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1999-11-17 第146回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月十七日(水曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 武部  勤君    理事 太田 誠一君 理事 杉浦 正健君    理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君    理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 西村 眞悟君       岩永 峯一君    奥野 誠亮君       加藤 紘一君    鯨岡 兵輔君       熊谷 市雄君    熊代 昭彦君       左藤  恵君    笹川  堯君       菅  義偉君    高市 早苗君       中野 正志君    保岡 興治君       山本 有二君    渡辺 喜美君       枝野 幸男君    坂上 富男君       福岡 宗也君    山本 譲司君       漆原 良夫君    安倍 基雄君       権藤 恒夫君    三沢  淳君       木島日出夫君    保坂 展人君       園田 博之君     …………………………………    議員           杉浦 正健君    議員           東中 光雄君    法務大臣         臼井日出男君    法務政務次官       山本 有二君    最高裁判所事務総局人事局    長            金築 誠志君    政府参考人    (人事院事務総局給与局長    )            大村 厚至君    政府参考人    (警察庁長官官房長)   石川 重明君    政府参考人    (警察庁刑事局長)    林  則清君    政府参考人    (警察庁警備局長)    金重 凱之君    政府参考人    (法務大臣官房長)    但木 敬一君    政府参考人    (法務大臣官房司法法制調    査部長)         房村 精一君    政府参考人    (法務省刑事局長)    松尾 邦弘君    政府参考人    (公安調査庁長官)    木藤 繁夫君    政府参考人    (厚生省保健医療局長)  篠崎 英夫君    政府参考人    (郵政省電気通信局長)  天野 定功君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 十一月十七日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     岩永 峯一君   菅  義偉君     中野 正志君   藤井 孝男君     熊代 昭彦君   枝野 幸男君     山本 譲司君   権藤 恒夫君     三沢  淳君 同日  辞任         補欠選任   岩永 峯一君     加藤 紘一君   熊代 昭彦君     藤井 孝男君   中野 正志君     菅  義偉君   山本 譲司君     枝野 幸男君   三沢  淳君     権藤 恒夫君     ————————————— 十一月十七日  民事再生法案内閣提出第六四号) 同日  子供の視点からの少年法論議に関する請願北村哲男紹介)(第一四八号)  選択的夫婦別姓法制化に関する請願北村哲男紹介)(第一四九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案内閣提出第二号)  特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案与謝野馨君外五名提出衆法第三号)  サリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案東中光雄君外一名提出衆法第四号)  裁判官報酬等に関する法律及び裁判官育児休業に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第六八号)(参議院送付)  検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第六九号)(参議院送付)     午後一時一分開議      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案及び与謝野馨君外五名提出特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案並びに東中光雄君外一名提出サリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房長石川重明君、警察庁刑事局長林則清君、警察庁警備局長金重凱之君法務大臣官房長但木敬一君、法務省刑事局長松尾邦弘君、公安調査庁長官木藤繁夫君、厚生省保健医療局長篠崎英夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 武部勤

    武部委員長 この際、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に対し、与謝野馨君外四名から修正案提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。北村哲男君。     —————————————  無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  5. 北村哲男

    北村(哲)委員 民主党北村でございます。  ただいま議題となりました自由民主党民主党、公明党・改革クラブ及び自由党の各会派共同提案に係る無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に対する修正案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び概要を一括して御説明申し上げます。  第一は、本法律案目的についてであります。  本法律案は、我が国において、団体活動としてサリンを使用して無差別大量殺人行為が行われ、その団体が依然として危険な要素を保持しつつ活動しており、このことに国民が大きな不安と危惧の念を抱いているという現状にかんがみ、過去に無差別大量殺人行為を行った団体について、現在も危険な要素を保持していると認められる場合に、これに迅速かつ適切に対処するための必要な規制措置を定め、もって国民生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的とするものでありますので、その趣旨を明記するものであります。  第二は、本法律案適用対象団体範囲についてであります。  本法律案による規制処分は、無差別大量殺人行為を行った団体活動に対して一定制約を課するものでありますので、この団体範囲を明確に限定するため、団体役職員または構成員当該団体活動として行った無差別大量殺人行為のうち、この法律施行の日から起算して十年以前にその行為が終わったものを除外するものであります。  第三は、観察処分及び再発防止処分取り消しについてであります。  公安審査委員会は、これらの処分の必要がなくなったと認めるときは、その職権によりこれを取り消すことができるとされておりますが、当該団体においても、公安審査委員会に対して、職権による取り消しを促すことができることを法律上明らかにするものであります。  第四は、団体所有等に係る土地または建物についてであります。  本法律案による立入検査は、観察処分を受けている団体所有しまたは管理する土地または建物対象として実施されるものでありますので、公安審査委員会による観察処分の決定またはその取り消しの判断に資するため、公安調査庁長官が、公安審査委員会規則の定めるところにより、団体所有しまたは管理する土地または建物について、これを特定するに足りる事項を記載した書面を公安審査委員会提出するものとするものであります。  第五は、法律施行後の見直しについてであります。  この法律案は、我が国においてサリンを使用して無差別大量殺人行為を行った団体が依然として危険な要素を保持し、そのことに国民が大きな不安と危惧の念を抱いているという特別な事情に対処することを念頭に置いたものでありますので、この法律について、その施行の日から起算して五年ごとに、この法律施行状況について検討を加え、その結果に基づいて廃止を含めて見直しを行うものとするものであります。  以上が、この修正案趣旨及び概要であります。  この修正案につきまして、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  6. 武部勤

    武部委員長 これにて修正案趣旨説明は終わりました。     —————————————
  7. 武部勤

    武部委員長 次に、東中光雄君外一名提出サリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案について、提出者から趣旨説明を聴取いたします。東中光雄君。     —————————————  サリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  8. 東中光雄

    東中議員 日本共産党提出しましたサリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明いたします。  一九九四年六月の松本サリン事件、翌年三月の地下鉄サリン事件など、オウム真理教とその関係者は、サリン等発散させ、不特定多数の人を無差別に殺傷するという、我が国犯罪史上例を見ない残虐きわまる犯行を実行し、社会に重大な不安を生じさせました。  このようなオウム教団凶悪犯罪に対して、国会は、その年の、九五年四月に全会一致サリン等による人身被害防止に関する法律を制定いたしました。サリン等発散させること及びサリン等製造輸入所持等重大犯罪規定し、サリン等発散製造輸入等の未遂さらには予備をもそれぞれ処罰することを規定し、さらに、サリン等発散製造輸入に要する資金を提供すること、または発散製造等土地建物を提供すること、車両、設備、機械、器具または原材料を提供することもまた独立の犯罪として処罰することにしたのであります。サリン被害防止法は、サリンによる多数殺人等再発防止のための強力な立法措置をとったのであります。  ところが、オウム教団は、今日に至るも、サリンによる凶悪犯行を認めず、謝罪反省もしないまま、再び教団としての活動を活発化させ、全国各地に進出し、地域住民の不安を高めています。かくて、全国知事会全国市長会全国町村会は連名で、オウム教団活動実態の的確な把握、問題発生防止活動規制等立法措置を訴えているのであります。  本法案は、これらの要望にこたえて、サリン被害防止法を改正して、新たに、団体活動として団体役職員または構成員サリン等発散させることにより無差別大量殺人行為を行った団体について、その活動状況を明らかにし、また当該行為再発防止するために必要な規制措置を講ずることによって、オウム教団とその構成員によるサリン犯罪等発生を完全に防止し、公共の安全の確保に寄与しようとするのが目的であります。  以下、法案の主な内容を御説明いたします。  第一に、本法案によってその活動規制を行う対象団体は、サリン等発散させることにより無差別大量殺人を行った団体で、サリン差別大量殺人行為首謀者当該団体活動影響力を有しているなど、その基本方針を現在も維持している疑いがあると認めた団体指定するというふうに規定をしております。そうすることによって、実際上、規制対象になる団体は厳格にオウム教団に絞られているのであります。政府案破防法上の暴力主義的破壊活動を行った団体とは決定的に違うわけであります。  第二に、対象団体指定は、都道府県公安委員会国家公安委員会承認を得て行うことといたしております。この団体指定枠組みは、公安委員会暴力団指定を行うという現行の暴力団対策法規定に準じてつくっております。本法案暴対法枠組みをとったのは、言うまでもなく、警察は、個人の生命、身体及び財産保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧をその責務としているからであります。史上かつてないサリン凶悪犯罪を犯したオウム教団は、いわば単なる暴力団ではなくて極悪暴力集団ともいうべきものであり、オウム教団サリン犯罪再発を予防し、その構成員不当行為防止するためには、暴対法に準じた枠組みによって警察規制を行うことが、最も現実的かつ道理ある立法だと考えるのであります。  第三に、本法案による団体活動規制について御説明します。  本法案は、政府案のような破防法による団体規制とは違って、指定団体活動規制をすることとしております。これは、暴力団活動規制と同じ性質のものであります。  まず、都道府県公安委員会は、指定団体に対して、その活動状況を明らかにするため、報告または資料提出を求めることができることとしています。  次に、指定団体都道府県公安委員会の求めに対し、報告または資料提出を行わなかったり、虚偽の報告または資料提出をしたとき、また指定団体からの報告では活動状況を明らかにすることができなかった場合には、公安委員会は、国家公安委員会承認を得て、警察職員当該指定団体所有しまたは管理する土地建物への立入検査を行うことができることとしております。  さらに、公安委員会は、立入検査を拒まれ、妨げられ、もしくは忌避されたとき、または指定団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が明らかにあると認められるときは、当該指定団体に対し、国家公安委員会承認を得て、土地または建物新規取得や借り受けの禁止団体所有または管理する特定土地または建物使用禁止団体への加入強要や勧誘または団体からの脱退妨害禁止、金品その他の財産上の利益の贈与を受けることの禁止制限等規制処分を行い得ることとして、その実効性確保するために所要の罰則を規定しているものであります。  このように、三つの段階を追って指定団体に対しその活動状況を明らかにするように求め、その活動規制し、犯罪防止しようというのが本法案の特徴であり、団体規制目的とした政府案とは根本的に異なるものであります。  第四に、関係地方公共団体の長からの請求に応じて、指定団体に関する情報提供公安委員会に義務づけるとともに、政府に、指定団体に対する処分内容等について、毎年一回、国会報告を義務づけています。情報地域住民に提供することが、国民の不安を解消することからいって極めて重要だからであります。  以上が、本法案提案理由及びその概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  9. 武部勤

    武部委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  10. 武部勤

    武部委員長 次に、与謝野馨君外五名提出特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対し、木島日出夫君から修正案提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。木島日出夫君。     —————————————  特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対する修正案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  11. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、ただいま議題となりました特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案について、日本共産党修正案提案理由説明いたします。  修正案はお手元に配付したとおりでありますので、案文の朗読は省略をいたします。  修正趣旨は、原案の特定破産法人の定義について、政府提出の無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に基づく指定団体に関連させている部分を、我が党提出サリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案に基づく指定団体に関連させるものであり、そのための所要修正を行うものであります。  何とぞ御賛同くださいますようお願いいたします。
  12. 武部勤

    武部委員長 これにて修正案趣旨説明は終わりました。     —————————————
  13. 武部勤

    武部委員長 これより各案及び両修正案を一括して質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。与謝野馨君。
  14. 与謝野馨

    与謝野委員 まず、政府参考人に伺いたいと思いますが、この法案を出された背景、立法目的お尋ねしたいと思います。
  15. 但木敬一

    但木政府参考人 オウム真理教現状を見ますと、過去、松本サリン事件地下鉄サリン事件を初めとする凶悪重大事件を相次いで引き起こしながら、謝罪はもとより、反省の意を全く示そうとしておりません。かえって、殺人をも肯定する危険な教義を保持するなど危険な体質を維持しつつ各地に進出しており、国民に対し大きな不安や危惧の念を与えていることは周知の事実でございます。  本法案は、このようなオウム真理教現状念頭に置き、当面の緊急の措置として、無差別大量殺人行為の結果の重大性事前防止困難性及び反復性というその特性にかんがみ、過去に例えばサリンを使用するなどして無差別大量殺人行為を行い、かつ現在も危険な要素を保持している団体に対し、その危険性程度を把握するための観察処分及びその再発防止するための再発防止処分を行うことができる仕組みを設け、もって国民生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与しようとするものであります。
  16. 与謝野馨

    与謝野委員 この法案による団体規制は、憲法上の結社の自由、信教の自由を侵害する懸念はないかということについてお答えをいただきたい。
  17. 但木敬一

    但木政府参考人 本法案は、過去に無差別大量殺人行為を行った団体について、その活動状況を明らかにし、または当該団体による無差別大量殺人行為再発防止することによって公共の安全を確保することを目的として、観察処分あるいは個別の再発防止処分を科するものであります。その処分は、準司法機関である公安審査委員会が個々の具体的な事案に応じ、その必要性に応じて合理性の認められる限度で選択するもので、その手続も、団体側から意見を聞いた上で証拠書類等に基づいてなされる、中立性公正性確保されたものであります。  したがいまして、法案による規制は、結社自由等に対する公共福祉により認められた必要かつ合理的な制約であると言うことができますし、また、御指摘のような権利を侵害する懸念もないものと考えております。
  18. 与謝野馨

    与謝野委員 この法律は、第二条でこの法律解釈適用、また第三条において規制の基準を書いてございますが、この二条、三条の趣旨をお伺いします。
  19. 但木敬一

    但木政府参考人 お尋ねの第二条、第三条は、本法を貫く原則規定でございます。  第二条は、本法案解釈適用限度を定め、公共の安全の確保のため必要な最小限度においてのみこれを適用すべきことと定めているものであります。これを運用する者において、本法案の各規定を不当に拡張解釈して適用することがないよう戒めている規定であります。  第三条は、本法案の運用に当たる者のうち、主として公安審査委員会委員及び職員並びに公安調査庁職員が、権限を逸脱し、またはこれを濫用するなどして、国民基本的人権を不当に制限したりすることのないよう戒めた規定であります。  第三条第一項と第二項との表現は若干異なっておりますが、基本的人権保障という根本的な趣旨は同一であり、第一項は主として個人たる国民の自由と権利保障の面から、第二項は団体活動保護という面から準則を定めたものでございます。
  20. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第四条に定義する無差別大量殺人行為の意義をお伺いしたい。また、いわゆる国際テロ一般もこれに含まれるのかということをお尋ねしたい。
  21. 但木敬一

    但木政府参考人 本法案の無差別大量殺人行為は、政治目的をもって不特定かつ多数の者を殺害し、またはその実行に着手してこれを遂げないものをいいます。したがって、無差別大量殺人行為を行った団体として本法案対象となる団体範囲は極めて限定されており、現時点においてはオウム真理教以外にはありません。  国際テロ一般も本法案対象となるかとのお尋ねでございますが、本法案第一条は公共の安全の確保に寄与することを本法目的としておりますが、ここで言う公共の安全とは、日本国憲法のもとにおける我が国公共の安全を指しております。他方、我が国行政機関が行う行政処分の相手方は、我が国統治権が及ぶ地域内に存在している必要がございます。  したがいまして、ある団体本法の無差別大量殺人行為を行った団体に該当するためには、第一に、当該団体日本国内において団体としての実体を有すること、第二に、当該団体による無差別大量殺人行為我が国憲法秩序を頂点とする公共の安全に向けられたものであることの二つ要件が必要であり、この二つ要件がいずれも満たされなければならないと考えております。  これら二要件を同時に充足しなければならないために、本法委員指摘国際テロに適用される余地はほとんどないと考えております。
  22. 与謝野馨

    与謝野委員 本法律案第五条は、観察処分について書いております。第八条は、再発防止処分について書いております。  この中で、法案第五条第一項第五号及び八条一項八号の包括条項はあいまいであり、規制対象が拡大する懸念はないかということを言われる方がありますが、それについての見解を述べていただきたい。
  23. 但木敬一

    但木政府参考人 本法案第五条第一項は観察処分要件を定めるものでございますが、これは、団体がその属性として危険な要素を保持していると認められる場合のうち、第一号から第四号が典型的なものを類型的に規定したものであるのに対し、第五号はこれらと同種あるいは類似のものを意味することになります。  また、第八条第一項は再発防止処分要件を定めるものでございますが、これは、その属性として危険な要素を保持している団体について、このような危険な要素が量的、質的に増大しており、あるいはこれを増大させようとしていると認められる場合のうち、第一号から第七号が典型的なものを類型的に規定したものであるのに対し、第八号は、その法文の位置からして、これらと同種あるいは類似のものを意味するものでございます。  したがいまして、いずれの要件も明確であり、規制対象が拡大する懸念はないものと考えております。
  24. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第八条一項七号は無差別大量殺人行為とどのような関係があるのか、お伺いしたい。
  25. 但木敬一

    但木政府参考人 過去に無差別大量殺人行為を行い、現在も危険な要素を保持している団体が、人的、物的あるいは資金的要素を急激に増加させ、または増加させようとしているときには、その内容や変化の理由を迅速かつ的確に把握することが困難であり、このような急激な増加そのものによって無差別大量殺人行為に関する危険な要素が増大していると認められることから、本法第八条第一項第七号を再発防止処分要件の一つとしたものでございます。
  26. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第五条において構成員氏名及び住所報告させることとしているのは、構成員個人結社の自由、信教の自由あるいはプライバシーを侵害するのではないかと言う方がおられますが、これに対してお答えを願いたい。
  27. 但木敬一

    但木政府参考人 結社の自由やプライバシー権利あるいは信教の自由のうち、外部的行為としてあらわれる宗教的行為あるいは宗教的結社の場合におきましては、これは絶対無制限のものではなく、公共福祉により認められた必要かつ合理的な制約を受けることがございます。  無差別大量殺人行為特性からいたしますと、公共の安全の確保の観点からは、実際に当該団体活動として行動する主体である構成員氏名住所報告させ、当該団体人的要素という側面から見た無差別大量殺人行為に及ぶ危険性程度及び活動状況を継続して明らかにする必要性公益性は極めて高いものと考えられます。  しかも、観察処分を受けた団体構成員は、危険な団体であることを承知しつつ当該団体活動参加、従事するものでございますから、その必要性及び公益性にかんがみれば、構成員住所氏名報告させることにより構成員として当該団体活動参加、従事する上で一定制約を受けるとしても、この程度の不利益を甘受すべき立場にあるものと考えられます。  したがいまして、構成員住所氏名報告させることは、公共福祉の観点から必要かつ合理的な制約と言うことができますし、御指摘のような諸権利に対する不当な制約とはならないものと考えております。
  28. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第七条の立入検査憲法第三十五条の令状主義に違反するのではないかという指摘がありますが、それについての見解をお尋ねします。
  29. 但木敬一

    但木政府参考人 最高裁判所昭和四十七年十一月二十二日大法廷判決の趣旨、判旨に即して申し上げますと、本法案立入検査は、刑事上の処罰を目的とする手続ではございませんし、刑事資料収集に直接結びつく作用を一般的に有するものでもございません。  また、その立入検査の拒否、妨害等については刑罰が科されておりますが、その強制の態様、程度はあくまでも間接的なものにとどまり、直接的、物理的強制と同視すべきものではありません。  さらに、このような観察処分に付された団体活動を明らかにするという必要性公益性は極めて大きく、立入検査はこの目的実現の上で必要不可欠のものでございます。  したがいまして、この立入検査があらかじめ裁判官の発する令状によることを要件としないからといって、憲法三十五条の法意に反するものとは考えておりません。
  30. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第七条による立入検査は一体どこまでできるのかということについてお伺いしたい。
  31. 但木敬一

    但木政府参考人 一般論として典型的なものを申し上げますと、立ち入った先で帳簿や書類を閲覧すること、設備を見分することなどができます。そのほかにも、例えば、立ち入り先の建物内で検査対象物が入っていると思われるロッカーをあけるように求めたり、帳簿類の提出を求めたり、検査結果を明らかにするため必要かつ合理的な範囲内で施設や設備の写真を撮影したり、事務所の見取り図を作成したりすることもできるものと考えております。  これに対し、例えば、施錠されている引き出し等を別途かぎ屋を呼んで開錠させるような行為など直接強制的な行為、すなわち捜索・差し押さえと同視されるような行為は検査として行うことはできないと考えております。
  32. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第七条による立入検査対象は人の住居にも及び得るものであるが、その適法性はどのように担保されるのか、この点についてお答えいただきたい。
  33. 但木敬一

    但木政府参考人 本法第二条及び第三条は、この法律の権限の行使を必要最小限度にとどめるべき旨を定めております。また、第七条第二項は、特に必要があると認められるときに立入検査を行う旨を規定しております。また、第七条第四項及び第十三条第七項は、立入検査犯罪捜査のために認められたものではない旨を確認し、さらに、第四十一条及び第四十二条は、それぞれ公安調査官と警察職員職権濫用の禁止を罰則をもって担保するなどしておりまして、これらによって公安調査官と警察職員による立入検査の適法性が担保されているものと考えております。
  34. 与謝野馨

