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2000-04-26 第147回国会 衆議院 建設委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年四月二十六日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 大口 善徳君    理事 佐田玄一郎君 理事 佐藤 静雄君    理事 原田 義昭君 理事 宮路 和明君    理事 田中 慶秋君 理事 吉田 公一君    理事 井上 義久君 理事 中島 武敏君       加藤 卓二君    亀井 久興君       岸田 文雄君    小林 多門君       桜田 義孝君    西川 公也君       野田 聖子君    蓮実  進君       林田  彪君    増田 敏男君       松本 和那君    宮腰 光寛君       吉川 貴盛君    樽床 伸二君       平野 博文君    藤田 幸久君       前原 誠司君    渡辺  周君       赤羽 一嘉君    辻  第一君       青木 宏之君    一川 保夫君       中西 績介君     …………………………………    建設大臣         中山 正暉君    国土政務次官       増田 敏男君    建設政務次官       加藤 卓二君    建設政務次官       岸田 文雄君    政府参考人    (厚生省社会援護局施設    人材課長)        森山 幹夫君    政府参考人    (林野庁長官)      伴  次雄君    政府参考人    (水産庁次長)      川本 省自君    政府参考人    (建設省建設経済局長)  風岡 典之君    政府参考人    (建設省河川局長)    竹村公太郎君    政府参考人    (建設省道路局長)    大石 久和君    政府参考人    (建設省住宅局長)    那珂  正君    政府参考人    (消防庁次長)      細野 光弘君    参考人    (首都高速道路公団理事) 北川  久君    建設委員会専門員     福田 秀文君     ————————————— 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   西川 公也君     吉川 貴盛君   樽床 伸二君     藤田 幸久君   上田  勇君     赤羽 一嘉君   佐々木洋平君     一川 保夫君 同日  辞任         補欠選任   吉川 貴盛君     西川 公也君   藤田 幸久君     樽床 伸二君   赤羽 一嘉君     上田  勇君   一川 保夫君     佐々木洋平君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策推進に関する法律案内閣提出第七一号)(参議院送付)     午前十時開議      ————◇—————
  2. 大口善徳

    大口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策推進に関する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として建設省建設経済局長風岡典之君、河川局長竹村公太郎君、道路局長大石久和君、住宅局長那珂正君、厚生省社会援護局施設人材課長森山幹夫君、林野庁長官伴次雄君、水産庁次長川本省自君及び消防庁次長細野光弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大口善徳

    大口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として首都高速道路公団理事北川久君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大口善徳

    大口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  5. 大口善徳

    大口委員長 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。
  6. 宮腰光寛

    宮腰委員 おはようございます。自由民主党の宮腰光寛でございます。きょうは、土砂災害防止法に関する質問を行います。  まず、昨年の六月の広島集中豪雨によりまして、同時多発的な土砂災害が起きました。これは記憶に新しいところであります。これによる教訓といたしまして、危険箇所におけるふだんからの情報提供や迅速な警戒避難措置必要性、さらには危険箇所における立地規制必要性が認識されてまいりました。これまでも砂防工事や急傾斜地崩壊対策事業などでハード対策がとられてまいりましたが、その一方で、危険箇所宅地開発災害弱者施設が立地してきておりまして、ハード対策を幾ら進めても危険箇所がふえていくという、いわばイタチごっこのような状況になっております。この土砂災害防止法では、ソフト面を重視し、土砂災害危険性のある区域を明らかにし、その区域の中での警戒避難措置立地抑制策を進めることとしております。  これまでは、いわゆる砂防三法、すなわち砂防法地すべり等防止法、急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律で対応してきておりますが、さらに土砂災害防止法制定することとした目的について、まず建設大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  7. 中山正暉

    中山国務大臣 お話のございました昨年の広島でも大変犠牲者の方が出られまして、改めて御冥福をお祈りする次第でございます。  今まで事業法としての三法がございましたが、これから総合的な土砂災害防止法というものをつくりたいということで、既存の三法に対しまして、災害原因地における土砂災害防止工事等ハード対策を中心として土砂災害防止に大きく貢献はしてまいりましたが、この土砂三法以外に、開発進展に伴いまして、危険な場所に新たに住宅等が立地することによりまして危険箇所増加傾向にあるために、ハード対策だけで対応することが困難となってまいりました。危険箇所増加を抑制するソフト面での対策が必要ということを考えております。  特に、都市近郊、山に囲まれた、私は関西でございますが、大阪なんか見ましても、六甲とかそれから生駒とか金剛とかいうようなところの大変危険な区域のようなところに住宅がどんどん山へ上っていく姿を私ども目にするわけでございますが、そういう意味で、今後は、従来の砂防三法に基づくハード対策と本法案に基づくソフト対策を連携させて、土砂災害防止をより効果的に実現しようとするものでございまして、これらの仕組みを生かして、土砂災害、大体五年で四千カ所ぐらいということになりそうでございますが、そういう危険な区域に対して万全を期したい、かように考えております。
  8. 宮腰光寛

    宮腰委員 次に、基礎調査についてであります。  例えば急傾斜地の場合ですと、区域指定要件は、崩壊するおそれのあるところというようにあいまいな点がありましたけれども、この法案では、都道府県警戒区域特別警戒区域指定のために基礎調査実施することとされております。いわば客観的な基準によって区域指定をするための調査でありますが、技術的にも財政的にも都道府県の役割や負担が大きくなると考えられます。  すべての都道府県基礎調査に要する期間費用はどのくらいを見込んでおいでになるのか、また、都道府県が行う基礎調査に関し、国の支援策としてどのようなことを実施していくのか、昨年集中豪雨による土砂災害をこうむった広島県御出身の岸田政務次官から御答弁をいただきたいと存じます。
  9. 岸田文雄

    岸田政務次官 先生の方から広島災害に触れていただきまして、まことにありがとうございます。  基礎調査についてお尋ねをいただきました。  基礎調査につきましては、おおむね五年をかけまして全国一斉に実施をしまして、そして調査を終えた箇所から警戒区域等を順次指定していく、こうした流れを考えております。  この基礎調査というものは都道府県知事の責務で実施するものですが、今回の法律制度、仕組み、流れの中で、この基礎調査というもの、大変重要な要素だというふうに認識しております。建設省としましても、その調査実施に要する費用補助だけではなくして、実施に際しての技術的助言、こういったものもしっかりと行っていかなければいけない、そのように感じております。そして、基礎調査の前に国として基本指針を定めるわけですが、この基本指針の中で調査手法を定めるなど技術的支援を行っていく、こういったことも大切な支援というように考えております。  期間としてはおおむね五年、そして費用につきましては、五年の間に作業を進めていく中にあって、ケース・バイ・ケースで不足がないように支援をしていかなければいけない、そのように感じております。
  10. 宮腰光寛

    宮腰委員 次に、工事実施についてであります。  土砂災害警戒区域等は、都道府県知事基本指針に基づき市町村長意見を聞いて指定することになっております。このとき、関係住民意見市町村長に代表されていると解釈されますが、土砂災害警戒区域は、そもそもその地域が持っている内在的な危険性基礎調査により客観的に明確になったものであります。この法律制定によりまして、土砂災害対策は、従来の砂防法等工事による対策から、土砂災害危険箇所における開発行為に対する許可制建築規制及び建築物移転等ソフト対策が整えられ、総合的な対策が整備されることになります。  さらに、既成の集落以外にも、今ほど大臣の方からおっしゃいました都市化進展が予想される地域に対して、土砂危険箇所増加抑制観点からも、積極的に土砂災害防止法による区域指定を行うべきと考えます。  そこで、砂防法等事業実施に当たりましては、従来の事業採択基準に加え、土砂災害警戒区域等指定も考慮して実施するのか、また、危険箇所増加抑制観点から当面事業は行わないこととするのか、政務次官のお考えを伺いたいと思います。
  11. 岸田文雄

    岸田政務次官 今先生から御指摘いただきましたように、本法案は、まず生命、身体の保護に加えまして、土砂災害危険箇所増加抑制目的としたソフト法でありまして、土砂災害特別警戒区域等基本指針に基づき指定するということになっているわけですが、その一方、従来の砂防法等に基づきます土砂災害防止工事につきましては、今後とも従来と同様に、危険性とか緊急性とか、あるいは保全対象重要性とか経済性、こういった観点に基づいて検討を行って事業優先度を決めて進めていく、今回の法律制定とは別に従来どおりそうした工事も進めていくわけです。ただ、今回の法律によりまして特別警戒区域等指定が行われますと、その工事優先度判断する際に、こうした区域指定一つ判断要素にはなると思っております。その区域指定が行われることによって、従来から進めている土砂災害防止工事等優先順位を考える際にその判断要素となる、そのように両方関係を考えております。
  12. 宮腰光寛

    宮腰委員 建築物移転についてでありますけれども、先日、地元山間部国政報告をいたしました際にこの法案につきまして話をいたしましたところ、関心を示された方が非常に多かったわけであります。  そのときに、いろいろな疑問点をお聞きしたわけでありますが、特に建築物移転について、この法律に基づく特別警戒区域指定をした場合に、都道府県知事建築物移転勧告ができることになります。その際に、国及び都道府県努力義務として、この法案では支援措置を講ずることとしておりますが、都道府県知事から移転勧告がなされた場合、例えば、既にあるがけ地近接等危険住宅移転事業補助金制度に加えまして、この法律による新たな支援措置が受けられることになるのかどうか、政務次官から伺いたいと存じます。
  13. 岸田文雄

    岸田政務次官 御指摘いただきましたように、現行でも、がけ地近接等危険住宅移転事業がけ事業と言っておりますが、このがけ事業によりまして、危険な地域からの住宅移転に対しまして、移転先住宅建設費等の一部を予算措置として補助しているところでございますが、こうした補助に加えまして、本法案では、都道府県知事が勧告した場合について、住宅金融公庫貸し付け条件を優遇する措置を設けているところでございます。  ですから、従来のがけ事業による補助に加えて、こうした住宅金融公庫貸し付け条件の優遇を受けられる、両方を受けられるということでございます。
  14. 宮腰光寛

    宮腰委員 次に、土砂災害関連をいたしまして、黒部川におけるダム排砂についてお伺いをいたしたいと思います。  まず、海域漁業への影響についてお伺いをいたしたいと思います。  お手元に六枚つづりの資料をお配りさせていただきました。そのお配りしてある資料は、既に公表されております北陸農政局富山統計事務所編集資料などをもとにしてグラフ化したものでありますけれども、まず初めに、この資料内容に間違いがないかどうか、水産庁の方からお伺いをいたしたいと思います。
  15. 川本省自

    川本政府参考人 配付資料の(4)におきます、一九九五年の富山県全体の「その他刺し網」の漁獲量数値が、資料に示された数値よりも百トン多い九百四十三トンでございますが、これ以外につきましては、資料のとおり間違いはございません。  以上でございます。
  16. 宮腰光寛

    宮腰委員 ほぼ、その一点を除けば間違いないということであります。  この資料に従いまして質問をさせていただきたいと思います。  黒部川河口周辺における海域漁業推移ということでありますが、先日の中島議員質問で四枚の資料配付をされました。その中に、入善横山漁協刺し網水揚げ高をグラフで示したものがありました。佐藤さんを初め四人の漁業者水揚げを示したものでありましたが、出し平ダム排砂直前の九二年と数回排砂した後の九九年を対比いたしまして、減少率がそれぞれ六〇%、五〇%、七五%、三〇%という大きな数字になっておりました。中島議員は、水揚げ高が大きく落ち込んだ原因は出し平ダムからの排砂影響によることは明らかであると主張しておられますが、私は、地元議員として、排砂影響はなしとはしないものの、排砂イコール漁獲高減少というような単純なものではないということを、公表されているデータもとにして申し上げたいと存じます。  まず、一番最後のページ、黒部川河口の近辺の写真でありますが、黒部川河口の特徴として、写真のコピーのように、河口を出た水の流れはほとんどが右岸側入善町の海域流れることが挙げられます。過去数回にわたる排砂のときも、一度だけ左岸側黒部市の海域流れた以外は、すべてそのほかは全部入善側流れております。つまり、左岸よりも右岸入善町の海域の方が排砂影響を大きく受けているわけであります。当然、関西電力からの漁業補償額入善側の方が大きくなっております。  そこで、一枚目の資料市町村別漁獲量推移を見てみますと、一番上の段の二重丸が排砂実施年でありますが、市町村別漁獲量で、排砂前と排砂後では、四角マーク入善町、赤い線ですが、ほぼ横ばいであるのに対しまして、排砂影響が少ないはずの三角マーク黒部市、ここでは大きく減少をしております。ほぼ半減をしたと言ってもいいかと思います。  次に、二枚目の黒部川近隣地区別漁獲量、これは地先ごと漁獲高を示しているわけでありますけれども、入善町の地先河口に近い方から順に、三角マーク、これはちょっと黄色で見にくいかもしれませんけれども、飯野地区横ばい。それから十文字マーク、そのすぐ上の青い線でありますけれども、吉原地区増加傾向。そして一番河口から遠い、中島議員から御指摘がありました横山地区、これはひし形マークですが、これが減少傾向となっております。特に、この横山地区では一九九八年に激減をいたしております。  これにつきましては、三枚目の資料丸印、一番下の欄に十九トンというふうになっておりますが、この上の数字、一九九七年に百四十トンの漁獲高であったものが、一九九八年は十九トンと極めて少なくなっております。恐らく、一九九七年に小型定置網漁獲量が百十六トンあった数字計上漏れになっているか、それとも定置網漁業をやめたかして、何らかの理由で計上されていないものと思われます。  刺し網だけで見れば、資料の四枚目、ひし形マーク横山地区はほぼ横ばいか少し減少ぎみという状況であります。  資料の五枚目、これは中島先生が問題とされましたヒラメ漁獲量推移を示しております。  これを見ますと、多少のでこぼこはありますものの、入善町の飯野、これは黄色いラインであります。それから吉原、これはブルーのラインであります。それから横山、これは紺色のラインひし形マークであります。そして中島先生の御指摘佐藤さんのデータ、これは丸印でありますけれども、ほぼ同じ傾向を示しているのではないかというふうに思います。  また、青のバッテンマーク、これは黒部市でありますけれども、これもよく似た傾向を示している。あるいは赤丸印富山県全体の傾向、これも減少傾向となっております。  これは、ヒラメ漁獲減少しておりますのは入善町や横山地区に限らず、残念ながら、富山湾全体の傾向であるということを示しているのではないかというふうに思っております。  以上申し上げましたように、公表資料を幅広く詳細に分析すれば、水揚げ高が大きく落ち込んでいる現象富山県の海面漁業に共通する問題であるということがわかります。  特にヒラメに関しましては、最近の富山県の漁業白書にも、富山県のヒラメ漁獲量は一九七一年に二百四十トンのピークを迎えたが、その後減少しており、最近は百トンを割る年が多い、ただし、ヒラメ漁獲量減少はほぼ日本海側全体で認められている現象であり、乱獲や貧血症などの疾病が原因と考えられている、というふうな記述もあります。  そこで、水産庁にお伺いしたいのですけれども、今申し上げた幾つかのデータから見て、ダムからの排砂漁獲高減少との関連について、漁業の立場からどのように認識しておいでになるのか、お聞きしたいと思います。
  17. 川本省自

    川本政府参考人 漁業によります漁獲高増減は、水温の変化や海流の強さ、方向など非常にさまざまな状況原因が絡み合って生じるものというふうに考えられます。ダム排砂漁獲高増減との直接的な関連につきましては、判断することは非常に困難であるというふうに認識しております。  以上でございます。
  18. 宮腰光寛

    宮腰委員 排砂との直接的な関連判断するのは極めて困難だということだそうであります。  海域汚染がなぜ起きているのかということにつきまして、昨年の十月の二十二日、富山水産試験場は、県漁連からの依頼で入善町の沖合海底調査実施いたしました。ことし三月十八日の地元新聞の報道によりますと、入善吉原沖、ここは横山沖よりも黒部川河口に近い地先でありますけれども、海底の泥の採取や潜水調査を行いました。それによれば、プラスチックの破片やビニール袋、たばこのフィルター、木くず、植物の葉、もみ殻なども見つかったと報道されております。このもみ殻は、農業用水から流れ込んで海底に堆積したものと見られておりますが、入善町では下水道がまだ整備中でもありまして、生活雑排水ヘドロも同じように川を伝って海底に堆積しているのではないかとも考えられます。  先日、ヘドロのまじった海水の瓶詰のにおいをこの場でかがせていただきましたけれども、実は私は、平成三年の十二月の第一回排砂の直後、県の船に飛び乗って、黒部川河口海上をずっと見て回りました。そのときに河口付近海上でかいだにおいとは少し違うような気がいたしました。大変きついにおいでありましたけれども、多少ちょっと違うなというような気がいたしました。漁業者の話によりますと、ヘドロやごみは海底の同じ場所に堆積しやすいとも聞いておりまして、入善町の海域全体がヘドロ汚染されているとは考えにくいのであります。  そこで、黒部川右岸入善沖合海域汚染は、ダム排砂原因か、あるいは生活雑排水なども影響していると考えられるのか、お伺いしたいと思います。
  19. 川本省自

    川本政府参考人 水産庁といたしましては、富山入善沖合におきます海域汚染原因を特定することにつきましては、いまだ解明されていない点が多いというふうに認識しているところでございます。生活雑排水等影響を含めました当該海域漁場環境問題に関します調査検討を今後行うことが重要であろうというふうに考えておるところでございます。  水産庁といたしましては、引き続き、漁業への総合的な影響の把握という観点から、建設省黒部川ダム排砂評価委員会検討結果を見守ってまいりたいというふうに考えております。  以上でございます。
  20. 宮腰光寛

    宮腰委員 今ほど水産庁としても調査検討したいとお話がありました。先日、地元漁民皆さん方が、独自で海底汚泥調査実施しておいでになりました。今年度中には、県漁連関西電力建設省の三者で、富山東部沿岸漁場全体の海底調査をするというふうに伺っております。  富山湾漁場環境を守っていくことは極めて重要でありまして、県東部漁場排砂によってどういうような状態になっているのか、ぜひしっかりとした調査をされるように要望いたしたいと思います。予定されている調査内容について伺いたいと思います。
  21. 川本省自

    川本政府参考人 先生指摘海底調査実施につきまして、富山県及び富山県漁連に確認いたしましたところ、建設省調査実施について検討しておりまして、具体的な調査項目につきましては今後県漁連とも協議して詰めていくということでございました。  水産庁といたしましては、今後、富山県及び富山県漁連とも連絡をとりつつ、適切な情報収集に努めてまいる所存でございます。
  22. 宮腰光寛

    宮腰委員 次に、連携排砂についてお伺いをいたしたいと思います。  黒部川全国有数急流荒廃河川でありまして、黒部川が運ぶ大量の土砂が、世界で最も典型的と言われる扇状地を形成してまいりました。同時に、流域住民にとりましては、川との戦いと共生の歴史を刻んできたわけであります。  ダムからの排砂によりまして、黒部川が非常に汚れているかのような印象を持たれているかもしれません。あるいは黒部川周辺海域が非常に汚れているという印象もお持ちかもしれませんけれども、建設省調査では、黒部川は、一番最近の平成十年の調査を含めまして、過去四回も清流度全国一位になっている。黒部川扇状地湧水群は、環境庁の名水百選にも選ばれているわけであります。黒部川日本を代表する清流一つであるというふうに考えておりますが、どのように認識しておいでになるのか、政務次官からひとつお願いします。
  23. 加藤卓二

    加藤政務次官 私の方でこれをお答えするようにということでありまして、委員のおっしゃられるとおり、私たちは、黒部川に関していろいろどんなぐあいに認識しているかということなんでしょうが、河川局の方も同じようなことをおっしゃられると思います。  私、黒部川というと、日本有数豪雪地帯で、しかも水量の非常に豊かな清流の川だ、こう認識しておりました。もっとあれなのは、最近テレビで見ると、大変大きな雪のトンネルというのか谷間をバスが通れるんだというその認識で、これだけの豪雪の中だから水量が豊かなんだなと思いました。  先ほど委員もおっしゃったとおり、日本でも一番きれいな河川一つだと認識しております。それと同時に、そういう水量を豊富に使った幾つかのダムの中で、日本一高い百八十メーターのダムがあるということも認識しております。
  24. 宮腰光寛

