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2000-02-09 第147回国会 衆議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御報告することがあります。  永年在職議員として表彰された元議員二階堂進君は、去る三日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  二階堂進君に対する弔詞は、議長において去る七日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。     〔総員起立〕  多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰された元自由民主党副総裁前衆議院議員従二位勲一等二階堂進君は しばしば国務大臣の重任にあたり 内政外交に多大の貢献をされ また政党政治の進展につとめられました その功績はまことに偉大であります  衆議院は 君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます      ————◇—————  裁判官弾劾裁判所裁判員辞職の件  裁判官訴追委員辞職の件
  4. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) お諮りいたします。  裁判官弾劾裁判所裁判員大口善徳君から裁判員を、また、裁判官訴追委員富田茂之君及び中井洽君から訴追委員を、辞職いたしたいとの申し出があります。  右申し出をそれぞれ許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 伊藤宗一郎

  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) つきましては、裁判官弾劾裁判所裁判員及び裁判官訴追委員選挙を行うのでありますが、この際、あわせて、検察官適格審査会委員予備委員北海道開発審議会委員及び国土審議会委員選挙を行います。
  7. 野田聖子

    野田聖子君 各種委員等選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
  8. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 野田聖子君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。  議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員平田米男君を指名いたします。  次に、裁判官訴追委員に       西川 知雄君 及び 井上 一成君 を指名いたします。  ただいま指名いたしました訴追委員のうち、西川知雄君につきましては同予備員でありましたので、この際、新たに裁判官訴追委員予備員旭道山和泰君を指名いたします。  なお、予備員の職務を行う順序は第五順位といたします。  次に、検察官適格審査会委員予備委員西川知雄君を指名し、漆原良夫君の予備委員といたします。  次に、北海道開発審議会委員丸谷佳織君を指名いたします。  次に、国土審議会委員一川保夫君を指名いたします。      ————◇—————  平成十二年度における公債発行特例に関する法律案内閣提出)、租税特別措置法等の一部を改正する法律案内閣提出)及び法人税法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明  国務大臣発言平成十二年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) この際、内閣提出平成十二年度における公債発行特例に関する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案について、趣旨説明大蔵大臣から求め、平成十二年度地方財政計画についての発言並びに内閣提出地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、趣旨説明自治大臣から求めます。大蔵大臣宮澤喜一君。     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました平成十二年度における公債発行特例に関する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案趣旨を御説明申し上げます。  まず、平成十二年度における公債発行特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  平成十二年度予算につきましては、我が国経済が厳しい状況をなお脱していないものの緩やかな改善を続けている中にあって、これを本格的な回復軌道につなげていくため、経済運営に万全を期すとの観点に立って編成したものであります。この結果、一般歳出規模は前年度当初予算に対して二・六%増の四十八兆九百十四億円となり、一般会計予算規模では八十四兆九千八百七十一億円、前年度当初予算に対して三・八%の増加となっております。  こうした中で、公債につきましては、財政法規定により発行する公債のほか、二十三兆四千六百億円に上る多額の特例公債発行せざるを得ない状況にあります。  本法律案は、こうした厳しい財政事情のもと、平成十二年度財政運営を適切に行うため、同年度における公債発行特例に関する措置を定めるものであります。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、平成十二年度一般会計歳出財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債発行することができることとしております。  第二に、租税収入等の実績に応じて、特例公債発行額をできる限り縮減するため、平成十三年六月三十日まで特例公債発行を行うことができることとし、あわせて、同年四月一日以後発行される特例公債に係る収入は、平成十二年度所属の歳入とすること等といたしております。  次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、最近の経済情勢等を踏まえ、本格的な景気回復に資する等の観点から、民間投資等促進及び中小企業ベンチャー企業振興を図るための措置を講ずるとともに、社会経済情勢変化等に対応するため所要措置を講ずるものであります。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、民間投資等促進を図るため、住宅ローン税額控除制度特定情報通信機器即時償却制度適用期限延長等を行うこととしております。  第二に、中小企業ベンチャー企業等振興を図るため、エンゼル税制対象株式に係る譲渡益課税特例及び同族会社留保金課税特例創設等を行うこととしております。  第三に、社会経済情勢変化に対応するため、年齢十六歳未満の扶養親族に係る扶養控除加算措置の廃止、相続税の延納の利子税軽減等措置を講ずることとしております。  その他、特別国際金融取引勘定に係る利子非課税制度土地の登記に係る登録免許税課税標準特例被災代替資産等特別償却制度などについての期限延長、既存の特別措置整理合理化等を行うこととしております。  次に、法人税法の一部を改正する法律案につきまして御説明いたします。  本法律案は、商法及び企業会計における金融商品評価に係る時価法の導入を踏まえ、法人税における有価証券評価方法について、売買目的有価証券については時価により事業年度末の評価を行うこととする等の改正を行うほか、所要整備を行うものであります。  以上、平成十二年度における公債発行特例に関する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)     —————————————
  12. 伊藤宗一郎

  13. 保利耕輔

    国務大臣保利耕輔君) 平成十二年度地方財政計画概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案趣旨について御説明申し上げます。  まず、平成十二年度地方財政計画策定方針について御説明申し上げます。  平成十二年度においては、依然として極めて厳しい地方財政現状等を踏まえて、歳出面においては、経費全般について徹底した節減合理化推進する一方、経済新生への対応、地域福祉施策充実等当面の重要政策課題に対処し、歳入面においては、地方税負担公平適正化推進地方交付税所要額確保を図ることを基本としております。  具体的には、地方税については、個人住民税最高税率引き下げ及び定率減税並びに法人事業税税率引き下げ等の恒久的な減税を引き続き実施するとともに、平成十二年度固定資産税評価がえに伴う土地に係る固定資産税税負担調整措置等所要措置を講ずることといたしております。  また、地方財政運営に支障が生じることのないようにするため、通常収支における地方財源不足見込み額については、地方交付税の増額及び建設地方債発行等により補てんするとともに、恒久的な減税に伴う影響額については、国と地方たばこ税税率変更法人税地方交付税率の引き上げ、地方特例交付金及び減税補てん債発行等により補てんすることとしております。  さらに、地域経済振興や雇用の安定を図りつつ、自主的、主体的な活力ある地域づくり住民に身近な社会資本整備、災害に強い安全な町づくり、総合的な地域福祉施策充実農山漁村地域活性化等を図るため、地方単独事業費確保等所要措置を講ずることといたしております。  以上の方針のもとに、平成十二年度地方財政計画を策定しました結果、歳入歳出規模は八十八兆九千三百億円、前年度に比べ三千九百八十四億円、〇・五%の増となっております。  次に、地方税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  平成十二年度地方税制改正に当たりましては、最近における社会経済情勢等にかんがみ、地方税負担軽減及び合理化等を図るため、平成十二年度固定資産税評価がえに伴う土地に係る固定資産税及び都市計画税税負担調整措置宅地等に係る不動産取得税課税標準特例措置等を講ずるほか、非課税等特別措置整理合理化を行う等、所要改正を行うことといたしております。  次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、平成十二年度分の地方交付税の総額につきましては、一般会計から交付税特別会計への繰り入れ、同特別会計における借り入れ等特例措置を講ずることにより、二十一兆四千百七億円を確保することとしております。  また、単位費用につきまして、所要の改定を行うとともに、合併市町村建設のための特例地方債の償還に要する経費を算入することとし、また、地方分権推進計画に沿って、交付税算定方法簡明化の一環として、一部の経費について、新たに単位費用を設定することとしております。  以上が、地方財政計画概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案趣旨であります。  速やかに御審議の上、御可決賜りますようお願いを申し上げます。(拍手)      ————◇—————  平成十二年度における公債発行特例に関する法律案内閣提出)、租税特別措置法等の一部を改正する法律案内閣提出)及び法人税法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明並び国務大臣発言平成十二年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  14. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨説明及び発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。鳩山由紀夫君。     〔鳩山由紀夫登壇
  15. 鳩山由紀夫

