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1999-11-16 第146回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月十六日(火曜日)     午前九時三十四分開議  出席委員    委員長 武部  勤君    理事 太田 誠一君 理事 杉浦 正健君    理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君    理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 西村 眞悟君       奥野 誠亮君    熊谷 市雄君       小林 多門君    左藤  恵君       笹川  堯君    菅  義偉君       高市 早苗君    望月 義夫君       保岡 興治君    山本 有二君       渡辺 喜美君    枝野 幸男君       坂上 富男君    福岡 宗也君       漆原 良夫君    安倍 基雄君       木島日出夫君    保坂 展人君       園田 博之君     …………………………………    法務政務次官       山本 有二君    参考人    (筑波大学社会科学系教授    )            内野 正幸君    参考人    (大田原市長)      千保 一夫君    参考人    (ジャーナリスト)    江川 紹子君    参考人    (東京大学大学院法学政治    学研究科教授)      高橋 宏志君    参考人    (弁護士(現オウム真理教    破産管財人))      阿部 三郎君    参考人    (地下鉄サリン事件被害対    策弁護団団長)      宇都宮健児君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 十一月十六日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     望月 義夫君   渡辺 喜美君     小林 多門君 同日  辞任         補欠選任   小林 多門君     渡辺 喜美君   望月 義夫君     加藤 紘一君     ————————————— 十一月十六日  サリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案東中光雄君外一名提出衆法第四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案内閣提出第二号)  特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案与謝野馨君外五名提出衆法第三号)     午前九時三十四分開議      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案及び与謝野馨君外五名提出特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案の両案を一括して議題といたします。  本日の午前中は、特に、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案審査のため、参考人として筑波大学社会科学系教授内野正幸君、大田原市長千保一夫君、ジャーナリスト江川紹子さん、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人の皆さんに委員会を代表して一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  内野参考人千保参考人江川参考人の順に、各十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、内野参考人にお願いいたします。
  3. 内野正幸

    内野参考人 内野でございます。  先生方のお手元に、「団体規制法案憲法学的検討」と題する文書が届いているかと思います。大体、これに即して話していきたいと思います。  最初に、一、法案基本構造や特色についてです。  今回の法案は、大まかに言いますと、無差別大量殺人行為を行った団体に対して規制措置を施すという形で、教団を封じ込めることなどをねらうものと言えます。そこでは、公共の安全の確保のためということで、教団がいわば危険団体とみなされて観察処分対象となりそうです。この処分の実施に当たりましては、公安調査官立入検査も予想されるわけです。これに対し、警察による立入検査は、再発防止処分に向けてのいわば準備という文脈の中に位置づけられていますが、それが行われる可能性もありましょう。場合によっては、再発防止処分発動されるかもしれません。このような二種類処分は、公安調査庁による処分請求を受けた公安審査委員会がその請求の適否を判断して決定するという方式で行われます。  次に、二番、公権力が人権を制限するためには、まず他人への危害防止などの正当な規制目的が必要であります。次いで、規制手段、つまり具体的な措置が、原則的に目的を達成するための合理的で必要最小限のものであるということが求められます。  現在の教団危険度につきましては評価が分かれるでしょうけれども、私を含む多くの国民は、教団に対して不快や嫌悪を感じておりまして、また、施設のある地域住民などは、不安感恐怖感も抱いているようであります。ただ、仮に危害を受ける恐れを言うのでしたら、地域住民よりも、むしろ教団反対運動推進者の方がこのような恐れを抱いてしかるべき立場にあると言えるかもしれません。  さて、ある団体人物世の中で非常に嫌われているということは、関係者人権規制していいということの理由にはなりません。同様に、人々が何となく主観的に感じる不安の解消を図るというのでは、話が漠然としていまして、正当な規制目的に当たるとは言えないでしょう。ただ、危険度が高い低いにかかわらず、多くの人々が抱くのがもっともであると言えるような種類の、いわば客観的な不安であれば保護に値すると見る余地はあると思います。  法案は、表向きの規制目的としては公共の安全の確保をうたっていますが、動機や本音に近い規制目的としては、むしろ住民の不安の解消防止を図るというところに重点が置かれていると言えましょう。  確かに、公共の安全の確保は正当な規制目的に当たりますが、その場合、教団への規制という手段がこの目的と密接な関係を持っているかが問われることになりそうです。他方、住民が合理的に感じる不安の解消こそが主な目的であると言ってくれれば、目的手段の密接な関係は肯定できますが、今度は目的正当性が問われるでしょう。  仮に目的正当性が肯定されたとしましても、まだ問題はあります。それは、規制手段に行き過ぎはないであろうか、また、規制によって関係者人権を制限し過ぎていないであろうかということであります。  いずれにしましても、今回の法案は、結社の自由とか宗教の自由あるいは住居不可侵などとの関係で、憲法問題を引き起こすおそれがありましょう。観察処分発動にとどまるならばまだしも、再発防止処分まで行われるとしますと、それはかなり重大な人権問題になるおそれもあると思います。仮に、観察処分を実施することだけで教団への監視策が功を奏するならばそれにこしたことはないわけです。  なお、法律を制定する、そしてそれを発動させる姿勢を示すということだけで、教団を萎縮させたり住民の不安を静めたりする効果がある程度出てくる可能性もあるかもしれません。  数年前の凶悪な犯罪事件に関しては、犯人たちが厳しい刑罰を受け、また多額の損害賠償を支払わなければならないのは当然であります。しかし、憲法学者としてというより、ある種の素人感覚を交えて言いますと、事件後の過去三年余りの時期における教団に関しては、その行いや態度に悪いところがあるとして規制措置という形のいわば一種の制裁を加えるにしましても、それはその悪さかげんに見合う程度のものにとどめるべきであるという見方も成立するかもしれません。  次に、三ということで、観察処分再発防止処分に関する若干の問題点ということです。  ここでは時間の関係上、すべての問題点を取り上げるわけにはいきませんので、気がついた一部を指摘したいと思います。  まず、観察処分についてです。  法案におきましては、団体現実的、具体的な危険性観察処分発動要件とはされておりません。それはひとまずわきに置くとしましても、観察処分の一環として、五条二項一号後段というのがあるんですが、そこでは、団体役職員だけではなくて、すべての構成員の氏名及び住所報告する義務まで課しているわけです。しかし、それはややもすると、団体のメンバーのプライバシーの権利を侵害する行き過ぎた措置ではないかとも考えられます。  信徒たちの中には、犯罪に何らかかわることなく純粋に信仰活動を行ってきた人もかなり含まれているわけですが、そういう人たちに対して、自分特定宗教団体信者であることを国家機関にさらけ出すよう義務づけるということでは、信教の自由、宗教の自由が脅かされることになるでしょう。少なくとも、役職員以外の構成員については、その人数を報告させるにとどめるといった代案も考えられていいと思います。  次に、再発防止処分についてです。  この要件一つとしまして、八条一項第二文では、「報告がされず、若しくは虚偽報告がされた場合、」という文句が含まれています。しかし、この場合はどういうわけか刑罰対象となっておりません。そうだとしますと、この報告がされず、虚偽報告がされたという話を再発防止処分要件から外すとともに、刑罰対象とするという代案も考えられると思います。  それで、今回の法案のかなり大きな問題点と感じられますのは、再発防止処分要件を定める八条一項の規定に関してであります。  そこでは、第一号に、「人を殺害し若しくは殺害しようとしているとき、」とありまして、二号以下にいろいろ書かれているわけです。その中でも第七号では、構成員の総数または資産を急激に増加させまたは増加させようとしているときというふうになっています。これはちょっと要件の定め方があいまいだと思います。  それはさておくとしまして、最後の第八号です。それを見ますと、これまでの各号に掲げるもののほか、当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の増大を防止する必要があるときという、いわば一般条項的な規定になっているわけです。もしも当局が再発防止処分をねらおうとする場合には、八条一項の一号から七号にかけての規定に該当する事実がなくても、この一般条項的な八号の規定を利用する手が残っているわけです。この規定は恐らく再発防止処分を行いやすくさせるために設けられたものだと思います。  私の考えですと、この第八号というのは削除した方がいいんではないか。あるいは、その後段部分を、別の条文ですが、五条一項五号、すなわち、当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事由があるときというふうに修正した方がいいのではないかという気もします。仮にそこまで言わないにしましても、この第八号の規定は、一号から七号にかけての事由に準じるような重大な事由があるときというふうに厳格に解釈していく必要があると思います。  ともあれ、仮に憲法違反の疑いということをわきに置くとしましても、この法案をもって規制の態様が余り厳し過ぎるものでないような方向に修正するという、いわば立法政策的な提言は行い得る余地があるのではないかと思います。  次に、四としまして、立入検査に関する手続上の問題点であります。  家宅捜索などは原則的に裁判官の発する令状に基づいて行うべしとする憲法三十五条規定があるんですが、この規定につきまして、川崎民商事件についての最高裁判決というのがありまして、そこでは行政調査に適用される場合もあるという一般論が述べられています。この判決によりますと、その上で、所得税法に基づく検査の場合は令状は必要ではないということでして、その理由一つとして、そこには直接的、物理的な強制が伴っていないということが挙げられているわけです。この判決は、この種の直接強制を伴う行政調査の場合は令状が必要であるということを裏でほのめかすもののようにも読めます。  今回の法案ですけれども、令状なしで警察公安調査官立入検査することを可能にさせる規定を含んでおります。この立入検査はどういうふうに行われるのか、まだ詳細はわからないところもあるんですが、仮に直接的な実力の行使ではなく間接強制によるものであるのであれば、その限りでは令状なしで行っても必ずしも憲法違反にはならないように思います。  また、観察処分を受けている団体が所有しまたは管理する土地または建物に対して立入検査を行う場合に、その要件を満たす個々建物などを具体的に特定していく作業が必要になるはずですが、そこでの認定手続を有効にチェックする仕組みというものが法案には見られないわけです。それは仮に違憲にならないにしても、少し疑問があります。  このような問題点は、仮に立入検査の前後における公安審査委員会への報告に関する規定が整備されたとしましても、完全に解消するとは言い切れないと思います。  最後に、五としまして、措置法、すなわち処分的法律についてというところです。  これは仮に法案法律となったと仮定しての話ですけれども、法律は、教団だけに適用されるべきであって、それ以外の団体、特に政治団体に適用されるべきではないと言われることが多いわけです。それで、法律時限立法にすべきであるといった議論とか、あるいは、無差別大量殺人行為を行った団体という言葉の前に、過去十年以内にという限定句をつけ加えるべしという議論もこの点に関連してくるわけです。  しかし、法律が事実上教団だけに適用されるということを意図したものだとしますと、いわゆる措置法をめぐる問題が出てくるわけです。  そもそも法律というのは、一般的、抽象的法規範、すなわち不特定多数の人や団体あるいは事例に適用される法規範であることを原則としています。このことは平等原則にも関連してきます。今回の法案は、宗教団体の固有名詞を出しておらず、その意味で、形式的には一般的、抽象的法規範ですけれども、実質的には措置法としての色彩が強いわけです。  このような措置法を設けることについて、一般論として憲法学では反対意見もあるのですけれども、私自身は、強い政策的必要性がある場合には措置法を設けることを是認してよいというふうに考えております。  以上でございます。(拍手)
  4. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  次に、千保参考人にお願いいたします。
  5. 千保一夫

