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2000-03-22 第147回国会 衆議院 運輸委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月二十二日(水曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 仲村 正治君    理事 石破  茂君 理事 実川 幸夫君    理事 菅  義偉君 理事 森田 健作君    理事 高木 義明君 理事 玉置 一弥君    理事 江崎 鐵磨君       衛藤 晟一君    大石 秀政君       久野統一郎君    熊谷 市雄君       栗原 裕康君    坂本 剛二君       桜井 郁三君    桜田 義孝君       田中 和徳君    中馬 弘毅君       中野 正志君    望月 義夫君      吉田六左エ門君    渡辺 具能君       奥田  建君    今田 保典君       永井 英慈君    前原 誠司君       松崎 公昭君    石田幸四郎君       遠藤 乙彦君    岩浅 嘉仁君       寺前  巖君    平賀 高成君     …………………………………    議員           玉置 一弥君    運輸大臣         二階 俊博君    運輸政務次官       中馬 弘毅君    政府参考人    (運輸省運輸政策局長)  羽生 次郎君    政府参考人    (運輸省鉄道局長)    安富 正文君    政府参考人    (運輸省海上交通局長)  高橋 朋敬君    政府参考人    (運輸省海上技術安全局長    )            谷野龍一郎君    政府参考人    (運輸省港湾局長)    川嶋 康宏君    参考人    (帝都高速度交通営団総裁    )            寺嶋  潔君    運輸委員会専門員     長尾 正和君     ————————————— 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     田中 和徳君   木村 隆秀君     大石 秀政君   久野統一郎君     桜田 義孝君   中野 正志君     熊谷 市雄君   望月 義夫君     桜井 郁三君   佐藤 敬夫君     松崎 公昭君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     木村 隆秀君   熊谷 市雄君     中野 正志君   桜井 郁三君     望月 義夫君   桜田 義孝君     久野統一郎君   田中 和徳君     小里 貞利君   松崎 公昭君     佐藤 敬夫君     ————————————— 三月十七日  移動制約者のための交通バリアフリー法制定に関する請願(北沢清功君紹介)(第五〇〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  運輸施設整備事業団法の一部を改正する法律案内閣提出第二七号)  高齢者身体障害者等公共交通機関を利用した移動円滑化促進に関する法律案内閣提出第三四号)  高齢者障害者等移動の自由を確保するための法律案玉置一弥君外二名提出衆法第三号)  陸運に関する件(帝都高速度交通営団日比谷線脱線衝突事故問題)     午前九時一分開議      ————◇—————
  2. 仲村正治

    仲村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出運輸施設整備事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として運輸省運輸政策局長羽生次郎君、同海上交通局長高橋朋敬君、同海上技術安全局長谷野龍一郎君及び同港湾局長川嶋康宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 仲村正治

    仲村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————
  4. 仲村正治

    仲村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木義明君。
  5. 高木義明

    高木委員 おはようございます。民主党の高木義明でございます。  運輸施設整備事業団法の一部を改正する法律案について、時間の範囲内でただいまからお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず初めは、行政改革観点から若干のお尋ねをしてみたいと思います。  特殊法人整理合理化等につきましては、平成五年の十月二十七日、臨時行政改革推進審議会、いわゆる第三次行革審答申において、行政減量化効率化を図る、そして、時代的な要請にこたえるために総合的かつ全般的に行政を見直していく、こういうことで、これに基づいて、平成七年の二月に、運輸省関連鉄道整備基金船舶整備公団統合閣議決定をされまして、平成九年の六月十三日には、運輸施設整備事業団法制定をされました。こういう経過でございます。  そこで、運輸省として、このような統合をしていく折に、行政効率化スリム化というのを本当に考えておるのだろうか、私はそのように常々感じるわけであります。  例えば、統合前の平成八年度の鉄道整備基金船舶整備公団について見てみますと、鉄道整備基金、これは二部四課、役員が五人で、職員五十八人、資本金一億円、予算が一兆二千八百二十七億円、このようになっております。一方、船舶整備公団は、五部十二課一室、役員が六人、職員七十八人、資本金が四十五億円、予算が千四百八十三億円、こういう状況でありました。  そして、統合後を見てみますと、平成十年度でありますが、運輸施設整備事業団になりまして、五部十一課一室、役員が八人、職員百三十五人、資本金が四十七億円、予算については、鉄道関係が一兆一千六十二億円、船舶関係が千五百八十一億円、新しく加わりました基礎的研究等が四・一億円、こういう状況でございます。現在は、運輸施設整備事業団として、八人、百三十二人、百四十八億円、こういう状況で推移をいたしております。  これを見てみまして、役員は三人、職員は四人の減、資本金百一億円の増、予算は、鉄道勘定が約一千億円の減、船舶勘定がほぼ同様、基礎的研究等勘定が約三百億円の増となっておるわけです。若干の役職員の減、これは私もそのように認めていきたいと思いますが、本当の意味で、この事業団の運営が、行革審答申の言う行政減量化スリム化効率化、これに十分こたえているのかどうか、この辺についていま一度、運輸省としてどのようにお考えであるのか、答弁をいただきたい。
  6. 中馬弘毅

    中馬政務次官 高木委員指摘のように、行革の一環として、こうした特殊法人統合再編を行ってまいりました。運輸省としましては、この方針にのっとりまして、積極的に対応してきている所存でございます。  御指摘でございます鉄道整備基金船舶整備公団、これの統合平成九年十月に行われまして、運輸施設整備事業団が発足したわけでございますが、今委員からも数字が述べられましたように、部の数、七部を五部に減らしたり、あるいは役職員も十一名を八名にしたりということで、かなりそれなり効果は出ていると私ども認識いたしております。それだけではなくて、業務につきましても、単純に統合しただけではなくて、港湾運送用船舶共有建造及び使用譲渡を初めとする多数の業務廃止するとともに、今度は、時代の要請にこたえるために必要な運輸技術に関する基礎的研究業務、こういったことも新たに加えました。  そういったようなことの上で、今御指摘がありました費用の面でございますが、旧国鉄長期債務償還等を除きまして、一人当たり事業費を比較してみますと、統合前、平成八年度は一人当たり二十五億円でございましたけれども、現在では、逆にそれがふえて、一人当たりでは二十八・四億円を処理する事業をしているということで、そういうところからも、行政改革の実は上がっているのではないか、このように認識いたしております。
  7. 高木義明

    高木委員 「特殊法人等整理合理化について」、平成九年六月でありますが、この閣議決定に基づいて、今回の議案の中にも主な柱としてあります造船業基盤整備事業協会廃止をされて、その業務の一部を、ただいま申し上げました運輸施設整備事業団が引き継ぐことになっております。  現在の造船業基盤整備事業協会構成は、三部六課となっておりまして、役員が七人、職員が十九人、資本金が七十三億五千万円、予算総額が百十二億円、こういう状況でございます。  法の施行は、平成十三年三月一日、運輸施設整備事業団が引き継ぐのは、平成十二年度の一カ月といわゆる新しい十三年度からになるわけであります。  こういう状況で、この事業団は、いわばその中に、鉄道、それから海運造船、こういう分野から、事業団目的であります大量輸送を基幹とする輸送体系の確立という重要な役割を果たさなければならないし、またそれが期待をされてこそこの特殊法人等整理合理化あるいは行政改革の精神にこたえることであろう、私はこのように考えます。そういう意味で、その役割は重大でありながらも、同時に、一方でスリム化効率化を続けていかなければならぬ、これは言うまでもありません。  したがって、この際、造船業基盤整備事業協会廃止事業継承に伴う、いわゆる運輸施設整備事業団構成人員資本金予算、これについてはどのような形態になっていくのか伺いたい。
  8. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 御説明をさせていただきます。  造船業基盤整備事業協会運輸施設整備事業団への統合に際しまして、同協会組織人員につきましては、次のように大幅に削減を予定したいと考えております。  まず組織につきましては、先生指摘の、現行の三部六課体制を一部三課体制削減いたしたいと考えております。また人員につきましては、役員数を七人から一人に削減いたしたいと思っております。さらに、職員数につきましても十九名を十二名に削減をいたしたい、こういうふうに考えております。  それから、御指摘資本金の取り扱いでございますが、御承知のように、造船業基盤整備事業協会には、現在、政府出資金十億円、それから、日本政策投資銀行から出資金十億円、さらに民間出資金五十三・五億円、トータル七十三・五億円を資本金として保有いたしておりますが、政府出資金それから日本政策投資銀行出資金は、そのままこれを運輸施設整備事業団に移管することとし、さらに、民間出資金につきましては、持ち分の払い戻しを希望する者には払い戻しを行った上で、残った分につきまして、引き続き資金的貢献を希望することを条件として拠出金として同事業団に移管をしていただこう、こういうふうに考えております。
  9. 高木義明

    高木委員 今の御答弁は一定の評価をしたいと思います。この造船業基盤整備事業協会は、思えば昭和四十八年でありましたが、あの石油危機に端を発しまして、いわゆる造船業構造不況に陥った、これを乗り切るために、当時五千トン以上の船舶製造することができる造船業の過剰な設備土地買収等によりまして、昭和五十三年に特定船舶製造業安定事業協会として設立をされたわけです。翌昭和五十四年度には、第一次買収事業で九事業所、四十八万九千トン昭和六十二年度は、第二次買収事業で五事業所の二十六万七千トン買収によって我が国造船建造能力削減となったわけであります。  そこで、平成元年六月、まず第一に、船舶舶用機関等に関する技術開発促進するための業務を、また平成八年六月には、二番目として、外国船舶製造事業者による船舶不当廉価建造契約防止に関する業務、いわゆるダンピング防止に関する業務でありますが、これを追加して今の造船業基盤整備事業協会、こういうふうになってきたわけです。平成十年においては、現下のこのような構造不況物流構造の変化あるいは景気の低迷、これによって内航船建造需要が大幅に減った、そういう中で、特に中小造船業設備過剰の問題が浮上をして、この削減のために特定船舶定義が、長さ五十メートル以上の船舶製造が可能であり、かつ製造できる最大の船舶が一万総トン未満造船施設を有する船舶製造業、こういう定義に改められまして、いわゆる第三次の買い上げ事業が開始をされて平成十二年度まで実施される、こういう経過をたどっておるわけであります。  そこで、今日まで造船業基盤整備事業協会が果たしてきた役割についてどのように評価をしておるのか、この点についてお答えをいただきたい。
  10. 中馬弘毅

    中馬政務次官 石油ショックで、世界一の造船量を誇っておりました日本造船業が、大変大きな困難に陥ったことは御指摘のとおりでございます。それで、この前身の特定船舶製造業安定事業協会が設立されまして、大幅な造船所買収、そしてまたそれを廃棄してしまうという挙に出たわけですが、この金額も四百七十五億円をつぎ込んでおります。そしてまた、逆にそれを新たな形で生かしていく形で、ただ買ったまま放置しておくわけではなくて、全部それの処理も済みました。このおかげで設備能力が二分の一に削減をされております。  また、今御指摘がございましたその後につきましても、中小造船所に対しましては、平成十年度から三カ年計画で設備及び土地買収実施中でございます。まだ一カ所でございますが、これは順次、今の目的を達成するまで何とか頑張っていきたいと思っているところでございます。  さらに、不況によって停滞した造船業技術開発を活性化して、造船業基盤を強化するために、平成元年より超高速船、テクノスーパーライナー、また、超大型浮体式海洋構造物メガフロートですが、これらの高度船舶技術に関する試験研究に対する支援事業実施いたしておりまして、それはそれなりに、また大きな効果を発揮していることは御承知かと思います。  以上のような業務実施することによりまして、同協会我が国造船業の経営の安定及び技術高度化に大きく貢献してきたところだと認識いたしております。
  11. 高木義明

    高木委員 この整備事業協会は、構造転換事業、いわゆる買収事業完了に伴って廃止することといたしておりますが、これは何をもって完了と言えるのか、この点について、いま一度明らかにしていただきたい。
  12. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 御説明をさせていただきます。  中小造船業平成十二年度末までの買い上げ事業目的でございますが、先ほど先生からも御指摘がございましたが、現在、中小造船業というのは大変需給均衡に悩んでおります。したがいまして、この買い上げ事業そのものは長期的な需給均衡を是正することを目的としたものということで実施をいたしております。  具体的には、平成十年度から十二年度までの三年間を目標に置きまして、一つは、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業一環といたしまして、長期的に過剰となる約二五%の供給力削減することを目標として、中小造船事業者が自主的に設備削減するとともに、これを促進する観点から買い上げ事業造船業基盤整備事業協会において実施をいたしているものでございます。  この買い上げ事業につきましては、先ほど総括政務次官お答えいたしましたように、十一年度までの間に一カ所しかまだ買収ができておりません。  それぞれ、長い間造船業実施されてきて、それなりにいろいろと思い入れがあるということで、なかなか難しい点はございます。しかし、中小造船事業者の円滑な撤退支援していき、この買い上げ事業をスムーズに進めることが需給均衡を長期的に図っていく観点から大切なことだ、こういうふうに認識をいたしておりますので、日本小型船舶工業会中型造船工業会などの業界団体などにも十分本制度趣旨とメリットを説明の上、着実な成果が上がるように努めてまいり、何とか十二年度末までに所期の目的が達成できるように努力をしたいと考えております。
  13. 高木義明

    高木委員 そこで、中小造船業状況についてお尋ねをしてまいりたいわけですが、中小造船というのは、御承知のとおり、各地域における経済あるいは雇用、こういうところでは大きな役割を果たしておるわけです。ところが、今日のこの不況に加えて、中小造船操業度も非常に厳しい状況にあって、廃業するのか、片や仕事量を求めて日夜頑張っておる姿を私もよく聞いております。  そういう状況の中で、平成九年に海造審補足意見書として、長期的に過剰となる中小型船供給能力を二割から三割処理して、この需給均衡を可能な限り速やかに解消する必要がある、このため、事業者の自主的な集約化あるいは設備処理、そして造船業基盤整備事業協会による買収事業、これを活用することによって、今言われました十二年度末までに需給の不均衡解消を図る、こういうことになっておるわけです。  この第三次買収事業では、処理が必要な過剰設備は、全体で百二十の中小造船業の四分の一程度の半分程度をこの事業協会買収をしておりまして、十五事業所、百億円の事業規模が設定をされております。現在の進捗状況は、一事業所のみ買収で、土地については一万二千四百八十五平米、買収価格は五億四千百万円、設備を含めて約六億円弱という状況でございます。  つい先日の三月十六日、海造審における運輸省の資料においては、中小型船建造量平成四年がピークで、五百六隻の五十三万三千総トンから、平成九年は約半分の二百五十七隻、二十六万五千総トンまで落ち込んだ。内航船建造は依然として減少しておるという状況が明らかになっております。  中小造船約八十社のうち、これは常時操業している会社ということでしょう、十一年の一月時点では二十九社が、平成十二年、ことしの一月時点では六十三社が、約八割の事業者手持ち工事量はゼロ、こういうことを言っておられます。  したがって、この際、第三次買収事業現状を踏まえて、平成十二年度末までにどのようにこの需給均衡解消を図っていくのか、今後の見通しについてお答えをいただきたい。
  14. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 御説明をさせていただきます。  先生今御指摘のように、現下中小造船業というのは、私どもが受け取っているよりはるかに厳しい状況にございます。今御指摘のように、事業者数八十社にアンケート調査をいたしましたら、十二年の一月末時点では、八十社のうち六十三社が全く仕事がないという状況であります。  ただ、我々、中小造船業がその糧としております内航船需要につきましては、これは将来的には供給者として中小造船業が応分の役割を果たしていくものだと認識をしております。また、現下の情勢というのは、表現が妥当かどうかわかりませんが、いわば需要停滞期に入っている、踊り場状態だというふうに認識をいたしております。  今般の海運造船合理化審議会に際しまして、将来の需給見通しをしてみましたところ、十二年度はさらに落ち込む可能性はありますが、今後少なくとも十三年度以降は回復に向かう見込みだということでございます。したがって、こうした需要に対しまして、供給責任を果たすべく、きちっとした形でぜひ中小造船業を残したい、こういうふうに考えております。  ただ、中小造船業の個々の事業者の方々の思いは、それぞれ長年造船業をやってきておられますので、全体のために自身が撤退するということを決断するのは大変難しいことだと思っております。したがって、我々としては、御指摘集約化でありますとか、あるいは、例えば組合方式をとることによって協業化を図っていくとか、いろいろな方法を考えながら、その中で、撤退をしていただき、全体の需給バランスがとれる方向で御協力をしていただく方を見つけていくことで何とか解決策を探していきたい、こういうふうに考えております。
  15. 高木義明

    高木委員 この運輸施設整備事業団一つ業務として、いわゆる共有建造がございます。これは、海上運送事業者、いわゆる船主さんとこの事業団が共同で船をつくる、そして、その債務を返済しながら、後は船主が引き取る、こういう制度でございまして、これは今日まで、中小船主さん、内航船主、あるいは、多くの離島を抱える離島航路、客船、フェリー、こういう建造に非常に貢献をしたと私は評価をしたいと思っております。  しかし、最近の運輸施設事業団一つ仕事である共有建造について、大きな問題といいますか、実際事業団共有建造の機能が果たされているのだろうかという指摘が多く私のところにも寄せられております。  例えば、ある船主さんはこのように言っております。運輸施設整備事業団は、いわゆる融資をしておるわけですが、このところ使用料回収が滞っておる中で、今後その回収に力を入れる。一体船主はなぜ使用料を、債務を払わないのかといえば、払わないのではなくて払えないのが今の現状だ。先ほども内航海運状況も出てまいりました。いわゆる荷主鉄鋼石油ほか素材メーカーのことでございますが、一方的な問答無用運賃用船料切り下げによって、地方船主は休みをとらずに切り詰めるだけ切り詰めて努力しているが、現在の収入では融資の返済もできないのが現実です。運賃用船料が上がらないとこの問題は解決しない。  したがって、事業団は、船をつくって海運貢献をするということが趣旨でありますから、船主の立場に立って、内航総連とも連携をして、例えば経団連とか、あるいは石油鉄鋼業界、いわゆる主要荷主に、適正な運賃用船料を確保してほしい、こういうお願いをするぐらいのことがあっていいのじゃないかと率直な気持ちを訴えております。  そして、事業団は、状況を見てみますと、やはり確かに未納も増加しているわけでありますから、これは当然回収しなければなりません。そういう意味で、未納が増加しているから、新規融資には極端に慎重になって、いわゆる超優良企業しか融資しなくなった。したがって、地方船主からは、事業団との共有建造はもうできないのではないか、そういうあきらめの空気が今強い。だから、そういうときにこそ、やはり積極的な船主についてはめり張りをつけて融資をしてやって、老朽化船新造船にかえるとか、そういうことをしていくべきではないか、こういう訴えもあるわけでございます。  そういう意味で、この共有建造に対する事業団のあり方について、私が申し上げましたような中で、中小造船あるいは地方船主からの率直な声があるのですが、これに対してどのように思われますか。
  16. 高橋朋敬

    高橋政府参考人 初めに私の方から答弁させていただきます。  事業団共有船建造事業というのは、中小企業が多い海運事業に対して建造支援するという制度として設けられているわけでございます。これは必ずしも超優良企業でなければ貸さないという仕掛けではございませんで、赤字であったり、あるいは債務の超過したような企業であっても、船をつくることによって用船料が十分入ってくるとか、経済的にペイするということがわかれば、これを支援して共有建造を進めてきたという経緯がございます。  今、船腹過剰感がありまして、建造意欲が大変落ちている状況にあるわけでございますが、私どもとしては、基本的には、お貸ししたお金を返していただくという基本ルールがあるものですから、その点についての確認はさせていただくとしても、しかし、この建造について積極的に支援していくという視点から、事業団共有比率を一〇%上げるとかいうことで、七割から九割まで共有比率を高めるとかいったようなことも進めてきておりますので、こういう努力の中で引き続き支援というものを続けてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  17. 高木義明

    高木委員 共有建造という重要な役割があるわけですから、回収ということも十分理解はできますけれども、やはり積極的な建造意欲のある船主さんにはそういうものが使えるような体制をぜひとっていただきたい、これは強く要望をしておきたいと思っております。  次に、運輸施設整備事業団造船業基盤整備事業協会廃止に伴って当面引き継ぐ業務として、構造転換事業に係る納付金の徴収と、買収した土地設備譲渡、こういう清算業務がございます。  三月十六日の海造審においては、中小小型造船業要望もあり、十二年度までの納付金率建造契約額の〇・五%とされた、このようになっております。  買収した土地譲渡で得た収益と納付金収入によって収支が合ったところで終了になる、こういう仕組みでございますが、運輸省見通しでは、平成二十二年度までの十年としておって、平成十三年度から十四年度は〇・一%、平成十五年度から十六年度は〇・一五%、平成十七年度から十八年度は〇・二%、平成十九年度、二十一年度が〇・二五%、そして平成二十二年度が〇・二二%と納付金率が上がっていく状況になっておりますが、この構造転換に係る納付金中小造船にとって将来過度の負担になるのではないか、こういう懸念があるわけですけれども、この点について、いかがお考えでしょう。
  18. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 御説明をさせていただきます。  造船業構造転換業務納付金率につきましては、先生指摘のとおり、海運造船合理化審議会の御意見を聞いた上で毎年これを定めていくということになっております。そして、せんだっての海運造船合理化審議会のときに、種々の御議論をいただいた結果、中小造船業の方々の思いも入れて、平成十二年度の納付金率については、先生〇・五%とおっしゃいましたが、〇・〇五%に定めていただいたところでございます。  そして、全体的には、買い上げる量とそれを清算していく事業の規模によって異なりますが、当初の予定よりは少し買い上げ量が少なくなるのかな、こう思っておりまして、それに伴いまして若干納付金を集める金額も軽減できるのかな、こう考えております。  いずれにしましても、先生の御意見のとおりであります。中小造船業、大変苦しいわけでありますので、今後の建造需要でありますとか、あるいは個々の事業者の経営基盤状況などを十分見きわめて、過度の負担にならないように、心して納付金率を定めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  19. 高木義明