    与謝野委員 法案六条及び十条の取り消し規定は一体どういう意義を持っているのか、お尋ねしたい。
  35. 但木敬一

    但木政府参考人 本法案第六条及び第十条は、観察処分または再発防止処分について、公安審査委員会処分を継続する必要がなくなったと認められるときには、その処分取り消し、その効力を将来に向けて失わせることができるという当然のことを確認するとともに、さらに、一歩進めて、これを義務としてしなければならないことを規定し、対象団体権利保障を図った規定でございます。  もとより、この取り消し公安審査委員会がその職権によって行うべきものではございますが、対象団体においても、公安審査委員会に対し取り消し職権発動をいつでも促すことができる性質のものであると考えております。
  36. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第八条一項各号の「しようとしているとき」というのは非常にわかりづらい言葉なので、この意味をはっきりさせていただきたい。
  37. 但木敬一

    但木政府参考人 「しようとしているとき」とは、一定行為の実行を始めているとき、あるいは、一定行為の実行は始めていないが、その準備行為を行っているときという意味でございます。  例えば、人を殺害する目的でそのための凶器や毒薬を準備する場合は、第八条第一項第一号に規定する人を殺害しようとしているときに該当すると考えております。
  38. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第十三条で警察職員による立入検査を認めた趣旨をお伺いしたい。
  39. 但木敬一

    但木政府参考人 本法は、公安調査庁長官観察処分再発防止処分の請求をするに際しましては、事前に警察庁長官の意見を聞くものとすることによりまして、公安調査庁長官警察庁の情報や意見を処分請求に反映させることを可能とし、これによって当該団体に関する十分な情報と的確な意見を公安審査委員会に提供し得る仕組みとしたものでございます。  警察庁長官が陳述する再発防止処分請求に係る意見は、その規制措置がもたらす効果の重大性にかんがみまして、既存の保有情報のみならず、対象団体に関する最新でより詳細な情報に裏づけられた的確な内容のものでなければならないことから、警察庁長官がかかる意見陳述のために必要があると認められるときは、都道府県警察に必要な調査を行うことを指示することができることとし、さらに、この指示を受けた都道府県警察の警視総監または道府県警察本部長は、同調査を行うに当たり、関係者への質問、観察、見分等、通常の任意調査の方法によっては調査の目的を達成することができないなど、特に必要があると認められるときは、観察処分を受けた団体に限って警察職員による立入検査ができることとしたものでございます。
  40. 与謝野馨

    与謝野委員 本法案における意見聴取手続は破防法に比べて簡略化されており、団体権利保障に欠ける懸念はないのかという疑問が呈せられております。それについてお答えいただきたい。
  41. 但木敬一

    但木政府参考人 破防法は、規制処分内容といたしまして、団体に対する解散指定処分をも可能としているのでありまして、国民基本的人権である結社自由等に重大な制約を加えるものであることにかんがみ、特に慎重な手続を定めております。  これに対しまして、本法案規定されている観察処分及び再発防止処分は、いずれも対象団体一定の作為または不作為を求める不利益処分にすぎず、対象団体の資格または地位の直接的な剥奪を意味するものではございませんので、行政手続に関する一般法である行政手続法でも、原則として相手方に弁明書及び証拠書類等提出する機会を付与すれば手続として足りるものと規定している程度内容となっております。  しかしながら、本法案におきましては、これら処分結社自由等に直接かかわりを持つものであることにかんがみまして、その手続につきましては、原則として国民に公開した上、対象団体側に口頭で意見を述べる機会を与えるなど、本来必要とされている手続に比べてより手厚い手続保障を実現したものであり、団体権利保障に十分なものであると考えております。
  42. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第三十条の国会への報告趣旨をどう理解されているのか、お伺いしたい。
  43. 但木敬一

    但木政府参考人 本法案三十条の規定は、本法案による団体規制措置憲法上の結社自由等制約を課するものであることにかんがみまして、その規制措置を執行することを責務とする政府が、国権の最高機関である国会に対し、毎年一回、その施行状況報告することを義務づけ、もって国会における見直しを含む多角的な検討に資する趣旨に出たものでございます。
  44. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第三十一条の関係地方公共団体への情報提供趣旨は一体何か、この点についてお答えいただきたい。
  45. 但木敬一

    但木政府参考人 本法第三十一条は、公安調査庁長官観察処分に基づく調査の結果得た情報関係地方公共団体に提供することによりまして、当該自治体の施策に資するとともに、住民の不安感を解消、緩和し、もって国民生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを趣旨とする規定でございます。  また、公安調査庁長官観察処分に基づく調査の結果得た情報につきましては、国家公務員法第百条第一項の職務上知り得た秘密に該当し、公務員の守秘義務が課されているため、本法案第三十一条において、個人の秘密または公共の安全を害するおそれがあると認める事項を除きまして、その守秘義務を解除した規定でもございます。
  46. 与謝野馨

    与謝野委員 法案第三十三条では行政不服審査法の適用を除外し、三十四条では団体のみに取り消し訴訟を提起する資格を認める規定を置いているが、個人の救済方法に欠けるところはないかという疑問が呈されています。これについてのお答えをいただきたい。
  47. 但木敬一

    但木政府参考人 本法案第三十三条は、本法案におきます規制措置処分は、準司法機関である公安審が特に慎重な手続によって審査及び決定をするものとされており、まず公安審には上級庁がないため、上級庁に対する審査請求というものはあり得ず、また同一庁に対する異議申し立てという制度にもなじまないことから、行政不服審査法による不服申し立てを除外した規定であります。したがいまして、この規定により、直ちに個人の救済が損なわれるものではございません。  次に、本法案第三十四条は、規制措置処分に不服がある団体は、法人格がなくても取り消し訴訟を起こすことができることを特に示した規定でございまして、団体以外の者が訴えを起こすことを制限する趣旨ではございません。したがいまして、この規定によりまして、規制措置によって個人権利が侵害された者が個人の資格で裁判所に救済を求めることを妨げているものでもございません。  したがいまして、個人の救済方法に欠けるところはないものと考えております。
  48. 与謝野馨

    与謝野委員 この法案は、破防法と同じく公安審査委員会及び公安調査庁による規制枠組みを採用していますが、迅速かつ実効ある規制ができるのか、その点についてはどうお考えなのかを伺いたい。
  49. 但木敬一

    但木政府参考人 本法案におきまして、公安調査庁長官が調査及び処分の請求を行い、一方で公安審査委員会が決定を行う仕組みをとりましたのは、本法結社自由等制約する重大な効果を有することから、調査及び請求を行う機関とは別に、独立して職権を行使し、準司法的機能を有する公安審査委員会処分を行うこととすることによりまして、処分中立性、公平性を確保できるよう、慎重を期したものでございます。  本法案におきましては、公安審査委員会規制請求に係る官報公示があった日から三十日以内に決定するよう努めなければならないこととするなど、手続の迅速化への配慮をする一方、警察の有する情報力あるいは組織力等の活用を図るために必要な措置を講ずるとの観点に立ちまして、公安調査庁長官処分請求に係る警察庁長官の意見陳述や、意見陳述のための警察職員の調査及び立入検査等の規定を盛り込んでおりますので、規制措置は十分に迅速かつ実効性あるものになっているものと考えております。
  50. 与謝野馨

    与謝野委員 この法律で、四十一条、四十二条で、それぞれ公安調査官及び警察職員職権濫用の罪を規定しておりますが、この職権濫用罪が成立する場合はどのような場合か、どのようなことを想定されているのか、お伺いしたい。
  51. 但木敬一

    但木政府参考人 具体的事案でございますが、本法案四十一条あるいは四十二条が成立する場合といたしましては、例えば、公安調査官や警察職員立入検査に際して、施設内にいる者の身体を無理やり捜索するような場合などでございます。
  52. 与謝野馨

    与謝野委員 先般、この法務委員会の各委員のもとにオウム真理教からパンフレットが参りまして、この法案では問題の基本的な解決にならないということが書いてありました。ただ、私は、オウム信者の社会的復帰対策についても、やはり国も都道府県も考えなきゃいけないというふうに思っております。それについては法務省ばかりの話ではないと思いますが、それについて法務省としてどう考えているのか、お伺いしたい。
  53. 但木敬一

    但木政府参考人 団体活動といたしまして無差別大量殺人行為を行った団体に対します一定規制措置を設けるのが本法案でございますが、これによる規制対象となりましたオウム真理教の信者や、これを脱退した元信者の社会復帰に役立つ対策を講じることは、社会的にも極めて重要なことであると考えております。  この問題につきましては、政府全体といたしまして、オウム真理教問題関連対策関係省庁連絡会議が設置されておりますが、関係省庁間で連携を図りつつ、適切な対策を講ずべく現在協議を続けているところでございます。
  54. 与謝野馨

    与謝野委員 東中議員にお伺いしたいのですが、共産党の案を見ますと、これは明らかに団体規制という形をとっているわけですが、やはり共産党も、場合によっては団体規制というものが公共福祉を実現するために必要と思ってこの法案を出されたのでしょうか。
  55. 東中光雄

    東中議員 団体規制の方式はとっておりません。読んでいただきますればわかりますが、団体活動規制になっています。  破防法は、一条に、団体規制措置をとることが目的、こうなっています。だから私たちは、その団体によるわけですけれども、暴力団という団体がありますね、それを指定して、そしてその団体活動をいろいろ規制するという法律が、一九九一年のいわゆる暴力団対策法、正式の名前は、暴力団員による不当な行為防止等に関する法律というのがありましたよ。それで、公安委員会暴力団指定をするんです。その指定をするやり方は、ちゃんと公安委員会の規則もありますし、この法律でつくられているんです。それを今度はオウムについて、オウムというのはサリンをまいて大量殺人行為をやった、その団体について同じ方式で適用していく。オウム集団というのは暴力団というよりは超暴力団と言ってもいいような、そういう関係ですから。だから私たちは、この暴対法でつくられた方式に従って、そういう行為規制しようということであります。ちなみに、この暴対法については、九一年ですからまだ新しい法律、これは全会一致でつくられているんですね。  だから、そういう方式をやる。公安委員会が意見を聞いて、そして公開のところでそういう暴力団指定をやる、そうしたら、いろいろ暴力団員の行動に対して規制できる。これは自民党も私たちも認めた全会一致法律であります。それに従ってやっていこうと。  ついでに、サリン等による人身被害防止に関する法律、これは私たちが改正を出しているわけですけれども、この法律全会一致で、先ほど申し上げましたように、三月に地下鉄サリン事件が起こったすぐ後の四月に全会一致でつくったんですよ。  それは、その行為を、さっきも言いましたけれども、普通、サリンをまくことはいかぬと。殺人になったら、これはもう刑法がありますから、まくこと自体を無期懲役にするというのですね。製造も物すごく重い。ところが、製造の未遂から予備までいくんですね。さらに、製造行為輸入行為の場所提供とか資金提供とかをやったことまで犯罪だ。普通なら犯罪にはいかぬですね。ところが、サリン散布というのは非常にひどいものだから、そこまでやって、そしてサリン等による人身被害防止をやろうということなんです。  この立場で、今度は、復活してきたオウムの活動について、不動産なんかの使用によってどうなっておるのかわからぬということで、みんなが非常に不安に思っているわけですから。犯罪であるかもしれない。しかし、そういう実態を、この法律をつくることによって報告させてつかもうじゃないかというのが私たちの趣旨であります。
  56. 与謝野馨

    与謝野委員 せっかく大臣に来ていただいたので、一般論で結構なんですが、住民基本台帳法という法律がございます。また、憲法には義務教育の規定もございますし、学校教育法という法律もあります。  そういう中で、住民登録をした者に対してこれを受理しないという裁量権は、多分、地方の自治体の長には与えられていないと私は思っておりますが、こういう裁量というものは違法性がないのかどうかという問題。結局、就学をしなければならない年になったのに学校に行けないという問題を、法務大臣は政治家としてどのように考えておられるのか伺いたい。
  57. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 ただいま委員指摘をいただきました住民基本台帳法というのは、所轄が自治省でございますので、そのことについては直接お答えはできないわけでございますが、今回の、無差別大量殺人をした団体、現在もその活動を活発にしている、各地において住民との摩擦が非常に起きておって、住民の不安といったものが大変激しい。こうした中で、各地方自治体がこの住民基本台帳、住民登録といった問題について、もちろんオウムの皆さん方の権利というものもございますが、同時に、既にそこに住んでおられる方々の権利というものもあるという中で、極めて苦渋の選択の中でもってそうした判断をしていただいているということだと私は理解をしておりまして、一刻も早くこうしたことの解決ができるように、本法案を一日も早く成立させていただくように、心からお願いを申し上げます。
  58. 与謝野馨

    与謝野委員 終わります。
  59. 武部勤

    武部委員長 午後二時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時五十一分開議
  60. 武部勤

    武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。福岡宗也君
  61. 福岡宗也

    ○福岡委員 民主党の福岡宗也でございます。  私は、さきに大綱については大体質問をさせていただきましたけれども、きょうは、昨日行われました参考人質疑についての、参考人の御意見を踏まえまして、二、三点だけ御質問をさせていただきたい、かように考えております。法務大臣より簡潔にお答えをいただきたいと思います。  昨日の質疑におきまして、まず参考人の江川紹子さんは、オウムはいまだ危険な団体であって、調査と規制は必要であるとしながらも、オウム信者であるからということで何でもあり、また、これに対して違法行為をすべて許容するという社会風潮は好ましくないのだといたしまして、まず第一に、地域住民も、オウムに最低限度のルールを強く求めているのであるから、みずからも違法行為はやはり慎んでおく必要があるのだということ、さらに、行政も適法に執行をなすべきで、規制規制としても、その限度はきちっと守っていく必要があるのだという指摘もされております。さらに、報道自体についても、ある程度の距離を置いて冷静に事実を見詰めて報道すべきである、さらに、調査、規制についても、やはり厳格な要件のもとに必要最小限度であるという趣旨のことを述べられているわけであります。  さらに、内野教授は、やはりオウムに対する公権力の調査、規制というものが必要な場合もありましょうけれども、その要件としては、やはり規制のための正当な目的があるということ、それから規制の具体的な手段というものは適当なものであるかどうか、これは十分に判断をしなければならないのだということを指摘されまして、公権力で人権を制限するためには、公共福祉、しかもそれが、差し迫った危険が具体的にある場合に限定すべきであるということですね。そして、住民の現在のオウムに対する恐怖心とか不安というものについては、この正当な目的には当たるのではなかろうかということで、ただ、その場合でも、それぞれの危険性程度と比較考量した妥当なものでなければならぬという指摘をされました。  それから、千保市長も、これは転入届の拒否なんかもされまして、苦渋の選択をされておるわけでありますけれども、やはり基本的な考え方は、そのオウムに対する人権制限も、やはり公共福祉を守るための必要な限度でなきゃならないとされまして、私の質問に対しましても、転入についても、個別的な転入についてはやはり認めざるを得ないのじゃないか、そして、拠点づくりみたいなものについてだけはやはり制限するとかという、公共福祉の限界というものを十分に検討したいということをおっしゃっているわけですね。  それから、さらに、先ほども与謝野先生の方から御指摘のありました、いわゆる就学の問題についても、市長としては、そういうものについては拒否処分もしないし、ライフライン的なものについての供給も、やはり人権、生存権の問題だから拒否しないということも、これは言っておられるわけであります。  すなわち、どういうことかといいますと、それぞれ、報道、学者、さらに現場で苦慮しておられる人たちがすべて、やはり制限は必要であるけれども、基本的人権保障というものをきちっと守っていかぬといかぬのだということは、それぞれ認識をされているわけであります。そうしなければ、何か悪があった、すべて何でもできるということではやはり法治国家とは言えないのだという観点は、それぞれ参考人はお持ちだったというふうに私は理解して、意を強くしたところでもあるわけであります。  そこで、私の第一の質問は、内野先生もこれは同意をしていただいたのですけれども、前もちょっと質問したと思いますけれども、公共の安全のほかに住民の生活の平穏ということもやはり、先ほどの適正目的ということを言うためにはちょっとわかりにくいというか、抽象的な幅広いそういう公共福祉ということだけではなくて、安全ということだけではなくて、具体的な恐怖、不安というのでもって生活ができにくいという状況にあるからこういう法案があるんだということを明確にしておく必要があるのじゃないかというのがまず第一点であります。  それから、さらにもう一つの考え方は、やはり要件事実を、やはり憲法違反のそしりを免れず、万一これが通ったら、処分について憲法違反の争いが生ずるようでは困るわけですから、そうするとまた適正な執行もできにくくなりますので、そういうことを避けるためにも、要件事実としては、やはり学者も言われているように、なるべく明確できちっとしたものにしておくということが必要だろうというふうに思うわけであります。  それには、やはり私の考えるのには、現在の観察処分における要件、一号から五号までございますけれども、具体的な一号から四号までのものについてはやはり例示的なものとして、第五号の殺人を犯す危険性が明らかだというような要件を第一号で持ってきて、そういう場合はやはりこういう観察処分ができるのだとして、なおかつ具体的な事例、こういうやり方が一番いいのじゃないかなというふうに思っておりますし、規制処分もやはりそういうような形に規定した方がいい。  したがいまして、これは急いでおりますので、検討がそう細かくできるかどうかということは問題であります、一言一句細かく検討していくということができるかどうかというのはありますけれども、将来的にもこういった問題をきちっと検討していくという歯どめをかけてもらいたい、かように思っているわけであります。  この二点について、まずお答えをいただきたいと思います。
  62. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員指摘いただきましたように、基本的人権というものも極めて大切でございます。  今回御審議をいただいております法案によりまして確保しようとしております公共の安全、この意味には、日本国憲法のもとにおける国家社会の基本的な秩序が平穏に維持されることも意味しておりまして、これには国民生活の平穏も含まれているものと考えております。ただ、この法案国民の大きな不安と危惧の念を取り除くということを念頭に置いた緊急の対策であるということにかんがみますと、国民生活の平穏を確保することを目的規定の中に明記することについては意義あるものと考えている次第でございます。  また、本法案観察処分要件を定める第五条一項は、団体がその属性として危険な要素を保持していると認められる場合を類型的に規定をしておりまして、また再発防止処分要件を定める第八条一項においても、その属性として危険な要素を保持している団体について、そのような危険な要素が量的、質的に増大しており、あるいはこれを増大させようとしていると認められる場合を類型的に規定をいたしております。  このように、お尋ねの五条第一項及び第八条一項は、いずれもその団体属性として危険な要素を保持していることを念頭に置いて、その危険性のあり方を要件の中心に据えているものでございます。  以前から委員指摘のとおり、五条第一項あるいは八条第一項の最後の部分というものを冒頭にという御意見でもございました。それらのことも一つの考え方だと思いますが、私は、このような私どもの提案をさせていただいております本法案によるもので十分目的を達せられている、このように思っております。
  63. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。  検討はしていただけるということで、また、特に目的についてはある程度前向きに御検討もいただけるということですから、ぜひともそうしていただきたいと思うわけです。  そこで、持ち時間がもうなくなったということでありますので、一点だけ指摘するにとどめておきますけれども、教授の言われておる中に、こういうことを言われているんですね。いわゆる観察処分の中の、団体の役員だけではなくて、すべての構成員氏名住所を公表せよという要求について、単なる構成員の場合ですと、勧誘されて、余りそういったことについての考え方もなくて、信仰にちょっと自分が賛同して、全く信仰の問題だけで入ったという人も結構いるんだけれども、そういう人たちまで一々細かくそういうものまで報告するということは、信仰の自由というものを脅かす、また信仰の自由に違反すると言われるおそれがあるので、これについては構成員の場合だけは人数だけにとどめて、名前や住所までは報告義務がないというふうにしたらどうかという御指摘があるんです。私もこれはもっともだなという気はしたわけですけれども、これだけ一言だけお答えをいただきたいと思います。
  64. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員指摘をいただきました、憲法上の結社の自由、あるいはプライバシー権利、あるいは信教の自由も、外部にあらわれる宗教行為宗教的結社をつくるについては、絶対無限、無制限のものではございません。公共福祉による必要かつ合理的な制約を受けることが当然あります。  ところで、無差別大量殺人行為特性に照らしますと、この公共の安全の確保の観点から、実際に当該団体活動の主体となる構成員氏名住所報告させ、団体の人的側面から見た危険性程度を明らかにする必要性公共性は極めて高いと言えます。しかも、観察処分を受けた団体構成員は、危険な要素を持つ団体であるということを承知しつつ団体活動に加わっている者でございますので、団体にその住所氏名報告させることによりまして一定の不利益を受けるといたしましても、これを甘受しなければならない立場にあるものと考えている次第でございます。  このように、観察処分対象となる団体にその構成員住所氏名報告させることは、公共福祉の観点から必要かつ合理的な制約と言うことができまして、御指摘のような諸権利に対する不当な制約とはならないと私どもは考えている次第でございます。
  65. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。  最後に、二条、三条の規定、解釈基準とかいうものもありますし、それから限度も必要最小限度にとどめるという精神もありますので、実際の運用上において、そういう人たちについてはなるべくそういうものを発動しないという運用も大切だろうというふうに思いますので、その辺のところも十分に考慮したようなことで御検討をいただきたいというふうに思います。  時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  66. 武部勤

