残忍な事件であり、私自身、大変な衝撃を受けるとともに、現下の少年犯罪の深刻さを改めて痛感したところであります。  凶悪、粗暴な少年犯罪の増加の背景には、少年自身の規範意識の希薄化や、家庭、地域社会の少年問題への無関心、少年を取り巻く環境の悪化等の要因があると考えられます。  議員と同様、私といたしましても、少年非行の問題に対しましては、家庭、学校、地域関係機関等が協力し、社会全体が一丸となって、重大な非行の前兆段階で的確に対処するなど、根本的、総合的対策が必要であると認識いたしております。政府といたしましても、関係省庁が緊密に連携し、こうした取り組みの促進に努めてまいりたいと考えております。  少年非行の原因と教育の責任についてのお尋ねでありますが、少年非行の原因、背景はさまざまであり、家庭のしつけや学校のあり方地域社会における連帯感の希薄化などの要因が複雑に絡み合い、発生していると考えます。同時に、社会の病理現象のあらわれとも考えられます。したがって、子供に対する教育の責任社会全体が担っているということを大人一人一人が自覚し、家庭、学校、地域社会等がそれぞれの責任を果たしつつ、協力して取り組むことが極めて重要であると考えます。  教育問題に取り組むに当たっての決意、意欲に関するお尋ねがありました。  次代の日本を担う子供たちを創造性豊かな立派な人間としてはぐくむことができますよう、教育改革を不断に推進していくことが重要と考えております。  その際、目指すべき教育改革の方向としては、日本人として持つべき豊かな心、倫理観、道徳心をはぐくむ教育への転換を図るとともに、何よりも命を大切にする心、そして思いやりの心、奉仕の精神、日本の文化、伝統を尊重する気持ち、国や地域を愛する気持ちを育てることが重要であると考えております。最も大切なのは、人間としての全人教育であります。  教育改革を進めるに当たっては、社会の病理の原因を根本から退治していくという思いで、ハード面、ソフト面を含め、単なる制度、仕組みの改革にとどまらず、基本に沿って徹底的に取り組んでいく所存であります。  また、必要な予算については、これを確保してまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたします。(拍手)     〔国務大臣臼井日出男君登壇
  56. 臼井日出男

    ○国務大臣(臼井日出男君) 倉田議員にお答えを申し上げます。  現行の審判の方式における少年の事案認識に関するお尋ねがございました。  御指摘の規定は、少年審判の手続自体が少年を保護し教育する場であるとの考え方に基づくものでございまして、必要に応じ、毅然とした態度で臨むことは当然であって、少年においても審判を重く受けとめているものと考えております。  裁定合議制及び検察官関与の目的についてお尋ねがございましたが、裁定合議制は、少年事件においても複雑困難な事件が見られることにかんがみ、判断の客観性を高め、各裁判官の知識、経験を活用することができるよう、事案に応じ、三人の裁判官による合議体で審判を行うことができるようにするものであります。  検察官の関与につきましては、少年審判における証拠の吟味等に関して、多角的な視点を確保し、その事実認定の適正に対する国民の信頼を確保するとともに、争われている事件において裁判官と少年が対立するような状況に陥ることを回避して、円滑、適正な審判の実現を図ることを目的とするものであります。  いわゆるリストラティブ・ジャスティスというシステムを導入すべきではないかというお尋ねがございました。  それがどのような内容を含むものか必ずしも明らかではない点もございますが、少年審判手続は、少年の健全育成を期し、非行のある少年に対して保護処分を行うということを目的とするものでありますので、少年の改善、更生のため有益と認めるときは、被害者との関係の調整をも含む環境調整のための措置をとることが可能であると考えております。  少年審判における自白の強要や冤罪防止のための手段についてのお尋ねがございました。  審判において、真に非行のない少年に対し非行ありと判断することは当然避けなければならないことでありますが、今回の改正は、審判の手続において、多角的な観点から吟味を容易にすることにより、事案の解明を一層的確に行うためのものであり、自白の強制や冤罪につながることはないと考えております。  今回の少年法の改正のみでは不十分ではないかとのお尋ねがございましたが、近年における少年の事件や少年審判の実情にかんがみ、少年審判に対する国民の信頼を確保するには、まずもって、その事実認定手続の一層の適正化のための所要の法整備を行うことが喫緊の課題であると考えられたことから、これについて行うものでございます。  御指摘のように、近時、少年による凶悪重大事件が発生したことなどを契機として、少年司法における年齢区分のあり方国民の重大な関心事となっていることは、十分認識をいたしております。この問題については、刑事司法全般において少年をいかに取り扱うべきかという基本的な考え方にかかわるものでございまして、種々の議論があることから、これらの議論を踏まえつつ、重要な課題として早急に検討していく必要があるものと考えております。  以上であります。(拍手)     〔国務大臣中曽根弘文君登壇
  57. 中曽根弘文

    ○国務大臣(中曽根弘文君) 少年の事件に対する学校側の対応及び学校の役割についてのお尋ねでございますけれども、最近、少年による凶悪な犯罪が多発していることにつきましては、大変深刻に受けとめております。児童生徒の問題行動につきましては、校長のリーダーシップのもと、全教職員が一致協力した指導体制を整え、問題行動の前兆を早期にとらえて適切な対応を行うことが大切であります。  結果といたしまして事件が大きくなった学校の事例を見ますと、御指摘のような問題点が見受けられることはまことに残念であり、文部省といたしましては、今後とも、児童生徒の問題行動への適切な対応が図られるよう、指導を徹底してまいりたいと存じます。  また、学校教育におきましては、人格の完成を目指して体徳知の調和のとれた児童生徒を育成するため、共通に身につけるべき基礎、基本を習得させることが必要であると考えております。このため、特に児童生徒が人間としてのあり方を自覚し、人生をよりよく、正しく生きるための基盤となる道徳性の育成に努めてまいります。  父兄と教師のあつれきの中で先生自身が命を絶つという事件についてのお尋ねでございますけれども、近年、学校教育の役割や機能に対する国民の期待や要望が多様化、場合によっては相矛盾するようになってきておりまして、学校はこれらに適切に対応していかなければならないという大きな課題を抱えております。  このため、文部省といたしましては、校長のリーダーシップのもと、全教職員が一致協力して組織的、機動的な学校運営が行われるよう学校運営の改善に努めるとともに、教職員が悩みを抱え込むことなく、日ごろからお互いに相談し、支え合えるような職場づくりを行うよう、各教育委員会指導しているところであります。  今後とも、教職員が心身ともに健康を保持しつつ、国民の学校教育への信頼にこたえていくことのできる学校づくりに向けて、各教育委員会指導してまいりたいと思っております。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣八代英太君登壇
  58. 八代英太

