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1999-12-01 第146回国会 参議院 本会議 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十二月一日(水曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十号   平成十一年十二月一日    午前十時開議  第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、北海道開発審議会委員選挙  一、国家公務員等任命に関する件  一、原子力災害対策特別措置法案及び核原料物   質、核燃料物質及び原子炉規制に関する法   律の一部を改正する法律案趣旨説明)  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  この際、来る四日に任期満了となる北海道開発審議会委員一名の選挙を行います。  つきましては、北海道開発審議会委員選挙は、その手続を省略し、議長において指名することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、北海道開発審議会委員橋本聖子君を指名いたします。(拍手)      ─────・─────
  4. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) この際、国家公務員等任命に関する件についてお諮りいたします。  内閣から、  国家公務員倫理審査会会長花尻尚君を、同委員芦田甚之助君、島田あき子君及び浜田広君を、  検査官森下伸昭君を、  国家公安委員会委員渡邊幸治君を、  日本銀行政策委員会審議委員田谷禎三君を、  中央社会保険医療協議会委員工藤敦夫君を、  また、電波監理審議会委員辻井重男君を 任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。  これより採決をいたします。  まず、国家公務員倫理審査会会長、同委員検査官及び電波監理審議会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり同意することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  5. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  6. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数          二百三十     賛成            二百三十     反対               〇    よって、全会一致をもって同意することに決しました。     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕     ─────────────
  7. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 次に、国家公安委員会委員及び中央社会保険医療協議会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり同意することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  8. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  9. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十一     賛成             二百八     反対             二十三    よって、同意することに決しました。     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕     ─────────────
  10. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 次に、日本銀行政策委員会審議委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり同意することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。    〔投票開始
  11. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。    〔投票終了
  12. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百三十一     賛成            百四十四     反対             八十七    よって、同意することに決しました。     ─────────────    〔投票者氏名本号末尾掲載〕      ─────・─────
  13. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) この際、日程に追加して、  原子力災害対策特別措置法案及び核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案について、提出者趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 斎藤十朗

  15. 中曽根弘文

    国務大臣中曽根弘文君) 原子力災害対策特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  本年九月三十日に発生した株式会社ジェー・シー・オーウラン加工施設における臨界事故は、安全確保大前提原子力開発利用を進めてきた我が国にとって、初めて住民避難屋内退避要請された極めて重大な事故でありました。  事故対応教訓として、我が国における原子力災害に対する対策について、迅速な初期動作、国と地方公共団体との有機的な連携原子力災害特殊性に応じた国の緊急時対応体制強化原因者である原子力事業者の責務の明確化等必要性が明らかとなりました。  本法案は、このような現状にかんがみ、原子力災害に対する対策の抜本的な強化を図ることとし、原子力災害の予防に関する原子力事業者義務原子力緊急事態宣言の発出及び原子力災害対策本部設置その他原子力災害に関する事項について特別の措置を講ずるものであります。  次に、本法案要旨を御説明いたします。  第一に、本法案は、原子力災害特殊性にかんがみ、関係法律と相まって、原子力災害に対する対策強化を図り、もって原子力災害から国民生命、身体及び財産を保護することを目的としております。  第二に、原子力事業者に対し、原子力事業者防災業務計画の作成、原子力防災組織設置原子力防災管理者の選任、放射線測定設備設置原子力防災資機材の備えつけ等を義務づけることとしております。  第三に、主務大臣は、原子力事業所ごと緊急事態応急対策拠点施設を指定するとともに、国、地方公共団体原子力事業者等が共同して行う防災訓練実施のための計画を作成することとしております。  第四に、原子力防災管理者に対し、一定の事象の発生についての通報を義務づけるとともに、主務大臣は、原子力緊急事態発生したと認めるときは、内閣総理大臣に必要な情報報告等を行うこととしております。  第五に、内閣総理大臣は、原子力緊急事態発生についての報告等があった場合には、原子力緊急事態宣言を行うとともに、原子力災害対策本部及び原子力災害現地対策本部設置することとしております。  第六に、原子力災害対策本部長は、関係指定行政機関の長、地方公共団体の長、原子力事業者等に対する必要な指示防衛庁長官に対する自衛隊部隊等派遣要請原子力安全委員会に対する技術的事項についての助言要求等をすることができることとしております。  第七に、原子力災害現地対策本部及び地方公共団体災害対策本部は、原子力緊急事態に関する情報を交換するとともに、緊急事態応急対策について相互に協力するため、緊急事態応急対策拠点施設において原子力災害合同対策協議会を組織することとしております。  第八に、指定行政機関の長、地方公共団体の長、原子力事業者等は、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策実施しなければならないものとするとともに、原子力事業者は、指定行政機関の長、地方公共団体の長等の実施する緊急事態応急対策が的確かつ円滑に行われるよう、原子力防災要員派遣等必要な措置を講じなければならないこととしております。  第九に、科学技術庁及び通商産業省原子力防災専門官を置くこととするとともに、この法律施行に必要な限度において、原子力事業者に対し報告の徴収または立入検査ができることとしております。  以上が原子力災害対策特別措置法案趣旨でございますが、衆議院におきまして、原子力防災専門官業務として、地方公共団体が行う情報の収集及び応急措置に関する助言を明示することを内容とする修正が行われております。  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  本年九月三十日に発生した株式会社ジェー・シー・オーウラン加工施設における我が国初臨界事故は、安全確保大前提原子力開発利用を進めてきた我が国にとって、これまでの原子力安全についての規制に対する信頼を損なう極めて重大な事故でありました。  従来、加工施設については国による定期的な検査受検義務づけられておりませんでしたが、これまでの事故原因の究明により、ジェー・シー・オー社加工施設においては法令に違反した危険な作業が行われていたこと、今回の事故は高濃度の核燃料を製造する際に同様の危険な作業を行ったことにより生じたこと等の事実が明らかにされております。  本法律案は、このような重大な事故から得られた教訓を踏まえ、原子力安全についての規制体系全体を見直し、加工事業についての保安対策強化、製錬、加工等事業等についての保安教育及び保安規定遵守状況に関する検査等に関する規定整備するものであります。  次に、本法律案要旨を御説明いたします。  第一に、加工施設についての定期検査等に関する制度新設であります。  加工事業保安対策強化につきましては、これまで国による施設性能に関する検査受検義務づけられていなかった加工施設において事故が生じたこと、近年、加工事業の形態が変化していること等にかんがみ、施設使用前にその性能について検査することとするとともに、使用開始後も国による毎年一回の施設定期検査受検義務づけることとしております。また、加工施設の解体についても国への届け出等義務づけることとしております。  第二に、保安教育保安規定遵守状況に関する検査等に関する規定整備であります。  事業者等及び従業者遵守すべき保安規定において、核燃料物質取り扱い等に関する保安教育についての規定が含まれることとし、事業者等従業者に対して保安教育を行う義務を有することを明らかにしております。  さらに、事業者等に対して主務大臣が定期的に行う保安規定遵守状況に関する検査受検することを義務づけるとともに、これを実効性あるものとするため、科学技術庁及び通商産業省当該検査に関する事務に従事する原子力保安検査官を置くものとしております。  第三に、主務大臣に対する申告に関する制度新設であります。  事業者等がこの法律に違反する事実がある場合には、その従業者は、かかる事実を主務大臣申告することができることとし、事業者等は、当該申告がなされたことを理由として、当該従業者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないものとしております。  以上が核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案趣旨でございます。  両法案とも原子力の安全及び防災体制抜本的強化に必要なものでありますので、何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)     ─────────────
  16. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。佐藤雄平君。    〔佐藤雄平登壇拍手
  17. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 初めに、今回の臨界事故で直接被害を受けられました東海村の皆さん初め、風評などで甚大な被害を受けております茨城県の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。  私は、ただいま議題となりました原子力災害特別措置法案原子炉等規制法改正案に対して、民主党・新緑風会を代表して質問をいたします。  まず、法案についての質問の前に、原子力安全委員会権限強化についてお伺いいたします。  もとより、政治行政基本国民生命財産を守り、いかに安全で安心な暮らしの環境をつくることではないかと思います。  しかしながら、今日の社会状況を見てみますと、連日のようにその国民生活の不安を助長するような事柄が起こっております。改めて我々政治をお預かりしている者としてその重要な役割を自覚し、与党とか野党とかではなく、ひとしくその任を全うしなければならないと思います。  その最たるものがこのたびのジェー・シー・オーにおける臨界事故であります。見えない、聞こえないというこの事故は、茨城県民皆さんはもとより全国民を震撼させました。原子力安全神話を根底から覆すことになり、直接的ではないにしても原子力発電に大きな不安を与えたことは事実であります。  国民生活のために、電気エネルギーは不可欠なものであります。その大きな役割を担っているのが原子力発電であります。今日まで、立地のためにさまざまな分野ではかり知れない努力をしてまいりましたことは、先刻皆さん御承知のとおりであります。関係機関、国はもちろんですが、とりわけそれぞれの自治体を預かる首長の努力と苦労は、我々の想像をはるかに超えるものがあります。  我々も、その安全性については自信を持って推進してまいりました。私自身、原子力発電所を持つ福島県出身であります。国のため、国民のため、原子力発電必要性を訴えてまいりました一人であります。  このような事態の中で、国民皆さんに安心していただける原子力政策施行していくに当たっての重要なことは、当然のことながら安全管理危機管理であります。しかし、その大前提として原子力安全委員会機能するということであります。この事故でも明らかになりましたが、まずその施設安全基準遵守しているかどうか、これが最大の問題であります。そのためには、原子力安全委員会権限強化が必要であります。  政府は、代表質問においても、これまでも行政府は独自の立場から安全審査等に厳正に臨んできた、省庁再編後も内閣府で現在の機能を引き継ぐとともに、独立事務局を置き、原子力安全確保により主導的な役割を果たせるよう強力な体制整備すると、現行法のままで改正の必要などみじんもないような御答弁が総理からありました。しかし、その後、報道によりますと、自民党行革推進本部原子力安全委員会三条機関に格上げして、原子力安全検査体制強化する法律案次期通常国会に提出するとのことでありましたが、どのような経過があり、その方針を変えられたのか、自民党総裁としてのお考えお尋ねしたいと思います。並びに、続総務庁長官そして二階運輸大臣にそれぞれ公明党自由党原子力安全委員会強化に関してもお伺いしたいと思います。  また、科学技術庁通商産業省の双方に原子力に関する推進部門安全規制部門が同居しており、このことは原子力行政に対して不信感不安感を芽生えさせている原因になっているのではないでしょうか。  原子力安全規制については、その重要性にかんがみ、スリム化を当てはめてはならないと思います。今回の事故は、そのための天の声ではないかと思います。アメリカのNRCは約三千人のスタッフを擁しております。現在の原子力安全委員会事務局十九人、その業務を手伝っている科学技術庁原子力安全局全体でも百四十人、単に数を比較しているわけではありませんけれども、余りにも寂しい状況であることは事実であります。新しく原子力安全規制機関に生まれ変わるとするのであれば、どのような権限規模、人員が必要であるのか、総理にお答えいただきたいと思います。並びに公明党皆さん自由党皆さんにもまたお伺いしたいと思います。  次に、新法案内容についてお伺いいたします。  今回の臨界事故の貴重な教訓は、当然のことながら初期対応の迅速さに問題があります。そこで、法案は、異常な水準の放射線量が検出されるなど緊急事態発生時に、担当大臣総理に概要を報告し、総理原子力緊急事態宣言を発し、防衛庁長官自衛隊派遣要請自治体に対して住民避難等指示をすることになっております。体制の一元化は評価できますが、まだ初動体制には不安が残ります。  今回の事故では、当初の二十五分間に最も放射線が飛散しました。このことをかんがみ、事故発生後直ちに都道府県知事本部長とする事故対策本部をつくり、都道府県知事が一元化された権限により指揮をとることが、より迅速な対応ができるようになると考えます。総理はいかがでしょうか。また、その事故対策本部設置される前に、市町村長住民避難などの指示をできるようにすれば、東海村の村上村長さんのように悩みながら策を講じなくともその対応ができるのではないでしょうか。  緊急宣言後、自治体住民避難等指示をすることになっておる政府案よりも、このような考えの方が早く対応できるのではないでしょうか。これは何も都道府県知事に全責任を負わせてしまうということではありません。国を初め関係機関が瞬時に全面的に協力できる体制をつくることが可能であるということであります。緊急事態に備え、日常的に、国も含めて対応策整備し、訓練も行い、都道府県知事がその権限において判断できることが最も大事だと思います。総理、いかがでございましょうか。  また、政府案では、平常時に緊急事態応急対策拠点、いわゆるオフサイトセンターと呼ぶ施設を指定し、緊急事態が起きた場合に現地事故対策本部とするお考えのようですが、原子力関連施設が多く立地している自治体には原子力防災センター(仮称)というものを設置し、各事業所から自動的に情報が集められ、原子力防災専門官がデータを監視するとともに、自動的に関係機関情報が通報される施設平常時から備えておくことが必要と思われます。総理はいかがでございましょうか。  原子力防災センターには、放射線防護のための資機材緊急用の飲食料品などの備蓄をしておくこと、周辺住民原子力についての理解を得るため、原子力教育研究などにいつでも開放され使えるような施設としたらいかがでございましょうか。  そして、政府案では、事故発生後、現地原子力災害現地対策本部原子力災害合同対策協議会設置し、国、自治体、その他関係者が集まり情報の共有や意思の疎通を図ることなどになっております。このことについては現在よりも改善されたことは評価いたします。私は、平常時から、都道府県知事が国、自治体原子力事業者、その他関係者に呼びかけ、その協議機関を定期的に開き、原子力防災センターにおいて緊急時における対応を協議し、原子力防災訓練等を共同で実施することで当事者間の連携がより強固で円滑になると思いますが、通商産業大臣科学技術庁長官にお伺いいたします。  初期対応について先ほどお伺いいたしましたが、今回の事故で地元の皆さんからの強い要望は、とにかく一刻も早い対応をすることでした。ですから、都道府県知事市町村長初期対応については、指揮権限をゆだねることが最も重要であると思います。現地に常駐している原子力防災専門官原子力防災センターにおいてリアルタイムで現況を注視しておりますから、自動的に関係機関に連絡できるようになっております。すなわち、直ちにその状況都道府県市町村にも同時に知らされているわけであります。そこで、緊急事態発生した際、都道府県知事市町村長原子力防災専門官助言を得て瞬時に対応がとれるのであります。今回の事故における教訓から、総理はこのようなことをどのように思われるか、お伺いしたいと思います。  また、今回の事故で、臨界事故とも知らされず出動し被曝した消防署員皆さん現地近くまで行っていながら中性子線防護が十分でなく活動できなかった自衛隊皆さん、また、知らずに被曝してしまった近隣住民皆さんのために、中性子線、ガンマ線その他放射性物質に対する防護策整備などについて科学技術庁長官はどのような対策をお考えでしょうか、お伺いいたします。  これらの対策は、いつ起こるやもしれない同様な事故を想定し、一刻の猶予も許されません。直ちに万全の対策を講じなければなりません。  そして、事故状況地域住民、広く国民皆さんに正しく知らせることが重要であります。地域においては素早い広報活動実施、正確な事故情報の伝達、全国的にはマスメディア等の活用による正確な情報を提供できる体制整備が必要であります。  政府として、原子力施設が多数存在している地域、例えば茨城県、福島県、新潟県、福井県など、平常時も含めて政府状況を正しく地域住民に伝えるためにはどのような施策が必要であるか、総理お尋ねして、質問を終了いたします。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  18. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 佐藤雄平議員にお答え申し上げます。  まず、原子力安全委員会強化についてでありますが、我が国におきましては、原子力安全委員会三条機関化するよりも、行政庁法令に基づく安全審査を行い、さらに原子力安全委員会が独自の立場からダブルチェックを行うという現在の方法が安全規制実効性を高める上で有効なものと認識いたしております。  なお、原子力安全委員会は、省庁再編に伴い、各省庁より一段高い位置にあります内閣府に設置されるとともに、独立事務局が置かれ、その活動はより充実強化されることとなります。今回の事故を踏まえ、原子力安全委員会独立性機能強化をさらに進めることといたしております。  我が国では、原子力規制推進機能を効果的に分離しつつ、科学技術庁または通商産業省法令に基づく安全審査等を行い、さらに行政庁とは独自の客観的かつ中立的立場から、原子力安全委員会安全審査を厳重にダブルチェックする仕組みになっております。  この体制は、いわば原子力安全規制における多重防護考え方の適用であり、我が国における原子力安全確保のためにふさわしい規制体制であると考えております。  なお、原子力安全委員会は、省庁再編に伴い、各省庁より一段高い位置にある内閣府に設置されるとともに、独立事務局が置かれ、その活動はより充実強化されることとなります。今回の事故を踏まえ、原子力安全委員会独立性機能強化をさらに進めることといたしております。  我が国原子力安全規制機関規模等に関するお尋ねでありました。  米国原子力規制委員会NRCは約三千人の職員を擁しておりますが、米国NRC体制は、関係する安全研究要員も含むなど基本的には我が国と異なる制度下のものであり、その業務組織構成は日本の行政組織と異なるため、一概には比較できないものと考えられます。  我が国においては、一次行政庁、すなわち科学技術庁及び通商産業省に約三百人の安全規制を担当する職員がおりますとともに、独自の立場からダブルチェックを行う原子力安全委員会には二百人を超える専門家を擁する体制となっており、今後一層これを充実していくことが肝要と考えます。  特に、今回の事故にかんがみ、原子炉等規制法改正し、一次行政庁検査等機能強化を図るとともに、原子力安全委員会につきましても、建設や運転の段階において随時現地調査を行うなどの機能強化を図ることといたしております。  都道府県知事が一元化された権限により指揮をとるべきではないかとのお尋ねでありましたが、原子力災害特殊性にかんがみれば、国が果たすべき役割責任自然災害と比しても大きいものと認識いたしております。  このため、原子力災害対策特別措置法案では、国の迅速な緊急時対応体制強化を図り、地方自治体とも連携をとりつつ、一体的かつ迅速に対策を講じることといたしておるところであります。  市町村長が行う住民避難等指示に関するお尋ねでありましたが、本法案施行後におきましても、市町村長はこれまでと同様、災害対策基本法に基づき、現地状況を直接把握できる立場から、緊急事態宣言が発出される前に迅速に住民等に対して避難など必要な指示を行うことが可能であります。  平時からの国も含めた対応策整備都道府県知事の判断の重要性について御指摘がありました。  原子力災害対策特別措置法案におきましては、平時より地方自治体に対し、原子力安全委員会による協力、原子力防災専門官による指導、助言等を行うとともに、国が作成する計画に基づき関係機関が共同して防災訓練実施することといたしておりまして、地方自治体等も含めた関係機関対応能力を高めると同時に、それらの連携強化を図り、円滑な防災対策が講じられるようにいたしております。  次に、緊急事態応急対策拠点施設、いわゆるオフサイトセンターの平常時における機能についてお尋ねでした。  オフサイトセンターは、平常時より緊急事態応急対策実施するために必要となる原子力事業所の設計図、通信機器、資機材会議スペース等を確保することといたしており、原子力防災専門官の主要な活動の場の一つとなるものと考えております。  いわゆるオフサイトセンターの平時の使い方についてでありますが、飲食料品の備蓄や原子力研修等での利用のような使い方も含め、それぞれのセンターごとに地方自治体関係者が地元の実情に応じた最良の方法で運用されることとなると考えております。  初期対応における都道府県知事市町村長指揮権限等に関するお尋ねでありました。  原子力事業者による事故の通報を受けた自治体は、これまでと同様、国による対応を待つまでもなく、災害対策基本法等に基づき、みずからの判断により所要の措置を講ずることが可能となっております。  この場合におきまして、国の原子力防災専門官自治体への専門的アドバイス等を行うとともに、自治体要請に応じて専門的知識を有する職員派遣することといたしており、自治体においても迅速かつ的確な初期対応が図れるよう対処することといたしております。  最後に、住民への情報提供についての御質問でありました。  緊急時はもちろんのこと、平常時におきましても、原子力施設に関するわかりやすい情報を迅速かつ正確に提供していくことが重要と考えております。このため、平常時における一層効果的な情報提供に努力するとともに、緊急時におきまして、多くの方々に迅速な情報の伝達が可能なテレビ、ラジオ等のニュースメディアに対する協力を求めるなど、地域住民の方々に状況を的確に理解していただけるよう、より一層のきめ細かな情報の提供に努めてまいりたいと存じます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中曽根弘文登壇拍手
  19. 中曽根弘文

