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2000-03-24 第147回国会 衆議院 厚生委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月二十四日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 江口 一雄君    理事 安倍 晋三君 理事 衛藤 晟一君    理事 木村 義雄君 理事 田中眞紀子君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 福島  豊君 理事 吉田 幸弘君       伊吹 文明君    石崎  岳君       今村 雅弘君    遠藤 利明君       大石 秀政君    大村 秀章君       河井 克行君    鴨下 一郎君       小林 多門君    阪上 善秀君       鈴木 俊一君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    田村 憲久君       戸井田 徹君    根本  匠君       桧田  仁君    堀之内久男君       松本  純君    山下 徳夫君       渡辺 博道君    家西  悟君       石毛えい子君    上田 清司君       土肥 隆一君    中桐 伸五君       古川 元久君    遠藤 和良君       小沢 辰男君    大野由利子君       白保 台一君    岡島 正之君       武山百合子君    児玉 健次君       瀬古由起子君    中川 智子君     …………………………………    厚生大臣         丹羽 雄哉君    厚生政務次官       大野由利子君    政府参考人    (内閣審議官)      伊佐敷眞一君    政府参考人    (沖縄開発庁総務局総務課    長)           東  良信君    政府参考人    (大蔵省理財局長)    中川 雅治君    政府参考人    (厚生省保健医療局長)  篠崎 英夫君    政府参考人    (厚生省社会援護局長) 炭谷  茂君    政府参考人    (厚生省年金局長)    矢野 朝水君    参考人    (年金福祉事業団理事長) 森  仁美君    厚生委員会専門員     杉谷 正秀君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   石崎  岳君     大石 秀政君   大村 秀章君     阪上 善秀君   桧田  仁君     渡辺 博道君   宮島 大典君     小林 多門君   山下 徳夫君     今村 雅弘君   五島 正規君     上田 清司君   遠藤 和良君     白保 台一君 同日  辞任         補欠選任   今村 雅弘君     山下 徳夫君   大石 秀政君     石崎  岳君   小林 多門君     河井 克行君   阪上 善秀君     大村 秀章君   渡辺 博道君     桧田  仁君   上田 清司君     五島 正規君   白保 台一君     遠藤 和良君 同日  辞任         補欠選任   河井 克行君     宮島 大典君     ————————————— 三月二十二日  平成十二年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案内閣提出第三〇号) 同月二十三日  国民年金法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会閣法第一一八号)(参議院送付)  年金資金運用基金法案(第百四十五回国会閣法第一一九号)(参議院送付)  年金福祉事業団解散及び業務承継等に関する法律案(第百四十五回国会閣法第一二〇号)(参議院送付) 同月十七日  社会保障拡充に関する請願石橋大吉紹介)(第四六五号)  同(北側一雄紹介)(第四六六号)  同(小坂憲次紹介)(第四六七号)  同(西川知雄紹介)(第四六八号)  同(高市早苗紹介)(第四七三号)  同(中山成彬紹介)(第四七四号)  同(村井仁紹介)(第四七五号)  同(中林よし子紹介)(第四八五号)  同(堀込征雄紹介)(第四八六号)  同(北沢清功紹介)(第四九四号)  同(佐藤謙一郎紹介)(第四九五号)  同(伊藤茂紹介)(第五〇三号)  同(中田宏紹介)(第五〇四号)  同(小川元紹介)(第五一〇号)  同(中馬弘毅紹介)(第五一一号)  同(石井一紹介)(第五一五号)  同(小川元紹介)(第五一六号)  同(大森猛紹介)(第五一七号)  同(奥谷通紹介)(第五一八号)  同(土井たか子紹介)(第五一九号)  同(土肥隆一紹介)(第五二〇号)  同(大森猛紹介)(第五二五号)  同(志位和夫紹介)(第五二六号)  同(戸井田徹紹介)(第五二七号)  同(土井たか子紹介)(第五二八号)  同(中路雅弘紹介)(第五二九号)  同(藤井孝男紹介)(第五三〇号)  同(赤羽一嘉紹介)(第五三六号)  同(赤松正雄紹介)(第五三七号)  同(平野博文紹介)(第五三八号)  同(小林守紹介)(第五四八号)  同(河本三郎紹介)(第五四九号)  同(土井たか子紹介)(第五五〇号)  同(藤木洋子紹介)(第五五一号)  同(土井たか子紹介)(第五五九号)  同(蓮実進紹介)(第五六〇号)  同(渡辺周紹介)(第五六一号)  同(安住淳紹介)(第五七九号)  同(木島日出夫紹介)(第五八〇号)  同(自見庄三郎君紹介)(第五九一号)  同(石破茂紹介)(第六一四号)  同(越智通雄紹介)(第六一五号)  同(大野松茂紹介)(第六一六号)  同(土井たか子紹介)(第六一七号)  同(長勢甚遠君紹介)(第六一八号)  同(保坂展人君紹介)(第六一九号)  同(細川律夫紹介)(第六二〇号)  同(宮下創平紹介)(第六二一号)  保育学童保育予算大幅増額保育施策拡充に関する請願西川知雄紹介)(第四六九号)  介護保険緊急改善と新たな医療費自己負担引き上げ中止に関する請願佐々木陸海紹介)(第四八〇号)  同(志位和夫紹介)(第四八一号)  年金改悪反対、安心して暮らせる老後保障に関する請願中林よし子紹介)(第四八二号)  同(藤木洋子紹介)(第四八三号)  患者負担の再引き上げ中止、安心してかかりやすい医療に関する請願中路雅弘紹介)(第四八四号)  介護保険国民健康保険改善に関する請願松本善明紹介)(第四八七号)  臍帯血の保存・管理に要する費用の医療保険適用等に関する請願北沢清功紹介)(第四九六号)  食品の安全確保対策に関する請願北沢清功紹介)(第四九七号)  介護保険制度緊急改善に関する請願松本善明紹介)(第五一四号)  医療費負担引き上げ反対介護保険緊急改善に関する請願藤木洋子紹介)(第五五二号)  同(渡辺周紹介)(第五六二号)  保険によるよい歯科医療実現に関する請願渡辺周紹介)(第五六三号)  安心の年金改革医療患者負担増撤回の実施に関する請願伊藤茂紹介)(第五六七号)  同(北沢清功紹介)(第五六八号)  同(知久馬二三子紹介)(第五六九号)  同(中川智子紹介)(第五七〇号)  同(中西績介紹介)(第五七一号)  同(畠山健治郎紹介)(第五七二号)  同(鳩山由紀夫紹介)(第五七三号)  同(濱田健一紹介)(第五七四号)  同(深田肇紹介)(第五七五号)  同(保坂展人君紹介)(第五七六号)  同(村山富市紹介)(第五七七号)  同(横光克彦紹介)(第五七八号)  同(土井たか子紹介)(第五九二号)  同(村山富市紹介)(第五九三号)  同(横光克彦紹介)(第五九四号)  同(伊藤英成紹介)(第六二二号)  同(伊藤茂紹介)(第六二三号)  同(池田元久紹介)(第六二四号)  同(石毛えい子紹介)(第六二五号)  同(上原康助紹介)(第六二六号)  同(枝野幸男紹介)(第六二七号)  同(小沢鋭仁君紹介)(第六二八号)  同(大畠章宏紹介)(第六二九号)  同(川端達夫紹介)(第六三〇号)  同(菅直人紹介)(第六三一号)  同(北橋健治紹介)(第六三二号)  同(玄葉光一郎紹介)(第六三三号)  同(佐藤謙一郎紹介)(第六三四号)  同(佐藤敬夫紹介)(第六三五号)  同(坂上富男紹介)(第六三六号)  同(仙谷由人紹介)(第六三七号)  同(中西績介紹介)(第六三八号)  同(原口一博紹介)(第六三九号)  同(深田肇紹介)(第六四〇号)  同(前原誠司紹介)(第六四一号)  同(松沢成文紹介)(第六四二号)  同(松本龍紹介)(第六四三号)  同(横路孝弘紹介)(第六四四号)  同(吉田公一紹介)(第六四五号) 同月二十三日  社会保障拡充に関する請願土井たか子紹介)(第七一四号)  同(金子満広紹介)(第七五七号)  同(木島日出夫紹介)(第七五八号)  同(土井たか子紹介)(第七五九号)  同(矢島恒夫紹介)(第七六〇号)  介護保険制度改善に関する請願児玉健次紹介)(第七四八号)  要介護認定改善等介護保険緊急改善に関する請願佐々木陸海紹介)(第七四九号)  同(辻第一君紹介)(第七五〇号)  同(中島武敏紹介)(第七五一号)  同(藤木洋子紹介)(第七五二号)  同(松本善明紹介)(第七五三号)  あん摩マツサージ指圧師はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願春名直章紹介)(第七五四号)  介護保険緊急改善に関する請願瀬古由起子紹介)(第七五五号)  患者負担の再引き上げ中止、安心してかかりやすい医療に関する請願石井郁子紹介)(第七五六号)  医療費負担引き上げ反対介護保険緊急改善に関する請願石井郁子紹介)(第七六一号)  同(大森猛紹介)(第七六二号)  同(金子満広紹介)(第七六三号)  同(木島日出夫紹介)(第七六四号)  同(児玉健次紹介)(第七六五号)  同(穀田恵二紹介)(第七六六号)  同(佐々木憲昭紹介)(第七六七号)  同(佐々木陸海紹介)(第七六八号)  同(志位和夫紹介)(第七六九号)  同(瀬古由起子紹介)(第七七〇号)  同(辻第一君紹介)(第七七一号)  同(寺前巖紹介)(第七七二号)  同(中路雅弘紹介)(第七七三号)  同(中島武敏紹介)(第七七四号)  同(中林よし子紹介)(第七七五号)  同(春名直章紹介)(第七七六号)  同(東中光雄紹介)(第七七七号)  同(平賀高成紹介)(第七七八号)  同(不破哲三紹介)(第七七九号)  同(藤木洋子紹介)(第七八〇号)  同(藤田スミ紹介)(第七八一号)  同(古堅実吉紹介)(第七八二号)  同(松本善明紹介)(第七八三号)  同(矢島恒夫紹介)(第七八四号)  同(山原健二郎紹介)(第七八五号)  同(吉井英勝紹介)(第七八六号)  保険によるよい歯科医療実現に関する請願児玉健次紹介)(第七八七号)  同(春名直章紹介)(第七八八号)  同(松本善明紹介)(第七八九号)  同(山原健二郎紹介)(第七九〇号)  国・自治体の責任による福祉拡充に関する請願石井郁子紹介)(第七九一号)  同(大森猛紹介)(第七九二号)  同(金子満広紹介)(第七九三号)  同(木島日出夫紹介)(第七九四号)  同(児玉健次紹介)(第七九五号)  同(穀田恵二紹介)(第七九六号)  同(佐々木憲昭紹介)(第七九七号)  同(佐々木陸海紹介)(第七九八号)  同(志位和夫紹介)(第七九九号)  同(瀬古由起子紹介)(第八〇〇号)  同(辻第一君紹介)(第八〇一号)  同(寺前巖紹介)(第八〇二号)  同(中路雅弘紹介)(第八〇三号)  同(中島武敏紹介)(第八〇四号)  同(中林よし子紹介)(第八〇五号)  同(春名直章紹介)(第八〇六号)  同(東中光雄紹介)(第八〇七号)  同(平賀高成紹介)(第八〇八号)  同(不破哲三紹介)(第八〇九号)  同(藤木洋子紹介)(第八一〇号)  同(藤田スミ紹介)(第八一一号)  同(古堅実吉紹介)(第八一二号)  同(松本善明紹介)(第八一三号)  同(矢島恒夫紹介)(第八一四号)  同(山原健二郎紹介)(第八一五号)  同(吉井英勝紹介)(第八一六号)  介護保険における国庫負担増などの緊急改善に関する請願穀田恵二紹介)(第八一七号)  介護保険緊急改善等に関する請願金子満広紹介)(第八一八号)  同(矢島恒夫紹介)(第八一九号)  保育学童保育予算大幅増額保育施策拡充に関する請願児玉健次紹介)(第八二〇号)  介護保険緊急改善と新たな医療費自己負担引き上げ中止に関する請願大森猛紹介)(第八二一号)  同(佐々木陸海紹介)(第八二二号)  年金改悪反対、安心して暮らせる老後保障に関する請願吉井英勝紹介)(第八二三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案内閣提出第二九号)  平成十二年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案内閣提出第三〇号)  国民年金法等の一部を改正する法律案(第百四十五回国会閣法第一一八号)(参議院送付)  年金資金運用基金法案(第百四十五回国会閣法第一一九号)(参議院送付)  年金福祉事業団解散及び業務承継等に関する法律案(第百四十五回国会閣法第一二〇号)(参議院送付)     午前十時開議      ————◇—————
  2. 江口一雄

    江口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案及び平成十二年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案の両案を議題とし、順次趣旨説明を聴取いたします。丹羽厚生大臣。     —————————————  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案  平成十二年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  戦傷病者戦没者遺族などに対しましては、その置かれた状況に配慮し、年金支給を初め各種援護措置を講じ、福祉の増進に努めてきたところであります。平成十二年度においても、年金などの支給額引き上げることにより、戦傷病者戦没者遺族などに対する援護の一層の充実を図ろうとするものであり、その改正内容は、障害年金遺族年金などの額を恩給の額の引き上げに準じて引き上げるものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、平成十二年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  公的年金制度及び各種手当制度などにつきましては、国民年金法などの定めるところにより、毎年の消費者物価指数の変動に応じた物価スライドを実施することにいたしております。  平成十一年の年平均全国消費者物価指数平成十年に比べ〇・三%の下落となったことから、国民年金法などの規定に基づくと、平成十二年度においてはこれに応じた減額改定を行うこととなりますが、現下の社会経済情勢にかんがみ、平成十二年度における特例措置として、公的年金及び各種手当などの額を平成十一年度と同額に据え置くこととし、この法律案を提出した次第でございます。  以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  平成十二年度において、特例として、国民年金厚生年金児童扶養手当などについて、物価スライドによる年金の額などの改定措置を講じないこととしております。  なお、この法律施行期日は、平成十二年四月一日としております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 江口一雄

    江口委員長 以上で両案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 江口一雄

    江口委員長 この際、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣外政審議室内閣審議官伊佐敷眞一君、沖縄開発庁総務局総務課長東良信君及び厚生省社会援護局長炭谷茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 江口一雄

    江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 江口一雄

    江口委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本孝史君。
  8. 山本孝史

    山本(孝)委員 おはようございます。民主党山本孝史でございます。  民主党といたしましては、ただいま議題になりました二法案について賛成の立場でございますけれども年金の問題については、午後も年金法審議がございますので、その折に触れさせていただくことにして、この与えていただいております時間は、戦傷病者戦没者遺族等援護法改正に関連する諸問題についてお聞かせをいただきたいと思います。  きのうの質問通告と順番が最初のところで入れかわっておりまして申しわけありませんが、最初質問は、特別永住者の元日本軍人軍属への戦後補償問題でございます。  昨年の三月九日に内閣委員会がございまして、私も傍聴しておりましたけれども、当時の野中官房長官が、ただいま申し上げました特別永住者の元日本軍人軍属への戦後補償の問題について、内閣として前向きに対処したいという御答弁がございました。ちょうどそれから一年がたっております。  その後、各党でそれぞれいい案はないだろうかということで協議が進んでいるところでございますけれども、その後の審議の中で、宮下厚生大臣は、内閣として取り扱うことは無理であるという御答弁をこの委員会でもいただきました。しかし、その後、大臣も御承知のように、昨年の十月十五日に、大阪高裁判決所見を述べました中で、現状は法のもとの平等を定めた憲法十四条や国際人権B規約二十六条に違反する疑いがあるというふうに明確に述べたところであります。  このように大阪高裁が述べた所見というものについて、まず大臣はどのように受けとめておられますでしょうか。御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  9. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 援護法には国籍要件が設けられており、朝鮮半島出身者など日本国籍を有しない方には同法は適用されない、まずこれが原則でございます。  このような国籍要件が設けられましたのは、朝鮮半島などの分離独立地域に属する人々の補償、財産あるいは請求権などの問題は、昭和二十七年のサンフランシスコ平和条約において、それぞれの二国間の特別取り決めにより解決するものとされたものでございます。  その中で、韓国との関係については、昭和四十年の日韓請求権経済協力協定によって、在日韓国人軍属等の問題を含めまして、法的には完全かつ最終的に解決済みのものとなっているような次第でございます。  御指摘大阪高裁判決でございますが、判決そのものは、今申し上げましたような国側のこれまでの主張が基本的には認められて勝訴になっている、こういうふうに私どもは受けとめておるような次第でございます。
  10. 山本孝史

    山本(孝)委員 ただいまの御答弁は、厚生大臣としての国の見解をお述べになったということだと思います。  かねてからどなたもおっしゃっておられますように、法律には国籍条項があるので、したがって、この問題は現行法では取り扱いができない、朝鮮半島出身方たちについては日韓請求権協定でもう既にこれは解決済みであるという趣旨をお述べになったわけですけれども、これは大臣承知のように、在日韓国人の場合は、今韓国からも日本政府からもどちらからも全く補償を受けていないという状態で長年放置されてきておられる。片や、同じように日本軍に参加をしながら、日本方たち恩給法あるいは戦傷病者法等で大変手厚く援護を受けておられる。  しかし、同じように日本国内に長年住みながら、その状態にないということは差別的状態であると裁判所は言ったわけです。こういう状態にあるということ、国会の側の立法措置が必要であるということも述べたわけですけれども、これは大臣としては先ほどの御見解だと思うんですけれども政治家として、国会議員のお一人として、こういう状態をどのように受けとめておられるのでしょうか。
  11. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 今、私は、厚生大臣という公職におるわけでございます。今申し上げましたように、法的には完全かつ最終的に解決済み、こういうことでございますが、野中官房長官の御発言を契機にいたしまして、これらの方々の置かれた状況を十分に配慮しながら、現在、内閣外政審議室におきまして、この問題に対処するに当たってのさまざまな問題点につきまして調査検討が行われているところでございまして、厚生省といたしましても、必要に応じて協力を行っていきたい、こう思っております。  率直に申し上げて大変難しい問題でございますが、現在、与党内でも、議員立法前提として、委員も御指摘のようないわゆる人道的観点からの検討が進められている、こういうふうに承知をいたしておるわけでございますので、当面、その状況を見守っていきたい、このように考えているような次第でございます。
  12. 山本孝史

    山本(孝)委員 新聞情報でしか存じ上げておりませんけれども、自民党の中で、弔慰金として、台湾のときの二百万を前提に二百六十万円という金額を考えて、公明党さんの御主張が含まれたのかと思いますけれども生活困窮者方たちに別途一定の額を支給する。そこの根拠がどういう形でつくのかと思っていますけれども。  しかし、基本的に、長年日本で住みながら、在日の方だけ全く恩恵にあずからず、大変差別的な状況が長年続いてきているということについて、なおかつ、弔意のあらわし方はいろいろありましょう、しかし、今生存しておられる方、大変重い障害を持っておられる方たちの今後の生活ということについては、一定年金的なもので対応しませんと、その方たち生活不安というのはなかなか解消しないのではないかと思います。  戦傷病者現行法で対応することは国籍条項があるので無理だということは十分承知しておりますけれども、しかし、立法する折に、一時金ということだけで済まさないで、ぜひその後の生活が保障できるようにということで、我々民主党としては、現行法にのっとった形での別法をつくって、弔慰金あるいは見舞金支給等々を考えていったらどうかということで今法律検討させていただいておりますので、自自公三党で御協議されるのかとは思いますけれども、これは国会全体にその解決を求められている問題であるというふうにも思いますから、ぜひ各党とも知恵を出していただいて、今国会中で解決の糸口をつけたいというふうに私どもも思っております。  しかし、今新聞で見ておるような一時金では、これまでの長年の差別的扱い等々を考えて、あるいは今の在日の置かれている状況を見ても、ちょっと足りないのではないかなというのが正直なところ私の感想でございます。  次の問題に移らせていただきたいというふうに思いますが、これは遺骨収集にかかわる問題でございます。  戦没者遺骨収集に当たって、新しい技術の発達に応じてDNAの鑑定を行うということで厚生省はお考えであったというふうに私は理解をしております。新聞記事でも一面のトップで、「戦没者遺骨DNA鑑定 身元確認の“切り札” 厚生省方針」ということで大きく出たといういきさつもございます。  しかし、その後、当面見合わせというような記事も出まして、これはどういう方針で今後臨んでいかれるのかなというふうに思っているものですから、これは局長の方からで結構でございますから、戦没者遺骨のDNA鑑定問題について、今どのような状況であるのか、どのようにお考えになっておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  13. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 戦没者遺骨のDNA鑑定につきましては、遺骨の氏名の特定に大変有効な手段であるというふうに考えております。  このため、埋葬図等がありまして、墓地等に埋葬されている場合につきましては、一部の遺骨を検体として、焼骨をしないで、例えば歯の一部とかというものを持ち帰ってきております。これは昨年の七月から始めておるわけでございまして、シベリアまたはモンゴルというようなところは、大多数の遺骨はこのような形で埋葬されているケースが多うございますので、そのような形で持ち帰ってまいりました。  そして、何らかの根拠がありまして氏名判明の蓋然性が高いとして御遺族の方から自費によるDNA鑑定の申し出があった場合は、私どもとしましては、その検体を提供し、これに協力していくという方針を持っておりまして、これを今後とも継続してまいりたいというふうに考えております。
  14. 山本孝史

    山本(孝)委員 その方針、今御説明いただいたんですが、来年度、平成十二年度の予算ではどのように対応するということで予算を編成されておられますか。
  15. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 私ども、国としては、できる限り御遺骨は御遺族のもとにお返しをする、御遺族にお届けをするというのが国の役割だろうという趣旨に沿いまして、平成十二年度の予算要求の段階では、国においてその一部を援助していくということで予算計上をしたわけでございます。  しかしながら、DNAの鑑定というのは新しい技術でございまして、まだ実際の実例の積み重ねは余り多くありませんでした。そして、その秋以降、少数ながら実例が出てきまして、それを判断いたしましたところ、当初の予想と違いまして遺骨の氏名の特定にはつながらなかったというようなことがございましたので、具体的にどのような蓋然性があった場合DNA鑑定が有効であるかというようなことにつきまして、さらに検討をしていきたいということで、十二年度の予算の中には計上を見送っております。
  16. 山本孝史

    山本(孝)委員 平成十二年度は、従来の、十一年度の方針を継承しないで予算には計上しなかったということは、方針が変更されるということなんですか。
  17. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 十一年度におきましては、自費でDNA鑑定を行いたいという御遺族があった場合、それに対して御協力をするという方針でございましたので、十二年度以降もその方針をとっていきたいというふうに考えております。
  18. 山本孝史

    山本(孝)委員 いろいろ新聞記事等々を読んでおりまして、個別埋葬されていて、余りたくさん検体をDNA鑑定しなくても氏名が判明するのではないかと思っていたと。ところが、なかなかそこが一致しないと。しかし、遺族からすれば、そこの墓地のところに埋葬されているはずだ、こういう思いがあって、どれがということはなかなか言いづらいんでしょうが、そこに埋葬されているんだということがわかるということは大変に心安らかになることだと思うんですね。  そういう意味で、せっかく今持ち帰ってきておられて、厚生省で保管をしておられる御遺骨があるというふうに聞いておりますけれども、御遺族の要望として、毎年五月に行われます千鳥ケ淵の戦没者墓苑への納骨について、今お持ち帰りになっている部分については納骨しないようにと御遺族が望んでおられる部分がありますので、大臣、ぜひそういう御遺族の要望に沿った御対応をしていただけるようにお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  19. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先ほど局長の方からもお話がございました。また、委員の方からも御指摘がございました。このDNA鑑定というので、既にシベリアであるとかモンゴルであるとか、千八百六十二柱につきましてこういうようなことが有効な手段の一つとして実施をしておる、こういうふうに聞いております。  平成十一年度の遺骨収集から個別埋葬またはこれに準ずるような形で収集されました御遺骨につきましては、その一部をDNA鑑定の検体とすることができるよう焼骨せず持ち帰って、御家族から自費でDNA鑑定を行いたいという申し出があったときには、これに協力するようにいたしたい、こういうことでございます。
  20. 山本孝史

    山本(孝)委員 済みません。もう一度お伺いをします。  今、そのためにお持ち帰りになっている御遺骨の一部をこの五月に千鳥ケ淵の戦没者墓苑に納骨をしないで、引き続き保管をしていただけるのかどうかという点です。
  21. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これらの遺骨でございますが、従来どおり、遺留品や埋葬資料から氏名の特定作業をしているところでございますが、今後、DNA鑑定を含めまして、関係の御遺族の方々から種々の御照会があるということが当然予想されるわけでございます。一定期間厚生省霊安室に、御案内と思いますけれども、保管することにいたしております。こういうことを踏まえまして、平成十一年度に収集したこれらの御遺骨につきましては、本年の五月から千鳥ケ淵戦没者墓苑の拝礼式の際には納骨をしない、こういうことにいたしたいと思っています。
  22. 山本孝史

    山本(孝)委員 今納骨しないという御答弁をいただいたわけですけれども、この遺骨収集の方法について、今後の検討といいましょうか、今後の厚生省の方針、どのようにされるお考えなのかということについてお伺いをしておきたいと思います。  今大臣も御答弁の中でお触れになりましたように、焼却をしてしまいますとDNAがつぶれてしまいますので、もはや手がかりが全くなくなってしまうわけですね。本来、個別埋葬されているという部分があったら、もう少し蓋然性が高くて、御本人かどうかの身元の判明が非常にわかりやすいだろうとおっしゃるわけですけれども、関係者のお話を聞いておりましても、わからなかったときに身元不明というのではなくて身元未確認ということになるのではないかという御指摘もあります。DNAの鑑定というものが、今だんだん技術が進んで非常に確率高く御本人であることの確定ができるようになってきているということを考えますと、本来は、予算が措置されれば、例えば外地の墓地で収集された御遺骨全部のDNA鑑定をすれば、そこに埋葬されているという方とのマッチングをすれば、実はわかるわけですね。  今厚生省のお考えは、その墓地の中の一つの墓穴から出てきたものが、何か遺留品があって、自分の身内がいるかもしれない、だから、ということで検体の数を少なくしておられるわけですけれども、ある意味でいけば、お名前の判明と同じように、そこの遺骨収集してきたもの全部のDNA鑑定をするということも、考えようによっては、予算の問題だとは思いますけれども、実はできるのだと思います。  今後ともにそういうことも考えるのか、あるいはDNA鑑定が後ほどできるように遺骨の一部を常に持ち帰るということをするのか、あるいは全部焼却をするという従来の方針でいくのか。収集の方法についての変更、あるいは今後の方針、どのようにお考えになるのか、そこをお聞かせをいただきたいと思います。
  23. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これは、委員も御指摘になりましたように、あくまでも個別埋葬の分でございますけれども、今後とも、収集いたしました遺骨の一部を焼骨せずに持ち帰りまして、希望されます遺族の方々に対しましてはDNA鑑定が受けられますようにできるだけの御協力をさせていただきたい、このように考えている次第であります。
  24. 山本孝史

