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2000-03-24 第147回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月二十四日(金曜日)     午後二時十一分開議  出席委員    委員長 金子 一義君    理事 衛藤征士郎君 理事 鴨下 一郎君    理事 根本  匠君 理事 渡辺 喜美君    理事 上田 清司君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君       石原 伸晃君    大石 秀政君       大野 功統君    河井 克行君       久間 章生君    桜井  新君       桜田 義孝君    塩谷  立君       下村 博文君    鈴木 俊一君       砂田 圭佑君    高市 早苗君       高橋 一郎君    西川 公也君       林  幹雄君    水野 賢一君       宮本 一三君    村井  仁君       村上誠一郎君    渡辺 博道君       岩國 哲人君    岡田 克也君       奥田  建君    河村たかし君       末松 義規君    中川 正春君       中桐 伸五君    山本 譲司君       谷口 隆義君    並木 正芳君       若松 謙維君    安倍 基雄君       一川 保夫君    武山百合子君       西田  猛君    佐々木憲昭君       矢島 恒夫君    横光 克彦君     …………………………………    大蔵大臣         宮澤 喜一君    国務大臣    (金融再生委員会委員長) 谷垣 禎一君    金融再生政務次官     村井  仁君    大蔵政務次官       大野 功統君    政府参考人    (金融再生委員会事務局長    )            森  昭治君    政府参考人    (金融監督庁監督部長)  乾  文男君    参考人    (日本銀行理事)     黒田  巖君    大蔵委員会専門員     田頭 基典君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     鈴木 俊一君   高市 早苗君     水野 賢一君   宮本 一三君     高橋 一郎君   村上誠一郎君     久間 章生君   末松 義規君     山本 譲司君   仙谷 由人君     中桐 伸五君   中川 正春君     奥田  建君   一川 保夫君     武山百合子君 同日  辞任         補欠選任   久間 章生君     村上誠一郎君   鈴木 俊一君     石原 伸晃君   高橋 一郎君     宮本 一三君   水野 賢一君     高市 早苗君   奥田  建君     中川 正春君   中桐 伸五君     仙谷 由人君   山本 譲司君     末松 義規君   武山百合子君     一川 保夫君     ————————————— 三月二十三日  預金保険法等の一部を改正する法律案内閣提出第三五号)  保険業法及び金融機関等更生手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五七号)  国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会閣法第一二一号)(参議院送付) 同月十七日  消費税増税反対消費税率三%への減税に関する請願松本善明紹介)(第四七八号)  不況打開地域経済振興緊急対策に関する請願松本善明紹介)(第四七九号)  商工ローン問題に関する請願北沢清功紹介)(第四九二号) 同月二十三日  関税定率法等改正案慎重審議等に関する請願佐々木憲昭紹介)(第六八五号)  同(矢島恒夫紹介)(第六八六号)  同(佐々木憲昭紹介)(第七四六号)  同(矢島恒夫紹介)(第七四七号)  金融監督庁金融機関への検査等緊急対策に関する請願佐々木陸海紹介)(第七四四号)  消費税率を三%に戻すことに関する請願大森猛紹介)(第七四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  預金保険法等の一部を改正する法律案内閣提出第三五号)  保険業法及び金融機関等更生手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五七号)  国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会閣法第一二一号)(参議院送付)  銀行生保など金融機関の行き過ぎた営業活動による個人債務者契約者の被害に関する予備的調査についての報告     午後二時十一分開議      ————◇—————
  2. 金子一義

    金子委員長 これより会議を開きます。  内閣提出預金保険法等の一部を改正する法律案及び保険業法及び金融機関等更生手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。大蔵大臣宮澤喜一君。     —————————————  預金保険法等の一部を改正する法律案  保険業法及び金融機関等更生手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました「預金保険法等の一部を改正する法律案」及び「保険業法及び金融機関等更生手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案」につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  この二つ法案は、金融システムの一層の安定化利用者保護を図るため、国民の基本的な貯蓄であり生活保障手段でもある預金及び保険について、ともに、破綻処理制度の拡充、セーフティーネットの財源の充実及び経営基盤強化手段整備を行うものであります。  まず、預金保険法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  我が国金融システムは、預金保険法金融機能再生法及び金融機能早期健全化法の枠組みを用いて官民一体となって不良債権処理金融機関再編整理等に集中的に取り組んだ結果、安定化してきております。  このような状況もと金融機関破綻処理のための恒久的な制度整備するとともに、交付国債の増額及び預金等全額保護特例措置の一年延長等を行うことに加え、当該特例措置終了に向けての環境整備の一環として協同組織金融機関経営基盤強化のための措置をあわせて講ずることにより、我が国金融機能の一層の安定化及び破綻金融機関の的確な処理を図るため、この法律案を提出することとした次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、平成十三年四月以降の金融機関破綻処理制度として、破綻処理迅速化多様化を図るため、破綻金融機関に係る合併等に対する資金援助適用範囲を拡大するとともに、破綻金融機関に対する金融整理管財人による管理、破綻金融機関業務承継金融危機に対応するための措置等制度を設けることとしております。また、金融機関について民事再生手続特例等を設けることとしております。  第二に、預金保険機構に交付する国債を、既に交付している七兆円に追加して六兆円増額するほか、平成十三年三月末までとなっている預金等全額保護特例措置を一年延長し、平成十四年三月末までとするとともに、流動性預金につきましては、当該特例措置終了後も、平成十五年三月末までの一年間、全額保護することとしております。  第三に、協同組織金融機関経営基盤強化を図るため、個別の協同組織金融機関による優先出資発行を可能とし、これらの金融機関について、金融機能早期健全化法に基づく資本増強適用要件を見直した上で、その適用期限を一年延長するとともに、平成八年の預金保険法改正前の破綻処理に伴う債権回収事務整理回収機構に円滑に一元化するための措置を講ずることとしております。  次に、保険業法及び金融機関等更生手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  我が国保険業を取り巻く環境は厳しいものとなっており、各保険会社にあっては、競争力強化、事業の効率化と同時に、一層の経営健全性の確保が必要な状況にあります。  このような状況もと相互会社から株式会社への組織変更に関する規定の見直しを行うほか、保険契約者等保護するための特別の措置等整備するとともに、相互会社更生手続特例等を設け、さらに、生命保険契約者保護機構借り入れに対する政府保証を可能とする措置恒久化を図ること等により、保険会社経営基盤強化及び破綻保険会社の的確な処理を図るため、この法律案を提出することとした次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、保険相互会社について自己資本充実再編等が円滑に行われ得るよう、相互会社から株式会社への組織変更に関する規定を見直し、端株の一括売却制度の導入により売却代金交付による社員への補償を可能とすることとしております。また、組織変更と同時の株式発行等による資本増強を可能とすることとしております。  第二に、破綻処理迅速化多様化を図るため、保険契約者保護機構の子会社である承継保険会社による保険契約承継等を可能とすることとしております。また、株式会社のみを対象としている更生手続について相互会社への適用を可能とするとともに、保険会社更生手続特例として、監督庁による更生手続開始申し立て等を可能とすることとしております。  第三に、これまでの破綻処理により基盤の揺らいだ生命保険契約者保護機構セーフティーネットとしての機能維持を図るため、生命保険会社各社負担能力を超える等の場合には、平成十五年三月末までに破綻した生命保険会社破綻処理費用について政府による補助を可能とするとともに、生命保険契約者保護機構借り入れに対する政府保証を可能とする措置恒久化を図ることとしております。  以上が、「預金保険法等の一部を改正する法律案」及び「保険業法及び金融機関等更生手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案」の提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 金子一義

    金子委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 金子一義

    金子委員長 この際、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事黒田巖君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として金融再生委員会事務局長森昭治君、金融監督庁監督部長乾文男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 金子一義

    金子委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺喜美君。
  8. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 代議士にとって質問は命でございますから、きのうのきょうでもやれと言われれば幾らでもやるのが代議士でございます。この二つ法案ともに非常に大事な法律でありますし、十分に時間はおとりしてございますので、野党の先生方におかれましても、御協力のほどよろしくお願い申し上げます。  今、この国においては、非常事態が終わるかどうか、そういう瀬戸際にあるのですね。人間というのは忘れっぽいものでありまして、三年前の秋でございますが、平成九年の十月ぐらいから嫌な雰囲気になってきまして、十一月にはいわば心筋梗塞みたいなことを起こしてしまったわけでございます。したがって、金融の大破局の予感を感じ取ると、例えばおすし屋さんの売り上げが半分になってしまうとか、いわば金融心筋梗塞からとんでもない肺炎を併発してしまった、そういうことなのであります。  それ以前から我々は、いわば統制システムから市場型システムへという体質改善、いわば酸性体質からアルカリ体質に変えていこう、そういう努力をやっていたのでありますけれども、まずこの心筋梗塞肺炎治療を、ほうっておいたら死んでしまいますので、この方をきっちり治しましょうと。実はこれは膨大なお金がかかったわけですね。そこで、お父ちゃんが入院してしまったわけですから、お金持ちのお母ちゃんから入院費とか治療代を借りてやってきたわけでございます。結局、膨大な借金は確かに積み上がっているのでありますけれども、一種の外科手術が必要なんですね。とにかく損失処理。  お手元にお配りした「日米の土地と株式資産の対名目GDP比」というグラフは、前回もお配りをしてあるわけでございますが、とにかく地価の大暴落によって、七百兆から八百兆円の資産が消えてなくなってしまった。この衝撃こそは金融心筋梗塞の一番の根本問題なわけでございます。したがって、この損失処理外科手術をやるにはどうしてもカンフルと輸血、つまり財政と金融資金供給ということが必要になってくるわけでございます。とにかく早くこの外科手術をなし終えるということが肝要なのでございます。  今回の二法のうち、まず生保倒産法制セーフティーネットの方からお尋ねをいたします。  今回の生命保険契約者機構のスキームにおいて、業界負担分の五千六百億円を超えるような破綻が生じた場合、政府補助は必ずつけてくれるのだろうか、こういう疑心暗鬼を今生じておるのですね。  法案によりますと、平成十五年三月までに破綻した生命保険会社破綻処理に要した費用生保各社負担金のみで賄うとしたならば、生保各社財務状況を著しく悪化させてしまって、契約者信頼性維持が困難となる、ひいては国民生活または金融市場に不測の混乱を生じさせるおそれがあると認める場合には、予算で定める金額の範囲で、保護機構に対して政府国庫補助をすることができる、こう書いてあるわけですから、一体、本当に政府お金を出してくれるのかどうか心配だという声があっても不思議はないのでございます。そのあたりはどうなんですか、きちんとお金は出してくれるのでしょうか。     〔委員長退席根本委員長代理着席
  9. 大野功統