    高木委員 私の先ほどお尋ねの中の、納付金率が〇・五%を、〇・〇五%と訂正させていただきたいと思います。  そこで、テクノスーパーライナーの件に入ってまいりますけれども、今回の事業団法の改正は、民間が行う高度船舶技術試験研究に必要な資金に充てるための助成金を交付する、既に実績も何件かあるわけですが、また国土交通大臣の定める金融機関、いわゆる日本政策投資銀行からの試験研究資金の借り入れに係る利子の支払いに必要な資金に充てるための助成金を交付する、これまたテクノスーパーライナー等、舶用推進プラントなど実績もあるわけですが、こういう造船業基盤整備事業協会業務を引き継いで、新たに試験研究または高度船舶技術を用いた船舶等の製造に必要な資金の借り入れに係る債務保証を行うことが加えられております。  そういうことによって、いわゆるテクノスーパーライナーの事業化への取り組みが始まっていくわけです。まさに本当に事業化に向けての期待が強いわけでありますが、多くの困難な課題も一方にはございます。  この基盤整備事業協会の十一年度の予算におきましては、高度船舶技術普及促進調査研究受託費として九千六百六万円、約一億円ですが、計上されております。  去る二月の二十九日に、今静岡県で所有しておりますテクノスーパーライナー、いわゆる「希望」が、国際実験航海のため清水港を出まして、途中和歌山、長崎を経由して上海に寄港した、こういうふうに初めて海外に航海をしたということでございますが、この国際実験航海の目的は一体何であって、そしてこの成果はどうだったのか、この点について大臣の方から。
  20. 二階俊博

    ○二階国務大臣 先ほど委員長及び理事のお許しをいただきまして、「TSL国際実験航海の結果について」ということで簡単なメモをお配りさせていただいておりますので、また後ほど御参考にごらんをいただきたいと思います。  ただいまのお尋ねのTSLの国際実験航海の目的とその成果ということでありますが、国内におきましてTSLの実用化が成功すれば、TSLはやがて国際航路に従事させることが次の課題であるということを常々考えておりました。  TSLは全く新しい形式の船舶であるので、国際航路に投入する際にはその安全性について国際的に認知されることがまず重要だと考えております。このため、お尋ねありましたように、本年二月二十九日から三月八日にかけまして、現在静岡県が所有しております防災船でありますTSL希望号を用いまして実験航海を実施したところであります。国際航路の厳しい条件のもとで十分な安全性が確保できることを実証するとともに、国際的な安全基準策定のための基礎的なデータを得ることとしたところであります。  TSL「希望」は、長崎—上海間の国際航路を含む全航程約四千キロを高速航行時には平均時速七十キロを超える速力で安定的に航行し、計画どおり無事実験航海を終了したところであります。  今回は、初めての寄港地となりました上海におきまして、私も一月に北京を訪れました際に、運輸担当の責任者に対しまして、これは単なる貨物船が中国を訪問したということではなくて、将来日中関係の貿易にも重要な役割を果たすであろうというこのTSLの初航海に、中国側もこの寄港に対して重大な関心を持っていただくと同時に、十分な配慮をお願いしたいということを申し上げておきましたが、ちょうど全人代の開会中とぶつかったものですから、閣僚等そうした方々の御出席はかないませんでしたが、担当局長等多くの有力な皆さんがお見えいただき、またこの船にも乗船していただいて、いかに性能がすばらしいかということも、中国側にもアピールできたものだと思っております。国内外に対し、TSLの高速性及び安全性を広く周知することができたものと考えております。今回得られましたデータは、TSLの事業化及び今後の普及に大いに役立つものだということを確信いたしております。  大変な荒波のところを渡るわけでありますから、最初はこのことに対する成果に注目をいたしておりましたが、乗船してきた方々の話を聞きますと、例えばたばこを立ててもそれが波を越えていく際に全然揺れないで、倒れなかったということの証言もございまして、予想以上の成果をおさめたものと考えておる次第であります。
  21. 高木義明

    高木委員 TSLはまさに我が国造船業の技術を集めた次世代の大切な技術だと私は思っておりますが、このTSLの実用化に向けて、どういうところで会社を持っていくのかとか、出資金をどうするのか、本当に採算性がとれるのか、そういう問題から、海運業、荷主造船業、そういう業界にも賛否両論がある、これが今の現実です。  かつて、平成四年三月に、シップ・アンド・オーシャン財団がこのTSL導入の円滑化に向けて調査報告をまとめておりましたが、この中でも、実用化実現に向けての課題として、例えば、船主の負担軽減のための船舶の所有形態あるいは財政支援はどうなるのか、積み荷の確保はできるのか、こういうことについては十分な検討が必要であろう、あるいは、高速で走りますから、当然にしてこの高速性を生かせるターミナルにおいての処理の迅速化、あるいはTSL専用の岸壁、港湾、そういう施設、あるいはまた高速荷役システム、早く行ったので早くこれを積みかえる、そういう荷役システムの検討、それから、先ほども一部触れられましたけれども、やはり国際的な情報システムの整備、こういったことについてクリアしなければならないということを指摘されておるわけであります。  確かに、今まさに実用化をどうしていこうか、そういう中で今回の法律の整備もされておるわけですけれども、今私が指摘しました件等についてどのような検討がなされて実用化に踏み切っていこうと考えておられるのか、この件について説明をいただきたい。
  22. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 御説明をさせていただきます。  高木先生造船に大変御造詣が深いので、TSL実用化についての課題もほとんど今御説明になりました。我々この実用化に向けて一番大きな課題、一番コアになる部分だけをしたがって整理して申し上げますと、一つは、TSLが全く新しい技術を用いた船舶であるということ、それと、そういうことによって大変建造コストが高いということがまず第一点ございます。  そしてまた、高度な技術を組み合わせた特殊な船体構造あるいは推進形式を有しておりますので、いわゆる保守管理のためのコストというのが一般の船と比較して大変高くなるのではないか、こういうふうに考えております。  この二つの課題を考えますと、実用化について事業者の方々は、大変投資リスクが大きいのではないか、こういうふうに皆さん見ておられるというのが実態でございます。したがいまして、この課題を専ら解決する観点から、今般、次の三点の支援措置を考えたい、こういうふうに考えております。  まず、投資リスクを回避するために、造船事業者等関係者でこれを分担するスキームを考えたいと思っております。このために、TSL保有管理会社を特に幅広く民間等の出資により設立をしたいというのが第一点でございます。  それから第二点は、当該会社が建造資金を円滑に調達できるように、今般御審議いただいております運輸施設整備事業団債務保証できる規定を新たにつけ加えていただきたい、こういうことでございます。  そして第三点は、保有管理会社が行うTSLの安全で効率的な保守管理を可能とする運航支援・保守管理システム、我々これをトータル・サポート・システムと呼んでおりますが、これを補助によって開発を促進したい、こういうふうに考えております。
  23. 高木義明

    高木委員 実用化に向けて、どうぞひとつ力強いリード役も果たしていただきたいと思います。  今、もう言うまでもなく、造船業界というのは大手も中小手もそれぞれの背景によって厳しい経営環境なんです。例えば、ことしの春闘、いわゆるベースアップについて見ても、ベアゼロという状況でございまして、まさに今新しい構造改革に向けて相当な努力をしておる最中であります。まさに体力が余り強くない、そういうときに、投資リスクがある状況の中で、なかなか踏み切れないという実情についても十分理解をしていただかなければなりません。  同時に、こういうものについては、別の方向の、いわゆる総合交通体系、物流体系の中のモーダルシフト、こういう政策誘導というのがやはり必要じゃないか。ディーゼル車の排気ガス等の問題が、今東京都を初め、大きな政治課題になっておる中で、環境への負荷を低減して、そして物流の高度化に即応するためには、我が国は海に囲まれた海洋国家でありますから、海運の活用、こういうものが出てくれば、それは非常に将来的にも経済的、社会的な効果がもたらされるのじゃないか、私はそのように思っておりますので、この点について大臣の決意をお伺いしておきたいと思います。
  24. 二階俊博

    ○二階国務大臣 造船業界に大変御経験と、また御関心の深い高木委員からの、先ほどのTSLの問題のみならず、中小造船業に対する大変心温かい御提言等を拝聴しておりました。  さらに、TSLにつきましては、先ほど谷野局長からも申し上げましたように、今後TSLを具体化して、世界の舞台に、あるいはまた我が国の物流大革命に大いなる貢献を期待する上において、とるべき必要な手段、また特に重要な問題点等につきまして先ほど来御指摘がございました。  さらに、ただいま環境問題、モーダルシフト、あるいはディーゼルの排気ガスの問題等に対しまして大変重要な問題が提起されておる昨今でありますだけに、これらのことに対してTSLをどう活用することができるか、単なる物流だけではなくて、新たな政策課題に対してTSLをどう活躍させていくかというふうな観点でも十分政府として考えるように、こういう御提言であったかと思います。私も全くそのとおりだと思っております。  約十年の歳月をかけてここまで進んでまいりましたTSLでございますが、これを実用化するということに対しましては、現在の造船業界の体力等を考えても、そう容易なものではないということは十分認識をいたしております。  それだからといって、この問題を休んでおっていいというわけではありません。こうしたときこそ、さらに実用化の推進に向けて、政府としてなし得る手段はどんどんと積極的に講じていかなくてはならない。今回、本法律の御審議をお願いしておりますゆえんも、TSLの実用化に向けて全力を挙げて取り組んでいく、こういう決意のあらわれでもあるわけであります。  高木委員指摘のようなことを十分踏まえまして、今後も積極的に、今与えられた条件の中で何をなし得るか、十分このことに配慮しながら取り組んでまいりたいという決意を申し上げておきたいと思います。
  25. 高木義明

    高木委員 そういう前向きな力強い決意をいただきまして、非常に頼もしく考えるわけでありますが、これは各界協力をして前に進めなければならぬ、このように思います。  この件に関して、私はせんだって新聞報道も見ましたけれども運輸省の方で、例えば海上保安庁の方に、一昨年でしたか、例の不審船が日本海にあらわれた、防衛庁と当時の海上保安庁が追尾をしたけれどもどうにもならなかった、この事態を見て、私は、造船王国日本と言われた、いわゆる世界に冠たる造船技術からしてみると、非常にじくじたるものがありましたし、こういう技術はあるわけですから、まさにテクノスーパーライナー等の能力を海上保安の分野にも国として一隻ぐらい装備をしておっていいのじゃなかろうか。  先日、私は東京の石川島播磨重工のいわゆるしゅんせつ兼油回収船、大臣も命名されましたけれども、新たな回収船の進水式に行って、私は新たな感動をしたわけです。そういう国のリスクをもって、そういうところについては対応することもいいのじゃないかと私は思っておりますので、どうぞひとつ御検討いただければと思っております。  そこで、新たな技術開発については、このテクノスーパーライナーと並んで、メガフロートの実用化に向けて、これまた今日までフェーズI、フェーズIIという、平成七年度から平成十二年度に向けて、今もう一千メーターの海上浮体構造物が追浜の沖に浮いておるわけでございますけれども、そこに大臣も出向かれておられますが、この海上浮体構造物、いわゆるメガフロートについては、これまた今やもう実用化が一つの大きな課題であります。  したがって、つい前までは例えば海上へリポートの話も取りざたされておりましたけれども、この先、一体どうしていくのか。例えば、首都圏第三空港、昨日は羽田が国際空港になるという報道もありましたけれども、私は、やはり首都圏第三空港は羽田の沖合展開、こういうことについては、ぜひ環境面にも優しいこのようなメガフロートの実用化を視野に入れた、そういう取り組みを進めていくべきではないかと思いますけれども、この点について対応はいかがか、大臣の所信をいただきたいと思います。
  26. 二階俊博

    ○二階国務大臣 メガフロートの問題につきまして、最初に御熱心な御主張を伺ったのは、私はたしか高木委員からだというふうに記憶をしておるのです。それは新進党の時代に関係者が集まりまして、メガフロートの推進議員連盟をつくろうということで、高木委員から私に御相談がありまして、それは大変結構なことだということで取り組みました。その後、御承知のような経過を経まして、新進党は各方面に有為な人材を輩出しております関係で、結果的には超党派の議員連盟になっているような形になっております。  私はそのことに大変意を強くしながら、今委員からも御指摘のありましたように、先般現地に参りまして、あの一キロのいわゆる海に浮かぶ大地と呼ばれております浮体モデルの上を歩きながら、しみじみとそうしたことを振り返ったことを今改めて思い起こしております。  平成七年度から六カ年計画で進められてきたわけでありますが、本年夏に、おかげさまでこの一キロメートルの浮体モデルに航空機の離着陸実験ができるという段階まで進んでまいりました。これからは単なる空港ということだけではなくて、他にもいろいろな活用の方法があるのではないか。コスト等を考えますといろいろ制約があるわけですけれども、当面はコストというふうなことを考えずに、いかなる分野にこの海に浮かぶ大地を活用することができるか、例えばそこに住宅を建ててみるのも一つの方法、そして何か農業のようなことをやってみることも大事であって、それぞれの人たちが考えております常識というものを打ち破って、海に浮かぶ大地がこれからの二十一世紀に我が国としてどのような活用ができるかというようなことも真剣に考えてみる必要があるのではないか。笑い事ではなくて、本気で考えてみる必要があるということを私は関係者に申し上げております。現地には芝生もちゃんと育っておりますから、海に浮かぶ大地は、これからいろいろなロマンを抱きながら今後推進していくことができるだろうというふうに考えております。  運輸省におきましては、総額二百億円の研究開発費に対し、補助金等約二十七億円を分担するなど、メガフロート研究開発を今日まで積極的に支援してまいったところであります。官民挙げて取り組んできた結果でありますが、十二年度中に、さらに実用化のための基盤技術が確立するものと考えております。  今お尋ねのように、十三年度以降の取り組みにつきましては、関係者の研究成果をさらに大きく発展させていくために、メガフロートの実用化を促進する新たな体制の整備を図り、海上空港や防災拠点等広範囲に活用できるように、今後一層具体的な対策を進めてまいりたいと考えております。  今、首都圏第三空港の問題にお触れになりましたが、実は、羽田の問題につきましても当委員会におきましてしばしば御議論をいただいておるところでございます。  私は昨日、羽田空港の夜間、早朝の比較的あいておる部分につきまして、国際チャーター便等の活用について検討を開始するように航空局に命じたところであります。これは当然、千葉県との調整等、まだまだ幾つかの課題を抱えておるわけでありますが、我が国にとりまして、大きな首都であります東京のしかも便利な羽田に、夜遅くあるいは朝早く離着陸ができる、そういう時間帯があるわけでありますから、各方面から大変強い御要望もいただいておりますので、今後、千葉県等の御了解を得ることを前提にしまして一層取り組んでいきたいと思っております。  基本は、私は、高木委員指摘のように首都圏第三空港を建設する必要を痛感いたしております。そうした際に、メガフロートを活用してはどうか、こういうふうな御意見もこれまた各方面から寄せられておりますが、私は、首都圏第三空港にメガフロートを活用するということは重要な視点だというふうに考えております。
  27. 高木義明

    高木委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  28. 仲村正治

    仲村委員長 次に、永井英慈君
  29. 永井英慈

    ○永井委員 民主党の永井英慈でございます。  大臣初め関係者に質問をさせていただきたいと思います。  先ほど来の高木委員と二階大臣のやりとりを静かに伺っておりまして、ああ、海洋国日本の国民として大変夢が持てる、大変幸せなことだな、そんな印象を持ちながら伺っておったわけでございます。そして今回の事業団協会統合につきましては、この議案につきましてさっと見てみまして、正直言って、私は高木委員とは違うのです。海のない県で生まれ育ち、造船とは全く無縁の陸地で食べ物を動かすような人生を送ってきまして、海運については全くど素人でございますけれども、いや、ちょっと待てよ、TSL、これが実用化されてくると本当に海運の革命だなという印象さえ受けたわけでございまして、ぜひこれは大きく実用化に向けて政府としても御尽力をいただきたいな、そんな印象を持ったところでございます。  そこで、余りにも初歩的で済みません、テクノスーパーライナーというネーミングはどこから来ているのですか。多分合成語じゃないかと私は思っておりますけれども、これはほぼ今後永遠に、これだけの海運施設ですから、テクノスーパーライナー、TSLというこの用語は使われると思うのです。この際はっきり、こんなすごい革命的な海運船でございますので、説明をいただきたい。
  30. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 御説明をさせていただきます。  テクノスーパーライナーの技術開発を始めましたのは、ちょうど造船業が二度にわたる設備削減をしてへとへとになった時期でございます。何とか技術開発で活性化を図りたいという思いで立ち上げたプロジェクトでございます。  そのときに、この超近代的な船をどういうふうにネーミングするか、みんなで議論しました。そして関係者の中で公募をして、そしてその中でテクノスーパーライナーという名前が生まれました。時々、テクノスーパーライナーというのはスーパーテクノライナーの間違いじゃないかと言われる方もあります。したがってこれはまさに、造語ではありますが、我々としては今や日本語のように皆様に親しまれているというふうに考えております。  こういった経緯の中で生まれた技術でございますので、この名前も大切にしながら、実用化に向かって頑張りたいと思っております。
  31. 永井英慈

    ○永井委員 そこで、小渕総理が昨年十月に、ミレニアムプロジェクトとしてこのTSLを位置づけられましたですね。すごいことだと私は思って新聞で見ておったのですが、小渕さんのミレニアムプロジェクトというのはこのほかに、御承知だったら教えていただきたいのです。
  32. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 私、心が狭いのか自分の局のことしかよく覚えておりませんが、ミレニアム事業で、実は私どもの局でもう一つお認めいただいたプロジェクトがございます。  プレジャーボートの廃船処理とか廃棄処理の問題が、今非常に大きな社会問題化いたしております。この強化プラスチックでできましたプレジャーボートをリサイクルするシステムについて開発せよということで、もう一つどもの局にいただいております。  そのほか、霞が関全体の電子政府の問題とか、あるいは私ども気象庁の気象観測関係でいただいたりしていることというふうに理解をしております。  ちょっと私どもの局のことを中心にお答えして、申しわけありません。
  33. 永井英慈

    ○永井委員 そこで、すばらしいとあえて形容詞をつけますけれども、このテクノスーパーライナーが就航しますと、先ほどのTSL国際実験航海の結果ということでちょっと聞きたいんですけれども、これを通常の船でやった場合、どのくらい日にちがかかるのか、実際に今大臣がこれはすごい実験結果が出たと胸を張って御説明をされましたけれども、従来の形でやったらどんな数字が出るのか、ちょっと参考までに教えていただきたい。
  34. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 御説明させていただきます。  このテクノスーパーライナーは、上海実験航海のときには約二千百海里を平均時速七十一キロで航走いたしました。七十一キロというのは相当なスピードでありまして、ざっと言って、通常のタイプの船の、それも速いタイプの船のちょうど倍ぐらいの速度になります。
  35. 永井英慈

    ○永井委員 実験も成功し、いよいよ実用の段階に入るわけです。長い間研究開発に費やしたエネルギー、大変大きなものがあったと思う。  そこで、この運輸施設整備事業団造船業基盤整備事業協会、これが一緒になるについて、特にこの高度船舶技術の研究開発助成業務というのが移管されてくるわけですね。そうですね。  そこで、この人数を見ますと、非常に少ないんですね、もう時間がありませんから多くは申し上げませんけれども。ミレニアムプロジェクト、もう舌をかみそうな、すごいプロジェクト、しかも革命的な海運業の道を開くと私は先ほど申し上げました。それにしては、先ほどメガフロートとかあるいはガスタービンとか、いろいろな研究開発もされているようですけれども、これだけ、時の総理が、力を入れてやろう、海運日本の面目を世界に施してやろう、このくらいの勢いだと思うんです。  とすれば、この高度船舶技術の研究開発助成業務、単にこれをこちらに移すだけでなくして、例えば今までの船舶技術研究所、ありますね。先ほどいただいたんですけれども船舶技術研究所、これはすごい施設ですわ。すごい陣容ですわ。すごい予算をとっておりますわ。したがって、テクノスーパーライナーをこれから実用化させていく、実際に建造していく、そして国際的にも評価を受ける、そのためには、どうも今回のこの統合ではちょっと無理があるんじゃないだろうか。かえって、こちらの方に全面的に統合して、盤石の体制をとってテクノスーパーライナーを開発と同時に建造していく方がより現実、より安定的かな、こういう感じがするんですけれども、いかがでしょうか。
  36. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 御説明をさせていただきます。  先生から多大なエールを送っていただきまして、本当に感謝をいたしております。  今、TSLの事業化あるいはさらなる高度化についての取り組みについて種々御意見を賜りました。先生の御意見は御意見として、十分承らせていただきたいと思っております。  これまでのTSLの開発の中で、先生指摘船舶技術研究所も基礎的な段階で応分の対応をしてまいりましたし、役割分担もしてまいりました。ようやく技術的に確立された状況でありますので、これからは、どちらかというと実用化に向かってどのようにてこ入れをしていくのかということが非常に大事だと我々考えております。そういう意味では、より民間に近い形とか、あるいはより民間の方も多く含んだ仕組みの中でこれの実用化を図っていくことがより効率的であるのかなと思っております。  そういう意味で、民間業界の方と促進協議会を構成いたしましたり、あるいは、今般てこ入れをすることでお願いいたしております基盤整備事業協会が主とします業務の一層の高度化とか、あるいは施設整備事業団におきます債務保証業務とか、そういったものをうまく組み合わせながら、先生の御趣旨に沿うように頑張ってまいりたいと思います。
  37. 永井英慈

