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2000-04-20 第147回国会 衆議院 決算行政監視委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成十二年四月三日(月曜日)委員会において、設置することに決した。 四月十九日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任された。       赤城 徳彦君    古賀 正浩君       山本 幸三君    吉川 貴盛君       綿貫 民輔君    鹿野 道彦君       神田  厚君    青山 二三君       中林よし子君    米津 等史君 四月十九日  赤城徳彦君が委員長指名で、主査に選任された。 平成十二年四月二十日(木曜日)     午前九時開議  出席分科員    主査 赤城 徳彦君       古賀 正浩君    山本 幸三君       吉川 貴盛君    綿貫 民輔君       石毛えい子君    鹿野 道彦君       藤田 幸久君    青山 二三君       中林よし子君    米津 等史君    兼務 栗原 博久君 兼務 竹本 直一君    兼務 林  義郎君 兼務 桧田  仁君    兼務 福島  豊君 兼務 藤木 洋子君    兼務 松浪健四郎君 兼務 保坂 展人君    兼務 栗本慎一郎君     …………………………………    外務大臣         河野 洋平君    文部大臣    国務大臣    (科学技術庁長官)    中曽根弘文君    厚生大臣         丹羽 雄哉君    外務政務次官       江崎 鐵磨君    厚生政務次官       大野由利子君    労働政務次官       長勢 甚遠君    会計検査院事務総長官房審    議官           増田 峯明君    会計検査院事務総局第一局    長            増田 裕夫君    会計検査院事務総局第二局    長            関本 匡邦君    会計検査院事務総局第四局    長            渡辺 孝至君    政府参考人    (外務大臣官房文化交流部    長)           林   梓君    政府参考人    (外務省経済協力局長)  飯村  豊君    政府参考人    (外務省条約局長)    谷内正太郎君    政府参考人    (大蔵省国際局開発政策課    長)           細見  真君    政府参考人    (文部省高等教育局長)  佐々木正峰君    政府参考人    (厚生大臣官房総務審議官    )            宮島  彰君    政府参考人    (厚生省健康政策局長)  伊藤 雅治君    政府参考人    (厚生省保健医療局長)  篠崎 英夫君    政府参考人    (厚生省保健医療局国立病    院部長)         河村 博江君    政府参考人    (厚生省医薬安全局長)  丸田 和夫君    政府参考人    (厚生省社会援護局長) 炭谷  茂君    政府参考人    (厚生省老人保健福祉局長    )            大塚 義治君    政府参考人    (厚生省児童家庭局長)  真野  章君    政府参考人    (厚生省保険局長)    近藤純五郎君    政府参考人    (社会保険庁運営部長)  小島比登志君    政府参考人    (通商産業省通商政策局経    済協力部長)       寺田 範雄君    政府参考人    (国民生活金融公庫副総裁    )            坂本 龍彦君    決算行政監視委員会専門員 中谷 俊明君     ————————————— 分科員の異動 四月二十日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     枝野 幸男君   神田  厚君     仙谷 由人君   青山 二三君     若松 謙維君   中林よし子君     児玉 健次君   米津 等史君     達増 拓也君 同日  辞任         補欠選任   枝野 幸男君     渡辺  周君   仙谷 由人君     石毛えい子君   若松 謙維君     青山 二三君   児玉 健次君     木島日出夫君   達増 拓也君     一川 保夫君 同日  辞任         補欠選任   石毛えい子君     藤田 幸久君   渡辺  周君     平野 博文君   木島日出夫君     児玉 健次君   一川 保夫君     米津 等史君 同日  辞任         補欠選任   平野 博文君     鹿野 道彦君   藤田 幸久君     神田  厚君   児玉 健次君     中林よし子君 同日  第一分科員林義郎君、松浪健四郎君、栗本慎一郎君、第三分科員桧田仁君福島豊君、藤木洋子君、第四分科員栗原博久君、竹本直一君及び保坂展人君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  平成年度一般会計歳入歳出決算  平成年度特別会計歳入歳出決算  平成年度国税収納金整理資金受払計算書  平成年度政府関係機関決算書  平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  平成年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府科学技術庁)、外務省文部省厚生省所管環境衛生金融公庫及び労働省所管〕     午前九時開議      ————◇—————
  2. 赤城徳彦

    赤城主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。  本分科会は、総理府所管中防衛庁・防衛施設庁、科学技術庁外務省所管文部省所管厚生省所管環境衛生金融公庫労働省所管についての審査を行うことになっております。  なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明会計検査院検査概要説明及び会計検査院指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。  平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件中、本日は、文部省所管総理府所管科学技術庁厚生省所管環境衛生金融公庫労働省所管外務省所管について審査を行います。  これより文部省所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。中曽根文部大臣
  3. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十八億七千九百八十七万円余に対しまして、収納済み歳入額は三十七億一千三百二万円余であり、差し引き八億三千三百十四万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額五兆八千二百三十五億四千四百九十二万円余、前年度からの繰越額八百七十五億二百九十一万円余を合わせた歳出予算現額五兆九千百十億四千七百八十三万円余に対しまして、支出済み歳出額は五兆八千四百九十八億五千七百二十九万円余であり、その差額は六百十一億九千五十三万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は五百二十八億五千六百四十一万円余で、不用額は八十三億三千四百十二万円余であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済み歳入額は二兆八千七百九十二億二千百四十一万円余、支出済み歳出額は二兆六千六百六十六億七千六百七十八万円余であり、差し引き二千百二十五億四千四百六十二万円余の剰余を生じました。  この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読みかえられた同法第十二条第一項の規定により、六十七億三千六百八十七万円余を積立金として積み立て、残額二千二十六億一千九百三十一万円余を翌年度歳入に繰り入れることとし、特別施設整備事業に係るものについては、同法附則第十四項の規定により、翌年度歳入に繰り入れる三十三億八千九百六十九万円余を控除した不足額二億百二十六万円余を特別施設整備資金から補足することとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆六千七百六十億五千四百八十二万円余に対しまして、収納済み歳入額は二兆八千七百九十二億二千百四十一万円余であり、差し引き二千三十一億六千六百五十八万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆六千七百六十億五千四百八十二万円余、前年度からの繰越額一千四百八十六億一千六百六十万円余を合わせた歳出予算現額二兆八千二百四十六億七千百四十二万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆六千六百六十六億七千六百七十八万円余であり、その差額は一千五百七十九億九千四百六十三万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は七百八十九億一千二百十六万円余で、不用額は七百九十億八千二百四十七万円余であります。  以上、平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。  続きまして、平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額三十億一千六百六十二万円余に対しまして、収納済み歳入額は三十六億二千四百三十六万円余であり、差し引き六億七百七十三万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額五兆七千九百五十五億六千四百六十三万円余、前年度からの繰越額五百三十一億一千二百七十五万円余を合わせた歳出予算現額五兆八千四百八十六億七千七百三十八万円余に対しまして、支出済み歳出額は五兆八千二十三億四千九百八十八万円余であり、その差額は四百六十三億二千七百四十九万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は二百八十億四千四百三十九万円余で、不用額は百八十二億八千三百十万円余であります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済み歳入額は二兆七千七百九十六億七千三百二十九万円余、支出済み歳出額は二兆六千二百九十二億八千四百七十八万円余であり、差し引き一千五百三億八千八百五十一万円余の剰余を生じました。  この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読みかえられた同法第十二条第一項の規定により、一千五百六十三億四千九十万円余を翌年度歳入に繰り入れることとし、特別施設整備事業に係るものについては、同法附則第十四項の規定により、翌年度歳入に繰り入れる十二億五千九百四十万円余を控除した不足額七十二億一千百七十九万円余を特別施設整備資金から補足することとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆六千六百四十九億六千五百九十万円余に対しまして、収納済み歳入額は二兆七千七百九十六億七千三百二十九万円余であり、差し引き一千百四十七億七百三十九万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆六千六百四十九億六千五百九十万円余、前年度からの繰越額七百八十九億一千二百十六万円余を合わせた歳出予算現額二兆七千四百三十八億七千八百六万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆六千二百九十二億八千四百七十八万円余であり、その差額は一千百四十五億九千三百二十七万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は四百六十一億八千二百六十一万円余で、不用額は六百八十四億一千六十六万円余であります。  以上、平成年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 赤城徳彦

    赤城主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院渡辺第四局長
  5. 渡辺孝至

    渡辺会計検査院当局者 平成年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三十三件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  まず、不当事項について御説明いたします。  検査報告番号九号から二八号までの二十件は、大学病院における診療報酬請求に当たり、手術使用した特定保険医療材料費用算定していなかったり、麻酔料に関する加算を行っていなかったりなどしたため、診療報酬請求額が不足していたものであります。  検査報告番号二九号から三二号までの四件は、県教育委員会におきまして、架空名目により関係書類を作成するなどして、文部省から委嘱等を受けて実施する教育関係等事業経費として示達された旅費謝金等を各県の出納部局に不正に支出させ、これを別途に経理し、教育関係等事業実施とは直接関係のない用途使用するなどしていて、経理が適正を欠いていたものであります。  検査報告番号三三号から四一号までの九件は、義務教育費国庫負担金等算定において、国庫負担対象にならない教員に係る給与費等を含めたり、教職員定数算定を誤ったりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、少子化等に伴う公立小中学校施設有効活用に関するものであります。  クラスルーム等として使用されていない普通教室学校施設として必ずしも有効に活用されていないと認められるものも見受けられる一方で、老人デイサービスセンター等としてこれを転用するニーズが高まっているのに、市町村においてこのような施設への転用について必ずしも積極的な検討を行っていない状況でありましたので、文部省に対して、学校施設の一層の有効活用を図るよう改善意見を表示いたしたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、キャンパス情報ネットワークにおける交換機整備に関するもので、国立大学等におきまして、マルチメディアに対応した大容量データ通信を実現するキャンパス情報ネットワーク整備に当たり、学部等の具体的な利用予定の把握が十分でなく、また、文部省大学等に計画的な整備を行うための指針を示さないまま、整備を進めさせていたことなどのため、設置された交換機端末装置等が接続しておらず遊休しているなどしておりました。これについて指摘したところ改善処置がとられたものであります。  続きまして、平成年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項五十六件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項一件であります。  まず、不当事項について御説明いたします。  検査報告番号二号から一八号までの十七件は、大学病院における診療報酬請求に当たり、手術使用した特定保険医療材料費用算定していなかったり、検査料算定を誤っていたりなどしたため、診療報酬請求額が過不足となっていたものであります。  検査報告番号一九号から四〇号までの二十二件は、府県教育委員会等におきまして、架空名目により関係書類を作成するなどして、文部省から委嘱等を受けて実施する教育関係等事業経費として示達された謝金旅費等を各府県出納部局に不正に支出させ、これを別途に経理するなどし、教育関係等事業実施とは直接関係のない用途使用するなどしていて、経理が適正を欠いていたものであります。  検査報告番号四一号から五五号までの十五件は、義務教育費国庫負担金等算定において、国庫負担対象にならない教員に係る給与費等を含めたり、教職員定数算定を誤ったりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号五六号は、職員不正行為による損害が生じたもので、国立大学職員が、普通預金払い戻し請求書歳入歳出外現金出納官吏銀行届け出印等を無断で押印し、架空の金額を記入するなどして、預金口座から払い出しを受け委任経理金を領得したものであります。なお、損害額は、全額が補てんされております。  検査報告番号五七号は、国立大学授業料の免除が不当と認められるもので、授業料が半額しか免除できないのに全額免除したり、全く免除できないのに半額または全額免除したりしていたものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、科学研究費補助事業実施に関するものであります。  国の研究助成費であります科学研究費補助金を受け研究を行った者は、研究期間終了後は研究成果社会へ還元させるとともに、科学研究費補助金による研究の評価の充実に資するため研究成果報告書等提出が義務づけられているのに、提出期日までに提出されておらず研究成果社会への還元が十分なされていないものが見受けられましたので、文部省に対して、研究成果報告書等の未提出者に対する適切な措置をとるよう改善処置を要求いたしたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  6. 赤城徳彦

    赤城主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。中曽根文部大臣
  7. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 平成年度及び平成年度予算執行に当たりましては、予算の効率的な使用経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成年度及び平成年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。
  8. 赤城徳彦

    赤城主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 赤城徳彦

    赤城主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  10. 赤城徳彦

    赤城主査 以上をもちまして文部省所管説明は終わりました。  これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、文部省所管については終了いたしました。     —————————————
  11. 赤城徳彦

    赤城主査 これより総理府所管科学技術庁について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。中曽根科学技術庁長官
  12. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 科学技術庁平成年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  平成年度の当初歳出予算額は五千二百九十三億二千九百二十七万円余でありましたが、これに予算補正追加額二百七十四億九千九百七十万円余、予算補正修正減少額百六十三億三千八百四十六万円余、予算移しかえ増加額五千四百九十五万円余、予算移しかえ減少額百四十一億三百十四万円余、前年度からの繰越額百九億五千七百五十八万円余を増減いたしますと、平成年度歳出予算現額は五千三百七十三億九千九百九十万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額五千三百十三億二千四百二十一万円余、翌年度への繰越額五十五億九十八万円余、不用額五億七千四百七十万円余となっております。  次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分歳出決算について申し上げます。  まず、電源立地勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は四百七十七億二千八百三十五万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額三百四十一億一千九十二万円余、翌年度への繰越額三十五億五千三百七十二万円余、不用額百億六千三百七十万円余となっております。  次に、電源多様化勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は一千百九十八億四千三百四十二万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額一千八十二億一千三百九十万円余、翌年度への繰越額七十八億九千四百七十八万円余、不用額三十七億三千四百七十三万円余となっております。  以上、簡単でありますが、平成年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  続きまして、科学技術庁平成年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  平成年度の当初歳出予算額は五千七百十四億一千百九万円余でありましたが、これに予算補正追加額一億百八十三万円余、予算補正修正減少額二百億五千九百七十二万円余、予算移しかえ増加額五千五百十六万円余、予算移しかえ減少額百六十八億二千七百五十二万円余、前年度からの繰越額五十五億九十八万円余を増減いたしますと、平成年度歳出予算現額は五千四百一億八千百八十二万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額五千三百七十五億四千五百三万円余、翌年度への繰越額十六億二千六百五十四万円余、不用額十億一千二十四万円余となっております。  次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分歳出決算について申し上げます。  まず、電源立地勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は四百六十一億三百十万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額三百十六億二千十二万円余、翌年度への繰越額五十一億一千八百三十二万円、不用額九十三億六千四百六十五万円余となっております。  次に、電源多様化勘定につきましては、平成年度歳出予算現額は一千二百四十七億七千百六十九万円余であります。この予算現額に対し、支出済み歳出額一千二十八億六千八百八十四万円余、翌年度への繰越額百三十九億三千八百六十二万円、不用額七十九億六千四百二十二万円余となっております。  以上、簡単でありますが、平成年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  13. 赤城徳彦

  14. 増田峯明

    増田(峯)会計検査院当局者 平成年度科学技術庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  次に、平成年度科学技術庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項一件であります。  これは、電気需給契約における夏季割引制度の導入に関するものであります。  放射線医学総合研究所に設置されております重粒子線がん治療装置等は、運転計画に基づき、毎年夏季定期点検実施するため運転を停止しております。この停止期間における使用電力は、契約電力の三〇%以上低減することが実績等から十分予測できましたのに、このような場合に適用できる夏季休日契約電力会社と締結していなかったので、当局の見解をただしましたところ、放射線医学総合研究所では、十年五月、電力会社との間で夏季休日契約と同様の割引を受けられる夏季操業調整契約を締結するとともに、今後は、主要設備運転計画を的確に把握し、電気料金の節減を図る処置を講じたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  15. 赤城徳彦

    赤城主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。中曽根科学技術庁長官
  16. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 平成年度予算執行に当たりましては、予算の効率的な使用経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。  指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講じたところであり、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。
  17. 赤城徳彦

    赤城主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 赤城徳彦

    赤城主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  19. 赤城徳彦

    赤城主査 以上をもちまして総理府所管科学技術庁説明は終わりました。  これより質疑に入るのでありますが、その申し出がありませんので、総理府所管科学技術庁については終了いたしました。     —————————————
  20. 赤城徳彦

    赤城主査 これより厚生省所管環境衛生金融公庫について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。大野厚生政務次官
  21. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 平成年度及び九年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算概要につきまして御説明申し上げます。  まず、平成年度決算について申し上げます。  一般会計につきましては、歳出予算現額十五兆四千五百五億円余に対して、支出済み歳出額十五兆二千四百四十四億円余、翌年度繰越額千四百八十七億円余、不用額五百七十四億円余で決算をいたしました。  次に、特別会計の決算について申し上げます。  第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額六十兆五千九十一億円余、支出済み歳出額五十三兆八千四百五十九億円余、翌年度繰越額十六億円余であり、差し引き六兆六千六百十五億円余を、この会計の積立金として積み立てるなどにより、決算をいたしました。  第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額千三十九億円余、支出済み歳出額千四億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整した差し引き三十一億円余を、この会計の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。  第三に、国立病院特別会計につきましては、収納済み歳入額一兆千五百四十八億円余、支出済み歳出額一兆四百八十億円余、翌年度繰越額二百四十一億円余であり、差し引き八百二十六億円余を、この会計の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。  第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十一兆九千三百二十一億円余、支出済み歳出額十九兆七千百六十四億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整した差し引き二兆千六百四十五億円余を、この会計の積立金として積み立てるなどにより、決算をいたしました。  以上、平成年度決算について御説明しましたが、次に、平成年度決算について申し上げます。  まず、一般会計につきましては、歳出予算現額十五兆七千二百七十九億円余に対して、支出済み歳出額十五兆五千六十一億円余、翌年度繰越額千二百三十七億円余、不用額九百八十一億円余で決算をいたしました。  次に、特別会計の決算について申し上げます。  第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額四十二兆六千五百二十億円余、支出済み歳出額三十五兆二千六百四十四億円余、翌年度繰越額九千七百五十五万円余であり、差し引き七兆三千八百七十五億円余を、この会計の積立金として積み立てるなどにより、決算をいたしました。  第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額千一億円余、支出済み歳出額九百六十五億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整した差し引き三十二億円余を、この会計の積立金として積み立てるなどにより、決算をいたしました。  第三に、国立病院特別会計につきましては、収納済み歳入額一兆千三百六十五億円余、支出済み歳出額一兆六百三十二億円余、翌年度繰越額百四十九億円余であり、差し引き五百八十二億円余を、この会計の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。  第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十一兆八千九百十七億円余、支出済み歳出額二十兆千百九億円余であり、差し引き一兆七千八百七億円余を、この会計の積立金として積み立てるなどにより、決算をいたしました。  以上をもちまして、厚生省所管に属する平成年度及び九年度決算説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  22. 赤城徳彦

    赤城主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院関本第二局長
  23. 関本匡邦

    ○関本会計検査院当局者 平成年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百五十七件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項二件であります。  まず、不当事項について御説明いたします。  検査報告番号四二号は、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号四三号は、厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号四四号は、特定入院料、入院時医学管理料、初診料・再診料等の診療報酬について医療費の支払いが適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるものであります。  検査報告番号四五号から五六号までの十二件は、社会福祉施設施設整備費補助金等が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号五七号から六〇号までの四件は、生活保護費負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号六一号から九八号までの三十八件は、老人福祉施設保護費負担金算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号九九号から一二二号までの二十四件は、児童保護費等負担金算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一二三号から一二七号までの五件は、児童育成事業費補助金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一二八号は、国民健康保険の療養給付費補助金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一二九号から一三七号までの九件は、国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一三八号から一九八号までの六十一件は、国民健康保険の財政調整交付金が過大に交付されていたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項について御説明いたします。  その一は、結核性疾病及び精神病に係る特別調整交付金の算定に関するもので、国民健康保険の特別調整交付金の交付に当たり、被保険者の負担軽減措置が行われる場合の保険者負担額の算定方法が交付申請書の様式等で明確に示されていなかったなどのため、負担軽減措置対象となった結核性疾病及び精神病に係る医療給付費について、所定の減額調整を行っておらず、特別調整交付金が過大に交付されておりました。これについて指摘したところ改善処置がとられたものであります。  その二は、国立病院等における下水道料金の支払いに関するもので、国立病院等では、蒸気ボイラー設備等に供給された水道水等の相当量が蒸発するなどしているのに、関係地方公共団体から公共下水道へ排出されない水量を控除した汚水排出量の認定を受けていなかったため、水道水等の使用量をそのまま汚水排出量と認定されるなどしていて、下水道料金が不経済となっておりました。これについて指摘したところ改善処置がとられたものであります。  次に、平成年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百三十六件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項二件であります。  まず、不当事項について御説明いたします。  検査報告番号五八号は、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号五九号は、厚生年金保険の老齢厚生年金等の支給及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正に行われていなかったものであります。  検査報告番号六〇号は、特定入院料、入院時医学管理料、初診料・再診料等の診療報酬について医療費の支払いが適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるものであります。  検査報告番号六一号から六四号までの四件は、社会福祉施設施設整備費補助金等が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号六五号から七一号までの七件は、生活保護費負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号七二号から一〇三号までの三十二件は、老人福祉施設保護費負担金算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一〇四号から一一九号までの十六件は、児童保護費等負担金算定において、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号一二〇号から一三四号までの十五件は、児童育成事業費補助金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一三五号から一九一号までの五十七件は、国民健康保険の財政調整交付金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一九二号は、廃棄物処理施設整備事業において、高率な最低制限価格を設定したため、割高な契約を締結しており、補助金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号一九三号は、職員不正行為による損害が生じたもので、社会保険事務所の職員が、虚偽の高額療養費支給申請書を作成し、みずから支給決定を行い、知人に受領させるなどして高額療養費を領得したものであります。  なお、損害額につきましては、不正行為を行った職員から全額が返納されております。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件について御説明いたします。  その一は、在宅福祉事業費補助金(老人デイサービス運営事業分)の算定に関するものであります。  この補助金の算定に当たり、サービスに伴う食材費、光熱水費等の原材料費等は補助対象経費の実支出額に含めない取り扱いとしているのにこれを除外していなかったりなどしていて、補助金が過大に算定されている事態が見受けられましたので、厚生省に対して是正改善処置を要求いたしたものであります。  なお、本件につきましては、厚生省において十年十一月に交付要綱を改正するなどの処置をとっております。  その二は、政府管掌健康保険生活習慣病予防健診事業の委託費の支払いに関するものであります。  この事業において、都道府県は健康保険病院等の実施機関と健診委託契約を締結し、国の負担する健診の委託費を支払っておりますが、会計法令に違背し異なる年度予算で支払っていたものなど適切を欠いている事態が見受けられましたので、社会保険庁に対して、是正改善処置を要求いたしたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善処置を講じた事項二件について御説明いたします。  その一は、特別養護老人ホーム等の入所者に対する診療報酬請求の取り扱いに関するもので、施設の入所者を配置医師の所属する医療機関へ通院させて行った診療について診療報酬請求していたりなどしていて、医療費が不適切に支払われている事態が見受けられました。これについて指摘したところ改善処置がとられたものであります。  その二は、未利用国有地の有効利活用に関するもので、厚生保険特別会計等に属する国有地において、現況等の把握、利用方針の策定、処理計画の決定等が適切に行われていなかったため、百二十二口座、五万八千百五十一平米の土地が未利用となっており、有効に利活用されていなかったものであります。これについて指摘したところ改善処置がとられたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  24. 赤城徳彦

  25. 増田峯明

    増田(峯)会計検査院当局者 平成年度環境衛生金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  また、平成年度環境衛生金融公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  以上でございます。
  26. 赤城徳彦

    赤城主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。大野厚生政務次官
  27. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 平成年度及び九年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。  指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。
  28. 赤城徳彦

    赤城主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 赤城徳彦

    赤城主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  30. 赤城徳彦

    赤城主査 以上をもちまして厚生省所管環境衛生金融公庫説明は終わりました。     —————————————
  31. 赤城徳彦

    赤城主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桧田仁君。
  32. 桧田仁

    桧田分科員 自由民主党の桧田仁でございます。  決算行政監視委員会というのは、分科会も何か寂しい気がいたします。予算委員会分科会は、いろいろ大議論で、予約を入れて、うまくくじが当たればいいがという状況なのに、決算委員会は、本当に一番大事な委員会が、何か慌ただしさに紛れている。それだけに、きょう御出席の皆様方には大変感謝し、またしっかり頑張りたいという気持ちでもございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  先ほど来から聞いておりますと、厚生省所管のいろいろな決算状況会計検査院の報告、いろいろとございます。関係者の皆様方には御努力いただいているわけでございますが、国民にとって適正な予算執行、行政のいろいろな問題はぜひよろしくお願いしたい、こういうふうに思います。  きょうは、特に国立病院の問題と医薬品の納入について、二点に絞って質問させていただきたいと思いますので、的確でかつ簡潔な御答弁をお願いしたいと思います。  まず第一に、国立病院の再編成の問題です。  国も行政の統廃合あるいは再編成の中にあることは御承知のとおりでございまして、国立病院といえども、真に国民の期待を担う医療はどのようにしたらいいか、あるいは新しい時代の医療、将来を見据えたどんないい医療を国民にするかということは、大きな課題だと思います。  既に、十数年前から国立病院の再編成は行われておるわけでございますが、特に、最近の国立病院の再編成に対する基本的な考えを、大野厚生政務次官にお伺いしたいと思います。
  33. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 桧田先生は専門家でいらっしゃいまして、よく御存じのことではございますが、国立病院、おっしゃいましたように、今いろいろ再編成に取り組んでおります。  国立病院・療養所は、国立医療機関としてふさわしい、広域を対象といたしました高度医療または専門医療などの政策医療を担うために、機能の質的強化を図るべく、昭和六十一年度に二百三十九施設を百六十五施設とする再編成計画を策定し、推進してきたところでございます。また、平成十一年三月には、再編成計画の見直しを行い、最終的には百五十三施設とすることとしております。  再編成の進捗状況についてお尋ねでございますが、計画発表以来の十年余の取り組みの積み重ねもあり、近年、加速化しており、平成十二年三月末までに三十四施設が減となって、今二百五施設になっております。また、その他のケースについても、関係者間の協議の場が設置されるなど、具体的な取り組みが進んでいるところでございます。  今後、昭和六十一年度再編成計画に盛り込んだもののいまだ統合などに至っていないケースにつきましては、平成十二年度末までに施設の廃止を含む対処方策を決定し、速やかに実施することとしております。また、平成十一年三月に行った再編成計画の見直しにより追加いたしました対象施設についても、平成十六年度の独立行政法人移行までにおおむね完了させることとしております。
  34. 桧田仁

    桧田分科員 ありがとうございました。  大野総括政務次官には、大変いろいろ御努力いただいております。また、大変な中での統廃合でございますので、引き続きよろしくお願いを申し上げます。  それでは、私は、皆さん御存じと思いますけれども、統合する広島県の国立大竹病院に四年半ほど勤務いたしました。現場の中におりましたし、いろいろな思いがないといえばうそになります。多くの方々と一緒に、国立病院の医療、いろいろな御意見と御批判、また期待のある中で頑張ってきた者の一人として、どうしてもこの問題は真剣に突っ込んで聞かせていただきたい、あるいはどんな考えかという気持ちがございます。ぜひこれから詳しくいろいろお聞かせいただきたいと思います。  まず、広島県にあります国立大竹病院と国立療養所原病院の現在の医療はどのようにやっているというようにお考えでしょうか。
  35. 河村博江

    ○河村政府参考人 国立大竹病院につきましては、現在二百床で、がん、成育医療、循環器病、免疫異常などの政策医療を担っておりまして、あわせて施設の能力の範囲内で救急医療や僻地医療も行っていると承知しております。  また、国立療養所原病院につきましては、二百七十床で運営しておりまして、重症心身障害、進行性筋ジストロフィー、小児慢性を中心とした医療を行っております。
  36. 桧田仁

    桧田分科員 そこで、この二つの病院を統合するということですが、どのような医療を担い、また病棟の構成になる予定でしょうか。
  37. 河村博江

    ○河村政府参考人 国立大竹病院と国立療養所原病院の統合を推進すべく、現在、現地において再編成推進協議会というものが設置されておるわけでございますが、去る四月十四日に、統合による新病院につきましては、がん、神経・筋疾患、重症心身障害に関しまして、ナショナルセンターとの連携のもとに、専門的な医療を担える機能を備えた施設として整備するために、一般病床二百床、重症心身障害、筋ジストロフィー病床をそれぞれ百二十床、合わせまして四百四十床で運営するとの素案を御提示させていただいたところでございます。
  38. 桧田仁

    桧田分科員 今のお答えを聞きますと、政策医療、そして一般病床も二百床残していただくということです。病棟だけではいけません。やはり外来もあります。ずばり、この地域が大変期待しております一般医療に関しては、今後どのようにお考えでしょうか。
  39. 河村博江

    ○河村政府参考人 国立大竹病院と国立療養所原病院の統合によります新病院の機能については、がん、神経・筋疾患、重症心身障害等の政策医療に特化することにしておりますけれども、あわせまして、施設の能力の範囲内で一般的な地域医療にも対応することになると考えております。
  40. 桧田仁

    桧田分科員 先ほどから施設の持てる能力の範囲内で、この言葉が河村部長がお答えいただくことなんですが、またこれもきょうの議論の最たるものですが、施設の持てる能力の範囲内というのは非常に大きな幅があると思います。  例えば医師の能力です。医師の能力は診療科によっても、例えば私は整形外科でございますけれども、脳外科も診ますし、救急医療も診ます。時には内科疾患から、新幹線の中では私は本当に婦人科まで、あるいはまた飛行機の中ではもう自分の専門外の、外国の方までやらなきゃなりません。  つまり、施設の持っている能力というのは、ただ建物だけでなく、人もあり、また地域との連携もあり、周辺の病診連携、医師会とのこともあるわけですが、施設の持てる能力というのは、人、建物、地域、あるいはすべてを含めていると考えていいでしょうか、いかがでしょうか。
  41. 河村博江

    ○河村政府参考人 国立病院・療養所の機能というのは、政策医療を担うことでありまして、そのための医療資源を有しておるわけでございます。先生おっしゃいますような施設あるいは医療スタッフその他でございますが、そういう政策医療の実施に合わせまして、この医療資源を活用して、できる範囲内での一般医療にも対応することになると考えております。
  42. 桧田仁

    桧田分科員 少し具体的に聞いてみたいと思いますが、例えば国立大竹病院は二次救急医療をやっております。地域にとっては、この病院がなくなりますと、下手をすると約一時間もかかるような場所に地域の患者を搬送するようです。また、御承知と思いますが、国立大竹病院は、離島振興法のもとによります僻地の阿多田島の診療もやっております。  このような救急医療や僻地医療は、少なくとも政策医療という範疇とは違うようですけれども、引き続きやっていただけるのでしょうか。
  43. 河村博江

    ○河村政府参考人 これまで国立大竹病院で担ってきた僻地医療あるいは救急医療という一般的な地域医療につきましては、施設の能力の範囲内で対応することになると考えております。
  44. 桧田仁

    桧田分科員 ぜひこれはお願いしたいと思います。  と申しますのは、確かに国立病院の担っている政策医療は非常に大事なことです。専門家、あるいはここでなくてはできない大事な医療もあると思うのです。しかしながら、皆様方御存じのように、私たち人間というのは、百の病気があると九十九まではずばり一般的疾患です。百に一が特殊な疾患です。それからもう一つは、一般外来で、後に肺がんとわかっても、最初からがんとわかることはほとんどないことは御存じのとおりで、風邪を引いたとか少し胸が痛いとかせきが出る、つまり風邪と一歩も違わない疾患から少し重症になったり長引いたり、少しおかしいということでどんどん特化していきます。  私は、どんな政策医療も国民の医療の本当の信頼を得るためには、一般医療をきっちりやるということが、必ずやいい国立病院の政策医療になると確信いたしておりますので、重ねて部長にもよろしくお願いしたいと思います。  最後に、国立病院は、特に地元の大竹市医師会、松浦会長以下役員が大変御努力して、病診連携をきっちりやっています。国立病院と地元大竹市医師会は非常に連携をよくとり、急患の行き来も、あるいは勉強会も、さらには医師の交流、あるいは先ほど言いました離島の治療も救急医療も、非常にいい形になっています。ぜひこれは引き続き医師会との連携もしっかりやっていただきたいと思うのですが、部長のお考えはいかがでしょうか。
  45. 河村博江

    ○河村政府参考人 この二つの病院を統合するために設置されております再編成推進協議会というのが地元にあるわけでございますが、地元医師会にも構成員として入っていただいておりまして、統合新病院の機能につきましては、その中で調整させていただくということになろうかと思います。
  46. 桧田仁

    桧田分科員 ありがとうございます。大野総括政務次官もお残りでございますし、河村国立病院部長にも、やはり国民が本当に統合してよかったという国立病院の再編を必ずよろしくお願いします。  以上で国立病院の質問を終わりまして、次に薬のことについて質問をいたしたいと思います。  皆さん御存じと思いますけれども、このたび薬価改定、医療費ベースでは一・六%ですけれども、薬価は七%下がりました。この薬価基準を決めるに当たりましては、薬価調査をやっている。ある時期の薬の値段が幾らか幾らかと調べているわけです。  ところが、どうやら薬の値段を調べるのに、もともと薬の値段を、価格が百円か三十円か二十円かわからぬまま、ずっと延ばしている病院がたくさんあると聞いています。しかも、それが医療の中で大事な大きな病院、例えば国立病院、大学病院、日赤、済生会というような、国民が一番信頼して、そこの薬の値段が幾らかということに非常に関心がある病院が、卸問屋から俗に言う仮払い、仮納入という言葉で、本当におかしなことで、ちなみにこれは英語では、外国にはそういう例がないのです、日本だけ。仮払い、仮納入を英語に訳すと外国の人はわからないそうです、何ということです。薬を納めたまま、一年間も値段を決めないで引っ張る、あるいは支払いをしないで引っ張る、仮払い、仮納入ということを長くこの商取引でやっておられました。これは何も買う病院側だけとか医療側だけではなしに、納める側もついつい、入れてほしいものですから、まあまあというなあなあでした。  しかし、薬価調査をして、私たちはこのたび、多くの薬は平均七%ですが、おのおのの薬を全部決めました。一万一千余りの項目をみんな決めたのに、この薬価調査は本当にこれでいいのかという問題提起で、今からの質問をしたいと思います。  まず、この仮払い、仮納入というのは大変おかしなことで、昨年も私は提起いたしております。皆さん御存じかどうかわかりませんが、去年の八月、この点を問題提起して調べてもらいました。調べてもらいますと、実に一部の病院はほとんど決めていないまま薬を入れている。後でお話ししますけれども、総価山買いといって、いろいろな薬をみんな一把からげて十三億円を十二億八千万円で買いましょう、おのおのの値段はわかりません、そんなやり方をしているような病院の中で薬価を調査して、はい、薬価はこれでございますと中医協に出して、はい、幾らですと。私は、国民はそれで納得できるのか。少なくとも、本当の薬価調査をするためにも、総価山買いを前提とするような仮払い、仮納入は論外だと思います。  この実態をきょうはしっかり聞きたいと思うので、まず第一に、去年の八月、どんな状況であって、一番最近のデータで、仮払い、仮納入はどうなっておるか、大きな病院を中心に教えてください。
  47. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 お尋ねの件でございますが、医療用医薬品の購入に係る価格の妥結状況につきましては、日本医薬品卸業連合会が、二百床以上の病院につきまして抽出調査を行っているわけでございます。  この調査によりますと、先生お尋ねの平成十一年八月時点では、調査対象になりました病院のうち七〇・二%の病院で価格が妥結していたわけでございますが、直近の、本年二月の時点では九〇・一%が妥結していると報告を受けております。  そこで、具体的に、どのような病院の妥結率が低かったかというお尋ねでございますが、昨年八月の時点で妥結率が低かった病院といたしましては、設立主体として主なものを申し上げますと、日赤、済生会、労働福祉事業団、厚生連、私立大学の学校法人などが挙げられるわけでございます。
  48. 桧田仁

    桧田分科員 その中で、今局長がお答えになった日赤とか済生会、そういう病院の現実というのはどうなんですか。ずばり、薬は買ったまま払わないということですか、価格を決めていないのですか。  それから、日赤とか済生会、病院を責めるつもりもありませんけれども、一体どういうことなんですか。低いということは今御報告を受けましたので、どんな指導をして、その担当者はどんなお答えをしているんですか。低い理由をどんなに答えているんですか。それでいいと思っているんですか。その理事会等はどんな御返事になっておるんですか。
  49. 炭谷茂

    ○炭谷政府参考人 今先生御指摘されました日赤病院、済生会病院につきましては、医薬品の妥結状況が従来から他の医療機関に比べて遅いことから、各方面からその改善が求められてきております。  価格妥結が長期間にわたってなされないことは、通常の取引から見てもちろん好ましいことではないことから、厚生省においては、従前からその改善に向けて指導を行ってまいりました。  特に、昨年度におきましては、十一年八月、また先月にもそれぞれ担当者を、日赤、済生会それぞれの幹部を直接厚生省にお呼びいたしまして、文書で手渡し、改善方に対して強く指導を行ってまいりました。  それを受けまして、日赤、済生会におきましては、病院長、また事務部長の全国会議などにおいての指示、また悪い病院についての個別の事情聴取などを行いまして、各病院に対して、改善に向けて現在指導を行っております。  しかしながら、平成十一年度の日赤病院、済生会病院の妥結率を見ると、他の医療機関に比べて依然として低いこと、また、ことしは薬価改定が行われた年でございます。例年、全体として価格妥結が遅くなる傾向があります等から、今後、厚生省におきましては、日赤病院、済生会病院において早期妥結が図られるよう、特に今年度からは、各月末の状況について随時報告を求めるということで、その指導に強く当たってまいりたいというふうに考えております。
  50. 桧田仁

    桧田分科員 局長、大事なことなんです。実は日赤は、そのお金をため込んで学校をつくっている。学校をつくるときの資金を、仮払い、仮納入でお金を残しておいて学校をつくっている。大丈夫ですか。こんなことをさせていいのですか。どうです、局長
  51. 炭谷茂

    ○炭谷政府参考人 ただいま先生の御指摘された事項について、今現在資料を持っておりませんけれども、もしそういうことであれば、それは著しく不適切なことでございますので、指導させていただきたいと思っております。
  52. 桧田仁

    桧田分科員 実はこの問題、質問通告していないのですが、日赤はお金をずっとため込んでおいて、しかも、もちろん赤字のところはよそから寄附してもらって、そのため込んだお金で学校をつくっているんです。それは学校も大事ですよ。ですが、看護婦の事業計画もよく調査しないで、とにかくここだということでわっとやっている。その点、大丈夫ですか。もう一回、あなたの今の感想で言うてみなさい。
  53. 炭谷茂

    ○炭谷政府参考人 ただいま先生の御指摘されたような、せっかくの医薬品の購入の問題を解決しないでそのようなものを別途やっているということは、ある意味では非常に不適切な経営、会計処理また経営問題だろうというふうに考えるわけでございます。
  54. 桧田仁

    桧田分科員 実は、なぜこのことを私が通告せずに言ったかというと、あなた方、通告しますと適当に答弁をごまかされるんですよ、私、意地悪なつもりはないんですが。ここに日赤の仮払い、仮納入の本当の理由があるんです。厳重に調査を命令します。お願いします。  これは、これ以上あなたに言っても仕方ありませんから、次へ行きます。  同じように、国立病院は一昨年までは大変厳しかった、去年はきっちりやってきた。国の病院は、少なくともこういうことで御迷惑かけちゃいけないんですが、またルールもあると思うんです。国の病院というのは、薬を入れて、価格が決まりませんよ、金は払いませんよということをやっていたのでは、大きな信頼を失いますから、国立病院はしっかりしていると思いますが、この点、どうなんですか。
  55. 河村博江