    千保参考人 栃木県大田原市長千保一夫と申します。  本日は、このような席で参考人として意見陳述の機会をいただきまして、身の引き締まる思いであります。私は、地域住民生活と直結した自治体立場から、そして住民の視点に立って、感じておりますことについて申し述べさせていただきたいと存じます。  さて、私ども大田原市におきましては、本年五月二十五日に、オウム真理教信者と思われる者が、最近廃業したばかりの民宿跡土地建物を売買により取得し、それからちょうど一カ月後、六月二十五日の午前中に、一人の男性からその番地を住所とする転入届本市市民課窓口提出され、それを受理したところ、その日の午後になって、今度は代理人と称する者から、松本智津夫被告戸籍筆頭者とする子供二名の転入届が同窓口提出されました。これが大田原市におけるオウム騒動の発端であります。  なお、その数日前から、既に、施設周辺には大型トラック等が駐車し、不審な人物たちの出入りが付近住民によって確認されており、住民が懸念していたとのことであります。  六月二十五日当日の早朝、トラック等で多数の人間が乗りつけ、施設内に大型重機資材等を運び入れ、その日の夕方までには、たちまちにして施設周辺を高さ三メートルほどの塀で囲い、白いビニールシートで覆ってしまいました。この間、何人もの住民が現場を訪ね、作業中の者たちに、何のための工事か、だれかなど質問したりを繰り返しておりましたが、一向にらちが明かず、うわさが飛び交っていたそうであります。  やがて、周辺要塞のように囲われることで地元住民オウムを意識し始め、住民代表たちが夜になってから施設に出向き、確認をいたしましたところ、応対に出た三人の者から、本日市役所で転入届が保留になっていることや、転入してくるのは松本智津夫被告次男、次女であり、次男オウム真理教教祖であることなどが説明されたとのことであります。  施設周辺を高い塀やビニールシートで覆い、外界と遮断するという形態は不自然で異常であり、将来、続々と大勢の信者たち集団で移住し、ここにオウム一大拠点ができ上がるであろうことを想像したとき、地域住民恐怖を感じ、翌二十六日には、地元住民約三百人が施設周辺に集まり、退去を求める抗議集会を開き、さらに地区内のあらゆる団体を網羅する役員たち連名で、大田原市に対し、「オウム真理教関係者住民登録の不受理について」との要望書提出され、市は内部協議を重ねました結果、二十八日月曜日に、転入届受理を決定し、オウム側文書で通知したものであります。  全国の多くの市町村オウム問題のトラブルが起きておりますことは承知しておりましたが、それは私には関係のない遠いところで起きているらしい他人事でありました。私の心や記憶の中では、松本地下鉄サリン事件を初めとする数多くのオウム教団による残忍な無差別大量殺人事件は既に風化しつつありました。そこに突如、オウム真理教信者たちがまさに集団移住してきようとしている現実を目の前にして、私は、初めてオウム問題を我がこととして受けとめると同時に、あの残虐きわまりない事件の数々が鮮明に自分記憶によみがえり、戦慄を覚え、果ては、住民が抱いている不安を超えた恐怖心解消するために自治体として何ができるのか、考えれば考えるほど行き詰まりを覚え、解決のすべを見出せず、ただ無力感にさいなまれるばかりでありました。  しかしながら、行政としては何らかの決定を求められておりました。  選択肢の一つは、形式的に法にのっとり転入届受理し、市内にオウム真理教教団の合法的な一大拠点施設を築くことを容認すること、もう一つは、たとえ形式的には住民基本台帳法上疑義ありといえども、居住移転の自由を保障する憲法第二十二条における公共福祉に反するとの判断に立って、適法合憲転入届の不受理を決定することと考えました。  次男はいまだ五歳とはいえ、オウム真理教教祖であり、同教団象徴的存在であります。それらの転入届受理することは、その後多数の教団信者が移り住み、やがてその施設が本山、本部の性格を持つ教団中心的施設となり得ることは想像にかたくありません。  私たち地方の小都市では、狭い地域社会の中で濃密な人間関係を基盤とし、地域住民連帯意識もいまだ損なわれずに残っており、身の回りの生活環境を初めとする諸問題は円満に解決され、円滑にコミュニティー活動も行われております。このたび、そのような田園地帯に、日本社会にかつて存在したことのない残忍な無差別殺人を行った団体要塞を築き、隣人として集団移住してくることによって、ただ平凡に、何事もなく平穏に生活していきたいという地域住民の素朴な願い、そしてそんな生活を送れるだけで幸せな人生だと受けとめている、そんな住民願いさえも突如侵害されてしまうと考えたものであります。  我が国はもちろん法治国家でありますから、国民権利が著しく侵害されようとしている現実をいかように解決すべきかにつきましては、必ず法的な根拠が見出せるはずだとの思いで種々検討いたしました結果、オウム信者たち集団での居住移転憲法第二十二条の公共福祉に反するので、転入届はこれを拒否するということしかないとの結論に達したものであります。すなわち、地域住民の、平凡であってもいい、平穏に生きたいという素朴な願いを実現し、保障してやることが市町村としてのかけがえのない基本的な責務であると考えました。  平成二年の熊本県波野村の転入届受理処分に対して、平成五年十月に熊本地方裁判所は違法との判決を出していることは承知しておりましたが、当時を振り返りますと、オウム真理教危険性については社会一般共通認識は形成されておらず、同教団集団移住に対しても、公共福祉に反するとの社会的認知はなされておりませんでした。しかし今や、松本サリン地下鉄サリン事件を含む数限りない無差別大量殺人を経て、社会認識は決定的に変わりました。すなわち、同教団集団活動公共福祉に反しており、転入届の拒否も適法合憲に行い得ると考えましたので、熊本地裁判決はそれとして、もう一度改めて司法判断を仰ぎたいという思いに至ったものであります。  住民は、単に気味が悪いという程度の感情で拒否しているわけではありません。オウム真理教信者隣人となることで、あの松本サリン事件地下鉄サリン事件を含む凶悪な残虐行為恐怖が鮮明によみがえってきて、そのような凶悪事件に巻き込まれることに強い恐怖を感じるものであります。そうでなければ、心身ともに疲れ果てながら、住民が交代で二十四時間の監視抗議活動は続けられるはずがありません。ちなみに、健康の不安を訴える付近住民に対しましては、市の保健婦を毎週月曜日に現地近くの公民館に派遣し、相談、指導に当たらせているところであります。  私たち国民は、日本治安は世界一よいという言葉を信じ、そのことを日本人の誇りとさえ思い自分や大切な家族たち生命、身体、財産の安全を国家にゆだねています。したがって、個々国民がみずからの安全を守るために闘うという覚悟も備えも持ち合わせておりません。すなわち、犯罪者がその気になれば、国民自分自身生命家族生命も守り得ない、全く無防備な状況に置かれています。そういう意味で、世界じゅうのどの国よりも治安がいいとされる日本ほど、犯罪者の前に無力な国民はありません。  今回、オウム真理教という過去に集団大量殺人を行った組織、団体に対する規制ができないようであれば、国家としての統治能力が問われるのではないかとの気持ちすら庶民は感じております。  このたびのオウム真理教規制するための法制定の国の動きに対応して、オウム側では、去る九月二十九日に休眠宣言等活動停止などを表明しております。しかしながら、これらのオウム側姿勢というものは、社会全体のオウムに対する予想外の強烈な反発、批判、非難による住民運動と、それに呼応する国の対策が講じられそうになった状況を受けてのものでありますので、国におかれましては、間違っても、オウム危険性が遠のいたなどという判断に立って、緩やかな規制でも十分などと安易な法律になりませんよう、格段の御理解を伏してお願い申し上げたいと思っております。  さらに、国が国家権力を行使しようとすると、必ずと言っていいほど、形式的人権主義人権絶対主義などを掲げる方々からは、犯罪者や少数の特別な人たち権利を擁護するための人権論が声高に叫ばれますが、これらは、日本の未成熟な民主主義につけ入る、国民を愚弄するものではないかとの感さえいたして、残念でなりません。  通常、善良な国民大衆というものは、みずからの権利を主張するすべを知らず、世の中の不条理にも口をつぐんで我慢している無告の民であります。今回の住民運動は、無名の一般大衆が初めて国家自分たち権利擁護を求めた、やむにやまれぬ思いから生まれた例外的な運動です。その点についての御理解をよろしくお願い申し上げます。  今回、大変ありがたいことに、こうして国が国民の窮状を救済すべく法整備に御努力くださる姿勢が見えてまいりましたので、ぜひ最後まで頑張ってくださいと心からの声援を送らせていただきたいとも思っております。  国家権力の本来の機能は国民のために行使されるものでありますのに、せっかく国家国民のために正当に行使しようとする本来の権力行使までもがあたかも悪であるとか危険であるとかと主張し、阻止しようとする勢力の行動がつきものであります。それでは逆に、国民の幸福追求権が守られなくなります。国家が真に国民のために権力を行使しようとするときには、国民挙げてこれを認め、他方、万が一国民の幸福追求に逆行する権力行使がなされようとする場合があれば、そのときには国民全体が断固として反対することができるような、民主主義の成熟した日本社会になってほしいと願っております。  また、国家権力から国民を守ってやれるのは自分たちだけしかいないと自負をしておられる進歩的文化人や一部マスコミの方々には、国民大衆もきちんとした判断力を身につけてきていることを信用して、権力の是は是としてともに認め、ゆだねる姿勢を持っていただきたいと願っております。  ところで、今臨時国会に提出されております無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案についてでありますが、与野党協議の中で時限立法との話も出ているように報道がなされております。  しかし、五年とかの短い時限立法ですと、その間だけオウムが活動を休止していれば、五年が過ぎて法律が失効してしまい、その後活動を復活させるという危険性もありますし、現在は、開祖と言われる松本智津夫元教祖の裁判が、今後五年間で確定、終了するとは思われないことなどから、ぜひとも時限立法にはしないでいただきたいと考えております。ただし、五年ごとに廃止を含めて見直しをするということもあるようでありますが、このくらいはやむを得ないものかもしれません。  次に、今般の法案と直接にはかかわりありませんが、オウムに関連しての教育の問題についても一言申し述べさせていただきたいと思います。  大田原市の施設には、来年小学校に入学する年齢の次男が出入りしておりますので、あるいは就学願が出されるかもしれません。昭和四十二年に、多重債務者などサラ金から逃げている人たちの救済として、住民票がない者も就学を認めるべきとの文部省の通達が出ておりますが、今回のオウムのように自治体公共福祉に反するとして転入届を不受理としている場合には、問題を異にしており、就学を認めるべきかについてはいささか議論の分かれるところと思っております。  しかしながら、本市教育委員会といたしましては、もし就学願が出た場合には、県の教育委員会に照会をし、指導を受けてと考えているようであります。県の教育委員会も文部省に照会をしてということになるかもしれませんが、教育問題につきましても、人権絶対主義者たちは就学を認めるべきと言っております。一方で、まだ五歳の子供である教祖は、教団関係者に囲まれ養育を受けており、昼間は寝ていて、夜起きて修行をしているような異常な生活環境に置かれているとも聞いております。そのような異常な生活環境からでも一般の公立学校で就学を受け入れよと言われますが、まず異常な生活環境を改善し、通常の生活環境から学校に入れたいというのであれば、どこでも受け入れるはずであります。そういう点で、教育の問題につきましても、ぜひ解決策をとお願いを申し上げたいと思います。  種々お願いを申し上げましたが、今回、このような早い時期にオウム対策の法案が国会に提出されましたことに対しまして、全国のオウムに悩む自治体住民は、心から感謝を申し上げますとともに、大きな期待を寄せて見守っております。今回提出されております法律案規制内容等は最善のものであると思っておりますが、今後、与野党間の折衝で法案の角が取れ、法案自体の実効性が失われることがあっては大変残念に思います。この法案につきましては、与野党協力の上、一日も早い成立を願ってやみません。  また、今回の法律で国がオウム規制してくださることになれば、国内治安国民の安全性が保持されることになり、国民の平穏な生活が戻ります。将来再び大きな社会問題になることなどのないよう、実効性の高い法律を重ねてお願い申し上げます。  最後になりますが、今回の法案が成立し、オウム真理教の活動に制限を加えることとあわせて、オウム真理教信者教団を脱退しようとする際に、彼らの社会復帰を支援し、確実にさせる意味でも、元信者のマインドコントロールを解くための方策として、カウンセリングの体制を確立し、元信者にとって、せっかく脱退しても行き場所がなく、再び教団に舞い戻ってしまうということなどのないような方策の検討もぜひお願いを申し上げたいと思っております。  以上であります。ありがとうございました。(拍手)
  6. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  次に、江川参考人にお願いいたします。
  7. 江川紹子

    江川参考人 おはようございます。  坂本弁護士事件が起きてからもう丸十年が過ぎました。強制捜査が始まって四年半以上になります。そういう今になってこういう形の団体規制を考えなければならないということ自体に残念な思いがいたします。  こういう法律を招き寄せたのは一にも二にもオウム真理教に責任があることは言うまでもありません。彼らは、一連の事件教団として何の反省、謝罪もしないまま、資金稼ぎをし、活動を活発化させてきました。  ただ、私たち社会の側も、このことに十分な対応をしてきただろうかという思いはあります。これまでにもオウム対策でできることはいろいろあったのではないでしょうか。例えば、規制という面では、オウムの資金源になっている関連企業について、税金面や労働法規などさまざまな現行法を活用して対応するということができたはずです。現行法では何ができて何ができないのかを議論し、現行法でできることを十分にやった上で、それでもこういう危険性、このような問題があるから新しい規制が必要だというのではなくて、あちこちで騒ぎが起きているから急いで規制法という名のこう薬をつくって張りつけようという印象が正直言って否めないのです。  ただ、私も、彼らオウム真理教が言うように、彼らが一〇〇%安全な集団になったなどとは毛頭思っておりません。何しろ、この集団は今もなおこうした機関誌に麻原彰晃こと松本智津夫の説法や写真を掲げて、彼を偉大なる完全なる絶対なるグルと称賛してやまないのです。松本智津夫が新たな指示を出す、そういうことができない今、この集団は殺人などの違法行為を行っておりません。重大犯罪は行っておりません。ですが、本質的に彼らが変わったとは思えないのです。だからこそ、せめて将来彼らが再び反社会的行動をとることがないよう最善を尽くすという必要は感じております。  そのためには、この集団監視するということは非常に重要だと思います。この法案が、まずは監視、観察をし、内部の状況を正確に把握することが必要であるという点を柱に据えているその方向性については理解し、十分評価できると思います。ただ、こうした法律による監視についてはいろいろ気がかりな点が多いということも指摘しておかなければなりません。  まず最初に、この法律が施行されれば、オウム真理教は私たちの目から非常に見えにくい形で活動をするようになっていくだろうということです。法案の制定が言われるようになって、既にその兆候はあらわれております。対外的に開かれているべきはずの広報部でさえ引きこもって、連絡もつかず、どこで何をしているのかもわからないという状態です。  あの集団の例えば街頭でのパフォーマンスを見なくて済むというのは非常にせいせいするものがあります。しかしその一方で、彼らがどこで何を考え、どんなことを言い、行うのか、この目で、この耳で確認しにくくなるというのはやはり不安が残ります。警察と公安調査庁がやるから大丈夫なのでしょうか。警察や公安調査庁の人員や能力にも限界がありますし、オウムだけにすべての人員を投入するわけにもいかないというのも現実でしょう。それに、公安調査庁という私たちの目にはやはり見えにくい、その動きをチェックしにくい機関からの情報に頼り切ってしまうというシステムにしていいのかという疑問が私にはどうしても払拭できないのです。  そして、私たちの目に見えないような、目に触れないような形で彼らはどのように振る舞うのでしょうか。まず考えられるのは、オウムをやめたふりをして、いわゆる元信者を装うことです。公安調査庁の方もそれは先刻御承知でしょうから、元信者を含めて観察の対象にされるということになると思われます。  オウムに長くいた信者は、組織を離れ、頭ではオウムの問題性を十分に認識したとしても、心を整理するのには時間がかかり、社会に飛び込んでいけない状態がかなり長く続きます。また、依然としてオウムにしがみついている友人たちを説得しようという気持ちから、現役信者に接触をしている元信者もおります。観察をする側にとっては、そうした行動というのは非常に怪しく見えるでしょうし、観察する、あるいはマークの対象になるということは十分に考えられるわけです。  社会に復帰した元信者もたくさんおります。その勤務先、住居周辺に入念な調査が行われれば、どうなるでしょうか。今のようにかなり激しい反オウムの感情が吹き荒れている中、オウムにいたことがばれれば、会社にいられなくなったりして、社会復帰を阻害する心配もあります。  一方、この法律の効果として、現時点で迷っている信者が親元や社会に戻ってくる一つのきっかけになり得るという考え方もできます。彼らは、オウムという真理の集団からみずから離れていくということは、死後地獄に落ちるほどの大きな悪業であると信じています。だから、過去の犯罪や今の教団のあり方に疑問を感じたとしても、怖くて離脱できないという人がかなりいる、そういうふうに指摘する元信者もおります。今回の法律は、自分の意思で脱会するのではなく、社会の圧力によりやむなく離脱せざるを得なくなった、そういう形、言いわけを彼らに与えてあげることができるというわけです。  他方、こういう法律をかけても残る者は確実におります。しかも、彼らはこれまで以上に心をかたくなにし、自分たちが真理を実践しているがゆえに、昔のキリストと同じく、社会から迫害されているのだ、そういう自己正当化を強めていくでしょう。もちろん、彼らの言うことをそのままに受け入れようというのではありません。甘くすれば彼らはつけ上がるというのは、これまでの常でありました。  しかし、例えば構成員の総数または資産を急激に増加させ云々という非常に抽象的、情緒的な基準によって厳しい処分を科す法律をつくれば、彼らが自分たちを窮地に追い込む社会に対して怨念を募らせていくのではないかという不安は否めません。こうした信者の心理の問題については、さきに述べました元信者への影響をどうするかという問題とあわせて、法の運用に当たっても十分に配慮していただきたいというふうに思います。  もう何点か、運用ということについてお願いしたいことがございます。  一つは、オウム信者住民票の問題です。  当初、茨城県三和町が不受理判断をしたときには、まさに苦渋の決断だったと思います。先ほどの大田原市の場合も、教祖が来るという特殊な事情があったことは事実です。しかし、二番手、三番手とそういった判断が続く中、今では地方自治体住民票不受理といういわば違法行為を行うのに、何のためらいもなく、むしろ当然という風潮になっています。  オウムを入れたくないという住民の心情は十分に理解するものです。そして、この戦術がオウムを追い込んできたのも事実です。しかし、もっと長い目で見たときに、行政が法を曲げることを常態化してしまっていいのかという疑問はあります。それが人道上の問題をもたらしつつあります。それだけでなく、一般国民には行政罰をもって義務づけているはずの住民票の届け出をオウムだけはしなくていいという、いわば脱法行為のお墨つきを与えているような気がいたします。  今回の法案は、信者が居どころを正しく届け出ることを要求しているわけです。片方で届け出るなと言い、片方で正確に届け出ろと言うのでは矛盾していると思います。規制法の施行と同時に、最低限、住民票の問題は適法な状態に早く戻すような指導をお願いしたいというふうに思います。  それとあわせて、先ほど話題にもなりました信者教祖の子供についての問題ですが、それについても考えていただきたいと思います。  いわゆるオウムの子たちが常識も一般知識も学ばずに、同年代の子供との交流すら持たないまま、独善的な教義だけを教え込まれて大人になっていく、そういうことはどうなるのだろうか、将来を考えると、想像するだけでそら恐ろしくなります。何らかの形で保護をする、あるいは就学を促進していくなどの工夫が要ると思います。先ほどもありましたように、そのために住民が不安におびえたりすることがないよう、例えば教師の数をふやして目が行き届くようにするなど、国なり県なりが地元の自治体住民を支えていくという必要があると思います。  それから、こうした法的な規制では、オウム真理教の問題は根本的に解決しないということも忘れないでいただきたいと思います。オウムを初めとするカルト問題については、残念ながら、これを飲めば一発で効くという特効薬はないのです。  十年間かかわってみて、本当に感じるのは、オウムの問題は、もともと変な人あるいは特異な環境に育った人が集まって起こしたものではないということです。ごく普通の若者が、社会人が、主婦が、人生の夢を模索したり、あるいは何らか悩んだりする中で、たまたま書店でオウムの本を手にとったり、大学にやってきた松本智津夫の講演を聞いたりしてオウムと出会い、引き込まれていったというケースがかなりあります。  若者たちに関して言いますと、どちらかというと、大人から見ればいい子だった青年たちが多いようです。それは重大犯罪にかかわってしまった信者に関しても言えることです。地下鉄サリン事件のある実行犯の父親は、法廷でこのような事態になってしまった原因について聞かれ、わからへんとうめくように言われて泣いておられました。失礼な話かもしれませんが、ここにおられる議員の方々のお身内あるいは知り合いの中に信者がいても全然不思議ではないという状況だと私は思っております。  今信者でいる人たちが一刻も早く本来のそうした自分を取り戻し、社会に戻ってくることが本当の意味でのオウム問題の解決であり、社会の安全につながるのではないでしょうか。  カルト団体のメンバーに対するカウンセリング活動を続けてこられている方に今回の法案の感想をお聞きしましたところ、こんなことをおっしゃっていました。信者と元信者の境界線は本当にデリケートであって、きょう信者であっても、あす元信者になり得るわけで、カウンセリングの現場からいえば、多くの信者、殊に末端信者は元信者予備軍です。しかも、信者から元信者への移行を図るのに客観的な基準などありません。百人いれば百の基準があるのでしょう。法律は、そういうカルト問題の本質であるデリケートな問題を見落としてしまう危険性をはらんでいるわけです。  私が思うに、彼ら信者たちはある意味で怖がっていると思います。社会に対して恐怖感を抱き、そしてオウムによって植えつけられた地獄などの恐怖によって心を縛られている状態ではないでしょうか。その恐怖を覆い隠すために、妙なプライドにこだわったり、現実に目をつぶって教団への疑問や不信感を抑え込んでいるという人も多いと思われます。  団体規制という厳しい措置を行うだけでなく、信者がそうした恐怖を克服したり、心を整理したり、現実と向かい合う勇気を奮い起こしたり、あるいは自分の夢や生きがいをもう一度自分自身で探し直そうと立ち上がったり、あるいは人間に対する信頼を回復したりするには手助けが必要です。逮捕され、比較的長い期間身柄を拘束されていたとしても、かえってオウムに対する忠誠心や信仰心を強固にしていく信者がどれほどいたでしょうか。単にオウムから引き離して隔離しておけばいいというものではありません。  ただ、心のケアが重要だということで行政が相談室のようなものをつくっても、オウム信者がすぐにそこを頼りにするということはちょっと考えにくいと思います。きょうまで住民票不受理など敵対していたお役所に心を開いて相談にやってくる信者がどれだけいるか、考えただけでちょっと考えにくいものがあります。  そういう形ではなく、では、何ができるのでしょうか。これまでもオウム信者に対してカウンセリング活動を実施したり、こうしたカルト問題について研究を深めてきた人々団体がおります。そういう人々団体をバックアップするという形で、信者の心のケア、良質なカウンセラーの養成などの問題に取り組んでいただきたいと思います。それから同時に、大学や研究機関などでカルトによる心の支配についての研究を促進していただきたいと思います。  最後に、一言申し述べたいと思います。  どうか、この法案で一丁上がりではないということを心していただきたいのです。また、オウム真理教が目の前から見えなくなれば一件落着ではないということ、オウム以外にもカルトの問題はたくさんあるということをよく認識していただきたいと思います。  先日も成田市内のホテルでミイラ化した男性の遺体が発見されたという件で、ライフスペースという集団に対して警察が捜査を始めていると言われています。ほかにも、問題点が指摘されている集団は幾つもあります。オウムをつぶせばそれで終わりという簡単な問題ではありません。  カルトの問題は心の問題であり、警察だけにお願いし、押しつけておいていいものでもありませんし、公安調査庁だけで対応できる問題でもありません。教育、心の健康などさまざまな分野の人々、専門部署、国の機関でいえば文部省や厚生省に当たるのでしょうか、そういった機関が力を結集することが必要だと思います。一応は省庁連絡会議なるものが持たれたということですが、そこで現実的にどういう成果があったのでしょうか。もっと実のあるものにしていただきたいというのがお願いです。  それから、多くの、とりわけ有為の若者たちが巻き込まれているカルト問題に対抗するためには、私たちは何をすべきなのか。現行の法制度の中で何ができて何ができないのかを、さまざまな分野を専門とする国会議員の方々が協力して、英知を傾け、時間をかけて研究し、提言をしていただきたいと思います。フランスやドイツ、ベルギーなどヨーロッパでは、国会がそうした機能を果たしております。ヨーロッパにできて日本にできないはずはないのです。  オウム事件では、多くの人々が亡くなり、健康を損ない、苦しみ、悲しみました。こうした悲劇の中から私たちが何かを学び取り、二度と同じような悲劇を起こさぬよう未来に生かしていくこと、それが被害者の犠牲を生かす唯一の道だと私は信じております。  今こうしている間にも、どこかのカルトが悩める若者に触手を伸ばしております。単に、今目の前にあるオウムの問題、これに対応するために規制法律をつくるだけでなく、国会を中心とした中長期的な取り組みをこれを機会にぜひお願いしたいと思います。この法律を成立させればお仕事は終わりというのではなくて、これが始まりなんだ、そういう認識でこれからの審議をぜひともお願いしたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  8. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 武部勤