    ○永井委員 お話はよくわかります。こっちは基礎的な研究とか新たな開発の分野が大きいと思うんです。こちらは、どちらかというと債務負担行為がくっついているんですね。これがどうも今回の統合の大きなポイントかなという感じがするんですけれども。  それで、今までは私、バラ色の話をしてきました。まさに運輸革命、ロマンが持てる、すごい。しかし、まだ筋書きどおり全部うまくいくとも限らないんですね、私に言わせると。今回の実験船も、実用船に比べて三分の一ぐらいの規模じゃないですか、ちょっとお答え願いたいんですが。
  38. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 お答え申し上げます。  今回の実験船は、長さが約七十四メーター、総トン数が約二千七百トンぐらいの船でございます。実用化を計画しております船は、総トン数が大体一万六千トンぐらい、長さが百五十五メーターぐらいということですので、ボリュームにおいては四、五倍の船になるかと思います。
  39. 永井英慈

    ○永井委員 実験船はその規模、そして実用化に向けては、私は一万二千から一万六千ぐらいのことを聞いたんですが、かなり大型船になります。そして、特に日本海周辺をかなり高速で貨物を運ぶということですね。  ちょっと私の地元のことで悪いんですが、私は川崎の南部地区なんです。臨海工業地帯の中心なんです。あそこに産業道路というのがあります。横羽線という高速道路も走っております。一般道も走っているんです。とにかく空気が悪い。空気の汚染は全国屈指なんです。  ですから、そういう一万二千トン、一万六千トンの大きなスーパーライナーを建造することもかなり現実的ですが、逆に、近海を小型ですいすいと通れるような、そういう小型のテクノスーパーライナーを建造するというか、開発するというか、そういうお考えはどうでしょう。地元としては切実なんです。
  40. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 お答え申し上げます。  先生の御指摘、もっともだと思います。  我々、テクノスーパーライナーを開発したときには二つのタイプのテクノスーパーライナーをやっておりまして、そのうちの一隻が、今回、大量輸送に寄与する大型船ということでございます。もう一隻、やや小ぶりで、さらに乗り心地のいい船を実際には開発し切っております。こうした船の実用化に当たりましては、ぜひいろいろなタイプの大きさを需要動向に合わせて考えていきたいと思っております。  さらに、ちょっと追加で申し上げますと、TSLと並行いたしまして、実は環境に優しい舶用のガスタービンを研究開発いたしております。御承知のように、ガスタービンは、NOxが通常のディーゼル機関の八割減ぐらいになります。それから、問題になっております黒炭といいますか、浮遊物質みたいなものは全く出ません。そういう環境に優しいエンジンを内航船に積みまして、そして内航船の新しい輸送体系というものを模索したいということを、もう一方のプロジェクトとして実は進めてまいっております。
  41. 永井英慈

    ○永井委員 地元として、大気汚染に苦しんでいる地域としては、本当にすごい答弁をいただきました。小型の、小回りのきく、しかもNOxも出ない、環境にも優しい、そういう船をぜひ開発してほしい。どちらかといえば、大型船は少々時間をかけたっていけるんだ。それで、そんなに集中的に大気汚染を起こさないんです、大型船は。しかし、川崎を走るあの三号線、産業道路、交通量は大変なんです。しかも、それがほとんどみんな今問題のディーゼル車なんです。  そうしますと、もう一度伺いますが、小型のそういったスーパーライナーを開発することによって、あの京浜地区の運河とか近海を、どんどん貨物を輸送できるような状況も期待していいですね。
  42. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 お答え申し上げます。  期待していいのかということでありますが、私自身が期待をしておるところでございます。  ただ、その開発しておりますエンジンを、舶用のガスタービンを搭載することを対象にしておりますのは、できれば現行の内航船の、特にスピードを要請されるような船のほとんどに搭載したいと思っておりまして、それがテクノスーパーライナーと呼べるかどうかはわかりませんが、いずれにしましても、環境に優しいエンジンを搭載した内航船の開発をモーダルシフトの先兵として考えているということは、そのように受け取っていただいて結構かと思います。
  43. 永井英慈

    ○永井委員 大変すばらしい御答弁をいただきまして、私ども臨海工業地帯としては、ぜひこれを最優先で進めていただきたいぐらいの思いでございますので、運輸省の研究機関挙げて御尽力をいただきますように、心から御期待を申し上げる次第です。  そこで、あんなに夢の多い話の続きに、ちょっと湿っぽいような話になるかもしれませんが、このTSLの保有管理会社、もう先ほど高木委員からお話を伺っておりますから、それほど必要ありません。簡単に答えていただきたい。  資金規模あるいは組織、そのうち、日本政策投資銀行からはどのくらい、それから、民間からはどのくらい期待をしているのか、出資はどのくらい御負担をお願いするのか。また、もうすぐ始まるのですね、現在どんな詰めをしているか、その辺についてお話をいただきたいと思います。
  44. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 御説明をさせていただきます。  先生指摘のTSL保有管理会社でございますが、まず予算措置といたしまして、政策投資銀行から十億を限度に御出資をいただく措置をとっていただいております。したがって、まずこの会社の出資金といいますか、資本金につきましては、これを核にしながら、造船事業者あるいは舶用工業事業者あるいは物流事業者、そういった方々から、つまりTSLのメリットを裨益する方々から広く出資を求めたい、こういうふうに考えております。  出資金額について、今、投資銀行の十億を限度としてということだけは明定しておりますが、これから皆さんに広く募りたいということで、私としては、できるだけ多く出資者を募りたいとまず考えているところでございます。  それから、この保有会社そのものの役割につきましては、先ほど来議論しております課題をブレークスルーする、打破する一番大きな役割を果たしていただくということでございます。  そんなところでよろしゅうございましょうか。
  45. 永井英慈

    ○永井委員 日本政策投資銀行から十億だけは決まっている、しかし建造費にはおよそ百億円以上かかる、民間からの出資を募る、その辺のところが一番ポイントですね。  これは、投資銀行の方はどんどん出てくるわけです、決めれば。ところが、問題は、民間からどうやって出資を募り、そしてそれをペイするように経営していくかが今後の課題だと思うのですけれども、どうでしょう。
  46. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 それでは、もう少し突っ込んでお答えさせていただきます。  この保有管理会社のリスクをとる一つ目的は、TSLという大変技術的に高度な船の技術的リスクを回避する、とりわけ保守管理でありますとか運航の安全とか、こういったことであります。こういうリスクについては、一番それを負担するといいますか、それに対する取り組みが得意なのはやはりメーカーだと思っております。  したがって、このプロジェクトで一番大きな役割を果たす者としてメーカーを考えておりますし、また、メーカー自身がTSLがたくさん売れれば一番裨益するということでございますので、応分の負担をしていただくということで、その金額についてはまだ確定しておりませんので勘弁していただきたいのですが、少なくとも第一船を建造する資金については集められるコンセンサスが得られております。  また、この会社が開発します運航・保守管理システムというのはこの会社の大変すばらしい無形資産になると思っております。これを今後運航されるあらゆるTSLに活用することで会社自身が相当な利益を上げ得るのではないか、こういうことも期待をしておるところでございます。
  47. 永井英慈

    ○永井委員 わかりました。大いに期待をしておるところでございますが、このTSL、今、高木委員からずっと話をしてきますと、先ほど言った海運革命ですね。そうすると、世界の船舶需要というか船舶マーケットというか、これは物すごくこのTSLに集中してくる可能性があろうと思うのです、ばかに夢が大きいような話で申しわけないけれども。  これは、量産体制というのはどうなんですか。
  48. 谷野龍一郎

    谷野政府参考人 お答えさせていただきます。  この船は、船体を全体的にアルミでつくります。そして、主力エンジンはガスタービンでございます。いずれも、アルミの供給体制でありますとかガスタービンそのものについては既存の開発された技術を活用していくわけでありますので、問題はこれらを組み合わせてTSLにするということでありますので、注文がございましたら、どんどんつくれると思います。
  49. 永井英慈

    ○永井委員 終わります。
  50. 仲村正治

    仲村委員長 次に、平賀高成君。
  51. 平賀高成

    ○平賀委員 日本共産党の平賀高成でございます。  改正案は、造船業基盤整備事業協会を解散しまして、運輸施設整備事業団にその清算業務を引き継ぐと同時に、超高速船、テクノスーパーライナーの実用化を図るための業務が新たに追加をされています。まず最初に、このテクノスーパーライナーの実用化の問題について大臣に聞きたいと思います。  テクノスーパーライナーは、八八年度から九五年度にかけて研究開発を行ってきました。そして、実海域模型船「飛翔」は建造費約四十八億円をかけてつくられましたが、その実海域模型船が静岡県に売却をされまして、そして現在、「希望」という船名で防災船として九七年から就航をしているわけです。  特に、静岡県の「希望」は実際の半分程度の大きさでありますが、県の総合管理公社が管理をしてリース契約で運営しているわけです。しかし、実際にこの運営に係るさまざまな諸経費が、県の資料を見ましても、年間大体十億円近くかかっております。防災関係の船員の人件費やリース料、メンテナンスの費用、これらが年間八億四千七百万で、それ以外のカーフェリーにかかるいろいろな費用を合計しますと、年間十億円。その一方で、収入はどうかというふうに見ますと、これはカーフェリーの収入がありまして、これが年間六千万から七千万という状況にあるわけですね。ですから、年間通して見ましても、大体九億円以上がかかっていくわけですから、静岡県としましても、非常に財政的に悲鳴を上げているというのが実態だと私は思います。  この点で、大臣は静岡県のこの「希望」に対してどのような支援策を検討されているのか、まず最初に伺いたいと思います。
  52. 二階俊博

    ○二階国務大臣 「希望」は、御承知のとおり運輸省が、ただいま委員指摘のとおり、多年このTSLの開発に努力を重ねてまいりまして、試験研究費用等を総合いたしますと、約百六十億円の予算を投じて今日まで開発研究を進めてきたわけであります。  「希望」をつくる費用は今御指摘の四十八億円であったかと思いますが、それまでそれだけの研究開発を進めてきた。これを静岡県にたしか三億円程度で払い下げをさせていただいたと思っております。静岡県はこれを防災体制強化のための実験船として活用して、県としては、大変すばらしい防災船ということで改造をされたものであります。  したがいまして、防災が毎日必要というわけではありませんから、有事に備えてそういう対策を講じておられるわけでありまして、平時、保有負担を少しでも軽減しようということで、カーフェリーとして清水港と下田港の間を往復しておることは承知をいたしております。  「希望」は唯一のTSLの実証船でありますので、その存在自体、今後、TSLの実用化に大きな力になっていただけるものと考えております。  特に、先般、中国に参りましたこの「希望」は、今度は逆に私どもが静岡県からリースしていただいて、これを運航したということであります。今後も極力「希望」の活用を図ってまいりたいと考えておるものであります。  また、来年度予算で開発予定の運航支援・保守管理システム、トータル・サポート・システムとも呼んでおりますが、この開発によって新たにサービスが提供されるようになれば、「希望」についても、このシステムを優先的に活用していただくことによって、ただいま年間数億円を要しておりますエンジンの整備等約半分以下で、経費の節減にも通ずるものというふうに考えております。  今後、いろいろな工夫を凝らして、静岡県が保有されておりますTSL、気持ちの上では、国と共同で持っておるぐらいの気持ちを持って、静岡県の現在の状況支援していくことを考えていきたいと思っております。  ただいまは、もうかっておらぬじゃないかという意味の御質問であったかと思いますが、これはもともと防災体制を強化するという静岡県のたっての御要望に、百六十億円かけてつくったものを三億円で払い下げたということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  53. 平賀高成

    ○平賀委員 今の、支援策は講じていくということなんですが、実際になかなかもうかっていないのじゃないかという問題について、私、次に聞きたいと思うのです。  実際、運輸省が三十九億円の補助をして、総事業費百六十九億円をつぎ込んで、大手造船七社の技術研究組合が研究開発を行ってこのTSLができ上がったわけです。しかし、船の値段が高いということや運航リスクが大きいために、まだ事業化した船は一隻もないわけです。  運輸省として、これまでTSLが民間ベースで事業化できなかった理由についてどのように考えているのか、伺いたいと思います。
  54. 二階俊博

    ○二階国務大臣 TSLの事業化に際しての課題は、けさほど来高木委員からも具体的に御指摘がございました。  私ども、TSLは全く新しい技術を活用した船舶でありまして、建造コストが極めて高額であるということ、さらに、先ほども申し上げましたが、特殊な構造を有するTSLの運航保守コストが一般船に比べて割高であることから、投資リスクが大きいということ、そして、現況の経済情勢等相まって、今はこのTSLを事業化していくことに関して希望と期待を持っておりながらも、様子眺めをしておられる業界の姿勢だというふうに認識をいたしております。  従来から、船の大きさに比較して輸送できる貨物量が大きいという利点を有するコンテナ船としての実用化を検討してまいりましたが、国内輸送に関しては、現在の輸送実態から、トラック輸送との組み合わせが容易であり、事業者からの要請も多いカーフェリーの方が導入しやすいものというふうに判断をいたしております。
  55. 平賀高成

    ○平賀委員 今、コンテナ船よりもカーフェリーの方が現実的だという趣旨答弁がありましたが、私、そもそもTSLの建造に当たっては、もともと民間のユーザーや民間事業者の意向を反映したものではなくて、やはり急激な円高に伴って不況に陥った造船業界の起爆剤としてこのTSLの建造を進めていこう、こういう経過があったと思うのですね。それで、実際にそういうことでつくってきた結果、運航維持コストが大きくかけ離れることになったのです。当初、運輸省はコンテナ輸送をこれでやろうというふうに考えていたわけです。しかし、今度はカーフェリー輸送に変更したということを今答弁でも言われました。  特に、TSLの事業化をコンテナ輸送として行うことは運輸省としてもなかなか難しい、こういう判断に立っているということなのかということを聞きたいと思います。
  56. 二階俊博

    ○二階国務大臣 今、どうしてすぐ民間で活用されないかという意味の御趣旨でもありましたので、現在はこういう経済情勢のもとで、事業者からの要請も多いカーフェリーの方が導入しやすいという現状を御説明したわけでありまして、私ども、TSL開発当初からの方針を改めたわけではありません。
  57. 平賀高成

    ○平賀委員 コンテナ輸送を考えた場合、いろいろクレーンの整備とか岸壁の整備とかいうふうなことがあってこれがなかなかうまくいかないのだというのは、きのう「TSL事業化に向けたこれまでの経緯」というのを私いただきましたので、その中にもそういったことが指摘をされておりました。  それで、実際に今度TSLの事業化をカーフェリー輸送に変更して事業化をするために、日本政策投資銀行造船会社などが出資をして、TSLの保有管理会社をつくるということになっているわけです。特に、このTSLの保有管理会社というのは、TSLを建造、保有して、運航事業者に適切な料金でリースをするというものでありますが、こうしたTSLの保有管理会社を設立することによって、事業化する大手海運会社の経済的リスクを大幅に低減することになるのでしょうか、大臣。
  58. 二階俊博

    ○二階国務大臣 せっかく開発してまいりましたテクノスーパーライナー、先ほどからの御質問にもありましたように、これが我が国海運業界の起爆剤となっていくことも当然期待をされるわけでありますが、そうしたことを具体的に推進していくためには、できるだけ関係者のリスクを低くしていくということは重要なことでありまして、今度TSLの保守管理費用等が大幅に削減される、就航率も向上させる等で、海運事業者がTSLを経済的に運航するための環境の整備の一環になるであろうということを期待しております。
  59. 平賀高成

    ○平賀委員 実際には支援策になって、コスト削減貢献するというふうなものだということが答弁されました。  それで、実際に運航リスクが大きくなって事業化が具体化しないために、今度運輸施設整備事業団の中に債務保証を行うための基金を設けて、そこに国が十億円出資をし、改正案の中でもTSLの保有管理会社のTSL建造資金の債務保証を事業団が行うようになっています。また、試験技術開発の資金に補助金を出すようにもなっています。これは、カーフェリー運送を行う大手海運会社の経済的リスクを減らして、その一方で事業団が、つまり国が経済的リスクを負うということになるのではないでしょうか。
  60. 二階俊博

    ○二階国務大臣 事業団は、政府として十億円、日本政策投資銀行十億円及び民間からの出資金、これは五十三億円今積まれておりますが、これらで構成される造船業基盤整備事業協会資本金を活用して信用基金を造成し、この信用基金を財務基盤として、その範囲内で、いわゆるその範囲をきちっと限定して債務保証を行うものでありまして、国の負担が大きくふえるということにはならないと考えております。
  61. 平賀高成

    ○平賀委員 その基金の範囲内で負担をするということになっているわけなのですが、そもそも今度TSLをつくって事業化をするに当たって、国がその支援措置をするというのは初めてじゃないでしょうか、こういう事業に国が支援をするというのは。これは初めてなのかどうなのか、それだけでいいですから、大臣、答弁をお願いします。
  62. 二階俊博

    ○二階国務大臣 テクノスパーライナーのようなすばらしい開発を行うということも初めてでありますから、これに対して我々はあらゆる英知を結集して、これを具体化するように努力をしていきたいと思っております。
  63. 平賀高成

    ○平賀委員 私たち日本共産党は、テクノスーパーライナーなどの新しい技術開発について、これを否定するものではないのです。ただ、事業を行うからには、民間の事業者がみずからの資金とみずからの責任でやるというのが私は原則だと思うのですね。ですから、銀行業界に対する支援に対して非常に国民的な批判は強いわけです。ですから、この原則はしっかり守るべきだということを私は改めて強調しておきたいと思います。  それでさらに、運輸省が「TSL事業支援調査報告書概要」というのを出しております。これによりますと、事業化の際のリスクは経済的リスクと技術的リスクがあって、事業化を行うためには国の支援が必要であるというふうに書いてあります。特にこの中で、そのためにはということで、公的機関または、第三セクターによる保有機構がTSLを建造保有し、運航事業者に対して適切な料金でリースすることなどが国による支援措置の一つとして考えられるということになっていまして、これはコンテナ輸送での事業化を考えてのことでありました。  なかなか事業化が進まないことから、運輸省は九七年にTSLの事業促進協議会を設置して、九八年九月にはコンテナ輸送から採算性の高いカーフェリー輸送に変更して活用することを確認して、さらに九九年二月には事業促進協議会の下部組織にワーキンググループを設置して、メンバーには大手造船会社、大手フェリー会社と運輸省が入って、船主のリスクを低減させて実用化に結びつけるためにTSLの保有管理会社が浮上をしてきたわけです。  TSLの建造は、技術的に言いますと、これは三菱重工業や三井造船が受注をすることになるものであります。こういうことを見ますと、TSL保有管理会社というのは、大手造船会社の仕事をふやし、大手海運会社の運航リスクを減らすために国が支援をするということになるのではないかと思うのですが、この点で大臣の見解を聞きたいと思います。
  64. 二階俊博

    ○二階国務大臣 まず、TSLの保有会社がTSLを建造、保有し、運航支援・保守管理システム、先ほどからもたびたび申し上げておりますように、トータル・サポート・システムを新たに開発、運用することによってTSLの事業化に関する初期の投資リスク及びTSLの保守管理コストを低減することが可能となり、TSLの普及が進むものと考えておるわけであります。  今お尋ねの中で、特に先ほど平賀議員から、日本共産党はこの技術開発に反対を唱えるものではないということの御意見をいただきまして、私は大変力強く思う次第でございます。同時に、大企業を応援するので、中小企業のことはどうだといういつものような御意見をちょうだいいたしましたが、これは中小企業でこのことに参画しようという勇気のある企業がもしあれば、大いに歓迎をいたしたいと思っております。
  65. 平賀高成

    ○平賀委員 私が一貫して問題意識を持っているのは、事業化に当たって国がなぜ支援をするのか、やはり今までの経済の原則からいってもこれはおかしいのではないかということを私は言っているわけなのですね。  それで、今運輸省は、今年度内に保有管理会社と運航会社で用船契約を行って、建造契約、それから航路及び仕様を決定するということになっていますが、運輸分野の需給調整規制の廃止に伴う業界内、他の輸送手段との激しい競争が今行われております。特に国内フェリーにおいても、同一航路を運航しているフェリーは、これは純民間で運航しているわけです。一方、TSLによるカーフェリーを運航するということになりますと、同一航路で、一方は純民間、一方は国が支援ということになって、競合するようになるのではないでしょうか、大臣。
  66. 二階俊博

    ○二階国務大臣 TSLを今日まで長年にわたって研さんに努め、開発をようやくここまで成功に導いたわけでありまして、これを具体化して、そして日本の物流業界全体の発展のために、それはひいては日本国の全体の発展につながるわけでありますから、私たちは何とかしてこれを実用化させる方法はないかということを考えておるわけでありまして、これをもって現行のカーフェリー等と競合させるというようなことは毛頭考えておりませんので、そういうことが生じないように十分配慮してまいりたいと思っております。
  67. 平賀高成

    ○平賀委員 これはやはり民間事業、純民間でやっているところと、それから国が支援をするTSLのカーフェリーということになりますと、やはり競合する部分が出てきますし、それからそういうTSLをリースすることができないような民間の事業者、これはやはり競争の中でやめていかざるを得ない、廃業に追い込まれざるを得ないということになっていくことは明らかだと私は思います。私はやはりこの点で、今までの原則というのは、やはりそういう事業をやるからには民間の事業者の責任と民間の資金でやるべきだというのを改めて強調しておきたいと思います。  それで、次に、中小造船業について私は質問をしたいと思いますが、今、大臣も御承知のように、中小造船業の業界というのは非常に厳しい状況に置かれております。特に今、そういう状況を打開しようということで、土地とかそれから設備買収して、なるべく造船能力そのものを削っていこうということをいろいろ運輸省としましても行ってきたと思います。ところが、これはなかなかうまくいっておりません。特に、中小造船業の方々に言わせますと、長い間、代々受け継いできた資産や設備などがありますが、簡単には売却はできないということで、今の事業がうまくいっておりません。  それで、運輸省の資料によりますと、主に内航船製造する中小造船業者が約百二十業者ということでありますが、運輸省は第五次構造改善事業目標においても、地域性を考慮した中小造船業の活性化を挙げていますが、建造需要の喚起につながる緊急的な支援というものはあるのでしょうか。  それから、二〇〇〇年で第五次構造改善事業も終わりますが、中小造船業対策としての方向づけというものはどういうものがあるのか、この点について大臣に聞きたいと思います。
  68. 二階俊博

