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2000-02-23 第147回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年二月二十三日(水曜日)     午後六時二分開議  出席委員    委員長 金子 一義君    理事 衛藤征士郎君 理事 鴨下 一郎君    理事 根本  匠君 理事 渡辺 喜美君    理事 北橋 健治君 理事 石井 啓一君    理事 鈴木 淑夫君       石原 伸晃君    大石 秀政君       大野 功統君    河井 克行君       桜井  新君    桜田 義孝君       塩谷  立君    下村 博文君       砂田 圭佑君    高市 早苗君       林  幹雄君    村井  仁君       村上誠一郎君    吉川 貴盛君       渡辺 博道君    岩國 哲人君       岡田 克也君    河村たかし君       末松 義規君    仙谷 由人君       中川 正春君    谷口 隆義君       並木 正芳君    若松 謙維君       安倍 基雄君    一川 保夫君       達増 拓也君    西田  猛君       佐々木憲昭君    矢島 恒夫君       横光 克彦君     …………………………………    大蔵大臣         宮澤 喜一君    国務大臣    (金融再生委員会委員長) 越智 通雄君    金融再生政務次官     村井  仁君    経済企画政務次官     小池百合子君    大蔵政務次官       大野 功統君    政府参考人    (大蔵省主税局長)    尾原 榮夫君    政府参考人    (大蔵省理財局長)    中川 雅治君    政府参考人    (国税庁次長)      大武健一郎君    参考人    (日本銀行総裁)     速水  優君    参考人    (日本銀行政策委員会審議    委員)          植田 和男君    参考人    (日本銀行総裁)    山口  泰君    大蔵委員会専門員     田頭 基典君     ————————————— 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   西川 公也君     吉川 貴盛君   安倍 基雄君     達増 拓也君 同日  辞任         補欠選任   吉川 貴盛君     西川 公也君   達増 拓也君     安倍 基雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  平成十二年度における公債発行特例に関する法律案内閣提出第一号)  租税特別措置法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第三号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案大畠章宏君外三名提出、第百四十六回国会衆法第一五号)     午後六時二分開議      ————◇—————
  2. 金子一義

    金子委員長 これより会議を開きます。  内閣提出平成十二年度における公債発行特例に関する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び第百四十六回国会大畠章宏君外三名提出租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君、日本銀行総裁山口泰君、日本銀行政策委員会審議委員植田和男君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として大蔵省理財局長中川雅治君、大蔵省主税局長尾原榮夫君、国税庁次長大武健一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 金子一義

    金子委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。
  5. 中川正春

    中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。本格的な委員会議論になりましたので、私も張り切って質問をさせていただきたいというふうに思います。  きょうは、速水総裁、それから植田政策委員、せっかくおいでをいただきましたので、ありがとうございました、先にそちらの方の関連の、日銀金融政策についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。  私も改めて、去年からことしにかけての政策委員会議事録を読み返してみました。その中をずっと時系列的に読んでくると、明らかに二つの潮流といいますか、三つぐらいかな、が見受けられるようでありまして、それぞれ、特に中原委員あるいは篠塚委員少数意見というのが終始一貫してずっと貫かれておりまして、そんな中でちょうど中間的に最終的な日銀としての政策決定がなされてきている、そんな印象を受けたわけであります。  そんな中で、一つ見方として、今の経済の認識でありますが、速水総裁、時系列的に見てくる中で、やっと経済底打ちをしながら次の段階に入ってきたな、そんな緊迫感があるように思いますね。それがこれから先起き上がってくるのか、それともまだデフレ傾向が続いていくのかということで、それぞれ見方が分かれているようでもあるわけですが、そんなことも含めて現在の金融状況、これは政策委員会としての議論はあるでしょうが、速水総裁自身がどう見ておられるか、これを改めてお尋ねさせていただきたいというふうに思います。
  6. 速水優

    速水参考人 お答えいたします。  私の考えを申し上げさせていただきます。  景気は、足元持ち直しに転じているというふうに判断いたしております。すなわち、海外経済の堅調などを背景にしまして、輸出増加傾向をたどっております。設備投資も下げどまりと言っていいと思います。さらに、これらを背景に生産が増加を続けてきております。こうした中で、企業収益業況感の改善も明確になってきているように思いますし、民間需要をめぐります環境は徐々によくなっていると判断しております。  ただ、目下のところ、設備投資個人消費といった民間需要が自律的に回復していくかどうかということにつきましては、いろいろ数字を見ておりますけれども、またミクロでいろいろなものを見に行ったりもしておりますけれども、まだ全体として自律回復ができてきているというふうには判断できません。物価の方は、現状横ばいということでございますが、当面はおおむね横ばいで推移を続けるのではないかと思っております。  ただ、これから先、需給要因に由来するような潜在的な低下傾向が出てくるようなことが、万一起こるようなことがあっては困るということで、その点についても引き続き留意する必要があると思っております。  以上、申し上げたような情勢判断をもとにしまして、二月十日の金融政策決定会合では、二人の反対で、多数でゼロ金利政策継続を決定いたしました。  実は、あした、二月の第二回目の金融政策決定会合を開催することになっておりますが、政策委員の間で景気情勢を丹念に点検して、政策運営に誤りなきを期してまいりたいと思っております。
  7. 中川正春

    中川(正)委員 これまでの景気の下支えというのが、いわゆる内部要因、特に内需拡大という本来の形のものではなくて、外部要因公共事業と、それからアジアやあるいはアメリカ景気に支えられた輸出関連、これはいつか来た道ですが、こういうものを中心にして持ちこたえているのだということ、これはそのとおりだというふうに私も思います。その上に立って、これから先をどう見るかということが非常に分かれてくるのだろうというふうに思うのですね。  これが徐々に内部要因に置きかわってくるという見方をするエコノミストもおりますし、そうじゃなくて、これはやはり無理なんだろう、非常に厳しいぞという見方をするエコノミストもいます。その上に立って、ゼロ金利政策がずっと続いてきているわけでありますが、ここから先、どっちにしても、これから本格的に起き上がってくるよということになれば、このゼロ金利政策が解かれて、金利を自然な形に戻すというか、そういうことを模索していくのだろう。  逆に、これは本物じゃなくてまだまだデフレ傾向というのは厳しいよ、こういうふうに現実がなってきた場合には、金利政策、これ自体はゼロ金利ですから動かすことはできない。動かすことはできないというか、限界までずっとやってきたわけだから。  だから、これでじっとしておれるという状況でなくなってきたとき、いわゆるデフレ傾向がまだまだ続いていくというふうな流れになってきたときに、よく言われる量的緩和に移るだとか、あるいはある程度の思い切った、また違った意味での金融政策にステージをはっきりと変えていくのだというふうな、そんな選択肢が問われるわけでありますが、総裁としては、そうした意味では、そういうことが可能なのかどうか。  可能なのかどうかというのは、特にデフレ傾向がまだ続いていった場合に、これまでのゼロ金利政策だけで来た状況というのを転換していけるような、そういうツールというのを日銀として使う用意があるかどうか、その点について改めてお尋ねをしたいというふうに思います。
  8. 速水優

    速水参考人 私どもとしましては、必ずしもゼロ金利政策手詰まりになっているとは見ておりません。  第一に、ゼロ金利政策は、金利をほぼゼロで推移させるためには幾らでも資金を供給していくという極めて弾力的な政策でございまして、今、翌日物コールレートが〇・〇二%で、大体ずっとそれが続いておりますが、これを維持していくためには、金融市場局で随分毎日毎日いろいろな道具を使いながら潤沢な資金を出して、それでその金利を維持しているということでございます。  経済情勢が改善していきます中でゼロ金利を維持していけば、その金融緩和効果というのは徐々に強まっていくものと思っております。事実、短期金利中期金利ターム物金利、それから長期金利、いずれも低くずっと来ておりますし、さらに金融株式市場の方にも回って株価が上がっていく、あるいは企業にも潤沢な資金が供給されて低コストの経営ができていっているということで、ゼロ金利を維持していくことは決して手詰まりということではないと思っております。積極的な政策運営であるということをまず御理解いただきたいと思います。  それから、その上で、まず、ここへ来て量的緩和について、昨年の秋ごろからいろいろな議論が内外で私どもの方にかけられてきておりますけれども現状のゼロ金利政策のもとで日本銀行金融市場に大量の資金供給をしておりまして、その意味では既に十分な量的緩和をしていると言うことができると思います。  ただ、マネタリーベースなどの目標値を設定することにつきましては、そうした量的指標を厳密にコントロールできるものかどうかという、技術的にも疑問がございますし、量的な指標実体経済との間に安定的な関係が維持できていけるのかどうかといったようなことも難しい問題であろうと思っております。また、適当でない、これまでの政策委員会では大体この判断で、私どもはこの問題は今のところ取り上げておりません。  次に、調整インフレ論というのも御承知のように出てきておりますが、これは、ある程度高いインフレ率目標にしておいて、それを達成するためであれば国債大量買い入れでも何でもやればいいじゃないかという議論でございます。これは非常に危険な考え方であると思います。  物価の安定は、国民生活企業活動にとりまして不可欠な条件でありますから、経済問題をインフレをもって解決していこうというような誤った方法をとるつもりは全くありません。  これでお答えになっていたかと思いますが、よろしくお願いします。
  9. 中川正春

    中川(正)委員 これまで方々で主張されたことを改めて述べていただいたわけでありますが、その中で新しい要因というか、これから予期される問題が出てきております。  それは、一つは、ことしの予算案、この中ではっきりとそれに対する評価であらわれてきているように、国債限界以上の発行になってくる。いわゆる八十兆円を超す国債消化をしていかなければならないということの中で、例えばムーディーズあたりもこの状況を見ながら国債の格下げを検討し始めたという状況、これがこれからの特に金利にどういう影響を与えてくるか、そういう問題。  それからもう一つは、交付税特会ですね。国債がこういう状況でありますから、交付税特会民間から八兆円調達をする必要があるということで、これも本当に異例な形で組み込まれるというようなことになってきております。  こういう客観情勢といいますか、これは政策によってつくり出されてきた日本現状でありますが、そういうことを踏まえていくと、現在のゼロ金利のこの状況というのも、それだけではどうしても日銀としても耐え切れないといいますか、よく言われる国債日銀引き受けに対する圧力というのも当然増してくるだろうという予想が十分にされるわけですね。そういうことに対して、総裁としてはどのような姿勢で臨んでいかれるのか、そこもひとつ確かめさせていただきたいと思います。
  10. 速水優

    速水参考人 まず、ムーディーズ格付でございますが、民間格付機関の話でございますので、それ自体について私どもからとやかく申し上げる立場にはないと思います。  一般論としまして、長期的な展望を持って財政赤字の問題を考えていくこととか国債市場改革などは、我が国にとって大切な課題だろうというふうに思っております。  また、国の信用という意味で、物価安定のもとで景気が自律的に回復していくということが何よりも重要でございます。日本銀行としても、そういった観点から引き続き努力してまいりたいと思っております。  先ほどから御指摘の、国債発行高が三十二・六兆円ですか、国債依存度歳出総額の三八・四%になる、あるいは一年のGDPフローでいきますと八%近い国債を出すということ、それによって、世界の国債残高の三六%が日本国債だというようなことを、私ども国際会議で、BISなどでも言われております。  それだけ国債を出していくわけでございますけれども、今のところは御承知のように一・八%台の金利長期金利消化されていっております。ここのところ、十年物、五年物、公募しておりますけれども、二倍前後の申し込みがあって、十分消化されておるわけでございますが、私どもとしては、これから将来のことを考えてまいりますときに、やはり国債市場というものをもっと拡大して、かつ流動化して、かつグローバル化していかなければいけないということが我々の課題だというふうに思っております。  今のところ、短期証券市場残高で、FBとTB両方入れますともう既に六十六兆円が出ております。これは、私どもとしても金融の調節に、実際にある短期証券を売ったり買ったりしながら調節しているわけでございますので、この一年で随分市場が大きくなってきたと思っております。  そのほかに、五年物を出したり、種類を非常に多くしてくださっておりますし、もう一つは、海外居住者国債への応募についても、有取税もなくなりましたし、短期証券は自由になりましたし、長期のものについても源徴源泉徴収をなるたけ有利に見るという方向に向かってきておるのですけれども、今のところ、海外日本国債保有高はわずかに六%です。アメリカは三五%、ドイツは三一%海外に売っているわけですから、そういうところは私どもの方はおくれていると思いますので、その辺のところもこれからはどんどんグローバル化していく必要があるというふうに思っております。  それと、先ほどの千三百兆円という民間消費者の持っている金融資産というものを、今のところほとんど七百兆以上が預貯金に回っているわけですね。あと三百兆が保険と年金、二百兆ぐらいしか株式、債券には回っていないわけなんで、これは従来の間接金融が残していった状況なんでございますけれども、そういうものが、民間消費者の持っている千三百兆の金融資産というものがもう少し分けられて、一部リスクアセットに投資されていく、あるいは投資信託などを使って国債に出したり株式を買ったりといった方向に回っていくことによって、金融構造改革が行われていくことを私どもとしては期待しておるわけでございまして、その千三百兆をどういう形でこれから国債消化に向けていくかということを、今後、私どもとしてもいろいろ方法議論しながら考えて、大蔵省とも協力しながら考えてまいりたいというふうに考えております。
  11. 中川正春

    中川(正)委員 総裁の基本的なそういう考え方を踏まえて、次に植田委員お尋ねをしていきたいのです。  量的緩和の問題なんですが、当初からインフレターゲット論をしっかり、先ほど否定をされましたけれども、基本的には、こうした国債発行状況等々踏まえていきますと、既に量的緩和をしながらインフレに向けて中長期的な流れというのは始まっているのじゃないかという懸念一つあります。  それと同時に、先ほど総裁の方も、昔は金融政策だけでという基本的な理念の中でやっていた日銀運営というのが、いつしか、例えば短期国債オペレートするような形で量的にふやしていったり、あるいは為替の非不胎化介入という形で量的にふやしてきたり、あるいは資金運用部資金繰りに対する援助といいますか、それに向いて日銀が介入していくという形で関与していっている。これは全部実質的には量的緩和に結びついてくるわけでありますし、それから、もっと言えば、既に、一つのルールに基づいてではありますけれども長期国債日銀自身も持ち続けてきている。  こういう現状の中で、既にそうした、ターゲットはつくっていないけれども、今の流れをそのまま延長していけば、これはデフレ懸念に対する対応ということだけじゃなくて、将来やはりインフレに必ず結びついてくるのではないか、その懸念払拭できない、こういうことであります。  そういう現実日銀説明と、現実の底流に流れている一つ一つの施策、それから流れ、それをとらえていく中で、実は植田先生MITの中で研究もされて、クルーグマンの論理とも非常に通じている、そんな背景を持ちながらやってこられたのだろうというふうに思います。  最初のころ、私、いろいろな書き物を見せていただいたら、ちょうど日銀政策委員になられる当初のころは、調整インフレ論になるのか、それとも量的緩和になるのか、あるいは国債引き受けなんかも具体的な前提として考えておられるのか、いずれにしたって、こうした量的な部分で金融緩和策をやっていくべきだ、金利だけの操作じゃなくて量的にもそれをやっていくべきだという非常に積極的な議論をされていたように私は理解をいたしました。  恐らく、政策委員会の中でもそんなことを具体的に先生自身議論をされていたのかなと思ってずっと見たのですが、残念なことに、議論のときに名前が出ていないものですから、具体的にこの委員会の中ではどういう議論をされたのかというのがつかめません。ただ、中原さんははっきりと、量的なターゲットをしっかり示すべきだ、その指標に基づいて、はっきりとした説明責任を基本にしながら政策を論じていくべきである、そういう観点に立っておられるというのはよくわかるのです。  そういうことを含めて、植田先生のこの問題に対しての基本的なスタンス、これを改めてお聞きをしていきたいというふうに思います。
  12. 植田和男

    植田参考人 お答えいたします。  御質問の趣旨の一部かもしれませんが、それは、私が、当初量的緩和論にやや積極的な姿勢を見せていたのに、最近は言わなくなったのはどうしてかということではないかと思います。同様の批判をいろいろなところでいただきまして、つらい思いを時々しておりますが、この場をおかりしまして私の意見を申し上げさせていただきたいと思います。  当初、量的緩和一つ政策オプションとして真剣に考えるべきものであるということは、確かに主張いたしました。おっしゃいますように、政策委員会の中でどういう主張をしたかということにつきましては、守秘義務関係でここで事細かく申し上げることができません。  ただ、その後ゼロ金利政策を採用した、さらにゼロ金利政策デフレ懸念払拭されるまで続けるというコミットメントを出したという事態になりまして、私の判断では、通常意味の、通常意味のといいますのは、オペ対象玉としまして短期金融資産を買っていくという通常金融手法のもとでのという意味でありますが、通常意味での量的緩和効果がほとんどなくなったという判断に至ったわけであります。したがって主張しなくなったということで、私の頭の中では首尾一貫した態度をとっているつもりであります。  やや敷衍いたしますと、通常量的緩和とはどういうものかということを申し上げてみたいと思います。  通常量的緩和とは、金利の下がる余地がある中で行うものであります。通常金融緩和金利を下げるということでやるわけでありますが、必ずしも直接金利を下げるというふうに言わなくても、量をふやすという形で、量にコミットすることによりまして自然と金利を下げていくという手法がございます。両者の違いは微妙でありますので、技術的になりますので省略いたしますが、いずれにせよ、金利が下がる余地がある中でこの手法意味があるものであります。  もう一つ金利関係なく、量が出ていくだけで、例えば、貨幣がたくさんありますと、物を買うことはできるという流動性効果があるということから、量をふやすということに意味があるという主張もございます。これも量的緩和論一つの系譜であります。  しかしながら、現状を見ますと、短期金融市場にはじゃぶじゃぶにお金があふれておりますし、日本銀行資金供給オペも時々札割れになったりいたしております。こういう中では単に量をふやすということの景気拡張効果はほとんどないのではないかというふうに私は思うわけであります。  こういうことからいたしまして、通常意味の、そういう意味での量的緩和余り効果が期待できないということですので、それを主張するということをしなくなったわけであります。  一言つけ加えますと、量的緩和論の権化のように言われております、先ほどお話のありましたMITクルーグマン自身も、単純な量的緩和論日本経済現状のようなところでは無意味であるということを、単純な量的緩和でありますが、認めております。
  13. 中川正春

    中川(正)委員 こういう形で、デフレ懸念払拭されるまでゼロ金利政策を続ける、こういうことがずっと続いてきているわけですが、そのデフレ懸念払拭というのはどういうことをもって言うのかということですね。ここが一番論点になるところだろうと思いますけれども植田先生はどういう時点でそれは大丈夫だという話になるとお考えですか。
  14. 植田和男

    植田参考人 お答えいたします。  極めて明快な基準が示せればそれにこしたことはないわけでありますが、そう簡単ではないということを残念ながらちょっと申し上げてみたいと思います。  非常に大まかには、私の判断は、デフレ懸念払拭が展望できるという状態は、しばらく先のインフレ率がかなり厳しいマイナスの状態に陥るリスクが非常に小さくなったと判断できるときというふうに考えております。それを実体経済の方の言葉で言いかえれば、総裁が時々申し上げておりますように、消費設備投資のような国内民需が自律的な回復軌道に乗るということが展望できたときということになるかと思われます。  もちろん、もっとはっきりと、例えば消費者物価指数上昇率が〇%を超えたとき、〇・五%を超えたときにゼロ金利を解除するというようなことが言えればはっきりするわけでありますが、金融政策はラグをもって経済にきくものでありますので、現在インフレ率が〇・五になったからそこで解除するというのでは遅くなってしまうというものかと思います。  したがいまして、将来、半年、一年先後の経済状態を見て、それに対する予想をもとに現在の政策判断するということにならざるを得ません。その分わかりにくい、あるいは総合判断的な要素がまじってしまうということは御理解いただけたらと思います。
  15. 中川正春