    宮腰委員 地元のPRをさせていただいたわけでありますけれども、北海道の自然の川よりも清流度が高い、申しわけありませんが。全国第一位四回ということであります。  そこで、昭和四十四年八月、黒部川観測史上最大の大洪水に見舞われまして、特に右岸入善町で数カ所の堤防が決壊して濁流が一・五キロメートルもの幅で流れまして、国道八号を乗り越えてそのまま海に達しました。  はんらん面積一千五十ヘクタール、家屋流失や全壊が七戸、半壊や床上浸水が百三十六戸、床下浸水や農業用施設の損壊、橋の流失など、甚大な被害をもたらしました。大洪水の割に家屋の被害が少なかったのは、当時この地域が散居村であったからでありますが、現在は、工場や住宅も多く立地をいたしております。  そのほかに、黒部川の大水害は、新聞に報道されているだけでも、明治で二回、大正で一回、昭和で十六回、平成七年の集中豪雨災害を含めて百三十年間で、大きなもので二十回を数えております。  宇奈月ダムは、そのような大水害から流域を守るために住民の熱望にこたえて建設されたものでありまして、黒部川の中流という建設地点からいたしましても、流域における最後のダムであると言ってもいいと思います。ダムそのものは既に建設が完了いたしまして、ダムの湖底で昨年、最初で最後の湖底コンサートというものを開きました。現在、試験湛水が開始をされております。  この宇奈月ダムと上流の出し平ダム排砂ゲートを閉め切って仮に排砂を行わないものとした場合に、いずれ数十年後にこの二つのダムは、土砂が堆積して完全に埋まりまして、洪水調節機能も土砂管理機能も果たせなくなるわけであります。その結果、流域住民は再び大水害や土石流の危険に身をさらすことになってしまいます。  漁業への影響を最小限にとどめるよう、排砂の時期や方法を十分に考慮しつつ、流域の将来にわたっての安全確保のために、出し平ダムと宇奈月ダム連携排砂は計画どおり実施されるべきと考えますが、建設大臣のお考えを伺って質問を終わりたいと思います。
  25. 中山正暉

    中山国務大臣 黒部川は私も思い出がありまして、私は、大阪市議会に昭和三十八年、四十二年とおりまして、そのころ、御承知のように関西電力というのは昔大阪市電気局でございましたものですから、電力復元をやれということで、もう一回大阪市に取り返せなんというような運動があったことがございます。  しかし今、独占的な九電力の中の関西電力、一番最初に原子力発電なんかやりまして、恐縮でございますが、近畿が一番電気料金が安いのはそのためだということのようでございまして、私も財政総務委員をそのころやっておりまして、「黒部の太陽」なんて石原裕次郎の映画にまでなりましたが、大阪市が一四%ぐらいの関西電力の株を持っているんじゃないかと思います。その関西電力からぜひ、そんなことで、私そのときは行きませんでしたが、つい三年ぐらい前に初めて黒部を見てまいりました。  大変立派にでき上がっている姿を見て、私は、今先生からいろいろお話がありました、急峻な川、そして下流に、例えば黒部川では昭和二十七年、昭和四十四年、それから平成七年等、今お話のありましたようなその以前にも大変たび重なる洪水被害を受けております。このため、建設省では、黒部川の洪水被害軽減等を目的として宇奈月ダムの建設を進めまして、現在、試験湛水を行っているところでございますが、一方で、黒部川流域は日本でも有数の土砂生産地帯であることから、ダムの治水及び利水機能の確保、それから総合的な土砂管理のために、ダム貯水池に堆積する土砂を積極的に下流に流下させることが必要でありまして、宇奈月ダムの上流約七キロメートルにあります関西電力の出し平ダムと連携して、ダムから排砂を行う計画を持っております。  この連携排砂、これは日本では初めての技術でございまして、これは、ダムはすぐにもう土砂がたまるから、それこそダムはむだではないかなんていう話がありますが、環境調査関係機関との十分な調整を行いまして、このすばらしいダムが、構造を見ますと、下から、水かさを抑えてそして砂を出して、次のダムでまた水かさを抑えて砂を排出していくという、これは永久に有効に活動できるようなダムがつくり上げられているこの現場は、もう本当にすばらしいことだと思います。  日本のこういう治水技術者のその技術の成果を私は高く評価をいたしておりますが、環境調査やそれからまた関係機関との十分な調整を行いまして、各分野の専門家の御意見を拝聴しながらその操作に当たっては万全を期してまいりたい、かように考えております。
  26. 宮腰光寛

    宮腰委員 終わります。ありがとうございました。
  27. 大口善徳

  28. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 民主党の藤田幸久でございます。建設委員会で初めて質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。  本日のこの土砂災害防止法でございますが、昨年の六月の梅雨前線豪雨による中国地方を中心とした土石流の災害がけ崩れ等によりまして、昨年、今回のこの法案についての検討が始まったというふうに聞いております。今回のこの法案の一番の基本的な考え方というのは、事前措置重要性、つまり被害が発生する前の対策というふうに聞いておりますけれども、今回のこの法案が形成をされる検討の経緯とその意義について、まず大臣の方から御答弁をいただきたいと思います。
  29. 中山正暉

    中山国務大臣 この法案提出までの経緯といたしましては、昨年の六月末の広島県下の土砂災害、二十四名の大変とうとい犠牲が出ました。がけ崩れやそれから土石流によるとうとい人命が失われたこの災害を踏まえまして、今御病気になられました小渕前内閣総理大臣から私建設大臣に対しまして、土砂災害危険性がある地域における住宅立地のあり方等について、これは何とかしなきゃいけないんじゃないかというお話がございましたものですから、建設省といたしましては、七月に省内で総合的な土砂災害対策に関するプロジェクトチームというのをつくりまして、検討を行いました。そして十一月に、私は、河川審議会に土砂災害防止のための法制度のあり方についてという諮問をいたしました。本年二月に同審議会の答申をちょうだいいたしまして、ここに今回法案の提出、こうなりました。  それが経緯でございます。
  30. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今私は外務委員会の方から移ってまいりましたが、いわば災害に対する予防外交といいますか、あるいは、医療的にいいますと予防医学というのが今回のこの法案の重要な点であるかと思います。したがいまして、この予防医学あるいは予防外交というような点からいたしますと、これは天災に関する予防ということもございますが、人災に関するこの予防ということも非常に重要ではないか、そういった総合的ないろいろな想定を予想した予防というものが重要ではないか、その精神がこの法案に生かされておるのではないかというふうに理解をいたしますが、その点、大臣いかがでしょうか。
  31. 中山正暉

    中山国務大臣 もう大変適切な表現をいただいておると思います。まさに予防の時代でございますから、土砂災害防止工事推進するとともに、危険な箇所における警戒避難体制の整備や、それからまた開発の規制、建築の規制、それから住宅移転促進、そこにありますものを移すということでございますが、そういう土砂災害が発生するおそれのある箇所増加させないこと、それから、災害が発生しても死者を出さない等の被害を最小限に抑えることを目的とするものでございまして、災害の未然防止観点に立つということでございます。  今後とも、災害対策とかそれから環境対策を初め建設行政全般にわたりまして、国民の生命、身体への被害の未然防止観点に立った施策を展開してまいる所存でございます。  今回、有珠山でもああいう噴火が起こりましたが、噴火が起こる前に避難をしたという世界で初めての例になりました。そういうことで、私ども日本としては、大体、脆弱な土質に急峻な山それから川を持っております国家でございますから、そういうところに、狭い地域に、太平洋ベルト地帯には特に人口が集中しておりますが、そういう意味で、そこへ住もうとする方々に危険を事前にお知らせするということは大変重要な国家の役割であろうと私は思っております。
  32. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 その関係で、東京の首都高速道路の王子線の大気汚染について、今おっしゃっていただいた未然防止という観点から非常に関連がございますので質問をしてまいりたいと思いますが、その前に、これは大臣地元でもございます大阪に隣接している尼崎の大気公害訴訟というものに判決が言い渡されました。これは、大気汚染というものに関しまして、いわば国の責任とあるいは義務というものをはっきりうたった判決というふうに理解をしておりますけれども、つまりこの判決では、大気汚染を国は形成しない義務を負うということが判決の内容であったと思います。  この判決によりますと、国が、今までは、例えば事前の段階あるいは起こった後のことについても義務関係がはっきりしていなかった、しかしながら、事前あるいは進行中のものも含めて、途中の段階も含めて、やはり大気汚染に対して国あるいは道路公団が義務を負うという判決の内容だったと思いますが、その内容について御確認とそれからコメントをいただければ幸いです。
  33. 中山正暉

    中山国務大臣 小選挙区になるまでの私の選挙区と隣接をいたしております尼崎、それから西淀川というのが私の選挙区でございましたが、この辺は、阪神工業地帯が密集地帯、まことに狭いところに道路が何本も通っておりますので、その意味では、いろいろな排気ガスの問題、特に大都市は、大阪、東京は大体平均時速十八キロぐらいしか走っておりませんので、その意味で、CO2とかNOxというような問題がございます。  しかしこれは、裁判は三審制でございますので、この因果関係というものがそれに直接結びつくのかどうかというのは、まだなかなか医学的にもはっきりしておりませんので、今ああいう判決が出ましたが、とにかくその判決とは別に、私どもは、石原知事も、今、東京のディーゼル車に対する問題を提起されておりますが、とにかくこの大都市に早く道路をつくって、通り抜ける、通過する、その目的とする、都市自体じゃなしにほかへ通過する自動車がたくさん走るところが今のその裁判で問題になったところでございますので、適当なスピードをもって通り抜けてくれるようなそういう道路行政全般に、道路というのは皆つながってこそ価値があるものでございますので、そういう意味での渋滞が起こらないような道路政策を私ども建設省としては推進していく、そしてまた裁判の結果を見守らせていただく。因果関係については、医学的な経験その他そういう因果関係についてもはっきりしたものを打ち出していただくような方向に期待をいたしております。
  34. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 尼崎の道路と非常に似たような形での首都高速道路中央環状線王子線というものが今建設中でございます。私の事務所のすぐ近くでございますが、今地元の住民の方々が、これは尼崎と同じようなことが起きるんじゃないかというふうに実は心配しておるわけです。  それで、資料を何枚かお渡ししてありますけれども、この「首都高速中央環状王子線問題の概略」という紙にもございますけれども、中央環状線は新宿線と王子線とございまして、実は新宿線の方は地下のトンネルにつくられるという計画になっております。ところが、この王子線の方は高架式になろうというふうになっております。  これはどう考えても、トンネル式の方が大気汚染ということから考えますと非常にベターではないかと思うんですが、この王子線がなぜトンネル式ではなくて高架式になったのか、その理由をまずお聞かせいただきたいと思います。
  35. 北川久

    北川参考人 お答えいたします。  現在、首都高速道路は二百六十三・四キロメートルを営業しておりまして、利用台数は一日約百十六万台、二百万人もの方に利用されております。また、東京二十三区で限ってみれば、野菜や魚の四割、雑貨や日用品の六割は首都高速道路を経由して運ばれておりまして、首都圏の社会経済生活を支える大動脈となっております。  このうち、首都高速道路東京線の都心環状線を利用する交通は約四十六万台ございますけれども、このうちの約六割が都心に目的地を持たない通過交通量であります。この渋滞を解消するためには、首都圏三環状の一つであります四十六キロメートルの中央環状線の整備が急がれているわけでございます。(藤田(幸)委員質問に答えてください」と呼ぶ)はい。この中央環状線のかなめの区間として、今先生から御質問のありました王子線がございまして、私どもとしても、一日も早い完成を目指しているところであります。  このように、大変重要な路線でありますので、王子線の構造につきましては、既設高速道路との接続位置、道路占用されて建設されている都営地下鉄三田線、それから沿道の土地利用状況、また地形条件など、種々の要素を総合的に検討いたしまして、現在の高架を主体とする構造となったものでございます。
  36. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 最後の三十秒で答えになっておりましたので、質問に答えて、今後答弁いただきたいと思います。  この構造上、大気汚染それから地震災害も含めまして、やはりトンネルよりも高架式の方が非常にいろいろな意味で問題が多いということは、いろいろな形ではっきりしていると思うんです。しかしながら、そういう形で進んでおりますので、そういった不利な条件をどうやって克服していくかということが、大臣、これから非常に重要になってくると思います。  まず、構造図も資料の中にございますけれども、六%の上り勾配が五百メートル以上続く。これは、高速道路の場合に、六%というのは大変な急坂でございます。それが五百メートル以上続く。これは今まで、三大都市圏の過去の高速道路で六%勾配が五百メートル以上も続くというふうなことはあったんでしょうか。
  37. 大石久和

    大石政府参考人 お答え申し上げます。  三大都市圏におきます都市高速道路において、縦断勾配六%が五百メーター以上続く区間はございませんが、首都高速におきましては、六%以上の勾配の箇所が六カ所ございまして、最大で四百メーター台の箇所がございます。阪神高速におきましても、六%の勾配を持つ、延長三百メートルの縦断が続く箇所がございます。
  38. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 資料の中で、図一というのがございますが、これはばい煙量の勾配に対する補正率をあらわしております。つまり、六%勾配の場合には、例えば走行速度が四十キロから六十キロメートルの場合に、三・六倍以上になるんです。そして、このばい煙量というのは、これは一目瞭然のとおり、非常に加速的に増加している。  これだけ実はばい煙量が出てくるということ、通常の三倍ないし四倍の排気ガスが予想されるわけですけれども、これは周辺住民への健康被害ということを、尼崎も想定していただきたいと思いますけれども、やはりここまで来た以上、地上部分を例えばシェルターで覆うといった抜本的な対策が必要ではないか。そうでないと、これは大臣、王子公害訴訟、大気汚染訴訟ということになってしまう。この図を見ていただいても明らかなような、そういう状況でございます。  例えば、シェルターで覆うとか、そういう具体的な、抜本的な、これはきょうは予防外交というか予防医学の話をしているわけですから、そういう観点からしっかりした対策が必要ではないかと思いますが、どういう対策を考えておられるでしょうか。これは大臣から。
  39. 大口善徳

    大口委員長 北川理事。簡潔にお願いします。
  40. 北川久

    北川参考人 王子線の環境影響評価は、東京都環境影響評価条例及び建設省所管事業に関する当面の措置方針において、東京都におい実施されております。その中では、各項目とも評価の指標以下となるため、大気環境に与える影響は少ないとされており、シェルターの設置は考えておりません。  しかしながら、この縦断勾配六%の高架部を含む区間については、騒音対策として、高さ七メートルの高遮音壁を設置することとしていますが、その効果として、騒音低減効果のほか、七メートルの高い位置から排出ガスを拡散させることによりまして、沿道環境への影響を緩和する効果も期待しております。
  41. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 先ほど東京都の数字等々をおっしゃいましたけれども、住民集会等でいろいろな形で数字についてのやりとりもしてまいりましたけれども、道路公団側の方で、そういった数字に対して、具体的にこういう数字になるので、したがってこういう対策をとれば大気汚染に対してこれだけ対応ができる、緩和ができるといった具体的な答えは出てきていないんですね。今も、この七メートルの壁をつくったにしても、これはトンネルのようになるわけですから、つまりシェルターじゃありませんので、大臣、上から煙突のように出てくるわけです。それは多少水平に出てくるよりも上に出てくるという話だろうと思いますけれども、それによって、実際に大気汚染数値的に、何%程度までその数値を下げることができる、具体的な数字を示していただきたい。これは予想ですから。  ただ、きょうの話は、起こり得ることについて未然にと先ほど大臣がおっしゃいましたが、未然防止ですから。しかも、今回の法案は、そもそも人災ではなくて天災で起きたということに対してなっていますけれども、物を建てているという以上は、天災と違いまして、予想がかなりつくわけですね。ということは、予想可能な限りの数値に対して未然に防止をするというのがきょうの法案の趣旨でもありますし、まだ建設中でございますので、建設中であるということは、予想で最大限の起こり得る汚染に対して最大限の未然防止策を講じるというのが趣旨だろうと思います。  そういった観点からしますと、今の、ただ七メートルの壁をつくる、だけれども、上に煙突のように大気汚染が出てくるんです。これでは十分な未然防止にならないんじゃないですか。具体的な、こういう形で幾らという実際の対策を示してください。
  42. 北川久

    北川参考人 高遮音壁を設置することによりまして、自動車から排出される汚染物質は、まず上方に拡散されまして、遮音壁の高さに達した後に横方向に拡散いたします。この高さが高いと、より広い範囲に拡散することになりまして、結果として到達地点での濃度が低くなる効果を先ほど申し述べさせていただきました。  当初の計画の三・五メートルの遮音壁を設置した場合と、現計画の七メートルの高遮音壁を設置した場合とを比較いたしますと、上層のトンネル出口付近断面の試算地点でのSPM寄与濃度で、位置平均でございますけれども、約〇・〇〇一ミリグラム・パー立米という低減効果が見込まれております。NO2につきましては、わずかの効果はありますけれども、数値にあらわれるほどの濃度の変化はございません。これはあくまでも現時点の試算結果でございます。
  43. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そもそも前提として、道路公団の方では、このいろいろな数値に関しても、四%勾配までの数値しか出していませんですね。大臣、よく聞いていただきたいのですが、実際の道路は六%勾配で五百メートルです。しかしながら、今公団の方がおっしゃっていましたけれども、四%勾配までのいわば予測値しか出していないで、その上で、今のお話で、あたかも上の、煙突から出てきた煙が四方に拡散するので何とかなるだろうというふうな話ですけれども、これでは未然防止にならないのだろうと思うんです。あくまでも期待値にしかすぎないのではないか。  これは、なぜ六%勾配に対する数値と予想される数値というものを出さないのですか。
  44. 北川久

    北川参考人 ただいま先生の御質問につきまして、この御質問内容は、先般先生から資料要求があり、三月十七日に東京都と首都高速道路公団から提出いたしました浮遊粒子状物質、SPMの試算結果についてのものと思いますけれども、先ほど表をお示しされましたけれども、御指摘のばい煙排気量に対する補正値、あるいは燃料消費量の補正値と浮遊粒子状物質、SPMの補正値とは同じものだという確証は私ども得ておりません。したがいまして、浮遊粒子状物質、SPMについては、最新の知見をもとに一定の前提を置いて縦断勾配の補正を行い試算を実施した、そういう資料でお答えしております。  なお、浮遊粒子状物質、SPMにつきましては、平成六年度から単体規制が実施され、さらにまた平成十一年度にも規制が強化されると聞いております。順次これらの規制の効果があらわれてくることを期待しております。
  45. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 その浮遊粒子状物質の勾配の適用範囲が四%までしかない、これはなぜですか。
  46. 北川久

    北川参考人 先ほど申しましたように、最新の知見におきまして四%の数値を示されております。それで、それ以上の勾配に対する補正値もございませんので、とりあえずこれは試算値でございますので、四%を使って試算をした、そういうことでございます。
  47. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 大臣、お聞きのように六%の勾配、これは大変な、そして先ほど来この図表でお示ししていますように、例えばバスとかトラックの場合でも、勾配が六%も上がりますと排気ガスが五・八倍とか四・六倍に上がるのです。それに対して四%ですと、せいぜい三倍とか四倍未満なんです。  ということは、この表をごらんいただきたいと思いますけれども、図一というのと図二というのが出ていますけれども、勾配が四%の場合と六%の場合では、例えばばい煙排気量の割合が倍以上、倍近くと相当変わるのです。それから、下の方を見ていただいても、例えばバス、トラックに関しましても、四%と六%ではこれだけ差があるのです。ところが、まだ四%しか数字が出ていないので、これで対応するというのでは、これは実際にこの差が出て、先ほどのいわば塔を建てるというのも、七メートルというのも、これはあくまでも四%までの話でございまして、四%から六%に勾配が上がることによって排気量が加速度的にふえてくるわけですね。  これに対して、今までのそういう四%しかないからというので済ますのでは、これは未然予防にならないのじゃないですか。大臣、今のお話をお聞きになって、どうですか。
  48. 中山正暉