    武部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。
  10. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田勇でございます。  きょうは、参考人先生方には、大変お忙しい中御出席をいただきまして、また貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございます。  今お話をいただきました内容に沿いまして何点か御質問をさせていただきたいというふうに思いますが、まず最初に内野先生にお伺いをいたします。  内野先生の御意見のとおり、まさに今回のこの団体規制法律というのは、オウム真理教というこれまでは考えられなかったような大量無差別殺人を行った団体の、現在もなおその実態や動向が必ずしも明らかになっていないという不安の中で、公共の安全あるいは国民の平穏といったものと、それから憲法法律で保障されております国民としての権利、このバランスを保つ、バランスの中でという極めて難しい判断であるのは先生のお話のとおりだというふうに考えているところでございますが、その中で、内野先生から、立入検査に関する手続上の問題につきまして問題があるというような御指摘をいただいたところでございます。我々、これはそれぞれ与党の中で、また政党間でいろいろな議論を重ねる中で、この立入検査手続として、例えば一つはこういうような方法が考えられるのではないかということで議論しているのをちょっと御紹介させていただきたいというふうに思います。  それは、公安調査庁の長官が処分請求するに当たりまして、土地建物当該団体の所有または管理に係るものであるということ、これを資料で公安審査委員会提出をする、その上で公安審査委員会としての処分判断をしていただくということをまず行いまして、その後、実際に公安調査官が立ち入る場合には、あらかじめ立ち入りを行う土地建物、また予定されている期日などを公安審査委員会に通報する。さらに、警察官が行う場合においても、公安調査庁長官を経由して同じように公安審査委員会に通報をする。さらに、今度は立入検査を終わった後で、公安調査官が行った場合あるいは警察官が行った場合にも、その結果を公安審査委員会の方に報告するというような手だてを考えれば、立入検査の濫用に一定の制限を加えることができるのではないかというようなことを考えておるところでございます。  ただいまちょっと私が申し上げましたようなスキーム、それについて先生の御意見と、また、さらにこういうような点をもっと改善すべきなのではないかというような御意見がありましたら、あわせてお聞かせいただければというふうに思います。よろしくお願いします。
  11. 内野正幸

    内野参考人 ただいま御指摘いただいた点でございますけれども、公安審査委員会が事前に確実にチェックできる仕組みを整えるという意味では、事前の手続適正保障という点でよりよい方向に進んでいるというふうに考えます。
  12. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ここの問題というのは、適正な手続という問題と、それから迅速な対応を行わなければいけないということで、これは非常に難しい、両方の命題を両立させなければいけないということでございまして、それをどういうふうに行うのが一番適切なのかということは、今も我々としてもいろいろ議論を重ねているところでございます。また、そういった点につきまして御意見とかがありましたら、ぜひお聞かせいただければというふうに考えているところでございます。  さらにもう一つ内野先生にお伺いをいたしますけれども、今度のこの団体規制法案は、公安審査委員会観察処分あるいは再発防止処分の決定を行うという仕組みになっております。これについて、一部いろいろな方々の御意見の中で、これは公安審査委員会ではなくて国家公安委員会が行い、観察あるいは規制についても警察が一元的に行うべきであるというような御意見もありますけれども、そういった考えについて、先生の御意見をぜひ伺いたいというふうに思います。
  13. 内野正幸

    内野参考人 公安審査委員会国家公安委員会かという問題でございますけれども、両方とも合議制のいわゆる独立行政委員会に属すると言われておりますけれども、公安委員会と比べまして公安審査委員会の方が、いわば第三者的な準司法的機関としての性格がより強いという点から申しますと、公安審査委員会の方がより望ましいというふうに考えております。
  14. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ありがとうございます。  それでは、次に千保市長にお伺いをいたします。  千保市長からは、先日このように大田原の方からの御要請もいただきまして、私も拝見をさせていただきました。住民の皆様、平穏な生活の中にこのような事件が降ってわいて、大変な思いをされていることだというふうに思いますし、また市長として、市民の安全を、また民心の安定を図るという意味からも大変御苦労されていることについては、本当にお見舞い申し上げる次第でございます。  実は、こうした問題というのは、オウム真理教施設が存在するところ全国各地でもうずっと前から起きておりまして、私も、かつて議員になる前に農林水産省に勤めておりまして、その折、九州農政局では波野村での大きな問題がございました。これも、わずか人口千数百人というような地域でまさに降ってわいたような大事件となって、もう本当に村じゅうがひっくり返るような大変な騒ぎになったということを身近で見た経験がございまして、そういう意味では、本当に市長を初めといたします大田原市民の皆様の大変な不安、御苦労についてはよく理解するものでございます。  先ほど市長の方からは、今回の法案は一定の評価ができるという御意見をいただきました。それは大変に感謝申し上げる次第でございますけれども、今回のこの法案というのは、観察処分オウムの、あるいは指定される団体の活動の実態を解明するというのがまず最初にありまして、すぐにその団体の存在や日常的な活動それ自体を規制するという形には決してなっておりません。  私は、先ほど申し上げましたように、この目的、いわゆる公共の安全を図らなければいけないという目的と、それから国民に保障されている権利というバランスの中で、これはぎりぎりのところでの接点だったというふうに理解しておりますけれども、今回のそうした措置は、住民の皆様の思いというのは多分それでは一〇〇%は満足されないのではないかという懸念も持っております。というのは、まず、多分住民の皆さんからは、そこの場所から退去してほしいというのが最後思いなんだというふうに思うのです。  そこで、非常に難しい御判断の質問だと思うんですが、果たして今回のこの法律観察処分で実態の解明を行うということがまずは優先されるという中で、まずはそこを行うということで、住民の皆さんの不安が、とりあえずでもいいんですが、それは解消される、あるいは市長として住民の皆さんの民生の安定を図れる、そういうふうなお考えであるのかどうか。その辺のちょっといろいろな事情も含めまして、御意見をもう少しいただければというふうに思います。
  15. 千保一夫

    千保参考人 お答え申し上げます。  きょうは団体規制法案の御審議ということでありますが、この後また破産法関係の特別措置法の御審議もあるようでありますけれども、私ども、その前段階の内閣提案のこの法案につきましては、今先生がおっしゃいました観察処分、その後の幾つかの条件に基づいて再発防止処分が行われるという、その観察処分立入検査あるいは報告を求めるということを国の方でやっていただけますと、住民の不安というのはかなりそこで軽減される、こう思っております。観察処分で、住民の不安、中で何をやっているかわからないという不安とかあるいは実態が解明をされる、また、今回の法案でも自治体の求めに応じて警察なり公安調査庁などが調査結果の報告などもしていただけるようでありますから、そういう意味ではかなり不安は軽減されてくると思いますし、その次の一定の条件のもとの再発防止処分が行われますと、さらに住民にとりましては、極端かもわかりませんが、かなり安心して日常生活に戻れるのではないか、こういう気もいたします。  本来ですと、再発防止処分が行われるぐらいですと、あるいは住民の不安は本当はさらに増幅されてしまうのかもわかりませんけれども、観察処分が行われる、我々無力な自治体やあるいは地域住民が直接監視などをしなくても済むような、そういう状態になることは楽に想像できることですので、そういう意味では、住民にとりましては相当精神的な不安感解消され、また自分たちの、みずから防衛のようなことをしなくても国が権力によってそれらの監視活動をしてくれるということになりますと、相当住民は安心ができるのではないか、こういう思いでありますので、観察処分並びに再発防止処分につきましては、私どもは今の法案の原案につきましては大変高く評価をさせていただいている、こんなふうに申し上げたところでございます。よろしくお願いいたします。
  16. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ありがとうございます。  それで、市長にもう一つお伺いをいたしますけれども、市長の方からもお話がありました、また江川さんの方からもお話がありました住民受理の問題についてでございます。  この法律で、仮にオウム真理教が指定をされて観察処分が決定される、それによって定期的に公安調査官なり警察官の立入調査も含めます監視が行われるということになりますと、当然今度は住民票の受理を求めるという動きになってくるのではないか。また、その際に拒否をする理由というのが、これはいわゆる住居の中、住んでいるところがなかなか確認できないというのが一つ拒否する理由になっていると思いますけれども、そうしますと、届け出もされる、立入検査も行うということになると、なかなか拒否する理由というのがなくなるというふうに思われます。  ただ、先ほど市長も申されましたように、住民票を受理して市民になると、それに付随して、教育の問題あるいは福祉の問題など、村としては多分対応しなければいけないいろいろな問題が出てくるので、非常に難しい判断になってくるんだというふうに思います。ただ、一方では、場所が、そこにいる人間特定される、なおかつ中に警察による立入検査も行われるというようなことになりますと、そういう拒否する理由がなくなるというふうにも思われますけれども、その点についてどのように対応されるお考えなのか。もし、わかる範囲で、今決まっている範囲で結構でございますので、お聞かせいただければというふうに思います。
  17. 千保一夫

    千保参考人 お答え申し上げます。  一般論として申し上げさせていただきたいと思うのです。私どもの大田原市ではどうするかということについてはまだ正式に協議をしておりませんので、一般論として私どもが考えておりますのは、今先生がおっしゃいましたように、今回の観察処分がなされて、もしそれでまだいろいろ危険がある、不安があるということになりますと再発防止処分も行われるという、そこまでまいりますと、住民にとりましてもみずから監視する必要がなくなりますことと、もし危険があれば再発防止処分も行われるということでありますから、自治体としても、住民の平穏な生活を守るために居住そのものを拒否をするという必要性はなくなってくることは間違いないというふうに思っておりますので、一般論として申し上げますと、やはり今回の法律の内容、成立しました内容によりましては、自治体転入届を不受理にするということについての、今の、適法かあるいは合憲か、そういったことが争われるような状況の中で、転入届を不受理にするということについての必然性というのは相当なくなってくるというふうには、今考えております。
  18. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ありがとうございます。  それでは、最後江川参考人にお伺いをいたします。  江川さんは、これまでずっとこのオウム真理教につきまして調査され、多くの本も書かれ、大変詳しく、そういう意味では、研究されている、まさにこの問題の第一人者というふうに考えておりますけれども、私も、江川さんが書かれた本、ずっとオウムの動きを追跡されてきた本をもとに、実は国会の場でも質問させていただいたことがあるのです。  先ほどの御意見の中にもありましたが、このオウム真理教が、坂本弁護士事件を初めといたしましていろいろな全国各地で端緒があった、それについて結局は十分な対処ができないままに、ついには松本サリン事件地下鉄サリン事件という事件に至った。その間、たしか江川先生の書いていただいた本の中には、現行の法律、いろいろな法律でも十分対応できたところがあるし、いわゆる警察の対応についてもいろいろな疑問を言っていただいているわけであります。  そこで、ちょっとお伺いしたいのは、その松本サリン地下鉄サリンに至る経過の中で、現行の刑法を初めといたしますさまざまな法制度を的確に適用することによってああした悲劇は果たして未然に防げたというふうにお考えなのか。それとも、先ほど意見の中にもありました、今回の団体規制法律やあるいはカルト規制法律など、そういった包括的な法律がなければ、やはり個別の法律の適用や捜査機関の対応だけではその辺は無理だったのか。その辺のお考えを最後にお聞かせいただければというふうに思います。
  19. 江川紹子

