○
参考人(
藤原房子君) それでは、ほかの方の質問時間に食い込むかもしれませんが、お許し願いたいと思います。
それから、
手元に配られております
資料をさっき見ておりましたら、私が「
地方自治」という雑誌に書いた八ページぐらいのエッセーを配るとおっしゃって、私はそれはいいでしょうと申し上げたんですが、入っておりますでしょうか。ちょっと
資料が一部私のがないなと思って今探しておりました。それからもう
一つ、私どもの会で出しております
男女共同参画基本法についての
前文が
一つ、入っておりますか、「
地方自治」の方は入っていますか。
それでは始めさせていただきます。
ただいま
樋口さんのおっしゃいましたことに若干重なると思います。
日本は国際的に見ますと大変異質な国だということをしばしば
外国の方から指摘されます。
外国人が何を言おうと勝手だということかもしれませんけれども、例えば
貿易の
交渉だとかいろいろな
国際会議とかに出ている顔ぶれを見ておりましても、
女性がほとんどいらっしゃらない。例えば、
貿易交渉でも向こうの
通商代表部のトップは
女性であるというようなことなどはもう頻繁にテレビに出てまいりまして、これをもってしても
日本異質論が噴出しかねない
状況にあるということを私はかねがね思っております。
かつて
貿易摩擦が起きましたときに、
日本の生産物の賃金は公正でないと言われたことがございました。それに関連しまして、
日本の生産物がなぜ安いかというときに、壮年男子の極めて長時間労働にたえ得る、そして少数の
人間が集中的に働いてコストを切り下げることが可能な
日本の企業
体質というものがある程度
外国の人にも知られておりまして、これはアンフェアなトレードになるのではないか、問題が出るのではないかと私は薄々思っておりましたけれども、そこまで話は行きませんでした。しかしながら、国際的に見ますと非常に異質であるということはもう申すまでもないことでございます。
戦後五十年
たちまして、
日本において意思
決定に
参画できるはずの
女性は戦後の
教育制度のおかげで層をなして出てきていいはずなのでございますが、実際にはそうなっていないということについてきょうはお話ししたいと思います。
ニュース等で見ますと、
女性の姿が見える場合は通訳かガイドさんかあるいは要人の配偶者の方かというような方が非常に目につくわけでございまして、そういったことを改善することがグローバルスタンダードからいっても必要なことではないかということを思います。
基本的には、私は、
男女共学というのが戦後始まりましたけれども、その中で
女性が
男性と肩を並べて教室で学ぶということ、そのことについてはほとんど違和感を持たなくなってきております。多少の問題は残しておりますけれども、なれるということは相当大きなことだなといつも思っております。それから、
家庭科の
男女共修などでも、男子有名進学校において
女性の教員が
家庭科を教えているという実態も今出ておりまして、そういうことも、なれれば若い人
たちは非常に柔軟に順応していくものだということを感じております。
そこで私が申し上げたいのは、まず一歩踏み出すための前提として、データの集積ということを申し上げたいんです。
国連が一九七〇年から九〇年までの二十年間の
世界の
女性の
状況を調べた「
世界の
女性 一九七〇―一九九〇 ―その実態と統計―」という分厚い
資料集がございまして、本日ここへ持ってきたのはその後から出た新しいものでございますが、その先に出た方の冒頭に「
言葉は政策に影響を与え、そして
世界を変えるには数字が必要である」と書いてありました。ちょっとおかしな
日本文ですけれども、訳文だろうと思いますが、とりあえず
世界を変えるには数字が必要であると。
そこで、
日本はどういう数字を持っているかというと、これは
世界有数の統計生産国だということは知られておりますけれども、
ジェンダー統計がいかにも弱いのでございます。さっき
樋口さんがおっしゃられたとおりだと私も思います。
ジェンダー統計とは何かということなんですけれども、これは問題
状況の把握や改善につながることを認識して策定された統計のことを我々は
ジェンダー統計と呼んでおります。
その種類のものが少ないというのはなぜかというと、統計を設計するときに
女性が
参画していない、あるいは
最初の仮説を立てるときにかなり偏った
意見で、従来型のものでつくられてしまう。どうしても統計は時系列を重視いたしますので、そういった面での改善が非常におくれております。
かつて私が総理府の婦人問題企画推進有識者