    中山国務大臣 まだ実際に走っておりませんので、これはどういう数字が出てくるかというのは予測ができません。しかし、早く通過道路をつくりませんと、そういうものが町の中に、自動車が入り込んでいきますと、また交通事故も起こりますし、特にまたそういう排気ガスの問題は地上を走る場合でもあるわけでございますので、やはり過密の東京都、三・六%の国土の中に二六%の人口が住んでいるという東京都の場合、一刻も早く通過していく自動車を送り出すような、そういう道路行政というものが必要である。  そして、今着々とその準備が進んでおるわけでございまして、知事からも促進をしてくれという御依頼を私は昨年の十一月一日に受けておりまして、その意味での首都の責任といいますか、首都行政の中での道路、大体全国から大都市東京に集中してくるわけでございますので、その通ります地域の方には大変御迷惑をおかけするとは思いますが、これはいたし方ございません。  空港の周りに住む人たちには空港のいわゆる騒音公害からいろいろなものがございますし、廃棄物を処理します施設の周りにはやはり御迷惑をおかけしますし、そこにあるということで大変御迷惑をする方には万全を期して、そういう被害が未然に防止できるような対策を道路建設とともに立てていくということが、私はやむを得ぬ、それは何もないことが一番いいことかもわかりませんが、この近代的な国家において経済力を保つためには、やはりそれなりの産業基盤であります道路を築いていかなければならないというのは我々の責務でございます。  いわゆる受忍義務ということで恐縮でございますが、その受忍義務に対して万全の対策を立てるということで、完成時に皆さん方に御迷惑をおかけしないような方式というものを研究してやっております公団の方に、私からもまた依頼をいたしたいと思っております。
  49. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今、大臣はいたし方ないということをおっしゃいましたけれども、尼崎の大気汚染では死亡した患者さんを含む五十名の方々が気管支ぜんそく等になっておられるわけですね。この尼崎と比較をしてみましても、この王子高速線の場合には、飛鳥山がございますけれども、飛鳥山の下をトンネルをくぐって、それで上がってくるのです。そして、その高速道路が高架になる部分、この坂の部分というのは明治通りなんです。明治通りというのは東京の大きな幹線道路の一つでございまして、既に二%の勾配になっておりますから、既に相当の大気汚染といいますか排気ガスがあるのです。それプラス六%の勾配で五百メートル上ってくるわけです。ですから、これは相当の排気ガスが出てくるのです。  いたし方ないとおっしゃいましたけれども、これはまだ建設中のことでございまして、今まさに未然防止ということをおっしゃっておられて、しかも未然防止ということは、この土石流等の、天災じゃなくて、構造物をつくるわけです。しかも、もちろん尼崎の場合にもまだ最高裁まで行っていないかもしれませんけれども、少なくとも一月の裁判においては、これは道路側の義務ということを言っているわけですね。仮に確定をしていなくても、そういった方針が出されている、そういった流れからいいますと、今対応をしておけば、例えばぜんそくの患者の方々も今の段階でとめることができる。しかしながら、今対策をとらないで、しかも六%と四%というような、まだ検査をしていないという段階でもって確定をした方式を決定したことによって、これでぜんそく患者の方々が出られるということになりますと、これは未然防止をしなかった。これは環境基準もだんだん変わってきています。だけれども、環境基準が例えばSPMについても変わってきているわけですけれども、そういった環境基準が変わってくることによって対応していくというのがまさに未然防止なのじゃないですか。  予防医学、予防外交というのは、何かが始まる前にやることも一つですが、進行している途中で、現在進行形の段階で対応をとるというのもこれは未然防止、予防医学、予防外交で、方針を変えていくということも、まさに未然防止の非常に重要な面じゃないんでしょうか。  であるならば、これは先ほど来図表も示しておりますけれども、四%と六%の差というのは非常に致命的なことになり得るんですね、出てくる大気汚染からしますと。これに対して、まだはっきりしていないので何もしない、あるいは十分でない措置でもってとめていくというのは、未然防止と先ほどおっしゃいましたけれども、それをせずに、今の大臣のお言葉の、いたし方ないでは済まないんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  50. 中山正暉

    中山国務大臣 いたし方ないということは、現実にその道路が建設が進んでおりますものでございますから、特にこの東京都という首都の責任において、私は、これもヘリコプターでずっとその道路の上を見させていただいてまいりました。大都市パリとかロンドンに比べまして、東京の場合は全くきれいに環状道路ができ上がっておりません。そのために都内各所にそういう問題が起こっておると思いますので、先生と私、全然逆の方向を言っているんじゃなくて、未然に予測されるものを、できるだけ想像力を駆使してどういうことが起こるのか想定をして、そして公団に万全の対策を立ててもらうための技術的な、また環境評価に対する想定をして対応していただいて、そしてこの東京の過密の場所で大変な技術を駆使して、道路工学的なもの、私は上からヘリコプターで見せていただいて、日本のそういう方々の努力の成果というもの、これが民衆の皆さんから受け入れられるような評価を受けるようなことで決着をつけなければいけない。  先生のおっしゃる意味で、未然防止ということで、私は公団の方にもそういう意味の依頼をしているところでございますので、一日も早く皆さんに現実の対応をしていただくような事態が、道路の完成によって皆さんで共通の評価が持てますように、いろいろな想定で、いろいろないわゆる意見の相違というものがかえって道路の進行を阻むようなことにならないように、早く道路の完成を見、そしてまた皆さん方に御迷惑をおかけすることのないような、日本経済全体にとりまして効果をもたらすような道路が完成すること、そういうふうに私は考えております。
  51. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ちょっともう少し掘り下げますが、先ほどの道路公団の話ですと、あたかも最新の情報で四%しかないとかいう言い方をしていましたが、実際には二酸化炭素だけではなくて窒素酸化物の環境基準値も上回るということははっきりしているんです。  SPMは、いわゆるこの高速線が認可をされた昭和六十一年の段階ではその評価基準に入らないことになっていましたが、現在では、SPMというのは窒素酸化物と同時に非常に重要になっているわけです。それから、私の請求に対する答えのSPMの濃度予想値は、平成十五年というものを一つ基準にして回答してきているんです。平成十五年、これは先のことで、それから、排出係数原単位というのは平成三十年としているのです。  ということは、大臣もお兄さんはお医者さんでいらっしゃいますけれども、予防医学の場合に、やはり起こり得る検証をしっかりした上でそれに対する選択肢を持つということだろうと思うんです。どうも今までの道路公団あるいは建設省の対応というのは、おいしいもの食いじゃないけれども、環境基準については東京都のものを持ってきて、あるものについては別のところを持ってきて、いわば我田引水的に、今までの工事をそのまま続行するというための裏づけの材料を非常にいろいろなところから持ってきている。そして、ないものについては、結局ないままにずっとしてきている。それで、実際の測定をしたのも去年の十二月なんです。しばらくの間、測定もしていなかった。  そうしますと、窒素酸化物に関しても実は環境基準を上回っている、それからSPMについても四%までしか出していないとかこういう段階で、先ほどのようにシェルターはつくりません、いわゆる塔だけで済ませようとしている。いわば、地上に出てくる排出ガスを煙突のように上に出すから高さが十分あれば済むだろうと。ところが、前提となっている全体の予想の排出量をそもそもまだ検証していないんです。そうしますと、お医者さんが十分検証していないまま現在進行形で走ってしまっているということは、これは予防医学の観点からしますと、やはり起こることについては最大限こういった対応をするという対応をしなければ、これは予防医学にならないのではないか。  そういう意味では、今までの建設省、道路公団のNOx、つまり窒素酸化物に対する究明、それからSPMに対するしっかりとした数字の出し方について不十分です。ですから、大臣、一たんそういったものがはっきりするまでは少し対策についても、もう一度ゼロからやり直す。  それから、今例えば中断できることについては、もちろん私はできるだけ早く開通をしてほしいと思うけれども、ただ、環境汚染を犠牲にしても今進行するということについては、今いろいろな意味で、都知事もディーゼル車のSPMの除去装置についても義務づけをするとかいういろいろな流れの中で、場合によってはちょっと一たんとめて、そして対応するというようなことも含めて、とにかく基準値が全然出てきていないのです、材料を出してこない。これについて、しっかり出すということを大臣の方から表明をしていただきたい。これは大臣の方から。  今まで、とにかく出てきていないのです、四%までしか。これでは、どのくらいの汚染が出るかということをはっきり認知せずに進めても、十分な対応ができないんじゃないですか、どうですか。これは大臣に。
  52. 大石久和

    大石政府参考人 先ほど首都公団の方から御説明申し上げましたように、当該道路は東京都におきまして環境影響評価の手続を経て、都市計画決定に基づき実施されているものでございます。  環境影響評価は、その時々の最新の知見に基づいて行うものでございます。御指摘のように、NOxの評価はいたしておりますが、SPMの評価はしていないではないか、そのとおりではございます。しかしながら、個別具体の事情により対応を求められる場合は、工事実施段階あるいは供用段階において必要な対応をしていくということを考えながら実施していくものと考えてございます。  建設省といたしましては、首都高速道路公団が環境影響評価の手続を経てつくりました工事実施計画が、この計画を踏まえて策定されたものであることを確認し、現在、道路整備特別措置法に基づく工事実施計画の認可を行っており、それに基づき、施行がされているものと考えています。
  53. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 大臣、今の答弁の、そういう問題じゃないと思うのです。さっきから言っていますように、環境基準自身も変わってきている。一方で、実際に六%勾配でありながら、六%勾配に対してこう対応しますという材料がないまま対策をとろうとしているのです。そのことに関して、今の局長の答弁も答えていないのです。  ですから、基本の問題は、手続上の問題以上に、大臣、これは予防外交、未然防止内容でございますので、例えば去年の天災が起きた、そのときに手続上は問題がなかったというのであれば、そもそもきょうこういう法律をやっていないわけですよね。ましてや、今私が問題にしているのは天災じゃなくて、物をつくっていて、物をつくっている中からこういったものが出てくる。出てくるものの実態を十分把握をしないまま、そのままの段階の対策で済ませている。これでは、もっと出得る蓋然性が非常に強いと思うのです。  この蓋然性ということが、尼崎大気公害訴訟も一つの大きなキーワードだったと思いますけれども、蓋然性に基づいて、つまり、どの程度汚染が出得るかということを最大限予想した上での対策が全然できていない。ですから、手続の問題じゃなくて、対策ができていないんじゃないですか。大臣、どうですか。
  54. 中山正暉

    中山国務大臣 これはもう環境影響評価も済んでおりまして、これは私が認可したものでも何でもないわけでございますが、過去の大臣が認可をされて、それを早く建設をするように、特に今、日本は五十三億時間のロスがあって、一人が大体二日間ぐらい自動車の中で寝てもらっている勘定になる。その上に十二兆円の経済的なマイナス効果がある。私は、納税者に対する義務として、そういうものを早く運用するような道路行政というのは必要だという感じを持っております。  先生のお言葉でございますが、これは病院へ入っても死んで出てくる人もいるわけでございまして、病院へ入った人がみんな生きて帰ってくるのならいいのですけれども、その意味では、その因果関係が直接つながらないことに対して万全を期すという、現段階での科学的な評価というものは、道路ができてから、それに対してどういう効果が出てくるかということを踏まえて万全を期すということが、納税者に対する国の道路行政を預かる建設省としての責任だと私は思っておりますので、着々と工事は進めさせていただかなければならない、かように考えております。
  55. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 病院に入った人が死んで出てくることもあるということは、それは今大変な発言をされましたけれども、今問題になっているのは、大気汚染があるところに人が住んでいるかどうかです。つまり、結果的に病気になるか死ぬかということじゃなくて、実際に大気汚染があるところに高速道路ができることによって大気汚染が出るか出ないかの話をしているわけです。  その出るか出ないかの判断基準が、今環境評価基準のことをおっしゃいましたけれども、それは昭和六十一年ですよ。今は、昭和で言いますと昭和七十五年ですよ。その間に実際に環境基準も変わってきて、それから世の中の環境に対する考え方も変わってきた。  それから、当時自分は認可していないとおっしゃいましたけれども、まだ進行中であって、進行中の今建設大臣ですね。ですから、現在進行のことについて対応できるのは建設大臣ですよ。ですから、それを病院に入って死んだ人も出てくるというのでは、これはもう責任放棄そのものじゃないですか。  もし大気汚染が出てきたら、大臣はどういう責任をとりますか、どういう対応をとりますか。
  56. 中山正暉

    中山国務大臣 先ほど私の兄貴の医者の話を引用されたものですから、私がその話をして、けさも放送を聞いていましたら、中国の昔の医者は治らない限りは治療代を取らなかったというような話をきょうテレビでしておったものですから、ついそれを引用したわけでございます。  私は、道路行政の責任者として、六十一年とおっしゃいましたが、簡単に道路なんというのはできるものじゃございませんで、その出発した時点から、早く道路などを仕上げるようにと会計検査院から建設省は非常に言われております。私、この間も、圏央道を見に行きましたときにも、九百人の方が賛成をして、たった四人の人の家に一坪地主が六十八人入っている。そして、私は、建設大臣室でその反対の方の御意見伺いまして、それから現場へ行きましたら、もう一遍に一坪地主が百十三人にふえていました。  そういうことを見てみますと、国民の皆さんから税金をいただいて、早く道路をつけろという御要望もたくさんあるわけございまして、現場へ行きましても、各市の市長さん、それから知事さんも、十一月の一日にわざわざ石原知事も来られましたし、そういう道路行政を進めていく上で、それに対して、何といいますか、害としての飛沫を浴びる方に対する対策をどう立てるか、そのことで全体をとめるということは、これはまた納税者に対する義務を果たさないという我々の責任にもなるわけでございますので、まことに恐縮でございますけれども、私はこれは着々と進めさせていただきたい。  十一月の一日に石原知事が来られたときも、昭和四十五年、根本龍太郎建設大臣が圏央道の工事を凍結したということで、東京都が世界の大都市に比べて大変お粗末な環境状態になっている、CO2とかNOxという、東京都全体のことを考えてくれるためにはぜひひとつ凍結を解除してくれということを私は依頼を受けておりますので、その意味での責任を私は果たしたい、かように考えております。
  57. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 時間が参りましたので、その着々という中には、後になって、あの中山建設大臣の段階で対応しておけばよかったのに、しなかったので、王子環境汚染訴訟になったと言われないような対策を着々と進めていただきたい、しっかりと指示をしていただきたいことをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  58. 大口善徳

    大口委員長 渡辺周君。
  59. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 引き続きまして、持ち時間の範囲内で今回のこの法案について質問をさせていただきます。  まず、本題のこの法案の審議に入ります前に、建設大臣に改めて、この問題は何度かもうこの建設委員会でもお尋ねをしてまいりました。恐らく、巷間言われておりますように解散・総選挙に間違いなく、なる。そしてまた、その後、大臣がこのまま留任をされるのか、あるいは総理になられるのかわかりませんけれども、一つここでお約束を果たしていただきたいという願いを込めて、先般の一月の吉野川のいわゆる住民投票、第十堰の改築事業の是非を問う住民投票が行われた際に、大臣は、我が党の仙谷あるいは前原両議員の仲介で、住民投票の中心人物でありました姫野さん初め住民団体の皆さんとお会いをされました。  その中で大臣は、住民団体の方々に対しまして、住民投票の結果を尊重する、そしてまた、できるだけ早い機会に地元で話し合う、そしてまた、事業内容についてはゼロからまた話し合おうではないかというようなことを、三点約束をされたというふうに我々は確信をしているわけでありまして、また、二月十七日の予算委員会におきましては、予算が上がったらぜひ現地へ行きたいというようなことも述べていらっしゃるわけであります。  もちろん、その後、有珠山の噴火、それから小渕前総理の病気退陣に伴ういわゆる政局の激変がございまして、いろいろな形で多忙をきわめられたということは想像がつくわけでございますので、それが今日までどうであるということは私自身は申し上げませんけれども、大臣として、私も今回の建設委員会での質問が今国会での最後の質問になると思います。生涯最後の質問にならないように一生懸命努力するわけでありますが、これはジョークで言っております。  そういう意味で、改めて確認をさせていただきたいわけでありますけれども、大臣の任期の間にぜひともこれは実施していただきたい。地元の方々もお話をしたいという思いを強くしているわけでありますが、その点につきまして、大臣、もう一回御答弁いただきたいと思います。
  60. 中山正暉

    中山国務大臣 私も、吉野川には大変な思い入れがございます。何度か現地にも参りましたり、それから瓶ケ森、本川村というところからその源を発しておりますが、瓶ケ森の水源から百九十四キロ、吉野川、日本の暴れ川、大利根川の坂東太郎、それから筑紫の次郎、それから吉野川の四国の三郎という、百九本の一級河川、二千八百十七でしたか二級河川がございますが、そのたくさんの川々の中でも吉野川というのは私は思い入れがありまして、それで私からお招きをして、住民投票の活動をされている方、久米宏さんの「ニュースステーション」の番組で住民の代表として出てこられた方々をお招きして、私の大臣室で、大臣室始まって以来、建設省始まって以来、人間を特定せずに来られた方みんなに入っていただいてお話し合いをしたというのは初めてでございました。私も、そういうことは積極的にやりたいと思って、いつも三十年間の政治歴の中で、私はそういうことばかりやってきました。  ですから、この間も、前原先生、それから仙谷先生、竹村先生にお越しいただきまして、御一緒に来られまして、今先生がおっしゃったように、現地へ入ってお話し合いをしたいということはもう私の信念でございますので、先生と同じようにこれが最後の答弁になるかもわかりませんが、それは別にして、建設大臣として在任中に、十月の十八日ということで、私は、総理大臣には解散はサミット後がいいのではないかと言っておりますので、何かそれ以前にあるみたいな話がどんどん出てきておりますが、私はやはり小渕さんの内閣を継承されたというならば、小渕さんが思い入れを持っておられたサミットというのが済んでから解散をすべきではないかと思いますが、そんないろいろなスケジュールを頭の中に入れながら現地へ入ってみたい。  それから、オランダとの修好四百年祭で、この間ヨハネス・デ・レーケ・シンポジウムというのがありました。ヨハネス・デ・レーケという人が、木曽三川とかそれから大阪の淀川、淀川は結局、明治三十六年にヨハネス・デ・レーケは本国へ帰られましたので、その後、沖野さんという方が淀川の改修をやられたようでございますが、吉野川にも明治十七年に、この固定堰は将来危ないぞということを予言しておられますので、私、そんな意味がありまして、何となく。川というものが整備されるようになりましてからまだ百年ほどしかたっておりません。ですから、それこそこれからの百五十年に一度とか、それから七十五年に一度といいますが、大阪の淀川あたりはもう十年に一度。もし大阪の阪神電車とか阪急電車のところから水が漏れたら、もう日本一の地下街は一遍に水につかってしまいます。  ですから、吉野川の皆さんがお金は要らないとおっしゃるなら、ほかへ移してもいいのですよなんてこの間も冗談を言ったのでございますが、むしろ大被害があるところは、ほかにも緊急を要するところがありますから、それをどういうふうに対応するかというのは現場に入って、私は政治家として、私は技術者でも何でもありません、河川の専門家でも何でもありませんから、そういう専門家の話を聞いて、何が民衆のためにいいのか、その周辺に住まいされる方のためにいいのかというのは、政治家としての勘だけでございますので、私は、それを皆さんに説得することは現地に行って大いにやりたい、こう思っております。  先生の御意思に沿った方向で今後検討をしてまいるということは私はお約束をしたい。でも、物理的に不可能になれば、これはしようがありません。サミット前に解散なんということになりましたら、それはいたし方ございませんし、私も総理になるなんておっしゃっていただきましたが、そうはいきませんで、アイ・アム・ソーリーというやつでございますが、ですから、これはお約束はできませんが、物理的関係がない限りは現地にぜひ入りたいと思っております。
  61. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 本当に、これはもちろん解散の権限は総理大臣の専権事項でございます。ただ、もう今やサミット後にあると思っている国会議員の方はだれ一人いらっしゃらないのではないかと思うわけでございまして、巷間言われている常識的な範囲で考えますと、やはり現中山建設大臣がお約束をされましたこと。それで、この住民投票のあり方というのも、今回初めてこういう形で徳島市民の方々が意思表示をされた、それについては私自身も尊重をしますが、また反面で、住民投票という制度そのものがまだ日本の中に根づいているわけではありませんし、また、個々の方々がどのような形で意思表示をされたかというのは、これもまた私どもは、細かく個人個人の思いまで、どのくらいの強い思いであったかということは、もちろん私自身も現状においては知るよしもないわけであります。  ただ、それであるならば、逆に、建設省の最高責任者である建設大臣がやはり行っていただいて、今お話がありました、なぜこの問題を国として重要課題としてやるのか。そしてまた、住民投票に参加した方々も、あるいは参加しなかった方々も、どういう意思表示をされた方々も含めて、大臣室に特定をせずに住民代表の方々とお話を持たれたという度量の広い大臣として、これは今や日帰りで行かれるところでございますので、ぜひとも行っていただいて、お約束された、特に大臣の場合は、日本の一種の美風といいますか美徳というものに大変な強い思いを持っていらっしゃいます。これまでの答弁の中でも、私も党派を超えて尊敬をする次第であります。  日本の美徳を守る、まさに大臣の御発言の中によく出てまいりますけれども、ぜひとも「ニュースステーション」ですか、番組の中で、あるいは住民の方々とお約束されたことを、確かに時間的、物理的な制約があるのは承知でございます。現実問題として、今地元建設省の出先機関の方で、そういう現地入りについての話し合いを住民代表の方とされているということも聞き及んでいるわけであります。これはぜひとも、それらの意見のどこにどう違いがあるのか、あるいは、どういうふうな認識の違いがあるのか、あるいは、どこが共有できるのかという点について、何とか話し合いをする段取りを、大臣から指示を出していただきたいと思います。  また、大臣のその思いというものをぜひ事務方の皆さんにも伝えていただいて、ある意味では、ここで大臣が第十堰の問題を白紙撤回するということになると、民主党にとっても攻める材料を一つ失ってしまいますし、これは大変な痛手になるわけでございますが、それはそれとしても、やはり地元住民の方々の思い、それから民主主義のあり方、こういうことを考えていった場合には、ぜひとも率直な話し合いをしていただきたいという思いであります。先ほど、ちょっともごもごと口ごもったような検討する方向ではなくて、もうちょっと具体的な、明確なお約束をいただけないものかなということを再度お尋ねをしたいと思います。
  62. 中山正暉