    江川参考人 警察の問題につきましては、今神奈川県警の問題がいろいろ出ていますけれども、坂本弁護士一家の事件について現場の捜査員の方々は本当によく一生懸命やっていらしたと思っています。一カ月以上もおうちに帰らないで、その捜査のために力を注いでいらした方も何人もいらっしゃいました。  ただ、残念ながらその捜査の方向性がなかなか定まらなかったということがありますし、それから松本サリン事件のときなどでは、私のような全く外部の人間でもオウム真理教が何か怪しいというふうなことに気がつき始めている時期に、長野県警の方で、第一通報者である河野さんについて、あいつには年越しそばは食わせないというような物言いがなされたとも聞いております。  ですから、やはりそういったことについて十分な反省を警察の方もしていただきたいし、何をどう反省したのかということをちゃんと公表していただきたいと思います。  それから、現行法のことで言うと、もしもということは、本当に仮定の話なので断定的なことは申し上げられませんけれども、例えば、オウム真理教というのはあちこちで盗聴事件とか違法行為を引き起こしていました。警察が横の連絡をもっととっていれば、オウム真理教の組織的な犯罪であるということは早くに明らかになって、もっともっと早い時期に、こんなに犠牲を出さない間に追い込めたのではないかということが、非常に残念な気がいたします。  それから、一般行政についても、例えば山梨県の上九一色村ですと、オウムの建築物について、ここは大変怪しい、住民方々が写真を撮って当局の方まで持ち込んだのに検査がおざなりだったというふうな話も聞いておりますし、それは警察だけではなくて、各部署で、ああやっておけばよかったのではないか、こういう法律が活用できたのではないかという反省点はあると思うのですね。その反省をどう反省したのかということがなかなか明らかにならないのが私はとてももどかしく思います。  お答えになったかどうかわかりませんけれども、そういうことです。
  20. 上田勇

    ○上田(勇)委員 参考人先生方には、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  時間でありますので、これで終わります。
  21. 武部勤

    武部委員長 西村眞悟君。
  22. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 それぞれのお立場から貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。これから四問ほどお尋ねしたいと思いますので、お教えいただきますようにお願いいたします。  まず内野先生に、先生が立論の前提として、仮に目的正当性が肯定されたとしてもということで論を進めておられる。目的正当性とは、先生からいえば、客観的な不安であれば保護に値し、目的手段は整合性がとれるであろう、この法案公共の安全の保護というのは、目的手段関係でいかがなものかという前提で、仮に正当性が認められてもという立論になっておられるわけです。私も、先生の言っておられることはわかっておりますが、客観的な不安というのは、この法律で言いますならば、過去に大量殺人を犯し、そしてその教義をいまだ信じ、その教義に基づく活動をいまだしておるということが客観的な不安になるわけです。これすなわち、公共の安全、公共の不安ではないでしょうか。  我々が今審議している法律目的と、先生が言われる客観的不安を保護法益とする目的とはそごはないように思うのですが、それはいかがでございましょうか。
  23. 内野正幸

    内野参考人 厳密に申しますと、住民の不安の解消防止を図るということと、公共の安全の確保を図るということは必ずしも重なり合うものではないと思うわけです。  極端な言い方になると思うのですけれども、仮に、実際には危険性がないのに迷信その他で危険性があると信じ込まされていた、それで不安だ、不安だというふうに感じている、この状態を解消するというのは、一つのあり得る目的なんですけれども、これはあくまでも不安の解消の問題であって、客観的な危険がなければ公共の安全性の確保という目的を掲げる根拠を失うのではないか。その意味で、理屈の上では、不安の解消ということと安全の確保ということは一応別個のものであるというふうに思います。  ただ、実際的な問題としまして、両者がお互いに接近する傾向がありまして、それで、公共の安全の確保ということと住民の不安の解消という二つの事柄をできるだけ引き寄せて解釈し、位置づけてみせるということはできる余地はあると思います。
  24. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございます。  次に、江川参考人にお伺いしますが、長年オウムのことを調べておられて、そのことでちょっと御質問があります。  つまり、オウムというのは、単組織で活動しておった団体ではなくて、例えばロシアからヘリコプターを持ってくるとか、ロシアからのいろいろな軍事情報に基づく武器の製造を始めるとか、それで現在も活動しております。そういうふうなオウムのことを、単品ではなくて、関連組織といいますか、ロシア等々を通じて、また、報道によりますと、ロシアに行けば北朝鮮との接触も可能であった等々がありましたけれども、その関係はいまだに保っておるのでしょうか。
  25. 江川紹子

    江川参考人 今の御質問の趣旨は、ロシアとの関係があるのかどうかということをまずお聞きだというふうに受けとめますが、強制捜査が始まって以降、オウム真理教は国内のことに対応するのに精いっぱいで、上祐史浩がたしか緊急対策本部長というのをやっていたときに、ロシアはいわば切り捨てるような形になったというふうに当時ロシアにいた人からは聞いております、自分たちは切り捨てられたということで聞いておりますので、組織として何か連携して動いているということは今はないのではないかと思われます。  ただ、人とのつながりというのはわかりませんので、例えば、ロシアにいる信者、ロシアの中で勧誘されて信者となった人と今オウム真理教関係を結んでいないという証拠はないわけですし、上祐史浩がロシアの中の信者の何人かには殺人をも肯定するバジラヤーナの思想をたたき込んでいたという証言をした人もいますので、そういう人たちが今どういう動きをしているのかはわかりません。  ただ、単品で動いているのではないので、組織として、ほかの組織と連携がということをおっしゃっていましたけれども、いわゆるほかの組織との関連性については、私が調べた限りでも、あるいは警察の方にお聞きしても、とりたてて、例えば北朝鮮とのつながりとかというのが浮かび上がってきているということは、私の調べた中ではないです。
  26. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございます。  江川参考人には、オウムだけが問題ではないんだ、カルトというものがオウム以外にもあって、若き青年男女の人生をずたずたにするような、まあ大量殺人はしない、刑法犯に当たるようなことはしない、ただ若者の人生をずたずたにするようなカルトもあるんだ、そして、それに対する対策は国会議員の責務として考えておかねばならないという貴重な御意見をいただきました。  その御意見を拝聴しているときに、さて、本件は大量殺人を過去に犯した団体のことをやっておるけれども、そうではない、カルトというものを、我々立法におりますから立法者としていかに把握して、そして、そのものが青少年の人生をずたずたにしないように我々はいかなる立法者としての法的対策をとるべきかということもちょっと考えました。  先生がカルトのことに造詣が深いのでお伺いしたいのですが、法規制をするときのこのカルトというものの概念ですね。宗教を信ずるということはいいわけです。何もそれは問題ないです。ただ、危険性があって、一人の人生に惨害を及ぼす、社会に惨害を及ぼす、いろいろな種類があるでしょうが、そのカルトというものをいかなる概念で我々は条文化すべきなのかということをちょっと考えまして、先生から何かヒントをいただければありがたいなと思って質問させていただきます。
  27. 江川紹子

    江川参考人 私もカルト全般の研究者ではないので、これがカルトであるという定義づけは私の力量ではできません。多くのいろいろな心理学者とかそういう人たちが集まってみても、ある種の定義、はっきりした定義というのは、マインドコントロールの問題についても、まだしっかりとしたものがない状況です。  現実では問題がこれだけ起きているのに、それについての研究や定義づけがまだそれほど進んでいないという状況をまず御認識いただきまして、では、そのためには、実体が何なのか、どこで線引きをしたらいいのか、国会やあるいは社会心理学者などの専門家と共同してそういう作業を進めていただきたいと思います。  カルトというのは、宗教に限ったことではないというふうに思います。いろいろな経済的なものあるいは政治的なものも含めてカルトと呼べる団体があるやもしれません。そういうことについても、今の段階でこうだというふうに決めるのではなくて、やはり先生方、いろいろな方たちが集まって、長い時間をかけて討議をしていただきたい、研究をしていただきたいというふうに思っております。  そして、法規制だけではなくて、例えば、カルトにひっかからないためにはどうしたらいいかという予防措置を学校の現場でできないのかどうか。例えば、消費者問題が起きたときには消費者教育というのがなされております。カルトの問題が起きたときにカルト教育というのができないものか、できるとすればどういう形でできるのかということも御検討いただければというふうに思っております。
  28. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございます。  次に、最後の質問を千保市長と江川参考人にさせていただきます。  法はやはり法なきを期すのでありまして、私どもも、この法が、つくって万能であって、そして一件落着とは何ら思っておりません。この法の本質は、ある意味では情報収集の手段を我々が持つ、社会が持つということになります。しかし、法は法なきを期すと言っても、今、市長が先ほど御説明いただいた状況下で、この法が必要だと我々は思っております。必要性を前提にしたこの法、人間のつくり上げているものですから、いろいろな不完全さがあることは承知しております。しかし、この法は今必要であると我々は思っております。  今、正直申し上げて院内では、この法を五年の期限で時限立法とするという修正意見との対立がございます。こういう意見があります。私は、麻原彰晃という方の裁判、それが最終的に執行という形で判決が執行される期間、そして、先ほどからるる御説明いただいたオウム真理教というものの危険性、そして、調べるべきものが未知で残っているということ等々を考えれば、五年で限る立法を我々はつくるわけにはいかない、このように判断しておるんですが、現場におられる市長、またオウム真理教に造詣の深い江川参考人に、五年に限ることが是か否かということで御意見をちょっとお伺いしたいと思います。
  29. 千保一夫

    千保参考人 お答え申し上げます。  先ほど一度意見陳述の中で申し述べましたけれども、かつて、地下鉄サリン事件後しばらくの間、オウム真理教がいわゆる死んだふりといいますか、そういう時期がありまして、そういったものが破防法の団体規制請求棄却につながって、そういう社会的な機運といいますか、そういったものにつながった、こういう批判があるわけであります。  今回の法律につきましても、五年という時間は非常に短い時間でありますから、その間休眠をしておれば、活動を休止していれば、たちまちにして法律が失効してしまいます。その後活動を復活させればいいわけでありますのと、今先生がおっしゃいましたように、麻原彰晃開祖の判決というものが確定あるいは執行されるのには五年では到底済まないというのが国民の大体の予測でございまして、裁判がどのぐらい早く進められるかわかりませんけれども、今のところ、五年ということにつきましては余りにも短過ぎるということ。  それから、オウム真理教危険性が変わらない限り、あるいは、宗教でありますから、新興宗教によくありますように、開祖、最初にその宗教を起こした者への個人崇拝というものが非常に多いわけでありますから、麻原彰晃絶対の、麻原彰晃個人に帰依をする、そういうことであれば、麻原彰晃があるいはこの世からいなくなったときにその宗教が消滅するということも考えられなくはないのかもしれませんけれども、今のところ、もう次期教祖が定まっておりまして、いたいけなというか、小さな、罪のないはずの子供を教祖に祭り上げて、その教祖を周りの信者たちが、教団の求心力を高めるため、あるいは対外活動を拡張するための手段に利用しているわけでありまして、こういったことからいきますと、麻原彰晃があるいはいなくなっても、次期教祖がもう既に定まっているわけでありますから、同じ教義を持ったまま今後もまだ活動がずっと続くかもわかりません。  そういうことになりますと、五年が十年になっても、私は、オウム真理教社会の不安解消になるまでに力を弱めるとか、あるいは団体が消滅するということは必ずしも確信が持てないところでございまして、せっかく法律を制定していただきましても、もう一度また社会の大きな不安を惹起してしまうような、そういうことのくれぐれもないように、もし五年ということであれば、先ほどもちらっと申し上げましたけれども、五年ごとに社会状況によって廃止を含めて見直しをするんだということであれば、それはやむを得ないことかもしれませんけれども、ぜひ法律につきましては短い法律にはしないでいただきたい。  それと、五年が十年になっても私は必ずしも十分解決できるとは思っておりませんで、一度失効してしまいましたら、また次にもう一度新たに法律を制定するということにつきましては、社会の大きな国家権力に対する相当の信頼がありませんと、また、国家権力に対する不信とかそういったもので国民が惑わされますと、新しい法律の制定は難しくなるんじゃないか、こう思いますので、ぜひそこのところを御理解いただきまして、きちんとした法律で、国民の安心できる法律をつくっていただきたい。そういう意味では、短い時限立法にはしないでいただきたいとくれぐれもお願い申し上げたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  30. 江川紹子

    江川参考人 私の頭の中では、二つの価値観がせめぎ合っているような状況です。一つは、今大田原市長がおっしゃったように、住民の方たちの安全とか安心感というものを考えると、なるべく長い方がいいのかなと思ったりもします。その一方で、この法律というのは非常に副作用の大きいというか、効果といいますか影響の大きいものですから、それを考えると、なるべく短い期間の方がいいという思いもあります。  また、オウム真理教というのはそのときの状況に応じていろいろ対応を変えていきますから、今のこの法律が五年間このままでいていいのかというふうな問題、そういう視点から考えなければならないのかもしれません。  そういうことを考えると、これは双方のいろいろ考え方の妥協ということになるのかもしれませんが、やはりバランスの問題かなというふうに思います。  私、今の時点で意見を聞かれれば、数年程度で見直しを含めて考えるということ、例えば三年とか、そういうことでもう一度考える、必要ならば延長する、あるいは足りないものがあれば付加する、余計なものがあればそれを取り除くということを小まめにやった方がいいのではないかなという気持ちがしております。
  31. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございました。
  32. 武部勤

    武部委員長 次に、福岡宗也君
  33. 福岡宗也

    ○福岡委員 民主党の福岡宗也でございます。  参考人の皆様方には、大変お忙しい中を出席を賜り、貴重な御意見を述べていただきましたこと、心から感謝を申し上げます。一、二点御質問をさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。  まず最初に、内野先生に対して御質問を申し上げたいと存じます。  先生のお話、きょうお聞きしましてよくわかりましたし、それから、過日朝日新聞に発表されておられました先生の御意見も拝聴したわけでございます。したがいまして、それに基づきまして、ちょっと二、三確認を申し上げたいというふうに思っているわけであります。  先生は、本法案の最も基本的な問題として、オウム危険団体だとして観察処分にし、また再発防止処分にしておるということなのだけれども、この法案問題点は、規制のための正当な目的があるのかという点と、それからさらに、規制の具体的手段というものが必要最小限度の適切なものであるかどうか、この二点にあるんだということを指摘されておりまして、さらに、公権力、特に国家権力により人権を制限するためには公共福祉を守るという理由が必要だ、しかもそれは、たしか最高裁の判例を引用されて、差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であるということを基準として述べておられます。そして、その規制手段としては、差し迫った危険というものを具体的に回避するために、とりあえず必要な最小限度のものにしなきゃならないんだという御主張のように思われるわけであります。  そして、規制目的そのものについては、公共福祉とか公共の安全ということはもちろんだけれども、今回のオウム真理教事件について言うならば、むしろそれよりも現実に必要になっておるのはどういうことかというと、いわゆるサリン事件のような無差別大量殺人というものを犯した、防御のしようがないというようなことから、住民人たちが強い不安感恐怖心を抱いておる、生活の平穏が非常に害されている、こういうことが現実の問題として目的として極めて問題になるとして、そしてこの問題が正当な、先ほど、抽象的な基準になるかどうかという問題については、やはりなるのではないだろうかというような評価をされておるように感ずるのですけれども、ただ、どうも先生の場合にはなると断定はされていないようなので、まず質問の第一点は、住民生活の平穏、恐怖心を払拭する必要があるということが憲法上のいろいろな人権を制約する合理的理由になると考えておられるのかどうか、これをお聞きしたいわけであります。よろしくお願いします。
  34. 内野正幸

    内野参考人 今の質問にお答えする前提として、一点だけですけれども、先生の御指摘は九割方当たっているのですけれども、一割ほど、明らかに差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であるときという部分は、いわば特殊な文脈といいますか、集会のための市民会館会場使用申請を不許可にするという文脈における最高裁の判決でありまして、公共福祉という強い要件を満たすためには必ずそういう厳しい要請を満たしていなければいけないという趣旨ではありません。もう少し緩やかなものであっても構わないというふうに一般論としては考えておりますということを前置きした上で、原則的には、危害が予想される、あるいは何らかのおそれがあるということが必要なのですけれども、住民が不安や恐怖を感じ、そのことにそれなりの合理的な理由があるのであれば、不安とか恐怖から自由な生活を求めるというのは安全な生活を求めるということに近づいてまいりますので、何とか辛うじて人権制約正当化事由としての公共福祉一つの内容に組み込めるのではないかと考えております。
  35. 福岡宗也