会議におりましたときも、そのことを一度議論したことがございました。しかしながら、そのときも農業統計、商業センサス、いろんなものをやっていらっしゃる、総理府の方や何かもいらっしゃって具体的な問題指摘もやったのでございますが、その成果をまとめて印刷したということを聞いておりませんので、ひょっとすると記録だけが残っているかもしれませんが、私は
手元に持っておりません。
でも、いずれにしても、より詳細で問題発見につながる、改善に寄与する統計というのを少なくとも国は準備するべきだと私は思います。
そこで、基礎データの集積がいかに不十分かということを少し具体的にお話ししてみたいと思います。
内閣総理大臣官房
男女共同参画室が毎年お出しになっておりますので
先生方のお
手元にも行っているかもしれませんけれども、「
女性の
政策決定参画状況調べ」、ことしは十一年七月に出ております。これを見ますと、たくさんの
女性たちが
政策決定過程に
参画しているような数字が見られるわけでございます。
選挙の場合はちょっと別で、
統一地方選挙の結果が、先ほど
樋口さんがおっしゃったように六%を超えて、これはもうかつてないふえ方であったということは認められているんですが、実は
地方議員は出にくい、立候補もしにくいということが実態としてございます、時間がないので省略いたしますけれども。
今、
市町村合併が進んでいるというふうに聞いております。これは、
地方分権の推進とともにその受け皿であるところの自治体の規模を大きくしなければならないという基本的な
考え方で合併の話が進んでいるというふうに聞いておりますが、仮にこれがもし合併した場合には、また議員さんの数とかあるいは役職についている自治体の
管理職の
方々の数が減らされるということは明らかなことでございまして、そのことは
行政のコスト削減にはつながるわけで納税者としてはありがたいのですが、それが逆に
女性を締め出すということになりはしないか、そのことはちょっと今案じているところでございます。
そこで、先ほど言いかけたのですが、統計の与える錯覚というものを
一つ具体的な例を挙げて申し上げたいと思います。
これは今の
男女共同参画室のつくった
資料の中にあるのですけれども、職業における
男女の共同
参画、
政策決定への
参画という表に出ておりまして、もしお手持ちであれば三十三ページでございますけれども、これを見ますと、専門的・技術的職業従事者というのは女子は四一・六%いるわけです。これだけを見ますと、専門的・技術的職業についている人が四割を超えている、非常に職業におけるスキルが向上しているんだなというふうに思われるかもしれませんけれども、実は、概して申し上げれば低賃金であり低職位であり余り恵まれない、一言で言えばそういう言い方になるかもしれませんが、そういう職種に
女性の方が集中しているということは残念ながら指摘せざるを得ません。
ですから、この四一・六%という数字だけで話はできない。となりますと、一体
女性はどのようなところにどう位置づけられているのかということを丁寧に見なきゃいけない。それこそまさしく
ジェンダー統計というものの活躍する
場面ではないかと思います。
それから、保健医療従事者もそうですが、七一・九%が
女性でございますけれども、これは言わずと知れたことで、やはりお医者さんは少ないということでございます。
私がもう
一つ御紹介したいと思っていますのは、会社の
管理職というのが管理的職業従事者の中にありまして、会社・団体等の役員というのが一四・二%あるわけです、
女性の
比率が。しかし、会社と申しましても、一部上場企業とか二部上場企業とかそういったところではなくて、中小の商店とか二、三人で経営していらっしゃる零細企業と言われるようなところ、そして株式会社あるいは有限会社になっているようなところ、そういったところの役員の方もやはり会社・団体等の役員でございまして、これは国勢
調査の数字ですからこういったのがはっきり出てこないわけですね。ですから、一部上場企業では一体何%か、ゼロに近いわけでございます。トップはもちろんいらっしゃいません。
それからマスメディア、これは、新聞社においては
日本の
代表的なマスメディアにおいて
女性のトップは一人もいらっしゃいませんし、
管理職も極めて少ないんです。これも
国連の
調査の中に出てまいります。そういったことがありまして、マスメディアのメーンストリームはメンズストリームだということを北京
会議のときにNGOフォーラムで聞きました。まさしくそうでありまして、これはマスメディアだけじゃなくてどこの
世界でもメンズストリームがメーンであるということは事実ではないかと思います。
そこで、マスメディアに言及したついでに記者、編集者の