    中山国務大臣 そういうことで、私はこれは政治的な問題ではないと思っております。もう一にかかって国土の形成をどうするか、河川をどういうふうに静かにしてもらうか。そもそも地球ができたときのまま流れていたものを、長い歴史の中で、あの固定堰も二百五十年ほど前、享保年間だったと思いますが、そのころにつくったものでございますから二百数十年たっているわけでございます。  そんな川をどうするかというのは、これはちゃんと国家的な国土としての資産、国土資産をどういうふうに価値あるものにして、これが今生きていらっしゃる方々の資産に悪影響を及ぼさないような、また人命に悪影響を及ぼさないような、身体に危害を加えることのないような川に仕立てていくために、私は純粋に、建設省の皆さんと相談をして、そして、登山口が違う、御殿場口、吉田口、富士山に登る道は、入り口は違っても、私は同じことを考えていらっしゃるのが住民の皆さんではないかと思いますので、話せばわかる、犬養木堂ではありませんが、話せばわかると思っておりますので、そういう意味で、何も私は後ずさりする気持ちも何もありません。  私は、皆さんと話し合いをするのがまた大好きで生きてきた人間でございますから、今選挙でも立会演説会がなくなったのが残念でしようがないという男でございますので、その意味で、いつでもディベートでも何でもやりたいものだな、そういう川についての知識も、そうしてお互いに磨き上げていって、吉野川というものにどういうふうにこれから対応していくかというのは、皆さんとの話し合いがかえって楽しみでございます。
  63. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 楽しみにしていただいたのは大変ありがたいことでございます。時期的なあれはいただけないわけですけれども、何とか任期中に公開で話し合うということについて一言言っていただければ、これはある意味では中山建設大臣に対しての信頼感というのは地元の方々も大変強いわけでありまして、決して、来て、そこで何か血祭りに上げてやろうとかなんとかではなくて、やはり冷静に本当に話し合いをしようということで、逆に大臣の説得によって、またいろいろな考え方も生まれてくるやもしれませんし、まさに今おっしゃられた、富士山の登り口が違っても、たどり着くところが一緒であるならば、そのプロセスの中で、ぜひとも一言、任期中に公開の場で話し合うという言葉をここでいただきたいなと思うわけですが、大臣、どうでしょうか。
  64. 中山正暉

    中山国務大臣 たとえ逆さまにつるされてむちでしばかれても結構だと思いますが、必ず行きたいということは、現場の係の人に早くそれで話し合いのあれを決めてくれということを指示を出しておりますので、現場の方々がこれからどういう形で話し合うのかということをいろいろ苦労してくださっておりますので、その方々にお任せをして、そして日程を決めていただきたい。また、内々で私なりに先生の御意思を体して役所の中では話をしたいと思っております。
  65. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 この問題だけをやっておるとまた時間がなくなりますけれども、ぜひとも一つの民主国家としてのやはり行政のトップと住民が垣根なく、隔たりなく話し合う機会をこれからつくっていく上で、今回のもし大臣の御決断がされれば大変画期的なことではないのかな、私はそのように考える次第でございますので、ぜひともその辺は、御多忙の中と存じます、政局のいろいろな問題もありますし、有珠山の問題も当然あります、百も承知でございますが、この問題についてぜひとも高いプライオリティーに置いていただきたいなとお願いをする次第でございます。  それで、今回の本題でございますが、この法律案幾つかにつきまして御質問をさせていただきたいと思います。  今回のこの法案の提出にある背景についてでありますけれども、日本の国土総面積の四分の三が山地、丘陵に占められております。地形が急峻で、脆弱な地質の土地が多いという我が国でございまして、これは国の方の資料でございますけれども、十年間の平均でも、年平均大体千件を超える土砂災害が発生をしている。風水害あるいは土砂崩れの時期、毎年毎年でありますけれども、またかまたかと新聞、テレビ等で報道されまして、これだけ本当にさまざまな砂防対策が行われていながら、毎年毎年、甚大な被害と、とうとい人命が失われているというような背景は承知をしているところでございます。  もちろん、この砂防法地すべり等防止法、急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律、いわゆるこの土砂三法によって対応をしてきているわけでありますが、しかし、今の日本の現状をちょっと見ますと、私も、これは今回の質問に当たって読んで、驚いたんですけれども、現在我が国に存在する土砂災害危険箇所が、土石流危険渓流数およそ七万九千、地すべり危険箇所がおよそ一万一千、がけ崩れ危険箇所数がおよそ八万七千、合計約十七万七千カ所に達すると。十七万七千カ所もあるとはちょっと想像だにしなかったわけでありますけれども、言葉をかえて言えば、まさに土砂災害列島であるというような状況に置かれているわけであります。  大臣も、もうこんなことは知っているよというふうにお思いでしょうが、この基本的な認識として、今回の法案の提出の背景となった点についての御認識として、従来の土砂三法による土砂災害防止対策の中心は、危険な場所をコンクリートで固めて危険箇所を安全な場所へ変えるというような、ある意味ではハード面の事業であった。今回の法案では、このハード面についての対策ではなくて、ソフト面への対策というふうに転換がされていくわけでありますが、転換というのか、さらなる法整備といいましょうか、この点についてどのような今回の本法案の基本的な必要性について御認識をお持ちなのか、まずは大臣にお尋ねをしたいと思います。
  66. 中山正暉

    中山国務大臣 先般も、広島土砂災害が起こったわけでございますが、現行のいわゆる砂防三法というのは、災害原因地における土砂災害防止工事等ハード対策を中心にして、その土砂災害防止に大きく貢献をしてまいりました。  今先生のおっしゃったような大変な数の危ない場所があるわけでございますから、それを周知徹底させることで、それに対応するために、開発進展に伴い危険な場所に新たな住宅等が立地することによりまして、危険箇所増加傾向にあります。なかなか住宅地、自分の土地を欲しいというと、自分が傾斜地なんかに土地を買っても、割に最初はいいところに家ができるというそのうれしさだけですが、家というのは、大体一年たつと建てた後不満が出てくるものだと言われております。その意味で、そういうハード対策だけで対応することは困難でございますので、危険箇所増加を抑制するというソフト面での対応、それからまた、従来の砂防三法に基づくハード対策と本法案に基づくソフト対策を連携させて、それから土砂災害防止をより効果的に実現しようとするものであって、転ばぬ先のつえといいますか、そんなものを砂防行政の中に入れてこよう、そういうことで土砂災害防止に一層努力していきたいと思います。  砂防法というのは明治三十年にできたものでございまして、地すべり等の防止法というのは昭和三十三年制定でございまして、急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律というのも昭和四十四年でございますから、ちょうど三十年たっております。この三十年の間に経済情勢も変化しましたし、住宅宅地に関する意識も随分変わってまいりましたので、そういうものに対応するには今が適当な時期、新しい世紀に新しいそういう砂防意識をひとつ広げてまいりたい、こんなふうに考えております。
  67. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 確かに、今幾つかの御指摘があったように、急速な都市化、急速な開発によって、どんどんといわゆる危険箇所開発行為によっていろいろ予測せぬことも現実問題として起きてきている。  もう一つ危険箇所がそれによって増加する反面で、年々、限られた防災施設の予算と考え合わせると、これからいわゆる防災施設の整備率を当面飛躍的に増大させていくことは不可能じゃないだろうかというようなことで、これまでも、昭和五十七年度ですか、土石流の危険渓流の周知、警戒避難体制の確立、住宅移転等の総合的土石流対策、それで、その翌年の昭和五十八年度からは、土砂災害への国民の意識を深めるということで、毎年六月を土砂災害防止月間という形でさまざまな啓発、運動をしているというふうにも理解をしているわけであります。  にもかかわらず、今回、情報提供の告知、土地利用規制、移転の促進をあえてここで法制化をするということについて、どういうわけで今回法制化をすることとなったのか、要綱等でうまくいかなかったのかどうなのか。そしてまた、さまざまな移転事業なんかも推進をしてきて、国土庁でも防災のための集団移転促進事業というような制度幾つかやってきているわけでありますが、今回、あえてまた重ねてでありますが、法制化をするということをどのように御説明いただくのか、御答弁いただきたいと思います。
  68. 中山正暉

    中山国務大臣 私どもが高速道路を走っていたり、特に私なんか関西なものでございますから、大阪から宝塚、あっちの方へ行く高速道路の右上なんかの傾斜地にできている家を見て、こんなところへ建てて大丈夫なのかなんて素人の私どもが見ても思うような感じがありますところが全国にもうたくさんあるわけでございます。  そういう中でも、土石流の危険渓流のところを周知徹底させるとか、それから警戒避難体制の確立等の対策を今日までも講じてきたところでございますけれども、法的な制度にはなっていなかったために、地方公共団体の取り組みにもそのばらつきがありまして、的確なソフト対策実施に一定の限界があったという感じがいたしております。  このために、本法案は、土砂災害のおそれがある区域を明らかにする、これはもうだれが見ても、専門家が見たらこれは危ないぞというところを指定して、その区域指定と連動させて警戒避難体制の整備、それから住宅等の新規立地の抑制、ここはもう家はつくらないでくださいというような警告を発するとともに、また、移転のあるところには、ここは少し場所を変えてもらった方がいいんじゃないですかというような、そういう移転の促進のための措置を講じることを内容とするものでございまして、そういう意味でのハードに対するソフトといいますか、そういうものを周知徹底させて、一人でも土砂災害で悲しいテレビのニュースにならないように心がけて提案したというのがこの法律だと思っております。
  69. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 それでは、政務次官にもお尋ねをしたいと思うわけであります。  建築基準法ですとか都市計画法においても、危険区域の居住等を制限するという制度があるわけであります。自治体が災害危険区域指定して、区域内における建築物の禁止を含めた制限の上乗せを条例で行えることになっているわけですね。  それをかんがみましても、これまでいろいろ、さまざまなほかの法律との関係の中でも、ほかの法律の中でも幾つかの対策がとられてきたわけでありますが、従来の法制度と何か不都合といいましょうか、何かふぐあいがあるのかどうか、その点についてお答えをいただければと思います。
  70. 岸田文雄

    岸田政務次官 先生の方から今、従来の法律との関係について御質問をいただきました。  まず、御指摘がありました建築基準法の災害危険区域の部分ですが、これは地方公共団体の条例で区域指定するとともに建築物の規制について定めることができる制度でありますが、これは従来、技術基準が明確でないというようなことから、区域指定や規制が地方公共団体によってまちまちであったということが指摘されております。  また、都市計画法に基づく開発許可制度でありますが、こちらは災害危険区域などの開発に適さない区域における開発行為は認めていないという制度でありますが、この制度におきましては、都市計画区域外の開発行為とか、あるいは社会福祉施設の建築を目的とする開発行為、こういったものは対象外であったということが指摘されております。  こういった部分を補うということから、今回、こうした法制化を行うということでございます。
  71. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今、政務次官から御答弁をいただきまして、まさにそういうことで、さらなる安全対策といいましょうか、被害を最小限にしていくということで御努力をいただきたいわけでありますけれども、ここで基本的な考え方にまた立ち戻るわけですが、大臣にちょっとお伺いしたいんです。  国民と行政の役割、基本的な考え方として、これはなかなか哲学的な話になってしまうのかもしれませんが、この法案を見ていろいろ感じたのは、政府は一体どこまで行うべきなんであろうかと。  今回の法案では、いわゆる警戒区域特別警戒区域の二つに指定をする。警戒区域はいわばお知らせをする区域として、一方で、特別警戒区域の場合は、先ほど来説明のありました、開発行為の規制でありますとか建築物の構造規制、あるいは移転勧告及びそのための支援措置が行われるということでございます。  その反面で、ちょっと考えてみますと、どこに住むかということは、確かに行政の責任として、ここは危険なんですよ、あるいは危険性の将来高くなるところかもしれないということを言っても、ある意味では、移転の自由みたいな自由も憲法上認められている。あえて言うと、一人一人、どこに住もうが自己責任の世界みたいなことを、小沢一郎さんも何か昔、そんな本でこんなことを言っていたような気がしますけれども、自己責任の世界があって、望むところに住む権利を持つ、しかしその反面でリスクも背負う、これは義務もあると考えられるわけであります。  そうすると、ちょっとこれは意地悪な言い方になるのかもしれませんが、実際そういう論議もいろいろな学者さんたちの間では出てくるとは思うんですけれども、このように考えれば、政府が危険情報を周知するのはもちろんみんな理解するわけですね。しかし、どこに住もうということに関してまで、あるいは人の家の構造物まで責任を負って、移転のための支援ということについては、いろいろ、これからひょっとしたら議論の余地というものはまだまだあるのかなというふうに思います。  そんなことを考えますと、こういう点について大臣がどんな御認識を持っていらっしゃるのかなと。ちょっと非常に、これはもう大臣というよりも、一つの哲学的なことになりますけれども。
  72. 中山正暉

    中山国務大臣 今、突然の御質問でございますけれども、私は、民主主義というのは最大多数の最大幸福ということだと思っております。  行政の及ぶ範囲というのは、技術とそれから潤沢な資金さえあれば、国民のできるだけ多くの人を幸せにするような、行政の中での治山治水、それからあらゆる生活面における、いわゆる介護の問題なんかでも、財政支援によるか保険によるかは別にして、国の機構の中でどういうふうに少子高齢化を徹底して、網の目をだんだん狭くしていって、一人でもそれから漏れる人がないようにするというのが、私は民主主義の極致ではないかと思っております。  その中でまた、いやそんな勝手に、おれがどこへ住もうと勝手だよ、山の上に住もうが、滝が見えるところへ住んで崩れたら、もうそれはおれの運命だと思う、そういう人たちに対して、先生がおっしゃるように、憲法上、どこへ住もうと勝手だということになっておりますから、自分の土地に自分が家を建てて住むのに、それにどうするんだと。  だから、私は、親切を理解してくれる人たちに対する民主主義の徹底といいますか、国が個人に対してどんなに親切にしていくかということを理解してくれる人以外は、もうこれはどうしようもないと思います。縁なき衆生は度しがたしと。  衆議院の衆という字も、余計な字の講釈で恐縮ですが、これは四つの衆、衆というのは、いわゆるお釈迦様が説教をする場所を与える人のことを発起人、これは言葉で残っています、発起衆。それから、お釈迦さんの話を聞いて、わけがわからないけれどもありがたいと思うのは、当たるという字とそれから機械の機、当機衆というそうでございます。それから、お釈迦さんと縁を結ぶけれども人には広めないというと結縁衆、縁を結ぶ人。それからあとは、こうだよと言って広げて歩く人。この人は、お釈迦様はすばらしいことをおっしゃっているよというのは、これが影響衆というんだそうです。その四つの衆を相手にしなさい、そのほかは縁なき衆生だ、こういうことでございます。  その範囲をいかに凝縮していくかというのが、哲学的な話ということでございますから、お許しを得ましたら、そういう人をいかに取り囲んでいって、安全な囲いの中に国家というものが入れるというのが、私は使命のような気がいたします。  私なんかは、戦争が済んだとき中学校一年生でしたから、戦争中、防空ごうへ入れというのに入らなくて死んだ人、それから、戦地に出征していった人には公務扶助料とかそれから遺族年金とかいうので出ていますが、これは、戦地でB29から落とした爆弾で死んだ人には公務扶助料とか遺族年金とかが出るのに、日本の国内にいて、同じようにB29から同じ爆弾で死んだ人には何も出ていません。それはどこが違うかというと、勇躍してというのが入るそうでございます。勇み躍って戦地に行った人には国が責任を持たなきゃならない。  そういう範囲、これをできるだけできるだけ網の目を小さくしていって、そして国民みんな一人一人が幸せになっていただく、私は、これが国家の発展していく、近代化がますます進んでいく、そういう国家の使命なんじゃないかなと。  何かわかったようなわからないような話でございますが、そんなふうな、直観的に、今先生の御質問を受けて、私なんかはもう余命幾ばくもありませんが、先生なんかはこれから本当に広がる人生、広がる国家への責任というのを持っていらっしゃいまして、ぜひ次も御当選されることを今から祈念いたしております。
  73. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今のお話の中にありました、まさに選挙活動に、本当にあの人はこういう人だ、まさにそういう縁をいただいて、そういう人たちがたくさんいればいいなと、お話の中で大変選挙運動に共通する部分もありまして、ありがたく拝聴いたしました。ありがとうございました。  実際問題として、権利の問題、いわゆる義務と権利とでもいいましょうか、逆のことを考えると、例えば、国の方である意味では認めた構造基準をクリアして許可がおりた、そこに住んで、何ら手落ちはなかったんだけれども、結果的に、例えば何らかの土砂災害が予見不可能なところで起こった。そしてまた、何か起こった場合、今度は逆に言うと、クリアしたからといって、いわゆる特別警戒区域の中で建築物を建築した、許可がおりた、何ら問題はなかったにもかかわらず被害が及んだじゃないか、そうしたら今度は、国は責任をどうしてくれるんだというようなことだって、当然自己責任の反面で、そうすると今度は、認めた国も悪い、まさにそういうことが起きるわけであります。  これもまた裏腹な質問で大変申しわけないのですけれども、例えばこういった場合にだれの責任となるのだろうかな、政府の責任になるのか、あるいは予見不可能であったということを考えればどのようになるのであろうか、そんなことをもしお答えいただければと思います。  あわせてもう一つ質問させていただければ、この法案の中に、第二条ですけれども、土砂災害の定義の中に、「国民の生命又は身体に生ずる被害」という中に国民の財産に生じる被害というのは含まれないわけでありますけれども、広義の意味において、財産というものも含まれるというふうに考えていいのか、それともわざわざ国民の生命または身体という点について限定をあえてしたのかという点についてお答えをいただきたいと思います。
  74. 岸田文雄

    岸田政務次官 まず最初の方の質問の責任の話ですが、この法律におきまして、御指摘ありましたように特別警戒区域において構造基準を定めているわけですが、この構造基準の設定に当たりまして、まず災害事例などこれまでの知見をもとに、建築物に作用する衝撃を想定して、この想定を前提としまして、生命や身体に著しい危害が生じることがないようこの基準を適切に定めるということになっているわけですが、先生指摘いただきましたように、相手が自然でありますから、これは完全に予測しがたい部分があるということ、これはもう否めないとは思っております。  しかし、この法律をつくる上で、今申しましたような考え方において構造基準をつくっているわけですから、こうした責任を問われるようなことにならないように万全を期すという建前でこういう基準をつくることになっておりますので、その上でどうするのかという部分は想定せずに、万全を期すという建前のもと法律をつくっているということをぜひ御理解いただきたいと存じます。  そして二番目の質問でありますが、要するに生命、身体という部分に限定して、財産を対象としない、その辺についてどういうことなのかということでありますが、まずこの法律、先ほど大臣の方からお答えしましたように、がけ崩れ、土石流等が発生しても住民の生命が失われないようにするソフト対策が、この法律の主眼であります。  そのために災害発生時に警戒体制を的確にとる、そして必要最低限の建築物等の構造基準を設ける、こういった仕組みになっているわけですが、これに財産まで保護の目的に加えるということになりますと、発生そのものを根本的に抑えなければいけない。対策工事をしなければいけないか、あるいは極めて広い範囲で規制をかけるか、これはどちらかしないと財産まで完全に保護することは難しいのではないかと思います。  ですから、この法律においては、ソフト対策として生命、身体にかかわる部分、この部分をしっかりと対象としていこう、そういった役割分担を行っているということでございます。
  75. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 ちょっと時間がなくなってしまいました。さらに掘り下げて伺いたいのですが、重要なことをあと二点ほどつけ加えて聞きたいと思います。  先ほどちょっと申し上げました、従来の調査危険箇所と言われるところが約十八万カ所ある、十七万七千ですか、ここを調査をするとなると、基礎的調査を行う、都道府県がやるというのですが、これは一県当たり、都道府県で平均してみますと三千八百カ所ぐらいある。これだけの危険地帯に対して、これを都道府県調査を行う、先ほど五年間程度で行うというふうに前の委員への答弁の中でおっしゃっていましたけれども、実際問題として、これは莫大な時間とコストがかかるであろうな、まず、この財政的な負担をどのようにしていくのかという点が一つであります。  また、現実問題としてどれぐらいの期間、五年というふうに先ほど答弁の中であったようですけれども、本当に五年という時間の間にできるんだろうかというふうなことを漠然と思うわけですが、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  76. 岸田文雄