    山本(孝)委員 個別埋葬というときに、どこまで個別埋葬で、しかも、確定できる蓋然性を持っているかということにかかわってくるのだと思いますけれども、水没している遺骨については、たしか、海が墓場であるのでそれは引き揚げないという方針で来られていたと思います。しかし、いろいろな形で、今、遺骨は民間の方たちも発見されて日本に持って帰ってこられる。  そういうことを考えますと、確かに、個別埋葬でなければDNA鑑定の対象にしないという考え方は、遺族の側からすると、これだけ技術が進んできますと、なかなかすっと受け入れにくいのではないか。あの戦場でとかあるいはあの場所でという思いがあれば、やはりDNA鑑定をしておいていただければ、後々、御遺族からの申し出があったときに、マッチングはしやすいということもあると思います。  ここは多分同じ御答弁になると思いますけれども、予算の問題だけだと思いますので、国の方針として、国の責務として、遺骨は全部収集するという方針は常に変わっていないわけですから、その折に、あくまでも御本人の身元をきっちりと判明するあるいは確認をして御遺族にお返しするということを国はやっているわけで、そのための手がかりになるようなDNA鑑定をするということまで含めて、これは技術の進歩に伴っての新たな国のお仕事としてふえてきているのではないかと思いますので、一度その辺ぜひ御検討してみていただけませんでしょうか。
  25. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 委員の御意見を十分承りまして、検討させていただきます。
  26. 山本孝史

    山本(孝)委員 よろしくお願いを申し上げます。  いろいろな問題で煩わせておりまして申しわけありません、たくさんテーマが分かれておりまして恐縮でございますが、今千鳥ケ淵のお話をさせていただきました。九段に平和祈念館が開館をいたしましたのが去年の三月二十八日でございまして、ちょうどあれから一年たつわけであります。私もおくればせながら寄せていただいて、二十年来のいろいろな議論があって、どういう建物を建てたらいいのだろうという大変議論があった。あのときの、運営委員と申しましたでしょうか、委員の皆さんも途中で辞任されたりして、展示物のあり方についての激論があったことは、大臣もよく御記憶のとおりだと思います。建物の形が揺らいでいるのでそれもどうだという話もあった。つくられて、行ってまいりましたけれども、割と小ぶりな感じかなというふうに思いました。  一年たちましたので、この一年間の来館者といいましょうか、この平和祈念館に来られた方たちがどのぐらいおられて、どんな印象を持っておられるのか、御担当の方からお聞かせをいただければと思います。
  27. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 昭和館の開館後、入館状況は順調に推移いたしており、今年の二月末までに御来場された方々は、これは常設陳列室、映像・音響室、図書室も合わせたものでございますが、延べ十六万五千人になっております。月別に見ますと、開館直後の四月、五月は、約二万五千人。また、冬場に入った昨年の十二月の入場者は約六千人という状況になっております。  御来場された方々の分析をしてみますと、約九割の方が大人、二十以上の方でございまして、ただ最近、昨年の秋ごろからは社会科の見学による小中学生の団体入場などが増加いたしております。また、ことしからは、はとバスの観光コースにもしていただいたということになっております。  特に、小中学生からの意見を拾ってみますと、「当時の苦しい時代があるからこそ今日の日本があるのだと思う」や、「戦中の暮らしについて学習したつもりでいたが、改めて人々の苦労や努力を知った」「当時の母と子の手紙の内容に感動した」などという感想が寄せられている一方、労苦を体験できるコーナーや自由に触れられる陳列にしてほしいなど、物足りないというような感想もいただいております。
  28. 山本孝史

    山本(孝)委員 今、延べ人数で来館者をお話しになりましたけれども、入館者はお金を払って入られるということでいきますと、団体を含めて二月末現在で八万五千人という数字でお伺いをしています。当初目標はたしか十万人だったというふうに思いますが、これで本年度の運営費の補助費はどの程度にしておられるのでしょうか。
  29. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 今年度の昭和館の運営費は五億八千万でございます。
  30. 山本孝史

    山本(孝)委員 入館者の目標は十万人であったという私の記憶は正しいですか。
  31. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 有料の常設陳列室への入館者の目標は、私ども、十万人という目標を持っておりました。
  32. 山本孝史

    山本(孝)委員 十万人の目標で運営費補助費五億八千万ですから、一人来ていただくのに五千八百円かけて三百円の入館料を取っている、こういう計算になるわけですね。  今、博物館等々のエージェンシー化が言われておりまして、これはいろいろな考え方があるのだと思いますけれども、この運営費と十万人という入館者目標、ここの対比といいましょうかバランス、これは担当としてはどんなふうにお考えなんですか。
  33. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 私ども昭和館の活動につきましては、常設陳列室の入館者をさらにふやすということも目標にしながら、そこで事業として行っております映像や音響の利用者、これが大変多うございまして、約三万人から四万人ということになっております。また、図書の関係も大変充実しておりまして、その利用者もあるわけでございます。  これらについては利用料金を取っておらないわけでございますけれども、このような面で一般の国民の方々に昭和館を御利用していただいている、さらにこのようなものを拡大していかなければいけない、そのようなことで運営費に合った活動ということについて努力してまいりたいというふうに考えております。
  34. 山本孝史

    山本(孝)委員 大臣にお伺いをします。  まだお出かけになったことがないというふうにお聞きをしているのですけれども、公務が御多忙とは思いますが、近くですので、ぜひお出かけいただきたいと思います。それで、昭和館の感想を後日、ぜひ何かの折にお聞かせをいただきたいと思うのです。私も行ってきたばかりですから、そんなことが言える立場ではないのですけれども。  戦中戦後の国民の労苦を伝えるという館の設置目的があるわけですけれども、その労苦が伝わるのかということになりますと、先ほど援護局長は、その感想の中から幾つか選ばれてお話しになったのかなというふうに思いますけれども、同じ資料を見ながら私は違うところを述べることになるのでしょうけれども、「客観的な視点でいることが戦争を知らない世代に戦争の悲惨さをつたえられるだろうか」という声もあります、私はこれが一番当たっているのではないかと思うのですが。「館内の雰囲気はよいが何か物足りない気がした」という感想が、私もこれは全く同じ感想を実は持ちました。大変に平板な展示になっているのではないだろうかと思います。  戦中戦後の労苦という中に、私も戦後生まれですから、さほどに存じ上げているわけではありませんけれども、しかし、戦中戦後ということを考えれば、やはり国民生活ということでいけば、戦争があって、空襲という大変大きな被害の状況、あるいはそこで国民がどういう苦労をしたのか、その後にやみ市があって云々というようなところも、あの展示からではなかなか感じ取りにくいのではないかなと思います。大変な論議があって、その結果として、判断を加えないという形で展示物を選ばれてあの形になっているのだと思うのですけれども、何か正直なところ物足りない感じが私はいたしました。  この辺は大いに検討していくところがあるのではないかなと思うのですけれども大臣に御答弁を求める前に、もう一点だけ確認です。  隣がたまさか九段会館であったり、靖国神社が近くにあったりするものですから、遺族会の皆さんが地方から来られて、そのついでに昭和館に寄られるという方が多いのではないかなと思うのですね。だから、来られている方の年齢別で見ましたら、きのうこの資料を見ていただいていませんけれども、割と年を召された方が多いのではないかと思いつつ、今お聞きしていますと、学校での社会科授業の中で集団で来られているというお話も聞きましたけれども、それは、何か昭和館の方としてそういう方たちに来ていただくような働きかけをしておられて、学校教育の中に組み込みをしておられるのですか。
  35. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 昭和館の使命といたしまして、後世にこの労苦を伝えるという使命があるわけでございますので、やはり小学校、中学校の若い世代に見ていただかなければいけないというように考えております。  まず、私どもとして、昭和館の運営委員会の中に、中学校の社会科の先生も入っていただいております。また、各教育委員会、学校などに、ぜひ社会科見学に利用してほしいというような案内状を出しております。その結果、主に小学校、中学校、関東近辺が多うございますけれども、そのような学校からの見学というものも最近ふえるようになっておりますので、さらにこの面については努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  36. 山本孝史

    山本(孝)委員 展示のあり方について、こうやって若い方たち、学生さんたちが多く来られるようになってきますと、そこに、今学芸員の方もおられるのでしょうけれども説明がついてこないと非常にわかりづらい。引率の先生方もだんだん若くなってきていますから、しっかりと戦中戦後のことを聞いておられないと、きちっとした説明もしにくいという部分もあると思うのです。  そういう意味で、多分、私が想像するに、遺族会の皆さんがだんだん訪れることが少なくなってくると、性格も変わってくるし、展示のあり方も変えていかなければいけないのではないかなと思うのですけれども、ぜひ一度ごらんいただいて、どんなふうにしていいのか、あるいは、何か今お考えがおありでしたら、少しお聞かせをいただきたいと思います。
  37. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 委員の方から、ぜひとも昭和館を見ておくように、こういうような御注文があったことも承知いたしております。私も、ぜひとも一度見せていただきたいなという思いでございましたが、御案内のような、とにかく朝から晩まで御審議に応じて、皆様方に叱咤激励を受けておるわけでございますので……。  やはり、国会の活性化ということも大変重要なことでありますが、厚生大臣として現場を見て、先生が御指摘のようなこともその中で御議論させていただくということが本来の姿でございますので、どうかひとつ、今後そういう点におきましても十分に御配慮を賜りますよう、まずお願いを申し上げる次第でございます。  そこで、昭和館でございますが、戦没者遺族援護施策の一環といたしまして、戦没者遺族などを初めとする国民の方々が経験した戦中戦後の国民生活上の御労苦を後世代に伝える、こういうことを目的といたしまして、昨年の春に開館をいたしました。  戦中の悲惨な生活であるとか、あるいは戦後の焼け野原の中から復興をしてきた今日の我が国の状況、当時の国民の皆様方の御労苦は決して風化させてはならない、こういうような思いで歴史的な事実を正確に伝えるということで、こういうようなものをつくらせていただいたわけであります。  私といたしましても、これらの事実をありのままに伝えることで、今日の我々の生活はこのようなとうとい犠牲と御労苦の上に成り立っていることや、二度とあのような悲惨な忌まわしいことを決して繰り返してはならない、こういうような強い決意、二十一世紀を担う若い世代の方々に感じ取っていただけるような、そんな施設にしていかなければならない、私は個人的にそう思っています。
  38. 山本孝史

    山本(孝)委員 お忙しいことはわかりますけれども、大変近い場所でございます。非常に狭い——私が思っていたより狭くて、これではと思いまして、時間を費やして、実はコンピューターの前に座って、あの戦史叢書がどんなふうに入れられたのかなというふうに思いながら見ておりました。タッチパネル方式で、年をとった方にはなかなか操作はしづらいだろうなと、正直言って思いました。若い方たちが多分使われることはないのではないかというふうに思います。  私は、かねての質問の折に、小泉大臣に、なぜそれをデータベース化して入れる必要があるんだというふうに申し上げましたけれども、いや、なぜ入れてはいけないんだとかと言われて、結局実用化されたようです。たくさんコンピューターを置いてありますけれども、そこにおられる方に聞けば、毎日の入館者は百人程度というふうにおっしゃっておられましたので、宝の持ちぐされかな、半分以上は動いていないなという状態です。  それはそれとして、展示の部分は、二階スペースしかありませんし、大変に狭い部分ですから、すぐに行けます。  あわせて、私も、今おっしゃったように現場を踏んでからいろいろと議論するということはとても大切だと思います。その意味で、先にお願いを申し上げておけば、やがてこの委員会で廃掃法の議論になります。産業廃棄物の処理及び清掃に関する法律改正案が出てくると思います。香川県の豊島の問題が今ようやく動き始めていますけれども、あるいは千葉県でも栃木県でも福島県でも、この近辺に大変大きな産業廃棄物の現場がございますので、委員長のところ、千葉県もそうなっています、成田のあたりにもあります。そういう意味では、ぜひごらんいただいて、廃掃法の議論に臨んでいただけるように、厚生省の担当者の方たち、ぜひ時間をつくってあげていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。  ただ、大変に——大阪にも、ピースおおさか、大阪国際平和センターというのがありまして、私が出ました立命館大学にも国際平和ミュージアムという展示施設があります。とりわけ大阪の場合は、自虐史観に基づいているのではないかということで常に議論がありまして、展示の内容をめぐって意見の異なる方たちの間でかなり激しい議論が続いているんですけれども、しかし、事実は事実として伝えていかなければいけない部分があると思うんですね。そういう意味で、若い方たちに事実をどう伝えていくのかということについては、展示というのは大変重要な点だと思いますので、ぜひあり方を検討していただきたいと思います。  そういう意味で、今大臣にもお話をさせていただきましたけれども国会議員の議連が一つありまして、恒久平和のために真相究明法の成立を目指す国会議員連盟というのがございます。私も加盟をさせていただいておりますけれども、去年の八月になりますが、国立国会図書館に恒久平和調査局という新たな部局を設置するという法律を今議員立法で出させていただいています。  その趣旨は、第二次大戦及びこれに先立つ時期における惨禍の実態を解明し、その実態を次世代に伝え、世界の諸国民と日本国民の信頼関係の醸成を図り、もって我が国の国際社会における名誉ある地位の保持及び恒久平和の実現に資する、こういう趣旨になっているんです。  超党派での議連になっておりますけれども、これは大臣としての御答弁ではなくて、議員立法でございますので、議員立法に対しての御見解をお聞きするのはなかなか僣越かと思いますけれども、こういう趣旨、こういう方向にあるということについて、丹羽代議士としての御見解はいかがでございましょうか。
  39. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 私ども政治家というのは、それぞれ立場であるとか主義主張であるとかいろいろ異なる点はありますけれども、だれしもが願うことは、一つは繁栄であり、一つは平和である。私は、その座標軸というのは変わらないと思います。私も委員と同様に、平和を祈念するという気持ちは人後に落ちない気持ちを持っているつもりでございます。  御指摘法案につきましては、その内容が、まだよく勉強しておりませんので、適当かどうかということを含めまして、しばらくお時間をいただきまして、今私が軽々にここで申し上げるよりは、大変御熱心にこういう問題について取り組んでいらっしゃることに対しましては、心から敬意を表させていただきます。
  40. 山本孝史

    山本(孝)委員 政務次官に質問のお知らせがおくれて申しわけありませんでしたけれども、この議連の会長を務めていただいておりますのが、会長がお二人おられまして、御党の浜四津先生と我が党の鳩山代表なんですけれども、去年の一月二十二日の参議院の本会議で、浜四津先生が質問に立たれております。  その中で、「犠牲を二度と繰り返さないためにも、事実は事実として次の世代に伝えていかなくてはなりません。」「各国の責任追及のためではなく、客観的な証拠に基づく正確な事実を記録し、正しい歴史を残すことが未来の過ちを防ぎ、真の世界の平和を築くことになる」、こういうふうにお述べになりまして、日本が過去に行ったすべての戦争に関する公文書その他の資料を保存して公開する、仮称、平和資料館を設置すべきではないか、こう御質問されたんですね。  小渕総理が御答弁の中で貴重な意見として承る、こういう御答弁だったわけですけれども、意見として承られただけなのか、その後どうなっているのかなというのが大変気になっているんですが、私はいろいろな思いを持っているんですが、もし御存じでしたら、その後の経緯とか、あるいは今も公明党としては同じお考えでおられるのか、お聞かせをいただければというふうに思います。よろしくお願いします。
  41. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 私といたしましても、次の世代の方々のために、過去の歴史を直視いたしまして、歴史資料を整備し、提供をするということは大変重要なことである、このように思っております。そして、平成十三年度にアジア歴史資料センターが開設をされる予定で、今現在準備が進められている、このように認識をしている次第でございます。
  42. 山本孝史

    山本(孝)委員 今答弁の中でお触れになりました、アジア歴史資料センターが来年四月開館ということで動いているということ、それが、質問の中で提唱された平和資料館というものと同一である、こういう御認識で御答弁されているのかというふうに私は受けとめますが、もともと、歴史資料センターそのものは、いわゆる自社さ政権の中の村山総理の提唱でこういうものが必要じゃないかという話があった。名前は何でもいいのです、そういうものができるということが私は大切だと思っていますので。そういうものがかねてからあった。  今、平和資料館というものを御提唱された。来年四月からそのような機能を持った施設がオープンに向かって今運んでいる、こういう御答弁ですね。ただ、今お触れになったアジア歴史資料センターの開館なんですけれども、当初言われていた計画から大幅に縮小されているのですね。  来年度予算の中では、結局、現在関係している機関が持っている資料をデータベース化するということだけになっていまして、もともとの趣旨は、近隣の諸国あるいは欧米に保存されている資料等々も含めて幅広く収集をして、電子情報化していこうではないか、こういう考えだったと思うのです。今、政務次官が御答弁されたアジア歴史資料センターは、残念ながら、今外務省とか防衛庁が持っている資料をデータベース化することにとどまっていて、新たな資料の収集ということには来年度の予算ではなっていないのです。そういう意味で、大幅に計画が縮小されてしまっている。  ここは、ぜひ内閣全体として、もっと幅広い資料の収集、そして事実を事実として伝えるということのためにも、散逸しないように早くデータを集める、資料を集めるということがとても大切だと思うのです。それが浜四津先生がおっしゃった趣旨ではないかと思いますので、政務次官あるいは大臣も、閣議の中であるいは内閣として、幅広い資料の収集に乗り出していくんだという基本線は変わっていないんだ、そのために力を尽くしていくというお考えなんだというところをぜひお聞かせいただきたいと思うのです。
  43. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 私は、浜四津代表代行の発言をかわりにここで発言をする立場ではございませんが、御指摘のアジア歴史資料センターの整備事業は、歴史資料のデータベースの構築、情報提供を行うための事業であり、この整備事業を政府が一体となって推進するために、内閣官房が総理府の協力を得て基本方針の策定などを行っております。関係省庁は、センターの事業が円滑に行われるよう協力することとされております。  日本国民とアジアの近隣諸国との相互の理解、また信頼、友好を深めるためにも、過去の歴史資料を整備、提供することが大変重要でもあり、大変意義のある事業でもあるわけでございますし、立派な施設として整備をし、実現することを願っている次第でございます。
  44. 山本孝史

    山本(孝)委員 アジア歴史資料センターは外政審議室の御担当です。十二年度の予算を一億二百万円組んでいただいていると思います。ただ、この費用は、私から申し上げれば、一億二百万円ですけれども、コンピューター政府調達関連仕様書作成及びそのために必要な検討経費五千百万円、センターのデータベースに蓄積すべき国立公文書館の既にマイクロフィルム化された資料をデジタル化するために必要な経費一千七百万円、アジア歴史資料センター開設準備の経費、事務所借料等三千四百万円という形で、一億二百万円が開設経費として盛り込まれているのです。  お聞きいただいてわかりますように、事務所を借りる経費、既にマイクロフィルム化されているものをデジタル化するための費用、コンピューター政府調達関連仕様書作成のための経費ということで、新たな資料の収集のための経費は一円たりとも実は盛り込まれていないのです。新たな収集はするという方向に、この十二年度のアジア歴史資料センターの開設準備という中にはないのですね。ということは、十三年までに向かって一年間何も資料を収集しないという予算編成になっているものだから、それは従来の計画と違うのじゃないか、こう申し上げているのです。  なぜこういうふうに当初の計画から乖離してしまって、ほとんど進まない状況になってしまっているのか、その経緯を説明していただきたいと思います。
  45. 伊佐敷眞一

    ○伊佐敷政府参考人 お答え申し上げます。  今、先生が御指摘になりましたとおり、十二年度の予算といたしましては、総理府に一億二百万円を計上しております。内訳は、先生御指摘のとおりでございます。  先生の方から、当初の構想と実際に今実施しようということの間に乖離があるのではないかという御指摘でございます。その経緯を説明せよということだと理解いたしましたが、経緯的には、御承知のとおり、一番最初平成六年八月三十一日の総理大臣の談話でございます。この総理大臣の談話の中で、かねてから必要性が言われているセンターについて検討しよう、こういうことが表明されたものでございます。そこでは、具体的な中身にまでは触れられておりません。  その後、この総理大臣の談話を踏まえまして有識者の方々にお集まりいただきまして、内閣官房長官のもとにアジア歴史資料センター(仮称)の設立検討のための有識者会議というものが設置されまして、翌平成七年六月三十日に提言が提出されました。この提言の中におきましては非常に幅広い事業を想定しております。この中では資料の収集ということも触れられております。  他方、昨年十一月三十日に閣議決定されました現在の政府の方針でございますが、この閣議決定の立て方は、有識者の提言の立て方とはやや異なっておるのは事実でございます。閣議決定におきましては、国の機関が保管するアジア歴史資料を電子情報の形で蓄積するデータベースを構築するというふうにセンターの業務を限定しております。  他方、有識者会議の提言にもいろいろ触れられております関連諸事業があるわけでございますけれども、これは、閣議決定の中の一の(2)のところに広報ですとか人材の育成ですとか資料の現状の調査等々六項目挙げられておりますけれども、これにつきましては、政府の関係部局がそれぞれ分担し合って、政府全体として推進するという立て方にいたしました。  そういう意味では、有識者会議の提言をもちろん参考にいたしまして、有益な提言をたくさん含んでおりますので、これを参考にして準備段階から検討を進めてまいりましたけれども、最終的な閣議決定の形としましては、今御説明したような形になっております。
  46. 山本孝史

    山本(孝)委員 説明が長くなって、多分聞いておられる大臣も政務次官もわかりづらくなっておられるのじゃないかと思いますけれども、昨年の、十一年九月に「アジア歴史資料センター構想の検討状況について」といういただいておりますペーパーでは、「平成十二年度概算要求の概要」というのがありまして、その中にきっちりと、事業の目的も、「アジア歴史資料を」、これは「アジア近隣諸国等との関係に関わる我が国の公文書等の資料」と書いてありますが、「幅広く、偏りなく収集し、これを内外の研究者をはじめ広く一般の利用に供する。」という形になっているのですね。  私が申し上げましたのは、アジアの近隣諸国の資料だけでなくて、欧米諸国にもたくさん資料がありますので、それを日本の国として収集するというのは一つの仕事なんだろうと思うわけです。  ところが、平成十二年度の予算の中では、事務所を借りる費用、それから、今既にマイクロフィルムになっているものをデータベースにする費用にしか当たらないという形にしか予算は立てておられない。それでは新しい資料の収集に全くならない。  今、日本の国が公文書として持っているさまざまな文書を将来のためにも保存をしていくというか、散逸しないように、あるいは紙がだんだん酸化していって資料の価値がなくならないようにそれをデータベース化していく作業というのは、これは別にアジア歴史資料センターの話とも関係なく、これは日本の国として公文書の資料保存はやっていかなければいけない。それはそれとしておやりなさい。しかし、そのことをもってアジア歴史資料センターの仕事をしていますとおっしゃるのは、ちょっとこれは筋が違うのではないでしょうかというのが私の思いなんですね。  基本的に考えとしてあった、もう一度浜四津先生のお話を繰り返せば、事実は事実として次の世代に伝えていかなければいけないんだ、だから、客観的な証拠に基づく正確な事実を記録して、真の世界の平和を築くようにしていこうという意味で、過去にあったいろいろな資料を集めていきましょう。それは、既に集まっているものじゃなくて、散逸しているものをできるだけ集めていこうというのが、村山総理の思い、そして浜四津先生のあの代表質問での思い、我々みんなの思いだと思うんですよ。  だから、そういう意味で、予算づけの中で、繰り返しになりますけれども、こういうふうにかなり、矮小化しているとは言いませんけれども、縮小化されるのじゃなくて、もう一度もとの姿でできるだけその資料を集めていくということが内閣としてのお仕事だと思いますので、厚生大臣も閣議等でぜひ御発言をしていただいて、もう一度この事業をちゃんと軌道に戻す、あるいはちゃんと軌道に乗せていくというふうにしていただきたい。よろしくお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  47. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 いろいろ御指摘いただきました。詳細については、私も承知をしておりませんので、御意見として承りまして、勉強をさせていただきたい、このように思っております。
  48. 山本孝史

    山本(孝)委員 大臣、閣議の中でぜひ御発言いただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  49. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 私も、率直に申し上げて、報道でそういうことを読んだことはありますが、今政務次官からお話がございましたように、いろいろな経緯について、まだ十分に掌握していない部分がございます。  仮称でございますか、このアジア歴史資料センターというのは、これは、基本的な運営についての作成は内閣官房が総理府の協力を得てやる、こういうことでございます。  いずれにいたしましても、私どもは、日本の国民とアジアの近隣諸国との相互の理解と信頼を深めるために、過去の歴史資料をきちんと整備し、提供するということが大変重要であり意義のある事業である、立派な施設として実現することを願ってやまないわけでございます。そして、これを通じまして、アジア諸国との友好、相互理解が一層深まることを期待いたしておるわけでございます。
  50. 山本孝史