    ○河村政府参考人 国立病院におきます契約事務につきましては、会計関係法令を遵守して行うように、従来から各種会議あるいは監査指導等でその徹底を図っているところでございまして、平成十一年度で数字を申しますと、平成十二年二月時点での妥結率は九八・七%、三月中旬には一〇〇%となっております。引き続き、早期妥結に向けて指導してまいりたいと思います。  それから、どのようなルールでやっておるかというお尋ねでございますが、国立病院等におきます医薬品購入につきましては、会計関係法令にのっとって契約しているところでございまして、国立病院等における医薬品等に関する支払い事務につきましては、会計関係法令に基づきまして、まず契約を締結して、納入物件の確認を行いまして、契約の相手方から請求書を受理して三十日以内に支払うということになっておるところでございます。
  56. 桧田仁

    桧田分科員 国立病院ぐらい、三十日以内という形のルール、守ってやってください。  それでは、さっき言ったように、日赤はそれを一年も延ばして、そのお金をため込んで、何かほかの事業をする。本来、医療でいった原価ですから、それは払ってやらなきゃいけない。  局長、お願いしますよ。国立病院は三十日ルールですよ。日赤、済生会、ただこんなに延ばしていいかどうかということは、もう答えは要りませんが、絶対お願いします。それから、妙なところに日赤が持っていくようなことは相ならぬ。このぐらいきっちり管理しておかなければいかぬですよ。わかりますか。お願いします。  そこで、この点を私がこのたび質問いたしましたのは、確かに、薬を買う側と売る側、商取引の中でいろいろ苦しみはあります。しかし、私は、長い間に、薬を納入したけれども価格が決まらない、最後の段階では十億円になったからもう値下げせざるを得ない、こういうシステムを、大きな病院や官公立病院がやって本当にいいのか。ちなみに、民間病院はみんな払っています、これはちょっとデータがわかっておりますから、これも言っておきますけれども。官公立病院が、確かに経営は大変です、いろいろ改善をしていただかなきゃいかぬ、でも、それを薬の卸業者の犠牲のもとにやるということはとんでもないことです。  そこで、厚生省としては何らかの是正案を考えているんじゃないんですか。このまま、ただ呼んできて指導しました、日赤の担当者を呼びました、理事会は聞いて聞かぬふりをしておる、日赤の理事会は。聞いていないからこそこうなっておるんですよ。あなた方が指導しても、はいと言って、理事会の議事録をまだ出していない、その議論をしていない。  そういう状況だから、厚生省、今後の指導や法的ルールを決めるべきじゃないんですか。何かあるんじゃないんですか。どうですか。厚生省としては、何か考えがあるんじゃないんですか。
  57. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 仮納入、仮払いの改善に向けて、どのような対応をするかということでございます。  私どもといたしましては、医薬品の流通近代化に向けまして、関係者の取り組みが進められておりますけれども、仮納入、仮払いの問題は、流通改善の推進にとって残されている大きな課題の一つであると考えているところでございます。  これまで、仮納入、仮払いの是正を初め、医薬品流通の改善につきましては、関係者の意識改革などに努めてきたところでございますが、昨年八月には、特に価格妥結率の低い公的病院等の所管課に理解と協力を求める通知を送付するとともに、本年四月の薬価改定に際しましても、メーカー、卸売業者、病院関係の団体などに対しまして、改めて流通改善の理解と協力を求める通知を出したところでございます。  また、中医協が昨年十二月に取りまとめました薬価制度改革の基本方針におきましても、薬価制度を検討するに当たって密接に関連する医薬品の流通問題につきまして、平成十二年度の薬価改定後の流通取引の実態を踏まえながら、引き続き検討を行うこととされているわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、今後とも、このような中医協の検討も踏まえながら、流通改善の一層の推進に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  58. 桧田仁

    桧田分科員 先ほどから何度も言っています総価山買いというのもあるんです。価格を決めない、仮払い、仮納入して、どっと持たせておいて、日赤などは、最後になって総価山買い、幾らだとダンピングの交渉をするんです。  私は、やはりこれは、中医協でこのたび薬価を決める、まずこの総価山買いということを局長がどんな認識でどう考えているかということを先に聞いて、薬価のことを聞かぬことには薬価のことを聞かれない。まず、総価山買いについてはどんなお考えですか。手短にお願いします、時間がないから。
  59. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 総価山買いは、基本的には好ましいものではないと考えております。しかしながら、これは卸売業者と医療機関との当事者間の交渉の結果として行われるということから、また独禁法に抵触するものでないという公取の御判断もございまして、これを完全に禁止するというのは困難だというふうに考えております。  しかしながら、総価山買いは大きな問題点の一つであると認識しておりまして、仮納入、仮払いの問題とともに、流通改善の推進の中でその改善の指導を行ってきたわけでございますが、今後とも、関係者に対しまして理解と協力を求めてまいりたいと考えているところでございます。
  60. 桧田仁

    桧田分科員 だから、この前提で、総価山買いというのは、個々の薬は値段は決めないでわっと決める。特に、日赤とか済生会とか一部のところは決まらないままで総価山買い、しかも、中医協の報告を聞いてみると、何が何円何円と皆決まっているらしく、薬価調査が行われている。  薬価調査、中医協の報告を聞くと、あなた方はいろいろ理由をつけて、調べまして、何円です、何円ですからこうですと言っているけれども、日赤とか済生会とか、大きな病院が決まらないままで薬価調査していて、正しい薬価調査になっているんですか。
  61. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 薬価調査の信頼性を高めていくということは、薬価行政の根幹であるというふうに認識しておるわけでございます。そのような観点から、薬価調査におきましては、調査時点におきまして、価格が妥結していない医薬品につきましては、調査票に記入しないよう指導を行っているところでございます。  また、薬価調査は、すべての卸売業者に対しまして、すべての医療機関との取引を調査対象としておりまして、昨年の本調査時点におきましては、医療機関数で九九%、金額ベースでも約九割程度の妥結状況となっております。  さらに、人為的な価格操作を調査から排除するという目的で経時変動調査を行っておりまして、より市場実勢価格の適切な把握に努めているところでございまして、私どもといたしましては、これらのことを通じまして、今後とも薬価調査の信頼性を高めていく努力をしたいと考えております。  したがいまして、薬価調査の一層の精度の向上を図るという観点から、仮納入、仮払い、また総価山買い、これらの問題につきまして、本腰を入れて指導してまいりたいと考えているところでございます。
  62. 桧田仁

    桧田分科員 薬価調査というのは、大変大事なところです。局長初め皆さんが、総価山買い、仮払い、仮納入はなくした上できっちりやらないと、日赤、済生会のようなところは一時三〇%の妥結率のままで、こんな大きな病院の薬価調査のないままでやられている、これは絶対困る。  それから、最後にこれは要望しておきます。  このたび、薬のチェーン店化がどんどん進んでいるんです。薬局は薬の卸業者ができるのに、卸業者は薬局ができないという非常に不公平な形になっています。きょうは時間がありませんから、答弁は要りませんけれども、ぜひこれは是正しないと、薬局をやっている者は薬局をどんどん大きくして、卸もやる。一方、卸の者は一薬局もできないというやり方になっていることは、必ず是正していただきたい。また、一部、通達でいいですよと言いながら、おかしなことになっている。これだけはぜひお願いしたいと思います。  委員長、ありがとうございました。
  63. 赤城徳彦

    赤城主査 これにて桧田仁君の質疑は終了いたしました。  次に、竹本直一君。
  64. 竹本直一

    竹本分科員 私は、厚生行政あるいは今問題となっております介護保険云々については専門家ではございません。どちらかというと、ふだんの国会活動は商工、財政、建設といった分野を主として担当しておる者でございますが、一利用者としての経験があります。そういう意味で、消費者の立場から、この介護保険の具体的な問題について幾つか御質問をし、この介護保険が円滑に、そして国民一般に老後の心配を持たなくてもいいような制度として根づくことを願って、幾つかの点を質問させていただきたいと思います。  ただ、いろいろ細かい点にわたりますので、本来なら大野政務次官にお答え願いたいところでございますが、物によっては当然政府参考人、担当局長で結構でございますので、あらかじめそれをお断りしておきます。  まず、私は、選挙区は大阪なんですが、介護保険が四月一日から実施されました。いろいろ御質問を地元の方から受けるわけでございますが、一番大きい質問の一つは、同居家族に対する訪問介護を家族がやった場合にどうなるのかという点でございます。  一定の資格を持った者が訪問介護、つまり自分の家で自分の親の面倒あるいは義理の親の面倒を見るわけでございますが、そういった場合には保険の給付の対象になるのかならないのか。一定の場合にはなるというふうな話を聞いておりますが、まず、その点はどういうふうな仕組みになっているのかということをお答え願いたいと思います。     〔主査退席、中林主査代理着席〕
  65. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、原則的にと申しましょうか、サービス事業者が介護サービスを提供するというのが典型的なケースでございますけれども、お話しございましたように、同居の家族に対するサービスの場合の取り扱いというのを一定の基準で認めておるわけでございます。  どんな基準かと申しますと、一つは、離島、山間僻地といったようになかなかサービスが十分調達できない、サービスの確保ができないというような事情にある地域、これは市町村の判断によるわけでございますが、そういう地域であること。もう一つは、きちんとした一種の事業、サービスとして提供されなければなりませんので、ケアマネジメント機関が作成する居宅サービス計画、いわゆるケアプランに基づいて提供されるものであること。それから三つ目に、ヘルパーさんの資格を持った個人の考えではなくて、サービス提供責任者、事業体の具体的な指示に基づいて提供されること。それから、内容的には身体介護が主たる内容であること。そして、五つ目でございますけれども、同居家族に対するサービスが、ヘルパーさんと申しますか、介護員の業務の全体ないしは過半を占めるというのもこれまた本来の形に適当でございませんので、おおむね二分の一相当は家族以外の方のサービスに使われておるというような勤務形態、業務形態であること、こんなような基準を定めまして、こういうケースについては介護保険給付の対象とすることが、最終的には市町村の判断に尽きますけれども、できるような仕組みにいたしております。
  66. 竹本直一

    竹本分科員 介護を要する状態に陥った場合に、どういう状態で介護されるのが本人にとって幸せかという問題でございますが、今、全国的に見て、県別で見ますと、女性でいうと沖縄が一番、断トツの高齢なんですね。それで、沖縄の人は豚肉をよく食べるあるいは昆布をよく食べる、だから、それが高齢の原因だという説もありますけれども、私は、それもあるのかもしれないけれども、それ以上に、家族制度が長寿に貢献しているのじゃないか、こういう感じを持っております。  どういうことかというと、沖縄では親、子、孫、ひ孫まで一緒に暮らしているケースが非常に多い。つまり、大家族制度の中で、おじいさん、おばあさんが孫と話をするという、若い世代との交流が毎日のように図られているためにストレスがたまらない、また老化しやすい脳細胞がそういった刺激によって活性化される、こういった効果があるからではないかというふうに思うわけでございますが、そういう意味において、どういう介護が一番幸せかというと、やはり家庭内介護が一番幸せである。  そこで、今お答えにあったように、一定の資格を持った場合に保険の給付の対象となるということでございますが、現実に私の地元なんかでいろいろ話を聞いてみますと、四十を越して一人頭千四、五百円出していく、六十五歳以上になると三千円出していく、そんなに出していながら、しかし施設に入るのは嫌だ、家の中にいると何も給付もないのじゃないか、ばからしいな、こういう話が随分あるわけなんです。  したがいまして、一番理想的な状態は、家の中で家族に見守られながらやる介護が一番幸せだとすれば、資格のない人が自分の親を介護する場合についてはどのようなことになるのか。つまり、介護保険料を納めていながら、介護保険のサービスを全く使っていない、こういった場合については何か手当てがあるのかないのか、あるいはそれに対する埋め合わせをしておられるのかどうか、それについてちょっとお聞きしたいと思います。
  67. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 お尋ねの趣旨に合うお答えになるかどうかわかりませんが、おっしゃいますように、御家族が介護保険によりますサービスを受給できる場合であっても、みずから家族のお力で介護サービスを受けない方々というものもおられるだろう、そういう方々に対する一種の慰謝、慰労というような趣旨をあらわすことができないだろうか。  これは、昨年の与党の中の介護関連の特別対策の論議の中で、そういった議論がございました。その結果、昨年十月にまとめられました与党三党の申し入れの中で、介護保険制度あるいは介護保険給付とは別だけれども、市町村の判断でそうした御家族に対して一種の慰謝、慰労の事業をする場合に、国も助成するというような方針が決められたわけでございます。  やや具体的に申し上げますと、例えば対象者としては、要介護度が四あるいは五の方で、住民税非課税世帯の在宅の高齢の方が、過去一年間、原則として介護保険の給付を受けない、利用しなかったという場合には、年間十万円までの金品を贈呈するというような事業を市町村が行う場合に、これに対して国も支援をするというような方向で施策をまとめられました。具体的に動き出しますのは十三年度ということになるわけでございますから、今後の細部の詰めはこれからございますけれども、そういった事業を考えておるところでございます。
  68. 竹本直一

    竹本分科員 保険を使わなかった人については、そういう方策を通じてある種埋め合わせをするということでございますが、一たんこういうお金を保険外で払いますと、それが既得権化しやすいのではないかということを非常に恐れるわけでありまして、市町村の判断でやることでありますから、任せておけばいいというものかもしれませんけれども、その財源的措置は、結局国が裏で面倒を見るわけですから、既得権化しないような運用ということを心がけていただきたい、要望であります。  さて、基本的には、訪問介護員というのですか、そういう資格を持った人が自分の家族を介護した場合には、一定の条件のもとに保険の給付があるということでございますが、その資格というのはどういうものがあるのか、そしてまた、その資格向上のためにどういう方策を講じているのか、お答え願いたいと思います。
  69. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 訪問介護員、ホームヘルパーの方のいわば資格でございますけれども、実際には、都道府県知事あるいは都道府県知事が指定をいたしました研修を行う事業者が実施いたします訪問介護員の養成研修を修了することというのがいわば資格条件でございます。  この訪問介護員の養成研修は、一級から三級まで三種類ございまして、例えば一級でございますと、総計二百三十時間の講習を受けていただき、そのうち約三分の一でございますけれども、八十四時間は実習をしていただくということでございますし、二級は、同様でございますが、時間数にして百三十時間、三級は五十時間というような基準が決められております。  こうした一定の研修を受けましてホームヘルパーの業務に携わることができるようになるわけでございますけれども、さらに、そういう資格を持たれた方も、引き続きさまざまな研修を繰り返して質の向上に励んでいただくということになりますけれども、特に、現在、今申しましたように三級に分かれておるのでございますが、三級の課程を修了した方につきましてはできるだけ二級になっていただくということで、こういった事業につきましては、平成十二年度、今年度でございますけれども、国も助成をいたしまして、全体としてのホームヘルパー、訪問介護員の質の向上に努めてまいりたいと考えております。
  70. 竹本直一

    竹本分科員 三級を受けられた方には二級の資格を取るようにいろいろ勧誘もし、また助成もしておるということでございますけれども、私は地元でも言っておるのですが、せめて三級の研修を五十時間受けて、あと一週間ぐらい実習をやるようでございますが、そういう研修をぜひ一般の家庭の奥様方も、多少でも時間のある方は、世のため人のためと思ってどんどん受けてくださいと。特定の人たちだけに限られるというのもおかしい話であって、何も自分の家族のためにそういう資格を取るわけじゃない、保険の給付を受けたいためにそういう資格を取るわけじゃない、世の中にボランティアとして働く中で、介護を要する人に対する介護という愛情ある行為を社会全体、みんなで負担するんだ、そういう高貴なつもりで、社会に奉仕できるのだから、ぜひそれをやっていただきたいということを各所でお願いをしておるわけでございます。  今御説明にあった資格制度、あるいはどれぐらいのことをやれば三級が取れ、また二級になるのかということが本当に知られていない。もっともっと広報に努めて、そんなチャンスがあるならやってみようかなと思っている人がたくさんおられるのです。ただ、どこへ行けばいいのか、どれぐらいの負担がかかるのか、費用はどうなのかということが全然わかっていないというのがほとんどであります。したがいまして、もっとこの点について厚生省としてもPRに努めてもらいたい、そのように思うわけでございます。  さて、家庭内介護が一番幸せな状態だと私は思うわけでございますが、実際の家族構成の中でそういかない場合が多いわけであります。そこで、結局、特別養護老人ホームとかそういったところに入所せざるを得ないわけでございますけれども、この養護老人ホームにおける職員の資質の向上、そしてまた職員のいろいろな作業についての教育訓練、そういったことについてどのような配慮をしておられるのか、ぜひお聞きをいたしたいと思います。  といいますのは、これは私の本当に身近な、はっきり言えば私のおやじなのですけれども、三年前に養護老人ホームに入れて、結局亡くしたのですが、ある施設へ入れました。歩けたものですから、別にぼけも何もないのですが、歩かせてくださいねとお願いしておいたけれども、結局は歩かせていない。あなたどうして運動させてくれないのですかと言うと、余り歩かせて骨折されても困るからということで、結果としては、半ば強制的に寝たきりにされてしまう。  それから、こういうこともありました。もう少し運動させてほしいからと言って別の施設へ移したわけでございますけれども、そこでは運動はさせてくれたのですが、結局、配ぜんなのですけれども、食事を持ってくる人と食事の後片づけをする人が違う。食事を持ってくる人はテーブルの上に食事を置きます。一時間後に今度は片づける人が来る、別人です。全然手をつけないで置いてある。しかし、本人にとっては片づけるのが仕事ですから、手をつけているか、要するに食べているとか食べていないとかにかかわりなくみんな持っていってしまう。そうしますと、上に対する報告は、食事を配ぜんしました、片づけましたという報告である。しばらくすると、だって何も食っていないのですから、どんどんやせていくわけであります。それをだれも見ていない。私は、十日ぶりぐらいに行って、ミイラのようになっている自分の親を見て、何ということをしているのだと思ったわけでございますが、そういったことが間々あるわけなのです。  だから、そういう実態をよく監視するような仕組みをつくらなきゃいけないのではないか。そういう点について、どのような監視体制、どのような技術の向上策をとっておられるか、御説明をお願いしたいと思います。
  71. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 おっしゃいますように、施設に限りませんけれども、サービスの質と申しましょうか、そのレベルの向上というのは非常に重要な、むしろサービスの本質にかかわる問題だろうと思っております。  現在の特別養護老人ホーム、この四月から新しく介護保険制度によります指定介護老人福祉施設となるわけでございますが、これにつきましては、新しい制度になることもあり、さまざまな工夫を凝らしながらその質の確保に努めてまいりたいと考えておりますけれども、例えば人員基準におきましても、今お話が出ました機能訓練ということになりますが、これもおっしゃいますように、寝かせきりにならないようにということは大変大事でございますので、機能訓練指導員の配置を義務づけることにいたしました。  ただ、これは、残念ながら、需要に応じた供給は相当厳しい状況もございますから、兼務でもやむを得ないのですが、ただし、これをきちんと配置しますと、それに加算をするというような誘導策も含めまして、そういう人員配置基準もつけ加えました。  それから、全体としてのサービスの管理でございますけれども、施設サービス計画というような考え方を導入いたしまして、計画を専門に担当する介護支援専門員、これも配置を義務づけておりますけれども、その専門員が個々の入所者、利用者のサービスのプラン、言ってみればケアプランをきちんとつくる、そして関係職員と連携をとって、常にそのサービスの状況を点検するというような内容の基準をきちんと定めました。  さらには、それらを今後、きちんと運用されているかどうかをチェックしていくというシステムが必要なわけでございますけれども、これも行政監視という観点だけでなくて、地域の方々のお力もかりながら、地域に開かれた施設あるいはサービスとなるような方向で、さらにサービスの質の向上に我々も努力をしてまいりたいと考えております。
  72. 竹本直一

    竹本分科員 今の御答弁の中で、開かれた施設、開かれたサービスというお言葉がありましたけれども、まさにその点にもっともっと留意をしていただきたいなというふうに思うわけであります。  監視の要員が、大体この介護保険は自治事務になっていますから、自治体がやるのだと思いますけれども、要員がどの程度あるのか。巡回で回って行ったとしても、行かなかった日の方が多いわけですから、全部目につくわけではない。そうなりますと、結局こういった施設について、例えば民生委員とかその他地域社会におけるいろいろなお世話役をやっている人たち、そういった人たちに、評議員というのか監視員というのかあるいは調査員というのか知りませんけれども、そういった役割を持たすなどして、変なことが行われていないような、そういうチェックをぜひともきちんとやる必要があるのではないかというふうに思います。  ところで、特別養護老人ホームや老人保健施設整備が着々と進んでいるわけでございますけれども、一つお聞きしたいのは、こういった施設整備に対してどのようなチェック体制をしいているかということをお聞きしたい。まず、平成年度の一年間に、こういった特別養護老人ホームあるいは老人保健施設等の整備が何カ所行われたかということをお聞きいたしたいと思います。
  73. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 平成年度施設整備状況でございますけれども、特別養護老人ホームにつきましては、社会福祉施設等調査報告、決まった一定の調査がございますけれども、二百二十九施設、ベッド数といいましょうか、定員数で申しますと一万六千百八十六人分ということになっております。
  74. 竹本直一

    竹本分科員 平成年度の特別養護老人ホームに対する国庫補助の実績はどうですか。
  75. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 施設整備費、設備整備費合わせまして、平成年度の国庫補助額、総額で約九百十億円でございます。
  76. 竹本直一

    竹本分科員 それだけのお金をつぎ込んでいるわけでございまして、全国各地でこういう施設ができてまいります。しかも、それに対しては大幅な国庫補助がなされているわけでございますが、その施設をつくる側を見てみますと、必ずしも社会奉仕のため身をなげうってというような人たちばかりではない。むしろ相続税対策とかあるいはその他の税金対策、あるいはお金をもうけたいと思ってやっている人もたくさんおられるわけでございます。そのことを私はいいとか悪いとか言うつもりはございませんけれども、本来あるサービスがきちんと行われなければならない、そのためにこそこういった国庫助成をやっておるわけでございますから、それに対する監視の体制というのはぜひきちんとやっていただかなければいけないなというふうに思います。  先般、予算委員会分科会だったと思いますけれども、丹羽厚生大臣にこの点を質問いたしましたら、たしか全国で三人の監視官を置いているというような御答弁をいただいたわけでございます。これだけの助成をしていながらたった三人しか監視をしている人がいないというのは、極めて片手落ちというか、不十分過ぎるのではないかということを申し上げたわけでございますが、いま一度そういった監視体制ということをきちっと充実していただく、そういうことが必要だと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  77. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 貴重な公費でございますから、この適正な執行というのは、特別養護老人ホーム関連に限りませんけれども、私どもも重々、常日ごろ念頭に置いて執行しなければならないと思っております。  特別養護老人ホームに関係しての御説明を申し上げますと、一つ大きく今回事情が変わりますのは、介護保険制度に変わるということが一つございますけれども、地方分権法の施行によりまして、こうした指導監督業務が自治事務ということになります。したがいまして、都道府県等が主にやっていただくことになりますけれども、私どもも従来、都道府県、市町村と連携をとって実施をしてまいりましたし、国としての役割を果たしていくという観点も重要でございますから、今後とも相協力して適正な実施に努めてまいりたいと思います。  具体的に申しますと、従来、指導監査の実施方針というものを定めまして、これに基づきまして実施をしてまいりましたけれども、これを全面的に見直しまして、近く市町村、都道府県それから関係方面に御連絡したいと思っておりますが、私ども厚生省といたしましても、施設に対しまして、サービスの質を含めてでございますが、介護サービス指導官というのを十三名、この四月一日に配置をいたしました。十三名でございますから、全国津々浦々というところにはまいりませんけれども、ただいま申し上げましたように、地方自治体とも緊密な連携をとりまして、遺漏のないような指導監査に努めてまいりたいと考えております。
  78. 竹本直一

    竹本分科員 全国に十三名いるという、何となく建前だけというような感じがしまして、そんなことで本当に監査ができるのか、一体どうなっているのかと言いたくなるわけです。私は、介護保険に関する事務が自治事務となったということは反対をいたしませんけれども、それはそれでいいんですけれども、それに対する監視、監督という点は、何か国の機能としてきっちりとやっていただかないといけないんじゃないかなというふうに思うわけであります。  これはほかの行政でもそうでございますが、例えば金融行政でも、信用組合の監督は自治体が行っておった。そのために、信用組合が大変な腐敗をあちこちでやる。これがもし財務局のような国の機関で監督しておれば、あそこまでならなかったのではないかということを非常に気にするわけであります。今回、行革の中で、地方分権が叫ばれる中で、逆に監督権限を本省の方に、財務局の方に戻したわけでございますが、それと同じような反省がやはり必要なのではないかなというふうに思います。  そういう中で、特に思いますのは、特別養護老人ホーム等の施設の理事長あるいは理事に、県会議員あるいは府会議員、あるいは国会議員がなっているケースがあるのではないか。そうしますと、そういった人たちがいるということは、監督する自治体の職員にとっては非常にやりづらい。これは自治体の方からも私は聞いております。したがいまして、そういった人は理事を遠慮していただく、そういう指導が必要なのではないか。  今どうなっているかということと、私の意見に対する見解をお聞きいたしたいと思います。
  79. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 現在、社会福祉法人に関しますさまざまな指導あるいは通知等におきまして、お話しのような国会議員あるいは地方議会議員が理事等の役員に就任することについて特別の定めはしておりません。  社会福祉事業に熱意と理解を有し、また法人運営に適切な能力をお持ちの方でございますれば、これは個別のケースに応じて判断をされるべきだと思っておりますので、現在におきましても、国会議員であることをもって、あるいは地方議会議員であることをもって社会福祉法人の運営に参画することは適切でないとは私ども考えておりません。  ただ、一方で、これは共通あるいはむしろ基本的なことかもしれませんけれども、社会福祉法人の運営が恣意に流れることのないようにするということで、例えば役員構成は、当然のことながら、血縁関係者が相当入るとか、あるいは、監査を担当する方については必ず一定の資格を持った一種の外部監査の人間にお願いするとか、そういったような観点で全体としての法人運営の適正化を図るということが、必要でもございますし現実的な対応だろうと考えております。
  80. 竹本直一

    竹本分科員 李下に冠を正さずという言葉がございますけれども、やはり公職にある者が疑われるような行為をすべきじゃないし、またすべき状況に自分の位置を保つべきではない、これは一般的に言われていることでございます。  私は、認可のときにそういった人たちが入ることが、監督をする立場として、行政の監督としてですよ、非常にやりにくいという状況が懸念されるのであれば、できるだけそういう方は遠慮されるような指導を厚生省として当然やるべきじゃないかと思っておるわけでございます。それについての御見解をもう一度お聞きしたいと思います。
  81. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 行政の公平性というのは当然担保されなければならないわけでございますから、運営に携わる方がどのような方であれ、法令あるいは所定の基準に基づいて、きちっとした指導監督を行うというのが行政の役割でございます。したがいまして、就任の段階でこういう方であってはならない、特に法令上当然に避けるべき条件の方は別といたしまして、お話しのようなケースを認可の段階あるいは事前にこれを排除するというようなことは適当ではないだろうと思っております。  ただ、現実問題といたしまして、その業務をきちんと遂行できるだけの客観的な条件があるかどうか、これは一つの判断材料であろうとは思いますけれども、その方のお立場ということで制限を設けるということはやはり私は公平の観点からは適当ではないのだろう、こう考えております。
  82. 竹本直一

    竹本分科員 今はそういう答弁になるのかもしれませんけれども、大きい検討課題としてよく御検討をお願いしたいなと思います。  大体時間が来ましたのでこれでやめますけれども、大野総括政務次官、今個々の具体的な問題についてお聞きいただいておると思いますが、いろいろ問題があります。しかしながら、世界的に見て画期的な試みとしてこの介護保険を実施したわけでございまして、ぜひ国民生活の一部としてきちっと根づくような施策、細かい配慮が絶対必要だと思うんです。  特に、そういう中で忘れてならないのは、人間存在そのものを常に念頭に置きながら、このサービスがどうあるべきかということをやはり考えるべきだ。つまり、冒頭申し上げましたように、大家族制度の中で生活しておる人は余りぼけない、そして幸せ感がいつまでもある。  人間というのは、一番弱いのは、老後になった場合の孤独なんですよ。私は、アメリカにおりましたときに、当時は、もう三十数年前ですが、我々東洋人に対しては余り白人の人が声をかけないようなときでも、私がおりましたアパートのロビーにおりていきますと、二、三十人の老夫婦が我々に寄ってたかって話しかけてくる。話し相手がいないんですよ。そういう状態が、老後における人間存在の一番酷な状態なんです。  したがいまして、介護を受ける状態になっても、寂しさ、孤独を味わわせないための配慮が絶対必要だと思います。こういうことをやっているからこれでいいんだ、規定ではこうなっているからこれでいいんだ、そのようなことで済む問題ではこれはないんではないか。幸せに人生を終えていくということこそ介護の一番大事なポイントだと思いますが、最後に総括政務次官の御見解をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  83. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 介護サービスの質の確保について、委員が大変御熱心に取り組んでこられたことに敬意を表するものでございます。  いろいろと今回、今までの措置から契約ということに介護保険制度によって変わることによって、サービスの質の確保へ向けて向上するということも期待しているところでございますし、また現在、介護相談員派遣事業を市町村がやる場合、サービスの質の確保の取り組みを行う市町村事業でございますが、緩やかなオンブズマン制度と申しましょうか、先ほど委員が御指摘ありました民生委員の方とかいろいろな方にお願いをいたしまして、皆さんの声を聞いて、そしてさらに質の向上を図るという介護相談員派遣事業をやる場合に、国としては援助をしてまいりたい、このように思っております。平成十二年度からそういう事業もスタートいたしましたし、今後、サービスの質の評価基準の策定につきましても、厚生省でしっかり前向きに検討をしてまいりたい、このように思っております。  そして、最後に委員が述べられました、人生、人間としていかに尊厳を保てるか、本当に介護が、形の介護ではなくて、一人の人間として本当に尊厳のある幸せな一生を全うできるようにどういう支援ができるのかということにしっかり厚生省は取り組んでまいりたいと思っております。
  84. 竹本直一

    竹本分科員 これで終わります。どうぞ頑張っていただきたいと思います。
  85. 中林よし子

    ○中林主査代理 これにて竹本直一さんの質疑は終了いたしました。  次に、栗原博久さん。
  86. 栗原博久

    栗原(博)分科員 きょうは、血液の問題と腎疾患の問題についてお尋ねしたいと思っております。  エイズウイルス事件という大変痛ましい事件が起きて、まだその大きな余韻が残っておるわけでありまして、それがどこに起因したかというと、おわかりのとおり、血液凝固因子製剤の投与によってそれが発生し、五百人以上のとうとい人命が失われていることについては、本当にざんきにたえないわけであります。きょうは、その点から、血液、輸血についてお尋ねしたいと思っています。  献血は、多くの国民の方々、現在、年間約六百万人の方々の善意のたまものでされております。それによって、とうとい人命がこれまた救われているわけであります。近年を見ますると、九年前には約八百万人の方々が献血に協力された、今は約六百万人というふうに承っておりますし、また、九年前には国民から約二百二十万リットルの献血をされていた、現在百八十五万リットルというふうに伺っております。人数が減ったことは、四百ミリ献血ということで量が一人当たり多いから減ったかもわかりませんが、しかし、献血の量そのものが確かに減っておるわけでありますから、こういうことを踏まえながら質問をさせていただきたいと思います。  私は、まず献血をされている多くの国民に対しまして、深く敬意を表したいと思います。また、天皇陛下におかれましても、毎年献血をされておりまして、今まで約二十回近い献血をされているわけでありまして、こういう中におきまして、やはりいかに献血が大事であるか、特に、献血は国民の生命、そしてまた健康の維持のために不可欠なものでございますから、当然これは国の責任によって行うべきものだと私は思うわけであります。  このことにつきましては、日本赤十字社が昨年の三月に第五十三回代議員会で委員長報告というものを出しております。その中では、献血、輸血によって、無過失の事由によって被害を受けた方への行政上の救済措置をとるべきだというようなことの法制化のことも実は報告書に出ておるわけであります。  まず、大野総括政務次官にお聞きしたいことは、献血の推進に対して国はどのように取り組んでいるかということについて、かいつまんでひとつ御答弁賜りたいと思います。
  87. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 献血の推進にどのように取り組んできたか、こういうお尋ねでございます。  我が国におきましては、輸血用血液製剤及び一部の特殊な製剤を除く血液凝固因子製剤につきましては、献血血液による国内自給が達成されておりますが、アルブミン製剤及びグロブリン製剤については、海外からの原料血漿または製品の輸入に相当量の依存をしている現状でございます。  このため、現在、平成九年十二月の血液行政の在り方に関する懇談会報告に基づき、平成二十年度に百五十万リットルの原料血漿を確保し、国内自給を達成することを目標に、毎年度、厚生省におきましては原料血漿の確保目標量を設定し、これを受け、各都道府県及び日本赤十字社の都道府県支部が中心となり、その達成に向けて献血の計画的な推進を図っているところでございます。
  88. 栗原博久

    栗原(博)分科員 今、全量賄えていないという御答弁でございました。  先ほど私も数字を申し上げましたが、国内の献血は約百八十五万リッター、海外に依存しているのが約二百三十万リットルですね。そうしますと、国内の自給というのはおかしいわけで、国内のあてがっている割合は約四五%でございます。半分以下であるわけですね。  昭和三十九年閣議決定、確かに国内で必要な血液はすべて国内で賄うという閣議決定をされておりますし、またWHOでは、自国の血液は自国民の血液によって賄えという勧告もいたしております。昭和四十九年、輸血用の血液製剤につきまして、国内血液で確保するということであったわけでありまして、それには昭和六十一年から四百ミリリットルの献血運動をしておりますし、またエイズの原因となりました凝固因子製剤につきましては、平成五年には一部の特殊なものを除いて確保されている。しかしながら、今政務次官仰せのとおり、アルブミン製剤とか免疫グロブリン製剤については、まだまだそれが賄い切れていない。これらの血液製剤の確保に向かって、やはり私は国はもっと努力せねばならぬと思うのであります。  これらの血液を、要するに昭和三十九年の閣議決定、あるいはWHOの勧告などを踏まえて、やはり一〇〇%賄えるように努力をすることが、これまた、日本赤十字社だけに依存する、あるいはまた地方自治体だけに任せるのじゃなくて、やはり厚生省みずからが先頭に立ってこれに対処せねばならぬと思うのでありまして、この点についての、国内自給について、血液の確保についてどの程度動いているか、あるいはまた、なぜ国内で賄い切れないかという問題点について、端的明瞭にひとつ御回答をお願いしたいと思います。
  89. 丸田和夫

    ○丸田政府参考人 先生御指摘のように、我が国の血液の国内自給という原則で現在取り組んでいるところでございます。  そういう意味では、先ほど政務次官の方からも御答弁申し上げましたように、我が国におきましては、輸血用の血液製剤は昭和四十八年度から、一部の特殊な製剤を除きます血液凝固因子製剤は平成六年から、それぞれ献血血液による国内自給が達成されております。  しかしながら、御指摘のアルブミン剤あるいはグロブリン剤の自給率は、上昇傾向にはございますが、平成十一年現在では、アルブミンにつきましては二七%、グロブリン製剤につきましては六六%となってきている状況でございます。  こういう中で、血液製剤の国内自給を達成するためには、献血の推進とあわせまして、諸外国と比較して使用量の多いアルブミンを中心としまして、血液製剤の適正使用を推進することが重要であると考えております。  このため、従来から、新鮮凍結血漿、アルブミン、赤血球濃厚液の使用基準、あるいは輸血療法の適正化に関するガイドライン、こういったことに基づきまして適正使用を推進してきたところでありまして、この結果、平成十年の血液製剤使用状況調査によりますれば、平成五年の前回調査に比べまして、患者一人当たりのアルブミンの使用量が四割強減少するなど、適正使用が進捗しているような状況でございます。  そうはいいましても、いろいろまだ諸外国と比べて高いわけでございますので、昨年、平成十一年の六月には、最新の科学的知見に基づきまして、従来の基準などを改めまして、新たに血液製剤の使用指針及び輸血療法の実施に関する指針を策定いたしまして、その普及を図るなど、引き続き適正使用の推進に努めているところでございます。  私どもとしましては、今後とも、献血の計画的な推進と血液製剤の適正使用の徹底を図ることによりまして、献血血液による血液製剤の国内自給の達成に努めてまいりたいと考えております。
  90. 栗原博久

    栗原(博)分科員 ぜひ強力な努力をしてください。特にアルブミン製剤、今局長は四割減ったと言っておりますが、これは本来心臓手術などに使われるべきものが、私ども日本においては栄養補給の栄養補剤として使われているなど、大変過剰使用が認められている。だから、あなたがおっしゃるとおり、これらについて適正な指導をしつつ、四割強減ったということだと思うんですが、これについて適切な指導をひとつお願いしたいと思います。  次に、私どもの田舎で、新潟県で、県の献血協議会に夏井清次という方がおられるんですが、本当に一生懸命に献血運動をやっておるんです。東京における、中央における献血の協力と田舎における協力を見ると、どうも東京の方は、都市圏は少ない、地方に比べて。では、輸血、血を使うのはどうかといいますと、極端な例だと思うんですが、ある低い県に比べて、東京とかは十倍もこれを使っている。同じ人間でございますから、こんなに血液の格差はないと思うんですよね。こういうことについて、やはり私は的確に、このような血液製剤の使用を、さっきあなたも、いろいろ指導されたから四割強減ったと言っておりますが、とうとい献血から血液製剤ができておるわけですから、やはり安易に、外国から二百万リットル以上も依存している、金で買えるんだ、そういうことであってはならないと思う。  だから、私は、とうとい命の結晶を賜っているわけですから、それについて、やはり地域的格差というものがまさしく私は物語っておると思うのでありまして、これはやはり使用についてもう一度、ひとつあなたから、どのようにされるかという決意をお聞きしたいと思います。できたら総括政務次官からしてもらうのが一番いいのだけれども。
  91. 丸田和夫

    ○丸田政府参考人 御指摘のとおり、献血について見ますれば、献血可能人口に対します献血率という統計をとっておりますが、熊本県の一一・二%から埼玉県の五・一%まで、格差がございます。  また一方、血液製剤の使用量について見ますと、一千病床当たりのアルブミン製剤の使用量、これは平成十年の十一月のデータでございますが、これを見ますと、北海道の二百五十四・五リットルから高知県の二十七・一リットルまで、非常に大きな格差があるのも事実でございます。  私どもとしましては、こういった地域の状況に応じました献血の推進や血液製剤の適正使用が効果的に推進されることが必要であると思っております。  具体的には、献血の推進につきましては、ことしの一月に、都道府県とか市町村、あるいは日赤血液センター、ボランティア団体、こういった関係者の方々に御参加いただきまして、献血推進運動中央連絡協議会を開催したところでございます。  また、平成十一年度からは、献血制度推進特別事業実施する、こういったことで、いろいろ取り組みにより得られた効果的な献血活動の事例を提供しながら、より効果的な献血活動が進められるように考えております。  一方、適正使用につきましては、平成年度から各都道府県におきまして、二次医療圏の中核病院を対象といたします血液製剤使用適正化説明会を行ってきておりますが、平成十一年度からは、血液製剤の使用量が特に多い都道府県におきまして、適正使用の普及啓発を重点的に実施しているところでございます。  以上でございます。
  92. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 委員御指摘のように、今後とも、これらの地域格差の状況を明らかにしながら、都道府県とか市町村、日本赤十字社等と連携をしつつ、また、医療関係者等の理解を促しながら、全国的な献血の推進や血液製剤の適正使用の徹底を図ってまいりたいと思います。
  93. 栗原博久

