○吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、
総理並びに
関係大臣に
質問いたします。
政府は、今回のジェー・シー・オー東海
事業所における臨界事故を契機に、原子力防災に関する二つの
法案を出してきました。
それは、
原子炉規制法
改正案の方で、核燃料加工
事業にも国の定期検査を行おうとすること、原子力施設従事者が安全に関する内部告発をできるようにしようというものであります。
また、
原子力災害対策特別措置法案の方では、国が原子力災害対策本部をつくり、自治体とは合同協議会をつくること、防災専門官を原子力施設に配置するなどの体制の強化、そして
事業者に放射線測定設備を設置することを
義務づけることなどとしています。
しかし、今回の事故で明らかになったことは、政府は、臨界事故が発生しても、
事業所から臨界事故の可能性ありというファクスが送られてきても、臨界事故は起こり得ない、想定外のことなどと、安全神話に立って、確認するための中性子線測定を指示することも、避難勧告を出すように助言することもしなかったことであります。
当時の科学技術庁長官は、午後一時四十二分に、青い光を見たという
報告を受けたとき身震いしたと語っていますが、文部
大臣引き継ぎ前の書類整理を続けただけでした。科学技術庁が臨界事故と判断したのは午後四時のこと、事故発生から五時間半もたっていました。政府の判断のおくれによって被曝者をふやしてしまったことは重大です。
小渕
総理、政府の対策本部長として、
国民に対する謝罪と厳しい反省の言葉が要るのではありませんか。(
拍手)
先日の科学技術
委員会では、二〇%濃縮のウラン溶液の臨界体積は十六・五リットルであり、一方、臨界事故を起こした沈殿槽の容積は百リットルであったことが明らかになりました。沈殿槽の設計値は臨界体積をはるかに超えており、安全審査指針十に定める、単一ユニットは、技術的に見て想定されるいかなる場合でも、容積の制限等により臨界を防止する対策が講じられていることという、この基準に反していたことは明白です。今回の事故発生施設は、もともと臨界事故が起こり得るものであったのです。
この点で、十六年前、ジェー・シー・オーから提出された変更許可申請書の安全審査に当たって、原子力安全
委員会が定めた基本指針と審査指針十に違反している上に、さらに、指針十二で、誤操作等により臨界事故の発生するおそれのある施設においては、万一の臨界事故に対する適切な対策が講じられていることと示しているのに、この指針十二にも違反していました。二重に違反していたものを許可したことは極めて重大であります。
ところが、驚くべきことに、原子力安全
委員会の事務局を担当している現職の原子力安全調査室担当
審議官は、今日でも、この容積の沈殿槽で御
審議いただくんだと答弁し、原子力安全
委員長も同様の答弁をしました。昔も今も安全神話に浸っているこの状況で、どうして住民の生命や安全を守ることができますか。今、防災対策を論じるならば、検査体制の強化や事故発生時の災害対策本部の設置を考える以前の問題として、原子力から
国民の安全を守る最大の原則として、このような安全神話を一掃することであります。
総理の答弁を求めます。(
拍手)
原子力防災で一番肝心なことは、第一に、事故の発生を未然に防ぐ徹底した科学的な安全審査の
実施とそれを
実現できる体制の確立、第二に、万一事故が発生しても住民の生命と健康を守れる安全距離を確保し、住民の暮らしに見合った防災対策を進めること、第三に、原子力施設が立地する周辺自治体の、
関係自治体の防災対策と防災能力の強化を図るために、国が必要な
財政や技術の面での支援を強めるということであります。
そこで、具体的に
質問します。
これまで政府は、原発の安全審査については、国際原子力機関、IAEAの設置した国際原子力安全諮問
委員会、INSAGが八八年に出した
報告書「原子力発電所の基本安全原則」を適用することに反対して、
我が国の原子力施設におきましてはシビアアクシデントが起こることは現実には考えられない、したがいまして、シビアアクシデント対策の見地から安全
規制を改める必要はないと
国会で答弁してきました。
アメリカ、ドイツを初めどこの国でも、過酷事故を想定して、
原子炉の炉心が溶融して溶岩の流れのように圧力容器を破壊して格納容器に達する場合の対策まで設計の中に入れています。さらに、アメリカの原子力
規制委員会、NRCでは、燃料溶融で圧力容器が壊れた場合に、格納容器が破壊する確率は五〇%だとする研究まで行って議論をしています。
総理が本気で原子力防災を考えるなら、安全審査の中に、国際原則となっている過酷事故を想定した審査基準を取り入れるべきであります。答弁を求めます。
どんな審査指針をつくっても、今回の事故が示したように、
規制の
立場にある者がその指針に基づいて厳格に審査しないならば意味がありません。阪神大震災などの経験や新しい知見を常に積極的に取り入れて、原子力安全審査基本指針を根本的に
見直し、その指針を厳格に適用するべきであります。
総理の答弁を求めます。
科学技術庁長官、指針に反する書類は原子力安全
委員会に上げないという厳格さが必要ではありませんか。
政府は、
経済協力開発機構、OECDに対して、日本における原子力
規制部門とその職員の数は四百五十人と
報告していることがOECDのレポートで示されています。この四百五十人という数は、科学技術庁原子力局と原子力安全局に通産省資源エネルギー庁を加えた数です。しかし、この科学技術庁と通産省資源エネルギー庁といえば、先日のクエスチョンタイムでも明らかになったように、開発、推進側の機関に属するものです。外務
