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2000-02-18 第147回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年二月十八日(金曜日)     午前九時五十三分開議  出席委員    委員長 武部  勤君    理事 笹川  堯君 理事 杉浦 正健君    理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君    理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君    理事 倉田 栄喜君 理事 西村 眞悟君       岩永 峯一君    太田 誠一君       奥野 誠亮君    加藤 紘一君       鯨岡 兵輔君    熊谷 市雄君       菅  義偉君    高市 早苗君       中谷  元君    藤井 孝男君       宮本 一三君    保岡 興治君       山本 有二君    渡辺 喜美君       枝野 幸男君    鍵田 節哉君       坂上 富男君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    木島日出夫君       保坂 展人君     …………………………………    法務大臣         臼井日出男君    法務政務次官       山本 有二君    最高裁判所事務総局総務局    長            中山 隆夫君    最高裁判所事務総局刑事局    長            白木  勇君    政府参考人    (警察庁長官)      田中 節夫君    政府参考人    (警察庁長官官房長)   石川 重明君    政府参考人    (警察庁長官官房国際部長    )            兼元 俊徳君    政府参考人    (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君    政府参考人    (警察庁刑事局長)    林  則清君    政府参考人    (警察庁警備局長)    金重 凱之君    政府参考人    (宮内庁次長)      森  幸男君    政府参考人    (法務大臣官房長)    但木 敬一君    政府参考人    (法務省民事局長)    細川  清君    政府参考人    (法務省刑事局長)    古田 佑紀君    政府参考人    (法務省人権擁護局長)  横山 匡輝君    政府参考人    (公安調査庁長官)    木藤 繁夫君    政府参考人    (国税庁調査査察部長)  村上 喜堂君    政府参考人    (文部省初等中等教育局長    )            御手洗 康君    政府参考人    (文部省体育局長)    遠藤 昭雄君    政府参考人    (厚生大臣官房障害保健福    祉部長)         今田 寛睦君    政府参考人    (厚生省児童家庭局長)  真野  章君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     中谷  元君   鯨岡 兵輔君     古賀  誠君   左藤  恵君     宮本 一三君   福岡 宗也君     鍵田 節哉君 同日  辞任         補欠選任   中谷  元君     岩永 峯一君   宮本 一三君     左藤  恵君   鍵田 節哉君     福岡 宗也君 同日  辞任         補欠選任   岩永 峯一君     加藤 紘一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件     午前九時五十三分開議      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、法務行政等の当面する諸問題について、法務大臣から説明を聴取いたします。臼井法務大臣
  3. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員長を初め委員皆様方には、平素から法務行政運営につきまして格別の御支援をいただき、厚く御礼を申し上げます。  私は、昨年十月の就任以来、司法法務が抱えている重要な課題に取り組むべく微力を尽くしてまいりましたが、今後とも、皆様の一層の御理解と御指導を賜り、法務行政の各分野にわたって国民生活向上のため全力を尽くしてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、法務行政に関する所信一端を述べさせていただきます。  改めて申し上げるまでもなく、法務行政基本的役割は、法秩序維持国民一人一人の権利の保全を通して国民生活の安定と向上を図ることであります。しかし、行政実施する制度は、利用されてこそ評価されるべきものであります。私は、国民により理解される法務行政国民により親しまれる法務行政をモットーに、国民皆様方に活用され、評価していただける法務行政を目指して進んでまいりたいと考えております。  今、社会は、二十一世紀を迎えるに当たり、ますます複雑多様化し、国際化が進み、規制緩和が着実に進められているという状況にありますが、この大きな変革時代に、法務行政国民ニーズに的確にこたえ、その役割責任をよりよく果たすためには、改めて国民皆様制度利用される方々の視点に立って、何がそれらの方々の利益にかなうかを十分念頭に置いて運用を行い、改革を進めていくことが不可欠であると思うのであります。  私は、こうした認識のもとに、新しい時代の要請を踏まえつつ、国民の期待にこたえられる法務行政実現全力を尽くしてまいりたいと考えております。  以下、当面の重要施策について申し述べます。  第一は、司法制度改革についてであります。  司法は、近代国家基本である法の支配を現実のものとする役割を担っており、国民権利実現を図るとともに、国民基本的人権を擁護し、安全な国民生活維持するなど、国民生活にとって極めて重要なものであります。二十一世紀我が国社会においては、さきに申し上げたような社会のさまざまな変化に伴い、司法役割がより一層重要なものになると考えられます。  昨年七月に内閣に設置された司法制度改革審議会は、このような背景のもとで設けられたものであり、国民各層からの意見を踏まえて、昨年十二月に審議具体的論点項目決定、公表されたところであります。現在、審議会においては、この論点項目に従って熱心な審議が進められております。本審議会審議等に関する国会への対応法務大臣が担当するものとされておりますので、皆様がその審議の経過を把握していただけるよう十分配意したいと存じます。同時に、司法制度を所管する法務省として、審議に最大限協力してまいるとともに、時代変化に即応し、国民ニーズにこたえられる司法制度を速やかに実現できるよう積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  また、司法基盤充実策の一環として、司法にかかわるスタッフの充実を図ることが当面重要であり、今国会においても、裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、判事補等増加することを内容とする法律案提出したところでありますし、検事を含む法務省職員増員につきましても、平成十二年度予算案に盛り込まれているところであります。  第二は、社会的状況変化に的確に対応すべく、民事刑事基本法について見直しを行うことであります。  このところ、民事法整備については、皆様方の強い御支援をいただき、着実に進めてまいっておりますが、目下の緊急課題は、会社経営効率化、企業の国際的な競争力確保等の観点から、会社組織の再編成を柔軟に行うことができるようにすることにあります。平成九年以来、会社の合併、親子会社などについて、順次制度整備を図ってまいりましたが、残る課題である会社分割制度の創設について取りまとめを行い、これを内容とする商法等の一部を改正する法律案を今国会提出したいと考えております。  また、インターネット利用に代表される高度情報化社会への動きが急でありますが、電子取引等安全性確保することが大きな課題となってまいりました。その一方策として、商業登記制度基礎を置く電子認証制度及び公証制度基礎を置く電子公証制度の導入に必要な措置を定める法律案を今国会提出いたしましたので、速やかな成立をお願い申し上げます。  他方刑事法分野においても課題は少なくありません。特に、これまでともすれば見過ごされがちであった犯罪被害者の立場をより重視することについては、社会的な関心も非常に強いものがあります。昨年十月、刑事手続における犯罪被害者保護を図るための法整備について、法制審議会に諮問を行ったところでありますが、早急に答申をいただいて、今国会に所要の法律案提出したいと考えております。  また、現在継続審議となっている少年法等の一部を改正する法律案につきましては、少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図ることが喫緊の課題でありますので、何とぞ十分な御審議をいただき、速やかな成立に至りますようお願い申し上げます。  第三は、治安確保及び法秩序維持についてであります。  最近における我が国犯罪情勢を見ますと、通り魔無差別殺人事件保険金殺人事件等凶悪重大事犯金融機関役職員による経済事犯貸金業者の取り立てをめぐる事犯等が相次いで発生している上、薬物密輸入集団密航等犯罪組織が関与する事犯も後を絶たない状況にあります。国民生活の安全を確保し、公正な経済社会秩序維持することは、我が国の繁栄の基盤としていささかなりともゆるがせにできないものでありますので、これらの犯罪に厳正に対処し、特に、組織的な犯罪に対しては、いわゆる組織的犯罪対策三法を適正かつ効果的に運用するとともに、国境を越える犯罪に対する国際的な取り組みを強化するなどして、法秩序維持に万全を期してまいります。  また、私は、このような犯罪情勢に的確に対応しつつ、法秩序維持に万全を期すため、今後とも検事増員を初めとした検察体制の一層の充実強化に努めてまいりたいと考えております。  オウム真理教に対しては、昨年末、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律に基づく観察処分請求を行い、本年一月、公安審査委員会において、三年間同教団公安調査庁長官観察に付する旨の決定がなされ、このたび同教団施設に対する立入検査実施いたしました。今後も、同教団活動を継続して明らかにするように努めるなど、適切に対処してまいりたいと考えております。  また、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律に基づく報告を含め、この法律実施状況につき、必要に応じて皆様に御報告させていただくつもりでおります。  第四は、犯罪者に対する矯正処遇更生保護についてであります。  犯罪者矯正処遇につきましては、行刑施設の被収容者の数が平成五年以降増加の一途をたどり、特に暴力団関係者覚せい剤等薬物事犯者が多数含まれ、外国人収容者高齢受刑者が目立って増加しているなど、処遇上困難な要因が拡大しつつありますが、引き続き、行刑施設の適正かつ円滑な運営に意を用い、個々の被収容者の特性、犯罪傾向等に応じた適切な処遇に努めてまいりたいと考えております。  また、少年施設の被収容者平成八年以降増加を続け、殊に、ささいな動機から凶悪犯罪に及び、重大な被害を与えても罪の意識の乏しい者が増加するなど、少年の持つ問題性は一層複雑深刻化してきておりますので、その処遇に当たっては、従来にも増して、個々少年問題点を的確に把握して、改善更生のための有効適切な措置を講じ、効果的かつ計画的な矯正教育を推進してまいりたいと考えております。  他方非行に陥った少年や罪を犯した者の再犯を防止し、その改善更生を図ることを任務とする保護観察におきましても処遇に困難を伴う事案が増加しておりますが、今後とも犯罪非行予防活動及び保護観察の効果的な実施に努めてまいりたいと考えております。  また、本年は社会を明るくする運動が五十回目を迎えます。犯罪非行の防止を目的とする本運動は、民間の自発的な取り組みを起源として昭和二十六年から法務省が主唱し、保護司、更生保護法人更生保護婦人会BBS等更生保護関係者が一丸となってその展開に積極的に取り組み国民的な運動として発展してまいりました。人間関係希薄化が進み連帯感を失いつつある現在の地域社会では、犯罪非行抑止力が低下する傾向にありますが、本運動が、記念すべき五十回を迎えることを契機として、地方公共団体を初めとする地域関係機関団体の一層の御理解、御協力を得て、地域に根差した活動を展開し、一層充実強化されるよう努めてまいりたいと考えております。  第五は、民事行政事務効率化及び訟務事件処理等であります。  民事行政事務に関しては、登記事務コンピューター化を初めとして、行政情報化に沿った施策を推進してきておりますが、先ほど申し上げた高度情報化社会進展にかんがみ、利用者の負担を軽減し、その利便性を高めるため、登記情報コンピューターネットワーク利用して提供する制度を創設するための法律さき臨時国会において成立いたしました。できる限り早期にその運用を開始したいと考えております。  訟務については、国民国家との法律上の紛争の適正な解決に資するなど、法の支配の確立のために重要な役割を担ってきているところですが、司法機能充実強化が要請される現在、その一翼を担うものとして、裁判所における審理の迅速化充実化対応すべく、引き続き訟務事務処理体制充実強化を図り、一層適正円滑な事件処理に努めてまいります。  第六は、人権擁護行政についてであります。  人権啓発につきましては、昨年七月、法務省に設けられた人権擁護推進審議会から、人権教育及び啓発に関する答申をいただきましたので、その趣旨を踏まえ、人権啓発に関する施策のより一層の充実を図り、各種の啓発活動によって国民の間に広く人権尊重の思想が普及徹底するよう努めてまいります。  また、同審議会におきまして、現在、人権が侵害された場合における被害者救済制度あり方等について調査審議が行われており、今後、基本的な考え方が取りまとめられることとなっておりますので、その結果も踏まえ、被害者救済制度充実強化のための具体的施策を策定してまいりたいと考えております。  民事に関する法律扶助制度につきましては、同制度が裁判を受ける権利を実質的に保障する意義を持ち、司法制度充実に寄与する公共性の高いものであることにかんがみ、国民がより利用しやすい司法制度実現に資することを目的として、民事法律扶助事業整備及び発展を図るための措置を講ずる民事法律扶助法案を今国会提出したところであります。社会的な関心も高いところであり、速やかな成立をお願い申し上げます。  第七は、出入国管理行政充実強化についてであります。  出入国管理行政が果たすべき役割は、国際化の著しい進展に伴いますます大きくなっておりますが、私は、国際協調国際交流進展への寄与、我が国社会の健全な発展確保を理念とし、社会に歓迎される外国人の円滑な受け入れを行ってまいりたいと考えております。  他方我が国には、約二十七万人の不法残留者に加え、集団密航等により潜在する不法入国者も存在し、そのほとんどが不法就労活動に従事しているものと推定されるほか、これらの者によって引き起こされる犯罪増加するなど、我が国社会にさまざまな影響を及ぼしております。これら不法滞在外国人については、今後とも、関係省庁と緊密な連携を保ちつつ、積極的な取り締まりを推進し、その着実な減少を図っていく所存であります。  以上、法務行政重要施策につきまして所信一端を述べましたが、今国会提出した法律案及び提出を予定しております法律案は、いずれも我が国社会変革の中にあって欠くことのできない重要な柱となる制度上の手当てに係るものであります。その内容は、今後詳しく御説明させていただきますが、御理解を賜り、十分な御議論の上、速やかな成立に至りますよう重ねてお願い申し上げます。  この課題の多い時期に当たり、委員長を初め委員皆様の一層の御理解と御指導を賜りまして、法務大臣としての重責を果たしていくことが私の使命と考えておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)
  4. 武部勤

    武部委員長 なお、平成十二年度法務省関係予算及び平成十二年度裁判所関係予算につきましては、お手元に配付いたしております関係資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承をお願いいたします。     —————————————
  5. 武部勤

  6. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 武部勤

    武部委員長 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所中山総務局長白木刑事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  9. 武部勤

    武部委員長 この際、公安調査庁長官からオウム真理教に関する報告を聴取いたします。公安調査庁長官木藤繁夫君。
  10. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 オウム真理教に関する報告を申し上げます。  一、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律成立・公布。  いわゆるオウム真理教が依然として無差別大量殺人行為に関する危険な要素を保持しつつ、活動を活発化させて各地に進出し、国民が大きな不安と危惧の念を抱いているという状況に迅速かつ適切に対応することを念頭に置いた緊急の措置として、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律が昨年の第百四十六回臨時国会において成立いたしました。早期成立させていただき、まことにありがとうございました。  二、観察処分請求。  この法律は、昨年十二月三日の成立後、同月二十七日に施行されましたが、公安調査庁長官といたしましては、同法律緊急性及び重要性を十分に踏まえ、施行日に、警察庁長官の「観察処分請求を行うことが相当である」旨の意見を聞いた上で、公安審査委員会に対し、オウム真理教観察処分に付する旨の請求をいたしました。  当該処分請求書においては、一、被請求団体が政治上の主義を推進する目的をもって、いわゆる松本サリン事件及び地下鉄サリン事件という無差別大量殺人行為団体活動として行ったこと、二、同法第五条第一項各号に掲げる危険な要素のいずれをも保持していること、さらに、三、その欺瞞的、閉鎖的組織体質が顕著であることなどにかんがみ、当該団体活動状況を継続して明らかにする必要があることを骨子としており、あわせて、その裏づけとなる証拠書類等公安審査委員会提出いたしました。  また、当該処分請求と同時に、観察処分の期間を三年とすること、及び、公安審査委員会が特に必要と認める報告事項について、第一に、出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階、第二に、被請求団体作成インターネット上のホームページに係る接続業者名契約名義人氏名及び掲載の管理運営責任者氏名とすることが相当であるとの意見提出するとともに、同法律第十三条に基づき、立入検査の対象となり得る被請求団体が所有しまたは管理すると認める土地または建物について、これを特定するに足りる事項を記載した書面を提出いたしました。  三、公安審査委員会による手続。  公安調査庁長官による観察処分請求を受けて、公安審査委員会は、本年一月五日、前述処分請求書における請求の原因となる事実、並びに公開意見聴取期日及び場所を官報で公示し、さらに、同月十二日には、公安調査庁長官提出処分請求書及び証拠書類等の写しを被請求団体に交付いたしました。  公安審査委員会は、同月二十日、法務省内において公開意見聴取実施し、被請求団体の代理人である弁護士三名及び大学教授並びに代表代行から憲法論を含むさまざまな意見を聴取し、証拠提出を受けました。  なお、公安調査庁では、公安審査委員会による意見聴取前に被請求団体から提出された質問事項書に対する回答書意見聴取期日前に提出し、また、意見聴取期日においても被請求団体からの質問に対して最大限の回答を行うとともに、被請求団体主張に対しては、意見聴取期日公安調査庁としての意見の要旨を述べ、同月二十一日、最終の意見書提出し、被請求団体主張理由がない旨反論いたしました。  四、観察処分決定。  これら一連手続を経て、公安審査委員会は、同月二十八日、被請求団体に対し公安調査庁長官による三年間の観察に付する旨の決定を行い、同月三十一日、当該決定書の謄本を公安調査庁長官及び被請求団体に交付し、同年二月一日、当該決定官報で公示し、その効力が発生したものであります。  同決定においては、被請求団体が同法律第五条第一項に規定する観察処分の要件を充足し、また被請求団体主張には理由がないものと認定し、前述公安調査庁請求どおり、被請求団体を三年間、公安調査庁長官による観察に付するものとし、公安審査委員会が特に必要と認める報告事項前述の二点としたものであります。同決定は、公安審査委員会におかれ厳正かつ迅速な審査を行った結果、前述公安調査庁主張を認めたものであり、まことに適切な決定であると考えております。  五、この間における被請求団体対応とその実態。  以上のような同法律成立から公安審査委員会決定に至るまでの間においても、被請求団体は、同法律による観察処分を逃れるためにさまざまな方途を画策してきております。  例えば、公安審査委員会による意見聴取直前の一月十八日には、「抜本的教団改革事件に関する総合的見解表明及び抜本的教団改革概要)」なるものを文書で発表しましたが、この中で、昨年十二月三十日に正大師を返上したと発表された被請求団体幹部上祐史浩が、依然として被請求団体を代表する形で、「教団執行部見解として、麻原開祖一連事件に関与したのではないかと思われるという認識で一致した」「麻原開祖は天才的な瞑想家であったと思われるが、その教団が引き起こした事件については肯定できない」旨を指摘した「事件に関する総合的見解表明」を発表するとともに、被請求団体代表代行村岡達子が、教団名称の変更、危険な教義(タントラ・バジラヤーナ)の破棄、地下鉄サリン事件など一連事件に対する被害者補償法令の遵守などを内容とする「抜本的教団改革概要」を発表しました。  さらに、同月二十日の公安審査委員会による意見聴取の場においても、村岡達子が、この「抜本的教団改革」と同一内容主張を行うなど、被請求団体危険性がないことを殊さら強調しました。  しかし、翌二十一日には、麻原次女及び三女を含む被請求団体構成員らが麻原の長男を拉致する事件を引き起こすなど、被請求団体法令を遵守すると表明しながら依然として危険な要素を保持していることが露呈されたところであります。また、同事件を指示したと見られる麻原次女及び三女らについては、同月二十二日に逮捕状が発付されておりますが、いまだ検挙には至っていないことにかんがみますと、被請求団体が組織的に犯人を隠匿しているのではないかとも疑われるのであります。  このように、被請求団体によってさまざまな改革方針の表明がなされたとしても、被請求団体に対する観察処分の必要性に何ら影響を及ぼすものではないと認められるところ、公安審査委員会決定においても、「被請求団体がシバ神の化身とする松本に対する絶対的帰依を核心とする教義を保持している以上、そのような改革が現実に可能であるとは考えられないこと、松本自身及び被請求団体が全体としてこのような改革を受け入れるかも明らかでないこと、松本の被請求団体に対する決定的な影響力を考えると、被請求団体が将来、松本もしくは松本の影響を受けた者の言動によって再び無差別大量殺人行為に走る危険性を否定することはできないこと、そして、被請求団体が「あらゆる法令を遵守し、違法行為は一切禁止する」旨発表したやさきに、松本の次女及び三女を含む被請求団体構成員らが松本の長男を拉致する事件を引き起こして構成員らが逮捕されるなど、被請求団体が依然として危険な体質を保持していることがうかがわれること等を考慮すると、被請求団体主張を信用することはできない」旨指摘されているところであります。  六、観察処分実施及び今後の予定。  公安調査庁としては、二月四日、各県警察と共同で、オウム真理教が所有または管理する土地または建物のうち、栃木県大田原施設、茨城県三和施設、埼玉県越谷施設、岐阜県美濃加茂施設、滋賀県甲西施設の五施設に対して、また二月十日、公安調査庁単独で神奈川県横浜支部に対して、それぞれ観察処分に基づく立入検査実施いたしました。いずれの施設におきましても、同法律及び同法律に基づく観察処分決定の趣旨を踏まえ、施設内の状況を細部にわたって確認するとともに、パソコンや書類が存在した施設においてはこれを検査するなど、適正に実施されたものと認識しております。  公安調査庁としては、同法律に定める要件を充足する場合には適宜適切に立入検査実施していく所存であり、今回対象とならなかった施設についても、今後、立ち入る可能性があることを申し上げておきます。  また、三月二日までに被処分団体から第一回目の報告がなされることとなっておりますので、これにより一層的確に被処分団体活動実態を把握することができるものと考えております。  今後とも、公安調査庁としては、国民の期待にこたえるべく、観察処分を適正に実施して、被処分団体活動実態を継続して明らかにしていきたいと考えております。  なお、同団体は、二月八日、公安審査委員会決定した観察処分の取り消しを求める行政訴訟を東京地方裁判所に提起するとともに、同処分の執行停止を求める申し立てを行いました。  また、立入検査につきましては、以上に加えて、本日午前八時ごろから、茨城県旭村施設、埼玉県八潮大瀬施設及び東京都千住河原施設の三施設について実施していることを付言いたしたいと存じます。  以上でございます。     —————————————
  11. 武部勤

    武部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅義偉君。
  12. 菅義偉

    ○菅(義)委員 自由民主党の菅であります。オウム問題を中心に質問をいたします。  ただいま公安調査庁の長官から観察処分に至るまでの経過の説明があったわけでありますけれども、現在のオウムにおける意思決定はどのような形で行われているのか、上祐が出所する前と後ではどのような変化があったのか、まず最初にお尋ねをします。
  13. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 オウム真理教の意思決定の仕方につきましては、従前は村岡達子ほかの正悟師クラスの幹部信徒によって構成される長老部が全体の意思決定に当たっておりましたが、昨年十二月二十九日の上祐史浩の出所以後は、同人が以前の長老部の構成メンバーを主導する形で意思決定の中心的役割を果たすようになったものと認識しております。
  14. 菅義偉

    ○菅(義)委員 今の報告にもあったのですが、先月、麻原の長男が拉致をされる事件がありました。これは教団内部の権力抗争じゃないかと。この抗争を経て権力構造というものが変化があったのかどうか。それと同時に、今、指名手配をされております次女、三女、この行方についてどのように把握をしているのか、お尋ねをします。
  15. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 委員御指摘のように、一月の二十一日に麻原彰晃こと松本智津夫の長男が連れ去られるという事件が発生いたしました。  この事件の背後関係としましては、オウム真理教内部の権力構造の変化によるものなのか、あるいは麻原の家族に対する同教団の方針の変化によるものなのかなど、種々の事情が考えられるところではありますけれども、現在までの調査では判然といたしておりません。今回の麻原の長男拉致事件が、同教団内においていかなる状況のもとで発生したのかについては、さらに調査を続けることといたしたいと思っております。  また、次女、三女の行方につきましても、現在調査中のところでございます。
  16. 菅義偉

    ○菅(義)委員 オウムは、パソコンショップは教団とは無関係であるということを言い続けてきましたけれども、このパソコンショップが去年の暮れに唐突に閉鎖をされました。しかし、ことしになって、オウムは今度そのパソコンショップの事業を再開して、その収益の中から犯罪被害者の方たちに補償をしたい、こういうことを実は言っておるわけでありますけれども、この事業の実態というのは、どのように当局は把握をしておられますか。
  17. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 委員御指摘のとおり、オウム真理教の主要な資金源と見ておりましたパソコンショップ、東京で三店舗、名古屋に一店舗あったわけでございますけれども、それらにつきましては本年一月末までに、彼らの言い方によりますと、警察当局による捜査やマスコミ報道によりまして通常の営業が不能になったなどと称しまして、閉店しているわけであります。  オウム教団は、以前から一貫してこれらのパソコンショップと教団との関係を否定しておりまして、これまでに得た事業収益も秘匿してきたわけでありますが、一月二十九日に地下鉄サリン事件などの被害者への新補償計画の概要を発表しておりまして、この中で、同教団が新たにパソコン企業を設立して、事業収益の純益を被害者の補償に充てる旨主張しております。  この実態につきましては、教団被害者補償というものを大義名分としまして、これまで関与を否定し続けてきたパソコン販売事業とか、あるいは昨年九月の休眠宣言以降控えてきたセミナー開催等の支部活動などを公然と再開するということを宣言して、そして組織の温存を図ろうとするねらいがあるものと考えております。
  18. 菅義偉

    ○菅(義)委員 次に、先ほどの説明にもあったわけでありますけれども、公安審の意見聴取の直前になってオウムは名称をアレフに変えました。そして、今まで否定をしていた一連事件への関与も実は認めて抜本的な教団改革なるものを発表し、マスコミを通じてというよりもマスコミを利用して、自分たちは教団の体質が変わったんだ、こういうことをアピールしておるわけでありますけれども、本当にその本質が変わったのかどうか、その実態についてどのように把握をしているのか、お尋ねをします。
  19. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 オウム真理教は、御指摘のように一月の十八日に、その名称と代表者の変更、また被害者補償実施及び法令の遵守など、いわゆる改革案と称するものを発表したのでございますが、一月二十日の公安審査委員会による意見聴取期日におきましても、麻原に対する崇拝を継続していくことを明言するなど、その本質に変化はないと思っておりますし、また、同教団の従前の意思決定機関である長老部を構成していた幹部信徒らが名称変更したと称するアレフの役員に名を連ねるなど、組織としての同一性を維持しているものと見ております。  したがいまして、同教団一連改革案につきましては、被害者補償というものを大義名分にいたしまして組織の延命を図る同教団の苦肉の方策にすぎない、教団の欺瞞的な体質があらわれているものと受けとめております。
  20. 菅義偉

    ○菅(義)委員 実は、私も全く同感であります。今日までオウム教団というのは、例えばオウム立法が成立する直前だとか、そういう節目に自分たちが変わったということをいろいろ発表しておるわけでありますけれども、表向きの言葉と裏の活動が一致をしておりませんし、やはり麻原を否定しない限りにおいては、私も、本質は変わっていない、そういうことで、今度の観察処分というのは当然のことであると思っております。  この観察処分に伴いまして立入検査が行われたわけでありますけれども、当初五カ所でありました。横浜支部はそれよりおくれて、二月の十日ですか、六日間おくれて入ったわけであります。そして、きょうも三カ所ですか、検査が行われている、こういう報告でありますが、どうも検査に対して私は違和感を感じているんですね。公安調査庁と警察の連携がうまくいっていないんじゃないか、こういう不協和音さえ実は感じておるわけでありますけれども、その点についてどうであるのか、お尋ねをします。
  21. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 観察処分に基づく立入検査の場所あるいは対象施設の選定については、公安調査庁が、警察庁とも協議しながら、諸般の事情を勘案して決定しておるわけでございます。  第一回目の立入検査については両者が共同で行うこととしまして、対象施設決定しました。横浜支部は、その後、神奈川県警の支援、協力を得まして公安庁単独で実施しておるわけでありますけれども、警察との間にいろいろ連絡協調を密にして行っておりまして、お互いに情報交換した上で立ち入り先を決定しておるところでございます。  その結果、共同して立入検査実施したり公安庁の単独で立入検査実施したりすることがあるわけでありますけれども、公安庁が単独でやる場合におきましても、施設周辺の警備など、警察の支援、協力を得て適切に実施してきておりまして、警察との連携については円滑に行われているものと考えております。
  22. 菅義偉