    ○二階国務大臣 中小造船業の関係につきまして、これまた大変御支援の御質疑をいただいておりますが、私ども我が国産業の中で中小企業というものがいかに重要であるかということを考えますときに、運輸省といたしましても、造船業界におきまして、中小造船業ということを特に重要視して対策を講じていかなくてはならないということは言うまでもないことでございます。  先ほど資金力の小さい海運事業者にとってのTSLに対する御所見が述べられましたので、私の方からも一言これにお答えをしておきたいと思います。  今回の事業支援措置は、保有と使用を切り離すことなどによって、海運事業者の資金負担を軽減し、資金力の比較的小さな海運事業者でもTSL事業に乗り出しやすい環境を整備するということも念頭にあるわけであります。したがいまして、今回のスキームでは、投入される航路の採算性がリース先を決めるに当たっての最も重要な要素となるものであり、資金力の大小は事業者選定の大きな要素とはならないものと考えておりますので、運航する地域が極めて重要な、あるいはまた需要の大きい、そうした航路を選ばれた場合には、当然、資金力の小さい海運事業者であっても、この際、リース先ということに対しては有力な候補に上げられるわけでありますから、ただいま議員御指摘のようなことも我々は十分念頭に入れて対応していきたいと思っております。  中小造船業の活性化のための支援策はどうかということでありますが、我が国中小造船業は、平成八年以降の内航船建造需要の激減によりまして、極めて深刻な不況に直面していることは事実であります。このため、運輸省として、中小型船市場における著しい需要と供給の不均衡に対処するために、造船業基盤整備事業協会による造船設備の買い上げにより、中小造船事業の円滑な撤退支援するとともに、中小造船業の産業基盤を維持、強化するため、生産設備の高度情報化等を内容とする、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業を推進してまいりました。当面の需要の激減に対処して仕事量を確保するために、官公庁船の早期代替について、当省のみならず関係省庁及び地方自治体にも働きかけを行ってきたところであります。  中小造船業不況を克服し、今後も需要の変化に的確に対応した船舶を供給できるように、引き続き運輸省としましても、所要の対策を積極的に講じてまいりたいと考えております。
  69. 平賀高成

    ○平賀委員 中小造船業に対するいろいろな支援措置について今いろいろ述べられましたが、私はそこまで行く前に、もうちょっとさきの時点での質問になると思いますが、特に内航海運業者の皆さんでいいますと、船腹調整事業がなくなりまして、今暫定措置事業が行われております。これについては、新しく船を建造する船主に対して建造納付金を課しまして、それでお金を出す、船を廃船する船主に対しては廃船の交付金を支給するというふうなことで、今暫定措置事業がやられていると思います。しかし、実際に、この事業の中でも、トン当たり一万五千円の納付金自身が非常に重い、そういう役割を果たしていますし、その資金の調達にすら苦しんでいるのが今の現状だと思います。  特に、内航船主の中でも一杯船主は、資金の調達先として運輸施設整備事業団をこれまで利用してきましたが、九九年度の共有船主募集要領で保証期間の延長や債務保証の要件が追加をされて、全くその利用の道が閉ざされているというのが今の実態だと思います。事業団の資金を利用できるのは一部の大手の内航業者だけで、一杯船主にとっては資金的なよりどころがないという状況になっています。  特にこの点で、一杯船主の方たちの資金調達についてどういう対策を持ってみえるのか、この点について質問をしたいと思います。  現状では、仕事が何年先まであるかどうかという非常に厳しい要件がつけ加わっているために、一杯船主がなかなかお金を借りられないという状況に置かれているのですね。この点について、支援策をお聞きしたいのです。
  70. 二階俊博

    ○二階国務大臣 事業団共有建造方式は、担保を要しない長期の資金の提供と技術支援を通じ、資金力及び十分な技術力に乏しい中小零細な海運事業者の造船支援として十分定着し、幅広く利用されてきたところでありますが、内航海運においては、近年、長引く不況のもとで、輸送需要の低迷に伴う用船料等の著しい低下、船腹の過剰等により、船舶建造意欲が著しく減退しているものと承知をいたしております。  事業団としては、中小海運事業者の建造支援のために、平成十年度以降、事業団共有比率を一割引き上げ、その結果、事業団共有比率を最低七割から最大九割とし、事業者の負担を軽減する措置を講じてまいりました。平成十二年度の予算におきましても、共有比率に関し同様の措置を講じてきたところであります。  今後とも、担保を要しない長期資金提供による共有建造方式のメリットを生かして、中小海運事業者の建造支援に努めてまいりたいと考えております。
  71. 平賀高成

    ○平賀委員 最後に、ほんの一言だけ。  そうした一杯船主の皆さんの資金の調達のために、内航総連としましても債務保証をしましょうということで、今いろいろ頑張っているわけなのです。運輸省として、内航総連債務保証の事業に対するいろいろな支援をぜひしていくべきだと思うのですが、この点についての検討をされているのかどうなのか、その点を最後に聞いて、終わりたいと思います。
  72. 二階俊博

    ○二階国務大臣 お答えいたします。  内航総連で検討している債務保証事業について運輸省としてはどうするのだ、こういう御質問だと思います。  平成九年六月の内航海運組合法改正によりまして、内航総連船舶建造のための資金について債務保証事業ができる枠組みが整備されたことは御承知のとおりであります。  基本的な考え方としましては、組合員の出捐により基金をつくり、これを財産的基礎として、組合員が金融機関から船舶建造資金を借り入れる際に、内航総連がその債務保証をしようとするものであります。  暫定措置事業への移行という状況変化の中で、内航総連債務保証事業の具体化に向けて検討中と伺っております。運輸省としては、これを現在見守っておるところであります。  業界の自助努力によりまして基金ができるだけ早期につくられることを期待しておりますが、運輸省としても、運輸事業団船舶共有建造方式の拡充、船舶の近代化に資する租税特別措置の継続など、内航船舶建造促進のための措置を引き続き推進してまいりたいと考えております。
  73. 平賀高成

    ○平賀委員 見守るだけではなくて、一歩踏み込んで支援をしていただきたいということを最後に申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
  74. 仲村正治

    仲村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  75. 仲村正治

    仲村委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。寺前巖君。
  76. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、日本共産党を代表して、運輸施設整備事業団法の一部を改正する法律案の反対討論を行います。  第一の理由は、テクノスーパーライナーの研究開発は、造船大手七社の技術組合を主体として八八年度から九五年度にかけて行ってきたものです。総事業費百六十九億円。この間に、運輸省は三十九億円の補助を行ってきました。しかし、建造船価が高く、管理運航のコストがかさむなど、運航リスクが大きいことから、これまで民間ベースでは事業化できなかったものです。  現在、静岡県で防災船として活用されている実海域模型船以外のTSLはまだ一隻も就航していないのが現状であり、事業化のめどは立っていないものです。  改正案は、TSL保有管理会社を設立し、その建造資金の債務保証を事業団が行うなど、事業化を図るために大手海運会社などの経済的リスクを減らす一方で、国がその経済的リスクを負うというものです。事業化が軌道に乗らなければ、債務保証した事業団、つまり国が経済的リスクを負わなければならないものです。  テクノスーパーライナーの事業化は民間事業者の責任において行うべきであり、事業化のためのリスクを国民に負わせることには合理性がないものであります。  第二の理由は、テクノスーパーライナー実用化のための業務を新たに追加し、国が事業団に補助を行い、さらに事業団から試験研究を行う事業者に補助を行うことになっています。また、業務追加に伴う職員も、運輸省等から出向してその業務を行うものであります。  本来、必要な補助金は国が直接行うべきであり、このようなやり方は補助金に対する国の責任をあいまいにするものであります。  以上の点を指摘し、討論を終わります。
  77. 仲村正治

    仲村委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  78. 仲村正治

    仲村委員長 これより採決に入ります。  運輸施設整備事業団法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  79. 仲村正治

    仲村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 仲村正治

    仲村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  81. 仲村正治

    仲村委員長 次に、内閣提出高齢者身体障害者等公共交通機関を利用した移動円滑化促進に関する法律案及び玉置一弥君外二名提出高齢者障害者等移動の自由を確保するための法律案の両案を一括して議題といたします。  順次趣旨説明を聴取いたします。二階運輸大臣。     —————————————  高齢者身体障害者等公共交通機関を利用した移動円滑化促進に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  82. 二階俊博

    ○二階国務大臣 ただいま議題となりました高齢者身体障害者等公共交通機関を利用した移動円滑化促進に関する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  我が国においては、諸外国に例を見ないほど急速に高齢化が進展し、平成二十七年には国民の四人に一人が六十五歳以上の高齢者となる本格的な高齢社会が到来すると予測されていること、身体障害者が社会のさまざまな活動に参加する機会を確保することが求められていること等から、高齢者身体障害者等が自立した日常生活及び社会生活を営むことができる環境を整備することが急務となっております。そのためには、公共交通機関を利用した移動の果たす役割が極めて大きいことから、その移動について、所要設備の整備等により身体の負担を軽減し、その利便性及び安全性の向上を促進することが不可欠となっております。  このような状況を踏まえ、高齢者身体障害者等公共交通機関を利用した移動円滑化促進するための各般の施策を総合的に講じることが必要であるため、この法律案を提案することとした次第であります。  次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、主務大臣は、移動円滑化を総合的かつ計画的に推進するため、移動円滑化促進に関する基本方針を定めることとしております。  第二に、公共交通事業者は、旅客施設の新設や大改良あるいは車両等の導入を行うときは、これらを移動円滑化のために必要な一定の基準に適合させなければならないこととするとともに、既にその事業の用に供している旅客施設及び車両等についても、当該基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。  第三に、市町村は、多数の旅客が利用する鉄道駅等の旅客施設を中心とした地区について、基本方針に基づき、移動円滑化のための事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本構想を作成することができることとし、基本構想が作成されたときは、関係する公共交通事業者、道路管理者及び都道府県公安委員会は、これに即して事業実施するための計画をそれぞれ作成し、これに基づいて当該事業実施することとしております。  また、国及び地方公共団体は、基本構想に定められた駅前広場、通路等の一般交通用施設や駐車場、公園等の公共用施設の整備等必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。  さらに、基本構想に定められた事業促進するため、土地区画整理事業の換地計画において定める保留地の特例措置、また、主務大臣の認定を受けた計画に基づく公共交通事業者による事業に関する助成を地方公共団体が行う場合の地方債の特例措置を講ずることとしております。  第四に、主務大臣は、公共交通事業者による移動円滑化のための事業実施に関する情報の収集、提供等を行う法人を指定することができることとしております。  その他、移動円滑化促進するに当たっての国、地方公共団体及び国民の責務を定めるとともに、運輸施設整備事業団移動円滑化のための事業実施する公共交通事業者に対して補助金を交付することができることとしております。  以上が、この法律案を提案する理由であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  83. 仲村正治

    仲村委員長 次に、玉置一弥君。     —————————————  高齢者障害者等移動の自由を確保するための法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  84. 玉置一弥

    玉置議員 高齢者障害者等移動の自由を確保するための法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  高齢者障害者等移動について制約を持っている人々は、長い間公共交通機関や道路の利用について大変な制限を受けてきました。一九八一年からの国連・国際障害者の十年は、ノーマライゼーションの理念を広め、バリアフリー社会をつくろうという目標を示した時代でしたが、我が国の取り組みは十分なものではありませんでした。交通の分野でも、すべての人がいつでも安全に利用できる公共交通機関及び道路等の整備があらゆる人たちの社会参加の前提であるとの訴えは、法的な裏づけもないまま今日に至っております。  スウェーデンでは、一九七九年に交通事業者に対し障害者の移動可能性を確保する義務を課す法律が、またフランスでは、一九八二年に障害者を含むすべての市民に対し交通権を認め、移動制約者についてはその実現のため特別な措置をとるという内容の法律ができており、一九九〇年、アメリカにおけるADA法、そして一九九五年、イギリスの障害差別法など、欧米に比べ我が国のバリアフリーへの取り組みのおくれは明白であります。政府案も、今までなかった法制化の試みとしては評価できるものの、ノーマライゼーションの理念が明確でなく、主に都市部での施設整備に偏した立法措置になっております。  ここに私たちが提出した法律案は、高齢者障害者等移動制約者の自立とあらゆる分野の活動への参加を促進するため、移動制約者が円滑かつ安全に公共交通機関等を利用することができる施策を定めることにより、本来だれもが持っている移動の自由を最大限確保することを目的とし、出発地から目的地までの間を他の人々と同等に利用できるようにすることを明確にうたってあります。自立と社会参加の拡大は、高齢者障害者等移動制約者により多くの生きがいを与えるのはもちろん、我が国の経済活動全般に好影響を与えるものであることも申し添えておきたいと思います。  次に、この法律案の主要点について、特に政府案との相違に重点を置いて御説明申し上げます。  第一は、基本指針の作成についてであります。主務大臣は、移動の自由を確保するための施策推進のための基本指針原案を、移動制約者等の意見を聞いた上で作成し、国民から意見を聞き、国会承認を受けるものとしております。  第二は、公共交通事業者、道路管理者等が講ずべき措置についてであります。主務大臣は、移動制約者等の意見を聞きながら整備基準を定め、交通事業者、道路管理者、都道府県公安委員会等は、基本指針等に基づいて整備計画を定め、それを実施するものとしております。駅などの施設につきまして、新設、既設の区別は設けず、また、政府案で除外しているタクシー事業者も含んでおります。すなわち、出発地から目的地までの例外のないバリアフリー化を目指すものであります。また、施設の大規模な改善については必ず移動制約者等の意見を聞くなど、当事者参加を明示しております。  第三は、市町村の措置についてであります。ナショナルミニマムとして国が責任を負う部分と、上乗せ、横出しとして市町村が講じる措置を明確に区別しております。地域の実情に応じ、市町村整備指針を定め、公共交通事業者は、それに即して地域整備計画を作成し、認定を受けることとしております。さらに、市町村は、公共交通機関では対応できないような制約を持っている人、あるいは公共交通機関がカバーし切れない地域の人々に、別途のサービス、いわゆるスペシャル・トランスポート・サービスを提供する旨を定めております。交通のバリアフリーをくまなく実現するためには、福祉タクシー、ボランティアによる移送サービスなどによるドア・ツー・ドアの移動手段について、どこの市町村でも対応できるような計画的施策が必須であります。  第四は、情報の提供についてであります。移動制約者が安全かつ円滑に移動できるようにするため、理解しやすい方法により必要な情報を提供するように努めるものとし、バリアフリー情報の提供と情報のバリアフリー化を推進するよう規定しております。  第五は、財政上の措置についてであります。交通のバリアフリーという政策課題の重要性にかんがみ、国が公共交通事業者に対し、バリアフリー施設の整備に要する費用の四分の三を補助するよう規定しております。  第六は、国会への報告についてであります。内閣は毎年国会に対し、移動の自由を確保するための施策を報告しなければならないとしております。  以上がこの法律案趣旨でございます。  民主党は、この法案を作成するに当たって、各地でのシンポジウムやパブリックコメントを実施し、数多くの意見をいただいた上で作成させていただきました。高齢者や障害者の思いをできる限り実現するために、ぜひとも真剣な御議論がいただけますようお願いいたしまして、私の趣旨説明とさせていただきます。
  85. 仲村正治

    仲村委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  86. 仲村正治

    仲村委員長 陸運に関する件について調査を進めます。  本日は、特に、帝都高速度交通営団日比谷線脱線衝突事故問題について質疑を行います。  まず、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として帝都高速度交通営団総裁寺嶋潔君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 仲村正治

    仲村委員長 御異議なしと認めます。よってそのとおり決しました。  引き続き、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として運輸省鉄道局長安富正文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 仲村正治

    仲村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————
  89. 仲村正治

    仲村委員長 議事に入るに先立ち、去る三月八日の営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故によりお亡くなりになられた五名の方々の御冥福をお祈りし、お悔やみを申し上げます。  また、負傷された多くの方々には、一刻も早い回復を心から願い、お見舞いを申し上げます。  ここに、お亡くなりになられた方々と御遺族の方々に衷心より哀悼の意を表し、黙祷をささげたいと存じます。  御起立をお願いいたします。——黙祷。     〔総員起立、黙祷〕
  90. 仲村正治

    仲村委員長 黙祷を終わります。御着席願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅義偉君。
  91. 菅義偉

    ○菅(義)委員 自由民主党の菅であります。  あの大惨事が発生をしてから早くももう二週間たったわけであります。運輸省は、二階大臣を先頭に鉄道局の皆さんが、二度と再びあのような事故を起こしてはならないという熱意で、今日まで処理策について半ば徹夜状態の中で取り組んでおられます。本当に御苦労さまであります。また、私どもも皆さんと力を合わせて再発防止に努めなければならないのは当然のことでありますけれども、そのためにはやはり事故原因の徹底的な究明というのが必要であると思います。  まず最初に、大臣は就任以来安全というものに対して大変厳しく執念を持って取り組んでこられましたけれども、今度の事故に当たって、大臣の所感をお尋ねしたいと思います。
  92. 二階俊博

    ○二階国務大臣 まず、本日、営団日比谷線の脱線衝突事故につきましての御審議に際しまして、冒頭に、私からも改めて謹んで今回の事故でお亡くなりになりました五名の皆様の御冥福を心からお祈り申し上げるものでございます。御遺族の深い悲しみに、お慰めの言葉もございませんが、心からお悔やみを申し上げる次第でございます。また、負傷されました方々におかれましても、一刻も早い御回復をお祈り申し上げる次第であります。  ただいま菅議員から、私ども運輸省の今回の事故に対する取り組み、また運輸行政における安全の問題につきましてお尋ねがございました。  私はかねてより、安全という問題は運輸行政の基本であるという認識を常々抱いておりましたが、大臣就任に際しまして、改めて安全の問題を提起し、安全こそ運輸行政の要諦だということを申し上げてまいりました。ただこれを記者会見等で申し上げるだけではなくて、直ちに運輸省内に、運輸省の事務次官をトップにいたしまして三万七千の運輸省職員が全員心を一つにして安全対策に取り組もうという決意を内外に明らかにした、その一週間もたたないうちにJRのトンネル剥落事故が発生し、相次ぐ事故が生じております。  今回また、営団日比谷線の脱線衝突事故、相次ぐこのような事故に際しまして、私は本当に言葉もないような気持ちでありますが、しかし、皆様の激励を受けて、私自身も決意を新たにして安全の問題にもう一度真剣にチャレンジをしてみたいというふうに考えておるものでございます。  今回の事故の状況につきましては、深刻に受けとめております。したがいまして、けさほども運輸省の幹部に命じたところでございますが、すべての鉄道事業者、相当数がありますが、三回ぐらいに分けて運輸省にお越しを願って、運輸省としての安全問題に対する決意を改めて徹底いたしたいというふうに考えておるものでございます。  今後、原因究明と再発防止策の確立に向けて全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っておりますので、委員の諸先生方におかれましては、一層の御指導と御協力を改めてお願い申し上げる次第であります。
  93. 菅義偉

    ○菅(義)委員 では、この事故の原因究明という観点から質問してまいりたいと思いますが、三月八日の九時一分ごろに事故が発生をした。そして、運輸省では九時二十分には既に梅崎事務次官を本部長とする対策本部を設置する。九時三十分には事故調査検討会のメンバーの派遣を決定した。そして、九時三十三分には中馬総括政務次官が現場に行かれたわけでありますけれども、総括政務次官、現場に行っての状況というのはどうだったのでしょうか。その点についてお尋ねします。
  94. 中馬弘毅

    中馬政務次官 九時一分と今おっしゃいましたが、私どもに情報が入ってまいりましたのが九時五分ぐらいでございましたでしょうか、ちょうど大臣室で省内の事務打ち合わせをしていたときでございました。いろいろな情報が飛び交う、未確認情報だけで、爆発だとかあるいは脱線だとか、死傷者が四名だとか二名だとか、あるいはまた負傷者が三十名だ、五十名だということで、その場にいても状況もつかめないので、早速に現地に飛ぼうじゃないかということで、先ほどおっしゃいました運輸省の中での中目黒鉄道事故対策本部を立ち上げ、そして事故調査検討会、これは以前にこの検討会のメンバーはもう指定しておりましたから、その方々にすぐ連絡をとって、その場に行っていただくということを指示すると同時に、大臣は予算委員会でございましたので、まず私がということで、施設課長を同行の上、九時三十三分ごろでしたか、現地に飛んだようなことでございました。  現場に立つことがいかに大事かということを、常日ごろ私どもも思っております。百聞は一見にしかずと申しますが、やはり直接目の当たりにしてその事実をしっかりとつかむということが私は非常に大事だと思っております。また、組織挙げてこの事態に対処しているという意識を、トップがそこに行くことによりまして組織に浸透することができるのではないか。また、現場の作業員や職員を鼓舞し、また責任感を共有しているという連帯感、こういったものが生まれると私ども認識をいたしております。  そういうことで現場にすぐ飛んだわけでございますが、比較的すいておりまして、発生しましてから一時間以内、十時前に現地に到着することができました。その時点ですべての死傷者の病院への搬入等は終わっておりまして、もちろん乗客の誘導も終わっておりまして、その場にはそういった方々はいらっしゃいませんでした。しかし、事故現場はそのままでございまして、警官の許しを得て私どもは入ってそれを目の当たりにしてまいりました。  状況は詳しくは申しませんが、報告されているとおりでございまして、その状況を私どもは、逐一対策本部の方、本省の方で待機しております事務次官以下、あるいは鈴木政務次官もいましたが、そこに電話連絡しながら、今こういう状況だ、死者はどうも二名らしい、いや三名に今膨れ上がったらしいとか、そういったようなことも含めて状況を報告すると同時に、現場の見取り図をつくりまして、それをファクスで送ったりして正確に伝えたようなことでございました。  今、菅委員指摘がございましたように、私どもはそれぞれの立場で動いているわけですから、現場での若干のそごがあるんじゃないかと心配をしておりましたけれども先ほど申しましたように、消防は消防としてその職務を本当にトラブルなく遂行したようでございまして、その方々からも余り不満が出ずに死傷者の方々にそれぞれの処置をしたようでございました。  また、警官ももちろん、特に刑事事件としての現場検証ということで立入禁止をしておりましたけれども、事故調査検討会の学者の先生方、メンバーが集まってこられる中で、その方々にぜひ見せてあげてほしいと我々が言いましたところ、かなり素直にそれを受け入れていただきまして、ちゃんと現場の状況そのままで調査することもできました。  また、鉄道事業者の方は、やはり一刻も早く復旧させたいという気持ちで、早く検証を終わって現場を片づけて、そしてあすの一番電車に間に合わせたいという意向がその場でひしひしと我々にも伝わりましたけれども、それもそれぞれの職務をそれぞれが相手の立場を考えながら遂行した結果、次の日の一番電車からちゃんと走らせることもできた。  今回は、そういうことで、非常にそれぞれの部署部署の者が、それぞれの責任を遂行しながらも、相手の立場を思いやって共同の対処ができた、私はそのように評価をいたしました。しかし、それがいつものことではないので、今後のことの一つの示唆をそこから得ようとするならば、情報を一元化した形で集中的に把握して、それで何か問題が起こったときに、コントロールタワーといいましょうか、ちゃんとした形の指揮ができるところがあった方がいいんじゃないかということはそのときに少し考えたことでもありました。  ともあれ、今回の事故を一つの大きな反省事項として、また原因をしっかりとつかんだ上で、二度とこのようなことがないように鉄道事業者を督励しながら、私たちもしっかりと対処してまいりたい、このように考えているところでございます。
  95. 菅義偉