    鳩山由紀夫君 民主党を代表して質問いたします。  私は、今、民主主義あり方について思いをいたしております。  小渕総理、あなたは、長い歴史の中で培われた国会運営ルールを粉々に破壊してしまいました。代表質問与党だけで行い、参議院では委員会審議なしで本会議採決を行い、野党抜き予算審議に入りました。特に、参議院で強行された委員会審議なしの本会議採決は、憲政史上かつて例のないものであります。それだけではありません。行政府国権最高機関である国会を従わせるという、議院内閣制の原則をも破壊してしまいました。国会を私物化し、じゅうりんをしてしまった。  小渕総理、あなたは恐ろしい人だ。正月、あるパーティーで、あなたは、日本の歴史の中で新しい千年紀のスタートのときに権力者であった者は二人いる、私小渕恵三と、一〇〇〇年のときの藤原道長だと言われました。藤原道長は、御承知のとおり   この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば と詠むほどに栄華をきわめ、権力に酔った人物であることは余りにも有名であります。このよう人物自分をなぞらえておられるとしたら、あなたもまた権力に酔っているとしか言いようがないじゃありませんか。(拍手)  あなたは、解散権自分にあると豪語されていますが、もしや主権まで自分にあるとお考えではないですか。主権者は、総理大臣ではなく、国会議員でももちろんなく、国民であることを全く自覚しておられないのじゃないですか。  今や民主主義が死のうとしています。国会運営ルールが踏みにじられ、国権最高機関の長である議長官房長官の強要に屈し、良識の府と言われる参議院の権威が泥にまみれ、野党がその存在を否定されました。小渕総理野党存在しない国会をあなたはよしとしたのですか。野党のいない国会は、大政翼賛政治そのものじゃありませんか。あなたには、野党のいないその空席の後ろに国民の姿が見えなかったのでしょうか。  自自公は、私たち民主党国会審議を拒否したと非難しています。しかし、本当に審議を拒否したのはどちらか。あなた方が私たちに呼びかけたのは、形だけの審議にすぎないではありませんか。あなた方の民主主義は、まやかしの民主主義じゃありませんか。私たちは、真の民主主義の土俵が崩された国会には出ていくわけにはまいらなかった。しかし、議会人にとって、議会に出ていかないということは、また非常につらい選択でもありました。  これ以上審議の拒否を続ければ、私たちまでもが、小渕自公政権と同じよう議会制民主主義を軽んじてしまうことになりかねません。何よりも、小渕総理にこれ以上この国を任せることは、国民にとって大きな不幸です。私たちは、小渕自公政権に占拠された国会国民の手に取り戻すために、今こそ反転攻勢に転じながら論戦を挑んでまいります。これは、民主主義議会政治を守るための戦いであります。  国会がここまでじゅうりんされたのはなぜか。今国会において、小渕総理は二枚の手形を切られましたね。一枚は、冒頭解散はしないという公明党に対する手形であり、もう一枚は、衆議院定数削減法案を冒頭処理するという自由党に対する手形であります。この二枚の手形を同時に落とすには、国会運営ルール議長の裁断も無視して突っ張るしかありません。まさに連立枠組みを揺るがしたくないという一心で、議論もせずに採決を強行しなければならなかったのです。  今国会は、依然として厳しい状況が続く我が国経済を何とかして再生軌道に乗せることを最大のテーマとするものであり、国民生活に密着した来年度予算是非を議論する場です。しかし、なぜ予算よりも衆議院定数削減法案を優先しなければならなかったか。ここには、主権者たる国民存在など全く眼中になく、政権枠組みを維持することしか考えていないという小渕総理の思惑が明確にあらわれているじゃありませんか。  そもそも自自公には、国民の信任を受けた政権であるという正統性がありません。自民党自由党公明党は、新進党時代からお互いに誹謗中傷合戦を繰り広げ、熾烈な戦いを展開していました。一昨年の参議院選挙直後の臨時国会において、小沢一郎自由党党首は、小渕総理に対する代表質問の中で、「もともと自民党に対しては、衆議院においても国民は過半数を与えておりません。そうである以上、野党政権をゆだねるか、衆議院解散・総選挙を断行し、国民の信を得た正統政権に道を譲るのが憲政常道であります。」と述べておられます。  ところが、その年の秋、自由党は突如として自民党との連立に踏み切ることを発表しました。自自連立には当然批判が集中し、公明党神崎代表は、小渕総理に対する代表質問の中で、「総理、国政の基盤である政権が、ほとんどの国民夢想だにしなかった自民党自由党による連立政権である以上、一日も早く景気回復の道筋を立て、しかるべきときに衆議院解散し、国民にその信を問うのが憲政常道考えます。」とさえ述べておられます。  自民党に対しこのような厳しい批判を繰り返していた自由党公明党が、今や自自公連立政権として、まさに国民夢想だにしなかった連立を組んでいることは、今世紀最後にして最大の疑問です。小沢党首神崎代表の論理で考えれば、自自公政権国民の信を得た正統政権ではなく、国民の信を問うのが憲政常道ということになるはずじゃありませんか。  このような経緯で誕生した自自公連立政権が、理念や政策で一致するはずがありません。その矛盾を覆い隠すために、自自公国会運営ルールさえ破壊してしまったのであります。(拍手)  ここで、小渕総理御自身の問題について一つだけお尋ねしなければなりません。  総理、あなたの政務秘書官は、既に死亡された地元の秘書からNTTドコモ株四千株を譲り受けたとして、現在二十五億円に上る巨額の財産を手にしています。亡くなった者から株を譲り受けるという世にも不可思議な主張を展開している秘書官NTTドコモ株入手疑惑について、あなたはどのように釈明するのか、明確にお答えください。  次に、民主党ネクスト・キャビネットを代表して、私たちはどのような国を目指すのかを国民皆様方に訴えるとともに、小渕総理施政方針に対して質問をいたします。  小渕自公政権は、保身と守旧の政治、すなわち総保守化政治を展開しています。二十一世紀を目前にして改革刷新が必要とされているときに、政官業癒着構造の上に立った、既得権益を死守するだけの総保守化政治はもはや時代おくれの遺物でしかありません。また、盗聴を合法化し、生まれたばかりの子供にまで番号をつけて管理するという国権主義国家管理強化路線に突き進む総保守化政治は、時代に逆行する権力押しつけ政治にほかなりません。  私たち民主党は、既得権益に縛られず改革刷新を断行することを声を大にして申し上げます。そして、そのための健全な選択肢を国民に提示いたします。それが今この時代民主党存在する意義であり、民主党の使命だと考えます。  私たちは、大きく三つの政策思想を主張いたします。  第一に、私たちは、現在世界の潮流となっておりますニューリベラルと連携いたします。  ニューリベラルは、結果の平等ではなく機会の平等を保障し、自立した個人が公正、透明な市場競争を行う社会、すなわち、頑張る者が報われる社会を目指します。同時に、病気や年齢、性別など、本人が責任を問われる必要のない部分で苦しむ不条理については、政府の公的な責任セーフティーネットを用意します。市場経済のもとでの社会政策の重視、これが私たちの目指すニューリベラルであります。  第二に、私たちは、都会サラリーマンなど中間層を育てる政治を目指します。  市場競争至上主義は、強い者はより強く、弱い者はより弱くという社会的ひずみをもたらしました。今や、米国では、経営者従業員所得格差は四百倍にも広がっていると言われています。我が国においても、格差の拡大とともに、社会の主軸を担っている中高年の自殺者が増大するなど、中間層に厳しい現実が招かれています。とりわけ都会サラリーマンなど中間層に位置する人々は、子供の教育や親の介護などさまざまな負担を背負い、リストラの危機におびえながら重税感にさいなまれているのが現実であります。にもかかわらず、ますますスポットライトが当たらない存在となってしまっています。  このような新しい不条理に対し、私たちは立ち向かっていかなければなりません。経済市場にゆだねる市場経済は大いに認めながら、社会をも市場にゆだねる市場社会は決してつくってはならないと考えます。これが友愛の市場経済であります。(拍手)  第三に、私たちは、自立と自尊の外交を取り戻します。  ニューリベラルは、グローバリズムと調和したしなやかな愛国心を日本人が持つべきだと主張します。それは、偏狭な民族主義でも、反米、反安保でもありません。  日米安全保障条約が調印されてから四十年がたちました。日米安全保障体制は、我が国安全保障政策の最も重要な柱であることは間違いありません。しかし、日米相互信頼と敬意を欠いたものとなりつつあることもまた事実であります。私たちは、日米同盟関係を再設計し、地位協定思いやり予算の見直し、米軍基地段階的縮小のための交渉を進めます。私はそれを平成条約改正と名づけます。  また、アジア近隣諸国との信頼関係を構築し、中長期的には、アジア太平洋における地域的な安全保障枠組みを構築します。  先日、徳島市において、吉野川第十堰の可動堰計画に対する是非を問う住民投票が実施され、圧倒的多数の住民が反対の意思表示をしました。この計画は、そもそも建設必要性が乏しいばかりか、環境への悪影響も避けられないものであり、白紙撤回すべきものであることは疑いようもありません。  しかし、問題はそれだけではないのです。公共事業あり方だけでなく、民主主義そのものが今問われているのです。  民主党は、住民投票は、地域のことは地域で決めるための仕組みとして、積極的な位置づけをしていくべきだと考えます。代議制住民投票は対立するものではなく、相互に補完するものであります。私たちは、住民投票法制化に取り組んでまいります。  しかし、政府与党の要人からは、そんなものに判断していただく気はないとか住民投票などくそ食らえだとか、そんな暴言が聞こえてきます。総理もそのとおりだとお考えなのか、あるいは、それは大変な暴言だとお考えか、お聞かせを願いたい。あわせて、中山建設大臣は今でもそのお考えにお変わりはないのか、改めてお尋ねいたします。  我が国で実施されている公共事業は五十兆円を超え、主要先進国の中では例を見ない公共事業大国となっています。吉野川第十堰の可動堰計画に象徴されるように、住民意思に反する公共事業必要性の乏しい公共事業は、全国至るところに見られます。これらのむだな公共事業は、一方では財政破綻危機をもたらし、一方では環境破壊をもたらしています。その流れにストップをかけるには、今すぐ公共事業改革を断行しなければなりません。  そもそも、小渕自公政権が行っているのは公共の名には値しません。公共事業とは、その名のとおり、広く社会公共の利益を図るための事業であり、小渕自公政権がばらまいているのは、特定の業界を潤すためだけの事業にすぎません。私たち民主党は、今国会公共事業見直し国会と名づけ、公共事業コントロール法案を提出いたします。その上で、少なくとも五年間で二割、十年間で合計三割削減という数値目標を定め、公共事業の質、量ともの削減を目指します。同時に、環境破壊をやめて美しい自然を回復するため、循環型社会を目指す法案を提出します。  小渕総理、あなたはいつまで公共事業の大盤振る舞いを続けるおつもりか、いずれは数値目標を定めて公共事業の削減を断行する気はお持ちなのか、具体的にお答え願います。中山建設大臣及び二階運輸大臣にも同じくお答え願いたい。  小渕総理、あなたがむだな公共事業を乱発して将来にツケを回し、八十四兆円も借金をふやした結果、二〇〇〇年度末には国と地方の長期債務は六百四十五兆円に達します。これは国民一人当たり五百十二万円という途方もない金額です。我が国財政は、今や主要先進国中最悪の水準となりました。現在の歳入歳出構造では、毎年三十兆円もの国債を発行し続けなければなりません。このままでは、財政は間違いなく破綻します。  総理は、景気を本格軌道に乗せるという目的と財政再建に取り組むという重要課題の双方を同時に追い求めることはできない、二兎を追う者は一兎をも得ずと述べられました。しかしながら、総理経済政策は一兎をも得ていないではありませんか。二期連続マイナス成長が確実視され、十二月の勤労者の実収入は六・一%も減少し、消費も四・七%落ち込みました。失業率は再び悪化し、昨年の失業率は過去最悪の四・七%を記録したばかりか、高校生の就職内定率も過去最悪の数字であります。親の失業で高校を退学する生徒も急増しています。悲しいことに、失業や生活苦から自殺をする方々も、昨年初めて三万人を超えたではありませんか。今や自殺遺児が社会問題化しているほどです。  私たちは、景気回復なくして財政再建なし、財政規律なくして景気回復なしと考えています。財政規律を重視しながら経済構造改革を進めることが我が国経済が生き延びる唯一無二の道であり、予算編成に当たってもこのような理念が根底になければなりません。同時に、財政健全化のビジョンを明確に示すことこそ、今この時代に生きる政治家の大きな責任であります。にもかかわらず、世界一の借金王と開き直る小渕総理の姿には、国民はあいた口がふさがりません。  総理のおひざ元である自民党内にも財政規律を訴える声が高まっていますが、総理及び宮澤大蔵大臣は、そのような声には、まさに不見識きわまるとお答えになるおつもりですか、財政健全化のビジョンをそれともお示しなさるおつもりですか、そのお気持ちは全くないんですか、はっきりとお答えください。  世界の歴史に例を見ないほどのスピードで高齢化が進んでいます。多くの国民は将来不安の高まりを抑えられません。私たち民主党は、安心できる社会の構築のため、社会保障の三本柱である年金、医療、介護の諸制度について抜本改革や基盤整備を進めてまいります。特に、年金については、現行の給付水準は決して引き下げないことをお約束します。  小渕総理は、将来にわたり安定的で効率的な社会保障制度の構築に全力を挙げると表明されましたが、では、一体、昨年末の介護保険の制度の根幹を揺るがす自自公の迷走ぶりは何だったのでしょう。保険料なき保険方式とか税負担なき税方式などという議論には、理念のかけらも見られないではありませんか。介護対策と称する一兆円のツケ回しは選挙対策以外の何物でもないという国民批判に対して、総理はどうお答えになるのか、お聞かせください。(拍手)  前国会で、年金の給付水準を切り下げ、支給開始年齢を引き上げる法案が衆議院で強行採決されました。成立すれば、四十二歳の人で千二百万円もの減額となります。国民の不安をあおる法案を成立させることがなぜ安心への挑戦と言えるのか、総理の弁明をお聞きしたい。  自自公は、医師の圧力を受け、この御時世にもかかわらず、診療報酬の引き上げを決定いたしました。医療制度と医療保険制度の抜本改革は先送りし、自民党政策責任者に巨額の献金を行っている医師会には甘い蜜を、患者に対しては負担増を押しつける。なぜこのような不条理がまかり通るのか、総理の明確な説明を求めたい。  国民の多くが望んでいることは、強い経済の再生です。そのかぎとなるのがIT、すなわち情報技術革命と規制改革であります。  私たち民主党は、小渕総理ようにIT革命の進行にただすがりつくのが精いっぱいといった状況ではなく、積極的にIT革命をリードするため、集中的に資源を投入し、強い経済の再生に取り組んでまいります。  サービス化が進むであろうこれからの我が国経済の主人公は中小零細事業者です。廃業率が開業率を上回ってしまう現状を変え、やる気のある人がどんどん新規事業を起こすことができるような税制、金融改革を行うとともに、競争促進、消費者重視の立場に立って、一層の規制改革を進めてまいります。  小渕総理は、金融システムの改革や産業競争力の強化、規制緩和など、構造改革に積極的に取り組んできたと胸を張っておられます。しかし、果たしてそうでしょうか。  一昨年の金融国会で、民主党は金融再生関連法案を提案しましたが、それはひとえに、ペイオフ凍結が解除されるまでに不健全な金融機関を整理し、金融不安を解消することが目的であり、だからこそ、公的資金の投入も認めたのであります。しかしながら、自自公は、金融審議会の最終結論を安易にひっくり返し、ペイオフ凍結解除を一年間先送りしてしまいました。一体なぜこのようなことになったのでしょうか。  結局、この問題は、金融不安をいまだに解消できていないことを如実に証明するものであり、金融システムの改革をさらにおくらせるものであることは疑いがありません。総理の公約違反の責任は極めて重かつ大であります。総理説明を求めます。  自民党内に、かつては規制緩和の旗振り役を務められた武藤元総務庁長官が中心となって、規制緩和を見直す会が発足したというではありませんか。その活動内容は、既得権益を持つ業界を擁護し、規制緩和にブレーキをかけようとするものだと伝えられています。  総理は、このような構造改革に逆行する党内の動きをただ見過ごすおつもりですか。もしそうならば、総理の言葉は全くの偽りということになりますが、それをお認めになるんですか。続総務庁長官の御見解もあわせてお尋ねをいたします。  変化のスピードが劇的に速まった今日、小渕自公政権のまさにスローワールドでは、我が国は、変革のできない国として歴史の中に埋もれてしまうでありましょう。時代は今、ダイナミックな改革、刷新を断行する民主党のファストワールドを求めているのであります。  今国会から憲法調査会がスタートいたします。二十一世紀の新しいこの国の形をどのようにするのか、私たちの構想力が今問われています。主権者である国民を基本に据えて、国民投票や住民投票、首相公選制のあり方などについて真剣な議論をするとともに、国と地方あり方についても大きく見直していくことが求められています。  私たちは、新しい民主主義をつくるという歴史的な仕事を請け負っているのであります。民主党は、未来への責任を果たす政党として、憲法のあり方について大いなる議論を沸き起こして、積極的に議論をリードしていく覚悟を持っています。  小渕自公政権の行き着くところ、それは民主主義の破壊、財政の破壊、改革の破壊でしかあり得ません。私たちの祖先が営々とつくり上げてきたこの国の運命は、今や残念ながら風前のともしびであります。  この国のあらゆるところにモラルハザードが蔓延しています。政治家と金にまつわる話が後を絶たず、余りにも言葉に責任を持たない政治家がちまたにあふれ、政治家も官僚も経営者も失敗の責任をとらない。そのような大人たちを日々嫌というほど見せつけられている子供たちが果たして立派な大人に育つのでしょうか。小渕総理、あなたはこの国を残念ながら堕落させた張本人なのです。一体、どこが富国有徳なのでしょうか。あなたには教育などを語る資格はありません。  小渕総理は、解散権を有するのは自分だけだと思い込んでおられるようです。しかし、権利には必ず義務がつきものであるということを思い起こしていただきたい。小渕総理は、国民の信任を得ていない暫定総理のままであります。正統性のない政権民主主義を破壊し、財政を破壊し、改革を破壊しようとしている今、小渕総理には、解散権を行使し、国民に信を問う義務があるのです。日本を救うためには、選挙によって選ばれた新しい政府を樹立するしか道はありません。民主党がその重責を担う政党となることを強くここに表明して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  16. 小渕恵三

