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1999-11-22 第146回国会 参議院 中小企業対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月二十二日(月曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十一月十九日     辞任         補欠選任      朝日 俊弘君     堀  利和君      羽田雄一郎君     今井  澄君      加藤 修一君     海野 義孝君      石井 一二君     島袋 宗康君  十一月二十二日     辞任         補欠選任      足立 良平君     羽田雄一郎君      今井  澄君     千葉 景子君      山下 栄一君     益田 洋介君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         陣内 孝雄君     理 事                 岩井 國臣君                 加藤 紀文君                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 寺崎 昭久君                 円 より子君                 弘友 和夫君                 池田 幹幸君                 梶原 敬義君     委 員                 岩崎 純三君                 加納 時男君                 釜本 邦茂君                 北岡 秀二君                 久世 公堯君                 小山 孝雄君                 斉藤 滋宣君                 仲道 俊哉君                 馳   浩君                 保坂 三蔵君                 森下 博之君                 森山  裕君                 山下 善彦君                 今井  澄君                 今泉  昭君                 川橋 幸子君                 木俣 佳丈君                 高嶋 良充君                 千葉 景子君                 羽田雄一郎君                 福山 哲郎君                 堀  利和君                 海野 義孝君                 木庭健太郎君                 益田 洋介君                 山本  保君                 緒方 靖夫君                 西山登紀子君                 山下 芳生君                 三重野栄子君                 入澤  肇君                 高橋 令則君                 菅川 健二君                 水野 誠一君                 島袋 宗康君    国務大臣        通商産業大臣   深谷 隆司君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君    政務次官        農林水産政務次        官        谷津 義男君        通商産業政務次        官        細田 博之君        通商産業政務次        官        茂木 敏充君        労働政務次官   長勢 甚遠君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君    政府参考人        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        大蔵大臣官房審        議官       筑紫 勝麿君        通商産業省機械        情報産業局長   太田信一郎君        通商産業省生活        産業局長     横川  浩君        中小企業庁長官  岩田 満泰君        郵政省電気通信        局長       天野 定功君    参考人        日本商工会議所        中小企業委員会        委員長      大西  隆君        全国中小企業団        体連合会会長   和田 貞夫君        豊橋創造大学経        営情報学部教授  黒瀬 直宏君        グッドウィル・        グループ株式会        社代表取締役会        長        折口 雅博君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○中小企業基本法等の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ただいまから中小企業対策特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十九日、羽田雄一郎君、朝日俊弘君、加藤修一君、石井一二君が委員辞任され、その補欠として今井澄君、堀利和君、海野義孝君、島袋宗康君が選任されました。  また、本日、足立良平君が委員辞任され、その補欠として羽田雄一郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 中小企業基本法等の一部を改正する法律案議題とし、参考人から御意見を聴取いたします。  まず午前は、日本商工会議所中小企業委員会委員長大西隆君並びに全国中小企業団体連合会会長和田貞夫君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。ただいま議題となっております法律案につきまして、皆様から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の進め方でございますが、まず大西参考人和田参考人の順にそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えいただきたいと思います。  それでは、大西参考人からお願いいたします。大西参考人
  4. 大西隆

    参考人大西隆君) ただいま御紹介いただきました、日本商工会議所中小企業委員会委員長を務めております大西でございます。また、同時に私、大阪商工会議所中小企業担当の副会頭も務めております。どうぞよろしくお願い申し上げます。  本日は、御出席先生方におかれましては、商工会議所事業活動に対しまして日ごろから深い御理解と力強い御支援を賜っております。この場をおかりしまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。  また、現臨時国会中小企業国会として位置づけられておりまして、新たな中小企業政策の確立と各種支援策拡充につきまして熱心な御審議をいただいておりますことに対しまして深甚なる敬意をあらわしますとともに、その成果につきまして心から期待をしているところでございます。この意見陳述機会を設けていただきましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げます。  それでは、本論に入らせていただきます。  現在、参議院におきまして御審議をいただいております中小企業基本法の抜本的な改正についてでございますが、御高承のとおり、我が国中小企業政策基本的な考え方とこれに基づく政策体系を定めた現行基本法は、昭和三十八年に制定されて以来三十六年間経過しているわけでございますが、この間、中小企業をめぐる環境は大きく変化してきております。このため、現行基本法の大企業中小企業の間の格差是正という政策理念とこれに基づく政策体系が現実に適合しなくなってまいっておりまして、この中小企業定義につきましても、前回の改定以来四半世紀が経過して経済実態と合わない面も出てきている現状でございます。  こうしたことから、中小企業庁におきまして昨年七月に中小企業政策研究会を設置し、さらにことしの六月からは、研究会報告を踏まえまして中小企業政策審議会において新たな中小企業政策について検討が進められたところでございます。  日本商工会議所としましては、こうした一連の検討対応するために昨年八月に中小企業政策懇談会を設置しまして、中小企業政策基本理念政策体系転換中小企業者定義の見直しにつきましてアンケート調査を初め活発な意見交換を行いまして、商工会議所としての意見集約に努めてまいりました。研究会審議会におきまして意見の表明を行ってきております。  また、ことしの四月からは、日本商工会議所東京商工会議所合同政策委員会におきまして、二十一世紀に求められる中堅中小企業中堅中小企業支援のための環境整備について提言の検討を進めております。去る十一月八日には、中間報告としまして「スモール・イズ・ダイナミック実現に向けて」という発表をいたしております。  この日本商工会議所東京商工会議所合同委員会は、四年前の平成七年十一月にも、中小企業のさらなる活躍が経済ダイナミズムの源泉であるという認識に基づきましてスモール・イズ・ダイナミックを提唱いたしました。これからの自己責任原則が求められております市場経済社会におきまして、勇気を持って攻めの経営に邁進する中堅中小企業が数多く登場してくる必要があることを提言しております。  こうした考え方を再確認する意味におきまして、「スモール・イズ・ダイナミック実現に向けて」という中間報告を取りまとめた次第でございます。経済ボーダーレス化情報革命規制緩和市場開放などの進展によりまして内外の企業間競争が本格化してきておるわけでございますが、中小企業経営環境は一層厳しさを増すものと考えております。  しかしながら、このような時代こそ中小企業は、行政の支援に依存するばかりでなく、みずからの経営努力によりまして困難を乗り切っていこうとする心意気が必要だと考えております。また、多くの中小企業経営者は、経営努力の積み重ねなくして中小企業の未来も、また日本経済再生もおぼつかないと存じている次第でございます。このため、新基本法にありますように、中小企業自立を促し自立に向けた自主的な取り組み支援していくことは、中小企業経営者自身そして日本経済にとって必要不可欠なものと考えております。  新しい基本法案に対する意見でございますが、まず第二条の中小企業定義については、商工会議所としてかねてより経済実態に合わせた範囲拡大を要望していた経緯もございまして、法案に示されている定義にぜひとも拡大していただくようお願いを申し上げる次第でございます。  次に、第三条の基本理念でございますが、日本商工会議所としましてはほぼ同様の考え方を持っております。  すなわち、私ども政策委員会中間報告で、中堅中小企業が二十一世紀に期待される役割としては、従来からの地域経済地域雇用地域共同体文化伝統担い手としての役割に加えまして、新規創業や新商品開発、また経済活性化実現新規雇用の創出の担い手として位置づけております。創業ベンチャー支援を初め既存中堅中小企業に対し、資金調達円滑化労働力確保等支援中堅中小企業体質強化のための税制セーフティーネット整備を提唱しております。  これまでの基本法は弱者救済的な色彩が濃く出ておりましたが、新基本法案では中小企業時代の主役となるような環境づくりを精神としているところと理解しております。大いに歓迎するものでございます。  また、基本的な施策につきまして、第五条の基本方針に基づき、第十二条から二十四条に述べられておりますが、私ども日本商工会議所としましても、我が国経済の喫緊の課題でございます創業促進はもとより、新商品、新技術開発など既存企業による企業体質強化への取り組み促進など、中小企業自立を積極的に支援していくことが必要だと思っております。各地商工会議所におきまして、こうした考え方に基づきまして活動を展開するよう努めているところでございます。  今後、基本方針並びに基本的な施策に沿いまして具体的な施策の策定と展開が行われると存じますが、きめ細かな配慮をお願いいたしたいと存じます。  また、先週の十九日には中小企業事業活動活性化のための関係法律整備に関する法律案が今国会に提出されておりますが、法律を早期に成立していただきまして、こうした施策を速やかに実施に移していただきたいと考えております。  次に、特に御配慮をお願いしたい面についてでございますが、まず第一が中小企業関係税制の問題でございます。  特に、中小企業事業承継に当たりまして、重い税負担によりましてキャッシュフロー不足から資金繰り難や、それから新規投資の面から、先代のときと同じ中小企業の活力をそがれてしまい、雇用維持に困難を来すケースがふえております。さらに、相続を機に二世が新分野へ進出しようとする意欲の芽も摘んでしまうことから、中小企業ダイナミズム維持拡大の観点から、相続税贈与税の税率全体の引き下げや取引相場のない自社株評価額軽減など、負担軽減が必要でございます。  この他、諸外国に例を見ない、かつ中小企業自己資本の充実を阻害しております同族会社留保金の課税問題でございますが、これの廃止を訴えておるわけでございますが、エンジェル税制の抜本的な拡充固定資産税の大幅な負担軽減など、中小企業投資促進税制延長等実現していただきたいと存じておるのでございます。  第二に、中小企業技術開発支援する中小企業技術革新制度、SBIRにつきまして、中小企業に対する予算拡充支出目標額拡充並びに参加省庁拡大をぜひとも図っていただきたいと存じております。  第三には、国と地方公共団体役割分担中小企業対策の円滑な実施についてでございます。  新基本法案では、第六条におきまして、地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との適切な役割分担を踏まえて中小企業施策を策定し、実施する責務を有することが明示されております。地方公共団体中小企業対策につきまして適切な役割分担を担っていくことになっておりますが、これを実施する地方公共団体におきまして、財源措置人材育成についてまだ満足のいく対応がとられていないのが現状でございます。  特に、地方公共団体財政状況は一段と厳しさを増しておりまして、財政難から、商工会議所等が行う小規模企業対象とします経営改善普及事業につきまして、事業費のみならず人件費の削減も行われてきております。本事業の円滑な運営に重大な支障が生じているところでございます。  小規模企業への配慮は第八条にうたわれているところでございますが、経営改善普及事業を初め、新しい理念に基づく創業経営革新促進支援といった新しい事業が円滑に実施できるよう、地方公共団体の特に財源確保につきまして十分な配慮をお願いしたいと存じます。  以上、中小企業基本法案につきまして、日本商工会議所としての意見を述べさせていただきましたが、地域経済雇用に加え、地域文化伝統の重要な担い手でございます中小企業が大きく自己変革を迫られている今日、各地域におきまして中小企業対策を主体的に実施しております商工会議所も、みずからを二十一世紀経済社会にふさわしい形に変え、地域経済社会発展に一層貢献していきたいと考えている次第でございます。  今こそ商工会議所は、地域経済社会の先頭に立って、地域が元気を取り戻す環境づくりと、試練に耐えながら転換への対応を急ぐ中堅中小企業自助努力支援する体制づくりに向けて、全国五百二十三の商工会議所の緊密な連携のもとに、総力を挙げてこれらに取り組む決意であることを最後に申し上げまして、意見陳述を終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  5. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) どうもありがとうございました。  次に、和田参考人にお願いいたします。和田参考人
  6. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 私は、全国中小企業団体連合会という中小企業団体全国組織会長でございまして、全中連協同組合連合会理事長も兼ねております和田貞夫でございます。  平素は先生方におかれましては、国会活動を通しまして中小企業問題に御心配をちょうだいし、極めて情熱を燃やしていただいて対処していただいていることに対しまして、衷心より感謝を申し上げたいと思います。  さて、私たち団体単協全国各地に散在しておるのでございますが、各単協の多くは、事務所をも持つことのできない零細企業者事務員を雇うこともできない事業所経営者たち共同事務所的役割を果たしておるわけでございます。  私たち団体サイドから見る限り、景気は底打ちどころか最悪の事態だと思っております。どの単協におきましても、倒産または廃業によりまして毎月二ないし三の会員が退会を繰り返しているのがここ一年余り続いております。  さて、政府がこの国会に提出されている中小企業基本法等の一部を改正する法律案についてであります。  まず第一に、基本理念転換についてであります。  中小企業の大企業との格差是正という政策目標から中小企業自助努力支援する方向に基本理念を変更しようとするものでございます。中小企業と大企業間の生産格差が解消し取引条件が向上したことによって企業間格差がなくなったということではございません。したがって、企業規模間格差実態政府みずからが認識する限り、格差是正取引条件の向上についての政策は、今後の中小企業政策の中におきましてどのように具体的に行っていくのか明らかにしていただきたいと思うわけでございます。  次に、中小企業者範囲改定について御意見を申し上げたいと思います。  政府改定案では、その範囲基準となる資本金額を全体的に引き上げ、製造業については一億円以下を三億円以下に、卸売業については三千万円以下を一億円以下に、サービス業は一千万円以下を五千万円以下に、小売業は一千万円以下を五千万円以下に改定し、従業員数についてはサービス業についてのみ五十人以下を百人以下に引き上げようとしているものでございます。  昭和四十八年以来の改定でございますから、経済の変遷がある限り資本金額改定はある程度はやむを得ないと思います。しかし、一挙に三億円に引き上げて約一万六千社の中堅企業中小企業範囲に入れるだけでは、多くの問題を残すだけで中小企業政策強化にはならないと思います。  私たちは、この機会に、資本金金額従業員数によってその範囲基準を決めて、中堅企業小規模企業及び個人事業者を含む零細企業というように中小企業定義を細分化して決め、それぞれの定義に基づく中小企業政策を具体的に、中堅企業対策小規模企業対策零細企業対策に分離して進めていくべきであると考えております。  次に、資本金額を三億円に引き上げることによって新たに中小企業者範囲に入ることになる、先ほども申し上げましたように、約一万六千社の中堅企業中小企業施策支援対象となることによって、既存中小企業がそのしわ寄せを受けることが懸念されるのであります。あわせて、創業的企業ベンチャー企業に対する支援が厚くなるために、金融面政策予算執行面で、特に小規模企業零細企業にどのような影響をもたらされるかの不安が解消されません。  次に、事業分野調整のあり方についてであります。  従来の事業分野調整に関する見解が大きく変更されることでありますから、紛争処理のための機構の整備等も図らず、中小企業事業活動機会確保のための大企業者事業活動調整に関する法律、すなわち事業分野調整法廃止を余儀なくされ、大企業による中小企業事業分野への進出を防止し切れない状況がつくり出されるというように考えられます。  私は、中小企業の原点は個人事業であると考えます。  中小企業政策を推し進めるに当たりまして、具体案を立案するに当たって、こうすることによって個人事業者にどのような影響をもたらすようになるか、このようにすることによって個人事業者はどう対応することができるだろうか、このことによって個人事業者は結果はどうなるだろうか、常に個人事業者のことについて念頭に置きながら中小企業政策を推進してほしいわけであります。  どうぞ意のあるところを御理解をちょうだいいたしまして、ぜひともこの法案審議に当たってじっくりと時間をかけて御議論をいただき、弱い者の立場に立って、弱い事業者立場に立って、個人事業者立場に立って、今後中小企業政策政府が推し進めることができるような基本をつくり出していただきたいことをお願い申し上げたいわけでございます。  どうぞこれからも中小企業問題について篤とお取り組みをいただきまして、何としても戦後の経済の再建は、大企業を支え劣悪な労働条件の中で今日まで踏ん張ってまいりました中小企業経営者、そこに働く労働者、この大きな功績であろうと私は思います。そういう中小企業のためにこれからもひとつお力になっていただきたいことを特にお願い申し上げまして、私の意見といたします。  ありがとうございました。
  7. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 小山孝雄

    小山孝雄君 両参考人、早朝からまことにありがとうございます。ただいま御意見をちょうだいいたしました。きょうは八会派の代表質疑ということで、大変細切れになることをお許しいただきたいと思います。  今も既に両参考人から意見が述べられたところでございますが、まずもってこの基本法改正一言で言うならば中小企業の概念をこれは根本から変えるものだ、こういうふうに思うわけであります。中小企業は小なるがゆえに弱いものだ、弱いものだから助けなければならない、保護されなければならない対象というものを、中小企業自助努力を真正面から支援して、中小企業が地場で、そしてまたその中から世界のチャンピオンになっていくものをつくっていこうじゃないか、こういった基本的な方針がこの改正案に盛り込まれているものと理解をいたしておりますが、いま一度お一言ずつこの基本的な考えについてお伺いをいたします。  両参考人にお願いいたします。
  9. 大西隆

    参考人大西隆君) 私の体験で申しますと、この八月の終わりから九月の初めに東南アジア諸国大阪商工会議所視察団で回ってまいりまして、そのときに各国のトップの方々といろいろとお話し合いをいたしました。  日本経済が戦後このように発達したのは、一つに、やはり中小企業政策が間違っていなかった、中小企業政策が正しかったために中小企業が頑張って、そして国家の経済を支えてきたというふうな理解をしておられました。特に、今申されました基本的な考え方中小企業保護政策としてきたことに対しては、それがあったから今日の日本中小企業発展があったんだという理解のもとに、我々に対して今後中小企業対策についていろいろと協力をしてほしいという要請がございました。  確かに、私どもも、今申しましたように、従来の政策基本的な考え方に基づいて保護されてそして大きくなったというところはございました。しかし、それはもう三十六年間同じ考え方に基づいてそして発展してきたわけでございまして、ここへまいりますと中小企業範囲というものをもう少し拡大しませんと、今のままですと余りにも小さ過ぎて、なかなかいろんな政府中小企業政策が浸透しないという環境になってきているという理解をいたしておりまして、商工会議所としましては新しい基本理念につきまして賛同している次第でございます。  以上でございます。
  10. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 先ほども申し上げましたように、今日までの中小企業政策は、中小企業と大企業の格差を是正する、こういう基本に立った支援策を講じていただいたと思うわけであります。したがいまして、その成果として、例えば本田さんのように中小企業から今日上場会社にまで大きくのし上がるというようなことにもなっておりますし、またそこにまでいかなくてもたくさんの中小企業の皆さん方が大きく育成されてまいったと思うわけでございます。したがいまして、今日までの政府のとってこられた中小企業政策というのは大きな成果を上げていただいていると思います。  しかしながら、まだ力不足の多くの零細企業というのは存在するわけでございますので、その零細企業の皆さん方をこれからどうするのか、直ちに大転換によって自助努力支援をするということだけになってまいりますと、そのような企業がますます落ちこぼれになってしまうということを心配するわけであります。  したがいまして、私が先ほど申し上げましたように、中小企業の原点というものは常に個人事業に置いていただきたいということを私はお願いしたいわけであります。こういう政策をとることによって個人事業者にどのような影響を及ぼすことができるか、このことによって個人事業者がどのようになるかということを常に念頭に置きながらこれからの中小企業政策の推進を政府にしていただきたい、こういうような考え方に立って先生方どうぞひとつ政府機関に激励をしてもらいたいというように思っております。
  11. 小山孝雄

    小山孝雄君 大西参考人にお尋ねをいたしますが、先ほど和田参考人から、ただでさえも中小企業と一口で言っても中堅から零細から小規模から幅広い、さらにまた今回幅を広げると、非常に今も御懸念が表明されましたけれども、零細、小規模そして個人事業の色彩の大変強い企業が置いてきぼりを食うんじゃないかという、そういった意見は私のところにも寄せられております。大変これは重きを置いて聞かなければならないし、またその施策も練らなければいけないものと考えます。  先ほど和田参考人からありました対象企業定義というものを零細、小規模あるいは中小そして中堅、こういうふうに分けて十分な財源を持って各規模別にきめ細かな対策をしなきゃいけないんじゃないのという御意見も寄せられました。この御意見に対して日商の代表としての参考人の御意見を伺います。
  12. 大西隆

    参考人大西隆君) 今、和田さんがおっしゃられましたことにつきましては、私が実際に仕事をしておりまして非常にいろいろと痛感するところもたくさんございます。  と申しますのは、私の事業は衣料品の卸売業でございますので、小売店さんが廃業なさって商店街にシャッターがおりるとかいうケースが最近あちこちで起こっているわけでございますが、そのようなケースも身近に知りながら私の考え方を申し上げたいと思います。  これは国際的にSME、スモール・アンド・ミディアム・エンタープライズという言い方で、国によって中堅とか中小、それから今のおっしゃった零細というんですか、そういうふうに区別している国もございますし、一緒にしているところもございます。そういった意味で、区別することが必要かどうかということよりも、やはり政策としましてどういう企業に対しては政策をとるかということの方が大事だと思います。  ですから、今おっしゃいましたマル経融資というものを通じて対応を図っております商工会議所の小規模事業対策としまして、これは今回もそのまま法律というものは残っていくわけでございますが、製造業で従業員二十名以下、それから商業、サービス業では五名以下の小規模企業対策としまして、我々商工会議所は各支部を設けまして、その支部で指導員が経営指導を行い、そしてその経営指導のもとにマル経融資たる五百五十万円は無担保無保証、それから六カ月以上経営指導をして、そして融資の申し入れがある場合は、あと四百五十万円プラスしまして一千万円まで無担保無保証で融資するという制度がずっと行われているわけでございますが、その制度は非常に商工会議所の中で重要な事業として展開いたしております。  ですから、そういった事業をそのまま継続してやっていくということにつきまして、これは個人の企業を無視するということではないということを申し上げたいと存じます。  以上です。
  13. 小山孝雄

    小山孝雄君 和田参考人、中小、零細、小規模事業所に対する配慮というのは欠かすことのできない大事な点だと思います。何か具体的なことで要望しておきたいことがございますればお述べください。
  14. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) お願いしたいと思いますのは、現行中小企業基本法でも新しく改正される中小企業基本法でも小規模事業者というのをこういうようにいうとうたわれておりますが、これは、小売業については五人以下、卸、サービス業については二十人以下と、従業員数だけになっておりますね。  私、先ほど申し上げましたように、細分化して定義をつくるのには従業員数だけでなくて資本金額もその基準に、対象にしてほしいと。なぜかといいますと、従業員だけでありましたら、例えば高級の貴金属店が十億の資本金で設立して従業員が四人だった、五人だった、これが零細企業小規模企業ということに入るかどうかと。  従業員数だけでなくて資本金金額もともに、小規模企業についてはこういう定義だ、中堅企業についてはこういう定義だ、零細企業についてはこういう定義だというように、今回そのように改めることができなくとも、さらに、一たん決めたら二十年も三十年もそのまま定義をほっておくというんじゃなくて、御議論をしていただいて、近い将来にでもぜひともそういうような定義づくりをしていただく中で初めて零細企業に手を伸ばす、個人事業に手を伸ばしていける温かい中小企業政策を推進することができると思いますので、ぜひともひとつ、篤とお願いをしておきたいと思います。  以上です。
  15. 小山孝雄

    小山孝雄君 終わります。
  16. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 民主党・新緑風会の高嶋でございます。  両参考人にはわざわざ大阪からお越しをいただきまして、大変御苦労さまです。私も選挙区は比例ですけれども地元は大阪ということで、きょうは大変心強く思っておりますので、よろしくお願いをいたします。  とりわけ大西参考人は、大阪ではまさに中小企業のリーダー役ということで、大西衣料の経営と同時に中小企業経営革新のために頑張っておられるということでして、まさに実践の人だというふうに思っています。  和田参考人につきましては、元通産政務次官ということでもございますから中小企業政策には大変お詳しいということで、きょうはいろいろと教えていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。  以前から言われているんですが、大阪の町を元気にするためには阪神タイガースに優勝してもらうことと中小企業が繁栄することだと。そういう意味ではことしは両方ともだめ、こういうことですから大阪の町というのは非常に暗い。きのうも大阪市長選挙の応援に行っておりましたけれども、市長選挙まで盛り上がらない、こういう状況でございまして、そういう意味では私は、中小企業の町と言われる大阪を発展させるためには何としても既存中小企業、たくさんあるわけですから、そこに活力が必要なんではないかなというふうに思っているわけです。  とりわけ、全国に六百四十万の事業所既存中小企業としてあるわけですけれども、これは地域経済を担っているということはもう当然のことです。と同時に、雇用吸収力でも大きなウエートを占めているというふうに思っているわけです。  そういう意味で今回の法改正を見てみますと、先ほど大西参考人は大変評価をされましたけれども、とりわけベンチャー企業等での創業支援とか経営革新のところで評価されました。それはそれで私どももこれを評価しているわけですけれども、これはマスコミでもそういう意味では脚光を浴びているというふうに思っています。  ただ、和田参考人もちょっと先ほど言われましたけれども既存中小企業については、経営革新をするところについては手厚い支援をするけれども、それ以外のところでは余り目新しい施策に乏しいのではないかというふうに思っているわけです。そういう意味では、中小の体力強化をどう図っていくかというのは、これから非常に重要ではないかなというふうに思っているのです。  お二人に、大阪の実情や経験を踏まえて既存中小企業を元気にさせる施策大西参考人も先ほど若干言われましたけれども、とりわけ税財政面とか金融面でどういう具体的な施策があるのか、御教示をいただきたいと思います。  両参考人にお願いします。
  17. 大西隆

    参考人大西隆君) 阪神タイガースも夏ごろまでは頑張っておったんですが、最近もう全くだめになりまして、それと同じように、この年末には景気がよくなるだろうと言われてきた状態が、今日に至りましても一向に消費がまだ活発にならないという現状を、非常に大阪として寂しく思っておるわけでございます。  今御質問のございました関係で、特に私ども中小企業経営者が、今、大阪商工会議所経営相談室でもっていろいろと相談を受けていることの内容は、八〇%が金融面のことでございまして、去年の十月に二十兆円の特別融資枠を設定して、そして信用保証協会でもって保証をする制度が非常に去年の十月以降有効に効果を上げました。  現在、もう既に十月末で十八兆円使われておるということでございまして、そのもうあと残りが来年の三月までに二兆円しか残っていないという現状を踏まえまして、増枠とそれから期限の延長を我々は要望したわけでございますが、その点につきましても、通産省の方から、一応増枠と一年の期限の延長、増枠につきまして十兆円の増枠という御通達をいただいたわけでございます。いずれにしましても、私たち商工会議所でいろんな会員さんとの交流におきまして、中小企業担当の副会頭として、あの制度だけが本当にほっとしたというんですか、何か我々も皆さんのために役に立ったんだというぐらい非常に大きく効果がありました。  大阪の企業の倒産件数というのがずっと二百五十件ぐらい毎月毎月、去年の十月まであったわけでございますが、十月以降、十一月、十二月と年末に向けても百件ずつぐらい減りまして、ずっと二百何件あったのが百五十件ぐらいに毎月の倒産件数が減ったというのが一番大きな金融面での支援策だったというふうに思っておる次第でございます。  ほかにもたくさんございますのですけれども、とりあえずそのことを申します。ありがとうございました。
  18. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) まず、大阪の経済再生中小企業を元気づけるということについてでございますが、これは中小企業政策ではございませんけれども、大阪経済の沈下の最大の原因というのは、大阪の企業の本社、これが東京に行く。本社が大阪にあっても本社機能が東京に移されるということで、大阪の企業の本社は空っぽなんです。そういうような状態を、もう一度大阪に本社機能を帰ってきてもらう、こういう努力をやってもらいたいと思うんです。  そして、そのためにも一つの策として、それだけじゃございませんけれども、例えば特許庁の分室を大阪に置く。そうすると、大阪の特許の申請のウエートというのは約三割なんです。しかもその三割のほとんどが中小企業者なんです。ぜひとも、その本社機能をもう一度大阪に帰ってきてもらう一つの策としてでも、特許庁の分室を大阪に持ってきてもらうというようなこともひとつ考えてもらいたいなと思うんです。  それから、商店街の空き店舗対策です。これは、大きな企業、百貨店やスーパーが来るから空き店舗ができるんじゃないんです。大きな店舗と商店街というのは、これは共存の姿で地域発展させていかにゃいかぬ。空き店舗ができるというのは、大型の店舗じゃなくて大型専門店、本屋さん、眼鏡屋さん、おもちゃ屋さんというように大型の店舗ができるために商店街では持ちこたえないで空き店舗ができていっているということでございますので、従来のような大型店舗対策じゃなくて、大型の専門店対策をやっぱり空き店舗対策としてひとつ御検討いただきたいなというように思っておるわけであります。金融面については、私らの方にも御心配をかけていろいろと御相談に上がるのはほとんどが金融です。  そこで、中小企業零細企業の皆さんが商工ローンに取りつかれることを防ぐためにも、ぜひとも政府関係の金融機関は、これは危ないなと思っても、これはどうやろなというふうに思っても、やはりそこでもう一人保証人をつけなさいというような知恵を窓口で与えてもろうて、何としても、無理をしてでも政府関係の金融機関が零細企業中小企業に金融の手を差し伸べるという、そういう踏ん切りをぜひともやってもらうようにひとつお骨折りをいただきたいなというように思っておるわけでございます。  ほかにもございますけれども、時間の関係で以上で終わらせていただきます。
  19. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 もう一問だけちょっと時間がないので簡単にお尋ねをいたしますけれども、今回の改正案、とりわけ理念的な部分は大西参考人が言われたように、第一の目的というのは市場原理を中小企業セクターに貫徹させることが中心だと思うんです。  私は、自己責任という意味からいってもそれはそれでいいと思うんです。すべてを否定するわけではないんですが、ただ、勝者というか優等生を優遇して、敗者というか落第者を冷遇するということになっては、これまた問題点が出てくるというふうに思いますので、そういう意味では、この間、大阪府の商工部長が要望書を持ってこられたんですが、その三点目に、市場から退出を余儀なくされる者に対して、円滑な廃業と再挑戦の機会を提供するようなセーフティーネットを完備してほしいという要望がございました。  これは、フランスなんかではラファラン法ということで閉店補償等が認められているというような部分もあるようですけれども、そういうことについて一言ずつ感想をお尋ねしたいというふうに思います。
  20. 大西隆

    参考人大西隆君) 非常に難しい問題でございますが、倒産防止法とかそういうところで現状はいろいろと対処できるんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  21. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) これは御議論のされるところでございますけれども、幾らセーフティーネットを考えても、やはり弱者が取り残されていってしまうということを防ぐことは非常に難しいというふうに思うわけでございます。要は、最大のセーフティーネットというのは景気を上昇すること、景気を上昇して、そして零細企業中小企業が倒れないようにすること、それに尽きると思います。
  22. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 両参考人、大阪の元気のために頑張っていただきたいと思います。
  23. 海野義孝

    海野義孝君 公明党の海野でございます。  本日は、大西和田御両人、大変遠いところから、また朝早くから大変御苦労さまでございます。  お二人ともに、今、中小企業基本法審議中でありますけれども、それぞれ現場といいますか、取りまとめていらっしゃる団体の最高幹部の方として大変いろいろな思いがおありと思いますし、また先般の中小企業関係の審議会の答申の中にもそういった御意見等が多々織り込まれている、このように思うわけでございます。  先ほどお二人の方から御質問がありまして、私の申し上げるような質問が言い尽くされている感はありますけれども、若干視点を変えましてお聞きしたいと思います。  まず、大西参考人でございますけれども、関西で長い間繊維・衣料関係の卸関係をやっていらっしゃる。社員の方が約四百人ぐらいいらっしゃるというふうに仄聞しております。  そうした中で、まさに今、中小企業基本法が新法に変わるという中で問われておる問題の核心でありますけれども、いかに中小企業自助努力といいますか自立的な、まだ今、日本経済は大変厳しい状況にありますけれども、そうした中でいかにして今後発展していくか。かつてのソニーさん、本田さんの二十一世紀版というのはどこから出るかということでありますけれども、身近に、大西さんは近年のこの大変な不況の中で、特に消費税の増税あるいは医療保険のアップ、特別減税の打ち切り等の中で、過去三年ほどにわたってたしか売り上げを伸ばしてきていらっしゃるということを聞いているわけで、大変まさにこういうところでお話をされるのにはふさわしい方ではないかというふうに思うわけでございますけれども、時間が限られておりますから、ごく簡単に経営哲学といいますか、どういうような取り組みをこの平成不況の中でやってこられたのか、その辺について。  それから、従業員はふえてきているのか減っているのか、あるいは資本金等が、あるいは経営効率、生産性、こういったものは上がっているのか下がっているのか、簡単にひとつお願いしたいと思います。
  24. 大西隆

    参考人大西隆君) 大変具体的な御質問でございますが、私ども企業の規模は先ほど申されました四百名程度ということでございます。本社の経営規模はその程度でございますが、全体ですと八百五十名ほどの社員と、それからパートタイマー、アルバイトなどの方を入れますと二千二百名ぐらいになるわけでございます。  これはすべて子会社も含めましてのことでございますが、私たち、最近の三年間ぐらいのお話と申しますと、消費そのものは非常に低迷しているわけでございますが、一番問題なのは商品単価が下がっているということでございます。これは繊維の商売が中心でございますので輸入に頼るところが多くございまして、全体としまして六〇%ぐらいの商品が海外生産をされているということでございます。そして、それが非常に単価が安くなっている。特に中国でつくっているケースが多いんですが、そういうふうにして単価が下がっております。それと、消費そのものがどちらかというと単価の低いところへ低いところへと来ておりまして、そういった面で、数量的には販売数量はここ三年間ぐらいは全く落ちていないんですが、単価が下がっている分が売り上げが下がっている。これは業界全体で言えることでございます。  そういう中で対応していくということにつきまして、これはいかにその相手さん、お得意先の要望にこたえるかという体制をつくり続けてきたということでございます。これは、本社の方でできないことは子会社をつくって、そしてそこでお客様の便利な商売のあり方を追求しまして、ですから、本社の売り上げが減ってきました分を子会社へ社員を異動いたしまして、そして全然そういうリストラとかいうことなく、社員の採用はここ四年間ほどとめましたけれども、最近また二年前から新しい採用も復活しております。  ですから、そういった意味で、いかに消費に対応するかということと、その消費に対応している小売業者にどのように商品を買ってもらうようにするかということが私たちがここ数年間努力してきた主たるやり方でございます。ですから、これはやはり消費というものが中心になって、どのように消費者がどこから物を買うのかという、その物を買うところに物を売るという、そういう仕組みづくりが私どものやってきたことでございます。
  25. 海野義孝

    海野義孝君 もっと詳しくお話をお聞きしたいんですが、質問時間が限られておりますので、もう一問、大西さんにお聞きしたいと思います。  たしか先週でございますか、もうちょっと先ですか、日商さんの方として要望書を政府の方にお出しになったというふうに聞いているんです。「本格的な景気回復の実現中小企業の活力強化策の拡充に関する要望」という要望書をお出しになりましたか。承知されていますか。  今回のこの基本法の中にもいろいろ書かれておりますけれども、いわゆる明後年、平成十三年の四月一日からペイオフということで、現在のペイオフ凍結が解除になるということになりますと、一応一般的に言われている上限が一千万円という問題がありますけれども、今、私も関係している委員会におきましてこれに対して取り組み中でございます。特に今の商工ローン等の問題からもわかりますように、貸し渋り等から中小企業の皆様方は大変な御腐心をされているということでございますけれども、そういったことに対して、やはり早急にセーフティーネットを構築して、そして万全の体制で平成十三年四月を迎えるということではなかろうかと思いますけれども、要望書におきましては、具体的にペイオフの問題についてはどのような御要望を出されたか、もしお差し支えなければお聞かせいただきたいと思います。
  26. 大西隆

    参考人大西隆君) 「ペイオフ制度の解禁にかかるセーフティネットの構築」ということで要望書を提出いたしておりますが、   ペイオフ制度の解禁を前にして、信用不安や中小企業資金調達に支障をきたすことのないよう、問題金融機関の早期発見と金融機関の経営努力により破綻を未然に防止することが必要である。また、万が一の破綻に備え、破綻金融機関の資産と預金を健全な金融機関に円滑に引き継ぐ方式等の破綻処理策を講じるとともに、決済性預金を全額保護するなど万全なセーフティネットを構築すること。 ということがこの要望書の中にうたわれていることでございまして、私の私見も同じように、このままで平成十三年四月にペイオフが解禁されますと大変な問題が起こるんじゃないかというふうに考えておりまして、この要望書と同様に、やはり万全なセーフティーネット構築というものがそれまでに必要だという考え方を持っておる次第でございます。
  27. 海野義孝