    ○菅(義)委員 目的は一つでありますから、外から見てもそういうことを感じられぬような形で連携をして、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。  実は、上祐が、昨年の十二月二十九日に広島刑務所から出所して、今、私どもの横浜市にある教団施設に住み続けておるわけでありますけれども、地域の住民の人は実は大変な迷惑をしております。右翼の街宣活動やあるいは見物人、二十四時間の人の出入り、マスコミ、また機動隊の人たちは、この寒いのに二十四時間態勢ですから、大変な思いで警備に当たっていただいております。  町は騒然といたしておりまして、住民の人たちが、一日も早く出ていってほしい、そういう署名を集めて、先日、地元の市長やあるいは警察署長に陳情しました。大臣にも来週陳情する予定になっておりますけれども、この教団の中で横浜支部というのはどのような位置づけにあるのか、さらに、上祐はそこに住み続けていくのかどうか、さらに、立入検査の結果、再発防止処分につながるようなものがあったのかどうか、含めてお尋ねをします。
  23. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 オウム真理教の横浜支部は、これまでは主に在家信徒を対象にした修行施設として使用されておりました。上祐が出所した十二月の二十九日以降は、同人が横浜支部施設内に居住しておりまして、村岡達子ら長老部構成員である正悟師クラスの幹部が集結している状況が確認されておりまして、同支部が事実上の本部機能をもあわせ持つに至ったものと考えております。  こうした実態を含めて、同教団の動向に対しまして付近住民の方々が大変不安に感じておられるということも十分理解しておるところでございます。そういうこともありまして、単独で、県警の協力を得て立入検査実施したところであります。  上祐がいつまでいるかということにつきましては、現在のところ、まだ明確にわかっておりません。  立入検査において再発防止処分の請求ができるような発見があったかどうかということでございますが、横浜支部をも含めまして、現在までに立入検査実施した六施設につきましては、サリンなどの無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が明らかとなるような物品等の発見には至っておりません。また、再発防止処分につながるような検査拒否とか検査の妨害、忌避と認められるような事案の発生もありませんでした。  ただ、オウム真理教危険性につきましては、今後とも同教団からの報告聴取をも含めて必要な調査を行っていきたい、このように考えております。
  24. 菅義偉

    ○菅(義)委員 本部機能を持つというような話もありましたけれども、徹底して立入検査を繰り返していただいて、住民の皆さんに危害の及ばないような態勢をぜひつくっていただきたいというふうに思います。  さらに、オウムには、破産管財人が入る前に七億円を超える資産があった。これは管財人の阿部先生も言っておりますけれども、この隠し財産の発見に全力を挙げるべきであると思います。そのためには、やはり信者の住居なども立入検査の対象にするべきだと思いますけれども、いかがですか。
  25. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 立入検査の対象となる施設は、当該団体の所有または管理する施設であって、当該団体活動状況を明らかにするために特に立入検査実施する必要があると認められる施設ということになっております。  先生御指摘のように、隠し財産がありそうな施設につきましても、そういった要件に該当するならば、信者の居住地であっても立入検査が可能であると考えられますので、先生御指摘の点をも考慮に入れまして、立入検査を行う施設を選定してまいる所存でございます。
  26. 菅義偉

    ○菅(義)委員 次に、このオウム真理教と関係が深いとされています出版社のなあぷる、これについて当局はどんな見解を持っていらっしゃいますか。
  27. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 御指摘の出版会社の存在につきましては、私どもとしても確認しているところでございますけれども、同社とオウム真理教との関係については、調査の具体的内容に触れることにもなりかねませんので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。  しかし、一般論として、公安調査庁といたしましては、オウム真理教と関連の深い法人等の活動実態については重大な関心を持っているということだけを申し上げさせていただきたいと思います。
  28. 菅義偉

    ○菅(義)委員 ぜひ徹底して調査をしていただきたいと思います。  なぜ私がこれを申し上げるかといえば、オウムは、信教の自由だとか結社の自由ということを隠れみのにして、反社会的な行動を今日までとってきました。今度は表現の自由という中でここを拠点とするのではないかなという懸念を実は私は持っておりますので、十分注意して当たっていただきたいと思います。  観察処分被害者救済と連動するわけであります。立入検査によって内部の資料を収集することによってこれにつながるわけでありますが、その実効性についてはどのように考えておられますか。
  29. 山本有二

    山本(有)政務次官 特定破産法人の破産財団に属すべき財産の回復に関する特別措置法、さき国会で御審議いただき成立いただいた法律でございますが、観察処分を受けた団体及びその構成員等が有する財産を、特定破産法人の破産財団との関係で不当利得と推定することとされております。また、特定破産法人の破産管財人は、財産等の返還請求をするために必要な資料の提供を公安調査庁長官請求することができるものとされております。  去る一月二十八日、いわゆるオウム教団観察処分を受けたことによりまして、宗教法人オウム真理教の破産管財人は、公安調査庁長官から必要な資料の提供を受けた上で、当該団体及びその構成員等に対し、推定規定の適用を主張して、不当利得の返還を請求することが可能となりました。したがって、被害者への配当の引き当てとなる破産財団の増殖が見込まれます。それによりまして、観察処分被害者の救済をも進展させる契機となったものと確信をいたしております。  また、オウム側が毎年一定額の金銭を支払うという提案をいただいたわけでありますが、これもこのことに関連した発言だろう、こう考えております。
  30. 菅義偉

    ○菅(義)委員 ぜひ、徹底してこれからも立入検査を行っていただいて、内部をガラス張りにしていただきたいと思います。  次に、このオウムの裁判についてお尋ねをしますが、麻原の国選弁護費用、今日まで二億四千万程度かかっているということを言われていますが、オウム関連に関して国選の弁護士費用の総額はどれぐらいになっているのか、お尋ねをします。
  31. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  オウム関連の事件は、全国で百九十四人の被告人が公判請求をされておりますが、それらすべての被告人について国選弁護費用がどれくらいに上るかということは、調査する時間的余裕がございませんでしたので、多数のオウム関連被告人が起訴されました東京地裁の例で申し上げます。  東京地裁には、現在係属中の事件もございますが、このうち六十七人の被告人について付されました百三十五人の国選弁護人に対しまして、平成七年八月から現在までの間に総額約四億四千万円の国選弁護料が支給されております。
  32. 菅義偉

    ○菅(義)委員 後でいいですから、全体の資料を請求しておきたいと思います。  また一方、オウム関連事件被害者に給付された犯罪被害者の給付金の総額はどのぐらいですか。
  33. 石川重明

    石川政府参考人 お答えいたします。  オウム真理教に係る一連事件、いわゆる松本サリン事件地下鉄サリン事件などで被害に遭われ、亡くなられたりいたしました合計十四名の被害者の御遺族の方々等に対しまして、総額約六千六百万円が支給をされておるところでございます。  なお、地下鉄サリン事件だけで十二名の方が亡くなられたわけでございますけれども、そのうち、亡くなられた二名の御遺族に対して犯罪被害者等給付金が支給されております。これは、犯罪被害者等給付金支給法によりますと、労働者災害補償保険法その他の法令により給付が行われる場合には、その給付額の限度において犯罪被害者等給付金は支給されないということになっておりますので、この事件につきましては、その発生時間帯が通勤時間帯であったということで、大部分の被害者の方々に労災が適用されたというふうに承知をしております。
  34. 菅義偉

    ○菅(義)委員 麻原の公判は、来年度予定三十八回ということが発表されていますけれども、このままのペースですと、第一審の判決がおりるまで約十年かかりますね。これはもし、当然そうなると思いますけれども、最高裁まで争うならば、実は二十年以上かかってしまいます。これは、被害者の心情や国民感情を考えたときに、やはり裁判をもっともっと早くしてほしい、これは当然のことであると私は思っています。裁判のスピード化を含めて、制度改革についてどのように考えておられるのか、お尋ねをします。
  35. 山本有二

    山本(有)政務次官 先生御指摘のとおりでありまして、国民の裁判を受ける権利、とにかく納得いただける形にしなければなりません。その意味で、司法制度改革審議会において論点項目の一つに挙げられておりまして、この議論を承りながら対処してまいる所存でございます。  御参考までに、今現在、一審で平均をとりますと、平成十年では、刑事事件で審理期間というのは三・一カ月、高裁で四・一カ月、最高裁で五カ月。したがって、事件の平均は一年ぐらいでほぼ完結するということになっております。また、世界各国の例を見ますと、制度が違うから一概には言えませんが、平均審理期間は、地方裁判所、日本は三・一カ月と申し上げましたが、アメリカでは五・六カ月、ドイツでは六・二カ月。アメリカ、ドイツに比べますと、日本の方がやや早いということでございます。  しかしながら、先生の御趣旨を体して、一日も早い迅速な裁判を目指してまいりたいと思っております。
  36. 菅義偉

    ○菅(義)委員 ぜひ司法制度改革の中で、できるだけ早く裁判が結審を迎えられるような制度に取り組んでいただきたいと思います。  今私は、あえて国選弁護費用と給付金について質問しました。それは、一連のオウム事件を通じて、加害者と比較して被害者の立場が余りにも弱過ぎる、このことが実は浮き彫りになってきていると思います。加害者に対しては、憲法三十七条を初め、刑事訴訟法にもその権利というのが明記をされていますけれども、犯罪被害者の人たちの権利を明記している法律はありません。犯罪被害者の人たちは、人権を軽視されて、不十分な救済しか受けておりませんし、想像を絶するほど経済的にも精神的にも負担を強いられているのも、私は現実であると思っております。被害者の多くの人たちは、権利の確立と被害回復の実現というものを強く望んでおります。  具体的には、法廷での意見陳述、公判資料の閲覧、コピー、損害賠償での民事上の合意に強制執行力をつけてほしい、あるいは、精神ケアのためのカウンセリングの体制を整えてほしい、また、医療費や学費を含めた給付金制度充実などを強く求めておりますけれども、これも私は当然のことであると思います。  山本総括政務次官は、この問題に対して大変深い理解のもとで積極的に今取り組んでおられますけれども、現在、法務省が今国会提出を検討しております犯罪被害者保護についての法整備概要というのはどんなものになっているのか、お尋ねをします。
  37. 山本有二

    山本(有)政務次官 法務省におきましては、昨年十月、刑事手続において犯罪被害者への適切な配慮を確保し、その一層の保護を図るための法整備につきまして、法制審議会に諮問を行ったところであり、早急に答申をいただいて、今国会に所要の法律案提出したいと考えております。  この法律案に盛り込む主な内容といたしましては、強姦罪等の性犯罪の告訴期間を撤廃すること、次に、証人の負担を軽減するための措置として、証人を別室に在室させ、テレビモニターを通じて証人尋問を行うビデオリンク方式による証人尋問や、証人の遮へい、証人への付き添いの制度を導入すること、次に、被害者等の傍聴に配慮し、また、公判記録の閲覧、謄写を認めること、次に、公判手続において、被害者等による意見陳述を認めること、そして、被告人と被害者等との間の民事上の和解を刑事の公判調書に記載し、これにより強制執行ができる制度を設けることなどを考えております。
  38. 菅義偉

    ○菅(義)委員 ぜひ、早急にこの刑事手続に関する法整備というものを行っていただきたいと思います。  さらに警察庁では、給付金制度の見直しについて検討しておると思いますけれども、現在の制度では、遺族や重い障害が生じた被害者だけが対象になって、それも実は一時金であります。入院や通院の治療費は含まれておりませんし、犯罪被害者については全額医療費を公的負担してほしい、これも私は当然なことであると思います。  確かに、一義的には加害者が行うべきでありますけれども、加害者ができなければ国費で負担をしてほしい、これが実はその声であります。さらに、現在の給付金の上限でありますけれども、千七十九万になっておりますけれども、これもやはりもっと高く設定をすべきである、こう考えますけれども、これについていかがですか。
  39. 石川重明

    石川政府参考人 今委員御指摘のとおり、犯罪被害者等給付金は、不慮の犯罪被害に遭われて亡くなった方の御遺族、あるいは重い障害が残った方に対して、社会の連帯共助の精神にのっとって、いわば見舞金的性格の給付金として支給されているわけでございます。そのために、給付金について、損害補償とは異なるという観点から定められておるわけでございまして、必ずしも、御指摘のように、被害者の方々の損失をすべて補うものとなっていないということは事実でございます。  警察庁といたしましては、これまで額の問題につきましては、他の公的給付との均衡、あるいは物価水準の上昇等をしんしゃくいたしまして、過去三回にわたって引き上げの改定を行ってまいりました。また、支給対象となる重障害の範囲につきましても、平成九年に拡大をするといったような見直しを行ってきたわけでございます。  では今後どうするか、こういうことでございますが、被害者の方々に対して、国や地方公共団体が今後さらにどのような支援をしていくかにつきましては、社会全体の問題として、十分に議論をしていく必要があろうというふうに考えております。  現在、警察庁におきましては、被害者学の専門家の方々に対しまして、この制度を含めまして、被害者対策に資するための総合的な調査研究を委託して行っていただいているところでございます。これらの調査結果、あるいは被害者のニーズ等を踏まえまして、犯罪被害給付制度の拡充を含めまして、被害支援のあり方を今後積極的に検討してまいりたい、このように考えております。
  40. 菅義偉

    ○菅(義)委員 ぜひできるだけ早く結論を出していただいて、現在の犯罪被害者等給付金制度の拡充に努めていただきたいと思います。  被害支援のネットワークが日本にもあるわけでありますけれども、その山上さんという会長、精神科医の先生でありますけれども、その会長によれば、日本の犯罪被害者保護救済制度というのは、イギリスやアメリカに比べると二十年おくれている。これは、精神ケアだとかあるいはボランティアの体制、そういうものも含めてでありますけれども、この問題については、法務省、警察庁のみならず、やはり国を挙げて取り組むべきであると思いますし、その法整備と同時に、やはり予算化にも積極的に取り組んでいくべきであると私は思っております。  被害者の人たちは、犯罪被害者基本法の制定を切実に望んでおりますけれども、これも私、当然のことであると思っております。国は、被害者の立場を考えて、包括的な被害者の方を保護、救済する法律というものをぜひつくるべきであると思います。  最後に、山本総括政務次官の決意を伺いまして、質問を終わります。
  41. 山本有二

    山本(有)政務次官 昨年秋に内閣に犯罪被害者対策関係省庁連絡会議が設けられました。また、自由民主党でも、犯罪被害者保護・救済に関する特別委員会、いわゆる与謝野委員会が設けられたわけでございますが、この二つの委員会が設けられる前に、任意の研究会として、菅委員が事務局を務められて、いわゆる被害者救済の立法への運動を展開されたことを承知しております。したがいまして、熱心な菅委員の御指導のもと、この両会議あるいは委員会等の議論も踏まえつつ、総合的な見地から積極的に検討してまいりたいと考えております。
  42. 菅義偉

    ○菅(義)委員 終わります。
  43. 武部勤

    武部委員長 次に、倉田栄喜君。
  44. 倉田栄喜

    ○倉田委員 倉田でございます。  私は、人権問題それから法秩序維持、この二つの視点からお尋ねをしたいと思います。  まず、人権問題についてでありますが、その中で、特に家庭内暴力。神戸そして新潟、京都、本当に最近、驚くような事件が起こっておりまして、一体どうなっているのかという思いを強くいたします。その意味で、これは家庭の中に、暴力の問題も含めて相当大きな問題があるのだろう。家庭内暴力という視点では、例えば、長じた子供が弱くなった親に対して暴力を振るう、その問題も看過できない、こう思います。  きょうは、もう一つ、いわゆる親が子供たちに暴力を振るうという児童虐待、こういうふうに言われている問題について、まずお聞きをしたいと思っております。  子供たちが親や大人に虐待をされる、こういう児童虐待件数が増加をしているというふうに承知をいたしておりますが、まずこの問題の実態をどのようにとらえておられるのか。これはそれぞれ、きょうは厚生省と警察庁からおいでをいただいておりますので、簡潔に、この問題を今どういうふうに御認識になっておられるのか、それをお聞きしたいと思います。
  45. 真野章

    真野政府参考人 先生御指摘の児童虐待の相談件数でございますが、全国の児童相談所におきまして受け付けました件数は、平成二年度に千百一件でございましたが、平成十年度には六千九百三十二件と増加をいたしております。そして、いわば主たる虐待者の調査も行っておりますが、実母が五五%、実父が二八%という調査結果でございまして、児童にとって本来一番愛されるべき存在であります親からの虐待ということが一番多いということでございまして、私ども、大変深刻に受けとめております。  この急増につきましては、国民への通告義務の啓発や、児童相談所を中心といたしました福祉、保健、医療、警察、教育などの関係機関の連携促進により、従来潜在化していたものが顕在化してきたという意見もございますし、また一方、親が孤立をしたことが原因となったケースもふえているということから、実際にはもっと多くのケースが発生しているのではないかという意見もあることは承知をいたしております。  児童虐待というのは、家庭という密室で行われる場合が多うございますので、とにかく早期発見、早期対応ということが重要だと考えておりまして、関係省庁、民間団体との連携の強化、それから通告義務の徹底等、そういうことで対策に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  46. 黒澤正和

    黒澤政府参考人 最近、児童虐待に関しまして警察に寄せられる相談件数も増加傾向にございますが、平成十一年に児童虐待事犯として検挙いたしました事件でございますが、百二十件でございます。被害少年数は百二十四人、そのうち四十五人が死亡という状況でございます。  警察といたしましては、これまでも児童虐待問題を少年保護対策の最重要課題の一つとして位置づけまして、積極的に取り組んでまいったところでございますが、最近の深刻な状況を踏まえまして、昨年の十二月でございますが、取り組みの強化を各都道府県警察に指示をいたしたところでございます。  その概要は、児童虐待事案の早期発見、児童虐待事案への適切な対応、児童相談所等、関係機関との連携強化、部内体制の充実職員に対する指導、教養の充実などでございます。  さらに適切な措置を講じまして、児童の保護の万全を期してまいりたいと考えております。
  47. 倉田栄喜

    ○倉田委員 親、大人の子供に対する暴力、これを虐待とするとき、一方では、親のしつけとしての懲戒権、あるいは施設でもいろいろ問題があると思うのですけれども、施設等の教育訓練権、こういうところとの区別があって、なかなか、発見されたときは非常に大変な状況になっているということが多いのだと思うのですね。今の時点で、親の懲戒権と暴力、あるいはしつけと暴力、虐待、あるいは施設の中における教育訓練、そこにおける暴力、これは厚生省、警察庁、現場では大体どんな区別をしているのでしょう。
  48. 真野章

    真野政府参考人 先生おっしゃいますように、親の懲戒権、施設の訓練権との関係、また学説的にも虐待ということにつきましてさまざまな御論議、定義についての御論議もございまして、いわば関係者で一致したものというものは、定説というのはまだまだ見出しておられない状況ではないかと思いますが、ただ、現場でございます児童相談所がこれに対応するためにはそういう学説の定説化を待っているわけにはまいりませんので、昨年の三月に関係者、専門家にお集まりをいただきまして、いわば児童相談所におきます認識を同じくし、そしてそのための対策を期するということで、「子ども虐待対応の手引き」というものを作成いたしました。  その中では、虐待は親の意図とは関係なく、子供自身の苦痛の観点から判断をするのだということと、典型的なケースとして、親による身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、それから保護の怠慢や拒否による健康状態や安全を損なう行為、ネグレクト、ちょっと片仮名で恐縮ですが、そういう分類をいたしまして、児童相談所における対応というものを指導しているところでございます。  また、児童福祉施設の長に与えられました懲戒に係る権限につきましては、平成十年に児童福祉施設最低基準を改正いたしまして、身体的苦痛を与え、人格を辱める等、その権限を乱用してはならないという最低基準を設けまして、いわばその乱用に当たる行為を例示いたしました。そういう懲戒に係る行為の方法及び程度が児童の健全育成という法の目的を達成するために必要な範囲を超える場合には乱用に当たるのだということを通知をもって示しておりまして、そういう面で指導の徹底を期していきたいというふうに考えております。
  49. 黒澤正和

    黒澤政府参考人 警察では、現場におきまして、児童虐待と思われる事案を発見、認知した場合には、個々の事案によるわけでございますが、一般的に申し上げますと、時間、場所、手段、方法、そして児童の年齢や状態などを総合的に勘案をいたしまして、親のしつけとしての懲戒権等の行使であるかどうかを判断いたしておるものと承知をいたしております。
  50. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今のお答えでも明らかになったと思うのですけれども、刑法上の暴行という概念は非常に明確になっていると思いますし、区別はできると思うのです。これは暴行であるということは明らかであると思うのですが、これが虐待ということになると、今のお答えのとおり、総合的に勘案をしなければならない、こういう話であります。そうすると、なかなか現場の担当者の方はおわかりにならないというのか、刑法上の暴行だったら非常に明確だと思うのですけれども、しつけだとかあるいは教育訓練権だとかいう話の中では大変難しいことになっているんだろう、こう思うのですね。  そこで、これは先般、児童虐待対応に対して、全国の児童相談所の所長さん対象かと思いますけれども、アンケートをされたという記事が載っております。全国相談所の八割以上の方が、現行の児童福祉法では限界があると。そういうことで、これは新聞記事によりますけれども、まず、児童虐待という虐待の定義を明確にする必要があるのではないのか。そしてさらには、これはしつけですよ、親の親権の行使ですよということでありますので、場合によれば親権の一時停止ということも必要なのではないのか。そしてさらには、先ほど通報体制の整備というお答えがあったわけでありますけれども、一方で、誤認通報の場合、これはどうするか。これについてはある意味では免責の規定が要るのではないのか。さらには立入検査の具体的権限、それから、児童相談所に保護されたとしても、親権者が引き取りに来られた場合にどう対応するか等々、さまざま問題が指摘をされております。  厚生省は、児童福祉法の問題にもかかわっていくと思いますけれども、今私が指摘をした問題、どういうふうにお考えになっておられますか。
  51. 真野章

    真野政府参考人 御指摘をいただきました調査でございますが、児童相談所長会として内部での議論を行うための資料として、昨年の十二月に、全国の百七十四カ所の児童相談所長さんに、個人的なお考えを急ぎ把握するということで行った調査というふうに聞いております。今後、この調査結果を含めまして、いわば所長会としての議論を集約していただくというふうに聞いております。  ただ、先生御指摘のそれぞれの点、私どもも問題意識も持っております。それから、また逆に言えば、どういう形でそれを実効あらしめる方法を担保していくのかという問題もございます。実際に第一線でこの問題を担当していただいている所の所長さん方のいわば御意見でございますので、我々としては、その所長会からの検討の結果も踏まえまして、厚生省として今後検討する場合の重要な参考資料にさせていただきたいというふうに考えております。
  52. 倉田栄喜

    ○倉田委員 総括政務次官、お聞きになって問題点の所在はおわかりいただいたと思うのですが、この児童虐待の問題については今から考えなければいけない、こういう状況のようであります。  先ほど警察庁の方から、児童虐待事犯として検挙した事件は百二十件、被害少年数は百二十四人、そのうち四十五人が死亡。新聞記事だと、九七年度五千四百件と九〇年度の五倍になって、親に殺された子供は、無理心中を含めて百三十一人というふうな記事がございました。また、最近のテレビ、新聞等でも見られるわけでありますけれども、いわゆる知的障害者施設の訓練や体罰、あるいは児童福祉施設の訓練、体罰が非常に大きな問題になっています。  もちろん、施設の中では指導員の熱意、あるいは家庭の中においては親の教育における熱意というものもあると思いますけれども、先ほど申し上げましたように明確な規定がない。子供の側から考えるんだというお話はあったわけでありますけれども、これらの家庭内あるいは施設の中における幼少時における虐待というものが、長じて、これからいろいろ調べられるんだと思いますけれども、新潟でありあるいは京都であり、ああいうふうな事件になっていっているんだとすれば、これは大きな問題であります。  法務省として、人権あるいはそういう側面からこの児童虐待の問題をどのように認識をしておられるのか、あるいはどう解決をすればいいとお考えになっておられるのか。私は、そういう意味では、児童虐待防止法みたいなものを制定するとか、児童虐待防止センターみたいなきちっと、児童相談所があるわけでありますけれども、その辺の整備をしっかりやらなければいけないのではないのか、こう思うわけでありますけれども、総括政務次官、法務大臣のかわりにお答えいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  53. 山本有二

    山本(有)政務次官 委員御指摘の事実を改めてお伺いいたしまして、大変深刻な事態が来ているというように思いました。  特に、児童虐待の件数の多さ、量の点、それから、いわゆる先生の言う懲戒権を飛び越えてこれはもう殺害まで行くというこの深刻さにおける質の点、さらに、特に最近の、急速に増加している、ここ一、二年で倍ぐらいになっているというこの急速増加の点、この三つにおきまして、子供は国の宝と申しますけれども、そのことを考えたとき、将来のこの国の危うさ以上に、強い大人が弱い子供をいじめているこの現在の社会の病弊、徹底的に解明していく必要があろうというように思っております。  特に、児童福祉法が虐待を受けている児童の保護手続等を定めておりますけれども、法務省人権擁護機関でも、人権相談等を通じて具体的に児童虐待事案につきまして情報を認知した場合には、福祉事務所または児童相談所に通告し、人権擁護の観点に立った的確な対応を要請し、これら機関に協力してその解決に努めていきたいと思います。また、必要に応じ、人権侵犯事件として関係者に対し啓発を行うなど積極的に関与することとしておりまして、今後とも、関係機関とも連携をとりながら、このような取り組みを一層充実させてまいりたいと考えております。  なお、児童虐待を含むさまざまな人権問題に関する救済制度のあり方につきましては、現在、当省に設置されております人権擁護推進審議会において調査審議が進められているところでございまして、その結果も踏まえまして、法務省人権擁護機関としてどのような取り組みを行うことができるかについてなお一層検討をしてまいりたいと考えておりますので、御指導をよろしくお願いいたします。
  54. 倉田栄喜

    ○倉田委員 問題は非常に深刻だと思うのですね。そういう意味では、虐待の定義、虐待防止法あるいは防止センター等々、これは真剣に検討していただいて、対応ができるようにしていただきたいと思います。児童虐待のそういう小さいころの経験があるから、長じて逆に親に対して暴力を振るうということもあるのではないのか、こういうふうに思います。  もう一点、家庭内の暴力という問題でいえば、女性に対する暴力、いわゆるドメスティックバイオレンス、これもさまざま議論になっているんだと思いますが、これもやはり、いわゆる夫婦間の問題だ、あるいは身近な人ということで恋人同士の問題だということで、夫の妻に対する暴力行為について警察はなかなか受け付けてくれないのではないのか、こういう声が聞こえてまいりますが、警察は実際この点はどんなふうに対応しているんでしょう。
  55. 黒澤正和

    黒澤政府参考人 児童虐待につきましては、先ほども議論がなされたわけですが、家庭内のしつけであるとの主張がなされましたり、夫から妻への暴力事案につきましては被害者の方の処罰意思が明確に示されないなど、それぞれ他の事案とは異なった難しい面がございます。しかしながら、事案の態様、被害の程度、被害者の処罰意思などを総合的に勘案いたしまして、警察といたしましては、刑罰法令に抵触する事案につき、適切な検挙措置を講じておるところでございます。  そのほか、児童虐待につきましては、先ほども申し上げましたように、各種活動を通じました早期発見、少年サポートセンターを中心といたしました被害児童の適切な保護、それから、夫から妻への暴力事案につきましては、刑罰法令に抵触しない事案につきましても、事案に応じた適切な自衛、対応策の教示でありますとか、必要に応じまして相手方への指導、警告等の、被害女性の立場に立った適切な対応に、それぞれ取り組んでいるところでございます。
  56. 倉田栄喜

