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2000-03-29 第147回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月二十九日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 金子 一義君    理事 衛藤征士郎君 理事 鴨下 一郎君    理事 根本  匠君 理事 渡辺 喜美君    理事 上田 清司君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君       石原 伸晃君    岩永 峯一君       大石 秀政君    大野 功統君       河井 克行君    桜井  新君       桜田 義孝君    塩谷  立君       下村 博文君    砂田 圭佑君       高市 早苗君    西川 公也君       林  幹雄君    宮島 大典君       宮本 一三君    村井  仁君       村上誠一郎君    渡辺 博道君       岩國 哲人君    岡田 克也君       河村たかし君    末松 義規君       仙谷 由人君    中川 正春君       谷口 隆義君    並木 正芳君       若松 謙維君    安倍 基雄君       一川 保夫君    西田  猛君       佐々木憲昭君    矢島 恒夫君       横光 克彦君     …………………………………    大蔵大臣         宮澤 喜一君    国務大臣    (金融再生委員会委員長) 谷垣 禎一君    金融再生政務次官     村井  仁君    大蔵政務次官       大野 功統君    政府参考人    (警察庁刑事局長)    林  則清君    政府参考人    (金融再生委員会事務局長    )            森  昭治君    政府参考人    (金融監督庁検査部長)  五味 廣文君    政府参考人    (金融監督庁監督部長)  乾  文男君    政府参考人    (公安調査庁次長)    三谷  紘君    政府参考人    (大蔵省主計局次長)   寺澤 辰麿君    政府参考人    (大蔵省金融企画局長)  福田  誠君    参考人    (預金保険機構理事長)  松田  昇君    大蔵委員会専門員     田頭 基典君     ————————————— 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     岩永 峯一君   河井 克行君     宮島 大典君 同日  辞任         補欠選任   岩永 峯一君     石原 伸晃君   宮島 大典君     河井 克行君     ————————————— 三月二十九日  消費税率を三%に戻すことに関する請願古堅実吉紹介)(第八三八号)  年金生活者に対する課税最低限度額引き上げに関する請願木島日出夫紹介)(第八三九号)  計理士に公認会計士資格付与に関する請願熊谷弘紹介)(第八六一号)  納税者権利憲章制定に関する請願河村たかし紹介)(第九七三号)  納税者権利憲章制定に関する請願河村たかし紹介)(第九七四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  預金保険法等の一部を改正する法律案内閣提出第三五号)  保険業法及び金融機関等更生手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五七号)     午前九時開議      ————◇—————
  2. 金子一義

    金子委員長 これより会議を開きます。  内閣提出預金保険法等の一部を改正する法律案及び保険業法及び金融機関等更生手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として大蔵省金融企画局長福田誠君、大蔵省主計局次長寺澤辰麿君、金融再生委員会事務局長森昭治君、金融監督庁監督部長乾文男君、金融監督庁検査部長五味廣文君、公安調査庁次長三谷紘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 金子一義

    金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田克也君。
  5. 岡田克也

    岡田委員 民主党の岡田克也です。  質疑を始める前に、私の方は政府委員は呼んでおりませんので、政府委員の答弁は結構でございますので、そのことをまず申し上げておきたいと思います。  さて、きょうは第一回目でありますので、基本的な問題を中心にお伺いしたいと思います。  まず、保険業法それから更生特例法改正法案でありますけれども、私は、ここでの一番大きな問題は、なぜ生命保険会社破綻に対して税金投入する必要があるのかということについて、国民の皆さんに対してきちんと説明ができるかどうかというところではないかというふうに思っております。  金融機関銀行の場合には、金融秩序維持という名目で税金投入されました。このときにもいろいろな議論があったわけであります。それに先立つものとしては、住専に対する税金投入ということがあった。私は、住専に対する税金投入は今でも失敗であったといいますか、投入すべきでなかったというふうに思っておりますが、住専にまず税金投入したところからこの金融の問題が始まったところにいろいろな混乱の原因があったのだろう、そういうふうに思っております。  しかし、金融機関に対しては金融秩序維持という中で税金投入が認められた。では、生保の場合はなぜなんだということについて、改めて大蔵大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変根本的なところから問題を提起なさっておりますので、多少お答えをするのに時間がかかるかもしれませんが、御質問趣旨は、保険契約は、あるいは保険会社の場合には、銀行と違いまして、銀行についても議論のあるところではありますけれども、これはやはり決済機能がありますから、それとして国まで出て保護しなければならない、殊にこのたびの事態はそうであったと思います。  そういう意味では、保険そのものにはそういう機能がございませんから、いわば保険契約というのは一つ商品であって、それは消費者選択をし、その消費者選択が誤れば、業界内で共助規定があるということは場合によって考えられますが、そこで国まで出なければならない理由は、銀行預金と違って保険会社の場合に果たしてあるのか、そういうお尋ねにかかわっていると思います。  もっと言えば、保険会社同士共助規定のようなものを競争相手と一緒に結ぶことはどういうものだろうか。それを拒否する会社がいても別に不思議はないだろうといったような、そういう問題に発展する御論議だと思いますが、それはそもそも論でございまして、もっと我が国も普通のときになりましたら、そういう議論を本当に一度基本的にすることに私は大変意味があると思いますので、御質問趣旨はそういう意味で大変に関心のある御提起でございます。  今の現実我が国状況で申しますならば、生命保険についていえば、世帯ベースで九割の国民加入をしておりまして、生命保険契約者保護機構が創設されており、破綻した保険会社のすべての保険契約は、受け皿となる保険会社あるいは保護機構に承継されるという仕組みが動いております。  これは、遠因と申すまでもなく、我が国のブームからバーストになりましたこういう背景、非常に下がりました金利等々、いわば我が国のこういう異常な事態における保険会社ビヘービアということから——ビヘービアというのはちょっと言葉が適当ではございませんが、そういう状況に置かれた保険契約というものの現状とでも申しておきますか、そういう中から、倒産をした保険会社もございますし、またその倒産処理をしなければならない保険会社もあるということから、当然、先ほど申しました保護機構の財源の相当の部分が保険会社破産処理、要処理額、例えば東邦生命の場合には三千八百億円と言われておりますけれども、そういうことで使われてしまっておりまして、そういう状況の中でつくられた業界によるセーフティーネットの基盤が揺らいでまいりましたから、片方では保険契約者のそういう信頼に対して政府として信頼確保する必要がある。あるいはもう一つは、いわゆる生保危機というものが考えられますのは、そういう状況になって、保険会社が例えば所有する有価証券を売りまして、そして状況に備えるといったようなことになりますれば、それは金融市場全体に不安が広がる危険というものもある。  こういうのが現実事態でございましたから、したがって、まず業界自身がそういうセーフティーネットの強化を図らなければならないということ、これは業界自身が考えていることでございますけれども、その業界のそういう努力に加えて、政府としてもそれを補完するために時限的に政府補助を可能にする必要があるであろう。それがこの法律お願いをしているところでございますけれども、言ってみれば、現状事態に対して、業界自身セーフティーネットが、あるいは、これ以上業界がそれを強化するための努力負担の能力の限界があるということから、政府としても、それに加えまして政府としての保護の意思を明らかにする、こういうことであると思います。  ですから、このことは、岡田委員の言われましたそもそも論からいえば、実は遠く離れた、非常に異常な事態の中でお願いをしておる措置であろうと思います。これは、おのおのの立場で哲学がいろいろ違いますと思いますが、もっともっと正常な事態になりましたときに、そういう、そもそも業界共助規定というようなものが、これは、やるのなら勝手だが自分はそれに参加しないという会社が出ても不思議はないではないかとか、いわんやそういうものに政府がさらにバックアップをする必要はあるのかと。  そもそも論は私は非常に関心がございますし、もっと平静の時代になりましたら、静かな時代になりましたらそういう御議論というものは非常に有意義だと思っておりますけれども、ただいまの事態における政府としてなさなければならないことは、この法案お願いをいたしておるとおりのことでございます。
  7. 岡田克也

    岡田委員 今の大臣がおっしゃる異常なる事態を、どこが負担をする形で乗り切っていくかという問題だろうと思います。基本的には三つしかないわけでありまして、一つは、破綻した会社保険契約者が基本的に責任を負っていくというやり方と、それから業界でそれを支えていくというやり方と、国民全体が税金という形で支えていくという、三つ選択肢だろうと思います。  今大臣業界のことをいろいろおっしゃいましたが、私自身は、業界でこういったものを全部支えていくというのは不可能だし、またそれはすべきことではない、それこそまさしく護送船団方式である、そういうふうに考えております。  基本的には、それぞれの企業自己責任契約を結び、やっている話でありますから、それを、同じ業界に属するからといって、他の企業までがその責任をすべてかぶって支えていくというやり方は私はおかしい、そういうふうに思っております。もちろん、具体的な限度の問題として、今が本当に限度なのか、もう一段業界として負担をすべきなのか、そういう議論はあると思いますが、何でもかんでも業界が支えるべきだという議論は、私は基本的に間違った議論じゃないか、そういうふうに思っております。  そこで、私のきょうの趣旨は、破綻した保険会社保険契約者というものがどこまで責任を負うべきか、そこの議論であります。つまり、そういう形にすべきなのか、あるいは国民全体が税で担うべきなのかという、そこのバランスをどう考えていくかというところについて議論を深めたい、そういうふうに思っているところでございます。  ただ、その本論に入る前に、今大臣がおっしゃいましたが、これは本会議北橋委員質問に対しても大臣はおっしゃっているわけですけれども、保険会社破綻になると、有価証券を売るという状況が生じて、そのことが金融市場に不安を広げるということを一つ理由として挙げられました。本会議においても、「生保危機に端を発する金融危機というものを防ぎたい」ということもおっしゃっております。  ただ、これは本当にそういうことなんだろうか。例えば、生保以外の他の業種に属する企業が、例えば商社破綻をするというような場合だって、商社もかなり株式を保有しております。同じような問題が起こり得るのじゃないか、なぜ生保に関してだけこういう議論が成り立つのかというのは、私にとりましては理解しにくいところでありまして、その点につきまして、もう少し説明していただければありがたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはり、我が国経済界あるいは国民もそうでございますけれども、それが受け取っている保険会社というものの、あるいは保険契約、殊に死亡保険契約というもののコンセプトの問題があると思います。殊に保険契約なんかは、国民からいえば、貯金の一種と余り違わないもののように思っている国民が多いという現実がありますし、また、保険会社そのもの金融的な影響力というものはもともと非常に大きいというふうに考えられております。  今のお尋ねで申せば、例えば、保険会社が存立が危うくなったというときに、例えば商社であればいろいろな商業活動活動そのものの中から起死回生の道を見出すことができますけれども、保険会社というものは、主たる業務保険業務金融業務そのものでございますから、したがって、そういう場合にそれに備えるだけの資産も持っておりますし、その資産処分によってそれに対応しようとする、またそのマグニチュードといいますか大きさも、ほかの非保険会社あるいはビジネスの会社とは違った影響力があるというふうに、現実そうでございましょうが、また一般にも考えられておりますから、生保が所有の有価証券処分に入ったというようなことになりますと、それの与える影響は、その他の場合に比べてやはり現実には格段に大きいのではないかというふうに思います。
  9. 岡田克也

    岡田委員 私は、今の御説明はしょせん程度問題であって、たまたま生保というものが大蔵省の所管にありますからこういう発想になったと思いますけれども、もしそうでなければまた違う道が追求されたのじゃないか、そういうふうに思っております。  本論に戻りまして、保険契約者がどこまで責任を負うべきかということでありますが、一つは、保険会社というのは基本的に相互会社でございます。相互会社における保険契約者というのは、株式会社における株主とまではいきませんが、例えば、保険業法の三十七条に規定しますように、「社員は、社員総会において、各々一個の議決権を有する。」こういうことになっております。つまり、株式会社で言う株主的な性格法律上は持っているわけであります。それを自覚しているかどうかはまた別の話かもしれませんが。そういう保険会社経営共同責任を負う立場にある保険契約者が、当該保険会社破綻したときに保護されるべきだという議論というのは、私は大分預金者とは状況が違うように思うわけですが、そこについてどういうふうにお考えでございましょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 法律的なコンセプトでいいますと、今岡田委員の言われたことは私はそのとおりであると思いますけれども、現実の問題として、相互会社保険契約者が、自分会社事業運営に参加する社員であるという意識を大抵の場合現実に持っているかといえば、現実にはなかなかそうではないように思います。  株式会社における契約者と同じように、自分加入している保険契約上の権利が確実に、かつできるだけコストを払わずに履行されるという意識が、今の場合の相互会社契約者大半ではあるまいか。無論そうでない人もおられるでありましょうが、現実にはそこは株式会社保険契約者と同じに考えている人々が多いのではないかと思います。
  11. 岡田克也

    岡田委員 私も、現実大臣のおっしゃるとおりだろうと思います。しかし、物事、法律というものが現に存在して、そこに規定されているときに、それを認識していなかったからといって保護すべきであるということになりますと、これは自己責任というものをどう考えるかという議論にまでさかのぼらなければいけなくなる。  現実には、例えば契約等でいかにも気の毒なケースでも救われないケースというのはたくさんあるわけです。こちらの場合、法律でちゃんと書いてあって、法律上権限が規定してあっての話でありますから、もしこういうものまで保護すべきだということになりますと、保護すべき人はもっともっとたくさんいるのじゃないかという議論も成り立ち得ると思うのですが、もう一度ちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、岡田委員のおっしゃることは少しも間違っていない、法律的にはそうならざるを得ないだろう。ただ、私は、大半の場合にはそういう意識を御当人方が持っておらないというのが現実だろうということを判断として申し上げただけのことでございます。
  13. 岡田克也

    岡田委員 私は、保険契約者が全く保護されなくていいと言っているのではなくて、その程度の問題を議論したいと思って今までのことを申し上げたわけですが、例えば責任準備金の九〇%までは保護するという考え方が今回のこの税金導入大前提としてあると思いますが、なぜ九〇%まで保護するということをお決めになったのでしょうか。この根拠はどこにあるのでしょうか。
  14. 大野功統

    大野(功)政務次官 どこまで保証すべきかという問題につきましては、いわばパーセンテージ保証するのか、それとも額で保証するのか。預金の場合は額ということになっております。しかし、この問題は、保険の種類がいろいろございますので、例えば死亡保険年金となりますと、年金では毎年毎年同様にずっと継続するわけですから、その態様によって、やはり額でやるということになるとインパクトが変わってくるのじゃないか。そこでパーセンテージにする。では、パーセンテージの場合はどこまでやったらいいのか。かつて一〇〇%ということもございましたし、九〇%ということをどういうふうにやったか。  これはいろいろ議論がございました。保険審議会でいろいろ議論して考えているわけでございますけれども、九〇%といいましても、これは長期の問題になりますから、長い目で見ると、それが例えば三〇%ぐらいになるケースもあるし、二〇%ぐらいの保証になるケースもあるし、では一体自己責任を一〇%あるいは二〇%にする意味はどうなんだろうか、こういう議論は、やはり先生御指摘のとおり、いろいろあろうかと思います。  しかし、先ほども大臣からるる御説明申し上げましたとおり、やはり保険契約というのは、非常に大勢の人が入っておりますし、長期にわたるものですから、長期であるということは、保険契約者の方からいえば、将来にわたって例えば金利動向、景気の動向を余り見通せないものですから、そこによほどの自己責任を追及するということがいいのかどうか、こういう問題もございます。いろいろな問題がございますけれども、各保険会社経営健全性確保をする、あるいは保険会社におけるモラルハザードの発生の抑止等、こういう問題も勘案しながら決定していかなきゃいけない。  外国の例というわけにもいきませんけれども、外国の例で申し上げても、イギリスでは保証水準が九〇%だ、こういうことで、従来十分議論した上こういう結論になったと思っております。
  15. 岡田克也

    岡田委員 大分議論が先に行って少し混乱したと思いますが、基本的には、責任準備金を九〇%ということを前提にして、そして予定利率をはじく、予定利率は一本だ、その予定利率に基づいて、それぞれの保険商品の中身の差がありますから、資産運用前提にするものと、場合によっては掛け捨てのようにそうでないものもありますから、結果としてどこまでもとの契約がてん補されるかは保険契約性格によって異なってくる、こういう流れだろうと私は理解しております。  その大前提としての責任準備金九〇%というのはなぜなんですかということをお聞きしたいわけであります。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今総括政務次官が申し上げたことに尽きますけれども、それなら八〇%であろうかとかいろいろ、どこかで決めなければならぬということの中で、生命保険契約者保護機構の資金を拠出する保険会社自身健全性というものの確保あるいはモラルハザード等々、その間のことをいわば兼ね合いで決定して九〇%というものが常識的な線ではないかということであるのではないか。  いろいろな議論をしますと、保証水準の九〇%というのは、保険審議会でもそう言っていますけれども、今政務次官の言われましたように、イギリスでも大体その辺にしているという、一種のそういう意味での兼ね合いといいますか、経験則で妥当な水準ということで決まってまいったということではないでしょうか。
  17. 岡田克也

    岡田委員 実は、この九〇%ということが、どれだけ税金を最終的に投入しなければいけないかということの決め手になるわけであります。その決め手という割には、イギリスがそうだからというだけでは、私は、なかなか国民は納得しないだろう、やはりそこのところにもっと説得力のある説明が必要なのではないか、そういうふうに思っております。  きょうのところはこの辺にさせていただきますが、ここはもう一度私は聞かせていただきたいと思いますので、税金負担すべき国民がなるほどと納得していただけるだけの説明政府の方できちんとしていただきたい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。  もう一つ税金投入についての議論というのは、保護すべき上限の話であります。  預金保険の場合には、一千万までは全額保護します、それ以上はそれぞれの破綻した金融機関資産状況に応じてその割合でしか保護しません、そういう考え方が、一年延期になったとはいえ、近い将来導入されるわけであります。それじゃ、なぜ生保の場合にはそういう考え方がないのか。  例えば、一人の保険契約者が何億円も保険契約している場合と、それから、みずからの生活のために最小限の保険契約をしている場合で、私は状況は大分違うだろうと思うのですね。そこを全部一緒くたにして、そして責任準備金九〇%の範囲で計算した予定利率で、いわば比例的に、保険契約の額の多い人はそれだけの多くの保護がされるという考え方が、税金投入ということを前提にした場合の考え方として果たしていいのだろうか。これが、業界の中で助け合う、そういう範囲であれば政府がとやかく言う話ではないかもしれませんが、税金まで投入して保護するということに今回なるわけですから、そこの考え方はやはり変えるべきじゃないか。余り多額保険契約者については上限を設けて保護しないことにすべきじゃないか、こういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それも私は一つの論理的なお立場だと思いますけれども、まさに御質問前提にあるように、非常に多様な保険契約があることはもう御存じのとおりで、一時払い養老保険のようなものはかなり貯蓄型の保険だと思いますが、他方で死亡保険のようなものはもう少し大きい。それを、一つ一つについて制限を設けるということは、考え方としてはできないとは申しませんけれども、それらの混合がありましたりいろいろなことで、恐らく現実的ではない。  それで、それならば現実的に、仮に預金のように千万円と切りました場合には、貯蓄型の保険が一般的には全額保護されることになるであろうと思いますし、死亡保険平均加入金額死亡保険の場合は四千万円以上と言われておりますから、そういうものは保護ができないことになる。雑多な、いろいろな保険とその混合があります中で、いわば一本の基準で貫くことが現実の問題として合理的でもないし、また技術的にも容易でないということから、ここはやはり、預金保険なんかと同様に千万円なら千万円として区切ることに問題があるということだと思います。
  19. 岡田克也

    岡田委員 確かに保険契約はいろいろあります。いろいろありますから、当然、保険会社破綻した場合にどれだけてん補されるかということはその保険契約の中身によって変わってくるというのは、現実にそうなっているわけですね。例えば、非常に掛け捨ての性格の強いものは破綻した場合でも一〇〇%保護される、しかし貯蓄性格の強いものについてはそうはいかないという一般的な考え方で、それぞれ具体的に商品ごとに計算されることになっていると思うのです。そういう具体的に商品ごとに計算をしている以上、私は、上限を設けるということも一工夫すれば可能なんじゃないか、こういうふうに思います。  今大臣は技術的な理由もあるというふうにおっしゃいましたが、そういったことは十分議論した上で全額保護という結論が出ている、技術的な問題その他が、実際に検討したけれども乗り切ることができないということでそうなっているというふうに理解してよろしいでしょうか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が主として聞いておりますのは、契約の内容に従って一つ上限を設けるということが現実に非常に困難であるということ、なおまた、上限金額にもよりますけれども、それによっては破綻処理に伴うコストが非常に大きくなるということも現実にはあるかもしれませんけれども、主な理由はそういうものとして説明を受けております。
  21. 岡田克也

    岡田委員 上限というものをどこまで考えるかという議論もあると思います。先ほど言いましたように、一人で何億というような保険契約をしているような場合にまで本当に全部保護するのかというところについては私はかなり議論は残るのじゃないか、そういうふうに思っております。  それで、次に参りますが、谷垣大臣にお聞きしたいと思います。  生命保険というのが非常に長期契約であるということで、その間、今の時代何が起こるかわからない、今の超低金利時代というのもある意味では想定ができなかった状況になっているのかもしれませんが、そういう非常にいろいろなリスク、変動の可能性がある今の時代の中で、何十年先まで予定利率ということで保証するような生保商品契約というものがそもそも問題があるのじゃないか、こういう議論もあると思うのですね。それは、保険会社として契約者に対して約束をするわけですが、本来、そんな約束はできないはずじゃないか、こういう議論があると思います。  私は、例えば、貯蓄性の非常に高い商品などは、将来の金利変動というのが予測できない以上、予定利率保証するというようなことは制限すべきではないか、こういうふうに思いますが、大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  22. 村井仁

    村井政務次官 生命保険商品認可の問題でございまして、金融監督庁の所掌に属することでございますので、まず私からちょっとお答えをさせていただきたいと存じます。  予定利率保証しまして、それで、死亡時あるいは生存の一定の条件が満たされましたときに一定額の保障を行う、こういうものに対するニーズというものは、これはまたこれで結構あるものでございまして、そういう商品につきまして、法令に基づきまして一定の審査基準がございますけれども、これを満たしている限り、私ども、現在の体系では、その認可申請を拒否することはちょっとできないという考え方でございます。  申し上げるまでもございませんけれども、一方で額の保証のない変額保険という体系があるわけでございまして、一方で定額保険というのがあるわけで、その定額の保険の中に養老、終身というようなものから定期保険まであるわけでございます。そういう一定額を保証するということにもある程度のニーズがある以上、私ども、そうしますと、一定額を保証する保険商品ということになりますと、商品設計上予定利率というものを規定せざるを得ないという事情にあるということは御理解をいただきたいと思います。  いずれにいたしましても、長期にわたって運用をしなければならないそういう商品を売ります場合に、各保険会社は、当然のことでございますけれども、経営健全性を損なうことのないよう長期的な視点に立って予定利率を立て、また運用も図っていかなきゃならない、資産構成の面でもそういう配慮をしなきゃならない、そういう点についても目配りはしているつもりでございます。
  23. 岡田克也

    岡田委員 今のお話なんですが、私も五年、十年程度の定額保険であればあるいは可能かもしれないと思いますが、それが二十年、三十年ということになったときに、それでも必ずこれだけの予定利率保証しますよというような契約というのは、私はどんな会社でも本当には保証できないのだろうと思うのですね。そういうものを果たして認めるべきかどうか。  会社がみずからのリスク負担でやっている場合には今の議論も成り立つのかもしれませんけれども、今回、税金を入れて破綻した保険会社のそういったものについて穴埋めをする、そういう状況になるときに、私は、政府としてはもっと違う立場でこの問題について挑むべきじゃないか、こういうことを申し上げているわけですが、いかがでしょう。
  24. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 先ほど総括政務次官からお答えした以上のことについて、私、今御答弁する準備はございませんけれども、一つは、政務次官が御答弁しましたように、このような形態の保険に対するニーズというものは非常に強いということがやはりあるのだろうと思います。それで、一定額を保証すると商品設計上一定の利率というものを考えざるを得ない、ですからこういうものが出てきているのだろうと思うんです。  岡田委員の御質問に今正面から答えられるかどうかわかりませんけれども、平成八年度の保険業法の改正におきまして、どれだけ責任準備金を積み立てておくかという観点からは、標準責任準備金制度というものが導入されておりまして、利率によってやはりそこのところを変えていくということで、今委員のおっしゃったこと全部のお答えになるかどうかわかりませんが、対処しているということではないかと思っております。
  25. 岡田克也

    岡田委員 今の保険会社の苦しい経営状況というのは、もちろん、現在の低金利もあると思いますし、それからバブルのときの、これはすべての保険会社というべきかどうかは議論があるところだと思いますけれども、バブルに踊った姿、その清算を今求められているというところもあると思います。しかし、同時に、予定利率を五・五%に設定して、そして多くの保険契約を結んでしまったというこの遺産も、これから十年、二十年、三十年と引きずっていかなければいけない大きな問題だろうというふうに思います。  これは保険会社が勝手にそうしたんだ、こういうことかもしれませんが、私は当時の護送船団行政のもとでの大蔵省責任というものもあるのじゃないか。つまり、予定利率を五・五に引き上げるときに、もちろんそのときはバブルでみんなそのぐらいの資産運用ができるというふうに思っていたのかもしれませんが、しかし、一般の契約ではなくて生保契約ですから、二十年、三十年先まで見通したときに、やはりこの五・五というのは、今から考えればかなり誤った判断だったと思います。それは、個々の会社だけではなくて、行政、政府責任も私はあると思いますが、この点について御見解を聞かせていただきたいと思います。
  26. 村井仁

    村井政務次官 ただいま御指摘の当時の大蔵省の判断ということでございますと、執行官庁としての金融監督庁が引き継いでおります。そういう立場からお答えをさせていただく次第でございます。  先ほど来申し上げましたように、生命保険予定利率につきましては、長期的な資産運用水準などを見込みまして予定利率を設定するということが基本でございまして、これまで各社とも当時の実績を踏まえまして、その時点においては適正な予定利率を設定してきた。例えば、平成元年当時でございますと、現実の運用利回りというのは六・九九実現していた、あるいは平成二年でも六・四二実現していたというような実績はあるわけでございまして、それがずっと下がってくるわけでございますけれども。  そういう意味では、いずれにいたしましても、委員御指摘のように、経済、金融環境の変化というものを完全に予測することはできないながらも、当時としてはできるだけのことをしてきた。そして現在も、私どもとしましても、経営健全性確保の観点から、適正な予定利率の設定を行うという方向で見ておりますし、監督もしているわけでございます。  先ほども谷垣大臣からお答えしたことでございますけれども、平成八年の保険業法改正によりまして、一定の保険契約につきまして、生命保険会社が積み立てるべき責任準備金の算定方法につきまして、積み立て方式、それから標準予定利率、標準予定死亡率を告示によって定めて、いわゆる標準責任準備金制度というものを導入し、そのような意味での基準というものを明示しているということを御理解いただきたいと存じます。
  27. 岡田克也

    岡田委員 そこで、この五・五%のバブル時の保険、これが将来の保険会社経営にとって継続的にずっと負担になっていくだろう、そういうふうに私は思うわけであります。  もちろんこれは保険会社保険契約者の間の契約の問題でありますから、そういった五・五%の予定利率契約をした保険会社に問題があることは大前提の上で、しかし、このままこれを放置しておいたときに何が起こるかというと、恐らく保険業界に新規参入をする海外の会社も含めて、あるいは国内の、そういう負の遺産を持たない会社との競争が成り立たないような事態というものも十分起こり得るのではないか。それこそまさしく我が国生命保険業界というものが、私は別に業界保護するわけではありませんが、既存の企業が次々にドロップアウトするような事態まで招きかねないのではないか、こういうふうに思っております。  先ほど言いましたように、もちろん契約前提でありますから、それを法律で強制的に、例えば五・五のものを五に下げるとか、そういうことはできないだろう、こういうふうに私は思います。今回提案されている法律の中では、更生特例法までいけばその予定利率が変えられるということであります。  しかし、会社更生というのは、法律用語で言えば倒産であります。倒産して初めて予定利率が一律に、まあ一律でなくてもいいのですが、下げられる、こうお考えになっているわけですけれども、私は、そこまでいかないまでも、保険契約者の一定の賛成があれば、既に契約をした五・五%なら五・五%というものを下げることが可能な、そういう法制というものは準備しておくべきではないか。それは強制するものではなくて、保険会社とその契約者との間の、つまり、相互会社であれば社員である契約者との間の契約の変更ということをやりやすくするような、そういった法制というのは考えられないのだろうか、こういうふうに思うわけですが、そういった御検討はされたのでしょうか。
  28. 大野功統

    大野(功)政務次官 まず、民間でそういう契約ができるようにというお話でございました。これはまことにそのとおりだと思います。これは民間の契約の問題でございます。  国としてそこにどういうふうに立ち入っていくのかという問題点でございますけれども、先生御存じのとおり、平成七年の改正前の保険業法におきましては、大蔵大臣の行政命令による保険金の削減あるいは定款の定めによる保険金の削減などの規定がございました。しかし、これはまさに財産権の侵害ではないか、こういう議論を生むわけでございまして、この問題は後の改正によって削除されているわけでございます。  したがいまして、国と民間との関係でいいますと、そこのところが非常に問題になる。しかしながら、先生のおっしゃるような問題点も十分わかるわけでございますが、問題はやはり今の症状をきちっとやっていくことによってその問題を解決していかざるを得ない。後はもう民間の方でどういうふうな商品をつくり出していただけるか、こういうことではなかろうか、このように考えております。
  29. 岡田克也

    岡田委員 私、この話をしましたのは、結局、日本の銀行がバブルの後不良債権の処理をどんどん先送りにして、その間大手の銀行も次々に倒れていったという、これと非常に似た感じを受けるからであります。  五・五%の保険というのは、ある意味では不良債権というか不良債務というか、これが保険会社経営という意味ではがん細胞のようにずっと残っているわけで、そこについての何らかの対処というものをしない限り、多少現在の超低金利時代が終えんを迎えたとしても、あるいは株価が上がったとしても、結局はずっと残っていく問題ではないか。それが五年、十年で処理できるならいいのですが、二十年、三十年あるいはそれ以上という問題ですから、私は非常に根が深いというふうに思うわけであります。  私は、行政命令とかそういう形は無理だと思います、確かに。しかし、例えば社員総会の招集とか議決の特例を法律で設けるとか、そういう形で、もちろん基本は民間の問題ですけれども、その議決などがしやすい形で政府の方でそれを支えることができないのだろうか、そういう問題意識で申し上げているところでございます。もし何かコメントがありましたらおっしゃっていただきたいと思います。
  30. 大野功統

    大野(功)政務次官 先生の問題意識、非常に私どもも明確にわかるわけでございます。  この問題を解決する一つの手段といたしましては、やはり生命保険契約者お一人お一人と会社契約を更改していく、こういうような話があろうかと思います。その社員あるいは契約者というのは、保険会社の場合大変多うございます。例えば、一番大きな生命保険会社でございますと千数百万人にわたるというようなことがございまして、到底現実的にそういう解決策がとれないのかな。しからば、何か便宜的に、総代会とかなんとかそういうところで何分の何の議決、こういうやり方があるのかな。しかし、それはやはりお一人お一人の期待権なり財産権を侵害していくのかな。非常に難しい問題で慎重に検討していかなければいけない問題ではないか。問題意識はよくわかるのでありますが、現実的に非常に難しい、このように思います。
  31. 岡田克也

    岡田委員 例えば、バブルのときに五・五の予定利率契約した保険契約者も、放置しておけば、会社更生法の適用があって、結局予定利率が五・五が二ぐらいに下がってしまう、それよりは早目に手を打って、五・五を五ぐらいにしたとしても、それで本当に会社が立ち直るのならそちらの方が自分も得だと、冷静に考えればそういう判断もあり得るのではないかと私は思いますので、ここは一工夫できるのではないかというふうに思っております。この議論はまたしたいと思いますけれども、政府の方でも御検討をいただければありがたいと思います。  いずれにいたしましても、きょうは預金保険法の方もやろうと思ったのですが、時間が参りましたのでこの辺にさせていただきますが、最後に、これだけの生保経営危機の一つの原因に、やはり金融機関の救済のために安易に生保にツケを負わせた、こういうことはあるのだろうと思います。九五年の兵庫銀行のときでありますとか、あるいは九七年、九八年の日債銀、そして三洋証券、それぞれ生保にかなり無理やり負担を押しつけてそういう既存の金融機関の救済に当たった、それが結果的に金融機関破綻することで紙くずになってしまった、こういう経緯があると思いますが、そういったことに対しての政府としての反省の弁がもしありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金額的にということになりますと、必ずしも因果関係があると思いませんけれども、まあしかし、ああいう行政そのものが適当でなかったということは、これは以前にも何度も申し上げたことで、その点反省いたしますし、また相手にも御迷惑をかけたという思いもございます。  そういう過去もございまして、やはりそういう意味で幾らか負い目も実は感じざるを得ない、正直の気持ちで申しますと。ああいう行政そのものの誤りは、反省をいたしております。
  33. 岡田克也