    栗原(博)分科員 ひとつよろしくお願いします。  次に、腎臓病の対策についてお聞きしたいと思います。  今、我が国の医療技術の向上、あるいはまた、腎疾患に対します保険制度の確立などによって、我が国では透析をされる方々が大変多くなっておると思うんです。ほかの国に比べまして、人口当たり、日本の国は大変高いと思うんです。  それで、透析患者は、今全国に十八万六千人有余、導入患者が約三万人。この間の死亡の方が、本当にかわいそうですが、約一万七千人近い方々。また、人工腎臓の台数が約七万台、そしてまた、透析する病院、施設などが約三千有余。それからまた、今、透析を受けている方々の平均年齢が約六十歳である。また、最近は、糖尿病などによる透析が多くなっておりますから、そういう関係で、導入患者の平均年齢が約六十三歳近いということであります。  特にまた、この透析の原因は、糖尿病などによる腎症が約三六%に近い。次が、慢性の腎炎が約三五%である。あるいはまた、腎硬化症が約六・七%、嚢胞腎が二・四%ということでありますが、先ほど申しました医学の進歩並びにいろいろな透析の技術によって、世界的にもまれな技術水準を誇っておるわけであります。  それによって、患者の数も伸びておりまして、また、一人一年間に約五百万近い医療費がかかるということで、やはりそれに対しても抑制するという措置もとられているような感もいたしますが、今、透析患者は一年間約一兆円近い金額であるというふうに承っています。  そうしますと、今、全医療費に占める割合が大変高くなっているというふうに伺っておるわけでありまして、その中で、全医療費に対しまして約三・七から三・八%が透析患者に対する医療費である。しかし、そうであっても、やはり透析の方々は、先ほどお話ししたとおり、今だんだん高齢化しておりますから、高齢化する中において、長期の透析患者の方々が合併症などについて大変危機を感じながら透析をされているわけです。  その中で、ことしの四月一日から介護保険法が出発しましたが、要するに、お年を召されれば、当然、要介護透析患者が出てまいる。ところが、全透析の一五から二〇%近い方々が、やはり透析をしながら要介護をされなければならぬというふうになっています。今、特別養護老人ホームとか老人保健施設、あるいは療養型病床群などにおいて透析治療は行っておりませんから、やはりこれに対する不安感があると思うんですね。  では、在宅についてはどうかといいますと、在宅されている要介護の方も、やはり施設まで行く間の移送の問題についても、今、移送というものが保険の対象になっておりませんから、だんだん体が不自由になってくると、移送についても不安を持っているわけであります。  こういうことについて、やはりこういうものを踏まえながら、透析あるいは腎臓疾患の方々に対して措置を講じなきゃならぬと私は思っておりまして、そういうことについてかいつまんで、厚生省の腎疾患対策についてのお考え、またこれからどうするかということについても、ひとつお聞きしたいと思います。
  94. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 今先生の方から、腎透析を含めて、腎患者さんに対する総合的な対策についてどうかという御質問でございますが、私ども、大きく分けて五つの対策を推進いたしております。  まず一番目は、今、先生もおっしゃいましたが、人工腎臓への更生医療及び育成医療の適用、二番目が、子供さんの場合もございますので、小児慢性特定疾患治療研究事業の適用、三番目が腎不全に関するさまざまな研究、四番目が人工腎臓の整備、それから五番目が腎移植の推進等、主にこの五つを中心に対策を進めておるわけでございます。  以下、今申し上げましたことに若干御説明を加えさせていただきますと、まず人工腎臓につきましては、医療保険が適用されておりまして、さらに更生医療及び育成医療の対象とされておりますことから、所得に応じてでございますが、最高月額一万円の自己負担で透析が受けられるという状況になっております。  また、二十歳未満におきます慢性腎疾患に対しましては、小児慢性特定疾患治療研究事業対象といたしまして、これもその医療費の自己負担分を公費により補助しているところでございます。  それから、腎疾患の研究についてでございますが、難治性腎疾患の研究につきましては、昭和四十八年から、特定疾患調査研究事業対象といたしまして、その病態の解明及び治療方法の開発などについて推進してきたところでございます。また、腎不全につきましては、平成元年から研究を始めておりまして、平成年度からは、厚生科学研究事業健康科学総合研究という研究の中で、糖尿病性腎症の進行の防止ですとか、あるいは、今御指摘がございました透析の合併症の予防等の研究を行っているところでございます。  それから、人工腎臓の整備、透析の機器等の整備につきましては、各都道府県において、人工腎臓の不足地域について計画的に整備をしていきますために、人工腎臓不足地域設備整備事業というのを予算化しているところでございます。  それから、最後でございますが、腎移植の推進につきましては、臓器提供者確保のための事業あるいは腎移植施設整備事業、そして都道府県の臓器連絡調整者の設置などによりまして、腎移植の推進に努めているところでございます。
  95. 栗原博久

    栗原(博)分科員 透析医療の進歩によりまして、長期の透析患者の方が、二十年、三十年近い方々が増加しております。それによって、合併症で苦しんでいる方々もふえているわけでありまして、血液透析ろ過法によりますと、いい結果が出るというようなことも言われておりますので、この施設が十分整っておりませんから、こういうことについても手当てをできるようにひとつお願いしたいと思うんです。  それで、長い透析をやりますと、視力障害が起きるとか、骨とか関節に障害が起きるとか、あるいはまた聴力に障害が起きるなど、こういう合併症での重複障害が出てまいります。骨粗鬆症とか、あるいはアミロイドの沈着などによって患者の方も大変苦しんでいる方もおられるわけであります。  そこで、私、一つ御提言というか、お聞きしたいのでありますが、食事療法です。厚生省では、特定疾患調査研究事業を行っている、先ほどちょっと御説明がございましたが、いろいろな対策の事業の中で研究をやっていると思うんですが、腎臓が軽度の不全状況から非常に重篤な不全状況にならないように、それを防止するために、要するに、腎不全の進行をおくらせるには、食事の中における低たんぱく質化、そういうことが大事だと私は思うんですね。  特にまた、透析を受けている方は働いている方も多うございますから、働きながら透析にかかりながら、かつまた食事についても十二分に注意しながらやっているわけでありますが、問題は、透析になると五百万近い経費がかかるわけですから、透析をなるべく引き延ばすということ、また、透析よりも自然の状況であれば体に負担がかからないと思いますが、そのために、食事について、病院内では当然、腎疾患に対する食事の加算部分がございますが、通院している方に、やはり私は、この食事に対します手当て、あるいは助成制度などが必要だと思うのでありますが、こういうことについてどのようにお考えであるかということについて、ひとつお尋ねしたいと思います。
  96. 篠崎英夫

    ○篠崎政府参考人 食事療法の効果につきましては、生活習慣病と呼ばれております、例えば糖尿病の予防のために大変重要なことは先生今御指摘のとおりでございまして、私ども、平成年度より、健康科学総合研究という研究の中で、糖尿病性腎症に対するたんぱく制限食の効果の研究を進めておりまして、食事療法の有効性に関しての科学的な根拠を示していただくべく、研究を今進めているところでございます。  今先生の御指摘の助成についてでございますが、食事療法という名前がつきますと、例えば外来におきましては、医師や栄養士等の専門家が個々の患者の状態に合わせて栄養指導を行うわけですが、その場合は、診療報酬上も、栄養指導の部分については評価をされております。ただ、食事そのものについて助成という今御指摘でございますが、それについては、現在の制度では大変難しいというふうに考えております。
  97. 栗原博久

    栗原(博)分科員 医療費を軽減化するべき中において、私、この食事療法はまさしく治療だと思うのですね。食事療法をやっている方は大変多額な負担です。食事療法の品物をもっと安くすれば別だけれども、高いわけなんで、今、制度上というのはわかるが、やはりそこを変えるのが政治でございますから、こういうものを踏まえながら、厚生省でも十二分に検討していただきたいと思います。  先ほど、あなたからも、移植の問題もございました。臓器移植法ができましてから、その事例を期待しているわけですが、臓器移植によっても、なかなか少ないようでございます。生体腎ですか、親族の間には約五百例があると伺っている。あるいはまた、死体腎では百四十八ですか、約百五十ぐらいあるように伺っていますが、こういう情報のネットワークというものが大変大事だと思いますので、今局長からも移植についての御回答がございましたので、とうとい腎臓の提供者の希望者もおられますから、それが速やかに希望する方に移植されるように、御努力されることを御期待、お願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  98. 中林よし子

    ○中林主査代理 これにて栗原博久さんの質疑は終了いたしました。  次に、青山二三さん。     〔中林主査代理退席、主査着席〕
  99. 青山二三

    青山(二)分科員 公明党・改革クラブの青山二三でございます。  少子高齢化が急速に進展していることに加えまして、国の一般歳出に占める社会保障費の割合もだんだんふえ続けておりまして、厚生省も予算編成には大変御苦労されていることと思います。  その中で、本年度予算につきましては、今回審査対象となっております平成年度、九年度と比べてみますと、優先順位の低かった政策課題に光が当てられております。  そこで、さらに生活者に優しい政治、安心社会の構築のために予算を配分していただきたい、そんな思いで、きょうは質問してまいりたいと思います。  きょう質問させていただきますのは、アレルギー性疾患対策についてでございます。  この問題につきましては、さきの予算委員会におきまして、丹羽厚生大臣より、有効な治療法を周知し、過剰な投薬や治療を防止することによって、その結果、医療費の負担を軽減するということで、医療費の軽減につきましてはそういうお考えを伺っておりますので、より具体的にお尋ねをしてまいりたいと思っております。  我が党は、昨年十一月、アレルギー疾患対策プロジェクトチームというのを設置いたしまして、本格的な取り組みを開始しておりますが、その中で、多くの方々から、アレルギー疾患に悩むお子さんや御自身の問題についてお話を伺う機会がございました。  患者や家族にとりましては、根本的な治療が確立されていないことはもちろん、経済的な負担が重いことも深刻な問題となっております。入院や通院にかかる交通費や医療費、包帯や寝具類などの購入費、また、特別の食事や空気清浄などの費用が家計を圧迫しているという現状を伺いまして、できるところからすぐ手を打っていくということの大切さを痛感しているところでございます。  さらに、アレルギー疾患は、異なった発症年齢や異なった原因の疾患が次から次へと発症してくることが多いという専門医の指摘がございます。それはまずアトピー性皮膚炎から始まることが多くて、その約三分の一は、数年以内に気管支ぜんそくへと移行していくようでございます。そして、気管支ぜんそくから始まった場合も、その四〇%は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎へと移行しまして、気管支ぜんそくのみで終わる例は半分にすぎないということでございます。  一たび何らかのアレルギー疾患にかかりますと、その後も何年かにわたって幾つかのアレルギー疾患に悩むことになると想像されます患者や家族の精神的な苦痛や経済的な負担は、はかり知れないものがございます。  そこで、経済的な負担の軽減を図るための措置が早急に必要であると考えております。  特に、慢性かつ重度のアレルギー疾患患者に対する費用の負担を軽減することや、医師の指示のもとで使われました食品や包帯、寝具などの購入費用を医療費控除の対象とするなど、患者の過重な経済負担を少しでも軽くする方策についてどのようにお考えなのか、まず伺いたいと思います。
  100. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 アレルギー疾患プロジェクトで大変御熱心に取り組んでおられることに敬意をまず表したいと思います。  国民の三割が何らかのアレルギーで悩んでいらっしゃるという、今や国民病ともいうべきアレルギーでございますが、厚生省におきましては、平成年度からアレルギー疾患に関する研究に取り組んでまいりました。特に、平成十二年度からは予算も大きく増額いたしまして、アレルギー疾患の発症の仕組みや治療法などの研究を促進するとともに、これらの研究成果、最新の医療技術を医療機関や患者等に普及啓発するための連携体制の構築を図ることとしております。  これらのことを通しまして、一般の医療機関において有効な医療を確保しますとともに、患者さん、またその家族の方に正しい知識を普及することによって、適切な医療の確保をしてまいりたい。今、一部には、かえって重症化をしたりというような、アレルギーの治療もなかなか確立をしていない、こういう状況でございます。  厚生省といたしましては、適切なアレルギー医療の研究、そして普及促進によって重症化を防いで、結果として医療費を大きく削減できるのではないか、まずこのことに全力を挙げてまいりたい、このように思っております。
  101. 青山二三

    青山(二)分科員 適切な治療法で患者の負担の軽減をするということでございますが、現に本当に悩んでいる患者さんがたくさんおります。今、大野総括政務次官がおっしゃいましたように、三人に一人、国民の三割が何らかのアレルギー疾患で悩んでいるというような状況でございまして、重症のアトピーとかぜんそくで悩んでいる患者、そして家族の苦しみというのは、それはそれは筆舌に尽くせないものがございます。  そこで、我が公明党の女性委員会ではアレルギー疾患対策を求める署名活動を展開いたしましたところ、短期間ではございましたけれども、一千四百六十四万三千百三十八名にも達したわけでございまして、これが、多くの人たちが悩んでいるということの一つの証明であろうかと思います。  早速、森総理大臣にお届けいたしました。森総理からは、重みを感じます、しっかり受けとめてまいります、そういう回答をいただいたところでございます。  国民の命と健康を守る厚生省といたしましては、この重みをしっかりと受けとめていただきまして、今悩んでいる方たちへの積極的な対応をお願いしたいと思います。  次に、経済的負担の軽減策を実行するために、小児慢性特定疾患治療研究事業について要望したいと思いますが、まず、この事業について簡潔に御説明をしていただきたいと思います。
  102. 真野章

    ○真野政府参考人 小児慢性特定疾患治療研究事業は、小児の慢性疾患のうち、治療によります入院が長期間にわたりますなど、医療費の負担も高額となり、これを放置することが児童の健全な育成を阻害するような疾患につきまして、研究を推進し、その医療の確立と普及を図るとともに、医療費の自己負担分の公費負担を行うというものでございます。  現在、本事業は、小児がんや慢性の腎疾患など十の疾患群約五百の疾病に罹患している児童を対象にしております。給付対象人員は、平成年度では十一万一千八十七人という状況でございます。
  103. 青山二三

    青山(二)分科員 さきにも申し上げましたけれども、ぜんそくを患っている子供の割合は年々増加をいたしまして、幼稚園から高校までの各学校段階で過去最悪となっておりますことが、文部省のまとめました学校保健統計調査でわかりました。専門医からは、実態は文部省の調査よりも多いという指摘もございまして、増加をとめる決め手がないまま対症療法に追われているのが実情でございます。  ぜんそくにつきましては、ただいま御説明のございました小児慢性特定疾患治療研究事業対象として医療費補助が受けられることになっております。この事業は、ただいま御説明がございましたとおり、小児特定疾患の治療研究を推進し、その医療の確立と普及を図ることと、あわせて患者家族の医療費の負担軽減にも資することを目的として医療費の自己負担分を補助する、こういうものであるわけでございます。  しかしながら、ぜんそくにつきましては、二十歳未満までという年齢の延長はありますけれども、連続一カ月以上の入院がこの対象条件になっておりまして、通院患者は対象外となっているわけでございます。患者家族の医療費の負担軽減にも資することを目的としているこの制度でございますので、せめて一カ月以上の長期の通院患者もこの対象に加えるということをお考えいただきたいと思うわけでございますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  104. 真野章

    ○真野政府参考人 今申し上げましたように、小児慢性特定疾患治療研究事業、これはやはり、治療による入院が長期にわたるなど、医療費の負担が高額となるというところに着目をいたしまして、何とかそういう方々に対する医療費負担の軽減ができないかということで行っているものでございます。  先生御指摘のとおり、ぜんそくにつきましては、発作による呼吸困難が繰り返して生じるなど、医学的にも重篤な患者の方々に対する給付ということを行っておりまして、一月以上の入院を必要とするということで、現在、六千三百三十一人の方が対象になっております。  これを通院の方も対象にできないかという御指摘でございますが、今申し上げましたように、この事業の趣旨その他から考えますと、今の状況でこの対象を拡大していくというのはなかなか難しいのではないかというふうに思っております。
  105. 青山二三

    青山(二)分科員 厚生省の予算が大変厳しいということで理解はできるわけでございますが、それではもう一点、こういうことで拡大していただけないかということを要望しておきたいと思います。  小児科領域に限って、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の発症年齢を累積率、すなわち何歳までに全体の何%が発症していたかということを見ますと、気管支ぜんそくの六〇%弱は二歳までに発症して、九〇%は六歳までに発症しております。アトピー性皮膚炎の九〇%は二歳までに発症しております。これらに対しまして、アレルギー性鼻炎の発症はかなりおくれておりまして、学齢期前の発症は二〇%余りでありました。そして、これらは同時に二つか三つのアレルギー疾患を併発していることもございまして、年齢が進むにつれて減少していく、こういう結果が報告されております。  そこで、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎についても気管支ぜんそくと同様にこの事業対象疾患に加えていただきたいと思うわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  106. 真野章

    ○真野政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、小児慢性特定疾患治療研究事業、これはやはり、治療による入院が長期にわたるというような、高額療養費制度はございますが、医療費負担が非常に大変だというところに着目して、そういうところの負担軽減を図ろうというものでございます。  先生御指摘のアトピー性皮膚炎なり鼻炎、これにつきましては、やはり長期にはわたりますが、一般的には治療は通院治療ということから考えますと、他の対象疾患、今回のこの事業の趣旨、それからやはり大変厳しい状況でございますので、せっかくの御提案ではございますが、なかなか難しいところがあるのではないかというふうに思っております。
  107. 青山二三

    青山(二)分科員 大変厳しいということでございますが、財政が豊かになった時点ではこういうことも実現していただきたいということを要望しておきます。  それでは次に、ことしの秋に設立することが決まっております臨床研究センターに関連してお伺いをいたします。  この臨床研究センターは、国立相模原病院に設置されることになっておりまして、これまで対症療法にとどまっておりましたアレルギーの原因物質の究明や発症のメカニズムの解明、根本的な治療法の確立など、総合的な研究の効果的推進が期待をされております。これは、まさしくこれまで我が党が要請したことでございまして、関係者ともども大変に期待をいたしております。  これまではそれぞれの分野で別々に研究や治療が行われてきたわけですが、この中心となるセンターの設立とともに、今年度からは研究者のネットワークを構築するということも聞いておりますが、その研究成果や最新の医療技術、また適切な予防や治療方法を全国的に提供する体制を早急に整えていただきたいと思います。  そして、これまで症状によっては病院の中をたらい回しにされていた患者さんたちが安心して受診できるように、各都道府県にもアレルギー対策の拠点となる病院を整備すべきであると考えておりますけれども、この件に関しまして、具体的な取り組みをお伺いしたいと思います。
  108. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 アレルギー疾患は、一つは、先ほどもお話が出ていましたように、大変患者数が多くて、慢性的な経過をたどるということが多いものですから、一般の医療機関において、身近なところで適切な治療を行えるようにすることが望ましいのじゃないか、このように考えております。このため、厚生省といたしましては、アレルギー疾患についての研究成果そしてまた最新の医療技術等の全国的な普及を図るために、医療機関とか研究機関とか研究者等による連携体制の構築を図りまして、適切な治療法の普及啓発に努めていく所存でございます。  また、患者の方が一般の医療機関において適切な医療を受けることができるようなネットワークの構築というものが必要であると認識しておりますので、こうしたことも前向きに検討してまいりたいと思いますし、また、そうはいっても、現状においてはまだまだアレルギー専門のお医者さんが少ない、どこに相談すればいいのか、そういう患者さんの悩みもあることだと思いますので、こうした悩みにこたえられるにはどうすればいいかというようなことについても、厚生省は今後前向きにしっかり検討をしてまいりたい、このように思っております。
  109. 青山二三

    青山(二)分科員 このアレルギー疾患が増加する背景には、車の排気や工場の排煙、野焼きの煙などに含まれております窒素酸化物や硫黄酸化物などによる大気汚染、そして残留農薬や食品添加物などの食生活上の問題、また住宅建材に含まれる化学物質や杉花粉の増加など、多様な環境要因が影響をいたしております。ぜんそくなどでは、天候や気圧の変化が発作を起こしやすくしているとも言われておりまして、加えて抵抗力の低下やストレスなどの肉体的、精神的な要因も絡んでいるわけでございます。  このように、アレルギーの原因となるものを特定することが難しくて、問題が複雑となっているために、残念ながら、原因の解明それから治療法の確立など、対策がおくれているというのが現状のようでございます。このために専門的な治療施設が少なく、症状によっては、先ほども申し上げましたように病院の中をたらい回しにされるわけでございまして、患者さんたちは不安な思いを抱えながら治療を受けているというのが現状で、治療を受ける施設を探すだけでも大変な苦労をしているわけでございます。さらに、アレルギー性疾患は、慢性的なために医療費の負担が多い上に、成長期の子供に多いことからも、精神面での影響も深刻な問題であると考えております。  そこで、ただいまも御説明がございましたように、アレルギー性疾患の原因の究明や効果的な治療法の研究開発、そして専門医の養成とともに、とても探すのが大変だと大野総括政務次官も今おっしゃいましたように、どこに行けばいいのか、こういう御苦労をしている患者のために、アレルギー科など専門施設の増設を早急にすべきである、アレルギー科を持つ病院を増設していただきたい、あるいは病院の中にアレルギー科を設置していただきたい、このように思うわけでございますけれども、その点につきましてはどのようなお取り組みをされておりますでしょうか。
  110. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 アレルギー科に関しましては、平成八年に医療法上、アレルギー科という名前を標榜していいということで追加されたわけでございますが、厚生省の医療施設調査によれば、アレルギー科を標榜している病院は、平成八年で九十九病院、平成九年が二百五病院、平成十年が二百四十病院と年々増加をしている状況ではございますが、厚生省といたしましても、研究成果の普及などにより、アレルギー科を標榜する医療機関の増加を委員御指摘のように図ってまいりたいと思っております。
  111. 青山二三

    青山(二)分科員 ただいま年々増加をしているということで御答弁がございましたけれども、アレルギー科を設置している病院は、ただいま御答弁のとおり現在二百四十病院でございますけれども、八千二百六十六病院中二百四十ということで、わずか三%しかないというのが現状でございますので、この推進について全力を挙げていただきたい、このように思うわけでございます。  それから次に、特に専門医の養成が急がれるわけでございます。私のところにも、患者さんやその家族の方から、専門医にめぐり会うまでの苦労を訴えるお電話やお手紙をたくさんいただいております。  その中から一つ例を挙げますと、ある大学病院で、アレルギー膠原病科というのがあるそうでございますけれども、こういう名前がつけられていても、この科の責任者は膠原病の医者でございまして、アレルギーに関する知識は全くないために、ぜんそく患者や食物アレルギー患者が適切な治療を受けられない実態がある、そんなお話がお手紙で寄せられたわけでございます。  このように、アレルギー科を掲げる医者や病院は多いものの、本当の専門医が少ないために適切な治療が行われない、こういう現状を改善いたしまして、名前だけのアレルギー科などがなくなるように専門医の養成を早急に行っていただきたいと思うわけでございますが、具体的な専門医の養成計画というのはあるのでございましょうか。
  112. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 アレルギー専門医の養成につきましては、任意団体であります日本アレルギー学会において、高い医療水準を確保するための医師の養成を目的に、認定医制度を設けております。認定医の中から、より高度な専門的診療を行うことができる医師を認定専門医制度として認定し、さらに、専門医の養成のための研修指導にふさわしい医師を指導医として認定をしておりまして、平成十一年四月現在、認定医が千六百三十九名、認定専門医が六百八十名、指導医は二百六十一名、こうなっていると聞いております。  厚生省としては、日本アレルギー学会による専門医の養成の推進、また、先ほど御質問のありましたアレルギー科を標榜する医療機関の増加により、アレルギー疾患に係る診療の推進を図るとともに、アレルギー学会ともしっかり連携協議を図りながら、専門医の養成を推進してまいりたいと思います。
  113. 青山二三

    青山(二)分科員 大変前向きな御答弁をありがとうございました。  それでは、最後の質問になりますけれども、アレルギー性疾患の中で特にアトピー性皮膚炎について申し上げますと、医療機関による治療法のほかに、日本では民間療法が百花繚乱でございます。あれもこれも試したが効果がなく、次々と新しい治療法に飛びつく患者さんやその家族のつらさは、大変なものでございます。  日本皮膚科学会が去る一月二十八日に発表いたしました調査結果によりますと、全国十一の大学病院の入院患者三百十九人のうち、不適切な治療が原因で症状を悪化させた人が百四十人と、半数近くを占めております。こうした結果を受けまして、学会では新たに治療問題に関する委員会を設置いたしまして、情報の収集や情報の公開、そして患者の相談に直接応じるというような組織づくりを進めていく予定だということでございます。  そこで、国といたしましても、このように幅広い民間療法の実態の把握とその効果についても比較研究して、情報を広く国民に提供すべきであると考えておりますが、いかがでございましょうか。また、患者から直接相談に応じる体制づくりも必要であると思いますけれども、大野総括政務次官の御見解をお伺いしたいと思います。
  114. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 御指摘のように、民間療法を含め、膨大な情報が出回っておりますが、何が医学的に正しいのかそうじゃないのか、難しいところがあるわけでございます。  厚生省におきましては、厚生科学研究費補助金免疫・アレルギー等研究事業におきまして、こうした民間療法を含めた科学的な評価研究に取り組んでいるところでございますが、これらの評価研究の成果に基づいて、診療・研究連携体制の構築を図りながら、有効な医療技術の全国的な普及を図ってまいりたいと思いますし、また、患者さんの相談にどう乗れるかというふうなことも前向きに検討してまいりたいと思います。
  115. 青山二三

    青山(二)分科員 大変前向きな御答弁をありがとうございました。  過日、日本アレルギー協会の奥田理事長とお目にかかりまして懇談いたしましたところ、奥田理事長はこのようにおっしゃいました。患者を減らすのは政策です、医者が頑張っても患者が頑張っても限界がありますということで、政治そして政策に対する大きな期待を寄せておられたわけでございます。  かつて国民病と言われましたあの結核が、国を挙げての取り組みで今日激減をいたしております。厚生省といたしましては、このたびの新しい国民病と言われますアレルギー性疾患に対する対策を、各省庁とも連携をとりながら、本当に強力にしっかりと進めていただけますように心から要望をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。きょうは大変にありがとうございました。
  116. 赤城徳彦

    赤城主査 これにて青山二三君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  117. 赤城徳彦

    赤城主査 これより労働省所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。長勢労働政務次官
  118. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 労働政務次官でございます。  労働省所管平成年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額五千三百二十億五千四百五十二万円余に対しまして、支出済み歳出額五千二百四十四億九千三百八十五万円余、翌年度繰越額十二億千五百三十九万円余、不用額六十三億四千五百二十八万円余で決算を結了いたしました。  次に、特別会計の決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに、労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆千百九十五億七百六十万円余に対しまして、収納済み歳入額二兆六百十四億九千三百二十万円余でありまして、差し引き五百八十億千四百三十九万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額一兆四千四百十八億七千九百九十六万円余に対しまして、支出済み歳出額一兆二千八百三億五千二百六十九万円余、翌年度繰越額五十六億八千二百九万円余、不用額千五百五十八億四千五百十七万円余で決算を結了いたしました。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆二千八百五十五億九千三百四十七万円余に対しまして、収納済み歳入額二兆七千二百三十九億四千七百三万円余でありまして、差し引き五千六百十六億四千六百四十四万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額三兆二千八百八十八億三千九百九十三万円余に対しまして、支出済み歳出額二兆七千百五十億二千八百五十四万円余、翌年度繰越額五十一億七千七百二十五万円余、不用額五千六百八十六億三千四百十四万円余で決算を結了いたしました。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆五千八百八十六億九千九百六十八万円余に対しまして、収納済み歳入額三兆四千七百八十億五千六百七十万円余でありまして、差し引き千百六億四千二百九十七万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額三兆五千八百八十六億九千九百六十八万円余に対しまして、支出済み歳出額三兆四千七百七十五億九千二万円余、不用額千百十一億九百六十五万円余で決算を結了いたしました。  最後に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち、労働省所管分の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額百六十一億九千五百六十二万円余に対しまして、支出済み歳出額百三十一億五千九百七十一万円余、不用額三十億三千五百九十万円余で決算を結了いたしました。  続きまして、労働省所管平成年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額六千四百八十七億二千八十六万円余に対しまして、支出済み歳出額六千三百七十六億五千六百六十万円余、翌年度繰越額十九億九千八百八十七万円余、不用額九十億六千五百三十八万円余で決算を結了いたしました。  次に、特別会計の決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  初めに、労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額二兆千五百四十二億千七百三十四万円余に対しまして、収納済み歳入額二兆七百四十五億五千四百六十三万円余でありまして、差し引き七百九十六億六千二百七十一万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額一兆四千六百六億千八百八十三万円余に対しまして、支出済み歳出額一兆三千百九十八億二千八百十八万円余、翌年度繰越額三十八億七千百九万円余、不用額千三百六十九億千九百五十五万円余で決算を結了いたしました。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆三千百十八億八千九百四十七万円余に対しまして、収納済み歳入額二兆八千二百六十九億四十万円余でありまして、差し引き四千八百四十九億八千九百七万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額三兆三千百七十億六千六百七十三万円余に対しまして、支出済み歳出額二兆八千二百十五億七千七百三十九万円余、翌年度繰越額三十億九千二百十七万円余、不用額四千九百二十三億九千七百十五万円余で決算を結了いたしました。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額三兆六千三百五億七千四百四十九万円余に対しまして、収納済み歳入額三兆五千三百十三億三千百五十五万円余でありまして、差し引き九百九十二億四千二百九十三万円余の減となっております。  歳出につきましては、歳出予算現額三兆六千三百五億七千四百四十九万円余に対しまして、支出済み歳出額三兆五千三百八億五千百二十五万円余、不用額九百九十七億二千三百二十四万円余で決算を結了いたしました。  最後に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち、労働省所管分の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額百四十二億五千七百六十七万円余に対しまして、支出済み歳出額百二十億四千四百六十八万円余、不用額二十二億千二百九十九万円余で決算を結了いたしました。  なお、一般会計及び特別会計における主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、時間の関係もございますので、御説明を省略させていただきたいと存じます。  以上をもちまして、労働省所管に属する平成年度及び平成年度一般会計及び特別会計の決算説明を終わります。  よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  119. 赤城徳彦

    赤城主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院関本第二局長
  120. 関本匡邦

    ○関本会計検査院当局者 平成年度労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項五件であります。  検査報告番号二七七号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。  これは、事業主が提出した保険料の算定の基礎となる賃金の支払い総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があったものであります。  検査報告番号二七八号は、雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったものであります。  これは、失業等給付金の受給者が再就職しておりますのに、失業等給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日をもとに再就職手当を支給していたりして、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二七九号は、雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、失業の予防その他雇用の安定を図るため、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用する労働者について休業、教育訓練または出向を実施した事業主に対して、事業主が支払った休業手当、教育訓練受講日について支払った賃金または出向労働者の賃金について負担した額の一部を助成するものでありますが、休業日に業務についていた日数分を支給対象として申請しているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二八〇号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二八一号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正でなかったものであります。療養の給付は、業務上の事由または通勤により負傷または発病した労働者に対して、医療機関において診察、薬剤の支給等を行うもので、都道府県労働基準局において医療機関からの診療費の請求内容を審査することになっておりますが、医療機関が診療費を誤って過大に算定して請求しているのに請求どおり支払っており、支払いの適正を欠いていたものであります。  なお、以上のほか、平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、労働者災害補償保険の診療費の算定について、及び平成年度決算検査報告に掲記いたしましたように、雇用保険の継続雇用制度導入奨励金の支給について、それぞれ処置を要求し、または意見を表示いたしましたが、これらに対する労働省の処置状況についても掲記いたしました。  次に、平成年度労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項五件であります。  検査報告番号二六七号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。  これは、事業主が提出した保険料の算定の基礎となる賃金の支払い総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があったものであります。  検査報告番号二六八号は、雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったものであります。  これは、失業等給付金の受給者が再就職しておりますのに、失業等給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日をもとに再就職手当を支給していたりして、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二六九号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二七〇号は、雇用保険の地域雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、雇用機会が不足している地域の雇用構造の改善を図るため、施設等の設置、整備を行って当該地域に居住する求職者等を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成したり、施設等の設置、整備に要した費用と雇用した労働者数に応じて所定の額を助成したりなどするものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いているのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号二七一号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正でなかったものであります。療養の給付は、業務上の事由または通勤により負傷または発病した労働者に対して、医療機関において診察、処置手術等を行うもので、都道府県労働基準局において医療機関からの診療費の請求内容を審査することになっておりますが、医療機関が診療費を誤って過大に算定して請求しているのに請求どおり支払っており、支払いの適正を欠いていたものであります。  以上をもって概要説明を終わります。
  121. 赤城徳彦

    赤城主査 ただいまの会計検査院指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。長勢労働政務次官
  122. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 平成年度及び平成年度決算検査報告に掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。
  123. 赤城徳彦

    赤城主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 赤城徳彦

    赤城主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  125. 赤城徳彦

    赤城主査 以上をもちまして労働省所管説明は終わりました。     —————————————
  126. 赤城徳彦

    赤城主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。栗原博久君。
  127. 栗原博久

    栗原(博)分科員 自由民主党の栗原でございます。  大変厳しい景気の中にありまして、雇用の安定に御尽力されております牧野労働大臣、そしてまた長勢総括政務次官を初めとする労働省の皆様に深く敬意を表する次第でございます。  先週末の四月十四日にニューヨークの株式市場が史上最大の下げ幅を記録したということで、世界の同時株安が懸念されておりましたけれども、十九日までには株価下落の三分の二ほど株価が回復したということでありますし、あるいはまたナスダックにおいては元値に戻ったというようなことで、一応安堵はしておりますが、これがどうなるかということに大変不安を持っております。  こういう中におきまして、バブル崩壊後、自由民主党は、金融、財政などの面におきまして、中小企業国会を開きながら、強力ないまだかつてない対策を練ってまいりましたし、特にまた、公共事業の前倒し五千億、これらも既に検討せねばならぬ時期に入っているように伺っておるわけであります。  こういうことで、何としても雇用が安定することが、国家の平静といいましょうか、国民から本当に安心感を持たれる社会をつくることであるわけでありまして、そういう中におきまして、先ほど申しましたが、大臣また長勢総括政務次官など、本当に御努力されている中で、この我が国の現下の雇用情勢をどのように見ていらっしゃるか、あるいはまた、それに対してどのように対応せねばならぬのかという御決意をお聞きしたいと思います。
  128. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 大変厳しい雇用情勢が続いてまいりましたことは、御指摘のとおりです。政府といたしましては、累次にわたって最大限の雇用対策を講じてきた次第でございます。しかしながら、景気の問題もあり、なかなか十分な改善を見ていないというのも事実でございます。  昨今に至りまして、有効求人倍率も相当程度に改善の兆しが出ておりますけれども、完全失業率につきましては、二月には四・九%という過去最高水準を記録するという事態を生じておりますし、完全失業者三百二十七万人、また百十五万人が非自発的失業者である、大変に厳しい状況にあるというふうに認識をいたしております。  景気は緩やかな改善が続いておりまして、設備投資も徐々にいい方向に行っているという自律的な回復に向けた動きが徐々にあらわれておることはいい点でございますけれども、雇用はどうしても景気の回復におくれて回復をする傾向があるということもありますので、当面厳しい状況が続くものと認識をしております。  特に、ここ数年の傾向を見ますと、三月、四月におきましては定年退職者あるいは学卒未就職者が労働市場にあらわれてまいりますので、そういうことから完全失業率が二月よりも上昇するという傾向も見られますので、さらに注意を要すると思っております。ぜひ、今後とも雇用改善に全力を挙げてまいりたいと考えております。
  129. 栗原博久

    栗原(博)分科員 今、三百二十七万人の完全失業者など、本当に厳しい労働情勢についての御説明があったわけでございますが、平成六年から大体三%以上の失業者を見ておりますし、有効求人倍率もなかなかいい方向に行っていないわけで、その中でいろいろの対策を講じておられることは私ども承知しております。  特に、長勢総括政務次官も北陸の御出身でありますが、私もそうでございます。完全失業率は北陸は全国より少ないようでございますが、規制緩和とかリストラなどで、失業率が低いといたしましても、雇用所得が大変落ち込んでいる点も私、実は感じておるわけでございます。その中で、北陸あるいは新潟を初めとするこの地区の有効求人等についてどのようにお考えであるかということをお聞きしたいと思います。
  130. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 北陸ブロックは、全国の水準から見ますと数字的には若干いい状況にあるわけでございまして、北陸ブロック、これは新潟、富山、石川、福井の四県を言っておりますけれども、二月の有効求人倍率は、全国が〇・五二倍であるのに対しまして、北陸では〇・六四倍。また、昨年十月から十二月期の完全失業率は、全国が四・四%でございますが、北陸については三・二%、こういう状況でございます。雇用保険受給者実人員の推移を見ますと、全国ではことしの二月で百三万九千九十三人、前年同月比で〇・七%減ということになっておりますのに対しまして、北陸では前年同月比で六・五%減という状況でございます。  そういう意味で、全国に比べれば厳しさが少しはいいということは言えますけれども、今先生御指摘のとおり、倒産等々の状況もいろいろあるようでございますし、こういうことはこの後どういう形であらわれてくるかということに十分注意を払い、しっかりした雇用対策にハローワークの方々を中心にして全力を挙げていかなければならない、こういう認識でおる次第でございます。
  131. 栗原博久

    栗原(博)分科員 ありがとうございました。失業率が低いからいいというわけではなくて、中身の問題もあると思いますので、その点についてもひとつよろしくお願いします。  特に、雇用環境が厳しい中で、それを改善するということで労働省は大変御努力をされておりまして、平成十年四月においては総合経済対策として緊急雇用開発プログラム、あるいはまた同じ十一月には緊急経済対策の一環としまして雇用活性化総合プランということで、百万人規模の雇用創出を目指すなど、いろいろの対策もされております。また、平成十一年六月には緊急雇用対策ということで、七十万人を上回る規模の雇用就業機会の増大をやるということで対策を練っております。また、平成十一年十一月には経済新生対策、中小企業の創業支援並びに基盤整備強化を通じまして雇用の創出、拡大、あるいはまた大規模なリストラに対する対策ということで、中小企業労働確保法に基づく助成、あるいはまた緊急雇用創出特別奨励金に基づく事業などなど、多くの今までにない対策を練っておられますが、それに対して、具体的にどのような改善措置をされているかについてお聞きしたいと思います。
  132. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 今先生御指摘のとおり、累次にわたって、何とかこの厳しい雇用情勢に対して国民の不安をなくしたい、こういう努力をしてまいりました。景気全体の環境の問題もございまして、十分な成果を上げているかどうか御議論のあるところではございますが、完全失業率等は若干の上向きの気配もありますので、下支え効果としてそれなりの成果を上げてきたものと思っております。  今後さらに、今年度は学卒未就職者の問題も大きくクローズアップされておりますので、こういう方々の就職の促進に全力を挙げてまいりたいと思いますし、また、ここに来まして、情報通信や介護分野等におきまして大幅な求人増も見られます。そういうことでありますので、こういう分野に再就職が迅速に的確に行われるように、いわゆるミスマッチの解消について、従来の助成金の活用が十分図られるように、全力を挙げて積極的な雇用対策を進めてまいりたい、こういう方針で今進めておるところでございます。
  133. 栗原博久

    栗原(博)分科員 大変かたい決意を伺ったわけでありますが、要するに、今までにない雇用対策についての重点的な予算の裏づけを持ってもろもろの事業をされておるわけですが、やはりそういうものがちゃんと事業主にわかるように、まだわからぬ方も大変多うございます、ハローワークを通じて、あるいはまた各市町村などを通じまして、こういう労働省の取り組みについてぜひひとつ、宣伝というわけではございませんが、周知徹底するように御努力されることをお願いしたいと思います。  そのほかの中小企業労働力確保法に基づきます助成の進捗状況とか、あるいはまた緊急地域、新潟県においても約四十五億ですか、交付金がございますが、そういうことについてもお聞きしたいのでございますが、きょうは時間の関係でほかの委員会の採決がございますもので、またの機会にお聞きしたいと思います。きょうは、これで私の質問を閉じさせていただきます。ありがとうございました。
  134. 赤城徳彦