    ○国務大臣(八代英太君) 過激な映像等が少年に与える影響についての現状認識及び対策に関するお尋ねでございますが、近年のIT革命の進展に伴いまして、利用者の利便性が著しく向上する一方、暴力的あるいは性的な過激な映像等の流通が、少年の健全な育成という観点から大きな社会問題になっているものと認識いたしております。  このため、郵政省では、インターネットプロバイダーや放送事業者等による適切な対応を確保するために、その自主的な取り組みを支援するとともに、インターネット上を流通する少年に有害な映像等を見せないようにするための技術的対応の推進にも一生懸命努めているところでございます。  郵政省といたしましては、引き続きこのような対策を推進するほか、IT革命に伴う新しいメディアの発展や自由な情報流通の妨げとならないよう十分配意しつつ、多角的な検討を行いまして、少年の健全な育成に悪影響を与えることなく安心して情報通信を利用できる環境整備に向けまして適切に取り組んでまいりたいと考えております。  なお一層の御指導をお願いいたします。(拍手)     —————————————     〔議長退席、副議長着席〕
  59. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 木島日出夫君。     〔木島日出夫君登壇
  60. 木島日出夫

    ○木島日出夫君 私は、日本共産党を代表して、少年法等の一部を改正する法律案について総理に質問します。  中学生による五千万円恐喝事件、十七歳の少年による西鉄バスジャック事件、殺してみたかったという動機による女性殺害事件等、最近発生した少年による重大な犯罪が我が国社会を震撼させました。このような深刻な少年犯罪をどうすれば我が国社会からなくしていくことができるのか、そのためにどうすればよいのか、何が問題なのか、少年法はどうあるべきなのかなどについて、だれもが今こそ真剣に考えざるを得ません。  我が党は、今日の少年犯罪を防止し、子供たちの健全な成長を図るために、その原因究明とこれを防止する対策の研究などに真摯に当たるとともに、少年法についても、犯罪被害者救済対策の抜本的改善、犯罪少年に自己の行為の責任を自覚させ、再び事件を起こさないようにするため、少年院などでの処遇の改革など、検討すべき課題は少なくないと考えています。その立場から、現在政府から提出されている少年法改正についても、真剣かつ慎重な検討をしたいと考えます。  少年法の検討に当たっては、犯罪被害者救済対策が重要です。  ゆえなく殺害されたりけがを負わされた被害者の無念さ、悔しさは、察するに余りあります。我が国では、長い間、犯罪被害者は、精神的にも経済的にも、また社会的にも苦しめられてきました。それは、少年犯罪被害者も同様であります。その背景には、日本政府が長い間犯罪被害者救済対策を怠ってきたという重大問題があります。  国際社会では、一九八五年十一月の第九十六回国連総会において、犯罪及び権力の濫用の被害者のための司法の基本原則の宣言が採択され、犯罪被害者の権利が尊重されるべきこと、そのために、被害者の司法及び公正な処遇へのアクセス、損害賠償、補償、援助等について、具体的、国内的、国際的措置をとるべきことが確認されたのです。  欧米各国では、この宣言を契機として、政府が犯罪被害者対策を進めてきておりますが、我が国政府の取り組みは各国より二十年近くもおくれていると指摘されています。ようやくにして今国会で、刑事訴訟法の一部改正と、犯罪被害者の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律が成立しましたが、犯罪被害者救済は全く不十分と言わざるを得ません。政府は、被害者対策を促進するための犯罪被害者基本法の制定さえ拒絶し続けていますが、総理は、犯罪被害者対策は現状で十分だという認識なのでしょうか。答弁を求めます。  少年法の検討に当たって、現在の少年非行と犯罪の現状をどう見るかという問題が重要であります。  最近の少年犯罪の特質は、非社会型非行が急増していることだとの刑事法学者の指摘があります。非社会型非行とは、犯行に対する明瞭な動機を欠き、異常な心理状態のもとで行われる非行と犯罪のことですが、今回の西鉄バスジャック事件や女性殺害事件など、まさに典型的な非社会型犯罪と言わなければなりません。  こうした最近の少年犯罪の特質を踏まえ、少年事件にかかわっている人々の意見も十分取り入れ、幅広い視野からあるべき少年法の姿について検討することが求められていると考えますが、少年法改正の理念と方向性について、総理の答弁を求めます。(拍手)  凶悪、重大な非社会型非行が急増していることの背景には、我が国社会のさまざまな病理現象が少年を襲っているという深刻な現状を直視しなければなりません。これを取り除くことなしに、少年の非行や犯罪をなくしていくことはできません。  そのためにも、まず第一に、学校教育のあり方を抜本的に改革することです。  現在の学校教育は、受験中心の詰め込み教育、競争教育が基本になっていて、それが高校、中学から小学校に至るまで支配的な流れになっています。そして、この受験中心の教育が学校を荒廃させ、子供の世界を荒廃させ、いじめ問題を深刻な社会問題にしているのです。五千万円恐喝事件などは、まさにいじめを発端として拡大していった事件でした。受験競争を勝ち抜くため、一人一人の子供たちが孤立させられ、人とのつながりが希薄になっているのです。  受験のための詰め込み教育の重荷から子供たちを解放し、学校教育の基本として、知育、体育、情操教育、徳育、これは戦前型の復活ではなく、社会を構成する人間にふさわしい市民道徳を身につける徳育、これらを中心に据えて、すべての子供たちのものとすることに真剣に取り組むことが今日極めて重要です。  そのために、統制と押しつけ一本やりの学校運営をやめ、三十人学級の実現を目指すなどの抜本的な改革が必要と考えますが、総理の答弁を求めます。  第二は、社会の各分野で道義ある社会を目指す取り組みを強めることです。  やってよいことと絶対にやってはならないことのけじめを、社会のあらゆる分野できちんとつけることが何よりも大切です。人を殺してみたかったという理由で平然と殺人を犯す事態に、本当に慄然といたします。  子供は社会の鏡です。そして、この面で大きな社会責任を担っているのは政治と経済の世界です。子供に市民道徳を求めるためにも、政治や経済の世界で、道義が荒廃し、法律違反までまかり通っているような事態の根本的改革が必要です。  この二つの世界は、今、日本の道義的腐敗の震源地とも言われる状態にあります。政治腐敗、経済腐敗の一掃を初め、すべての分野において真の社会的道義の確立を目指すことが特別に重要であると考えます。総理の答弁を求めます。  第三は、子供たちを社会的な退廃から守るために、特にテレビや雑誌などの文化面で、社会の自己規律を確立することです。  我が国社会においては、戦争賛美や人の命を粗末にする映像、出版が余りにもはんらんし、野放しになっています。こうした退廃文化の影響が、女性殺人事件、西鉄バスジャック事件などに如実にあらわれたと言わざるを得ません。  この分野での我が国の国際的な立ちおくれは大変著しいものがあります。九八年六月、国連の児童の権利に関する委員会から最終見解が日本政府に送られてきましたが、その中に「委員会は、締約国に対し、印刷、電子、視聴覚メディアの有害な影響、特に暴力的ポルノグラフィーから児童を保護するため、法的なものを含め全ての措置をとるよう勧告する」とあります。昨年の国会で、児童買春、児童ポルノ処罰法が成立しましたが、超党派による議員立法でした。日本政府は国連の委員会の指摘に対して一体どんな具体的な措置をとって対応したのか、答弁を求めます。  日本共産党は、少年の非行と犯罪をなくし、すべての子供の健全な成長のために、家庭、学校、地域、職場、政治などのあらゆる場で、人間をおとしめ粗末にする風潮と戦い、健全な二十一世紀日本社会の建設のために全力を尽くす決意を表明して、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣森喜朗君登壇
  61. 森喜朗

