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2000-03-22 第147回国会 衆議院 建設委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月二十二日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員      委員長 大口 善徳君    理事 佐田玄一郎君 理事 佐藤 静雄君    理事 原田 義昭君 理事 宮路 和明君    理事 田中 慶秋君 理事 吉田 公一君    理事 井上 義久君 理事 青木 宏之君       加藤 卓二君    亀井 久興君       栗原 博久君    小林 多門君       桜田 義孝君    田村 憲久君       西川 公也君    野田 聖子君       蓮実  進君    林田  彪君       増田 敏男君    松本 和那君       宮腰 光寛君    望月 義夫君       枝野 幸男君    島   聡君       樽床 伸二君    平野 博文君       前原 誠司君    渡辺  周君       上田  勇君    西野  陽君       辻  第一君    中島 武敏君       中西 績介君     …………………………………    建設大臣    国務大臣    (国土庁長官)      中山 正暉君    国土政務次官       増田 敏男君    農林水産政務次官     谷津 義男君    建設政務次官       加藤 卓二君    政府参考人    (農林水産省構造改善局次    長)           佐藤  準君    政府参考人    (水産庁長官)      中須 勇雄君    政府参考人    (資源エネルギー庁公益事    業部長)         大井  篤君    政府参考人    (建設省河川局長)    竹村公太郎君    政府参考人    (自治省財政局長)    嶋津  昭君    建設委員会専門員     福田 秀文君     ————————————— 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   岸田 文雄君     望月 義夫君   野田 聖子君     栗原 博久君   林田  彪君     田村 憲久君   前原 誠司君     枝野 幸男君   渡辺  周君     島   聡君 同日  辞任         補欠選任   栗原 博久君     野田 聖子君   田村 憲久君     林田  彪君   望月 義夫君     岸田 文雄君   枝野 幸男君     前原 誠司君   島   聡君     渡辺  周君     ————————————— 三月二十一日  大深度地下公共的使用に関する特別措置法案内閣提出第五九号) 同月十七日  愛知万博を利用した新住宅開発事業の中止に関する請願瀬古由起子紹介)(第四九〇号)  同(瀬古由起子紹介)(第五三三号)  建設省中部地方建設局における男女平等な職場の実現に関する請願知久馬二三子紹介)(第五三二号)  同(石井郁子紹介)(第五三九号)  同(瀬古由起子紹介)(第五四〇号)  同(辻第一君紹介)(第五四一号)  同(中島武敏紹介)(第五四二号)  同(中林よし子紹介)(第五四三号)  同(藤木洋子紹介)(第五四四号)  同(藤田スミ紹介)(第五四五号)  同(石毛えい子紹介)(第五五三号)  同(土井たか子紹介)(第五五四号)  同(辻元清美君紹介)(第五六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  河川法の一部を改正する法律案内閣提出第一九号)  大深度地下公共的使用に関する特別措置法案内閣提出第五九号)  公共事業個別事業内容実施状況等に関する予備的調査についての報告     午前十時三十分開議      ————◇—————
  2. 大口善徳

    大口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出河川法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として建設省河川局長竹村公太郎君、農林水産省構造改善局次長佐藤準君、水産庁長官中須勇雄君、資源エネルギー庁公益事業部長大井篤君、自治省財政局長嶋津昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大口善徳

    大口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 大口善徳

    大口委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林田彪君。
  5. 林田彪

    林田委員 それでは、河川法にかかわる問題ということで、トップバッターで質問させていただきます。  河川といいますと、きょうび、やはり吉野川の第十堰の話がマスコミと申しますか国民の一番関心のあることではなかろうかと思います。これは私ごとになりますけれども、私も、河川改修と申しますか河川管理に若干携わった者としてそれなり意見と申しますか、思いを持っております。それを含めましてひとつ質問させていただきたいと思います。  至って河川は、当然でございますけれども、全く自然が形成したものでございますし、なおかつ、長い年月の間、その流域流域生活される方々のそれぞれの思いというか、それが非常にしみ込んだ川でございます。また、それぞれの河川が特徴を持っておりまして、一本、一本それぞれやはり地域地域代表する河川である。全くそういう意味では、同じ河川は二本と日本にないというような表現もおかしいのですが、そういう特性を持っているかと思います。  そういう中で、建設省からいただきました資料の中で、第十堰の生い立ちというのがございます。  これを読ませていただきますと、今から三百三十年ほど前、一六七二年ごろとなっておりますので藩制の始まったばかりかと思いますが、このとき、第一番目に新川開削というふうになっております。これは恐らく、現在では旧吉野川になっておりますけれども、その吉野川沿川の方々洪水に悩まされて、別宮川というのですか、右に支川になっていたと思うのですけれども別宮川の方にいわゆる本川化を図るということで、これは人工的に開削されたんじゃなかろうかと思うのです。  それ以来八十年たって、現在の第十堰というのですか、それが設置された。約二百五十年ほど前でございますけれども、この堰そのものは、目的は、洪水別宮川の方に行ったんだけれども、いわゆる農業用水と申しますか、稲作用取水が恐らく厳しかったということで、利水上の要請でこの第十堰そのものは恐らくつくられたんじゃなかろうか。まず洪水で、洪水は来てくれるな、日ごろの水はとりたいという要望の中でこの第十堰が二百五十年ほど前につくられたようでございますが、当然、低水分流というのは日ごろは結構なんですけれども、いざ水が少なくなる、あるいは洪水のときになりますと、いわゆる塩害の被害とか、あるいは農業用水取水支障を来すということもあったのでしょう。  それから百三十年たって、いわゆる上堰というのですか、今斜めになっている上流の方の堰、これがつくられておるということでございますが、当然、その上堰がつくられるということは、洪水時に水が引いた後、土砂が堆積して、日ごろの利水に向かっての取水が非常に支障を来すということ等もあったようでございます。  最終的には、それでは取り入れ口のっけようではないか、のっけようではないかというか位置を変更しようということで、大正十二年、約八十年ほど前に第十樋門を設置されて現在の形ができ上がったというふうになっております。  そういうことで、河川局長にまずお尋ねでございますけれども治水上、洪水を安全に流下するという意味合いからすれば、この堰はあった方がいいのか、ない方がいいのか、一言で結構でございます。
  6. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 ただいま先生から御説明ございましたように、この第十堰は、平時にはなくてはならない施設ですが、洪水時にはあってはならない施設でございます。
  7. 林田彪

    林田委員 私も全くそのとおりだと思うのです。これも写真だけの判定で申しわけございませんが、昭和四十九年の洪水のときのこういう写真をいただきました。私も、ある面では技術屋の端くれとしてこの写真を見たとき、まず、これは治水上非常に厳しいなと思いましたのが、この左岸側でございます。この写真が撮られたということは、恐らくピークが過ぎた後だと思います。ましてや飛行機が飛べるような状況ですから、いわゆる一番厳しい時間帯は過ぎた後だと思うのですけれども、それすらこの左岸側には、いわゆる迂回流というか、多摩川裁判を引き起こしましたようなそういう迂回流流れが見受けられる。なおかつ、この右岸側、一番右側でございますけれども、この斜めになっている堰、これは、これから見ただけでも、乱流というか波が立っているのがよくわかりますし、恐らくこれは、いわゆる局所洗掘というか深掘れというか、そういう事象が起きる可能性があるんじゃなかろうか。  それと同時に、この堰本体そのもの、いろいろな写真を見せていただきますと、固定堰固定堰といいながら、これはどうも言葉は悪うございますが、いわゆる継ぎはぎだらけの堰というか、そういう意味合いでは、ブロック乱積みも、恐らく四トンものか三トンものか、十何トンなんというブロックじゃないようでございますが、そういうブロックをいわゆる乱積みの状態で置かれておる。すると、これは堰本体がもし流出いたしますと、恐らくこの堰をめぐる流出に伴う流れの乱れというのは、とてもじゃないけれども予期せぬような流れが出てくるかと思うのです。  今までの出水の経過で、ある団体に言わせると、八十八年間出水がないじゃないかと言っておるようなこともちょっと新聞等で見受けられましたが、要は、この堰があることによって、治水的な危険性というかそういうものを、具体的に河川局長も、建設省も、あるいは地元消防団、どういう認識でおられるか、お尋ねしたいと思います。
  8. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 吉野川大変流れが急流で、そして洪水日本河川の中で最も大きな洪水流量を出す川でございます。一気にこの吉野川の大きな洪水徳島平野になだれ込み、現在、文明を築いている徳島平野方々洪水被害の危険にさらしているわけでございますが、それを、現在私ども河川改修を懸命にやると同時に、流域水防団方々が毎年のように出水のたびに出動して、どうにかこの堤防の崩壊を免れている現状にございます。  具体的に最近の例で申しますと、去年、平成十一年の七月、水防団がこの第十堰上流におきまして、十七・四キロでございますが、そこで水防活動をやっております。月の輪という工法をやっております。それは何かと申しますと、川の中の水位が高くなって、その水位堤防負荷をかけて、そして人々の住んでいる堤防のところから水が噴き出すという現象がございますので、水防団方々は、人々が住んでいる側に大きなプールを土のうでつくって、水が堤防から噴き出し土砂を洗い流すことを防止するための月の輪工法をやっております。  実は、そのときの水が噴き出した場所と川の中の水位の差が二メーターでございます。たった二メーターの差でもって実は吉野川の水が堤防を噴き出したという事態が去年の七月に生じております。実は、その二メーターと申しますのはハイウオーターハイウオーターと申しますのは、私ども技術屋が、この吉野川洪水から守ってみせましょうという一つの目安の水位が十四・三メーターでございますが、実は、水が噴き出したときには、それより四メーターも低いところで噴き出しているわけでございます。  ですから、私ども、この吉野川において、ハイウオーター、つまり危険な水位十四・三メーターまでどうにか守ってみせますが、水防団方々の御尽力なくしては、現在この吉野川安全性は守れない状況になっておりまして、今先生の御指摘のように、迂回流、または、もし堰が流出した場合の思わぬ流速の変化等による堤防負荷がかかり、あの四十九年の多摩川で起きましたような、十九戸の流失ということで多摩川では済んだわけでございますが、この吉野川大変天井川でございますので、もし一たび堤防が決壊したら大変な被害になると私ども考えておりますので、万全を期してまいりたいと考えております。
  9. 林田彪

    林田委員 洪水流を安全に流すためには、まず流れてくる量を減らすか、あるいは器を大きくするか、この二点が一番わかりやすいことかと思うんです。  流れてくる量、これはもうはっきり言って、上流の方でのダム調節とかあるいは遊水地での調節とかあるんでしょうけれども、いずれにしましても、河川の方で、河積、入れ物、器を広げる意味合いでは、私も現場現場でやってきたのは、まず考えるのが河床の掘削でございます。第十堰の現場で合致するかどうかわかりませんけれども、まず河床が下げられないか。これは当然、すべての日本の川はほとんど一〇〇%近くが海に注ぎ込んでおりますので、海の海底高との関係で、これはやはり限界がある。  その次は、横幅を広げられないか。これは地方等の用地が潤沢にあるようなところであれば結構なんですけれども、恐らく中心市街地市街地流れている河川などというのはとてもじゃない。  その次は、一番最後手当てとして、水位を上げてもしようがない、要するにかさ上げ堤防という対処の仕方があるんでしょうけれども、今の河川局長答弁からいたしますと、河川をある面では預からせていただいている立場の方としてはいわゆるヘッドヘッドといったらちょっと専門用語になりますが、水頭を要するに極力低くして処したいというのは、これは河川局全体のポリシーというか哲学というか、そういうものとして理解してよろしいですか。
  10. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 私ども河川技術者の一番の原則は、洪水時に水位を一センチでも二センチでも下げるというのが大原則でございます。一つの手法としましては、上流ダム流量を少なくするというような方法もございます。この吉野川におきましては、徳島県ではなくて高知県におきまして、早明浦ダム等、四百世帯の方々犠牲の上に立ってつくったダムが、実は下流の徳島県を守っております。高知県の犠牲に基づいて徳島県が守られております。  今度は、徳島県の中におきまして、一センチでも二センチでも洪水水位を下げること、つまり、人工的につくってしまったこの第十堰を、人為的につくった第十堰だから人為的にどうにか下げていこう、水位を下げるための工夫をしようというのが私たちの原則的な考え方でございます。
  11. 林田彪

    林田委員 ありがとうございます。全くそのとおりじゃなかろうかと私自身もある面携わった者として心強く思っております。ぜひその方向を曲げないように、よろしくお願いしたいと思います。  それで、治水上この堰は全く要らないものというか、無用のものということでございますけれども、当然、これは長い歴史の中で、初めはやはり、ちょんまげ時代と言ったら表現が乱暴過ぎるかと思いますが、その時代からの農業用水での営みといいますか、水との格闘であったのではなかろうかと思います。そういう意味合いで、この第十堰にかかわる利水者農業用水あるいは工業用水あるいは都市用水、いろいろあろうかと思うんですが、それぞれ治水上の、撤去をしてくれ、あるいは可動堰化要望というのは結構あるんだと思うんですが、水にかかわる方々、いわゆる利水受益者と申しますか、そういう方々意見思いというか、そういうのはどういうふうに伝わってきているというか、掌握されているんでしょうか。わかる範囲内で結構でございます。
  12. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 先ほど申しましたように、平時においてはこの堰は川の水位をかさ上げして水をとりやすくしている、役に立っている堰でございますが、洪水には逆に邪魔をするということでございます。  私の今手元に持っている全国の、取水をする利水者のためにこれはある堰でございますから、見てみますと、この第十堰はベストテンに入るほど多くの水を取水しております。三十四トンという非常に多くの水を取水しております。その中で、なおかつ二十トン以上取水している全国の堰を見ますと、固定堰は実はこの第十堰だけでございます。つまり、日本全国の中においても、非常に多くの水を取水している堰の中で、固定堰で残されているのは実は第十堰だけでございます。  一つ考え方としては、未来永遠にその第十堰を手直し手直しをしながら持っていくということも一つ代替案としてはございますが、流域利水をしている方々は、一番効率的に、安全に、そして長い間確実に取水するというための堰にしていただきたいという要望が私どもに届いております。利水者からも、この不安定な固定堰をきちんとしてもらいたいという思いはあると私は認識してございます。
  13. 林田彪

    林田委員 恐らく、この堰があることによって、徳島平野というのですか、吉野川平野というのですか、あれそのものが存在するということ、これは過言ではなかろうかと思いますが、河川、それぞれ思い思い、その地域方々あるいは時代要請に応じて、いろいろな手が打ってこられました。  私の地元熊本でも、当然でございますが、加藤清正公が、治水の神様と言われた方でございますが、要は、水がはんらんするときは熊本市内の方にははんらんしないように、物理的に言えば、要するに薩摩側、いわゆる左岸側がはんらんするような手を打ってございます。あるいは堤防そのもの熊本市だけを守るための堤防で、片側は堤防がないところすら現在あるような状況でございます。  そういうことで、建設大臣に、最後の方といいますか、まとめというような意味合いでお願いしたいのですが、河川流域で、それぞれやはり長い歴史の中で培われた生活実態等があろうかと思います。ある面ではこれは生き死にの問題、生きるという意味合いでは、日ごろ、こういうきょうみたいな天気のいい日もそれなり営みをやっていかなければいかぬ。そういう意味合いで、生きるということもありますし、いざ出水のとき、これはとんでもない事態も生じるわけでございます。  吉野川にしましても、資料が整っているのが大体二十九年以降でございますけれども、西日本河川資料が整ったのが昭和二十八年の災害、いわゆる二十八災というふうに表現しておりますけれども、ほとんど九州北部も含め、大体二十八年を契機にいろいろな手当てが、観測網の整備すらそれから始まっているような状況でございます。  いずれにしましても、生き死にの問題と、住民投票がどうのこうのというのは、いろいろな意見があろうかと思います。そういうものを含めまして、生命財産を守る、あるいは安定した生活基盤を整備するというのは、国として、ある面では最低というか、最小守るべき責務ではなかろうかと思う。そういう中で、こういう第十堰あたり、現在の進捗状況が、まだまだ現場には入っていないというような状況のようでございますけれども、今後の建設省としての取り組む基本的な姿勢といいますか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  14. 中山正暉

    中山国務大臣 御専門の筑後川の工事事務所長をしておられて、本当に釈迦に説法でございますが、今、河川局長とのやりとりを伺っておりまして、私もこの間、先月の二十六日に大阪猪名川で、享保五年といいますから、八台将軍吉宗のころにつくりました固定堰を今度は可動堰に改築するという式典に出てまいりました。ここは流域七市がありまして、大阪と兵庫県の間を流れる川でございますが、ここは住民投票も何にもなくて、皆さんの御意見が一致して、あと二年でゴム式可動堰が築かれることになりました。猪名川の場合は十年に一遍の洪水の予想、その下に左門殿川とか中島川とか神崎川とかいう川がありますが、これは六年に一遍ということでございます。  吉野川の場合は、百五十年に一遍か七十年に一遍、こういうことでございますが、明治六年にやってきましたヨハネス・デ・レーケ、これは吉野川明治十七年に行っておりまして、この固定堰は後年何とかした方がいいという予言も残しておるわけでございますが、淀川の改修とか、それからこの間木曽三川に行きましたら、木曽三川もこのデ・レーケが三本の川をちゃんと分離する仕事をしております。  日本明治維新、立ち上がりのときに、オランダのいわゆる技術を導入した、そういう方も指摘をしておりますこの吉野川の問題というのは、これは百九十四キロ、高知県の本川村瓶ケ森を水源にいたしまして、百九十四キロのうち徳島に接するところは十四キロだけでございますけれども、ここで住民投票をやられました。市で条例を決められて御意思を表明されたわけで、その中にも、九千三百六十七票の早くやってほしいという少数意見もあったわけでございます。  私は、皆さん代表方々建設省大臣室にも来ていただきまして、今後皆さんの御意見を聞きながら、まだまだ調査費がついておるだけでございまして、うわさでは千三十億、これは道路と可動堰が一緒になった場合でございますが、千三十億とか可動堰だけの場合は九百五十億とか、これはただ想定されていることでございますので、まだ調査費しかついておりませんし、今すぐという問題でもございません。  皆さん意見を伺いながら、治水を担当する建設省といたしまして、住民生命財産を守ることが大きな責務でございますし、洪水流れを妨げている今の固定堰現状のまま放置することはできないと思っております。事業として何らかの対応が必要であると考えておりますし、第十堰につきましては、今後流域方々から幅広く御意見を伺って、対話を積み重ねて、河川管理者としての責任を果たしたい、治水上の安全を確保することに取り組んでまいりたいと思います。このために、私自身も現地に赴きまして、この事業に賛成の方々、反対の方々住民代表である市町村長考え方など幅広く拝聴をして、今後の対応をしたいと思います。  治山治水と、政治の治という字が、山を治める、川を治めるというのがついております。中国では、揚子江とか黄河とか、曲がりくねった江とか河とかいう大きな川、これは、中国の王様が竜をマークにしておりますのは、川を治める者は国を治めると。それがシンボルで、中国では王者のマークは竜ということでございます。  私どもはこのいつ暴れるかわからない竜をどういうふうに制御していくかというのが、私、国土庁長官もやっておりますが、国土を保全する意味での安全対策としての私の責務であると思っております。
  15. 林田彪

    林田委員 力強い御答弁をいただきましてありがとうございます。ぜひ河川局は、技術集団トップとして自信を持って進めていただきたいと思います。  それで、実は今回の河川法改正、それぞれ地域住民方々、あるいは広くその意見を聞きながら、あるいは参加という形になっているようでございますが、今回の河川法改正に当たりましてどのような、いろいろな検討がなされたかと思います、そういう面を含めまして、総括政務次官、何かございましたら。
  16. 加藤卓二

    加藤政務次官 今回の河川法改正に当たっての検討についてのお尋ねでございます。  平成十年九月から、建設大臣諮問機関である河川審議会において、経済社会変化対応した河川管理の体系のあり方について審議をいただき、昨年八月に、個性豊かな自立型地域社会の形成を進めるため、市町村を初め流域における多様な主体が河川管理に幅広く参画することが必要との答申をいただいたところであります。  さらに、昨年十二月から、河川管理への市町村参画拡充方策について引き続いて審議を行い、本年一月に、市町村工事制度拡充政令指定都市への河川管理権限の委譲を内容とする答申をいただいたところであります。また、これと並行して、十二の政令指定都市関係都道府県とも意見交換を行い、これらを踏まえ、今回の法律改正を行うところとしたものでございます。
  17. 林田彪