    ○倉田委員 これも法務省として総括政務次官にお伺いをしたいと思うのですが、今お話にありましたように、夫や恋人等による女性に対する暴力の継続、いわゆるドメスティックバイオレンスについては被害者の悩みは非常に深刻なのですね。逃げるところがない。それで、暴力に対する恐怖とともに、本当に居場所がなくなる、こういう問題があります。  人権擁護推進審議会答申にもこの問題が指摘をされておると思いますが、我が公明党もこの問題については、これらの人々を救済するための駆け込み場所の整備であるとか相談施設としての救済センターの設置等々を要望いたしておるところであります。これらのいわゆる駆け込み場所ということでの救済センターの設置、あるいはドメスティックバイオレンスということでDV禁止法、先ほど児童虐待防止法ということを申し上げましたけれども、DV禁止法もある意味では必要かと思われますけれども、この点については法務省として総括政務次官、どのようにお考えになられますか。
  57. 山本有二

    山本(有)政務次官 法務省人権擁護機関といたしましても、従来から夫婦間等におけるいわゆるドメスティックバイオレンスの根絶に向けまして積極的に啓発活動に取り組むとともに、人権侵犯の疑いがある場合には調査を行い、相手方に対する啓発を通じて被害者の救済を図るなど、その解決に努めてまいったところでございます。  ドメスティックバイオレンスの問題につきましては、このような人権擁護機関による取り組みのほか、委員御指摘のような被害保護のためのシェルターによる対応や加害者に対する刑事事件としての対応等が考えられておりますが、現在法務省に設置されております人権擁護推進審議会におきまして、ドメスティックバイオレンスを含むさまざまな人権問題に関する救済制度のあり方につきまして調査審議が進められているところでございまして、その結果も踏まえ、法務省人権擁護機関としてどのような取り組みを行うことができるかについて今後さらに検討してまいりたいと考えておりますので、委員の御指導をよろしくお願いいたします。
  58. 倉田栄喜

    ○倉田委員 これはぜひ積極的によろしくお願いをしたいと思います。  そこで次に、犯罪被害者及び被害者家族の救済の問題について先ほど御質問がありました。これも私は大体要望だけ申し上げておきますけれども、現行の犯罪被害者等給付金制度についても、その拡充のためには要件の緩和や金額の引き上げが必要と思っております。先ほどお答えをいただきましたけれども、これも早期に結論を出していただいて、より被害保護に資するようにしていただきたい、こういうふうに思っております。  そこで、この問題に関しては一点だけ、これは総括政務次官に。  先ほど、今回法案提出される被害者救済の法案についての御説明をいただきました。加害者の服役、出所情報の通知制度の導入とか、あるいは現在被害者の相談場所としての検察庁の被害支援体制の制度、これは充実をしていただきたいということだけ申し上げておきますけれども、この加害者の服役、出所情報の通知制度だけについて、政務次官どうお考えですか。
  59. 山本有二

    山本(有)政務次官 犯罪者の刑務所等からの釈放に関する情報を知りたいと思われている犯罪被害者がおられることは十分承知しております。これらの犯罪被害者のお立場も十分に考慮されるべきであると存じております。他方犯罪者改善更生やそのプライバシーの保護も重要ですので、両者の要請をどのように調整するか等につきまして鋭意検討を進めているところでございますので、御理解よろしくお願いいたしたいと思います。
  60. 倉田栄喜

    ○倉田委員 時間がなくなってまいりましたのでちょっと急ぎますけれども、法秩序維持という観点で、これはちょっと簡潔に現状だけひとつ教えていただければと思うのですけれども、麻薬、覚せい剤等国際的犯罪組織の現状。  先般、通信傍受法が制定をされました。今私が申し上げました麻薬、覚せい剤や国際的犯罪への対応について実効的な運用を期待したい、こう思っておりますが、一方で、この法律に対する批判も踏まえますと、運用の透明性も担保されなくてはならない。この点を、これは総括政務次官、どうお考えになっておられるか、このことが一点。  それから続けてもう一つ、先ほどオウムの問題について御報告をいただきましたけれども、秩序の維持という観点から、私は二つだけ問題意識を持っております。  一つは、御報告のとおり、オウム集団について観察処分が適用されることになりましたけれども、信者や元信者の社会的に復帰できる環境を一方整えていかないとなかなかこの問題は根本的に解決をしない、この問題を法務省としてどうお考えになるのか、これが二つ目です。  もう一つ、私はこれは法曹として問題だなといつも新聞報道を見るたびに思うのですけれども、信者の住民票が不受理になっている事態があるわけです。これは自治体にとっては住民感情等の中で本当に苦渋の選択なのだろう、こういうふうに思うわけでありますけれども、自治省の方でも違法の疑いがあるというのか、私はやはりこれは違法なのではないのかな、こう思っております。これを超法規的な措置ということで放置黙認することはやはり法務省としても決してできないのではないのか、こう思うのですけれども、こういう意味からしても、法秩序維持というのが法務省あるいは法務大臣のお役割であるとすれば、このオウムの住民票不受理の問題は法務省としてはどうお考えになっておられるのか。  もう時間がなくなりまして恐縮ですけれども、この三点だけお答えいただければと思います。
  61. 山本有二

    山本(有)政務次官 第一点目の通信傍受法案の運用の透明性確保の点でございますが、御指摘の通信傍受法は、他の組織的犯罪対策二法とともに、我が国における組織的な犯罪に適切に対処するために必要不可欠なものであり、この種犯罪の防圧に極めて有効なものと考えております。  もとより同法におきましては、不当に人権が侵害されることのないよう十分な配慮がなされておりますが、その運用に当たっても、国会における論議等をも踏まえ、国民皆様から十分信頼されるよう、その適正かつ有効な運用に努め、断固とした決意で組織的な犯罪に厳正に対処してまいりたいと考えております。  第二問目の、オウム集団についての社会的復帰、この環境を整えるべきであるという御指摘でございますが、オウム真理教に関しては、団体規制措置を講ずる一方で、その信者や元信者の社会復帰に資する対策をとることも社会的に重要なことであり、団体規制法案に関する衆参両議院法務委員会における附帯決議に盛り込まれましたとおり、政府として取り組むべき課題であると理解しております。  その対策につきましては、昨年十二月十七日に行われたオウム真理教対策関係省庁連絡会議におきまして、オウム真理教信者等を対象とした相談受理体制、精神的ケア、生活支援を柱とするオウム真理教信者等に対する社会復帰対策の推進についての申し合わせが取りまとめられました。  法務省といたしましては、オウム真理教信者等の社会復帰に資するよう、人権擁護委員人権擁護担当部局を活用した専門の人権相談窓口を設けており、それを積極的に利用していただけるよう努めてまいります。  また、先ほど述べましたオウム真理教対策関係省庁連絡会議において、専門家によってマインドコントロールを解く手法を開発することの重要性が確認され、本年一月十九日付の警察庁、法務省及び厚生省の申し合わせにより、社会復帰を希望するオウム真理教信者等に対する精神医学的、心理学的な援助、支援のあり方についての研究会が設置されており、信者等の社会復帰に役立つ、実効性のある研究成果が得られるよう期待しております。  そして三番目の、いわゆる住民票不受理の問題でございますが、オウム真理教の信者の住民登録等をめぐる問題は、信教の自由、居住移転の自由などの信者側の人権にかかわる一方、平穏で安全な住民の生活の確保という住民側の人権にもかかわる問題でございます。  関係地方自治体においては、オウム真理教に対する住民の方々の不安等を背景として、かねてから、苦渋の選択を迫られる中で、御努力を続けてこられたものと認識しております。  その解決に当たりましては、住民側の人権に配慮しつつも、信者等の権利が妨げられることのないよう、関係省庁とも連携を図り、政府全体として対処していく必要があると考えております。  法務省といたしましては、立入検査を含めた観察処分によりまして、オウム真理教活動実態を明らかにし、住民の皆様の不安をまず緩和、解消することができるよう努めることが必要であり、重要だと考えておりまして、この安全を確保した後に、信者の権利確保することにおいて住民側の御理解をちょうだいできる、そう考えておる次第でございます。
  62. 倉田栄喜

    ○倉田委員 以上で終わります。
  63. 武部勤

    武部委員長 漆原良夫君。
  64. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  まず最初に、最高裁判所の方にお尋ねをしたいと思います。  被害者の遺品の還付手続についてでございますけれども、一九八〇年に起きた富山・長野連続誘拐殺人事件の判決が確定した。それに伴って、一審を担当した富山地裁は、昨年に、殺された女性のセーター、バッグ、手帳、ブローチ、仮免許証、こういういわゆる遺品の還付手続をとったわけでございますが、還付した先が、遺族の方ではなくて、いわゆる被告人、名古屋拘置所に拘留されている死刑囚のところに返ってしまった。地裁から連絡を受けた被害者の遺族が、死刑囚に娘の遺品の返還を求めたところ、その死刑囚からの返答は、もう既にそういうものを処分して、ないというふうな回答が返ってきたということで、まことに悲しんでおられる。我々法律家でも、ちょっとそんなことあるのかなということで、びっくりして、何とも納得のいかない結末になっております。  そこでお伺いしたいのですが、まず、本件の証拠物は、これは多分領置だと思うのですが、刑訴法百一条では、領置の要件として、「被告人その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。」こういう条文になっておるのですが、本件のセーター、バッグ、手帳、ブローチ、仮免許証等は、この要件のどれに当たるのでしょうか、お答えいただきたい。
  65. 中山隆夫

    中山最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  遺留されたものということで領置されたものと考えております。
  66. 漆原良夫

    ○漆原委員 そうすると、これは被告人以外の者が遺留した物、遺留物、こういうふうになるわけですね。  そこで、今回、富山の裁判所から遺族の方に来たこういう通知がありました。富山地裁から書類が届いたのは昨年の九月初めだ。セーター、バッグ、手帳など六十五品目の押収物目録と事務連絡文書であった。その事務連絡文書の内容がこうあります。「警察の領置調書上所有者が」、これは被害者になっておりますが、名前を伏せます、被害者殿となっているなどの別紙の押収物については、「第一次的受還付者である被押収者としての被告人の還付請求権の行使により、同人に還付いたしましたので、お知らせします。なお、貴殿らが所有権その他の権利を有するときは、同人に対し引き渡しを求めることができます」、こういう通知が来て、遺族の方はびっくりして、死刑囚である被告人のところに手続をとった。返還を求めたところ、もうないんだ、こういうふうな結末になっておるのです。  そもそも、遺留物として領置されたんだ、この遺留物が、何で被告人が還付請求権を有するのかな、これが一番の疑問なんですが、これは最高裁はどのように解釈されておりますか。
  67. 中山隆夫

    中山最高裁判所長官代理者 先ほど私の御説明が少し足りなかったかもしれませんが、被疑者が遺留したものということで、まず領置手続がとられているものでございます。  御承知と思いますけれども、平成二年に最高裁の決定がございまして、その決定が、この場合だれに還付すべきかということを明示している唯一の判例でございますけれども、それによりますと、原則として被押収者に還付するというものでございます。原庁では、この被押収者に被告人が当たると考えて、宮崎元被告に返したものというふうに理解しております。
  68. 漆原良夫

    ○漆原委員 今のお答えで、被疑者の遺留物ということなんですか。先ほど読みました領置調書によりますと、所有者が被害者、こういうふうな領置調書になっておるようなんですが、なぜ被疑者の遺留物となるんでしょうか。
  69. 中山隆夫

    中山最高裁判所長官代理者 私どもが承知しておりますものは、原庁からの証拠書類として、領置調書でございますけれども、その領置調書によりますと、それは被疑者が遺留したという形で記載されている、こういうふうに理解しているわけでございます。
  70. 漆原良夫

    ○漆原委員 例えば、殺害現場にバッグが落ちていた、ブローチが落ちていた、あるいは被害者のセーターがあった、これは何で被疑者の遺留物になるんでしょうか。常識的に考えれば、被害者の遺留物じゃないのでしょうか。なぜ調書に被疑者の遺留物で書いてあるのか、まことにこれは常識に反する書き方になっていると思いませんか。いかがでしょうか。
  71. 中山隆夫

    中山最高裁判所長官代理者 少しく詳しく申し上げさせていただきたいと思います。  平成二年の先ほどの決定は、原則として押収物については被押収者に返すということを言っているわけでございます。ただ、この判例が遺棄された形の遺留物にまで及ぶかどうかということについては、率直に言って種々の見解があろうかと思います。原庁では、警察の調書、そもそもの領置調書、そこに被疑者と書いてあったことから、これが被押収者に当たるというふうな考えのもとにやったものと思います。  しかし、そうはいっても、委員今御指摘のとおりの、いささか常識にそぐわないことになるのではないかという考えも持ったようでございまして、宮崎元被告の方に受還付をするに当たり、本来所有者は遺族だと思われますけれどもどうされますか、遺族にお返しされたらどうでしょうかという趣旨のものもお書きしました。  その結果、宮崎元被告の方からは、これらは裁判で争われた証拠物で、自分は今後再審も考えている、再審の鑑定に必要なものなので自分の方にすべて送付してもらいたい、受領後、弁護人とも相談の上、鑑定に必要のないものについては遺族の方にお返しするような対処を考えている、こういうことでございました。  その結果、再審請求という、これは被告人の方にとっても重大な権利でございますので、やむなく原審の方はそれをお返ししたわけでございますが、あわせて、御遺族の方に、こういうようなことで宮崎元被告の方に返さざるを得なくなった、そういった事情を書いた書面をお送りした、こういうふうに承知しております。
  72. 漆原良夫

    ○漆原委員 大体経過はそのようなことなんですね。  ただ、問題は、やはり被疑者の遺留物というふうに認定したところなんじゃないのでしょうか。被疑者の遺留物だから、今さっきおっしゃった最高裁の判例がある、だから第一次的には被押収者に戻すんだ、こういうふうになるわけですね。だから、そもそも本当に被疑者の遺留物なのか、この点はどうなんでしょうか。
  73. 中山隆夫

    中山最高裁判所長官代理者 先ほどの答弁でもお答えいたしましたけれども、こういった形の遺棄された遺留物について、先ほどの判例が果たして適用されるべきものかどうかということについては種々の見解があるというふうに私どもも思っております。ただ、原庁の方ではそういった判断をしたということでございます。
  74. 古田佑紀

    古田政府参考人 捜査段階の手続の問題でございますので、私どもの承知していることを御説明申し上げます。  確かに、今委員御指摘のとおり、これは遺留物として領置され、所有者は被害者の方、それから遺留者は被告人ということになっているわけでございますが、これは被告人が実は御遺体とともによそに運んでそこに遺棄してきたものでございまして、そういうことから、そこに捨てた者は被害者の方ではなくて被告人である。こういう場合には、だれが捨てたのかということは捜査手続上明瞭にしておかなければなりませんので、この場合は、やはり遺留した者は被告人ということになるわけでございます。
  75. 漆原良夫

    ○漆原委員 理屈はそうなるのかなという気もしないでもないのだけれども、素人の目から見たら、遺族の皆さんの目から見たら、何を言っているんだろうなという感じだと思いますよ。手続上、ミスがない手続になっているかもしれないけれども、何ということをおっしゃっているのかなという感じだと私は思います。  殺害された遺族の両親は、娘の遺品が遺族である自分たちではなくて娘を殺した人に返還されて、そして処分されてしまったんだ、何ともおかしなことじゃないかと思われるのは当然だと私は思いますが、お母さんは、新聞ですが、こう言っております。返してほしいと望んだのは大したものではないんだ、写真嫌いのあの子が珍しくにこにこかわいらしく写っていた仮免許証、ブローチも、あの子が最後に金沢で買ったものだから、あの子の写真の前に供えてやりたかったんだというふうに無念の気持ちをあらわされているわけなんです。  起きたこと、終わったことを、もう当然返還できないわけですが、ああだこうだ責任を細かく追及しようがない。問題は、今後この種の場合にどう対処されたらいいのか。この辺、最高裁、いかがお考えでございましょうか。
  76. 中山隆夫

    中山最高裁判所長官代理者 先ほどお答えいたしましたとおり、裁判所としても、宮崎死刑囚に対しては、できる限り所有者の方に返していただきたいという手だてを講じてまいりました。しかし、結局、廃棄されるという残念な結果になっております。  御遺族のお気持ちを考えると、もう少し裁判所の方としても手だてがなかったかどうかということを反省すべきところがあるかというふうに考えておりますけれども、この事件が起きまして、法務省とも直ちに連絡をとりまして、本日朝日新聞にも出ておりますけれども、二月八日付で書簡を発出し、あわせて協議会等でこの件につきまして説明をしてきております。  書簡の内容は大きく分けて二つございまして、一つは、先ほどの判例がこのように被疑者が捨てた、遺棄したというような遺留物についてまで及ぶかどうかについては種々の見解があるところだということで、再考といいますか、押収物はだれに返すべきかというときに、きちんとそのあたりを見てくれということを改めて下級裁の方に注意喚起したところが一つございます。  もう一つは、先ほどもお話ししましたけれども、宮崎元被告の方に対しては、手紙を出し、できれば返していただきたい、遺族の方は返還を望んでおられます、こういうこともあわせて送ったわけですけれども、それを宮崎元被告への書簡で書いているにとどまり、拘置所の方に対して、こういった書面を宮崎元被告の方に送っている、あるいは遺族の方がそういった御希望を持っているということについてお知らせしておりませんでした。そのあたりのことを、今後は手続的にもきちんとお知らせして、裁判所あるいは拘置所の方で抜かりなくその辺のところを、御遺族の気持ちの方も考えて、こういった事態の起こらないようにしてもらいたい、そういう指示を発出したところでございます。  以上です。
  77. 漆原良夫

    ○漆原委員 今の最高裁の中山総務局長のお答え、現在の法制度の中ではそれが限界なのかなという感じで受けとめました。  ただ、それでも被告人に返されるというところは原則として残っているわけなんですね。そこが残っている以上、被告人が嫌だと言ったら、説得に応じなければ、それはその人の善意にまつしかないということになると思うんですね。だから、そういう意味では、やはりこの辺は、こういう場合にどういうふうに還付すべきかということは、一度きちっと法的に明確にしておくのも一つのやり方じゃないのかな。今回のように、領置調書で所有者が明確になっているわけですから、そういう場合には、そのまま被告人に返していいのかなどうかなという、これも検討しなきゃならぬ大きな問題だろうと思います。  法務省に、総括政務次官にお尋ねしたいのですが、先ほど大臣の所信の中にも、犯罪被害者の救済という法整備を今つくっているんだということが、また大事な問題だということがあったわけなんですが、今回のあれを見ていますと、本当に被害者の権利はどこへいっているのかなという感じがします。  先ほど読ませてもらいました文書、これは富山地裁から遺族の方に送られた文書なんですが、要するに、法的には第一次的受還付者である被押収者としての被告人に返したよ、あなたは所有権があるというのであれば当事者同士でやりなさいよという、ある意味では非常に冷たいやり方ですね。  こう考えてみますと、遺族の方の所有権が明確であるような事案については、きちっと法的措置を、立法措置をとって、その辺のルールを明確にしておく、こういう悲しいことがもう起こらないような措置法務省としてはとるべきじゃないかと私は思うのですが、御感想はいかがでしょうか。
  78. 山本有二

    山本(有)政務次官 先生の御指摘によりまして、今後は、裁判所や検察庁からの連絡などによって還付品が被害者の所有に係るものであることが判明した場合には、被収容者が廃棄を願い出ても、施設において保管し、あるいは被害者側に返還するなど、被害者や御遺族に十分配慮した取り扱いをしてまいりたいと考えております。  先般、所管部局から拘置所等の施設の長に対して書面でその旨の指示を発出し、その趣旨の徹底を図っておるところでもございますので、御理解ください。
  79. 漆原良夫

    ○漆原委員 ありがとうございました。  最高裁、ありがとうございます。結構でございます。  それでは、警察庁にお尋ねしたいと思います。  例の中村俊希君の事件で、有力な容疑者が、京都府警が任意同行を説得している最中に逃走して、公団の屋上から飛びおりて死んでしまった、こういう事件がありました。京都府警は被疑者死亡ということでこの男を書類送検するということを聞いておりますが、犯人がどうしてこのような残虐な行為に及んだのか、動機の解明はこれによって全く不可能になってしまったわけであります。  犯罪の動機を解明するということは、同種の事件の再発防止という観点からも大変大事なことであろうと思いますし、また、被害者の遺族の皆様にとっても、どうして自分の子供がこんな残虐な目に遭わなければならなかったのかな、そういう被害感情の観点でも私は非常に重要だろうなと思っております。  この俊希君のおばあちゃんは、思わぬ結末に戸惑っています、事件発生から犯人が逮捕されることだけを願ってきただけに残念です、今はただ俊希の冥福を祈るしかありませんというふうに話されていたということを聞いております。  テレビでよく京都府警の担当者が記者会見されておりますが、手続にミスはなかったんだ、やむを得ないことだったんだ、一生懸命やったんだというふうに弁明されております。確かにそうなんだろうな、一生懸命捜査されて、一生懸命やられたんだろうなということを私は思います。しかし、そのテレビで、警察に瑕疵はないんだ、ミスはないんだということを見た遺族の方はどんな気持ちになるのかなという気持ちがするんですね。  私は、京都府警なりあるいは警察庁なりで、やはり、そういう被疑者が死んでしまった、警察として、この俊希君の御両親にお見舞いをするとか、あるいは事件の経過を説明するとか、場合によっては、法的責任の有無はともかくとして、警察として申しわけないというお言葉をかけていただく、これは人間として当たり前のことだろうなと思います。  この辺のことを、おやりになっておると思いますが、御報告に、あるいはお見舞いに行かれたのかどうか。また、行かれたのであれば、いつ、どなたが行かれたのか。この辺の御報告を願いたい、こう思います。
  80. 林則清

    ○林政府参考人 お尋ねの点、まことに同感でございます。  今回の容疑者自殺という事態を踏まえまして、京都府警察としましては、容疑者自殺当日の二月五日から七日にかけまして、本件捜査本部の捜査幹部らが相前後して御遺族宅へ赴きまして、御遺族の御両親に対しまして、容疑者が自殺に至った経過の報告を行うとともに、当然のことながら、こういう事態になってまことに残念である、いろいろな意味での御遺族の御期待といいますか御希望、そういうことに沿えなかった点についても残念であるという旨をお伝えいたしておるところでございます。
  81. 漆原良夫

    ○漆原委員 林刑事局長、今誠意を持ってお答えいただいたわけでございますけれども、その御報告に行かれた、お見舞いに行かれた御両親ないし御遺族の方の反応はどんなことだったのでしょうか。
  82. 林則清

    ○林政府参考人 そのようにいろいろ御説明を申し上げたり、おわびを申し上げたりということに対しまして、御遺族からは、府警の捜査に対する激励と、いろいろとよくやってもらった、そういった言葉、それから、非常に今世間の風当たりが強いけれども頑張ってくださいという励ましのお言葉をいただいておるところでございます。
  83. 漆原良夫

    ○漆原委員 ありがとうございました。  別な観点から警察庁にお尋ねしたいのですが、この事件、どうして逮捕状をとってから任意同行を求めなかったのかな、そこに私は根本的な疑問があるのです。  六時に捜索令状を請求した。七時に捜査員がその容疑者のうちを訪ねて任意同行を求めた、拒否された。八時半ごろ、公園で説得。十一時七分に家宅捜索を開始して、犯行との関連メモを発見した。十一時三十分ごろ、逮捕状請求した。そして十二時四十分、男が自殺。十二時四十五分に逮捕状が出た。  非常に後手後手になっておるんじゃないかな、こういう感覚を受けるのですが、この捜査本部、二月五日七時の記者会見によりますと、記者が、いつごろからこの男が捜査線上に上がったのかという質問に対して、担当者は、一月の末に、現場の聞き込み、それからビデオに写った男の調べ、遺留品の販売先での捜査、こういうところから容疑性が高いと判断したんだ、こういうふうに述べておられるのですが、これだけのものがあったら逮捕令状は出るんじゃないかという感じがしますが、いかがでございましょうか。
  84. 林則清

    ○林政府参考人 議員御指摘のとおり、京都府警察におきましては、昨年の十二月二十一日でありますけれども、本事件発生以来、いろいろな捜査を続けたわけでございます。  今御指摘ありましたように、その捜査の過程で、今回自殺した容疑者につきまして、現場遺留品と同種の品を購入したビデオの写真に似ているという幾つかの証言を得た、それから、犯行現場近くに遺留されておった自転車の購入者の購入の際の筆跡と今回自殺した容疑者の筆跡が似ているというような材料も得た、それから、犯行現場周辺でありますとか遺留品の同種の品を購入した場所、こういったものに土地カンを有するというような資料を捜査の過程で得ておったというのは事実であります。  これらの資料で、議員御指摘のように逮捕状請求できるかどうかということは議論の分かれるところであろうというふうに思うわけでありますが、府警としましては、これらの資料では逮捕状請求するものとしてはまだ必ずしも十分ではないのではないかというふうに当時の状況において判断をした。  府警としましては、本件が本当に社会的な反響の大変大きい重大な事件でありますことを踏まえまして、本人の取り調べといいますか供述、それから、逮捕状よりはもう少し低い容疑性でもって可能になります捜索・差し押さえ、これによって、もう少し強いといいますか、そういった証拠を得て、この容疑者が犯人であるという確証を得た上で逮捕令状を請求するという方針であったというふうに承知をいたしておるところでございます。
  85. 漆原良夫

    ○漆原委員 今刑事局長おっしゃった筆跡の問題ですね。二輪の教習所に彼は自分の住所、氏名を書いて、筆跡を残しているわけですね。もう一つは、犯人が自転車を購入した、その購入したときに、登録申請のときに使った筆跡が残っていた。その筆跡を合わせると非常に一致するんじゃないか。そこまでわかっていれば、二輪教習所の彼の氏名、住所の筆跡がある、それと自転車を購入した筆跡が一致しているのであれば、それを証拠に逮捕令状は十分出るんじゃないでしょうか。これはいかがですか。
  86. 林則清

    ○林政府参考人 ただいまお答えいたしましたように、議員おっしゃるようなそういった判断も、当時の捜査としてはあり得ないことではないというふうには思います。  しかし、一つ一つの捜査につきましては、現場の状況に応じて、指揮官なりなんなりが、これでいけるだろうか、これではまだ不十分ではないかというのは、やはりその現場における判断にある程度任せざるを得ないといいますか、捜査そのものはどうしてもそういうものであろうかと思うわけであります。  それをもっと果断に、いけばよかったじゃないかというようなことは後の可能性としては言えるわけでありますが、少なくとも、当時、現場の状況において捜査官は、あるいはちょっとその後になれば慎重過ぎるのではないかというような御批判を浴びることはあろうかと思いますけれども、現場においてそういう判断をしたということは、あながち私どもとしては大変明白に不当な判断であったというふうにはちょっと言えないのではないかと考えているところでございます。
  87. 漆原良夫

    ○漆原委員 警察庁、ありがとうございました。  最後に一点だけ、法務省にお尋ねしたいと思います。  先ほど大臣の所信にもありましたが、法律扶助制度の創設、大変にうれしく思っておりますが、将来的には、刑事事件の起訴前の弁護活動とか少年事件の付添弁護もその対象にすべきではないか、あるいは、場合によっては中小企業などの法人もその対象にすべきではないかというふうな意見も最近出されておりますが、これに対していかがお考えでございましょうか。
  88. 古田佑紀

    古田政府参考人 まず最初のお尋ねの被疑者段階の弁護、それから少年事件の問題についてお答えいたします。  委員御存じのとおり、刑事事件は、国が国家の刑罰権の実現として本人の意思にかかわらず手続にのせる、そういうものでございまして、私的な紛争の解決を目的とする民事事件に比べますとかなり性質が違うところがございます。より迅速かつ確実に弁護人の選任等を行う必要がある。また、こういうこととあわせて、現在、被告人については、御存じのとおり国選弁護制度があるわけです。やはり同じ刑事手続の中でございますので、被疑者段階の弁護それから被告人段階の弁護、これは統一的、整合性があるものにする必要があるだろう。そういうことから考えますと、扶助という形は必ずしもなじまないのではなかろうかという気がしております。  しかし一方で、起訴前の弁護活動につきまして、やはり何らかの公費負担なり公費援助を考えるべきであるということは一面ごもっともでございまして、私どもとしても、その必要性を現実にこれから検討をして考えていきたい、司法制度改革審議会でもこれは一つの論点になっておりますので、こういう議論等も踏まえつつ精力的に検討していきたいと考えているところです。  次に、少年の問題でございますが、この点につきましては、先般、百四十五回通常国会提出いたしました少年法等の一部を改正する法律案におきまして、一定限度で、少年に弁護士である付添人がいらっしゃらないときは家庭裁判所の方で弁護士である付添人を付する、つまり国選付添人制度の導入ということを盛り込んでございまして、やはり、こういう付添人制度全体の中でどう考えるべきなんだということから検討をすることが適当だと思っております。
  89. 横山匡輝