  67. 北村哲男

    北村(哲)委員 民主党北村でございます。  きょうは、大臣には、実は私の質問は非常に細かいことが多くて恐縮なんですが、本当は昔の政府委員の方に聞きたかったところなんですけれども、我が党が大臣に直接聞けということなので、ひとつそういうことで、細かいことにわたりますけれども、しかし重要な法案でもありますし、まだなかなか普通の人になじまない、普通の人よりも私ども法律家にとってもなじみにくい条文がありますので、確かめる意味でこれから聞いていきたいと思います。  まず、第五条の一項一号で「首謀者当該団体活動影響力を有していること。」ということが観察処分要件になっておりますが、影響力を有するということは一体どういうことなんだろうかということです。だから、自分はこういうことにはかかわりたくないと思えば、影響力を行使したくないというふうなことが一体できるだろうか。すなわち、首謀者というのは存在自体が、いればもう影響力を与えるようなことで、作為不作為関係なしに影響力というのはあり得るわけですよね。そうすると、そういうことを要件にすると、非常に広い意味で人を縛ってしまうんじゃないかということで、一体どういうことをお考えでこのような条文をつくられたのかということをお伺いしたいと思います。
  68. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員指摘をいただきました影響力ということになりますと、一般的には、ほかに作用を及ぼし、反応、変化を生じさせる力のことというふうに考えられるわけであります。  本法案の第五条第一項第一号の、首謀者団体活動影響力を有していることということは、首謀者たる特定人の言動が団体活動の基本的方向性を左右する力を有しており、これによって団体活動が実際に左右されている場合はもちろんのこと、個別具体的な場面、すなわち、基本方針を具体化する手段、方法の選択、そういった場面においてもその内容を左右する力を有して、これによって団体活動が実際に左右されている場合も含む、こういうふうに考えております。  なお、この場合における特定人の言動は、現時点における直接的な言動のみならず、過去における言動であっても現時点において本人によって否定されていないもの、それも含まれると考えている次第であります。
  69. 北村哲男

    北村(哲)委員 大変詳しい解説なんですけれども、そうすると、首謀者影響力を及ぼしたくないと思ったらどうすればよろしいんでしょう。御感想で結構です。
  70. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 一つの例といたしまして、過去に首謀者が自分で主張したこと、これをはっきりと公に否定をするというのも一つの方法であろうかと思います。
  71. 北村哲男

    北村(哲)委員 わかりました。  次に、これは先ほど与謝野委員からも解説があったんですが、第五条一項の五号という問題、ここに「危険性があると認めるに足りる事実があること。」ということがあります。これは、一号から四号までの間というのは、今のように具体的なこと、だれだれがどうした、だれだれがどうしたということが書いてあるんですけれども、五号だけは急に広くなって、何でも入る。法律用語はバスケットクローズというふうな言い方を言うようなんですけれども、要するに全部ひっくるめちゃう。  午前中の説明では何か類似したものというふうに言うんですけれども、それなら、そういうふうな条文のやり方、書き方があるはずですよね、右に類似した事項とか。大臣の口からも、同じような質問で恐縮ですけれども、ひとつその五号の意味について再度お願いしたいと存じます。
  72. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 既に午前中参考人が御答弁をしたことと重なるわけでございますけれども、本法案の第五条一項は観察処分要件を定めるものでございます。これは、団体がその属性として危険な要素を保持していると認められる場合について規定をいたしております。  そのような場合のうち、第一号から第四号までは典型的なものを例示したものでございます。第四号の、殺人を明示的にまたあるいは暗示的に勧める綱領は、当該団体構成員団体活動として無差別大量殺人行為を行うよりどころとなるものでございます。  第五条第一項第五号は、一号ないし第四号の規定する場合以外のものであっても、団体属性としてこれらと同種あるいは類似の無差別大量殺人行為に関する危険な要素があると認められる場合には、当該団体観察処分に付すことを明らかにいたしたものでございまして、四号までのものと同種または類似のものについては五号に該当する、このように組み立てをいたしているところでございます。
  73. 北村哲男

    北村(哲)委員 質問がちょっと適切でなかったというのは、その書いたものが、一号から四号までという趣旨で今のお答えにも入っておると思います。私も、この五号に関しては、今大臣のおっしゃったように、一号から四号に類似するもの、それに準じたものというふうに非常に限定的に解することがこういう規定の場合は大事であろうと思っておりますので、今の問題を再度お聞きしました。  次に、五条二項の四号に、「当該処分が効力を生じた日における当該団体の資産及び負債のうち政令で定めるもの」というふうに規定してあります。政令ではどういうことを予定しておられるのでしょうか。
  74. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 委員指摘法案五条二項四号では、資産及び負債のうち政令で定めるものを観察処分を受けた団体報告事項の一つといたしているわけでございます。  このうち、いわゆる資産とは、具体的には土地建物、機械、証券、金銭などでございますけれども、その名義を問わず、当該団体所有していると実質的に判断されるものを団体の資産とすることにいたしておりまして、同様に負債も、借入金などでございますけれども、団体が他から借りている金銭等と実質的に判断されるものを対象とすることにいたしております。
  75. 北村哲男

    北村(哲)委員 わかりました。  次に、同じ五条二項の五号に、「公安審査委員会が特に必要と認める事項」というふうに、わざわざ「特に」とは言ってありますけれども、限定せずに書いて規定してあります。「特に必要と認める事項」は、どういうことを予定して書かれたんでしょうか。
  76. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 委員指摘の、法案第五条第二項第五号の「公安審査委員会が特に必要と認める事項」ということでございますが、当該団体特性に応じて、危険な要素関係のある事項を意味するものでございまして、例えば、団体が使用している特定の設備等が挙げられるわけでございます。
  77. 北村哲男

    北村(哲)委員 今度は、同じく五条三項の五号というところをお伺いします。  「団体活動に関する事項のうち政令で定めるもの」というふうにあります。団体活動に関する事項で、一体何をどういうふうに政令で定めようとしておられるのでしょうか。
  78. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 当該団体活動状況を継続的に明らかにするためには、当該団体活動の基盤となる人的、物的、資金的要素に関連する事項のみならず、当該団体の実際の活動状況のうち、主要なものについても把握することが必要でございます。  そのため、これを報告させるものとしたものでございまして、一といたしまして、当該団体の役員がした当該団体活動に関する意思決定の内容、二といたしまして、当該団体の機関誌紙の名称及び発行部数並びに編集人及び発行人の氏名などを考えております。
  79. 北村哲男

    北村(哲)委員 次の質問に移ります。第六条の問題であります。  公安審査委員会取り消し処分、これは職権でできるということなんですけれども、確かに普通では、「活動状況を継続して明らかにする必要がなくなった」というのは、ものがなくなったとか活動がなくなったとかというのは、大体わかります。  しかし、この法文全体で大事なことは、濫用にわたることがあり得る点で非常に注意深くつくってあるんですけれども、万一、この観察処分あるいは再発防止処分の中で、特に立入検査なんかで濫用がしばしば行われるような場合、公安審査委員会は、この取り消し処分条項に基づいて、観察処分あるいは再発防止処分を取り消すことができるんでしょうか。
  80. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 公安審査委員会は、観察処分の決定後も、観察処分必要性、相当性につき判断を加えまして、これを職権で取り消すことができるわけであります。  したがいまして、観察処分の権限による取り消し理由は、特段限定されるものではございません。
  81. 北村哲男

    北村(哲)委員 今のお話ですと、もし必要ありとすれば、公安審査委員会が、濫用にわたった場合は観察処分を取り消すことができるというふうに理解したいと思います。そういうお話だったと思います。  さて次に、ちょっとわかりにくい点があります。わかりにくい点というか、私の方の読み方が不足かもしれませんが、第七条に「観察処分の実施」ということで、「公安調査官に必要な調査をさせることができる。」と第一項にあります。  ただそれだけ、必要な調査というふうに言っているだけなんですけれども、一体公安調査官はどんな調査をするだろうかということが、実際は調べて、ある程度はわかるんですけれども、どういうことをするのかということをちょっと御説明願いたいと思います。
  82. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 委員指摘の、法案第七条第一項に規定する必要な調査というものは、観察処分対象団体の個別具体的な活動状況を明らかにするために必要な調査をいうわけであります。  公安調査官に認められた調査権限は、立入検査の場合を除きましてあくまでも任意調査でございますので、例えば、観察処分対象団体役職員または構成員の動向につきまして、当該人物の周辺調査をいたしましたり、場合によっては対象人物に直接面接をいたしましたり、あるいは当該団体の施設を外部から見まして、その施設に出入りする者、搬入物品等を確認するといったことが想定されるわけであります。
  83. 北村哲男

    北村(哲)委員 七条の二項に、団体所有し管理する土地及び建物というものがあります。それに対しては立入検査ができる。すなわち、団体所有し管理する土地建物。  ところが、五条の二項二号それから五条三項二号ないし三号に、団体活動の用に供されている土地建物という書きぶりがあります。この両者、すなわち団体活動の用に供されている土地建物立入検査なんかの対象にならないのだろうかという、ちょっと範囲が違うような感じがしますけれども、この書きぶりの違い、対象に差が出てくるのかという点についてはどのように理解すればよろしいでしょうか。
  84. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 委員指摘をいただきました法七条あるいは同五条等の記述でございますが、いわゆる団体所有するということは、団体が法人格を有している否かにかかわらず実質的に当該土地建物所有していると認められる場合を意味します。団体が管理するということは、団体が事実行為として土地建物の管理を行っていると認められる場合を指すわけであります。  これに対しまして、団体活動の用に供されているということは、土地建物団体の意思決定に基づいて、その活動の全部または一部を行う場所として用いる場合を意味するわけでございます。  団体活動の用に供されていると認められる場合であっても、団体がその土地建物所有していない場合もございますし、管理についても、ほかの管理者がいるような施設を活動の用に用いているという場合もあろうかと思われます。
  85. 北村哲男

    北村(哲)委員 ですから聞きたいのですが、そうすると、団体の用に供されている土地建物というだけでは立入検査対象にならないということですか。所有または管理をしていなくてはいかぬということですか。
  86. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 そのどちらの場合も検査の対象としてなし得るということであります。
  87. 北村哲男

    北村(哲)委員 そうなるのでしょうか。もう一度。所有しまたは管理する土地建物は立ち入りの対象になります、しかし、団体活動の用に供されている建物であっても所有でなく管理でない建物があると大臣は今言われました。そうすると、それは立入検査対象にならないことになりませんか。
  88. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 失礼いたしました。そのとおりでございまして、単にそれだけであっては立ち入りの対象にならない、こういうことであります。
  89. 北村哲男

    北村(哲)委員 私は、所有し管理しなくても団体活動の用に供されている土地建物だったら立ち入りの対象になっていいような気がするのだけれども、どうして書きぶりが違うのかなという点がちょっと疑問で、なかなか今の大臣のお話でも、やはりそう思われると思うのですね。当然、そこで大集会が行われた、何かあったか知らないといったら、行っていいような気がするのですけれども、どうですか。
  90. 山本有二

    山本(有)政務次官 報告目的あるいは危険の認定の目的、それぞれ各条文ごとに目的が違いますので、目的に応じてこの概念が異なる、こう考えていただきたいと思います。
  91. 北村哲男

    北村(哲)委員 まあそのように聞いておきましょう。  次に、立入検査という問題が時々問題になっている、またマスコミでも問題になって、学者も問題にしております。立入検査は確かにある部分では憲法違反のというか、憲法問題としても判例もあったりしますが、本法案立入検査が違憲ではないということはそれでよろしいのですが、そうでないとしても、憲法の定める個別令状主義という精神はどこかで生かさなくてはならないというふうに考えます。それはどのような形で生かされているのか。  これは私どもの修正案にも関係して、ちょっと質問のしづらい、するのもちょっと問題、自分にはね返ってくる問題ではあるのですが、最初から問題にしておったこともありますので、大臣の御見解をお聞きしたいと存じます。
  92. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 本法案における立入検査観察処分を受けた団体に対して行われるものでございまして、その処分の決定をする時点で対象団体所有しまたは管理する土地または建物立入検査を行うことがあるということにつきまして、準司法的な機関である公安審査委員会の判断を経る仕組みとなっており、慎重な手続が踏まれること、また立入検査につきましては、その事前と事後に公安審査委員会への通報を行うことを実務上予定していることから考えますと、適正に行われるものと考えております。
  93. 北村哲男

    北村(哲)委員 立入検査について、第三者が、当該物件が自己の所有物であってオウム真理教とは無関係であるというふうに言いたい場合が多いと思うのですが、その場合はその第三者は異議を申し立てることができるかどうかということについては、細かい質問ですけれども、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  94. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 行政調査としての立入検査は、公権力の行使たる事実行為であるわけでございますけれども、その内容が継続的性質を有していないために、行政不服審査法に基づく不服申し立てや行政事件訴訟法に基づく取り消し訴訟の対象にはならないわけでございます。  また、立入検査に不服がある者は、国家賠償訴訟あるいは立入検査拒否罪を審理いたします刑事訴訟、場合によっては担当職員に対する刑事告発におきまして当該立入検査の違法性を主張することができるということになっております。
  95. 北村哲男

    北村(哲)委員 再びちょっと言葉の意義について聞きます。  立入検査について、立入検査を妨害したり忌避したりした場合は懲役何年に処すという条項が、旧三十八条ですか、「検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一年以下」と。これは、「拒み、妨げ」はわかるのですが、「忌避」というのはどういうことを指しているとお考えでしょうか。
  96. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 立入検査の忌避とは、公安調査官や警察職員立入検査を直接的に妨害するのではなく、例えば、あらかじめ関係書類を隠匿するなど間接的な手段、方法により実質的に立入検査目的が果たせないような妨害行為をするということでございます。
  97. 北村哲男

    北村(哲)委員 先ほどの説明では、金庫をあけなさいと言われて、かぎが別にあるのをかぎであけなさいと言って、それを知らん顔したら、拒みあるいはこの場合に当たるというふうにされましたね。  ひとつ大臣のお考えを聞きたいのですが、コンピューターに入っているものを本人でなければ出せない場面があるわけですよ。それをコンピューターに電源を入れてキーをたたいて資料を出しなさいと言われて、私それは知りませんと言ったら、これはやはり妨害とか忌避とかになるんでしょうか。
  98. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 いわゆる行政行為としての立ち入りでございますので、相手が拒否した場合には、それはそれ以上要求はできない、こういうことでございます。
  99. 北村哲男

    北村(哲)委員 もう一つ例として、帳簿をコピーをとりなさいというふうに言われたらどうするかという御質問があったわけですよ。それについてはどういうふうにお考えですか。そこまでやる義務はないというふうにお考えですか。
  100. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 これも同様でございます。
  101. 北村哲男

    北村(哲)委員 それから、もう一点だけ聞きたい。  立入検査の拒否は、これは即その場でノーと言えば犯罪が成立すると書いてありますけれども、これはもう政務次官で結構ですから、それは現行犯逮捕の要件になるんでしょうか。
  102. 山本有二

    山本(有)政務次官 刑事事件に当たりますので、現行犯逮捕の要件に当たります。
  103. 北村哲男

    北村(哲)委員 わかりました。  杉浦先生、済みません、いつも最後になりまして。ちょっと間に合いませんでしたので。失礼しました。  終わります。
  104. 武部勤

    武部委員長 次に、坂上富男君。
  105. 坂上富男

    ○坂上委員 もういよいよ審議も大詰めに迫ったようでございます。今までのものを少し整理させてもらいますと、まず、オウムの集団は十六都道府県三十四カ所に及んで、これに対する反対対策組織は二百五十に及んでいる、これは大変な数でございます。これほど国民の皆様方が困っておられるという象徴なんだろうと思っております。出家信徒が五百人以上、在家信徒が千名以上、四百人逮捕のうち百七十人が教団に復帰している。こういう状況だという、この審議の中で明らかになったことでございます。  そこで、私のところに、インターネットで大変熱心に聞いておられる方が相当たくさんあるようでございますが、実はお二人から電話をいただきました。審議の状況は熱心のようでありますが、私たち国民から見ると、この法案が成立をして適用になったら一体どういうふうになるのかが全くよくわかりません、わかるようにひとつ国民説明してください、私のところへこういう連絡がありました。坂上、あなたは何で質問しないのかということも付言されておったわけでございます。  きょうは参考人からお聞きをいたしますが、まずこの法案の適用のシミュレーション、それを簡略にひとつ、ああこういうふうになるのかということをまずお答えいただきたいと思います。
  106. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 お答え申し上げます。  本法案は、過去に無差別大量殺人行為を行った団体が現在も危険な要素を保持している場合に、当該団体活動状況を継続して明らかにするための観察処分と、当該団体の危険な要素の増大を防止するために、土地建物新規取得禁止すること、あるいは既存の施設の使用を禁止することなどを内容とする再発防止処分、この二つ処分をとり得ることとしておるのでございます。また、処分を実効あらしめるために、公安調査官だけでなく警察職員による調査や立入検査も行い得ることとしておりますし、調査結果については関係自治体に情報を提供することになっております。  このように、この法案によりオウム真理教活動状況を公安調査官や警察職員による厳重な監視下に置きまして、その危険性の増大の兆候が見られればより強い規制に移れる体制がとられるとともに、調査による情報地域住民にも伝わる手だてが設けられておりますので、地域住民の方々の二十四時間の監視活動といったものは基本的にその必要はなくなるものと考えられておりまして、多くの国民の不安を取り除くことができるものと考えております。
  107. 坂上富男

    ○坂上委員 では長官、観察処分再発防止処分、これはどちらが先になってもいいんですか。
  108. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 それぞれ別個の処分でございますが、とりあえず観察処分によってオウム真理教の実態を解明するということが重要であろう、このように考えております。
  109. 坂上富男

    ○坂上委員 では、どちらが早くなるかわからぬ、こういう答弁のようでございます。  そこで、いわゆる団体、オウムの場合、オウムの団体構成員すべての住所氏名、これを明らかにする、報告を求める、こうなっております。これについては刑罰規定がないようでございます。ただ、再発防止処分の適用の条件にもなってはおるようでございます。しかし、これは、公安調査庁長官が、地方公共団体の請求によって、公共の安全を害するおそれがあると認める事項、これは聞かせなくてもよろしい、こう書いてあるんですね。  実は、住民の方々が一番心配しているのは、公共の安全を害するおそれがオウムの場合ないだろうかどうだろうかということで監視しているんじゃないですか。そうだとするならば、このことを隠しておいたんでは、住民は、もう本当に大事なことは隠されているんだ、我々に本当に実態を、透明性を明らかにして心配ないと言い切れるか、こういう問題が私はやはり残るかと思うんです。でありまするから、これらの集団によって公共の安全を害するおそれがあるということは、やはり住民に聞かせなければいかないと思いますが、これはどうですか。  それから、ちょっと、警察の警備の方になるんでございましょうか、例えばこういう事実を報告だけ受けても、オウムが何をするかわからぬので心配なわけです。だから、これをもう住民の皆様方にかわってきちっと警備なさるんでございますか。これはどういうふうに見たらいいんでしょうか。これだけの処置をすれば安心だと言うけれども、これを見たところは、私は、やはり依然として住民の皆様方が監視しなければだめなんじゃなかろうかという感じがしているんでございますが、さっきのシミュレーションの話を聞いても、どこで住民が安心できるんでございますか。警備はきちっとして、そして万一のことがあったら警察の方から連絡しますと。  それから、虚偽報告、うその報告があった場合、これを住民に聞かせるんですか、うそのことだと。こういうことも、これはどうなるんですか。
  110. 但木敬一

    但木政府参考人 まず、私の方から三十一条の関係について御説明申し上げたいと思います。  三十一条には、委員指摘のように、「個人の秘密又は公共の安全を害するおそれがあると認める事項を除き、」とございます。ただしこれは、当該関係都道府県または関係市町村にその調査結果を公表することによって公共の安全を害するおそれが出てくる、そういう事項はだめですよという趣旨でありまして、もちろんオウムの実態が公共の安全を害するような場合には、その害するような状態をそのまま御報告いたします。  ただ、ここで除外しているのは、例えばそれを関係地方公共団体に申し上げた場合に、それがオウムの次なる行動を助長するとか、あるいはそれによってオウムが逆にその証拠を隠匿するとか、公表することによってそういう公共の安全を害するおそれがある事項、これがだめだと言っているわけでありまして、そのように御理解いただければと思います。
  111. 坂上富男

    ○坂上委員 まだ答弁も続くんでございますが、ちょっと官房長答弁について。  これは、いわゆるこれを発表することによって公共の安全が害されることがあるということ、また続くという場合だ、こうおっしゃっているんですが、ちょっと想像できませんが、具体的に言ってみてください、具体的に。
  112. 但木敬一

    但木政府参考人 例えばオウム側の施設の状態がどうであるというようなことは、もちろん関係地方公共団体に申し上げるわけであります。  ただし、オウム側が現在、例えば危険な材料をどこに隠匿しているかというような場合に、その隠匿場所を例えば移転の最中であるというような場合に、なおかつ移転の最中であるというようなことまで地方公共団体に申し上げるかというようなことになると、それによって公共の安全が害されることがある、その場合には、その段階では申し上げられない場合。すなわち、公共の安全を害するおそれがある事項というのは、オウム側が公共の安全を害しているという話ではなくて、むしろ公表することによって公共の安全が害される、そういう事態に現在あるときは、その事項についてまでは開示できません、こういうことであります。
  113. 金重凱之