    林田委員 ありがとうございます。  河川は、非常に長い歴史の中で、地域方々とのかかわり合いで成り立ってくる。まして、その時代時代要請の中でそれぞれ改修の契機、あるいは利水施設の設置の契機ということになるのでしょうが、いずれにしましても、この河川法も含めまして、地域住民の多様なニーズが出てきておると思います。ましてや、物をつくる以上、ただ用を足せばいい、あるいは強ければいいのではなくて、やはりそれなりに風景にマッチした、あるいは美しいものとか、要するに用強美というふうに我々教わりましたけれども、そういう精神でもって処していかれると思うのです。  どの時代でも変えることのできない責務といいますか、守るべき、どなたが何と言われようともどうしてもこうあるべきだということは、やはり国の責務と申しますか、利害を調整する立場におられます建設省河川局はぴしっとした誇りを持って、力強い、蛮勇という意味合いではなくて、とにかく時代時代で変わらない大事なものが必ずあるというものを常に認識されて、今後の河川行政に処していっていただきたいと思います。  以上です。よろしくお願いします。
  18. 大口善徳

    大口委員長 渡辺周君。
  19. 渡辺周

    渡辺(周)委員 民主党の渡辺周でございます。  この後は一時間半の民主党の委員の枠をいただきました。前段、私が法案についての質疑をさせていただきまして、その後に、同僚である前原委員から各個別の御質問があるということでございます。  まず、河川行政の方向性という点について、建設大臣お尋ねをするわけでございます。  この河川法改正平成九年の六月だったかと思いますが、私どもも旧民主党の時代にこの河川法の政府案に対抗して、私どもとしては市民団体等の中心になりまして、さまざまな、学者の先生方も一緒になりまして、旧民主党独自の河川法改正案を提出いたしました。  当時、私どもは、河川管理権限におけるいわゆる地方分権、情報公開、住民参加、そしてまた環境への負荷を最低限にとどめるようにといったことを柱にしまして、当時は亀井静香建設大臣だったかと思いますけれども、私も答弁者の一人としましてこの対案を出しました。  その中で質疑を行いまして、残念ながら我々は否決、廃案となったわけでございますけれども、その後の河川行政の方向性を見てまいりますと、ある意味では私どもが法の精神として訴えてきた部分が、まさにこの方向に傾いてきている、そんなようなことを認識しているわけであります。  昨年成立しました地方分権一括法等々によりまして、河川管理における分権が進みました。そしてまた、今回提案されている改正案もその一部だと認識をしているわけでありますが、私どもが訴えてきた情報公開、それから住民参加。機能しているかどうかは別にしましても、我々が強く訴えてきた点について、例えば国民の意識というものが、今も質疑にありました吉野川の問題、それからそれ以前の例えば長良川の河口堰の問題、そうしたさまざまな問題を含めまして、大変意識が高まってきたことは御案内のとおりでございます。  そんな中で、今、例えば河川審議会で、本年一月でありますが、川と人の長い歴史を振り返り、先人の知恵に学ぶことが肝要として、風土との調和の中で工夫された伝統工法をということが答申の中に盛り込まれました。そしてまた、河川局のホームページを開いてみますと、市民参加、環境保全という言葉が大変ちりばめられている。まさにオンパレードでございまして、今さらながら、どうして我々が訴えてきたことが当時受け入れられなかったのか、当時の話でございますけれども、不思議な思いがするわけであります。  そんなことを考えますと、治山治水利水といったような従来の河川行政から、環境保全、住民参加、そして地方分権、こうした重要性が飛躍的に増してきた、そしてまたそれを建設省も認識をされているところでございますが、この変化について、今回のこの法案提出に当たりまして大臣がどのように受けとめていらっしゃるのか、また評価しているのかという点につきまして、まずは御答弁をいただきたいと思います。
  20. 中山正暉

    中山国務大臣 第二次世界大戦が過ぎまして五十四年の間、世界の環境に対する感覚というものが今ぐらい盛り上がってきた時代はないと思います。資料を収集するいろいろな科学的な、計測器なんかも大変発達いたしましたから、前には全く意識の外にあったようなものが考えられるということになってまいりました。  特に、私どもがいろいろな恩恵を受けておりますし、また、一たび暴れれば大変な被害を受けるという川の問題、全国で百九本の直轄河川を持っておりますが、先般の平成九年の河川法改正でも、十六条の二の四というところで、一般の市民の公聴会なんかを開きまして一般の方々の知恵、とにかく特に現場の知恵というのもあるものでございますから。と申しましても、やはり直轄河川はいろいろな府県を縦断的にまた横断的によぎる川があるわけでございますので、地方とそれから中央の知恵の結集というのがこれからの時代の私は河川行政の中心になるべきものであろうという感じでおります。  平成九年の河川法改正のときには、法律の目的として河川環境の整備と保全が位置づけられるとともに、また新しい計画制度が導入されて、河川整備計画の策定に当たり、地方公共団体の長それから地域住民等の意見を反映する手続が整備されたところでございますが、地域意見を生かした河川整備を推進することが、今、制度として始動をし始めた。  このような河川環境や地域特性を踏まえた河川整備に対する要請は、今後とも一層高まってくると考えておりまして、国民の生命と財産を守る河川行政の使命を確実に遂行する一方で、多様な国民の要望にこたえるような河川行政を進めてまいりたい。  特に、コンクリートで固めた川には何とも言えない悲哀を感じます。のり面も、メダカやトンボそれからまたカタツムリがはい回るような、子供たちに自然の夢を与えるような河川というものはすべての母でございます。やはり地球といいますけれども、地球は陸の部分というのは三割しかございません。七割は海でございまして、その海に水を提供するところ、世界につながる河川というものを我が国が環境の問題を考えながら浄化していくこと、これは世界のためだと思います。本当は、地球と言わずに水球と言った方がいいのかもわかりませんが。その意味で、水というのの環境の保全というのは、世界的な、特に先進国としての日本の使命であろう、かように考えております。
  21. 渡辺周

    渡辺(周)委員 今大臣から御答弁いただきまして、非常に叙情的なと申しましょうか、あるいは牧歌的な何かイメージが大変浮かぶような、大変前向きの御答弁をいただいたと思うわけであります。  まさに、地方分権、環境保全、中央の知恵と地方の知恵、これから地方の知恵、最も周辺の住民がどのような形でかかわっていくか、そしてあるべき姿をその伝統社会の中で築いていくか、位置づけていくかということがまさにこれから問われるわけであります。また、環境保全、我々も保全というものを決して、昔のままがいいんだ、放置をしておくことが最善だというふうに言っているのではありませんで、私の地元に狩野川という一級河川流れておりまして、かつては大変な大災害を引き起こしたところでありますから、そういう意味では、人の財産生命にかえて何よりも環境が大事だ、それだけを言っているわけではないわけです。その点においては、今後どのような形でそうした視点を入れて、環境も含めた視点を重視しながら河川行政を考えるかということに対して、まさに前向きなお考えをいただいたと認識をするわけであります。  平成九年改正の後の河川行政の変化についてちょっとお尋ねをしたいわけであります。  基本的な計画制度の変更ということで、ちょっとさかのぼってこの法について考えてみますと、平成九年改正の時点で、従来の工事実施基本計画にかえて河川整備の基本方針及び河川整備計画、二本立ての計画として、とりわけ河川整備計画の策定に当たっては、学識経験者の意見を聞いて、必要がある場合には公聴会を開催することができるということを法の中に盛り込んだわけであります。そしてまた、まさに今大臣が御答弁されたような趣旨で、従来の治水利水から、環境の保全ということを加えて考えようと当時建設省説明をされました。  そこで、お尋ねをしたいわけでありますけれども、この法改正後、現在どの程度の水系で河川整備基本方針あるいは河川整備計画を策定されたのか。そしてまた、当時の答弁の中で建設省は、積極的に公聴会というものを住民参加の手段として担保していくんだということを答弁されたわけでありますけれども、現実問題、具体的にはどれぐらいの回数が開催されたのか、実際問題として、具体的な数字として御認識をいただいているのであればここで御答弁をいただきたいな、そのように思うわけであります。
  22. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 法改正に伴いまして、平成九年以降の私ども河川整備基本方針及び計画の策定状況についてお答えいたします。  まず、国が管理しております一級水系につきましては、昨年十二月に留萌川、沙流川、最上川、豊川、由良川、大野川の六水系で河川整備基本方針を策定したところでございます。引き続きその河川におきましては、河川整備計画を策定すべく現在作業を行っている最中でございます。他の水系につきましては、基本方針及び整備計画の策定に向けて、現在、各地建で努力している状況にございます。  都道府県知事の管理している二級河川につきましては、上津浦水系等全国で九水系で河川整備基本方針が策定されまして、このうち上津浦川と気仙川の二水系では河川整備計画を策定いたしました。  もちろん、この河川整備計画の策定したところの二河川におきましては、河川法第十六条の二の四項、関係住民意見を反映させる必要な措置という条項に基づきまして、河川整備計画が策定されたこの上津浦川と気仙川では、ともに、関係住民意見を反映する方法といたしまして地域住民への説明会を開催して、質疑応答、意見交換等を行ったところでございます。
  23. 渡辺周

    渡辺(周)委員 今、るる御説明をいただいたわけでありますけれども、そうしたら、ちょっと個別の河川の策定について伺いたいわけであります。  今も質疑のありました、いわゆる吉野川であります。第十堰改築事業が法改正前の工事実施基本計画を前提に進められている事業だと認識しております。ここに、九年の改正河川法の「目的」に、環境の整備と保全という目的が追加をされました。もし、今こうした河川整備計画を策定するとなれば、学識経験者でありますとかまさに住民参加の公聴会のような形で意見を加味すれば、これまでと違う結果が当然出るんではないだろうかと思うわけであります。  具体的な問題につきましては、先般、前原委員も長時間にわたりまして質疑をいたしました。ここでは時間の関係で割愛をいたしますけれども、質問の意図は御理解をいただけるかと思うわけでありますが、それではこの吉野川の基本方針及び整備計画は一体いつ策定されることになるんだろうか。  そしてまた、重ねてお尋ねをしますが、川辺川、それから揖斐川、特に揖斐川上流の徳山ダム建設区域付近、最近はオオタカのような貴重な生態系の生存地としてまた重要性が指摘をされているわけでございます。そうしましたところは当然住民団体を初め環境団体、こうした団体から幾つかの問題点が既に指摘をされているわけでございまして、そんな中でこの個別の三つの河川について、いわゆる平成九年改正の法の精神といったものが生かされていくのか、その点について、この三河川について、基本方針それから整備計画の策定状況について御答弁をいただきたいと思います。
  24. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 ただいま御質問の三河川につきましての河川整備方針及び計画の策定状況につきましてお答えいたします。  吉野川、球磨川、木曽川水系、木曽川水系というのは徳山ダム関連でございますが、揖斐川を含みます。河川整備基本方針につきましては、現在、その策定に向けて各地建で検討中でございます。  ただし、改正河川法におきましては、河川整備基本方針及び河川整備計画が法施行後直ちに策定されるものではない、相当期間時間を要さざるを得ないという判断から、これらが定められるまでの間は、今まであった工事実施基本計画の一部を河川整備基本方針及び河川整備計画とみなすことを附則の第二条に経過措置として明記してございます。  川辺川ダムに関します球磨川、そして徳山ダムに関します木曽川につきましては、これらの規定に基づきまして、昭和六十三年に改定された工事実施基本計画、六十三年は球磨川でございます、そして、平成六年に改定された木曽川水系の工事実施基本計画に基づきましてこれらの事業が進められているところでございます。  なお、吉野川水系におきましては、昭和四十九年、五十年、五十一年と大きな水害に見舞われましたので、昭和五十七年に吉野川の工事実施基本計画を改定しておりまして、これに基づきまして第十堰の改築事業が位置づけられておりまして、現在、吉野川水系において、第十堰について今後流域方々から広く意見を聞きまして、種々の代替案も議論の対象といたしまして対話を積み重ねて、この事業の進め方について流域方々と議論して内容を詰めてまいりたいと考えております。
  25. 渡辺周

    渡辺(周)委員 従来の御答弁と変わらないわけであります。広く意見を聞くということはもちろんでございます。  ここで、ちょっと大臣にお尋ねをしたいわけでございます。前回から特に吉野川の問題、それ以外にも、公共事業地域住民のさまざまな要望あるいは環境団体からのいろいろな意見も含めて、今特徴的な三つの河川を私どもは挙げたわけでございます。そんな中で、今、計画の策定めどが立たない、相当期間だというような御答弁がございました。  現実問題として、こうした平成九年改正の法の精神を、どのような形でいつごろまでに具現化をするのか。もちろん住民意見聴取というものもある。それらを総合的に判断をされるというこれまでの御答弁がございますけれども、その点について認識をどのように持っていらっしゃるのか、大臣に一言いただきたいと思います。
  26. 中山正暉

    中山国務大臣 この間、明日香村へ行った帰りにいわゆる亀の瀬という、大阪の二上山とそれから信貴山の間、これは私もびっくりしたのですが、大阪にいながら知らなかったのですが、あそこは日本一の地すべりの上に大和川という川が乗っているのですね。それに対して、直径八メートルの百メートルのくいを四十二本打って、動く地すべりの地盤をとめているという大変な工事を見せてもらいまして、大変私も勉強になりました。  考えてみると、先ほど御答弁申し上げました中にも、二十六年ぶりに猪名川固定堰可動堰改修をされる。それから、今申しました大和川というのは、中甚兵衛という人が十八歳から六十八歳まで、五十年かかって大和川を北へ流れておりましたものを大阪湾に直接流す。何で大阪の真ん中を流れているのに河内川とかなんとか言わないのかなというと、その地すべりのところがもし遮断されると奈良県が全部湖になるそうでございます。それがもし破堤すると大阪の六割が水没する。そういうことを考えますと、なるほど五十年かかったのだなと。それから、猪名川の周りは六兆八千億ぐらいの経済区域でございますから、七市が関係していて、この川が十年に一遍とか六年に一遍のはんらんが予想されておりますから、それは時間がかかって当たり前だなと。  先ほど申しましたヨハネス・デ・レーケが明治七年に淀川水系、ずっと上まで上がって調査をしておりますが、それがまた二十数年かかって、淀川という今の大阪のど真ん中をよぎって真っすぐ流れるあの川。そう考えてみますと、何も今、慎重に皆さんの御意見を聞きながらどうしたらいいかというのは、長いスパンで私は考える必要があるのではないか。  特に、今御指摘のありました吉野川というのは、七十年に一遍とか百五十年に一遍とかいうことで、大阪と神戸の間を流れている川のように十年に一遍の洪水予定とかそんなものでしたら、これは大いに急ぐ必要がありますけれども吉野川皆さんの御意見が、和気あいあいのうちに川をどうするかということは、これはみんなの川でございますから、百九十四キロのうちの十四キロを接していらっしゃる徳島皆さんの御意見も貴重と拝聴しながら、あと四十七市町村関係がありますし、多くの県に関係があります。四国、日本代表する三大暴れ川の一つでございますから、これは慎重に、河川法改正の趣旨に従いまして着々と準備を進めていくことが私は大切ではないかなと。  そういう意味で、河川法改正に関しましては、河川整備基本方針及び河川整備計画が、法施行後直ちに策定されるのではなく、相当期間を要さざるを得ないことから、これらが定められるまでの間の工事実施基本計画の一部を河川整備基本方針及び河川整備計画とみなすことを附則第二条に経過措置として規定をいたしております。  一級水系につきましては、昨年十二月に河川整備基本方針を策定した大野川等六水系、先ほど河川局長から六つの水系の話を御答弁申し上げましたが、現在、河川整備計画を策定すべく具体的に作業を進めております。他の水系についても、河川整備基本方針及び河川整備計画の策定に向けて鋭意努力を進めてまいる、なかなか一朝一夕には皆さんのコンセンサスを得られないと思いますので、建設省としても、それは皆さんに御理解を得るための大いに努力をいたしたい、かように考えております。
  27. 渡辺周

    渡辺(周)委員 今、まさに御答弁をいただいたわけでございます。ぜひともその意見を、これは大変国民が注視をしているんですね。ただ、一河川治水あるいは周辺住民のみならず、これはもちろん周辺住民の方にしてみると、遠くから何を言っているんだ、こういう問題は常にそうであります。自分たち地元のまさに生命財産を考えたときに、治水という問題がなぜ東京や大阪の人間からあれやこれや言われなければいかぬのか、ましてや東京の政治家が出てきて、何であんな東京であれこれ言われなければいかぬのか、地方のことは地方に任せろと、これは我々もいろいろな公共事業現場へ行ったときに言われたことであります。  しかし、この問題で大きいことは、住民参加という、今制度が不備な中で住民投票というまさに制度が行われたことによってこうした意見が表明をされた。それをこれからどうとらえていくか、そしてまた、それが果たして行政をどのような形で動かしていくことができるのか、これは大きな本当に私は転換期にある象徴的な一つの課題だと思っております。  そういう意味では、政治的な決断というものが歴史に残るわけでございまして、その点につきまして、これは大臣もしくは建設省皆さん方にぜひとも重く受けとめていただいて、この問題だけに時間を割けませんけれども、御判断をいただきますように御期待を申し上げたいと思うわけであります。  時間が私も決まっております。そんな中で、改めてもう一つ大臣に御認識を伺いたいわけでありますが、どの程度河川環境の整備保全ということが実行されているかについての御認識をお尋ねしたいと思います。  平成十二年度の河川局の予算概要を見てみたわけでありますが、来年度の新規事項に河川環境の保全にかかわるという事業が一切ございません。重点項目の経済新生特別枠の中には若干の配分も見受けられるわけでありますけれども河川局全体の予算から見ると微々たるものである。そうしたことを考えましたときに、反面で、従来から行っている大規模土木が今年度も相変わらず予算がついている、この点が、まさに従来型土木と批判される公共事業であります、予算配分だと我々は認識をするわけでありますが、この点についていま一度、大臣はどのように御認識をお持ちか、聞かせていただきたいと思います。
  28. 中山正暉

    中山国務大臣 これは、河川環境保全のための事業というのは、大部分が治水のための事業と一体化をして行われておると思っておりますので、環境保全のための予算額を分離して算出するというのはなかなか困難だと思います。河川環境整備事業というのは、専ら水質の改善とか河川敷の整備を行う事業の予算名でございまして、河川環境保全のための事業の一部、こう考えていただければいいと思うのでございます。  いわゆる日本がどうして復興するかという経済発展ばかりを頭に置いておった時代には、なかなか環境の問題なんかには配慮がなされなかった時代は、とにかく川が危ないからコンクリートで固めろと。これが、現在はっと気がついてみましたら、いろいろな意味で自然環境に影響を与えていたようなところがございます。  しかも、良好な自然環境を求める国民の意識の変化を受けまして、魚類だとか植物だとか、いろいろな生物が生息しやすいような川を考える時代が来た。真っすぐ流れるものを蛇行させてみたり、それからまた、護岸を土で覆われた、植生を大切にするようなものに、自然環境を最大配慮するということでしっかり予算の中で、分離して考えることはできませんけれども、懸命にそのための努力はいたしておりますということを御答弁申し上げたいと思います。
  29. 渡辺周

    渡辺(周)委員 ぜひ目に見えるような形で、これは従来の開発型行政から環境保全という視点がまさに盛り込まれた、その点についてやはり予算措置という中で、ぜひとも今後国民の皆さんに目に見える形をつくっていただきたいなというふうに考えるわけでございます。  時間の関係で、あと二問ほど御質問をさせていただきます。  この法案のそもそもの部分についてでありますけれども、いわゆる管理が委譲されるということについてでございます。この点について、まずこの財政的な負担について、今後どのようになっていくかということにつきまして河川局長お尋ねをしたいわけでございます。  例えば、法改正によって都市基盤河川改修事業及び河川環境整備事業市町村長も施行することが可能となる。これは、ある意味では、その域内の独自の行政需要によって、都道府県との調整を待たずして迅速に事業に取りかかれるということが一つの利点だと当然考えるわけでありますけれども、結果的には、この財政的な点を考えますと、これは今後調整を待っていかざるを得ないのではないだろうか。  市町村がある程度独自の発案ということでやっても、なかなか、これは上部団体である県と財政負担についていろいろな協議を今後進めていかなければならない。そうしましたときに、事前にこうした形で、どのような形で協議をしていくかということについて整理をしておいた方がいいのではないだろうかと考える次第でございますけれども、その点についてはどのように御認識をお持ちなのか、御答弁いただきたいと思います。
  30. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 今回の法改正によりまして、市町村の発意によってできる事業と県との調整につきましてお尋ねがございました。  一級河川の直轄管理区間におきましては、国が直轄で行う改良工事については、都道府県はその費用の三分の一を負担することとされております。これと同様に、市町村が行う工事につきましても、都道府県に費用の三分の一の負担をお願いすることになるわけでございます。ですから、どうしても調整が要るようになります。  このように、都道府県にも一定の財政負担をお願いすることになるので、市町村長河川工事の実施に当たりまして河川管理者である建設大臣に協議する際には、都道府県と必要な連絡調整を行い、円滑に事業が行われるよう、私ども国も、都道府県及び市町村長に対し、よくこの内容を周知し、調整がスムーズにいかれるよう最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  31. 渡辺周