    ○内閣総理大臣小渕恵三君) 鳩山由紀夫議員にお答え申し上げます。  冒頭、議員から定数削減法案の処理と国会状況について御指摘がありましたので、この場で改めて私の考えを申し述べます。  定数削減法案につきましては、国家公務員の削減、地方議会の定数削減、民間の経営合理化への取り組みなどを踏まえ、また、国民世論の声を十分勘案して、国会においてまず改革を進めることが大切であると考えます。衆議院議員の任期が本年十月に到来する中で、先般、国会においてこの問題が対処されたことは大変意義の深いことと考えます。  そもそも、衆議院議員の比例定数の削減は、昨年六月に自自両党からの法案が提出されて以来、三回の国会にわたって各党間で議論されてきた課題であります。今国会においても、予算案の国会提出がおくれざるを得ない中で、国会を早期に開会し、定数削減法案の審議に全力を注がれ、また、衆議院議長の累次の御努力などもあったと承知をいたしております。  本法案については、こうした経緯を経て、衆参両院において正規のルールに従って手続を進められ、処理されてきたものと承知をいたしております。国会ルールが破壊されたとの御指摘は、全く当たらないと考えます。(拍手)  次に、自自公連立政権について御指摘がありました。  これまで申し述べてきたところでありますが、私は、日本が危機的な状況に陥る中で、政治の安定が何よりも大事であると考え政策を共有できる三党は、広範な政策合意をもととして連立内閣を樹立いたしました。これが国民や国家のためであるということは、責任ある三党に共通する確信であります。  三党の協力により、昨年の通常国会及び臨時国会において、経済安全保障政治行政改革を初め国政全般について大きな成果を上げることができました。今後とも、与党三党の強い結束のもとで景気の本格的回復と構造改革など必要な政策を遅滞なく推し進め、三党連立による成果を得たいと願うものであります。  私の秘書官の株式取得についてお尋ねがありました。  お尋ねの件は、週刊誌の記事に掲載されておりますが、秘書官本人からは、この記事は全く事実無根であり、一日も早く真相を明らかにするべく、二月三日、名誉毀損罪として週刊誌の編集人と執筆者を刑事告発した旨、報告を受けているところであります。  本件株式の取得の経緯としては、既に一昨年の衆議院予算委員会において答弁しておりますが、昭和六十三年に、現在の会社の前身のまたその前身に当たる会社の株式を、議員御指摘の方とは全く別の、当時、同社の役員をしている方から頼まれ、もとより正当な手続を経て譲り受けたものであり、何ら不適切なことはなかったと承知をいたしております。  権威ある国会の場において、何ら根拠を示すことなく本件を疑惑と決めつけ質問されたことは、まことに遺憾であります。(拍手)  吉野川第十堰に係る住民投票についてお尋ねがありました。  徳島市の住民投票結果を見ると、流域の治水上の安全のために固定堰である現第十堰を放置しておけないことが、十分理解されていないと思われます。本事業は、二市六町にわたる住民の生命と財産にかかわる問題であり、地域住民との対話を積み重ねていくことが重要であり、その具体的な進め方につきましては、治水を担当する建設大臣が責任を持って対処いたします。  公共事業の削減についてお尋ねがありました。  財政再建は重要な問題でありますが、十二年度予算につきましては、経済運営に万全を期すとの観点から、その総額について前年度当初予算と同額を確保しております。  また、その内容につきましては、配分に当たって、我が国経済の発展、国民生活の向上に向けて、社会資本整備の面で緊急かつ優先的に取り組むべき課題は何かという見地から、新たな発展基盤の構築を目指し、物流効率化による経済構造改革の推進環境対策、少子高齢化対策、情報通信の高度化といった我が国の直面する政策課題に対応した重点化を図っております。  さらに、その実施に当たりましては、費用対効果分析を活用した事業評価を引き続き厳格に適用するとともに、公共工事のコスト縮減などに積極的に取り組むことにより、効率性、透明性の確保に努めてまいります。  財政構造改革の進め方についてのお尋ねがありました。  私は、極めて厳しい財政状況を重く受けとめており、財政構造改革という重要な課題を忘れたことは片時もありません。  しかしながら、私が常々申し上げておりますとおり、今、景気の本格的な回復と財政再建という課題の双方を同時に追い求めることはできない、二兎を追う者は一兎をも得ずとなってはならないと考えておるわけであります。  我が国経済ようやく最悪期を脱し、緩やかな改善を続けている中で、私は、ここで景気の足元を固めることなく財政再建に取りかかるという過ちを犯すべきではないと考えます。むしろ、今重要なことは、せっかく上向きかかってきた景気を本格的な回復軌道に乗せることであります。  我が国経済が低迷を脱し、名実ともに国力の回復が図られ、それにより財政、税制上の諸課題について将来世代のことも展望した議論に取り組む環境を整え、その上で財政構造改革という課題に立ち向かってまいりたいと考えております。  昨年秋に決定をいたしました介護特別対策についてのお尋ねでありますが、これは、与党三党による申し入れを重く受けとめ、国民の皆様に新しい制度や負担になれていただくまでの間の経過的な激変緩和措置として取りまとめたものであり、本年四月から介護保険法を円滑に実施するために必要な措置であると考えております。  年金改正についてのお尋ねがありました。  今回の改正案では、将来世代の過重な負担を防ぐという見地から、制度全般にわたる見直しを行い、将来最も負担が重くなる時点において、年収の二割程度に抑えることとしたものであります。  一方、給付につきましては、確実な給付を約束するとの考え方に立ち、改正後も現役世代の手取り年収のおおむね六割の年金水準を確保することができるものとしており、高齢者の方々の生活費をほぼ賄えるものと考えております。  この改正を実現することにより、老後を安心して暮らせる年金制度を構築してまいりたいと考えております。  診療報酬の引き上げと患者負担に関するお尋ねでございました。  今回の診療報酬改定は、小児医療、救急医療の充実、さらにはリハビリテーションや在宅医療の充実など、国民にとって良質かつ効率的な医療サービスを提供するために必要な改定として、実質〇・二%の引き上げを行うこととしたものであります。  こうした診療報酬の改定や老人の患者負担について、月額上限つきの定率一割負担制を導入することなどにより、抜本改革に向けて第一歩を踏み出したものと考えております。  ペイオフの解禁時期の問題につきましては、与党間における真摯な議論の末、昨年末、一年延長することが適当である旨の合意がなされたところであります。  本件につきましては、政府といたしましても、我が国経済を確実な安定軌道に乗せるためには、一部の中小金融機関について、経営の一層の実態把握を図り、その改善を確実なものとすること等により、より強固な金融システムの構築を図る必要があるとの観点から、与党間の合意も踏まえ、ペイオフ解禁の一年延長の措置をとることが適当と判断したところであります。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、平成十四年三月末までの間に、与えられた枠組みを活用して、さらに強固な金融システム構築を図るべく、最大限の努力を行うことが重要であると考えております。  規制緩和への取り組みについてのお尋ねでありました。  規制緩和は、我が国経済社会の抜本的な構造改革を進めていく上で極めて重要であるとの認識をいたしております。政府としては、規制緩和推進三カ年計画を着実に実施していくなど、規制緩和への取り組みにいささかの変更もなく、引き続き積極的に取り組んでまいる所存であります。  最後に、解散・総選挙についてお触れになりましたので、この場で改めて私の考えを申し述べます。  日本経済は、これまで各般の諸施策により、最悪期を脱し緩やかな改善を続けているとはいえ、自律的な景気回復に至っておりません。本格的な景気回復のために、そのかぎを握る平成十二年度予算の早期成立が何より必要であると考えております。  他方、衆議院解散は、実際上、内閣総理大臣に与えられた大権でもあります。あくまでも、国民、そして国家、このことを判断の基準に据えつつ、解散して国民の信を問うべき事態に立ち至ったと考えられるときには、これをちゅうちょすることなく断行すべきであると考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  17. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 財政改革についてどのようなビジョンを持っておるのかというお尋ねでございました。  総理施政方針演説にもございましたように、我が国経済は、最悪期は脱しましたけれども、まだまだ民需の力が弱い、国民消費と投資が非常に弱いということで、どうしても、この間の補正予算とこのたび御審議いただいております予算、もう一遍財政が後押しをせざるを得ないというのが基本的な判断でございます。  したがいまして、先ほど総理が言われましたように、この御審議いただいております予算におきましても、公共事業について、前年と同額、その上に五千億円の予備費を組んでおるということもそういう考え方でございますし、それから、預金保護のために四兆五千億円という巨額を国債整理基金特別会計に投入いたしておりますのも、こういう問題についてはこのたびの予算をもってほぼ処置を完了させたいという私どもの気持ちでございます。  ただ、公共事業につきまして先ほども厳しい御批判がありました。  公共事業の内容がいわば旧態依然であるということについては、私どももかなり深刻に自己批判をいたしておりまして、したがいまして、先ほど総理がお話しになられましたように、このたびの予算は、昨年の秋以来の構想であります四つの重点目標を新たに設けて、それに向かって編成をいたしております。  それは、先ほど総理も言われましたが、いわゆる構造改革のためのインフラになる施設、あるいは全体の環境対策、少子高齢化対策、そして情報通信に関する対策、これらは、長くなりますといけませんので省略いたしますが、例えばハブ空港であるとかダイオキシンであるとか地球温暖化であるとか、あるいは公共施設のバリアフリー化であるとかオプティカルファイバー施設のための空間の設定であるとか、そういうものでございますが、これらを合わせますと、全体で二兆円をちょっと超えることになりました。  したがいまして、九兆何がしの公共事業からいいますと、これは二割を上回っておりまして、前年対比で七・四%でございますから、かなり新しい工夫がなされておるということもどうぞ一度御検討を賜りたいと思います。  そういうことで、このたびの予算は、もう一遍景気刺激的な手助けをしなければいけないということからいたしましたが、しかし、おっしゃいますように財政は非常な危機に達しております。  なぜ早く財政再建政策を立てないかとおっしゃいますが、それは申し上げるまでもなく、我が国経済が確かに民間の活動で成長の軌道に入ったということの確認ができませんと、将来の計画のフレームワークができません。これは申し上げるまでもないことでございますけれども、第一、税収の見込みが立ちませんし、金利と国債発行との関係ができませんし、国際収支の見込みもできませんから、そういうもののない中で計画を立てるということは、実際上はなかなか難しいことでございます。  ただいまの予算から、しかし将来を展望いたしますと、例えば、先ほど申し上げましたように、預金保護のために四兆五千億円という計上をしておりますが、これはもう明らかに将来要らない金でございます。それから、不況が回復すれば、いろいろの不況対策は、確かにこれは落としてもいい項目になろうと思います。それらが将来の財政を軽くするアイテムでございますけれども、しかし、経済活動が回復いたしますと金利が上がるということは当然考えておかないとなりませんので、それは国債の負担にならざるを得ないと思います。  それからまた、景気が回復いたしますと税収の伸びを予想することができますが、税収の弾性値が仮に一・一であるといたしますと、三%の名目成長がありましても、税収増はまあ一兆、一兆五千足らずということでございますから、ここらだけではなかなか財政の収支ということが難しい上に、それに、いわゆる社会保障政策を通じての給付と負担との国民のコンセンサスが生まれませんと、なかなか将来の財政計画というものは立たないという問題がございます。  また、税制、財政といいますと、地方財政地方税制のことにも触れざるを得ませんから、それは恐らくは二十一世紀の初頭における我が国経済社会の全体の見取り図の中でなされなければならない作業であろう。  いろいろな二十一世紀の課題がございます中で、こういう財政でそれらの問題に対処することは非常に苦しいことでございますけれども、それはどうしてもなさなければならないことである、そういうフレームがかける時期になりましたら早速取りかからなければならない、今から心構えをいたさなければならない問題だ、そういうふうに承知をいたしております。(拍手)     〔国務大臣続訓弘君登壇
  18. 続訓弘

    国務大臣(続訓弘君) 鳩山議員にお答えいたします。  私には、規制緩和への取り組みについてお尋ねがございました。規制緩和は、我が国経済社会の抜本的な構造改革を進めていくために極めて重要な課題でございます。  政府としては、昨年三月に改定した規制緩和推進三カ年計画を着実に実施しているところであり、さらに、昨年十二月に提出された行政改革推進本部規制改革委員会の第二次見解の内容等を同計画最大限に盛り込み、本年三月末を目途に再改定することとしております。  政府としては、規制緩和への取り組みにいささかの変更もなく、引き続き全力を傾注してまいる所存でございます。以上です。(拍手)     〔国務大臣二階俊博君登壇
  19. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 鳩山議員にお答えをいたします。  公共事業についてでありますが、我が国経済社会の基盤をなす運輸関係の社会資本は、二十一世紀に向けた国際化の進展や経済構造改革に対応するため、ますますその必要性が高まっていると認識しております。特に、国家プロジェクトであります成田空港、中部国際空港、関西国際空港等の大都市拠点空港、さらに港湾では、横浜、大阪、北九州等の基幹的な国際物流港湾、整備新幹線や都市鉄道の整備、さらに地方においては、幹線から新幹線への乗り入れが可能となるフリーゲージトレーンの開発等を重点的に進める必要があります。  特に、運輸省の平成十二年度公共事業予算の策定に際しては、新規事業二十一、継続事業三十について、先ほど総理からも御答弁がございましたように、費用対効果分析を活用した事業評価を厳格に実施し、三事業について休止、一事業について見直しを行い、公表したところであります。  今後とも、国民に対する説明責任を果たしながら、効率性、透明性を高めるとともに、国民の皆さんの理解と協力をいただきながら公共事業の積極的な推進に努めてまいりたいと考えております。  なお、私は北海道開発庁長官も兼任しておりますが、きょうも雪に埋もれ、吹雪の中にある北の大地の皆さん、過疎地に生きる国民の皆さんが、公共事業の一層の推進により、国土の均衡ある発展に期待をされておられる事実もぜひ御理解をいただきたいことを申し上げておきたいと思います。(拍手)     〔国務大臣中山正暉君登壇
  20. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) 鳩山先生から私には二点の御質問がございました。  まず、四国の吉野川第十堰に係る住民投票についてのお尋ねでございますが、徳島市の住民投票結果を見ると、流域の治水上の安全のために固定堰である現第十堰を放置しておけないことが十分理解されていないと思われます。  広範囲な流域全体の治水に責任を持つ建設省といたしまして、従来に増して説明責任を果たす努力をいたしたい、かよう考えておりますし、今後は、種々の代替案も議論の対象といたしまして、対話を積み重ね、治水上の安全性を確保することに取り組んでまいりたい、かよう考えております。  二点目は、公共事業の削減についてのお尋ねでございますが、財政再建は重要な課題であると考えておりますが、住宅・社会資本整備も、安全で豊かな国民生活の実現や活力ある経済発展に不可欠でございます。  今後とも計画的かつ着実に整備を進めていくことが重要であると考えておりまして、平成十二年度予算については、我が国経済を新生し、本格的な回復軌道に乗せるとともに、豊かで活力ある二十一世紀の経済社会を構築するために、連携、交流を支えるネットワークの整備、本格的な少子高齢社会の到来に備えた生活空間づくり、環境への負荷の少ない経済社会の実現など、現下の政策課題に対応した事業を重点的に実施することといたしております。  また、公共事業の効率的、効果的執行と透明性の向上を図るため、コストの縮減、事業間の連携と費用対効果の分析を含めた新規事業採択時の評価、それから中止、休止も含めた実施中の事業の再評価などの施策を積極的に推進してまいりたいと存じます。  今後ともよろしくお願いいたします。(拍手)     —————————————
  21. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 岡田克也君。     〔岡田克也君登壇
  22. 岡田克也