    金重政府参考人 先生の方から、オウム真理教に対する警備、きちんとやるのかどうか、こういうことの御質問がございました。  私ども警察としまして、オウム真理教の動向に重大な関心を払っているというのは当然のことでございまして、そこで、住民の平穏な生活を守る、公共の安全を確保するというような立場から、オウム真理教施設の周辺におきまして、従来から、必要に応じて二十四時間態勢の警戒警備活動というのをやってきておるわけでございます。例えば、臨時交番を設置したりとか、パトロールあるいは監視活動、検問を強化するというようなことをやったりいたしておりまして、トラブルの防止というようなことと同時に、オウム真理教の違法行為みたいなものが発生した場合の厳正な捜査ということも含めて、地域住民の不安感の除去に努めておるということでございまして、この姿勢につきましては今後とも変わらない、こういうことでございます。
  114. 坂上富男

    ○坂上委員 今でも警備はなさっているんだ、こういう話ですね。したがって、今後もまた続けるんだと。  だけれども、住民の方は心配だから、今言ったような、大変たくさんの皆様方が自衛権行使のために組織をつくって、寝ないで警備をなさっておるわけでございます。でありますから、どうもこの話を聞いても、いわゆる観察処分を受けて、会員の名前がわかった、住所がわかった、そんなことがわかったとしましても、また立ち入ってそういう調査をしても、調査結果を報告だけであって、一体何をされるかということは住民にとっては本当に恐怖の的になっているわけでございますから、果たしてこれでいいんだろうか。  それから、今度、再発防止処分が出たとしましても、確かに建物の使用を禁止はされるけれども、信者の自宅においてこういうようなことがなされないとも限らぬわけでございます。  でありますから、こういうことに対する警戒というのもきちっとなさらぬと住民の皆様方は大変安心できないんじゃなかろうか、私は実はこう思っておるものでございまするから、本当に皆様方がこれだけの法律を適用すれば、住民の皆様方、どうぞうちにお帰りになって安心してお休みになっても結構でございますということを言い切れるんだろうかといいますと、本当にそうなんだろうかということに、よくよく読んでみると疑問を感ずるんですが、これは本当に心配のないということをどういう観点から言い切れるんでございましょうか。どうぞ、ひとつ公安調査庁あるいは警察当局から、もう一遍御答弁いただきたいと思います。
  115. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 現在の住民の皆様がオウム真理教に対し非常に不安と危惧の念を持っておられます最大の原因は、拠点の施設を設けまして、その拠点施設のありようが、高い塀で囲ったりしてその中の利用状況が明らかでない、一体どういうふうに使われているのかよくわからない、したがってその施設に対する出入りなどを監視小屋を設けて監視しておる、こういう実情にあると思うのでございます。  関係自治体の長に情報提供できる中身としまして、いろいろ考えられるわけでございますけれども、まず、その施設の具体的な利用状況とか、仮に立入検査をしたのであれば、その施設の中にどのような物件があってそれがどのように使われておるのかということについては関係地方自治体に情報提供いたしまして、それを経由して地方の住民の方にも伝わる、このようになっておるわけでございまして、不安と危惧の念の相当部分は払拭ないし軽減できるのではなかろうかと思うわけでございます。  かつ、再発防止処分をかけることによりまして、その団体危険性程度に応じまして、その危険性が増大するということを防ぐような処分が可能になるわけでございますので、やはりその点も、社会的な不安感の増大を防ぐ、それを軽減することに役に立つ、このように考えておるわけでございます。
  116. 坂上富男

    ○坂上委員 私は、やはり住民の方は、単に動静を調査するというのじゃなくて、監視をするのじゃなくて、また再び大量殺人みたいな不法行為が起きることを心配して警戒しているんだと思うのですよ。動静を監視しているのではなくて、再びこのような犯罪を引き起こされることを不安に思ってやっているんだろうと思っているのであります。  でありますから、私は、やはりどうもちょっと皆さんが考えておられることと住民の皆様方が心配しておられることは、まだぴしっと一致していないのではなかろうかと思っておりますが、それ以上の答弁、期待もできないのだろうからいたし方ありませんけれども、しかし、これは本当に住民の気持ちを、安心してもう任せていいと言い切れるかどうか、いささか疑問だと思っておるのでございますが、これは警察当局、何か御意見ありますか。
  117. 金重凱之

    金重政府参考人 お答えいたします。  この法案施行されまして、オウム真理教観察処分が適用されるというようなことになりますと、警察立入検査等を行うことができる、こういうことになります。そのことは、すなわちオウム真理教の実態というのがガラス張りになるというようなことであろうというふうに思っておりまして、もちろん警戒警備活動というものは必要に応じて私どもやらなければいけないところでございますけれども、そういうようなオウム真理教の実態等がガラス張りになるというようなことから、住民の方々の不安感の除去につながるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。
  118. 坂上富男

    ○坂上委員 ちょっと賛同いたしかねます。  さて、警察側は公安調査庁長官に、いわゆる観察処分あるいは再発防止の請求をすることが、意見を述べることができる、こうなっておるわけでございます。これはぜひ、本当に万遺漏ない調査をしていただかなければいかないわけでございます。  特に私が思っておりますことは、あれだけあの当時、一つは緒方さんの盗聴事件が起きました。そしてそれにかかわりまして、坂本弁護士の扼殺という大変無惨な事件が起きておったわけであります。しかし、警察当局は、なかなかこの捜査の開始までに至らないという状況であったわけであります。そういうような状況から見てみまして、警察の立場としては、今後は一生懸命国民に、坂本事件のような事態が起きないようにきちっとしますと確約してもらわなければならないのでございます。まさにあのときオウムのバッジが坂本さんの部屋に落ちておったということも言われておるわけでございますが、それすら捜査したのかどうかわかりませんけれども、問題が指摘をされているわけです。いわゆる盗聴問題に対する弁護士活動をなさっておったものだからというような意向があったとも聞いておるわけでございまして、そういう点で、公安調査庁警察当局が果たして本当に的確に意見を言うことができるのかということを私は非常に心配しているわけであります。  この間、一般質問の際も、実は当時、もう再びないだろう、自戒をして絶対に不祥事はないだろう、こう思っておったら、送検されてから十時間もたたないうちにいわゆる恐喝未遂事件が起きた。その恐喝の未遂は、いろいろ調べてみたら、十月五日なんですね。十月五日に脅迫の害悪の告知がなされている。直ちに、一日二日で上司にその報告があって、犯罪として探知されたのだろう、私はこう思っているわけです。それが、送致された後、逮捕した、発表した、こうなっているのですね。これは、隠せたら隠しておこう、しかし、どうもいろいろ検討すると隠し切れないようだ、またこれが暴露されたら大変になる、よって逮捕した、そして発表した、こうなるのじゃなかろうか。  私は、実はその前に官房長に質問をしておるわけでございまして、本当に警察はこの法律を遂行するということについて責任を持ってやれるのかということになりますと、率直に言って、私は極めて不安を感ずるわけでございます。そういう観点から、警察は、今言った具体的な指摘について、一体どんなふうに御認識をなさっているのか。  しかも、送検された不祥事件は強制捜査でやるべきだと私は指摘したのでございますが、的確な答弁がございませんでした。そこで、検察庁に送検になったわけでございまして、刑事局長が御出席でございますが、これは本当に、もう報道でも明らかになって、やはり身内のことだからそのままいったのじゃなかろうか、こういうようなことになって、本来検察庁がやるべきであった、こういう指摘もあるわけでございます。  検察においては、これから十二月何日になると時効になるのだそうでございますが、国民の立場に立っても、強制的な捜査はやられるべきなんじゃなかろうか、これが捜査あるいは捜査官庁に対する信頼を取り戻す第一歩になるのじゃなかろうか、私はこう思っておりますが、警察当局と、ひとつきょうは刑事局長から的確な御答弁をいただきたいと思っております。  私はいつも言っているのですが、証拠と法律によって適用されると思いますはもうわかっておりますから、どうぞ本当に決意をこの際明らかにしていただいて、質問を終わりたいと思います。
  119. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 今お尋ねの神奈川県警をめぐる一連の不祥事でございますが、検察庁といたしましても、本来法を守るべき立場にあり、かつ、違法があれば厳正に摘発するという立場にある警察官による犯罪であるということで、大変重大な事件であると認識しております。  現に、これまで送致を受けた事件につきまして、既に処分したものもございます。また現在、横浜地検におきまして、送致を受けまして捜査中の元神奈川県警本部長らによる犯人隠避と証拠隠滅事件につきましても、徹底した捜査を行って、事案の全貌を解明した上で、厳正、公平に処分するものと承知しております。  ただ、先生お尋ねの強制捜査を行うかどうかという点でございますが、具体的な事件の内容、方法にかかわる事項でございまして、私からどうするというようなお答えを差し上げるのは控えたいと思っております。
  120. 林則清

    ○林政府参考人 先生から坂本弁護士事件についてお話がございました。  これにつきましては、先生と少し認識が違うかもわかりませんが、実態としましては、神奈川県警察において、認知後速やかに百二十名体制、相当大きな体制でございます、そういった捜査本部を設置して捜査を推進したものでありまして、先生が言われる、着手がおくれたということはございません。  本捜査については、国会でも巷間でも、事件発生時の見立てが甘かったのではないかとか、あるいは積極的に捜査しなかったのではないかとか、そういったさまざまな論評とか批判がなされたところでありますけれども、実際のところ、そういうことはなかったわけであります。  事件発生当時、オウム真理教というものがあれほど凶暴な犯罪を敢行する集団であるという認識は十分に持っていなかったというのは事実であります。神奈川県警におきましては、当時、拉致を含めたあらゆる可能性を視野に入れて捜査を推進した。そこで、さっき御指摘がありました、プルシャが遺留されておった、それから、坂本弁護士が当時オウム真理教の被害者の会の救援活動に従事し、教団と対立関係にあったというようなことも詳細が明らかになって、教団に力点を置いた捜査を推進したということであります。  それからもう一点、先生……
  121. 武部勤

    武部委員長 簡潔に御答弁ください。
  122. 林則清

    ○林政府参考人 緒方事件に関係ある云々ということでありましたけれども、それで消極的だったのじゃないかというふうにとれるような御質問がありましたけれども、捜査において、被害者がどういう立場にあるかということを一々、そういうことによって左右されるようなことは断じてありません。
  123. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。
  124. 武部勤

  125. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党木島日出夫でございます。  本日、政府団体規制法案に対して、自民党、民主党、公明党・改革クラブ及び自由党の四会派から共同修正提案が出されてまいりました。そこで、私は、その共同修正案について、提案者に幾つか質問をしたいと思うのです。  第一点でありますが、共同修正提案の第一に、政府提出法案の第一条「目的」の中に「例えばサリンを使用するなどして、」という言葉を挿入するというのがあります。  どうなるかといいますと、こうなります。「目的」「この法律は、団体活動として役職員又は構成員が、例えばサリンを使用するなどして、無差別大量殺人行為を行った団体につき、その活動状況を明らかにし又は当該行為再発防止するために必要な規制措置を定め、もって公共の安全の確保に寄与することを目的とする。」  こうなるわけですが、こういう文言を挿入しようとする、その趣旨目的は何でしょうか。
  126. 北村哲男

    北村(哲)委員 お答えします。  目的に「例えばサリン」などというふうに入れたのは、この法律対象がオウムに限るということを、限りなくそれに近くするという趣旨で入れたのであります。  「例えば」ということ、単にサリンを入れるなどという形で本当は入れたかったのですが、法技術上、どうもそういうふうに入れてしまうと、また特定のものだけということになって、昨日も学者の先生が言われたように、一般法としての意味がなくなるということで、「例えば」ということを入れざるを得なかった。  しかし、この法律の中にサリンという言葉が入ったということは非常に大きな意味があって、共産党さんもサリン対象とするということで法律をつくっておられますけれども、考え方は、政治目的ということを離れて、サリン集団というか、オウム集団に限るということに限りなく近づけるために最大限配慮したという意味での修正でございます。
  127. 木島日出夫

    ○木島委員 政府案による規制対象団体をオウム集団に限りなく近づけるために、目的条項の中に「例えばサリンを使用するなどして、」という文言を入れた、こういう御回答ですね。限りなく近づけるためという、そこがちょっとひっかかるんです。  先ほど理事会で私どもに配付されたペーパーによりますと、「一 目的規定 (一)無差別大量殺人行為を行った団体を、「例えばサリンを使用するなどして」の文言を加えることによって限定することを明らかにする。」こういう言葉になっているんですね。ところが、先ほど提案者から読み上げられた提案趣旨説明には、全くそういう趣旨のことを書いていないのですよ、限定するということが。  ですから、答弁の、限りなくオウム集団だけを対象にしたいんだということと、このペーパーと先ほどの提案理由、ちょっとずつニュアンスが違うので、そこを詰めてお聞きしたいと思うんです。
  128. 北村哲男

    北村(哲)委員 限りなくと申しましたのは、ここだけではなくて、私たちは、この法律全体をいろいろながんじがらめに縛ってオウムから外したくないという気持ちで修正に臨みました。しかし、修正ですから、一定の限界はあります。ですが、今の「サリンを使用するなどして、」というのは第一条「目的」に入れました。たしかその後、第四条だと思いますが、過去十年に限ると、それ以前のものは対象にしないという意味で、時期的な意味で限定をしました。また、未来については、ある意味での見直し規定、廃止を含む見直し規定という形で限定を加えた。過去、未来そして目的という形で、限りなくというのは、私たちの修正としてできる最大限の配慮をしたという趣旨で限りなくという言葉を使ったのであります。
  129. 木島日出夫

    ○木島委員 果たしてそういうお気持ちがこの文言に表現されるだろうかということでお聞きしたいのですが、よく聞いてください。  「団体活動として役職員又は構成員が、例えばサリンを使用するなどして、無差別大量殺人行為を行った団体につき、」規制を定めるんだということでしょう。そうすると、「例えば」という言葉が載っかっているということはどういうことかというと、例示ですね。「例えばサリンを使用するなどして、無差別大量殺人行為を行った」という言葉になってしまったがゆえに、サリン使用団体は一つの例示にすぎない、これ以外のいろいろな団体があるんですよということを逆に示す言葉に日本語としてなってしまうんじゃないのですか、「例えば」という言葉が入ってしまったために。そこをどう答えられますか。
  130. 北村哲男

    北村(哲)委員 私はそういう趣旨で入れたのではなくて、それはもう言葉の問題ですから、例示であることは確かです。では爆弾は対象にならないかと言われれば、なると思います。  しかし、この法律の中にサリンという言葉をどのように挿入するかということで苦労しました。それで、このあたりが限界であるということで入れたので、逆にとるということ、それは法律ですから、裏表はありますから、とられることもあり得ますが、通常読まれると、ああ、サリン団体だなというふうにこの法律目的を読めるというふうに私どもは思っております。
  131. 木島日出夫

    ○木島委員 ですから私は、「例えば」という言葉を入れちゃったために、そうじゃないテロ、爆弾による大量無差別殺人、これもあるんですよということを逆に意味してしまうということを言うんですよ。  だから、この法案の一番最初の審議のときに、法務大臣も、爆弾テロ事件も入るんだという御答弁をされて、次の日にやや答弁のニュアンスを変えて、現在日本にある対象団体としてはオウムしか想定されないという御答弁になったんですね。そういう難しい、大変微妙な問題なので、私は詰めているんですよ、「例えば」と入っちゃうと逆になると。例示だということを示しちゃうんです、「例えば」という言葉が入っちゃうことによって。  だから、これは、そういうお気持ちなら、オウムに絞りたいんだというお気持ちなら、ストレートにそれを表現する日本語として「例えば」という言葉は取らないといかぬのじゃないか、逆になるのじゃないか、そういう質問なんです。
  132. 北村哲男

    北村(哲)委員 木島先生の思いがちょっと私どもには通じないのですけれども、というのは、日本語としてというか、やはり私どもは、たとえオウム集団としてもサリンだけには限れないという点があります。これは、法文の解釈あるいは目的からいって、サリンだけなら、ほかの爆弾はどうなるんだ、かといって、ではそれ以外の、他団体の方に波及させないにはどうするかという意味でつくったわけですから。  それと、法文の様式上、今言ったように、サリンをまくなどしてというふうにするならば、これはもう目的を限定した法律になってしまう、ですから例示が限界であるというふうに私どもは考えた、それが修正をつくる限界であるというふうに考えたという以外に言いようがないのです。
  133. 木島日出夫

    ○木島委員 もう一点、それに関連して聞くのですが、もし、修正案を提案した皆さんの意図が、本当にこの法案をオウム集団だけに適用したいのだということであるならば、今問題についていろいろ日本語の表現上の問題を私指摘しましたが、それを目的の第一条に入れることによってそれが表現されるんだろうか。四条の定義にこそ入れなければ縛れないのじゃないか。対象団体を限定することは、本当のところ法律上はできないのじゃないかと思うんですが、なぜ四条の定義のところにこの「サリンを使用するなどして、」という言葉を挿入しないで、一条の目的の方にのみ入れたのか、その意図は何でしょうか。
  134. 北村哲男

    北村(哲)委員 四条に入れることについても検討をしました。しかし、四条は、定義というか、政治目的という破防法の条項が入っております。そういう中にサリンという目的をすると、その基本的な構造そのものを全部変えなくちゃいけないという形になって、まさに共産党さんの案のようになってしまう。そうなると、それ以外の、爆弾とか機関銃だとかというものについては全然除外しなくちゃいけないのかということになるから、結局目的の中で、緩やかであるけれども大枠で、さっき言ったように、別の、十年前あるいは将来という形で、せめて目的の中で決めて、この法律はオウムを対象にしているんですよということを政府案よりもさらに縮めたという意味で、意味があります。  しかし、おっしゃるように、サリンを使った団体というふうに限定してしまうということまではできなかったことは確かです。しかし、そうするとはみ出てしまう部分ももちろんあります。サリンになると、先ほどから言いますように、爆弾はどうなんだ、機関銃はどうなんだという形になると、やはり法律形式としてはそういうものも入れざるを得ないだろう。そうすると、目的で、例えばサリンなどというふうな形での限定がもう限界であったというふうに聞いていただきたいと思います。
  135. 木島日出夫

    ○木島委員 四党修正案は、無差別大量殺人行為を行った場合を、政府原案は過去ずっといつまでもさかのぼったわけでありますが、それを過去十年で切ったわけですね。それは定義の上で切ったわけですね。ですから、定義の上でちゃんと限定したわけだと思うんです、それ自体は。  しかし、それは私、ここでも質疑に立って言いましたけれども、過去十年に絞っても、例えば銃器等による無差別大量殺人事件は、二人以上の不特定多数に対する殺人を犯した団体というのはあるわけですよ。そうすると、オウムに限りなく限定したいということで十年に絞っても、定義の上で絞ってもやはり絞り切れない。それで、テロ集団が対象になるのかならぬのかが、この法案審議では一つの大きなテーマとして鋭く論じられたと思うんです。  ですから、定義の中で過去十年というふうに絞れたんですから、オウムに本当に規制を限定したいというのであれば、その定義の中にさらに加えて、サリン等を散布することによってという修飾語をつけることが、提案者の意図に最も沿う立法のやり方ではないかと思うのですよ。どうですか。
  136. 北村哲男

    北村(哲)委員 その点も当然考えながらやったのですけれども、先ほどから申しますように、十年というのは本当に一般的ですね、数というのは一般的ですから、定義に入れても本当に問題はないと思うのですけれども、この四条の中にサリンということを入れると、やはり一般的定義としてはもう成り立たないといいますか、限界があるというふうに、その限界というのは修正の限界ですよね。  修正の限界というのはおかしいですけれども、修正は、御存じのように、相手ありこちらあり、もともとこちら、我々がつくったのではない、政府案に対する修正ですから、その体系を根底から崩すような修正はやはりどうしてもできないから、影響のないところでかぶせていかざるを得ないというのがこれの、あなたのおっしゃることはもちろんわかるし、追求はしましたけれども、そこはできなかったというふうに聞いていただければよろしいかと思いますね。
  137. 木島日出夫

    ○木島委員 私どもの案は、サリン防止法を基礎にしていますから、サリン等を散布することによって不特定多数の者を殺害した団体で、その危険がある団体というので非常にすっきりしているのですが、政府案は、確かに破防法の条文を使っているのですよ。今おっしゃるように、破防法四条一項二号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動、こういう概念が破防法の概念そのものですから、それを持ち込んできてしまって対象団体を絞り込むというのが政府案ですから、それを私どもは批判しているのですが、それは意見が一致していないところですから棚に上げたとしても、四条の、この法律において無差別大量殺人行為とは、破防法四条一項二号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動であって、かつサリンを散布して不特定多数の者を殺害し、またはその実行に着手してこれを遂げないものということはできるではないですか。非常に素直な修正ではないですか。  私は認めないですよ、破防法を前提にするような法律は認めないのですが、仮に、もし皆さん方がこの政府法案破防法を土台にしているからもう修正の限界があるので、限界の枠内で物を考えざるを得ないといっても、その四条の不特定かつ多数の者の殺害の上に、サリン等の散布によってという修飾語を挿入すれば、皆さんが考えておられる、オウムだけを規制したいのだというのであれば、そういう立法技術はできるではないですか。全然修正の限界なんかは超えていないではないですか。  私は、そもそも修正には限界はないと思います。全面修正だってできると思うのです。私は破防法を認めませんが、皆さん方、破防法の体系を認めたってそういう限定は可能ではないか。だから、なぜ定義のところに入れることができないのかというのですよ。目的条項にのみ入れて定義のところに絞りをかけないのか。そうじゃないと、法の実効性が全然ないではないかということなんですよ。
  138. 北村哲男