    山本(孝)委員 最初に申し上げましたが、我々は議連で恒久平和調査局を設置しようという運動をしておりますけれども、これは、事実は事実として記録していこうということを言っているのであって、そこで何かの判断をしていこうということを言っているわけではないんですね。次世代にできるだけ資料としてきっちりと正確なものを残していく。それは、日本国内にあるものだけでなくて、海外にあるものも手近なところできちっと見られるように、手にすることができるようにしていくのは、我々今生きている世代の責任だというふうに思います。  実は、常にそういうふうに思っていますと、事この戦争のことに関しては、沖縄だけは全く別扱いでずっと来ているんですね。沖縄で地上戦があって、大変大きな住民を巻き込んだ惨禍があって、それは筆舌に尽くしがたいということは私もよく理解はしているんですが、沖縄のことに関しますと、沖縄開発庁の予算ということで別枠で何でも処理をされていく部分がありまして、学童疎開船の対馬丸の遺族の皆さんへの弔慰事業というのも沖縄開発庁予算でやっています。  私は前から申し上げているのですけれども、国内で学童疎開をしている人たちが例えば機銃掃射に遭って亡くなっていても、そういった事実については全然振り向きもされない。橋本龍太郎先生の学友が同じような目に遭っているというふうにおっしゃられても、実は沖縄だけは別扱いでずっと来ていると思うんです。そういう思いがしているものですから——そのことが悪いと言っているのではありません。なぜ沖縄並みにやっていただけないんだろうかというのが常に私の持っている思いなんです。  そう思っておりましたら、今回、沖縄戦による住民の被害状況を総合的に把握するため、沖縄戦有識者会議を設置をして、関係資料を収集することになったという新聞記事を見たものですから、これは趣旨はどういうもので、どういう経緯でこういう有識者会議を設置して関係資料を収集することになったのか、そのいきさつを教えていただきたいと思います。
  51. 東良信

    ○東政府参考人 御説明いたします。  昨年の通常国会におきまして、沖縄戦に関する資料につきまして御議論がございました。それを受けまして、沖縄戦に関する資料の収集整理ということにつきまして、沖縄が戦後二十七年米国政府の施政権下に置かれていたということ、それから、昨年がちょうど本土復帰後二十七年目という節目の年に当たるということもございましたし、それから、二十世紀に起こったという意味で、二〇〇〇年という二十世紀の締めくくりのときだということでございまして、日本国において本当に激しい地上戦が行われました沖縄戦に関しまして、国等が保有している公文書等の資料を収集し、歴史的な資料として整理を行い、沖縄戦についての国民一般の理解に役立てたいということを考えたというものでございます。  具体的には、その後内部で検討をいたしまして、沖縄戦に関しまして学問的また専門的に見識を有する方々によります沖縄戦に係る資料の収集整理に関する有識者会合というものをつくりまして、関係資料の収集整理の方針を策定していただくということを考えています。当然のことながら、この方針に基づきまして、関係省庁または国会図書館、沖縄県も十分にやっておられますので沖縄県、そういうところの協力を得て関係資料を収集するということにしております。  現在、本年二月から第一回目といたしまして、有識者にお集まりいただきまして御議論をいただいたという状況でございます。  以上が経緯それから目的というものでございます。
  52. 山本孝史

    山本(孝)委員 沖縄開発庁の課長さんを責めてもらちが明かないというふうに思うのですけれども、御自身で御答弁されておられて、そういう説明でうまく整合性がとれると思っておられるのかなと若干思うのです。  今あなたは国会で議論がありましたとおっしゃった、国会では沖縄だけにかかわらず日本全部の状況について歴史をちゃんと保存していこうということについては常に議論があるのです。沖縄復帰二十七年目とおっしゃいますけれども、二十八年目、二十九年目、戦後何十年という話を常にやっているんです、毎年やっているんです。二十世紀中にけりをつけなきゃいけないというような話は、戦争全体のことについてはそうであって、沖縄だけの話ではないんです。  だから、今あなたが挙げられた三つの前提条件というのは、別に沖縄だけに限る話では全くないんです。沖縄開発庁予算の中でおやりになるので、担当者としてそういう御答弁になるんだと思いますけれども、結局これは内閣全体の問題なんですね。  さっきからずっと申し上げているのは、アジア歴史資料センターについても、あるいは平和祈念館の問題にしても、戦争あるいはその前一定の時期を含めての事実関係、事実といいましょうか歴史のいろいろな関係資料というものをきっちりと収集をしていく。それは図書だけに限らず、当時の方たちからの聞き取り調査というのも、高齢化していますし、もう時期が来ていますから、できるだけそういう聞き取り調査もする。あるいは、諸外国の方がもっといろいろなデータを持っている、そういったものを集めてくるという仕事は、もう本当に一刻を争う仕事だと私は思うんです。  そのときに、沖縄のことだけに関しては沖縄開発庁という、何か別枠予算でどんどんお金がおりておやりになる。なぜ、日本全国であれだけ本土空襲を受けて、その空襲の実態をきちっと把握していくという仕事を政府としてしないのか。学童疎開をしているという状態についても、政府としてやっているのか。みんな民間の人たちがずっと自分たちで汗を流して、お金をつぎ込んで今データを集めてやってきているんですよね。そういったデータも含めて、日本の国としてきっちりとした資料を集めていくということは、私は大変重要な仕事だと思うんです。  沖縄のことをだめだと言っているわけじゃありません、沖縄並みにしていただきたいというのが私の思いです。これは厚生大臣の所管の範囲を超えている話だと思いますけれども、しかし、事遺族援護あるいは戦争ということについては厚生省が一番深くかかわっているところもありますので、小渕内閣として二十世紀に片づけるという、あの野中官房長官の言葉も受けて、この資料収集の面についても範囲を拡大されて、積極的に収集に乗り出していくということを表明されたら、少しは小渕さんの人気も上がるのではないかというぐあいに私は思っていますので、ぜひ内閣としてお取り組みをされてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。
  53. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 委員の御指摘になりましたことは、私の方から内閣といいますか官邸側の方にお伝えをいたしておきます。  とにかく、私どもは、あのような忌まわしい大戦というものを二度と繰り返してはならない。そういう過程におきまして、後世にきちんとした資料をお示しして、そして、その資料を通じて平和への誓いといいますか高まりといいますか、そういうものが高まってくることを私は大変願っているものでございます。
  54. 山本孝史

    山本(孝)委員 政務次官、いかがですか。公明党の中でもぜひそういうふうに取り組みを強めていただきたいと思いますが。
  55. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 努力してまいりたいと思います。
  56. 山本孝史

    山本(孝)委員 どうぞよろしくお願いします。  ありがとうございました。質問を終わります。
  57. 江口一雄

  58. 児玉健次

    児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  私たちは、この委員会に今付託されている戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案、そして、平成十二年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案、この二つの法案に賛成いたします。  この機会に、私は、サハリンの少数民族に対する日本の戦争責任の問題を取り上げたいと考えます。丹羽厚生大臣にとっては恐らく初めて耳にされることだと思いますが、後に総論的にお考えを聞きたい、こういうふうに考えております。  さて、ポーツマス条約、一九〇五年九月五日、これでサハリンの北緯五十度線の南の部分が日本の領有するところになりました。以前からこの地域を生活の基盤にしていたウィルタ、ニブヒなどの少数民族、大体狩猟と漁労を中心に平和な生活を営むこの人たち生活に、ポーツマス条約で自分たちが住んでいるところが日本の領有するところになったとしても、特段大きな変化はありませんでした。そう私は聞いている。  ところが、一九二六年、昭和元年です、樺太庁は、ウィルタ、ニブヒなどの五つの少数民族をポロナイ河畔のオタスというところ、これはアイヌ語で砂地という意味だそうですが、オタスに強制移住させ、かつ囲い込みを行って、その場所で、土人教育所で皇民化教育を強制しました。  それで、太平洋戦争が開始される。一九四二年の八月に、陸軍敷香特務機関はオタスの少数民族の青年、少年を召集して、北緯五十度線近辺の地域で対ソ連諜報活動に従事させました。その一人、北川源太郎氏、ウィルタのゲンダーヌ氏ですが、この方について植木光教総理府総務長官は次のように述べている。「戦時中は陸軍の特務機関要員として勤務をし、また戦後はソ連の軍法会議においてスパイ容疑によって八年の刑に処せられた。自来、昭和三十年に帰国されますまでの約十年間、数々の御苦労をなされたことは承知いたしておるのでございまして、私どもといたしましても、その御苦労には深甚なる御同情を申し上げているところでございます。」昭和五十一年五月十三日、内閣委員会で、小笠原貞子参議院議員の質問に対する答弁でこのように述べています。  厚生省はこのことを御承知でしょうか。社会・援護局長にお尋ねします。
  59. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 今先生が御指摘されました昭和五十一年五月十三日の議事録を読んでおりますので、承知いたしております。
  60. 児玉健次

    児玉委員 私は、そのことを出発点にして、もう少し踏み込みたいと思います。  当時、サハリンの南半分で日本の行政機関であったのは御承知の樺太庁です。樺太庁の傭人料費目予算要求書、これは昭和十九年、一九四四年のものです。その中に次のような記述があります。多少古い言葉ですが、重要な記述なので私はそのまま紹介します。「当庁ニ於テ」、当庁というのは樺太庁です、「当庁ニ於テ蒐集セル情報ノ範囲ニ於テモ、北樺太亜港諜報部ノ対日諜者」、諜者というのは、英語で言えばスパイ、諜報活動の諜ですね、「対日諜者ハ三十八名ニ上リ、之等ハ常ニ五〇度線ヲ越境、我方ノ機密偵諜ニ狂奔シツツアルガ、諜者ノ殆ンドガ土人ニシテ、彼等ハ原始林ノ跋渉ニ慣レ、厳寒ノ下ニ野宿シ、粗食ニ耐エ、ソノ行動敏速之ガ捕獲ハ容易ナラザルモノアリ」こういう明確な記述があります。  そして、この傭人料費目予算要求書というのは、これらの少数民族の少年、青年を樺太庁が何らかの給与、人件費をもって召集し、この活動につかせたということがここからも明らかです。  日本軍によって特務機関員として危険きわまる活動に参加させられたこれら少数民族の青年、少年が、その後どのような運命をたどることになるか、この点が今改めて問い返される必要がある、私はそう考えます。  青年、少年の数は、樺太庁の言う三十八名よりずっと多かった。多数であった。遺族の方々やウィルタ協会の関係者が懸命に調査をして、一九九五年一月までに把握した戦死者、死没者、不明者等は六十名です。その中で、氏名のわかっている戦死者は二名。小川ワシュカ、先ほどの皇民化によって日本名を付与されています。小川ワシュカ、ウィルタ、一九四三年の九月に国境で狙撃され戦死をされた。奥田プキィヨン、これはニブヒ族です、一九四五年八月十七日、戦争が終わった二日後、オタスの地で狙撃され戦死されている。  そして、戦犯としてソ連の軍事法廷にかけられて有罪判決を受け、大体多くの方がシベリアに連れていかれて、ラーゲリで強制労働に従事させられた。その場で死没された方が、今わかっている範囲で三十二名。そして、日本に引き揚げ後死没された方が二十二名、消息不明四名。懸命の努力で、今お名前も含めてかなり明らかにされている方々はこのような状況です。  なぜこれらの方々が日本に引き揚げてこられたか。推測するところ、サハリンの原住の少数民族であって、対ソ戦に日本の特務機関要員または憲兵として作戦行動に参加させられたことで戦争犯罪人となり、そして、戦後、彼らの祖国であるサハリンには戦争犯罪人のままでは帰りがたいというので舞鶴に帰還された方が多かった、そのように推測されています。  これらの方々に対して、舞鶴に引き揚げ船で帰港されたとき、日本政府はどのような補償を行ったのか、そのことを明らかにしていただきたいと思います。     〔委員長退席、田中(眞)委員長代理着席〕
  61. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 シベリアで抑留された方が本土に引き揚げられたときの措置でございます。ただ、今先生のおっしゃられましたサハリンに居住されていた少数民族の方々の事例については、正直言いまして、現在データを持ち合わせておりません。したがいまして、一般論としてお答えするということでお許しをいただきたいと思います。  引き揚げていらっしゃった方々、例えば舞鶴に引き揚げられていらっしゃった方につきましては、援護措置といたしましては、帰還手当、帰郷旅費、療養の給付及び障害一時金の支給などを行っているようでございます。ただ、当初、例えば昭和二十年ごろですと、上陸地における宿泊、医療、被服の支給等の応急援護だけだったのが、その後徐々に援護内容が充実しているというような経過がございますけれども、基本的には先ほど申し上げたような支給を行っております。
  62. 児玉健次

    児玉委員 その中の一人の引き揚げ証明書を拝見しますと、帰還手当一万円、帰郷旅費(雑費)二千五百円、そして応急援護物資とあります。この方が舞鶴に帰港されたのは昭和二十八年です。帰還手当一万円、帰郷旅費二千五百円、これに相違ありませんか。
  63. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 先生が御指摘されましたように、帰還手当につきましては、必要な当面の生活資金ないし就職するまでの間のとりあえずの支度金として、昭和二十八年当時一万円支給されております。これはその年度また増額になっておりますが、例えば、ちなみに現在の額は四十八万五千円、大人二人、子供二人の場合でございます。帰郷旅費につきましては、上陸地から帰郷地までの距離に応じまして、一人につき千円から三千円までの支給というふうになっておりまして、この額につきましては、昭和二十二年以降変わっておりません。
  64. 児玉健次

    児玉委員 私は、大臣の注意を喚起したいのですが、当時の植木光教総務長官の、深甚な御同情を申し上げるといった次元の問題ではないと考えますね。同情という言葉は、この場合適切ではありません。  そして、これらの方が舞鶴に引き揚げてきたとき、今明らかなように、昭和二十八年の段階でいえば、帰還手当一万円、この方は落ちついたのが北海道ですから、帰郷旅費が二千五百円、それが最初で最後です。そういう中で、今私たち審議している戦傷病者戦没者遺族等援護法、この措置と若干重ねて考えてみたいと思うのです。  戦傷病者戦没者遺族等援護法では、対象として軍人軍属、準軍属と三つに分けています。軍属では、戦地勤務の陸海軍部内の雇員、傭人等とあります。そして要件は、有給であることが要件である。先ほどの敷香の陸軍特務機関、そこによって召集されている。そして、準軍属でいえば、戦闘参加者、特別未帰還者——抑留中負傷されたり現地で死亡された方も含む、そのようになっている。  そこで私は例示的にお聞きしたいわけですが、サハリンの少数民族の方々の中で戦死、シベリア抑留中の病死等が明らかになった場合、援護法の適用対象となると考えますが、どうでしょう。
  65. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 援護法におきましては、先生がただいま挙げられました軍人軍属、準軍属等が、戦後海外で抑留されていた期間に自己の責に帰することのできない事由により負傷しまたは疾病にかかった場合で、第五款症以上、例えばこれは薬指がなくなるという場合でございますけれども、それ以上の障害状況にある場合や亡くなった場合については、基本的に障害年金遺族年金支給されることになります。  ただ、具体的には、援護法に基づき本人の身分や遺族の要件、それから、この場合問題になるかもしれませんけれども国籍要件などについて個別に審査を行った上で、対象になるかどうかの裁定を行うということになるわけでございます。
  66. 児玉健次

    児玉委員 念を押しますが、仮に、サハリンの北方民族の方であって、シベリアのラーゲリで強制労働に従事されて、そして、先ほど若干の推測を交えて申しましたが、舞鶴にお帰りになった、そして日本国籍を取得されている、ないしは、そのとき、今おっしゃった戦傷ないしはラーゲリで服役中の何らかの事故で皆さんが設けている負傷の条項を満たしている場合、それから、ラーゲリのどこかで何月何日に亡くなったという事実が明らかにされ、その方が日本国籍を有している場合、そういう方の遺族で日本国籍を有している日本在住の方、これらの方については援護法の対象になりますね。
  67. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 今先生の挙げられたように、国籍要件また障害要件等がしっかりと確認できれば、基本的には援護法の対象になります。
  68. 児玉健次

    児玉委員 そういった要件を満たして、サハリンの北方少数民族の出身で援護法の適用を受けた方がどのくらいいらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  69. 炭谷茂

    炭谷政府参考人 ただいま手に持っております資料ですと、一名の方がいらっしゃいます。
  70. 児玉健次

    児玉委員 さて、事実関係が明らかになりましたので、丹羽厚生大臣に私は若干の質疑をさせていただきたいと思います。  昨年七月二十一日、君が代・日の丸の法制化に関する法案国会審議で、私は、二十世紀に積み残された課題に対する日本政府の責任の問題について触れることがありました。そのとき私は、ドイツが周辺の民族に対してみずからの戦争責任を可能な限り真剣に果たそうとしている努力について述べて、そして、日本もこの努力に学ぶべきであるというふうに政府に求めました。そのとき、私の質問に答えたのは当時の野中広務官房長官です。  私は、この点はぜひ同僚議員の皆さんや厚生省丹羽大臣に心にとめていただきたいのですが、皆さんよく御存じのドイツのワイツゼッカー大統領は、当時、当時というのは一九八五年の段階です、五月の八日、第二次大戦終結四十年の日に、彼は連邦議会で著名な演説をなさった。「五月八日は心に刻むための日であります。」そう述べて、ドイツの戦争行為、加害責任によって被害を受けた方々を次々に述べては心に刻んだわけです、「戦いに苦しんだすべての民族、なかんずくソ連・ポーランドの無数の死者を思い浮かべます。」「虐殺されたシィンティ、ロマ、」シィンティ、ロマとはジプシーがみずからを呼ぶときの言葉です、「ドイツに占領されたすべての国のレジスタンスの犠牲者に思いをはせます。」と。  そういう方々に対してドイツは真剣にみずからの責任を果たそうとしている、そのことに学ぶべきだと私が求めたのに対して、野中広務官房長官は次のように答えたのです。「二十世紀を振り返りますときに、委員おっしゃった問題を含めてさまざま残してきた問題があり、なお解決するべき課題が多うございます。私どもはまた、ドイツの処置に学ぶべきところが多いと考えております。」私はこれは積極的な答弁だと思います。  このことについて、もちろん総理府の所管とか外務省の所管とか厚生省の所管などさまざまにあります、その中で、厚生省所管の問題については先ほど援護局長から一定のことが示されました。そういったことも踏まえつつ、丹羽厚生大臣として、ドイツに学ぶべきところ、そこのところを日本としても真剣に果たしていく、このことについて大臣のお考えを聞きたいと思います。
  71. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 まず、野中官房長官の御答弁は、政治家としてのお気持ちを率直に述べられたものと私なりに受けとめております。  先ほども私の方から答弁をさせていただきましたけれども、例えば在日韓国人の元の戦後補償の問題につきましても、今与党の中においても、野党の中においても、さまざまな御検討がなされている、このように私自身受けとめておるわけでございます。  我が国とドイツとは、これは殊さら違いを強調するということはいささかどうかと思いますけれども、要するに同じ敗戦国でございます。そういう中において、特にドイツの場合には、ナチスの政策によります迫害というような大変特殊な事情ということが世界的にも大きく注目されておるわけでございます。日本の場合におきましては、これとはまた別の次元でございますけれどもサンフランシスコ平和条約によります包括的な取り決めを行いまして、賠償の問題は国家間の外交交渉によって解決する、そういうことで既に決着をいたしておるわけでございますが、ドイツは御案内のように大変不幸なことでございまして、当時東西ドイツに分断されておりました。  私が考えますところによりますと、こうしたことからいわゆる包括的な条約というものは存在しなかったということで、それぞれの国によってやはり事情というものが大きく異なるものではないかと思っております。  ただ、賠償のあり方につきましては、今申し上げましたような両国間の事情の違いであるとか、あるいは我が国の戦後問題の解決の基本的な枠組みを踏まえて考える必要があるのではないか、こう考えております。  いずれにいたしましても、戦争の被害者と向き合う真摯な態度、これはあるいはその理念においては私どもとドイツというものは共通しなければならないし、学ぶという言葉が適当かどうかわかりませんけれども、私個人としてはそういう気持ちで今後とも取り組んでいかなければならない、こういうような思いをいたしておるような次第でございます。
  72. 児玉健次

    児玉委員 最後に一言申しますが、戦争の被害者に対して真摯にみずからの責任を明らかにしていく、この点は、今大臣の言葉を私は正確に再現はできないけれども、私たち日本人、日本政治家として、日本政府としても、ぜひ真剣に追及していくことが求められている。  一言言いますが、ヨーロッパにおけるナチズムとアジアにおける日本軍国主義は、第二次世界大戦において果たした役割の深刻さ、責任の深さにおいては変わるところはありません。そのことを明確に述べて、ともにこの分野での努力を進めることを私は私自身の決意として述べて、この質問を終わります。ありがとうございました。
  73. 田中眞紀子

    田中(眞)委員長代理 中川智子さん。
  74. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうの案件、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案平成十二年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案、この両案とも社会民主党として賛成という立場を表明して、質問に入らせていただきます。  まず最初に、大臣に、みずからのお言葉で結構ですが、私は二度と戦争は嫌だ、平和憲法を守りたいという思いで今回のこの案件に対して質問をしたいのですが、やはり政治家の胸に去来する思いは、二十世紀中に起きたことは二十世紀の中で解決をしていこうと。大臣にとって、二十世紀中に起きたことを二十世紀中に解決することで、本当にこれだけはやらなければと思っていることがございましたら、お聞かせをいただきたいと思います。  これは、今の児玉先生の質問とかを受けられまして、二十世紀中に大臣としてこの分野で戦争の片をつけていく、このような形で大臣としてのお考えを一言まず最初に伺いたいと思います。     〔田中(眞)委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 二十世紀の後半、二十世紀前半も含めましてでございますが、私どもは戦争の繰り返しをやっておったことは紛れもない事実でございます。  そういう中におきまして、近隣諸国に多大な被害、犠牲を強いてきたということを、過去の先人たちが犯してきたことを率直に受けとめて、そして後世に伝えていくことが私どもに課せられた最大の課題である。  先ほど申し上げましたように、基本的には、サンフランシスコ平和条約において我が国として基本的な戦後処理は終わったという立場でございますけれども、さまざまな国民の皆様方の御理解を得ながら、必要のあることについては今後十分に党派を超えて御議論をいただきまして、そして、もし私どもにするべきことがあれば、当然のことながら検討していかなければならない。具体的な問題について今とやかく申し上げる段階ではないと思っております。     —————————————
  76. 江口一雄

    江口委員長 この際、お諮りいたします。  政府参考人として厚生省保健医療局長篠崎英夫君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 江口一雄

    江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  78. 江口一雄

    江口委員長 引き続き、中川智子さん。
  79. 中川智子

    中川(智)委員 篠崎局長には急遽おいでいただきまして、申しわけございませんでした。理事の皆さん、委員の皆さんにも、このような形で決議をいただいて感謝いたします。  それでは、まず最初に、本日は在外被爆者問題について御質問をしたいと思います。  先月二月二十九日、朝鮮民主主義人民共和国の被爆者の方、そして医師を中心とした朝鮮被爆者実務代表団が、治療や被爆者医療の研修等を目的に来日されました。共和国の医師が研修を目的に来日したのは初めてのことでありました。広島の赤十字病院や千葉の放射線医学総合研究所で研修を受けられまして、大変喜ばれて帰られました。  広島、長崎で被爆して、戦後朝鮮民主主義人民共和国に帰国されて、今なお被爆の後遺症で苦しんでいる方がたくさんいらっしゃいます。それは現在共和国で千三百人の方がいらっしゃるという報告がなされていますが、つい数年前までは、共和国に何人被爆者の方がいらっしゃるのか、その存在さえも明らかにされてはいませんでした。もちろん、それらの方々に日本からの補償は一切ございません。国交がないという理由で、一切の補償は共和国にはされていません。  でも、今回訪日されましたときに、小渕総理がお会いになりまして、代表団との懇談の中で、日本は二回の被爆体験があるので、治療を受けたり、被爆者治療のノウハウを学んでほしい、今回の訪問が日朝友好の芽となり実となることを期待しており政府としても支援していきたい、このように総理が前向きの御発言をされました。  厚生大臣、これはいらっしゃる前に、大臣にもいらっしゃるという御報告をさせていただいて、本当に厚生省も応援していただいたことを心から御礼申し上げます。そのことをまず大臣、皆様に報告いたします。  この在外被爆者が、いわゆる出国による手帳への影響、外に出た途端、日本から本当に外に一歩でも出た途端に、健康管理手当等々一切の認められていたものが失権されるということになっております。このことについてまず御質問したいのですが、被爆者援護法では出国による手帳等への影響というのはない、海外不適用の条文もありません、これは確かでしょうか。
  80. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 ただいま先生から在外の被爆者には被爆者援護法各種手当などを支給しない法律上の明文の根拠はあるのかという御質問だと思いますが、それにお答えいたしますが、被爆者援護法各種手当などの対象であります被爆者となるには、被爆者健康手帳の交付を受ける必要がありますが、明文で、その交付を受けようとする者はその居住地または現在地の都道府県知事に申請を行うこととされており、法律上、被爆者が国内に居住または現在していることを前提とした規定となっております。  また、被爆者援護法の制定時における国会審議におきましても、政府側から、国外居住者には手当を支給せず、日本国内に居住または現在している者を対象として手当を支給する旨を明言し、これを前提に議決されております。  したがって、国外居住者を対象としない前提法律の構造や法制定時の国会での審議の経緯、そして、そもそも我が国の主権の及ばない国外に国内法が適用されないのが原則であることなどを考えますと、在外被爆者に対し被爆者援護法を適用しないことには十分合理的な法的根拠があるものと考えております。
  81. 中川智子

    中川(智)委員 国外への法の適用がされているものもございますよね。それはどのような法律がございますか。国籍条項がなく、そして国外に出た後も支給されているもの、それはございますね。
  82. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 今先生の御質問は、ある方でございますね。  戦傷病者戦没者遺族等援護法では国外居住者に対しましても年金等が支給されておりますけれども、これはちょっと御質問ではございませんが、これは、同法がいわば使用者責任に基づく国家補償法であることから、かつて雇用または雇用類似関係にあった者に対して、たとえ現在国外に居住していても支給する取り扱いとなっておるということでございます。
  83. 中川智子

    中川(智)委員 被爆者というのは、日本に一たん入って手帳を受けて、そして国外に行って暮らしても被爆者は被爆者で変わりないのに、ただいま局長の方からは国会審議の中での議論、そしてその根拠というようなことがお話しされましたが、法治国家の日本といたしましては、海外不適用の条文が明らかにこの被爆者援護法にはないわけですね、国籍条項もない。そして、出国による手帳等への影響も、非常に不透明な線引きにより有効なままの人と無効とされている人がいるわけですね。  厚生省が根拠にされているのは、七四年に出されました通達がございますね。この通達で、「特別手当受給権者は、死亡により失権するほか、同法は日本国内に居住関係を有する被爆者に対し適用される者であるので、」云々ということを書いておりますけれども法律よりも通達の方が上回っているというふうに思うし、非常におかしい取り扱いを現在なお続けているという印象があり、たくさんの方たちの本当に必死な訴えを今なおその通達によって退けている。法律の方にはそれが書かれていないのに、どうしてこの通達が優先されているのか、その根拠をお聞かせいただきたいと思います。
  84. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 確かに、御指摘の局長通知は出ておりますが、私どもとしては、被爆者援護法に基づく手当の給付が日本国内の居住または滞在を要件としているという法律趣旨及びそれに基づく事務取扱を指示した、つまり、法律に基づくものを局長通知として指示した、こういう理解でございます。
  85. 中川智子

