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2000-04-27 第147回国会 衆議院 厚生委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年四月二十七日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 江口 一雄君    理事 安倍 晋三君 理事 衛藤 晟一君    理事 木村 義雄君 理事 田中眞紀子君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 福島  豊君 理事 児玉 健次君       伊吹 文明君    石崎  岳君       遠藤 利明君    大村 秀章君       鴨下 一郎君    木村 太郎君       木村 隆秀君    鈴木 俊一君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       戸井田 徹君    根本  匠君       桧田  仁君    堀之内久男君       松本  純君    山口 泰明君       家西  悟君    石毛えい子君       五島 正規君    土肥 隆一君       中桐 伸五君    古川 元久君       瀬古由起子君    岡島 正之君       吉田 幸弘君    武山百合子君       中川 智子君     …………………………………    参考人    (財団法人中部盲導犬協会    常務理事)    (盲導犬総合訓練センター    所長)          河西  光君    参考人    (DPI障害者インター    ナショナル)日本会議障害    者権利擁護センター所長) 金  政玉君    参考人    (社会福祉法人全日本手を    つなぐ育成会常務理事)  松友  了君    参考人    (桃山学院大学社会福祉学    部教授)         北野 誠一君    参考人    (社会福祉法人全国社会福    祉協議会常務理事)    松尾 武昌君    参考人    (障害者生活権利を守    る全国連絡協議会会長)  吉本 哲夫君    厚生委員会専門員     杉谷 正秀君     ————————————— 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   田村 憲久君     山口 泰明君   宮島 大典君     木村 太郎君 同日  辞任         補欠選任   木村 太郎君     宮島 大典君   山口 泰明君     木村 隆秀君 同日  辞任         補欠選任   木村 隆秀君     田村 憲久君     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会福祉増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案内閣提出第五〇号)     午前十時五分開議      ————◇—————
  2. 江口一雄

    江口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出社会福祉増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人方々から御意見を聴取いたします。  本日、午前、御出席参考人は、財団法人中部盲導犬協会常務理事盲導犬総合訓練センター所長河西光君、DPI障害者インターナショナル日本会議障害者権利擁護センター所長金政玉君、社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会常務理事松友了君、以上三名の方々であります。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  最初に、参考人皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず河西参考人にお願い申し上げます。
  3. 河西光

    河西参考人 中部盲導犬協会河西でございます。よろしくお願いいたします。  社会福祉事業法の一部改正意見を陳述させていただきます。  盲導犬事業社会福祉事業法の一部改正法律案で追加されますことは、盲導犬運動が始まって以来の念願でありまして、盲導犬関係者にとってこの上ない大変な喜びであります。この法律改正に当たり御尽力を賜りました関係各位皆さんに、深く感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。  私どもは、盲導犬施設が加盟いたします日本盲人社会福祉施設協議会盲導犬委員会において盲導犬訓練施設設置運営基準案を策定し、盲導犬訓練施設社会福祉事業法に追加されるように協議を重ねた経過がありますので、非常に感慨深いものがあります。  盲導犬施設社会福祉法に追加されることは、盲導犬普及視覚障害者皆さん社会参加促進が図られるものと大きな期待をしております。特に、盲導犬育成が国の事業として認められることは、盲導犬施設社会的な認知と信用度が増し、社会理解と協力が大きく期待されます。  また、都道府県盲導犬普及に取り組みますことにより、視覚障害者盲導犬を持つためのPRというか広報が非常に浸透し、盲導犬を持つ方が多くなると思います。  また、第二種の社会福祉事業に位置づけられますので、施設整備等に国庫の予算というか公的予算がつけられますので、盲導犬育成施設整備の体制が整うものと思っております。  また、訓練士の地位の向上もあり、そういった中で訓練士も励みになってこれからも盲導犬訓練に頑張っていけるような状況になりますし、盲導犬を持った方も、一般社会理解が深くなり、その要請が多くなると思います。  そういった盲導犬事業は、法改正によるメリットはたくさんあるわけですが、このままでは盲導犬が多くなるわけではないものですから……。この「デュエット」の中に、日本財団が調査したものによりますと、今すぐに盲導犬を希望する方が四千八百人、潜在的な希望者は七千八百人もいるわけです。しかし、実際の訓練をする者は、実習生勉強をしている者も含めて日本では六十人ぐらいしかおりません。やはりこの何倍かの訓練士がいなければ十分な要望にはこたえることができませんので、そういった中で訓練士の養成であるとか盲導犬を養成するという意味では、盲導犬に適した犬の開発とか研究、繁殖の勉強などが必要になります。できますればそういった予算措置要望としてお願いをしたいと思います。  それから、日常生活訓練予算化されていますが、盲導犬視覚障害者訓練をするときにも、日常生活訓練と同じように歩行指導についても予算措置ができれば大変運営も安定していくかと思います。  それから、視覚障害者盲導犬と一緒に社会参加するに当たって、社会の中でまだいろいろなところで利用が断られる場合が多くありますので、そういった視覚障害者の方が盲導犬利用しながら社会参加をするときに、やはりバリアフリーの立法化というのをぜひ要望したいと思います。  こういった理由から、ぜひ立法化を進めていただきたいと思います。  以上です。ありがとうございました。(拍手
  4. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、金参考人にお願い申し上げます。
  5. 金政玉

    金参考人 おはようございます。ただいま御紹介いただきましたDPI日本会議障害者権利擁護センターの金と申します。  きょうは、貴重な時間をいただきまして大変ありがとうございます。私ども障害種別を超えて、障害を持つ当事者立場から、このたびの社会福祉事業法改正について、ほとんど問題提起に近いお話になるかと思いますが、率直な提起をさせていただきたいと思っております。レジュメに沿って、非常にかいつまんだお話をさせてもらうことになるかと思います。  私どもとしては、いろいろな問題があるかと思いますが、六点にわたってお話をさせていただきたいと思っております。  まず、このたびの改正案のやはり一番大事な改正案の目的と理念についてであります。  特に、このたびの改正案が、社会福祉基礎構造改革検討の中で、サービス提供者利用者の対等な関係確保を図るということが検討過程ではずっと言われていたと思います。それと、利用者本人の自立した生活支援促進するというような趣旨のことも言われていたと思うのですが、このたびの改正案法文を見る限りでは、そういったトーンが非常に低く、薄められてしまっているというような印象を率直に持っておるところであります。  特に、基本理念のところについてでありますが、まず私どもとしては非常にひっかかるのが、第三条で言われていますその利用者本人の有する能力に応じて、「能力に応じ」という文言が入っていると思います。私たち障害者運動当事者運動をしている立場からいいますと、この「能力に応じ」というものは非常にひっかかる言葉でありまして、やはり障害のあるなし、障害の程度に応じてそういう処遇——処遇という言い方も私たちは問題があると思いますが、そういった権利がより薄められたり強められたりというようなことになりかねない。  例えば、このたびの契約型のサービス移行する中で、そういった契約する能力のある人と余りない人というような分け方が実際の契約にかかわる話の中で非常に起こりやすいという危惧を持っております。そういった意味で、私たちは、「能力に応じ」という文言はぜひ見直しをしていただきたいというふうに思っております。  障害を持つ者の立場からいえば、障害というものをそもそもどういうふうにとらえるべきなのであろうかということで考えますと、例えば一九九三年に国連で障害者機会均等化に関する基準規則というものが採択されております。この基準規則というものが、現状では最も国際的には進んだ障害者人権にかかわる基準規則だというふうに言われておりますが、ガイドラインという位置づけでありますけれども、その中で前面に言われていることは、環境等要因ですね。環境等要因を第一に障害者人権の問題については考えるべきだということが非常に高らかにうたわれておるわけです。  そういった意味で、個人的な要因によって判断されるようなものが基準になるような理念の出し方についてはぜひ考えていただきたい、考え直していただきたいなというふうに思っております。  次に三点目に入りますが、支援費の支給、要するに代理受領方式の問題についてであります。  このたび措置制度から契約制度に至る改正の中で、これまでの措置制度からこのたび言われている契約型のサービス移行に伴ってどのように変わっていくのかということを、私たちは現場の当事者立場からどうしても考えざるを得ません。  そのときに、サービス契約ということで、利用者提供者契約を交わしたとしましても、支援費、実際に支払う利用料については、役所の方から本人を通さないで事業者の方に流れていくというような仕組みに結果としてはなっていると思います。  そういった意味でいいますと、利用者提供者事業者との間で対等な関係に基づく契約ということが本当に成り立つのかどうなのか。事業者の側からいうと、これまでの措置制度のように、利用者本人というよりも役所の方の顔色を見ながら契約にかかわる話を進めていくようなことがあり得ないのか。私たちとしては、そういうことが非常にあり得るのじゃないかというふうに思っております。そういった意味でいいますと、これまでの措置制度と基本的にどこが違うのかという非常に不透明な点がありますので、その点についてもぜひ御審議いただきたいなというふうに思っております。  それと、私たち障害を持つ当事者現状からいいますと、現状では、所得保障整備ということからいいますと、非常に立ちおくれていると言わざるを得ません。  常用労働者の数というものが成人障害者の中ではまだ全体の約二割ぐらいの割合だと思いますが、そういった意味でいいますと、今所得保障制度整備の立ちおくれの中で収入保障というものが非常に立ちおくれている状況があるものですから、そういった状況の中で対等な関係に基づく契約関係事業者との間でどのようにできるのかということについては、非常に問題が多く残されていると思います。  本来、契約型のサービス移行するに当たっては、やはりそういった所得保障制度の抜本的な見直しというものがまずはもっと積極的に検討されて、その上で契約型のサービスへの移行ということが本人選択自己決定に基づいて行われていくべきではなかったのかなというふうに思います。その点についての検討は私たち印象では非常に不十分なままにとどまっていると思いますので、ぜひ今後の検討課題にしていただきたいと思います。  そういったことで、検討課題の中で代理受領方式にかわる例えばダイレクトペイということを私どもとしては考えております。そういうダイレクトペイという、バウチャー方式ですが、サービスにかかわる費用をそういったチケット方式の形にしてまずは本人提供されて、本人自身事業者との間でそういったチケットを管理しながらサービスを選んで決めていくというような仕組みづくりというものがぜひ必要なのではないかなというふうに思います。  もう一つつけ加えたいのは、代理受領方式にするのであれば、少なくとも法文上はそういうお金の流れについて本人同意を得てということがぜひとも前提として必要なのではないかと思いますが、ただいまの改正案ではそういった本人同意ということが出されておりませんので、ぜひそれも御検討いただきたいと思います。  扶養義務の問題については、私たちとしては、障害者本人が、利用者本人が自立していくためには、できるだけ早期に家族などの扶養ということから離れて自立した生活を営むための生活支援という条件整備が必要だと思っておりますので、扶養義務規定については削除すべきであろうというふうに思います。  それと、このたび大きな改正案になっております苦情解決仕組みについてでありますが、これについても非常にポイントを押さえてしか言えませんけれども運営適正化委員会というものが都道府県社会福祉協議会に設置されていくということになっております。  ただ、委員先生方御存じのように、社会福祉協議会というものは事業者団体事業者会員が非常に多い割合を占めております。そういった事業者会員が多く割合を占める社会福祉協議会のもとで、公正中立な第三者的な役割権限を持つ運営適正化委員会というものが本当に機能し得るだろうかという疑問を私たちは持っております。やはりそこは、地方公共団体都道府県などの監督責任ということを明記して、都道府県の条例だとか要綱などに基づいた第三者委員会というものを本来的には立ち上げて、そのもとでサービス利用にかかわる監督なり勧告をきちんとしていけるような権限を持った第三者機関というものがぜひ必要なのではないかなというふうに思っております。  最後に、指定事業者拡大の問題です。  私どもとしては、全国にただいま約八十カ所を超える自立生活センター当事者主体事業活動を行っております。これは、アメリカのバークレーというところで自立生活センターというものが一九八〇年のころに起こって、それをもとに日本でもそれが紹介されて、日本での当事者運動の非常に大きな取り組みになっておりますが、そういった当事者主体事業展開がされておりまして、そういった当事者事業展開サービス事業展開市町村指定で非常にできやすくするような仕組みというものがないと、やはり利用者本人障害者本人の本当のニーズに基づいたサービス提供といった観点からも、多様なサービス提供者参入というものがぜひ必要なのではないかなというふうに思っておりますので、ぜひそういったこともあわせて御検討をお願いできたらと思っております。  そういうことで、大変簡単で恐縮ですが、私ども問題提起とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手
  6. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、松友参考人にお願い申し上げます。
  7. 松友了

    松友参考人 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会常務理事松友でございます。  このたびは社会福祉基礎構造改革関連法案の審議に際し、参考人として発言の機会を与えていただきましたことに対し、関係各位に心より御礼申し上げます。  また、法案作成過程で幾度となく意見交換の場をおつくりいただいた厚生省担当官皆さんに、敬意と感謝の意を表したいと思います。私たちは、その真摯な対応により、今回の改革理解し、期待を持つことができました。  さて、私は、この関連法案が火急、速やかに可決され、新しい時代の法が成立することを強く願い、その気持ちを訴えるためにこの場に出向いてまいりました。  私たちの会は、知的障害児者を持つ親が中心につくるいわゆる親の会であります。全国市町村施設を単位に二千五百を超す地域の会があり、およそ三十二万人の会員がそこに属しています。全日本育成会は、その親の会運動全国本部に当たります。  私自身知的障害者の父親であります。ことしの夏に三十歳になる長男は、生後すぐに難治性のてんかんを発病し、医療ミスも加わることにより、重い知的障害をあわせ持ちました。本日は、親の一人として、全国の親を代表し発言したいと思います。  私たちが今回の改革とそのための法案を評価し期待するのは、知的障害者が置かれている現状が極めて厳しく、その抜本的な改革が必要だと考えるからであります。そのためには、従来のシステムが虚心坦懐に見直され、高い理念に基づく展望が提示されなければなりません。従来のスピードと発想では、現在の苦境を脱することは不可能だと考えております。  確かに、知的障害者福祉は着実に充実されてきました。そのことにまず感謝申し上げます。しかしながら、現状は決して満足できるものではなく、苦しみの本質は変わっておりません。およそ十万人の人は入所施設での生活を強いられ、四十九年前に私たち運動がスタートしたとき以来の課題である親亡き後の不安の解消はいまだ果たされておりません。  特に、地域において福祉資源が圧倒的に不足しています。どこに暮らし、どこで働き、だれが支えるのでしょうか。これらがすべて不十分であり、親の力に依存しているのが実情であります。そのため、みずからが高齢になり支える力が弱まった親による、成人した我が子を殺害する事件が各地で相次いでいます。確かな支えが早急に整備される必要があります。  親が中心になり、著しく不足する地域での日中活動の場として設立されたのが小規模作業所と呼ばれる無認可通所施設であります。全員就学が昭和五十四年に実現したにもかかわらず、卒後の場は全く不足しています。そのため、親たちはみずからの力でその場をつくらねばなりませんでした。その数は、現在では五千カ所を超えております。  しかし、無認可という理由により、国からの支援はわずかな補助金のみであり、ほとんどの作業所は経営的に危機に瀕しています。そのため、将来に対しても展望が持てません。しかし、小規模作業所に在籍する障害者は、認可の通所施設に在籍する総数を超えるに至っています。今や、小規模作業所存在抜き地域生活は語ることができません。  今回の改革、すなわち、法改正では、経営主体の大幅な緩和とともに、定員や資産要件緩和等による小規模作業所法内化社会福祉法人設立促進がうたい上げられています。多くの事業主体参入により競争が発生する不安が強調されていますが、私たちは、この小規模作業所法内化施設運営母体法人化促進する側面を高く評価いたします。  多くの親たちは、知的障害のある我が子がいることに大きな負い目を持っています。それは、福祉サービス利用するときの極めて屈辱的な体験の積み重ねが大きな原因の一つになっています。親、本人サービス選択が不可能であるばかりでなく、まさに一段下の位置から慈善としてのお恵みを受け取らなければならないのであります。  確かに、行政処分としての措置はある種の安心感を与えます。特に、これまで果たしてきた財政的な基盤を支える役割は大きく評価できるでしょう。しかし、サービス利用者としての自尊心を傷つけられるシステムは、自己決定自己責任に基づく市民社会においては耐えがたいものがあります。サービス利用者事業者が対等な関係に立ち、契約で進められるという今回の改革の最大のポイントは、ノーマライゼーションとリハビリテーション、すなわち、人間尊厳の復権という観点から高く評価できます。  今回の改革を評価し、関係法案の一日も早い可決成立を願う立場としても、多くの不安や疑問は否定できません。これらについては、厚生省担当者意見交換する機会に伝え、さまざまにシステム整備されました。しかし、完全にぬぐわれたわけではありません。ここに幾つかの点を指摘し、一層の努力と必要な見直し期待いたします。  まず、選択契約ができるほどサービスの量は足りているかということです。厚生省は、この不足状態を解消するためにも改革が必要だったと、事業主拡大法人化への条件緩和を進めようとしていますが、思うようにその成果が上がるでしょうか。  次に、契約する前にそのサービスの内容が伝えられ、理解できるだろうかという問題があります。福祉サービスはかなり複雑なものです。特に、判断能力が不十分な人の場合、うまく契約ができるでしょうか。改正法では、情報公開の義務づけや地域福祉権利擁護事業及び相談事業制度化が打ち出されています。また、民法改正による成年後見制度もスタートしました。問題は、これらの制度がうまく機能するかということであります。  第三は、サービスの質の確保です。行政の監視が弱くなる中で、高い質をどのように保つのでしょうか。厚生省は、苦情解決システムの創設や評価基準の提示による自己チェック、あるいは第三者評価システム等を考えており、その準備も進んでいます。しかし、大した罰則規定もないこれらのシステムで、果たしてうまくいくでしょうか。  第四は、障害の重い人や過疎地に住む人への配慮です。契約システムの中で、ある面では処遇的に困難な人や地域が不利にならないようなシステムは完備されているでしょうか。切り捨てがあってはなりません。  さらに、ただいまの四に関係することですが、障害定義認定はどのようになるのでしょうか。知的障害者福祉法における知的障害定義は、今回も見送られました。介護保険においても問題になっている認定は、正確になされるのでしょうか。  加えて、自己負担分を可能にする所得保障の問題です。既に現在の制度でも、グループホームでの生活を見ると、保護者の財政的な援助なしでは不可能であります。ほかの多くのサービス利用が無料か低額であり、さらに本人等の賃金での収入が厳しい現状を考えると、この問題は大きなものであります。  最後に、五年ごとの見直し規定をぜひとも明文化していただきたいと思います。法律時代とともに修正が必要であり、既に前述のとおり、多くの課題を抱えています。実践と修正を重ねながら、よりよい法律に近づけていただきたいと思います。その意味でも、現在提案されているこの法案は緊急に可決いただきたいと思うのであります。  短時間ではありましたが、私の意見を述べさせていただきました。御静聴ありがとうございました。(拍手
  8. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 江口一雄