    国務大臣中曽根弘文君) 佐藤雄平議員にお答えをいたします。  平常時から当事者間の連携を円滑なものにすべきであるとの御指摘でございますけれども、本法案におきましては、国、自治体事業者による共同の防災訓練実施自治体の防災計画策定における原子力安全委員会による協力などの規定を設けているところでありまして、関係者間の連携を強固で円滑なものとする措置は講じられているものと考えております。  次に、中性子線等に対する防護策整備などに関する御質問ですが、今回の事故におきまして、中性子線測定装置が設置されていなかったため、事故発生後しばらくの間、臨界が継続している事態が把握できず、初動において的確な対応が行われなかったことは反省すべき点と考えております。  今回の事故の経験を踏まえ、これから御審議いただく関連二法案におきまして、原子力事業者に対し施設内の放射線測定機器の設置義務づけるなどの措置を講じております。  さらに、今回の補正予算で、原子力施設周辺における中性子線及びガンマ線用のモニタリングポストの設置など、原子力防災用モニタリング情報収集体制強化、消防職員自衛隊員等の防護服、放射線測定資機材を初めとする原子力防災用資機材等の整備等を行うために必要な経費を当庁及び関係省庁が計上しているところでございます。  今後、万一の事故発生する場合に備えまして、適切な放射線防護対策が講じられるよう、原子力防災対策の充実に努めてまいります。(拍手)    〔国務大臣続訓弘君登壇拍手
  20. 続訓弘

    国務大臣(続訓弘君) 佐藤雄平議員にお答え申し上げます。  私に対する御質問は二点ございました。  まず第一点目は、原子力安全委員会機能強化についてでございますけれども、我が国におきましては、行政庁法令に基づく安全審査を行い、さらに原子力安全委員会が独自の立場からダブルチェックを行うという現在の方法が安全規制実効性を高める上で有効なものと認識しております。  原子力安全委員会事務局を組織的に分離することは大切と考えております。そのため、二〇〇一年の省庁再編後は、行政庁独立した事務局内閣府に置くこととしております。また、それまでの間の原子力安全委員会独立性及び機能をさらに強化する努力は必要と考えております。  第二点目の御質問は、我が国原子力安全規制機関規模等に関するお尋ねでございました。  原子力安全委員会とアメリカのNRCとの比較でございますけれども、NRC安全規制のための研究機能も有しておりますが、我が国におきましては、日本原子力研究所等が安全研究に取り組んでいるなど、人員の規模のみで安全規制実効性を単純に比較することはできません。先ほども申し上げましたように、我が国におきましてはダブルチェックという方法をとっており、これによって我が国に適した安全規制体制がとられていると認識しております。今後とも、人員の拡充を図るなど、機能強化に努めるべきだと存じます。(拍手)    〔国務大臣二階俊博君登壇拍手
  21. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 佐藤雄平議員にお答えをいたします。  今日まで原子力の問題につきまして大変熱心に取り組んでこられた議員の御指摘でありますが、原子力発電我が国エネルギー源の約四割を占め、また環境保全の視点からも極めて重要なエネルギー資源であると考えております。  自由党は、党の基本政策として、安全、公開の原則に基づく原子力の平和利用を積極的に推進し、電力の安定供給を主張しているところであります。関係者の今日までの御努力によりまして、原子力発電に対する国民の理解がようやく得られようとなりつつある今日、このたびのジェー・シー・オーにおける臨界事故はまことに遺憾であり、ジェー・シー・オー等の関係者責任は極めて重大であると考えております。  今回の事故教訓として、再びこのような事故を起こすことのないよう、原子力発電の安全の確保と危機管理に万全を期し、国民の理解のもとに原子力の平和利用を進めていかなければならないと自由党考えております。  なお、原子力の開発推進部門と安全監視部門が同居している今日の原子力行政のあり方には基本的には問題があり、これを分離し、原子力安全委員会原子力安全確保に自律的、主体的な役割を果たすことができる体制を確立すべきであると考えております。  原子力安全委員会が新しく原子力安全規制機関に生まれ変わるとするなら、どのような権限規模、人員が必要かとのお尋ねでございますが、自由党は、独立事務局を持つなど、委員会が原子力安全管理に十分責任を果たし得るよう強固な体制を整えるとともに、必要な権限機能強化は当然のことと考えております。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣深谷隆司君登壇拍手
  22. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 佐藤議員の御質問は、関係機関連携強化の問題でございます。  防災対策を円滑に、そして有効に行うためには、国、地方自治体、そして事業者等関係機関連携を確保していくということが大事でありまして、本法案ではそれを確保するということを明確に述べております。  また、オフサイトセンターにつきましては、総理からも詳しくお話がございましたが、あらかじめ主務大臣がオフサイトセンターを指定いたしまして、ただいま申し上げた国、地方自治体、そして事業者が一堂に会して緊急事態対応策を相互に協力して行うということになっております。  また、共同訓練につきましては、主務大臣が作成した計画に基づいて、ただいまの三者を中心とした機関が共同して訓練を行うということでありまして、いずれにいたしましても、一体となった防災対策がとられるように我が省としても全力を挙げていきたいと思っております。(拍手)     ─────────────
  23. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 加藤修一君。    〔加藤修一君登壇拍手
  24. 加藤修一

    ○加藤修一君 私は、自由民主党、自由党及び公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました二法案に対して質問いたします。  我が国は、世界で唯一の被爆国として、原子力の利用については特有の国民感情があります。その中にあって、原子力の民生利用として原子力の火が初めてともったのは今から四十二年も前の出来事であります。先人が長年積み上げた原子力への努力が民生利用へと展開しましたが、今回のジェー・シー・オー事故はその努力を根底から覆すものであります。  それでは最初に、原子力災害対策特別措置法案についてお伺いいたします。  この法案は、第一に、ジェー・シー・オー事故における対応教訓としていること、第二に、原子力施設立地市町村が長年要望していた内容を踏まえていること、第三に、従来の考えを打ち破り、第十三条に原子力緊急事態の想定を積極的に取り入れたこと、そして機敏な法案作成であったことなどを高く評価したいと思います。  ところで、緊急事態の想定でありますが、例示をいかように考えておりますでしょうか。一九七九年のスリーマイルアイランド、すなわちTMIの事故レベルを最悪の想定と考えているようでありますが、中曽根科学技術庁長官、どのようにお考えでしょうか。  ところで、TMI事故についての報告には、ケメニー委員報告、またロゴビン委員報告があります。特にケメニー委員報告においては、多くのスタッフと研究委託の予算を持ち、宣誓をさせた上での公式証言は百五十を超え、資料は百メートルに及ぶものであります。この報告書は、原子力は本来危険をはらんでいると口に出して述べる態度に変えなければならないと鋭く本質を指摘しております。これは我が国原子力事故にとっても聞き逃すことができないものであります。小渕総理はいかなる御所見でしょうか、お尋ねいたします。  さらに、ケメニー委員会の勧告では、原子力は本来危険との認識に立たねばならない、原子力規制委員会は安全よりも開発優先であるから、委員長を外部から新たに求め、組織を抜本的に再編し、新しい血を入れるべきだと勧告しております。さらに、政府、業界が改革をこの勧告に従い断行しなければ原子力発電は存立できなくなるであろう、しかしその責任は挙げて政府、業界にあると、実に厳しい勧告でありました。  当時、我が国からも調査団が幾つか派遣されました。しかし、必ずしもこの成果が十分に生かされなかったことは残念であります。小渕総理は、このようなアメリカの厳しき勧告についていかなる御見解をお持ちでしょうか。  ところで、今回の事故において、初期動作などにおける科学技術庁原子力安全委員会対応は歯がゆい思いがしました。特に、この事故責任官庁は、科学技術庁ではなく原子力安全委員会であるかのように国民の目に映ったのではないでしょうか。本来、規制推進の分離を旨として出発したのでありますが、今日に至ってみると、規制推進事務局科学技術庁が担当していては完全な分離ができ得ていないと見えるのであります。この際、規制推進のあり方について小渕総理の御所見をお伺いいたします。  ところで、今回の事故対応で露呈した不備があります。第一に、事故の終息作業や被曝者の救助に生命の危険が著しく伴う場合、第二に、被害が一都道府県を超えて広域に広がった場合、第三に、大地震に伴って原子力災害が起こり通信網も遮断されたような場合、これらにどのように対処するのか、今までは危機管理上必ずしも十分ではありませんでした。そこで、本法律案に期待するところでありますが、小渕総理の明快な御答弁をお伺いします。  次に、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。  この法案は、加工事業に定期検査制度を追加し、保安規定遵守状況検査制度を創設し、さらに原子力保安検査官を主要施設に配置する改正であります。これらの改正については評価できます。ただし、現在の検査体制や人員で実効性が担保できるかどうか。原子力発電所の運転管理専門官は現在定員割れを併任でしのぐ状況であります。法律やシステムができても人材確保が大事であります。また、安全を生み出すのには安全への継続的な強い関心が重要であります。中曽根科学技術庁長官の人材育成・確保に向けた御決意をお伺いいたします。  次に、今後の原子力開発についてお伺いいたします。  原子力開発における世界の動向を見ますと、原子力発電所の最大保有国である米国では、安全並びに技術上の理由から既に数基が閉鎖され、今後新規建設の見通しがないため、原子力のエネルギー供給に占める割合は現在の一八%から七%にまで低下すると見られております。また、スウェーデン、イタリア、ドイツなどにおいても、脱原発の政策決定や検討がなされており、苦渋の選択を強いられております。  これに対し我が国では、地球温暖化対策などから原子力を選択せざるを得ないとの主張があります。今回の事故や世界的な脱原発の動向を踏まえますと、国民の理解と協力を得るため、我が国原子力開発のあり方について再検討が必要ではないかと思います。小渕総理の御見解をお伺いいたします。  次に、自然エネルギー政策についてお伺いします。  小渕総理は、平成十二年度予算案の中でミレニアムをキーワードとして頻繁に使っております。欧米では将来地球のミレニアム議論また地球憲章の議論が盛んでありますが、本来のいわゆる千年紀に向けてのパラダイムシフトを小渕総理はどのように認識しておりますか。  また、人間の安全保障、ヒューマンセキュリティーという観点から新しい国際社会の潮流が徐々ではありますが形成されつつある中で、明年、国連ミレニアム特別総会が開催されます。政府の取り組みと総理自身の出席についてはどうでしょうか。あわせて総理お尋ねいたします。  ところで、パラダイムシフトに関連して、三十カ国以上の国家組織のアドバイザーとして世界的に著名なアメリカの未来学者、ヘイゼル・ヘンダーソン博士は、「地球市民の条件—人類再生のためのパラダイム」という論文を書いております。その中で彼女は、「パラダイムシフトが訪れる有望な徴候がある。それは、人間の発展のプロセスを言い表すのに、「経済成長」という言葉が次第に使われなくなっている、という事実である。」と述べております。そして、さらに「「経済学的」という言葉は、勢いを失いつつある。生態学的な新しい定義、すなわち「持続可能な発展」という定義の中では、「経済学的」という言葉は一切使われておりません。これは好ましい徴候である。」と論述しております。そして、その兆候の一つとして、欧米における自然エネルギーの勢いにあらわれていることも示唆しております。  すなわち、EUでは、一次エネルギー供給に占めるバイオマスなどの自然エネルギーの割合を二〇一〇年までに一二%に倍増し、炭素の削減は年間四億トン、雇用創出は五十万人から九十万人の計画を発表しております。また、先ごろ提出された米国の包括電力競争法案においては、すべての供給事業者が自然エネルギー電源から一定割合を導入する義務が盛り込まれております。これに対して、我が国の自然エネルギーの割合は十年後の二〇一〇年でさえ三%と欧米に大きく水をあけられ、我が国のエネルギー政策の隅で縮こまっております。  一方、先ほどのように、欧米では脱原発の結果、自然エネルギーの選択が大胆に進んでおります。この選択は、今までの欲望と消費の大規模化に支えられた文明から、循環を組み込んだ持続的発展を軸にする新しい地球文明へのミレニアム、その第一歩と考えられます。  小渕総理、みずからミレニアムの視点に一層深く立ち入り、エネルギー政策の転換にイニシアチブを発揮していただきたい。いかがでありましょうか。  最後に、深谷通産大臣にお伺いいたします。  先日、スウェーデンの民間のバーセベック発電所の一号機が環境的、政治的判断により閉鎖・廃炉に追い込まれたと言われております。二十一世紀の地球環境や世代間の公平性の視点から考えてみますと、今後は輸入依存の高い石油などから、国産エネルギーとしても大変有望な自然エネルギーを大いに取り入れるべきであります。技術開発や、かつてないほど大胆に予算を投入し、画期的なグリーンシフトを図るべきであります。これは、自然エネルギー産業の発展ばかりか、雇用創出などによる地域の活性化、国際競争力の強化にもなります。  深谷通産大臣の御見解をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  25. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 加藤修一議員にお答え申し上げます。  大変、二十一世紀にわたっての文明論も含めました御見識を拝聴しながら、問題の諸点について私、お尋ねについてお答えをさせていただきます。  まず、ケメニー委員報告書で原子力は本来危険をはらんでいると述べられているとの御指摘についてでありますが、原子力開発利用に当たりましては、安全の確保に万全を期することが大前提であります。このため、これまでも国として最善の努力をしてきたところでありますが、今後とも一層の安全確保に努めてまいらなければならないと考えております。  また、原子力規制の組織の長についてのお尋ねでありましたが、我が国原子力安全委員会は、規制行政庁とは独自の立場に立つものであり、その委員は国会の同意を得て内閣総理大臣任命することとなっております。さらに、その委員長は委員の互選によって選ぶことになっておりますので、組織の中立性は十分に担保されたものとなっておると考えております。  規制推進のあり方についてのお尋ねですが、原子力安全委員会平成十三年一月の省庁再編を機会に内閣府に設置され、独立した事務局整備されるとともに事務局職員数も拡充されるなど、抜本的な体制強化を図ることといたしております。  一方、今回のジェー・シー・オー事故を契機として、このような原子力安全委員会独立性及び機能強化を早期に実施すべきでないかとの御意見があることを踏まえ、平成十三年一月を待つことなく、平成十二年度早々にも事務局機能を現在の科学技術庁から総理府に移管し、その人員も大幅に拡充する方向で対処するよう、現在関係省庁指示いたしておるところであります。  今回の事故教訓が本法案にどのように生かされ、また本法案によりどのように対応されるのかについてのお尋ねでありましたが、今回の事故で、国と自治体との連携強化原子力災害特殊性を踏まえた国の緊急事態対応性の強化事業者責務の明確化等の課題が顕在化したものと認識しております。  このため、今般の原子力災害対策特別措置法案により、こうした課題を解決し、また、議員御指摘のようなさまざまな場合にもより実効性のある対応が可能となるよう、原子力防災体制強化を図ることといたしております。  原子力開発の見直しに関するお尋ねですが、エネルギー供給は各国の国情に応じた対応が必要であり、資源の乏しい我が国が社会経済の安定的発展と地球環境の保全を図るには原子力抜きのエネルギー供給の確保は不可能であります。  原子力研究、開発、利用に当たっては、国民の理解と協力が不可欠であるとの認識は同じくいたしておりまして、今回の事故を真摯に受けとめ、幅広く国民の意見を伺いながら、原子力委員会等の場において原子力研究、開発、利用のあり方についての検討を行っているところであります。  新しい千年紀、ミレニアムに向けてのパラダイムシフトについてのお尋ねがありました。  私は、次の千年を展望するとき、大きな潮流課題としては、第一に温暖化など地球環境問題を初めとして人口、食料、貧困の問題などの地球規模の問題への対応、第二に核兵器など大量破壊兵器の問題や地域間の緊張、紛争に対する国際の平和と安全の確保、第三に情報化、グローバル化が進み、市場が世界規模となる中での安定的国際経済の発展などと考えております。  これらの課題への取り組みに当たりましては、御指摘の循環を組み入れた持続的発展が一つの大きな軸となるものと考えられます。我が国としては、各国と協力しつつ、先頭に立って、新しい平和と繁栄の秩序を築くべく努力していく気概で臨みたいと思います。  国連ミレニアム総会についてのお尋ねでありましたが、我が国は、同総会で人間の安全保障の視点も踏まえつつ二十一世紀の国際社会が直面する課題への取り組みとそのための国連機能強化についてのビジョンが示されることが重要と考えておりまして、同総会に向け、各国と協力しつつ積極的に取り組んでまいります。  また、私も可能であれば、同総会中に開催される国連ミレニアム・サミットに参加したいと考えております。  自然エネルギーについてのお尋ねですが、自然エネルギーの中でも太陽光発電などの新エネルギーにつきましては、経済性や安定性などの難しい課題も伴いますが、エネルギー安定供給の確保、環境保全、経済成長の同時達成を目指したエネルギー政策の推進を図る観点から、その開発と導入の促進は極めて重要であります。  このため、二〇一〇年において新エネルギーの導入量を現在の約三倍、一次エネルギーの総供給の約三%にするという高い目標を設定いたしておりまして、その実現に向けて最大限の努力を行ってまいりたいと存じます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中曽根弘文登壇拍手
  26. 中曽根弘文