    横山政府参考人 それでは、私の方から、法人、特に中小企業を法律扶助の対象とすべきではないかという点についてお答えいたします。  このほど民事法律扶助法案を今国会提出させていただきましたが、この法案は、従来重ねられてきました検討の結果を踏まえまして、緊急の必要性に対処するため、民事法律扶助の制度上の基本的な枠組みを定めるものであります。  御承知のとおり、我が国民事法律扶助事業は、これまで、資力に乏しい個人の方々に対し、訴訟代理費用等の立てかえ等の援助を行ってきたものでありますが、近年の社会経済情勢等を反映しまして、増大している個人の需要に十分対応し切れていないなどの事情から、本法案は、個人を対象として制度整備を図ろうとするものであります。  ただいまの法人、特に中小企業を対象とすべきではないかとの委員の御指摘は、私どもとしましても重要なものとして受けとめております。しかしながら、この問題は法律扶助のあり方そのものにもかかわってまいりますので、今後、高い見地から幅広に検討されるべき事柄ではないか、そのように考えております。
  90. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。
  91. 武部勤

    武部委員長 安倍基雄君。
  92. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 現在、司法制度改革審議会でこれからの司法制度のあり方を検討中でございますが、これは、基本的には、これからの社会がいわゆる行政指導というよりは一つのルールをつくってそこでみんながやる、それの決着は司法でやるというような基本思想があるわけでございまして、その点、司法制度改革は非常に大事であると私は思っております。  その点と関連しまして、私は前も指摘したんですが、アメリカのように弁護士を大勢つくっていく方向とそうでない方向、欧州型と二つ分けましたけれども、一つ私は、今度、いわば司法試験で通過する人をふやすということはしても、裁判官がふえぬことには、弁護士がどんどんふえると、弁護士は飯の種じゃないけれども次々と事件を生んでくる、次々といわば訴訟が起こってくる。一方、裁判の方は逆に言うと数がこなし切れなくなる。  でありますから、これからいわば裁判を早めることが日本にとっては大事でございますが、そのためには、むしろ裁判官にどんどん人間をふやすというような形の方向、アメリカ的に弁護士ばかりふやすというんじゃ、これは需給といいますか、持ち込まれる件数はどんどんふえちゃって、といって処理はできない、かえってみんな不便になってしまうと思います。これはまだこれから審議するわけでございますけれども、一つの方向性として、私は以前から欧州型がいいんじゃないか、アメリカのように弁護士社会みたいになり過ぎても困ると思っておりますけれども、このいわば需給というか、持ち込まれる件数ばかり多くて処理されるのが少なくなる、ますますみんなとしては裁判に持っていきたくなくなるという状況が生まれないとも限らないので、この点についてお聞きしたいと思います。
  93. 山本有二

    山本(有)政務次官 我が国における適正な法曹人口の増加のあり方を検討するに当たりましては、法曹それぞれの果たすべき役割や法曹に対する国民ニーズ、法曹の質の確保の必要性、過度な訴訟社会をもたらすおそれの有無、いわゆる隣接法律専門職種との役割分担のあり方等も含めて、幅広い諸事情を考慮する必要があると思われます。  法務省といたしましても、このようなさまざまな事情を考慮しつつ、司法制度改革審議会における審議結果等をも踏まえ、法曹人口の適正な増加に努めてまいりたいと考えております。  先生のただいまの御指摘というのは本当にありがたい御指摘でございまして、事前チェックから事後チェック、その意味における司法の機能強化につながると思いますので、ぜひ増加についての御理解が世間に広まりますよう、先生の御指導をお願いします。
  94. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 それと関連しまして、今話題となった周辺の人々、例えば今日本では司法書士とか税理士とか弁理士とか、あるいは社会保険労務士とか保護司とか行政書士とか、非常に裁判との関連のある周辺の人口がいるわけですね。弁護士が今度ふえますと、弁護士は食べていくために、そういう領域をどんどんと侵食する。一般の庶民も、弁護士さんに頼むよりはもっと身近な人に相談するという傾向もあるわけです。でございますから、いわゆる司法官、弁護士の周辺をめぐるいろいろな職種をどう扱っていくかというのが大問題でございますけれども、いろいろ聞いてみますと、一般的に、弁護士さんが何もかも仕事をとっていってしまうというような話も出てきております。庶民の相談相手としてのこういった人々と弁護士との位置づけといいますか、その辺をやはり一つの大きな問題点としてとらえねばならないのじゃないかと思いますけれども、この点はいかがでございますか。
  95. 山本有二

    山本(有)政務次官 司法書士等、隣接法律専門職種と弁護士との役割分担のあり方につきましては、法務省といたしましても、国民利用しやすい司法制度実現するという観点から、重要な検討課題であると認識しております。  また、司法の人的インフラにかかわる重要な問題であることなどから、司法制度改革審議会における調査審議の対象とされるものと考えており、規制改革委員会の第二次見解におきましても、司法書士等の隣接法律関係専門職種に訴訟代理権等を認めるべきではないかとの結論に至ったとしつつ、司法制度改革審議会において、弁護士と隣接法律関係専門職種との関係ないし役割分担のあり方といった広い視点から適切に判断されるべき事項であり、規制改革委員会の見解を踏まえ検討し早期に適切な結論が示されることを期待するとされているところでございます。  この問題につきましては、第一に、当事者その他の利害関係人の権利利益の擁護、第二に、法律生活の公正かつ円滑な営みの確保、第三に、適正迅速な訴訟運営確保等の必要性にかんがみ、司法制度改革審議会による調査審議の結果等も踏まえ、利用者の立場を最大限に重視しつつ、慎重かつ十分な検討を行ってまいりたいと考えております。
  96. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これから審議会で議論していくことと思いますけれども、庶民の相談相手的な人々の存在。私はこの前もちょっと別の話で言ったんですけれども、例えば保護司なんというのはすごい犠牲を払いながら、ほとんど報われないでやっている。こういう庶民に近いところの人々をどう扱うかというのは審議会の大きな議題だと思いますが、私もこの審議会が、途中経過で時々我々と意見交換をしてもらいたい。小委員会をつくってあるわけでございますから、その辺やはり、最終的にこうでき上がったからやってくれじゃなくて、途中段階でいろいろ我々の意見も聞いてやっていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  97. 山本有二

    山本(有)政務次官 昨年十二月に司法制度改革審議会において決定、公表された「司法制度改革に向けて 論点整理」の中に、「弁護士と隣接法律専門職種等との関係」という項目が掲げられておりまして、今後審議会において、国民利用しやすい司法実現という観点から審議が行われ、本年中のしかるべき時期に中間意見を公表される予定と承知しております。  なお、これまでにも、論点整理や審議の進め方に関するさまざまな御意見、御要望を含め、国会における御議論等につきまして、その議事録を審議会において配付することなどにより委員各位に周知されていると聞いており、審議会におかれましては、今後ともこうした取り組みを進めていかれるものと考えております。そして法務省といたしましても、先生御指摘のように、答申があったから、そのとおり直ちに決定するという向きではありません。もちろん国会の先生方にお諮りいたしまして、十分柔軟な対応をしていきたいと考えております。
  98. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、話題をかえまして、雅子妃の御懐妊問題はちょっと、法務大臣が来られてからいたしますから。  沖縄サミットの警備状況ですね。というのは、沖縄サミットが目前でございますけれども、皆さんは、オウムの問題こそみんな怖い怖いと言って、オウム問題は非常に神経質になっている。確かにそれは、無差別の恐ろしいことをやるわけですから怖いわけでございますけれども、私はむしろ、相手を絞ったテロというのがこれから非常に問題になるのじゃないか。  と申しますのは、かつて私は成田空港問題をいたしました。これは要するに、土地収用委員会の委員あるいは委員長、あるいはそれに関連する運輸省の人間をいわばおどかす、その結果空港がろくにできないという問題を取り上げて、実は、何か向こうの中核派の新聞に出まして、その後、警察が警備してくれているという状況のようでございます。警察官には非常に気の毒というか、負担をかけて申しわけないのでございますけれども。  これは、また沖縄でテロでも起こったら国際問題になる。私は、テロ問題をどう扱うかというのは非常に大事だと思いますけれども、現在の沖縄サミットに向けての警備状況をちょっとお知らせ願いたい。
  99. 金重凱之

    金重政府参考人 お答えさせていただきます。  沖縄サミットの警備状況についてでございます。  これは九州・沖縄サミットということで言われておりまして、首脳会議が沖縄で行われる、蔵相会合は福岡、外相会合は宮崎でということでございます。我が国で初めて、地方で分離開催ということになるわけでございます。そこで、極左暴力集団各派がその開催阻止を呼号しておるというようなことがございまして、警備的に決して予断を許さない状況にあるというふうに私ども考えております。  特に沖縄の首脳会議につきましては、過去、サミットにつきましては三回、東京でありますけれども、前回東京サミットにおきまして、警視庁の方で一万人の派遣部隊を全国から派遣を受けまして、警備の万全を期してきたということでございます。沖縄におきましては、沖縄県警の警察官が約二千三百というようなことでございますし、警戒すべき対象も大変広範囲にわたっておるというようなこと等がございますので、全国から多数の警察官の派遣が必要になるというふうに私ども思っておるところでございます。  こういう厳しい情勢の中でございますけれども、私ども警察といたしましては、各国首脳等の身辺の絶対安全ということと、それから行事の円滑な進行を確保するということ、そのことのために、開催地の沖縄県民の皆様方の御協力を得て、また広く国民皆様方の御理解、御協力も得て、全国の警察の総力を挙げて各種対策を推進してまいりたいということで、今取り組んでおるところでございます。
  100. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 実は私、個人的な話ですけれども、うちの父が書いた「思い出の記」というのを二月末に出します。そこには戦前のテロ事件、クーデター事件などが全部載っているわけでございます。  御承知のように、戦前は、首相が次々と暗殺された。原敬とか、犬養木堂とか、財界人も殺された。これがやはり日本の進路を大きく曲げることに影響しているわけですね。本当に、あのころの良識派が生きておれば日本はあそこまで行かなかったのじゃないか。日本もこれからいろいろな問題が起こってくる。そういうときに、皆さんがサリンとかオウムとかいうことばかりに目を向けないで、本当にこういうテロに対してどういうことを考えるのかということをよく考えていかなければいかぬ。  特に、国際的な犯罪組織なり政治結社あたりが自由にまた日本に出入りするような状況でございますね。こういうことを考えますと、かつてそういった方向で、どっちかというと日本は警察国家だった、弾圧国家だったということが、非常にそればかりが強調されて、そのためにそういうテロ的なものをいわば防止するという点において非常にほかの国に比べて、情報収集さえできていないという状況かと思います。  その面で、私はあえてこういうことを言うのでございますけれども、それを言うとすぐ人権侵害だとか警察国家だといろいろ言われちゃうわけでございますけれども、過去の日本が、本当にテロによっていろいろな要人が殺され、そのために日本の進路が曲がったということはやはり自覚すべきではないかと思います。この点について、御見解をお答えいただきたい。
  101. 金重凱之

    金重政府参考人 お答えさせていただきます。  先生御指摘の、およそテロというものにつきましては、これはもう民主主義社会に対する重大な挑戦でございますから、絶対に容認することができないものでございます。  そこで、警察としましては、その未然防止を図るという意味合いから、極左暴力集団それから右翼あるいは国際テロといったようなものに対する情報収集、分析力を強化するということをやっておりますし、同時に、あらゆる形態のテロに的確に対応できるようにということで、特殊部隊でSATというものがございますけれども、これの充実強化等を含めまして、事案対処能力というものの強化に努めておるということでございます。  それで、具体的に申し上げますと、極左でございますけれども、これは非公然軍事要員という者によるところの組織的、計画的なものがテロだということでございまして、これらによるテロの事件捜査に努めておりますし、それからまた、アパート・マンションローラーという先生先ほど御指摘のようなものの諸対策もやっております。さらには、極左の攻撃になりそうな重要防護対象に対する警戒警備ということも行っているというようなことでございまして、右翼につきましても同様の取り締まりを行い、かつ、国内外の要人等に対する警護警備ということについても徹底を期しておるというようなことでございます。
  102. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 この問題はやはり、我々これからの政治を行う上においてきちっと考えていかなくちゃいけない、法秩序の確立とともに、国の政策が曲がらないような意味のテロ対策ということを本当にお願いしたいと思います。  次に、宮内庁の問題に移りますが、去年の十二月、雅子妃殿下のいわば御懐妊の報道がございました。この問題は、個々説明を聞くとまた時間がかかりますから、簡単に私の方からかいつまんでお話ししますと、十二月十日の朝日の朝刊で、御懐妊の兆候ありということで、午前中に官房長官が記者会見し、現段階では判断できないと。そして、東宮大夫からレクチャーがあった。夕刊に一斉に各紙が掲載して、両殿下は大変なショックを受けた。十二月十三日に検査が行われて、そのときの夜、東宮大夫がレクチャーして、医学的には確認できないと。十四日の朝刊で各紙が報道した。最終的には三十日に検査をされまして、夜、東宮大夫が担当医師とともにレクチャーを行い、御流産であったという結果がわかったという発表があったということでございますが、この点は間違いございませんか。
  103. 森幸男

    ○森政府参考人 ただいま先生のお話しの経緯につきましては、そのとおりだと思います。
  104. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、ある有権者から、何でこの問題が国民の代表者の集まりである国会で論議されないのか、これはけしからぬというようないわば依頼を受けました。私は、そのころ余り詳しく調べていなかったものですから、ちょっと調べてみようということで、この問題を取り上げたわけでございます。  ちょっと私、一つ疑問があるんですけれども、報道があったために検査が行われたのか、検査が行われたために、ちょっと時期的な問題もありましょうけれども、ストレスというか、その面を含めて御流産に関係があったのかどうか、その点を教えていただきたいと思います。
  105. 森幸男

    ○森政府参考人 まず、最初の問題でございますが、十二月十日のスクープがあったために急遽十三日に検査をすることになったのかどうかということでございます。  この点につきましては、妃殿下の御健康につきまして、常に私ども留意をいたしているところでございます。それで、今の先生のお話の昨年行った検査は、医学的に見て、私どもとして、いろいろな事情から御妊娠の可能性があるというふうに想定をされたために、十二月の十三日に行われたものでございます。そういう意味で、十二月の十日にスクープされたということが直接の原因といいましょうか、そのことと直接の関係があるわけではございません。それが第一点でございます。  それから、報道がプレッシャーとなって流産に結びついたかどうかということがお話がございました。  プレッシャーがかかることにつきましては、私どももこれは当然ないにこしたことはございませんけれども、医学的に見た場合に、一連の報道によるプレッシャーそれ自体が直接流産の原因になったというものではないということでございます。医学的見地に基づく発表を待たずになされた一連の報道が、先ほどの先生のお言葉にもございましたが、妃殿下の御負担につながったということについては、私ども大変遺憾なことであったというふうに思っております。
  106. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 医者の発表によれば、医学的には関係ないのではないかという説明のようでございましたけれども、この辺はなかなか最終的にはわからない。特に七年間、いつまでもお子様ができないということで非常に気を使われておられた妃殿下がこの報道によってやはり大きなショックを受けたということは事実ではないか。事実、東宮大夫の説明にも話が、たしか十二月十日のレクのときにもそういう発言があったといいますけれども、結果的には何らかの形で影響をしているんではないかと私は推定いたします。これは医学的であろうと、普通の人間の場合のショックと大きさが違うといいますか、その面で、普通の人のストレスの場合だったらちょっとのストレスでも大したことないと思いますけれども、相当大きなショックを受けられたと私は思います。  ここで問われておりますのは、やはり大新聞の良識と見識ですね。それからもう一つは、皇室報道のあり方、この二点がやはり問われているんではないかと私は思います。それは、新聞社としては特だねという気持ちを持ったかもしれませんけれども、やはり特だねという気持ちでこういうことは扱ってはいけない。  実は私は、新聞報道でいささか不満なのは、私は長銀をリップルウッドに売ることについて大蔵委員会で昔から発言し、こんなことは、本当に四兆円のお金をそのままやっていいのかということをしきりと論議しておった。そういったようなことはほとんど載せないで、若干事実関係は載せておりますけれども、もう少し論議すべきなのであって、いわば特だねを追うという姿勢、特に大新聞の姿勢、それは民間のちょっとした格の低いイエローペーパーなら別ですけれども、やはり大新聞の見識といわば良識が問われているんじゃないかという点が第一点。  第二点は、今後の皇室報道についてのあり方、これをどう考えるか。  それぞれ宮内庁と法務大臣の、これは個人的な見解でいいわけでございますけれども、お聞きしたいと思います。
  107. 森幸男

    ○森政府参考人 皇太子妃殿下の御懐妊問題についてのマスコミの対応についてでございます。  この御懐妊に関する昨年の十二月以降の一連の報道につきましては、私どもといたしまして、きちんとした医学的な見地からの発表も待たずに妃殿下のプライバシーにも触れるような過熱した報道がなされまして、そういう点で極めて遺憾なことであったというふうに考えております。  宮内庁といたしましては、皇室の方々に関する事柄につきまして、従来から報道機関に対しまして事柄の内容に応じまして適切な時期に適切な情報を提供するということで努めてきたつもりでございます。各報道機関におかれましても、今後は、今申しましたプライバシーを十分尊重して、節度ある取材、報道をしていただきたいというふうに考えております。  それから、先生二番目にお話がございましたのは、皇室と報道のあり方ということかと思います。  日本国及び日本国民の統合の象徴としての御公務を果たしておられる天皇陛下並びに皇族方のお姿につきましては、報道を通じまして国民に正しく理解されるということが必要であると私ども日ごろ考えているところでございます。そういう意味で、できる限り報道機関等への対応がなされるべきであり、このことにつきましては、先ほども申しましたが、今後も同様な方針で臨んでまいりたいと考えております。  ただ、天皇陛下並びに皇族方につきましても、プライバシーにつきましては基本的に保護されるべきものであるというふうに考えております。そういう意味で、今後におきましても、取材、報道に当たりまして、天皇陛下並びに皇族方のプライバシーが十分配慮されることが大切であるというふうに考えております。
  108. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員御指摘をいただきました皇太子妃の御懐妊のマスコミの報道等につきましては、具体的な経緯や事実関係を承知しておりませんので、それについてのコメントは差し控えさせていただきたいと思っておるわけでございますが、一般的に申し上げまして、御指摘のような問題に当たりましては、事柄の性質上、マスコミとして、母性の保護あるいはプライバシーの保護等に最大限配慮した慎重な対応というものが求められると私どもは考えております。
  109. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 これは、通常の人権云々の論議を少し超えた議論なんですね。やはり、国のいわば皇位継承者が生まれるか生まれないかというような大きな問題であったわけでございますから、今後とも皇室報道については本当に慎重に対応、特に新聞社の側で、そちらへ言ってもあれなんですけれども、新聞社の側で対応してもらわにゃいかないなと思っております。  では、話題を変えまして、最近のいろいろ経済関係の事犯というか、銀行の背任問題とか、次々といわば起訴され罪になってくる。  例えば、私はかつてこの場で言ったと思いますけれども、ある頭取がある企業に追い貸しをするかしないかという判断は非常にデリケートなんですね。つまり、担保は不十分だけれども、今ここで貸せばちゃんと立ち直って貸し金が戻ってくるのか、あるいはこれ以上やるとどぶに捨てるお金なのか、その判断はそう簡単に裁判官にはわからないわけですよ。だから、起訴する裁判官にその判断を求めることが非常に難しいケースが随分あるわけです。  最近、非常に貸し渋りという問題が起こっています。これは確かに、銀行の頭取でうっかりこれに貸したら後で責任問われるかもしれぬと思うとついつい貸し渋っちゃうわけですよ。だから、司法の判断というのは、ある意味からいうと非常に、金融に対するチェック、いい意味じゃチェックですけれども、悪い意味じゃ足かせになっているという事実があるんじゃないか。  私は、資料として、今ここで余り長く議論できませんけれども、中央公論に出しました「あえて日債銀を弁護する」という論文を書きました。これはこれなりに反響があったんです。通常、日債銀の昔の経営者を弁護するなんていったら大ごとではないかと言うんですけれども、これは簡単に言いますと、粉飾決算でいわば罪にしているわけですけれども、当時において、もし大きな赤を出せば一遍に信用が揺らいで倒れるかもしれぬ。その当時はまだ本当の意味のセーフティーネットがなかった。でありますから、大蔵省もセーフティーネットがない状況のもとに余りぎしぎしした査定をしなかったんですね。  というのは、債務超過かどうかというのは、私はこれを長銀のことでも言っているんですけれども、どういう場合に債権を不良と見るか優良と見るかによって全然違ってくるわけです。私が長銀の譲渡を怒ったのは、債権をどんどん不良と見れば債務超過がどんどんふえちゃうよ。要するに、それを全部国が面倒見るのはとんでもないということでございますけれども、それと同じようなことで、日債銀なんかの場合に債権を優良と見るか不良と見るかで全然債務超過が違ってくるわけです。  優良と見るか不良と見るかというのは必ずしも全く客観的なものがあるわけじゃないし、当時においてはセーフティーネットがなかった。そこでもって大蔵省もむしろそれを支える側に回っていた。そのもとに行われた決算を粉飾といって罪にしている。大蔵省、大臣を起訴できるならば、当時の経営陣を起訴してもよかろう。  こういう金融パニックを避ける法益と、一般の投資家を保護するための粉飾決算の禁止と、そのバランスを一体裁判官がとれるのかという趣旨なんですが、これはひとつ読んでいただいて、要するに勉強していただけばいいんですが、経済事犯に対する訴追の問題です。これは非常に難しい問題でもあるし、余り形式的ばかりでもいけない、それは裁判官が本当に判断できるかという問題に戻るんですけれども。となれば、それを起訴とすることそのものにも問題がある。それがやはり広い意味で経済活動の大きな足かせにもなっておる。そういう事実を少し司法方々も、判断というか一つの勉強の材料として頭の中に入れておいてほしいと思いますが、この点いかがでございますか。
  110. 山本有二

    山本(有)政務次官 先生の御質問にお答えする前に、先生の論文を拝読させていただきました。さすが、ペンシルベニア大学でクライン教授に学ばれ博士号を持っていらっしゃるというところであろうと思います。  特に、銀行経営者の責任を人間的にとらえておられる。市場に対する責任論とそれから経営責任論とこの二つをもって、これに検査基準の変更、さらに不良債権の認定の変更という時期的な問題とを加味させて、そして、緊急避難的に金融パニックを回避する、いわば違法性において、このところを考慮に当たるところがあるではないかというような御指摘、大変傾聴に値するものだと感心して読ませていただきました。  お尋ねの事件でございますが、検察は、今の経営陣からも告発を受けて、法と証拠に基づき適正妥当に検察権を行使したものと承知しておりまして、検察におきましては、従来から、刑罰法令に触れる疑いのあるものにつきまして刑事責任の有無及び程度を明らかにするとの観点に立って、その真相の解明に努め、適正に事件処理を行って、その職責を果たしてきたものと確信しておる次第でございます。  以上です。
  111. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は、起訴されたことをどう裁判官が判定するのかにまで口を挟むつもりはないのですけれども、こういういわば基礎的な認識のもとにこういった起訴するかしないかということの判断が求められているのじゃないかと思います。  この点で、いわゆる経済犯罪というのがなかなか難しい問題なんですね。特に、裁判官、まるでもうお金の勘定なんかろくにしないというような一生を過ごしているわけですから、そういう人々に、いわば追い貸しがよかったのかとか、背任になるんだろうかとか、粉飾決算どうのこうのということの判断を求めることそのものがやはり慎重でなくてはいけない。  それは、やはり基本的に、私は、ある意味からいうと一度書いてみようと思っているのですけれども、現在の不景気はやはり相当司法が絡まっている要素があるぞということを、ちょっと今時間もございませんけれども、書いてみようと思っています。  例えば、総会屋問題のあの話も、要するに総会屋で、少しでも払ったら全部だめだと。確かに形式的にはそうなんですけれども、それでもって、倒れたとは言わないにしても、第一勧銀あたりなんかも総会屋事件でもってあれしたために非常にがたがたいったとかいろいろあります。もともと総会屋自体がけしからぬことは事実ですけれども、総会屋の裏にある暴力団をほっておいて支店長あたりがどんどん殺されても捕まらないというような状況で、総会屋に金を渡した連中ばかり責めてもしようがないんじゃないか、そういったことも私は書いたことがございますけれども、司法というのは、やはりいろいろな面で実体経済、経営者との絡まりをよく考えた上で、余り法形式的にやるというのはどうかということでございます。  最後に、少年法の問題です。私は以前から、少年法の改正をもっともっと推進しよう、いわゆる年齢も変えろというふうな主張をしておりまして、これも二年くらいになりますか、中央公論でやはり少年法についての論議をしたのでございますけれども、前回、何か最高裁で、いわば少年審判証拠がはっきりしないものだから差し戻しというようなのがございました。私も、あの問題はやはり証拠がはっきりしていないという面で、少年審判においても、きちっとした論議なり、証拠提出したり認定したり、そういう手続が行われるべきじゃないのか。その面で、少年法のいわば改正というのをやはりもう一遍、熱意を持ってというか、何となく少年法問題が棚上げになっちゃって、弁護士さんがちょっと反対するとすぐ腰砕けになっている感じがするので、この点についての御見解を承りたいと思います。
  112. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員ただいま御指摘をいただきましたとおり、少年審判におきましては、非行事実が確定的に認定され、事案が十分に解明されるということは、少年法の本来の目的でございます少年の健全育成という観点から大変重要であるのみならず、少年審判制度に対する被害者を初めとする国民の信頼を確保するという観点からも最も基本的かつ重要な事項の一つだと思っております。  昨年通常国会提出させていただきました少年法等の一部を改正する法律案は、このような観点から、裁定合議制の導入、検察官及び弁護士である付添人の関与した審理の導入等、事実認定手続の一層の適正化のための所要の法整備を図るものでございまして、この法整備重要性緊急性にかんがみまして、皆様方の御理解を得てできる限り早期成立させていただきたいと思っております。  ただいま安倍先生のお励ましもございましたので、さらに努力をいたしてまいりたいと思います。
  113. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 もう大分前の論文ですけれども、私が書いた論文をもう一遍読んでいただけばと。そこには、要するに年齢の引き下げを含めまして、各国との諸法制の比較をしておりますので、もう今さらでございますけれども、もう一遍読んでいただきたいと思います。  時間が参りましたので、終わります。
  114. 武部勤