    ○岡田克也君 民主党の岡田克也です。鳩山代表に引き続き、経済財政問題を中心に質問をします。  質問に先立ちまして、先ほどの小渕総理の答弁につきまして、二点、お伺いしたいと思います。  総理は、先ほどの鳩山代表の、国会運営ルールを破壊したとの指摘に対して、議会ルールに全く反していないと強調されました。そこには、おごる総理の姿しか見えません。例えば、衆議院議長の裁断を与党自民党が真っ先に拒否したということは、これは何の問題もないと総理はお考えなのでしょうか。お考えをお聞かせいただきたいと思います。  第二に、NTTドコモの問題であります。  総理は、秘書官が既に名誉毀損で裁判で訴えているということを理由に挙げられましたが、裁判で訴えたことは何の説明にもなりません。今重要なことは、国民が疑問に思っていることに対して率直に答える説明責任であります。今直ちに納得のいく説明ができないというのであれば、予算委員会等において、今後、総理が、国民が理解できるよう説明をされるようにお約束をいただきたいと思います。(拍手)  さて、今国民は、長い不況のトンネルの中で、いつ見えるともしれない出口を求めて苦しんでいます。この戦後最も深刻な不況の直接の原因は、言うまでもなく、平成九年の橋本内閣の九兆円の負担増であります。  橋本前総理は、歴史に残るこの経済大失政の責任をとって総理をおやめになりました。  小渕総理は、この橋本内閣において外務大臣という要職にありました。小渕総理が現在の不況を招いた大失政の責任を橋本前総理と共有すべき立場にあるということは明確に指摘しておかなければなりません。総理にこの点について反論があれば、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。  さて、まず来年度経済成長について質問します。  小渕総理は、施政方針演説において、設備投資や個人消費など民間主導の自律的景気回復を実現させるとの決意を述べられました。  しかし、一年前にも総理は同じようなことをおっしゃったことを覚えておられないのでしょうか。  昨年一年を振り返れば、米国は順調に経済成長を遂げ、アジア経済も予想以上に早く回復をしました。これだけの好条件がありながら、我が国経済は、民間需要への点火がなされないままでした。結局、処方せんが誤っているのではないですか。なぜ、同じことの繰り返しであるにもかかわらず、来年度は民間需要が回復するとお考えなのか、総理の見解をお伺いします。  次に、宮澤大蔵大臣にお聞きします。  宮澤大臣は、さきの予算委員会において、設備投資については慎重に見るべきと述べられました。むしろ個人消費主導の景気回復シナリオを考えておられるようで、四—六月期に消費の回復がはっきりしてくると述べられております。果たしてそうでしょうか。  好景気に沸く米国では、過去十年間、一人当たりの雇用者所得はふえていません。雇用者数の減少や一人当たりの所得の伸び悩みを見ると、消費主導の景気回復は余りにも楽観的に思えますが、宮澤大臣のお考えをお聞きします。  また、堺屋長官は、この個人消費主導の景気回復という考えに同調されるのか、お伺いをしたいと思います。  私は、民需主導の景気回復というのであれば、民間設備投資に期待するしかないと思います。  日本はマクロでは設備過剰ですが、マクロとミクロは違います。国際競争下にある企業は、その生き残りをかけて、情報化投資を中心とする設備投資をせざるを得ない状況にあります。これらの潜在的にある設備投資意欲を政策的に引き出すことが景気対策の重点であるべきであり、情報化投資を対象とした大型の投資減税を行うべきと考えますが、宮澤大臣の見解をお伺いします。  さて、国民は、単に目の前の不況に苦しんでいるわけではありません。この国の未来に対して大きな不安を抱いているのです。二十一世紀の日本が今よりも平和で希望に満ちた国であるのか、自分たち子供や孫が今よりも豊かに暮らせるのか、多くの人々が深刻に悩んでいます。その不安は、小渕総理がこの国のリーダーになったこの一年半の間に、大きく増幅されたのです。小渕総理がこの一年半に行ったことは、第一に、この国の財政を破綻一歩手前の状況にまで追いやったこと、第二に、やるべき構造改革を次々に先送りしたことです。  まず、財政の問題について質問します。  小渕総理は、施政方針演説において、「景気を本格軌道に乗せるという目的と財政再建に取り組むという重要課題の双方を同時に追い求めることはできない」と言われました。我が国経済の本格回復を待って財政構造改革という大きな課題に立ち向かいたいとも述べています。私には、この総理の二兎を追う者は一兎をも得ずの議論は、根本的に誤っていると考えられます。  以下、三点について質問します。  第一に、総理は、財政構造改革と財政再建を混同しているのではありませんか。財政構造改革がもし安易な増税や歳出の一律カットを意味しているのであれば、確かに今それを行うことは景気回復に悪影響を与えるでしょう。そのことは橋本政権において実証済みであります。しかし、これらは財政再建ではあったとしても、財政構造改革とは言えません。  私は、財政の構造改革とは、まさに歳出項目の構造にまで切り込んで本質的な改革を行うことだと考えますが、総理の言う財政構造改革とは一体何なのか、お聞かせいただきたいと思います。  例えば、公共事業予算を例として挙げれば、近い将来の少子高齢化社会や人口減少時代の本格到来を踏まえ、公共事業予算の省庁別シェアを大胆に変え、特定財源あり方について再検討する必要があります。現実にニーズの少ない事業が、単に国から予算が来るからという理由で実施されることのないよう公共事業予算地方分権化も極めて重要です。  私は、これらの構造改革を今行うことは、景気に対し何ら悪影響を及ぼさないばかりか、かえって、効率的な公共事業の実施によりその波及効果を高めることになると考えますが、総理はいかがお考えでしょうか、答弁を求めます。(拍手)  第二に、総理の言うように、我が国経済の本格回復を待って財政構造改革に取り組むという考えでは、永遠に財政赤字はふえ続けることになると考えます。財政構造改革を本格的に論議し立法するためには、数年間の真剣な議論と時間が必要です。景気がよくなってから取り組んでいたのでは、実行しようというときには既に景気は下降局面になっているかもしれません。少なくとも現時点においても、財政構造改革の真剣な議論が始まっていなければならず、総理の議論すら棚上げするような姿勢は、全く理解しがたいところです。総理の財政構造改革に取り組む決意をお伺いします。  第三に、八十五兆円の予算のうち三十三兆円を国債に頼るという来年度予算、今後、歳出伸び率がゼロでも毎年三十兆円の国債発行が必要だとの現実は、国民に将来の大インフレか大増税の予感を抱かせ、そのことが景気回復の足を引っ張る結果となっています。  つまり、総理が財政構造改革を先送りしていることが、国民に大きな将来不安を与え、景気回復をおくらせ、一兎をも得ずの結果になっていると考えます。むしろ今必要なことは、将来の財政構造改革のビジョンをしっかり示すことで、国民に将来に対する安心感を与えることではないでしょうか。総理に財政構造改革のビジョンをつくる決意があるかどうか、お伺いします。  以上、三点にわたり私が申し上げたことは、二兎を追う者は一兎をも得ずではなく、小渕総理ように、景気回復という一兎しか追わない者は一兎をも得ずであり、景気回復と財政構造改革の二兎を追う者は二兎を得るということであります。  これでも総理は、財政構造改革に今取り組むべきではないとお考えでしょうか。このままでは、小渕総理は、日本の財政を回復不能な状況にまで追いやり、日本の没落を決定づけた総理として、歴史に名前が残るでしょう。二兎を追う者は一兎をも得ずとの考えを取り消し、財政構造改革に正面から取り組むとの決意を改めてお聞きしたいと思います。  次に、小渕総理の構造改革先送りについて述べます。  橋本前総理は、六つの改革を内閣の最重要課題として取り組んできました。言うまでもなく、経済構造改革を初めとする構造改革の実現は、景気回復のための最も効果的な手段であり、今断固としてやり抜かなければならないことです。それぞれの改革が今どういう状況にあるのか、改めて確認したいと思います。  第一に、行政改革です。  中央省庁等改革基本法に基づき、二〇〇一年一月から新たな省庁体制が発足します。しかし、最も重要な課題である公務員数の削減については、大きな抜け道が残ったままです。  小渕総理は、平成十年八月の総理としての初めての所信表明演説で、十年で公務員の定数は二〇%、コストは三〇%削減すると約束されました。さらに、自民、自由両党の合意で、定数削減率は二五%に拡大されました。  しかし、その後の国会審議で明らかとなったように、この定員削減は、独立行政法人への移管による減少分も含むとされています。移管された人々は、公務員としての身分が保障され、かつ人件費も税金で手当てされるということに何ら変わりはありません。これでは、国民を欺いていると言われても仕方がないじゃありませんか。  それどころではありません。国の行政機関の職員の定員について、一〇%削減することが中央省庁改革基本法に定められています。しかし、この一〇%削減ですら、純減ではないという意見があります。すなわち、一方で一〇%減らしつつ、他の理由で一〇%以上ふやしても法律違反ではないというのです。これでは、何のための定員削減なんでしょうか。  コスト削減のための定員削減であったはずが、コストは全く減っておらず、単なる数合わせに終わっています。これでは、会社ならとっくに倒産しています。今後十年間で国の行政機関の職員の定員を純減ベースで一〇%減らすことを、今国民に対して明確に約束すべきではありませんか。小渕総理の明確な答弁を求めます。  第二は、社会保障制度改革です。  特に、医療制度の抜本改革は、平成九年に、二〇〇〇年度には医療制度改革を実現し、新たな制度を導入するとの当時の与党合意に基づき検討がなされてきましたが、結局、抜本改革は二年以上先送りされることが決定されました。  平成九年に二〇〇〇年度からの抜本改革が約束されたのは、言うまでもなく、健康保険法の改正により、医療費の国民負担増、一割の自己負担が二割に決まったこととの関係においてであります。私は、当時、厚生委員会の野党側筆頭理事を務めておりましたが、小泉厚生大臣も与党責任者も、明確に二〇〇〇年度までの抜本改革を約束しました。  しかしながら、医療制度の抜本改革はまたもや見送られ、高齢者の患者負担の増加が決められました。構造改革、抜本改革なくして負担増なしの約束は、またもほごにされたのです。  先日、社会保障制度審議会は、今回の医療制度抜本改革の先送りを厳しく批判するとともに、利害関係者を除く第三者で構成された臨時医療制度改革調査会の設置を提言しました。社会保障制度審議会は総理の諮問機関であり、これらの批判や提言は総理に対してなされたものであります。  総理総理はなぜ医療の抜本改革に取り組もうとしないのでしょうか。そして、異例とも言える社会保障制度審議会のこれらの批判と提言に対して、どうお考えでしょうか。答弁を求めます。  第三は、金融システム改革です。  金融システム改革は、二〇〇一年四月のペイオフ解禁を一つの目標に進められてきました。そのペイオフ解禁が突然、昨年末、延期になりました。宮澤大蔵大臣は、たびたび、ペイオフ解禁は予定どおりやると言いながら、与党三党の政調会長会議で延期が決まると、調整の中身について私が言うことはないと述べ、簡単にその結果を丸のみしてしまいました。与党政策責任者にすべてを任せるのでは、大臣とは一体何なのでしょうか。特に、ペイオフの問題は与党三党でも意見が分かれていただけに、宮澤大臣の対応には大きな疑問が残ります。  そして、この重要な問題に対し、小渕総理は外向けに全く発言していないのです。橋本政権の進めた改革の中で唯一実績があったとされる金融システム改革までもが先送りされてしまったのです。  宮澤大臣は、与党政策責任者との間でどのような議論をされ、なぜペイオフ解禁延期に賛成したのか、答弁を求めます。(拍手)  また、亀井自民党政調会長は、この問題は総理からすべて任されていたと述べたと伝えられていますが、総理は、ペイオフ解禁延期問題について、大蔵大臣や亀井自民党政調会長にあらかじめどのような指示をしていたのか、答弁を求めます。  今、六つの改革のうち、代表的なものを取り上げました。その他の教育改革や経済構造改革、全く進んでいません。すなわち、小渕政権の本質は、改革先送り政権なのです。  小渕政権が改革先送り政権であることの具体例をもう一つ挙げておきましょう。  総理は、今まで数多くの政策諮問機関をつくってきました。最初に鳴り物入りで発足したのが経済戦略会議です。経済戦略会議の報告書ができたときに、だれもが、小渕総理が報告書の実現のためのリーダーシップを発揮すると考えました。しかし、各省庁から批判が出るのを見るや、たちまち君子豹変し、文字どおりただの作文になってしまったのです。この戦略会議の中心人物であったある経済学者は、せっかくの提言を放置するなら、会議という名の器をつくるだけという意味で、箱物政治と呼ばれるだろうと述べています。  総理は、経済戦略会議の最終報告を、今後どのように各省庁を指導し実現していく決意か、答弁を求めます。  経済戦略会議、「二十一世紀日本の構想」懇談会、少子化への対応を推進する国民会議、ものづくり懇談会、社会保障構造の在り方について考える有識者会議、教育改革国民会議など、次々に箱物をつくりながら、その提言をつくるに当たって何らの方向性も示さず丸投げをし、できた結論は一部を適当につまみ食いするのみで、重要な改革は行わず、そのまま放置するという、無責任で無内容な政治こそが小渕政治の本質ではないでしょうか。これでは、国民は将来に期待を持てないだけではなく、目の前の景気もよくなるはずはありません。  今政治に求められているのは、第一に、将来への確信、二十一世紀への新しい展望を持たせるだけのビジョンの提示であり、そして第二に、そのために今、勇気を持って、変えるべきものは変える、改革するという国民への説得とリーダーシップだと思います。  総選挙を近くに控え、今さえよければという考えがまかり通る現状を心から憂え、今も大切だが未来はもっと大事という選択肢を国民の皆さんに提示して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  23. 小渕恵三

    ○内閣総理大臣小渕恵三君) 岡田克也議員にお答え申し上げます。  議員のお尋ねの前に、鳩山代表の先ほどの代表質問につきまして、答弁について重ねて求められた点が二点ありましたのでお答え申し上げます。  一点は、国会運営ルールについて、このルールを破壊したのではないかということでございました。  内閣総理大臣といたしましては、施政方針演説を行い、与野党議員の御出席のもとに御質疑をお受けするという立場でございまして、私の立場から国会ルールを破壊するなどということは絶対あり得ないことでありまして、むしろ、一般的ルールから申し上げれば、施政方針演説をお聞きなされ、そして堂々とこの場で、今日のように御質問をいただくことが国会ルールと私は理解をいたしておるところでございます。(拍手)  第二は、秘書のドコモ株についての説明が不十分であるということでありますが、本件については、鳩山議員から疑惑というお言葉でございましたが、疑惑の内容について十分御説明のない中では、私としてはそれを解明することはできないわけでありまして、後刻というお話がございましたから、後刻、そうしたことがありますれば、誠実に私としては国民の理解を求める努力はいたしていきたいと申し上げておきたいと思います。  まず、橋本内閣における九兆円負担増についてのお尋ねがありました。  御指摘の一連の改革のうちで、消費税率の引き上げを含む税制改革は、当時、少子高齢化の進展という構造変化に税制面から対応したものであり、また医療保険制度改革は、医療保険制度の破綻を防ぎ、安定した運営確保していくために給付と負担の見直し等を行ったものでありまして、これらの改革は、我が国の将来を考えたときに極めて重要な改革であったと考えております。  しかしながら、アジア地域の通貨・金融市場の混乱や、平成九年秋の金融機関の経営破綻などを背景に、小渕内閣の発足いたしました平成十年半ばにおきましては、景気は極めて厳しい状況にありまして、私としては、景気回復に向けた諸施策の実施に内閣の命運をかけ、大胆かつスピーディーに取り組んできたところでございまして、この間の状況については国民の御理解を得ておるものと理解いたしております。  今後の民需主導の本格的景気回復についてのお尋ねがありました。  我が国経済は、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響で、緩やかな改善が続いております。しかしながら、民間需要の回復力はまだ弱い状況にあります。こうした状況のもと、政府は、昨年秋に決定した経済新生対策などを力強く推進することにより、公需から民需への転換を図り、設備投資や個人消費など民需主導の自律的景気回復を実現してまいります。  日本経済新生のため、景気回復経済の構造改革を車の両輪として進める必要があり、単に景気を立ち直らせるだけではなく、本格的な景気回復と構造改革の二つをともに実現するために、力の限り立ち向かってまいります。  財政構造改革と財政再建を混同しておるのではないかとのお尋ねがありました。  私は、極めて厳しい財政状況を重く受けとめており、財政構造改革という重要な課題を忘れたことは片時もありません。常々、財政を考えるに当たりましては、幅広い視野を持って、歳出項目の構造にまで踏み込んだ取り組みが重要であると考えております。  十二年度予算の編成におきまして、例えば、御指摘の公共事業予算におきまして、経済構造改革、環境対策といった直面する政策課題に対応した重点化を図るとともに、各種の統合補助金の創設等により地方分権に対応しているのを初めとして、二十一世紀に向けて真に必要な施策に、限られた財源の中で、重点的、効率的配分を行っておるところであります。  次に、財政構造改革に取り組む決意及び時期についてのお尋ねがありました。  繰り返して申し上げておりますように、財政構造改革という重要な課題を忘れたことは片時もありません。しかしながら、今景気の本格的回復と財政再建という課題を双方、同時に追い求めることはできない、二兎を追う者は一兎を得ずとなってはならないと考えております。我が国経済ようやく最悪期を脱し緩やかな改善を続けている中にあって、私としては、ここで景気の足元を固めることなく財政再建に取りかかってはならないと考えております。むしろ、今重要なことは、せっかく上向きかかってきた景気を本格的回復軌道に乗せることであります。  また、財政構造改革のビジョンを示すべきではないかとの御指摘がありました。  我が国経済が低迷を脱し、名実ともに国力の回復が図られ、それにより財政、税制上の諸課題について将来世代のことも展望した議論に取り組む環境を整え、その上で財政構造改革という課題に立ち向かってまいりたいと考えております。  国の行政機関の定員削減についてのお尋ねでありましたが、御指摘の独立行政法人化は、国とは別の法人として自律的、弾力的な運用を行わせようとするものであり、これに加えて、少なくとも十年一〇%の計画的削減を行うことによって、二五%純減を目指した定員削減に最大限努力をすることといたしております。今後、どのような新規行政需要が生じるか見通すことはできませんが、いずれにせよ、各年度の定員審査において新規増員を極力抑制すること等により、できる限り大きい純減を確保してまいる所存でございます。  医療制度の抜本改革についてのお尋ねがございました。  これまでも制度の全般にわたって見直しを進めてきているところであり、来年度におきまして、薬価差の縮小とあわせ医療の質の向上などを図る観点から、薬価と診療報酬の改定を行うとともに、老人の患者負担について、月額上限つき定率一割負担制を導入するなど、抜本改革に向けて第一歩を踏み出したと考えており、今後とも着実に取り組んでまいります。  また、社会保障制度審議会の御答申でございますが、臨時医療制度改革調査会について、関係審議会もあることから、現時点では、新たな組織の設置については慎重に考えなければならないと思います。  なお、社会保障制度全体については、社会保障構造の在り方について考える有識者会議を設置し、医療、年金、介護など制度ごとに縦割りではなく、総合的な観点から検討をお願いいたしておるところであります。  ペイオフの解禁時期の問題につきましては、与党間における真摯な議論の末、昨年末、一年延長することが適当である旨の合意がなされたところであります。  本件につきましては、政府といたしましても、我が国経済を確実な安定軌道に乗せるためには、一部の中小金融機関について、経営の一層の実態把握を図り、その改善を確実なものとすること等によりまして、より強固な金融システムの構築を図る必要があるとの観点から、与党間の合意も踏まえ、ペイオフ解禁の一年延長の措置をとることが適当と判断したところであります。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、平成十四年三月末までには与えられた枠組みを活用してさらに強固な金融システムの構築を図るべく最大限の努力を行うことが重要と考えております。  各諮問機関の提言に対する取り組みについてお尋ねがありました。  例えば、経済戦略会議の答申に対して、昨年六月に、政府としてのフォローアップを行った結果、提言項目のうち、実現する方向で検討するものが過半数を占める一方、約一割については実現のために乗り越える課題が多いとされたところであります。さらに、この結果を踏まえ、私から各省庁に対し、経済戦略会議の委員との対話を含め、真摯に検討を行うよう指示し、昨年七月から十二月にかけて各省庁との間で活発な政策対話が行われたものであります。  こうした過程を通じまして、個々施策の面でもさらなる前進があったと委員より結果の報告を受けております。  このように、私は、諮問機関等からの提言については、有識者の方々からいただいた貴重な御意見、御提言として重く受けとめており、国政をお預かりする立場にある者としてできる限り成果を上げてまいる所存であり、いわゆる丸投げ、つまみ食いとの批判は当たらないと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当面の景気回復について、個人消費の増加がかぎになると私が申しておりますことについて、アメリカで十年近い繁栄の中で、雇用者所得というのは余りふえていないということをおっしゃいました。そのことはそのとおりでございますが、私が申そうとしておりますのは、どうも昨年の秋ごろから、家計簿を見ておりますと、収入が減っている、したがって消費が減っているという傾向がございます。  これは、いろいろ理由はあると思いますが、やはりリストラというものがかなり本格化してきて、そして、雇用は何とかパートということで常雇用から移っておりますけれども、所得は明らかに減るわけでございますから、それがどうも原因ではないだろうか。したがって、この四—六月期になりましたら、いわゆるリストラというものも一つ落ちつきが出てくると思いますし、それから当期利益もふえる傾向にあると思いますから、そのときになりますと家計簿の好転が見られるのではないか、こういうことを申しておるわけです。  もちろん、本来的には消費がむやみにふえるわけはなくて、いわゆる企業設備投資がふえなければ本当の経済の成長ということはない、これは私は岡田委員の言われるとおりだと思います。殊に、いわゆるインフォメーションテクノロジーの投資が本当にあるかないかということが二十一世紀の日本経済が生き残れるかどうかということだと思いますので、私はその点は岡田議員の御認識は全く正しいと思いますし、また、そのための税制等、例えばパソコン等の即時償却制度とか、あるいは中小企業の投資促進税制について適用期限を長くするとかいうことをやっております。  私は、やることがあればできるだけ助けていかなければならない、設備投資は大事だというその認識は変わりません。私が申しましたのは、当面のこの景気脱出について、設備投資に時間がかかるとすれば、個人消費というものをやはり給与の面で引き上げていくということが大事だということを申したわけでございます。  それから、もう一つのお尋ねは、ペイオフのことでございました。これは、私はそんなに複雑なことだというふうに実は思っていませんで、信用組合というものは全国に三百近くございますが、これは御承知のように、都道府県が監督をしておりました。国が検査をしたことはございません。  ことしの四月から国の検査に入るわけでございますので、金融監督庁も、財務局も体制はかなり整ってまいりましたので、信用組合を初めてこれから検査いたします。その上で、破綻処理を要するものは破綻、早期是正をさせるものはさせる、それから公的資金の導入が必要なら導入する、今後一年ぐらい、それをやはり判別をしなければならないじゃないかというのが問題であるわけです。  信用組合が多少のことがあっても、国の信用秩序に関係があるというようなことではございませんけれども、何分にも三百近くありますし、そして毎年幾つかずつは破綻している状況でございますから、これをやはりすることが大事ではないか、そういう議論であったわけであります。  もちろん、かといって、銀行等の公金導入は予定どおり十三年三月で終わりでございますから、私は、この一年延期という問題は、大きな問題であるとは思っておりませんし、財政負担がそれでふえるということもないのではないか。  いっとき、これは日本の金融の国際信用にかかわるというような議論も聞かれましたけれども、クレジットレーティングが下がったということもございませんし、またG7でも別段話題にもならなかったことで、その点は私は余り懸念しなくていいのではないかというふうに思っております。(拍手)     〔国務大臣堺屋太一君登壇
  25. 堺屋太一