    国務大臣中曽根弘文君) 加藤修一議員にお答えをいたします。  緊急事態の想定についてのお尋ねでございますけれども、本法案第十三条におきまして、原子力緊急事態の想定も含めた国が作成する計画に基づきまして、防災訓練実施することとしております。この緊急事態の想定につきましては、TMI事故等これまでの内外の事故、現在県が中心となって行っている防災訓練、諸外国での防災訓練の想定等を参考にしながら、今後具体的な内容を検討してまいります。  人材育成・確保についてのお尋ねでございますけれども、原子力保安検査官は、原子力事業者の職務、組織、保安教育実施状況を初め、施設の運転管理状況放射線管理状況等の保安活動に対し検査業務を行うこととされておりまして、施設の構造、機能及び品質保証活動等に関する知識等を有することが重要でございます。  このようなことから、原子力保安検査官につきましては、広範な知識と現場における十分な経験を有する適切な者を配置することが必要でありまして、原子力行政の経験のある者の育成に努めるとともに、資質の向上に向けて研修等の充実を図ってまいります。(拍手)    〔国務大臣深谷隆司君登壇拍手
  27. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 加藤議員が自然エネルギーの問題で大変熱心に努力しておられることに敬意を表したいと思います。  お尋ねのとおり、あるいは御提言のとおり、自然エネルギー、特に新エネルギーは、地球の環境問題あるいはエネルギーセキュリティー、さらに新規産業の創造、雇用の創出等、大きな効果をもたらすものでございまして、我々は全力を挙げて取り組んでいくべきものだと思っております。  二〇一〇年に現在の三倍の新エネルギーを開発しようというお話は、ただいま総理から申し上げたとおりで、我々はその目標に向かって全力を挙げていきたいと考えております。  ただ、新エネルギーにつきましては、まだコストが非常に高いことやら、あるいは太陽光や風力については気象条件に左右されるといったような課題が多くございます。その課題をどうやって解決していくかということが大事でございまして、その課題解決を目標にした平成十二年度の概算要求では、新エネルギー関係予算は前年度比三十九億円増額の九百十四億円としているところでございます。  委員御指摘のような、新エネルギーの開発に向けて全力を挙げていきたいと思っております。(拍手)     ─────────────
  28. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 西山登紀子君。    〔西山登紀子君登壇拍手
  29. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 私は、日本共産党を代表して、原子力災害対策特別措置法案及び核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案に対し、総理質問いたします。  去る九月三十日に起きた茨城東海村の核燃料施設での臨界事故は、日本の国民はもちろん、世界にも大きな衝撃を与えました。イギリスのインディペンデント紙は、日本には正確な安全文化はないと指摘し、日本のチェルノブイリとまで報じた外国の新聞もありました。この事故によって、日本の原子力行政の実態は、今日の国際的な水準から見ても異常に立ちおくれたものであることが浮き彫りになりました。  我が党は、国会では七〇年代から日本政府安全神話の危険性について指摘し、その一掃を求め、具体的改善を提案してきました。しかし、政府は、我が党のこうした提案や住民の意見に全く耳をかそうとしませんでした。安全神話とは、原子力は安全だから心配ないという立場です。今回の事故を契機に提出された二つの法案が真に国民安全確保の願いにこたえるためには、安全神話にとらわれて安全対策をないがしろにしてきた行政の根本的転換が前提でなければなりません。総理基本的見解を伺います。  事故当日、午前十時三十五分に事故発生した直後にジェー・シー・オー側は臨界の可能性ありと判断し、十一時十五分には科学技術庁にそう書いたファクスを送っています。それにもかかわらず、科学技術庁臨界事故など信じられないとして必要な対応をしませんでした。科学技術庁臨界事故を確認したのは午後四時ごろ、事故発生から五時間半もたってからでした。  総理安全神話の呪縛にとらわれたこうした判断のおくれから、ジェー・シー・オーの従業員だけでなく、周辺住民を長時間被曝させる重大な結果となったのです。国の原子力行政責任者として、改めて謝罪と厳しい反省があってしかるべきではないでしょうか。はっきりお答えください。  今回の事故ジェー・シー・オーのずさんな操業が直接の原因であり、その原子力事業者としての責任は免れません。しかし、もともと臨界事故を起こした沈殿槽は百リットルもあり、形状制限も、容積の制限による臨界防止の対策もとられていませんでした。こうした施設を許可した政府責任は極めて重大です。ところが、驚くべきことに、今なお政府は、審査は適切だった、事故原因ジェー・シー・オーの違法行為だと繰り返すばかりです。  総理、今回明らかになった政府のずさんな安全審査を反省しないで、どうして国民の命と安全を守ることができるでしょうか。答弁を求めます。  さらに、今、今回の事故で被曝した地域住民の健康管理や経済上の被害救済に万全の対策が求められております。  放射線被曝による晩発影響については、長期にわたる追跡調査が必要であり、きめ細かい対策が必要です。また、地域に与えた風評被害を含む経済被害は深刻であり、倒産を余儀なくされた業者も出ております。こうした身体的、経済的な被害をどのように賠償するのか、ジェー・シー・オーばかりでなく、親会社である住友金属鉱山の責任もあわせて明確にし、必要な賠償が行われるよう政府も万全を期すべきと考えますが、いかがですか。  次に、原子力施設安全確保を図る上で、推進規制体制を分離、独立させることは焦眉の課題です。我が党は、我が国も批准している原子力の安全に関する条約に基づくその実行は国際的責務であることを指摘してきました。原子力施設設置や運転に関する許認可の権限を持たない原子力安全委員会は、条約上そもそも規制機関とは言えません。  総理、今回の事故の痛苦の教訓から、東海村の村上村長を初め立地自治体の首長や議会も、規制機関の分離、独立を強く求めています。この地元の声に誠実にこたえるべきではありませんか。はっきりとお答えください。  今回の原子炉規制改正では、新たに第六十六条の二を新設し、事業者に法令違反の事実がある場合に、従業員の主務大臣に対する申告権を規定しています。しかし、この規定を置いただけでは実効性は確保できないことを指摘しなければなりません。  アメリカなどでは、警告のために口笛を吹く人を保護するホイッスルブロワー・プロテクション・アクトという法律があります。その法律によれば、従業員は内部告発を行うことが認められるのみならず、事業者がその従業員に不利益な扱いをすれば、そのこと自体が犯罪とみなされることになっています。従業員に申告権を与えるだけでなく、十分に保護されることが明確に規定される必要があります。どのような措置をとるのでしょうか。お答えください。  次に、ジェー・シー・オー事故が示したように、原子力事故の際にはとりわけ専門の知識と経験を持った多くの専門家が不可欠であり、人材の養成も国の責務です。  この点で、我が国原子力分野における中核的な総合研究機関として安全性研究開発などを行っている日本原子力研究所の果たすべき役割は重要です。ところが、この研究所の原子力安全研究予算は、一九九〇年度に約百三十億円あったものが、今年度は約七十二億円にまで減っています。安全神話のために原子力安全研究はもう必要ないと考えているとしたら重大です。私は、今回の事故処理に献身的にかかわった所員の方から、安全研究費を抜本的にふやしてほしいと切々と訴えられました。  総理、この際、原子力研究所を初め大学などの安全に関する研究費用を抜本的にふやし、強化すべきではありませんか。答弁を求めます。  原子力防災を考える場合、事故の影響についてあらかじめ予測し、必要な対策を準備することが不可欠であります。  科学技術庁は、一九五九年、原子力産業会議に委託をして、「大型原子炉事故の理論的可能性及び公衆損害に関する試算」を行い、報告書にまとめていました。これは日本で初めて過酷事故を想定した貴重な試算であります。ところが、この報告書全文は、国民のたび重なる開示要求にもかかわらず、国会に提出されたのは本年六月のことでした。およそ四十年にわたって非公開扱いにし生かそうとしなかった政府責任は極めて重大です。  この報告書によれば、大型原子炉事故を起こした場合の損害額は、最大で当時の国家予算の二・五倍に当たる三兆七千億円と試算されています。ここでいう大型原子炉とは十六万キロワットですが、現在の原子炉は百三十五万キロワットにもなっています。被害規模はけた違いに大きくなるはずであります。有馬前科学技術庁長官は、国会の答弁でこの試算が防災対策考える上で有効なものと評価しています。  総理、改めて今日の技術を生かして、個々の原発ごとに過酷事故を想定した災害の予測を行い、具体的な防災対策を立案すべきではありませんか。答弁を求めます。  ジェー・シー・オー事故が示したように、事故発生時に最初に事故現場で対応するのは地方自治体です。住民合意の上にその暮らしに沿ったきめ細かい取り組みがどうしても必要です。  総理、地方自治体の防災対策と防災能力の向上を国が責任を持って技術的にも財政的にも日常的に支援することが重要ではないでしょうか。緊急時に設置される自治体対策本部を敏速に支援することとあわせて、責任ある答弁を求めます。  最後に、政府はプルトニウム循環方式による原子力政策推進に固執していますが、技術的困難さから先進各国は既に撤退の方向を決めています。危険なプルサーマル計画は中止し、原発依存のエネルギー政策を根本的に見直すべきです。二十一世紀のエネルギー政策は、省エネルギー、省資源循環型社会への転換を進め、地球環境に負荷の少ない自然エネルギーの利用などに全力を尽くす方向に切りかえるべきです。  日本共産党は、原子力防災はもとより、今日の原発の危険から住民を守る立場国民共同を進める決意を表明して、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  30. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 西山登紀子議員にお答え申し上げます。  まず、安全対策についての御指摘でありました。  原子力開発利用に当たりまして、安全確保に細心の注意を払い万全を期することを大前提に、これまでも最新の科学的知見に基づき厳正に安全規制を行ってきたところであります。  今回の事故は、認められた条件を著しく逸脱した操作が行われたことが直接的な原因でありますが、原子力安全委員会に設けられた事故調査委員会の緊急提言も踏まえ、今回の法整備を含め、安全規制についても見直しを行い、二度とこうした事故が起こることのないよう適切に対処してまいるところであります。  事故への対応のおくれについてのお尋ねですが、事故現場の状況につきまして得られた情報をもとに、政府としては可能な限りの判断と対応を行ってきたところであります。今回の事故により、周辺住民を初めとする国民の皆様に多大な御心配と御迷惑をおかけしたことを厳粛に受けとめ、住民の皆様の健康管理等に万全を期するとともに、現在行っている原因の徹底究明の結果を踏まえ、二度とこのような事故の起こることのないよう適切に対処してまいります。また、今回の政府事故対応については、謙虚に点検し、さらなる万全を期してまいりたいと考えております。  安全審査についてのお尋ねでありましたが、今般、臨界事故発生をいたしました施設におきまして、種々の臨界管理が行われることなどを安全審査において確認しております。今回の事故は、こうした条件を著しく逸脱した操作が行われたことが直接的な原因ではありますが、現実に事故が起こったことは厳粛に受けとめ、謙虚に反省をいたしております。  安全審査については、原子力安全委員会設置された事故調査委員会においてその見直しを行うべきとの指摘がなされたことを踏まえ、既に原子力安全委員会安全審査指針について見直しに着手したところであり、このような事故を再び起こさぬよう適切に対処してまいりたいと考えております。  周辺住民へのきめ細かい対策についての御指摘でありましたが、周辺住民の長期的な健康管理につきましては、原子力安全委員会設置をされました健康管理検討委員会におきまして推定被曝線量に基づいた健康管理のあり方について検討がなされており、この結果を踏まえ、地元自治体とも協力し、周辺住民の健康管理に万全を期してまいります。  損害賠償について万全を期すべきとの御指摘でありましたが、今回の事故につきまして、事故を起こしましたジェー・シー・オー責任は当然であり、迅速かつ公平な補償を行うよう求めております。また、住友金属鉱山については、親会社として社会的、道義的責任を有すると考えており、同社に対して、ジェー・シー・オーを全面的に支援するよう求めております。政府としては、原子力損害賠償制度の適切な運用等により被害者救済に遺漏なきよう努めてまいります。  推進規制体制についての御質問でありましたが、我が国では、原子力規制推進機能を効果的に分離しつつ、科学技術庁または通商産業省法令に基づいて安全審査を行い、さらに原子力安全委員会ダブルチェックをする仕組みとなっております。  なお、原子力安全委員会は、省庁再編に伴い、各省庁より一段高い位置にある内閣府に設置されるとともに、独立事務局整備され、その活動はより充実されることとなります。今回の事故を踏まえ、原子力安全委員会独立性機能強化をさらに進めることといたしております。  申告をした従業者の保護についての御質問でありましたが、原子炉等規制法改正案におきまして、申告を理由とした従業者に対する不利益な扱いを禁止するなど、申告者の保護に配慮することといたしております。本制度の運用に当たりましては、他法令の同種の制度を参考にしつつ、適切に対応してまいります。  安全研究推進についてのお尋ねでありましたが、原子力研究、開発、利用を進めるに当たりまして安全確保大前提であり、安全研究を積極的に推進していく必要があります。日本原子力研究所等では、研究評価の結果や研究の進捗状況を踏まえ、原子力安全委員会の年次計画に沿って必要な予算額を確保いたしておるところであります。  今後とも、その内容の充実を図り、原子力施設安全性を高い水準に維持していくため、安全研究を着実に進めてまいります。  過酷事故を想定した具体的対策についての御質問でありますが、本年四月、原子力安全委員会の防災専門部会により、地域防災計画の策定等のため、各原子力施設ごとに、地域施設の特性を踏まえ、何らかの仮定を置いた災害想定及びそれに対応した対策についての検討を行うべきことが提言されておりまして、この趣旨は今回の法案の中に反映されておると考えております。  今回の法案や今回の事故の経験を踏まえ、一層の原子力防災体制の充実強化に取り組んでまいります。  最後に、地方自治体の防災対策等に対する国の支援について御質問がございました。  政府といたしましては、従来より地方自治体の防災資機材整備等の財政的支援や防災関係者に対する研修等を実施いたしてきたところでありますが、今後ともこれらの支援を適切に実施してまいりたいと考えております。  また、現在御審議をいただいております原子力災害特別措置法案におきましては、地方自治体に対し、原子力安全委員会による協力、原子力防災専門官による指導、助言等を規定いたしておりまして、地方自治体の防災対応機能の向上、緊急時における迅速な支援体制強化を図ることといたしておる次第であります。  以上、お答えといたします。(拍手)     ─────────────
  31. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 清水澄子君。    〔清水澄子君登壇拍手
  32. 清水澄子

    ○清水澄子君 私は、原発事故が最も多い福井県出身の立場と社会民主党・護憲連合を代表し、東海村の核燃料加工工場、ジェー・シー・オー臨界事故政府責任及び政府から提案の二法案につきまして、小渕内閣総理大臣並びに関係大臣に質問いたします。  今回の事故で多くの方が被曝されましたが、これは安全基準、許認可、安全点検などにかかわる政府のずさんな原子力行政が招いた事故であり、政府責任は重大であります。  まず、次の三点について科学技術庁長官質問いたします。  第一に、事故を起こした施設安全審査に用いられた原子力安全委員会の「核燃料施設安全審査基本指針」には、「各種核燃料施設について、その特質に応じた個別の安全審査指針を整備するものとする。」とありますが、政府が濃縮度五%を超えるウラン加工について指針の整備を怠り、安全審査で今回の事故を回避する機会を逸した理由を御説明いただきたい。  次に、アメリカの基準値では、ウラン235の臨界量は七百グラムで、これから換算すると、ジェー・シー・オーが核制限値としていた一六から二〇%の濃縮ウランで二・四キログラムは、明らかに臨界量を超えることになります。安全審査基準そのものに重大な落ち度があったのではありませんか。  政府は、今回の臨界事故現場となったジェー・シー・オー転換試験棟の設置変更申請を一九八四年に約半年で簡単に認可していますが、その際に、臨界量や指針の整備についてどのような議論をされたのでしょうか。このような安易な認可を行い、十三年にわたってジェー・シー・オーの違法な作業を放置したずさんな管理体制責任は重大です。長官の答弁を求めます。  中性子線事故発生から十八時間も放射し続けました。広島、長崎以来の中性子線被曝事故です。中性子線は体の内部まで深刻な被曝の影響が出ます。ところが、中性子線の測定開始は事故後八時間後であり、政府対策本部の第一回の会議事故から六時間半も後でありました。政府は、住民避難について最後まで現地に何らの指示も出していないにかかわらず、安全宣言だけは早々と出しました。  政府対応が適切でなかったために多くの人々が被曝しました。総理及び科学技術庁長官責任は極めて重大であります。責任をどう感じておられるのか、再発防止についての決意を伺います。  水抜き作業をした十八人、硼酸水注入作業の六人、弗化アルミ袋の積み上げ作業をした人たちは、計画被曝者として扱われ、被曝者数から除外されており、全く納得できません。全被曝者データの公開を要求します。被曝された方々の治療費をどう補償されるか伺います。  被曝者は、十年後、二十年後にがんや白血病などになる危険性がありますが、将来にわたってどのように調査し補償されるおつもりか、被曝者手帳のようなものが必要だと考えますが、政府の具体的な対応策科学技術庁長官に伺います。  災害対策基本法では、現場となる自治体が第一の当事者です。原子力災害対策特別措置法案は、二十条で、総理本部長とする対策本部が避難など必要な措置自治体指示できるとしていますが、原子力事故対策は第一に初期対応であり、市町村が速やかに動けるよう支援すべきであります。  そのため、一秒を争う原子力事故に備えて、専門的な人材や権限強化を含め、自治体事故対応能力を高めることが最も必要だと考えます。同時に、地域防災計画住民避難訓練放射線の常時監視と情報公開が先決であります。総理の見解を伺います。  今回の事故教訓として、原子力利用の推進規制が実質的に一体である現在の体制を変えなければなりません。アクセルとブレーキは分けるのが当然であります。  原子力安全委員会は、原子力利用の推進から切り離し、独立した第三者機関とすべきであります。委員原子力利用推進に疑問を提起している人を加えたり、環境庁の所管とするなど、原子力安全委員会の抜本的な再編成が必要と考えますが、総理の答弁を求めます。  臨界事故の後、世論調査によると原子力に不安を訴える声が九割に達し、欧州を初め世界は脱原子力の流れにあります。原子力偏重の偏ったエネルギー開発による高コストの電力よりも、クリーンな自然エネルギー開発と普及に財政支出を振りかえ、新しいエネルギーと産業構造を展望すべきではないでしょうか。総理の決意と見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  33. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 清水澄子議員にお答え申し上げます。  まず、事故への対応のおくれについてお尋ねがありました。  事故現場の状況について得られた情報をもとに、政府といたしましては可能な限りの判断と対応を行ってきたところであります。  今回の事故により、周辺住民を初めとする国民の皆様に多大な御心配と御迷惑をおかけしたことを厳粛に受けとめ、住民の皆様の健康管理等に今後万全を期するとともに、現在行っている原因の徹底究明の結果を踏まえ、二度とこのような事故の起こることのないよう適切に対処してまいります。  また、今回の政府事故対応について謙虚に点検し、さらなる万全を期してまいりたいと考えております。  地方自治体対応能力強化についての御質問でありますが、本法案では、国は、原子力安全委員会の協力、原子力防災専門官による指導、助言等により、自治体における地域防災計画の策定、訓練実施等を支援することといたしております。  また、原子力災害特殊性にかんがみ、国が果たすべき役割責任自然災害と比して大きいものと認識しており、国の緊急時対応体制強化初期対応の迅速化を図ることといたしております。  さらに、放射線の監視とその情報公開につきましては、原子力事業者放射線測定設備設置放射線量の記録及び公表を義務づけているところであります。  原子力安全委員会独立した第三者機関とすべきとの御指摘でありますが、原子力安全委員会平成十三年一月の省庁再編を機会に内閣府に設置され、独立した事務局設置されるとともに、事務局職員も拡充されるなど、抜本的な体制強化を図ることといたしております。  今回の事故を踏まえ、原子力安全委員会独立性機能強化をさらに進めることといたしております。  原子力開発から自然エネルギーの開発と普及に財政支出を振りかえ、新しいエネルギーと産業構造を展望すべきとの御指摘でありますが、太陽光発電、風力発電等の新エネルギーの研究開発、導入と原子力推進は、エネルギーの安定供給の確保、環境保全、経済成長の同時達成を図る観点から、ともに重要であると考えております。  新エネルギーにつきましては、当面は経済性や安定性などの課題も伴いますが、今後とも予算の充実を図りつつ、その研究開発と導入に最大限の努力を行ってまいります。  以上、お答えといたします。残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中曽根弘文登壇拍手
  34. 中曽根弘文