    渡辺(周)委員 ぜひ、そういう意味では、地方分権とあわせてこの財源論というのは必ず出てくるわけでございまして、これはどの地方自治体からも要望が出ているところであります。  この議論はまたにしまして、一つ個別の問題として、大変恐縮ですが、例えばという形で具体例を一つ挙げて、御答弁をいただきたいと思います。  これは静岡県の沼津市の例でございまして、いわゆる舟運構想を今持っています。中心市街地の活性化事業の一環として、先ほど申し上げた一級河川狩野川、河川空間のその周辺を潤いとにぎわいの空間という形で位置づけまして、ここの計画策定を行っております。そんな中で、一つに、かつて狩野川の河口から沼津港あるいは駿河湾まで出ていた船を復活させようと、いわゆる舟運構想があるわけであります。できるだけ人を運ぶことによって、ある意味では慢性的な渋滞の解消でありますとか、あるいは水上の緊急物資の輸送、あるいは当然観光客の一つの目玉、いろいろなことを検討しているわけでございます。  例えば、こうした一つの船着き場をつくろうといったような構想が市から上がってきた、こうした場合に、今回の法改正がどのような形で影響を与えるんだろうか。例えば、事業の迅速な実施あるいは市の主体性の向上といったことが図られるのかどうか、これがまず一点。  そしてまた、狩野川というこの一級河川を航路とするとなると、今度は河川のしゅんせつというものが必要になるわけであります。私ども、河口に近い部分でございますので、そういう意味では、川の形状というものがどのようになるかということについて、私も専門家ではございませんので、ここではどのような形になるかということを申し上げられないわけでありますけれども、例えば、こうした問題は治水とも当然関係してくる部分。そうしますと、そういうことが市独自の判断で行えるのかどうか。  これは、今回の法改正によって、例えばこうした一つの具体的な例として今進んでおります例を挙げさせていただきまして、どのような形で影響を与えるのか、ぜひともその点について御答弁をいただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  32. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 狩野川の舟運構想は、沼津市から伊豆長岡までの十九キロについて舟運を復活させる大変魅力のある構想でございまして、現在、沼津工事事務所が構想の検討主体である沼津市から相談を受けて検討に入っております。  建設省としても、舟運というのは、大きな災害時の緊急物資輸送等の観点から、または狩野川の歴史の発掘、文化の復興というような観点から河川舟運の復活を目指しているところでありまして、沼津市の具体的な舟運計画の立案を待って、必要に応じて支援を行ってまいる所存でございます。  沼津市が主体となって整備する実施内容が固まりますれば、河川管理者との協議を行い、今回の法改正によりまして、沼津市において直轄河川区域内の河川工事を実施することが可能となります。その際、私ども治水上の観点から、直轄工事においても対応できるもの、または調整できるものを沼津市と密に連携をとって実施してまいりたいと考えております。
  33. 渡辺周

    渡辺(周)委員 終わります。
  34. 大口善徳

  35. 前原誠司

    前原委員 民主党の前原でございます。  河川法審議でございますので、まず河川法について、一問だけ前もって総括的なことについてお話を伺いたいと思います。  私がきょう質問をする内容については、熊本県の川辺川ダム計画についてがメーンでございます。  この川辺川ダム、私も現地に行かせていただきまして、いろいろな方々にお話を伺ってまいりましたけれども、この川辺川ダムは計画から今三十三年が経過をしております。確かに関連事業については進んでおりますので、計画変更をしてからの総事業費二千六百五十億円の半分以上がもう執行されております。  しかし、ダムそのものの本体事業についてはまだ取りかかっていないということでございますが、この川辺川ダムについては、平成九年に改正をされました新河川法に照らして、例えば環境の問題にさらに検討を加味するとか、あるいは周辺住民方々との話し合いを持つとか、新たにこの川辺川ダム平成九年度に改正をされました河川法に基づいてある程度見直す余地があるのかどうなのか、その点について大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  36. 中山正暉

    中山国務大臣 お答えを申し上げます。  法律はさかのぼらないということだろうと、常識として持っておりますので、ほとんどの方々は立ち退きの移転のことで了承してくださいまして、七七%ぐらいがもう立ち退きを始めておられる、そして五木村も上部に移転をする、その基盤の造成もできておりますので、法律改正前にさかのぼって、また一からやり直すということではない、昔を今になすよしもがなというものではないかな、こう考えております。
  37. 前原誠司

    前原委員 法律をつくった趣旨というのは一体何なのかということをやはり考えなくてはいけませんし、三十三年という長い月日の中で、いろいろな環境変化、これからるる具体的に質問をしてまいりますけれども、環境変化が起きている中で、法律はさかのぼらないということは、私は、新たに改正した河川法が泣くのじゃないかな、そういう思いを強くしております。  また、実際に多くの方々が立ち退きをされたということについては、私も現場に行かせていただきましたので、それについては承知をしておりますけれども、ただ関連事業のことでございまして、ダム本体事業についてはまだまだこれからということでございます。  この議論は、多分水かけ論になりますし、時間のむだだと私は思いますので、民主党としては、川辺川ダムの本体事業については即刻中止をすべき、しかしながら治水利水の部分での代替案、あるいは今大臣が御答弁をされた、立ち退かれるという前提で三十三年間もがき苦しんでこられた住民方々に対する引き続きの補償、つまり、この特定多目的ダム事業というものの根拠がなくなった後も、やはりこの三十三年間翻弄された方々に対しては何らかの措置が必要なのだろうという立場だけ表明をして、個別具体的な質問に入りたいというふうに思います。  まず、昭和四十年に、球磨川本流、そして球磨川の支流の川辺川の合流地点に人吉という町がございます、町と言ったら怒られるかもしれません、市でございますけれども、この人吉で洪水が起きております。この洪水については、いろいろと推測も含めて、地元方々で言われている部分がございます。それは何かといいますと、昭和三十五年に球磨川本流の上流に市房ダムというダムができておりますけれども、そのダムができた後に昭和四十年の洪水になっているわけでございます。  きょう、委員長から御提示をいただきました予備的調査資料、かなり詳細にわたって我々も予備的調査をさせていただきまして、このことについても質問事項に入っております。したがって、政府側としての答弁というものは、特別の雨だった、こういう答弁内容が書かれておりますので、改めてこれについて質問するのはこれまた時間のむだだというふうに思うわけでございます。したがいまして、さらに突っ込んだ議論をさせていただきたいというふうに思っています。  少し我々腑に落ちない資料がございます。それは市房ダムの当時のいわゆる放流流入記録というものでございます。以前、質問主意書の回答の中で答弁があるものもございます。これは政府から出された答弁資料でございますけれども洪水時には風波等による貯水位の振動の影響を排除し、流入量の適切な値が得られるよう、通常十分間程度に設定をしている、つまり流入量それから放流量についてのデータというものについては十分間程度にしているということなんですが、このあたり、市房ダムについては一時間なんですね。  熊本県の民主党の県会議員の鎌田議員という方にお願いをして、熊本県からその当時の、昭和四十年六月二十九日から七月四日までの市房ダムの流入量それから放流量そして貯水位というものについての表を送っていただきました。なぜ一時間なのかということ、まずそれから伺いましょう。大臣、何でこれは一時間なんですか。
  38. 中山正暉

    中山国務大臣 ちょうどきのうの晩、テレビを見ておりましたら、球磨川を衛星放送の方でやっておりまして、いわゆる観光用の、翠嵐楼と言いましたか、翠嵐楼という旅館の前から船頭さんが二人ついていくのと、それから片一方では、ゴムボートでヘルメットをかぶって急流を下るのを見ていまして、先生のお顔を思い出しながら、そのテレビの番組を見ておったわけでございます。  今の御質問でございますが、これは本当は河川局長あたりから、技術者として専門家からお答えをした方がいいのかもわかりませんが、昭和四十年当時は、コンピューターなんかによる雨量データとか水位データ等の処理が未発達でございまして、技術的には一時間ごとに測定の記録をとるのが精いっぱいだったということでございます。そのために建設省の指導でも、ダムの流入量とか放流量の記録については一時間ごとに記録、報告を行うこととしておりましたようでございまして、熊本県においてもそれに基づいて市房ダムの記録をとっていたもの、先生がおっしゃったように二十数年間たっておりますから、今は大変コンピューター技術も発達しておりますので、この間、Y2Kのときには何か全国で四カ所ぐらいちょっと狂いがありましたが、ほとんど狂いがなかったということでございまして、これからはもう御心配がないと思っております。
  39. 前原誠司

    前原委員 我が党は、基本的に政治家同士の議論ということで大臣に御答弁をお願いしたいというふうに思っておりますが、もし大臣、専門的なことに携わるということであれば、どうぞ河川局長に振っていただいて結構でございます。その点についてはちょっと細かい議論もしていきたいと思いますので、結構でございます。  それで、今おっしゃったように市房ダムについては一時間だということなんですが、別の資料がありまして、この球磨川の市房ダムの下に幸野ダム、幸いの野原の野というダムがあるのですね。コウノダムというのかサチノダムというんですか、コウノダムだと思いますが、このデータは、逆に昭和四十年当時、十分間間隔でとっているのです。  もっと不思議な点は、市房ダムがいわゆるピークになった、貯水位が満杯になって流入量、放流量ともピークになった時点になると、この幸野ダムまで一時間単位になっちゃっているのですね。つまり、直前までは十分単位で計測していたものがその直下の幸野ダムについては一時間単位に変わっちゃっているのですよ。何かこれは私はデータの抹消というふうにとられても仕方がない部分があるのじゃないかというふうに思うんですね。  市房ダムは確かに県からいただいた資料は全部一時間単位、しかし、幸野ダムについてはピークになる直前まで十分単位で、ピークになった後以降が一時間単位になっている。これは私は非常に不思議でなりません。何か意図的な作為があったのではないかと思わざるを得ないのですね。  なぜこういうことを申し上げるかといいますと、一時間というのはかなり長い時間ですね。洪水というのは刻一刻と変化をする、それは先ほど大臣が御答弁をされたとおりです。つまりは、そういう刻一刻と変化する、だからこそ十分単位で今やろうということで建設省もやられているということなんですけれども、ひょっとしたらその平均値が出てきているのじゃないか、一時間単位にすれば。十分単位にすればもうちょっとでこぼこがあったのではないか。  つまり、この市房ダム、このころの貯水位というのは、これは満杯になると二百八十三メートルなんですけれども、二百八十メートル近くまでいっているのですね。つまり、ダムが決壊するかどうか、いわゆるオーバーフローするかどうかというところまで来ているわけです。その記録が一時間単位しかない。しかし、その直下の幸野ダムについては、ピークになる直前まで十分単位での統計があるのに、それ以降は一時間単位になっている。作為的なものを感じざるを得ない。その点について、大臣、御答弁いただきたい。
  40. 中山正暉

    中山国務大臣 細かい数字の問題でございますので、先生のお許しもいただいておりますし、委員長の御許可と委員先生方の御許可を得て、竹村河川局長から御答弁申し上げたいと思います。
  41. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 ただいま御指摘の幸野ダムと申しますのは、市房ダムの下流にあります電力のダムと承知しております。  現在、私ども、事前にこの幸野ダムのデータを入手することができませんでしたので、この段階では、幸野ダムがどのような操作または記録をとっていたかというのはこの場ではお答えできない状況にございますので、また必要があればきちんと後ほど、または別の機会に、その幸野ダムのデータが入手できた段階で、そのダムの管理者または責任官庁からお答えがあるのかと考えております。  なお、市房ダムでございますが、市房ダムだけが昭和四十年当時一時間単位のデータを記録していたのではなくて、当時、私も四十年当時は建設省に入っておりません。四十五年当時、建設省に入ったときは、コンピューターは全く事務所にはなく、タイガー計算機で手回しで計算をしていた時代でございますので、この四十年当時のデータは、先ほど大臣が御説明しましたように、一時間単位で記録をとるのが精いっぱいだったというのが実態だと私は思います。  では、一体ダムの操作はどのようにしていたのか。一時間ごとにしていたのかということは、これは実は違いまして、いわゆる具体的な市房ダムの操作につきましては、ダムの湖面、湖面の水位というのはダムの管理所のすぐ近くにございますので、ダム湖面のフロートを見ながら、フロートというのは浮きを見ながら、今何メーターのところに来ているということは、ダムの管理所の職員は自分の肉眼で見ながらダムの操作を行っておりまして、一定率一定量と申しますか、専門用語で大変申しわけありませんが、ある洪水のピークになるまでは一定率のダムの中でため込もう、そしてあるピークを超えて以降は洪水の一定量をダムでため込んでいこうという、事前に定められました操作規則に基づきましてゲートのきめ細かい操作、一時間ごとに操作をしているということではなくて、必要があれば五分ごとに操作もすることもありましょうし、その水位が全く変化なければ十五分後に操作することもあったかもしれませんが、極めてきめ細かいダム操作を行いながらこの市房ダムが操作をしていたということは確認されております。  その結果、今議論になっておる四十年の洪水におきましては、八百六十トンのダムの流入量のうち三百四十トンをダムで貯留いたしまして、安全に五百二十トンの流量を流したという実績になってございます。
  42. 前原誠司

    前原委員 私が質問したことだけに答えてもらえれば結構です。  要は、市房ダムは一時間ごとの記録しかない。そして、幸野ダムについては、流入量、放流量、ピークになる直前までは十分単位でやっていたのに、それ以降は一時間単位になっている。何か証拠隠滅と疑われても仕方のないような状況があります。  委員長、今大臣あるいは河川局長から答弁がありましたけれども、この幸野ダムの細かな精査、なぜ直前までは十分単位でその以降が一時間単位なのかということで、十分単位の資料があると思います。これはぜひ調べていただいて、この委員会に、私の質問の内容の非常に根本的な部分でございますので、調査をして提出をしていただくようにお取り計らいをいただきたいと思います。
  43. 大口善徳

    大口委員長 理事会で諮ります。
  44. 前原誠司

    前原委員 よろしくお願いします。  竹村局長、質問のことだけお答えください。  それで、市房ダムが人吉に対してすべて流れ込んでいる川の源ではない。したがって、市房ダムだけの責任で異常な洪水が起きたかどうかというものは、これは相関関係というものは必ずしもあるとは言えないかもしれない。  しかしながら、人吉の方々の多くが、ダムができたことによっていわゆる今までと違う、経験したことのないような洪水が起きたというふうに感じておられるということは、私はこれは非常に難しいことだと思います。大変なことだと思いますし、そういう前提に立って、この川辺川のダムの問題も考えていかなくてはいけないと思っています。  ダムそのものの構造について、大臣、お答えしていただきたいと思います。これは質問通告している内容でございますので。  要は、ダムそのもの洪水を増長する可能性というものはないのかどうなのかということなんですね。私は、それについてはあるというふうに思っておりますし、いろいろな専門誌も、その点について調べさせていただきましたら、ダムがあることによっていわゆる過剰な放流というものが起きる可能性はある、こういうことなんですけれども建設省の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  45. 中山正暉

    中山国務大臣 私の六十七年間の人生で、昔の水害から見ると今は本当に減ったな、これは、河川管理その他ダムとかそういうようなものがいろいろなところで計画をされて、河川を、どんなふうに水の勢いというものを制御するかというのは、着実な実績を積み上げてきたのが、大きなダムの決壊とか河川のはんらんとかがなくなった原因ではないかなと私は思います。  先生の先ほどからの御指摘で、意図的なものがあったと。何のための意図とお考えになっていらっしゃるのかなと。  もちろん、河川行政に携わる方というのは、何とか人の命を救おう、何とか川の流れを制御して、そして農業にうまい利水をさせよう、そういうふうな発想で皆さんやっておられるから、結果として何か、それは万に一つ間違いが起こるかもわかりません。天然自然現象というのは大昔とは変わりまして、オゾン層が破壊されるとか日本の周りで台風ができるとか、そういう自然現象、エルニーニョとかラニーニャとかいうような異常な気象現象が地球を覆っているわけでございますので。私は、隠す意図というのが、最近何かを隠したというはやりのような形になっておりますが、そういうことではない。治水治山にかかわっていらっしゃる方の善意を私は信じたい。私も、昨年の十月五日からでございますが、こういう建設関係のことには、長い間私も建設委員会に若いとき所属しておりましたことがございますし、そういう面での河川行政というのは大変着実な実績を積み上げている、こう思っております。  洪水調節を目的とするダムにおいては、流入する洪水の一部をダムにためて、流量を少なくした上で放流を行うということで洪水被害を減少させる。また、計画を超える洪水時にはダムへの流入量を超えて放流を行えないようにゲートの操作を行うというのは、これは常識以前の常識のことしかここに書いてありませんが、その意味で、そういう水量調節を長年のデータを積み上げながら持っていく。  私のおやじも熊本出身でございますので、この熊本に対しては少々意識がございますが、私は本当に、五木の子守歌という平家の落人の物語なんかがありましたりするような辺境の地が何とか農業の発達する地、それから観光に有利なふうに展開をしていく、そんな願いで先生のお話を伺いながら、資料が不足しているということでございますから、これはできる限り資料を調査させますことをお約束いたしまして、先生のまた続いての御質疑を受けたいと思っております。
  46. 前原誠司

    前原委員 私も、質問する前提、二つほど申し上げたいと思うのですね。  私は、ダムを全部否定しているわけではありません。ダムが果たしている役割というのは大きいものもあるということで、ダムを全否定しているわけではありません。しかし、ダムというものを過信してもいけないということの中で、今の質問をしているわけです。  それから、もう一つ申し上げるのは、意図的に何か隠しているのじゃないか、どうなのかというような、大臣の懸念の声がありました。私は、ダム管理者の方々が一生懸命に仕事をされているということについても、それは前提は、人吉ではいろいろなうわさがありました。でも、それはあえてこういう公の場で申し上げることじゃないので、私は言いませんけれどもダムの管理者の方々は一生懸命やられているという前提に立って、しかし、すべて過失というものはあるんですよ、業務上の。人間ですから過失というのはあるわけです。だから、そこについての問題点というものを、つまり、ダム万能主義というものを過信し過ぎると、先ほど河川局長答弁されたように、最終的な調整というのは人間が行うわけです。目で見て、そしてどれだけの放流をするかというふうな判断をするわけですよね。その場合において、ダムが仮に、いわゆる人的な過失、故意じゃないですよ、過失において洪水を増長する可能性は私はあると思っているわけです。だから、その点を確認したいと言っているわけです。  つまり、どういうことかといいますと、ダムにほぼ水が満杯になっている、昭和四十年の七月の市房ダムのような状況のとき、二百八十三メートルの水位で、もう二百八十メートルぐらい来ている、こういう状況において、どうすれば、いわゆる川に入ってきた流入量よりも放流量の方が多いのかということの目安というのは、これは簡単なんですよ。水位が上がり続けている、これは流入量の方が多いんです。水位が一定の場合、これは流入量と放流量が一緒なんです。水位が下がっていった場合、これは流入量より放流量の方が多いわけです。そうですよね。ダムが満杯になったときには、これは決壊、つまりオーバーフローというものを防ぐためには、さっき河川局長がおっしゃったように、要は目視でダムの調整を行うわけですね。  つまりは、入ってきた水よりも出る水の方が多いときはあり得るわけです。つまり、目いっぱいになって、これは大変だということになって放流をした場合に、水位が下がったということは、その時点において流入量よりも放流量の方が多くなっているわけです。それにおいて、つまり、流入量よりも放流量の方が大きくなって、逆にそれがある地域において洪水を引き起こすという可能性はあるんじゃないかということを申し上げているんです。時間がありませんので、あるかないか、その一言で結構です。
  47. 中山正暉

    中山国務大臣 人のやることでございますから失敗がありますし、コンピューターにも誤作動というのがありますし、これはいたし方がないと思います。私も、ふろの水を一生懸命出して、とめるのを忘れて廊下まで水が出たことがあります。このごろのふろはうまく排水するようになっていますから、じゃあじゃあ流しても廊下まで出なくなった。  そんな知恵が積み上げられていく状況で、私は、この間、どこかでキャンプに行った方が、サイレンが鳴ったのに、ダムが放流をするということを知らずに、キャンプ場でまだ大丈夫だろうといって遊んでいらしたその姿のニュースの画面を今思い浮かべながら先生のお話を聞いていたわけでございます。  万に一つの失敗もダムのようなところでは許されない問題であって、これは以前にそういうことがあったのではないかというようなことから御心配をなさっていらっしゃると思いますが、我々は専門家を建設省にたくさん、地方事務所、河川管理事務所なんかで努力をしていただいている方々のその努力に、私は、たまたま失敗があるかないかと言われれば、万に一つ、全くありませんということは御答弁できませんし、ありましたということも御答弁できませんので、その辺は、私も十月五日からしか大臣をしておりませんし、ここにいらっしゃる専門家の方々でもずっと同じ仕事をしていらっしゃるわけじゃございませんので、その御質問に対する答弁というのは、この程度でしかやむを得ぬのではないかと思っております。
  48. 前原誠司