比率がどれぐらいかというのを、これも今の総理府がまとめました国勢
調査の数字で申し上げますと二六・九%となっています。果たして二六・九%かと、これは過大な印象を与えるのですね。例えば、新聞社の場合は記者は六・五%が
女性ですから、実態で私どもが感じていることと、それから数字として出てきて、
日本も改善されたなとかかなり
女性は元気ですねとか言われたら、これは大変な錯覚ではないかと思っておりまして、その分野でもう少し詳細な
調査が必要ではないかと思っております。
それから、管理的職業従事者のうち学校の場合はどうかといいますと、小学校の先生は六二・二%が
女性、しかし校長先生のうちの一三・八%が
女性でありますし、教頭は二二・五%。だから、職位が上がっていくにつれて
女性の
比率が大きく下がります。中学の場合は、ちなみに教員の
方々は四〇・五%、校長は二・九%でございます。高等学校は、
先生方は二四・七%
女性でいらっしゃいますが、校長先生は、これはゼロという数字が出ております。校長先生は時々おいでになって、やめられたりいたしますので、
調査した時点での文部省の学校基本
調査におきましては、この時点では校長ゼロとなっております。それから、大学教員も一二・三%でありますが、学長が六・二%であります。教授の場合は七%、助教授が一一・九%。では、そのほかの
女性はどこにいらっしゃるのかというと、主に講師とか助手とか、比較的給料も高くない、それから職位も低い人
たちがいらっしゃるというようなことです。
こういうことは、例を挙げれば切りがないので、これぐらいで先に進めないと時間がだんだんなくなってまいりますので、もう
一つ別の団体活動における数値というのを申し上げます。
これは農協でしばしば問題になりますんですが、農業協同組合の中の
女性の組合員数は一三・五%です。なぜ少ないかといいますと、これは、組合員になるためには出資しなければなりません。夫婦で働いているんだから二人分出資したらということを私
たちは言うんですけれども、しかし、農業の世帯のやりくりからいうと、とても二人分は出せない、だから夫だけが入る。しかし、夫は役場へ勤めていて、妻だけが日常の農業をずっと担っている、基幹的労働力は
女性ですというような
家庭もあるわけです。そうしますと、組合員数が一三・五%というふうに、農業従事者の六割が
女性と言われながらこういう数字になるわけです。それから、役員数になりますと〇・二九%ということになります。
ここでまた
一つ、私はある危惧があるんですが、農協の合併ということが盛んに言われます。これは、やはり小さな農協がたくさんあってそれぞれに役員さんがいらっしゃると運営のコストがかさむということで、合併した方が効率的だと言われるわけです。しかし、そうなったときどうなるかというと、やはり役員さんは減ります。理事の数を減らす、あるいは組合長は二人か三人だったところが一人になるというようなことになってまいりますと、
女性がせっかくいろいろ進出できる余地が出てきたところでまた絞られてしまうというようなことがあると思います。
労働組合は民主的だとは言われますけれども、連合の傘下の組織人員が
女性二六・四%、中央執行
委員の
比率が六・五%ですから、やはり所属する組合員は多いけれども、数は少ない。その他、
地域におけるPTAとか町内会、自治会、
子供会、老人クラブ等々は全部そうです。
たまたま、きょう
皆様のお
手元にお配りいただいたのは
生活協同組合の表でございますけれども、このホチキスでとめてあるものの五枚目の「
生活協同組合役員における
男女比率」というのをごらんいただきたいと思います。
生活協同組合というのは、消費者
運動の形をとっておりますけれども、実は流通の大きな一翼を担っておりまして、末端においてはすさまじい競争がありまして、流通業と言いかえてもいいくらいの御努力をしておられます。
その
生活協同組合の役員というのはどういう人がなるかというと、専従で事務局にいらした方、それから非常勤、これは組合員として長く販売実績を上げるのに貢献した有能な
地域の
女性活動家
たち、そうした人
たちの中から非常勤理事というのが選ばれるんです。しかし、これらの
方々はほとんどの場合無報酬でございます。
それから、その人
たちに会って話を聞くと、国勢
調査のとき、
自分は有職と書くべきか無職と書くべきか悩むと。そうすると、国勢
調査の時点によっては、その前一週間に何の収入もなければ無職と書くわけです。肩書だけは非常勤理事というのが大変矛盾を感じるというようなこともおっしゃられておりました。私は果たして無職なんだろうかと言っておられまして、そういった点でも