    江口委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸井田徹君。
  10. 戸井田徹

    戸井田委員 自由民主党の戸井田徹であります。  各参考人には早朝から本当にありがとうございます。  十分という時間でありますから、いろいろ考えてきたんですけれども、今ずっとお話を聞いておりましたら、いろいろ自立という言葉が出てきました。私自身も、特に社会福祉事業ということに関しては自立できる体制をどう組んでいけるか。そして、障害者自身もこの世の中に生まれて、現実に自立度、ゼロと言えるのかどうかわかりませんけれども、可能性として生きている限りは〇・幾つかでも自立しているんだと私は思うわけですね。それから、一〇〇%の自立までの間のどこに自分がいるのか、そして、その足りない欠けている部分というかその部分をどうやって支援していくかが社会福祉であり、同時に社会保障だと思うわけですね。それは、健全な人間であっても、五体満足であったとしても、やはりどこか欠けている部分がある。そうすると、自分の活動ができなくなったときに、社会制度の中でどうやって支援をしてくれるか、その社会制度がしっかりでき上がっているかどうかというのがこれから問われていくことだと私は思うわけですね。  そうやって考えてみますと、私の知り合いに、過去、社会福祉事業をやっていて、何とか普通の社会で普通の企業と同じように一緒に競争していけないか、そういう中で努力してきた人というのは実はたくさんいるんですね。しかし、どこかで必ずぶち当たって、思い遂げずにやめてしまったり、今現在の流れの中で甘んじているという人がいるわけですね。だけれども、ただ一人だけこれを乗り越えていった。  自分たちの中でもってある一つの公園をつくって、もともとは老人ホームがスタートだったわけですけれども、そこから施設をふやすと同時に、自分たちの土地の中にいろいろな——年寄りとか障害者というのは海外旅行に行こうと思っても行けない、行けないんだったら海外からそういうものを自分の土地の中に持ってきてつくってしまったらいいじゃないかというようなことでもって、中国の磨崖仏だとか万里の長城だとか、兵馬俑を千体ほど輸入して、それをそのまま実物をつくってしまうわけですね。  そういう施設をいっぱいつくっていくうちに、そこに観光に来る人がふえてきて、年間十五万人ほど来るようになってしまう。そこの売り上げというか入場料を全部その施設の方に使うようにして、同時にそこで働いている人はみんな障害者、まだそこまで確立されていないのですけれども、そういうことを考え出してやってきた人がいるのですね。多分この事業は、本当に事業そのものが自立するのじゃないかな、社会福祉施設としてとらえたときに、社会福祉施設そのものが完全に自立して社会福祉事業をやっていけるんじゃないかな、そんなことを実はその人がやっているのを見ていて思ったわけですね。  これからの社会福祉事業というのは、まさにそういうふうにして一般社会の中においても対等に戦っていけるような、そして、知的障害者も含めてその施設の中に抱え込んでしまうような、そうしたら、その中でみんなが安心して生活していけるのじゃないかな、私はその事業を見ていてそう思ったのですね。こういうことがこれからどんどん可能になってくるのがこの法案じゃないかなという気がするのですけれども、感想でも結構ですので、松友参考人の方から、今のことに関してどういう感想をお持ちか。
  11. 松友了

    松友参考人 今の具体的に先生がお示しになった社会福祉法人の実践はちょっと存じ上げておりませんので、一般論といいますか、お話しさせていただきます。  私は親でありまして、親の会運動ですが、今、親の会そのものがあるいはその影響のもとに各地に社会福祉法人を経営しておりまして、私自身も東京の郊外で小さな法人の理事長をさせていただいております。  今御指摘のありました先生の御提案は、私は二つの面で整理して理解する必要があろうかと思うし、そういう意味では、先生の御指摘は大変示唆に富んでいるのではないかと思います。  といいますのは、一つは、障害者自身の置かれているあるいは障害のある方々社会的な位置についての理解ということと、その方々に対する援助をする法人のあり方ということはおのずから分かれるだろう。先生の御指摘は後者について、すなわち、援助をする社会福祉法人自体がもっと自由にさまざまな可能性と努力と創意工夫をしてやるべきであるし、今回の法改正によってそれが可能ではないだろうかという御提案かと思います。私は、それについてはまさにそのとおりだと思います。  私たち社会福祉法人は、ある面では非常に支えられ保護されて、そのことが非常にいいサービス提供できる面もありましたが、逆に、特に地域の中、社会の中で創意工夫してもっとさまざまな事業を展開するにおいては若干規制もあった。そういう部分については今回の法改正によって可能性が広がってきたという意味でも私たちは評価し、その可能性にかけてみたいという意味で、先生の御指摘はそのとおりではなかろうかと思っております。
  12. 戸井田徹

    戸井田委員 金参考人にお伺いしたいのですけれども、今の御意見をずっと聞かせていただいておりましたら、非常に障害者の先頭を切って走っているような雰囲気があるわけですね。多分、その自立度ということから考えてみると、どの辺におられるのかわかりませんけれども、ある意味で自分の意欲というものは一〇〇%に近いところまで行っているのじゃないか。逆に言ったら、自分の障害というものを除いて、障害者の仲間を引っ張っていけるような雰囲気を感じたわけであります。  今まで社会福祉事業の中でも例えば小規模作業所であるとかそれぞれ社会福祉関係のいろいろな施設がありますが、みんな割と単独でできているケースが多いのですね。それはそれなりに理由があったのだろうと思うのですけれども、私が今申し上げたところは、そういったものが全部いろいろなところから寄ってきて、年寄りもいれば子供もいる、障害者もいれば視力障害者もいる、いろいろな人たちがいて、その人たちがそれぞれお互いの欠ける部分というか不足する部分というかそういうところを補い合いながら生きている。今度はその中に、一般の人たちもその土地の中に入れて、住宅の中でもって住んでもらう、そんなことを考えているのですね。  多分目指しているところはまさにノーマライゼーションの社会だろうというふうに思うのですけれども、そこにいろいろな人が寄ることによって初めて見えてくる部分は実はたくさんあると思うのですね。そういう中でもって能力が発揮できるものはあると思うのですね。そういうものを引っ張り出してくるのが今回のこの事業法の改正でなければいけないと私は思うのですけれども、そういうことについて御感想が何かありましたら、金参考人に。
  13. 金政玉

    金参考人 基本的には、今委員の方でおっしゃられた考え方と私も同じだなと思っております。  私たちが特に問題にしたいのは、従来入所施設というものが、この二十年、三十年ぐらい前からの施策としてどうしても収容型の入所施設になってきた、そういった形で展開されてきたということをまず問題にさせていただいておるということであります。私たちは、収容型の入所施設から地域開放型の小規模型の施設に早く転換していくような施策をぜひともしっかり講じてほしいということから、さまざまな活動を展開してきております。  このたびの事業法の改正案の中でも、社会福祉法人の要件緩和というものがあるかと思います。それ自体、一千万ぐらいの自己資金があれば社会福祉法人格の取得ができるようにというようなことも含めて検討課題になっておるようなんですが、基本的には地域住民参加型の地域福祉計画というものが、この改正案でも言われていますし、その中身がこれからぜひきちんと検討されていく必要があると思います。  ただ、私たちは、問題としてあえて申し上げたいのは、現在、障害者基本法に基づく障害者基本計画というものがあります、これは地方自治体の場合は努力義務で策定することになっておるのですが、今現在でもたしかまだ半数の地方自治体が障害者計画の策定にまで至っておりません。そういった障害者計画というものがきちんと生活状況にかかわるさまざまな課題に取り組む施策として地方自治体レベルでつくられていって、そういったものの上に立って地域福祉計画というものが策定される必要があると思っていますので、そういった枠組みのもとで、今委員の方で御指摘された住民参加型の開放的な事業展開というものが具体的になされていくということがぜひとも必要なのではないかなというふうに思っておる次第です。
  14. 戸井田徹

    戸井田委員 もう時間が来ました。河西参考人に一つ質問したかったのですけれども、時間ですので、これで終えさせていただきます。ありがとうございました。
  15. 江口一雄

    江口委員長 土肥隆一君。
  16. 土肥隆一

    ○土肥委員 おはようございます。民主党の土肥隆一でございます。  きょうは、三人の方、本当に早朝からありがとうございます。十分間ですから絞ってお聞きしたいと思うのであります。  先ほど松友参考人の方から、やっと措置時代から利用というか選択時代に入ったのだ、こんな喜ばしいことはないというふうにおっしゃったわけでございまして、私は、今回の法改正は、そういう意味では戦後福祉構造の本当に基礎構造改革であったというふうに思うのです。だけれども、その後うまくいくかなということがこれからの課題でございます。  それと同時に、ここで言われております、金さんがおっしゃった障害者の「能力に応じ」というところとひっかかってくるわけでありまして、この能力に応じというところは私も非常に悩ましい言葉でございまして、例えば人間を能力に応じて見くびってしまうとか見限ってしまうというようなこともあるわけですね。ああ、この人は知的障害者なのよとか、この人は寝たきりなのよとか、そのほかの機能は全く配慮しないところがあるわけですね。  最近、言語能力をなくした方がコンピューターによる文字の選択や読書が可能になって文字を学ぶことができるようになって、実はすばらしい哲学的な思想を独自の領域から発表なさったという障害者の話をお聞きしまして、ちょっとその本の名前は忘れたのですけれども、つまり、能力に応じというのは、外から見て能力があるとかないとかという話であって、ここがやはり一番問題だろうというふうに思います。  しかしながら、その環境、年齢及び心身の状況なんというのを言いますとこれまたいろいろなファクターが入ってきて難しくなって、自立支援をどうしたらいいかというところは、私は、その人に着目するという程度でいいのであって、能力とかほかのことは言わない方がいいのじゃないかというふうに思っているのですね。したがって、何か授産所であれば一般企業並みに働かなければいけないとか、極端な場合はこの人を治療してやるのだみたいな感じの、まだ知的障害者の児童施設なんかには治療なんという言葉が残っているところがありまして、問題だと思うのであります。  そういう能力という問題については、これから現場でそうした偏見みたいな、一種の思い込みみたいな、それも周りの人の思い込みみたいなものをどう取っていくかということでございます。  金さんにお伺いいたしますけれども措置が解けて利用選択という時代に入って、皆さんの活動がこれからより活発に、そして障害者権利をきっちりと主張できる時代がこの法案で来るとお考えですか。
  17. 金政玉

    金参考人 非常に根本的な問いかけのようなことだと思うのですが、率直に言いまして、このたびの法律は、いい言葉というか文言が非常にたくさん並べられている法律だと思います。ただ、私どもは、現状を考えますと、先ほど松友参考人のおっしゃられたこととも重なるのですが、基盤的な条件整備というものがやはりまだまだ余りにもできていないのじゃないかという現状認識を持っているというのが率直なところです。  そういった意味でいいますと、先ほどの理念の問題にもかかわることになりますけれども、私たちは、その環境の要因というものをあえてもっと考えてほしいというふうに申し上げたのは、やはりその点になるかと思うのですね。  これはかなり抽象的な言い方になるかもしれませんけれども、私どもとしては、昨年八月時点で諮問書が出されたときには、てっきり社会福祉増進にかかわる法律案なんだろうなというふうに思っていたわけですね。そういった意味では、社会福祉事業者にとっての条件整備というものが、それなりにこのたびの改正案では大きな柱立てとしてなるだろうと思ったのです。  ただ、ふたをあけて、いざ見ますと、社会福祉法というふうになっております。社会福祉法となりますと、また話が違ってくるのではないかなというふうに思っていますので、そういった意味では、サービスを受ける利用者側に立った理念規定というものがもっと明確に、憲法との関係、幸福追求権との関係も含めまして、そういった観点からのまた見直し、審議がぜひとも必要になってくるのではないかというふうに思うのです。そういった意味でいいますと、余計にその基盤的な条件整備というもののしっかりとした検討が必要なのではないかなというふうに改めて思っております。
  18. 土肥隆一

    ○土肥委員 おっしゃるとおりだと思います。  つまり、この法案は半分事業法なんです。半分将来の福祉を見通した福祉法と言ってもいいくらいで、ある意味で経過的というか、中途半端といえば中途半端ですけれども、これから五年後なら五年後に、本当に福祉法、日本福祉の全体像がきっちり浮かび上がるような、それが事業支援費というものとマッチングした制度にしていかなければならないというふうに私は思っております。  松友さんにお尋ねいたします。  知的障害者の場合は、重度、それも私に言わせれば超重度、この皆さんが実は施設からも排除されているわけです。余りにも重いがために施設で見られないというわけですね。これは、今までの措置費体系が、重度加算はございますけれども、重度もその他の方も押しなべて一人当たりの措置費が決まってくるわけでありまして、こういう決め方をする限りは施設が重度の方を積極的にお迎えすることはできない。  私、きのうも委員会で質問をしたのでございますけれども、そういう意味では、超重度ほど家庭にいる。そして、ほとんど寝ないで子供を見ながら過ごしている奥様やお母さんがいらっしゃるわけです。父親もいるかもしれませんけれども。そういうことから考えると、今度はサービス利用するんだ、契約して選択してというふうに言うのですけれども、この社会福祉施設、特に知的障害者施設施設体系が変わらないと今申し上げたようなことも実現しないというふうに思うのでありますが、松友さんの現場の方からのお考えをお聞きしたいと思います。
  19. 松友了

    松友参考人 まさに御指摘のとおりだと思います。  私たち理解では、我が国における知的障害者福祉においては、特に入所施設、これは更生、授産、両方とも中軽度を対象とした制度であります。これは二つとも訓練施設でありまして、先ほどもありましたが、いわゆる治療教育を含めた訓練をして一丁前にして、社会の中で一人で生きなさいという基本政策で進められている。ですから、超重度はもちろんでございますが、強力な援助が必要な重度の人の場合、ほとんど見捨てられてきている。  ですから、当然ながら、重度加算等があったとしても、常時医療の介護が必要であったり、あるいは激しい行動障害があって、それを私たちは特別なニーズを持つ人とも言うわけですが、そういう人に対する特別な支援体制がない中で本当に切り捨てられてきた。これは本当に御指摘のとおりであるし、これが今度の法改正でどうなるだろうかということで私たちも大変不安に思います。  これを解決するのは、やはりそういう人たちのニーズに応じた、言うなれば財政的な部分が認められるかどうかにすべてかかっているのじゃないだろうか。本当に大変なケアが必要な人に対して、それに応じただけのきちんとした財政的な体制があって、それを基本にして進めていけば、逆に言うと、表現は大変おかしいのですが、施設においてもお客様として大変歓迎されて迎えられるだろう。  これは、現に重症心身障害者対策とか別の意味ではもう既に行政もなされておりますので、そういう意味では、この重度知的障害者の対策等において、先生の御指摘のように、施設体系あるいは施設をつくった理念、これは逆に言うと地域においてもその方の能力が低いというのではなくてまさに手厚い援助が必要だという視点から、ぜひ手厚い財政的支援をつくっていただく方向に展開いただければというふうに願っております。
  20. 土肥隆一

    ○土肥委員 もう一つ質問させてください。  河西さん、今度の法改正盲導犬訓練事業が入ったということは大変うれしいことだと思います。私、一つ提言があるのです。世はまさにペットブーム。核家族化、老人が孤独な生活をしているときに、ペットが非常な慰めになっているのですね。行き過ぎたペットブームもございまして、大体、糖尿病、肥満、かわいがり過ぎ、あげくの果ては剥製にして家の中にたくさん並べていらっしゃるのです。  私が言いたいのは、盲導犬協会では、盲導犬というのは非常に能力のすぐれた犬だと思うのですが、そうではなくて、能力が劣っていても老人家庭に配るとか飼ってもらうとか……。それはいろいろな方法はありますが、動物の飼い方、獣医さんや何やいらっしゃいますけれども、広く、世はまさにペットでしか慰め手がいないような人がたくさんいるわけでありまして、そういう分野の事業も視点に置かれてはいかがでしょうかということを一つ提案して、御答弁ください。
  21. 河西光

    河西参考人 今ペットブームでありますが、私どもも、盲導犬になった犬は視覚障害者の方に行くのですが、途中で盲導犬にならなかった犬もいるわけです、そういった犬を老人ホームにプレゼントしたりしています。  また、中部盲導犬協会ではPR犬というのもいるのですね。視覚障害者にお渡しするにはぎりぎりでちょっと無理だけれども、学校へ行っていろいろなことを実演したり、そういった分にはいいという犬もいるのです。そういった犬を、やはり老人ホームに行ったり学校に行ったり、または一般家庭に差し上げるということをしております。  反対に、老人ホーム等を訪問したり、また差し上げた分に関しては、そこの寮母さんたちも、今まであんなに笑ったことはなかった、話しかけたことはなかった、ああいうふうな笑顔を見たことがなかったというふうに、その方が変わってきます。ですから、そういった意味では盲導犬にならなかった犬でそういった効果があることも確かですし、反対に、いろいろな家庭で、また一般の方が、そういうふうな運動でホームを訪問したりそういうことをなさっている方もいます。  もう一つだけ言いますと、例えばこれはイギリスの例なんですが、北海道と同じぐらいの寒さです。ひとり暮らしの老人の方ですと、暖房をつけない方がいて、凍死をするそうです。しかし、小鳥でも犬でも飼っていると、その犬のため、動物のために暖房をつける、そのために凍死がなくなる。それから、表にえさを買いに行くとかいろいろありますから、体を動かす。または、途中でワンちゃんかわいいですねと言われることによって、社会とのつながりがある。そういった面で健康で長生きできるというふうな統計もございますので、そういった意味ではぜひやっていきたいと思います。  ありがとうございました。
  22. 土肥隆一