    海野義孝君 次に、和田参考人にお聞きしたいと思います。時間が三分しかありませんので、二問まとめて申し上げますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  第一点は、和田参考人会長をなさっている全国中小企業団体連合会の方としまして、十一月四日に通産大臣に「中小企業者範囲の見直しに関する要望」というのをお出しになっていらっしゃる。その中で、さっきいろいろとお話がありましたけれども製造業とかあるいは非製造業、卸、小売、サービス等について、法案とおおむね同じなんですけれども、その中でただ一点、製造業については、一億円以下を三億円以下にするという法案に対して、一億円以下を二億円以下にするということで、拡大幅を二億円でなく一億円にとどめられた理由をお聞かせいただきたい、これが第一点。  第二点は、先ほど同僚委員から御質問がありましたけれども、資金繰りの問題が大変深刻でして、先般平成十年版の中小企業白書によりましても、金融機関の貸し出し姿勢で厳しくなった点としては、中小企業者は「信用保証付きを条件とされた」、それから「借入申込みを拒絶された」、「担保・保証人の追加を求められた」などが中小企業白書の中で中小企業方々からは挙げられているわけであります。  去る十一日の政府としての経済新生対策の策定の中で、金融安定化特別保証制度の枠を従来二十兆円ですけれどもさらに十兆円拡大して三十兆円に、さらに来年三月で一年半で終わるところを一年間再延長するということでございますけれども中小企業への円滑な資金供給という面から考えまして、これをどのように評価されているか。  特に、先ほどおっしゃったように、いわゆる中堅企業小規模企業、あるいは個人事業者ということで、特に個人事業者に対する思いが和田さんはお強いようでございますけれども、そういったことを踏まえて、一連の政府の貸し渋りに対する対策、こういったものをどのように評価されるか、お答えをいただきたいと思います。
  28. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 第一点につきましては、そんなに私は根拠がないわけであります、三億を二億にするということは。一遍に三億にするということによって一万六千社の中堅企業、その中に大企業系の中堅企業も含めて入ってくるということを少しでも食いとめるためには、一遍に三億にするのじゃなくて二億程度でどうだという意見なんです。そのことよりも、私は定義を細分化してもらいたいというところに重点を置いたのが過日の通商産業大臣に出した要求書の内容です。  それから、二つ目につきましては、これは私は一つ評価すべき点は評価せにゃいかぬと思いますけれども、特に政府系の金融機関につきましては、これはもう倒産の疑いが非常に強いとか、もう赤字だからどうやとかというような方がやっぱりたくさんおるわけです。だから、市中銀行じゃなくて政府関係機関に行かれるわけですね。そこを、ただ枠を広げるということだけでなくて、審査をやはり温情味のある審査にしていただいて、だから断られて商工ローンを活用するというところに行かないように、何とかやはりこの際は中小企業零細企業を救う意味で緩やかな審査をしてほしい、こういうふうに思います。
  29. 海野義孝

    海野義孝君 終わります。  ありがとうございました。
  30. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  大西参考人和田参考人、御苦労さまでございます。  時間が短いので、まず最初に和田参考人に伺いたいんですが、先ほどの冒頭のお話の中で、この中小企業基本法をじっくり審議してくれという御要望がございました。中小企業基本法が制定された直後の国会で、衆議院議員として特に中小企業問題に専門的に携わられた和田参考人のお言葉として、御要望として非常に重く受けとめたいんです。  特に、衆議院では、今国会二日半、合計十七時間ちょっとという審議時間。これをごらんになって恐らく和田参考人は心配なさって、これで果たして大丈夫なのかというお気持ちを持たれたことだと思うんです。  ともかく、今度の基本法改正が弱者に対して十分な配慮ができていないんじゃないかという、そういうお考えじゃないかというふうに先ほどの冒頭のお話を伺ったんです。  じっくり審議してくれということについて、私たちも、基本法制定国会では二国会かけてこれを審議しているということを知っておりますし、その御要望を非常に重く受けとめたいんですが、その辺の、弱者に重点を置くという、ここのところにさらに重点を置いてほしいんだ、そのためにはこれだけの時間が必要だといったお気持ちをいま一度お話しいただきたいと思うんです。
  31. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 一つは、やはり先ほども申し上げましたように、中小企業を考えるときの原点は個人事業に置いてほしいと。こういう政策を出すことによって個人事業はどうなるだろうか、こういう政策を進めることによって個人事業対応していくことができるだろうか、こうすることによって個人事業はどう考えるだろうかということ、常に個人事業に視点を置いた中小企業政策をやってほしいということ、申し上げたとおりであります。その点が、新しい目標の転換によってそのことが薄れられていきはしないか、こういう懸念があるわけです。その点は議論の中で十分消化していただいて、そうでないという考え方政府に持たしていくようにひとつ努力をしてほしいというように思うわけでございます。  二つ目は何でしたか。
  32. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 じっくり時間をかけてということです。
  33. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) そういう意味で、じっくり時間をかけてひとつ議論をしてほしいということであります。
  34. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 続いて和田参考人に伺いたいんですが、そういった立場でいわゆる格差是正から自助努力という方向へやっていくにしても、圧倒的多数はやはり中小企業は弱者なんだというお立場だと、お考えだと思うんですね。  そういうところで、今回法改正小規模企業問題について見ますと、現行法は前文で「特に小規模企業従事者の生活水準が向上するよう適切な配慮を加えつつ、」と明確に書いておりますし、二十三条で小規模企業対策というのを明記しておるんです。そこでも明確に「小規模企業の」「従事者が他の企業の従事者と均衡する生活を営むことを期することができるように」ということで、ここもまさに生計という問題を重視しなきゃいかぬのだと。小規模企業者というのは確かに企業ではあっても、生計という問題まで踏み込んだ支援をしなければいけないという考え方現行法で出されております。  それが、先ほどお話があったように、八条ですね、ここでこの生計という考え方がばっさり削られてしまっている。このことについてお考えをお聞かせ願いたいと思うんです。
  35. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 御指摘のとおり、個人事業者というのは、事業者であると同時に生計を維持することが含まれておるわけでございますので、それは、この法律にうたわれようがうたわれまいが常にそういうものであるということを御理解いただきたいと思うのであります。
  36. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 今度は、同じく小規模企業問題について大西参考人に伺いたいと思うんです。  先ほどのお話の中で、現在、小規模企業への予算が削減されてきているというお話がありました。事実、最近の政府基本方針で見ていきますと、団体支援の縮小とかそれから受益者負担といったことがかなり進行しておりまして、国からの支援が縮小されているのが現実です。  そういったところであるわけなんですが、今審議が行われておりますこの基本法審議の中で、政府の答弁では、小規模企業への支援は縮小しないんだと、先ほども定義がありましたけれども、実際にはそんなことはしないという答弁をしております。  しかし、実際現場でこれをどう受けとめておられるのか。現実に支援予算が減ってきている、基本法改正では、生計に踏み込んだ支援まではしないよと言わんばかりのものになっておるということをどうとらえておられるのか。特に、近畿、大阪では今非常にしんどい状況になっておるし、先ほどのお話にあったように大西参考人も衣料の卸をやっておられるというお話だったんですけれども、特にこの衣料卸売業界、大変なんですね、関西、大阪では。こういった営業状況といったようなものも含めまして、この小規模企業支援問題、どのように考えどう要望なさるのかお伺いしたいと思うんです。
  37. 大西隆

    参考人大西隆君) 確かに小規模企業の問題というのは大きな問題としてあるわけでございますが、現在我々商工会議所として取り組んでおります小規模企業対策ということにつきましては、各支部でもっていろいろと経営指導の相談を受けながら、経営指導をしながら、そういう倒産とかいう方向へ行かないように努力をしているわけでございますが、小規模企業と申しましても、例えば商店街の中で廃業をして、そしてシャッターがおりるというふうな場合は、これはその経営者の後継者がいないということによって起こっていることが大半でございます。  しかし、新しくこのごろ若い方が、リストラなどで企業から排出された人たちが新しい仕事を起こすということも、これは個人の事業またはそれに共鳴する数名の事業ということで新しく起こってくるという小規模企業もあるわけでございまして、従来の対策に加えてそういう方たち支援するというのが今回のこの法律改正の中で一番中心になっているところでございます。  それはなぜかといいますと、やはり開業率と廃業率の問題が大きく、私たち商工会議所でいろいろと議論しております問題の中で、何とか開業率を高めたいことと、今次々と大企業の合併とかいうことでリストラで何千人の社員が二年後には要らなくなるとかいう、そんなことがどんどんと発表されますので、これが消費を一番抑えている心理的な要素だと私は思っているわけでございますが、そのためにも、そういう方たち、これから二年間、三年間で出てくると予測される人たちを受ける受け皿をいかにつくっていくかということが私たち商工会議所の中で一番議論していることでございます。  今おっしゃられた小規模企業の保護ということでは、従来の保護政策をそのまま維持していくということと、新しくそういう事業を起こそうという人たちにいかに、どのようにしてやればいいのかというんですか、そういうセミナーを開いたりして努力をしているところでございます。  今、繊維の卸は非常に大阪で困っておるわけでございますが、これはどちらかといいますと、そういう不況、消費の不振のところに天候の異変というか、十月、十一月、十一月の本当に先週までずっと暑かったようなわけでございまして、そういう気候が追い打ちをかけているというのが繊維問屋の今の苦戦している状況でございます。  これで御返答になったかどうかわかりませんが。
  38. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 廃業率が開業率を上回っているという重大な問題です。確かにそれはあるんですが、だからそれじゃ創業支援したらうまくいくのかと。創業支援は大事なことです。大事なことですが、やはり今なお圧倒的多数は弱者なんだというところに目を据えて中小企業政策をやらなけりゃならぬのだというふうに私は考えております。  そこで、時間がなくなりましたので、一点だけ両参考人にお伺いしたいんです。  先ほど和田参考人のお話の中にあったように、分野確保法の話です。これは商業では大店法の問題というのがございました。その他、中小業界に分野確保法の必要とする分野は今なおあるわけなんですが、空き店舗問題なんかにしても、確かに専門店の問題もありますけれども、やはり現実の問題として大規模小売店舗の進出によってそれが衰退に陥っているという問題があります。大店法が廃止になって新たに立地法等でやることになるわけなんですけれども、とにかくこういった弱者であるということの観点と、それから事業分野確保するということは決して中小企業そのものを救済するというだけじゃなしに、まさに経済的社会的に不利な地位にある、そういった経済実態、それを改めていくための法律なんだというふうに理解しておるんです。  そういう点において、この事業分野確保法がなくなるなんということになったらとんでもないことだと思うので、そういったことについて御両名どうお考えか、お伺いしたいと思います。
  39. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 事業分野法、現段階でなくなるというようなことのないようにぜひともひとつ、むしろ強化をしてもらいたいという考え方でございますので、どうぞひとつよろしくお願いしたいと思います。
  40. 大西隆

    参考人大西隆君) 事業分野法の問題につきましては、今、和田さんがおっしゃったのと同じことでございます。  それで、私たち商工会議所で今、特に小規模企業に対して問題が起こってきておりますのは、下請問題がございまして、現在、資本金が一千万超から一千万以下という、資本金一千万で今度は何か下請企業対象に考えているようでございますが、従来、下請と申しますと製造業が頭にすぐ浮かぶわけでございますが、最近ですと製造業よりもどちらかといいますとビルメンテナンスの仕事であるとかそれから広告代理店の仕事で、大手が受けて下請で物をつくったもの、これが採用されないと原価も払ってもらえないとか、それからコンピューターのソフトの問題で、プログラムなんかを組んで、それが十分うまく評価されないとその費用も払ってもらえないとか、そういうところに今出てきております。  ですから、そういった意味で、公正取引委員会の中での下請代金につきましてもう少し、そういう資本金の一千万とかいうことで区別するんじゃなくて、そういう下請という業態をいかに我々がこれからうまくフォローしていくかということが今商工会議所で話題になっております。  以上でございます。
  41. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 ありがとうございました。終わります。
  42. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 社会民主党の梶原です。  きょうは、大西参考人和田参考人、貴重な意見ありがとうございます。私も三点ほど時間があればお尋ねしたいんです。  最初に大西参考人和田参考人もちょっと言われたんですが、今の最大の中小企業対策は景気対策であると、この点についていかがお考えかお聞きしたい。  というのは、ずっと調べてみますと、私もこの委員会長いんですが、過去、赤字法人率というのを見ますと、景気のいいときは五〇%を切るんですね、赤字法人率が。それで、景気が悪くなると、特に今のような状況というのは六四、五%台をずっと推移して、ことしの六月の国税庁の締めの場合六八%を超しているんですね、六八%を超している。もう圧倒的に中小企業が多い。その中小企業の中で赤字企業が多い。これをどうかしない限り、これは本当の手の打ちようは基本的にはないんじゃないか、こう思うのでありますが、その点のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  43. 大西隆

    参考人大西隆君) 確かに景気問題が非常に大きく赤字問題に絡んでいるわけでございますが、今一番実業界で大きな問題は、新しい会計法でもって来年の三月決算をしなきゃならないというところに非常に大きく影響が出ておると思います。  特に、従来、子会社にしわ寄せをして、そして本社を形づくってきたという企業が連結で決算しなきゃならない。そういうことになりますと、そこで大きくその問題点がクローズアップしてくるわけでございまして、そのあたりと、それと中小企業との絡みといいますか、そこら辺のところがこの九月決算、それから来年の三月決算で一番大きく影響するんじゃないか。  ですから、私たちは、三月以降につきましてもっともっと期待をしているといいますか、ですから三月までのところなかなかいい数字があらわれてこないというような解釈を、これは私見でございますけれども、いたしておる次第でございます。  以上です。
  44. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  和田参考人にお尋ねしますが、おっしゃられますように中堅と小と零細とは分けろと、よく理解できるのでありますが、なかなか法案の修正とか何かになりますと、与野党の勢力もありましてそう簡単にはいきません。  そこで、通産省の中小企業庁には今、小規模企業部というのがあって、部長がおって課長がおるわけですね。それが一つあるんです。この中で、中堅と小と零細と担当者を、課長もそれぞれ室を分けて、これは本格的にきめ細かい対策をやるべきではないか。お話を聞いておりまして、法案の修正というのは現実的にはなかなかそうはいかない。あしたから、それじゃ、どうするかという場合に、参考人の言われることはよくわかります。それを取り入れる方法を行政に国会意見を申す、こういう形を考えたのですが、いかがでしょうか。
  45. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 法律がどうであれ、やはり零細企業個人事業者を含む零細企業に対するところの政策というのと中堅企業に対する政策というのは、私はもう全然違うと思うわけですね。だから、現実に行政機構の中でそういうようにやっていただくということも私は一策であろうと思います。  この国会で無理であっても、ひとつ御理解をいただければ近い将来に基本法をもう一度見直すという場をつくっていただいて、ぜひともそういうようにしていただきたいというようにお願いをしておきたいと思います。
  46. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  そういう努力をするのが私ども役割かなと思っておりますから、頑張りたいと思います。  それで、大西参考人、新しい創造的なベンチャービジネス等を支援するセンターを都道府県に三百ですか、これをつくっていこうという、先ほどちょっとお話がありました。私も、これは本当にうまく機能するのかな、うまく機能する方法があるとすれば役に立つのではないかな、このように思うんですね。  支援センターというのは、経営の指導、大西さんのような経営手腕のある、能力のある、要するに経営者にはやっぱりそういう人がいるんです。そういう人がそこの支援センターを回す場合には恐らく相当有効でしょうね。  ところが、肩書だけで経営能力もないけれども、何かサラリーマン重役になってうまいこと世渡りしていったような人が県の経営者団体の幹部でおります。こういう人がそこにおって経営を指導したって、これはできるものじゃない。かえって悪くなりますよね。そういうことを役所は今からどう考えているのか、聞いてみてもなかなかわからないんですよね。だから、意見は言っておるんです。その点が一つ。  それから、そこの中には、私はやっぱりニュートラルで、非常に中立でだれに対しても公平に情報を提供してあるということが大事。  それから、金融相談についても、要するに経営をひっくるめて本当に力のある者がやっぱり相談に乗ると。そうしなきゃ、囲碁でも将棋でも横から下手なくせに口を挟むのがいっぱいおりまして、そういうようなことはよくあるんですね、経済界の中にもあると。  ちょっと感想をお聞かせ願いたい。
  47. 大西隆

    参考人大西隆君) 私どもも、具体的に始まってそこにそういう相談所ができているわけでございませんので具体的な御返答にはならないと思いますが、日本商工会議所といいますのは五百二十三商工会議所だけで日本国じゅうにありまして、それに満たない規模の町村なんかですと商工会があるわけですが、商工会というのは二千六百ぐらいあるように聞いております。  ですから、そういう窓口があるわけですが、それ以外に三百もの新しいものができるということで、私たちが最も心配しておりますのは、そういう方向へ行くということについて、今回中小企業基本法から成るわけでございまして、三十二の法案がここで新しく生まれるということで、そういうものをわかりやすく説明ができるようにそういう三百の支所といいますかがつくられるというふうに私は聞いておるわけでございますが、私たち自身ももっともっと勉強しまして、ではその機関と我々との関係をどのようにするのかというところにつきましても、まだ具体的な商工会議所としての考え方がまとまったわけでございません。  ですから、そういった意味で、新しくできるその三百カ所の相談所というものについて私たちももう少し研究をしたいと思っておる次第でございます。
  48. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 これはぜひ知恵をかしていただきたい。  私の地元でも本当に裸一貫で出てきた人で、名の通った人が経営をやってもうまくいかない、その人が行くと立ち直っていく、そういう人がおるわけですよ。その人はもう朝が早いんですね。朝早く起きて従業員より早く出勤して、そして窓でもあけて空気を入れて皆さんをお迎えする、なかなか厳しい人ですけれども、そういう人がおる。  だから、そういう人がやっぱり企業のあり方とか、こうしたらもうかるな、うまくいくいかないという相談ならいいけれども、全く力のないどこかの銀行から行ったりして肩書だけで世の中を渡っていくような人が指導するような形というのは、これは意味がないような気がしています。ぜひ商工会議所の方もそこら辺を非常に大事に考えていただきたいと思います。  二分ありますから一つお聞きしたいんです。  ことしも年末が近づいております。資金の関係、運転資金等の関係ですが、大体どういう御状況なのか、厳しさ、そういう点についてあれば。
  49. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 年末融資ですね。  私は率直に申し上げて、この法律が施行すると同時に一番喜んでおられるのは、今度新しく導入される中堅企業対象になる中堅企業の方は年末間に合うんです。一番喜ばれると思うんです。そのことによって、一つの枠の中で零細企業小規模企業がはみ出されるということのないように、やはり厳重に議会の方では監視をしていただきたいと思うのであります。そして、できるだけひとつ温かい気持ちで審査を緩やかにしてもらって、温情味あふれる政府関係金融機関の対処をぜひともお願いしたいと思います。
  50. 大西隆

    参考人大西隆君) 冒頭にも申しましたけれども、去年の十月から実施されました、特別保証枠二十兆円を設けまして保証協会が保証する融資制度でございますが、融資が始まりまして以降、返済までの一番長期の期間が一年間余裕があったわけでございますが、大半の企業がもう翌月から分割で返済していっているということが起こっておりまして、そのデータが、この十月末で十八兆円使われたわけでございます。毎月毎月一兆円ぐらいの保証が行われているわけでございますけれども、返済が半分ぐらい、五千億ぐらい返済が起こっておるものですから、ここ七カ月間毎月五千億伸びているという状態が続いております。  ですから、今はもう二十兆円のうちの十八兆円使われておるわけでございますけれども、大体そのくらいの時間で進んでいくんじゃないかと。しかし、それでも、年末はまあ何とかそれで間に合うんじゃないかと思いますが、それ以降が間に合わない。そのために何とか増枠していただきたいということを要望している次第でございます。  また、マル経融資でございますが、これもその特別保証の制度ができましてからマル経融資を利用する額が減っております。と申しますのは、経営指導を受けなければ融資ができませんものですから、そうしている期間、経営指導を受ける期間がないというところでそのマル経融資の金額が減ってきておりますので、その分は十分予算として持っておりますので、それを使っていくことは可能と思います。  以上です。
  51. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 どうもありがとうございました。
  52. 高橋令則

    ○高橋令則君 自由党の高橋でございます。  大西和田参考人方々には大変御苦労さまでございます。  最初に、まさに原点をお聞かせいただきたい。何といいますか、御感想をお聞かせいただきたいわけですけれども、今企業にとって大変なことでありますのは、要するに起業する方々が少なくて、そしてリタイアする方が多くなりまして、それでこれは大変だということが基本なわけですね。  それは恐らく経済状況等から見てやむを得ないという、何といいますか、景気なり経済変化に対する環境ということを言うんですけれども、それだけでもないのではないのかなと。もっと個人個人の考え方とかそういうものも根底にあるのではないかと。もっと深い問題もあるのではないかなということを、特に中小企業関係についてはそう感じるんですけれども、その点について最初にそれぞれ所感をお聞かせいただきたいと思います。
  53. 大西隆

    参考人大西隆君) ちょっと御質問の、中小企業の廃業問題ですか。
  54. 高橋令則

    ○高橋令則君 何といいますか、新しく起業、いわゆる業を始められる方とそれからリタイアする方々が逆になっているわけです、最近は。
  55. 大西隆

    参考人大西隆君) これは三年前ぐらいから起こった現象でございますが、開業率と廃業率が逆転しまして、これが非常に問題になっておる次第でございます。  おっしゃられましたように、そういう産業構造上の問題で新しく構造が入れかわるということもあるわけでございまして、そういった意味での新しく起こる産業と、それから従来のだんだんと減っていく産業と両方あるわけでございますが、やはり廃業の問題は、これは先ほども申しましたように、それが商業であろうと製造業であろうと、ほとんどが後継者がいないということによって起こっている問題がある。  特に大阪の商工会議所では、その問題の中で、特に技術を持った人たちが働いている工場が、経営者が高齢化して後はもうやれないというふうなことによって起こる廃業という問題ですと、これは、技術というものと、そこにいる技術を持った職人さんを生かす方法がないかということで、匿名によるMアンドA、企業買収でございますが、MアンドA制度というのを三年前に大阪商工会議所で始めまして、実際、売りたいという企業と買いたいという企業と、買いたいという企業は三年前にすぐにもう七十社ほど申し入れがあったわけですが、売りたいという企業はなかなか出てこなかったんですが、三年間で七件実効を上げております。  それはやはりそういう買いたいという企業の方は新分野に、新しい自分のところがやっている仕事以外にこういう仕事を欲しいと思っているところに売り物があった場合にそれが成立しているわけでございますが、やはり一つの方法としまして、そういうふうにして雇用確保と同時に技術そのものをずっと引き継いでいくということが非常に重要だと思います。  ですから、廃業に対する我々の商工会議所でやっている施策としましては、匿名のMアンドAを進めるということで、我々のところでそれが評価されまして、京都、神戸、尼崎の三つの商工会議所が去年から一緒に参画していただきました。そのおかげで、京都の企業と大阪の企業とがMアンドAで一緒になったということがございます。  それから、開業支援につきましては、これはもう今回の法改正の中で一番重要視されている問題でございますので、いろんなベンチャー支援といいますか、金融問題から、それから技術の問題からいろいろとございます。ですから、この問題につきましては、会議所としましては、セミナーを開きまして、もう既に数千人の人がそのセミナーに参加しておるわけでございますが、それを全国的にこの十一月からも、もっともっと具体的な、単に開業問題だけでなくて、融資の問題から技術供与の問題からいろんな問題を五日間のコースでもってセミナーを開いていくというのが、今計画している最中でございます。  以上でございます。
  56. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 中小企業というのは複雑なことでございまして、業種も非常に多岐にわたっておりますので、画一的に私は言えないと思うんです。例えば製造業については、やはり部品を下請で製造なさっておられるところもあれば、ペンチだとかドライバーというように完成品を製造している中小企業もあるわけです。完成品をつくっておる中小企業については、技術を生かすための手段を講ずる、それに対して支援というのはしてもらえるでしょうが、部品をつくっておる下請の中小企業はそんなことあり得ないわけなんですね。製造業でもやっぱりそのとおり。まして、建設業というようなことになってくると、これは何ぼ援助したところで一遍に小企業から中堅企業になっていったり大きくなっていくということはできないということです。  だから、やはり支援をしていただくのは私は結構でございますけれども、その支援をしてもらえない、もらうことができない業種、企業に対してこれからどうしていくんだということを考えてもらわないと、取り残されていってしまうということを一番恐れておるわけでございます。そういう点をひとつぜひとも配慮してもらいたいと思います。
  57. 高橋令則

    ○高橋令則君 私は、国そしてまた都道府県、そして団体も、大西参考人がおっしゃられたように、中小企業対策についてはそれなりに一生懸命やってきたと思うんです。私も関与したことがございますので、その中身はそれなりに承知をしておりますが、今おっしゃられたようなことを鋭意やってきたけれども、なおかつ起業率と、そして出る方々、やめる方々が多くなるというのは本当に残念だし、経済とかいわゆる申し上げたような環境のほかに、やっぱり一人一人の心というか気持ちとか、そういう企業者のマインドというんですか、モラールというか、そういう基本的な問題があるんではないかなというふうに、哲学というのは失礼だけれども、そういうふうなことがもっと根底にあるのではないかなと。したがって、それを十分わかった上で対策を立てませんと、表面的なことになってしまうんではないかなということを感じているわけでございます。そういうことを申し上げたわけでございます。  質問の時間も経過しましたので、参考人のお二人はいずれも団体の最高責任者の方でございますけれども、これからこの基本法が変わることによりまして団体取り組みも非常に変わってくると思うんです。今までの取り組みと比較をしますと、非常に大変ではないかなという気持ちで私はおります。  格差是正を中心にしながら経営指導とかいろんな、例えばテクノプラザとかいろんなこともやったわけですけれども、それがやっぱり主だったと思うんです。それが逆になってくるんだろうなと、取り組みが大変ではないかと思うんですけれども、それについての御意見をお聞かせをそれぞれいただきたいと思います。
  58. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 私たち団体は、先ほども申し上げたように、いわゆるそれぞれの単協中小企業の皆さん方の駆け込み寺的な役割を果たしております。また、零細企業経営者の皆さんの共同的な事務所役割も果たしておるわけで、おのずから職員にやはり意欲とそれから技術と知識とを持たさなくちゃなりませんので、ことしも先々月に中央会の御指導を受けまして研修会を全国から集めましてやらせていただいたところでございます。  そういうようにいたしまして、これから先は、零細中小企業の皆さん方のよき相談相手になる団体としてひとつ努力したいと思いますので、御支援のほどよろしくお願い申し上げます。
  59. 大西隆

    参考人大西隆君) 特に、商工会議所といたしましては、商工会議所法に基づいていろんな事業が行われているわけでございます。  今、精神面のことをおっしゃられましたが、例えば地方文化という点で祭りが、商店街の疲弊によって活力のある祭りが行われないというようなことなどが出てまいりました。私たちは特に商店街の青年部会を非常に重要視して組織化しているわけでございますが、青年部会でその祭りの活性化というものをやりまして、そしてそれがその商店街の催しと一緒になって活性化していくというふうなこと、特にそのような地方の文化的な面での、だんだんと薄れていくということに対する対応としまして、青年部会に力を入れているのが現在の私たち商工会議所でもって行っている施策でございます。
  60. 高橋令則

    ○高橋令則君 団体役割も極めて重要だと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げて、終わります。
  61. 菅川健二

    ○菅川健二君 参議院の会の菅川健二でございます。  きょうは、大西参考人和田参考人には大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。また、両参考人には、それぞれ中小企業の振興のために御尽力されておることに対しまして、心から敬意を表したいと思うわけでございます。  そこで、私の質問といたしまして、ただいまの高橋委員の質問にも一部ダブるわけでございますが、中小企業の指導、支援体制につきまして御意見を伺いたいと思うわけでございます。  これまで中小企業の保護政策を中心にいたしまして、国で画一的な一律の指導というのが中心であったわけでございますが、これから中小企業というのは自助努力自立促進するんだということになりますと、まさに地域におきますきめ細かい指導、支援体制が重要になろうかと思うわけでございます。そういう面では、つい数カ月前に地方分権推進法が成立いたしましたし、地方分権というものがほうはいとして力を持ってくる時代にもなってきたわけでございます。  そこで、私は、これからの中小企業をさらに支援、指導するきめの細かい対策を講ずるためには地方団体などの役割が重要であり、また皆様方の商工会議所、商工会、また地域中小企業団体役割というのは非常に重要になるんではないかと思うわけでございますが、この辺の指導、支援体制につきましての方針転換につきまして御意見をお伺いいたしたいと思います。
  62. 大西隆

    参考人大西隆君) 今回のこの基本法改正の中で、第六条の「地方公共団体の責務」という項がございます。「地方公共団体は、基本理念にのつとり、中小企業に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」と。  従来はこの責務という言葉はございませんでしたので、国の責務というのはございましたが、地方自治体の責務というのが初めて出てきたわけでございまして、私たちはそのあたりのところで、地方自治体と一緒になって仕事をしている事業とそれから国の一つの政策に基づいて行っている事業とをこれからは区分けしながらといいますか、特に地方自治体と一緒になって仕事を進めていく場合に、地方自治体の財政問題なんかもございまして、このあたりが新しく法的に分けられたことについて、私たちは特に地方自治体の財政問題が事業を展開していく中で従来と同じような事業展開ができるのかという点で心配をしているところでございます。ですから、そういった意味ではこれから先もう少し商工会議所内で練り上げまして、特に地方自治体との仕事の取り組み方ということについて、責務がある地方自治体との仕事の仕方について改めて詰めていきたいと存ずる次第でございます。
  63. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 基本的な理念を、従来の大企業中小企業企業間格差に対するところの支援をするという政策から、自助努力に対するところの政策ということに転換をされたわけです。  しかし必ずしも、企業間格差というものがなくなったから、あるいは小さな企業の方で大きな企業に対するところの技術が負けないようになったから転換するんだということじゃなくて、現実はやはり企業間格差もございますし、あるいは中小企業者にとって取引条件が劣悪な条件であるということは残されておるわけです。したがって、基本理念転換をされてもそういう点を解決するための政策というものはやはり忘れないように、後生大事にしてもらいたいというのがお願いであります。  特に、どうにもならぬ中小企業があるわけです。例えば建設業の場合なんか、これは元請と下請との関係、親企業と下請子企業との関係というのはもう非近代的な取引条件なんです。建設業法では文書をもってしなくちゃならぬということになっておっても、文書なんかやるのはないです。そして、その請負金額も話し合いで決めるんじゃないです。大きなところから下請へこれでやれという指し値で、赤字であろうが何であろうが指し値でやらす。受けたところが赤字になるというようなことで、下請いじめがされておるというのが現実の姿であります。  そういうことを頭に置きながらの中小企業政策というものをひとつ展開していただきたいというのが私たちのお願いでございます。
  64. 菅川健二

    ○菅川健二君 お聞きしておりますと、国の政策と地方の政策というものが両々相まってそれぞれが機能分担を適正にやっていくということであろうかと思います。全く私もそういう意見でございます。  ただ、若干心配なのは、先ほども梶原委員からもございましたけれども中小企業支援センターというのを全国に三百カ所つくるという新たなシステムを導入するということにつきましては、既存のいろいろな組織なり機能があるわけでございまして、それとの間で十分連携し、その機能が十分生かされるようにしなくちゃいかぬのじゃないかと私は思っておりまして、本会議におきましても当委員会におきましても、通産大臣にその点をただしたわけでございます。  通産大臣としましては、もちろん都道府県なり地域の商工団体意見は十分聞いて地域実態に合うような形にしたいという答弁をされておるわけでございますが、今後、具体になりますといろいろその辺の接触があろうかと思いますが、商工会議所としても十分意見を、発足の段階から誤りなきようにしていただく必要があるんじゃないかと思うわけでございますが、一言大西参考人、この点につきましてお答えいただきたいと思います。
  65. 大西隆

    参考人大西隆君) 確かに、私たち商工会議所の運営につきましては、会員になっていただいてそして会費を払ってもらって運営をしているという運営の方法でございます。これは、商工会でも同じく会員になってそして会費をもらって運営していくということでございますので、ですからそういった意味で、国がそういうセンターをつくるというのは、会員でない人全員、要するに国民全体に対しての窓口をつくろうということではないだろうかというふうに解釈をしております。  といいますのは、私たちは一生懸命、会員も非会員も同じく、従来は国の政策としていろいろな事業を、特に経営指導面でのセミナーとかなんとかを無料で一般に全部案内してそしてやってきているわけでございますが、しかし現実に会員と非会員ということがあるわけでございますので、そこらあたりのところをもう少し詰めないと、本当に具体的にその三百のセンターが国民の皆さんのお役に立つのかどうかということについて、もっともっとこれから先も進めていきたいと存じます。
  66. 菅川健二

    ○菅川健二君 これからのことでございますから、十分機能するようにひとつ関係者で協議していただきたいと思います。  最後に、私自身も地元の商工担当の行政を三年余りやっておりましたので、振興公社とかあるいは信用保証協会に帰っていろいろ状況を聞いてみますと、資金需要はいろいろあるけれども大半がもういわゆる運営資金なんだと。設備資金については、例えば振興公社については、設備近代化資金を配分いたしておるわけでございますが、ほとんど需要がないというような状況でございます。もとより景気回復というのが一番重要だろうと思うわけでございますが、中小企業の投資を促進するための税制等の配慮も要るのではないかと思うわけでございます。  この点について御意見がございましたら両参考人に、余り時間がございませんので簡潔にひとつお答えいただきたいと思います。
  67. 大西隆

    参考人大西隆君) 景気対策で最も効果的な税制ということで、中小企業対象にしたものとしましては、現在、相続税の問題それからそれによる事業承継問題というのが今回も私たちが要望していることでございますが、もっともっと一般的なことを申しますと、中小企業留保金に対する課税がございます。  これは昭和三十六年に法人税率が三八%、所得税の最高税率が七五%というときにできた留保金課税でございまして、これが平成十一年には三八%の法人税が三〇%になり、そして所得税の最高税率が三七%になりました。もうこの差は三〇%、三七%ですから七%しかないわけです。三十六年のときは三八と七五ですから倍あったわけでございますが、だからそういう意味でこの留保金課税というものが設定されたままになっております。これはやはり中小企業がその利益を蓄積していくということに非常に大きく問題でございますので、この留保金課税をぜひとも撤回していただきたいというふうに存じている次第でございます。
  68. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 国民金融公庫の窓口、それから保証協会の保証のやり方、ぜひともひとつ、多少危険度があったとしても温情味のある緩やかな審査の上で貸し付けに応じていただいて零細企業中小企業を援助していただきたいというように思います。
  69. 島袋宗康

    島袋宗康君 二院クラブの島袋宗康でございます。  本日は、大西参考人和田参考人、大変御苦労さまでございます。日ごろは日本商工会議所あるいは全国中小企業団体の育成そして発展のために御尽力されていることに対して敬意を表したいと思います。  私は、質疑というよりは、むしろそれぞれの立場で今政府にやってほしいこと、何をやってもらいたいのかということをお一人五分間ぐらい述べていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  70. 大西隆

    参考人大西隆君) 大変難しいことでございます。  特に私どもが要望しております中で、金融問題につきましては、先ほど来ずっと語られている特別保証枠の増額問題と期限の一年間の延期問題でございますが、あと税制問題で、特に私たち、町の中で百年以上も歴史のある企業相続税を払うためにその土地を売却して、そしてその店がなくなっていくというケースが大阪で二年間で三カ所ほど起こっておるし、特に心斎橋という非常にメーンの通りなんですが、お茶屋さんと呉服屋さんと、それからずっと記念品をつくっていたというすずの容器をつくっている会社と三つが相続税を払うためにその地所を売って、そこでもう廃業してしまうということが起こっていますので、今のこの相続税問題が事業承継問題と絡めて非常に大きな問題であるというふうに考えている次第でございます。  特に事業承継につきましては、この未上場の株式の評価でございますが、これも大変なことでございまして、これもできる限り大企業と同じように、同業他社の株価というか、そういう評価の仕方をしてもらいたいという要望を出している次第でございます。  それともう一つ、税制問題で固定資産税の問題でございますが、これは地方税ですので、なかなかここで議論をするのが難しいかもわかりませんが、ずっとこの固定資産税というものが、土地の評価がどんどんと上がってきまして、ですから今現実として土地がどんどん下がっていっているのに、上がっていた状態で今まだ高どまりしているのが現状でございまして、特に大阪とか東京とか大都会の場合ですと、本当に都会の中心地の地所というのは本当に十分の一ぐらいに下がってしまっていますのに、上がった状態で徴収されているというのが現状でございますので、この固定資産税のひとつ見直しをお願いしたいというふうに考えている次第でございます。  以上です。
  71. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 一つは、個人の事業所の承継にかかわる相続税の問題、長い間の懸案でございますので、ぜひともひとつ解決してもらって、後継者がおらぬ家やというように見えぬように、承継できるようにひとつ何とかここらあたりで解決してもらいたいなというふうに思います。  それから、御心配いただいておりますこの法律改正分野法がもう役に立たぬというようなことでないようにひとつ何とかしてほしいと思うんです。昔は時計屋さんで眼鏡を売っていたのが、このごろ眼鏡屋さんで時計を売っているという時代の変化ですね。その眼鏡屋さんが大型化していますね。書籍屋さんが極めて大型化したんですね。おもちゃ屋さんがアメリカからもやってきて大型化したおもちゃ屋ができる。クリーニング屋さんも大型化でお豆腐屋さんも大型化でというようなことで、本来これは不動産業を含めまして中小企業事業分野なんです。地域個人事業であったわけなんです。それがだんだんだんだんと大型化していっているために、これ、つぶれざるを得ないという状況にあるのが現実の姿であります。  ところが、この法律の施行によってそういう分野法のいわゆる取り締まり機能というか調整機能というか、これがなくなるというようなことになると、分野法自体が要らぬじゃないかという議論に発展していくことを私は非常に心配しているわけです。  だから、法律の中でどう表現をしておることが変わろうとも、今お話をいたしましたように、現実の姿というものを見きわめていただいて、そういう中でそのような零細企業中小企業を守っていくためには、分野法というのを今こそ大事にしていただいて、むしろそれを強化していただいて、これ以上大きな企業中小企業分野に入り込まない、分野を荒らさない、進出しないように何とか食いとめていただいて、中小企業事業分野を何とか守るように、守ることができるようにひとつしていただきたいというふうに思います。
  72. 大西隆