    中川(正)委員 そうした中で将来を見ていくときに、さっき指摘があったように、今、量的緩和は、実質的にゼロ金利政策と相伴って、短期オペやあるいは不胎化や、そういう形でやっていますよ、それでじゃぶじゃぶですよと。じゃぶじゃぶだけれども、基本的にはしっかりとした効果が上がってこない。その指数なんかで最たるものというのは銀行の貸し出し枠なんだと思うのですが、これ自体が伸びてこない、もう一つ言えば、民間設備投資が起き上がってこない、そういう指標で表現できるのだろうというふうに思うのです。  そのときに、日銀というのはマクロで政策決定をしていくのでしょうが、しかし、日本現状を見ていると、私は、マクロ以上にミクロのいわゆる構造的な問題がある、あるいは政策的な問題があるように思うのです。  端的に言えば、銀行あたりがリスクテークをやっていない。それが、この間も端的に消費者金融あたりで、あるいは町金融にぐっと流れてそれが社会問題化したとかいうようなことで現象的にもあらわれてきているわけでありますし、それから、ISバランスといいますか、企業自体が過剰な設備投資それから過剰な資金というのをまだ持ち続けているのじゃないかとかいうようなこと等々を含めて、そうした一つ一つの構造的な部分、これにメスを入れないと、今の現状が続く限りは、実際に金融政策効果が上がってこないということが続いていくのじゃないかというふうに思うのです。  そういう認識に立ってこれから将来を見込んだときに、今どういう位置に日本経済が立っているのか。植田委員、これから日本は大丈夫なのか、それとも、どういう条件を満たしていけば日本経済は立ち直ってくるというその太鼓判が押せるのか、そういう表現でも結構ですが、委員なりの見識を少しお話しいただきたいというふうに思います。
  16. 植田和男

    植田参考人 お答えいたします。  御指摘のように、金融緩和政策あるいは拡張的な財政政策経済への効果がこれまでのところやや弱いと見られる大きな理由としまして、金融部門及び非金融部門の非常に厳しいリストラ努力がある、あるいは構造的な問題があるということであるかと思います。  金融部門に限りますと、これは、銀行部門の不良債権問題、そしてその他直接金融、あるいは債券市場のやや未成熟な発展段階、こういうことになるかと思います。これらの問題を金融政策で解決していくということは、非常に難しいかと思います。  しかしながら、我々も金融政策の範囲でも、もちろんオペ金融機関等を対象に行うわけでありますが、その金融機関の外への影響力が強くなるような工夫をいろいろしてまいりました。CPオペとか社債担保オペあるいはABSを担保にするオペ等がそれであります。  より重要な点といたしましては、不良債権問題につきましてはさまざまな対策が九八年からとられてきております。その結果といたしまして、まだまだ貸し出しは伸びておりませんが、一部、中小企業向け貸し出し等に積極的な姿勢を銀行はとり始めるという兆しもあります。  また、非銀行部門を通じます資金仲介につきましては、資産流動化あるいは資産運用のフレキシビリティーを増大させるような法律、あるいは規制面での緩和措置等がとられつつありまして、これらについてもかなりの期待を私は持っております。お答えになったかどうかはあれですが。
  17. 中川正春

    中川(正)委員 それぞれ参考人、ありがとうございました。  最後に、一つ金融監督庁の方に、話題を変えましてお聞きをしておきたいのです。  外形標準課税の問題で、政府のいわゆる閣議口頭了解というのがきのう出されました。その中で最後に、金融システムの安定を確保することが大切だけれども、今回の場合は、公的資金を使って金融を守っているにもかかわらず、いろいろな影響が出るよと。その中に、いわゆる自己資本の減少、不良債権処理の遅延、経営健全化計画の履行あるいは公的資金の返済への支障、金融再編への悪影響、金融機関間における競争条件の不均衡、こういう項目が並んでいますね。  これは、恐らくそれぞれの根拠を持ってこういう批判をされたのだろうと思うのですが、具体的にどれぐらい、それぞれ影響が出るのは当然だと思うのですが、その程度が問題なんだろうというふうに思いますね。それを示していただきたいというふうに思います。
  18. 越智通雄

    ○越智国務大臣 当然悪影響が出るだろうとおっしゃいましたが、資本比率を一定にしておけば、自己資本が減少すれば、貸し出しをどうしても下げざるを得ない。  では、どの程度減るか。それは、税額の分でいえば、東京都庁は千百億と言いましたが、全銀協ベースで計算すると、税効果会計とでは四千億、これはもろにことしからかかってきますから、そういう意味では、それでは幾ら下がるかと言われましても、計算はしにくいですけれども、仮に八%資本比率のところだったら、それの十二・五倍が下がるわけでございますよ。四%基準行でしたら二十五倍になってきますから、かなりの額が当然出てくるのじゃないかと。  不良債権の処理は、今一生懸命やってもらっていますけれども、これはやはり、何行ベースでとるかによりますけれども、大体九千億ぐらい、十七行ベースだったかな、やっているのが。四千億ひっかかれば、その分がスピードが半分ダウンしてくるわけですから、そういう意味では問題でございます。  それから、そういうものは経営健全化計画、これは実は注入してから二年後に改正することになっているのですけれども、臨時にもやれるようにしました。しかし、通常ですと来年の三月期に改定時期が来るのですけれども、恐らくそれを待たずに改定という作業が当然入ってくるのじゃないかなと。しかし、これはともかく今都議会にかかったばかりですから、それから、正直に言いまして、条例案を取り寄せて見ましたけれども、ここでも申し上げたように、中身は必ずしも詰まっていません。かなり雑駁な点がありますから、そういう意味ではわかりません。  それから、公的資金の返済は、東三からこの二十八日に千億返してもらうのですけれども、いわゆる佐々波委員会のときの千億は各行にだんだん返してきてもらおうと思っております、各行もそう思っておりますが。実行するのは今期は東京三菱だけですけれども、こういうのもやはりちょっと返しにくい状態になってきます。  それから、やはり、五兆円というそれこそ根拠のないレベルで切ったものですから、これから破綻したとかあるいは破綻しかかった銀行を救済にかけるときに、足して五兆になるというところがちょっとヘジテートするんじゃないでしょうか。  それで、あの条例案では、この間ここでも申し上げたように、持ち株会社の場合には、個別行の計算をしていますから、持ち株会社でしのぐしかないみたいな、そういう意味の変な影響が出ます。もちろん、海外では、かなり新聞等では、サプライズアタック、それでたたいている新聞等がございますので、これから海外での外貨繰りのときにどの程度の影響が出るか。  それからもう一つ、国内の銀行の株価が明らかに下がっておりまして、皆さんにペイオフのときに随分心配していただいたのですが、あれは全然下がらなかったのです、十二月末から二月の初めまでは。むしろ、二月の七日以降の下げ方の方が、一割五分ぐらい下がっております。  株価そのものがどうこうというより、一番心配しているのは、銀行の株を一番持っているのは保険屋さんでございますから、保険会社の方の三月決算にどの程度影響が出るか。あと多く持っているのは信託銀行ですから、そういうところを全部私どもとしては、都議会がどれだけ良識ある判断をされるか知りませんが、決着がつくのが三月三十日と聞いておりますので、それの中身をよく見、かつ、条例で十分わかり得なかった、きのうも申し上げたように、銀行の出した社債はあの五兆の計算に入らないなんという非常に穴のあいたところもありますので、どういうふうに対応するかをよく見ながら、影響の数量的な計算もしていかなきゃならぬ、このように思っております。
  19. 中川正春

    中川(正)委員 時間が来ておりますので。  よほど憎らしいという気持ちがあふれたような答弁だったわけですが、そういうことは実質的にやはり議論を重ねなければいけないだろうというふうに私も思っています。  その上に立って私もこれを少しやりたかったのですが、時間配分を間違えてしまいまして、また後半それぞれ尋ねる機会があるでしょうから、ここで終了させていただきます。
  20. 金子一義

    金子委員長 次に、岩國哲人君。
  21. 岩國哲人

    ○岩國委員 民主党を代表いたしまして質問をさせていただきます。  まず最初に、今、中川委員の方からも質問が出ておりました東京都の外形標準課税、大蔵大臣も、それから越智長官も、お二人いらっしゃいますので。  円の国際化ということは、日本の政府にとっても、それから金融関係者にとっても非常に大きな命題であり、いまだにその目標ははるか遠くにあると思います。その円の国際化を目指しながら官民一体となって努力しているそのときに、この外形標準課税というのが出ておりますけれども、円の国際化、そして東京マーケットを世界のマネーセンターの一つとして育成していく、この二つの視点から見て、今回のあのような新しい課税をどのように考えておられるか。まず、宮澤大蔵大臣からお伺いしたいと思います。
  22. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これにつきましては、政府の見解を定めておりますので、それに限って申し上げますけれども、あの中に、今岩國委員の言われましたように、将来の国際マーケットを目指す東京として、わかりやすい言葉で言えば、プレディクタブルでないことをするというのは、国際的には非常に不安になるのではないかということを申しておるわけでございます。  それは、円というものにも直接に関係をいたしますし、そこのところは、不思議な、驚くことがあるものだなという印象を与えなければいいが、それはやはり将来本当に世界の三つなら三つの市場の中心になろうとします立場からは、非常に気をつけなければならないことだと思います。     〔委員長退席、根本委員長代理着席〕
  23. 岩國哲人

    ○岩國委員 それでは次に、越智長官の方からも御所見をお伺いしたいと思います、特に大臣の御意見につけ添えていただく点があるとすれば。
  24. 越智通雄

    ○越智国務大臣 これは、やはり世界の北半球を、ニューヨーク、ロンドン、東京と結ぼうと思っているときに、日本はちょっと違うぞという感じを与えました。そして、かなり銀行というものに対して日本では信頼よりも敵意があるんだなと。  したがって、実は、最初は彼らは、具体的に言えば五兆円を超している外国銀行の支店はございません。なぜなら、五兆円の計算は在日の支店の分だけで計算したわけですから、後ろ側が猛烈に大きい銀行でも、シティといえども入らないのですよ。だから、競争条件からいうと自分たちは有利になったかという感じがあったのですけれども、よく考えてみると、いつまたこんな格好でサプライズアタックを自分たちが食うかもしらぬという懸念を色濃く持ったと思われますことは、先生もお読みでしょうけれども、ニューヨークやロンドンのその系統の新聞等には非常に明瞭に、かなり強く、行われてからここ一週間ぐらいはまだ静かだったのですが、その後においてかなり強く出ております。きょうはその新聞をここに持ち合わせておりませんけれども、そういうのは幾らもございます。
  25. 岩國哲人

    ○岩國委員 新聞もそうですけれども、こちらにおりますそういった銀行、あるいは銀行類似のインベストメントバンク、証券、そういったところも一様に、排除してもらって喜んでいるということでは必ずしもないわけです。  日本の銀行だけを対象にして外国の銀行を外す、私はこういう閉鎖的な考え方をとるべきではないと思います。やはり日本は開かれた自由な国ですから、税金を取らせていただくときも一緒に入っていただく、そういう姿勢が私は大事だと思いますけれども、シティバンクやメリルリンチやドイッチェバンク、たくさんの社員が東京の中で働き、そして世界のトップレベルの銀行がこの対象にならないというのも、非常に奇妙な感じを与えるのです。税金は助かったという反面、今、越智長官がおっしゃったように、いつ自分たちがねらわれるかもしれない、こういう不安感を与えてしまったということは、東京のマーケットは大人のマーケットじゃないという面を見せてしまったような気がするのですね。  私は、ロンドンにもニューヨークにもおりました。今世界で一番信頼されて、そしてプレディクタブルなマーケットといえば、越智長官も同意されていますけれども、ロンドンなんです。フランスもドイツも、その点についてはまだインターナショナルセンスがない。  では、ニューヨークはどうか。ニューヨークは、一九六三年に、ケネディという経済のわからない大統領が出たために、金利平衡税をしいてしまって、そしてお金の世界にベルリンの壁をつくってしまった。そして、ニューヨークの地位は没落し、それがロンドンをあのようなユーロマーケットの中心にしてしまった。非常に皮肉な結果になった。いまだにニューヨーク・マーケットはロンドン・マーケットにその点では追いつけないわけです。  同じように、アジアの中でシンガポール、香港、競争相手もまだおる中で、なぜこのような措置が、単に地方分権だから地方に税金のことを任せなさいというのではなくて、やはり国策、国益という観点から、もっともっと中央政府はこういうときにこそしっかりとした意見なり姿勢を示すべきではないか、私はこの大蔵委員会の一員として恥ずかしく思いました。  宮澤大臣も越智長官も海外に勤務されたではありませんか。そして、いろいろな国際会議にも出ておられる。その中で、こういう地方分権のにしきの御旗を掲げたら何でもできるというのは、これは青森県や島根県でやるなら話は違います。日本の首都で、東京のマーケットを育てようというときに、東京でやるから問題が大きいわけです。  ビッグバンをやらなければいかぬときに、ビッグバッシングの方が先に行われてしまったということになって、私は大変残念に思いますけれども大蔵大臣も越智長官もその認識を持っていただいているようですから、今回のことは、できるだけ大きなマイナスにならないように、いろいろな施策、政策、アプローチを積み重ねていただいて、円の国際化や東京マーケットのマネーセンター化がこれでもって後退したり、あるいは世界から妙な目で見られるということがないように、ぜひとも御努力をいただきたいと思います。  次に、大蔵大臣金利政策あるいは国債、財政について質問させていただきたいと思いますけれども、その前に、現在の景気認識はどういう景気認識を持っておられるのか、それをお伺いしたいと思います。  経企庁の政務次官にもおいでいただいておりますけれども、最近の政府の景気判断、公的な景気判断と、また最近行われました景気ウオッチャー、これにかなりの乖離が見られるわけですね。きょう、小渕総理はクエスチョンタイムのときにも、景気は緩やかに、着実に回復している、こうおっしゃっていますけれども景気ウオッチャーの調査結果は、必ずしもそれを裏づけていないと思います。  まず、経企庁の方から、政務次官がおいでになっていますので、その点についてどのような説明ができるのか、簡潔にお願いいたします。
  26. 小池百合子

    ○小池政務次官 ただいま、景気の認識、そして今回の初めて行われました景気ウオッチャーの調査結果と乖離があるのではないかということを御質問いただきました。ちなみに、数字で申しますと、一月の結果は、三カ月前と比較した景気現状に対する判断は四五・三ということで、真ん中の五〇を切った、そういう結果が出たわけでございます。また、二、三カ月先の景気の先行きに対しては、五一・一という数字が出ております。  今回初めて景気ウオッチャーの調査をさせていただいた、これは御承知のように、もっと肌で景気判断ができるように、景気の実感を伴ったものを迅速に調べようということで、この意気込みについてはぜひとも御評価いただきたいと思うところでございます。  そして、今後、データの蓄積など、また統計の癖なども生じてくるということかと思いますけれども、しかしながら、問題は、今回景気ウオッチャーとしてお願いしたところが、まだ地域的に全国津々浦々ということにはまいりませんでした。主な、関東地方なども抜けているわけでございます。また、景気ウオッチャーをお願いしたところが、いわゆる個人消費にかかわる部分が非常に大きい、シェアが大きいということで、これは私どもの月例の経済報告などでもお伝えしているように、現在はまだ個人需要が伸びていないということで、ある意味ではその点一致しているのかなというふうに思っているところでございます。
  27. 岩國哲人

    ○岩國委員 私も調査結果を見て、次官と同じように、今回の景気ウオッチャー調査は目線を低く、非常に庶民的に、しかも動いている生活の中から実感をつかみたい、私はその目標はかなりの程度は達成されたと思います。  達成されたがゆえに、経済企画庁の方の景気判断とずれてきたという思いがけない産物もあったと思いますけれども、これは一回目だけですから、今後どういう点を反省し、これからこの景気ウオッチャー調査はさらに継続されるのか、そして第二回目を、今回の経験にかんがみてどういう点を改善しようとされるのか、一つ二つ御紹介いただけますか、これは改善しなければならないという点。
  28. 小池百合子

    ○小池政務次官 どの分野ということを具体的に今お答えするわけにはまいりませんが、しかし、今回のこの一回目のことを踏まえまして、また継続していく中で、もっと必要な、例えば景気ウオッチャーでお願いする業種でございますね、そういったところに工夫を加える、シェアの工夫も加えていくといったようなことで、また既存の統計との整合性などの問題もございます。いろいろと学識経験者の皆様方からも御助言いただいておりますので、その辺は機動的、機敏にまた対応していきたいというふうに思っております。  それから、量的といいますか、景気ウオッチャーの数自体でございますけれども、今回の調査の範囲、規模にプラスして、この二月からは関東を加えて全国で六地域に上り、そして各地域が百人ということでございますので、合計六百人にウオッチャーがふえてまいります。これがまず次の段階。そして、それを、平成十二年度中には対象地域を全国で十一地域ということで、そのほか北関東、南関東、北陸、中国、四国、沖縄、比例ブロックのような名前になりましたけれども、このウオッチャー数を拡充するということで、将来的にはおおむねで二千人のウオッチャーにしてまいりたいと考えております。  以上です。
  29. 岩國哲人