    岸田政務次官 先生、御指摘いただきましたように、約十七万七千カ所、十八万近い箇所、膨大な数でございます。この数の多さはしっかりと受けとめなければいけないと思うわけですが、一方で、土砂災害に対する危険というのは、これはもう日々あるわけでありますから、こうした膨大な数に対しても、しっかりと努力をして対応をしていかなければいけない。そういった努力を積み重ねることによって、五年間かけて、五年の間にはぜひこの基礎調査を終えて対応をつくっていきたい、そのように考えているところでございます。  そして、費用の点にも御質問がありましたが、費用につきましては、先ほども申し上げましたように、この基礎調査というもの、この法律によってでき上がる制度の中で大変重要なポイントだと思っております。この部分がしっかりできていないと、この制度自体がうまく機能しないと考えておりますので、この五年の間にそれぞれの地域においてそれぞれの作業が行われるわけでありますが、ケース・バイ・ケースで必要な支援を行っていかなければいけない。その費用につきましては、そういった考え方でしっかり都道府県への支援を考えていきたい、そのように思っております。
  77. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 しっかりとした支援ということでございますが、これは例えば、いわゆる都道府県負担分については地方交付税で交付税措置を行うのかというようなことなんでしょうか。それとも、そこまではまだ考えていらっしゃらないのか。
  78. 岸田文雄

    岸田政務次官 本法案で規定しておりますのは、基礎調査費用都道府県の財政負担の軽減のために費用の一部を補助するということでございます。一部というのは、これは政令で定めることになりますが、国が三分の一を負担するというようなことを一応予定しております。  地方交付税措置でございますが、この基礎調査費の都道府県負担分について、ほかの事業におきます事業調査においても、地方交付税措置を行っている事例はないと考えております。ですが、都道府県の財政負担の軽減ということでは、今後の課題として検討することはしていきたいというふうに思っております。
  79. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 実際問題として、これを実効性あるものにしていくためには、こうした今の財政の厳しい状況の中で、どのような形で実際この五年間という歳月の中でやっていかれるのかということでありまして、その辺がはっきり裏づけがないと、実際、法案自体も何か絵にかいたもちになってしまうんじゃないだろうかと思うわけでありますから、ぜひとも、その上においての財政的な部分についても今後検討を深めていっていただきたいなと思うわけであります。  それから、これからいわゆる警戒区域特別警戒区域、これの情報を、例えばどういう形で住民に知らしめたらいいんだろうか。これまでもいろいろな形で、都道府県の広報でありますとかあるいは市民便りのようなもので伝えてはいるというのはもう承知しているわけでありますが、なかなかこうしたものというのは目にとまらないわけでありまして、例えば災害何とかマップをつくっても、よほど関心があって、日常何か、例えば有珠山じゃないんですが、つい最近もそういうことがあった、だからといって、意識の高いところと、いや、そんな予想だにしなかったというようなところがまず当然あるわけでありまして、そういうところに例えばどういうふうに周知をしたらいいのか。  それともう一つ、ちょっと関連して伺いますと、いわゆる土地取引ということを考えた場合、重要事項説明に、土地取引の際に、特別警戒区域指定されているということを、例えば売買のときには伝えることがあるというふうに理解しているわけでありますけれども、先般の都市計画法の改正でも、地価に大きな影響を与える容積率の移転を、その後の土地取引の参加者にどのように周知されるのかというところがあいまいなまま、何か我々は理解したような気がするんですが、当然、住民へのいわゆる周知の手法、それから土地取引における周知、告知、この点についてこれからどういうふうな方策を考えていかれるのか、政府にお尋ねをしたいと思います。
  80. 岸田文雄

    岸田政務次官 周知方法についての御質問ですが、まず、警戒区域等の周知方法につきましては、指定区域等を公示するとともに、一般住民を対象に縦覧する。公示と縦覧、これはまず法律の中で規定しているところでございます。  その法律以外に、先生も今お話しの中に出ておりましたが、ハザードマップのような図面を作成し、これを配付するというようなこと。さらには、現地が警戒区域等であるということが明らかにわかるように表示板を設定する等、そうした現地における工夫もしっかり進めていかなければいけないと思っております。  こうしたハザードマップとか表示板の部分は都道府県が責任を持つことになると思いますので、都道府県に対して、具体的にその周知徹底の方法、この辺につきましては、しっかりと検討して徹底するように指導していかなければいけないというように思っております。  そして、土地の売買につきまして御指摘がございました。これにつきましては、土砂災害特別警戒区域であることにより土地利用の制限がかかる旨の説明、この説明を重要事項説明と位置づけまして、宅地建物取引業法の政令で措置することによって、これを説明することを義務づけるということを予定しております。  こうした法律における措置等もあわせまして、国、地方の対応等を総合的に活用して周知徹底を図っていくというように考えております。
  81. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 この法律については、とにかく一人でも多くの人命が危険にさらされることがないように、我々も一丸となって、ぜひともこの法律を、まさに名実とも実効力のあるものにしていかなければならないと思います。  いずれまた、次の国会でも質問をする機会もあるかと思いますので、またこうした問題につきましては、ぜひとも、ともども国民の生命財産を守るために頑張ってまいりたい。  以上で終わります。
  82. 大口善徳

    大口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  83. 大口善徳

    大口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上義久君。
  84. 井上義久

    ○井上(義)委員 建設省調査によりますと、平成二年から平成十一年までの十カ年の年平均で、千二十三件の土砂災害が発生しております。最近では、平成十年八月に東北、北関東で、平成十一年六月には広島で、土石流災害がけ崩れ災害が発生して、多大な人的被害がもたらされたことは御承知のとおりでございます。こうした状況に対して、土砂災害防止工事、これは着実に進められているわけですけれども、危険箇所はふえる一方。  こういう現状を踏まえて、やはりハードだけでは土砂災害対策は限界があるということで、今回この法案で、土砂災害に対して、災害防止工事というハード対策だけではなくて、危険箇所の立地抑制や警戒避難体制の強化などソフト対策も拡充して被害を最小限にしていこう、こういう立法趣旨で提出をされた、このように認識しておるわけでございます。  まず大臣に、今後の土砂災害防止の基本的な方向並びにこの法案の位置づけということについて、特に既存の法制度土砂三法との関連についてお伺いしておきたいと思います。
  85. 中山正暉

    中山国務大臣 今も先生から御指摘がありましたように、十年間で千二十三件の災害があったということで、既存の砂防三法というのは、いわゆる砂防法地すべり等防止法それから急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律法律も、明治三十年、昭和三十三年、昭和四十四年と、回を重ねるごとに、法律の名前すら密度が上がってきているようでございます。  それから三十年たちまして、今、この災害原因地における土地の災害防止工事等のハード対策を中心として土砂災害防止に大きく貢献をしてまいりましたこの法律から一歩進んで、開発進展に伴いまして、危険な場所に新たな住宅等が立地することによりまして危険箇所が増大する傾向にあるということでございまして、その増加を抑制するソフト面での対応が必要だと思います。  明治三十年ごろというと、人口も六千万、七千万ぐらいのところでありましたのが、今は一億二千万、それも都市周辺に集中しているということでございますので、大変条件の悪いところに家が建つというようなこともあるわけでございます。この法律案は、ソフト面対策実施するための法律という形でソフト対策に徹したということでございまして、いわゆるハード対策とこれは連携させて、土砂災害防止対策をより効果的に実施していくような一層の努力をしたいという決意のあらわれだ、かように考えております。
  86. 井上義久

    ○井上(義)委員 平成十年の八月末の集中豪雨で、福島県の西郷村にある県立の社会福祉施設太陽の国の救護施設からまつ荘で、入所者五名が土石流によって死亡するという痛ましい事故がございました。私も、この災害直後、朝のニュースで知りまして、濁流に車が押し流されそうになりながら現地に行ったわけでございますけれども、高齢者の方や障害者それから子供たち、いわゆる災害弱者が利用する施設災害対策強化の必要性緊急性ということを非常に痛感をいたしました。  帰りましてすぐに、当時、野中官房長官でございましたけれども、こういう福祉施設災害対策について、というのは、西郷村のこのからまつ荘はいわゆる急傾斜地の危険対策地域にも指定されていなかった、こういう現状があるわけでございまして、早速総点検をして避難体制等を含めて取り組むようにお願いをし、またその後の建設委員会、災害対策委員会でもこの問題を取り上げたところでございます。  これに関連して、きょう厚生省からも来ていただいていると思いますけれども、この太陽の国の現況がどのようになっているのか、またその後、この災害を受けてどのような対応策をとってきたのか、このことについてまず確認しておきたいと思います。
  87. 森山幹夫

    森山政府参考人 厚生省社会・援護局の施設人材課長でございます。  初めに、平成十年八月、生活扶助の施設など総合的な施設でございます、社会福祉施設群でございます太陽の国で、土砂災害によって亡くなられました五名の方々の御冥福を、改めてお祈り申し上げる次第でございます。  まず、この施設面でございますが、被災後とられました対策と現況につきまして御説明申し上げます。まず、裏山につきまして砂防工事実施されました。その間において、二百四十六人分の仮設施設を整備して入所していただきました。工事終了後、合計六百四十四人の入所者に一時的に避難していただきましたけれども、最終的には、施設の復旧工事が進んで、現在回復しているところでございます。また、平成十一年三月には、復旧工事が終了したところでございます。  次に、運営面でございますが、運営体制の強化でございますが、太陽の国におきまして、施設の運営に関しまして、地元の西郷村との間で防災協力協定を締結いたしまして、警報が発令された場合は、電話またはファクスによりまして、直ちにその情報の提供を受けることとしております。  また、警戒体制につきまして、気象の状況に応じまして、一次から三次までの警戒体制をしきまして、施設周辺の状況の把握、非常事態に備えました防災対策会議の設置あるいは警戒要員の配置などを行うことといたしております。  また、避難誘導体制につきましては、新たに土砂災害を想定いたしました避難誘導体制に関しまして、各施設で定める防災計画にそのような体制を反映しているところでございます。  また、通報網につきまして、施設内のすべての電話機からの一斉放送を可能といたしまして、外部への救援要請等を二経路で確実に伝達できるようにするなど、システムの改善を図ったところでございます。  このように、防災体制の見直しも実施しているところでございます。
  88. 井上義久

    ○井上(義)委員 この太陽の国のような災害弱者施設は、今後、少子高齢化の進行もあって増加していくというふうに考えられるわけでございます。新規立地を抑制しつつ、危険箇所について対策を講じる場合に、特にこの社会福祉施設等の災害弱者関連施設に重点を置くということが必要だ、このようにまず指摘しておきたいと思いますし、それから、土砂災害における災害弱者の被災状況が現状どのようになっているのか、また、土砂災害のおそれのある区域における災害弱者関連施設の立地についてどの程度把握をしているのか、このことについてまず確認しておきたいと思います。
  89. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 からまつ荘の災害の後、関係省庁、建設省、厚生省、林野庁で共同して全国調査実施しました。その結果、私ども、災害弱者関連施設全国危険箇所における配置状況を把握したわけでございます。  また、平成十一年の全国土砂災害の発生状況等も調べますと、がけ崩れ、土石流、地すべり、合わせて千五百件が発生しておりますが、三十四名の方が亡くなっており、このうち約六割に当たる二十名の方がいわゆる災害弱者の方でございました。  私ども、この災害弱者関連施設の先ほどの調査の結果、十三万九千の関連施設のうち約一万九千施設危険箇所にあるということがわかっておりますので、この危険箇所につきましては、重点的に砂防事業推進と避難場所情報提供、警戒避難体制の確立等、関係省庁が連携して実施していきたいと考えております。  なお、先ほど御質問にあった、からまつ荘の災害復旧でございますが、四つの渓流におきまして、砂防ダム三基、床どめ工一基、約七億円の事業を一年間で緊急事業として完了してございます。
  90. 井上義久

    ○井上(義)委員 平成十二年の二月の河川審議会の答申でございますけれども、土砂災害特別警戒区域における規制の対象として、「人が夜間も含め滞在することとなる住宅、宿泊施設や避難行動に関し制約が大きい災害弱者が利用・滞在する災害弱者施設等とすることが適当である。」こういうふうに具体的に指摘しているわけでございますけれども、今回の法案の成立によって、災害弱者関連施設の立地抑制を具体的にどういうふうに進められることになるのかということと、それから、土砂災害防止工事を今計画的にしておりますけれども、既存の弱者関連施設に対する土砂災害防止工事はほかにも優先して推進していかなければいけないのじゃないか、このように思うわけですけれども、この点についてどうでしょうか。
  91. 中山正暉

    中山国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、本法案におきましては、土砂災害特別警戒区域内における、高齢者それから障害者が利用するいわゆる災害弱者関連施設に関する開発行為に関して、一定の対策工事がなされ、安全が確保されることを条件としてその開発を許可することにより、土砂災害の危険のおそれの高い地域における災害弱者関連施設の立地抑制を進める所存でございます。  当然のことだと思いますが、今まで、喧騒の場所から離れた、郊外の山に近いところとか、そういうところに立地しているのを私も何例か知っておりますが、こういう危険な区域というのは、建設省といたしまして、自力避難が困難な方が入所、それから入院されている施設土砂災害対策施設が未整備の箇所という緊急度の高い約一千六百カ所につきまして、平成十一年度からの五カ年で整備が概成できるよう計画的に砂防事業等を推進しているところでございまして、今後とも、災害弱者関連施設に係る土砂災害防止工事を積極的に、優先的に整備していく、私はそんな考えでおります。
  92. 井上義久

    ○井上(義)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  一方、災害弱者の方というのは、自力による迅速な歩行行動が困難であるということから、土砂災害の犠牲になる可能性が高い。やはりこの西郷村のからまつ荘の方なんかも全くそのとおりでございまして、土砂災害によって一気に押し流されてしまって命を失う、こういう逃げる間もなかったというのが現状でございます。  本法で指定される土砂災害警戒区域での災害弱者関連施設に関する警戒避難体制について、今後どのような施策を講じていくのかということと、また、その場合に、都道府県において社会施設を所管している部局とも十分連携をとって速やかに体制を整える必要があるというふうに考えますけれども、厚生省の取り組みについてもあわせて伺っておきたいと思います。
  93. 森山幹夫

    森山政府参考人 土砂災害危険箇所に立地いたします社会福祉施設につきましては、緊急時の避難連絡体制の整備を指導しております。また、危険箇所から移転する際に、新たな施設の整備に関します国庫補助につきまして優先採択をさせていただいております。また、社会福祉医療事業団の無利子融資などによりまして施設の整備を図っているところでございます。  また、冒頭御指摘の太陽の国での土砂災害を踏まえまして、昨年の一月に関係五省庁、これは文部、厚生、林野、建設、自治の五省庁でございますが、検討の結果、連名で通知を出しております。その内容は、都道府県に対しまして、国土保全事業推進すること、社会福祉施設に対します情報提供体制を行ってほしい、また社会福祉施設の防災体制の確立をしてほしい、そういったことの通知を出しておりまして、これらによりまして、災害弱者関連施設に係ります総合的な土砂災害防止対策実施を指導しているところでございます。  社会福祉施設に対します土砂災害防止につきましては、今後とも災害の未然防止に向けまして、関係機関、部局とも十分な連携を図りながら実施してまいりたいというふうに考えております。
  94. 井上義久

    ○井上(義)委員 あと若干、本法案につきましての具体的な問題についてお伺いしたいと思います。  まず、この土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域、この指定をするために都道府県基礎調査を行うというふうにされております。この基礎調査は、土砂災害防止の実効性を上げるための大前提であります。  的確な調査を行うためのマニュアルの徹底でありますとか、あるいは人員の確保、経費に対する支援措置はとられるのかどうか。また、区域指定を受けることによって権利制限が発生するわけでございまして、やはりこの基礎調査というものが厳密に行われませんと、非常に大きな問題を惹起することになりかねないわけでございますが、この基礎調査の厳密性というものをどのように確保していくのか、この点についてお伺いいたします。
  95. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 本法案におきまして、基礎調査都道府県知事の責務として位置づけているところでございます。この基礎調査は大変重要でございまして、建設省としても調査実施に要する費用補助実施に際しての技術的援助等、積極的な支援を行っていく所存でございます。  具体的に申しますと、調査全国的に行われますので、調査実施のためのマニュアル、技術的判断基準の作成のための助言等、技術的支援を行ってまいりまして、民間コンサルの力もかりまして、全国一斉に調査実施できるよう、体制づくりに努めてまいりたいと考えております。  なお、各都道府県におきましては、もう既に長年、急傾斜地崩壊危険箇所調査等、土砂災害危険箇所に関する調査を計画的また継続的に実施しております。そのため、調査は厳密に実施されるものと思料されますが、国としましても、ただいま委員の御指摘のように、権利制限に係るものがございますので、都道府県と連携して、技術的な判断のための支援体制を確立してまいりたいと考えております。
  96. 井上義久

    ○井上(義)委員 次に、平成九年十一月に建設省が行った住民意識調査によりますと、家の近くに土石流危険渓流があることを知っているかという問いに対し、知らないというふうに回答した人は四九%、それから、避難のために指定された場所を知っているかという問いに対しても、知らないという回答が五三%と半数に上っているわけでございます。警戒避難の心構えや土石流の前兆に至っては六八%の住民が知らないというふうに回答しているわけでございまして、危険危険と言う割には、災害に対する住民への周知徹底が必ずしも行われているとは言いがたいのではないか。  建設省平成九年九月、十年六月、十一年六月に、住民への周知を目的としたダイレクトメールを出した、このように聞いておりますけれども、その効果がどうなのか、またそれ以外の周知方法というものを具体的にどのように考えていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。  また、個々の住民の方に情報を伝えるということはもちろん喫緊の課題ではありますけれども、逆に住民の側からの情報の収集も視野に入れた、いわゆる双方向的な、インタラクティブなシステムの構築が必要であるというふうに思うのですけれども、見解はいかがでしょうか。
  97. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 住民へのダイレクトメールでございますが、委員指摘のように、私ども、住民の方々がどの程度の認識を持っているのかということを知るために、平成九年度から三カ年かけて都道府県等が近年の土砂災害発生箇所の周辺住民約十七万世帯に対し、ダイレクトメールを送付いたしました。  そして、土砂災害についての注意喚起をしたところでございますが、この初年度である平成九年度にアンケートを実施しました。その結果によりますと、ダイレクトメールを受け取った方の約九割が、このダイレクトメールは非常に有益だった、私ども最初、このダイレクトメールが、皆さんが住んでいるところは危ないよというおどかしの手紙のように思われるのではないかと大変心配したわけでございますが、大変有益だったということの結果を得ております。  このように、土砂災害に関する情報を住民みずから知っていただきたいというシステムがますます重要だという認識のもとに、住民と行政の双方向の情報交換を推進するために、平成十二年度から、土砂災害危険区域図の配付及び土砂災害の一一〇番の設置等を行う土砂災害情報相互通報システム整備事業を創設しまして土砂災害関連情報の共有に努めておりまして、私ども行政の知らせる努力と住民の知る努力の相まった土砂災害防止のための努力にこれからも全力を挙げていきたいと考えております。
  98. 井上義久

    ○井上(義)委員 それから、この警戒区域とかあるいは特別警戒区域指定を受けることになりますと、先ほども申し上げましたけれども、権利制限が発生するわけでございます。  現在、土地取引につきましては、災害危険区域、これは宅地建物取引業法による重要事項説明というふうにされているわけでございます。今回、警戒区域とか特別警戒区域指定することになるわけですけれども、これは当然重要事項説明の対象になるべきであるというふうに思うのですが、この点についてはどうなんでしょうか。
  99. 風岡典之

    風岡政府参考人 宅地建物取引業法でございますけれども、宅建業者が宅地建物の売買の仲介等を行う場合には、そういった対象となります宅地建物に関しまして法令上一定の制限がある、そういったときには、その内容につきましてこれを相手方に説明をしなければならない、こういうふうになっております。その場合の具体的な範囲あるいは内容につきましては、これは政令で定める、こういう扱いになっております。  本法案土砂災害特別警戒区域につきましては、先生指摘のように、一定の開発行為が制限をされる、そういった区域でありますので、これにつきましては宅地建物取引業法に基づきます重要事項説明の対象として政令で定める方向で検討しているところであります。  また、土砂災害警戒区域についてでありますけれども、この区域特別警戒区域のような直接的な権利制限を定めるというものではありませんけれども、急傾斜地崩壊等が発生した場合には、住民の生命、身体に危害を生ずるおそれがある区域、そういう危険のある区域でありますので、宅建業者の取引に際しましては、相手方の保護といったことを十分図っていく必要がありますので、特別警戒区域と同様に重要事項の対象にする、こういう方向で検討していきたい、このように考えております。
  100. 井上義久

