○吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、
内閣提出の
消費者契約法案について、
経済企画庁長官並びに外務
大臣に
質問いたします。
法案に先立って、まず堺屋長官のディジタルアーカイブズ社問題について
質問いたします。
堺屋長官の私設秘書と言われている伊東明子さんが代表取締役を務め、堺屋長官の所有するビルにオフィスを構えるディジタルアーカイブズ社が、経企庁が著作権を持つ経済白書のDVD化を請け負い、さらに、経企庁長官提唱による
政府のインターネット博覧会の有識者懇談会技術部会にも同社の古瀬取締役が入っています。
大臣がみずから
責任を持つ経済白書や博覧会に、公募や競争入札でない形で請負や参画をさせることは、極めて不明朗な
行政の私物化とマスコミに
指摘されても言いわけのできない問題ではありませんか。堺屋長官の明確な答弁を求めます。
日本共産党は、
消費者契約法を
制定するからには、その
目的は、物品等を販売する
事業者とそれを購入する
消費者との間の
情報や知識や
交渉力の歴然とした
格差があることを踏まえて、
消費者契約における
契約の
過程や
契約の
内容を適正なものにさせることにより、
消費者の
利益を守り、
国民の消費生活の安定や向上に役立つものとなるようにするべきだと
考えております。その立場から
質問をいたします。
まず第一に、
契約に当たっての
情報提供についてです。
その一つは、
消費者が
内容をよく理解してから
契約するためには、社会通念上一々書面の交付をするには及ばないというものを除いて、
事業者が
消費者に対して、
契約の締結前に、原則として、その
内容をきちんと示して、それを書面で交付することが当然のこととして必要であると
考えます。この書面を交付することを
義務として
法律に明記するべきではありませんか。長官の答弁を求めます。
二つ目に、
契約内容に関して、
事業者は、
消費者契約を結ぶ前に、
消費者が
契約内容についてよく理解できるように、親切に、必要で十分な
情報を
提供するべきであります。
堺屋長官は、昨年十一月五日の商工
委員会で、
事業者と
消費者との間には
情報や
交渉力などの構造的な
格差が存在する、このことを考慮して
消費者のための新しい
システムづくりに取り組むことが重要であると述べました。
そうであるなら、
情報格差を埋めるために、
契約についての
情報を
提供するように
事業者に
義務づけるべきでありますが、逆に
政府案では、
消費者に
契約内容について「理解するよう努める」ことを求めています。これでは、
事業者の
情報提供に対する
責任をあいまいなものにしてしまうのではありませんか。
政府案にある、
消費者に理解することを求める
努力義務規定は削除して、
事業者の
情報提供義務こそ明記するべきであります。答弁を求めます。
ここで、外務
大臣に
質問します。
アメリカでは、判例法を条文の形で整理した第二次
契約法リステートメントにおいて、業者が
消費者に
情報提供をしないことは、不実表示、つまり事実と違うことを示したのと同じ誤りと見なされます。
ヨーロッパにおいては、フランスの
消費者法典は、財の販売者または
サービスの
提供者である職業人は、
契約締結以前に、
消費者に対して財または
サービスに関する
基本的な特性について知らしめなければならないと
規定しています。
またドイツでは、
契約締結上の過失の法理に基づいて、業者には、
重要事項の開示や
説明、通知などの付随
義務があるとされています。
そしてイギリスでは、慣習法の中で、最高信義の
契約として、優越した地位にある場合、
情報提供の
義務に違反することは、相手側に
契約の
取り消し権を生じさせるとされています。
このように、欧米諸国では、
情報の
提供の
確保やその
義務は、判例で明示されたり、立法化されているのではありませんか。答弁を求めます。
国民生活審議会消費者部会長の落合誠一東大教授は、経済企画庁の雑誌の中で、欧米諸国の
消費者は我が国の
消費者よりもより厚く保護されているのであり、したがって、グローバルスタンダードから見ても我が国の現状は問題であると述べています。真に具体的かつ包括的な
民事ルールの必要性を強調するならば、欧米諸国では当たり前となっている
情報提供の
義務づけを明確にするべきであります。重ねて経企庁長官の答弁を求めます。(
拍手)
第二に、
消費者が
契約を取り消す場合の問題です。
その一つは、
政府案が、
事業者の不当勧誘
行為を脅迫に近い不
退去や監禁などに狭く限定していることについてです。