    ○福岡委員 疑問符的に若干ありましたけれども、先生は、結局そういうふうに考えても許容されるというお考えだとお聞きしていいわけですね。  そうしますと、公共福祉という概念は、我々の理解によりますと、それぞれの人権に内在をする、内在的制約という考え方をとっている学者が多いと思っているのですけれども、そういうものの範囲内のいわゆる公共福祉でいいのか。  それとも、それは余り狭過ぎるので、もうちょっとそれを超えた規制、特に犯罪も何も行わなくとも、現在はまじめに信教をしているという人たちに対して、将来やるかもしれないなということだけで令状もないのに立入検査をする、さらには信教の差しとめもしてしまうような活動もするし財産権も侵害するというような活動までやるのは、やはりその程度は結構高いので、より強度の公共福祉が必要だということなのかということですけれども、私としては、ややそれは高いのじゃないかなというふうに思うのですね。  それはどういうことかといいますと、先ほどおっしゃった、住民生活の平穏を非常に不安がっているという状況解消する、そのことがやはり差し迫っていて、どうしてもそれをしなければほかに手段がない、そういう緊急避難的な要請というのがあるような場合に厳しく限定をすることによって初めて憲法上の適法性も出てくるということではないだろうかなと実は考えているわけですけれども、先生はそのどちらの考え方をとっておられるのか、率直に御意見をお伺いしたいわけであります。よろしくお願いします。
  36. 内野正幸

    内野参考人 ただいまのどちらのという質問に正確に答えることはちょっと難しいのですけれども、一つには、人権を制約する事由としての内在的制約ということは、他人の権利、利益を守るという観点からする人権の制約というふうに言いかえることができるのですけれども、今回の、住民の不安を予防して平穏を取り戻すということは、その枠組みの中におさまり切るであろうというふうに考えます。  それから、一応、規制目的は正当だとしましても、その正当性が極めて強い場合と必ずしもそうではない場合の区別がありまして、今回の場合は、極めて強い、明らかに正当であるような規制目的とは言いがたい面があります。そうだとしますと、いわば、やや弱めの正当な規制目的を達成するために規制措置として行えることという点では、より控え目な手段しか選びにくいのではないか、そういうふうに考えております。
  37. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。  そうしますと、そういう規制目的が、緊急性といいますか必要性といいますか、そういったものが若干弱いというような御認識であるということですね。したがって、当然、それに対する規制もそれに見合ったもの、比較考量した結果、公正なものでなきゃいかぬ、こういうお考えだということですね。  したがいまして、私自身もこの法律は必要だと思っておりますけれども、そこの目的も極めて限定的にしたいし、それから要件も緊急性というものに見合う必要最小限度にしたいから、また、構成要件も明確にしたいということ、さらに、発動自体も、必ずしも形式的要件に合致をしているというだけで発動するのではなくて、もっと適切な発動を要求するということが必要だろうと思っているのです。  先ほど先生、要件のところで具体的にいろいろと指摘をされておりますけれども、特に観察処分の一号から四号までは具体的事実を列記して、最後に抽象的な、その他の危険性のある場合という書き方をしておるということが問題であるという御指摘もありましたし、それから再発防止処分の場合にもやはり同様の、一号から七号までは具体的で、これは絶対的な、いわゆる該当といいますか、要件事実みたいな形で書いてあって、さらにそれを包括的に、その他ということで、危険性を増進させる場合という形で書いてあるということ、それが問題だという御指摘があったのですが、これは私自身は、できれば抽象的な表現を冒頭に持ってきて、そして絶対的な要件というもの、それぞれの個別的なものの上に二重にそういったものをかぶせて規制をする方がやはりいいのじゃないだろうか、そうすることによって極めて限定的になるのじゃないかなというふうにも考えるのですけれども、その点が一つ。  それからもう一つ、構成要件の具体的内容として、影響力があるとか、一部が構成員であったとかという「全部又は一部」という表現があるわけですけれども、実際はこれは一人でも入っていれば当然という形になるわけで、そういう、一見するとよさそうな気がするけれども、よく検討するとちょっと問題のあるような構成要件というものがある。したがって、こういうようなことは改める必要があるのではないだろうかなというふうに考えますけれども、この点はいかがなのでしょうか。
  38. 内野正幸

    内野参考人 理論上の問題と実際上の問題がございます。  最後の号の部分にやや一般条項的な、抽象的な表現を置いたという点につきましては、理屈の上では観察処分の場合も再発防止処分の場合も同様のことが言えそうなのですけれども、ただ、私の場合は観察処分についての指摘はあえて省略したわけです。実際問題として、観察処分要件を満たしているということが初めからかなり明らかなような立法スタイルになっているからなのであります。だからこそ、実際に発動されるかどうか確実なことが言えないような再発防止処分の方をあえて問題として取り上げたわけです。  理論上の問題としましては、御指摘のように最初に抽象的な規定を持ってきて、それに重ねるように具体的な規定を設けてくるという方がより要件が明確になって望ましいというふうに考えておりますし、また御指摘のように、いわば構成要件のあいまいなところは改めるように検討した方がいいというふうに考えております。
  39. 福岡宗也

    ○福岡委員 先生に最後に。  今回の法律案では、宗教法人であったオウム真理教事件を犯しました、それは解散命令には一応なっているわけですね、したがって実際の対象になるのは、同一性を持って現在存続しておる任意団体であるオウム真理教というものに対する対策法という形になっていると思うのですね。  そこで問題は、その同一性というものがどこまであるのかということですね。例えば、対象になるのが、会社というような組織を使って、外形上営利目的か何かを掲げて構成員なんかが活動しておるというような団体、なかなか実質的にはそういうものと同一性があるということが判断しにくいというようなことがあるので、実際にこの法律案が動いた場合に、同一性の問題で、教義自体を変えた場合とか、それから構成員が少ない場合とか、外形上は別の団体とするとかというような場合に、やはり認定する基準というのがどういうところにあるのかなというのがちょっとわかりにくいので、これは実効性があるかという不安を実は私は持っているのが一つ。  それからさらに、政治目的というのが、今回、破防法を準用しているために入っているのですね。そうすると、明らかに信教ということの心情に基づいてやった活動なので、ストレートに政治目的があったとは言いがたい活動であったことは事実です。したがって、オウム真理教は破防法の問題のときにもこれを強く主張したわけです。今回、政治目的ということを入れることによって、またそういったような混乱が出てくる可能性があるのじゃないかなという気がするのですが、この点についての御見解をお願いしたいと思います。
  40. 内野正幸

    内野参考人 確かに御指摘の面はあるかもしれませんけれども、私としましては、政治目的という言葉はこの法案教団に適用することの妨げには全くならないであろう、専ら政治目的という趣旨ではなくて、政治目的がかなりまざっていればいいという趣旨に自然に解釈できるからであります。
  41. 福岡宗也

    ○福岡委員 わかりました。  それでは次に、江川さんの方に御質問を申し上げたいと思います。  江川さんの御指摘になりました、本法律案規制だけではやはりだめなのであって、十分なカウンセリング活動というものによってオウム真理教自体のカルト性というものを排して、そういうことに所属していた人たちも導いていくということにしなければだめだという御主張、本当にもっともだというふうに思うわけでございます。  したがいまして、この事件を見るときに、やはり報道の問題というのが非常に欠かせないところで、必要以上にパニックをあおったのではないかなというような感じも多少するわけですね。したがって、千保市長なんかが御苦労されているのも、住民のパニック状態というものが非常に多いので、違法かどうかという問題に悩みながら、それをとりあえず救済しなければいかぬというような形で、いろいろな対応に苦しまれたというのも一つの原因になっておるというふうに思うわけであります。  そこで、江川さんの報道に関する基本的な姿勢というものを見てまいりますと、このようなことをオウムと報道ということに関する論文で述べておられるのですね。その一つは、あくまでも報道というのは距離感を持って冷静に対処しなければいけないということです。取材対象が熱くなっている、地元の住民人たちが熱くなっている、それと一緒になって熱くなってしまってはあおってしまうだけで、したがって誤った道を歩みかねないというようなことを示唆されて、それは逆に住民人たちを誤った方向に導いて逆批判を受ける結果を報道がつくっておるのではないか、こういうような趣旨のことを言っておみえになると思うわけであります。  また、地元の反対運動についても、やはりこれは当然のことなのだ、しかもそれがオウムを反省させることの一つの材料にはなっているという効果もあるということで理解を示しながら、同時に、やはりオウムに対しては最低限度のルールを守れと、殺すなかれ、盗むなかれ、人の自由を奪うなかれとかいろいろありますけれども、全部含めてそれを求めているのに、社会とか市民の側が非合法の行為を公然としてしまうということは、かえってそれも追及がしにくくなるのではないかな。  したがって、信者の体をつかんで振り回すというようなことがテレビの前で公然と行われるというようなこと自体が、逆にオウムの活動を容認してしまうということにつながるのではないだろうかという指摘をされておるので、報道としては公平にきちっとそういう問題については、住民にとってもいかぬことはいけないのだ、オウムにとっても厳しく追及することは追及するという姿勢が必要なのだ、こういうような御指摘だと思うのですね。  私どももそのとおりだというふうに実際は思うわけですね。特に、一方が悪を犯した、こちらは悪には悪をという形で報いるということはやはり法治国家日本としては基本的に許されないので、そういう社会の醸成をしてはならないということは、非常に悩みではありますけれども、きちっと守っていかなければならぬ原則だろうというふうに思っています。  そこで具体的に、ではどうしたらいいかということが、なかなか私は考えが及ばないのですけれども、マスコミとしてはどういう対応をすべきなのだということを一言、簡単に述べていただくのと、それから地方公共団体や国というもの、それぞれについて、それからあとは住民人たちがどういうような対応というものをしたらいいのかということを、簡単にちょっと結論だけ述べていただきたいというふうに思います。
  42. 江川紹子

    江川参考人 今のは私の意見を要約して言っていただいたわけですけれども、私自身も坂本事件の問題が解決しないときには、やはり相当熱くなったり、いろいろ距離感を見誤ったりしたこともあると思うので、今さら人のことを言えるかというような気持ちもあるのですけれども、今のマスコミの状況を見ていると、やはり心配が先に立つことが多いと思います。  例えば、先ほど御指摘のあったような事態、それはある意味では、若い人たちがそれをテレビで見たりしますと、大人が寄ってたかって若いオウム信者をいじめているように映るようなのです。そうなると、変に、過去の背景あるいは経過は抜きにして、その映像をもって、何かオウムがいじめられていて気の毒だ、そういう印象すら与えてしまうのは、これは全体の事実認識を正確にしていただきたいという点からしても逆効果かなというふうに思うわけです。  ですから、マスコミの方には、私も含めて、自戒を込めてですが、やはり常に冷静に、特に今のオウムというのは、対社会との関係でいうと社会の方が圧倒的にオウムはけしからぬというふうに言っている時期ですから、そういう時期こそやはり冷静にやらなければならないと思います。  それから、行政やあるいは議会におかれましては、やはり事実をまず正確に知るということに努めていただきたいと思います。地方によっては、オウムの実態がよくわからない、わからないから逆に不安だということで不安を募らせていって問題が大きくなるというところもあったやにお聞きしております。やはり、事実をなるべく正確に知ること。  この法律がもしこのまま通るとすれば、公安調査庁はいろいろな情報を知ることになるわけです。その情報を、論評を交えずに正確に事実を公表するということをやはり心していただきたいなというふうにお願いしたいと思います。
  43. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。  それで、実は、サリン事件の問題で、これは松本サリンでありますけれども、奥さんが意識不明というような被害を受けられまして、自分自身も犯人扱いをされまして幾多の中傷や嫌がらせをされた河野義行さん、本来ならばオウム反対活動の先頭に立つような人だと思うんですけれども、この人が、私では到底言えないようなすばらしいコメントをされているのを見て、私自身も愕然としたというか、本当に驚きであったわけでありますけれども、これについて、三人の先生方に一言ずつ、どういう気持ちをお持ちになったかということをお聞きしたいので、ちょっと読まさせていただきますので、よろしくお願いします。  マスコミは、オウムが悪で住民が善という構図をあおっている。だから、オウムが本当に怖いかどうかということは余り言及せずに、紙面にはおびえる住民とかいう記事がクローズアップされる。読者は、紙面を通してオウム恐怖を植えつけられてしまっているんじゃないか。だから、新聞でそういうふうにあおられた、活字になったことは市民は事実と受けとめてしまう。  彼らがそこで何をしたのか。オウムというだけで物は買えない、し尿処理ができないという状況は昔の村八分のようだ。オウム側の車を取り囲んで通行を妨げたり大声で騒ぐことは、嫌がらせ以外の何物でもない。憲法で認められている基本的人権や信仰の自由さえ否定されておる。  こういうようなことを言いまして、転入届の問題についても、転入届の不受理を決めた市長の言動は、住民感情と同レベルに立って法律を無視している。行政は、法律を守るところであって、判断をする場ではない。世の中の風に影響されているとしか言いようがない。最も基本的で、守られなくてはならない大きなルールがなくなってしまっている。  マスコミは、行政姿勢法律的な見地に立って分析する努力をし、このような行政判断法律的に成立するのかどうかを冷静に報道してほしい。オウムが悪なので法律を無視してもいいという論理は成り立たない。公正な報道を期待する。新聞記者は、だれのために取材をして記事を書いているのかという基本的なことをもう一度考えてほしい。  そしてさらに、オウム信者が特別に変わった人たちとは思っていない、こう言って、人を殺す準備をしておるともなかなかまだ思えないし、そんな根拠もないだろう。オウム側も、自分たちが生きていく上での最低限の権利さえ認められずに、生活することが困難な状況であれば、裁判という公の場で自分たち権利を明確に主張するだろう、こういうことを言っているんです。  結局、確かにオウムは悪いということなんですけれども、やはりそこでやることについては適法の範囲内であるし、それに対して不法な攻撃を加えるというようなことを軽々しく許容しちゃいけないというような御主張を、最も被害に遭われた人が言っているということなので、私自身もちょっと感銘を受けたんですけれども、これについて一言ずつ、簡単でよろしゅうございますので、コメントをいただきたいと思います。
  44. 内野正幸

    内野参考人 私自身も大変感銘を受けました。
  45. 千保一夫

    千保参考人 お答え申し上げます。  ちょっと長くなって恐縮でありますが、河野義行さんの御意見については私も何回か読ませていただきました。しかし、今先生が河野義行さんは被害者であるのにとおっしゃいましたが、オウムによる被害者であるのに、こういうお話だと思いますけれども、河野義行さんは、権力と住民、あるいは報道による被害者という、そちらの方が河野さんの心を非常に傷つけております。したがって、河野さんは、オウムによる被害者としての恨みとかオウムに対する憎しみとか、そういうものじゃなくて、住民運動、誤解に基づいて行動した住民に対する、あるいは誤解した報道、誤解をした警察などの公表した内容をそのまま報道してしまったマスコミに対する反発、そういったものがありまして、極端に申し上げれば、警察権力に対する反発と、マスコミと住民がそれを安易に受け入れてしまったということに対して、河野義行さんの心が非常に傷ついているということからする言動だと私は思っておりまして、河野義行さんの立場とすればやむを得ない言動だと思うのでありますけれども、私たちにしてみますと、河野義行さんのお一つ一つの御意見については納得しがたい面が多々ございます。  特に、オウム信者は、一人一人悪い人じゃない、特に変わった人じゃない、こう言うのでありますが、それはそのとおりなんだと思います。末端の信者方々は真に純粋に信仰の生活を送っていると思っている人たちが結構多い。あるいは、この前のサリン事件等で凶悪な犯罪を行った実行犯の人たちも、純粋に信仰に基づく行為だと当時は思って、あの残虐無比の行動に何のためらいもなく、また死んでいく者に対しても一片の同情のかけらもなく、あの凶悪犯罪を犯すことができたわけであります。  それはすべてオウム真理教の教義に基づく、信仰上は正しい行為でありまして、信仰心が強ければ強いほど、あの殺害や何かについては正しいと信じて疑わなかったわけでありますから、素直で純粋な、あるいは従順な末端の信者人たちは全く危険がないというふうに考えるものではなくて、素直な、本当に純粋な、あるいは穏やかな性格を持った人が、その信仰に基づいて凶悪な犯罪に何のためらいもなく入り込んでいくことができるというところに、オウム真理教宗教であることの、宗教をもとにした、あるいはマインドコントロールをもとにした、そういう団体危険性があると思っております。  私は、そういう意味で、現に施設の中に今は機関銃がないとか、あるいはサリンが置いてなかったとか、だから危険はないと人権関係方々は言いますが、やはり教義そのものが残っている限り、いつでもまたそういう同じことを何のためらいもなくできてしまうところに今後ともその危険性はずっと残る、現在も危険性が続いている、こう思っておるわけでございますから、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。
  46. 江川紹子