    ○内閣総理大臣(森喜朗君) 犯罪被害者対策に関してのお尋ねがございました。  先ほども申し上げましたとおり、政府といたしましては、刑事手続における犯罪被害者保護のための二法案を今国会に提出したほか、これまでも警察など関係機関において所要の施策を講じ、また、犯罪被害者対策関係省庁連絡会議を設置するなど、積極的に取り組んできたところであります。  今後とも、犯罪被害者の多岐にわたるニーズにこたえるべく、精神的、経済的支援を含めた各種支援策のさらなる充実に努めてまいります。  少年非行の現状を踏まえた少年法改正の理念と方向性についてお尋ねがありました。  政府といたしましては、重大な少年犯罪が多発している実情も踏まえ、適正な処分を行うための基盤となる事実認定手続を一層適正化するため、本法案を提出しているところであります。  少年犯罪に対処するには、総合的な行政施策とともに、国民全体の幅広い理解と不断の努力が重要であると考えますが、少年法のあり方についても、種々の御議論を踏まえつつ検討していく必要があると考えております。  学校教育の改革についてのお尋ねがありました。  これからの学校教育においては、学力だけがすぐれた人間を育てるのではなく、創造性豊かな立派な人間を育てることが重要であると考えております。  その際、たくましく生きるための健康や体力を持ち、倫理観や規範意識、道徳心を身につけ、みずから学び、みずから考える力を備えた、体徳知のバランスのとれた健全な人間を育てるための全人教育が最も大切であると考えます。  このためにも、学校がより自主性、自律性を持って、校長のリーダーシップのもと、組織的、機動的に運営されるようにするとともに、個に応じたきめ細かな指導など、子供たちの個性や能力を伸ばしていけるような教育を行うことが重要であり、そのための教育改革を進めてまいります。  なお、三十人学級についての御指摘がありましたが、今後の学級規模及び学習集団のあり方等に関しましては、教育水準の維持向上という観点から、現在進めている協力者会議の検討を踏まえ、財政負担にも十分考慮して、適切に判断していく必要があると考えます。  政治や経済の分野における社会的道義の確立についてのお尋ねがありました。  御指摘のように、子供は社会の鏡という側面があることは事実であり、子供なりの倫理観形成の過程において、子供を取り巻く社会環境が影響を及ぼすことは十分に考えられます。このことに照らしても、政治や経済の分野で活動する各人が、おのおの関連の法律等を遵守することはもとより、正しい倫理観のもとに責任ある行動をとることは極めて重要なことと考えます。  政治倫理の確立について申し上げれば、政治家一人一人の自覚を基本としつつも、政治家個人中心の仕組みから政党本位、政策本意の政治へと転換を図るべく、小選挙区比例代表並立制の導入を柱とする選挙制度改革政治資金規正法の改正など、各般の選挙制度改革を推し進めてきたところであります。今後とも、政治倫理の確立には最大限の努力を傾注してまいります。  また、経済分野における社会的道義の確立についても、最終的には、経済活動に参画するおのおのの主体の倫理観の確立が必要不可欠であると考えますが、グローバル化、ハイテク化、ビジネス手法の多様化、複雑化といった種々の状況変化を踏まえ、政府として適切に対処してまいります。  各種メディアの有害な影響からの児童の保護についてのお尋ねですが、政府といたしましては、そのような影響から児童を保護するために、関係者と密接に協力しつつ、各種メディアにおけるガイドライン策定や自主規制を支援し、また、そのような児童規制等の取り組みにおいて保護者等の意見が反映されることを促進しているほか、御指摘の、いわゆる児童買春、児童ポルノ処罰法や青少年保護育成条例等関係法令に基づき悪質な業者の取り締まり等を行うなど、さまざまな対策を講じております。(拍手)     —————————————
  62. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 安倍基雄君。     〔安倍基雄君登壇
  63. 安倍基雄