    大野(功)政務次官 ただいまお尋ねの、生命保険契約者保護機構の全体のセーフティーネットの枠でございますけれども、九千六百億円になっております。その中で、業界負担分五千六百億円でございますから、四千億円分のことでございます。  その四千億円のところでございますけれども、現在のところを申し上げましたら、その時点で、そういう問題が生じた時点で、やはり業界負担能力などの要件について改めて検討を行って、そして政府として予算措置を講じていく。その場合、当然国会の御審議は必要なわけでございます。このように、政府補助必要性はその段階で改めて判断されるべきものでございます。  しかしながら、先生今御指摘になったような問題はございます。当然、生命保険業界負担金水準は相当高いところにあります。また業界を取り巻く厳しい経営環境もございます。そういうことを考えますと、やはり現時点では基本的には予算措置を講じることになるものと考えておる次第でございます。
  10. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 今回それに加えて、生保業界に対して四千六百億円の負担に加えて、新たに一千億円の追加負担を求めることとしているわけでございますが、合計で五千六百億円になるのですね。これが足りないということで、これ以上負担を求めるというようなことにはなりませんか。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その辺は、法文上はこういう規定をいたしておりますが、例えば、ただいま銀行業界渡辺委員よく御承知のようないきさつから特別の保険料を払っておるわけでございますけれども、この銀行業界負担というのは、今、計算をしてもらいますと、業務純益に対して保険料が六・一五%になっておるそうでございます。  そこで、保険業界の場合、今渡辺委員の言われました一千億円を加えますと、既に業務純益の六%に達しておる計算でございますから、実際上それは負担の限界であろう。銀行業界のことを考えましても、そう判断するのが相当ではないかと思っておりますので、先ほど総括政務次官からお答えをいたしましたように、実際問題として、その場合には政府予算措置を講ずる必要があるという判断をいたします。
  12. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、今、非常事態の最後の段階でして、我々が目指す次の未来というものを明確にしておく必要があるのですね。したがって、こういった保険制度についても、次の未来は小さな保険制度であるべきだということであろうと思うのでございます。  生保においても、ソルベンシーマージン比率とか、そういったディスクロージャーは昔に比べれば随分進んできたと思います。今、平均株価が二万円ぐらいの近辺にあるわけでございますが、二万二千円ぐらいの水準であればみんな、やれやれ、こういうことになるのだと思いますが、これが一万六千円とか一万七千円ぐらいにまで行ってしまうと、またこれは非常に嫌な気分になってくるのですね。  結局、日本銀行とか生保は相変わらずしこたま株を抱えておる。要するに、持ち合い株式を相変わらず抱え込んでしまっているわけでして、特に、生保銀行の持っている株というのはオールドエコノミーの方の株が多いんですね。ニューエコノミーの株というのは余り持っていないわけですよ。オールドエコノミーの方は膨大な資産を抱えておりますから、資産デフレの世の中ではどうしても株価は余り上がらないわけですね。  ですから、今平均株価が二万円ぐらいになった、バブルの最高値の大体半値ぐらいまで戻してきたわけでございますが、ニューエコノミーの方が随分と上場しておりますから、時価総額でいくと大体八割戻しぐらいになっておるんですね。ですが、オールドエコノミーの方ばかり抱えていると、とてもじゃないが、半値八掛け五割引きまではいきませんけれども、何割引きかという水準だ、こういうことになるわけでございます。  そういう状況もとで、破綻危機にあるような生保というのはあるのですか。そのあたり、あるのだったら言ってはいけないかもしれませんけれども、ないのだったらはっきりないとおっしゃった方がいいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  13. 村井仁

    村井政務次官 ただいま渡辺委員、大変該博な観察をお述べになられたわけでございますけれども、生命保険会社につきましては、確かに御指摘のように株価がある程度戻してまいりましたから、そういう意味で、有価証券含み損益、これはある程度改善を見ておる。しかし、それはある程度のことでございまして、平成九年、十年それから十一年上半期と引き続きまして保有契約高が減少しております。それからまた、低金利に引きずられまして、運用利回り、これも低下しているというような非常に厳しい経営環境にあることは事実でございます。  ただ、このような中で、各社とも経営効率化を一生懸命高めるとか、あるいは自己資本充実するということによりまして経営基盤強化を図る、あるいは今ニューエコノミーオールドエコノミーというようなお話がございましたけれども、資産構成の組みかえを図るというようなことを一生懸命努力しているということでございます。  私どもといたしましては、破綻危機にあるような生命保険会社があるのかというお尋ねに対しましては、今申し上げたように、地合い、なかなか難しい関係ではございますけれども、それぞれに今一生懸命やっている、そういう状況であるということを御報告申し上げたいと存じます。
  14. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、我々は今大変動の中にあるわけですよ。完璧ではないかもしれませんが、四〇一kみたいな確定拠出型年金なども、我々、法整備を行いつつあるところでございまして、とにかく国民の方も自己責任によって自分のお金を運用していく、そういうことがより一層求められていくようになるわけでございます。こうしたセーフティーネットは、今までなかったことがおかしなことでございますから、ぜひ今国会で仕上げたいというふうに思うわけでございます。  お手元に、「米国におけるFDICによる銀行破綻処理流れ」という二枚つづりの紙をお配りしてございます。これは、実は私が二年前の金融国会のときに、いわばブレーンストーミングでお配りをした紙なのでございますが、要するにこれはアメリカ破綻処理流れなんですね。  最小コストテストとか不可欠性原則とかいう大原則があるわけでございますが、実際の処理方式というのは二つやり方に分かれるわけでございます。一つは左側、銀行シャッターを閉めて破綻処理をやる方式クローズドバンク・トランザクションなどと言うそうでございます。一方、もう一つの方は、シャッターをあけておいたまま、破綻処理といいますか、そういうやり方オープンバンク・アシスタンスと言うそうでございます。  こういったアメリカ制度参考にしながら、それを全部まねたわけではございませんけれども、今回、銀行倒産法制の恒久的な制度を構築しようということになったわけでございます。金融国会のときにつくった制度非常事態対応でございますから、今回、非常事態対応と同時に恒久的な制度、つまり、平時モードに戻り、その後また危機に見舞われるというようなことに対する対応策ですね。ですから、非常時対応と次の危機対応とごちゃまぜになっていることがあるものですから、ちょっと混乱をしているようなところがないわけではございませんけれども、この中で、金融国会のときにも大変議論を呼んだのは、こっちの資本注入資本増強オープンバンク・アシスタンスの方なわけでございます。  こっちの方は、アメリカ原則では極めて例外的な原則として位置づけられていたわけでございますし、いまだかつてアメリカで一度も発動されたことはないのでございますが、日本の場合には、冒頭申し上げましたように、とんでもない資産価格の大暴落という事態に見舞われて、こっちの方を多用せざるを得ない状況に追い込まれてしまったわけでございます。したがって、金融健全化法によって資本増強をやった結果、今非常に金融不安というものが遠のき、システミックリスクはもう大丈夫だろう、そういうところまで来たわけでございます。  したがって、もう大丈夫だから資本増強は要らないんだ、こういう意見ももちろんあるわけでございますが、しかし、グローバル資本主義というのは、言ってみれば、資本主義のいい面と同時に、昔の資本主義の非常によくない面も同時にあわせ持っているのですね。例えば、昔の資本主義では恐慌ということはしょっちゅうあったわけでございまして、そういうことを考えれば、きちんと非常時対応国家の任務として考えておかなければいけないわけでございます。  今回の預保法改正における危機対応勘定の中で、特に資本増強必要性についてお聞かせいただきたいと思います。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 冒頭に、平成九年の秋の危機のことについてお話がございまして、あのときには私も御一緒に党の方で働いておりまして、渡辺委員先見性とエキスパティーズに非常にみんながお世話になった。この危機打開、脱却について非常なお働きをされたことを思い出すわけでございます。  それで、今おっしゃいましたような規定でございますが、あれからきょうまで経験したようなことは、我々はもう一遍あろうとは思いませんけれども、しかし、俗に、のど元過ぐれば熱さを忘るるということもございますから、やはり近代国家としてはこういうような規定を持っておくことが一つの見識であろう。持つか持たないかというのは判断の問題でございますが、やはり持っておいた方がいいであろう。ただ、その発動の条件は極めて重くしておきまして、万一のときに、しかし非常に重いプロセスを経てのみ発動できる、こういうものとして、今、渡辺委員の言われましたような、考えられることを大体ここで整備して万一の場合に備えた、そういう考え方でございます。
  16. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 アメリカ制度でも、これは非常に柔軟対応ができる仕組みになっておるのですね。預金保険機構、FDICの長官が、これは財務長官と相談するのでしょうか、最終的に大統領の号令一下、非常に柔軟対応ができる仕組みになっているわけでございます。  したがって、危機というのは、これはいつどのような形で起こってくるか、わかっていれば苦労はないのですね。ですから、余りがちがちの要件でがんじがらめにしてしまうと柔軟対応ができないという側面もあるわけでございますから、今回のこの法案は、そういったところについては、非常にある意味で柔軟対応ができる仕組みになっていると思いますので、その点で私は評価をしておるわけでございます。  今回、一連の銀行の、銀行だけではなくて預金取り扱い金融機関、小さなところまで含めて我々が考えておる次の未来というものは、まずペイオフというものは解禁をしていきましょうと、これは、言うまでもありませんけれども、預金者に自己責任を持っていただくということであります。  第二に、金融機関破綻を未然に防止する必要があるということであって、そのためには市場規律をより一層働かせて強靱な金融システムをつくるということ、そして金融監督当局の監督検査、早期是正、早期発見、早期治療、こういうことに努めること、そして金融機関破綻が起こった場合には預金保険を発動して迅速な処理を行うということでございます。そういった枠組みにしてあるわけですね。  第三に、預金保険制度のあり方については、基本的に、先ほども申し上げたように、小さな預金保険制度を目指すべきである、こういう発想が根底にあるわけでございます。  第四には、金融機関破綻処理の仕組みについてでありますが、再生の見込みのない金融機関については早期に処理する、その際コストのより小さな方法を選択する。  こういったことが基本的な発想になっていると理解をいたしております。  そこで、アメリカやり方でもありますように、PアンドA、資産と負債の一括譲渡というやり方がございます。これは、金曜日に裁判所に駆け込んで月曜日にはもう別の受け皿に貸付金と預金を一括譲渡ができるという、いわば小さな金融機関向けの破綻処理と理解をしておりますけれども、今回の法律では、一括譲渡の中で、営業の一部譲渡の場合の資金援助についても規定をしているわけでございます。  一部譲渡ということになりますと、これは受け皿の方にとっていいとこ取りになりはせぬか、そういう心配があるわけですね。ですから、受け皿の方の金融機関には通常のリスクぐらいはちゃんととってもらわないと困りますよと。金融機関が全くノーリスクでやろうというのは、これはモラルハザード以外の何物でもないわけでございますから、そういったいいとこ取りになりはせぬかという心配についてはいかがでございましょうか。     〔根本委員長代理退席、委員長着席〕
  17. 大野功統