    武部委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  115. 武部勤

    武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂上富男君。
  116. 坂上富男

    ○坂上委員 私は、質問事項といたしましては二問ございまして、臼井法務大臣元秘書の税法違反問題について、それから新潟県警女性長期監禁事件についての質問でございます。二番目の方から質問をさせていただきたいと思います。  新潟県警女性長期監禁事件は、私が住んでおります三条市に起きました。平成二年十一月十三日十七時十分ごろ、小学校四年の少女が小学校からの帰途、忽然と姿が消えて、御家族、御親族、御町内、警察、消防団の皆様方が必死になって連日捜索が続けられたにもかかわらず、全く見当もつかず、神隠しに遭ったような状況で、手がかりすらつかめないまま、本年一月二十八日、少女は、九年二カ月監禁されたままの状態で、同日十三時三十分、柏崎市の監禁場所の二階の一室で発見をされたのであります。  まことに残忍、残酷、悲惨、深刻な出来事であります。心が痛んで、これを表現する言葉もありません。被害者本人はもちろんのこと、御両親を初めとする御家族、御親戚の御心痛を察するに余りあります。謹んでお見舞いを申し上げ、被害者の一日も早い御回復をただただ祈ってやみません。  御両親、御親戚の方々は、そっとしておいてくれ、静かに見守ってくれとの御心情が報道から推察ができるのでございます。私は、国会に籍を置く地元の議員といたしまして、私のなすべき仕事は今何かと考え続けてまいっておりました。  しかし、その後の報道によりますと、警察の発表に誤りがあり、おかしな捜査という批判が市民の中から出始めました。私としては、このまま見守るだけではその責を果たすことができないと認識し、二月九日、質問主意書を提出し、伊藤衆議院議長を通じて、小渕総理から回答を求めることにいたしました。そして、私の支持者の集会で、警察の責任は問われなければならないと表明をいたしました。  しかし、その回答は、十年前にさかのぼるものでありますから捜査に時間を必要とするので、定められた七日以内の回答を三月十四日の閣議決定まで延期してほしいとの要望がありました。私は、捜査は迅速、確実になされることが任務だと見ておりますので、遅いのではありませんかと申し入れをし、しかし当局が準備が間に合わないならやむを得ないかとも思いまして、承知はいたしたのであります。  そこで、本日の質問におきましては、政府当局は、現在まで判明した事実においてできるだけ詳細な御答弁をいただきたいと思っておるのであります。  そこで、私は、この事件は捜査の初動からミスがあり、そして、女性発見の締めくくりの捜査においても重大な失敗があったと断ぜざるを得ないのであります。  早速でございますが、本日テレビを見ておりましたら、国家公安委員長が、いわゆる一月二十八日に発表をいたされました女性を保護したときの状況についての、間違ったことに対する責任問題について表明されました。  どういうことかと申しますと、報道でもあるのでございますが、県警本部長がうその発表をすることを了解した、了承したと。そして、女性を発見した場所は病院であったと発表をいたしました。しかしながら、実際、いろいろ調査をしてみますると、一月二十八日の午後一時半ごろ、容疑者の自宅において女性を発見いたしたのであります。しかるにかかわらず、その夕方、記者会見で発表されましたことは、病院において女性を発見した、こういう記者発表があったわけでございます。私も、その発表を聞いておりまして、発見されてよかったなと思った瞬間、しかしまた、女性は自由に外に出られたんだろうかということも思いました。  そして、事後、捜査が進みました。そういたしましたら、監禁されておった二階の部屋の、しかも、もう本当に小さい範囲において、動かすことができないような状態において監禁をされておったということが、捜査の結果、わかってきたわけであります。そして、それが報道されておるわけでございます。  そうだとすると、二十八日の発表とその後の捜査の状況から見ると、女性は一歩も外へ出ていない。にもかかわらず、警察の発表からいいますと、最後に発見したのは病院である、そこに容疑者の男性と女性がいた、こういう発表の仕方でございまして、これはもう本当に著しい食い違いでございます。  私も、この女性は監禁をされながら外へは出られたんだなと最初は思いました。しかし、後から、捜査の結果を見ますと、一歩も外へ出られないというような状況があったわけであります。でありますから、警察の発表というものが一体本当にこうなんだろうかということを私は疑問に思いました。そしてまた、報道で、どうもおかしいじゃないか、これはもう明らかに警察が虚偽発表をしたのでないかと。  しかも、その虚偽発表の理由は、当時、これを発見したのは保健所の皆様方でございます。保健所の方々がその監禁場所で発見したので、警察官に来てくださいと言ったけれども、来られませんと拒否をされた。そしてまた、いろいろ女性について聞いてみたら、十年前に監禁された小学校四年生の少女であった、今はもう十九歳、こういうことがわかりまして、そのことを警察に連絡をいたしましたら、初めて警察が病院に来られたわけであります。確かに、警察としてはその女性を発見したのは病院ではありまするけれども、女性を保護し発見をしたのは監禁した場所であるわけであります。  何でこんなことをしたのか。まさに警察の出動が間違いであった、しなかったことについて責任を問われる。だものでございまするから、この発表を、病院で被害者を発見し保護したという発表になったわけであります。大変な虚偽発表でございます。  私は、これは法律的にも問題があるのであります。この監禁罪というのは継続犯であります。だから、犯罪の終了時をどこにしたのか、一時三十分なのか、あるいは病院で発見されたという三時過ぎなのか、犯罪はどこまで継続したかという法律上の問題もあります。法律上の問題以前に、本当に警察がこのようなうその発表をするというところに私は大きな問題があろうと思っております。  国家公安委員長は、朝の記者会見でおっしゃったそうでございます。この責任は、場合によってはやはり新潟県警にとってもらうという事態になる、こういうようなことも言われたようにテレビで私は聞いておりました。  今言った問題は本当にきのう、きょうのお話でございますが、まず、この問題についての詳細な御発表をひとついただいて、これに対する責任を一体どういう形で警察はとられようとされているのか、御答弁をいただきたいと思います。まず、どちらでも結構です。刑事局長さんでも結構です。
  117. 林則清

    ○林政府参考人 ただいま議員のおっしゃいました発見時の状況というのは、まさに議員おっしゃるとおりでございます。  警察としては、発見時のこれについては、発見者に対していろいろ問い合わせが殺到するなど御迷惑をかけるのではないかと、今になって思えばまことに不必要な、そしてまた事の軽重をわきまえない、そういった配慮で、全く誤解、もっと言えば虚偽になるような、そういう発表ぶりになったということで、私としては、承知しておりますのは、新潟県警としましても、このことについては非常に反省をしており、先ほども御指摘ありましたように、昨日記者会見を行って、一連の本当の経緯と、そしておわびを行ったというふうに承知しております。
  118. 坂上富男

    ○坂上委員 長官、国家公安委員長がおっしゃいました。また、長官としては、この責任の問題について、どういうふうに対処されるつもりでございますか。
  119. 田中節夫

    田中政府参考人 ただいま刑事局長から御説明申し上げましたように、今回の事件につきましては、委員御指摘のような経過で一月二十八日の状況はあったわけでございます。  これにつきまして、一連の、この件が発生して、それから被害者発見、救助に至るまでのその過程の中の問題も含めてでございますけれども、国家公安委員会からもいろいろな御指摘をいただいております。また、それが本日の国家公安委員長の発言になったものというふうに受けとめておりますけれども、私どもといたしましても、事の重大性というものを十分認識しておりまして、非を正すべきところはきちんと正す、責任があるところにつきましては責任を求めていくというような形のことを、今後、公安委員会の御指導を得ながら、やってまいりたいと考えておるところでございます。
  120. 坂上富男

    ○坂上委員 お話によりますと、警察本部の方にも大変な批判の投書が行っておるというふうにも聞いております。神奈川県警は、御存じのとおり、犯罪を隠匿して、これが判明をいたしまして大問題になったのであります。  本件も、二十八日の一時半に発見されたのに、三時に病院で発見されたとするならば、これはまさに証拠隠滅です、こういう発表をして。もし、これがわからないでそのままいったら、検察庁はどう判断されるかわかりませんでしたが、仮にそのままいったら、本当にこれは、まさに証拠隠滅のまま起訴されるというような事態になるのじゃなかろうかとも私は思っておりました。まさに継続犯でございますから、一時半に終わるべきものが三時まで継続しておるというようなことになるわけでございますものですから、これは本当に、一般的人間としての常識判断と同時に、法律的にもこういう問題があることを私はまず指摘しておきたいと思っております。  以下、また質問を続けます。  さて、これは九〇年の十一月十三日に起きた事件です。しかも、少女の姿が忽然と消えたのは五時十分だと言われております。御存じのとおり、この被疑者、容疑者は競馬好きだと言われておるわけでございます。そこで、この日、三条に競馬に来ていたのじゃなかろうか。三条で競馬があったかどうか、あるいはお調べになっているかどうかわかりませんけれども、競馬はなかったそうでございますが、新潟競馬の場外売り場のことが行われていたそうです。そして、それが四時半に終わったそうでございます。四時半に終わって、この犯罪現場まで行くのに二十分とかからぬ地域でございます。  そうだといたしますならば、いわゆる広域捜査が行われなかったと言われております、またコンピューターに入力されなかったと言われておりますが、まず第一弾といたしまして、広域捜査をやらなかったその時期というのは、いわゆる競馬ということによって相当遠くの人たちが来ておって、そしてその足で犯行現場に行ったということだって幾らでも想像できることなのでございます。まずこの点について、警察はどんな認識を持っておられたのか、どんな捜査をなさっていたのか。当時、柏崎警察は確かに、西山町で町長が公金を十何億とか何億とかを横領いたしまして、大変な時期ではありました。大変な時期ではありましたし、三条にとりましては、今言ったような状況下でありましたものですから、柏崎が捜査の圏外に外れておった、こういうふうにも言われておることから見ますと、まず初動捜査において、この点を一体どんなふうに警察はお考えになっていたのか、お答えいただきたいと思います。
  121. 林則清

    ○林政府参考人 お答え申し上げます。  本件発生時、先生がおっしゃったように、全く忽然と姿が消えたということでありますので、事故もあり得るということの両面を念頭に置きまして、当時、本部、刑事部、防犯部、現在の生活安全部でございますが、これを含めて百七名態勢で対策本部を三条警察署に設置しまして、これも御案内でございますが、地域住民の協力を得て、順次その現場から広げていきまして、翌年の一月までには延べ二千八百名で検索を行う、あるいは目撃者探し、その他もろもろの捜査を現場を中心にして初動対応を行っておりますけれども、捜査の観点からは、犯人が県内の各地へ移動しておるということは当然可能性を考慮しまして、発生の当日に県下全警察署に対しまして、本部刑事部長から、要するにこういう人相、着衣の云々という手配の徹底、それから県下で不審者、不審車両に対する職務質問を強化するというようなことで、全署を挙げて、柏崎の方には手が薄かったということではなくて、対処しております。  年が明けてからは、すぐに今度は本部長名で、いろいろな、いわゆる警察用語では使いませんが、変質者あるいは可能性ある者について、情報を全部総本部へ上げろという通知も繰り返し出して、全県下漏れなくやるようにやっております。  それから、競馬の点、先生御指摘ございました。当時、その点も確かめてみましたところ、発生当初、何か場外馬券があるそうでございますが、ちょうど場外馬券売り場に来た人間が、現地としては本件と特に関連があるという状況にあるとは見なかったようでございます。したがいまして、今申し上げましたように、それに絞っていろいろ考えるというよりも、広く県下各署に捜査発見活動を指示したということでございます。  それから、これは蛇足でございますけれども、検挙後わかった結果論でございますけれども、本件、今回捕まっております被疑者というのは趣味が競馬であるということでありますけれども、現在までの捜査状況によりますと、ちょうど女性を拉致した時期、平成二年でございますが、このころにはまだ競馬を実はやっていないという模様でありまして、競馬をやり始めたのはこの拉致より大分たってからの模様でございます。全く結果論で何の意味もない、初動において意味のある話ではございませんけれども、蛇足でありますが、つけ加え申し上げます。
  122. 坂上富男

    ○坂上委員 競馬に興味を持ったのは犯罪後であるというお話でございますが、果たして、そうやって断定するところに大きな問題もあったんじゃなかろうかと私は思っておるわけであります。  私の言いたいのは、広域捜査をなぜやれなかったかという点でございます。例えば、競馬があった、したがって相当遠いところから人が来ているんじゃなかろうか、御商売に来る人も結構ある、そういうような意味からも広域捜査というものが必要になってくるんじゃなかろうか、こういうことを私は指摘をしておるわけでございますので、この点についてもひとつ御判断をしていただきたいと思います。  さてそこで、言われていることが、いわゆるこういうような前科前歴のある人について、その容疑者の犯歴、手口等については全部コンピューターの中に入っているのだ、しかも、このわいせつ犯罪、こういうようなものについては、いわゆる類似犯罪とも言われるわけでございますが、このコンピューターへの入力が行われておらなかった、こういうふうなことも言われておるわけでございます。  三つ考えられます。一つは、現地から、いわゆる柏崎から県警に上申がなかったのか。あるいは、コンピューターに入れるべく報告はあったのだけれども、県警の方で入力を何らかの事情でできなかったのか。コンピューターに入力はされており、この名前は挙がっておったけれども、何らかの手落ちによってこの点の調査はしなかった、捜査はしなかったというのでしょうか。  私は、入力が行われなかったというミスはあった、そのミスの原因が三つ、どちらかにあるのではなかろうかと思っておりますが、これはどうでしょうか。
  123. 林則清

    ○林政府参考人 先生から御指摘がございましたように、今回の捜査におきまして、残念ながら、今回捕まった男が捜査の対象者ということで浮上はしていなかったということであります。  それで、新潟県警察におきましては、年少者に対する略取誘拐とかわいせつ行為、こういった犯罪を再び行うおそれのある者については、手口制度といいまして、先生おっしゃったようにコンピューターに登録するということで、手口資料として活用するということ。当時としても、こういうものを初めとして全県下が保有する捜査情報というものを吸い上げて、その対象者を把握して捜査を行うというのが一つの捜査であったわけでありますが、先生御指摘のように、本件犯行から約一年半前に強制わいせつ、しかも年少者に対する強制わいせつで逮捕されておるというこの被疑者が、この手口資料がコンピューターに登録されていなかったというのは事実であります。  今先生言われましたように、まず再犯のおそれのある者を登録しますので、そういうふうな認定をしたのか、あるいはそれを手口資料として署が本部へ上げなかったのか、一体どの段階で落ちたのかという問題はありますけれども、これは現在まだ確定した話ではございませんけれども、どうも警察署から本部に資料の送付がなかったのではないかという、詳細のところはまだ正直言って確定できるほどの調査は進んでおりません、何しろ、非常に弁解がましくなりますが、ちょっと古いことなものでございますので。  いずれにしましても、そういう点について十分検証を行い、まさに今後もあり得ることでありますので、反省、教訓とすべきことを捜査一般に生かしていくということで徹底的に検証してみたいと考えておるところでございます。
  124. 坂上富男

    ○坂上委員 今申しましたとおり、柏崎署は、当時西山町の事件で大変だったんだろうと私は思っております。だからといって、これを放置した、あるいはうっかりしておったというのは、やはり大変重大な捜査ミスだろうと私は思っておるわけであります。これが第一歩の捜査ミス、二つのうちの一つです。いわゆる広域捜査をやらなかったということ、いわゆるコンピューターに登録しなかったということ、そして、それに基づいて捜査をしなかったということ、このことが、九年二カ月にわたってこの女性を大変な無惨な不幸に陥れ続けたんじゃなかろうかと私は思っておるわけでございます。  でありまするから、この点については綿密にひとつ検証していただきまして、少なくとも、例えば、警察から県警本部に行ったときは、ちゃんと受付みたいなのがあるんじゃないでしょうか。受付がなくぼんと入れる、入れたか入れないかわからぬというような状態ではないと思うのですね、警察ですから。これはちゃんと受付簿というのはあるんじゃないでしょうか。これはどうですか。
  125. 林則清

    ○林政府参考人 ただいまのお尋ねでございますけれども、基本的には、その取扱署が取り扱った、そして再犯のおそれが認められるという特定犯罪に関する資料というものを本部へ送付する、そして送付を受けた本部で入れるということになっておりますが、今先生言われたような、きちっとした仕組みというものができておるかどうかというのは、ちょっと定かでございません。できていないとすれば、きちっとそういう仕組みをつくるようにいたしたいと考えております。
  126. 坂上富男

    ○坂上委員 大変大事なことでございますが、結局、この初動捜査の誤りは、機械に頼り過ぎた、機械万能主義、これがこういう事件を起こしたんだろうと私は思っております。これが二十年前、コンピューターが発達していないときであったら、こういうことはなかったんじゃないでしょうか。類似事件、前科者についてちゃんと全部コンピューターに入っている、そしてコンピューターの登録者も全部当たってみた、しかし手がかりが得られなかった、こういうことなんだろうと私は思うのです。その中に今の容疑者が入っていなかった、まさにコンピューターを頼った結果です。捜査が機械を頼った結果がこういうことになったのじゃなかろうか。  やはり、言われるように、足で稼げと言われておるわけでございます。そういう意味において、本当に、科学捜査と言われますけれども、科学捜査に頼った結果がこういうとんでもないことを起こしているわけでございます。こういう点、どうですか。
  127. 林則清

    ○林政府参考人 まず、広域捜査云々でございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、県下全部に、関連情報なりあるいはチェックすべき人間の情報を本部の方へ、対策本部でございますね、これを集約するようにというのは再々入れております。  それから、先生御指摘の、まさに取り扱った人間、過去に、わずか一年しばらく前ですから、これがこれではなかろうかというような人的情報といいますか、取り扱った人間からの情報、そういうものも集積すべきであった。それがやはり、それもされていなかったということはおっしゃるとおりでございます。  おっしゃるとおり、捜査というのは、最後は人が、あるいは人の勘、勘もあれば、理屈だけではなくてやっていくものでありますから、科学捜査といいますか、そういったコンピューターであるとか支援システム、そういうものに頼りきりになるということはいさめなければならない、かように思っております。
  128. 坂上富男

    ○坂上委員 長官でもいいですし、局長さんでもいいです。捜査ミス、認めますか。
  129. 林則清

    ○林政府参考人 捜査ミスという言葉はいろいろな使われ方をするわけでありますが、捜査というのはいろいろな活動が積み重なっていく、あるいは結果と照らし合わせますと、それが妥当ではなかった、あるいはむだであったとか、あるいは見当外れであったとかというようなことはございます。あるいは、何かから漏れていたということはございます。  したがいまして、コンピューターに入っていなかったから例えば今回の結果を招いたということは一概に言えない。先ほど先生からも御指摘がありましたように、いろいろな諸活動が積み重なって捜査というのはできますものですから、その手口に記入しなかったということ自体はミスとは言えても、本件捜査に関する全体をとらえまして、全体との関連におきましてこれが捜査ミスだというような言い方は私はちょっと捜査の実情からしてできないというふうに考えております。
  130. 坂上富男

    ○坂上委員 長官、いかがですか。
  131. 田中節夫

    田中政府参考人 ただいま刑事局長から申し上げたとおりでございまして、全体としてはいろいろ問題がございましたし、一部に捜査ミス、例えば手続上のミスみたいなこともございましたけれども、これは一概に捜査ミスがあったということでここに結論づけることにはやや難しい問題があろうかと思っております。
  132. 坂上富男

    ○坂上委員 どうでしょうか。私は申し上げますが、やるべきことをやっていなかったのじゃないか、これを私は言っているのです。いろいろ指摘をしました。それでも捜査ミスでありませんと言えますか。私は、やはりこれは捜査ミスと断定すべきものだろうと思っておるわけでございます。新潟県警の刑事部長さんですか、やはり初動捜査にミスがあったということを記者会見でおっしゃっているわけでございます。  やはりこれだけの結果ですから、しかもこのとき、まずいわゆる容疑者、それから九年二カ月の間、私はこれから指摘をいたしますが、こういうことを考えますと、明らかに初動捜査のミスから始まりまして、最終的に女性を保護したときの状況まで、みんな県民に虚偽の報告をする、発表するという結果になったのじゃなかろうかと私は思っておるわけであります。これをもってして捜査ミスでないと断言される警察庁に私は強い抗議もしたいと思いますが、いかがですか。
  133. 田中節夫

    田中政府参考人 新潟県警察におきまして記者会見の席上、捜査ミスがあったということを申し上げたことにつきまして、詳細につきましては存じ上げないところもございますけれども、恐らく、例えばコンピューターの入力のミスがあった、していなかったということをとらまえまして、そこにミスがあったということを申し上げたのではなかろうかと思いますけれども、全体として、先ほどお話がございましたように、コンピューターに頼っているばかりではだめで、そのほかに方法があったとすればそういう努力をしていたということになれば、全体としては相当の努力をし、全力を挙げて捜査に向かっていたのだと思います。  しかしながら、今先生お話しのように、全体として捜査ミスがあったからこの結果につながったんだということにつきましては、それは部分的にはそういう小さなミスはありましたけれども、それが全体としてつながったかということになりますと、それはちょっと、私どもとしてはそうではないのではなかろうかというふうに思っておるところでございます。
  134. 坂上富男

    ○坂上委員 長官、大事な発言をなさっているのですが、小さなミスはあった、しかし大きなミスはなかった、こういう言い方だ。こんなこと、許されますか。重大なミスです。類似犯罪の、いわゆる前科者の入力、それを怠っただけでももう大変な責任問題です。  あわせまして、さらにこれとはまた別に、広域捜査で徹底的な捜査をやった、こう言われるが、広域捜査は柏崎なんて全然やっていない。これは私は、小さなミスが大きいミスを引きずったなどという問題ではないです。本当にその責任は、捜査のミスによってこの問題は発見がおくれ、犯人検挙がおくれたと私は思っておりますが、どうですか。
  135. 田中節夫

    田中政府参考人 先ほど来繰り返し申し上げて大変恐縮でございますけれども、例えばコンピューター入力ミスがあったということは私どもも認めているわけでございます。そのとおりでございます。  ただ、それが、そのほかに方法はなかったのか、先生お話しのようにコンピューターに頼り過ぎていた、ほかに方法がなかったのかということになりますと、ほかの方法が十分であれば結果として被疑者を早く検挙し、被害者を早く救出できたかもしれない。それを全体として見た場合に、もうちょっと検証するところはたくさんある。そして、捜査ミス、そのコンピューターのミスがあったことが直ちにそれにつながったかということは、それはちょっと言いにくいのではなかろうか。ほかにももっともっと検証すべきところはあるし、私どもは、捜査ミスがあった、捜査ミスがなかったということにつきまして、ここで全体として結論づけるにはやや早いのではないかということを申し上げておるわけでございます。  ただ、コンピューター入力にミスがあったということは、これははっきり申し上げているところでございます。
  136. 坂上富男

    ○坂上委員 長官、もう一つ御質問しますが、私たちは、警察の発表はそのままうのみにしてよいですか、今のこの事件の経過を見てみて。  本当に、いわゆる一月二十八日のこの結果の発表、もうとんでもないことでございまして、一時半なのか三時なのかということは重大な犯罪の成否にかかわる問題でしょう。それを隠して、承知の上で、しかも本部長が御承認の上で発表したという話でございます。  一体、こんなようなことで、今後の捜査において警察発表というのは私たちはそのままうのみにしていいのでしょうか。どうですか。
  137. 田中節夫

    田中政府参考人 先ほど刑事局長からも御説明申し上げましたこの一月二十八日の発表の経緯でございますけれども、新潟県警本部はいろいろなおもんぱかりといいますか判断があってあのような形の発表になったのだろうと思います。しかし、一時的にはそのような判断があったにせよ、それは事態の推移によりまして、もっと速やかに発表の訂正とか、公式に訂正をすべきであったというふうに私は思っております。  そういう意味で、私どもの広報のあり方、あるいは発表のあり方についての御質問でございますけれども、誤りは直ちに直す、それから、広報はもちろんでございますけれども、常に正確な事実を申し上げるというのは、これは基本でございます。
  138. 坂上富男

    ○坂上委員 それでは、今度は中間の捜査についてお聞きしましょう。  捜査線上に疑わしい者として現職警察官が浮かんだということでございます。そのことが初動ミスの要因となり、身内説で捜査が広がらなかったという記事があります。この方は結果的に依願退職されたそうでございますが、この状況をちょっとお話しください。
  139. 林則清

    ○林政府参考人 お答え申し上げます。  お尋ねの件についてでございますけれども、当時、新潟県警察の現職の警察官が、職務上知り合った女性に対して警察官としてふさわしからざる行為があったという案件がございました。この警察官に対して、警察でありますから調査を行います。そういう調査を行った際に、女性に対してふさわしからざる行為でございますので、念のために、今回の事件との関連性というものを、ちょうど平成三年でございましたので、有無を聴取したという事実はございます。結果は、本件とは全く無関係であるということがすぐに判明しております。そういうことでありますので、それも一因になって本人は退職したということであると承知しております。
  140. 坂上富男

    ○坂上委員 これも、もっと力を入れるべきところに力を入れないで、こういう現職警察官を、どうも好ましからざる異性との交渉があるということで、それとこの未成年者略取はどういう関連があるのか、御答弁を聞いておってもわかりません。  どうでしょうか。調書をとりましたか。それから、メモをとったんですか。そして、依願退職の理由は何でしたか。三つお答えください。
  141. 林則清

    ○林政府参考人 詳細は承知しておりませんけれども、まず、調書をとったかというお尋ねでありましたけれども、本件とは関係が全くございませんので、調書といったものはとっておりません。メモ程度のものはとってはあると思います。  それから、先生のお尋ねの中で、前提として、何でこんなものばかりやっているんだというお話がございました。実はこういうものばかりでは毛頭ありませんで、先ほど、一つは落ちておりましたけれども、手口制度などから、昭和四十年代までのものを、県下のものを全部洗い出しまして、千何百人、これを全部各署に割り当ててチェックする。それから、何らかの類似犯罪に今まで、他県であろうが関係ある者を、あった場合には本件と関係ないかということを確かめにやる。その一環として、この女性に対するふさわしからざる行為というのも、どちらかというとまだ未成年者相手であったものですから、そういうことで、念のために、もっとたくさんいろいろやっておるけれども、ある意味ではそこまで広げて本件と関係ないかということを確かめたということでございます。  それから、やめた理由ということでございますけれども、やめた理由は、そういうふさわしからざる行為で調査も受けておるし、本来、懲戒免職するような事案ではなかったようでございます、詳細は知りませんが。本人はそういうことはやっていないということを言っておったようでありますけれども、結局、本人としては、そういう調査も受けたりなんかしたので退職をしたというふうに承知しております。
  142. 坂上富男

    ○坂上委員 御答弁を聞いていますと、やはりこのことが原因になって、中心的な問題として退職されたようでございます。それは、こんなことばかりやっていたわけじゃありません——当たり前です。もうあらゆるものをお調べになったんだろうと思っているんです。なのにかかわらず、何で柏崎のこの容疑者を忘れたのか、しなかったのか。しないでしょう、全く。これをお聞きしているんです。
  143. 林則清

    ○林政府参考人 先ほど申し上げましたように、こんな膨大なものをやっておりながら、不運中の不運と申しますか、なぜこれがその後コンピューターにも入力されず、取り扱ったものからも、捜査本部の方に、対象者の中に何千人と挙げておきながらなぜというのは、先生のおっしゃるとおりでございまして、もうお答えしようがないという、先生の何倍も、なぜ、どうして、これがあったのだという気持ちしかお答えできないのが現状でございます。
  144. 坂上富男

    ○坂上委員 率直な答弁として聞いておきます、率直な答弁として。  さてそこで、これは捜査中ですから答えられないという答弁が戻ってくるかもしれませんが、この女性は、一日一回しか食事を与えられなかった、そして冷たいものを三回に分けて食べておった。これだけでもまさに涙が出る思いであります。  それから、今度はスタンガン、高圧電流銃だそうでございますが、これでもっておどかしていた。あなたのうちの家族もみんなこうやって連れてくるぞ、山の中へ入れるぞ、こんなようなことでおどかされていた。  それから、彼女は、八畳の部屋ですか、六畳でしたか、そのうち、その部屋じゅうを動けるんじゃなくて、自分の、まあ畳一枚か二枚ぐらいのところに置かれていたようでございます。しかも、毛布に袋詰めになっておって、発見されたときは、保健所の皆さんがはさみで切断して救出された。これは実は大事な証拠でございます。しかしまた、そうやっていち早く被害者を救出しなければならぬことは当たり前でございます。まさに袋詰めになっていたと言われて、新聞では出ております。そして、そのことのために、一歩もその部屋の外にも出られなかった、こうも言われております。  捜査中の秘密だといって答弁はなさるんだろうと思いますが、少しこれについての事実の認識と所感をひとつ述べてください。
  145. 林則清