    国務大臣中曽根弘文君) 清水澄子議員にお答えをいたします。  指針の整備についてのお尋ねでございますが、原子力安全委員会では、濃縮度五%を超えるウラン燃料の加工施設、プルトニウム取扱施設使用済み燃料の再処理施設等の核燃料施設安全審査に当たって、その基本考え方を取りまとめたものとして核燃料施設安全審査基本指針を定めております。  今回、臨界事故を起こしましたジェー・シー・オー加工施設は約一九%の高濃縮ウランの加工を行うことから、核燃料施設安全審査基本指針を適用して安全審査を行ったものであります。  今回の事故につきましては、安全審査で認められた条件を著しく逸脱した操作が行われたことが直接的な原因でありますが、事故調査委員会の緊急提言を踏まえ、安全審査についても必要な見直しを進めていくこととしております。  既に原子力安全委員会では、核燃料安全基準専門部会におきまして、核燃料施設に関する安全審査指針の見直しについて検討を開始したところであります。  ウランの臨界量についてのお尋ねでございますけれども、濃縮度九三・五%の濃縮ウラン溶液につきましては、溶液が球状で存在し、外側に水があって中性子を反射するという最も臨界を起こしやすい条件下で臨界質量は約八百グラム程度とされています。  このような臨界を最も起こしやすい条件のもとで、今回、事故の起こった施設で扱うことのできる二〇%濃縮度ウランの臨界質量は約五・五キログラムとなります。この臨界質量約五・五キログラムに対し、十分な安全裕度を持たせるため、その二分の一以下の二・四キログラムを今回、事故のあった施設において濃縮ウランの核的制限値として採用したものでございます。したがいまして、当該施設安全審査の核的制限値として二・四キログラムを採用したことに問題があったとは考えておりません。  次に、今回の事故と許認可等との関係についてのお尋ねでございますが、事故のありました施設につきましては、核燃料施設安全審査基本指針に基づいて安全審査を行い、一回のウラン取扱量を、誤操作による二重装荷を考慮しても臨界にならない安全な量に制限すること。沈殿槽に送液するまでにウラン量を二度計量すること等により、臨界事故発生するおそれはないと認めたものでございます。  また、施設の運転段階におきましても、保安規定遵守状況調査や運転管理専門官による巡視などにより、可能な限り施設の運転状況等の把握に努めてきたところでございます。  今回の事故は、安全審査で認められた条件を著しく逸脱した操作が行われたことが直接的な原因でありますが、結果として今回のような臨界事故発生したことを厳しく受けとめております。このため、安全審査指針の見直しに着手するとともに、今般、加工施設定期検査等規制項目を追加するなどの原子炉等規制法改正案を国会に提出し、本日から本院で御審議をお願いしているものでありまして、今後、安全規制体制強化し、一層の原子力安全確保に最善を尽くしたいと考えております。  次に、今回の事故への対応と再発防止に関するお問い合わせでございますが、事故発生後、科学技術庁長官本部長とする事故対策本部設置関係機関へのモニタリング要請原子力安全委員現地への派遣など、得られた情報をもとに科学技術庁としても可能な限りの判断と対応を行いましたが、初動におきまして事故状況の正確な把握が十分でなく、東海村が独自に住民避難の判断をせざるを得なかったこと等は率直に反省すべきものと受けとめております。  今回の原子力災害対策特別措置法案において、事業者の通報義務づけ、専門職員派遣原子力災害合同協議会の設置など、特に初動における国と地方公共団体連携強化と迅速な対応を可能とする規定を設けております。  また、あわせて、原子炉等規制法改正により、安全規制の見直しを行うとともに、原子力安全委員会に設けられた健康管理検討委員会の意見を踏まえつつ、被曝された住民の適切な健康管理に努めてまいります。これらの措置により、原子力安全防災対策抜本的強化を行い、国民の負託にこたえていくことが最大の任務と考えております。  次に、被曝のデータの公開及び治療費の補償についてのお尋ねでありますが、臨界終息のため沈殿槽の水抜き作業や硼酸水注入作業に従事した従業員の被曝の状況につきましては、現在までに確認された作業後の全身計測や線量計による測定結果を公開のもとで開催されている事故調査委員会に報告してきたところでございます。  また、現在までに測定データが得られていない個人につきましては、線量を推定するために事故時の行動調査等を進めているところでございまして、これらの結果が取りまとめられれば、プライバシーに十分配慮して結果を公表することとしております。  被曝された方が万一、治療が必要となった場合の治療費の扱いにつきましては、労働者災害補償保険法または原子力損害の賠償に関する法律において適切に対処されるものと考えております。  最後に、被曝された方の長期的な健康管理についてのお尋ねでございますが、原子力安全委員会設置された健康管理検討委員会において健康管理のあり方が検討されているところであります。  科学技術庁といたしましては、その検討結果を踏まえ、被曝された方の健康管理に適切に対処してまいります。(拍手)     ─────────────
  35. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 水野誠一君。    〔水野誠一君登壇拍手
  36. 水野誠一

    ○水野誠一君 参議院の会を代表して、原子力防災対策法案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  一九六六年に原子力発電が開始されて以来、今日、原子力発電は日本の発電量の三割以上を占めるまでに発展してきました。その間、一貫して言い続けられてきたのが、原子力はクリーンで安全なエネルギーというスローガンでありました。しかし、ジェー・シー・オー臨界事故などにより、このスローガンは、絶対安全をうたい続けてきた行政に対する国内外の信頼とともに、もろくも崩壊してしまいました。我が国原子力政策及びエネルギー政策は、あらゆる意味において窮地に立たされたものと考えます。  殊に、今回の事故で露呈したのは、事故原因のお粗末さのみならず、一たん事故が起きた後の処理の被曝を覚悟した決死の水抜き作業や土のう積みといった前近代的な処理方法でした。政府は、原子力事故が万一起きてしまったときの対策を、もっとシステム的かつ科学的に準備するリスクマネジメントの根本的再構築を図るべきだと考えます。  必要なのは、ただ単に絶対安全だから安心せよと訴え続けることから、原子力はメリットもあるが使い方を誤ると危険なものだという姿勢への転換であり、その観点からすると、保安教育避難訓練義務づけ、自衛隊派遣要請手続などを含んだ今回の法案は、我が国原子力と向き合う姿勢に新たな一歩を示したものと考えます。  そこで、総理に伺います。  二重、三重の事故再発防止対策努力することはもとより当然であります。しかし、今後も原子力を必要な施策としていくのであれば、原子力が持つリスクをいかに適切に管理するかという観点に立った緊張関係を国民と共有し、結果として安全な原子力の確保を目指すことこそが失った信頼回復への近道であると考えます。原子力政策に関する情報公開をさらに進めると同時に、ひたすら原子力の安全を訴え続けてきた従来の姿勢からの脱却をお示し願いたいと思います。  さて、今回の法案においては、原子力保安検査官原子力防災専門官規定する内容が盛り込まれております。しかし、今回のジェー・シー・オー臨界事故の遠因として、原子力規制する側と推進する側が明確に分離されていないことが重ねて指摘されてきましたが、本法案でも、いわば規制を行う保安検査官などの職務に推進側である科学技術庁などの職員が当たるとの説明がされていることに、いささか違和感を覚えるものであります。  保安検査官などが高度な専門的知見と判断能力を求められることはもちろんですが、住民の安全を守るという大きな責任を果たすため、推進側の論理に流されず、チェックする側としての職務を十分遂行し得る環境をどのように確保するのか。そのためには、むしろ原子力安全委員会に属させるべきなどの意見もあると思いますが、いかがお考えか、総理並びに科学技術庁長官に伺いたいと思います。  政府が推し進める核燃サイクル構想には、高速増殖炉の実現性、放射性廃棄物処理問題など、いずれも解決困難な課題が山積しております。加えて、今回の事故を契機に各地でプルサーマル計画の延期などが決定されました。  そこで、今国会冒頭の代表質問において、今後の原子力発電の新規立地計画について変更の余地はないかと通産大臣にお尋ねしたところ、安定供給、経済成長、環境保全の観点から、方針をいささかも変えるつもりはないという趣旨の御答弁をいただいております。  しかし、先日、原子力委員会が進めている原子力研究開発利用長期計画の見直し作業において、ジェー・シー・オー事故を受けて、原子力発電推進の是非にまで立ち戻った議論が始まっているという報道がありました。五年置きに実施されてきた過去の改定作業原子力推進大前提として進められてきたのに対して、今回はいわば異例の展開であり、原子力発電を進めるかどうかを原点から議論しないと国民の理解は得られないなどの意見も見られたようであります。  この際、原子力政策の根本的な是非論にも真摯な姿勢で取り組むとともに、二〇一〇年において三・一%とする新エネルギー構成比見通しの引き上げなども含めて、エネルギー政策全体の将来像を描き直すことも必要だと考えますが、総理並びに通産大臣の御決意を再度伺って、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  37. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 水野誠一議員にお答え申し上げます。  原子力安全確保情報公開について御指摘でありますが、原子力開発利用に当たりましては、安全確保に細心の注意を払い、万全を期することを大前提に、これまでも最新の科学的知見に基づき厳正に安全規制を行ってきたところであります。  今回の事故は、認められた条件を著しく逸脱した操作が行われたことが直接的原因でありますが、原子力安全委員会に設けられた事故調査委員会の緊急提言を踏まえ、今回の法整備も含め、安全規制についても見直しを行い、二度とこうした事故が起こることのないよう適切に対処してまいります。  また、原子力に関する情報公開は、国民の理解と信頼を得るために必要不可欠であり、今後とも原子力政策の策定に当たっては一層の情報公開と透明性の確保に努めてまいります。  原子力保安検査官等についてお尋ねですが、法案規定されている原子力保安検査官及び原子力防災専門官は、その職務が安全規制及び防災対策を所管する行政庁の責務として実施されるものであることから、行政庁に置くことが適当と考えております。また、その職務を厳正かつ的確に実施すべきことは言うまでもありません。  なお、今回の事故にかんがみ、原子力安全委員会では、建設や運転の段階において随時に現地調査を行うなど、一層の機能強化を図ることといたしております。  原子力政策への取り組みに関するお尋ねですが、資源の乏しい我が国が社会経済の安定的発展と地球環境の保全を図るには、原子力抜きのエネルギー供給の確保は困難であります。現在、原子力委員会では、新たな原子力長期計画策定に向け審議をいたしておりますが、今回の事故を真摯に受けとめ、議員御指摘のような幅広い見地からの御議論をいただき、国民の理解と協力を得られる原子力政策を策定してまいります。  エネルギー政策の見直しについての御指摘でありますが、エネルギー政策におきましては、エネルギーの安定供給の確保、環境保全及び経済成長の三者の同時達成を目標といたしております。このため、需要面で最大限の省エネルギー対策を図り、供給面では安全確保を一層徹底して原子力政策を円滑に推進するとともに、新エネルギーについても、経済性や出力の不安定性の課題があるものの、その供給を約三倍に増加すべく最大限の努力を行ってまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣中曽根弘文登壇拍手
  38. 中曽根弘文

    国務大臣中曽根弘文君) 水野誠一議員にお答えを申し上げます。  原子力保安検査官等についてのお尋ねでございますが、ただいま総理から御答弁がございましたけれども、我が国では、安全規制を担当する行政庁原子炉等規制法に基づき設計段階から運転段階までの各段階において厳格な規制を通じ安全確保を図り、さらに行政庁安全審査原子力安全委員会ダブルチェックすることにより安全確保に万全を期することとしているところでございます。  原子力保安検査官は、原子力事業者の職務、組織、保安教育実施状況を初め、施設の運転管理状況放射線管理状況等の保安活動に対し検査業務を行うこととされております。また、原子力防災専門官は、平常時において原子力事業者に対する指導等を行うのみならず、万一の事故の際は現地において地方自治体に対して防災に係る指導を行うこととされております。  このような職務は行政庁の責務として厳正かつ的確に実施されなければならず、原子力保安検査官等は行政庁に置かれることが適当と考えております。  いずれにいたしましても、原子力保安検査官等について十分な専門的能力を有する適切な人材を育成、確保することとし、安全確保及び防災対策に万全を期してまいりたいと思っております。(拍手)    〔国務大臣深谷隆司君登壇拍手
  39. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 水野議員からエネルギー政策の見直しについてのお話がございました。  残念ながら、我が国は依然としてエネルギー資源の大部分を輸入していて、そのエネルギー供給は極めて脆弱な状態にあります。また同時に、地球温暖化防止京都会議等で合意をいたしましたエネルギー起源の二酸化炭素を削減していくための努力等々を考えますと、今後も大変厳しいエネルギー政策を堅持していかなければならないというふうに思います。  こうした中で、我々は、総理も今言われましたけれども、できる限りの省エネ対策に取り組むと同時に、原子力安全性を確保していく、そして水野議員も指摘された新エネルギーの開発に全力を挙げていくということに一体となって進んでいかなければならないと思っております。  原子力に関しましては二酸化炭素を排出しない等の特性がございますが、この安全性を確保するために、今回の法律改正あるいは新しい法律及び予算の上で十分な対応をしてまいりたいと思っております。  新エネルギーにつきましては、先ほども申し上げましたけれども、コストの面であるとかあるいは気象条件に左右されるとかさまざまな課題がありますが、この課題を乗り越えていくことが大事であり、二〇一〇年の三倍にということはかなり高い目標でございますので、それをしっかり実現してまいりたいと思っております。  以上です。(拍手
  40. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。  これにて午後二時三十分まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ─────・─────    午後二時四十一分開議
  41. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)  去る十一月二十五日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。藁科滿治君。    〔藁科滿治君登壇拍手
  42. 藁科滿治