    大野(功)政務次官 先生指摘のとおり、まさに破綻処理というのは迅速にやらなければいけない、金曜日に破綻しておれば月曜から受け皿銀行がきちっと受け継いでやっていかなければいけない、そのためのPアンドAという考え方でございます。  まず資産と負債を分けて考えてみたいと思うのですが、負債の方は、預金の方は付保預金の部分、これは受け皿銀行にきちっと受け継いでもらわなければなりません。それ以上の部分につきましては、やはり司法手続等できちっと決裁をして、そして幾らまで戻ってくるのだろうか、こういう手続が必要だろうと思いますので、この点は少し時間がかかるのじゃないかと思いますので、これは分けて考える。その場合に資金援助が可能となる、こういう考え方でございます。  それからもう一つ資産側、貸し付けの方でございますけれども、これは今でも一部引き受けが可能でございます。これは法律によってきちっと書いてございますが、問題点は、要するに何としてでも借り手を保護していかなければいけない、こういう問題点が一つあるわけでございまして、結局、今のやり方というのは、引き受けてくれないところはRCC、整理回収機構できちっと処理していこうというので分離して考えている、こういう考え方でございます。  今回、それに加えて、これが一番大事なところだと思うのですけれども、ロスシェアリングの考え方が入ってまいりました。それは一件ごとに交渉して決定していくのだろうとは思いますけれども、ロスシェアリングという考え方が入れば、それだけ資産サイドも受け皿銀行の方で受け入れやすくなってくるのではないか、そういう意味ではむしろ評価していただきたい、このように私は思っておるところでございます。
  18. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、借り手が困るような制度にしてしまうと非常に問題があるわけでして、今総括政務次官がおっしゃったような事後的な損失補てん、ロスシェアリングを行うことを可能にするというのはグッドアイデアであるというふうに思います。  いずれにしても、いわば灰色債権について、こういうものを引き取っても、これは灰色債権が正常債権になるということだってあり得るわけですから、そういうときにはもうかるんだ、こういうことがあったっていいわけなんですね。ですから、そのあたりのインセンティブももしかしたら考えていく必要があるのかもしれません。  いずれにしても、そういったことは迅速に行う必要があるわけで、とにかく長い間放置しておくとますます国民負担がふえてしまうということが長銀や日債銀のケースでわかったわけでございます。長銀なども本当はつぶさない方がよかったのですね、私に言わせれば。つぶした結果、魚でも生きている魚の方が価値があるのですね。死んだ魚というのはやはり安くなってしまうのですね。  それと同じように、銀行も殺してしまうとどんどん資産が劣化していって、結局それは国民負担になって返ってくるということがわかってしまったわけなんですね。ですから、そういうことも非常に大事な発想として考えていかなければいけないと私は思うのでございます。  そこで、監督当局にお尋ねいたしますけれども、平成十一年九月の中間決算における不良債権のディスクロージャーというのがことしの一月ぐらいに出されているわけでございますが、この数字を見てみますと、余り不良債権が減っていないんじゃないのかという感じなんですね。自己査定の分類債権でいきますと大体六十兆円ぐらいになるのかな、これはほとんど減っていないのですね。一方、業務純益の方はどうかというと、これは年々減り続けているわけですね。  ですから、けさの新聞の一面トップは地価は相変わらず値下がりしておる、大都市の一部では下げどまったようなところもないわけじゃないけれども、全国ベースでは相変わらず地価は値下がりし続けておるということになると、ロス率は逆に高くなってきているのじゃないのかということなんですね。  業務純益が減り続けているとなると、償却の原資はだんだん少なくなってきてしまっているのじゃないのかということなんですね。株が今二万円ぐらいですから、何とかよかったよかったみたいな雰囲気がありますけれども、こういう業務純益が減り続けておる、貸し出しも減り続けておるという状況もとで、一体不良債権処理に何年ぐらいかかるんだろう、これは数字を見れば大体計算できるのですね。  例えばこの六十兆のうち仮にロスが十兆ぐらいだということになりますと、不良債権処理能力が二、三兆円としますと大体五年ぐらいかかる、ロスが二十兆円ということになりますとこれは十年かかっちゃう、こういうことになるのですね。このあたりはどのような御認識でございましょうか。
  19. 乾文男

    ○乾政府参考人 お答えいたします。  十一年九月末のその不良債権の数字、今先生、六十兆ということで、恐らく自己査定の数字でおっしゃったわけでございますけれども、自己査定の数字で全国の銀行を見ますと、二から四分類の合計額が六十二・一兆円となっておりまして、三月末が六十四・三兆円でございましたから、二兆円強の減少というふうになっているわけでございます。とりわけ三分類につきましては、不良債権処理の進捗によりまして、三兆二千億円から二兆六千億円に減少しているところでございます。  今のは全国銀行でございますけれども、主要十七行で見ますと、二分類債権、今約六十兆とおっしゃいましたものが、主要行では二分類が三十七兆七千億円でございます。それからさらに、三分類が一兆九千億円、四分類が四百億円というふうになっているわけで、合計三十九兆六千億円でございますけれども、この数字も十一年三月に比べまして二兆円の減少となっているわけでございます。三分類、四分類の額につきましては、これは銀行が企業会計原則に基づきまして適切な償却、引き当てを行った後の数字でございますので、これはさらに償却、引き当てをすべきものではないことに留意する必要があるかと思います。  そこで、御指摘の二分類債権でございますけれども、二分類債権は、通常は各行において債権管理上注意を怠らなければ損失が発生をしないものでありますことから、これを直ちに不良債権として認識することは適当でないと考えております。  しからば、二分類債権から生じ得るロスをどのように見込み、どのように対応しているかというお尋ねでございましたけれども、なかなか一律に計算するのは困難でございますけれども、一定の仮定を置きますと、全国の銀行の要注意先二分類から年間に発生しております貸し倒れの実績率、先生のおっしゃるロス率といいますものは、約三%、三・一%程度でございます。そこで、今申しました主要行三十七兆七千億円の二分類がすべて要注意先といたしまして、これに今申しました三・一%を乗じますと、年間に確率として生じ得るロス額が一兆二千億円、二分類から生じますロス額が一兆二千億円ということになるわけでございます。  他方、主要行の業務純益でございますけれども、御指摘のように、一時に比べますと大幅に業務純益が減少しておりますけれども、この九月期の中間決算を十一月に発表しましたときの十一年度の通期の見込みを見ますと、主要行の業務純益の合計は三兆二千億円に、ややこれまでよりは回復した数字を見込んでいるということでございます。  それから、有価証券の含み益、御指摘ありましたけれども、九月中間決算時、日経平均が一万七千円台のときに、主要行の含み益が六兆二千億円というふうになってございまして、この時点での計数を前提にする限りは、不良債権への対応は十分対応可能な数字になっているというふうに考えております。  ただ、今後の景気や地価の動向によりまして、あるいは個別債務者の業況によりまして不良債権というのは随時発生していく可能性があるものでございますことから、監督当局といたしましても、各金融機関におきまして、今後ともそうした地価あるいは債務者の業況の動向に十分注意を払いながら、適切な償却、引き当てを行っていくことを求めているところでございます。
  20. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 この間、会社更生法の申請をして、何かきのうかおとといどこかの外資系に引き取られるという長崎屋、これは二分類だったようですね。ですから、そういうことを考えますと、これから民事再生法が四月一日から施行されるわけです。特定調停制度は、もう既に二月から施行されております。したがって、これは思わざる負担がかかってきかねない、そういう状況があるわけでございますから、監督当局としては十分に注意を払ってもらいたいと思うのでございます。  時間がなくなってしまいましたので、質問をはしょらざるを得ません。  早期健全化法に基づいて中小企業向けの貸し出しの増加目標を出させておるのですが、これは三兆円の目標なのに、中間決算では七千億円しか達成していない、こういう状況なんですね。今、再編統合が進んでおりますから、こういうことが下方修正されることのないように、ひとつ十分に注意を払って監督していっていただきたいと思います。  最後に、日本銀行に、きょうは政策決定会合の真っ最中だということなので、黒田理事さんにおいでいただいておりますが、長期金利、これがどうも何か、管理相場だから仕掛けてやれ、こういうことをたくらんでいる人がいるといううわさを新聞で読んだものですから。  この点について、長期金利が一パー台であればそんなに問題はないけれども、二パーを超えてとんとん拍子に三%に行っちゃったなどということになりますと、円は恐らく百円を突破して進んでいっちゃいますし、これは非常によくない、悪い金利上昇になるのですね。体が温まって体温が高くなって金利が上がっていくというのであれば、それは悪くない金利上昇でありますけれども、よくない金利上昇が起こったときに、日本銀行はどう対応するおつもりなんですか。
  21. 黒田巖