    参考人大西隆君) 私が知識不足でしたので、先ほど全国三百カ所に支援センターができるということに対して商工会議所との関係がよく説明できなかったんですが、これは既存のそういう商工会議所とか商工会とかいうところが、もう自分たちが、これが適当な団体であるということであれば、申し入れをすることによってそこを指定されるという関係だそうでございます。私の知識不足で。ですから、商工会議所は全商工会議所が手を挙げているというのがその三百カ所、支援センターのこれから行われる関係ということでございます。  それから、特に私、大阪の商工会議所の関係でお願いをしたいことなのでございますが、地方公共団体の財源が非常に緊迫しておるものですから、例えば私どもが行っております小規模事業に対する経営指導とかいう問題で、指導員の給与、人件費の問題でございますが、大阪の場合、平成十一年から人件費を一〇%、事業費を三〇%カットするということが実施されました。平成七年までは人件費の半分は国が負担し、そして半分を地方自治体が負担するということでございましたが、それが七年以降そのように全額地方自治体が負担するということで一般財源の中に入れられてしまうということが起こりました。特に大阪のような感じの、大阪府でこういうことが起こりました。  そのために、商工会議所としまして、二十三支部があったわけでございますが、今年度は三支部を統合しまして二十支部に今なっておるわけでございます。また、来年度はもう三支部統合して十七支部にしようと。それでないと対応ができない。  と申しますのは、人件費を一〇%カットと言われましても、一〇%指導員の給料をカットするわけにはまいりません。大阪府の職員がそれじゃ一〇%給料を減らしたかというと減らしているわけじゃないものですから、また私たち商工会議所の職員ももちろん同じように減らしておりません。ですから、その分は全部商工会議所の一般財源から負担しているというのが現状でございまして、我々お願いいたしたいことは、十分な地方財源を措置できるようにお願いしたいということでございます。
  73. 島袋宗康

    島袋宗康君 時間はないんですけれども、ちょっとお尋ねしたかったことは、各地方で昔繁栄した商店街がもうほとんどシャッターがおりているというような状況を見たときに、この日本のすべての経済に大きく影響しているんじゃないかというふうな感じがして本当に心を痛めております。時間があればその辺の改善を、どうすればそういった地域においてもとどおり戻していくか、人が寄ってくるかというようなこともお尋ねしたかったんですけれども、あと二分ぐらいありますけれども、もし一言ずつ何かありましたら。
  74. 大西隆

    参考人大西隆君) 大店法の改定が行われまして、来年の六月から町づくり三法と言われております大店法の新法に変わるわけでございます。その場合に、特に中心市街地活性化法というものが予算を伴っていますので、そのお金を使っていかに町づくりをしていくかという中に、都市計画法というもので町づくり全体をもう一度見直して、そしてどの地域にどのような商店街といいますか商業施設を持ってくればいいのかといいますか、そういうゾーニングをするというのが新しい法律の大きな一つの変化、変わるところでございます。  ですから、そういった意味で、せっかく財源を持っている、中心市街地活性化法の財源を使えるような町づくりの絵を描くということが一番大事なんだと私たちは思っておりまして、商工会議所は過去に大店法の審査をする中に入っておりましたので、その町づくりの、都市計画法の新しい改定をすることの中に私たちが手を挙げて入っていきたいというふうに考えている次第でございます。
  75. 和田貞夫

    参考人和田貞夫君) 大店法がだんだんと骨抜きになってきております。大きな店が来たらいかぬというんじゃなくて、来るのであればその地域活性化に力をかせということで、地域活性化のために商店街と協力してやはり多額の資金を地域に落とさせて、そして協力をさせるという方向にしていく必要があるんじゃないかと思うんです。  それと、私はもう一度、先ほど申し上げたように、商店街が歯抜けになる原因というのは、クリーニング屋さん、眼鏡屋さん、おもちゃ屋さん、本屋さんという、そういうところが歯抜けになっておるんです。それが付近で大型化した店舗ができるから、やっていけぬから歯抜けになってしまう、空き店舗になっていく、その点の対処の仕方もやっぱり考えてもらう必要があるんじゃないか、こういうふうに思います。
  76. 島袋宗康

    島袋宗康君 ありがとうございました。
  77. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々一言御礼を申し上げます。  本日は、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  78. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) ただいまから中小企業対策特別委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、今井澄君及び山下栄一君が委員辞任され、その補欠として千葉景子君及び益田洋介君が選任されました。     ─────────────
  79. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 休憩前に引き続き、中小企業基本法等の一部を改正する法律案議題といたします。  午後は、豊橋創造大学経営情報学部教授黒瀬直宏君並びにグッドウィル・グループ株式会社代表取締役会長折口雅博君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。ただいま議題となっております法律案につきまして、皆様から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方でございますが、まず黒瀬参考人、折口参考人の順にそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、黒瀬参考人からお願いいたします。黒瀬参考人
  80. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 黒瀬でございます。  お手元にB4の横長のペーパーが届いているかと思います。それからA4のペーパーも私のものでございますけれども、時間の都合上このB4の方のペーパーをもとにお話をさせていただきたいと思います。  中小企業基本法改正につきましては、中政審の答申がその意図をよく示していると思いますので、本日はその答申内容を念頭に置きながら幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、今回の基本法改正案が抱いている中小企業像について私の意見を述べさせていただきたいと思います。  どのような中小企業像を持つかということは、これは政策のすべての前提になるものでありますから、ある意味で言いますと、今回の基本法改正に関しては最も重要な本質的な点ではないかと思います。  この点につきましては、現行中小企業基本法というのは、周知のように、二重構造観に立ちまして、中小企業を低生産性と低賃金に陥っている企業という、そういうぐあいに問題において中小企業をとらえたわけでありますけれども、今回の基本法改正案では、その第三条に示されているように、中小企業というのはそういう弱者ではなくて、例えば産業の創出を行い経済構造を変革していく、そういう国民経済において積極的な役割を担う企業なんだ、そういうぐあいに位置づけをしたわけであります。  そういう意味で言いますと、中小企業を問題においてとらえます問題型中小企業観から、国民経済において積極的な役割を果たし得るんだという、そういう積極性において中小企業をとらえる積極的中小企業観へ、まさにパラダイムの転換と言っていい大きな転換をしたわけであります。  私は、改正案がこういう中小企業発展性でありますとか国民経済における積極的役割に着目したのは政策としての進歩であると思いますし、大いに賛成するものであります。しかし、ただ中小企業像を専ら発展性と積極的役割の面からのみ描くのが果たして正しいのか。中小企業というのは、今述べたような発展性や役割を発揮する上で、現在が大企業中心の経済体制になっていることから発する固有の不利を抱えた存在でもある、そういうことも同時に認識する必要があるのではないかと思うわけであります。  例えば、中小企業技術進歩は目覚ましく、その専門分野に関しては大企業以上という中小企業はもはや珍しくはございません。これはまさに中小企業発展性を示すものであります。しかし一方、大企業との付加価値生産性格差はそれにもかかわらず縮小していない。ここに着目すれば、中小企業発展は抑えられているということになるわけであります。なぜ格差が縮小しないのか。これは中小企業が生み出した成果を大企業が吸収してしまうという、どこかそういう仕組みがこの社会にはあるのではないだろうか、だからであると私は思うわけであります。  こういう意味で、中小企業発展性と同時に大企業体制に起因する問題性も抱えた存在である。私の言葉で言うならば、発展性と問題性の統一物であるというぐあいにとらえるべきでありますし、中小企業政策を講ずるに当たってはこういう複眼的な視点に立つ必要があると思うんです。  こういうぐあいに考えてみますと、基本法改正案には大企業体制と中小企業という視点が基本的に欠けているために、その中小企業像は一面的になっているのではないだろうか、そういう危惧を持つわけであります。このことが、以下で述べますように、政策目的、政策手段に関しても重大な問題をはらませているのではないだろうかと思います。  そこで、政策目的でありますけれども、私の理解によれば、政策というのは究極的に達成しようとする高次の目的と、それから高次の目的を達成するための具体的な目的、これが含まれておると思うんです。現行中小企業基本法は、産業構造の高度化と国際競争力の強化というのを中小企業政策の究極の目的に掲げておりました。そういう国際競争力の強化を達成する上で中小企業の低生産性が問題だという認識に立っていたわけですから、そこで政策の具体的な目的を中小企業と大企業との生産性格差の是正に置いたわけであります。それに対しまして今回の基本法改正案は、産業革新をしていく、それを進める、それを中小企業政策の高次の目的として、その政策の高次の目的を達成するための具体的な目的を、これは中政審答申の表現をかりれば「多様で活力ある独立した中小企業の育成・発展」に置いたわけであります。言うまでもなく、今日の経済の閉塞状況を独立中小企業の育成によって打破しよう、こういうねらいだと思うんです。  これは確かに中小企業に期待すべき役割だと思うんですけれども、果たして目的の設定はこれで十分かどうかという気がいたします。例えば、中小企業経済構造の改革を推進する、そういう経済における中小企業と大企業の関係というのは、現在のように大企業が中核セクターとして社会の再生産過程をリードしていくというものではないだろう。専門能力を持った独立の中小企業がネットワークを組みまして、再生産過程において垂直統合の大企業と同等の重要性を持っているはずである。また、取引面においても中小企業セクターと大企業セクターが対等化しているはずだと思うわけであります。そういう意味で、経済力が分散しかつ対等化されるという経済民主主義の進展を伴わないと、中小企業が本当に産業を創出していくという、そういう経済はあり得ないのではないかというぐあいに私は思います。  そういうことで、私は、政策の高次の目的として、中小企業による産業の革新と並んで大企業優位の仕組みを変える、そういう経済民主主義の推進を打ち出すべきであろう。それに伴いまして独立中小企業の位置づけも、そういう経済民主主義推進の担い手なんだという、そういう位置づけをここに加えるべきだろうと思います。  続いて、具体的な政策手段に関する問題であります。周知のように、今回の基本法改正案では施策群を大きく三つに分けたわけでありますけれども、その中でも特に新規性のある政策というのが創業支援とベンチャービジネス支援であろうと思います。  これにつきましては学界でも、これは中小企業問題を対象にするんだから本来中小企業政策とは言えないんだといったような意見もあるのは事実でありますけれども、私は、創業支援というのは経済力の分散を進めるものでありますし、ベンチャービジネス支援は大企業の重要性を相対化する、そういう意味でともに経済民主主義の推進に役立ち得るものでありますから、創業とベンチャービジネス支援に含まれる積極面を評価したいと思うんです。  ただ、既存中小企業に対する経営革新支援策は、私に言わせますと極めて不十分であります。一言で言うならば、既に七〇年代に提言されていた経営革新策が再びここで中政審答申に出てきたという、そういう印象を免れないわけであります。  私のレジュメで言いますと、時間がございませんので次のページに入りたいと思います。  既に先ほどもちょっと触れましたけれども日本中小企業というのは技術面では大企業と並ぶ専門性を私は獲得していると思います。ただ問題は、市場面で依然大企業に依存しているという問題があるわけであります。それは下請企業でない場合も同じでございまして、大企業主導の経済拡大に依存しつつ市場を拡大してきたというのが現状ではないのだろうか。ところが、現在、大企業を中心とする大量生産型の工業は失速しております。そういう意味でいいますと、この大企業中小企業に市場を提供するという機能はもはや失われたわけであります。したがいまして、独立中小企業の育成のキーポイントというのは、技術だけではなくて市場面でも大企業に依存しないような、そういう中小企業をつくり出すということがポイントになると思います。一言で言いますと、大企業との販売力格差を是正するということが中心になると思うんです。  じゃ、なぜ中小企業の販売力がないのか。これは必ずしも中小企業の努力不足とは言えないと思います。後で時間があったら申し上げますけれども、やはり体制的な要因、歴史的な要因というものが背後にあるために中小企業の販売力が弱いわけであります。そういう意味で、中小企業の販売面での革新を支援する施策を大企業とのイコールフッティングの確保という点から行う抜本的な施策が必要だろうと私は思います。  それから、二番目に具体的な施策に関して指摘したいのは、経営基盤の強化、これは答申の言葉をかりれば「競争条件の整備」ということでありますけれども、この施策が必ずしも十分なものとは言えないということでございます。私は、この経営基盤の強化策、つまり競争条件を整備するという施策は大いに強化すべきであると思いますし、この施策コンセプトは大賛成なのでありますけれども、内容が不十分であろうと思います。二つほど理由があります。  一つは、大企業の取引上の優越的な地位の乱用を規制するという、そういう取引適正化のための施策強化が見られないからであります。中小企業政策研究会最終報告というのが出ておりましたけれども、その報告書では、「独占禁止法、下請代金法等のルールの厳格な適用により、適正な取引条件確保を図る。」とかいうような文面がございました。それから、さらに最終報告で注目すべきは、中小企業庁設置法にある中小企業庁の代弁機能をここで復活させるんだという指摘があったわけでありますけれども、中政審答申ではどういうわけかそれがすべて削除されてしまったわけでございます。  三十三行目に書きましたけれども、九〇年代不況突入後、不公正な取引方法が極めて大きく広がっております。これを放置しておきますと、下請企業を初めとして日本経済のすそ野を支えている部分の崩壊につながるのではないかと私は危惧しております。そのために、独禁法ルールの厳格な適用と下請関連諸法制の強化改正、あわせて中小企業庁の代弁機能を復活させるべきであろうと思います。  もう一つ、施策で私は問題だと思いますのは、この中政審の答申では、今やまさに問題の焦点となっております民間間接金融の改革について何ら触れられていないということであります。  今回の貸し渋り、貸しはがし問題は次のことを明らかにしたと思います。第一は、金融の円滑という銀行業務の公共性を構成する重要事項の一つが守られなかったということであります。それから二番目の問題は、中小企業が銀行との取引において従属的な立場に置かれている、こういうことをはっきりさせたわけであります。最終ページの五行目に書きましたように、そういう意味で貸し渋りというのは、銀行の反公共性という社会問題であると同時に、対等ならざる企業間関係に発する中小企業問題である。まさに金融問題というのは中小企業問題でありまして、これをやはり中小企業政策当局は正面から取り上げるべきだろうと思うわけであります。  そこで必要なのは、銀行に円滑な資金供給ですとか取引の公正性を守らせていく仕組みをつくることであります。この点に関しまして、NPOの二十一世紀政策構想フォーラムというのがございますが、この団体が金融アセスメント法というのを提言しております。金融監視委員会を設置し、金融機関を、円滑な資金供給、利用者の利便、これは公正な取引のことを指しますが、それから経営の健全性、この三つに関して優秀、良好、改善の必要の三段階に評価し公表するとともに、金融機関が支店設置等を行う場合に、その認可に当たってこれを考慮に入れるというものであります。このような政策が、こういうぐあいに金融問題の解決についても、大企業体制と中小企業という視角からの優越的地位にある金融機関の規制が必要なんだろうと私は思います。  その他、人材獲得に関する支援についても現状以上の政策提言があるようには思われません。私は社会的インターンシップの導入などを提言したいと思います。  中小企業定義におきましては、純粋持ち株会社が解禁されたわけでありまして状況がここで変わったわけでありますから、これは資本面での独立性基準を当然導入すべきだろう。そして、政策実施体制における地方自治体、特に私は市区町村の基礎的自治体の役割の抜本的強化が必要だと思いますけれども、この点でも現行改正案では私は不十分ではないかと思います。  最後に、一言だけ申し上げますが、戦後の中小企業政策中小企業庁設置法の制定とともに出発いたしました。この中小企業庁設置法の理念は、一言で言いますと、反独占的な競争政策であったわけであります。財閥は解体される。その解体後の財閥が再び集中するのを阻止するのは独禁法で行う。その一方、財閥に象徴されるような経済力の集中に対する対抗力をつくるのがこれが中小企業政策であるという、そういう経済民主化理念に立っていたわけであります。私は、形骸化しておりましたこういう同法の経済民主化理念を再評価し、いわばネオ・経済民主化型中小企業政策として中小企業政策を再構築することが必要だ、こういうぐあいに考えております。  以上でございます。
  81. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) どうもありがとうございました。  次に、折口参考人にお願いいたします。折口参考人
  82. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) 中小企業基本法の中には、従来型の中小企業とそれからベンチャー企業と言われるこの二つのものが含まれているというふうに理解しています。  これは違うものだというふうに思われがちなんですが、もとはといえば創業した当時は皆普通の中小企業ですから、そこから、ある段階である意思を持ってベンチャー企業になっていく、そして意思を持って従来型の中小企業のままでいるというふうになっているというふうに私は理解しております。  恐らく従来型の中小企業、これも世の中の基礎的な部分を支える上で重要なものだとは思います。ただ、経済を画期的に活性化していくという意味では、ベンチャー企業を育てていくということが大変重要になってくるというふうに思っています。  ただ、今まではこのベンチャー企業というのが育ちにくい環境にあったということです。なぜかというと、中小企業を全部一緒にしておりますので、初めのうちはお金が集まらない、銀行からも融資を受けられないということで、そこを突破しないと、幾らいいアイデアがあったり幾らやる気がある人間がいても、なかなか上がってこれないという現実がありました。だから、そこのところを考えて政策を打つ必要があるというふうに思っています。  皆様御存じのとおり、アメリカは、八〇年代は経済は沈滞しておりましたが、九〇年代に入りましてから目覚ましい発展をいたしました。その核となった会社がマイクロソフトであり、インテルであり、そしてシスコシステムズであり、今で言えばAOLであるということです。これらはみんなベンチャー企業であり、今言ったほとんどの会社が大体八四、五年ぐらいに起業した会社です。わずかまだ十五年もたっていない会社なわけです。  これが何であんなに伸びられたかということなんですけれども、そして今アメリカのベンチャーのすそ野がなぜあれだけ大きくあるかということなんですが、大きなものとしてはやはり社会でベンチャーを育てられるインフラがあるということだと思います。  一番初めに来るのは、多分日本がこれから導入した方がいいと思われることとしては、まずは税制の問題があると思います。今回のこの法案に関係あるかどうかわかりませんが、私は根本的な話をしたいと思っています。  エンジェル税制、これに関しては今国会でも議論されることになっていると思いますが、アメリカの場合は、一般投資家が投資して、そしてもし失敗した場合、所得と合算して年間一千万までは損金に認められるというふうになっております。これが大きな役割になっていくというふうに思っています。日本ではもっと強烈にやってもいいと思っているんですけれども。  理由としては、個人がまずは欲望に基づいて、欲望と言ったらちょっとあれですけれども、自分がそれで資産をふやそうと思って投資するという多くの人が参加することによって選ばれてくる、要するに企業が成長してくるということが、まず広い枠をつくる意味で大事だと思います。  そして、その中で、日本でもベンチャー企業で失敗しそうになる会社というのは、資金調達に失敗して失敗する例が一番多いです。特に、技術職の人なんかは資金調達に関しては余り得意でないという人もいます。そういう人たちが初めの段階でお金を集められるという大変大きなメリットがあります。  お金を集めて自分で事業を実際にやってみますと、大きくなっていく過程でいろんなことを学びます。本当に財務戦略をちゃんと考えられるようになるとか、人事マネジメントができるようになるとか、マーケティングの仕方がちゃんとできるようになるというふうになります。そうすると、初めはある技術に対してのプロフェッショナルにもかかわらず、だんだんプロの経営者になっていくことができます。そういう人がどんどんふえていきます。  アメリカは、そういう人たちが株式公開をどんどんして資産をためます。ためた人が自分の会社を売却したり、もしくは、やりながらその資産をもとに新たなベンチャーに投資するということをやっています。そして、彼らがそのベンチャーを見ますので、経験者ですからプロですね、プロが見るので、次のベンチャーも成功確率が高いということです。  不思議なんですが、例えばプロ野球の解説者になっている人は、プロ野球選手で優秀な人がなっていますね。だからよくわかるわけです。監督やコーチにしてもそうです。だけれども、何で経済の方は事業を成功させた人がベンチャーキャピタリストをやっていないんですかと。  日本は、コンサルタントになっているのは、大学を出てからMBAを取ってきて、事業は全然やらないでベンチャーキャピタリストになったりしています。アメリカは、ベンチャーキャピタリスト、シリコンバレーのキャピタリストは皆さん事業経験者です。だから、うまくいくわけです。どんどん投資していく、うまくいく。その循環がどんどん枠を大きくして、新しいベンチャーが育っていくということになりますので、まず、このエンジェル税制というのは大変大事だろうなと思っております。  ただ、ここで日本の場合、注意しなくちゃいけませんのは、従来型の中小企業というものを引きずっている面もありまして、確かにそんなに売り上げが上がらないものですから、皆さん経費等を会社で使っております。そういう面が、例えば今度ベンチャーになったときでもそういうことが起こっていくとどうなるかということなんです。  投資家からお金が集まります。集まるけれども、公私混同的なことになっていくとなると、これは大変まずいことになってくると思います。なので、やはりベンチャーを目指すんだとなってお金を集めるんだとなった会社においては、間違いなくディスクロージャーというものを徹底的にする必要があります。そして、公私混同があったり、もしくは経営上まずいようなことをした場合、アメリカであれば逮捕されてしまいます。日本は、金融でいろいろありましたけれども、なかなか逮捕される人も少ない。そういう風土があるわけですね。  そういうのを厳しくして、やはり権利と義務は一体化するわけですよということです。お金も集められます。だけれども、当然持ち株比率も減ります。減っていいわけです。あるベンチャーの起業者によると、持ち株比率が減っちゃうからそれはちょっと困ると言う人もいますが、そんなことはないです。減ったって、それはきちんと経営すればいいわけです。別に自分のポジションも危うくなりません。実力があって経営するから、預かったお金をちゃんと資産運用できるんですね。それを期待して投資家もお金を出すわけですから、そういう義務をしっかりやる必要があるということです。  そうすれば、きちんとその持ち株比率の中で少なくとも責任を果たせます。そして、社外取締役がたくさんいて、監視の目の中でもやれますということで、より緊張感を持って、本当に成功させるぞという客観情勢も整いますので、それはうまくいけるのにおいても重要なことであります。  そういうふうに経営を科学的に持っていくことが大事だと思います。言ってみれば権利と義務、これをはっきりしてエンジェル税制を入れれば日本でもうまくいくのではないかな、そういうふうに思っています。  それから、大企業との戦いの中で、伸びゆくベンチャー、これが途中でつぶされたら大変だから何か策を練ろうというふうに思われている方がいらっしゃるかもしれません。そういう議論もたまに出ます。ですけれども、私はこれは全然必要はないというふうに思っています。従来型のいわゆる中小企業はある程度必要があると思います。それは本当に部品をつくるとか基礎を固める上でなくてはならない存在があります。そういうところは、下請法とかそういうのがあった方がいいと思います。  ただ、ベンチャーというのは、将来本当に大きくなる、大企業に伍して大きくなろうと思って、そういう志を持って、そしてエンジェル税制とかの支援も受けながら大きくなるところですから、これはかえって何か甘いことを条件に出すと強くなれません。その戦いに勝ってこそ本当に大きくなれるということです。  だから、例えばIBMがありました。マイクロソフトは後から出てきました。だけれども、結局、IBMよりも株式時価総額においては当然もうずっと大きい会社になりました。それは、IBMがマイクロソフトをベンチャーだからといって生かしてくれたわけではありません。マイクロソフトは負けないためにソフトという、OSという一番強いところを押さえたわけです。でも当時は、初めのころは、IBMはそれがすごく強くなると思わなかった。思わなかったけれども、それをビル・ゲイツはわかっていたわけですね。  そうやって、つぶされそうになるものをよけながら、そして本当に強いものの本質をわかりながら戦ってきているので大きくなれているわけです。だから、そうやっていって勝ち抜いたところが本当に強くなります。  今、日本だって伸びている会社はそうです。光通信という会社、携帯電話の会社でトップの会社があります。これの時価総額はもう四兆円近くあります。十年前にできた会社です。数々のNTTとかいう大企業、NTTに本当につぶされそうになる可能性は十分ありました。ですけれども、圧倒的なセールス力で、そして頭を使ってあれだけのシェアを持ってきて、今二千億円以上の売り上げがあります。  やはりこれは、そうやって自分で強くなってきたからこそ大きくなれているんですね。なので、そういうことは自由競争にさせる、競争させてより強い会社をつくっていく。それが国際的に本当に強い会社が日本の中から出ていく大事なことだというふうに思っています。  最後、三分ぐらいあると思いますので、根本的なことをもう一つ言います。  今言った手段は、確かに実務的に大事なことであると思います。ですが、物事は何でも根本が大事です。根源が大事ですね。日本でなぜベンチャーが育たないか、なぜ弱いかというと、私は教育問題にあると思っています。  特に大事なのは小学校の教育問題だと思っています。物心ついたときに初めて習うのが足し算、引き算とか漢字であるというのでは、実務的、戦術的なことをいきなり習うわけです。そしてそのまま受験競争があって、会社に入って、大蔵省とか行きますね。そうすると、その戦術的なことができる人が偉い人である、人間的に偉い人だというふうに思われております。ですが、なぜ本当はそうでもないかなというと、アメリカなんかではもっと違うんですね。  まず、私は理想的にも思うんですけれども、小学校に入ったときに、自分は何のために生まれてきたのか、社会に何をなすべきか、そして自分は将来何をしてどう人生を価値あるものにしていくのか、自己実現していくのかということを真剣に考えさせることをさせたらいいと思います。それを作文にでも書かせて、より真剣に考えている人が点数がいい、その点数を半分ぐらい、そして実務的な点数を半分ぐらい、その総合点で成績が決まっていけば、かなり人格的にもすぐれてくると思います。  その中で日本に欠けていることが三つあって、一つは、プライドを与える教育をしていない。それからもう一つは、目的意識、人生の目的とかそういう大きな目標、これを考えさせる教育をしていない。もう一つは、三つ目は悪平等主義、これがあります。  この三つがあって、起業家に非常に大事なこの三つが足りないので出にくくなっています。起業家で大事なのは、まずプライドを持っていなくちゃいけません。プライドがあるということは、まず国家では社会性がある、天下国家を考えるということです。  日本人がなぜ天下国家を考えなくなったか。それはプライドを与えられる教育というのが戦後なくなってきちゃったからです。起業家はやっぱりプライドがなきゃできません。それイコール社会を考える、ミッションを考える。だからそこに役立つものを目指していくんだという志を持って経営ができます。これが大事です。  それから、目的意識がないから戦略性がないんですね。起業家は戦略が大事です。実務も大事ですけれども、大きな戦略を考えていくということが大事です。それを考えられる能力が余りなくて、重箱の隅をつつくとか、木を見て森を見ないことを考えやすいというのが日本人の特徴です。  それから、悪平等、これによってユニークな発想が出なくなる、もしくは人と違うことを行う、考えることが阻まれるという環境にあります。  ですから、そういうことが大きく起業家が育たない、ベンチャーが育たない原因にもなっておりますので、その辺教育改革も含めてやっていくことが大事であるというふうに思っています。  以上です。
  83. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  84. 小山孝雄

    小山孝雄君 意見の御陳述ありがとうございました。  まず、黒瀬参考人にお尋ねをいたします。  参考人はまさに中小企業政策の専門家であり権威者であり、先ほど詳細にわたってのお考え、ペーパーにしても配付をいただきまして、読ませていただいております。  中小企業と大企業経営原理というのは、これはおのずからあり方は違うものと思います。例えて言うならば、巨大なタンカーや大型客船とモーターボートの違いのようなもので、同じ海の上に浮かぶにいたしましても、その設計思想から船を操るやり方までまるで別の世界のものと心得なければならないわけであります。  そして当然のことながら、中小企業対策のあり方も、中小企業本来の経営原理、特性に合致していなければならないものだと考えるわけであります。  中小企業の特性と申しますれば、市場の求めるものを敏感に察知する能力にたけている点であるとか、あるいは地域の特性やその持つ特技を生かした高付加価値化、あるいはネットワーク化あるいは経営連帯等を進めやすいという点もありましょう。意思決定あるいは企業行動の機敏性、柔軟性に富むということもあろうかと思います。こうした特性を生かして、やる気のある企業、将来性のある事業に重点を置いた支援をこれから行っていこうというのがこの基本法改正のねらいでもあろうかと思います。  起業に成功した実例やあるいは立て直しに成功した事例なども御紹介いただきながら、基本法改正後の中小企業政策のあり方につきまして先ほどるる聞かせていただきましたけれども、さらに御意見を伺いたいと存じます。あの時計で五分残りでおまとめいただければと思います。
  85. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 大きく二つ御質問があったと思います。  一つは、基本法改正後の中小企業政策のあり方ということでありますけれども、私先ほど申し上げましたように、中小企業というのは、中小企業独自の強みを持った、今まさにおっしゃいましたように人の気がつかない機会を察知すること、私はこれが中小企業の強みでありますし、起業家活動の根本だと思っております。中小企業はそういう強み、特徴、発展性を持っていますけれども、一方、先ほど述べたような幾つかの不利な点があるわけであります。したがいまして、これからの中小企業政策基本姿勢というのは、そういう中小企業固有の問題を解決し、中小企業の特徴、強み、発展性を引き出し、経済発展に役立てること、これが今後の中小企業対策基本姿勢であるべきだろうと思うんです。  そういうことを考えてみた場合、特に急ぐのは、私は一応金融アセスメント法という言葉で紹介させていただきましたけれども地域の正当な金融ニーズには民間金融機関から金融が流れるような、そういう仕組みというものをやはりつくるべきだろうと私は思うんです。  現在、いろいろ中小企業経営者にお会いいたしますと、今、銀行の合併が起きております。そうすると、今までそれぞれの銀行に五と五の枠があった、合計十の枠があった、しかし今度一緒になるとこれが五に縮まっちゃうんじゃないのかといったような、そういう不安を持っている経営者がたくさんいるわけであります。したがって設備投資も進まない。そういうときにこういう金融アセスメント法をつくれば、安心して設備投資をするだろうし、景気回復にも向かっていくだろうと私は思うんです。  それからもう一つは、やはり公正な取引関係であります。いろいろ聞きますと、例えばスペックも設計図もないまま納期だけ決まっている。したがって、そのために何回も何回も設計変更があるけれども、その設計変更の費用は全然見てくれないで短納期だけを要求される。こういうことが続きますと、日本技術の基礎というものを崩してまいります。したがって、公正な取引関係というものも緊急にやるべきだと思います。そういうような政策を行えば、実は中小企業というのはかなり潜在的な力を持っておるわけであります。  例えば、私が最近会いましたのは、家電店をやっていた経営者がございます。しかし、他の大型店との競争で大分不利に立ちました。しかし、お客さんが、うちのクーラー何か臭いのよといったような言葉の一言を聞いて、クーラーの丸ごと洗浄機というものを開発して、今伸びている企業がございます。  それから、最近では一家に何台も自転車を持つようになっておりますけれども、多くの方はマンションに住んでいます。そんなに一家に何台も自転車置き場はございません。だから、例えば共同自転車なんかをやりますけれども、そうするとどうしても使い方が荒くなります。そのために、そういう共同自転車の管理システムというものを開発して、今どの家がこの自転車を使っているかがわかるようなシステムを開発し、これが今伸びているというのがございます。  こういうのはいわゆるベンチャービジネスほどの画期性はないのでありますけれども、人々の日常の問題を解決するといったような形で新しい企業を起こしている。普通の中小企業でもこういうことをやっているんだという、ここにやはり私は注目していただきたい。  それから、起業だけじゃなくて、やはりこの不況期から脱出するのに成功している中小企業も決して少なくありません。これはある継ぎ手メーカーの例でありますけれども、一〇〇%親企業に依存しておりました。ところが、その親企業がこけちゃった。それで、エンドユーザーのところに行った。そうしたら、そのエンドユーザーは無理して規格品をつくっているということがわかった。したがって、これからはエンドユーザーの少しずつのニーズの差、これに着目して製品を提供していくのだ。いわば無理のきく継ぎ手メーカーということをモットーにして、その無理を聞くことによって技術を向上し、さらに継ぎ手以外の新分野にも進出するという形で伸びている中小企業もあるわけであります。  ですから、こういうぐあいに日本中小企業の潜在能力というのはあるわけでありまして、そういう能力を引き出すために、中小企業を取り巻いているさまざまな不利の是正を行っていくということ、これが重要だろうと思います。
  86. 小山孝雄

    小山孝雄君 ありがとうございました。  次に、折口参考人にお伺いをいたします。  折口参考人は知る人ぞ知るかつてお立ち台ギャルというのを生み出したあの企画者であり、私も一度ぜひ行ってみたいなと思いながらも行く機会がないままに終わってしまいました。今お話を伺っておりまして、ああしたことを企画されたその背景にも立派な哲学があったということ、だからこそ画期的な企画も生み出されたのだなということもよくわからせていただいたところであります。  今回の改正法は、創業そしてベンチャーというものを促しているわけでございまして、詰めて言うならば、やる気のある企業には積極的に応援するが、市場から退出すべき企業には手はかさない、すなわち延命措置にはくみしないといった面が強くあるのかなと、こう思います。  そしてまた、参考人の原体験から創業ベンチャー支援の今後の施策に対する評価、お考え等を聞かせてください。
  87. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) やる気のないところはやはり退場すべきだと思っているんです。こういう中小企業対策とかを考えるときも、本当によく根本的なことを考えなくちゃいけないと思っているんですけれども、弱者と弱者もどきというのはしっかりと分けるべきだと思っています。基本的にはこれは経済社会の中でやっていますから、中小企業といえども本当の弱者ではなくて、弱者もどきと言うと失礼ですけれども、例えば私がやっている、私は介護事業をやっていますが、介護事業でケアをする高齢者もしくは将来的な障害者は弱者だと思っております。  なぜかというと、働こうと思っても働けないわけですね、もう物理的に無理なわけです。ですから、自分で生活しようと思っても物理的にできない。そういう人はセーフティーネットとして社会で支える必要があると私は思っております。ですけれども、例えば新宿のホームレスの人たちがいます。あの人たちは私は弱者もどきだと思っています。別に病気で働けないわけでもなし、働こうと思えば就職誌はいつでも分厚いページでもって求人情報を出しております。何だってやろうと思えば働けます。だから、私はそれをやればいいと思うんです。  中小企業は、弱者と弱者もどきを考えたときに、基本的には働いてもうかれば社長は幾らでも給料を取れるわけですから、いい生活もできるわけです、経費を使いながらですね。だから、それにおいてはリターンもあるわけです。なので、どこまで面倒を見てやろうかということは、考えることとしては、本当に中小企業であるがゆえにどうしようもないというところだけでいいと思います。建設の下請をやったときに、どうしても大企業が、幾ら値下げしてもまだ下げろまだ下げろと、じゃなかったら支払いを何カ月後、一年後にするぞとか、そういう恫喝的なもの、そういうものに遭ったときは困ります。だから、そういうような本当に不公正のあるところをやればいいと思います。  ただ、今回、中小企業定義が広がって、いろいろ融資とかなんとかが受けられるようになった。それはいいと思います。ただし、融資というのは、本当に当てにしてやっていくと、何といっても銀行だって少ない金利でもってやっているわけですから、倒産すればやはり一%の金利しか抜いてなければ百年かかるわけですね、取り戻すのに。ということは、そう簡単には出せない。政府だってそう簡単には出せないということを中小企業者理解した上で、できるだけ自分の資金でやる、もしくは自分で調達する、責任を持って返せる範囲でやるというのをやりながらきちんとやるということが必要であるというふうに思っていますので、自己責任というものはベンチャー、中小企業に限らず徹底する必要があるというふうには思っております。  それから、原体験からしての評価については、私の場合たまたま資金繰りとか資金調達に関しては強い方ではありました。ですが、日本で優秀と言われる人は一流大学を出て大企業に行きます。その人がベンチャーに行こうと今なかなかできない。本当は一流大学を出てから、一流というか能力の高い人がベンチャーに初めから行けばいいんですけれども、なぜ行かないかという一番の原因としては、資金が怖いからなんです。いい企画があったり、情熱があったり、能力はあるかもしれないんですけれども、資金が怖い。だから、そこの部分に先ほど言ったようなエンジェル税制というものがしっかり機能するようになると、芽を摘まれていた人たちに芽が出る可能性が非常に高くなるので、そこのところが一番ポイントになるだろうというふうに思っています。
  88. 小山孝雄