    岡田委員 終わります。
  34. 金子一義

    金子委員長 次に、並木正芳君。
  35. 並木正芳

    ○並木委員 おはようございます。公明党・改革クラブの並木正芳でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。  大手銀行再生のめどが立ちつつある中で、さらなる金融システムの安定化のために、信金、信組及び生保経営改善と再編強化を講じようとする日本版PアンドA、あるいはロスシェアリングや、信金、信組への優先出資による資本注入策などを盛り込んだ今回の二法案は、景気回復にも大いに資するものと期待しております。  最初に保険業法関連の方から質問させていただきますけれども、先ほども質問があったわけですけれども、平成三年来の低金利による逆ざや、あるいは日産生命、東邦生命破綻による生保業界の置かれた厳しい現況を考えますと、今回の保険業法及び更生手続特例法の改正といういわば保険システム安定化のための法案は、まことに時宜を得たものと評価しております。  しかしながら、ビッグバンの要件がフリー、フェア、グローバルということであり、保険業界が厳しい状況にさらされているとはいえ、あくまで契約者保護を最優先させて、破綻保険金融機関の救済策であってはならないことは、これはもって瞑すべきだと思います。保険会社は、今回の法案中にも盛り込んでいるわけでありますけれども、みずからチェックをきちっとして、情報公開と説明責任を十分に行い、契約者との信頼関係を保持していく必要があると考えます。  金融監督庁が協栄生命、第百生命、大正生命保険等に対して資本増強の早期是正措置を発動したと聞くわけですけれども、逆ざや問題や、バブル期に販売した高い予定利率商品満期にまだ当分かかるだろう、そういう業績低迷の中で、生保会社の現在の経営状況、いわゆるソルベンシーマージン比率、こうしたものをどのように把握されているでしょうか。
  36. 村井仁

    村井政務次官 並木委員の御質問にお答えさせていただきます。  生命保険会社につきましては、御案内の、幸い株価も少し上昇しつつあるというようなことで、有価証券の含み益の改善というようなものもございまして、明るい面もあるわけでございますが、一方で、保有契約高が減少しておりますとか、あるいは運用利回りが低下しておるというようなことで、大変厳しい経営環境にある、これが私どもの基本的な認識でございます。  このような中で、各社とも、経営効率化の推進に努力する一方、自己資本の充実を図り、また資産構成につきましてもいろいろ組みかえを図る、いわゆる比較的伝統的な株式から今後上昇期待のできる株式に切りかえるなどと、こういったような努力をいろいろ払っている、こんなふうに理解しているところでございます。  問題の生保各社のソルベンシーマージン比率でございますが、これにつきましては、平成十一年三月期決算発表時点での各社の公表値がございますけれども、これは私どもが早期是正措置の発動基準としております二〇〇%をいずれも超えていた、このような理解をいたしております。
  37. 並木正芳

    ○並木委員 二〇〇%を超えているというようなことですけれども、かつて日産生命が破綻した、九五年になるわけですけれども、その検査で大蔵省は日産生命の債務超過を知っていたけれども、資産内容に問題あり、そういう指摘だけで特段の措置はとらず、その後、周知のように破綻ということになった、そういうことが問題化されたこともありました。  破綻後に債務超過が膨らんだり粉飾決算が明らかになる、こういう例がこれまでにはしばしば見られたわけでありますけれども、こうした反省を踏まえて、アクチュアリーの申告制度、こういうものも設けたわけでございますけれども、今お答えがありましたソルベンシーマージン比率の把握など現時点での生保業界の業況把握と早期是正に向けた検査体制あるいはリスクモニタリング、これは万全と考えてよろしいのでしょうか。  この三月期には決算が乗り切れないんじゃないか、こういう報道等が出ているわけです。今の二〇〇%は十一年の三月ですけれども、みんな超えていて心配ないというふうに受け取っていいのかもしれませんけれども、この法案が発動するかしないかというのはまだ先になるわけです。こういう段階で、破綻のおそれはもうない、あるいはもっと早期に処理を決断していく、こういうおつもりでいられるのか、その辺についてはいかがですか。
  38. 村井仁

    村井政務次官 私ども金融監督庁といたしましては、従来から保険会社の財務内容等の的確な実態把握に努めているところでございまして、保険会社に対しまして立入検査を順次実施しておりまして、既に第五弾目まで入っておるわけでございます。  一方、検査と検査の間におきましても、報告徴求をいたしましたり、ヒアリングなどを適切に実施しまして、委員ただいま御指摘の日産生命のような事態にならないように一生懸命努力している、こういうところでございます。  平成十一年四月以後は、保険会社につきましても御案内のとおり早期是正措置が導入されておりまして、こうした実態把握の結果、もし必要があれば早期是正措置を含めまして監督上の措置を打ちたいということで、これを適時に発動する、こういうことにいたしておるわけでございます。  また、保険会社の情報開示の問題でございますけれども、これにつきましては、保険業法の第百十一条に基づきまして、銀行法に基づく開示と同様にリスク管理債権額等の開示が義務づけられているところでございますけれども、さらに不良債権額につきまして、債務者区分を基礎にした金融再生法に基づく開示と同じ形の開示でございますね、これを法令上義務づける、これによりまして保険会社の情報開示をさらに充実させたい、そういう方向で現在検討を進めているところでございます。
  39. 並木正芳

    ○並木委員 決意のほど、その体制整備というか、よくわかりましたけれども、この二十三日ですか、蔵相の諮問機関の金融審議会の第二部会で、生保の構成員契約規制の緩和、すなわち保険代理店販売に関する規制緩和の検討、あるいは二〇〇一年四月に解禁する銀行の窓口での保険商品の販売について販売商品を拡大する検討に着手した、こういうことでありますけれども、現在、業界の置かれている状況は、保有契約高が頭打ち、しかも逆ざやマイナスは当面解消しない、こういう厳しい現状にもかかわらず、さらにこうした緩和に踏み切る、その辺の意図はどこにあるのでしょうか。
  40. 大野功統

    大野(功)政務次官 大きな流れは、やはり自由経済の中で自由競争でやっていこう、こういう流れがございます。それは何のためにやるかといったら、やはり消費者の利便のため、保険でいいますと保険契約者の利便のためでございます。  しかしながら、そういう自由競争でやった場合に、やはり何らかいろいろな問題が出てくるケースもあろう、そうすると、そこはやはり保険契約者保護ということも十分監視していかなきゃいけない、こういう中での議論でございます。  まず第一の、構成員契約規制でございますが、平成九年十二月に行政改革委員会から、その「撤廃の可否を含めた検討を行っていくべきである。」と指摘されております。これを受けまして、規制緩和推進三カ年計画におきましても、金融審議会において当該規制のあり方について検討すること、こういうふうになっているわけでございます。銀行におきます問題につきましては、平成九年六月でございますが、保険審議会報告におきまして、二〇〇一年をめどに、住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険について銀行等による保険販売を認めることが適当、こういうふうにされておるわけでございまして、今回の保険業法改正において必要な法令上の手当てを行う、このようなことでございます。  銀行等の取り扱える保険商品範囲につきましては今後の問題でございますが、具体的に内閣府令で定めることといたしております。今後、保険審議会の報告を踏まえつつ検討してまいる、こういう状態でございます。  いずれにいたしましても、自由の中で契約者保護していく、こういう観点から物事を処してまいりたい、このように考えております。
  41. 並木正芳

    ○並木委員 現状では、既にもう破綻した日産生命、後のあおば生命ですけれども、これはフランスのアルテミス、東邦生命がアメリカのGEキャピタル、そして第百生命がカナダのマニュライフ、日本団体生命保険がフランスのアクサ、平和生命保険がアメリカのエトナ・インターナショナル、こういう外資の傘下に入っていっているわけです。  今、日本の銀行がやっと再生のめどがついてきたということなんですけれども、その金融グループなどがまだまだ立ち直りがおくれている、こういう中で早急に外資の参入を仰ぐのがよいのか。まあ市場に任せるということかもしれませんけれども、私の考え方としては、余り早急な再編を外資に、いわゆるハゲタカ産業といいますか、そういうものに任せていくというのに懸念があるわけなんですけれども、その辺の、今後の生保業界再編の方針と見通しについて御見解を伺いたいと思います。
  42. 村井仁

    村井政務次官 保険会社に限らず、こういう金融機関の提携、再編等につきましては、結局のところ、各社の経営戦略、経営判断の問題だというふうにお答えせざるを得ないわけでございますけれども、一方で、利用者の利便向上、それから経営基盤の安定、これをどうしても私どもとしましても期待しなきゃならない。そういう意味では、いろいろな提携の形態というのはあり得る。その中で、外国企業との提携関係というものもあながち否定するべきではない。それなりにグローバルな経験の蓄積等々も日本で享受できるというようなメリットもありましょうし、そのあたりはもう少しいろいろ議論をしていかなきゃならない問題ではないかと私は思っております。  ただ、いずれにいたしましても、この提携関係等々をこれから進めてまいります上で、今回御審議いただいております法律が施行されましたら、保険相互会社株式会社化が容易になるとか、あるいは個々の保険会社経営判断に基づく自己資本の増強、再編等が進む環境の整備ができるのではないか、そんなような期待もいたしているところでございます。
  43. 並木正芳

    ○並木委員 ところで、お手元に今資料をお配りしたところなんですけれども、埼玉県本庄市での保険金殺人事件ということが話題になっております。容疑者は、多数の生命保険会社と小口の契約を結ぶという手口で保険会社の審査を巧みにすり抜けていた、こういう報道がされています。  業界は、事件のたびに自衛策を講じ、一九九四年には御契約内容登録制度というものをつくって、短期間に多額の保険契約が結ばれていないかをチェックしている。あの有名な和歌山カレー事件の翌年、去年になるわけですけれども、保険契約の登録期間を二年から五年に延長して、登録する保険金の額も数千万円に下げた。今回の本庄事件の契約というのは、制度改定前なので、登録されない五千万円以下の保険契約であったということで盲点をつかれた、こういうふうにされているわけです。  こうしたたび重なる事件、保険金詐欺というのは後を絶たないとも言えるわけですけれども、こういう中でなされている制度改定が、あくまで今後はこうしましょう、今後は注意しましょう、そういう程度のもので、今回のケースでもそうですけれども、和歌山事件等を教訓にして、改定前二年間、これは直近にされた契約が多いわけですけれども、こういうものを調べるだけでも、結果的とはいえこうした契約の不的確さが明らかになったと思うわけです。その辺が業界においてなされ得なかった、それについてはどのような御見解をお持ちでしょう。
  44. 乾文男

    ○乾政府参考人 ただいまお尋ねがございました契約内容登録制度、御指摘のように、平成六年から死亡保険金について対処されたわけでございますが、もともと昭和五十五年に不正な入院給付金事件というのがありまして、そうしたことを排除する観点から発足したものでございます。それで、平成十年の和歌山保険詐欺事件の発生を踏まえまして、私どもからも協会に検討を要請しまして、御指摘ありましたように、登録される保険金額の基準を引き下げる、あるいは登録している期間の延長を図る等の制度の拡充を図ったところでございます。  今回の事案はまだ捜査中でございまして、私どもその詳細を承知していないわけでございますけれども、もしそうした制度の裏をかいくぐるようなことで起きたといたしましたならば大変残念でございまして、私どもといたしましても、保険契約者保護を図ります観点から、生命保険会社による保険引き受けの際のチェック機能の強化を促すなど一層の適切な監督に努めますとともに、生命保険協会に対しまして適切な対応を要請してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  45. 並木正芳

    ○並木委員 適切な対応をされるということなので、それを待つというか、見守りたいという気持ちもあるのですけれども、こうしていろいろ報道を聞きますと、被害者と言えるのでしょうか、薬をいろいろ飲まされていた方ですけれども、その方はほとんど収入がない、八木という容疑者のところで食事も食べさせてもらわなければどうしようもなかった、こういうようなことが言われているわけです。そういう状態の人に、ある報道によれば、元外交員のコメントとして、収入とか職業は幾らでも書きかえられます、そんな話もあるわけです。こういうことが日常的に行われていると思いたくないのですけれども、この辺、もっと厳しく指導すべきと考えますけれども、いかがでしょう。
  46. 乾文男

    ○乾政府参考人 御指摘の本庄での事件、三月二十四日に容疑者が公正証書の原本不実記載同行使の疑いで逮捕されたところでございまして、現在、捜査当局におきまして捜査が行われているというふうに承知をしております。私ども、捜査がそのように始まったところでございまして、現在、その事実関係を承知しておらないわけでございまして、今後、捜査当局によります捜査、取り調べの状況を見守りながら、もし本件の保険契約及び保険金支払いに関して、何か問題があったかなかったかなどにつきまして、今後保険会社からヒアリングを行うこととしているところでございまして、引き続きそうした観点から事実関係の調査に努めてまいりたいというふうに考えております。
  47. 並木正芳

    ○並木委員 この辺で保険の方は終わりにしたいと思いますけれども、いずれにしても、こういう一覧表を見ても、単に制度の盲点をつかれたというよりも、これだけでも、九八年五月と七月に、A社はこの人に、塗装工の男性ですけれども、二億五千万も、一口は二億ということがありますし、あるいは別の会社は、やはり二社、二つの契約で、あるいは八木の国友商事も入れると三つ契約ですけれども、これは一億五千万あるいは一億八千万、こういうふうな契約に入ってしまっている。ですから、現場で実際に契約者を見ても資力が疑問視される、こういう人物に現実にこういう保険に入らせているわけです。つまり、売らんかなの姿勢ばかりがなお続いているのじゃないか。こういう点では和歌山の事件等々の教訓が生かされていない、こういうことで国民業界への信頼というのを失墜させる。  そういう中で、もちろん保険契約者契約維持するということですけれども、公金を投入する可能性もあるという枠組みをつくるわけですから、いわゆる透明性のある生保運営というか情報開示、こういうものが一層求められておりますけれども、最後にその辺の指導方針について伺いたいと思います。
  48. 乾文男

    ○乾政府参考人 平成十年に和歌山の保険金詐欺事件が起きましたことから、監督庁といたしまして、どのような問題点があったのかを検討いたしまして、その結果、主として次の三点をポイントといたします保険契約締結あるいは募集に当たる適正化措置を講じたところでございます。  その三点と申しますのは、一つは、被保険者の同意確認の強化。和歌山のときには本人が知らない間に掛けられていたということがあったわけでございますけれども、同意確認の強化。それから保険契約における医師の関与の適正化。それから多重契約のチェック制度の強化ということを講じまして、平成十一年四月から施行したところでございます。  ただ今回、こうした事件がさらに起きたということで、事実関係を調べて適正に対処したいと思っておりますけれども、監督庁といたしましては、いずれにいたしましても、今後とも、保険契約者保護を図ります観点から、生命保険会社による保険契約引き受けの際のチェック機能の一層の強化を促すなど、適切な監督に努めてまいりたいというふうに考えております。
  49. 並木正芳

    ○並木委員 それでは次に、預金保険法関連についてお聞きしたいと思いますけれども、本法案中にありますペイオフ解禁の一年延長ということですけれども、これについては、日本のいわゆる金融ビッグバン対応へのおくれということを露呈して、日本の金融機関は脆弱だ、こういう印象を与えて国際的信用低下につながる、こういう懸念があるわけですけれども、この点について、まず明確に否定していただく必要があるのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。  ペイオフ解禁が一年延長されようとされまいと、既に日本の金融界はメガコンペティション時代と言われるこの状況に対応すべく、合併、再編、こういう流れが進んでいるわけであります。マネーセンターバンクの破綻とか、ビッグバン対応のおくれというのがペイオフ延長を余儀なくしたのだ、こういう見解はとるべきでないと思います。その点を確認したいと思いますが、いかがでしょうか。
  50. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 結論から申しますと、ペイオフの一年延長というのは、中小の一部金融機関をこの期間にできるだけ健全な確実なものにしていこうという観点からこういう決定に至ったものと考えておりまして、今並木委員がおっしゃった、ビッグバンの対応のおくれからとか、あるいはマネーセンターバンクに心配があるから一年おくらせたというようなものでは全くないとまず申し上げたいと思います。  それで、やはり二年前、三年前から比べますと、金融状況は大きく安定化の方に向かっているというふうに私は思っておりまして、マネーセンターバンクにつきましては、金融再生法や早期健全化法あるいは預保法等のいろいろなものをつくりまして、いろいろな手段を講じてまいりまして、もうこれは峠を完全に越したというふうに言ってよろしいのではないかと思います。  それから、ビッグバンへの対応につきましても、これから当然、委員のおっしゃるメガコンペティション、国際的にもあるいは国内的にも競争が激化していくということが考えられるわけでありますけれども、それへの対応として、いろいろ金融商品を開発したり、あるいはそれぞれの経営体質を健全化していったりというような動き、これは各行意識が随分変わってまいりまして、真剣に取り組んでいるというふうに思っております。また、委員が御指摘のように、いろいろ再編の動き等も出てきておりまして、こちらの方の対応がおくれているから一年延ばすというものでももちろんない、こういうことであろうかと思います。  いずれにせよ、我々としましては、再生法あるいは早期健全化法あるいは預保法のこういう仕組みを使って、いただいた期間の中で全力を挙げてより健全なシステムをつくっていくように努力をしたい、こう思っております。
  51. 並木正芳

    ○並木委員 今大臣のお話のとおり、延期されたのは預金を全額保護する特例だけと言ってもいいと思います。公的資金の注入というのは、信金、信組など以外の銀行については、予定どおり二〇〇一年三月までということですし、金融再生法の一部の仕組みは恒久化されますけれども、そのものは二〇〇一年三月末で廃止される、こういうふうになっております。与党協議でも、ペイオフ解禁によって、信用組合の預金の主力である一年物定期預金が流出して、資金が枯渇して、いわゆる借り手の中小企業が資金難に陥り、経営破綻しかねない、こういうことから、あくまで地域の中小零細企業の救済を目的とするというような見解であったと思います。  ところが、この種の対策というのはある意味でパラドクシカルなわけですけれども、セーフティーネットが整備された、こういう安心と、一方で整備しなければならない脆弱性があるのじゃないか、こういう懸念というのが相半ばしてしまう。そういうことでは、この論議の中で、信組業界への信頼が大きく低下して、そのための預金流出も考えられるのじゃないか、こう思うわけですけれども、そういうことから、迅速に信組の経営基盤の強化と業界の合併、再編、なかなか地域に偏ったそういう信組等が合併していくというのは非常に難しい問題もあると思うのですけれども、この法案にもそういうための措置がやりやすいようにということでなっているわけです。  現在、金融監督庁は、検査監督権限が都道府県から国に移されるこの四月、すぐですけれども、それ以降、七月、これは金融庁になるわけですけれども、信組に対して集中審査を行っていく、こういう方針だということなのですけれども、現在のところだと、全国の二百八十八信組のうち、自己資本比率が八%を超えるのは約半分ぐらいの百五十三信組だと言われております。  谷垣大臣は、地域金融機関の自己資本比率についてはどのようにお考えでしょうか。イギリスなどでは、特定地域経済に依存せざるを得ないという地域金融機関は、その分リスクが高いということで自己資本比率を高くすべきだ、こういう考えもあるということですけれども、その辺、なかなか悩ましい問題でもあると思いますけれども、大臣の見解はいかがでしょうか。
  52. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 自己資本というのは、貸出資産が通常想定される危険度を超えて貸し倒れたという場合などに備えるバッファーとしての役割があると思うのですね。だから、市場において金融機関が円滑に資金供給や資金調達を行う、そして預金者の安全も図っていくという上では、自己資本比率というのは極めて重要なものだろうと思います。  それで、どの程度に設定していくのが妥当かということについては、これは理論的に言えば、貸出先がどういうふうに分散しているかとか、あるいは業種や地域の偏りとか個々の金融機関の貸出資産の構成等によって随分違ってくるだろうと思うのですが、我が国では、バーゼル銀行監督委員会における国際基準行の健全性の基準が自己資本比率八%である、これを参考にして、国内だけで業務を営んでいる金融機関については自己資本比率四%を最低限必要な水準というふうに定めまして、これを早期是正措置の発動基準ともしている。これはもう今さら申し上げるまでもないことでございます。  それで、こうした枠組み全体としては、これは不動なものというよりも、いろいろそのときそのとき、これからもよく見て、不断に見直しも必要なのかもしれませんが、現在の段階としては、去年の三月までは弾力運用措置というものが入っておりまして、その弾力運用措置が今は取り払われた段階、本則に戻って国内基準行四%ということでやっていこうということになっておりまして、まずは現行の基準に基づいてきちっとやっていきたいというふうに考えております。  それで、イギリスなどではもっと高い基準を設けているところがあるという御指摘でございましたけれども、自己資本比率というものはそれだけで必ずしも判断できるものではなくて、やはり貸出債権等にどの程度引き当てをしているかということと相まって判断が必要なのではないかな、こう思います。  この点につきましては、御承知のように検査マニュアル等できちっと引き当てを要求し、また自己査定等も、昔が不健全に行われたと言うつもりはありませんけれども、このところずっとそういうものの信頼度が向上してきたというふうに私は思っておりますので、こういう引き当てと四%の自己資本比率というものをきちっと求めていくということによって我々は健全化を進めていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  53. 並木正芳

    ○並木委員 大変当を得たお答えだと思いますけれども、自己資本比率を上げさせるということとなりますと、もともと信組等は大変資本力の弱い地域の企業に融資している、こういうようなことで地域経済の底辺を支えているわけです。それが、比率引き上げを迫れば貸し渋りということも起こさざるを得ない。しかし、それを恐れても経営の弱さを追認する、またこういうことになってしまう。そういうような中で、地域の中小零細企業となると直接的に資金調達をするというのも、いろいろこれから制度整備がされるとは思いますけれども、まだまだ困難だと思います。  そういうふうなところで、地域経済にどうしたら打撃をできるだけ与えないようにできるだろうか、こういう考え方の中で、地方金融機関共通の不良債権処理基準、あるいは、公的資金で今回そうした中小零細的な信組、信金等にも資本増強するというわけですけれども、その辺の指針というのはもうお持ちなんでしょうか。流動的に考えるということなんでしょうか。
  54. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 どういうふうに特に協同組織の金融機関に資本注入等を考えていくかということにつきましては、今まではなかなか実際上やりにくかったわけでございますので、今優先出資法等の改正をお願いしておりますので、この国会の方での御審議とあわせて我々も考え方を詰めていかなければならないのだろうと思っております。まだ明確に考え方が打ち出せる段階ではございませんけれども、やはり私は二つ考えておかなければならないのだろうと思います。  一つは、今御指摘がありましたように、それぞれの地域に根差して地域の経済を支えているわけでございますから、それぞれの地域の特質というものをやはり色濃く持っている面があって、マネーセンターバンクと同じ考えでいっていいのか、もう少し地域の実情を考えに入れなければならないのではなかろうかということがやはり議論されるのだろうと思います。  他方、資本注入をして体力を増強していくのだということでございますけれども、これは要するに破綻した銀行にロス埋めするなどというのとは違いまして、後、金融機関が健全になって国民のあれから出資したものがきちっと戻ってこなければいけない、やはり毀損はさせてはいけないというのが私は原則だろうと思います。  そうすると、毀損をさせてはいけないということになると、それはどういう基準を求めてやるべきか、ここもやはりきちっと詰めておかなければいけないことだろうと思いまして、国会の御議論と並行しながらこれを精力的に詰めたい、こう思っております。
  55. 並木正芳

    ○並木委員 時間でございますので、最後に大臣にもう一点お聞きしたいのですけれども、金融再生委員会金融監督庁は、イトーヨーカ堂の決済専門銀行ですとかあるいはソニーのインターネット銀行、こういう異業種からの銀行業務新規参入を認める方向であるということでありまして、また一方で、それに対しての公平性ということでしょうか、銀行の一般事業参入も認めていこう、こういう動きもあるというふうに聞いております。  これは、沈滞した経済の活性化には資するかもしれませんけれども、金融システム安定ということでは非常にリスクを負いかねないのじゃないか。銀行が株価の低落で今回もいろいろな問題が起きたわけです。そういうふうなことを考えると、銀行業務がほかの事業の好不況に左右されるというのは、当然それはあるわけですけれども、できるだけ左右されないようにすべきじゃないかなという考え方もあるわけです。  その辺のいきさつを考えて、相互参入の指針について厳格さを要求されると考えるわけですけれども、現在どのようなお考えをお持ちでしょうか。
  56. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 今具体的な名前をお出しになって御質問でございますが、私、これから金融再生委員会に上がってくるといたしますと、予断を与えるようなことは申し上げにくいので、個別の名前は別として一般論として申し上げますと、一方で今まで事業をやっていた会社銀行業に乗り出してくるということは、他の事業で培ったノウハウというものを金融の世界に持ち込んできて、両方が相乗効果を発揮する、そういう中で、新しい金融技術が発展していったり、場合によれば新しい業が起こってくるということも期待できるのではないか、そのことが利用者の利便にもつながっていくのではないか、こういう期待が一方で持たれるわけでございます。  しかし、他方、事業会社銀行のあり方というのは、今までも、やや非対称でございますけれども、銀行は五%以上持ってはいけないというようないわゆる五%ルールというものもございましたし、かつての昭和金融恐慌のときに、金融機関が事業会社の機関銀行化することによって傷を深くしていったという経験もありますし、その辺のことは十分議論を煮詰めなければならないと思っております。  今、金融再生委員会金融監督庁でプロジェクトチームをつくっております。その辺をある程度整理いたしまして、金融再生委員会としても議論をしていきたい。まだ金融再生委員会としても十分議論をして煮詰めておりませんので、委員長独断でこれ以上のことは、やや、まだ申し上げる準備がございません。
  57. 並木正芳

    ○並木委員 ありがとうございました。
  58. 金子一義

    金子委員長 午前十一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十時三十一分休憩      ————◇—————     午前十一時二十三分開議
  59. 金子一義

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。
  60. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  預金保険法の改正案につきましてお聞きをしたいと思います。  法案では、今の預金の全額保護措置を一年間延長して二〇〇二年三月末まで継続するということにしているようであります。問題は、破綻処理に公的資金を投入する枠組みまで同じ期間延長して、二〇〇二年三月末までそれを続けようとしていることであります。このことは、最終的には国民負担となる可能性が大のものでありまして、大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、なぜ預金の全額保護の延長に合わせて公的資金投入の枠組みまで延長をしなければならないのか、その点についてお答えを願いたいと思います。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御存じのような理由で一年延期いたしましたから、したがって、何かありましたときには公的資金の投入も当然それだけ延びる、そうでありませんと、金融機関自身負担によってしなければならないということになりますのでという、そういう考え方でございますが。
  62. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 どうも余り説得的ではない御説明だと思うのですね。全額保護措置の延長をなぜ国民負担でやらなければならないのかという問いに対しては明確にお答えになっていないと思います。  公的資金の投入についてこれまで政府はどう説明してきたかということで振り返りますと、九六年に初めて信用組合の破綻に公的資金を使うことを決めたときに、西村銀行局長はこのように答えておられます。第一に金融機関が最大限の努力をすること、第二に日銀がつなぎ融資をすること、そしてどうしても財政負担をする場合には、「以上のようなことをしてもいかなる方法もまだ足りない、あるいはそれを放置しておいた場合に経済にはかり知れない影響を与えるというような場合に限って、かつ時限的な措置としてこのようなことをお願いをする」、このように九六年五月二十八日の答弁でお答えになっております。  九八年に交付国債を積んで金融機関破綻処理をする仕組みをつくったときに、当時の三塚大蔵大臣は、九八年の一月八日の参議院大蔵委員会ですけれども、アジア通貨危機や山一証券と拓銀の破綻、ジャパン・プレミアムの急上昇などのもとで、「金融システムに対する信頼を一刻も早く回復させ、経済全体が危機に陥る事態を防ぐための時限的な緊急措置として」公的資金を活用できるようにした、このように述べておられます。  つまり、公的資金の活用というのは、金融の極めて深刻な危機的状況に対処するために、時限的な、緊急的な措置だ、これがこれまでの一貫した政府説明でありました。こういう理解でよろしいですね。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来そういう考えで進めてまいりまして、金融機関に対しましては、御承知のように保険料を、七倍と言われますが徴収してまいりまして、それは恐らく、今の業務利益等々から考えますと、もう限度であろうというふうに考えてまいっておりますが、そういうシステムでございます。
  64. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そうしますと、公的資金投入税金投入の仕組みを一年間延長するということは、金融システムが今でもあの当時と同じように極めて危機的な状況だ、このように判断されているということになりますね。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 必ずしもそうではないと考えておりまして、金融システムはかなり不安が解消しつつございますけれども、金融機関そのものは、何年間かのこういう状況の中で、かなり傷んでおりますことも事実でございますから、したがって、さらに特別の保険料を増徴するといったようなことについては限度に来ているという状況そのものには変わりがないと考えております。  別に、ですから、そのゆえに金融システムのリスクが存在する、あるいはさらに悪くなったといったようなことを考えておるわけではございません。
  66. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 先ほどの谷垣金融担当大臣は、金融危機の峠は完全に越したというようなことをおっしゃいましたし、今も大臣は、基本的には危機的な状況は克服したというような御答弁をされました。  そうしますと、これまで政府は、金融の危機的な状況に対応して、緊急的、一時的な措置として公的資金を投入する、こういう説明をずっとされてきたわけですね。今は金融不安が起こるような危機的状況でもなくなった、そういうときにもかかわらず、つまり、前提が変わったにもかかわらず税金投入を続ける、こういうことになるわけですね。  私は、これは非常に安易だと思うのですよ。銀行負担能力に限界があるというふうにおっしゃいましたが、負担のできる条件は既につくられている、にもかかわらず負担をさせずに国民負担に全部振りかえてしまう、その発想の基本が私は問題だというふうに思うのです。  当事者である銀行自身、このようにいろいろなインタビューでおっしゃっております。例えば興銀の西村頭取は日経のインタビューで、金融不安の再燃はないかと聞かれまして、ジャパン・プレミアムの解消あるいは昨年中の日経平均株価の三七%増を挙げまして、「少なくとも大銀行に対する不安は消えた。」「信用組合の問題は部分的には大変かもしれないが、十分解決可能と思う。日本の金融不安が再燃するような問題ではない」、これは一月九日付の日経で述べておられます。  政府はこれまで、例えば橋本首相は、九六年五月二十一日衆議院本会議で、「金融機関破綻処理は金融システム内の負担により賄われることが原則」だ、こうおっしゃっていました。しかし、金融危機だからやむを得ないんだ、今大変な危機だからやむを得ないんだ、つまり、金融システム内の負担銀行業界負担を超えて、そういう原則を超えて公的資金を投入しなければ大変だから、時限的、限定的にやるんだ、こういう説明でありました。  ところが、現在では、当事者である銀行業界自身が、金融不安はもう既に消えた、こうおっしゃっておりますし、大蔵大臣も、金融危機は乗り越えた、このようにおっしゃっているわけであります。つまり、政府が今まで主張してきた公的資金投入前提が変わっている、前提が崩れている。そうであるならば、なぜいつまでも税金投入を続けるのか。私は、公的資金の仕組みはこの際やめて、従来の政府答弁どおり、銀行業界負担預金保護を図るという原則に立ち戻るべきじゃないか、そう思いますが、大臣はいかがでしょうか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御議論としては、なるほど、そういう考え方もあるなと思わないわけじゃありませんけれども、実際問題として、そういう大きな出来事が多分あることもなかろう、少しはあるかもしれませんけれども。そこでまた、一年のことですから、今度はもうここで、片っ方は政府は引きますと言わなくても、もう一年のところを政府もおりますと言っても別に大した、どこにも害があるわけではなし、皆さんそうですかということで、これでいいかなと実は思ってやっているわけなんですが。  佐々木委員のおっしゃること、それは厳しく言えば、それでどこが悪いとおっしゃったらなかなか申し上げにくいのですが、まあ私どものやっていることもそう弊害もないのじゃございませんかな。
  68. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 納得できない答弁でございまして、預金保護は本来銀行業界責任なんだと政府はずっとおっしゃってきたわけですね、これは原則であると。ところが、危機的状況は克服した。危機的状況を克服したにもかかわらず、銀行業界には新たな負担は一銭も求めておりません。負担は全部国民に、新たに負担を一年延長することによって求めております。これが問題だと言っているのですよ。ですから、私は、今、本来の姿に戻るべきだ、このことを強く申し上げておきたいと思います。  この法案では、公的資金の使用期限を延長するだけではなくて、交付国債を六兆円増額することになっておりますね。新たに国民負担の提案がこういう形で具体的に行われているわけであります。なぜ交付国債の増額が必要になるのか。  そこで、前提として大蔵省金融企画局長にお伺いしますけれども、これまで交付国債がどのように使用されてきたか、その使用の状況、それと今後の使用見込み、これを示していただきたいと思います。
  69. 福田誠