    ○岩國委員 昨年文部省が、国民の生活意識調査、国民性調査というものを発表していますけれども日本国民が、将来の見通しについて豊かになると思う人は、二十年前の四四%に対してわずか一五%に激減している。貧しくなると思う人は二五%から五〇%へきっちりと倍増している。幸福になると思っている人は三七%から半分の一九%へ激減。こういったふうに、堺屋長官はよく景気は気からということを強調されます、それは確かにそういう面がありますけれども景気は気からとすると、この文部省の調査を見ると、国民は非常に悲観的であるということが言えると思います。  経企庁が昨年六月調査されました国民生活選好度調査、これによりますと、失業の不安を感じているという人が二十年間でこれも倍増です。生活全般に満足しているという人は減って、暮らしはよい方向に向かっていると思っている人は三七%から二〇%へ、半分になっています。老後の見通しは明るいと思った人が二十年前は三五%いたのが、二十年たってみたらちょうど半分になっている。  この文部省の調査でも経企庁の調査でも、最近の政府が発表される、あるいは小渕総理がきょうのクエスチョンタイムでおっしゃった、緩やかに着実に回復しつつあるということとの間に、かなりの乖離があるんじゃないですか、このウオッチャー調査によっても。なぜそこまで言わなければならないのかな、政府の景気見通し、景気現状判断というのは、この文部省やあるいは経企庁が調査された別の方法、あるいはこのウオッチャー調査、もっとそういうものに近い判断を国民にしっかりと示すべきではないかと私は思います。  緩やかに回復、緩やかに回復と、毎月そのようなものが発表になりますけれども、一方では緩やかに回復しつつ、倒産し、倒産件数がまたここで激増しているじゃありませんか。ですから、実感と離れたことをいつまでも言い続けられると、私は経企庁自身のクレジビリティーにも影響してくるんじゃないかと思う。  景気は気からということを堺屋長官初め最近政府の幹部もおっしゃいますけれども景気は気からとすると、株式市場は半年の間に五割近く上がっています。どこの国でも、これだけ株式が上がれば、少しは個人消費のプラス効果が出てくるはずでしょう。それが全然出てこない。今度の景気ウオッチャー調査を見てください。飲食関係、小売関係、よくなったと感じている人は〇・〇です。きれいにゼロ。そして、地域的に見ると、北海道、東北、北の方は、よくなったと思っている人はゼロゼロです。地域的にもそこはもう完全に冷え切って、横ばい。それから飲食関係、小売関係もはっきりとそこは冷え切って、横ばい。そういうことはウオッチャー調査でも、極端にそこの部分が光っています。  株式市場に返りますけれども、株価の方が五割も上がって、いまだに財布は緩んでこない。私は、こういう現象は今までほとんど見たことがないのです。二万円というのは、株式関係者の間で、市場関係者の間では額面と思われていたのです。心理的な額面回復は二万円だと。ということは、去年の一万三千円、一万五千円のころから、二万円になればようやく額面割れの状態が直るんだと、市場関係者は確かにこの二万円を待望しておりました。その二万円が実現しても、いまだに個人消費に火がついてこない、なぜなのかということなんです。私は、政府の景気対策、金融政策が大きな間違いを犯しているのじゃないかと思うのです。  例えて言えば、景気は気からと言いますけれども、本当に安心して老後を過ごせるのか、これから生活がよくなると思えるのか、不安を感じる人がさらにふえる、そして失業不安がふえている、よくなると思う人は半減している、これが日本人の気の実態なんです。  なぜそんなに悲観的なのか。それは、税金は上がる、上がるだろうとみんな今の消費議論、あるいは現に東京都が先陣を切って税金を上げてきました。いよいよ来た、自分たちの不安が一つ、小さい形でも示されたわけです。借金が、膨大な借金を積み上げた。小渕内閣になってから、日曜日が来るたびに一兆円ずつ借金がふえているんです。八十三回日曜日が来て八十三兆円。ネバー・オン・サンデー、日曜日はだめよ、嫌よと言いますけれども、日曜日になるたびに一兆円ずつ借金がふえていったのがこの小渕内閣。橋本さんのときはもうちょっとペースが緩やかでした。国民は、この借金が非常にふえているということに対して非常に不安感を持っている。税金はいつか上がる、利子は下がる、借金はふえる、仕事は減る、そして医療費は上がる、年金は下がる、そういう不安に今おびえているからこそ、株価が上がっても一向に個人消費は進もうとしない。  この点について大蔵大臣、ゼロ金利をいつまでも続けて、そうして将来不安を残したままで景気対策を繰り返しても、個人消費というのはなかなか火がつかないような気がするのですけれども大蔵大臣がテレビ番組でおっしゃった、個人消費は年内に大幅な回復を示して、年後半には二%あるいは一時的には三%をつけるかもしれないというところまで回復すると今でも思っていらっしゃいますか。
  30. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府としての正式な見解というものはございませんので、宮澤はどう思うかというお尋ねとしてお答えをいたしますけれども、やはり私は、十—十二というのはどうもなかなか難しいなという印象を持っております。  それに対して、一—三はいいのじゃないかなということをまた思っておりますのは、いずれにしても、これは消費の動向をめぐる問題でございますけれども、我が国は八千世帯という広いカバレッジを持つ家計調査を統計局がもう長いことやって歴史を持っておりますし、今日もやっておるわけですが、これについて一番困りますのは、いろいろな事情があると思いますけれども、季節調整というものが大変に難しくなってしまったということでございます。  今、したがって、毎月統計は出てまいりますのですが、これが一番大事なところなんですが、季節調整が危ないものですから、前月比を使わずに前年同月比という、わざわざ昨年に返って比べておるという問題がありまして、一—三がよかろうかなと思いますのは、少し十—十二と一—三との季節調整の仕方にバイアスがかかっているのではないか。なぜということは事の性質上申し上げられませんが、どうもそういう感じを、堺屋さんも実はしておられるのですが、しております。  しかし、いずれにしても、十—十二はどの統計を見ましても消費はよくなっておりません。収入が落ちておりますので、たまに限界消費性向が上がる月があっても、収入が落ちぎみでは消費が上がるということは無理でございます。これは、私はやはりリストラクチャリングの一番直接の影響と思っております。リストラクチャリングによりまして案外に失業率が上がっておりませんのは、常雇用からパートの雇用に変わっているからだと思っておりますが、それは収入の減になってかなりてきめんにあらわれておる、それが十—十二であったと思います。  ここに来まして賃金交渉が労使で行われておりまして、これは政府が絶対に関与してはならないことでございますが、私の申そうとしておりますのは、その中から労使の間でいろいろな話し合いというものがあり、了解というようなものができて、リストラクチャリングが依然続くのではございますけれども、あるレールの上で進んでいくのではないかという期待を持っておりまして、それは統計でいいますと、私は四—六にあらわれるだろうと思います。したがって、それがわかりますのは九月の十日ごろでございますが。  長くなりましたが、私が思っておりますのは、十—十二が難しいとして、一—三はいろいろな事情からプラスになっていくのではないか。四—六はもう少し実体的な事情でプラスになっていくのではないか。  設備投資は、機械受注が復活しているといいますので、半年ぐらい先を見ますと、秋ぐらいには初めて設備投資がプラスになるかもしれない。そこまでいけばもうかなり先は読めるわけでございますけれども、私が瞬間風速によっては二、三%はあるかもしれないと申し上げましたのは、まだまだこうやってだめな月、いい月とございますと、それは瞬間風速で二%や三%ございましても、昨年の一—三のように、別にそれ自身が不思議ではないし、ただし余り自慢することもない。  これが全部、それでもやや希望的な部分が入っておりますけれども、しかし、そこが一番難しいところで、岩國委員は、いや、そこまで日本経済は回復していないよ、そんなこと統計に出ていないじゃないかとおっしゃっていまして、私どもは、確かに、ここのところひょっとすると二回続いてまたマイナスがあるかもしれませんが、しかし、基調的にはもう確かに固まりつつあるのではないかと思おうとしておりますのと、そこが、こちらも確かにそうだと申し上げるほどの実は自信はございませんけれども、堺屋さんや私が申し上げていることは大体そういうことであると思っております。     〔根本委員長代理退席、委員長着席〕
  31. 岩國哲人

    ○岩國委員 御丁寧な御説明ありがとうございます。  ただ、要するに、俗な言葉で言えば、個人消費、そういったものに明るさがはっきりと出てくるのはことしの桜じゃなくて来年の桜の時期だ、こういうことですね。そして、設備投資に火がついてくるのは来年のもみじのころだということでしょうか。あるいは私の聞き違いだったのでしょうか。
  32. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 申し上げようが悪かったかもしれませんが、そうではございません。  統計にあらわれるのは、一—三があらわれるのは六月十日ごろでございましょうか。四—六があらわれるのは九月のやはり十日ごろでございますから、統計にあらわれる時期としてはどうもその時期ではないか。しかし、現実に起こってくるのはもう少し早いのではないか。来年ということを全く思っておりません。
  33. 岩國哲人

    ○岩國委員 そういう早い景気回復がはっきりと見える形で年内に出るということであれば、大変結構なことだと思いますけれども、しかし、実際にウオッチャー調査なんかを見ましても、町の中でもタクシーの運転手さんに聞いても、お金の使い方というのはよくなっていないと私は思っているのです。  しかも、株価というものが気を反映し、株価の上昇がまた気を新しくつくり出すとすれば、一年間に一万三千円から二万円まで駆け上がった株価というものが、さっぱり景気にプラスになっていないし、個人消費にもプラスになっていない。株価が五割も上がれば、内閣の支持率はどこの国でも上がるものなのです。ところが、内閣の支持率は、株価は上がる、支持率下がる、こういう傾向が最近出ております。これは釈迦に説法ですけれども、そういう経済の世界の中の理屈だけじゃなくて、これは今の政治情勢が大きく影響しているのじゃないかと思います。  自自公連立政権ができたとき、そういう大きな勢力に期待した人も少なくなかったと私は思います。しかし、それからさっぱり自自公連立政権に対する支持率は上がってこないじゃないですか。三党寄れば何とかといいますけれども、三党寄ってもなかなかいい仕事ができるような感じが伝わってこないから、ああいう巨大な政権を、数合わせをやっても、これでもやはりだめなんだなと。政治が助けてくれることはとても、これだけの巨大な政権をいろいろな非難を押し切ってまでつくって、それでも懸案を片づけることは何一つできない。やることはみんな先送りばかり。介護サービスしかり、ペイオフしかり、政治改革しかり。  一つ一つ大事な問題を見れば、三つの連立ができてから、やることはてきぱきと片づけるというよりも、先送り、先送り、先送り。定数削減も、五十の削減と言いながら、五十を二十に削減して、そして削減する。結局、こういうことから見ても、五十削減も先送りになってしまった。結局、今の政治に対する、自自公に期待した人たちも、無気力、無策、無責任、そういったような感じに失望している。それも、株価は上がってもさっぱり明るさが増してこない。市場関係者は、去年、一年前から言っていました、二万円という額面を回復したら景色は一変すると思いますと。全然一変しないのはなぜか。私は今の政治情勢にも大きな影響があるように思います。  何か御意見がございましたら。
  34. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 株価のことでございますけれども、最近になりまして、個人が株式市場にいろいろな形で、投信も含めまして参加してきたように思います。かつての外人買いとは違う傾向が見られますけれども、私は、専門家に対してお言葉を返すようですけれども、このたびのウエルスエフェクトというのがなかなかあらわれないのではないだろうか。先ほど申しましたことが本当だといたしますと、株価の上昇によってウエルスエフェクトを取得する階層と、今リストラによって給与の打撃を受けている階層とが私は違うのではないかというふうに思っております。  しかしながら、二万円というのが明るいのは、やはりコーポレートピクチャーが明るいのだろうと思うのでございます。コーポレートピクチャーが明るいということは最終的には大事なことでございますから、それでいいのだと思っておりますけれども、それが個人の所得あるいは当期利益にはね返って出てくる、それだけのプロセスは経なければならないのではないかな、これは専門の先生に大変僣越でございますけれども、そう思っております。
  35. 岩國哲人

    ○岩國委員 そうした景気情勢を踏まえて、依然として緩やかに着実に回復しているという、きょうの小渕総理の国民の前でおっしゃった言葉は、少しまだ危ないところがあるのじゃないかなという感想を私は持っております。  そうした景気情勢の中で、ことしの財政のあり方、特に借金がどんどんふえる。国債がどんどんまたこれから発行される。それで金利が上がるのじゃないか。庶民は、素朴な形でそれも一つの生活不安の種と受け取っているわけですね。  そこへ、今度はムーディーズ格付が下げる。スタンダード・アンド・プアーズは下げておりませんけれどもムーディーズは、一度下げてダブルA1、そして今度はダブルA2かなんかに、もう一つ下げる。下がるたびに発行コストが、これはドル建てのものを下げたわけじゃありませんけれども、円建て債についてですけれども国債マーケットではワンランク下がると、大体〇・二から〇・三%余計金利を払わなきゃいかぬ。それが、さらにまたワンランク下がると、またそれに〇・二あるいは〇・三%利回りをよくしなければならない。  と同時に、民間企業で頑張っているNTTもトヨタも、今までは国債と同じように、最上位だったのが、国債が下がればつれて下がっていく。前回はそうでした。今回は必ずしもカントリーシーリングというものが民間企業には影響しないようですけれども、しかし、国債格付が下がるということは、一般の民間企業資金調達にも決してこれはプラスになるはずはないわけです。そういう格付そのものをよくするための努力。  予算委員会で以前私が御質問させていただいたときに、金を貸している日本の方が金を借りているアメリカよりも格付が低いというのは納得できない論理ですな、大臣はこうおっしゃったように思いますけれども、私は今でも信じています。今はお金を持っている国が信用されるのじゃなくて、お金の使い方を知っている、お金にお金を稼がせる、そういうノウハウと場所を持っている国の方が世界から頼られるときなんです。田舎でいえばお金持ちのだんさんの家が信用されるか、あるいは、市の中で中心になって企業起こしからいろいろな活性化に取り組んでいる、しかし資産そのものは余りないという人が頼りにされるか。私は、世界の中で、この違いではないかと。これがやはり格付にも影響してくるのじゃないかと思います。  こうした六百兆円の国債、地方債合わせての残高ということは、税収でいえば、これは約十二年分ぐらい、家計に例えたら十二年先の給料を前借りしてことしのうちに使おうという、これは大変なことだと私は思います。そして、国債という形でもって資金を調達しなければならない、赤字国債を出さなければならない、そういうときに、先日も質問が出ましたけれども、この八兆円を市中銀行から消化するということは、私は、何とか日本としてそういう事態を避けるべきではないかと思います。言ってみれば、十二年先の給料を借りて生活している家がとうとうサラ金に手を出したか、こういう目で世界のマネーマーケットから見られるのじゃないでしょうか。  決して、市中銀行は立派な銀行で、サラ金の金融機関とは違いますけれども、しかし、れっきとした先進国の経済大国がそういうお金の借り方をするということは、見方によってはサラ金からお金を借りるような行為にも似てくるということを私は申し上げているわけですけれども、この点について大蔵大臣は、先日、予算委員会でも肯定的に答弁しておられましたけれども、避ける方法は全くないのですか。  もっと国債を多様化することによって、短い国債、長い国債、この十年間に随分多様化が図られてきました。利付国債もあれば、今度は割引、ゼロクーポンタイプのものも出てきました。バラエティーで、かなりメニューはふえてきましたけれども、もっともっとそれに工夫を凝らして、そして、海外の投資家がどの程度マーケットに入ってきているのか、日本国債にもっともっと外国の資金を引っ張ってくる、そのような工夫も私は必要ではないかと思うのですけれども、こういう個人への売り込み、それから海外の機関投資家への売り込み、この点についてどういう計画、戦略を持っておられますか。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 八兆円は、もう御案内のように、地方財政がどうにもいかないものでございますから、いろいろ考えまして、国税の減税による地方財政の収入の減、地方財政そのものの減税による地方財政の減、その減の分につきまして、特別会計が借り入れをする、その借り入れは半分は国が持ちましょうと。これは余計なことでございますけれども、地方財政対策としては随分思い切ったことをしておりまして、それが八兆円でございます。従来でございますと財投資金から借りる余裕がございましたけれども、余裕がございません。その分だけひとつ市中で借りようと。  市中で借りようという話は、いかにも、どうもお侍の立場からいいますと余り姿のいい話ではございませんけれども、ただ、一番安く借りられるのは市中でございます。どこよりも安く借りられます。これは単年度、年度内の返済でございますから国債というわけにもまいりませんが、国債よりも安く借りられるというのは事実でございますし、市中も、恐らくこれは入札いたしますと大変に歓迎をするというのが現実だと思いますので、そういうことをする決心をいたしました。  当面に関する限りだれもみんなハッピーだというような結果になるわけですが、まあ、余りこういうことはやってほしくないね、外国でも取りざたされるよと。取りざたされるのは、日本金利というのがそういう状況になっておるということがいかにも不思議なことだなという部分が本当は取りざたされているのだと思いますけれども、まあ、余りしょっちゅうやってほしくないねというお話でございましたら、それはそういう感じがいたさないわけでもございません。  ただ、算術といたしましては、採算といたしましてはこれが一番安い金の調達方法であるし、また、入札参加者もこれを歓迎する。言ってみれば、そういう金利状況というのはというお話ならなんでございますが、そういうことでございます。
  37. 岩國哲人

    ○岩國委員 市中銀行が歓迎するような環境をつくっているのが、私は、今の金融政策の過ちだと思っているわけです。コストはゼロで入ってくる、貸す方には貸し渋りで貸さない。結局、この差額というものは、中小企業じゃなくて政府だったら安心して貸せるという環境を政府みずからの政策でつくり出しているだけのことであって、私は、余りほかの先進国にはこういう例はないのじゃないかと思います。  そういった多額のお金をそういう貸し付けという形でもって政府に貸すということじゃなくて、普通だったら、短いものでも長いものでもマーケットで消化する、銀行はマーケットでそれを拾って自由にポートフォリオを組んでいく、それがあるべき姿。私は先ほど、東京のマーケットが世界の金融センターの一つになってほしい、そういう努力をしておられるはずだと申し上げましたけれども、市中から借りるという環境をつくり出すことは、私は、あるべきインターナショナルなマーケットとはちょっと違うのじゃないかと思います。  市中銀行に公的資金を投入し、ゼロ金利政策を提供し、そして貸し渋りを自由にやらせ、これは少しきつい言い方になりますけれども、結果として、もうひれ伏してでも政府の八兆円をぜひ使わせてください、お使いください、そういう環境をつくり出しているのは、今の政府みずからの金融政策の欠点じゃないかと私は思うのです。そして、そういう欠陥を持った環境をつくり出しておいて、いや、市中銀行は喜んでくれますから、八兆円を困っている銀行から私は借りてあげるんですというストーリーは、私は、なかなか説得力はないのではないかというふうに思います。その点について、何か御意見がございましたら。
  38. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう表現でおっしゃればそういうことでございますし、私のように申し上げれば私のようになりますので。余り自慢のできる話ではございませんでしょう。
  39. 岩國哲人

    ○岩國委員 この点はそれぐらいにしまして、大蔵大臣、今三百二十兆ぐらいの国債の残高がありますけれども、その中で外国が持っているパーセントは何%ぐらいですか。日本人以外。
  40. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 海外、三%だそうでございます。十兆三千六百五十二億円と記されております。
  41. 岩國哲人

    ○岩國委員 外国人が持っている比率というのは非常に小さいと思うのですね、円の国際化という観点から見ても。そして、外国の金融機関をマーケットに引きつけるためには、やはり東京マーケットの一番の武器は、魅力的な国債というものがあるからこそ、こういう情勢の中でも外国のお金が日本にやってくる。株式も、もちろんそれはあります。しかし、ボンドマーケットではやはり日本国債ではないかと思います。  その日本国債の外人比率というものがまだ一けただというのは、大変寂しい話じゃないでしょうか。やはりふだんからそういうところをもっと比率を上げておく努力をしていれば、市中銀行から借りる必要もなかったかもしれないし、あるいはトータルとしてのコストダウンをもっと図れたかもしれないしと私は思います。  同時に、今度は逆の方向で、日本人が持っているドル建ての資産というのは今どれぐらいありますか。株式、債券そしてドル建て預金、全部合わせて。アバウトな数字で結構です。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最初のお尋ねでございますけれども、とにかくイールドが一・七とか一・八とかいうことでございますから、外人に持ってくれといいましても、価格差を追うならともかく、なかなかそれは、こういう状況でございますと……。  それから、しかし同時に、先ほどもちょっとおっしゃりかけましたが、個人に持たせる、日本人の場合には外債も持てますけれども日本の中でいえば、国債をもう少し割引債にして、短いものにして、そして個人に持たせるようにしろと前から言っていらっしゃいますが、それはそのように一生懸命励んでおります。  それから、日本が持っておりますドル債というのは、これは統計がいろいろに混雑しておりまして定義がはっきりいたしておりませんが、三千億ドルということを言っておりますのですが、それが主に国債であろうと思います。意外に少ないように思いますが、そういう統計が出ております。
  43. 岩國哲人