    小山孝雄君 ありがとうございました。  終わります。
  89. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 民主党・新緑風会の高嶋良充でございます。  きょうは両参考人から貴重な御意見を拝聴させていただきまして、私どもぜひこの国会審議に反映をさせていきたいというふうに決意を新たにしているところでございます。  そこで、まず黒瀬参考人に、先ほどからも出ていますけれども、金融の円滑化ということについてお考え方をさらに詳しくお伺いをしたいというふうに思うんです。  この間、新聞の投稿欄に税理士の方からこういう投稿がされておりました。中小企業家が借り入れを申し込むと、現在の業況は、二つ目に担保不動産は、三つ目に連帯保証人はという、この三つのハードルを越えることが非常に難しい。そういう中で、担保不動産を持たない事業主が今緊急に数百万円の資金の調達をしないと手形の不渡りが出るという状況になれば、やっぱりやむなく商工ローンに駆け込まざるを得ないんだと。そういうことで、こういう商工ローンのような社会的問題が続くというのは、年利数%の銀行と年利数十%の高利の貸金業者との中間に不動産担保に依存しないで緊急に融資する中金利の金融機関が存在しないかまたは少ないからだ、そういうことでぜひ国会でもこの新方式を検討してほしいというような要望が出されていたわけです。  先ほどから黒瀬参考人から出されています銀行の公共性という問題あるいは政府系金融機関の融資という問題等々含めて、現在の日本中小企業の資金繰りを満たすための金融システムの問題点あるいは改革点、先ほどから出ています金融アセスメント法との関連も含めて、考え方を再度お伺いしたいと思います。
  90. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 一時、中小企業の金融問題というものはもはや解消したんじゃないかと言われたことがあったわけでありますけれども、今回の貸し渋り、貸しはがし問題はやはり本質的な点では解決していなかったということを示したものだと思うんです。私は、銀行の公共性というのは、例えば信用秩序の維持、それから預金者保護もございますけれども、これは銀行法を読めばはっきりわかりますように、資金の円滑な供給ということも公共性を構成する重要な事項になっているわけであります。  問題は、銀行の健全性が保障されれば、自動的に公共性特に資金の円滑な供給というものがなされれば、これは特に問題はないわけなのでありますけれども、御存じのように、公的資金を投入し自己資本率が上昇しても、今幾つかの、例えば日本商工会議所あたりのデータを見ましても、やはりこの貸し渋り問題が緩和されたという事実はないわけであります。  ということは、銀行の健全性と資金の円滑な供給とかあるいは公正な取引というこの三つが、ほうっておくとどうも両立といいますか、三つですから鼎立と言ったらいいんでしょうか、鼎立しがたいという面があるんだろう、それはやっぱり鼎立するような仕組みをつくる必要があるだろうというのが、この金融アセスメント法のそもそもの発想なわけであります。  そういうことで、先ほど申し上げましたように、この円滑な資金の供給それから取引の公正さ、これは利用者の利便と言いかえてもいいのかもしれません、それから健全性、こういう三つの観点から必要な情報を収集して、そして金融機関の活動について評価する、こういう機関というものをつくってみたらどうか。仮にこれを金融監視委員会というぐあいに述べたいと思います。  金融監視委員会が収集した情報とそれに基づく評価の結果は、当然対象の金融機関に伝えなくてはなりません。ただ、この評価が必ずしも正当かどうかという問題がありますので、別途、審査会みたいなものをつくりまして、この金融監視委員会の評価が正しいかどうかという審査を経た後に国民に適切な方法で開示していく。こういうような仕組みをつくってはどうか。もちろん、この場合には金融機関側からの異議申し立ても聞くということにしなくてはいけないと思うんです。こうやって国民に開示することによって、国民がそこで金融機関を選んでいくという情報が得られるわけです。  やはり、金融機関は国民、特に地域の住民によって育成されるべきものでありますから、こうやって地域の住民が金融機関を育成していくんだという、そういう仕組みも一つできるだろう。同時に、中小企業も正当な金融ニーズに応じた金融が得られるという、こういう仕組みができるのではないだろうか、こういう考えであります。  先ほどの金利の多様化ということも、これは当然必要でございます。今のままの金利では、自由化されたとはいえ非常にまだ硬直的な面があるわけでありますけれども、それはこういうようなシステムの中で、うちの銀行の特徴はこうなんだ、ここを評価してくれといったようなことにそれぞれ金融機関が努力していくことになろうと思うんです。多少金利は高くてもすぐ貸す、あるいは単に貸すだけではなくていろんな経営情報とともに貸すといったような、こういうシステムがはっきりすることによって、それぞれの金融機関がどのようなことを我が行の特徴としてあるいは差別化する柱として打ち出していくのかといったような競争も可能になっていくのではないのだろうか。そういう意味で私は、再度ここでまたこの金融アセスメント法の提言というものをさせていただきたいわけであります。
  91. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 次に、中小企業の市場面での自立という関係でお二人の参考人にお伺いをしたいというふうに思うんです。  とりわけ、公正取引との関連もあるというふうに思うんです。これもこの間テレビ報道を見ておりましたら、企業の名前を言ってはなんですけれども、新しい空気清浄機を開発されたカンキョーというんですか、非常に当初は発展されて、かなり大々的に販売をされたようですけれども、大手の参入とほかにも一つ二つ原因があったようですけれども、それによって急落をして倒産の危機に瀕しているという報道がございました。ここだけの話ではなしに、やっぱりベンチャー企業であっても、新商品、新しいサービスをせっかく開発しても、なかなか市場を開拓できないという問題、あるいは先ほどのことのように市場を開拓しても大手が参入をしてそこで挫折をするというような中小企業が非常に多いのではないかというふうに思っているんです。  そういう意味で、まず黒瀬先生の方から、先ほどから言われているように、黒瀬先生は大企業との販売力格差を是正すべきだという考え方に立っておられると思うんですけれども、その辺の方策は実際どういうことをすればいいのか。  それと、折口参考人の方は、大企業との戦いということではなしにと、こういう言い方をされました。必要ないと、こういうことなんでしょうけれども、ただ私は、この不公正な取引関係がもはや製造業からサービス業まで広がってきているという状況のもとでは、やっぱり独禁法の強化適用とか下請法の抜本改正という意味である程度の規制強化というのは必要なのではないかなというふうに思っているんですが、その辺弱者あるいは弱者もどきの保護との関係を含めて御意見をお伺いしたい。  ちょっと時間がございませんので、済みませんが簡単に。では、黒瀬先生の方から。
  92. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 私の答弁時間が長いので、私は短くして。お先にどうぞ。
  93. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) 今出ました事例の件なんですけれども、これは私が先ほど言った例の中の一つだと思っています。きちんと戦って、勝てたら勝った方がいいという、勝つべきだということのですね。実際問題、大体特別な下請関係とかがない限りは、原因がなければ結果がないというふうに思っております。要するに、だめになる原因がないと結果はないわけです。  では、あの会社はどうであったかというと、まず一つは商品力が本当にあったかどうかということが大事になります。それで、その会社のものと大手が後から出したものを比較してみますと、実際に私は比較してみました。自分でも使ってみました。そうしたら、後から出たものの方が非常に使いやすいし吸引力があるんです。これは私もちょっと心配しました。その後、何カ月かたってから倒産しましたけれども。本当にいい技術なんだけれどもどうしても勝てないというのならまた別かもしれません。ただ、そういうものがありました。  あともう一つは、その代表をやられている方は博士ですね。言ってみれば学者タイプです。企業というのを経営するには、技術だけではなく財務とか人事マネジメントとかマーケティングとか、すべての要素が入ってきます。そうすると、そういう人はほかのものが余り得意でなかったということがあると思います。その場合は、経営者として自分がCEOをやるのであれば、必ず得意な人間を社内に雇って彼らにやらせる。そして、そういうこともちゃんときちっと押さえなくちゃいけないんですよというやはり基本がなっていないわけです。なっていないと言ったら失礼かもしれませんけれども。  だから、それができなくて例えば落ちていく人を助ける必要があるのかどうかということで、やはり企業は非常に厳しい戦いの中でやっています。もしそのとき助けても、次に上のステップへ行ったらまた大企業が来ます、またやられちゃいます、また助けますとなると、やっぱりそれはそうではなく、自分から勝っていける者が残っていくべきだろうというふうに私は思っていますが。
  94. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 今の例は、とにかく市場に出て競争したわけであります。私は、その限りでしようがないのかもしれない。ところが、問題は、そもそも市場に出られないといったような状況中小企業の多くの場合にはあるわけです。  例えば、物を開発してセールスに行っても相手が会ってもくれない。名もない中小企業の名刺を出してもお客さんは会ってもくれないことがあるわけです。一方で大企業の名刺を出せば、これは嫌でも会ってくれるわけです。ですから、ここは初めから勝負になっていないわけであります。何しろ自分の商品を見てもらっていないわけでありますから。  ですから私は、イコールフッティングという観点から、自分の開発した製品を例えば公的な機関の援助によって展示するとか、場合によってはマスメディアで発表するような機会というものをつくる、これはイコールフッティングとしてあっていい政策ではないだろうか、こう感じておるわけであります。
  95. 高嶋良充

    ○高嶋良充君 ありがとうございました。
  96. 益田洋介

    益田洋介君 益田洋介でございます。  お忙しいところ、お二人の参考人の先生、本日はありがとうございます。  まず、私はWTOに関しまして。アメリカと中国の話し合いが、これは実はガットの時代から参加の申請をして、さまざまな変遷を経て十三年かかってやっと話し合いがついて、加盟が来年の四月ごろには実現するだろうという運びになりました。中国は、しかし、ただこれはもろ手を挙げて喜んでいるわけにもいかない状況があると思います。やはりマーケットを開放するということによって、世界経済、国際経済社会の中でスムーズになじんで経済活動をすることを要請されるために、いろいろな義務やそれから責任が生じてくることだろうと思います。  私は、一つここで注目しなきゃいけないのは、日本が戦後経済復興した過程におきましては、中小企業が非常に力を得て、そして輸出産業あるいは鉱工業活動というものを発展させてきた。それからまた、日本の場合は、工業団地ですとかあるいは工業組合といった、そういったコミュニケーションシステムが中小企業で非常に発展して定着してきたという過程があったと思います。それが戦後日本経済の活力になってきた。中国でもやはりこれからは同じようなものが求められていくんじゃないか。  ですから、日本はそうした面でやはり最終的には、隣国の中国のマーケット、これは非常に大きいわけでございますので、日本がさまざまな形で特に中小企業対策で援助の手を差し伸べていけば、最終的には日本にも利益が戻ってくるんじゃないか。具体的には、中小企業について、例えば人材の育成でありますとか法整備でありますとか、さまざまな観点から日本は協力を要請されていくんじゃないかと思いますが、この点について両参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  97. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 私は特に中国に詳しいわけではございませんが、今先生おっしゃいましたように、中国の場合にやはり人材というのが郷鎮企業を初めといたします中小の企業の成長の一つのネックになっていることは間違いございません。  すぐれた郷鎮企業は既に国営企業に存在する技術者をスカウトするといったようなことをやっておりますけれども、なかなかすべてがそういうわけにはいかない。技術を見ましても、私の印象では、現状では、中国のローカルの中小企業であります郷鎮企業代表されるような、そういう企業はやはりまだ三十年はおくれているのではないだろうか。しかも、ある技術分野で仕事をしても、適正規模を達成する前にまた何か次の仕事に移ってしまうといったような、そのような企業行動も中国の一つの特徴になっているように思います。そういう意味で、特に技術面での人材育成というのは我が国が大いに協力すべきことであろう、私はそう思います。
  98. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) 当社グループで今中国といたしておりますビジネスは、技術者を日本に派遣して持ってきております。これは大変優秀な技術者、日本で言えば本当にトップクラスの大学にいるような、そういう人たちをお連れして日本へ派遣しているわけです。そこそこ英語ができれば大体のことは共通語でできるということで、そういう役に立てるようなことはやっていると思います。  ただ、そういう何というんですか大きな投資が絡まないこととかこちらでビジネスするというのに関しては安心感を持ってやっておるんですけれども、私も以前総合商社にいましたときに、同じセクションが中国で取引をやっておりました。いろんないい話があるからいろんな投資をしていろんなことをやるんですけれども、大体そのうち全部とられてしまうというような歴史が非常に長く来ていると思っております。  今回は、こういうことで本当に市場が開放されていいんだと思うんですけれども、香港も返還されたから大分変わってきたとは思いますけれども、そういう政変というか政策的な考え方が変わらないと、そういう不安があるとなかなか進まないかなと思っております。多分中国も香港を契機として非常に今変わってきて、これから本当に変わるというふうになっているとは思うんですけれども、その辺のことが解決されれば、我々民間企業としては、中国というのは本当に大きな市場ですし、人材面とか法整備面とかいろいろ含めて提案したいこともあるし、やろうと思うことは幾らでもできると思います。そういうもっと根本的なことがどうなのかなというふうに思っていることはあります。
  99. 益田洋介

    益田洋介君 黒瀬参考人は、先ほどお話の中で、大企業中小企業の人材面で、リソースといいますか、そういったものが根本的に違っているんだ、そういう形での社会的な改革がなされない限りはやはりその差はどんどんついていってしまうということをおっしゃいました。  慶応大学の村田昭治先生、マーケティングを専門とされている方でございますが、要するに人間をスカウトしてくるについては大企業中小企業は関係ないんだ、魅力ある、活力ある、将来性、透明度の高い展望のある企業であれば中小企業でもどんどん人材が集まるんじゃないかというような言い方をしておりました。マーケティングの根本はやはり人材である、こういう御意見をお述べでございますが、この点はいかがでしょうか。
  100. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 私の知っている企業でも、八〇年代後半のあのバブル期の超人手不足の時代にも、百人の応募者の中から二人、三人を選べるといったような中小企業も確かに存在いたします。そういう企業の一つの特徴は、現在の我が社に就職するのではなくて十年後の我が社に就職してくれ、十年後の我が社を達成するために今君の力が必要なんだというようなことで、まさに今おっしゃいましたようにともに夢を実現しようといったような形で優秀な人材を集めるのに成功している中小企業はございます。  ただその一方で、例えば最近はごく普通のことになってしまったわけでありますが、大企業の方から週末の発注を受けて週初に納入しなくちゃいけないとか、就業時間後に発注を受けて翌朝納入しなくちゃいけないとか、こういう事情もあるわけであります。そうすると、幾ら中小企業が努力をしても、これは週休二日制は達成されないわけです。土曜、日曜も出てこざるを得ない、残業もしなくちゃいけない。やっぱりこういうもう一つの問題があるわけです。  ですから、私はたびたび申し上げますけれども、今私が述べたようなすぐれた中小企業はあるわけでありますけれども、やっぱりそういう中小企業だって、今のような発注を受けちゃったら、これは当然長時間労働をせざるを得ない。長時間労働をするところには人は行きたくないというのが現状であります。  ですから、私は、中小企業の可能性というものは大いにある、人材調達面でもあるんだけれども、一方でそういう可能性を阻害するような体制的な要因もある。ここにこそ私は政策としてメスを入れるべきだろうというぐあいに考えております。
  101. 益田洋介

    益田洋介君 先ほど折口参考人が非常に興味深いお話をされました。日本の場合はいきなりベンチャーに学校を卒業してから行く人はいない。それは資金面での不安がある、資金面での現実的なショートがあるんだと。  私の友人で神戸にお住まいの株式会社パソナの代表取締役南部靖之さんという方がいらっしゃいますが、この方は全然就職したことなしに、折口参考人がおっしゃったように、いきなりベンチャービジネスに入っていって非常に成功された方でございます。  そういった面では、エンジェル税制というのはこれからそうした新しい形でのベンチャーの人材が輩出してくるためには非常に重要なことだと思いますが、加えて、やはり中小企業対策としては相続税の、例えば最高税率が日本の場合七〇%ですけれども、アメリカは五五%、フランスとイギリスは四〇%、ドイツに至っては三〇%、そういうことでございますので、これはやはりベンチャーをしてもそれが継承されないでいってしまうという道筋をたどらざるを得ない。だから、中小企業はもう三代も続かない、相続税が払えないから。土地や工場なんかの敷地もみんな物納せざるを得なくなってくる。  これも、直間比率の問題がございますが、税制面でやはり国として政府として中小企業対策の一環として考えていかなきゃいけないことだと思いますが、エンジェル税制のほかに、具体的に折口参考人としてどういったことを私どもこれから検討していったらいいのか、どういう御意見をお持ちでしょうか。
  102. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) やはり、まず第一は法人税だと思います。韓国の場合なんかも、公開した後数年間は法人税を半分にするとかというインセンティブを与えて国際競争力を高めております。だから、税金というのはどこから取るかというときに、結果的には取らなくちゃいけないんですけれども、結果的に最も取れる方法を考えていったらいいと思うんです。  だから、相続税で取るというのも確かに手ですけれども企業が存続していき、そしてやっている最中、法人税の税率としては低目である、国際的に見てちょっと。だけれども、継続もできるし、実際にその少ない法人税により、例えば株価が、EPSが高まりますから、一株当たりの利益が高まりますから、そうするとPERで余計に買われていき、時価総額が大きくなる。大きくなると、その時価総額を使って企業買収ができるとか資金調達が大きなロットでできるようになるということで、さらに発展できる。さらに発展すれば、雇用も創出するし、さまざまな経済に対して大きなインパクトを与えることができる。結果、税収がふえるということができますから、身近に見えるものでがばっと取っちゃうということはやめた方がいい。  ですから、言ってみれば法人税は、今回下がりましたけれども、四〇%になっていますけれども、今四一%でアメリカと大体同じくらいだと思うんですけれども、逆に言えばアメリカより五%下げたらどうかとか、そうやってくるとこれは大分変わってきます。  それから、今まであった、同族だといっぱい税金がかかるというのがあります。ちょっと正式な税金名は忘れたんですけれども、同族だといっぱい税金がかかっちゃうので、わざわざ配当をいっぱい出してその税金を減らさなくちゃならない。これは公開準備のぎりぎりの会社でもそういうことを強いられるわけです。でも、配当をいっぱい出すということは、企業の内部留保を薄くすることですから、それはお金が外に出ていってしまいます。成長するまで配当を出したくないという会社はいっぱいあります。だから、それもやはり税金に縛られたりしていますので、そういう意味では手元で取る税金の税率は下げた方がいい。  ただ、企業が大きくなる過程において、もちろん消費税もふえるでしょうけれども、売り上げが上がりますから、あと源泉税がふえるとか、そういうキャッシュフローの大きな流れの中で取っていくということを重点的にやっていった方が経済活性化にはいいと思っています。
  103. 益田洋介

    益田洋介君 先ほど折口参考人が、ベンチャービジネスを育てるためにはやはり教育の問題だというお話をされました。先ほど私が引用しました神戸のパソナの南部靖之さんというベンチャーの起業家の方でございますが、やはり個の尊厳とか組織に頼るなと、そういった考え方をしている方でございまして、この教育の問題で一言、黒瀬参考人に御意見を伺いたいと思います。
  104. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 今までの教育は、生徒に地図を見せて、線を引いて、この地図のとおりに歩けというのが日本の教育だったと思うわけであります。これからの教育は、地図は与えるかもしれないけれども、どの山に登るかはおまえ自身が決めろ、その山へのルートもおまえ自身が決めろ、こういう教育へ転換しなくてはいけないと思います。
  105. 益田洋介

    益田洋介君 どうもありがとうございました。
  106. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  黒瀬参考人にお伺いいたします。  私は先生が書かれた、これは中小商工業研究七月号で、「中小企業発展性と問題性」という論文を読ませていただきまして、大変勉強になりました。先生のお考えで、中小企業の危機が加速しているという今日の状況があると思うんですけれども、その原因について端的にどうお考えかを述べていただけたらと思います。
  107. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 私は、そもそも日本中小企業問題の原点を考えてみたいと思うんですけれども、戦前、戦後の日本中小企業問題というのは、過剰労働力があり、低賃金労働がある。その農村の過剰労働人口が、食えないために都市に出てきて中小企業を開業し、そしてそこに就職し、しかし低賃金だからまた独立するという形で中小企業がどんどんふえていって、中小企業が過当競争を行う。そういう中小企業の過当競争を大企業がいわば利潤源泉として利用するという、こういう構図であったと思うんです。  私の見解では、こういう過剰労働力と低賃金に基づく中小企業問題というのは、高度成長の過程で基本的には解消したんだろうと。だけれども、それはしかし中小企業問題の解消ではない。先進国にも共通である大企業体制に起因する中小企業問題というのが依然として残っている。そういう大企業体制に起因する中小企業問題というのは、むしろ九〇年代不況下ではかえって強まっているのではないだろうかというぐあいに私は思うわけであります。  ちょっと私のペーパーのどこかにも書いておいたのでありますけれども、現在では、例えばアジア並みの下請単価というものは国内でもごく普通に貫かれている時代になっております。それから、さっき述べたような週末発注、週初納入も普通であります。それから、先ほど述べましたように、仕様も設計図もはっきりしないまま納期だけは決まっているといったような、こういう発注方式というのが広がっております。  製造業だけではなくてサービス業の方におきましても、例えばフランチャイズ契約をした、そのフランチャイジーがどんどん営業成績を上げてきた。そうすると、契約どおりに確かにほかのフランチャイジーとは契約していないけれども、フランチャイザーがそこに入り込んで直営店を開設していく。フランチャイザーの方は、どこの地域がもうかっているという情報はたっぷり持っておりますから、そういう地域は幾らでも見つけて入れる、これは契約違反ではないといったような。  こういう、もしかすると法律には違反していないのかもしれないんですけれども、常識で考えてアンフェアの取引関係が広がっている。やっぱりこれを規制しないと、創業しようという人だって出てこないのではないだろうか、私はそういうぐあいに考えております。
  108. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 ありがとうございました。  先ほど先生のお話の中で、大企業との付加価値生産性格差は縮小しておらず、ここに着目すれば中小企業発展は抑えられている、そういうふうに陳述されましたけれども、私もそうだなということを痛感いたします。  今度の法律改正で言いますと、例えば大企業中小企業の不利の格差、そういった問題が削除されるとか、あるいはまた中小企業の組織化、そういうものが落ちるとか、そういうことはありますけれども、先生のお考えで言いますと、そういう方向というのは中小企業発展にとってどういう意味を持つのか、プラスなのかマイナスなのか、その点どうお考えでしょうか。
  109. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 私は、中小企業発展性のみから評価するのはやはり誤りであると思いますし、先ほど申し上げましたように、中小企業というのは発展性と問題性の統一物であるというのが私の認識であります。  したがいまして、中小企業政策においても、そういう複眼的な視点からやらなくてはいけないわけでありまして、問題性を無視するということはこれは到底許されることではないと思うんです。  ただ、私は格差是正という言葉に若干抵抗を感じているんです。なぜかといいますと、現行基本法の格差というのは具体的には生産性格差を示します。生産性格差を是正するというのは、むしろ大企業が国際競争力をつけるために中小企業の低生産性がネックになっているから生産性格差を是正するという、そういう意味でいいますと、中小企業を本来補完的なものに位置づけているんですね。  それからもう一つの問題は、生産性のみで比較しておりますから、要するに中小企業が大企業のような企業になればいいんだという思想がそこにはどこかにあるわけであります。中小企業中小企業の独自のよさがあるわけでありまして、ミニ大企業になる必要はないわけであります。  ですから、私は、問題性を無視することはこれは許されない、問題性を解決しないと中小企業発展性もあらわれてこないだろう。ただ、それを格差是正という言葉で表現するのは私自身は賛成しかねております。
  110. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 先生が書かれた著書の中で、「中小企業政策の総括と提言」というものがあります。これも私読ませていただきましたが、大変勉強になりました。その中で、東京の大田区と墨田区の事例が挙げられておりまして、そこで自治体が決めている条例の役割等々について非常に評価されている。それも非常に興味深く思いました。  それで、実は私、例えば大田区蒲田の金属機械加工業の集積、その問題をここでも取り上げたんですけれども、今の状況を放置しておくと大変なことになる。歯抜け状態がどんどん進んでいるわけですね。どこかが歯抜けになると水平ネットワークが破壊される、それは取り返しがつかない、今ならばこの復興策を打てば間に合うという、その話も聞いてまいりました。  そこで、先生にお尋ねしたいのは、条例等々で頑張っているけれども、しかしそれだけでは間に合わないというのが現状だと思います。そうすると、国として何をするのか、何が必要なのか、どういう施策を打てばそういう中小企業、世界に誇るようなそういう集積地域を救うことができるのか、先生のお考えをお伺いしたいと思います。
  111. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 東京大田区は、かつて九千あった工業の集積地がたしか最新のデータでは六千台に減ってしまっているわけであります。  そういう点で、まさに戦後最大の危機にあるわけですけれども、やはり一つは、中小企業というのは、私は中小企業だけではないと思うんですが、産業というのは本来地域が単位になっておるわけであります。特に中小企業の場合には地域産業集団という形であるわけでありますから、私は、中小企業政策の主体も実は地方自治体、特に市区町村のような基礎的自治体が中心になるべきだろうと思うんです。  ただ、もちろん現状では、今までは中央集権的に政策が行われてきたわけでありますから、基礎的自治体にそれにふさわしい人材がいないのは当たり前であります。それからもう一つは、当然財源問題もあるわけであります。  しかし、私は、墨田区の例なんかはやはり典型だと思うんですけれども地域の小零細企業と行政とがお互いに協力し合って何か創造的な政策を打ち出している。例えばスリーM運動なんというのは典型だと思うんですね。ああいう創造的な施策というものを講じられる、やはりそういう仕組みをつくり上げていくということが地域の産業集積を守ることにもつながっていくんではないだろうかと考えております。
  112. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 今回の法改正については非常に拙速であるということが言われております。中小企業団体団体としてそういう意見を表明するということも行われております。確かに、議論する時間もない、意見も上げようがない、わずか二十日間インターネットで意見を聴取するということが行われたにすぎないわけですね。  その点で、参考人は、個々の中小企業者が参加し得る政策提言システムの構築を提案されている。これはやはり非常に興味深いと思います。アメリカのホワイトハウス中小企業会議も紹介されておりますけれども、こういうシステムの構築についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  113. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) ホワイトハウス中小企業会議というのは、やはり我々がどこか念頭に置かなくてはいけない政策制度だと思うんです。各州の中小企業者が集まってそれぞれの政策提言を行う。今度はその州が幾つか集まったある地域でさらに政策をまとめます。そして、それをホワイトハウスに持っていきます。ホワイトハウスで我が地域はこういう政策提言をしたいのでぜひ一票入れてくれといったような選挙運動をして、最終的にホワイトハウスに対する政策提言を決めるわけであります。重要なことは、その政策提言をすると、次の段階でその提言がどれだけ実行されたかということもちゃんとチェックするような仕組みができているんですね。我々はやはりこれを学ぶべきだろうと思うんです。  それからもう一つは、そういう政策提言をするには、私は、一番自分の身近な行政機関である基礎的自治体というものがやはり中小企業政策で重要な力のある役割を果たさなくちゃいけないと思うんです。我が町の行政だからこそ提案もし得るわけでありますから、そういう中小企業者が参加という意味でも、基礎的自治体に私は中小企業政策の重要な役割を与えるような方策というものを今後検討すべきだろうと思います。
  114. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 先ほど挙げた先生の本の中でも、日本経済活性化させる上での中小企業役割、そのことにも触れられているわけですけれども、大企業役割もある、それからまた中小企業役割もある。今の日本のこういう状況の中で、大企業との対比で中小企業が果たす独特の役割、先ほど先生は中小企業には独自のよさがある、役割があるんだ、中小企業がみんなでっかくなりゃいいわけじゃない、そういうことをおっしゃられました。私もなるほどなと思います。  その点での今の経済発展ということも課題にしたときの中小企業役割を端的に述べていただけたらと思います。
  115. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 私は、産業発展とそれから人々の働く場というこの二つの意味で、中小企業は独自の役割を果たし得ると思います。  私は、基本的に今日の先進資本主義国というのはもはや大量生産型工業が行き詰まっていると思います。これからの先進国の中心というのは、より高度な要求水準のしかも絶えず変わるような、そういうニーズに対して素早く適応するという、こういう産業分野が残っていくだろう。私の言葉で言うならば、カスタムメード型の産業分野というのはだんだん拡大せざるを得ない。これはまさに中小企業分野であります。これはベンチャービジネスでもそうですけれども、普通の中小企業でもこういうカスタムメード的な生産は得意としているわけでありますから、そういう意味で二十一世紀こそ中小企業の可能性がある社会になるだろう、こういう可能性というものを中小企業が抱えている問題を解決することによって引き出さなくちゃいけない。これが一つであります。  それからもう一つは、私は端的に言うならば、現在、大企業というのはモラルクライシスに陥っていると思います。大企業に勤めるメリットでありました終身雇用、年功序列というのは事実上崩壊しているわけであります。それにかわる動機づけというものを大企業が提供することに成功しているとは到底私は思えません。  その一方、中小企業の中にはやはり人間尊重型の経営をしている企業がございます。すべてとは言えません。すべてとは言えませんけれども、本当に人間中心型の経営を一生懸命やっている中小企業があるわけでありまして、そういう意味で職場としても働く場としても中小企業の可能性というのは高いものというぐあいに考えております。
  116. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 ありがとうございました。  折口参考人、大変済みません、時間がなくなりました。ありがとうございました。
  117. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  黒瀬参考人並びに折口参考人、きょうはお忙しいところ、いろいろありがとうございました。初めに非常に胸がときめくような陳述をいただきまして、大変うれしく思っています。  まず、黒瀬参考人にお尋ねいたしたいと思います。  今回の改正案では中小企業範囲拡大することとしておりますが、分類そのものはこれまでと変わっておりません。ですから、かえってこのことが課題になっているのでございますけれども、これまでの質疑の中でも言われたところでは、単なる範囲拡大では対象が拡散してしまう、小規模企業への支援が手薄になってしまうのではないか。それを防ぐためには、大企業中小企業、その中小企業の中の小規模企業という現在の分類を改めまして、中小企業をさらに零細、小規模、中小、中堅に細分化して、各規模別に十分な財源を担保したらどうだろうかという、きめ細かな政策を講じなければならないのではないかという考えを持っております。  先ほどからお伺いいたしておりましたけれども、復習的になるかと思いますけれども、もう一度お願いいたします。
  118. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 規模別に政策を分類すべきだというお考えかと思います。私はちょっとそういうことまで思い至らなかったのでありますけれども、小規模層に行くほど中小企業の問題性が高まるということは事実だと思います。  ただ私は、とはいえ、小規模企業対策基本はやはり経営革新ということに置かざるを得ないんじゃないかという気がするんです。  というのは、仮に現状維持のまま小規模企業政策で保護しようと思っても、もはや保護できない時代になっているんだと思うんです。例えば、かつて小さな小売店でも、店に品物を並べておいて、シャッターを上げれば幾らでも売れたという時代はあったわけでありますけれども、現在ではそういうことは到底考えられないわけであります。やはり小規模企業小規模企業なりに経営革新を進めていかなくちゃいけないだろう。ただ問題は、小規模企業が行うような小さな革新でもきちっと政策支援対象にするんだということを私は担保することだと思うんです。ここが重要だと思うんです。  それからもう一つは、やはり小規模企業対策を国が全体的に見るというのはかなり無理があるんじゃないか。小規模企業というのはまさに地域に密着した存在でありますし、地域によって全部特性が違うわけです。大都市の工業集積の小規模企業と地方の小規模企業とは、これは全然性格が違うわけであります。そうすると、どうしたってやはり、繰り返しますが、基礎的自治体が中心になって小規模企業対策をやる必要があるだろう。むしろ、きめの細かい小規模企業対策という点では、いわば地方分権というものを進めるということが必要なのではないだろうかなという気がいたします。
  119. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございます。  地域に密接しているということをぱっと伺いまして、やはり中小企業といいますと何だか商業経営というか産業経済にかかわるというふうにも思うんですけれども中小企業というのはもっともっと幅広いわけでございますから、そういう意味では地方自治体と十分連絡をとりながらやっていかなくちゃいけないと提案をいただきまして、ありがとうございました。  次に、中小企業基本理念についてもう一度教えていただきたいわけでございます。  今回の改正案では、大企業との格差の是正というこれまでの基本理念を大きく転換することとしています。けれども、本当に格差はなくなっていくのだろうか。確かに中小企業の地位は上昇してきているとは思いますけれども技術面では大企業に引けをとらない中小企業が多数あるとはいいながら、先生が著書で申されております、「中小企業政策の総括と提言」を読ませていただきましたけれども、市場における大企業の寡占的支配力は依然強力であり、それどころか現在さらに強化されているということでございます。  先ほどからもこの点をお伺いいたしましたけれども、市場の支配力という面から見ればまだまだ大企業の力が圧倒的に強いのが現状ではないかと思いますが、現状が追いついていないのに、本当に今度の基本理念を変えてしまって大丈夫だろうか、そこらあたりの御示唆をいただきたいと思います。
  120. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 中小企業が抱えている問題を大企業との生産性格差という形でとらえるのは私自身は余り賛成しかねるわけでありますけれども、先ほどから申し上げていますように、中小企業というのは大企業体制に起因する問題というものも一方で抱えている存在だと、やはりそういうぐあいに中小企業定義しなくちゃいけないと思うわけであります。  今、先生御指摘していただいたわけでありますけれども、この寡占問題というのは、むしろ九〇年代不況に入って私は強化といいますかますます悪化したんだろうと思うんです。それはやはり構造的な背景があるからであります。  例えば製造業の場合でいいますと、かつて日本製造業というのは素形材の生産から部品加工から最後の組み立てまで全部国内で完結しておりました。しかし、今やその一部というものはアジアを巻き込むものになっているわけであります。特に労働集約的な分野、定型的な技術を使った分野は東アジアに行っているわけであります。そういう形で日本の国内製造業が東アジアとの競争に巻き込まれているわけであります。国内だけで競争していたとするならば、東アジアで競争せざるを得ない、賃金が日本の三十分の一といったような、そういう国と競争せざるを得なくなっております。  ですから、例えば大企業がある国でこの部品をこれこれで発注するといった話が発注前に伝わっただけで、先ほどの大田区ではその価格が貫かれちゃうといったような、そういう状況があるわけです。ですから、これは不況のたまたまのから発したものではなくて、そういう構造的なものがあるわけでありますから、そういう意味で私は特に公正な取引環境の形成というものを中小企業政策の重要な柱としてこの際打ち出すべきだろうと思います。
  121. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。  それでは、折口参考人にお尋ねをいたします。  経歴紹介がありまして、申し上げていいかどうかわからないと言いながら申し上げたいわけですけれども、防衛大学を卒業なさって大会社にお入りになって、そして退社をされてディスコ・ヴェルファーレをオープンなさいまして、次にグッドウィルを設立された。大変もう大きな変化、私どもから考えると大きな変革の中で若々しく頑張っておられる、そういう現状の中から、そういうことを実感としてお伺いしたいんです。  今日の日本では企業の廃業率の方が開業率より高くなってしまっています。みんな心配していると思います。何とかして開業率を引き上げなくては日本経済活性化はあり得ないということでございますが、そもそもどういう動機づけでこういうことをなさろうと思ったのか、今日までなさってきたのか、そこのところをお伺いしたいと思いますが、よろしくお願いします。
  122. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) 自分には小さいころからの夢がありまして、それは大きなことをすることというのが自分の夢なんですね。その夢をずっとやりたいと思ってきた結果、今までの人生の歩みがあります。  ただ、自分の思ったこととは裏腹に、自分を取り巻く環境は変わりました。小さいころ、父親は社長をやっていました。大田区の工場です。人工甘味料をつくっていました。業界団体会長も二十年やっていたんですが、あるときアメリカでその人工甘味料は発がん性があるというレポートが出ました。そうしたら厚生省が製造中止という決定を下しまして、会社が倒産してしまいました。小さいころは裕福だったんですけれども、一気に非常に貧乏になりました。  私はなぜ防衛大に行ったかというと、高校に行くときにお金がなかったんです。それで、陸上自衛隊の少年工科学校というところに行きまして、そこに行けば勉強もできるしお金ももらえる、その中から仕送りもできるということで、選択肢はほかにありませんでした。その後、うちは生活保護家庭にもなりました。ですが、そういう中で大学まで出ました。  それで、総合商社に行ったのはなぜか。それは、大きなことをなしたい、そして世の中に影響力を持って大きく社会貢献したい、それをもって自己実現していきたいというふうに自分で思いました。それで、商社はきっと大きいことができるだろうと思って選びました。  その後なぜジュリアナをやったかというと、商社にいても、例えば派閥があったりとか、いろんな会社の中で自分の力ではどうしようもないことがあって、出世できない可能性がある。出世できないと大きいことはできないな、やっぱり役員になりたいなと、こう思ったんです。であれば、自分で独立してやるものも、もし世界的なコングロマリットをつくれるようなきっかけがあれば、それをもとにやったら大きいことができそうだなと、こう思ったわけです。  たまたまジュリアナ東京をきっかけに独立したんですけれども、あれをやったら日本一のディスコにできるだろうと思いましたから、そうすると人脈もできるだろうし軍資金もできるだろうと、こう思ったわけです。それをきっかけで独立しました。それで、実際に非常にはやりまして、人脈はたくさんできたんですけれども、お金の面に関しては、かかわっているメンバーに裏切られてしまいまして、私は大借金生活になってしまいました。そのとき四千万借金を負いまして、それからヴェルファーレというディスコをつくる二年の間に七千万まで借金が膨れました。  実は、商工ファンドにも三年間借りておりました。別に擁護するわけじゃないんですが、ですけれどもそのとき思ったのは、商工ファンドに借りている四〇%という金利は、実は自分にとってはそれでも助かりました。五百万借りても月に二十万の利息だけ払っていればよかったんですね。でも、これは貸してくれる人がいないんですよ。それより先に行ったら本当に町金融になってしまうわけですね、トイチの。だから、それは助かりました。  そういう面もありましたですけれども、結果的にヴェルファーレをつくって企画料をもらって、その借金を返してやっと身軽になれたと。  それで、その後グッドウィルという人材会社をやったのは、これからは人材ビジネスは大きくなるよと。人材ビジネスとかアウトソーシングとか医療福祉ビジネスですね、在宅介護、この辺のビジネスは非常に大きくなる、だから大きな可能性があると思って私はここに入ってきたわけです。  それで、今それがうまいぐあいに大きくなってきて発展ができたわけですが、きっかけとしては、その夢を達成したいと思ってやめたわけです。でも、当時、大手商社をやめてディスコの経営者になるなんていうことは考えられない概念ですから、親戚じゅうから大反対を受けました。周りからも反対を受けました。だけれども、私はその夢を達成するためにやめて貫きました。この辺が、日本的な一般的な教育を受けていると、やはりユニークな発想を許さないとかいろいろありますね。人生の価値観というか目標意識というのは余り皆さん感じませんので、そういうことで一般的には反対されるんだろうなと。だけれども、教育も変わってくれば、そういう考え方も確かにおもしろいじゃないか、チャレンジしようじゃないかとなってくれば、どんどんそういう人がふえてくる。だから、それイコール開業率もふえていくだろうとまず思っています。  それからやはり、やったことによって自分の人生を価値あるものにできるという実感が得られるんだということを多くの人に知っていただく、さらには、うまくいけばお金も持てますよという実際のよさ、物理的なよさも味わえるということがうまく成功例がふえて体験できるようになればより開業率はふえるのではないか、こう思っております。
  123. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。  いろいろ大変厳しいところもあったと思いますけれども、でも、勝ち抜こう、頑張っていこう、理想を貫こうというお気持ちが成功に導いていると思います。人生まだ長いですから、頑張ってください。
  124. 入澤肇