    前原委員 河川局長、イエスかノーかで、一言だけで答えてください。
  49. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 今、先生の御指摘のようなことが現実問題としてはあり得るという前提で、私どもダムの操作について万全を期して、ただし書き操作等の設定をしている状況でございます。
  50. 前原誠司

    前原委員 先ほど大臣が御答弁されたように、人間というのは万能じゃないわけです。そして、もちろん善意で、また職務上一生懸命それを追求しようとして、しかしながら、過失が起きる可能性はある。つまり、ダムというのはそういう危険性があるんだということをやはり我々は認識しなきゃいけないということなんですね。  私は、それを前提として次の質問に移りたいんですけれども、要は、人吉に行きまして、多くの方々が心配されているのは、市房ダム、そういう不安というものが頭の中に残っている。その中で、市房ダムよりも大きな許容量の川辺ができたときに、これは本当に統合管理は可能なんだろうか、こういう心配を持たれるのは私は仕方のないことだと思うわけです。  今から川辺川ダムの調整の方式についていろいろ細かい議論をしていきますけれども、つまりは、先ほど申し上げたように、過剰放流ではなくても、流入量イコール放流量という形でダムの決壊を防ぐためにそのまま流すという状況になったときに、仮にそのピークが重なり合ったときには、これは逆に洪水というものが増幅される可能性というのは十分あり得るわけです。そういうものを心配されている。つまり、統合運用は本当に可能なのかどうなのかといったところをこれからちょっと具体的に問い詰めていきたいというふうに思います。  この川辺川ダムの調整方法というのがいわゆる不定率調節方式、一般的にはなべ底調節方式、こういうふうに言われているということでございます。建設省の指針の中でも、効率はよいが操作が困難というふうにされておりますし、前回、民主党の部会でこの川辺川ダムの経過について御説明いただいたときに、横塚河川局開発課長も、長時間の雨にはダムは弱いということもおっしゃっているわけでございます。  わからない方々がほとんどだと思います。私もつけ焼き刃の勉強でございますので、どういう方法なのかということをお話させていただきたいと思うわけでありますけれども、川辺川ダムというのは、六月から十月が洪水期に当たるのではないか。そのうち洪水期が来るんじゃないかということなんですね。そして、仮にダムができた場合、ダム湖への流入量が毎秒五百トンまでは流入と同量を放流する、五百トンを超えると一定率で徐々に放流量をふやして、千百トンを超えると八百トンの一定量放流をするということですね。つまり、放流量調整を行うということです。  ただし、本流の球磨川上流部で流量が千二百トンに達すると放流量を二百トンに減らして貯留する。つまり、本流の球磨川と川辺川が、大量の水が一緒にならないように、本流の水の量がふえてきた場合においては放流量を二百トンに減らして貯留をしていく、こういうことなんですね。そして、人吉市の合流地点で一気に流量が増大するのを防ぐということであります。  しかし、要は、雨がふえていった場合に、本流も減らない、川辺川ダムについてもどんどん流入量がふえていった場合。  ピークというのは大体三時間ぐらいを建設省からいただいた資料でも想定をされているわけでありますけれども、この想定したように雨が降ればいいわけであります。つまり、その場合においては、建設省が言われているように、効率がいいということになるわけでございます。しかし、いろいろな専門家から指摘をされているのは、本流のピーク、つまり球磨川のピークを的確に推測するのは本当にできるんだろうか。あるいは、先ほど私が少し触れましたように、ピークが一山でない場合、雨の降り方が断続的に、つまりピークが二山も三山も来るような場合、これはどうするんだろうか。つまり、なべ底の貯水容量を使い切る可能性があるわけですね。そうすると、一気に放流をしなくてはいけないということになる。そうすれば、さっき可能性があるということを確認したような過剰放流というものの危険性が出てくるということなんですね。  いろいろな雨の降り方というものが想定をされておりますけれども、確かに昭和四十年の七月の洪水というのはピークが一山なんですね。しかし、昭和五十七年の七月はピークが二山来ています。それから、平成七年の七月の洪水はピークが三つの山が来ているのです。としたときに、本当にこの不定率調節方式、なべ底調節方式というものが役に立つのか、こういう心配があるわけです。いかがですか。
  51. 中山正暉

    中山国務大臣 私は、今はなべ底方式というのはやっていない、定率方式という、徐々に推移していくものに合わせてやっているという話を聞いております。  先生のお話のように、なかなか予測しがたい流量というもの、降水量というものが、これは伝説の中でも、ノアの箱船といって、世界じゅうが洪水になった話も残っておりますから、どんな自然現象が突然起こってくるのか、この地球の場合はなかなかわかりませんから、できるだけ人間の英知を結集して、想像できるだけの措置をとっていくということが我々の言う万全の措置ではないかと思います。なべ底方式はもうやっておりません、こういうふうに聞いております。  詳しくは河川局長からお願いします。
  52. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 この球磨川水系は、川辺川ができたとしても、実は八十分の一の確率の洪水にしか対処できておりません。つまり、全国的にも非常に洪水の危険のある川でございまして、川辺川ダムによりまして、市房ダムと川辺川ダムを共同して、連携して運用していこうというのがこのプロジェクトの原点でございます。  人吉盆地を襲ってくるこの二つの川、つまり球磨川本川にある市房ダム、そして川辺川にある川辺川ダム、この二つのダムでやるわけでございますが、市房ダムの方の洪水調節容量は千八百万トンしかございません。昔つくった市房ダムは千八百万トンしかございません。それに対して川辺川ダムは、この球磨川と川辺川ダムはほとんど同じ流域でございますが、川辺川ダムの方の洪水調節容量は、四倍以上の八千四百万トンの洪水容量を持っております。この洪水容量を大きく持てたところの川辺川ダムをうまく利用して、市房ダムと連携をしていこうということが基本的な考え方でございます。  市房ダムで放流、市房ダムが小さいダムでございますので、これを最優先で洪水調節をやったその後の結果が、流量観測点で、人吉市に入る直前の合流点近くで、私ども現在は市房ダム流量をきちんと観測できます。そして、現在観測できたデータを瞬時に、その時間帯でテレメーターという装置でもって川辺川ダムの管理事務所へ送ることができる装置をつけます。そこで、川辺川ダムでは何をやるかと申しますと、市房ダムが一番危険な状態になっているのかなっていないのか、まだ余裕があるのかどうかということを含めて、川辺川ダムの操作を決めていくということでございます。  そして、計画論上一番厳しい状況、つまり大きな洪水が来て、人吉市に市房ダム後の洪水が行った場合、川辺川ダムでこの八千四百万トンを利用して最大限洪水をため込んでいこうという内容が、今現在、先生が御質問の中で言われた内容の操作になってございます。  それでは、もう一つの御質問の、二山洪水また三山洪水はどうなのかという話でございますが、過去この地域を襲ってきた二山洪水また三山洪水、私ども何年もデータをとっておりますので、それらの洪水が実際この市房ダムと川辺川ダムに来たときは私どもの今考えている操作はどのような操作になるのだろうかということを全部検討しまして、そして、今現在私どもが考えている操作規則でいけるという内容を、「川辺川ダム建設について」ということで、技術報告ですべて公表しているところでございます。  というように、自然現象でございますので、私どもの予測を上回るということは決して否定できませんが、私どもさまざまな観点から、現在、過去のデータをすべて駆使して、それを利用して、そしてチェックを繰り返して、今後の川辺川ダムの操作規則に万全を期していきたいと考えております。
  53. 前原誠司

    前原委員 二つ聞きます。  河川局長、先ほど大臣がなべ底調節はもうしていないということなんですが、川辺川ダムはなべ底調節をする前提じゃないですか。これが一つ。  もう一つは、八十分の一という前提を一番初めに言われました。それが本音だろうと思うのですね。これは悪い意味で言っているのじゃありません。自然ですから、人の想定を超えるようなものが起きる可能性があるわけです。その場合に、二山、三山ピークについても十分調べて、うまく対処できるようにしているということをおっしゃいましたけれども、そういう想定外、つまり八十分の一というものを超える、あるいは新たな雨の降り方というのがあるかもしれません、そのときも統合運用は完全にできるのか。  この二つ、答弁いただきたいと思います。
  54. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 第一点目の御質問でございますが、先ほど委員が御指摘の、放流量を八百トンにし、そしてピークのときには二百トンに抑えていくという内容でございます。これは実はなべ底と呼んでおるものでございます。  私ども、なべ底という言葉がよくないということで、最近はこの言葉を使っておりませんが、川辺川ダムの八千四百万トンの容量を最大限使う操作規則というような内容で、このような操作規則を今現在検討中でございます。  そして、第二点目の内容でございますが、私どもの計画をオーバーする降雨というのは必ずございます。このダムが百年、二百年また三百年稼働していく中で計画を上回る雨量はあるだろうという前提で、そのときにダムの操作はどうしたらいいのだろうかということも含めて、先ほど実はただし書き操作と申しましたが、そういう予想外の大きな洪水ダムに突入してきても、ダムから出す水は、下に放流する水は入ってきた水と最大限同じ状態にしようという内容、つまり、入ってきた水よりも大きな水を出さないようにしようという内容のただし書き操作、これは、現在建設省で所管しているダム、または県のダム、または利水ダムもそれに準じていると思いますが、すべてのダムで、予想外の洪水に対しての対処ということで、全国的に対応している内容になってございます。
  55. 前原誠司

    前原委員 一点目は、要は、なべ底調節という言葉は気に入らないということであれば、結局は不定率調節方式というのをやられるということですね。つまりは、効率的であるけれども、今まで建設省の中では操作が困難であるということが内部でも言われている方式というものを採用する、これが確認をできました。  それから、今二つ目におっしゃったことは、要は、もう想定外のときには両方とも流入量イコール放流量にするんだよというふうなこと。ということは、これは当然ながら、統合運用はその段階ではできていないということの裏返しでございますので、もちろん、非常に許容量の大きなダムであって、そして八十年に一度の大雨に対応するためにそういうものをつくられるという趣旨については私全く理解をしていないわけではありませんけれども、想定外の問題が起きたときには二つのダムの統合運用というのは難しい、つまり、入った量だけもう流すだけだ、こういうことでございます。  したがって、八十年に一度の雨で二千六百五十億円使うのかどうなのかということの議論というものは、やはりもうちょっと我々としてはしていかなくてはいけないポイントではないかというふうに思います。  次に進ませていただきたいと思います。  きょうは、農水省の谷津政務次官に来ていただいています。ありがとうございます。農水省関係のことについて少々御質問をさせていただきたいと思います。  できるだけ政務次官に御答弁をいただきたいと思いますが、構造改善局の次長もお越しでございますし、水産庁長官もおいでだということでございますので、その点は御相談しながら御答弁をいただいたら結構です。  まず一つは、今、川辺川の国営かんがい事業利水事業で裁判が起きております。被告は国、そして原告は、受益者である方々が実はこういう訴訟を起こされている。三月十日に結審がありまして、九月の初めに判決が出る、こういうことでございます。  国としては、もちろん敗訴はしないという前提に立って物事を進められているとは思いますけれども、仮に敗訴した場合には、これは計画変更しなきゃいけないということで、後者については一般論で結構でございますので、仮にそうなった場合にはどういう状況になるのかということについて御答弁をいただきたいと思います。
  56. 谷津義男

    ○谷津政務次官 先生おっしゃいましたとおり、国が敗訴するということは想定しておりません。この計画につきましては、土地改良法の規定に基づいて有効に成立しているものというふうに考えております。  仮に計画変更が起きた場合はということなんですね。(前原委員「敗訴です」と呼ぶ)敗訴ということは考えておりませんから。
  57. 前原誠司

    前原委員 国のお答えとしてはそれが限界でありましょう。国としては、裁判、判決が出るまでは、負けることは当然想定していない、そういう御答弁だと思います。  国にとっては不吉なことかもしれませんが、敗訴した場合の前提に立っていろいろちょっとシミュレーションしていきたいというふうに思っております。敗訴という前提でなくて結構です、計画の変更ということで結構でございますけれども、これは、農水省が、仮に国営事業であろうが何であろうが計画変更するということになったときには、ダム全体の計画を変えなきゃいけないということになると思うんです。  つまり、特定多目的ダム事業というものの中には四つの目的があるわけですね。治水、二つ目が利水、三つ目が発電、そして四つ目がいわゆる流量調整、こういう四つがあるわけでございますけれども、特定多目的ダムをつくるに当たって、その目的の一つでも計画変更した場合は、ダム事業そのものを変更しなくてはいけないと思うんですが、これについては建設省になるんですか、建設大臣になるんでしょうか。御答弁をいただきたいと思います。
  58. 中山正暉

    中山国務大臣 これは今の政務次官の御答弁のとおり、私どもと農林省の問題でございますので、建設省としては今何とも申し上げられないと思います。
  59. 前原誠司

    前原委員 法律的なことで結構でございます。敗訴とかを前提にしなくても、仮に農水省が計画変更をされるというときには、要は多目的ダム事業そのもの一つの柱の変更になるわけでございますので、ダムそのものの見直しというものが避けられないと思うんですが、その点について御答弁いただきたいと思います。もし大臣おわかりにならなければ、局長で結構です。
  60. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 私どもダム事業は、特定多目的ダム法に基づいて実施しておりまして、その利水者、そして治水を受ける受益者である都道府県という関係者と協議をしながら、そしてきちんと告示、または議会の議決を経ながら進めております。特ダム法の中におきましても、事業の変更をする場合の手続ももちろん記述されておりますので、事業のプロジェクトの変更というのは当然理論上あると思っております。  この川辺川ダムにおきましては、治水の必要性は何ら変わらない、そして、農水省が実施している国営川辺川土地改良事業の計画に基づいた農業用水の確保、そして、我が国唯一の国産エネルギーである水力発電の必要性、そして、球磨川の激流下りを国民が楽しんでいただけるような流水の正常な維持の保全、私ども、この内容は現在全く変わっておらず必要なものと認識しております。
  61. 前原誠司

    前原委員 今御答弁がありましたように、四つのうちの一つでも基本的な計画変更があれば、ダムそのものの計画の見直しもしなければいけないということが法律的に確認をできたわけでございます。  したがいまして、九月の段階でどういう判決が出るかということに関して、これは大きくダム事業にかかわってくるということでございまして、ぜひこの判決について見守っていきたいし、我々としては、ことしも平成十二年度の予算案の中で川辺川ダムの関連事業については満額の回答が要望で出ておりますけれども、これは建設大臣、九月の判決というものが一つの大きな柱なんですね。したがって、その推移を見ながら、当然、物事の着工あるいはどうするかということは決められるべきだと思うのでありますが、その点大臣、御答弁をいただきたいと思います。
  62. 谷津義男

    ○谷津政務次官 先生、この裁判につきましては、農林省の計画に対する裁判であって、ダムの方の裁判とは違います。その辺誤解のないようにお願いします。
  63. 前原誠司

    前原委員 いや、誤解じゃないですよ。今さっき河川局長がおっしゃったように、農水省の計画の見直しが迫られたときには、これは特定多目的ダム法に基づいてダムの計画そのものを見直さなきゃいけないわけです。だから誤解じゃないんです。だから、大臣、さっきの私の質問に答えてください。
  64. 中山正暉

    中山国務大臣 まだ第一審でございますし、日本は三審制度になっておりますので、そのときはそのときでまた先生方からいろいろな御指摘を受けながら考えたらいいことで、四百年に百回も起こっている水害をどうするかというのが我々建設省の基本的な考え方でございますので、再々そういう計画をどういうふうにするかというのは確固たる信念で皆計画をしておりますので、裁判所がどういう判断をなさるか、裁判所にも裁判官に専門家ばかりいるわけじゃございませんから、司法、行政、立法というこの三つの組織、三審制の中での御判断によって、そのときはそのときでまた裁判所の御判断も尊重しなきゃいかぬと思っております。
  65. 前原誠司

    前原委員 今大臣が御答弁されたことは、私も全く同感であります。  裁判所は三審制であるというのは、それは事実であるからそのとおりでありますし、四百年に百度ですか、私はそれは知りませんでしたけれども、非常に洪水の多い地域であるということで、その中でダムの計画が出てきたんだろうということは、それは理解をしておりますし、また、地元の中でもダムに対する要望が昔からもあったということはよくわかっております。  ただ、反対あるいは非常に危惧する意見もあるという中と、あとは三十三年という非常に長い年月が経過した中で、計画変更というものがあり得ていいんではないか、こういうことを私は申し上げているわけであって、洪水をいかになくしていくのか、そして、流域住民方々の生命と財産をいかに守っていくのかということの問題意識は全く一緒でございます。  これは答弁は結構でございますので、一つだけお話をさせていただきたいと思うんです。  つまりは、三十三年たって流域の環境もかなり変化したということを申し上げたいんです。先ほどからお話をしている昭和四十年の洪水と、それから一九九五年、平成七年の水害の比較をいたしますと、ピークのときに流域に降った平均の二日間の雨量というのは、昭和四十年が四百一ミリ、そして平成七年が四百四十七ミリなんですね。つまり、平均の二日間の雨量というのは平成七年の方が多いということなんです。そして、人吉におけるピークの流水量については、秒当たり三千九百立米。そういうことで、昭和四十年と平成七年、これは全く一緒なんですね。  それで、実は被害がどうだったのかといえば、死者が昭和四十年は二人で、平成七年はゼロであります。そして、損壊家屋あるいは流失家屋の合計は、昭和四十年が六十四戸、そして平成七年が一戸であります。そして床上浸水が、昭和四十年が二千四百四十七戸で、平成七年が百二十五戸ということなんですね。  これは、私は率直に、建設省河川局が御努力をされてきた、つまり、ダムではなくて河川流域の整備も一生懸命やられてきたということもわかっておりますので、努力をされた結果と同時に、かなり山の保水力が上がったということが言われております。  ある資料を、これも御報告だけしておきたいと思いますけれども、これは地元で活動されている専門家の方々が統計をされたものでありますけれども、川辺川上流域の森林の面積というものが、かなり古い大きな木というものが大きくなっておりまして、その結果、保水能力がかなりアップしたのではないかということなんですね。  この間、吉野川で大臣とも議論させていただきましたけれども、つまりはこれだけの年数の変化において、川だけ見ちゃいかぬと。やはりその上流の山をどのようにメンテナンスしていくのかということは、同時に考えていかなきゃいけない問題ですので、先ほどの比較というものは、かなり重要な示唆を持っているのではないかというふうに私は思います。  そしてまた、そういう数字というものは、ダムというものに対して絶対主義、私は、先ほど申し上げましたように、ダムが絶対だめだと申し上げているわけじゃなくて、必要なダムもあると思います。しかし、ダム絶対主義に対しての、やはり一つのアンチテーゼとしては見るべきではないかということを、私の意見として申し上げておきたいと思います。  ちょっと質問時間が詰まってきましたので、最後、またこれは農水省政務次官あるいは水産庁長官になるんでしょうか、お話をしたいと思うんです。  今、川辺川の工事、本体事業がとまっている一つの大きな要因というのは、球磨川漁協との話なんですね。これについて、いわゆる損失補償というものが議論できていないということなんですね。  そして、球磨川漁協については、いわゆる水産業協同組合法というものに基づいて設置をされている漁協でございますけれども、ここに、そういう損失補償みたいなものの規定はございますか。どうですか、政務次官。
  66. 谷津義男

    ○谷津政務次官 先生指摘の球磨川漁協に対するこの点でありますけれども、漁業補償に関する法的手続につきましては、漁業法あるいはまた水産業協同組合法の定めにはありません。
  67. 前原誠司

    前原委員 今、政務次官が御答弁されたように、これは水産業協同組合法の規定ではなくて、いわゆる民法の方から読んでくるというふうに伺っております、七百九条の損失補償ということで。つまりは、この漁協ができている前提となっている水産業協同組合法については、そのような損失補償についての取り決めはないということなんですね。これは、一つ大きなポイントだというふうに私は思っております。  そうすれば、不思議なのは、では、なぜ建設省が漁協との損失補償に当たるのかということなんですけれども、漁業権というものが漁業法に記載をされているそうなんですけれども、この球磨川というのはどういう漁業権なんですか。これは水産庁長官
  68. 中須勇雄

    中須政府参考人 現在、球磨川漁協につきましては、第一種共同漁業権及び第五種共同漁業権、これが免許されております。
  69. 前原誠司

    前原委員 つまり、内水については、今おっしゃったような漁業権漁業ということでございまして、許可制ではないということなんですね。しかも、球磨川はすべて、支流も含めて、一帯の漁協に対していわゆる漁業権が与えられているというところでございます。  そこで、農水省に御質問をしたいわけでございますけれども、損失補償についての規定がないということでありますけれども建設省は、強制収用ということも含めて議論をしているような話を聞いておりますけれども、この漁業権というものは、今まで強制収用されたことはあるんですか、どうなんですか。
  70. 谷津義男