    ○安倍基雄君 私は、保守党を代表して、ただいま提案されました少年法等の一部を改正する法律案について質問いたしたいと思います。  最近における少年犯罪の増加とその凶悪化は、日本社会に大きな衝撃を与えております。また、一方において少年の麻薬の使用の増加、他方において学級崩壊とまで言われる教育の荒廃があります。最近の報道で、人を殺す経験をしてみたかったと広言する少年もいたとかで、まさに少年犯罪の問題は二十一世紀の日本に対しての大きな警鐘であると考えます。  まず、総理、法務大臣、文部大臣にお伺いいたしますが、この少年犯罪の増加、凶悪化の現状をどう認識しておられるのか、この原因はどこにあるのか、これにどう対処しようとしているのか、お答え願いたいと思います。  次に、今回の改正の意義についてお伺いします。  今回、少年法の改正が提案されたことはまことに喜ばしいことと考えております。私個人といたしましても、法務委員会において長い間少年法の改正を主張し、二年前の平成十年、月刊誌中央公論にその見解を発表したこともあり、今回の提案はいささか遅きに失したものと考えますが、いずれにせよ、改正への第一歩を踏み出したものとして高く評価するものであります。  今回の改正は、二十歳未満の少年を対象とする少年審判において、従来、裁判官一人の裁定に任されていたものに合議制を導入し、かつ、凶悪犯罪については検察官が事実認定の手続に関与することを認めるという点、及び事実の審理のために時日を要するときは身柄の拘束期間の延長ができること等々が主な内容となっております。  山形マット死事件という、いじめによって少年を窒息死せしめた事件がありました。その直後に私は文部政務次官となり、その処分が甘きに失したのではないかと考えた者の一人であります。  この事件において、加害者である少年の陳述が次々と変わり、事実認定が困難であったと記憶しております。被害者及びその親族が事実関係を知るため民事事件として提訴しなければ実態はやみの中であるというのが現状のようであります。今回の改正は、事実関係の解明という点で大きな前進があったと考えます。  法務大臣にお伺いしますが、事実関係の解明に関する限り、今回の改正で十分であるのか、これ以上の改正は必要ではないのかという点についてお答え願いたいと思います。  今後の問題点として私が指摘したいのは、今回の改正が手続面の改正にとどまり、実体面の改正がなされていないという点であります。少年法に内在する本質論を避けて通ろうとしているのではないかということであります。  昭和二十三年、言いかえれば敗戦直後に制定されたこの法律は、戦後の混乱期、窮乏の時代に、飢えの余り窃盗に走った少年などを想定し、ジャン・バルジャンの例のように、一切れのパンを盗んだために一生を台なしにするようなことのないようにという温情あふれる内容であります。  戦前では、検察官が事件を少年審判に回すか否かを判断したのに、現行法は、まず最初に家庭裁判所の審判に回し、裁判官の判断により刑事事件と扱うか否かを決定する、少年の範囲を十八歳未満から二十歳未満に引き上げる、十六歳未満の者については刑事事件として扱わない、十八歳未満の者については刑を軽減する、犯人の氏名の公表を禁じるなど、犯人の更生に主眼が置かれております。これには戦争直後における社会情勢が色濃く反映しているのではないかと考えます。  しかし私は、五十年以上前に制定されたこの法律は、教育刑の思想が余りにも強く、応報刑の思想が非常に薄いのではないのか、果たして社会変化に対応しているものであるかという疑念を持っております。  私は、かつて、一人の女性を数人の少年が拉致し、監禁の上、暴行の限りを尽くし、殺した上にコンクリート詰めにして放置したという鬼畜にも劣る行為に対し、加害者の氏名も公表されず、また処分が著しく軽かったことに大きな憤りを感じたことを記憶しております。  これは裁判官の裁判そのものに問題があったと考えますが、基本的には、少年法の厚い壁が存在したためであります。最も陰湿な行為であるいじめがあたかも公認され、社会的に許される印象を与えたのではないかと懸念いたしました。山形マット死事件にせよ、多くのいじめ事件は、この判決の延長線上にあります。  おれたちには重い罰は科せられない、少なくとも死刑にはならないとうそぶく少年がいる限り、いじめは後を絶たないでありましょうし、凶悪犯罪も増加の一途をたどるでありましょう。少年であるがゆえの寛大な処分という社会的風潮、加害者の少年に対する表面的な温情が、罪のない犠牲者を増加させているのではないかと思います。  私は、いたずらに少年に対し重罰を加えよと主張しているのではありません。しかし、少なくとも凶悪犯罪については、判断力のない幼児についてはともかく、一定の年齢以上の少年について成人と異なる扱いをすることそのものに問題があるのではないかと考えます。(拍手)  これと関連し、諸外国と同じように、少年として扱う年齢あるいは刑事訴追さるべき年齢を引き下げること、実名報道の禁止の部分的解除など、少年法の実体面についての改正が必要ではないかと思うのであります。  私がこのような発言をすると、いわゆる人権論者は、加害者たる少年がかわいそうだ、彼らにも人権があり、更生の機会を与えるべきであると反論するでありましょう。もちろん、大多数の少年について、ちょっとした犯罪により一生を棒に振るようなことは避けなければなりません。しかし、かわいそうなのは被害者であります。懸命に社会を支えようとしている善良な市民であり、その子弟であり、被害者の人権であります。少年犯罪にどう対処すべきかであります。  もちろん、教育問題、麻薬防止問題など、総合的な対策が必要でありますが、その基本には、罪を犯せば罰せられるという厳然たる法の精神がなければなりません。  総理及び法務大臣にお伺いいたします。  今回の法改正はその第一歩であると認識されているのかどうか。被害者保護の見地から、また、少年犯罪の防止と法の精神という見地から、少年法について今回の改正で十分なのかどうか。手続規定の改正にとどまらず、年齢の引き下げ、処分の強化等その実体に立ち入った根本的な改正に取り組む決意がおありか否かについてお答え願いたいと思います。  最後に、我々は教育の大切さに思いをいたすべきであります。総理及び文部大臣に、道徳あるいは市民としての倫理を教えるための教育の必要性、教育改革必要性についてのお考えを承って、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣森喜朗君登壇
  64. 森喜朗

    ○内閣総理大臣(森喜朗君) 少年犯罪の現状とそれへの対処方策についてお尋ねがありました。  連休中に発生しました二件の十七歳の少年による凶悪な犯罪にも象徴されるとおり、最近の少年非行情勢は厳しい局面が続いており、極めて憂慮すべき状況にあると認識いたしております。  この原因につきましては、先ほども申し上げましたとおり、少年自身の規範意識の希薄化や、家庭、地域社会の少年問題への無関心、少年を取り巻く環境の悪化等の要因が複雑に絡み合っているものと考えているところであります。  少年非行の問題につきましては、社会全体で取り組むことが不可欠と考えており、政府といたしましては、関係省庁間の緊密な連携のもと、この問題に対する取り組みが国民的な広がりを持ったものとなるように、広報啓発活動の推進、重大な非行の前兆段階での的確な対応等を図るとともに、悪質な犯罪に対しましては厳正に対処してまいる所存であります。  少年法の抜本的な改正に関するお尋ねがありました。  さきにも述べましたとおり、政府といたしましては、重大な少年犯罪が多発している実情も踏まえ、適正な処分を行うための基盤となる事実認定手続を一層適正化するため本法案を提出しているところであります。  繰り返しになりますが、少年犯罪に対処するには、総合的な行政施策とともに、国民全体の幅広い理解と不断の努力が重要であると考えており、また、少年法のあり方についても種々の御議論を踏まえつつ検討していく必要があると考えております。  道徳教育等の必要性、教育改革必要性についてのお尋ねでありますが、家庭でも学校でも社会でも、およそ人間が生きていく上で最低限守らなければならない規範が存在します。現在、その最低限の規範が崩れつつあり、それが社会の病理現象の根本的な原因となっているのではないでしょうか。戦後教育を振り返ったときに、私は、まずこのことを率直に反省すべきものと考えております。  そこで、目指すべき教育改革の方向性として、日本人として持つべき豊かな心、倫理観、道徳心をはぐくむ教育への転換を図るとともに、何よりも命を大切にする心、そして思いやりの心、奉仕の精神、日本文化、伝統を尊重する気持ち、国や地域を愛する気持ちを育てることが重要であると考えております。最も大切なのは、人間としての全人教育であります。  教育改革を進めるに当たっては、社会の病理の原因を根本から退治していくという思いで、単なる制度、仕組みの改革にとどまらず、基本にのっとって徹底的に取り組んでいく所存であります。  残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣臼井日出男君登壇
  65. 臼井日出男

