○
山崎力君
山崎でございます。
私も主に
朝鮮半島情勢について、今回の
調査に関する私なりの受け取り方を申し述べたいと思います。
まず一番最初に私が感じたのは、どなたかの
発言にもあったと思いますが、いわゆる
米議会側、
共和党を
中心とした
議員さんの
発言と、国務省及び国防省のそれぞれの担当者の
発言に温度差があった、微妙な食い違いがあったということでございます。
議会側は
ペリー報告は誤りであるとはっきり申された方もいらっしゃいますし、あるいは国務省側は当事者の
発言ですから当然高く評価する、国防省はその中間でして、まああんなものだろうというような、一言で言えばそういうことで、我々は別の仕事があるんだと、こういうふうな受け取り方を私はいたしました。
特に象徴的だったのは、今回のペリー訪朝のきっかけとも言える不審地下施設、トンネル問題ということでございました。このことに関してしつこく質問したわけです。なぜかといいますと、具体的に言うと寸法なんですけれども、そのことを公にすることができない理由がはっきりしなかったわけです。
日本側にも通知はあったのかもしれませんが、他言無用と。そして、国務省にその問題をただしたところ、朝鮮部長ですか、そのことに関しては言えない、我々を信用してほしいと、こういう言い方であったわけです。なぜなんだということが当然疑問として残りました。
このことに関しては
韓国側にも質問したところ、
金鍾泌総理は、規模的に言って原子力施設をつくるにはあのトンネルの大きさというのは不十分であり小さい、ただし大きなものであると聞いている、ただ、それではなぜそういった施設をつくったのかということに関しては我々も合理的な判断ができないと、こういう返答であったわけです。
そういったことを私なりに推察すると、非常に
北朝鮮側に対して
アメリカが神経を使っているというふうな印象でございました。と申しますのは、もしそういったことが、寸法なり規模なりというものがはっきりした場合、専門家がそれを点検して、その疑問に対して
アメリカ側も十分答えられない、だから言えないのではないだろうかという疑問が払拭できないのであります。仮に、このくらいの大きさであるから原子力施設はできないのだというふうに
説明した場合、原子力の専門家が、いやその寸法でも原子力開発、核開発はできるんだという
意見がもし出れば、今回の
ペリー報告というのはまさに
共和党議員でなくても間違いだと、
アメリカ合衆国
政府外交の根幹を揺るがすことになりかねないということがあるからあえて触れないでいるのではないだろうかと。
逆に言えば、それはそれとして、今の時点ではああいう
報告で
宥和政策をとる方が
北朝鮮、
アメリカ、
韓国並びに
東アジア、我々
日本を含めた北
東アジアの安全にとって、将来にとっていい判断であるという結論が
アメリカの
外交担当者にあったのではなかろうかというふうに私は推察したわけであります。ですから、国防省としてみれば、それはともかく、我々はいざとなれば与えられた任務の遂行にちゅうちょするものは何物もないと、それだけの自信を深めたような
発言があったというふうに私は思いました。
そういった中で、今回のいろいろな一連の
外交交渉を見てみれば、いわゆる北側の瀬戸際
外交と言えるものが
アメリカにとって非常に何というのか、煩わしいものであったことは間違いありません。特に強硬派あるいはタカ派と言われている
アメリカ議会の人たちにとっては、非常に厄介なといいますか、いらいらさせられる問題であったろうと思っております。
ただ、そこのところでの
アメリカ外交、あるいは
韓国側も含めてですけれども、
米韓を含めて、北側が
戦争を本当にやろうというのならば我々はそれにちゅうちょなく対抗する、そのメッセージをいろいろな
外交チャンネルを通じて伝えたんだろうと。ただし、我々が彼らに対してちゅうちょなく武力をやるという決意を持っているということは、逆に、我々から、
米韓側から
戦争は望んでいないんだと。その理由は、まさに先ほどどなたかもおっしゃいましたように、