    ○谷津政務次官 これは、土地収用法第五条の第三項に基づきまして、漁業権を強制収用することは可能であります。  しかしながら、今日まで、漁業権が強制収用された事例につきましては報告を受けておりません。
  71. 前原誠司

    前原委員 時間が来ましたのでこれで終わりにしますけれども、一応の規定はあるけれども、しかし、今までそういう事例はない。しかも、水産業協同組合法においては、そういう損失補償についての取り決めすら持っていない。  つまりは、いわゆる漁業権というものを与えるということの中で、やってくださいよということを規定しているわけであって、私は、この漁業権というものは、法律的に可能であっても、この水産業協同組合法から照らし合わせてみれば、これは強制収用の対象にはならないというふうに思います。  この点については、またの機会に、建設大臣と議論をさせていただきたいと思います。  質問を終わります。
  72. 大口善徳

    大口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  73. 大口善徳

    大口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上義久君。
  74. 井上義久

    ○井上(義)委員 河川事業のあり方について、河川審議会委員でございます高橋裕先生が「河川にもっと自由を」という小論を書いていらっしゃるんですね。非常に示唆に富む小論だと思いまして、ちょっと御紹介させていただきますけれども、  堤防はまれではあるが切れることもあり得る。砂防ダムもその容量をはるかに上回る土石流発生もあり得ることを前提に、土地利用規制、危険情報提供などのソフト対応治水施設と併用して対処すべきである。その方が、元来自然奔放でありたい河川に対しても礼を尽くした付き合いであろう。河川の自由を徹底的に抑えるのではなく、ある程度の自由を与えてこそ、自然としての河川との共生は可能であろう。そもそも“与える”というのも人間の驕りである。 こういうふうにおっしゃっているんですね。それで、公共土木施設の限界を見きわめた上で、ハードとソフトを併用することで自然との共生も図っていこう、こういう発想、手法というのは、今後の河川事業のあり方に対して大きな示唆を与えているんではないか、このように思うわけでございます。  近年の土木技術の発達によって、自然の脅威を和らげる、そのことによって国民に安全と利便を提供してきた、その役割というものは非常に大きなものがあったと思うわけですけれども、それと裏腹に、やはり私たちが失ってきたものがあるわけでございます。例えば生態系とか水循環とか、あるいは土壌の破壊とか、あるいは水質の汚濁によって海洋汚染をもたらすとか、もっと言えば、川という存在が、人間が近づけなくなって人間と非常にかけ離れた存在になってしまった、こういうことがあるわけでございます。私は、この高橋先生指摘というのは、今後の河川事業を考える上での、大きな示唆に富んだ、また目指すべき方向ではないか、このように思うわけでございまして、河川行政の方向性ということについてまず大臣の所見を承りたい、こう思います。
  75. 中山正暉

    中山国務大臣 全くその高橋先生のおっしゃるとおりで、自然を人間が制御しようと思うことがもうそもそも自然の摂理というものを、生意気になった人間の考え方というものに、あるときはんらんするようなことは、自然が人間の対応をせせら笑っているんじゃないかというような雰囲気があるんじゃないかと思います。  しかし、明治時代には四千万ぐらいの人口で、それ以上ふえたら困るというので、ハワイに移民をやったりブラジルに移民をやったり、明治維新から後の政府の考え方というのは、人口をいかに抑えるかということだったんだろうと思いますが、それが今一億二千万以上になりました。それに、大都市に集中して、どうしても人間は川の流域に住もうという本性みたいなものがあります。それは、水というものが、扱いようによっては、人間が生きていく上での貴重な資源を提供しますし、そういうことも含めて、農業とか、いわゆる水産業、先ほども質問に出ていましたが、川の漁業権を持っていらっしゃる方々とか、やはりそういう中で、これから一体どうしていったらいいのかという先生のお話のように、今になってはっと気がついた。自然と共生をするその考え方というのは達観しているわけにもいきません。  良寛和尚という和尚様が、新潟の大地震があったときに、私おもしろいと思って読んだんですが、災難を受けるときには災難を受くるがよくて候、これが災難を避くる妙法にて候という、もう本当に達観をしたことをおっしゃっています。自然に逆らってもしようがないんだよ、自然が猛威を振るったときにいかにその災難を避ける道を人間が選んでいくかということを、禅宗のお坊さんらしいことをおっしゃっています。  しかし、我々は、やはり国家としてこの体制を築いている上では、市町村民の安全、国民の安全を考えなければいけませんので、その意味では、いかに川に対して語りかけるか、川と共生する、人に対して川をどういうふうに考えていただくかというような、川を含めたその地域方々の基本的な考え方、それからまた、その技術の向上をして、川に自然の体系を保有させながらうまく海に誘導するというような、そんなことが河川法の基本理念であるべきではないだろうか、私は、そんなふうに先生のお話を伺いながら感じております。
  76. 井上義久

    ○井上(義)委員 それで、河川行政については、平成八年の河川審議会答申、二十一世紀の社会を展望した今後の河川管理のあり方についてに基づいて平成九年に河川法の大改正を行ったわけでございます。法の「目的」に「河川環境の整備と保全」を追加する、それから新たな計画制度を整備して新しい河川行政の展開をしよう、こういうことでスタートをしたわけでございまして、この河川法改正後、河川行政は本当に変わったのか、どのように変わったのかということがやはり国民の目に見えてこないといけないんじゃないかなと思うわけでございます。吉野川の第十堰の問題等を通じて、どうも国の河川行政は変わっていないんじゃないか、国民の側から見るとそういう疑問があるわけでございまして、この河川法改正から国の河川行政がどのように変わったのか、国民に目に見える形で明らかにしなければいけない、こう思うわけでございまして、その点ひとつどうなのかということ。  それから、今回もう一つ答申の柱であった市町村河川管理への積極参加ということについて、今回の法改正というのは、その趣旨に沿った改正ではないかというふうに考えるわけでございますけれども、この二点について、見解をお伺いしたいと思います。
  77. 中山正暉

    中山国務大臣 確かに、河川に対する感覚というのが変わってきたのが平成九年、法律の目的として「河川環境の整備と保全」が位置づけられるとともに、新しい計画制度が導入されて、河川整備計画の策定に当たり、地方公共団体の長、それから地域住民等の意見を反映する手続が整備されたというところに大きな意味があると私は思います。  今までも全く無視してやっていたわけではないでしょうけれども、それを法律に明記するということが、私は、位置づけとして大変いいことではないか。地域意見を生かした河川整備を推進する制度が始動を始めたという印象でございます。  このような河川環境や地域特性を踏まえた河川整備に対する要請の高まりを踏まえるとともに、まちづくりの主体であり、住民に最も身近な自治体である市町村河川の整備と管理に対して積極的に参画することが求められるという、今までの、国から、上から直下型でいろいろな指示を与えるということではないという状況でございます。  こういうもとで、建設大臣といたしましては、諮問機関である河川審議会において、昨年十二月から河川管理への市町村の参画の拡充方策について審議をお願いいたしておりましたが、本年一月に、市町村工事制度拡充とか、政令指定都市への河川管理権限の委譲、そういうものを内容とする答申をいただいたところでございまして、これを踏まえての今回の法律改正ということでございます。
  78. 井上義久

    ○井上(義)委員 平成九年の河川法の大改正で、法目的に「河川環境の整備と保全」ということが追加されて、新しい計画制度を整備されたということで、それから三年目に入るわけですけれども、国民の目に見える形で、国の河川行政はこういうふうに変わったんですよ、変わりつつあるんですよということを具体的に示していくことが、私は、これからの河川行政の理解を深めていく上で非常に大事じゃないかということで質問させていただいたわけでございます。  例えば、水辺プラザ事業というのがあります。これは河川法改正以前からスタートした事業なんですけれども、いわゆる河川工事というのが、どちらかというと河川から人間を遠ざけていくという形で行われてきた、それをもう一回親水性というものを取り戻そうということで水辺プラザ事業というのがスタートして、私も先般、私の地域でございます岩手県の北上市の北上川の水辺プラザ事業というのを、地元の市長さんから要請がございまして、ずっと視察に行って、市長さんと一緒に見させていただいたんです。  相当広い地域、約二十五ヘクタールの河川敷を親水公園として、いわゆる治水事業とあわせて整備しよう、こういう計画でございまして、例えば護岸なんかも、丸太とか木の皮を活用していわゆる多自然型工法で整備したり、それから、群生するヨシをそのまま残してバードウオッチングを楽しめるような用地をつくるとか、非常に地元の期待も大きいわけでございます。  こういったものがあちこちにできていくと、河川行政というのはこういう形で我々の方を向いてきているんだなということがよく理解されるんじゃないか、こういうふうに思うわけでございまして、この水辺プラザ事業の推進、特に北上川の水辺プラザ事業の推進ということについて、ぜひ積極的にやっていただきたい、こう思うわけでございますけれども、これの進行状況、また今後の方向性についてお答えいただければと思います。
  79. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 ただいま委員の御質問にございました一関の水辺プラザは、河川法改正以前からスタートしているわけでございますが、こういう各地で行われている、今から御説明するプラザのこのような事業が前提となって河川法改正になったと認識しております。このような一つ一つの積み上げが新しい河川行政の展開になると考えております。  内容につきましては、流域のNPOの活動の拠点、NPOの方々河川で活動する場合、大変困るのが、実はトイレの問題であったり、雨が降ったときのみんなの集合場所であったりいたします。そういうときも含めて、河川で活躍する方々が快適に河川空間を享受してもらうというような河川行政の転換の一環として、平成八年度より東北地方建設局岩手工事事務所で実施している事業でございまして、内容につきましては、建設省が勝手にやるということではなくて、福祉だとか教育だとか歴史等の各方面の有識者から成る懇談会を開催いたしまして、この方々意見を取り入れて事業の推進を行っております。  内容としては、キーになるものは、仮称でございますが、北上川学習交流館という建物を中心として現在は整備をしておりまして、平成十四年度の完成を目途に事業を進めております。  これができた暁には、北上川がより国民に開かれた、そして楽しめる空間になるようなものとなるべく、建設省も努力してまいりたいと考えております。
  80. 井上義久

    ○井上(義)委員 ぜひ推進、よろしくお願いしたいと思います。  次に、今回の河川法改正に関連いたしまして、今回の改正は、河川管理への市町村の積極参加を目指すもので、より地域住民のニーズを把握している自治体にその権限をゆだねていくというのは、地方分権の上からも、また、自然との共生ということを実現していく上でも歓迎すべきことである、このように評価しております。  そこで、一つ目は、改正では政令指定都市河川管理権限を委譲するということになっているわけですけれども、政令市における河川管理のノウハウというのがどこまで蓄積をされているのか。また、建設省による技術、ノウハウの支援体制をどうとっていくのか。自然との共生というこれまでにない河川行政の新たな課題に挑戦していかなければいけないということを考えますと、権限を委譲することはいいわけでありますけれども、受け取った政令指定都市がしっかりと取り組めるような支援体制をしっかりしいていかなければいけないんじゃないかということが一つ。  それからもう一つは、財政支援の問題でございます。政令指定都市への河川管理権限の委譲にしても、あるいは市町村が行える河川工事等の範囲の拡大、これも大変結構なことだと思いますけれども、それぞれ財政の負担が伴うわけでございまして、私は、市町村への財政支援が不可欠である、このように思うわけでございます。これらの点についてどのような財政措置を考えていらっしゃるのか、これについてお聞きしたいと思います。
  81. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 委員の御質問にお答えいたします。  従来より、十二の政令指定都市は、みずから管理する準用河川改修事業のほか、都道府県知事が管理いたしております一級河川及び二級河川におきまして、治水の安全度を高めるためのいわゆる都市基盤河川改修事業等を実施してきております。十二市で九十一河川、お金にしまして三百八十四億という内容事業政令指定都市は実施しております。これまで一定の河川工事または河川の維持の実施をしてきておりまして、河川管理の実績を着実にこの政令指定都市は積み重ねていると認識しております。  建設省としましては、今後この法律が通った暁には、政令指定都市におきまして事務の円滑な執行がされるよう、今委員の御指摘のありますように政令指定都市への必要な支援、技術上の知識の支援、そして普及の支援等を実施していかなければいけないと認識しております。今後私どもに与えられた重要な課題だと認識しております。  もう一点の、政令指定都市への権限委譲に当たりましての財政支援でございますが、政令指定都市が一級河川の都道府県管理区間と二級河川の管理を行う場合、これまで都道府県が負担していた費用は政令都市が負担することとなります。  この場合、河川工事に要する費用につきましては、都道府県に対する場合と同様に私ども国庫補助を行いますが、起債措置と元利償還金の地方交付税措置が都道府県と同様に取り扱われるよう、自治省と私ども協議してまいる予定になってございます。  このようなことで、政令指定都市河川管理者としての支援をしてまいりたいと考えております。
  82. 井上義久

    ○井上(義)委員 それから、先ほどちょっとお答えがなかったのですけれども市町村が行える河川工事等の範囲の拡大というのが今回うたわれておるわけでございまして、それに対しても相当な費用負担がありますから、やはり財政的な措置をとらなければいけないのじゃないか。これについてはどうでしょうか。
  83. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 大変失礼しました。  一級河川の直轄区間におきまして市町村河川工事を行う場合、河川工事に要する費用の負担は、国が三分の一、都道府県が三分の一、市町村が三分の一となっております。  この場合、市町村河川工事の負担分につきましては、都道府県が行ったと同様に起債措置と元利償還金の地方交付税措置が認められるよう、現在自治省と協議中でございます。
  84. 井上義久

    ○井上(義)委員 最後に、私の地元の北上川下流の改修工事に関連して何点かお聞きしたいのです。北上川の下流につきましては、旧北上川の下流に石巻という市街地があることもあって、明治四十四年から新北上川の開削が始まり、分流施設が設置をされたわけです。  設置後七十年経過して構造物が不安定化したということでいわゆる分流堰の改築が計画され、石巻地域治水対策という観点からこれは必要な事業だと思いますけれども、一方、出水時の濁流だとかごみの流出、流木によって漁業被害が発生して、新たな分流堰の設置によってその被害が拡大するのではないかということで、下流域の漁業関係者の皆さんがこれに反対をされておるわけでございます。  地元皆さん要望を私も伺ってまいりましたけれども、確かに、現状でも、年に四回ぐらいの洪水時の濁流で漁業に相当な被害が出ている、それから流木等で漁船とか網に相当な被害が出ているという実態があるわけでございます。これが分流堰によって増水時にすべて新北上川の方に流れますと、相当被害が増大することが考えられるわけでございます。  これらの点について、一つは、それぞれの地元漁協からこの濁流とか流木被害について報告されていますけれども、なかなか被害の実態が定量的に明らかになっていないということもあって、私は、対策を講じる上でやはりきちっとした実態調査がまず必要なのではないか。この辺は県とか水産庁とも連携しなければいけないと思いますけれども、この実態調査ということが一つ。  それともう一点、この漁業被害が起きた場合に、これについてどう対応していくかという問題と、それから、そういう漁民の皆さんの反対もあってこの分流堰の着工が一時見合わされたというふうに聞いておるわけですけれども、今後どういう手順で分流堰の改築、及び分流堰設置に伴って当然北上川の下流の改修をしなければいけないわけですけれども、それの予定をお伺いしたい、こう思います。
  85. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 北上川は、明治四十四年から平成九年にかけましてできた新しい川でございます。従来は旧北上川に流れておりまして、迫川、江合川等が合流しまして大変洪水が激しかったところを、新北上川で洪水を安全に流そうという内容でございます。  そういう意味で、新北上川流域方々は、委員指摘のことを大変心配されております。私どもも、流域におります関係機関と協調しながら、流木等の対策について現在検討しております。  河川管理者としても、ダムによる流木の捕捉、そして河道、川の中における流木の捕捉施設の設置や水面清掃船の配置、河道内及び河口部の流木やごみの捕捉を行うなど、可能な限り実施しているわけでございます。  また、北上川河口におきます流木や濁水の被害状況に関しましては、県の水産部局が行う調査に協力するなど、必要に応じてその漁業の営みの実態について把握してまいる所存でございます。  さて、もう一点の御質問の分流堰でございますが、今御説明申しましたように、新北上川の下流の方々にとっては、洪水が来るということは、ある意味では迷惑がかかるというような状況でございまして、なかなか旧北上川分流施設の改築事業に同意を得られなかったというのが事実でございまして、平成十一年度は事業の着手を見送ったところでございます。  私ども、このため、北上川下流の治水事業の進捗、ともかく北上川そのものの下流地域治水事業を進捗しなければ了解を得られないだろうということと同時に、流木の対策等につきましてさらに真剣になって取り組むことによって、北上川下流の方々の御理解を得て、この旧北上川分流施設事業に着手してまいりたいと考えております。
  86. 井上義久

    ○井上(義)委員 この濁流問題とか流木問題というのは、実はこの北上川に限ったことではなくて、全国各地の河川でこれは極めて深刻な問題になっているのですね。  やはりこれは河川管理者が第一義的に責任を負わなければいけないということだと思うのですけれども、濁流についていいますと、河川改修を初め土砂対策とか道路工事、宅地造成、そういった官民の土木工事がその因と考えられますし、また流木というのは林野行政とか、あるいはごみ問題は自治体の清掃行政と密接に関連しているわけで、それらとの協力がなければ解決は困難だと思います。  少なくとも河川河川管理者ということで、いわゆる排他的な権限を持っているわけでございまして、これに起因する流木問題、汚濁問題で漁業者等が非常に被害を受けている、あるいはその他の被害もいろいろ出ているわけでございまして、これらの問題についてこれから本格的に取り組まなければいけないんじゃないか。この辺の濁流問題、流木対策についての建設省考え方最後にお聞きしたいと思います。
  87. 中山正暉

    中山国務大臣 先生のお話しになりました濁水、それからごみ、流木といった問題は、これはもう流域全体、日本全体の問題であると思っておりますので、林業とかそれから農業、都市生活等の関係機関がそれぞれ同様に問題を認識いたしまして、役割を分担することによって対応を推進していきたいと、建設省でもいろいろな機関に働きかけております。  このため、流域内の自治体等を含む関係行政機関と協調することが必要でございまして、この推進を図っていくように、河川事業においても流木捕捉施設の整備を行うとともに、災害復旧による流木処理を実施し、また平成十二年度からは新たに海岸域における大規模漂着流木の処理について、災害復旧対応を可能としたところでございますが、今後さらに御指摘のような適切な対応を推進してまいりたい、かように考えております。
  88. 井上義久

    ○井上(義)委員 以上で終わります。
  89. 大口善徳

    大口委員長 青木宏之君。
  90. 青木宏之

    ○青木委員 河川の方は治水とか利水、本来の任務として大変御努力をいただいておると思いますが、特に今般はいわゆる河川の親水化ということが、既に取り組まれ出してはおりますが、これからの重要課題だと思います。そういったことから、親水化を中心にしてお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず、そこで、大抵の河川堤防があるわけですけれども、その堤防の上には道路が大概あるわけですね。それで、河川の親水化を進めていきますということは、結局、基本的にはそこへ歩いて近づくというケースが非常に多い、いわゆる歩行者が中心になってくる可能性が多いと思います。そうしますと、堤防上の道路とその堤防を乗り越えてというか渡って河川へ近づく歩行者との問題が出てくるのではないか、いわゆる歩行者の安全確保という問題が出てくるのではないかというふうに思うわけなんです。  そこで、堤防道路上の、現在においてどの程度の事故率があるのかなと思いまして、もちろん専門的には警察ですので警察にもお尋ねしたわけですけれども、これが資料がない、まとめていない、こういう返事でして、実態がわからないわけなんですね。やはり管理して、そしてまた道路をつけるか、あるいは道路上の問題、管理、そういうことからすれば事故自体は警察なんでしょうが、河川管理者としての立場からも実態というものを知っておく必要がある。特に、今申し上げた親水化ということがこれから進んでいけば、なおさらこの問題は大きくなってくると思いますので、道路のあり方についても今後ひょっとしたら議論が大きくなるのではないかというふうに思います。  したがって、まず、河川管理者としてこういった問題についてどのようなお考えといいますか感想をお持ちになられるか、お尋ねをしたいと思います。
  91. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 委員指摘堤防道路に関しましてでございますが、河川は、その地域の身近な自然との触れ合いの場として、また憩いの場として、改めて国民の注目を今集めているわけでございますが、一方では、貴重な地域の交通網の一環を構成している堤防上の道路等が多く存在しております。この流域人々河川へのアクセスについて影響を与えているという事実も事実であると認識しております。  このため、私ども、道路管理者や警察と協力いたしまして、横断歩道や信号機を設置するなど、子供たちを初めとする流域人々河川に安心してアクセスできるよう改善に向けて努力してまいる所存でございます。
  92. 青木宏之