    赤城主査 これにて栗原博久君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後三時十四分開議
  135. 赤城徳彦

    赤城主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管環境衛生金融公庫について質疑を続行いたします。福島豊君。
  136. 福島豊

    福島分科員 本日、私は、近年頻発いたします医療事故の問題について取り上げたいというふうに考えております。  我が党におきましても、医療事故対策小委員会を先日設置をいたしまして、どのような見直しを行うことが医療事故の予防に必要であるか、そしてまた、実際に事故が発生した場合の患者、家族の皆様の救済のためにはどのような手続が必要なのかということについて検討を進めております。それとの関連におきまして、本委員会におきまして、この医療事故対策について概括的な御質問をさせていただきたいというふうに考えております。  まず第一点目でございますが、近年頻発をする医療事故の発生の原因、これは、今厚生省におきましても研究会を設置して検討を進めておられるようにも伺っておりますけれども、厚生省としては、どういった要素がこういう医療事故に結びついていると考えておられるのか。  さまざまな要素があろうかと思います。医療従事者の教育の問題もありますし、医療現場の労働の体制の問題もあると思います。そしてまた医療器具の問題もあろうかと思います。そういうさまざまな原因が考えられるわけでございますが、まずは、厚生省としてはどのように考えておられるのかをお聞きしたいと思います。
  137. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 まず、最近相次いでおります医療事故によって、国民の医療に対する信頼は今大きく揺らいでおり、私どもは、この状況を謙虚に、また真摯に受けとめ、医療の安全性向上と信頼性回復のために一丸となって取り組んでいくことが求められていると考えております。  医療事故の背景といたしましては、今先生御指摘のように、さまざまな要因があろうかと思われますが、まず、大きな病院で分業体制が進んでいるということと、効率性と安全というものをどのように両立させていくかということが基本ではなかろうかと思っております。  したがいまして、医療事故を防止するためには、まず、申すまでもなく、職員一人一人が、患者の生命を預かっているという意識を忘れずに、安全に十分配慮して医療に従事していただくことが重要であると考えております。また、高度に複雑化した現代医療におきましては、このような職員個人の努力に依存した取り組みのみでは限界があるので、たとえ個人がミスを犯しても事故に発展させないような組織的な取り組みを進めていただくことが重要であると認識しております。  医療事故が相次ぐ背景として、このような職員の意識や組織的な取り組みが欠けているのではないかと考えておりまして、本年三月二十二日に医療関係団体にお集まりをいただきまして、厚生大臣から、積極的に取り組んでいただくよう働きかけを行ってきたところでございます。
  138. 福島豊

    福島分科員 さまざまな課題がある、そしてまた厚生省としても三月より大臣を先頭に取り組みを開始していただいたということでございます。  医療機関はたくさんございますけれども、非常に進んだ医療機関ではリスクマネジャーのようなものを置いているところもあるというふうにも伺っておりますし、ある医療機関では安全管理のためのマニュアルすらないところがあるでありましょう。これは医療機関によってさまざまに異なっているというふうに私は想像いたしておりますけれども、実際に医療機関における安全管理の体制というのはどうなっているのか。その実態について、厚生省として調査をし、また踏まえている数字というようなものがあればお教えいただきたいと思います。
  139. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 先ほども申し上げましたように、医療機関の安全管理体制というのは、組織、ベッド数の大きな、分業の進んだ病院が特に重点対象だと考えております。したがいまして、特に高度な医療を提供する特定機能病院につきましては、一般医療機関以上に安全管理体制の確立を図る必要があることから、安全管理のための組織的な取り組みを制度的に義務づけまして、本年四月から実施したところでございまして、すべての特定機能病院におきます事故防止に対する取り組みの徹底を図ることとしております。  また、この特定機能病院に対する指導の一環としまして、安全管理の取り組み状況について実地調査等を行うことにしているわけでございます。  また、特に組織的な安全管理体制の確保を図ることが有効と考えられるのは規模の大きな病院という考え方から、二百床以上の大規模病院を対象といたしまして、安全管理体制の取り組み状況について実態調査を行うこととしておりまして、現在準備を進めているところでございます。現状におきましては、必ずしもこれら大規模病院の定性的な実態把握につきましては十分ではないとも考えておりまして、そのようなことから、二百床以上の大規模病院を対象といたしまして調査を行うということにしたわけでございます。
  140. 福島豊

    福島分科員 特定機能病院につきましては、ある程度、進んだ体制、そしてまた実態の把握がなされていると思います。しかし、二百床以上の病院はたくさんあるわけでございまして、調査をするということが病院みずからの安全管理体制の見直しということにつながっていくというふうに思います。マスコミに報道されております事故は恐らく氷山の一角であろうというふうに皆感じているわけでございまして、この実態調査というものをできるだけ早く進めていただきたいと私は要望いたします。  次に、医療関係者、とりわけ医療現場におきましては医師が中心となって医療を運営していくわけでございますけれども、医師の教育において安全管理というものがどのように教えられているのか、そこのところは非常に大切な課題だと私は思っております。  私も医学部で勉強させていただきましたが、安全管理というようなことは余り教育された記憶がありません、出席率が悪かったせいかもしれませんけれども。文部省きょうおいででございますけれども、実際のところ、それぞれの医学部において安全管理というようなものについてどういう教育がなされているのか。こういう領域はアメリカが大変進んでいるというふうに私は思いますけれども、日本における実態、そしてまた、なされているとすれば、どのぐらいの大学でなされていて、どんな内容のことが教えられているのか、こういう点について具体的にお教えいただきたいと思います。
  141. 佐々木正峰

    ○佐々木政府参考人 医学部の学生に対する安全管理教育につきましては、一般に、医療管理学、病院管理学等の中で安全管理に関する授業が行われてございますが、平成年度状況で申しますと、このような形で授業が行われておりますのが七十九大学のうち五十三大学でございます。また、このほかの大学におきましても、基礎や臨床医学の各授業の中で折に触れて安全管理教育が実施されているところでございます。  また、学生が病棟において医療チームの一員として実際に患者の診療に携わる臨床実習、クリニカルクラークシップでございますが、その中においても実践的な安全管理に関する教育が実施されておりますが、このような大学は、平成年度においては七十九大学中三十四大学で行っておるところでございます。  現在、国公私立大学医学部共通のモデルカリキュラムを専門家によって検討していただいておりますが、その中におきましては、医療管理学において医療事故と医療過誤を扱うなど、安全管理に関する教育を明確に位置づけていただくことが必要と考えているところでございます。  文部省といたしましては、今後とも、各大学に対して、安全管理に関する教育が適切に実施されるよう促してまいりたいと考えております。
  142. 福島豊

    福島分科員 七十九大学のうち五十三大学ということでございますが、問題は、どういう教えられ方をしているのかということだと思うのです。数字だけで余り具体的なお話がございませんでしたが、病院管理学という講義も恐らくそれほど時間をかけていないだろうと僕は想像します。その中でも安全管理ということになりますと、教科書の中でも例えば一ページぐらいの分量なのか、数行程度の分量なのか、そんなような想像をいたします。  むしろ、具体的にこういう事例があった、こういう非常に初歩的なミスが大学病院のようなところであった、例えば人工呼吸器の加湿器に水と間違えてアルコールを入れてしまった、こういうような初歩的なことがあって人が亡くなることがあるというような事例を、医学を志す学生にきちっと教えるべきだろう、絶対こんなことはしてはいけないという一種の警告を発すべきだと私は思うのですけれども、そのような教育がなされているのかどうか、この点についてもう少し詳しく御説明いただけますか。
  143. 佐々木正峰

    ○佐々木政府参考人 具体的なケースで申し上げますと、例えば大阪大学の医学部におきましては、ヘルスケア・リスクマネジメントという講義の中で、具体的には、病歴管理とリスクマネジメント、評決からのレッスン、医事紛争の実態、日本医師会医師賠償責任保険の紛争処理の実際、医療事故及び医事紛争の基礎知識、それから医師賠償責任保険と紛争処理システムの概略等の講義が行われているところでございます。  以上でございます。
  144. 福島豊

    福島分科員 余り一つの質問だけにかかわっていますと時間がなくなりますので、以上で結構でございます。  次に、卒後教育。臨床実習の中でも、半分ぐらいの大学ですか、安全管理ということが教育されるようになったという御報告が先ほど文部省からございましたけれども、卒後教育、実際に医師として臨床現場で働くようになってからの教育も非常に大切な柱であるというふうに私は思っております。医療機器もどんどん高度化をしていくわけでございまして、生涯教育の中で安全管理ということを位置づけていく必要がある、そしてまた繰り返し繰り返し安全管理についての教育というのを受ける必要がある、私はそのように思います。  この生涯教育における安全管理ということについて、どのような体制が我が国ではなされているのか、厚生省からお聞きをしたいと思います。
  145. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 安全管理についての教育につきましては、ただいま文部省からお話がありました医師の養成課程においても重要でございますし、医師の生涯教育の中で継続的に取り入れていくことが極めて重要であるというふうに考えております。  医師の生涯教育につきましては、従来から日本医師会を初め関係学会で取り組んでいただいているところでございますが、その中で医療事故防止に関する教育を積極的に取り上げていただくよう、日本医師会を初め関係団体に働きかけを強化していきたいと考えておるところでございます。  また、厚生省自身といたしましても、医師の生涯教育の出発点と位置づけられます卒後臨床研修におきまして、医療事故防止についても、従来からも研修することになっておりますが、今日の事態を勘案いたしまして、今後その一層の強化を図っていきたいと考えているところでございます。
  146. 福島豊

    福島分科員 次に、発生してしまった場合にどうするかということなんですけれども、先日の大学病院における患者取り違え事件におきましては、その機関の中に調査委員会が設置をされて調査を行いました。こういう形が本当にいいのかなという気がいたします。  むしろ、航空機事故の調査委員会のように、第三者機関がきちっとあって、そしてまた事故が起こった場合には外部からその医療機関の中に入っていきまして、本当にどこに問題があるのかということについて徹底的に洗い出すというような形にすべきではないかという思いがいたします。  この点について、厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  147. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 現在、医療事故が発生した場合の対応につきましては、特に事故に遭われた患者さんや御家族に対する説明についての法的な制度は設けていないわけでございますが、それぞれの医療機関が当然の責務として誠意を持って対応していただくということで医療に対する信頼回復に努めていただくことが望ましいのではないかと考えているところでございます。  さらに、今委員お尋ねの医療機関における安全管理体制を評価する第三者的な機関が必要ではないかという点についてでございますが、この問題につきましては、いろいろの論点がございます。  そこで、お尋ねの医療機関における安全管理体制の評価について、行政機関が直接実施する仕組みはないわけでございますが、現在、日本医療機能評価機構によります病院評価事業におきまして、安全管理に対する取り組み等について評価を受けることとなっているわけでございます。  さらに、今第三者的な機関を設けるということにつきましては、さまざまな観点から慎重に検討していくべき課題ではないかというのが結論でございます。
  148. 福島豊

    福島分科員 厚生省の結論だということなのかと思います。  今局長は二つごっちゃにして答えられたのですけれども、一般的に医療機関の安全管理体制がどうなっているのかという評価をする場合には、医療機能評価機構、これはもっと活用していくということが大事だと思うのです。ただ、大学病院のようなところで事故が起こった場合に、それを調査するという体制は、先般の患者取り違え事件のように当該の医療機関の中に調査委員会を設置するというようなことでなくて、その外に厚生省の直轄で調査委員会のようなものがあって、それがそこに行って調査をする、どこに問題があったのかという事例として徹底的にやるというような体制をとったらどうですかと、二つ別々の話でございます。どちらにしても、第三者機関というのはいろいろな御意見があるということなのかなというふうに思います。  ただ、患者、家族に対しての説明について、法的な根拠がないということでございますけれども、これは、なされない場合も多々あるように私は聞いています。実際にガーゼを置いてきてしまったとかそういうような場合に、そのまま直接に、きちっと説明せずに再度開腹をするような事例があるようにも聞いております。これはどうしたら変えることができるのかという話を考えれば、何らかのきちっとした説明義務というようなことについて、どう定めるかは別として、関係者の合意もいただく必要があると思いますけれども、きちっとすべきことだろうというふうに私は思っております。  時間もありませんので、次に、医療事故が発生した場合に、報告義務というのもないわけですね、どういう事故が起こったのかと。これは、例えば訴訟につながるので、なかなか医療機関としてもそういう義務を持つことは回避をしたいということもあるのかもしれませんが、そういう訴訟に結びつくような形ではなくて、実際にどういうことが起こっているのかということをつかむ意味でも、医療事故に対しての情報を収集する何らかの仕組みをつくるべきではないかというような気がいたしますけれども、この点について、厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  149. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 医療事故の事実関係の把握につきましては、極めて高い専門性が必要であることから、第三者が安易な形で対応するということは非常に困難であると考えられます。したがいまして、原則的に、医療事故が発生した場合には、医療機関において誠意ある対応を行うことによって患者さんの信頼回復に努めていくということが基本であろうかと考えておりますが、医療事故に関しまして情報収集する機関の設置につきまして、いろいろ具体的な報告制度を設けることにつきましては、幾つか検討を要する事項がございます。  まず、刑法上の責任を問われかねない医療事故につきまして、果たしてその当事者である医師等関係者に正確な報告を求めることができるのかどうかという問題点。また、届け出を義務づける医療事故の範囲をどのように定義づけるか。患者さんのプライバシーにかかわる問題をどのように考えるか。さらに、捜査権を持たない厚生省が届け出の内容の正確性をどのように確保すればよいかといった問題があることから、これらの問題を慎重に検討して結論を出すべきであるというふうに考えております。私どもとしては、御提言の趣旨は十分理解できるわけでございますが、具体的にどのようにしていくかというところでいろいろ多角的な検討が必要ではなかろうかと思っております。
  150. 福島豊

    福島分科員 確かにいろいろと配慮をしなければいけないデリケートな問題はたくさんあると私も思います。アメリカで、ナショナル・ペイシェント・セーフティー・ファウンデーションですか、これはアメリカン・メディカル・アソシエーションの中に置かれておりますけれども、行政の中に置くのがいいかどうかという議論は当然あります。刑事訴追に結びつかないような形で、ニュートラルな形で情報収集をする。余り細か過ぎる話は、それぞれの医療機関の中でリスクマネジャーのようなものを置いて、インシデントレポートというような形で集めていただいたらいい。ただ、ある程度の重大な事故についてはそれを集めるという二段階に分けた方がいいのじゃないかというふうに私は思っているのです。デリケートな問題があるということはわかりますけれども、ではどうすればできるのかという観点で、ぜひとも検討を進めていただければというふうに私は思います。  また、質問が若干前後しておるようでございますが、別の観点で御質問をいたしますと、医療機器の問題ですとか医薬品の問題ですとか、こういうことについても、安全管理ということから、その製造に当たってデザインなりに関して一定の配慮があってしかるべきだ。最近、接続部をサイズを変えるとか、いろいろと動きがあるようでございますけれども、こういうものに対しても厚生省として、認可をするのは厚生省でございますから、包括的な指針といいますかガイドライン、そういうものをつくられてはどうかというふうに私は思いますけれども、この点についてはどうでしょうか。
  151. 丸田和夫

    ○丸田政府参考人 先生御指摘のように、医療事故を誘発する要因の一つといたしまして、医薬品、医療用具等医療上使用されます製品の容器とか名称とか、あるいは仕様の類似性の問題があるわけでございます。  このような物的な要因が考えられます医療事故事例を医療機関から幅広く収集いたしまして、具体的な改善策を検討しまして、医療事故を引き起こしにくい製品を医療の場に提供できるようにするために、今後速やかなシステムの構築を図ることとしておるところでございます。現在、そのための検討会についていろいろと準備している段階でございます。  今後は、このシステムの構築に際しまして、より安全な医薬品や医療用具を提供する上での基準等の策定等の必要性も含めまして、その具体的なあり方につきまして検討を急いでまいりたいと思っております。
  152. 福島豊

    福島分科員 前向きな御答弁をありがとうございます。ですから、そういうきちっとしたガイドラインを出していく場合でも、現実にはどんなことが起こっているのかという情報が集まらなければいけませんから、そういう意味で情報収集の機関を設置した方がいいのではないかという思いもあるわけでございます。  それから、保険局長にもおいでいただいておりますので、安全管理体制をどう評価するのかというところがまだしっかりしておりませんから、それを診療報酬でどう評価するかと言われても非常に困るというふうには私は思うのですけれども、今後の流れとして、きちっとした安全管理、これは人も要りますしコストも要ることですから、そういうものを確立していこうという場合には、何らかの形でそれは、入院に関しての基本的なファクターとして評価をする必要があるのじゃないかというふうに思いますが、厚生省としてのお考えをお聞きしたいと思います。
  153. 近藤純五郎

    ○近藤政府参考人 先生御指摘のように、実態を踏まえて考えなければいかぬということがございますので、なかなか診療報酬上に反映するというのは難しいわけでございますけれども、今の制度の中でも、今回の診療報酬改定の中で、MRSAの院内の感染予防対策、これはやって当たり前だ、こういうことで、やらないところには減算しますよ、こんな形を整えたわけでございますし、それから、一定の救急の医療機関につきましては、入院基本料の急性期特定病院加算というのを設けておりますが、その際には院内事故の防止対策というものを条件にして算定する、こういうことをいたしております。  したがいまして、これからさらに実態を踏まえまして、中医協におきましても御審議をお願いしたい、こういうふうに考えております。
  154. 福島豊

    福島分科員 患者取り違え事件がありましたときに、当時の宮下厚生大臣に質問させていただきました。たしか新聞に意見の投稿があったわけでございます。それは大病院の院長の投稿でございまして、看護婦の数が足りないのではないかという指摘であったと思います。当時の宮下大臣の御答弁は、いやいや患者取り違え事故があった病院は、一般の病院に比べるとより看護婦数というのは多くて、充実した体制になっておりますというような御答弁がございました。  今国会で、医療法の改正ということで、三対一の看護というようなことが言われているわけでございますけれども、三対一で本当に足りるのかという議論も一方ではあります。  しかし、なかなか、それだけ数がそろわないという意見も片っ方であります。ですから、一律に言うのはなかなか難しいのですけれども、私が現場で働いておりましたときの経験で感じますことは、忙しさも非常に波があるわけですね。  医療機関の中でも、例えば深夜から日勤帯に変わるときの申し送りをしているときなどというのは大変忙しい。この患者取り違えの事故も実はそういうときに起こっているわけです。朝の採血もしなきゃいけない、そしてまた患者も送り出さなきゃいけないというようなことで、ある特定の時間帯にはかなり凝縮された業務というのがある。そうなると、単に三対一とか何対一とかという議論ではなくて、一日の業務の中のそれぞれをちゃんと切り分けて、どういう労働の密度があるのかというようなことをきちっと分析する必要があるのじゃないかと私は思う。  そういうものに合わせて、では、どういう体制を組む必要があるのか。これは、言うは易く実際にそれを調査するというのは大変難しいことだろうというふうに私は感じはしますけれども、ぜひともこれはやっていただきたい課題だと思っております。この点についての厚生省の御認識をお聞きしたいと思います。
  155. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 先生の御指摘はそのとおりではないかと思っております。  いろいろ具体的な事故事例につきまして報告を受けておりますが、やはり決して看護婦なり医師の数が少ないから起きているということではなくて、院内の業務の実態に即した配置なり人員の体制というものを常に見直していく、そういうことが極めて重要ではないかと思っております。  したがいまして、私どもといたしましては、今後、御指摘の業務の実態に即した院内の体制というものも含めまして、各医療機関におきまして適切に対応していただくよう指導していきたいと考えておりますし、私どもが今検討しております具体的な指針などの中でもその点を強調していきたいと考えておるところでございます。
  156. 福島豊

    福島分科員 最後に、一問お聞きしたいと思います。  ISO9000というのがございます。これは、製造業における品質管理のための手続を定め、そしてまたその手続がきちっと行われているかどうかということを第三者が評価をして認証を与える、そのことによって当該製造業なり会社なりの工場がつくる品質というのは非常に保証されるという考え方でございます。  私は、医療における安全管理も同じような考え方で評価できるのではないか。単に、安全管理マニュアルがありますとか、それから安全管理委員会がありますとかというようなことだけでは本当に安全を確保することはできない、むしろ医療機関の中におけるダイナミックプロセスがきちっと保証されているということが大事だと思います。  例えば、リスクマネジャーのような人を置いて、そこに自然とレポートがちゃんと集まって、リスクマネジャーから業務改善に関しての指導がなされる、そういう一つのループがきちっと動いているというようなことを認証するような仕組み、そういうのをぜひ検討していただきたい。そういうものがありますよということをもって、日本医療機能評価機構でもいいと思いますけれども、ちゃんと安全管理についての認証を与える、それが診療報酬に結びつくというような形になれば最も望ましい形ではないかというふうに思うのですけれども、この考え方について、最後に厚生省のお考えをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  157. 伊藤雅治

    ○伊藤政府参考人 ISO9000に倣った安全管理システムにつきましては、医療の分野におきましても非常に参考になる点があるのではないかと考えておりまして、私どもとしては、今後医療事故防止対策の面におきまして、ISO9000の安全管理システムから取り入れるべきところは取り入れて、積極的にこの調査研究を進めていきたいと考えているところでございます。
  158. 福島豊

    福島分科員 どうもありがとうございました。
  159. 赤城徳彦

    赤城主査 これにて福島豊君の質疑は終了いたしました。  次に、林義郎君。
  160. 林義郎

    ○林(義)分科員 平成八年、九年の会計検査の国会での審査が行われるに当たりまして、厚生省関係につきまして若干の質疑を行いたいと思います。  大臣もわざわざお見えでございますが、監査ですから若干細かな点もありますし、官僚諸君の御答弁をしてもらっても一つも差し支えありません。基本的な方向だけ大臣からお話をいただければいいし、監査ですから、私は一々大臣がごらんになる話でもないのだろうと思います。役所の規律をどうしているかというのがこの監査の趣旨の大きな目的だろうと私は思いますので、そういった点で答弁していただきたいと思います。  厚生省関係は、言うまでもありません、まさに厚生でありますし、福祉関係の仕事をいい、したがって補助金の支出も際立って多いのであります。各省の中で補助金の額も一番多いし、項目も多いのじゃないかな、こう思っています。  こういった支出面は、当然のことながら毎年いろいろなことが指摘されております。  平成八年、九年の決算報告から指摘された項目を抜き出してみますと、第一、診療報酬の過大な支払い等医療費にかかわる国の負担が不当である、社会福祉施設整備補助金の経理が不当、老人福祉施設保護費負担金経理が不当、児童保護費負担金経理が不当、児童育成事業費補助金の経理が不当、国保の財政調整交付金の交付が過大、国保の結核、精神病に関する特別交付金を過大に算定、廃棄物処理施設整備費の契約が不当、職員による現金の着服による損害の発生、老人デイサービスに対する補助金の算定、政管健保生活習慣病予防検診の委託費の支払いが不当、老人ホーム入所者の診療報酬請求の取り扱いが不当であるというような点がずっと指摘されている。  これは、例えば八年で指摘されたら十年ぐらいには直ってもいいのじゃないか、何年かたったら項目が消えてもいいのだろうと思いますが、ずっと項目が続いている。  職員による現金の着服による損害の発生なんというのは、これはやはり役所の制度の問題ではなくて個人個人の役人の話ですから、それは確かに不当であるけれども、さあそれを直すには一体どういうふうにしてやるか、役人を全部やめさせて不当な着服をやめさせるというようなことがとてもできるわけじゃありませんから、そういった点は抜きにいたしまして、こういった問題について、基本的にいろいろと考えていかなければならないと思いますが、現実問題として、制度を運営している限り何らかの形でこういった項目が出てくることは仕方ありません。しかし、システムを改善することによりましてその発生を防止できるものもあるのじゃないかなと思います。  そこで、国民の生活に密接にかかわる行政を進めている厚生省において、これら会計検査において指摘された種々の問題について、全体的にどのように受けとめ、またどのように対応しているのか、基本的な考え方をまずお伺いしたいと思います。
  161. 宮島彰

    ○宮島政府参考人 会計検査院の会計検査で毎年度多くの御指摘を受けているということについては、まことに遺憾であるというふうに考えております。  会計検査院からの指摘事項の中では、今もお話ございましたように社会保障関係がかなり多くを占めておりまして、額的にも大きなものになっております。  主な指摘事項といたしましては、一つは保険料の徴収不足というものがございまして、これは、保険料納入義務者である事業主が従業員の被保険者資格取得届の提出を怠ったために保険の適用ができなくて、結果的に保険料徴収ができなかった。二つ目には、年金や医療費の不適正な支給ということがございまして、年金受給者が就職いたしまして被保険者になったにもかかわらず、その取得届がなかったために年金を過度に支給してしまったとか、あるいは医療費につきましては、医療機関からの診療報酬請求に対する審査点検が不十分なために過度の支払いをしてしまった、こういった事例があるわけでございます。  先生も御指摘ございましたように、厚生省の予算は国民生活に密接にかかわるものでございますし、社会保障制度に対する国民の信頼を確保するためにも、その執行を適正に行うことがぜひとも必要であるというふうに考えております。  厚生省としましては、会計検査院の御指摘を踏まえながら、今後とも、こういった関係事業主などへの指導啓発の徹底や実地調査等による実態の的確な把握、さらには審査、確認事務の適正な処理などによりまして、厳正な事務の執行に努めてまいりたいというふうに考えております。
  162. 林義郎

    ○林(義)分科員 今御答弁ありましたが、こうした指摘があったときに、不当に支出されたと指摘されたものにつきまして、返還とか賠償というような点についてはどういうふうに考えているのか。指摘を受けたものについて返済されるのか。先ほど話をしました、職員が着服をした、それは、着服したらそのままだというのじゃどうにもならぬので、着服したは金は損害賠償を請求するとか、懲戒処分にするとか、いろいろなこともあるんだろうと思います。その辺はどういうふうにやっているのか。
  163. 宮島彰

    ○宮島政府参考人 まず、今指摘のありました不適正な事項の中で、年金の不適正支給につきましては、これは直ちに被保険者資格の取得届を提出させますとともに、返還すべき支給額につきましては、今後支給される年金額からその相当額を減額して調整するという方法か、または別途返納するという方法などによりまして返還させております。ただ、返還額が大きい場合には分割返納という形で、返還が完納するまで数年間要する事例もございますが、最終的にはすべて返納させるということでございます。  それから、医療費の不適正支給につきましても、これも返還すべき額についてはすべて返還させる措置実施済みでございます。ただ、この場合も、返還額が大きい場合は同様に分割返納の計画を立てまして行うという事例もございますが、最終的にはすべて完納させるということにしております。  そのほか、補助金等の過大な交付や、先生御指摘ありました職員不正行為による損害などにつきましても、返還すべき額の全額の返還や、いわゆる損害額の全額賠償を受けております。  こういった不当な支出が生じた場合には、今後とも返還等をきちっと徹底するとともに、まず不当な支出が生じないよう事務の適正な執行に努めてまいりたいというふうに考えております。
  164. 林義郎

    ○林(義)分科員 こうした歳出の面について個別にやっていくと切りがありませんので、きょう私は歳入面にメスを入れてみたいと思います。  八年、九年の「会計検査のあらまし」に指摘されておるところによりますと、第一に、労働者派遣事業の派遣元等の事業者が被保険者資格取得の届け出書の提出を怠っているのに社会保険事務所の調査指導が不十分である。第二に、六十五歳未満の老齢厚生年金の受給権者が事業所に勤務して厚生年金に加入した場合には年金の支給を受けることは抑制する、しかもこれを社会保険事務所に届けるということになっていますが、これについて社会保険事務所の指導が不十分であるといったことが指摘されております。  第一の問題は、派遣元で健康保険を支払うのであろうから、それへの義務を課せばよい。派遣元の企業が組合健康保険に加入しているか、政管健康保険に加入しているかによって対応は違ってくる。一般的に言って前者の方が企業の負担は大きくなるであろうが、その差はあるにせよ、国民健康保険の場合に比べると、会社の負担がある分、労働者個人の負担は金額が低いと思われる。  しかし、この場合に、雇用契約でなくて、今のような雇用派遣のときには雇用契約だと思いますが、単なるアドバイザーであるとか嘱託であるという形で労働者が会社に入ってきた場合まで健康保険に入れと言い切れるかどうか、私は正直言って疑問だと思います。会社勤めが長い期間にわたる場合ならいざ知らず、短期間で終わるようなことが明らかな場合にはどうか。また、会社都合でそうなった場合まで広げて考えると、どこまで法は厚生年金や健康保険の適用を強制しているのだろうかと思います。  このような方々の社会保険適用に関して、どのような取り扱いになっているのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  165. 小島比登志

    ○小島政府参考人 社会保険の適用に関するお尋ねでございますが、健康保険、厚生年金保険の適用につきましては、派遣労働者、パートタイマー、嘱託などの名目のいかんを問わず、従来から、常用的使用関係にある者は強制適用とされているところでございます。  実際の健康保険の適用に当たりましては、当該就労者の労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を総合的に勘案して常用的使用関係の認定をすることといたしておりますが、具体的には、所定労働時間及び所定労働日数が、当該事業所において同種の業務に従事する通常の就労者のおおむね四分の三以上である者を、原則として健康保険、厚生年金保険の被保険者として取り扱うことといたしております。
  166. 林義郎

    ○林(義)分科員 ただいま、正社員の四分の三の時間の勤務を目安として厚生年金や健康保険の適用を行っているという御説明がありました。世の中を見渡してみますと、三分の二ぐらいの人もたくさんおるでしょうし、また、小さな子供がおるからというので正社員の半分程度で働いているという人もいるでしょう。私は、ばらばらだと思います。  いわゆる多様な働き方というのが労働の需要と供給の両面で求められている現状におきまして、これらの方々の社会保険の適用について、どちらかにしなければならないというのはやや窮屈な扱いではないか。思い切って、健保か国保か、選択を認めてもよいのではないかという声も耳にするところであります。厚生省として、この辺をどう考えているのですか。
  167. 近藤純五郎

    ○近藤政府参考人 先生御承知のとおりでございますけれども、我が国は国民皆保険制度でございまして、サラリーマンとそれ以外の者とにつきましては、生活の態様が異なるということとか沿革的な理由もございまして、健康保険制度と国民健康保険制度に分かれているわけでございます。  健康保険と国民健康保険の選択を認めるかどうかということでございますけれども、保険料でございますとか、あるいは事業主負担のあるなし、それから給付の内容も異なっているわけでございます。  もし自由な選択を認めるということになりますと、リスクが高い、病気がちのときには給付のいいものを選んで、リスクが低いときには保険料負担が低いのを選ぶという、一部の人だけに逆選択を認めることにもなりかねないわけでございますし、その結果、選ばれた保険者の方では保険財政の安定が損なわれるおそれも出てくるわけでございますし、選択といいましても、事業主サイドの選択と本人の選択とあるわけでございまして、事業主負担を免れる、そのために事業主が労働者に対しまして場合によっては国保に移ったらどうか、こういうふうなことを合法的に許すという形はどうかなということで、私どもはやはり、今のような四分の三ルールが適当かどうかはわかりませんけれども、区分けはきちっとする必要があるのではないか、こういうふうに考えております。
  168. 林義郎

    ○林(義)分科員 今の話に関連しますけれども、いわゆる社会保障は一般に、終戦直後には生活保護制度、すなわち救貧に始まったのです。それから国民一般を対象とする社会保険制度、すなわち防貧、貧乏であることを防ぐということに発展をしてきたものであります。  いわゆる社会保険は、そうした意味で、防貧ということですから、自立の精神を基礎とする個人観に基づいて自助を共同化したものというふうに考えてもいい。私は、政府が、貧乏だから全部救ってやるということではないものだろう、こう思うのです。  先ほど紹介した声のように、自助自立ということで、医療保険や年金についても個人の選択を認めてよいのではないか、しかし、制度としてはそれでは成り立たないので強制適用する、そうすると適用漏れが生じてしまうと、突き詰めていくと、社会保険でやっている医療や年金や介護を税方式に改めるべきだという考え方に一方では行き当たってくるのです。  ところが、例えば、医療を税方式によって保障している国としては、国民保健サービスで医療を給付しているイギリスがありますが、そこでは、医療給付の対象が限られてしまうという話を聞いたことがあります。  もう十年も前になりましょうか、イギリスではCAPDという腎臓ろ過装置が医療保険として認められませんという話を聞いたことがある。日本でも、腎臓透析をやっているのだけれども、何で腎臓ろ過装置という、持って歩くところの小さな透析の機械がいかぬのかなという話を聞いたことがあるのですが、普通の形でやる腎臓透析なら値段は安い、携帯のそれだと機械的なものがあってなかなか高いということで認められないのだ、こういうふうな話でありました。  医療技術が進歩する中で、新しいものは最初は高いのが当然であろう。これをだれが負担するか。一般的にだれでも受けてしかるべき診療ならば、税負担で賄っても結構であろう。しかし、よりよい医療であるならば、選択の自由のもとに社会保険でカバーしてもよい。さらに言うならば、さらに高度の医療、例えば何千万円もするような、アメリカに行かなければできないような自由診療は自己負担の比率をさらに高めるということにしたらどうかなという考え方が一つあるわけです。  こういうことにより、より自由な医療技術の発展にも刺激を与えるのではあるまいかと考えるが、治療行為や医療用具等の保険適用の考え方は一体どういうことになっているのでしょうか。
  169. 近藤純五郎

    ○近藤政府参考人 治療行為でございますとか医療用具等の保険適用の関係でございますけれども、治療行為等が治療上有効かどうかという有効性の問題。多くの患者が利用しているかどうか、いわゆる普及性の問題。患者に対して安全に実施されるであろうかという安全性の問題。それから、社会保険でございますので、医療費の効率的な配分というのに適しているかどうか、こういう費用対効果。こういったものを総合的に勘案いたしまして、中医協の審議を経て適否を決めているというのが実情でございます。  先生のお話がございました高度の先進医療でございますけれども、これにつきましては、高度の先進でも何千万かかっても入れているものはあるわけでございますけれども、ただ、一部の人しか扱えない、こういうものにつきましては特定療養費制度というのを設けておりまして、基本的な部分、入院費用みたいなものはまずは保険で見て、その技術料は自己負担していただく、こういう制度を設けているわけでございます。これが普及すれば、また診療報酬の改定のときに本格的に保険導入をする、こういう形をとっております。  医療用具におきましても、これは薬事法上の製造等の承認が必要でございますので、その承認を得たものにつきまして、今申し上げました有用性等に着目して適否を決めているということでございます。  先ほど先生御指摘のCAPD、携行用の腹膜透析法でございますけれども、これにつきましては、我が国においては既に保険適用になってございます。
  170. 林義郎

    ○林(義)分科員 もう十何年も前の話ですけれども、十何年前にはイギリスでもやっていなかった。だんだん技術が発達してくれば、当然に入ってくるのだろうと思った。技術の革新というのはだんだんと一般的に取り入れていくところに医療の問題がある。それを余りかたくなな形でやっていると、新しい技術の導入を拒むことになりはしないかということを心配しておるわけでありまして、こうしたことをこれからどうやっていくかということを考えていくのは、医療保険制度としても一つの大きな問題だろうと思います。  そうしたときに、医療保険を全部税で負担したらどうだという考え方でありますけれども、これを全部税で負担するということになると、いわゆる救貧であって、よりよい医療ということにはならないわけですから、それは、とてもじゃない認められないという話になってくる。だから、やはりそこは、保険でやる、最後は自己負担、こういうふうなことをミックスした形で医療の運営を図っていくというのが必要なことではないかなと私は思っているところであります。  そこで、社会保障については、時代の進歩を取り入れて、国民が納得でき、安心できるような制度にしていくことを考えていくと、社会保険方式を中心として、一方で税負担とか利用者負担を組み合わせて考えていかなければならないというふうに私は考えておりますが、財源のあり方の問題も含めて、今後の社会保障の基本的な考え方についてどう考えているのか、厚生大臣にお尋ねをしたいと思います。  申し上げますと、今、医療費が大変かさばんで、保険料の収入は少ない。医療の方はだんだんふやしていかなければいけない。医療の技術はだんだん進歩していく。特に老人がふえているから、医療の負担はだんだんふえてくる。そういったときに、これからはその辺の組み合わせをどう考えていくのか、私は、社会保障の基本問題として、あえて厚生大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  171. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 我が国の社会保障のこれまでの歴史を振り返ってみますると、林委員が御指摘のように、戦後の焼け野原の跡において、まず救貧だ、それから防貧だ。どちらかというと、特定の限定された方々に対する社会保障というのが施されていた、こういうような嫌いがあったわけでございますけれども、御案内のように、大変豊かになってまいりまして、そしてまた少子高齢化というものが大変進んできました中において、現在、年金であるとか医療であるとか介護であるとか、社会保障そのものが国民全体に一般的に普遍化してきているのではないか、私はこういう認識に立っておるような次第でございます。  こういうような認識の上に立ちまして、いわゆる年金、医療、介護などの社会保障の給付は年間およそ六十九兆円に達しておるわけでございまして、これらの費用は、国民の支え合いでございます保険料と公費との組み合わせによって賄われているわけでございます。  そこで問題は、今後の社会保障のあり方を考えるに当たりまして、私は、まず何といっても、個人個人が自立する、自立した個人ということが大切なことではないか。つまり、基本的には自助を中心に据えながら、個人がお互いに支え合う形での共助であるとか互助であるとか、社会的連帯という言葉にも置きかえられるわけでございますけれども、こういったようなことが何よりも必要なことであります。と同時に、公的な仕組みによります公助をどのように組み合わせていくか。そういう中において、いわゆる少子高齢化社会というものが深刻化しておる中におきまして、社会保障のよりよい確立というものを目指していかなければならない、このような考え方に立つものでございます。  それから、財源の問題でございますが、やはり私も委員と同じような見解に基づくものでございまして、給付と負担の関係が明確で、国民の理解を得やすい社会保険方式が、我が国の社会保障の経緯、要するに、医療にしても年金にいたしましても、これだけ国民の間に定着をしてきておる。さらに、今度スタートいたしました介護も、いわゆる事業者と要介護者が対等な立場に立って考えていく、こういうようなことを考えましても、やはり社会保険方式というのが最も適当ではないかな、こう考えているような次第でございます。例えばドイツなんかの場合には、介護保険を見ましても、全部保険料によって賄われておるわけでございます。日本の場合には給付費の半分を公費で賄っている、こういうことでございます。日本型の社会保険方式でございます。これに必要な公費を組み合わせるとともに、一定の利用者の御負担もお願いをしながら、必要な財源の確保に努めていくということが極めて現実的な考え方ではないか、こう考えております。  さらに、給付と負担のあり方、つまりどこまで公的な給付サービスを行うのか、それから増大する高齢者をこれまでどおり、いわゆる高齢者ということになりますと一律に社会的弱者であり、そして社会的弱者は経済的弱者だ、こういうような考え方をされてきたわけでございますけれども、お年寄りは確かに社会的な弱者であることはもう紛れもない事実でございます、だれしもがやがて老いて病んでいく身にあるわけでございますけれども、果たしてお年寄りを一律的に経済的弱者に位置づけていくことが適当なのかどうか。  お年寄りの中には、いわゆる高齢者の医療保険制度を受けていらっしゃる方には、一千万円も二千万円ももらっている方もいらっしゃるし、委員の周りにも、そうそうたる顔ぶれの方で三千万円、四千万円もらっている方も一回五百三十円の医療費であって、年金が三万円、四万円の方も五百三十円、こういうようなことでございますが、果たしてこういうような位置づけというのが適当なのかどうか。こういったことも私は思いきって議論をしていく必要があるのではないか。  要するに、高齢者というのは、医療費は国民医療費の中の三分の一、大体十一兆円を占めておりますけれども、大体若い方の保険料によって賄われておるわけでございます。六割か七割が若い方の保険料で賄っている。これをどういうふうに国民の皆さん方に率直に申し上げて御理解をしていただくか、こういう問題があるのではないかと思っております。  いずれにいたしましても、今後、少子高齢化に伴いまして社会保障に要する費用が増大する中で、国民の皆さん方が安心して老後を過ごせるよう、やはり国民の理解と合意を得ながら、いわゆる少子高齢化社会が本格化いたしております二〇〇〇年におきましても、安定した効率的な社会保障の構築に向けて努力していくことが何よりも大切だ、このような考え方に立つものでございます。
  172. 林義郎