    ○国務大臣(臼井日出男君) 安倍議員にお答えを申し上げます。  少年犯罪の現状、増加の原因及び対処方法に関するお尋ねがございました。  御指摘のとおり、最近の少年犯罪の情勢を見ますと、少年刑法犯の検挙人員は平成八年以降増加に転じ、殺人、強盗など凶悪犯の検挙人員もここ数年間増加の傾向が認められる上、特に最近においては社会の耳目を引く凶悪重大事件が相次いでおり、まことに憂慮すべき事態にあると考えております。  このような少年による犯罪情勢の悪化には多くの要因が考えられますが、最近の非行少年の特徴として、規範意識の低下、対人関係の希薄化等が指摘をされているところでございます。  法務省は、これまでも、少年非行防止対策の一環として、検察庁における少年事件の適正な処理、少年の福祉を害する事犯に対する厳正な処分と科刑の実現、非行少年の改善、更生に必要な矯正保護機能の充実強化等に意を用いてきたところでございまして、今後とも、これらの諸点について、関係省庁と連携を図りつつ、最善の努力を傾けてまいりたいと考えております。  今回の少年法改正が事実関係の解明に十分なのかというお尋ねがございました。  本法案は、少年審判に対する国民の信頼を確保するために、事実認定手続の一層の適正化のための所要の法整備を図るものであり、これによって事案の解明が一層的確に行われ、少年審判が適正に行われることに資するものと考えております。  少年法の抜本的な改正についてのお尋ねがございました。  少年犯罪には多くの要因がありますことから、これに対処するには、教育、文化、社会福祉その他各般にわたる総合的な行政施策と相まって、国民全体の幅広い理解と不断の努力が必要であると考えております。  少年法のあり方につきましては、非行のある少年について、その改善と健全な成長をどのように実現するかという基本的な問題にかかわるものであり、種々の議論があることから、これらの議論も踏まえつつ、総合的な観点から検討してまいりたいと考えております。  以上であります。(拍手)     〔国務大臣中曽根弘文君登壇
  66. 中曽根弘文

    ○国務大臣(中曽根弘文君) 安倍議員にお答えをいたします。  少年犯罪の現状についての認識と、その原因及び対処についてのお尋ねでございますが、先ほどからもお話ございますように、現在、少年非行は戦後第四のピークにあります。また、少年犯罪の凶悪化の傾向も見られるなど、大変憂慮をしておりますし、私としても大変厳しく受けとめております。  これら少年非行の原因また背景はさまざまでありまして、家庭のしつけや学校のあり方、さらに地域社会における連帯感の希薄化、青少年を取り巻く環境の悪化などの要因が複雑に絡み合い発生しております。  文部省といたしましては、先日、省内にプロジェクトチームを発足させまして、最近の少年による犯罪についての分析や対応策の検討を開始したところでもございます。今後とも、規範意識の徹底を初め、心の教育の充実、全国子どもプランの推進、家庭教育への支援施策の充実などを通じ、学校、家庭、地域社会が一体となった取り組みが推進されるよう努めてまいります。  さらに、道徳や倫理を教えるための教育の必要性、教育改革必要性についてのお尋ねでございますけれども、人間として生きていく上で最低限守らなければならないルールなどの規範や市民としての倫理について、幼少時から子供たちにしっかりと身につけさせることが大変重要であると考えております。  このため、家庭や地域社会、学校が一体となって、子供たちに正義感や倫理観、生命を尊重する心、思いやりの心などをはぐくむ心の教育に取り組むことが重要であると考えております。  同時に、子供の問題行動等が憂慮すべき状況となっていることの背景には、子供たちを取り巻く環境の著しい変化社会全体のモラルの低下があり、そうした意味で、我々大人一人一人が、反省をし、自覚をし、子供の手本となるような行動や態度をとることが重要であると考えております。  こうした点も含めまして、次代を担う子供たちが、豊かな創造性を持ち、たくましく心豊かに成長できるよう、教育改革に全力で取り組んでまいる決意でございます。(拍手)     —————————————
  67. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 西村眞悟君。     〔西村眞悟君登壇
  68. 西村眞悟

    ○西村眞悟君 私は、自由党を代表いたしまして、少年法の一部を改正する法律案に関し、総理大臣並びに法務大臣に質問いたします。  現下の驚愕すべき少年犯罪の多発と凶悪化を目の当たりにして、被害者の悲しみと憤り、そして社会不安ははかり知れないものがございます。ここにおいて、政治はもはやこの問題に目をつぶることは許されず、従来の少年法をこれ以上放置せず、その改正に取り組まねばならない段階に参りました。  したがって、審議に当たってまず第一に総理にお答えいただきたいことは、少年法改正案をこの時点に至って内閣が提出されている以上、現下の国民的問題意識の高まりにかんがみ、その信託にこたえるべく、現国会において必ずや成立せしむるべしとの決意を持って、内閣総理大臣また自民党総裁として本国会に臨まれておるのか、国民にそう約束されるのかということであります。  次に、少年法の理念についてお尋ねいたします。  少年法第一条は、「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」と規定しています。つまり、保護処分優先主義と言われる原則であります。これは、少年の犯した犯罪を罰することを主目的とするのではないという考え方であります。  しかしながら、秋霜烈日の厳しさこそ真に人間を鍛えるということは経験的真理でもあるわけでございます。特に可塑性に富む少年であるからこそ、社会規範、人倫の定めを厳しく五体にしみ渡らせることも必要なのでございます。  したがって、単に保護処分だけでは対応し切れない現下の状況にかんがみ、少年法の目的に、刑罰法令の実現、つまり刑事法手続を加味する検討が必要であると考え、それが少年法における社会正義実現にほかならないと思いますが、総理及び法務大臣の御見解を伺います。(拍手)  次に、少年法適用年齢と刑事処分年齢についてお尋ねいたします。  我が国は、適用年齢二十歳未満、刑事処分年齢は十六歳であります。しかしながら、平成十年の十六歳未満の起こした殺人、強盗等の凶悪犯罪は五百九十六件でございます。これらの犯罪は刑事処分を免れ、詳しい処分の内容社会には不明であります。社会は、なぜ犯罪が起こったのか、加害者が社会に復帰すればどう対処すべきなのか、わからないのでございます。この現状こそ、少年犯罪の実態と国民感情に甚だしく乖離していると言わざるを得ません。  先進各国の少年の定義は、イギリス、ドイツ、フランスが十八歳未満、アメリカもほとんどの州で十八歳未満であります。刑事処分最低年齢は、イギリスは十歳、ドイツは十四歳、フランスは十三歳、アメリカで十五歳、ただし重罪は例外扱いであります。  少年の更生のための理念として、甘やかすことだけが優先されてはなりません。その意味からも、少年の定義を十八歳に引き下げ、刑事処分年齢もさらに引き下げるべきことは、改正案を出す以上当然のことと考えますが、総理の考えをお伺いいたします。  次に、少年の審判方式についてお伺いいたします。  少年法二十二条は、審判は、懇切を旨として、和やかにこれを行わねばならないとあります。これは一体何を審判するための原則でありましょうか。事実の認定なのか、量刑なのか。仮に、少年が山形マット事件のように事実の認定で争っている場合、その少年がその犯罪を犯したのか犯していないのか、裁判官がどうして和やかに認定できるのか、理解に苦しむのであります。  事実の認定のためにそれにふさわしい形式が採用されるべきことは、少年事件も成人事件も何ら違いはありません。なぜなら、無実の少年があやふやな事実認定でクロとされれば、その少年の人生に取り返しのつかない傷を与え、反対に犯罪を犯した少年がシロと認定されても、決してその少年の人生のためにはならないからでございます。  したがって、重大な犯罪や事実が争われている事件については、こと事実認定に関しては、少年事件の特殊性はないわけでございますから、成人と同様の審理方式を採用すべきと考えますが、法務大臣の御見解を伺いたいと存じます。  以下、各論は委員会での審議にゆだねるとして、最後に、総理大臣に次の観点から質問させていただきます。  世人の耳目を驚かす少年事件がしょうけつをきわめる現状は、もはや単に少年法の改正をもって足る次元ではなく、政治はもっと深くかつ深刻に、我が国戦後五十年という時代の一つの回答が少年犯罪という形をとって我々の眼前にあらわれているのだと把握しなければなりません。その意味で、事態はまことに深刻で、政治社会全体の自己点検と自己改革を促すものでございます。  戦後の社会と教育は、確かに子供たちに、先ほどからの答弁にありましたように、命のとうとさとお互いの人権を尊重する思いやりの心を教えてきたと言えるでしょう。政治も、ダッカ・ハイジャック事件のように、一人の命は全地球よりも重いという哲学をもって対処してきたのであります。けれども、これらは決して間違ってはいないけれども、戦後よって立ってきたこれらの哲学とまさに正反対の結果が少年犯罪においてあらわれ、少年が虫よりも価値なきもののように人間の命を奪うのを我々はどう理解すればよいのか、それが我々に突きつけられている課題なのでございます。  ここに、戦後五十年の政治が見ぬようにして回避してきた空洞が見えるのでございます。その空洞とは、祖国に対する愛を教えてこなかったし、我々自身その愛を自覚して生きてこなかったことからくる暗黒でございます。  私は、最近、人間愛の構造と体系を端的に示したすばらしい文章に出会いました。それは、二千年前のローマの政治家である文人キケロの次の文章であります。  あらゆる人間愛の中で、最も重要で最も大きな喜びを与えてくれるものは、祖国に対する愛である。父母への愛、その大切さは言うをまたないくらい当然であり、息子や娘たち、親族兄弟、そして友人たちへの愛も、親愛の情を恵んでくれることで、人間にとって大切な愛であることはだれでも知っている。だが、これらすべての愛ですらも、祖国への愛に含み込まれるものなのだ。祖国が必要とするならば、そしてそのために君に立ってほしいと求めるならば、祖国に一命をささげることに迷う市民はいないであろう。  これがキケロの言葉であります。  戦後、我が国は、他のだれでも知っている愛だけが愛であり、それらすべてを含み、それに位置づけを与える祖国に対する愛を見ないようにしてきたがゆえに、結局、自己愛や周囲に限定される愛を超えた愛があることを子供たちに教えられなかった。そして、その結果、教えてきたつもりの父母への愛や隣人への愛や思いやりも、結局位置づけを失い、砂粒のようにばらばらになって見失ってしまったのではないか。  私は、少年事件は、このような空洞から生み出された戦後という時代の結果であると認識せざるを得ないのですが、総理は政治家としていかに少年犯罪、非行のよって来る時代の病理を把握しておられるのか、お答えいただきたいと存じます。  しかるに、政治は、危機において祖国に対する愛を実行するための組織をいまだ国防省ともせず、軍隊とも呼ぶことを避けてきておる。さらに、昨年十一月、民家に落ちるのを避けるため身を犠牲にして墜落し、殉職した二人の自衛官を英雄とたたえようともしない。  我が国政治は、いずれ我が国を背負うであろう少年に、キケロの言う最も重要な祖国に対する愛を教えてこなかったがゆえに、結局それに含まれる隣人への愛も我々政治は教えることができなかったのであり、政治は、キケロの言う、またそれと二千年の時空を超えて一致している我が国家の教育勅語の言う人倫の基本たる愛の構造を無視して、戦後安易に政治自身が基軸なく漂ってきたその因果が教育の荒廃を招いてきたと思われて仕方がないのでございます。  政治政治の場で少年に対する重大な責任を負わねばなりません。しかし、政治は、またこの議場にいる我々は、その責任を果たしてこなかったのではないかと痛感するものでありますが、この点に関し総理の御所見を承り、質問を終えます。(拍手)     〔内閣総理大臣森喜朗君登壇
  69. 森喜朗