    ○青木委員 そのように御努力をこれからいただいていけば結構なことだと思いますが、今度は一転して道路の方、車の方から申し上げますと、いわゆる堤防道路と一般道路とが交差するところが何カ所か当然あるわけです。それは大体、橋梁、橋のところへ来るわけですが、そうしますと、そこに信号が当然ほとんどつくわけですけれども、かなりこれが、通常のところはいわゆる交差するところが少ないものですから非常に流れがよくてスムーズに通行できるわけですが、一たん交差する交差点へ行きますと、それが一気にたまってしまうというか渋滞をするケースが非常に多いわけで、大体そのあたりは順次迂回路といいますか、あるいは堤防外ですね、河川側の方へ、橋の下を通るいわゆるアンダーパスといいますか、そういったこととか、いろいろなところが過去から行われてきておるわけなんです。  そこで、いわゆる河川の側の、河川敷の方のアンダーパスの方であれば、これは費用的には非常に安くできるわけですが、一たん堤防内といいますか都市部の市街地の方は、これは地価からいって高いし、立ち退きとかいろいろな付随する問題があって、わずかな迂回路をつくるだけで相当な費用がかかるわけなんですね。だから、費用とか手間とかいう点からすれば、極力河川の方のアンダーパスを通していただけると、道路としては非常にいいのかなという感じをずっと持っておったわけです。  それが、当然河川の安全管理ということからしますとなかなかそうも簡単にはいかないという事情も前々からずっとお聞きしておるわけですが、しかし、頭から、できるだけ堤防内、市街地の方へ、市街地の方へと、私は今まで建設省の方はどうもそういう動きにあったような気がするわけです。私も地方議員をやっておりまして、いろいろ陳情したこともあるんですが、建設省がうんと言わない、建設省がうんと言わないというのをずっと聞いてきたわけでございます。  いろいろ難しい問題、確かに安全管理の責任ある立場からすればわからないわけではないですが、今言った費用からしますと、これはべらぼうに違うわけですので、よくよく技術的な問題を研究しながら、できれば河川敷の方へ、アンダーパスの方へオーケーを出すというような方向性も、場所によってはあるいは技術的な問題解決ができればという条件つきですけれども、そのようにしてほしいなと思うわけでございますけれども、この点についてのお考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  93. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 委員指摘の堤外のアンダーパス、いわゆる川側に道路を入れることによって交差点の渋滞を解消しようという、都市生活者が日々渋滞に悩まされているその実情を少しでも河川空間が救っていこうという気持ちは、私どもも実際生活していますと十分わかる内容でございます。  ただし、委員も十分御承知かと思いますが、一たび川側に道路をつくりますと、その道路は未来永遠にその川の空間を占用してしまいまして、人々河川空間で憩うということは極めて困難になる。そして、出水のときはその道路は中断されてしまう。さまざまな問題点がございまして、私ども、道路管理者と協力しまして、橋梁をかけかえるようなとき、そういうときに合わせまして、堤内の、橋梁かけかえのときはどうしても用地等の新しい取得が道路サイドも必要になりますので、そういうときを私どもチャンスをとらえまして、道路の拡幅、右折または左折する車線を増幅するような方策を、道路管理者と協力して交差点改良を実施していきたいと考えております。  私ども、日々各地でそういう声または将来の河川のあり方について悩みながら河川行政をやっているというのが実態でございます。
  94. 青木宏之

    ○青木委員 道路のことになりますと、費用の点でなかなか実現性は難しいかもしれませんが、今のは堤防からアンダーパスの問題ですけれども、逆に、いわゆる堤防下というか河川敷の方の地下へ道路をつくることも可能になるわけでございます。費用は地下ですからかなりかかるから、どの程度実現性があるかわかりませんけれども、いずれにしても、方法としては地下へ道路を通すことができるようになると理解しております。  そうしますと今度は、河川敷の方の地下もですが、河床の地下の方もかなり広い。堤防なんかは大体左右両方あるわけですので、さっき言った歩行者との交差あるいは一般道路との交差等々からすれば、理想からいえば交差しないのがいいわけですから上へつくるか下へつくるかすればいいんですが、軽く考えて、上へつくるということになりますと非常に景観がよろしくないという問題が出てきますので、さすれば、地下へ潜ってしまえば景観も守られるし、道路の問題も解決できるというようなことが出てくると思いますが、堤防直下はどうかなという気もするのです。  ちょっと専門的なこと、技術的なことはわかりませんので、河川を管理する範囲の中で全部地下道路は建設可能なのか、あるいは制限を受けるのか、あるいは大深度という問題がやがて出てきますが、大深度ならオーケーなのか、今のままならどこはいけないとか、そういうようなことをちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
  95. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 河川空間の下部におきます道路の計画でございますが、現在、道路の技術が大変すばらしいものがございまして、海の中でもいけるという状況にございますので、私ども、川の下にトンネルを、または道路トンネルがあっても何ら技術的に心配はしておりません。  ただし、川の河床というのは、常に十年オーダーまたは百年オーダーで変動しておりますので、河床が変動して道路トンネル等にまた影響があってはいけませんので、十分河床変動に影響のない範囲までおろしていただくということになれば、経済性の検討はまた別にしまして、私ども技術的には十分協議に応ぜられる内容だと考えております。
  96. 青木宏之

    ○青木委員 わかりました。  次に、親水性ということでございますが、親水化を進めていくときに、さっきから話も出ておりますが、やはり自然との共生といいますか、あるいは自然化といいますか、そういったことも伴って効果が上がってくると思うんです。たまたま、具体的にどこといって忘れてしまったんですが、いわゆる改修前、改修後という比較の写真を見たときに、写真からだけですから事実ははっきりわかりませんが、写真からだけの印象からしますと、改修前のときは川のふちに木がいっぱいありまして緑が非常に多いんですが、改修後になったら、そこがずっとなだらかになって親水化、人が近寄れるようにしてあるんですね。非常に整備はされてあるんですが、その写真からだけですと、どうもその辺に緑がさっぱりなくなってしまってというような印象を受けた写真を見たわけです。  やはり親水化、水に親しむようにするということと同時に、それには今言ったように、そこには当然緑も、減るんじゃなしに現状維持かそれよりふえるとか、あるいは水があれば水にかかわるいわゆる水生動物、魚もですが、それから緑がふえれば当然緑にかかわる昆虫類とか鳥類とか、そういった動物も関係してくるわけです。したがって、動植物ともに自然をそこにある程度よみがえらせるというか、あるいはまた自然を維持するというか、それと相まってその親水化をなせば効果がある、こういうことでございます。  そのときに、時々見受けるんですけれども河川ばかりじゃなしに町の中でも見るんですが、新たに植栽する場合には当然もともとそこに存在をした植物を中心にしてというか、そこにあってもおかしくない、いわゆる植生に合った植栽をすべきだ。とんでもない内容のものを持ってきたり、温帯のところへとんでもない北方のものを持ってきたり、たまに見かけるわけですけれども、ぜひそういうことのないようにしていただきたい。また同時に、そういう植生に応じた昆虫、鳥類、そういう小動物もそこにもともといたものがあるはずですから、当然動植物関連させて、要するに、特に都市部なんですけれども、もともとそこら辺にあった自然をよみがえらせるということに意を用いて親水化を進めていただくということが必要だなと私は思うんですが、まずその点だけ、ひとつ簡単にお答えをお願いしたいと思います。
  97. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 ただいま委員の御指摘の、河川敷に植栽をする場合はその地に合った植生をというのは、全く私どもそのような心づもりでやっていくと思っております。  一言申しつけ加えさせていただきますと、植生が川の中にありますと、洪水時に水の流れが悪くなって水位の上昇という現象が起きます。私ども、植栽をする際そういうことが本当に大丈夫かというようなことをきちんと把握しまして、数値的な解析だとか、科学的に十分検討した上で、安全な、河川の断面に余裕があるようなところで河川環境空間を形成していきたいと考えております。
  98. 青木宏之

    ○青木委員 それで、私は地方議員のころから、いわゆる都市部ですので、身近な自然というものについていろいろかかわってきた者でございます。一つ私がずっと取り上げてきましたのは、トンボとチョウチョウの問題なんですけれども、自他ともにトンボチョウチョウ議員などと県会議員のころは呼ばれておったこともあるんです。  多分、これは違っているかもしれませんが、例えば、トンボが今非常に少なくなった、チョウチョウも少なくなったんですが、トンボは、水たまりとかせせらぎ、要するにああいった水のものが一キロ、千メーター以内に続いていないと行動距離をそれ以上延ばすことができないというふうに聞いているんです。昔は至るところに池があったり、せせらぎ、小川があったり、都市部でも結構池というものがちょこちょこ、水たまりがあったものですから、そういったところへトンボが渡り歩いて繁殖した。ところが、昨今は都市部の池、小さい池はほとんど埋め立てられてなくなってしまっておりますし、せせらぎ等もなくなってきているわけで、農薬の問題も当然大きいわけですけれども、そういうトンボが見かけられないというようなことではなかろうかと思うんです。  そこで、河川というものはずっと連続して山間地から海まで流れておるわけですので、この長い長い距離の中で一キロ以内ずつそういった水たまり、せせらぎというものをそこに求めることは非常に可能性が高いんじゃないかというふうに思います。だから、親水化を進めていくときにぜひ、今も既におやりをいただいているところもあるように聞いてはおりますが、連続して一キロ以内にはそういった水たまり、せせらぎというものが確保できるような、水系一貫した方針をちょっと立てていただいてお進めいただけたらありがたいな。  そこで問題となってきますのが、今回の改正で、各地方の個性、そういったものが重視されてくる、あるいは権限が持たれてくるということは、それはそれでいいかと思うんですけれども、そういう一貫性を求めた場合には、それがかえって阻害されるおそれがある。個々にお任せをすると水系全体がばらばらになるという可能性もありますので、今回の改正とあわせて、今私が申し上げた、トンボは一例ですけれども、そういったことについて、水系全体としての管理方針というか、そういう国と地方とのあり方というものをいま一度、ちょっと心構えといいますか考え方をここでお聞かせいただいておきたいと思います。
  99. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 委員指摘のように、今回の法改正によりまして市町村工事が河川で実施されることになります。その際、各市町村思い思いの工事をしたら結局川全体がばらばらになるのではないかという御質問でございますが、私どもそのようなことを大変心配しておりまして、あらかじめ当該区間を一体的に管理する河川管理者市町村がよく話し合って、事業を実施する前に環境面においても河川全体として統一性が確保されるように、バランスがとれるように調整を図りながら、相談をしながら事業を実施していきたいと考えております。
  100. 青木宏之

    ○青木委員 最後に、ひとつ大臣からお答えというかお考えをお聞かせいただきたいのでありますが、私も余り横文字には強くありませんが、ミティゲーションとかいう河川行政に使われる言葉があるようであります。要するに、環境へ配慮するということなんですけれども、ドイツでは相当進んでおるようでありまして、我が国においてもようやくといいますか、先ほど来お話が出ております河川管理におけるそういう環境重視ということが始まってきたようでありますけれども、やはり先進のドイツにおいてこのミティゲーションということがきちっとやられておるようであります。  要するに、基本的には環境を重視した管理をしていく、そしてまた、どうしても環境がそこで、その河川において技術的にも守られないというか、そんなような場合にはそれにかわる代償措置まで求めておるようでありまして、そういったものが代償、かわりの措置がきちっととれなければ開発はできないとか、かなりきついことになっておるようであります。  ぜひひとつ、日本もようやくこういう環境重視という河川管理のあり方というふうに進んできたわけでございますので、さらに一歩進めて、そのあたりまで、具体的にどの程度ドイツのあれがこういったことがきちっとやられておるのか私もよく存じませんけれども、その先進例があるわけでございますので、この際そこへ進んでいく足を少し速めていったらいいのかな、こんなふうに思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  101. 中山正暉

    中山国務大臣 ミティゲーションと申しますか、なくした、失ったものを取り返していくという、昆虫のお話とか、それから動植物の生息、生育環境に配慮した河川整備、これはビオトープとかいって、また新しい、自然を今の代替案のような形でどんなふうに河川の周辺によみがえらせるか、これは大事な問題だと思います。  ウサギ追いしあの山、小ブナ釣りしあの川なんというような、私はブラジルに行きましたときに、移民の方々がお別れに歌われた歌を聞いて本当に、昔は、日本を離れてそういうものにあこがれていらっしゃる方々の気持ちみたいなものを本当に切々と感じましたものですから、これからの河川行政には、川にはいわゆる生態学的な癖がいろいろあると思います。流況が安定している例が多摩川とか、それから流況が変動の多い千曲川とか、それから砂質河川である木津川とか、それから河川激甚災害対策特別緊急事業の実施で河川環境が変化する北上川とか、いろいろその川の癖があります。そういうものと、そういう自然を大切にする学問なんかを真剣に研究していらっしゃる方々、生物関係の学問研究の先生方のお知恵を拝借しながら、景観を重視して、また今のミティゲーションという、なくしたものを我々が取り返していくということは、これからの二十一世紀の地球全体のことを考えてみて、大変重要な御指摘だと思います。  特に、都市の中で人がほっとする場所、それが私は川の流域であることが大変大事なことではないかしら。護岸でコンクリートで固めてしまって、その上を鉄橋が何本も何本も走っている川を幾らでも見るわけでございます。これはいたし方ございません。都市の中でどういうふうに生活環境を能率化するかということと、それから自然をどういうふうに残していくかということを並立させることがなかなか困難かもわかりませんが、河川行政の中でそれをちゃんとした、はっきりした意思を持って実現していくことが、先生のおっしゃったような御趣旨に私も大変賛同をいたすものでございますが、そういう河川行政でありたい、かように意欲を持って対応してまいりたいと思っております。
  102. 青木宏之

    ○青木委員 どうもありがとうございました。
  103. 大口善徳

  104. 中島武敏

    中島委員 私は、まず最初に、法案そのものについて質問をいたしたいと思います。  本法案は、ことし一月の河川審議会答申であります「河川管理への市町村参画拡充方策について」を受けて提出されたものだと思っています。  この答申では、まちづくりと河川整備の連携や、都市部の浸水対策を推進するために、治水上著しい影響を与えない範囲で市町村の工事可能な範囲の拡充を求めていると思うのですね。  まちづくりと河川整備の連携とは一体どういう事業を想定しているのかについて、お答えいただきたいと思います。
  105. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 今回の河川法関係しますまちづくりと河川整備の連携につきましての御質問がございました。  私ども、水辺は貴重な水と緑の空間であり、地域社会に潤いを与える貴重な空間だと認識しております。この空間を、まちづくりと一体となって水辺空間の整備を図ることが、社会的な要請が高まってきているという状況も把握しております。  今回、このまちづくりと河川整備の連携とは、まちづくりの主体であります市町村が、河川地域社会の貴重な水辺空間と位置づけて、市街地再開発事業、区画整理事業、都市公園事業等と一体的に河川整備を進めることであると理解しております。  具体的に申し上げますと、福岡県の北九州市では、小倉の中心市街地の再開発事業と一体となった紫川の整備を行っております。東京都江東区では、工場跡地での公園整備事業と連携して旧中川の整備を実施しております。  このように、まちづくりと河川整備が一体となって、この今回の改正を受けて、さらにこの事業が各地で行われるものと私ども期待しております。
  106. 中島武敏

    中島委員 次に、政令指定都市に対して、指定都市区間内の一、二級河川の管理を任せる措置は、政令指定都市の判断で地域の特性を踏まえた河川整備事業を可能とするものであると思います。今回の措置は、国からの押しつけではなくて、あくまでも政令指定都市の同意を前提にしている、そういうふうに理解してよろしいですか。
  107. 加藤卓二

    加藤政務次官 政令指定都市河川管理権限の委譲に当たっての、政令指定都市の同意についてお尋ねでございますが、そのとおりでございまして、指定都市の河川管理権限の委譲は、指定都市が都道府県と同様の高度な行政能力を有することを踏まえ、また、政令市長会の権限委譲の要望がなされたことを受けて行うことにしております。  指定都市の長が管理を行う区間は、一級河川については、建設大臣関係都道府県知事及び指定都市の長の意見を聞いて、また、二級河川については、都道府県知事が指定都市の長の同意を得て指定することとしており、指定都市の意思を尊重するものであることには間違いございません。
  108. 中島武敏

    中島委員 では、この問題の最後ですけれども、大臣に伺いますが、今回の措置によって政令指定都市あるいは市町村が新たな財政負担を招く、そういうことはないと思っておりますが、間違いありませんですよね。
  109. 中山正暉

    中山国務大臣 政令指定都市への河川管理権限の委譲とか、それから市町村工事制度拡充に当たりまして、財政負担の問題というのは大変私どもも気になるところでございますが、政令指定都市が一級河川の都道府県管理区間と二級河川の管理を行う場合には、これまでの都道府県が負担していた費用は指定都市が負担することとなるということでございます。  この場合に、河川工事に要する費用については、都道府県に対する場合と同様に国庫補助を行う必要があるということでございまして、起債措置とか元利償還金の地方交付税措置が都道府県と同様に取り扱われるよう自治省と今協議をいたしております。  また、日常的な維持管理を含めた河川管理の費用についても、地方交付税の算定に当たりまして、基本的に都道府県と同様に取り扱う方向で自治省と協議をしているところでございます。今、指定都市も十二になっておると思います。  一級河川の直轄区間においては、市町村長河川工事を行う場合、河川工事に要する費用の負担は、国が三分の一、都道府県が三分の一、市町村が三分の一となる。この場合の市町村河川工事負担分については、都道府県管理区間と同様に起債措置と元利償還金の地方交付税措置が認められるように、自治省となお一層そういう形になりますように努力をいたしたいと思っております。
  110. 中島武敏

    中島委員 次に、総合治水対策について伺いたいんですが、新聞報道によりますと、建設省は、堤防ダムなどコンクリート構造物や河川改修で川をあふれさせないようにすることで治水対策を行う従来のやり方から、洪水をためる調整池や土地のかさ上げ対策などのさまざまの方法を組み合わせて、川の流域全体ではんらん被害を最小限に抑える方法をとるなど、河川治水行政を見直すことを河川審議会に諮問したとされております。  そうだとすると、こういう諮問をされた背景は何だったのかということと、それからまた、具体的にどのようなことを検討しているのかということについてお答えいただきたいと思います。
  111. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 ただいま委員の御質問の、私ども河川管理者は、全国のそれぞれの河川の現在のありよう、歴史的な変遷を踏まえまして、その水系におけるある一定の計画の洪水を設定し、その一定の計画した洪水については安全にその地域を守っていこうという内容で、事業を営々と明治以降やってきております。  ただし、近年、異常気象を原因とした集中豪雨によって極めて大きな洪水が多発しておりまして、自然の驚異的な力は私ども人間が予測し計画したものを必ずいつかは上回るという認識のもとに、大洪水による壊滅的被害を回避すべく、被害を最小限とするための流域全体における対応の充実による総合的な対策の確立が急務と認識しております。  具体的に申し上げますと、これまで主に地方自治体や水防団等にしか伝わらなかった洪水関連情報の地域住民へのわかりやすい伝達、人々生活している地域堤防で守る輪中堤や住宅地のかさ上げなどによる水害に強いまちづくり、学校のグラウンドや公園等を利用しまして雨水をためる流域での貯留対策等、流域全体での対応の充実が重要だと認識しております。このため、本年二月四日に河川審議会にこのような内容を諮問し、流域での総合的な対策について検討しているところでございます。  今後とも、流域全体を見据え、治水施設の整備と流域における対策が一体となった総合的な治水対策を推進し、安全で快適な国土を形成していく所存でございます。     〔委員長退席、原田(義)委員長代理着席〕
  112. 中島武敏

    中島委員 では次に、黒部川の排砂ダムによる環境破壊と漁業被害の問題について伺いたいと思います。  黒部川の関西電力出し平ダムが一九九一年十二月十一日から行った排砂作業によって、大量の有機質を含む土砂、ヘドロが富山湾内に流入して、関係漁民に多大の被害を与えました。  まず最初に、この排砂作業による水環境、河川水生生物、海域水生生物、農作物、治水、社会経済への影響について、当時、事前にどのような調査を行ったのかについて伺います。
  113. 大井篤

    大井政府参考人 お答えいたします。  私ども事業者から伺いましたところでございますけれども、御質問の出し平ダムからの排砂に当たりまして、排砂及び濁水流下のシミュレーションを行いまして、黒部川最下流の愛本合口ダム地点における濁りの状況、これにつきまして予測を行っていたというふうに聞いております。
  114. 中島武敏