    ○林(義)分科員 私と大体考え方は同じようですが、今医療費の話をいたしました。言うならば、厚生年金保険につきましても、確定給付型、最後のところになって必ずこれだけもらうという年金としてだけであるならば、高齢化社会には年金受領者の数がふえ、比較して年金の保険料の支払い者の数が減る。そこで一律に保険料を上げるのではなく、自己責任の原則を入れる、厚生年金ではなくて国民年金との選択を認める。さらには貯蓄型としても認める。場合によってはこれが確定拠出型年金ということになることもあるでしょう。  こういう多様な考え方をして、要は自助努力を十分に加味した老後の生活保障を考えるべきである。これは、厚生大臣、どういうふうに考えておられますか。  それからもう一つ申し上げますが、昨今の新聞を見ますと、企業が年金保険料の積み立てで大変だから厚生年金から撤退する、働く人は老後の保障がなくなるというような記事が出ていますが、それは基本的にはやはり社会保険の自立の精神、救貧の精神でやっていくものだろう、私はこう思っておるので、そうしたような点についてどういうふうに考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  173. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 公的な年金でございますが、これは私から申し上げるまでもなく、老後の所得保障の柱として、高齢者の生活を終身にわたりまして支える、その役割をいたしておるわけでございます。また、多様化する老後のニーズにこたえまして、より豊かな老後生活を確保するためには、私的年金であるとか貯蓄といったような自助努力、こういうものを組み合わせて老後の所得保障というものを考えていくべきだ、こういう考え方に立つものでございますが、問題は、公的年金は基礎年金の部分だけとして、いわゆる二階建て部分というものを廃止し、民営化するという意見が一部にあるわけでございます。  率直に申し上げて、高齢者夫婦世帯のモデルで、大体月額二十四万円弱ということでございますし、モデル年金の基礎年金の十三万四千円のみになる、こういうことを考えまして、私は、いわゆる公的年金そのものはしっかりと堅持して、今問題となっております、また今度の国会に提出する予定でございます四〇一kであるとか、さまざまな問題はいわゆる三階建ての部分としてチョイスをする、そういうことが現実的であって、いわゆるサラリーマンであるとか国民の皆さん方を安心させることになるのではないか、私はこういうような認識に立つものでございます。
  174. 林義郎

    ○林(義)分科員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  175. 赤城徳彦

    赤城主査 これにて林義郎君の質疑は終了いたしました。  次に、石毛えい子君。     〔主査退席、中林主査代理着席〕
  176. 石毛えい子

    ○石毛分科員 民主党の石毛えい子でございます。一時間の時間をいただきましたので、この四月から始まりました介護保険の実施を中心に質問をさせていただきたいと思います。  お願いしました質問の順序、ちょっと変えさせていただきまして、有料老人ホームの介護費用の調整、この問題から入らせていただきたいと存じますが、よろしゅうございますでしょうか。——それでは、質問をいたします。  この件に関しましては、既に私ども民主党の金田議員、そしてまた参議院では、木俣議員が質問をさせていただいておりますけれども、もう少し具体的なところで、私も詰めた点でお伺いをしたいと思います。  厚生省の方から、有料老人ホームの介護費用の調整に係る進捗状況調査、こういう調査が実施されていると伺っておりますが、これは、現在どのような進捗状況にございますでしょうか。お願いいたします。
  177. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 お尋ねの、有料老人ホームの介護費用に関する費用等の調整の問題でございますが、二月末に一度各都道府県を通じて調査をいたしました。その時点におきましては、必ずしも調整が済んだというような率が高くございませんでしたので、再度、三月末の状況を今調べております。  ちょうど介護保険制度の施行の時期と重なりまして、都道府県の作業もやや追われておりまして、今集計中の段階、あるいは確認中のところも含めてでございますが、感触的で恐縮でございますけれども、全体といたしましては、かなり調整の割合が高い率になってきたという感触を得ております。
  178. 石毛えい子

    ○石毛分科員 そういたしますと、二月末で、例えば調整が必要な施設九十八、そのうち、四パターンに分類をして、調整の考え方のみ説明済みというような分類も含めまして、何施設かという結果がございますが、これにつきましては、まだ最終的な確定はできていない、そういうお話だと今伺いましたけれども、そういうことでございますね。
  179. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 お答えを申し上げればさようでございますが、感触と申しましたが、もうちょっと踏み込んで申し上げますと、ざっと九割程度の施設では、一応調整が済んでいるという感じでございます。  ただ、正確にはもう少し精査をしてみませんと、正確な計数その他は申し上げられない状況でございます。
  180. 石毛えい子

    ○石毛分科員 厚生省が、老人福祉振興課長名で調整についての通知を出されましたのが二月十四日でございます。ある有料老人ホームのこの調整に関します、入居者の方への御説明の文書だと思いますけれども、二月に一度、御入居者の皆様へということで説明をされておりまして、その後、調整費のことをめぐりまして、三月二十四日付で「調整について」という文書が出されております。  厚生省のこの通知は都道府県の民生主管部長あてに出されておりまして、これがどういうルートで、それぞれの有料老人ホームあるいはそこに入居されている方のところにどういうふうに伝わっていったのかということは私はつまびらかには存じませんけれども、この「調整について」という文書を見ておりますと、こういうことでいいのかなという疑問を持ちます。三月二十四日といいますと、四月一日の介護保険の実施を控えましてあと一週間というところの文書になるわけですけれども、少し読ませていただきますので、通知を出されましたお立場でこの説明は妥当なのかどうかということをお尋ねさせていただきたいと思います。  まず「調整の考え方」ということが書かれておりまして、これはそれほど、特段申し上げるべきことはないと思いますけれども、二番目に「基本的な考え方」といたしまして二点。まず一点が、「入居者の皆様と締結しています入居契約を最優先に考え、現在終身入居契約を結んでいるご入居者には、新たなご負担が生じないようにいたします。」という文章。それから二点目に、「現在の介護サービスの水準を維持します。」ということが「基本的な考え方」として述べられております。  これは、事業者の方がこういう基本的な考え方を持っているということでメッセージを発したという意味では特段問題がないかと思いますけれども、こういう、ある角度から見れば入居されている方のお気持ちやお考えを誘導するようなとも言える文書を出されているということに関しまして、これはやはり全体の構成上問題があるのではないかというふうに私は考えているところでございます。ただ、この点はお尋ねをいたしましても、価値判断の相違とかいろいろございますので、この点は私の方から申し述べさせていただくということだけで、次に進ませていただきます。  「調整方法」ということで、一つ目が、「調整の方法には、一括精算と分割精算があります。」当事業者といたしましては、「介護費の一括精算は困難ですので」次の方法で「精算させていただきたいと考えております。」これはよろしゅうございますよね。御確認をお願いいたします。
  181. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 有料老人ホームにおきます介護費用等の調整というのが非常に難しい点の一つは、基本的な当事者間の契約がベースにあるというところもございます。したがいまして、さまざまな契約内容があり、一律になかなかできないという点がまずございます。  ございますが、いわゆる常識的にと考えましょうか、合理的な範囲で調整をしていただくということが必要だろうと思っておりまして、その範囲の中でまさに当事者がさまざまな手法を選ばれるということは妥当なことだと思いますので、一括あるいは分割、その辺の方法は当事者間の合意と申しましょうか、御相談にゆだねるべきだろうと思っております。
  182. 石毛えい子

    ○石毛分科員 次でございますが、このあたりから具体的な中身に入るわけです。「ご入居者が負担される介護保険料相当額は管理費請求時に減額するなどして、」「ご入居者の皆様に返還させていただきます。」あと、括弧内の文章がありまして、「(具体的な返還方法は、介護保険制度上、税法上を含め別途検討させていただきます。)」というふうになっております。これにつきましては、いかがでしょうか。
  183. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 お尋ねに対してお答えするのがなかなか難しゅうございますのは、それですべての内容が尽きることになるのか、あるいはほかのお話し合いの経過が別途あるのか、その辺の事情が必ずしも個別にはつまびらかでございませんので、お答えを申し上げにくいわけでございます。  やや一般化して申し上げさせていただくことをお許しいただけるならば、私どもの考え方としては、これまで有料老人ホームに入居される際の契約がございますけれども、ことしから新しい介護保険制度というのが導入されますので、その辺の費用調整ということですから、一たんそこで一種の、現実に精算するかどうかは別といたしまして、費用負担関係を明らかにする、明らかにしてその上でお話し合いをしていただくということが必要だろうと思います。  したがいまして、その辺が不分明のままお話し合いが進み、最終的にそれが違法かどうかという議論になりますと難しい問題がございますけれども、基本的には、そういった情報をきちんと入所者の方にお示しをした上で、それをベースにお話し合いを進めていただく、そういう意味では、金額の多寡が明確でないというような形は必ずしも望ましい進め方だとは私は思いません。
  184. 石毛えい子

    ○石毛分科員 「介護保険料相当額は管理費請求時に減額するなどして、」というこの書きぶりは、もちろん当事者間の契約でそういう話が成立すれば、それはそれでよろしいのかもしれませんけれども、介護保険制度の実施といたしましては、介護保険料は収入のラインがあります、年金収入のラインがありますけれども、年金から天引きという形が一般的になっておりますので、それに照らしますだけでも、この書きぶりは妥当とは言えないのではないかというふうに私は判断するところでございます。  それから、次に書かれておりますのが、「ご入居者が介護保険のサービスを利用された場合の一割の自己負担金に相当する金額について」は、介護サービスを利用された場合に事業者から「返還させていただきます。」こういう書き方になっております。今度は、一割の自己負担金ということについてでございますけれども、これについてはいかがでございましょうか。
  185. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 今非常に観念的な整理をいたしますと、仮に分割納付、返還というのが認められるといいましょうか、その一形態としてそういう方法が絶対にないかというと、これもないわけではなかろうと思います。それを一つの目安にして、実際に必要になった経費の方を優先的に返還するというやり方もないわけではないと思います。  繰り返しになりますけれども、そういう方法をとるにいたしましても、その前提となる当事者間の費用負担関係の骨格、金額も含めてですね、それが明らかになり、それを説明を受ける、そういう前提がございますれば、決して絶対にあり得ない方法とは私は思いません。が、そういった前提があるのかどうか、その辺が、世の中の常識的に考えて妥当な方法となり得るかどうかの一つの目安にはなろうかと思います。
  186. 石毛えい子

    ○石毛分科員 次でございますけれども、「法定代理受領サービスに同意いただけないご入居者につきましては、」有料老人ホームで「介護保険によるサービスを受けられた場合、その費用として市町村から償還払いを受けた金額相当分を」事業者に「お支払いいただきます。」これは私は明らかに間違いではないかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  187. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 まことに恐れ入りますが、ちょっとその文章の中身を十分理解し損ないました。もしお許しいただければ、恐縮でございますが、もう一度。
  188. 石毛えい子

    ○石毛分科員 代理受領を同意しない入居者につきまして、入居をしている有料老人ホーム事業者からサービスを受ける場合、その費用として、市町村から償還払いを受けた金額相当分を事業者にお支払いいただきますという文章なんです。  何とも理解がしにくいといいますか、私の常識的な理解からしますと、この有料老人ホームは、入居の際に入居者が介護費用を一時金として支払っている事業者でございますから、既に支払っていて、それで代理受領を同意しない方が償還払いを受けた場合に、その受けた費用をもう一回納めるというような文章の内容であるとすれば、これは二重払いになるのではないかと。  少なくとも、明瞭に理解し得るような形では書かれていない。私のように理解しても仕方がないのではないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  189. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 そのような文章が書かれたとしますと、先生が理解されたように理解する、二重払いになるような文章と、少なくとも誤解を生むという文章であろうとは思います。
  190. 石毛えい子

    ○石毛分科員 つけ加えさせていただきますけれども、介護保険に基づいて提供されます介護サービスには消費税はかからないということでございますけれども、民間の有料老人ホームが提供するサービスには消費税がかかるということでよろしゅうございますよね。そこをちょっと確認させてください。
  191. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 有料老人ホームが提供するサービスも、部分的にではございますけれども、一種の介護保険制度の給付というふうに認定できる部分があるわけでございます。したがって、その部分が今回調整の問題になるわけでございますが、そういう意味での介護保険法に基づくサービス、これは非課税でございます。  しかし、その他のと申しましょうか、通常の契約によって提供されるサービスは原則、課税の対象となる、こういう制度でございます。
  192. 石毛えい子

    ○石毛分科員 そういたしますと、「調整について」というこの内容につきまして入居されている方に説明される場合には、介護保険に基づくサービス提供部分につきましては消費税も返還しますという、その文章が入っていないとおかしいのではないかと判断いたしますが、いかがでございますでしょうか。
  193. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 率直に申し上げまして、先ほどと類似のお答えになるわけでございますが、どこまで全体を説明され、その中のどの部分が欠けているかというのがわかりませんと、ちょっとお答えのしようがないところがございます。例えば、税との関係がもし生じるとするならば、そういったことも含めて適切な御説明をするのが望ましいとは思います。  ただ、今お読み上げになった文章がそこのすべての資料なのかどうか、その辺も正直わかりかねますので、確定的なと申しましょうか、断定的なお答えは、することが難しゅうございます。
  194. 石毛えい子

    ○石毛分科員 「調整額について」という項目もございます。調整額は介護費残高掛ける介護保険対応サービスの割合ということで、この事業者の場合ですけれども、調整額が三億五千四百万円。介護費残高は十億一千万円、それに掛ける介護保険対応サービスの割合ということで〇・三五というふうになっております。  この〇・三五という割合の見方につきましては、参議院の審議で、民主党の木俣議員が、幾つかの有料老人ホームにお問い合わせになられて、三五%という同じ回答が返ってきたのはある意味では独占禁止法違反ではないかという趣旨の御質問をされておられました。私はきょうはそのことはおかせていただきますが、三五%を掛けまして調整額は約三億五千四百万円というふうに記載されてございます。  それで、厚生省がお出しになられている通知を拝見してまいりますと、通知の中の「介護費用の調整に係る主な疑義照会」の問四のところに、これに触れるところがございます。  これを読みますと、「各入居者に係る調整対象額とその考え方を明らかに」ということで、お一人お一人につきまして、調整額、つまり介護費用として前払いをしている部分と、もし介護保険からサービスを受けるようになった場合に代理受領で事業者側が受け取るその額との調整は、一括しての金額ではなくて各入居者にというふうに記載されていると、私は通知の方を理解するわけでございます。  お入りになった方の年次によりまして介護費用の支払い金額も、この事業者の場合に具体的にどのように違っているかということは私は存じませんけれども、一般的に考えれば違ってきているというようなことも当然あり得るわけですから、一括しての金額というのは明らかにおかしいのだと思いますけれども、それは、この事業者が出されているこの文書には記載されておりません。その点についてはいかがでございましょうか。
  195. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 有料老人ホームに入居される際の契約書、ここに戻らざるを得ない部分が一つはございます。そこで明示的にどのような契約であったのか。御案内のように実は相当さまざまなパターンがございますので一律に申すことも適当ではないのでございますが、ここで、通知及び質疑応答で申し上げておりますのは、やはり原則的には、説明する際の少なくとも資料としてお一人お一人計算をしてみる、そういう手順が必要だろうと。  しかし、その一方で、主として大部分の有料老人ホームでは、入居の際にお一人お一人のコストを計算して入居金を決めているわけではございませんで、言ってみれば共通部分というのはどうしても出てまいります。そういう部分もございますから一律にはまいりませんけれども、そういう作業をした上で御理解を求めるというのが手順として妥当だろうということを考えております。  したがいまして、最初から一括してそれがすべての答えというやり方は、私どももいかがかなと。少なくとも、ここで想定しております質疑応答では、好ましくないというふうに答えをいたしておるわけでございます。
  196. 石毛えい子

    ○石毛分科員 厚生省が「有料老人ホームの介護費用の調整に係る進捗状況調査」をなさっておられます。それで、この調整をめぐりまして幾つかの実施段階というのを分類されていて、例えばその一つに、「調整の考え方及び調整対象額について説明し概ね合意」何施設というような分類がございます。  私がきょうここで問わせていただきましたこの施設は、幾つかのグループがある有料老人ホームでございまして、そこではもう合意がされているようでございます。そちらの事業者につきまして一体どういう内容の情報提示がされたのかということを私は確認しておりませんので、一概には申し上げることはできませんけれども、今指摘させていただきましたこの文書を見ますにつけて、「調整の考え方及び調整対象額について説明し概ね合意」というこの中身は一体どうなんだろうというふうに思わざるを得ないのでございます。  冒頭申し上げました点に少し戻りますけれども、もしも私が入居している一人であったとしますと、新たな御負担が生じないようにいたしますとか、現在の介護サービスの水準を維持しますということを初めに言われてしまっていれば、多少わからない点がありましても、まあいいかと思うというのは往々にしてありなんだというふうに思うわけですけれども、そうしたことは本当は、それでも合意したのだから契約契約だと言えばそれまでなのかもしれませんけれども、この「調整の考え方及び調整対象額について説明し概ね合意」こういう施設でも、私はかなりいろいろな問題が含み込まれているのでないかということを危惧するわけですけれども、いかがでございますか。
  197. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 ただいまお取り上げになっておられます施設につきましても、率直に申しまして、その個別事例につきまして私どもは詳細を承知しておるわけではございませんから、お答えも幾つか、仮定と申しましょうか、一般的なお答えを申し上げたわけでございますが、私ども、一番この問題についての大事な点は、きちんとした説明をする、それは、例えばその記録を残すというようなことも含めまして、手順が大事なんだろうと思います。  と申しますのは、ベースが契約という性格もございますので、個々の調整はそれこそ、公序良俗に反しないと言うと言い過ぎなのでしょうか、合理的な範囲というのはある程度幅があるものと思いますので、それを内容に踏み込んでチェックするというのはおのずから限界がございます。しかし、その手順というのはきちんとするべきだという考え方で、都道府県を通じて指導もお願いし、各有料老人ホームにも徹底をお願いしておるわけでございます。  したがいまして、個々の内容の適、不適まで踏み込めるかどうかということになりますと、私はそう簡単ではないと思いますけれども、そういう手順がきちんととられるかどうか、これは都道府県を通じた調査あるいは指導という局面で十分にお願いをしたいと考えております。
  198. 石毛えい子

    ○石毛分科員 手順といいますのは、きちっと説明したかどうか、そういうことを意味しておっしゃられたのでしょうか。内容まで踏み込めるかどうかというのは、少しそこまではというふうにおっしゃられたと伺いましたけれども、手順と内容とどういうふうに区分けをいたしますのでしょうか。
  199. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 多少言葉が足りませんでしたので、補足をいたしますと、内容の適、不適を、最終的にといいましょうか、行政が適、不適まで踏み込むにはかなりの限界があると思いますけれども、その手順としての説明は、十分内容が明らかにされたもので説明をされる必要があるという意味では、当然手順の中に内容も含まれると考えております。
  200. 石毛えい子

    ○石毛分科員 私はこのことに関しましてつくづく思いますのは、恐らく情報が事業者の方からしか御入居者の方に知らされていないということ。つい先ごろ消費者契約法が成立いたしまして、御出席になられていらっしゃいましたけれども、情報の非対称性ということが大きな今の社会的な課題になっていて、十分に消費者が情報を知らなければ対等な立場で契約を結ぶことができない、そうした時代を迎えていて、介護保険で、まさにそうした現代の課題がこの件をめぐって起こっているというふうな認識をせざるを得ないのだと思います。  情報が事業者の方から御入居者へということで一方向でしか流れていないとすれば、これはどんなふうに考えたらいいのでしょうか。  例えば、有料老人ホーム協会はこの件に関しまして、有料老人ホームに入居されていらっしゃる方に何らかの、厚生省がお出しになられた通知を直接にお示ししているのでしょうか。  あるいは、調整の考え方の一つとしまして、精算の方法ですけれども、介護費用というのは相互扶助の考え方に立ちまして一時金を払っているわけですし、介護保険は介護保険でまた国の制度としての相互扶助という形でつくっているわけですから、その保険数理の計算の仕方は違いがあるかもしれませんけれども、介護は入居している有料老人ホームで指定事業者としてしていただいて、介護を受けた場合の介護報酬が支払われてきたら、その介護報酬は御入居者の方たちが全部均分してバックしていただくという考え方も一つの選択肢としてあり得るんだろうというふうに思います。もちろん、事業者の方と御入居者の方がお話しされて、それは納得できないと言われればそれはまた違う選択になるのかと思いますけれども、選択肢の一つとしてはあるんだろうと思います。  その選択肢は厚生省が出された通知の中には入っていないというふうに私は考えておりますけれども、そうしたことも含めまして、情報はもっと、事業者の方と入居されているユーザーの方とが対等に持たなければならない。にもかかわらず、情報は事業者の方が持たれて、一方向性でしか出されていない、これは非常に大きな問題です。しかも、出されている情報が先ほど御指摘させていただいたような情報ということになれば、これは明らかに情報のミスリードだというふうに申し上げざるを得ないんだと思います。  例えばの話ですけれども、有料老人ホーム協会ですか、これは老人福祉法の中に規定されているパブリックな協会だと思いますけれども、ユーザーの方に対してどういう情報をお出しになっていらっしゃるのかということを、これは質問通告していない具体的な中身で恐れ入りますけれども、お答えいただけたらと思います。
  201. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 おっしゃいますように、行政の立場からもあるいは今の有料老人ホーム協会の立場からも、事業者経由で情報を提供するという手法が簡便でもございますし、徹底もするということで、現実にはどうしてもそういう手法がとられることが多うございます。  有料老人ホーム協会が今回の問題について、私どももいわば相互に協力しながら、やってまいりましたことは、法律の専門家あるいは会計の専門家も配置をいたしまして、法律的な相談も含めまして、有料老人ホーム協会が御相談あるいは苦情を受け付けるということは、私どもも一緒にそういう体制をつくってもらったわけですけれども、当然その中には、入居者の御相談も受け付けるということになっております。  それが入居者に伝わらなければまた意味がないわけでございますが、それは、事業者を通じてそういうことがあるということを十分徹底してくれということもあわせてお願いいたしましたし、専門家ではなくて一般の方々が読んでも読めるようなパンフレットのようなものも準備をいたしました。  おっしゃいますように、お一人お一人に十分詳細な情報が伝わるかといいますと、どうしても接点に立ちます事業者の方に、あるいはその誠意にゆだねる、お任せするという部分がゼロにはできないわけですし、相当大きくならざるを得ないと思っておるのでございますが、事業者を通ずる、私どもの立場でいえば指導、老人ホーム協会からすれば傘下の団体に対する指導、協力依頼ということをさらに力を入れてやっていく必要がありましょうし、契約というこれからの社会において、できるだけ消費者が的確な情報を得るための努力というのは、言うまでもございませんけれども、必要な、大事なことだろうと思っております。
  202. 石毛えい子

    ○石毛分科員 もう一点、事実関係をめぐりましてお尋ねをいたしたいと思います。  これはある県の健康福祉部から出されている各有料老人ホーム設置者あての文書ですけれども、この介護費用の調整につきましては入居の方から同意を得ること、そういう通知も中身にございますけれども、その同意をめぐりまして、こういう文章がございます。当該ホームの方針を十分に説明し、大部分の同意があれば、一部同意しない入居者があっても方針決定に差し支えはない。そういう文書があるんですけれども、これについてはどのようにお受けとめになられますでしょうか。
  203. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 数多い入居者の方々には、いろいろな御判断がございます。そういたしますと、こうした問題はいずれ整理をしなければならない。できれば実は介護保険法の施行前にと思ったわけでございます、それはなかなか難しいといたしましても。  全員の方が同意しませんと、なかなかスタートできない、その方との関係では残ります、同意をされない方との関係という意味では残りますけれども、そのほかの方々に対する処理処理ともいいましょうか、対応ができないというのも困るわけでございますから、いずれにいたしましても、個人、同意をされていない方との関係は残るわけでございますので、それを前提に全体の処理を進めるのはやむを得ないというのは、これまた、私どももやむを得ない進め方だと思います。
  204. 石毛えい子

    ○石毛分科員 今の御答弁は、これはなかなか微妙にして難しい問題だと思いますけれども、相互扶助で、マクロで算定しました介護費用を介護保険からの給付としてどう調整していくかということですから、どうしてもお一人お一人は、何らかの考え方を基準に、均分といいましょうか、あるいは均分に近いような形で結論を出していかざるを得ないというわけです。そのお一人なりお二人なりが最終的にまだ納得できないと言われましたときに、九八%の方が納得されていれば、必然的にそのお二人をめぐりましてはどうするかという課題は残るわけでございますけれども、その方につきましては、また別の方法をとるということもあり得るかと思います。  今の御発言を伺いまして、何人かもし同意をしない方がいらっしゃれば、その方につきましては重ねてどういう方法をとるかという協議を進めていくということであって、多数決をもって決めていくということではないという理解でよろしゅうございますね。
  205. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 そういう努力を事業者側はすべきでありますし、それが望ましいことでもありますし、事業者の責務だろうと私は思っております。
  206. 石毛えい子

    ○石毛分科員 そこで、大臣にお尋ねしたいと思います。  この有料老人ホームの介護費用の調整をめぐりまして、私たち民主党の金田議員が厚生委員会で質問をされました折、大臣の御答弁で、「有料老人ホームと利用者との契約」、間をちょっと抜かせていただきますが、「さまざまな問題点がこの中にあることも十分に私も承知をいたしておるような次第でございます。」と。そして「有料老人ホームの運営につきましては、」「入居者の意見がホームの運営に適切に反映されますように、」あるいは「身元の引受人の代表であるとか、それから第三者的立場にある学識経験者などから成る運営懇談会の開催などについて指導を行っておるわけでございますし、今後も都道府県などを通じまして指導を徹底していきたい、このように考えております。」と御答弁をなさっていらっしゃいます。  今回、私は有料老人ホームの介護費用の調整をめぐって質問をさせていただきましたけれども、これから、例えば有料老人ホームだけでなくても、入所施設に長い間御入居になられていらっしゃる方で入居の途中で仕組みが変わったというようなことですとか、そういう問題が起こってきたときも、情報がどのように届くかということは非常に大きな課題なんだろうというふうに思います。  一般的には、介護保険に関しまして、どのような指定事業者を選択するかというような情報は、今いろいろなところで工夫もされているようでございますけれども、閉鎖空間、言葉は必ずしも適切ではないかもしれませんけれども、要するに閉ざされた空間の中に長く生活をなさる方は、どうしても情報に対するアクセスがしにくい。しかもその場合に、どこから情報が来るかといえば、事業者の方から来るということが一般的になってしまって、これは往々にして情報の格差を生みがちだ、こういう危険性は免れがたいと思うのです。  これから介護保険が本当に動き始めていくときに、この問題はやはりとても重要な問題だと思いますけれども、大臣、これはどういうふうにクリアしていかれるおつもりですか。お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  207. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほど来、石毛委員のお話をお聞きいたしておりまして、また金田委員がさきに御質問をなさいました問題等につきまして、なかなか実際問題、あくまでも個人と有料老人ホームの契約というものに果たして私どもがどこまで介入することが適当なのかどうか。基本的にはやはり民事の不介入という立場でございまして、私どもは、基本的にはまず、できるだけ事業者と、そこに入居をなさっていらっしゃる方との間において円満に話し合いをつけるということが望ましいと考えておるような次第でございます。  そこで問題は、御指摘のございましたように、確かに、特定の施設の中に入居をしている場合に、今回の介護保険制度の中で、民間を含めたさまざまな事業者が参入してきておるわけでございますけれども、その選択の幅がおのずと狭まってくるではないか、こういうような問題があるわけでございます。  私どもは、当然のことながら、あくまでも入居者の便宜といいますか便益といいますか、こういうことをまず優先的に考えながら、こういった問題についても、できれば開かれた施設、一般的な話で恐縮でございますけれども、情報もできるだけ数多く施設に流していく。そして、施設施設によっておのずと若干異なる面があるかもしれませんけれども、一般論として言わせていただきますならば、もし入居者と事業者との間の契約がそういうようなサービスという問題について一応白紙になって、どなたであっても選ぶことができるというふうになった場合には、幅広い選択ができるような環境づくりを私どもはさせていただかなければならないと思います。  ただ、一般的に、今委員も御指摘があったように、これまでの事業者と入居者の関係とか、さまざまな問題がございますので、私どもは、個々のケースについて今ここで余り立ち入ったことを申し上げるということは適当ではない、こう思っておるような次第でございます。  ただ、先ほど来の議論をお聞きいたしておりまして、この有料老人ホームの入居者と事業者との関係には介護保険を契機にいたしましてさまざまな問題が生じてきておるということも紛れもない事実でございまして、私どもはこの問題を大変重要に受けとめまして、いずれにいたしましても、入居していらっしゃるお年寄りが困った状態にならないように、私どもができることにつきましては最善のお手伝いをさせていただく、こういうような立場でございます。
  208. 石毛えい子

    ○石毛分科員 もう一度お尋ねさせていただきたいと思いますけれども、介護保険の被保険者、あるいは広く介護サービス、福祉サービスを御利用になる方、その広いマーケットの中で、今申し上げましたように、生活空間が情報という観点から見ると狭まっているというような状況、あるいは御高齢の方でなかなか一般的な情報に接するチャンスが少ないというようなこと、自由に飛び回って自分で品定めをしたり、サービスについてのチェックをしながらサービスを自分で受容していくという関係にはなかなか立ちがたい、こういう介護とか福祉とかには、医療もそういう側面があるかと思いますけれども、そういうユーザーとしての特質、特徴があるんだろうというふうに思います。  そういう特徴がある事業者の方と利用者の方との関係を調整していく、その調整の社会システムをつくるというのは、やはり政府の責任であるのだろうというふうに思うわけです。ですから、今大臣は民民の関係というふうにたしかおっしゃられたと思いますけれども、民民の関係が対等に成り立つための環境整備をするところに公の責任があるのだろうというふうに私は思うわけです。ですから、情報の非対称性、情報格差があるということが明瞭であれば、その格差を埋める手だてをどうつくるかということが公の責任としてあるのではないでしょうか。一般的に、情報を得なさいというふうに言っても、なかなか無理なのではないでしょうか。この点、いかがでしょうか。
  209. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 非常に難しい御質問だと思います。  有料老人ホームにおきます介護サービスについて、利用者との間でどういうようなことが結ばれているのかとか、どういうようなサービスがなされているのかとか、そしてまた一番大切なことは、そこに入居している方が果たしてそれで満足なのか不満足なのか、さまざまな問題があるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そういった問題を含めて、いろいろさまざま、要するに竹で割ったようにすべて御破算にして、そして新たに介護保険制度を導入するというようなことは難しい面が多々あるのではないか、このように私なりに考えておるわけでございます。  やはり一つ一つ全般的に、それぞれの有料老人ホームに入居していらっしゃるお年寄りの皆さん方の実態というものを把握しながら、そういう中において、あくまでも民事は不介入でございますけれども、私どもとしてお手伝いをさせていただくことについては当然ながら一つの方向性というものを出して、いずれにしても大切なことは、これまで多額のお金を払って有料老人ホームに入った方々が、この介護保険制度が導入されたことを機に、何かトラブルが起きたり、十分なサービスができなくなってしまったり、こういうことがないように最大限努力をしていきたい、このように考えております。
  210. 石毛えい子

    ○石毛分科員 確かに民事不介入なんでしょうけれども、介入しなくてもいいような状態を環境整備するというのは、やはり公の責任ではないでしょうか。その環境整備の中で、十分に事業者の方と利用者の方のある意味での、この場合はまずは情報だと思いますけれども、情報の対等性が確保されまして、その上で起こってくる何かの事案につきましてはそれは民事不介入なんでしょうけれども、少なくとも条件の対等性をつくるところまでは公の責任で、とりわけ介護保険制度をスタートさせて新しい制度が動き出すというこの時期であれば、余計にその条件整備をするというのはやはり公の責任としてあるのだろうというふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  211. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 あくまでも事業者がどういうような姿勢で施設の運営を行っていくのか、これがまず一番の大きなポイントではないかと思います。そして、それと同時に、当然のことながら、そこに入居していらっしゃるお年寄りの皆さん方がどういうような、その施設に対する満足度なり不満足度とか、そういうものを持っているのか、こういうことでございますが、個人的な見解として申し上げさせていただきますならば、できるだけ、その施設においても、委員からも御指摘がありましたようなさまざまな、いわゆる事業者なりの情報というものが的確にその施設に入居しているお年寄りたちに把握できるような状況が望ましい、私どもとして、そのためのどういうようなお手伝いができるか、こういうふうに考えているような次第でございます。
  212. 石毛えい子

    ○石毛分科員 恐縮ですが、今大臣が御答弁くださいました最後の方の部分が、私とすればよく理解できなかったのですけれども、端的に、大臣にはちょっととどめていただきまして、局長にお尋ねしたいと思います。  例えば、有料老人ホーム協会を通じて、今回の調整に関しまして御利用者の方々に、この問題に関しましてはこういうことなんですという説明と、それから方向性としては幾つかこういう方向があるというふうに考えられますと、どこまで具体的にするかというのはまたいろいろあるかとも思いますけれども、そういうことを、例えば有料老人ホーム協会を通じてユーザー、利用者、御入居者の方に何らかの形で情報が届くようにする、そういう工夫はしていただけるものなのかどうなのか。大臣が最後におっしゃられました御利用者の方に届くようなというそのお言葉をいただけば、例えばそういう方策が一つ考えられるかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  213. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 先ほどもお答えをさせていただいたわけでございますが、有料老人ホーム協会といたしましても、入居者の方々に必要な情報が届くという努力はしてきてくれておるわけでございます。  こういう表現が適当かどうかわかりませんけれども、有料老人ホームに入居されておられる方々は、知的水準と申しましょうか、大変高い方が多いケースもございますし、運営委員会、運営協議会のようなものも設けられております。したがいまして、それなりの状況を把握しておられると私どもは基本的には理解をいたしておりますが、今の具体的なお尋ねでございますから、これまでの同協会の実施してきたことをもう一度確認いたしますし、協会として何ができるかというものを私どもからもう一度御相談をしてみて、必要があれば御協力を仰ぐということも検討させていただきたいと思います。
  214. 石毛えい子

    ○石毛分科員 ぜひとも具体的な、再検討というふうに申し上げたら言葉が少し過ぎるのかもしれませんけれども、老人福祉法に有料老人ホーム協会は規定されているわけでございますし、有料老人ホームに関しましては都道府県知事が指導監督するという責務も、老人福祉法で規定されているところでございますので、必ずしも全面的に民民の関係だというふうに言い切れない部分があるだろうというふうに私は思います。ぜひともよろしく御検討をお願いしたいと思います。  それから、個別の事案でございますけれども、私がきょう指摘をさせていただきましたこの説明文書につきましても、ぜひとも御検討くださいますように要請をしたいと思います。  たくさん質問項目を準備いたしまして、回答をお考えいただいたと存じますけれども、これだけでほとんどの時間を費やしてしまいました。最後に大臣にお教えいただければと存じますけれども、大臣が、介護保険のスタートを目前にされまして、たしかお正月の期間でしたでしょうか、ドイツに行かれまして、そこで、日本でもオンブズマン制度をおつくりになりたいという記者会見をされて、それが日本の新聞に大きく報道をされました。私は、大いに期待をさせていただきました。  オンブズマンと申しますと、調査は無論のこと、場合によりましては勧告もできる、そういうような機能を持っているんだと思いますけれども、日本で今動きつつあります仕組みは違うのではないかと思いますけれども、あれは日本の報道がミスリードだったんでしょうか。そこのあたりを大臣にお伺いさせていただきたいと思います。
  215. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 私がドイツで記者との懇談の中で明らかにいたしましたものと、それから、今私どもが進めているものは、一貫して変わっておりません。  それはどういうことかと申しますと、オンブズマンという言葉が適当かどうかは別として、要するに、いわゆる官制のもとでの相談員ではなくて、いわゆるお年寄りと施設の橋渡し的な役割が必要なのではないか。  やはり日本という国のこれまでの国情というものを考えますと、施設の中においても御理解をいただく、それから、例えば在宅サービスの中にも入っていける。そういう中で、私どもが申し上げましたことは、あくまでもいわゆる摘発型ではなくて、問題を提起して、そして提案して解決していくということが、この日本におけます福祉制度、介護保険制度の中で、国民の皆さん方から、あるいは事業者の皆さん方、こういう方々に幅広く定着させていって、そして現実問題として、お年寄りの皆さん方が言いたいことも言えない、こういうものをかわって、いわゆる介護相談員という方々が、一、二週間に一回の割合で介護サービスを受けていらっしゃる利用者の方々を訪ねて、そして今後、事業者の方との橋渡しとなってサービスの改善に努める、こういうことをドイツで申し上げたわけでございます。  その後の講演でも同じことを申し上げておるわけでございまして、私どもといたしましては、その必要性というのはますます重要ではないかな、こう考えているような次第でございます。
  216. 石毛えい子

    ○石毛分科員 オンブズマンという表現が多様に用いられておりますので、理解の仕方がさまざまにあるんだろうと思います。大臣がお考えになっておられた内容はそういうことでおありになったということは、ただいま伺わせていただきました。私は、何らかの形で勧告ができる、そういう第三者機関は必要ではないかというふうに考えておりますけれども、それはまた考え方の問題、これからいろいろと検討していくべきテーマであると思いますので、そのことについてはこれで終わらせていただきます。  大臣が今御発言になられましたその機能が、私がただいま時間をずっと費やさせていただきました有料老人ホームの施設の中にもどんどん入っていけて、そして情報のアクセスが御利用者の皆様にもっと容易になるようにということは私も同じように考えますので、ぜひとも充実していかれますように。伺いますところ、まだ非常に実験的な段階ということでございますので、ぜひとも元気な方向で進めばというふうに要望させていただきまして、いろいろ質問に対して準備をしていただきましたが、そのことについてはおわびをいたしまして、またの機会にさせていただきたいと思います。これで終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  217. 中林よし子