女性と
男性との格差というのは、これは職業の上のことだからやむを得ないとはいいながら、しかし相当深刻な問題ではないかと私は思っております。
それから、国家公務員になる人、これも、受験の申込者、合格者、採用者それぞれに相当なギャップがあります。
平成九年度Ⅰ種試験の場合です。これは一番新しい数字が平成九年度だったものですから、それを御紹介いたしますけれども、申込者の二六・一%が
女性、それから、その
女性の方
たちの合格率は一・七%、それから、一・七%の合格者のうち採用率は三七・三%でございます。男子はどうかというと、男子はその反対の数字ですから、申込者の七四%ぐらいが
男性で約四分の三ですけれども、男子の合格率は三・八%、男子の方が若干いいですけれども、これは試験の結果だからやむを得ないということかもしれません。しかし、男子の採用率が四二・八%で、
女性となぜここに五ポイントぐらいの格差があるのかということが疑問でございます。
採用率は、従来の傾向をずっと見ておりますと、
女性が高い年もありますし逆になっている場合もあります。しかも、採用するときの
決定の実態というのは我々にうかがい知ることはできません。したがって、このことについて、どうも言いにくいんでございますけれども、やはり同じ能力というか、試験結果で
男女が並んだときに一体どちらが採用されるかというようなこともかなりシリアスな問題ではないかと思います。
審議会等への登用が、今
一つの目標値が定められておりまして、それを政府が努力しておりますが、ことしの三月現在一八・六%という数字がありますけれども、これを西暦二〇〇〇年度の末には二〇%にしたいということです。これは恐らく達成されるのではないかと思いますが、国際的なレベルでいうと、もうはるかに低いわけでございます。
国連では、以前、三〇%を目標にし、それから究極は五〇%というようなことは出ているわけですけれども、これは、ちょっと
日本は非常に控え目な数字になっておりまして、二〇〇〇年度末に二〇%。
以上、私は、公的な場における
地域活動、半分公的というふうに
考えてもいいと思います。細かいことはすべて割愛いたしますけれども、そういう場における
男女の共同
参画の実態がこうであるということを申し上げたわけでございますが、これだけで話は終わらないということをつけ加えたいんです。それがトータルな
視点で仕事をとらえるということでございます。
どういうことかといいますと、水面下にある仕事というものを
女性がほとんど担ったままで公的な参加ということを努力しましても、かなりこれは
女性に負担がかかってまいります。水面下にある仕事というと、言うまでもなくアンペイドワークでございます。アンペイドワークの試算については、北京
会議で、それは各国がもっと努力するようにということを指摘されて、
日本も
経済企画庁でその試算に挑戦し、そしてその後もまたさらにそれを改善する作業が続いているというふうに聞いております。
でも、その中で、私も第一回目の試算のときの
委員会に名前を連ねたんですけれども、そのときに感じましたことは、
生活時間
調査ですね、
社会生活基本
調査というのが総務庁にありまして、それをもとにしてやっているんですが、実は、
家事労働等の把握について、あるいは地元におけるPTAとか町内会、自治会活動とかあるいは老人クラブ活動とか、そういうプライベートな場における活動の中での
調査項目がないために、あたかもそういったことが存在しないかのような結果になってしまっております。普通は、記入する側が書きやすいようなクエスチョニアであり、そしてどれか拾えば必ず
自分に該当するというようなつくり方であればそういう数字は出てくるであろうと思うんですが、かなり
家事関係の項目が大ざっぱであるということは残念ながら認めざるを得ないと思います。
社会活動の項目等も詳細ではなかったということでありまして、これは、統計の設計に洞察が足りなかったことではないかと思います。
アンペイドワークといいますと、
個人的なことではないか、そういう
生活の内部について余り言うことは八幡のやぶ知らずになると言われそうでございますが、実はそういうことではなくて、もっと
男性が
家庭生活にも共同
参画するという
視点がない限り、
男女の共同
参画は非常に厳しいと思います。
最後に、
差別撤廃
委員会の一般的勧告の中に、アファーマティブアクションとか優遇的措置とかクオータ制とか、それらをもっと
日本も取り入れるべきではないかという
意見が出されているということをつけ加えて、私の
意見を終わりたいと思います。
ありがとうございました。