大臣、日本政府は国際機関に対してうその
報告をしていたのではありませんか。
不破
委員長が明らかにしたように、原子力の安全に関する条約第八条第二項では、「締約国は、
規制機関の任務と原子力の利用又はその促進に関することをつかさどるその他の機関又は組織の任務との間の効果的な分離を確保するため、適当な
措置をとる。」と定めています。
現在の日本の原子力安全
委員会は、諮問にこたえて答申するだけで、許認可
権限を持った
規制機関ではありません。日本では、科学技術庁と通産省が原子力の推進機関であるとともに、許認可
権限を持つ
規制機関を兼務しています。
総理、アメリカのNRCのような、推進側の政府機関から完全に独立した原子力
規制組織をつくることが条約上の
義務であります。日本共産党は、そこに少なくとも数百名規模の十分な数の専任の常勤スタッフを置くべきであると考えるものです。
総理の答弁を求めます。(
拍手)
これまで原子力施設で事故があるたびに、建設を請け負ったメーカーが親会社となっている試験研究機関に分析と事故原因調査を委託したり、今回のジェー・シー・オーの事故の場合のように、安全審査が問われている原子力安全
委員会の中に事故調査
委員会を設置してきました。これでは、本当に後に生きる教訓を生み出すことも、
国民から信頼され得る
報告書もできません。スリーマイル島原発事故の後のケメニー
委員会のように、電力会社やメーカーはもとより、原発推進官庁からも
規制機関からも完全に独立した事故調査
委員会をつくって徹底した調査を行うべきであります。
総理の答弁を求めます。(
拍手)
今回の東海事故では、中性子線測定器も、臨界事故時の制御抑制装置も、臨界対策も何もない工場が、民家に隣接して二十六年間も操業していたことが明らかになりました。
総理、安全審査の入り口の問題として、原子力施設と住民の居住地との間に十分な安全距離を確保することを
義務づけるべきではありませんか。また、
国民のライフラインを構成する水道水源などからも必要な安全距離を確保することを
義務づけるべきではありませんか。
政府はこれまで、原発所在地自治体の要望にもかかわらず、事故想定に基づく防災を考えませんでした。しかし、原子力防災法をつくるなら、具体的な事故想定とそれに対応する実効性ある原子力防災対策を検討することです。
今から四十年前に、科学技術庁の委託を受けて日本原子力産業
会議が、大型
原子炉の事故の理論的可能性及び大衆損害に関する試算という研究を行いました。これによると、電気出力十六万キロワットの原発が炉心溶融を起こした場合の想定で、原発の敷地境界から八百メートル、さらに二十キロメートル、百二十キロメートルのところに人口十万人、六百万人の都市があるというモデルを考えています。前科学技術庁長官は、科学的な技法で正確に検討されていると、分析手法が有効であることを認めました。
現在、原発事故時の住民の避難距離は、原子力施設から八キロないし十キロメートルという基準に固定して、その外では対策を考えていません。これを、事故に応じて十キロメートル以上、二十キロ以上、三十キロメートル以上と、必要な安全距離をとることを初めから考えた防災対策に改めるべきではありませんか。
アメリカでは、防災対策
実施区域を十六キロ圏、八十キロ圏、スイスでは三ないし五キロの第一ゾーン、二十キロメートルの第二ゾーン、さらに広い第三ゾーンを考え、イギリスでも三・五キロの圏内のほかに四十キロメートル圏での食料と水の
管理を定めています。答弁を求めます。(
拍手)
原発事故発生時には、放射性沃素などが拡散してくる前に沃素剤を飲んでおく必要があります。そのためには、地域住民の
生活実態に合わせて緊急に服用できるよう、あらかじめ沃素剤を各戸に配付しておくことと、早期に対応できる地域公共施設への配備を行うことが必要です。また、放射線
医療機関の配置、放射線
医療専門スタッフの養成と
関係地域への配置など、実態に見合った取り組みが必要です。
こうした取り組みを効果的に
実施する上で、
関係する自治体では、各戸に防災無線施設を設け、住民の経験に基づく緊急時の避難道路と避難施設を整備しておくことも必要です。こうした取り組みに、
総理は
財政負担を含めて
責任を持ちますか。伺います。
事故発生時に最初に事故と向き合って対応する機関は、現場の地方自治体と公設消防と地域の消防団ということになります。これらの人たちの安全を守り、防災活動を支援する上で、放射線防護服と呼吸器、放射線線量計の配備、また消防署に除染施設を設置することは最小限の基準となりますが、
総理、国と原子力
企業の
財政負担で整備しますか。
関係地方自治体には原子力
関係分野の専門職員が配置できるように支援することはもとより、自治体に日常的に原子力施設の査察ができる
権限を与えること、緊急時に設置される自治体の原子力防災に当たる対策本部を国が
責任を持ってバックアップすることが重要ですが、
総理はそれを行いますか。
東海村臨界事故の後、
国民の多数が原発は危険だと思い、何とかしなければならないと考えています。安全神話に立って原発増設。しかも、本格的な実験もせず、データもないまま通常の商業炉でプルトニウムを燃やすという極めて危険なもくろみも強行しようとしています。これでは
国民の
期待にこたえることはできません。
電力の三分の一は原発という原発依存のエネルギー構造を改めること、原発推進が生み出したプルトニウム循環方式の行き詰まりを根本的に
見直して、世界からも信頼される核政策に転換すること、そのためにも、省エネルギー、省資源循環型
社会への転換を進め……