    ○林政府参考人 先生おっしゃいましたように、逮捕で捜査中である、あるいは女性自身のプライバシーにかかわるということで、公式的に言えばなかなかお答えできないものであります。そういうことで、詳細を述べることは少し差し控えさせていただきたいと思いますけれども、これまでの捜査から判明したこととしましては、被害者はさらわれる際、略取の際にはナイフを突きつけられて自動車のトランクの中へ閉じ込められて、その途中からでありますけれども、さらには監禁の当初においてはガムテープで手足を緊縛されておったというふうに思われます。さらにその後、御指摘にもありました、ナイフやスタンガンを示すなどして脅迫されていた模様で、今のところ、発見、救出されるまでは一度も部屋から出ることはできなかった可能性が強いというふうに考えております。  それからまた、最初にお尋ねのあった食事につきましては、弁当、おにぎりなど、単調で大変偏ったものが主でありまして、しかも頻度もまばらで、丸一日食事をしないということもあったようで、満足なものは与えられていなかった模様でございます。  また、発見時の状況につきましては、女性は毛布に袋詰めになっておったというわけではありませんけれども、ややそれに似た、縫い合わせて寝袋状にした毛布の間におびえ切って潜り込んでおったもので、発見された保健所の方か医師の方か、これがその毛布のつないである縫い目を切って救出をされたというふうに聞いておるところでございます。
  146. 坂上富男

    ○坂上委員 率直な答弁としてお聞きをしました。  さらに、いま一つでございますが、母親は九六年に柏崎警察署に相談に行ったそうでございます。県警の長谷川部長は、内容に関しては記録はなく、担当者も覚えていない、そのとき十分に状況を聞き出していれば早期に救出できたのではないか、申しわけないと述べておられるそうでございますが、四年前、どうですか、この事実は。
  147. 黒澤正和

    黒澤政府参考人 四年前に被疑者の母親が柏崎警察署に被疑者に関し相談したということにつきましては、新潟県警察から、事実はあるが詳細は確認できていないとの報告を受けておりますが、いずれにいたしましても、その相談の際にしっかりと受けとめまして十分に状況を聞き出しておれば被害者を救出できたかもしれず、この点、まことに残念でございます。
  148. 坂上富男

    ○坂上委員 県警本部長でした、捜査ミスを認めるような発言をなさったのは。本当に私は今のお話を聞いているだけでも、やはり捜査ミスによって本件犯行が長期に及んだんじゃないかと。そうだといたしますと、国家賠償法によるところの賠償義務があると思いますが、この点は、民事局、どんな考えでございますか。  それから、文部省の方とされましては、登校時における生徒が被害に遭ったことに対しては共済金が支払われるということも聞いておるわけでございますが、一体、こういう場合の算定の仕方、そして金額なんかはどうなるのか。  そしてまた、これとは別に、私は国家賠償法の対象になると確信をしているわけでございますが、これはどうですか。民事局、お答えいただけますか。
  149. 細川清

    細川政府参考人 具体的事案を承知しておりませんので、問題となります国家賠償法一条一項の一般的な解釈論として申し上げますと、お尋ねのような場合、すなわち公権力の行使に当たる公務員がなすべきことをしなかったという場合に、その不作為が法律上の作為義務に違反した違法なものであるかどうかというのがまず問題になります。それから、もう一つは、その不作為と損害の発生との間に因果関係があるかといったことが問題になるわけでございまして、こういった要件が満たされれば、当然のことながら国家賠償責任があるということでございますが、先ほど申し上げましたとおり、具体的事案は承知しておりません。  以上でございます。
  150. 遠藤昭雄

    遠藤政府参考人 お答えいたします。  学校の管理下において児童生徒が災害に遭いました場合には、日本体育・学校健康センターが実施主体となりまして医療費とか傷害見舞金などを支給する災害共済給付制度というのがございます。  今回の事件につきましては、同センターが新潟県教育委員会から災害共済給付の可否について事前に相談を受けておりまして、検討いたしておりました。検討の結果、学校管理下の範囲に該当するということから、災害共済給付の対象となり得るというふうに判断をしたと聞いております。  したがいまして、今後、新潟県三条市教育委員会あるいは保護者、どちらでもいいんですが、どちらからか正式なそういう請求を受けまして、同センターにおいてそれを審査した上、給付が行われるということになりますが、その場合の給付の中身は、医療費でございます。それは、健康保険、十分の三が自己負担になりますが、その十分の三プラス療養に伴って要する費用として十分の一というものを加算しまして、十分の四が支給対象となる。あと、退院して障害が残っている場合の見舞金というものも事後の問題としてはある、そういう状況になっております。
  151. 坂上富男

    ○坂上委員 金額はわかりませんか。
  152. 遠藤昭雄

    遠藤政府参考人 金額は、その医療費が幾らかかるかということによって、それに応じて支給をされるということになっております。
  153. 坂上富男

    ○坂上委員 見舞金は。
  154. 遠藤昭雄

    遠藤政府参考人 見舞金は、これはその程度によりまして、三千三百七十万から七十三万という幅がございます。
  155. 坂上富男

    ○坂上委員 もう時間も切迫しているようでございますが、今度は刑事局長にお聞きをいたします。  未成年者略取、それから監禁致傷でございます。監禁致傷の方は、傷害の、重い方をもって適用するということですから十年。未成年者略取は、長期五年でございましょう。まず、これは併合罪だろうと思いますが、どうでしょうか。それから、併合罪であるとするならば、重い方の長期の半分をこれに加算をする。そういたしますと、いろいろの条件もありますが、その前提をなしにして、正常であれば十五年間が長期の対象になるのではなかろうか、こう思っておりますが、私たちの町の人たちは、この少女、女性が九年二カ月こうなった、それ以上の処罰がなされなければいけないという声を私は聞いております。この辺をどうするのか。  それから、これは私、意見を申しません。報道によりますと、母親は立件しない、こういうようになされておりますが、これはどうなんでございましょうか。私は意見は申し上げませんが、事実だけお聞きをしたいと思います。
  156. 古田佑紀

    古田政府参考人 未成年者略取と逮捕監禁致死傷の罪数関係でございますけれども、これは委員御案内のとおり、実際にどういう事実関係かによって違ってまいります。したがいまして、これは捜査の結果を見てみなければわからないことでございますので、現時点では御答弁をちょっと差し控えたいと存じます。  ただ、一般論として申し上げれば、今御指摘のように併合罪になる場合、これは三月以上十五年以下、場合によりまして、観念的競合になるということも考えられるわけでございます。あるいは、ほかの科刑上一罪、この場合は三月以上十年以下ということになります。  それから、最後のお尋ねの立件の件につきましては、捜査当局の判断にかかわる事項でございますので……(坂上委員「警察の方」と呼ぶ)
  157. 林則清

    ○林政府参考人 母親の立件云々という報道がされておりますけれども、私どもとしては、承知しておりますのは、まだ検討中でございまして、ただ、少し証拠的に薄いのではないかというような報告を受けておる段階でございます。
  158. 坂上富男

    ○坂上委員 刑事局長、九年二カ月に及ぶ長期の監禁と言ってもいいと思います。こういうのは日本や世界の事例の中に、こういう少女が、こんなものあるんですか。事例を、あったらちょっと……。
  159. 古田佑紀

    古田政府参考人 私自身の個人的な今までの知識としてはございません。
  160. 坂上富男

    ○坂上委員 日本を代表する刑事局長がおっしゃるのでございますから、まさに世界史上類を見ないところの犯罪であろう。だからがゆえに、私たちは心が痛み、本当にどうしようもない思いにみんなが駆られるのだろうと思っております。  さてそこで、文部省それから厚生省でございますが、致傷の中の傷害の内容について、それから文部省においては、九年間にわたりまして勉強することができなかった、こういうようなことについてどのような対応をなされるおつもりなのか、お聞きをしたいと思います。
  161. 御手洗康

    御手洗政府参考人 当該女性は小学校四年以降監禁されておりまして、その後一切教育を受けられぬまま現在十九歳ということでございますので、法律上は、小中学校の義務教育年齢を超してございますので、小中学校に通う義務は既になくなっております。  また、このままでは中学校を卒業したという資格もございませんので、今後、例えば高等学校あるいは専門学校等に進むということで、教育を受けあるいは技術を身につけようという場合も、資格がないことになってまいります。  したがいまして、この女性が今後円滑にまず社会復帰を果たしまして、その上で、健全な社会生活を送る上でどういった教育が必要かということにつきましては、今後、御両親を含めまして、御本人の、どういう御希望が出てくるかということを待った上で、関係機関において検討するということになろうかと思います。  いましばらく時間がかかろうかと思いますけれども、文部省といたしましては、既に新潟県教育委員会とも、小学校におきます四年生以降の取り扱い状況等についても御報告を受け、今後の対応についても意見交換等をしているところでございますので、今後、御両親を含めた御希望を待った上で、関係機関と適切な必要な限りの支援をしていく、そういった配慮をしてまいりたいと考えているところでございます。
  162. 今田寛睦

    今田政府参考人 精神的な後遺症として、いわゆるPTSD、ストレス後の精神障害というのが十分に予測されるわけでありますし、これから、そういった意味で、そういった専門家の先生方のお力をかりる形で御援助を申し上げることになろうかと思いますが、現在、体力が非常に弱っていらっしゃるというようなこともありますので、御家族等とも十分相談をしながら、必要な医療の確保には努めていきたいと思っております。
  163. 坂上富男

    ○坂上委員 厚生省、文部省、本当に御家族、御本人の希望をよく体されまして、この女性が完全に社会復帰が可能になるように私からも強くお願いをいたしておきたいと思っております。  時間も過ぎておりますが、まあ十分ぐらいはちょっと私の分を超過したわけでございますが、私の同僚の方から時間をいただいておりますので。  最後でございますが、臼井大臣に聞くのもいささか私もせつないのでございますが、一言二言質問をさせていただきたいと思います。  臼井法務大臣の元秘書が税法違反をした、こういうようなことが新聞に出ておりまして、いろいろ読んでみますると、どうも脱税教唆というような状況のことをしていたんじゃなかろうか、そしてこちらに加入さえすれば何とかなりますよといって国会の秘書さんを集めてやったんじゃなかろうか、こんなような感じもしておるわけでございます。  新聞によりますと、大臣はいわば健康上の理由で辞職したというようなことをおっしゃっておりますが、一体この辞職をした本人は診断書の提出なんかあったのですか。それから、いずれもこれは、こういう事件がもう発覚したものでございまするから、去年の二月ですか、やめさせたというようなことなんじゃなかろうかと思っております。  これは、失礼ですが、私の調べたところによりますと、私設の秘書さんでございますが、どうもなしている行為は大変許しがたいことなんじゃなかろうか。しかも、パーティー券を問題のコンサルタントからどうも購入してもらっておるんじゃなかろうかとも思っております。  元秘書の勤務期間と、そして、どのような地位にあったのか、どのような業務を担当しておったのか、簡単でいいですから要領よくまず御答弁いただきたいと思います。
  164. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員御指摘をいただきました秘書は、約十年間、昨年の三月末までおったわけであります。仕事の内容といたしましては、会合の代理、党本部との連絡あるいは部会等への出席、そうした仕事をいたしておりました。  一昨年の暮れから体の調子が悪いと、診断書等は出てまいりませんでした。また、そのときどういう病気であったかということもちょっと記憶が定かじゃございませんで、恐らく私の感じでは、大変、感じで申しわけないのですが、糖尿病とかあるいは腎臓の関係とか、そんなことではなかったか、それ以外のものではなかったような気がいたします。そこで、昨年の一月から臨時で一人入れまして、そうした穴をふさぐということをいたしてまいりました。  大分長くなっておりまして、どうも本人の感じから、むしろ、体が悪いということもあったんだろうが、やめてほかの仕事をしたいというふうな希望があるんじゃないかということに気がつきまして、本人に問いただしましたところ、そうであるということでございましたので、切りのいい三月末日で退職ということになったものでございまして、実は、前回のいわゆる旅行のことも、その時期が来るまで存じませんでしたし、今回のことも、新聞報道等で知りまして驚いているところでございます。  新聞報道で定かなことはわからないわけですが、マスコミの皆さん方がおっしゃっているこの人物と私は直接接したことはございません。また、政治献金もちょうだいをしたことはないと思います。  しかし一方で、パーティー券については、あるいは何枚か行っているか行っていないか、その辺は実は定かでございません。パーティー券については、いいかげんだとお思いになることもあろうかと思いますが、追跡が非常に難しい面がございまして、先般、御質問を受けた後、記者会見を開きました。その後、私の秘書のサイドから本人と連絡をとりまして聞いたところでは、恐らくないのではないだろうか、本人も、定かではない、こういうふうに申しております。  いずれにいたしましても、本人に事情等をある程度は聞いておりますが、実は、マスコミ等で言われているものとかなり違っているところもございます。真実は一つでございまして、私の場合は、元秘書からはそうした話を聞くことはできますが、そのほかの関係者の皆さん方からは事情を改めて聞くような立場にございませんので、したがいまして、この問題は、やはり税務当局にしっかりとお願いをするということが一番適当なのではないだろうか、こういう感じを持っている次第でございます。  いずれにいたしましても、私の現職中に、もしこういうことが事実であるとするならば、監督不行き届き、こういうふうに言われてもやむを得ないわけでございまして、ひとつ今後とも、残りの秘書等にこうしたことが二度と起こらないように指導しながらやっていきたい、このように思っております。
  165. 坂上富男

    ○坂上委員 この元秘書といつお会いになったのですか。何時間ぐらいお会いになりましたか。場所も言っていただくとありがたいのですが、言われなければ、時間、いつごろ、それぐらいのことは言っていただきたいと思います。
  166. 臼井日出男

    臼井国務大臣 これは、私、直接ではございません。私どもの秘書が本人に会っているのでございます。(坂上委員「いつでしょう。大体でいいです」と呼ぶ)おとといぐらいだったんじゃないでしょうか。ちょっと、今、大変申しわけございませんが、おとといぐらいだったと思います。
  167. 坂上富男

    ○坂上委員 確かに監督不行き届きでございます。その責任は、やはり私は問われるべきだろうとは思います。  つきましては、もっとこれからも質問がほかの方からも続くと思いますので、この際、私の名前において証人申請させていただきます。臼井元秘書松岡光君、それからコンサルタント会社のコンサルタントと言われております鈴木照次でございます。この二人について証人申請いたします。  終わります。
  168. 武部勤

    武部委員長 ただいまの件は、理事会で諮りたいと思います。  枝野幸男君。
  169. 枝野幸男

    ○枝野委員 それでは、私からは、まず民法改正の件についてお尋ねをいたします。  法制審議会で選択的夫婦別姓などを含んだ民法改正に関する答申が出されてから、もう何年もたっております。今回の大臣所信の中にも入っていなかったと思いますが、どうして法制審の結論が出ているのに国会提出をされないのでしょうか。
  170. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今先生御指摘の選択的夫婦別氏制度の導入の件でございますけれども、平成八年二月に法制審議会から民法の一部を改正する法律案要綱の答申がございました。答申に基づく改正法案が政府から国会提出されることのないまま今日に至っているというのは、そのとおりでございます。  これは、答申内容、特に、選択的夫婦別氏制度の導入や、嫡子でない子と嫡子である子の相続分の同等化等につきまして、なお国民各層や関係各方面にさまざまな御議論がございまして、国民皆様方の御意見が分かれている状況にあることによるものでございます。  例えば、この問題に関する平成八年の総理府による世論調査の結果によりますと、選択的夫婦別氏制度の導入に賛成の意見が三二・五%、反対の意見が三九・八%、通称の使用を認めたらいいんじゃないか、そういう意見が二二・五%というふうになっておりまして、かなり意見が割れているのも現状でございます。  また、地方自治法第九十九条二項の規定に基づきまして地方議会から提出される意見書には、選択的夫婦別氏制度に関するものがございますが、現時点までに法務省提出された意見のうち、導入に積極の意見が四十九件、慎重ないし消極の意見が三百八十八件となっております。  さらに、嫡子でない子の相続分の改正につきましては、平成九年の総理府による世論調査の結果では、さらにこれが開いておりまして、これに賛成の意見が二五・〇%、反対の意見が三八・七%、どちらとも言えないとするものは三〇・八%というふうになっておりまして、このように、これらの問題について国民意見が大きく分かれているということがうかがわれるわけでございます。
  171. 枝野幸男

    ○枝野委員 そういうお答えが出ると思ったのですが、それでは、臼井法務大臣は、国務大臣として吉野川可動堰には反対をしていただけますか。
  172. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御指摘のことにつきましては、直接私の所管でございませんし、また、問題としては極めて別個の問題だと思っております。ここでお答えを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  173. 枝野幸男

    ○枝野委員 法務大臣は、法務大臣である前に国務大臣として法務省の職務も分掌しているのであって、まずは国務大臣であって、国務全般に責任をお持ちなのです。  今法務大臣法務大臣としておっしゃった民法を提出しない理由をそっくり吉野川可動堰に持ち込めば、建設をやめるべきじゃないか。国務大臣として、閣議でどの案件についても御発言できるお立場なのですよ。どうして御発言されないのですか。
  174. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私も政治家でございますから、個々の点についてはいろいろ意見を持っているというのは、これは当然のことでございます。  しかし、私は、大臣として法務省を現在所管いたしておりまして、そういった意味では、他省庁の問題については立場としては発言を控えるべきことが多い、こう考えておりまして、こうした問題についても、私は、自分の判断で発言を控えるべきだと思っておりますので、発言いたしません。
  175. 枝野幸男

    ○枝野委員 せっかくいらっしゃるので、山本弁護士、今の憲法解釈と内閣法の解釈は間違っていませんか。
  176. 山本有二

    山本(有)政務次官 間違っているとは全く思いません。法務大臣のお考えが正当だと思います。
  177. 枝野幸男

    ○枝野委員 時間が短いので水かけ論をしていてもしようがないので、あくまでも国務大臣でありますから、逆に言うと、閣議で自分の所管のところ以外は発言されないのだったら、閣議は要らないわけですよ。閣議という制度が要らなくなるわけで、それは今の内閣制度を全く無視したお話だ。  民法をもし世論が分かれているということでおやりにならないのだったら、吉野川可動堰もやらないということでなければ、内閣としての物の考え方が分裂をしているということであるということを指摘しておいて、時間が余りございませんので、次に参ります。  先ほどの新潟の事件も大変痛ましいといいますか異常な事件でありますが、最近こうした事件が多うございます。私の選挙区の隣の桶川というところでも、女子大生がストーカーに殺されるという事件が昨年起こりました。最終的には、そのストーカー行為を行っていた人間は自殺をしたということになっておりますが、実際に命を落とされるまで、殺されるまでの間に、警察に対して手を打ってほしいというようなことをして、また、警察が動かないということの中で、御家族などの方が相当な努力をして対抗しようとしていたようでありますが、結果的には、殺人事件という痛ましい事態になった以降、ようやく名誉毀損で警察が動いたということであります。  ここでは警察の責任問題をやるつもりはありません。この事実だけで明らかに責任があって、ある段階ではしかるべき責任をしかるべき方がおとりになるんだろうと私は思いますが、まず、そもそも、法制面の問題として、確かに、殺人事件にまで発展をしたということで、結果的に名誉毀損というそういった捜査が行われたわけでありますが、そこまで至らないけれども、まさにこういった事件も起こってしまった以上、ストーカーに苦しめられている多くの皆さんが、本当に次は自分が殺されるのではないだろうかという強い恐怖を持っていらっしゃる。  そういった状況の中で、今の法制度、法体系でこうしたことを防ぐことができるのかどうか。逆に言えば、今回のようなことは、埼玉県警がちゃんと動いていれば防げたというお考えなのか、それとも法整備をしなければ防げないというふうにお考えなのか、どちらなのでしょう。
  178. 山本有二

    山本(有)政務次官 この種のストーカー犯罪に対する法整備ということは、そういう要請や御意見もあることを存じておりますが、その範囲が明確でない点もあり、事案により、刑法の傷害罪、脅迫罪、業務妨害罪や軽犯罪法違反の罪が成立する場合が少なくないと思われます。  当面は、現行諸罰則を厳正に適用していくことが肝要であると思われますし、新たな立法の必要性につきましても、今後、事案の実態を踏まえつつ、諸外国の例も参考にしながら検討していきたいと考えておるところでございます。
  179. 枝野幸男

    ○枝野委員 確かに、いざ立法措置をするとなったら難しいということはわかっています。もし時間があればそこまでいきたいのですが。  現に、埼玉県警はこの桶川の女子大生の声に対して反応することができなかった。その結果、殺人事件にまで至ってしまったわけです。  ということは、論理的に言って、二つあるわけです。今の法制度では警察は動けなかった、殺人事件に至ったんでようやく動くことができたんだというふうに考えるのか、それとも、埼玉県警に広い意味での落ち度があった、動くべきときに動かなかったと考えるのか、どちらの立場にお立ちになるのですか。
  180. 山本有二

    山本(有)政務次官 つぶさに埼玉県警の初動捜査等について承知してはおりませんが、総合的に判断しますと、社会というもの、コミュニティーオーガニゼーションがしっかりしておって、地域犯罪を未然に防止できるというような理想論からしますと、この種のことは、法あるいは捜査当局だけに責任を追及するという以前の問題もかなりあるのではないかというように思っております。  ただ、治安維持についての所管の政府の者といたしましては、先生おっしゃることも踏まえながら、研究に研究を重ねていきたいというように思っております。
  181. 枝野幸男

    ○枝野委員 私は、桶川の事件というのは、現行法の中でも手の打ちようがあったんではないだろうかと思っております。現に、ストーカーに悩まされている多くの方々が警察などに駆け込んでも、動いてもらえていない。桶川のような、命まで失うところまでいっていないから、余り表ざたになっていないということだと思いますけれども、現実には相当、精神的な傷害を負わされている方も少なくないだろうと思う。そして、今の法体系の中で、では本当にそれを警察が取り締まることができるのかといえば、確かに境界線が難しいわけです。特に、異性を追い回すなどという話については、ある意味では、少しぐらい押しが強く、押しまくらないといけないという世界もあるかもしれないけれども、犯罪的な話というものの境界線というのは必ずどこかで引かなければならない、そこが難しいのは確かによくわかります。  しかし、難しいからといって時間をかけていいのかといえば、今政務次官もお話しになりましたとおり、社会が大きく変化していますので、地域コミュニティーの中でこれを解決していくということは、正直言って当面は不可能だろうというふうに思います。そうすると、できることがあるとすれば、広い意味での警察的な組織が何らかの形で初期の段階で手を打てるようにするという知恵を、これは待ったなしなんではないだろうかというふうに思うのですが、いかがですか。
  182. 山本有二

    山本(有)政務次官 アメリカ合衆国、一九九〇年のカリフォルニア州においてそういう処罰する規定や措置があるというようにも聞いておりますし、またさらには、鹿児島県等もそのような趣旨のものを盛り込んだ条例制定をしておるということも聞いておるわけでございますが、とにかく、そういう措置が必要であるという認識は先生と共通しております。
  183. 枝野幸男

    ○枝野委員 そこで我々も野党として、議員立法などの努力をしてみたいと思っていますが、一つ提案させていただきたいのです。  日本に限らないですけれども、伝統的に裁判手続などというのは、刑事民事に分かれています。今政務次官もおっしゃられたとおり、ストーカーに対応するにはどうしたらいいかというと、新しい犯罪類型をつくってそこに含めていこう、それが従来の考え方からすればオーソドックスだと思いますが、先ほど言った、ちょっとしつこい男とストーカーとの境界の引き方というのを法律の条文のつくり方でどこまでできるのかというのはなかなか難しいと思います。逆に言うと、ストーカーとまではいかない、ちょっとしつこいなというところまで犯罪にしてしまうということも、これまた問題がある。  できることがあるとすれば、当事者の申し立てによって、これはストーカーだとしかるべき機関が認定をする。できれば裁判所のようなところがいいでしょう。それも、民事の仮処分に準ずるぐらいの早急な対応でやってもらわなければいけないわけですが、そして、そこで下された命令に反してそれ以上つきまとった場合には、これはかなり重い罪をかぶせるというような例えば立法の仕方。  従来の刑法理論からは逸脱していると思います。しかし、まさに社会が大きく変化している中で、人権を守りながら、今のようなボーダーラインがあいまいなものの犯罪をきちんと摘発をしていこうというふうに思ったら、こういった仕組みということも少し検討しないと対応し切れないんじゃないだろうかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  184. 山本有二

    山本(有)政務次官 まさにそのとおりだと思います。
  185. 枝野幸男

    ○枝野委員 それでは、ぜひ早急な検討を私の提案も含めて進めていただければというふうに思います。  もう一件、ちょっと私もうっかりと見逃していたのですが、午前中、我々のいないところでの議論ではオウムの話も出ていたようでありますが、オウムに公安調査庁立入検査をしたということ、そのこと自体は、法律も通りましたので、若干法律の中身に問題点もないわけではないですが、素早い対応ということは評価したいと思います。  ただ、ここにも新聞記事を持ってきていますし、テレビなどの映像の報道で見て驚いたというか、公安調査庁の皆さんが非常に派手な、公安調査庁と書いたジャンパーを着ていらして、そして立入検査にお入りになっているんですね。  一般的に、たしか、ほかの案件などで公安調査庁についてどんな方がどういうことをやっているんだとお尋ねをしても、いや、それは逆に言うと、そんなものがオープンになったら調査なんかできませんよということで、どちらかというとだれが公安調査庁調査官なのかということを隠すのが従来の公安調査庁ではなかったのか。オウムのところに立ち入りをすればテレビにでかでかと映るのはわかっているわけで、そんなところで派手なジャンパーを着て、しかも公安調査庁と書いて自分が公安調査庁調査官ですなどということを示すというのは、公安調査庁は、今までの方針を変えて、みんなメンバーをオープンでやるということなんでしょうか。
  186. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員御指摘のとおり、こうした公安調査庁のメンバーが、できれば余り公的なところに顔を出したりすることのない方が私はよろしいんじゃないかという気持ちもございます。  一方で、今回、皆様方によっておつくりをいただきましたいわゆる団体規制法におきましては、立入検査をする公安調査官については、その身分を明らかにしなければならない、証票を携帯しなければならない、関係者に提示をしなければならないということが規定をされておりまして、公安調査官ということがはっきりわかるようにして検査を実施することになっておりまして、秘密裏に行うということは許されておらない、こういうことでございます。  ジャンパーの着用は、検査の相手方に対して公安調査庁職員であるということを明らかにする一つの方策でございまして、特にそれ以外の意味というものはございません。
  187. 枝野幸男

    ○枝野委員 御存じだと思いますし、昨今言われている金銭スキャンダルの話じゃありませんが、週刊誌に書いてあることが全部正しいとは思いませんけれども、例えば最近オウム絡みのところでは、公安調査庁が生き残るためにオウムがむしろ残るようにやっているんではないかという記事を書いている週刊誌もあるぐらいの世の中なんですね。  確かに正直、公安調査庁、従来の極左、極右の、私が生まれる前の時代のような、ああいった公安調査の対象というのはリアリティーがかなり薄くなっている中で、まさに今回のことを奇貨として、これで組織が生き残れるんだというような受けとめ方をされている部分もあるわけですよ。そんなところで、ちょっとはしゃぎ過ぎではないのかなというような受け取られ方もこれまたされかねないのではないだろうか。相手方に公安調査庁調査官であるということを認知させるのであれば、身分証明書みたいなものを胸にぶら下げるとかなんかで十分なわけであって、オウムのことを支えているのは我々だということで世の中にアピールをして生き残りを図っているというふうに、少なくとも、誤解であったとしても受け取られるようなことはあってはいけないと思います。  さらに言うならば、オープンになるならオープンになられるで、それは僕は一つのあり方だと思います。例えば、実を言えば、先ほど言いましたストーカーのような話について、これは新しいニーズとして、警察がダイレクトに捜査をする前のワンクッションを入れた二段階論というのは新しく必要じゃないかと思っている。そうすると、かつてのような極左、極右の公安調査というようなもののニーズはなくなっているけれども、かなりその部分のノウハウが生かせるところで、今度は一般市民の生活を守るという部分で調査をしたり、あるいは判断をしたりというような準司法的な機関というのは必要であるかもしれない。そうしたら今度はかなりオープンにやってもらってもいいわけですし、むしろそういうところの知恵を使われる方がいいのではないだろうかなということを指摘しておいて、これ以上余りはしゃぎ過ぎと誤解をされるようなことのないような、地に足のついたことをやっていただくようにお願い申し上げまして、質問時間が終わりましたので終わらせていただきます。ありがとうございました。
  188. 武部勤