    江川参考人 今のオウム真理教というのは、犯罪を犯した人たちと、それからそうではない自分たちを分けて考えよう、自分たちは大丈夫なんだ、ほかの人たちはどうだか知らないけれどもということで切り離しを図っております。  ただ、それは正しくないと思うのです。オウム真理教、今の人たちは全員安全で普通の人々なのかというと、そうではないと思うんです。今市長さんがおっしゃったように、あそこの教義を信じている以上、そういうふうに言い切ることは私は危ないなと思います。現に、私は元信者人たちにかなり会っている方だと思うのですけれども、その人たちに、あなたがばりばりに信じていたときに、麻原彰晃こと松本智津夫から、江川紹子をポアしてこいと言われたらどうしただろうねというふうに聞いてみると、私は断りましたというふうに言い切る人はいません。やはり、迷ったでしょうねとか、断れなかったでしょうねと言ったり、あるいはやりますと言う人もいます。それは末端の人たちの中にもいます。そういうことを考えると、安全だ、そういう切り離しはできないと思います。  ただし、河野さんがおっしゃるように、そういう者たちに対応するときにルールが必要だというのは、私は本当にそのとおりだと思います。やはりマスコミも行政も、今そのルールが非常にあいまいになっているこの状態、それから批判をすることに非常に物が言いにくい風潮というものも大変危ないものを私は感じております。
  47. 福岡宗也

    ○福岡委員 それでは、最後千保市長に御質問をしたいわけであります。  先ほど御説明のございました、松本被告の二人の子供さんの転入届を不受理とされたことにつきましての新聞上で拝見していた市長のコメントでありますけれども、法的根拠は明確じゃないけれども、住民恐怖、不安を取り除くことのために、憲法で認めている公共の安全ということによっていわゆる居住移転の自由を制限することは認められるのじゃないかというような趣旨の御発言だったというふうに私は思うのでありますけれども、これがそのとおりでよろしいかということ。  それから、先ほども内野先生にも私質問申し上げましたように、公共の不安といいますか、住民生活不安といいますか、そういったものが正当目的になるかという問題と、やはり憲法上の制約ができるかということになると、結構これは難しい問題であるわけです。特に、当然そこに実態としての住まいがある以上、転入は基本的に拒絶できないということで、行政としてはそうしなきゃならないので、このままでいってしまうと、不服申し立てをすると言っていますので、これは最高裁において憲法違反だということも出かねないというようなこともある。  私どもは、当面の市長の決断はやむを得なかったと思っているのですけれども、そういうことになってしまったら、これは余計また妙なことになるので、もう少しきちっとした理論構築ができて、緊急避難的なというのを私申し上げましたけれども、国家の緊急避難というものがあるかどうかも十分私はわかりませんけれども、それならば、その論理的な可能性はあるので、そのためには、転入を拒絶するということについては、単なる個別的に来る者については拒絶はしないとか、そういう拠点づくりで集団的に生活するというような者は危険性を増大させるということだからそれは制約するとか、きちっとした考え方で基準をつくってそういうものの取り扱いをしないとまずいのではないだろうかなという思いが非常に強いわけですね。  そういった点について、これはいろいろ難しいと思います。私考えても名案がありませんので、そういった点を検討されているかどうかだけ、千保市長にお伺いをしたいと思います。
  48. 千保一夫

    千保参考人 お答え申し上げます。  転入届受理憲法上どうかということにつきましては、私ども市町村といたしましては、何らかの法的根拠に基づきまして現実対応の処分決定をしなければなりません。今回、憲法上保障されているオウム側の基本的人権と、あと地域住民のこれまた幸福追求権あるいはその他の基本的人権との衝突をいかに調整するかということで私どもは決断しなければならなかったわけでありますけれども、もちろん法治国家でありますから法的根拠を求めて、住民基本台帳法にも転入届を不受理にできる条項というのはどこにもありません。  しかしながら、法律の上位法であります憲法の二十二条にも、居住移転の自由を保障しながら、「何人も、公共福祉に反しない限り、」ということで、二十二条と二十九条の私有財産権のところだけは、特別に公共福祉を個別条項でうたっている。基本的人権と言われる中でも、居住移転の自由は強く、特に他の国民の基本的人権と衝突しやすい、そういう人権であるからということで個別条項でうたわれているのであろう、こう私どもも考えましたし、そういう意味で、今回は憲法の二十二条を持ち出して、そして公共福祉に反する場合には、住民基本台帳法上、転入届受理にしてもいい条文というのはございませんけれども、これは適法合憲、こう申し上げて、あとは司法判断を受けたい、こう思ったわけでございました。  なお、今先生がおっしゃいましたように、何らかの区別をつけるべきじゃないかということを、私も実はそのとおりに考えておりまして、したがいまして、大田原市でも、以前に、当日の午前中、一人の信者が元民宿のところに転入届をいたしました。それはそのまま受理をしまして、その午後、今度は松本智津夫被告の二人の子供の代理人が転入届を持ってまいりましたので、同じ番地への転入届でありましたから、これでここが拠点になっていくということで不受理に最終的にいたしました。  その後、もともと転入届受理してしまいました者については、その取り消しも何も一切行いませんし、また、巷間いろいろ報道等されておりますけれども、私どもは、水道もそのまま給水も続けておりますし、またごみも、収集のステーションを制度化しておりますが、ステーションがございませんから収集にはそこへ参りませんので、ごみ焼却施設へ本人が自分で持ってまいりましたら、うちの方ではきちんとそれを処理しておりましたりということで、生命、生存を保障するための最小限のものについては、私どもでは全く拒否しておりません。  そういうことで、これからもそういう拠点施設になるということについては、やはり非常に大きな危険があるということから、区別はしていかなければという考えは当初から持っていたつもりではございます。  以上でございます。
  49. 福岡宗也

    ○福岡委員 いろいろ大変だと思いますけれども、そういうことできちっと法的にはクリアできるような方法で御努力をいただいて、しかし、同時にまた、対策もきちっとして本当にいい対策ができる、そういうような御努力をいただきたいというふうに思っております。  どうもありがとうございました。これをもって質問を終わらせていただきます。
  50. 武部勤

  51. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  三人の参考人の皆さんには、大変貴重な御意見をありがとうございました。御意見を生かして、国民の皆さんが願っているような形での立法をしていきたいと考えております。  実は、私どもも、現在の日本においてオウム犯罪の再発を防止するための規制のための立法措置は必要だ、こう考えております。当然、基本は、江川参考人からもるるお話がありましたように、現行法の厳正な適用がまず基本だ。これまで坂本弁護士一家殺害事件以来、余りにも日本の捜査当局のオウムに対する現行法の厳正な適用が不十分だったということを私どもこれまで再三指摘したところであります。警察だけではありません、労働関係その他の現行法の厳正な適用がまず前提だということを考えておりますが、今日、オウム集団の復活等を見ますと、やはりあれだけのサリン事件を起こして社会に重大な不安を抱かせ、今なおその犯罪事実を認めようとしない、謝罪も反省も行わない、そして活動を活発化させて全国各地に進出をする、そして各地の住民の不安を大きくしているという状況であります。全国の知事会や市長会、町村長会の皆さんが何らかの法的規制を求めているというのは、私は当然だと思うわけでありまして、これにこたえていかなければならないと考えているわけであります。問題は、どういう形の法律をつくるべきか、その問題だと思うのです。  そこで、最初に各参考人の皆さんにお聞きしたいのですが、規制対象をどう絞り込むかということだと思うのです。私は、三つのことが大事ではないかと考えています。  一つは、そうした立法をつくった場合の規制対象団体は、やはり必要最小限度に合理的に絞り込まれること。そして二つ目には、法ですから一般法にならざるを得ないわけでありますが、だからこそ、その法が、その法の目的を超えて拡大適用、濫用のおそれが絶対ないような仕組みをつくるということがどうしても必要だ。そして三つ目には、逆の立場でありますが、つくった以上は実効性がきちっとなければならない。この三つの要請を満たさなければならぬのじゃないかというふうに思っております。  そんな観点から、政府法案は、規制対象団体を、いわゆる破防法の概念をかりてきて特定したわけです。破防法四条の概念、一項二号ヘですか。要するに、政治的目的、政治上の主義、施策を推進、支持、または反対する目的をもって行う殺人であって、無差別大量殺人、不特定多数の者に対する殺人をやった団体で、今なおその危険性が残っている団体、こういう概念をつくり出してきたわけです。それが政府法案ですね。  そうすると、法務大臣はここでも再三、現在日本ではオウムだけなんだ、想定しているのはオウムだけなんだとおっしゃいますけれども、私どもは、この概念規定では、オウムだけではない、いわゆる一般テロ集団にも当てはまる法律概念が政府によってつくり出されようとしていると考えるわけです。そうしますと、現在のオウムの危険から住民の安全を守るという法目的からいたしますと、規制対象が必要以上に広がってしまう、拡大適用、濫用のおそれが非常に広いと私どもは考えているわけです。  そういう立場から、私どもは、そういう絞り込みではなくて、サリン防止法というのがあるわけであります。これは、地下鉄サリン事件が勃発した直後に全会一致でこの国会でつくり出した法律でありますが、この枠組みを使えるのではないか。  オウム危険性の最大の危険たるゆえんは、あのような犯罪、殺人目的にしか利用方法のないサリンを無差別に散布したというところにあるわけですから、二度と再びあのような行為を起こさせないという立場から、やはり対象団体を、サリン等の散布によって不特定多数の無差別大量殺人を行った団体で、なおかつ現在もその危険性が残っている団体、ある団体というふうに絞り込むべきではないか、立法技術的にも立法目的のためにも絞るべきではないかという考えに立ちまして、実は先週の金曜日にその法案を正式に衆議院に提出したわけでございます。参考人のところにも事前に送っておいたわけでございますが、今こういう二つの法案が事実上国会に出ているわけであります。  内野参考人千保参考人、また江川参考人にも、そういう法の目的とどういう仕組みで絞り込みをするかについて、この二つの法案があるわけですが、御意見を聞かせていただきたいと思います。
  52. 内野正幸

    内野参考人 共産党案のような絞り込み方も一つの立派なアイデアだと思います。  ただ、政府案のような適用の仕方で、確かに一般論、抽象論としては拡大適用のおそれがあると言えるのかもしれませんけれども、実際問題としては、拡大適用のおそれということを心配する必要はそれほどないというふうに考えております。
  53. 千保一夫

    千保参考人 お答え申し上げます。  私も、今の内閣提案の対象団体要件も、先生方日本共産党のサリン等という要件も、対象オウムに絞れているということで、今後それが他に、一般国民に濫用されるということは余りないのではないか、そんなふうには受けとめてはおります。  以上でございます。
  54. 江川紹子

    江川参考人 対象ということについては、大変申しわけありませんけれども、私はよくわかりません。  先ほど、一般テロ団体にも適用される可能性がある、おそれがあるとおっしゃいましたけれども、全くオウムと同じようなことをやる集団がもしあるとすれば、それに対しても監視をしていくということは私は必要じゃないかと思うので、これがオウム以外にも適用されることが絶対に一〇〇%いけないのだというふうにはちょっと思えないところもあって、私にははっきりした意見が申し上げられません。  ただ、もう一つ、実効性ということを言われましたけれども、その面については、どちらかというと、共産党の案を拝見しましたけれども、警察が主体となってということが書かれていたと思いますが、警察が主体となった方が実効性という面についてはやはり効果があるのかなと私は考えてはおります。
  55. 木島日出夫

    ○木島委員 私がこのことを非常に強調するのは、やはり法律をつくる上での必要性が日本社会にあるのかという問題。これは、法律的には立法事実があるのかということで言われますが、やはり、これからつくり出されようとする法律規制法なんですね。基本的には団体規制法であり、その団体に所属する個人に対する行為の規制法でありますから、やはり、憲法の結社の自由とか表現の自由、思想、信条の自由、信教の自由等々の基本的な自由に抵触せざるを得ない。だからこそ、つくられる法案法律というのは、最大限、国民のそういう基本的な自由を侵害しない枠組みが必要だろうと思うわけでありまして、そういう規制法を、強力な法律をつくる必要が今日本に現にあるのかというのが根本的に問われると思うんです。  そういう観点からいきますと、私は率直に言って、今必要があるのは、やはり、サリンを散布して、ああいう世界の犯罪史上でもまれに見る凶悪犯罪を起こして、しかも反省をしないで、そしてまたその団体が拡大、肥大化して各地に進出している、そういう状況があるからこそそういう立法が辛うじて必要になってきているんじゃないかと思うわけですから、これがほかの一般テロ団体に対しても必要だなんという立法事実が今の日本にはないだろうと思うわけなんですね。それは、憲法上の観点からそういうことを言っているわけであります。  そういう立場から政府案を読み込みますと、オウム以外に拡大適用されるおそれはないと内野参考人はおっしゃいますけれども、政治目的をもって不特定多数の者を殺害し、またはその実行に着手してこれを遂げないもの、不特定多数というのは二人でもいいんです、法律上。そして未遂でもいいんですよね。だから、ある政治目的をもって無差別に二人を殺害した団体で、なお現在そのおそれがあると認定できれば、幾らでもこれは拡大適用できるんじゃなかろうかと思うんですが、どうなんでしょうか。内野さんの御意見をお聞きしたいと思います。
  56. 内野正幸

    内野参考人 理屈の上では御指摘のとおりだとは思いますけれども、先ほど江川参考人が述べられましたように、万一そういう凶悪なテロ集団のようなものがあらわれたとしたら、そういうものも適用の対象になることがあり得るということは、これは絶対にまずいことだとは思いません。
  57. 木島日出夫

    ○木島委員 そういう立法事実が生じたら、そのときにきちっと対応すればいいんじゃないんでしょうかね。  というのは、法律というのは、つくられますとひとり歩きするという性格を持っている。特に、政府に、また治安当局に、特別の国民の行為を規制する法律をつくりますと、それがひとり歩きして拡大していく、そして、結果、人権がいろいろな形で侵害されるという歴史を私ども日本国民も世界の人たちも体験をしているから、だからこそ、ひとり歩きできない法律がつくられるべきではないかと私どもは考えておるわけでございます。  そうすると、今日本にある、そういう法律を辛うじて必要とされているのは、やはりオウム集団だろう。その基本的な特徴は、サリンを散布するようなああいうやり方をしたからではないか。そこに着眼をして立法することが——内野参考人が陳述の最後のところで、いわゆる措置法処分的法律、一般的、抽象的な法規範じゃない措置法政策的必要性があれば是認できるんではないか、憲法上も是認できるんではないかとおっしゃられました。私はそのとおりだと思うので、だからこそ対象を絞るというのが非常に大事だと考えているわけであります。  これは私の意見ですので、次の問題についてお聞きしたいと思うんですが、その規制の機関、行政機関をどこにするかという問題なんです。  政府案は、参考人御存じのように、公安調査庁と公安審という体系、いわゆる破防法の体系を前提にしておりますから規制機関を公安調査庁にしているわけでありますが、私ども日本共産党の法案は暴対法、これも全会一致で国会でつくられ、現に生きている法律でありますが、暴対法の枠組みをきちっと利用できるんではないか、そして、それの方が実効性もあるんではないかと考え、規制機関を警察国家公安委員会、都道府県公安委員会、こういうラインにすべきではないかと考えて、立法、提案をしたわけでありますが、その一つの問題として、これまでの公安調査庁のやってきた仕事の具体的な中身、歴史、これを考えているからなんです。  もともと破防法と公安調査庁というのは、日本共産党を初め多くの民主的団体監視規制のための機関としてつくられた。現にこの間、一貫して憲法違反の、思想、信条、結社、表現の自由を侵害する活動を続けてきた。公知の事実なんです。日本共産党に対する有名な盗撮事件もありました。しかも、最近もそれが続いている。  問題なのは、オウム事件が起きた、あの地下鉄サリン事件が起きた一九九五年、阪神大震災がありましたが、公安庁は、専ら阪神大震災で救済活動のために全力を尽くしているボランティア活動なんかの監視をしている。そしてまた、サッカーくじで大問題になりましたが、サッカーくじに反対するPTA全国協議会とか東京弁護士会とか、そういう団体監視を一生懸命やっている。また、市民オンブズマン活動、行政が不当に公金を流用しないようにという形で最近すばらしい全国オンブズマン活動が進んでおりますが、そういう活動を一生懸命調査しているというのが現実なんですよ。  ですから、こういう国家機関に新たな団体規制法の権限を与えるということがどんなに危険なものか。憲法上の自由を守る立場から危険なことではないか。そういうことから、私どもは、新たな法案は、公安調査庁、破防法のそういう枠組みを絶対に使うべきでないという立場に立っているわけでありますが、この点についての三人の参考人方々の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  58. 内野正幸