    国務大臣(堺屋太一君) 岡田議員から消費需要について御質問がございました。  我が国の消費需要は、九九年度の、前半にはほぼ順調に回復しておりましたが、後半に至ってやや足踏み、年末に至りまして、ボーナスの支給が低かったこともございまして、後退いたしました。恐らくは、コンピューターの二〇〇〇年問題などの不安心理も旅行や高額買い物の足を引っ張ったということもあろうかと思います。  日本経済が直面いたします問題は、まず第一に、循環的な下降局面にあったこと、二番目に、バブル崩壊の結果、金融や企業の経理状態が悪くなったこと、そして第三には、規格大量生産社会が文明の流れと沿わなくなったこと、この三重の問題がございました。  これに対しまして、政府は、まず一昨年、緊急経済対策によって景気の下げどまりを実現し、次に、昨年秋に決めました経済新生対策によって、景気回復とともに、経済社会構造の改革の推進に全力を尽くしてまいりました。また、平成十二年度予算におきましても、景気対策とともに、情報化、少子高齢化対策など重点的な配分を行っております。こうしたことによって、さらに税制面でも、民間の投資を促進する、住宅、コンピューターの減税を行っております。  これらの施策を通じて、雇用不安を払拭し、消費需要の拡大を実現するとともに、新規創業の活性化、環境、情報の飛躍的な発展等を行いまして、十二年度の後半には、設備投資が増加し、民需中心の本格的な回復軌道に乗るのではないかと見込んでおります。(拍手)     —————————————     〔議長退席、副議長着席〕
  26. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 不破哲三君。     〔不破哲三君登壇
  27. 不破哲三

    ○不破哲三君 私は、日本共産党を代表して、小渕首相に質問いたします。  まず、国会の今回の混乱の問題であります。その原因と責任は、議会制民主主義ルールを踏みにじった与党三党の暴挙にあります。特に次の二点について、首相の見解を伺います。  第一点は、与党が、定数削減法案に関して通常国会の冒頭に可決成立を期すとの方針を決め、その日程を強引に国会に押しつけたという問題であります。あなた方は、衆議院では、議長の裁断も拒否して、施政方針演説の前日の一月二十七日、本会議採決を強行し、参議院では、国会法に背いた中間報告の乱用で、二月二日、審議抜きの本会議採決を強行しました。これらすべてが、国会運営を冒頭処理の日程に無理やりはめ込むための措置でした。このようなやり方は、国会から審議の場という最も重大な生命を失わせるものであります。  第二点は、青木官房長官が、一月二十七日、強行採決のための本会議開会のベルを押すことを衆院議長に電話で繰り返し要求し、翌日には、冒頭処理とは二月二日までの成立のことだとして、参院議長に電話で強行処理を迫ったという問題であります。三権分立の立場に照らしても、官邸が国会議長に対し法案処理のあれこれを命令したり圧力をかけたりするなどは、絶対に許されることではありません。議会政治ルールを破るこのような暴挙は、二度と繰り返されてはなりません。首相の責任ある見解を求めるものであります。  次に、財政再建の問題です。  首相は、二兎を追う者は一兎をも得ずと財政再建を先延ばしにしていますが、あなたが首相に就任した際には、国、地方の借金は五百四十四兆円でした。それが、今回の予算案では六百四十五兆円へと百一兆円もふえています。一体いつまで借金をふやし続けるつもりですか。政府には、問題を先延ばしにせず、財政再建の計画と展望を国民に示す義務と責任があります。  まず、財政赤字を大幅に減らすことが、当然財政再建の第一の目標となります。その努力をする目標年次を示してほしいと思います。また、国と地方の借金が、今後最大限どこまでふえていくと見込んでいるのか。そして、それを何年がかりでどこまで縮小することを目標とするのか。これらの点について、明確な見解を国民に示すべきであります。  ここまで財政を悪化させ、再建の展望を持たないまま国債増発の道をひたすら走り続けるような無責任な内閣には、政権を担い続ける資格はありません。このことだけからいっても、解散・総選挙で直ちに国民の審判を仰ぐべきであります。(拍手)  今日の財政危機には、それをとめどもなく拡大していく構造的な仕組みがあります。九九年度を例にとって試算しますと、国、地方の総収入は九十五兆円、そのうち借金の利払いと償還に充てられる分が三十六兆円、結局、実質的に使えるお金は五十九兆円しかありません。それなのに、実際の歳出は百十兆円となっています。支出が収入の二倍近い、そのために毎年五十兆円前後の借金がふえる。この異常な仕組みが、九〇年代の半ば以降ずっと続いています。  過大な支出の中心をなしているのが、年間五十兆円に上る公共事業であります。財政投融資による分も幾らかはありますが、結局大部分は、現在あるいは将来の国民の税金が財源になっています。年間に使えるお金が五十九兆円しかないのに五十兆円規模公共事業を毎年続けていたのでは、財政破綻が年々ひどくなるのは当たり前であります。公共事業中心の財政運営を正す仕事に今こそ大胆に取り組むべきだが、その意思はありませんか。  公共事業への過大な投資を改めることは、今、国政の上で極めて切実な問題となっています。  昨年十一月に出された会計検査院の報告は、本四架橋について、建設費が認可を求めたときの申請よりも二・六倍から四・七倍も大きくなったこと、収入源となる車の通行量が予定量を大幅に下回っていること、そのために年々の収入では借金の利息さえ賄えない状態にあることを痛烈に総括しています。着工のときには机の上の数字でつじつまを合わせるが、実際には採算のとれない破綻経営だという指摘であります。これは本四架橋だけの問題ではありません。大型公共事業全体への警告として受け取るべきであります。現在の大型公共事業には、後は野となれ山となれ式のものが余りにも多いからであります。  まず、空港の問題です。  今大型空港だけでも、関西国際空港の第二期事業、中部国際空港、神戸空港と計画が数多く進み、さらに多数の地方空港が計画されています。この現状について、国際的に強い批判が起きていることを首相は御存じでしょうか。採算を無視した大型建設に熱中してきた結果、日本の空港は世界一使用料が高い空港となっています。  昨年七月、日本に乗り入れている在日外国航空会社協議会は、高騰する日本の民間航空の経費という声明書を発表しました。それによると、アジア各国の国際空港でのジャンボ機一機の使用料は、ソウルが二千七百四十四ドル、バンコクが二千二百三十九ドル、シンガポールが三千三百六十一ドルで、香港の五千八百六十六ドルが飛び抜けて高いということで問題になっているとのことです。ところが、日本の空港はけた違いで、関西国際空港の場合一万二千五百六十一ドル。この高値のために、外国の航空会社が日本便から撤退するという傾向が強まっています。  昨年十一月、イギリスの新聞フィナンシャル・タイムズは、日本における航空需要を無視した大型空港の乱立という問題を取り上げ、日本では空港の収益性への懸念がほとんど見られないのが驚きだと書いています。  総務庁行政監察局が一月に発表した報告でも、関西国際空港は採算が困難で、利用率が上がらない限り見通しは暗いとされています。航空需要の実態を考えず、大規模建設さえすればよいという立場で空港を乱立させるやり方に、今こそ思い切った再検討を加えるべきではありませんか。  吉野川可動堰の問題では、一月二十三日の住民投票で、建設反対という圧倒的な住民意思が明らかになりました。政府は、住民意思を尊重して、この建設計画を中止すべきであります。建設相は、建設是非を決定する資格があるのは専門家だけだと、素人の住民に何がわかるかと言わんばかりの言明をしていると聞きますが、これは余りにもおこがましい態度であります。  国民は今まで、専門家の権威なるものを頼りに政府が進めてきた計画が、無惨な失敗や惨害に終わった実例を嫌というほど見せつけられています。「もんじゅ」や東海村、最近のプルサーマルなど、原子力関係の一連の失敗しかり、JR西日本など、堅牢であるべきはずのコンクリートの各地での崩落事故しかり、水の需給見積もりを誤ったために各地で問題を引き起こしている建設省の大型ダム計画しかりであります。  九〇%を超える住民意思を足げにする言語道断の態度を捨てて、自然環境の保全と洪水防止の目的を両立させ得る新しい計画を探求する謙虚な態度こそ、政府が今とるべきことではありませんか。(拍手)  次に、愛知万博であります。  博覧会国際事務局の代表が、昨年十一月の通産省との会談で、これは二十世紀型の開発至上主義で、世界では認められないものだと批判したことが報道されました。これは事実ですか。もしそうであるなら、なぜその事実をそのときに公表しなかったのですか。こういう秘密主義こそ排除すべきであります。首相は、愛知万博の推進議員連盟の会長代行を務めていますが、愛知万博のどこが二十世紀型の開発至上主義で批判されたのか、どう考えているかを伺いたいと思います。  問題になったのは、自然との共生を唱える万博を計画しながら、跡地利用と称して海上の森などの貴重な自然を破壊する計画だという点にあります。この計画は閣議決定などを経てきたはずですが、政府のどの機関もこの計画に疑問を感じなかったのでしょうか。世界からは許しがたい開発至上主義だと批判される自然破壊の計画が、日本の政府のもとでは当然のものとして扱われる、ここに日本の行政の最悪の立ちおくれがあります。政府は愛知万博についてどうするつもりか、今後の方針を聞きたいのであります。  公共事業へのばらまきは、中央、地方の財政を破綻させるだけでなく、日本の環境を守るためにも、日本経済の国際的な地位の回復のためにも、極めて有害なものとなっています。今こそ、日本の政治を毒してきた開発至上主義にきっぱりした反省を加え、公共事業規模を思い切って圧縮し、内容も国民生活に密着したものに切りかえる大改革を断行すべきときであります。首相の見解を問うものであります。  公共事業へのこうしたばらまきと全く対照的なのが、社会保障の現状です。  社会保障の今日の危機的な状態の根底には、臨調行革以来の国庫支出の圧縮があります。社会保障財源の中で国の負担が占める割合は、一九七九年度には二九・九%ありました。それが、十八年後の一九九七年度には一九・〇%に低下しました。三分の二に切り下げられたわけであります。総財源を約九十兆円として計算しますと、国は、一年分について約十兆円ものお金を社会保障から引き揚げたことになります。年金保険や医療保険の問題を考えても、介護保険の導入を目の前にしながら、内容が貧しく、国民の間から不安と懸念、深刻な危機感がぬぐえないでいるのも、すべてここに共通する大きな根源があります。  二十一世紀にふさわしい社会保障体系を築き上げるには、不当な削減政策を改めて、国の負担を抜本的に引き上げる方向に転換する必要があります。首相の見解を問います。(拍手)  政府は、まず不況の克服をと言いますが、政府統計や経済企画庁の報告を見ても、個人消費の縮小や低迷が日本経済を冷え込ませている最大の要因であることは明らかであります。社会保障を貧しい水準に置いたまま国民負担だけを大きくするやり方が、個人消費を圧迫し、景気の安定的な回復への最大の障害物になっていることを自覚すべきではありませんか。  景気対策の面からいっても、財政危機を野放しにして社会保障を圧迫したり、その負担を消費税増税にかぶせたりするなど、個人消費にブレーキをかけるよう政策は絶対にとってはなりません。この意味でも、開発至上主義から思い切って抜け出すことなしには健全な財政再建の道はないことを重ねて強調したいのであります。  次に、雇用の問題ですが、昨年十一月の臨時国会でも質問しました。首相は雇用対策に万全を期していくと答弁しましたが、問題はその内容であります。  政府がこの十年来やってきたことは、結局、企業の雇用意欲を刺激するために幾らかの助成金をつけるということだけで、今回のものを含め、九回にわたる特別雇用対策がすべてそれでした。現在ではこれらの助成金は六十三項目にも及んでいますが、どれ一つとっても、雇用情勢に大きく影響を与えるような実際効果は全く上がっておりません。雇用危機は極めて重大であります。  私は、十一月の質問で二つの提案をしました。  一つは、残業時間の短縮、中でもサービス残業の一掃について政府として責任ある措置をとることであります。  その際、社会経済生産性本部が発表した、サービス残業をなくしただけで雇用が九十万人ふえる、残業をすべてなくせばさらに百七十万人、合わせて二百六十万人の雇用がふえるという試算も首相に示しました。サービス残業というのは明白な違法行為で、政府自身が重大な犯罪行為と認めてきたものであります。首相は労使の話し合いを見守りたいと答えましたが、この種の問題は社会的な規制が何よりも必要であって、個々の企業ではなかなか解決し得ないものであります。  ソニーの会長だった故盛田氏は、九二年に書いた日本型経営の改革についての論文の中で、改革の焦点の一つに長時間労働の問題を挙げた上で、「日本の現在の企業風土では、敢えてどこか一社が改革をやろうとすれば、その会社が結果的に経営危機に追い込まれてしまうよう状況存在しています」、こういう改革は「日本の経済社会のシステム全体を変えていくことによって、初めてその実現が可能になると思います」と書いています。これは、経営者自身の体験によっても、政府意思と行動が何よりも重要だということであります。  重ねて聞きます。なぜ首相は国の行政としてこれに取り組もうとしないのですか。我が党は近く法案を提出するつもりですが、サービス残業の根絶のために、政府としての積極的な責任ある取り組みを求めたいのであります。  もう一つの提唱は、大企業の勝手横暴なリストラを規制する問題であります。  この面でも、ヨーロッパ諸国との違いは歴然としたものとなっています。  しんぶん赤旗では、四人のヨーロッパ特派員が現地調査に当たりましたが、今日本で行われているような労働者と労働組合の権利を無視した一方的なリストラはヨーロッパではあり得ないことだというのが、各国の関係当局者の一致した対応でした。  今日産では、フランスの自動車会社ルノーが乗り込んで、日産そのものの解体を意味するような乱暴なリストラを強行しようとしていますが、日産のようなやり方はヨーロッパでは通用しない、この言葉は、昨年十一月、欧州委員会の雇用・社会問題局を訪問した日本の労働組合代表に対して、同局のバスケス主任行政官が語った言葉であります。結局、外国の経営者たちが、日本に解雇規制のルールがないことにつけ込んで、自分の国ではできないことを日本で強行しているということであります。  今法的、社会的な規制の措置をとらず、雇用問題でルールなき資本主義の現状をそのままにしておくと大変な事態になります。小渕内閣が経済再生内閣どころか、雇用危機の火に油を注いだ内閣だという汚名を歴史に残さないためにも、真剣な対策を講じることを求めたいのであります。  経済問題の最後に、農業問題を取り上げたいと思います。  農水省は、昨年十一月、主要先進国の食料自給率の最近二十七年間にわたる推移について、カロリーベースでの数字を発表しました。  それによると、一九七〇年の自給率は、アメリカ一一三%、フランス一〇五%、ドイツ六八%、日本六〇%、スイス四七%、イギリス四六%で、六カ国中スイスとイギリスだけが五〇%の線を割っていました。二十七年後の一九九七年には、フランス一三九%、アメリカ一三二%、ドイツ九七%、イギリス七七%、スイス五九%、日本四一%になりました。  この間に、どの国も自給率を大幅に高めてきたが、自給率が低下したのは日本だけで、それも五〇%ラインを大きく割り込み、四〇%に近づいている。ここまで落ち込んだ国は、七〇年代以後主要国のどこにもありません。日本の現状はそれほどに危機的な事態であることを、農水省発表の数字が明確に示しています。  人口一億二千六百万の日本で食料自給率が四一%だということは、国内で自給できるのは五千二百万人分、あとの七千四百万人分の食料は外国からの輸入に頼っているということにほかなりません。二十一世紀が世界的な食料不足の世紀となるであろうことは、今や常識であります。このような輸入依存の体制のままでは、国民の食料の面から、二十一世紀の日本の安全が大きく脅かされることになります。  政府は、その場だけを取り繕い、米の輸入など外圧に屈するだけの無責任な農業政策に今こそ真剣な反省を加え、旧来の枠組みにとらわれず、自給率を引き上げる明確な年次目標と、これを達成する現実的な方策の確立に今こそ全力を注ぐべきだと考えますが、首相の見解はいかがでしょうか。(拍手)  次に、沖縄サミットの問題であります。  政府がサミットの開催地として沖縄を選んだということは、各国の首脳とともに世界のマスコミをも沖縄に招待するということであり、いや応なしに沖縄基地の現状を世界に見てもらうこと、そのあり方を世界的な基準で評価するよう求めることを意味します。  私は、この問題意識に立って、サミットの首脳と世界のマスコミをあえて沖縄に迎えようとしている首相が、日本の米軍基地体制の異常さについてどれだけの認識を持っているかを率直にただしたいと思います。  第一。沖縄の米軍の主力である海兵隊は、海外遠征を主任務にした部隊です。横須賀を母港とする機動部隊も、日本防衛の任務は持たず、専ら海外遠征を任務にした部隊です。  そこで伺いたい。サミットに参加するアメリカ以外の諸国は、ロシアを除く五カ国のすべてがアメリカの軍事同盟国ですが、海兵隊に常駐の基地を提供している国や、空母、機動部隊に母港を提供している国が日本以外に存在するかどうかであります。  第二。その米軍基地に対して、日本は年間六千八百五十五億円の予算を支出しています。そのうち二千七百五十六億四千万円は、全く条約上の義務がないのにアメリカの財政的な苦しさを思いやって日本が自発的に出している、いわゆる思いやり予算であります。  米軍基地を維持するためにこのような特別の支出までしている同盟国が、サミット諸国の中にほかにあるかどうか聞きたいのであります。  思いやり予算は、その後一部が特別協定化されましたが、この協定の期限は二〇〇〇年度で切れることになっています。日本が最悪の財政危機のもとにある今日、この種の支出を続ける根拠は政府の立場からいっても既に失われているはずであります。よもや継続の新たな取り決めをするといったぶざまなことはないと思いますが、この機会に思いやり予算をきっぱり打ち切るつもりかどうか、あわせて聞きたいのであります。  第三。米軍基地の態様の問題であります。今、日本各地で米軍機の低空飛行や離発着訓練による国民の被害が大問題になっています。一月に岩手でこの問題のシンポジウムが開かれましたが、低空飛行の停止を求める声が圧倒的で、岩手県知事もメッセージを寄せられました。  アメリカ本国でもヨーロッパでも、米軍のこの種の訓練は厳重に規制されています。日本のように、住民や自治体の抗議を無視し、国内法も無視してこの種の訓練を自由勝手にやる権利を米軍に保障している国はどこにもありません。サミット参加諸国の中で、米軍機の訓練に対して日本と同じ態度をとっている国があるかどうかを聞きたいのであります。  今挙げた三つの点は、日本にある米軍基地の基本的な性格にかかわる問題であります。主権の重要な部分を放棄して、自分の国土をアメリカの対外戦争、海外遠征の最前線基地として提供する、まさに植民地型の基地体制とでもいうべき実態を持っています。この状態から抜け出すことは、二十一世紀の日本国民にとって避けることのできない政治課題となることを私は確信するものであります。  さらに、沖縄では今、名護市への新しい米軍基地建設が問題になっています。これは普天間にある古い基地の単なる移転という問題ではありません。まさに最新鋭の基地の建設であります。オスプレイという新型軍用機の配備が予定されていますが、航続距離が従来型ヘリコプターの五倍から十倍というこのオスプレイが配備されれば、台湾海峡も朝鮮半島も、輸送艦なしでの直接飛行で作戦範囲に入ることになります。  アジアのこれらの地域に矛先を向けた新鋭基地を今日本につくるということは、基地のない沖縄を願う沖縄県民の気持ちを逆なでするだけでなく、国際的にも極めて深刻な意味を持つ行為となります。これは、アジア外交重視を唱える首相の言葉とは真っ向から矛盾する行動ではありませんか。  さらに聞きたい。一体、この基地の建設はだれの負担で行われるのでしょうか。すべて日本国民の税金によるものではありませんか。  また、沖縄県知事は、さきの知事選挙で、基地の提供に十五年の期限をつけることを県民に公約しました。選挙でこの知事を支持、推薦する態度をとった自民党は、政権党として当然この公約に共同の責任を負っているはずであります。首相は、十五年の期限についてアメリカ側に堂々と要求し、その実現のために真剣な交渉をやる意思があるでしょうか。交渉さえやらないというのなら、知事だけでなく自民党自身も、沖縄県民を偽りの公約でだましたことになるではありませんか。  既に、名護市への米軍基地建設については、九七年十二月の住民投票で、建設反対という名護市民の意思が明確に表明されています。私は、政府が、名護市民のこの意思を踏まえて、名護市への新鋭基地建設というこの計画を撤回することを強く要求するものであります。  以上、幾つかの問題について首相の姿勢と政策をただしてきましたが、どの問題も、国民の審判なしに政府の勝手な行動や措置の許されない性質の問題であります。予算案への審判を含め、早急に国会解散し、総選挙で堂々と国民の審判を仰ぐべきこと、そこで二十一世紀に向かう日本の進路についてお互いに堂々と論戦し合うことを首相に要求して、質問を終わるものであります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  28. 小渕恵三