    中島委員 今ちょっとお答えがありましたけれども、結論から言いますと、ほとんど事前の調査をやっていたというふうには言えないような中身ではないかと思うんですね。そのことは、宇奈月ダム事業審議委員会排砂調査専門委員会、ここが報告書を出しています。その報告書を読みますと非常にはっきりするんです。  何が書いてあるかといいますと、計画時点では、排出される土砂のほとんどが粒径が大きな砂れき分と想定されたため、これらの土砂河川域でその大部分が沈殿するものと予想されておったというんです。さらにまた、濁質による海域での拡散も通常の洪水程度とされていたわけですね。しかし、実際に排砂をやった。そうしますと、海出、海へ出る土砂量は当初の予想を大幅に超え、さらに黒く腐敗臭を伴っていたことから、黒部川のほか、沿岸海域までもその影響を及ぼしたため、漁業団体等の強い中止要請を受けて、関西電力は十二月十三日の午後七時に排砂作業の中止を決定し、十四日午前零時に排砂ゲートを全閉、つまり全部閉めた、こういうことが報告されているんです。  この報告書は非常に具体的でして、時間があれば私もうちょっとそれを紹介したいと思うんです。   排砂作業終了後の測量結果から、排砂作業の開始から作業の中止までの約三日間で排出された土砂量は、当初予想された「七日間で三十万立米」を大きく上回る約四十六万立米であったことが明らかになった。 と書いてあります。それから、  SS濃度のピーク値についても、愛本地点において、約二千八百ミリグラム・パー・リットルの予測に対し、実測値は四千四百ミリグラム・パー・リットルと予測値を大きく上回る値を記録した。   また、排砂の実施に当たり、関西電力は、関係団体や県等との事前の協議、調整が不十分であった。観測体制についても、前述のように河川域で大部分が沈降するものと予想していたため、作業時の流域における河川水質の観測は愛本地点よりも下流では行われなかった。 こう書いていますね。それから、   更に、排砂作業は出し平ダムの湛水後六年を経過してから実施されたが、この間に出し平ダム上流の峡谷斜面から樹木や木の葉及び腐植土等の有機物が大量の土砂とともにダム貯水湖に流入、堆積し、それらが嫌気分解を受け変質したことやそれにともなう流域への影響については全く予想されていなかった。 こういうふうにここでは非常にはっきりと述べられているのです。  先ほど御答弁がありましたけれども、これはもう調査らしい調査を事前にやっていなかった、あるいは予想しておったものは大したことはないというふうに思っていたものが、非常に大きな被害を及ぼしたということは今の報告書から明らかじゃないかと思うのですね。  ですから、排砂作業の結果が何を生み出すかということについて、やはり予想もしないような事態が起きたということは、この調査をしっかりやらなかったというところに大きな原因があるのじゃないでしょうか。
  115. 大井篤

    大井政府参考人 先ほど議員の方からも御指摘がありましたように、関西電力が当初行いましたシミュレーションでございますけれども、浮遊物質量のピーク値、これは愛本合口ダム地点におけるということだと思いますが、当初は二千八百ミリグラム・パー・リットルということであったようでございますけれども、実際には浮遊物質量が四千四百ミリグラム・パー・リットル、こういうことになったというふうに聞いております。  一応、土砂の堆積状況であるとかあるいは排砂ゲートの操作であるとか下流の地形であるとか、いろいろなものを考えながらシミュレーションを行ったわけですが、結果として見て、二千八百ミリグラム・パー・リットルの予測というものが四千四百ミリグラム・パー・リットルになった、こういうことでございます。
  116. 中島武敏

    中島委員 このような事態を受けて、実は富山県は黒部川出し平ダム排砂影響検討委員会を設置して検討を重ねて、一九九五年四月に「検討結果の報告と提言」を出しております。  ここでは、その結果、堆積物を除去せず放置する場合においては、ダム堤体の撤去及び河川を原状へ回復する方策及び砂防ダムに転換する方策を検討したが、いずれも技術的には可能であるものの工期的にも実現は困難であり、安全性を考慮すると放置することを選択すべきではないか、こういうふうに判断をして、結局、排砂ゲートを用いて排砂せざるを得ないと判断されるとしているわけですね。  私は、これは、これだけの被害がずっと出ているという現実を見ながらも、まず最初に排砂ありきという姿勢でこの排砂作業を再開したのじゃないかと思うのです。この「報告と提言」は再開するための口実を与えたものにほかならないというふうに私なんかは思いますね。結果的にはお墨つきを与えたものではないかと思うのですけれども、この点、建設省の方での見解を伺いたいと思います。
  117. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 関西電力の出し平ダムの排砂に関しまして、平成三年に大きな被害というか、河川または海域まで浮遊物質が流れたという事実は私ども河川管理者としても十分認識しておりまして、内容は把握しております。  そのため、この出し平ダム排砂影響検討委員会、これは幅広く、学識経験者はもとより県、流域市町村、そして漁業関係者、漁業組合の関係者の参加も得て富山県が平成四年から設置して、さまざまな観点から検討したと私ども報告を受けてございます。  これらの十回にわたる検討結果に基づきまして、各種選択肢を比較検討した結果、洪水時に排砂ゲートを用いて排砂するという結論に達したものと報告を受けておりまして、建設省としても、その結果は尊重していこうと考えております。  では一体、平成三年になぜあのような濁水が流れたのかという内容でございますが、二点ほど考えられます。  一点は、先生先ほど申しましたように、六年間あのダムにずっと物がたまり続けていたということで枯れ葉等がかなりたまっておりまして、それが有機化、腐食して有機物になっていって、その六年間たまってしまった腐植土が一気に実は平成三年に出てしまったのではないかという点と、そこから出される一つの教訓は何かというと、排砂はためてやるのではなくて、毎年洪水時にやっていこうじゃないかという点が一つ教訓として得られました。  もう一点が、平成三年の作業は十二月に試験的にゲートをあけたわけでございます。十二月と申しますと川の流量が大変少のうございます。川の流量が大変少ないときに排砂ゲートをあけてしまったということで、その影響度合いがより大きく出たのかと認識しております。  そういうところからもう一点、私ども河川管理者としても教訓を得たことは、排砂ゲートを開くときは、自然の洪水が濁度を持っているとき、そのときに排砂ゲートを開放して排砂をしたらどうなんだろうかという内容、この二点がこの委員会等でも話し合われたと報告を受けてございます。
  118. 中島武敏

    中島委員 今、六年間のものがたまっていてそれでと、一つはこういうことを言われたのですが、これは、六年間分たまっていたというのですけれども、それはそうでしょう。ですけれども、それから三年後にまた排砂をやって、それでまた大変な汚濁あるいはヘドロ、こうしたものがたくさんたまって、そして非常に大きな漁業被害をもたらしているということでありますから、六年間だから、たまっていたから、今度は毎年やるんだから何でもないというふうには到底考えられないのですね。  それから、排砂の時期なんですけれども、時期についても、それは冬季にやるよりは出水期にやるということの方がより流れやすいということは事実だと思います。しかし、あそこは大変な急流ですね。谷底を川が流れているわけですから、そういうことからいうと、今の結論というのは私なんかは大変いただけないなという気がするわけですね。後でもちょっとその辺のところをめぐって実証していきたいと思っているのです。  ところで、建設省にもう一つ聞きたいと思うのは、建設省は九五年の十月に宇奈月ダム事業審議委員会を設置しておりますけれども、これはいかなる目的で設置したものでしょうか。
  119. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 一九九五年に設置された宇奈月ダム事業審議委員会の目的は、宇奈月ダム事業の目的や内容について審議することを目的としましてスタートいたしました。  審議に当たりましては、特に重要な点となったのは、平成三年の、先ほど申しました出し平ダムの排砂が社会的な問題となったことから、特に排砂に関する調査検討を行うため、同審議委員会のもとに、生物、環境、河川工学等の学識経験者六名から成る排砂調査専門委員会を設置いたしまして、六回の審議をし、公聴会も踏まえて、平成九年六月に、工事を継続実施し、早期に完成することが妥当という御提言をいただいたところでございます。  この提言の中で、宇奈月ダムの排砂についても、排砂ゲートを用いて排砂する方策により、洪水時に、自然の土砂の濁度に近いときに、流下に近い形で排砂を実施することが妥当とされたところでございます。
  120. 中島武敏

    中島委員 この委員会は、九八年度に、「出し平ダムの排砂に伴う環境影響継続調査結果について」というのを発表いたしております。それによりますと、こういうことを言っているんですね。  「水環境への影響」、結論はどうかというと、通常の状態と比較して大きな違いは見られない、出し平ダムの排砂は極めて特異なケースとして、宇奈月ダムではこのような状況にはならない。こうなんですね。さらに、「河川水生生物への影響」、結論、魚類の生存についてはほとんど支障がないものと考えられる。こういう結論を出すのは相当なものだと私は思います。  さらに言いますと、「海域水生生物への影響」として、結論、濁水に対して本来忌避行動をとり、濁りの少ないところに退避する、よって、魚類の生存についてはほとんど支障がないものと思われる。これもすごい結論を出すね。この委員会は何なんだろうなということを私なんか本当に思いますね、率直に。「農作物への影響」、水稲の生育に影響は見られなかったという結論が得られている。「治水面への影響」、局所的な著しい堆積等の現象は見られなかった。「社会・経済への影響」等々、こう続くわけですよ。私、これは相当ひど過ぎるんじゃないかなということを痛感します。  それで、最終的にはどうするのか、どこへ結論が行くのかといえば、結局、堆砂対策については、排砂ゲートを用いて排砂する方策により、できるだけ自然の土砂流下に近い形で排砂を実施することが妥当と、さっき言われました、そういうふうになっております。  そして、九八年の二月には、出し平ダム、宇奈月ダムの円滑な排砂及び適切な黒部川流域土砂管理等に関し、関係機関との協議、調整を図ることを目的として、黒部川土砂管理協議会を設置しております。そして、出し平ダムと宇奈月ダムの連携排砂実施計画をつくり、それを実施しようとしているのではないでしょうか。
  121. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 建設省が現在施行しておりまして、ことしから運用が予定されております宇奈月ダムは、大変厳しい黒部川の洪水から下流部に広がっている扇状地の方々生活を守るというのが大きな目的でございます。位置としては、関西電力の出し平ダムから下流七キロに位置しておりまして、出し平ダム上流、宇奈月ダムが下流と、二つのダムが直列に設置しております。  そして、宇奈月ダムも同様に排砂専用ゲートを有しまして、洪水調節を終わった後、洪水のピークカットが進んだ後の洪水がまだ終了していない時点で、川がまだ濁水のときに、自然状態と近いという判断のもとに排砂ゲートを開放して、出し平と連携して排砂を実施していきたいというような計画になってございます。  今委員指摘検討委員会、現地での協議会等、この川に関係しますさまざまな利害関係者、関係している方々がこの協議会等で今後とも黒部川の水質について監視し、そして両ダムの操作についてのデータを私ども公表いたしまして、皆様方とそのデータを共有して、よりよい出し平ダムと宇奈月ダムの操作のあり方について、模索はやめずに、これからもずっと続けていきたいというようなことを考えてございます。
  122. 中島武敏

    中島委員 連携排砂は計画するんですね。
  123. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 今のところ、先ほど申しましたように、長年砂をためてしまいますと、砂と一緒に落ち葉がいっぱいたまってしまいます。その落ち葉が年月がたつと腐食しまして有機物になって、下流に大変悪影響を及ぼすという一つの大きな学習を私どもいたしましたので、宇奈月ダムにおきましても、洪水のあるたびに毎年適切な量を下流に放流していきたいと考えております。
  124. 中島武敏

    中島委員 審議会の、結局すべて影響はない、こういうことに大変勢いを得まして、にしきの御旗とこれを考えたんでしょうか、ことしは連携排砂を実施しようとしていると私も聞いております。これはさらに、漁業を初め、環境に非常に大きな影響を与えることはもう明白ではないかと私は思います。  そこで、具体的に、漁業、特に海域漁業への影響について質問したいと思うんですが、資料をお配りいただきましたね。  それでは、ちょっとこの資料について説明をさせていただきたいんですが、(1)、こういうふうになっている、一番上に乗っかっているものなんですけれども、これは排砂量です。これは、一九八五年に出し平ダムがつくられまして、そして六年後ですか、一九九一年十二月に、さっき申し上げましたような、初めてこのような排砂が行われて、四十万トン余の排砂があったということを示しております。それから三年後に、一九九四年二月に、やはりほんの少量ですけれども排砂をやっています。それで、一九九五年の十月に百七十万トン余を排砂した。ぐっと黒く高く伸びているのがそうなんですね。それ以後、毎年排砂をしまして、昨年九九年九月、七十万トンを排砂しているわけですよ。  その次に参ります。その次は(3)の方なんですけれども、これは横山漁協の刺し網漁業水揚げ金額なんです。これは、A、B、C、Dという四人の方の水揚げの動きをグラフにしたものです。一九九二年、Aさんは千五十万円の水揚げです。それが、九九年には四百万円を切るという事態になっているんですね。だから、もう六〇%以上が減ってしまって、四〇%を切るというところまで落ち込んでいます。それからBさんです。この方は、千百万円、それが六百五十万円に、ちょうど五〇%に減ってしまっておる。それからCさんは、四百万、それが百万に、二五%になってしまっているということですね。それからDさん、これは九百万を超えておったんですけれども、六百五十万、この方は一番減り方は少ないと思うんですけれども、七〇%ぐらいになったということでしょうか。  私は、さっきから話を聞いていて、局長の答弁を聞いておって思うのですけれども、一番最初はどっと出たからすごかったのだ、こういうふうに言われるのですけれども、そうじゃないのだね。ここに具体的にあらわれておりますことというのは、これは漁協の刺し網なんですけれども、漁協のデータですから、各個人個人の方のデータですので、間違いのないものであります。こんなにやはり減っていってしまう。毎年毎年排砂する、毎年毎年どんどんやはり減っていくということになるわけですね。それで宇奈月が加わるということになったら、連携排砂であれ何であれ、さらにもっとひどくなってくるということはだれしもわかることじゃないかと思います。  その次に、(2)という資料佐藤さんという方のこれはヒラメ刺し網漁なんですけれども、これを見ていただきますと、年が一番左側にありまして、それから漁獲枚数、漁獲金額、その他こういうふうに載っております。一九九七年からはがっくりおっこちているということがこれでわかるかと思います。  それから、その次のものは魚津漁業協同組合の資料、たしか二千枚と聞きましたが、約二千枚の仕切り伝票を全部分析をして、今申し上げたようなものをつくっているわけなんです。大変な作業だったと思いますけれども、これぐらい漁業被害というのは大きいのですね。  さらに続けますと、これが出し平ダムの排砂によるものでないということはもう絶対言えないと思うのです。その影響だということは非常にはっきりしているのじゃないか。それでも漁業に対して大した影響を与えない、そんなことを言い張ることができるかどうか、私はそれはなかなか困難じゃないかなというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  125. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 私ども、現在手元に詳しい資料をまだ取り寄せておりませんので、ここでは定性的なお話でしかありませんが、私どものこの黒部川におきます洪水から守るためのダムがすぐ砂で埋まってはいけないということで、最新式の排砂装置を設けて、未来永遠にこのダムが効用を地域のために発揮してもらいたいということで設置した施設でございます。その間、出し平ダムの影響なのか、漁獲量の減少が、関西電力が既に運用しているダムの影響なのか、それとも今後、富山湾全体で漁獲量がどのように変化していくのかというような長いトレンドを私どもこれから注意深く見守り、そして水産部局がそういう調査をする場合には、河川管理者としてできる情報提供、ダムからのさまざまなデータ、そして河川におけるさまざまな水質等のデータはすべて地域方々と共有して、これからも黒部川の管理に当たっていきたいと考えております。
  126. 中島武敏

    中島委員 富山湾全体の漁獲高が減っているのだというのですけれども、これは富山の農林水産統計年報です。富山県月別の属地漁獲量というものなんですけれども、これによりますと、平成三年、九一年を例にとりますと、二万四千五百六十五トンなんですね。ところが、話を手っ取り早くするために九七年、平成九年までのデータしか載っておりませんけれども、二万二千八十五トン、こういうデータがあるのですね。つまり、ほとんど減ってないのですよ。一〇%ぐらいは確かに減っていますでしょうか。しかし、先ほど私がお示ししたようなものとは大いに違います。  ですから、後々こういうデータを共有していきたいとおっしゃるのは、それは結構です。だけれども、排砂をするとこういう被害が起きてくるのだということをちゃんとよく認識してもらわないと、これは困るのです。後で大臣にもいろいろ伺いたいと思っております。  ちょっと時間もきつくなってきたのですけれども、実はきょうは、委員長、ここに、漁協の皆さんがどれだけひどいものかということで採取した水があります。これはちょっとまだ見えるのですよ。ところが、これはもう真っ黒ですよ。これは一月の八日、横山沖網つき汚泥です。網についた汚泥です。時間があったらにおいをかいでもらおうと思ったのです。もうすごいですよ。それから、横山沖三十メートル海底の汚泥です。それから、これは一ミリますで振るい分けて残った汚泥、これは赤川沖の水深百二十メートル、これでもこうですよ、黒くなっちゃうのですよ。これは富山県に一番近いところの市振海岸といって、新潟県の一番こっちへ近いところ。これは百二十メートルでしたか、こんなふうに何ぼやったって色は変わりません。  いいですか、こういう実態になっているわけでして、もうワカメも何もとれなくなっちゃっているんだって。もうひどいものですよ。建設省は漁業者の皆さんに対して排砂問題について説明した、こういう話を聞いておりますけれども、とりわけ今非常に深刻な被害を受けている横山漁協など当事者の地元の各漁協の合意を取りつけない状態では、私は、排砂を行うべきでない。もうこんなひどい状況で、それでがたがたと漁獲量が減ってきているのですから。これでもまだいろいろな理屈をつけてやるというのは、私は理不尽というのはこれ以上にすぐるものはないと思いますよ。  報道によりますと、関西電力から富山県漁連に総額二十九億八千万円の漁業補償が行われたとされております。そのうち一部は黒部市以東の漁業者に配分されたことが明らかになりました。これらの事実を知らされていなかった入善町の刺し網部会などでは、この程度じゃない、もう時間がないから省略していきますけれども、この程度じゃない、物すごい被害を受けている。大問題になっているのですね。建設省はこの問題について知っておられるかどうか、それから通産省は知っておられるかどうか、これを聞きたい。  それから、続けて言います。ことし連携排砂するというわけなのですけれども、そうした場合に漁業被害が出ることは私は間違いないと思うのですけれども、出た場合に今度は建設省の責任が非常にはっきり問われるというふうに思うのです。それは、関係漁業者に補償額も知らされない事態、これは異常なことですね。補償交渉、一体何をやったのかということを全容を公表させて、被害を受けた漁業者が納得できるように関西電力を指導すべきじゃないかというふうに思うわけですね。  以上、ひとつまず大臣の方からお答えいただきましょう。
  127. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 今委員指摘の、建設省は知っていたのか、海域の漁獲量が減っているのを知っているのかということでございますが、私ども、県の水産部局が持っているデータは入手しておりますが、個別の漁組の方々のデータは、きょうの段階では十分把握しているわけではございません。これから関係機関の協力を得て、私どもはさまざまなデータは入手していきたいと考えております。  今後、関電のダム以外にも私どもの直轄ダムがございますので、この操作には本当に留意して、最新の方法でやっていきたいと考えております。
  128. 中島武敏

    中島委員 データをお持ちではないというのですけれども、通産の方もそういうデータは持っていないだろうと思うのですが、私、大事だと思いますのは、関電と県漁連の間だけでやっていて、民民の関係なんだからさわることはできないみたいなことを言っておってはだめだということを私は言いたいのです。  それから、そういう点では、県漁連と、それから下の方の幾つもの漁連がありますね。その漁連の人たちは納得していないんですよ。だから、そういうすべての漁連の人たちが納得をする、幾つもの漁連があるわけですから、その漁連が納得できる、そういうふうでなかったら、大臣、だめでしょう。トップのところだけでごちゃごちゃやっておっても、下はこんな被害を、先ほど私が御紹介したような事態になるのですから。だから、そこまでやはりちゃんと建設省としても責任を持つ。河川管理者なんですから。  それから、出し平ダムについて、それは確かに、関西電力に専用使用権を与えているという限りにおいては、その責任をやはり負っているということをしっかり考えていただきたいのです。それが一つです。  それから、もう一度申し上げますけれども、こういう状況のもとで……
  129. 大口善徳

    大口委員長 中島君に申し上げます。  時間が終了しております。
  130. 中島武敏

    中島委員 はい。排砂を進めるべきではない。なかなか見識のある大臣なんだから、この辺はすぱっとそういう結論を出していただきたいと思います。
  131. 中山正暉

    中山国務大臣 今、先生からそういう目で見る資料は拝見をいたしましたが、私も今初めて聞いたことでございますので、事実関係をよく調査して、またの機会に詳細、これからの方針、それから今までやってまいりましたこと、関西電力との関係、そういうものをいろいろ精査してみたいと思います。
  132. 中島武敏

    中島委員 重ねて申し上げますが、連携排砂なんというのはどうぞ精査をした上で、このようなことのないように私は強く要求して、この質問を終わります。
  133. 大口善徳