    ○土肥委員 委員長、時間オーバーをお許しください。
  23. 江口一雄

    江口委員長 福島豊君。
  24. 福島豊

    ○福島委員 公明党・改革クラブの福島でございます。  参考人の皆様には、本日、大変お忙しい中、貴重な御意見を承りましたことを御礼申し上げる次第でございます。  まず初めに、河西参考人にお尋ねをしたいと思います。  先ほど土肥委員からもございましたように、この法律というのは半歩前進といいますか、基盤的な条件整備が追いついていかなければ余り意味がないというお話がありました。盲導犬もこの法律の中で社会福祉事業にきちっと位置づけられたわけでございますが、しかし、実際には育成を図っていくためにはさまざまな財政的な支援も必要でございますし、そういう基盤というものが本当に整っていかなければ、入っただけではいかぬと私どもも思っております。  先ほど参考人から若干の御説明がございましたけれども、具体的に盲導犬の育成には一体幾らぐらい費用がかかるものであって、そして国または行政からの支援というのは現状においてはどの程度なされているのか、またどういう形でなされているのか、この点について御説明いただければと思います。
  25. 河西光

    河西参考人 盲導犬の育成のシステムにおける資金的な問題ですが、これは、日本で八施設が今盲導犬訓練をしておりまして、もう少しするともう一施設ふえるかもしれません。全体的には、財団法人と、一施設社会福祉法人で経営しておりますが、その多くは寄附や募金を財源としております。もちろん、厚生省障害者の明るい生活促進事業という中でも盲導犬の助成はされていまして、それが県とか市を通じて来ます。大体一頭当たり三百万ぐらいかかるのですが、例えば名古屋市の助成でいえば、一頭当たり百万円の助成ですから、あとの二百万円はそういった寄附や募金に支えられているというような状況でございます。  そういった中では、これから盲導犬がどんどんふえるという部分では訓練士の養成というか、そういった部分では人件費の問題とか、そういった解決する問題はたくさん抱えているわけです。
  26. 福島豊

    ○福島委員 実際には、関係者の皆様の大変な御努力で支えていただいているんだということが、今のお話からもわかりました。そういう財政的に大変厳しい中でございますから、当然、訓練士の方も、人件費も含めてそれほど高い水準にないんだろうなというふうに私は想像いたします。  盲導犬の数をふやしていこうと思えば訓練士の数がふえなければいけないわけでございまして、その処遇の改善ということが当然必要だと思いますけれども、この点について、訓練士の方は実際どういうお気持ちで働いておられるのかというようなことも含めて、御紹介いただければと思います。
  27. 河西光

    河西参考人 訓練士の処遇ですが、日本財団の調査もあったわけですが、基本給でいけば、平均が大学卒で十五万三千円ぐらい、高卒で十三万ぐらいが初任給になります。一般の社会福祉法人の給料と比べますと、大体三万から五万ぐらいの開きがあると思います。  しかし、現場の訓練士たちは、視覚障害者の人たち社会的自立、安全に誘導するように自分たち訓練をするんだということに誇りを持って、ある意味で、犠牲ではなくて奉仕というか、非常にそのために喜びを持っているわけですが、やはりそういった処遇の問題は早期に解決しないと、非常に将来の望みがない、夢がないということにもなりますから、我々も処遇の改善には努めているところです。
  28. 福島豊

    ○福島委員 また、今回の社会福祉事業法改正で、社会福祉法に変わるわけですが、盲導犬についてはきちっと訓練施設が位置づけられる。介助犬ということを中川委員も大変御熱心にやっておられまして、検討会を設置するということになりましたけれども、次々と新しい分野が開けているわけでございまして、そういうものを適時適切に法律の中に位置づけて、先ほどもありましたように、社会の中での認知度を高め、しっかりと育てていくことが必要だと私は思います。介助犬も含めまして、参考人の御意見をお聞きできればと思います。
  29. 河西光

    河西参考人 犬というか動物が人間の社会の中で大きな手助けをしているという部分では、盲導犬も介助犬も同じだと思います。まだ日本では始まったばかりで、基準をつくったり、きちんとした整備がなされれば、それなりの発展も、理解もされると思います。
  30. 福島豊

    ○福島委員 次に、松友参考人にお尋ねをしたいんですけれども、五年ごとの見直し規定を設けるべきであるという御意見でございました。私も非常に同感をいたしております。  実際に法が施行された後にどうしていくのかということが非常に大切だと思いますが、この見直しに向けてどういうところを一番我々は注視して見詰めていかなければいけないのか、この点について御意見をお聞きしたいと思います。
  31. 松友了

    松友参考人 先ほど六点ほど問題提起しましたが、私たちが一番心配しているのは、サービスの質が落ちないだろうかということでございます。  今でも知的障害施設等ではしばしば人権侵害等の問題が起こっておりますが、これに対してさらにいろいろな業種というか事業主も入ってきますし、そういうことを含めて、さらには、経営主体の努力ということも迫られていく中で、サービスの質が落ちないようにしていくことが一番大きいかと思っておりますし、それについていろいろな厚生省等の制度が機能するかどうか、これは先ほど金さんもおっしゃっていましたが、その制度の機能状況もチェックしながら、そのあたりが五年後にまた見直さなければいかぬ一番大きいところかなというふうに考えております。
  32. 福島豊

    ○福島委員 この質の問題は、私も全く同感でございます。介護保険もスタートしまして、そのサービスの質が一体どうなるのかというようなことも含めまして、これはきちっとしたフォローをしていかなきゃいけない。  最後に、金参考人にお尋ねをしたいんですけれども第三者機関が必要であるということでございますけれども、今回の法律の中にはきちっと運営適正化委員会というような位置づけがありますけれども、しかし、それは第三者ではないという御指摘だったと思うんですね。  私は、どちらかといいますと、むしろ民間のサイドからそういうものを主体的に立ち上げていって、評価をしていくというような動きが大切なんじゃないかというような思いもいたします。本当に利用する障害者立場に立った評価をきちっとしていく、そしてまた、その情報発信をしていくことによって、福祉サービスの質そのものを変えていくというような動きが大切なのではないかと思いますが、このような考え方について最後参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  33. 金政玉

    金参考人 ただいま福島委員の方から御指摘されたことについては、全く同感であります。  私たちも、障害を持つ当事者の方、関係者の方からの相談活動をやっておりまして、いわゆるNPO活動の中でこの権利擁護活動というものを不十分ながらでもやっておるんですが、その中でも本当にもっと非常にすそ野の広い問題でして、何が権利侵害なのか、どういうことが本当に苦情なのかというのは、両者の言い分がそれなりにあるわけです。そういった意味では、事業者事業者の言い分が当然あるわけです。  そういったことはあるんですけれども、やはり利用者の側に立って、そういった切り口から事実関係を整理して問題をきちんと解決をしていくための努力というのは、現在の都道府県社協の運営適正化委員会の枠の中だけではどうしても限界がある。もっと多様な、そういう権利擁護活動を行っている方々の連携の体制というものが、それも基盤的な条件整備の中にしっかり位置づけて具体化されていくような提案がされていかないと、形だけのものになってしまうおそれが非常にあるかと思います。  その連携のあり方については具体的な仕組みの問題として考えるべきだと思いますし、それをぜひ私たちも考えていきたいと思いますし、この場でも御審議を積極的にお願いできればというふうに思っております。
  34. 福島豊

    ○福島委員 時間になりましたので質疑を終わりますが、今後も参考人の皆様の御意見を踏まえて頑張ってまいりたいと思います。  ありがとうございました。
  35. 江口一雄

  36. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  きょうは、参考人皆さん、大変御苦労さまでございます。  私は、まず最初に御三方にお聞きしたいと思います。  今回、社会福祉事業法の改定の大きな理由に、与えられる福祉から選択できる福祉制度に変えるんだという御説明があるわけですね。今まで、今お話ありましたように、選択できる場合でも、その前提である豊かなサービス施設、こういうものがなければなかなか選択できないという問題があると思うんですね。  その点、今、日本障害者施設サービス地域サービスがどういう状態になっているかというと、なかなか大変な状態もあります。障害者プランそのものでも、先ほどお話ありましたように、二二%の自治体でまだ計画もない。都道府県でも数値目標のないところもある。全国の自治体で、数値目標がない自治体は四分の一あるわけですね。こういう状態で果たして選択できるのかどうか、逆に障害者選択されてしまうことも出てくるんじゃないかという不安もあると思うんです。この点、いかがお考えか。  それから、障害者プランそのものも私たちは不十分だと思っていますが、その障害者プランもなかなか進んでいない実態がある、一体なぜそうなっているのかということについてどのようにお考えか、この点をまずお伺いしたいと思います。  河西参考人金参考人松友参考人、御三方にお願いいたします。
  37. 河西光

    河西参考人 情報の提供サービスということですが、盲導犬のことに関して言えば、今のところ、十分なサービスとか情報の提供ができていないのが現状です。  例えば、すぐにでも持ちたいという方が四千八百人ほどおります。今、日本では八百五十三頭の盲導犬視覚障害者とともに活躍しながら生活をしているわけです。そういった中で、今現在盲導犬を持ちたいという方が、各施設に約五十名ぐらいずつ待機者がいるわけですが、各盲導犬協会とも、多いところで三十頭ぐらい、少ないところで十頭から十五頭ぐらい盲導犬を年間貸与をして、八施設では年間で百三十頭ぐらい貸与をしているわけですが、しかし、まだ待機者が何年も待たなければいけないという現状もあるわけです。ですから、選択をするとか、申し込んでも盲導犬が十分にその視覚障害者のところに行くまでには時間がかかっているのが現状ですから、そういった意味サービスができているかといえば、まだまだできないのが現状だと思います。  それから、外国との比較でいけば、イギリスでは四千頭の盲導犬が活躍しています。しかし、人口は日本の約半分だと思います。そういった中で、やはり盲導犬普及が、日本でも、要は申し込んだ方にすぐに対応できるというふうな体制を整えることが十分なサービス提供ということになるのだと思いますが、まだ盲導犬については残念ながらそういった体制にはないということです。
  38. 金政玉

    金参考人 今委員の方で御指摘されたプランの問題については、私たちも非常に大きな課題であろうというふうに以前から認識しております。  障害者プランそのものの実施状況が、まだまだ非常にそれ自体が不十分である。それはなぜなのかということですが、私たちからいいますと、障害者プランそのものが各省庁にまたがっております。交通アクセスの問題から障害者雇用の問題から、厚生省だけの所管でない課題が省庁にまたがっておりますので、そういった意味では、実施そのものがなかなか統一的に足並みをそろえてできないことになっているかと思います。いわゆる省庁の縦割り型の弊害というものがこういったことにも出てきているのかなというふうに私たちは思っておるのですが、私たちとしては、基本的に、きちんと権限を持って総合調整できるような部署がどうしても政府の中に必要であろう。このたびの省庁再編のもとでは内閣府というものができるというふうにお聞きしていますが、少なくともそういったところでの調整機能、取りまとめていく機能というものがこれから必要なんじゃないかなというふうに思っております。  それと、あと自治体レベルでの障害者計画については、先ほども私御指摘させていただきましたけれども、本当に立ちおくれている。そういった中で、地域福祉計画というものは本当にどうなるのかということが不安であります。そういった意味で、もうそろそろ努力義務、要するにできるだけ検討しなさいというようなことじゃなくて、自治体としてはこれからの事業法改正に伴う取り組みの中で本当に義務規定としてまずは策定をきちんとやるということになっていかないと、せっかくの事業法改正もやはり中身のないものになってしまうおそれが非常にあるのではないかなというふうに思っております。
  39. 松友了

    松友参考人 先生の御質問は二つであったかと思います。一つは今回の法改正サービスが大きく飛躍するのかということと、二点目は市町村障害者計画が進まないのはどういう理由だと考えるかということかと思います。  まず、非常に厳しいサービス現状が今回の法改正でもって大きく広がるか、逆にサービスをこっちが選ぶどころか選ばれるのじゃないかと。これは将来の話じゃなくて現状がそうなんです。もう既にそうなんです、五十年間一生懸命やってもそうなんですね。私は、かなりこの二十年間行政もいろいろな形で力を入れていただいたと思うのですが、この実態、この根本のシステムは変わってない。ですから、今度それが構造改革が成ったときに飛躍的に拡大するだろうかどうだろうかということについては、私は拡大する可能性にかけています、その可能性を期待したいと思っております。それには、先ほど言いましたようなサービスの低下であったり、いろいろな問題の副作用をはらみながらも実施主体の拡大であるとか、そういう一気に間口が広がるという意味においては量的な拡大に行くのではないだろうか。あるいは、それぐらいのドラスチックな前進をしていかないと、もう我々は待てないというぐらいの状況がある。ですから、サービスのチェックが必要だというふうに申し上げました。  二点目の市町村障害者計画等が進まない、これはいろいろな理解があろうかと思いますが、私は、一つには障害者問題に対する国民あるいは行政全体の比重が低いのかなという感じがします。高齢者問題というのは、これは高齢性障害者の問題でありながら、年齢的に分断され、全然連続性がないことから見ても、何か特に発達障害等については別格に特化し、排除するという形の国民的、全体的な風潮あるいはシステムそのものが、地方自治体においても取り組みの弱さになろうか。  しかしながら、やはり一番の弱さは、福祉事業福祉システム市町村中心にやるんだというシステムにまだ少なくとも知的障害はなっておりません。ですから、特にスウェーデンとかいろいろな国において地方自治体が具体的なサービス生活支援の主体になるんだという形に切りかえられ、そして、もちろん私たち当事者団体におきましても、その地域で参加しつくり上げていくという形の動きが出れば、これもドラスチックに変わっていくだろう。そしてまた、そういう社会を、中央集権的な期待感、霞が関を期待するというシステムから、地元の地域をつくるんだという中で地域行政もドラスチックに変わるのだろうと思うし、今回の法の中ではその方向性が提案されているという意味で、そこにもかけたいというふうに思っております。  以上です。
  40. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 最後に、河西参考人にお聞きします。  今の盲導犬状況は、大変施設数が足りないという問題なんですけれども、現在の希望者などを考えましたらどのぐらいの施設数が必要になってくるのかという問題と、盲導犬利用の費用、今訓練施設利用する場合に今回の提案で無料または低額の料金でという形になっていますが、これをどう考えているか、お聞かせいただきたいと思います。
  41. 河西光

    河西参考人 盲導犬が今全体的にどれぐらい必要かということですが、実際に今八施設、もう少しで九施設になると思うのですが、その施設を充実させればいいことだと思います。都道府県全部に盲導犬施設があるということではなくて、今の施設を拡充するというか、そういった中で訓練士の養成であるとか、繁殖犬から訓練犬を多くするという部分でいけばいいのです。  それから、そのための訓練士実習生も含めて訓練に従事する者は全国で約六十人ぐらいおります。しかし、今現在、盲導犬自体を訓練しても、盲導犬になるのは確率的には五割ぐらいなんです。四割から五割ぐらいです。ですから、十頭訓練しても四頭から五頭ぐらいしか盲導犬にならないのですね。そのためには、例えば繁殖犬、いい盲導犬になるための繁殖の研究をして、この犬同士から生まれたものは八〇%は訓練できる、また非常に訓練能力もあるといった犬をつくり上げて、その中で各訓練をすれば非常に能力が確率も高くなりますね。だから、今、例えば六頭ぐらいずつみんな担当していると思いますが、その中でなるのが三頭ぐらいなんですね。  ですから、そういった意味では、一つは盲導犬になる質のいい犬をつくっていくということが大事だと思います。その上で、今六十人いても、大体三年しますと実習生の約四割ぐらいですから、六割ぐらい退職をしてしまうという非常に定着率の悪さがあるものですから、そういった処遇的な問題も含めて解決しながら、百名程度の訓練士が必要になってくると思います。反対に、訓練士ばかりではなくて、繁殖の専門の者がいたり、犬舎を管理する者、それからアフターサービスですね、実際に盲導犬を持った方が地域で何か困ったりしたことがあった場合には、それに飛んでいって相談業務をするような人たちも必要なわけで、そういった人員も含めた人員の整備が必要だと思います。  ですから、今いろいろなところに施設をこれ以上つくるというよりは、今の施設を拡張して、その内容を十分に充実させることで対応ができると思います。  以上です。
  42. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 どうもありがとうございました。
  43. 江口一雄