    武部委員長 北村哲男君。
  189. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 北村でございます。  法務大臣にお伺いしたいと思います。  例の秘書さんの件ですけれども、先ほど坂上委員が名前を読み上げて松岡光というふうに言われたのですが、これはその方が当該の秘書さんでしょうか。
  190. 臼井日出男

    臼井国務大臣 そのとおりでございます。
  191. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 午前中の予算委員会の中で日野委員質問をされました。  その中で、当時は十五人の秘書をお持ちだということで、九人の男性と女性六人だったということですが、これは国会の秘書さんというふうに聞いていいと思うのですけれども、それでよろしいわけでしょうか。よく地元と国会とありますね。国会の秘書さんということなんでしょうか。
  192. 臼井日出男

    臼井国務大臣 地元と国会と両方あわせたものでございます。
  193. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 では、先ほど、仕事を、どういう仕事かというふうにお聞きしたときに、党との関係それから委員会の問題とか言って国会のことしか言われなかったのですけれども、地元の秘書もおやりになっていたということと聞いてよろしいわけですか。
  194. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今は全体の数のことをお尋ねでございましたから、地元も含まれているというふうに申し上げましたが、本人はいわゆる東京詰め、こういうことでございます。
  195. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 給料はどのくらい払っておられたのかということを聞かれたときに、言えないというふうに言われたのですが、どうして言えないのですか。それとも、給料はなかったということなんですか。
  196. 臼井日出男

    臼井国務大臣 出しておりましたけれども、今ここで給料の額というものがはっきり確認できておりませんので、後ほどお答えさせていただきます。
  197. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 午前中は何か言えないと言われたので、私はむしろそのときに、給料を出していなくて、名刺だけで、あとは自給自足、先生の名前で実際に稼いでこいという秘書さんがおられるということも聞いております。そうだとするとかなりゆゆしき問題であって、それは、大臣の名において自分で稼いでくるような秘書を雇うことは、まさにこういうことを温存、温存というよりも醸し出すような雇い方になるのじゃないかという気がしたので、給料はある程度もらっておるけれども額がはっきりしないという意味で、ではそういうふうに認識しておきます。  それから、先ほど政治献金はもらっていないと思いますというふうにあいまいなお答えをしておられるのですが、もらっていないという確信はおありですか。
  198. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私、周辺を調べましたけれども、一度も会ったことがない、献金ももらったことがない、こう申し上げたいと思います。
  199. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 本人については、これはある説では一時公設であったという話もありますけれども、それは続けて聞きますが、いつからいつまでの勤務であったのか、それから年、家族、現在の仕事はどういう仕事をしておられるのでしょうか。
  200. 臼井日出男

    臼井国務大臣 現在の仕事は私はわかりません。年齢は五十二ぐらいだと思いました。家族構成もちょっとわかりません。
  201. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 家族構成がおわかりにならないということなんですが、十年も勤めておられた秘書さんの家族構成とか、それから現在どこに住んでおるか、そういうこともわからないのですか。
  202. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大変申しわけございませんが、わかりません。
  203. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 直接会っていなくて、他の秘書さんでしょうけれども、秘書を通じていろいろ調べておると言われたのですが、本件が出てきたのが、六日前の十二日の夕刊に大きく出ました。秘書さんを通じてということについて、やや大臣御自身の名誉にかかわる問題であると思うんですけれども、どうして直接会って事情を聞かないのでしょうか。
  204. 臼井日出男

    臼井国務大臣 これは認識の違いだと思うんですが、新聞等でしか状況はわかりませんが、これがどういうふうな形でどうなっていくかわからないということになると、むしろ私が直接会うことは口裏合わせというふうなことにもとられかねない。むしろ、客観的に秘書を通じてお話をした方が、本人の現在の状態もありますのでよろしいのじゃないか、こう判断をして、あえて会っておらないのでございます。
  205. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 そうすると、会おうと思えばいつでも会える状態というふうに聞いていいかと思うんですけれども、それはまた後に聞きます。  退職理由について、おととしあたりの暮れから調子が悪いように言っていて、そしてけじめとして去年三月にやめたというふうに言われました。問題の週刊誌に出たのが五月号なんですけれども、現実に石和温泉に女性連れで行ったというのは二月の初めのころのことらしいのですが、それから見ますと、しかもそれが、普通であればある程度わかって、それで後の方に週刊誌に出たりするんですけれども、大臣は、そのときに実は事情を知っていてやめてもらったということではないのですか。
  206. 臼井日出男

    臼井国務大臣 全く存じませんでした。もし知っておったら、即首であったと思います。
  207. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 そうすると、そういうところに行ったということではなくて、謝礼をもらったということもそのときはもちろん知らなかったということでよろしいわけですね。  それで、七百万円の謝礼を、自分のボスである大臣というか臼井代議士に黙ってもらっておったというのをあなたが知ったのは今回の新聞報道が全く初めてであるかどうか、この点、確かめたいと思います。
  208. 臼井日出男

    臼井国務大臣 本人の名誉のために申し上げておきますが、これは、新聞報道は一部でそう言っていることであって、果たしてそれが本当であるかどうかということはまだ定かじゃないと私は思っております。  そして、このことについては、私は、新聞報道の直前、新聞記者の方からそうしたお話を電話で受けて初めて知ったのでございます。
  209. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 新聞報道によると、修正申告を既にしておるという報道もあるんですけれども、その点は確かめましたか。
  210. 臼井日出男

    臼井国務大臣 そのように申しておりました。
  211. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 そのように申しておったというのは、秘書を通じてということでよろしいわけですかね。  ということは、修正申告をしたということは、自分でそのことを認めておるということであって、第三者から見ればもらっておったということが確定できるんじゃないでしょうか。
  212. 臼井日出男

    臼井国務大臣 伝聞でありますから、一般的に言って、本人が七百万の修正申告をしたからといって、一カ所からそれが入ったものなのか、そうでないのかということは、それは本人でなければ確認できないわけでありますから、そういう意味ではいろいろな見方があるんじゃないだろうか、このように思います。
  213. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今のお答え、よくわかりません。修正申告をしたという事実を聞いておるということは、修正申告をしたということは収入があったことを認めることなんですけれども、それを直接確かめていない、伝聞だというふうに逃げるのはおかしいと思うんですね。伝聞をしてはいけないという理由は言われたわけですから、それなりに信頼される人を通じて聞いておられるわけですから。その修正申告をしたという事実を大臣が確認しておられるのであれば、これはもらったということがその前提になければ修正申告にならないわけですから、それ自身は、大臣の認識としてはもらったんだということになりませんか。
  214. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私が申し上げたのは、本人がどこかからもらったということは事実だと思います。それがかのところの一カ所からもらったものなのかそうでないのかということは私も存じませんし、いろいろな事実があるんじゃないだろうか。真実は一つでございますが、それは本人だけが知っているのでございます。
  215. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 一カ所か別かは別にしまして、私どもの給料でも、額面は百二、三十万になるんだけれども、現実にもらっているのは一カ月七十万ぐらいですね。秘書さんが議員の一年分にも相当するようなお金をもらっておるということは、これは監督不行き届きというお話でありますけれども、それで済むんでしょうか。あるいは、もらっておったことがわかれば、それこそ尋常じゃないと思うんで、これは懲戒解雇になるのか、あるいは政治家自身も責任をとらざるを得ないようなことになると思うんですけれども、大臣はその辺はどういうふうに認識しておられますか。
  216. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私の責任を感じるということは申し上げましたけれども、これは一昨年の修正申告だったそうでありますが、七百万の別収入というのは大変異常なものである、こう私は思います。
  217. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 問題の脱税コンサルタントといいますか、コンサルタントの人が査察を受けたのは昨年の夏というふうに言われておりますね。大臣の就任は十月。しかも、単に国税だけではなくて、これは脱税絡みということで捜査当局も興味を示しているということも報道によってあります。あり得ることだと思うんです。そうなると、事前に全然耳に入っていない、あるいは大臣の御就任の直前に査察が入ったということ、しかも修正申告はちょっと前というふうに言われましたが、その時期は私もわかりませんけれども、そういうことが全然耳に入らないということはあるんでしょうか。
  218. 臼井日出男

    臼井国務大臣 現に存じませんでした。
  219. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 先ほど、石和事件を知っておれば即首だと言われましたね、異常なお金をもらったということがわかればまた即首だという。それも問題だと思うんですけれども、そういう事態がはっきりすれば、そのやめさせた形、すなわち、さかのぼって懲戒解雇をする、あるいは何らかのお金を返させるというふうな措置をお考えでしょうか。
  220. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ですから、今回のことは現時点では不確定の部分が多うございまして、したがって、そこまで私は、やめた者に対して、七百万がどういうもので、どういうふうにすべきかというふうな指示を与えるような立場には現在ないと思っております。
  221. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私は、これは相当脱税絡み、外形的に見ても、どうも相当多くのコンサルタント料を取って実は何もしなかったとか、あるいは大蔵省の役人も絡んでおられる、その間の一種のグループの中にその秘書さんも入っておられた感じがするわけです。  そうすると、当然これは単に修正申告で済む問題ではなくて、脱税、しかも犯罪に近いものだと思うんです。それを、やめたからといって云々指示する立場にないということで私は済まないと思うんですけれども、そのあたりは大臣はどうお考えでしょうか。
  222. 臼井日出男

    臼井国務大臣 税金の面のことでありますとかそのほかの面、これは職務権を持っておる税務当局あるいはそれらのところがしっかりと見ていただけばいいわけでありまして、どういうふうにするかというのは、あくまでも本人がその内容に応じて行うべきものと思います。
  223. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私はとてもそうとも思えませんが、ちょっと刑事局長に聞きたいと思います。  これは、既に税務当局は、まずは修正申告をさせたり、あるいは、場合によっては脱税ということになると思うんですけれども、そうなりますと当然告発の問題なんかも起こってくると思うんですが、検察当局としては、この点については捜査の対象にしておられるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  224. 古田佑紀

    古田政府参考人 どのような事項について捜査を行うかということは、これは捜査機関の活動内容にかかわる事柄でございますので、申しわけありませんが、答弁を差し控えさせていただきます。  一般論としては、刑罰法令に触れる疑いのあるものについては、これは真相の解明に努め、適正に対処するということでございます。
  225. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 いつものとおりの御答弁だと思うんですけれども、法務大臣が十年間も自分の配下でお使いになって、しかもその過程の中で、普通の人から考えたらとてもひどいことやっておったという人がおる。しかもそれが、一つは国税の問題、それから場合によってはこれは犯罪にかかわるわけですから捜査当局の問題になるわけで、法務大臣は捜査機関に対する指揮監督権を持っておられるわけですね。いわば身内の者が捜査当局の捜査の対象になるということに対して、果たして法務大臣がそこにいらっしゃることが適切かどうかという問題が起こってくると思うんです。  例えば裁判の場合は、裁判官の身内の者が裁判にかかる場合は、みずからやめるか、あるいはそうしない場合は忌避をされます。そういうふうになった際、大臣はどういうお考えでこの問題に対処されようとしておるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  226. 臼井日出男

    臼井国務大臣 かつて私の事務所におった者でございますが、はっきり言わせていただければ、現在は縁もゆかりもない、そう言い切ってもいいと思います。したがいまして、このことで現場がちゅうちょしたりするということは毫もない、このように思っております。
  227. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 いずれにしても、もう知らぬというふうなことで済むものか、あるいは私は、相当に体質的な問題もあると思うし、また、その間の監督の問題についてもかなり責任の大きな問題だと思っておりますので、まだわからない点もあります。これからも、先ほどの証人喚問もされたし、それから国税当局にお聞きしたいこともあるし、また、大蔵省職員がどのように関与しているかもわからないという点もありますので、現時点ではこの程度にとどめておきたいと思います。  それから、次の点なんですけれども、一点、余り時間がないんですが、これは司法制度改革審議会の問題についてなんです。  一月十八日の司法制度改革審議会の第十回の会議のときに、大臣はみずから、自分は総理から担当大臣として指名された者としまして一言ごあいさつを申し上げますというふうにあいさつをされております。これは、私どもの認識では、担当大臣ということを言っておられるんですけれども、この改革審議会の主任大臣は、設置法の八条か何かで総理大臣というふうに決まっておるんですけれども、この担当大臣というのは一体、いつどのような経緯で指名されて、どういう仕事をされるのか、その点についてはっきりさせておきたいと思います。  それでもう一つ、この司法制度改革審議会設置法がここで審議されたときは、やはり法務大臣が来て、この審議をすることに限って自分が担当すると言われたんです。ですから、私どもは、それでもう担当大臣としては終わって、審議会の方に移っているものだから、あとは総理大臣が主任大臣としてつかさどるというふうに思っておるんですけれども、それが、臼井大臣が一月十八日に、担当大臣として指名された者としてということでその審議会であいさつをしておられるという点が非常に唐突のような感じなので、そのあたりについて御説明をお願いして、私の質問を終わります。
  228. 臼井日出男

    臼井国務大臣 法務大臣司法制度改革審議会の担当大臣として指名されましたのは、昨年七月二十一日、司法制度改革審議会の発足に先立ちまして、その設置法の施行期日を定める政令等が閣議で決定された際に、その閣議の席上において内閣総理大臣から、同審議会司法制度に関するものであるため、今後、その審議等につき国会対応が必要となる場合には、その対応法務大臣に依頼する旨発言があったことによるものでございます。  司法制度改革審議会の担当大臣としての法務大臣は、同審議会審議状況等につき国会において質疑がなされる場合に、主任の大臣である内閣総理大臣にかわり答弁に当たるなどの国会対応を行うものと理解をいたしております。
  229. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 もう質問時間は終わりましたけれども、この司法制度改革審議会は内閣総理大臣のもとに、特に法務省の主導あるいは干渉というものを排除して、法曹三者の意見が一致する、そして改革を行っていくということがあるわけですから、法務省が余り、はっきり言えば前面に出るとまたおかしくなってしまうということがあります。そういうことにならないように、なるべく謙抑的というか、自分の立場を小さくして、そして改革を進めていただきたいと思いますので、ひとつその辺はよろしく大臣にはお願いしたいと思っております。  それで私の時間は終わります。
  230. 武部勤

  231. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  先ほど法務大臣所信表明で、治安確保及び法秩序維持について、こう述べております。「国民生活の安全を確保し、公正な経済社会秩序維持することは、我が国の繁栄の基盤としていささかなりともゆるがせにできないものでありますので、これらの犯罪に厳正に対処し、特に、組織的な犯罪に対しては、」中略しますが、「法秩序維持に万全を期してまいります。」こう述べられております。  本来、大臣所信に対する質問でありますから、この一年間の我が国法務行政のあるべき姿についてただしたかったわけでありますが、私からも、最近、報道を通じて大問題になっております大臣の元秘書松岡光が、東京都内の遊技場経営者に経営コンサルタントを紹介、遊技場経営者から経営コンサルタントに支払われた総額五千万円の中から紹介料として七百万円を受け取ったが、所得税の申告をしなかったとの指摘問題についてお聞きをしたいと思います。  この元秘書は松岡光という者ですが、先ほど答弁のとおりですが、十年前とのことですが、大臣の秘書は国会と地元で大体十五人おると答弁されましたが、古さかげんからいくと何番目ぐらいですか。
  232. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私どもの事務所は、女性が一番、二人とも古うございまして、あと、古さからいくと、三番目か四番目ぐらいになるんじゃないでしょうか。今、ちょっとはっきりいたしません。
  233. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、先ほど、たしか男性秘書九人とおっしゃられましたが、男性の秘書の中では一番古いか二番目の古手、こう聞いていいですか。
  234. 臼井日出男

    臼井国務大臣 男性だけをとってみて、三番目ぐらいでしょうか、に古い。
  235. 木島日出夫

    ○木島委員 次の質問です。  秘書に対する政治家、国会議員としての信頼度もいろいろだと思うんですが、率直に、信頼度はどの程度だったでしょうか。
  236. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大変人当たりのいい、相手をそらさない男だったというふうに思っております。
  237. 木島日出夫

    ○木島委員 非常に信頼しておりましたか。特に、政治資金等の問題でも、扱いについても信頼しておりましたか。
  238. 臼井日出男

    臼井国務大臣 どちらかというと、事務所の中心になって行動するということではなかったわけでありまして、まあ、行動については信頼しておりました。
  239. 木島日出夫

    ○木島委員 約十年間、秘書としてお勤めになったわけでありますが、給料の額等は問いません、この元秘書の生活をするに足る必要な給料は、あなたのところはきちっと、毎月毎月給料という形でこの松岡光氏に支払われておりましたか。それとも、給料は自分で稼げ、ボランティアとして動けという間柄だったんでしょうか。
  240. 臼井日出男

    臼井国務大臣 給料については、必ずしも十分ではなかったと思いますが、これは、私の友人が助けてくれておったというふうな男であります。
  241. 木島日出夫

    ○木島委員 よくわかりません。  生活するに足る給料は、きちっと政治家臼井日出男事務所としては彼には払っていた、こう聞いていいですか。
  242. 臼井日出男

    臼井国務大臣 本人が生活するのには十分だったと思います。
  243. 木島日出夫

    ○木島委員 今回の疑問、疑惑は、彼が紹介料として経営コンサルタントから七百万を受け取ったという疑惑なんですが、もちろん、大臣は、全然あずかり知らぬことだというこれまでの答弁ですが。そうすると、こういうのは私的活動になる。この金が、自分のポケットに入って消費されたか、その一部が政治家臼井日出男氏の政治活動の一部に入っていったか、そこが大問題なんですね。  これは、あなたのところでは、こういう秘書が、仮に私的な活動をして七百万を入金して自分のポケットに入れるというようなことは、あなたとこの秘書との関係で許される関係ですか。それとも、断じてそういうことは許されないという政治家と秘書との関係なんですか。あなたのところはどうだったんですか。
  244. 臼井日出男

    臼井国務大臣 それが事実であれば、許されません。
  245. 木島日出夫

    ○木島委員 お聞きしますが、あなたの関係政治団体に、うすい日出男政経懇話会というのはありますか。
  246. 臼井日出男

    臼井国務大臣 もう既に、今では政治団体というのは非常に絞られてきております。政経懇話会という名前は、ちょっと記憶がございません。
  247. 木島日出夫

    ○木島委員 記憶がないというので、書類を示します。  「自治省政治資金課編 政治団体名簿 平成十年版」。うすい日出男政経懇話会、代表者氏名松岡光、会計責任氏名桜木英一郎、主たる事務所の所在地、東京都文京区本郷三の十一の九、設立届け出日、昭和五十六年九月一日。  示しますが、大臣が知らないというのはちょっと信じられないんですが、思い出していただけませんか。
  248. 臼井日出男

    臼井国務大臣 申しわけありませんが、余り記憶にないんですが、五十六年ということは、私が五十五年に当選して翌年でございますから、この時期に、最初にあるいは政治団体としてつくった団体であるかもしれません。
  249. 木島日出夫

    ○木島委員 昭和五十五年初当選で、五十六年最初につくった政治団体と。そうすると、もうこれは十九年ほど前ですよね。松岡光は十年ほど前にあなたの秘書になった。その名簿には代表者として載っている。一体いつから代表者にしたんですか。
  250. 臼井日出男

    臼井国務大臣 一度この会計責任者等に問いただしてみたいと思います。  しかし、実際に私どもの秘書になったのは六十二年であることに間違いございません。
  251. 木島日出夫

    ○木島委員 どういう関係で秘書になったんですか。秘書になったいきさつを教えてください。
  252. 臼井日出男

    臼井国務大臣 友人の紹介であったと思います。
  253. 木島日出夫

    ○木島委員 どういう友人ですか。
  254. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私の選挙活動について応援をしてくれる友人であります。
  255. 木島日出夫

    ○木島委員 うすい日出男政経懇話会の会計責任者に桜木英一郎となっていますが、この人はどういう人ですか。秘書ですか。
  256. 臼井日出男

    臼井国務大臣 これは私の家内の弟でございます。
  257. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、少なくともこの自治省に届け出た名簿によると、あなたの秘書が代表者で奥さんの弟さんが会計責任者というのは、何か常識的には逆転しているような感じなんですが、どうしてこういう名簿になるんですかね。思い出していただけませんか。
  258. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この松岡はかつて、私の事務所に来る前も他の先生方の秘書もやっておったということでありますから、そういった関係で、秘書でないときもいわば政治活動に近いような立場にあったので、あるいはそういう関係があったのかとも思います。
  259. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、どんな政治家の秘書をやっていたか、記憶の限り述べてください。
  260. 臼井日出男

    臼井国務大臣 申しわけありませんが、今はわかりません。
  261. 木島日出夫

    ○木島委員 国会議員ですか。自民党の国会議員の方の秘書をやっていた経験があるんですか。
  262. 臼井日出男

    臼井国務大臣 恐らくそうであろうと思いますが、今は定かじゃありません。
  263. 木島日出夫

    ○木島委員 この秘書がやめたときのいきさつを聞きます。  やめたのが去年の三月末だと。年度末で切りがいいということでしょう、先ほどの答弁を聞きますと。そこで聞くんですが、円満な退職だったんですか。それとも、秘書として不始末があって事実上やめてもらったというのが真相なんですか。
  264. 臼井日出男

    臼井国務大臣 これは円満な退職でございます。
  265. 木島日出夫

    ○木島委員 あなたとこの秘書の間には何のわだかまりもないということですな。  そうしますと、やめたのが去年の三月末。やめた後、直後、私の調べですと、九九年四月十四日発売ですが、九九年五月一日号の週刊現代に衝撃的な石和温泉旅行なるものの記事が出ておる。あなた、このことを知ったのはいつですか。
  266. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私は忘れておりました。というのは、その記事が余りにも衝撃が大きかったので、それを見たときが最初だというふうに思っておりましたが、秘書の方から、実はそれが出る数日前に雑誌社から電話があって、そのことの話が電話等であったそうであります。  その秘書が松岡に確認したところ、五万円会費で参加をしたということであったと。私のところに報告をしたそうでありますが、私もちょっと記憶がはっきりしないんですが、私自身としては、そのとき既にやめた者であるということで、それ以上の追及はいたしませんでした。
  267. 木島日出夫

    ○木島委員 それが信じられないんですよ。あなたが現に秘書として雇っていた、そのさなかでの出来事ですね、去年の二月二十六日。すさまじい記事ですよね。私はここで恥ずかしくて読み上げられないような記事です。あなたの政治生命にとっても重大な問題が生ずるかもしれないような記事ですよ。  それで、先ほど私、聞いたんです。けんか別れじゃないんだ。円満な退職なんです。それなら早速に松岡光を呼びつけて、本当かと聞くのが当たり前じゃないですか。やりましたか。
  268. 臼井日出男

    臼井国務大臣 その記事自体は、云々するまでもなく非常に明らかなものでございました。
  269. 木島日出夫

    ○木島委員 だから、これが真実だったら、自分の現に雇っていた秘書として、その雇っているさなかのこういう出来事なんですね。ほかの自民党代議士の名前も出ています。現に表へ出ました、この週刊誌は。早速呼びつけて、本当かと本人から直接——自分は雇い主ですよ、政治家は。雇われた秘書がやった出来事ですよ。呼びつけてただすのが当たり前じゃないですか。やりましたか、やりませんでしたか。
  270. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私からはいたしませんでした。
  271. 木島日出夫

    ○木島委員 なぜやらなかったんでしょうか。だれにやらせたんでしょうか。
  272. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大変申しわけございませんが、既にやめている男でもございますし、この件については何をか言わんやだというふうな気持ちでございました。
  273. 木島日出夫

    ○木島委員 この記事を見たら、もう一見、明らかに自分の秘書の松岡光だとわかったわけですね。二日前には事前に連絡もあったと。  それでも私は理解できないですね。だって、自分の政治家としての命取りになりかねないような記事でしょう、これは。あなたが直接呼びつけることができない何らかの事情はあったんですか。
  274. 臼井日出男

    臼井国務大臣 特にございません。
  275. 木島日出夫

    ○木島委員 それで、今月の十四日にはさらに衝撃的な記事が新聞各紙に出ましたね。今度は法務大臣現職中の新聞記事ですよね。この記事を見て、これは自分のかつての秘書の松岡光だったとわかりましたか。
  276. 臼井日出男

    臼井国務大臣 その新聞は何新聞ですか。(木島委員「これは毎日」と呼ぶ)毎日ですか。一番最初に新聞が出たのは産経だったと思いましたけれども、産経新聞の記者さんから私のところに電話がございました。そして、こういう状況のようであるということでコメントを求められましたので、事前にそういう記事が出るんだろうということはわかっておりました。
  277. 木島日出夫

    ○木島委員 事前に産経の記者から電話があったときに、やはり元秘書の松岡光のしでかした仕事ということで連絡があった、そう聞いていいですか。
  278. 臼井日出男

    臼井国務大臣 そのとおりであります。
  279. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、さらにこれは衝撃的な事実ですね、これが事実だったとしたら。産経新聞も私持ってきています。早速あなた、松岡光を呼びつけて、一体どうなんだと事実確認するのは、私は普通、常識だと思うんですが、やりましたか。
  280. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私が呼びつけてということはいたしておりません。
  281. 木島日出夫

    ○木島委員 それが本当に私理解できないんですよ。だれにやらせたんですか。秘書にやらせたと言うので、だれですか、その秘書は。どういう秘書ですか。
  282. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私の事務長格の男であります。
  283. 木島日出夫

    ○木島委員 これは、場合によっては本当に法務大臣の命取りになりかねないような衝撃的な事実ですよね、事実だったら。そうは思いませんか。
  284. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大変なことであると思います。
  285. 木島日出夫

    ○木島委員 これは新聞報道だけです。それならなおさらのこと、もう早速にでもあなたは、産経新聞の記者から内報があった段階ですぐにでも松岡光を呼びつけて、一体どうなんだと詰めて聞くのは当たり前じゃないですか。それで当然、新聞に出ればコメントを求められるわけですから、事実が違うんなら、断固と違うというコメントを発表しなきゃ、あなたの政治的責任あるいは法務大臣としての職責にかかわるような出来事でしょう。当然、そんなのをするのは当たり前だと思います。私、政治家ですから、そう思いますよ。自分の生き死ににかかわる問題ですから。なぜやらなかったんですか。やれない事情があったんじゃないですか。
  286. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ちょうどこの記事が出てきたのは連休中でございまして、事務所も開いておりません。そうしたことで、本人の所在というものもとれない。その後、我が方の事務所から連絡をとったわけですが、しばらく連絡がとれなかった、こういう事実もございます。
  287. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、これからお聞きすることと答弁は、当然、先ほどのあなたの秘書が松岡光に会って事実を確認し、その秘書からあなたに報告されたことかと思うんですが、そういうことで、それを前提にしてお聞きします。  この新聞に出た経営コンサルタント会社役員、もう既に同僚委員から証人喚問要求が出ましたが、改めて、何という名前の男だったか、あなたの調査報告としてお聞かせください。
  288. 臼井日出男