    ○内閣総理大臣小渕恵三君) 不破哲三議員にお答え申し上げます。  定数削減法案の処理についてまずお尋ねがありました。  定数削減の意義、その緊急性、国民の期待については既に申し上げたところであります。また、昨年来のこの問題の経過につきまして先ほど御説明したとおりであり、本法案につきまして、衆参両院において正規のルールに従って手続が進められ、処理されてきたものと承知をいたしております。暴挙との御指摘は当たらないと考えます。  なお、御指摘のあった定数削減法案についての与党方針は、あくまで与党としての目標であり、国会運営を拘束する性格のものではないと考えております。  また、官房長官についての御指摘がありましたが、政府としては、衆議院参議院議長に対し圧力をかけるようなことはあり得ないものと考えております。念のため官房長官に確認いたしましたところ、そのようなことは一切ないということでありました。  今後の財政再建への取り組みについてお尋ねがありました。  常々申し上げておりますように、現下の財政状況を重く受けとめており、財政構造改革という重要な課題を忘れたことは片時もありません。しかしながら、今、景気の本格的回復と財政構造改革という課題の双方を同時に追い求めることはできない、二兎を追う者は一兎を得ずとなってはならないと考えております。  我が国経済ようやく最悪期を脱し、緩やかな改善を続けている中にありまして、私は、ここで景気の足元を固めることなく財政再建に取りかかるという過ちを犯すべきでないと考えております。むしろ、今重要なことは、せっかく上向きになってまいりましたこの景気を本格的回復軌道に乗せることであると考えます。我が国経済が低迷を脱し、名実とも国力の回復が図られ、それにより財政、税制上の諸課題について将来世代のことも展望した議論に取り組む環境を整え、その上で財政構造改革という大きな課題に立ち向かってまいりたいと考えております。  財政再建の展望を持たぬまま国債を増発し続けるのは無責任ではないかとの御指摘がありました。  我が国経済平成九年秋以降五四半期連続のマイナス成長という戦後初めての厳しい局面を経験した中で、私は、就任以来、内閣の命運をかけて財政、金融のあらゆる手段を講じて経済再生に取り組んできたところであり、こうした諸施策の効果もあって、現在、我が国経済ようやく最悪期を脱し、緩やかな改善を続けておると考えております。  先ほども申し上げましたとおり、私は、ここで景気の足元を固めることなく財政再建に取りかかるという過ちを犯すべきではない、むしろ、今は経済新生に全力で取り組み、せっかく上向きかかってきた景気を本格的回復軌道に乗せることこそ内閣としての責任を果たすことになる、こう考えております。  財政運営についてお尋ねがありました。  私は、就任以来、財政運営に当たりまして、内閣の命運をかけ経済回復軌道に乗せるというかたい決意のもと、その時々の経済社会情勢を的確に見きわめ、今日まであらゆる手段を適切に講じてまいりました。この中で、公共事業について、民需の落ち込みを相殺する形で、景気がスパイラル的に悪化していくのを防止し、その下支えに貢献してきたものと考えており、この結果、我が国経済は緩やかな改善を続けていると認識をいたしております。  十二年度予算におきましても、現下の経済金融情勢にかんがみ、公共事業に加え、金融システム安定化、預金者保護に十分な対応を行うとともに、二十一世紀に向け真に必要な施策に対し、限られた財源の中で重点的、効率的な配分を行っております。  次に、空港の整備についてお尋ねがありました。  空港の整備につきましては、我が国が国際社会に重要な地位を確保していく上で、国際交流に不可欠な基盤施設である大都市圏の拠点空港を中心に、航空輸送需要や事業効果等を考慮しつつ、真に必要性、緊急性の高いプロジェクトについて、計画的かつ重点的な整備を行っておるところであります。  吉野川第十堰についてお尋ねがありました。  第十堰の事業は、一徳島市のみならず、吉野川流域全体の方々にとって重要な施策であると考えております。事業を進めるに当たって、地域全体でよく話し合うことが重要であり、その具体的な進め方については、治水を担当する建設大臣が責任を持って対処いたしてまいります。  二〇〇五年の日本国際博覧会についてのお尋ねでありますが、昨年十一月に博覧会国際事務局の議長等が来日をいたし、通産省の担当者と意見交換をした際、博覧会会場の跡地利用のあり方について、「自然の叡智」というテーマにふさわしいものとしてきちんと説明ができるようにし、広く内外の理解を得ていかなければならないなどの指摘があったと聞いております。  これらの指摘につきましては、通産省から愛知県等の関係者にも伝えられ、現在、愛知県において、博覧会のテーマを重く受けとめつつ、地元を初め関係者の意見の集約を図りながら、跡地利用のあり方について検討が進められていると聞いております。  愛知万博につきましては、愛知県の検討、博覧会国際事務局の指摘等を踏まえながら、内外に幅広く理解と賛同を得て、「自然の叡智」という二十一世紀にふさわしいテーマを体現した意義のある博覧会を開催できるよう政府としてその具体化に向け、全力を尽くす考えであります。  なお、跡地利用に関し、政府として、許認可を行うに当たりましては慎重に審査いたしてまいりたいと考えております。  公共事業についてお尋ねがありました。  十二年度予算につきましては、経済運営に万全を期するとの観点から、その総額について前年度当初予算と同額を確保いたしております。  また、その内容につきましては、配分に当たりまして、我が国経済の発展、国民生活の向上に向けて、社会資本整備の面で緊急かつ優先的に取り組むべき課題は何かという見地から、新たな発展基盤の構築を目指し、物流効率化による経済構造改革の推進環境対策、少子高齢化対応、情報通信の高度化といった我が国が直面する政策課題に対応した重点化を図っております。  今後とも、真に必要な分野への戦略的、重点的投資に努めてまいります。  社会保障に対する国の負担についてお尋ねがありました。  高齢化の進展に伴い給付が増大する中で、社会保障制度について、国民の新たなニーズにも対応しつつ、経済との調和がとれ、将来世代への負担を過重なものにならないようにしていくことが必要であり、これまでも必要な財源確保を図ってきたところであります。  今後とも、真に必要な給付は確保するとともに、制度の効率化、合理化を図り、将来にわたり安定的な社会保障制度の構築に努めてまいります。  個人消費の回復について、GDPの約六割と大きなウエートを占めている点からも重要であるとの認識をいたしており、昨年から実施しておる個人所得課税の恒久的減税が継続しているほか、政府として、十二年度において、雇用不安の払拭、新規事業の活性化、消費需要の拡大などを実現することによって、景気を民需中心の本格的回復軌道に乗せることを目指してまいります。  また、開発至上主義から脱却し、健全な財政再建の道を目指すべきとの御指摘がありました。  公共事業に関しましては、将来の発展基盤の構築に向けて、時代のニーズや要請を見通しつつ、必要な分野、事業への戦略的、重点的投資を行うとともに、その実施に当たっては効率性、透明性の確保に努めてまいります。  いずれにせよ、財政構造改革につきましては、我が国が低迷を脱し、名実ともに国力の回復が図られ、それにより財政、税制上の諸課題について将来世代のことも展望した議論に取り組む環境を整え、その上でこの大きな課題に立ち向かってまいりたいと考えております。  なお、消費税の問題を含む将来の税制のあり方につきましては、今後、少子高齢化の進展など経済社会の構造変化や財政状況等を踏まえ、国民的議論によって検討されるべき課題であると考えます。  次に、時間外労働についてのお尋ねでありました。  長時間の時間外労働の抑制のため、政府としては、労働基準法に基づく時間外労働の限度基準の遵守を指導するほか、サービス残業については監督指導を実施し、労働基準法違反の是正に取り組んでまいります。また、労働条件の基準を遵守した上で具体的な労働時間の水準については、労使の話し合いを見守り、その合意を尊重いたしてまいります。  大企業のリストラについてのお尋ねでありました。  リストラは企業の経営にかかわるものであり、御指摘のような法的な規制を設けることは適当ではないと考えております。リストラに対する対応としては、企業や経営者団体に対して雇用の安定に向けての最大限の努力を求めるとともに、国として必要な指導援助を行うなど、雇用対策に万全を期してまいります。  食料自給率引き上げの年次目標とその達成方策についてのお尋ねでありました。  食料自給率目標につきましては、食料・農業・農村基本法に基づきまして今年度中に策定する食料・農業・農村基本計画において、おおむね十年先を目標年次として向上を図ることを旨として定めることとしており、その達成に向け、総合的かつ計画的に施策を講じ、生産者その他の関係者と一体となって取り組んでまいります。  次に、米海兵隊及び空母についてのお尋ねでありました。  御指摘の諸国のうち、米海兵隊が駐留する国は我が国のみと承知をしております。また、御質問の母港とはいろいろな意味合いに用いられており、御質問に対して確たるお答えをすることは困難であります。  なお、米軍は、日米安保条約及びその関連取り決めのもとで、海外家族移住計画に基づき、前方展開の任務についている空母を含む艦船の乗組員の家族を我が国に居住させております。  政府としては、アジア太平洋地域において引き続き不安定要因が存在する中、海兵隊や空母を含む在日米軍が我が国及び極東の平和と安全の維持に貢献していると考えております。  我が国を含むサミット参加各国による米軍駐留経費負担についてお尋ねがありました。  御質問の特別な支出が何を指すか定かでありませんが、各国の負担は各国を取り巻く安全保障環境等種々の要因を総合的に勘案しさまざまな形をとりつつ行われており、単純な比較や評価は困難であります。また、我が国の米軍駐留経費負担については、今後とも、厳しい財政事情にも十分配慮しつつ、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保のため適切に対応していく考えであります。  米軍機の訓練についてお尋ねがありました。  御指摘の訓練を自由勝手に行う権利とは何か、これも必ずしも明らかではありませんが、米軍は、他国においてと同様、我が国において当然に公共の安全に考慮し活動することとなっております。政府としては、米側に対し、訓練に際しては安全確保に万全を期すとともに、地元に与える影響を最小限にとどめるよう申し入れいたしておるところであります。  普天間飛行場の代替施設が新鋭基地の建設であり、沖縄県民の気持ちを逆なでし、アジア外交重視の姿勢に反するとの御指摘でありますが、そもそも普天間飛行場の移設は、沖縄県の強い要望を受け、米側と交渉した結果、県内移設が合意されたものであります。また、今般の移設先の決定も、昨年十一月の稲嶺沖縄県知事の表明及び十二月の岸本名護市長の受け入れ表明を経て決定したものであります。  日米安保条約に基づく在日米軍の存在が、我が国の安全のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定のため不可欠であることは、平成八年の日米安保共同宣言でも確認されております。在日米軍の能力と即応態勢を維持するため、SACO最終報告における普天間飛行場移設に伴う機能を確保することとした今般の閣議決定に基づく代替施設の建設が、アジア外交を重視することと矛盾するとは考えておりません。  代替施設建設費用につきましては、SACO最終報告に盛り込まれた措置の実施について、平成八年十二月三日の閣議決定で、法制面及び諸経費を含め、政府全体として十分かつ適切な措置を講ずることとされており、今後適切に対処してまいりたいと考えております。  普天間飛行場の移設に係る十五年の期限についてのお尋ねがありました。  代替施設の使用期限につきましては、政府としては、閣議決定にあるとおり、国際情勢もあり厳しい問題であるとの認識を有しておりますが、沖縄県知事及び名護市長から要請がなされたことを重く受けとめ、先般、これを瓦防衛庁長官がコーエン国防長官に対し取り上げたことに続き、河野外務大臣からフォーリー駐日米国大使に対し取り上げたところであります。  政府としては、閣議決定にあるとおり、今後、国際情勢の変化に対応して、本代替施設を含め、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事態勢につき、米国政府と協議いたしていきたいと考えております。  また政府としては、あわせて、国際情勢が肯定的に変化していくよう外交努力を積み重ねてまいりたいと考えております。  なお、過去の市民投票との関係についてのお尋ねがありましたが、政府としては、稲嶺沖縄県知事の移設候補地の表明や岸本名護市長の受け入れ表明等の経緯を踏まえ、昨年末、所要の閣議決定を行ったものであり、今後、同閣議決定に基づき、住民生活や自然環境へ特別の配慮等を行う中で本件に取り組んでまいります。  最後に、解散・総選挙についてお尋ねがありましたが、日本経済がこれまで各般の諸施策により最悪期を脱し、緩やかな改善を続けているとはいえ、自律的な景気回復に至っておりません。本格的な景気回復のためには、そのかぎを握る平成十二年度予算の早期成立が何より必要と考えております。  衆議院解散は実際内閣総理大臣に与えられた大権であります。あくまで国民、国家を中心に、その判断の基準に据えつつ、解散して国民の信を問うべき事態に立ち至りましたと考えられるときには、これをちゅうちょすることなく断行すべきであると考えております。  以上、御答弁申し上げました。(拍手)     —————————————
  29. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 土井たか子君。     〔土井たか子君登壇
  30. 土井たか子