    ○入澤肇君 自由党の入澤でございます。  最初に、黒瀬参考人にお伺いしたいと思います。  今度の法律は、二重構造を解消し、多様で活力ある中小企業をということを標語になされておりますけれども、先ほどから先生のお話を聞いていまして、問題型の中小企業観から積極的な中小企業観へのパラダイムの転換があるというお話がございました。  現在、二重構造の解消、私は必ずしも十分に解消しているとは思っていません。大企業との並立競争関係あるいは大企業との系列関係、これをパラダイムの転換をなす場合に、何を問題にしてどのように対応をしたらよいかということについてお考えをお聞きしたい。
  125. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 二重構造をどう定義するかということでありますけれども、二重構造をごく一般的に解釈すれば、大企業中小企業の間には生産性と賃金に関して格段の格差があり、二重構造の底辺を形成する中小企業というのは低賃金を基盤にして唯一生き残れる存在である、これが二重構造観に対する中小企業像だったと思うんです。  ただ、私は、現在果たして低賃金に依存できるような中小企業というのはこの日本にあり得るのだろうかという気がしているわけであります。基本的に、もう海外との競争にも巻き込まれるメガコンペティションの時代でありまして、多少の低賃金になったとしても、日本の賃金の三十分の一というアジアの企業なんかとは到底対抗できないわけであります。ですから、一時的にはともかく、低賃金を専ら経営の基盤にするというような中小企業はそういう意味ではもはやあり得ないんでありまして、そういう意味でいいますと、少なくともかつて言われたような二重構造というのは私は基本的に解消したものだろうと思っているんです。  ただ、その一方で、どの先進資本主義国にも共通である大企業体制に基づく中小企業問題というのは、これは存在しているし、むしろ激化しているんだということを先ほどから申し上げているわけであります。一言で言うならば、寡占問題と言っていいと思うんです。ですから、こういう寡占問題に起因する中小企業問題を解消し、そして、中小企業が本来持っている起業家的なよさ、起業家活動のよさというものを開花させていくんだという、これがやはり中小企業政策基本姿勢になるべきだろうと思います。
  126. 入澤肇

    ○入澤肇君 そうしますと、総務庁の就業構造基本調査というのがあります。これだと、女性と高齢者への依存度が中小企業は非常に高い。二十人未満の中小企業では女性依存度四五・四%、六十五歳以上の高齢者に対する依存度が一五・五%。ついせんだって発表されました最低賃金を守っているかどうかについての労働省の調査によっても、中小企業の一〇%近くが最低賃金すら守っていないという指摘がございます。  このような、女性、高齢者に依存度が高くて、低賃金の存在を解消したんだというふうに言い切っていいのかどうか、二重構造は解消したんだと言い切っていいのかどうか、もう一回お願いします。
  127. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 確かに二重構造の復活といったような意見もありますし、私自身ももう一回そういうことはよく研究してみなくちゃいけないと思いますけれども、先ほどから申し上げますように、東アジアの企業を巻き込んだ競争の中で、日本が東アジア以上の低賃金で企業経営をやっていくということはあり得ないわけでありますから、少なくともそういう低賃金を主たる武器として生存していくというような企業はもはや私はあり得ないのではないだろうかというぐあいに考えております。
  128. 入澤肇

    ○入澤肇君 折口参考人にお聞きしたいんですが、創業ですね、ベンチャー、これにつきまして最も根本的なことは教育問題だというふうに先ほどおっしゃいました。しかし、これは余り根本的過ぎてすぐには役に立ちません。  そこで、私はそれ以上に、今日本の抱えている雇用状況雇用慣行あるいは社会経済システムの中で固定的な価値観だとか階層序列意識、こういうものも創業を阻んでいる大きな要因じゃないかと思って見ているんですけれども、いかが考えますか。
  129. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) 私も、例えば新卒の面接とかを三年前からやっております。ここ一、二年、特にこの一年ぐらいでその考え方が物すごく変化したことに気づいております。要するに、今としてはもう当社なんかは中小企業じゃないですけれどもベンチャー企業ですね、ベンチャー企業に入りたい、ベンチャー企業でやりたいと本当に思っている人が相当ふえました。なので、今考え方としては大分変わってきていると思います。これは急速に変わってきていると思います。  そういう意味では、大企業の終身雇用というのが事実上なくなってきたということが大きな影響をしていると思います。ただ、すごく大事なことなんですが、だから雇用慣行とか価値観というのは変わってきているので、これからベンチャー企業に大きなチャンスが回ってくると思います。  でも、いずれにせよ、ベンチャー企業に行きたいと思うやっぱり大きな理由は、そこに行けば成功できるということですよ。トップにならなくたって、トップは当然いいですけれども、役員でも、もしかしたらある部分で頑張るマネジャーでもいいです、相当ないいことがあるんですね。  私はあえて言いたいんですが、先ほど三重野さんですか、人生長いから頑張ってくださいというふうに言われて、笑われた方もいますけれども、それがだめだと言うんですよ。  私は、じゃ、どれぐらい頑張る必要があるかというと、株式公開のときに既にキャッシュで五十億円手に入れています。一生働かなくて大丈夫です、はっきり言って。今資産は幾らありますかと言われたら、今二千億円あります、うちの株式を時価で見ますと。株価が半分になったって一千億円あるんです。使い切れません、はっきり言って。うちの社員、役員は百億円以上持っています。社員は半分以上は億万長者です。二年半前に一株買った人は今一億八千万です。みんな物すごく自分が喜んで仕事をやっています。自己実現しようと思ってやっています。お金ができたからといって遊んでいません。  ですから、そういうのをたたえる文化が必要なんです。アメリカというのはやっぱりそうだと思うんですよね。ですから、どうせ頑張ったって、君、そんな夢を持っていたって、今頑張ってちょっと名前が出ているけれどもどうせだめになっちゃうんだろうというようなことが、国会議員の先生がそんなことを思っていたら絶対だめだと思います、僕は。思っているかどうか知りませんけれども。  やはり、それはすごい、みんなそういうふうに目指していこうと思えば、それを目指して次から次から進んでくると思うんですね。やってくると思うんです、人は。だから、私は、今やっていることは、本当に純粋に夢を果たしたいと思っているし、やっぱり社会がそういうことで活性化されてよくなる方がいいと思っていますからやっているということですので、そういうことがベンチャー企業にどんどん人が来たいということになるというふうに思っております。
  130. 入澤肇

    ○入澤肇君 黒瀬参考人にもう一度聞きますけれども、今度の新しい法律、これは旧法と読み比べてみますと、理念が変わった、表現が変わったというふうに言っていますが、どうも具体的な行政手法は余り変わっていないというふうに私は見受けられます。  そこで、新法と旧法で新しいパラダイムの転換をやるような場合に、従来の金融とか税制あるいは財政上の措置、これは基本的にどのように変えていくべきかということについて、何か御示唆がありましたら教えてください。
  131. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 金融については、御承知のように、今度は直接金融というものを中小企業でも利用できるようにしたということがやはり新しいことだろうと思います。私は確かに、中小企業の可能性を開くために中小企業も直接金融が利用できるような環境条件を整えるということ、これは重要なことだろうと思うんです。  しかしまた、同時に言えることは、折口さんのような企業もありますけれども、やはり大部分の中小企業にとっては間接金融なんですね。政府系金融機関もありますけれども政府系の金融機関は中小企業金融の大体一〇%前後を推移しているわけでありますから、最近は高まっておりますけれども、歴史的には大体そういうレベルだと思います。そうすると、やはり民間の間接金融というものを整備していかなくちゃいけないだろうという気がするんです。  ですから、中小企業がその発展可能性を十分に発揮するためにも、中小企業の正当な金融ニーズには資金が円滑に供給されるような仕組みというものをつくらなくちゃいけない。そのためには、銀行の公共性と健全性が両方守られるような仕組みというものをつくり上げていく必要がある。そういう点で、金融アセスメント法というのは一つの案になるのではないだろうかなと思って、ここでお話を申し上げてきたわけであります。
  132. 入澤肇

    ○入澤肇君 折口参考人にお伺いしますけれども、一九九六年のアメリカの中小企業白書を見ますと、アメリカではイノベーションの五五%が中小企業によるものだというふうなことが指摘されております。  先ほどから創業についての御意見を伺っていますけれども、なぜアメリカでは中小企業がこんなに活力があるのか、何か思い当たることがありましたら教えていただきたいと思います。
  133. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) 先ほど黒瀬先生の方からも御指摘がありましたけれども日本の場合ですと、中小企業が名刺を持っていっても大企業に相手にされないとかマーケットに相手にされないというのがあります。でも、アメリカの場合はそういうのはほとんど関係ないということが、初めからチャンスを大きくしていることとしては具体的には大きいことだと思います。  これを考えたとき、なぜそれをアメリカができて日本ができないのかなとちょっと私も考えたことがあるんです。そうすると、恐らくこういうこともそれなりに大きいと思います。  アメリカでは自由にマーケット・インできますけれども、何かもしまずいことがあった場合に処罰が大きいです。アメリカのPL法というのは物すごくきついです。そうすると、例えばマクドナルドで、コーヒーをこぼされた人にすごい単位の金額を、何十億か何百億かちょっと忘れましたけれども裁判で払わされることになったと。これはきっと大企業だけにかかわらず中小企業でも、そういう欠陥があったりとかもしくは詐欺的行為があったりとかした場合に処罰が厳しいはずなんですね。なので、やる方もあらかじめ当然ちゃんとやろうと。懲罰があるからちゃんとやろうというのもちょっと発想としては貧困なんですけれども、でも、そういうのがちゃんと機能しているなとは思っているんですよ。  日本の場合ですと、そういう面でかなり甘い面があります。だから、もし取引して相手のものがまずかったらどうしようという、非常に怖いわけですね。  それともう一つは、発想的なものもあります。新しいものを取り入れてうまくいった方が褒められるんだという国の風土と、日本のように、どっちかというと今までは減点主義的なもので、新しいものが来て、自分がそれを導入責任者になって入れたんだけれども、もしまずかったら、その減点の方が導入してよかったよりも大きい、だったら触れない方がいいだろうと。  こういう二つのこともありますので、そういう風土も直す必要があるなとは思いますけれども、やっぱり一番目に言った、自由に入れるけれども、何か非常にまずいことがあった場合には大変なペナルティーもあるよということがそれなりにきいているんじゃないかと思います。
  134. 入澤肇

    ○入澤肇君 終わります。どうもありがとうございました。
  135. 水野誠一

    ○水野誠一君 参議院の会の水野誠一です。よろしくお願いします。  お二人とも大変きょうはありがとうございました。少し順序を変えて折口さんから伺いたいと思います。  私は、折口さんがおつくりになったジュリアナ、ヴェルファーレともに御招待をいただいて拝見をしておりまして、大変これはすごいものをおつくりになったなといって感心していたら、今度は新しい事業で店頭公開をされると。  私は、折口さんの事業を大変注目していましたのは、今の時代というのは情報ハイテクベンチャーというのは幾らでもある。ただ、本当の総合サービス産業、特に高齢者介護とか人材派遣とかいうまさに今これからの成熟化の時代にふさわしい事業で店頭公開をする。これがどれだけ評価されるかということで、大変期待をしていました。  私は、そういう新しい事業分野というのを第五次産業というふうに勝手に呼んでいまして、いわゆる今までの第三次産業、サービス業とは違う、つまり第四次産業という情報産業の時代のサービス産業は第五次産業だろうということで常々言っていたんですが、実際非常に大きな評価が株価という株式の市場でなされたということは大変喜ばしいことだと思っています。  先ほど折口さんがベンチャーキャピタルのあり方ということをお話しされました。私も実は、アメリカのネットスケープ社という会社がありますが、そこのジム・クラークというファウンダーが友人だったものですから、ちょうど一九九四年に彼の事業の立ち上げをお手伝いした経緯がありまして、アメリカのベンチャーというのはどんなものかということを身をもって体験できたということがあるんです。  最近、彼が「ネットスケープ・タイム」という本を書いて、今私は実は日本語に翻訳をしている最中なんですが、その中でおもしろいのは、アメリカのベンチャーキャピタルの中にも、彼の言葉を借りればいわゆるハイエナベンチャー的な、言ってみればお金もばんと入れるけれども、優秀な事業にお金も入れるけれども、そのかわりそれは一種のマネーゲームであって、そこがだめになったらさっと引き揚げるというようなベンチャーから、実際彼がおつき合いをしたのはクライナー・パーキンズという有名なベンチャーキャピタルですけれども、そこのジョン・ドエールという人のように、実際経営に対していろいろアドバイスをしてベンチャー企業を育てていく、そして同時に非常にすぐれた目ききであるという、こういうベンチャーキャピタルがアメリカには育っているといいますか、もう既に存在している。その層の厚さというのを大変私は痛感したところであります。  日本にもそういった本当の目ききのベンチャーキャピタルというもの自体が育っていかないと、なかなか日本のベンチャー事業を育てることは難しいんじゃないかな、それはもう先ほどのお話のとおりだと思っています。  私は、そういう中で一つお尋ねしたいんですが、海外で折口さん御自身でIR、つまり投資家向けの広報活動をやってこられたという記事を実は拝見したんですが、そこの経験から、日本と海外、とりわけアメリカの市場の違いあるいは投資家の違いというものをどういうふうにお感じになったか、これをまず伺いたいということ。  それからもう一つは、日本の店頭市場というものを実際経験されてどう評価されるか。御自身では、今度は一部上場を目指したいというふうにおっしゃっているそうですが、日本では店頭市場がこれからまだまだ活性化しなければいけないという課題があると思います。その辺も含めて、実際の御経験の中からお話しいただければと思います。
  136. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) 当社の株価も、株式公開した初日が一株二千三百万円だったんですね。それが三カ月後には七千八百万円まで上がったわけです。その理由は、そのうちの半分以上が外人投資家、機関投資家によるものであったということです。  なぜ外人投資家がうちの会社をいっぱい買ってくれたかというと、やっぱりこれも教育の影響が出ているのではないかと思います。  日本の会社の場合、過去のスコア、要するに幾ら利益を上げていて幾ら資産があるかということを非常に重視して日本の機関投資家は投資します。だけれども、これの場合ですと、投資する時期には既に成熟期を越えちゃっていて、もう余り伸びないんじゃないかなと思う会社が本当は多いんですね、日本の場合。  アメリカの場合は、それよりも、もちろん過去のものも大事ですけれども、その経営者がどういう志とビジョンそしてフィロソフィーを持っているかということを一番まず重要視します。そしてさらに、行っている市場が大きくて成長性があるというところ、こういう大きな抑えのポイントを一番見ます。  今、先生が第五次産業と言っていただきましたけれども、インターネット、インターネットと言って今すごく騒いでいますけれども、もちろん私もインターネットはいいと思います。でも、例えばそれを実現ならしめるためには、例えばEコマースをやるんだったら必ず配送が、デリバリーが要ります。そうしたら、その間にパッキングする人も要るし、運送する人も要る。そういう人のかかわる部分とかアウトソーシングとかいろいろ出てきます。だから、そうすると本当に大きなリスクを負わなくても、そういうところにきちっとついていけば利益もとれるとかいろいろ考えていくと、むしろインターネットがすごいけれども、それにくっついているところももっとすごいかもしれないと思ったりとか、そういう本質的なところを結構見てもらえます、単なるイメージだけではなくて。  そういうところが、海外の投資家というのはよりそういうところをよく見ていますので、買ってきているポイントだろうなと思いますから、新しい産業をやって将来ずっと伸びていこうと思っている人は海外投資家に今プレゼンするのが一番いいという感じです。ただ逆に、海外投資家が一番もうけています、含み益やっぱりすごくなっちゃいましたから。早い段階から日本の機関投資家がやってくれと言ったら日本の投資家はもっともうかっているはずなんですけれども、残念だなと思いますけれども、そういう目で日本の投資家も見ていただければ大分変わっていくんじゃないか、そういうふうに思っています。  あと、店頭市場ですけれども、特に店頭にいながら不自由を感じているということは余りありません。東証一部に行った方がいいと思っているというのは、なりますと、特に日本の年金とか大きなファンドはもう初めから規定で例えば店頭には入れないとかと決まっちゃっているのがあるんです。そうなると、東証に行けば大量のお金が入ってくるけれども、そうじゃないと入らないとか、こういうことですので。  アメリカなんかの場合は、ナスダックが店頭市場であるにもかかわらずマイクロソフト、インテルがいるわけですから、当然年金も全部行きます。だから、機関投資家がやっぱり逆に、店頭市場がどうのこうのというよりも、日本の機関投資家とかそういうところがやはり見方として成長産業にもあるポジションはもう間違いなく投資していくとか、そういうポートフォリオの見方とか考え方をすることがこれから育つ意味で大事じゃないかなというふうに思います。
  137. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。  次に、黒瀬先生に伺いたいと思うんですが、先ほどお話の中で、中小企業を見ていくときに、大企業との力関係とか支配関係、それを見落としてはいかぬという御指摘があったと思います。全くそのとおりだと思うんですが、それを解決していくために、先生も言われていますが、中小企業のネットワークの必要性ということ、これは私も全く同感でございます。  先日の日経新聞で、これは前回の委員会でもちょっと触れさせていただいたんですけれども、「さらば「大樹の陰」」、つまり寄らば大樹の陰の時代じゃないということで、大変元気な中小企業が三十五社のネットワークを組んで、試作の分野ですけれども、大企業二千社と取引をしている。こんな事例が紹介されたり、あるいは神戸の中小企業が七社でトラストファンドをつくってお互いに保証し合うというような一種の現代版の頼母子講、こういうことをやっているというようなことになっている。  それは、なぜそういうものが必要なのかというと、やはり現在の日本資金調達のシステムというのがどうしても間接金融に頼り過ぎている。間接金融比率というのは非常に高いわけでございまして、やはりこれを直接金融、つまり実際株式市場で資金を調達していく方向に比率を変えていかなきゃいかぬ。こういう問題というのが私はどうも根底にあるような気がするんです。  そうしたときに、しかし中小企業が株式公開するのはなかなか難しいというような問題、これは確かにこれからマザーズというような新しい市場ができたりアメリカのナスダックが日本版をつくったりということで大分その門戸は開けていく、バーは下がってくると思うんですが、そういうときに、例えば私の知っているソフト産業が四、五社集まって持ち株会社をつくって、その持ち株会社を店頭公開していくというような方向も考えようとしている。これから本当にそういう知恵を大いに使わなきゃいかぬ時代になっていくと思っております。  こうした点について先生に二つ伺いたいと思いますが、大企業の支配関係あるいはこういった意味での資金調達関係、今まではやっぱり大企業の陰で、大樹の陰で資金調達もできたということが、これからはなかなか難しくなる。こういう構造を変えていく、あるいは変わっていくためにはどうしたらいいのか。  いい形で変えていかなきゃいかぬと思うんですが、そのためにはどうしたらいいのかということが一つと、それから今回の信用保証枠の拡大、二十兆を三十兆にするという話があって、私はこれは単純に必ずしもどうかなという点もあるんですが、この二点についてどうお考えなのか、もう時間がございませんので簡潔にお願いします。
  138. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 垂直的な産業組織から水平的な産業組織に変えていかなくちゃいけないということでありますけれども、一つは、私は垂直的な産業組織そのものがかなり今崩れつつあると思うんですね。その一方で、資金調達の問題とは別に、例えば共同開発をやっているグループというのは墨田区でも東大阪市でもどんどん出てきております。それから、ある一社が中心となってネットワークを形成するという事例もたくさん出ております。  ただ、やはりこういうネットワークというのは、通常の取引関係とは別のところでの形成がある程度必要でありますので、やはりそういう出会いの場というのを政策的に用意していくということが重要だろうと思います。  それから信用保証の問題は、ある意味では問題を抱えている制度ではありますけれども、そもそもそういう保証制度をなぜやらざるを得なくなったかというのは、繰り返しますけれども、やはり正当な金融ニーズに資金の供給が円滑にいかなかったというところが根本にあるんだということが重要だと思います。
  139. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。
  140. 島袋宗康

    島袋宗康君 二院クラブの島袋宗康でございます。  本日は、黒瀬参考人、折口参考人、本当にすばらしい意見を賜りまして、感謝しています。ありがとうございます。  まず、黒瀬参考人にお聞きしたいんですけれども、近年、我が国の新規事業の開業率が非常に落ち込んでいるというふうなことが言われておりますけれども、その要因は何にあるのか。そして、その対策として政府のこれまでの施策が適切であったのかどうか。そして、今後の中小企業対策というものが非常に、今国会中小企業対策特別国会と言われているぐらい中小企業の育成というものに対して真剣に考えていかなければならない状況になっておるわけでございますけれども、そういった政府の今日までの取り組み、そして開業率が少なかったという点についてどういうふうな御意見をお持ちか、具体的に御説明をしていただければありがたいと思います。
  141. 黒瀬直宏

    参考人(黒瀬直宏君) 新規開業率低下の要因については、やはり大きく二つの根本要因があると思うんです。  一つは、そもそも日本では開業予備軍と言われるような社会層というものが薄くなってしまったということ、それからもう一つは、開業そのものに要する技術と申しますか技能といいますか、それがやはりより高度化してきたという、この二つが開業低下の要因だろうと思うんです。  これはドラッガーが指摘していたことでもありますけれども、五〇年代から六〇年代前半については、日本資本主義国の中でもかなり起業家精神にあふれた国であったという指摘があったわけでありますけれども、いつの間にか、高度成長を通じ七〇年代安定成長になるに従ってそういう起業家精神が衰退してきたということはやはり認めざるを得ない。  それは何なんだろうかということでありますけれども、こう言ったら身もふたもないのかもしれませんけれども、やはり豊かになったことによるハングリー精神の希薄化ということを指摘せざるを得ないと思います。  それからもう一つは、やはり教育問題であります。  先ほどもちょっと簡単に申し上げましたけれども日本の教育の基本というのは、生徒に地図を与えて、線を引っ張って、とにかくこのとおり歩け、このとおりに歩いた生徒がいい生徒であって、ここから外れた生徒は悪い生徒だという教育をやってきたわけであります。  これからは、地図の見方は教えなくてはいけない、だけれども、どの山に登るのか、その山に登るにはどういうルートを使ったらいいのか、それは君たち自身が考えることなんだよという、やはりこういう教育を展開していかなくちゃいけないと思うんです。これがやはり教育の基本だと思います。  もちろん、さらに開業促進によりつながるものとしては、例えばアメリカの場合にはジュニア・アチーブメントでありますとか、あるいはカウフマン財団といったようなところに象徴されますように、ボランティアで起業家教育を小学生や中学生に対してやっているといったような団体もあるわけでありますので、日本でもこういう団体ができるような仕組みというものが必要なのかなと思います。  それから、もう一つの要因は、先ほど言いましたように、例えば技術的、ノウハウ的な参入・開業障壁というものが高くなったということであります。  かつて、製造業の場合でいいますと、小さな旋盤とボール盤一台で、アパートの畳を上げて土間にして、電気はその辺の電線から盗んでくる。そうすると、いつの間にかブローカーと言われる人が来て、ポケットから部品を取り出して、こういう部品ができるかどうかということを聞いてくれる。これとこれはできるよと言う。そんなような形で開業できた時代があったわけでありますけれども、御存じのように今日は町工場といえども、一台二、三千万円もするメカトロ機器というものを購入しなくちゃいけませんし、それから常にアジアの企業と闘うために毎日毎日生産技術の革新というのは進めなくちゃいけない時代であります。そういう開業障壁が高くなったということがやはり二番目の理由であろうと思います。  それから、ではそういう開業率低下に対して政策が果たして的確であったかどうかということがあります。そもそも、この政府創業支援に対しては、そんなことをやることはかえってベンチャービジネスを甘やかすことになるのであって、本来ベンチャービジネスの支援とは矛盾するといったような御意見もあるわけであります。これはそれなりに説得力があるとは思うんですけれども、先ほど申し上げましたように、現在というのはほっておけばどんどん開業がふえるという時代ではもはやないわけでありますから、私はそれなりにこの創業支援策を講じてきたという政府政策というのは正しいだろうと。  ただ、やはり問題は、制度だけつくって魂が入っていない。先ほど目ききが必要だということをどなたかがおっしゃいましたけれども、一番日本で欠けているのは目ききであります。ベンチャー財団を各地でつくりましたけれども、そのベンチャー財団が的確な投資先を見つけることができません。投資先を見つけるに当たっては金融機関の援助なんかも受けているようでありますけれども日本の金融機関というのは、御存じのように担保主義に徹してきましたから、本当に経営者経営能力を見る目がないわけであります。もちろん企業側も借り方を忘れたという面があります。  私は正直言いまして、八〇年代後半のバブルは銀行も金の貸し方を忘れたし企業側も金の借り方を忘れたという気がするんです。これはやはりおかしい、問題なわけでありますが、とりあえず今の創業支援策について言うならば、制度はそろえたけれども目ききになる人材というものがいまだに輩出していないということがやはり今の一番の問題ではないのかなと思います。
  142. 島袋宗康

    島袋宗康君 ありがとうございます。  折口参考人にお伺いいたします。  政府ベンチャー企業対策、創業支援策は現在まで十分であったかどうか、これから特にどのような点に力を入れるべきであるのか、その辺のひとつ御意見を承りたいと思います。
  143. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) 今までが十分であったとは思いません。  それで、先ほど来言っておりますように、一つはエンジェル税制の件ですね。多くの資金が集まって、それで経営自体、資金繰りに不得意な人でも開業できるようにするということが大事だと思います。  それから、ちょっとベンチャー企業中小企業と分かれてしまうんですけれども中小企業、今回の信用保証枠というのはいいと私は思います。それでもってとにかくやれる最低限の力は持てるようにすると。ただ、これからは独自の力をやっぱり持たないといけないと思います。  例えば、魚屋さんがあってスーパーがあります。スーパーが進出してくると魚屋はつぶれる可能性があります、商店は。だけれども、つぶれずにますます売り上げを上げている魚屋さんもいます。なぜかというと、消費者ニーズをつかんで、生きのいい魚をいつも入れているとか、お客さんの顔を覚えていてこの家庭はこの魚が好きだから奥さんきょうこれが入っているよと言ってタイムリーに出せる。それがもう力なんです。そうすると生き残れる。  でも、その横の魚屋さんは努力を怠っていると、いつも昔ながら同じことでやっているというと、結局は売れなくてつぶれる。でも、つぶれたときに、銀行はお金を貸さないとか政府対応が悪いんだとかと言っても、それは本当は自分が悪いわけです。なので、その差をはっきりした方がいいというふうに思うんです。  思うに、私も資金繰りに苦労していたときがありますけれども、銀行は比較的よく見ているなと思います。その後グッドウィルで、急速に伸びてきたときでも資金繰りはかなり、急速に伸びたんですけれども、しっかり説得できれば貸してくれました。だから、やはり借りる側の方がちゃんと説得するべき、きちんと説明をするとか資料をつくるとか、そういう面倒くさいことをやらなくちゃいけないんですね。もしくは、そういうのが余り得意でない人もいるでしょうけれども、商店とかそういうところであればもう本当に自分の勘どころで仕入れを考えるとかという、ちゃんと付加価値をつけるということをだれもがやらなくちゃいけないと思います。町工場であっても、きらりと光る技術をちゃんと持っているというものがあれば、やっぱり強いわけですよね。そういうふうに、全体的によくするためには、みんなが趣向を凝らし努力をするということが大事だと思います。  学校の先生も画一的に教えていれば楽だと思います。地図を渡してみんなで考えろといった場合、それをどういうふうに指導していくかとか、みんなにどういうふうにこの人生を価値あるものにするかということを教えていくかというのは結構大変です。本人自身も本当にそういうことを考えなくちゃいけません。だから、先生になれたから、公務員になれたから、ああこれで安泰だ、いいところに就職しましたねなんて言われているようではやはりよくない。先生になったということは、人を教育するんだ、人の人生を変えるだけの力があるんだから、これは社会に本当に事をなせることなんだから大変なことなんだというふうに思うかどうかですね。  だから、そういうことを一つ一つ細かく見ても、皆さんがやっていけば必ず底上げしていく。そうじゃないところは、今回の二十兆円は対策としては緊急避難的にいいと思いますけれども、この先は、それをずっと続けるんじゃなくて、そういうところを見ながらこの先どうするかと考えたらいいと思います。  ベンチャー企業に関しては大分雰囲気はよくなってまいりました。大分社会の追い風も吹いてきていますし、その対策をしようというふうに政府もなってきていますから、まずはエンジェル税制をやる、その後は権利と義務というものをはっきり明らかにして、国際的なルールの中で戦っていけるということをきちんと定義づけていけば、かなり発展していけるというふうに私は思っています。
  144. 島袋宗康

    島袋宗康君 折口先生にちょっとお伺いしたいんですけれども、せんだってアメリカに行ってまいりましたけれども、そこの中小企業、いわゆるベンチャー企業に対する考え方というものが日本の投資家とアメリカの投資家と随分違っているんじゃないかなという感じを受けたんです。  日本人というのは、一回事業に失敗するとある意味で社会的にレッテルを張られてしまって、あれが起こす事業はもうだめだ、あるいは投資も非常に嫌だというふうな感じがするわけでありますけれども、アメリカの場合は、一回、二回失敗しても、本人がいわゆるやる気を起こせばあるいは能力があれば、投資は幾らでも得られるというふうな感じの話を承ったんですけれども、その辺についての違いをどういうふうに評価されていますか。
  145. 折口雅博

    参考人(折口雅博君) アメリカでも基本的には、失敗した人でもまたベンチャーキャピタルが投資しようと思われる人というのは本当に頑張っている人です。もともとポテンシャルも高い、そしてチャレンジした、精いっぱいやった、朝から晩まで寝ずに働いてすごく頑張った、だけど失敗した、急な市場環境の変化があってどうしても読み切れなかった、もう一回チャンスをくれ、そういうようなパターンが多いんですね。何か適当にやっていたんですけれどもお金が集まって、金が集まったからいい車に乗って、いい食事をしてと、いきなりやっていって失敗してお金をもらった人というのは、まずほとんどいないと思います。だから基本的には、一つは、もう本当に真剣に頑張るんだという人が多くなるような環境にすることが、失敗しても立ち上がれるような人がふえるということになると思います。  それからもう一つは、アメリカ人の投資家というのはベンチャー投資でいい思いをしているわけです。どんどんベンチャーが公開してきますから、皆さんもうかりますね。そうすると、例えば二十件に投資して一件成功すれば元が取れるというふうにもなってくるわけです。そうすると、必然的にある程度寛容になってきますよね、外れたら外れたでしようがないなと。だけど、これが当たったから一気にそれで五十倍とかになって全部もう取れるというのがありますので、やっぱり大事なことはパイをふやすことですね、市場参加者をふやすことです。  成功する確率が高まるのは、やっぱりポテンシャルの高い人、これは学歴とかは関係ないです。人間としてポテンシャルの高い人、もしくは向上心がある人、そういう志のある人がどんどん市場に入ってくる、大企業に行くんじゃなくて。それでパイがふえて、そこにお金が入ってくる、そしてそれが、成長する人がふえて、プレーヤーがふえる。プレーヤーがふえれば確率が高まりますね。そうするとどんどんお金が向かってくる。すると結果的には、失敗したって、じゃまた次やりますといって、そうか、今度はうまくいくかもしれないなといってまたお金が入ってくる。こういうもう少し気楽な感じでなれるようになるんじゃないかと思いますから、全体を活況にするというのが大事じゃないかなと思います。
  146. 島袋宗康

    島袋宗康君 どうもありがとうございました。
  147. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々一言お礼を申し上げます。  本日は貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  148. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  149. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  中小企業基本法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会政府参考人として金融再生委員会事務局長森昭治君、大蔵大臣官房審議官筑紫勝麿君、通商産業省機械情報産業局長太田信一郎君、同生活産業局長横川浩君、中小企業庁長官岩田満泰君及び郵政省電気通信局長天野定功君の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  151. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) それでは、中小企業基本法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  152. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。  連休の合間、大変お疲れさまでございます。今回の法案について少し質問をさせていただこうと思います。  まずは、通産大臣におかれましては御就任おめでとうございます。大変個人的なことで恐縮なんですけれども、大臣の義理の息子さんが私の先輩でございまして、先輩から、大臣は人格的にも義理の父としても大変すばらしい方だというふうに伺っておりまして、きょうはその大臣と一緒に審議をさせていただくことを大変楽しみにやってまいりました。どうかよろしくお願い申し上げます。  実は、私ここにことしの六月に私のメーリングリストに入ったメールを四通持ってまいりました。中小企業に関することでございまして、まずは、大臣、政府参考人の皆さんにこのメールの中身をちょっと聞いていただきたいと思います。少し長くなりますが、よろしくお願いいたします。メールの発信者はほとんど私と同世代でございます。   今日は、矢島です。   久しぶりに発信します。   初めての方にはまず自己紹介を。長野県に本社があるワイシャツ・メーカーの専務をしています。   ワイシャツの製造というのは労働集約型産業の典型です。丁度、一週間前の今日、私自身でも以前、二年半程、工場長をしていた鹿児島県鹿屋市にある鹿屋FLEXという従業員百四十名強の工場を閉鎖しました。女性が九割という女子雇用型の職場でしたが、母子家庭の比率はかなり高い工場でした。ここ一、二年、地滑り的に国内縫製から海外縫製へとお客様の需要も変わり、海外工場を増強する一方で四つある国内工場の内、上記一工場をついに閉鎖せざるを得なくなりました。閉鎖に伴い全従業員解雇です。発表は四月上旬にしました。その閉鎖日当日の話、少し聞いて下さい。   当日の午後、現地鹿屋市に到着。市長、商工会議所、職安等を回った後、工場に入ったのが三時過ぎ。既に最終出荷も済んでおり、ミシン等の搬出準備が始められていました。がらんとした工場内で言いようのない淋しさに襲われる。グループ毎にあちこちで固まっている人達の顔なんて、勿論、まともに見られない。   三時四十五分、閉鎖式スタート。工場長の話があり、その後が会社代表としての私の話。マイクの前に立った途端、涙がこみ上げ、胸が締め付けられて一言も言葉が出ない。数分間のインターバルをもらう。その間に総務からの事務連絡。一斉にあちこちから泣き声が漏れてくる。改めてマイクの前に立ち、どうにかこうにか鹿屋FLEX最期の挨拶を終える。   さて、皆さんに本当に聞いて頂きたいのはこれから先です。   その夜、従業員の総意として彼等の積立金でお別れ会の宴会が開かれました。百四十名強の内、欠席はほんの三、四人。淋しさの中、大いに盛り上がりました。   酌をして歩く中、みんなが私の所に次々来て言うことは、「矢島さん、頑張ってね。本当に頑張ってね。」それこそ、何人に言われたか分からない。ある母子家庭のライン職長が言ったのは、「会社のお陰で、家が建ったよ。車も買い換えられた。ありがとう。」ある男子スタッフは、「仕事は関係なくなっても、これからも付き合って下さいね。」宴会場内、数カ所の集団で聞かされた究極の台詞は、「矢島さん、もし鹿屋でまた工場を開くことがあったら、私ら来るからね。きっと工場また開いてよ。」何でみんなを一方的に解雇して、仕事を奪う私が励まされなければならないんだ。   四月の閉鎖発表後も少しも生産性も下がらず、品質の乱れも起こさない工場でした。再就職活動も工場が終わるまではしたくないという従業員が大勢いた工場でした。時代の流れとはいえ、こんなにもモラルの高い人達でできた工場を閉鎖しなければならないって言うのは無性に悔しくって仕方がない。どうしたら、こんなにも素晴らしい日本という国に生産を取り戻せるんだろう。   本当に本当に、日本を一日も早く元気にしたい。元気になった日本の男の人が必要とするのは、きっときっと遊び心があって、楽しいシャツのはずだ。そういう商品は、絶対に長い生産期間を使って大量に海外で作るような商品ではない。何とか一緒に日本を元気付けましょう。早く元気になるといいな、日本。   最後に、私にとって鹿屋の従業員から罵られなかったというのは、さほど重要なことではありません。かれら自身が「こんな会社の為にこき使われて、私の、俺の、過去何年間は一体何だったんだ。」なんて思わず、辞めてもらえたこと。彼等の最後のプライドが守れたのが、私にとっての、せめてもの救いです。   鹿屋FLEXの従業員の皆さん、どうもありがとう。 というメールが入りました。  これは私だけに来たメールではなくて、私の仲間、たくさんの、それこそ何十人というメーリングリストに一斉に入ったメールです。これに次々と実は私の同世代の友人が反応しました。  ある方です。   矢島さん、皆さん   工場閉鎖の話ありがとうございました。このようなお話は隠しておきたい筈なのにあえて発表される矢島さんの勇気に感動しました。   四年程前のことですが、ある上場企業の下請けをして頂いていた企業があります。その上場企業からの下請けの仕事が少なくなってきた時のことです。トップが電子部品の組立てから一転してモロヘイヤの栽培を手掛けられました。途中、栽培技術の色々な困難を克服されまして、現在は成功されています。   矢島さんの会社も、優秀な人材を活かせる、他のジャンルが見つかるといいですね。 という返事が来ました。  もう一個。   四月に友人が会社を倒産させました。先日、その友人は、銀行は中小企業には金を貸さない、銀行に火をつけてやろうか、と苦笑していました。色々な理由があるにせよ日本という国の策に憤りを感じるのは小生だけか。常に強者への策、税金の大規模投入がはたして国民を守るのか。日本人の我慢強さに委ねる無策、小生の会社はある大企業と契約していますが、あまりの無謀さに反旗を翻しました。潰されるかもしれませんが筋を通します。まあまあ、まあまあは止めました。矢島さんと小生の業界は違っても時代環境は同じです。我々が未来を創ろうではありませんか。振出しに戻る事に恐怖はないのですから…   では又お会いできる時を楽しみにしています。お体ご自愛下さい。  これがもう一人。  もう一方だけ紹介させてください。   メール拝読いたしました。胸がつまります。涙が出ました。いろんなことを考えました。何かを伝えたくても思いが乱れます。   矢島さんのメールを読ませていただいて頭に浮かんできたことがあります。以前に上杉鷹山を書かれたある方の講演の中で、リストラについておっしゃった言葉が頭から離れないのです。「リストラは人を切ることではない。自分の周りの人と時代の荒波を乗り切るために、その人達を乗せていくための新しい船を造ることである。」というのがその主旨です。この言葉を聞いてから、私はいつも仕事の創造をこころがけていこうと思いました。   私の家業は料理旅館です。この時代ですから、かなりつらいものがあります。ですから、数年前から観光のお客様や女性のお客様を獲得するための努力をしています。少しずつですけれども、お客様が広がってきました。しかし、数字は横ばいですが、なんとか生き残っています。他にも色々なことを考え実行しました。大成功はしていませんが、一通り種まきが終わった感じがしています。性格が災いしてか、幸いしてかはわかりませんが、売り上げ増進策はいっぱい思い付くのですが、経費の削減はさっぱりです。ばかな社長ですが、みんなが助けてくれます。そのみんなを積んでいくための、新しい船を一生懸命考えています。みんなを泥船に乗せないように必死です。試行錯誤の連続ですが、後ろにはさがりません。ドンキホーテのようです。   矢島さんの鹿屋の工場の人たちは素敵な人ばかりのようですね。頑張れ、矢島さん。鹿屋の人を乗せていける新しい船を造ってあげてください。あなたなら出来ます。頑張りましょう。   ご縁に感謝して。  これはたった四人の方のメールなんですが、実はこれだけではありません。本当に何十人もの方々がこの矢島さんの百四十人が働く工場閉鎖のメールに反応しました。そして、先ほども申し上げましたように、私たちの同じ世代の人間です。  私は、この中小企業特別委員会審議に参加をさせていただいて、少し政府の答弁はリアリティーがなさ過ぎるのではないかなという気がしています。  まず、大臣、それから中小企業庁長官も来られていると思いますが、今のメールを聞いて御感想をお聞かせいただけますでしょうか。
  153. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) まず、福山委員の誠実な質問ぶり、大変感銘を受けております。  たまたま婿殿と松下政経塾で勉強を一緒にされた由聞いておりましたけれども、初めて議論できる機会を得て幸せに思っています。  ただいまのホームページに対する発信及びその多くの方々の反応を伺いまして、本当に胸が痛くなる思いでいっぱいであります。バブルがはじけて、経済再生に向けて必死の努力を民間ももちろん官も政治もやってきたわけでありますが、なかなかその垂れ込めた雲が晴れていかない。しかし、昨年、小渕内閣が誕生して経済再生に全力を挙げていろんな政策をとってきました。批判も多いかもしれません。しかし、そういう中からようやくやや明るみが出たかなという、そういう感じが出てまいりました。  それを確かなものにするために、この臨時国会では、中小企業に活力を持っていただこうという趣旨で、中小企業国会と言われるような内容で議論をしているところであります。臨時国会ではございますけれども、補正予算を組みながら何とか景気回復を確かなものにしようと必死でございます。そういう意味では、ありきたりのといいますか、いいかげんな机の上で物を考えるような発想は少なくともしないつもりで、微力でありますが一生懸命頑張っています。  今のワイシャツ工場、百数十人の方々が働いている、その工場があるいはその会社がどういう理由でそのようになったかがつまびらかではありませんから正確なことは申し上げませんが、今のお話の範囲で聞くと、社長さんも社員の皆さんも誠実で、こういうような企業がどうしてこのようなところに追い込まれたのか、その状況は私自身もしっかり学んでみたいというふうな思いを強くします。  そして、そのような厳しい状況にある中で、例えば銀行の融資がままならない、それでは緊急避難的に貸し渋り対策を行おうではないかということなど、数々の手を打ってきたわけであります。また、今の関連して届いたメールの中に、新しい事業を起こしたという話もあったようであります。まさに創業あるいはベンチャー企業を育てようという今の私たち考え方もそこにあります。  また、大企業事業再構築のために、リストラとか下請が非常に苦労している。大企業にも社会的な責任は当然なければなりませんが、その再構築の状況の中でどう社員を守り、そして下請を守るかというのは大企業もあわせて考えていかなければならないし、それらの問題が具体的に示された場合、通産省としてはあらゆる対応で全力を挙げておこたえをしていかなければならないと思っていますし、そのためにしっかり大臣として頑張りたいと考えます。
  154. 岩田満泰