    ○岩國委員 これはたしか、大蔵省の方で調べていただいたあれによりますと、外貨預金残高、それからドル建て証券、合わせて一兆ドルをかなり超えておりますね。特に最近、シティバンクの新聞広告なんかを見ましても、相当なお客さんが、日本人がドル建て預金で預けていらっしゃるということは容易に想像できるわけです。  したがって、私がお伺いしたいのは、国債も円建てばかりでやらないで、日本の中には、ドル建て債券を持ちたい、ドル建て債券でも、聞いたことのないような小さな国とかあるいは遠いアメリカ国債ばかりじゃなくて、日本国債をドル建てで東京の中で発行するというお考えはないのですか。これは資金調達の多様化にもなり、また同時に、円建てであれば一・七、ドル建てであれば五・五とか六とかいう表面利率の高さに引かれて外国の資金も入ってくる。ドル建ての日本国債を買わせて、それが、将来円のクーポンレートも上がってくれば、そのようなときになじみをつかせる。それをいつまでも一・七%でいらっしゃい、いらっしゃいと言っても、なかなか来てくれない。まず、ドル建てで玄関まで来てもらって、そして将来には円建ての国債にもどんどん入ってくるようなそういう道をつける、そういう努力をやるべきじゃないかと思います。  同時に、先ほど申し上げましたように、日本の中の金融機関あるいは個人のお金持ちの人も、ドル建てのボンドを持ちたいというニーズはあるはずですから、何もシティバンクに行かなくても、何もメリルリンチに行ってアメリカ国債を買わなくても、東京で、日本の中でドル建て証券が買えるということも考えるべきじゃないかと私は思うのです。大蔵大臣の御所見をお願いいたします。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 クーポンレートが片っ方は一・八であり一・七台である、それに対して五%ぐらいはいたしませんと問題にならないのだと思いますが、そういう場合のコスト、それからもう一つは為替のリスクというものを政府としてはやはり考えざるを得ないので、つまり、今の状況でございますと、とにかく国内で一・七とか八とかいうイールドで十年物の国債が出ている、価格もややオーバーパーで取引されているといったような状況でございますと、今のような外債という、外国デノミネートの債ということにはなかなかなってこないのではないか。現に大国は余りそういうことをやっておらないように思いますけれども。  コストの面から、為替リスクの面から、そういうことを今考える段階ではないのではないかと思っております。
  45. 岩國哲人

    ○岩國委員 大蔵大臣のことですから当然、コストと言う場合には、何も表面金利の差だけではなくて、為替リスクも含めた上のトータルなコストというお考えで答弁していただいたのだと思いますけれども、やはりそれは同じように、ビッグバンそしてグローバルマーケットに少しずつなじんできている日本の個人投資家、既になじんでいる日本金融機関投資家、そういうところには、クレジットが日本の政府であればもっと安心して投資しやすい、為替リスクがたとえあったとしても。  今は為替リスクの上にクレジットリスクまで負いながら海外の証券に投資しているというのが実情でありますから、少なくともその二つのリスクのうちクレジットリスクについては、ないとは言いませんけれども、自分の国です、為替リスクという一つのリスクだけはあるかもしれないけれども、そういう商品を提供した方がいいのではないか、そのように私は思います。  次の質問に移らせていただきますけれども、長銀の問題、それからそれ以外の都市銀行に対する公的資金の投入。  私は、公的資金というのは税金にはなっていないけれども来年か再来年の税金のことを意味しているわけですから、国民の負担においてそういうところに公的資金を投入するのであれば、銀行が持っている優良株、上場されている株式を、銀行は、長銀の場合も二兆円以上持っています。ほとんどの大手都市銀行は、上場した優良株、NTTとか日立とか東芝とか、毎日毎日市場で買われているような、そういう優良資産を何兆円と持っている。その優良資産を買い上げて、そして金を渡す、そういうやり方に切りかえるべきだと思うんです。国民の負担において、将来税金で返すような借金で銀行に公的資金を渡すのではなくて、公的資金を渡したらちゃんとそれに見合う分だけの株式を受け取る。預金保険機構あるいはどこかの信託銀行に預けて、その株式を担保にし、見合いにした国債発行すべきじゃないかと思うのです。  以前梶山さんは、NTTの株なんかを担保にしてと、そんな提案をされたことが一年半前にありましたけれども、あれは国債の担保に既に入っているNTTを、担保の横取りになるからよくないとあの案については私は思いました。  しかし、今都市銀行がいろいろな意味で反感を招いている一つの理由は、本店は持っている、株式はもう何兆と持っている、株式を持ってもいない私の税金をなぜそういう株式を大量に持っている銀行に渡さなきゃいかぬのか。これも素朴な庶民感情じゃないかと思うのです。「豪邸に住んでる人の借金を隣の私がなぜ払う」、こういう気持ちは今でも変わっていないんです。豪邸に住んでいて株式もたくさん持っているのだったら、その株式を町内会に、納税者にまず差し出すべきじゃないでしょうか。  かといって、それをばんばん毎日毎日マーケットで消化するというと株式市場もたまったものじゃありませんから、それは凍結して、共同証券、証券保有組合、これをやって成功した例もあります。もう一度、私は平成の証券保有組合、そして共同証券構想で株式市場の立ち直りをと。  そして、国債にばかり頼らないで、転換国債、銀行の株式を担保にして、納税者の負担にならない国債発行すべきじゃないかと思うんです。発行するときは国債、しかし、マーケットが上がれば国民は転換するでしょう。転換する見合いの株式はもうちゃんと用意してそこに積んであるわけですから、政府が損するわけでもないし、銀行が損するわけでもないし、投資家が損するわけでもない。そういうことによって国債を少しでも、国債という名前は出ますけれども、それは償還をしなくても済む国債発行すべきじゃないかと思う。  転換国債というのは世界には例がありませんけれども、なぜ世界に例がないのか。先進国で、株式を大量に持ったまま倒産した銀行がないからです。そういうふうな金融行政をやった国がないからです。日本は確かに特殊です。特殊だからこそ特殊な条件をうまく活用すべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  46. 越智通雄

    ○越智国務大臣 朝日新聞「論壇」にお書きになりました先生のあの論文と申しますか御提言は読ませていただきまして、私どもはやはり、もう今はあらゆる知恵の時代でございますから、先生方のそういう発想を前向きにとらえて検討していかなきゃいけないという思いでございます。  実は今、先生がおっしゃいましたように、世界の銀行に比べると、日本の銀行は株式の持ち方が多うございます。今四十二兆ございます。そして、これだけの株価の水準になってきたものですから、十兆まではいかないけれども、かなりの含み益は出てきたと思います。  他方、来年から時価評価の時代が迫りましたものですから、今持ち合い株の放出が結構多いので、七月の統計でございましたか、銀行の関係だけで見ると売り越しでございます。かなり、二倍ぐらいの売り越しになっております。  ですから、先生がおっしゃるように、銀行の持っているその株をどこかに、組合をつくるか機構をつくるか、集中する、ただ、それが強制的にできるかどうかは問題がありますけれども。そして、それを担保に、先生は国債とおっしゃいましたけれども、むしろそういう場合には、一種の政府保証債みたいなものでその買い上げ資金を徴収して、その政府保証債みたいなものが、株式が全部そろったところで、先生がおっしゃるように、投信みたいに組んでやれるかどうか。ただ、今、先生よく御存じのように、投信が相当出ておりますので、正直言うと、投信のもうちょっと先の姿を私どもは心配しながら見ておりますものですから、何かの格好で、おっしゃるような、株式を担保に物を考えた方がいいのじゃないか。  ただ、その場合に、万が一がらがらと来たときは、ではだれが面倒を見るか。結局、やはり政府保証債という格好をとらないと、その懸念があるものですから、やれないなと。そんなようなことも考えながら、前向きに検討をさせていただくべき貴重な御意見だと思っております。
  47. 岩國哲人

    ○岩國委員 長官の方でそこまでお考えいただいているのでしたら、ぜひさらに研究、それの準備を進めていただいて、これはやはり国債とか政府保証という債券であるからこそ、海外の投資家が万一のときでも安心だと。国債を買う感覚、それから、転換国債の場合には、普通のストレートボンドの一・七より低い金利でいいわけですから、一%でコストが調達できる。そして、マーケットが上がればそのまま償還する必要もない。いい方に行けば低金利資金が調達できて、しかも国民の負担に全くならなくて、ですから、そのような形で工夫することが必要ではないかと思うのです。  やはり今は、金がなければ知恵を出す時代だと思いますから、そういう知恵を出して、国民のそういう、また公的資金を入れるのですかという批判をかわす意味でも、銀行もちゃんと渡すものは渡しているのだと。そして、一般の金余りの中で、国債の安心さと将来の値上がりの妙味、そういう商品を提供して、たんすの中に眠っている、仏壇の引き出しの中で眠っている、そういうふうなお金を動員すべきじゃないかと私は思います。自説にこだわるようですけれども、ぜひそういう方向で検討していただいて、そして、銀行のリストラにもこれは貢献することになるのですから、長官には申し上げるまでもない。  そうした、日本の銀行だけがいつまでも株式をたくさん持っていて、予算委員会で私が質問しましたけれども、営業目的のために必要な株だとか政策目的のために必要な株式だ、こんな、よその国で通用しないような言葉を使って説明しなきゃいかぬ。そういう出っ腹の体質の出っ腹部分を早く解消するためには、私は、今のように銀行は公的資金の投入を待っている、だからこそ銀行を説得することができるわけで、これがまた二年、三年して景気がよくなる、株価もよくなる、そうすると、銀行のリストラ、リストラというのは、人減らしだけではなくて資産のリストラ、これを進めなきゃいけないと思いますね。  ですから、日本の銀行の体質改善、今のようなピンチの中にチャンスあり、今こそ銀行の体質改善というのを進めるべきではないか。その方策の一つとしてぜひ、長官が先ほど御理解をいただいておりますような転換国債という形で、一般大衆に喜ばれる、ああ、政府はこういう商品もつくってくれた、税金の負担をこれだけ少なくするようにしているのだなという努力を評価されるような施策をぜひ実現してしていただきたいと要望して、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  48. 金子一義

    金子委員長 次に、渡辺喜美君。
  49. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 渡辺喜美でございます。大臣におかれましては、夜なべの連続で、まことに御苦労さまでございます。一時間与えられておりますが、できるだけ早目に切り上げさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。  二年前の九八年十一月十七日、緊急経済対策を発表いたしました。と同時に、ムーディーズという格付会社が日本国債の格下げをいたしたのであります。当時、たしか一・六%ぐらいの利回りだったかと存じますが、これの値段が下落して、長期金利が暴騰するということがございました。  今回、またしてもわけありげなムーディーズの、円建て債格付を引き下げ方向で見直し、こういう発表を過日したところでございます。理屈の上では何となく当たっていそうなところがないわけでもない、非常に悩ましい話でございますが、大臣は不快感を御表明されたと聞いておりますが、この問題について、再度大臣の御見解を明確にお聞かせいただきたいと思います。
  50. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、渡辺委員のことでいらっしゃいますから、その後に出ましたスタンダード・アンド・プアーズの発表もごらんいただいておると思います。私がムーディーズを読んで感じました一種の反論は、大体、スタンダード・アンド・プアーズにほぼそのとおり出ておりまして、同じものを見るのにもいろいろな見方があるものだということになりますが。  つまり、一言で言えば、一言で言うわけにいかないかもしれません、日本は大債権国でありますし、これだけ外貨準備は持っておりますし、何しろこれだけの、落ちぶれたといってもやはりイワシとタイは違いますから、その中で日本国債に疑いを持つというのは、どうも甚だ心外だというような思いでございますけれども、それは、スタンダード・アンド・プアーズが言っていることと大体同じようなことでございます。
  51. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 今、尊王攘夷論みたいな見解が急速に勢いを増しつつあるような気がするのですね。つまり、政治的には対米従属からの自立という大変格好いいことを口にされ、なおかつ緊縮財政と構造改革が先だ、そして金融量的緩和はまかりならぬと。つまり、政治的なアメリカからの自立と、経済政策的に、アメリカにお金が流れ込まなくてもいいんだという、ある意味では非常に理論的に一貫した意見のように思えるのでございます。     〔委員長退席、根本委員長代理着席〕  アメリカ人は、貯蓄率をマイナスにしてお買い物をし続けているわけですね。したがって、貯蓄率がプラスになると経済成長がマイナスになるという心配もあるわけでございます。  一方、株が高いうちは、アメリカでは株がいわばお金がわりになっているわけですね。例えば四〇一Kとかストックオプションとかですね。実際、アメリカでは国内で物がつくれませんから、どんどん輸入をする。そういたしますと、貿易が赤字になっていく。大体ことしあたりは四千億ドルぐらいの赤字になるのじゃないか。ということになりますと、他国の貯蓄を輸入しないとやっていけない、ファイナンスをつけてくれる人がいないとやっていけない、そういう事情もこれはあるわけですね。  一方、日本は十兆円から十二兆円ぐらいの黒字を抱えている国で、黒字国が赤字国の資産を取得するというのは、ある意味で当たり前のことであろうと思うのですね。したがって、中には、アメリカの世界戦略の中に組み込まれてしまったんだ、積極財政とゼロ金利はまさにその戦略の一環なんだ、こういうおどろおどろしい解説をする人もいらっしゃるのですが、私は、日本の国益を考え日本政策は立案をすればいいわけで、日本の国益はこういうことですよという立場がはっきりしておれば、逆に政策のすり合わせというものは容易になっていくのではないかという気がしておるのでございます。  そこで、過日G7で円高懸念の共有という日本主張が盛り込まれたわけでございます。日本にしてみれば、アメリカのドル資産を持っているわけですから、アメリカインフレになってその資産が目減りをしていく、ドル安・円高ということになったら、これは国民の富が消えてなくなる話ですから当然のことなのでございます。この表現を盛り込むに当たって、アメリカの方から、追加的な財政政策をさらにお願いしますよとか、あるいは量的緩和をもっとやってちょうだいとか、そういったお話はあったのでございましょうか。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 せんだってのG7の話がございましたので、先ほどおっしゃいましたことに関連して申し上げますけれども、グリーンスパンがこういう、向こうから見ますと、今ちょうど渡辺委員の言われたことなのでしょうが、要するに、株式が高騰して国民の間に資産効果ですか、ウエルスエフェクトというものが出る。ところが、これが購買力になるのだけれども、このウエルスは、サービスの結果でもないし、物の生産の結果でもない。そういう意味では対象なしに生まれた購買力であって、したがって、それは、輸入を呼ぶかあるいはサービス価格を上昇させるか、それしか行きようのない購買力だと。確かに理屈はそうだなと思いましたが、自分が心配していることの一つは、ウエルスエフェクトが購買力になった場合には、賃金が上がるか輸入がふえるか、どうもそれが避けられない状況だ、それを自分は言いたいのだという話をしておりましたから、今渡辺委員のおっしゃいましたようなことはございますと思います。  その次のお尋ねですが、これはせんだってのG7というふうにお聞き取りくださらないで、日米の間には絶えず対話がございますので、昨年からでございますけれども、もうちょっと日本金融の緩和ができないのかというようなことは、議論をしておりますと、申します。しかし、日銀総裁のお立場からいいますと、金はもう掃いて捨てるほどあるわけでございますから、言葉は悪うございますが、そんなことを言われる筋合いはないだろうというような、まあ程度問題でございますけれども、そういうやりとりはしょっちゅうございます。  いつどうということではなくて、そういうことをしょっちゅう議論をしておって、お互いわかりながら進んでおるということでございますので、基調として、そういう物の考え方についてのディスカッションはしょっちゅう行われておるということでございます。
  53. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 大臣、もう昼間からずっと委員会に一日じゅう座りっ放しで、まだお食事もしておられないと思いますので、どうぞお食事に行かれてくださいませ。十分お体気をつけてください。御苦労さまでございます。  グリーンスパンの金融政策は、アメリカでは株がお金がわりになっちゃっているということが前提にあります。アメリカでは、株の時価総額がGDPの一・何倍、二倍近いところまで今行っているわけですね。そうしますと、今大臣のお話にあったように、資産効果というのが出てくるわけですよ。したがって、いかに株の過熱を冷やすかということについて、非常に丁寧な政策が今なされているのだろうと思うのですね。  所得が、例えば、アメリカでは、五、六%伸びる。一方、株価は一〇%から一五%高くなるというのは、明らかに行き過ぎなのですね。したがって、資産価格の伸びを例えば所得の範囲内に抑える、そういったこともあるいは考えておられるという解説もあるわけでございます。こうした非常に丁寧な資産価格についての金融政策アメリカではとっているわけです。  植田教授にお尋ねいたしますが、アメリカの株がバブルなのか、あるいはそうでないのか。バブルだと軟着陸というのは非常に難しいのかもしれませんが、バブルでないとするならば、軟着陸といいますか、株価の高度を下げていく、そしてこれが景気の過熱につながらないようにしていくということもあるいは可能であると思いますが、そのあたり、どのような御見解をお持ちでしょうか。
  54. 植田和男

    植田参考人 大蔵大臣のようにはうまくお答えできませんので、時々メモを見ながら失礼いたします。  米国株の行方という御質問だったと思いますが、ダウでいいますと、既に高値から一〇%強の調整を経ているわけですが、この先どうなるかということに関しましては、前もって予想することはだれにも困難であるということをまず申し上げてみたいと思います。  その上で、おっしゃいました軟着陸が可能かどうかということでありますが、現在の米国の景気に若干の過熱感があるかもしれない、その余波もあって株が若干上がっている部分もあるかもしれないという場合に、さらに今後インフレが高進するのを、アメリカのFEDが未然に防止するというようなプリエンプティブといいますか引き締め政策に成功した場合には、景気過熱感が速やかに後退し、金利上昇も少しのもので済み、株価の調整も大したことでなくて終わるということになるのだと思います。そういうようになるという状態を軟着陸と呼んだとしますと、そういう可能性はまだ十分あるかと思います。
  55. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、アメリカにお金を流すなと言われても、アメリカの株価の急落は私もないとは思いますが、ファイナンスする人がいなくなってしまうとこれは金庫が空っぽになってしまいます。そういたしますと、何が起こるかわからぬということもあるわけなんですね。したがって、これは政策のすり合わせというのはきちんとやっていく必要があるわけだと思います。  そこで、翻って我が国の状況考えてみますと、今日本でお金がわりになっているのは国債なんですね。昔は、土地本位制などといって、土地がお金がわりになっておったわけでございますが、土地の価格が大暴落をしまして、平成四年ぐらいから国債がそれにかわって異常増発されてきた、こういうことがあるわけです。  したがって、国債がお金がわりになっちゃっているわけですから、日本銀行短期金利だけ見ていればいいかというと、もうそういうことじゃなくなっちゃったわけですね。国債の利回り、すなわち長期金利についても、日銀は重大な関心を払わざるを得ない状況にもう既に至っているわけでございます。  そういう中で、日銀のゼロ金利政策というのは、去年の二月に国債の利回りが暴騰した、二・三%ぐらいまでたしか上がったと記憶しておりますが、これを今の一・八%ぐらいの水準に保ってきている非常に大きな要因であろうと思うのですね。日銀のこれからとるべき政策について、先ほど植田教授が語っておられましたけれども、我々はよくわからぬのですね。植田教授がかつて言っておられたことと、今のお立場と、先ほどの話を聞いておっても、よくわからないのですよ、我々素人には。  実は、我々、植田先生には大変に期待をしておったわけでございます。量的緩和インフレターゲットをかつて主張しておられたわけで、それが、政策委員になられましたら、何か日銀オウムに洗脳されてマインドコントロールされているような感じを受けかねないのでございます。  そこで、先生と学術的な議論をやってもしようがないので、ひとつお聞きをしたいのでございますが、日本の潜在成長率というのはどれぐらいあるとお考えですか。それから、来年の消費者物価の上昇見通しはどれぐらいだとお考えになりますか。
  56. 植田和男