    ○土井たか子君 社会民主党・市民連合を代表いたしまして、私は、小渕内閣総理大臣施政方針演説に対して質問をいたします。  まず初めに、本国会の冒頭から二週間に及んだ異常事態について、総理はどのようにお考えか、その御見解をしっかり伺いたいのでございます。  言うまでもなく、議院内閣制において、議会の多数派、つまり与党が首相を出し、内閣を形成することになっております。もし、この多数派が少数派、つまり野党批判、主張に耳を傾けず、まともな議論もせず、数を頼んでごり押しで決めてしまうというならば、もはや議会の意味はございません。野党もまた国民の代表であります。自自公政権は、この国民の代表の声を全く無視したのです。これは議会の自殺行為でなくて何でしょうか。  だからこそ、議会制民主主義を掲げる限り、歴代の自民党政府も、野党のいない議場で施政方針演説を行うなどという乱暴なことはこれまで一回もしなかったのです。小渕総理は、それを事もなげに行われました。前代未聞、言語道断のことであります。国民への謝罪の言葉はないのでしょうか。  また、衆議院議長のあっせん案は、与党によって全く無視されたのみならず、開会のベルを押さなければ政権枠組みが崩れるという官邸からの圧力で、強引に開会させられたと報じられております。これは行政による国権最高機関国会への圧力であり、干渉ではないですか。  議院内閣制において立法と行政の境目は微妙であり、だからこそ一層の慎重さが求められているのは改めて申し上げるまでもないことです。三権分立の原理を総理はどう考えておられるのか、はっきりと伺いたいと思います。  そしてまた、小渕内閣を支えている自民、自由、公明三党の数の横暴によって議会制民主主義の根本が脅かされていることに、国民の皆さんの注意を喚起したいと思います。  第一に、今回の衆議院比例区の定数削減は、ただ与党三党の政権合意に基づいているにすぎません。自由党連立を離脱しないためにとられた、与党内部の都合だけによるものです。しかも、野党国民もあずかり知らないところで、五十削減がいつの間にか二十削減となり、小選挙区からも削減するという案が比例区だけになりました。何の理念もなく、なぜそれがそうなったのか、納得のいく説明も一度もされておりません。つまり、三党の党利党略、談合だけで、議会の議席数という国政にとって最も基本的な、公的な問題が、バナナのたたき売りのごときやりとりで決められてしまったのです。  国会は、国民のさまざまな意見を反映した代表者たちによって議論が交わされ、合意が得られていく場であります。そのためには、憲法を引くまでもなく、国民の代表たる国会議員の選出は適正で正当なルールに基づかなければなりません。一票の価値ができるだけ平等になるように、また、民意ができるだけ正しく議席に反映されるよう選挙制度は決められなければならないのです。与党野党を問わず全国会で議論し、合意していかなければならないのは当然です。議席の定数問題が全政党の合意なく決められたのは初めてのことであります。  小渕政権与党三党は、こうして最も公的な問題を私したのであります。これを暴挙と言わずして何と言いましょうか。議会制民主主義への挑戦と言わずして何と言えばいいのでありましょうか。  第二に、法律の中身も大いに問題です。  民間がリストラで苦しんでいるのだから、国会もまた身を削らなければならないなどという理屈ですが、国会で本当に議論すべきなのは、長期にわたる大不況とリストラの中で職を失った人、その家族をどう救済し、安定した生活を保障するか、また、新しい職を見つけられるようどう手だてをしていくかということではないのでしょうか。  議員二十人を減らして削減される経費は十五億円、国民負担に本当に配慮すると言うのなら、各党が受けている政党助成金三百十三億円を返上するか、一部削減すれば、この何倍ものお金が節約できるではありませんか。与党の理屈は理屈になっておりません。  何より、比例区は、小選挙区制では民意が著しくゆがめられるという理由で、それを是正し、多様な国民の意見を国会に反映させるために設けられたものです。この比例部分だけから定数を削減しようというところに、国民の民意を全く尊重しない与党三党の姿勢がありありとあらわれていると考えます。自民、自由、公明三党は野党の意見を封じたのではありません。国民の国政に参加する権利を奪ったのであります。(拍手)  さて、小渕総理大臣の施政方針であります。  私はこれまで、経済の長い大きな落ち込みによって、人々は自信を失い、先行きの見えない不安の中で暮らしていると代表質問のたびごとに繰り返し指摘してまいりました。今や人々は不安どころか絶望さえ感じ始めているのではないでしょうか。大規模なリストラ、首切りが引き続き行われ、中高年の自殺が急増しています。巨額の財政出動にもかかわらず、景気は一向回復する兆しが見えません。勤労者の消費支出は二年間連続してマイナスになりました。個人消費が伸びないから、景気も回復しないのです。これは当然のことでありましょう。  これまで誠実に、長く働いてきた企業の労働者、中小企業の労働者が、みずからの責任ではなくして首を切られています。ある者は職を失い、他の者は職を失うのではないかとおびえています。個人商店は次々と商売をやめ、シャッター街と言われる閑散とした商店街がすべての地方に広がっています。荒涼たる風景であります。大学新卒の就職内定率は七四%、過去最悪であります。特に女子学生は悲惨としか言いようがありません。そして一方で、年金などの社会保障が次々と切り下げられています。それでどうして個人消費がふえるでしょうか。これでどうして希望が生まれるでしょうか。立ち向かう楽観主義が生まれる余地がどこにあるでしょうか。  二〇〇〇年度予算案では過去最高の三十二兆六千百億円の国債発行が予定されておりますが、国債残高は二〇〇〇年度末で三百六十四兆円、地方と合わせた長期債務残高は六百四十五兆円に達すると報じられています。この額は、国内総生産、GNPの一・三倍、八年分の国の予算をすべて回しても返せない額です。もちろん主要国の中で最悪の数字です。そして、人々は知っているのです。この膨大な借金のツケは必ず自分たちの肩にのしかかってくると。  小渕総理は、十年後、二十年先を見据え、子供たちにどのような未来を引き継いでいくのかと案ずると言われました。案ずるなら、今この膨大な借金の山をどうするのかを考えるのが政治責任でありましょう。政府責任者は、他人事のように、やればできるなどと国民にお説教することではないはずであります。  そして、総理は、立ち向かう楽観主義のキャッチフレーズのもと、五つの挑戦を掲げられました。しかし、総理、将来への不安の中で身を縮めている人々に、幾ら立ち向かえ、チャレンジせよと言っても、どだい無理な話であります。「国民の間には社会保障制度の将来に不安を感ずる声も出ております」などと、どうして評論家のようなことがおっしゃれるのか、まことに理解に苦しみます。  継続審議となって今国会にかかっている年金関連法案は、明らかに給付の切り下げを目的としたものです。国民の不安を呼び起こしているのは政府ではありませんか。  まずお聞きします。総理は、財政再建と景気回復を同時に追い求められない、まず景気を本格軌道に乗せると言われました。しかし、財政出動が既に限界に達していることは、内外すべての人々が知っています。このままでは、後は野となれ山となれではないですか。どういう御計画でこの膨大な借金を返していくおつもりか、お考えを伺いたいと思います。さらに、この財政状況で、どうやって総理の言われるセーフティーネットをしっかりしたものにしていくのか、具体的な構想をお示しいただきたいのでございます。  調整インフレしかないという声もあります。しかし、それでは人々の生活はさらに追い詰められ、破綻します。ただでさえ福祉切り捨てに苦しんでいるお年寄りたちはどうなるのでしょうか。  この機会に私の考えを申し上げます。私は、政府が大胆に発想を転換し、勇気を持って転換した方向に進むことだと思います。景気が上向かないから、財政が危機だからといって、年金や保険や福祉を切り下げるのではなく、むしろそれを充実させ、確固としたものにするのです。人々が不安と絶望から解き放たれ、安心してチャレンジできるようになってこそ、消費は伸びて、景気は回復し、財政もまた健全になると考えます。  総理、世界一の借金王などとおっしゃっている場合ではありません。政府は、全力を傾けて社会保障の基盤を充実させることを決断し、国民にはっきりと約束すべきです。現在の経済の回復は、政府政治家への信頼の回復にかかっていると言えるのです。  例えば介護保険。何という行き当たりばったりの変更でしょうか。現場は混乱し、怒っております。介護を受けるお年寄りやその家族は、きちんとした介護が受けられるのか不安を抱き、介護を担う民間の施設などは、経済的に成り立つのかどうか不安を抱いております。地方分権の道は定まったのですから、介護のそれぞれのやり方については、現場をまず尊重し、足らざるところ、困っているところを財政を含めて政府が援助する、そういうことが必要なのではないんでしょうか。また、現金給付よりも、充実した現物、サービスの給付が求められております。総理、どうお考えになりますか。  また、年金であります。  現行制度では、年金保険料の引き上げと給付水準の切り下げが続いています。まるで逃げ水のように年金は人々の手から遠のいています。これが制度全体の信頼性を失わせており、保険料の納付は年々悪化していることは御存じのとおりです。このままでは確実に年金制度は破綻します。  総理は、四〇一K型確定拠出年金の導入について触れられましたが、企業の負担は軽くなり、従業員の年金のポータビリティーは確保されるものの、逆に企業のリストラ推進の誘因となり、また将来の給付についてもまことに不安定になります。これではセーフティーネットを確かなものにするとは言えません。  あるいは、子育て、教育です。  子供社会の宝と総理は言われました。これはそのとおりでしょう。それでは、よその子供でもしかろうなどと言う前に、政府は子育ての条件を整備する責任を果たすべきでありましょう。保育所や学校にもっとお金を出すべきです。わずかな児童手当の増額のことではありません。四十人学級を三十人、二十人学級にしたり、担任を複数にしたり、子供たちにもっとゆったりときめ細かな対応ができるような、そんな予算を組むべきではないでしょうか。地方に行きますと、箱物つくりの公共事業型体育館には補助金がつくけれども、身近な教室の机やいすを取りかえる予算や窓を補修する予算もつかないといった嘆きをよく聞きます。  財源がないとは言わせません。巨大でほとんど役に立たず、初めから赤字が予想されているような巨大な公共事業、橋、河口堰、ダム、干拓、道路、空港など、山ほどあるではありませんか。その出費を抑え、組みかえていけばいいのです。地方では、どこに行っても、もう公共事業はたくさんだといった声であふれております。  財政に占めるこの公共事業負担の大きさは、戦前の軍事費にも匹敵すると言われております。総理の言われる景気対策はおおよそこの種のばらまきであります。戦前は軍で国を滅ぼし、今は公共事業で国を滅ぼすということになりかねません。要りもしない工事が大々的に行われている横で、老人がベッドに縛りつけられている、こんな国のあり方はおかしいのです。余りにもバランスが崩れているとお思いになりませんか。総理、もっと人間を大切にする国、社会にしようではありませんか。(拍手)  問題の先送りとばらまきの拡大しかできない政権なら、直ちに国民のために政権の座を去るべきです。国民の多くは、構造転換のできる政権を求めております。  関連して、一月二十三日に行われた吉野川可動堰をめぐる徳島の住民投票について伺います。  先ほどからもこの問題が取り上げられておりました。徳島の市民たちは、何年にもわたる粘り強い運動によって、自分たち地域につくられようとする巨大公共事業に対して自分たち意思を表明する住民投票を実現させました。自分たちで情報を集め、事業を分析し、もっと合理的で費用のかからない、環境にも悪影響を与えない対策さえきちんと示しているのです。  住民投票を実施させた第十堰住民投票の会、吉野川シンポジウム実行委員会の代表の方々に先日私はお会いいたしました。五〇%の投票率がなければ無効になるという理不尽な規定をはねのけて、投票所に足を運ばれた徳島市民の人々に、まさに民主主義と自治がここに息づいていると私は感じました。総理の言われる、立ち向かう楽観主義がここにあるではありませんか。組織や集団に埋没しない、個人が輝き、個人の力がみなぎってくる自治の姿がここにあるではありませんか。総理はどうお考えになりますか。  私は、徳島市民の声にこたえて、国会吉野川可動堰関連の予算を一切認めるべきではないと考えます。そして同様の、むだで環境破壊的な全国の公共事業を洗い出して、国民的なチェックを厳しく行うこと、公共事業の決定に国会が大きく関与する法律をつくることを提案いたします。そして、住民投票について、その権利を全国民に広げるための法律をつくることを提案いたします。  国民の安心という点で看過できないのが、昨年九月に起きた東海村臨界事故です。突然、人々が暮らす町に裸の原子炉が出現したようだと言われた深刻な大事故であり、日本の原子力開発史上、初めて犠牲者が出てしまいました。極めて残念なことであります。  現在、日本の新エネルギー開発の費用の圧倒的な部分は原子力に使われています。世界の多くの国で開発が進行している自然エネルギー、循環型のエネルギー開発にはほとんどお金が回されていないのが現状です。  原子力が一度事故を起こしたらどんなに恐ろしいことになるか、人々は改めて認識したのです。取り返しのつかない事故が起きないうちに、日本は勇気を持って政策を大転換させなければなりません。総理の御所見と英断をお聞かせください。  さて、憲法を議論する憲法調査会が今国会から設けられたことについて、総理はわずかにしか触れられておりません。確かに、国会が設けた調査会でありますから、政府として多く言及することには、はばかりがあったのかもしれません。  一言だけお聞きします。  私は、憲法は、日本の政策すべてにかかわるわけですから、各委員会において具体的な施策に沿って論ずるべきであると主張してきました。環境地方分権、情報公開、安全保障、これまで憲法論議が必要とされた主張で取り上げられた問題は、すべて委員会で議論ができるものばかり。政策を追求するのに、あるいは日本社会が抱えている問題を解決するために、本当に憲法がネックになっているのか、そこまで詰めた議論というものは聞いたことがありません。  総理総理の日本国憲法観とはどのようなものなのでしょうか。  最後に、沖縄の問題についてお聞きします。  一九九五年の米海兵隊員による少女暴行事件が普天間基地移設のきっかけです。沖縄の人々は、圧倒的に県外への移設を望みました。今も、私は、多くの沖縄の人々はそう望んでいると思います。それがなぜ県内移設なのでしょうか。  稲嶺知事の受け入れ表明に続いて、名護市長からも受け入れの表明がありました。市民からは強い反発と批判の声が上がっております。しかも、問題なのは、新設される基地の場所も規模も工法も明らかになっていないことであります。
  31. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 土井たか子君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単にお願いします。
  32. 土井たか子

