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内閣総理大臣(
小渕恵三君)
二見伸明議員にお答え申し上げます。
冒頭、
二見議員は、
西暦二〇〇〇年という
節目を、
今世紀中にやるべくしてやれずに先送りしてきた多くの
課題に挑戦し、
決着をつけ、志の高い
日本につくり直す
助走の一年とすべしと述べられました。その上で、
日本の
あり方につきまして、豊富な御経験、高い
見識に立った積極的な御
主張、御提言をいただきました。
連立政権を支える
二見議員、そして
自由党の高い志と確固たる
政策を拝聴させていただきました。
私としても、この
連立政権の
使命、原点を改めてしっかりと踏まえ、国政に
全力で取り組んでまいります。
まず、
二見議員から、
政治の
リーダーシップについてのお尋ねがございました。
先般の
政府委員制度の
廃止と今
国会から設置される
国家基本政策委員会における
党首討論の
実現は、
我が国政治史上画期的な
改革であります。この
改革に当たり大きな
牽引力の
役割を果たされた
自由党に、改めて敬意を表する次第であります。(
拍手)
議員御指摘のとおり、こうした
改革により
政治の
リーダーシップが高まり、
政治の
責任、そして
政党の
責任が格段と重くなることは、全く同感であります。
その関連で、
政党法の制定についての御提言がありました。
政党の
社会的責務の
重要性は
議員御指摘のとおりではあります。しかしながら、
政党がその期待される
役割を十二分に果たしていくためには、
政治活動の自由が最大限尊重される必要があります。したがいまして、一般法としての
政党法の制定につきましては、慎重な検討を要するものと
考えますが、まずは、
国会におきましても御
議論をいただきたいと
考えております。
二見議員から、
国家社会と
個人とのかかわり合いあるいは公の
概念について触れられた上で、抜本的な
教育改革の必要性、また、
西沢潤一学長の
言葉を引用されつつ、
歴史教育の
重要性についてのお尋ねがありました。
施政
方針演説において、
我が国の目標として教育立国を目指すことを掲げ、志を高く掲げ、さまざまな分野で創造力を生かすことのできる人材を育成することをこれからの教育の大きな目標と位置づけております。
昭和二十二年に
教育基本法が制定されて以来、これまで
政府としては、臨教審の答申も踏まえ、また、橋本内閣の六大
改革の
一つとして
教育改革を位置づけるなど、これを推進してまいりました。
しかしながら、いじめや不登校、いわゆる学級崩壊など、教育全般についてさまざまな問題が提起され、また、
教育改革も先進各国の共通の悩みとなっており、二十一
世紀に向け
国民的に
議論を重ねていくことが大切であると認識しております。
私自身といたしましては、例えば生涯学習、地域
社会と家族、さらには個と公、すなわち
個人とパブリックとしての公の両立という視点から、教育をどの
ように
考えるのかといった問題意識を持っているところであります。
今後、広く
国民各層各界の意見を伺い、教育の根本にまでさかのぼった
議論を行うため、
教育改革国民会議を早急に発足させ、
社会の
あり方まで含めた抜本的
教育改革を内閣の最
重要課題として、
全力で取り組む所存であります。
教育基本法につきましては、制定以来五十年余りを経ており、教育全般についてさまざまな問題が生じている今日、幅広く
議論を積み重ねていくことが重要であると
考えております。
歴史教育については、子供
たちが、
日本の
歴史や文化を大切にし、郷土や国を愛し、
日本人としての自覚と
誇りを持って
国際社会の中で生きていくことができる
ようにすることは極めて重要であります。
我が国の子供
たちがしっかりとした
歴史理解を持つ
よう、教育の充実に努めてまいる所存であります。(
拍手)
国連の
平和活動に関する
法整備についてのお尋ねがありました。
私は、施政
方針演説におきまして、
国連の
平和活動への一層の努力を進めてまいりたい旨述べた
ように、
二見議員の御意見に賛同するものであります。
政府としては、