    福田政府参考人 お答えいたします。  七兆円の交付国債の使用状況でございますが、三月二十九日現在で、償還額累計で四兆七千九百一億円でございます。  若干内訳を申しますと、十年度に一兆一千九百九十二億円使っておりまして、そのうちの大宗は拓銀の処理で、一兆三百八十七億円でございます。それから、十一年度になりまして三兆五千九百九億円使っておりますが、このうち長銀の処理に三兆二千二百四十四億円を使用してございます。  今後の交付国債の償還見通しでございますが、これにつきましては、今後の金融機関破綻の発生状況あるいは破綻した金融機関資産劣化の状況等が現時点において不確定でございますので、確たることは申し上げられないことを御理解賜りたいと存じます。  ただ、ちなみに、現在既に破綻したということで公表されております金融機関の数は三十七金融機関でございます。
  70. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 政府は、九六年に信用組合に公的資金を注入するという仕組みをつくったときには、信組以外には入れないと言っておられました。例えば、当時の西村銀行局長はこう答弁されております。   私どもは、金融機関破綻した場合といえども、できる限りというか、原則として金融システムの中におきまして、金融機関の自助努力によりまして対応するというのが原則であろうかと思っております。したがいまして、通常の金融機関につきましては、預金保険制度というようなものを含みます金融システム内の負担によって対応すべきものであると考えておりますし、アメリカにおいても、SアンドL以外の金融機関破綻処理については、金融システム内の処理ということで対処したところでございます。   しかしながら、信用組合につきましては、なかなかそういうことだけでは対応し切れないのではないかということで特別の措置をお願いしておる、こういうことでございます。 こう答弁されているのですね。  こう答弁しておきながら、その後政府はどのようにしたかといいますと、九八年になりますとこの立場を捨てまして、公的資金の対象を今度は銀行に広げた。交付国債七兆円を含む十七兆円の公的資金枠をつくりました。そのとき政府はどう説明していたか。七兆円で十分だ、こう説明をされていました。当時の山口銀行局長は「七兆円が底をつくことはまずないというふうに思います。」「現実的な議論をさせていただきたいと思いますが、七兆円で十分な手当てができるというふうに思っております。」これは九八年の二月十三日の参議院財政・金融委員会での答弁であります。  ところが、その後どうだったかといいますと、この七兆円が底をついてしまった。そして、足りなくなったから今度は六兆円増額したいというわけですね。こんなことをずっと繰り返してきているわけですよ。足らなくなれば、以前にどんな答弁をしようがそれを棚上げにして、国民にどんどん負担させる、これがこれまでの姿勢であって、非常に私は安易ではないかと思うのです。  大蔵大臣にお聞きしますけれども、今回六兆円増額するというわけですけれども、また足りなくなったと言って国民負担の増額を求めてくることはないと、これは断言できますか。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今、コスモ信用組合でございますか、あのころから振り返ってみまして、銀行局長がそういう答弁を申し上げていたということ、その程度の認識しか専門家は持っていなかったということでございますから、それはもう不明をおわびするしかありません。それ以外に申しようはない。事態はしかしコスモでとどまりませんで、北拓、拓殖銀行までいき、それにとどまらずに長期信用銀行まできた、こういう展開でございました。それを全く見抜けなかったことは大蔵省として本当におわびをしなければなりません。その間の答弁は、したがっておわびをして、御説明するしか方法がございません。  そこで、もう一遍、今度六兆円のお話でございますけれども、今政府参考人が申し上げましたように、七兆円の交付国債をしていただきましたところで四兆七千億使っております、その四兆七千億円の中には長期信用銀行の三兆二千億円が入っておりますということでございますので、今残りました三十六ですか七ですかの金融機関銀行が六つでございますが、みんな世間のわかっていることでございます、あとは信用金庫等々でございますから。七兆円の中で四兆七千億円長銀までで使っておりまして、あと、現にわかっている破綻機関がその程度でございますと、普通に考えまして、今度六兆円投入をお許しいただきますが、大きいものとしては多分日債銀ということでございましょうから、それらも、普通考えますと、債務超過額三兆円がらみのものと思いますので、そういうことを考えますと、ここで六兆円追加いたしまして、まず制度も終わりになってまいりますし、これで今の世の中から見まして足りないということはまず考えられないと私は思っております。  西村君、山口君、私がその三度目のうそをつくかねと、多分そういうことには相ならぬと思っております。
  72. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 これまでも公的資金投入の枠をつくるときに政府は、これで十分だということを言いながらどんどん拡大してきたわけでありまして、そのときには必ず、当初想定していなかった事態が起こったんだ、こういう説明をされるわけであります。  この間、もう一つ問題は、公的資金投入の制度が、信組からどんどん広がって、非常に投入の対象が広がっているという問題があるのです。九六年の場合には信組だったのですが、九八年になりますと、特例業務勘定を預金保険機構につくりまして、一般金融機関も対象にした破綻処理の仕組みをつくりました。十兆円の政府保証に加えて七兆円の交付国債を使って公的資金の投入策が行われました。金融機能安定化緊急措置法によって資本増強、資本注入も合わせますと三十兆円の銀行支援の枠組みがこの段階でつくられたわけです。さらに、九八年十月、あの金融国会のときであります、六十兆円の銀行支援策がつくられた。特別公的管理、金融管財人による管理、資本注入機能の拡大、こういうことが行われまして、持参金つきで長銀を売り渡すということまで可能になっていったわけであります。  このようにして、公的資金投入の仕組みが延長されただけではなくて、その仕組みが非常に複雑怪奇に広がって、その広がりと同時に規模も拡大していった。その結果、国民負担がふえる一方であります。既に三十一兆の公的資金が資本注入も含めまして使われております。私たちの計算では、そのうち九兆円国民負担が確定している。大変な事態であります。  ですから、私は大蔵大臣にぜひお聞きをしたいのですけれども、国民負担だけがどんどんこの間拡大していくというこの問題についての反省は全くないのか、銀行に対しては新たな負担は今後とも全く求めていかないのか、この点についての基本的な認識、基本的な考え方をお伺いしたいと思うのです。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金融国会のことを言われました。あのときが一番世界の金融危機であったわけでございますけれけども、ちょうどあの年の九月でございますか、ワシントンにおりまして、日本の国会もいろいろ議論をしていらっしゃる、なかなか時間もかかる、長銀のこともいろいろ言われるというような中で、世界じゅうが我が国動向に非常な注目を払った、そういう瞬間がございますけれども、まだ国会の御議論の方向は定かでない時期でありましたから、関係者は非常に、アメリカを初めとして不安に思っておりました。ただ、結果として、今おっしゃいますように六十兆円というオーダーの金を日本の国会、日本の政府が用意したということを聞いたときには、さすがに連中が内心驚いたようでございます。  それは、ちょっと裏から物を言うようでございますけれども、日本の国力というものが、それだけのことができるんだな、そういう受け取り方をしたようでございました。ですから、そういう意味で、世界の金融危機金融不安というものを鎮静するのにあのときの国会の御審議、非常に実は役に立っておったということ、これは自慢になる話ではもとよりございませんけれども、そういうことがございました。  それで、今ここまで来ましたので、いろいろお願いしたそれだけの金を全部使わなければならないか、あるいはそうでないか。公的資金の導入などは、いずれにしても返してもらうと考えている金でございますので、全体の総決算がいつになって幾らになるかということはわかりませんが、非常に大きな対応をさせていただいたということで、世界の不安も静まったということは事実でございます。  さて、これを当の金融機関の諸君にどうやって将来対応してもらうかということ。導入したものはだんだんに返してもらう、これは当然のことだと思っております、資本部分でございますね。それからあと、今まだこうやってかなり高い保険料を取っておるということをいつまでどうするのかとか。実際問題としましては、金融機関の諸君は、こういう金融危機の中で、企業の合併、統合等をやり、しかも金融機関によっては経営者としての責任を問われる等々、いろいろなことで自分たちのこれについての責任を遂行しているという気持ちであろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、これはやはり非常に大きな出来事で、これをどういうふうに最終的に、いわば歴史になって処理されるかということは、まだなかなかわからないことであると思います。  ただ、確かに政府責任がございました。しかし、金融機関にも責任があったことは明らかだと思っています。
  74. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 国民負担の拡大というのは、政府の行政の失敗の結果だというふうに私は考えております。政府金融機関の不良債権の実態を従来明らかにしてきませんでしたし、その処理を先送りして傷口を広げてきた。  長銀、日債銀の巨額の債務超過での破綻も、正確な不良債権の実態を覆い隠したままで資本注入をし延命してきた、そういう結果だと思うのです。長銀、日債銀は、飛ばしなどで不良債権の隠ぺいを図ってきた銀行であります。これを見逃してきた大蔵省の検査監督責任、一体その責任はどこにあったのか、この解明はいまだになされておりません。  公的資金の拡大は、当初予想ができない事態が起こった結果だ、単にそういう言い逃れで済まされる問題ではないと思うのです。金融機関を検査監督してきた政府責任を明らかにしていかなければ、これが足りないから次はまたというふうに、簡単にそれを認めるわけにはいきません。全くそういう理屈だけでは説得力を持たないと思います。  時間が参りましたから、きょうはまだこれは入り口でございますので、さらに本論がありますから、きょうのところはこれで終わりたいと思います。
  75. 金子一義

    金子委員長 次に、矢島恒夫君。
  76. 矢島恒夫

    ○矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。  私、保険業法の改正案の問題で、特にまず、相互会社から株式会社へ転換する、このことに関して質問したいと思います。  金融監督庁に聞きますが、現在、生命保険会社が何社あって、そのうち相互会社は何社なのか、それから損害保険会社については、同じことですが、何社あって、そのうち相互会社は何社になっているのか、お答えいただきたいと思います。
  77. 乾文男

    ○乾政府参考人 生命保険会社につきましては、本日現在で四十七社ございますけれども、そのうち相互会社形態のものが十四社となっております。損保会社につきましては、六十四社ございまして、うち相互会社形態のものが二社となってございます。
  78. 矢島恒夫

    ○矢島委員 相互会社生命保険会社が十四ということで、損保会社に比べては多いということが数字の上では出ておるわけです。  そこで、相互会社株式会社への転換、これは相当前からいろいろと論議されていたと思うわけですけれども、本格的にこの問題が論議され始めたのはいつごろのことですか。
  79. 福田誠

    福田政府参考人 御指摘の保険会社の組織変更に係る制度でございますが、これは平成七年の改正前の旧保険業法におきましては、御案内のとおりですが、株式会社から相互会社への変更の規定はございましたが、逆の相互会社から株式会社への規定は設けられておりませんでした。すなわち、生命保険会社というのはそもそも相互扶助の理念に基づく相互会社の形態が原則であるという考え方が恐らくあったのだと存じます。  しかしながら、その後、保険分野におきます競争促進というような要請もありますし、業務の多様化あるいは弾力化が図られていく中では、資本調達能力の向上とか多様な事業展開を目的とした場合に、株式会社への転換を図る可能性が生ずるのではないかと考えられまして、具体的には、平成四年の保険審議会答申におきまして相互会社から株式会社への転換規定を整備する必要性が指摘され、これを受けまして、平成七年の新保険業法の改正項目の一つとして相互会社から株式会社への組織変更の規定が新設されたわけでございます。  ただ、そういう事情ですので、このときの改正は具体的なニーズが既にあったというわけではございませんで、制度として規定を整備したということにとどまっておりましたために、例えば、大量に発生する端株の処理に関する規定がないとか、あるいは資本増強に関する規定がなくて極端な小口分散所有となってしまう等々の問題がそのまま放置されておりましたので、今般審議をお願いしている法案は、まさにこの点について手当てを行いたいというものでございます。
  80. 矢島恒夫

    ○矢島委員 平成四年のころからこの問題について議論が始まっている、そして実際には平成七年の保険業法の改正、こういう中に盛り込まれてきたということがわかりました。  平成四年から七年まで約三年間、時間をかけてこの法改正を行ったわけですけれども、実際にニーズがあってやったわけじゃないという局長のお話もありましたけれども、こういう法律制定するということは、相互会社から株式会社への転換、これを進めていくという考えだろうと思うのですよ。つまり、この法律をつくることによって株式会社化が進む、こう考えられてつくったわけですよね。
  81. 福田誠

    福田政府参考人 繰り返しのような御答弁になりますが、当時、審議会では、今後を展望したときに選択肢としてそのようなものも可能にしておくということまででございまして、当時はまだ保険会社の中ですぐにでも株式会社化したいというような具体的な要請はなかったように存じます。
  82. 矢島恒夫

    ○矢島委員 大臣にお聞きしますけれども、大蔵大臣、御用事がありますのでこれにお答えいただいたら中座して結構なんですが、今、福田局長も言われたのですけれども、ニーズがあってやったのではなく、展望を示すための法改正であった、平成七年のときですね。やはり、恐らくこの法律で進めようという意向だったのだろうと思うのですが、余り進めようという意欲があってつくったわけじゃないのだ、将来そういう方向が必要になるだろうというような展望のもとにつくったと言うのですが、大臣、そういうことでつくられた、こう考えてよろしいですか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も非常に詳しい経緯を知っておるわけではございませんけれども、やはり、将来事業活動が大きくなる、複雑になる、その際の資本調達力であるとかあるいは事業展開についてのいろいろ機動力であるとかそういうことを考えると、やはり株式化するという一つのトレンドが出てくるのではないか、そのための法的整備をしておいた方がいい、そういう動機であったように私は聞かされております。
  84. 矢島恒夫

    ○矢島委員 大蔵大臣、結構です。  確かに、これでどんどん進めていくのだ、進んでいくぞ、こういう自信があってつくったわけではなくて、将来への展望ということだということはわかりました。確かに、この間を見てみますと、相互会社から株式会社に転換した会社一つもないわけですから、まさにそういうことだろうと思うわけです。  そこで、この間、転換はしないけれども、大蔵省とも話し合いながら真剣に株式会社へ転換しよう、こう考えていた相互会社があるのかどうか。それから、これは一社も実際には転換していないわけですが、先ほど福田局長もその部分にちょっと触れましたけれども、具体的に何が問題になって進まなかったのか、もう一度お答えを。
  85. 乾文男

    ○乾政府参考人 平成八年四月以降に形式的には株式会社化が可能になったわけでございますけれども、その後、監督当局に対しまして具体的な御相談があったということは、私もちょっと記憶にございません。ただ、一年ぐらい前から大蔵省金融審議会におきまして本問題の審議が行われたころから、私ども、生命保険業界等々といろいろな機会に話をしておりますけれども、そうした中で、こうした株式会社化を通じまして自己資本基盤を強化していくということに対して強い関心を示しているところが少なからずあるということでございます。
  86. 福田誠

    福田政府参考人 制度的なものを補足いたしますと、新保険業法の中にも、株式会社化を図るときの社員への株式の割り当てという規定もちゃんとございましたが、実際には、膨大に発生する端株をどうするかというような規定がなかった。あるいは、さっき申し上げましたように、株式会社後の資本増強について特別の手当てはございませんでしたので、もし株式会社にいたしましても、ほかに例を見ないような小口分散所有による会社ができてしまって、例えばその後の資本増強等がスムーズにいかないような、事実上なかなかワークしにくい制度であったということでございます。
  87. 矢島恒夫

    ○矢島委員 今乾部長の方からもお話がありましたけれども、当時は特に具体的なものはなかったけれども、平成十一年、ワーキンググループが発足いたしました。昨年の七月、金融審議会第二部会報告が出されていると思います。「保険相互会社株式会社化に関するレポート」というのが第二部会から出されているわけですけれども、これを読みますと、まず冒頭に、「保険相互会社においては、株式会社への転換のニーズが高まってきている。」こういう記載があります。先ほど、乾部長の方からも最近の状況について触れられました。  そこで、なぜそういうニーズが高まってきているかという問題について、これは大蔵大臣に聞こうと思いましたが、大臣はちょっと中座中なので、政務次官にお答えいただければと思います。  一つは、生命保険相互会社、ここの逆ざやの問題が年を経て一層深刻になっていっている、こういう問題。あるいは、金融ビッグバンの進展の中で、相互会社には限界がある、こういう見方。あるいは、自己資本の増強ということが不可欠になってきた、こういうようなことが、最近になって非常にニーズが高まってきているという、先ほどの乾部長や、あるいはこのワーキンググループのレポートの中にも記載されていることの背景にあるのだろうと思うのですが、政務次官、どうお考えか。
  88. 大野功統

    大野(功)政務次官 まず、先生御指摘の問題はそのとおりだろうと思いますが、そのまた背景に、相互会社であって生命保険会社社員である、つまり、経営参加とかそういう権利がある場合もあるのでございますけれども、保険契約者の方は社員であるという意識が全くない。単に、自分保険を掛けて、そしてそれをきちっと確実に運営してもらいたい、こういう意識がありまして、いわば総代会とか総会というのは、大勢社員がいらっしゃいますからちょっと開催不可能でございますけれども、総会というのはどちらかというと形骸化していくような格好にもなっております。  そういう背景があって、株式会社であろうと相互会社であろうと、保険契約者の関係からいいますともうほとんど変わらない、こういう背景が一つあって、その上に今先生御指摘のような問題が出てきている。したがって、株式会社化というのは時代の流れである、このように思っております。
  89. 矢島恒夫

    ○矢島委員 大蔵省からいただいた資料の中に「生命保険契約者保護のための制度の課題と対策」という一枚の資料があります。その中で相互会社経営基盤が脆弱であるというのが一番最初に出てくるわけなのですね。生命保険会社経営というのがなぜ脆弱なのか、その理由と、設立当初から生命保険会社というのは脆弱な体質を持っていたのか、その辺についてのお考えを。     〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
  90. 福田誠

    福田政府参考人 お答えいたします。  相互会社につきましては、当然株式を発行しておりませんので、株式会社のように外部資本の調達をする道がございません。そのかわりにありますのは基金の募集という手段でございます。基金というのは、あくまで借り入れ、他人資本でございますので、最終的には返済しなければならない、あるいはコストもかかるわけでございまして、株式会社に比べて自己資本の充実が難しいという理由はそこにございます。  また、そもそも相互会社契約者社員が同じでございますので、いわゆる実費主義の原則というのがございますが、保険事業の成果については基本的に社員にすべて還元されるということを想定しておりますので、内部留保で自己資本を高めていくというようなことにはおのずから限界がございます。  ちなみに、法令上も、生命保険会社につきましては、保険業法上、剰余金が発生しますと八割以上、旧法では九割以上でございましたが、これを社員に配当するような義務づけ規定がございます。  いわゆるバブル期までは、有価証券等の含み益が潤沢でございましたことから、相互会社組織の脆弱性というのは余り注目されておりませんでしたが、バブル崩壊後は、御案内のとおり、一転して逆ざや問題が発生いたしまして、毎年それを取り崩す事態になっておりますので、その脆弱性が特に目立つようになったわけでございます。  したがいまして、御指摘の問題は、相互会社であるということに由来するものでございますので、設立後当初から、あるいはその経過年数によって脆弱性が異なるというものではございません。  ただ、本来、相互会社は、株主に対する配当がない分、より安い費用で保険事業を提供することができるというメリットがございますので、経営基盤の相対的な脆弱性のみをもって相互会社の存在意義が否定されるものではないと思っております。
  91. 矢島恒夫

    ○矢島委員 株式会社に比べて自己資本の充実に向けてのやり方というのは非常に難しいというのはよくわかるのです。しかし、実際には、つまり設立そのものから問題があるのじゃなくて、言うなればバブルの崩壊後、そのほかの条件もあると思いますが、この脆弱さというものが近年目立ってきている、こういうお答えであろうと思うのですけれども、そういう相互会社の脆弱な基盤というのについては保険契約者には何の責任もないのだろうと私は思うのです。これも政務次官、そういうことでよろしいですか。
  92. 大野功統

    大野(功)政務次官 先生の御指摘のとおり、生命保険というのは、いわば世帯で数えますと九割以上入っている、まさに安心感のよりどころになっているわけでございます。  それから、自己責任という観点からしますと、どうしても長期契約になりますので、十年先の景気がどうなっているか、十年先の金利がどうなっているか、こういうことは保険契約者一人一人が予測し得ないような問題かと思います。したがいまして、自己責任原則の世の中ではありますけれども、その自己責任原則を一定限度、つまり一〇%ということで限っていく。このように考えますと、自己責任というのをそんなに追及できないのがこの世界じゃないか、このように思います。
  93. 矢島恒夫

    ○矢島委員 自己責任の問題ということでお話しいただいたのですが、要するに、先ほど福田局長もお答えの中で言われましたが、実際に相互会社として存在することの問題が脆弱につながっていくのじゃなくて、やはり近年いろいろな条件、一つはバブル崩壊後の条件、そういうようなことだとか、あるいはいろいろな、それぞれの保険会社、相互扶助というようなことで出てきてはおりますけれども、結局、あの時期における、バブルの中で大もうけしようとしてハイリスクにあるものに投資してみたり商品を新しく開発していくとか、いろいろなことがあったのだろうと思うのですが、契約者というのはそういう企画にかかわっているわけじゃないのですね。社員であったとしたって、その意見が保険会社の企画というものに参加するという形ではほとんどないし、まあ皆無だと言ってもいいと思うのですね。  そういう意味からすれば、契約者責任というのを追及するのは酷なことであって、今日の脆弱さと指摘されている部分、これについての責任は、一にあってこれはやはり保険会社の方にあるのじゃないかと私は思うのですよ。  そこでお聞きしたいのですけれども、こういう脆弱な基盤をつくっていった経営者の問題ですが、先ほども言いましたように、いろいろと、予定利率が非常に高い商品をあのバブルのときに売り出したとか、まあ逆ざやの問題ですね、そのほか、銀行ほどではないにしても不良債権を抱え込むとか、それぞれいろいろな事態が生じているわけですけれども、同時に、今現在、なかなか生命保険は、新しく契約しよう、新規契約というのが余りふえない状況にあるわけですね。これも景気の状況やあるいはその他の要因もあろうかと思いますけれども。こういうことが重なった結果、体力が弱ってきたというのが今日の状況だろうと思うのです。  そういうわけですから、相互会社から株式会社に転換する場合に、それによって保険契約者が不利益をこうむるなどということがあってはならないんだと私は思うのですが、その点については、局長、いかがですか。
  94. 福田誠

    福田政府参考人 大変重要な御指摘だと存じます。  したがいまして、組織変更に係る一連の手続におきまして保険業法に明確に規定を置かせていただいておりまして、契約者としては社員総会または総代会において議決権を行使することができます。そのほか、契約者異議手続もございますし、組織変更無効の訴えというような手段もございまして、手続の各段階において契約者が意見を表明することが可能となっております。したがいまして、契約者の意見を無視して株式会社化が進められるようなことはないと考えております。  また、株式会社化の是非につきまして契約者が適切な判断を行えるように、今回の改正におきましては、生命保険会社のすべての事務所において組織変更計画書等の閲覧を可能とするなど、組織変更に係るディスクロージャーを充実することとしております。  他方、最終的に組織変更に至った場合でございますが、その場合の意に沿わなかった方の社員権の補償につきましては、各契約者の寄与分に応じて株式の割り当てを行うということで、この寄与分の計算につきましては、保険数理に基づいて公平公正に計算されるものと考えております。  なお、株式会社化した後も、相互会社社員であった保険契約者はそのまま変更後の株式会社保険契約者となり、契約内容等に変更が生ずることはございません。
  95. 矢島恒夫

    ○矢島委員 手続のそれぞれの段階で契約者としての意見を述べることができ、実際に不利益をこうむることがないような手だてをとっている、こういうお答えですが、そういう問題で幾つかお聞きしたいのですが、今回の法改正で、組織変更をする場合、先ほども寄与分のお話が出ましたけれども、社員に対する寄与分に応じた株式を割り当てる、こういうことになっています。端株相当部分、それから端株未満の相当部分、ここについては一括売却方式ということが導入されるとなっているわけです。そうすると、この端株相当部分やあるいは端株未満相当部分、こういうものを取得している保険契約者は、この売却代金と引きかえに社員権をなくすことになるのではないだろうか。  そうなりますと、例えば、相互会社でいいますと、中堅のところで社員が百万とか三百万とか、あるいは大手のところになりますと一千万人以上の社員を抱える会社もあるわけですね。先ほども小口分散の問題が出されたわけですけれども、確かに、ほかに例を見ないような小口分散所有の会社となってきて、株式会社化した後の株主総会といっても運営上非常に問題が生じる、こういうお話も先ほどありました。  そこで、今、各段階で意見を聞くというわけですけれども、その意見を申し述べる場とか、あるいは社員総会、こういうような状況の中で、つまり組織変更をする前の段階でいろいろと社員から意見を聞く、そのやり方というのは大体どんなことを考えていらっしゃいますか。
  96. 福田誠

    福田政府参考人 これは組織変更に限らないとは存じますが、重要な事項につきまして総会が開催されるということになりますと、決められた一定の期間の前にそういう議題の御案内が行くわけでございますし、それに付随したいろいろな説明資料も添付されてくると思いますので、その間に十分に考えていただくということではないかと思います。
  97. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ぜひ、私も、意見を十分聞いて、そして株式会社化を図っていくということが重要だということを申し述べておきたいと思います。  そこで次に、組織変更ということによって、相互会社の現在の社員権利が喪失するということがあってはならないと私は思うのですけれども、相互会社の場合、保険加入している契約者配当という形で収益の分配、こういうものを期待している向きもあるわけです。その点で、私が使った先ほどのレポートですけれども、このレポートの中で、「組織変更後の有配当契約者保護について」という項目があります。これについて述べている中で、「組織変更後の有配当契約者保護の問題については、このように」、このようにというのは、諸外国の例が、アメリカの例、イギリスの例がその前にいろいろ挙げられているわけですが、「このように諸外国でも様々な方法が工夫されており、単一の方法を強制するのではなく、契約の内容、資産状況等に応じて、真に契約者保護を図り得る合理的な方法を選択することが望ましいと考えられる。」こう述べているわけです。その具体的な方法についても記述されているわけですが、このような点は、実際守られるのですね。
  98. 福田誠

    福田政府参考人 今御紹介ありましたレポートにはいろいろな検討の経過が書いてございますが、確かに、ニューヨーク州の保険法などを見ますと四つの方式がございます。しかし、アメリカの例でも、このうち実際に適用されたことがあるのは四番目に書かれておる方式でございまして、エクイタブル等にその方式が使われたわけでございます。むしろ、ニューヨーク州法の第四方式を例にとりますと、社員権の補償については契約者に公正かつ公平に補償すべきであると規定が置いてあるだけでございまして、その具体的な考え方は示されておらないわけでございます。  これに対しまして私どもが提案させていただいております業法では、株式の割り当てにつきまして、寄与分基準という客観的な基準を用いることによりまして公平性を担保するということで、より透明性の高い方式になっていると存じます。また、端株の一括売却制度の導入や資本増強の規定の整備によりまして、改正後の保険業法の組織変更制度は実務上の問題に十分対応できるものとなっておりますので、今御指摘のニューヨーク州法に定める方式などと比べて遜色のないものであるというふうに考えております。
  99. 矢島恒夫

    ○矢島委員 本当に相互会社社員権利というものを守る方向、そういうものをぜひ今度の改正の中できちんとしていただくということが重要だろうと思います。  今の福田局長の答弁、ニューヨーク州の四つの方式のうちの第四番目しかやっていないけれども、私はこれがいいということを言ったわけではありません。レポートの中に書かれている報告の中身、これがきちんと守られるのですねということをお聞きしたかったわけです。  ついでに続けます。この同じレポート、保険相互会社株式会社化に関するレポートですが、ここを読んでみますと、その後に「具体的な内容」と書いてありますが、これには、「有配当契約に係る方針を定款に定め、組織変更決議において決定しておくことが考えられる。 また、決定された内容を担保するために、組織変更を行う保険会社のみに適用される特例として、保険業法上、当該方針を定款記載事項として義務づけ、その変更を認可に係らしめる方法が考えられる。」これがレポートの報告の内容であります。  この点は重要なので、私、確認しておきたいのですが、現行の保険業法の第百十四条の一項ですか、「保険業を営む株式会社は、契約者配当を行う場合は、公正かつ衡平な分配をするための基準として」「大蔵省令で定める基準に従い、行わなければならない。」これが現行の保険業法にあるわけです。今のレポートの中の報告で、定款にこれをきちんと記載しろ、このことが必要だ、こういう報告になっているわけですけれども、定款に定める場合、今言った現行の保険業法の第百十四条第一項というのは、もちろんこれによって定款が定まる、これがきちんと働く、こう考えてよろしいわけですね。
  100. 福田誠

    福田政府参考人 おっしゃるとおり、定款で規定されるところでございます。
  101. 矢島恒夫

    ○矢島委員 その点はそのとおりで、結構だと思います。  確かに、組織変更が行われる場合に、資本増強というのももちろん一つの大きな目的ですから、資本増強も行われるわけであります。そうしますと、大株主が生まれるということもあるでしょう。そういう企業や個人の意向に沿って定款が変更されるという場合を私は心配するわけです。  ですから、保険契約者社員としての権利というものがそういうことによって失われては大変だ。だから、定款の変更というのは、もちろん株主総会をクリアしなきゃなりませんし、また金融再生委員会の認可も受けなきゃなりません。そういうきちんとした部分はありますけれども、金融再生委員会としても、今の保険業法の第百十四条の一項、先ほど私が読み上げたもの、その立場に立ってぜひ十分見届けていただきたいということを意見として申し上げておきたいと思います。  そこで、生命保険というものについては、いずれにしろ国民契約者信頼というものが必要で、その上に成り立っているということが言えると思います。そこで、午前中にも同僚議員から保険詐欺事件の問題で質問がありましたけれども、私の地元である埼玉で起きた本庄市の問題です。  ただ、今刑事事件になっておりますので、どういう部分について監督庁にお尋ねすればいいのかなと思っているわけですけれども、一般に、国民の普通の常識的な考えからしても、なぜそんな高額の保険契約が、しかも分散されて、そして多分殺人事件だろうと思いますけれども、殺人事件等を起こして、それでその保険金が支払われてしまう、こういうことに国民としての率直な疑問があるわけですよ。確かに今度の場合でも、十一億円という巨額保険契約をしたわけです。しかも小口に分散しています。そういうやり方で審査をすり抜けるという手法をとったのだろう、そういう疑いということが浮かび上がってまいりました。こういう犯罪を未然に防ぐためのチェックがなぜできないのかな、これが国民の率直な疑問であるわけなんです。  先ほど、午前中にもお話しいただいたわけですけれども、この死亡した男性、保険金の総額は十一億四千万円ですね。生命保険会社が十六社、三十四口に分散されておるのですね。こういうのはチェック不可能なんですかね。監督庁どうでしょう。
  102. 乾文男

    ○乾政府参考人 本事案につきましては、現在、捜査当局が調査しているところでございまして、私どもはその状況を見守りながらいろいろな検討をしているところでございますけれども、一般論として申し上げますと、保険会社の募集担当者が保険契約を締結しますときには、申込人及び被保険者へ面接をいたしまして、その被保険者が他の生命保険契約にどのように入っているかということを聴取することになっているわけでございます。加えまして、一定の額の保険契約につきましては、生命保険協会が運営いたします契約内容登録制度によりまして、他社との保険契約状況を確認する仕組みになっているわけでございますけれども、本件の場合ですと、まだ事実関係はつまびらかでございませんけれども、もしもそうした現行の枠組みをくぐり抜けるようなことが行われていたといたしましたならば、現在の保険契約あるいは保険金支払いの仕組みについて問題がなかったかどうかなど、今後業界からヒアリングを行ってまいりたいと考えております。
  103. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そうすると、亡くなって保険金が払われている、佐藤修一さんという名前だと思いますが、この方の保険契約についてはチェックしたかどうかはわからないということですか、今の段階では。
  104. 乾文男

    ○乾政府参考人 現在、捜査当局の強制捜査が行われた直後でございまして、私どもも保険会社からその詳細を聞ける状況にはございませんが、今後そうしたことが可能になり次第、どのようなことであったのか、ヒアリングしてまいりたいと考えております。
  105. 矢島恒夫