    ○中林主査代理 これにて石毛えい子さんの質疑は終了いたしました。  次に、藤木洋子さん。     〔中林主査代理退席、主査着席〕
  218. 藤木洋子

    藤木分科員 日本共産党の藤木洋子でございます。きょうは、母子生活支援施設についてお伺いをしたいというふうに思っております。  ここ数年、ドメスティック・バイオレンスの問題がクローズアップされておりまして、その実態が明らかになるにつれ、夫やパートナーから暴力を受けている女性の数の多さ、内容の深刻さが浮き彫りになってまいりました。また、離婚件数も年々増加をしております。  一方、母子世帯の平均年収というのは、一般世帯の三ないしは四割前後ということで推移しているわけです。その格差というのは、減少するどころかさらに拡大をしているという傾向がございます。また、結婚で一度退職をした女性の再就職というのは、リストラ、合理化のあらしが吹き荒れているもとで、これまで以上に困難になっております。  このように、母親が一人で子どもを抱えて生活をしなければならないという傾向は、増加をし続けていると言っても決して言い過ぎではないと思うわけです。その生活実態の困難さが一向に改善されていないということが問題だ、私はそのように思っております。  こうした母子世帯を受け入れる施設として、母子生活支援施設がございます。法律的には「配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援することを目的とする」、このようになっているわけです。  現在の社会的背景も考慮をいたしますと、母子世帯に対する各方面からの総合的な対策というものが求められているであろうと思いますが、しかし、施設面でいいますと、この母子生活支援施設のニーズというのはこれまで以上に高まっていると私は考えているわけです。ですから、それだけに母子生活支援施設の今日的役割というのは極めて大きいものがあるというふうに考えておりますが、大臣の御認識は、この点いかがでございますか。
  219. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今委員から御指摘がございましたように、最近、ドメスティック・バイオレンスや離婚の増加によりまして、母子生活支援センターに駆け込む女性の方々が大変ふえておる、このように認識をいたしておるような次第でございます。こういった母子を受け入れる施設として、母子生活支援センターの機能は大変重要になってきているのではないかと思っております。  厚生省といたしましては、このような事態を踏まえまして、例えば夫の面会強要を避けるためにできるだけ広域入所の措置を促すとともに、着のみ着のままの母子を受け入れるようにするため、昨年から、寝具、身の回りのものを貸与する事業を行っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、こういうようなドメスティック・バイオレンスというものが大変大きな社会問題になっているということは十分に認識をいたしているような次第でございます。
  220. 藤木洋子

    藤木分科員 そこで、厚生省からの資料を拝見させていただいたのですけれども、母子生活支援施設に関する相談件数というのは、九六年度が八千五百九十二件です。九七年度は八千七百五十一件、九八年度になりますと一万二百二十四件となっております。相談に至っていない人もその背後に数多くいるということが想定されますから、この相談件数だけをもってすべて反映しているというわけではありませんけれども、しかし、それにしても、実際の相談件数というものは増加をしているわけです。  そこで問題になってくるのは、こうしたニーズに対して、施設の実態がそれにこたえ得るものになっているのかどうかという問題なんです。母子生活支援施設施設数、それから定員数及び現員数の推移について、九五年度と九九年度のこの二つの年の数だけで結構ですので、お聞かせをいただけますでしょうか。
  221. 真野章

    ○真野政府参考人 母子生活支援施設でございますが、九五年度施設数は三百十一、定員は六千百六十一世帯でございます。入所世帯数は四千二百三十四世帯ということで、定員に対するいわゆる充足率は六八・七%ということでございます。  九九年度でございますが、施設数は二百九十五、定員は五千七百九十五世帯、入所世帯数は四千二百三十四世帯ということで、充足率が七三・一%ということになっております。
  222. 藤木洋子

    藤木分科員 この相談件数が年々増加をして、施設へのニーズは高まっているにもかかわらず、施設数、定員、これはいずれも減少しておりまして、入所者の数は横ばい状態でございます。これまで聞いてまいりましたことからいって、常識的に考えれば、施設数も、それから現員数もふえていて当然だというふうに私は思うのですけれども、矛盾しているのではないでしょうか。  施設数と現員数が減少及び横ばい状態になっているのは、これはどんな理由からでございますか。
  223. 真野章

    ○真野政府参考人 母子生活支援施設でございますが、現在、委員御指摘のとおり、現員数につきましては、過去五年程度は四千二百世帯前後で推移をいたしております。充足率も大体おおむね全国平均で七割ということになっているかと思います。  数の減少でございますが、これにつきましては、施設も大変古くなっているとかそういうような状況があるのではないかと思いますが、施設の廃止につきましては、市町村立であれば知事への届け出、または社会福祉法人立でございますと都道府県知事の承認ということでございますので、これは当然、都道府県がその地域の状況を判断して届け出の受理なり承認を行っておられるというふうに思っております。
  224. 藤木洋子

    藤木分科員 実際にニーズが高まっているにもかかわらずそれが減らされなければならないという問題は、これは極めて深刻だというふうに私は思います。  地域によってニーズに差があるということも、これは事実だというふうに思います。しかし、それだけでは、実態を正確に反映しているとはとても私には思えません。もっと根本的な問題として、施設に入所したくともなかなか入所が難しいといった問題であるとか、保護を求めている女性でさえも、ここではとても生きられない、こう言って入所を断念しなければならないような環境の施設もあるという話を私は聞いております。  あるDV被害の女性は、夫に暴力を振るわれ、決死の思いで、所持金もないまま子どもと家を飛び出し、相談に行ったけれども、手続等に三日間旅館で待たされた上、旅館代も自分持ちで、近所の人たちにカンパをもらって何とか急場をしのいだが、担当した職員からは、御主人のところに帰ってはどうか、思い切ったことをするんだから男がどこかにいるんじゃないですかなどと言われ、二週間だけの措置日数しかなく、その間にアパートの確保等自力で行わなければならず、生活費もなく、結局泣く泣く暴力夫のもとへ帰らざるを得なかったと話されております。母子生活支援施設に入りたくても、このように行政の手で切り捨てられているという場合もあるわけです。  また、私の地元の兵庫県尼崎にあります母子生活支援施設の実態ですけれども、これは社会福祉法人「サン野菊」ですが、ここは一九六四年の四月に現在の場所に新築移転をいたしまして、三十六年が経過しております。私も施設を実際見てまいりましたし、お話も伺ってまいりましたけれども、鉄筋とはいえ、もうかなり古い建物でございます。施設長の話では、毎年三十件ほどの問い合わせがあり、うち十九件が施設の内容を聞いただけで入所を断念する、七件程度が見学に来られて、そのうち入居に至るのは四件程度だ、他市への紹介も少なくはないと言われております。  施設の設備というのは、独立した母子室というのがございますが、これは板の間を含めて六畳程度でございます。実際に畳の部分というのは四畳半だけなんですね。洗面所、炊事場、それからふろ、トイレはすべて共同で、トイレには男女の別はありません。ふろについては、八七年に屋外にユニットバスが設置をされただけでございます。この実態を見れば、入所に至らなかった世帯にしても、ほかによりよい条件の場所があったわけではないというふうに考えるわけです。  入所の必要性があっても入れない、こんなことでは、高まっているニーズにこたえるどころか、今ある施設でさえ十分に機能していないということになりはしないでしょうか。  このような福祉事務所の対応や母子生活支援施設の実態を、国として把握されていらっしゃるのでしょうか。国として、つかんでいらっしゃいますか。
  225. 真野章

    ○真野政府参考人 母子生活支援施設への入所につきましては、当然のことながら福祉事務所におきまして、個々の母子の状況に応じまして、必要な場合には施設への入所、そのほか適切な対応を行うというのが、これはもう福祉事務所の責務でございます。  私どもは都道府県等に対しまして、当然のことながら、そういう福祉事務所の責務をきちんと果たしていただきたい、また母子相談員、母子家庭の一番の相談役でございますので、その母子相談員に対しても研修を行いまして、いろいろな母子福祉施策を活用するように、そういう指導をしているところでございます。
  226. 藤木洋子

    藤木分科員 どのような御指導をされているかということではなくて、実態を本当にリアルに手のひらに乗せているかということを私は伺っているわけなんですよ。  今、実際に認識していて指導もしているとおっしゃいましたけれども、それでは伺うわけですが、個々の施設の築年数だとか、あるいは設備の実態そのものを把握していらっしゃるのでしょうか。いろいろおっしゃいましたけれども、自治体任せということになっておりまして、本来保護されるべき人々が保護の手からこぼれていってしまう、結果的には社会的に弱い立場の人たちが片隅に追いやられているということを示しているのではないでしょうか。このような、切り捨ててしまうことを許せないと私は思うわけです。  もう少し詳しく申し上げますと、尼崎の施設の実態ですが、九九年一月二十三日の入所世帯の資料では、二人世帯が十三世帯、三人世帯が三世帯、四人世帯が一世帯となっておりまして、児童区分になりますと、乳児が一名、幼児が十四名、小学生が四名、中学生一名、高校生二名となっております。ここ数年の入所世帯の状況を見ましても、同様な傾向にあるわけです。  全国母子生活支援施設協議会というのが調査を行っております。これは九六年の二月から三月にかけて行った調査ですが、これを見ますと、子どもたちのニーズとして、ほっとする空間が欲しい、こういう要求が切実です。部屋の広さが第一位に挙げられておりまして、トイレ、ふろのニーズも高くなっています。  また、母親へのアンケートでは、四九%が建物や施設に関する不満で、母子室が狭いという不満の内容は、母子室そのものの面積だけではなくて、家族数、子どもの年齢、性別に関係なく、一律に同じ広さの部屋が提供されているということに対する不満です。また、母子生活支援施設にやってほしいことという設問では、プライバシーの尊重というのが、八一%で第一位であったと報告されております。  この調査からもわかりますように、小学生でもそうですけれども、中高生になりますと、実質四畳半の部屋に親子で生活しなければならないような状態というのは、物理的に窮屈だということだけではなくて、母親にとっても、子どもにとっても、プライバシーの尊重どころか、精神的圧迫は極めて大きなものだと考えられます。  こうした施設を、結局は放置し続けているというのが今の実情です。母子生活支援施設は児童福祉法で定められた施設ですけれども、このような実態で、子どもたちの健やかな成長を保障する、そういう環境だと言えるのでしょうか。これは大臣にお答えいただきたいと思うんです。今の実態は、果たして子どもたちに健やかな成長を保障するような場になっているか、いかがでしょうか。
  227. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 母子生活支援施設でございますが、確かに、尼崎の母子生活支援施設も昭和三十九年に開設したということで、大変老朽化しておるということをお聞きしておるわけでございます。  もともと、これはどちらかと申しますと、戦後、いわゆる戦争遺族の方々の入居を多く受け入れてきた、こういうような経緯があるわけでございまして、児童福祉施設の最低基準には達しておるわけでございますけれども、設置された年代がいかにも古いものが多くて、現在の居住水準から見れば必ずしも十分でない、このように考えておるような次第でございます。  そこで、厚生省といたしましては、施設整備する際の国庫補助の基準面積といたしまして、平成十二年度は一世帯当たり六十・四平米、これだけに広げるように改善に努める一方、施設整備に必要な予算を十分に確保いたしておるようなところでございます。  いずれにいたしましても、この母子生活支援施設というものが、今改めて大変大きな関心を呼んでおるわけでございます。夫の暴力から逃れるための、いわば駆け込み寺的な意味合いも持っておる、こう認識いたしておるわけでございます。こういうふうに近年極めて注目されていることを踏まえまして、地域の実情、要望に対応して、その改善に努めていきたい、このように考えているような次第でございます。
  228. 藤木洋子

    藤木分科員 それぞれの施設の歴史的背景というのはそれぞれあるというふうに思うわけです。しかし、実際には、今私が申し上げたような状況では、身も心も傷ついた女性や子どもたちを保護し、健やかな育成を子どもたちに保障し、そして母子の自立を促進するという施設の目的をとても達しているとは思えませんし、そもそも子どもにとっても母親にとっても、人間らしい生活を送るという基本的人権から見てこの施設の実態はそれを保障するものではないということは、大臣がお認めになっているとおりであります。もちろん、そのための対応策というものも今お話しされたわけですけれども。  尼崎市でも、施設長はこう言っております。時代の変化に伴って、より近代的なものへ建てかえたいが、市の財政状況が悪く、予算請求をするのも控えてしまうとおっしゃっています。また、緊急性からいうといつも後回しになってしまうというのは、市の当該課のお言葉でございました。  結局、なかなか整備が進んでいないとの答弁がありましたけれども、都道府県任せにした結果、施設整備の進捗状況がどうなっているのか。ここ数年の施設整備費の国庫補助額を見ますと、大臣は、もうふやしたとおっしゃいますけれども、九六年では約五億九千万円ございました。九七年になりますと、これが約三億二千万円になっております。九八年はほぼ横ばいなんですが、これでも約三億九千万円。九九年度は約二億八千万円と大幅に減っているわけですよ。  ですから、申請が上がってきたものはすべて認めている、厚生省はこう言っておられるわけですけれども、実績を見ますと、目的にふさわしい施設にするための整備というのは地方自治体任せで、全く進んでいないわけです。改築の申請がされたものだけを認めるというのでは、いつまでも今の状態が続いてしまいまして、子どもたちの権利を侵害し、基本的人権さえも脅かされかねないということになるわけです。この施設の放置をし続けることは許されないというふうに思います。財政問題がネックになっているということが明らかなんですから、ここに対して財政出動をするという支援をしなければ、これは物事は前へ進まないというふうに思うわけです。  それで、尼崎市の施設では、最初にも述べましたけれども、築後三十六年を経て老朽化し、入所している母子は劣悪な施設の中での生活を余儀なくされております。このような実態を一刻も早く改善できるように、国による特別加算、こういった手だてが必要だというふうに考えるのですけれども、大臣、いかがですか。
  229. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 もう委員に申し上げるまでもなく、この施設整備につきましては、国庫補助につきまして、市町村が設置する場合には、施設整備に係る費用の、国が二分の一を、都道府県、市町村がそれぞれ四分の一を負担することになっておるわけでございます。  母子生活支援施設などの施設整備につきましては、何でも国がやれ、こういうことをおっしゃっているようにも聞こえないでもないのですが、基本的にはこれは地方分権の観点でございまして、地域の具体的なニーズを踏まえまして、まずはそれぞれの首長さんが、やはりこういうような母子生活支援施設のようなものを、もっとニーズに合ったすばらしいものにしていくのだという気持ちになっていただかないと、私どもはなかなか実際問題としてお手伝いできないわけでございます。  いずれにいたしましても、厚生省といたしましては、このような地方自治体の判断というものを十分に尊重しながらも、入居者の処遇の向上を図るという観点から、いわゆる老朽施設の改築であるとか大規模修繕などの整備に対して優先的に補助を行うことにいたしておるわけでございます。地方自治体から要望がございますならば、十分に対応できるような施設整備についての予算措置を確保いたしておるわけでございますので、どうか先生からもその点を、十分に各おのおのの自治体に御理解を賜りますように御協力をお願いできれば幸いだと思っています。  いずれにいたしましても、今後とも老朽施設の実態であるとか、先ほどから問題となっております近年の入居者の動向など、施設全体の状況というものを十分に踏まえながら計画的な整備を進めていただきますように、私どもといたしましては、地方自治体の方に十分な御理解をしていただきますように努力をしていく決意でございます。
  230. 藤木洋子

    藤木分科員 誤解をされたら困るのですが、尼崎市がこれをやるまいと思っているわけではないのです。改善したいのですよ。やりたくてやりたくて仕方がないのです、その当事者も、当該課も。しかし、財政事情を見たら、これを先に、優先的に押し出していくというわけにいかない、そういう悩みを持っているわけですよ。  ですから、それほど地方財政というのが逼迫しているわけですから、国の予算の使い道を少し考え直していただいて、特別必要な自治体に対しては加算をするといったような措置をぜひ御検討いただきたいと思います。  いずれにしても、全国の施設実施状況、実態状況というものをきちんと把握されないとだめだと思いますよ。私はたまたま地元ですから尼崎の問題をこうして申し上げましたけれども、ほかにどんなところでこのような事態が放置されているかもわからないということを考えますと、私は本当に胸が痛い思いがいたします。  ですから、施設整備状況だとか入所者へのアンケートの調査をなさるとか、実態をリアルに手のひらに乗せていただきたい。老朽化した施設あるいは設備の不適切な施設については、施設整備計画を立てて、そして着実に改善に取り組んでいただきたいというふうに思います。  大臣、地方のことだと言われましたけれども、二分の一は少なくとも国が補助を出している補助事業です。ですから、やはり国も責任を負って、その計画が本当に着実に遂行できるような目配りをしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  231. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 これはもう委員御案内のように、すべての現在の補助金制度のもとにおいては、それぞれの市町村なり県なりが上げてくる、そしてそれを採択する、こういうシステムでございます。当然のことながら、私どもといたしましては、先ほどから委員が御指摘になっているような問題を防止するためにも、こういった問題について、それぞれの自治体なりあるいは市町村にもっと積極的に優先度を早めていただいて、そして、現実問題としてこのような、もう古くなった、いかにも古い母子生活支援施設については新しいものに改築をして、そして、真の意味でこのようなお困りの母子の方々が安心して生活できるような環境づくりのために努力をしていきたい、このように考えているような次第でございます。
  232. 藤木洋子

    藤木分科員 先ほども、ある調査について私はちょっと紹介をさせていただいたのですけれども、そういった法人任せにしないで、やはり国自体が一回きちんと調査をしていただきたいと思うのです。どこでどんな問題があるのか、それをリアルに調べていただいて、そして、あなたのところからは一つも声が出ていないけれども困っていないのかという心配りを、厚生省でなければこれはできませんから、ぜひ厚生省にやっていただきたいと思います。  もう一問お伺いをしたいことに、これもやはり尼崎にあるグループハウスの問題なんですけれども、今、この施設は、形態でいいますと日本でたった一つのものでございまして、阪神・淡路大震災直後に、ケアつき仮設、地域型仮設として出発をいたしました。その後、在宅福祉事業の国の特別事業に採択をされまして、モデル事業として現在に至っているわけです。  現在、十八名定員のところを、十二名の痴呆、身体障害等、日常生活などを地域の中で単独ではとても営むことはできないという支障のあるさまざまな高齢者の方が入居しておられます。職員が二十四時間体制で常駐しておりまして、入居者の安全が確保されております。プライバシーが保障されると同時に、共同生活の場もありますから、本人の自主性だとか自立性、これが尊重されておりまして、入居者は心身に困難を抱えながらも実に生き生きと生活をしておられるわけですね。ここでの生活で、震災前よりかえって元気になったという方もいらっしゃるわけです。  こういうすばらしい施設なんですけれども、まだ本格的にこれは制度化されておりませんので、入居された皆さんたちは、これがなくなるのではないか、なくなったらどうしたらいいか、こういった不安を常に抱いていらっしゃいます。震災の特例措置が五年で軒並み期限切れになっているわけですが、こういった状況の中で、健康な人でさえも新たな苦難に直面をしているという状況があるわけですね。そこで、現場の職員も、この事業を打ち切られたらここに入居している人はとても生きてはいけないと、存続についてとても強い不安を持っておられました。  運営費の二分の一を補助している国として、入居者が希望している限りこのグループハウスを存続させるということをひとつ明らかにしていただいて、入居していらっしゃる方たちを安心させていただきたいと思うのですが、大臣、いかがですか。
  233. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 このグループハウスでございますが、兵庫県尼崎におきましては、このグループハウスを、震災発生後のいわゆる経過的な事業として位置づけて、基本的には設置後五年の間に、つまり平成十四年でございますけれども、入居者の方々全員につきまして、それぞれ介護が必要な方などにつきましては特別養護老人ホームなど適切な施設に移っていただいた上、廃止する、こういうような方針を聞いておるわけでございますけれども、平成十二年度も引き続きまして、兵庫県尼崎におきましてはこの運営事業実施することにしておる、こう聞いておるわけでございますので、地元の尼崎なり兵庫県がこういうものを引き続き実施していることを十分に踏まえまして、また地元の意向というものもそういうような御意見があると思いますので、そういうことで、この意向を尊重して支援を申し上げさせていただきたい。  具体的には、平成十一年度でございますけれども、いわゆる生活援助員の人件費などに対しまして、補助といたしまして一千五百万円、これは国が二分の一でございます、そのほか県が四分の一、市が四分の一でございます。  いずれにいたしましても、県と市と十分にお話をしなければならない問題でございますが、これはあくまでも主体となって行っておりますのが県であり市であるということも十分に御理解を賜りたいと思います。
  234. 藤木洋子

    藤木分科員 時間でございますからこれで最後にいたしますけれども、この施設は、実は各地の地方自治体からとても関心を持たれておりまして、相次いでモデル事業としての視察が行われているわけですね。その優位性というものが高く評価されているわけなんです。この事業の優位性というものを積極的に生かされるようにお願いしたいと思うのです。  実は、大規模な特別養護老人ホームにおいても、ユニット化、小さな単位で十名程度のものが試験的に行われておりますね。そのメリットが確認されつつあるということを伺ってまいりました。スケールメリットを追求するのではなくて、入居しているお年寄りがいかに生きる喜びを持ち続けることができるかということが大切だと考えているわけです。  施設長の話では、何より病気が重くなるのを防ぐことができる、そのために、結果的には人生の総介護量が減るんだということを言っていらっしゃるわけですね。施設というと、一律のサービスになってしまい入居者の選択の自由がないけれども、その一方、シルバーハウジングはケアがないので虚弱高齢者は住み続けられない、グループハウスは両者の欠点を相補っているという点で、経過措置としてとられたのではあるけれども、これは二十一世紀型の施設だという皆さん方の評価が出ているということなんですね。  ですから、産業技術短期大学の児玉義郎助教授も、特養と比較をしてその優位性について語っておられます。一人当たりの建設費は五十人規模の特養が約九百六十万円程度だ、ところがグループハウス尼崎は約六百万円、運営費については、特養が月々約三十万円なのに対して、グループハウス尼崎は約十三万円前後の計算になる、用地も狭くて済むので取得しやすい、このように述べておられるわけですね。ですから、入居者にとりまして、また経済的な面から見ても優位性のはっきりしているグループハウスは、二十一世紀に向けた高齢者の住まいということで、ぜひこれについては研究をしていただきたいと思うのです。  厚生省としても研究していただいて、これをさらによいものに練り上げていくような施設ができるならば、震災の不幸はありましたけれども、それが未来に一つ貢献するということになると思いますので、そのことをくれぐれも研究を重ねていただきますようにお願いをして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  235. 赤城徳彦

    赤城主査 これにて藤木洋子君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  236. 赤城徳彦

    赤城主査 これより外務省所管について審査を行います。  まず、概要説明を聴取いたします。河野外務大臣
  237. 河野洋平

    ○河野国務大臣 外務省所管平成年度決算につきまして御説明を申し上げます。  平成年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は八千八百六十二億四千九百七万円余でありまして、支出済み歳出額は七千五百五十九億五千八百五十二万円余、翌年度繰越額は一千二百五十二億六千六百八十一万円余、不用額は五十億二千三百七十二万円余でございます。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額七千七百十三億七千二百十八万円余、前年度繰越額一千百二十八億二百五十二万円余、予備費使用額二十億七千四百三十六万円余であります。  以上、平成年度外務省所管一般会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。  引き続きまして、平成年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  歳出予算現額は九千二百九億三千二百九十三万円余でありまして、支出済み歳出額は七千八百十八億二千三百九十八万円余、翌年度繰越額は一千三百二十五億三千百六十七万円余、不用額は六十五億七千七百二十七万円余であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額七千九百五十四億七千二百九十二万円余、前年度繰越額一千二百五十四億六千一万円余でございます。  以上、平成年度外務省所管一般会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  238. 赤城徳彦

    赤城主査 次に、会計検査院検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第一局長
  239. 増田裕夫

    増田(裕)会計検査院当局者 平成年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  また、平成年度外務省決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  240. 赤城徳彦

    赤城主査 この際、お諮りいたします。  お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 赤城徳彦

    赤城主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  242. 赤城徳彦

    赤城主査 以上をもちまして外務省所管説明は終わりました。     —————————————
  243. 赤城徳彦

    赤城主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浪健四郎君。
  244. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 保守党の松浪健四郎でございます。  質問の機会を与えていただきましたことを心から感謝を申し上げたいと思います。  私の質問はアフガニスタン問題一点でございまして、江崎総括政務次官にお尋ねしたい、こういうふうに思いますので、もし大臣がお忙しいということであるならば席を外していただいて結構でございますので、そのことをまずもってお断りしておきたいと思います。  早速質問に入らせていただきますけれども、一九七五年から七八年まで、私は、国際交流基金を受けて、アフガニスタンの唯一の大学であります国立カブール大学で体育学とレスリングの指導を三年間行いました。その間、アフガニスタンの隅々を旅し、多くの人々と友好関係を深めてまいりました。そして長男がかの地で生まれました。したがいまして、我々家族にとりましては、アフガニスタンという国は第二の母国と表現していいくらい思い出深い国であり、また興味深い国であります。  三年間家族が生活をした後、帰国してからわずか三週間で革命が起こりました。私たちは、あのシルクロードの十字路と呼ばれる美しい国が地獄絵図を見るような国に転じてしまったことに心を痛めたわけでありますけれども、以来二十数年間、あの国は戦火にまみれております。大変残念なことであります。  しかも、最初はソ連だけが手を出すという国でありましたけれども、内乱状況になってまいりましてからは、幾つかの国が干渉をするというふうな形にもなってまいりました。しかし、近年、新しい勢力が台頭してまいりまして、何となく落ちついたような気がいたしますけれども、まだまだ内戦が続いているわけであります。  そして、かの地はかつては仏教国でありました。もちろん、我が国に仏教がもたらされた、そのシルクロードの重要な通過点であったわけであります。五十三メートル、三十八メートルという世界で最大の石仏がある国としても有名でありますけれども、その三十八メートルの石仏は、残念なことに破壊されてしまったという報道もございますし、過日、私はビデオでその姿を見せていただきましたけれども、あの世界遺産に指定された遺跡が破壊されておるということを大変残念に思います。  しかしながら、うれしいことに、我が国政府は、このアフガニスタンの和平の問題について、大変熱心に取り組んでくださっておる先進国の唯一の国であると言っても過言でないほど、熱心に取り組んでいただいております。このことをまずもって御礼を申し上げておきたい、こういうふうに思います。  そこで、お尋ねをしたいわけでございますけれども、アフガニスタンの国情はまあまあ落ちついているではないか、そこで、パキスタンを初め幾つかの国が、タリバーンという勢力が支配をするアフガニスタンを承認しておるわけでございます。そこで、この承認問題を我が国はどういうふうな位置づけとしてとらえているのか。そして、このタリバーン勢力は領土の九〇%を実効支配している、こういうふうに報道もされておりますし、昨年の二月、私は単身でアフガニスタンを訪れ、見てまいりましたけれども、その印象を強くしたわけでありますけれども、実効支配とはどのような状況を指すのか、外務省の見解をお尋ねしたいと思います。
  245. 江崎鐵磨

    ○江崎政務次官 松浪委員とは政治行動をともにして今日に至っておりますが、特に、昭和五十年から昭和五十三年までアフガニスタンの国立カブール大学で講師をお務めになったといったお話はかねがね伺っておりましたが、奥様もアフガニスタンに、そして御長男がアフガニスタンで誕生されたといったお話は、きょう初めて伺ったわけであります。  先ほども第二の母国といったお話がございましたが、それだけに、松浪委員のアフガニスタンに対する思いとか懸念、非常に強いものと拝察する次第であります。  初めの問いでございますが、我が国は七九年のソ連によるアフガニスタン侵攻以来、同国のいかなる政治勢力も政府承認はいたしておりません。現在、タリバーンが国土の大半の地域を軍事的に支配しているとの見方もあると伺っておりますが、アフガニスタン国内の状況はいまだ流動的であり、一政治勢力による支配が確立されていないと考える次第であります。  先ほど、実効的支配とはいかなる状態を示すのかといったお尋ねがございましたが、一般的には、一国領域を有効に支配する状態と解釈し、その判断は個別事案について個別になされるべきと考えております。
  246. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 私もそういうふうに思うわけですけれども、一日も早くこの国が落ちついて、そして我が国政府が堂々と承認できる日がやってくればいいな、こういうふうに願うものであります。  次にお尋ねをさせていただきたいのは、私がアフガニスタンにおるときですら、世界的に最貧国というふうに言われておりました。貧しい国であった、こういうふうに思っております。しかし、貧しいからその国はよくないというふうな考え方は私は全く持っておりませんで、本当に心の豊かな人々が住む立派な国でありました。そういうふうに私は認識を持っておるわけです。  隣国にありますパキスタンのイスラマバードに我が国の大使館がありますが、この前まで久保田大使が御着任されておりました。この久保田大使はアフガニスタン問題に大変熱心でありまして、私は、外務省としていろいろな情報を集めておられた、こういうふうに認識しております。  そこで、アフガニスタン人の暮らし、生活、それはどういうようなものであるというふうに認識しているのか、このようにお尋ねをしたいと思います。同時に、どの国だって一国でやっていくことはできません。いろいろな国々と交易をしなければなりません。しかし、アフガニスタンは国連の経済制裁を受けていたりしてなかなか交易するのが難しいのではないのか、それを一体どのようにしているんだろうか、どういう交易の状況にあるのか、あわせてこの二つをお尋ねしたいと思います。
  247. 江崎鐵磨

    ○江崎政務次官 お答え申し上げます。  アフガニスタンにおいては、二十年以上にわたる内戦により、主要産業である農業を含む経済活動が、あらゆる分野で基礎インフラが破壊された結果、憂慮すべき経済状態にあることは委員御案内のとおりであります。  このため、アフガニスタン国民の生活も極めて厳しく、また極めて多数の難民、国内避難民が発生していると伺っておりますが、自分の前任である東総括政務次官は、訪日したカージー・フセイン・アフマド・イスラム党党首と、こうした点も含め幅広く意見交換を行ったと承知をいたしております。歴史的に見れば、先ほど委員おっしゃられたように、アフガニスタンはシルクロードのまさに経路として隣国との交易は盛んに行われていたと承知しておりますが、現在は、治安状況の悪化や国連安保理制裁もあり、自由には行われていないものと伺っております。
  248. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 とにかくこの国に平和が訪れて、いろいろな形で自由に交易ができる、そして国連の経済制裁、これが解かれるということに一日も早くなるよう願うものであります。  そこで、実効支配をしているのはタリバーンという勢力でありますけれども、このタリバーンという勢力は国際的にも非常に評判がよろしくありません。その評判のよろしくないのは、人権の問題であるとか、あるいは子供、婦人の教育の問題、あるいは麻薬の問題、いろいろあるのかもしれません。  私自身、アフガニスタンを訪問させていただいて、そして指導者の一人でありますムタワキールという首脳といろいろとお話をさせていただいたときに、この三十代の指導者がこれだけの国を指導していく、そのためにはいろいろな厳しい制約というようなものがあるだろう。同時に、ウサマ・ビン・ラディンといういわゆる国際的にテロのボスと言われている人を客人として扱うタリバーン、これはどう見ても、外から見れば評判がよろしくない。印象が悪い。そこで、間々孤立をせざるを得ないのかなというふうに私は見ているわけであります。しかし、実質的には、国土の九〇%を実効支配している勢力であります。  このタリバーンという勢力について、我が国政府はどのように認識しているのか、とらえているのか、このことをお尋ねしたいと思います。
  249. 江崎鐵磨

    ○江崎政務次官 昨年十月、国連は、タリバーンに対し、委員おっしゃられたオサマ・ビン・ラーデン、この引き渡しを要求し、タリバーンがこれに従わない場合は、航空機離着陸禁止及び資産凍結等の経済制裁を科す内容の安保理決議を採択しております。  その一方、国連諸機関による人道支援等については、タリバーンは協力的な姿勢を示していると承知いたしております。  また、アフガニスタンにおける、特に委員が心配しておられる女性に対する差別を含む人権侵害や、世界最大とも言われる麻薬の生産の実態や、密輸が行われている現状については、我が国としても非常に大きな懸念、心配をしているところであります。
  250. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 とにかく、私たちの価値観では律することのできない風土の異なる異国のことであるがゆえに、我々の目から見ればよろしくない、こういうふうに映るのかもしれませんけれども、アフガニスタンに住んだことのある人間と、そしてタリバーン勢力以前が支配していた勢力の政治、これらを見てまいりますと、麻薬の問題、密輸の問題等、これらは許しがたい問題ではありますけれども、あの国にありましては、婦女子の問題あるいは人権というのは実は違う一面があるな、しかしそれを一々国際的に理解をしてもらうというのは難しい、私はそういうふうにも思うわけでありますけれども、タリバーンが実効支配してから治安が物すごくよくなったというのは事実であります。そして、治安が悪いがゆえにタリバーンがどのような政治をしなければいけなかったか、このことをも私たちは理解しておく必要があるのではないのか、私はそう思っております。  と申しますのは、タリバーン勢力は敬けんなイスラム教徒であります。そして、アフガニスタンにはスンニー派とシーア派、二つが勢力としてあるわけでございますけれども、この対立は以前からありました。そのためにはどのような制裁措置を加えなきゃいけないか、治安を維持するためにはどうしなければならないかというようなことは、我々日本にいてはなかなか理解のしにくいことである、私はこのようにとらえておりますけれども、今、総括政務次官から御説明いただいた見方、これは一般的で当然の見方であろう、私はこういうふうに認識もいたします。  そこで、次にお尋ねしたいのは、我が国政府はタリバーンの和平には大変熱心である、そしてそのことに敬意を表したいということは冒頭で述べさせていただいたとおりでありますけれども、小渕前総理が外務大臣当時にも、熱心に和平のために御尽力をされました。いろいろな形でやられることに、私は大変うれしい思いをしたわけであります。  そこで、河野外務大臣は、この三月、アフガンの勢力を日本にお招きをして和平のためにいろいろなことをやられたということを私は承知いたしておりますし、私も、非公式でありますけれども面談をさせていただきました。この御配慮にも心からお礼を申し上げておかなければならないと思います。  しかし、政府と各勢力とどのような話をしたのか、その内容については私は全く存じ上げないわけでございます。そこで、この三月、アフガニスタンの要人をお迎えして、具体的にどのようなことをされたのか、また、和平に関してどのような交渉を持たれたのか、お尋ねしたいと思います。
  251. 江崎鐵磨

    ○江崎政務次官 我が国では、長年にわたり内戦の続くアフガニスタンにおける和平の実現は、国際の平和と安全にとり重要であると考えており、アフガニスタン復興和平会議の東京開催を提唱するなど、和平実現のため貢献を行ってきたと思っております。かかる努力の一環として、本年三月、アフガニスタンにおいて内戦を継続しているタリバーンを含むアフガニスタン各派の関係者を個別に我が国に招聘し、和平に向けた意見交換を実施してまいりました。  我が国としては、これまでと同様、アフガニスタン和平実現のため、アフガニスタン各派への働きかけや国際場裏において活発な活動をこれからも行っていく考えであります。特に、先ほど委員からお話ございましたが、九六年には小和田国連大使がアフガン復興和平会議の東京開催を提案されるといったことがありましたが、これは内戦が激化して現在まで実現はされていないことも御案内のとおりであります。  そして先ほど、三月にはどのような方たちをといったお話でありましたが、三月、タリバーン、反タリバーンの両勢力及びローマに在住し、ロヤ・ジェルガという和平イニシアチブをとっている元ザーヒル国王の側近者を個別に招聘し、早期の和平実現のため相互に協議するように働きかけるとともに、先方の意見を聴取した次第であります。
  252. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 とにかく和平のために我が国がリーダーシップを発揮して、そして、なかなかまとまらない、それでも根強くこれからも和平のために御尽力くださいますようお願いをしておきたいと思います。そして、アフガンの人々は我が国に大きな期待を寄せておるということを御承知おきいただきたい、こういうふうに思います。  と申しますのは、二年前でしたか、アメリカがアフガニスタンにミサイルをぶち込みました。つまり、アメリカが和平のために動くことのできない国になっておるということと、ウサマ・ビン・ラディンを客人としてかくまうタリバーン、この勢力ともアメリカは仲よくすることができないという現状にもございますので、日本の役割、これは非常に大きなものであるということを重ねてお伝えしておきたい、このように思います。  そこで、旧ソ連がアフガニスタンに侵攻してまず何をしたかと申しますと、全土にわたって地雷を埋設したということであります。そしてまた内乱状況になったときに、各派は再びたくさんの地雷を埋設したというふうにお聞きしております。私が昨年の二月、アフガニスタンを訪れた折に国際赤十字のお医者さんや看護婦さんに聞いたことは、とにかく地雷が多い、そして多くの病人を診るわけですけれども、ほとんどが地雷で犠牲になられた人たちの手当てだ、こういうふうにおっしゃっておられました。  地雷は、申すまでもなく、小渕当時外務大臣が地雷禁止条約、これにも批准をされて、最も許してはならない武器の一つというふうに我が国は認識していると私は思いますし、国際的にも地雷を使ってはならないということになっておるわけでありますが、たくさんの地雷がアフガニスタンに埋設されている、こういうふうにお聞きしておりますし、そして犠牲者がたくさん出ているというふうにお伺いをしております。  政府は、地雷の埋設状況であるとか犠牲者の状況をどのようにとらえておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  253. 江崎鐵磨

    ○江崎政務次官 国連の資料によりますと、九七年時点でアフガニスタン国内において九百七十万個の地雷が埋設され、同国は世界で最も地雷が集中して敷設されている国とされております。このため、毎月三百名以上の民間人が犠牲になっているほか、経済活動を行う上でも大きな支障を来しているといったことを承知しております。  特に、九七年国連統一アピールによれば、約九百七十万個の地雷が敷設され、そのうち九〇%が居住地、農地等に埋められているといったことであります。地雷による死者の数は八〇%以上は民間である。国連アフガニスタン人道調整事務所資料によれば、現在でも一日に十人から十二人の対人地雷犠牲者が生じており、その三六%が子供といったことが報告なされております。
  254. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 そこで、大変な量の地雷があるということがわかったわけですけれども、九九年版ODA白書によりますと、緊急無償による地雷除去支援について記されてあるわけであります。この「対人地雷問題に関連する日本の支援実績」、その中に、アフガニスタン向けの支援はあったのか、また、あったとすればどれくらいの金額であるというような具体的な内容、これについてお尋ねしたいと思います。
  255. 江崎鐵磨

    ○江崎政務次官 アフガニスタン内の埋設地雷の除去を緊急無償で支援した実績はございません。  なお、地雷処理に関しては、九九年十一月に、我が国が国連アフガニスタン人道調整事務所に留保している資金から百三十万ドルを地雷処理活動のためにリリースしております。また、草の根無償資金協力の実施が一件ございます。特にアフガニスタンにおける人道援助活動を調整するUNOCHAに我が国は資金を留保しており、国際機関等の要請に基づいてリリースをしておるのが現状であります。  これまで主に難民帰還、地雷処理等へ資金をリリースはしておりますが、九九年十一月には、パワーシャベル型地雷処理機を含む百三十万ドルを地雷処理活動のためにリリースしておるといったことであります。
  256. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 とにかくその額をできるだけ多くふやしていただいて、あの国から地雷を一日も早く除去することに御協力いただきたいということをお願い申し上げておきます。  そこで、これも九九年のODA白書によるのですけれども、草の根無償開始をしたというふうに聞いておるのですけれども、この草の根無償開始の経緯、そしてこれまでの実施状況、これをお尋ねしたいと思います。
  257. 江崎鐵磨

    ○江崎政務次官 草の根無償資金協力については、一九九八年十二月に、東京において第四回アフガン支援グループ会合を開催した際に、開始を決定しました。  同国においては、長引く内戦により、食糧、医療事情が悪化しており、このことを踏まえ、草の根レベルできめ細かい援助を行うNGO等を機動的に、直接支援するべく開始したものであります。  これまでの実施状況としては、一九九九年度に、対人地雷、水供給等の分野において六件、合計約三千二百五十万円を実施いたしております。
  258. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 最後にお尋ねをいたしますけれども、冒頭でも述べさせていただきましたように、アフガニスタンにはたくさんの歴史的遺産がございます。これを守っていかなければいけない、こういうふうに思っておるわけでございますけれども、我が国は文化無償資金協力に関しましても非常に熱心であります。そこで、アフガニスタンだけに限らず、中近東諸国及び中央アジアに対しては、具体的にどの国にどのような協力を行っているのか、また、ユネスコとの協力については具体的にどのようなことをしているのか、このことをお尋ねしたいと思います。  と申しますのは、どうも日本人は、欧米には興味があるけれども、イスラム諸国であるとかあるいは中近東諸国に余り興味がない、そういうようなところがあります。しかし、政府はそうではない、私はこういうふうに思っているわけですけれども、それらのことについてお尋ねしたいと思います。
  259. 江崎鐵磨