    黒田参考人 お答えさせていただきます。  ただいま先生から御指摘がございましたとおり、現在までのところ、長期金利、最近では長期国債の流通利回りで見まして大体一・八%台を中心にして総じて安定して推移しております。  今、先生から御指摘の点は、仮にこういうものが今までと非常に違う動きをしたときを想定しての御質問かと思いますが、先生も先ほど御指摘ありましたように、金利がどういうことで上がっているのかという点につきまして、やはりしっかりと検討していくということが第一であろうと考えております。  先生、先ほど、よくない金利上昇というお言葉がございましたが、どういうことで金利が上がっているのか。例えば、これから景気に対する市場の見方が強くなってまいりますと金利は上方圧力がかかってくると思いますけれども、こういうことが仮に生じたといたしますと、これはある意味では、先生が先ほど御心配のような金利上昇とはまた違ったものであろうというふうに思います。  こういうような動きに対しましては、金利の上がった原因、何が背景であるかということを見きわめていくということから始めまして、金融政策決定会合において御議論の上、対応をしていく、こういうふうに理解しております。
  22. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、国家戦略を考えてやっていただきたいのですね。自分の庭先だけきれいにしておく、こういう発想ではだめなんです。もうこれ以上は言いません。これ以上具体的に言うと、また政治家が日本銀行に圧力をかけたと言われますから言いませんけれども、そういう場合にどういう防戦ができるかということをぜひ考えておいてください。  以上、質問を終わります。ありがとうございました。
  23. 金子一義

    金子委員長 次に、石井啓一君。
  24. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 公明党・改革クラブの石井啓一でございます。  今回の預金保険法保険業法改正案の審議が開始されているわけでありますけれども、私は個人的に大変感慨深いものがございます。  といいますのは、私、この大蔵委員会理事平成十年の通常国会からさせていただいているわけですが、前年の秋の山一証券、拓銀の破綻の大変な金融危機を迎えて、ジャパン・プレミアムも大変なプレミアムの量になりまして、この十年の通常国会は、大変異例なことでありましたけれども、予算審議の前に金融二法を審議しまして、交付国債十兆円で、七兆円を預金の全額保護のために、また三兆円は、このとき初めて資本注入を行う枠組みをつくったわけでございます。佐々波委員会をそのときつくったわけでありますが、そういうことがございました。また、その通常国会では、金融システム改革法もやはり審議を行いまして、その中で保険セーフティーネット充実をさせたわけでございます。  その後、平成十年の春から長銀問題が出てまいりまして、御承知のとおり、この年の夏から秋にかけて金融国会が開かれました。金融再生法、金融早期健全化法、こういう大きな法律を成立させました。また、今回のこの預金保険法改正法、保険業法改正法ということで、恐らく今後の預金あるいは保険セーフティーネット、あるいは破綻処理の仕組みについては恒久的な仕組みができる、こういうことになると思いますので、ある意味では金融システム安定化のための初めから中間、そして最後まで、一連ずっと担当させていただいた、非常に貴重な経験をさせていただいているということで、非常に感慨深いものがございます。  預金保険ともに非常に国民生活に密接に関係する問題でございますから、この大蔵委員会でも、充実した中にも円滑な審議で、ぜひ法律の早期制定ということで期待をしているところでございます。  それでは、今回の預金保険法改正案でございますけれども、まず、ペイオフ解禁の一年延期について私どもの立場を申し上げておきたいと思いますけれども、昨年末、与党三党の政策責任者の間で、今後、中小企業対策に万全を期すなど、我が国の経済を確実な安定軌道に乗せるためには、一部の金融機関においてはさらに改善を必要とするところがある等の理由によりまして、ペイオフについては、さらに一年これを凍結することが適当である、こういうふうに合意をしたわけでございます。  私もこの検討の中に一員として入らせていただきましたけれども、最終的にはやはり信用組合の問題が焦点になりました。  ことしの四月から信用組合の監督権限が国に移る。当然のことながら、これまでも都道府県で検査をやってきたわけでありますが、やはり、国に監督権限が移るという中で、国がきちんと検査をもう一度全部やり直さなければいけない、こういうことでございまして、信用組合の三月末決算がまとまるのが大体六月ということで、七月から一斉に財務局あるいは金融監督庁で検査を行う。  お話を聞きますと、平成十二年度中に大体検査は全部終わるということのようでございますけれども、検査をした後に、その検査結果を踏まえて、場合によっては早期是正措置を出す。あるいは、経営の健全化、立ち直る可能性がもうない、こういうところについては破綻処理を行う。また、場合によっては、今回の改正案の中で措置されましたように、公的な資本注入を行う。こういった処置を行って、信用組合まで含めて金融システムをきちんと健全化させようということですが、それが平成十三年の三月末までに時間的に間に合うかどうか、これが焦点の議論になりまして、議論の結果、信用組合まで含めて金融システム安定化に万全を期すためには、やはり一年間さらに必要であろう、こういう結論になったものでございます。  当初のペイオフを予定していた平成十三年の四月からこれが実施できればそれにこしたことはないわけでございまして、私どもも当初そういうふうに主張してきたわけでございますけれども、このペイオフを解禁するということのためには、それまでにやはりきちんと準備を万端に整えておかなければならない。もしその準備が整わない段階でペイオフを迎えるということになると、預金者に不安を抱かせる、ひいては経営不安を抱えるような金融機関から預金が流出することがあり得る、それは小さな金融機関のみならず日本金融システムにも波及するかもしれない、そういうことの懸念は否定できなかったわけでございまして、やはり、預金者、国民の皆様に安心してペイオフ解禁を迎えていただくためには準備を万全にしなければならない、そのための一年間の延期はやむを得ない、最終的には私どももそういうふうに判断をしたところでございます。  このペイオフ解禁を一年間延期したことについてはいろいろな批判があることも承知をしております。代表的な批判は、これによって政府への信任が落ちるといいますか、我が国の経済金融行政に対する信頼が失墜する、こういう批判もございましたけれども、その後のマーケットの反応を見ますと、これは非常に冷静な反応を受けておりまして、そういう心配は杞憂に終わった。現段階でいうと、むしろ、ペイオフ解禁を一年前倒しといいますか、もとどおりやりますよ、そういうふうにした方が恐らくマーケットは非常に混乱するんじゃないかな、現時点ではそういうふうに思います。  また、一年延期したことによりまして国民負担が多くなるんじゃないか、こういう指摘もございますけれども、よく考えてみますと、まず都銀それから地銀、第二地銀については、これは当初予定どおり平成十三年三月末までに公的資本注入の仕組みは終わる。これに象徴されますように、当初の予定どおり大体健全化は達成させる、こういうことでございますので、第二地銀までは大体問題ないと思う。あと協同組織金融機関、これは経営強化、再編淘汰というのはこれから行うわけでございますけれども、これに要する公的資金はどれぐらい必要なのか。これは、一年間延期することによって公的資金がふえるということではなくて、どこまで徹底して淘汰再編を行うか、このことによって公的資金の投入量というのは結果として決まってくるわけですから、延びたということによって公的資金がふえるということは、これはもうないと思うのですね。  もう一つ、ペイオフ解禁を延長した一年の間に破綻する金融機関、これは、ペイオフを超えて預金を全額保護する分、公的資金がふえるのではないか、こういう主張もあると思うのですけれども、先ほども申し上げましたように、ペイオフというのは当然それまでに準備を万端にして迎えるということですから、ペイオフ解禁後早々、金融機関が相次いで破綻するというようなことは余り考えられないわけでございます。そういった意味からも、一年延期により国民負担が大幅にふえるということはないのであろう、私はこういうふうに思っているところなのでございます。  政府のかわりに私がいろいろと言うこともないのですけれども、これから質問に入らせていただきます。  まず、金融再生委員長にお伺いをいたすわけでございますが、ペイオフ解禁を一年間延期したということによりまして、金融システムを健全化しよう、安定化しようというような金融改革の機運が緩むのじゃないのか、こういう懸念がございます。私は、これは決してあってはならないことだと思うのですね。  当然のことながら、金融機関は、金融ビッグバンという厳しい環境を生き延びるために、みずから経営努力をやっていかなければならないと思いますし、政府においても、金融機関の健全化に対する監督指導というのは、決して手を緩めることなく、やはりきちんとやっていかなければならないと思います。金融再生法の趣旨にございますように、経営健全性の確保が困難な金融機関は存続させない、こういう厳しい手で監督指導をきちんとやっていただきたい。金融システムの構造改革、安定化にやはり全力で取り組まなければならない、こういうふうに考えているわけでございまして、具体的なお取り組みについて、ぜひお伺いをしたいと思います。
  25. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 きょう、この委員会でお答えをすることを考えておりました大体の内容は、今、石井委員からおっしゃっていただいたような気がいたします。  それで、一年間延期したことによって、金融システムを改革していく熱意が緩んでしまうのではないか、こういう御心配でございました。  石井委員が今、この数年間、この委員会でお取り組みいただいたいろいろなことを振り返ってお話しになりまして、私もずっとその当時のことを思い出していたのですが、確かに、二年前、三年前に比べますと、ああいう早期健全化法や金融再生法を御議論の中でつくっていただいて、ああいうものも使い、官民挙げて努力して、あのときから比べると、全体の金融秩序はうんと安定してきたと思います。  しかし、他方、これからを考えますと、やはり厳しい競争というものも想定されるわけでありますし、また、金融取引の一層の多様化や国際化が進んでいくわけでございますから、こういう競争の激化や、いろいろな新しい条件の中で、気合いを緩めている余裕はないのだろうと私は思います。  そして、各金融機関もその辺のことはよく承知しておりますから、一年間延期によって緩んでくることは決してないだろうと思っておりますし、現にその後も、いろいろな再編の努力や何かが新聞にもいろいろ出ておりますけれども、そういうものが進んできていると思っておりますし、私たちも、そういう動きをできるだけ励まし、また督励していかなければならないと思っております。  私たちがこれからやりますことは、早期健全化法やあるいは金融再生法、それから、今御審議をいただいている改正預金保険法などを使いまして、一年間余裕ができたわけでございますけれども、先ほどおっしゃった協同組織の金融機関等の検査をきちっとやって、そういうところも含めて安心してペイオフの解禁に臨めるように、私たちも全力を挙げて取り組みたいと思っております。
  26. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 続きまして、先ほども申し上げましたように、今回の改正案では、協同組織金融機関に対しまして、全国を地区とする連合会のみならず、個々の信用組合あるいは信用金庫等にも優先出資証券の発行を可能といたしまして、さらに、資本増強が容易となるように適用条件を見直すとともに、平成十四年三月末まで資本注入適用期限を延長する、こういうふうにしております。  これから財務局、監督庁の検査が入るわけですけれども、先ほど申し上げましたように、検査の結果を踏まえて、早期是正措置なり、厳しい場合は淘汰を行うなり、あるいは、今申し上げましたような資本注入の仕組みを使うなりということで、法律上も、平成十四年三月末までには協同組織金融機関も含めて金融システム安定化が図られる、こういう枠組みになっておるわけでございます。  したがいまして、今回、ペイオフは一年間解禁を延ばしたわけでございますけれども、これをさらに再延期する必要はないだろう、私はこういうふうに思っておりまして、大蔵大臣金融再生委員長それぞれに、お考えをお聞きしたいと存じます。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことに、お話しのとおり、また谷垣大臣の説明されたとおりでございますから、これをさらに一年延長するというようなことは全く考えておりません。
  28. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 私も同様でございます。
  29. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、今申し上げました協同組織金融機関への資本増強の考え方を、ちょっと金融再生委員長に確認しておきたいと思います。  といいますのは、今までの金融早期健全化法では、資本注入要件というのは、具体的に申し上げますと、「信用秩序の維持又は企業の活動若しくは雇用の状況に甚大な影響を及ぼす等経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずるおそれがあること。」ということで、これは非常に重たい要件といいますか、大変危機的な状況を阻止する、こういうことであったかと思っております。  今回の改正案では、協同組織金融機関については、「業務を行っている地域又は分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずるおそれがあること。」これを資本注入要件としています。すなわち、地域あるいは分野における役割を非常に重視して資本注入を行う、こういうふうに考え方が変わってきているというふうに理解をしております。  私は、これは非常に評価をするところでございますけれども、どういう考え方で資本注入をこれから行っていこうとされるのか、その点について確認をさせていただきたいと存じます。
  30. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 協同組織金融機関に対する資本注入のあり方につきましては、今御審議をお願いしているこの法案が、法改正を踏まえて、今後、金融再生委員会において議論をしていかなければならないことなんですが、その際、踏まえておかなければならないことは、私は大きく言うと二つなのではないかと思います。  一つは、今石井委員が御指摘されましたように、協同組織金融機関というのは、地域地域で、地域の実情に即した形で活動をされているわけでありますから、資本増強をして、こういう信用組合等の体力を増加して経営基盤を安定させて、その地域における資金供給の円滑化を図っていく。そういう意味での、地域の実情に即した取り扱いというものがやはりなければいけない。これは、大手の銀行とやはり少し違った考えが、その意味では必要になってくるところなんだろうと思います。  ところが、他方、これから検査をすることによって、おいおいこの実情が我々も把握できるだろうと思っておりますが、だからといって、この資本注入というのは毀損してよいものではないわけです。やはり、注入したものが戻ってくるという前提で法の仕組みもでき上がっておりますし、私たちもそれは十分に考えておかなきゃいけないことだろうと思います。ですから、地域の実情に即してといって、では柔軟に、毀損していいかというと、そうはならないので、その二つを踏まえて、どういう要件整備していくかということであろうと思います。  それ以上のことは、まだ金融再生委員会においても議論はこれからでございますが、その二つが一番の柱であろう、こう思っております。     〔委員長退席根本委員長代理着席
  31. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ぜひよろしくお願いしたいと存じます。  当然のことながら、銀行と違いまして、信用金庫、信用組合というのは、地域の、特に中小企業の皆さんを相手にして行っているわけで、仮に中小企業の経営状況が悪かったとしても、今までのいろいろな活動、それからその先の成長度合い等をよく知っていらして貸していらっしゃるというようなところもあるわけでございますから、おのずから大きな金融機関とその融資のやり方も違ってきている、そういうこともございますし、当然のことながら、この資本注入は毀損していいというものではない。その前提を踏まえながらも、前段の方の実情に即した取り扱いというのをよろしくお願いいたしたいと存じます。  それから、ペイオフを迎えるまでの環境整備ということで、特に情報開示のことについて申し上げたいと思いますけれども、ペイオフを解禁するということは、これは預金者に自己責任を課すということになりますから、当然預金者がきちんとそれぞれの金融機関経営実態、情報を踏まえていなければならない、これはもう大前提であるわけでございます。  金融再生法に基づく資産の査定はもう既に始まっておって、平成十二年三月期からは全金融機関で実施される、また、平成十一年の三月期からは連結ベースでの開示が罰則つきで義務化されておる、こういうことで、かなり金融再生法あるいは金融早期健全化法をつくりましてからディスクロージャーが進んでおる。このことは非常に評価できるところでございますが、こういったディスクロージャーの動きをより進めまして、一層開示に向けての努力をしなければならない、こういうふうに考えますので、これも再生委員長の御見解を伺いたいと存じます。
  32. 村井仁