    北村(哲)委員 余り繰り返しになってもしようがないのですけれども、定義となると、やはり法規範は一般的、抽象的である。特定のものだけに向けてやる法律ということは通常つくってはならないという立法上の普通の原則があるわけですけれども、そこにサリンということを入れてしまうと、あいつだけだというふうになってしまう。だから、やはり一般法としての体裁、抽象的定義、一般的定義というものを定義としては置かなければいけない。だけれども思いは、であるということで、そういうことで理解していただく以外はないのですよね。  だけれども、特定のものをやっつける法律だってできていいではないかという先生のことになってしまうわけですけれども、それはいかぬというのは、ずっと今までの審議の中でだめではないかと言い続けてきたのがこの委員会での合意なんですね。そこの違いだと思うのですよ。それでもう……。
  139. 木島日出夫

    ○木島委員 そういう問題提起を出されましたから、それでは共産党の法案は、サリンを散布することによって不特定多数の者を殺害したという概念で、これは決して、特定のオウムという名前を出していないので、私は一般的定義だと確信しているのですが、では、共産党の法案提案者である東中議員の方から、その問題についての見解をお聞かせ願いたいと思います。
  140. 東中光雄

    東中議員 サリン等による殺人行為ということを法律名にして、それの被害を防止する法律全会一致で、オウムのあの問題が起こったときに、要するに五年前の三月に起こって、そして四月にサリン等による人身被害防止に関する法律をつくっているわけです。だからサリンを散布すること、それから散布して不特定多数の殺人をやった行為、それをやった団体を、これは今はオウムだけしかいませんよ。しかし、その法律をつくれば、サリン等の散布によって不特定多数の殺人行為をやった団体というのは抽象的なので、立法上できないはずがありません。  現に、サリン等による人身被害防止に関する法律はそういう概念でつくっているではありませんか。その後また出てくるかもしれません。だから、この法律は時限立法になんかする必要は全くないので、オウムがなくなったら、それはオウムに適用されなくなるだけで、次にまた何かが出てきて、サリン等ですから、サリンと同じような、あるいは力を持ったような毒ガス、サリン等ということについての定義がこの法律にちゃんとありますから、これは一般的な問題ではありませんか。そんなものは私は全く理由にならないのではないかというふうに思います。
  141. 木島日出夫

    ○木島委員 私も、法律論としては今の東中議員の答弁の方が正解だと思うのですよ。サリン法があって、サリン法をつくったときに、それは想定はオウムでしょう、サリンをばらまいたのはオウムですから。しかし、つくられた方は、サリンという物質を規制しようということでつくった法律。今度の我が党案も、サリンを散布して不特定多数の者を殺害した団体、そしてこれは一般概念ですよ。個別概念というのは、オウムという名前を法律に書き込むというのが個別措置法なのでしょう。  きのうここに参考人としてお呼びした憲法学者は、そういう措置法でも憲法違反ではないと言いましたよね。それは、個別のオウムという名前を入れた法律でも、本当に必要なら違憲ではないときのう言いましたよ。しかし、我々の法案は、サリン等を散布することによってということで、一般法の形をきっちりと整えているのですよね。今の東中さんの答弁、一般法ではないか、そういう言葉を挿入することに何ら差し支えないではないかというのが私は妥当だと思うのですが、北村提案者お答えを。
  142. 北村哲男

    北村(哲)委員 定義の中に、サリンを散布する等とか書くと、将来もサリン等を散布しない限り適用できなくなるということもあると思うのですよ。だからオウムは、現に機関銃をつくったり、あるいはその他爆弾のようなものをつくろうとしたりということで、どういう手段に出るかわからない。きのうの参考人の江川さんも、一つ法律をつくればすぐ次の手を考えるのがあの集団だ、また別の方法を考えるだろうというふうなことも言っておられました。  ということですから、今の問題は、ああいうふうに定義で限定してしまうと将来もくくってしまう、一般的な無差別大量殺人というものの方法までサリン等に区切ってしまうことになってしまう、そういう点があると思います。
  143. 木島日出夫

    ○木島委員 しかし、この政府法案も我が党の法案も将来何をするかは全然争点にしてないのですよ。過去にどういう無差別大量殺人事件をやったかということと、そういう危険性が今残っているかどうかが対象団体として適用するかどうかの唯一のメルクマールであって、その団体が将来どんな犯罪行為をやろうとするかということはこの団体規制要件には全然入っていないのですよ。だから、今の答弁では答弁にならないと思うのですよということを指摘しておいて、時間が迫ってきてしまっているので、二つ目の問題について質問したいと思うんです。  四会派の修正案、読ませていただきました。しかし、この修正案は、政府法案団体規制法案の基本的骨格、これは、対象団体の定義や規制の手続等において破防法枠組みを基礎として、公安調査庁公安審査委員会を基本的な規制機関としていること、この問題については何らの修正が加えられていないとお見受けをいたします。  そこで、民主党さんにお聞きしたいんですが、民主党の当初の九項目の修正要求を見ますと、一つには、第四条の、破防法四条一項二号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動、この破防法四条一項二号ヘという言葉を削除するとか、あるいは最後のところに、公安審査委員会国家公安委員会とする、こういう修正を出されておりました。  私は、民主党さんの当初の修正要求というのは、破防法公安調査庁枠組みは使わないということだったのではないかと理解をしたわけであります。非常に大事な点であります。実は、私ども日本共産党の案もそういう案なわけですね。破防法公安調査庁の体系は使わない。  民主党さんの当初の修正のお考えは、やはり基本は破防法公安調査庁は使わない、それは切り離すというお考えだったことには間違いないですか。
  144. 北村哲男

    北村(哲)委員 結論的にはそのとおりでございますが、破防法体系は使わないというのは、確かにこのオウムに対しては、かつて公安審あるいは公安庁は効力を表しなかったというふうな問題、それから、もっぱら破防法の存続を前提としてのみ存在する省庁である、ですから宗教団体には若干ずれがあるんじゃないかということで、確かに考えました。  しかし、その思いは、この四条の中で破防法を入れることによって、その範囲が広がるんではないかということです。政治的目的ということで広がるのじゃないか。確かに公安審は、政治目的団体であるというふうに認定して、しかし解散指定はしなかったということで、認定はしています。しかし、それに対する多くの反論もあったはずです。うちは宗教団体であって政治団体ではないんだという反論はあったはずですけれども、そういうことはあったにしても、私たちの思いは、破防法体系は絶対使わないんだ。それは、使わないんだというのではなくて、思いは、あくまでオウム教団に限るという意味で、そういう政治目的を外して、オウムということを何とか閉じ込めることはできないかと考えたわけです。  その思いが、さっきから言っておりますように、目的とか、あるいは過去十年とか、将来の時限立法とかということによって固めることができたので、だから破防法体系をそのまま維持してもいいだろうというふうに考えたわけです。
  145. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、民主党さんの当初のお考えも、決して破防法公安調査庁の体系は使ってはならぬということじゃなくて、オウムを規制したいというのが思いなんだということだった、そういうことなんですか。  そうすると、今、民主党さん、四党修正法案はまさに破防法公安調査庁の体系をもろに使う、そういう体系ができ上がって、骨格には何ら変更のない修正になっているというのですが、それはもうよしとする、今までの民主党の考えと基本のところでは変更はないんだということなんですか。
  146. 北村哲男

    北村(哲)委員 政治目的、政治集団ということで固めてしまうという破防法があります。片や宗教目的というので、重複する部分がありますよね。ですから、その政治目的ということをもろに四条に入れて、ほかのところを全然修正しないと、やはりずれている部分が出てくるんじゃないかということを考えたわけです。  今言ったように、やはりそこで別のところで封じ込めることができるならば、むしろ警察一本よりも、公安調査委員会のような準司法組織的な組織を使った方が、使った方がというよりも使ってよろしいのではないかということで、その考え方をやめるのに別に大きいちゅうちょはありませんでした。
  147. 木島日出夫

    ○木島委員 実は、私、先日この委員会でも指摘したんですが、この政府法案は、第四章、公安調査官による調査という項目を入れております。これは現行破防法と全く同じ条文、一言一句変わっていない。  実は、この調査なるものが、今、大変な憲法違反の、乱暴な、不当な、違法な、スパイなどのような調査をやっていると私も指摘しました。あのオウムの事件が起きたときに同時並行で起きていた神戸の阪神大震災のボランティア活動団体を事細かく調べ上げようとしているとか、サッカーくじに反対するPTA連合会なんかも調べ上げようとしているとか、東京弁護士会まで調べ上げようとしている、それがいかぬじゃないかと。その根拠がこの破防法第四章の「調査」にある。  それで、この法律はそれが全くそのままなんですね。そういう問題に対して、私はこんなのはおかしいじゃないかと指摘したんですが、では、その問題、こういうことをやっている公安調査庁ということに対して民主党さんはどういう認識なのか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  148. 北村哲男

    北村(哲)委員 ちょっと済みません、質問を簡単にもう一回。余計な人が来て僕に余計なことを言ったので、ちょっと聞き取れなかったのです。申しわけありません。
  149. 木島日出夫

    ○木島委員 要するに、この政府法案は、第四章で公安調査官による調査というものを全部入れています。それは現行破防法の第四章「調査」と全く同じ条文なんです。それで、この公安調査官による調査こそが、今、サッカーくじに反対する団体を調査してみたり、阪神大震災のボランティア活動を調査してみたり、とんでもない、違憲、違法、無法なスパイ活動をやっている根拠条文になっている。これがそっくり入ってきている。そういう危険な活動をしているじゃないかということを私指摘したので、そういう公安調査官の現状に対して民主党さんの認識をお聞きしたいというわけです。
  150. 北村哲男

    北村(哲)委員 その点については、そのまま受けるわけにはいかないんです。  私ども、公安調査庁の役割というのは、やはり公安調査庁それから公安調査委員会という法務省の下にある準司法的な組織であるということ、それから、純然たる調査機関であること。  やっていることは、中にはそういうこともあるかもしれません。しかし、このオウムに関係しては、あのときに破防法の解散指定をしなかったというのは、やはりそこに、あの「明らかなおそれ」というものに対する正確な解釈をされた公安調査委員会の判断というのは、それなりのチェック機能を働かせた、理性の働かされた判断であるというふうに私は考えておりますので、そういうふうにけしからぬ団体だというふうに、すべてをそれによって決めつけるわけにはいかないと私どもは思っております。
  151. 木島日出夫

    ○木島委員 もう時間が来たようですから終わりますが、私どもは、やはりそういうことをやっている公安調査庁破防法体系を使うわけにはいかないということを最後に申し述べまして、質問を終わらせていただきます。
  152. 武部勤

  153. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  まず、この法案に入る前に、警察庁の官房長に来ていただいていますが、一点だけ。  先ほど同僚議員からも出ましたけれども、先日のこの法務委員会の議論から、さらに今度は、不祥事が発覚していたそのときに、女性同僚の警察官を恐喝する未遂事件で二人の方が逮捕されている。また、小さなことだというふうに決して言えないのは、五十八歳の警部が仕事の帰りにワンカップのお酒を飲んで横転事故を起こして、これも公表していなかったというようなことが相変わらず続いているんですね。  これを前回私は、組織の体質に起因するんじゃないか、ここまで組織ぐるみの証拠隠滅などが進んできている以上、この法案でも大変な権限がまた付与されるわけですから、組織の体質というふうににらんで、厳しく襟を正してほしいと指摘したんですが、いかがですか。
  154. 石川重明

    石川政府参考人 神奈川県警察におきまして、今回、一連の不祥事案が続発したほか、不祥事案の再発防止に向けて県警が挙げて取り組みを始めて一生懸命やっている、そうしたさなかに、今お話のございましたような恐喝未遂事件あるいは飲酒にかかわる交通事故というものが発生をいたしました。委員指摘のような御批判を受けるに至ったということは、まことに残念なことでございます。  ただ、この恐喝未遂事件について、隠したんじゃないか、隠そうという意図があったんじゃないかという点は、いささか私どもとしても、ちょっと経緯を御説明したいと思うんですが……(保坂委員「いや、いいです」と呼ぶ)これは、事案をきちっと捜査して共犯者がいることがわかったので、送致をして、すぐ逮捕するとともに発表した、こういうことでございます。
  155. 保坂展人

    ○保坂委員 極めて残念なことではなくて、組織の体質というところに踏み込まない限りこの問題の解決はないということをさらに指摘して、法務大臣に、この法案内容の一番入り口のところで、ちょうど三回目になってしまうんですが、もう一度復習をさせていただきたいと思うんです。  一回目に、いわゆるクメールルージュの勉強会という一つの事例を挙げました。これについて大臣は、外国の勢力が日本に入ってきて、日本で支部的なものをつくって活動するということであれば当然入ってくるとおっしゃったわけですけれども、これは一応修正をされた。必ずしも正確ではなかったというふうにお答えになっています。  ところで、再質問、前回、十二日のやりとりに対して、海外の団体であっても、日本に組織の実体があって、しかも、もう一つの条件として、無差別大量殺人というものを行った団体でなければこの新法は適用されないとおっしゃっているんですね。これは逆に、裏返すと、海外の団体で、日本に組織実体があって、無差別大量事件を行っていればこの法律に該当するというふうにも受け取れる内容なんですね。これはそれでいいんですか。
  156. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 ある団体が、本法案の無差別大量殺人行為を行った団体に該当するためには、要するに、一つとして、当該団体日本国内において団体としての実体を有すること、二つとして、当該団体による無差別大量殺人行為我が国憲法秩序を頂点とする公共の安全に向けられたものでなければなりません。この二つ要素は、いずれもなければならないと考えております。  お尋ねの、外国のテロの組織が日本国内団体としての実体を有していない場合には、いかなる意味においても本法適用対象団体にはならない。仮に、外国のテロ組織が国内に支部を置くなどの団体としての実体を有している場合においても、当該無差別大量殺人行為が他国の政治体制の打倒や経済秩序の混乱を目的とする以上、我が国公共の安全に向けられたものとは言えませんので、やはり本法の適用団体にはならないということでございます。
  157. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、例示します。  例えば、日本の旅客機あるいは日本人乗客が多数搭乗をしている航空機が狙撃されたり、あるいは爆破されたりという手段で多数の死傷者が出た、実行組織の日本支部が認められるとき、この場合は該当しますか。
  158. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 先般来の御質問で、今委員もおっしゃったものについては、先ほど私が申し上げた前提条件が当然問題となってくるわけでございまして、今のお話の中だけでは、必ずしもどうであるかということは申し上げられないわけであります。
  159. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、確認的にもう一度求めますが、当初、政治家数人が海外でねらわれたり、そういうときは例外的に適用になるんだとおっしゃったんですね。そこで、話が広がっていってしまったんです。  今度は日本で、海外の組織が政治家数人をねらったり誘拐したりして、例えば殺人をも意図して危害を加えたとき、それらの行為を支援する組織が日本に存在したときには、これは対象になるんでしょうか。
  160. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 先ほど申し上げた要件があったとした場合、我が国憲法秩序を頂点とする公共の安全に向けられたものでなければ適用にならないということであります。
  161. 保坂展人

    ○保坂委員 ただ、政治家数人がそういう形で危害を受けるということは、憲法秩序、日本の公共の安全に危害を加えられたというふうに認識されますか。
  162. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今、委員指摘なのは、外国の政治家ということでおっしゃっているのですか。
  163. 保坂展人

    ○保坂委員 もう一回言います。日本の政治家が、海外の組織によってねらわれて、殺害をも含めていわば襲われたということですね。そして、日本国内にその組織の支援組織が存在したと認められるとき。
  164. 山本有二

    山本(有)政務次官 先ほど申し上げましたように、当該団体日本国内において団体として実体を有すること、そして当該団体による無差別大量殺人行為我が国憲法秩序を頂点とする公共の安全に向けられたものであることでございますので、先生御指摘のように、日本の政治家であろうとも、その目的が海外の公共の安全に対する危害の目的でございましたら、当たることはありません。
  165. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣、これは本当に当たらないんですか。よろしいですか、確認して。
  166. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 当初私が申し上げたように、そうした条件に当てはまらなければ適用しないということでございますので、今、政務次官がお話をしたとおりでございます。
  167. 保坂展人

    ○保坂委員 これはしっかり、定義のところを大臣もきっちり答弁していただきたいんですね。  私は、今の一つの事例の中に、日本の政治家数人がねらわれてという特定条件を出しているんですね。「不特定かつ多数」という要件があるじゃないですか、この法律には。だから、そこの時点においてこれは該当しない、こういうふうに考えていいんじゃないですか、爆弾とかなんとかという、そういう手段は別にして。
  168. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員が申されたのは、当初私と御論議をしておった点以外の、以前にも委員指摘をされましたけれども、四条一項に当たる不特定かつ多数、こういった状況のものを今お話をしていただいておったわけですが、今までの中では、そうしたことではない要件のお話をしておりました。したがいまして、私どもはそうした答えを出しておったわけであります。
  169. 山本有二

    山本(有)政務次官 大臣の答弁を補足しますと、先生の例示のように、特定の政治家に向けて、ある一定犯罪手段をとったとしましても、手段次第では未必の故意、すなわちそれ以外の人物にも危害を与える可能性があるならば、その場合は、この大量無差別に当たってしまうわけでございます。
  170. 保坂展人

    ○保坂委員 これははっきり答えてもらわなければ困るんですね。今はそういう手段の問題を省いています。ねらわれてというのは明快な日本語なんです。  では、具体的に言いましょう。三人の人がねらわれて、それは政治家です、三人の政治家がねらわれてとなったときには、これは特定でしょう。特定であれば、ほかの法律で当然罰せられますよ、しかし、この法律関係ない、こういうふうに言えないんですか。
  171. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 ですから、申し上げておりますとおり、単にそこの部分だけ取り出しては、この法律というものは考えられない。あくまでも、その三人を例えばねらったとしても、その行為そのものが不特定かつ多数の方々に対して影響を与えるものであれば、当然それは入ってくるし、それらの条件というものは、これをほかに置いておいてこれだけで判断しろというのは無理であります。
  172. 保坂展人

    ○保坂委員 これは、法案の最終段階でそんなことでいいんですか。定義で不特定かつ多数とやっているわけですよ。特定も限定できないで、不特定が限定できるわけないじゃないですか。
  173. 山本有二

    山本(有)政務次官 先生のおっしゃるねらわれてというその前提は、犯人の主観的な事実に当たりますので、たとえ犯人の故意を云々しましても、犯罪自体は客観的に、すなわち対象が限定されるかどうかについては手段の態様で定められるものであるというように考えておりますので、このような答弁になる次第でございます。
  174. 保坂展人

    ○保坂委員 前回、官房長が大臣の補足答弁をしているんですよ。そのときにはきちっとかみ砕いて、三人の方がもし仮に爆弾でも、草原の中でとかあるいはある限定された場所で周りにだれもいないという状態では、これは特定ですねと明快に答えているわけです。だから、そういうことをきちっと、これは確認しているわけですから、余りにもそういうところが揺れ動くので、そういう定義が揺れ動いてもらっては困るんです。
  175. 武部勤

    武部委員長 保坂君に申し上げますが、委員長としては異なった印象を受けませんが。  もう一度法務大臣から答弁いただきましょう。
  176. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、例えばその行為が三人の特定に向けられたもの、今例示でお示しをいたしました草原の真ん中で三人をねらった、これは当然適用外でございます。  しかし、三人をねらって、その場所が三人だけでなくて不特定かつ多数の市民の皆さん方に影響を与える、そういう場所でもって例えば爆弾等でもってやったということであれば、当然これは対象になる、こういうふうに申し上げたわけであります。
  177. 保坂展人

    ○保坂委員 では、何回もやりましたので、ぜひそこのところは押さえていただきたいということで、次に移ります。  共産党提案の法律について、ちょっと一言だけ伺いたいと思うんですけれども、確かに、破防法体系に問題があるというのは、私ども同じ見解であります。  しかしながら、公安委員会警察の組織も、御存じのように大変、とりわけ警備公安警察の実態も含めて、私どもよりも共産党の方がずっといろいろ御存じのはずなんですが、これは、公安委員会警察の組織の方が公安調査庁公安審査委員会よりもまだ信頼し得る、公平にやれるという御判断でこういう提案になっているんでしょうか。
  178. 東中光雄