    政府参考人(岩田満泰君) 御指名でございますので。  大臣が申し上げましたことですべてでございますが、今の実態についての認識がもう一つではないかという御指摘を受けました。私ども事務当局といたしまして、これまでもそれなりに努めてきたつもりでございますが、引き続き実態の把握について一生懸命日々頑張っていきたいと存じます。
  155. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 大変御誠実にお答えいただきましてありがとうございました。  確かに、大臣の言われたとおりでございまして、このたった四人のメールには今の中小企業実態が実は大変多くちりばめられています。まず一つは、解雇された従業員の問題でございます。彼らの中で恐らく住宅ローンを抱えている人もいるでしょう。年金をどうやって継続していくかと悩んでいる人もいるでしょう。子供を育てる教育費が出せないと思っている人もいるでしょう。そして、地方でございます。再就職がどの程度確実に見つかるかということも恐らくまだまだ不透明だというふうに思います。まずはこういった問題があります。  第二は、海外生産がふえて、日本の産業構造自体が高コストに変わっていく中で製造業自身が大変苦境に立たされている。私の地元の京都でも、先日、日産の宇治工場の閉鎖が発表されまして宇治市では大変衝撃が走りました。こういった高コスト構造の問題。  第三は、先ほど大臣も言われましたように、返事のメールの中にありましたが、電子部品から一転してモロヘイヤの栽培をされたというような形で、要は転業、別のものを創業するというこの法案に対して大変大きな柱となっている問題。  そして第四の問題は銀行の貸し渋りの問題、大企業、下請との関係の上下の問題。  そして、最後の旅館のだんなさんが言われた、工夫しながらどうやって商圏を広げていくか、新規事業をどうしているか、先ほどのモロヘイヤと同様でございますが、こういった問題がたった四人のメールの中に本当にちりばめられているというか本質が隠されている。  こういった条件の中でこの法案を考えたときに、まず二重構造の是正から、独立した中小企業の活力ある成長発展へというふうに理念を変えられた。私は独立した中小企業の活力ある成長発展ということに対して否定をする気は毛頭ございません。私は、どちらかというとベンチャー行け行けどんどんの世代でございます。どちらかというとベンチャー企業頑張れ、創業支援、頑張ってほしい、そういう世代でございます。  しかし、大企業中小企業格差是正策というのは、これは少なくとも並列をしてちゃんと議論をされないと、ベンチャーがどうだ、創業支援がどうだという話ではなくて、中小企業の中にはたくさんの中小企業があって、現場としてこういう実態がある中で、今まさに大臣が言われたみたいに、大企業中小企業の下請の問題等についてしっかりと実態を把握したいとおっしゃられた。それにもかかわらず、根本的な法案基本理念からこの二重構造の問題が削除された。私は、実はこれは実態を隠ぺいするものではないかというふうに思っておりまして、ぜひそこについて大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  156. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 昭和三十八年、つまり昭和三十年代というあの時代の議論というのを振り返ってみますと、大企業中小企業というのを明らかに経済的な二重構造と置いておりました。そして、中小企業が非常におくれている、非近代的であるというような立場から、専ら画一的に中小企業の底上げをして大企業に近づけることが経済対策の中小企業問題だという、そういう嫌いが多うございました。  もちろんそのことが成果を上げて、例えば生産性が向上されてきたとか、いろんな分野もありますし、中小企業そのものの努力もあってそれなりの発展はしてきたわけでありますが、現在、しからば、中小企業を画一的に考えて大企業に近づけるという意味での格差是正ということが必要かというと、私はその点は全く逆ではないか、むしろ中小企業の多面性に着目して、経営基盤を強化していくという、そこに力点を置くべきではないか。  現実に、例えば賃金とか労働条件とかその他もろもろ格差はありますけれども、それは指標としての格差であって、それをなくすことにいささかも変わりはないわけでありますが、そのときに単に画一的に大企業に近づけるのではなくて、それぞれの分野に応じた対策をきめ細かく行うことで中小企業経営基盤を強化していく、そうしていけば活力が増していくであろう、こういうとらえ方をしているわけであります。
  157. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 今のお話はごもっともだと思います。経営基盤を強化していくことで、三十八年から続いている大企業にキャッチアップするんだという議論はやめていこうと。確かにそうだと思いますが、実態的に言うと非常に僕は不可思議だと思うことが幾つかあります。  それは、なぜならば、政府はさきの国会で産業再生法案を成立させました。これは合理化、リストラを含めて、押して申請をすれば、過剰設備、過剰債務、過剰雇用を何とか処理して企業の収益体質をよくしようという、多分力点を置かれた法案だったというふうに思います。そうすれば必ず過剰債務、過剰設備、過剰雇用を処理するという前提で、産業再生法を申請した企業からすれば、過剰設備を処理するということは、そこには必ず下請の企業がついてきます。そこの廃棄というものは必ず伴うわけでして、それは想定できるわけで、そこは先ほども申し上げました日産の問題でも今徐々に明らかになっています。  特に私の地元、地元ということで言うわけではないんですが、ひどい話で、ことしの五月、三菱自動車が用地の三分の一の売却を発表しました。八月、キリンビールの京都工場が撤退を表明しました。八月、イセトーという印刷会社が工場を滋賀に移すことを決めました。来年の五月、島津製作所が工場を移転することを決めました。来年の九月、第一工業製薬の工場がこれも閉鎖が決まりました。はっきり言ってひどい状況なんです。  大企業が生き残りと雇用を守るために移転をしていったり工場を撤去するというのは、ある意味でいうと経営判断です。そこは責められないと僕は思っています。しかし、責められないけれども、そこにいた企業の下には必ず下請企業とか関連の中小企業がたくさんあって、産業再生法案を通した段階でこういう実態が出てくるというのは想定できたはずなわけですね。  これは先ほど言われたように、大臣の言われた経営基盤を強化していくことはもちろん根本的に重要だと思いますけれども基本的には、この大企業中小企業の格差というか下請の状態の実態というのは、これから逆に言うとどんどん出ていくかもしれない中で、中小企業国会と言われるこの国会基本法の中でそれが削除されたことに対して、私は大変遺憾に感じておりまして、ぜひもう一度大臣のお言葉をいただきたいと思います。
  158. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 産業競争力を強化するというのは、国策として私は間違いではないと思っています。今企業が足腰が弱くなってきた、そこをどう変えて新しい時代にふさわしい企業になって生き抜いていくかということは、国の経済の動向を考えても当然必要なことであります。  ただ、その際に、安易にリストラに走るということを定めた法律では全くありませんで、企業事業を再構築するという場合にできるだけ協力するということですが、それを単にリストラとか下請を切ることを公然と許したという内容では全くないわけでありまして、その面については私は大企業も十分社会的責任を果たしていただきたいと思っていますし、現実に日産に対してもそのような申し入れを行ったりもしてまいったわけであります。  これはある比較的大きな繊維関係の企業でございますけれども、ここの社長ともいろんなお話をしましたら、二万数千人という社員を減らすまいという大変な努力をしていると同時に、あわせて、高齢化した人たちを会社の別枠の企業をつくりまして、例えばメンテナンスであるとかあるいは廃棄物のリサイクル活動など、そういうところできちっと守っているという、そういう具体的な会社の姿もありました。  私は、事業の再構築という過程の中で企業がそういう責任を果たしていくということはとても大事なことだと思っています。ただ、にもかかわりませず例えば失業せざるを得なくなった、下請企業が切られざるを得なくなった。そういうときに社会的なセーフティーネットとして通産省は何ができるかということがとても大事で、そこの分野は私たちが担当していかなければならぬと思っているわけであります。そういう意味では、下請企業振興協会などを通して各都道府県のもとであっせんをしたり、いろいろなこともしているわけでございます。  どのぐらい成果を上げたかというと、これはいろいろ議論が分かれるところでありますが、例えばこの協会に何とかしてくれと申し込んできた三万一千の希望に対して、四千六百社ぐらい新たな業を御紹介申し上げて成功したという例もございます。  ですから、そういうような下請対策と、あるいは中小企業金融公庫等政府系の金融機関による設備資金、運転資金、その他もろもろ総動員して対応していくというのが私たち役割だと思います。
  159. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 そのお気持ちはよくわかっているつもりでございますし、逆に言うと、産業競争力を強化をするということに対しても、私も先ほどの質問でも申し上げましたように、否定をしているわけではありません。それはある意味でいうと経営判断なわけです。しかし、だからといってなぜこの大企業中小企業の問題を削除する合理的な根拠があったのかということになると、よくわからないんです。  大臣のおっしゃることはよくわかるんです。それは片一方では絶対に国策として必要なことだというのはよくわかる。しかし、こういう状態が目の前に来ている。現実には見ている中で、なぜこの法案でわざわざ削除したのかということについては実は余り、片方では頑張るんだからそれでいいじゃないかとおっしゃるけれども、それはそうなのかもしれないけれども、ではわざわざ減らす必要もないだろうという議論もありまして、そこについては、大臣、もうこれ以上は食い下がりませんが、もし御答弁いただければと思います。
  160. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 格差の是正という文言を経営基盤の強化というふうに変えておりまして、別に基本法の中で全くなくなってしまったという意味の削除ではありません。
  161. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 次に、例の中小企業に対する定義の問題についてお伺いをしたいと思います。  今回の法改正では業種の例示をお変えになられた。それから資本金の大きさと従業員の規模によって分類を変えられました。これは別に政府参考人でも結構でございますが、この定義変更で、現状中小企業の比率それから従業員の中小企業の比率は改正前と比べるとどのように変わったかお答えください。
  162. 岩田満泰

    政府参考人(岩田満泰君) 現行企業数で九九・四%でございましたものが九九・七%に企業数で増加をするということでございます。それから従業員数でございますが、現行定義で六四・四%が従業員数で七〇・九%に上昇をするというふうに計算をいたしております。
  163. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 そうなんですね。今回の法案によりますと、中小企業の分類、定義を変えたおかげで九九・四%から九九・七%に中小企業対象数がふえた。それから従業員に至っては六四・四%から七〇・九%の人が中小企業の従業員であるというふうに定義を変えられました。  ここで質問なんですが、〇・三%なんですね、大企業というのは。一定の基準でこれを分類しているというよりかは、ある意味でいうと全体を包括しているという意味合いの方が私は非常に強いと思うわけです。定義をして分類しました、片方が九九・七%、片方が〇・三%なんというのは、これは大臣、ある意味でいうと分類という定義ではないと私は思うわけですが、いかがですか。
  164. 細田博之

    政務次官(細田博之君) どこで切るかということは大変長い間、それこそ三十年来議論してきたことであります。  しかし、まず御認識いただきたいことは、日本は世界に冠たる制度をこうやって確立してきておりまして、従来から与野党ともにこれはやるべしということで、中小企業に対する基本法をもって、そしてそれに基づいて中小企業に対する政策を金融、税制あるいは個別法で、全部いわば護送船団方式にも近い形で整備して、そして中小企業庁という役所があって専門的にやってきたという、このことの意味というのはまず一つ考えていただきたいこと。  それではどこで切るかということですが、例えば今回大企業が一万四千社になります、減りましたから。しかし、その従業員数というのは合計しますと千三百四十一万人になりまして、残りの大企業の平均が千人なんです。もちろん二万人いる会社もあれば、六百人の会社もあるかもしれません。しかし、そこでやはり質的なところはこれは国家として大事な助成をすべきだという範疇ではないというところで、どこかで切って、むしろその他の大きな我が国経済の大宗を占める中小企業に積極的に世界にも例を見ないような助成策をとろうという発想でやってきたことでございます。  切り方についてはいろいろ御意見はあると思いますが、最近の実態の変化に伴いまして、御存じのように、これだけ助成を中小企業にやっておりますと、ちょっと上のランクのところが助成が受けられない。政策投資銀行、旧開発銀行でも、運転資金融資を入れたり設備資金も少し余計に見ようとかいうことで少しずつやってきましたけれども、それではいけないから中小企業の手厚い政策をやっていこうじゃないかと、その政策対象として意味があるということで審議会の方で判断いただいたということですから、その点は御理解をいただきたいと思います。
  165. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ですから、例えばアメリカでいうと大企業の関連子会社とか小規模企業でも、例えば少ない企業でもその会社がマーケットの中で市場シェアが高い場合には中小企業には入らないんですね。  私が言いたいのは、九九・七%が一緒くたに分類されているようなものというのは、それだけ政策の有効性、つまりどこを対象にするのか、どういう方法でその政策の有効性を担保するのか大変ぼやけるんじゃないかと思っているわけです。先ほどから出てきますように、もっともっと、大企業中小企業の関係で下請の会社もある。この法案対象になっているベンチャー・創業支援をする企業もある。ほかの企業、例えば先ほどの参考人も言われましたけれども個人事業主で本当に一人か二人で夫婦でやっている企業もある。その中小企業を九九・七%一緒くたにこれが中小企業だという分類をして政策をつくること自身に僕は実は無理があると思っていまして、これはあくまでも定義でも分類でもない、包括的にくくっただけで、それだけ政策の焦点、論点、有効性がぼけるのではないかというふうに私は思っているんですが、いかがでしょうか。
  166. 細田博之

    政務次官(細田博之君) そういう御意見も成り立つと思います。  しかし、小規模事業について、また近代化資金等助成法などでさらに特別に今まで以上に融資等をやっていこうということは、このたび拡充しておりますが、逆に、衆議院の議論でもありましたけれども小売業がなぜ五十人で切れるんだと。じゃパートタイムを入れて五十人じゃいけないからパートタイムは絶対外せと。これは逆に言うと、五十人から百人ぐらいの実態があっても、パートを除いた常用労働者が五十人以下であるようなところは当然対象にすべきだ、できれば百人まで対象とすべきだという御議論もあるんです。  だから、企業によって職種によって非常にばらつきがあります。従業員が七十人もいる小売業というのは、確かに町でいえば七店舗も八店舗も持っているスーパーマーケットですから、小売業から見ると大きな存在、脅威の存在であるから、これらはむしろ五十人もいるなら外してくれというような声もあるんですが、そこのバランスをとって見ているということ。  それから、中小企業三機関にしましても保証協会にしましても、その他の税制にしましても、これらの企業には何兆円という融資残高、保証残高があって、非常に潤沢な形で政策的に見ていると我々は自負しているわけでございまして、もっと小さな、例えば五十人で切れ、百人で切れ、あるいは資本金も一億円で切れという議論は確かにあるわけでございますが、それは非常に資金的にもあるいは助成策としても限られたときの話としてはそういう議論もあったわけでございますが、最近はそうでもない。金融的にも緩和しておりますし、もっと助成措置を拡充しておりますから、面倒を見ていけるんだという自信を持って今度の定義改正に臨んでいることを御理解いただきたいと思います。
  167. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 どうも先ほどから政務次官のお話を聞いていると、潤沢な資金を供給し続けている、融資をしている、助成をたくさんしていると。だから細かく分類しなくてもいいじゃないかというふうに私には聞こえるんですが、潤沢に資金を融資した、潤沢に資金を助成したからそれで中小企業政策がいいとは私は思いませんから、そこはちょっと余り議論がかみ合いませんので、別の観点でお伺いします。  では、政務次官、お答えください。  この法案は、大企業と対抗し得る中小企業の育成を目指して、その潜在能力を持つ中小企業を育成することが対象なのか、市場で淘汰をされていく生存困難な中小企業を保護することなのか、これから先大企業の系列下から離れていく中小企業が今後本当に市場競争の中で頑張っていかなけりゃいけないものを生き残らせて戦わせるための政策が中心になっているのか、どれなのかお答えください。
  168. 細田博之

    政務次官(細田博之君) 基本的には、中小企業は、昭和三十年代にこの基本法が定められて以来、一ドルが三百六十円から一時八十円、今でも百十円という三倍になった中で国際競争を強いられ、そしてさまざまな不況の波、オイルショックの不況もあれば円高不況もあるし、そしてバブルの崩壊もあって、その中を生き延びてきている五百九万、七万社が九万社になるわけですが、そういった企業があり、今日いろいろ姿を変えて残っているわけですね。多数の繊維産業が織物業をやめて機械部品に変わったり、いろんな産地での変化もあって残ってきているわけですから、私は、基本的に中小企業政策は、時代の変化の流れに沿って中小企業の中でもいろいろな工夫をしていただいて生き延びていく、そして生き延びる知恵と、それから必要な投資や金融やその他の助成措置が必要な方々にそれをできるだけ潤沢に提供するということが基本でありまして、大企業中小企業なのか下請企業なのかという観点は、基本法的にはその次に位するものであります。  ただ、取引の関係にしても下請の関係にしても、それぞれが力関係で非常に大きな問題を抱えておりますから、それぞれの法律によって保護すべきものは保護するという考え方でございますから、基本的には、今現に歯を食いしばって生きてきている中小企業で意欲のある者は、みんな意欲があるわけですから、その意欲のある方々をお手伝いするということが基本であると思っております。
  169. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 だから、先ほど最初にメールの話をお聞かせしたんです。  意欲がないわけではないわけです。でも、環境の変化とかでどうしようもない状況になる人がいるときに、いろいろな方法で生き延びられるためにメニューをつくりましたと。メニューをつくっていない。いろいろ生き延びるためにどうのこうのと、そんな抽象的な議論をされたら、それは中小企業の皆さんたまらぬですよ、みんなこうやって苦労しているわけですから。  だから、僕がさっき言ったように、この法案というのは、市場で淘汰をされていく中小企業に対して何とか次のソフトランディングをするための法案なのか、そうじゃなくて、中小企業が、もちろんこれはベンチャーもそうなんですけれども、ベンチャーも含めて大企業と肩を並べるぐらいちゃんと伸びていくための法案なのか、それとも、系列下にある中小企業が系列というものから切り離される状況がもう目の前に来ているわけですから、そういう状況の中で何とか生き残ったりそれぞれが自分で生きていくための政策をちゃんとメッセージとして伝える法案なのか、どれなんですかとお伺いをしているんです。
  170. 細田博之

    政務次官(細田博之君) おっしゃいましたような、一生懸命これからも生き延びていこうという企業に対して手を差し伸べていく、国家が特別に手を差し伸べていくための基本法でありますし、そのための中小企業政策だと私は考えておりますが、それでは、各論で私も申し上げましたように、何年もの間に中小企業によっては廃業を余儀なくされた方や事業転換をされた方やいろんな方がおられます。  しかし、先ほど例に挙げられた方の実際の工場閉鎖をどうしても阻止するように措置をとれと言われると、これは国家、政府としての政策としてはそこまで行けませんので、おやめになる前にいろんな融資や保証や、そういうものは御相談いただいて、その上で企業が生き残るためにどうしても一部の工場を閉鎖して一部の工場を生かすという御決断をされた場合には、やっぱりこれはやむを得ないことであるし、それは例としてはたくさんあるわけでございます。  しかし、それは冷たい政策をとっているのじゃなくて、そういうことができるだけ起こらないようにするために用意しておりますが、それじゃ政策手段として何ができるのかということをいえば、やはり金融面の融資ですとか保証ですとか、あるいは税制ですとかその他の補助金ですとか、そういうものにツールが限られている。そして、不公正な取引がそこで発生したり差別が起こったり不当な解雇が起こったりしたときにはまたそれのツールを用意するということが政府政策ではないかというふうに考えているわけでございます。
  171. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 そこで不公正な融資とかいろんな貸し渋りがないようにしていただかなければいけないのはよくわかりますが、どうも政務次官のお話を聞いていると融資と助成ばかりが出てきますので。  次に行きます。  私は、この法案審議の中で根本的な問題は、二十一世紀、恐らく非常にマーケットの洗礼を中小企業も受けることになると思っているんです。そのときにマーケットの洗礼を受けるのはやむを得ないわけです。ところが、そのやむを得ない中で、強い者が勝つ優勝劣敗という方程式をそのまま中小企業に当てはめていくのか。  我々は構造改革をこの国でしていかなきゃいけない。構造改革するときには、ある意味でいうと転廃業に対するソフトランディングも必要なわけです。ある意味でいうとやめるための施策も必要でして、あくまでも頑張って意欲のある人には支援しますよ、あとは知りませんみたいな話ではなくて、構造改革の中でどういうふうに本当に中小企業政策を位置づけるかという私は大変重要な問題だと思っています。高度経済成長のときにははっきり言って敗者なき競争だったわけです、どんどんパイが大きくなるわけですから。それはいろんな構造転換はあったけれども転換したってその構造転換した中でやっぱり経済成長をしてきたわけですけれども、今みたいな低成長の中では、転換をしてそれが大丈夫だという保証がないわけです。中にはこんな状況だったらやめたいと思っている中小企業もいっぱいいるわけです。  そこで、創業支援だ、ベンチャーだ。私は、冒頭申し上げましたように、この世代ですから、ベンチャー万々歳の世代でございます。行け行けどんどん、ベンチャー頑張れという世代でございますけれども、そうではにっちもさっちもいかないところが厳然とあるということをやっぱりもう少し具体的に法案の中に盛り込んでいただきたいというのが私の今の率直な感想でございます。  ちょっと具体的に行かせていただきます。  中小企業支援ということでは恐らくだれも反対する人はいないと思います。要はその中で、これも地元のことで恐縮なんですが、西陣織のネクタイ織物産業が地場産業で千数百社あります。これは構造不況業種の典型でございまして、こうした中小企業に対して、先ほど政務次官が言われた、ただ融資を続けていくのがいいのかどうか、僕は非常に今悩んでいます。もう売れない状況の中で融資ばかり続けていったって、借金の残高がふえて、設備はしていますから、その設備も返さなきゃいけない。売り上げが上がらないのに借金をしてとにかく生き長らえていることが本当にいいのかどうか、僕は大変悩んでいます。  実は、絹織物業というのは、群馬の桐生や山梨や東京の八王子、博多、西陣だけではありません。私は、ただこういうところを守れとか保護しろという話をしているわけではなくて、具体的にちょっと行きたいと思います。  まず、日本国内のネクタイの使用量というのはおよそ今三千五百万から四千万あるんですけれども、そのうち海外からの輸入はどのぐらいあって、どの国からの輸入が多いか、お答えをいただけますか。
  172. 横川浩

    政府参考人(横川浩君) 我が国へのネクタイの輸入についての御質問でございます。  近年の世界各国からのネクタイの輸入の実績でございますけれども平成九年には前年比で九一・六%、平成十年には九七・八%、若干減少傾向で推移をしてまいりましたけれども、本年になりまして一―九月、前年同期でございますが、二・五%の増、若干の増になっております。  輸入の総量でございますけれども、一九九八年、昨年一年間の世界各国からの我が国への絹製ネクタイの輸入量は千七百五十二万本、こういった数字になっております。
  173. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 中国と韓国からはどのぐらい来ていますか。
  174. 横川浩

    政府参考人(横川浩君) 申し上げました全世界から千七百五十万本余りの輸入がございますが、そのうち三五%に当たります六百十万本が中国からの輸入でございまして、ほぼ同様のシェアになっておりますけれども、韓国から三四・四%のシェアの六百二万本の輸入がございます。残りはフランス、イタリアといったような欧州からの輸入で占められておるわけでございます。
  175. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 実は、千二百十二万本中国と韓国から輸入をされているんですが、この輸入品の平均単価が何と中国製はわずか二百四十八円、韓国製は三百八十三円なんです。これは特恵関税で関税がかかっていません。製品で輸入をしてくる場合には関税ゼロです。  先ほどヨーロッパの話が出ましたが、イタリアからの輸入の平均単価は二千四百円、フランスは三千四百円なんです。ある意味でいうと十分の一なんです。十分の一の状況で製品が入ってきているわけです。この中国や韓国の三百八十三円とか二百四十八円だと、国内だと縫製代、縫う金額にもならない状況で、特恵関税という名目でどんどん入ってきているわけです。ことしに入って千二百万本という状況でございます。  もう一つだけ余計なことを言いますと、まず関税が今かかっていないということと、養蚕農家の保護によって、これは古くて新しい問題ですからここについて詳しく議論する気はありませんが、要は、原料の生糸に対して逆の意味の調整金が負担としてかかっています。  若干申し上げれば、原料を輸入しようとする場合は二割高い関税を加えないと原料として入ってこないわけです。つまり、国際価格に比べると二割高い価格で輸入をして製造する。ところが、製品として入ってくるネクタイそのものは、中国から韓国から縫製代にもならないような状況で年間千二百万本入ってくるわけです。  要は、製品がそのまま入ってきて、こっちが安くつくろうと思うと国際競争力の原料よりも二割も高い価格で輸入をしてつくらなきゃいけないわけです。例えば、国際競争力に見合うようなところをつくりなさい、マーケットで頑張りなさい、メガコンペティションで頑張りなさいと言ったって、全然関税がつかないで入ってくるものが十分の一の値段で入ってきて、自分らが原料を安く仕入れようと思うと、その原料は国際価格に比べたら二割も高いわけです。これはネクタイの産地の業者にとっては、変な話ですけれども、武器を全部とられてどうやって勝負するんだという状況なわけです。  こういう状況を放置しておいて、彼らが言うには、もうつぶれていけ、もうおれらは野たれ死ぬしかないんだと政府に言われているような気がするというわけです。先ほど政務次官も大臣もおっしゃいました、基盤を強化する。じゃ、せいぜい条件整備ぐらいは同じ土俵にしてもらわないと彼らは戦えないというわけです。彼らは別に保護してくれなんて言っていないんです。助成をくれなんというのもよっぽどのことじゃない限り言っていないんです。ただ、条件を何とかしてくれれば我々は伝統技術で頑張れる、でも原料は二割高い、向こうから十分の一ぐらいの値段で製品がそのまま入ってくるような状況では戦えないと。  こういったところに対して、放置しておけということは、逆に言うと、先ほど大臣が言われたセーフティーネット等をつくっていかないことには、それこそ言われている構造転換とか中小企業の基盤強化が僕は本当に絵そらごとのように聞こえるんですが、大臣、政務次官、いかがですか。
  176. 茂木敏充

    政務次官(茂木敏充君) 絹製のネクタイの輸入急増に対する事業者経営安定、これに関した質問でありますが、私も栃木県の足利市という繊維の町に生まれ育ってきまして、輸入の急増によりまして多くの繊維事業者が年々厳しい経営環境にある、そういった実態も見てきております。  そんな中で最近感じますことは、事業者の目も変わってきている。単にコスト競争力さえつければ売れる、こういう時代ではなくなってきている。その一方では、例えばイタリア製であったりとかフランス製の一万円、二万円のネクタイが飛ぶように売れるような事態になってきています。  そういった中で、企業が今頑張っているのは、むしろコスト競争力よりもマーケティング、それから新商品開発、デザイン能力をつけていく。例えば、私の町で言いますと、イタリアのコモ市という町がございます。ここは新しいタイプのデザイナーがたくさんいる。そういうデザイナーと直接に契約を結んで新しいネクタイをつくったり、そういった新商品開発にも取り組んでおります。  そういった中で、政府としましても、単に関税の問題であるとかそういうこと以上にこれから重要になってきますのは、例えば展示会を開催する、イベントを開催する、そういった中でマーケティングに対しても企業のお手伝いをしていく、さらには新商品のお手伝いをしていく、こういった措置を一層充実していきたい、こんなふうに考えております。  ただ、輸入品の急増等の環境の激変、これがある場合につきましては、新法上も、第二章第三節におきましてセーフティーネットとしてこれからも対策をとっていきたい、このように考えております。
  177. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ということは、ある程度輸入急増等について対策は具体的に考えられる要素はあるということですね。
  178. 茂木敏充

    政務次官(茂木敏充君) 申し上げましたのは、輸入品の急増等によりまして国内の産業が大きな打撃を受ける場合につきましてはセーフティーネットの措置がとれる、こういう対応が新法上も組まれております。そういった個々の事情を見ながら、その対策が必要かどうか、適時適切に判断してまいりたいと考えております。
  179. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 そろそろ時間なのであれなんですけれども、私が一貫して申し上げたかったのは、ただ守れ守れということを言いたいのではありません。  逆に言うと、中小企業も、これだけ自由主義だ、マーケットだと言われている状況の中で、覚悟は決めているわけです。ただ、条件整備をきちっとしてあげることと、それとやはりスムーズな転廃業。そうやってのたうち回っているところに、やれベンチャーだ、創業だと言ったって、そんな余裕はないところが多いんですよ。そういうところに対していかに転廃業をスムーズに、逆に信用保証枠で生き長らえさせていればそれだけ構造転換がおくれて、逆に言うと日本の産業競争力が強くならないのかもしれない。  要は、そういった状況のもう少しきちっとしたセーフティーネットの具体的なメニューを出していただかないと、実は今のたうち回っている中小企業の皆さんは安心できないし、未来に希望が持てないと思うんですが、通産大臣、御答弁を最後にいただけますでしょうか。
  180. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) あなたの議論のやりとりを伺いながら、あなた自身も含めて大変悩んでいるということはよくわかります。私たちもそうです。  とにかく、五百万以上もある中小企業の、その一つ一つの動きに全部こたえられないということに歯がゆさを感じます。そして、そういう中小企業自助努力で頑張ってもらうところを、せめていろんな資金だとかノウハウだとかさまざまな形でお手伝いする。そして、なお難しいという場合のセーフティーネットを用意していく。  現状では本当に最大限の努力をしていると思いますが、足らざるところが多いということに一方では胸も痛めております。
  181. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 堺屋長官、済みません、時間がなくなってしまいました。申しわけありませんでした。  では、かわります。これで終わります。ありがとうございました。
  182. 川橋幸子

    川橋幸子君 引き続きまして、民主党・新緑風会の川橋幸子であります。  経済政策中小企業政策雇用政策、私は労働省で仕事をいたしましたけれども経済あるいは産業政策には疎い者でございますが、この三つの関連がどうも解けないなぞのように思われまして、多分私がそう思うことは国民の多くの方々もそのように感じているのではないかということから、この三つの政策の関連について伺わせていただきたいと思います。  まず、堺屋長官、連休の谷間、他省庁の通産所管の法案にまでお出ましいただいてありがとうございます。日本経済の一流のエコノミストのお一人でいらっしゃって、しかも、これから内閣府の強化という中では、非常に内閣の総合調整機能の中で経済企画庁というのは逆に大きな力を振るっていただかねばいけない、そういうポジションでいらっしゃると思います。  一府十二省庁を先取りするような形で御質問させていただいて恐縮でございますが、まず第一は雇用の問題、雇用の創出という特にそちらの方の問題です。  これに関しては、政府ができることというのはごく限られているのではないかというのが私の実感でございます。雇用というのは経済活動に伴いまして派生的に生ずる需要、典型的な派生需要でございます。そういう意味で、雇用増というのは経済の回復にまたなければならないことが多いと思いますが、このところさまざま、産業再生法から今回の中小企業改正法から、雇用創出につながるというようなそういう政府の説明が多いように思いますが、いかがなものでございましょうか。やっぱり政府のできることというのは、雇用創出はちょっと違うんじゃないかというのが私の実感でございます。
  183. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 委員御指摘のように、雇用というのは経済活動に派生して発生するものでございますから、まず政府としてやらねばならないのは景気対策、経済活動全体を拡大していくということだと思うんです。そういたしますと、やはり雇用が増大する。そういう意味で、経済新生対策等も今決定いたしまして御審議いただくことになっておりますが、そういった景気振興政策あるいは新しい成長軌道に乗せることが大事だと思います。  しかし、もう一つとして、一方において雇用需要がありながら、また一方において働きたいという人がいながら、その間にミスマッチが生ずるということもしばしばございます。したがいまして、そういう点の情報、あるいは能力開発、そういったことも国の仕事として拡大していきたいと考えております。
  184. 川橋幸子