韓国としてみれば、今のこれだけ発展した、しかも経済危機を何とか乗り切ってもう一回将来に希望の見えてきた時期において、そういった生活を破壊するようなことをみずからやるわけがないと。その辺のところをある程度伝えることに成功したのではないかというふうに私は
理解しております。
そういった意味で、私が非常に重要な
発言と思っておりましたのは、
金鍾泌総理の
発言ですが、いわゆる黄海のカニ合戦というのでしょうか、カニの捕獲をきっかけとした一種の海戦が行われて、そのときに北側の通常兵力の海上兵力のもろさというものはこちらが驚くほどひどいものであったということをおっしゃった後で、我々は北側を追い詰めないと。追い詰めれば窮鼠猫をかむようなことをする
可能性はあるんだと、だから我々としては追い詰めないということをはっきり
日本の方々にもわかっていただきたいという
発言がありました。そういった
状況であろうと思います。
ですから、少なくても
アメリカ、
韓国側は、いわゆる瀬戸際
外交の無法な要求には毅然とした態度で一切応じないが、それ以外のところはできるだけ向こうの立場に立って要求をのんでいくと。そのことが北側の暴発を防ぎ、短期的、中期的には平和の維持につながるという結論を出したのが今回のペリー訪朝の
報告であろうというふうに受けとめております。
それが長期的に見てうまくいくかどうかというのは神のみぞ知るというところなんでしょうが、こればかりは何とも言いようがない。しかし、国力から見て、たしかこれも
金鍾泌総理の
発言だったと思いますが、飛行機の飛んでいるのをある時間帯で
朝鮮半島全体を見ると、
韓国上空はもう無数の飛行機が飛んでいるように見えるのに北側の方は戦闘機を含めてもう数えるほど、一機か二機しかないようなことが多いんだ、それだけ違っているんだという
発言がありましたけれども、そういった中で
韓国側が北側をどう見ているかということがよくわかったと思います。
ただ、これは私自身感じたことですけれども、北も訪問させていただいた人間からすれば、こういった北側の
状況がいつまで続くんであろうかということに対して、おせっかいかもしれませんが、北側の人たちに対して非常な同情を禁じ得ないということが言えると思います。その辺のところが、逆に言えば
韓国側はもう割り切ったんだろうなというふうなのが私の結論でございまして、そうである以上、我々
日本側としてみれば、
韓国あるいは
アメリカの半島情勢に対してみずから進んでどうのこうのと言うことは、私個人の考え方では余りしてもしようがない。むしろ、お手伝いできることがあれば誠実にさせていただきますという態度で北問題については
アメリカや
韓国とつき合っていく方が上策ではないのかなというのが、今回の訪韓あるいは
アメリカを通じての私の朝鮮問題に対する、現半島情勢に対する現時点での結論でございました。
もう一点だけ、
最後につけ加えさせていただければ、やはり軍事的に見れば
韓国というのは、先ほど
月原先生ですかおっしゃられたノドン、テポドンで大騒ぎしている
日本と比べてもう何十年来その脅威下にあったわけで、今さらそれが何発か
可能性が出てきて大騒ぎするということに対して、
韓国からしてみれば何を今さら笑止のさたというような感じを持たれているのではないかと思います。
それと同時に、私が別のルートで聞いたことによると、やはりさはさりながら現在の核はともかくとして、BCと言われている生物化学兵器、こちらの継戦能力に対しての不安感というのは軍事的に見れば
韓国側は極めて深刻に受けとめていて、一般兵器での
戦争であればともかく、そうでなければやはり甚大な被害を
韓国側は受けるという覚悟は、覚悟といいますか、そういうふうなことを現実に持っている。だからこそ、一ひねりでつぶせるのにつぶさないというような感覚は全く持っていないというふうなことを聞いております。事実だろうと思います。
そういった中で、我々としてこれからどうやっていくかということになると、先ほども申し上げたとおり、そのことも含めて協調の中でできる範囲のことを誠実にやっていくということが結果として北
東アジアの平和にもつながるし、大して表面に出なくても
日本ができる最大の貢献ではないだろうかというふうに改めて思ったというのが、私の今回の
調査の結論でございます。
以上であります。