    ○矢島委員 和歌山の毒カレー事件の後、これは衆議院の消費者問題等特別委員会でやったことですけれども、参考人に出頭してもらいましていろいろと状況質問した。その中で、これは谷垣委員長にお聞きするようなことかもしれませんが、吉田紘一という保険協会の会長さんですが、こう述べていらっしゃるのです。  これは和歌山の事件です。「こうした事件が発生したという事実を厳粛に受けとめまして、善意の御契約者集団を維持するという生命保険会社の根幹業務について、生命保険各社が挙げて、その責任を果たすために万策を尽くさなければならないと考えております。また、生命保険協会といたしましても、何ができるのか、いま一度原点に立ち戻って検討、見直しを行ってまいりたい」。検討、見直しがどの程度進んでいるかわかりませんけれども、九八年の十二月に行った消費者特の委員会での意見陳述であります。  それから、同じく、損害保険協会の樋口会長もこんなふうなことを述べられています。「複数の損害保険会社にまたがる高額な契約をチェックするために、従来の御本人による申告に加えまして、死亡保険金受取人を指定した契約につきましては、業界ベースで契約情報を交換するシステムの開発を検討いたしております。」保険協会の吉田会長は、善意の契約者集団の維持生命保険会社の根幹業務だ、こういうことを言っています。  そうすると、こうした保険金詐欺の頻発、この二つだけじゃありません、たくさんの保険金詐欺事件が起きておりますけれども、善意の契約者に非常に大きな不利益をもたらすことになるわけですね。ということは、吉田会長の弁をかりれば、生命保険会社の根幹を掘り崩すようなものだ、こういうことになろうかと思うのです。  金融監督庁としても、先ほど乾部長の方からお話がありましたが、金融再生委員長として、こういう事件が起きるのは非常に無視できない問題だと私は思うのですが、何か御見解ありましたら。
  106. 村井仁

    村井政務次官 大変恐縮でございますが、とりあえず、金融監督庁マターでございますので、私から一言申し上げさせていただきたいと存じます。  保険会社、ただいまお話しございましたように、多数の善意の被保険者、これに対しましてきちんとした保障を提供するということが大切な任務でございます。そういう意味で、このような事件が起こりますことは非常に残念なことでございまして、先ほど監督部長からもお答え申し上げましたように、和歌山の事件を一つのきっかけにいたしまして、私どもといたしましても、被保険者の同意確認でございますとか、あるいは保険契約における多重契約のチェック制度の強化でございますとか、あるいは医者の関与の適正化ですとか、そういったことをいろいろ今やっておるわけでございますけれども、今後とも、保険会社に対しまして、国民信頼が回復できますように一層監督上の責務を果たしてまいりたい、このように思う次第でございます。
  107. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ぜひそういう方向についての研究あるいは指導を強めていっていただきたいと思います。  そこで次に、保険契約者保護機構の問題で、大臣がお帰りになりましたので、早速質問させていただきたいと思います。  この保険契約者保護機構というのは、日産生命の破綻、あの後ですから、一九九七年でしたか、創設されたと思うのですが、四千六百億円という借入限度額、その後東邦生命破綻しまして三千八百億円使っちゃったということですから、さらにもし東邦生命クラスの会社破綻なんということがあればもう対応できなくなってしまう、そんなことから五千億円を追加するということになった、そういうふうに理解してよろしいですか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりです。
  109. 矢島恒夫

    ○矢島委員 それでは続いて監督庁にお尋ねするわけですが、東邦生命に対する金銭贈与の資金、これは、保険契約者保護機構はどこから借り入れて支払ったのかということが一つと、それから四千六百億円というのは、保険会社から全額機構に納入されているのかどうか、この二点について。
  110. 福田誠

    福田政府参考人 今御指摘のように、東邦生命破綻処理に要した金額は三千八百五十億円でございますが、これにつきましては、民間金融機関等から入札による借り入れで三千五百億円調達いたしまして、そのほか保護機構に、まだ十分積み上がっておりませんが、三百五十億円ございましたので、その資金を取り崩して充てたところでございます。  それから、二番目の点につきましては、これは資金援助に使われたわけでございますが、ちょっと質問の御趣旨が……。
  111. 矢島恒夫

    ○矢島委員 もう一度質問させていただきます。二番目の質問は、四千六百億円というのは、保険会社から全額機構の方に納入されているのか、未納なところがまだあるのか、その辺について聞きたい。
  112. 福田誠

    福田政府参考人 失礼いたしました。四千六百億円というのは十年間の枠でございますので、その十分の一相当額ずつを毎年拠出しているわけでございます。
  113. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そういう状況の中で、今度のフレームといいますか、九千六百億円、こういうことが提案されているわけですけれども、東邦生命破綻で三千八百億円が使われたわけですから、全体が九千六百億円ですから残額が五千八百億円、こういうことになっているわけです。東邦生命の場合は金銭贈与ですから返済される見込みはありませんから、この五千八百億円というのがふえて余裕が出てくるなどということはまずないだろうと思います。  ただ、機構の借入金五千六百億円を超えた場合、一般会計からの財政措置が行われることになる。九千六百億円から五千六百億円を引きますと四千億円になるわけですから、四千億円の補助がなされることになっているわけです。これは、今回初めてここに導入された新しいものですけれども。  日産生命にしても東邦生命にしても、このような事態になった責任はどこにあるのかという点を考えてみますと、経営者に非常に大きな責任がある、経営者の責任は重大だ、私こう考えるわけなんです。  ただ問題は、そういう状況にあるこれらの生命保険会社を放置してきた、あるいは、監督あるいは指導、こういうことを怠ってきたという表現でいいかと思いますが、こうして債務超過にしてしまった大蔵省、現在は金融監督庁ですけれども、この責任もまた考えていかなければならない問題だと私は思うわけです。  そこで、そういう事態というものに対して十分に検討され、反省され、総括され、その上でというのだったらこういう提案について考えてみてもいいなと思うのですが、まさにそういうことなくして国からの補助をやっていこう、こういう道を開くことになるわけです。これは破綻した保険会社の債務を穴埋めするわけですから、本来ならばこれは生命保険会社あるいは生命保険業界、こういうところで負担すべきものなんだと思うのです。  今回なぜ国庫補助をすることになったのか、これは大蔵大臣、もしお考えがありましたらお聞きしたいのですが。
  114. 大野功統

    大野(功)政務次官 まず第一に、この問題についての反省ということでございます。その反省につきましてはもう既に乗り出しておりまして、いわば事前調整から事後監視の世界へ今システムを変えていこうとしているし、どういうところが問題かというと、やはりきちんと検査をしていかなきゃいけない、だから検査官も増員していこう、これは金融監督庁の問題でございますが、そういう反省があるわけでございます。  したがいまして、反省がないかと言われますと、反省はしてシステムを変えている、このように申し上げたいと思います。  それから次に、それでは結果としてこういう大きな破綻ができて、しかもこれからつくろうとしている制度で政府保証をやって、場合によっては税金で補助していこう、こういうことになるのはやはりおかしいじゃないかと言われれば、そのときそのときでは努力しておりますけれども、大きな破綻があったことについてはやはり我々反省していかなきゃいけないと思います。  しかし、先ほども申し上げましたように、やはり生命保険というのはいわば安心感のよりどころでございます。しかも、自己責任ということを余り追及できない問題でございます。  そこで、もちろん第一には経営者の責任というのは十分追及していかなきゃいけないことは事実でございますけれども、それでは民間の保険会社相互でこのシステムを支えていけるかどうか、このところが一番大きな問題だと思います。規模の問題については九千六百ということを前提としてお話し申し上げますけれども、今度、四千六百億円に加えて一千億まではみんなで負担してもらおうと。そういたしますと、保険業界業務純益と比較いたしまして分担金が約六%ぐらいになってしまう。これは、預金保険機構でいいますと銀行保険料の負担金が銀行業務純益に比べまして六・一五%でございますので、ほぼ同じような負担になってくる。  これ以上負担を求められるかどうか、これがまさに問題でございます。もしこれ以上負担を求めるとすれば、やはり先ほど申し上げました国民の安心のよりどころである保険業界自体が少し将来暗くなってしまう。大体銀行と同じような負担のレベルで抑えていこう。そうなりますと、将来どうなるかわかりませんが、もし四千億のところまで食い込んでくるようになれば、やはり政府補助ということを現状では考えていかなきゃいけない、こういう問題かと存じます。
  115. 矢島恒夫

    ○矢島委員 反省して新しい方向を出して今取り組んでいるんだというお話ですが、責任をどうとったかという問題も、これもまた私たちとしては考えていかなければならない問題だろうと思うのですね。それは経営責任もあるでしょうし、同時に当時の監督指導に当たった大蔵省についての責任はどうとっているのかというあたりもきちんとした上で、今度はこういう形で四千億の政府保証をしていくんだというようなのならば、そういう反省の上に立ってやっているんだなと思いますけれども、どうも今までの責任問題をうやむやにしてということで進めることについては、私たちも納得しないのですが。  そこで、今度の国庫補助というのを見ますと、二〇〇三年の三月までですか、三年間ということになっていると思うのですが、それでよろしいのですか。
  116. 大野功統

    大野(功)政務次官 そのとおりでございます。
  117. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そこで、大蔵大臣にお聞きしたいのです。  今の生命保険会社状況というのは非常に厳しい状況があります。そうなりますと、この四千億円で足らなくなって、これを突破口にしてさらに追加するということになると大変なんですが、果たしてこの四千億円で今の保険業界状況の中から考えてみて済むのかどうか、この辺についてお考えがあったらお聞きしたいのです。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これからのことに関することでありますし、また諸般の事情からこのお答えは非常に難しいところでありますけれども。  先ほど総括政務次官が言われましたように、今の各社の負担というものが大体銀行業界業務純益の六%というその水準に達していて、しかも各保険会社の内容というものは御承知のようないろいろな事情からかなり苦しい、銀行も苦しいですけれども、保険会社の方がある意味では過去のコミットメントがいろいろあったりすることもあって容易でないという状況であると思われます。  したがいまして、何かの事態が起こりましたときに、とりあえずは恐らく保険機構が借り入れをするといったようなことでやっていける部分があろうと思いますけれども、その後の、最終的には、いろいろ諸般の事情を考えながら、しかし全体として政府としてほっておくわけにはいかないという判断をせざるを得ないことがあるかもしれないというふうに思っております。
  119. 大野功統

    大野(功)政務次官 まことに細かいことでございますが、一つだけ追加させていただきますと、早期発見、早期治療に努める、これが一つの改正のポイントではないか。会社更生特例法破綻前の適用、これをやってまいりまして、早期発見、早期治療に努めて、できるだけ破綻の損害額は少なくしていこう、こういう精神もぜひとも御理解いただきたいと思います。
  120. 矢島恒夫

    ○矢島委員 破綻前の問題については、もう時間がありませんから、次の機会にまた質問させていただくといたしまして、保険会社が実情は大変苦しいという状況は私も承知しておりますし、また、では保険会社負担で、あるいは保険業界負担でということについて、その困難さをるる今大臣も述べられたわけですけれども、しかし、私、モラルハザードの問題等も含めて、銀行のときに何回もこの公的資金の投入問題ではやってまいりました。先ほども佐々木憲昭委員の方から、六兆円の増額問題、そして公的資金六十兆円枠が七十兆円枠になる問題、こういうのが出されました。生命保険の方では、保険契約者保護機構、この借り入れに対して四千億円の政府保証を行うことにした。多分、後日、この四千億円については一般会計から国庫補助にするのだろうと思うのですけれども。  私は、今後、生命保険会社破綻すれば公的資金を投入する、銀行の場合六兆円をさらに追加していったというような事態保険会社の段階でつくり上げるようなことになってはとんでもない、保険会社もしくは保険業界責任でこれを負担していくという方向をきちんとつくるべきだ、こういうことを申し上げて、時間になりましたので、終わりたいと思います。
  121. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員長代理 次に、岩國哲人君。
  122. 岩國哲人

    ○岩國委員 最初に、委員長にお伺いします。  この大蔵委員会の定数は幾らで、今現在何人出席しておるか。
  123. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員長代理 二十名で、ただいま食事をしておりますので、大変恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。
  124. 岩國哲人

    ○岩國委員 食事も審議の一部、こういう判断で続行されますか、されませんか。
  125. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員長代理 ぜひ、質疑は続行をしていただきたいと思います。
  126. 岩國哲人

    ○岩國委員 大蔵委員会は、一年ちょっと前に定数不足で大変もめた、そういう恥ずかしい記録を持っている委員会ではございますけれども、そういう中で質問を続行しろというのは、私にとって甚だ不愉快なことであります。
  127. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員長代理 大至急、委員の皆さんに連絡をしてください。  岩國君。
  128. 岩國哲人

    ○岩國委員 定数が満たされたら御指名いただきたいと思います。     〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 金子一義

    金子委員長 岩國哲人君。
  130. 岩國哲人

    ○岩國委員 まず最初に、東京都の外形標準課税について宮澤大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  世界の金融センターと一般に言われるのは、ニューヨーク、ロンドン、まあ最近は東京とかいうものがありますけれども、そういったニューヨーク、ロンドン、あるいはパリ、フランクフルト、せいぜいそこまで入れて、そういうところで、銀行業界だけを対象にしてこのような新しい税金が徴収されたという例はございますでしょうか。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よく存じませんけれども、この石原知事の構想が発表せられましたときに、閣僚の間でもこれについていろいろ自由討論のようなことがございましたけれども、私の申しました一つの点は、やはり東京が世界のマーケットのセンターにならなければならない、また東京もなろうと考えているときに、事柄の内容というよりも、こういうことが突然起こるということ、それも、かなり実はいろいろ議論のあるであろう提案が突然起こるということは、世界の人々にとって、いわゆるアンプレディクタブルである、東京というところは何が起こるかわからないということになっては、これは世界のセンターの市場として信用をされるのに非常にぐあいが悪いことになるのではないか、私はちょっと実感でそう思いましたし、また、私の友人なんかが最初に言ってきたことはやはりそういうことでございました。  したがって、推論いたしますと、このようなことは恐らく、世界のエスタブリッシュされたという大きな市場ではそうしょっちゅう起こらないのではないか、起こってはならないのではないかと判断いたします。
  132. 岩國哲人

    ○岩國委員 そうしょっちゅう起こらないのではないかということは、一つか二つはそのような実例があったということでしょうか。今まで大蔵省がお調べになった中で一つでも二つでもあったかどうか。あす三十日、東京都議会において、この外形標準課税が議会で可決されようというきょうはその前日でありますから、この点、私はあえて質問させていただいているわけであります。  そういうことを踏まえて、しっかりと大蔵省のお考えを述べていただきたいと思います。
  133. 大野功統

    大野(功)政務次官 我々が調べた限りにおきましては、世界で、金融センターと言われるところにおきまして銀行から特別に税金を取るという例はございません。  ただし、例えば、これは一般に金融機関に対する課税の例でございますが、フランスにおきまして金融機関特別税、これは前年度の一般経費に一%の税率で課税をする、こういう例、それからカナダの金融機関資本税、これはいわばミニマム税としての性格を持っているものでございまして、資本金に対して一%あるいは一・二五%でかけていく、こういう例はございますけれども、先生御指摘のいわば世界の金融センターという地域で特に銀行税金をかける、このような例は聞いておりません。
  134. 岩國哲人

    ○岩國委員 これは、宮澤大臣も先ほど外国のそういった評価ということもお答えいただきましたけれども、私の限られた資料の中でも、ニューヨーク・タイムズが二月九日、あるいはフィナンシャル・タイムズが二月十六日、それぞれ、このようなことがニューヨークやロンドンで起きたならばニューヨークの銀行は恐らく税金とともに去っていくだろうと。風とともに去りぬというのはありますけれども、あれはアトランタの話でありまして、税金とともに去っていく、こういう評価もされているようです。ロンドンのフィナンシャル・タイムズは、世界の金融センターを目指している日本がこういう恣意的な、アンプレディクタブルな行動をするということは、世界の金融センターとしての資格要件に欠けるのではないかという懸念を表明しております。  日本が、そして東京都が世界の金融センターを目指していろいろなインフラ整備を進めてきておるのは厳然たる事実でありまして、私たちもまた、それが国益にかなうものであると今でも信じております。そういう流れの中で、こうしたことを行われる、新しい税金が課せられて、世界の金融センターとしての見識を疑われるということは、私も大変残念に思います。  それでは、質問を変えまして、大蔵省の方で調査された中で、今まで、逆に、金融業という特殊性にかんがみて、ニューヨークとかロンドンとかその他の金融センターにおいて、金融取引というものの重要性にかんがみて税金を下げた例はありますか。
  135. 大野功統

    大野(功)政務次官 一九八六年のイギリスのビッグバンでございます。ビッグバンにおきまして、いわば金融・資本市場を活性化していく、当然のことでございますけれども、そのようなねらいの一環として税制改正が行われております。  その改正の内容でございますが、株式などの取引にかかる印紙税、いわば流通税でございますけれども、課税対象範囲を拡大して税率を引き下げる、いわば歳入中立、ニュートラルでやっておりますが、税率は一%から〇・五%に引き下げている、こういう例がございます。
  136. 岩國哲人

    ○岩國委員 それ以外にも、この東京都の動きと全く別な動きとして、ニューヨーク、六五年に有価証券取引税というものを連邦としては廃止をし、一九六五年、今から約三十五年前ですけれども、国の税金としての取引税を廃止して、これを地方税の税源として渡してしまった、このような例がありました。つまり、今日本でいう地方分権の財源の中央から地方への移転、こういうことを行ったわけです。  そして、それを受けてニューヨーク市が、それから十年たって、七五年から七八年、ニューヨーク市の財政状況が非常に悪くなったとき、その権利を使って税金を取る、こういう発表をしました。それに対して、当然のことながら、今東京で起きたような騒ぎがニューヨークでも起きている。結局、導入された有価証券取引税が間もなく廃止されてしまったのです。  何のために廃止されたか。それは、金融業という特殊性をよく考慮して、ニューヨーク市にとっては世界金融センターとしての位置づけが必要だということで、ニューヨーク市が取り上げたものを結果的には廃止の方向に持っていく。一九七八年に廃止されてから二十何年たちますけれども、それ以降一度もこういう議論はもうむしろ起きなくなっている。つまり、ローカルなガバメントがこういうインターナショナルな金融業に対して税金をかけてはならないということをニューヨークは再認識したような形になっているわけです。  それから、ニューヨークとはちょっとスケールが違いますけれども、今度はサンフランシスコ。このサンフランシスコ市も、一九九五年、今から五年前ですけれども、パシフィック証券取引所での株式売買に対する課税案を発表した。今の東京都と同じような動きです。東京に例えて言えば、千代田区がたくさん銀行を持っているからその銀行から税金を取ろうという発表をしたところ、その上部団体であるカリフォルニア州の州議会が取ってはならないという決議をしたのです。  カリフォルニアにとってサンフランシスコという存在は大切。また、そういう有価証券取引税というものを地方自治体一斉にではなくて限られた地方自治体だけが徴収するということに対して、カリフォルニア州議会は反対し、そして以後、市や郡による取引税の導入を禁止する法案を採択してしまったのです。この辺も全く今の東京都の動きと私は逆な動きだと思います。  これをどういうふうに評価しておられるか、お考えを聞かせてください。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が一番一つの大きな問題としてこれを閣内で議論しました気持ちの中には、それは、知事さんは知事さんとしての東京都というものを一番大事に考えられる、それは当然であるし、また、やられたことの内容については私も実は意見があるのですが、そういうことは別にしておいて、東京都というものが我々国民にとっていわば日本の象徴的な町であるということ、あるいは、日本の代表的な町であって、いろいろな活動、国際活動もその一つですけれども、が東京都を中心にして行われているということ。東京市場というものも、そういうものとして、実は日本人全体のものであるばかりでなく、世界の人々の市場あるいは市場になろうとしているところであるということについて、知事さんの御配慮があったのであろうかと。  こういうことを問題にしておるわけでございますから、それは、今岩國委員が言われましたような、そういう各国の世界のセンターになりたいという市場の人々、あるいはその地域の人々、あるいはその国の人々が一緒に考えるべき問題だというふうに私は思っておるわけであります。
  138. 岩國哲人

    ○岩國委員 カリフォルニア州の例を引きましたけれども、こうしたカリフォルニア州の州議会が地方自治体で徴収すべきでないという決議をしたその考え方は、もっとそこには普遍的なものが私はあろうかと思うのです。ですから、サンフランシスコはサンフランシスコだからその決定、ロサンゼルスへ行ったらまた違いますよとか、あるいはテキサスに行ったら大いに取った方がいいというような考えになろうか、私はそうはならないと思うのです。  最近、二十年、三十年の間に、金融業、証券業というものが大きく変貌したこと、これは釈迦に説法ですけれども、ビッグバンといいあるいはボーダーレスといいインターナショナルといい、そういういろいろな形でもってお金に完全に国籍がつかなくなってしまった。それまでは、国籍のついたお金が取引されて、それぞれのローカルなガバメントでも、あるいはそれぞれの国の中でもある程度収益の状況が捕捉しやすい。今は収益といっても、東京に本社があってもその収益はヨーロッパやアメリカの収益で支えられた収益であるという見方もしなきゃならないというときに、私は、自動車産業や建設業や不動産業と同じような感覚で、ローカルに税金をアセスするということはもはやできない時代に入っておるのではないか、そのように思います。  具体的にお伺いしますけれども、このように中央集権、地方分権、二つの考え方、この地方分権という流れの中で、いろいろな権限、財源が地方に渡されています。私もそれは方向としては賛成します。しかし、その中で、一つだけ逆流したものがあります。それは、信用組合の検査監督。これについては、今まで都道府県がやることになっておったものが、逆に中央に返されましたね。地方分権という流れの中で、なぜ今まで都道府県が持っておった権限、職務が中央に返されたのか。  それには理由があったからです。そういう専門化した金融業というものについての指導監督、検査というものは、もうローカルガバメントの手に負えない。どんどん不祥事件がこれからふえるばかり、そういう危機感もあったでしょうし、現実認識もあったのでしょう。  ならば、検査権を中央に集中したのであれば、そういう金融・証券業に関する徴税権というのは、もう地方自治体から中央に移すべきではないかと私は思います。そのような立法措置を講じられる、準備されるお考えはありませんか。
  139. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今、地方の金融機関のお話がございまして、信用組合のこともおっしゃいました。それは、やはりおっしゃるように、ファイナンスというものはローカルなものではなくなった、単純に私はそういうことであると思っておるのです。  しかし、それから先へ進んで、そういうファイナンシャルインスティチューションに対する課税権もしたがって地方からとってしまうべきだということになりますと、それはさて、いろいろな議論が入ってきそうな気がいたします。  仮に、ある地域がタックスフリーだという地域を設けるということであると、それは、反対も賛成もあるでしょうが、一つの主張かと思いますが、そういう銀行のあるところには、その地域には課税権はないということ、それをしかし仮にだれが持つかということになれば、タックスフリーゾーンにするのならともかく、やはりなかなかそこは議論がありそうな気がします。
  140. 岩國哲人

    ○岩國委員 銀行、証券、金融サービス業に対する課税権は地方自治体にはないというふうな立法措置をして、具体的にどういう不都合が出てくると思われますか。
  141. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、なぜだという説明が大変に難しいと思います。
  142. 岩國哲人

    ○岩國委員 なぜという説明が難しいということのようですけれども、自動車産業、建設業、不動産業というのは、原料がどこで使われ、そして人がどこで働き、収益がどこの地域で上がり、そういうことが国の国境という中で非常に把握しやすい、ある程度目に見えやすい。それと金融・証券業というのは、全くこれは異質な世界に今なりつつあるのじゃないでしょうか。  その点からいって、同じような法体系や同じような税思想でもって、建設業、不動産業その他のものを地方に財源として渡すから、金融・証券業の財源も地方自治体に渡していいんだということになれば、第二、第三、第四の東京都のようなものが出てきたときに非常に混乱が起きるのではないか。混乱を未然に防ぐのであれば、検査、指導監督をやっている中央官庁に課税権も置くというのが一番自然ではないか、地方に渡すということの方がむしろ不自然ではないかと私は思います。  再度御答弁をお願いします。
  143. 大野功統

    大野(功)政務次官 業態の違いと課税権との違い、これはやはり別の問題だと私は思います。  指導監督権があるから国が、あるいは地方がすべて課税権を持つんだ、これは少し、国税と地方税の性格から考えまして、そこまで進んでいけるものか。先生のおっしゃる意味は十分わかるのでございますが、地方税は例えば応益課税でございます。こういうような観点からしますと、やはりそこは違って考えていかなきゃいけないのじゃないか。  そういう意味で、国税と地方税、その性格に応じて課税権を与えるべきであって、それが、業態が何だから、あるいは指導監督がどうだから課税権が国だ、地方だ、こういう考え方はちょっと私は納得できないような感じがいたします。
  144. 岩國哲人

    ○岩國委員 例えば、信用金庫あるいは地方銀行、こういうところに対する課税権というものを見た場合に、税体系の中で、有価証券取引税と、それからもう一つは今度の東京都の考えておるような外形標準課税、この二つは、今御答弁いただきましたけれども、国税の中に入るべきなのか、地方税の中に入るべきなのか、どちらがあるべき場所ですか。
  145. 大野功統

    大野(功)政務次官 まず、外形標準課税、これは政府の税制調査会でも十分議論されております。その議論されておる土俵というのは、地方税の中でされている。いわば応益的な要素が多いので、これは地方税に属するものだと私は思います。  それから流通税相当分、これはどちらで見るか大変悩ましいところがございます。したがって、消費税なんかを見ましても、国の部分あるいは地方の部分と両方に分かれているような感じでございまして、それは一つ一つについて十分議論しなきゃいけない問題だとは思いますけれども、基本的に言いますと、全国流通、これを考えますと、国税の分野で扱うべきかなというふうに考えます。
  146. 岩國哲人

    ○岩國委員 外形標準課税は地方税であり、それから有価証券取引税は国税、こういう理解でよろしいのですか。(大野(功)政務次官「はい」と呼ぶ)  そうすると、アメリカがやったことは、有価証券取引税をわざわざ中央から地方へ移したのです。国税であるべきと考えられているものを中央から地方に移すというのは、ちょっと私には理解に苦しむわけですが、もう一度御答弁をいただきます。
  147. 大野功統

    大野(功)政務次官 国の仕事は何か、そして課税権を中央に与えるのか、地方に与えるのか、これは基本的に、連邦政府という国を考えるのか、あるいは単一国家という国を考えるのか、こういうこともやはり背景として考えていかなきゃいけない。そういう中で、私、ニューヨークのことを十分勉強しておりませんけれども、ニューヨークでは、ニューヨーク州にということになったのではなかろうか。その辺は、私、自信ございませんけれども。  基本的には、国のあり方として、連邦政府なのか単一国家なのか、こういうことも考えていく必要があろうと思います。
  148. 岩國哲人

    ○岩國委員 次に、長銀、日債銀の譲渡問題について質問させていただきたいと思います。  この日長銀、日債銀の譲渡問題について、新聞報道等いろいろ、かなり大きくされておりますけれども、今まで、大蔵省あるいは金融再生委員会金融監督庁、この二年間の間に予算委員会、大蔵委員会で何度も取り上げられましたけれども、大事な発表がすべて、大蔵委員会が開かれておらないとき、開かれる前か、もう閉められた後か、予算委員会も閉められた後。  具体的に申し上げますと、日長銀の検査結果の公表、債務超過であるということがわかりました。それまで、債務超過ではないか、ないか、ないかと何度も質問され、そんな疑いは今のところ承知しておらないという答弁でずっと大蔵委員会も予算委員会もきている。そういったものは、予算委員会が終わった後、発表された。  特別公的管理、いわゆる国有化の発表、これも、予算委員会も大蔵委員会も開かれておらない。したがって、きょうの発表は、あるいはきのうの発表はといって、国会で審議の対象にならないような時期を選んで今まで発表されております。  長銀にあっては、優先交渉決定、リップルウッドにしたといったようなことの公表、あるいは基本合意書締結の公表、いずれも発表された時期が、なぜか、大蔵委員会、予算委員会が開かれていない時期が選ばれてそういうことが行われてきておる。  こういう何兆円というお金が国民負担になるかもしれない、そして世間一般の注目度が非常に高いとき、今まで、すべてとは言いませんけれども、大蔵委員会、予算委員会で直ちに熱い話題として審議しにくいようなときに発表が行われてきておる。これについて、何か説明していただける点がありますか。
  149. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 突然のお尋ねですので、その国会の開会状況と記者発表の状況がいかなる関係にあったのか、私、つまびらかにはいたしませんが、私が参りましてからいろいろ議論をしておりますのに、そのような国会の委員会の開会しているときを避けて物事を行おうというようなことを考えている、あるいは考えていた節は一切ないというふうに申し上げます。
  150. 岩國哲人

    ○岩國委員 それでは、その答弁を踏まえてお伺いいたしますけれども、今後は、そうした予算委員会、大蔵委員会が開催されているときを、必ずということは無理なこともあることは私も十分わかります、不可抗力ということもあります。しかし、偶然になったということが幾つも重なって、国民の疑惑を招かない、あるいは我々大蔵委員会委員、予算委員会委員の審議権を制約するような、あるいは取り上げるようなタイミングで発表されることがないように、十分に努力していただきたいと私は思います。  むしろ、すべての発表はそういうときにきちっとこういう委員会の場所で発表する、それから記者発表をされるぐらいに国会を重視すべきじゃないかと私は思います。国会議員のほとんどが、大体、国会が閉まっているときに新聞で読まされている。委員会も開かれていないから、ここで質問するわけにもいかない。そのような時期をあえて選んで、そして次々と、かなり風化した段階でやっと国会が開かれている。私は、こういう扱い方をするということは、今度の法案の取り上げ方にしてもそうですけれども、金融行政の姿勢そのものに大きな問題がありはしないかと思うのです。  予算委員会の場で、大蔵委員会の場で、今こういうことを考えて、きょうの午後これを発表しますといったようなやり方で発表が行われた例がありますか。お教えください。
  151. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 今後進めていきます場合に、委員のおっしゃったように、わざわざ避けてやったというようなことはないと私はかたく信じておりますが、今後とも、わざわざ避けてやるというようなことを意図的に行うことはいたさないということは申し上げたいと思います。  それと同時に、法の仕組みをよく御存じでいらっしゃいますが、法の上では、これは再生委員会が再生委員会責任と権限でもって決めていく、それから、第五条におきまして、政府は、おおむね六カ月に一回、そしてまたその求めがあったときは直ちに国会に処理の状況を報告しなければならないというのがございまして、それは、その手続をきちっと踏んできたのであろうと思います。  私もまた役所へ帰りまして、今までのその辺の状況もよく聞いてみたいと思っております。
  152. 岩國哲人

    ○岩國委員 私は国会の経歴が非常に短いわけですけれども、今までのこうした大きな金融事件、山一事件なんかも何十年か前にありました。そういう大きな公的資金の負担を伴うような政府の措置、救済、あるいは国有化、そういうものが国会の中でまず発表された例というのはありますか。いつも国会の外で発表されている。国会議員は後から、新聞を読んでから審議を開始するということばかりだったのではないかと思うのです。ばかりではなかったという例が一つでもあったら教えていただきたいと私は先ほど質問したわけです。
  153. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この一年半ぐらいのことでございましたら、私は比較的、閣内におりまして、存じておりますが、今岩國委員の言われましたことは、振り返ってみて、何か政府が意図的に国会を避けていたという感じは、私は正直持っておりません。  確かに、長銀のこと、いろいろなこと、例をお挙げになりまして、年の暮れになってそういうことが行われたということ、そのとおりだったのだろうと思います。ただ、国会は国会で、しきりに連日のようにこの議論をなすっておられるわけですから、それを避けるなんということはあり得ないことだったし、むしろ、大変にそれで難しい事態だったと思いますが、だからといって、国会を避けてということも何も実益はないのでして、発表すればすぐ翌日御議論になるわけですから、そんなことをしても何の役にも立たないし、また、御質問があっても、はっきり決まっていないことは、信用にかかわることですから、正直申し上げられないということもあることも御理解いただけると思うのです。  どうも私は、この一年半に関する限り、意図的にそういうことが行われていたと思いません。また、行いましても別に実益はありませんから、今後もそういう意図でそういうことが行われるとは思いません。
  154. 岩國哲人