    東中議員 警察を信頼するとか警察組織がどうしているかということが法制度をつくる場合に問題になるのではありません。  私たちが考えておりますのは、サリン等による人身被害防止するということは、オウムの問題が起こって非常に大切な問題になりました。そういう場合に、全会一致でつくった、サリン等による人身被害防止に関する法律があります。ところが、今、サリンによる被害を与えるようなことを再発させないための法律、それだけではいかぬ、オウムが実際に動き出してきているという状態で、非常に不安を与えている。その場合に、だれがそれに対してチェックをするかということになれば、警察というのは本来の任務は、警察法の一条ですか、人権を守る、生活を守るということとあわせて、犯罪の予防、鎮圧が任務なんだと。だから、このサリン等による人身被害防止する法律を提案したのは国家公安委員長ですよ。警察なのでございますね。  それから、暴力団に対する対処の措置というのをやるのはだれなんだということは、警察法の二十三条で、暴力団対策をやるのは刑事警察だというふうになっていますよ。暴力団対策を指定してやるのに、オウム対策を、オウムを指定して、オウムということじゃなしにサリン使用による大量殺人行為をやった団体指定して、そして犯罪を予防するということについて任務としてやらなきゃいけないのは何かといったら、警察法二十三条に言う刑事警察の任務だ。  そういう構造になっているんだから、法構造がそうだから、私たちは、個々の警察で腐敗があるとか、個々の政治家で腐敗があるから、だから政治家は信用できぬ、そんな性質のものではないというふうに思っております。
  179. 保坂展人

    ○保坂委員 実は民主党北村先生にも質問があったんですが、先ほど出ましたので割愛させていただきたいと思います。  それでは、法務省の官房長はいらっしゃいますね。少し細かいところで確かめたいと思います。  昨日、江川紹子さんのお話にもありましたけれども、確かにオウムは今でも危険性を持っている。しかし、一方において、脱会して社会復帰を目指している元信者などもいる。この辺の峻別が非常に難しかろうと思うんですが、例えば公安調査庁警察が、脱会を目指している方を関係者と認定してしまって、自宅や職場に立入検査ですか、そういう心配はないのか、この点はどうなっているでしょうか。
  180. 但木敬一

    但木政府参考人 法制度的に申しますれば、再三お話ししております本法の二条、三条によって、警察職員あるいは公安庁の職員はもちろん必要最小限度のことしかやってはいかぬということが決められておるわけであります。その判断基準に従って解釈し、適用し、運用するというのが義務づけられておりまして、その解釈基準を超えてやりますと、場合によっては四十一条以下で罰則まで用意されているという状態ですので、法的には担保されていると私は思います。  ただ、御指摘のように、非常に限界事例がございます。例えば、脱退したというのが実は偽装で、その者にオウム真理教財産の名義人にならせるために偽装脱退させるということもしばしば行われております。したがいまして、そういう限界事例の場合にどう行動するかというのは非常に難しい問題だろうと思います。  また、復帰して職場についた人をいつまでも追っかけるようなことはするな、そのとおりだと思います。ただ、場合によっては、確かにそういう御指摘のような事案が起こる可能性を全面的に否定するわけにはいかないだろう。これはやはり現場の職員が、二条、三条の精神を生かして的確に判断してもらうということに最終的にはなる限界事例は私はあると思います。
  181. 保坂展人

    ○保坂委員 立入検査の事前通知それから事後報告ということで、令状主義になるべく近づけるということだと思いますけれども、公安審査委員会が、実態としてこれで十分なチェックができるんでしょうか。簡潔にお願いします。
  182. 但木敬一

    但木政府参考人 今度の修正案も含めて、この法律がどういう体系になったかと申しますと、公安審査委員会は、現在公安調査庁あるいは警察がどういう観察処分を執行しているかということが常にリアルタイムでわかるようになっております。そうした公安審査委員会の、言ってみれば一種の状況把握、監督下に行われるというシステムになってきているというふうに考えております。
  183. 保坂展人

    ○保坂委員 ずっと官房長に何問か続けます。  公安庁長官は、当該団体所有するあるいは管理する土地あるいは建物特定する資料を公安審に提出するということになるようですが、立入検査特定された土地建物に限られると考えてよろしいのでしょうか。  もう一回言います。  公安庁長官が、その団体所有、管理する土地建物特定する資料を公安審の方に出す。そうすると、行われる立入検査は、特定された、出された土地建物に限るのかということです。
  184. 但木敬一

    但木政府参考人 ある意味では、そのとおりであります。  つまり、観察処分を請求する段階で、その対象団体所有または管理する土地建物というのが特定されて出てまいりますので、それが立ち入り対象だということで観察処分の決定をしていくわけであります。  ただ、その後新たな、オウム真理教所有または管理する土地あるいは建物が発見された、あるいはそういうものを新設したというような場合も起こり得るわけでありますが、これにつきましては、立入検査をする前に、公安審査委員会の方にそういう土地建物がありますという報告をいたしますので、いずれにしても事前に公安審査委員会はこれを知るということになります。
  185. 保坂展人

    ○保坂委員 これは実際に起こり得ることだろうと思うのは、これからさらに権利関係等が極めて複雑になっていくことが予想されるわけなのですが、公安庁長官の提出資料で、当該団体関係している場所だ、あるいは土地だと特定された所有者及び管理者が、この法律の手続が行われる際に、うちのところは違いますよと何か主張することはできるのでしょうか。
  186. 但木敬一

    但木政府参考人 もちろん根本的には、立入検査というのはいわゆる直接的な強制処分ではございませんので、立ち入りに際しまして、これは全くオウムに関係ない建物ですから入るのをやめてくださいという拒否がまずできることになります。  仮に、本当にそれが何らその対象団体関係ない土地建物でありますれば、立入検査妨害という罪は成立しないわけですから、当然それは起訴できないという話になる。万一それを起訴すれば、もちろん司法によって最終的な判断が下される。  なお、民事的にはもちろん損害賠償請求権がございますので、立ち入りによって生じた損害については損害賠償請求の訴えを裁判所に起こすことができるということになります。
  187. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、立入検査の細かい話をしたわけですけれども、あと最後に、官房長には一問だけ。  先ほど警察庁の官房長にお答えいただいたように、不祥事が相次いでおります。そして、実はオウム真理教事件というのは、信者の警察官が捜査情報を漏えいしていたというような点も含めて、大変異例な事件だったわけです。  例えば、警察官や公安調査官が、観察処分立入検査の過程で得た情報を材料に教団をゆすったり、あるいは教団情報を提供したり、そういうことが起きないようなことはきちっとどこかで担保されているのですか。つまり、そこへ入った、それで取得したもの、それが不正に使われてはならないわけですけれども、そういう事例が最近多いものですから、あえて私はお聞きします。
  188. 但木敬一

    但木政府参考人 公安調査庁職員にいたしましても、あるいは警察職員にいたしましても、権力の行使ということは、相手方にとって極めて重大な、言ってみれば制約をかけるわけでありますので、当然、それによって得た資料というものは、公開してはならないものは公開してはならない、あるいは、地方公共団体に提供するものについては正当なルートで情報が公開されなければならないと思います。それにつきまして仮に不正の流用あるいは恐喝罪等に当たるような行為があれば、これはもちろん断固として厳正な措置をする、それはもちろん刑事事件になる場合もあるということになろうと思います。
  189. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは法務大臣に。  実はきのう参考人の質疑において、地下鉄サリン事件の弁護団長の宇都宮参考人から、今度の法案で、地下鉄サリン事件で言えば五千人を超える被害者のうち千人を少し超えるくらいの方が破産手続を進めておられると。しかし、そこにおいてはいわゆる財産回復ということがあり得るわけですけれども、名乗り出ることができない、そういう被害者の方が多々おられる、実はそれが被害者弁護団でも掌握できないのだと。かなり重傷を負っておられたり、ひどい障害を負っておられながらも、いろいろな事情で手続に加われない方がいらっしゃる、だからこういう問題はやはり残されているということを指摘されたのですが、大臣として、このオウム犯罪の枠外に置き去りにされる方たちに対して包括的な救済と、もう一つは、オウム犯罪以外の凶悪犯罪についてもやはり抜本的な犯罪被害者救済ということが求められている、こういうふうに思うのですが、その点いかがでしょうか。
  190. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 私もその事実関係、しかと把握しておりませんで申しわけないわけでございますが、ただいま委員がお話しいただきました、そうした被害を受けながらいまだそうした請求ができないような方々、こういう方々は極めてお気の毒でもございますし、そういう方があってはいけないように思います。  したがいまして、そういう方々の対策というものも国の責任としてやはりしっかりととっていかなければならない、引き続きこうした点につきましては検討してまいりたいと思います。
  191. 保坂展人

    ○保坂委員 今の大臣の御答弁で、やはりまだまだ課題は多いと。オウムの被害者に関してももちろんだし、私どもは、犯罪被害に対して、犯罪被害者給付金等の制度がありますけれども、まだまだ不十分だ、ここはぜひしっかり取り組んでいただきたいという意味で、その決意を伺いたいと思います。
  192. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、オウム等で現在苦しんでいらっしゃる方々、こうした方々の中でもって被害者請求ができておらない方々に対するものについてもさらに努力をしてまいりたいと思いますし、また今委員指摘犯罪被害者に対する対策というものも鋭意努力をいたしてまいりたいと思います。
  193. 保坂展人

    ○保坂委員 私どもは、このオウム真理教の凶悪事件も憎むべく、そしてまた被害者の方の抜本的なトータルな救済がぜひ必要と思います。残念ながらこの法案には賛成できない立場ですけれども、そこのところは総合的な被害者救済法をできるだけ急いでいただきたいという要望をして、私の質問を終わりたいと思います。
  194. 武部勤

    武部委員長 これにて各案及び両修正案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  195. 武部勤

    武部委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。
  196. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私は、自由民主党、公明党・改革クラブ及び自由党の三会派を代表いたしまして、ただいま議題となっております無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に関する修正案及び修正部分を除く原案並びに特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に賛成の立場から討論を行うものであります。  以下、これら法律案に賛成する主な理由を申し述べます。  第一に、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案は、必要かつ重要な法整備を図るものであり、その実効性も十分期待されることです。  サリンを使用して無差別大量殺人行為を行ったオウム真理教が、依然として危険な要素を保持しつつ活動しており、そのことに国民が大きな不安と危惧の念を抱いているという現状があります。  この法律案に設けられております観察処分及び再発防止処分により、無差別大量殺人行為を行った団体が依然として危険な要素を保持している場合には、これに迅速かつ適切に対処することが可能であり、ひいては国民が抱く大きな不安と危惧の念を取り除き、国民生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与するものであります。  第二に、同法律案では、適正な運用が期待できる仕組みを設けており、正当な団体活動を阻害するおそれがないことです。  本法律案では、規制対象となる団体を、過去に無差別大量殺人行為を行い、依然として危険な要素を保持している団体に限定しております。そして、処分の請求をする公安調査庁長官とは別に、その職権を独立して行使することが保障される準司法機関である公安審査委員会処分の決定をゆだねる仕組みを設けております。  そして、本法律案では、公共の安全の確保のため、必要な最小限度においてのみこれを適用すべきであり、本法案の各規定を不当に拡張解釈して適用することがないよう戒める規定及び国民基本的人権を不当に制限したりすることがないよう戒める規定を設けており、さらに、職権濫用行為について重い罰則も設けております。  したがって、憲法保障する国民の自由と権利を不当に制限するおそれはないものと確信いたします。  第三に、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案は、被害者の方々の救済に資するものであるということです。  サリンによる大量殺人事件などを起こしたオウム真理教は、解散後に破産宣告を受け、その財産破産財団を形成していますが、本来オウム真理教財産であってそのままこの破産財団に属すべき財産がかなり流出していると見られ、そのために、地下鉄サリン事件松本サリン事件等で犠牲となられた方々やその御遺族に対する損害賠償が極めて不十分な状態にあります。  そこで、破産管財人が破産財団に属すべき財産関係者から取り戻そうとする場合に、その立証の負担を減らすことによってこれを容易にすることなど特別の規定を定めることは必要かつ重要な措置であり、これにより、流出した財産が取り戻され、被害者の方々の損害の回復に充てることができるようになると期待されます。  また、四党提出修正案は、法律案目的及び効果を変更することなく、立法趣旨及び運用のあり方をより明確にするものであります。  これら法律案は、国民の大きな不安と危惧の念を取り除くことが期待されるとともに、無差別大量殺人行為による被害者の方々の救済に大いに資することとなるものと考えております。  委員各位の御賛同をお願いし、賛成の討論といたします。(拍手)
  197. 武部勤

    武部委員長 次に、北村哲男君。
  198. 北村哲男

    北村(哲)委員 私は、民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案につきまして、自由民主党民主党、公明党・改革クラブ及び自由党提出修正案及び修正部分を除く原案に賛成し、また、与謝野馨君外五名提出特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に賛成の立場で討論を行うものであります。  まず、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案及びその修正案に関して申し上げます。  地下鉄、松本両サリン事件や坂本弁護士一家殺害事件など、オウム真理教によって引き起こされた残虐な事件は、日本国じゅうに大きな衝撃を与えました。昨日の参考人である地下鉄サリン事件被害対策弁護団団長宇都宮健児弁護士の意見陳述を伺っても、地下鉄サリン事件の悲劇がいまだ未解決であることを改めて思い起こさずにはおられないのであります。  主要幹部の逮捕、起訴によって一時鳴りを潜めていたオウム教団も、活動を活発化させ、その信者数は二千百人、教団施設も三十八カ所に上り、首都圏や長野県を中心として、マンション、保護施設、ホテル、工場などを買収して、信者の集団転入を図っているとの報道がなされております。  それに伴い、住民による反対運動も活発化し、大きな社会問題となっているところはよく知られているところであります。昨日の大田原市長による意見陳述は、現場においてオウム真理教と最前線で対峙する地方自治体の苦悩を強く感じさせるものでありました。教団に対する何らかの規制必要性は極めて大きいと言わざるを得ないのであります。  このような観点から見まして、本法案規定する観察処分及び再発防止処分等の処分は、教団の実像を明らかにし、周辺住民の不安を軽減させる効果を有するものと期待されるのであります。  しかし一方、団体規制立法には、憲法保障する個人の人権等を侵害する危険性を含むものでありますから、法律案内容につきましては、社会の安全と個人の人権の調整という観点から、慎重な検討をすることが必要なのであります。  修正案は、このような観点から、目的について明確化し、本法律案適用対象団体範囲を限定し、さらに法律施行後の見直し等について規定しようとするものであります。このような修正によって、国民の人権等に配慮しつつ、住民の生活の平安を回復することが可能になると確信するものであります。  次に、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案について申し上げます。  オウム真理教につきましては、教団財産の散逸を防止し、被害者に対する救済を少しでも実現しようと、破産手続によって財産処理がなされているわけでございますが、平成十年十月十四日においてなされた中間配当では、犯罪被害者の総債権額三十八億円余に対し、配当額は九億円足らずにとどまり、その配当率はわずか二二・五九%にすぎないのであります。  しかるに、法人格こそ違え、団体としての同一性を保持している教団が、パソコンショップの経営などによって莫大な利益を上げているとの報道がなされ、被害者及び国民一般に強い不信の念を引き起こしているのであります。  本法案の成立によって、破産管財人が破産財団に属すべき財産オウム真理教関係者から取り戻し、被害者の方々を救済する上で大きな力となることを期待しているのであります。  委員各位の御賛同をお願いし、賛成の討論といたします。  終わります。(拍手)
  199. 武部勤

    武部委員長 次に、木島日出夫君。
  200. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、日本共産党を代表して、日本共産党提出サリン防止法の一部改正法案に賛成、政府提出団体規制法案及び四会派提出のこれに対する修正案に反対、破産特別措置法案及びこれに対する日本共産党修正案に賛成の討論を行います。  日本共産党提出したサリン防止法一部改正法案は、オウムがサリンによる無差別大量殺人という世界に例のない前代未聞の凶悪犯罪を行った集団であるという点に着目して、サリン事件の直後、全会一致で緊急立法をした現行サリン防止法を一部改正するという手法で立案したものであり、その手続も、全会一致で成立している現行暴対法を基本にして、犯罪の予防、鎮圧に責任を持つ警察に当たらせることとしており、オウム集団の活動規制する最も実効性があり、かつ濫用を防止できるものであり、賛成であります。  これに対し、政府案並びに四会派の修正案は、思想、信教、集会、結社、表現の自由、勤労者の団結権など、国民基本的人権を侵害する違憲の法律である破防法を土台にしており、オウム対策に名をかりて、実は破防法公安調査庁の拡大強化、適用容易化をねらったものであり、このような団体規制法案には賛成できません。  反対の第一の理由は、規制対象団体を無差別大量殺人行為を行った団体として、破防法に掲げる暴力主義的破壊活動であって、不特定かつ多数の者を殺害したもの、未遂を含む、としていますが、これでは、宗教団体を標榜するオウムについてわざわざ政治目的の立証をしなければならず、無用の負担を強いられることになります。しかも、これによって、オウム集団だけでなく、オウム以外の団体規制の網の中に入ってくることになり、破防法の拡大と言わなければなりません。  反対の第二の理由は、規制機関を、公安調査庁が中心となり、これにさらに警備公安警察がかかわるとしていることであります。  公安調査庁は、これまでも、市民団体、民主団体、労働組合等に対する不当なスパイ謀略活動を行ってきたのであります。法案は第四章で、引き続き公安調査官にこれまでどおりの調査権を与え、さらにこれを強化しようとするものであり、賛成できません。  被害者救済のための破産特別措置法案については、破防法による団体規制法の団体指定を基本的枠組みとしておるので、我が党、日本共産党は、サリン防止法案に準拠するとの修正案提出したわけでありますが、法案の基本的目的は被害者の救済であり、この法律によって破防法が拡大強化されるという性格のものではないので、賛成の態度をとるものであります。  以上で討論を終わります。
  201. 武部勤

    武部委員長 次に、保坂展人君
  202. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党を代表して、討論を行います。  政府提出団体規制法案、四会派提出修正案サリン防止法改正案、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特措法、そして共産党修正案に、いずれも反対の立場から討論を行います。  私たちは、オウム真理教による無差別大量殺人などの犯罪行為は決して許されない、そしてオウム真理教の責任を厳しく追及するべきであり、また現在の活動についても十分な施策を加えていかなければならないというのは当然という立場で、この間の審議に臨んでまいりました。  いわゆる団体規制法は、これまで私たちが憲法違反として批判をしてきた破防法の姉妹法ともいえるものであります。第二破防法と言わざるを得ない包括的な内容のもので、定義一つなかなか定まりません。この法案には賛成することができません。  そしてまた、オウム真理教の一連の犯罪、そしてこれから国民を不安に陥れるかもしれないさまざまな事件を防止するためには、包括的なカルト防止政策の推進が必要不可欠だと考えております。過去の犯罪、過去の大量殺人行為のみに着目した個別的な立法でその不安が消去するとは考えません。むしろ、カルトへのきっちりした総合的な対策が必要ではないかという意味で、この内閣提出法案には反対です。  そしてまた、四党提出修正案目的の中にサリンの使用が入ったことや、過去十年に限定して適用範囲を狭めたことを評価しながらも、やはり破防法との関連をそのままにしていることから反対。  共産党提案のサリン防止法改正案には、その御努力に敬意を表しつつも、憲法上の集会、結社、表現の自由に制約を与えるおそれがあることから反対いたします。  社民党は、いわゆる破産財団財産回復するこの法案について、団体規制を前提とせずにこれらの財産回復をすることを検討してまいりましたけれども、議案提出権がないということもあり、包括的な犯罪被害者救済への道を開く犯罪被害者救済基本法などの立法準備を急ぎたいと思います。  オウム真理教などカルトによる犯罪への対策の必要は、私どもも認めるところです。もう少し慎重に、拡大適用のない、明確な立法を望むところです。  以上の理由で、私どもの反対の討論といたします。
  203. 武部勤

    武部委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  204. 武部勤

    武部委員長 これより採決に入ります。  まず、東中光雄君外一名提出サリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  205. 武部勤

    武部委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。  次に、内閣提出、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、与謝野馨君外四名提出修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  206. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  207. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、与謝野馨君外五名提出特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、木島日出夫提出修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  208. 武部勤

    武部委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  209. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  210. 武部勤

    武部委員長 この際、ただいま議決いたしました無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に対し、横内正明君外三名から、自由民主党民主党、公明党・改革クラブ、自由党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。西村眞悟君。
  211. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨説明といたします。     無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に対する附帯決議(案)   この法律施行に当たっては、政府は、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 政府は、この法律の適用に関しては、いやしくも、日本国憲法保障する国民の自由と権利を不当に制限することのないよう、及び、労働組合その他の団体の正当な活動を阻害することのないよう、厳に留意すること。  二 政府は、無差別大量殺人行為を行った団体が依然として危険な要素を保持している場合には、この法律を適用して厳正に対処し、国民生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与するよう努めること。  三 政府は、公安審査委員会職権による観察処分の取消権の適正な行使に資するため、立入検査の実施に当たっては濫用にわたらぬよう、公安調査庁長官において、あらかじめ立入りを行う土地又は建物の所在及び立入りの予定日を公安審査委員会に通報するとともに、その立入検査の結果を公安審査委員会報告するなどの細則を定めること。  四 政府は、この法律により規制処分を実施した団体から離脱し又は離脱しようとする当該団体役職員及び構成員並びに既に離脱した者の社会的な救済につきカウンセラーの充実などこれらの者の社会復帰に資する体制の整備などの施策を講じるよう努めること。  五 政府は、この法律の適正な運用を確保するとともに国会がこの法律により行う五年ごとの見直しに資するため、この法律による一年ごとの報告及び種々の情報提供につき、法務委員会における報告等の審議を含め、積極的に対応すること。  六 政府は、いわゆるテロ対策等について論議することに資するため幅広い調査・研究に努めること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  212. 武部勤