    内野参考人 私自身も、率直に言って少し迷うところがあるのですけれども、確かに公安調査庁系列の規制の仕方に対して警戒心を抱いておられるという気持ちも理解できます。しかし、先ほども申しましたのですが、公安審査委員会国家公安委員会とを比較するという見地から申しますと、公安審査委員会の方が準司法的機関としての性格という面ですぐれているということは、最低限言えると思います。  それから、他方で、警察サイドの系列の方がいいんではないかという御指摘でありますけれども、警察サイドといいましても、各都道府県警の内部には、御存じのように公安部というのがありまして、その公安部に対する警戒の問題はどうなるのであろうかというような問題も伴ってくると思うわけです。そういう点で、言ってみれば一長一短というところがあるのですけれども、強いて言えば、私は、公安審査委員会による方式でやむを得ないかなというふうに感じております。
  59. 千保一夫

    千保参考人 お答え申します。  よくわかりませんけれども、現在私どもが考えておりますことは、公安調査庁、権限がないために責任がない、こう思っておりまして、したがって、それらの活動等につきましても非常に、あるいは掌握できないものもあるのかもしれませんけれども、そこへいきますと、警察には権限がありますから責任がある。あるいは、警察に対する上位機関の監督なども非常に厳しく本来はあるはずでありまして、そういう意味では、私は、今後公安調査庁に権限が与えられますと、それなりの責任も伴い、あるいは上部機関からの監視、監督のもとに置かれてくる。あるいは、警察と公安調査庁の連携もこれから図られるやに今度の法案等でもできているようでありますから、そういう意味で、今までの公安調査庁とは違うものができてくるんじゃないか。  逆に、権限が付与されることによって、相当監視あるいは監督の力が強く及んでいくんではないか、こんな気もいたしておりまして、今の内閣で提出しておりますものに若干の、公安審査委員会への事前報告あるいは事後の報告、こんなことも義務づけるという修正がなされるようでありますから、そうなってまいりますとあるいはよろしいのかな、そんなふうに素人考えで考えていたところでございました。
  60. 江川紹子

    江川参考人 私は、法律のことはよくわからないので、実効性ということだけ申し上げたいと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、警察が中心となった方が実効性はあると思います。  というのは、警察というのはやはり、警察署があり、交番があり、私たちの目に見える形でそういう機関がありますので、例えば、住民の方がいろいろ相談に行ったりするのにも比較的頼りにしやすいところもあるでしょうし、それから、人数も多い。今までにオウムについてのいろいろな調査がありましたけれども、公安調査庁とそれから警察とを比べてみますと、私の知る限りではですけれども、警察の方がより正確で詳しい調査をなさっているように思えます。  多分人的な問題もあると思いますけれども、そういう今までのことを考えると、警察が中心となった方が実効性はあるのかなとは思います。
  61. 木島日出夫

    ○木島委員 一点、内野参考人に重ねてお尋ねしたいんです。  確かに、現在の法の仕組みで公安審査委員会と公安委員会を比較しますと、公安審査委員会の方が第三者機関的な法的枠組みは持っていると私は思うんです。  しかし、最大の問題は、政府法案にも第二十八条の公安調査官の調査権というのがあるんですね。これは全然公安審のチェックが入らないわけです。公安調査庁長官と各公安調査官の権限で自由自在に調査ができるという仕組みなんですね。これは、現行破防法で公安調査官憲法違反の調査活動をしている、その根拠規定になっている条文がそっくりそのままこの法律に入り込んできているわけです。これは公安審は関係ないんですよ。こういう枠組みが残っている。  しかも、今度の法案で、先生も、警察の中の公安警察か刑事警察かというんで先ほど指摘がございましたが、先日この国会で私が質問して確認しましたところ、初めてこの破防法体系に警察が関与してくるわけですね。調査の段階での関与、それから意見具申の段階で関与。その関与をする警察は、警察庁の内部部局としては警備公安警察であると答弁したんです。私は、それじゃだめだ、刑事警察じゃなきゃだめだということを主張したんですが、警備公安警察が関与するんだと。それは破防法体系に乗っているから、やはり警備公安という観点で物を見ている、そしてこれまでもそういう立場オウムに対して関与してきたということをおっしゃるんですね。それではやはり治安ということが前面に出てきてしまうわけなんですね。  私どもの法案は、サリン防止法と暴対法を基本に据えております。そうしますと、サリン防止法の実施官庁は警察庁の中では刑事警察です。それは法律でしっかり書き込まれています、政令で。それから、暴対法の所管官庁も警察の中で刑事警察なんです。警備公安警察じゃないんです。  それで、江川さんからもお話がありましたが、やはりあれだけの犯罪を起こした、そして犯罪捜査のために第一線で頑張ったのが刑事警察です。資料を持っています。その流れで、ああいう再犯を起こさないというのが根本目的ですから、治安じゃないわけです。いわゆる公安じゃないんです。警備公安じゃなくて、やはり刑事警察のラインでこそ、サリン散布のような無差別大量殺人事件を二度と起こさせないという立法目的を貫徹させるべきではないかなというふうに思うんですね。  そうすると、先ほど言いました調査の問題等でやはり破防法体系、公安調査庁の体系を使うと問題じゃないかと、私はやはり疑念はぬぐえないんですが、ちょっと重ねて内野参考人の御意見を賜りたいと思います。
  62. 内野正幸

    内野参考人 御指摘のありました二十八条の公安調査官の調査権ですけれども、確かに規定のあり方に私も問題を感じております。ですけれども、全体として見た場合に、公安調査庁、公安審査委員会という系列を全部まとめて否定しなければならないという感じのものではなくて、むしろ個別の条文について批判を加えていって当面対処すべきではないかというふうに考えております。
  63. 木島日出夫

    ○木島委員 時間がありませんから次の質問に移らせていただきますが、今率直に言って、オウムが進出することに対して地域住民の皆さんが大変に不安に思っている最大の問題は、オウムがそこで何をやっているかわからない、情報が全然地元の自治体にも住民にも提供されてこないということだと思うんです。私、長野県でありますが、非常に大きな施設などが川上村とかああいうところでつくられましたから、本当に心配なわけです。そこに住民の不安の根源があると思うんです。  それゆえに、新たにつくられる法律で大事なことは、得られた情報は的確に関係地方公共団体あるいは地域住民に開示されるということが本当に大事じゃないかと思うんですね。これが正しく開示されて、大して危険性はないということになれば住民の不安も基本的に解消されることになるわけですし、そして江川さんからお話がありましたような、オウム信者一人一人のマインドコントロールを解いて本当に社会復帰のために道を開いていくためにも、そういう住民状況が必要だと思うんですね。  ということから、政府法案と我が党が提出している法案を比べてみますと、えらい違いなんです。政府法案でいきますと、三十一条で、公安調査庁長官は、関係都道府県または関係市町村の長から請求があったときは、第五条処分に基づく調査の結果、これは観察処分再発防止処分ですが、その部分についてのみなんですが、この調査結果を提供することができるというんですよ。提供しなければならないという条文じゃないんですね。先日確かめましたが、そうだと言うんです。権限付与規定であって、公安調査庁に義務を課した条文じゃないと言うんです。だから、これじゃ、千保さんが大田原の中で何をやっているのか情報をくれと言っても、やらないこともできるというんですね。解釈上、そうならざるを得ない。ところが、我が方の、日本共産党の案はそうじゃなくて、地元自治体の長が請求をすれば、これは情報を提供するものとするという言葉になっています。これは行政官の行為ですから、するものとするという言葉は、事実上しなければならないという義務規定なんです。そういう違いがあるわけであります。  先日私、北御牧村の村長さんなんかにお会いしましたところ、あれだけオウムが出てきて住民の不安が高まったときに、地元の自治体としては公安調査庁に情報をしっかり提供してほしいとお願いしたけれども、全然情報をくれなかったというんですね。そういうことがあったようなんですが、やはり私は、つくられる法律で、国家機関が得られた情報は、プライバシーとか、そういう情報公開法でも表に出せない部分その他はいろいろあるでしょう、しかし、必要な情報は的確に地元の自治体に提供することを義務づけることが必要じゃないかと思っているんですが、これは千保参考人の率直な御意見を賜りたいと思うんです。
  64. 千保一夫

    千保参考人 お答え申し上げます。  私どももより多く知りたいという気持ちはありますけれども、実際に権限が違いますと、警察あるいは公安調査庁の権限と私ども末端の市町村住民生活のすべての分野で責任を持っております私どもの場合ですと、もちろん私どもも知り得た秘密は守秘義務がございますけれども、職員も一年、二年、三年でどんどん部署がかわってまいりますので、それぞれそういう警察、公安関係の事務事業に精通している者ばかりというわけにまいりません。そういう意味では、それらを提供するかどうかの判断警察あるいは公安調査庁がそれぞれ独自にお持ちになって、私どもに提供して差し支えないものと判断したときにだけ提供してくれるということでもやむを得ないのかなと。私どもも知りたいという気持ちはなくはありません。住民に対する責任も負っていることからいきますと知りたいという気持ちはなくはありませんけれども、総合行政職であります市町村に対して、特別の目的を持った国の機関がどこまで資料を提供してくださるかにつきましては、それぞれの専門の機関の判断でやむを得ないのかな、そんな気持ちでございます。  以上でございます。
  65. 木島日出夫

    ○木島委員 えらい遠慮されていますね。  最後に一点、江川参考人からお聞きします。  私どもも、規制すればオウム問題が解決するなんて断じて思っておりません。最終的なこのオウム問題の解決のためには、やはりオウム信者一人一人がマインドコントロールを解かれて社会生活に復帰していく、そういう状況をいかにしてつくり出すかということだと思うんです。  私、この夏、法務委員会の視察でフランスを訪れまして、ビビアン氏にお会いしてきまして、フランスでのカルトに対する対応について詳しく勉強させていただきました。先ほどの江川さんの指摘もそうだったと思うんですが、今、そういう問題、そういう観点から、国に対してこういう仕組みをつくってほしいという一番の願っていることは何か、もし指摘できましたら指摘していただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
  66. 江川紹子

    江川参考人 一番というのは難しいのですけれども、やはりこういうカルトの問題というのは、例えば個人のプライバシーが守られたり信教の自由が守られたり、そういう、何というか、とてもいい方向に社会が進んでいくと、どうしてもその間隙を縫って、それをついてはびこるものだと思うので、完全に撲滅するということは非常に難しいと思うのですけれども、彼らが何をどういうふうにしてやっているのか、例えばマインドコントロールと一言で申しますけれども、実際にどのようにしてそういう状態になっていくのかということがまだ十分に解明されていないと思います。そういう研究をやっている人もごくわずかです。恐らくお金もかかるし、手間もかかる作業だと思います。そういった研究に対して国として援助していく、あるいは国でそういうプロジェクトチームをつくるとか、そういう方向で心の操作についての解明をしていただく。  あるいは、カウンセラーの人たち、何人か一生懸命頑張っておりますけれども、人数も足りないですし、それからカウンセラーの質の問題もあると思います。やはり良質なカウンセラーがたくさん活躍できるような環境づくりをお願いしたいというふうに思っております。
  67. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。終わります。
  68. 武部勤

  69. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  参考人の皆さん、どうもありがとうございます。せっかく貴重な御意見をお聞かせいただきながら、ちょっと出席委員の方が数が少ないのがまことに残念で、おわびをしたいと思います。  まず、内野参考人に伺いたいと思うんです。これは、事実上教団だけに適用される措置法だろうというお考えだと思うんですけれども、この点に限って二回の対政府質疑を私は行いました。定義のところだけで費やしたんですけれども、例えば提案理由の説明には、ケニア、タンザニアにおける米国大使館同時爆破事件に代表されるように、公共の場所で爆弾を爆発させるなどして市民を犠牲にする無差別大量殺人事件が発生しているとあります。そしてまた、第四の定義のところでは、無差別大量殺人なるものを、法律上は「不特定かつ多数の者を殺害し、」こういう語句に置きかえているわけです。  さて、では「不特定かつ多数の者を殺害し、」これが大量殺人行為だとすると、未遂も入りますけれども、そういう集団をいわば対象としてこれは発動していく法律なんだというところで、私は、実はちょっと事例を考えてみまして、ポル・ポト派、カンボジアの大量虐殺を行った当時、指揮官であった人物など数人が何らかの理由日本に来られて、カンボジア人あるいは日本人とクメールルージュ勉強会をつくった場合はどうかと法務大臣に質問したところ、そのときには、外国の勢力が支部などをつくった場合にはこれは入るというふうに思いますというふうに言われて、さすがにこれはおかしな答弁だなと思って、その後追及して、前回また同じ点をただしたところ、少しこれは説明不足だった、日本公共の安全にカンボジアの大量殺人はとりあえず直接は関係ないので該当しないと、正反対の答弁をいただいたわけなんですね。  また、先ほどから議論になっていますように、今後の問題がありますよね。確かに、今はオウム真理教による事件が最も該当するだろうというふうに考えられますけれども、今後の問題で、破防法の四条の殺人に根拠を置いて公安庁や公安審査委員会監視システムでやはり団体規制しようという、措置法という色彩は強いけれども措置法と言い切れるのかどうか、このあたりはいかがでしょうか。
  70. 内野正幸

    内野参考人 措置法と言い切れない面があるのではないかという御指摘でありますけれども、法案作成者の側としましては、一般的、抽象的法規範であるということを装うということが必要でありまして、それを装うためにあれやこれやの文章を書き並べるということがあり得るわけです。それで、そのようないわば装いのうち、真に受けていい部分と、いわば飾りのように述べた部分と見分けるということも必要だと思うんです。あと、御指摘のように細かいところで疑念の生じるところは確かにあるかもしれませんけれども、実質論といたしましては、今回の法案措置法というふうにほぼ認定してよいだろうというふうに考えます。
  71. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、法律の一番厳格な定義のところで、いわば大臣の答弁が必ずしも正確でないという部分で、果たして絞り切れた要件と考えられるかどうか。  例えば、法律案の中で、無差別大量殺人行為という名称と不特定かつ多数という法律の中の語句とは、不特定かつ多数の方がやはり範囲は広いだろうと思うんですね、対象範囲は。無差別大量殺人という語句の惹起するイメージということと不特定かつ多数というのは、またそこで違ってくると思うんですが、こういうことはもう少し厳密じゃなければいけないと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  72. 内野正幸

    内野参考人 御指摘の趣旨はわかるところはあるんですけれども、不特定かつ多数という言葉は、別の文脈でしばしば使われる不特定または多数という言葉とは違いまして、無差別大量殺人により近い言葉であると思いますし、また、法案が仮に成立したとして、実際にそれを解釈、運用していく段階で、無差別大量殺人という言葉の日常用語的な意味も解釈にとって大いに参考にされるはずですので、そういう点も含めまして、今回の法案予想外の別の団体に拡大適用されるおそれがあるということについては、さほど心配しなくてもいいであろうというふうに考えます。
  73. 保坂展人

    ○保坂委員 では、今度は江川参考人にお尋ねします。  長いことジャーナリストとしてオウムの問題をずっと追跡してこられたということはよく承知しておりますけれども、今日、神奈川県警で不祥事が日がわりメニューのごとく続発して、その不祥事が究極の不祥事というか組織ぐるみの犯罪隠ぺいまで至っているということが現在なわけなんですけれども、私どもは、日本共産党の緒方さんの盗聴事件、こういうものに対して警察組織はやったものはやったと認めるべきだっただろう。この八月の国会まで認めていない、過去も現在も盗聴などやったことがないというような、そういういわばこの事件に対してあいまいにしてしまったことがやはり今日の警察の信用の失墜を生んだんじゃないかというふうにも思うんですけれども、オウムのさまざまな事件、坂本さんの結果的には殺されていたあの事件をスタートラインにして、江川さんから見て、この十年でもっと早く、地下鉄サリンとか松本とかああいう重大事件に至る前にオウム強制捜査のメスを入れるタイミングがあったんじゃないかという思いがあるかと思うんですが、具体的にどのあたりでどうすべきだったかという御意見があれば伺っておきたいと思います。
  74. 江川紹子