    江口委員長 吉田幸弘君。
  44. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 保守党の吉田幸弘でございます。  本日、三名の参考人の皆様から貴重な御意見を伺うことができまして、本当にありがとうございます。  私は、この法案、さらにまたこの委員会で扱う法案に関して、よく迷うところがございます。その迷うというのは、例えば医療関係法案であれば病気を持った方の気持ち、今回の場合であれば障害を有した方々の気持ちというものはどのようなものであるのかと。  また、私が小学校のころ、ある表彰を受けたわけであります。ただ、その表彰を受けたのは、自分では柔道大会で優勝したからもらったのかな、そういうふうに思っていたものが、十何年たって新聞を見たところ——私は障害を有した友人の子をおぶった。図書館へ行ったり、あるいは運動場へ行ったりするときにおぶったわけです。小学校のころから非常に体が大きかったものですから、何げなくそういうことをやっていたわけです。別にそれが評価を受けるとかそんなことは全然わからずに。本当に自分でもびっくりしたわけです。それこそ、先ほど申し上げたように、柔道大会の結果とかそういうものでいただいたというふうに思ったわけです。  何が言いたいかというと、あるときに人間は、障害を有した方と健常者を、言葉は適切ではないかもしれないのですが、差別ではなくて区別をするようになる。その人たちに対して健常である人たちは何をするべきなのか、これはしっかりと自覚をしなければならないわけです。教育の問題も含めて、今後新しい時代に向けてやっていかなければいけないと強く私自身も思うわけでありますが、実際のところ、障害を有した方の立場に立って、自分たちはどのように考えて——これは余りにも漠然として質問の意図が伝わらないかもしれませんが……。  健常者の人と比べて、こういうことに対して不満ではないものの自分自身心配するところがあるとか、本来一緒なのにとか、今まで三人のお話を伺っていますと、金さんなんかは対等という言葉を使われました、また、松友さんは人間尊厳の復権というような言葉を使われたわけです。ですから、健常者から見たことではなくて、障害を持った方々からの意見というか、そういうものを三人の参考人の方から、簡単で結構です、教えていただきたいと思います。
  45. 松友了

    松友参考人 私は、家族でございますので、ある面では本人自身ではございません。ですから、もしせがれが来れば違うことを言うかもわかりませんが、三十年間親として一緒に生きてきてささやかに感じるのは、人間として一番重要なのはやはりプライドというか誇りが守られた上で一緒に生きていくことではないだろうか。  そういう意味では、確かに財政的な、あるいはさまざまな手だてであったり援助というのはもちろん量的にも必要なわけでありますが、その援助の仕方とかその考え方とか、それがどういうふうな形で用意されているかとか、そういう部分によっては金額が多いとか量が多いというのが必ずしもいいとは言い切れない。そういう意味で、一人の人間として、自分の誇りがきちんと保たれ、自尊心が保たれるようなシステムであってほしい。  私は、子供が障害になったことでいろいろな——私よりも妻の方が大変だったかと思いますが、一番つらかったし、一番怒りを感じたのは、そのことによって一段も二段も低い人間のような形で見られてしまう、処遇されてしまう、人間としての自尊心が傷つけられることが本当に一番つらかったと思います。多分、長男、せがれもそうではないかというふうに思っておりますので、その点を大事にしていただきたいし、今回の法改正はそういう理念が出されていることに大変うれしく思うわけであります。
  46. 金政玉

    金参考人 実は、私ごとになってしまいますが、私も小学校四年生までは校区の普通小学校に行っていまして、そのときは本当に松葉づえも車いすも使わないでおぶってもらっておりました。そのとき、クラスの友達に、二人ぐらいどこに行くにしてもおぶってもらってあちこち連れていってもらう友達がおりまして、非常に強く記憶に残っております。  それはそれとして、私たちは、障害を持つ本人の必要性というものをどう考えるか、ニーズという言い方もされるかと思いますが、支援をする支援者の側、御家族の方も含めてどういうふうにそれを理解したらいいのかということについては、そんなしゃくし定規に考える必要はないと思います。  例えば、一つの案ですが、私ども成年後見制度改正に伴って考えたことがあります。まずは家庭裁判所で本人の事情聴取をするわけですよ。家庭裁判所でその事情を聞くときに、本人自身が成年後見人を本当に必要としているのかどうなのかは、一回聞いただけでは絶対わからないだろうというのが議論としてありました。少なくとも、三度目の正直という言い方がありますけれども、三回ぐらいは、日を分けて、手間暇をかけて担当者がちゃんと聞いてもらいたい、本人が本当に後見人を必要としているのかどうなのかを。その手間暇をかけたことが、効率性の問題からいったら何か非常に難しいということがあるかもしれませんけれども、やはり障害者の問題を考えていくときにはそれぐらいの気持ちでかかわっていく必要があると私たちは思います。  そういった意味で、ニーズの理解をどのようにしたらいいのかということから考えていく必要があるのではないかなということを申し上げたいと思います。
  47. 河西光

    河西参考人 私どもは、盲導犬訓練をするときに目隠しをして歩きます。そういった意味で、訓練士にも、また実習生にも、視覚障害者の気持ちに立って物を行うようにということを心がけています。視覚障害者立場に立つという部分と、その人たちが目が見えないだけで能力がないわけではないのですね、ですから、能力があるということや人格が非常にあるということを理解しながら接しております。  反対に、今盲導犬自体が、盲導犬は賢いよと皆さんおっしゃるものですから、その盲導犬を使っている視覚障害者の方が、より人格があり、能力があり、社会参加をしているのだ、そういうふうに理解して当たっております。
  48. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 松友さんにお伺いをしたいと思います。  プライドの部分をおっしゃったわけでございますが、プライドを傷つけられる、あるいはそこの部分に対して障害を持った方々が非常に気にされている。ただ、健常者から見れば、そういうようなことはそうそうないというふうに私自身は思っております。  ただ、今まで多くの場面でそういうようなことがあったということで、今回の法改正に対しては評価をいただいているというふうに理解をするものでありますが、同時に自己責任も発生するのではないかというふうに考えますが、この点について、時間もありませんので、簡単にお示しいただきたいと思います。
  49. 松友了

    松友参考人 御指摘のとおり、自己決定には当然自己責任を伴う、それがあってこそある面では自分の人生の選択の一つの喜びもあろうかと。ただ、自己責任、つまり自己決定等について、非常にその部分で弱い人がいらっしゃるのは事実でありまして、そういう意味で、成年後見制度等のサポートとしての法整備も同時になされていることによってそれはカバーされるものと思います。
  50. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  51. 江口一雄

  52. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子でございます。  きょうは御苦労さまでございます。  まず、河西さんにお聞きしたいと思いますけれども、私、大変勉強不足でございまして、この八百五十三頭というのは、どのくらい年月をかけて訓練して、盲導犬としてきちっと使えるようになさったのか。それから、現在すぐにでも欲しいという四千八百人の方々のニーズに応じるには、この法律改正されるわけですけれども、今後何年くらいかかるのか、その辺、ちょっとお話を伺いたいと思います。
  53. 河西光

    河西参考人 訓練にどれくらいかかるかということですが、訓練の前に、まず盲導犬を子犬から育てなければいけません。今ラブラドールレトリバーとかシェパードだとかゴールデンだとか、そういったものが盲導犬に使われていますが、そういった盲導犬に適する犬の母親から子犬が生まれます。ちょうど生後二カ月しますと、一般家庭にその犬の飼育をお願いします。パピーウオーカーと呼んでいますけれども、その家庭では十カ月ほど中部盲導犬協会でお願いをしています。それは、家族と一緒に生活することによって非常に人間が大好きな、また、その生活で非常に人間の生活のルールがわかる、また人間を非常に信頼する、そういうことのために一緒に生活をしてもらいます。それで十カ月すると、ちょうど生後で一年になります。  生後一年になりますと盲導犬協会へ帰ってきまして、それで盲導犬になるかならないかの適性のテストがあります。例えば攻撃性がないことや集中力があることや、非常に人間に従順であったり。反対に、攻撃性があってかみつきやすいとか、そういう犬はそのときに盲導犬の候補からは外すわけです。そういったことで、大体盲導犬に適する犬は今度は訓練に入ります。中部では、両方、右側も左側も持って歩けるようになっておりますので、少し時間がかかりますが、八カ月から十カ月くらいの訓練期間が必要です。ですから、盲導犬としてなるには約二年かかります。その後、視覚障害者の方と盲導犬との相性を合わせて、大体四週間から六週間くらいの訓練をします。そういった視覚障害者との共同訓練も含めて、約二年の歳月が必要となります。  それから、四千八百人の盲導犬希望者がこれからどういうふうに進んでいくだろうかということですが、これは盲導犬関係者とも今後の将来計画をどうしようかというふうな話し合いもいろいろしているところで、今細かな数字をきちんと言うわけにはいかないので申しわけないのですが、四千八百人の方に行くには何十年とかかる状態だと思いますね。  最近話し合った中では、最低でも十年かけて二千頭くらいにふやそう、そのためには、例えば毎年ほかの盲導犬協会、全部の盲導犬協会が一名ずつ訓練士をふやしても、到達するには、今百三十頭が年間出る数ですが、それをまず今の倍の二百六十頭にしようという考えを持っていますが、その倍にしながらの計画で約十年かかって二千頭というような段階ですから、四千八百頭までいくにはまだ何年もかかるのではないかと思います。
  54. 武山百合子

    ○武山委員 例えば海外との連携なんかはどのようにとっているのですか、育成する意味でも、もちろん訓練士の質的な向上なんかも考えて。こういう盲導犬に対しては、どちらかといいますと日本よりは先進諸国の方が進んでいると思うのですね。ですから、海外との連携はどのように考えて、行っているのでしょうか。
  55. 河西光

    河西参考人 盲導犬についての海外との交流や連携ということですが、実は私、国際盲導犬学校連盟の評議員をしております。そういった関係で、年に二回ほどイギリスが本部になっている国際盲導犬学校連盟の会議に出て、全体的な、国際的な盲導犬のレベルアップということを考えた中で、日本もその基準に合っているかどうかということでありますが、訓練技術や施設等は日本は十分に国際基準にも合っていますし、レベルも高いと思っております。  そういった中で、この七月にはイギリスで国際セミナーが開かれます。そういったセミナーに日本訓練士も参加したりしていますし、日本もイギリスやアメリカやオーストラリア、ニュージーランドから繁殖用の犬を購入するとか、または交流をするとか、それから国際間の繁殖犬の研究をしようというふうなことで凍結した精子をお互いに交換しようとか、または股関節の問題がありまして、関節が遺伝的に非常に悪い犬もいるのですが、そういった関節の悪い犬を出さないようお互いに研究をしようというふうなことでそのレポートを提出するとか、そういったことで今国際間の協力も行っております。
  56. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、国際的にもレベルは一緒だということですか。では、何がおくれているのでしょうか。何をどうしてもらいたいという希望があるのですか。
  57. 河西光

    河西参考人 当初、盲導犬を持ったときの我々の実感からいえば、私は盲導犬をイギリスの訓練士から学んだわけですが、盲導犬視覚障害者に持っていただいたときに、今は違いますが、その当時は電車にもバスにも乗れない。視覚障害者がせっかく盲導犬を持って、安全に行動範囲も広がるというときに、いろいろな施設利用できない。反対に、盲導犬を持ったがためにその行動が制限されてしまったという、私にとっては非常につらい、悲しい思いがあるのですね。それは私がつらいのではなくて、盲導犬を持ったために、社会参加ができ、いろいろな行動もできる人たちが、それを拒まれてしまったというのが非常に残念なのですね。  今でも、厚生省や運輸省や環境庁から盲導犬の受け入れについては通達を出していただいたり、社会の受け入れという部分ではいろいろな面で協力をいただいています。しかし、実際盲導犬を持って、まだこれから盲導犬がふえていく中で、アメリカでもイギリスでも、いろいろな先進国は盲導犬に対しても要は断ってはいけないという法律を持っています。日本では通達の段階ですから、まだそこまで強いものはありません。反対に、イギリスでは法律がなくても盲導犬を当たり前として、どこでも行ける社会になっているわけです。  ですから、日本もそういうふうなどこへでも気軽に行ける社会になってほしいというのが一つの願いです。それが、国民的な感情もあって、徐々に理解はされていますが、やはり法的な、立法化というか、盲導犬のバリアフリーというふうなこと。  それから、盲導犬を多くしていくという部分では、先ほどの繁殖犬の研究であるとか、非常に資金や期間も必要な部分があります。それから、訓練士の養成は最低でも三年、長くて五年くらいの期間がかかりますし、その中では一人に対して約一千万円くらいの投資がかかるわけです。その訓練士の養成とかそういうものに対しても予算措置がされれば、訓練士もふえ、視覚障害者盲導犬を持って社会参加できる、そういうふうな状況になるかと思います。
  58. 武山百合子

    ○武山委員 最後にもう一つ、そうしますと、経済的な支援、経済的な基盤がやはり大事な一点ではないかと思いますけれども、寄附というものは税制上控除になるのでしょうか、皆さんのところへ例えば寄附した場合。それについてお答えいただきたいと思います。
  59. 河西光

    河西参考人 盲導犬事業は住民参加の福祉と言っておりますが、今非常に多くの方が協力いただけるようになって、我々も大変感謝をしております。  平成五年だったと思うのですが、特定公益増進法人に認められまして、社会福祉法人並みに税金の控除、寄附された個人、企業に対しては寄附控除の特典はあります。
  60. 武山百合子

    ○武山委員 そういうことが国民に周知徹底されますと、国民はこれから支援していこうという気持ちの輪は当然広がると思うのですね。ですから、税制上優遇措置があるのだということをやはり国民に訴える必要があると思うのですね。実際、正直なところ、私も今初めて知ったところでございます。  きょうはどうもありがとうございました。
  61. 江口一雄

    江口委員長 中川智子さん。
  62. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは本当にありがとうございました。  まず最初に、松友参考人に伺いたいのですが、私も、友人の子供さんが知的障害を持っていらして、高校、養護学校を卒業したときに、卒業式の日におめでとうと言いましたら、おめでとうという言葉は私たちにとってはつらい、これからが大変なんだ、学校に行っているときは安心して子供たちを学校に行かせられるわけだけれども、卒業した後が私たちにとっては本当の苦労が始まるのだと聞かされました。実際にそのとおりだと思います。  今、作業所などではやはり不況の影響をかなり受けていらっしゃると思います、仕事も減ってきていると思うのですが、その状況を少しお話しいただきたいのと、今、年間の補助金が百十万ということでこれがなかなかふえません、やはり最低これぐらいの補助金作業所に必要だというお考えがありましたら、それをお伺いしたいと思います。
  63. 松友了

    松友参考人 御指摘のとおりでございまして、とにかく公的な認可された受け皿がないということで、やむにやまれずという形で親を中心としてあるいはいろいろな関係者で自主的につくっているのが作業所であります。  御存じのように、いろいろな分野で不況の影響が、今詳しいデータを持ってきておりませんが、まずいろいろな形で仕事が来ない、つまり、下請的なものは仕事が来ないという実態があります。  この不況とは違うのですが、つい先日、日曜日に、私は北海道の有珠山の被害状況について見てまいりました。そうすると、あの噴火によって工場が閉鎖されて、その工場の下請をやっている五つの作業所が非常に困っているという実態を切々と訴えられました。これはちょっと事例が違うのでしょうが、同じようにやはり不況において仕事が来ない、あるいは自主製品が売れないという実態で、非常に音を上げております。  一方、今度は逆に、これはどう理解すればいいかわかりませんが、一般企業が倒産したり解雇された人たちが、今続々と作業所に戻ってきているという実態もございます。そういう意味で、非常に支えが弱い、しかし大きな受け皿であるということを御理解いただければと思います。  さて、幾らあればいいのかということでございますが、もちろん規模がいろいろありますので、単価制といいますか一人に幾らということであれば、やはりこれは措置費と同じというのが原則ではなかろうか。これは基本的にダイレクトペイというか、本人を基本に置けば、その人がどこに行こうが、その人に対するニーズ、援助というのが同質であれば同じ援助の金額がなされるべきであろう。  しかし、現実的に、施設を単位とすると、今回の法改正に基づく援助も、いわゆる単位制ではなくて施設全体に援助が考えられているとお聞きしておりますが、これは文字どおりその規模の大きさによって若干違ってくる。  ですから、基本原則は、参考にするのは、いわゆる措置体系にあります第一種社会福祉事業としての通所授産施設を基本に考えていただきたい、それが原則ではなかろうかというふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  64. 中川智子

    ○中川(智)委員 続きまして、金参考人にお伺いしたい。  今回の事業者代理受領方式では、本人に全然それが渡らないということになります。先ほどの陳述の中でも、利用者本人サービス提供者との間で対等な関係を維持していくためには、事業者代理受領方式の前提条件として本人同意の明記が必要というふうに主張されていますし、それは本当にそのとおりだと思うのですね。それがないがゆえに起こる問題というのはどのようなことが考えられるか、それに対してもう少し金さんの御意見を伺いたい。  もう一つは、今回の年金改悪の問題でも、無年金障害者のことは一切解決を見ませんでした。それに対してずっとその活動をしていらした金さんに、それについて一言お伺いしたいと思います。
  65. 金政玉

    金参考人 まず、代理受領方式の問題でありますけれども、私たちは、この点についてはむしろ簡単に考えていいのではないかというふうに思っています。  というのは、民法上の契約というのは、対等な関係に基づいて契約が成り立つということですね。そういった意味では、このたびの契約関係も、対等な契約ということからいいますと、両者の合意に基づいて契約されるわけでして、そういった両者の合意には、少なくともその片方の本人自身同意というものがどうしたって要るのではないかなと、本当にシンプルに考えているということであります。  では、判断能力の低い障害者の人はどうするのかという議論もあるかと思いますが、そのために成年後見人というものがこのたび新しくできたということもあるかと思いますので、そういったことも含めて、やはり本人同意というものは最低限必要なものとしてきちんと見直しをする必要があるのではないかなというふうに思います。  あと、所得保障にかかわることですが、私自身が外国籍を理由とされた無年金の障害者の一人なんですけれども、現在厚生省が言われる人数だけでも十万人ぐらい無年金の障害者はいるだろうというふうに言われていますが、実際にはまだ多いかもしれません。  そういった無年金の障害者と、あと、圧倒的多数は、先ほど授産施設の話もありましたけれども福祉的な就労のもとで、賃金ではなくて工賃ということで非常に低い額の収入しか得られていない状況があります。そういった状況を踏まえて、私たちは、これから本当に契約型のサービスということで対等性という問題にこだわっていくのであれば、現行の生活保護制度見直しということも本当に本格的に手をつけていく必要があるのではないかなというふうなことも含めて考えております。  それは、私たちも対案づくりということにこれから取り組んでいきたいと思いますので、ぜひともそういった点からも御検討していただきたいというふうに思っております。
  66. 中川智子