    ○土井たか子君(続) 既に沖縄では、四十年の使用にたえ、新鋭の海兵隊ヘリを配備する、基地新設であるという報道があります。  どんな基地がどこに予定されているのかを知らずに、どうして受け入れなどができるのでしょうか。総理、現在予定されている基地はどのようなものなのか、明らかにすべきです。  このことを申し上げ、与党枠組みが自自公となって以来、国民に信を問う解散・総選挙は常に政治日程にあることから、一日も早い解散を求めて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  33. 小渕恵三

    ○内閣総理大臣小渕恵三君) 土井たか子議員にお答え申し上げます。  まず、定数削減法案の処理と国会状況についてお尋ねがありました。  定数削減の意義、その緊急性、国民の期待については、既に申し上げたところでございます。また、昨年来のこの問題の経過につきましても、先ほど御説明申し上げたとおりであり、本法案については、衆参両院において正規のルールに従って手続を進められ、処理されてきたものと承知をいたしております。したがいまして、暴挙との御指摘は全く当たらないと考えております。(拍手)  また、立法と行政との関係について御指摘がありました。政府として国会に対し圧力をかけるようなことはあり得ないものと考えております。  なお、三権分立の原理についてのお尋ねがありましたが、三権分立とは、通常、国家作用を立法、司法、行政の三権に分け、おのおのを担当するものを相互に分離、独立させ、相互に牽制させる統治組織原理のことを指していると承知をいたしております。  定数削減法案の処理に関連をいたしまして、施政方針演説や代表質問野党が欠席されたことは、私にとりまして初めてのつらい体験でもあり、大変残念なことでありました。私としても、できるだけ早く国会が正常に復し、国民信頼と期待にこたえられるよう願っていたところであります。今般、衆議院議長からのごあっせんがあり、正常化が図られたことは、まことに喜ばしいと考えます。  社会保障制度の将来への責任についてのお尋ねがありました。  いわゆる団塊の世代の人々がやがて高齢世代の仲間入りすることを考え、最後の検討機会との思いで、社会保障構造のあり方について、有識者会議において総合的な観点からの検討をお願いいたしておるところであります。将来にわたり安定的で効率的な社会保障制度の構築に全力を挙げてまいります。  年金関連法案についてお尋ねがありました。  今回の改正案で、将来世代の過重な負担を防ぐという見地から制度全般にわたる見直しを行い、将来最も負担が重くなる時点においても年収の二割程度に抑えることといたしたものでございます。  一方、給付について、確実な給付を約束するとの考え方に立ち、改正後も現役世代の手取り年収のおおむね六割の年金水準を確保することができるものとしており、高齢者の方々の生活費をほぼ賄えるものと考えております。この改正を実現することにより、老後を安心して暮らせる年金制度を構築してまいりたいと考えております。  財政についてお尋ねがありました。  まず、膨大な債務をどういう計画で返していくかというお尋ねでありますが、常々申し上げておりますように、平成十二年度末の債務残高が六百四十五兆円になることを重く受けとめており、財政構造改革という重要な課題を忘れたことは片時もありません。しかしながら、私は今、景気の本格的回復と財政構造改革というこの二つの双方を同時に追い求めることはできない、二兎を追う者は一兎を得ずとなってはならないと考えております。  我が国経済ようやく最悪期を脱し、緩やかな改善を続けている中にありまして、私は、ここで景気の足元を固めることなく財政再建に取りかかるという過ちを犯すべきではないと考えます。むしろ、今重要なことは、せっかく上向きになりかかってきた景気を本格的な回復軌道に乗せることであります。我が国経済が低迷を脱し、名実ともに国力の回復が図られ、それにより財政、税制上の諸課題について将来世代のことも展望した議論に取り組む環境を整え、その上で財政構造改革という大きな課題に立ち向かってまいりたいと考えております。  次に、セーフティーネットについてのお尋ねがありました。  国民の安定や安心をもたらす社会保障制度については、今後とも、真に必要な給付を確保するとともに、制度の効率化、合理化に努めてまいります。  また、調整インフレ論についてでありますが、調整インフレ論とは、一般に、金融緩和による通貨供給量の増加等の手段で人為的にインフレ率を高めていき、実質金利を低下させること等を通じて消費や投資といった需要を喚起するという政策論であると思われます。  しかし、この内容は、論者によって幅もあり、また、種々の議論も行われていることから、慎重に考えていく必要があるものと考えております。  社会保障基盤の充実についてお尋ねです。  社会保障制度について、国民の新たなニーズにも的確に対応しつつ、経済との調和がとれ、将来世代の負担を過重なものにならないようにしていくことが必要であり、このため、年金制度などの改革や介護保険制度の円滑な実施に取り組んでいるところであります。  介護保険におきまして、現場を尊重すべきではないかとお尋ねでありますが、政府としては、御苦労いただいている市町村や関係者の御意見等を踏まえながら、本年四月より介護保険制度が円滑に実施されるよう万全を期してまいります。  要介護者の方々については、介護保険のサービスを受けていただくことが基本と考えており、政府としても一層の基盤整備推進を支援してまいります。  子供たちの教育にゆったりときめ細かな対応ができる環境を整えるべきとの御主張、お尋ねでありましたが、平成十二年度におきまして、第六次教職員配置改善計画の完成に向け、チームティーチングなどきめ細かな指導等を行うための教員配置の改善を図ってまいります。  また、保育サービスの充実を含め、少子化対策については、昨年末に策定をいたしました少子化対策基本方針や新エンゼルプランなどに沿って、総合的な対策を進めてまいります。  次代を担う子供たちがたくましく心豊かに成長することは、二十一世紀を確固たるものにするための基本であり、政府としても、学校教育や児童福祉の推進に十分意を用いてまいりたいと思います。  次に、第十堰、公共事業住民投票についてお尋ねがありました。  吉野川第十堰の事業は、二市六町にわたる住民の生命と財産にかかわる問題であり、地域住民との対話を積み重ねていくことが重要であり、その具体的な進め方については、治水を担当する建設大臣が責任を持って対処いたします。  すべての公共事業において、事業採択時の評価や再評価を実施し、効率性、透明性の確保に努めております。また、事業の実施に当たりましては、環境への影響に十分配慮し、必要に応じ、環境への影響を評価いたしております。  公共事業に関しては、予算において事業ごとに所要額を計上し、国会の議決を経ているところであります。なお、個別の公共事業の箇所づけについては、予算成立後速やかに公表し、事業の透明性の向上に努めております。  法律制度の問題として、住民投票の制度化につきましては、現行の代表民主制を基本とした地方自治制度のもとで、議会や長の本来の機能と責任との関係をどう考えるか、住民投票に適する事項及び適さない事項は何であるか、住民投票を実施する地方公共団体の範囲をどうするかといった問題があると考えております。  昨年の臨界事故を踏まえた原子力政策についてのお尋ねであります。  エネルギー資源に乏しい我が国が、エネルギーの安定供給を実現しつつ、環境保全と経済成長の両立を図っていくためには、二酸化炭素を排出しない等の特性を有する原子力は極めて重要なエネルギー源であります。  他方、太陽光発電、風力発電などの新エネルギーにつきましては、現時点におきまして経済性や安定性などの難しい課題も伴いますが、こうした課題の解決を図り、二〇一〇年において現在の約三倍の導入量という目標を達成するためにも、その支援策の拡充に努めているところであります。  政府といたしましては、今後とも、新エネルギーの研究開発、導入の促進を進めるとともに、原子力につきましては、今回の事故を真摯に受けとめ、国民の理解と協力を得つつ、安全の確保を大前提にその利用を進めてまいる所存でございます。  次に、憲法観についてのお尋ねがありました。  憲法の基本理念である民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、憲法が制定されてから今日まで至る間、一貫して国民から広く支持されてきたものであって、これを堅持すべきものと考えております。  一方、憲法第九十六条は憲法の改正手続を規定しており、憲法が法理的に永久不変のものとは考えておりません。憲法をめぐる議論が行われること自体は、何ら制約されるべきものではないことは言うまでもありません。  今国会から、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うため、衆参両院に憲法調査会が設置されたところであり、極めて意義深く、将来の我が国の基本的あり方を見据えて、幅広く熱心な議論が行われることを期待いたしております。  最後に、普天間飛行場の移設に関しての御質問がありました。  政府といたしましては、稲嶺沖縄県知事の移設候補地の表明や岸本名護市長の受け入れ表明等の経緯を踏まえ、昨年末、所要の閣議決定を行ったところであります。  また、代替施設の工法及び具体的建設場所につきましては、安全、環境対策に万全を期すとともに、地域住民の方々の意向を尊重すべく、沖縄県及び地元地方公共団体の方々とよく相談を行い、最善の方法をもって対処してまいる所存であります。  以上、お答えといたします。(拍手
  34. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  35. 野田聖子

    野田聖子君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。  大蔵委員長提出平成十一年度緊急生産調整推進対策水田営農確立助成補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
  36. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 野田聖子君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 渡部恒三

  38. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 平成十一年度緊急生産調整推進対策水田営農確立助成補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案を議題といたします。  委員長の趣旨弁明を許します。大蔵委員長金子一義君。     —————————————  平成十一年度緊急生産調整推進対策水田営農確立助成補助金等についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————     〔金子一義君登壇
  39. 金子一義

    ○金子一義君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。  本案は、本日、大蔵委員会におきまして全会一致をもって起草、提出されたものでありまして、平成十一年度緊急生産調整推進対策水田営農確立助成補助金等に係る所得税及び法人税について、その負担軽減を図るため、同補助金等のうち、個人が交付を受けるものについては、これを一時所得とみなすとともに、農業生産法人が交付を受けるものについては、一定の要件のもとに事業用固定資産の圧縮記帳の特例を認めようとするものであります。  なお、本案の提出を決定するに際しましては、内閣の意見を聴取しました。  以上が、本案の提案の趣旨とその概要であります。  何とぞ御賛成いただきますようお願いを申し上げます。(拍手)     —————————————
  40. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 採決いたします。  本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。      ————◇—————
  42. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時十九分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         外務大臣    河野 洋平君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         運輸大臣    二階 俊博君         建設大臣    中山 正暉君         自治大臣    保利 耕輔君         国務大臣    堺屋 太一君         国務大臣    続  訓弘君  出席政務次官         大蔵政務次官  大野 功統君         自治政務次官  平林 鴻三君  出席政府特別補佐人         内閣法制局長官 津野  修君      ————◇—————  昨八日は、会議を開くに至らなかった。