    ○藁科滿治君 私は、民主党・新緑風会を代表し、さきに行われました財政演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  最初に、予算編成をめぐる基本的な問題ですが、政府は、経済新生対策を発表したその日に今年度の経済見通しについても見直しております。それによりますと、実質成長率は当初見通しの〇・五%から〇・六%へ〇・一%の上方修正となっておりますが、一方で、名目成長率は当初見通しの〇・五%からマイナス〇・三%へ〇・八%の下方修正となっています。  政府は、今年度ははっきりとしたプラス成長を達成すると公約しましたが、名目ベースの成長がマイナスということは、はっきりとしたプラス成長が達成されたとは到底言えません。まず、この点について小渕総理の御見解を伺いたいと思います。  また、今次補正予算で七兆円以上の国債を発行する結果、小渕総理は就任後わずか一年余りで五十兆円以上も借金を重ねることになり、今年度の一般会計予算の歳入に占める国債の割合は戦後最悪の四三・四%になります。しかし、大盤振る舞いの経済運営を続けているにもかかわらず、我が国経済が収縮していることは、政府の経済運営が不適切であることを如実に証明していると言えます。宮澤大蔵大臣が大魔神を一回から登板させたと強調された当初予算は最終回までもたず、今次補正予算に救援を要請せざるを得なくなったわけであります。これについて小渕総理及び宮澤大蔵大臣の明快な御答弁を求めたいと思います。  あわせて、最近における急激な円高の景気への影響と今後の対応策について宮澤大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。  さて、今次補正予算では、社会資本整備関係費として三兆五千億円の予算が計上されております。小渕総理は、経済新生対策について、新規性、期待性、訴求性をキーワードにしたと自画自賛しておられますが、実態は旧来型公共事業の焼き直しにすぎません。言葉面を追えば、「歩いて暮らせる街づくり」、「基幹ネットワークインフラの整備」、「情報化の飛躍的推進」などと、いかにも将来を先取りした斬新な事業のように見えますが、これらは道路や港湾、整備新幹線などの旧来型公共事業の寄せ集めや、電線地中化計画などの既存計画の看板のかけかえにすぎません。  これら旧来型公共事業の景気刺激効果は極めて限定的であることは多くの識者が指摘しているところです。一部の業界の救済のために国民の血税を大量に注ぐことは全く不公平なものであり、ましてやその財源が将来へのツケ回しであれば無責任きわまりないものであります。この点について総理の御見解を伺いたいと思います。  次に、中小企業基本法が我が党の主張も取り入れて改正されました。改正案は、中小企業者の定義を拡大するとともに、中小企業に積極的な役割を持たせ、独立した中小企業の多様で活力ある成長発展を基本理念としております。しかし、今次補正予算の中小企業対策を見ますと、旧態依然とした施策がちりばめられ、基本改正の方向に逆行しているのではないかとの印象を受けます。  その典型的なものが中小企業金融安定化特別保証枠の安易な拡大、延長であります。この制度は、金融システムが大きく揺らぎ貸し渋りが激化する中、あくまでも緊急避難措置として設定されたものであります。しかしながら、ケースによっては実質的に無審査で保証が行われ、本来市場で淘汰されるべき企業まで延命されるなど、運用上さまざまな問題が生じていることも事実であります。  さらに問題なのは、保証枠の追加分である十兆円の積算根拠が甚だ不明瞭であることであります。当初、通産省は、追加分は二兆円もあれば十分、このように見込んでいたにもかかわらず、与党三党の調整でこの金額は十兆円にはね上がりました。まさに選挙対策の見せ金としか言いようがありません。これはまさに新しい中小企業基本法の精神にも反するものと言わざるを得ません。  以上の諸点について総理の御所見を伺いたいと思います。  その他、中小企業・ベンチャー企業振興策と銘打つ施策が織り込まれていますが、実際に効果を上げるかどうかは疑問です。今必要なのは、中小企業のやる気を支援する政策です。中小企業税制の抜本改革、直接金融市場の整備、商店街を中心とした福祉コミュニティーの再構築、独占禁止法や下請関連法制の厳格化、こういった課題に徹底的に取り組むべきと考えますが、これらの点についても総理のお考えを伺いたいと思います。  次に、来春の実施を前に、現在、国民と地方自治体に大きな不安と不満をもたらしている介護保険問題について質問いたします。  政府の見直し案は、高齢者の保険料について、来年四月から半年間は徴収凍結、その後一年間は半額を徴収するとしております。  そこで、まず総理にお伺いしたいことは、介護保険を社会保険制度で運用する意義と目的についてどのようにお考えになっておられるかということであります。  社会保険として運用される今回の介護保険につきましては、いざというときのための担保として、そして国民相互が助け合う社会的システムとして、国民がこの制度を信頼し、保険料を納めることを納得しつつあるわけであります。ここに社会保険が成り立つ原則があるわけですが、しかし現在、政府が打ち出した保険料の減免措置は、この社会保険の存立基盤を否定した全くの選挙目当てのものであると言わざるを得ません。これまでの国民間の合意形成の努力と、地方自治、地方分権の精神にのっとり諸準備を進めてこられた市町村努力を踏みにじるものであります。どうか、高齢化社会に不可欠な介護保険が内容的にも充実し、国民の評価が得られる制度としてスタートできるよう、いま一度再考すべきであると考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。  あわせて、高齢者保険料対策費の七千八百五十億円につきましては、現在、自治体関係者より、保険料の減免分に限定するのではなく、サービス基盤の充実など、市町村の独自性に任せてほしいとの要望が出されていますが、この点についても総理の御見解を伺いたいと思います。  次に、医療保険者対策費の千二百六十億円に関連してお尋ねいたします。  政府は、個々の医療保険者の財政事情を見ながら支援する考えのようでありますが、これでは医療保険制度のもとで財政状況が悪化した保険者に公費補助を行うことになりませんか。そもそも、医療保険制度の改革が遅々として進まないことが問題であり、そのために保険者は厳しい財政状況に追い込まれているのです。医療保険制度の抜本改革について、政府は二〇〇〇年度からの実施を約束しましたが、来年四月からどのような改革を実施するのか、総理お尋ねいたします。  介護保険の実施を目前にした今回の見直しには、国民自治体も大混乱しています。与党三党がばらばらの主張をし、介護保険制度の将来も見えてこない中、国民の不安や不満は頂点に達しています。総理国民が安心して生活できる介護、年金、医療など、社会保障全体の将来像について、今こそ説得力のあるビジョンを語っていただきたいと思います。  さて、企業・団体献金の問題に移りたいと思います。  私たちは、五年前に、二〇〇〇年一月をもって資金管理団体に対する企業・団体献金を禁止するということを、もちろん自民党も含めて、国会の明確な意志として国民の前に約束をいたしました。しかるに、自民党はこれをほごにしようと動かれました。さきのクエスチョンタイムでは、我が党の鳩山代表の追及の中で、総理はようやくこの約束の履行を明言されました。しかし、報道等によりますと、自民党内では抜け道探しや政治資金規正法附則第十条削除の議論が盛んに行われているとのことです。これが事実としたら、国民政治不信はますます増幅されるのではないかと考えます。  小渕総理、このような事態が起こっている現状をどのようにお考えでしょうか。また、総理・総裁として、この際、政治倫理確立のために強力なリーダーシップを発揮すべきと考えますが、いかがでしょうか。あわせて、附則第九条に基づく法案をいつ提出し、いつまでに成立させるのか、明確にお答えいただきたいと思います。  民主党は、企業・団体献金の禁止は当然のこととして、政党を迂回路するひもつき献金などの抜け穴をふさぐ措置として幾つかの提案を行っております。例えば、選挙運動に関するものを除き、政党や政党の政治資金団体が政治家の資金管理団体、その他の政治団体に寄附を行うことを禁止すること。また、団体寄附を受けられる政党支部を限定し、支部に対する団体寄附に年間五十万円の個別制限を設けること。さらには、政治資金の透明化を進めるために、収支報告書の保存期間を刑法上の時効期間である五年間に延長するとともにコピーを解禁することなどであります。これらの政策は国民世論からすればまことに当然のものですが、小渕総理の御見解をお尋ねしたいと思います。  次に、衆議院の定数削減問題ですが、この問題は大きく言って二つあります。  その第一は、削減の方法です。自自公三党合意によりますと、衆議院定数を五十議席削減するとしながらも、当面は比例区から二十議席削減し、残り三十議席については先送りされております。民主党は、与野党の協議会において、再三再四、残り三十議席の削減方法や考え方を示すよう求めましたが、与党各党の発言はばらばらのままで、突然協議が打ち切られました。当初の自自合意に基づく法案では、比例区のみから五十議席削減でしたが、今回の自自公合意は、残り三十議席について小選挙区を中心に削減すると、あいまいながらも法案の根幹を変更するものとなっております。まさに、理念も哲学も違う政党が政権延命のために選挙制度をおとしめているように思われます。  改めて、小渕総理及びこの際二階運輸大臣、続総務庁長官に、残り三十議席の具体的な削減方法、つい最近まで各党が主張していた方針が変節した理由、そもそも各党はどのような選挙制度を目指しているのか、それぞれ具体的に御説明願いたいと思います。  第二の問題は、与野党協議を不正常な状態にしておき、与党だけで改革を強行しようとする姿勢であります。  かつて、民主主義の土俵づくりにかかわる選挙制度の改革を与党のみで強行したことはありません。政権にある者がそれぞれの都合で選挙制度を変更するようなことは決して民主的とは言えません。むしろ、選挙制度に関しては、自自公合意で記されている在日永住外国人の地方選挙権の付与、また、衆議院小選挙区で法定得票数に達しなかった重複立候補者の比例代表選挙名簿削除、くらがえ等の立候補禁止、比例代表選挙当選議員の政党間移動の禁止、消滅した政党の比例名簿繰り上げ当選の排除等についての改革を先行すべきではないかと考えますが、小渕総理のお考えを伺います。  次に、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国との関係改善について伺います。  冷戦構造が崩壊して十年たちましたが、期待とは裏腹に、世界の各地では地域紛争が続き、東アジアにおいても朝鮮半島をめぐる情勢は予断を許さないものがあります。  昨年来、テポドン発射などで日朝間の緊張は著しく高まりましたが、そうした情勢の中で、昨今、南北間の新たな交流の動きが出始め、またアメリカ、韓国の柔軟な対応姿勢が出てきております。そして、このほど超党派による村山訪朝団が北朝鮮を訪問することになりました。きょう出発したようでございます。今後の両国の関係改善につながる環境づくりとして大いに意義あるものと期待しております。  しかしながら、二十一世紀に向けた両国の関係を確固たるものにするためには、政党レベルや民間レベルの努力だけではなく、政府の継続的かつ強力な取り組み努力が不可欠であります。そうした意味から、総理の日朝関係改善に向けての御決意のほどをお伺いしたいと思います。  最後になりますが、小渕・自自公連立政権に決定的に欠けているもの、それは将来へのビジョンと責任ではないでしょうか。とりわけ小渕政権の経済運営は、予算のばらまき、財政規律の欠如、将来世代へのツケ回しといった言葉に特徴づけられます。そのために、既に破綻したと言っても過言ではない財政の再建策も示されておりません。  一方で、東海村の臨界事故、神奈川県警の不祥事、商工ローン問題等々、これらに代表されるモラルハザードが世の中に蔓延しているのは、政治の世界の現状と全く無縁ではありません。  国民の正当な信託を得ていない小渕・自自公連立政権は、直ちに衆議院を解散し、国民に信を問うべきであることを強く訴え、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  43. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 藁科滿治議員にお答え申し上げます。  まず、今年度のプラス成長の達成についてのお尋ねがありました。  我が国経済再生の道筋の中で、今年度は、三年連続の実質マイナス成長を何としても回避し、はっきりとしたプラス成長へ転換する年と位置づけ、本格的な経済回復に向けてまさに正念場であるとの認識のもと、プラス成長を確実にすることに向け不退転の決意で取り組んでまいったところであります。  これら各般の政策は着実に成果を上げつつあり、我が国経済は、実質経済成長率で見て五四半期連続のマイナス成長から二四半期連続のプラス成長となるなど、今年度は当初政府見通しの実質〇・五%程度の経済成長を達成し得る見込みであります。  政府といたしましては、経済新生対策の強力な推進を図ることによりまして、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、我が国経済を本格的な回復軌道に乗せていくよう努めてまいります。  経済運営が不適正ではないかとのお尋ねがありました。  私は、就任以来、内閣の命運をかけ、我が国経済を回復軌道に乗せるという決意のもとで今日まであらゆる手段を講じてまいりました。例えば、十一年度当初予算におきまして、景気回復に全力を尽くす観点からいわゆる十五カ月予算の考え方のもとに編成を行い、さらに、その後の厳しさを増す雇用情勢に適切に対応すべく第一次補正予算を編成したところであります。  このように、その時々の経済社会情勢を的確に見きわめ、適切な措置を講じてまいりました。これらの政策効果の浸透に加え、アジア経済の回復などの影響もあって、我が国経済は、民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱しておりませんが、緩やかな改善を続けており、これまで政府を挙げて取り組んできた経済財政政策に御理解をいただいたものと考えております。  ここで重要なことは、経済を本格的回復軌道につなげていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築き、未来に向け経済を新生させることであります。こうした観点から、先般経済新生対策を決定したところであり、本対策実施するために必要な経費を計上した第二次補正予算の御審議を今お願いいたしておるところであります。  経済新生対策中の公共事業の効果についてでありますが、公共事業につきましては何をもって旧来型と新型とを概念上区別するかは定かではありませんが、社会資本の整備に当たりましては、経済社会のニーズに的確に対応していくことは極めて重要なことと考えております。  また、九〇年代に入りまして以降、累次の経済対策を講じてきたところでありますが、これら対策による公共投資の増加につきましては、バブル崩壊後の民需の落ち込みを相殺する形で、景気がスパイラル的に悪化していくのを防止し、その下支えに貢献してきたものと考えております。  今回の経済新生対策の取りまとめに当たりましては、従来の概念や計画省庁の枠組みにとらわれない新たな構想と目標を策定し、投資効率と利用者の使いやすさを考えたハード、ソフト、制度改革の実施に最大限配慮してきており、社会資本整備につきましては、二十一世紀の新たな発展基盤を築くため、情報通信、科学技術の振興、生活基盤充実強化、少子高齢化、教育、環境特別対策といった分野を中心に整備を進めることといたしております。  政府といたしましては、本対策の強力な推進を図ることにより、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、我が国経済を本格的な回復軌道に乗せていくよう努めてまいりたいと考えております。  特別保証制度について御指摘をいただき、かつお尋ねがありました。  昨年来の信用収縮の状況下では、競争力のある中小企業ですら資金繰りがつかず危機に瀕したのであり、そうした緊急事態対応する臨時異例の措置として本制度は大きな効果を上げていると認識をいたしております。  保証枠を十兆円追加することといたしましたのは、セーフティーネットとしての本制度趣旨に照らし、今後の資金需要に十分対応し得る規模を確保するためであり、また、政府がそうした姿勢を示すことで中小企業者に安心感を与えるという心理的効果も期待しております。こうしたセーフティーネットの整備は、新中小企業基本法のもとでも重要な政策の柱であると考えております。  中小企業のやる気を支援する政策について、御質問いただきました。  経済新生対策におきましては、日本経済の源泉として、また、地域経済の基盤的存在として中小企業を振興することといたしております。今国会では、中小企業基本法の改正法案を既に成立させていただきましたが、資金、組織及び技術の面から、中小企業の事業活動を活性化するために関係する法律改正を図りたいと考えております。補正予算に計上した措置を含めて、中小企業・ベンチャー振興のための施策は真に効果のあるものと考えております。  税制に関しては、景気の本格的回復と新たな発展基盤の確立を目指す観点から、中小企業・ベンチャー企業支援に資する措置等、真に有効かつ適切な措置について検討を行い、結論を得たいと思っております。  直接金融市場に関しましては、個人金融資産のより有利な運用の道を開くとともに、中小・ベンチャー企業や次代を担う新規産業への円滑な資金供給を実現するため、店頭登録市場、未公開市場、取引所市場に係る証券市場の抜本的、総合的改革を着実に推進いたします。  商店街につきましては、今後、高齢化社会の到来のもと、高齢者等の身近な購買機会や交流の場を提供するという役割が重要であり、政府としても支援に努めたいと考えております。  最後に、独占禁止法や下請関連法制の厳格化に関しましては、今後とも関係法律の適正な運用に努めてまいります。  次に、介護保険を社会保険制度で運用する意義と目的についてのお尋ねでありました。  社会保険方式は、給付と負担の関係が明確であり、介護保険法もこれを踏まえたものと考えます。  なお、与党三党で、介護にかかる財源及びそのあり方につきましては実施状況を見ながら協議するとされておりますので、その結果を踏まえて適切に対応してまいります。  高齢者保険料対策についてのお尋ねがありました。  今回の一連の対策は、介護保険法の円滑な実施のために総合的な対策を講じるためのものであります。まずは要介護認定が始まって一年間が経過する十二年九月末までは、国民が新しい制度のもとで要介護認定手続や新しい介護サービスの利用方法になれ、介護サービスを制度趣旨に沿って円滑に利用できるようになるまでは、いわば制度の本格的スタートに向けての助走期間と位置づけ、高齢者の保険料を徴収しないことができるような措置を講ずることといたしたものであります。また、半年が過ぎた平成十二年十月から一年間については、高齢者の保険料を経過的に半分に軽減し、高齢者に新たな負担になれていただくよう配慮することとしております。  このような激変緩和を図ることにより、制度の定着を図り、また、市町村における保険料徴収の円滑化を図ることとしたものであります。  なお、今回の交付金は、基本的には高齢者の保険料軽減やこの措置のために必要なシステム改修費等の準備経費などに充てられるものと考えております。  医療保険者対策についてのお尋ねでありましたが、今回の対策は、高齢者の保険料について特別な措置を講ずることにも配慮して、全体として新たな負担の増加を抑えるため、従来より負担増となる額の一年分を手当てし、個々の保険者の実情を酌み取りつつ財政支援を行うものであります。  また、医療制度の抜本改革に関するお尋ねでございましたが、政府では、現在医療制度の全般にわたり見直しを行っているところであり、個別具体的に制度改正案の検討を急ぎ、改革の実現に向けて最大限努力をいたしてまいっております。  さらに、介護、年金、医療などの社会保障全体の将来像についてでありますが、政府としては、有識者の皆様に御参加いただき、議論の場を設けることとしており、社会保障のあり方について制度横断的な議論を進めてまいりたいと考えております。  次に、企業・団体献金についてのお尋ねでありましたが、企業、労働組合等の団体献金につきましては、平成六年の改正法附則により施行後五年を経過した場合の取り扱いについて定められているところであります。  既に政治家個人に対する企業・団体献金については、附則第九条の指し示すところに従い、これを受け取らない旨の判断を下しており、これをもとに三党派で協議を進め、所要の法案を提出させていただきたいと考えております。  政党及び政治資金団体に対する企業・団体献金につきましては、附則第十条において、法の施行後五年を経過した場合において、そのあり方について見直しを行うものとするとされているところであり、まずは与党内さらに各党各会派における御論議を見守ってまいりたいと考えております。  衆議院議員の定数削減についてのお尋ねでありましたが、この問題につきましては自民、自由、公明三党間で合意がなされ、十一月十九日に、比例代表定数を当面二十人削減することを内容とする修正案が三党より国会に提出されたところであります。  また、この修正案では、平成十二年に行われる国勢調査の結果により、速やかに衆議院議員の定数を四百五十人とするため小選挙区選出議員の定数を中心に削減する措置を講ずるものとされております。  国会議員の定数のあり方につきましては、議会政治の根幹にかかわる問題でありますので、各党各会派において十分議論を深めていただきたいと存じます。  選挙制度改革についてのお尋ねであります。  永住外国人の地方選挙権付与の問題につきまして、自民、自由、公明三党間の合意を受け与党内で協議が行われているところでありますので、その推移を見守ってまいりたいと考えております。  衆議院小選挙選挙で法定得票数に達しなかった重複立候補者の比例代表名簿からの削除等、現行の衆議院議員の選挙制度の問題点の改正については、現在、与党三党において協議しているところであります。  いずれにいたしましても、この問題については各党各会派においても十分御議論を深めていただきたいと存じます。  最後に、日朝問題についてお尋ねがございました。  本日、出発をされました村山訪朝団には、日朝当局間の本格的な対話の場を構築するための環境整備をしていただくことを強く期待いたしております。政府としても、抑止と対話のバランスをとりつつ対応するとの方針のもと、日朝が互いに前向きの対応を取り合い、もって日朝関係を改善していくことができるよう努めてまいる考えであります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  44. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 国債の増発が続く中で、景気の回復がどうも一向にはかばかしくないではないかというおしかりでありました。  小渕内閣発足以来、何とかこの苦境打開をいたしたいと思っております。幾らかは最悪の時期は脱したという思いはありますけれども、しかしこれもおっしゃいましたように、個人消費はやはりまだ下がっておりますし、設備投資も、これも浮かんできませんで、したがって民需はやはりどうも決して強くないと申し上げざるを得ないので、そうなりますと、この補正予算、もう一度来年の本予算、このところまでは財政がやはり総力を挙げなければならないという気持ちでおりまして、大きな経済でございますから十分予測はできませんけれども、その結果としてある段階で民需にバトンタッチをしたいと、こういうことをこいねがっているわけでございます。  税収で申しますと、来年度の予算はまだ編成途次でございますが、いろいろなことを見ますと、多少来年度の税収はプラスが出るかもしれない。マイナスもございますが、差し引いて多少プラスがあるかというふうに見込んでいまして、その辺から経済が回復し、財政も少しずつ回復するというふうに、とにかくひとつお認めをいただきました予算を精いっぱい有効に執行いたしたいと考えております。  それから、円のことにつきましてお話がございまして、ここに参りまして、おっしゃいますように非常に円の上昇が急でございます。ことしの二月ごろには百二十円ぐらいでありましたわけですから、この百飛びになりましたのは大体九月ごろからでございまして、九月ごろからずっと百飛びという傾向が続いております。  これも申し上げるまでもありませんけれども、日本の経済が回復を始めているということについて、そうには違いないと思いますが、多少海外はそこをやや過剰に、過大に考えている嫌いもあると思いますし、それから株式が上昇し始めておりますので、そのために円の需要があるというようなことがありまして、これらはそれ自体では悪いことではないと思いますけれども、余り過大になりますとせっかく我が国が成長に戻ろうとしているところの邪魔になります。また、企業からいいましても、二月ごろには百二十円であったということになりますと、今の水準はいかにも企業の経営としては急でつらかろうというふうに思われます。  したがいまして、昨今のように市場がやや投機的な動きをいたしますときは、これは政府としても当然にそういう動きに対処しなければならないと考えておりまして、また対処いたしつつございます。  背景にはそういうことがございますので、そういう動きをできるだけ緩和しながら対応していかなければならない、こういうふうに考えておりまして、余り十分なお答えではございませんけれども、そういうことで考えております。(拍手)    〔国務大臣二階俊博君登壇拍手
  45. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 藁科議員にお答えをいたします。  我が国は、高齢化、国際化といった内外の情勢の急激な変化に伴い、国全体が大きな構造改善をなさなくてはならない事情に見舞われております。それを克服するためには、社会のあらゆる面で構造改革を国民皆さんの御理解をいただきながら積極的に進めていくことが強く求められている今日であります。  与党三党が定数削減法案を提出しておりますのも、かかる状況にかんがみ、国民の代表である国会議員みずからが改革の先頭に立って、その範を示すことが重要であると考えるからであります。  今回の自自公の政権協議において、さきの国会に提出した定数削減法案について、国民に約束したとおり、衆議院の定数は五十人削減する、しかし激変緩和のため、まずは比例定数の一割である二十人を削減することとし、残余の三十人については、総理御答弁のとおり、来年の国勢調査の結果により小選挙区定数などを中心に対処することで合意に達し、三党で修正案を提出するに至ったのであります。  連立政権という性格上、自由党の固有の政策を一〇〇%実現することが困難なことは当然であり、各党はみずからの理想とする政策の実現に一歩でも近づく努力を行っているのであります。  しかし、今回の修正案においては、衆議院議員の定数を五十人削減するという基本はいささかも変わってはおりません。公党に対し、変節したという指摘はいささか適当ではないのではないかという思いはありますが、この際改めて申し上げます。自由党が変節したということは全くありません。  なお、自由党は、選挙制度について最終的には衆議院の定数を小選挙区のみで四百人にすることを目指しております。当面は現行の小選挙区比例代表並立制を維持しながら、現在各党間で協議が行われているところであり、その推移を見守っていきたいと考えております。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣続訓弘君登壇拍手
  46. 続訓弘