国連を中心とする国際平和のための努力に対し、
憲法の枠内で貢献することが必要と
考えており、この
ような
観点から、三
党合意や今後の
国会の御審議等を踏まえつつ、
法整備について検討してまいりたいと
考えております。
セーフティーネットの
整備等を
前提としつつ、結果の平等ではなく
機会の平等を
保障した、
市場経済原理を中心とした
経済体制との
関係で、今後の
経済運営についてのお尋ねがありました。
これからの
我が国経済社会におきまして、
個人の自由と
自己責任が
基本的な行動原理となり、多くの人々が夢に挑戦し、その中から新しい創造性が生まれるべきだと
考えております。
そこでは、すべての人に対し公正な
機会が与えられているほか、失敗をした場合、最低限の安全ネットと再挑戦の可能性が確保されていることが
前提となります。
また、御指摘の
ように、この
ような自由な
市場経済原理を中心とした
経済体制を
整備するためにも、
規制緩和を着実に進めていく必要があると認識をいたしております。
さらなる
地方分権の推進についてお尋ねがありました。
御指摘の
公共事業につきましては、国と
地方が適切な
役割分担のもとに協調、
協力して事務を進めることが必要であるとの
観点から、これまでも、
地方への権限移譲、補助金等の整理合理化などを進めてきており、第二次
地方分権推進計画に沿って、統合補助金を創設し、直轄
事業の一層の基準の
明確化を進めるなど、
公共事業の適切な遂行に取り組んでおります。
今後とも、
地方自治は大転換の時期を迎えているとの認識のもと、内閣を挙げて、
地方分権推進計画等を踏まえ、
地方分権の推進に積極的に取り組んでまいります。
憲法改正についての御提言がありました。
憲法に関する問題につきましては、条文上の表現ぶりも含めて、これまでに各方面からさまざまな意見が出されているものと承知をいたしております。
議員御自身はこのたび設置された
衆議院の
憲法調査会の委員となられましたが、いずれにいたしましても、憲政史上初めて
国会に設置された同調査会において、将来の
我が国の
基本的
あり方を見据えて、幅広く熱心な
議論が行われますことが大切であると
考えております。
今後の
経済運営の
方針について、
景気対策と
経済構造改革は補完し合うものであり、
構造改革を進めるとともに、今なお総需要喚起策をとることが必要との御指摘がありました。
日本経済新生のために、
二見議員御指摘のとおり、
景気回復と
経済改革を同時に進める必要があると
考えております。
政府は、あらゆる分野の施策を大胆かつ迅速に総動員して、
景気回復と
構造改革とに尽力してまいりました。この結果、最近の
我が国経済は緩やかな改善を続けておりますが、民間需要の回復力はまだ弱い状況にあります。
こうした状況のもと、
政府は、
経済新生対策などを力強く推進することにより、民需主導の自律的な
景気回復を
実現してまいります。
また、これまで取り組んでまいりました金融
システムの
改革や産業競争力の強化、
規制緩和など、
構造改革の推進、定着に一層の努力をしてまいります。さらに、意欲あふれる中小・ベンチャー
企業への支援や金融対策にも万全を期してまいります。
十二年度
予算につきましては、
経済運営に万全を期する
観点から編成をいたしたところであります。
私は、これらの諸施策により、単に
景気を立ち直らせるだけでなく、本格的な
景気回復と
構造改革の二つをともに
実現するために、力の限り立ち向かってまいりたいと存じます。(
拍手)
財政再建への今後の取り組みについて、具体的に将来をも展望しつつお尋ねがありました。
私は、極めて財政状況を重く受けとめており、財政
構造改革という重要な
課題を忘れたことは片時もありません。
しかしながら、私は、今、
景気の本格的回復と財政
構造改革という
課題の双方を同時に追い求めることはできない、いつも申し上げております
ように、二兎を追う者は一兎をも得ずとなってはならないと
考えております。
財政再建は極めて重要ではありますが、足元を固めることなく、
景気を本格的な回復軌道に乗せる前に取りかかるという過ちを犯すべきではありません。