    ○菅(義)委員 今回は、総括政務次官が現場に行かれて陣頭指揮をとった形だと思いますけれども、この検討会の先生方は非常にスムーズにいったということですね。ぜひ、航空とか海とかと同じように法的調査権を持てるようにこの検討会を位置づけてほしいなということを私は要請しておきます。  営団総裁にお尋ねしますけれども、営団では過去に滑走があった、そういうことを営団の職員の方が専門誌に発表していますけれども、そういうものがあって営団では何らかの対応をされたんでしょうかということをお尋ねします。
  96. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 冒頭に、このたび三月八日、日比谷線脱線衝突事故を引き起こしまして、多数の死傷者が生じましたことにつきまして、この場をおかりして深くおわび申し上げます。私どもといたしましても、亡くなられた方の御冥福をお祈りし、おけがをされた方の一日も早い回復を祈って、一生懸命御遺族あるいは負傷者の皆様方に対応させていただいているところでございます。また、原因究明、再発防止対策を急ぎまして、二度とこのような事故を起こさないように頑張る決意でございます。  ただいまお尋ねのございました滑走現象でございますが、これは、レールの表面に雨とか油とかがついて滑りやすい状態でブレーキをかけると生じる現象でございます。その結果、車輪が一部平らになりまして、いわゆるフラットと言っておりますが、いびつな形になりまして、その結果として、カタカタと音がして乗り心地が悪くなる、あるいは騒音、振動を発生させて周辺の住民の方に御迷惑をかける、また車自体も傷みやすくなる、また線路の表面に損傷を与えるというようなことで、このような現象が起きないように常日ごろから心がけているものでございまして、先生が言及されました職員の論文も、そのような観点から書かれたものでございます。  フラットが発生いたしましたら、すぐに私どもの車両基地において車輪の削正などを行いまして真円に回復するようにしておりますが、論文において提起されました問題につきましては、私どもとしてもこれからこれを手がかりにして、何とか安全性の向上、すなわち滑走の防止に役立てるように努めていきたいというふうに思っております。
  97. 菅義偉

    ○菅(義)委員 営団では、昭和二十六年当時は半径二百メートル以下のカーブに摩耗防止ガードというのをつくっていた。そして、昭和五十六年から脱線防止ガードにかえたわけですね。少なくとも百四十から二百メートルの間は危険であるということを当初から認識をしていたわけですね。  私は、この質問に立つに当たり、民間の私鉄の安全管理者の方から話を伺ってきたんですけれども、例えば滑走があれば、そこの会社では車両だとかあるいは工務だとか、関係者が集まって大問題になるというんですね。これが脱線につながる危険性がかなりあるということなんですね。そして、この二百メートルから百四十メートルにした件も、そこの会社では運輸省から何メートルという指摘を受けてもそれ以上のことをやっている。私鉄は大抵そういう形で安全に対して取り組んでいる。現に、私鉄の一番半径のあるのは、東急が四百五十メートルですよ。確かに、それぞれ車体だとかいろいろな条件も違うと思いますけれども、少なくとも、事安全に関して、営団の皆さんの認識が非常に甘かったのではないかということをやはり私は指摘せざるを得ないと思うんですね。  それで、なぜ営団はこのような形になっているのかなと思ってその人にいろいろ話を聞いたら、あそこはプロパーの人は理事にしかなれないというんですね。私は組織表を見てみました。総裁と副総裁が運輸省出身です。十人の理事のうちプロパーが五人しかいないんですよ。やはりこういうことも、安全を含めて日ごろのさまざまな問題に影響するんではないかなというふうに私は思いますけれども、総裁、いかがですか。
  98. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 営団の中で、技術関係の職員につきましては、それぞれの部門の責任者、職員としての責任者、その一番上は部長でございますが、登用いたしまして、その知識経験を十分に発揮してもらっております。また、役員につきましても、先生指摘のとおり、五名の役員を内部から登用をしているわけでございます。これらの人たちの知識、経験は、営団の中において十分に発揮していただいていると思っております。
  99. 菅義偉

    ○菅(義)委員 大臣にも同じことをお尋ねしたいのですが、やはりこの組織全体を見直しする必要があるのではないかと私は思いますけれども、大臣の見解を伺います。
  100. 二階俊博

    ○二階国務大臣 営団法第十七条によりまして、営団の総裁、副総裁、理事及び監事は主務大臣である運輸、建設両大臣が任命することとなっております。  営団の役員の任命に当たっては、営団内部からの登用であるかまたは外部からの登用であるかにかかわらず、人格、識見及び経験等を勘案して、役員としての適格性を総合的に判断し、最も適任と思われる者を選任し、適切に配置してきたところであります。  このような判断のもとに、営団職員からの登用についても、培ってきた経験や能力または責任感、そうしたことを勘案し、従来からも役員として任命してきたところでありますが、常勤役員十三名中五名、委員指摘のとおり、営団職員からの登用になっておる、これが現状でございます。  いずれにしましても、各役員がそれぞれの持ち場において総力を挙げて、安全輸送を使命とする鉄道事業者としての責任と誇りを持って業務の推進に邁進していただきたいと考えております。
  101. 菅義偉

    ○菅(義)委員 ぜひこの事故を機に営団内部についての改革を行っていただきますことを、私は強く要請いたします。  事故検討会では、半径二百メートル以下のカーブに脱線防止ガードを設置するように通達をいたしましたが、今まで運輸省はこの通達に対して強制力はなかったわけでありますけれども、今度の事故を契機にこうしたことについてもやはり法律で義務づけるべきではないか、こう考えますけれども、いかがですか。
  102. 安富正文

    ○安富政府参考人 脱線防止ガードにつきましては、普通鉄道構造規則及びその告示において、曲線半径の小さい曲線または急勾配の区間にある曲線に設けることが規定されておりまして、これを受けまして、鉄道事業者が具体的な設置基準を定めているところでございます。  先生おっしゃいますように、事業者によって幾つか基準が異なっているという点がございました。今回、我々としては、検討会の御判断をいただきまして、当面の緊急措置として、今回の事故にかんがみて、三月十六日の事故調査検討会の検討結果を受けて、半径二百メートル以下の曲線部に脱線防止ガードを設置するということが必要だということで、これを全国の事業者に指示したところでございます。  先生おっしゃいます脱線防止ガードの設置基準、これを法令的にどうするかということにつきましては、さらに事故調査検討会でのより詳細な検討を踏まえまして、法令に基づく技術基準の見直しについても今後適切に対応していきたいというふうに考えております。
  103. 菅義偉

    ○菅(義)委員 終了します。
  104. 仲村正治

    仲村委員長 次に、遠藤乙彦君。
  105. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。  私自身も公明党の営団事故対策委員会の一員としまして、当日昼過ぎに現地に参ったわけでありますが、大変衝撃を受けた次第でございます。特に、先ほど大臣もおっしゃっておりましたが、大臣の施政方針演説の中で安全を最優先にということを表明されまして、私たちも全面的に賛同し、これを一体となって推進していこうといったやさきだっただけに、大変衝撃を受けたわけでありますけれども、ぜひとも再発防止のために最大の努力をすることを誓い合いたいと思っております。  時間がございませんので、単刀直入に話をしていきたいと思っております。  今菅委員からも、脱線防止ガードの話がありましたが、同じような論点になりますけれども、最重要の点だと思いますので、重ねて私も質問したいと思います。  この事故現場はいわゆるS字型カーブ、しかも上り勾配というところであって、常識的に言うと、脱線の危険の確率の最も高い箇所であるということは指摘されてきたとおりであろうと思っております。脱線の事故原因につきましては今検討中であり、早々に結論を出すことはできないと思いますが、常識的にいろいろな状況から考えますと、恐らくさまざまな要素が複合してこういったいわゆるせり上がりの脱線になったという見方が支配的であり、これはほぼ妥当な見方ではないかと私も考えるわけでございます。そうであるとすると、やはりなぜ脱線防止ガード、いわゆる護輪軌条が設置されていなかったか、これが最大のポイントではないか、重ねて私も指摘したいと思っております。  この設置基準につきましては、各社かなりばらつきがあります。東急の場合半径四百五十メートル以下、小田急が四百メートル、京王が三百メートル、京急が三百メートル、西武が二百五十メートル、JR東日本が二百五十メートル、それに対して営団地下鉄は百四十メートルと異常に甘いということがまず指摘されるかと思います。  それからもう一つは、時間的経緯をたどると、営団はこの基準を緩くしてきました。一九五一年に二百メートルであったのが、五四年に百八十メートル、五八年に百六十メートル、六八年に百四十メートルということでありまして、この事故現場が半径百六十・一メートルということを考えますと、どんどんこれを甘くしたその限界点で事故が起こったということでありまして、悔やんでも悔やみ切れないものではないかと私は考えるわけであります。  こういったことをかんがみますと、やはり営団として脱線の危険性についての認識が甘かった、またそれによって、効率化といいますかコスト削減を図るために、結果として安全が犠牲になったと言わざるを得ないと思いますけれども、この点につきまして、営団総裁、どのようにお考えですか。
  106. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 委員ただいま御指摘のように、脱線防止ガードの設置基準を過去において引き下げ、昭和四十三年以来百四十メートル以下ということにしております。ただ、いわゆる防止ガードの機能は、過去においてはレールの摩耗防止が主たる目的認識されておりまして、その後、技術の進歩によりまして、レールの改良とか塗油器の改善等が見られましたので、その機能は次第に意味を失いまして、昭和五十六年以降は脱線防止の機能を主眼に考えることになっております。  ただ、順次基準を緩めてきました段階におきましても、常に実車による脱線係数等の測定を行いまして、それが安全性の目安とされている数値の基準以内におさまっているということをチェックしながらやってまいりました。  したがいまして、当時の判断としては、これで十分安全であるという考え方に立っておったわけでございますが、遺憾ながら、このたび半径百六十メートル余りのところで事故が発生いたしまして、このことを私どもは深刻に受けとめ、今までの考え方にこだわらずに、今後、先日運輸省から指示されました半径二百メートル以下の曲線につきましては脱線防止ガードを設置するという考え方で、緊急にこの工事を進めてまいりたいというふうに思っております。
  107. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今の総裁の御発言の中で、当時の判断としては安全であったという発言がありましたが、ただ、それを今実際事実が覆したわけですから、やはりその当時の認識は甘かったということをお認めになりますか。
  108. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 四十三年以降も、回数にしますと何百万回という回数で同じ地点を列車が無事に通過してまいったわけでございます。しかしながら、その事実は事実として、今回このような事故を招きましたので、その点は私どもは謙虚に受けとめております。したがって、先ほどのような再発防止措置をとろうとしております。
  109. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今度は運輸省に伺いますが、先ほども御説明がありました運輸省令普通鉄道構造規則には、一応、脱線防止ガードの設置について定められておりますけれども、これはあくまで定性的な表現になっておりまして、危険な箇所には設置すべきだと。雨が降りそうなときは傘を持っていった方がいいというような、そういった表現でありまして、安全基準のガイドラインとしては、やはりちょっとこれは不十分ではないかという気がいたします。  特に、やはり定量的な指数を入れないことにはきちっとしたガイドラインにならないのではないかと思うわけでありまして、単に半径のみならず、恐らく勾配であるとか列車の速度も当然関連してくるかと思いますけれども、もう少しきめの細かい定量的な安全基準、一つだけではなくて、いろいろな状況に合わせて、例えば複数であってもいいと思うんですが、そういうきめ細かい定量的な安全基準を再検討すべきではないかと思いますが、この点いかがでしょうか。
  110. 安富正文

    ○安富政府参考人 先生指摘のように、現在の基準では定性的に書いておりまして、具体的には、鉄道事業者がガードレールの設置の具体的基準を定める際に、曲線における運転速度であるとか車両性能あるいは線路の状況等を勘案して定めております。  今回、三月十六日の検討会、それから三月十七日の通達ということで、ガードレールを二百メートル以下についてつけろということを指示いたしましたが、これはあくまで緊急的な措置だと我々も考えております。今後、事故原因の究明等を事故調査検討会で行っていく際に、我々としては、具体的な、定量的な設置基準というものを定めることがどういうふうな形でできるのかも含めまして、調査検討会のいろいろな意見を伺って、今後対処してまいりたいというふうに考えております。
  111. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひとも今回の事故原因の究明を踏まえ、きちっとした結論を出していただくよう強くお願いをしたいと思います。  続いて、もう一点です。私が現場を見て気になったんですが、車両の軽量化という側面でございます。  車両につきましては、従来、スチール製からステンレス製、さらにアルミ製へと主流が変わってきたわけでございますけれども、アルミの場合には、大変当初のコストは高くても、軽量化によるコスト軽減あるいはまたメンテナンスの軽減ができるので、経済的には非常に有用なものだということでアルミが主流になってきたと思っております。現場を見た限り、下り線のアルミ製の車両が、三分の二ぐらい側面がはぎ取られておりまして、ちょうど缶詰のふたがはがれたような状況でございまして、非常に強度が弱かったのではないか。そのはがれた部分が上り線に突っ込んで大惨事になったというふうな感触を私は持っておりまして、やはり車両強度の問題も、ぜひともこれは検討する課題であると考えております。  特に、横からの衝撃に対する強度というものを大変重要な要素として今後検討すべきではないかと思っておりまして、この点について、車両の強度基準はどうなっているのか、特に横からの衝撃に対してどうなのか、今後どういう方向で検討するかについて、お考えを聞かせていただければと思います。
  112. 安富正文

    ○安富政府参考人 現在、車両の車体強度につきましては、これも普通鉄道構造規則の百八十八条で、車両の車体は、堅牢で十分な強度を有し、運転に耐えるものでなければならないという規定がございます。  これを受けまして、各鉄道事業者において車両を設計する際に、運転状況等から車体にかかる乗客等の荷重あるいは連結部等の前後に働く力といったものを考慮しまして、所要の安全対策を確保しているところでございます。これは具体的には、JIS規格等で各種の試験方法が定められておりまして、それに基づいてやっております。  ただ、おっしゃいますように、横からの強度ということについて、どの程度これを確実にやっているかということについては、必ずしも十分ではないという点もあるかと思います。ただ、今回、アルミ製の車両が具体的な事故原因にどう結びついたか、あるいは事故の被害の拡大にどう結びついたかということは、原因究明をする過程において我々としても重大な関心を持って検討しなきゃいけないなと思っております。  そういう意味で、その検討結果を見まして、今後運輸省としても、車体の強度とか構造等の安全対策についてどうしたらいいのかということについては検討していきたいというふうに考えております。
  113. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひとも、この点につきましてもきちっとした結論を出していただければと思います。  もう一点、私は現場を見て思ったんですが、上下線の間隔の狭さ、これも今回の惨事につながった要素であると考えております。やむを得ない面があるかと思っておりますが、地下鉄の場合、人口密集地域であり、また用地買収等の問題もあって、どうしても間隔を狭くせざるを得ないという面があるかと思っております。  しかしながら、もしこれをもうちょっと広く間隔をとれておれば、脱線だけで済んで、こういった大惨事にはならなかったと思うわけでございまして、この点についても、困難なテーマかと思いますけれども、見直しが必要なのではないかと私は考えておりますので、お考えを伺いたいと思います。
  114. 安富正文

    ○安富政府参考人 いわゆる鉄道の上下線の間隔に係る基準でございますが、これも普通鉄道構造規則の二十三条におきまして、車両の動揺等を考慮して、並行する二つの線路を走行する車両同士が接触することのないように、その間隔、通常ですと六十センチ、あるいは、旅客が窓から身体を出すことのできない構造の車両のみが走行する区間の場合は四十センチということで定められております。  具体的に、営団日比谷線のように、旅客が窓から身体を出すことのできない構造の車両のみが走行する区間という場合には、車両限界の幅に四十センチを加えまして、さらに曲線部における車両の偏倚に応じた数値、当該区間では約二十五センチございますが、これを足しまして、車両の上下間の間隔という形で基準を定めております。  ただ、線路及び車両の上下間の間隔でございますが、これはあくまで線路及び車両が所定の水準に整備されていることを前提に定めている、いわば脱線を前提としていない、通常の状態における列車走行の安全性がこれによって確保されるということでございまして、その場合に、脱線を前提としてどうするかということについては、現在のところ、そういう基準を設けられるのかどうか、我々としては多少問題ではないかな、こう考えております。
  115. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私は、もう一つ現場を見て思ったのですが、事故検討会も調査をされたそうですけれども、やはり警察の調査といいますか、捜査が非常に先行しておって、どうも事故検討会は後手後手に回ったのではないかということ、警察との連携が果たして本当に十分うまくいったのだろうかということを一つ疑問点として持っております。  またもう一つは、十分な実態調査が果たしてできたのだろうか、もう少し精密に測定をしたり、十分な情報をとるべきであったのに、復旧を急ぐ余り、そういったことがおろそかになったのではないかと私は非常に危惧しているわけでありまして、こういった点、ちょっと心配しておるわけであります。  時間がありませんので、これはもう問題提起にとどめたいと思っておりますが、そういった意味もありまして、いろいろな人から既に提案があったかと思いますけれども、やはり鉄道事故についても、航空事故とか海難事故と同じような、独立の法的な基盤を持った強力な事故調査委員会を設置すべきではないか。恐らくもうコンセンサスではないかと私は思いますけれども、ぜひとも今回の事故を契機に、独立の法的な基盤を持った、強い調査権限を持った鉄道事故調査委員会を設置すべきではないかと思います。  特に二階大臣は安全ということを最優先に掲げておられますので、ぜひ大臣のときに、今の鉄道事故調査委員会を発足させてはどうかと思いますけれども、大臣の御所見を伺います。
  116. 二階俊博

    ○二階国務大臣 現在、鉄道事故調査検討会が中心になりまして、原因の究明等、全力を注いでおるところであります。今の事故調査検討会のメンバーは、恐らく我が国鉄道技術におきまして最右翼といいますか、これにまさる人はいないのではないかというぐらいの人をあらかじめお願いしてこの調査検討会を設けておりましたことは委員承知のとおりでございます。その上に立って、航空機事故等については航空事故調査委員会制度が設けられておりまして、常設の機関としてそうしたことが既に設置されておりますので、鉄道においてもこのことが必要ではないかという御意見でございます。  私は、実は参議院の方でもいろいろな御意見を承ってまいりました。恐らく各党の皆さんがこのことの御主張をなさっております。今直ちにこのことに対して結論を申し述べる段階ではございませんが、各党からのそれぞれの御意見につきまして、私は謙虚に受けとめて、しかもせっかくのそれぞれの政党からのまさに政党政派を超えての御主張をいただいておるわけでございますから、こうした意見を十分踏まえて、できるだけ早い機会にこのことに対する結論を得られるように十分検討をしてまいりたい、このように考えております。
  117. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私自身は、日本鉄道の安全性は非常に高いものだと思っております、国際的に非常に誇るべきものだと思っておりますが、残念ながら昨今いろいろな事故が起きております。  いずれにしましても、大臣が安全最優先と言われたように、事故ゼロへの挑戦、安全一〇〇%への挑戦ということをもう一度、この世紀の変わり目にぜひ原点をしっかり固めていきたい。また、そういった最初のステップとして、今申し上げましたような、法的権限に立った、しっかりした、専門性を持った独立の鉄道調査委員会を設置することを強く要望いたしまして、私の質疑を終わりたいと思います。
  118. 仲村正治

    仲村委員長 次に、江崎鐵磨君。
  119. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 自由党の江崎鐵磨でございます。  このたびの事故で、人生半ばにしてとうとい五名の方が亡くなられました。改めて心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、特に御遺族には、これから一家の支えとなる、また期待される方を亡くされた悲しみはいかばかりか察するに余りあるとお悔やみを申し上げる次第であります。そして、現在、けがをされて多くの皆さんが入院加療中でありますが、一日も早く回復、そして治癒されることを願い、お見舞いの言葉といたします。  今回の脱線事故におきましては、事故発生後直ちに、総理官邸に官邸連絡室を、また運輸省には事務次官を本部長とする運輸省中目黒鉄道事故対策本部を設置、そして、いち早く現地に、本来ならば二階運輸大臣が赴かれるところ、予算委員会の審議中でありましたので、中馬総括政務次官を初めとする専門家の人たち、そうした方から構成される事故調査検討会メンバーの派遣を決定されるなど、迅速な初動体制を整えられました。阪神大震災のとき、特に日本の危機管理を問うと訴え続けておられた二階大臣の迅速かつ適切な対応に、私ども、ただただ頭が下がる思いであります。  私どもは、地下鉄は安全な乗り物といった認識がありましたが、今回このような事故が起こりますと、利用者は少なからず不信と不安感を募らせたのではないかといったことであります。今や地下鉄は、大都市の通勤通学輸送に不可欠の交通機関であり、日常生活になくてはならないものでありますだけに、利用者の不信、不安感をいっときも早く解消するためにも、一日も早い原因究明と対策が必要とされております。  去る三月十六日の事故調査検討会ワーキンググループ合同会議によれば、脱線事故の原因について十項目の推定をし、それらの幾つかの要因が重なって起きる複合脱線との見方を強めておられますが、今後の原因究明と対策の必要性について、大臣のお考え及びスケジュールを、また営団を含めて全国の鉄道事業者にどのような指示を出されているのかをお尋ねいたします。
  120. 二階俊博