    中川(智)委員 それは厚生省の方に都合のよいような形の趣旨です。また事務手続も、年金などは手厚くて、海外に居住していても振り込みがきっちりできるのに、この被爆者の取り扱いについて、日本国から出てしまったら事務手続が非常に煩雑でそれができないというのはどうにも納得できません。その趣旨、事務手続の問題で、もっとしっかりと納得できる形でその趣旨内容を教えてください。
  86. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 今先生から年金等のお話も出ましたので、それに関連があることとして御説明いたします。  基本的には、この被爆者援護法社会保障法でございまして、社会保障施策はその国に居住する者の福祉をその国の政府が実施すべきという原則に立つものでございます。給付の財源が、今御指摘がありましたような年金のような保険料等の本人の拠出ではなくて、税金などの公的財源により賄われるものであること。公的財源で賄われる他の制度においても、在外居住者に対する適用がないことなどがその根拠でございます。
  87. 中川智子

    中川(智)委員 でも、一回その権利を取得したら、もしも日本にいれば、税金でというか予算というのは変わらないわけですね、その中でそれに対する財源というのは確保していて、そして、一たん国外に出れば財源の確保が困難になるということでのあれじゃないですね。  今社会保障というふうにおっしゃいましたが、大きく言えば、その精神は国家補償。被爆したことによって、いわゆるサービスというか、社会保障だけではなくて国家補償的な意味合いもあると思うのです。これは全くないというお立場で、社会保障だけということで今おっしゃられたわけでしょうか。
  88. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 私どもの現在の整理では、国家補償ではなくて社会保障の複合的性格を有するものがこの援護法であるというふうに認識をいたしております。
  89. 中川智子

    中川(智)委員 もう一度確認したいのですけれども、「出国による手帳等および医療費・手当・年金等への影響一覧」にたくさんの法律がございます。ほかの法律は、被爆者援護法以外は全部条文どおりきっちり運用されているわけです。これは当たり前のことですね、条文どおりきっちり運用されています。  つまり、国外に出ることによって、一たん取得した手帳や手当を打ち切ることを定めた条文がないから、これは日本国外に出国しても打ち切られないわけですね。ほかのところは、児童手当、児童扶養手当とか特別児童扶養手当法律なんかは、住所を国外に移すと打ち切りということがはっきり書いてあります。でも、この被爆者援護法はそれさえも書いていません。短期滞在者でも不法入国者でも手帳は交付される。でも、この被爆者援護法だけは、条文がないのに国外に出ることによって手帳を無効とされ手当を打ち切られる。  先ほどるる御説明がありましたけれども、そのことは何ら根拠にならないというふうに思うのですね。根拠になるというふうにお考えなんでしょうか。先ほどの国会審議、そして国税、租税でこれを賄っている、それがすべての根拠だというふうにおっしゃいますか。
  90. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 私どもとしてはそのように理解をいたしております。
  91. 中川智子

    中川(智)委員 先ほど、法律趣旨や目的によって法律の適用範囲というのは決まるというふうにおっしゃいました。それは、初めてそれを適用する場合は当てはまると思うのです。でも、皆さん、一たん全部手帳を交付されてその権利を有したわけですね。ところが、長期海外出張でどこかの国にいらっしゃるとか——最初から国籍は関係ありませんので在韓の方でもこちらで権利は取得できたわけですね、被爆者であることには変わりないのに、国外に居住していると、海外旅行でもこれは失権してしまうわけですね。  このように矛盾に満ちているということは、私はそちらの論理の方が……。本当にそうだと思うし、被爆者の方は、胎内被爆された方も私より年が上です。平均年齢は、北朝鮮の場合も、共和国の場合も七十二歳、ほとんど平均年齢が七十歳以上になってしまっている。被爆者の手帳を受けて権利を有したのに、国の外に行ったからといってそれが全部だめになってしまうということは、この援護法をつくったときの精神に反すると思うのです。どうして被爆者援護法だけが、条文も定められていないのに出ること一つによってそれが打ち切られるのか、もっと納得できる形で御説明をお願いします。
  92. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 先生の再度の御質問でございますが、また、先ほどの繰り返しになってしまうわけでございますが、援護法のそもそもの性格、今までの運用していること、それから事務的な取り扱いの方法等によりまして、私どもは、法の趣旨に照らして、先生の今御指摘のようなことはなかなか難しいということを申し上げたいと思います。
  93. 中川智子

    中川(智)委員 では、最後に大臣、この問題は予算委員会山本孝史委員質問されました。私は、二十世紀のうちに二十世紀の問題をといいましたら、まず被爆者の方たちがさまざまな健康被害を受けながら、その被害に対して日本がしっかりと安心して余生を送れるようにするべきだと思います。一たん権利を取得したのに、一歩国外に出ると、法律ではそれを明記されていない、明文化されていないにもかかわらず、通達という形で権利を一切失権する。アメリカの方、ブラジルの方、韓国の方が、昨年も日本を訪れて必死の思いで訴えられてまいりました。  大臣、この問題に関して一歩踏み込んで、厚生省として、立法府としてやっていただきたいと思います。大臣の前向きな答弁を最後にいただいて、質問を終わりたいと思います。
  94. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 被爆者援護法に基づきます給付につきましては、国籍を問わず、原子爆弾の放射能によります健康被害に着目して、公費によります必要な医療を行っているわけでございます。  まず、給付の財源が保険料などの本人の拠出でなく、税金等の公的な財源によって賄われているものであること。  二番目といたしまして、公的財源で賄われますほかの制度、例えば特別児童扶養手当あるいは特別障害者手当等におきましても在外居住者に対する適用がないこと。  三番目といたしましては、社会保障としましては、その国に居住する者の福祉はその国の政府が実施するべきであること。  それから四番目といたしましては、法制定時の国会での議論においても、国外居住者は対象外であると明言された形で議決されていることなどから、日本国内に居住、現在していることを要件といたしております。  したがいまして、国内に居住、現在していない者に対しましては手当を支給することは困難だと思いますが、山本委員の御質問の中で、旅行か何かでしたか、そういうような場合も含めるのかということにつきましては、これはちょっと私も私なりに感じるところもございますし、それですべてストップしていいのかどうかということは、私は十分に検討しなければならない、こう考えているような次第であります。
  95. 中川智子

    中川(智)委員 時間になりましたが、特別障害者手当も外国に出るだけでは失権しません。そこは違いますので、そこをきっちり精査されて……。出るだけで失権するというのは、本当に法律違反ですから、法律をきっちり守っていないということになりますので、これは戦後の問題として在外被爆者への手当てをきっちりお願いいたします。  大臣、もうちょっと前向きに言ってくださるんだったらいいですが、そうでなきゃ答弁はいいです。最後にこのことを言って、終わります。
  96. 江口一雄

    江口委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  97. 江口一雄

    江口委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  98. 江口一雄

    江口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、平成十二年度における国民年金法による年金額等改定特例に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  99. 江口一雄

    江口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 江口一雄

    江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  101. 江口一雄

    江口委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  102. 江口一雄

    江口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  第百四十五回国会内閣提出参議院送付国民年金法等の一部を改正する法律案年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団解散及び業務承継等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  各案は、第百四十六回国会で本院において議決の上参議院に送付したものを、参議院において継続審査に付し、今国会におきまして法律番号及び法律の略称に係る暦年について、「平成十一年」を「平成十二年」に改める修正を行って本院に送付されたものであります。  したがいまして、趣旨説明を省略したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 江口一雄

    江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————  国民年金法等の一部を改正する法律案  年金資金運用基金法案  年金福祉事業団解散及び業務承継等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  104. 江口一雄

    江口委員長 この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として年金福祉事業団理事長森仁美君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として大蔵省理財局長中川雅治君及び厚生省年金局長矢野朝水君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 江口一雄

    江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  106. 江口一雄

    江口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田清司君。
  107. 上田清司

    上田(清)委員 民主党上田清司でございます。  私は、かねてから、年金福祉事業団の運用について十分な成果を上げているのかどうか、このことに関して疑念がございましたので、大蔵委員会、予算委員会を通じて少し議論をさせていただきましたので、きょうは集約をさせていただきたいというふうに思っております。  そこで、まず運用利回りでございますが、お手元に資料を配付させていただいておりますが、大臣、恐縮ですが、大臣のところにまだ渡っておりませんか、議事録の一部をまとめさせていただきました。大野政務次官と吉武政府参考人審議官の話でありますが、一見総利回り四・四%は信託銀行よりもましだという議論がなされておりますけれども、果たしてそうなのかどうかということについて私は疑念がありますが、大臣、このような考え方でよろしいのですか。
  108. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これは委員御案内のように、政務次官の方で御答弁を申し上げましたのは、利息は別とすれば信託銀行並みの成績を上げているという趣旨のことだと考えております。
  109. 上田清司

    上田(清)委員 微妙に答弁が少し変わったわけでありますが、一般に聞いていると、あたかも利益の利率がそこに出たような感じでありますが、実は、これはまだいわばコストを引いていない数字でありまして、コストを引いたときはどうなんだということも明らかにしないと……。このような答弁をしばしばなされていますと、あたかも四・四%のいわば実現利益をしっかり上げているような意味合いにとられますので、やや私は政府として不誠実ではないかなと思います。  それでは大臣、ネットで、つまり、さまざまなコストを引いた上で、年金福祉事業団は信託銀行よりもいいんですか。
  110. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 この問題は、非常に技術的な問題ですので、私の方からお答えさせていただきます。  これは、信託銀行、年金福祉事業団いずれもコストを控除する前の収益率でございます。しかも、これは修正総合利回りということで、含み損益を加味したものでございまして、ただ単なる実現収益だけではございません。
  111. 上田清司

    上田(清)委員 あなたはいつも答えないんだよ。コストを引いたときにどれだけ差が出るんだと聞いたんだ。説明要らないからね、みんなわかっているんだから。
  112. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今申し上げましたとおり、これはいずれもコストを控除する前の生の数字でございます。(上田(清)委員「コストを引いたときどうなんだと聞いているんだ」と呼ぶ)コストを引いた場合は、信託銀行の場合も、これは全国の厚生年金基金の運用実績でございまして、基金によりましてコストはさまざまでございます。そういうことで、コストを引くということはなかなか難しい問題もございまして、いずれもコストは引いてございません。
  113. 上田清司

    上田(清)委員 それでは2の資料を見ていただきたいと思います。これは厚生省から出していただきました「信託銀行・年金信託の運用利回り(修正総合利回り)の推移」ということで、六十一年度から出ておりますが、ここに、「出典 厚生年金基金連合会調べ」ということで、「信託銀行全体の運用利回りについては把握していない。」というただし書きを入れていただいております。  把握していない数字を何で出すんだ。御説明は十菱さんからいただきましたけれども、そういう説明を聞かなければわからないような数字を出すなよ。本当に不誠実です、あなた方の答弁の仕方というのは。  コストを引いた利回りを出していませんから、私が試算をいたしました。それが1の数字であります。あなたたちが把握していない数字です。私の方に提供した信託銀行、年金信託の数字を当てはめて、年福と信託の比較です。1の一番上と下を見てください。既に十年度でも信託銀行の方が上回っていますし、平均でも上回っている。通算で年福の方が悪いじゃないですか。こういう事実に関してどうするんですか、説明は。コストを引かないときだけ、調子のいい部分だけをとって、あたかも信託銀行よりうまくやっていますなんて、信託銀行に失礼ですよ。あなたたちの方がコストがかかってネットの利回りが低いということが、数字で証明できるじゃないですか。答弁は要りません。まずこのことを言っておきます。  それから、最近、あたかも黒に転じているようなお話が出てきております。三枚組みの、「時価ベースの損益の動き」というタイトルをつけております。特に十二年二月三日の参議院国民福祉委員会大野由利子総括政務次官が田浦議員の質疑にお答えになった部分を書いております。「平成十年度末には時価ベースで約一兆二千億の累積欠損が生じていたわけでございます。」云々と、しかし、「今年度に入ってから国内株式などの収益が大変貢献をして解消に向かっておりまして、」「十二月末現在の時価ベースにおいてこれまでの累積赤字を解消いたしまして、七千五百億円の黒字に転換しております。」と。  いつ黒字に転換したんですか。なぜこうなるのか、根拠を述べていただきたいと思います。大臣、いかがですか。
  114. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これはあくまでも政務次官がお答えを申し上げておりますように、平成十年度末の時価ベースで一兆二千億円の累積赤字が生じていたわけでございますけれども、昨年の十二月末現在の時価ベースには、株価の上昇等がございまして累積赤字が解消いたしまして七千五百億円の黒字に転換したという事実を申し上げただけでございます。
  115. 上田清司

    上田(清)委員 大臣は御存じだと思いますが、時価ベースではまさに瞬間風速で動いておりますね。したがって、決算も簿価でやっておりますね。こういうことを言うと、わかりづらくなってしまいますね。田浦さんはそのときにお答えされていますよ、そうですか、黒字に向かっているのですか、これで安心しましたと。安心できるような数字なんでしょうか、時価というのは。大臣、現実に今十年度末においてしか決算が出ておりませんので、正確な数字として、赤字なんですか、黒字なんですか。
  116. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 委員のお尋ねの点は、まさに年福事業団は簿価ベースでも累積赤字を解消できるのか、こういう問題につながっていくと思いますけれども、年福事業団の資金運用の収益につきましては、先ほども私から申し上げましたけれども、今年度に入りましてから国内の株式によります貢献といいますか、これが大変大きいことから、このままいけば三月の末には時価ベースで累積黒字になる、こういう見通しを政務次官も申し上げたわけでございます。  一方、これを簿価ベースで考えますと、時価は、私から申し上げるまでもなく、専門家の上田委員はよく十分に御承知だと思いますが、簿価プラス含み益でございますので、要するに含み益を有する資産を売却しない限りはすぐに赤字解消にはならないことは言うまでもありません。  含み益を処分することによって決算上黒字にするということは可能なことでありますけれども、それは年金の長期運用とは相入れない資産の取り崩しにつながるわけでございまして、事業団としては、資産を無理に売却して簿価で黒字を図っていくことは、必ずしも年金加入者の利益につながらないと考えております。  それから、もう一点申し上げさせていただきますならば、御案内のように、簿価というのは資産を取得したときの帳簿の価格であります。年福事業団でいいますと、制度発足以来の資産は昭和六十一年の価格そのままでありますから、その後、景気は上がってきておりますから、その後の変動を反映しないために、私は、この問題というものは、簿価は簿価でしっかりと押さえていかなければならないけれども、だからといって、直ちに六十一年のままと今の問題とを比べるということは、いささか実態にそぐわないのではないかと考えております。
  117. 上田清司

    上田(清)委員 大臣はしっかりした御答弁を私はされたと思いますね。確かに大臣が言われたとおりであります。これと同じようなことは吉武審議官も言っておられます。ある意味では瞬間値というふうに考えていただきたいという、二月二十四日の衆議院大蔵委員会での答弁なんですけれども、まさにこの時価ベースの話をしたときに、これは瞬間値ですよというきちっとした認識をされている。大野政務次官はきちっと認識をされておられたかどうか、私はわかりません。  しかし、事務方の言うとおりやっていると、これは誤解を招くような話になってしまうんですよ。政治家というのは事務方の言うことを聞いてはいけないのです、常にまゆつばでいかないと。本当ですよ。消費者契約法だったら、これは違反ですよ。罰則はつきますよ。新しく出される消費者契約法だったら、意図的に誤解を招くような誘導じゃないですか。あるいは民間金融機関だったら、こんなことは許されませんよ。商取法違反になってしまいますよ、勝手に瞬間値の数字をぽこぽこ上げていったら。そういうことですね。  理財局長、この七千五百億、すぐには売れませんね。御答弁ください。
  118. 中川雅治

    中川政府参考人 現在、その含み益になっている部分を実現益にするためには、これは市場で売却をしなければ実現できないということになるわけでございます。その場合に、仮に他の条件が全く変わらないという前提であれば、例えば株式の売却を行う場合には株価の下落要因となると考えられるわけでございますが、実際には、例えば一部の投資家が一部の資産を売却したといたしましても、他の投資家の動向や他の経済要因等によっても価格は変動するわけでございます。売りが出ましても、それによって買いが誘発される、あるいは取引が活発化することによってさらなる需要が出てくる、こういったような局面もあるかと思います。  また、仮に株式を売却いたしたといたしましても、その売却により回収した資金を例えば債券で運用するということになりますと、この場合であれば債券価格の上昇要因となりまして金利が低下するわけでございますが、金利の低下は株価の上昇要因というようにも見られるわけでございまして、実際に市場はさまざまな要因で変動いたしますので、個別の資金運用の内容が市場に与える影響につきましては、一概に申し上げることは困難だというふうに思います。  いずれにいたしましても、具体的な資金運用につきましては、年金福祉事業団が適切に判断される問題であると考えております。
  119. 上田清司

    上田(清)委員 だめですよ、理財局長、きのう言ったことと違うようなことを言っては。  矢野局長、あなたは、今聞いたように、理財局長ははらはらしながら毎日ボードを見ておられるのですけれども、簡単に売却もできなければ実現益にすることもできないようなことをしゃあしゃあと述べておられるし、大変御無礼にも政務次官にそういう説明までさせている。謝罪していただきたい。
  120. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 これは、私どもは毎年度末の決算という形で正確な数字をいろいろな角度からお示ししているわけですけれども、年度途中はどうなのだということを国会で聞かれたわけでございます。したがって、これは年度途中の瞬間値でありまして、今の時点でマーケット価格で一定前提を置いて計算いたしますと、こういった数字になりますということをお答え申し上げたわけでございます。  いずれにしましても、これは瞬間値でございますから、年度末が参りますと、きちんと締めて、正確な数字を御報告したいと思います。
  121. 上田清司

    上田(清)委員 謝罪していただきたいと言ったのですよ。しかも、国会で聞かれていると言ったね。どこを聞いた。聞いてなんかいないよ。ちゃんと答弁して。
  122. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 失礼しました。  これは、実は具体的に申し上げますと、社民党の先生から年度末の数字ではなくて年度途中の数字はどうなのだということを聞かれましたので、今申し上げたようなことで、一定前提を置いてお答えをしたということでございます。
  123. 上田清司

    上田(清)委員 矢野さん、私にはそう言っていないのだよ。私に謝れと言っているんだよ。謝らなければ審議できないよ。
  124. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 いろいろ誤解を招いたということにつきましては、申しわけなかったと思います。
  125. 上田清司

    上田(清)委員 誤解を招くように誘導されていることに問題があるということをあえて申し上げます。  そこで、実は一番気になるところは、資金運用部から毎年お金をお借りしているわけでありますが、3のところに理財局から出していただきました資料がございます。昭和六十一年度から貸し付けが始まって、その後、受け取り利息も含めて、その時々の償還時期に償還をしておられるわけでありまして、その貸付残高が十年度末で二十五兆七千五百三十億。このように貸付残高があるのですけれども、実際運用はどうかというと、4の一番右下の十年度末を見ていただきたいと思いますが、これは、年金財源強化事業と資金確保事業、両事業の合計でありますが、運用額が二十三兆九千八百五十四億ということになっております。  そうすると、借りたお金よりも少なくなってきておりまして、普通は、年金強化事業というぐらいですから、財源をますますふやして国民に利益をもたらす事業だというのがこの運用事業でありますから、借りたお金よりもふやして初めて運用が成功していると言えるわけですけれども、減っているのはどういうわけでございますか。そして、この減った分は、当然理財局には毎年毎年お返しをされているのですから、どのお金でお返しされたのか。理事長の給与から払われたのか、職員の給与を切り詰められたのか。
  126. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 これは、年金福祉事業団が資金運用部から資金を借り受けておるわけでございまして、利払いと元本の支払いというのはきちんきちんとしなければいけないというのは、当然でございます。  実現収益が利払いに足りないということでございまして、その分については運用資産の中からお支払いをしているということで、そういうことからこの運用元本が減少しておるということでございます。
  127. 上田清司

    上田(清)委員 また巧みにあなたはわけのわからぬことを言った、運用資産から返していると。運用資産の中身は何なのですか。
  128. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 運用資産は、資金運用部から借りたお金プラス収益ということでございます。その収益でもって利子が返せないということから元本の一部が出ている、そういうことで元本が減少しておるということでございます。
  129. 上田清司

    上田(清)委員 要するに、利益を出し切れなかったから元本を食いつぶしている、こういう認識ですね。
  130. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 そのとおりでございます。
  131. 上田清司

    上田(清)委員 これを言わせるのに三日もかかってしまったのですよ。十二月三日に言ってくれればよかったのを、ぐずぐずして、何が何だかわからないことばかりずっと言うので、資料請求してもそらした資料ばかり出してくる。  大臣、実はこういうことでございまして、大臣の認識にございましたか、元本を食いつぶしているということに関して。
  132. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 認識というより、説明は受けておりません。
  133. 上田清司

    上田(清)委員 今の御答弁、よくわからなかったのですが、認識しておらなかったということでよろしいのでしょうか。
  134. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 報告を受けておりませんでした。
  135. 上田清司

    上田(清)委員 これは本当に重大なことでありまして、何のためにこの年金福祉事業団が存在し、六十一年から何のために運用してきたかという根本の話につながってくることでございますし、新基金に今度は転換されていくわけですけれども、過去の部分を明確に清算もしなければ総括もしないままに、新しい運用基金がうまくいくわけがない。  しかも、大臣承知のとおり、これから審議会などで方針を決めてからやっていくという。何ら青写真を私どもの前に見せておられません。しかし、結果が元本を食いつぶしてきている。しかも、きのうきょうではありません。この4に示しているように、平成五年度からもう既に元本を食いつぶし始めたのです。  この実態がありながら、なぜ大臣に報告しなかったのか。もちろん時価ベースで切り抜けることができるというような判断をされたのでしょう、あるいは、資産そのものをふやすことで後でつじつま合わせができると。これは銀行によくありがちな、バブル以降の日本の金融資産運用のパターンでありますから同情はいたします。同情はいたしますが、しかし、本法案審議されているさなかに、現況をきちっと大臣に報告されていないというのは一体どういうことか。きちっと答弁してください。
  136. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 この資金運用事業といいますものは三月末で決算期を迎えるわけでございまして、三月末を過ぎまして、各受託機関からいろいろな情報を最終的に取り寄せ、チェックをして、実績報告書というような形で一般にも公表しておるわけでございます。こういう時期が、大体六月末にそういう作業を行っておるわけでございます。  そういうことで、そういう実績が出ますときには、必ず事前には大臣はもとよりいろいろな方に御説明しておりますし、もちろん記者会見などもして詳しい状況を御報告いたしております。  そういう中で、昨年度末でいいますと、累積で一兆八千億の簿価上の損失が生じておる。それからまた、時価ベースでも一兆二千億の累積の利差損が生じておる、こういったことは詳しく説明しておるわけでございまして、マスコミ等にもそれは詳しく報道されているところでございます。
  137. 上田清司

    上田(清)委員 あなたの務めは、確かにそれで終わっているのかもしれません。簿価ベースではこうです、時価ベースではこうです、累積損失はこうですと。しかし、一方では、時価でこうなって、実は昨年の十月ではマイナス四千億になっております、あるいは十二月にはプラスに転じていますとか、そういう話が飛び交うときに、それだけの説明で終わるわけがないじゃないですか。だれが元本までつぶしていると思っていたでしょうか、国民が。普通はふやしているはずだと。国民は、積み立てているわけですから、積み立てたらふえると思っているのですよ。元本まで食っているというじゃないですか。これをきちっと説明していないから、みんながわかっていないじゃないですか、国民も。あなたの家に石が飛んできますよ、こんなことやっていたら。本当に元本まで食いつぶしているということがあったら。森理事長だってそうですよ。大変なことであります。  しかも、あなた方は、この運用する六十一年の段階で、厚生省で、いろいろな審議会で、どうすればいいかということを議論しているのですよ、六十一年の十二月十二日に。最悪でも財投の〇・五%は利回りを出せと、努力目標を出しているのですよ。そういう金額で、少なくとも借りたお金に〇・五%ずつずっと掛けていけば、昭和六十一年度から平成十年度までのこの十三年間に九千五百二十九億ふえているはずなんですよ。資料の5にこのネットの数字を出しております。最小限度これはふやしておかなくちゃいけない数字だった。ところが、現実に一兆七千億減らしておられます。これは6のところに私が数字を書かせていただきました。  達成できなかった目標収益の累積額が九千五百二十九億、元本を食いつぶした額が一兆七千六百七十六億、合わせて二兆七千二百五億。これは、本来国民が得なければならなかった、得ていいはずの利益だったのです。これが年金に返されるはずだったのですよ。だから、支給年齢を上げなくちゃいけないようになっちゃった、あるいは給付を下げなくちゃいけないようになった。こういう議論の根本をつくったのはあなたたちじゃないですか。理事長、御感想を。
  138. 森仁美

    ○森参考人 ただいまの数字を挙げてのお尋ねでございます。その実態を大変重く受けとめておるところでございます。  今お話しの二兆七千二百五億、資料六ページにございます、これは、一つだけ言わせていただきますと、目標収益でございまして、残念ながらその目標を達成することができなかったということがございますが、しかし、この目標から見ればこういう数字になることは事実でございますから、総体として、結果を大変重く私は考えております。
  139. 上田清司

    上田(清)委員 こんなお金は大き過ぎて、返しなさいといってもなかなか返らないですね。簡単に返るものではないと思います。  そこで、大臣、政務次官、7には残念ながら直近の五カ年分の政府出資金と政府交付金しか出ておりません。それでも三千四百億から年金福祉事業団に出資、交付されております。こういうお金を使ってもあれだけの損失を出しているんですよ。十年さかのぼれば、十三年さかのぼれば、当然この倍ぐらいあると見てください。出したお金は、さかのぼればもっとあるんです、合計で一兆円以上。どっちにしても、大臣、えらいことに厚生省は、出資金や交付金をいただいて、そのネットで事業をして、そして運用でどんどんもうければいいような仕組みだけはつくってくれていたんですよ。だから、何にも心配することなく運用でもうけていただいて、国民に還元していただければよかったんだけれども、そうじゃなかった。  実は、私はこれは法律違反じゃないかと思っていますよ。8にこの運用をする根拠法が出ています。昭和六十二年に、年金財政基盤強化のための年金福祉事業団業務特例及び国庫納付金の納付に関する法律ということで、第一条の目的にはいろいろ書いてありますから、最後の二行だけ、「もつて厚生年金保険事業及び国民年金事業の財政基盤の強化に資することを目的とする。」この法律は運用する目的は基盤を強化するとあるが、基盤を強化していない、法律違反じゃないんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
  140. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 そういう目的で強化事業というものが行われたことは事実でございますが、御案内のように、先ほどから委員の御発言の中にもございましたけれども、いわゆるバブルが崩壊をいたしまして株が乱高下をした、こういう中でできたことでございまして、法律違反であるとか法律違反でないとか、そういうものに私はなじむものではない、こう考えています。
  141. 上田清司