    ○中川(智)委員 ありがとうございます。  河西参考人に伺いたいのですが、介助犬を推進する議員の会というのを、自民党の田中眞紀子さんが会長で、私が事務局長でやっているのですが、昨年だと思いますが、盲導犬使用者の方のアンケートの中で、やはりまだ通達が弱いというか、運輸省、厚生省——先ほど通達のことをおっしゃいましたが、通達の後のチェックということとか、通達の内容が厳しくないので、盲導犬使用者の人たちも、まだまだホテル利用施設利用、さまざまなところでバリアになっているということを伺いました。  その通達に対してやはり見直してほしいというお気持ちがあるならば、そこのところの御意見と、もう一つは、アメリカのADA法のように、障害者権利としてきっちりと盲導犬なり介助犬も、聴導犬とかもございますし、それをうたって当たり前だと私は思うのですが、こういう法律が欲しいという外国の法律の例がございましたら、お教えください。
  67. 河西光

    河西参考人 法律的な部分と通達のお話がありましたが、通達より法律の方を見直していただければ大変ありがたいと思います。  私どもも、視覚障害者の方が盲導犬を断られたということで、話をしたりお願いに行くのです。最近は、ある意味では社会理解も深まってきて、少しは前よりはよくなったのですね。ところが、通達のお話をしますと、これは何の強制力もないよと。受け入れてください、協力してくださいということですから、強制力があるならば受け入れるけれども、そうでなければこちらの都合でこのまま盲導犬を受け入れませんというところも現実にあるのですね。だから、やはり通達の見直しというよりは……。  今、五年前くらいからだと思うのですが、韓国でも盲導犬の育成が始まりました。去年の一月には韓国では法律ができているのです。ちょっと正確にはわかりませんが、多分二百ウォンかなんかの罰則があるのです。  アメリカのニュージャージー州でも、一九八四年にニュージャージー州の法律で、要は、「視覚障害者盲導犬を全ての公共施設、職業、公共輸送機関に同伴する権利保障する。」とか、公共の輸送機関には、航空機、列車、バス、船舶、タクシーを含むといったものもあります。それ以外にも、カリフォルニア州でも、カナダのコロンビア州でも、スペインでも、そういうふうな法律がございます。
  68. 中川智子

    ○中川(智)委員 ありがとうございました。  私は、これは一歩前進と言いながら、もう十歩も二十歩も百歩も前進しないと、この国は福祉国というふうに胸を張って言えないと思いますし、本当に頑張らなければいけないと思っております。  きょうの御意見参考に審議をしっかりとしていきたいと思います。ありがとうございました。
  69. 江口一雄

    江口委員長 これにて午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。(拍手)  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ————◇—————     午後一時七分開議
  70. 江口一雄

    江口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、本案審査のため、参考人方々から御意見を聴取いたします。  午後、御出席参考人は、桃山学院大学社会福祉学部教授北野誠一君、社会福祉法人全国社会福祉協議会常務理事松尾武昌君、障害者生活権利を守る全国連絡協議会会長吉本哲夫君、以上三名の方々であります。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  最初に、参考人皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず北野参考人にお願い申し上げます。
  71. 北野誠一

    ○北野参考人 皆さん、こんにちは。桃山学院大学の北野と申します。  今回の社会福祉事業法等改正は、二十一世紀の日本社会福祉を占う非常に大切な法改正なのですけれども、私の方は、この法案につきまして幾つか私なりの意見がありますので、きょうはその意見を述べさせていただきます。  まず、私の方は、実は障害者福祉論というのを専門にいたしておりますので、特に私の内容は障害者問題を中心に話を展開させていただきます。  まず最初に、社会福祉事業法社会福祉法と名称変更される件についてお話しさせていただきます。  はっきり申しますと、社会福祉事業法社会福祉法という名前に変わるとき、私はある種のショックを受けました。といいますのは、社会福祉法と申しますと、どうしても私の頭の中にはスウェーデンの社会サービス法であるとかデンマークの社会援助法といった法律を思い浮かべてしまうわけです。つまり、社会福祉法ということになりますと、社会事業者のための法律ではなくて、社会福祉とはどうあるべきかという理念であるとか目標、目的を高らかにうたい上げる必要があるというふうに私は思います。  そういたしますと、例えばスウェーデンの社会サービス法、これは一九九六年に変わりまして、新社会サービス法になりましたけれども、新社会サービス法の第一条の理念を見ますと、「社会全体に関わる社会サービスは、民主主義と連帯の基盤の上に経済的・社会的安定、生活条件の平等、社会生活への積極的な参加へと人々を促すことを目的とする」とうたわれておりますし、第三項には、「社会サービス事業は、自己決定権利および人間としての尊厳に配慮して実施される」というふうにうたわれております。また、第三条四では、「身体的・精神的またはその他の原因によって、生活上、相当の困難を抱えている人々は、共同社会に参画し、他の人々と同様に生活することができる」とあります。また、第五条の第一項には、「コミューンは、」つまり地域社会は、その市町村に「居住するものが必要とする援助を得るにあたって、究極的な責任を負う」というふうにうたわれております。  つまり、ここでは、ノーマライゼーションの原理に基づきまして、障害者地域の中で他の市民と同等の生活をする権利がうたわれているわけです。また、そのために必要な支援の究極の責任を行政に課しているということは、障害者には地域の中で他の市民と同様に生活するために必要なサービスを受給する受給権が保障されていると言えます。  また、日本がモデルにしたと言われておりますドイツの介護保険法、ドイツの介護保険法は日本介護保険法のモデルなんですけれども、その第二条の「目的」を見ますと、「介護保険の給付は、要介護者が援助を必要としながらも、人間の尊厳にふさわしい、可能な限り独立しかつ自律性のある生活を送ることを援助するものである」というふうにうたわれております。  一方、日本介護保険法の第一条の「目的」を見ますと、「この法律は、」「入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護」等々「を要する者等について、これらの者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」とあります。  つまり、可能な限り自立した生活を求めていらっしゃるドイツの介護保険法と、「その有する能力に応じ」という表現のある日本法律は、実は非常に大きな違いがあるということであります。  そして、今回の社会福祉法を見ますと、社会福祉法第三条の福祉サービス基本理念ですけれども、「福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、その内容は、福祉サービス利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない。」とあります。  その有する能力に応じた自立という表現は、二つの意味で二十一世紀の福祉理念には似つかわしくない理念であります。  まず一番は、本人のできない部分は本人能力の責任として、能力の範囲に応じた生活を強いられる可能性がこの表現では出てまいります。  スウェーデンにおいても、あるいはドイツにおいても、法の意味するところは、ノーマライゼーションの考え方に基づいて、障害ゆえの生活上の困難を障害者の責任として押しつけることなく、社会環境の変革、例えばハートビル法であるとか、今回審議されておられます交通バリアフリー法案であるとか、あるいは支援サービス、例えばホームヘルプ制度であるとかガイドヘルプ制度等の充実によって、可能な限り本人の希望する当たり前の市民生活を享受するという考え方が、それによって否定される可能性が出てまいります。  また、二番目に、その有する能力の違いによって、つまり、その障害の種類であるとか程度によってサービスの質量が限定される可能性も生まれてまいります。そのために、施設入所以外の選択肢がない人たちが生まれてくる危険性があります。  私はカナダにしばらく住んでおりましたけれども、カナダのブリティッシュコロンビア州においては、一九九七年の三月には、知的障害者入所施設はすべてグループホームとアパートに変わりましたし、スウェーデンにおいても、この三月に、すべての施設入所者は地域生活移行いたしております。アメリカにおいても、九つの州は施設入所者がすべて地域生活移行しております。  つまり、そのような時代に、その有する能力に応じた生活を求めるということは間違ったことであります。表現を「可能な限り自立した日常生活」とすべきであります。  また、この法案の最も中心理念であるところの利用者自己決定、自己選択権の保障、このことがこの法案の最も大事なところであると皆さんも言われておられますので、私はそれを入れて、第三条の理念はこういう表現が望ましいのじゃないかというふうに考えております、「福祉サービスは、利用者の基本的人権を尊重し、その自己選択に基づいて、利用者が可能な限り自立した日常生活が営めるよう、支援するものとする」。こういう程度でなければ、この法律は十年後の見直し規定がありますので、十年後の見直しまでもたない、つまり、二十一世紀の前半を担うには少し表現が、私はまだ問題があるというふうに思っております。  もう一つ申させてもらいます。二つ目は、身体障害者福祉法と知的障害者福祉法の一部改正の部分であります。  福祉の根幹というのは、実は二つの権利によってでき上がっております。一つは、サービスを受給する権利であります。もう一つは、サービス選択する権利。この二つは福祉サービスの二大権利なんですけれども日本のこれまでの措置制度は、確かに、サービスを受給する権利サービス選択する権利も、ある意味でないに等しかったというふうに言えると思います。ですから、私は、今回の法案をそれなりに評価はいたしております。  それに対して介護保険法はどうかといいますと、介護保険制度は、被保険者に要介護認定に見合ったサービスを受給する権利と情報開示に基づくサービス選択権を一定確保いたしております。  では、今回の障害者に対する利用費援助制度、今度の利用費援助方式はどうであろうか。この法案によりますと、まず一定のサービスが現存していること、存在していることがこの仕組みの前提になっております。ですから、本人があるサービス提供者利用契約を結ばなければ、利用費補助制度利用費助成が発動しない仕組みになっております。つまり、この法案は、それ自体ではサービスの量を担保する仕組みを持っておりません。  一方、介護保険法においては、本人が一定の要介護認定を受ければ、それは少なくともサービスを受給する権利性は担保されることになります。つまり、介護保険法は、その法律自体においてサービスを受給する側のインセンティブとして供給量を増大させる可能性を内発しております。  そのために、私は二つのことをぜひともお願いしたいと思っております。  一つは、この法案は基盤整備をみずから行えるような法的な仕組みを持っておりません。ですから、この法案自体では不可能な基盤整備を、利用契約制度が開始される二〇〇三年までに何としてでも行わねばなりません。そうしなければ、障害者福祉と高齢者福祉の間に大きな溝ができ、障害者はある意味で差別構造の中に置かれていると認識される事態に陥る可能性があります。  そこで、ノーマライゼーション七か年戦略に基づいて市町村は数値目標のある障害者計画を周知徹底する、ノーマライゼーション七か年戦略を各市町村障害者計画に落とし込む仕組みをかなりきっちりやることが必要であります。  二つ目に問題になるのは、今回出ている社会福祉法案の百七条の市町村地域福祉計画であります。  地方分権一括法との関連でこの表現が非常に弱まったというふうに思われますけれども、この法案の表現では、市町村地域福祉計画を立てることが義務づけられていないどころか、立てなくても構わないのではないかというふうに読めるような表現ですらあります。基盤整備障害者福祉におけるかなめであります。基盤整備のための地域福祉計画の法的義務づけは何ら地方分権とは矛盾いたしません。地域福祉計画を当事者地域住民の参画のもとでどのように展開するのかこそが、地方分権のもとで自治体の裁量としてなされるべきことでありまして、地域福祉計画そのものを義務づけることは何ら地方分権一括法と矛盾しないということを私の方は言わせていただきます。  以上です。どうもありがとうございました。(拍手
  72. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、松尾参考人にお願い申し上げます。
  73. 松尾武昌

    ○松尾参考人 私は、全国社会福祉協議会常務理事を務めております松尾武昌と申します。参考人としての意見を述べさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず最初に、本委員会の大変貴重な時間を割いていただきまして意見をお聞きいただきますことに、心から御礼と感謝を申し上げます。  先生方には御案内のことでございますが、全国社会福祉協議会の構成は、市町村社会福祉協議会を構成団体とします都道府県指定都市社会福祉協議会全国民生委員児童委員連合会、さらに社会福祉施設、在宅福祉事業等の各種の協議会によって構成されている協議団体であります。  本日の議題となっております社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案につきまして、これらの各団体の意見を踏まえまして、結論を先に申し上げます。  急速な少子高齢化、家庭機能の変化、障害者の自立と社会参加の推進などに伴い、社会福祉に対する需要は増大かつ多様化しております。こうした期待にこたえるためには、社会福祉制度利用者本位の視点から一層強化していくことが不可欠であると認識しております。  本改正案は、福祉サービス利用者提供者の対等な関係を確立し、社会福祉法人及び社会福祉施策の一層の充実と活性化を進めるものであり、一日も早く実行すべき緊急かつ重要な課題と考えております。このためにも同法案の成立を心から期待しているところであります。  本日は、これらの基本的方向を踏まえまして、二つの事項に絞って意見を述べさせていただきます。その一つは、本改正法律案改正内容についてであります。その二つは、本改正法律案により、私が所属しております社会福祉協議会に対しまして、地域福祉の推進の観点から多くの重要な役割をいただいておりますが、これらにつきましての取り組みについて申し述べたいと思います。  改正の内容の第一は、本法律改正案の柱であります、利用者立場に立った社会福祉制度の構築であります。  その一つが福祉サービス利用制度化であります。具体的には、障害者福祉サービス利用者サービス選択できる、措置制度から利用制度への改正であります。これにより、利用する障害者提供する事業者の間に対等な関係が築かれ、障害者への福祉が大きく前進する改正期待しております。  しかしながら、対等な関係を確実にするには、福祉サービス利用者保護のための制度が必要であります。このために本改正法律案地域福祉権利擁護制度苦情解決仕組みの導入の画期的な制度の創設を内容としており、高く評価しております。  地域福祉権利擁護制度は、本年の介護保険制度事業開始を考慮して、昨年から全都道府県社会福祉協議会事業を開始しましたが、本改正による法制化を強く望んでいるところであります。苦情解決仕組みにつきましても、本改正法律の成立後、各都道府県社会福祉協議会で早速に対応することといたしております。  利用者立場に立った社会福祉制度の構築には、地域福祉権利擁護制度苦情解決仕組みが的確に機能することが肝要であると受けとめ、社会福祉協議会といたしましても、その実施に当たりましては最大限の努力を払いたいと考えております。  また、サービス選択を実現するためには、各福祉サービスの基盤の充実が重要であります。これまで以上の基盤整備の推進につきまして御配慮賜りたいと思います。  その第二が、サービスの質の向上であります。  その内容は、サービスの自己評価や事業運営の透明性の確保であります。そのため、サービスの内容の情報の提供事業報告書等の開示が義務化されます。このため、提供者が積極的にサービスの質の向上に取り組み、個性的で魅力ある事業が展開できるよう努力することとしておりますが、さらに、これへの取り組みを推進するために、事業運営上の各種の規制緩和についての御配慮をお願いしたいと思います。  また、サービスの質の向上には、優秀な人材の確保が不可欠であります。選択されるサービス利用者の視点でのサービス提供のためには、これまで以上の人材の養成研修が必要だと考えております。これに対しましても、今後とも最大限の努力をしてまいる所存であります。  第三は、社会福祉事業の充実、活性化であります。  障害者を対象とした事業中心に、新たに社会福祉事業に追加し、その事業を明確化されますことは、関係者の期待にこたえるものであると考えております。  また、社会福祉法人の設立要件の緩和も、これを待ち望んでいた関係者にとって朗報であります。小規模事業体が社会福祉法人格を取得して運営基盤を安定し、責任体制を明らかにすることは、社会的位置づけを明確にする重要な改正と評価しております。  この件でお願いしたいのは、社会福祉法人の運営の弾力化であります。さきにも述べましたように、サービスの質の向上を進めるに当たりましては、個性的で魅力ある事業の展開を進める必要があります。このために社会福祉法人の運営の弾力化は不可欠であります。これは法改正後の運用事項でありますが、積極的な取り組みをお願い申し上げます。  最後に、その第四になります地域福祉の推進であります。  特に市町村地域福祉計画の策定でありますが、高齢者福祉施策、障害者福祉施策、さらに児童家庭施策などの多くの福祉施策が地域を基点に展開されております。この地域福祉計画の策定は、今後の社会福祉の推進のかぎを握る重要事項と考えております。早急な計画策定が行われるよう御支援をお願いしたいと思います。  また、市町村社会福祉協議会がこの地域福祉の推進役として位置づけられまして、この期待にこたえる重責を担いました。また、民生委員、児童委員も、住民の立場に立った相談、援助活動を行うよう職務内容が明確化されました。今後とも、地域福祉の推進にさらなる努力を傾注すべきだと責任を強く感じております。  これまで本法律改正案に対する基本的な考え方とその改正内容に対する意見を述べましたが、ここで我々が見失ってはいけない大事なことがあると認識しています。それは、我が国の社会福祉は、戦後、我々の先達の献身的な尽力によりその混乱を乗り切り、その後の社会経済の変化に対応した先達の熱心な御努力により今日の我が国の社会福祉があると確信しております。  今般の社会福祉基礎構造改革、これを受けての本法律改正案は、これまでの社会福祉制度を大改革しようとするものであります。先達が積み上げてくれましたよきところは、今後も大切にし、この改革がうまく方向転換できるよう心がけるべきだと思っております。  次に、社会福祉協議会のこれからの取り組みと課題であります。  まず、市町村社会福祉協議会であります。  地域福祉の推進に対応するため、市町村社会福祉協議会の充実や運営の改革も必要であります。その際、その地域の特性を生かした個性的、魅力的な社会福祉協議会の活動の展開を目指すべきだと考えております。広域化・共同化事業への取り組みも必要であります。また、関係団体に協力しまして、地域福祉計画の策定への取り組みも重要な課題と考えております。  次に、都道府県社会福祉協議会であります。  本改正法案で新たに担うことになりました地域福祉権利擁護事業苦情解決の取り組みの実施に当たりましては、新たな都道府県社会福祉協議会をつくり出す覚悟が必要な大きな事業と考えております。本事業の適切な実施に最大限の努力を図ることといたしたいと思います。  さらに、社会福祉従事者の養成研修事業の拡充が都道府県社会福祉協議会の今後の重要な大きな柱となることも考えております。  最後に、全国社会福祉協議会役割であります。  本改正法が成立いたしますと、新しい事業の創設や既存事業見直しの作業が各機関や団体で一斉に開始されます。このため、各事業の実施方法の研究や検討が必要となります。市町村社会福祉協議会都道府県社会福祉協議会支援する立場から、これらに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  新しい福祉制度への切りかえには、優秀な人材の確保が大事であります。これまでの研修事業等をさらに充実し、これらの人材の育成を積極的に図ってまいりたいと思っております。  社会福祉基礎構造改革の策定に当たりましては、厚生省の担当部局におかれまして、我々を初め多くの福祉関係団体の意見を数度にわたり聴取していただきました。本改正法案にも福祉関係団体の要望を十分に組み入れていただいております。どうか一日も早い本法案の成立をお願いいたしまして、参考人意見陳述を終わります。  ありがとうございました。(拍手
  74. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、吉本参考人にお願いいたします。
  75. 吉本哲夫