    武部委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  横内正明君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  213. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。臼井法務大臣
  214. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、政府といたしまして、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりますことをお約束申し上げます。     —————————————
  215. 武部勤

    武部委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  217. 武部勤

    武部委員長 次に、内閣提出参議院送付裁判官報酬等に関する法律及び裁判官育児休業に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。臼井法務大臣。     —————————————  裁判官報酬等に関する法律及び裁判官育児休業に関する法律の一部を改正する法律案  検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  218. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 裁判官報酬等に関する法律及び裁判官育児休業に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。  政府においては、人事院勧告の趣旨等にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案提出いたしました。  そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案提出した次第でありまして、改正の内容は次のとおりであります。  第一に、裁判官報酬等に関する法律の別表に定める五号以下の判事補の報酬及び十号以下の簡易裁判所判事の報酬並びに検察官の俸給等に関する法律の別表に定める十三号以下の検事の俸給及び七号以下の副検事の俸給につきまして、おおむねその額においてこれに対応する一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける職員の俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの給与の改定は、一般の政府職員の場合と同様に、平成十一年四月一日にさかのぼってこれを行うことといたしております。  第二に、育児休業をしている裁判官に対し、国家公務員の育児休業等に関する法律の適用を受ける職員の例に準じて、期末手当、勤勉手当または期末特別手当を支給することといたしております。  この育児休業をしている裁判官に対する期末手当等の支給は、平成十二年一月一日から行うことといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律及び裁判官育児休業に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  219. 武部勤

    武部委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  220. 武部勤

    武部委員長 この際、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局給与局長大村厚至君、警察庁長官官房長石川重明君、法務大臣官房司法法制調査部長房村精一君、郵政省電気通信局長天野定功君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  222. 武部勤

    武部委員長 次に、お諮りいたします。  最高裁判所金築人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  224. 武部勤

    武部委員長 これより両案に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。日野市朗君。
  225. 日野市朗

    ○日野委員 ただいまの提案理由説明を伺いました。  それで、私も、ちょうだいした俸給表をずっと拝見いたしました。改善という言葉を法務大臣は使っておられるが、やはり用語というのはもっと大事に使わなくちゃいかぬ。これで改善と言われたら、裁判官、検察官、これは気の毒だ。上がってせいぜい月千円やそこらでしょう。  しかも、私、今改めてこの俸給表を見たのですが、判事補に任官すると、十二号俸というのですか、これに該当して、二十三万九千三百円に今度なるのです。二十三万七千八百円が二十三万九千三百円になるということであります。検察官も、これも任官したばかりで、二十三万七千八百円が二十三万九千三百円に増額される、こういうことです。司法試験に合格をして、そして二年間司法修習をやって、そしてこの額で裁判官や検察官になる。  私なんかが使っていた、いそ弁というのがおります。何でいそ弁というのかわかりませんが、私の事務所に勤務している弁護士ですが、その給料よりもずっと低い、初任給で。私、こういうのを見ると本当に、裁判官、検察官という、これはある程度のステータスを持った職業です。しかも、一生懸命勉強もし、そして時間的にもかなりよそよりも余計働くという人たちに対して、これではちょっと気の毒だなというふうに思います。  そして、今度この報酬等に関する法律で別表が改定をされまして、そして上がったのは判事補の五号以下、それから検察官も検事の十三号以下、こういう人たちで、その上は我慢してくださいよ、こういうことになったんだろうというふうに思います。これは経済事情や何かが非常に厳しい、それから人事院勧告なんかが厳しいというのはわかりますが、やはりいい人材を採り、そしていい仕事をしてもらう、このためにはいい処遇をしなくちゃいかぬ、私はこう思うのです。  原則論になりますが、この点については質疑の通告なんかしなかったが、どうです、原則的にはこういう考え方は正しいとお思いになりませんか。
  226. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員指摘のとおり、今回の改正というものが、裁判官、検事等にとって大変厳しいものになっているというのは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、大変使命感を持って皆さんお仕事に励んでいらっしゃいますので、私は、こうした環境の中でもしっかりやっていただけるものと確信をいたしている次第でございます。
  227. 日野市朗

    ○日野委員 それは皆さん、使命感を持って任官をされて、そして仕事もいい仕事をしようということで努力をしておられるのでありましょう。しかし、やはりその使命感にふさわしい報酬というものはあるものでございます。  私は、現在の経済事情、そういった点から、民間の労働者の給与がどうなっていくか、それから一般職の公務員との対比等々について、今回はやむを得なかったにしても、これについてはちゃんとした、大臣としても、また、きょうは最高裁を呼びませんでしたけれども、やはり最高裁もちゃんとした見識を持って当たられることを心から願いたい、こういうふうに思います。  それで、私、俸給表は一応、給与が少ない人たちについては幾らかでも上げた、本当に微細な額でありますけれども幾らかでも上げたということで、これは是といたしましょう。  ところが、一方で、期末手当それから勤勉手当、こういったものは〇・三カ月分引き下げろ、こういう人事院勧告が出ました。それで、この手当は、判事、検事について大体どの程度減額になりますか。まず、判事の場合は、裁判官の場合は五年で特例がつきますので、それを一つの時期として、それから十年で判事補の補がとれて判事になるわけですが、その二つの時期で、今度の人事院勧告によってどの程度の手当の減額になるものか、ちょっと教えてください。
  228. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今、委員指摘の点につきましては、一人平均で裁判官は三十五万円程度の、また検察官は二十九万円程度の、それぞれ減額になると承知をいたしております。  また、未特例判事補から特例判事補となったばかりの裁判官は十八万円程度の、また、判事補から判事となったばかりの裁判官は二十八万円程度の、それぞれ減額になると承知をいたしております。
  229. 日野市朗

    ○日野委員 裁判官などというのは、やはり随分身だしなみもちゃんとしていなくちゃいかぬという話がありますね。それから、本も自分で購入をして勉強もしなくちゃいかぬ。それから、自分の知見を広めるために、いろいろなところを個人的にも視察をしなくちゃいかぬ。もう万事物入りでございますよ。そういう人たちからこういう手当という形で減額をするということは、私はこれは気の毒も気の毒だ。  それと同時に、裁判官にしても検察官にしても、それぞれ厳しい職務をやっていて、自分の責任でやっている仕事というのが多い。裁判官は、特に裁判官独立の原則に従って、裁判官が独立して仕事ができるようにという経済的な保障、これをこの報酬等でやっているわけですね。検察官だって、これは上命下服の関係にあるとはいえ、やはりその職務については独立性が要請されるところでございますね。  私、こういうことをやっていると、俸給表は低く抑えられる、それから手当なんかも低く抑えられる、そうすると、今でさえ問題になっている裁判官への任官、検察官への任官について、任官しようというインセンティブを削ってしまうのじゃないか、悪い方に働いてしまうのじゃないか、そんな危惧があるんです。大臣、いかがお考えでしょうか。
  230. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今、委員懸念をいただいたわけでございますが、検察官等の給与制度というものを所轄する者としては、大変ありがたく存じている次第でございます。  しかしながら、裁判官、検察官になろうとする者は、その職務にやりがいと魅力を感じ、強い使命感を持って任官を希望してきている者たちでございます。また、任官直後の若手に対しましては制度として初任給調整手当が支給される措置が講じられております上、また、そのほかにも、魅力ある職場体制、職場環境づくり、各種の研修や研究の機会の提供及び福利厚生、そういった面の充実強化等々の方策を講じているところでございます。  今回の措置は、我が国の現下の厳しい経済情勢において、民間給与の動向をも踏まえたやむを得ないものでございますが、今後とも、若手にとって活力があり、かつ魅力のある職場づくりに努めてまいる所存でございますので、給与が下がることによって任官者が減るといったことは生じないものと考えております。
  231. 日野市朗

    ○日野委員 私も司法修習生をやり、そして弁護士の道を選んだ者として、まず、大臣はそういう経験はおありではないだろうけれども、私なんかが任官をしなかったのは、任官についての勧めというのは一応はありますが、しかし、あのころから、この給料ではという思いはやはりずっとありましたね。  そして、現実に、私が弁護士になって最初に取り扱った事件の着手金、これはその当時の裁判官、検察官の給料月額の倍を超えるというような状態でした。それは金でだけはかるなというのはいいですよ、悪いとは言わない。だが、しかし、そういう部分もやはり、優秀な人材を獲得して、いい仕事をやってもらうためには必要なんだということを、私は何度も繰り返してお話ししておきたいというふうに思うのです。  そして、給与法は給与法でいいですよ、これは。しかし、今度、人事院勧告でごそっと手当が減るわけですね。私が先ほども申し上げたように、裁判官にしても検察官にしても、特に裁判官の場合は独立した仕事をやっていく、裁判官の独立に従って仕事をやっていく、そのための経済的な裏づけというものが憲法に書いてありますね。七十九条、最高裁の裁判官、それから下級審については八十条、それぞれ、「報酬は、在任中、これを減額することができない。」こう書いてあるわけですね。  報酬というのは月々支払われるものでございます、それ以外は手当なんですから、これはこの憲法規定する報酬ではありません、こういう理屈を皆さんおっしゃるんだ。しかし、私はこれに納得しないのですね。やはり、裁判官がちゃんと独立して仕事をやっていけるための経済的な裏づけなんですね。  もう一つは、やはりこの報酬というのは、給料とか、自分の仕事に対する対価的なものも含むわけですね。そして、法律にもそう書いてあるのです。「報酬その他の給与」、こう書いてあるのです。裁判官報酬等に関する法律及び裁判官育児休業に関する法律の一部を改正する法律案については、その第一条に、「裁判官の受ける報酬その他の給与」、こう書いてある。  報酬とその他の給与というふうに条文上分けてあるけれども、先ほどお話ししたように、裁判官が独立して仕事をやるための経済的な裏づけ、こういうことを考えれば、ここで、この法律には「報酬その他の給与」と書いてあるけれども、これは、先ほど言いました憲法の諸条文における、報酬は在任中これを減額してはならない、こういう規定から見れば、これもこの憲法に言う報酬に当たる。この法律に言う「報酬その他の給与」というのは、憲法で言う報酬に当たるものだ。こういうふうに読むのが正しいというふうに私は思います。いかがでしょうか。
  232. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今、委員指摘いただきました、憲法七十九条の六項、そして八十条の二項、それに言う報酬というのは、裁判官の職務に対する反対給付、すなわち公務員の基本給たる俸給と同じ意味である、こういうふうに思います。各種の手当とは明確に区別されたものであると私は理解をいたしております。したがいまして、報酬以外の給与である期末手当等につきましては、憲法上の減額禁止保障は及ばないと考えております。  また、実質的に見ましても、公務員の期末手当等は、民間の支給動向に対応して増減をすることが予定をされているものでございまして、公務員の例に準じて支給される裁判官の期末手当等についても、これと別意に解する合理的な理由はないものと考えております。
  233. 日野市朗

    ○日野委員 そう言われるだろうと思いましたが、「報酬その他の給与」というのは、特別に憲法で定めている報酬に当たる、こういうふうに読むべきだ、私はこう思いますので、これは裁判官ももっと本当は強く言わなくちゃいかぬのですね。  大体、裁判官なんというのは労働組合も何もないですから、そうすると、裁判官というのは上から言われればそのままだし、予算一つとってもそうだ、法務省でこうだと言われれば、それは裁判所だって、最高裁も全部それに右へ倣えでやってきていたというのが今までの実情で、そういう中で裁判官がこれを強く主張するということは、今までの伝統的な立場上なかなかできなかったろう。  これは私はよくわかるんですが、あくまでもこの報酬というものは、法律に言う「報酬その他の給与」、これを一括して憲法に言う報酬と読むべきだ、こういうふうに私は思います。  それからもう一点、別の問題について、裁判官育児休業でございますね。これは、裁判官は何人、それから検察官は何人、育児休業をとっておられますか。
  234. 房村精一

    ○房村政府参考人 ただいま育児休業をとっております現時点での人数でございますが、裁判官につきまして十六名、検察官につきまして二名でございます。
  235. 日野市朗

    ○日野委員 房村さんはプロだから、今までちょっと通告しなかった質問になりますが、全部女性ですか。
  236. 房村精一

    ○房村政府参考人 いずれも女性であると伺っております。
  237. 日野市朗

    ○日野委員 私、仄聞するところとお話ししておきましょう。この育児休業、これをとるのが実は容易ではないのだ、とっても、育児休業はこの程度で結構でございますと、育児休業承認取り消しの申し出、これをできるだけ早くしないと、上司の覚えも悪く、同僚の裁判官たちからも白い目で見られるという傾向があるように私は仄聞しているわけであります。  今度の法律ではかなり前進したと思いますよ。前進した、これは認めますが、そんなことが裁判所部内であるやに仄聞をしておりますが、いかがですか。まさかあなた、そのとおりでございますとは言わないと思うが、一応聞いておきましょう。
  238. 房村精一

    ○房村政府参考人 裁判所の内部の事情につきまして私も必ずしも明らかではございませんが、法務省では、人事当局はできるだけ、育児休業法の趣旨に沿って、とりやすい職場環境を整えるということで努力しているというぐあいに承知しておりますし、裁判所におかれても当然、同様の趣旨でいろいろ努力をされているというぐあいに承っております。
  239. 日野市朗

    ○日野委員 今、私が仄聞したところについてお話ししたが、そんなことがないように努力すると一言お約束いただけますか。
  240. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今、育児休業のことについてお話ございますが、育児休業というものがさらにとりやすいような職場環境の整備に努めてまいりたいと思います。
  241. 日野市朗

    ○日野委員 終わります。
  242. 武部勤

  243. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党木島日出夫です。  最初に法務大臣にお伺いしたいんですが、今回の給与関係二法の改正で、実際に裁判官や検察官の年収は、総額で前年比どうなるのかということをお示しいただきたいと思うんです。
  244. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今回の改正で、俸給が据え置かれる裁判官、検察官につきましては二・四%から二・一%程度、また俸給が増額される下位の号俸の裁判官、検察官につきましては一・〇%から一・六%程度の減額になると承知をいたしております。  全体の平均減額率につきましては、裁判官につきましては二・三%程度、検察官につきましては二・二%程度と承知をいたしております。
  245. 木島日出夫

    ○木島委員 いずれも減額ですね。  一点だけ、参議院法務委員会での質疑の中で、我が党の橋本委員から、こういう減額は歴史的に初めてじゃないかという質問をいたしましたところ、法務大臣から、いや一度、昭和五十三年にあったんだということで、五十三年以来なんだという御答弁がありました。  しかし、これは余り細かいことですから確認だけなんですが、私の方で調べましたところ、正確には昭和五十三年も、判事補については実際は減額になっていない。それは、ベアは三・八%でありまして、手当が年〇・一カ月マイナスで、差し引き、判事補については減額になっていなかった。それ以上の判事についてのみ減額になったということですから、細かいことですが、正確には、判事補については歴史上まさに初めての減額、そして、その余の人たちについては二度目ですか、昭和五十三年以来の二度目の減額ということかと思います。それは事実、そのとおりで結構ですか。
  246. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 委員指摘のとおりでございます。
  247. 木島日出夫

    ○木島委員 そこでお聞きしたいんですが、なぜこのような減額改正という形にしたんでしょうか。その経過を答弁いただきたいと思います。
  248. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 裁判官、検察官の報酬、俸給月額の改定につきましては、いわゆる対応金額スライド方式、すなわち、特別職及び一般職の俸給表の俸給月額と対応させ、同じ改定率で改定額を定める方式をとっております。これにより、一般の行政官の給与水準とのバランスを考慮しつつ、裁判官、検察官の職務と責任の特殊性を給与体系に反映させることといたしております。  本年八月の人事院勧告を踏まえ、政府は今国会に、期末手当を年間〇・三カ月分引き下げることを内容とする一般職給与等の一部改正法案提出いたしているところでございますが、裁判官、検察官の給与についても、一般の政府職員の例に準じて期末手当等が減額されることから、給与が全体として減額されることとなるものであります。
  249. 木島日出夫

    ○木島委員 出発点は本年八月の人事院勧告が引き下げの勧告をしたことだ、特別職、一般職の公務員についてそういうことになって、それに準じて裁判官も検察官も引き下げざるを得ないということになったという答弁ですが、人事院をお呼びしております。  そこで、問題の根本はやはり人事院勧告にあると私は思うので聞きますが、人事院というのは、もともと、公務員に対する憲法上認められている労働基本権を剥奪したその代償機関としてつくられ、その勧告が行われてきたはずなんです。ですから、労働基本権の剥奪の代償機関なんですから、実質的に年収が減額するというような勧告をすることはすべきでないし、できないんじゃないかというふうに思うんですが、人事院の御見解を聞きたいと思うのです。
  250. 大村厚至

    ○大村政府参考人 人事院勧告は、御案内のとおり、労働基本権制約の代償措置でございます。その内容につきましては、民間の動向を的確に反映させ、仮に公務員に労働基本権があればどうなるかということを念頭に置いて検討することが要請されているというところでございます。  そこで、本年も、労働三権が保障されている民間企業の賃金の状況を詳細に調査、把握いたしまして、官民給与の正確な比較を行ったところでございます。これに基づきまして本年の勧告を行いましたが、その内容につきましては、民間の厳しい状況を反映しまして、本省庁課長級以上の管理職を除く一般職員についてベア〇・二八%を行う一方で、特別給を〇・三カ月マイナスすることとしたところでございます。このようなことをやりました結果、職員の平均年間給与はマイナスとなったものでございます。  人事院勧告の給与勧告は、従来から、公務員給与を社会一般の情勢に適応するように変更することを基本といたしまして、民間給与との均衡を図ってきたものでございますが、期末・勤勉手当につきましては、過去において実際、民間の状況等を反映いたしまして、支給月数の引き下げの勧告を行ったことが何回かございます。また国家公務員法では、二十八条、六十七条などに給与水準の引き下げがあり得ることを予定している規定がございます。
  251. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、公務員の給与体系が民間とのバランス、均衡を考慮するという、そういう手法をとられることにどうこう言っているわけじゃないんですよ。  人事院というものが、公務員から労働基本権を剥奪してしまった代償として、スト権もない、団体交渉権もない、そういう状況にある公務員の皆さんの賃金面での権利を守るという立場でつくられた役所で、そのために勧告をしてきているということですから、値下げをしろという勧告をすることは、根本的に間違っているんじゃないか。代償機関じゃないじゃないですか。労働組合が会社の代表取締役に、おれたちの給与を下げろと言ってストライキを打ちますか。そういうことを聞いているんですよ。
  252. 大村厚至

    ○大村政府参考人 人事院といたしましては、国民全体の奉仕者でございます公務員の給与につきましては、労使双方を初め、国民の理解と納得が得られる必要があると考えておるところでございます。  人事院は、労使双方から独立した中立第三者機関として給与勧告を行うものでございますが、広く各方面の意見を徴しつつ、職員に対して社会一般の情勢に適応した、適正な給与が確保されるべく勧告を行っているものと考えております。
  253. 木島日出夫

    ○木島委員 人事院が中立第三者機関だというのは、私は違うのだと思うのです。公務員から労働基本権を剥奪した代償機関だというこの基本的性格が、それではネグレクトされてしまうと思うのです。そんなことを裁判は認めていません。  そこで、最高裁をお呼びしておりますので、大変有名な昭和四十八年四月二十五日の最高裁大法廷の判決、全農林警職法事件で、人事院勧告というのが代償措置なんだということをはっきりと打ち出した判決があろうかと思うのですが、要旨を述べてほしいと思うのです。
  254. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 御指摘の大法廷判決の代償措置に触れた関係部分を読ませていただきますと、「公務員の従事する職務には公共性がある一方、法律によりその主要な勤務条件が定められ、身分が保障されているほか、適切な代償措置」、これは少し前のところを受けておりまして、人事院勧告制度などを指しておりますが、「適切な代償措置が講じられているのであるから、国公法九八条五項がかかる公務員の争議行為およびそのあおり行為等を禁止するのは、勤労者をも含めた国民全体の共同利益の見地からするやむをえない制約というべきであつて、憲法二八条に違反するものではない」というふうに述べております。
  255. 木島日出夫