    植田参考人 極めて難しい御質問であります。  まず、潜在成長率でありますが、我々といいますか、よくちまたである、経済の供給能力を労働者の数とかそこに存在する資本ストックというようなものから割り出しまして、それがどれくらい伸びているかというやり方で計算しますと、一%台後半ないし一・五、大まかに一・五から二%くらいという数字が出てまいります。  しかし、これをそのまま信じていいかといいますと、なかなか難しいわけであります。なぜかといいますと、二%近い潜在成長率があるといたしますと、現在のGDPギャップ、大まかにいいますと、過剰設備ですね。これは非常に大きなものになっているはずであります。そうしますと、物価は物すごく下落しているはずであります。ところが、実際の物価はそれほどの下落傾向はなく、最近では、どれを見るかに依存いたしますが、ほぼ上昇率ゼロ近辺を推移しております、若干マイナスでありますが。  ということは、ひょっとしたら潜在成長率はもうちょっと低くて、経済的に意味のある過剰設備はもう少し少ないのかもしれません。そちらの極端をとりますと、〇%に近いような潜在成長率も場合によっては排除できないかもしれません。  したがいまして、とりあえず私の前半の御質問に対する答えは、〇%から二%くらいのどこかかなという非常に大まかなものであります。  これに、例えばですが、政府見通しの来年度一%経済成長という成長率見通し、さらにその両側にある程度の誤差がつくと思いますが、例えばプラスマイナス一%ぐらい。そうしますと、現実の成長率、潜在成長率それぞれにつきまして、数とおりの見通しが出てまいります。その相対によって、これから先どれくらい過剰設備がふえていくか、減っていくか、したがって、物価への上昇、下落圧力がどうなるかということが決まってまいります。  それぞれ合わせまして、頭の中でがちゃがちゃっと計算いたしますと、そういう前提のもとでは、平均的には来年度の物価上昇率の予想値はゼロ近辺、さらにその両側、プラスに出ることもあるし、マイナスに出ることもあるというような結果が出てまいると思います。  つけ加えますと、マイナスに出る可能性もかなり否定できないということですので、我田引水でありますが、我々はデフレ懸念がまだ払拭できていないというふうに判断しているわけであります。
  57. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 そういう話ですと、これは日銀金融政策として、次の一手を考えざるを得ないのじゃないか、そう思うのですね。  したがって、デフレ懸念払拭されるまでというのは総合判断であって、将来を見て判断するのだ、こうさっきおっしゃられたのでございますが、私は、新日銀法のもとで、新日銀は、透明性の確保と国会に対する説明責任、こういう二大看板をしょっているわけですから、やはり植田教授のような本当に世界的な頭脳が、ここではっきりと、従来先生が主張しておられた主張を再度明らかにして、日本銀行政策委員会を引っ張っていくということが私は非常に大事だと思うのですよ。  先生が変われば、日銀が変わるのですよ。ですから、我々は、植田教授の同意人事にこだわって、先生にわざわざここまで夜なべをして来てもらってやっているわけでございまして、どうですか、インフレターゲットは先生の従来の主張でございますから、政策委員会でこういうことも決めていこう、そういうお考えはございませんか。
  58. 植田和男

    植田参考人 いろいろな御質問があったと思いますが、最後のインフレターゲットに絞りましてお答えいたしますと、インフレーションターゲティングそのものにつきましては、インフォーマルな形を含めまして、あるいは政策決定会合での議論を含めまして、日本銀行内では、私が就任してからまだ二年にしかなっておりませんが、その間、かなり頻繁に議論はされております。  その上で、おまえ、植田個人の意見を言ってみろということでありますならば、もしも目標インフレ率が、一部にありますような四%、五%、あるいはそれ以上のインフレ率を目指すというような政策でありますと、恐らくこれは国民の受け入れるところにならないであろうというのが私の考えであります。  次に、もう少しマイルドな、何%というのは人によって違いますがインフレ、あるいは人によってはデフレでもインフレでもない状態、こういうのを目指すようなインフレーションターゲティングがあり得るかどうかという話があるかと思います。これにはいろいろなメリットがついてくるものであります。その詳細は避けたいと思いますが。  これは、私が原則的に反対しているわけでは全くありません。経済がノーマルな状態に戻ったときに、そういう政策を採用して、日本銀行金融政策姿勢にある種の規律を課し、アカウンタビリティーを高めるというようなアプローチは、当然真剣に検討されてしかるべきものであるというふうに考えております。  その上で、それでは現在、直ちにそういう政策を採用すべきかどうかというポイントが残るかと思います。  仮にでありますが、二%とか三%の、マイルドというふうに感じるかどうかは人によって違うかと思いますが、インフレ率を目指すような政策をとることが望ましいかどうかという論点があるかと思います。  これに対する私の答えは、一般論として望ましいかどうかは別にいたしまして、現在手元にある政策手段を使ってそういうターゲットが達成できるかどうかということを考えてみますと、正直申し上げまして非常におぼつかない。したがいまして、仮にそういう目標がいいものであったとしましても、余り確度の高い確率で達成できるものではなかったとしますと、それを約束してしまうということは、どこかの時点でかえってクレジビリティーのロスにつながってしまうリスクが大きいという判断をとりあえず持っております。  さらに、その上で申し上げれば、長くなって恐縮でありますが、現行の政策スタンスは、もう少し一歩引きまして弱々しいものではありますが、ある程度はインフレーションターゲティングな側面を持っているものであります。すなわち、現在の金利をゼロにするということを言っているだけではありませんで、デフレ懸念払拭が展望できるまでゼロ金利という緩和基調を続けるということを約束したものであります。  これと、例えばですが、目標インフレ率ゼロというインフレターゲティングの違いがどこにあるかと考えてみますと、目標インフレ率がもう一つ厳密には明らかになっていないという点、それから、目標インフレ率を達成するということを必ずしも約束していない、ただし、到達するまではゼロ金利を維持するという、半分は約束に近いようなところでありますが、厳密に達成することはコミットしていないということではありますが、一方で、ある程度将来の金融政策のスタンスを明らかにしていく、それによってアカウンタビリティーをある程度でありますが高めていくという、インフレーションターゲティングのメリットもある程度兼ね備えたスタンスであるかと思います。  というあたり、ややアンビバレントな答えで申しわけありませんが、御理解いただけたらと思います。
  59. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 世の中はアンビギュアスなものですから、アンビバレントな態度というのもあるいは必要なのかもしれません。  いずれにしても、今、財政赤字の削減と構造改革、こういうのはいわばダイエット療法と漢方体質改善療法をセットでやるような話なんですね。したがって、これは非常に時間がかかる話ですよ。恐らく最低十年ぐらいはかかる話で、財政赤字を削減していこうというところに到達するまでに、恐らくあと二年ぐらいはかかるのだろうと思うのですね。その間、一種の軍備管理、アームズコントロールみたいな形で、いかに赤字幅の増大を圧縮していくかという政策をとらざるを得ないわけで、そういたしますと、長期金利も含めた日銀金融政策が非常に大きな意味を持つと言わざるを得ないわけでございます。  したがって、長期金利の悪い上昇に対し、日銀はそんなことは治せないのだと言うのなら、そんな治せないような医者だったらやめてほしいのです。いずれにしても量的緩和というのは、今のゼロ金利下であってもできるということがY2Kで明らかになったわけですよね。ベースマネーのコントロールはできないのだ、こういうのが日銀の従来からの主張でありますけれども、決してそんなことはないわけであって、いろいろなオペ手段を活用すれば、幾らでもベースマネーをふやすことはできる、こういうことだと思います。  先ほど植田教授の話の中で、ABSもオペ対象にするというようなお話もお伺いしましたけれども、このインフレターゲットの中の物価の安定、これを図るためには地価の下落に歯どめをかける、こういう政策が必要なわけでございまして、私はリフレーション政策ということを提案しているわけでございます。  したがって、中原政策委員や伊藤副財務官のようなCPIターゲット論とはやや異質な考え方を持っている人間でございますけれども、いずれにしても、今日本のバランスシート調整の過程で損失処理をとにかく早くなし終えるというときに、地価が下げどまらないということがあったのでは、これはいつまでたってもバランスシート調整が終わらぬ、こういうことになるわけでございます。  質問通告のない話ばかりでまことに申しわけないのでございますが、物価の中に資産価格というのはどういう位置づけがなされているのか。  私は、このお配りした表でもおわかりいただけるように、日本の場合には土地の時価総額というものがGDPの三倍ぐらいあるという、世界でも極めてまれな、恐らくこんな国は世界に余りないと思いますけれども、土地の資産効果経済に与える影響が非常に大きい国だ。したがって、この下落こそは日本デフレ懸念の最大の元凶である、こういう立場をとっているわけでございますが、この地価の問題、いかがお考えでしょうか、植田先生
  60. 植田和男

    植田参考人 教科書的な議論で恐縮でありますが、金融政策目標は、地価、株価のような資産価格ではなくて、通常の財・サービスの価格を安定化させるということであります。もちろんその中には、地価と密接に関係しておりますような賃貸料も、例えば消費者物価指数というようなものをとれば含まれておるわけであります。  したがいまして、そういうものを安定化させていくわけでありますが、一方で逆に、地価や株価そのものの特定水準での安定化あるいは特定水準に誘導するというような政策をとりますと、一般論としては、本来の目的であります財・サービスの価格の安定化に失敗してしまうということではないかなと思います。  では、だからといって、例えば地価、株価の動きを無視するかといえば全くそうではありませんで、地価や株価は二つの意味で少なくとも我々にとって重要である。すなわち、我々の金融政策通常短期金利のコントロールでありますが、これが経済に及んでいく一つのチャンネルが、地価、株価の動向であります。また、地価、株価の動向は、それとは別に経済の実体面に関する情報を我々に伝えてくれる鏡のようなものであります。したがいまして、将来の財・サービス価格の動向に関する重要な情報を含んでいるものであります。これは当然のことながら、毎日注視し、金融政策運営に当たっているということであります。
  61. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、早くやめろというサインが来ておりますので、できるだけ簡潔にやりたいと思っております。  お手元に「地価連動国債」という二枚紙をお配りしてございますが、実は、何でこんなことを思いついたかといいますと、昔、一九七九年でございますが、野口悠紀雄さんが地価インフレに対する一つの解決方法として地価インデックス債、こういうことを提案したことがありました。私は似たような発想で、地価デフレをとめるための国債というものを考えてみたのでございます。つまり、地価が下落をすると元本が逆に膨らみますよ、地価がインフレになりますと元本が縮小しますよ、そういうたぐいのすっとんきょうな国債でございます。  この表を見ていただけばおわかりのように、例えば、償還五年で年々五%ずつ下がっていくということになりますと、五年後にはキャッシュフローで一二二・三七と元本が膨らむ、こういうことになるわけですね。一方、地価が一〇%ずつ上がり続ける場合には、元本が五年後には三七に縮小をしてしまう、こういうたぐいの話でございます。したがって、地価下落をヘッジしたい人は、こういう国債をぜひ買ってみてくださいと。  また、来年からは国債ビッグバンが始まります。財投債みたいなものも大量に出回ってくるわけでございますし、また、郵貯や簡保のように長期運用でやっていくところも時価会計でディスクローズしなきゃいかぬという問題もあるわけですね。  そういたしますと、多様な国債をいかに発行政策の中で取り入れていくかということが非常に大事な政策になるわけでございます。こういう土地国債を例えば十兆円ぐらい出しておけば、市場性ができてまいりまして、地価に対する将来のいわば期待インフレ率といいますか、市場判断を見ることができるようになるわけなんですね。  したがって、こんなものを出してみたらどうだ、こういう提案をしているのでありますけれども大野総括政務次官、いかがでございましょうか。
  62. 大野功統

    大野(功)政務次官 さすがにアイデアマンである渡辺喜美先生の面目躍如である案だなと思って感心して聞いていたわけでございますけれども、問題点が幾つかあるのじゃないか。  一つは、土地が値上がりしたらいい人と悪い人がいます。やはり土地が値下がりした方が自分の家は建てやすいなという皆さんもいらっしゃるわけでございます。したがいまして、土地を大量に持っておる方にとってはいいアイデアだなと思いますけれども、第一に国民的なコンセンサスが得られるのかどうか。  それから、政府としてまことにまた裂きになるのであります。一生懸命景気を上げて土地の値段を上げるような努力をしなきゃいけない。そうすると、努力をすればするほど、今度はタックスペイヤーのお金で払ってあげなきゃいけない、こういうようなまた裂きの刑に遭いますので、どうかなというような感じもするわけでございます。  ここには、先生御丁寧にパーセンテージまで入れてくれておりますけれども、一体このパーセンテージ、どうやって決めるのだろう、こういう技術的な問題もありますので、アイデアとしてはおもしろいと思いますが、首をかしげておるところでございます。
  63. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 いずれにしても問題なのは、六大都市圏の商業地の地価なんですね。これが下がり続けるという場合には、恐らく損失処理、不良債権の処理がいつまでたっても終わらない、こういう大問題があるわけですよ。  ことしの四月から、民事再生法というクレジットカットの法律が施行されますけれども、聞く話によりますと、大手の法律事務所の中には二百件ぐらいもう既に相談が来ておる。それこそ上場企業みたいなところも、会社更生法じゃなくて民事再生法でいきたいみたいな話があるようです。民事再生法を適用いたしますと、これは損失処理を一気にやるわけで、利益を吐き出し、内部留保を吐き出し、それでも足りなければ資本金を吐き出すという形で減資をして、資本金が少なくなれば増資をせざるを得ないわけですから、そうすると業界再編が一気に進んでいくという、日本経済の負の遺産を払拭するには非常にいいことなんですね。  ですから、こういうバランスシート調整がきちんと行われるためにも、これはもう大外科手術みたいなもので、カンフルと輸血はきちんとやっておかなきゃいかぬと私は思うのでございます。カンフルというのは財政政策であるし、輸血というのは金融政策であります。ですから、こういうことをセットでやっていけば決して問題先送りになることはないのであります。  そこで、現実的な話としては、国債政策の多様化の中で物価連動債が大事だと思うのですね。利付金融債みたいなところまではいったのだけれども、やはり物価連動債という、世界の常識、日本の非常識の世界をきちんと開拓をしていくべきだろうと思うのですね。こういう価格変動の少ない国債を出しておけば、郵貯でも簡保でもあるいは日本銀行でも安心して保有できるわけでございますから、どうですか、この物価連動国債、CPIインデックス債とお考えいただいて結構だと思いますが、お出しになるお考えはございませんか。
  64. 大野功統

    大野(功)政務次官 物価連動債でございますけれども、今物価が大変安定している、こういう状態の中でニーズが出てくるのかな、こういう感じがまずするわけでございます。  それから、やはり、大蔵省というのは心配する者ばかりそろっているものですから、物価が下がったときに一体どうなるのだろう、元本割れするのかな、それとも初めから元本保証をしておかなきゃいけないのかな、こういう話も出てまいりますし、インフレに対する長期のヘッジ手段として持ちきりになるというような観点からいたしますと、どうも流動性が低くなりまして、かえって発行条件が割高になるのかな、こういう観点考えてみなきゃいけない。  しかしながら、いずれにしましても、我々といたしましては、国債の多様化という面から、渡辺先生の御示唆も考えながら、いろいろな面から国債の多様化を考えて、国債市場消化を円滑にするようにやってまいりたいと思います。
  65. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 いずれにしても、これだけ大量の国債をさばかなきゃいかぬという御時世でございますから、御用金思想であっては絶対にいかぬのですね。したがって、物価連動債なんというのは、イギリス、スウェーデン、カナダ、オーストリア、ニュージーランドで、もう九〇年代に導入されておりまして、いずれの国でもインフレ率目標範囲におさまった。つまり、物価連動債を出すことによって、この物価連動債と通常債とのスプレッドを計測すれば期待インフレ率の観測ができるようになる、したがってインフレターゲットも十分に可能になる、こういうたぐいの国債でございまして、なおかつ郵貯や簡保や日本銀行も大変ありがたい、こういうことであれば、私は、御用金思想を捨ててこれはきちんと出すという方向で検討をすべきであろうと思います。  こういうものは別に国会で法律を通さなくてもできるわけでございますから、大臣の腹一つでお決めいただいていい話でございますので、ぜひ御検討をいただきたいと思うのでございます。  もう時間が迫ってまいりましたので、最後にデノミについて大臣の御見解をお伺いしたいと思います。  ミレニアムプロジェクトだから二千円札を出そう、こういう話なんでございますけれども、私は、ミレニアムプロジェクトというからには、国会を移転するとかそれくらいのことをやったらいいと思うのでございますが、経済の世界では、デノミネーション、ゼロを二つ取るということは、私は、今の日本の沈滞した旧勘定を新勘定に移行するというシンボリックな意味合いもあって、損失処理がきちんと終わったころ、ゼロを二つとって、円の国際化をやっていくというのは非常にいいことだろうと思うのですね。  中には、例えば二千万円持っているおばあちゃんが二十万円しかなくなってしまうではありませんか、こういう御心配をされる人もいるのでございますが、百円を一円と言うからいけないのであって、百円を一両と言えばいいわけでございまして、そうすれば、二千万円持っているおばあちゃんは、何と二十万両持っている大金持ちになるわけでございます。  もし将来、いつかインフレの時代が来るかもしれません。そういうときには、今から金準備をたくさん確保をしておいて、日本は非常に金準備の少ない国でございますから、今金価格はそれほど高くないわけであって、金準備を今の何倍かにふやして、いざインフレが来そうだというときには、千両小判とか万両大判とか、チャリンチャリンと大量発行をしていく。ちょんまげまで結う必要はないのでありますけれども、それぐらいのことを考えたらどうだということでございますが、大臣、いかがでございましょうか。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは随分昔から支持論文がたくさんございますし、また最近、自由民主党の中でもそういうことを検討しようということになったと承知しております。  メリットはよくわかっておりますが、前から私が思っておりますことは、デノミをやると、どういうふうに振る舞えばもうかるとか、どういうふうにやると下手をすると損をするとかいう、すぐ損得論が、本なんかが直ちに出るようなことになりますと、それは大変に人心を騒がせるので、町名変更みたいなものですというような理解がまずできてほしいなということが一つあると思います。  それから、昨年途中から私が言い出しましたのは、昨年の暮れにいわゆる二〇〇〇年問題というのがございまして、コンピューターがどういうふうに動くかという大変に世論を呼び起こしまして、大したことがなくてようございましたが、コンピューターという時代にデノミを考えられたという方が、まだ余りいらっしゃらないようでありまして、例えば、今まででございましたら、円というものがあって、それが新しい円になる。旧円とか新円とかいって、最終的にはまた円になる。でございますが、円が円になるというその部分をコンピューターがちゃんと読み切れるかということを専門家が言っておられるわけでございます。それが二〇〇〇年問題よりははるかに難しい問題になるのではないか。  ですから、渡辺委員は、それをお考えになって両と言われたのかもしれません。新しいデノミネーションになってしまえば、その問題はございませんが、同じ円でもって通そうということになりますと、非常に難しいのだということを聞かされておりますものですから、党の方にもその点もひとつ御検討くださいと申し上げたようなところでございます。     〔根本委員長代理退席、委員長着席〕
  67. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、今長い長いデフレのトンネルからようやく出口の光が見えてきた、そういう段階になってきたと思うのですね。ニューエコノミーとオールドエコノミーの、黒潮と親潮がまじり合うようなところで、今、日本経済が必死の苦闘をしているというところだと思います。ぜひ、平成の大デフレを克服される経済と財政運営をやっていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  68. 金子一義