    国務大臣(続訓弘君) 藁科滿治議員にお答え申し上げます。  衆議院の定数削減を含めた選挙制度についてのお尋ねでございました。  衆議院の選挙制度につきましては、公明党は中選挙区に制度改革する中で五十名削減するという案を発表しております。  連立政権発足に当たり、自民、自由、公明三党間の協議により、「衆議院議員の定数については五十名の削減と、うち二十名については次期総選挙において比例代表選出議員を削減することを内容とする公職選挙法の改正を次期臨時国会冒頭において処理する。残余の三十名の削減については小選挙区定数などを中心に対処することとし、平成十二年の国勢調査の結果により所要の法改正を行う。」との合意がなされたところであります。三党の合意においては、衆議院の定数を五十人削減するという私どもの主張の根幹は維持されております。  いずれにせよ、議員定数を初め衆議院議員の選挙制度のあり方につきましては、議会政治の根幹にかかわる重要な問題でございますので、各党各会派において十分議論を深めていただきたいと存じます。(拍手)     ─────────────
  47. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 尾辻秀久君。    〔尾辻秀久君登壇拍手
  48. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 私は、公明党自由党及び自由民主党を代表して、宮澤大蔵大臣の財政演説に対し、総理及び関係閣僚に質問をいたします。  総理は、ASEAN・日中韓首脳会議に参加され、息つく間もなく首脳外交を展開され、大変御苦労さまでありました。  我が国の経済は、株価の上昇に象徴されるように明るさが見えてまいりました。他方、今まで世界経済の牽引役であったアメリカ経済は、株価は依然高水準であるもののインフレの芽が出始めており、経済活動が曲がり角に来ているとの見方も出ております。ただ、幸いなことに、ここに来て欧州諸国の経済活動が活発になり始め、アジア経済も回復基調を強めています。  総じて言えば、アメリカ一極体制から日米欧の三極体制へと世界経済の展開軸が移行しつつあると言えます。すなわち、世界経済の安定的な体制が構築されつつあるということであります。  この三極体制をさらに万全ならしめるためには、二つのことが必要であります。  一つは、我が国自体が自助努力により経済活力、体力を一刻も早く正常な状態にまで回復することです。もう一つは、アジア諸国に対し、経済、金融面での貢献を強化拡充して、アジア経済の成長軸になることであります。  折しも、ASEAN・日中韓首脳会議では、経済を中心とする協力が強く打ち出され、総理は、人材育成、中小企業の育成のための支援について積極的な提案をされました。  このような中で、今回の第二次補正予算は、我が国経済の新生はもちろんのこと、世界経済の安定基盤を確固たるものにするために重要なものと認識します。  そこで、まず総理に、今後の世界経済をどのように展望しておられるのか、その中で日本はいかに役割を果たしていくべきとお考えか、お尋ねをいたします。  経済新生対策と財政についてお伺いします。  我が国経済を公需から民需へのバトンタッチを図り、本格的な自律回復軌道に乗せるための経済新生対策が先月の十一日に決定されました。  私は、この対策政治主導で策定され、質量ともに知恵の時代にふさわしい内容になっているものと高く評価します。総理が所信表明で言われたような「はっとする新しさ」を持つ対策を今回の補正予算でどのように打ち出されたのか、具体的にわかるようお話しください。その対策を実効あるものにするための取り組みについても、総理の御決意をお伺いします。  この経済新生対策基本に編成された平成十一年度の第二次補正予算は、社会資本整備、中小企業等金融対策を初め、住宅金融、雇用対策等々、総事業費が十七兆円、さらに介護対策を含めば十八兆円程度にも及び、予想以上に大きな規模になりました。一方、歳入では、十一年度の国税収入の不足も含め、結局七兆五千億円以上の国債の追加発行ということになりました。財政の健全化も重要な課題ではありますが、今はまだアクセルを踏み続けなければならない経済状況にあります。今回の補正予算によって景気が反転軌道に乗り、力強い成長回復過程に入れるものと期待いたします。  景気回復のための積極的な財政出動は、この十五カ月予算をもって一応のめどがつくと判断しておられるのか、十二年度予算の編成方針とあわせ、財政運営の基本方針について大蔵大臣のお考えをお伺いします。    〔議長退席、副議長着席〕  補正予算に計上されている三兆五千億円の社会資本整備についてお伺いします。  経済新生対策は、社会資本整備などの発展基盤の整備は、新規性、期待性、訴求性を持つものを、施策の目標と全体像と目標年次の明示に極力努めることにしたと記しております。このような視点から、今回の補正予算に盛り込まれている社会資本整備が従来の概念や計画省庁の枠組みをどのように打ち破ったものなのか、またどのような効果が期待できるのか、経済企画庁長官にお尋ねいたします。  公共事業は、事業必要性から始まって、計画、環境影響調査、予算措置、用地買収等々、事業化までには相当の時間とエネルギーを必要とします。地方公共団体の財政は、国と同じように非常に厳しい状況にあります。  地方の時代にふさわしい公共事業や地方単独による景気対策事業を行うためには、地方財源問題が大きな障害となっております。速やかな事業執行と財源措置についてどのように考えておられるのか、自治大臣にお伺いします。  雇用対策についてお尋ねします。  完全失業率が四・六%とやや改善しましたが、景気回復のおくれや大企業のリストラによって雇用情勢は相変わらず厳しい状況にあります。  特に、新卒者の就職が最悪の状況にあるということは深刻な社会問題であります。日本の将来を担っていく若者が社会に巣立っていこうというときに、何十社回っても就職のめどがつかないということはまことにゆゆしき問題であります。  雇用関係指標は景気の遅行指数と言われますが、このような情勢が改善されなければ消費の本格的な回復は望めません。既に政府は六月に緊急雇用対策を決定し、計七十万人を上回る雇用創出策を打ち出しました。今回の補正予算には、中小企業の創業支援や雇用の受け皿としてモデルになる中小企業に対して積極的に支援する等、新たな対策が盛り込まれています。この際、全閣僚が横断的に協力し合い、地方公共団体や経済界も含めて総力を挙げて雇用創出に取り組むべきであります。その取り組みの体制について総理に伺います。経済界の雇用維持、就労機会の提供等について各方面にどのように要請されるのかお伺いします。  小渕第二次改造内閣が発足して約二カ月になります。この間、厳しい状況も重なりましたが、経済関係の各指標も明るい見通しを示すところまで参りました。  今こそ自自公連立政権が、この難しい歴史的大転換期に経済対策を初め危機管理や諸改革に政治主導により真剣に取り組み、実績を上げていく姿を国民に見てもらわなければなりません。総理の御決意をお聞かせいただき、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  49. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 尾辻秀久議員にお答え申し上げます。  グローバルな経済観の中で日本経済が世界経済に果たすべき役割についてまずお尋ねがありました。  世界経済では、アメリカ経済は先行きに不透明感も見られるものの、景気は拡大を続けており、また、ヨーロッパ経済も緩やかに改善してきておると考えております。一方、我が国経済は、各種の政策効果の浸透などにより緩やかな改善が続いておりますが、しかし民間需要に支えられた自律的回復には至っておりません。  このような状況のもとで、政府としては、景気の本格的回復と新たな発展基盤の確立を目指すため、先般、経済新生対策を取りまとめたところであります。  我が国経済の本格的回復は、アジアひいては世界経済にとって重要と認識をいたしておりまして、経済新生対策を初め必要な諸施策を強力かつ機動的に推進することにより公需から民需への円滑なバトンタッチを図り、民需主導の本格的回復軌道に乗せていく必要があるものと考えております。  経済新生対策と今回の補正予算の関係及び今後の取り組みについてのお尋ねがありました。  私は、今回の経済新生対策を新規性、期待性、訴求性、すなわち、はっとする新しさを持ち、国民の期待にかない、内外にわかりやすく訴える魅力のあるものとし、そのため対策の取りまとめに当たっては、従来の概念や計画あるいは省庁の枠組みにとらわれない新たな構想と目標を設定し、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的回復軌道に乗せていくとともに、構造改革を強力に推進し、二十一世紀の新たな発展基盤を築くことに重点を置いたところであります。  第二次補正予算におきましては、この対策を実現するために必要な措置といたしまして、社会資本整備費について、情報通信・科学技術の振興、生活基盤の充実強化、少子高齢化・教育・環境特別対策といった分野を中心に総額三兆五千億を計上しているのを初めとして、我が国経済のダイナミズムの源泉である中小・ベンチャー企業への資金供給を円滑化すること等を目的として中小企業等金融対策費七千億円余りを計上するなど、将来の新たな発展基盤の確立に不可欠な分野に重点的に配分を行っております。  政府は、本対策を初め、必要な諸施策を強力かつ機動的に推進することによりまして、公需から民需への円滑なバトンタッチを図り、我が国経済を民需主導の本格的回復軌道に乗せていくよう努めてまいります。  雇用創出への取り組み体制についてお尋ねがありましたが、政府といたしましては、地方公共団体の創意工夫に基づき、臨時応急の雇用就業機会の創出を図る緊急地域雇用特別交付金の創設等、雇用機会の創出を最大の柱とする緊急雇用対策の着実な実施に取り組んでいるところであります。  さらに、今般策定をいたしました経済新生対策におきましては、雇用不安を払拭しつつ、我が国経済を早急に本格的回復軌道に乗せること等を目指しまして、中小企業の雇用の創出・安定対策を初めとする各種の施策を盛り込んでおり、政府一体となってこの施策の推進に全力で取り組んでまいる所存であります。  また、企業や経営者団体に対しては、機会をとらえて従業員の雇用の安定に向けての最大限の努力を求めるとともに、必要な指導、援助を行うなど、雇用の安定に万全を期してまいります。  最後に、経済対策危機管理などに政治主導で真剣に取り組み、実績を上げていくべしとの強いお励ましの上で、決意についてのお尋ねがありました。  私は、安定した政局のもとで、三党派が互いに切磋琢磨し、政策を練り上げ、相協力して実行に移していくことが国民や国家のためであると確信し、連立内閣を樹立したところであります。この信念に立ち、経済新生、危機管理等への力強い取り組みを進め、必ずや国民の皆様に御納得いただけるような成果を上げ、その信頼と期待にこたえる決意であります。改めて議員各位の御支援と御協力をお願い申し上げる次第であります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  50. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの御質問の御趣旨は、確かに景気は多少回復してきたように思うが、しかし民需は必ずしも強くないし、また雇用のことはさらにリストラに従って心配も多い、したがって、政府がこの補正予算においてさらに財政刺激措置をとること、あるいはそのような方針で来年度の予算編成にかかっていることには基本的に賛成であるが、しかしかなり国債も多くなってきているので、これからの財政の展望というものをどう考えるのかと、こういう御趣旨お尋ねでありました。  それで、確かに民需が弱うございますので、この補正と来年度予算はやはり一生懸命その刺激策をやらせていただきたい、これで大体もう民需の軌道に入るようにいたしていきたいということを念願してやっておるわけでございます。  そこで、国債、歳入との関連でございますが、来年度の歳入につきまして、先ほど一部ちょっと申し上げましたけれども、来年度の予算は、今まだ査定の途中で全体のピクチャーがよく見えませんけれども、大きな展望でいいますと、幾つかの特殊要因もございますけれども、税収の方で多少のプラスが出るのではないかというふうに見ております。マイナスの要因もありますけれども、プラス・マイナスでちょっとプラスが出るんではないか、そういう意味では、長年の税収が減ってまいりました展望から多少変化が生まれるのではないかという気持ちを持っております。  そこで一般歳出は、まあまああれこれ大まかにはわかりますので、多少そういう財政のときにいろいろな金融関係の秩序をこの際安定しておくという問題が残っておりますわけですから、殊にいわゆるペイオフ、従来の制度を改めるという問題が先々あることもございますから、そこから国民が不安を感じられないようにということもあって、金融の安定を資金的にも予算的にも多少厚くしておいた方がいいという問題が、これは金額的にはやや大きいものでございますから、ございますような状況で、歳入の状況でいいますと、幾らか従来の傾向が変わってくるのではないか。急に大きくというわけにはまいりませんけれども、展望としてはそういう展望を持っております。(拍手)    〔国務大臣堺屋太一君登壇拍手
  51. 堺屋太一

    国務大臣(堺屋太一君) 今回の経済新生対策には二つの目的がございます。  第一は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せる。第二は、構造改革を強力に推進し、新たな発展基盤を築く。この二つでございます。  この経済新生対策の実現のために編成されました今回の第二次補正予算におきましては、第一の目的であります景気対策のために、予算規模で三兆五千億円、総事業費で六兆八千億円に及ぶ公的投資を実施することになっております。これで今後一年間の波及効果を短期日本経済マクロ計量モデルの乗数を用いて計算いたしますと、実質でGDPが一・六%程度上昇すると見込むことができます。  次に、お尋ねの構造改革の点でございますが、従来の概念や計画省庁の枠組みにとらわれずに新たな構想と目標を設定し、投資効率と利用者の使いやすさを考えた、ハード、ソフト、制度改革を同時に実施するように最大限の配慮をいたしました。  その例として一、二挙げさせていただきますと、例えば情報技術の条件整備でございますが、二〇〇一年度中には全部の公立学校にインターネットを結ぶようにする予定でございまして、二〇〇五年には全国に光ファイバーネットワークを完備することを明確な目標として掲げております。こういったことも、郵政省、文部省、自治体の枠組みを超えて御協力いただいたからできたものと思っております。  また、町づくりでは、これまで住宅地と商工業の集積地域を分けるという方向でございましたが、高齢者や男女共働きの御家庭にも暮らしやすく、住宅、職場、商店、あるいは文化施設、介護施設、そういったものが歩いて暮らせる範囲内でつくれるような、そういったモデルを募集する予定でございます。これも、建設省、通産省、運輸省、厚生省、文部省、警察等々の枠組みを超えて考えたのでできたことでございます。  その他、たくさんの新構想や技術開発プロジェクト、ミレニアム・プロジェクトなどが第二次補正予算には盛り込まれているところであります。これらが金融改革あるいは中小企業基本法の改正などと相まちまして、日本経済全体の構造改革を実現するものだと確信しております。(拍手)    〔国務大臣保利耕輔君登壇拍手
  52. 保利耕輔

    国務大臣(保利耕輔君) 尾辻議員にお答えを申し上げます。  今回の経済新生対策に係ります追加公共事業の円滑な執行を確保するため、地方財政の運営に支障が生じないよう、その地方負担分につきましては全額を地方債で措置し、その元利償還金の全額について後年度の交付税で措置することといたしたところでございます。  また、今後の地方単独事業につきましても、景気対策のための地方債の弾力的運用などの支援措置を講じまして、その着実な推進を図ることといたしております。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  53. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 宮本岳志君。    〔宮本岳志君登壇拍手
  54. 宮本岳志