平成九年秋以降、五四半期連続のマイナス成長という戦後初めての厳しい局面を経験した
我が国経済が、
経済新生対策を初めとしてこの
連立内閣で取り組んできた諸施策の効果もあり、
ようやく最悪期を脱し、緩やかな改善を続けております。十二年度
予算は、まさにこの動きを本格的な回復軌道に乗せるためのかぎとなる
予算であり、
議員御指摘の
ように、
日本経済の命運がかかっていると言えるものでもあります。したがって、まずは十二年度
経済運営を間違いなく行っていくことが重要であります。
財政再建の
実現は容易な
課題でないことは十分承知をしておりますが、
我が国の潜在的国力を顧みれば、私は決して悲観しておりません。
我が国経済が低迷を脱し、名実ともに国力の回復が図られ、それにより財政、税制上の諸
課題について
議論に取り組む環境を整え、その上で財政
構造改革という
課題に真正面から、将来の展望を見据え、取り組んでまいりたいと
考えております。
有事法制についての御指摘がありました。
有事法制は、
我が国への武力攻撃などに際し、自衛隊等がシビリアンコントロールのもとで適切に対処し、
国民の生命財産を守るために必要であり、平時においてこそ備えておくべきものであると深く認識しております。
また、いわゆる
領域警備につきましては、
政府といたしましては、三
党合意を踏まえ、自衛隊と
警察機関との連携要領の策定等、
現行の
法制度のもとでの
対応強化を進めておりますが、今後とも、自衛隊の
対応の
あり方や
関係省庁間の連携について、法的な
観点も含めさらなる検討を行い、万全を期してまいりたいと
考えております。
さらに、
PKF本体業務の
凍結解除につきまして御質問がありました。
我が国が国際的な
安全保障の確立に貢献することは、平和への重要な
課題であることは申すまでもありません。そのためにも、目下、三党派間で行われている
凍結解除に向けた真摯な御
議論が、さらに積極的に進むことを強くお願い申し上げる次第であります。
次に、先週、幾つかの
政府機関のホームページについて改ざん事案が発生したことを踏まえて、サイバーテロの対策に関する御質問がありました。
原子力施設や自衛隊関連施設あるいはライフライン
関係の
システム等について、現時点では、
システム構成が全く異なり、同列に論ずることはできないと
考えておりますが、
政府としては、こうした問題にも
対応すべく、ハッカー対策等の基盤
整備に係る行動計画を先月決定したところでありますが、なお、改ざん事案の発生にもかんがみ、本計画のもとでの
情報セキュリティー対策については、さらに積極的に推進強化をしてまいりたいと
考えております。
次に、三
党合意に言及されつつ、
社会保障についてお尋ねがありました。
施政
方針演説でも申し上げました
ように、今後少子高齢化が急速に進行する中で、制度ごとに縦割りで検討するのでなく、実際に費用を
負担し、サービスを受ける
国民の視点から、税制を初め関連する諸制度まで含めた総合的検討が求められております。私は、いわゆる団塊の世代の人々がやがて高齢世代の仲間入りをすることを
考えますと、
最後の検討
機会との思いで、先般、
社会保障構造の在り方について
考える有識者
会議を設置し、横断的な
観点からの検討をお願いしているところであります。こうした
議論や
与党の
協議等も踏まえながら、将来にわたり安定的で効率的な
社会保障制度の構築に
全力を挙げてまいります。
最後に、
連立政権の
あり方について、
議員はドイツの事例などを引用しつつ、
相違があることを
前提に協調することにより、当面の
重要課題を克服することが重要である旨指摘をされました。その上で、今般の三党
連立政権の
合意事項の
実現を目指し、真摯に取り組むべきであると述べられました。
私は、
連立政権の真髄は相互
信頼と互譲の
精神にあると信じます。その上に立って、
合意事項の
実現に向け、三党間でさらに真剣に取り組んでいくことを強くお願いいたしますとともに、私としてもしっかりとした
対応を行ってまいりますことをここに申し上げ、答弁といたしたいと思います。(
拍手)