    臼井国務大臣 このいわゆる経営コンサルタントの男でありますか。(木島委員「そう」と呼ぶ)名前を鈴木というふうに聞いております。
  289. 木島日出夫

    ○木島委員 先ほど同僚委員から証人喚問要求が出た鈴木照次だと思うのです。この人物が産経新聞や毎日新聞に出た経営コンサルタントであり、かつ、去年の二月の二十六、七日にあなたの元秘書松岡光が山梨県石和に温泉接待ツアーに行った、そのときに一緒に行っている人物かどうか、それは事実確認していますか。
  290. 臼井日出男

    臼井国務大臣 同一人物であると聞いております。
  291. 木島日出夫

    ○木島委員 鈴木照次、どういう人物だと報告を受けていますか。
  292. 臼井日出男

    臼井国務大臣 本人は、直接余りよく知らない、たまたま数度飲んだという関係であるということだけは聞いております。
  293. 木島日出夫

    ○木島委員 そんな程度ですか。右翼団体の幹部だというような、そういう報告は受けていないですか。
  294. 臼井日出男

    臼井国務大臣 聞いておりません。
  295. 木島日出夫

    ○木島委員 ここに私は、社会問題研究会編著「右翼・民族派事典」国書刊行会の抜粋を持ってきております。昭和五十一年八月二十五日発行のその書物によれば、殉国社、結成、昭和四十九年十二月十四日、所在地、東京都渋谷区千駄ケ谷一の十七の十、役員、会長鈴木照次とあります。目的と沿革が書かれています。現在の同一の資料ですが、結成年月日、もちろん同じです。所在地、東京都新宿区富久町二の二十の百一、その役員欄に相談役鈴木照次とあります。こういう団体のこういうところに名前が載っている人物であるというそういう状況は、あなたのところにいまだに報告はないということですか。
  296. 臼井日出男

    臼井国務大臣 右翼ではないかということは新聞記者の伝聞で伺っておりますが、それ以上のことは存じません。
  297. 木島日出夫

    ○木島委員 この人物から元秘書松岡光が七百万円のお金を受領したということをあなたは確認しておりますか。
  298. 臼井日出男

    臼井国務大臣 確認しておりません。
  299. 木島日出夫

    ○木島委員 新聞にはそう出ています。あなたの秘書を通じて松岡に、調査させたと言いますが、こんな大事なことをどうして確認できないんですか。どういう報告を秘書から受けているんですか。
  300. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先般から申しておりますとおり、事実は一つでありますが、私の場合は一方通行でありまして、松岡から聞いた話しか御披露できないのであります。それが果たして一〇〇%正しいかということも、職務権限等ありませんからわかりません。それを前提として申し上げれば、松岡は七百万円は受け取っておらない、こういうふうに申しているのであります。
  301. 木島日出夫

    ○木島委員 そういう報告を現秘書から、松岡から聞いた話として報告を受けていると。そうしたら、こんな新聞報道、産経、毎日、たくさん出ていますよね。それが事実だとすれば、この新聞報道はうそになりますね。いいんですか、それで。大変なことですよ。
  302. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ですから、今あらかじめ申し上げましたとおり、新聞が正しいのか松岡が言っていることが正しいのか、そのほかに真実があるのか、これはまだわからない話でありまして、ですから私は本当は申し上げたくないわけでありますが、委員が熱心に御質問でございますから正直なところを申し上げたわけでありまして、真実がどこにあるかということは、これは税務当局がやっていただくということしかないと思います。
  303. 木島日出夫

    ○木島委員 では、金額の有無なんか問いません。回数も問いません。何らかの金が、この新聞に出ているような、九八年ですか、このようなコンサルタント会社の役員から金をもらった、そういう事実、全面否定なんですか。
  304. 臼井日出男

    臼井国務大臣 全面否定ではありませんが、本人はコンサルタント会社から直接もらったということはない、こういうふうに申しているわけであります。
  305. 木島日出夫

    ○木島委員 では、その金に絡む報告をここで述べてくださいよ。だれから、どういう形で、どういう趣旨の金があなたの元秘書のところに入ったのか。あなたの秘書の現職中ですからね。報告してください、これは重大問題ですから。
  306. 臼井日出男

    臼井国務大臣 申しわけありませんが、これ以上は今この場では申し上げられません。  ということは、さっき申し上げましたとおり、真実は一つでありますが、それがどこまで正しいかということは、私は一方通行で一人の人間しか聞いておりません。したがって、その者が本当のことを言っているのかうそを言っているのか、それもわかりません。それをこうした公の場で申し上げるということはできないのでございます。
  307. 木島日出夫

    ○木島委員 その理屈は通らないですよ。あなたは、いわゆる法務大臣であり、国会議員である政治家であります。当然、検察そのものではありませんから、あらゆる証拠をかき集めて真実を追求するということを私は求めているんじゃないんです。これは、政治家としての立場にかかわる問題、ましてや法務大臣としての職責にかかわる記事ですよ。先ほど言うと、十年来務めたあなたの秘書だったと。そして、私が指摘したように、自治省の名鑑によれば、あなたにかかわる政治団体の代表者も務めている、そういう秘書のやった仕事ですよ。  ですから私は、少なくとも、あなたにたくさんのことを求めていませんよ。円満な退職だと言うんですから。けんか別れならしようがないです。逃げ出していって、法務大臣の顔も見るのは嫌だというような男に対して、追いかけていって調査しろとは言いませんよ。円満な退職なんだと。  だから、その当事者である松岡からの報告で結構ですよ。それのみでいいんですよ。私は、あなたにはそれしか求めないですよ、それ以上のことは、政治家としてのあなたには。それは当然、法務大臣の職責にかかわる問題で、やはり国会議員の資格にかかわる問題ですよ、秘書がやったことは。秘書だ秘書だと言って逃げられない問題でしょう。だから、当然、私は報告すべきだと思うんですよ。それを報告しなきゃいかぬと私は思いますが、どうですか。
  308. 臼井日出男

    臼井国務大臣 申しわけございませんが、現時点ではお話しできません。
  309. 木島日出夫

    ○木島委員 本当に納得できかねます。  大臣個人は三木武夫さんの流れに属する方であって、金と政治の関係は非常にきれいで、三木さん以来の伝統をお持ちの方だと私は信じたいわけですよ。そのあなたのもとで、あなたの秘書が起こした数々の出来事、本当に衝撃的なことだと思うんですよ。それだけに、三木さんは総理として、ロッキード事件、ああいう対処をしたわけですよ。少なくとも、こういうみずからに降りかかった疑惑や嫌疑、これはみずから率先して明らかにするという責務があなたにはあるんじゃないでしょうか。  そして、なおさらのこと、法務大臣、重ねてあなたの所信を言いますよ。法秩序維持ですよ、「国民生活の安全を確保し、公正な経済社会秩序維持することは、我が国の繁栄の基盤としていささかなりともゆるがせにできない」「これらの犯罪に厳正に対処し、特に、組織的な犯罪に対しては、」中略しますが、「法秩序維持に万全を期してまいります。」という問題でしょう。  きょうは、私は、時間のようですから終わりますが、国税当局もお呼びしておりました、刑事局長もお呼びしておりました。この事件の全貌は、あなたの秘書だけではない、ほかの政治家の秘書も一緒になってやっている、悪質な脱税犯罪集団による脱税事件ともいうべき重大犯罪だと思います。  先ほど名前も挙げましたが、経営コンサルタント会社なるものが中心になって、これに会計事務所や国会議員の秘書や国税職員までが絡んで脱税あるいは過少申告、そういう不当な税務措置をやった、そういう事件の一角にあなたの秘書がかかわっているという事件だ。そういう位置づけをして、真相を徹底的に解明しなければ、これは国会としても法務委員会としても責任を全うできないし、ましてやこんなものをあなたの答弁のようにうやむやにしたまま、私は、一日たりとも法務大臣のいすに座るべきではないと思わざるを得ません。  全く真相が出てきておりませんから、私も、改めて元秘書松岡光、経営コンサルタント鈴木照次、この二人を当委員会に証人喚問することを求めたいと思うんです。委員長
  310. 武部勤

    武部委員長 理事会に諮ります。
  311. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  312. 武部勤

  313. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  法務大臣に対しては、予算委員会におきまして一番早くこの問題を指摘いたしました。その際に、私正直に申し上げて、大臣がお答えになっていること一言一言、非常におつらい様子で、実は質問したいことも半分以上落としました。これは、やはり政治家の名誉にもかかわる問題ですし、そして、先ほど三木さんのお名前も出ました。私自身も三木睦子さんとは時折お会いして、三木試案、あの当時まとめられた政治改革、こういうことについてしっかりした議論を、教えていただくことが多いのですけれども、そういう立場で。  今、そういう意味では、国民の間で政治家に対する信頼度というのは一%なんです。私も、例えば子供たちだとかいろいろな人たちに言うと、政治家、これは秘書も含めて、この世界というのは汚れたものだというのが残念ながらこの国の常識になっているという中で、大事な信頼回復をしなければいけない法務大臣に対して、細かくお聞きをしていきたいと思うのです。  一つ、大臣の基本認識を伺いますが、大臣は、女性を金銭で買う、容認されますか。     〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕
  314. 臼井日出男

    臼井国務大臣 すべきではないと思います。
  315. 保坂展人

    ○保坂委員 この買春ツアーを経営コンサルタントの方が主催をして、全額費用を持っていた、ここに国会議員秘書が参加していたとしたら、どういう問題が生じるんでしょうか。  もう一度言いますと、国会議員の秘書、この件に限りませんよ、秘書たる者が、出所不明な人物に全費用を持ってもらって買春ツアーに行ってしまったとすれば、どういう問題が発生しますか。
  316. 臼井日出男

    臼井国務大臣 やはりそれらの者を雇用しておった代議士の監督責任も問われましょうし、それが公になるということによって国民の政治家に対する信頼というものが失われる、こういうふうに思います。
  317. 保坂展人

    ○保坂委員 としましたら、しかし、よく調べてみたらその費用の一部は会費制で支払っていましたという事実が出てきたら、これは免責されるでしょうか。
  318. 臼井日出男

    臼井国務大臣 率直に申し上げまして、全額あご足よりもその旅行自体は自主性がある、そのように思います。
  319. 保坂展人

    ○保坂委員 ここの点が大変問われなければならないと思うのですね。つい最近の大蔵省接待汚職で、過大な料亭などによる飲食の機会提供ですね、いわばこれは俗に言う接待。この中に、あえて言いますけれども、ノーパンしゃぶしゃぶなどの風俗接待、これは極めて信じがたい話、これもやはり贈収賄事件の関係業者への利益供与に対する対価として認定をされる。ましてやソープ嬢つきの温泉旅行、こういうことになれば、この記事によれば一人当たり二、三十万の謝礼を女性に対しては払っている、その主催された方が。確かに、五万円払ったということなんですが、往復のサロンバス代や宴会つき宿泊費、その他もろもろの費用を考えてみると、実費部分は確かにその会費で賄われたかもしれません。実費をやや上回ったかもしれないけれども、その女性の部分は丸ごとプレゼントされた、こういうことになるんじゃないでしょうか。
  320. 臼井日出男

    臼井国務大臣 したがいまして、会費を自分で持ったからといってそれらのものが免責されるということではないと思います。
  321. 保坂展人

    ○保坂委員 この御一行は玉金会、どういうふうに読むのかわかりませんけれども、この宴席にこう書いてあったというのですね、写真で出ています。大変人を食ったお話だと思いますが、大臣、この記事の中で大変驚いたとおっしゃいましたね、これを見て驚愕したと。  その中に、この主催者がこういうふうに言っているのです。接待と言われるがそうではないんです、みんなを喜ばせようと思って私が女性を連れていこうと思いついた、ソープ嬢への謝礼は私が払いましたと、ここで言っているわけです。一切利権絡みではありません、ただ、これから先のことはわかりませんがと言っているのです。このコメントを見て愕然としませんでしたか。
  322. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今初めてお伺いをいたしました。
  323. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣は、では今確認してください、その記事はお読みになったんでしょう。それで衝撃を受けたとおっしゃったじゃないですか。どうですか。
  324. 臼井日出男

    臼井国務大臣 申しわけありませんが、写真ばかり見ておりまして、余り文字の方は詳しく見ておりませんでした。
  325. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣、法務大臣に就任されるときにこのことは気になりませんでしたか。法務大臣というのは、他の閣僚よりさらにこういう問題で清廉であるということを求められるのは御承知のとおりですよね。  ですから、こういう問題を秘書が起こしてやめていった、あるいはやめた後にこれが露見した、どちらでもいいんですが、その中に、利権絡みではありませんといってソープ嬢の値段は持ったんだ、しかし、これから先はわかりませんがと証言しているんですよ。これはやはり、心配になるのが普通じゃないですか。
  326. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大変申しわけございませんが、その点は読み落としておりまして、今初めて伺ったと申し上げました。
  327. 保坂展人

    ○保坂委員 ではもう一つ。これはB氏というふうにイニシャルでこの秘書の方は出ていますが、Eさん、これはコンサルタントの社長のことをEさんと呼んでいますが、コメントを求めたところ、この臼井さんの秘書の方が、Eさんの好意と受け取っています、接待、違いますよ、今回は五万円も払っているんです、何が悪いんですか、これがコメントとして載っているんですね。これは思い出せますか、そこにありますけれども。後で確認してください。本当なんです。
  328. 臼井日出男

    臼井国務大臣 A、B、C、D、こう書いてございまして、これでははっきりわからないんじゃないでしょうか。
  329. 保坂展人

    ○保坂委員 後でよく読んでください。これだけの問題が出て、その記事ぐらいきちっと読んでいただきたいと思います。  私の方から見れば、その宴席を持った側が、利権絡みの話じゃ今ありませんよ、これからはわかりませんよねと言っているのにもかかわらず、行った側が何が悪いんだというふうに言っているようでは、やはり大変不安になるのが普通ではないかと思います。  もうその雑誌は後にいたしまして、具体的な件に入りますけれども、先ほど、七百万円というのは、その元秘書本人は認めていないとおっしゃっていましたよね。ただ、修正申告が七百万円、これは間違いないんですね。この詳細についてはこれから確かめられるのですか。
  330. 臼井日出男

    臼井国務大臣 これが事実であるのかないのか、松岡にはさらに確認をいたしますが、あくまでも一方通行でありまして、私は他の方々に確認をする、そういう権限も持ち合わせておりませんので、したがいまして、この真の姿というのは、今お調べをいただいている税務当局で権限を持ってしっかりお調べをいただくというのが一番正しい答えが出てくるんではないだろうか、このように思っている次第であります。
  331. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣、この方は十年いたわけですが、後半に、やめられる直前に、金遣いが荒くなったりとか派手になった、こういうふうに、ちょっと変だなと感じたことはありませんか。
  332. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大変申しわけありませんが、気がつきませんでした。
  333. 保坂展人

    ○保坂委員 新聞報道によれば、この七百万円はいわば遊技場経営者の方を顧客として経営コンサルタント会社の経営者に紹介をしたいわゆる紹介料として大臣の元秘書に贈られた、こうあるのですが、大臣自身はこの遊技場経営者の方と御面識はございますか。
  334. 臼井日出男

    臼井国務大臣 新聞記者の皆さん方のお話を総合すると、私の知っている方だと思います。
  335. 保坂展人

    ○保坂委員 この方はパーティー券等で協力をいただいた記憶はございますか。
  336. 臼井日出男

    臼井国務大臣 恐らく何枚か、あるいは一枚か二枚か数枚かわかりませんが、そう多くはございませんが、パーティー券も買っていただいていると思います。
  337. 保坂展人

    ○保坂委員 政治献金、これはいかがでしょうか。
  338. 臼井日出男

    臼井国務大臣 これについては確認できませんでした。
  339. 保坂展人

    ○保坂委員 この経営コンサルタントがどのような人物なのか、今木島委員からも出ましたよね。こういう経歴ですね。これは重大だと思うんです。しかも、活動費として、大臣の秘書も紹介をしたお知り合いの会社、そういうところからいわば経営コンサルタント会社に入金があって、その入金がまた、もとこの方がいた団体に還流をしていくという報道も産経新聞などでありましたね。活動費としてこの経営コンサルタント会社の社長がもと自分がいた団体に届けた、こういう報道もあったのですね。これは法務大臣として重大だという認識はございませんか。
  340. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大変申しわけございませんが、新聞報道では名前も実際に出てきておりませんし、それが実際のところ確かなものであるという確証もございません。
  341. 保坂展人

    ○保坂委員 公安調査庁長官、いらっしゃいますか。  この団体はどういう団体ですか。先ほど木島委員が指摘をしたのですが、この鈴木という経営コンサルタントの方がもといたこの右翼団体、どういう活動をしているのですか。
  342. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 委員御指摘の経営コンサルタント会社役員が元右翼団体の構成員であるというような報道がなされているようであります。  当庁としては、そういう報道がなされているという以上のことは把握しておりません。
  343. 保坂展人

    ○保坂委員 あえて調べてもいないということで、大臣はその辺気にならないのですか。あえてどういう団体なのかということは関心がないというふうに考えてよろしいですか。
  344. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大変申しわけございませんが、それらのことについて確認できておりませんので、私としてはそれ以上調べるつもりもございません。
  345. 保坂展人

    ○保坂委員 先ほどから民主党そして共産党から証人喚問という要求が出ております。私どももしたいと思いますが、その前に、大臣自身は事の真偽、これは先ほど言われているように、元秘書さんから話をとれば、その方の言い分が出てくる、あるいは報道は報道で出てくる。この真偽をやはり法務大臣の権威にかけて当委員会で明らかにするということに、これは前向きにこれを受けとめられますか。いかがですか。
  346. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員会にお任せをいたします。
  347. 保坂展人

    ○保坂委員 委員会に任せた上で、その場で真実が明らかになってくれば、これはもしいたずらな誤解があるとすれば誤解として解けていくでしょうし、今一番、私自身もそれはないだろうということで、臼井大臣自身がこの構造に関与していたかどうかというところまではこれは考えていないわけです。しかし、残念ながら、多くの方は、それを考える方もいるわけですね。そういう意味では、政治家としての信頼回復のために積極的にそういう場面に反映をするという姿勢を示した方がよいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  348. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私としては、今申し上げましたとおり、もちろん反省はございますが、そのほかの点でやましいところはございませんので、委員会にお任せをいたしたいと思います。
  349. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは委員長に、先ほど民主党そして共産党から請求がありました、この経営コンサルタント会社社長の鈴木氏と松岡元秘書ですか、この御両名の証人喚問を私ども社民党としても要求をしたいと思います。お取り計らいください。
  350. 杉浦正健

    ○杉浦委員長代理 先ほど武部委員長が申したとおりでありますが、社民党の御意向もお伝えをさせていただきます。
  351. 保坂展人

    ○保坂委員 それで大臣、これは国税当局が税務査察の過程でわかってきた構造ですね。これが言ってみればどういう事件の骨格をなしているのか。つまり、国税で端緒をつかんでいって、やがてはこれは贈収賄事件発展をしたり、あるいは大型脱税事件、さまざま展開があります。  これについて、これはもう大臣に予算委員会で聞いていますから確認しませんけれども、法務大臣だからといってこれにプレッシャーをかけるようなことはないと思いますが、むしろ逆に、東京地検特捜部もこれは徹底的に調べてくれということを、大臣おっしゃったらどうですか。むしろ、そういうことについて、自分としては、あらゆる方向からメスが入って真実が明らかになった方が政治家として名誉回復されるんじゃないかと思うんですが。
  352. 臼井日出男

    臼井国務大臣 申しわけありませんが、私はそういうことを申し上げる立場にないと思います。
  353. 保坂展人

    ○保坂委員 では、聞き方を変えます。そうですね、法務大臣個々具体的な事件についてああせい、こうせい、これは絶対言ってはいけない。  そうではなくて、政治家として法務大臣が今、国会の場でもこう明らかにする。そして、この事件が単なる単純な修正申告、過大な、この七百万というお金が大変な額だということにとどまらない様相を呈してきているわけですね。多数関係者も出てきているとすれば、これはもう大臣の立場と関係なく公平かつ厳正に、行われるべき捜査は行われるべきだ、これは言えると思うんですが、いかがでしょうか。
  354. 臼井日出男

    臼井国務大臣 そのとおりでございます。
  355. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、大変に聞きにくいことをたくさん聞きましたけれども、一つだけ最後に、その秘書の方、松岡秘書を、この給料について友人の方が助けてくれていたとおっしゃいましたが、この友人の方というのはどういう職業の方でしょうか。
  356. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私の身近に、うちの近くにおられる方であります。
  357. 保坂展人

    ○保坂委員 職業はおっしゃっていただけますか。
  358. 臼井日出男

    臼井国務大臣 会社を経営いたしております。
  359. 保坂展人

    ○保坂委員 先ほどの遊技場経営者の方ではないですか。
  360. 臼井日出男

    臼井国務大臣 そうではございません。
  361. 保坂展人

    ○保坂委員 会社を経営する方が支払っていた給料と臼井さんの事務所が支払っていた給料の割合はどうですか。つまり、その松岡さんの給料分のおおよそどの程度を援助してもらっていたんでしょうか。
  362. 臼井日出男

    臼井国務大臣 申しわけありませんが、確認いたしておりません。
  363. 保坂展人

    ○保坂委員 では、この程度にいたします。ぜひ襟を正していただいて、信頼回復に努めていただきたいと思います。  残った時間を草加事件についてお聞きをしていきたいと思います。  この草加事件、大臣も御存じと思います。この事件の中で、最初の捜査段階における自白に偏重し過ぎたんじゃないかということが厳しく問われました。  その中で、私ども資料を読み直してみて、やはりこれは大変注目せざるを得ないというのは、検察側の主張の中で、この付着していた血液がAB型だったにもかかわらず、被疑者とされた少年たちの血液型はいずれも違うんですね。違うんだけれども、被害者の女性の体液と加害者の血液がいわばまざって、あかとあるいは汗と血液がまざるとAB型になるんだ、この主張はそういう言い分に変化をしたわけでございますけれども、こういういわば珍説というか奇説といいますか、これは、今回、最高裁判所の判決理由では異例の口調で厳しくたしなめているんですね。この点について、法務大臣、いかがお考えでしょうか。  こういう強引な主張は今後改めるべきではないか、こういう主張にこだわってしまったがゆえに本来の犯人を取り逃がしたおそれすらあるんじゃないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  364. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大変申しわけありませんが、個別の事件については……
  365. 保坂展人

    ○保坂委員 じゃ、今と同じことを局長さんに。
  366. 古田佑紀

    古田政府参考人 まず前提として御理解いただきたいのは、現行の少年審判手続におきましては、検察官が関与しているわけではございませんので、強引な主張という、その主張をする機会がむしろないわけでございます。  また、最高裁判決、そこに書かれておりますことについては、裁判所の判断で、しかも民事訴訟事件についての判決でございますので、これもまた関与していないので、なかなかお答えするのが難しいわけでございます。  しかしながら、一般的に申し上げまして、血液型の問題その他で何らかの報告書なりそういうものを作成することがもしあるとすれば、それは、一般的にはきちっとした有識者の意見、有識者と申しますか、知識がある方の意見などを聞いて作成しているものでございます。
  367. 保坂展人

    ○保坂委員 これは、少年事件に限らず、最終的に誤判や冤罪を生んでいく一つの入り口のミスといいますか、一たんその主張をし始めると、なかなか——これはもう既に東京高裁、一九八九年ですか、民事裁判においてこの血液がAB型に混成されるんだという主張もなお続けられたと思うんですけれども、やはり最初の段階でしっかりした捜査をする。実際に付着していた血液型がAB型であって、少年に限りませんけれども、被疑者が違う血液型であれば、最初の捜査を疑ってみるということがやはり検察の現場に必要かと思うんですが、その点はこの事件を振り返っていかがでしょうか。
  368. 古田佑紀

    古田政府参考人 また重ねて前提について申し上げますと、民事の裁判には検察官は一切関係しておりませんので、ですから、検察官が民事裁判でそういう主張をしたとか、そういうことはございません。そこは御理解いただきたいと思います。  ある残っているものから特定の血液型の反応が出る、これはもちろん、その血液自体がそういう場合もありますし、あるいは異なった種類の血液ないし体液等が混合してそういう反応を起こすということもあるのは事実でございます。したがいまして、ただいま委員が、AB型であるのにという前提でお尋ねでございます、そこにつきましては、個別の事件としては私何も申し上げることはできませんけれども、一般的には、今申し上げたように、例えばAB型の反応があったから必ずそれはAB型だということにはならないということは御理解いただきたいと思います。  しかし、それはそれといたしまして、委員御指摘のように、自白と客観的な事情、それからいろいろほかに客観的に集められております資料等、これとは十分突き合わせをいたしまして、本当に自白が信用できるものかどうか、そういうことは検討して事件処理をすべきことは当然だと考えております。
  369. 保坂展人

    ○保坂委員 これは大臣にもこの次に伺いたいんですが、草加事件、女の子が亡くなって、遺族の方はその真相究明のために大変多くのエネルギーを割かれたことと思います。けれども逆に、最高裁がここまでの判決を出して、捜査手法あるいは自白の偏重があるんじゃないか、あるいはAB型の血液の解釈をめぐっても相当踏み込んだ意見を述べておられます。  それで、いかがでしょう。これは差し戻しですから東京高裁に戻ったわけですけれども、まず刑事局長にお尋ねしますが、この事件の時効はいつでしょうか。
  370. 古田佑紀

    古田政府参考人 この事件につきまして、昭和六十年七月十九日でございます。この中に殺人が含まれておりまして、これが一番時効としては重いものでございます。これは十五年でございます。したがいまして、昭和六十年七月十九日ということは、十五年経過するというのは、本年の七月十八日の経過ということになろうかと思います。
  371. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣、これは大変重大な問題なので、私ども、犯罪被害者の側に立って、その被害回復、これは絶対に整備していくべきという立場です。しかし、警察の調べの段階、これは最高裁判決は初動ミスがあったというふうに断定しているんですね、民事訴訟においてですよ、少年の処分はもう確定してしまったんですが。しかし、今も刑事局長はAB型の血液がついていたということが即AB型ではないという主張をされたんですが、そういうことにこだわってやっていきますと、あと何カ月でしょうか、五カ月ぐらいでもうこれは時効です。最高裁が極めて自白偏重であり大変矛盾があるということを全部指摘して差し戻した、こういう段階で、今決断をしないと本当に真犯人を時効内に捕まえるということも不可能になる、こう思うんですが、この点についていかがですか。
  372. 臼井日出男

    臼井国務大臣 おっしゃるとおり、今回の結果というのはまことに遺憾な結果だと思います。こういうことがあってはならないわけでありまして、したがいまして、御承知のとおり、少年審判というのは、従来、裁判長がお一人でもって裁かなければならない、そういうことを考えますと、やはり裁定合議制でありますとか、あるいは事実確認のための検察官あるいは弁護人の関与でありますとか、そういった審判機能の充実というものが大変強く求められているように思います。今後とも、さらにこうしたことのないように努力をいたしてまいります。
  373. 保坂展人

    ○保坂委員 ちょっと一問だけお願いします。  要するに、少年審判少年法全体の話を聞いているんじゃなくて、この元少年グループが、最高裁によってこれだけいろいろな点を指摘されて、冤罪であるという可能性が極めて強くなってきたんでしょう。そのときに、その主張にばかりこだわっていると時効内に事件は解決できませんよ、それについてどう受けとめられますかということです。それだけ答えてください、それで終わりますから。
  374. 臼井日出男

    臼井国務大臣 個々の具体的な事件について言及をするということは遠慮させていただきたいと思うわけでございまして、捜査機関が行う捜査、私はこれについてお答えをする立場にないと思います。  一般的なことから申し上げれば、検察官から家庭裁判所送致後、少年院送致決定がなされ、同決定を確定した事件については再捜査を行うということになっておらないのが現状でございます。今後、こうした点についてもさらに改善をすべきだと思います。
  375. 保坂展人

    ○保坂委員 終わります。
  376. 杉浦正健

    ○杉浦委員長代理 以上で委員の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十五分散会