    ○吉本参考人 御紹介をいただきました障害者生活権利を守る全国連絡協議会の会長をしております吉本と申します。  本日は、貴重な時間にお招きいただきまして、社会福祉事業法等改正にかかわる発言をさせていただく機会をつくっていただきまして、ありがとうございます。  私たちの団体は、障害の種別を超えて生活権利を守るために結集した団体でございます。その立場から、法改正についての意見を述べさせていただきます。  昨年、民法改正による新たな成年後見制度が発足し、交通バリアフリー法も成立の見通しが立ちました。さらに、資格制度から障害者を差別、排除している六十三項に及ぶ欠格条項の見直しも始まっております。国際的には、障害者権利条約制定の動きも始まっているところであります。障害者施策の流れは、障害者が人間として自立する上でのさまざまな制度的障壁を取り払い、親、家族の重い負担によって成り立っている福祉現状を根本的に改める参加と平等を具体的に保障するときに来ているというふうに思います。  社会福祉事業法等法律案は、障害別の相談支援事業などが第二種事業として法定化されるなど、障害者要望を取り入れた部分もありますが、今申し上げました基本的人権保障の流れと障害者の厳しい生活実態から見るなら、賛成することはできません。  その第一は、基本理念にある実施主体から国と地方自治体が削除され、措置制度を原則的に廃止して、福祉の原則を大幅に変更したことであります。  御存じのように、戦後の社会福祉は、国と地方自治体の責任を明確にした措置制度のもとで、収入の高低にかかわらず、すべての国民が安心して働き、人間らしい生活を送れる制度として定着してきました。障害者基本法と障害者プランはこれを一歩進めて、自立と社会参加、ノーマライゼーションとリハビリテーションを障害者施策推進の理念として提起しました。今求められていることは、切実で多様な障害者の要求、選択にこたえられない貧しい措置基準を改め、いつでも、どこでも、だれもが必要な施策が受けられるよう措置制度を充実することにあると思います。  障害者家族にとってもう一つ問題は、現行の費用徴収制度があります。成人障害者が施策を利用する場合は所得に応じて費用を徴収する応能負担制度となっておりますが、補装具やホームヘルパー制度利用するときは、本人や同居している家族の生計中心者の所得税額によって費用が徴収され、更生援護施設などの福祉施設利用する場合は、まず本人の所得税額に応じて費用が徴収され、さらに、扶養義務者が所得税額に応じて支払うという二重の費用徴収制度が実施されております。  少ない所得でぎりぎりの生活をしている障害者本人からの費用徴収そのものも検討を必要としますが、何よりも同居の扶養義務者からも費用を徴収するということは、障害者の自立生活を著しく制限するとともに、家族の負担と犠牲によって貧しい社会福祉を補っているものであって、緊急の見直しが必要だと考えます。  第二の問題は、利用契約制度支援費支給制度であります。  自由な選択契約制度導入は、法改正の大きな目玉となっているようであります。しかし、市町村の六割以上は障害者の法定施設がありませんし、大阪府では、昨年七月現在、大阪市と堺市を除いて知的障害者の更生施設入所を希望する待機者、待っている人たちが二百七十七人もいると発表されております。障害の特性を理解しているホームヘルパーさんに来てもらえないという嘆きもよく聞くことです。  選択する施設のないままで、業者の側からの選択だけが保障されることになり、利用者は選ばれる側になりかねません。自由な選択契約は、必要な質、量ともに拡大することが大前提であります。政府は、障害者プラン等を拡充して増設目標を具体的に示すべきであります。  また、現在、福祉制度利用は、行政の窓口に行けば手続は基本的に解決する仕組みになっておりますが、今でも障害者は窓口に行くこと自体が大変なことであり、なかなか施策を具体的に受けることができないでおります。今度の改正では、それとは違って、サービスの内容と提供業者、費用など、福祉サービスを受けるまでの複雑な手続となり、サービス利用を低下させるということは、これは間違いのないことだと思います。行政の窓口で一括して手続がとれる現在の方式をぜひ残してほしいと思います。  新しい仕組み支援費支給制度は、福祉の窓口は相談業務に限られ、利用者本人利用先を決定して契約が成り立てば、社会福祉協議会支援費を業者にかわって代理請求や受領もできるようになり、行政は求めがあったときだけ利用の調整を行うような消極的な規定では、地方自治体としての役割を果たすことはできない仕組みになっています。  小規模作業所社会福祉事業法の中に認められたことは前進ではありますけれども、別建ての運営費補助制度にすることは納得できません。また、作業所を立ち上げる場合は、そのほとんどが十人以下で始まっております。毎日のように設立されていると言われているこの小規模作業所を補助の対象から除外することがあってはならないと思います。ぜひ小さな十人以下の作業所にも助成をお願いします。すべての作業所に法定施設としての現行制度の運営費を差別なく支給してほしいと思います。  また、地域福祉権利擁護制度としてサービス利用援助制度が新設されることになりますが、公的責任で権利保障する、そういう仕組みを明確に打ち出してほしいというふうに思います。相談事業や手話通訳派遣事業など第二種事業に組み込まれた制度も公的負担でできるのかどうか、非常に不安が募ります。  最後に、対象となっていない障害者の問題です。  精神障害者や難病は国民だれもが共通に享受すべき法制度から除外され、障害者のための法制度からさえも除外され、最も厳しい生活を強いられております。社会福祉事業法社会福祉法となった機会に、これら障害者を対象とする手だてをとってほしいと思います。少なくとも本法の中にこのことは明確に位置づけるということを切実にお願いをいたしまして、そういう法案になっていくために現法案の撤回を求めるものであります。  ありがとうございました。(拍手
  76. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  77. 江口一雄

    江口委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本純君。
  78. 松本純

    ○松本(純)委員 自民党の松本純でございます。  ただいまは三名の参考人の皆様から意見陳述をそれぞれちょうだいをいたしまして、まことにありがとうございました。  既にただいまの御意見の中にも述べられていたところと重なるところもあるのでありますが、今回の事業法改正で、特に福祉サービス措置制度から利用制度にするという基本的な変化があるわけでありますが、このことについていま一度それぞれ御見解を述べていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いします。
  79. 北野誠一

    ○北野参考人 措置制度につきましては、我々社会福祉の研究者の中でも議論はさまざまでございます。つまり、措置制度は確かに行政による行政処分としてサービス利用の決定がなされる。ですから、サービス利用する側はその選択権が認められないという大きな問題を持っておるということは、我々の世界でも非常にこれは共通の認識であります。  しかし、一方で、サービス利用する利用者サービス提供する提供者とが直接の利用契約を結ぶときに、本当に対等の関係性が保障されておるかどうかというのは、実はこれは非常に難しい問題であります。といいますのは、サービス利用される方は、そのサービスがなければ実際に生活上にさまざまな困難を持っていらっしゃる方なんですね。ということは、サービスを手控えられてしまったり、はっきり言いますと医療や福祉サービス提供する側がその相手の弱みにつけ込みますと、サービスを受ける側は非常に弱い立場にいらっしゃるということがございます。ですから、措置制度のように国が最終的な責任を担保していらっしゃる仕組みが、一定の責任性の担保という意味では措置制度にも一つの意味があったという見解も成り立つわけでございます。  しかし、私は、今回こういう形で直接の利用契約制度仕組みをつくる限りは、逆に利用者選択権を本当に保障する仕組み、つまり、サービス事業者サービス利用者の弱みにつけ込まないように、それができないような仕組みをどういうふうにつくっていくかということが本当に大事な部分だと思っております。  ですから、厚生省の方も幾つかの考え方、例えばサービス利用する方の利用援助制度としての地域福祉権利擁護制度であるとか、サービスの苦情を解決するための苦情解決制度であるとか、あるいはサービスの質を保障するための第三者評価委員会であるとか、そういう仕組みを考えられたのは非常に卓見であるとは思いますけれども、私もサービスの質の第三者評価委員会の委員をしておりますけれども、実際にはまだその議論は上滑りです。本当にそれを地についたものにするためには、我々がもっと真剣に汗水たらして、日本福祉サービス利用者の、本当の意味での権利性と選択するサービスの量、つまり、選択する権利サービスの量を保障する仕組みをよりきっちりとつくっていく必要があるというふうに考えております。  以上です。
  80. 松尾武昌

    ○松尾参考人 今まで措置制度という中でいろいろなサービス利用が図られておりましたが、私は、措置制度といえども本人なり家族の了解をとらないで行政が勝手にやっていたとは思っておりません。やはりきちんと本人なり家族の了解をとりながら恐らくサービス提供をしていたというふうに理解をしております。ただ、考え方はあくまでも行政措置によるということでありますので、構造としましてはまさに措置という中でやられていたのだろうと思います。本改正に当たりまして、これがはっきりと対等な関係契約でいこうというふうにされましたことは、大変大きな前進であろうと私は思います。  今先生がおっしゃいましたように、このための施策が実は非常に大事であろうと思っております。先ほども申し上げましたけれども地域権利擁護事業苦情解決仕組みを私ども都道府県社会福祉協議会の中に仕組むようになっておりますが、これをきちんとすることが、まさに利用契約制度をきちんとしていく基本ではなかろうかと思っておりまして、我々に課せられた課題は大変重要なものであるというふうに理解しております。  また、契約制度の中では、情報の開示と申しますか情報提供と申しますか、そこの選べるような情報をきちんと提供していただく、そのためには第三者評価や財務諸表の開示等もありますけれども、そういう意味で、今までの福祉を担当しておりましたサービス提供者が積極的にその内容を公開しながら、サービスを受ける方と対等な関係でこの利用契約の中で福祉サービス提供していく、これがこれからの福祉の姿ではなかろうかというふうに理解しております。  以上でございます。
  81. 吉本哲夫

    ○吉本参考人 社会福祉の原則は、公的負担が原則だというふうに考えています。国や地方自治体が責任を持って行っていくということが非常に大きな意味を持っているというふうに思っております。ですから、原則的に社会福祉は国の予算で、地方自治体の予算で責任を持って必要なサービス提供していくということが原則にならなければならないと思っております。  例えば、現行のものが契約制度になった場合、もちろんこれは業者が入ってまいりますから、利益を追求しなきゃならないということになってくる。そうすると、寝たきりの障害者とか非常に手のかかる障害者をこの基盤整備が非常に不十分な中で受け入れてくれるだろうかという不安が私たちの中に広がっております。現に、介護保険の実施から今まだ一月たっておりませんけれども、あそこの中でも、ホームヘルプサービスには業者がどっと入ってきていますけれども、デイサービスとかそういうような余り利益にならない部分では非常に参加が少ないというふうに聞いておりまして、老人施設の中で大変な苦しい思いをしているということが訴えられております。  そういうふうに考えてみますと、契約によって障害者が自由に選択できるという言葉は、実際の運営上は、現段階では存在しないというふうに思っています。利益が上がって、そして手がかからない障害者から順次施設利用するということになって、重度障害者は結局親の負担の中で暮らしていくしか方法はないことになるという心配を私たちは大いに持っております。  以上です。
  82. 松本純

    ○松本(純)委員 北野、松尾、吉本三参考人の先生方には本当にありがとうございました。  ただいまの吉本参考人お話にもありましたように、障害者について措置制度でなければならぬという御意見のように承ったところでありますが、今般のこの法律のように、種々の手当てを講じておきながらどうしても対応できない場合には措置を用いるというような考え方と私は認識をしているのでありますが、障害者権利を尊重するという考え方はこの方がより明確になるのではないかと感ずるのでありますが、もう一度お答えをいただければと思います。吉本さんにお願いいたします。
  83. 吉本哲夫

    ○吉本参考人 現実の措置制度のもとでも、重度障害者の場合は施設に入れないということがたくさん起こってきております。これが契約制度になった場合には、先ほど申し上げましたように、自由な契約というのは言葉としては存在しても、現実に基盤整備ができていない、それから職員の配置も非常に悪いという状況で、企業として成り立っていく場合には、重度の障害者は基本的には受け入れられないのではないかということが現実の今の福祉施設の中でも起こってきている現象でありますので、先生から今お話がありましたようなことは、現実に今の段階では私は存在しにくいというふうに理解しております。  それで、措置制度も残っているじゃないかと。しかし、あれは基本的には例外規定ですよね。どうしても必要な場合はという規定であって、どういうことが必要かということは、まだこれからの問題としてほとんど規定がないわけでありまして、これはそうはいかないのではないかと私たちは今感じているんです。
  84. 松本純

    ○松本(純)委員 ありがとうございました。  十分という短い質疑の時間で、予定の時間が来てしまいました。三人の参考人の皆様にお礼を申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  85. 江口一雄

  86. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。  参考人の皆様には大変お忙しいところを御出席いただきまして、ありがとうございました。それに比べまして、この委員会の委員出席者が大変少ないということに責任を思う次第でございます。午後からは委員会の重複はそれほどございませんので、どうしてこんなに欠席なのだろうというふうに思いますが、私がお許しいただきたいと申し上げることなのかどうか、ちょっと戸惑いますが。  質問に移らせていただきたいと思います。  北野先生にお尋ねをいたします。  伺いましたお話の内容は、ほとんど私も考え方を同じくしておりますけれども、この法律が、今の状況では、与野党構成でいえば成立するだろうというふうに思いますけれども、そうしますと、措置から契約へ、選択へというふうに変わる。それで、選ぶときに利用者方々サービスについての情報を的確に得られなければ、それでも難しいと思いますけれども、得られなければうまくサービスとその利用がマッチングしないと思います。  そこで、とりわけサービスの質の問題にかかわりまして、サービス評価、サービス提供者が自己評価をするというようなことは法案の中にもございますけれども、この評価のあり方について御意見をお伺いできればと存じます。よろしくお願いいたします。
  87. 北野誠一

    ○北野参考人 今、サービスの質の評価委員会、厚生省委員会の委員をさせていただきまして、いろいろな議論をしておるところでありますけれどもサービスの質の評価は、ある意味で非常に難しい問題を幾つか抱えております。  一つは、サービスの外形的な評価というのは、現在、各都道府県の監査でなされております。問題は、この都道府県の監査によってなされている外形的なチェック、これが実は、はっきり言いますと、アメリカなどの仕組みと比べても非常に甘い仕組みでございます。  アメリカの場合は、もちろん抜き打ちでございまして、それぞれのサービス利用者の一定数についてかなり細かい部分でのチェックもいたします。ところが、日本の場合は、行く前にちゃんと日にちを説明しておいて、皆さんがその日だけは職員の数をそろえておられて、それがチェックできなくて、しかもほとんど書類審査だけで終わってしまっておるという現状でございます。ですから、そもそもその外形的なチェックすら日本の場合は非常に甘い仕組みでございます。  もう一つはサービスの質の評価なんですけれどもサービスの質の評価の中で、特にケアなり介助の質の評価をしようと思えば、当然、利用者に対する評価、利用者意見を聞くということが最低必要になってまいります。日本の場合、監査あるいはサービスの質の評価で利用者の御意見を伺うという仕組みを今まで全くとってきておりません。  我々が考えておるのは、これからやはりその利用者にきっちりと声を上げてもらう、評価できる、利用者の声が酌めるようなサービス評価をどうするのか、あるいは、御本人が自分ではおっしゃりにくい方の場合はオンブズマンのような制度を導入して、その御本人の声をくみ上げていただく仕組みを導入して、外からの第三者評価とオンブズマンのような仕組みが一緒になってサービスの質の評価をしていかなくちゃいけないというふうに思っております。そのために、今そういうことが東京なり大阪なりいろいろなところで、湘南福祉ネットでも起こっておりますので、そういう地方で起こっている大事な活動をぜひとも国は学ばれて、そういういい仕組み制度として設けてもらえたらと思っております。
  88. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございました。私も、利用者の方のお声を直接お伺いするには、できる限り利用者と近い生活経験等々をお持ちになっていらっしゃる方々の参加がとても大事だと思いますので、そういう意味では、NPOも含めた多様な活動の参入を求めていかないといい方向に行かないのではないかというふうに考えております。  次に、松尾参考人にお尋ねをいたします。  今度の社会福祉事業法改正では、地域福祉権利擁護制度を位置づけているというのが大変大きな特徴点として説明もしばしば伺っております。  そこで、都道府県社会福祉協議会のあり方につきまして、先ほど参考人は新たな都道府県社協つくりを覚悟するというお気持ちで臨まれるとお話しくださいました。まだ制度として固めていくのはこれからだとは思いますけれども、今、構想されていらっしゃるところで、運営適正化委員会につきまして、例えば委員の選任をどこがどのような基準でされるのか、あるいは苦情の解決をどこにフィードバックされていくのか。それから、私は、この社会福祉事業法に関連して、権利擁護といいますと、最終的にはやはり訴訟代理をどこかがきちっと受け持たないと権利擁護としては完結しないのではないかという意見を持っているわけでございますけれども、そのあたりについて御所見も含めてお尋ねさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  89. 松尾武昌