    ○内閣総理大臣(森喜朗君) 少年法改正法案の成立に対する決意についてのお尋ねがありました。  本法案は、少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図るとともに、被害者に対する配慮を実現するものであり、政府といたしましては、重大な少年犯罪が多発しているところから、法整備の重要性、緊急性にかんがみ、国会において十分御審議をいただき、御理解を得て、一日も早く成立させていただきたいと考えております。  少年法の目的についての御提言がありました。  現行少年法は、少年の健全育成を目的とし、保護処分のほか、一定の場合には刑事処分を相当として検察官送致できるなど、多様な処分を用意しておりますが、少年法のあり方については、さまざまな議論もあることから、これらを踏まえて検討する必要があると考えております。  少年法における年齢区分のあり方についてお尋ねがありました。  この問題につきましては、国民の関心も高く、また、さまざまな議論がありますことから、これらの議論も踏まえ、重要な課題として、かつ早急に検討していく必要があると考えております。  少年事件の多発と凶悪化に対する認識についてお尋ねがありました。  累次申し上げておりますとおり、最近の少年非行情勢は極めて憂慮すべき状況にあり、この背景につきましては、少年自身の問題、家庭や地域社会の問題、周囲の環境の問題等が複雑に絡み合っているものと考えております。  また、少年に対する政治責任についてお尋ねがありました。  少年非行の問題につきましては、社会全体で取り組むことが不可欠と考えておりますが、私といたしましても、何よりも命を大切にする心、思いやりの心や奉仕の精神、日本の文化、伝統を尊重する気持ち、国や地域を愛する気持ちなど、日本人として持つべき豊かな心をはぐくむことが重要であると考えており、かかる観点から、子供の健全育成を図るべく全力を尽くす所存であります。  残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)     〔国務大臣臼井日出男君登壇
  70. 臼井日出男

    ○国務大臣(臼井日出男君) 西村議員にお答えを申し上げます。  少年法第一条の目的についてお尋ねがございました。  現行少年法は、少年の健全育成を目的とし、個々の事案、当該少年の特性に応じ、少年院送致や保護観察等の保護処分を行うとともに、一定の少年につきましては、事件を検察官に送致して刑事処分を行うことができることといたしております。このような刑事処分の範囲の問題も含め、少年法のあり方につきましては、種々の御議論も踏まえ、検討する必要があると考えております。  年齢問題についてお尋ねがございました。  近時、少年法における年齢区分のあり方国民の重大な関心事となっていることは、十分認識をいたしております。この問題につきましては、刑事司法全般において少年をいかに取り扱うべきかという基本的な考え方にかかわるものでございまして、種々の議論があることから、これらの議論をも踏まえつつ、重要な課題として早急に検討していく必要があるものと考えております。  重大な事件等については成人と同様の審理方式を採用すべきではないかというお尋ねがございました。  現行法における少年審判の手続は、少年の適正な保護の目的に沿った柔軟なものでございまして、このような手続の本質からして、刑事訴訟のような厳格な手続規制を導入すると、柔軟さを阻害し、教育の場でもある審判を硬直化させる要因にもなりかねないなどということから、成人と同様の審理方式を採用するということについては慎重な検討を要するものと考えております。(拍手)     —————————————
  71. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 保坂展人君。     〔保坂展人君登壇
  72. 保坂展人