    ○井上(義)委員 ぜひその方向できちっと政令事項で定めていただくようにお願いしておきたいと思います。  それから、特別警戒区域におきましては、建築物の構造規制がかかったり、著しい損壊を生じる建築物には移転勧告も行われることになっておるわけでございます。建築物の構造規制に伴う助成措置や勧告による移転者のための融資、資金の確保等の支援措置を具体的にどのように考えているのか。この移転者のための融資、資金の確保等の支援措置、これがないと危険でも住み続けるということになりかねないわけでございまして、この点についてどう考えているのかということ。  それから、特別警戒区域内の住民は、建築物の構造変更や最終的には移転などの対応が迫られるわけでございます。それから、これら住民に対する相談窓口の設置がぜひとも必要というふうに考えるわけでございます。実際的には市町村が対応するということになると思いますが、建設省、特に住宅局はきめ細かく自治体と連携をとって住民のニーズにこたえるべきである、このように思うのですが、御見解をお伺いしておきたいと思います。
  101. 那珂正

    那珂政府参考人 お答えいたします。  特別警戒区域に現に存在します住宅につきましては、本法律案におきまして都道府県知事の勧告を受けて移転等を行う場合について、住宅金融公庫貸し付け条件を優遇する措置を講じているところでございます。  具体的に申し上げますと、いわゆる住宅金融公庫の一般的な貸し付け条件であります段階金利を適用せず、十一年目以降も引き続き基準金利、現在ですと二・八五%ですが、基準金利を適用するとか、三年限度でございますが、据置期間の延長を設ける、それに伴う償還期間の延長三年というような措置でございます。  また、予算補助事業でございます既存のがけ地近接等危険住宅移転事業を活用いたしまして、住宅金融公庫措置とあわせて、移転される方の負担軽減を図っていく考えでございます。  さらに、御指摘のとおり、本法律によります円滑な移転等実施につきましては、地域住宅の所有者等地域住民の方の十分な理解が不可欠だと存じます。そのため、私どもといたしましても、御指摘のとおり地方公共団体の建築、住宅担当部局と十分連絡を密にいたしまして、都道府県そして市町村、いずれにおきましても担当窓口をきちっと設けて、十分な周知、PRが行えるように、また個別の住宅、建築に関するいろいろな御相談にも十分応じられるよう、体制の整備に努力していきたいと思います。
  102. 井上義久

    ○井上(義)委員 いずれにしても、土砂災害防止対策の基本方向をハードとソフトの連携というふうに転換するものであるということで、高くこの法案を評価しているわけでございまして、ぜひ実効ある対応をとられるように当局にもお願いして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  103. 大口善徳

    大口委員長 辻第一君。
  104. 辻第一

    ○辻(第)委員 今回の土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策推進に関する法律は、昨年六月二十九日の広島土砂災害を教訓としてまとめられたというふうに聞いているのですが、私も先般、広島市の被災地に参りまして、被災地の一部をいろいろと見せていただきました。たくさんの方々にお話を聞かせていただきましたが、もう既に九カ月がたっておるわけでありますが、その傷跡といいますか、本当に生々しく残っておりました。たくさんの方が亡くなられ、また家が奪われるという本当に悲惨な状況、この土石流災害の怖さというのを改めて感じてまいりました。亡くなられた方に心から哀悼の意を表し、被災者にお見舞いも申し上げて、質問に入りたいと思います。  最近、私は汽車の中でもバスの中でも山の方を一生懸命見て、土砂災害の起こりそうなところはどれぐらいあるのかというふうに見ておるわけでありますが、それぐらいのことでも危険な箇所が本当にたくさんありますね。土石流危険渓流、急傾斜地崩壊危険箇所、地すべり危険箇所など土砂災害危険箇所全国にはどれぐらいありますか。また、広島県にはどれぐらいありますか。その対策の進捗状況はどうなっていますか。この点をお伺いいたします。
  105. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 我が国は、大変急峻な地形と年代が若い地質を持っている国土でございまして、土砂災害が大変多うございます。急傾斜地崩壊では全国で八万六千六百、土石流では七万九千三百、地すべりでは一万一千、トータル十七万七千余ということでございます。  そのうち、広島県は全国一の土石流災害危険箇所を持っておりまして、急傾斜では五千九百、土石流では四千九百、地すべりでは八十カ所、トータル一万九百七十カ所ということでございます。広島は、国土の面積では二%程度でございますが、全国の六%の土砂災害を受け持っているというような状況になってございます。  なお、広島の進捗状況でございますが、こういう状況からかんがみて、広島県は重点的に投資がある程度進んでおりまして、全国の整備率が二二に対して、現在広島は約二八%の整備率に達しております。
  106. 辻第一

    ○辻(第)委員 今、本当に危険なところが多いなというのを改めて感じたわけでございますが、土石流危険渓流にいたしましても、急傾斜地崩壊危険箇所に関しましても、広島日本一多いということでございました。  六・二九土砂災害の、広島県における災害の概況及び災害発生の原因についてお尋ねをいたします。
  107. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 昨年六月二十九日の広島における災害は、死者が二十四名、負傷者十四名、全壊六十四戸、半壊七十四戸ということでございます。  その原因と申しますのは、広島県の花崗岩によります風化土壌ということにつけ加えまして、短時間に極めて集中した豪雨が襲いました。時間雨量七十ミリを超すような雨量が起こりまして、そしてさらに、連続雨量二百ミリから三百ミリという集中豪雨が襲ったということで、特に、広島県の山すそに展開している住宅地を土砂災害が襲ったということで、広島市、呉市を中心とする地域で三百二十五件に及ぶがけ崩れ災害、土石流災害が発生したものでございます。
  108. 辻第一

    ○辻(第)委員 広島について申しますと、全国で危険渓流が一番多い、それが傷になっているようですね。今はちょっと持ってこなかったのですが、地図に色をつけてこう見ますと、実に多いのですね、広島の危険渓流のところ。そういう地図ができていながら危険な場所に次々と住宅の建設が進んでいったというのはどういうことなんですか。
  109. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 現行の法制度では、その土地に住んでいる方々が、自分の土地が土砂災害危険性のある地域かどうかということを住民が知るというシステムが明確になっていないということが一番大きな問題ではないかなと私は認識してございます。
  110. 辻第一

    ○辻(第)委員 天災の要素が多いわけでありますけれども、そういう点では、許してはならない人災ではないのかという感を強めるわけであります。  この災害は、広島県における地形、地質、さらには山すそに新たに開発された宅地などの諸要因によるものであろうと思います。広島に限らず、我が国の地形と都市の発展状況から、全国に広く土砂災害の可能性を持っているということは先ほど来お話があったとおりでございます。危険箇所全国に数多く存在し、問題は、今もなお、土石流発生の危険性の高い地域に人家や建物が次々と建設されてきたこと、いることでございます。  我が国では、高度経済成長期からバブルがはじけた今日まで、人口の大都市集中や都市の拡張の中で都市開発政策が進められ、また、規制緩和を初め、これまでの国土政策の中で無秩序な乱開発と自然開発が進められてきたというふうに考えます。今必要なことは、このような開発至上主義を改めることが必要ではないのか、このように考えるのですが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  111. 中山正暉

    中山国務大臣 従来、大都市周辺を中心といたしまして、がけ地等の土砂災害のおそれのある地域におきまして新規の住宅開発が数多く見られたことは、先生のお説のとおりでございます。  道路事情も非常によくなってきましたし、そういうことで、遠隔地域からの通勤とかそういうものも可能になってきました。電車とかそういうものも発達してきましたから、限られた国土面積という我が国の特性や、高度経済成長に伴う都市化進展、それからまた人口の集積を背景として、大都市周辺の旺盛な住宅需要を踏まえたもの、かように思っておりますが、山間部地域や漁村など、旧来から重要な生活の場であるとともに、その地理的条件によりまして居住可能の地が限られている地域においても、やむを得ず住宅建設が行われていることは事実でございます。昔の農村が、随分このごろはプレハブの住宅なんかに変わりまして、割に安い値段で地方では住宅ができるものでございますから、そういうところに家が建つ例が多いと思います。  危険箇所増加傾向を抑制するためには、ハード対策だけで対応することはこれは困難でございますので、危険箇所増加を抑制するソフト面の対応というのがあわせて必要になってくる。そういう意味で、今後ハード対策とソフト、ハードとソフトの連携をより強くしまして、土砂災害防止に万全を期したい。密集地と、それからまた過密過疎の別なく両方の、国土のそういうところにくまなく気を配っていきたい。地方ではかえって、数戸の住宅なんというのがそういうところに建っている場合が多いわけでございますので、そういうものにも対応したいと思っております。
  112. 辻第一

    ○辻(第)委員 現在の開発至上主義というのですか、あの愛知万博の海上の森の問題でも鋭く指摘をされているわけでありまして、開発至上主義というのはここで十分御検討いただきたいということを改めて申し上げたいと思います。  土石流危険渓流については地図になっておりますが、これらは従来から、どのように防災対策に活用されてきたのか。使われていなかったとは申し上げませんが、広島市でも、今回の災害によって改めてこの地図の大事さというのですか、再認識をされたということでもございます。各地で土石流危険渓流の地図がどのように使われてきたのか、お尋ねをいたします。
  113. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 土砂災害危険箇所は、昭和四十年代より全国のすべての都道府県において、土砂災害のおそれのある地域を対象として調査を行って把握しております。  調査結果については、都道府県が行う防災工事実施の基礎資料として活用するほか、都道府県が市町村にその情報を渡し、市町村が住民へ配付するための資料として活用してございます。過去の土砂災害の履歴、避難路、避難場所等をあわせて図面化した土砂災害危険区域図等をつくりまして、住民に配付する努力をしておるところでございます。
  114. 辻第一

    ○辻(第)委員 そこで、防災意識といいましょうか、そういうことにかかわって情報の問題でもまたお尋ねをするわけでありますが、住民を含めた防災意識を高めるためには、正確な情報の積極的な提供が必要ではないかと思うわけでございます。これは大臣にお尋ねをいたしますが、よろしくお願いいたします。  過去にも限定的ではありますが、過去にたびたび土砂災害に見舞われた長野県の小谷村、ここでは住民に対し小谷村土砂災害危険区域図を配付しております。また、県から市町村に土砂災害危険箇所マップが配付されたりしております。また、最近ではハザードマップが注目を浴びております。今回の有珠山の噴火でも、洞爺湖町の作成したハザードマップは、その想定として、洞爺湖町の中心部にもその被害、影響が及ぶことをわかりやすく警告をしてございます。  建設省は、災害を防ぐということでこうした災害危険箇所を積極的に正確に提供をしてこられたのかどうか、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  115. 中山正暉

    中山国務大臣 ハザードマップも十五カ所ができておると思いますが、一カ所だけ、伊東の東部というのは海の中でございますので、海の中のものはありません。かなり地震国としてのそういう対策は充実してきておるものと思いますし、けさほど申し上げましたが、今回の有珠山の噴火も、噴火前に避難を全部完了したというのは世界で初めてだと言われておりますから、今後の対応が重要になってくると思います。  建設省といたしましては、昭和五十七年から「総合的な土石流対策推進について」により、土石流災害関連情報の地域住民への周知について市町村におい実施するように都道府県知事を指導しておるということでございます。昭和六十三年の三月に中央防災会議におきまして決定されました土砂災害対策推進要綱でも、土砂災害による被害を最小限にとどめるために、土砂災害危険箇所周辺の住民を初めとして、広く国民に対して土砂災害に関する知識の普及とそれから防災意識の高揚を図ることの重要性指摘いたしておりましたところでございます。  土砂災害防止のために、砂防設備等の整備といった施設対応に加えて、関連情報を住民に積極的に提供し、警戒避難体制の確立を推進してまいりたいと存じます。  赤木先生砂防の先駆者と言われておりますが、この近くにも砂防会館なんというのがありまして、全国砂防大会なんというのも催されますから、各自治体、非常にそういう面の意識は日本は割に高い方ではないかと私は思っておりますが、今後とも、大都市周辺にまでそういうものが迫ってきたということでございますから、地域の格差なしに情報を提供することが大事だと思っております。  細かくは、竹村河川局長からお答えをいたしたいと思います。
  116. 辻第一

    ○辻(第)委員 日本一とかおっしゃったけれども、世界一ですか、どうもそれはいただけませんな。  土砂災害危険箇所という点でいいますと、急傾斜地、地すべり地などがございますが、それ以外にも、例えば河川でいいますと、堤防だとか樋管だとか樋門などにも危険な箇所があり得ます。これらの具体的な箇所は公表されたことがないようでありますが、これは必ずしも危険箇所が直接災害につながるわけではないということのようでございますが、一つの姿勢のあらわれではないかと思います。  もちろん、やみくもに不安をあおり立てるようなことはやるべきではありませんが、そうした情報を本当に正しく広く伝えるということは、日常の防災意識を向上させるとともに、もしもの場合の対応に非常に有効ではないかと思いますが、建設省、いかがですか。
  117. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 ただいま御指摘のように、土石流危険箇所等以外にも洪水の危険に関する情報がございます。特に都市化進展によりまして、さらに、最近極めて短時間に集中豪雨が来るというような気象特性の変化によりまして、特に大都市に一度災害が発生した際の被害は、人家、資産の集積等により一層深刻なものとなる傾向がございます。そのため、治水事業を私ども一生懸命やっております。  それに加えまして、水害に関する的確な情報を国民と共有して被害を最小限とすることが重要だということから、洪水時の破堤、いわゆる堤防が壊れた場合による浸水被害と避難方法等対策に関する情報を住民にわかりやすく提供することを目的としまして、洪水ハザードマップの整備の支援を行っております。平成七年度から公表を行っておりますが、平成十一年度には新たに三十の市町村で公表されまして、平成十二年の四月一日現在では七十四の市町村で公表されておりまして、だんだんこの作業が軌道に乗ってきたという段階になってございます。  そして、これらのハザードマップをつくるだけではなくて、住民になるべくわかりやすく知らせるために、地域の電話帳のハローページの一ページをかりて地域防災スペースのレッドページにハザードマップを掲載したりして、私ども、多くの住民にこの洪水のハザードマップの存在をわかってもらうように最大限の努力をしておりますが、今後とも、これらの努力を前向きに、そして懸命に進めていきたいと考えております。
  118. 辻第一

    ○辻(第)委員 土砂災害危険箇所等の公表の方法でございますが、これはお答えいただかなくて、申し上げるだけにさせていただきたいと思います。  地図にしても、またハザードマップにしても、公表することが基本でありますが、その公表のチャンネルをできるだけ多くすることが必要ではないかと思います。インターネット活用など、積極的な対応をお考えいただきたい、このように考えます。また、わかりやすくしていただきたい。行政用語でありますとか専門用語で非常にわかりにくいということがたくさんあろうかと思いますので、その点は、わかりやすくしていただきたい。  それから、先ほども触れたような話でありますが、国民が住宅を取得するときにもやはり重要ですね。住宅を購入したが、危険な場所であることは知らなかったという人もたくさんあるわけですね。それから、住宅の建築が許可されているのだから問題はないのではないか、このように思うておったということがあるわけです。こういう点でも、防災のPRがもっときちんとやられていたならば問題が避けられたのではないか。こういうことが多々あろうかと思いますので、情報の積極的な公表について十二分に御対応いただきたいということをさらに要望いたしまして、次に移ります。  今回の法改正で、土砂災害警戒区域指定、警戒避難体制の整備、立地規制などが盛り込まれましたが、これらはハード事業中心のこれまでの対策を一歩前進させたものと評価することができるわけですが、今後は、基礎調査を迅速に実施をしていただいて、土砂災害警戒区域指定を進めるべきであると考えます。  同時に、この指定に当たっては、地域の人々、殊に土地の所有者などにとっては非常に厳しい制限になりますし、いろいろな問題がございます。そういう点で、指定をされる場合は、市町村、そして住民の意見を十分に聞いていただきたい、このように要望するわけですが、いかがですか。
  119. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 本法案によります区域指定は、土砂災害のおそれがある区域を客観的な基準、いわゆる技術的な基準によって行うものであります。さらに、行政側の何か行政行為によってそこに住んでいる方の規制を行うということではなくて、そこにいらっしゃる住民自身の生命と身体を守るための規制、そしてその土地が自然的に持っている危険性を明確にするための目的でございます。  指定された区域については、警戒避難体制の整備等を初め行政上の対応を行う必要があることから、その指定に当たっては、市町村の意見を聞くこととしております。  なお、市町村長都道府県知事意見を述べる際、住民など地域意見を集約するために講ずる手続につきましては、市町村の自主性を尊重してまいりたいと考えております。
  120. 辻第一

    ○辻(第)委員 とにもかくにも、地元の住民の皆さんの意見が十分反映できるように、ひとつ御努力をいただきたいということでございます。  今回の法律で、一定の開発行為の制限が設けられました。これまで自治体では、例えば、開発行為の所管部局では、危険箇所であっても開発をとめるすべはなかった、現行法令に合致していれば許可せざるを得なかったというふうに担当者も言っておられるわけでございます。  また、従来、開発者に対して、その開発行為がそれより下流部に対する影響を排除することについては一定の対応がございましたが、一方、開発行為については、それより上流部、上のところの危険については十分に注意をするというような対策がなかったと言ってもいいような状況だったと思います。  そういうことで、こういうことも含めて、今回の法律では一定の開発については規制がかかります。これらのことについて万全の対応をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  121. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 委員指摘のように、この法案は、住宅開発地のいわゆる上部標高、上流側における土砂災害危険性に目を向けて警戒区域等指定しまして、警戒避難体制の整備や住宅の新規立地の抑制等の対策を講ずるものでございます。本法律の趣旨にのっとって、この制度の適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
  122. 辻第一

    ○辻(第)委員 私が現地に参りましていろいろ教えていただいた中に、土石流プラス流れ木、流木というんですか、これが非常に災害を激化したというお話を聞いてきました。  川筋が直角にこういうふうに曲がっているところがあるんですが、そこに、それは何十本という流れ木がたまって残っている、あれがそのまままた流れていったら大変なことだなというようなところも見せていただいたんです。土石流だけならまだ下の方で被害が幾らか少なかったんではないか、それが、住民の方何人かから、二階ほどの流れ木が山のようになって襲ってきたという生々しいお話を聞かせていただいたんです。ですから、土石流、土や砂、水だけではなしに、流れ木をどう防ぐかということが非常に大事なことではないのかということを痛感してまいりました。  その周辺の山の姿でありますが、基本は松林ではなかったのかと思うんですね。そこに昔の田んぼを減反で杉か何か植えたところがあったようにも思うんですが、最後の上流まで行かなかったんで、上にそういうところがあったように聞いておるんですが、そういうことで、言うたら山が荒れているんです。松の木は、塩害だとかあるいはいろいろな状況で大体枯れていたんです。  そういうことに代表されるように、山が荒れている。そういう中で、木が一緒に流れてきて、土石流をさらにひどくするし被害をひどくした、こういうことではないかと思うんですね。山が荒れるということは、保水力がなくなることにもなりますし、安全性にも問題があるということでありますので、どうしても建設省サイドだけでは問題が片づかないと思うんですね。  そこで、きょうは林野庁にお越しいただいているんですが、そういう点の対応についてお答えをいただきたいと思います。
  123. 伴次雄

    ○伴政府参考人 今指摘がありましたように、森林が災害防止という意味で非常に公益的機能を有しておるわけでございますけれども、その機能を発揮するからには、やはり森林が健全な状況であるということが必須条件であります。そういう意味で、林野庁としては、重要な森林につきましては保安林にまず指定をしまして、そして保安林の改良とか治山事業とかそういうものを進めておる次第であります。  また、一般的には、樹木の根茎が発達するように間伐をして、一本当たりの木を太くするというような間伐の実施とか、それから、三、四十年で切って繰り返すんじゃなくて、裸にしているような状態を可能な限り短くするような長伐期とか複層林にするとか、それから、今回では特に、いわゆる流れ木が多かったものですから、これを抑止するような透過性のダムというような新しい工法も今後積極的に進めていきたいと思うんです。  そういう意味で、やはり森林の整備というものが非常に重要だと思っておる次第でありまして、これの推進を図りたいと思っております。
  124. 辻第一