    ○岩國委員 私自身も、そういったことは実益がないという点はよくわかります。実益がないことをなぜそのように、結果的には偶然が重なってきたのか、それを残念に思う、そういう立場から私は申し上げております。決まっていない決まっていないという議論が、連日のごとくと今大蔵大臣がおっしゃいました。確かに連日のごとく行われてきたがゆえに、我々としては失望を感じざるを得ないわけです。  なぜ委員会が終わったら、終わったのを待っていたかのごとくそのような発表があるのか、今までの日にちのチェックによるとそういうのが出てきておりますから、そのようなことは偶然が重ならないように、本当に国会に対してそれだけの誠実な態度というものがあるのであれば、これだけの委員が忙しい中いつも座っている、そういう中で、きょう発表します、あした発表します、午前中に発表しました、そのようなホットな話題としてまず国会に報告する、国会の国会議員にまず審議の対象にする、そういう姿勢というものが今まで欠けておったのじゃないか、その点を私は非常に残念に思います。  新聞やテレビがなかったら、我々はどうやってそういうことを知ることができるのですか。何のために国会議員はこうやって国会に来ておるのか、そういうことも含めて私は大変に残念に思いますし、また、谷垣委員長は、約束どおりこれからできるだけ、予算委員会が開かれている間に早くこれを発表しなきゃいかぬ、大蔵委員会が開かれているから、早くこの作業を片づけて、検査発表の通知は早く開会中にやるべきだ、それぐらいの配慮なり誠意というものを見せていただきたいと私は思います。  そういう検査結果というものは書類になって次々と上がってきている、そういうのを横目に見ながら、大蔵委員会が終わるのを待っていてその後発表するというようなことが行われたのじゃないかと、いまだに私はその疑念を消すことができません。  次に、長銀の問題について。  日債銀、日長銀の財務代理人契約、フィスカルエージェンシーアグリーメントと言うのでしょうか、その二つの契約を、我々は理事会を通じて要求しておりますけれども、いまだにそれを手に入れることができないのです。日長銀の仕事は大半終わった、あるいは完全に終わっているのじゃないでしょうか、新生銀行としてもう既に出発しているのですから。そのゴールドマン・サックスとの契約期間というのは、まだ進行しているのか、終わったのか。二番目に、なぜそのアドバイザリーアグリーメントというのは国会に提出できないのか。この二点をお願いいたします。
  155. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 長銀と日債銀のフィナンシャルアドバイザーとの間で締結されたフィナンシャルアドバイザリー契約でございますけれども、この分野は、委員、長い経験でお詳しくていらっしゃるのだろうと思って、釈迦に説法のようなことを申し上げるのは恐縮でございますけれども、どうもこれは大変、こういうフィナンシャルアドバイザーをされる企業から見ますと、この契約は、言うなれば業務のノウハウがいっぱい詰まったところのようでございまして、これを開示するということは今後のビジネスの展開に支障を来しかねない、こういうことで、開示に当事者は大変強い反対がございます。  そういうことを考えますと、特別公的管理というようなものが今後は余り使われない、使う機会が多いということを我々は望んでいるわけではございませんし、特別危機管理という形で新しくなりました場合にもそういうことはできるだけ使われない方が望ましいわけでございますけれども、そういうノウハウを公開していくということが、今後フィナンシャルアドバイザーを使わなきゃならないような場合が出てきたときに支障を来すのではないか、こんなふうに考えておりまして、この契約内容は守秘義務から外れるものではない、守秘しなければならないものである、こういうふうに思っております。
  156. 岩國哲人

    ○岩國委員 ゴールドマンに支払われた報酬というのは、一説によると七億円、そしてデューデリジェンス、その後の不良債権のいろいろな吟味、調査、そのレポートをゴールドマンに仕事をさせて、それに対して五十五億円が払われたといったような話がありますけれども、こうした一般のアグリーメントに基づいて支払われたもののほかに、さらにデューデリでもって調べ上げた不良債権の分類、これに対して日本政府あるいは長銀がお金を払っているという事実はありますか。
  157. 森昭治

    ○森政府参考人 お答えを申し上げます。  委員御承知のとおり、長銀の例で申し上げれば、確かにゴールドマン・サックスがフィナンシャルアドバイザーとして、受け皿探し、さらに受け皿との交渉をアシストするという役割は演じましたけれども、デューデリジェンスということに関しましては、これは長銀自身及び長銀の公認会計士がやるわけでございまして、それについてフィナンシャルアドバイザーに何か対価を出すということはございません。
  158. 岩國哲人

    ○岩國委員 そうすると、ゴールドマンに払われた対価は総額七億円、それしかなかったということですか。
  159. 森昭治

    ○森政府参考人 金額の多寡につきましては、先ほど大臣から御答弁させていただきました理由により差し控えさせていただきますが、基本的に、その内容というものについては成功報酬という、つまりパートナーズ社へ譲り渡したという成功に対する報酬という部分でございます。
  160. 岩國哲人

    ○岩國委員 これは、公共事業の発注に例えるならば、競争入札的に行われたわけでしょう。十何社からのプロポーザルというのをもらって、いろいろな、能力、実績あるいは報酬の金額等々、何項目にもわたって慎重審議した結果採用された。金額一本だけの公共事業の競争入札とはその点は異にしますけれども、しかし一方的にゴールドマンだけを名指しで指名入札させたものとは話が違うのです。他業者から見れば、その入札条件あるいは負けた条件、勝った条件、それを当然知る権利はあるのじゃないですか。
  161. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  確かに、優先交渉先を最終的に一社に絞った段階では、複数の条件、条件にはビジネスプランも含めましての条件の比較でございまして、その場合にはその条件を比較して、国民費用最小の原則、金融安定化に資するかどうか等の視点で一社に絞ったわけでございますけれども、その場合に、いわば一社に絞った方の条件は公表させていただきましたけれども、落ちた方の条件につきましては、先方も公表しては困るという強い要望があって公表しなかったわけでございます。
  162. 岩國哲人

    ○岩國委員 官庁の発注工事でいろいろな入札条件なんかはすべて公示されておるのじゃないですか。業者の方で、何とか建設がそれは発表しないでくれと言ったら、日本政府はそれは発表しないのですか。いや、今度のは特殊なものだと。では、特殊な例を挙げて言えば、例えば阪神大震災のときにあの高速道路がつぶれて全部修復しなきゃいかぬ、あの工事を発注するときに、その条件というのは全部秘密で、どういう条件だったかというのは業者も国会も知ることはできない仕組みになっているのかどうか。  なぜ、一般の建設工事の場合には一〇〇%の透明度が保証されているのに、金融という名の公共事業のときだけはそれが透明でないのか、それをお答えいただきたいと思います。
  163. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 先ほど御答弁申し上げたことの繰り返しになりますけれども、このフィナンシャルアドバイザー契約、この中には、やはりフィナンシャルアドバイザーというものはどういうことをやっていくのかというノウハウそのものが込められているというふうに私は理解をしておりまして、それで当事者の方からも、これを表面に出すということは今後こういうフィナンシャルアドバイザーとして活動していくことに支障を生ずる、こういう強い要望が来ております。  したがいまして、当事者のこれからの経済活動、そして私たちが今後もフィナンシャルアドバイザーというものを使うときのいろいろな便宜、こういうものを総合的に判断いたしまして、私どもはお出しするわけにいかない、こう考えているわけでございます。
  164. 岩國哲人

    ○岩國委員 こういったアドバイザリーアグリーメントというのはノウハウのエッセンスがいっぱい詰まっておって、企業秘密だからよそに出せない、こういうことをおっしゃいましたけれども、では十何社から出てきたものをお比べになって、そんなにてんでんばらばらで、確かに企業秘密のエッセンスが込められて、料理の仕方が全部違っているというほどに違っていましたか。私の経験ではそんなに違っておりません。三菱重工なり三菱商事がそういうものを要求したときに、モルガンでもメリルリンチでもゴールドマンでも、みんな持っていきますよ。大体似たようなスタンダードというのがあって、お客さんが比較しやすいようなそういう配慮というものがなされているものなんです。それを、企業秘密だからといって、まるで何かの技術の特許みたいなふうに言っていることは、実際に担当者が目でごらんになれば、そんなことはないはずです。  それではお伺いします。昨年の四月十三日、参議院で我が党の浅尾慶一郎参議院議員が資料提供を要求しております。そのときに、なぜ出せないかという答弁を金融再生委員会がしておられます。参議院で、なぜ出さないかということを答弁された、それを繰り返していただけませんか。
  165. 金子一義

    金子委員長 ちょっと待ってください。参議院の資料要求は何の資料要求ですか、岩國先生。(岩國委員「アドバイザリー契約書。ちょっと補足します」と呼ぶ)
  166. 金子一義

    金子委員長 岩國君。
  167. 岩國哲人

    ○岩國委員 これは柳沢大臣がお答えになっていることでありますので、谷垣大臣にその部分をもう一度繰り返していただきたい。ちょうど一年たっている、一年たって同じことをまたここで繰り返す根拠があるかどうか、自分で答弁していただきたいと思います。
  168. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  と申しますか、正確な柳沢元大臣の議事録がございませんので、そのとおり正確にお答えができるかどうかわかりませんけれども、当時の我々の考え方といたしましては、先ほど谷垣大臣から申し上げましたとおり、第一に、純粋民間企業のゴールドマン・サックス社が今後の日本でのビジネスに支障を来しかねないこと等から開示に反対しているというのが第一。これに伴って、当方としては、国家公務員法上の守秘義務がかかるということでございます。第二点としては、現時点で開示した場合、今後、特別公的管理銀行等のフィナンシャルアドバイザーの活用に悪影響を及ぼしかねないという点。この二つを理由にお答えされたと承知しております。  今日においてこれと変わりないかということでございますが、我々は、ゴールドマン・サックス社に対していつの日か同意を得て国民にフィナンシャルアドバイザリー契約の内容を公示するといいますか、そういう先生方の要求があることを十分承知しておりますので、そういう要請のあることはゴールドマン・サックス社に伝えてございますけれども、今日におきましてもまだ反対であるという主張に変わりがないということでございます。  ただ、いつの時点かではゴールドマン・サックス社も自社のビジネスにそれほど影響がないという時点は来ると思いますし、その時点で、ゴールドマン・サックス社の同意が得られれば我々は開示できるものと思っております。
  169. 岩國哲人

    ○岩國委員 去年の四月の参議院の柳沢長官の答弁は、仕事がまだ終わっておらない、それから、近く日債銀の財務代理人契約を締結する運びになっておるからそちらの方に影響を与えたくないと、これは一年前の話です。  日債銀の代理人契約はもう既に締結されております。仕事もかなり終わっておるでしょう。そして、日長銀そのもののゴールドマンの仕事は、一年前にまだ仕事が終わっておらないからという時期はもう完全に過ぎております。仕事は終わっておる、日債銀の代理人契約影響を与える心配は全くない。にもかかわらず、まだそれを秘密にしなきゃいけないのか。  私は、代理人契約そのものに大きな大きな疑惑とか不正が行われているということを、そういう偏見なり予見を持ってこれを聞いているわけではないのです。ただ、こういう公的負担の大きい仕事には、あらゆるものは常にディスクロージャーする。情報開示とかディスクロージャーというのは、我々がこの二年も三年も国会のあちこちの委員会で言ってきたことじゃありませんか。それが、巨額な税金を使う、何億の話じゃないでしょう。それだけのものを使う仕事をさせたときに、その業者との契約さえも発表できないということを言い続けるならば、余計、そこには何か大きな疑惑があったのじゃないかと思う人も当然出てくるでしょう、近々ある雑誌がそういうことを来月号で書くようですけれども。  例えば、税金の問題について、ゴールドマンとの契約の中に、アカウンティングとかリーガルコンテキストとかいろいろなことについてアドバイスする、そのほかに税務についてもアドバイスをするということははっきりと文言には書かれておったかどうか。その点だけでもお示しいただきたいと思います。
  170. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  我々、ゴールドマン・サックスに対しまして、先生の要求あるいは浅尾先生の要求を踏まえまして、どこまで開示していいかということを詰めさせていただきまして、その結果として、ゴールドマン・サックス社とのFA契約の要点という形で昨年の四月に提出させていただきました。  その中に書いてあるサービス内容というのは、第一に「長銀に対する第三者から見た公正な評価」「譲渡先の選定」「譲渡交渉」「譲渡スキーム・条件の検討」「譲渡契約書の作成に係わる、財務上の助言及び助力であること」、これがサービスの内容でございます。  報酬体系は、「月額の基本料」「基本合意契約が締結された場合の特別報酬(その金額は時期によって異なる)」、そして最後に「その他の実費からなること」ということを開示することについて、ゴールドマン・サックスから同意を得まして、浅尾議員の資料要求に対する回答として出させていただきました。  これ以上のサービス内容等の開示というものは、今もってゴールドマン・サックスから拒否されておりますので、御開示は勘弁させていただきたいと思います。
  171. 岩國哲人

    ○岩國委員 その資料は私もコピーをもらっております。今その三ページの上から四行目、五行目のところをお読みいただいたのだと思います。そうした「譲渡交渉」「譲渡スキーム・条件の検討」、こういったことの中には、当然のことながら、法律問題もあれば会計問題もある。そして税金の問題もあるでしょう、将来どのような税金が発生するのか。  また、「アドバイザーの選定基準」というものを「参考」としてこの中に書いておられます。その選定基準は九項目あって、その中には「法律・会計問題についても、解決し得る能力を十分に有していること」といったようなことも書いてあります。  税金の問題について助言を得るということは前提になっていなかったのか。当然こういったMアンドAというかそういう場合にはそれは入っているものですけれども、ゴールドマンとの間に税金問題に関する助言は免責になっておったのか、あるいは免責になっておらないで、当然FAとしてあるものだという前提契約されたのだと思いますけれども、どちらでしたか。
  172. 森昭治

    ○森政府参考人 そのような点に触れますことは、ゴールドマン・サックスとのこれまでの協議、信頼関係といいますか、そういうものに反することにもなるので、これ以上のお答えは控えさせていただきたいと思います。
  173. 岩國哲人

    ○岩國委員 今のような答弁を世界のバンカーが聞いたらあきれると思いますよ。そんな、FA契約を結んでアドバイザーと称しながら、一番大切な税金のことについても免責されておった、あるいは期待されておったけれどもしなかったかと思わせるような答弁があっては困るのじゃないですか。ゴールドマンの名誉のためにも、しっかりともらっておった、助言はいただいておったと言うべきじゃありませんか。あるいは、いい仕事をさせた、政府側、日長銀の立場から何億円かに相当する、それだけに見合う仕事はちゃんと当然やっていただきましたと言うべきではありませんか。そういう答弁ができないということは、なぜですか。
  174. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 たびたびのお尋ねでございますから、私も同じことを何度も繰り返すのは心苦しいのでございますが、先ほど森事務局長が、昨年四月にいろいろ検討の結果ここまでは出せるとまとめたペーパーを一部読み上げさせていただきましたけれども、その内容にもございますように、フィナンシャルアドバイザーの、例えば具体的な報酬契約そのほか、こういうものを出すことは、日本のみならず今後国際的にフィナンシャルアドバイザーとして活動していくことについて非常に支障が生ずる、私もそれはそうだろう、こういうふうに思うのです。  それで、いろいろ詰めて、先ほど申し上げたようなサービス内容あるいは報酬体系、こういうことが入っているということを申し上げさせていただいたわけでございますが、先ほど委員が言われましたように、税務についてどうなっているのかというようなことについては、先ほど森事務局長もお答えは遠慮をさせていただきたいと御答弁を申し上げたわけでありますが、私もその点については、同じようなことで恐縮でございますけれども、御容赦を願いたい、こういうふうに申し上げざるを得ないのを大変残念に思っております。
  175. 岩國哲人

    ○岩國委員 それは、何遍も同じようなことを聞いて私も本当に申しわけないとは思います。しかし、これは何百万円の話ではなくて、何兆円の国民に対する公的負担がかかわってくる問題ですから、たとえ長官に嫌がられようと、私は何十回でも何百回でも同じ質問をせざるを得ないのです、満足する答弁をいただくまでは。  世界の常識は、アドバイザーというのは税務の面もきちっとアドバイスするのが、これは世界の常識ですよ、この業界の。にもかかわらず、常識であるのにもかかわらず、常識に基づいてちゃんとした、税務を含めていい仕事をしていただきましたということは、なぜ言えないのですか。何か心配事でもあるのですか。御答弁いただきたいと思います。
  176. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  委員御指摘のような、何か懸念を持ってそこの部分について隠しているというような意識は我々には全くございません。ただ単に、ゴールドマン・サックスとのFA契約をどこまで開示するかということに対して、我々、国会の御要請を踏まえてぎりぎりゴールドマン・サックスとやって、でき上がった文章が国会に提出させていただいたものでございますので、この場でそれをはみ出すようなことを申し上げられないという、それだけでございます。
  177. 岩國哲人

    ○岩國委員 いいですか、もう一つ。  日債銀の仕事をしているモルガン・スタンレー。このモルガン・スタンレーの東京の代表はテリー・ポルテ。私は彼と同僚、まだ若い社員でした。彼はモルガン・スタンレーとして結んだ契約書を公開してもいいと言っているじゃありませんか。ゴールドマンは出してもらっちゃ困る、モルガン・スタンレーとしては出してもいいと。  では、日債銀に関するFA契約は出せて、なぜ日長銀に関するFA契約は出せないのか。また、モルガン・スタンレーが出すと言っているのを、これは浅尾委員がプライベートに話をされたことですから、それは本当に出てくるものなのか出ないのか、しかし、少なくとも代表者の言葉として出す用意があるということを言っているモルガンと、出しては困ると言っているゴールドマンと、これはなぜそんなに違ってくるものなんですか。  いい仕事を堂々とやっておられたら、どんどんそんなものディスクロージャー、情報公開すべきものだし、政府としては、私のところは何とか不動産とは違うのだから、日本政府として公的機関だからタックスペイヤーのためにこのディスクロージャーをしなきゃならないのだという説得はできないのですか。
  178. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 モルガン・スタンレーに関しましては、委員はかつてそこで仕事をしていらしたことがおありですから、これはよく御存じなのだろうと思いますが、私は、代表者のポルテさんがそのようにおっしゃっているというふうには聞いておりません。
  179. 岩國哲人

    ○岩國委員 別にここで参考人、証人喚問するほどの大げさなことじゃありませんけれども、しかし、それはだれかがきちっと確かめておかなければ、この参議院の審議の記録のままでは、モルガン・スタンレーは情報公開する用意があるということになったままになっているのじゃないですか。それを否定した記録がどこかに出てきておりますか、何か。
  180. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  正確に申し上げますと、参議院でそういう話が出ましたものでございますので、当方といたしましても、先ほど岩國先生がお示しいただいた方に直接確認させていただきました。すなわち、FA契約というものを、例えば特別公的管理が終了した場合には外に出せるというふうに聞きましたが、そういうことですねというふうに確認させていただきました。  その答えは、私は確かに浅尾先生からの電話でいずれ出せると言ったのであって、時期は明示していない、したがって、特別公的管理終了直後に出すとか、そういうことについては、やはり長銀の場合同様、我々も困る、ただ、いずれはそれに同意して、ビジネスに支障がなくなった段階では出せるということを言ったのだというふうなことを当局の方には伝えてまいりました。それが正確なところでございます。
  181. 岩國哲人

    ○岩國委員 それでは、日長銀の新生銀行経営責任者の八城さんは、二年後に五百億円の業務純利益が見込める、三年後に七百億を目標とすると。これはすばらしい銀行ですよ。二年後にそれだけ、三年後にそれだけということを具体的な数字を挙げて経営目標とできるような銀行は、残念ながら日本にはありませんでしょう。  なぜそんなことが言えるか。何兆円も使って日本で一番心身健全な銀行をつくってしまったわけです。ほかの銀行はみんなまだ不良債権の処理に追われているときに、きれいさっぱり臓器移植も全部終えて、おふろにしっかりと入って身ぎれいになって、これから後は稼ぐだけ、しかも損失が出そうなときには日本政府からの損失補てん状までもらっている。それだけ恵まれた形でもって出発するのですから、五百億、七百億、もしそれが実現するならば、世界の常識からいえば、これは時価総額一兆円を超える銀行なのです。一兆円を超える銀行を、今日本政府は、我々納税者のお金を使ってそういう銀行をつくり上げた。一兆円のキャピタルゲインがいつかこの十人の投資家、あるいは投資機関によって手にする日が来るでしょう。そのときのキャピタルゲインはどこに入るのですか。  私は、予算委員会でも聞きました、越智長官に。日本政府税金を取れないという情報があったら、岩國委員教えてほしいと。なぜ私がそれを教える必要があるのですか。取れるという前提でこの日長銀の売り先を、十人のニュー・LTCB・パートナーズ、リップルウッドにお売りになった。その十人の投資家が一兆円のキャピタルゲインを手にしたときに、課税権はどこの政府が持つのか。五〇%とすれば五千億円のお金は日本政府に入ってくるのか、入ってこないのか。この点、明快な答弁をお願いいたします。
  182. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 今回のパートナーズ社との契約では、預保が株を持っておりますから、その株の売買益、キャピタルゲインは国に将来入ってくる仕組みになっておりますが、今委員がおっしゃっているのは、買い主である方々のキャピタルゲインですね。(岩國委員「もちろんです」と呼ぶ)それについては、私ども、この契約のもとでは、とりわけてそのことについて考慮しているわけではございません。
  183. 岩國哲人

    ○岩國委員 谷垣委員長、中央信託、三井信託、別のグループがあったわけでしょう。  いいですか。Aの買い手とBの買い手と、それぞれの出している条件が、日本のタックスペイヤーの観点から言ったら、どちらが高く買っていただけるのか。二番目に、それがすばらしい銀行にいつかなるという前提で投資家は買ってくるわけですから、投資家が一兆円の、あるいはそれを上回るかもしれません、キャピタルゲインを手にしたときに、日本の納税者にありがとうございましたと言って返ってくるキャピタルゲインタックスの収入というのは、日本政府は幾ら見込めるのか。Aの場合には幾らなのか、Bの場合には幾らなのか、こんなことはアドバイザーがきちっと精査して、比較して助言するものでしょう。ゴールドマンの助言にそれがあったかどうか。  アドバイザリーアグリーメントには必ずタックスマターというのが入っているはずです。そのタックスマターについて、ゴールドマンが、AでもBでも将来のキャピタルゲインは全くセームですよ、そんなことを言っておったのか、あるいは忘れておったのか。忘れておったのだったら、これは、はい七億円お払いしますということにはならぬと思うのです。大変な業務上過失じゃありませんか。  越智長官自身も、そして残念ながら谷垣長官も、その点については考慮しておらないと。考慮しないでなぜこんな大きな取り決めができるのですか。考慮するのが国家公務員の役目じゃありませんか。ちゃんと答弁していただきたいと思います。
  184. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 今回のこの売却に関しましては、今の委員の御質問は、内外無差別であるという前提に立って私どもはやっておりますので、そのことの是非はいろいろ御議論があろうかと思います。いろいろなお考えがあろうかと思いますが、私どもの方針は、内外無差別ということでやらせていただいてこのような結論を出したということでございます。
  185. 岩國哲人

    ○岩國委員 それは、政治的なスタンスとしては、当然無差別で、国籍を問わずやっていただきたいと思います。  私が経験した東京証券取引所の開放の問題、当時、竹下大蔵大臣のときでしたけれども、あのときには、そういう会員権を初めて海外に明け渡すかどうか、大変大きな騒ぎになったのです。しかし、値段が不透明であるということでもって、私はメリルリンチの代表者として山一証券の申し込みを断り、そして、広島の証券会社の手に入りました。結果的には、新しい議席をつくるという大蔵省の決定がなされて、それは平和なうちに解決いたしましたけれども。そういった点、インターナショナルな、グローバルなマーケットセンターとして、長官のおっしゃった考え方はまことに私は正しいことだと思います。  しかし、国益を考えた場合に、AとBと両方あって、どちらに売却したらどうなるかということが、将来のキャピタルゲインのことは忘れておりましたでは話にならぬじゃないですか。お答えいただきたいと思います。
  186. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  先ほども大臣が答弁されましたとおり、当委員会で、まず、どういう先を受け皿にするかという審議を深掘りいたしました。その際に、今のようなキャピタルゲイン税の観点、これは、租税条約の観点で、どっちに税金がいくかというのは、いろいろな場合によっていろいろ違いがあるわけでございますけれども、そういう考慮というものをしますと、実は内外無差別という原則はおろさざるを得なくなるわけでございます。  その点について議論をいたしまして、やはり国内の受け皿を選ぶにはそれなりのまたいろいろなメリットがあるかもしれません。それから、国外の受け皿を選ぶ際にも、例えば日本の金融技術に刺激を与えるような経営をしてくれるのではないかとか、いろいろなビジネスプラン上、国内の受け皿でないメリットもいろいろあるのではないかというような委員会議論の末に、やはり内外無差別ということを原則にさせていただいたわけでございます。  それでは、その銀行がしっかりしていって株式の再上場になったときにどれだけを我々は取り返すことを頭に置くかというと、まず基本的には、早期健全化法に基づいて資本注入した額、これは公的資金でございますから必ず返してもらう。それプラスアルファが返ってくるほどしっかりした銀行になる計画ができているかどうかということはきちっと見ます。それからもう一つ、株式の含み益を当該銀行の資本勘定に入れたならば、その分もきちんと返してもらう。我々は、そこまではきちっと公的資金を回収するというめどを立てた上で、受け皿は決めております。  ただ、委員のおっしゃるところは、さらにそれを超えて、株式がもっと上場したときに国にキャピタルゲインが入ってくるように考えていたのかと言われれば、そこまでいわば無制限に、あるいは長銀の場合でいえば、ロス埋めの三・六兆も取り返すようなことまで考えていたかと言われれば、そこは少し話は別だというふうに考えておりました。
  187. 岩國哲人

    ○岩國委員 そういった、新しい銀行が将来どれぐらいの利益を生むだろうか、生まないだろうか、あるいは損が出るだろうか、私はそんな段階ではなかったと思います。  三・六兆円の金を入れて、不良債権をきれいにした。きれいにもなっていない銀行は一生懸命汗をかいて一生懸命利益を出そうとしている。現に、新しい、経営者を代表して、非常に楽観的な、確信のある、積極的な目標、二年後に五百億、三年後に七百億業務利益が出せる、それだけの客観条件は全部段取りはできているわけです。  それをどうやって国民のために、将来の得べかりしキャピタルゲインを、我が国に入るのか、オランダに入るのか、アメリカに入るのか、あるいはどこの国にも入らない、脱税グループの喜びの手に入ってしまうのか、こういう配慮というものはないということは、私はおかしいと思うのです。  私は決して皆さんを軽べつするわけじゃありませんけれども、海千山千のそういうゴールドマンとかモルガン・スタンレーの場合にはちゃんとそういうことは考えて、弁護士の費用はどっちが持つかとか、印刷費をどっちが持つかとか、あるいは報酬を七億円にするか五億円にするかとか、そういうこととは違って、こういうフィナンシャルアドバイザーが一番頭を使うのは、この投資に対して将来かかる税金をどれだけ限りなくゼロにしようか、そればかり考えているのがそういうプロフェッショナルなアドバイザーなんですよ。そのプロ中のプロと言われるゴールドマンが、なぜ日本政府に、Aの方に売却したら将来のキャピタルゲインはゼロですよ、Bの方だったらこれだけ入ります、入札価格は千億違っても千億以上のキャピタルゲインが税収として入ってくる場合にはリップルウッドではなくて国内のこの銀行に譲渡すべきです、そんなことはみんなやっていることなんです。  もしそういう助言やアドバイスが受けられていなかったとすれば、これはゴールドマンの怠慢、そういう助言を受けていながら無視したとすれば、これは金融再生委員長は私は国益の点から告訴をされなきゃならないと思います。  御答弁をいただけますか。
  188. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 私は、直接当時の金融再生委員会内部の議論を、全部参加していたわけではございませんので、事後の報告でございますが、先ほど森局長が申しましたように、内外無差別という原則を立てるとすると、特に今のような、キャピタルゲインがどうなるかというようなこと、これは本当に区々に分かれる。したがって、それを言うのであるならば、やはり内外無差別という原則は立てられない、こういう議論はあったやに聞いております。  したがいまして、特別公的管理という枠組みの中で、そうして内外無差別という原則を立ててやっていくとなると、そしてもう一つ申し上げたいことは、これは確かに幾つかの受け皿となろうと手を挙げた方々があったことも間違いないわけでございますけれども、こういう俗な表現がいいのかどうか私はわかりませんけれども、実際、娘一人に婿何人で、すごいよいお話ばかりがたくさんあったというふうには私は思っていないのです。  したがいまして、こういう形になったということ、確かに三・六兆の穴埋めというのは気の遠くなるような膨大な数字でございますから、私もこれは大変なことだなという気持ちがございますけれども、この枠内でこういう形でやったということは万やむを得ないことであった、こういうふうに思っております。
  189. 岩國哲人

    ○岩國委員 これは閣議に報告され、閣議の了解は得られておりますか、この日長銀のリップルウッドへの売却ということについては。いつの閣議でそれは了解されているのですか。
  190. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 これは、先ほど金融再生法の法のことを申し上げましたけれども、これは閣議の了解とか閣議での了承というようなマターにはなっておりませんで、金融再生委員会がその責任と権限でもって決定をするという仕組みになっております。もちろん事後的に閣議に報告はいたしてございます。
  191. 岩國哲人

    ○岩國委員 いつの閣議に報告されて了解が得られておるのか。三条委員会というものはそういったことについて免責されておるということですけれども、しかし、これは何兆円というお金が絡んだ、新聞記事でも一番トップに出てくるようなことについて、三条委員会というのはそうしなくて済むことになっておりますから、再生委員会の判断を最終的な判断としてこれを外国に売却しますということでよろしいのでしょうか。閣議では何一つ質問が出なかったのですか。  いつの閣議で報告されて、質問一つも出なかったかどうか、この点を確認していただきたいと思います。
  192. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 九月二十四日に優先交渉先を決定いたしまして、その次の機会の閣議で報告を済ませておりますが、特段議論はなかったと聞いております。
  193. 岩國哲人

    ○岩國委員 先ほどの税金の問題については、これは大変大事な大きな問題であり、当然のことながらアドバイザーとしては助言していないはずがないと私は思います。そういうことを耳にした上で、なおかつ内外無差別という原則のもとに、将来のキャピタルゲインタックス、得られたかもしれない五千億円あるいはそれ以上の国益というものを放棄してまで内外無差別の原則を適用しなければならなかったのかどうか。大臣があれだけおられて、一人もそういうことについて疑問を持たない、これはすばらしい内閣だと思います。全員一致、一人も質問も出さない。  私は改めて要求します。このFA契約というのを早く国会に提出していただきたい。次々とお金が出ていく。そして、次の日債銀の件についても、日長銀のときには何が行われたのか、何が行われなかったかということを我々は審議の上で十分しなきゃならぬ。いずれ今度は日債銀の問題が出てきます。日債銀のディールが終わってしまってから、はい、もう全部終わってしまったんです、ゴールドマンからのやつは今やっと出てきました、そのときに審議をしても何の役にも立たないような時期まで待たなければならないのか。  日債銀の取り決めが今進行しているときに国会議員が何を言って、どういう意見を持っているかということを、当然そこに反映させるのが大蔵委員会の役目じゃありませんか。そのためにも私は、ゴールドマンのFA契約というのをここへ出していただきたい、そのことを要求します。出していただけますか。
  194. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 FA契約につきましては、先ほど申し上げたことと違うことを同じ委員会で申し上げるわけには残念ながらまいりません。  それと、あと、三条委員会だといって免責されているのかというお問いかけがございましたけれども、これは、独立行政委員会でこれを処理せよ、これをやれ、こういう法の仕組みになっておりますのは、独立行政委員会としてその権限と責任でもって仕事をせよ、こういうことであるというふうに私は理解をいたしております。
  195. 岩國哲人

    ○岩國委員 くどいようですけれども、委員長も政治家であり、三条委員会としてはそういう権限も、それから責任も与えられているから、それで結構です。しかし、何千億円か何百億円の話じゃないのです。何兆円という話になって、これだけ国会の中でいろいろと意見が出ているときに、三条委員会だからそんなことは閣議に報告しなくてもいい、了解を得るということは必要ないと。政治家であれば、きちっと今のような問題も含めて、それでも内外無差別というものを、小渕総理、要求されますか、それとも国益のためにこれは弾力的に運用すべきですか、政治家らしい判断というのはそこに出てくるべきじゃないでしょうか。  委員長に私は要求いたします。今までほかの契約書、それから資料は提供していただきましたけれども、一番根幹をなす、そして、税金についてアドバイスが得られておったか、それともこちら側が無視したのか、その真相を解明するためにはこのFA契約を出していただくことは絶対に必要だと思います。お取り計らいいただけますか。
  196. 金子一義