    上田(清)委員 やや私が野党的にちょうちょうしたもので、率直に大臣答弁が正しいと思います。即法律違反になるとは私も思いません。おっしゃるとおりであります。  ただ、実は、9の「資金運用部長期資金借用証書」、昨年度のコピーを一枚だけ持ってまいりました。一回一回こうして大蔵大臣あてに森理事長が借用証書を発行して、日銀の金庫に預かっているんですよ。その写しなんですけれども、この一の「用途」というところに、ちゃんとどんなところで使うんだということが書いてあります。「年金財政基盤強化のための年金福祉事業団業務特例及び国庫納付金の納付に関する法律第二条」。つまり、第二条というのは、先ほど申し上げました目的を遂行しなさいというのが第二条ですけれども、この借用証書では、ずっと過去の過去の過去に法律を学んだ人間の一人として過去を思い出すと、これは少なくとも元本を食いつぶして支払いをしろと書いていない、運用益を上げてきちっと金を返せ、こういう判断だと私は理解をしたんですが、中川理財局長、これはどういう理解なんですか。
  142. 中川雅治

    中川政府参考人 年金福祉事業団の行う財源強化事業及び資金確保事業を合わせました市場運用事業に対しましては、毎年度、国会において議決されました年金福祉事業団の借入限度額の範囲内で資金運用部資金の貸し付けを行っているところでございます。  年金福祉事業団におきましては、貸し付けを受けた資金の全額を、今お示しの借用証書に書かれました用途、目的に従って市場運用に用いているところでございまして、また、約定どおり償還、利払いが行われているところでございますので、契約違反となるというふうには考えておりません。  なお、資金運用部への償還、利払いのためにどのような資金を充てているかにつきましては、これは年金福祉事業団の資金繰りの問題であると考えておりまして、資金の用途とは別の問題ではないかというふうに認識いたしております。
  143. 上田清司

    上田(清)委員 私は異議があります。「法律第二条の規定による事業に使用。」と書いてありますから、法律の第二条は第一条を受けておりますから、第一条は基盤強化、財政をふやす、これが目的でありまして、二条はそれを受けてきちっと管理していけという趣旨でありますから、むしろあなたの答弁は正確じゃない。確かに色はついていないけれども、運用益が出せることを前提にして返すことが望ましい、少なくともそういう答弁をしてもらわないと困るんですよ。  金に色がついていないからどこから出しても大丈夫だと、それではあなたたちはきちっと監視していないことになるんですよ。この下の方にもいろいろ書いてあるじゃないですか。「本資金について、大蔵省理財局から随時調査を受け、又は報告を徴されても異存ありません。」こういうことが書いてあるじゃないですか。だから、金に色がついていないから返ってくればいいんだというんじゃないんです、中身を知らなきゃだめなんですよ。もう一回答弁し直してください。
  144. 中川雅治

    中川政府参考人 今先生御指摘のとおり、本来この事業の趣旨というのは、運用益を上げて、その運用益によって利払いをしていただき、元本も返済をしていただくということでございますので、そういうふうになされることが本来の姿であるということは当然でございます。  ただ、ぎりぎり申し上げて、契約違反になるかどうかという点を申し上げたということで、お許しいただきたいと思います。
  145. 上田清司

    上田(清)委員 大臣、今お聞きになったとおりでありまして、極めて不健全な形で、この借用証書の約定が好ましい形では行われていない。この現況がずっと続いていたということであります、平成五年から。  大臣、私の記憶ではこの間に厚生大臣も何かなさっておられたような気がいたしますが、違ったでしょうか。私の記憶だと何かなさっていたような気がいたしますが、なさっていたとすれば、ぜひ積極的に是正する方向を出していただきたかったと思っておりますが、これまた事務局の報告の仕方云々ということになってくるかと思いますので、そこまでは強く申し上げません。  いずれにしても、年金福祉事業団の運用が極めて不成績、不良、なおかつ、理財局との借用証書の返還の仕方についても非常に、不透明というような表現ではない、望ましくない形で行われている、これも事実であります。おのずから約定に従った返し方がなされるべきだと思います。  そこで、本当にこれをもう少し是正できなかったのか、元本を食いつぶさずにやることはできなかったんだろうか、もっとうまい運用はできなかったのかということを私もずっと考えておりまして、実は、三枚組みの発言集でありますが、三ページの「運用機関の評価」であります。正しい運用先を見つけて正しく運用すれば、利益を出し切れなくても、まだしも元本を食いつぶすようなことはなかったんじゃないか、私はそんな思いがずっとありましたので、一生懸命調べました。  そこで、幾つかお尋ねもしました。ちゃんとやっておりますという答弁が出ております。「三年から五年の実績を見まして、下位のところは入れ替えています。」とか、「運用機関に運用をお任せし、その成果をかなりの頻度でチェックをいたしておりました。」とか。しかし一方では、矢野年金局長は、三段目の真ん中あたりなのですが、「年金運用の世界というのは日本はまだまだ非常にレベルが低いといいますか、」なんて言って、うっかり口を滑らせちゃったのですが、日本の運用が非常に低い。  そこで、どんな運用をやってきたかということについて、ちょっと飛びますが、14を見ていただきたいと思います。  それで、運用手数料の推移が昭和六十一年から平成十年まで出ております。これを見ると、上位に、三井、三菱、住友、第一勧業富士、東洋、中央、日本と、これは信託銀行であります。そして、外資系も六十二年のドイチェから始まって、徐々に外資系の企業も参入してきております。同じように生命保険の方も出ております。  当然、運用手数料をたくさんいただいているところに運用をたくさんお任せしているというのは、大臣わかりますね。私、予算委員会の後、大臣はわざわざ私の席に来てこれは本当かと言って、本当ですよ、調べておいてくださいと言いましたから、やっていらっしゃると思いますけれども。  実は、この運用先がどういう成績かということに関しては12と13に出ております。12を見てください。これは年金財源強化事業の部分でありますが、これがどういうところが上位にあったか、あれこれ見るのも大変ですから、信託銀行だけ見てください。これは大蔵委員会の調査室にお願いをいたしまして資料をつくっていただきましたので、私がつくっておりませんので安心できると思います。  信託銀行の上位、六十一年から平成二年で切っております、先ほども言いましたように三年から五年で見直しているということですから、平成三年から十年、六十一年から平成十年の通期の部分を出しております。これを見てわかりますように、非常に外資系の方が調子がいい、運用益、収益率を上げている。にもかかわらず、入れかえているかというと、入れかえていない。答弁がうそじゃないか、これが私の一つの議論であります。  同じように、資金確保事業も同じような傾向がございます。それを極めてわかりやすくしたのが11であります。若干込み入って複雑かもしれませんが、一応二つを一遍に見ることができます。  これは、あえて十三年間を三つに分けました。六十一年から平成二年まで、平成二年から平成六年、平成七年から平成十年、あと通期。そして、左側の一番大きな数字でありますが、これが委託手数料の金額であります。単位が百万円ですから、決して小さくありません。例えば平成七年から平成十年の住友の金額は三十六億とかという運用手数料になっております。そういう金額を年福が払っているわけです。そして、たくさん払っているところはたくさん収益を上げれば極めていいのですけれども、これは十分上げていないじゃないですか。  私は前にも申し上げました。そこで、いや、ちゃんとやっております、入れかえたりもしています、これは定量ばかりじゃなくて定性でも判断していますと、わけのわからない答弁をされておりますけれども、しかし、運用機関は、どんな言い分をつけようと物の判断は収益がやはり九〇%です。収益を上げないところをいたずらにやっていれば損するだけですから。事実、損してきたのですから。なぜこんなふうに変えなかったのか。
  146. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先ほど、おまえは大臣をやっていて何をしていたのか、こういうようなおしかりを受けたわけでございます。  今、正確に報告させていただきますが、確かに元本割れが始まりましたのは、委員指摘のように平成五年度からでございますので、若干私もあれなのでございますが、おたくの政調会長さんでいらっしゃいます菅さんのときが一番、平成七年度から八年度で、エイズで大変敏腕を発揮した菅大臣のときが。私の責任の場合、割と少ないのですよ、はっきり言うと。平成四年度で締めておりますから、五年度はないのですが。こういうことは別の話でありますが。  問題は、同じ認識だと思いますが、私ども政治家がもっとリーダーシップをとって、こういう問題について、委員の御指摘のようなことについて、真摯にやらなくちゃいけないということは深く反省をいたしておるところでございます。  それで、先ほどからお話がございました年金福祉事業団での資金配分が不透明ではないか、こういうことだと思いますけれども、これは御案内のように、事業開始当初から、この事業団の場合には運用機関の評価に当たりまして定性評価と定量評価というのがあって、委員の前でこういうことを申し上げるのは大変失礼だと思いますが、例えば人材であるとか運用体制であるとか運用方針であるとか、これは定性方針でありますし、それから、全く定量だけであるということでございますけれども、果たして定量評価のみが長期運用体制のために適当なのかどうか。たまたまうまかったということもよくあるわけでありますし、それからもう一つは、運用対象となる資産も、例えば株値中心なのかあるいは信託が中心なのか、こういう異なるものを比較するということはできない。  それから、何よりも三年以上の期間で時価で評価する、こういう考え方に立っておるわけでございますが、委員の御指摘のこともわかりますし、会社によっては、銀行なんかはどんどん、給料なんというのは成績次第だということもわかりますが、果たしてそういうことがこのような特殊法人である年金福祉事業団になじむかどうかということも冷静に判断をしなければならない。しかし、だからといって、何か成績の結果もないということもまかりならぬということでございまして、これは大変重要なことである。  そして、私どもは、これから国民の皆さん方、特に年金加入者の皆さん方の御理解をいただくためには、より事業運営の透明性というものを確保しなければならない。そういう中で、より改善をして、まさに基盤強化といいますか資産を運用させていただくわけでございますから、御指摘のような御心配がないように努力していくことが私どものとるべき道だ、このように考えております。
  147. 上田清司

    上田(清)委員 大臣の言わんとしていることもよくわかるのですが、一番最後のページ、18にお得意の定量評価、定性評価——何が何だかわからないですね、普通の方が聞いていると。  私もお尋ねしたのですよ、運用機関選定の考え方は文書であるかと。きちっとそういうのがあって仕組みをつくっているのだろうねと言ったら、ありませんと最初言われました。ありませんで済むのか、メモぐらいあるだろうと言ったら、文書上の規定ではないがと言って、これを持ってこられたのですよ。だから、あえてこの資料に書いてあります、「文書上の規定ではない」と。この程度の話なんですよ。  大臣はそう言ってかばっていますけれども、だから、先ほど12で申し上げましたように入れかえを余りやっていない。いろいろな言いわけができるでしょう。ひざを突き合わせて何回でもやってもいいですからね。私はずっといろいろな精査をやったのですから、この年度の入れかえを。必ずしも十分入れかえをやっていません。これは、もしやったと言うのだったら大変な失言になりますから、あえて聞きません。今度は聞いたら大変なことになる、本当にもう首だから。  そこでまた問題になってくるのが、私は一つの癒着だというふうに考えざるを得ない、それが資料の15です。  大臣も御承知のとおり、年福で運用をしないで、なぜか、年金保養基地、グリーンピアの保養協会、あちらの中に年金資金運用研究センターというわけのわからない内部組織をつくって、わざわざそこに大手の金融機関からただで出向で研究員を呼んで、その研究員に判断をさせているんですよ。  その母体行はこうだ。住専じゃありませんけれども、母体会社が右の企業なんですよ。三菱信託なんというのは、運用がずっと悪いのに、ずっと一位か二位です。でき過ぎているんじゃないですか、話が。  もっときついことを言いますと、その次のページの「賛助会員」。何だ、これは。八十三社も賛助会員をとっている。大まかなお話で恐縮ですけれども、けさ聞いた話ですけれども、賛助会員の会社のベストテンを言ってみろと言ったら、ベストテンはないけれども、おおむね二十から三十の会社が毎年百万円、その他のところが五十社か六十社が毎年五十万円の賛助会費を払っていると。何のために払っているんだ。大臣、何のためにこれは払っているんでしょうか。
  148. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 こういう年金の運用問題というのは、先ほど私の失言だという御紹介がございましたけれども、端的に、正直に申し上げましてレベルが低かったわけでございます。近年は、それは非常に改善されてまいりました。  ただ、こういった問題、我が国は非常におくれておりましたので、こういった調査研究を充実しなきゃいけないということで、その場合には民間の専門性を活用するしかない、こういうことで平成五年にこのセンターを設立したわけでございます。  これまで、中長期的な投資環境の予測ですとか、国際分散投資に関する調査研究、あるいは内外の運用情報の収集分析、こういったことを行ってきたわけでございます。その際、こういった事業に賛同する金融機関ですとか、あるいはシンクタンクといったところから御援助をいただいた。そして、そういった中から、センターへも人材育成という形で人を送っていただいておる、こういうことでございます。  この点につきましては確かに手弁当ということで、これは総務庁の方からも指摘を受けまして、平成十年からはちゃんと賃金をお支払いする、こういうふうにしたわけでございます。  ただ、今こういったことで賛助会費を払っている、そういった大口だからそこに資金運用を任せておる、これは癒着じゃないかという御指摘でございますけれども、全くそういうことはございません。資金の配分は、先ほど大臣も申し上げましたように、調査をやり、そういう中から厳正な審査をして決めているわけでございますし、現に、センターに人を送っているような信託銀行なんかからも資金を回収しております。  だから、センターの問題、これはいろいろな問題がありますから改革するのは当然でございますけれども、その問題と資金配分の問題は全く別問題でございまして、これをくっつけて、何かよからぬことをやっているんじゃないか、こういうことは絶対ございませんので、そこはぜひ御理解いただきたいと思います。
  149. 上田清司

    上田(清)委員 一つだけまだ答えていないんですけれども大臣平成五年に専門家を集めて年金資金運用研究センターをつくった、そのときから食いつぶし始めたんですよ、皮肉なことに。皮肉なことに、わざわざ専門家を呼んで、保養協会の中に年金資金運用研究センターをつくったときから年金の元本を食いつぶし始めたんですよ。笑っちゃいますよ、本当に。  そして、賛助会費を集めているが、何のために集めなくちゃいけないんだ。そんなことをしなくてもいいように、政府出資金が入り、交付金が出ているわけですよ。これは癒着というんですよ、普通は。それを癒着と考えないところに問題があるんですよ。この鈍さ。大臣、どうですか。
  150. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 このセンターを始めたときから成績が悪くなったというあれでありますが、私もいきなり言われてもよくわからないので、恐らく経済情勢によってそうなったのではないかという見方でありますけれども……(上田(清)委員平成五年と六年はよかったんですよ」と呼ぶ)よかったんですか。そうですか。  それで、私が単刀直入にお答え申し上げますが、運営につきましては、要するに一口五十万円で、委員が御指摘のように一口か二口かということでございまして、常勤の研究員が七名、事務員が三名、こういうふうにおりまして、そして、何のための専門家かということでございますが、こういうような運営費に使わせていただいたというふうに聞いております。  問題は、そんな成績の悪いような、これは私そのときの状況がまだよくわかりませんけれども、雇って意味がないじゃないかということはございますけれども、では、これは専門家の話を聞かないでどうか、こういうことも率直に言って感じます。  こういう体制でありまして、今回は、現行の年金資金運用研究センターにつきましては、年金福祉事業団の廃止とあわせまして、自主運用の開始時期、つまり、平成十三年の四月までを目途にいたしておりますけれども、廃止をいたします。  ただ、国民の大事な保険料を安全確実に運用するためには、優秀なスタッフをそろえないとまた怒られますし、大変なことになりますが、十分な体制が必要でありますし、新たな年金運用に関する総合的な調査研究体制のあり方を検討してまいりたい、こう考えているような次第でございます。  それから、具体的な調査研究体制のあり方については今後の検討課題でございますけれども、先ほどから委員が御指摘になっていらっしゃいます、まさに官民の癒着というような御懸念というか、そういうような御指摘を受けないように、あくまでも透明性の確保というきちんとした視点に立ちまして十分な運営を行っていきたい、このように考えているような次第でございます。
  151. 上田清司

    上田(清)委員 翻って、矢野局長、賛助会費を取っていたことが、わざわざ集めたことがよかったのか悪かったのか。世間の常識では悪いんですよ、あなたはいいと思っているかもしれないけれども。本当にそう思っているか。
  152. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 このセンターでいろいろな研究をやっていただきました。特に、その研究をもとに基本ポートフォリオを設定した、そういうものをもとに年金福祉事業団の運用は昔と比べますと相当進歩したわけでございまして、いろいろな成果があったと思っております。  ただ、今、上田委員からこの場でもさんざんおしかりを受けましたけれども、李下に冠を正さずと昔から言いますけれども、そういう誤解を受ける、あるいはそういう目で見られるというのは大変まずいことでございまして、これは改めなきゃいかぬ、こう思っておるわけでございます。
  153. 上田清司

    上田(清)委員 最初から言いわけしないで、まずいことをしていましたと言うのが筋なんですよ。それをぐちゅぐちゅ言うんだから。  もうさんざんあなたたちは運用に失敗し、悪いことばかりしてきた。そして、給与はどうだといったら、元本を食いつぶし始めた平成五年も含めて一度も下げたことはない、上げるだけ。17は「年金福祉事業団役員の給与額等」と書いてありまして、理事長と理事と監事の年額。監事は非常勤です。これも、何か知らないけれども、聞いたような数字の二千六百万。余りにも不見識だ、無責任だと私は思います。国民からお預かりした元本を食いつぶしておきながら、そして、政府出資金あるいは交付金をずっともらっておきながら、あなたたちの給与だけは上がっていく。こんなのは許されないですよ、普通の社会では。それがしゃあしゃあと続けられる。  新基金がつくられて同じような仕組みになったら大変ですから、私はあえてここは、こんなことは許されないので、良識ある人だったら返還をされるのではないか、あるいは退職金も辞退されるのではないかというふうに思いますが、森理事長、いかがですか。
  154. 森仁美

    ○森参考人 事業自体が大変苦しい状況にありまして、先ほど申し上げましたように、この資金運用事業だけではなくて、他の二事業についても大変大きな問題を今抱えているわけでございます。全体はこれまでの仕組みを改めて、わかりやすく言うと、撤退をしていくという業務は大変難しいものでございます。そういう中で、私も含めて他の役員の俸給、給与というのが一体どうあるべきなのかというのは、一つの問題だとは存じます。  この給与につきましては、御承知のとおり、厚生大臣の御認可を得まして決められていくものでございまして、今、特殊法人全体の流れの中で一定額が定められ、ルールが定められているものでございます。それを今御提案のように、成績がよければ上げる、悪ければ下げるというような仕組みに変えられるものかどうか、これは一つ大きな問題ではなかろうかと思っております。
  155. 上田清司

    上田(清)委員 大臣、閣僚の皆さんは、目下、景気とかいろいろ国民の感情とか考えて、一〇%の給与のカットをなされておられますよね。国会議員も簡単にできるのかと思ったら、意外にできないもので、私個人に関して言えば立ちあぐんでおります。今理事長の誠意ある、誠実そうにお答えしておられますし、私も余り責め上げるのは好きじゃないのですが……。  しかし、この年金改正法案をめぐるいろいろな議論の中で、あるいはまたこの年福の運用を今後どうするかということに関して、新しい基金につながる過程の中で、どれほど問題があるかということについて実は十分議論ができなかった、あるいはまだし切っていない、私はこんなふうに思っております。しかも、大変な反対がある。なぜ支給年齢が上がり、そして負担がふえるのか、ほかに方法がないのか、そんなに知恵がないのかということも、やはりこの運用をもっと十分上手にできていればという、仮定の話です、今言っても。  しかし、このことが十分総括されないままに進んでいったじゃないかということを政府がきちんと反省して、大臣の言葉で、極めていいかげんな、ずさんな運営が行われたということを総括されないと。これは野党の立場だけじゃないと思いますよ、国民を代表して与党の皆さんも出ておられるのですから。このことが広く多くの国民に知られたら、これがもっと早く知られていたら、本当にこの年金法がこのようにスムーズに進むかどうかわからなかったですよ、私はそのくらいに思っております。  そこで、時間になりました、大臣、総括をきちんとして新基金に移行されるということを明言していただきたいと思います。
  156. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 まず、森理事長におかれましては、以前の話の、いわば再建役として大変優秀な、私も最も信頼をしておるまじめな方でございますので、お引き受けいただいてこういう問題に懸命に取り組んでおるというふうに……(上田(清)委員「新基金で」と呼ぶ)いえ、そうじゃなくて、今の年福事業団で取り組んでいるというふうに私は認識をいたしております。  そういう問題はさておきまして、さまざまな経緯がございまして、これまでの年金積立金の自主運用というのは、申し上げるまでもなく資金運用部の預託から年金資金運用基金によって自主運用になるわけでございます。そういう中で、自主運用に当たりましては、厚生大臣が加入者や金融機関の専門家の意見を聞きながら、運用の目標や資産の構成割合など、運用の最も重要な内容を基本方針として定めることになっておるわけでございますし、また、この年金資金運用基金におきましては、この指針をいかに効率的に実施するか、こういうことが求められているわけでございます。  特に、先ほどから御指摘になっていらっしゃいます、どの運用機関をどう選び、そして評価し、どうやって配分額を決めていくかなど、こういうプロセスというものを情報公開をきちんとしていかなければならない、こう考えておるわけでございますし、厚生省の運用関係の職員であるとか、あるいは新しくできる年金資金運用基金の役職員に対しましては、年金資金運用に関する忠実義務であるとか注意義務というものが課せられまして、違反者に対しましては厳正な懲戒処分を行うことにいたしております。  いずれにいたしましても、やはり一番大切なことは、私が申し上げるまでもなく分散投資だと思います。それで、国民の皆さん方が心配なさることは、何か株にたくさん、要するに乱高下の激しい株を買うのではないかということでございますが、私どもの勉強会の段階でございますが、自主運用に当たりましては、国債などの債権を七、八割、それを中心にしながら、国内株式を一割程度、国外株式を一割程度、こういうふうに組み合わせて、あくまでも分散投資を行うことによって長期的により安全で有利な運用が可能になる。こういうことを十分に配慮しながら、先ほどから委員が御懸念になっておりますようなことを払拭するような新しい形でスタートをさせたい、このような決意でございます。
  157. 上田清司

    上田(清)委員 大臣の御誠意ある御答弁は多といたしますが、丁寧にいろいろなこれからの仕切りを述べられるのは多といたしますが、一番わかりやすいのは、年福の理事長と矢野年金局長に辞表を求めることだということを申し上げて、終わります。
  158. 江口一雄

  159. 山本孝史

    山本(孝)委員 今の上田議員の質問、そして大臣の御答弁を聞いておりまして、年金福祉事業団の廃止、そして自主運用という件について、これまで成績が非常に悪かったねという話の中で、常に、いや、借り入れの利息との逆ざやがあったのでこれは制度的に仕方がなかったのだ、こういう御答弁で何とか繕おうとしてこられたと思うのですね。  ただ、きょう聞いておりまして、いみじくも大臣、これは事業からの撤退であるというふうにおっしゃったり、あるいは森理事長が再建役として頑張っていただいているのだ、こういう言葉を使われますと、今までの説明がいかにも周りをだましていると言うと語弊がありますが、明らかに説明が足りない。  我々も瞬間風速で十二月末の黒字、赤字の話をされても、私も別に資料を求めなかったのにもかかわらず、この辺の議員はみんなそうだと思いますけれども、先生、喜んでください、黒になりましたと、各部屋を回ってこられたのだから。そんなものを持ってきてもだめだよ、瞬間風速の話じゃないのだよと私も申し上げたとおりで、そういう意味でいけば、やはり明らかに説明不足、しかも、ごまかしにつながっている。  きょうおっしゃったように、撤退という言葉を聞いた途端に、私はもうこの審議は一体何だったんだと。やはり、きっちりとした審議をするためにはきっちりとした答弁をしていただかないと、時間を幾らかけても内容は深まらない、そういう思いがしてなりません。  大臣に率直にお伺いをします。  今、国民の間に、年金制度に対する不信が大変強いわけですね。きょうは具体的な細かな数字の話とかではなくて、この年金制度というものに対しての、この国会審議を通じて一体この先どうなっていくのかという国民の不安について、しっかりと我々はこたえるべきだと思いますので、お聞きをしたいと思います。  まず、大臣、国民は年金制度になぜ不信感を持っているとお考えか、何が原因で国民は不信だと言っているのか、大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。
  160. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 御案内のように、年金制度というのは賦課方式をとっておるわけでございます。それで、私どもの想像以上の少子高齢化が進んでいるという中で、一つは、若年世代の間に年金制度が維持できないのではないかというような、今委員が御懸念のような御心配が一部にあるのではないか。それから、やはり何といっても経済が非常に低迷をいたしておるわけでございますので、この点も大変大きな問題点の一つではないかと思っております。  しかし、現実問題として、今お年寄りの皆さん方が、六割は年金であるとかあるいは自分のためてきた資産に依存して生活をしておるわけでございますし、国民の老後を支える年金制度につきましては、将来にわたって安心して信頼のできるものにしていかなければならない。  そこで、一番大きな問題は、要するに今回の改正案は、今私が申し上げましたように、将来世代の過重な負担を防ぐという見地から制度全般にわたりまして見直しを行いまして、将来最も負担が重くなる時点におきましても年収の二割程度に抑えることにする、一方、給付におきましては、やはり確実な給付ということをお約束するという考え方に立ちまして、改正した後も現役の勤労者の皆さん方の世代の手取り年収のおおむね六割を確保する、こういうことをねらいといたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、このところをしっかりと将来のビジョンを明らかにしないと、国民の皆さん方のますますの不安というものが高まってくる、こういうふうに考えておるわけでございますので、私どもは、現役世代の方々の年金に対する不安を解消して、将来とも老後を安心して暮らせるような年金制度の構築を目指しているわけでございます。
  161. 山本孝史