    ○二階国務大臣 前段の今回の事故に対する江崎委員の御発言に対しましては、思いを同じくするものでございます。  三月十六日に開催されました検討会において、現時点で脱線の要因となると推定される事柄の整理を行い、これを中心とした徹底的な技術的解明を図るとし、このために必要なデータの収集、シミュレーションの実施、現地試験等を行っていくことを内容とした今後の進め方に関する基本的な方針が示されたところであります。今後、原因の具体的な究明につきまして、一日も早くこの方針に沿って原因究明が図られることを期待をいたしております。  しかし、私は、一日も早く、一刻も早くという思いであることは各委員の皆様と同じ思いでございますが、急ぎながらも、なお適切に、しかも、後になってまた別の原因ではないかというふうなことであったのでは適切でありませんので、さまざまな角度から科学的な検討を加えていただき、判断をしていただきたいと考えておるわけでございます。  事業者に対する指示につきましては、事故発生のその日に営団に対して原因究明と再発防止対策について指示を行うとともに、すべての鉄道事業者に対して軌道及び車両の点検等を指示したところであり、これを受けて営団は三月十三日に、独自に半径百六十メートル以下の曲線部に脱線防止ガードを設置したところであります。そこで、三月十六日の検討会において、当面の緊急措置として、半径二百メートル以下の曲線部について脱線防止ガード等を設置することとし、三月十七日に鉄道局長よりすべての鉄道事業者に対して文書を発出し、事業者が早期に適切な措置をとるように指導したところであります。同時に、その状況等につきまして改めて報告を求めるようにいたしております。  なお、先ほども御答弁で申し上げましたが、私は、それだけではなくて、すべての鉄道事業者運輸省にお越しをいただき、運輸省として今後の鉄道の安全の問題について、先ほども御指摘がございましたように、事故ゼロというのはこれは当然のことでありますから、我々は決意を新たにしてこの問題に取り組むということをすべての事業者に改めて徹底を図りたい、それが犠牲となられたとうとい五人の霊に報いる道でもあるというふうに考えております。  私たちは、安全対策だけはやり過ぎるということはない、すべてのことをこの際再点検をし、しっかり対策を講じて、再びこのようなことが起きないように努力をしてまいりたい、こういう決意でおりますことを申し述べておきたいと思います。
  121. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 今回の事故に関しましては、事故調査検討会が再発防止観点から調査をする、また、警察は犯罪捜査の観点から捜査をされています。事故原因を解明するには車両や台車の異常とともにレールの状態等の精密な検証データが不可欠でありますが、それらは特に警視庁に証拠品として保存されていると伺っております。事故調査検討会と警察の協力体制、連携はどのようになっているのか、大臣にお尋ねいたします。
  122. 二階俊博

    ○二階国務大臣 事故発生後直ちに、普通でございますとこの電車は警察に証拠品として押収されるわけであります。あるいはまた、運転士、車掌さんたちは警察で取り調べを受けるわけでございまして、その間事故調査が進まないということで、私は直ちに官邸に連絡をとりまして、警察庁及び警視庁に対して官邸として、運輸省が事故調査をスピーディーに進めることができるように適切な措置を講じていただきたいということを申し入れました。それに対しまして、直ちに警察当局としましても、私たちのそうした願いにつきまして積極的に御協力をしてくださっておる。したがいまして、鉄道局長と警察庁との間でも十分連携をとって、今警察との間で全く問題なく事故調査、究明に当たっておるという状況でございます。
  123. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 これから、特に得られたデータが今後予想される被害者の損害賠償請求にも役立てられるよう、十分に情報公開を切望するところであります。  引き続いて、このような事故の場合、原因究明の調査と同様、事故の犠牲者、負傷者への対応が極めて重要であります。一昨日、三月二十日、地下鉄サリン事件からちょうど五年目に当たり、二階運輸大臣も霞ケ関駅で総理とともに献花をされたと伺っております。地下鉄サリン事件で営団は、乗客の救済に当たった職員二名の方が殉職するなど、被害者の立場にありましたが、オウムに対する賠償請求は現在どのようになっているのか。あわせて、営団として今回の事故に対する補償に関してどのように対応されるのか、お伺いをいたします。
  124. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 まず、地下鉄サリン事件の件でございますが、先生指摘のとおり、この事件に関しましては、営団も二名の職員を犠牲といたしまして被害者の立場にございます。したがいまして、オウム真理教の教団に対する損害賠償請求を破産管財人に申し立てまして、いろいろ査定はございましたが、約八千四百万円が認められております。  しかしながら、この債権につきましては、破産財団の資産が、生命、身体を害された被害者またはその御遺族の救済にはほど遠い状況にあるということを考えまして、配当の段階で、これらの被害に遭われた方々の損害賠償請求権を優先していただいて差し支えない、逆に言いますと、営団の債権は劣後扱いで構いませんということを平成十年の四月に東京地方裁判所に届け出いたしました。  それから、今回の日比谷線の事故につきましては、大変私ども多数の死傷者を出しましたことを申しわけなく思っております。  それで、亡くなられました方の御遺族、そしておけがをされた方々及びその御家族につきましては、とりあえずはそれぞれの担当を決めまして、張りつけて御連絡に当たり、そしていろいろなお手伝いをさせていただきました。  また、私を初め役職員手分けしましてお悔やみに参り、葬儀等にも参列をさせていただいたわけでございますが、これら葬儀等は一応一段落しておりまして、これからは御遺族初め被害に遭われました方々への補償の問題等が必要になってまいるかと思います。そこで、三月十四日に日比谷線列車脱線衝突事故被害者ご相談室という組織を設置いたしまして、ここに専任の者あるいは兼任の者を張りつけまして被害者への御相談窓口とし、そして事故による損害賠償、慰謝料の請求等に対応することといたしております。  何分まだ事故後日も浅いことから、具体的なお話し合いはこれからという段階でございますが、営団といたしましては、このような対応に誠心誠意取り組んでまいる所存でございます。
  125. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 過ぐる本会議におきまして、小渕総理御自身も今回の事故に当たって、被害者の方に対する補償とかそうしたものに万全を期するようにと大臣にもお話があったかと伺いました。ぜひ総裁、どうかひとつそうしたことにも大いに目配りをしていただいて、厚い対応をしていただきますことを特にお願いを申し上げる次第であります。  日本の地下鉄は長年にわたって、安全な乗り物として国民の信頼を受けてまいりました。しかし、このたびの事故により、その信頼は一瞬にして崩れ、利用者に不信と不安を与えています。事故原因を究明し、再び同様の事故が起こらないようにするとともに、大臣が熱心に取り組んでおられる交通バリアフリーの推進など前向きの施策を講じ、鉄道の安全性と利便性の向上を図っていくことにより、国民の信頼を一日も早く回復していただきますよう特に二階大臣に要望し、最後の質問とさせていただきます。どうか、二階大臣の決意をお述べいただきますようにお願い申し上げます。
  126. 二階俊博

    ○二階国務大臣 安全の問題につきまして私は回を重ねて申し上げてまいりましたが、三万七千の運輸省職員と、そして同時にまたその運輸省に関係する企業、個人タクシーの経営者等を含めますと二十万社以上になるわけでございますが、そこに働く方々の数が三百六十万人とも伺っております。これらすべての運輸関係の事業に携わる皆さんの御協力をお願いして、安全総点検ということを二度にわたって行ってまいりました。  運輸安全行動計画も策定し、そしてY2K問題等に際しましても、重ねて安全という問題に対して関係者の御協力をお願いし、また、鉄道事故等によって生じましたいろいろな問題点、例えばJRの問題、それはJR九州の問題でありますが、JR北海道にもございました。  そうしたところにつきまして、ことし初めに、まだ寒いころでございまして、ほかの人たちにはいかがかなと思ったのですが、この際はやはりトップが現地へ行ってこの重大性を改めて再確認し、関係者の皆さんに御認識を新たにしていただくということが必要でございますから、私は、北海道の礼文浜というところ、零下四度でございましたが、そのトンネルの回復の状況等をみずから点検をしてまいりました。そして、その事故を、再びこのようなことのないようにするために、この日を何かみんなで考えてむだにしないように、この教訓を後世に伝えて、少なくともJR北海道関係者がこの日のことだけは絶対忘れないということをするべきだということを申し渡してまいりました。先週、社長が参りまして、安全を決意した、あるいはその誓いを述べた記念碑をその周辺に建立し、同時に、毎年必ず、安全記念日として会社を挙げてこれに対応すると。これは一つの例でございますが、私は各地域におきましてそのようなことをお願いしておるところでございます。  今江崎委員指摘のようなことを営団も十分認識を新たにして、先ほどお述べになりました交通バリアフリーの関係等におきましても、率先して営団が名誉回復に御努力をいただくことを期待するものであります。そして私どもも、もう一度委員会の皆様の前にお誓いをいたしますが、運輸省を挙げて、安全の総点検、再確認、これに全力を尽くすことをこの際申し上げ、また一層の御協力をお願い申し上げる次第であります。
  127. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 どうもありがとうございました。
  128. 仲村正治

    仲村委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  129. 仲村正治

    仲村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉置一弥君。
  130. 玉置一弥

    玉置委員 大変御苦労さまでございます。  寺嶋総裁、あの事故の後いろいろあったと思いますが、大変お忙しい中御出席をいただきまして、ありがとうございます。  また、今回の事故で犠牲になられました方々に、心からの御冥福をお祈り申し上げたいと思います。また、けがをされた皆さんに対しまして、一日も早い御回復をまずお祈りを申し上げます。  私たちにできますことは、事故の原因究明を徹底して行って再発防止につなげる、こういうことでございまして、運輸省の方も、特にこういう事故の後、再点検ということを毎回なさっておられますけれども一つの機会をとらえてやるというのは非常に大切なことだと思います。そういう意味で、ぜひ落ち度のない、これからにつながる点検をお願い申し上げたいというふうに思います。  毎回出てまいります話でございますが、運輸省の中に設けられました事故調査検討会というものが、事故ごとに、所轄の警察との関係で、いわゆる現場保存とかあるいは証拠物品の押収とかそういう関係で、なかなか実態解明をする、現物を見ることができないということが多々あるわけであります。  先ほども総括政務次官の方から、現地の警察署にはいろいろ配慮をしていただいているという話がありましたけれども、本来の緊急危機管理という面から見ると、警察庁と運輸省、あるいは内閣全体の中で、緊急危機管理の対応というものがある程度マニュアル化されていないといけないと思うのですが、今回の事故を振り返ってみて、警察との対応その他について日常からどういうふうな形で話し合いが行われ、それがどういう形で今回反映されたか、あるいは問題点があったかなかったか、その辺、ちょっと大臣にお伺いしたいと思います。
  131. 二階俊博

    ○二階国務大臣 このような事故発生に際しまして、原因の究明、再発の防止等におきまして、現場における証拠品等を中心にして極めて綿密な調査をする必要がある、そのためには警察の協力がなければできない、そういう状況になっておりますが、ただいま委員の御指摘は、日常からそういうことに対する対応があるかということであります。  警察との人事の交流も行われておるところでありますが、しかし、私は、今委員指摘のように、こうした問題に対して、我々、鉄道を初め航空、船もそうでございますが、あらゆる交通機関を担当いたしておるその責任上、警察当局と、事故発生の後の対応についての協議を日常からきちっとしておく必要があると思っております。  この今回の事故に際しまして、小渕総理からも、原因の究明あるいはまた再発防止、御遺族また傷害を受けられた方々に対する万全の対応をしてもらいたいという御指示がありましたので、その万全の対応をするためには警察の協力も必要でありますから、私は今回、警察庁の方へ直接連絡することも承知しておりましたし、国家公安委員長に連絡することも一つの方法だと思いましたが、これはやはり官邸がそういう指示をされたことでありますから、危機管理も含めて、こうした場合に警察庁と我々運輸省との間の対応が必要だという判断で、官邸にその旨を申し入れました。  今回の事故においての事故調査検討会メンバーは、鉄道局長の要請によって、事故発生直後、先ほど中馬政務次官からも御説明申し上げたとおり、直ちに現場に急行したわけでありますが、運輸省は事前に警察庁を通じて所轄の警察署に現地調査の協力方を連絡しており、現場では事故後の車両、施設などの状況について詳細な調査が支障なく行われたという認識を持っております。  ただし、冒頭に戻りますが、事前にこうした問題について詳しく、警察庁と私どもの方とで事故発生後の措置につきまして常にそうした打ち合わせをしておく必要があるということは、ただいま委員の御指摘のとおりでございます。  そういう観点から、これは海上保安庁と防衛庁の問題でございますが、これも先般の不審船の問題の際に、そうしたことに対しての打ち合わせが日ごろからできておる場合と突然事が起こって連絡をする場合とでは、初動においても大いに開きが生じてくるわけでありますから、私はこの間防衛庁長官に申し入れまして、防衛庁の幹部と運輸省の幹部がともに今後の防衛問題あるいは海上保安庁の責務につきまして意見の交換をしようということで、先般、第一回のそういう会合をやりました。近く第二回目の会合をやらせていただきたいと思っておりますが、そのことは防衛庁、運輸省、始まって以来のことだと聞きまして、私は若干愕然としたところがあるわけでございます。  それはそれであっても、今後私どもは省の壁を乗り越えて、バリアフリーではありませんが、そういうことに関して日常から危機管理の立場から対応していく必要があるというふうに判断しておりますので、委員の御指摘を十分踏まえて今後対応したいと思っております。
  132. 玉置一弥

    玉置委員 運輸省運輸省で、今までの調査結果をどう生かしていくかという話であります。警察の方は今までの結果に対する責任がだれにあるかという話で、大分方向が違うわけですね。その辺をうまくやらないと、目的がそれぞれ違うわけですから、なかなか調整が難しいのではないか。  それからあと専門家の活用ですね。これも運輸省の関係者の方々の協力がないと逆に原因究明ができないのではないか、こういうふうにも思いますので、できるだけマニュアル化して、いろいろなときに対応できるように、緊急危機管理というのは、別に交通事故だけじゃなくて、いろいろな場合に必要になってくるわけであります。この前のオイルタンカーの話もそうですし、それから不審船もそうですし、そういうふうに至るところに関係する省庁がございますので、ぜひ連携をとれるような活動をお願いしたいと申し上げておきます。  それでは、きょうは寺嶋総裁においでいただいておりますので、事故そのものについてお伺いをしていきたいというふうに思います。  まずは、新聞の中に、一年前にも要するに車輪空転の予測が出ていたというお話がございました。これは、日本鉄道車両機械技術協会というところに論文を発表されました営団の技術屋さんだと思うのですけれども、その方が、滑走メカニズムの研究ということでやられまして、発表をされました。それが九九年の一月号に載ったわけでありまして、その中身は、簡単に言うと一番先頭車と一番末尾の車との結合部分、結合に近い側の車輪は浮き上がりやすいという話でございまして、これに対していろいろな実験をされている、こういうものがかなり詳しく出ております。  そして、その中でいろいろ申されております中身を簡単に言いますと、滑走する特定地区といいますか、その場所が大体集中しているということ、それから曲線あるいはブレーキをかけたときに起こるということもわかっている、それで明確に軸のそれぞれについて数値が出ておりまして、空回りしている様子が数字上あらわれているということであります。そして、このことが非常に前々から指摘をされているというふうに述べられているわけですね。  そういうことを見ますと、今までこの委員会で、先ほど質疑にもいろいろございましたけれども、こういう公なものに掲載されるような発表がされているにもかかわらず、その危険箇所について事前にいろいろ改良する手配が行われていないのではないかとつくづく思うわけであります。  聞くところによりますと、営団地下鉄の中で、危険箇所といいますか、要するに線形が大きく曲がっているところが六十四カ所ぐらいあるというお話を聞いておりますけれども、それが今までどういう状況であったのか、それから、こういう論文が出されて危険箇所が指摘をされる、危険箇所といいますか、危険な状況指摘をされるということでありながら余り手を加えておられないということでございましたけれども、なぜ事前にいろいろこういうものが指摘されながら改良につながらなかったのか、その辺を総裁の方にお伺いしたいと思います。
  133. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 ただいま委員指摘の論文でございますが、車輪の滑走メカニズムの研究ということで、いわゆるブレーキをかけたときに車輪がロックされてしまって滑ってしまう、その結果として車輪が一部分平らになる、フラットでございますが、そういう現象が起きるメカニズムを研究したものでございます。これは車両をも傷め、乗り心地も悪くし、レールも傷めるというようないろいろな弊害がございますので、これを何とか防止しようということで研究したものでございまして、内容の大変充実したものだというふうに評価をしておるところでございます。  そのような滑走がなぜ起こるか、それをどう防止したらいいかということで、結びのところでは幾つかの提言もなされておりまして、これらの提言をどう生かしていくか、これはこれからの課題だというふうに思っております。どれ一つとしてすぐできるというものでもないわけでございますが、これはせっかくの提言でありますから十分に実現可能性を検討していきたい、この論文の成果が将来の安全対策に結びつくように努めていきたいというふうに思っております。
  134. 玉置一弥

    玉置委員 一年前の一月にこれが出されたということは、その前から研究されているわけですね。当然、公の部分に出すから、社内の合意を得られるように事前に話をされているはずなんですね。そういう中で、これらの車両側の対策として以下の内容が挙げられますということで、制動力配分の再検討、制動開始位置の変更、摩擦レール状況を配慮した路面形状の検討、ちゃんとこういうふうに路面形状の検討というのがうたわれているわけです。こういうことがなぜ行われなかったのか。それから、油を塗ったか塗らないかという話が出ていたようでございますが、これによりますと駅の近辺、間近なところは制動性能をよくするため油を塗らないということが書いてある。ということで見てみますと、油を塗るということはあの部分ではなかったのかなというような感じがするわけです。  ですから、もう既に指摘されている中身があります。それで、滑走するということは結局荷重が軽くなって浮き上がるということで、線路との摩擦がなくなって結局車輪側がとまってしまう、こういうことですね。それは、簡単に言えば浮き上がっているということなんですね。浮き上がっている現象がこういうふうに何回も指摘をされているわけです。  今総裁は事故を起こしてからこういうようなことを検討したいという話を申されておりますけれども、ここまでなぜできなかったのかがやはり問題だと思うのですね。この辺についてどう思いますか。
  135. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 大変的を射た御指摘だと思いますが、ここに掲げられております対策は、実現するのになかなかそう簡単でないというようなものでございまして、すぐには動けなかったというのが正直なところでございます。  しかしながら、御指摘のとおり、意味のある提案だというふうに受けとめておりますので、実現の可能性について早急に検討していきたいと思います。
  136. 玉置一弥

    玉置委員 先ほどの御質問の中でも、半径が当初二百メーターで、どんどんと小さくなって当該箇所は今百四十一メーターですか、百四十一メーターか二メーターか、外側が百六十ぐらいだと思いますけれども、そういうふうに小さくなってきているということでございますが、当初二百メーターあった半径が小さくなったのはどうしてでございましょうか。
  137. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 当該箇所の曲線半径は百六十・一でございます。小さくなったという御指摘は、営団の脱線防止ガードの設置基準を順次過去において引き下げてきた、昭和四十三年に百六十から百四十に下げたという点を御指摘かと思いますが、これは、当時の目的でありましたレールの摩耗防止という目的が、レールの改善あるいは塗油器の改善があって、意義をだんだん失ってまいりましたので、そのように下げてまいったわけでございます。せり上がりにくくなったということで下げてきたわけでございます。  その後、昭和五十六年には、むしろその機能よりは脱線防止機能を重視するということで、名前も、当初は摩耗防止ガードと言っておりましたが、その後は脱線防止ガードということに改めまして、本線レールとガードとの間隔も広げたわけでございます。  しかしながら、その都度、脱線係数等は計測いたしまして、十分に目安の値の中に入っているということを確認しながらやってきたものでございまして、当時としてはそれなりの自信があったということであったかと思います。
  138. 玉置一弥

    玉置委員 営団の中で、今度はいわゆる飛び出し防止のためのガードをつけようという話が今出ているそうでございますが、予定としてはどの程度つけなければいけないとお考えでございましょうか。
  139. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 ただいまの営団が持っております基準、半径百四十メートル以下というところでは既に十七カ所ついておりますが、これをさらに暫定的に営団としては半径百六十メートルまで引き上げることにいたしまして、その段階で四十三カ所増設する。さらに、このたび運輸省の方から指示がございました、半径二百メートルまでつけるという新しい基準が示されましたので、それに加えまして、さらに百十三カ所設置することになります。したがいまして、現状よりも百五十六カ所増設するということになります。
  140. 玉置一弥

    玉置委員 今まである程度予測されながらこのガードがつかなかったということは、何が原因でございますか。どういう理由でつかなかったのか。
  141. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 私どもは、脱線が予測できるという状況ではございませんでした。先ほど申し上げましたように、新しい形式の車両が導入されるとき、あるいは速度向上をするとき等にも随時安全率をチェックしておりましたので、これで脱線が起こるというふうには考えておりませんでした。  しかしながら、結果として半径百六十・一メートルのところでこのたび脱線が起きました事実を厳粛に受けとめさせていただいて、先ほど申し上げたような箇所に脱線防止ガードを増設することとしたわけでございます。
  142. 玉置一弥