    金子委員長 次に、石井啓一君。
  69. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 公明党・改革クラブの石井啓一でございます。  きょう、私の質問時間は大変短いのでございますけれども、さらにその上に短縮してほしいという御要請を受けておりますので、あらかじめ用意いたしました質問を、ちょっとポイントを絞りまして、場合によってはちょっと順番を変えたりしてお聞きをいたしたいと存じますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。  まず、経済再生と財政再建の問題でございますけれども、小渕総理は、二兎を追う者は一兎をも得ずということで、経済再生をまず最優先させることを重ねて表明をされていらっしゃいます。また宮澤大臣も、財政演説で、「財政構造改革が避けて通れない課題であることは言うまでもありませんが、その前提として、我が国経済が民需中心の本格的な回復軌道に乗ることを確認することが必要であり、その上で、財政、税制の諸課題について、二十一世紀の我が国経済社会のあるべき姿を展望し、速やかに検討を行い、抜本的な措置を講じたいと考えております。」こういうふうにされております。  私どもも、基本的にこの立場をとっておりまして、財政構造改革法に基づきます九七年度予算のように、急激に財政再建へとかじをとることは到底できないことでございます。民間主導の景気回復が確実になったことを見届けた上で、本格的な財政再建に移行すべきである、こういうふうに考えております。  一方で、ふえ続ける国債の残高に対して、やはり国民の間に漠とした不安が高まりつつある、こういうことも事実でございます。したがって、私は、やはり景気回復に全力投入をしながらも、財政再建に向けての見通しといいますか、シナリオといいますか、そういったものを示していくことが重要ではないか、こういうふうに考えております。  そこで、財政再建への見通し、あるいはシナリオというのを大臣にお聞きしたいわけでございますが、大臣は、予算委員会で、経済が本格的な回復軌道に乗る確認について、これはたしか鈴木委員との質疑のやりとりの中で御答弁されたと思いますが、一度だけでは軌道と言わないわけで、少なくとも二度ぐらいは回ってくれないと安心できない、こういう御答弁をされております。  こういったところからいたしますと、まず、平成十二年度はプラス成長に戻して、その後二回りということになりますと、十三年度、十四年度は中立的な財政政策をとって、この間財政再建のための諸課題を検討した上で、十五年度以降に財政再建に移行する。こういうことでよろしいのか、この点について確認をさせていただきたいと存じます。
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのようなお尋ねが鈴木委員からございまして、今おっしゃいましたような意味でのお答えを実はいたしておりますのですが、私自身も、その辺になりますと、実はいろいろ考えあぐねることがございまして、むしろ、そういう皆様から御教示を仰ぎたいような気持ちもございます。  というのは、恐らくそれは、財政改革というような簡単な問題にとどまりませんで、税制とか地方、中央の関係とかはもとより、日本経済全体の経済社会のあり方みたいなものを二十一世紀の初頭において描かなければならないのではないかという感じがいたします。そういたしますと、やはりモデルが要るだろう。マクロモデルをつくってやりませんと、なかなかそういう整合的なプランがかけないのではないだろうか。モデルをつくったら当たるというわけではございませんが、それがありませんと、多角的な話でございますから、少なくとも計量的にたえ得るようなプランというものはできないのではないかということになりますと、その仕事だけで実は一年ぐらいかかるのではないだろうか。  したがって、そういう仕事そのものは、ある程度日本経済が、多少のゲスを含めながら、正常になったなというころからは、モデルというものを、これこそ新しい行政改革でどういう省庁になりますか、これはやはり国民的な仕事としてつくらないといかぬのではないかと、自分の頭の中で考えていることでございますが、そういたしますと、いつから始まったというのは、作業そのものはかなり時間がかかるので、多少早く始めなければいかぬのじゃないか。ただ、それにしても、フレームの見当が全くつきませんとできません。  その辺のことは、私自身も確たる考えが定まりませんで、むしろこういうお尋ねの中から御教示を得たいと考えておりますのが本意でございます。これは、鈴木委員に対しましても同じ感じを持っております。
  71. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 多分、なかなかお答えをしにくい質問をしたと思っておりますが、今後とも、先ほど申し上げましたように、経済再生と同時に、財政再建に向けての考え方というのもぜひ御説明をしながら進めていただきたいと存じます。  続いて、昨日もこの委員会でやりとりがございましたけれども、財政構造改革、こういう用語を、これは必ずしも財政の収支を均衡するという意味ではなくて、大臣はストラクチャーとおっしゃいましたけれども、歳出の項目の見直し、中身の見直し、こういうことでこの用語を使うとするのであれば、これは、経済を再生していく中にあってもやはりやっていかなければならない。ある意味で不断でやっていかなければならない、そういうたぐいの事柄であろうというように思います。  私どもも、平成十二年度の予算、例えばミレニアムプロジェクトに見られますように、構造改革に向けての取り組みにも着手されていると思いますし、また、私どもは行政評価制度ということをかねてから、早く導入すべきだということを主張しておりまして、行政評価に基づく予算編成ということを志向しているわけでございますけれども、今言ったような意味におきます財政の構造改革、これに対する大臣のお考えというのをお伺いさせていただきたいと存じます。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げかけましたことの続きで申しますと、歳出面におきまして、第一、今まで考えておりましたこととは随分違ったものにならざるを得ないと思いますし、また、中央と地方の行政、財政の関係も、一から考え直すぐらいなことでありませんと地方自治というものも成り立っていきません。もう一つ、場合によって、日本経済とアジア各国の経済との関連といったようなものも積極的に考えていかなければならないかもしれないと思いますので、そういう中から財政のあり方というのが出てくる、そういったようなことではなかろうか、こう思っております。
  73. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、続きまして、国債平成十二年度また大量に発行するわけでございますけれども先ほどからしばしば指摘されておりますように、アメリカ格付機関が我が国の国債格付を低下させる方向で見直しをする、こういうニュースもございます。大蔵大臣がそれに対して、それはけしからぬと言うのは当然の話でございまして、私もそう思うわけでございますけれども、一方で、新発債で三十二兆六千百億円ですか、借換債も含めますと八十兆円近い大量の国債消化する。こういう中で、本当にこれがちゃんと市中で順調に消化されるのかしら、国債の値崩れ、金利の上昇というのはどうなんだろうか、こういう懸念があることも事実でございます。  そういった懸念の中で、昨年以来、国債の市中消化が難しくなるのではないかということから、日銀による国債引き受け、こういう議論がございます。きょうも予算委員会でちょっとやりとりがあったように伺いましたが、私は、これは宮澤大臣に申し上げるのはもう釈迦に説法でございますけれども、戦前の高橋是清大蔵大臣時代の、あの一〇%以上のデフレという状況の中で、なおかつ赤字国債を初めて発行して、それで何とかデフレを退治しようというときにやったことについては、確かに日銀引き受けということが有効であったと思いますけれども、この今の状況において、既に大量の国債発行し、そして、これからは中期的に考えると財政再建ということが非常に重要になってくる、こういった状況下においての国債日銀引き受けというのは、まさに財政のモラル、規律を全く緩めてしまう。  そういう意味で、私は、現下においてはこれはまさに禁じ手である、こういうふうに思っておるわけでございますが、大臣の御認識についてお伺いをいたしたいと存じます。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 全く御同様に考えておりまして、先ほどの予算委員会で申し上げたのですが、やはりこれは麻薬だという感じがいたします。痛みに耐えかねていっとき使うという、いっときの効果はあるとしても、どうも麻薬だと考えた方が、我が国の昭和の戦争に入るまでの歴史から考えましても、どうもそうではなかろうか。したがって、やはりそういうことはあってはならないと強く考えております。  言葉をかえて言えば、もしインフレターゲット論というものが実際に行われるとした場合には、一番早い道はそういう道であろう。しかしそれは、そこでとまるという保証が全くございませんので。  そういう感じでおります。
  75. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ありがとうございました。  では、最後に、きょうは日本銀行からもお越しいただいていますので。  先ほど日銀のゼロ金利政策についてかなり詳しいやりとりがありました。デフレ懸念払拭されるまで、こういうふうにされているわけですけれども、これの具体的な目安。先ほど植田委員のお話では、インフレ率がゼロということで若干おっしゃっておりましたけれども、私は、日銀が丁寧にみずからの政策を御説明されるという意味においても、このデフレ懸念払拭されるというのは具体的にどういうことをお考えになっているのか、ぜひ御説明をしていただきたいと思いますし、それから、日銀としては物価上昇率をどういうふうに予測をされているのか、お伺いをいたしたいと存じます。
  76. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  デフレというのは、恐らく、一般的に考えますと、物価が全般的に下落し続けるという状態ではないかと存じます。  ただ、物価の変動には、当然、申し上げるまでもなくさまざまな原因がございまして、外部的なショックによって変動する場合もございますし、また、昨今のように技術の進歩が非常に速い場合には、コストが下がるということで価格が低下する場合がございます。これは、いわばよい物価の下落ということだと思います。  私どもが心配しておりますのはそういうことではございませんで、需給が余りにも弱い、あるいは需要が著しく不足しているというようなことを原因にして物価に低下圧力がかかる、そういう場合でございます。したがいまして、最近の政策委員会議論におきましても、注目点の一つといたしまして、民間需要、これは個人消費設備投資などでございますが、そういうものが果たして十分な回復を示すのかどうかというところに一つポイントがあるのではないかというような議論をしております。  そこで、物価の今後の見通しいかんという後段の御質問でございますけれども、最近は御案内のとおり、幸い卸売物価消費者物価ともにおおむね横ばい、安定基調に入ってきているという状態でございます。  ただ、少し先を展望いたしますと、申し上げましたような民間需要の回復について、まだしっかりとした展望が出てきていない状態でございます。もし仮に、民需の自律的回復が非常におくれるというようなことになりますと、先ほど申し上げました需給の弱さ、あるいは需要の弱さということから、物価に下落圧力がまたかかりかねない可能性がございますので、そういうところに注目しながら、経済をよく見てまいりたいと思っておるところでございます。
  77. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 以上で終わります。
  78. 金子一義

    金子委員長 次に、谷口隆義君。
  79. 谷口隆義

    ○谷口委員 公明党の谷口でございます。  まず初めに、国税職員の皆さん方の待遇改善と機構の充実ということで申し上げさせていただきたいというように思う次第でございます。  御存じのとおり、国税を取り巻く状況というのは、今次、経済、また社会構造の大きな変化、また国際化であるとか、機械化であるとか、高度情報化であるとかというような大きな変化の中にあるわけでございます。また、それにつけ加えて、近年、電子商取引であるとかインターネット取引であるとか、税の捕捉が極めて困難な状況になっておるわけでございます。  従来から私も、外為法の自由化の折であるとか電子商法の法案の折であるとか、申し上げておったわけでございますが、国税の部門においても、そういう専門家のポストを十分の陣容で対応していく必要がある、このようにも申し上げたわけでございます。そのような状況の中で、国税の中に国際化専門官、また機械化専門官というような専門官ポストが設けられ、ここしばらくの状況を見ておりますと、これも充実をされておるわけでございますが、しかしまだまだ十分な状況ではない。  また、税の滞納は今の経済状態も大きく反映いたしておるわけでございますが、税の滞納が大変多いわけでございます。とりわけ、消費税の滞納が、平成十年度におきまして六千百四十六億円というような多額の滞納になっておる。税の徴収の現場は大変厳しいものがあるというように考えられるわけでございます。私も国会議員の前は公認会計士、税理士をやっておりましたので、税の徴収の現場に何回も出たわけでございますが、その当時に比べまして、昨今の状況は大変厳しいものがあるのだろうというように思っております。  そういう状況の中で、税というのは国の柱でございますから、国税職員の皆さん方の士気が低下するとか、また当初予定の税が十分に徴収できないというようなことになりますと、国全体が大きな影響を受けるわけでございます。そういう意味において、行政改革流れにはあるわけでございますが、国税職員の皆さん方の待遇の改善、また機構の充実をより一層図っていく必要があるのではないか、このように思っておるわけでございますが、本日、国税庁から大武次長に来ていただいておりますので、そのあたりの状況を踏まえて御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  80. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国税職員の処遇につきましては、以前にも御発言をいただきまして、御関心をお持ちいただいておりますことに感謝いたしております。  次長から御説明申し上げます。
  81. 大武健一郎

    ○大武政府参考人 お答えさせていただきます。  まず第一点目の、国際化、機械化ですとか、そういうものに的確に対応するためにポストの確保に努めろという御指摘につきましては、まさに御指摘のとおり、当庁としましても、経済取引の国際化あるいは機械化といった対応の必要性、重要性につきまして、各方面の御理解を得て、国際化に対応するための国際調査情報官、あるいは情報化に対応するための機械化調査情報官、そうした専門官ポストの新増設等、機構の整備に努めてきているところでございます。  特に、平成十二年度におきましては、これらのほかに、東京局に、機械化事案に対する調査手法等を開発するための査察開発課、国際化事案に対する調査手法等を開発するための査察国際課、国際課税調査事案を審理するための国際調査審理官、移転価格課税事案の審理をするための国際情報審理官等を新設するということにしております。  今後とも、国際化、機械化に対応するために、現下の厳しい行財政事情を踏まえつつも、所要の機構の整備につきまして、関係各方面に御理解を得ていただくよう一層の努力をしていきたいというふうに思っているところでございます。  それから、第二点目の職員の処遇の向上の問題でございますが、これもまた先生から御指摘いただきましたとおり、税務行政を取り巻く環境というのは、例えば滞納一つとりましても極めて複雑な経済状況を反映いたしまして、例えばそうした滞納の整理ということも非常に困難の度を増しております。  しかし、そうした状況の中でも、やはり適正、公平な課税、歳入確保の要請ということにこたえていくためには、職員の高い士気を維持していくことが非常に重要なことだと考えている次第でございます。これらを踏まえまして、当庁としましても、職員の処遇改善につきまして、これまでも可能な限りの努力を払ってきたところでございます。その結果、毎年上位級定数の確保をいただきまして、また機構面では、先ほども申しましたような国際化、機械化対応のポスト等、真に必要なポストの新増設につきまして、関係方面の理解を得てまいったところでございます。  今後とも、関係当局に対しまして税務の重要性、困難性を訴えて、所要の機構の整備に努めるとともに、所要の職員の処遇改善に十分配意し、努力していきたいと思っているところでございます。
  82. 谷口隆義

    ○谷口委員 ぜひなお一層の御努力をお願い申し上げたいというように思います。  次に移りまして、これは従来から私、何回か申し上げたことがございますが、消費税の届け出の関係のことでございます。  消費税の各種届け出書及び承認申請書の提出時期が課税期間の開始日の前日までということになっておりまして、これが原因で納税者が思わぬ不利益をこうむるというような場合がございます。そこで、この適用を、適用を受けようとする前事業年度の申告期限まで、ぜひ延長してもらいたい。これは何回か申し上げたのですが、これに対する反応が全くないというようなことでございます。ぜひその観点で対応していただきたいというように思うわけでございますが、本日、主税局の主税局長に来ていただいておりますので、御答弁をお願い申し上げます。
  83. 尾原榮夫

    ○尾原政府参考人 今先生のお話のございました件は、税理士の先生方からもよく聞いている話でございます。特にございますのが、消費税の課税事業者選択制度と簡易課税制度についての届け出書の問題が言われているわけでございます。しかし、私ども、税の性格を考えてみますと、やはりこれは特例措置でございますので、この適用の有無は課税期間の開始前に確定しておく現行の制度の考え方をとらざるを得ないのではないか、それが適正な課税の実現のためにどうしても必要ではないかと思っております。  理由が二つございまして、一つは、消費税が転嫁を予定している税でございますので、課税事業者であるか否かというのは課税期間が始まる前に決めておきませんと、商品の値づけにどうしても影響が出てまいります。  それからまた、簡易課税制度の選択について申し上げますと、簡易課税制度を選択するかしないかで、いわゆる記帳義務の内容に差異が出てくるというような問題があるわけでございます。  今、納税者の方からいたしますと、後で設備投資なんかをした場合の税の損得のような話があるのかと思いますが、そもそも、これらの特例措置でございますが、中小企業者の方がどうしても事務負担にたえられない、そこを何とか簡素化できないかということでつくられている制度でございまして、それを選択するかどうかといいますのが、納付税額が有利になるか不利になるかということであってはいけないのだろうというふうに思うわけでございます。  いずれにいたしましても、このようなことが問題になっているというのは承知しておりますので、この届け出の期限の問題については、こういった制度の趣旨でできているという内容を納税者の方にもよく理解していただくよう努めていきたいというふうに思っているわけでございます。  また同時に、先ほど、事務負担に関する制度だと申し上げましたが、特に、税理士の先生が関与されているような納税者の方々でございますれば、できるだけ初めから本則計算を選択していただくことは期待できないかというふうにも思っているところでございます。
  84. 谷口隆義

    ○谷口委員 もう何回も同じ答弁が繰り返されておるわけでございますが、税の実態的な態様ということをよく知っていただきたい。  というのは、原則課税を選択するか簡易課税を選択するかというのは、やはり基本的には納税額がどちらが有利になるのかという観点で実態的には動いておるということを認識されながら、従来と同じ答弁を繰り返されているというところに、私は問題があるんだろうというように思っております。ぜひまた、実態的な状況に合わせてやっていただきたいというように申し上げたいと思います。  余り時間が、これでとってしまいますとないものですから、次に参りたいというように思っております。  御存じのとおり、現在、会計ビッグバンと言われるような状況にございます。これは、二〇〇〇年三月期までに連結会計が入る。二〇〇一年三月期に、今回の税法でも改正されておるわけでございますが、売買目的の有価証券が時価会計になる。また、持ち合い株については、その翌年の二〇〇二年三月から適用される。また、年金会計が二〇〇一年三月から行われるというような、企業を取り巻く会計の状況が大きく変化をいたすわけでございますが、この会計の変化が経営のあり方を大きく変えるだろう、このように言われておるわけでございます。  現に、我が国の、日本的経営と言われておるような、終身雇用であるとか年功序列であるとかいうような雇用形態も大きく変わるだろうと言われておりますし、この時価会計が導入されることによって、今現在、もう既に起こっておりますが、持ち合いの株式が放出されるとか解消されるような動きになっていく。また、従来は個別単独企業がベースになっておりましたが、これはもう、連結ということになってまいりますと、連結グループでの経営というようなことでございます。  政府の方も、それをサポートするような意味合いもあって、今国会企業分割の法制度も変えられますし、また、持ち株会社の制度もつくったわけでございますし、SPCであるとか、そういういわばこれからの大きな変化に対応できるような、分社化の方向をこの法制度で整えてやろうというようなことがあるのだろう。そういうように、経営のあり方がこれから大きく変わってくるのだろうというように思うわけでございます。  このような一連の会計制度の改革背景にあるものは、国際会計基準を核とした会計基準の国際標準化の動きがバックにあるわけでございますね。一刻も早くそういうように我が国も合わせていかなきゃいかぬ、こういう要請から、今次、この数年間で大きく激変しようとしておる、こういう状況でございます。  そういう状況の中、今回、法人税法の一部改正で、売買目的の有価証券については時価法を適用しようというようになったわけでございますが、まず第一点、お聞きいたしたいのは、関係会社株式であるとか、いわば売買目的以外の有価証券については、今回、時価法が採用されないというようなことになったわけでございますね。売買目的であるかどうかというのは企業が決定するものですから、そのあたりの企業の所有目的は、ある意味では恣意性が入るわけでございます。  こういう状況の中で、私は、すべて時価法を適用すべきではなかったのかな、このように思うわけでございますが、大蔵大臣、このあたりの御見解をお聞きいたしたいというように思うわけでございます。
  85. 大野功統