    ○松尾参考人 苦情解決仕組みの導入につきましては、これからまさに我々検討してまいることになると思いますが、ある意味では、社会福祉事業にとりましては大変厳しい制度でありまして、事業界が今まで経験しなかったような新しい制度だと思っております。  したがいまして、この苦情処理につきましては、一つは、施設の中で苦情処理をする仕組みをどういうふうにつくっていくかということがございます。それから、そこで処理できないものを都道府県社会福祉協議会で処理をしていく、この二段階になるわけでありますが、これから私どもは、何と申しましても、施設の経営者あるいは従事する方々が苦情についてきちんと対応できるようなガイドラインやマニュアル等を踏まえて、それに対応できるような形でこれから詰めてまいりたいと思っております。  権利擁護につきましても、まさに先生おっしゃるとおりでありまして、まさに苦情解決とつながっていくわけであります。また、権利擁護につきましては、先生御案内のとおり、成年後見とのつながりがございます。私も成年後見の分野のいろいろな検討会に幾つか入っておりますが、成年後見も大変難しいようでありまして、手続等もそれなりに大変難しいようなことをお聞きしておりますが、我々の権利擁護につきましても、ある意味ではそういう専門家はなかなかいないということもございまして、私どもは、この権利擁護制度をきちんとするためには、そういう人材をきちんと確保しながら地域地域で対応していきたい。  何と申しましても、この二つの事業は、先ほど先生が言ってくださいましたように、かつて我々社会福祉協議会が体験しなかったような分野の事業でありますので、真剣にかつ積極的に取り組んでまいりたいと思っております。  以上でございます。
  90. 石毛えい子

    ○石毛委員 私は、この社会福祉事業法権利についての法制度的な担保の仕方が必ずしも明確になっていないのじゃないか、最終的には手続的権利まできちっとしなければ権利擁護にはならないのだと思いますけれども、何か自然権的な権利を表しているような感じがしまして、どこまで権利擁護がきちっと制度として担保されていくのかということについてはもっと厳密な規定が必要ではないかというふうに受けとめているところでございますということだけ申し述べさせていただきたいと思います。  質疑の持ち時間が終了いたしましたというペーパーが来ました。どうして生活保護法は基礎構造改革で取り上げられなかったのだろうかとかもっといろいろお伺いしたい点はありますが、ありがとうございました。
  91. 江口一雄

    江口委員長 福島豊君。
  92. 福島豊

    ○福島委員 公明党・改革クラブの福島でございます。  参考人の先生方には、本日、大変お忙しい中、国会におきまして貴重な御意見をいただきましたことに御礼を申し上げる次第でございます。  まず初めに、吉本参考人に私はお聞きをしたいのですけれども、私は措置という言葉が正直言いまして余り好きではありません。行政が何か上から指示を出して障害を持った方にサービス措置する、そういう考え方をいつまでも続けるのは正直言って反対なんです。御懸念のことはよくわかるのです。サービスが十分に保障されるのかどうか、権利が守られるのかどうか、そういうさまざまな御懸念はあると思うんですけれども、そういう前提がきちっとクリアできるという前提であれば、別に措置でなくても参考人は御理解をいただけるのではないかというふうにも思いますが、どうでしょう。
  93. 吉本哲夫

    ○吉本参考人 私が申し上げてきたのは、用語としての措置ということではなくて、公的責任を明確にするという点で、現在の法制度の中では措置措置制度ということになっていますから、これは用語を変えることにはいささかも私はちゅうちょするものではないのです。要するに、国の責任を、地方自治体の責任を明確にしていく法制度になっていないということに大きな危惧を私は持っているわけです。  それが、福祉の全体が、例えば民間が導入したとしても、監視機構というのかあるいは指導機構というのか、きちんと国の責任を明確にしていくという方向をとっていけば、これはまた話が違ってくるかもしれませんけれども、そういう公的責任を明確にしていくということが原則になっていかなければいけないのじゃないかという思いがありますもので、今の用語としては措置という言葉しかないものですから私は言っているのであって、責任の所在を明確にする用語があれば、それはそれなりにいいのじゃないかと思います。
  94. 福島豊

    ○福島委員 公の責任というのはどこまでをカバーすべきなのかという議論がそこで次に出てくると思うんですけれども、私は、一つは基盤整備をきちっとする、これは公の責任だ、また、さまざまな苦情ですとか問題が起こったときにそれに対処する、そしてまた、サービスの質が確保されているかどうかということをチェックする、これも公的な責任だというふうに思うんですね。  吉本参考人はどこまでを公的な責任の範囲というふうに考えておられるのか、その点をもう少し細かく御説明いただけますか。
  95. 吉本哲夫

    ○吉本参考人 やはり基本にあるのは基本的人権保障だということになっていくと思います。それが財政の分野からも、それから組織の分野も、機構の分野もということになっていくだろうと思います。  一つ申し上げておかなかったのは、今回提出された法案の中で、今先生御指摘のありました基本的な人権の分野でいえば、権利擁護の分野で請求権が明確になっていないのですね。請求権はやはり明確にしていかないと法制度としてはきちんとしたものになっていかないのじゃないかということがありまして、そういうものを含めた権利擁護といいますか国の責任といいましょうか、そういうものを明確にしていく必要があるのじゃないかと思っております。
  96. 福島豊

    ○福島委員 次に、北野参考人にお尋ねをしたいのです。  ちょうだいいたしましたペーパーですけれども、ドイツの介護保険法であれば「可能な限り」という言葉が使われている、そして今回の法律では、「能力に応じ自立した」ということで、「能力に応じ」という表現になっている。  私は素朴に考えまして、法律の用語についての認識の違いといいますか文化の違いが、ドイツと日本というか、ヨーロッパと日本であるのではないかな。この「可能な限り」という表現は、どこまでがその責任範囲なのかということが不明確になるというような懸念もあってこういう表現の仕方になったのではないかというふうにも思うものですから、その点については参考人はどのようにお考えでしょうか。
  97. 北野誠一

    ○北野参考人 おっしゃるとおり、「可能な限り」という表現が望ましいかどうか、それはどういう表現がベストであるかということについては、私もこれがベストであるとは思っておるわけではないのですけれども、「その有する能力に応じ」というのは、ある意味で、日本がずっと長く、分に応じたというイメージがどうしてもぬぐい切れない表現なんですね。ですから、私は、分に応じた、能力に応じた、そういう能力主義的な発想が感じられるこの表現をやはり変えるべきであるというふうには思っております。
  98. 福島豊

    ○福島委員 それから、ペーパーの三ページ目には、この法案自体では不可能な基盤整備について、二〇〇三年までに何としても行わなければならない、私もそのとおりだというふうに思います。基盤がきちっとしていなければ、利用選択といいましても、それは実現可能ではない。  ただ、市町村における障害者計画につきましても、あるところもあればないところもあるということで、大変意識の差があるということは事実だと思うんですね。首長さんも障害者福祉ということについて熱心な方もおれば熱心でない方もある。いろいろな状況があるのじゃないかなというふうに思うんですね。  二〇〇三年までというと、比較的限られた期間でございますし、私どもも最大の努力をしたいというふうに思いますけれども、その実現のためにどこが変わったらいいのかということについて北野参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  99. 北野誠一

    ○北野参考人 実は、私はこれまで十の市町村障害者長期計画の委員長をさせられまして、大阪で八カ所、和歌山で一カ所、兵庫県で一カ所やっておるのですけれども、やっておって一番よくわかるのは、大阪府は大阪府の長期計画に関する数値目標の算定に関するマニュアルをつくっていらっしゃって、かなり大阪府の指導がきっちり入っております。そうしますと、市町村は数値目標を入れないような長期計画はつくれないのですね。ですから、かなりきっちりできております。これは言っていいのかどうかわかりませんけれども、和歌山ではそういう指導が入っておりませんので、基本的に、私のしたところでは、数値目標が全く入らないような長期計画になってしまいました。  ですから、やはりこれは国なり都道府県のかなり綿密な御指導なり、きちんとした仕組みが必要であるというふうに考えております。
  100. 福島豊

    ○福島委員 最後に、松尾参考人にお尋ねをしたいのですけれども地域権利擁護事業ですが、社協が中心になって御努力をいただくわけでございますけれども、まだスタートしましてから限られた期間でもあります。現実には、社協の実態というのは地域によってかなり差がある、果たしてどこまでそういう細かなニーズにこたえ得るのかということについて、懸念を持っておられる方もおります。今後の見通し、そしてまた今までの取り組みにつきまして、簡単に御説明いただければと思います。
  101. 松尾武昌

    ○松尾参考人 権利擁護事業につきましては、現在のところ、契約件数というのはまだ大変少のうございまして、むしろ相談件数が多いという状況でございます。先生御指摘のとおり、大変進んでいる都道府県と、まだまだそこに至っていない都道府県の差は、大変大きな差があるだろうと思います。それは、先ほどもちょっと申し上げましたが、やはりそれに携わる専門職員の問題だとか、あるいはそれをバックアップしていただきます弁護士さんの数だとか、いろいろな意味地域差が出てきています。どちらかというと、都市部の方が非常に熱心に進んでいるように感じております。  ただ、私どもは、この制度は都市部だけで、それ以外はいいというわけにもまいりませんので、積極的に進んでいるところをぐんぐん進めさせまして、それをほかの地域にこういうことでやればこういうことができるよということを示しながら引き上げていくということが大事じゃなかろうかという感じがしております。  まだ半年でございますので、どこにどういう問題があって、どういうようなところをこれから手を入れたらいいかというのはまだ細かく詰めておりませんけれども、そういうことで対応していきたいと思っております。それから、四月一日から成年後見制度も発足いたしましたので、それとの関連もございますので、これからそういうことをきちんと詰めながら、私どもは対応してまいりたいと思っております。
  102. 福島豊

    ○福島委員 以上で持ち時間が終わりましたので、質問を終わりにいたします。参考人の先生方、ありがとうございました。
  103. 江口一雄

    江口委員長 児玉健次君。
  104. 児玉健次

    ○児玉委員 お三方、きょうはありがとうございます。日本共産党の児玉健次でございます。  今度の案で、措置制度の問題が大きく議論の対象になりますけれども、そのことについて一言言っておきますが、言葉の問題でなくて内容の問題だというのはそのとおりですが、しかし、言葉の問題としても、例えば子ども権利条約の中には随所に措置するという言葉が出てまいります、テーク・メジャーという形で出てまいります。私たちは、措置制度だから行政権の一方的行使だという立場には立ちません。この問題は、この後の政府との論議でやりたいと思います。  北野参考人に最初にお伺いをしたいのですが、先ほどの御陳述、本当に勉強をさせていただきました。サービス受給権とサービス選択権の問題、Aを選ぶかBを選ぶかCを選ぶか、そのことが可能なときにこの議論は成り立ちますけれども、逆の場合は成り立ちません。  四月の十四日、衆議院本会議でこの案について初めて趣旨説明が行われましたとき、日本共産党は代表質問で島根県の例を挙げました。島根県には、身体障害者が三万三千人いらっしゃいます。法定の更生施設は一カ所、五十人です。療護施設は三カ所、二百十人。授産施設は一カ所、四十人。重度授産施設が二カ所、百三十五人。全部合わせて四百三十五人です。三万三千人に対して四百三十五人。これでは、先ほど先生が強調されたサービス選択権はおよそ存在しない。  そして、先生が一連の今度の改正案、かぎ括弧つきですが、そのことについてコメントなさったとき、それはまず一定のサービスが存在していることが前提となっている。本当にそうだと思います。その前提が現在存在していないときにこの法案が出されたことについて、先生はどのようにお考えでしょうか。
  105. 北野誠一

    ○北野参考人 今おっしゃられたとおりでありまして、私は、本当にある意味障害者の仲間たちとともに憤っておる部分がございます。  といいますのは、例えば、今、高齢者の場合で申しますと、痴呆性の高齢者のグループホームがございますね、高齢者のグループホームは補助金が五人に対して一千二百十八万円出ております。一方、知的障害者のグループホームにつきましては、五人に対して三百二十万円ですか、重度の方の加算が全部ございましても六百万ちょっとなんです。つまり、ゴールドプラン、新ゴールドプラン、それからスーパーゴールドプランと、着々と基盤整備をされてこられている高齢者のシステムに比べて、余りに障害者の置かれている現状というのは、ある意味で厳しい、悲惨な状況です。  ですから、本当にこの問題を真剣に考えていただいて、障害者の基盤整備にまず全力を挙げて取り組んでいただきたいというのが切なる思いであります。
  106. 児玉健次

    ○児玉委員 ありがとうございました。  吉本参考人にお伺いしたいと思います。  今、全国各地の障害者障害者団体の間で、今回の案で、これまでの措置費に比べて利用費助成、支援費がどうなっていくのだろうか、措置費の水準が維持できるのだろうかどうだろうか、この点で強い危惧があると承っております。この後、措置費相当の支援費のあり方はどうでなければならないか、御意見をいただきたいと思うのが第一点です。  二つ目の点は、先ほど御意見の中にございましたが、精神障害者と難病の方々の存在と権利がこの法律改正案の中でどのようになっているか。この改正案には、今のことについてどのような問題点が含まれているか。この二点についてお考えを聞かせていただきたいと思います。
  107. 吉本哲夫

    ○吉本参考人 現在、措置費で福祉が運営されているわけですけれども、現在の福祉制度利用するというときには、窓口へ行って行政担当者と話をして、申し込みをして、そしてやりとりをするわけですね、窓口で。そして、結果的には措置という言葉になりますけれども、そこで一定の話し合いをするという仕組みが成り立っているわけです。  今度の支援費の場合は、これは行政が一方的にサービス支援費を決めて、上限も決めてしまって、その範囲内で障害者が施策を契約制度で受けるという仕組みになっていますから、突発事故が起きて障害が変わって重くなって、そして、それに支援が必要な場合とかあるいは行政の方の判断が低い支援状態をつくっていくというようなことになったときに、現行のサービスからうんと後退するのではないかという不安はたくさんの人が持っております。  現に、今介護保険が進行しておりますけれども障害者の介護と福祉関係は、まず介護保険で介護サービスをやって、そして従来の福祉制度の中で必要なものはやるという仕組みになってきているわけです。これは大分トラブルが起こってきているようでありますけれども、そういうふうになってきている。それで、今それをどうするかというのが大きな問題になっている。  今度支援費になった場合には、仕組みが、きちんと行政が入って障害者本人と話し合いをするという仕組みではありませんから、これは行政が社協なんかを通じて支援費の受託とか受領とかいろいろやったりするのだけれども行政はほとんど障害者の実態に触れた形で施策の進行をするという支援制度にはなっていないということで、これは、これから障害の変化とかあるいは状況が必要とするときに、こういうことが今までどおりできるかという心配を非常に多くの人たちが持っております。  もう一つ、精神障害者や難病等の問題ですけれども日本障害者福祉制度というのは、御存じのように制限列挙方式になっておりまして、これこれの人が法の体系になるという書き方をしておりますから、多くの障害者が排除されている現状がたくさんあります。  その中でも、精神障害者がきちんと保障されているのは年金です。年金はきちんと保障されておりますけれども、そのほかの福祉制度の中ではほとんど精神障害者が除外されている。国際障害者年以降できたさまざまな福祉制度、例えば有料道路の割引というのは精神障害者が排除されている、難病も同じですけれども排除されてきている。  こういうことを今こそきちんとなくさないと、二十一世紀へ引き継げないんじゃないか。ですから、障害者福祉制度も含めて、必要とする障害者がきちんと受けられるように目的を明確にしていかなければ、制限列挙方式の法制度では絶対それができなくなるんじゃないかということを強く私たちは主張しているところです。
  108. 児玉健次

    ○児玉委員 ありがとうございました。  最後に、松尾参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど私は、島根のケースを申しまして、お聞きいただいたと思います。先ほど松尾参考人は、この後の努力すべき何点かをお話しになったときに、苦情解決制度が今度盛り込まれたというふうにおっしゃりつつ、サービスの基盤整備の充実の重要性についてお触れになりましたが、そのことについて全国社会福祉協議会のお立場で政府にどのようなことを期待なさるか、お伺いしたいと思います。
  109. 松尾武昌

    ○松尾参考人 私どもといたしましては、まさに基盤整備がこれからの利用制度の導入に一番肝心、大事なことであるということは認識しております。  ただ、先生がおっしゃいましたように、私、ちょっと昔障害のことにかかわっておりましたので、その経験から申し上げますと、障害の場合は、障害種別にやはりいろいろな固有の課題を抱えておりまして、今、いろいろな福祉の施策の原点が地域地域というふうに言っておるんですが、なかなか地域での基盤整備が図りにくいという状況があるのではなかろうかというふうに当時私は思っておりました。  その後、法律もある意味では障害者福祉法、基本法という形になりまして、ある程度地域地域障害者が横断的にいろいろな制度利用できるような仕組みにしていきたい、するべきではないかという議論も起こっておりますので、そういうことも踏まえながらやらないと、障害者の場合は、施設にしましてもいろいろな在宅サービスにしましても、地域で展開するのはなかなか難しいのではなかろうかという感じがいたします。  そういう意味で、私ども障害者の各団体との連携を持っておりますので、地域地域障害者団体、横の連絡をとりながらその地域で基盤整備を図っていく、ある意味では行政といろいろな協議をしながら進めていくということが大事ではなかろうかというふうに思っております。  以上でございます。
  110. 児玉健次

    ○児玉委員 ありがとうございました。
  111. 江口一雄

    江口委員長 吉田幸弘君。
  112. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 保守党の吉田幸弘でございます。  本日は、三名の参考人の皆様、非常に貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。  早速でありますが、北野さんにお伺いをしたい点がございます。  先ほどの福島先生と同じような内容になると思うんですが、「能力に応じ」と「可能な限り」という言葉、私の理解では、可能な限りとした方が何となく強いようなイメージというか重いようなイメージがあるわけです。この点についてもう少し詳しく御説明いただければと思います。
  113. 北野誠一