    玉置委員 確かに、保全から考えると、いわゆる保線の関係の工数とか、それからその作業時間のとれる範囲とかを考えていきますと、ガードがついていると作業時間がかなり延びるだろうというふうに思うんですね。そういうのがあって多分つかなくなったんじゃないかなというふうに推測をするんです。  というのは、夜間作業しかできない、そして終電から始発までの時間が非常に短い、そういう中でレールの取りかえをやろうとすると、ガードがついていない方が半分で済むわけですね。そういうことが原因じゃないかというふうに推測するんですが、その辺はいかがでございますか。
  143. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 御指摘のとおり、脱線防止ガードがついておりますと、いろいろな作業をする際に一々それを取り外さなければならないという手間は確かにふえます。しかしながら、このたびの事故がありました以上、これを厳粛に受けとめて、そのような手間を惜しまずに、脱線防止ガードを増設して、作業の都度それを取り外すということとしたいと思っております。
  144. 玉置一弥

    玉置委員 事故の原因はせり上がり脱線というふうに言われているようでございますが、実際にいろいろな車両の脱線事故を見ておりまして、低速で傾斜がついていて、本来だったら遠心力で外へ押し出されるところが、傾斜の方が強過ぎてそちら側に脱線するということもあるんですね。それはすべて大体、今の浮き上がり現象とかいうのもあると思いますし、要するに、双方、車輪それからレールともにちょっと傷がありますと、歯車のようにかみ合って、フランジが上へ上ってしまうというのもある、そういうこともあるそうです。そういうのを考えていきますと、ふだんからいろいろな対策を考えていかなければいけないと思うんですね。  鉄道会社たくさんございますが、例えば地下鉄関係とかほかの民鉄、あるいはJRと、この辺の技術的な話とか対策とかいうふうな場面でどういう話し合いを今までなされておりますか。その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  145. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 他の鉄道事業者との交流の場といたしましては、全国の十四地下鉄事業者構成されております地下鉄技術協議会というものがございまして、軌道、土木、建築、車両、電力、信号通信という各部会ごとに定期的に会議が開催されておりまして、その中で技術面、安全面の情報交換が行われております。  ただ、今問題になっております脱線防止ガードの設置基準につきましては、運輸省の規則でも各事業者の判断によるということになっておりまして、この技術協議会のテーマとして議論されたことはなかったと聞いております。  また、民鉄各社との間では、日本民営鉄道協会の中で技術委員会というものがありまして同様の交流を行っておりますが、これにつきましても脱線防止ガードが議論になったということは聞いておりません。
  146. 玉置一弥

    玉置委員 いろいろな脱線の研究はかなりやられているんですが、大体、専門家が見て危険箇所というのは前々からわかっているわけですね。  それで、私も昔は鉄道マニアでございまして、模型も一生懸命つくって、家の中をくぎで打ち抜いて、あるいは庭の中を線路を敷いて走り回した一人なんですけれども、やはりボギー車みたいな、ああいう四輪の固定されたものというのは、非常に車両の負荷のバランスがとりにくいというのと、それから傾斜に弱いですね。  今回のことも、やはり傾斜のところで浮き上がったものと、それからもう一つは曲がり角度が急なためにそこへ乗り上げてしまうということは、これはあり得るわけでございますから、そういう面で、やはり線形改良も含めてちょっと大きな改良をしていかないと、またどこかで再発する可能性がありますね。ただガードをつけるだけではなかなかそんなカバーはできないと思うので、やはり線形そのものももう一回見直す必要があるんじゃないか。だから、角度が急で、穴の掘り方を変えるとかはなかなか難しいと思うので、傾斜の部分をもうちょっと緩くとるとかいうようなことも必要だと思うんですよね。そういうふうな面でもぜひ改良をお願いしたいというふうに思います。  それと、ちょっとこれは余談になりますが、実は、私どもこれから交通バリアフリー法案の審議を始めますが、地下鉄の駅で今まで視覚障害者の大体半数ぐらいの方が転落をしたという経験をお持ちだということでございますが、このことをお聞きになったことがございますか。あるいは、それに対して営団としてどういう対策をとられてきたのか。もしわかれば、お聞きをいたしたいと思います。
  147. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 視覚障害者の方の転落事故というのは営団においても過去にございました。私どもとしては、全駅に案内の、床にあの黄色いものを張っておりますが、あの誘導施設の取りつけ方がもっと適切であったらこれは起きなかったかもしれないというような事故もございましたので、全駅を見直しまして、そのようなふぐあいのあるところはすべて位置を変更いたしまして、現在ではできるだけ安全なところに御案内できるような設置の仕方になっております。
  148. 玉置一弥

    玉置委員 実際に、営団だけではなくて、いろいろな地下鉄の駅でこういう問題が起きておりまして、この前も運輸大臣にちょっとそれを申し上げたことがありますが、まず一番身近な早くできることということで、対策をぜひお願いしたいというふうに思います。  それでは、事故調査の問題でございますが、今、事故調査検討会が、一応十項目を推定して、この要因を順番に検討していこうというお話でございます。  この中で、一から十までありますけれども一つ一つ順番にやっていかなければいけない問題もありますし、優先度をある程度考えながらやっていかなければいけない、それから営団だけじゃなくて、地下鉄あるいは鉄道事業者全体にこういう話を逆に確認しなければいけないというのもあると思うんですが、どういう手順でいつごろまでをめどにやっていかれるのか、そして再発防止のために確認できるのはどういう形になるのか、その辺をちょっとお聞きしたいと思います。
  149. 安富正文

    ○安富政府参考人 先生指摘のとおり、三月十六日に開催されました検討会において、脱線に影響を及ぼしたと現時点で推定される要因を十項目ほど整理しております。この要因につきまして、今後これらを中心にして幅広く徹底的に技術的な解明を図っていきたいということで、現在考えているところでございます。  ただ、具体的な優先順位ということにつきましては、まだ現在のところ、具体的にこれをどういう形でやっていくかということで、検討会の各先生方の中でまた議論していただいて、これからいろいろ優先順位をつけていきたいというふうに考えております。そういう意味では、まだ脱線の原因をある程度特定できないものですから、これらの因子について幅広く検討するということになっているわけでございます。  こういう要因につきまして、今後、どういう形でやっていくかということになるわけですが、例えば同形式車両すべての輪重の測定であるとか、レールの断面形状とか、レールの頭頂面の表面粗さ等の調査とか、そういう具体的なデータの収集を図らなければいけませんし、それから輪重とか横圧の値に及ぼす諸因子の感度分析といったようなこと、あるいは車両運動に関するシミュレーションといったような手法での検討、さらにはいろいろな条件を置いて具体的に当該事故箇所で試験車による実車試験などを行うというようなことを方法論としていろいろ考えております。  したがいまして、今後、具体的な作業をいつごろまでにできるかということはなかなかお答えしにくいわけでございます。我々もできるだけ早期にということで考えておりますが、具体的作業の進め方については、検討会メンバーによるワーキンググループをできれば週一回以上は開いて、今後、早期に具体的なスケジュールの策定あるいは原因究明のめどを立てていきたいというふうに考えております。
  150. 玉置一弥

    玉置委員 大事故からいきますと、三河島とか鶴見とかいろいろありましたけれども、あれはいろいろな偶然が大きく重なったというのもありますし、高速でぶつかったというのもありますし、いろいろ考えられるのですね。しかし、こういうふうに、要するに駅に入る手前とか前後で脱線するのはしょっちゅうあるわけですね。もう本当に表に出ないくらい、そのくらいあるのですが、やはりいろいろな無理が結構たたっているのではないか。  それから、保全の方もいろいろ対応して、ポイントの改良とかいろいろやられていますけれども、やはり最終的には荷重のかかり方だと思うんですね。だから、その傾斜と各カーブだと思うんですけれども。その辺を思えば非常に簡単なことだと思うんですが、それがなかなかできないというのは非常に不思議でしようがないのですね。  ですから、検討会でやられましても、ぜひ現場で納得できるような結果が出るまで、それを突き詰めてやっていただきたい、こういうふうに思います。  いろいろまだ申し上げたいことがございますが、後は同僚に時間を譲りまして、私の質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  151. 仲村正治

    仲村委員長 次に、永井英慈君
  152. 永井英慈

    ○永井委員 民主党の永井英慈でございます。  きょうは本当にこの質問に立つのが、気が重くて、つらい思いでございます。特に、この大きなコピーを見せてもらいました。「脱線、対向電車と衝突」、きょう現在で五人が死亡され、三十五人の重軽傷者を出されたという大事件ですね。やりきれない思いなんです。いろいろな交通事故が起きました。御巣鷹山もありました。羽田沖のもありました。いろいろ多数の方が亡くなったけれども、今回のこの営団地下鉄の事件の死亡者に対しては別の感慨を実は私は持っているのです。  というのは、私ごとになって恐縮ですが、私は子供のころから電車が好きだったのです。どこへ行くにも電車に乗っていきたい。電車に乗るのが夢だった。電車に乗せてやるから一生懸命農作業を手伝えと言われて私は育ちました。  そして、六年ほど前になりますか、国会へ出ました。そうしたら、ひょんな拍子で政務次官になりました、二十四時間、車がくっついちゃったのです。それまで十一年間、私は健康増進のためにジョギングをやっておりました。でも、ここへ来ましたら、ジョギングをやっている時間がないのです。  そうすると、どこで運動不足を補うかというと、通勤しかないのです。通勤といったって、これは駅へなるべく歩く、駅へ出るのにバスに乗る、駅には必ず階段があるから、駅を使う、そしてどんなに込んだ電車でも電車通勤、もう六年続けました。  五年続けたときに、私は電車は子供のころから好きだったけれども、こんなに電車っていいものはない、そう思って、大臣、これは読んでくれましたね、お買い求めいただいたのを、手元を見ましたから。この「私の電車主義宣言」という本を書いたのです。たかが電車だ、だけれども電車はいいよ。「生き残りのカギを探し求めて」という題にしたのです。  そうしたら、きのう質問取りに来てくれた鉄道局の人も読んでなかった。だれも読んでくれない。ただ、これは宣伝じゃないのです、本当のことを言うんです、この本を読んで涙が出た、泣けたという人が五人、私の耳に入りましたので、ああ、そんなに変な本じゃなかったな、人の心を打つようにまじめに書くものだなという感じがしておりました。  そこで、この取材に一番行きたかったのはJRの松田社長のところ、ガリバー企業の親方ですから。幾ら頼んでも取り上げてくれない。幾ら頼んでも忙しいといって断られる。そのあげくに、常務どうですか、こう言うわけだ。小島常務さんどうですかと。社長さんが来られなければ常務さんでも、そんなこと言っちゃ悪いけれども、どうぞお会いさせてください。私は本社へ行きたかったのです。JR東日本の本社はどういう本社か、それも一つの取材です。ところが寄せつけないんだ、連れてくる、連れてくると言う。おかしなことを言うな、国会議員はそんなに偉いのかな、やたら連れてくる、連れてくるって。私はそんな不審の念を持っておった。  でも、小島常務が来たのです。私の部屋まで来てくれた。まあ何とも落ちつかない。私の見ている範囲じゃ、全く何を聞いているんだか、上のそらでしょうね、時計ばかり見ている。私は、申しわけないけれどもどなりました、あんた何しに来たんですか、私と話しに来たんでしょうと。ほとんど私は彼と話らしい話もせずに、三十分ぐらいでお帰りになりました。  JR東日本の社長に会いたかったんです。だけれども、だめだった。断りに断られた。  これはもう全部言います。その次に行ったのが日本民営鉄道協会、東京駅のあそこにあります。野崎さんという理事長がおりました。背の高い方です。にこりともしません。何しに来たんだと言わんばかりの私は印象を受けている。まともな会話ができない。電車はどうですか、民営鉄道の経営はどうですかから始まって、いろいろな世間話の中に取材というのはなかなかいい言葉が出てくるのです。  私は、一回行きました。おかしい人だ。あなたどこから来たんだねと聞いたところ、運輸省だと言う。それはあなた典型的な天下りですねと私は申し上げました。そうですと言いました。  二回目に行きました。二回目にはもう取材に来ましたと言って行きました。そして、答えることはまことに短く、味のある、一般の皆さんに読んでもらうような電車のおもしろい話とかエピソードとか、そういうのは全く話してもらえなかった。でも、その人のキャラクターでしょう、私はそれでいいと思う。  ところが、三度目に行った日本民営鉄道協会、そこで、でき上がりましたから読んでいただけるでしょうか、実はこれはできるだけ多くの人に読んでもらいたい、電車っていいよ、環境にもいいよ、交通渋滞にもいいよ、最初がちょっときつい本なんですけれども、そういうことで読んでもらいたかった。いかに電車がいいか、いかにエネルギー効率がいいか、電車を使えばこんなに地球を汚さずに済むのかと、みんな書いてあるのです。だから、一人でも多くの人に読んでもらいたい。  これは、実は、協会の方で加盟社にお買い求めをいただくことはできないでしょうか、その代金をいただいて、私は日本電車主義協会、電車の好きな人の会をつくりたいんだ、こういうことでお話をしました。そうしましたら、そんなことをやったら自民党に怒られると言うのです。そうですか、やはり野党はこういうところへ来ちゃいけないのですねという話もしたのですけれども、自民党に怒られると。まして、あなた方、国鉄の長期債務の法案に反対したじゃないですか、おかしいじゃないですかと。こんなことを民営鉄道協会理事長が言うのです。ああそうですか、では御協力はいただけないですね、こう言いましたら、やはり御協力はいただけなかった。  そこで、恥ずかしいのですけれども、私はこういう新聞を自分でつくりました。ザ・トレイニズム・ニュース、電車主義ニュースというのをつくって、こういう広場があれば仲間も集まるかな、いろいろな電車についての知恵がこういうところにだんだん集まってくるかなということ、これは国民運動にしたいんだ、こう申し上げたところ、その野崎さんという理事長さんは言いました。国民運動というのは一人から始めるものですよ、人に手をかりて国民運動なんというものは始めるものじゃありません、こう言われましたから、ああ国民運動というのはそういうものかなと思って、私は静かに引き下がってきた経過がございます。  これは、お話ししておりますと時間がなくなっちゃいます。でも、要点だけは言い始めたんだから聞いてもらいたい。  その一番初めに行ったのは運輸省だ、電車の仕事だから。鉄道局長、そのときいなかったのかな、梅崎さんという官房長がおられた。官房長とのやりとりは余り生々しいので、私はここでは控えたいぐらいです。  その次に行ったのが京急。京急はなぜ行ったかというと、日本民営鉄道協会の会長が京急の会長の平松一朗さんだった。では京急へ行きます、平松一朗さんにお会いしたい、こう話しました。そうしたら、野崎さんは、行かないでください、会長のところへ行って迷惑かけたり、負担をかけたりされちゃ困ります、こう言うのです。  ですから、私は、おかしいな、ではかなりこれはもういっちゃっている、ぼけちゃっているなと、もう本当にシャッポでいるだけの人かと思った。でも、この本を書く以上は会いたい。電話した、ではまた後ほど、幾ら待っても電話は来ない。また翌週になって、平松さんお会いできるでしょうか、いや、スケジュールの調整が立ちません、それで切った。また電話した。そんなことをやるうちに一月かかるのですよ。そして、では週でも明けたらまた調整して御連絡申し上げますと言うから、私は怒りました、何ですか、あなたはと。いや、もっとひどい言葉ですけれどもね、これは。  そうしたら、石川さんという総務部長が出てきて、ではどうぞいらっしゃってくださいといって、行ってみた。平松一朗さんという日本民営鉄道協会の会長は、ぴりっとしている、頭もさえている、言うこともびしびし言う。なぜ民営鉄道協会理事長は、平松さんに会うのを嫌がったのかな、私は今でも不思議に思っているのですけれども。これが京急ですね。  そして、京急へ約束して行きました。私は本当にびっくりした。守衛さんがいました。永井英慈という者です。京急は、私川崎の地元でございます。名刺を出しますよね。そうしたら、その守衛さんが案内してくれた部屋、まあ二畳か三畳、薄暗い、調べ室とかなんとかという部屋があるそうですけれども、そこで待っておりました。総務部長か総務課長が出てきてくれるのかと思ったら、そうじゃないのです。社史編集係という人が出てきた。会社のことは全くわからない。これはちょっと聞いていてくださいよ。でも、そのときは会えました。会って話をしました。一時間ぐらい話ができました。非常に私は勉強になりました。  その次に行ったのは、東武鉄道。東武鉄道に行ったら、守衛さんのところに行ったら、どうぞこちらの部屋へと。入ったところがやはり京急と同じぐらい。二畳か三畳ぐらいの小さな部屋。その部屋にこういう額が張ってありました。何と張ってあったかといったら、暴力団等の皆さんの立ち入りは御遠慮願いたい、そういう部屋に私は御案内をいただきました。  次に京成に行きました。京成へ行きまして、お会いしたいと。そしたら、二十五、六の若い人が出てきました。ところが、座るところがない。二階へ連れていってくれた。二階へ連れていったら、ここにいらっしゃる紳士のような立派な方が大勢いらっしゃる。そして、どこへ座らせてもらうかといったら、次長次長と呼ぶ人がいた。何と総務部の次長さんがいたのです。だけれども、下の受付ではいないと言うのです。女の子が応対と言うのです。話になりません。  東武へ行ったときには会社の話は何一つわからない人。  小田急へ行きました、もう取りつく島がございません。余り言うと仕方がありませんから。  次に、営団地下鉄上野の駅前へ私は伺いました。そうしたら、一階にパーティションで区切ってありまして、一つのところに通されました。そして、実はこの本も差し上げてあると思うのですけれども、多分まだ会長さんや社長さんのところまで行っていないのではないかと思うのだけれども、お願いしてきました。  理由は、これを買ってもらって財団の資金にして、こういう新聞をつくったり、電車のいろいろなことをやりたいのだ、そして、快適でまさに安全で楽しい、そういう電車をみんなでつくりたい。というのは、我が国は世界に冠たる鉄道王国、電車王国なんですね。これは電車会社だけではだめなんです。みんなして盛り上げることが大事であろうと思いましてお願いしましたけれども、さような経過でございました。  そこで、ぼつぼつ終わりにさせてもらいますけれども、要するに、私が驚いたのは、鉄道会社、電車会社、会わない。どこへ行っても会わない。経営者が会ってくれない。総務部長さんでも会ってくれないのです。これはひどいな、どういう理由だろうと私なりに考えてみました。私の独断です。とにかく線路を引けばおれのものだと、極めて独占的な企業形態であります。極めて排他的であります。そういうところにこの経営者の姿勢が出ているのか、会社全体の雰囲気がそういうところにあるのかな、そういう思いを私は強くしたのです。  そこで、こんなに大勢、一日に何億人と乗っているこの鉄道、万が一のことがあったら大変だ、電車というのは事故を起こせば人が死ぬのだ。自分でこんなこと言いたくない。起きたから言うのではありません。こんなに会社のお偉い人たちが外部に耳をかさないのでは、いつか何かが起きるぞ、そういう心配を私は常に持っておりました。  きょうも、実は東横線から御社の日比谷線で来たのです。それで新聞の社説を見てみた。やはり社説にも書いてあるのです。機械の方はしっかりしていても、経営の方はどうなんだ、人の方の教育はどうなんだ、人はできているのかと書いてあります。私は赤線を引いております。そうなんです。  これは民営鉄道だけじゃなくて、食料品業界も、あるいはデパート業界も、あるいはスーパー業界も衣料品業界もそうかもしれません。電車業界と同じように、そういう傾向が非常に強いのかもしれません。でも、少なくとも人の命を預かって輸送する事業形態を預かる経営者が、どうしてこんなに会ってくれないのだ。しかも、物をもらいに行くんじゃないんだ、ゆすりに行くのでもない。それで通されたのが三畳の調べ室のような部屋なんですよ。これが電車会社の、言ってみればトップの姿勢じゃないかと私は考えざるを得ない。  私はバッジをつけている。逃げも隠れもしません。きちっと自分の名刺を出しました。恐ろしいことだな、これはいつかどこかで国民に知らせなければいかぬという思いがありました。それで、新聞にいろいろ欄があります。もう書かなければいかぬ。そうじゃなかったら、でかいことでも起きたときには取り返しがつかない。何としても「電車主義」のようなものをつくって、みんなして電車を効率的に、効果的に、快適に利用できるようなそういう広場をつくらなければいかぬ。これが一点です。答弁が必要だったら言ってください。  次に、この本を読んだ人が、これはいい本だなと言って飛んできた人がいる。社長と専務がこれを見て飛んできました。永井さん、よくもこんないい本を書いてくれた。これはどこの人かというと、東京交通広告協議会というのがありますね、そこの、社長さんじゃないかと思うのですけれども、そのときにこう言ったのです。永井さん、この本、もう全車両おれたちがただで宣伝してやる。こっちはうれしいわね。こんなことをしてくれる。申しわけない。本当にありがたい。私は応対しました。いつ来るかと思って、きょうか、きょうかと待っていますよね、大体。  ところが、五日ぐらいしたら、もう一人の若い違う人を連れてきて、何と言ったと思いますか。永井先生、申しわけない、先般ああ申し上げましたけれども先生の本を宣伝するわけにはいかないと。だって、あんなに言ったじゃないか、全車両ただでやってくれると言ったじゃないかと、今度そこの社長とやり合ったのですよ。  そうしたら、どこからか圧力が入った、こう言いました。永井さん、政治家の本は車内、構内、交通機関の施設の中では宣伝できないと言われた。さらに言ったのが、宗教指導家の本も宣伝はできません、こう断られた。そんなことないじゃないか。いろいろな名前を挙げて、私はその宗教家の名前を挙げて、やっているじゃないですか、おれの本もぜひやってくれ、お断りしますと。  私はもうそれ以上言いません。でもそうだったのです。でも、有名な宗教家の著書その他、宣伝は続いております。  そこで、ぜひ申し上げたいのは、事故はメカだけで起きるのではない、事故は人の心に大きく関係することがある。それはもう読みません、ここに書いてありますから。もう読んでおられると思いますが、長くなって恐縮でございました。  そういうようなことで、ぜひ日本の電車が、さらに安全で、世界の人々から愛され、電車王国としての発展を遂げられるよう心から、特に総裁には御期待申し上げ、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  153. 仲村正治