    ○辻(第)委員 もう時間が参ったようでございますが、そういうことで建設省も、農水省など他の省庁とも十二分に連携をとって万全の対応をとっていただきたいということ、それから、危険箇所に対する緊急の対策を講じる点でも御尽力をいただきたい、このことを最後に御要望申し上げて終わります。ありがとうございました。
  125. 大口善徳

  126. 一川保夫

    一川委員 自由党の一川でございます。  私の方から、幾つかこういった質疑の中身が重複する箇所もあるかもしれませんけれども、再度確認を込めて御質問させていただきたいと思います。  まず、いろいろな質疑の中で既に話題が出ているところでございますけれども、今回のこういった土砂災害に関する既存の法体系というのはございます。これは、御案内のとおりの法律幾つかございますけれども、特にハード的に対応する砂防法なり地すべり等防止法、あるいは急傾斜地に関するそういった法律、それとあわせまして、都市計画法なり建築基準法なりという、割とソフト的に土地利用を規制していく、あるいは建物そのものを規制していくというような法律等が今日までございました。  今回、こういう新たな法律を整備していくという必要性は理解できるところでもあります。新たに法律を追加、追加ということも、ある面では問題意識としては大変重要なことなんですけれども、既存のいろいろな法体系を点検して、できるだけそういうものとの連携をうまく図っていくということがある面では非常に大事なことであろうと思うんです。  それで、最近こういういろいろな法制度が整備されてそれなりの対応をしてきたにもかかわらず、今日、土砂災害等が依然としてふえてきているといいますか、場合によっては人命に影響のあるような、そういう災害が目立ってきているということが言われております。  そういうことを考えますと、やはり今日のいろいろな状況変化等に対する対応がしづらい、そういう現行の法制度そのものに対する一つの課題といいますか、問題点がだんだんあらわれてきたというふうに理解するしかないわけですけれども、その点の基本的なところをお聞かせ願いたいと思います。
  127. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 本法案を提案した私どもの問題意識でございますが、何点かございます。  まず、私どもが従来砂防三法で行っていた事業は、土砂災害が発生するその場所、つまり原因地についての対策、いわゆるハード対策でございました。懸命にそれをやっているわけでございますが、一方では、危険な箇所が増大する、つまり危険な場所住宅が次々と立地してしまうというような、いわゆる乱開発と呼ばれているものが次々と登場しているというような、大きな点で二点でございます。そしてもう一点、今度はそこに住む方々の意識の問題でございますが、その場所が危険であるかどうかを知らなかったということでございます。  これらのことにつきまして、私ども、従来の事業の対応はこれからもきちんとやってまいりますが、被害を受ける場所における方々の被害を最小限に抑えるための新しいソフト法案が必要だという問題意識から、この法案の提案になったわけでございます。  今後とも、ハード対策を行う法制度とは別に、土砂災害のおそれのある区域を明らかにして、地域住民にそのことをわかっていただきまして、その中で自主的に市町村を中心とした警戒避難体制を整備して、または住宅の安全な新規立地をやってもらうというようなソフトの対策によりまして、土砂災害の被害を最小限に抑えるシステムをつくっていこうという背景がございます。
  128. 一川保夫

    一川委員 今ほどのお話にも関連いたしますけれども、今二点ほど、大きくそういう問題意識を持っているというお話がございました。  それで、近年、こういった土砂災害にかかわるような災害の特色といったものが、以前と比べて何か相当特徴的な現象があらわれてきているのではないかという感じがするわけですね。それは、今ほどの説明にございましたように、住宅地域がだんだん拡大していくことによって、割と危険な区域にも進出していってしまったということもその背景にあるというような話もございました。また、先ほどの質問等をお聞きしておりましても、最近のいろいろな気象現象そのものが異常な状態になってきているということです。  最近では、もう異常が通常みたいな格好にもなってきておりますけれども、そういう面での、特に近年のこういった土砂災害の特徴といいますか、そういう特異性といったようなものをちょっと整理して御説明をお願いしたいんです。
  129. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 我が国の山地が、地質が非常に若くて脆弱だというのは昔から変わらない事実でございますが、近年の土砂災害の特徴としまして、社会的な状況と気象学的な状況が二点ございます。  一点としましては、委員指摘のように、危険な斜面や谷の出口に人家が新たに建ってしまうということによります土砂災害危険箇所増加でございます。二点目の気象でございますが、気象庁のデータによりますと、私ども、過去十カ年のデータを見てみますと、アメダスという観測点がございますが、その千三百個のアメダスを十カ年見てみますと、大体過去十カ年平均、一年間で一個か二個が時間雨量百ミリを超えておりましたが、去年の十一年はその百ミリを超えたのが十カ所になってしまいました。百ミリというのはとんでもない集中豪雨でございまして、このような異常な豪雨がこのように記録されたということは、私どもは非常に厳しい状況が来たのではないかなという思いをいたしております。  そういう点と、もう一点、土砂災害で亡くなられた方々の内容を私どもがちょっと分析してみますと、約半数の方が高齢者や乳幼児、身体障害者、いわゆる災害弱者でございました。このようなことから、私ども、その危険な箇所を明らかにして、速やかに避難できる体制が必要だという認識を強くしたものでございます。
  130. 一川保夫

    一川委員 今のような御説明を受けて、こういう新たな法律が出されておるわけですけれども、大臣にちょっと基本的なところでお伺いしたいわけです。  今ほどのお話、これまでのいろいろな質疑等でもありましたように、今回のこういった法律を出す必要性なり背景なりというのはそれなりに理解いたしますけれども、現行のそういったハード面に対するいろいろな法律なり、現行制度、例えば現行のそういった法律の改正でこの課題が解決できなかったのかというのが一つあるわけですね。  なぜ新しい法律をつくる必要があったのか。ここで今新しい法律で対応しようとしていることが、現行の法律の一部改正でもできたのではないかというところがちょっと気になるところなんですけれども、そのあたり大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  131. 中山正暉

    中山国務大臣 詳しくは河川局長から御答弁申し上げたらいいと思いますが、先ほどもどなたかに御答弁申し上げましたように、昨年の広島災害のときに小渕総理が大変気にしておられまして、昔なら、その土地になれた人たちはそういう地域には家を建てないとか、そういうところへは物を立地しないというような、本能的といいますか、昔からの知恵みたいなものがあったものが、このごろは人口の移動が大変激しゅうございますし、新しい地域に新しい企業が立地したりしますものですから、若い家庭なんかが安易にそういうところに住宅を建てたりされる方がある。全く世の中の事情が、最後の昭和四十四年以来、もう随分変わってしまったように思います。  道路でも高速道路というのがあるかと思えば、東海道自然遊歩道というのがありますから。やはりハードとソフト、高速道路ですっと通り抜けていくのもありますし、きめの細かい、周りの景色をゆっくり歩いてみようなんという。それと同じように住宅でも、公営住宅、それから高層住宅、いろいろありますが、山間の地域住宅を建てて、そして土地も安い、そういうところへ行こうとする人たちに対して、やはり細かい心配りみたいなものが、私はこの法律の基本的な精神ではないかと思います。  いわゆる砂防三法で改正をしてやっていける部分と、時代の変化に、今までのハードに対してソフトで物を考える、そういうことを盛り込んだ、法律の名前も災害とか緊急災害とか、そういう災害という呼称が入っておりますものですから、それは、そういう意味を強調したところに新しい法律をつくった意味があるんじゃないかと私は思っております。  詳しくは、局長からお願いします。
  132. 一川保夫

    一川委員 大臣お話も理解いたしました。  それで、この法律とも関連いたしますけれども、私の要望も含めての確認でございます。  今回のこの新しい法律等が出されたいろいろな背景等のお話は、先ほど来のお話のように最近の犠牲者の特色を見ても、俗に言う、災害弱者とおっしゃったと思いますけれども、高齢者なり幼児の方々とかあるいは身障者の皆さん方に割と犠牲者が目立つようになってきた、そういう面でのいろいろなソフト的な対策がこの法律でうたわれていると思います。どっちかというと、ある面では、この法律としては、新興住宅地域に相当焦点を当てたような形になっているんではないかなという感じがするわけです。  ただ、一方で、農山村地域、俗に言えばそういう都市部でない地域には、御案内のとおり高齢化現象、過疎化現象というのが今顕著にあらわれてきておりますし、特に山村地域というのは、高齢者の方々の比率が非常に高くもなってきているわけです。  私自身はそういう山村地域に住まいをしている人間でございますから、ある程度実情はわかっておりますけれども、そういう山村、農村地域の集落というのは、もともとそんなに条件のいいところにはないと私は思うのです。どっちかというと、割と日当たりのいい、条件のいいところに農作物を作付する農地を確保して、人間が住んでいる場所はその犠牲的な場所といいますか、日当たりの悪い、割と山を背後にした傾斜地にあったり、相当厳しいところにも張りついていると思いますけれども、そういうのが全国地域にいろいろと点在していると思うのですね。  そういうことを考えますと、この法律で、当然全国同一に扱われるとは思いますけれども、私は、こういった山村地域でしっかりと国土保全をしながら頑張っておられる、そういったお年寄りの方々が住まいをしている農村の集落、そういったところに対してもこの法律の恩恵が及ぶようにぜひ配慮をしていただきたいと思いますし、そのあたりの対応についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  133. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 この法律に基づく区域指定は、地域を問わずに、土砂災害のおそれのある箇所であれば対象となります。  ただし、今委員指摘の農山村、そして漁村等に住んでいる方々は、生活する土地の制約が極めて多く、いわゆる土砂災害に対する安全の確保は極めて重要な施策であると認識しております。農山村地域の安定的な発展のため、農林水産省とも連携しまして、ハード対策も含めた土砂災害防止対策を着実に推進してまいりたいと考えております。
  134. 一川保夫

    一川委員 ちょっとここで、既にもう質問されたのだと思いますけれども、確認の意味で教えていただきたいのだけれども、今回の法律区域指定されますね。当然、その区域指定されたところに対しては、県レベル、市町村レベルでいろいろな対策をとっていかれると思いますけれども、特に、公共的な施設なり福祉的な施設も含めて、これから新たにこういうものをつくろうとする者についてはそれなりの指導をしようというふうに書かれていると思いますけれども、こういった区域の中にもう既にある、既存の公共的な学校等の施設なり、そういういろいろな社会福祉的な施設等についての対策というのは、これはどういうふうになっているのでしょうか。
  135. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 私ども、土砂災害に対しまして、過去さまざまな対策をやってまいりました。  委員、今御質問の件でございますが、例えば急傾斜地対策事業推移を簡単に御説明しますと、昭和四十二年からスタートした当時は、保全人口、つまり、がけの下に五十戸なければ採択基準に達しませんで、事業ができませんでした。その後、二十戸に減らし、十戸になり、そして現在では五戸ということです。そして、特に公共施設等がある場合は、これは採択基準は最優先で採択されるようなシステム、そして災害弱者がある場合は、その災害弱者の収容人数を三人を一戸とカウントするというような施策を今年度からスタートしておりまして、そういう公共施設、そして災害弱者施設がある場所につきましての対策工事は最優先で実施してきたという状況になってございます。
  136. 一川保夫

    一川委員 そこで、これもちょっと事前に通告しておりませんけれども、例えば、東海地震がかつていろいろと話題になった、その何となく予知されている地域といいますか、心配される地域については、財源的にもいろいろな特例扱いになっていると思うのですね。静岡県を中心にして、割と広範囲だと思いますけれども。  例えば、今回みたいに、こういう特別の指定を受けたり、いろいろな区域指定を受ければ、当然そういうことが地震以上に心配になるケースだってあると私は思うのですけれども、そういういろいろな財源的な対策もあわせて、相当手厚いことを考えておられるのかどうか、その点をちょっとお聞きしたいと思います。
  137. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 従来の法律は、災害が起きる場所での対策ハード対策でございましたが、今回の法案は、災害が起きたずっと下部標高、下の標高の、災害が発生した場所とは違う場所で被害を受ける方々の被害を最小限化しようという内容でございまして、災害対策工事事業と今回の法律内容、つまり土砂災害警戒区域指定しまして、その中の警戒避難体制を整備したり、そして特に危険な特別警戒区域場所におきましては開発行為の規制だとか建築規制をするというような内容につきましては、原因地の対策工事と今回のソフトの法律の提案とは、直接事業の執行にはリンクしておりません。  私ども、危険な箇所は別な判定、緊急性経済性、そして重要性等の別な判定から採択をして、事業実施していくことになってございます。
  138. 一川保夫

    一川委員 今のお話もそれなりに理解できますけれども、警戒区域なり特別警戒区域というのは、そういう災害の被害を受ける危険性のある区域だというふうに当然思うわけです。そういうところにもう既に存在している学校なりそういう公共的な施設等についての例えば移転とか、そういうもののいろいろな経費というのは、やろうと思えば相当かかると思いますけれども、そういうものに対する対応策ということもぜひこれからの課題として御検討願いたい、そのように思っております。  それから、先ほど局長の方から、今回の災害のいろいろな特徴、特異性という中には、最近では、時間雨量ですか、百ミリを超えるようなところも相当ふえてきているというふうに、相当異常気象的なものがあらわれてきているというお話もございました。日本列島それぞれの地域、いろいろな特色を持っているわけでございますけれども、災害が非常に多いという面では、いろいろなケース災害というのをもう既にいろいろと経験をしているわけですね。  そうしますと、私は、調査研究といいますか、いろいろな研究機関でいろいろな対策も含めたメカニズムの分析をされていると思います。テレビ等で時々そういった試験研究の状況みたいなものを見させてもらうときもあります。こういったものをもっと徹底的に、これまでのいろいろな事例を分析しながら、対応策ということをしっかりととっていくということが大変大事なことだというふうに思いますけれども、現在のそういう調査研究分野では、こういった土砂災害に対する対応というのはどうなっているのか、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。
  139. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 建設省を中心としまして、土砂災害に関する研究を精力的に進めております。特に土木研究所の砂防部で研究を進めております。  そして、この成果は非常に大きなものがございまして、具体的に申しますと、例えば、世界的にはもう砂防という言葉は共通語になっております。そして、土石流というメカニズムを初めて科学的に分析したのもこの研究班でございます。つまり、土石と水が入りまじって混合体となって流れてくるという現象を初めて分析したわけでございます。この土石流をどうやってとめるかという手法につきましても、先ほど林野庁の方が御答弁されておりましたが、鋼製のスリットダム、つまり土石流の勢いを弱めるための手法も開発をいたしました。  これらの技術は、日本国内だけではなくて世界の国々へ技術移転しておりまして、インドネシア、ネパール等、地質が大変苦しい国では大変これが役に立っているという状況にございます。  なお、今後私ども、日本国内のさらなる研究のために、例えば具体的にどういうテーマかと申しますと、警戒避難をするための技術基準基準がまだこれからだという課題が残っております。そして、最近話題になっている有珠山の噴火に伴い、泥流問題、これも火山問題というのはまだまだ未解明な部分がございます。このような未解明な問題にこれからも私どもは懸命になって技術開発、技術研究に取り組んでいく所存でございます。
  140. 一川保夫

    一川委員 こういった調査研究、技術開発的なものというのは、我が国としては最も得意とする分野でもありますし、また、世界をリードすべき、そういう立場にあるんじゃないかというふうに私は思います。そういう面で、これからこういったいろいろな研究開発等につきまして、さらにいろいろな面で充実を図るようにお願いをしたいと思っております。  そこで、先ほどちょっと話題に出ておりましたけれども、こういった土砂災害にかかわるようないろいろな対策等につきましては、建設省だけじゃなくていろいろな省庁、例えば、現在でいえば国土庁なりあるいは農水省なりというようなところと割とかかわりがあろうかと思いますけれども、場合によっては、今のいろいろな、福祉関係でいえば厚生省とか、あるいは学校でいえば文部省とかということにもなろうかと思います。  そういった他のいろいろな行政機関との連携というのは、災害を未然に防止したり、あるいは災害が発生したときの被害を最小限に食いとめるという面では、この連携、調整ということが、またこれは大変重要な課題でございます。連絡協議会的なものがあるというふうにも聞いておりますけれども、そのあたりの状況、今後の取り組み方針についてお聞かせ願いたいと思います。
  141. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 まず、各省連携は大変重要なことでございまして、防災関係につきましての事業に関して御紹介しますと、特に建設省と林野庁は連携を進めて山林そして山ろくの保全に当たっておりまして、昭和三十八年より、建設省と林野庁は本省の課長クラスによる連絡調整会議を設置しております。そしてなお、地方、出先におきましても、主管課長クラスの連絡会議を設けまして、それぞれの役割分担を認識し合い、そして自分たちの計画的に、お互いの山林、そして人々の安全のために事業をやっている状況にございます。  さらに、最近、防災に関しましてはもっと幅広い省庁が関係しておりまして、平成十年のからまつ荘の災害にかんがみまして、建設省と林野庁だけではなくて厚生省が参加していただきまして、災害弱者関連施設全国調査を一緒になってやったわけでございます。その中で、成果としましては、約一万九千施設危険箇所にあるということが改めて判明しまして、関係省庁の認識を改めたところでございます。  この認識を改めまして、さらに、建設省、文部省、厚生省、林野庁、自治省、今度は五省庁が共同になりまして、この土砂災害危険箇所や避難場所情報提供、警戒避難体制の確立などについて、各省連携、調整をしまして防災体制の整備を推進していこうという体制をとっているところでございます。
  142. 一川保夫

    一川委員 それから、これもちょっと確認しておきたいんだけれども、今回の法律によりましてこういった区域指定等が行われた後、いろいろな面で県なり市町村の対応が当然出てくると思います。この法律が施行をされた段階で、都道府県なり市町村の業務量というのは、ある程度はふえていくことは間違いないと思いますけれども、そういうものはどの程度どうなっていくのかということ、あるいは、そういったものに対する予算措置というものがなされるのかなされないのか、そういったことも含めてちょっとお聞きしたいと思います。
  143. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 土砂災害に対して対策を講じて、そこに住んでいる住民の生命を保護することは、都道府県を初めとする自治体の本来的な責務でございます。  これまで市町村等または都道府県等は管内の全域を網羅的に調査を行っていたというような状況になっておりますが、本法案の成立になりますと、今度は警戒区域または特別警戒区域という区域が明確になってまいりますので、今まで網羅的に行ってきた調査ソフト対策が、かなり重点的に焦点を絞って都道府県ないしまた市町村が実施できるという点にあるのかなと私どもは期待しております。  さらに、基礎調査に御質問でございます。  私どもは、都道府県が行う基礎調査がスムーズに行われますように、基本指針におきまして調査のマニュアルを定めたりしまして負担の軽減を図り、さらに、本来的に都道府県の責務ではございますが、この基礎調査は大変重要なことということで、財政当局とも御了解を得まして、調査のための補助を積極的に行っていく所存でございます。  このようなことで、私ども、県、国、市町村が連携して、災害防止のための体制をとっていきたいと考えております。
  144. 一川保夫

    一川委員 では最後に、ちょっと大臣にお伺いしたいと思います。  今回の法律のねらいあるいはこれからのやり方ということについてお聞きしたわけでございますけれども、先ほど来いろいろな質疑の中でも出ていますように、我が国、日本列島そのものがもともと潜在的に災害が発生しやすい、そういう自然的な条件なり立地条件にあることは、それは間違いないわけでございますけれども、しかし、それを我々が英知を絞って克服していくということになるわけでございます。  こういった土砂災害というのは、基本的には、要するにさっきの雨のお話もございましたように、水の処理というのは常につきまとっていると思うんですね、地下水にしろ、降雨にしろ。やはりそういった水の対策も含めたことを考えれば、本当に、これからのこういった対策というものもこれだけですべてが完結したということにもならないんだろうと思います。今回この法律制定された後、我が国のこういった自然災害をしっかりと防いでいくという観点での、何か大臣としての問題意識といいますか今後の課題といいますか、そういうものをお聞かせ願いたいと思います。
  145. 中山正暉