    山本(孝)委員 今おっしゃいました、将来に向かっての年金の将来像をぴしっと見せるんだと。  私、この委員会質問でもお聞きしましたが、もう一遍同じ質問をします。今回の改正で、これは最後の改正ですか。次の改正でまた給付を抑制する、保険料を上げるという改正をしないんですね。最後の改正ですね。
  162. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 何をもって最後かということが難しいのですが、財政再計算というのは五年ごとにやる。それはどういうことかと申しますと、委員も十分に御承知のことをあえて申し上げているのではないかと思いますが、これは要するに少子高齢化社会というものがどうなっていくのかというような人口構成のあり方であるとか、それから経済の状況によってこれは若干の、当然のことながらどういうふうに見直すかどうかということを現時点で申し上げることはありませんけれども、しかし私は、基本的にこの骨格で将来とも国民の皆さん方にきちんとお約束できる、こう確信をいたしているような次第であります。
  163. 山本孝史

    山本(孝)委員 前段におっしゃっている部分と後段におっしゃっている部分、私にはちょっと理解できないので、もう一遍聞きます。  五年に一遍の財政再計算をするからまた五年たったら変えていいよということをおっしゃっているのではなくて、一番最初におっしゃったように、今回の改正で将来に向かってぴしっとしたものをつくったんだとおっしゃるから、では、次期財政再計算、これは別に五年先でなくてもいいんですよ、五年の間にやればいいことですから、次期再計算のときにまた保険料を予定している以上に上げるんだ、あるいは予定している以上に給付を下げるんだということにならないんですね。そういう意味で今回が最後の改正ですね。
  164. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 この法案の附則の中で、安定した財源という前提がつきますけれども、二〇〇四年までに国庫負担の二分の一ということを明記いたしておるわけでございます。それで、この国庫負担は二・二兆円現実にかかるわけでございますけれども、この国庫負担の増加に伴いまして、当然のことながら一般的には保険料は減っていくだろう。  そういうことも含めまして、基本的には、できるだけ早く国庫負担の二分の一というものを実現して、そしてさらに安定的なものを目指していかなければならない、こう考えているような次第でございますし、当然のことながら、この国庫負担が二分の一に入る時点においては財政再計算を行うことになるのではないかな、こういうのがごく常識的な見方ではないかと思います。
  165. 山本孝史

    山本(孝)委員 いや、年金にお詳しい大臣、そんなあほなこと言っているというものじゃないですよ。当然、基礎年金の国庫負担率が上がれば、それに伴って保険料は下がるのは当たり前の話です。  私が言っているのは、それは入れようが入れまいが、今の最終保険料率と言っておられる部分がもうこれ以上は変わらないんですねと。上げるということにはならないんですね、これ以上に今の給付水準を下げるということにはならないんですね、そういうことを含んだ改正なんですかと。あるいは、将来また皆さんに保険料を今言っている以上に御負担いただかなければいけないこともあるよ、あるいは給付を抑制しなきゃいけないこともあるよということにならないんですねという質問です。
  166. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これは、当然のことながら、先ほど申し上げましたように経済成長にもよるわけでございます。経済成長は将来について二・五%ということを前提にいたしておるわけでございますので、そういうことによって、私がこの場において、いや、これですべてだ、もうこれで変えませんよということを申し上げることはありません。  ただ、要するに、骨格として今申し上げたようなことの中において、国民の皆さん方に安心して、私どもも安定した財源を確保した上で二分の一にするし、今申し上げたような二割の負担、そして現役の勤労者の六割の給付ということを、あくまでも基本的な大きな骨格としてお示しをしている、こういうことでございます。
  167. 山本孝史

    山本(孝)委員 人口構成とか経済成長とかという所与の条件はありますけれども、しかし、だからまた変わるんだと。  一番最初に聞いた質問は、結局これまで年金改正をやるたびに年金は逃げていくと。これだけのものを保障しますといって、一遍もそれは実現したことがないんですよ。常に年金は逃げ水になっている。若い人たちも、今二割の給付減になる。確かに保険料負担が減るかもしれないけれども、六千百万もらえると言ったものが四千九百万しかもらえない。一千二百万も減るということは物すごい減り方ですよ。  それほどの大きな減額を要求しておいて、なおかつ、これから先人口構造は予定以上に少子化が進みましたと。経済成長もこれから先そんなには望めないでしょう。そういうことも含めながら当然考えてこれから先は大丈夫だということを言わないと、今度の改正は最後の改正ではない、またこれから先変わり得ることがあるというのでは……。それは国民の側の受けとめ方ですよ。これが最後の改正でないのであれば、自分たちは自分たちなりに予定しなきゃいけない。もっともっと年金なんか払いたくないという気持ちが強まりますよ。  だから、そこは余り逃げないでいただかないと困るのじゃないんですか。
  168. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先ほどから繰り返し申し上げておるわけでございますが、骨格は変わらない。  しかし、例えば、特に参議院の国民福祉委員会では、女性の年金権の問題が再三にわたって御質問されました。あるいは、この委員会におきましても、障害年金の問題も出されました。さまざまな問題があるわけでございますし、こういった問題が全体に与える影響も、賢明なる委員も十分に御理解はいただけると思います。  しかし、私どもが申し上げているのは、あくまでも現役世代にこれ以上御負担をいただかないようにどうしたらいいかということで、あえて国民の皆さん方に、現在、これから年金をいただこうという皆さん方に給付の面で抑制をお願いいたしておる、こういうことであります。
  169. 山本孝史

    山本(孝)委員 大臣、誠実じゃないよ。負担が上がって給付がよくなるということについては、だれも文句を言わないんですよ。よくなることについてはいいの。  今私が言っているのは、悪くなることがないのかという問題であって、それは実際には保障できないんだと言うのなら、保障できないでいいんですよ。だけれども、これほどの大きな改正で、給付を抑制して、しかも保険料は実は上がっていくわけですね。今、世界各国の中で保険料がこれからも上がっていくというのは、日本だけですよ。そういう状況の中で、なおかつ、国民の皆さんに安心してもらえる年金制度なんだと言えるかどうかという問題は、極めて大きい問題です。  参議院の審議が終わった後に、各紙の論調、いろいろありましたよね。この新聞論調を大臣はどう受けとめておられるのかと思うんですが、毎日新聞は「二年近く費やされた論議経過をみても、積み残された宿題の重さをみても、これで改革といえるのか、と改めて問いたい。」、朝日新聞は「国民が安心して将来の生活を送れるよう早め早めに手を打つのが、政治の責任である。目先の思惑にとらわれて、結論を先延ばしするのは任務の放棄ではないか。」、日経新聞は「目先の収支合わせでは解決できないほど公的年金のひずみは大きくなっている。」「今回の改正は多くの懸案を先送りした。老後の安心を支える年金制度の信頼回復にはほど遠いといえる。」。  どの新聞を見ても、今度の改正で最後の改正だとか、これで抜本的な改正になったとは書いていない。国民だれ一人として、今度の改正で安心できる年金制度になったとは思っていない。思っているのは、厚生大臣、あなただけですよ。あなたも思っていないのかもしれない。あなたも自分の老後の年金がどうなるのか——私はあなたが国民年金厚生年金か知らないけれども、私は厚生年金国民年金あわせですけれども、自分の老後はほとんど年金は当てにできないと私は思います、自分の年から下がっていくし。  そういう意味で、あなた自身は本当にこれで年金は安心できる改革になったと思っているんですか、答弁していて。僕がそこに座っていたら、思えませんと正直言わざるを得ないと思いますが、あなたはどうなんですか。
  170. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、五年ごとの財政再計算があるということ、それから、朝日新聞でありますか、財源のあり方についても率直に議論をしろ、こういうようなことであります。  それで、与党三党間で、「二〇〇五年を目途に、年金、介護、後期高齢者医療を包括した総合的な枠組みを構築する。」こういうようなことで合意をいただいておるわけでございますし、今、また、総理のもとにございます有識者懇におきまして、これまでややもすると、年金年金、あるいは医療医療、介護は介護と、縦割り的な議論がなされていた嫌いがなきにしもあらずだ、こういうような反省に立ちまして、総合的な議論、これまで三回やっておりますけれども、そういう中でこの年金問題も私は当然議論されると思っておりますが、現時点においては将来に向けて最善の年金法改正だと私は確信いたしております。
  171. 山本孝史

    山本(孝)委員 与党側に出席求めてね。記録に残してもらうけれども、ほんの二人しかいないんだから、自民党は。委員長を入れて三人だけれども。(「いや、四人」と呼ぶ者あり)あなたは与党だけれども、連立与党だから。連立与党のもう一つはいないじゃない。  最善のとおっしゃるのは、これは逃げの言葉なんだよね。これから先の経済成長が二・五%あるかないかわからないとおっしゃる部分もそうだけれども、国民の側は、二・五なんてと小首をかしげているわけですよ。実際問題、これから先どこまで日本の景気がよくなるのかというのは、なかなか難しい。少子化の度合いはもっと進むだろう。また、この先五年たたないうちにもっとひどくなるだろう。そう思っているから、今度の年金改正というのが全然評価されていないんです。  それは何でかというと、現行制度を前提に給付と負担のバランスの数字を合わせようとしたら、この話しかないんですよ。それが絶対に安心できる年金改正にはつながらないんです。常に私たちはそれを申し上げてきた。一番やらなければいけないのは、やはり基礎年金の改革なんだと。基礎年金がこれだけ空洞化しているということについて、ほったらかしにしておいていいのかという問題に結局決着がついていない。  そこで、さっきから三党の合意とかと持ち出されておるので、先にお断りをしておけば、三党の合意が決まってからとか、三党で話し合いをしてからそれに従いますと言うんじゃなくて、ここは、大臣あるいは政治家なりのリーダーシップが必要なんで、私は、丹羽大臣なり丹羽雄哉代議士なりの、政治家としての御答弁がいただきたいと思います。  私たちは、国民皆年金を本当に実現しようとしたら、それは税方式でしかあり得ないんだと。ところが、ずっと二分の一はおっしゃるけれども、全額税方式には賛成はされない。ということは、無年金者が出てもいい、それでも社会保険方式でいくんだというお考えなのか。あるいは、税方式というものに、もっと率直に検討して宗旨がえをしてみようというおつもりはないのか。これは、政治家としての大臣はどうなんですか。
  172. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 私も政治家であり、そして今こういう立場にあるわけでございますので、余り個人的なことばかり申し上げるのが適当かどうかわかりませんが、私は、かねがね、一政治家として、五年前の年金法改正のときから、率直に申し上げて党内では余り賛同者はいなかったんですが、またいろいろな御議論がありましたけれども、基礎年金を社会保険方式のぎりぎりである二分の一まで引き上げていくべきだと。  なぜ社会保険方式を維持するかということは、これは単に年金のみならず、医療におきましても、そして今度スタートします介護、これもある意味において保険料を取らないということについては大変な御批判を浴びたわけでございますが、半年間の税方式という見方はとれないですかね。そういうようなことでありますけれども、この辺のところは、介護については保険料を取れ取れ、こういうことでおしかりを受けましたが、私どもは、あくまでも助走期間として、いろいろな問題があるでしょうということで、話が脱線して恐縮でございますが、要するに半年間は保険料をもらわない、こういうことでありますが、その辺のところを含めてこの委員会において率直に議論をなし遂げて、要するに与党であるとか野党であるとかそういう問題じゃないんです、これは国民生活に身近な問題であり、そして、その場合にどこまで御負担をいただけるか、こういう観点から考えるべきだ。  そして、私が申し上げたいことは、やはり我が国の社会保障というのは、長年にわたりまして社会保険方式であります。社会保険方式と申し上げましても、例えばドイツの介護保険なんというのは、公費は一銭も出ておりません。ゼロです。日本の場合は公費が半分出ているということであります。日本の場合には、医療においても国保については半分出ている、いわゆる日本型の社会保険方式というのが国民の間に定着しつつあるわけでございます。  それから、負担と給付というものも、全部税方式でやれば、確かに無年金障害者は生じないことは明らかでございますけれども、そういう問題ではないんだ、みんなでお互いに支え合っていかなければならないんだ、こういう考え方でございます。  それから、何よりも財源の問題があります。財源の問題としては、例えば今問題となっております公共事業の再配分の問題、これも私は民主党さんの考え方に近いところがありますけれども、こういうような問題であるとか、あと、これもたびたび出ておるわけでございますが、若年者の負担を軽減するという立場から積立金というものをやっておるんですけれども、それも要らないんだという意見もあります。  いろいろな議論がある中において、私どもは、いずれにいたしましても、大切なことは、老後に対する不安を解消していくために、現実的に、全部税方式にした場合七・六%基礎年金だけでかかるんです、それを、今税方式にしますよということで果たして国民の皆さん方の御理解をいただけるかどうか、私は正直に申し上げて自信がありません。  例えば消費税のときでも、まず三%にするとき、これはマスコミのことをおっしゃいましたけれども、マスコミも、どこの新聞とは言いません、消費税を導入するときにめちゃめちゃ反対のキャンペーンをしていたところが、三%から五%に引き上げるときには方針を変えました。やはり消費税しかないじゃないかということで、今度は五%容認論を打ち出しました。  ですから、私は、新聞というのは社会の公器であって、大変重いものであるとも思いますけれども、すべてそれによってどうのこうのということではなくて、私どもは国民の声を十分に踏まえながら将来にわたって現実的な選択をしていくということが、まさに政治家の役割であり使命である、こう考えているような次第であります。
  173. 山本孝史

    山本(孝)委員 そういえば大臣新聞記者出身ですよね。違いますか。記者ではないか。  そこのお話は何遍も聞いているんですが、結局は、社会保険料として取っているものを消費税に置きかえる、我々は年金目的税と言っているんですが。大臣の御説明は、常に新たに消費税として上がっていくじゃないかと、こっちばかりおっしゃっている。こっち側でその分だけ社会保険料の負担は減るわけですから、実は、国民の総負担としては同じなんです。だれが負担をするかという数式が変わるだけで、そこは各党皆さんそれぞれ考え方があるから違いますけれども、全体の負担は同じなんですよ。  だけれども、どっちがより正しい方向に行くのか、より安定した制度に行くのかということを考えないと、常に消費税を上げるんだからだめなんだだめなんだという話をされると、そこは違う。  だから、そこも説明が足りない。私は、説明というよりは、この議論を通じて国民にいろいろな選択肢を提示しながら、どの方向が一番いいんだということを探していくのが一番の手であって、国民の合意を形成していくのがこの委員会審議ですからね。そのときに、消費税を上げることにつながるからだめだだめだ、社会保険負担だけでやっていくんだとおっしゃるから、それで本当に改正になって安定するのか、そういうことにはならないのではないかと。大臣の御答弁が議論を深める方向には行かないので、私は非常に残念だと思っているんです。  もう一つは、先ほどもおっしゃいました、五年前の約束で、基礎年金の国庫負担率二分の一への引き上げを決めましたよね。そのときに、大臣は少数派であったと。しかし、あのとき決めて、今回の改正で本来そうなっていなければいけないのが、残念ながらまた五年先送りになった。そうすると、あのときの附則と附帯決議で二分の一引き上げが決まったわけだけれども、あれはあの場を取り繕ういわば合意であって、実は、自民党の皆さんはそれほど真剣に二分の一に引き上げるという考えは党内にはなかったということですか。
  174. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 あのときは、法律じゃなくてたしか委員会の附帯決議……(山本(孝)委員「附則と附帯決議」と呼ぶ)実際、詳しく二分の一という数字が出ているのはたしか附帯決議でありまして……(山本(孝)委員「全党一致の附帯決議」と呼ぶ)全党一致の附帯決議でありまして、たしか附則には、私は非常に残念な思いをしたのを覚えておりますけれども、それは触れていなかったわけであります、私の記憶に間違いなければ。ですから、あくまでもこの附帯決議の中で二分の一というのが初めて上がってきた。今回は附則の中で上がってきた。  それから、今委員は、五年先までやらないということでありますが、私は、繰り返し繰り返し申し上げているように、早くしなくちゃならない、こういうことを申し上げている。  それから、一点だけお聞きしたいんですが、税方式というのも確かに一つの有力な御意見であることは十分承りますが、その場合、今我が国の社会保障というのは、実際事業主負担というのがありますね、委員はこの事業主負担はもう求めなくてよろしいとお考えになるのか、その辺のところをちょっとお聞かせいただきます。
  175. 山本孝史

    山本(孝)委員 先の質問に対しての答えがないのに、逆に質問されるのはいかがかと思いますが。  あれは合わせわざだったんですよ、附則と附帯決議で。自民党の皆さんは御承知のとおりじゃないですか。あのときにあれは全員が同意したじゃないですか。それで今回二分の一になるはずだったんだ。だけれども、さっきの大臣答弁では、自民党の皆さんはそんなことは思っていなかったんだと。自分は少数派で、自分はもともと上げようと思っていたのに、だれも賛成しないからだめだったとおっしゃったから、自民党の皆さんは、あの場を取り繕うための、法案を採決に持っていくための単なる手だてに使われたんですか、その後本当にやる気はなかったんですね、これが私の質問です。
  176. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 正確に申し上げさせていただきますならば……(山本(孝)委員「自民党の中の話ですよ」と呼ぶ)自民党の中は、当然のことながら附帯決議に二分の一ということで賛成をしておるわけでございますので、この委員会の場においては当然賛成をしておるわけでございます。
  177. 山本孝史

    山本(孝)委員 さっき大臣が、自分は少数派で、みんなは賛成してくれなかったんだとおっしゃったから、自民党の皆さんは本当はやる気はなかったんだね、今もやる気はないんですねと私は申し上げているんです。  できるだけ早くとおっしゃるから、いつですかということと、その財源には何を充てるお考えなんですか。
  178. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 こういうことを申し上げることはちょっと僣越かもしれませんけれども、あの当時、それほどこの国庫負担の問題が大きな議論に出ていないということを……(山本(孝)委員「うそだ、大臣、それは違う」と呼ぶ)いやいや、実際問題出ていない。  今回の改正に当たりましても、私は今の立場でありませんでしたけれども、私はさまざまな場において、何よりも国民の皆さん方の不信感、あるいは年金の空洞化を防ぐためにも、国庫負担を二分の一にしなければならないという主張を繰り返し申し上げてきた。  こういう経緯であって、人様のことはともかくとして、自民党の中においても、現にもう大勢が当然のことながら二分の一にしなければならない、今現在においてこういう認識を持っているというふうに私は考えているような次第でございます。
  179. 山本孝史

    山本(孝)委員 時期と財源。
  180. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これが一番頭が痛い問題でありまして、例えば一つ考えられる方法としては、現在においては、財源の再配分を行うことによって二・二兆円を出すという考え方、それからもう一つは、例えば積立金から何か返ってくるとか、いろいろな税制上の控除であるとかこういうものを廃止するとか、それから、まさに御党の御主張であります、消費税を引き上げることによって賄っていくとか、さまざまな方法がありますけれども、私は、現実的には、どれか一方に偏るのではなくて、合わせわざということが適当じゃないんですけれども、これから十分に国会で御議論をいただかなければならないんですが、五年を待たずしてできるだけ早く、きちんとその安定した財源のめどをつけた上で二分の一に引き上げなければならない、こう考えています。
  181. 山本孝史

    山本(孝)委員 基礎年金二分の一引き上げの話だけでもそんなに逃げ口上になられて、三党合意で、医療福祉年金も、高齢者にかかわる部分の半分を公費で負担する、二〇〇四年までにそれを決めるというんでしょう。公費って何なんですか。そんなに腰が引けていて、議論にならないじゃないですか。  そもそも、この議論はずっと、我々だって立場は選挙の前で苦しいところがあったとしても、消費税の問題を真剣に考えないと、これほど国民が消費税に対して不信感を持っている中でどうするんだという議論はしないと、正直なところ社会保障ももちませんよ。それを、その責任者である大臣が、いやいや、あれもこれもと、そして、二〇〇四年どうなるかわかりませんと。いつまでですかと言ったら、わかりません。公費とは何ですか、財源は何ですかと言ったら、それも明言できません。それは、物すごく私は無責任だと思うわけです。     〔委員長退席、安倍(晋)委員長代理着席〕  それでもう一つ。あの当時、二分の一はそれほど真剣な議論でなかったとおっしゃいますけれども、私は当時なりたての議員でございまして、裏で何が起こっているのかつぶさに一年生には理解できない部分がありましたけれども、しかし、最後の最後まで問題になったのは、国庫負担の二分の一の引き上げ問題です。それをあの形で落ちつかせて、次の五年間の間にみんなで努力して二分の一にしようというのが各党の合意でした。ですから、それほど真剣に考えていなかったということは、平成五年の夏まで大臣厚生大臣であったはずです、年金改正案をずっとつくってこられた。そのお立場でそのようにおっしゃるのは、私は非常に不見識だと思います。  今、何とか基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げて、それで保険料の引き上げを抑えていこうという流れの中で、それほどの議論でなかった、自民党の中もそんなに真剣じゃなかったというのは、今、いみじくもそうおっしゃったから、これで五年先までやろうとおっしゃっている話は、これまた国民をだましているのだな、その場を繕っているだけの話ではないか、私はそう思わざるを得ません。  そういう意味では、またきょうの議論で、聞いておる方がおられるとすれば、政府の年金改正案というのはその場しのぎの改正案でしかない、そういう判断をされると思いますよ。政治のリーダーシップが必要だと私は思います。  個々の話でいえば、六十五歳支給への引き上げというのは、空白期間ができるという意味で、今働いておられる人あるいは将来受けるつもりでおる人たちは、この五年間は非常に心配が強い。確かに、一部の大手企業では六十五歳支給ということになったので定年延長の話が進んでいますけれども、それは必ずしも同じ条件でではなくて、大変条件が悪い中で再雇用するかという話です。中小ではそんな話には全くなりません。もっともっと条件は悪いと思います。  それから、そのときにやはり議論になりますのは減額率の問題だと思います。衆議院段階で三五%の減額率とおっしゃいました。参議院に行ってその減額率がさらに少なくなったように思いますけれども、これは数字の問題ですから局長にお伺いしますが、純粋に年金数理上で計算をすれば、減額率は何%と言えますか。
  182. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 お答え申し上げます。  これは、参議院で今井委員の方からの資料要求がございました。それで、私ども四つのケースで資料をお出しいたしました。  それは、現行の場合で利率を三・五、四・〇、五・〇、五・五というぐあいに変えた場合、利率が高いほど減額率は高くなる傾向になるわけでございます。  もう一つは死亡率の改善を盛り込んだ場合ということでございまして、これは六十歳支給の場合、例えば五・五%の予定利率を使いますと減額率は三五%、四・〇ということになりますと三一%、こういう数字でございます。  三つ目はスライドを加味した場合ということで、六十五歳までは可処分所得スライドということで二・五%、六十五歳以降は物価上昇のみということで一・五%、こういった場合ですと、支給開始年齢六十歳で、予定利率が五・五ですと三〇%、四・〇ですと二七%ということでございます。  さらに、今回改正では賃金スライドは凍結という御提案をしていますけれども、これではなくて、六十五歳以降も可処分所得スライドとした場合は、予定利率が五・五ですと二八%、予定利率が四・〇ですと二五%、こういうことでございます。  ただ、これは年金数理的に一定前提を置いて計算したらという数字でございまして、実は、減額率の設定についてはいろいろな要素があるわけでございますので、これは総合的に考えるべき問題だと思っております。
  183. 山本孝史

    山本(孝)委員 三五というのは、今の説明を聞いても、非常に厳しい罰則的な三五%になっていて、本来はそうでなかったはずだ。だから、この委員会でも三〇%というような話も出てきているのだと思いますが、今大臣の頭の中では、このパーセントはどの程度のところにあるのでしょうか。
  184. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 繰り上げ減額率の問題でございます。さきの国会の厚生委員会におきまして、老齢厚生年金の一階部分の支給開始年齢の引き上げにあわせて、新規裁定者の方につきましては二〇〇一年度から見直す方向で早急に検討するということを申し上げました。  その際に、昭和三十六年当時から用いた生命表以降の平均余命の伸びを、たしか先生からちょっとおかしいということも言われて、たしか私は申し上げたのですが、この伸びを考慮すれば、繰り上げ減額率は、現在四二%のところがあらあら三五%前後になるというふうに、これは坂口委員だと思いますが、お答えしたところでありますが、審議における御議論の経過を重く受けとめまして、また、繰り上げ減額を選択した方とそうでない方との公平、さらにスライド率であるとか死亡率、こういうことなども総合的に勘案した上で、さらに引き上げる方向で検討してみたいと思っております。
  185. 山本孝史

    山本(孝)委員 衆議院で御答弁いただいた三五をさらに引き上げていこうということですけれども、何%ぐらいという見込みですか。
  186. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 大変失礼しました。引き上げると言ったのは、引き下げる方向でございます。恐縮でございます、間違えました。訂正させていただきます。
  187. 山本孝史

    山本(孝)委員 いや、何%というふうに……。
  188. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 まだ決まっておりません。
  189. 山本孝史

    山本(孝)委員 参議院の議論を聞いていますと、三〇%もあり得ると受けとめられる御答弁をされておられますけれども、そういうことですか。
  190. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、この法案を一刻も早く成立させていただきまして、これは政令部分でございますが、委員会の御意向というものを十分に踏まえながら決めさせていただきたい、このように考えているような次第であります。
  191. 山本孝史

    山本(孝)委員 そんなことおかしいよ。法律が通ったらこうするということを、委員会審議をするときの条件として出すのが当たり前の話じゃないですか。皆さんに決めていただいて、法律が成立してから私たちがゆっくり考えますでは、私たち賛成するか反対するか決められないじゃないですか。何を言っているんですか。もう一遍答弁してください。
  192. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 同じ考え方でございます。
  193. 山本孝史

    山本(孝)委員 それは国民に対して非常に不誠実ですよ。どの法案だってそうですよ。法案で出てくるもので、これは政令にゆだねる、省令にゆだねると書いてあって、それはどう書くのですかということを審議するのが委員会審議じゃないですか。あなた、委員会審議を軽く見ているのじゃないですか。そんな答弁では私は満足できないよ。
  194. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 御質問趣旨を十分に踏まえまして、できるだけ早く精査をして明らかにさせていただきたいと思います。
  195. 山本孝史