    ○保坂展人君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、少年法等の一部を改正する法律案について質問を行います。  少年事件、中でも直近に起きた十七歳の少年による二つの凶悪な事件愛知県の女性殺人事件とバスジャック事件は、社会に深い衝撃と恐怖を与えました。事件によってとうとい生命を奪われた被害者の御冥福を心より祈るものです。  総理に伺います。  今回の二つの事件は、十七歳の少年が起こした、事実認定も比較的容易な事件です。家庭裁判所で行われる少年審判で成人同様の刑事処分相当とされた場合には、検察官に逆送され、刑訴法により成人同様の扱いを受けることとなります。  解散そして総選挙を意識して、政府・与党が少年法をやらないわけにはいかないというムードが高まっていると伝えられますが、一体今回の二つの事件と少年法の問題点にどのような相関関係があるのでしょうか。政府提出の改正案は、少年審判の事実認定の適正化という極めて技術的な問題として提起されていると私ども理解をしているだけに、率直な答弁をお願いしたいと思います。  政府・与党内では、刑事罰年齢の引き下げの検討も始まっているようです。少年法論議を日本社会の将来を見据えたしっかりとしたものにしていくためには、この半世紀にわたってアメリカで起きたことに対して十分な調査と検証が加えられる必要はないでしょうか。  戦後につくられた少年法のモデルは、一八九九年、アメリカのイリノイ州に少年裁判所が設置された、ここにモデルがあると言われています。少年に対しての保護育成を基本とした司法から、アメリカが刑事罰年齢引き下げを初めとした厳罰化への道をたどってきたことは、既に多くの皆さんが御存じのとおりです。その結果、少年犯罪は減少し、とりわけ凶悪な殺人等の少年犯罪は抑止されているでしょうか。ここが大切なポイントだと思います。  少年法論議をしっかりやろうとするなら、アメリカ社会の百年、とりわけこの半世紀の少年犯罪対策の推移を調査し、検証するのは当然の前提です。刑事政策、司法行政において現在もアメリカを参考にすることの多い政府がこの作業をどこまで進めているのか、明らかにしていただきたいと思います。  厳罰化への道が少年犯罪を減少させ、凶悪事件を抑止したことが明らかなデータがあればお示しいただきたい。この半世紀、結果として少年による凶悪犯罪がアメリカ社会で増加をしているのかどうか、この事実もお調べいただきたいと思います。  アメリカとは犯罪大国でもあります。司法省の統計によれば、百八十万人が刑務所で日々を過ごしている国です。先日来日した犯罪者の社会復帰施設アミティの責任者によれば、施設入所者の七割相当が少年時代に犯罪を犯し始め、再犯を繰り返してきたと言います。保護育成から厳罰化へ転換していった結果、巨額の刑務所維持費用を抱えて、財政の面からも見直しが迫られている現状を把握されているでしょうか。  法務大臣に伺います。  一方で、日本の少年犯罪はこの半世紀、どのような推移をたどってきたでしょうか。少年による殺人事件のピーク、この殺人に限って言えば、おおよそ四十年前、四百四十八件とそのピークを刻み、十五年ほどたって百件以下になって、現在、この十年も百件以下という件数でいえば、減少傾向にあると言えるのではないでしょうか。この五十年、少年法によって少年犯罪がふえたり凶悪化したと言える根拠があればお示しいただきたいと思います。  さらに、日本の少年犯罪の再犯率はどの程度でしょうか。諸外国に比べて、その数字は低いのか高いのか。また、保護育成を基本とした少年法の理念に不足や誤りがありますか。  今後の半世紀にかかわる重大な判断をする前に、国内外の少年犯罪の推移をしっかり検証する必要があるのではないでしょうか。  一九九〇年に採択された少年非行のためのガイドライン、通称リヤド・ガイドラインは、少年非行の防止は、むしろ幼児期から子供の人格を尊重し向上を目指すこととし、子供を社会の中で積極的な役割を担うパートナーとして位置づけて、幼児期からの福祉を中核にすること、非行者、逸脱者とすることは、かえって少年の好ましくない行動を持続させる、こういう認識を持つべきだとしていることに、政府はどのように学んだのでしょうか。  再び総理にお聞きしたいと思います。  一九九六年の国連子どもの権利委員会、この場で、こういうふうに日本政府は主張をしています。刑罰や非難を加えるよりも、保護、教育を行うことが健全育成に役に立つ、検察官が責任追及をするという刑事手続のような対立構造は望ましくなく、裁判官が直接少年に働きかけ、教育的な働きかけが行える審判構造の方がふさわしい。少年法の理念を国際社会で訴えてきた日本政府の立場に、お変わりはありませんか。  総理並びに文部大臣に、次にお尋ねしたいと思います。  成績がよく、また学校や地域の評価も高い子供たちの中に恐るべきやみの部分が広がっていることを私たちは感じています。刑事政策の問題というよりは、すぐれて硬直し切った画一的な日本の教育システムの問題がこの背景にあると考えませんか。  九八年の国連子どもの権利委員会は、次のような勧告を日本政府にしています。高度に競争的な教育制度が存在し、その結果として子供の身体的、精神的健康に悪影響が生じているので、これを解消すべく適切な処置をせよ。  少年たちが偏差値競争で心身をすり減らし、そして魂を削られて、人間らしさを失い、未来への絶望とせつな主義に支配された危機的状況にあるのは、決して凶悪犯罪を犯す少年たちだけの問題ではありません。多くの子供たちが、もはや危機的状況にあると言っていいのでしょう。  まさか総理は、便所掃除の奨励、教育勅語の復活でこの事態を乗り切ろうと本気でお考えなのでしょうか。  総理、予告をしておりませんが、一点伺いたい。よろしいでしょうか。  教育勅語、よいところも悪いところもあった。よいところについては既にお話しになっているようですが、悪いところは何かあったのでしょうか。予告をしておりませんので、もしお答えになれればお答えいただきたいと思います。  自民党の亀井政調会長は、教育改革など小難しいことを言わずに、全国の学校の先生に悪い子はぶん殴れと大臣告示をするように文部大臣に進言をした、こういうふうに伝えられていますが、文部大臣はどのように受けとめられたのでしょうか。体罰を奨励し、教育現場に精神注入棒を配付する計画を立てるなどの提言がこれからあるかもしれないので、念のために伺っておきたいと思います。  最後に、法務大臣に伺います。  少年犯罪の重大事件の被害者が訴える情報開示は、犯罪被害者の知る権利の保障の観点から、大変に重要な要求であると考えます。今回の少年法改正案には、事件終局の後、被害者、その遺族に、少年の氏名、決定の主文、理由の要旨を通知するとしたものの、至ってこれは不十分です。少年審判がどのような刑事証拠のもとで行われ、事実がどう認定されたのか、思い切った情報開示をすることと、少年法の保護育成の理念が矛盾することはありません。  また、重大事件を起こした少年が十分その罪を自覚し、深い反省とともに更生の道をより整える必要もあります。
  73. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 保坂展人君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  74. 保坂展人