    仲村委員長 次に、寺前巖君。
  154. 寺前巖

    ○寺前委員 今回の営団地下鉄事故は、五名の方が亡くなられた、重軽傷が三十八名も出る、これは営団地下鉄始まって以来の大惨事であるし、こういうことが二度と起こらないように、私どももよくその原因を突きとめて責務を果たすようにしなければならないと思います。大臣が公共輸送機関の最大の任務は安全輸送だとおっしゃっていることを、私も改めて確認をしたいと思います。  そこで、まず最初に大臣にお聞きしたいと思いますが、これまで営団地下鉄に対して、安全の問題について、その充実や督促を運輸省として正式に勧告したり、あるいは督促をされたということはあったんでしょうか。
  155. 二階俊博

    ○二階国務大臣 安全の問題につきまして、運輸省としましては、さきにもたびたび申し上げておりますように、安全戦略会議を設置し、それぞれ鉄道事業者はもとより、各種の公共交通機関を担当されております事業者に対しまして安全再点検、これを再々申し上げてまいりました。  これらにつきまして、それぞれの事業者からの報告等も受けてまいりましたが、我々は今回の事故の経験にかんがみ、重ねて安全の確保に対し、鉄道事業の最優先課題として今後とも真剣に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
  156. 寺前巖

    ○寺前委員 営団の総裁にお聞きをしたいんですが、昨年の二月に総務庁行政監察局で、わざわざ帝都高速度交通営団に対する勧告というのが出ています。  そこでは、経営の一層の効率化を図る観点から、次の措置を講じ、要員の合理化を図ることとして、駅務区、電車区及び検車区については、業務量に対応した要員配置の見直しを行うこと。二番目に、工場については、回転機の検修業務の部外委託をさらに進めるとともに要員の縮減を図ること。三、車両事務所を一カ所に統合し、統合後の内部組織について大幅な合理化を図るとともに要員配置を見直すことと勧告が出ています。  このような勧告に基づき、どのような措置をおとりになったんでしょう。
  157. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 委員指摘のとおり、昨年の二月に総務庁の方から、鉄道事業に関する行政監察結果報告に基づく勧告をいただいておりまして、経営の一層の効率化を図る観点から、要員の縮減を求められております。  この勧告に対しまして、営団といたしましては、安全確保を大前提にしつつ業務運営体制を見直すということといたしまして、駅業務におきましては、自動改札機の導入、券売機の性能向上等に伴いまして作業量の減少をさせる、また、保守業務関係におきましては、いろいろな設備装置のメンテナンスフリー化を進めまして、これに伴う作業量の減少を図っております。それから、検査の方法が人手から機械に置きかわっていっておりますので、これに伴う作業量の減少等を行っておりまして、作業量に見合った要員の配置を行っております。  主な例といたしましては、運輸関係では昨年の十月に池袋駅、門前仲町駅等に自動改札機を設置、車両関係では昨年の三月に車両事務所における積算業務の集約、ことしの三月には台車塗装のロボット化、電気関係では昨年の十一月に千代田線への新しい信号保安装置の導入によるメンテナンスの軽減等によりまして、要員の縮減を図ってまいりました。
  158. 寺前巖

    ○寺前委員 保安の問題については、同じように総務庁から、第三項目の問題として運輸省にやはり勧告が出ていますが、運輸省はこれをどう受けとめられたのでしょうか。
  159. 安富正文

    ○安富政府参考人 平成十一年の二月に、鉄道事業に関する行政監察結果報告に基づく勧告で、いわゆる保安監査の重点的かつ効果的な実施ということを求められております。  従来から運輸省としましては、鉄道事業法の規定に基づきまして立入検査を行い、実地に保安に係る業務状況を監査しているところでございますが、具体的には、従来から計画的に対象事業者を選定して、さらに、特に事故が多発するなど安全上問題のある事業者に対して、適宜、特別監査等を行うというようなこともやってきております。  特に、本省だけではなくて、運輸局とも連携をとりながら進めているところでございますが、先般の総務庁の勧告を受けまして、現在、監査制度の見直し等、所要の制度改正について検討中でございます。  既に本省に保安監査会議というものを設置しまして、重点的な監査計画の策定や、監査後の事業者に対するフォローアップを組織的にどう実施するかということについて検討している段階でございます。
  160. 寺前巖

    ○寺前委員 私、運輸省と営団の総裁の話を聞いておって、少なくとも保安というのが前提だとか、あるいはわざわざ勧告があったんだということから見るならば、それだけのことを提起していながら、何で今度の事故以前に気づいて慌てて何らかの措置ができなかったのだろうかと強く感ずるものなんです。  むしろ、何が入っているかといえば、九二年の十二月に発表された経営計画では、事業総収入に対する人件費負担率が三四%を上回らないことを目標に要員計画、業務効率化計画を進めよ、九四年には、現在の計画、一キロ当たり職員数を九二年の六十六・四人から二〇〇〇年には五十人の目標を掲げて行われている、こういう内容の人減らしの方向の話しか進んでいないじゃないか。  あるいはまた、九五年二月二十四日の「特殊法人整理合理化について」の閣議決定、「帝都高速度交通営団については、当面、各種業務の機械化、外注化等により要員縮減、業務効率化に努めるとともに、関連事業の推進等による増収に努めることにより経営の一層の効率化及び経営基盤の強化を図る。」こんなことだけが目についた話として進んでいたのと違うのかな。私は、安全第一だ、こう言うし、大前提だと言うけれども、安全のための施策として何をやったかということを胸を張って語れないというところに、引き続きこれからもこんな姿勢では大変だなということを率直に感ずるのです。  大臣就任以来、あの新幹線のトンネルの問題を初めとして次々とおっしゃいました。私は、第一の問題として、安全問題を中心に据えた勧告なり、そういう基準の見直しなり、総点検を今改めてし直すんだということを中心に運輸行政というのをやり直していただく必要があるんじゃないかとつくづく感ずるものですが、いかがなものでしょうか。
  161. 二階俊博

    ○二階国務大臣 けさほど来からの御質問にもお答えしてまいりましたとおりでありますが、私は、安全強化の面につきまして、具体的に今後何をなすべきか、今真剣に思いをめぐらしております。  ただいまのところは、専門家による調査を行っていただいておりますので、その科学的な根拠に基づいた助言、提言をちょうだいして対処したいというふうに考えております。  けさほど、私は鉄道局長に対しまして、すべての鉄道事業者を三回ぐらいに分けて運輸省に招き、今後安全問題に対して対応していく運輸省自身の決意を改めて、文書の通達ではなくて、じかに語りかけようではないかということを申し渡したところでございます。  ただいまのように、今回の事故を何とか未然に防げなかったのか、これはすべての国民がそう願っておると思いますし、特に運輸行政を預かる私たちの立場に立ちますと、そのことを本当に悔やんでも悔やみ切れないほどの思いでございます。しかし、私たちは、今回のことを教訓として、今後こうした事態を招くことのないように、全鉄道事業者に対しこれらのことを周知徹底する、そして、いかなることであろうとも安全をおろそかにするということがあってはならない、すべての事柄に安全は最優先する、この考えを徹底してまいりたいと考えております。
  162. 寺前巖

    ○寺前委員 ところで、今回の事故対策として、具体的には三月十七日付をもって鉄道局長から各地方運輸局長あてに「日比谷線脱線衝突事故を踏まえた緊急措置の実施について」というのが出されています。「半径二百メートル以下の曲線の出口側緩和曲線部に、脱線防止ガード、脱線防止レール又は安全レールを可及的速やかに設置すること。」という通達ですが、その根拠は何でしょうか。
  163. 安富正文

    ○安富政府参考人 先生指摘のとおり、運輸省では、三月十七日に、当面の緊急措置ということで、三月十六日の検討会の議論を踏まえまして、半径二百メートル以下のカーブについて脱線防止ガードを設置するよう鉄道事業者を指導したところでございます。  半径二百メートルの基準と申しますのは、これは事故調査検討会でいろいろ議論していただきましたが、一つには、一般的な鉄道をモデルとした場合に、曲線における脱線について理論的に試算したところ、半径二百メートル以上では脱線の可能性は著しく低下するということが示されていることが一つ、それからもう一つは、過去の統計からも、今回の脱線と類似した曲線における脱線事例というものが半径二百メートル以下の例が大半であったというような事実、そういうことを総合的に検討会で議論していただきまして、当面の緊急措置として提言された内容につきまして先般通達したものでございます。
  164. 寺前巖

    ○寺前委員 緊急対策とはいえ、こうやってちょっと論議をしたら緊急に対策方針が出るものを、検討中やと言って、去年の総務庁の勧告以後でも一年はたっている。本当にそこが中心の課題だと思うのならば、もっと簡単にいろいろな基準のあり方の改善が速やかにできたのではないかと私はつくづく思うのです。多くの人を泣かさなくても済むものをと、腹の底から私は怒りにたえないです。何でこんなことを速やかにやろうとしないのか、重ねて聞きたいと思います。
  165. 安富正文

    ○安富政府参考人 先生おっしゃいますように、具体的な安全基準の見直しについては個別いろいろな場面で、各鉄道事業者の意見等も踏まえながらいろいろな検討の場で実施したいということで、特に、今回の事故調査検討会を設置しましたのも、この事故調査検討会のもとに鉄道事故分析小委員会なるものを設けまして、この小委員会において、今後、事故の分析あるいはインシデントの分析を通じまして、どういう再発防止対策が必要かということを、昨年の六月以来設置しまして、第一回目を九月に実施するというような形で進めていたところでございます。  そういう意味で、即座にいろいろな基準の見直し等も含めた対応が十分できなかったということについては反省しておりますが、今後我々としても、恒常的に設けているこの事故分析小委員会において、事故分析あるいはインシデントの分析を通じて、どういう安全基準が今後必要になってくるかということについては、真摯に検討していきたいと考えております。
  166. 寺前巖

    ○寺前委員 事故があったら当座の対策をやる、そんなことでは世間は通用しないと思います。  運輸省は、公共輸送機関の安全の確保を第一に責任を持つ役所であります。それなのに今まで抜本的対策をこなしてこなかった、日常的に事故には結びつかないことであっても、情報収集、それを分析して国民に公開することが最低限必要であるということをこの際にはっきりしなければいけないと思うのです。  現に、この営団の問題でも、例えば九二年に川崎市の鷺沼車庫で脱線事故が一度ならず起こっているということが関係者から言われているんですから、本当にその気になったらもっと早くいろいろな対策を打つことができると思うのです。  今、車両の軽量化、メンテナンスフリー化等によって、保守等の合理化が実施されていると聞いています。車両の軽量化は近年ますます一般化してきています。九九年の営団地下鉄ハンドブックによると、営団地下鉄保有車両は二千四百十九両、アルミ車両以外が二百十六両で、アルミ車両は全車両の九一%を占めています。  車両の軽量化とは、車両の材質を鋼鉄製のものからアルミ製のものに持っていく材質の軽量化を初め、本来の機能を持った部位等も取り外し、軽量化を図っているというのがその特徴です。軽量化車両は、ボルスタレス台車を使用。ボルスタレス台車は、車体重量が空気ばねを介して台車に直接加わるので、左右の空気ばねの圧力差によって、車輪に加わる重量がアンバランスになりやすい。また、従来の台車は、台車が心皿を中心に回転するので、曲線走行がスムーズである一方、ボルスタレス台車は、牽引装置と空気ばねがねじれるので、曲線走行時、反発力が生じることになり、空気ばね部分の傷み、損傷等が激しいと言われています。  その空気ばねの取りかえ状況等についてどのような状況になっているのか、またその取りかえ期間はメーカーの仕様ではどの程度になっているのか、総裁にお答えをいただきたいと思います。
  167. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 御指摘の空気ばねの取りかえ時期、取りかえの状況でございますが、空気ばねは営団では九年周期で取りかえております。メーカーも、推奨値として九年で取りかえるということを推奨しております。ただ、初期の段階では、製品の耐久性が十分でないものがございましたので、これは私どもの手でチェックをいたしまして四年で取りかえたケースもございます。その後は品質が安定してまいりましたので、九年周期で見ております。  なお、実績といたしましては、日比谷線の〇三系車両で、昭和六十三年から平成六年にかけまして、四十二編成、全部で三百三十六両導入されました全車両に空気ばねが使用されておりまして、このうち取りかえは、三十二編成、二百五十六両で実施済みでございます。これは今月の二十一日現在の数字でございます。
  168. 寺前巖

    ○寺前委員 現場の人に車両の状況について聞いてみました。  メーカー仕様では、現場では十二年周期で交換するようにということが広く言われてきている。それから、私の調査によると、営団地下鉄日比谷線に初めて軽量化車両が導入されたのは八八年で、台車のメーカー仕様によれば、ことし、二〇〇〇年になって初めて空気ばねの交換が必要になる予定です。  しかし、ボルスタレス台車を使用する全車両三百三十六両のうち、十二年を待たずに全車両の三分の二が空気ばねの取りかえを余儀なくされ、短いのでは四年、平均で九年で交換しなければならなくなっている。現場では、交換が間に合わないので、車両についている空気ばねを百八十度向きを変えて改めて取りつけているような状況にあると言われている。このような実態を運輸省は知っているのですか。
  169. 安富正文

    ○安富政府参考人 具体的な車両の取りかえ周期等については、基本的に鉄道事業者がその安全性等を考慮して実施しているところでございまして、具体的な今先生がおっしゃいましたようなことについては、我々としては承知しているものではございません。
  170. 寺前巖

    ○寺前委員 先ほど説明したようなことでは、メーカー仕様どおりに空気ばねを交換していれば、空気ばねの調整ができなくなったり空気がなくなったりして電車の脱線など重大な事故に結びつくことになりかねないものであります。  都営地下鉄大江戸線の場合、設計はリニアモーター方式の台車であるが、メーカーは地下鉄事故の車両と同じ住友金属で、百六十八両のうち四十四両で亀裂が見つかっております。このような台車に亀裂が見つかり、運行していながら、東京都交通局は運輸省には報告していないということを明らかにしています。安全に直結する情報が公開されていないことが議会でも問題になっています。これらの事実が発覚すると、これを、別に隠していたということではないのか知りませんが、東京都交通局に対する利用者等から厳しい批判と、軽量化車両の台車の設計は大丈夫かという利用者、関係者の不安が大きくなってきております。  営団使用の車両の台車にも亀裂が入っていると聞いているが、その状況について御報告をお願いしたいと思います、総裁。
  171. 寺嶋潔

    ○寺嶋参考人 営団の車両の台車にも御指摘のように亀裂が発生した事案がございます。  一つは、ユニットブレーキの取りつけ座、取りつける部分でございますが、その部分の亀裂が平成十年二月に行われました定期検査、これは重要部検査と言われているものでございますが、その定期検査で発見されまして、一斉に点検いたしました結果、日比谷線の二編成で二十五カ所見つかりました。これは、直ちにすべて溶接修理済みでございます。これより後の二編成以後の第三編成から第四十二編成までは、すべて台車枠が鋳物一体成形に改良されましたので溶接部がなくなりまして、亀裂も発生をしておりません。  それから、もう一つの部分はモーターの取りつけ座、取りつけられる部分の亀裂でございまして、これは平成八年の五月に行われた日比谷線の定期検査、これは全般検査という、いわゆるオーバーホールの検査でございますが、ここで発見されまして、それをきっかけとして一斉点検いたしました結果、日比谷線、東西線、千代田線、有楽町線四線で使われておりますVVVF車という比較的新しい制御方式のついております台車の三十編成の中で二十一編成、六十台車で亀裂が発見されました。これらにつきましては、平成八年九月までにすべて溶接修理をいたしまして、さらにその後工場に入りましたときに台枠そのものを取りかえまして、平成十三年六月にはすべての台枠の取りかえが完了することになっております。
  172. 寺前巖

    ○寺前委員 現場の人に聞いてみますと、今の報告とは大分実感が違うようです。私の調査によると、〇一と〇二編成の台車のブレーキ部分亀裂に対して住友金属が自己負担で溶接を、また二十六編成から四十二編成までの三V車両のモーターつき台車のモーター取りつけ部の亀裂がついている台車枠の交換を今一生懸命始めていると言っています。これでは、軽量化車両は当初の設計どおりの耐久性を保持していないということになってくると思うのです。聞いてみると、運輸省には正式な報告をしなければならないということになっていないようです。ですから、結局のところ、知らないままに事は進んでいくということになっていると思うのです。
  173. 仲村正治

    仲村委員長 寺前君、お約束の時間でありますので、簡単に終わってください。
  174. 寺前巖

    ○寺前委員 はい、もう終わります。  調べてみると、三年前に総点検を要求して抜本的な改善をする必要があるのじゃないかということが、私、赤旗新聞を読んでいたらずっと載っているんです。  ですから、相当前から職場の中で問題になっているのに、何で点検されて総合的対策を組もうとしないのか、事業者任せであっていいんだろうか。片っ方で、人減らしとかあるいは合理化とかそういう話ばかりが通達で出ていくということになってくると、私は、安全性に損害を及ぼすことになるんじゃないか。  ですから、そういう意味で最後に結論的に言わせていただくならば、インシデント報告制度を早急に確立して、そして全面的に今の軽量化させつつあるところの鉄道事業に対して、運輸省として責任ある指導体制を確立するべきじゃないだろうかということを痛切に感じますので、大臣にその点をお伺いして終わりたいと思います。
  175. 二階俊博

    ○二階国務大臣 鉄道事業を預かる者といたしまして、このたびの営団の事故、そしてこればかりではなくて、いつ何が起こるかわからない鉄道の事故問題につきまして、私どもは、今までとってきたことをそれで十分だとは決して思っておりません。  新たに、この段階におきまして私たちは鉄道事業者全体からの意見も十分聴取し、そして今回の事故につきまして、衆参両院におきましてさまざまな御議論、御指摘をちょうだいしました。真摯にこれを受けとめて、再びこのような事態をもたらすことのないように、心を新たにして取り組んでまいる決意を申し上げて答弁とさせていただきます。
  176. 寺前巖

    ○寺前委員 ありがとうございました。
  177. 二階俊博

    ○二階国務大臣 お許しをいただきまして、先ほど永井英慈委員の御質問に際しまして、一言運輸省として御答弁を申し上げたいと思います。  先ほど永井議員から、「私の電車主義宣言」という立派な著書、また力作につきましていろいろと御意見がございました。私も、その点につきましてはきょう初めてお伺いする部分もありましたので、運輸省に持ち帰りまして、できるだけ永井委員の御指摘の点を十分頭に入れて対応していきたいと思っております。  永井委員が著書の中で述べられておることの中で、私は、かねてより三点にわたって大変心を動かされておる点がございます。  一つは、電車に乗らなければ庶民の気持ちはわからない。同時に、満員電車の中に庶民のルールとモラルがある。  私は、若いころ、学生の時代に、政治学を教えてくださる教授が、満員電車で通勤した経験のない者は政治を語る資格はないとまで言われました。その先生は、残念ながら、満員電車の中であったということだけが原因ではないと思いますが、通勤の途中満員電車の中で心臓麻痺で後刻亡くなられました。そのこととおっしゃっておられることとは直接の関係はないかもしれませんが、若いころから私は大変そのことを印象深く思っておりました。  それらの問題につきまして、これからも私たちは政治全体の問題として考えていかなくてはならない。永井委員の民主党代表であります鳩山代表と私は、鳩山さんが細川内閣の官房副長官をなさっておりましたときに、快適通勤の推進の政務次官会議を設置しようではないかということを私が呼びかけ、座長に鳩山さんになっていただきまして、オフピーク作戦というものを展開しようということで始めました。  しかし、このことの結果を出すに至るまでに内閣はあのような形で分散をしてしまいましたから十分なことができておりませんが、今、私の立場で改めて快適通勤の問題を取り上げておるところでございます。これらにつきまして、御一緒にこれから取り組んでいきたい、政党政派を超えて、与党も野党もなくこの問題は対応していかなくてはならない課題だと思っております。  そしてまた、交通の結節点としての駅の整備、駅の駐車場、駐輪場などの整備が必要だということを言われておりますが、ちょうど先ほど提案理由の説明をさせていただきましたバリアフリーの問題とこれは極めて密接なかかわり合いを持っておる御指摘でございまして、ちょうど昨日、前々からの約束になっておりました赤羽の駅に八代郵政大臣のお供をいたしまして、交通バリアフリーの現場の視察をしてまいりました。  これらの点につきましても、この「私の電車主義宣言」で説かれております御趣旨をこれからも政治の場で実現に努めてまいりたいと思っております。  また、渋滞で失われている時間が五十六億時間、損失金額にしますと十二兆円、さすが、経営者として御手腕を発揮されております永井委員の御指摘でございますが、私も実は、先ほど申し上げましたオフピーク作戦、快適通勤、この中で、サラリーマンの方々やあるいは学生の諸君が朝の通勤通学で失われていくエネルギーというものは極めて大きい。私は今、運輸省で素案をまとめて、運輸省が言っただけでは大方の信頼をかち得るということにならなければ、経済企画庁と一緒になってこの問題を研究してみる必要がある。既に、私は堺屋経済企画庁長官に、運輸省事務当局から御相談に上がるから、長官からもその旨一緒になってこの結果を出していただくように御協力を願いたいということを申し上げておる次第でございます。  したがいまして、この原稿をお書きになる段階におきまして不都合やあるいはまた失礼の段いろいろあったようでございますが、それらにつきましては、私の方としましても、機会あるごとに永井委員のお気持ちが届くように努力をしていきたいと思っております。せっかくの力作でございます。この「電車主義宣言」を今後の運輸行政の上に私は拳々服膺して努めてまいりたい、このように思っております。  以上をもってお答えにさせていただきます。
  178. 仲村正治

    仲村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十八分散会