    川橋幸子君 そこで、このごろ非常に迷いますのが、雇用における企業の社会的責任という言葉でございます。  昨日の日曜日、「サンデープロジェクト」、番組をごらんになられたかどうか、あるいはNHKも最後にやっていたようでございますが、この不況期にあってこそ雇用を守るのが企業の社会的責任であると。これを少し前にはトヨタの奥田会長、現日経連の会長もおっしゃられたし、それからきのうは実例をもって横河電機のお話がございました。大規模のリストラ計画が相次いで発表されている中で、非常に雇用不安というのが強くなっているわけでございますけれども、やはり雇用をふやすには競争力強化が先というのがエコノミストとしての常道のお考え方ではないかと思いますけれども、一方において、それでは日本雇用慣行、かつてジャパン・アズ・ナンバーワンというふうに私どもが誇ってきた日本的な終身雇用慣行というのは一体何だったのだろうか、そこらあたりの問いをわかりやすく御説明いただけるとありがたいと思います。
  185. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) これは大変難しい問題でございまして、確かに日本経済を強くし、発展させるためには各企業の競争力が必要だ、これはまた避けられないことでございます。その中で、ある部門ではやはりリストラ、人員整理を含むようなリストラも避けがたいと思います。しかし、各企業がそういうことをやるときにも、やはり労働側の、従業員側の立場も十分考えてやっていただく必要があると思います。  日本はかつてずっと終身雇用で栄えてまいりました。そのときには、まず第一に、日本経済全体が非常な成長力を持っていた。そして各企業従業員数も概して増加する。そんな中でも、石炭産業でありますとか映画制作でありますとか繊維産業でありますとか、従業員数が相当減少したところもありましたけれども、また一方で十分吸収できたのでそれほど深刻な問題にならなかったということもございます。  そういった兼ね合いを考えながら、それぞれの企業に適切な最も被害がない方法をとっていただくと同時に、そういう特定の地域であるいは業種で大きな失業あるいは雇用問題が出る場合には、特定地域雇用創出でありますとかそういったことも政府として対応していく方針でございます。
  186. 川橋幸子

    川橋幸子君 私は、日本的な終身雇用慣行というのは、雇用を守る、これが大前提というよりも、人間の尊厳というのを守っていく、労使の信頼関係というのは、安易なリストラはしない、その企業の中で雇用維持について最大限の努力をする、その一人一人の人の尊厳を守るということに非常に大きなことがあったんじゃないかと思います。単なる量の確保ではなかった。それは日本だけではなくて世界的に普遍的に適応するものとして、私は日本は十分それを主張し得る国だと思います。その説明が足りないのではないかと思います。  ところで、これは私の意見でございますが、先週、十一月十九日でございますが、政労使の雇用対策会議が開かれまして、この大規模リストラ計画が非常に大きな不安を呼んでいることについて話題になられまして、通産大臣、労働大臣がともに出席されて、それぞれ主張されたと伺っておりますが、通産大臣はどんな御主張をなさったんでしょうか。
  187. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 十一月十九日に、キャピトル東急で第六回目の政労使の会合がございました。  私は、基本的に、第一は今日の経済の状態、そして景気回復がいま一つである、そこでこの臨時国会における補正予算審議していくということやら、あるいは中小企業を力をつけて、例えば創業率でも押し上げるようにして、それが雇用に対するプラス影響になるような考え方であるといったようなことなどを申し上げました。  そのときに、鷲尾さんから、やっぱり具体的な数値を明らかにするということはとても大事ではないかという御発言がありました。私も全く同感で、例えば私たちが考えている中小・創業ベンチャー企業というのは、現在創業率が低いけれども、年間で十四万社ぐらいであるというのをこの五年間にさらに十万ふやして二十四万社ぐらいに目標設定する、その場合には雇用の人口は約百万である、そういう目標などを打ち立てて努力をしたい、こう思っているといったようなそういう話などもございました。  それから、そのほかいろいろ議論はかなり出されまして、この三者による協議は極めて有効であったと思って帰りました。
  188. 長勢甚遠

    政務次官(長勢甚遠君) 十九日に第六回の政労使雇用対策会議が開催されまして、労働大臣も出席をされました。  労働大臣は、かねてから、大変厳しい雇用情勢の中でリストラ等が安易に行われてはならない、企業においてもその社会的責任を十分認識いただきたいということを申し上げ、また経済団体等にも要請をしてまいった次第でございますが、この会議におきましても、今まで、またこれから補正予算等において政府が進めようとしておる雇用対策について御説明をするとともに、リストラと同時に新卒の問題も大変厳しいわけでございます。ぜひ企業責任を自覚して、企業においても労使一体となって頑張っていただきたい旨を要請いたしまして、三者そういうことでやっていこうという方向でお話が終わったというふうに伺っております。
  189. 川橋幸子

    川橋幸子君 通産大臣におかれましては具体的な雇用確保の数字を政府の責任としてお述べいただいたこと、それから労働大臣におかれましてはリストラだけではなくて新卒、学卒者の就職につきましても企業の社会的責任ということを強調していただいたということでございます。大変心強く存じます。  それらは、何も安易な企業経営ではなく、やっぱり一人一人を大事にするという、それこそが経済合理性も持つというふうに私は理解しているところでございます。  そこで、日本企業というのが競争力を失ってきた背景というのは、そういう集団主義の中に個人が埋没し過ぎてしまった、個人の創造性なりやる気なりというものを奪ってきてしまったことに原因があるのではないかと私は考えております。  かつての橋本行革の中で、私が評価しておりますのは、二十一世紀におけるこの国の形というものを国民的な議論を沸き起こしたいと、司馬遼太郎さんがおっしゃった「この国のかたち」という言葉をかりて、それを訴えられたわけです。明治維新期には自由な精神があって、合理的な精神があって、個人のプライドと志を持つようなこういう日本人がいたのに、これがいつの間にかなくなってしまっている。この状況をむしろ改革するという、そこが橋本行革のスタートであったと思うのでございます。  いささか文化論、社会論になるかもわかりませんが、経済企画庁長官にエコノミストとしてもこういう問題についてどのようにお考えになるか、あえてお尋ねしたいと思います。
  190. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 日本は戦後長らく高度経済成長してまいりました。その中でいろいろと新しい企業も起こり、新しい産業も興ったのでありますが、一九八〇年代に入ってまいりますと、だんだんそういう新産業、新技術の余地が少なくなって固定化されてきた。このことがどちらかというと経済の成長を阻む要因ともなり、また経済が伸びないことが新しい発想を阻むこと、それに教育の問題も非常に重要だと思います。  日本は、戦後の教育の中でみんなが欠点のない人間になろう、真ん丸人間になろうという、長所を伸ばすよりも欠点をなくする教育をしてまいりました。その結果、非常に画一的な、集団に埋没するようなものが生まれたと思います。そういった中でも、やはり創業を進めて新しい企業を起こされたり新しい文化をつくられたりした方もおられますが、こういう方々をもっと高く評価して、次の時代には新しい発想が生まれるようにしていきたいと考えています。  先ほど通産大臣が十四万社を十万社ふやして二十四万社ということはおっしゃいましたけれども、これは実は大変大きな数でございます。というのは、一方において廃業がほぼ十五万ぐらいありますから、二十四万になるということは九万ふえる、今一万減っているのが九万ふえるということになる。こうなりますと、やはり雇用にも大きな影響がありますので、ぜひそういう新しい産業を興そうという人を元気づける政策をとっていきたいと思っております。
  191. 川橋幸子

    川橋幸子君 先ほど参考人の方の大変興味深い意見を伺ったところでございます。その中で、折口さんとおっしゃる参考人の方ですが、日本の教育は間違っておったと。  まず第一点は、プライドを大事にしない、誇りを大事にしない、だから公共心が育たないということ。  それから、目的意識がはっきりしない。寄らば大樹の陰でもって何かに合わせることであって、自分が何がしたいのか何ができるのかという目的意識がはっきりしないような教育をやったので、それに対応するような戦略が出てこないこと。  それから三番目は、私は多少異論があるんですけれども、悪平等だったとおっしゃるのでございます。私は、言葉はむしろ悪平等というよりももたれ合い、依存し合い。集団の中に埋没して出るくいは打たれないようにするという自己保身が多かったのではないかと思います。悪平等なんておっしゃるなら、男性と女性の間の平等ももっと実現してよかったはずだと思うのでございます。ぜひ教育面につきましても、お並びの大臣に閣議の中では十分御主張いただきたいと思います。  さて、そういう哲学があるといたしましても、去年の秋の金融再生法は、公的資金をつぎ込まなければデフレスパイラルが起こる、これは緊急避難なんだということでやられた。それから、産業再生法の方も、過剰雇用維持するために、過剰設備があるんだから設備廃棄を楽にできるようにする、ちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、そういう問題がある。それから今度の中小企業基本法というのは、私流に言えば、これは定義の問題として九九・七%の企業を含むこの法律中小企業法と言うのはむしろ無理がある、私は企業再生法と言っていい法律だと思います。  しかし、今回の企業再生法を見ましても、結局お上頼みというんでしょうか、何かてこ入れしなければ日本経済はもたないんだよと。創業支援ベンチャー支援も書いてありますけれども、それにしても、何となく横並び意識を刺激して、護送船団方式で生じた弊害をもう一回横並び意識を刺激しながら護送船団方式で解決しているようにしか見えないのでございます。ばらまきが多いという、そういう非難も聞かれるところでございますが、これについては堺屋長官及び深谷通産大臣、それぞれいかがお考えでしょうか。
  192. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 現行中小企業基本法は、中小企業を一律に小さいがゆえに弱いというふうに定義しておりました。そういう意味では一律にとらえているということは言えると思いますが、今度提案させていただいております中小企業基本法改正案におきましては、それぞれの企業の特色を生かしてやっていこうということになっております。  ただ、市場メカニズムの中で、やはり中小企業が大企業に比べて不利な条件、例えば情報が入りにくいとか有名度が足りないから人材が来ないとか、そういうようなことがございます。そういう点を賄っていく、補っていくということで、決して一律にばらまきをするということではございません。  現にやっております中小企業の借入保証、これはかなり一律的なところがありまして、そういう非難もございますけれども、これはやはり緊急避難、去年のあの状況から生まれたものでございますからそういう点もありますが、これからは選別をして、それぞれが中小企業が特色あるものとして発展していく、そういうような志を持ってこの法案を提案させていただいておるわけでございます。
  193. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) まず最初に金融再生法でありますけれども、これは小渕政権ができてから私も党の三役としてかかわってまいりました。  金融機関が不良債権を抱えて動きがとれない、いわば体の中を血液が流れないような状態に融資関係がなってはならないと、そこで再生化とか健全化ということで打ち出したのが金融再生法でございます。しかし、そこにはかなりの厳しい条件もつけておるわけでございまして、そういう条件の中でどう再生、健全化が図られているかということでありましたが、昨今では金融業界はやや山を越えつつあるという状況になっておると思います。あとは金融機関が甘えることなく、貸し渋りなどで安易に資本比率を上げるようなそういうことをとらないということを大いにひとつ実践してもらわなければならないというふうに思います。  産業再生法では、産業がこれから事業の再構築を行って足腰を強くするということのためにできた関連の考え方でございますが、一方では、だからリストラは当然だといったようなそんな負の部分が目立つようになってはなりませんから、これはあくまでも日本経済が中長期的に見て発展するためにこれらが十分に生かされるということが必要であろうというふうに思います。  基本法改正については、今、堺屋長官の方が語ってくださいましたが、むしろきめ細かい対応で多面的にお手伝いするということであって、その大前提は自助努力だというふうに考えます。
  194. 川橋幸子

    川橋幸子君 それぞれ御答弁いただいたように、それぞれの法律が運用されることを私は切に望むものでございます。  御答弁いただいても、なおかつ、何となく号令一下みんな自立支援なんだからおまえたち頑張れよという、そういう指導のような感じが私個人はどうも否めない、これは私の偏見かもわかりませんけれども、そういう偏見を持つ人間がいるということも御理解いただきまして、適正な運営をお願いしたいと思います。  さて、雇用の問題でございますが、中小企業も今度は元気を出す、保護されるんじゃなくて自力で、そのかわり下請ではなく自分で市場開拓のできるような中小企業になると。まるで何だか灰色からバラ色への中小企業転換のような気がいたしますけれども、労働行政のことを考えますとなかなかそうは、バラ色の中小企業対応するような労働政策転換するまでにはまだまだやらなければいけないことがたくさんあるような気がいたします。  例えば現状中小企業、どう考えたって労働基準法の遵守率も悪い。それから、女性でございますので、改正雇用機会均等法の質問をこの間労働委員会でしたばかりでございますけれども、セクハラの防止義務は中小企業はほとんどやっていないという数字が結構上がっておりました。それから、中小企業の場合は、パートですとかあるいはさまざま契約関係が明瞭でないような、フルタイムの正規社員ではない非典型労働と言われるものが多いわけでございますけれども、その非典型労働というものが、たった一人の店長と言われる正規社員の給料はうんと高いのに、他の五十人いらっしゃるパートの方々の賃金というのは猛烈に低いと。  ちょっと例が極端過ぎるかもわかりませんが、やっぱり中小企業で人材を確保するということになれば、労働条件を上げる、大企業に劣らない、さまざまな通勤時間なり拘束性なりのハンディを引いた中小企業の働きやすい部分を考えた上でも、均衡がとれる労働条件確保されない限り人材は確保できないと思いますけれども、そうした中小企業に対する労働政策、その辺が欠けているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  195. 長勢甚遠

    政務次官(長勢甚遠君) 中小企業において労働条件等について若干の差異がある、また特に基準法の遵守等の立ちおくれが見られるのではないかという御指摘は、そういう部分もあるわけでございまして、これはもう大中小問わず基準法違反というのはあってはならないことでございますから、企業方々にも大変御努力をいただかなきゃなりませんし、我々もその是正に全力を挙げてまいりたいと思っております。  また、パートタイムの方々等々、いわゆる常用雇用方々と違う雇用形態の方々について、当然均衡のとれるような労働条件等を確保していくべきではないかということは、おっしゃるとおりでございまして、いわゆるパートタイム労働法に基づく指針等においてその方向で今まで努力をし、また雇用管理の改善のために助成金等の制度も今使ってその促進に努めているところでございます。  ただ、この均衡をどうやってとるべきかというのは、なかなか御案内のとおり現実には難しい部分もございますので、研究会も設けて、またその状況等も調査をして、より具体的に均衡ある姿を促進していくように努力をしてまいりたい、この方向で今進めておるところでございます。
  196. 川橋幸子

    川橋幸子君 先ほどの参考人意見聴取の中に、黒瀬さんとおっしゃる方の大変貴重な御意見がございました。  今度の中小企業基本法改正というのは、一点、やっぱり経済民主主義を追求していくんだと、追い求めていくんだと。大企業系列の中で支配される企業から、独立それから自立して市場を開拓できるようなそういう中小企業をふやしていく、こういう目的を持っているわけで、経済民主主義を実現すると。──済みません、政務次官、いいです、労働省の方に質問を振り向けます。  この辺は御納得いただける話だと思うんですが、私は、これと同じことを労働省にも申し上げたいのでございます。  経済民主主義というのか労働市場民主主義というのか、アメリカの場合はさまざまな規制、労働法制の規制はないといいますけれども、年齢差別ですとか男女差別ですとか、あるいは障害の差別ですとかマイノリティーの差別とか、そういう機会の均等に対しては非常に厳しいセーフティーネットをしいているわけでございます。それから、ヨーロッパの方はまた別のセーフティーネットを持つわけでございますが、いずれもやっぱりそれは民主主義、労働市場民主主義なんという言葉があるのかどうかわかりませんけれども、働く人たち、国民のほとんどは雇用労働者になるわけでございますけれども、そういう社会の中に公正なルール、社会の中の民主的なルールをしくということが労働行政の中で大事なことではないかと思います。この中小企業の人材確保労働条件の向上が必須だということと関連して、今のような参考人意見から私質問させていただきましたので、もう一回重ねて御答弁いただきたいと思います。
  197. 長勢甚遠

    政務次官(長勢甚遠君) 中小企業発展のためには、そこに必要な人材が確保されることがもちろん極めて大事なことでございますし、そのためには、お説のとおり、優秀な人材が来れるような職場の改善、労働条件の向上等が望ましいことは言うまでもないことだと思います。  今の参考人の方の御意見、私拝聴しておりませんでしたので正確なお答えになるかどうかわかりませんが、我が国我が国で、おっしゃるような民主主義的な、また公正なルールを確立できるように我々も頑張っていかなければならない、このように思っております。
  198. 川橋幸子

    川橋幸子君 大変いい御答弁をありがとうございました。大臣にもよろしくお伝えくださいまして、実現方、御努力いただきたいと思います。  さて、そういう明るい話のほかに、現状を見ますと、完全失業率は非常に高い状況が続いておりますし、特に非自発的失業者の数が絶対数が高水準にあるという、現下の雇用・失業問題には非常に厳しいものがあるわけでございます。中でも、六十―六十四歳、六十代前半層の失業率を見ると、私は日本というのはまあ何と異常な国ではないかと思うのでございます。  労働白書ですから政務次官はよくごらんになっていらっしゃると思います。(資料を示す)通産大臣も以前、労働政務次官をおやりでいらっしゃいましたし、それから経済企画庁長官は、今回の経済白書でもって、リストラと雇用の問題を非常に分析していただいて、リスクテーキングな社会をとってこの危機を突破しろと言っていらっしゃるわけでございますけれども、この完全失業率、ちょっとごらんになりにくいかもわかりませんけれども、年齢別の完全失業率をとりますと、若い方は自分に合った適職を見つけたいということで自発的な失業率が高いんだろうと思いますが、年齢とともに下がってきて、そして六十―六十四というところでがばっと上がってしまうわけですね。平均完全失業率が五%弱だとして、最近の六十―六十四歳のところはその倍、一〇%という山になっております。しかもこの山は、このところ年々山が鋭くそそり立つような形になっております。また、ちなみに諸外国の完全失業率の年齢別カーブを見れば、なだらかにこう収束している。山を描くのは日本だけでございます。こういう失業の山というのをどう考えるのか。  これから年金法の改正、また熱い議論が始まると思うのでございますけれども、年金改革の中では、むしろ給付開始年齢を引き上げの方向とか失業給付と年金との併給を調整する方向とか、六十代前半層にとっては非常に厳しい線が出ていると思いますけれども、年金は長期に向かって調整するものだといたしましても、やはり政府雇用政策と年金政策というのは整合性がとれていてほしいと思いますが、今回の年金法改正対応して、労働行政としては整合性のとれた、こういう六十―六十四の異常な山を減らすという自信がおありでしょうか。
  199. 長勢甚遠

    政務次官(長勢甚遠君) 御案内のとおり、高齢期における就業についての意欲というのは、どうも諸外国と日本でも格段の差があって、またそういうことも今おっしゃった失業率の大きな差異に結びついておるのではないかと思います。しかし、我が国の高齢者の方々が高齢期においても就業を通じて社会に貢献をしたいと、こういう意欲をお持ちであることは、いわば美徳というか大変すばらしいことでございますし、これにこたえていって年金制度との整合性をとっていくことが我が国のありようとして一番大事なことだろうと思っております。  どうにか六十歳定年制も定着をしてまいりましたが、さらに六十五歳に向けて定年なり継続雇用なり、あるいはいろんな形での雇用の場の確保を図るとともに、やはり高齢期になりますと就業に対するニーズというものもいろいろ変わってまいります。生きがいを求めるとか、いろんな方々がおられますので、その点でシルバー人材センターですとかまたあるいはNPOだとか、そういう活動の場も確保していくことが大事だと思いますが、それらもあわせまして今般、高齢者の雇用対策について新たな法律検討いたしておりまして、六十歳以降の再就職の促進、あるいは定年あるいは継続雇用の定着に向けて制度を強化しようという方向で今検討いたしておりますので、いずれまた先生方に御審議を賜りたいと思います。
  200. 川橋幸子

    川橋幸子君 労働行政は、景気の動向あるいはこうした長期不況の後遺症の後始末がずっと労働行政にかかっていくという点では私も大変御苦労が多いということでシンパシーを感じているところではございますけれども、ここは非常に大事なことでございますので、ぜひ年金と雇用との整合性ある対策をよろしくお願いしたいと思います。  さて、今六十―六十四のむしろ高齢者の問題を申し上げましたけれども、最近の調査結果によりますと、新規学卒の就職内定率が史上最低を記録したということが報じられておりました。先ほどお話もありましたように、企業の社会的責任として、この間労働大臣は政労使の会議で大企業の学卒採用についても理解を求める発言をなさったというふうに伺いました。御努力いただいているということはわかるのでございますが、私は、就職内定率が最低を記録しているということは、来年の三月末になればいつもと同じように回復するんだよ、そういう楽観的なことも思いながらも、どうも昨今の労働力の流動化政策というのは非常に若年に不利に働いているというような感じがいたします。  例えば、女性の中ではよく聞く話でございますが、短大の就職内定率は今三割ぐらいです。彼女たちが卒業式を迎えるころになっても就職口が見つからないと、まず派遣の登録に行く、あるいはアルバイト、フリーター等を繰り返す。女性だからいいということは私はないと思います。これからはむしろ夫婦共働きでなければ非常にリスクが大きい社会になっていくわけでございます。  それから、女性に限らず男性学卒も、今の労働力の多様化というんでしょうか、そういう中で、かつては若年は賃金が相対的に低いから失業の心配をすることはないよということで割合気楽に考えてこられたのが、今はむしろ若年失業の問題も今のうちから考えなければいけないんじゃないかと思っております。  労働省でも、インターンシップの問題あるいは学卒未就業で雇用保険に入っていないにしても、雇用保険の財源を使っての手当てを今のうちから考えていらっしゃるとは思うんですが、むしろ失業対策。  これ例えばの話です。うろ覚えで聞いておりますのでそれが正確かどうかわかりませんが、イギリスのブレア政権ではウエルフェア・ツー・ワーク、福祉から雇用へ、特に若年は雇用、働くことの価値というものを若いうちにしっかりと体験させる。そういう意味で、長期失業になった場合にはボランティア活動に強制的に就業するとか職業訓練に就業するとか、あるいは自治体の公共事業の中で失業対策をやるとか、非常に思い切った若年のための対策をとりつつあるという、そういう私は何か労働省の発表物を見たような思いがございます。そういう若年失業対策というのは本格的に今のうちから考える必要があるのではないか、そういう時期に来ているんじゃないかということが一つ。  それからもう一つは、ワークシェアリングといいますと、ヨーロッパ大陸、特にオランダが好事例として挙げられるわけでございますけれども、何分にも我が国と労働市場の構造が違う、それを直に日本が受け入れられるという事情にはないというような話を聞くことが多うございます。  それから、ほかの、イギリスでしたか、ヨーロッパの国々ですが、むしろ高齢者をパートタイムに誘導する。それでなだらかな引退というんでしょうか、失業率も高まらない、あるいは高齢期の生きがい労働、それから高齢期になれば生活費が低減するわけですから、その辺の家計も賄えるというような形で、むしろ正規労働者との均衡を図りながらパートタイムに誘導する、それに対して企業に助成するというような、そんなワークシェアリングのやり方もあるようでございます。  たまたま私が散発的に目にしたものでございますけれども、労働省ならもっともっとそこらのところは分析中ではないかと思いますが、この若年失業問題に関連して、今からそのような手を打つ必要があるのではないかという私の懸念に対してはどのようにお考えでしょうか。
  201. 長勢甚遠

    政務次官(長勢甚遠君) 現在、大卒、高卒の方々、若年者の就職問題が大変厳しい状況にあることは御案内のとおりでございます。できる限り就職ができるような多くの場をつくる、あるいは職業意欲を持ってもらうように講習なりインターンシップの助成なりということに努めておるわけでございますが、今先生の御指摘は、今回の問題は景気にかかわるだけではなくて、長期的にも若年失業問題に取り組むべきではないかという御指摘であったかと思います。  しかし、これから若年労働力自体は相当減っていく、減少の傾向にあるわけでございますから、今回のことで直ちに深刻な若年失業問題が日本に起きるかどうかということはまだ即断は許さないと思います。  また、いろいろ働き方も、今派遣でございますとかいろんなお話がございましたが、ここら辺も、企業ないし社会全体がそのような若い人たちに期待をしておるのか、あるいは若い方々の職業意識や就業形態が選択的に変わっておるのか、量と質の問題から高齢者の問題も大変深刻でございますので、整合的に日本全体としての労働力の活用というか、働いていただく個人としての生涯のあり方というものをもう少し勉強しなきゃならぬなという思いでおります。
  202. 川橋幸子

    川橋幸子君 直ちにそれほど心配するほどでもないのかもわかりませんけれども、私は心配性のせいですか心配をしている人間の一人でございます。  専門的な質問というお話がございましたけれども、実は就職期の子供を持っている親から見れば、今本当にこれは専門どころか子供の将来を考えてとても頭の痛いところではないでしょうか。それから、子供自身も、親の言うとおりになっていればよいわけではない、大企業に行けばよいわけではない、働くということがどういうことなのか、先ほど教育の問題を申し上げましたけれども、本当に自分という人間をよく発見して、自分としての誇りを保つというような教育に職業教育というのもそろそろ私は転換すべきじゃないかと思うのでございますけれども、何かうなずいていらっしゃいますので、通産大臣いかがでございましょうか。一言で結構です。
  203. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 先ほどから川橋委員の専門的なお話で、大変勉強になると思ってうなずいておりました。  いずれにしましても、今労働問題というのは非常に重要でございまして、だんだんに失業率が上がってくるということはもう心配の種でありますが、そのうちの半分以上はミスマッチという点もございます。そういう意味では、例えば大企業に就職する若い人たちがこういう機会にこそ中小企業に回っていただくとか、そういうことの工夫が非常に大事ではないかと思います。  そして同時に、やはり教育の面で言えば、私たち子供のころは恥を知れと親が教えたものであります。そして、その道徳観の上で勤勉さというものを強調されたのでありますが、かつて日本の美風であったものが否定されるようなややもすると傾向がある。やっぱりそこらはもう一回きちんと見直していくことはとても大事なことではないかと思います。
  204. 川橋幸子

    川橋幸子君 教育問題を含めて大事なお話だという、そういう御見解をちょうだいしまして、私も重箱の隅をつついて質問しているわけではございませんで、意を強くしておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  ところで、NPOの問題、先日来堺屋長官に伺ったことがございますが、御記憶でいらっしゃるかどうか。NPOの問題となりますと、法律の所管は経済企画庁、それから、今回の産業再生法に伴いまして二千億の地方への交付金、これは労働省が所管してやったわけでございますけれども、あの実績を拝見したところ、NPOセクターにあの交付金が事業として認められて交付されたのは全体の交付金額のうちの〇・五%という少ない割合だったようでございます。  その割合自体がどうこうというわけじゃないのでございますが、経済企画庁は法律を所管しているだけのたまたまの窓口省庁ではないと思うんですね。それから労働省も、自分は雇用政策をやっているのであってNPOの健全育成をやっているわけではない、このようなことをおっしゃられるわけでございますけれども、私は、ベンチャーとか創業支援と同列の問題でNPOセクターというものをこれからの日本はもっと大事にしなければいけない。むしろそこで、生きがいの受け皿になるはずでございますし、それからやる気とか公共心、社会への貢献とかというのを十分学べる部分です。公共部門とそれからプライベートセクターでそれが充足できるわけはないわけでございます。  NPOセクターとなると、海外NPOの方はむしろJICAとかODAの関係で割合資金が行くのですが、国内NPOについては、事務所から電話代から通信費からあるいはそこの事務職員から、欲を言えばコーディネーターから、非常にNPOの経営基盤が弱いわけです。そこをどうするかの話だと思います。  そこにつきまして、大きなのは寄附金控除の税金の問題だと思うんですが、こういう問題は一体企画庁がちゃんと要求してくださるのでしょうか。それとも労働省がおやりになるのでしょうか、それともそれは大蔵省がやるべき話なのでしょうか。どこかでしっかりと要求してほしい、発言してほしいと思いますが、まず堺屋長官に伺います。
  205. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) NPO活動というのは、これからの多様な知恵の時代そして高齢化時代に大変重要な問題だと認識しております。このNPOの法律は議員立法でおつくりいただきまして、法律の所管は私たちでございますが、二年のうちに見直すということがこの決議の中にうたわれております。  我々といたしましては、国民生活審議会等でこの実態をどういうぐあいになっているかということをよく調べて、いろんな今我々のところへ申請してきていただいている、届け出いただいているのでも随分いろんなのがございますから、この実態をよく見きわめて、そして立法府で御審議いただくときに適切な資料を出していきたいと思っております。  その中で、この税金の問題もどのように扱うべきか、御判断いただくのに適切なものを出していきたいと考えておりますが、自由にやるというところがNPOのいいところでございまして、何らかの拘束がないような方法で活動そのもの、活動の方に着目していくのが筋かなと、そんなことも考えておる次第でございます。
  206. 長勢甚遠

    政務次官(長勢甚遠君) NPO全般については経済企画庁さんの方で担当されておられますので、税制の問題は今大臣からお答えしたとおりだと思います。労働省としては、特にNPOの指導者の育成等についてそれなりに対策を講じているところでございます。  なお、今回の交付金についての御指摘がございましたが、NPOといいましても種々たくさんございまして、こういう仕事にまだふなれな部分もあったんじゃないかなと。各地方それぞれ知恵を出していただいて、活用できる、またやっていただける方々にはお願いをしたと思うのでございますが、結果は御案内のとおりでございましたが、これからも指導してまいりたいと思います。
  207. 川橋幸子

    川橋幸子君 今回の交付金の問題で、NPOからは公募方式をとってさまざま県内からのアイデアを募集したという宮城県の例、浅野史郎さんのところの例なんかもございますので、ぜひそういう方向でやる気を促すような方向でお願いしたいと思います。  早口でずっと参りまして、最後に貴重な一分が残ってしまいましたので、これは経済企画庁長官に、通告してない質問でございますが、デノミの問題について伺いたいと思います。  与党三党はデノミに大変に御熱心のようでございますが、政府はちょっと別の見解もお持ちのように思います。エコノミストとしての、あるいは経済企画庁長官としてのデノミに対する見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  208. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) デノミは、首都機能移転と並びまして戦後のずっと続いてきた問題でございまして、このデノミをやることがどのような効果を及ぼすのか。よく新聞に出ておりますのは、印刷がふえるとか、こんなのは余り意味のないことでございまして、国民の本当の心理あるいは経済に対する見方に対してどういう影響を与えるのか、よく見きわめなければいけないと思います。  いずれにいたしましても、これをやりますと、またコンピューターのやりかえから相当の問題がございますので、きょう言ってあしたできるというものではございませんので、これは慎重に考えていくべき問題だと思っております。
  209. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。終わります。
  210. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  まず、きょうは日産問題について取り上げたいと思うわけですけれども、今回の基本法改正につきまして、私たちは、現行法の格差の是正や不利の補正、従業員の地位の向上とか輸入の規制という文言が削除されまして、創業に特化するんじゃないか、こういう懸念を表明してまいりました。  この懸念というのは私たちだけが申し上げているわけではなくて、多くの中小業者、従来保守的とさえ思われるような団体の皆さんと懇談をいたしましたときにも、そういう懸念が率直に出されてまいりました。  大臣は、この間の議論の中で、決して既存中小企業に対する施策は変更はしない、むしろ、心配し過ぎだ、そういうふうな御答弁をしてこられたと思います。  私たちは、現行中小企業に対する施策、決して十分ではないというふうにも思っている立場でございますが、きょうは、日産の下請問題を通して今回の基本法改正問題について考えてみたいと思います。  大臣、一〇・一八ショックという言葉を御存じでしょうか。これは、私、地元が京都なんですけれども、日産車体の労働者から直接伺った言葉でございます。私も率直に言ってそこまで思っているのかというふうに受けとめた言葉でございます。もちろん、日本共産党は全国で日産問題の調査を今行っているところでございますけれども、私は京都の例を挙げて全国的な問題についても御質問をしていきたいというふうに思っているわけです。  十月二十五日に、私は宇治市の商工会議所、地元開の商店街、ハローワークなどにも行きまして、日産車体の労働者にも会ってまいりました。この日産車体京都工場といいますのは、宇治市で三十年の歴史を持つ代表的な大企業でございます。しかし、どこに行っても一〇・一八ショック、いわゆる日産ショックで呆然というような状態でございました。  日産自動車のいわゆるリバイバルプランというのは、もう皆さん先刻御承知でございますけれども、少し御紹介をさせていただきますと、この大リストラ計画というのは、人員削減は十四万八千人を十二万七千人に行う、国内は一万六千五百人。こういうことで、全体として国の内外で二万一千人の人員削減計画でございます。  また、取引会社の削減はどうかといいますと、部品や資材関係の会社は千百四十五社が六百社以下になる。設備やサービスはどうか。六千九百社が三千四百社以下になる。工場閉鎖はどうか。二〇〇一年の三月には東京の村山工場、京都の日産車体工場、愛知の愛知機械工場、二〇〇二年三月には神奈川、福岡の二つの工場が閉鎖される、合わせて五つの工場閉鎖でございます。購買コストを二〇%削減する、こういう大リストラ計画が発表されたわけでございます。  宇治の京都工場は、具体的に言えば従業員千百人が神奈川の湘南工場というところに配置転換という計画でございます。一年半かけて工場の閉鎖、それからそれによる下請企業の切り捨て、失業率の増大、人口や労働力の減という、地域経済や地元商店街への打撃というのはそれはもう恐ろしいほどのことでございます。  まず最初に、大臣に問題としてお聞きしたいのは、私はそういう計画がどのようなやり方で該当者に伝えられたかという問題なんです。  これは本当に驚くべきことでした。日産車体京都工場では、労働者は昼休みに講堂に集められ、十月十八日、当日でございます、昼休み、口頭で、営業不振のため一千百人残念だけれども湘南工場に行ってほしいと。一枚の紙切れもない、詳しい説明もなかったといいます。  下請業者はどうか。私、直接お訪ねをして聞いてみました、どんな方法で連絡を受けたんですかと。十月十八日、その日の朝に連絡を受けて、午後二時に日産車体の工場に集まってくれ。三十数社が集められた。そして、事実上の工場閉鎖、湘南工場への移転の話を聞かされたというわけです。このときも一片の紙切れも配られずに、口頭でした。下請業者の方が、何の誠意も感じられない説明だったけれども一言意見を言うことはできなかった、口惜しい、こんなふうにおっしゃっていたわけです。  そこで大臣、大臣は中小企業のことに詳しい方だとお聞きしております。こういう問答無用の通告の仕方、これはまさに大企業の優越的地位をかざした行為ではないでしょうか。労働者や下請の将来を一挙に不安に陥れるこうしたやり方、横暴とは思われないでしょうか、まず大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  211. 細田博之

    政務次官(細田博之君) まず、新しい動きがございますので……
  212. 西山登紀子

    西山登紀子君 いや、大臣です。ちょっと待ってください。
  213. 細田博之

    政務次官(細田博之君) ちょっと私から申し上げたいと思います。きょう……
  214. 西山登紀子

    西山登紀子君 いや、要らないですよ。大臣ですよ。だめですよ、それは。
  215. 細田博之

    政務次官(細田博之君) ちょっと、すぐ後でやります。
  216. 西山登紀子

    西山登紀子君 理事の皆さん、ちょっと言ってくださいよ。私が質問したのは、大臣に……
  217. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 指名しますので、その後大臣を指名しますから、お待ちください。
  218. 西山登紀子

    西山登紀子君 おかしいですよ。いや、おかしいです。質問者が……
  219. 細田博之

    政務次官(細田博之君) ちょっと私が言いたいことを言います。きょうの三時半に日産自動車が中間決算を発表しましたので、そのことはきょうの議論のもとになりますので、ちょっと話をさせてください。
  220. 西山登紀子

    西山登紀子君 ちょっと待ってください。  委員長、理事会の合意では、質問者が指名をしている方に答弁をさせるんじゃないんですか。
  221. 細田博之

    政務次官(細田博之君) きょうの三時半に日産自動車がどういう決算発表したかをちょっと、一分でいいですから。大事なことは……
  222. 西山登紀子

    西山登紀子君 聞いてもいないことを言わないでください、時間もったいないですから。
  223. 細田博之

    政務次官(細田博之君) 事実関係で申し上げたいことがあるわけですが、いいですか、日産の中間発表は……
  224. 西山登紀子

    西山登紀子君 聞いていないんですから、いいです。
  225. 細田博之

    政務次官(細田博之君) ああそうですか。
  226. 西山登紀子

    西山登紀子君 私は、問答無用のやり方について大臣の御意見を伺っているんです。
  227. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) それでは、深谷通商産業大臣お願いいたします。
  228. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) まず申し上げますが、別にあなたの返事を回避したわけではございませんで、このたびの国会からは総括政務次官が答弁を行うということが加わったわけでありますから、彼が手を挙げて答弁することも別に格別な問題ではないと私は思います。  いずれにしても、自動車産業をめぐる環境の変化の中で日産自動車が再建計画を策定して、選択と集中による競争力強化を図ろうとしていることについては、これは企業の苦渋の選択だというふうに私どもは思います。通産省としては、個別の経営判断に介入する立場ではございません。  私たちは、選択と集中に伴う雇用や関連下請企業への影響等についてできるだけ対処していくように、日産自動車には強く申し入れております。通産省としては、これによって影響を受ける下請企業あるいはその他もろもろの影響に対して、適時適切な対応策を打つつもりであります。
  229. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、私が聞いているのは一〇・一八ショック、つまり十月十八日に問答無用に関係者にそういう計画を発表する、そのやり方が横暴じゃないかと。その点はどうですか。
  230. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) この日に役員会が開かれて、その役員会の後に通産省にも連絡が入ったのであります。私どもとしても突然でございまして、びっくりいたしました。  しかし、企業にはおのずから企業の方向がございます。その経営の中身まで、対応の中身まで私はコメントする立場ではありません。
  231. 西山登紀子