    大野(功)政務次官 企業会計の御専門家で権威でございます谷口先生の御質問、やや戸惑いながらお答えするわけでございますけれども、おっしゃるとおり、今回改正をお願いしております法人税法では、売買を目的とするものに限って時価で評価するということでございます。それは、もちろん損益に計上する。では、売買目的とは何か。ここもこれからの問題かと思いますけれども、やはり、相当の回数反復して売買する、あるいは専門のトレーダーがいて販売している、こういうような情景を思い浮かべていただければと思いますので、ある程度限定されたものになるのかなという気はいたします。  それはそれとして、お尋ねは、なぜほかの、売買目的以外のものについても時価評価制度をとらないのか、とってみたらどうか、こういうような御示唆かと思いますけれども、この点、税の世界でございますと、基本的にそういう点に着目をしていないものですから、そこは資本勘定、バランスシートの問題になってくるということで着目していないということもありましょうが、問題は、有価証券の値段の動向が、確かに保有者にとって大変大きな参考になるということは当然でございますけれども、国際的な動向、私どもの理解では、時価評価というのを当期の損益に計上しないで資本の部に直接計上する方法も採用されているというようなことも聞いております。  そういうことで、企業会計の問題ですから、先生の方がずっとお詳しいわけでございますが、税法の世界としての問題じゃなくて、企業会計の世界として、そういう資本の部に計上してもいいのじゃないかな、こんなふうに感じております。
  86. 谷口隆義

    ○谷口委員 企業会計審議会の会長が、やはりこのようなことをおっしゃっておりまして、売買目的以外の有価証券においても時価法を採用すべきではなかったかなというようにおっしゃって、これは私と同意見でございますので、そういうようにやるべきではなかったかなというように思っております。  それと、先ほども申し上げました、我が国の独特の株式持ち合い制度というのがございますね。安定株主をつくらなきゃいかぬということで、金融機関であるとか、生命保険会社であるとか、こういうところが安定株主になりますと、株主総会が極めてやりやすいわけで、それ以外に持ち合いのいろいろ意味合いもあるわけでございますが。  このような株の持ち合いが、時価法を採用いたしますと、これは大きく流れが変わってくる。先ほども申し上げましたように、売買目的の有価証券は二〇〇一年三月でございますが、持ち合い株についても、翌年には時価法が採用されるというようなことでございます。  それでは、一体、持ち合いの株がどのくらいあるのかということになるわけでございますが、どうも聞きますと、上場企業と生命保険会社が保有する株式は、全体で百兆円ある。これが、九〇年の半ば以降、自然に株式の持ち合いが解消されるような方向に来ておるわけでございますが、今次、時価法が採用されますと、一気に持ち合いの株が解消されるというようなことになるのではないかというような危惧をされている方がいらっしゃいます。  これは、最終的には持ち合いの株が解消されるということはいいことでございますが、これが一挙にこういうようになってくると、昨年からことしの株式市場の商いの多さというのはそういう持ち合いの株が放出されているというところもあるようでございますが、このように、仮に集中して持ち合い株式が解消されるというようなことになることに対してどのようにお考えなのか、お聞きいたしたいというふうに思います。
  87. 大野功統

    大野(功)政務次官 確かなデータを持ち合わせておりませんけれども、傾向としては持ち合いが下がってきている。ただし、時価法を採用したらどうなるんだということはよくわかりませんが、仮に持ち合いが解消、それが急であると先生おっしゃったわけですけれども、急な解消になるとすれば、株式市場の活性化にとって非常によいことじゃないか、このように評価させていただきます。
  88. 谷口隆義

    ○谷口委員 時価会計が入ってまいりますと、ROEという企業評価基準が相対的に低下するものですから、なるべく保有株式を売却した方がいい、こういうような動きもあるようでございます。  そういうことで、一つは、そういう持ち株を解消させるという意味合いにおいて、時価会計を導入するというのは大きな意味合いがあるわけで、だけれども、それが集中したときにどうなるのかなというような疑問を私は持っておるわけでございまして、質問させていただいたわけでございます。  もう一つは、これは公認会計士協会の方からも指針が出ておるようでございますが、販売用不動産の時価評価、今ゼネコンであるとか、いろいろ販売用不動産を持っていらっしゃるところがございますが、これが五〇%以上下落した場合に時価で評価しなさいというようなことになります。そうしますと、これはいろいろなところで大きな影響が出そうでございますが、これについて、政府側の見解と申しますか、所見をお述べいただきたいというふうに思うわけでございます。
  89. 大野功統

    大野(功)政務次官 日本公認会計士協会では、その取り扱い案について公表されたと伺っております。  棚卸資産をどう評価していくかという問題でございますけれども企業会計の考え方とそれから税法上の考え方は、ちょっと区別して考えなきゃいけないのじゃないかな。企業会計の方は、いわば債権者等の利害調整機能というのが一つあろうし、それから、当然ながらディスクロージャーということを重点的に考えておられると思います。ところが、税法の方は、やはり公平性とか中立性とか、あるいはとにかく適正な課税という言葉で表現させていただいたらいいのかもしれませんけれども、公平とか中立とか、そういう観点から物事を考えているわけでございます。  したがいまして、法人税につきましては、企業会計原則にのっとった会計処理に基づいて算定すること、これは原則として当然でございましょうけれども、適正な課税という観点から、必要に応じ企業会計原則とはちょっと異なった取り扱いをすることもある。これが企業会計の考え方とそれから税法上の考え方との違いじゃないか、このように思います。  いずれにいたしましても、御指摘の問題点、課税の公平等の観点を踏まえながら十分検討していきたい、このように思っております。
  90. 谷口隆義

    ○谷口委員 販売用不動産の時価評価というのはかなり大きくて、これは、優秀な会社というか、余裕のある会社は、積水ハウスの例でいきますと、二〇〇〇年一月期の決算で一千九百億円の評価損を計上した。これは余力があるからできるわけでございますが、余力のないところは大変な影響が出てくる、こういうような状況でございます。  これは、税法上は損金処理が認められておるのでしょうか。
  91. 尾原榮夫

    ○尾原政府参考人 これに伴います税法上の損金処理は認めておりません。
  92. 谷口隆義

    ○谷口委員 そうすると、有税処理をしなきゃいかぬというようになるわけでございますが、今後これについて損金処理をするというようなことを考えていらっしゃるのかどうか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  93. 尾原榮夫

    ○尾原政府参考人 土地についての取り扱いでございますが、災害に遭って滅失したとかそういう場合は認められておるわけでございますが、今のように評価の問題、土地につきましては認められておりませんで、これは貸倒引当金等と同じように企業会計上との違いがあるわけでございます。したがいまして、その土地を現実に処分なされたときに初めて税法上は損金、こういう取り扱いになってくるわけでございます。
  94. 谷口隆義

    ○谷口委員 これは、評価損を上げなさい、また、税法は認めてくれないとなると、ダブルパンチになってくるので、これは損金処理を認めてやるような方向でぜひ検討してもらいたいというように大蔵大臣に申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。  その次に、きょうは日銀から山口総裁が来ていただいておりますので、先ほどからインフレターゲティング論であるとか調整インフレ論のお話が出ておりました。  これは何年か前になりますが、私は、新井将敬さん、大変お気の毒な、お亡くなりになったわけでございますが、あの亡くなられる前の年に、たまたま新幹線に乗っておりますと会いまして、それで私の横に来られていろいろな話をしている中で、今の経済運営の話になりまして、どうしたらいいだろうなというような話で、そのときに彼が、もうインフレを起こす以外ないじゃないかな、こういうように僕に言ったのですね。彼は経済通でございましたから、特に私の記憶に残っておるわけでございますが、今次ここへ来て急に調整インフレ論であるとかインフレターゲティング論であるとか、出てまいったわけでございます。  先ほど大蔵大臣の御答弁にもございましたように、これはもう麻薬みたいなもので、例えばインフレを起こすということについては了解できるものじゃないというような御答弁をされたわけでございます。私も全く同意見でございまして、これはちょっとうまくないな、このままいくとどうもそういうような兆しが見えてきたなと。  私も先日選挙区に帰っておりますと、六百四十五兆円という、国、地方を合わせまして十二年度末に大借金がある、大蔵省当局はもうこれが改善できないのではないか、要するに、財政構造改革はできないのではないかということで、半ばあきらめぎみになっているんじゃないかというようなことさえ先日選挙区に帰ったときに言っていらっしゃる方がおられたわけでございます。  そこで、今回のインフレターゲティング論でございますが、物価上昇率に具体的な目標を定めて、その実現に強くコミットする金融政策運営方法日銀内部で考えられておるというようなことのようでございます。この中には調整インフレ論も含まれておるようでございますが、もう一つは、日銀のアカウンタビリティーというのですか、説明責任が問われておるのじゃないかというふうに思うわけでございまして、そういう観点でちょっとお聞きしたいわけでございます。  先ほども出ておりましたが、ただいまの金融状況というのはデフレ懸念が心配されております。これが、今デフレが心配される状況にあるのかないのか、まず初めに御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  95. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  最近の物価情勢を子細に見てみますと、卸売物価消費者物価という代表的な物価指数が大体下げどまりまして、横ばいという状態になっております。卸売物価などは、原油価格上昇の影響も若干ございまして、月によっては〇・一%ポイントぐらい、わずかではございますが上昇する月も見られるという状態になってまいりました。  したがいまして、私どもは、おおむね現状物価下げどまり、安定基調に入ってきたというふうに考えておりますが、ただ、少し将来を展望いたしますと、需給バランスが弱くなるというようなことが起きた場合どうなるかという心配を依然として持っております。  これは逆に申しますと、経済が正常な成長軌道に乗っていきますためには民間需要が立ち直っていかないと難しいわけでございますけれども個人消費設備投資、いずれにいたしましてもまだまだ将来についてはきちんとした読みが難しいという状況にございます。したがいまして、まだデフレ懸念というのが何がしか残っている状態というふうに考えております。
  96. 谷口隆義

    ○谷口委員 今おっしゃった需給ギャップの話でございますが、これはとり方によっていろいろまちまちのようでございます。  それで、私が先ほども申し上げましたように、日銀のアカウンタビリティーという観点からして、一つは、この需給ギャップについて客観的な指標を持ち出してくるというか、これを掲げるというようなことは考えていらっしゃらないのでしょうか。
  97. 山口泰

    山口参考人 需給ギャップという概念が物価を分析する場合の一つの有力な道具立てになっておることは事実でございますが、近年、これは我が国だけではございませんで主要国いずれにおきましても、需給ギャップというものを正確にとらまえることが随分難しくなってきております。一つの理由は、技術の進歩が非常に速いものですから、設備の生産性というのがどれぐらいなのかはっきりわからなくなってきているということもあろうかと存じます。  日銀の中でも需給ギャップというのを、これは大変気になるものでございますから、いろいろな方法論、アプローチによりましてできるだけ正確にこれをつかまえたいというようなことで、かねてから勉強をし、かつ試算もしてきておりますが、ただいま谷口先生御指摘のとおり、どういう方法論を使うかによって得られる結果が変わって出てきてしまいます。しかも、その方法論によって生まれてくる差というのが、小さい差ではなくて非常に大きな差になってきてしまうものですから、余りそれだけでもって物価の動きを判断するというわけにもまいらないというふうに考えております。  ただ、どういう方法論が考えられるのか、あるいはどういう方法を使えばどんな需給ギャップというのが計算されるのかというようなことにつきましては、公表の是非を含めてよく勉強させていただきたいと思います。
  98. 谷口隆義

    ○谷口委員 そういう客観的に説明できるようなケースなんかがあれば非常に理解しやすいわけでございます。例えば、インフレターゲティングのときの物価上昇率の問題がございますね、これを何%に抑えるというような。これは、インフレターゲット論というのはそういう明確な基準を出してほしいという要望が一方であるというようなことなんだろうと思うんですね。  これが一体どういうことなんだろう、最終的な結論はわかっているんだけれども、果たしてそれが今デフレ状況にあるのかないのか、インフレとは全くかけ離れた状況になっておるのかどうか、そういう実態が余り明確に説明できないというところに一つ問題があるんじゃないかな。  そういうことにおいて広い意味でのインフレターゲティング論というのが出てきているのではないか、このように思うわけでございますが、これについての御答弁と、あと山口総裁御自身がこのインフレターゲティング論についてどのようにお考えなのか、これを含めてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  99. 山口泰

    山口参考人 谷口先生御指摘のとおり、日本銀行政策運営について、常日ごろから、どうしたら透明性を改善できるのかということは不断の研究課題として受けとめさせていただきたいと思っております。政策運営考え方なりあるいは実際につきまして、私ども政策委員会での議事の要旨を非常に詳細にまとめまして公表させていただくとか、さまざまな方法で世の中に明らかにしているつもりでございます。  ただ、政策のいわば目標そのものを数字で示す、ターゲティングというような考え方は、これまでのところとってきていないわけでございます。  世に言うインフレターゲティングというのは、物価の上昇目標というのを数字で示すということになるわけですが、これはイギリスその他で現在行われておる方法は、正確に申しますとインフレ予想ターゲティングというべきものでございまして、一年先、二年先といった物価上昇率を予想しながら、その上昇率目標とする範囲におさめていこうという性格のものでございます。  一年先、二年先の物価上昇が基本的な数字でございますから、当然、それはさまざまな需給関係やら外部環境やら為替レートの変動やら、そういう物価の背後にある諸情勢というものを総合的に判断して政策を決定していくということにならざるを得ません。数字を示せば機械的に政策が出てくるということでは決してない、そこに必ず総合判断の要素が入ってこざるを得ないというふうに私は考えております。  そこで、私自身はこのインフレターゲティングについてどう考えるのかという御下問がございました。政策運営をわかりやすくするという点でメリットがあることは否定いたしません。しかし、逆に、現在のように経済の構造変化が極めて速いとき、技術進歩によるコストの変動が非常に速いスピードで起こっておりますようなときに物価の望ましい上昇率ということをお示しするというのは、これはなかなか簡単なことではないというふうに考えております。  また、我が国の物価の動きというのは、ここ十年間、二十年間というかなり長い時間の中で考えましても、欧米主要国に比べますと格段に安定的に推移してまいりました。欧米主要国の物差しをそのまま輸入するわけにはいかないという事情もございます。  それから、最も重要な点でございますが、物価目標を示し何が何でもそれを実現せよということになりますと、先生が最初に御指摘されました調整インフレが持つ問題とこれはほとんど差がなくなってくるというようなこともあろうかと思います。  そういうようなことをいろいろ考え合わせまして、私自身はこれの採用に慎重に考えてまいりたいと思っております。そう申し上げた上で、私ども政策運営についての透明性の向上を図るというこの宿題については、しっかりと受けとめさせていただきたいと存じます。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  100. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  101. 鴨下一郎