    村井政務次官 ただいま石井委員指摘のとおりでございまして、金融機関のディスクロージャーでございますが、預金者の自己責任原則の確立という点をお触れになりましたが、それに加えまして、金融機関経営者の側でも、経営の透明性を高める、あるいは市場規律によって経営をきちんとコントロールしていくというような機能もございますので、ディスクロージャーの点、非常に私どもも大事なことだと思っております。  そういう意味で、ただいま御指摘がございましたけれども、既に再生法に基づきまして、主要行につきまして十一年三月期から、地域銀行につきましては十一年九月期から、さらに協同組織金融機関につきましては十二年の三月期から、債務者の財政状況、それから経営成績等を基礎にした資産査定の開示、これを個別行ごとに行うという非常にきちんとした対応をして、これはアメリカでもここまでやっていないということは、もう御理解のとおりでございます。  いずれにいたしましても、こういったような措置をとることによりまして、不良債権額等金融機関の財務内容について国際的にも遜色のない開示が行われるというふうに考えておりますけれども、今後とも、適時適切な情報開示を行えるように、私どもとしましてもしっかりウオッチをしてまいりたい、そのように考える次第でございます。
  33. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それと同時に、この預金保険法セーフティーネットの仕組みについて、預金者、国民の皆さんによく知っていただくということも非常に重要である、こういうふうに考えます。  今回の改正案の中身、特に、預金の全額保護を終わったとしても、それ以降一年間は流動性預金については全額保護するわけでございますし、そういった意味では、企業の決済の関係で直ちに何か心配事が起こるというようなことはないわけでございますし、あるいは、付保対象預金も若干広げておる、金融債についても個人の分は広げておる、あるいは利息についても対象にするということもございます。  また、何よりも、先ほど渡辺委員からも指摘がありましたように、これからはなるべく早目の破綻処理をやるということで、恐らく最終的に目標とされるのは、米国並みに、金曜日の閉店後に破綻の発表をして、月曜日の開店前に営業譲渡まで手続が終わってと、こういう形で週末の処理ができるのがベストだとは思いますけれども、なかなかそこまですぐにやるのは難しいかと思いますが、そういうなるべく預金者に御心配のないような迅速な破綻処理をやるんだ、そういった点もぜひPRをしていただきたい。  こういった点についての政府の取り組みをお伺いいたしたいと存じます。
  34. 大野功統

    大野(功)政務次官 私は昨年の十月に総括政務次官を拝命したのですが、大蔵省にホームページを開いておりまして、そのホームページでどういう項目に国民の皆様は一番アクセスなさっているのかな、これは直ちに聞いてみました。そうしましたら、やはりペイオフ関係、預金保険のことが一番多いのですね。その次が宮澤大蔵大臣の記者会見の模様でございますけれども、そういうふうに、非常に国民の皆様に関心が多い。  そういうことで、この問題について国民の皆様に無用な御心配をおかけしちゃいけない、無用な混乱を招いてはいけない、広報活動を一生懸命やろうと決意している次第でございますけれども、例えば、今先生おっしゃったいろいろな項目があります。一々繰り返して申し上げませんが、そういう項目一つ一つに丁寧に広報活動をやっていかなきゃいけない。  大蔵省だけではできません。もちろん金融再生委員会金融監督庁、日銀、総合力を挙げて、総合的な力で、ホームページの掲載のことは申し上げましたけれども、パンフレットをつくったり、あるいは説明会を開催したりして頑張っていかなきゃいけないなと。金融審議会の答申におきましても、広報のためにさらなる努力をしてほしい、こう書いてございました。  この法律につきましては、何とぞ早期成立をお願い申し上げますが、我々としても一生懸命その面は、国民の皆様の無用な誤解、無用な混乱を招かないように頑張ってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
  35. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 どうぞよろしくお願い申し上げます。  それから、続きまして、危機的な事態における特例措置、この点についてお伺いしたいと思います。  改正案では、危機的な事態、システミックリスクが予想される場合、内閣総理大臣は、金融危機対応会議の議を経て、一つには、預金保険機構による株式等の引き受け、資本増強ですね。二つ目には、ペイオフコストを超える資金援助。三つ目には、預金保険機構による全株式の取得、特別危機管理銀行。この三種類の特例措置を講じることができるというふうにされているわけでありますが、このシステミックリスク条項、特にペイオフコストを超える資金援助特例措置、これは特別危機管理銀行の場合もそういう措置が行われると思いますけれども、この措置が安易に発動されるということになりますと、これは現状の預金全額保護と全く変わらなくなってしまうわけでございまして、これはまさにモラルハザードを招くことになる。  また、ペイオフコストまでの資金援助破綻処理と、それからペイオフコストを超える資金援助というのが何かしょっちゅう起こるようですと、預金保護ということでは、処理のケースによって不公平が生じる、こういうふうにもなりかねないわけでございます。  したがって、システミックリスク条項を盛り込んだ前提として、まずペイオフを解禁する時点では基本的に金融システムを十分に健全化、安定化させているんだ、だから、このシステミックリスク条項というのは、まさに文字どおり万が一の事態に備えた極めて例外的な措置なんだ、だから、しょっちゅう行うような、そういうことではないのだ、そのことをまず一つ確認をしておきたいと思います。  その上で、これが恣意的に、あるいは何か裁量的な運用がなされるのではないか、そういう懸念を示される方もいらっしゃいますので、そういうことはない、また、かりそめにも政治的に安易に利用されるようなことはないのだ、そういったことの確認をぜひさせていただきたいと存じます。  大蔵大臣それから金融再生委員長、それぞれ御答弁をいただきたいと存じます。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども渡辺委員にも申し上げましたけれども、平成九年秋以降のことは全く思ってもみないような、悪夢のようなものでありまして、銀行の前に人が並ぶなんということは、私は、我が国ではもう大抵ないだろうと思っておったようなことでございましたが、現実にはそういうことがありました。その直後でございますだけに、もうあるまいということは実は強く思います。  しかし、先ほども渡辺委員もおっしゃいましたけれども、やはりこういう備えはしておくことが必要なのだろう。ただそれは、だれが見ても簡単に発動できる規定ではない、非常に重い発動の条件があり、しかし、そのかわり、発動されたら思い切ったことが行われる、そういうものとして置いてございます。  それで、先ほどのお尋ねの中に、ペイオフコストを超えて預金の支払いをするということの必要と申しますか、そういうことをおっしゃいましたが、これなんかも、そういうことが発動されると、預金というのは全部丸々払ってくれるんだなということを人々は知るわけでございますから、それなら何も出かけることもないという意味での、ディターレントといいますか、そういう意味でのアシュアランスと申し上げるべきなんでしょうか、そういうものとしてこの規定を設けました。  おっしゃいますように、今谷垣大臣も、また私もこうやってお答えを申し上げておりますが、政府として、この規定がそうやすやすと発動されるということは全く想定しておりませんし、どちらかといえば発動されないことに値打ちがあるというぐらいに実は申し上げたいところでございます。
  37. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 大蔵大臣の御答弁につけ加えることはございませんが、仕組みの上でも、金融危機対応会議判断して、その上で総理が御判断をされる、それで決めた場合には国会に報告しなければならないという厳重な手続がとってありますから、仕組みの上からも乱用されることは私は万々が一にもないのだろうと思います。  その上で、先ほど委員がおっしゃいましたように、スタートするときに全体ががたがただったら、例外的な制度だといったって、しょっちゅう使わなければいかぬというのでは、これは話にも何にもなりませんので、私どもとしては、今いただいている法の仕組み、それから今お願いしている仕組み、こういうものを使って、スタートするときまでにきちっとしたものをつくり上げていくことに全力を尽くしたい、こう思っております。
  38. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ぜひお願いしたいと思います。  私は、この危機的な事態における特例措置というのは、ある意味で伝家の宝刀にすべきものだなというふうに思うのですね。伝家の宝刀というのは抜かないところに意味があるということでございまして、抜くかもしれないぞという構えをしておるところに意味がある。抜いてしまえば余り価値がなくなってしまうわけでございますから。そういう意味での伝家の宝刀として置く措置であるというふうに理解をしておりますし、ぜひそういうことになっていただきたいな、こういうふうに思います。  それから、時間がなくなってまいりましたので、保険業法の方に移らせていただきたいのです。  今回、保険業法改正案の中で、特に生命保険セーフティーネットを再構築するわけでございますけれども、その前提として、銀行の方でも申し上げましたように、やはり生命保険会社のディスクロージャーを強化すべきというふうに考えております。  現状では、金融再生法基準での開示というのは生命保険会社には該当していないようですけれども、この際、不良債権の公表について金融再生法基準での公表を私は考えてもいいのじゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  39. 村井仁