    金子委員長 理事会でお諮りをさせていただきます。
  197. 岩國哲人

    ○岩國委員 では、日長銀のことから離れて、今度は日債銀のことについてひとつ質問させていただきます。  こののれん代が十億円。日長銀も十億円。この十億、十億というのは、偶然の一致のようになっている。一般には、日債銀には申しわけありませんけれども、日長銀の方がもっと大きくて、のれん代という場合には、日長銀の方が普通の常識ではもっと大きい、それは十倍か五十倍かはわかりませんけれども。なぜ日長銀と日債銀と同じのれん代としてカウントされなければならないのか。恐らく日長銀を支えてきた多くの中堅幹部、優秀な社員たちは、自分たちの銀行が日債銀と同じ評価しか得られなかったということを悔しがっている人もあるでしょう。  しかし、そういう個人的な感情は別として、我々国民立場から見て、日債銀よりもいい銀行であればもっと高いのれん代というのを要求すべきです。これは当然ですね。その点についてはどういうお考えをお持ちになったのですか。
  198. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  こういうのれん代というものの計算方法はいろいろあるようでございます、我々もいろいろ研究いたしました。そういう点につきましては、岩國先生まさによく御存じのことと思います。  ただ、一般に、この長銀とか日債銀とか、これは特別公的管理、特殊なものでございまして、受け皿に行くときにロス補てんというものがされます。長銀の場合でしたら三・六兆円ということで決まりました。日債銀につきましては、昨年九月の中間決算期の債務超過額は三・二兆円でございました。そういうロス補てんをいたしましても、単に資産と負債がバランスするということだけであって、資本金は何もございません。これから資本金をどうつけて、その資本金をつけてきちんと銀行となったものが、三年後、五年後、どのくらい利益を生むかというのはだれもわからないところではないかと思います。  そういう面におきましては、長銀にしたって日債銀にしたって、資産、負債がバランスしているだけの状況でございますので、結局は、買い手の方が、何人かの候補者がいわば札をつける、その中から、単にのれん代だけじゃございませんで、そのほかのいろいろな点も含めて総合的に考えて、国民負担最小の原則あるいは金融安定化にどう資するかという視点から選ばれたのが、長銀の場合はパートナーズ社であり、日債銀の場合はソフトバンク社であったということでございます。  したがいまして、十億円というのは、たまたま長銀が先に十億円つきましたので、日債銀の買い手の方もそれを参考にしたかもしれませんけれども、そういうことでございまして、何か絶対的な根拠があるかとか、どういう計算方法でこうなったかということは我々も聞いておりませんし、結果としてこうなったということでございます。
  199. 岩國哲人

    ○岩國委員 それは、ロス補てんが三・六兆と三・二兆円でほぼイコールだ、だからとおっしゃったわけじゃありませんけれども、グッドウィルというのれん代を十億円、十億円と。決まったのは、たしか長銀の方が先ですね。長銀の十億が決まって、日債銀が一億でもなく二億でもなく十億で決まったということを聞いたときに、どういう感じを持たれましたか。長銀というのは安く売り過ぎたのじゃないかという気は全くしませんでしたか。  二番目に、繰り返しますけれども、この新生銀行経営者は、二年後に五百億、三年後に七百億という非常に高い利益目標を持つ、そういう銀行ののれん代が十億でいいのかということなんです。世界のどこに二年後、三年後に何百億の利益を出せる銀行ののれん代を十億で売るような政府がありますか。  宮澤大蔵大臣大蔵大臣はずっと日本の金融機関を見ておいでになりました。長銀とも親しく交わられ、日債銀とも親しく交わってこられました。日本の銀行の値札をつけるとしたら、恐らく日本でたった一人、宮澤大蔵大臣しかおられないと私は思います。宮澤大蔵大臣の考えで、日長銀と日債銀は両方とものれん代十億、これは長い目で見てこられて納得のいく数字でしたか、お答えいただきます。
  200. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、詳しい経緯も何も知りませんけれども、あれはのれん代とかいいますけれども、骸骨の値段みたいなものじゃないかと私は思いますので、十億なら十億、一種のノミナルなのだろうと思っております。
  201. 岩國哲人

    ○岩國委員 いや、今のような、百億で売るべきものを十億で売ったとすれば、これは国の立場からいえばよくないことだと私は思います。百億で売るべきだったのです。  そして、ノミナルなものだから十といえば十、二十といえば二十、それが値段だよ、そういう感覚もあるかもしれません、こういう特殊な条件においては。であるならば、なぜ日長銀と日債銀が同じでいいのかということなんです。たとえ見せ金だろうとのれん代だろうとあるいはあいさつ料だろうと、二つのものがあって、それぞれの銀行には、それぞれの価値というものは全部違うはずだと思うのです。  それでは、十億ののれん代を払った日債銀が、新しい経営者が、八代さんと同じように、二年後に五百億、三年後に七百億を目指してやっていけるような銀行ですか。私は全く違う利益予想が出てくるのじゃないかと思います。のれん代が同じなのになぜ利益予想が違ってくるのか、そのときに改めてまた疑問が出てくるでしょう。両方とも十億というところは何とも私は納得がいかないわけです。  どのような議論が積み重ねられて、もうくたびれ果てて、十億なら十億とだれかが一声かけたからもうそれでいいよ、その程度のいいかげんなことだったと私は思いたくありません。どれぐらい真剣にこの十億というものは決められ、そして日債銀の十億が決められたときに日長銀の十億ということがどれだけ参考にされて決められたのか、きちっとお答えいただきたいと思います。
  202. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 これはそれぞれ受け皿になろうと言って手を挙げられた方々が、これからどういう経営戦略を持って札を入れようかとされたそれぞれの御判断でありますから、確かに長銀と日債銀が全く同じものであるのかどうか、どちらが価値があるのかないのか。宮澤大蔵大臣はノミナルなものとおっしゃいましたけれども、そこらも、資産と負債がバランスした状態でどうつけていくのかというのは、これはいろいろ言うことはできますけれども、結局札を入れてみないとわからない。札を入れてみた場合も、それはいろいろ総合判断でございますけれども、こういう形で出てきたということでございます。  もちろん、その過程ではいろいろ、あなたの申し分にはこれはこうじゃないかといういろいろなやりとりは当然あったと思いますが、その結論がこういうものであったということでございます。
  203. 岩國哲人

    ○岩國委員 それでは、十億というのは、それは買い手側からの数字が十億であったと、日債銀の場合、そのように理解してよろしいですか。
  204. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 そういうことでございます。
  205. 岩國哲人

    ○岩國委員 日債銀について、もう一つ関連してお伺いいたしますけれども、例の有名な奉加帳事件、奉加帳で集められたお金、これは、元気になってくれよという意味で、見舞金として届けられたのです。それが、いつの間にかお亡くなりになって、御霊前か何かに封筒を書きかえられて、それで届けられた。ほとんどの人は、見舞い金が御仏前になってしまっても文句は言わなかったけれども、一社だけ、その袋の中から取り出して返してくれと言ったところがありますね、六十五億円。しかも、それは見舞金以外のものには使ってはならない、それがおだぶつになった場合には返してもらうんだという裏契約があったからと新聞では報道されております。  この点について、事実関係はどうだったのか。そういう別途契約、サイドレターというものが有効なものとして、結果的には、日債銀は国有化されておりますから、国民負担において、お亡くなりになる前だったら日債銀の負担になるところを、棺おけの中へお入りになってからは国の負担においてそれをお返ししなきゃいかぬ、こういう状態になっているわけです。  なぜこの六十五億円は国民負担として返さなければならないのか、そういう契約は無効であるということをなぜ言い張れなかったのか。残り三十三社の奉加帳に連ねたところは、次から次と同じ要求をしてくるのかどうか。要求をしないまでも、それぞれの株主からあそこはちゃんとお金を取り返したのに、なぜあなたたち経営陣は取り返しをしないのかと言って株主訴訟を起こされる心配はないのか。  以上、まとめて御答弁をお願いします。
  206. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 今委員が指摘された問題は、事実関係から申しますと、日債銀から受けております報告でございますが、平成九年の六月十九日に、第一火災と同行の関連親密先である株式会社長浜地所というのがございますが、それとの間で貸し株契約が締結されまして、その契約において、株価が一定金額を下回った場合には長浜地所が第一火災にその差額を支払い、株価が一定金額を上回った場合には第一火災が長浜地所にその差額を支払う、こういう特約がなされまして、そして日債銀が長浜地所の債務を保証した、そういう契約があった、こういうふうに報告を受けております。  それで、今なぜそんなものを払わなきゃならないのかということでございますが、確かに、何かこういう一つだけ裏契約があったというようなことは、まことに理不尽ではないかという御意見もあろうかと思います。特別公的管理のもとでは、日債銀と、それから国有化された、特別公的管理下の銀行というものは法的に人格が継続しておりますので、有効な契約には縛られるという関係になるわけでございますが、正確にちょっと私記憶しておりませんが、たしか三つほどの弁護士事務所に、これはちょっと、余り委員会で記憶の不確かなことを申し上げてはいけませんのでその三つは撤回させていただきますが、幾つかの法律事務所と相談をして、この契約は有効であるということであったのでこの保証債務を支払ったというふうに報告を受けております。
  207. 岩國哲人

    ○岩國委員 奉加帳というものについてもいろいろな議論がなされましたし、これからもいろいろ問題になるだろうと思います。  三十四社のうち三十三社は返してくれということを言っておらない、それはそういう契約がなかったからだ。それは、ちゃんと頭のいい者はそういう契約までやって取り返す。保険会社だからちゃんと保険をつけておったんだ、こういうことになるかもしれませんけれども、しかしそれに対して、国としては、あくまでも法的に対抗手段をとるべきじゃないのですか。それは何人か、三者でも五者でも、弁護士が有効だと言ったら、はい、はいと払うというんじゃ、残り三十三社に対しての道義的な責任というのは、やはり集めた大蔵省としてはあるのじゃないですか。  そして、さっき私が伺ったことに答弁していただいておりませんけれども、残り三十三社の銀行とか保険会社その他の金融機関の株主が、自分のところが使った金も返してもらえということを言ってくるのじゃありませんか。そういう可能性は全くゼロですか。
  208. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 ほかの企業がどうなさるかということは私はよくわかりません。ただ、あの契約の内容も一方的な損失補てんというようなものではございませんで、上がった場合はどうする、下がった場合はどうする、そういう形での契約になっていたと聞いております。
  209. 岩國哲人

    ○岩國委員 いろいろな法律家の意見というのはあろうかと思いますけれども、私は、そういう契約そのものが、大げさに言えば公序良俗に違反しておるのじゃないかと思います。そのときには、公的な義務を民間機関で果たそうというのが奉加帳の趣旨だったのでしょう。だから、三十四社は、払いたくもなかったけれども、日債銀を救済し、金融システムを少しでもサポートするためにという公的な目的のために集められたお金であるはずですよ。  それを、自分のところは、上がったら幾ら、下がったら幾ら、まるで相場で逆張りでも張るような感覚で、そういうふうな裏契約でお金を取り返している。事態がこうなってしまった以上は、当然法律手段に訴えてでも、私は第一火災に恨みつらみがあるわけじゃありませんけれども、三十四社全体を横並びでやるのだったら、やはりあくまでも横並びで最後まで終始一貫すべきじゃありませんか。そのような契約は無効にするということでなかったら、今度奉加帳は、集めに行ったとき、お金が集まらなくなるのじゃないですか。  そういう問題も含めて、私は、このことについては、たとえ六十五億と、三・六兆円に比べればえらい小さな金額ですけれども、けじめはきちっとつけなきゃならない、そのように思います。
  210. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 余り私が評価的なことはできるだけ申し上げないように先ほどから御答弁を申し上げているのですが、確かに幾つかある中で一つだけこういうことをなさったところがあるのかということにつきましては、少なくとも憮然たる思いがするということは申し上げたいと思っております。  ただ、これもいろいろ、無効ではないか、公序良俗に反するのではないかという御意見でございましたが、この点は、公的管理下の日債銀においていろいろ検討され、先ほど申し上げたような法的見解のもとに支払わざるを得ないということで支払ったということだろうと思いますので、その点はまことに私はやむを得なかったと思っております。
  211. 岩國哲人

    ○岩國委員 時間も迫っておりますから、この問題はこの辺で終わりたいと思いますけれども、公的秩序を維持するために、民間機関がそのように三十四社もそろってお金を出したのであれば、公序良俗というのは、私はそういう概念をここにも援用されるべきだと思うのです。  そのとき、なぜそのような裏契約を尊重しなければならないのか。法律家には法律家の意見があるでしょう。しかし、政治家には政治家の、国会には国会の、政府には政府の意見というものをもっとはっきりと打ち出すべきじゃありませんか。新聞に何と書かれていますか。何となくおかしな、締まりのない話として新聞記事としては報道されております。もう少しけじめのある、国民の利益はあくまで守ってみせる、それが政府なんだと。これから次々とまた出てくるかもしれません、期待しているわけじゃありませんけれども。そうした第三、第四のいろいろなこういう金融救済が出てくるたびにいつも、締まりのない、だらしのない、何かきちっと最後まで詰めたことの行われていないような行政だということになれば、金融行政に対する非常に大きな不信につながってくる、それを私は懸念しております。  したがいまして、今の六十五億円、もう払ってしまったのだったら遅過ぎるのかもしれませんけれども、もう一度やり直してでも、意見というものをつくり直し、対抗手段をとる余地が残されている、時間的な猶予がまだあるのであれば、ぜひそれを私は闘っていただきたい、そのように申し上げて、次の質問に移らせていただきます。  生命保険会社への公的資金の投入についてでありますけれども、これは、金融サービス業という大きな海の中で今までのように保険保険、信託は信託、証券は証券、こういう時代が終わってきた、ある意味では金融商品という一つセーフティーネットワークというものが、こういう保険に対しても公的資金が必要な時代がやってきたのではないかな、そのように私は個人的には思います。党の意見がどう出るかはわかりませんけれども。  ただ、私がここで申し上げたいのは、生保の中にも非常に大きいところもあれば小さいところもある、これは場合によっては銀行以上に体力差というのが大きいのではないかと思います。  大手の生保の場合には、かつてはウォール街もヨーロッパも、毎日毎日のマーケットを日本の生命保険会社のお金が揺り動かしたものです。朝のメリルリンチの役員会で一番最初に出てくるのが生保はどう動いているか、これがメリルリンチの朝の役員会の一番最初の状況分析だったのです。生保というのはもう英語になっていました。銀行というのは英語になっていませんでしたけれども、生保はもう既に英語になっておったんです。もうセイホで通用する。セイホというのはドイツの保険会社じゃなくて日本の保険会社だと。それぐらいに大きな存在になっておった生保として、今のようなそういった公的資金に安易に依存するような考えがどこから出てくるのだろうかなということを、私は一面残念に思います。  最近保険業界の雑誌にも浅谷さんという方が、これは元大蔵省におられた保険関係の権威の方ですけれども、浅谷輝雄さんが、今保険業界の顧問として、年頭にことしの見通しを特別に書いておられます。その中に、公的な資金投入業界のために必要だということは、幾つも問題点を挙げておられながら書いておられない。わずかに書いておられるのは、保険契約者負担を軽減するため若干の公的資金が投入されれば、障害はなくなり、そういったリスクを少なくすることにはなるだろうと。  しかし、業界のために、組織的な公的資金の投入ということについては、これは保険業界を代表する主張とは言えないかもしれませんけれども、保険業界にとって本当に今回のような保険保険機構というものが必要だというほどの切実な声が上がっておったのかどうか、これを見ながら少し私は疑問に思います。  むしろ、保険業界立場からいって終始一貫この中で批判し、問題視しておられるのは、ゼロ金利政策なんです。ゼロ金利政策でもって、保険会社の利差益、費差益、死差益と三つのプロフィットの出る源泉がありますけれども、その中の利差益が逆ざやになってしまった。費差益、経費のリストラに努めた。死差益、日本人はだんだん長生きになってきた。その二つのファクターはプラスですけれども、しかし、肝心の利差益、運用資産のマージンというものはこのゼロ金利政策によって完全に崩壊し、破壊されてしまった。そこに日本の生保業界が急速に弱体化した原因がある。これを浅谷さんは鋭く批判しておられるのです。  ということは、政府、日銀が今銀行救済あるいは大手ゼネコン救済のためにとっておられる超低金利政策がこういう生保業界に大きなマイナスを投げかけ、結局、銀行救済、ゼネコン救済のツケが回り回ってまた国民のところへ返ってくる。  保険保険、言葉にしてもごろが悪いと思います。預金保険まではまだいいのですよ、今度は保険保険。なぜ保険保険が要るのかということさえもよく納得いかないのです。  その上、原因が業界のいろいろな問題ではなくて、ゼロ金利政策に問題があってこういう業界自分のお金を出せないということになっているとすれば、春秋の筆法をもってすれば、ゼロ金利政策の犠牲になってきた多くの預金者、毎年四兆円を奪われている、それをさらに生命保険保険機構をつくるために公的資金を投入するということになれば、ゼロ金利政策の被害はまたそこに膨らんでくる、こういうことになるのじゃありませんか。  このような考え方は間違っているかどうか、大蔵大臣に御答弁をお願いします。     〔委員長退席、根本委員長代理着席〕
  212. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段のお話ですが、けさほど一番最初にこの御議論があったわけで、生保は今国民の世帯の大部分にとって大事なものではありますけれども、銀行とは違うので、決済機能を持っているわけではありませんから、銀行が受けたようないろいろな意味での保護を国から受けるべきかどうかということはもっと世の中が静かになりましたら改めて議論をする価値があるかもしれませんということを申し上げました。それは、まさにニューヨークで言われているセイホがこういうことになっている生保と同じ生保かということには、少し感覚的にこだわりがやはりございます。  そのことはしかし今の問題でございませんから、今大きな生保もこれだけ、契約者保護機構というものにはともかく一緒にやろうということを言っておるわけですから、ここのところはそこでひとつお互いに助け合って、助け合ってという言葉は余りよくないかもしれませんが、そういう気になったならそれでやってもらう、ここのところは、というふうに思っておるわけです。  後段の問題は、私はそのとおりだと申し上げるしかないと思います。つまり、このような非常に予想外な低い金利が昨年の二月からずっと行われているわけで、それまでにそういう基調もありましたから、そこから予想利益率なんかに非常な影響を与えたことはもちろん間違いないところで、そこから非常な影響を受けておられるということは、否定のしようもないと思います。
  213. 岩國哲人

    ○岩國委員 大臣の御苦労はよくわかりますけれども、しかし、保険というのは預金とも違う、投資信託とも違う、保険というのは安心を買うものだ。安心プラス貯蓄という要素もあるでしょう。あるいは貯蓄の要素がかなり大きくなっている商品があることも私は知っております。しかし根本は、万一のときの安心を買うのが保険業の本来の機能だと思うのです。  その万一のときの保険さえも当てにならなくなってきたのか、金融大国と言われるこの日本の中で。その原因は何なのか。私は、ゼロ金利政策の政策破綻のツケが結局こういうところにまで次々と来ているのじゃないかと思うのです。ゼロ金利政策をやっていなかったら、ほとんどの生保業界は、よっぽどの経営失敗さえしなければ、この保険保険機構を必要とするところまで来なかったと私は思うのです。この点について、御意見があれば伺わせていただきたいと思います。
  214. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうであろうと思っております。しかし、そうであるけれども、それならば今のこういう日本銀行の低い金利政策というものがトータルにおいていいかどうかといえば、私はやはりそれは支持をいたしたいと思っております。その結果としてそういうことが生まれておるということについては、否定をする気持ちはありません。
  215. 岩國哲人

    ○岩國委員 大変率直な御答弁、感謝いたしますけれども。  失敗は失敗として、確かにこれは、だからといってほうっておいていいというわけではないわけですから、しかし、ほうっておいてはよくはないけれども、それではこの保険保険機構というものが一番いい形かどうかについては、私は異論があります。その異論と申し上げますのは、金融サービス業というのは大きな海の中へ、今までいろいろな違った川で流れておったのが、次々と、二十一世紀は一つの大きな海になっていく。  私の昔の会社の話をして恐縮ですけれども、メリルリンチは一九七五年から、二十一世紀の辞書には銀行という言葉がなくなっているはずだ、証券という言葉もない、保険会社という言葉もない。私はそのときびっくりしました。そんな常識は私もなかったし、そんなビジョンもなかった。ウォール街の経営者はもう既にそういう目で、銀行保険も証券も二十一世紀の辞書にはない、そこに書いてあるのはたった一つ、二十世紀まではそういうのは存在しておったと書いてあるに違いない。そのときには、全部、金融サービス会社というものの中へ入っている。しかし、その金融サービス会社というのは三つのグループにそのとき分かれている。一つはメガハウス、地球規模でやっていく、世界で十社ぐらい、アメリカ四つ、日本四つ、ヨーロッパ二つ、まあその数は変わると思いますが。二番目がローカルハウス、地銀、信用組合、信用金庫、地域密着型、これは、メガハウスがそこへ行ってもかなわない。三番目がスペシャリティーハウス、MアンドAとかリースとかプロジェクトファイナンスとか、こういう専門店のような少数経営。この三つのどれかの戦略を早く選ばなければサバイブできないというのが、今から二十五年前のウォール街の話でした。  今まさに日本で起きているのは、二十五年おくれて、今選択を迫られているのはそこじゃないでしょうか。そして、金融行政としてやらなければならないのは、そういうビジョンのもとに、これから保険会社というものは、全部まとめて保険会社というグループで生存させるのか、金融サービス、預金保険機構の中に一緒にしてしまって、その同じセーフティーネットの中でこれをやっていくのか、別枠でやっていくのか、今私たちはその選択を迫られているのじゃないでしょうか。  ここで、セーフティーネットも、銀行を中心とする金融サービスグループはこちら、保険グループはこちらと、おりを二つ分けてしまうということではなくて、ここで立ちどまって、インシュアランスインダストリーというのはどこに位置づけして、二十一世紀の金融サービス業の中で一緒にするのか、あくまでも垣根をつくってやっていくのか。垣根をつくるというのが国の長期方針であるならば、それはそれで、保険のための保険機構というものの存在理由というのはこれからも続くということになります。  伺いたいと思いますのは、そのビジョンのもとにこういうことをやられているのか。ゼロ金利政策の破綻がここに来てしまって、ばたばたと保険会社で危ないところが出てきたから、早目に何かこう薬かオロナインでも持って走っていかなければいかぬ。今までの銀行救済でも行われてきたような、その場その場の場当たり的な積み重ねが、またその学習効果もないままに今度は生命保険業界について行われる。あっちで傷が出たらすぐオロナイン、こっちで傷が出たらすぐオロナイン、おろおろ、ばたばた走り回る、こういうふうな金融行政ではなくて、しっかりとしたビジョンを持つべきだと私は思うのです。  二十五年前のウォール街が持っておったそういう将来ビジョンがいつまでも最高のものかどうか、それはわかりません。しかし、今、二十一世紀に、辞書の中に保険という名前だけは残すというのが国の金融行政の根本的な方針なのか、二十一世紀には銀行も証券も保険もない、金融サービス業という中に一緒にしていくというのが国の行政方針なのか。その辺について十分な検討とそして確信を持っておられるかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  216. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現実の問題として、委員が言われますように、保険というものは、全国のほとんどの家庭にとっての安心の一つの要素でありますし、また次に、保険会社が持っております資産から考えますと、自己を防衛するためであれば相当多額の有価証券等々を売りに出すというようなことのあり得る力のある機構でもあります。これは金融の不安定につながるわけでございますから。そういう現実にかんがみて、幸いにして、業界一つの機構をつくろう、育てようということでありますので、政府もそれを支援しよう、そして、それによって当面不測の事態の起きないようにというのがただいまお願いしている方策でございます。  これは別に、将来、先ほどお話しになりましたような、金融サービスインダストリーという一つのものになってしまう、そういうことになることを保険会社に奨励するとかなんとか、そういう将来を展望した政策に基づくものではありませんし、また、そういう事態というのは、何も国の政策の慫慂によってなるのではなくて、自然にそういうふうになっていくものだろうと思いますので、私ども、そういうビジョンを持ってこの法律案お願いいたしているということはございません。
  217. 岩國哲人

    ○岩國委員 展望はない、それから、国がそういうガイドラインを示すというのではなくて、民間の業界の動きというものに任せるのがよい、こういうお考えのようですけれども、それは、公的資金を投入しない、どうぞ勝手におやりなさいというときはそれで結構だと思います。しかし、今、税金を使って、公的資金を投入してこの業界のために何かをしようというときに、将来の展望は私はございません、あなた方の動きを後からまた追いかけましょう、これでは、本当に理念やビジョンのある行政と言えるのでしょうか。まあ、何度同じことをお伺いしても、それは、ないものはないとしかお答えいただけないと思いますから、私は、この点については質問を終えまして、次に、ペイオフの先送りについて一言お伺いしたいと思います。     〔根本委員長代理退席、委員長着席〕  先週だったと思いますけれども、鈴木淑夫議員の方から、このペイオフを二〇〇一年に実行するというのは自社さ政権の当時に決めたことで、その自社さ政権の当時の甘い認識でこんなことが決まったのだから、その後の厳しい風雪を経験したら見直して当然であると、まるで自社さ政権の当時の担当者が甘い認識を持っておったかのごとく、したがって、それを一つの根拠に、延期しても当然過ぎる話である、これはそのままではいただけないと私は思います。そうした見通しが甘かったといっても、一年前、二年前に、山一、長銀、次々といろいろな問題が起きたわけです。そのあらし、風雪の中でペイオフはいつという目標を堅持してこられたのは自社さ政権ではないのです。したがって、自社さ政権の甘い認識があるから先送りしてもいいということにはならないと私は思います。世間もそれでは納得しないのじゃないでしょうか。  また、公明党の石井委員の方からは、ペイオフを延期してもマーケットは驚かなかった、また、宮澤大蔵大臣もそれに似たような、同じような説の答弁をされたように記憶しておりますけれども、これは、市場は驚かなかったというのではなくて、もうあきらめておるのです。最近の自自公連立政権になってからやることは、大事な問題はみんな先送り、先送り。あのときに先送りしなかったらマーケットは驚いたでしょう。先送りしたからマーケットは驚かなかったのです。そういう見方、考え方もあるということを申し上げまして、私の質問時間、少し、二分ばかり残っておりますけれども、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  218. 金子一義

    金子委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後二時四十九分休憩      ————◇—————     午後四時開議
  219. 金子一義

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  両案審査のため、政府参考人として警察庁刑事局長林則清君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  220. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  221. 金子一義

    金子委員長 質疑を続行いたします。中川正春君。
  222. 中川正春

    ○中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。きょうは一日しっかりと議論をしていただいておりまして、それぞれ本当に御苦労さまでございます。  先ほどのお話のように、私の質問項目、最後の方にと思っていたのですが、わざわざ参考人に来ていただいていますので、ちょっと順番を先にさせていただきまして、保険金殺人事件にかかわる、社会現象化しているような保険制度にかかわる犯罪、この問題について、少し最初に議論をさせていただきたいと思います。  午前中にも、個々の問題としては、今新聞紙上をにぎわせております埼玉県の本庄保険金殺人疑惑、この問題が取り上げられたわけであります。これに限らず、私、皆さんのお手元に配付をさせていただいた資料で改めて感じたのですが、毎日新聞、エコノミストで掲載された資料なんですが、過去十年間にわたって、繰り返し繰り返し、同じようなパターンでこうした犯罪が起きております。  こういうことも含めて、一度警察当局から、保険金にまつわる犯罪、これに対して、どのように受け取られているかということ、特にその構造、それからもう一つは、どうも私の感覚からすると、ただ偶然にこれは起きてきているわけじゃなくて、ここに秘められた誘発要因、こういう仕組みがあるから犯罪として皆がここへ向いて集中をしてくるというか、いわばわなのような組織的な欠陥、あるいは、組織的ということだけじゃなくて、それを管理していく、監督していく部分、あるいはマネジメントしていく部分での大きな欠陥があるということだと思うのです。そういうふうに私自身は認識しているのですが、そんな観点に立って、警察当局の改めての認識を一度お話しいただきたいと思います。
  223. 林則清

    ○林政府参考人 お尋ね保険金目的の殺人事件及び同未遂事件につきましては、最近の検挙状況を見ますと、本年に入りましてからは、先ほど言及がございました、現在捜査中の埼玉県本庄市における金融業者らによる同容疑事件を含めて二事件という状況でありますけれども、資料もお配りいただきましたけれども、平成十年には六事件、平成十一年には八事件と、我々の検挙する件数の増加が目立っておるところであります。  事件一つ一つは大変それぞれが異なるものでありますけれども、我々が事件捜査を通じて感じますのは、保険加入に当たって、被保険者の同意が十分に確認をされないまま契約されておる事例がこういった事件の中で結構多いということ、それから、非常に目立つことでありますけれども、多数の保険会社に重複して多額の保険契約を結んでおるというような事例がこういった事件の中で見られることでございます。  事件捜査を通じてどんなふうに感じておるかということでありますけれども、細かな分析は別といたしまして、私どもとしては、被保険者の同意確認とか多重契約のチェックというものが非常に厳重に行われることがどうしても必要なんではなかろうか、こういった事件に早く気がつき、あるいはこういった事件を防圧するという上ではそういうことが必要ではなかろうかというふうに感じておるところでございます。  所管官庁や業界におかれましては所要の改善措置を講じてきておるものと承知はしておりますけれども、我々警察といたしましては、警察庁、都道府県警察レベルの双方で設けられております警察と業界団体との連絡会議等の場を通じて、引き続き、今申し上げましたような点に注目した情報交換を進めるなど相互の連携強化を図って、この種事件の防圧、検挙に努めてまいりたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  224. 中川正春

    ○中川(正)委員 最近の犯罪白書によりますと、殺人だけじゃなくて保険金詐欺という項目に当たる犯罪というのが年間四百件から五百件のレベルで起きてきておるということ。それと同時に、専門家に言わせると、ここに出てきている、殺人までいくような犯罪、これさえも本当に氷山の一角であって、恐らく表には出てこない。特に、これを見ていると、本来東京あたりで起こりそうな話が、案外東京というか都市部が少なくて、田舎の方で事件が発覚をして検挙されるという例が多いわけですね。  そんなことからわかるように、いわゆるコミュニティーとしてしっかりしているところは表にこうして出てくるけれども、本当に都市化して、お互いの人間関係が薄くなっているところに本来はこういう犯罪が起きやすくて、しかも、起きてもなかなか検挙されることが少ないという、そんな構造がきれいにあらわれてきているように思う。  だから、事は、表にあらわれているものよりも、もっともっと深刻な話になってきているのではないかというふうな感覚を私は持っているのですけれども、その点については警察としてはどのようにつかんでおられますか。
  225. 林則清

    ○林政府参考人 ただいま御指摘の点についてはまことに同感でございまして、この種犯罪というものは相当潜在化しておるであろう、警察に検挙されないところで実際には潜在化しておるであろうということはこの種犯罪全般について言えることで、私今から申しますことは若干あれですが、物損なんかの関係の、暴力団がかかわるような関係でも、実態としてはだんだんふえておるのではないかという様子が見られるところでありますので、そういうことから考えましても、先ほど来先生から御指摘あることは、実態としてはそのとおりではなかろうかというふうに考えております。
  226. 中川正春

    ○中川(正)委員 こうした警察の問題意識、あるいは、これは本当に一般の国民の感覚であるわけでありますが、そういうことも踏まえて、いわゆる監督官庁の立場からはこれをどういうふうにとらえておられるか、改めてお聞きをしたいと思います。
  227. 村井仁

    村井政務次官 ただいま中川委員と刑事局長の質疑応答を伺っておりまして、金融監督庁としまして、実は平成十年に、和歌山の保険金詐欺事件がありました。それを一つの契機にいたしまして、保険会社業務の健全化、適正な運営を確保する、そういう見地から保険業法の施行規則等の改正までやりまして、それで保険契約の締結や保険募集等にかかわる措置を強化したわけでございまして、とりわけて、今強調されました点でございますが、一つは被保険者の同意の確認、これを強化する、それから多重契約のチェック制度の強化を行う、さらには保険契約において医者の関与を適正化させること、こんなようなことで手を打ったわけでございます。  しかし、それでもなおいろいろまだ問題が出てきているということは私どもも重く受けとめなければならないことだと思っておりまして、今後とも保険契約者保護を図る、これは一部の大変遺憾な行為によって他の保険者が害されるということになるわけでもございますから、そしてまた保険システム全体の問題にもかかわってくるわけでございますから、一層適切な監督に努めるべく努力をしたい。  また、生命保険協会、これは各県に出先を持っておりますけれども、こういうところにもよく注意喚起もしてまいりたい。さらには、これは今まだ完成しておりませんけれども、保険会社の検査でございますけれども、これにつきましても、検査マニュアルをきちんといたしまして対応をしていきたい、こんなふうに考えているところでございます。
  228. 中川正春

    ○中川(正)委員 もうこれは十年来恐らく繰り返してきた話なんだろうと思うのです。こういう事件が起きるたびにこうして国会で取り上げられ、あるいはマスコミで騒がれ、その都度しっかりやっていきます、こういう話できた事柄であります。だから、ここに来て、ただただ精神論だけではだめだというふうに思うのです。  例えば契約内容をチェックしていく制度も、今の制度でいくと五千万円以上で、複数契約の中ではなかなかリストとして上がってこない。あとは、これは本格的にやろうと思ったら事務コストがかかりますよということが恐らく業界から出てくるのだろうというように思うのです。そういうことに対して、それでもやりなさいよということであれば、これは指導ということじゃなくて、新たな法制度の中でしっかりと最低限ここだけはやりなさいよという制度づくりというのが必要なんだろうというふうに思うのです。  そういう意味で、指導という段階から、これは新たな仕組みづくり、法制度づくりという段階に進むべきだというふうに思うのですが、その用意はありますか。
  229. 村井仁