    西山登紀子君 どこまで聞いてもそのやり方について問題があるというふうには大臣はお答えにならないわけですけれども、実は地元の京都府にも事前には知らされていませんでした。宇治市にも知らされていませんでした。リストラのためには何をやってもいいのか。企業が、先ほど苦渋の選択とおっしゃったんですけれども、苦渋かどうかわからないけれども、そういう選択をしたときに何をやってもいいのかということが今問われていると思います。  宇治市の助役さんにも会いましたけれども、宇治市には事前に何にも知らされない、本当に正確な情報が知りたいんだということで、それこそ苦渋の表情をしていらっしゃったわけでございます。地元開の商店街に行ってみますと、もちろん新聞報道以外わからない、商店が五十二あるけれども、全体としてはこたえる、このままではゴーストタウンになる、こういうふうなお話でございました。  宇治市の中での日産車体の占めている比重というのはどれほどのものかといいますと、宇治市の工業出荷額の約二七%をこの自動車関連産業が占めているということでございます。非常に大きな影響がある。  ハローワークに行ってお伺いいたしましたところ、宇治市の職安管内の雇用保険の被保険者の十分の一が日産関係でございます。下請関連三十四社一千五百名を含めれば、三千名となるということをお聞きいたしました。十九日に日産車体の部長が来て、生首は切りませんと言っていったけれども、持ち家を持っている人が六割もいる、移れるのだろうか、離職者も数百名は出るのではないかとハローワークの所長さんは大変心配をしていらっしゃったわけでございます。  事実、京都南部の有効求人倍率は非常に低うございまして、ことしの八月の有効求人倍率というのは宇治は〇・二四%でございます。京都府全体は〇・四二、全国の〇・四六よりも下回っているわけです。非常に深刻です。再就職というのは非常に深刻だという実態がおわかりいただけると思うわけです。こういう点でもやはり企業の社会的責任を本当に果たしているのかということが厳しく問われなければならないと思います。  さらに私が驚きましたことは、この日産車体というのは、千百人今いらっしゃるわけですけれども、パートとかいろんな方を含めますと千五百人の方が働いていらっしゃる大きな工場でございます。その工場はウイングロードというのが特に売れておりまして、黒字です。職場は二交代で、朝早くから夜は明け方の一時過ぎまで二交代でラインはフル稼働しておりました。十月十八日の直前までフル稼働をしていたんです。ですから、まさか労働者は、一〇・一八ショックという言葉が自然に出てきたのはそういうことも背景にあるわけです。湘南に行けと言われても、娘は大学に行かせたい、家のローンも返さなくちゃいけない、両親の介護もある、こうなりますとどうしても単身赴任をせざるを得なくなる、家族が一緒に住むことができない。本当に悲痛な言葉が次々と出てきたわけでございます。  大臣は大企業の社会的責任を何とお考えでしょうか。私は、大企業はやはり地域経済の繁栄と安定、働く人々の暮らしを守るという点で大企業の責任を果たさなければならないと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  232. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 日産自動車の経営環境その他もろもろがあっての苦渋の選択だとは思いますが、それに伴う下請事業者への影響あるいはリストラに遭う人々の影響等を考えますと、それに対して会社は全力を挙げて取り組むというのは当然のことであります。それは社会的な責任があるという意味だと私は思っております。
  233. 西山登紀子

    西山登紀子君 その場合、黒字で非常に調子よくいっていた、それから宇治市の中でも非常に大きな経済的なシェアも持っているというふうな企業が、一夜にして向こうに移りますよということについては、やはりこれは企業としては横暴だ、見直せというふうに大臣の口からぜひ言っていただかないと、これは大臣の社会的責任ということを果たさないことになるのじゃないかというふうに思うわけですね。  それで、これは私たちだけが言っているのじゃなくて、亀井さんもこのリストラ問題についてはいろいろ意見も言っていらっしゃるし、財界筋からも反対の意見がいろいろ出ている。もちろん労働組合としては、連合の方も含めて、いろいろ撤回というふうなところで闘いが盛り上がろうとしているわけでございます。  そこで、具体的な問題でお伺いをしたいと思うわけですけれども、大臣は雇用とか中小企業に目配りをしているんだと、日産の問題でも、先般、衆議院の御答弁で言われたわけですけれども、具体的にどのような目配りをされているでしょうか。
  234. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 例えば、このたびの法案に関係して申し上げれば、中小企業基本法といういわば中小企業立場についての発想、判断、あるいは憲法と言っていいでしょうか、そういうものに対する新しい時代にふさわしい中身を用意したつもりでございます。  それから、これから出されます法案につきましては、それを具体的な形で実践する、いわば中小企業が多面的にきめ細かい対応をする諸施策が盛り込まれておりまして、そういう意味で目配りを持って進んでいきたいと思っております。
  235. 西山登紀子

    西山登紀子君 ちょっと私の質問が具体的でなかったかと思います。  この日産のリストラの問題について、中小企業を守るという意味で、下請を守るという意味でどのような目配りをされているのかということです。
  236. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 先ほどもちょっと触れましたが、自動車産業をめぐる環境の変化の中で、日産自動車が再建計画を策定して、選択と集中によって競争力を強化して生き延びていく、これは中長期的に日本経済を見た場合にそれは一つの苦渋の選択だというふうに私は理解をせざるを得ません。そして、選択と集中に伴う雇用や関連下請企業への影響等についてはできるだけ対処するようにと、日産自動車に私どもから申し入れをいたしております。  また、日産の再建計画は二〇〇二年までに実施されるということでございますから、今後、日産は計画実施のための具体的な方策について検討を進めるものと思います。  私どもといたしましては、まず日産に対して工場閉鎖の対象となる工場の地元地方公共団体との連絡、情報交換体制の整備等についても要請をいたしています。これに加えて、地元の商工会議所、商工会において下請、地元中小企業に対する相談窓口を設けるなどその対応に万全を期しております。  東京でも、武蔵村山の市長さんがおいでになりまして、これから起こってくる下請関連のいろいろな企業に対する施策対応できるセーフティーネットとしての役割を十分に果たすつもりであるので、何なりと申し入れてくれということを申し上げている次第であります。
  237. 西山登紀子

    西山登紀子君 下請企業が一体どうなるかということなんですけれども、これはいろいろ私も直接日産の下請企業の方にお聞きしたんですけれども、例えば、金属工業ですが、六十名いる今の従業員のうち四十名は人員整理しなきゃならないだろう、私自身もやめるつもりだということで、涙ながらの話をしてくださった方がございました。  また、ある鉄工業者の方は、社長はいつ会社を閉めるかに頭がもういっていて、従業員は五人だけれども、四十歳から五十歳代までで学校に行っている子供を抱えている、中退金は積み立てているけれどもそれ以外何も出せないだろう、十一月の日程表は空白だらけだ、こういうふうに非常に暗い思いでいらっしゃるわけでございます。  関係者のどなたに聞いても、やっぱり住みなれた地域で仕事もしたい、営業も続けたい、こう願っているわけです。私は、これは決してわがままな要望ではないと思います。  私は政治家を志したときに、家族色の政治というものを信条としておりまして、家族がせめて夕食ぐらいは一緒に食べられるような、そういう暮らしよい政治をつくりたいというふうに願ってまいりました。ところが、今のようなこの企業の、苦渋の選択とおっしゃるけれども、これはやっぱり日産がルノーと合併をいたしまして海外での競争力をつけて海外に進出していくという、私は企業の身勝手だというふうに思います。  一方、犠牲になるこういう人たちの願いをどうするかという点でございます。撤回を求めるべきだと考えますけれども、少しでも行政として現行法のもとで何かできることはないかということで、私は少し勉強させていただいたわけですけれども、先ほど少し出ましたが下請中小企業振興法、こういう法律があるんですね。これは、現行基本法の後でできた法律で、昭和四十五年、一九七〇年に下請中小企業振興法というのができているということでございます。  そこで、この具体的な指導の中身についてですが、第四条で、「主務大臣は、下請中小企業の振興を図るため必要があると認めるときは、」「親事業者に対し、振興基準に定める事項について指導及び助言を行なうものとする。」という項目がございます。下請振興法の第四条でございます。大臣は「指導及び助言を行なうものとする。」となっているわけでございます。  そこで、実はこの振興法で何かできないかということなんでございますけれども、日産の下請業者の方の具体的なお話を聞きますと、今後の取引について今もって具体的な話はないんだと。京都では京都総評という労働組合がありまして、対策本部をつくって、工場閉鎖反対、地域経済を守るために日産の下請業者に労働組合が業者の聞き取り調査をやって、頑張ろうということをやっていらっしゃるわけですけれども、その中で、日産から情報がないので教えてほしいというような業者さんがいたわけです。多くの場合、情報は新聞しかないということをお聞きいたしました。  そこで、大臣に提案なんですけれども、下請中小企業振興法の第三条第一項の規定に振興基準をつくらなきゃいけないというのがございます。その振興基準、私もちょっと勉強させていただきましたけれども、この「振興基準」の中に、第6の2)というところがあります。「最近の経済環境の変化に伴う留意点」というところの(1)の②というところに、「親事業者は、海外進出並びに事業所の集約化等に伴う移転、閉鎖及び内製化等の合理化について下請事業者に情報を提供しつつ、下請事業者が行う製品多角化及び新規親事業者の開拓等の対応に対して、支援をするものとする。」というふうに、情報の提供を逐次行わなければいけないというふうな項目があるんです。  これを親事業者にぜひ守らせていただきたい。大臣、どうでしょうか。大臣。
  238. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 事実関係の説明をまず求めます。
  239. 細田博之

    政務次官(細田博之君) 事前通告は政府参考人ですから……
  240. 西山登紀子

    西山登紀子君 いや、それはいい、後で聞きますよ。長官にも後で聞きますから、今は時間がないから、大臣だけでいいです。情報。
  241. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 長官、簡単に説明してください。
  242. 岩田満泰

    政府参考人(岩田満泰君) 御指摘のような趣旨の規定が下請中小企業振興法及び同振興基準の中にございます。  これから日産のこの計画につきましては、具体的な対策内容が決定をされると承知いたしております。これからのプロセスにおいて、先ほど大臣から御答弁いたしましたように、下請中小企業者の問題、労働者の問題等々を含めて、そうした配慮のもとに具体的な計画が策定され、またこのガイドラインにも従いながら対応していただくということを期待いたしておりまして、私ども、そういう意味で、既に下請企業に対する対応あるいは配慮といったようなものについて一般的な要請をいたしておるところでございます。
  243. 西山登紀子

    西山登紀子君 振興基準に基づいて親企業は下請事業者に必要な情報を逐次提供しなさいということについて、大臣、親企業の日産に守らせていただけますね。
  244. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 具体的にこの下請中小企業振興法四条に基づく指導を今行っているわけじゃありませんが、日産自動車に対しましては、関連の下請企業等への影響についてできるだけ対処するようにと強く申し入れておりますから、そういう意味では、日産自動車は適切に対応しなければならないし、するであろうと思います。
  245. 西山登紀子

    西山登紀子君 するであろうということでなくて、大臣がきちっと指導してくださるかということ。
  246. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 日産自動車に対しましてそのような指導はいたしております。
  247. 西山登紀子

    西山登紀子君 さらに、仕事のあっせんということについてお伺いをしたいと思います。  先ほどの振興基準の中には、親事業者は、新規親事業の開拓等、下請事業者対応を図ることに対して、下請事業者の要請に応じ積極的支援を行うものとするというふうにあるわけで、私はこの点も非常に重要な点だろうと思います。  大臣は御存じだと思いますけれども、自動車産業の関連業者というのは、その系列で特化したしごく限られた製品をつくっているわけでございますので、ほかの自動車会社と取引しようと思うと、違う設備を新たに設備投資してつくらないと転換ができないということが現実でございます。  ですから、日産車体の下請の方にお聞きいたしますと、その設備投資で四千万円の借金をもう抱えてしまった、一年半のうちに方向転換しなきゃいけないので今本当に困っていると。これは決して大げさじゃなくて、首をくくるしかないなというふうに言われて、聞いている私も本当に茫然としたわけですけれども、そういう状態です。  また、ある部品メーカーは、数年に一回のモデルチェンジのたびに設備投資をして、今は蓄えがない、だからもうこれ以上新しい設備投資などできないと。この方も、死ぬしかないと、それぐらい深刻な状態に置かれているわけでございます。  日産のために借金をしてでも尽くしてきた下請企業に対して、来年からは湘南に行きますよというだけで切り捨てていっていいものか。私は、まさに血も涙もない仕打ちだな、リストラのためならば、あるいは大企業の生き残りのためならば何をやってもいいのかということが今大きな社会的な問題になっているのではないかと思います。  下請振興法の振興基準、また引用いたしますが、第6の(2にこういう項目もございます。「経済情勢の急激な変化に伴う下請事業者への配慮」、「親事業者は、短期間における経済情勢の急激な変化により、自らが受ける影響を下請事業者に不当に転嫁しないよう努めるものとする。」、こういう振興基準もございます。  取引の停止についても、相当の猶予期間をもって予告しなさいとか、影響を与えないように配慮しなさいとか、そういう取引停止の予告というのも第2項の6)というところに振興基準でちゃんと明記がされております。  大臣、このあっせんあるいは取引の停止に対する配慮、それからいろんな経済情勢の不利を自分がかぶって下請に負わさないようにというようなこの振興基準は、対象は二次、三次の下請も含むんですよね、これは通産省の御説明では。ですから、こういう点で、一次、二次、三次に向けても大臣がこの下請振興法の基準に基づいて現行法の中でもぜひ指導と援助を行うべきだと思いますけれども、大臣、いかがですか。
  248. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 下請中小企業振興法というのは、下請中小企業が自主的に事業を運営し、能力を有効に発揮できるようにその振興を図ることを目的としています。そして、下請企業の新たな受注先の開拓努力を支援するために下請取引のあっせん等を行っています。  今、委員御指摘のように、同法の規定では、振興基準で、一は、親事業者は取引を停止または大幅に減少しようとする場合に、相当の猶予期間を持って予告すること、二に、親事業者は海外進出、事業所の集約化、製品の内製化等の合理化について下請事業者に対する情報提供、今お話がありましたが、対応努力に対する支援を行うこと等を決めております。この基準を踏まえながら当事者間で真摯な協議が進められていくように期待をしております。
  249. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、第四条では、大臣は指導、助言を行うこととするとなっているので、期待じゃなくてぜひ御指導をよろしくお願いします。
  250. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) そのような基準を踏まえて当事者間で真摯な協議をするということが大前提でございます。それが行われない場合には、あなたの御指摘のような対応を図ることになります。
  251. 西山登紀子

    西山登紀子君 大臣、今まで私がるる言ってきました一〇・一八ショック、つまり問答無用ですね。その日のうちにこうだ、もう企業閉鎖だ、こういう態度をとっている親企業に対して、下請の人たちがまともに話ができるか。物が言えないんですよ。だから、私は大臣に、せめて現行法でもできるこのことについての指導と助言をするべきじゃないかと言っているんですよ。それをやらなければ、そんなこともやらなければ、中小企業国会と本当に言えるのでしょうか。
  252. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 御指摘でございますが、日産は再建計画を発表したという段階であって、今現在そのような協議がどんどん進んでいるという状態ではありません。だから、私たちはそれを見守りながら適正な対応をしていくし、また一般的に言えば通産省ができるセーフティーネットを生かしていくということであります。
  253. 西山登紀子

    西山登紀子君 事態を直視していただきたいのは、一カ月たってもこれからの取引についての情報は本当に何もない、こういうことを言っていらっしゃるんですね。その点をきちっと指導、助言していくということで要請しておきたいと思います。  さらに、これは本当に実効を上げようと思えば、やっぱり体制が必要でございます。本当に日産のこの計画というのもひどい計画でございまして、コストは二割カットするだとか日産の部品を一つの会社に特化していく。ほかに力のない中小企業というのは倒産するか生き残りをかけて骨身を削るコストダウンをするしか道がない。しかし、この不況の中で二割もコストダウンできる中小企業はあるでしょうか。こういうことで言えば、やっぱり日産のこのリバイバルプランというのは、日産だけは再生するけれども多くの中小企業再生はできない、切り捨てていく、こういう優越的地位の乱用のおそれというのは十分あるわけです。  ですから、行政が現行法でできることとして、下請を守るために、下請検査官が今極めて少ない六十三人ですか、いるというふうに聞いているんですけれども、大臣、私はこの下請検査官の増員、それからさらに振興法での実を上げるためにも、こうした人の力もかりて、村山市や宇治市などリストラの影響を受ける地域に監視、監督、支援の体制をとるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  254. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 通告ではいろいろ政府参考人とか書いてあったんですが、全部私の御質問でございますから私が答弁させていただきます。  下請代金検査官制度は、下請事業者からトラブルについての申し出があった場合に、下請取引の性格にかんがみ、行政が積極的に親事業者等から取引の状況を聴取し、必要に応じて立入検査等を行うことを目的に五十二年から導入された制度でございます。現在は、その検査官の数は、中小企業庁では本省と地方通産局を合わせて四十五人ということになっております。うち、三十四人は下請代金検査官としての本務発令を受けております。  この制度の実績については、平成十年度について申し上げれば、中小企業庁で三万七千の親事業者すべてに対する書面調査等及び約二千五百件の立入検査等を行い、千六百件について所要の改善を指導してまいったところでございます。
  255. 西山登紀子

    西山登紀子君 私が聞いておりますのは、もちろんそういう実態も答弁いただいても結構なんですけれども、今の日産の一〇・一八ショックを受けている下請の皆さんのそれこそ困難に置かれている現状、つまり親企業の優越的地位によって本当に仕事がなくなる、それこそ骨身を削るコストダウンを強いられる、こういうおそれが十分にある中で、下請検査官をふやすべきじゃないか、あるいは下請振興法の実を上げるために地元の村山市や宇治市なんかに通産省がそういう職員を配置していただいて監視や監督の指導の体制をとれば、社会的影響は非常に大きいし、また現地の皆さんを励ますことに大いになると思うんです。  ですから、大臣にはぜひそういう政策的な方向についての御決断をお伺いしたいと思います。
  256. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) さっき細田総括政務次官が、きょうの三時に発表した日産自動車の決算発表が大変関連があるものですから手を挙げて申し上げようとしたのですが、結構ですということでありましたが、その中のポイントの幾つかを見ると、例えばリバイバルプラン実施のための四百六十六億円とか、いろいろにこれからのプランを発表しているようであります。恐らく、下請に関連することやらあるいはリストラに関連すること等について積極的に日産自動車が当事者同士で話を進めていくに違いないと私は思うんです。  そういう場合に、それらの状況を見守りながら、通産大臣として、あるいは通産省として言うべきことがあればきちんと言っていこう、そう思っています。
  257. 西山登紀子

    西山登紀子君 幾ら聞いても、監視体制、それから実際現場でトラブルが起こるおそれのある、ショックで茫然となっている人たちを励ますための、そういう振興法の実を上げるための特別の体制、例えば昨年の末には特別保証で緊急体制をわっという形でとりましたよね。そういうふうな今事態じゃないかと思うんです。もちろん、日産のリストラだけじゃありません、いろんな大企業がやっているわけですが、しかし下請の実情というのは本当にすさまじいものでございます。  そういうことに昨年のああいう緊急体制のような体制を、下請検査官の皆さんの力もかり、また増員もするようにしてやっていただけないでしょうか。やるべきじゃないかということに対する大臣の御決意を。
  258. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 御質問の趣旨が非常に難しいのは、今までも何回も申し上げてきたのでありますけれども、日産が再建計画を立てて、そしてその社員と下請企業とのきちっと話し合いをするというこれからの作業でございまして、その前に検査官を派遣して監視をするというのはちょっと適切ではないと私は思いますが。
  259. 西山登紀子

    西山登紀子君 計画そのものに関連下請企業を半分にするだとか、コストは減らせよとかいうふうな計画が盛り込まれているわけですから、そういうもとで下請の皆さんが本当にこれからどうなるのか。情報も来ないわ、仕事もあっせんしてくれと口にも出せないわ、そういう状況になるおそれがあるわけだから、そこを見越して先にきちっとした体制をとるべきだということを申し上げているわけですけれども、そういうことすらやっていただけない、やろうとおっしゃらない。  最後に、大臣にお伺いいたしますけれども、日産というのは産業活力再生法の前の法律であります事業革新法、それの認定をずっと受けてきた大企業でございます。直前、九月二十七日にも事業革新計画の変更の承認ということで承認がされております。産業再生法の支援もするやに伺っているわけですけれども、私は、中央公論の十二月号に梶原一明さんという経営評論家が書いているものを読ませていただきましたが、こういう意見もございます。  「ルノーの持つ技術は世界的にも三流である。それに八割がヨーロッパ市場に依存している。ルノーの将来性はまっくらだったのである。しかも三年前には大赤字を出していた。」、「そこでなけなしの手許資金と旧国営化時代の金融資産の売却で半分近い資金をひねり出した。残りは現在も政府出資四四%の準国営企業の信頼により借り入れ金でまかなって日産買収資金を調達した。」、「ゴーン氏が日産でやるべき至上命題は、第一に日産で利益をあげて、ルノー自体の借金を返済することだ。それには新しい設備投資を控え、償却の進んだ設備をフル活用することなのだ。そのうえ稼働率を上げる。余剰人員を削減する。その間に日産の技術をルノーに吸収する。」、「弱者連合の日産ルノーの未来展望は不透明だ。 数年先にもう一度日産ルノーは強者と提携という羽目に陥る公算は大きい。」。  つまり、今度のリバイバルプランはうまくいかないというような御指摘をされているわけでございます。  日本の自動車産業というのは、非常に手厚い国の保護育成のもと、しかもすそ野を広く中小企業に支えられて今日の地位を築いたものでございます。日産だけではありませんけれども日本の自動車産業の今日があるのは、優秀な日本の中小零細企業の物づくりの技術と、中小業者と労働者の献身的な努力によるものではないかと思うわけです。結局、こういうやり方を産業再生法で支援するというようなことになれば、私は将来に禍根を残すというふうに思います。  最後に大臣の御見解を伺って、質問を終わります。
  260. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 梶原先生が書かれた内容については、梶原先生のお考えでありましょうし、梶原さんの内容でありましょうが、私はその日産のただいまのような話について通産大臣として申し述べる立場ではありません。  産業再生法に基づく申請については、まだ出ておりません。
  261. 西山登紀子

    西山登紀子君 終わります。
  262. 三重野栄子

    三重野栄子君 社民党の三重野栄子でございます。  中小企業金融公庫の延滞債権の状況から質問させていただきたいと思います。  中小企業金融公庫は、貸し渋り対策を担う政府系金融機関の中心として大変御苦労、御活躍をしていただいておりますが、事業の性格にかんがみますと、他の政府系金融機関と比べて延滞債権額が多いことも当然かと思うのでございます。しかし、中小企業金融公庫も郵便貯金、年金等を原資とする財投機関の一つでありますから、いわゆる償還確実性の原則と整合性を保たねばならないと思います。  中小企業金融公庫の貸付金残高に占める延滞債権額の割合を計算してみますと、平成八年度末が二・七八%、平成九年度末が三・〇二%、平成十年度末が三・五二%と、年々増加傾向にあります。しかも、かなり高い水準と言えるのではないでしょうか。  こうした中小企業金融公庫の財務状況につきましてどのような感想をお持ちでしょうか。さらに、中小企業金融公庫が担うべき役割についてどのような将来像をお持ちでしょうか、お尋ねいたします。大臣でも政務次官でもどちらでもいいです。
  263. 岩田満泰

    政府参考人(岩田満泰君) 中小企業金融公庫の延滞債権の状況についてでございますが、ただいま先生おっしゃいましたように、ここ三年ぐらいの間に延滞率は徐々に上昇してきておりますが、他の政府系金融機関と比較してどうかということでありますれば、特段の大きな差があるという状況にはないというふうに考えております。
  264. 三重野栄子

    三重野栄子君 大臣にはお願いしておりませんでしたけれども、今の御答弁でございますが、今後の中小企業金融公庫が担うべき役割についてどのように将来像をお持ちでございましょうか、お尋ねします。
  265. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 民間金融機関の企業に対する金融支援というのは、これはもう営業上当然のことであります。そして、多くをそれに期待しているのでございますが、例えば昨年のような金融改革のとき、不良債権が非常にたまってしまった金融機関が異常なぐらいの貸し渋りを行ったような場合には、これは臨機応変に国が保証協会の対応であのような処理をしたというように、いつも気を配っていかなければならないと思っています。つまり、民間の金融機関の補完的な役割をきちっとするというのが政府系ではないかと考えます。
  266. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。  次に、中小企業向け貸し出しにつきましてお尋ねをいたします。  平成十一年三月に公的資金の注入を受けた十五行は、中小企業向け貸し出しを平成十二年三月までに前年比三兆三百二十一億円増加することを経営健全化計画の中で公約しております。  今月十九日の日経新聞によりますと、公的資金を受けた大手銀行の中小企業向け貸し出しにつきまして、通期目標と上期の速報値を比較いたしますと、住友銀行が下期に二千五百億円程度を上積みする必要があるのを初めといたしまして、三和銀行やさくら銀行も千五百億円から二千億円ふやす必要がある、また富士銀行は六千億円程度、第一勧業銀行は五百億円程度目標値と開きがあり、公約達成は流動的であると日経は述べております。  こうした状況を踏まえまして、経営健全化計画の着実な履行を確保するためにもより厳しいチェックが再生委員会に求められていると考えるわけでございます。  そこでお伺いをいたします。  中小企業向け貸し出しに関して十五行が掲げた公約の達成についてどのような見通しをお持ちでしょうか。さらに、公約達成に向け今後どのような努力をなされているのでしょうか。御決意を伺います。
  267. 森昭治

    政府参考人(森昭治君) お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、ことしの三月に大手十五行に資本注入する際には、経営健全化計画を提出させまして、今後半年ごとにその履行状況報告を求め、それを公表することによりまして、いわばパブリックプレッシャーを背景として金融機関の自己規制を求めて計画の的確な履行の確保を図っていく、こういう仕組みをとった次第でございます。  その際、信用供与円滑化の観点から、特に中小企業向け貸し出しにつきましては十二年三月期、すなわち来年三月期のいわば残高目標を出していただきまして、そしてその残高目標に向けて最大限努力することを約束していただいたわけでございます。  先生御承知のとおりかと思いますけれども、ことしの三月期、最初に出していただいた経営健全化計画のときはまだことしの三月期の決算が出る前でございましたので見込み値でございました。それをことしの六月に決算が出てから実績値に変えたわけでございますけれども、その際にも、先生御指摘のとおり、三兆円ほど十五行合計でこの一年間で中小企業向け貸し出しを伸ばす目標がさらに下振れしているという状況が起こったわけでございます。その際に、当委員会といたしましては、十五行に対してさらなる貸し出しの努力を慫慂した次第でございます。  先生御指摘の点は、この九月期の中間決算で果たして十五行の中小企業向け貸し出しがどうなっておるかという御指摘かと思うわけでございますけれども、十五行につきましては、ちょうど先週の金曜日で約半分が中間決算発表をし、本日十五行全部中間決算の発表が終わることになっております。当委員会としては、現在ヒアリング中でございまして、計数が確定し次第これを公表いたしまして、もしその計数次第で、いわば目標値は来年三月期でございましてこの九月の目標値というのはないわけでございますけれども、しかし三月の目標値をにらんで進捗度の悪い注入行があった場合には、さらなる努力の慫慂を懸命にいたしていきたいと思っております。
  268. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変詳しく御報告いただきましてありがとうございました。九月期の目標はなかったんですけれども、三月に向けましてさらなる御検討をお願いいたします。  次に、資金調達の問題につきまして伺います。  中小企業に対する金融という観点からいたしますと、今月十一日に東証がマザーズを開設しました。さらに、平成十二年末にソフトバンクがナスダック・ジャパン、これはアメリカの関係ということですが、開設する予定があるそうです。  中小企業が直接金融によって資金調達を行うためのインフラの整備が急速に進んでいるところであります。こうした動きに対する評価及び通産省としてこのような動きに対してどのように支援をされていくのでしょうか、大臣のお考えをお伺いいたします。
  269. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) ベンチャー企業中小企業が資金を調達する上で多くの投資家が参加するということは、効率的な市場を開発するという意味においても非常に大事なことだろうというふうに思います。  今月、東京証券取引所に設立されたマザーズ、また二〇〇〇年の年末を目途にして設立が予定されているナスダック・ジャパンといった新たな証券市場の設立は、店頭市場等既存の市場との競争を通して効率的な市場の整備促進すると思いますので、私どもとしては大いに結構なことだと理解しています。
  270. 三重野栄子

    三重野栄子君 それでは、最後に一点伺います。  情報通信産業の円滑な発展に資するために、光ファイバー網の敷設の現状と見通しについてでございます。  マザーズへの上場を申請いたしました二社がいずれもインターネット関連のベンチャー企業であることが象徴していますとおり、二十一世紀を担う産業はやはり情報通信であると考えます。情報通信だけではなくて、きょうの質問の中にも、いろんな情報の交換の中でインターネットが活用されておるようでございますし、私もインターネットをちょっとばかりやっているんですけれども、やはりこの情報通信がこれからの課題、大きく担っておりますが、円滑な発展に資する意味でも、そのインフラであります光ファイバー網を全国に敷設する必要があると思っています。  平成十年度末現在、光ファイバー網が整備されているのは全国で二七%というふうに調べておるんですけれども、どのようになっているでしょうか、また平成十七年という全国整備の完了目標は果たして達成可能でしょうか、お伺いいたします。
  271. 天野定功

    政府参考人(天野定功君) お答え申し上げます。  光ファイバーがこれからの情報通信社会におきまして大変重要な役割を担うということは私ども承知しておりますが、現在、光ファイバー網につきましては、これまで民間主体の原則のもとに整備を進めてきておりまして、幹線系のネットワークは既に構築済みでございます。また、加入者系光ファイバー網につきましても、民間主体によりまして二〇〇五年の全国整備完了を目指して取り組んでいるところでございます。  郵政省としましては、民間事業者の投資負担軽減のための財政上や税制上の各種支援措置を講じてきたこともありまして、昨年度まで、先ほど先生御指摘のとおり、平均になりますけれども全国に約二七%の光カバーとなっているわけでありまして、順調に整備が進捗しているものと認識しております。  これは当初二〇一〇年を目標にしておりましたが、現在では二〇〇五年に前倒しして整備するということで、私どもは今順調に整備が進んできているというふうに理解いたしております。
  272. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変順調にということでございましたけれども、今二七%しかないわけでございまして、何か達成に不可能な問題、障害になるようなことは全くございませんでしょうか。
  273. 天野定功

    政府参考人(天野定功君) この光ファイバーの整備につきましては、全国平均が二七%でございますから、例えば政令指定都市あるいは県庁所在地級のビジネスエリアでは既にもう九八年度末で九〇%を超えているような整備状況でございます。確かに、地方の方で光ファイバーの高速ニーズの低いところでは需要が少ないということで整備はおくれがちでございますが、私どもとしましては、引き続きそういった都市も含めまして、さらに整備がおくれるようであればこの支援措置をより強固にしていき、ぜひともこの目標の年までに全国整備を達したいというふうに考えております。
  274. 三重野栄子

    三重野栄子君 どうもありがとうございました。光ファイバーに対するみんなの期待といいましょうか、大変大きいものでございますので、予定どおり、できれば前倒しでできるぐらいに御検討されることをお願いいたしまして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  275. 島袋宗康

    島袋宗康君 しんがりを務めることになりました二院クラブの島袋宗康でございます。  まず最初に、中小企業政策基本理念企業間における生産性等の諸格差是正から、独立した中小企業の多様で活力ある成長発展へと転換することになった社会的、経済的な背景はどういうことか、お尋ねいたします。
  276. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 既に何回も申し上げたのでありますが、三十年代のこの基本法ができたときの状況と今日的な状況は大きく変化している。私は、単なる大企業へ近づけるといったような格差是正という時代は終わりまして、中小企業が持っている活力をそれぞれに発揮させていただくような施策というのがこれから大事ではないか、こう思うわけであります。  我が国経済の成熟化が進展して大企業セクターの雇用数は減少する傾向にありますが、こうした中で、新たな産業を生み出して雇用を創出する主役として中小企業に期待するという声も高まっているわけでありますから、それらを踏まえて、我が国経済のかぎを握るのは中小企業だ、その中小企業を多面的にとらえて四つに組んで努力をしていこう、こういう考え方になったわけであります。
  277. 島袋宗康

    島袋宗康君 過去三十年間を振り返ってみますと、中小企業対策費の予算総額における比率が昭和四十四年から昭和五十四年までは〇・六%台であったわけであります。ところが、昭和五十五年度を境に〇・五%、〇・四%、〇・三%台へと次第に下がっていっております。平成二年度以降の十年間は実に〇・二九%から〇・二四%、現在は〇・二%と非常に激しく落ち込んでいる推移が見られるわけであります。  そこで、この比率の低下した原因は何か、また平成十年間の〇・二%台という低率が続いているのはどういうことなのか、お伺いいたします。
  278. 細田博之

    政務次官(細田博之君) 大変、当初予算ということで誤解の生ずるような数字を事務当局が用意するものですから、私もちょっと事務方を督励しまして、中小企業予算というのは年末に補正を行い、今回も補正を行っています。したがって、仕上がりの姿は大いに異なるのであります。  例えば、これは本邦初公開に近い数字なんですが、平成五年は補正を合わせて一般会計の数字は四千六十億あるんですよ。そして、不況が高まるたびにまたふえてまいるのでございますが、それでまた一度ちょっと減りましたが、通年ベースになりますが、七年度には六千四百億、そして八年度、九年度はちょっと前の支出が少したまっていたとか景気が少し上向いたということでございますが、平成十年度は何と一兆円を超える中小企業予算を組んでいるんです、補正を込みにして。  それでは今年度はどうかといいますと、今回の二次補正まで入れますと、まだ概算いろいろありますけれども、間もなく提出しようとしておりますが、八千七百億。つまり、従来の補正は年末補正ということで常にやっておりますが、大体平成の最初あるいは昭和の最後は補正を合わせても二千億台のことでございました。それを形式的に言うと千九百億、千八百億というふうにずっといわゆるシーリングで横ばいだったり微減だったりする一般の通常予算だけ申しておりますが、補正を入れると四千億、六千億、一兆、そしてことしが八千七百億というふうに、極めて大きな一般会計予算がつぎ込まれているということをちょっと御認識もいただきたい。  ただ、その原資になっている対象は保証基金や金融公庫や何かに積むお金だとか保証協会に積むお金を入れておりますので、ちょっとこれは私どももきちっと資料を整備したいと思っております。
  279. 島袋宗康

    島袋宗康君 私は沖縄県の出身でありますけれども、数少ない沖縄の地場産業の一つであります泡盛産業の振興について、御意見がありましたら承りたいと思います。
  280. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 島袋委員の御心配の最大のものは、沖縄の地場産業をきちんと振興させようということであろうというふうに思います。  沖縄には格別の思いがありますし、来年のサミット等でお世話にもなっておりまして、何よりも沖縄で地場産業が育つことが大事なことだと思います。その中に御指摘の泡盛産業というのがありまして、これに対する支援は、地場産業等活性化補助金として、平成十一年度は泡盛の県外市場の拡大と流通ルートの拡大ということで、わずかでございますけれども事業費四百四十八万円のうち補助金を二百二十四万円支出したところであります。そして、泡盛のデパート、スーパー及び酒販店での販売拡大等の販路拡大事業を行ってまいりました。  今後とも、必要によってはこのような措置を通じてお手伝いできたらと思います。
  281. 島袋宗康

    島袋宗康君 特段の配慮をいただけるように、よろしくお願いしたいと思います。  沖縄は、戦後五十四年、復帰後も二十七年続いているわけでありますけれども、第三次振計で五兆円余の公共投資が行われているという実態でありますけれども、依然として国民所得を平均いたしますと本土の七〇・一%。失業率に至っては去年の今ごろでしたら九・二%ありましたけれども、やっと最近景気が少しよくなった関係から、それでも八・四%。本土に比べて常時二倍の失業率があるということをまずおわかりいただければと思っております。  そこで、沖縄の経済自立をどうして図っていくかというふうな点で、二、三年前からずっと議論されました、例えば全島をフリーゾーンにしたらどうかとかいうようなこともありまして、そこはまた農業団体からいろいろ物すごい反対がありまして、全体的なフリーゾーンというものはなかなか難しいんじゃないかというふうなことがありますけれども、しかし沖縄の現実は、二十七年間の米軍支配というものがありまして、琉球政府、琉球立法院、琉球裁判所と三権分立しておりましたし、税関でも琉球税関というようなものがあって、日本から見ればいわゆる一国二制度的な制度がずっとあったわけですから、そういったノウハウはある程度私は持っているんじゃないかというふうに思っているわけです。  ですから、通産省とされまして、そういったフリー・トレード・ゾーンがこれから沖縄に適したものになるかどうか、省の立場から何かございましたらお教えいただきたいというふうに思っています。
  282. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 今ここでお答えを申し上げることはできませんが、過日も沖縄問題に関する閣僚会議を開きまして、沖縄県知事にもおいでをいただいてさまざまな協議をいたしました。  やはり沖縄が自立するためには、沖縄の人がさまざまな知恵を出していただく、御努力いただくことが重要ですが、しかし、置かれている状況ということは十分に踏まえて、私たちはどうやったら沖縄の自立が達成できるか、本当に深い配慮をしていかなければならないと思います。  そういう意味で、本日を機会に、また委員からいろいろな意見が出されれば大いに御相談に乗らせていただきたいと思います。
  283. 島袋宗康

    島袋宗康君 沖縄の経済自立の問題については、県政にとって非常に重要な課題でありますし、県民にとっても大きな願いでありますから、また今後こういう機会を設定していただきまして、ぜひ沖縄の自立の問題についていろいろと議論させていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  284. 陣内孝雄

    委員長陣内孝雄君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後六時一分散会