    ○江崎政務次官 まず、中近東においては、シリア、ジョルダン、エジプトなど十二カ国・地域に対する文化無償協力を行っておりますこと、議員御案内のとおりです。また、中央アジアにおいては、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスに対して文化無償協力を行っております。  支援の具体的な内容としては、中近東については、高等教育機関に対する視聴覚機材の供与といった教育施設関連機材の供与、全体の二九%、文化施設関連機材二三%、スポーツ機材一八%等があります。特に中央アジアについては、音楽院等に対する楽器の供与、全体の三三%、日本語学習機材二七%、文化施設関連機材二三%等があります。  ユネスコとの協力については、有形及び無形信託基金を通じ、イランでは遺跡保存修復事業への協力、ウズベキスタンでは、遺跡保存修復のための合同ミッションの派遣及び伝統的陶器彩色技術の保存振興事業を行っておりますのが現状であります。
  260. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 いずれにいたしましても、我が国は石油を、また天然ガスを持たない国であります。エネルギーの問題をかんがみたときに、中近東並びに中央アジアは大変重要な国々であります。我々が文化的ないろいろな面での協力を推進するということは、結局は我が国の国民に利益をもたらすことにつながる、このように私は認識しております。  今後も外務省は中近東それから中央アジアにさらなる力を注いでいただきますようお願いを申し上げまして、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  261. 河野洋平

    ○河野国務大臣 御議論を伺って、大変感銘をいたしました。アフガニスタンというと、私どももそうでございますけれども、世界的に見てまことに今厳しい状況の中におるわけでございます。そうした国に議員のような熱い思いを持っておられる議員が日本の議員でおられるということは、私は本当にうれしい限りでございまして、ぜひこれから先も、議員のアフガニスタンに対しますそうした思いを随所にお聞かせをいただきまして、私どもとしても、かの地がよりよく再興されるように願っている次第でございます。  今のお話にもございましたように、ともすれば、イスラム圏と申しますか、イスラムに対する知見というものが我が国は必ずしも十分でないように思います。そうしたことにも十分目配りをいたしまして、これから先、議員のいろいろな御指導もいただきまして、アフガンに対します考え方等について、十分研究をさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  262. 松浪健四郎

    ○松浪分科員 大臣にお礼を申し上げて、終わります。どうもありがとうございました。
  263. 赤城徳彦

    赤城主査 これにて松浪健四郎君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田幸久君。
  264. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 民主党の藤田幸久でございます。きのうに引き続きまた、河野外務大臣、よろしくお願いいたします。  きょう、初めにはいわゆる重債務最貧国の債務帳消しの問題、それからBC級戦犯等についてお聞きしたいと思いますけれども、その二つに関しましては、広い意味でのODAの問題でございます。  そのODAについてもいろいろな議論が起きております。ODAというものがなぜ必要であるのか。それから、今非常に財政も厳しい折ですけれども、やはりODAというのは納税者のお金で出しております。納税者のお金を使ってもやはり日本の外交上必要だという理由があるんだろうと思うんですけれども、そういう意味でのODAの意味というものについて、まず大臣の見解をお伺いしたいと思います。     〔主査退席、中林主査代理着席〕
  265. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私どもは国際社会の中で生きているわけでございます。国際社会が平和で繁栄をしていなければ、我が国は決していい状況の中で生きていくことはできないというふうにまず思っております。それから、我が国が現在こうして今日のような状況になっているということもまた、国際社会に感謝をしながら生きていくということが大事なのだろうと思います。だれかの力で我々はこうしてここにあるということを考えなければなりません。決して、自分たちだけで今こういう存在でいるというふうには思ってはならないし、たとえそう思っても、そんなふうには決してならないわけでございます。  持てる者、持たざる者、いろいろな環境、状況の中にいるわけでございますけれども、少しでも経済的な支援ができる環境にあれば、国際社会がお互いにできるだけ支援を行って、ともどもに発展をしていくということが大事なのだろうと思います。そして、ともどもに発展することが、結果として我が国が裨益することができるというふうに思います。  問題は、国民の皆様にそうしたことが十分理解をされるという必要がございます。今まさに議員がおっしゃったように、貴重な税金を使わせていただいているわけでございますから、タックスペイヤーの方々に十分な理解を求めなければなりません。その方法については、我々は常時考えていかなければならないと思います。  ODA、財政支援あるいは技術支援、いろいろな支援を行いますときに、それぞれのプロジェクトによって、それぞれのやり方があると思います。明らかに我が国からの支援だということが目に見えて支援されるということが非常に大きな意味のあるという支援の仕方もあれば、幾つかの国と一緒になって支援をするという支援の仕方もあるだろうと思いますだけに、さまざまな方法をとって、そうした恵まれない地域、恵まれない国、恵まれない人々に裨益されるということが大事でございますから、そうしたことを行うたびに、国民の皆さんに十分な理解が得られるよう、常時考えていかなければならぬというふうに思っております。
  266. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 大変すばらしいODAに関する理念を披瀝いただきまして、ありがとうございました。本来ならば党首討論でお答えいただくようなすばらしいメッセージをいただいたと思っておりまして、感謝を申し上げたいと思います。  次に、実はODAという言葉について、これは言葉の遊びじゃなくて、本質的にもかかわることですので御理解をいただきたいんですが、数年前ある外国人と話しておりましたらば、ODAというのはどういう意味かという話をしたら、こういう言い方もできるねと、日本語がわかる外国人ですけれども、おっしゃっていただきました。  そのODAの意味は、お金だけ上げる、ODA。これは、箱物ODAとか言われていた意味での一つの形でございます。もう一つ、お金だけ上げないという言い方もできるという話がございました。それは何を言うかといいますと、例えば戦後補償の問題、これは日本政府は一貫してお金だけは上げない。実は、重債務最貧国に関しても、帳消しだけはしないといいますか、お金だけは上げないというような非常にかたい政策があるのです。  これは単に言葉の遊びだけじゃなくて、私は、お金だけ上げるという意味とお金だけは上げないという意味の本質的なことが、今後の日本のODA政策にとって必要ではないかと思っているので申し上げているのです。  これはよく考えてみますと、前者のお金だけ上げるは、政府に上げてきた援助です。つまり、箱物と言われているような、いわばハードのものが多かったのです。一方、お金だけ上げないというものを吟味してみますと、この賠償の問題も、まさに個人には絶対お金だけは上げない。  実は、これから御質問する、いわゆる重債務最貧国の場合に、なぜ、何万人もの人がバーミンガムに行き、ケルンに行き、やがて沖縄に来るかといいますと、現在の仕組みの中で、一番貧しい国の個人にはお金が行かないといいますか援助が行かない、あるいは、国が債務を返すために、個人の犠牲においてでしか債務の返済ができないという構造があるのです。これは、私、最近気がついたことなんですけれども。  したがって、世界じゅうの方々がこの間も大蔵省を人の鎖といって囲んだようですけれども、なぜこれだけたくさんの人が反応するのかなと思いましたらば、結局、個人が犠牲になって国が返済をしなければいけない構造になっている。それから、BC級戦犯のことも後で触れますけれども、いわば法律と政治の谷間にある人々が犠牲になっている。したがって、個人にはお金だけは行かないという形になっているんです。  ですから、私は、せっかく大臣の方からすばらしいODAに関するお言葉をいただきましたので、そういう観点から、この二つの問題を超えていく内容について、今から御質問させていただきたいと思います。  まず、日本政府は、去年までは、重債務最貧国のいわゆる帳消し問題について非常に否定的な政策をとっておったわけですが、去年のケルン・サミットの直前に政策転換をして、ケルン・サミットの合意をしたわけです。  そもそも、なぜ合意をしたのか。それから、なぜその削減が必要なのか。削減という言葉を使っているわけですが、なぜ削減が必要なのかということについて、大臣自身がどうお考えなのか、まずお聞かせいただければありがたいと思います。
  267. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私は、債務の帳消し問題には、いろいろ議論はありますけれども、代表的に二つの議論があるんだろうと思います。  一つは、もうここで一遍全部債務を帳消しにしてゼロからスタートしていかなければ、どんなに応援をしても、それが全部債務の返済に回るだけで、ちっともその国のプラスになっていかない、だから一度ここで債務は全部帳消しにするんだという考え方を持つ人。  それから、いや、ここで一遍全部帳消しにしたからといって、帳消しにしただけで、次に支援をしていけば、やはり同じように垂れ流していってしまうだけで、何年かたてばまた債務はそこにたまっていってしまうだけだ。だから、帳消しにするならば、つまり帳消しにしてゼロからやり直すならば、そこでまず構造改革をやって、今度は、応援した分はちゃんと血になりますよ、肉になりますよ、そしていつの日にかは自立できるようになりますよという考え方ができ上がる、その上で債務を帳消しにするならするということでなければ、ただ単に債務の帳消しだけで問題が解決しないのではないかと考える人。非常に乱暴な意見ですけれども、大きく分けて二つの意見がきっとあったんだろうと思います。  ケルンのサミットにおいては、したがって、ケルンで行ったサミットでありますけれども、ドイツはこの問題については完全な納得でなく、みんながそれなら仕方がないかなという感じであったのではないか。私は出席しておりませんからわかりませんが、そんな感じだというふうに受け取っております。  一度全部債務を帳消しにして、とにかくゼロからスタートをするというやり方が一つある、しかしそのときに、これからはきちんとした仕組み、きちんとした計画を持って国づくりがやれるということもまた同時にやってもらいたいというふうに私は考えております。
  268. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 まさに今おっしゃっていただいた考え方が背景にあったんだろうと思うのです。ただ、実際に日本政府がその合意後に今やろうとしていることは、今大臣がおっしゃっていただいたこととむしろ逆になりつつあるのではないかという気がしております。  と申しますのは、今、日本政府がやろうとしているのは、いわゆる債務救済無償援助スキームということですけれども、まず一たん返しなさい、同時に、一たん返したと同じその分を無償援助スキームという形で与えますよという形になっているわけです。ところが、実際には、それを満たすためには、例えば途上国の方が外貨調達をしなければいけないということになっております。外貨調達をしなければいけないということは、これは輸出をしなければいけないということですね。そもそも、輸出ができれば最貧国になっていないということです。先ほど大臣がおっしゃっていただいた、ゼロにすることでやがてプラスにしなければいけないというお話、一点目にございましたが、実は、いろいろ調べてみますと、この無償救済スキームですと、むしろマイナスにしてしまうのではないかということが私は思えるのです。  この債務救済無償援助スキームの内容について、大蔵省の方に来ていただいていると思いますので、具体的にどういうことか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  269. 飯村豊

    ○飯村政府参考人 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、我が国は、重債務貧困国に対して有するODA債権につきましては、返済を一たん繰り延べた上で、債務国から返済がなされた場合に、それと同額の無償資金を供与するという債務救済無償方式で対応することとしておりますが、これは債務の一〇〇%帳消しと同等の効果を有する方式であるということで、国際的にも認められております。昨年のケルン・サミットにおけるコミュニケにおいても、多様な方法で対処するということが認められている次第でございます。  この方式のメリットでございますけれども、債務救済を受ける国に対しても返済努力を求めるということになるために、当該債務国の自助努力を損なったり、まじめに返済をしているほかの国々に悪い影響を及ぼしたりするという、いわゆるモラルハザードの問題の回避が期待できるところでございます。  さらに、債務救済によって利用可能となりました資金が、ODA本来の趣旨である、当該債務国の経済社会開発及び国民の福祉のために活用されるのを確保する上で有効な方式であると考えております。  ちなみに、付言させていただきますと、現在、国際社会も、債務救済するに当たりましては、貧困削減戦略ペーパーというのを途上国に書いていただきまして、帳消しにしたお金が建設的に貧困撲滅に使われるように考えながら、計画を立てながら実施しているのが現状でございます。
  270. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 いろいろなときに、こういう方式が国際的に理解をされているとかいうことをおっしゃるのですけれども、それをお聞きしようと思っていたのです。  ケルン・サミットで多様な方法と言っているのを根拠にしているのですが、それは決して認知をされているという意味ではないと思うのですが、どうなんでしょうか。なぜ、多様な方法ということを言っていることが認知をされていると言えるのですか。
  271. 飯村豊

    ○飯村政府参考人 ちなみに、先ほど申し上げるのを失念いたしましたけれども、日本以外にも、フランスも、我が国と同様、無償資金協力を行うことによって、いわゆるHIPCイニシアチブのもとでのODA債権の放棄を行うことを考えております。  したがいまして、これは日本のみならず、いろいろな国が多様なやり方で行っていくということは国際的に認知されているというふうに考えております。
  272. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 一見似ているんですが、フランスのやり方は日本と違うと思うんですね、無償というところは似ていると思いますけれども。  ほかの国々もといいますけれども、G7なりで考えれば、日本とフランス以外は、合意したのは削減ですよね。削減を決めているわけですよね。日本は実は便法を使おうとしているわけですけれども、私は、便法ではやはりこれから理解が得られないだろうということ、それから、今メリットだけ局長おっしゃいましたけれども、私が先ほど申し上げましたように、デメリットも相当あるわけです。  つまり、そもそも外貨調達をしなければいけない。それから、例えば商品購入をこの中でうたっているわけですけれども、実際にではどんなものが品物として入っているのか、どんなメーカーが関係しているのか、それから、そういった商品購入が、実際に利用が可能な財源として、医療とか教育とかいうものに実際に充てられるのかどうかということについて、確認のしようがないんですよね。  ですから、少しざっくりした言い方をすれば、とにかく一たん返せよ、そうしたら、こちらでまたそれに見合うものを出しますよ。ただ、その見合ったものを出すものが、先ほど大臣がおっしゃった、ゼロにすることによってプラスになればいいけれども、構造的に、外貨を稼がなきゃいけない、輸出をしなければいけない、四十年の長期にわたるということから考えますと、むしろマイナスになってしまう、より負担が大きくなってしまう。  もともとの精神をなぜ冒頭お聞きしたかというと、削減という意味、それからなぜ最貧国ができているかという経緯をよく考えない、先ほど申しましたように、とにかくお金だけは上げないということが先に出過ぎている。もうすぐサミットですけれども、私は、それでは通用しないんじゃないか。ということは、冒頭でおっしゃっていただいたODAの目的に結果的に反することになってしまうのではないかということで、この便法の方法論の問題と、そういう方法論をとることの理念的な問題と、両方、非常にこれは問題があるのではないかと思うのです。  細かいことは別にして、大臣、お聞きになっておられて、どうですか。私は、便法でありながら、むしろ問題をより大きくしてしまう気がするんですが、いかがでしょうか。
  273. 河野洋平

    ○河野国務大臣 この重債務貧困国の問題は、ケルンのサミットでも大変重要なテーマとして扱われて、先進国の首脳が集まって、これはやらなきゃいかぬということを決められたわけでございます。  そこで、どういう方式をとるかという問題になるわけですけれども、その方式は、必ずしも全部の国が同じ方式ということではないのだろうと思います。それぞれの相手国の国情によってもいろいろあると思います。  したがって、今議員からお尋ねの、メリットもあるがデメリットもあるだろうというお話がございまして、確かにデメリットもあるかもしれません。しかし、先方により多くのメリットがあるならば、それは一つの方法だと思います。我が方だけのメリットを考えてやるわけには当然いかないと思いますが、そうしたメリット・デメリットをお互いよく考えながら、双方でよりよい方式を考えていかなければならないのではないかというふうに思います。  どうも答えが一つしかないというのではなくて、議員からの御指摘も一つの御指摘として私はお伺いをいたしました。しかし、これまで外務省としてやってまいりました方式も一つの方式であるというふうにも、これは御理解をいただきたいと思います。
  274. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 債務救済無償援助スキームの典型的な例は、数年前、あれは九四、五年でしょうか、カンボジアに対して同じような方式をとった。それから、ベトナムもほぼ同じような方式をとって、ベトナムの場合は当時の東京銀行がある意味では資金を提供して、よいしょとやった。確かに、カンボジアとかベトナムなんかの場合にはそういった方法も可能であったと思うのですが、そもそも今回の最貧国の場合には、同じ、借りた金は返せという話で日本政府の考え方は来ていますけれども、その質が違うんだろうと思う、まるで次元が。  どういう次元か。次元というのは、量的な意味でいわゆる借金が多いとかいうことじゃなくて、個人と個人の借金であれば、借りたものを返すということがいわばモラルハザードの適用になるわけですが、現在対象になっているような国の場合には、構造的に、政府が先進国からお金を借りた、そのときには、いわばその国の独裁者であったり政府のための理由で借りている。ところが、債務が雪だるま式にたまってきたときに、それを返す際には、その国の政府が返すというよりも、その国の国民の生活手段そのものを奪わなければ返せないというところまで来ているということが、これだけ世界じゅうの問題になっている理由だろうと思うのです。これは、ただ単に旧宗主国とアフリカとの関係、日本はアジアとの関係だからとかいう次元の話でもないし、それから、カンボジアとかベトナムのような、先ほど大臣がおっしゃった、いわばゼロにしてからプラスにするようないろいろな要因があった国と状況はまるで違う。  したがって、一般の人々が、食べ物を減らして、教育が受けられずに、そして紛争も起こしかねない状況の中で、結局返さなければいけない。債務がふえた理由も、自分たちの理由というよりも、穀物マーケットとかまるで違ったところで実はふえてしまっている。したがって、世界の紛争予防上も、これはゆゆしいところまで来ているのでG7のテーマになっているんだろうと思うのです。  そういう観点からいたしますと、今のメリット・デメリットの根本が崩れるのではないか。だから、今までのいうところのスキームでは、ゼロがむしろマイナスになる方がはるかに大きくなってしまう。そもそも、そういう構造であるのでこういった問題になっているという認識が欠けているのではないのかなという気が私はいたしますけれども、その点、どうお考えになりますでしょうか。
  275. 飯村豊

    ○飯村政府参考人 債務救済、これからケルン・イニシアチブの合意に基づいてやります場合も、いわば帳消しにしたお金が建設的に使われるかどうかというのは保証されていないわけでございます。  したがいまして、私どもも、今、債務救済無償方式ということを申し上げましたけれども、もう一つ国際的に今協力しながらやっておりますのは、先ほど若干触れさせていただきましたけれども、貧困削減戦略ペーパーというのを一つ一つの国についてつくっていただいて、帳消しにしましたお金が軍事費に向けられたり非生産的な支出に充てられないように、まさに中長期的な計画を重債務貧困国に立てていただく、その上で国民の血税を使って債務救済を行うというシステムをとっておりまして、まさにこの二重の方法で債務救済を行わなくては開発の問題全般が解決できないという考え方で行動しているわけでございます。
  276. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 ですから、そういう一種の構造調整のような問題も含めて言っているわけですけれども、実際に今局長がおっしゃっているようなやり方で、では、それが受け入れられて、実際にそれができるかということになると、むしろそうはいかない可能性の方が……。  先ほど私がお金だけは上げないというふうに言ったもう一つの理由は、一種の不良債権化を起こしかねないではないかという気がするわけですね。  よく、借りたものは返さなきゃいけないという理由づけでモラルハザードということを言いますけれども、モラルハザードというのは二つ意味があって、不良債権化を起こさすような、貸している方の責任もあるのですよね。ですから、今のスキームですと、いわゆる借りる側のモラルハザードを日本側はよく言いますけれども、実は貸す側のモラルハザードという面もあるので、返してくれたと同時にそういうODAを出すということが実はプラスがマイナスになって、むしろもっと不良債権化を起こすということになれば、一見モラルハザードを起こさないようにやっていながら、むしろ不良債権化を増長するということにもなりかねない。  そもそもここまで至ったというのは、そういう貸し手の責任があるのでここまで来ているわけですね。つまり、独裁者という言い方がどうかわかりませんが、政府に対して支援をしてきた、ところが、いろいろな経緯がありますけれども、それを返す段になると今度は国民が返さなければいけない、生活を切り詰めて返さなければいけないということでここまで至っているというのが構造ですから、そういった構造にならないということがはっきり明示されなければ結局意味がない。その本質を押さえないで、とにかくまずお金だけは上げない、帳消しだけはしないという発想から来ている便法が——便法がきく地域もあると思います。  先ほど申しましたが、例えばカンボジアとかそういう例はあったわけですが、そもそも今回対象にしているような国々はそういった便法がきかないから今日のところまで来ているという認識がなければ、また便法で済ませてしまって、その便法が逆にもっと別の意味でのモラルハザードを起こしかねないのではないかということを申し上げたいと思っておるのですが、いかがでしょうか。
  277. 飯村豊

    ○飯村政府参考人 いわゆるHIPCと言われる国々は、委員御承知のとおり四十カ国ございまして、この国々に対しては、ODAの公的債権だけで九十億ドルに上るわけでございます。さらに、今般官房長官が発表されました非ODA債権を九〇%から一〇〇%の削減ということになりますれば、その部分だけで約一千四百億円に上るわけでございます。  これを私どもなりの方法で、確かに委員の言われたとおり、いろいろメリット・デメリットあるかと思いますけれども、これを基本的には放棄しようということでございます。これは国民の皆様の税金を使ってやらせていただくわけでございまして、まさに今まで委員が御指摘になられたように、過去の過ちをもう一回繰り返させないという観点からは、こういった削減された、あるいは救済されたお金が建設的に使われるようにいろいろな条件、途上国の自助努力というものが必要ではないかというふうに考えております。
  278. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 この前もアフリカの方々がいらっしゃったときに大蔵省とか外務省の方々にお会いをしたそうですけれども、牧師さんが来ていまして、妹さんはウガンダの学校の先生だそうですが、過去二年間に学校の就学率は倍増したけれども、財政難から教師の採用をとめているので一クラスが三百人になってしまったというような例が出ているそうです。  ですから、このウガンダという国が、かつてある時期の政府が援助を受けた、ところが、それがいろいろないわば不可抗力の形でふえていったものを教育とか生活、食べ物を含めて削らなければ返済ができない、そういったたぐいの次元の話、構造的なものでございますので、そうしますと、今のいわゆる商品購入をある意味では念頭にした無償協力スキームですと、中身を逆に限定できないわけですね。ですから、ある意味では、先ほどおっしゃったような社会開発に充てられるという保証がない形の無償協力スキームになっているのではないでしょうか。
  279. 飯村豊

    ○飯村政府参考人 今委員ウガンダの例を御指摘になりましたけれども、まさにウガンダの場合は現在の政府においても軍事費の支出の問題といった幾つかの問題を抱えているわけでございます。したがいまして、私ども日本のみならず、国際社会全体として、ウガンダがこれから債務救済を受けるに当たって建設的に使ってほしいということがございます。今までの政権が悪くてこれからの政権がいいというふうには一概に言えない部分があるのではないかと思います。そこら辺でいろいろな条件はやはり課さざるを得ないということだと思います。  それから、もう一つの債務救済無償でございますけれども、これは当然私ども使用され方をモニタリングしていくということを考えているわけでございます。
  280. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 ちょっと技術的なことで時間をとりましたので、少し別の観点から申し上げたいと思いますが、これは大蔵省の関係かもしれませんけれども、債権を免除すると次にはもう貸せないのだ、そういう法律があるというようなことをつい先週も宮澤大蔵大臣が別の委員会で答弁しております。いわば財政法の問題なのですけれども、ところが、よくよく聞いてみますと、必ずしもそういった法律はない。したがって法律上の障害はないのだというふうに聞いているのですが、その確認を大蔵省の方からしていただきたいと思います。
  281. 細見真

    ○細見政府参考人 お答えいたします。  まず第一点、国際協力銀行において貸し付けをして、それが債務救済無償の対象となったような場合に法的にもう一回貸せないかということ、あるいは重債務貧困国の対象になった場合に法的に貸せないかという問題でございますれば、法的にそういった制約があるわけではなかろうと思います。  ただし、委員御指摘のとおり、債務を返済できない状況になった国というのは債務の負担が重過ぎるということ、債務の残高が多くて返せないということでございますので、そういった国にさらに追加的に貸し付けを行う、先方に返済能力があるかということを考えると、それはなかなか難しいのだろうというふうに思います。  その意味では、新しい貸し付けが法的にできないということではないわけでございますが、それが望ましいことかどうかというのはまた別の問題かと思います。  以上でございます。
  282. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 今大臣お聞きになったかもしれませんが、今まで大蔵大臣を含めて、日本は財政法の問題があるので残念だけれどもということをおっしゃってこられたわけですが、実は、法律的にはそういうことではないと。  冒頭で削減ということを申し上げましたが、削減というのは具体的にどういうことができるかといいますと、合併をした国際協力銀行が削減を宣言すればいいのですね。国際協力銀行に対して政府の方で予算措置を講じて、ある程度の期間で返していけばいいのですね、政府が国際協力銀行に対して。したがって、この債務帳消しという話をした場合に、今日本が財政難なのに何を今さらという議論がありましたが、それは当てはまらない方法が実際にとれるわけです。  それから、今大蔵省の方がおっしゃっていただいたような、法律的にはそうだけれども残高が多いので返済が難しいという今の言葉を経済協力局長に投げかけたいわけです。つまり、先ほど来一生懸命説明していただいた無償援助スキームというのは、まさに非常に残高が多くて返済能力がない国に対してリスケをしようとしているわけですね。一たん返してください、リスケをしますと。ところが、今大蔵省の方がおっしゃっていただいたように、そもそも、それが非常に難しい国だからこういうことになっているわけです。それに、返すのが非常に難しい、したがって政策的に今までそういう方式をとってこなかった。法律的な財政法の問題じゃなくて、政策的に、返せないのじゃないかという前提でとってこなかったということ。ところが、今経済協力局の方でやろうとしていることは、一たん返しなさい、それで、それに見合うものを貸していきますよということは、先ほど不良債権化ということを申し上げましたが、一種のリスケでございますので、これは、今の経済協力局と大蔵省の話は非常に矛盾することになると思うのですね。  大臣、私は、せっかく削減ということを決めておる、そして、本質的にはやはり削減だろうと思います。なぜ本質的に削減かというと、そもそも構造上、いわばあるときの政府が借りたものが、その国の国民の犠牲、命、生活をすら奪わなければ返せなくなっている。したがって、削減をして、ゼロをプラスにする原点をまずつくっておかないことには、プラスになるかマイナスになるかの前提の議論ができないということだろうと思うのです。  それを便法でやろうとすると、プラスマイナス両面あるという話がございましたけれども、プラス面が著しく上回っているとは必ずしも言えない、むしろ構造上からいえばマイナス面になる可能性の方が非常に多いという状況ではないか。そして、その政策転換を図るためには、今まで私も財政法上難しいと思っていたわけですが、実は財政法上の縛りは法律的にはないということであれば政策的に決断をできるマターだろうと思いますし、ましてサミットの議長国として、政策的に転換をするのは、日本にとっても非常にメリットのある事柄ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  283. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私は、先ほど来のお話を伺っておりまして、藤田議員から、飯村局長が御答弁で申し上げたモラルハザードの問題に、モラルハザードは双方にあるのじゃないかということを御指摘になりました。まさに貸し手にもモラルというものがなければならないという御指摘は、恐らくそういうケースが、過去ずっと調べてみると、あるいはあったかもしれないと思います。しかし、とにかく一方で、貸した金は返すというのが、これは何よりもルールでございますから、そのルールをきちんとしておくということのためには、やはりそのモラルハザードというものは極めて重要だと考えていくべきだと思います。  それで、議員がいろいろ御経験から御指摘をいただきますことは、よくわかります。しかし、四十カ国に上るこれらの国々の中で、一つ一つの国にはやはりさまざまなケースがある。今日に至るまでの歴史的ないろいろなケースがある。あるいは、現在置かれている状況でもいろいろなケースがある。国によっては、非常にポテンシャリティーの高い国もあるでしょうし、そうしたものが十分ないという国もあるかもしれない。引き続き国内がざわざわとして、なかなか力が出てこないという状況下にある国もあるかもしれない。それは、一つ一つの国によってケースがかなり違うということもあるのだろうと思います。  それからもう一つ、財政法上の問題は、そういう法律があるか、こう議員からお尋ねになれば、そういう法律はありませんという答弁でございました。しかし、これは私はよくわかりませんが、恐らく、大蔵大臣がそうしたことを答弁なさったのは、やはりこれは極めて重要な政策上の判断、つまり、この政策判断をもし超えてしまうということになるとするとそこはかなり大きな問題になる、この部分はどうしても政策判断として変えたくないというお気持ちを、大蔵大臣なりあるいは大蔵省なりが持っておられるのだろうと思うのです。それはそれで、私は、一種のモラルを守るという意味で、そこも大事なところなのではないかというふうに思わざるを得ません。  しかし、いずれにいたしましても、重債務貧困国にとって、これからG7がこういうことをやろうと決意してその作業に入るわけでございますから、それらがそれぞれの国にとってプラスになるような、益するような方法で行われるということが何より重要で、とにかく決めたのだからやればそれでいいのだということで、それがその国にプラスになるかならぬかはまた別の話だというのでは、やはりG7なりG8なりの責任は果たせないというふうに私は思います。
  284. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 お言葉を返すようですが、きょうはちょっとじっくりと思っているものですから。  先ほど来の日本のスキーム、メリット・デメリットの話が出ていますが、さらに申し上げますと、一たん返してもらったものに対してまたODAを与えるということですけれども、その財源は、通常のODAの財源を使うわけですね。ですからODAが減るのです。例えばウガンダならウガンダでも結構ですけれども、ウガンダが今までの累積債務を返す。それに対して、それに見合ったものを無償援助スキームという形で出すわけですが、その財源は、もともとはODAとして出そうと思っていたものから出すのですね。  ということは、そのウガンダにもしこの無償スキームということをしなければ行くはずであったODAがそっくり減ってしまうということだろうと思いますから、したがって、先ほど来メリットとしておっしゃっておられる自立支援とは、むしろ矛盾するものになってしまう。これは明らかにデメリットの方が、受け手の側からしますと大きいのじゃないでしょうか。
  285. 飯村豊

    ○飯村政府参考人 確かに委員御指摘のとおり、債務救済無償、これは無償資金協力の一環として行っておりますので、ODAにカウントされるわけでございます。他方、まさに債務救済をしてほしいということが今開発援助の最大の課題になっておるわけでございますので、そこのところをまさに途上国の側は、先般の非同盟の会議、あるいはG77の会議でもそうですが、開発援助の大きな枠組みの中で債務救済をやってほしいという強い要望が出されているわけで、これは途上国に対する援助の一つの形として有効なものではないかというふうに考えております。
  286. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 何かちょっとよくわかりませんでしたけれども、要するに、本来はODAとして出すべきものであったものが、逆に減るということですね。  それから、先ほどの宮澤大蔵大臣のことは、そんなに言葉じりをとらえるつもりはありませんが、少なくとも、法律があるという答弁を今までされてきたのは間違いないわけですから、殊さらそれを大きくしようとは思いませんけれども、ただ、そういう事実が多分政府の中でも認識がなかったと思いますので、それは大臣、つまり削減ということに踏み込める、環境とすれば非常にいい情報だろうと思うわけです。  それで、この間もワシントンのIMFそれから世銀の会議に随分NGOの方が集まりましたが、ああいう方法についてもいろいろ議論がありますが、ただ、バーミンガムから始まって、シアトル、それからケルン、そしてワシントン、今度は沖縄という形になってきます。それだけ事の重大さがあるわけですが、実はこの債務削減についての議題が、まだサミットの正式な独立した議題になっていない。つまり、ほかのいろいろなパッケージの中に埋もれているだけで、まだはっきりした議題になっていないというふうに理解をしておりますが、いかがでしょうか。
  287. 河野洋平

    ○河野国務大臣 沖縄サミットにおきます議題の整理は目下行われているところでございますが、少なくとも、私の知るところでは沖縄サミットは、二〇〇〇年という一つの節目の年である、これから二十一世紀をずっと望んで、広く国際社会の中で心の安寧とか、あるいは繁栄とか、あるいは安心とか、つまり不安を除くとか、そういった普遍的な問題を中心的なテーマとして議論をしていただこう、そんな整理をしている段階であろうというふうに思います。  まだ、詳細のテーマと申しますか、そういったことがかっちりと決まったというふうに私は報告を受けておりません。
  288. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 それは、全体のアジェンダのセッティングのプロセスがそういうものなのか、今回は特に遅いのか。例年七月のサミットに対してアジェンダというのが、今四月の末ですから約二カ月前ですけれども、そういう漠然とした形で、いつもサミットというのはそういうものかどうかわかりませんが、仮にそうであるにしても、やはり幾つかの柱の一つとして、小渕総理が沖縄サミットを決められて、今大きな目的についておっしゃいましたけれども、そういう観点からしますとある意味では最も適したテーマであり、かつ、ここ二回のサミットの中の延長で来ているテーマでございますので、漠然としたテーマが、やがて姿をあらわすときにははっきりとテーマとして、議題として、アジェンダとしてうたっていただきたいということを、私がお願いするというのもあれですが、提案申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
  289. 河野洋平

    ○河野国務大臣 サミットの議長として、当然、前回のサミットつまりケルン・サミットの議長から、いろいろな議論についての引き継ぎと申しますか継承があるということは事実であろうと思います。また、ケルン・サミットから九州・沖縄サミットまでの間にフォローアップとしてどういうことができたかというようなことについても、また報告を求められるケースもあるわけでございます。  今議員がお話しのように、一つのテーマとしてそれが一項目起こされて、議長宣言と申しますか議長報告のような形で出てくるかどうかということになりますと、私、ちょっと今申し上げる資料を持ちませんが、いずれにせよ、ケルン・サミットにおきます合意があったわけで、その合意の実施が今回の九州・沖縄サミットによって加速化されるといいますか、あるいは加速化しなければならないということが重要な議論になるということは十分あり得ると思います。
  290. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 随分時間が過ぎてまいりますが、実は三月三十日に、超党派の議員連盟がございまして、小渕総理にこの債務帳消しの問題について陳情いたしました。小渕総理が倒れられる二日前のことでございます。それが意味があったのかどうかわかりませんが、それから約十日後に非ODA債権の帳消しを、削減を九〇%から一〇〇%に上げるというのを決定していただきましたこと、おくればせながら御礼を申し上げたいと思います。  たまたま、私はおととし、もう三年前になりますが、対人地雷禁止のオタワ条約のときにやはり超党派の議員連盟をつくって、当時の小渕外務大臣に陳情申し上げて、オタワを調印していただきました。そのときに実は、対人地雷禁止のキャンペーンをしておりましたNGOがノーベル平和賞をとったわけです。  今回小渕総理に三月三十日にお目にかかったときに、そういうイメージでお会いをしておりましたのですけれども、ことしは、いわゆる債務帳消しについての今世界で最大のNGOになったと言われておりますジュビリー二〇〇〇というグループがことしのノーベル平和賞の有力候補の一つになっております。そんなイメージも持ちながら小渕さんに三月三十日にお会いしたわけですが、ぜひ、外務大臣として沖縄サミットで削減を決めていただいて、そして一緒にノーベル平和賞をという形になるのか、あるいはジュビリー二〇〇〇が平和賞を実際にお受けになるかどうかわかりませんが、極めて類似性が強い事柄だろうと思っております。  そして、この削減というものに踏み切る。先ほどの財政法の問題も含めまして、それから環境的にいいまして、先ほどODAのそもそものお話の中の国民の理解ということ、これは世界の、市民全体の理解を得られる事柄だろうと思いますので、逆に言いますと削減というのは去年決まっているわけですから、決まっていることを実行すると政府は言ってきているけれども、実はその実行の中身がどうも便法で逃げているというふうに思われますので、やはり実行ということを実行していただきたい。つまり削減をしていただきたい、リスケじゃなくて削減をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  291. 河野洋平

    ○河野国務大臣 前段の、九州・沖縄サミットにおきます議論は、森総理は小渕総理の思いを一〇〇%継承したいという強いお気持ちがこの沖縄サミットに向けてあるというふうに私ども拝察をしておりまして、先ほど議員がおっしゃった小渕総理に対する申し入れは、恐らく、森総理がその申し入れは引き継いで持っていかれるということになると思います。  私どもは玄関番でございますから、飛行場でサミット首脳の送り迎えなどをいたすつもりでおりますけれども、会議において我が国総理が議長として、この問題について、先ほども申し上げましたように実行の加速化、つまり実効の上がるような、まさに本来の趣旨を踏まえた作業ができるような議論の誘導が議長の手によってなされることを私も期待いたしますし、きょうの議論につきましては、サミットまでの間に総理にもお伝えをしたいというふうに思います。
  292. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 ありがとうございます。  数分間残りましたが、もう一つのお金だけ上げないではございませんけれども、BC級戦犯について。  この事柄については外務大臣もよく御存じかと思いますが、一言で言いますと、政治的にも法律的にも谷間に置かれた方々。大変気の毒な状況にあられる。これはやはり政治的にあるいは外交的に解決していくべき問題ではないか。  これは裁判所の方でも、立法府あるいは行政の方で対応すべきだという判決も出ておることでございます。実は、いわゆるサンフランシスコ平和条約においても、請求権の処理は外交交渉で解決する、つまり外交的解決ということがうたわれておる。それから裁判の方でも、政治的あるいは立法的な解決ということが言われているわけですけれども、外交的に解決をするという意味が、裁判所の判断も踏まえて非常に重要ではないかというふうに思いますけれども、その点について、外務大臣として見解をお示しいただければ幸いです。
  293. 河野洋平

    ○河野国務大臣 もうこれは議員もよく御承知のとおり、本来、法的には完全かつ最終的に解決済みだというのが日韓間の法律的な取り決めでございます。でございますけれども、今議員がお話しのように、この問題に関する限り、いろいろなケースがあって、本当にお気の毒な立場の方々もおられる、かなりたくさんおられるということもあって、そうした方々をどうやって救済するか、あるいは、救済という言葉も余り適当でないかもわかりません、そうした大変重要な時期にその人生をそうしたことで使ってしまわれた方々に対して、どういうふうに我々として報いることができるかというような問題については、まさに法律で一刀両断、すぱっと割り切ることのできない部分もあるだろうということもございます。  つまり、私の申し上げますのは、旧日本軍軍人軍属の方々の置かれた状況にかんがみて、野中前官房長官の指示を契機に関係省庁でいろいろ議論をし、さらに内閣外政審議室において調査検討なども行ってきているわけでございます。これらの問題をどういうふうに解決といいますか前進させるかということは、議員がおっしゃるように政治的な問題であろうというふうにも思います。しかし、その政治的な問題をどういうふうに考えるかということについては、これまた大変いろいろな見方、考え方があって、そう簡単に答えが出ずに今日まで来てしまっているという部分があるのだというふうに思います。
  294. 藤田幸久

    藤田(幸)分科員 時間が参りましたので、一言申し上げたいことは、冒頭で申しました、お金だけ上げないという形の対象になってしまった方々というのは、まさに法律とか政治の谷間になってしまった、そういう方々に対するお金というのは実はソフトなんだろうと思うんですね。  今までお金だけ上げる方の箱物の援助というのがまさにハードだったわけですけれども、これから、冒頭で大臣がおっしゃっていただいたODAの本来の目的を達成し、国民の理解を得、そして有効に使っていくということから考えますと、従来のいわゆるネーションステーツといいますか国家というものを超えて、いわゆるソフトの面でのODAといいますか、そして、今までいろいろな枠でお金だけ上げないような形になってきたのは今までのそういった制約があるわけですけれども、今財政法のことについては実はそういうものがない、枠がないというのがわかったわけですが、そういった枠を超えて、本来のODAを実効的なものにするプロセスとして、今までのお金だけは上げないと言われてきた対象のものに対する方法をより積極的に考えていく非常に重要な時期が来ているような気がいたしますので、経協局長もいらっしゃいますけれども、それが日本の外交の選択肢を広げ、よりよい外交に、信頼される外交になる道ではないかというふうに考えておりますので、ぜひ御検討をお願いして、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  295. 中林よし子