    大口委員長 この際、休憩いたします。     午後二時四十二分休憩      ————◇—————     午後三時五十二分開議
  134. 大口善徳

    大口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中西績介君。
  135. 中西績介

    ○中西(績)委員 河川法第一条「目的」についてお聞きしたいと思います。  一九六四年、現行法が制定されて以来、一九七二年、第一回の改正がされまして、今回で六回にわたるわけでありますけれども、この第一条に、一九九七年、平成九年に目的を拡充するため「河川環境の整備と保全」が追加されましたけれども、なぜこのようなものが追加されてきたのか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  136. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 お答えいたします。  河川の持つ多様な自然環境や水辺空間としての機能に着目して、良好な河川環境の整備と保全を求める国民のニーズが近年高まってまいってきたところでございます。  一方、今委員の御指摘のように、前の河川法では、治水利水を主眼にして昭和三十九年に制定された河川法でございます。この河川法の中には、河川環境を明確に位置づけたものとはなっていなかったわけでございます。平成九年の改正におきましては、河川法第一条の「目的」の中で明記し、河川における良好な自然環境の保全や多自然型川づくり等、河川環境の整備と保全を積極的に推進していくこととしたわけでございます。
  137. 中西績介

    ○中西(績)委員 そういう経過があったわけでございますけれども、その中に、地域の意向を反映するための手続を整備したし、長期計画に学識経験者、地域住民の意思を反映することが明記されたと思いますけれども、この地域住民の意向というのはどういうものを指しておるのか、これについてお答えください。
  138. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 平成九年の河川法改正によりまして、河川整備基本方針と河川整備計画の二段階の計画制度が創設されました。  河川整備基本方針は、河川管理者が責任を持って策定することとされた一方、河川整備計画の策定に当たっては、河川管理者は、必要があると認めた場合には、公聴会等の開催によりまして、関係住民意見を反映させるための必要な措置を講じなければならないとされたところでございます。  これは、河川整備計画では具体の河川工事等の内容を定めることとしており、また、河川における環境の保全は、我が国のように南北に長い日本列島にある川は、地形、気象のみならず、生態系が一つ一つの川によって姿が変わってまいります。そのために画一的な環境整備、環境保全はなじまないということから、地域の特性に応じてきめ細かい整備を行う必要がある。そのためには、当該河川と密接な関係を有する流域住民方々の多様な意見をお聞きして、その計画に反映させようとしたものでございます。
  139. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、一番最後の方でお答えいただきましたように、その地域地域によって、それぞれの環境なりあるいは地勢なり異なるわけでありますから、それぞれ地域住民のそうした御意見を十分反映するということが必要になってきた。こういう事柄からして、このように地域住民の意向が非常に大事になってきたということが言われるわけであります。  そこで、建設省は、住民に対する情報公開と説明責任を負っておると思うわけでありますけれども住民の要求にいかに対応してきたか、この点について具体的にお答えください。
  140. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 住民に対する情報公開、説明責任はすべての公共事業にとって必要でありますが、特にこの河川行政におきましては、すべての公共事業に先立ちまして、ダム事業事業の評価手法として、平成七年度にダム事業審議委員会を試行しました。そこで第三者の意見を聴取し、そして、このダム事業審議委員会では、十三事業審議委員会を設置しまして、さまざまな意見を聴取し、意見を聞いたところでございます。このうち、一事業については休止、四事業については計画の見直し等、国民にわかりやすい事業の進め方に努力してきたところでございます。  さらに、平成十年度からは、所管事業の評価について、事業の節目となる段階ごとに評価を実施するシステムを導入いたしました。具体的には、新規事業採択においては、緊急性、必要性等を議論し、検討を行い、その結果はすべての事業で公表してございます。そして、事業実施中の事業につきましては、各地方建設局ごとに学識経験者から成る事業評価監視委員会を設置しまして、そこで今後の対応方針等を議論し、決定しているところでございます。  さらに、完成後の事業におきましては、今述べた事業評価監視委員会におきまして、現在、事後評価の試行、いわゆるトライアルを実施しておりまして、この試行結果を踏まえまして、平成十二年度より本格的に事業の事後評価を実施していく予定となってございます。
  141. 中西績介

    ○中西(績)委員 このような経過を経て、今説明のあったような体制にだんだん入ってきたわけでありますけれども、そこで、この前から問題になっております、一月の吉野川可動堰住民投票との関係についてお聞かせをいただきたいと思います。  それは、今言われましたように、住民の要求にちゃんとこたえるような情報公開あるいは説明が果たしてなされたかどうかということが大変問題になってきておると思います。  我々が入手した程度でございますから十分ではありませんけれども、七年前にこの計画を知った、そして初めてそこで住民皆さん説明を求められたけれども、一枚の紙片を渡すだけで、全くわからない一点張りであったということが新聞紙上でも報道されておるわけであります。あるいは、この審議会がございましたけれども、これは各河川あるいはダム等々の今まであったものをずっと時間の許す限り検討をしてまいりましたけれども審議会は、建設省から示されたものを追認するような形でほとんどが開かれておったのではないかと理解するような状況でしかなかったと私は思います。  したがって、少なくともこの従前の手だてがどうであったのか、そしてその後、積極的に民意を知る手段としての住民投票であるわけでありますから、こうした問題が出た後には、またどのようにお考えになっておられるのか。このような可動堰問題が発生する前とその後における状況を大臣の方からお答えいただければと思っています。
  142. 中山正暉

    中山国務大臣 私も十月五日に就任いたしますまでは、一般の情報として吉野川の話を、私自身そういう意味で会得しておりましたわけでございますけれども建設省に参りまして、従来から流域住民の意向を反映した河川整備を行っているという実績も知りました。  地域住民に対して、第十堰につきましては、事業説明とかそれから意向の把握をずっと連続的にやってきたようでございますし、公開模型実験、大分広い場所を借りまして、実際の吉野川の模型をつくって、そこで実験をしておりましたり、平成十一年度では地区別の説明会を三十四回やっております。それから、対話集会を二十一回実施しておりますようでございまして、一生懸命に説明するのと一生懸命に反対する人たちの行き違いが雰囲気として盛り上がってきたような、いろいろな誤解が、いわゆる反対をしていらっしゃる方の情報と推進をしようとする方々の情報とがちょっとそごを来してしまったような印象を私は持っております。  住民方々の理解を得ながら進めるという方針は変わらないのでありまして、私も、ですからその後、まだこの法律改正を御提案申し上げます前にも、住民方々大臣室で、異例のことではございましたが、かなり大勢の人に入ってもらってお話をしたことも、私は当然皆さんの御意向というものを、たとえ反対派の人であっても拝聴する機会を貴重と思っておりましたから、そういうこともいたしました。  はんらん域の一部である徳島市の住民投票の結果も踏まえまして、今後そういう問題でより一層流域住民との対話を積み重ねていきたいと考えておる。そんな趣旨での今般の、現在、対話の必要性を強く強調し、また認識し、対話への参加をさまざまな方々に呼びかけていく、そういうむしろ実態に合わせた法律改正というふうに私は認識をしております。
  143. 中西績介

    ○中西(績)委員 今まで原発問題にいたしましても、先ほど申し上げたダムあるいは河川の問題等にいたしましても、絶えず審議委員皆さん出席されるとか、いろいろな形で対話が行われてきたということを聞いておりますけれども、それはやはりただ単に主張だけがそのまま残されておるだけで、全くそこには十分な意思疎通が図られたということはほとんどない。だものですから、この直接的な住民投票による措置をとるというようなことが起こってきたのではないか。  吉野川の場合も、聞いてみますと、運動の出発点はやはり七年前の建設省のとった措置だとか、あるいはこの審議会の皆さんのそういう中身を見るにつけ、多くの皆さんが具体的には反発をするという格好になって起こってきたと言われております。  ですから、やはりこうした点を十分認識する中で、十分住民の意思がどのようにすれば把握できるのか、こうした問題等について、もしこれから後、先ほどお答えいただきましたけれども、対話を重ねることによっていろいろ努力をしていきたいということが言われておりますけれども、対話以外にそのほか何か手だてをお考えになっておられるかどうか、この意思を反映するためにどういうように図られていこうとなさっておるのか、こうした点についてお答えください。
  144. 中山正暉

    中山国務大臣 先ほどもどなたかに御答弁申し上げましたが、大阪と兵庫県の境を流れておりますいわゆる猪名川なんかは、二十六年かかって七市の方々との話し合いというのを重ねてきて、やっと御理解を得て、いわゆるゴム式可動堰をあと二年で立ち上げる。先月の二十六日にその起工式に行ってまいりました。その地域、その地域で実態が違うと思います。  第十堰の吉野川の建設事業審議委員会における公聴会とか、それから審議会後の対話集会等において第十堰の計画の説明及び住民の意向把握を行ってはまいっております。  しかし、徳島市の住民投票結果を踏まえながら、あの結果を見て、現第十堰の治水上、それから皆さんの意識の中にいろいろ問題があるということが、まだいろいろその中に定着しておりますので、このまま放置しておくということはできないということでございますので、十分その理解をしていただくための対応を、いろいろな立場でこれから流域住民方々と幅広く対話を重ねていって、どんなふうにしたらいいのかということを、その方式についてもこれからいろいろと検討してまいらなければならないのではないか、私はかように思っております。
  145. 中西績介

    ○中西(績)委員 したがって、この吉野川問題も含めて、先般お会いをした際に、ゼロからの出発だとかあるいは凍結だとかいうお言葉もお聞きしましたので、やはり慎重にそうした点を尽くされて、むしろ私が今まで経験したのでは、九州の地建の局長が、今までは絶対に住民皆さんとお会いしないということで、絶えず入り口でいがみ合ったという状況があったのですけれども、会ってみた結果は、逆に今度はお互いにその内容を知ることができた、そのことによってむしろいい条件をそこにはつくり出すことができたということを言っているわけですね。  ですから、大臣、やはりそのような形で、いろいろ直接的にでも積極的にお会いしたりするような状況があるわけでありますから、そうしたお気持ちを絶えず持っていただいて、多くの皆さんの御納得いただける状況をつくり出していくことでこれからのあり方も大きく変わってくるのではないか、こういうような感じがいたしますので、その点ひとつ十分御留意いただきたいと思います。  それから、時間がだんだんなくなってくるものですから、河川法の一部を改正する法律案の提出された背景、理由、本改正案について、この間に至る経過、簡単に触れていただきたいと思います。
  146. 加藤卓二

    加藤政務次官 今回の河川法改正の背景についてお尋ねがございました。  平成九年に河川法改正され、法律の目的として、河川環境の整備と保全が位置づけられたとともに、新しい計画制度が導入され、河川整備計画の策定に当たり、地方公共団体の長、地域住民意見を反映する手続が整備されたところであります。これにより、地域意見を生かした河川整備を推進する制度が始動したところであります。  このような河川環境や地域特性を踏まえた河川整備に対する要請の高まりを踏まえると、まちづくりの主体である、住民に身近な自治体である市町村が、河川の整備と管理に対して積極的に参加することが求められているところであります。  こうした状況のもと、建設大臣諮問機関であるところの河川審議会において、昨年十二月から河川管理への市町村参画拡充方策について審議を行い、本年一月には、市町村工事制度拡充政令指定都市への河川管理権限の委譲を内容とする答申をいただいたところであり、これを踏まえて今回の法律の改正を行うこととしたものでございます。
  147. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、現行河川法は、明治時代の旧河川法の区間主義管理制度を改正して、河川は水系別重要度によりまして区分できる水系主義河川管理制度を採用してきたわけであります。  今回の改正は、二級河川は、知事と政令指定都市市長の合意区間について、知事が持っている、河川整備基本方針を含む内容でございますけれども、一切の河川管理権限を委譲することになっておりますが、合意される場合の区間をどのようなところを想定しておられるのか、これが一つです。  さらに、河川整備基本方針を含め、一切の河川管理権限が委譲されることになると、知事との間では、水系一貫の河川管理支障はないのかどうか、この点についてお答えください。
  148. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 二点お答えいたします。  第一点目の、知事と政令指定都市の長との関係でございますが、河川のどういうところが、基準を指定されるかということでございますが、河川の重要度だとか河川の整備状況だとか、政令指定都市が管理する必要性の有無等、大小等ございまして、一律に客観的な基準を私どもが決めるということは予定してございません。  いずれにしましても、区間の指定は河川ごとの運用によってゆだねられまして、流域が指定都市の区域内で完結する河川だとか、改修がほぼ完成し管理のみを指定都市にゆだねるというような河川につきまして、知事と市長が完全に合意して区間の指定をするということとなるものと考えております。  第二点目の水系一貫につきましても、これも従来の河川法におきましても、二の、二つの都道府県にまたがるような河川におきましては、二級河川の管理につきましては、両者が、両知事が協議して管理をしていくというような法体系になってございまして、今回、新しく政令指定都市河川管理者が登場したとしても、それは従来と同じように、二の、二つの河川管理者が協議して河川管理を実施していくという法体系のもとに組み込まれるものと理解してございます。
  149. 中西績介

    ○中西(績)委員 次に、このような権限委譲が行われた場合、先ほどもありましたけれども、もう一度お答えいただきたいと思いますが、政令指定都市河川管理費用の財政措置はどうなっていくのか、この点について。
  150. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 政令指定都市が工事をやる部分につきましては、都道府県に対する場合と同様、私ども国庫補助を実施いたします。さらに、起債措置と元利償還金の地方交付税措置が都道府県と同様に認められるよう、自治省と現在協議をしております。  また、日常的な維持管理を含めた河川管理費用につきましても、地方交付税の算定に当たりまして、基本的に都道府県と同様に取り扱う方向で自治省と協議しているところでございます。
  151. 中西績介

    ○中西(績)委員 改正案におきましては、市町村工事制度の適用対象河川が拡大されることになっているわけでありますけれども、その場合、市町村は一定の河川工事あるいは維持に限られておりますけれども市町村が行った工事に関係した施設などの管理についてどうなっていくのか、この点が一つ。  それから、本改正案では、一級河川の直轄管理区間における河川の工事、維持をするのは市町村となって、都道府県は一級河川の直轄管理区間の河川の工事、維持はできないというけれども、その理由は那辺にあるのかをお聞きいたしたいと思います。  最後に、当該市町村が積極的に河川工事をするためには、費用負担の支援をどのようにしてやるのか。  以上についてお答えください。
  152. 竹村公太郎

    竹村政府参考人 三点についてお答えいたします。  市町村が行う河川工事の結果設置される施設は、河川管理施設となります。そのために、工事終了後は、一級河川の直轄区間の本来の河川管理者である建設大臣が当該施設を維持管理していくこととなります。  二点目の、都道府県ができない理由でございますが、この今回の措置は、市町村は、直轄区間においてまちづくりと連携した河川整備、河川環境の保全等の必要性については、都道府県管理区間内の一級河川及び二級河川と変わりはないわけでございます。  また、まちづくりや地域づくりの主体であるとともに、住民に最も身近な自治体である市町村河川管理に対してより積極的に参加することが求められることからこのような法改正になったわけでございますので、直轄区間において河川環境整備事業やまちづくりと関連して施行する必要がある一定の改修工事に限定して、市町村がその発意に基づいて施行できるような措置をしたわけでございます。  最後市町村の財政支援でございますが、一級河川の直轄区間におきましては、市町村河川工事を行う場合は、国が三分の一、県が三分の一、市町村が三分の一となります。この際、市町村河川工事の負担分につきまして、都府県が行います同様な起債措置と元利償還金の地方交付税措置が認められるよう、自治省と協議している段階でございます。
  153. 中西績介

    ○中西(績)委員 地方自治体の財政状況は極めて厳しゅうございますので、そこいらについては、この後各持ち場、持ち場における体制が揺るがないように、ちゃんと措置をしていただくようにお願いを申し上げて、終わります。
  154. 大口善徳

    大口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  155. 大口善徳

    大口委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  河川法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  156. 大口善徳

    大口委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  157. 大口善徳

    大口委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、原田義昭君外五名より、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を聴取いたします。田中慶秋君。
  158. 田中慶秋

    ○田中(慶)委員 ただいま議題となりました河川法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、その趣旨を説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。     河川法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。  一 政令指定都市への河川管理権限の委譲に当たっては、国、関係都道府県及び関係政令指定都市は相互に十分連携をとるとともに、過大な財政負担にならないよう努めること。  二 市町村工事制度の運用に当たっては、地域の創意工夫が十分反映されるよう努めるとともに、積極的な制度の活用を図ること。  三 河川整備を行うに当たっては、本年一月の河川審議会答申(川における伝統技術の活用はいかにあるべきか)を踏まえ、伝統技術の知恵を現代に合わせて活用し、環境や歴史的風土との調和に努めること。  四 都市河川が都市における貴重な水辺空間であることに鑑み、その整備に当たっては、親水性に配慮した魅力ある河川環境が創出されるよう努めること。 以上であります。  委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
  159. 大口善徳

    大口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  160. 大口善徳

    大口委員長 起立総員。よって、原田義昭君外五名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、中山建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。建設大臣中山正暉君。
  161. 中山正暉

    中山国務大臣 建設大臣として一言ごあいさつを申し上げます。  河川法の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことを深く感謝申し上げます。  今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました政令指定都市への河川管理権限の委譲に当たっての関係都道府県及び関係政令指定都市との十分な連携、地域の創意工夫を反映した市町村工事制度の運用等の課題につきましては、その趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。  ここに、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。  ありがとうございました。     —————————————
  162. 大口善徳

    大口委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 大口善徳

    大口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  164. 大口善徳

    大口委員長 次に、内閣提出、大深度地下公共的使用に関する特別措置法案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。国土庁長官中山正暉君。     —————————————  大深度地下公共的使用に関する特別措置法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  165. 中山正暉

    中山国務大臣 ただいま議題となりました大深度地下公共的使用に関する特別措置法案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  土地利用の高度化、複雑化が進んでいる大都市地域においては公共の利益となる事業を実施する場合には、地権者との権利調整に要する時間が長期化しており、効率的な事業の実施が難しいことから、主に道路等の公共用地の地下を利用して行われておりますが、合理的なルートの設定が困難となる場合があり、また、道路の地下を中心に、浅い地下の利用はふくそうしてきております。  このため、今後、これらの事業を実施するに当たって、地上及び浅深度地下の利用に加えて、土地所有者等による通常の利用の行われない地下、すなわち大深度地下を、国民の権利保護に留意しつつ、円滑に利用するための制度を導入する必要性が高まっております。  このような状況を踏まえ、平成七年八月に施行された臨時大深度地下利用調査会設置法に基づき、臨時大深度地下利用調査会が設置され、三年にわたり技術、安全、環境及び法制の両面から慎重な検討が行われた結果、平成十年五月、内閣総理大臣に答申され、直ちに国会に対して御報告しているところであります。  この法律案は、この答申を踏まえ、公共の利益となる事業の円滑な遂行と大深度地下の適正かつ合理的な利用を図るため、大深度地下公共的使用に関し、特別の措置を講ずるものであります。  以上が、この法律案を提出する理由であります。 次に、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、この法律において、大深度地下とは、建築物の地下室の用に通常供されることがない地下の深さとして政令で定める深さ、または、通常の建築物の基礎ぐいを支持することができる地盤、いわゆる支持層の上面から政令で定める距離を加えた深さのうち、いずれか深い方の地下をいうことといたしております。  第二に、この法律による特別の措置は、人口の集中度、土地利用の状況等を勘案し政令で定める地域において、道路、河川、鉄道、通信、上下水道等一定の公共の利益となる事業について講じられることといたしております。  第三に、国は、大深度地下における事業の円滑な遂行に関する基本的な事項や、安全の確保、環境の保全その他大深度地下の使用に際し配慮すべき事項等を定めた大深度地下公共的使用に関する基本方針を定めることといたしております。  第四に、法律の対象となる地域ごとに、必要な協議を行うため、関係行政機関等で組織する大深度地下使用協議会を設置することといたしております。  第五に、国土交通大臣または都道府県知事は、使用認可申請書の公告及び縦覧、利害関係人の意見書の提出、関係行政機関の意見書の提出等所要の手続を経て、使用の認可を行うことができることといたしております。  第六に、使用の認可を受けた事業者は、原則として補償することなく大深度地下を使用することができることといたしておりますが、例外的に補償すべき損失がある場合には、請求を待ってこれを補償することといたしております。なお、事業区域に井戸などの既存物件がある場合は、事前に補償した後、その物件の移転を求めることができることといたしております。  その他、これらに関連をいたしまして、所要の規定の整備を行うことといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いを申し上げます。  以上でございます。
  166. 大口善徳

    大口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。      ————◇—————
  167. 大口善徳

    大口委員長 この際、御報告を申し上げます。  去る平成十一年十二月十五日、調査局長に命じました公共事業個別事業内容実施状況等に関する予備的調査につきましては、去る三月十六日、報告書が提出されましたので、御報告いたします。  なお、報告書につきましては、同日、私から議長に対し、その写しを提出いたしました。  次回は、来る二十九日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十七分散会