    ○木島委員 そうなんですよ。そういう公務員の争議行為、あおり行為禁止憲法違反でないという判断をするのに非常に大事な人事院勧告というのがあって、それが代償措置としての役割を果たしているということを最高裁が判決で下しているんです。  逆の立場からの判決が平成五年一月十九日の大分地方裁判所での判決、これは大分県教組の人事院勧告ストに関する判決なんですが、これは裏側からそれを示している判決だと思うので、やはり最高裁判所からその要旨を、代償措置に関する部分で結構ですが、その要旨を報告してほしいと思うのです。
  256. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 御指摘の大分地裁の判決の要旨でございますが、公立学校教員らが昭和五十八年度の人事院勧告の完全実施等を要求して争議行為を行った場合につきまして、昭和五十六年度において人事院勧告が一部実施されず、昭和五十七年度は完全に凍結し、さらに昭和五十八年度において政府が勧告の完全実施について明確な態度を示さないという状況にあり、しかも政府は、完全実施が困難な事情として財政上の理由を挙げるのみで、完全実施を阻害する具体的要因、完全実施が可能となる時期や要件等を明確にすることなく終始したものであって、人事院勧告制度が労働基本権制約の代償措置としての本来の機能を果たさず、実際上画餅に等しいと見られる状態にあったものというべきであり、このような状況下において、人事院勧告制度の機能回復を要求して、相当と認められる範囲を逸脱しない手段、態様で争議行為を行うことは憲法上許されるとした上、争議行為参加理由としてされた懲戒処分憲法二十八条に違反し、無効であるとしたものでございます。
  257. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。こういう判決があるんですよ。ですから、人事院というのは、単なる労使からの中立、労使の間にあって中立第三者機関という性格ではない、公務員の基本権剥奪の代償機関なんですからね。今の判決、いずれも、値上げをやれという人勧の完全実施を求める状況のもとでの判決だったわけなんですね。ですから、私は今の人事院というのは姿勢がおかしいと思うのです。  御答弁の中で、国家公務員法第二十八条を引用してきました。しかし、国家公務員法第二十八条第二項というのはこういう条文ですよ。「人事院は、毎年、少くとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて国会及び内閣に同時に報告しなければならない。給与を決定する諸条件の変化により、俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院は、その報告にあわせて、国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない。」こういう条文なんです。  この勧告をしなければならないときに、増だけじゃなくて減もあるということで、人事院は減額勧告もできるんだという御主張のために引用したと思うのですが、これは百分の五以上という要件がついているんですよ。今回はそういう状況じゃないでしょう。だから、私は、今回人事院は減額勧告をすべきではなかった。  官民の較差がこういう状況にありますよというのが事実だとすれば、それはしっかり調査して、政府報告することはこの法律上の義務ですから、報告をしたらいいと思うんです。しかし、このぐらいの、ちょっと民間より公務員の方が高いから減額すべきだなんという勧告までいきますと、その法の根拠もないし、先ほど最高裁から要旨を述べていただきました各種の判決の趣旨からも逸脱してしまっているんじゃないかと思わざるを得ないんですが、人事院、どうですか。
  258. 大村厚至

    ○大村政府参考人 今、国家公務員法二十八条を引用されて先生御質問でございますが、私ども、この二項の五%以上というあれは、五%以上の増減があったときには必ず勧告をしなければならない、そういう義務づけの勧告だというふうに思っております。五%未満については、人事院に勧告するかどうかの判断をゆだねられているというふうに考えておりますので、今回も勧告することが適当だということで勧告させていただいたわけでございます。
  259. 木島日出夫

    ○木島委員 そういう解釈をとるのなら、人事院の本来の性格をわきまえて、自分たちは公務員のスト権や団交権がないその代償としての機関なんだから、報告だけはするけれども、減額勧告なんか慎もうじゃないかという態度であってしかるべきだと私は思うので、もうこれで論争は終わりますが、ひとつ、そういう立場で今後、人事院行政をやってもらいたいと思うんです。  そこで、次に法務大臣にお聞きしますが、こういう勧告があっても、本来、憲法上やるべきでない勧告なんですから、裁判官や検察官の報酬、俸給については、これは従う義務はないんですから、このような勧告に準拠しないでやはり頑張れたんじゃないかと思うんですが、そこはどうでしょう。
  260. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今、人事院の方からの御説明を聞いておりまして、私は、おっしゃっておられたことに、そのとおりだと思う次第でございます。  対応金額スライド方式をとっている民間と一般職との俸給の関係、あるいは一般職と裁判官、検察官との関係、そういったものは、やはり人事院のおっしゃるような見方で正しいように思います。
  261. 木島日出夫

    ○木島委員 しかも、先ほど同僚委員からも指摘されておりましたが、裁判官の報酬については、憲法七十九条六項と八十条二項で保障されているはずなんですね。憲法は、報酬は在任中減額されないという規定であります。  しかし、実際のやり方を見ますと、裁判官報酬法では憲法で言う報酬を勝手に二つに分離して、いわゆる報酬、狭い意味の報酬と報酬以外の給与、手当というふうにわざわざ法律で分けてしまって、そして、これまで最高裁は、その狭い意味の報酬だけを憲法保障しているんだなんて勝手な解釈をしているんですが、それは本当に憲法違反の解釈、憲法解釈の間違いだと思うのであります。  そこでお聞きしますが、今年度、現行の裁判官の、検察官も同じなんですが、狭い意味での報酬、それは総収入の何%ぐらいになっているのか。裏返しですが、狭い意味の報酬以外の給与、手当は全体の収入の何%ぐらいになっているのか。幾つかのチェックポイントで結構ですから、御答弁願いたいと思います。
  262. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 判事と、と申しますのは、判事は何年目でありましても同じでございますので、判事と十年目の判事補と初任の判事補、それぞれについてお答え申し上げますが、判事の場合は、報酬が約六〇%、手当が、期末特別手当と、一二%の調整手当が支給される場合ですが、この調整手当とを合わせて約四〇%でございます。  それから、十年目の判事補、判事補で一番高い報酬を受けている者につきましては、報酬が約五三%でありまして、手当は、期末・勤勉手当と一二%の調整手当及び扶養手当、これはモデルケースでありまして、配偶者と子供一人ですが、扶養手当を合わせますと約四七%。  それから、初任の判事補につきましては、報酬が約四七%に対し、手当は、期末・勤勉手当と一二%の調整手当、扶養手当及び初任給調整手当というものがございまして、これが相当額が多いのでございますが、これを全部合わせまして、手当は約五三%となっております。
  263. 木島日出夫

    ○木島委員 時間ですから終わりますが、今答弁されたとおりなんですよ。いわゆる狭い意味の裁判官報酬法で言う報酬というのは、上の方の判事で全体の収入の約六割なんです。下の方の初任者の判事補なんか、四七%の部分しかないんですよ。普通の十年目の判事補ですら、報酬というのは、狭義の報酬は五三%。だから、半分は報酬以外の給与、手当なんですよ。  ですから、憲法解釈として、今、現に裁判官がもらっている総収入の半分はいわゆる憲法上の報酬じゃないから憲法保障していないなんという、そんな憲法解釈をとったら、裁判官の基本的な身分保障はできませんよ。ぜひ、そういう解釈はもうやめて、裁判官の全体の総収入が減額されてはならないんだというのが憲法解釈なんだという立場で、裁判官の減額は認めないという立場に最高裁も法務大臣も立つべきだということを主張いたしまして、質問を終わります。
  264. 武部勤

  265. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  私ども社民党は、今回の二法案には賛成の立場でありますが、なお質問をさせていただきたいと思います。  一点目は、前回も最高裁にお聞きしたところですけれども、例の、十月に京都地裁の判決で、裁判官がタクシー運転手を雲助、こういうふうに呼んで、かけごとで借財を抱えた者が多い、こういう記述があった。これは職業差別そのもので、人権意識ということに対して極めて疑いを抱かざるを得ない。人を裁く役割を担っている裁判官、また憲法によって、その身分を強く守られて、そしてその報酬も保障されている裁判官が、こういう基本的な人権意識を持っていないということを指摘したところなんですが、どうでしょうか。  注意をされたそうですけれども、こういった問題、職業差別について、二度と人権侵害の疑いを抱かざるを得ないような記述をしないように、裁判官に対する教育、研修、研さんというか、そういう具体的な計画はございますか。一般の計画ではなくて、今回のことに照らして、新たに何か企画されていることは最高裁の方でありますか。
  266. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 裁判官に対する人権教育につきましては、前回お答えしておりますが、最高裁といたしましては、このたびのことを踏まえまして、研修の機会などをとらえまして、この件を教訓として紹介して各裁判官に注意喚起することを考えております。  また、裁判官の研修につきましては、今後一層、裁判官としての技術の習得に限らずに、人権問題に関する研修などの充実を図る、あるいは人権に関する情報裁判官に提供するなどして、裁判官の人権感覚の一層の向上に努めてまいりたいと思っております。  具体的な研修計画は司法研修所の方でつくりますが、常時そういう研修計画は検討しておりますので、その中で検討することになっております。
  267. 保坂展人

    ○保坂委員 その検討の中で、現場のタクシードライバーが今回の京都地裁の判決でどれだけ傷ついたか、あるいは侮辱を受けたか、こういうこともきちっと裁判官の方が受けとめる、こういうことが必要かと思うので、ぜひ努力していただきたいということを指摘したいと思います。  さて、法務大臣に伺うんですが、先ほどから同僚議員から、裁判官の給料について、裁判官の報酬についてやりとりがございました。本来ならこういう法案は、もう一つ検察官の俸給も入っているわけですから、検事総長代理などがここに来て話をするというのが自然かと思うんですが、率直なところ、どうですか。
  268. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 検察官等のことにつきましては、私が責任を負っているということで、法務省として責任を負っているということで、その必要はないんじゃないか、こういうふうに思います。
  269. 保坂展人

    ○保坂委員 実は、司法制度改革審議会の設置をめぐる議論の中で、房村さんは御存じですけれども、前々になりますけれども、当時の中村法務大臣が、一月の頭の読売新聞で、司法制度改革の一つのテーマとして、検討項目として法務省で温めている項目の中に、国会において、独立した捜査権限を持つとはいえ、行政組織の一つである検察庁が答弁責任を負う、アカウンタビリティーだ、こういうことを検討していいんじゃないかということが入っていたと思うんですが、いかがですか、房村さん。
  270. 房村精一

    ○房村政府参考人 ただいま委員指摘の本年一月四日の読売新聞の記事のもとになりましたものは、司法制度改革の論議が各方面で非常に活発になされているという状況のもとで、法務省において、中村大臣の指導もございまして、今回の司法改革でどのような問題が取り上げられるであろうかということを、一種の想定としてまとめたものでございます。その中に、検察官のアカウンタビリティーというようなものも入っていたというのは、委員指摘のとおりでございます。
  271. 保坂展人

    ○保坂委員 今答弁されたように、前々大臣である中村法務大臣は、やはり国会のあり方そのものも考え直すという点で、検察庁の、つまり個別の事件についていろいろ、どうだこうだということじゃなくて、こういう法案については私の考えでは、代理の方が出てきて、基本的なことについて答えるということはあっていい。やはり検察庁として、そういう個々具体的な事件、これは最高裁だって同じなわけですから、ありようについてチェックを受ける、ましてや則定問題などあったわけですから。  そういう意味で、法務省が監督している、大臣が監督しているとはいえ、大事な税金を預かって、公正な執行があるのかどうかというのは、やはり国会でチェックを受けるというのが大事だということを中村法務大臣は考えて、そして出したわけですね。お考えはいかがですか。
  272. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 先ほど私が申し上げましたとおり、検察官等につきまして、法務省でもって責任を持っているということでございますから、あえてこの場に出てくることは必要ないと思います。
  273. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると、中村法務大臣のつくられた文書というのは今や撤回されている、法務省としてはもうそれはやめた、こういうことですか。
  274. 武部勤

    武部委員長 房村司法法制調査部長。
  275. 保坂展人

    ○保坂委員 答えるのは一応大臣に。これは政府委員制度廃止のいいところでありますから、大臣に。
  276. 武部勤

    武部委員長 房村司法法制調査部長。委員長から指名されたら出てこなければだめじゃないですか。
  277. 房村精一

    ○房村政府参考人 失礼しました。  最初に申し上げたとおり、あくまで法務省の方針としてこういうものをという、決定した文書ではございませんで、司法改革の流れの中でいろいろな御指摘があるので、こういうことも取り上げられるのではないかということを想定してまとめた文書でございますから、そういう方針を決めた文書ではございません。その点を先ほど申し上げたつもりでしたが。
  278. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、そういう項目を想定したそうです。臼井法務大臣はその想定ぐらいはされていいのじゃないでしょうか。今後の議論のテーマとして、課題として、あっていいことじゃないでしょうか。
  279. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 私どもは既に、司法制度改革審議会に対して、二十一世紀を見据えた幅広い観点から、いろいろな問題について検討していただきたいということでお願いいたしております。私どもは、その経過というものをしっかりと見守ってまいりたいと思います。
  280. 保坂展人

    ○保坂委員 司法制度改革審議会も議論するんですが、法務大臣も監督されているわけですね。だから、国会での議論のあり方として、こういうことを検討したり、考えたりすることぐらいはあってよろしいのじゃないかとお聞きしているんですが。
  281. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 御意見としてお伺いいたしておきます。
  282. 保坂展人

    ○保坂委員 では、平行線なので、ちょっと質問を変えたいと思います。  この法案とちょっと離れますけれども、一点だけ。  警察の犯歴データが漏えいしたという件について前回質問をしたのですけれども、実際に、これは先ほどまで審議があった法案などとも大変関連がある問題だと思うんですが、この犯歴データという、前科前歴情報というのは一体どういう情報が漏えいしたのかという点について、簡単に説明警察の方からお願いしたいと思います。
  283. 石川重明

    石川政府参考人 私どもの警察のコンピューターに入っております前科前歴、いつ逮捕されたかとか、どういう処分になっておるかといったようなもので、その時点で判明しているもののデータでございます。
  284. 保坂展人

    ○保坂委員 この前科前歴情報を興信所に警察官が渡すというのは違法行為ではないのでしょうか。警察の方の御答弁をお願いします。
  285. 石川重明

    石川政府参考人 基本的にあってはならないことでありまして、その具体的な個別の事態によりましては、例えば地方公務員法の違反になるというようなケースもあると思います。
  286. 保坂展人

    ○保坂委員 その地方公務員法違反の疑いというか、まさに漏えいしているわけで、これで立件されなかった。つまり諭旨免職という形で、退職金も払われたそうですけれども、余り悪質じゃないというふうに判断をされて、こういう処分なんでしょうか。
  287. 石川重明

    石川政府参考人 この漏えいの仕方でございますが、私どもが警視庁の報告で承知しているところでは、口頭でやっておる、こういう状況がございまして、本件につきましては、本人が諭旨免職になった時点では、事件として立件するだけのいわゆる証拠というものが確認できなかったというふうに報告を受けておるわけでございます。  ただ、現在警視庁におきまして、さらにその立件に至るような十分な証拠があるかどうか、なお検討を進めているというふうに承知をしております。
  288. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、これは関連して、前科前歴情報とともに、NTT顧客情報が流出をしたということで、その一点だけで郵政省の局長においでいただいていますけれども、この顧客情報というのは、一体どういう内容が漏えいしたのでしょうか。  顧客情報と言われるものは、発信、着信、あるいはその電話番号、住所、あるいは課金の内容等、どういう内容が漏れているのか。最近NTTの職員が興信所にこれを漏らして、これは金銭の授受もあって事件化しているものなどもありますので、そこらも踏まえて簡潔にお答えいただきたい。
  289. 天野定功

    ○天野政府参考人 お答え申し上げます。  これまで流出した顧客データの内容でございますけれども、主として電話加入者の氏名、電話番号、住所など、いわゆる加入者情報であると承知いたしております。
  290. 保坂展人

    ○保坂委員 NTTはCUSTOMというシステムがあって、だれに、どこにかけたか、こういうこともきちっと記録されているわけですが、その情報は流出していなかった——では、これは警察の官房長の方に聞きましょうか。この警視庁の事件で、このデータというのはそういう内容は含んでいなかったのでしょうか。
  291. 武部勤

    武部委員長 ちょっと保坂君に申し上げますけれども、法案の審議とどういう関連があるのか、委員長としては理解に苦しむところがありますけれども。(発言する者あり)
  292. 保坂展人

    ○保坂委員 私は、この二法案には賛成の立場で、先ほど十数分間、裁判所とそれから検察官について質問をいたしました。(発言する者あり)
  293. 武部勤

    武部委員長 御静粛に願います。  委員長は尋ねているのです。どういう関連か尋ねているのです。(発言する者あり)御静粛に願います。
  294. 保坂展人

    ○保坂委員 ですから、もう一度、では警察の官房長に伺いますが、この顧客データの流出というのは、住所と電話番号以外に、例えば発信、かけた電話番号ですね、その時間の長さ等の通話記録ですか、これも含まれているのでしょうか。
  295. 石川重明

    石川政府参考人 警視庁の報告によれば、電話架設者と電話架設場所であったというふうに承知をしております。
  296. 保坂展人

    ○保坂委員 では、法務大臣に伺います。  これは人権上も大変な問題でありまして、犯罪を犯しても、所定の法によって決められた結果を待って、やはり一般の市民生活をされている方が多いわけです。犯歴データとそしてNTTの顧客情報というのは、決して漏れてはならないものですね。NTT職員が漏らすのももちろん問題だけれども、捜査をする立場の警察官がこういうものを漏らすということについて、個人情報保護の立場で、その被害者に対してやはり適正に謝罪をし、こういう不祥事があったことを告知して、二度とないように説明をするべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  297. 石川重明

    石川政府参考人 今申し上げましたとおり、警視庁において、だれの個人データが漏えいしたのかということについて、その特定を、困難が伴っているようでありますが、急いでいるところでございまして、現時点で特段の措置というものはとられていないことは確かであります。これが特定するといったような段階になりましたら、また必要な措置を考えたいというようなことを聞いておるわけでございます。
  298. 保坂展人

    ○保坂委員 事実関係を細かくおっしゃったので、一点だけ伺いますが、そうすると、漏えい先の興信所からその漏れたものを出していただくということはされているわけですね。
  299. 石川重明

    石川政府参考人 現時点において私ども承知しているところでは、口頭と口頭でやっておりまして、どうも記憶の世界の話になっておるという状況がございまして、それで、今、どのものが本来のものであって、どのものがいわゆる漏らしてはならないものであるのかといったようなことも含めてその特定に努めておる、こういうふうに承知しております。
  300. 保坂展人

    ○保坂委員 では、最後の質問になります。  法務大臣、今のやりとり、これは大変大事なやりとりですね。捜査機関に我々は信頼を置きたい、そして、一般の市民の権利が、あるいは情報がいやしくも捜査の名をかたって出ていく、しかも興信所にということは、これはゆゆしき事態です。警察庁の方も調査をすると言っておられますから、これはきちっと見守っていただきたい。そして厳正な措置をとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  301. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今御質問をされまして、いろいろ答弁があったわけでございますが、そうしたことはあってはならないというふうに思います。この件につきましては、しっかりと見守ってまいりたいと思います。
  302. 保坂展人

    ○保坂委員 見守った上で、今、口頭間とおっしゃいましたけれども、事実が出てきたら、やはりその被害を受けた個人に対してきちっと説明をして、謝罪するということも含めて、厳正な対応をお願いしたいのですが、いかがでしょうか、その点は。
  303. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 ただいま委員申されました個人に対する謝罪というのは、これは警察において考えていただくべきものだと思います。
  304. 保坂展人

    ○保坂委員 もちろんそうなんですけれども、そういうことを法務大臣として神経を配って見続けていただきたい、そういうことによって捜査機関の信頼性を高めていただきたい、こういうことです。  終わります。
  305. 武部勤

    武部委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  306. 武部勤

    武部委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。木島日出夫君。
  307. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、日本共産党を代表して、裁判官報酬法、検察官俸給法各改正案に反対する討論を行います。  反対の理由は、これによってすべての裁判官、検察官の年収が減額になることであり、しかも、それが憲法に反するという疑いがあるからであります。  第一に、本法案は、裁判官の報酬並びに検察官の俸給を人事院勧告に準拠して極めて低額のベースアップに抑え、その上、期末手当などの特別給を年間〇・三カ月引き下げる措置をとりました。これによって、すべての裁判官、検察官の年収が減額されます。平均で、裁判官は二・三%、検察官は二・二%となります。人事院勧告は公務員の労働基本権を奪った代償措置としてなされるものであり、減額勧告をすることは憲法趣旨に反するものと言わなければなりません。  第二に、憲法は、第七十九条、第八十条で、裁判官は相当額の報酬を受ける、この報酬は在任中、減額することができないと明記しています。これは、裁判官の独立の観点から、その身分を経済的に保障するものとして明定されたものであり、分限によってさえ減額されないとされています。  政府、最高裁は、手当は裁判官報酬法で定められた「報酬」には含まれないとの誤った答弁を繰り返しておりますが、これは、正当な憲法解釈を曲げ、行政に追従した不当な態度と言わなければなりません。  現在の裁判官報酬法によれば、年収額に占める手当額の割合は、判事以上の裁判官で四〇%、判事補で四七%から五三%となっており、裁判官の年収の中で極めて大きな比重を占めております。これを、手当だから憲法に定められた「報酬」に当たらないなどと強弁することは、到底認められるものではありません。  なお、育児休業中の裁判官に対する特別給の支給については賛成でありますが、以上の理由で本二法案には賛成できないことを表明し、反対討論といたします。
  308. 武部勤

    武部委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  309. 武部勤

    武部委員長 これより採決に入ります。  まず、内閣提出参議院送付裁判官報酬等に関する法律及び裁判官育児休業に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  310. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、内閣提出参議院送付、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  311. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  312. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  313. 武部勤

    武部委員長 次回は、来る十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十九分散会