    山本(孝)委員 これまで議論があったじゃないですか。年金改革のためにあなたたちは議論を何年やっているんですか。年金局長はサボっているんじゃないか。これは変えなくていいという話をしていて、委員会で言われて四二じゃなくて三五だという話になって、坂口さんが質問されて三五とここで言って、参議院に行って、さらにそれは三〇近くまでもあり得るという話をして、ここへ戻ってきて、野党の民主党質問だから答えられません、山本質問なんかに答えられるかというのは、それはおかしいよ。委員会を軽視している。そんな、私はもう質問をこれ以上続けませんよ。
  196. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 敬愛する山本委員の御質問を軽視しているわけでは全くありません。さまざまな委員からこの問題については御指摘を受けました。それを重く受けまして、十分に精査しなければならない問題だと考えております。
  197. 山本孝史

    山本(孝)委員 納得しません、そんな答弁では。答弁になっていない。参議院で数字を言っているのだから、そんなものは答弁にならない。答弁にならないよ、そんなものは。
  198. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 参議院におきましても、まだ検討中でございますので数字は申し上げておりません。
  199. 山本孝史

    山本(孝)委員 どうするんだと言うんだ。今まで何もしなかったのか。そんなものは答弁にならぬじゃないか。委員長、速記をとめてください。答弁になっていないよ、そんなもの。今まで何をやっていたんだよ。議論の間、何をやっていたんだ。ずっとこれは議論になっているじゃないか。
  200. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますが、この委員会におきまして、当初この問題を提起なさったのは、たしか委員だったと思います。(発言する者あり)失礼しました。児玉先生と両方で、野党の皆さん方から御提起いただきました。そういう中で、私は、あらあら三五%だということを申し上げました。  しかし、審議におきます御議論の経過を重く受けとめまして、また、先ほど申し上げましたように、繰り上げ減額を選択した方とそうでない方との公平というのをきちんと保たなければならない、それから、スライド率、死亡率なども総合的に勘案した上で、さらに引き下げる方向で検討させていただきたいということを参議院においても申し上げておるわけでございまして、参議院で数字を申し上げてこちらで数字を申し上げないということはありません。まだ検討中でございます。御理解いただきたいと思います。
  201. 山本孝史

    山本(孝)委員 さらにとおっしゃるから、さらにとはどこまでなんだと聞いている。
  202. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 さらにはさらにでございまして、引き下げる方向でさらに検討したい、こういうことでございます。
  203. 山本孝史

    山本(孝)委員 三五が三四・九になったらさらにか、そういう言い方はしませんけれども、しかし、誠実にここはちゃんと事務当局を督励して、聞かれることはわかっている話なんだし、我々がきのうお示ししたように、五つの問題点がありますよ、ここは明らかになっていませんよ、だからそれをちゃんと示してくださいと言ってあるわけで、いろいろと公平性を保つための考え方というのがあるというのはわかります。純粋に中立にならないということもあり得るのでしょう。しかし、そこは、こういう制度になるということでないと、六十から六十五まで全然年金はやらないよと言っておいて、その間の減額率も変えませんという話はないだろうと私は思いますので、早く考え方を出していただきたい。  繰り返しになりますけれども、そこをはっきりするのが委員会審議ですから、委員会法律を通していただいてからそこはゆっくり考えますというのは、そういう答弁をこれから繰り返すんだったら、私たちは全部ボイコットしますよ。そういう国会を軽視するような発言は慎んでいただきたい。厳にお願いします。わかりましたか。申しわけありませんけれども、よろしくお願いします。
  204. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 委員会審議を重く受けとめて、このようにさせていただいたような次第であります。
  205. 山本孝史

    山本(孝)委員 大先輩に向かって申しわけありませんけれども、我々も一生懸命やっているのです。そういう答弁は慎んでいただきたいと思います。  それから、何回も繰り返しますけれども、基礎年金の財源問題、今もはっきりおっしゃらない。時期はできるだけ早く、こういうふうに格好よくおっしゃっておられるけれども、今までの自民党の対応を見ていると、そんなのはいつまでたってもわからない。  私は思うのですけれども、今、国税収入は、ことしの予算で四十七兆円ありますね、二兎を追う者は一兎をも得ず云々の話が続いていますけれども、景気回復しても税収の増というのは恐らく二兆そこそこじゃないですか。だから、税収は実は余り上がらないんだと私は思っています。国税収入が四十七兆、社会保険料収入が五十四兆五千億ですよね。今国民が負担しているのは、税よりも社会保険の方がはるかに多いわけですね。所得税十五兆七千億に対して年金は三十兆円ですから。今一番国民が負担している大きい税目は、実は年金なんですね。所得減税で大変大きな減税をしましたけれども、本当は社会保険料減税をするという筋があったと私も思っています。  そういう意味で、財源として、はっきり大臣はおっしゃらないんだけれども、さっきも申し上げましたけれども保険料がこれから先もずっと上がっていくという国は日本しかないのです。基礎年金の国庫負担率を上げていけば、その分だけ名目上は保険料率は上がらなくて済むわけですね。しかも、社会保険料負担は減って税収の方がふえるという形でバランスがとれてくると思うので、私は、その点からも、基礎年金の税方式への移行、税方式というのはやはりやる方向にあるんじゃないか、こう思うわけです。これだけ社会保険料と税収がアンバランスになっている状態を、社会保障の将来財源をどう考えるのかということで懇談会をやっておられるわけですけれども大臣自身はどういうふうにお考えになっておられますか、将来の社会保障像として。
  206. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 私は、あくまでも社会保険方式を堅持しなければならない。しかし、先ほど申し上げましたように、社会保険方式というのは、ある意味において公費が加わらないわけでございますが、私は、社会保険方式のぎりぎりであります二分の一まで引き上げていく方向が望ましいのではないかと思っております。  そしてまた、先ほども申し上げたわけでございますが、これまでどちらかというと、年金年金医療医療、そして介護は介護、こういうような嫌いがなきにしもあらずでございますが、私は、やはり一番中心になるのは年金だと思います。年金をきちんと安定させて、国民の皆さん方に……。  そして、これからは少子高齢化社会を迎えるわけでございますし、例えば、お年寄りの中には、七十歳以上で一千万円の収入のある方もあれば、二千万円の収入の方もあれば、国民年金で四万円、五万円という方もある。これまでお年寄りというのは、どちらかというと社会的弱者であり一律経済的弱者だ。しかし、現在の人口構成の中で、果たしてこういうような社会保障というものを現在のまま維持していくことができるかどうか、こういうことも率直にこれから国民の皆さん方にも御理解をいただく方向で努力をしていかなければならない、こう考えておるような次第であります。
  207. 山本孝史

    山本(孝)委員 総理の私的諮問機関ですか、社会保障構造の在り方について考える有識者会議で今検討しておられるわけですね。この間、論点整理をされたんだと思いますけれども。これは新聞記事でしか私は見ておりません、恐縮ですが。  もともと、こういう会議をつくろうというのは大臣の御発案であったというふうにお読みをしたのですが、そういうふうに受けとめてよろしいのですか。
  208. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これを最初に申し上げたのは、たしかこの委員会で私が申し上げたんじゃないかと思っております。  私がこの問題について総理に御相談を申し上げましたらば、これはやはり社会保障だけではなくて財源の裏づけをきちんとしなければならない、内閣を挙げて取り組む問題だということで、最初に御提案を申し上げたのはこの委員会において私でございますが、今総理の諮問機関といたしまして、社会保障構造の在り方について考える有識者会議が設置されたところでございます。
  209. 山本孝史

    山本(孝)委員 私の記憶に間違いなければ、そういう会議をつくったらどうですかと提案申し上げたのは私だったように思います。それは、厚生大臣が主管としてやっていただきたいと思って申し上げたのですが、途中から何か総理大臣にとられたみたいになった。しかも、たしか大臣年金ということを考えて、年金医療介護保険とかがあったので、豊かな老後というか老後生活を支えるための社会保障制度をどうするかということを考えようじゃないかというような話で進んでいったのが、総理のところでぴっととられてしまって、全体の社会保障のあり方に関する有識者会議ですか、そういう形になってしまった。  そういう意味で、大臣のリーダーシップがどこかへいってしまっていると私は思っているのですけれども、いずれにしても、私は、この委員会の中でも申し上げたのですが、政治家がリーダーシップを持ってやろうじゃないか、この中に小委員会をつくって、与野党でメンバーが出てきてじっくり議論しようじゃないかと言ったのですが、残念ながら与党の皆さんが乗ってくださらなくて、依然として進まないんですね。  諸外国はみんな国会議員が中心になって議論して方向性を見出しているわけです。年金審議会に出していっても、なかなか利害の調整がつくわけではない。外の有識者会議に出されても、それは箱物で、そこへ投げられているだけで、出てくる話は全然採用されていませんね、経済戦略会議にしても。いろいろな会議をおつくりになっても、そこの中では出てこない。それはなぜかといったら、方向性を示さずに丸投げされるからです。それでは何ら結論は出てこないのです。  私は、やはり基礎年金の国庫負担率の引き上げ、一遍にとは言いません、まず二分の一に引き上げて、安定の方向へ持っていって、やがては税方式に切りかえて、全員に国民の基本年金を保障して、そして、二階の部分をそこで考えて、そのときに厚生年金基金の代行部分の返上というのもやがて考えざるを得ないだろうと思っているんです。その点で、この代行部分の返上について大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  210. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 山本委員のお考え方につきましては、大変見識のある一つの見方として拝聴させていただきます。  代行部分につきましては、基金と一体となってなされている問題でございますし、この代行部分をなくすということは、公的制度がその分だけまた小さくなるわけでございます。そういう意味におきまして、私は、あくまでも二階建て部分の代行部分につきましても公的制度の中できちんと位置づけて、そして基金と一体となってこの代行というものが運営されておるわけでございますので、一部にございますような代行部分の廃止ということは、サラリーマンの方々、年金加入者の方々にとって大変大きなデメリットがある、こう考えているような次第であります。
  211. 山本孝史

    山本(孝)委員 質問があちこち飛ぶのでペーパーを見つける前に御答弁に立っていただいたのだと思いますけれども、代行の返上論あるいは廃止論、いろいろあります。今の御答弁は、多分整理されていないままの御答弁だと思います。  今度、三階部分のところで、選択の一つとして確定拠出型年金というものを出してこられるわけですね。それが出てくるということで将来また一つ議論が出てくるわけです。当然、そのときには厚生年金基金の代行部分の廃止もしくは返上という議論はしなければいけないわけで、今の御答弁では整理されていないというふうに思います。時間がありませんので御指摘だけ申し上げておきます。そこはこれまた大きな議論ですので、今回ほとんど出てきませんでしたけれども、今の御答弁ではほとんどないと思いましたので、御指摘だけしておきます。  要は、将来へ向かっての不安がとても強いというこの時期、現行の年金制度の中で数字を合わせるだけの財政バランスをしているだけだから、結局はこういう制度にしかなり得ない。基礎年金の二分の一とおっしゃいますけれども、社会保険方式は維持するとおっしゃいますので、この基礎年金部分もこれから先は安定はしない。そんなふうにいろいろ考えますと、私は、今回の改正というのは国民の不安をあおるだけで、決して年金への信頼をかち取ることのできる改正ではないと思います。大変にまずい改正だと思います。  しかも、きょうの議論を聞いておりましても、二分の一の財源問題、時期は早くとおっしゃいますが、財源問題については依然として濁しておられて、与党間の協議にまつんだというふうにおっしゃる。そういうふうに考えますと、何も議論は先に進んでいないのです。  理事会で与党の理事の皆さんは、審議時間、審議時間、こんなに長くなりましたよとおっしゃいますけれども、残念ながら御答弁内容は大変に薄いものでしかないと思います。聞いている国民はこれで年金が安心できるとは思っていないと思います。やはり基礎年金の改革が先で、あのときの話はあのときの話であって余り皆さん重要に考えておられなかった、こういうふうにおっしゃいますと、基礎年金のこれからの改正というのは何なんだと私は思わざるを得ません。  それで、基礎年金の部分で申し上げているのは、やはりここでも何回か議論になりましたけれども、無年金障害者の問題、それから女性の年金権の問題、いずれの問題を取り上げても、基礎年金の全額税方式化で新たな制度につくりかえないと年金制度は安定しません。基礎年金を全額税方式に切りかえていくことが年金改革の第一歩だと私は思います。ほとんどの識者の方たちがだんだん今そっちの方向になっている。新聞論調もそうなっています。ただひとり厚生大臣あるいは厚生省だけが、この部分は絶対に譲れないとおっしゃるのです。  もう少し謙虚に、基礎年金の国庫負担率を上げていく税方式にしたときに、本当にどういう制度になり得るのか、大臣御自身も年金のことをよく御存じなわけですからもう一度お考えいただく、あるいは政務次官も考えていただく。この問題をしっかりしませんと、やはり先へ進まないと私は思っているのです。そういう意味で、もう一度大臣に。大臣御自身で。  厚生省に頼っていると厚生省は同じ考えしか言いませんから。きょうの答弁を聞いていても、みんなうそばかり言っているんだから。厚生省の言うことを聞くんじゃなくて、政治家がやるのですから、政治家がどういうスタイルでやるかはありますけれども大臣として、基礎年金の二分の一という考えに固執されていますが、そこを超えて税方式ということをもう一度考えてみる。この間も考えてみるとおっしゃったのですが、考えていただいたでしょうか。あるいは、これから先どうするお考えなのか、もう一度お聞かせをいただきたいと思います。
  212. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先ほどから私の考え方を申し上げておるわけでございますが、この税方式ということは、年金に入っていらっしゃる方も入らない方もすべてお年をとるといただける、そういう意味においては、いわゆる無年金障害者であるとかすべての問題が解決することは自明の理でございますけれども、あくまでも年金制度というものは負担と給付の関係を明確にして、そして、世代間の支え合い——現実問題として、先ほども委員に対して大変失礼かもしれませんけれども、今の我が国の社会保障というのは保険料の半分が事業主によっているということもございます。その辺のところもきちんとクリアをしないと、いきなり税方式と申し上げても、果たして国民の皆さん方に御理解をいただけるのかな、こういうことであります。  私は、かねがね申し上げているように、まず国庫負担を二分の一に引き上げていくということが一番の最大の課題でありますし、税方式かあるいは社会保険方式かということも、当然のことながら今後の問題として検討しなければならない、こう認識をいたしておるような次第でございます。
  213. 山本孝史

    山本(孝)委員 私も申し上げておりますように、一気に税方式にしろとは言っておりません。国民の理解を求めていくためにも、まず二分の一があるだろう、それは五年前の約束だったじゃないか、だから今回やるべきだったんだ、こう申し上げているわけです。  しかしながら、この先のことを言っても、いつかということについては、早くとはおっしゃるけれども、いつとはおっしゃらない。しかも、その財源については何じゃかんじゃとおっしゃっておられる。ということは、またやらないのかなと。自民党の皆さんもそれほど熱心でないといみじくもおっしゃいましたし、あのときはあのときの場繕いだったとおっしゃいましたので、私は、安定した年金制度にしようというお考えは、残念ですけれども、きょうの御答弁を聞いておりましても、厚生大臣にもあるいは与党の皆さんにもないと言わざるを得ないと思います。  そういう意味では、この審議は全く詰まっていません。肝心の点を全部あなたは逃げている。それではだめです、それでは年金改正にはなりませんということを最後にもう一度申し上げて、私の今の質問を終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
  214. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員長代理 児玉健次君。
  215. 児玉健次

    児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  今山本議員からも御紹介がありましたが、昨三月二十三日に、民主党日本共産党、社会民主党は、「政府年金関連法案審議を通じて、十分に明らかにされるべき問題点」、これを文書で提出いたしました。第一は「基礎年金の国庫負担二分の一引き上げについて」、第二は「賃金スライド「凍結」と厚生年金報酬比例部分の五%削減について」、三は「厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢の繰り延べについて」、四は「基礎年金繰り上げ支給に伴う減額率について」、五は「年金積立金の自主運用について」。  きょう、私たちはこもごもこのことを中心に議論をしておりますし、私はとりあえず三つの点を中心にして議論をしたい。  今、国民の強い関心と不安がこの年金問題に集まっています。真剣な審議を続ける必要がある。そして、この機会に職場の声を紹介することも含めつつ大臣と議論をしたい、こういうふうに私は思います。  まず最初は、年金支給開始年齢の引き上げと現在の深刻な雇用情勢の関連についてです。  大臣、思い出していただきたいけれども、昨年十一月十九日、この委員会で、年金支給開始年齢の引き上げと私たちが直面している異常な解雇、リストラの進行、そのことに関して私は大臣と論議をした。そのとき、大臣は次のように答弁された。「特に高齢者の雇用の問題というのは大変深刻であるという認識は、まず私は十分に持っております。」大臣、この認識に変わりありませんか。
  216. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 変わっておりません。
  217. 児玉健次

    児玉委員 当然、事実をしっかり踏まえてでないと認識は成り立ちませんから。  そこで、今、この異常なリストラと解雇の進行、出発点が一致しているという点は私は歓迎しますが、私自身はこれまでも何回か議論をしてきておりますが、現在の六十歳から六十四歳までの雇用の厳しさというのは一過性のものではない。これは政府の資料によってもそうですけれども、六十歳から六十四歳の有効求人倍率は一九九三年で〇・一です。十人訪れて一人分の求人票しかない。そして、それがずっと徐々に下がっていって、九九年の一月からことしの一月までの間でいえば〇・〇六と〇・〇七で推移している。  私たちの井上参議院議員に対する政府提出の資料によれば、年の暮れ、昨年の十二月、六十歳以上で職を求めた方が四十一万二千九百二人、ところが、職についた人はわずか五千七百二十人でしかない。一・四%ですね。こういう状態だ。そういった事実をもとにして、現在の中高年齢層の状況の厳しさ、この点をはっきり私たちは確認し合わなきゃいけないだろう。  そこで、次の問題です。  先日、私は病院に行って何人かの看護婦さんと年金の問題について忌憚のない意見の交換をしました。そのとき、看護婦の方からこういうふうに言われた。六十五歳まで働き続けることなどは、夜勤に追われている私たちにとっては考えられないことですと。六十五歳まで引き続いて働いて、やっと六十五になって年金がもらえる、それは考えられないことだと。そして、別の機会に私はタクシー労働者の皆さん方と議論をする機会があった。そのときも同じ御意見ですね。  そういう中で、次の問題ですが、昨年、この委員会における大臣と私との議論の中で、大臣はこうも言われた。「元気で働ける方はやはり働いていただく、そして働けなくなったら年金をいただく、こういうようなライフスタイルというものを確立しなければならない、」。そうですね、今ヨーロッパはそうなっている。  現在の厳しい雇用情勢のもとでそれをどうやって具体的に実現するか、その具体的道筋が提示されなければ国民は納得しません。どういう具体的道筋でそこに至るか、お答えいただきたい。
  218. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 雇用との関係についてのお尋ねでございますが、かつて五十五歳定年ということになっておりましたが、現在は六十歳定年制というものが定着いたしておるわけでございます。今後、定年年齢というものが引き上げられる傾向にあるわけでございます。  六十歳代前半で働く方々は、平成十年で五七%に達しておりまして、六十歳代前半の雇用は着実に進んでおるわけでございますが、また、今委員が御指摘になった六十歳代前半の方でも、その人その人のいわゆる体調であるとかあるいは健康状態によって当然異なるわけでございますので、私が申し上げたのは、元気な方は働いていただいた方がいいんじゃないか、しかし、おのずと働く中身についても変化が生じてくることは現実問題としてあり得るのではないか、こう認識をいたしておるような次第でございます。  そして、今回の春闘におきまして、雇用の延長問題が大変大きなテーマになっておるわけでございます。率直に申し上げて、大手でございますが、大部分の企業の中において、労使合意の中で、六十歳からさらに何らかの形で雇用を延長する、こういうことが出てきておることは大変歓迎すべきことである、こう考えているような次第でございます。  また、これは労働省でございますけれども、現国会に、六十五歳への定年制の引き上げの企業の努力義務を定めました高齢者等の雇用の安定に関する法律というのを提出いたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、今回の厚生年金支給開始年齢の引き上げは、十分な準備期間をとっておるわけでございます。そういう意味におきまして、今後関係省庁とも十分に連絡をとりながら、平均寿命が男性が七十七・一九歳、女性が八十三・八二歳と、今や世界で最も長寿国になったわけでございますので、今委員が御指摘のような六十歳代前半の雇用の問題を真剣に受けとめまして、私ども最善の努力をしていきたい、こう考えているような次第であります。
  219. 児玉健次

    児玉委員 この議論は、やはり一つ一つ、たとえ意見が違っていても、もし一致できる点があれば、さっきの中高年齢層の雇用情勢の厳しさという点では一致しましたね、それを踏まえて次に進まなきゃいけない。  今大臣が言われたことは、私は一言で言えば、職場を離れる日と年金を受給する日との間に空白期間がない、私たち三党が出しているこの文書でいえば年金と雇用の継続、これは世界的な趨勢です。そこに向けてどのような具体的道筋を描くのかと私はお聞きしたんだけれども、今の大臣答弁ではそれは描けていない。  一、二私は言いたいんです。  一つは、まず定年制の普及の問題であるけれども、これは既にこの委員会で議論した点です。私は、あの議論のときに、従業員五千人以上の大企業で六十歳の定年まで定年を待たずに離職を余儀なくされている人が四三%いるという点は既に指摘をし、そして大臣も覚えていらっしゃる。  それから二つ目の点は、一部の大企業で——来年から始まる年金のいわゆる定額の部分の繰り上げに関連した問題だけれども、この点は私は予算委員会であなたと論議をした。さまざまな動きはあるけれども、そのうちのある大企業に関していえば、五十代半ばで六十歳定年を選ぶか、それとも六十五までを選ぶかの選択を迫られて、いずれにしろ六十歳以降大幅に給与が下がり、出向や職種の転換を余儀なくされる。そして、企業の側からそういった異なった形での雇用の延長にどの労働者を受け入れるかという点について言えば、雇用側の選択にゆだねられているところが多い。これは定年制の延長とは見がたい。そのことを私はあなたに申している。  肝心な点は、この後六十歳以降の雇用の前進に努力もする、それは努力していただきましょう、しかし、今努力だけではそうなってきていないんだ。私たちのこの審議で、昨年の十二月二日に、一橋大学の高山憲之教授が参考人としておいでになった。高山教授は、率直にこのように述べた。「景気が回復すればこの六十代前半層の雇用環境がきっとよくなるに違いないという想定は、少なくとも過去の実績からすると、信じることができない」と明言されましたね。それが実態ですよ。  私は、大臣に職場の声にこたえていただきたいんだけれども、さっきの看護婦さんたち、夜勤に追われている、六十五まで働き続けてやっと年金、そんなことはできない、その声に厚生大臣としてどうこたえますか。
  220. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先ほどちょっと申し上げましたけれども、六十歳代前半によりましても、当然のことながらおのおのの健康上の違いがあることは明らかでございます。私どもは、働ける方について、自分の健康であるとかさまざまな事情に合った形で、何らかの形で雇用といいますか勤労の機会を得るようにするということが最も望ましい、こう考えているような次第でございます。  それから、今委員のお話の中でございました、大企業の早期退職者が多いということでありますが、これは、大企業の中で早期退職者の優遇措置というものがかなりとられてきているという中において、これまでどちらかといいますと終身雇用制の中において一企業に骨を埋める、こういう傾向もあったわけでございますが、さまざまな人生観、ライフサイクルの変化によりまして、そういう点も変わりつつあるのではないかと思っております。  私どもはさまざまな形で、端的に申し上げますと、例えば労働省のシルバー人材センターだとかというような部分もございますけれども、政府を挙げて、この大きな流れというものを現実に直視しながら、六十歳代前半の方々が何らかの形で働くことができて、いずれにいたしましても、基本的には年金と雇用の連動ということを十分に念頭に置きながらこの問題に当たっているわけでございます。
  221. 児玉健次

    児玉委員 その何らかの形ではというのは、看護婦さんやタクシーの労働者にとっては何の役にも立たないんですよ。具体的な道筋が示されなきゃいけない。それを示さないまま六十五歳への支給繰り延べだけを強行するというのは、憲法二十五条が定めた国民の生存権に対する重大な侵害ですね。この点は真剣に検討しなきゃいけない。まずそれが第一の点です。  次に、全世代にわたる年金支給額の削減について進みたいと思います。  つい今し方の答弁で、大臣山本議員に対してこうおっしゃった。私どもは、年金を受け始めた時点で現役世代の手取り収入のおおむね六割を確保する、正確に再現できませんが、大体そういう趣旨のことをおっしゃった。さて、この点で、私たちのこれまでの審議は何を明らかにしてきているか。現役世代の手取りのおおむね六割を確保できるかどうか、それが問題ですね。  賃金スライドの廃止と五%カットによって受給している年金額が今後何年かごとにどう減っていくかということは、既にこの間の審議で明らかにされています。五年後に七%削減される、十年後に一二%削減される、十五年後に一七%削減される。  一七%削減された段階で現役労働者の手取りの六〇%ということになれば、それはとりもなおさず現役労働者の手取り収入が一七%減らなければそうはならない。これはどだい成り立たないことであって、政府が今までずっと言ってきた、現役世代の手取りのおおむね六割の水準の確保というのは根っこから崩れてしまっている。ここに今度の年金改悪案の許せない第二の特徴がある。この点どうですか。
  222. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 今回の改正は、将来世代の過重な負担を防ぐことから、制度全般にわたって見直しを行った次第でございます。  今の制度をこのまま放置しておけば、将来世代の負担はピーク時において今の倍の三五%程度に上昇して、現実問題として、制度の維持が大変難しくなってくるわけでございます。こういうことを私どもは避けなければならない、将来に対して国民の皆さん方に年金制度をきちんと維持していきますという強いメッセージを送らなければならない、こういうことで、確かに委員指摘のように給付総額の伸びは抑制されますけれども、現在年金を受給している方の年金額の物価スライドは保障しながらも、急激な変化を避け、将来に向かって緩やかな改正を行うものであります。  先ほどから申し上げておりますように、改正後も、厚生年金につきましては、現役世代の手取り収入のおおむね六割の年金の水準で裁定されるものでございまして、高齢者の方々の生活費をおおむね賄うことができる、こう私どもは考えているような次第でございます。  それから、恐縮でございますが、もう一点だけつけ加えさせていただきますならば、今回の改正は段階的に支給開始年齢の六十五歳への引き上げを行うものでございまして、まだ二〇〇九年までいっておりませんけれども、二〇〇九年以降生まれの世代では、年金の受給総額は現行制度よりもおよそ一千二百万円ほど減少しますが、その一方で保険料の負担がおよそ二千万円以上、それ以上に軽減される、こういうことでございまして、私どもは、この大変厳しい中において、これからはスリムな年金というものを目指していかなければならない、こう考えているような次第であります。
  223. 児玉健次