    村井政務次官 全く御指摘のとおり、ディスクロージャーというのは本当に保険の世界でも非常に大事なことでございまして、とりわけて保険契約者のサイドでも自己責任原則ということをお願いしていかなければならない。そういう観点を考えますと、ただいま石井委員指摘のように、非常に重要だと思っております。  現在のところでは、保険業法の百十一条に基づきまして、銀行法に基づく開示と同様に、リスク管理債権額等の開示が義務づけられているにすぎないわけでございますが、私どもは、ただいま先生指摘のとおり、不良債権額につきまして、債務者区分を基礎とした金融再生法に基づく開示と同様の開示を法令上義務づけるということによりまして、保険会社のディスクロージャーのさらなる充実を図るべく現在検討を進めている、そういう段階でございます。よろしくどうぞお願い申し上げます。
  40. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 大変前向きの御答弁、ありがとうございます。ぜひよろしくお願いをいたしたいと存じます。  それでは、時間的に最後の質問になるかもしれませんが、逆ざやの問題に関連をしまして、金利政策についてちょっと言及をさせていただきたいと思います。  今、生保会社が大変苦しい経営状態にあるのは、御承知のとおり、これまでの保険契約の予定金利と今の史上最低の運用水準、この差、逆ざやにあるわけでございます。この逆ざや対策のために、生命保険会社みずからが経営改善努力を徹底しなければいけない、これはもう当然のことでございます。ただ、根本的には、金利のこの大きな逆ざやをなくすためにはやはり金利水準の上昇しかないのだろうな、こういうふうに思うわけでございますね。  といいますのは、一時期、生命保険会社も五%、六%と大変高い予定金利をやっていたところもございますけれども、それまではずっと四%でいたわけでございますね。ところが今は、予定金利が四%でも、今の運用環境は長期国債の利率が二%を下回っているような状況ですから、これは大変な厳しい金利の差があるわけでございます。  今のゼロ金利政策というのは現況の経済情勢ではやむを得ないというふうに考えておりますけれども、景気回復、経済再生を着実に進めましてゼロ金利政策から早く脱却をできるようにする、これは当然、金利政策は日銀の所掌でございますけれども、金利が上げられるように経済を立ち直らせていくということが私はやはり生保危機を克服する最大のポイントであろう、こういうふうに考えております。  この点について大蔵大臣の御見解を伺えればと存じます。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに今の、昨年二月からの日本銀行による低金利政策が、殊に生命保険会社危機の最大の原因である、私もそうであろうと思います。同様に、あちこちにこの低金利政策からいわば被害を受けていらっしゃる方がたくさんおられることもそのとおりと思いますが、しかし、総体的に考えまして、日本銀行のとっておられる政策は、我が国の経済に総体的には適切な、また全体としてはプラスになっておる政策だと、日銀のやられることですが、私はそういうふうに評価をしております。  石井委員の言われるとおり、こんなことがいつまでもいつまでも続いてはいけないわけでございまして、一言で言えば、日銀のこの政策は、もうこのような政策が要らなくなるためにとっておられる政策、こう申し上げるべきかと思います。また、そういうふうに日本経済が展開してまいりますことを、恐らく日本銀行も期待しておられるに違いないと思っております。
  42. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ありがとうございました。時間が参りましたので、終了いたします。     〔根本委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 金子一義

    金子委員長 次に、鈴木淑夫君。
  44. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  ただいま審議しております法案は、申すまでもなく二つあるわけでございますが、本日は、その中のいわゆるペイオフ関連法案預金保険法等の一部改正法案について質疑を進めさせていただきたいと思います。  この法案は、よく御存じのとおり、金融審議会の答申をもとにいたしまして、まず政府案の骨子ができてきた。それに対して、私ども自自公の与党三党がいろいろ検討しました結果、三党の金融プロジェクトチームで、あるいはその上部機関である三党の政策責任者会議でいろいろ議論をして、昨年末、政府の方に、こういうところを直していただけないものかということを申し上げて、それを受け入れていただいてできたのがこの法案でございます。  自自公の金融プロジェクトチームでは、私の前に質問しました石井委員も公明党の代表者の一人でございまして、私は自由党の責任者として入っておりました。その上部機関の政策責任者会議でも私はメンバーの一人でございましたから、ここへ出ている法案について何かお尋ねをするという立場には本来ないわけでございます。ですから、うっかりすると、さっきの石井委員のように、政府のかわりに一生懸命しゃべっているようなことになりかねない。  そこで、きょうは、大変僣越でございますが、野党の委員の皆様方が来週から質疑をされるわけでございますが、それに先立って、幾つかの点で事実認識の共通の土俵をこしらえたいな、そういう問題意識から質疑をさせていただきたいというふうに思います。これがいい悪いというより、事実認識で共通の土俵をつくりたいということでございます。  さて、このペイオフを二〇〇一年四月から解禁しようという決定は、九五年の村山自社さ政権のもとで行われた、この事実認識をそろえておきたいと思います。そして、九六年に住専処理をした直後にはっきりしてくるわけでございますね。  あのときの認識は、これは橋本総理の御答弁の中にはっきりあるわけですが、住専も処理したので不良債権問題は峠を越したと思う、ついては、まあ住専に公的資金を入れて非常に国民の反発を買ったものですから、これからは公的資金は、信用組合の破綻処理には使うかもしれないが、それ以外には使わなくて済むと思うとおっしゃったわけですね。それから、マネーセンターバンクはまず大丈夫だ、つぶれない、こういうふうにおっしゃったわけです。  これは、今から振り返ってみると、失礼ながら、非常に甘い見通しだったわけですね。不良債権問題というのはもっともっと根の深い問題であり、マネーセンターバンクをも巻き込む金融危機を生み出すほどの力を持った問題であったわけですが、そういう認識がないもとで、二〇〇一年四月からのペイオフ解禁を決めたんだ、これをひとつ共通認識として持たなきゃいけないと思うのです。  当時、早期是正措置の実施は決まっていた。だから、早期是正措置、あれをやっていけば、五年ほどたって、二〇〇一年四月にはもうペイオフ解禁しても大丈夫なようになっちゃうだろう、こういう認識でスタートしたものだということもひとつ共通認識にしたいと思うのでございます。  というのは、逆に言えば、実は二〇〇一年四月にペイオフ解禁するというのは非常に甘い見通しのもとに決めちゃったことなんですが、時の経過とともにこれは本当に大丈夫かなという不安が関係者の間に広がったわけですね。特に、悪夢のようだと先ほど宮澤大臣がおっしゃいました、九七年から九八年に荒れ狂った金融危機、マネーセンターバンクをも巻き込んで大変な金融倒産、そして金融システムの動揺が起きたわけであります。これを経た段階で、非常に甘い認識に基づいて決めちゃったが、本当に二〇〇一年四月にペイオフ解禁して大丈夫なものだろうか。  私が承知している限り、専門家の間では、これは危ないという認識が次第に形成されたように思います。それは金融審議会の委員の皆さんの中でもそうだったわけですね。したがって、金融審の答申というのは、私の目から見ますと、文字どおりのペイオフ解禁を二〇〇一年四月にやったら危ないので、ついては、何とか二年間の過渡期を置いて、一見ペイオフ解禁のごとく見えて実はあっちこっちに安全装置を新たに加える、そういうものにしよう、これが金融審議会の答申の中身であったと私は認識をしております。  では、どういう安全装置をつけたかというと、まず第一は、決済性預金保護しちゃおうというわけですね。決済性預金は、二〇〇一年と二年、二年間保護しちゃおう。それから、定期性預金についても、借り入れの担保に入っているものは借り入れの返済に使わせちゃおうというわけですよ。ということは、大口定期預金も、担保になっているものは事実上保護しちゃっていることになるわけですね。さらに、公金預金と特殊法人の預金保護の対象に入れてこよう。それから、これは今までもやっていたのですが、金融債については引き続き保護の対象にしよう。これが金融審議会の答申であり、それに基づく当初の政府案であったわけです。  これは私に言わせれば、実はペイオフ解禁ではなくて、ペイオフ解禁の二年延期案であると思うのですね。ただ、官僚の皆さんというのはどうしても先輩が決めたことを覆すのを嫌がるものですから、そう言わないで、私の目から見たら、ペイオフ解禁の二年延期案を出してきたと思います。しかし、私ども与党三党で審議した結果、これでいいのかねという議論になりました。  一番問題なのは、私、銀行の頭取、会長に友人が大勢おりますから、聞いてみました、統計がないものですから。これは常識的にわかることです。決済性預金保護しちゃいますね。残りの定期性預金について、大口定期というのは大体担保に入っていますよ。担保に入っていない一千万を超える大口定期なんというのはほとんどないわけですよ、探し回ったって。それだけが保護の対象外なんですね。そんなもの、一体どのくらいありますかと聞いたら、大体、私の友人、金融機関の役員たちは、それは一割もないかもしらぬなというようなことだったのですね。特に、公的預金やなんかも対象になっちゃう。そうすると、これはもう九割以上を保護する、とてもペイオフ解禁なんという代物ではないんだというふうに思うのです。  それほどの危機感をやはり金融審議会のメンバーも持っていたし、それに基づいた当初案をつくった官僚の諸君も、そしてそれを指揮された大臣もお持ちだったのだというふうに私は認識しているのですよ。  これは来週以降の野党の皆様の質疑に当たって共通の認識にしておきたいというふうに思うのですが、宮澤大臣、私、これは預金の何割ぐらいが保護対象にならないんだろうということについて、内々で伺いましたら、数字がないそうでございますね。  ただ、大臣、いかがでしょう。決済性預金保護しちゃうよ、大口定期預金で担保に入っているのは借入金と相殺できるので、事実上保護されておることになるよ、そうなると、残りの一千万を超える定期預金なんというのは幾らもないという点はいかがでございましょう。常識的に考えて、そんなものは幾らもないんだと思いますが、ほとんどは信託か何かに行っちゃうんだと思いますが、いかがでございましょうか。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私もそれを考えたことがございますが、やはり正確なことは恐らくわからないということじゃございませんか。先ほどお話しになられました専門のバンカーたちのお考えあたりが本当のところかもしれませんが、いずれとも何ともわからないことでございますね。
  46. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 しかし、委員の皆さん、常識的に考えてみて、そういう預金は余りないというのはおわかりいただけると思うのですね。そういう余りないんじゃないかと思う預金以外はみんな保護しちゃうというのが当初案でございます。ですから、私はこの当初案がもう限りなくペイオフ延期だと思っているのですが、しかし、中身はやはりちょっと問題があるんですね。  決済性預金保護するということについて、どうお考えですか。  私は、実は当初反対したのですよ。決済性預金保護するなんていったら、今のエレクトロニックファンドトランスファーの時代に、ちょっと銀行が危ないと言ったら、みんな一斉に決済性預金にあっという間に変わります。簡単に操作で変えられるわけですな。そうすると、ふたをあけてみると、貸し出しの担保に入っている定期性預金以外はみんな決済性預金に逃げ込んじゃうだろう。これは預金を全額保護していると言っているのとほとんど同じことじゃないかというふうに考えるのですが、この決済性預金保護というのは、本当に有効性があるのでしょうか。これはもう事実上、預金を全部保護していることになりませんでしょうか。
  47. 大野功統