    ○宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、さきの財政演説に対し、総理並びに大蔵大臣に質問いたします。  財政演説で大蔵大臣は、我が国経済の現状を、緩やかな改善が続いており、景気は最悪期を脱しているなどと述べましたが、我々がこの目で見、肌で感じる国民生活の実態は到底そんなものではありません。だからこそ、あなた方も、それに続けて、しかしながら消費は低迷し、殊にリストラが雇用に与える影響を考えると、消費が持続的に回復する状況には至っておらず、経済の自律的回復のかぎを握る民需の動向は依然として弱いと認めざるを得ないのではありませんか。  自律的回復の展望が見えないと言いながら、何をもって景気が最悪期を脱し緩やかな改善を続けていると言うのか、総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。  経済の自律的回復と言うなら、個人消費と民間設備投資、とりわけ中小企業の設備投資こそ、そのかぎを握るものであります。ここにこそ対策のかなめがあります。  ところが、今回の補正予算は、この景気回復の二大主役への対策はなく、またもや公共事業の追加であります。しかも、その公共事業内容は、船が入港せず釣り堀となっているような港湾の整備や、無責任きわまる採算予測に基づく中部国際空港など、大型プロジェクトが並んでいるのであります。また、長銀や日債銀などの破綻処理の穴埋めのために、一般会計から九千億円余りをつぎ込み、NTT株の売却益九千億円余りと合わせ、実に一兆九千億円近くも投入するというものであります。  総理、これでは従来型、銀行・ゼネコン奉仕型の予算の上積みであり、あなた方の言うような公需から民需への円滑なバトンタッチの保証など、何もないではありませんか。総理の答弁を求めます。  国債大増発に頼った公共事業の上積みが景気回復に役立たないことは、一九九二年以来の八回にわたる経済対策で実証されています。もはやゼネコン奉仕型の景気対策はきっぱりとやめるべきではありませんか。答弁を求めます。  民需中心の本格的な景気回復を目指すと言うなら、まず第一に、国民のリストラへの不安、雇用不安を解消し、個人消費の拡大を確かなものにする対策こそ先決であります。  現在の雇用情勢は、政府の経済失政による不況の深刻化に加えて、労働省の調査でも四十一社で十四万人、その後の日産やNTT、三菱自動車など、ますます大規模化するリストラによって一層重大化しています。これらのリストラは、新たな失業者を生み出すばかりでなく、地域経済に深刻な打撃を与え、さらにこれから社会に巣立とうとする若者たちの就職機会をも奪っているのであります。  総理、あなた方の雇用対策の最大の問題は、このリストラに対して何の規制も行わないこと、法的規制になじまないなどと言って野放しにしていることであります。  今、財界の中からでさえ、首を切るなら経営者が腹を切れという厳しい批判の声や、ワークシェアリングによってでも断固雇用を守れとの厳しい声が上がっていますが、雇用問題をどうするかは、労働者の暮らし、雇用を守るだけにとどまらず、まさに日本経済の再生、発展にもかかわる大問題であります。むやみなリストラは、企業にとっても人的資源を失い、将来の発展の芽を摘むことにもなりかねません。  今回、政府は、リストラされた労働者を雇う企業への奨励金などの雇用対策を設けています。これ自体は必要なものですが、大もとにあるリストラ計画の撤回や縮小などの見直しを政府責任でやらせないのでは、それは結局、リストラ推進のための受け皿づくり、環境整備になってしまうのではありませんか。  総理、今あなたがやるべきことは、リストラ計画に対して、企業任せではなく、日本経済の根幹にかかわる問題として政府責任規制を行うこと、そして分社化など企業組織の改編に当たって、雇用と労働条件を守るためのルールを確立すること、さらにはサービス残業の根絶で雇用を拡大することではありませんか。答弁を求めます。  そして、雇用対策と並んで国民が強く求めているのが消費税の減税です。先日発表された日銀のアンケート調査では、どのようなことが実現すれば支出をふやすと思うかとの問いに、消費税の引き下げが四九・五%とトップを占めています。  まさに消費税の減税は緊急の課題です。日本共産党は本国会に消費税減税法案を提案していますが、総理、今こそ速やかに、そして真剣に検討すべきではありませんか。総理の明確な答弁を求めるものであります。  次に、国民の介護と老後の不安にどうこたえるかであります。  補正予算には介護保険の保険料の徴収猶予のための九千億円が含まれています。しかし、恒久的な措置なしにただ当面徴収を延期するだけでは、問題を先送りすることにしかなりません。総理も、保険料は問題なしとしないと述べられていますが、猶予期間が終わった後の低所得者の救済はどのようにするのか、総理の答弁を求めます。  次に重要な問題は、徴収を延期している間にやるべきことは何なのかということであります。保険あって介護なしという状態になることへの国民の不安と怒りは強いものがあります。政府がそのことに気づいたというなら、少なくとも徴収猶予期間の終わるまでには必要な介護サービスができるようにするのが当然の責任ではありませんか。  ところが、補正予算に盛り込まれている五百十三億円の介護基盤整備費は、特別養護老人ホーム五千人分と老人保健施設四千人分でしかありません。厚生省の調査でさえ在宅待機者が四万七千人とされているもとで、これでは焼け石に水と言わなければなりません。総理、これを一体どう解決するのか、明確な答弁を求めます。  今最も緊急を要することは、介護基盤の整備費を抜本的に増額することではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。  最後に、財政危機への対応についてであります。  本補正予算によって今年度の国債発行額は三十八兆円を超えて過去最高となり、国債依存度は四三・四%と最悪の借金財政となります。そして、この額は地方交付税を除いた国の税収見込み額を戦後初めて上回ります。つまり、政府事業をするための最大の財源が税収ではなく借金となることになり、国家財政はまさに危機的状態であります。それにもかかわらず総理は、財政構造改革は経済の回復が本格的な軌道に乗った段階でなどと、問題を先送りする答弁を繰り返し、余りにも無責任であります。  では総理、将来景気回復が軌道に乗った段階が来たとして、これほど危機的な事態に陥った財政をどうやって再建するというのですか。政府税調の加藤会長は、十一月十九日、消費税を一〇%にと発言しました。結局、財政破綻のツケ払いは消費税増税という形で最も弱い立場国民にかぶせるなどということは、断じて容認できません。総理、はっきりとお答えいただきたいのであります。  さらに重大なのは、調整インフレ論がまたもや頭をもたげ、日銀に国債を引き受けさせようという声が高まっていることであります。国債の日銀引き受けの行き着く先は、歯どめのないインフレーションです。  総理、国債乱発によってかつての戦争が遂行され、戦後、貨幣価値の暴落によって国民が塗炭の苦しみをなめたという痛苦の教訓に基づいて、国債の日銀引き受けを禁じた財政法第五条がつくられたことは常識ではありませんか。返済の見通しもない国債の乱発、あげくの果てには日銀の国債引き受けをもたらすような補正予算は、政府みずからの責任で撤回すべきであります。総理の明確な答弁を求めます。  この危機的な状況を打開する道は、我が党が主張してきたように、社会保障に二十兆円、公共事業に五十兆円という財政構造の逆立ちを正して、国民本位の財政運営に抜本的に切りかえる以外にはありません。  消費税の増税も調整インフレ政策も、どちらもまさに亡国への道である、このことを厳しく指摘して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  55. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 宮本岳志議員にお答え申し上げます。  まず、日本経済の現状についてのお尋ねがございました。  日本経済は、本年に入って二四半期プラス成長が続き、その後も鉱工業生産の増加などが見られ、景気は緩やかな改善が続いております。ただし、これは主として各種の政策効果の浸透と輸出の増加に下支えされたものであり、個人消費や設備投資など民間需要の回復力はまだ弱いと考えております。景気を本格的回復軌道に乗せていくため一層の努力を行う必要があると考えております。  経済新生対策及び補正予算における公共事業の効果についてのお尋ねがありました。  政府におきましては、九〇年代に入って以降、累次の経済対策を講じてきたところでありますが、これら対策による公共投資の増加につきましては、バブル崩壊後の民需の落ち込みを相殺する形で、景気がスパイラル的に悪化していくのを防止し、その下支えに貢献してきたものと考えております。  第二次補正予算におきましては、経済新生対策を実現するために必要な措置として、社会資本整備費について、情報通信・科学技術の振興、生活基盤の充実強化、少子高齢化・教育・環境特別対策といった分野を中心に、総額三兆五千億を計上しております。また、我が国経済のダイナミズムの源泉である中小・ベンチャー企業への資金供給を円滑化すること等を目的として中小企業等金融対策費七千億円余りを計上するなど、将来の新たな発展基盤の確立に不可欠な分野に重点的な配分を行うとともに、国民生活に直結した雇用対策や介護対策についても必要な措置を講じております。  政府は、経済新生対策を初め必要な諸施策を強力かつ機動的に推進することにより、公需から民需への円滑なバトンタッチを図り、我が国経済を民需主導の本格的回復軌道に乗せていくよう努めてまいります。  大企業のリストラに関するお尋ねがありました。  リストラは企業の経営にかかわる問題であり、御指摘のようにリストラに対する規制を設けることは適当ではないと考えます。  政府としては、企業や経営者団体に対して、従業員の雇用の安定に向けての最大限の努力を求めるとともに、雇用の安定等の面から必要な指導、援助を行うなど雇用対策に万全を期してまいります。分社化等の企業組織変更に伴う労働関係上の諸問題につきましては、労使間で十分話し合うことが基本であると考えております。いわゆるサービス残業については、的確な監督指導を実施し、その是正に努めてまいります。  次に、消費税減税についてお尋ねでありましたが、消費税率の引き上げを含む税制改革は、少子高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものであり、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えます。消費税に限らず税は低い方がいいという面はありますが、税財政のあり方を考えるとき、消費税率の引き下げは困難であり、この点、国民皆さんに御理解をいただきたいと存じます。  低所得者に係る介護保険料の取り扱い及び介護サービスの基盤整備についてお尋ねでありますが、介護保険制度においては、低所得者の方にも配慮し、所得段階別に保険料を設定することとしております。また、特別養護老人ホームを初めとする介護基盤の整備を引き続き推進し、サービスの確保に努めてまいります。  次に、我が国の財政状況に対する認識及び財政再建の見通しについてのお尋ねがありました。  我が国財政は、公債依存度が第二次補正後四三・四%、十一年度末の国、地方の長期債務残高が六百八兆円にも達する見込みである等、極めて厳しい状況にあることは十分認識しております。その認識の上に立って将来世代のことを考えるとき、財政構造改革という大きな重い課題を背負っていると痛感しております。  ただ、せっかく上向きになった我が国経済をさらに大きく前進させることによって財政状況の改善が図られるような時点をしっかりと見きわめる必要があり、その見きわめを誤り景気後退といった流れになってしまってはいけません。したがって、我が国経済が回復軌道に乗り、足元がしっかりと固まった段階において、財政、税制上の諸課題につき中長期的な視点から幅広くしっかりとした検討を行い、国民の皆様にそのあるべき姿を示すというのが順序ではないかと考えております。  消費税率についてのお尋ねでありましたが、消費税率の問題を含む将来の税制のあり方につきましては、今後、少子高齢化の進展など社会経済構造の変化や財政状況等を踏まえ、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えております。  国債の日銀引き受けについてのお尋ねでありました。  戦前、戦中に軍事費等の調達のために多額の公債を日銀引き受けにより発行した結果急激なインフレが生じたことを契機として、現行財政法においては、健全財政主義の原則とあわせて、公債の日銀引き受けを原則として禁止し、公債は日銀以外の市中資金により消化するという市中消化の原則を定めているところであります。  政府といたしましては、こうした財政法の趣旨遵守することが必要と考えており、国債の発行に当たっては、市場のニーズを踏まえつつ、市中資金によるその確実かつ円滑な消化に努めてまいりたいと考えております。  社会保障に二十兆円、公共事業に五十兆円という財政構造を是正すべきではないかとのお尋ねがありました。  御指摘の数字の根拠は定かではありませんが、まず社会保障の水準については、我が国の社会保障給付の財源の相当部分は保険料収入であり、保険料も国民負担の一部であることにかんがみれば、御指摘が仮に公費負担額だけを取り上げているとすれば、その水準を議論したり他の経費と比較することは適切でないと考えております。保険料負担相当分も含めた社会保障給付費全体と比較して試算すれば、国、地方を合わせた公共事業費の一・四倍程度となっております。  今後とも、社会保障に関しては、高齢化の進展に伴い社会保障給付費の増加が見込まれる中で、必要な給付を確保しつつ、社会保障構造改革を推進し、制度の効率化、合理化を進めてまいりたいと考えております。  また、公共投資に関しては、将来の発展基盤の構築に向けて、時代のニーズや要請を見通しつつ、必要な分野、事業への戦略的、重点的投資を行うとともに、その実施に当たりましては、効率性、透明性の確保に努めてまいりたいと考えております。  以上、御答弁申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  56. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府は、景気刺激の対策をやっているにもかかわらず、他方で景気は最悪のところを脱したと言っているのはおかしいじゃないかと、こういうお尋ねであったわけです。  私ども思いますのに、我が国経済は一年半、四半期ごとにずっと対前期マイナスを続けてきたわけですから、ずっと一年半滑り続けてきたわけでございますが、それがことしの一—三月になりまして初めてプラスになった。年率八%というのはちょっと高過ぎたかもしれませんが、とにかく八%。その次どうなるかと思いましたら、四—六がやっぱりプラスになったんですね。これはそう高くはありませんでした、年率〇・八ですけれども。  ですから、二四半期プラスが続いた、一年半の後にということは、普通に常識的に考えて、まあこれで一番悪いところは過ぎただろうと。来週になりますと今度はこの七—九が出るわけで、それは必ずプラスになるということを申し上げているのではありませんが、傾向としては明らかに滑り続けた事態はもう変わったと、こう判断をしているという意味でございます。ただ、それでも実はいろいろ不安要因がありますので、補正予算と本予算ではひとつもう一遍しっかりやらなきゃならぬと思うということを申し上げております。  それで、その不安要因あるいはいい要因は何かと。もう簡単に箇条書きで申しますと、個人消費は、収入が低迷しているなどから足踏み状態である。住宅建設はまあまあである。設備投資は、これはどうもぐあいが悪い。公共投資は、かなり事業は進みましたが、このところ着工は低調である。輸出は、まあまあアジアがよくなって少しよくなっておる。在庫は、調整が進んでおりますけれども生産を刺激するほど在庫が小さくなっているわけでもないようであります。それから、雇用情勢は、もう今リストラになり、これこれで、残業時間はふえていますけれども常用雇用は減っているということでございますから、決して楽観できる状態ではない。  そのように、多少のいい要因とよくない要因がございますので、ここで油断をするわけにはいかぬと、こう思っているわけであります。(拍手)     ─────────────
  57. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 日下部禧代子君。    〔日下部禧代子君登壇拍手
  58. 日下部禧代子