    児玉委員 一人一人の人間がスポーツをやってスリムになることは大賛成ですけれども、しかし、年金をスリムにすることには賛成できませんね。  はっきり言わなきゃいけないのは、先ほど私が指摘した、五年後七%減、十年後一二%減、十五年後一七%減、このままいって手取りの六割ということはだれが考えてもできないことです。それが一つ。  それから、二つ目の点は何かというと、物価スライドというのは年金の実質価値を維持するにとどまっていて、賃金スライドは経済成長の成果、汗を流して努力をしている勤労国民の生活水準の向上、それを年金受給者に直接反映するものです。大臣、言ってみれば、ここに公的年金制度の命がありますよ。ここが辛うじて維持されていれば、国民は年金に対して一定の信頼感を持ちます。そして、そうなることを期待して年金に入っているんだから。  ところが、賃金スライドを廃止するというのは、経済成長の成果と国民の生活水準の上昇を年金受給者と遮断するものであって、そうであれば、これは私的な年金と少しの違いもなくなってしまう。ここのところが国民の大きな不安です。その点について端的に答えていただきたい。
  224. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これは、先ほどから申し上げておりますように、現在年金をいただいている方々の年金の給付額というものは変化はありません、ただ、伸び率が抑制される、こういうことでございます。それはとりもなおさず、これからの現役の若い世代の負担感、これを抑制することでありますし、より給付を確実にするものでございます。
  225. 児玉健次

    児玉委員 伸び率の問題というのは、これまでの国会における真剣な論議の到達点を無視しています。  例えば、夫七十歳、現行でいえばどのくらいもらえて、そしてこの改悪が実施されたらどのくらい減るか、実質額において三百万円減る。六十歳五百万円、五十歳五百万円、四十歳一千万円、三十歳千百万円、二十歳千二百万円、給付の絶対額においてそれだけ減ってしまう。そのことが一つ。これは厚生省の試算です。  さて、私はその上で、先ほどの私の質問に対してあなたは答弁することができないでいるけれども、職場でこういう声がありますよ。逃げ水年金という言い方です。そろそろ六十歳に近づいて年金がもらえると思い出したら、どんどん年金が向こうへ向こうへ逃げていってしまう。六十五歳まで行ってしまう。どれだけもらえるか、これは深刻な期待権です。ところが、賃金スライドと報酬比例部分の五%カット、遠くに行くだけでなくて影がどんどん薄らいでいく。それで逃げ水年金というのです。こういうふうに職場では声を上げ、怒っている。  私はそこで言いたいのは、この問題とあわせてもう一つ議論しなければいけない点がある。それは、地域経済との関係です。  私は、昨年度の厚生白書を読ませていただいて、非常に啓発されたところがあります。それは何か。私は北海道選出ですが、九七年度、北海道の米の生産額は二千六十一億円です。これは、米の生産量においては新潟より多いけれども、生産額においては新潟に譲ります。いずれにせよ、北海道の米の生産額は二千六十一億円です。大臣、北海道民が受け取る各種年金の総額は幾らになっているか。厚生白書によれば一兆二千五百二十九億円ですね。これが、言ってみれば北海道経済の重要な下支えになっています。そこのところがどんどん目減りしていって地域経済が成り立つか。  多分、大臣の茨城県でも、相当数の村が、その村の所得の第一位が年金給付というところが幾つもあるはずです。そこに対して今度の年金改悪は直撃をしますね。この点は日本経済にとってゆゆしき問題だと思うが、いかがでしょうか。     〔安倍(晋)委員長代理退席、委員長着席〕
  226. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 年金が与える地域経済への影響、こういうことではないかと思います。  これは、私は、いわゆる消費の減退という問題と大変密接に絡んでくる問題ではないか、こう認識をいたしております。  なぜ消費が減退しているのかということでございます。特に日本の場合は貯蓄率がアメリカがゼロ%に比べて二〇%だ、これが最大の、GDPの中の六割を占める消費がまだ持ち上がってこない大変大きな問題に一つなっていることは十分認識しております。  しかし、私どもが今問題を提起しておりますことは、将来に向けての問題でございますし、これが直ちに現在の消費の減退に結びつくとは考えておらないわけであります。むしろ、将来に対してきちんと明らかにあるべき姿を申し上げることが消費の向上につながる、私はこういう考え方に立つものでございます。
  227. 児玉健次

    児玉委員 まず最初に言わなきゃいけないのは、なぜ日本の貯蓄率が高いのか。この点では、ミニ経済白書も見事に指摘したし、それを引用した日銀の調査で極めて雄弁に事態を語っていますね。老後に対する不安ですよ。年金に対する不安が強いから貯蓄率が高くなり、それが消費を冷え込ませているのです。それに拍車をかけるだけじゃありませんか。  そして、私は大臣に端的に問いに答えていただきたいのだけれども、先ほど北海道の米の生産額が二千六十一億円で、年金給付の総額が一兆二千五百二十九億円、厚生白書からの一つのデータをとって、この一兆二千五百二十九億円が遠からず全体として二〇%目減りをしていく、そのことが地域経済に与える影響は大きいではないか、この事実については否定しないでしょう、大臣、どうですか。
  228. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 北海道の地域経済が大変疲弊しているということは、私も報道等で十分承知をいたしておるような次第でございます。  ただ、経済への影響で申し上げますと、私なりの考え方でもありますけれども、それを支えておる、若者であるとかあるいは現役の労働者、そして企業が、事業主負担の話を先ほどちょっと申し上げましたけれども、こういった負担が重くなるということで企業そのものが今非常に大変な危機的状況の中にあって、これがもしもこれ以上深刻になってくれば、平たく言えば元も子もない。こういうようなことでありまして、私は、やはり将来に対する負担ということも十分に配慮しながらこういった問題を議論していくべきだ、こういう考え方に立つものでございます。
  229. 児玉健次

    児玉委員 後半の問題は私が議論したい三つ目の点ですから、そこでやりましょう。  繰り返すようですが、北海道の経済は疲弊している、非常に困難な状態です。しかし、それは北海道だけじゃありません。そして、困難になっている北海道の経済を、この年金支給額の削減がさらに拍車をかけるのではないか、それ以外にないんじゃないですか。疲弊しているといって、それで済むような問題じゃありませんよ。地域経済を大切にしようと思ったら、そこのところを真剣に考えなきゃならない。この点に限ってどうですか。
  230. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、今回の年金法改正案におきましては、将来の若い世代に対する負担を軽減する、同時に……(児玉委員「私の聞いたことに答えてほしい」と呼ぶ)ですから、北海道の例を先ほどから挙げておりますが、地域経済に与える影響ということは、現に今いただいている方の年金が減るということならば、これは理解できますけれども、今後伸びを抑制するという考え方に立てば、直ちに児玉委員の御主張には私は賛同しがたいわけでございます。
  231. 児玉健次

    児玉委員 これも答えられないということですね。  そこで、最後の問題です。  大臣、あなたがさっきから何回も繰り返されたせりふの中に、将来の世代の負担という言葉がある。これは、あなたたちは基礎年金を二分の一にしてから言ったらどうですか。その点についての努力は先延ばしにしたままその議論をすることは誠実さがありません。基礎年金を二分の一にすればどうなるか。厚生年金において保険料は一%確実に下がります。国民年金で月三千円保険料を下げることが可能だ。しかも、これは国会と政府の国民に対する約束ですね。その約束を果たさないまま世代間の公平という言い方。まず基礎年金を二分の一にしてから議論をしようじゃありませんか。それが一つ。  もう一つは何かというと、とりあえず二分の一にするためには二・二兆円の財源が必要です。この財源の議論をしましょう。  昨日の朝日新聞の社説「財源問題から逃げるな 年金制度改正」で、こう書いていますね。「無駄な公共事業の削減など歳出構造の全面的な見直しによって、財源を確保する努力が不可欠である。」私はこれを読んでうれしかった。私たちが年来述べてきたことが今こういう形で代表的なマスメディアの意見にもなり、国民の声として今広がっている。  この二・二兆円の問題を議論するとき、財源措置で国民に新たな負担を求めてはならない、これが最も重要なところです。ゼネコンや銀行などに対する財政支出を思い切って削減する。財政構造を社会保障と国民の暮らしを中心に転換していけば、必要な財源をまさに安定して確保することが可能だ。この道を進むべきではないですか。大臣、どうです。
  232. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 公共事業がむだかどうかというのは、これはまた意見の分かれるところであります。最も公共事業が投資されているのは北海道ではないか、こういう意見も一部にはあるわけでございますし、その辺のところについてはまた十分に議論をしなければならないわけでございます。  私は、この二・二兆円の財源の歳出につきましては、当然のことながら、先ほども答弁を申し上げましたけれども、歳出のあり方の問題も十分に考えていただきたい、それから消費税でやっていく、税制の問題で考えていく、さらに積み立ての問題も提起されている、こういうものを総合的に考えながら、できるだけ早く安定した財源を見出す中においてこの二分の一を実現していきたいという気持ちは、児玉委員同様に私も強い気持ちを持っていることはぜひとも御理解をいただきたいと思っています。
  233. 児玉健次

    児玉委員 例えば小学校の体育館の改築だとか、公営住宅の修繕だとか、下水道や生活道路、そういった国民生活に密着した公共事業を私たちは重視しているし、そこを進めていくということは決して出費の増にはなりませんね。政府の財政構造、その歳出の中身を、私は次のようにこの前も言ったのだけれども、ゼネコンや銀行に支出される部分を思い切って見直すことで財源を生み出すことは可能だ。  そして、今度の年金改悪、介護保険医療費の引き上げ、これは三重苦になって国民の老後を脅かします。今私たちが求められているのは公的年金制度を発展させることであって、公的年金制度を改悪して国民生活を破壊することではありません。これは廃案以外にないということを述べて、私の質問を終わります。
  234. 江口一雄

  235. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  三月二十一日、参議院においてもこの年金改悪法案は強行採決をされました。自自公が数の暴力で、常に常に数の暴力で強行採決をしてくることに関して心から怒りを表明して、質問に入ります。  昨年も、衆議院のこの十五委員会室で強行採決がされました。私は、あのとき本当に怒りの気持ちが体を軽くして、委員長の机の上に乗ってしまいました。国民の皆さんたちからは批判が来るかと思いました。しかし、大臣、批判ではありませんでした。よくやってくれた、本当に年金問題は私たちの死活問題だ、私たちは将来年金がもらえなくなるのじゃないか、どうしてこの国は年金制度を抜本的に見直して、単なる私たち受給者に対する痛みだけで、しっかりと安定した形にしないのかという、一つ一つどれをとっても、物すごい大きな声として伝わってまいっています。  大臣は、御答弁の中で、年金に頼る生活をされる方は六割。六割というと本当に圧倒的多数です。この年金に頼らざるを得ない人たちに対し、大臣、与党の皆さんたちが、年金について二分の一の約束もすべてほごにして、このような形で今回また強行して年金改悪をしようとしている。本当に国民と乖離している、国会のこの議論が国民の思いと非常に離れているということを実感として感じます。  大臣、このような国民の皆さんの年金改悪に対する非難の声、そして必死の思い、私はそれをこの委員会や政府が十分に受けとめているとは思えません。国民と乖離しているのじゃないかということに対して大臣の御答弁をお願いします。
  236. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 私は、政治のあり方というものが大変大きく変わりつつあるなと思っております。これまではどちらかというと、私どもも反省を含めて申し上げますならば、あれもやります、これもやりますと、甘いことだけを申し上げてきた。これがある意味において、国民の皆さん方から、そういう時代じゃないんだ、むしろ率直に情報を開示して、今後のあるべき姿を示すべきだ、こういうように変わりつつあるのではないかと私は認識をいたしておるような次第であります。  今回の年金法改正において、それは将来においてもできるだけ給付が多ければ多いにこしたことはありません、そんなことは自明の理です。私も地元で、地元の皆さん方に申し上げるとき、そこまでおっしゃるのですかということで大変な御叱責を受けることもあります。しかし、私は、皆さん方も一生懸命頑張っていらっしゃるだろうが、現在のこの少子高齢化社会ということを考えれば、今の年代の方だけがより有利な年金給付をもらうということで果たしていいのかと。私どもは、私どもの子供や孫の代に対してもきちんと安定した年金制度にしなければならない。それは苦しいわけでございますが、風に向かって立つ、こういった気持ちで私はこのことをあえてお願い申し上げておるわけであります。  一番必要なことは、この年金制度を国民の皆さん方に御理解をいただきながら、そして、負担を軽くし、できるだけ給付を将来にわたってきちんと約束していくことが国民の皆さん方の信頼に立つ、こういうことではないかと私は考えているような次第であります。
  237. 中川智子

    中川(智)委員 国民の不安というのは将来が見えないからなんです。一方ではむだだと思える公共事業にどんどん国費を投入する、そして、国債をどんどん発行する、銀行には六十兆、いろいろな形で私たちのことを考えていると思わないような財政支出をやりながら、将来に対して、年金を確立していく将来像が見えないという批判なんです。それに対して今の大臣の御答弁は非常に無責任な形でなされていると思います。もう一度御答弁をお願いします。  むだな公共事業ですとか銀行へのそういうふうなことを一方でやりながら、生活の柱である生存権そのものを奪おうとするような形の今回の年金改悪、それに対してどうなのかということを問うているわけです。
  238. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 公共事業がすべてむだかどうかということについては、私はコメントを差し控えたいと思います。  ただ、率直に申し上げて、こうした少子高齢化社会が深刻化する中において、先ほど来議論もございますけれども、もっともっと国民の皆さん方の日々の生活に影響するニーズ、このニーズにこたえていく場合、つまり、生活基盤の整備であり、これからはハードよりはソフトの面に力を入れていくべきではないか。こういう点におきましては、あくまでも個人的考え方でございますけれども中川委員と同じ認識を持つものでございます。
  239. 中川智子

    中川(智)委員 私はむだな公共事業と言っているのです。大臣は公共事業がむだというふうに私が発言したと、それは全く逆なことです。そこのところは間違えないでいただきたいと思います。  前回、九四年の法改正時に、全会一致で決議された、二〇〇〇年、二分の一に引き上げるということに対して、全くその時期も明確にされないまま、必要な財源が確保されたときというあいまいな形でずっと逃げていらっしゃいますけれども、今与党の中では、自由党さんは財源は税だということで、自民党、公明党、自由党、三つの党が全部一枚岩ではないという印象を持ちますが、この二分の一の議論に対しては具体的にどのようになっているのですか。
  240. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 与党の中で認識の違いがあることは事実であります。しかし、きょう一日お話を聞いていても、これまでの認識の中でも、野党の中においてもそれぞれまた違いがあるのじゃないかな、こう思います。要するに財源をどうするか、みんな……(発言する者あり)
  241. 江口一雄

    江口委員長 静かに願います。
  242. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 ちょっと聞いてください。  私が申し上げたいことは、できるだけ早く二分の一にしなければならないということは与野党とも同じ考え方を持っている、しかし、現実に二・二兆円もの財源が要るという中において、どういう形で財源を確保するかということについてさまざまな意見がある、このことについては必ずしもまだ国民の中においても与野党の中においても十分に一致点を見出しておらないということが、私が申し上げたいことであります。  しかし、いずれにいたしましても、この年金制度を長期的、安定的なものにするためには、とにかく引き延ばしてはいけない。一日も早く、今非常に経済が悪い状態、不幸な状態にありますけれども、景気をよくして、そしてさまざまな形で、先ほどから私が申し上げておりますけれども、安定した財源を見出した上で二分の一にしなければならない、こういう認識を持っておるような次第であります。
  243. 中川智子

    中川(智)委員 政権党というのは、与党の中できっちり合意して、この年金関連法案に対してはっきりした道筋を示してこそ初めて法案を出せるものだと思っていますよ。法案を出すときにも、現在の時点でも意見が一致していないというのは無責任な連立だ、これは直ちに解消すべきだと思います。それが、そのような形で、まだ財源論も意見が一致していないのに、財源を確保してとかと言っても机上の空論で、絵にかいたもちで、全くそれに対してやれないだろうという印象を持ちました。  二〇〇四年までにとか、きっちりとしためどを、大臣、やはり明確に示すべきでしょう。そんなふうに逃げてばかりじゃだめですよ。いつなんでしょうか。
  244. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 かつて社民党さんとも自民党が連立を組んだ時代がございました。そのときも、与党協におきましてさまざまな意見の違いがあった、その中においていかにして接点を持っていくか。これは、私どもさまざまな御意見がありますが、社会保障においてはみんな同じ気持ちを持って取り組んでいただいている、私はこう思っております。  そういう中において、これはあくまでも、何か政争の具と国民に見られるような形ではなくて、お互いに議論を深めていく中において一致点を見出していくべきではないか、こういうたぐいのものではないか、こう考えているような次第でございます。
  245. 中川智子

    中川(智)委員 今、連立のことが出ましたけれども、中のけんかさえ外に見えないですよ。政争の具とおっしゃいましたけれども、本当に選挙のためにだけくっついているのじゃないかという印象が非常に強いです。この年金法に関して、三党は財源論をしっかり議論して、けんかしてもいいから、もっと明確に国民の前に示すべきだと思います。これに対して答弁願います。
  246. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これは、三党はあくまでも連立であります。今自民党と連立を組んでいただいております自由党さん、公明党さん、それぞれの主張があるわけであります。全部同じ考えであるならば、これは連立でないわけでございますから。これはそれぞれ、自由党さんは自由党さんで税方式をとっている、私ども自民党は社会保険方式の考え方が多いとか、また、自民党の中にも社会保険方式じゃなくて税方式だと言う方も実は現実におるわけでございます。  しかし、そういう中において今大変大切なことは、何度も何度も繰り返して恐縮でございますが、私たちの代だけではないんだ、将来に向けて若年者の皆さん方が、若い方々が、年金に対する信頼感を取り戻すためにどうしていくのかということで、あえて私どもが今強いメッセージを送らせていただいていることをぜひとも賢明なる委員は御理解いただきたいと思います。
  247. 中川智子

    中川(智)委員 年金というのは社会保障の骨格です。政権をつくるならば、これは当たり前に合意した形でやるべきだと思いますし、その合意があってこそ初めて法律としてみんなに出せる。それが、今の話を聞きますと、社会保障の骨格さえ合意されていない連立政権というのは何なのか、改めて疑問を呈しておきます。  それから、ずっと大臣は将来の若い世代とおっしゃいますけれども、結局若い世代が親の面倒も同時に見ていく、そのような不安が結局循環して若い世代の不安も生むわけです。将来の若い世代の人々が具体的に年金に対してどれだけ不安を持っていて、今回のことに関して若い世代からの声というのはたくさんありましたか。具体的にどんな声があって今回の根拠になったのか、ちょっと答弁してください。
  248. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 まず申し上げさせていただきますならば、前段の問題でございますが、三党間で相違点があったことは、財源の問題を初めとしてさまざまございました。しかし、この三党間の政策担当者の間でぎりぎりの接点を求めて現在の形になったということでありまして、その点は連立政権の御経験のある委員も十分に御理解を賜れると思っております。  それから、今委員からございました若い世代の方々の意見が十分に反映しているかという点、私どもはむしろ若い世代のことを十分に認識した上で、現在の、これからもらう方々には給付の抑制のみを我慢していただきながら、将来の若い人たちに対する給付、あるいは負担の軽減という観点から、あえてこの法案をお願い申し上げているような次第であります。
  249. 中川智子

    中川(智)委員 今回、衆議院でも参議院でも審議は全然十分ではなく、本当にスケジュールだけが先に決められてやられてきました。その中でたくさんの問題が出てきたと思います。これは本体だけではなく、年福事業団の問題、運用の問題、たくさんのものが出されました。そして、国民の非難の声、不安の声がここまで高まっている中で、修正というのはどこがされましたか。
  250. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 これはあくまでも私がコメントする問題ではございません。委員会審議にお任せをいたす問題でございます。
  251. 中川智子

    中川(智)委員 一切修正もなく、そして委員会審議が深まりもせず、不安は不安で、問題点問題点で、一切総理の出席もなく、大臣の苦しい御答弁ばかりが本当に壊れたテープのように流れるような委員会に対して、心から怒りを覚えます。  女性の年金の問題、そして、たくさんの委員がやはりこの審議の中でも申しました無年金障害者の問題、これも全く前に進みませんでした。この国は、本当に弱い立場の人をどんどんどんどん切り捨てていく、そんな政治しか行われていないということを実感いたします。午前中に私が質問いたしました在外被爆者の問題、無年金障害者の問題、難病の方たちの声、弱い声、小さな声が切り捨てられていく、そのことを本当に実感いたします。年金に頼らざるを得ない人たち生活さえも切り捨てていく、そのような今の日本社会保障、これは、国民年金の空洞化じゃないですが、外見だけは取り繕っていて、中身は期待されたものに全くなっていないということを実感します。  無年金障害者の問題で大臣質問いたします。  前回の年金改正では附帯決議までされました。厚生省に全く無視されてしまいましたけれども、これの不信や怒りを改めて表明いたします。これまでの質問に対する厚生省答弁を聞いていて、国会を、ただ法案を、それも悪法をどんどん通過させるための通過儀礼的なものに考えているのではないかと思います。そして、附帯決議さえも重く受けとめない。これに対して、やはり附帯決議があったから五年間待ち望んでいた無年金障害者の人たちの、一歩でも前に進む施策を大臣からお伺いしたいと思います。このまま捨て去るのでしょうか。
  252. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 無年金障害の問題につきましてはたびたびこの場で答弁をさせていただいたわけでございますが、委員御案内のように、あくまでも保険方式というものはそういう場合に備えて保険に入っていただく、このことといわゆるお気の毒な問題をどういうふうに考えていくか、私どもはそういった観点から、無年金障害と申しますか、そういった立場の方々に対してはさまざまな公費によって施策を行っておるわけでございまして、もともと年金の方式とその問題はなじむものではない、こう考えております。  しかし、大変難しい問題も抱えておるわけでございますし、私もこれまで率直にこの問題についてお答えを申してまいりました。真にやむを得ない理由によって、要するに国民の皆さん方が納得できるものかどうかということを含めて、今後十分に関係方面の御意見を伺いながら、私なりに知恵を絞って努力をしていく決意でございます。
  253. 中川智子

    中川(智)委員 大臣厚生省のやる気の問題ですよ。これはやらなければいけない時期に来ているのに、ずっと切り捨ててそのまま行く、血も涙もないのかと言いたいです。  今回の年金改悪は、二分の一の全会一致の約束もほごにし、賃金スライドもなしにし、五%カット、六十歳を六十五歳にする。これは、大企業の中でも六十五歳定年なんというのはまだまだこれからのことです。八割は中小零細企業、その人たちがほとんどです。
  254. 江口一雄

    江口委員長 時間が経過をしておりますので、簡潔にお願いいたします。
  255. 中川智子

    中川(智)委員 審議は全然深まっていません。審議をきっちり続行していただきたいと思います。  そして、無年金のことも先送り、女性の問題もそのまま、このままでは絶対納得できません。国民の皆さんが少しでも安心できるように、今回のこの改悪は廃案にしていただきたい。  大臣、廃案を求めます。御答弁をお願いします。
  256. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 私は、先ほどから答弁させていただいていますように、一刻も早くこの法案を成立させていただくことが、若年世代に対するこの年金の長期的、安定的な、揺るぎない強いメッセージだと考えております。
  257. 中川智子

    中川(智)委員 委員長審議はもっともっとやるべきだと思います。委員長、いかがですか。審議が深まったと思いますか。
  258. 江口一雄

    江口委員長 時間が経過をしておりますので、これにて質疑を終了いたします。時間が経過をしております。
  259. 中川智子

    中川(智)委員 大臣審議は全然深まっていませんよ。時間だけ、スケジュールどおりで進ませようとするこの自自公の暴挙に対して抗議いたします。
  260. 江口一雄

    江口委員長 これにて質疑を終了をいたします。これにて質疑を終了いたします。
  261. 中川智子

    中川(智)委員 もっと審議しなければいけません。
  262. 江口一雄

    江口委員長 時間が経過しているのですよ。
  263. 中川智子

    中川(智)委員 私はまだまだたくさん質問がしたいです。質問したい。質問しているじゃありませんか。
  264. 江口一雄

    江口委員長 中川智子さん、中川智子さんに申し上げます。ルールを守ってください。時間が大分経過をしております。(発言する者あり)時間は十分経過をいたしております。委員会委員長の……(発言する者、離席する者あり)質疑は終了しております。質疑は終了しております。  安倍晋三君。
  265. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 動議を提出いたします。  三案の質疑を終局されんことを望みます。(発言する者あり)
  266. 江口一雄

    江口委員長 安倍晋三君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者、離席する者あり)起立多数。よって、三案の質疑は終局をいたしました。(発言する者あり)     —————————————
  267. 江口一雄

    江口委員長 三案について質疑の申し出がないので、採決をいたします。(発言する者あり)時間は経過をしているのですよ。委員会委員長の専権事項です。(発言する者あり)同意をしていない。委員長の言うとおりにしてください。委員長の言うとおりにしてください。(発言する者あり)とめてありません。  三案について討論の申し出がないので、採決をいたします。  国民年金法等の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者あり)     〔賛成者起立〕
  268. 江口一雄

    江口委員長 賛成多数。よって、原案のとおり可決をいたします。(発言する者あり)委員長の権限で進めております。すべて理事会の決定どおりやっております。すべて理事会の決定どおりやっているんです。  年金資金運用基金法案に賛成の諸君の起立を求め……(発言する者あり)     〔賛成者起立〕
  269. 江口一雄

    江口委員長 起立多数。よって、原案のとおり可決いたしました。  年金福祉事業団解散及び業務承継等に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者あり)     〔賛成者起立〕
  270. 江口一雄

    江口委員長 起立多数。よって、原案のとおり可決されました。  三案の委員会報告書の作成は、委員長に一任願うことに賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者あり)     〔賛成者起立〕
  271. 江口一雄

    江口委員長 起立多数。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  272. 江口一雄

    江口委員長 これにて散会いたします。     午後五時十一分散会