    村井政務次官 今多重契約のチェックの関連で数字をお引きになりましたけれども、これはいろいろな影響もございますので私どもの方からは一切触れないという立場にありますことを、ちょっとお断りを申し上げておきたいと存じますが、その上で、いずれにいたしましても、単なるコストの問題だけではなくて、確かに、保険業界の営業態度の問題でございますとかいろいろ私は問題はあると思うのです。そういう意味で、私どもとしましても、こういう事態を踏まえまして一層真剣に検討してまいりたいと思う次第でございます。  ただ、具体的にどこをどういうふうに法律的にいじったらどういう効果があるかということになりますと、これはちょっとにわかにはお答えいたしかねる、もう少し慎重に中で議論をさせていただきたいと思っておるところでございます。  さっきもちょっと申し上げましたけれども、預金受け入れ金融機関に対する検査マニュアル、これは非常にきっちりした形でつくりましたが、それと別に、保険につきましての検査マニュアルというのを現在検討中でございますけれども、これは、特に募集の態様などにつきましてもきちんと検査をするということで、常時的なチェックの体制を整備する、これも一つの牽制の手段になるのではないか、そんなふうに私は思っております。
  230. 中川正春

    ○中川(正)委員 きょうはこれは入り口論でありまして、この程度にさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、問題のありかというのが、もう多年にもわたって繰り返し起きてきた問題をここまで放置したという責任、それから、今の状況の中では、これは減っているのじゃなくてこうした犯罪がふえつつある、しかもそれが地下へ潜り始めているという指摘、これは警察サイドからの指摘、この辺を問題意識として指摘をさせていただきたい。その上で、これから、本当の意味で新しい制度づくりに向かって進んでいかれること、これを要望しておきたいというふうに思います。  それ以上何か、特別に新しい話があれば……。
  231. 村井仁

    村井政務次官 さっきもちょっと申しましたけれども、私どもも、こういう異常な保険契約がありますことが他の善良な保険契約者に大変な害を及ぼし、また保険制度そのものに対する信認を失う、これは非常に大変なことだと思っております。それを深刻に受けとめておればこそ、先ほど申し上げましたように検査の問題やら何やらにまで触れましてお答えを申し上げているところを御理解いただきたいと思います。
  232. 中川正春

    ○中川(正)委員 それでは、次に移らせていただきたいと思います。刑事局長さん、御苦労さんでした。ありがとうございます。  預金保険機構の話をさせていただきたいと思うのですが、これまで議論が重ねられてきたその中身を見てみましても、やはり、当初の住専のときから比べると、本当に我々の意識もこれは変わってきておりますし、国民の方も何となく麻痺をしてきているぐらいに、ひょっとして社会全体がモラルハザードを起こしてとんでもない方向に走っているんじゃないかというぐらいに議論の中身が変わってきているということ、これを改めて私は感じるのです。  その上に立って、これは、私たちが今度こうした法律の、これまでは、とりあえずのところこの危機的状況を何とかクリアをしていかなければならないという大義名分があってつくられた制度でありますが、これを、恒久的なというか、これからのセーフティーネットを構築する上で、改めて、平静、波静かなときも含めてこの制度でいこうじゃないか、こういうことに変えていく、そのための制度改正を今議論しているのだ、そういうふうに理解をしているのですが、それでよろしいでしょうか。
  233. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 きちんとお話を受け取れたかどうかはわかりませんが、私自身はかなり長い人生を生きてきましたけれども、預金というものを国が全部保険してくれるなんてことは前にはなかったものでございますね。ここしばらくの間、もうそれが当然のようになったり、あれこれそういうことになってきまして、それは、必ずしも我が国だけがああいう失敗をしましたからそうなったのではないのかもしれません。片っ方で規制解除がどんどん行われますと、消費者がどんなに利口になっても、なかなかそこは自由経済というものが難しいですから、ミニマムなことは国がやるのが本当なのか。アメリカは預金についてはそうなっているのだと思いますけれども、どうもその辺がよくわかりませんが、ともかく、今我が国のずっとやってきましたことは、これはまことに、異常な時代における、クレージーなとほとんど言いたいようなことでございますから、やがておっしゃいますようにもっと静かになりまして、そう国もあれこれしなくてもいいような、しかし逆に今度は、消費者というものは保護される中で市場経済が進んでいく、そういうことになっていくのが私自身は本当だと思っておりますが、今はとてもとてもそうでない、いわば一種の異常状態の、そろそろ終わろうとしているのだと思いますが、その始末に寧日なきありさまである、こういうふうに私は思っております。
  234. 中川正春

    ○中川(正)委員 いろいろな人がいろいろな数字を挙げて言っているのですけれども、一度国民に対して、その六十兆円の枠はわかった、しかし、実際、これまでの整理をしてくるのに幾ら公的資金を使ったのか。その使った中身も、資本注入した分もありますし、貸した分もありますし、完全に贈与した分もありますね。その中で、返ってくる分もあれば、これはどうも返らないという部分もある。トータルで、コストでこんなふうに現在はなっていますよということを一度正式な場で表明していただいて、それを出していただきたい、こんなふうに思います。
  235. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、私どもで整理をいたしますとできますと思いますので、御提出いたします。  恐らく国民が一番驚かれるのは、長銀とか日債銀の処理に大変金がかかった、それをマスメディアで見ていらっしゃいまして、それが納税者の金だそうだと。実際は、国が預金を、この場合は金融債でございましたが、保護するためのコストであるということは、国民保護されていることは知っていらっしゃるけれども、今度、コストの大きな部分がそれだということは多分多くの国民は知っていらっしゃらないのだろうと思います。そういうことにもなりますから、今おっしゃいますような数字は、取りそろえまして、委員会に提出すればいいでしょうか、御提出いたします。
  236. 中川正春

    ○中川(正)委員 事前に出すように言っておいたのですが、それはまとまっていますか。(宮澤国務大臣「今口頭で申せばいいですか」と呼ぶ)ええ。口頭で言っていただくのと同時に、もう一つ、さっきの話で二次損失の問題もありますから、そういうようなことも含めて、将来に対するコミットも含めて、一度、どれぐらい国民負担を強いろうとしているのか、詳しく出していただきたい。これは書面で出していただきたい。大ざっぱなところはちょっと説明してください。
  237. 大野功統

    大野(功)政務次官 中川先生御指摘の点、分けて考えさせていただきたいと思うのです。破綻処理ということで、先生御自身御指摘でございましたが、貸した金で返ってくるという部分、こういうふうな話が一つ。それから、保険料で賄う部分と税金投入する、こういう仕分けが必要かと思います。  本日、破綻処理でどのぐらいやっているか、つまり、どのぐらい保険料プラス税金で支払っているか、この点について御説明申し上げたいと思います。  預金保険機構制度というのは昭和四十六年にでき上がっておりますが、破綻第一号は平成四年でございます。それから七十二行目、これは七十二行が破綻しておりますが、七十二行目は本年の三月でございます。  それで、これまで預金保険機構が実施した資金援助のうち、損失補てんのために金銭贈与をした、これは一般勘定と特例業務勘定、両方ございます。全部を合わせまして、累計が九兆五千八十三億円でございます。そのうち、交付国債ということに限定しますと、四兆七千九百一億円となっております。  それから、今度、破綻金融機関からの不良債権の買い取り、これは特例業務勘定でございますが、こちらの方が四兆三千百五十億円ということでございます。そのファイナンスにつきましては、基本的には預金保険機構が政府保証枠、平成十年二月以前は政府保証はございませんでしたが、平成十年二月以降は政府保証枠、政府保証として資金を借り入れている、こういう状態でございます。  その他につきましては、少し精査の上、紙にさせていただきたい、このように思います。
  238. 中川正春

    ○中川(正)委員 こうした数字は、まずこの時点で国民にはっきりと説明をしていく必要があるだろうと思うのです。それを踏まえて、それではこれを新しい法律に置きかえた場合にどのように違ってくるのか。今回のスキームに過去の事例を置きかえた場合にどんなふうに違ってくるのか。これをちゃんと説明すれば、これから先、公的資金というのがどんな形になってくるのかなというのは、国民にすっきり理解ができるだろうというふうに思うのですね。  それについての作業というのは、これはペイオフに係る部分というのはある程度精査して、それと預金保険で持っていく分とあわせて考えていかなきゃならないという作業があるだろうし、こっちはシステミックリスクですね。これに係る破綻というのが、具体的に、例えば長銀だとか日債銀というようなものが出てきたときに、これはどの処理になるのか、恐らくはシステミックリスクの範疇に入ってくるのだろうということ。  そんなこともあわせて、具体的に、このケースは今度の新しいスキームでいったらこういう処理になっていくんですよというふうなことは説明できると思うのですが、どうでしょう。
  239. 大野功統

    大野(功)政務次官 まず、勘定別に考えさせていただきたいと思いますが、一般勘定、これは十四年度一年間でございますけれども、流動性預金保護することになります。しかし、これはすべて保険料で賄う、こういうことでございます。十五年からは恒久措置として一般勘定すべて民間の保険料で賄う、こういうことでございます。  それから、特例業務勘定、これは十二年度におきましては、先生御存じのとおり、交付国債十三兆円、合計でございますが。それから、政府保証枠が十兆円。十三年度につきましては改めて考えていく。その後はなくなります、全くなくなる。  それから、金融再生勘定でございますが、これは十二年度で終わりになる。  それから、健全化勘定でございますが、これは十二年度で終わりでございます。(中川(正)委員「いいです」と呼ぶ)  そういうことになりますので、システミックリスクということで考えれば、システミックリスクというのは基本的には民間の保険料で賄うということが原則でございますが、一体何が起こってくるかわからない。わかりませんから、もちろん金融危機対応会議で決めてもらい、そしてそこで決定するわけでございますが、その場合は、事前に交付国債なんということはありません。すべて後に決まってくるということで、なかなか数字でどうなっていくかということはわかりにくい問題でございます。
  240. 中川正春

    ○中川(正)委員 今回の仕組みの話はいいのですよ。それは事前にしっかり説明を聞かせていただきました。  私がイメージがわいてこないのは、例えば長銀のようなクラスの銀行がつぶれかけたときに、それが今度の新しい危機に対応するための会議にかかって、それがシステミックリスクとして判断されるのか、それともブリッジバンクか、あるいは一般の再建をする手続の中でされるのかというような、そういう判断の基準が今度の法律を見たって見えてこない。  それをはっきりさせようと思ったら、一遍過去に枠組みを当てはめてみて、その過去のケースでこうした整理が今度の法律ではしていけるんですよということを説明すれば、今度の法律の中身ももっとはっきりしてくるのではないか。だから、過去の話に一遍枠組みを当てはめてみて、それから資料を出してください、説明をしてください、こういうことを言っているのです。
  241. 大野功統

    大野(功)政務次官 それは先生、なかなか難しい宿題でございまして、どういうふうに考えていけばいいのか、ちょっと検討させていただきたいと思います。  システミックリスク自体が要件の問題ではなくて、むしろ本当にそれこそシステミックリスク、放置しておけばまさに信用秩序が崩壊していくというような場合で、むしろ手続的に金融危機対応という、総理のもとできちっと議論して決めていこう、手続的な厳格性の方に重点を置いておりますので、勉強させていただきますが、ちょっと確約しにくいような問題でございます。
  242. 中川正春

    ○中川(正)委員 いや、そんなことないはずでしょう。  例えば、長銀を公的管理にしますよと言ったときには、それはシステミックリスクだから公的管理ですよ、そういう決断を我々聞かされたわけではないですか。一つ一つそういう判断がこれまであった。だから、それを一度当てはめてみて、最終的にどう違ってくるかというのを説明ができるはずです。その説明に立ってもう一回この話を議論したい、こういうことであります。大丈夫ですね。
  243. 大野功統

    大野(功)政務次官 モードが危機モードから平時モードに変わってしまいますので、いわば危機対応というのは万々が一の問題になってくるわけでございます。いわば伝家の宝刀みたいに、あるということで安心できる、しかし、あった場合にはこうだ、それを手続できちっとしていこう、こういう考え方でございますので、先生のおっしゃる意味は今十分わかりますけれども、さて具体的にどういうふうに整理していけばいいのかな、ちょっと考えさせていただきますが、確約しろと言われますと、ちょっと私は自信がございません。
  244. 中川正春

    ○中川(正)委員 この話はきょうのところはこれぐらいにしておきます。もし出てこないということであれば、具体的に一つ一つ確かめていくよりほかないということですから、結局同じことですから、ぜひ出してください。  それから次に、ここで基本的な話というのは、システミックリスクになった場合には公的資金がしっかりおりてくるけれども、そしてペイオフがないということだけれども、それ以外の破綻処理ということになると、一般管理といいますか、それぞれ銀行サイドが積み立てた保険の資金の中でやっていきましょう、そのかわりペイオフがありますよ、こういう理屈だと思うのですね。なぜシステミックリスクになったときにペイオフがないのですか。
  245. 大野功統

    大野(功)政務次官 先ほども御説明申し上げたのですが、本当に平時において万々が一のことを考えておくというのが政治家の務めだろうと思います。その万々が一のときにやはり安心できるというのが一番大切なことではないでしょうか。そういうときには手続をきちっとする、そういうことでいろいろな対策を考えておく、私は当然なことだと思っております。  先生がおっしゃるように、一般のときは、例えば一千万超の債務の一部を負担していくということはあり得ないとしても、やはりそういうときにはいろいろなことができるようにしておいて、そして、それはすべて金融危機対応会議、つまり総理大臣のもとで議論して決めていく、それが安心感だと私は思います。
  246. 中川正春

    ○中川(正)委員 いや、答えになっていないですね。  もう一回聞きますよ。これは再生委員長、ちょっと答えてください。
  247. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 そのときにどういう判断を具体的にすることになるかは、私も今何とも申し上げられませんが、私の直観では、これは長銀であるとか、日債銀であるとか、あるいは北海道拓殖銀行、この数年間の間に経験したようなケースは、これは恐らくシステミックリスクであるという判断をして対処していくことになるのだろうと思うのです。もしあのときに今度の法の仕組みがあれば、多分そういう判断であったろうと思います。  ただ、そのときに、では具体的に今までやってきた——ちょっと拓殖銀行の場合はまた全然仕組みが違う形でよくわかりませんけれども、長銀の場合あるいは日債銀の場合でありますと、特別危機管理という形で対処しても多分同じようなことになるのではないかなと思いますが、そこらは具体的にシミュレーションしたわけではないし、また、シミュレーションできるかどうかもよくわかりませんが、非常に漠然としたお答えで恐縮でございますが、そんなことではないかと、今お二人の議論を聞きながら思っております。
  248. 中川正春

    ○中川(正)委員 話があちこちしちゃって、また委員長で話が戻ってしまったような感じですが。  それからもう一つ進んでいまして、システミックリスクに処理を任せましょう、そのスキームでやりましょうというときにはペイオフをやらないのですよね。それは正しい認識ですね。
  249. 金子一義

  250. 中川正春

    ○中川(正)委員 いやいや、再生委員長に。(宮澤国務大臣「今この法律のことを言っていらっしゃるわけでしょう。第七章のお話ですね」と呼ぶ)ええ、法案の、新しい方です。
  251. 金子一義

    金子委員長 では、もう一度改めて質問してください。
  252. 中川正春

    ○中川(正)委員 今度の新しいスキームで処理をするときに、一つ破綻が出てきた場合に、それがシステミックリスクだということで判断されて公的管理にぐっと入った、それから次の処理に移っていく経過の中ではペイオフはしないのですね。
  253. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと私ども十分わからずにお答えしたかもしれませんが、今この改正案の七章百二条のことをお話しだと思いますが、こういう異常な事態が起こりましたときには、百二条に書いてありますように、第一号措置、第二号措置、あるいは第三号措置、事宜によっていろいろな措置をとる、こういうことであって、その事態にかんがみて、そのどれでなければならないとか、あるいは、どれとどれとというようなことは、やはり金融危機対応会議において具体的に決定することになると思っております。  したがいまして、ペイオフ、従来のままにすることもあるし、コストを超えて全額を保証する措置をとることもある。それは、その事態によって一号、二号、三号と書いてあります措置を会議で決定する、こういうことと考えております。
  254. 中川正春

    ○中川(正)委員 そうすると、そのときそのときの判断によって、ペイオフをする場合もあるし、それから、しない場合——しない場合ということは、全額を保証していく場合もある、こういうことですか。
  255. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 法律案の志向しておりますところは、金融危機対応会議の決定によりまして、事態の深刻さ、あるいは、事態に対応する方法の、これがいい、あれがいいということに従いまして、この三号、三つに掲げる措置をとるわけでございますから、場合によりまして、預金の全額保証を行うということもある、行わないこともあるということでございます。
  256. 中川正春

    ○中川(正)委員 もう一つ確かめたいのですが、逆に、システミックリスクではなくて、ブリッジバンクなんかを含めた一般の方式で公的資金を入れずにやっていく方式の場合、これは必ずペイオフはあるのですね。
  257. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この法律におきまして、いわゆるペイオフコストを超えて預金保証するというケースは、この法律におきまして百二条に定めるところに限るということと考えます。
  258. 中川正春

    ○中川(正)委員 いや、具体的にというか、もう少しわかりやすく説明していただけませんか。国民にとっては、一千万の、どうなるのかなという話があるわけですから。  だから、一般の破綻処理でいった場合には、これはもう自動的に一千万以上の預金というのはあきらめなきゃいけない、いわゆるペイオフがそこで働くのだという説明をしていいわけですね。
  259. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少なくとも、平常時、平時になりましたとき、この法律が適用になりました平成十四年から後でございますか、もう国が一千万円以上の預金保証してくれることはない、それはもうペイオフコストまでで、その状況によりまして結果としてそれ以上支払われることはございましょうけれども、保証としてそういうことは一切ない。  ただ、この第七章におきまして、非常に異常な事態が起こりましたときには事態のいかんによってそこまでいくこともこの三つの措置の中であり得るが、それはもう、普通に申しましたら、そうしょっちゅうあってはならぬ事態でありますし、また、ちょっとやそっとのことで会議がそれを発動するということもございませんから、常識的に、そういうことは普通の場合にはないと申し上げてよろしいのだと思います。
  260. 中川正春

    ○中川(正)委員 どうもその理屈が理解できないのですね。普通の一般処理の場合はそう世の中深刻にはならないよ、そこだけブリッジバンクをつくって営業譲渡するなり、あるいはどこかにくっつけていくなりというようなそんな措置で、しかも預金保険の範疇の中でやっていきますよ、そういうことですね。だけれども、そういう場合については一千万についてペイオフですよということですね。  ところが、システミックリスクというのはもっともっと深刻なんです。社会自体が深刻になってくるという話ですね。そのときにはなぜ全額が保証されるということが出てくるのですか。
  261. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、そういう事態が、ある金融機関についてまず恐らく起こるであろうと思いますけれども、それがナショナルなものであるにせよ、あるいはそうでないローカルなものであるにせよ、かなり大きな金融機関にそういう事態が起こりましたときには、住民は当然、自分の取引をしております銀行自分預金も危ないと考えますから、恐らく自分預金を引き出しにかかるわけでございます。千万円まではいいと知っておりましても、それの上のものは危ないなと思えば引き出しにかかるわけでございますから、そのときに、国が全額保証するという措置をきちんとしておきますれば、そういう波及が起こらない、そういう事態が起こらない、こういう意味でございます。  つまり、千万円以上の預金をお払いしたいからそういうことをするわけではありませんで、お払いしますと言っておけばどなたも心配なさらない、こういう意味でございます。
  262. 中川正春

    ○中川(正)委員 それが事前にわかっていればいいですけれども、さっきのような運営をされるということであれば、それを今国民説明をすれば国民はどんなふうに反応をするかといったら、ああ、そうか、それでは長銀のような、あるいは日債銀のような、あるいは今の都銀、四つのグループに収束をされようとしていますが、そうした全国的にシステミックリスクを起こすぐらいの規模、そうした銀行というのはこれはペイオフがないんだな、だけれども、うちの隣にある支店に預けておいたら、ローカルな銀行ではこれは危ないんじゃないかなというインセンティブがしっかり働くんじゃないのですか。
  263. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御説明の仕方が悪いのかもしれませんが、よく御存じでいらっしゃいますので、私どもの申し上げ方が悪いのかもしれません。  つまり、今日まで行われておりますような預金の無条件の保証というものは、二年たつと全部なくなる。そうしてこの法律に返りますので、それから後は、国民の皆さんは、預金というものは千万円以上はだれも保証してくれないということ、そういう状況に返るわけでございます。恐らくそういうことだけ国民は知っていていただけば十分であると申しますか、もう今までのような話はないんだねということを知っていただくということで、それで普通の場合は終わりでございます。  ただ、そういう立法を考えますときに、それでも、そうしょっちゅうあっては困るけれども、一遍あったことでもあるから、何かのときに、おかしなことがあって、これは国じゅう大変だとか、この地域は、仮に中部地域なら中部地域がどうも大変だということになったときに、政府は何もしないかと申しましたら、そういうときには金融危機対応会議を開いて、そして総理大臣が、いわば戒厳令みたいなものでございます、言葉は悪うございますけれども。そういうことで、その地域なり預金者を保護するということになる。そのときには、みんな心配して預金を引き出しに行くかということに思いますから、いや、それは大丈夫なんだ、これについては預金はみんな国が見てくれるそうだ、だからあちこち駆け回らなくてもいいんだということになれば、そういう危機が波及することがなくなりますから、そういうためのこういう一種の非常措置を法律として定めておく。  ただ、そんなことはめったにあるはずはないし、あったときにはしかしきちんとしておかなければならないから、その適用は非常に重い規定を置きますが、重いということはしかし同時に非常に早いということでなければなりませんから、国民の動きがあるとすれば、すぐその措置をとってそれに対応するということが、一種のそういう緊急策としてこの第七章に金融危機というものへの対応を設けたわけでございます。  普通考えましたら、こんなものは要らないという御意見があるのかもしれないと思います。ただ、今の憲法では、大変にそういうときの、昔でいえば緊急勅令とかいうことでございますけれども、そういうことは一切できませんから、やはりそういう一種のコンティンジェンシーには法律としては備えておいた方がいいのではないか。その場合、事態の態様によりまして、いや、何も国民はそんなに心配していない、取りつけに行ったりしないという状況であれば、何もそんなペイオフのことを持ち出す必要もない、ほっておけばいいのでございますし、そういう心配がありそうなときは、心配しなくていいですよ、あなたの預金は全部そのまま今度は国が見てあげますからと言っておけば波及をしない、そういう場合の配慮でございます。
  264. 中川正春

    ○中川(正)委員 これまでのいきさつといいますか、ここ何年かの危機対応を見ていると、いろいろなことが重なりながら一つの経済の危機的状況というのを醸し出してくるわけですね。我々がやってきたことも、私はかつて大臣に言ったことがありましたけれども、今やっていることは超法規的な措置じゃないかと。そんなことを、超法規的な措置をどんどん重ねながら、超法規的というのを国会でつくりながら、それをまた新たな法律にして積み重ねてきて現在の危機に対応してきたということなんですね。  恐らく、これから先起こってくることのそういうプロセスの中で、システミックリスクに当たるような危機的対応というのは出てくるのだと思うのです。それに対して今やっていることというのは、事前に、危機対応じゃなくて、ふだんの法律の中にその超法規的な部分を入れ込んでしまっているわけです。それを入れ込むことによって、どんな解釈がされるかというと、これはツービッグ・ツーフェールですよ。完全にそういう政策をとっているじゃないかというふうな批判が出ても仕方がないような形で受け取られるであろうということだと思うのです。それを考えたときに、ここの部分は修正しなきゃいけないのじゃないかと私は思いますね。  もし御意見があれば。
  265. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その角度からのお尋ねの方がお答えしやすいのかもしれません。  不幸にしてそういう事態が、もう我々はすっかり懲りましたから当分あるとも思えませんけれども、大分金融機関の体制も整えましたし、随分金も使いましたがいい勉強もしたという思いがいたしますから、もうこんなことがしょっちゅうあってはかなわぬなと。少なくとも私の元気な間はないだろうというぐらいには確かに思います。  それでも経済というものは生き物ですから、こういう規定を万一のために置いておいた方がいいか、いや、起こらぬなら起こらぬで、そんなものを置く必要はないじゃないかという両方の議論があると私は思うのでございますね。ただ、我が国の法制が非常にリジッドになりましたので、何かあったときに、昔で言う緊急勅令を発動するというような、非常事態の宣言みたいなものが簡単にできないようになっておりますだけに、普通の法律の方にそういう場合の規定を置いておいた方が周到なのではないかという配慮でございます。  いや、むしろそれは誤解を生むし、そんなことありそうもない話なら、乱用されたらなお大変だし、なくてもいいじゃないかというお立場は、そういうものを持っていない国もあると思いますのであり得ると私は思いますけれども、私どもは、日本の法制、殊に戦後のいろいろな状況から、非常事態に対応する法体制は余り完備しておりませんので、金融は一日のうちに事が起こりますから、こういうことは持っていて、即時に対応できるだけの準備はあった方がいいだろうというのがこれを御審議願っている理由でございます。
  266. 中川正春

    ○中川(正)委員 予定した三分の一ぐらいしか今話が進んでいないので、また改めてこの話を含めてやっていきたいというふうに思います。  最後に、もう時間が少なくなってきたのですが、せっかく用意をしましたのでちょっと見解だけ聞かせていただきたい。  一つは、生命保険の関係の保険制度の方なんですが、これは、いろいろ公的資金の話をしていますけれども、こうした問題を出す前に、もう一つ政府として整理をしておかなきゃいけない問題があるのじゃないかということは指摘をしておきたいと思うのです。  それは、保険業界というのは、国でいえば、特殊法人やあるいは第三セクターに対して非常に大きな額で貸し出しをやっているのですね。私がざっと調べたところで、むつ小川原や苫東あるいは石油公団、日本道路公団、鉄建公団、住都公団、こういうのを合わせて四千六百億円を今貸し出ししているのですね。これから焦げついてきた部分の整理というのをどうして行うのかというのは、ちょうど財投の議論が出てくる中で早急にやっておく必要があるのだろう。  それからもう一つは、地方の第三セクターの方です。これも正確な数字が出てこないのでそちらの方でも一度調べていただきたいと思うのですが、いろいろな評論家が言っているところで、貸付額だけでざっと千二百億円レベル、それから、いわゆる株、経営母体に入っていますから投資をしていますから、こういう投資をしている部分が一千億円、合計で二千二百億円ぐらいのコミットをしているのですね。  今、地方自治体レベルでは第三セクターをどういうふうに整理していくかというのは大問題になってきております。これも非常にアバウトですが、こうしたものをずっとやっていくと不良債権化していく可能性があるのが、国のいわゆる特殊法人レベルで二千三百億円レベルの話、それから地方の第三セクターレベルで、さっき言った、両方合わせて二千二百の半分ぐらい、一千億円ぐらいが焦げついてくる可能性がある、こういうふうに指摘をされておりますが、この問題についてはどういう認識をされておるでしょうか。
  267. 村井仁

    村井政務次官 私どもの検査あるいは監督でございますが、いずれにいたしましても、保険会社につきましては第五弾くらいまで一応検査を進めておりますけれども、今お話しのような、例えば特殊法人あるいはむつ小川原とかそういう話でございますと、昔ある時期、国策会社というような形で取り上げられた部分もあるわけでございましょうが、それとか第三セクター、そういう問題意識では必ずしも整理をしていないというのが実情でございます。  今、中川委員から御指摘ございまして、そういう規模であったかということを改めて感じたわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもの方は、それぞれの保険会社経営状況がどうだろうか、持っている債権の状態、その中でどれが不良債権化しているかどうか、そういったことにつきましては実態把握に努めておりますけれども、今御指摘のような形の整理をしていない。そういう意味で、申しわけございませんがコメントをする状況にはないということを、残念ながら金融監督庁の立場では申し上げざるを得ないということでございます。
  268. 中川正春

    ○中川(正)委員 では、別の角度でお聞きをしたいと思うのですが、債権がディスクローズされて、不良債権として提起をされるのか、あるいは健全債権ですよという形でやってもよろしいよというふうに指導されるのか、これはどちらですか。
  269. 村井仁

    村井政務次官 これはそれぞれいろいろな形で検査マニュアルやら何やらで決めておりますので、それぞれの貸し付けている対象の状態によりまして決まることだと思っております。
  270. 中川正春

    ○中川(正)委員 貸し付けている状態というのはさっきの答えにならないのですね。特殊法人と第三セクターは金融監督庁ではどういうふうに評価をされているのですかという質問なんです。
  271. 村井仁

    村井政務次官 失礼しました。  もう一度申しますと、事の性格からしまして、特殊法人ということになりますと政府が最終的には責任を持っているという認識でございますから、これにつきましては正常債権、こういうふうに見るべきだろうと思っております。しかしながら、第三セクターということになりますと、これはいろいろ、千差万別でございますから、それぞれ実態に応じて判断せざるを得ないということだろうと思います。
  272. 中川正春

    ○中川(正)委員 だとすれば、特に政府の特殊法人、一般的に言われる二千三百億円ぐらい焦げついていくだろうというこの部分は、国鉄の清算だとかあるいはそれ以後続いてきているそれぞれの特殊法人の清算と同じように、最終的には税でカバーするものですよという前提金融監督庁としては定義をしている、こういうことですね。
  273. 村井仁

    村井政務次官 委員御指摘の特殊法人という言葉がどの範囲をお指しになっているかちょっと不明確でございますが、私は、いわゆる財投機関といいますか、法律に基づきまして設置されているいわゆる特殊法人を考えているわけでございまして、むつ小川原等々はこの範疇に多分入らないと思っております。  そういう意味で、いわゆる特殊法人につきましては、これは私どもの認識では、少なくとも、現にゴーイングコンサーンとして動いている限りは、それはもちろん問題のない正常債権と認識するのが当然だろうと思っております。
  274. 中川正春

    ○中川(正)委員 おいおいこういう整理というのは、このまま放置するわけにはいかないだろうというのが我々の問題意識であります。  さっきの話では、永久に、それじゃそれを続けていったらそのまま正常債権でいいじゃないかという話でありまして、この二つを話していったってここはかみ合わない。しかし一般的には、あるいはこれまでの行政改革の中でさんざん指摘されているように、これはできるだけ早い時点でそれを整理していこうじゃないか。その一つの手法として財投の改革を入れようじゃないか。これは大蔵省自身が今進めてきている話ですよね。  そういう前提に立ったときに、ただただ動いている間は正常債権なんですよ、整理する段になって突然これは不良債権に変わるんですよ、そんな理屈は通らないだろうというふうに思うのですよね。  こういうことで、将来ここにもやはり公的資金が要るんだなという判断をされるのであれば、それと今度の公的資金と、ではどっちが先に本当は整理しなきゃいけないことかということになったら、私は、政府が、今から踏み倒そうとしているその金について先に結論を出して、それから次の段階というふうな順番があるんだろうというふうに思うのですよね。  そんな議論というのを、やはり大蔵省サイドから、あるいは金融監督庁サイドから、これは一つの省庁だけでできる話じゃない、いわゆる全政府的に、こうした問題を一つ一つ解決していくのにどう努力していくかという全体の意識がないといけないわけですが、その問題提起というのはやはり大蔵省からすべきだ、あるいは金融監督庁からすべきだ、こんなふうに思うのですね。  そんな意味から、こういう話をもっともっと詰めていきましょうと、もう時間が来ていますから、そういう意思表示をきょうはさせていただいて、入り口論で終わってしまいましたけれども、問題のありかだけの指摘になりましたけれども、私の質問を終わりたいというふうに思います。  以上です。
  275. 金子一義

    金子委員長 次に、上田清司君。
  276. 上田清司

    ○上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。あと一時間で、大変恐縮ですが、お疲れだと思いますが、よろしくお願いいたします。  きょうはもう一つのチョウギン、いわゆる朝銀問題を主に取り上げさせていただきたいと思っております。  まず、最近ショッキングなレポートが出ておりました。週刊現代の三月十一日号であったのですが、「金正日への秘密資金三百億円を私はこうして運んだ」というレポートがありまして、これに少し関心を持ったところであります。そこで、これのレポートの取材の対象になった元総連の財政局の最高幹部に私もお目にかかって、このレポートについて事実かどうかの確認をいささかしてまいりました。  もちろん、その方がうそを言っていれば、事実かどうかということに関して言えばもちろん違うわけでありますが、しかし信憑性のある部分も私はかなりあるというふうに理解をしておりまして、わかりやすいように、皆さんのお手元に送金ルートのスキームをちょっと用意させていただきました。どのようにして指示が入り、指令が入り、そしてどのようにしてお金が北朝鮮の方に流れていくのかということについて、スキームをつくってまいりました。これは、フリーのジャーナリストの野村さんが元財政局の最高幹部に聞かれたものを整理したものであります。  それぞれ漢字で書いてありますので、これをまた朝鮮語で読むのは私も苦手ですので、そのまま読んでいただければ結構でございますが、基本的に、本国の方からちょうど、日本語読みでいけば万景峰92号の船上まで許宗萬という責任副議長が来られて、具体的な指示を受けて、そして総連の中央常任委員会で地方に指示をするという形で、そのときに一番中心になっているというのでしょうか、極めて重要な役割を果たしているのが、まさしく朝鮮銀行、例えば東京信用組合であるとか、ここに○○信組と書いてありますが、それぞれの地方の信用組合が大変重要な役割を果たすということを、この後私は明らかにさせていただきたいと思っているわけであります。  そこで、早速ですが、公安調査庁にお伺いしますけれども、このような指摘をさせていただいたわけでございますが、送金ルートのスキームはこのようになっているということに関して、どのように公安調査庁は理解をされているのか、まず確認をさせてください。
  277. 三谷紘