    ○日下部禧代子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表し、さきに提案されました政府平成十一年度第二次補正予算案について、小渕総理並びに関係大臣に質問いたします。  今回、政府が編成した第二次補正予算では、新たに七兆五千億円の国債を増発することにした結果、公債依存度は五・五%も増大し、四三・四%となり、過去最高を記録しました。私は、将来世代にこのような負担を転嫁するには、何よりもまず将来世代の不安を取り除くことが前提でなければならないという観点から、お尋ねをしたいと思います。  その第一は、借金財政から脱却する財政構造改革についてであります。  政府は、経済が本格的な軌道に乗った段階に措置すると言われていますが、このような抽象的なことで安心できるものではありません。  総理の諮問機関である経済戦略会議が、ことし二月に答申を出し、財政悪化懸念の払拭のため、五カ年中期経済・財政見通しの公表を最優先で進めるべき政策事項として提起しております。  総理、この五カ年中期経済・財政見通しの公表はいつ実行されるのでしょうか。また、何をもって経済が本格的な軌道に乗った段階とおっしゃるのか、その基準をお示しください。  第二は、この補正予算案のうち、九千百十億円を充てる介護保険制度についてであります。  もともとこの制度は、家族介護から社会介護へという理念のもとに創設されました。ところが、今の政府・与党は、介護サービスを受けない、または受けることのできない家族に対し、来年度予算で年額、月額ではございません、年額十万円を限度とする慰労金を支給するなどという方針を立て、さらにこの補正予算では、六十五歳以上の保険料徴収を半年凍結、その後一年間は半額にするとし、来年四月から一年半にわたる保険料減収分をこの補正予算で補てんしようというものであります。  平均的に毎月一人三千円、四千円になると言われる高齢者保険料については、とてもそれだけの負担に耐えられないという者が多いことは御承知のとおりであります。その声にこたえようというのであれば、総理、国庫負担を拡大して負担軽減を図り、あるいは低所得者に対する保険料減免制度を創設するなどと恒久的なシステムを確立しなければならないのではないでしょうか。総理はどうお考えでしょうか。  また、今回の見直し案は、家族介護から社会介護へという理念とは矛盾しないのでありましょうか。あわせてお伺いいたします。  介護保険制度の運営について、ある新聞社の調査によると、不安だと答えた市町村が八七%にも達しております。自治事務であるにもかかわらず、国が細かいところまで決めた上、財政の裏づけもなしに自己責任のみ課せられる。その上、国の都合によって今回のように振り回されるというのでは、地方分権法の理念とは明らかに逆行するものと言わねばなりません。総理の御意見を伺います。  また、来年度から再来年度にかけての一年半の歳出をこの平成十一年度予算で手当てするということは、どう見ても財政法第十二条に定める会計年度独立の原則に反していると考えますが、この点についても総理の見解をお聞かせいただきたいと存じます。  今回の見直し案は、確固たる哲学も、将来の展望、財源さえも不明確であります。場当たり的な措置では国民の不安は募るばかりであります。見直しの根拠を含めて、納得のいく御説明を求めるものでございます。  将来不安を取り除く第三は、老後、人間としての尊厳を守れるような雇用と年金の制度になっているかどうかであります。  私たち社民党は、二〇〇四年度に基礎年金の全額税方式への移行を前提として、当面それを二分の一に改善するための経費をこの補正予算に計上するよう主張してまいりました。  政府案は、報酬比例部分の支給も基礎年金に合わせて六十五歳からに引き上げ、加えて支給額の五%を削減しようとしています。しかし、高齢者をめぐる雇用情勢が一段と厳しさを増している現状から見て、これは到底納得できるものではありません。  支給開始年齢を引き上げるのであれば、総理、六十五歳定年制や高齢者の就業保障システムの確立とセットで行うべきではないでしょうか。単に支給開始年齢をおくらせるだけでは、働きたくても働けない、年金も支給されないという事態を招くのではありませんか。総理の御所見を伺います。  また、年金福祉事業団では、国民から預かっている年金資金の一部を自主運用しておりますが、株や債券を買って平成十年度末までに簿価で何と一兆八千億円にも上る膨大な累積赤字を生じさせております。  政府は、この責任をとることなく、一方で年金の支給額の削減などを強行しようというのでは、みずからの責任国民に転嫁するものであり、到底認めることはできないのであります。総理及び厚生大臣は、この責任をどうおとりになるおつもりなのか、明確な御答弁を求めます。  最後に、人の生命と健康、国土と地球の環境を最優先すべき政治姿勢が根本から疑われていることについてであります。  さきの茨城東海村の核燃料施設臨界事故は、まさに人災そのものと言わざるを得ません。政府は予想外の事故であったことを強調しますが、私たち社民党は、原子力を扱う限りこのような事故は避けられないことを理由に、原子力エネルギーからの早期撤退を終始訴えてまいりました。  政府は、日本には資源がないからという理由で原子力依存を強め、かつ正当化してきたわけでございますが、その方向は自然エネルギーや燃料電池などという豊富な資源を軽視するものであると同時に、人の生命と健康をも軽視していると言わざるを得ないのであります。  政府は、チェルノブイリやスリーマイル島のような事故は日本では起こらないと言い続けてきました。しかし、実際には予想外の事故が起こることが明白になったわけであります。  総理、もし日本でチェルノブイリやスリーマイル島のような事故が起こった場合、一体どのような対応をなさるのでありましょうか。そのための危機管理とマニュアルの準備はどこまで進んでいるのでしょうか。具体的にお答えいただきたいと思います。  東海村の臨界事故は、我が国の核に対する安全感覚がいかに麻痺しているかを象徴的に示しております。このような状況のもとでは、核燃料サイクル計画の継続は無謀と言うよりほかはありません。  総理、アメリカやドイツのように、日本においてもおくればせながらクリーンエネルギーの開発利用の促進に資金を集中し、エネルギー政策のみならず、循環型の産業経済への構造的な転換を経済新生の基本戦略とすべきではないでしょうか。お考えと御決意のほどを承ります。  さきの経済戦略会議の答申において、「安心を保障するセーフティ・ネットの構築」が提起されておりますが、小渕総理御自身も、経済安全保障とは非軍事的要因による脅威からいかにして国家国民を守り、繁栄を増進するかであると、セーフティーネットの必要性を熱心に説いていらっしゃいます。  しかしながら、今回の年金改革法案、介護保険制度の見直し、原子力安全行政の現状が総理のお考えになっているセーフティーネットの水準だとするならば、それは国民考えるセーフティーネットと余りにも乖離が大きいと言わざるを得ないのであります。この際、総理のお考えになっているセーフティーネットの定義、その内容国民にわかるようにお示しいただきたいのであります。  総理国民が今求めている安全、安心とは何か、政治に何が求められているのか、総理は眼鏡をおかけでいらっしゃいますが、総理の心のレンズをもう一度磨き直していただき、現実を直視なさるべきであることを強く訴えまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  59. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日下部禧代子議員にお答え申し上げます。  まず、中期的な経済・財政見通し及び財政構造改革に対する取り組みについてのお尋ねでありました。  中期的な経済見通しにつきましては、経済審議会答申「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」におきましてお示しをいたしており、また財政の見通しにつきましては、例えば毎年の予算編成を反映した形で中期財政試算を国会に対しお示しいたしております。  財政構造改革に取り組むに当たりましては、我が国経済が立ち直り、本格的な回復軌道に乗った段階、すなわち、現在上向きになってきた我が国経済が潜在力に沿った成長率を安定的に達成する過程に入り、税収の増加等を通じ財政状況の改善が図られるような時点をしっかりと見きわめる必要があるということは御理解いただけると存じます。  介護保険に係る特別対策について種々お尋ねがございました。  今回の対策は、与党三党の申し入れを重く受けとめ、政府の方針として介護保険法の円滑な実施のための対策を講じるものであります。  高齢者保険料の特別措置につきましては、先ほども申し上げましたが、国民の皆様に新しい制度や負担になれていただくまでの間、経過的な激変緩和措置を講ずるものであります。また、家族介護慰労金の支給は、介護保険とは別に行われる当面の措置として行われるものであり、介護保険法の理念や枠組みを変えるものとは考えておりません。いずれにしても、予定どおり来年四月からの制度の円滑な実施に向けて万全を期してまいります。  介護保険制度と地方分権の関係についてお尋ねでありました。  この新たな制度のもとでは、市町村は介護サービスの量と保険料水準とを均衡をとりながら設定するなど、地域の実情に応じた運営を行うことが可能であり、地方分権法の理念に沿うものであると考えております。また、今回の特別対策につきましても、こうした方向に何ら逆行するものではありません。  介護保険関連支出の補正予算計上が会計年度独立の原則に反するのではないかとの御指摘でありますが、本支出を補正予算に計上することといたしましたのは、各市町村等において保険料率の決定等の介護保険法の施行準備に万全を期するためには、本年度中に各市町村等に基金を造成することが必要であるという事情によるものであります。  このような本支出につきましては、本年度に支出することが必要な経費を補正予算に計上し、本年度歳入で支弁するものであることから、財政法第十二条に「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」と規定された会計年度独立の原則に沿ったものであると考えております。  厚生年金の支給開始年齢の引き上げに関してでありますが、今回の改正におきまして、十分な準備期間をとって二〇一三年から段階的に引き上げるものであり、将来の保険料負担の増大を抑えるため必要な措置であると考えております。  また、高齢者が意欲と能力に応じ年齢にかかわりなく働き続けられる社会の実現を目指し、当面六十五歳までの雇用機会の確保のための対策の充実を図るため、高年齢者雇用安定法の改正案を次期通常国会に提出する方針であり、今後とも高齢者雇用の充実に努力してまいりたいと考えております。  年金福祉事業団についてのお尋ねであります。  他の年金資金を運用する機関投資家と比較して遜色のない運用収益を上げてきましたが、近年の低金利、株価の低迷等によりまして資金運用部への利払いを下回ったため、累積欠損が生じたものであります。今後、資金運用部からの借入金利の低下も見込まれること等から、累積欠損の解消に向け最大限の努力をしてまいります。  次に、原子力災害問題でありますが、危機管理体制について御質問がありました。  政府としては、昭和五十四年の米国スリーマイル島原子力発電所事故を契機に災害対策基本法に基づく原子力防災体制整備が進められ、防災基本計画に基づく関係省庁における防災業務計画や地方自治体における地域防災計画及びこれらに基づくマニュアルの整備等を進めてきたところです。また、政府全体としての危機管理の取り組みを強化するとの観点から、平成十一年四月に内閣官房において原子力災害時に備えた危機管理マニュアルが策定されております。  今回の事故教訓を踏まえまして加工施設を含めた原子力防災対策抜本的強化を図るため、国の緊急時対応体制強化などを内容とする原子力災害特別措置法案を国会に提出し、本日より本院において御審議をお願いするものでありますが、その成立を受けまして所要のマニュアル等の整備に取り組んでまいります。  核燃料サイクルとクリーンエネルギーに関するお尋ねですが、太陽光発電、風力発電等の新エネルギーの研究開発、導入と核燃料サイクルの推進は、エネルギー安定供給の確保、環境保全、経済成長の同時達成を図る観点から、ともに重要であると考えております。  新エネルギーにつきましては、当面、経済性や安定性などの課題も伴いますが、今後とも必要な予算を確保しつつ、その研究開発と導入に最大限の努力を行ってまいります。  最後に、セーフティーネットについてのお尋ねがありました。  年金、介護などの社会保障制度は、稼得能力を喪失した高齢期や要介護など生活の安定を損なうさまざまな事態生活の安定や安心をもたらすためのものであり、重要なセーフティーネットであると考えております。  今回の年金改正法案、介護の特別対策につきましては、セーフティーネットたる年金制度の将来にわたる安定的な運営や介護制度の円滑な実施を図るためのものであります。  また、原子力安全につきましては、今般の臨界事故教訓をくみ取り、今国会に提出した原子力関連二法案整備も含め原子力安全・防災対策の充実強化に全力を傾注してまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣丹羽雄哉君登壇拍手
  60. 丹羽雄哉

    国務大臣(丹羽雄哉君) 私に対する質問は、年福事業団についてのお尋ねでございます。  ただいま総理の方から詳しく御答弁がございましたけれども、御案内のように、近年の低金利、株価の低迷などによりまして資金運用部への利回りを下回ったために、平成十年度末におきましては時価ベースで一兆二千億円の累積欠損を生じたことは事実でございますが、その後、市場が御案内のように回復いたしまして、現在この額は四千億円まで縮減をいたしております。このように市場によって左右されるものでございますが、今後は資金運用部からの借入金利の低下も見込まれることなどから、累積欠損の解消に向けて最大限の努力をしていく決意でございます。  なお、今回の年金制度改正案は、御案内のように、将来世代の過重な負担を防ぐとともに適正な水準の給付を約束するという考え方に立つものでございます。何とぞ御理解を賜りますよう心からお願いを申し上げる次第でございます。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  61. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 堂本暁子君。    〔堂本暁子君登壇拍手
  62. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 私は、参議院の会を代表して、財政演説に対し、来る世紀の日本が産業構造の転換をいち早く実現すべきであるとの立場から、総理並びに大蔵大臣に質問させていただきます。  現在の世界的な不況は、十九世紀末の大不況と同じように、産業構造が変革過程にあるためだとの見方があります。つまり、十九世紀末に軽工業から重化学工業へと産業の主軸が移行したように、二十世紀末の現在、今度は重化学工業から情報通信、バイオテクノロジーなどの知的産業に代表される二十一世紀型の産業へと転換が図られようとしています。  とはいうものの、欧米諸国においてもこれを完全になし遂げた国はまだありません。どこの国が一番早く新しい産業社会に到達するか、目下のところ熾烈な国際競争が展開されています。日本はこの戦いに負けるわけにはまいりません。  日本は、第二次大戦後、経済復興、所得倍増、そして世界に類を見ない高度経済成長をなし遂げた資本主義社会における競争の勝者でありました。そうした日本に対して、マサチューセッツ工科大学のレスター・サロー教授は、三年前に出版した「資本主義の未来」という本の中で次のように警告しています。「ゲームの勝者が、ゲームのルールが変わったことに気づくのは、たいていは一番最後になる」、つまり、勝者である日本は、新しいゲームにいち早く参戦できないのではないかと予測していました。そして最近サロー教授が出版した「富のピラミッド」という本では、「日本経済は一九九〇年に不況に陥って以来、八年たっても回復していない。その原因は、必要な政策が必要な時期にとられていないためである」と述べています。  サロー教授の言をまつまでもなく、産業構造を転換するためには、二十一世紀型社会インフラの整備と、知的産業社会を支える創造的な科学者、技術者、管理者などの育成、そして全般的な労働者の技術水準の向上が不可欠です。  現在、情報通信産業の分野で国際的競争力をつけてきているのがスウェーデンやデンマークなどの北欧諸国です。これらの国々では教育投資に力点を置いています。スウェーデンでは、二〇〇二年までに、人口の何と一〇%に当たる八十万人の労働者に対して情報技術の再教育を行うプログラムを組み、学校でコンピューターを教える教員を六万人も増員するという力の入れようです。加えて、IT、インフォメーションテクノロジー、つまり情報技術のインフラ整備に多額の予算を配分しています。  かかる観点から今回の第二次補正予算の具体的な内容を見ると、そうした大胆さ、積極さに欠けているように思います。  公共事業が二兆三千億と三分の一を占めています。中小企業への金融対策費として七千七百三十三億を計上していますが、中小企業やベンチャー企業へのソフト面での支援は、経営基盤の強化として三百五十六億円が計上されているにすぎません。二十一世紀型の産業構造への転換を実現するためには、新産業の経営基盤の強化や人材育成といったソフト面にもっと多額の予算を配分すべきだと考えます。総理の御見解を伺いたいと存じます。  次に、大蔵大臣に伺います。  総理は、所信表明演説で、省庁の枠組みにとらわれずに施策を展開すると述べておられます。また、今、堺屋経済企画庁長官は、省際的な取り組みを行っていると答弁されたばかりでございます。御努力は認めたいと思いますが、一般公共事業省庁別割合を執行ベースで見ますと、建設省関係が七割、農水省関係が二割、運輸省関係一割と、平成七年度とほとんど変わらない割合です。このように今までの縦割りの既得権優先の予算配分を踏襲しているようでは、産業構造の転換はできないのではないでしょうか。国際競争に乗りおくれるのではないかと危惧しております。大蔵大臣に伺います。  次に、介護保険について伺います。  産業構造の転換は、まさに冒険であり、未知への挑戦です。この挑戦を可能にするためには、社会保障制度や福祉サービスの充実によって、社会における公平性と安全性が保障されなければなりません。にもかかわらず、今、介護保険をめぐって混乱が続いています。そうした環境では、ベンチャー企業の経営者や若者たちは、創造的な産業に取り組む意欲を失うでありましょう。不安と不信が増幅しています。  介護保険制度の特別対策で、何よりも納得できないのは、保険料の徴収を六カ月間先延ばししたことです。  各市町村は、来年四月からの介護保険の施行に向け精力的に準備を進めてきており、住民参加型の民主主義による地方分権がまさに実施されようとしているやさきでした。このたびの余りにも急な政策変更により、多くの地方自治体は戸惑っております。  法律の原則どおり、来年四月から保険料を徴収する市町村は、介護保険制度の円滑導入のための交付金を介護基盤の整備にも使えるよう補正予算を修正すべきだと考えます。総理の御見解を伺いとう存じます。  また、来年度前半に保険料の年額の四分の一を徴収した場合、交付金が配分されないのはなぜでしょうか。  そもそも保険料の徴収は市町村の自治事務です。数分前に総理は、これは地方分権推進法の理念に反するものではないと答弁されたばかりですが、そうであるとすれば、なぜ国が徴収しないことを事実上強制するのですか。やはり納得がいかないので、総理にもう一度お答えいただきたいと存じます。  さらに、介護保険の特別対策が来年度に実施されるにもかかわらず、今年度の補正予算に組み込まれたことは財政規律を乱すことになると考えます。重ねて総理の答弁を伺いたく存じます。  最後に、財政再建問題について伺います。  私は、景気の回復と財政再建は車の両輪だと考えております。今回の補正予算の主な財源は追加発行される国債です。その結果、平成十一年度末の公債残高は約三百三十五兆円と増大し、一般会計歳出の中で国債費、地方交付税交付金や決算調整資金繰り戻しを差し引いた一般歳出の割合は、昭和四十年度と比較すると約八〇%から約五七%へと大幅に低下しています。  つまり、本来、国の仕事である教育、福祉、医療など国民生活に不可欠なサービスを縮小せざるを得ない状況に追い込まれています。しかも、今年度の国債発行高は実に三十八兆円、一般会計の歳入に占める国債依存度は四三・四%に達し、将来の増税を懸念する国民の不安は高まっています。  財政構造改革について、この際、政府は、将来の負担のあり方と財政再建の道筋を補正予算の提出とともにはっきりお示しになる責務があるのではないかと存じます。この点について、総理大臣の見解を伺い、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  63. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 堂本暁子議員にお答え申し上げます。  今回の補正予算に関しまして、二十一世紀型の産業構造への転換を実現するためのものにすべきではないかとのお尋ねでありました。  私は、今回の経済新生対策の取りまとめに当たり、景気を本格的に回復軌道に乗せていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築くことに重点を置くこととし、中小・ベンチャー企業振興、ミレニアム・プロジェクト等の技術開発の推進など、日本経済がダイナミズムを発揮するための施策等を対策に盛り込んだところでございます。  第二次補正予算におきましては、この対策を実現するために必要な措置として、社会資本整備費について、情報通信・科学技術の振興、生活基盤の充実強化、少子高齢化・教育・環境特別対策といった分野を中心に総額三兆五千億を計上するほか、中小企業等の資金供給の多様化、円滑化を目的として、中小企業等金融対策費七千億円余りを計上するなど、将来の発展基盤の確立に不可欠な分野に重点的な配分を行ったと、こう考えておるところでございます。  政府は、本対策を初め、必要な諸施策を強力かつ機動的に推進することにより、我が国経済を民需主導の本格的回復軌道に乗せるとともに、新たな発展基盤の構築に全力を尽くしてまいります。  交付金についてのお尋ねでありました。  今回の臨時特例交付金は、基本的には、各市町村において高齢者の保険料の軽減等に充てるために交付するものでありますが、この措置のために必要なシステム改修費等の準備経費などに充てることができるものと考えております。  なお、基盤整備につきましては、今回の補正において別途約九百五十億円を計上しておりまして、これにより対応していただくことが適当であると考えております。  保険料徴収方法についてお尋ねでありましたが、交付金は、法施行後半年間は第一号保険料を徴収せず、その後一年間は経過的に二分の一に軽減するためという特別対策趣旨を実現するために交付されるものであります。  なお、保険料の徴収は市町村の自治事務であり、国が保険料の徴収方法を強制できるものではないことは言うまでもありません。  介護保険関連の支出の補正予算への計上が財政規律を乱すとのお尋ねでありますが、各市町村は、来年の二月から三月の議会において、平成十二年度から三年間の高齢者保険料を条例により決定しなければならず、また医療保険者は、来年一月から三月における事業計画の策定に当たって具体的な財政措置内容を確定させておく必要があるため、第二次補正予算に所要経費を一括して計上する必要があるものであります。  最後に、財政構造改革についてお尋ねがありました。  我が国財政は極めて厳しい状況にあり、将来世代のことを考えるとき、財政構造改革という大変重い課題を背負っていると痛感いたしております。  ただ、せっかく上向きになってきた我が国経済をさらに大きく前進させることによって、財政状況の改善が図られるような時点をしっかり見きわめる必要があり、その見きわめを誤り、景気後退といった流れになってしまってはいけないと考えております。二兎を追う者は一兎も得ずといったことのないよう、まずは何としても一兎を確実に得るべく、引き続き我が国経済が立ち直り、安定成長の軌道に乗せるため全力投球で立ち向かっていくことが必要と考えております。  したがいまして、我が国経済が回復軌道に乗り、足元がしっかり固まった段階において、財政・税制上の諸課題につき中長期的な視点から幅広くしっかりとした検討を行い、国民の皆様にそのあるべき姿を示すというのが順序ではないかと考えておる次第であります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  64. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) アメリカの経済が一九八五年ごろから非常な苦労をしてひどい目に遭いながら、それがきょうの隆盛につながったということを私どもは日本が困り出してから初めて実は気がつきました。  でありますから、私どもが今苦しんでいるのは、本当におっしゃるようにうかうかしていたら二十一世紀に生きられなかったかもしれない、そのための苦しみをしているんだというふうに考えろと言っていらっしゃるんだと思います。私も実はそう思います。  それで、予算につきましてそういう観点からいろいろ御批判がありまして、確かに今度なども三兆五千億円という社会資本整備という枠を設けまして、物流、生活基盤、情報、少子化等々かなり具体的に補正で詰めておりますし、総理の枠というようなことで、過去から切れた新しいものを採用していただこうとしたり、いろいろしております。  ですから、問題は、かなり私どもも自覚しているつもりなんですが、実際、各役所の長い間のいろいろ考え方というものが十分にまだついてきていないということをおっしゃっているに違いないと思いまして、その点は私ども十分反省をしながら、本当に不況ではありますから余りいろんなことはできないんですが、しかし、少なくとも二十一世紀に向かって物を考えていくということは忘れてはならないことだと思います。(拍手
  65. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十七分散会      ─────・─────