    ○保坂展人君(続) 検察官の関与、抗告権の付与の問題、観護措置期間の延長、裁定合議制の導入、弁護人、付添人関与の不十分などの問題を抱えており、この少年法改正案には賛成できない、反対であるという立場を表明して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣森喜朗君登壇
  75. 森喜朗

    ○内閣総理大臣(森喜朗君) 最近の少年による二つの凶悪重大事件と本法案の審議との関係に関するお尋ねがありました。  法案審議の時期等につきましては、国会でお決めいただくことでありますが、私といたしましても、このような重大な少年犯罪が多発している実情も踏まえれば、適正な処分を行うための前提となる少年審判の事実認定手続を一層適正化するための今回の少年法の改正は喫緊の課題であると考えております。  厳罰化と少年犯罪の抑止効果との関係に関するお尋ねですが、犯罪件数はさまざまな要素により増減するものであって、これについて特定の原因を挙げることは困難であると考えられます。  今回の少年法の改正は、事実認定手続の一層の適正化を図るものでありますが、御指摘のアメリカにおける主要な少年犯罪は、一九九四年のピークを境に減少の傾向にあり、同年前後にワシントンDCを含め四十一州において少年の刑事訴追を容易にする法律が制定されたものと承知いたしております。  なお、今回の改正においては、事実認定手続の適正化とともに、被害者に対する配慮を実現するものであることを重ねて申し添えたいと思います。  少年法の理念についてお尋ねがありました。政府として、少年の健全育成という少年法の理念そのものを維持することに変わりはございません。  教育システムの転換についてのお尋ねがありました。  近年の少年非行の深刻化に対しては、家庭、学校、地域社会等が協力し、子供たちに基本的な倫理観や規範意識、道徳心を身につけさせることなどに一丸となって取り組んでいくことが必要であります。また、学力だけがすぐれた人間を育てるのではなく、創造性豊かな立派な人間を育てることを目指す教育への転換を図ることが必要であり、入学者選抜についても、生徒の多様な能力、適性等を評価することができるよう、一層の改善工夫が必要であると考えております。  残余の質問については関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)     〔国務大臣中曽根弘文君登壇
  76. 中曽根弘文

    ○国務大臣(中曽根弘文君) 教育システムに問題があるのではないかとのお尋ねでございましたけれども、子供の問題行動等が憂慮すべき状況となっていることの背景には、子供たちを取り巻く環境の著しい変化社会全体のモラルの低下など、さまざまな要因があるものと考えております。  教育改革推進に当たりましては、これまでの学校教育制度における行き過ぎた平等主義や画一性を是正し、また、子供たち一人一人の個性、能力を尊重した、さらに、達成感の味わえる、また、楽しく学ぶことができる教育へと転換を図ることが重要と考えております。今後とも、子供たちがその個性に応じて多様な選択ができ、やり直しのきく学校制度実現を目指し、教育改革に全力で取り組んでまいります。  次に、偏差値競争などについてのお尋ねでありますけれども、近年の少年非行の原因、背景はさまざまでありまして、これらの問題については、家庭、学校、地域社会が協力して、一丸となって取り組んでいく必要があると考えております。先ほどから申し上げているとおりであります。  特に、家庭や学校におきましては、命の大切さや物事の是非、善悪など、基本的な倫理観をしっかりと幼児から身につけさせることが重要であります。また、清掃活動を実施している学校もありますけれども、こうした活動などを通して、人のためにも全体のためにも奉仕する精神をはぐくむことが重要であると考えております。  また、過度の受験競争につきましては、子供たちの豊かな人間性をはぐくむことを困難にするなどの問題があります。子供たちにゆとりを与え、生きる力をはぐくむためには、その緩和を図ることが必要であると認識をしております。このため、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化の観点から、入学者選抜の一層の改善、工夫に努めてまいります。  次に、学校における体罰についてのお尋ねでありますけれども、学校教育法第十一条におきましては、教育上必要があると認められるときは、校長及び教員は、児童生徒に懲戒を加えることはできますけれども、体罰を加えることはできないとされております。  文部省といたしましては、従来から、児童生徒の指導に当たり、教員が体罰を用いることのないよう、各教育委員会指導してきているところでありますが、問題行動に対して教育的な意味から適切な懲戒を行うことは大切であると考えております。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣臼井日出男君登壇
  77. 臼井日出男

    ○国務大臣(臼井日出男君) 保坂議員にお答えを申し上げます。  戦後の少年犯罪の件数の推移についてお尋ねがございました。  少年犯罪の全体的な動向につきましては、昭和二十六年、三十九年及び五十八年の三つのピークを経て、昭和五十九年度以降減少傾向にあった少年刑法犯検挙人員が、平成年度以降増加傾向に転じております。殺人の検挙件数につきましては、昭和二十六年と昭和三十六年において四百四十八件とピークを迎えております。凶悪事件につきましては、強盗を中心として、平成七年を境に増加の傾向に転じております。  現行少年法と犯罪増加ないし凶悪化との関係についてのお尋ねがございました。  犯罪の発生件数及びその内容はさまざまな要因により左右されるものでございまして、これについて特定の原因を挙げることは困難であると考えております。  少年の事件の再犯率についてお尋ねがございました。  再犯率につきましては、制度の異なる諸外国と単純に比較をすることは困難でありますが、我が国におきましては、平成年度中に保護観察が終了した者の再犯率は、保護観察処分を受けた少年につきましては一六・七%、少年院を仮退院した者につきましては二四・三%となっております。  保護育成を基本とした少年法の理念に不足や偏りがあるかとのお尋ねでございますが、少年法の理念が今後とも維持されるべきと考えることには変わりはございません。  国内外の少年犯罪の推移の検証についてのお尋ねでございますが、少年犯罪の推移については、今後とも必要な範囲で掌握してまいりたいと考えております。  お尋ねのリヤド・ガイドラインの点につきましては、少年の健全育成についての基本的な考え方を示したものと理解をいたしております。  被害者に対する情報開示についてのお尋ねがございました。  本改正法案では、被害者等に対する配慮の一環として、審判の結果等について被害者に通知をする制度を盛り込んでおります。このような少年審判における被害者に対する配慮のあり方につきましては、少年の健全育成という少年法の目的を踏まえ、少年審判が非公開とされていることとの調和を考慮しつつ検討していく必要があると考えております。(拍手
  78. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  79. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  森  喜朗君         法務大臣    臼井日出男君         外務大臣    河野 洋平君         文部大臣    中曽根弘文君         厚生大臣    丹羽 雄哉君         農林水産大臣  玉沢徳一郎君         運輸大臣    二階 俊博君         郵政大臣    八代 英太君         国務大臣    清水嘉与子君         国務大臣    保利 耕輔君  出席政務次官         法務政務次官  山本 有二君