    ○中林主査代理 これにて藤田幸久さんの質疑は終了いたしました。  次に、栗本慎一郎さん。     〔中林主査代理退席、主査着席〕
  296. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 栗本慎一郎でございます。  最初に、私ごとでございますが、昨年の秋に脳梗塞で倒れまして、今回は委員会で七、八カ月ぶりの質問をさせていただくことになりますが、その身に引きかえまして、小渕前総理大臣の病状につきましては、個人的ではございますが、大変御心配させていただいており、よろしければ外務大臣の方からも、ぜひとも今後も頑張っていただきたい、また勇気と希望を捨てないでいただきたいという御伝言を賜れば幸いでございます。  また、本来ならば河野外務大臣がその後をお継ぎになるんではないかと私は自分のホームページで四時間ほど予測いたしましたので、そうすると、ここでお会いできなかったので、その意味で残念でございます。  質問申し上げます中身は、中近東に対する我が国の外交政策ということでございますが、私は、実は昨年の九月から十月にかけて、それが脳梗塞で倒れる原因の一つになったという説もあるぐらいなんですが、イラクに行ってまいりました。そして、イラクにおける、首相というのはおいでにならないですね、第一副首相、実質首相として国際的にも認知されていると思われますタリク・アジズ氏と、一時間、国際問題、日本の問題、アメリカの問題について意見を交わしてまいりました。  そのときから私は実は体調がちょっと悪かったのですが、首相とのアポイントメントをとれたこと自身が大変なんであります。たしか、我が国の天江前局長が行ってもお会いになれなかったということだと思いますけれども、私が一方的に日にちをずらしても、待っていていただきまして、予定の時間三十分を二倍にして、もう通訳を交えず話をした。今でも私のホームページに、外交官の方もちょっとお読みいただけるとありがたいんですが、世界情勢、日本の位置についての英語版のサイトもございますが、彼はそれを読んでいる、そういうような関係でございます。  そこで、いろいろなことを忌憚なく、私の方も別にイラク派としてこれまでやってきたわけじゃありませんので、核査察等に関しては、きっちりとシロならシロであるということを我々にも見えるように明確にすべきであるし、そういう努力をもっとしてもいいのではないかといったことを含めて、忌憚なく強く申し上げてきたんです。  その核査察の問題でなく、まず、いわゆる国連制裁、湾岸戦争以降非常に厳しい形で続いております。これは、さまざまなところに国連制裁があるわけでございますが、このイラクに対しては、特に時期も長いし、また、医薬品も含めて厳しくチェックする。飛行機はもちろん飛ばせない。飛行機はアンマン空港にイラク航空のがあります。多分、もうあんなに何年も置いてあれば飛ばなくなるんだと思いますけれども。それでジープで行ってしまったので、しまったというか、それしかないんですが、往復四千キロでございました。  町を歩きまして、私はいわゆる恐怖政治と言われた時代のルーマニアとかハンガリーとかたくさん歩いた経験があるのでございますが、全く町の状態はそこに比べると明るい。非常にわかりやすい例で申し上げると、恐怖政治の行われている国では、旅行者がカメラを町の人に向けると、大体逃げるわけであります。ここは行ってもいいよというところは結構明るいんですけれども、よく見ると、後ろの方にその国の政府の方が何となく監視をしている。だから、栗本なら栗本が、こいつは登録されているとオフィシャルなところはオーケーだという感じなんで、これは私、学者時代から随分そういうところへ行きましたので、感じでわかるわけであります。これはいわゆる表面的な恐怖政治とは違う。  また、タリク・アジズさん自身が、外相御承知かどうか、実はイスラム教徒ではありません。イスラム教徒の国なんですが、キリスト教徒であります。  これも、クルド族という民族が、トルコ、イラク、イランにまたがりまして二千万人ほどいると言われておりまして、人類学者として私はいると思っておりますが、これはなぜ思っていると言わなければいけないかというと、御承知のとおり、もし本当にいるということになると、つまり、二千万もあればさまざまな意味で自治権を与えなければならない。だから、あいまいに、たくさんそういう人たちがいるけれども何人かわからないという話を、学者以外はしているわけであります。  これが大体、非常に弾圧されているという話になっております。実は、トルコでいわゆるクルド労働者党の党首が逮捕されまして、死刑判決を受けたということで非常に今国際的な関心の一つになっておりますが、イラクにはクルド人の政党が二つも存在し、与党とは言えませんが、かなりの数で存在している。日本の民主党さんぐらいの比率にはあるんじゃないかというぐらいであります。ですから、我々がCNNニュース等を見て受けるイラクのフセイン大統領のイメージと、現実の統治の実態というのは相当に違うという印象を強く持って帰ってまいりました。  そういう国に対しまして国連制裁が非常に長く続いているのでありますけれども、そこでは、もう本当にあらゆるものが輸入禁止であるという格好になっている。国民の多くの方が大体月収三ドルぐらいで暮らすというような状態でありますから、いわばこれはどの国でも起きる、簡単に言いますと、こそ泥であるとか、余りにも苦しいためにちょっと下級の官吏の人が少し何かくれというふうな話がないとは言えません。しかし、その辺がまた針小棒大に言われているところがありまして、基本的には全く大丈夫でありましたし、何よりも明確な事実として、先ほどのカメラですね、旅行者がカメラを持って深夜の一時でも二時でも町へ行っても、何の危険もないわけであります。  これは外務省の方にも直接申し上げておきましたけれども、バグダッドに我が国の大使館があるんですが、臨時代理大使が今も任命されておりますけれども、バグダッドにいない。東京にはイラクの臨時代理大使がいる。  タリク・アジズさんは大変ユーモアの、エスプリのきいた、自分の言葉でしゃべれる世界の政治家の数少ない一人であると思いますけれども、大変ユーモアに満ちた言葉で、我々貧乏イラクが、あのあなた方の非常に価格の高い、生活費の高い東京に臨時代理大使を置いているのに、この治安のいい、ここを強調していましたが、この治安のいいバグダッドに何で日本の大使館は、大使館をいわば開店休業状態にいたしまして、法律的にはあるんですけれども、いない。これでは困るじゃないかと。  日本だけというわけじゃないんですけれども、しかし全世界でもないわけですね。この辺に関しまして、そういう意見を賜りまして、私は一議員の立場として、自分の印象からいってもそれはおかしいと思うというふうに言ってまいったわけでございます。  まず、イラクに対する基本的な態度ということの前に、そういういわば形式的に公平を欠いているじゃないか、いかなる理由があるのか。私の考えでは全く、アンマンにおいて、バグダッドはひょっとしたら危ないかもしれませんよという話を私はたくさん受けたんですが、そういうことを言っているメリットは何もなく、デメリットだけではないだろうかという疑問がございます。ぜひとも大使館の、開設じゃないですね、開設しているんですから。大使館員及び臨時代理大使を戻して、公平な、対等の外交関係をまずつくるという御要望を申し上げたいんですが、その辺についてのお考えを賜りたいと思います。
  297. 河野洋平

    ○河野国務大臣 まことに御無礼なことを申し上げますが、きょうの委員会におきまして、松浪議員といい、藤田議員といい、また栗本議員といい、私にとりましては大変示唆に富むお話をいろいろと伺う本当にいい機会をいただいたことに、お礼を申し上げたいと思います。  とりわけ栗本議員におかれては、イラクという、正直我々にとって情報が極めて少ない地域に行かれて、今お話を伺っただけでも、恐らく議員のイラクにおける経験のほんの一片であろうと思いますが、我々にとっては大変貴重なお話を伺ったような思いがいたします。  おくればせで申しわけありませんが、議員が健康を回復されたことは、本当にそういう意味でも私にとりましてはうれしゅうございますし、貴重な議員の経験をぜひ国政に生かす意味でも、お体をおいといいただきますようにお願いを申し上げます。  また、同じように、小渕前総理にお見舞いをいただきましたことにお礼を申し上げますと同時に、何かの機会に御家族に議員のお気持ちはお伝えするようにさせていただきたいと思います。  さて、今非常に率直に大使館の問題についてお尋ねでございました。事務当局に確認をいたしましたけれども、例えばG8のメンバーの中でイラクに大使館がある国、ない国、いろいろあるわけでございますが、正直申し上げると、大使館があってきちんと大使がいて仕事をしているという国は、ロシアがそうだということでございます。また、ドイツもまた、これは必ずしも一〇〇%大使館として動いているかどうかは若干クエスチョンマークがあるようでございますが、ドイツもまずそういう状況に近い状況だというふうに報告を聞きました。  さらに、アメリカ、イギリス、フランス、イタリーとなりますと、これはイラクに、バグダッドでございましょうか、利益代表部という形で、大使館ではございませんけれども、利益代表部を置いている。これは当然さまざまな情報はそこから得ることができるであろうというふうに思います。カナダは公館を持たないということでございました。  さて、我が国でございますが、我が国の状況は今議員がお話しになりましたように、大使館は存在しているわけでございますが、現実に、日本から行っております館員はバグダッドにはおりませんでアンマンにいるわけでございます。情報収集ということも兼ねてバグダッドに行くことももちろんあろうかと思いますが、常駐していないというのは事実でございます。現地のクラークがいるというふうに、あわせて報告を聞いております。  今議員がお話しのように、イラクは日本に大使館があってちゃんと仕事をしているのに、なぜ日本はバグダッドに常駐していないのかというお話でございますが、これは恐らく、こうした状況、こうした事態が始まりました最初は一九九一年でございますか、一月に在イラク大使館員がイラクを出国して以降、こうした状況がずっと続いているわけでございます。これらはいずれも大使館におきます仕事がどういう状況にあるかということを私はさらに調べてみなければなりませんが、事実はそういうことになっておりまして、現在のイラクが国連の決議その他によって、いろいろな条件といいますか、状況を迫られている中で、なかなかそれがそのとおり進んでいないということが問題になるのではないかというふうにも思っております。  報告によりますと、我が国としては、国連安保理の関連決議の履行をイラクに対して働きかけるとともに、イラクとの対話を行うために過去二十七回にわたってテクニカルミッションを派遣したという事実はある。そのことがどれほど常駐の大使館に比べれば意味があるかということになりますと、状況を踏まえればあそこに大使館員を置けない理由というものもあるのだろうと思いますが、議員が御指摘のような、大使館はあるのに人がいない、甚だ残念だとおっしゃる状況に今なっていることは事実だということを申し上げざるを得ません。
  298. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 いわゆるG8諸国の関係についてはよくわかりました。つまり、全部があるわけではない。  しかし、そこはよく御承知のとおり、我が国とイラクの経済的な関係は他のG8諸国とは比較にならないほど強かったことは事実でありますし、そういう意味で、将来の日本のエネルギー政策とのかかわり等々も含めて、世界第二の産油国であります。ですから、努力という意味で、ほかの国が出ていないところもあるから置いていないというのはやはりおかしいし、ぜひとも早目に御検討いただきたい。安全は私が保障いたしますというふうに、私ではなく、タリク・アジズ氏が言っておりました。別におかしなことはないと思います。  これによって国際的な批判を受けることはまずあり得ないし、逆に、これは耳の痛いことを申し上げますけれども、アメリカの政策べったりのように思えるという、これは疑惑だというふうに私は思いますけれども、また思いたいわけですけれども、あるわけです。そういう意味の疑惑という点であると、イラクは核査察がいろいろあるけれども、実は持っているのじゃないかという疑惑も存在をしているかと思いますが、それであれば、その疑惑よりも、日本がアメリカのイラク政策にべったりであるという疑惑の方が強いということも、これは国際的な世論の中で十分御理解いただきたい、そこからぜひとも自立をしていただきたいというふうに思うわけであります。  その上でまた、例えばかつて日本の大使館が占拠された、占拠でしたか、そういったことが響いているのはよくわかりますけれども、そういったことがあれば、そのとき判断をするのでもよろしいのではないか。ですから、可及的速やかに、日本は自立しているのだということをぜひともお示しいただくようなことをお願いしたいと思います。  同時に、なぜまたこういうことをここで申し上げるかというと、たまたま私が復帰してきて質問の機会をいただいたからだけではなくて、これはアメリカ、イギリスの政治家、議会においても非常に今強まっている意見だからでございます。  先ほど申し上げた国連の制裁が、結果的に非常に過酷なものになり、見方によっては世界で最も過酷なものになっているという中で、イギリスの議員の一人は、イギリスのロンドン名物である二階バスに物資を乗せてバグダッドに運び、これは国際的に報道されておりました。  またアメリカでは、カリフォルニア州選出の共和党下院議員トム・キャンベル氏とミシガン州選出の民主党議員ジョン・コネアース氏、いずれも非常に信望のある政治家でありますが、彼らを先頭に合計七十人の下院議員が署名をいたしまして、今のイラクに対して行われている経済制裁は当初の目的から外れ、イラクの国民に対する不当な抑圧に結果としてなってしまっているではないかということで、これをリフトアップすることを要求するアピールと署名を、国連事務総長に送っております。私も、それは正しいと思います。  もちろんその中では、人道的な立場からということでありまして、これは例えば我々が、国としては批判をし、国交もない北朝鮮の人々に対して米を送ろうという話と同じであるのですが、実はその北朝鮮の問題に関しては、本当に国民のところに行くのかという疑惑が存在しているのも事実であります。自民党の外交部会の中でもそういう議論がございました。ところが、このイラクに関しましては、間違いなく人々のところに行く。当局の邪魔は皆無なんであります。  そういったことで、本当は援助をやるということもあれなんですが、これを外務大臣にお聞きしているわけじゃありません。私がここでお聞きしたいのは、実はそういう経済制裁の解除を求めるアピールをアメリカ議会でもかなりの人数の人々が行われ、それから、まだ結果が十分出ておりませんから途中報告になりますけれども、日本の議会でも、たまたまここに保坂展人議員もおられますけれども、既にこれとほぼ同様の趣旨の署名は何人か集まっております。これを一体何人にして国連にお届けするかということは、ちょっとこれは一種の政治的判断ということではありませんけれども、より有効な方がいいだろうからというふうなことで考えております。  これは恐らく、どの立場から見ても、今の経済制裁がイラク国民に対する極めて不当な抑圧に結果なってしまっているというふうな、政権に対するさまざまな意見はそれはそれといたしまして、そういうことがございますので、大体そういう動きがあることを外相は御存じであったかどうか。御存じでもしなかったならば、それは上げなかったという外務省の——外相のその大きなお耳には必ず入るべき種類のことだと私は思うのですね。その辺のことをお聞きしたいと思います。  まず、御存じでしたでしょうか。
  299. 河野洋平

    ○河野国務大臣 我が国の議員の中にもイラク議員連盟というのがございます。このイラク議員連盟は、あの湾岸戦争当時、大変厳しい状況に立たされて、大変苦しい立場の中にあったということも、私の仲間が何人かその議連に入っているものですから、聞かされたことがございます。  しかし、そうした中でも、イラクの大使は、そういう議連の仲間に対して自国の主張というものを繰り返し述べていたということを聞きました。当時はなかなか聞く耳を持つ人もおりませんでしたし、聞いても、それはとても大使の話は、湾岸戦争の、つまりCNNを通して見るイラクの姿を見れば、そうした大使の言葉は到底耳に入らない、そういう状況であったと思います。  その後、随分長い月日がたって、その間に国連から何度かの決議が出、査察を受け入れるようにという要請があり、一時はやや受け入れたような形になって、結局は、どうも国連側の査察が完全に受け入れられるということにならないということで今日の事態になっているわけで、アメリカにも日本にも、そうした状況下でさまざまな動きが出てきている。  さっき議員がイギリスでもいろいろな動きがあるということをおっしゃいましたけれども、恐らくあの近くの国々は、イギリスにとって長い歴史の中でいろいろなやりとりがあったわけでございますから、もっと言えば、欧米諸国とあの周辺の国々との関係というものと我が国との関係を考えれば、我が国の方は、そういう意味ではかなり真っさらな状況といいますか、我々には余りマイナスの歴史はないわけでございます。そういう状況下で、一方で、石油のエネルギー資源の問題もあるではないかという議員の御指摘は、それは我々もよく承知をしているところでございます。  しかし、一方で、あの湾岸戦争当時の状況を忘れられない部分というものもございます。あれだけのことが起こり、世界の耳目を集めたあの湾岸戦争というものは一体何だったのかということを、依然としてまだ我々には釈然としないものもございます。さらに、あの当時、日本に対してさまざまな厳しい、誤解に満ちた批判もあったことなどを考えれば、我々としても釈然としない思いもございます。  また、あの当時、イラクにおりました日本人の中には人質となった人もおりますし、大使館員も厳しい状況の中で仕事をしなければならなかったあのころのことを思いますと、私は外務大臣として、今議員から大変いいお話は伺いましたけれども、本当に……(栗本分科員「事実をお答えください、質問に答えてください、一般論は結構です。よくわかります」と呼ぶ)  一言だけお許しをいただきたいと思いますけれども、私として、館員を十分安全にバクダッドに出せるかどうかということについてよく考えなければならないと思います。  事実について申し上げれば、議員の中でそうした動きがあるということは承知をいたしております。
  300. 栗本慎一郎

    ○栗本分科員 ちょっと話が長引いたので、血圧が上がるといけないもので、失礼いたしました。  そういうお話はよくわかりますが、そのことは、しかしまた、大臣はよくおわかりだと思いますが、これを犯罪と比較するのは非常によくないことだと思いますけれども、一般論として、我々があることに疑惑がある、その捜査が行われた、あるに決まっているといって捜査をした、その捜査員の中に某国のスパイがいるという話も出て、そのことも含めて十分にはいかなかった、捜査側も完璧じゃなかった、捜査も違法があった、現在出ていない。これの時効というのはどうなるかわかりませんが、殺人で十五年で時効ですね。要するに、今、ある人にとっては絶対真っ黒だというけれども、見つかっていないわけですね。そういう中で、あるに決まっているから続けているというのが今の国際的な、法的な解釈だと思う。これは、やはりおかしいと思うんです。  しかも、それは政権に対してでありまして、国民に対してあのような過酷なあれを強いているということは別問題だと思いますので、ぜひともそこは、我々の動きが一体何になるか、それは別として、たとえ少数であっても私は筋の通った話だと思いますし、私自身が、イラクのフセイン政権についてプロ・フセイン政権であるとかいうふうなことじゃございません。ちょっと行ってみまして、フセインさん個人に会ったことはないけれども、言われているような恐怖政治とは違うなという強い印象を持ったのは事実でありますけれども。  私自身が英文でアメリカの新聞に書いた湾岸戦争当時のものがございまして、それは、砂漠に我々は友人を捨てるのか、デザートという言葉でひっかけまして、下手な英語でしゃれをつくりまして、言うならば、多国籍軍と訳されていましたが、本当は連合軍ですね、アライドアーミー。アライドアーミーを多国籍軍、マルチナショナルアーミーとするのは、多分あれは朝日新聞がやったんでしょうけれども、それもまた政治的な、意図的な誤訳であって、それはよくないんじゃないかというふうに同時通訳の人に文句をつけたこともございますが、そういうわけで、必ずしも私はプロ・イラクの立場ではないわけであります。  そこはぜひ御理解いただきたいんですが、そういったことで、今私どもの動きを御承知であるとおっしゃっていただいたんですが、そうじゃなかったら、榎局長に、何で大臣にその実態のことをきちんとお伝えしないんだという質問をしようと思ったのでありますが、大臣がそういうふうにうまく言っていただきましたので……。  でも、局長、今の状態でこちら側がちゃんとやるべきことを、つまり大使館員を置くとか、連絡員さえも置いていないというふうな状態で、イラクの側にとってみたら、まともに外交する体制をとっていないのに、ちょっとやってきたから会いたいとかいうのは、それは会わないのも当然だと思うんですよ。  ですから、それを打開するには、失礼ながら、今度は、局長さんが行って向こうの実質首相であるアジズさんに会おうとかいう話ではなくて、もっと下のレベルで話を詰めながら、そして、できたら大臣に行っていただくような形をとって、中近東問題はぜひとも、今後またさまざまな問題を起こさないように御対応をいただきたいと思うのであります。  そしてまた、人道的援助という点に関しましては十分の御理解をいただきたい。我々は、近い国であるからという意味で北朝鮮にも人道的援助をすべきなんですが、そこには技術的な疑問が、今申し上げたようにございます。簡単に言いまして、本当にお米を送っても人民に届くのか、軍隊の倉庫に入っちゃって売られるんじゃないか。これは自民党内の議論でありまして、私はもう知りませんよ。  しかし、そういうあれでありましても、イラクに関しましては間違いないわけです。もしそういうことが行われれば、着くわけです。我々が持っていくこともできるわけです。北朝鮮にはそれができませんね。  そういったことを含めまして、つまり非人道的なことを国連が続けるということは、また将来の問題に対しても、イラクの国民の側にとって国連に対する不要、不当な反発も強めることになります。その辺をぜひとも、サミットの話題等にはならないと思いますが、広い意味で目を配っていただいて御高配をいただき、また、総理になられましたときには、その辺を上位の順番に置いておいていただきたいということを御要望申し上げて、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  301. 赤城徳彦

    赤城主査 これにて栗本慎一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、保坂展人君
  302. 保坂展人

    保坂分科員 最後になりました。社会民主党の保坂展人です。  せっかく外務大臣と栗本議員、そして藤田議員の議論を聞いておりまして、予告はしておりませんが、簡単に二点だけちょっと指摘をさせていただいて、御感想、所感をいただきたいと思います。  一点目は、大臣御存じだと思いますが、先日、イタリアの下院議長が来日をされました。ここで森総理にも指摘をされたこととして、三十一年前にイタリアで起きた、銀行が爆破をされて十数人の方が亡くなり、百人近い方が負傷されたというフォンターナ事件、この容疑者、これはイタリアでは欠席裁判でもう裁判が始まっているそうですが、三月の末に身柄引き渡し要求があった、こういうことでございます。  実は三十一年前の事件ですから、その後いかなる経緯があったのかわかりませんが、この身柄引き渡し要求をされている方は、日本に入国し、日本国籍を取って、そしてファッションビジネスでかなりの成功をおさめている。法務省の民事局長並びに法務大臣からは、一般的に、日本国籍を持っている者を引き渡すことは原則としてはできないけれども、爆弾テロ事件などの重要な事件であれば、抹消も含めて検討調査を進めているというような答弁をいただいております。こういったことを指摘させていただいたということが一つ。  もう一つは、質問主意書などであるいは御存じかもしれません。実は私、当選して直後から、あえてビルマと言いますが、ビルマのアウン・サン・スー・チーさん率いるNLDの若い、といっても十年前に学生だった諸君といろいろな形で出会い、そして彼らの、日本国の中で起きているさまざまな悩み、あるいは入管上のいろいろな退去強制手続にかかわる問題等、御相談に乗ってきました。  そして、去年、これはちょっと政府としても重大な事件として記憶をしておいていただきたいんですが、一ツ橋の日本教育会館、ここのホールで、いわゆるミャンマー大使館が主催をする文化芸能大会みたいな催しがあったそうです。そこの場で、自由ビルマ万歳というような声が上がって、いわば祖国の民主化を求める、日本に滞在する若者の一人がそういう声を上げた。その席で暴行が始まったんですね。カメラの三脚などでたたかれ、そして現場に警察署員が駆けつけて、頭が割れて意識を失う。  あろうことか、そこに外務省の方が駆けつけたんですが、一応大使館の大使並びにその家族ということで外交特権がありますから、警察の、事情聴取をしたいということには断固拒否ということで、結局、この質問を私が法務委員会等でしていたさなかに、きょう質問するという日に、朝日新聞を見ましたら、ミャンマー大使は突然帰国されたんですね、去年の七月。そして、これは一時帰国で、その後そのまま離任される。異例の展開だったようです。  大使の家族の中にこの暴行の容疑者がいたんじゃないかということも、被害を受けた彼らは主張しています。警察の方は捜査をしている。しかし、捜査も一定の限界があります。ということで、これは外交ルートにおいて——外交官特権によって守られているとはいえ、白昼堂々暴行が起こるというのはまさに、圧制の国から逃れて日本国内で民主主義のビルマを建設しようと願っている彼らにとって大変ショッキングな、つまり、暴行を受けた翌日、私の議員会館にその青年が来ましたが、包帯にはまだ血がついていまして、大変ショックを受けました。こういうことがあった。そして、まだ解決していない。この点、特に御感想を求めたいと思います。
  303. 河野洋平

    ○河野国務大臣 前段のイタリーのゾルジという人の問題でございますが、総理とお話し合いの中でそうした問題が出て、総理からも、政府部内で検討中というお答えをしたようでございます。事実、そのとおりであると私は思います。  正直、突然のお尋ねで、この問題、私は詳しく承知しておりませんので、今のお話はよく調べてみたいと思います。  後段の、議員はビルマとおっしゃいましたけれども、私どもはミャンマーと言っておりますが、ミャンマーの問題は本当に深刻な状況だと思います。もう随分時が流れて、選挙において多数を得たアウン・サン・スー・チー女史率いる集団が結局政権の座に着けずに、現在もなお軍事政権という状況になっているわけです。  こうした状況が果たしてあそこに住む人たちにとってどういうふうに評価をされているのかということについては、これまたさまざまな議論があって、現地へ行って帰ってこられる人の中には、民主主義という点では非常に問題はあるけれども、しかし、治安の維持あるいは国を形づくるという意味ではきちんとできているのではないかという報告をされる方もありますし、いや、そんなことよりも何よりも、民主主義という視点に立てば、これはもうとんでもないことだというふうに言われる方もあって、これは本当に、その国を母国となさる方々、その国に思い入れの強い方々から見れば、何とかしなければならないという状況であろうと思います。  今お話しの暴行事件というものがどういうものであったか、これも私、詳細を存じませんのでそれに対する論評はできませんけれども、いずれにしても、現在のミャンマーが国際社会の中で認められて、そして国際社会の中でやはり活躍をしてほしいというふうに私は思っておりますだけに、何としてもあの国内で問題解決の動きがどちらからか、どちらからというよりは双方から出てほしいというふうに思います。  欧米の方々からはしきりにスー・チー女史を支援する非常に強いメッセージがございます。しかし、それだけではやはり問題は解決しないわけで、さらばといって軍事政権を支援するということもまた、これは適切であるかどうかということには非常に問題があると思います。  しかし、いずれにせよ、軍事政権、現在の政権側からやはり話し合いに応ずる、あるいは話し合いを呼びかける、そういう動きも出てこなければならない。つまり、両方からそういう動きが出てこなければならないわけで、一方からだけでは、一方だけを支援し、一方的に何かしろということでは、なかなか問題は解決しないのではないか。むしろ両方から、まさに国を思う気持ちが出てきてほしいというふうに私は思いますだけに、現在日本がとっている態度、立場というものはどっちつかずではないかということをおっしゃる方もありますけれども、私はやはり、現在の政権に対しても十分物が言える、政権に対してもっと話し合いに臨むべきだというような説得ができる、そういうことが必要ではないか、そんなふうに思ったりしております。
  304. 保坂展人

    保坂分科員 時間に限りがありますので、大臣にはぜひ、私がこの問題を多分委員会で質問をしたときに、NLDの国会議員として本来議場にいなければならない方がたまたま来日をされていて、傍聴席で聞かれて、その後私の議員会館の部屋に来られて、私もこうやって国会で質問したい、議論したかったということを本当に万感こもるまなざしで言われたということを今でも私は、非常に何とかしたいなという気持ちでいっぱいなので、外務大臣にもぜひ彼らの声を、また機会はあると思いますので、お伝えをしたいと思います。  そして、社民党が与党だったころ、ODAを空港の補修について出すときに、これはもう質問ではありません、指摘だけにとどめますけれども、当時、この補修で出すことについて随分議論を自民党との間でしました。大臣が言われるように、こういう人権問題や圧制については物申すのだというのであれば、我が国の中で起こったこの暴行事件について、しかも大使が突然帰国して、一時帰国のまま離任するという異常事態ですから、これに対しては本当に外交ルートでミャンマー、あえてミャンマーと言いますけれども、現地大使館もあるわけですから、そこできちっとしたことを言われているのかどうか。これはいいかげんにしてうやむやにしてほしくないということだけ指摘をさせていただきたいと思います。  それでは、予告をしていたアジア留学生協力会の問題、これは一点だけにします。  文部省外務省の認可法人であったアジア留学生協力会、平岩外四さんとか小山五郎さんとか財界人も理事に名を連ねているこの財団が、一月の十二日に認可取り消しに遭うということがあったようです。そして、その前段に、昨年の九月にはこの財団専務理事の笹川武勇氏が文部、外務両省によって刑事告発を受ける、これは一千百五十万円の業務上横領というようなことで報道がなされています。  これは一点だけ、もう質問を絞ります。  実は、その一千百五十万円が問題というだけではなくて、財団の七億円余りの基本財産が消失をしていた、つまりなくなっていたということも報道されているのですが、これは事実でしょうか。事実としたら、どこへ消えたのか。どういう調査を行っているのか。これは簡潔にお答えいただきたいと思います。
  305. 林梓

    ○林政府参考人 御報告いたします。  基本財産が費消されているのは事実でございます。先方からの、理事会と向こうの称する、その理事会の報告というのを受けましたときに、過去の累積した赤字等を補てんしたというような記述を発見いたしました。それで、非常におかしいと思って調査をいたしまして、これが費消していることは事実でございます。  これは、今御指摘のように、告発をして捜査が進んでおりますので、そういう段階でいろいろな問題が明らかになってくることを我々は期待しております。
  306. 保坂展人

    保坂分科員 後ほど外務大臣に御感想を伺いますが、アジアからの留学生を招いていくこういう財団、公益性の高い法人の基本財産がない、こういう公私混同が行われるというあるまじき事態が起きているわけですが、もう一つの公益法人の問題を取り上げたいと思います。  海外技術者研修協会、これまた長い歴史を持つ法人でありまして、全国に研修センター、東京でありますとか横浜、関西、中部にかなり大規模な研修センターを運営されている。この中で幾つか問題点が起きているようです。  これは通産省の方にお聞きをしたいと思います。まず、この研修センターなんですけれども、新聞等に、かなり長い間いわゆるビジネスホテル格安版としてお客さんをとっていて、旅館業界が、これはもう旅館業法違反ではないか、法律違反をしているのではないかということで、やみ旅館業をしていたということで、例えば横浜市が中止指導をしていたりとか、書類送検されたりということがいろいろあったようです。これはどうしてこんなことになってしまったのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  307. 寺田範雄

    ○寺田政府参考人 ただいま先生に御指摘いただきましたように、海外技術者研修協会は現在、旅館業法違反ということで、特に横浜のセンターでございますけれども、横浜地検に書類送検をされているという状況にございます。  この研修センター、当然のことながら、海外からの研修生に宿泊をしていただきまして、そこで研修を受けるという目的の施設であるわけです。  この事業を円滑に遂行していくためには、地元の皆様方とか、会員企業の方々、そういった方々のやはりいろいろな理解と協力もあわせて必要であるといったような観点から、あくまで宿泊施設にあきがある場合、予備がある場合に限ってでございますけれども、地元の企業の方々、あるいは会員企業の皆さん、あるいは地元市民の方々、そういった方々に御要望に応じて実費をいただいて研修施設の利用を認めてきたということがあったわけでございます。  ここで宿泊料をちょうだいしたということで、旅館業法の許可をとっておりませんものですから、そこの点が旅館業法違反になるということでございまして、昨年の六月に、地元の保健所の方からその点についての指摘を受けまして指導がなされております。それ以来、横浜研修センター以外の、今御指摘いただきました全部で四つの研修センターがあるわけですけれども、この四つのセンターすべて、それ以後は、こういった外部の人たちを宿泊させるというようなことは一切行っていないということでございます。  私ども通産省としましても、それ以来指導をいたしまして、以後、保健所の指導に即してそういったことは行っていないということで、今後ともその点につきましては十分監督していきたいと思っております。
  308. 保坂展人

    保坂分科員 この旅館業法違反という問題はいわゆる国内問題ですけれども、実は、かなり大規模にこの協会がアジア各地から研修という形でいろいろな方を受け入れ、そしてその研修が終わった方を、同窓会という形で組織されている。この同窓会という形で例えば来日をしてもらうという催しが行われてきたと聞いております。  問題は、昨年の三月、インドにおきまして明るみに出てきたことでございますけれども、在インド日本領事館から、端的に言えばこの同窓会の航空運賃の扱いに疑義があるのではないか、こういう議論が出てきたと私は聞いております。  航空運賃の正規料金というのは、御存じのとおりかなりの額なわけです。ところが実際には、正規料金を振り込んだはずなのに、これがいわば全く一番安いディスカウントの航空券が支給をされる。こういうことの中で、不明朗な経理が行われているのではないか、こういう指摘がありました。この点については、この協会の中でも、指摘を受けて改めるということが行われているようですけれども、過去これは本当にあったのか、実態はどうなのか、その調査を本当にこれは通産省としてされているのかどうか、この点をまた簡潔にお願いしたいと思います。
  309. 寺田範雄

    ○寺田政府参考人 ただいま御指摘いただきました渡航費の請求の件でございますけれども、これは現実に格安の航空チケットで購入したにもかかわらず、それより高い金額が請求されているというようなことにつきまして、インドのケース等で指摘をいただいているところでございまして、現在、海外技術者研修協会におきまして実態を調査しているということでございます。  当然のことながら、不当請求の事実が発見された場合には、差額分は国庫へ返納するという措置をとらせていただくことになるわけでございますけれども、実は、そういった指摘が昨年来なされていましたことから、その点は本年度に入りまして改善をいたしました。  チケットの購入方法につきまして、今までは、現地で購入して日本で請求をしてもらってこちらで払っていたという形だったわけですが、今後は、日本の方で航空チケットを購入して現物を現地の方に送付をして、それを利用していただくということで、そういった不当請求が行えないような仕組みに改善を図ったところでございます。
  310. 保坂展人

    保坂分科員 これは、ODA関係ということで、かなりの予算が補助金という形でついているのではないかと思うのですが、この研修協会の渡航費の予算は年額幾らぐらいなのか。そして、今私が指摘した同窓会と言われる方々の渡航費の金額、それが昨年ないし一昨年のベースで、それぞれというのではなくてどちらでもいいです、大体年額幾ら、最近はどうなのかということについて、お願いします。
  311. 寺田範雄

    ○寺田政府参考人 補正予算等でこういった事業がふえたり減ったりするということがあるわけでございますけれども、単年度ベースで大体計算いたしますと、平成年度の例でございますが、補助金ベースで五億三千九百三十六万というのが全体の渡航費に相当する金額でございます。単年度ベースで見ますと、この金額はそれほど大きく変動してございません。  それで、同窓会の関係につきまして、渡航費で幾らかというのは、ちょっとなかなか算定ができないわけですけれども、受け入れをしている研修生の数、コースの数その他から考えまして、大体五分の一ぐらいが、同窓会からの推薦という形で現在受け入れて研修している方たちの渡航費におおむね相当するのではないかというふうに想定いたしています。
  312. 保坂展人

    保坂分科員 今平成十年の補正予算の件を出されましたけれども、中小企業研修生受け入れ事業というのが平成十年の補正で盛り込まれておりまして、これは本体事業の補助率七五%ではなくて、全額補助になっていたというふうに私の調べでは確認できるわけなのですが、こういう事実はありますか。
  313. 寺田範雄

    ○寺田政府参考人 ただいま御指摘いただきました中小企業の関係の特別事業でございますけれども、これは平成十一年度の補正ということであったかと思いますが、まだ今、先ほど申し上げましたように海外技術者研修協会において実態調査が進行中でございますので、全体が調べ終えてございませんけれども、その予算に関連しましては、このような事実は目下のところはちょっと発見されていないという状況ではないかと思いますが、まだ途中でございますので、今後さらに調べたいと思います。
  314. 保坂展人

    保坂分科員 いっぱい細かいことを聞くとわかりにくくなるので、もうごく簡単に、外務大臣に感想というか、受けとめていただきたいのは、今の研修協会の件では、通産省がお認めになったように、インドの領事館から指摘を受けていろいろ調べてみると、これはやはり高い料金で購入をしたはずのチケットが、実はIT料金というか、ディスカウントのエアチケット、そこに落差があるわけですね。この落差が一体どこに消えてしまったのか。  これは、今重大な答弁をいただいたと思いますが、もしここに不正があったのであれば国庫に返納してもらう、こういう答弁があったので、これはぜひ厳重に調べていただきたいと思うのです。当該現地の方々に、もしそういういわば二重の予算構造みたいなことがあったとすれば、やはりこれは悪い影響を与えるのではないかと私は思います。  さらに、さきに質問したアジアの留学生、この財団の解散、解散というか認可取り消しですね。アジアの留学生たちを受けとめ、育成するという財団本来の目的は消失したわけではないわけですが、こういうことで基本財産まで消えてしまう。あるいは、きょうは具体的に出しませんが、実は別の、これは法務省所管の公益法人では、アジアから留学生を研修で連れてきて、研修というつもりで来たら漁に、海に出ていく漁船に乗せられて、かなり長時間労働で、そこを逃げ出してくる。いろいろな形で、アジアとのかけ橋という言葉はいいですけれども、不名誉なことや正さなければならないことを日本はかえって輸出してしまっているのではないか、こんなことを感じるわけですが、御感想を一言いただきたいと思います。
  315. 河野洋平

    ○河野国務大臣 アジア留学生協力会は、私の記憶が間違いでなければ、外務大臣もなさった福田赳夫先生の肝いりで、呼びかけでと申しますか、著名な財界人もこれに賛同をされてつくった協会だと承知をいたしております。  今、議員がお話しのように、極めて意味のある仕事をしておられた。ただただ日本で留学をして、帰ってしまえばそれで終わりというのではなくて、いわゆる、それから先もその人たちと日本とのかかわり合いを十分つくっていって、お互いに交流をする一つの重要なチャネルであったに違いないわけでございます。そうしたことが、運営上の問題で基本財産まで失う、こういうことになって、これはもう運営上の事態を考えれば取り消さざるを得ない、まことに残念な、遺憾な事態だと思います。  しかし、今まさに議員がおっしゃったように、この協会は運営上のこうした不始末からいって取り消さざるを得ない、そしてまた基本財産を出していただいた方々には何とおわびをしていいかわからない、まことに申しわけない事態だと思いますが、この協会をつくった目的というものはまだまだ残っているわけでございますから、その目的をこれからどういう方法で達成していくかということを我々は考えていかなければなりません。まず、こうしたまことに申しわけない不始末に対しておわびを申し上げると同時に、今後、こうしたことを乗り越えて、目的をやはり大事にしていく努力というものをしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  316. 保坂展人

    保坂分科員 もう一つ、二番目に指摘をさせていただいた研修協会の航空運賃の落差は通産省もお認めになったのですが、これは通産省の問題というよりは、やはりアジアの、しかもそれぞれの国の経済の骨格をこれから担っていかれようとする、日本にとっても大切な客人である人たち、その人たちを招くに当たって仮にそういう不正経理があったとしたら、大変失礼な話ではないか、日本に対する信頼感や、ビジネスにおける表裏なしということと全く逆の、日本というのは裏がある国だというふうに印象づけられてしまって、大変遺憾な事態になると思うので、この点についてもぜひ注目をしていただきたいのですが、これ、一言だけいただきたいと思います。
  317. 河野洋平

    ○河野国務大臣 もうまことにお恥ずかしい事態と言うよりほかにないと思います。こうしたことが決してあってはならないというふうに思いました。
  318. 保坂展人

    保坂分科員 それでは、ちょうど時間になりました。この問題については特に、公益法人一般の問題というよりは、やはりアジアとの関係でじっくりと、そして外務省にも通産省にも速やかに調査を行っていただいて明らかにしていただくことを、改めて大臣の前で要請をして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  319. 赤城徳彦

    赤城主査 これにて保坂展人君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして外務省所管の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十一日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時二十五分散会