    三谷政府参考人 朝鮮総連関係者などによります北朝鮮への送金ルート等につきましては、幾つか方法の可能性は考えられるわけでございまして、私ども公安調査庁としましても重大な関心を持って調査を続けているところでございますが、残念ながら、その全体像ということについては把握するには至っておりません。
  278. 上田清司

    ○上田(清)委員 ちょっと、最後、全体像を見ていないということですか、全体をよく見ているということですか。
  279. 三谷紘

    三谷政府参考人 送金ルートの全体像については把握できておりません。
  280. 上田清司

    ○上田(清)委員 それで、このレポートについては重大な関心を持っておられるかどうか、このことだけ確認させてください。
  281. 三谷紘

    三谷政府参考人 御指摘の報道につきましては、重大な関心を寄せております。
  282. 上田清司

    ○上田(清)委員 それなりに重要な資料になり得るというような判断を公安調査庁もなさっているというふうに私も認識をした上で、以後、この朝銀問題についても確認をさせていただきたいと思います。  そこで、それぞれの都道府県にあります、最盛期には三十七ほど、例えば朝銀愛知県信用組合だとか、三十七ほどあったというふうに私は理解しておりますが、これはそれぞれ独立した法人なのかどうか。これは担当は金融監督庁になるのでしょうか。
  283. 村井仁

    村井政務次官 各朝銀、これはアサギンと呼んだ方がよろしいかもしれませんが、朝銀信用組合につきましては、中小企業等協同組合法第二十七条の二の規定によりまして、原則としてそれぞれの都道府県知事の認可を得て設立されたものでございまして、その意味で別個の法人格を有している、このように認識をしております。
  284. 上田清司

    ○上田(清)委員 総括次官にお伺いしますが、別個の存在だ、そしてこれは独立した経営体というふうに理解してよろしいんでしょうか。
  285. 村井仁

    村井政務次官 それぞれ都道府県知事の監督を受ける独自の法人格を有する協同組合であるが、それが経営体という言葉でございますと、これは必ずしも法律用語ではございませんし、独自のものかどうかということにつきまして、私も何ともお答えのしようがございません。
  286. 上田清司

    ○上田(清)委員 それはちょっとおかしい答弁になります。都道府県知事が認可をした独立した組合である、金融機関として位置づけられていると。だからこそ、大阪信組破綻の後に近畿信用組合に関して既に資金贈与並びに資産の買い取り等をやっているわけでありますから、そういうふうな何かわけのわからない御答弁ではちょっと困ります。明確にお答えをしていただきたいと思います。  きちっとした組合として認められたものである、これは一つ一つの信組に当然決算があり、そして監査があり、それぞれ独立した——経営体という言葉の意味ではなくて、法人格を持ってきちっと独立体としてやっているのかどうかということを私は確認しているのであって、用語の言葉で余りこだわらないでほしいと思います。中身で答えていただきたいと思います。
  287. 村井仁

    村井政務次官 改めてお答え申し上げます。  私ども独立した法人として認識をしております。
  288. 上田清司

    ○上田(清)委員 そこで、皆様方にお届けしております二枚目にスキーム図がございます。朝銀○○信組は朝鮮総連での事業体で、朝銀○○信組は事実上支店にすぎないのではないかということでちょっとタイトルをつけておりますが、そのような認識をせざるを得ないような状況がいろいろな局面で出てきておりまして、実はそのようなこともいろいろな文書の中に出てきております。  私なりに推察するに、どうもこれはもともとの本部が朝鮮労働党にあり、朝鮮総連の中央常任委員会の指揮下にあって、日本朝鮮信用組合協会といういわば本店機能を持つような、本店と言ったらちょっと言葉に語弊がありますが、やや全体を総括するような協会がありまして、その下にそれぞれ朝銀の○○信組があるのではないか。しかも、それは各県の総連の本部の指揮を受けているというようなことが、後で一つ一つ具体的な事例を申し上げますが、このような仕組みになっているように私は理解しております。  特に、総連の発行する「朝鮮総連」という本がございますが、そこには日本朝鮮信用組合協会は朝鮮総連の傘下団体であるということを記してあります。それから、ここに朝鮮時報といういわば機関紙がございますが、この中にもこの信用組合が事業体であると明確に出ております。どのような団体が関連しているかという関連団体をわざわざ書いてあります。  そういうことを申し上げますと、今申し上げましたように独立した一種金融機関であるにもかかわらず、極めて政治的な一つの組織体の中の一つの部分になっている部分がある、私はこのようにまずは申し上げておきます。後で個々のところでまた御指摘をさせていただきます。  そこで、まずお伺いいたしますが、通常の銀行の場合、仮にどこかの銀行の新橋支店が破綻した場合、丸の内支店が受け皿支店になったりすることが可能なのかどうか。仮定の話で恐縮ですが、このことをお答えいただければありがたいと思います。
  289. 村井仁

    村井政務次官 ちょっと突然のお尋ねでございまして、私もどのようにお答えしたらいいか……。  受け皿というのは、通常の場合でございましたら別個の企業体の中で受け皿というようなことがあるので、支店同士というお話になりますと、ちょっとイメージがもう一つよくわからないという感じがいたしますが、恐縮でございます、ちょっとお答え申し上げかねます。
  290. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 ちょっと法律的な補足をいたしますと、支店が破綻をしたということは、支店だけの破綻ということはちょっと法律上はない話でございまして、やはりその企業体と申しますか、法人そのものが破綻をするということでありましょうから、ある支店が破綻をしたときにほかの支店が受け皿になるということは、これは法の理屈の上から見てないというふうに申し上げるのがよろしいのじゃないかと思います。
  291. 上田清司

    ○上田(清)委員 全くそのとおりでございます。  ところが、先ほど申し上げましたように、まずこの日本朝鮮信用組合協会というものが本店だとすれば、各県にございます朝銀の○○信用組合というものは支店にしかすぎないのではないかというようなことを私は申し上げざるを得ないのであります。  その理由は、まず人事権が事実上朝鮮総連にあり、常任委員会にあり、そして本店機能を持つ協会の方にある。その証拠は、皆様にも資料提出しております「全国三十三朝銀信組の役員プロフィール」、若干資料は古いんですが、これは金融ジャーナリストで有名な須田慎一郎先生が取りまとめたものであります。  これを見てわかりますように、普通は信用組合というのは地域に根差して、例えば愛知県の信用組合の理事長が突然岐阜県に行ったり、岐阜県はちょっと近いから行きやすいかもしれませんが、東京に行ったり北海道に行ったり福岡に行ったりしないものであります。この人事のローテーションは明らかに異質な経営体系を持っているということを私は指摘せざるを得ないのですが、この点については大臣はいかがでございますか。——質問の意図がよくわからなかったみたいですが。  見ていただければわかりますように、それぞれいろいろなところに異動をされております。要するに、これは普通でいうと一つの法人の社長なんですね、理事長というのは。支店長じゃないのですね。にもかかわらず、各県にあるいは本店に行っておられるわけですよ、理事長があっち行ったりこっち行ったり。これは明らかに、先ほど法律に基づく、中小企業法の八条の第五項か何かは知りませんが、その組合法に基づく法人としては異質な展開をしている、少なくとも経営者が。これはおかしいじゃないですか。
  292. 村井仁

    村井政務次官 上田委員のお話は、要するに朝鮮総連と各朝銀信用組合との関係についての私どもの見解をお尋ねということでございますけれども、私どもとしましては、朝鮮総連について何らかのコメントができる立場ではございませんし、また、朝銀信用組合等の信用組合につきましては、これは改めて申し上げますが、御存じのとおり都道府県が監督事務を行っているということでございまして、そういうことで、この関連につきましてコメントをすることはできる立場にございません。
  293. 上田清司

    ○上田(清)委員 私は、村井事務次官に聞いたのではなくて、政治家村井総括政務次官に聞いたつもりであります。  既にもう大阪の方で預保を通じて三千億円を超えるお金が贈与されておる事実もございます。総連のことを聞いているわけでもありません。先ほど申し上げました中小企業等組合法第五条の三項に基づく法人として、組合として極めて異質な状況にあるということを私は指摘したので、この指摘について、そのとおりなのか全く違う見解を持たれるのか、そのことを聞きたいということであります。
  294. 村井仁

    村井政務次官 私どもとしましては、その信用組合の役員の選出でございますけれども、これは、協同組合法に基づきまして、総会または総代会で選挙または指名推選等によって決められるということでありまして、各信用組合の役員はこのような手続を経て就任をしているものだろう、このように理解をしているところでございます。
  295. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、松田理事長にお伺いしますが、預金保険機構の方で三千億以上の資金贈与並びに資産の買い取りを、朝銀大阪信組の破綻の後合併された近畿を受け皿にして出されておりますが、当然そのときにこのような経営実態について把握をされたというふうに私は理解しておりますので、これを不思議に思われなかったのかどうか。私は、極めて不自然、通常ではあり得ない話だということを申し上げたい。  御感想というか、このことについてどのような感慨を持たれたか、お伺いしたいと思います。
  296. 松田昇

    松田参考人 御指摘の点でございますけれども、大阪朝銀につきましては、破綻したのが大阪朝銀という組織で、救済したのは朝銀近畿という組織だということで、大阪府の検査、破綻公表を経て、それから、当時は大蔵大臣でございましたけれども、当該営業譲渡についての適格性の認定を受けた後で私どもは申し込みを受けまして、処理をいたしました。  先生の御指摘のとおりの約三千億、後に若干減額をいたしておりますけれども、その金額を資金援助したわけでございまして、当時の認識としては、当然のことながら、破綻金融機関として独立している、もう一つは救済金融機関として独立している、こういう認識でございました。
  297. 上田清司

    ○上田(清)委員 そこで、現在でも構いませんが、このような人事の異動があった、具体的にもう一つ私は特定の個人名を挙げさせていただきます。  文学秀という方は、具体的な年度は確認をしていませんが、このような形で動かれております。朝銀大阪堺支店長、それから朝信協、つまり、先ほど申し上げました一種の本店機能を持つ朝鮮銀行信用協会、それから朝銀大阪業務部長、それから東大阪支店長、そして現在、朝銀の近畿に入っておられるはずです。  このように、一人の方がぐるぐる回っておられる、こういうことは可能なんでしょうか。しかも、こちらのペーパーにありますように、理事長クラスがあっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。これは、通常の組合法に基づくような役員構成として望ましいのか望ましくないのか、そのくらいの回答はできるでしょう。どのような選出がされたかどうかはともかく、普通の常識で考えられないじゃないですか。これは地域に根差した組合でしょう。それとも、組合員は全国から募っているのですか。これは一定の地域から組合員を募っているのでしょう。その組合員の利益のためにやる組合でしょう。だったら、不自然だというふうに思うのが当たり前じゃないでしょうか。  松田理事長、今これを見て不自然だというふうに思われるのか思われないのか。
  298. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  今先生御指摘の詳しい人事の異動の話、これは、一部雑誌等で私どももふわっとは拝見いたしておりましたけれども、今、具体的な御指摘を受けましたのが、私としては具体的な認識として初めてでございますので。  当時、朝銀大阪を処理した段階では、完全な独立した組織である。つまり、我が国の法令に従って認可をされている金融機関で、預金保険制度に加入をされているということで、他の金融破綻処理と同じような手続で進行した、そういう処理をした、こういうことでございます。
  299. 上田清司

    ○上田(清)委員 これは谷垣大臣にお伺いしたいのですが、どう見てもこれは支店であって、それぞれ独立した法人とは見がたいですよ、役員人事だけ見ても。それ以外にも後で御指摘しますけれども、どうしても認めたくないと言われるのだったら、認めさせる論点をもう一回出させてもらいますけれども。  不自然だと思わないのか思うのかというのは、国民に対して、もしこのことで不自然に思わないと言われるような大臣だったら失格ですよ、テレビも入っていますから。不自然に思わないと言うような大臣では失格ですよ。越智さんと同じですよ。
  300. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 今、預金保険機構の松田理事長から御答弁がありましたように、日本で認可を受けて、そこでそれなりの内部の手続で選任された人事であろうと思います。いろいろな人事の形態があり得るのかもしれませんが、私としては、それ以上申し上げるのは差し控えさせていただきます。
  301. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、私は、人事でやや不自然なローテーションがある、支店機能しか果たしていないんではないかというふうなところがありますので、さらに、法令上もやや問題があることを指摘させていただきたいと思います。  実は、中小企業等協同組合法第五条三項にこういう文言がございます。「組合は、特定の政党のために利用してはならない。」こういう、政治から独立してやっていくべきだというようなことを書いてあります。  ところが、この後に極めて興味ある判決が出ておりまして、九七年の五月に朝銀愛知の預金横領事件というのがございまして、当時の副理事長を訴えた原告側の東明商事というものが勝訴しているわけなんですが、名古屋地裁に原告が提出した内部文書によって、先ほどここのところで出させていただきました学習指導委員会、俗に言う学習組、この存在が明らかにされております。この裁判の中で、実は、愛知の朝銀愛知信用組合は学習組が支配をしているのであって、経営者はそうではない、そういうことを裁判の中で、内部の文書をいろいろな形で出してきておりまして、これもまた極めて奇怪な状態でありまして、こういうふうな立場でここに書いてあります。  これは原告の代理人の大橋秀雄弁護士の事務所からいただいた一部資料でございますが、「基本的性格」で「「学習組」は、金日成主席・金正日書記に絶対の忠誠を誓い、思想性が高く活動能力に優れた活動家で構成されており、朝鮮総連の諸活動、とりわけ、対南非公然活動で重要な役割を果たしている。」これは公安調査庁がよく御存じのことであります。  こういうことをやっておりまして、この中ではっきり、原告側から出された裁判の資料の中で、学習組指導委員会が朝銀愛知の最高意思決定機関であるということを明らかにしたものがありますので、できましたら金融監督庁としても、この裁判の追っかけをきちっとやっていただきたい。  もし本当にこの非公然たる組織である学習組の支配下にある信用組合だということであれば、まさに、先ほど申し上げました中小企業等協同組合法第五条三項の法律に抵触する団体だということになってしまいますから、果たしてそのような組合に今後、これまでの資金贈与も含めて、あるいはこれから行われるであろうところの四ブロックに集約される新しい仕組みに資金贈与が可能なのかどうかということも考えられなければいけませんので、このことについて、今すぐ答弁を求めたところで大した答弁が答えられるというふうに思いませんので、まず調べていただきたいということを約束していただきたいと思います。約束できますか。
  302. 村井仁

    村井政務次官 初めて私もお伺いいたしましたが、よく私どもの方でも研究をさせていただきたいと存じます。
  303. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  そこで、実はこのような大まかなフレームと、そして極めて異常と思われるような人事のローテーション、そして裁判で明らかにされた朝銀愛知と学習組との関係、そういうことも含めて、朝銀大阪の検査とそして資金贈与の問題について、いま一度再検討をすべきではないかというふうに私は思っております。  この当時の検査は大阪府でありますから、その大阪府の検査を敷衍して預金保険機構の方で判断をされたと思いますが、まず、大阪府の検査がきちっとなされていたという前提に立っておられたのでしょうか。
  304. 松田昇

    松田参考人 大阪府の検査の前に、大阪府の知事が当該スキームを公表されております。その後検査が行われておりますので、私ども、その検査を尊重して処理をいたしました。
  305. 上田清司

    ○上田(清)委員 実は、自由党の小池百合子議員が昨年の七月六日に同じような質問をされておられまして、当時、五味政府委員がこの問題に関して、「私ども直接の監督官庁でございませんので必ずしもその詳細は把握しておりませんけれども、資産の確定の検査という意味では適切に実施されたというふうに承知をいたしております。」と、同じような御答弁をされたわけです。やや無責任だなと思うのは、詳細に把握しておりませんけれども適切に実施されていると。詳細に把握していないのに何で適切に実施されているのがわかるのか、ちょっとこの辺が理解できないところですが、これは単なる嫌みですから、嫌みだというふうに理解していただきたいと思います。  そこで、当時の朝銀大阪の不良債権額の総額と、回収見込み額と回収不能額を明らかにしていただきたいと思います。
  306. 村井仁

    村井政務次官 平成九年の八月三十一日を検査基準日といたしまして大阪府が実施した検査の結果でございますけれども、総資産が五千二百四十六億円、このうち回収不能額または無価値と判定される資産が約二千五百五十一億円でございまして、残りが回収可能と判定される資産であった、このように承知しております。
  307. 上田清司

    ○上田(清)委員 そこで、預保のいわば資金贈与の基準というのはどのようになっているのか、そして、この朝銀大阪に限っていえば、その基準に基づいてどのようになされたのか、確認したいと思います。
  308. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  大阪朝銀の関係で朝銀近畿に資金援助したわけでございますけれども、それは金銭で申しますと、金銭贈与が二千六百八十三億円でございました。そのほかに、不良資産の買い取りということで四百七十六億円で、これは朝銀大阪から不良資産の買い取りを当機構及びRCCで行っております。  問題は、穴埋めに使いました金銭贈与の算定根拠であろうと思いますけれども、これは、資産買い取り時に多数発生いたしました譲渡損、これが大宗でございます。それで、そういう三千四十四億円の費用とロスが計上されました。一方、それに対して補てんをする財源としては、引当金等がございましたので、それを三百六十一億円引きまして、差し引きで二千六百八十三億円不足いたしておりますので、これは、預金者の預金の支払い原資を救済金融機関に贈与するという趣旨で、その金額をお支払いすべく運営委員会で決めたわけでございますが、その後、資金贈与までの期間に回収等がございましたので、差し引き五十七億円減額をいたしまして、金銭の贈与は二千六百二十六億円ということになっております。
  309. 上田清司

    ○上田(清)委員 そこで、一般に、預保の資金贈与の金額を決めるいわゆる基準というのは、どのようになっておられますか。
  310. 松田昇

    松田参考人 特に金銭贈与が中心でよろしゅうございますか。  私どもの金銭贈与を行います基準と申しますか目的は先生御案内のとおりでございまして、預金者等の保護を図るために、当該事業、この場合には営業譲渡と言わずに、信用組合ですから事業譲渡と申し上げるのですが、事業譲渡の実現に必要不可欠な資金援助をする。これは、預金等を引き受ける金融機関預金等の債務を引き受けますので、その支払い原資に充当するために金銭の贈与を行う、こういう仕組みになっております。  そのときにどういう基準で差し引きしていくかと申しますと、一つは、救済金融機関へ譲渡します資産の中で、引当金不足で積み増しをするもの、あるいは、当機構あるいはRCCが破綻した金融機関から資産を買い取る際に譲渡損が発生しますので、その譲渡損、これは非常に大きなものでございます。二番目に、事業譲渡までの間にいろいろな、例えば不動産を売却しましてまた売却損が出る、そういうことがございますので、事業譲渡時までの決算損失というのが入ります。そのほかに、事業譲渡コストということで、例えば対抗要件に伴う登記の費用、こういうものがいろいろ加わりまして、それが全体として費用ロスの合計額になります。  それから引当金、そのほか、例えば外部支援がありますと外部支援の金額等を引きまして、それで差し引き不足額を計算して、それを金銭の贈与として引き受けた金融機関にお渡しをする、こういう手順になっております。
  311. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  そこで、四月一日から、都道府県から金融監督庁の方に検査の権限が移るという形になっているわけでございますが、この朝銀大阪の場合、破綻してから金銭贈与まで約一年ぐらい時間がかかっているというふうに理解しておりますが、これは間違いないでしょうか。
  312. 松田昇

    松田参考人 破綻をいたしましたのが平成九年五月に発表でございまして、それで営業譲渡の事業日が平成十年の五月の十一日でございます。先生御指摘のとおり、約一年かかっております。
  313. 上田清司

    ○上田(清)委員 そこで、やはり同じように、十一年の五月に十三の朝銀信用組合が破綻をしております。そこで、これを北東ブロック、中部ブロック、西ブロック、関東ブロックという形で、四ブロックに分けて受け皿信用組合をつくろうという仕組みが明らかにされておるところでありますけれども、具体的に、もう資金贈与や資産の買い取り等についての査定は終わったのかどうか、御確認をさせていただきます。
  314. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 今おっしゃったように、十九の北朝鮮系信用組合が合併して、四つの組合に再編されたということまでは承知をしております。  それから、今おっしゃった、破綻が公表されてまだ処理が決定していない北朝鮮系の信用組合が十三ございますが、これは個別の処理に関することでございますので申し上げないということを原則にしておりますので、そのように御答弁させていただきます。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  315. 上田清司

    ○上田(清)委員 それはおかしいですね。国民のお金が出されていくわけでありまして、その国民を代表しているのが我々でありまして、申し上げられないというのはおかしな話でありまして、別に幾ら出せといって話をしているわけではありませんから、少なくとも前回一年ぐらいかかっていると、だからどのような状況になっているのか。まさかまた、先ほどの岩國先生じゃありませんが、国会が終わったころ出そうなんというふうな考えを持っているわけじゃないでしょうね。  いつ出されるのか、いつ処理をされるのか。これは大事なことなんですよ。極めて国民関心を持っている話ですから、どのような仕組みでいつ処理をされるのか、やはりある程度言っていただかないと困ります。
  316. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 個別の決定をしましたときは直ちに公表をしておりますけれども、処理の途中いろいろなことを発表しますと、こういう期間、例えば、預貯金が急激に移動するとか、いろいろなことがございますので、これ以上申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。  いずれにせよ、一般論でございますけれども、具体的に金融再生委員会で物事を決定し、処理していく場合には、これはきちっと厳正に法に従って処理をするということでございます。
  317. 上田清司

    ○上田(清)委員 そこでお尋ねをしますが、十三の信組、そしてまた朝銀大阪信組、私、法務省の方に確認をとりましたところ、いずれも背任行為はない、つまり民事、刑事の訴追が一つもなかったというふうに聞いておりますが、これは金融監督庁として確認をされていることでしょうか。
  318. 村井仁

    村井政務次官 私どもといたしましては、金融機関破綻しました場合、破綻原因や責任解明を行うには、この朝銀信組に限らず、破綻金融機関に課せられた当然の義務でございますから、これはきっちりやっていただく、こういう姿勢でございます。  現在、破綻を表明している朝銀十三組合を初めとしまして、預金保険法上の資金援助の適用を受ける信用組合につきましては、基本的には、弁護士あるいは公認会計士などの第三者による責任解明委員会を設置しておりまして、それで破綻原因、その責任の解明をやっていただいているところであります。  また、預金保険機構から資金援助が行われました場合には、整理回収機構が破綻金融機関から資産を買い取った債権を回収する過程で、その破綻金融機関経営者、借り手などの民事、刑事責任が明らかになれば、これに適切な責任追及を行う、こういうことになると承知しているところでございます。  ただ、金融当局としましては、いずれにしましても、金融機関業務の健全かつ適正な運営が確保されるように監督を行っている立場でございますけれども、個々の融資案件について、背任罪か否かというのを判断する立場には私どもはないということを申し上げておきたいと存じます。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  319. 上田清司

    ○上田(清)委員 実は、背任行為が極めて明々白々に出ている資料を私は持っておりますので、今から明らかにさせていただきたいというふうに思っておりますので、同じように、ぜひ、この話を聞いた後に調べていただきたいと思います。  この問題に関しては、朝銀大阪の場合であります。既に、フリーのジャーナリストの野村旗守さんがいろいろな論文で明らかにしておられますが、大阪府高槻市上田辺町八九一の一、約六百坪の土地でありますが、これが一九八七年から一九九〇年にかけて住銀リースで六十二億、それから一九九〇年に神戸商銀で十二億、それでその後に、九〇年から九二年にかけて朝銀大阪が百十二・五億貸し付けをやっております、この土地を担保に。  ところが、その資産価値とかを調べていきますと、極めてこの融資がでたらめであるということがわかります。  これは、野村さんが調べられたところによりますと、担保価値は当時でも、どんなに高くても五十億、低ければ三十億というものに、合計で百九十六億もついている。特に、住銀リースやそういったところで、もう担保価値は終わっているにもかかわらず上乗せをしている、こういう事態でありまして、このことがたくさんございまして、私も一つ持っておりますが。  これは、香川県の仲多度郡仲南町の土地でございますが、国土庁の方で時価を調べていただきましたところ、大体、平米当たり二万二千円の査定をすればいいかなというふうな御紹介がございまして、六十三坪の土地でありますが、そうしますと、これは単純に掛け算すると、百三十八万六千円。ところが、これに二十九億、朝銀大阪が貸し付けをしている、この担保に。これはちゃんと登記簿がここにあります。後でお貸ししても構いません。  このように極めてでたらめな融資をしておりまして、これだけではありません、もう枚挙にいとまがありません。このことでもう一時間ぐらいしゃべれるぐらいです。  こういう形もあります。例えば、これはアエラで九三年の三月三十日に詳しくレポートされたものでありますけれども、朝鮮総連系の団体であります朝鮮出版会館、文京区白山にございますが、こちらにやはり八十二億融資されておりますが、この融資先が、なぜか、朝銀大阪、朝銀東京、朝銀神奈川。  なぜ東京の物件に大阪の朝銀が貸すのか。これは、エリアがあったらだめなのかどうかということに関して私も確認をとっておりませんが、ひょっとしたらこれも法律違反になるかもしれません。  それから同じように、同じくアエラの八月三日号で出ておりますが、朝鮮総連中央学院、これは八王子ですが、一千五百三十二平方メートルのところにやはり朝銀東京、朝銀神奈川、そして朝銀福岡も貸し付けております。  なぜ朝銀福岡が八王子まで来て貸し付けなくちゃいけないのか。まさに、先ほど申し上げましたように、これは全部支店ですから、一つの事業体ですから、一つのコングロマリットですから、独立しておりませんから適当に融資ができるという仕組みなんですね。こういったところでも、明らかに独立した信用組合ではないというようなことがわかってくるのではないかと私は思います。  こんなものがたくさんございまして、これはまさに、本当に朝鮮総連の最高幹部が持って焼却しているはずの内部資料なんですが、この中に、今申し上げたものも含めてたくさん、朝鮮総連系の持つ、学校関係であります、学校関係を担保にしてたくさんのお金を借りております。この総額が、関西で五百億以上、そして全国で二千億から三千億になるという、これもたまたま、先ほど冒頭に挙げました週刊現代のレポートの一部に、その財政局の元最高幹部が吐露をしております。  一つ一つ申し上げていくと時間がございませんけれども、なぜ、このように学校を担保に融資をなさって、そして学校が改築されたわけでもない、あるいは新しく変わったわけでもない。どこにお金が使われたのか、それもよくわからないはずであります。相当この朝銀信組に関しては、大阪も含めて、東京も含めて、これからブロックで行われるところに関しては極めて慎重な検査が必要だということを私は申し上げたいと思います。これは事実上の過剰融資だ、あるいは、過剰融資であるということは事実上背任ではないかというふうに私は思っております。  実は、金融監督庁を初め、大蔵省も含めて、このような実態を御存じじゃないのですか。大蔵大臣、大体聞いていらっしゃるんじゃないですか。御報告を受けているんじゃないですか。
  320. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうも私は不敏にして全く聞いておりません。
  321. 上田清司

    ○上田(清)委員 特に、朝銀大阪の元副理事長などは、これも法務省の方から資料をいただいたのですけれども、名前はあえて挙げませんが、この方は、平成九年の四月上旬、北朝鮮船舶の貨物船に覚せい剤約五十八キロをハチみつ缶に隠匿して積載し、同月十日ごろ、宮崎県日向市内の岸壁に接岸中の同船から覚せい剤を陸揚げして、同市内の税関支所において逮捕された方であります。  少なくとも、大阪の朝銀の副理事長が、麻薬密売で逮捕されております、覚せい剤輸入で。覚せい剤取締法違反、逮捕が九年四月十一日、そして現在公判中であるということでありますけれども。こういう方が朝銀の副理事長をやっておられたという事実もあります。一体どういう関係かと。先ほど申し上げましたように、朝銀はちょっと簡単な問題じゃないですよ、普通の信用組合と違いますよということを、もう時間が迫ってまいりましたので、改めて申し上げますけれども。  先ほど申し上げましたように、人事のローテーションがぐるぐる回っている。地域に根差した信用組合であれば、そんなことはあり得ないはずであります。どこにぐるぐる回る理事長がいますか。多くの、それぞれの都道府県やあるいは市町村にできております信用組合の理事長が、あっちへ行ったりこっちへ行ったりするでしょうか。当然それはあり得ないことであります。あっちの県から来た、こっちの県から来たということはあり得ないことでありまして。しかも、本店的機能を持つ日本朝鮮信用組合協会の方にも出たり入ったりするという。  そしてまた、朝銀大阪の副理事長が、いろいろうわさにあるところの、麻薬密売の取締法違反で逮捕されて現在公判中であるという事実。そして、先ほど申し上げましたように、むちゃくちゃな過剰融資。そして、皆さんが、それぞれの都道府県が検査して、それを追認されたはずの預保においても金融監督庁においても、何ら民事、刑事上の責任追及をされない、この現実。このことに関して、私は極めて不可思議な感想というよりも、憤慨をしておるところでありまして、それぞれ各学園の資料もあります。後でいつでも御提供させてもらいたいと思います。  そこで、私は、きょう最後になりますが、一番大事な御指摘をさせていただきたいと思います。  事このような疑義がある以上、間違っても、国会に明らかにする前に、新しくできる四ブロックの信用組合に金銭贈与や資産の買い取りを絶対してはいけない、このことをお約束していただきたい。問題解明のために、ぜひ内部の組織を私は何らかの形でつくっていただきたいというふうに思っております。  これは極めて重大であります、もう既に三千億使われておりますから。この調子でいきますと、四つありますから、単純に計算しても一兆円を超えるかもしれない。これは大変なことでありまして、このことで私は、既に贈与されたもの、買い取りをされた大阪朝銀の再調査をお願いしたいということを、まず担当大臣お願いしたいと思います。
  322. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 私も、きょう初めて聞かせていただいたようなことも幾つかございまして、これからよく勉強してみたいと思っております。  ただ、一般論としてしか申し上げられませんが、今、適格性の認定に関するようなお話もいろいろございました。適格性の認定をするということになりますと再生委員会の仕事でございますけれども、法に照らして適格性の認定はきちっとやりたい、このように思っております。
  323. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは大臣にお伺いしますけれども、例えば三十億の価値しかない土地を担保に二百億融資すれば、これは背任でしょうか、それとも適正なんでしょうか。
  324. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 背任かどうかはやはり、捜査を遂げた上で、それぞれの捜査機関が御判断になることでありますから、私としては、仮定のお話、背任に当たるかどうかというような見解は差し控えさせていただきたいと思います。
  325. 上田清司

    ○上田(清)委員 金融監督庁を主宰される金融再生委員会大臣でありますのでお伺いしますが、それでは、過剰融資というふうには理解できてよろしいのでしょうか。
  326. 村井仁

    村井政務次官 地価が非常に変動したというような事情もございますから、今の設例のお話、初めて伺うことでもございますし、それだけで簡単に判断するわけにはまいらないということだけ、とりあえず申し上げておきます。
  327. 上田清司

    ○上田(清)委員 私も、選ばれた国会議員として確実な資料をもとに申し上げております。きょうそういう御答弁しかされないのであれば、また改めて、資料をよく読んでいただいてきちっとした答弁をしていただきます。  しかし、事態は深刻であります。そのような答弁で済むような問題でありません、この構図は。一つ一つの資料を見ていただければ、とても信じられないような事態が起きております。これは俗に言うでたらめであります、経営体として。そして、そのでたらめをきちっとするには、私はやはり金融整理管財人を置くべきではないかということを要求いたします。  資料不足で十分このことを把握していないというような御認識をされておられるみたいですけれども、私は、多分、もし総括次官や大臣にこのことが届いていないとすれば、事務局の怠慢であるということを最後に強調して終わります。  必ずきちっと報告してください。中身は大変なことであります。でないと、またまた日本国民に対して多大なる損失を与えるということを強調して、終わります。きちっとやるということを答弁してください。
  328. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 いずれにせよ、適格性の認定をしなければならぬということになれば、法に照らしてきちっとやりたいと思っております。
  329. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございました。
  330. 金子一義

    金子委員長 次回は、来る三十一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十九分散会