    大野(功)政務次官 教授に生徒がお答えするような感じでまことに申しわけございませんけれども、まず、決済性預金保護という点は一年間だけに限る話でございます。  それからもう一つは、利息についても今度の制度は付保対象になりますので、低金利時代ですから、どこまで預金者の皆様に評価されるかはわかりませんけれども、利息の差があるんだろうなと。それから、流動性預金というのは全預金残高の大体三〇%ぐらいかな、こういう前提で考えさせていただきたいのでございますけれども、まず、歴史の流れというのが、少額の預金保護ということから、やはり金融機関の不安というのが地域経済なり全体の経済に甚大な影響を及ぼしてくる、そういうシステミックなリスク、あるいは決済機能保護、借り手の保護、こういうところに広がってきている、この流れはやはり我々は見逃してはならない、このように思う次第でございます。  そういう意味で、一番我々が考えなきゃいけないことは、流動性預金については、金利の上限をきちっと設けておくこと。そうしないと、例えばモラルハザードが起こって、要するに五%ぐらいの金利をつけておいて、そして流動性預金保護するということになりますと、まさに鈴木先生がおっしゃったような現象が、もう危機でなくても起こってくる可能性がある。そういう問題はひとつきちっとしておかなきゃいけない。これは金利の上限を設ける予定でございます。  それから、二番目の問題は、しからば流動性預金とその他の預金との境目はどうするか。きちっとそこもしておかなきゃいけない。これも、普通預金、それから当座預金、別段預金、こういうことでやってまいる予定でございます。しかも、流動性預金、つまり一年間だけになりますが、この流動性預金については重い保険料を考えていこうじゃないか、こういう要素が入っております。  先生まさに御指摘のような問題点はありながら、そこはきちっとしていこう、こういう考えで臨みますので、これは教授に対しての答えとしてはおかしいのでありますが、そういうことで考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
  48. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 そういう条件をおつけになっているということは私も評価するものでございますが、私が問題にしているのは、危ないとなったらあっという間に流動性預金にみんな逃げ込んでくるよということでございます。結果として、ほとんどの預金保護対象になっちゃうだろうなということなんです。  それから、次に、公金預金をほかの民間預金と同じように対象にして、将来一千万円まで保護するわけですが、これは僕は公金預金保護になっていないと思うのですね。公金預金というのはもっとずっと大きな額でございますから、一千万までは大丈夫だ、対象にしたよなんていったって、どの自治体も、いや、ありがとうございますなんて言いませんよ。ふふんと笑われちゃう。引き続き非常に不安に思っています。  私は、公金預金については、こんなことではだめなんで、例えば自治体の相互扶助のような、自治体だけの何か預金保険制度をつくれないものか、あるいは、場合によったらそれを政府が後押しできないものか、そういう構想の方が現実的だと思っておりますが、いかがでございましょう。
  49. 大野功統

    大野(功)政務次官 公金預金についての鈴木先生お話、十分承知いたしました。  それで、金融審議会におきましては、公金預金というのは現在は預金保険の対象になっておりませんけれども、企業との均衡を勘案すれば預金保険の扱いに差を設ける必要はない、こういうことで今回改正になっていることは先生十分御存じのことでございます。  そこで、どういうメリットがあるのかなと私も考えてみるわけでございますけれども、例えば、送金途中の公金がこれで保護されることになる。つまり、歳入歳出の管理という観点から見ますとメリットが出てくるのではないかな、こういう点は一つ評価していいのではないか、こういうふうに思う次第でございます。  本題の、地方公共団体がお互いにそういうセーフティーネットをつくったらどうか、これはもう大変すばらしいアイデアだと思いますし、将来そのような相互扶助的な仕組みが真剣に議論されていくことを望んでおるところでございます。
  50. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 御賛成いただきましてありがとうございました。  私は、そもそも金融審議会の答申の中にある、企業とのバランスを考えてというあの認識が間違っていると思います。私企業とそれから地域住民のお金を預かっている公的預金とを同じに扱ったああいう答申を平気で出してくる委員というのは困ったものだなと率直に思っております。  もう一つ、ちょっとあれなのは金融債なんですね。  御承知のとおり、金融債に主として依存して仕事をしてきた長期信用銀行は、もう興銀を残して二行が御承知のような状態です。そして、業態の垣根も緩和していきますので、また興銀もグループを組んだりしていきますから、私は、金融債という特殊な商品を特殊の業態に認めて長期金融をやらせるという戦後のシステムは、もう役割を終えたと思っています。必要なら金融機関銀行も他の事業会社と同じように社債を出したらいい。そして、その社債は保護対象にはしない、早くこういうところへ行くべきではないかな。そうすれば、金融債を保護の対象にするという話はなくてよろしいというふうに思うのですが、その点はいかがでございましょう。
  51. 大野功統