    ○北野参考人 重いということですので、ちょっと私のレジュメの二ページをもう一度見ていただきたいんですけれども、まず、なぜ私が有する能力に応じた自立という言葉にこだわっておるかと申しますと、かつて、有する能力に応じた生活という表現の中で、つまり、障害を持っている方ができないことがある。そうすると、できないことはあなたの責任ですよと。あなたは自分の障害の程度に応じて、その能力の範囲で、能力に応じた生活といいますか、例えば重い障害を持っていらっしゃる御本人が在宅生活なり地域での生活を望んでいらっしゃっても、あなたの障害の程度ならそういう選択はありませんよと。つまり、あなたの障害の程度ならこういうところの病院に行きなさいよ、あるいはこういう施設の中に行きなさいよというように、どうしても能力に応じた生活というのは御本人のさまざまな自己展開なり自己実現なり自己決定に一定の制約を設けてしまうイメージが我々のこの世界ではあるんですね。ですから、その有する能力に応じたという表現をなるべく避けたいと。  恐らく午前中に金さんも御発言されたと思うんですけれども、その環境なり性別なり本人状況に応じたという表現を希望されていらっしゃる障害者方々もいらっしゃいます。ですから、その環境なり状況なりに応じたという表現の方が望ましいのか、それとも私の言ったようにアズ・ポシブル・アズという表現で、つまり、本人のできる限りという表現をとる方が望ましいのかは少し議論があるかもしれませんけれども、可能な限りとか、こういう表現が望ましいんじゃないかなというふうに私の方は思っておる次第です。
  114. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 ありがとうございました。大変よく理解できました。  次に、松尾さんにお伺いいたしたいと思います。  午前中も似たような質問をさせていただいたんですが、社会保障福祉とか医療とか年金において、とにかく自己責任という言葉が最近よく聞こえてまいります。今回の件に関して、障害者の方の自己責任というのはどの程度まで考慮するべきなのか、簡単で結構です、お示しいただきたいと思います。
  115. 松尾武昌

    ○松尾参考人 直接今担当しておりませんので、的確な御返事ができるかどうかわかりませんが、施設を選ぶということは、どういう施設を選びたいか、あるいは、どういう在宅福祉サービスを欲しいかというのは、それを受けたい本人がまさに選択すべきものであろうというふうに私は思っております。  これに直接関連するわけではありませんが、今、社会福祉施設を経営する者あるいは事業を経営する者が、実は非常に脅威を感じております。と申しますのは、苦情解決とか第三者評価といったものがこれから新しい制度によって導入されますと、それに対応する施設運営、事業経営というのは、実は大変厳しいんじゃなかろうか。今まで私ども社会福祉分野はそういう経験をしておりませんものですから、そういう意味では非常に厳しい環境を迎えるんじゃないかということを今皆危惧しているといいますか心配しているわけであります。逆に言えば、まさにそこが、これから利用する側がそういうことをきちんと言えるようなサービス利用契約で受けるというところではなかろうかと思います。  したがいまして、私、どこまでが自己責任で、これ以上は自己責任でないという線はなかなか引けませんが、そういう形で利用する側がこういうことを欲しいあるいはしてほしいということをまさにきちんと言われる、それに対して施設側がきちんと対応していく、こういうことがこれからの福祉の世界ではなかろうか、そういうふうに理解しております。  返事になっていないかもしれません、大変失礼ですが。
  116. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 その自己責任云々という件でありますが、事態が起こってからどこの責任であるとか、後から国が悪いとか、施設が悪いとかということではなくて、選択する時点でその責任を明確にして、そして選ぶ方もそのことを十分承知した上でのサービス利用ということでやっていきたい、これが私の考えでございます。  以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  117. 江口一雄

  118. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子でございます。きょうは大変御苦労さまでございます。  まず最初に、北野さんにお伺いしたいと思います。  先ほどのお話の中に、各市町村は数値目標を立てて障害者計画を周知徹底することがまず大切である、それで大阪府の場合はきちっと数値目標ができていると。  政治の世界で法案をつくるときに、よく努力規定だ義務規定だということが議論になるのですね。それで、努力規定から義務規定にするのに、本当にコンセンサスを得るのが大変難しい。この政治の世界に入りまして、なぜ簡単にそこの部分が努力から義務にいかないのだろうかなと私自身は本当に不満に思っている一人なんですけれども、これは、やはり数値目標というものをきちっとこれからは掲げるべきだと思うのですね。  それで、あいまいで努力しているかしていないかわからない、過去、その状態をずっと今まで続けてきたわけですけれども、そのあたりの状況、すなわち、その数値目標というものが全国でどのくらい立てられて実際に行われているのか、半数ぐらいあるのか、それとももっと少ないのか、その辺の事情を聞かせていただきたいと思います。
  119. 北野誠一

    ○北野参考人 我々のところには平成十年度の集計しか教えられておらぬわけですけれども、実際に四九%の市町村が長期計画そのものはつくっていらっしゃる、その中で三九%でしたかその部分が数値目標を持っていらっしゃるということなんですけれども、もっとはっきり申しますと、数値目標の中身のチェックが必要なのです。  私は大阪府下で八カ所の長期計画の委員長をしましたけれども市町村によって、数値目標は一応掲げておるけれども、非常にお寂しいといいますか本当に最低の最低の数値目標で、私たちが実際に障害者のニーズ調査を行って、出てきたニーズと数値目標が非常にかけ離れておるものがございます。  ですから、やはり障害者の方のニーズをきっちり調査され、そのニーズに基づいた数値目標を立てていただかなければ、逆に数値目標が表向きあるだけで許されてしまってはいけない。ですから、必ずニーズ調査をきっちりする、そのニーズ調査に基づいて数値目標を立てられる。それで、高齢者の場合はそういう仕組みをとりまして、ゴールドプランが新ゴールドプランに変わったのは、ニーズ調査の結果、市町村の全体のサービスの総量が国の予定を上回ったために新ゴールドプランが生まれてきたという経緯もございますから、ぜひともニーズ調査に基づいて全国サービスの総量を出されて、今のノーマライゼーション七か年戦略をはるかに上回るような新ノーマライゼーション七か年戦略を立てていただければというふうに思っております。
  120. 武山百合子

    ○武山委員 ありがとうございました。  実は私、昭和四十年代から海外で生活する運命になりまして、海外から日本の経済成長をずっと眺めてまいったわけなんです。過去を振り返りますと、日本が経済大国になっていく過程をずっと眺めてまいりまして、物質が豊かになり、本当に思ってもみなかった経済成長を遂げたわけですけれども、なぜこういう経済成長を遂げた国なのに日本福祉というものが根本から変えられなかったのか。今回の法改正も、本当に何十年ぶりで変わった。これから大きな意識改革になるわけですけれども、なぜおくれたのか、お一人お一人、その原因をちょっと提示していただけたらと思います。
  121. 北野誠一

    ○北野参考人 これは、いろいろな方がいらっしゃいますので、どう説明したらいいかわかりませんけれども、一番大きな問題は、戦後の日本福祉の生まれ方の中で、福祉が施し、恩恵としての福祉という発想が日本ではとても強かった。ですから、とても障害を持っていらっしゃる方や高齢者一人一人の権利としての福祉というビジョンが出てこなかった。  つまり、困ったらまず家族が見る、家族がぎりぎりまで見て、家族が倒れて初めて公的な福祉が恩恵として手を差し伸べる、そういう恩恵的な福祉の発想がずっと日本福祉には残ってしまった。当たり前の市民の権利としての福祉のビジョンが生まれてこなかったことが一番大きな原因だというふうに考えております。  以上です。
  122. 松尾武昌

    ○松尾参考人 先生に反抗するわけじゃありませんが、おくれたという認識のところは、ちょっとどうかな、私の認識と違うのかもしれません。  私は、確かに最初の出だしは大変鈍かったかもしれませんが、社会福祉にとってみますと、国連障害者の十年からその後を考えてみますと、私は相当進んできたのではないかというふうに認識をしております。ただ、そこまでに大変時間がかかったということについては、私も同感であります。  また、今やいろいろな意味障害者が住みやすい社会にしようという努力が払われておりまして、私は、この法改正もまさにそうでありますが、これからもますます福祉は伸びていくんじゃないかというふうに認識しております。
  123. 吉本哲夫

    ○吉本参考人 話が重なるかもしれませんけれども、やはり基本的には、憲法二十五条に保障されている生存権を初めとする社会保障権がきちんと具体的な制度の中で生かされてこなかった。例えば障害者が養護学校を卒業して施設に入ることになったときは、東京の場合、秋田県とか福島県とか、そういう生まれ育った地域で生きていくことが保障されないような状態であるのがある意味では当然のこととされてきている。その現状が、やはり権利としての社会保障というものをきちんと位置づけた施策になっていないことがあるのではないかと思うのです。  財政は、そういう社会保障の分野が優先するのではなくて、社会保障は後景に押しやられて、もっと違う形の財政の使い方をしていく、そういう社会福祉に対する政治の姿勢がやはり大きな原因になって今日まで来ているんじゃないか。権利としての社会保障が、そういう形で結果的には行使できない状態が続いていくことだろうと私は思っています。
  124. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  これは私が四十年代にアメリカに住んだ経験なんですけれども、四十年代に、もうアメリカでは、例えば中学校、高校は、アメリカの場合義務教育なんですけれども、身体的ハンディキャップの子供がいる場合、家までスクールバスが迎えに来るのですね。それで、車いすで行ける場合は学校で本当に普通の生徒と同じように授業ができ、また、体が動かせない場合は、ある一定の定年退職した大学の先生とかいろいろな方がおうちまで来て勉強を見てくれたり、また電話で授業をしたりとか、大変進んでいたことにびっくりした次第なんです。  それは、国がもちろん経済的支援をする部分もありますし、同時にまた、寄附をした場合、税制上の控除は大変大きく、またノンプロフィットオーガニゼーション、非営利団体の活動もこういう社会で大変大きな貢献をしているわけなんですね。  それで、今、社会福祉事業に対しても日本の国民で寄附をしたいという人はたくさんいらっしゃると私は思うのですね。その税制上の優遇措置というものを日本でもこれからどんどん行っていかなければいけないと思うのです。  それで、午前中、参考人皆さんから聞いた話では、盲導犬の方は寄附には税制上優遇措置があるということですけれども、他の分野に一番精通していらっしゃる方、最後の質問になりますけれども、優遇措置があるかどうか、その辺ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  125. 松尾武昌

    ○松尾参考人 正確かどうかわかりませんが、盲導犬事業については、今まで盲導犬事業ということで税制上の恩典があったようでございますが、今般、社会福祉事業としてきちんと認められる、そこの中に規定いたしますと、これは他の事業と全く同じでありまして、寄附税制、事業税制、法人税制、そういった形できちんと社会福祉事業としての税制が適用になるというふうに理解しております。
  126. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  そうしましたら、社会福祉事業ということで税制上の優遇措置があるということを国民全員が知る必要があると思うのですね。皆さん、寄附をしたいという方々、地元でもたくさん聞いておりますので、私も周知徹底という意味皆さんに知らせたいと思います。  ありがとうございました。
  127. 江口一雄

    江口委員長 中川智子さん。
  128. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは本当にありがとうございました。  まず最初に、北野参考人に伺いたいのですが、いろいろな委員からの質問の中で、数値目標のあるところとないところの差、そして、参考人自身が大阪八カ所、和歌山、兵庫、そのような実際の数を教えていただいたのですけれども、国や都道府県がそれに対してどのように指導をしているのか、その姿勢ですね、そのことを一点伺いたいと思います。
  129. 北野誠一

    ○北野参考人 例えば、私は、箕面市というところで長期計画の策定の委員長をさせていただきました。箕面市は、長期計画では最もすばらしいというお褒めをいただきまして、私も鼻高々なんですけれども、箕面市の長期計画をつくるときに非常におもしろい議論がございました。  実は、ノーマライゼーション七か年戦略ができたばかりのころでありましたが、国の出してこられた数値目標の算定の仕方を我々なりに考え、つまり、人口割なりいろいろな仕組みで割り出しましたものと、大阪府からの指導のもとに出してこられた数値目標の算定方式での割り出しの計算をいたしましたものと、箕面市の長期計画に関するニーズ調査の算定と、三つを突き合わせて、これは障害当事者の市民に委員会に多く入っていただきまして、障害者本人と家族の方々にその三つの数字を提示して一体この数値をどんなふうに、一緒に一番いいものをつくっていこうかということを考えました。  あのときは、例えばグループホームをつくる場合には大阪府の数値の方が国の数値よりもはるかに上回っておりました。初めは、国の指導と大阪府の指導の間に挟まれて箕面市の方は非常に苦しんでおられたのですけれども障害当事者の熱い思いの中で、私たちが協力してグループホームをつくっていきます、一緒にやりましょうということの中で、大阪府の方が高ければ大阪府の数値を選ぶ、国が高ければ国の数値を選ぶという形で、すべて高い数値の方を選択させていただいた。そのかわり、障害当事者なり市民はそれをやるためにすべてのエネルギーを注いで、一緒に協力してやっていくという、ある意味で市民と障害者の側と行政がともにつくっていくという仕組みをつくっていかれますと、やはり一番いいものができるのじゃないかなというふうに私は思っております。
  130. 中川智子

    ○中川(智)委員 私も、本当に、当事者地域で活動していらっしゃる方がともにつくるというのが基本だと思います。  そのことに関連して松尾参考人に伺いたいのですが、今回、社協のお仕事、責任はとても重くなったと思います。そこで、社協として心しなければいけないことをどのように考えていらっしゃるのか。  あわせて、今の北野参考人の御意見のように、私は、運営適正化委員会の中に当事者、NPO、そのような方たちにしっかり入っていただいて、より開かれた形でニーズ、要求、皆さんが希望していらっしゃることに沿っていくというのが基本だと思いますが、この運営適正化委員会の中に利用者代表、NPOがどのような形で入っていくように考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  131. 松尾武昌

    ○松尾参考人 本法案改正によって社会福祉協議会が大変重い責任を持つということは痛感しております。  これは反省でございますが、社会福祉協議会の今までの活動といいますか事業を見てみますと、特に市町村社協がそうでありますが、介護保険にほとんど忙殺されてきたというような感じを実は持っております。今も、まだ介護保険が始まったばかりでありますので、非常にそこに大きな力を注いでいる状況であろうと思います。これが落ちつくと申しますかある程度軌道に乗れば、障害者施策や児童の施策に展開できるのではないかと思っております。もともと障害者施策等については、社会福祉協議会市町村社協がそれを支援するような形になっておりませんでしたので、これからまさにこの法律の施行を踏まえてそういうことを担当していくべきではないかと思っております。  それから、都道府県社協もある意味では同様でありまして、社会福祉協議会はどちらかというと都道府県、あるいは市町村社協は市町村の委託事業が大半でございまして、その事業を進めていくという形で今まで来ておりました。これからは苦情解決なり、あるいは権利擁護もそうですし、これから評価も始まりますが、社協としての独自の事業が恐らく展開されていく、ある程度財源は負担していただきますが、独自で仕事をしていくというような形になると思います。  適正化委員会の構成でございますが、私ども、これがどういう形できちんと仕組まれていくか、まだ実態をすべて把握しておりませんので、当然、利用者事業者、公益代表がそれぞれ同数で委員会をつくるように聞いておりますので、そこにどういうような形で選ばれてくるのか様子を見ながら、また状況を把握していきたいと思っていますし、むしろそういう意味ではいろいろな意見が反映できるような事業運営に意を尽くしていきたいと思っております。
  132. 中川智子

    ○中川(智)委員 利用者の方の御意見が本当に最大限生かせるような仕組みでよろしくお願いしたいと思います。  吉本参考人にお伺いしますが、参考人障害者生活権利を守る全国連絡協議会の一員として入っていらっしゃいますが、国民のねがう社会福祉の拡充を求める連絡会の方からの本法案に対するさまざまな御意見をちょうだいして、特にその中から、今回、指定事業者施設支援費を代理受領することになりますので、特に自治体が利用者生活実態の把握というものが今後きっちりできるのか、できていくのかどうか。これが施行された後に、今度の改正案が通りました後、それが円滑に機能できているかどうかということに対するチェックというか、自治体の方がしっかり把握できなくなるという不安が大きいように聞いておりますが、このあたりの御意見を聞かせていただきたいと思います。
  133. 吉本哲夫

    ○吉本参考人 先生も御存じのように、市町村障害者プランの策定が非常におくれているわけですね。私たちはそれを非常に心配をしているのです。  ただ、町や村に入っていきますと、障害者福祉の専門家が配置されていない、熱意はあってもどういうふうにつくるかわからないというような人たちがたくさん職員の中にいるわけです。それから、つくっていく上で、地域障害者意見を反映してつくっていくような仕組みができていないということで、では、だれがつくるかというのが実態が明確になっていかない。これは、やはりもっと県がきちんと援助していきながらそういう集団をつくっていく、そういうことが必要です。つまり、障害者意見が反映されるような仕組みができ上がっていないのです。そういうことが障害者の政策をつくっていく上で非常に一つ一つ障壁になってきているわけです。  今度の法改正の中でも、特に今度は行政が直接かかわらなくても支援費が動いていくという形がとられます。そうすると、障害者意見が反映されて支援費をふやしたりすることができるという仕組みになっておりませんから、結局障害者の実態がつかめないままだということになってしまうのではないかという不安を私が持っているものですから、先生から今お話がありましたような資料をつくりまして、やはりこういう問題があるのじゃないかということを多くの人に知ってほしいということで今活動をしているわけです。  ですから、先生から御指摘ありましたように、単純に決めるのじゃなくて、もっといろいろな議論をした上で内容を決めてほしいということが私たちの全体としてのスタンスであるわけです。できるだけ長く、たくさんの意見を聞いた上で、二十一世紀にかかわる法改正でありますから、十分な時間を割いて議論をしていただきたいなということが私たちの切実な願いであります。  よろしくお願いいたします。
  134. 中川智子

    ○中川(智)委員 あっという間に時間が来てしまいました。たくさん伺いたいことがあったのですが、雇用の問題とかそのあたり深刻なものがございますので伺いたかったのですが、今後とも本当にいろいろな形での御支援と、ともに頑張っていきたいということで、終わらせていただきます。  きょうは、ありがとうございました。
  135. 江口一雄

    江口委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼申し上げます。(拍手)  次回は、来る五月十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十三分散会