しかし、実際によく発生しているのは、羽毛布団の勧誘をめぐる催眠商法での威迫や、職場へしつこく電話をかけての通信教材つき資格商法での執拗な勧誘などの
困惑行為です。これら
被害の実態に即して、威迫や
困惑など
消費者の判断を誤らせるものを広く不当勧誘
行為として、このような場合、
消費者がその
契約を取り消すことができるようにするべきであります。答弁を求めます。
二つ目に、
政府案で
消費者に告げなければならない
重要事項としているのは、
商品、
サービス、権利などの
内容や
取引条件に限定しているために、モニター商法や霊感商法などのような悪質商法を規制できません。
我が党は、
契約する
商品、
サービス、権利などの性質、品質、
内容、
取引の仕組み、
消費者負担の
内容、支払い手段などはもとより、その
取引全体を
重要事項として網羅できるようにするべきだと
考えます。
重要事項というのを、
取引全体を把握するために必要な
事項として、あらゆる悪質な商法に
契約の取り消しができるようにするべきではありませんか。
さらに、
政府案は、
消費者に不
利益になることを告げなかった場合に取り消すことができるとしていますが、そのことで問題になるのは、
故意に告げなかった場合に限定しています。しかし、それが
故意であったと
消費者が
立証することは極めて困難なことであり、
故意ということは外すべきであります。答弁を求めます。
第三に、無効となる
契約条項についてであります。
政府案では、無効とするのは限られた
条項ですが、日弁連は、そもそも無効とすべき
条項を列挙してブラックリストとし、また、
事業者が不当でないことを
立証しない限り無効とする
条項を列挙してグレーリストとして整理しています。
消費者トラブルの実態を踏まえたこのような提案は、率直に受けとめて、
法律として明記するべきでありますが、なぜ採用しないのか、明確に答えられたいと思います。
第四に、
消費者団体による差しとめ請求権についてです。
三月九日に横浜地裁では、ココ山岡ダイヤ買い戻し商法に対して、破産を予期しつつ販売し、多くの顧客から多額の代金をだまし取った
責任は重いとして、被告全員に実刑判決が言い渡されましたが、
裁判は長
期間を要し、
被害者の皆さんはいまだに救済されていません。また、豊田商事事件、オレンジ共済事件などを見ても、こうした
消費者被害の特徴は、同種かつ大量に発生しています。
このような事件を未然に食いとめるためには、
消費者被害の救済や
被害の防止に
消費者団体として当たれるように、その差しとめ請求権を
法律に明記するべきであります。答弁を求めます。
第五に、
契約取り消しの時効の問題です。
日弁連の調査によりますと、
内容に不審を持った相談が圧倒的に多い時期は、
契約直後よりも、
契約締結時から
経過時間が一年以上が多いというのが実態です。
したがって、日本共産党は、取り消し
期間は十年とし、さらに、
消費者にわかる方法で
情報提供をしなかったり、事実に該当しないことを言って
消費者の判断力の不足につけ込んだり、不当勧誘などの
行為があった場合は、その
行為があったことを知ったときから三年間
取り消し権を行使しない場合に時効になるよう改めるべきだと
考えます。また、威迫や
困惑に当たる
行為の場合には、その
行為がやんだときから三年間とするべきであります。答弁を求めます。
さて、
消費者トラブルをめぐる状況は、苦情、相談件数で、単なる問い合わせを除いたものは、一九九八年に約四十五万件ですが、これは、一九八五年の約十八万件から十三年間に二・五倍、二十七万件増加したことになります。その相談
内容の八〇%が
契約に関する
トラブルです。しかし、実際に消費生活センターなどの相談窓口に来る割合は二・一%ですから、圧倒的多数の方は泣き寝入りしてしまっているのが実情です。
こうしたもとで、
悪徳商法と取り組んでいる弁護士や
国民生活センターなどの相談員の皆さんは、現行法を駆使し、判例の積み重ねや相談活動で、
消費者の
利益を守る実績を積み上げてきています。そうした教訓も生かして、私が今具体的に提起したことも盛り込んだ
実効性ある
消費者契約法とすれば、
裁判所における
紛争処理、また
裁判外の
紛争や相談などの処理の規範になり得るものと
考えるものであります。
日本共産党は、
消費者契約法が、
消費者の皆さんの期待にこたえて
実効性のある積極的な
法律になるように、各会派の皆さんと共同して取り組んでいくことを表明して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣堺屋太一君
登壇〕