    大野(功)政務次官 まず、個人的意見でございますが、金融債の役割はもう終えたのではないか、私もそのように思っておりますが、これは公式見解ではございません。  それで、付保対象に金融債を加えるという話につきましては、金融審議会で、先生御存じのとおり、どういう預金を付保対象とするか、三原則みたいなものがございまして、一つは、基本的な貯蓄手段として国民の間に定着しているものである、それからもう一つは、元本保証がなされているものである、もう一つは、債権者が特定いたしておりまして転々流通しない、こういう三原則もとに考えているところでございます。  今回の金融債につきましても、今申し上げたような三原則、三つの基準に照らして検討されたわけでございますけれども、金融債の中で実質的に定期性預金と同じような性格のものであると考えられるものがあります。現在、長銀とか日債銀とか興銀とか合わせまして三十兆円ぐらいあるようでございますけれども、その中で転々流通しないものといたしますと三兆円ぐらいあるようでございますが、そういうものについては、今申し上げました三原則に照らしてやはり保護すべきであろう、付保するべきであろう、こういう考えで結論が出されたと承知いたしております。  そういう意味で、今回も、償還まで債券が交付されないもの、銀行で預かってこれが外へ出ないもの、これは保護していこう、こういうシステムを構築した次第でございます。
  52. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 以上、いろいろと質問をさせていただきましたが、委員の皆様、私のはっきりさせたいと思っていたことは、私ども自自公の政策責任者が集まってちょっと直した、その以前の金融審議会の答申に基づいて出ていた案そのものも、そんな立派なものじゃなかったということですね。事実上、ペイオフ解禁延期に限りなく近いことを意図していたし、今私が質問しましたように、決済性預金とかいろいろなところに……(発言する者あり)ごめんなさい。僕はディベートしたいので。でも、どうぞ聞いていてくださいよ。  そういう意味で、決済性預金保護という話も公金預金金融債も、いろいろと検討すべき問題を含んだのが当初の原案としてあった。私ども自自公の政策責任者はその中のどこを変えたかといいますと、こういう限りなく事実上のペイオフ解禁延期に近い原案、これは二〇〇一年四月から二〇〇三年三月までの二年間、過渡的にペイオフ解禁延期に限りなく近い、こういうことをやろうとしているのに対して、私どもが言ったのは、その二年間のうち最初の一年間だけ正真正銘のペイオフ解禁延期にしようよ、それで次の一年間は原案どおりでいいよ、最後に着地する二〇〇三年四月からの完全ペイオフ解禁は全然いじらないよ、これがこの案でございます。だから、私どもがやったことをペイオフ解禁延期と言われるのは私は実はまことに心外であって、一年も一日も延期していないよと言いたいところです。  本当のペイオフ解禁は当初案だって二〇〇三年四月からですよ。それまでは、私は、これはペイオフ解禁延期と言っているが、限りなくペイオフ延期に近い。ペイオフをしない、保護しちゃう。ほとんど全部保護しちゃうという形に近いんです。  私はそれは当然だなと思うのですね。それは、住専処理しただけでもう日本金融システムは大丈夫だなんという、全く誤った認識に基づいて決めた二〇〇一年四月のペイオフ解禁が心配だというのは当たり前のことですから、二年過渡期を置いたのですよ。その二年の過渡期は私どもは認めているのですね。その最初の一年だけを、ごまかさないで、きちっと本当の解禁延期にしようと。  その理由が、御承知のように信用組合にあるわけですね。信用組合の、今まで都道府県にお願いしていたものを国が引き取って、それで検査をして、その結果、だめなものは整理しなきゃいかぬ、何とか立て直せるものは出資金を注入してでも立て直そうと。銀行にやったことと同じことを一年間かけてやっていくとすれば、それはやはり、最初の一年は正直に本当のペイオフ解禁延期でございますと言っておいた方が、システムの中での資金シフトでシステムが動揺するということを防ぎやすい、だからそうしましょうということを言ったわけですから、何か、もとの原案は非常に立派な改革案で、我々が決めたことは改革延期でけしからぬのだ、そういうとらえ方をしないようにしてほしい。マスコミの皆さんもそこはお間違えのないようにというふうに思っております。  そのことを言いたいためにいろいろと質問したのですが、そこで、まだ時間がございますから、今度は金融再生委員会の谷垣大臣にお伺いしたいわけでございます。  そういうことで、ごまかさないで、正真正銘のペイオフ解禁延期を二年のうちの最初の一年間にやろうと。その期間というのは何のための期間であるかといえば、言うまでもなく、ことしの四月から来年三月までに検査した結果を踏まえて、信用組合を整理したり立て直したりする、そういう期間であるわけですが、その進め方について、これからは検査ですが、その後の一年、どういうふうに持っていくおつもりか、お聞かせをいただければありがたいと思います。
  53. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 大野政務次官は教授に対する学生とおっしゃいましたけれども、私も昔、先生やあるいは阪大におられた蝋山先生がやっておられた勉強会、末席で加えていただいて勉強したころのことを思い浮かべますと、お釈迦様に説法する門前の小僧のような気がいたしておりまして、大変居心地が悪い思いでございます。  前置きは別といたしまして、今鈴木先生がおっしゃったように、信用組合につきましては、まさに、これまで早期健全化法の資本増強の仕組みも実際上使えないような形でございましたし、それから、今都道府県の機関委任事務、その監督下にあって、この四月一日から国の監督下に入ってくる。現時点では、率直に申し上げて十分な実態把握ができていないということだろうと思います。  その信用組合の資本基盤強化につきましては、今回御審議をお願いしている法案におきまして、優先出資法の改正によって、優先出資による資本増強の道を開く。それからまた、早期健全化法において、信用組合等が公的資本の増強を受けることを容易となるようにする内容を盛り込んでいる。これも今さら申し上げることもないことでございます。  それから、国による信用組合に対する検査でございますけれども、今先生がおっしゃったように、ことしの決算が確定する、大体六月末だと思いますが、それを受けまして、ことしの七月から直ちに集中検査を実施して、そのための人員も整えて集中的にやっていきたい。そして、十三年の三月末までに検査を一巡できる体制を整えているところでございます。  そして、私どもも、これからこの法案を成立させていただきますのと同時に、先ほど石井委員にもお答えをいたしましたけれども、信用組合に対してどういう基準で資本注入なりそういうものに臨んでいくのかという考え方もこれからきちっと整理をしていかなければならないと思っております。  いずれにいたしましても、信用組合が資本増強等を通じて再編強化をきちっと図って、不良債権の抜本的処理とか金融システム改革に伴う環境変化などの課題に対応できるようにしなければなりませんし、それから同時に、検査や日常のモニタリングあるいは信用組合とのいろいろな情報交換を通じて信用組合の実情をきちっと的確に把握して経営健全性の確保を図っていくために、今つくっていただいているツール、これからまたつくっていただくツールを最大限に利用してまいりたい、こう思っております。
  54. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。ぜひとも二〇〇〇年度中にそのようにしっかりと検査をしていただき、実情をつかんだ上で、二〇〇一年度中に業界の、手術すべきところは手術する、立て直すところは立て直すということで御処理いただきたいと思います。そして、最後に二〇〇三年四月に正真正銘のペイオフができるようにしていただきたい。  先ほど宮澤大臣、谷垣大臣はお二人とも、もう一回延期するようなことはしないというふうにおっしゃいました。それは恐らく一つ前のところの二〇〇二年四月以降の話だったのかもしれませんが、私の認識では、本物のペイオフ解禁は、当初案から、そして今も二〇〇三年四月でございますから、二〇〇三年四月の本物のペイオフ解禁が安全に行われるように、ひとつこぎつけていただきたいということをお願い申し上げる次第でございます。  もう一つ問題がございますのは、御承知のように、実はマネーセンターバンクとか地銀は、二〇〇一年四月にペイオフ解禁されても大丈夫なところまで来ている。それは、私どもがつくった六十兆円のあの枠組みで徹底的にやっておりますから、この連中は大丈夫なんだ。それなのに信用組合のことが心配であるためにちょっと延期した。当初案から実はそうなんですが、特に当初案の二年のうちの最初の一年を正真正銘の延期にしちゃった。  これで、大丈夫な方にモラルハザードが発生しやしないか、あるいは余り大丈夫じゃない第二地銀、信金なんかにモラルハザードが発生しやしないか、それを心配した人がかなりおるわけですが、そういうことのないように、前の越智大臣の時代に各業界に手紙を発出し、その返事をもらったということは私、認識しております。その後、新しい谷垣大臣になられた後もモラルハザード防止策を講じておられると思うのですが、どういう形でこれを続けておられますでしょうか。
  55. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 今鈴木先生おっしゃいましたように、ことしの一月二十五日、越智前委員長も、今度の決定によってモラルハザードが起こることを心配されまして、各業界団体にあてて手紙を出され、またその手紙にそれぞれ返事をいただいておりまして、それぞれモラルハザードが起きないように努める、こういう返事をいただいているわけでありますけれども、その後におきましても、大規模な再編が進展するなど、金融機関の取り組みに緩みが出ているとは考えておりません。  先ほど申し上げましたように、国際的な競争もこれから大変激化していくというふうに考えられますし、非常に金融秩序が厳しいときでございますから、それぞれ金融機関の認識も進んできているというふうに思っております。しかし、同時に我々も、これも先ほど何度も申し上げているところでございますけれども、金融再生法あるいは早期健全化法、こういうものもしっかり使いながら、緩みの生じないように、残された期間を最大限活用させていただきたい、このように思っております。
  56. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ぜひそのようにお願いいたしたいと思います。  もう一つ心配されたことは、国際的な信用が下がるんじゃないかということですね。ペイオフ解禁を延期しなきゃいけないほどまだ日本金融機関は悪いのか、あるいは日本金融システムはまだそういう危ないところを抱えているのか、こういうことで、日本金融機関一般あるいは金融システムに対する国際的な信用が下がって、例えば国際的に競争している大銀行の格付が下がったら心配だとか、あるいは日本の株式市場に、特に銀行株に入ってきている外資がちょっと入らなくなったら心配だ、あるいはジャパン・プレミアムが国際金融市場に再びあらわれるのじゃないか、国際公約と称して、実際は公約したわけでも何でもないのに、国際公約を破るのだから大変なことが起きる、わいわいと新聞、雑誌、テレビで報道されたわけです。  私、予算委員会の基本的質疑のときにも御質問申し上げたわけですが、あの時点で全くそういう動きはなかった。あれから二カ月近くたっております。今回のこの決定が国際的信用の低下につながるというような動きは、私は全く認識しておりません。その後も全くないんだということでよろしゅうございましょうか。今の情報をお持ちの範囲内でお答えいただければと思います。
  57. 谷垣禎一

    ○谷垣国務大臣 私どもも、例えば格付機関等が日本金融機関の格付を低めたとかそういうような情報には、現在のところ全く接しておりません。
  58. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 私も全くそういう認識でございまして、例の石原東京都知事の五兆円以上の金融機関に対する外形標準の法人事業税、あの話で少し株は動揺したようでございますが、それ以外はないという認識でございます。  以上、きょうはペイオフ関連の法案について、野党の皆さんも含めて委員の間で、できれば事実に関しての共通の認識を形成したいという思いで質問をさせていただきました。  それにしても委員長、対面式であれば、さっきみたいに私が野党委員に向かってしゃべったときに、あっち向いてしゃべれというやじは飛ばないのですね。きょうは一斉に委員会が動いているのでできなかったという事情はわかりますが、ぜひとも基本は対面式で、我々与党は野党委員に向かってしゃべるのが当たり前という審議にしていただきたい、このことを委員長に希望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  59. 金子一義

    金子委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時十八分休憩      ————◇—————     午後五時十八分開議
  60. 金子一義

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  第百四十五回国会内閣提出参議院送付国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案議題といたします。  本案は、前国会において原案のとおり可決し、参議院に送付いたしましたが、同院において継続審査とされ、今国会において、法律番号の暦年について「平成十一年」を「平成十二年」に改めること等の修正を行って本院に送付されたものであります。  したがいまして、その趣旨につきましては既に御承知のことと存じますので、この際、趣旨説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————  国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  62. 金子一義

    金子委員長 本案につきましては、質疑及び討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  63. 金子一義

    金子委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  65. 金子一義

    金子委員長 この際、御報告いたします。  昨年十二月十四日、調査局長に命じました銀行生保など金融機関の行き過ぎた営業活動による個人債務者契約者の被害に関する予備的調査につきまして、去る十六日、報告書が提出されましたので、御報告いたします。  なお、報告書につきましては、同日、私から議長に対し、その写しを提出いたしました。  次回は、来る二十九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会