    中山国務大臣 この日本列島というところにみんな一緒に住んでいるという、これは宿命でございます。そういう宿命の土地に我々が生存をし、後世にこの日本を豊かな国として引き継いでいくことが我々の使命でございますから、日本列島は四回か五回、大きな塊がぶつかって四十五億年の地球の歴史の中で今日ができ上がった、こういうことでございますが、その中で近代的な科学技術も進捗しております。  今度の有珠山の災害を見ましても、無人のヘリコプターで今国道二百三十号線をずっと調査して、無人のヘリコプターが映像を送ってくるというふうな時代になったわけでございますから、また砂防の技術も、また今度も、有珠山からおりてきております噴火湾の方へ流れます川の途中で、無人のショベルカーを入れて、普賢岳で使ったものが船で送られてきまして、もし土石流が流れてきた場合はその手前でとめようとか、いろいろな工夫がなされておると思います。  そういう意味で、国土の七割が山地でございますし、その地質も脆弱で、その上に土砂災害が発生しやすいという、土砂災害対策は国土保全上の大変重要な意味を持っていると思いますし、その上に人命に関係があるわけでございますので、土砂災害から国民の生命それから身体を保護するためのソフト対策法でございます。  法施行後の主要課題は、都道府県が行う、特に地方の時代と言われておりますから地方に、来年の一月六日から国土交通省と名前が変わって、建設も運輸も、それから北海道開発庁も一つの役所になるわけでございますので、それが都道府県と一体化しまして、基礎調査の結果に基づいて、速やかに警戒区域それから特別警戒区域というものを指定していくことが大事だと思っております。  土砂災害危険箇所の整備率は依然として低い状況にありまして、大きな課題でございますが、砂防関係事業を着実に推進して、それから安全性の確保を図っていく必要がある、かような認識をいたしております。  依然として土砂災害が多発しておりますし、危険箇所増加し続けていることから、建設省といたしまして、本法案に基づく対策推進し、砂防関係事業と相まって、土砂災害対策をみずからひとつ心を引き締めて、国土の保全に万全を期し、日本国民の幸せにつないでいくという、そんな新しい意義がある法律案だ、かように私は思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  146. 一川保夫

    一川委員 どうもありがとうございました。
  147. 大口善徳

    大口委員長 中西績介君。
  148. 中西績介

    ○中西(績)委員 一八九七年砂防法、一九五八年地すべり等防止法、一九六九年急傾斜地災害防止法が制定されまして、土砂災害危険性の高い箇所は、都市計画法、建築基準法で開発行為や建築行為に対する規制がなされてきました。  しかし、危険性の高い急傾斜地開発などの増加によって必要性に迫られたと思うが、これらの法律で何が不足し、対応できなかったのか、さらに、ハード対策ソフト対策があると思うが、現在までの基本的考え方に変更があるのか、そして、本法律案はなぜ提出されてきたのか、問題点がこの法律で解消できるだろうか、こういうようなところを一応まとめてお聞きしたいと思います。
  149. 中山正暉

    中山国務大臣 日本は、もう言い古されていることでございますが、急峻な土地、脆弱な基盤、そして三つのプレートが日本の下へ入っていくという地震国、それから八百の火山が世界じゅうにありますが、日本には八十六の火山がある、そういう非常に災害が多い国でございます。先生が今御指摘いただきましたようないわゆる砂防三法が、時代とともに国のきめ細かい注目度というものを、自然災害を克服するために意を決してといいますか、今まで頭の中で考えて、専門家はきめ細かくやれればいいと思っていたことを法律にして決意を示すような、この法案の心を私はそういうふうに感じております。  土砂災害対策に関する現行の法制度は、土砂災害防止工事等ハード対策実施するほかに、切り土等の土砂災害を誘発、助長する行為の制限を行うための法制度でありまして、いわば土砂災害が発生する原因地についての対策を講じるための制度でございましたが、対策工事を行う一方で、開発進展に伴い危険な箇所に新たに住宅等が立地することによりまして危険箇所が増大する傾向にあるために、その増加を抑制するためのソフト面での対応が必要ということであろうと思います。  さっき、明治三十年の最初の砂防法お話を、西暦に変えてお話がございましたが、そのころは人口も割に少のうございましたが、最近は大変な人口増加でございます。その上に、高齢化社会でございますから災害弱者の方もふえているということでございますので、これからはそういう方々に対する配慮もしていかなければなりませんし、どうしても土地の安いところに、自分の土地を持ちたいとか自分の家に住みたいとかいう意欲が、また危険な場所に立地する場合がありますものですから、今般は、ハード対策を行う既存の砂防三法とは別に土砂災害のおそれのある区域を明らかにして、その中で警戒避難体制というものの整備や、それからまた住宅等の新規立地の抑制、そういうふうに両々相まつといいますか、そういうソフト対策を講じるための法案という形での、災害脆弱国としての日本が新しい二十一世紀に国民の身体、生命の安全を確保するという大命題に挑戦する意欲ある法律だと私は思っております。
  150. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、今説明がございましたこれまでのハード面におけるものにつきましても、起こってくる原因がいろいろ多様化してきておるということも一つまたあるわけですから、それぞれを一つずつこう薬を張るみたいにするだけでなしに、やはり全体的、総合的な考え方の中でこれがつくられた、こういうように理解をするわけであります。  いずれにしましても、この法案については、よほど住民の意識なりあるいは今度は行政側の意識というものが一体的になっていかないと、犠牲者は依然として出てくるということが今まで実証をされたわけでありますから、こうした点はやはり十分お考えいただいて、これから後、一、二指摘はいたしますけれども、具体的に対応していく必要があるのではないかということを感じます。  次に、災害危険区域指定につきましてお聞きしたいと思います。  土砂災害危険箇所は何カ所あるのか、緊急に整備の必要箇所がどれだけあり、そしてこれらへの対応をどのようにして、進め方、どのようになさるのか、この点についてお聞かせください。
  151. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 御質問土砂災害危険箇所でございますが、現在私どもが把握している中では、土石流箇所が七万九千カ所、地すべりが一万一千カ所、急傾斜地等の崩壊が八万六千余でございまして、合計十七万七千カ所でございます。この危険箇所は五カ年ごとの調査をきちんとやっている急傾斜の事例におきましてもふえておりまして、平成四年から平成九年まで約四千八百カ所がふえております。そして、そのような状況が繰り返されて現在八万六千六百カ所ということになっているわけでございますが、私ども、これらの災害危険箇所の整備をやらなければいけないわけでございますが、予算の制約等もありまして、優先度の高いところから、緊急性の高いところから事業実施しております。  具体的に申しますと、まず地形、地質の状況から、土砂災害の発生の危険性が極めて高い箇所、これは技術的にでございますね、まずそういうのが最優先。そして次に、保全対象状況、つまり、もし災害が起きた場合、大変な大きな災害が起きるというような重要性の高い箇所、また、老人ホーム等災害弱者が被災するおそれのある箇所、これらを重点的に整備を進めて、優先度をつけて実施をしている状況にございます。
  152. 中西績介

    ○中西(績)委員 災害危険地域指定数、整備目標年は、大体今のこのスピードで整備をしていくとどの程度かかれば終わるという予測をしてあるのか、この点どうでしょう。
  153. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 ただいまの御質問、私ども、大変残念ながらきちんとお答えする能力は持っておりません。  と申しますのは、先ほど申しましたがけ、急傾斜地崩壊対策事業に関しまして、危険箇所が五年前に比べて、整備した箇所は五カ年で四千カ所整備したわけでございます、約一年間に一千カ所ずつ整備したわけでございますが、危険箇所はその整備した箇所の四千を上回る四千八百カ所ずつふえておりますので、いわゆるイタチごっこでございまして、私ども、何年たったらこれは整備できるんだというような計画が立たない状況にございました。  こういう状況をどうにかして私ども終えて、きちんとした土砂防止の計画を立てて重点的にやっていきたいということからも、今回提案している本法案重要性があると私どもは認識してございます。
  154. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなってまいりますと、今お言葉ありましたように、イタチごっこというようなことを言われたんですけれども、これでいきますと、じゃ、なぜそうなるかということの原因をよほど分析していかないとやはり対応できないんではないか。ですから、今度のこの法案によってそうした原因なりなんなりがある程度抑えられるということであれば、減少をずっとしていくという傾向が出てくると思いますけれども、そこいらもあわせてこれから大きな課題だろうと思いますね。  特に、先ほど私申し上げた、いわゆるそこに住む人たちと行政側が、極端な言い方をしますと、管理をしながらでもこれを抑えていかないと、やはり危険箇所というのはふえてくるわけでありますから、こうした点のあれをどこで求めていくかということが物すごく大事だろうと思いますね。  ですから、これを、今度は法律をつくって規制をしたりあるいは避難をしたり、いろいろなことをいろいろなソフト面で対応していけば、そうしたものが果たして少なくなっていくかどうかという、ここいらがまた大きな課題になってくるわけであります。これらはまた結果を見なくてはわからない面もありますけれども、こういう面につきましては、さらにずっと追求を強めていかないと、この法律があるからということによってこれらの問題が、また規制そして縮小できるということにはならないんではないかというような気がしますので、これらの問題についてさらに御検討いただければと思います。  次に、災害危険地域内の建築物棟数、住宅あるいは非住宅の数と割合についてどうなっておるのか、さらにまた、建築物に対し今後どのような対策をしようとしておるのか、お答えください。
  155. 那珂正

    那珂政府参考人 お答えいたします。  建築基準法三十九条に基づく災害危険区域につきまして、そこにあります建築物の棟数等についてのお尋ねでございます。  平成十一年三月の時点の調査によりますと、住宅約三十七万二千棟、非住宅約七万二千棟でございます。しかしながら、これらの多くは、多くの地域で急傾斜地崩壊防止工事が進められてきたこととか、あるいは建築基準法に基づく条例による規制に適合して建築された住宅や建物もかなり多くあるというようなことから、必ずしも今申し上げた数字の建物がすべて危険な状態にあるというわけではございません。  いずれにいたしましても、今後、この新しい法案が施行されることによりまして土砂災害特別警戒区域指定されていくわけでございますが、引き続き、建築物の構造基準の適用をしっかり行うとともに、区域内に存在する基準に適合しない住宅区域外への移転の促進等に的確に取り組んでまいりたいと思います。
  156. 中西績介

    ○中西(績)委員 次に、基礎調査につきましてお聞きしますけれども、先ほどの討論の中におきましても、大体五年をめどにして終了するということを言っておられましたが、調査には相当な負担がかかるのではないかと思います。したがって、国は、この支援措置、どのようなことを考えておられるのか、この点についてお答えください。
  157. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 御指摘基礎調査は、都道府県知事実施するという位置づけになっております。この基礎調査、大変重要でございまして、建設省としても、調査実施に関しまして、費用補助的な財政支援、そして実施に際して技術的助言、または調査のためのマニュアルづくり、このマニュアルがありますと、各都道府県が民間コンサルの力をかりまして一斉に調査に入れるということがございますので、マニュアルの作成の支援、または調査のマニュアルだけではなくて、調査した結果どうやって判断したらいいんだろうという技術的判断基準のわかりやすい作成等を行いまして、都道府県の行う基礎調査の過度な負担にならないように、最大限国も財政的、技術的支援をしていきたいと考えております。
  158. 中西績介

    ○中西(績)委員 そのことについては、財政的なものについてもやるということは、そういう予算か何かをお組みになってやられようとしておるんですか。
  159. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 この法案が成立後、財政当局と打ち合わせをしていかなければいけませんが、調査のための国費の補助、三分の一程度を財政当局に要求していきたいと考えております。
  160. 中西績介

    ○中西(績)委員 次に、警戒区域指定については基本指針に基づいてなされると思いますけれども、その際の基準はどのようなものを指しておるのか、この点お答えください。
  161. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 土砂災害警戒区域等指定基準は政令で定めることとしてございます。土砂災害警戒区域につきましては、土砂が到達するおそれのある区域、そしてそのうち特に特別警戒区域と申しますのは、土砂が直撃をして住宅等が破損、損壊し、住民の生命、身体に著しい危害が生ずるおそれのある区域と私ども今概念的に考えております。  これらの区域指定基準は、今後、関係省庁、関係機関と調整をとりながら政令で定めてまいりたいと考えております。
  162. 中西績介

    ○中西(績)委員 警戒区域指定をするときには、その理由と指定区域及び土砂災害発生原因の自然現象の種類を公示して、関係市町村に公示された事項を記載した図書を送付するということになっておりますけれども、土地価格との関係から反対する者があり、周知が大変困難と思います。  この際、危険箇所について地域住民への情報の周知徹底を図るための措置、対応はいかにするのか、さらにまた、図書の公開をされるべきと思いますけれども、この点、どのようにするつもりなのか。  さらに、土地取引の際、宅地建物取引業法による重要事項説明の対象としておりますけれども、これを義務づけるべきではないかと思いますけれども、この点についてどのようにお考えですか。
  163. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 まず、図書の公開について、私の方からお答え申し上げます。  土砂災害警戒区域指定を行ったときには、都道府県知事関係市町村に図書を送付しなければならないということになっておりますが、この図書はあらかじめ公示されることになります。公示という手続によりまして公開されるということは担保されておりますが、いわゆる行政上公示という手続だけで公開したということではなくて、実質的に住民にその情報が共有されなければいけません。そのことが重要だと認識しております。そのために、警戒区域等の周知については、法案で規定しているもののほかに、警戒区域等の範囲や避難路、避難場所等を表示した図面を別途作成しまして配付するとともに、現地にわかりやすい表示板を設置するというようなことを考えてございます。
  164. 風岡典之

    風岡政府参考人 宅地建物取引業法の関係でございますけれども、宅建業者が宅地建物の売買の仲介等を行う場合には、当該宅地建物に関して法令上一定の制限があるときにはその内容を相手方に説明しなければならない、このようになっております。具体的には、政令でその中身を決めることになっております。  本法案土砂災害特別警戒区域につきましては、これは一定の開発行為が制限されることとなる区域でありますので、これにつきましても宅建業法に基づく重要事項の対象として政令で定める方向で検討しているところであります。  それからまた、土砂災害警戒区域につきましては、特別区域のような制限はありませんけれども、急傾斜地崩壊した場合に住民の生命、身体に危害を生ずるおそれがある区域でありますので、これにつきましては、相手方の保護が十分図られるように、特別区域と同様、宅建業法の重要事項の対象にしていきたい、このように考えております。
  165. 中西績介

    ○中西(績)委員 特別警戒区域指定についてお聞きしたいと思います。  一定の開発行為の制限や居室を有する建築物の構造が規制されることになります。本案では、住宅宅地分譲、社会福祉施設等の建築のための開発行為の制限や居室を有する建築物の規制などを行っているが、現行法体系の関係で私権の制限についてはどのように今後調整をしていくつもりなのか、この点についてお答えください。
  166. 加藤卓二

    加藤政務次官 土砂災害特別警戒区域における規制に関する見解についてお尋ねがありました。  本法案による施策は、土砂災害のおそれのある地域を明らかにし、その中で開発や建築に対する必要最小限度の規制を行うものになっておりまして、住民の自己責任に期待しつつ、住民の安全確保のための施策を講ずるものでございます。  土砂災害特別警戒区域における規制は、その土地が自然に持っている危険性によるものであって、住民みずからの生命、身体を守るために必要最小限度のものであることから、財産権の侵害には当たらないと考えております。
  167. 中西績介

    ○中西(績)委員 時間がありませんから、意見もありますけれども、次に行きます。  特定開発行為の制限についてお聞きしたいと思います。  特別警戒区域において、開発行為をする土地の区域において予定建築物の用途が制限用途である開発行為をしようとする者は、原則、都道府県知事の許可を得なければならないものとするとありますけれども、具体的にはどのような規定をするつもりなのか、この点についてお答えください。
  168. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 本法案開発規制は、土砂災害による生命、身体の被害を防止するため、開発段階から規制していく必要が高いもの、それを対象と限定しております。  具体的には、住宅宅地分譲等を目的とする開発行為、高齢者、身障者等が利用する災害弱者関連施設である建築物の建築のための開発行為等を規制対象として規定しているところでございます。
  169. 中西績介

    ○中西(績)委員 制限用途とは、予定建築物住宅並びに高齢者、障害者、乳幼児その他特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設、学校及び医療施設等の用途であるものとあるが、政令で定めると言われておりますけれども、ほかに何を予定されてありますか。
  170. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 委員指摘のように、今後政令で定めてまいりますが、関係省庁と調整した上でございますが、現在のところ養護老人ホーム、養護学校、病院等を政令で規定することを見込んでおります。先ほど申しましたように、関係省庁とこれから調整をとった上で規定をしていきたいと考えております。
  171. 中西績介

    ○中西(績)委員 土地所有者にとって制限が厳しくなる指定をする場合、住民等の意見聴取をする必要があると思いますけれども、具体的にどのように措置をするおつもりなのかお答えください。
  172. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 先ほど総括政務次官が御説明申し上げましたように、そこに住んでいる住民自身の生命、身体を守るための権利制限でございますので、指定された区域につきましては警戒避難体制の整備等を初めとする行政上の対応を行う必要があることから、その指定に当たっては都道府県知事は市町村の意見を聞くこととなってございます。その際、市町村が都道府県知事意見を述べる際、地域意見を集約するために講じる手段につきましては市町村の自主性を尊重してまいりたいと考えております。
  173. 中西績介

    ○中西(績)委員 がけ地近接等危険住宅移転事業は、平成十二年度の補助単価の大幅引き上げがなされておりますけれども、今回の場合、なぜこのように大幅に引き上げたのか、この点についてお答えください。
  174. 那珂正

    那珂政府参考人 御指摘のいわゆるがけ事業補助限度額の考え方でございますが、これは移転先住宅の建設のための借入金に係る利子相当額を目安に設定してきたものでございます。  今回、十二年度予算におきましては、土砂災害対策を強力に推進していこうという観点に立って、またこれまでの実績といいますか、住宅建設費の、少しずつではありますけれども、増嵩に伴って借入金額も相当数ふえてきているというような実態を勘案しつつ、今回限度額ベースで最高のもので六百三十万円を七百八万円まで約二割程度引き上げたところでございます。
  175. 中西績介

    ○中西(績)委員 今言われたように引き上げた理由はわかりますけれども、平成十年度予算におきましては、八億三百万、執行額は三億二千九百万です。したがって、不用額は四億七千四百万となっております。なぜこのように不用額が多いのか、結局は利用されなかったということになると思いますけれども、この面がたくさん出ないようにこれからはしようとしておるんですけれども、いずれにしましても、これについての検討が必要ではないかと思いますが、お答えください。
  176. 那珂正

    那珂政府参考人 御指摘のように、このがけ事業全国で十分利用されているとは言えない状況であると思います。  今回の補助限度額の、この時代にあっては大幅と言ってよろしいかと思いますが、この大幅な引き上げ効果とともに、御審議いただいておりますこの新法案によって、特別警戒区域等指定、そこからの移転に対してこの事業推進していくというようなことを含めて、都道府県、市町村という地方公共団体のがけ対策移転対策への積極的な取り組みをも期待いたしまして、この事業の活用の促進に努めてまいりたいと思います。
  177. 中西績介

    ○中西(績)委員 いずれにしましても、予算面から見ましても、内容が果たして多くの皆さんに知られておるかどうかということが一つあろうと思いますし、こうした問題につきましては、先ほども申し上げましたように、多くの住民の皆さんと行政とのかかわりがよほどうまくいかないと、これらの問題については絶えず問題を残しますし、不信を買うことになるわけでありますから、ぜひそうした点について御留意いただいて、行政の側も努力していただくことを要望いたしまして、終わります。
  178. 大口善徳

    大口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  179. 大口善徳

    大口委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策推進に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  180. 大口善徳

    大口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  181. 大口善徳

    大口委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、宮路和明君外六名より、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、日本共産党、保守党、自由党及び社会民主党・市民連合の七会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を聴取いたします。宮路和明君。
  182. 宮路和明

    ○宮路委員 ただいま議題となりました土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策推進に関する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、日本共産党、保守党、自由党及び社会民主党・市民連合を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程におい委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。     土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策推進に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。  一 本法による土砂災害防止のための対策の円滑かつ適正な実施が確保されるよう、土砂災害防止に関する国民の理解を深めるために必要な措置を講じ、土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域指定の促進が図られるよう努めること。また、指定に当たっては、関係市町村や関係住民意見が反映されるよう努めること。  二 土砂災害防止対策基本指針については、本法施行後速やかに定めるよう努めること。また、基本指針に基づき行われる基礎調査都道府県の事務が円滑かつ的確になされるよう支援に努めること。  三 国及び地方公共団体は、土砂災害に対して迅速な警戒避難措置がとれるよう、情報相互通報システムの整備、雨量観測体制の整備等の推進及び支援に努めること。 以上であります。  委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
  183. 大口善徳

    大口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  184. 大口善徳

    大口委員長 起立総員。よって、宮路和明君外六名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、中山建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。建設大臣中山正暉君。
  185. 中山正暉

    中山国務大臣 建設大臣として一言ごあいさつを申し上げます。  土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策推進に関する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことを深く感謝申し上げます。  今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました災害防止について国民の理解を深めることによる土砂災害警戒区域等指定の促進、本法に基づく事務を行う都道府県への支援災害時に迅速な警戒避難措置がとれるような体制の整備等の課題につきましては、その趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。  ここに、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。  ありがとうございました。     —————————————
  186. 大口善徳

    大口委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 大口善徳

    大口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  188. 大口善徳

    大口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五分散会