    ○鴨下委員長代理 次に、鈴木淑夫君。
  102. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  大臣、朝からの質疑でお疲れかと思いますが、私がラストバッターでございますので、いましばらくおつき合いをいただきたいと存じます。  初めに、質疑通告をしていなかったのでございますが、先ほど渡辺喜美委員が終わりごろにデノミについて大臣に御質問申し上げたときのお答えがちょっと気にかかりますので、そのことだけ申し上げたいのでございます。  これは、実は予算委員会の基本的質疑のときに、やはり私がデノミについて大臣の御見解を伺いましたときにも同じことをおっしゃったのでございますが、現在の円、例えば百円を新しく一円にするという場合に、円と円では区別がつかないよ、そういうコンピューターソフトはつくれないよ、こういうことをおっしゃったのでございますが、これは私、まことに心外というか、どうしてそうおっしゃるのか理解に苦しむのでございます。  というのは、どこの国のデノミの歴史を見ても、まず最初は新という字をつけるのですね。円に対して新円にするわけです。ですから、コンピューターのソフトでも、円という単位と新円という単位が同時に入るわけですね。  お札も、フランス方式と申しまして、例えば今の一万円券の上に新百円というのを重ね刷りするのでございます。それを流通させます。そうすると、今の一万円券と新百円が重ね刷りされたのが同時に流通いたします。国民はそれを見て、だんだんなれていくわけですね。相当なれてきたところで、今度は新百円というのもまた出します。そうすると三種類流通します。それで、だんだんだんだん旧一万円券はくたびれてきますから、流通から引き揚げられていく。それで五年たち六年たつと、新円というお札だけになってしまいます。また、商取引法上も旧円単位で残っているというのはほとんどなくなってきますので、もう大丈夫だというところで新の字を外すのでございますよね。  だから決して、大臣が御心配になっているような理由で混乱が起きるとか不可能だということはないのでございます。そうでなかったら、諸外国であんなにデノミはできません。  それからもう一つ、コンピューターのソフトの切りかえに大変なコストがかかるというような情報が大蔵省の事務方からかどこからか大臣のお耳に入ってやしないかと思って、私は心配しているのでございます。  実は私の非常に親しい人の中に、金融機関のデリバティブスのコンピューターソフトをつくっている男がいます。デリバティブスのコンピューターソフトというのはさまざまな通貨単位が入っていて、しかもその通貨単位間の為替相場が変動していて、それからそれぞれの通貨単位の金利が違って、しかも動くわけですね。  それで、その金利の差、為替相場の差をうまくかいくぐって金もうけするのがデリバティブスでありますけれども、そういうソフトをつくっている男から見ると、新円という単位の通貨をもう一本入れるぐらい簡単な話はないのだそうです。  なぜかというと、まず百対一の固定レートでございます。変動相場制でたくさんの通貨を入れるコンピューターソフトを扱っている人間から見ると、固定レートですからこんな簡単な話はない。しかも、両方の、円と新円と二つの通貨の金利が等しいのですから、こんなコンピューターソフトをつくるぐらい簡単な話はないと言います。  ですから、コンピューターソフトをつくるのがコストがかかって大変だという話も、私は要するに、コストがかかるのが嫌だという経営者の、自分の経営中心に考えた理屈がデフォルメされて出ているというふうに思います。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕  近年デノミをした国といえば、近所に、韓国もいればインドネシアもいればロシアもいるわけですね。あの連中だってもうコンピューターを相当使っているわけです。それができているわけですから、日本で、大臣がおっしゃっていますような、旧円と新円の混乱を起こすぞとか、コンピューターソフトの切りかえにコストがかかり過ぎるぞとかいう話は、ちょっと私はいかがかと思っております。  なお、自自公のプロジェクトチームでその辺もきっちり今詰めておりますけれども、そういうことがあるということを、先ほどの御答弁を伺いながらちょっと気になって、申し上げなければいかぬかなと思ったのでございますが、もし何か御感想ございましたら。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もう大丈夫だということになって、新というものを消してまた円になるわけですが、そのときになって昔の円をどう呼ぶのでしょうか。
  104. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 旧円と言います、そうなったら。めったに出てこない昔のは旧円と呼びます。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは普通我々もそう呼んでまいりましたけれども、旧円というものをつくらなければなりませんね、コンピューターのコンセプトでそのときに新しく。そうでしょうか。     〔委員長退席、根本委員長代理着席〕
  106. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 おっしゃるとおりでございまして、切りかえるときは新円という名前のを円に変えて、ただ円と言っていたのを旧円に変えるだけのことです。これは簡単な話でございます。  まあ、余りこれ以上、お疲れのところを申しわけございません。  それで、質疑通告申し上げた財政赤字の話に入りたいと思うのです。  先ほど石井委員質問に大臣がお答えになっておりましたのをお伺いしておりまして、確かに大臣がいろいろ思い悩んでおられる難しいポイントだと思いましたのが、どういう段取りで財政赤字を縮めていくかというやり方なんだろうと思うのでございます。  それで、一応自自公の政策責任者会議で合意しており、また総理の諮問機関でありました経済戦略会議の答申の中にもあります考えは、いつも大臣がおっしゃっておりますように、九九年度と二〇〇〇年度は景気刺激型、その次は、民需主導型の成長が定着するのを見届けるという意味で、一年ぽっきりじゃなくて二〇〇一年と二〇〇二年は財政中立型、それから二〇〇三年から六年かけてプライマリーバランスをとる、国債費を除いたところでバランスさせる。だから、最終的に二〇〇八年にバランスをとる。そうしますと、赤字が発散しない形になるわけでございますね。これが一応の道筋だと思うのです。     〔根本委員長代理退席、委員長着席〕  大臣、私は、現実財政赤字は相対的には来年度、平成十二年度から減り始めると思っております。そして特に財政中立型でやっているときにもうどんどん減り始めると思います。相対的にですよ、公債依存度とかあるいはGDPに対する比率、フローで見てですね。ストックの方はふえます。でも、最終的にプライマリーバランスをとれば、ストックの対GDP比率はふえませんから、最後はそこへいくのですが、しかし、フローの方で見た場合、私は、財政赤字というのは、最悪期は本年度だったと思っています。  例えば、大臣よく御存知だと思うのですが、一応、補正後の平成十一年度の公債依存度は四三・四%でございますね。それで、予算委員会に出ているのですが、当初予算、平成十二年度の依存度は三八・四でございます。四三・四から三八・四にぽんと下がるわけですね。  大臣がよくおっしゃいますように、来年度こそは大型補正を組まないでいいようにしたい、民需主導型の回復が始まると。その夢が仮に実現するとすれば、大型補正を組まないのですから、公債依存度は、十一年度の四三・四がピークであって、早くも十二年度には下がるわけですね。そしてその次二年間、財政中立になります。税収はふえてくるし、中立型ですから無理して減税したり歳出を伸ばしたりしませんから、これは公債依存度という相対的な形で見れば、ぐんぐん下がっていくはずなんですね。  ですから、二年間は財政中立にするということは、二年間は赤字を縮めないということを意味しないですね。赤字はもう縮み始める、それも、財政刺激をしている、しかし民需主導型の回復が始まる平成十二年度から減り始めるというふうに僕は見ております。  といいますのは、もう大臣は私よりもずっと長いこと日本経済を見ていらっしゃいますからよく御存じだと思うのですが、昭和五十四年度に、当初予算の公債依存度は三九%強、これはすさまじい高さだと言ったんですね。仕上がりは、御存じだと思いますが、三四・七%です。このとき、民需主導型の成長がようやく始動したものですから、税収が上がってきたりしまして、それから公共投資も繰り延べたりして、もう大丈夫な景気状態が出てきたものですから、この五十四年度というのは仕上がりが下がった。その下がった三四・七がこの前後のピークでございまして、その後どんどん下がった。もちろん、財政再建の努力もございましたけれどもね。  そういう状況だものですから、私は、相対的に見れば、本年度が財政赤字の最悪期であって、来年度から下がり始める。特に、大臣が期待し、私自身も期待している民需主導型の成長が平成十二年度の下期に始動すれば、これはそうなると思いますよ。それから、法人税の税収なんかを考えましても、三年ぶりの増益が出るのはこの三月期でございますからね。これは来年度、法人税は伸び始めるんじゃないかというふうに思います。  ですから、私の頭の中では、二年間の中立的な期間を置くからといって、その間は財政赤字を縮めることを放棄しているんじゃなくて、それどころか、財政刺激型の二年目である平成十二年度から赤字が縮み始める、特に、相対的に見れば、公債依存度とか対GDP比率で議論をすれば。そういうふうに見ておるのですが、いかがでございましょうか。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 同じ前提に立って考えまして、平成十三年度というものは、十二年度がかなり一遍限りのものを持っておりますので落とせるものがある、そこは私もそう思っております、前提が間違いなければ。  ただ、それから後、一つは、やはり年金だとか医療だとか介護だとかいう、一般の社会保障の問題についてのコンセンサスがなかなかできておりません。随分言ってもできておりませんから、これができないままでおりますと、これはどうしても財政負担にかなり重くなってくるだろう。もう負担も少なくする、給付も少なくていいよというような話になかなかならない可能性が高いという問題が一つ。  それからもう一つは、幸いにして前提が成り立っておりますと、金利がやはり上がっていくだろうと思います。それは、この際の議論としては、国債費が上がるということ。  この二つだけがどうも私の頭の中でなかなか片づきませんで、弾性値の方は、これは鈴木委員の言われますように、随分赤字の法人がたくさんあって、ぼつぼつ当期利益が大きくなってきていますから、弾性値といいますか税収といいますかは、少なくともある一時的にはかなり回復するかもしれない。最終的には一・一になるにしましても、そういう時期のことはありそうだとは思いますが、どうもその二つの問題についての解決がなかなか難しいのだろうなということでございますね。
  108. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 二つの御懸念は、私もごもっともなことだと思います。特に最初の、高齢化が進むことに伴う社会保障費の伸びというのは非常に大きな要素であって、私自身は、財政のプライマリーバランスをとり始める二〇〇二年以降には消費税を上げていく以外にないというふうに考えております。  しかし、私は、消費税引き上げを始めない限りどんどん赤字がふえちゃうかというと、必ずしもそうではないだろう、弾性値の話と、それから二つ目の御懸念金利が、上がることは上がりますが、そんな大きな上がり方をしないんじゃないかというふうに思います。  きのう、例の財政の中期展望について申し上げましたが、これはもう大臣はとうに御承知のように、三つのキーバリアブルでできておりまして、成長率が三・五です、弾性値は一・一です、したがって、税収の伸びは三・八五です。三・五掛ける一・一で三・八五です。ところが、金利は四・五です。上にいます。四・五で税収の伸びが三・八五では、この差で、それだけで赤字が拡大していくのです。社会保障の話を別にしちゃっても、最初から拡大する仕掛けになっているわけですね。  ところが、こんな予測ぐらい人騒がせな、間違った予測はないと私は思っております。  どこが間違っているかというと、私は、三・五という成長率がそんなに間違っているとは思わないと申し上げました。今三・五と言われるとぎょっとするかもしれませんが、ついこの間、九五年度は御承知のように三・〇%成長しているのですから。九六年度は実に四・四%成長しているのですから。設備投資が上を向いた途端に三・五%以上成長したのですね、ついこの間。それを例の九兆円の国民負担増の大デフレ予算でぶっつぶしちゃって、二年連続マイナス成長にしちゃったのですね。  ですから、デフレギャップが相当ある現状考えますと、それは、一たび民需主導型の回復が主導した場合は、三・五になると言い切る自信はありませんが、三・五という数字はそんな途方もない数字じゃありません。ついこの間、百兆円の不良債権を引きずりながら、バランスシートリセッションのさなかにやあっと立ち上がってきて、平均して三・五以上のスピードを二年出しているのですからね。そんな途方もない数字じゃないのです。  ところが、弾性値一・一と金利四・五というのは途方もない数字だと思います。  弾性値一・一というのは、なるほど過去の十年間の平均をとれば一・一でございますが、大臣よく御存じのように、弾性値は大変な循環変動をしております。  最近の地方税と国税を合わせた税収のピークは、九一年度の九十八兆円でございます。それが補正後の本年度で幾らと予想されているかといえば、八十三兆円と予想されています。十五兆円も落ちたのですね。  これ一つ考えても、景気が一たび上に向いたときは相当税収が上がってきそうだなというふうに常識的には理解できると思うのですね。しかも、その間成長率がマイナスだったわけじゃないのですから。九一年度と本年度、九九年度の間にGDPは曲がりなりにも上がっていた。それなのに税収が十五兆円落ちた。若干減税の影響もございます。途中で増税もしていますけれどもね。そこを調整しても落ちたということは、弾性値は一・一よりはるか下、それどころかゼロを突っ切ってマイナスに行っちゃっているということです。  ですから、十年間一・一を実現するためには、これから大変な弾性値の上昇が起きなきゃそうならないですよね。私は、今度は十年間一・一じゃないかもしれないな、もう少し低いかもしれないなと思っていますが、来年度以降、弾性値は景気回復とともに急上昇していくと思います。ですから、この財政の中期展望の一・一というのは、とんでもない、あり得ない、人騒がせな数字を置いていると思いますよ。  それから金利の四・五、大臣が御心配の点ですね。これも、私はきのうもちょっと申し上げましたが、最近の物価の超安定から考えまして、それから、やはりこれからはIT革命がどんどん起きますから、今のアメリカもそうであるように、物価がなかなか上がらない。したがって、予想インフレ率が上がらない。したがって、長期金利は余り上がらない。言うまでもなく、予想インフレ率長期金利を決める基本的な要素になりますので。  そういたしますと、私は、とても金利四・五なんというのは、しばらくならないと思いますよ、よっぽど日本景気がよくならない限り。  近くの例を見ましても、きのうも申し上げましたが、三・〇%とした九五年度、四・四%とした九六年度、国債のクーポンレートは二・九でございますからね。四・五よりはるか下にありました。ですから、御懸念はごもっともでございますが、私は、今のように考えるがゆえに、社会保障費はじりじり上がっていくだろうが、それを打ち消すぐらい弾性値は上がるし、金利はそんなに上がらない。  これは算術の話で、さっき言いましたように、三・五掛ける一・一で三・八五で四・五というから発散するのですが、これは弾性値を一・三と置いたら、ちょっとここでぱっと暗算するとあれですが、一・三と置いたらもう四・五をわずか上回るのです。弾性値一・三というのは簡単に出ますよ、景気回復期には。大臣、いつか御答弁でおっしゃっていたように、二とか三とかいう数字は出ますからね。  ですから、ましてや金利は四・五でなくてもう少し低いと思うのですね。そうしたら、弾性値が一・二か三でも、もうそこが逆転しますから、その分赤字発散型じゃなくなるのでございますね。そういう算術を私はしているものですから、昨日はこの人騒がせな、政策意図の何にも入っていない、しかも予測としてこれは落第点の予測である、こんなものは発表するものではないと申し上げたわけでございます。だからこそ、生意気にも日本国債のレーティングを格下げするなどという会社が海外にあらわれちゃうというふうに思う次第でございます。  私は、本当はこれを野党の皆さんとディベートしたいのですよ。だけれども、まだ委員長に向かってディベートしますと言うには早過ぎるかもしれませんから。大臣とディベートするのじゃなくて皆さん方とディベートしたいのです。財政赤字日本が大変なことになるとおっしゃるものですから、そうじゃないよということをディベートしたいのですが、完全ディベート型にまだ委員会が変わっていないようでございますから、この件は後日、委員長のお許しをいただいてからディベートすることにいたしますので、もうちょっとお待ちください。  それで、ちょっと脱線して失礼をいたしましたけれども、私は、そういうわけですので、野党にあれだけ言われて防戦一方になる必要はないので、大臣方なら切り返せますので、切り返していただきたいと思うのですね。私はかけをしてもいいなと思うぐらいで、つまり公債依存度ピークは本年度だ、来年度は少し下がるよ、その先はもっと下がっていくよというふうに思っております。何か御感想ございますでしょうか。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 友あり、遠方より来るという思いで承りました。
  110. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 尊敬する宮澤大臣にそう言っていただいて、こんなうれしいことはございません。どうぞ、私のあれを御活用いただきたいと思います。  もうお疲れだからなるべく早くやめたいのですが、これでやめたら早過ぎると思うので、もう一問。三つ用意したのですが、一つ飛ばします。もう一問、外形標準課税のことでございます。  ちょっと私事にわたって恐縮でございますが、私は政界に出る前、十年近く政府税制調査会のメンバーをやらせていただいておる。その終わりごろには、私は積極的に外形標準の法人事業税を新設して、これを地方税の中心とすべしという主張をしておりました。そして、自由党としても今、基本政策はそっちの方向を向いているのでございます。  ただ、これはいろいろ問題があって、みんなで考えているうちに慎太郎税がぱんと飛び出してきちゃったわけですが、私どもは、ああいう形になった以上、早く全国一律の外形標準の法人事業税をつくろうという主張でございまして、それで、地方税法を改正してしまえば東京都も従わざるを得なくなりますから、地方税法改正という形で統一的な外形標準の法人事業税を入れようという考えでございます。  その場合に、難しい問題点が、御承知のように幾つもあるのですが、第一は外形標準として何をとるかでございます。経済学的には付加価値が一番いいことは間違いないのでございます、中立的という意味で。  例えば、人件費をとりますと労働集約的な産業に対して不公平になります。資本をとったら資本集約的な方に不公平になります。事業所の数をとったら流通みたいなところに不公平になる。不公平になるということは、そういう業種は非常な負担をこうむるということでございますね。売上高も不公平になります。非常に付加価値率の小さな業種に重い負担がかかります。  ですから、理論的には付加価値が一番いいのですが、付加価値の難点は、それをやると消費税とどこが違うのという議論になってしまう。これが難点でございますね。ですから、税制の中立性、業種別の不公平を起こさない、産業構造にゆがみを起こさないという意味の税制の中立性を守ろうとすると付加価値なんですが、付加価値だと消費税とどこが違うのという議論を誘発する。それが一つ非常に悩ましいところだと私は考えております。  それから、もう一つ悩ましいのは、景気がこういう状況で、何とか設備投資個人消費主導型の成長を始動させなきゃいけないというときに、これをかけて設備投資に悪影響が及んで、景気に悪影響が及んだら困るなという点なんですが、これについては大臣、私ども自由党は、非常に思い切った手を考えております。  それは、御承知のように私ども、高齢者の社会保障、基礎年金、高齢者医療、介護、この三つだけは保険制度をやめて、保険料をゼロにして消費税で見ろという主張をしているわけでございます。生産年齢人口の医療保険なんかは保険制度で大丈夫でございますけれども、それから二階建て、三階建ての年金も保険制度でいいのですが、この三つだけは保険料をゼロにしちゃおう、保険制度をやめて消費税で支えましょうと。  そうしないと、少子高齢化が進んでいった場合に、結局保険料を払う方の人の数が相対的に減って給付を受ける方がふえるのですから、保険料を上げるか給付水準を下げるか、あるいは赤字国債を出して後の世代に負担を先送りするかしか手がなくなっちゃう。  だから私ども消費税方式と言っているのですが、消費税方式を導入しますと、企業主負担、これもただになってしまう。私どもはそこを見ているのですよ。そのときに外形標準の法人事業税を入れる、同時に実行しよう、これが我が自由党の主張でございます。  これをやって、今地方交付税交付金で国税分の消費税のかなりの部分を地方に回していますが、これはある程度引き戻したい。というのは、新しい法人事業税が地方に入りますので。そういう形で二つの大改革を一遍にやるという構想を持っております。  初めてお聞きになるかもしれませんが、そういうわけで二点、最初の、外形標準をどれを選ぶかというものが大変悩ましい、テンタティブで結構でございますが、大臣、どうお考えですかということと、二番目の私どもの大きな構想についてどうお考えですか、その二点でございます。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 なるほど、事業主負担をなくしてそのかわり事業税をかけよう、それはトリックと言ってはいけませんが、それで負担をする方からいえば損得なし、こういうお話ですか。それはわかりますね、考え方としては。なるほど。しかし、政策目的が全然違うことになりますが、さあ、これはすぐに何も申し上げられません、なるほどと思いますが。  それで、外形標準のことでございますが、これは、実は正式には自治大臣がお答えなさるべきことですから、宮澤がどう思うかという私見として申し上げさせていただきますけれども、どういう標準をとるにしても、法人の六〇%以上が赤字でありますから法人税を払っていないということ、それであるのに国あるいは地方団体のいろいろ供与している便益はそのまま使っておる、何も税金を払っていないということは正常な状態ではないではないかというのは、私はそこのところの理屈は間違っていないと思うのでございます。  そこは間違っていないと思いますが、ただこの問題は、地方の商工会議所なり商工会なんかでやりますと、何しろ六割以上は赤字の方でございますから、ネットの増税になることは間違いないです。それで、今まで払っている人は、特に得はありませんから、賛成だとも言ってくれないということで、討議をしますとまず勝ち目がないということを承知しておかなきゃなりません。したがって、どういう説得をもって、ともかくこれだけの便益を受けていらっしゃる限りは何かを払ってくださいという、そこのところをどういうふうに説得するかということが一番難しい問題なのではなかろうかと思っております。  今度、石原知事がああいうことを言われたことによって、今まで税制調査会の中でずっとくすぶっておりましたこの議論が表に出てまいりますのは、私は一つのメリットであるかと思いますけれども、そうなりますと、まずどういう課税をするかよりは、とにかく今まで全然払っていない六〇%以上の法人、それは概してほとんど中小企業で、それに新しい負担をしてもらうことの決心をどうやってやってもらうのか、こういう不況なときでありますだけに、なかなかそれを通していくことに難しさがあるだろうということの方を実は悩んでおります。
  112. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 一つだけ、今の御答弁について、念のためにもう一度申し上げたいのですが、それは確かに赤字法人にもかかります。それは負担になりますが、赤字法人といえども社会保険料の企業主負担は払っていますね。そうでしょう。ですから、企業主負担というのは、いわば人件費を外形標準にとった例、法人事業税と本質的に同じことをやっているんですよ。その点です、ポイントは。ですから、私が言っているのは、赤字企業にとっても増税になりませんよ、その辺の額でそろりと入っていくのが一番現実的ですよというふうに申し上げているわけなんです。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わかりました。  御党の御主張からいうと、それは一石二鳥のような大わざでありますが、さあ、ちょっとそこは、よく考えさせていただきます。
  114. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 ぜひよくお考えいただきたいと思います。  委員長に催促されるまでもなく、もう本当に、延べ十一時間以上たっております。大臣、まことに御苦労さまでございました。お疲れかと存じますので、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  115. 金子一義

    金子委員長 次回は、明二十四日木曜日午後一時五十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十時四分散会