    江川参考人 例えば坂本弁護士の事件についても、先ほど現場の警察官は本当に一生懸命やってくださったと言いましたけれども、やはり捜査の方向性というのは大きく誤ったと思います。やはり初動捜査のときに、私が見ている限りでは、オウムをマークするというよりも、例えば坂本さんの交友関係をいろいろ洗って飲み屋さんに至るまでシラミつぶしにやったけれども、その反面オウムに対する追及は非常に緩やかだったように思いますし、そうした捜査の問題点というのがどこにあったかというのが全然きちんと総括されていない、内部ではされているのかもしれませんけれども、こういうところに問題があり、こういうことを改善したいということが全く私たちの目に触れないというのは非常に問題だと思います。  それで、それはさておき、やはり最初の私たちの思いとしては、坂本事件をもっと早く解決できたのではないか。現場には多数の血痕があったそうです。それは犯人がふき取っていたので私たちの肉眼では見えませんでしたけれども、警察の捜査で早い段階でわかっていました。それでいながら自発的失踪という宣伝が随分警察の方からなされたということは非常に残念ですし、そういった方向を誤らせた捜査の指揮をとった方がその後何の責任もとられていないというのは非常に残念です。ですから、坂本さんの初動捜査のときがやはり一番大きな節目だったと思います。  それ以外にも、先ほど申し上げたように盗聴事件をいろいろやっていたり、あるいは宮崎県の方で旅館経営者を拉致して監禁して、それで財産を奪おうという事件がありました。そのときにも宮崎県警の方は非常に慎重というか消極的でした。宮崎県警と警視庁の間でどっちが担当するか、あっちだこっちだというようなやりとりもあったようですし、神奈川県警の持っている、その後は神奈川県警がずっと捜査はしていたわけですから、情報がなかなかよその警察に生かされないで時期を逸したのではないかなというふうに私は思っています。宮崎の事件などではとても残念な思いをしました。
  75. 保坂展人

    ○保坂委員 早く適正な捜査が行われていれば、坂本事件にそれだけの物証もあったとすれば、とすればということはもう仮定になってしまいますけれども、こういう重大事件にまで至らずに済んだかもしれないという教訓が我々にあるならば、第二、第三のオウムまたはそれに類似をしたグループというかカルト集団というか、そういうものが出てこないような抜本的な政策を立てるべきだというのが私たちの考えであります。  そこに行く前に一点だけ、江川さんは、そういう意味では、警察の捜査の限界あるいは機構の中の官僚主義ということも十分認識しつつも、公安調査庁が担当するよりは、全国に見えやすいところに警察官がいて、交番があってという警察の方がまだ妥当ではないかということを先ほどから言われていると思うのですが、公安調査庁の調査能力というか、オウムのこの事件に関してどの程度の水準にあるか、何かそういうことを認識する機会とかいうのはおありでしたか。
  76. 江川紹子

    江川参考人 公安調査庁の水準というのは、私、十分認識していないので、的確なお答えはできかねます。  ただ、時折マスコミに対しての公安調査庁の発表がありました。例えば信者の人数とかそういうものが発表されたときに、おやっと思うような、私の取材や実感などではこんなにいるようには感じられなかったものがこんなにたくさんいるのかなというふうに思ったりして、そのときに警察の方にいろいろ問い合わせてみると別の数字が出てきて、そちらの方が実感に合うような気がしたものですからそう申し上げた次第で、公安調査庁はこれぐらいで、警察はこれぐらいというのはちょっとわかりかねます。申しわけありません。
  77. 保坂展人

    ○保坂委員 ちょっと聞き方がアバウト過ぎて申しわけなかったです。今、公安調査庁長官も陪席してこの議論を見守っているので。  さきの政府質疑で、公安調査庁が、オウムを危険な団体あるいはもうこれはマークしなければならないというふうにまず着目したのは地下鉄サリン事件であった、そして最終的にそういう体制をとったのは松本智津夫被告の逮捕、こういうタイミングだったんですね。したがって、それ以前から江川さんなどがずっと追跡してきたというところはなかなか注目できなかった。公安調査庁自体は破防法の実施官庁ですから、左翼、右翼あるいは特別な暴力集団ということで、五五年体制下のいわば監視、情報調査、収集をやってきた官庁だと思います。  ところで、地下鉄サリン事件以後、例えば江川さんに公安調査庁から、もっと詳しく知りたい、オウムはどうなっているんだ、どういうふうな事件だったんだというふうな、いわゆる参考意見を求められるというようなチャンスはございましたか。
  78. 江川紹子

    江川参考人 ありません。警察の方からは何回かいろいろお尋ねがありました。
  79. 保坂展人

    ○保坂委員 やはりそういう組織の全容をカバーして未然に危険をコントロールしようとしていくとすれば、当然、江川さんのような取材をされた方からまずは聞くというのが常道だと思いますけれども、どうしてしなかったのかは、きょうはここで聞けませんので、後ほど聞いてみたいと思います。  それで、最後江川さんが言われた、カルトに対してもっと抜本的な対策をとってほしい。そしてまた、今この瞬間でも勧誘される若者がいる。そしてまた、家族がばらばらになったり、あるいは場合によっては資産がだまし取られたり、こういうことがあるわけです。  ちょっと内野参考人にこの点、一点だけ聞きたいのですけれども、確かにこれは措置法としてとらえられている。ただ、破防法の政治目的では、例えば殺人をしないカルトという方が多いと思うんですね。オウム真理教は、いわゆるカルトと言われているような集団の中でも特別な凶悪性、犯罪性を持ってきた教団だったと思うのですが、例えば拉致、監禁、殺人等はしないけれども、財産を大量にだまし取るとか、そういう主に金銭をたっぷり集めるということを目的にしてマインドコントロールをしていくような集団など多数あると思うのです。最近でも、ライフスペースという自己啓発セミナーと称するグループが、会員がふえていって、いろいろな変死事件なども起きていますけれども、こういうカルト対策の整備というんですか、こういう問題について、やはりこれを急ぐべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  80. 内野正幸

    内野参考人 御指摘のカルト対策については、私も整備の必要性を感じておりますけれども、それ以上具体的な提言などは現在持ち合わせておりません。
  81. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、内野さんのお書きになった、朝日新聞でしょうか、論考の中で、やはり大衆心理が暴走するということも警戒しなければならないんだ、今の日本にファシズムが再来するごとき議論自分はうなずかないけれども、しかし、ややそれに似た兆候がないとも言えない、そこは懸念があるということをお書きになっておられるのですが、具体的に、私も今回の法案で調べてみて、この法案は絶対やはり——大田原市長さんにも後ほどお聞きしますけれども、二つ事件が起こりましたよね、新たな事件。それは、一つが、松本サリン事件の被害者の妹さんが拉致をされた、誘拐されたのかもしれないという、その後保護されたという記事でございます。これは、裁判をやめろ、こうおどかされたとかさんざん大きく報道をされたんですけれども、結果的にはこの女子大生の方の作り事であるということがわかったという記事は割と小さいですね。これは見逃している方も結構いらっしゃる。  それからその次に、オウムの女性信者が大変な形で監禁をされていたんだということで、木曽福島で二人の方が捕まったんですね。監禁をされていたはずのその女性の方を警察が捜してみると、オウム施設に舞い戻っていて、その証言を覆してしまったので、処分保留で釈放。  この二つのケースを見ると、かなり社会的な効果というか、やはりこれは大変だという認識は強まったケースだと思うのですけれども、結果としてこれが事実に基づかなかったとすれば、そういった大衆社会の心理の中で、例えばチラシを入れるというだけで逮捕という微罪の問題も先生お書きになっておりますけれども、冷静な対処を今こそ求めなければいけないという部分で若干問題があるんじゃないかと思いますけれども、報道のあり方も含めて御意見をお願いしたいと思います。
  82. 内野正幸

    内野参考人 最後の若干の問題があると言われた趣旨を私が正確に理解しているかどうか自信がないのですけれども、確かに、これまで空気の流れとしまして、オウム憎しというふうな一方的な国民感情のようなものが支配していたという流れの中で、先ほど御紹介のあった河野さんの発言なども含めまして、あるいはこのような空気の流れに対して少し抵抗するような事実関係が一部明るみに出されたりとか、そのような状況はあると思いますので、私自身、今現在の状況をもって国民感情が暴走しつつあるというふうに決めつけているわけではございませんで、今後の期待も込めて、もう少しバランスのとれた方向に状況を持っていければいいなというふうに考えております。
  83. 保坂展人

    ○保坂委員 では、今の同じ点について、江川さんから見てどう思われるかということをお願いします。
  84. 江川紹子

    江川参考人 マスコミ報道の件については、やはり結果としてオウム反対運動というか、オウム憎しの風潮をあおってしまうというか、意図したものではなくてもそういうある意味で演出効果みたいなものを生み出してしまっているような、そういう危惧はしています。  ただ、先ほど例に挙げられました監禁事件というものですけれども、これは刑事事件にはならなかったけれども、果たしてこのまま放置しておいてよいものだったのかなという気はするのですね。  あの事件というのは非常に、オウムの問題を刑事事件として扱うことの難しさというのを示していると思います。とても気持ちがはっきり定まらない人、オウムにいて、嫌だなと思って出てくるけれども、この社会の方においてやっていこうというふうにもならない、そういうとてもふわふわとした状況の人が一回そういう被害者として届けても、また向こうに戻って、いや、そんなことはないのだということは、私自身、前にも経験しておりますので、そういうことというのは、オウムを刑事事件としてだけやっていたらなかなか解決しないということをよく象徴しているのかなというふうに思いました。
  85. 保坂展人

    ○保坂委員 ですから、私もオウムを破防法の政治目的で公安調査庁が見るというのはとても無理があると思っておりまして、本来だったらカルト対策庁などの行政のきちっとした仕組みをつくり、専門官や心理分析やあるいはその教義もしっかり理解をして、どうやって、カウンセリングなど、カルトにとらわれた人たちが一般社会に戻っていける、しかも自発的にみずからの意思で歩めるようにするかが最大の問題だというふうに考えているのです。  それで、最後になりまして失礼ですけれども、千保参考人に伺いたいと思います。  実際にそういった施設がいきなりつくられて、そして中で何が行われているかわからない、住民の方の不安は大変なものがあろうと思います。そこで、例えば市として、あるいは市議会として、ちょっと不勉強で申しわけないのですけれども、例えばその施設に申し入れて、一体中で何をやっているのか、どういう形状の建物で、何人いて、何がそこで行われているのかきっちり見せてほしいという要望をして実現なさるという計画などはこれまであったのでしょうか。あるいはもう既になされたのでしょうか。
  86. 千保一夫

    千保参考人 お答えいたします。  私どもの方で、施設の中で、もう初日から、いろいろな工事が行われて、そこから搬出されるものなどを監視している報告というのが何度も来ているのでありますが、どうも建築基準法上問題のある行為などが中でなされているようである。あるいは、水道につきましては大田原市の施設でございまして、その水道なども届け出なしにどうも水道管をいじる、水道管に何らかの工事をしているようだ。これも市の規則等には違反しているわけでありますが、そういうもろもろのことがございます。  それらが予測されたのでありますけれども、しかし、だからといって、私どもが中に入って違反行為を摘発するということをする必要があるのかどうかということにつきまして、いろいろ内部で随分と協議したのでありますけれども、中に入れてほしい、それで、どれとどれがよくてどれが違反か、何の法律に違反している、あるいは規則に違反している、そういったものをつまびらかにしていくということをする必要があるのだろうかということにつきましては、そういう状況が明らかになったときに、その後の対処をきちんとできるかという、いろいろ判断に悩みました。また住民の方は、そういうことでそこに退去を求める抗議運動をやっておりますし、私ども市の行政としましては、転入届受理ということで、そこが教団の本部、本山的な一大拠点施設になっていくことについては絶対反対という姿勢が私どもにもありましたので、もう受け入れないという形でございましたので、あえて中に入れてほしい、あるいは調査させてほしいということは、私どもの方では申し入れておりません。  市議会では、一たん調査をしようということになりましたが、住民も反対、市も転入届受理ということでやっておりますので、あえて市議会も、どんな違反行為が、あるいはどんな生活をしているか、実態を調査するということについてはいかがなものかということで、中止をしたという経緯がございます。  以上でございます。
  87. 保坂展人

    ○保坂委員 確かに、本当にそもそも来てほしくないわけだから、そういった施設そのものを認めない、そういう住民の方の気持ちの中で、あえてその中に入らなかったということは一面で理解できるのです。しかし、実際のところ、中で何が行われているかわからないという不安もそういう建物ができてしまうとあるわけです。  これは例えば今江川さんがちょっと触れられたことなのですけれども、いわゆる施設内の子供の就学問題などがありますね。どういう立場、どうこうは別にして、この施設の中の子というと、周辺住民からはもう一日も早く出ていってほしいというふうに言われている中のいわば子供である。しかし、その子供は親を選んで生まれてきたわけじゃないわけです。  先ほど触れられたように、普通の生活をしていないんじゃないかというふうにおっしゃいましたよね。例えば教育委員会等でそういった就学の可否を判断するときに、やはりどういう生活実態かということをきちっと見に行く、そういう必要性は出てくるのではないかと思うのですが、そこの点はいかがですか。
  88. 千保一夫

    千保参考人 お答えいたします。  私どもの方に移ってきようとする前は、茨城県の旭村に住んでおりました。そこの一つ年上の年子でございます。長男、次男、年子でございまして、二人とも教祖でありますが、その長男が、ことしの四月に旭村の小学校に入学をいたしております。そのときの状況等も私ども何回も旭村へお伺いをして、いろいろ御指導いただいて、調査させていただいているのでありますが、その限りでは、やはり出家信者のサマナ服を着た養育係の信者がずっとついている。授業中も廊下にいる。教室を時々のぞいている。  あるいは、オウム側からも学校側に対しての申し入れがありましたそうで、ほかの子供たちに、教祖様の頭に、髪を非常に長くしておりますので、髪にさわらせるな、頭にさわらせるな。あるいは、窓際に座らせるな、窓際に全部カーテンをつけよ。あるいは、都合で教祖様が学校へ行きたいと言ったときだけ行かせるから、学校ではそのつもりでいてくれとか、いろいろあったようでございまして、私どもの方も来年、学齢に達する次男大田原市の施設に今出入りをしておりますから、あるいは出てくるかもしれません。  しかし、そういう状況で、本当に無邪気なほかの一年生にしてみますと、友達が、同級生が髪が長かったら何の気なしに無邪気にさわってしまうものではないかというふうに思いますことや、あるいは、そういうことで、今オウムといいますと全国で有名になっておりますから、サマナ服などを着て送り迎えをされたり、あるいは授業中廊下に立っていたりということがございますと、ほかの子供たちに対する影響も大きいだろう。  公立の学校でございますから、全部受け入れよということになりますと、私は今の生活環境を、今の子供が異常な養育、異常な環境に置かれていると思っておりますので、両親のいないところで他人の信者たちに今囲まれて生活しているわけでございますので、そういう意味ではもっと先に、学校で受け入れる前に児童福祉法などで保護をするとか、そういう別なやり方があるのではないか。  あるいは、極端に申し上げますならば、親権者の著しい不行跡ということで、親権に服している子供に対するきちんとした監護ができていない、養育ができていない、親権をきちんと行使できていない、こういうことで親権を喪失させるとか、検察官による親権喪失の申し立てをするとか、そういう何らかの方向で後見人を選任して、後見人のもとから一般の公立学校へでも私立の学校へでも通学させる、こういったことの方が先なんじゃないか。  今の他人の信者の中にいて異常な昼と夜の生活社会一般から見ますと異常に思えるわけでありますが、そういう状況で普通の一般公立学校へ通わせるということにつきましては、住民感情としても、あるいは地域のいろいろなPTA関係方々、父兄にとりましても不安がどうしても残ってしまいますので、そういったことから受け入れないでくれ、そういう要望は地域住民から学校あて、教育委員会あてに出ております。  それでもなお、市の教育委員会としては、最初から受け入れないという姿勢ではなくて、県の教育委員会に照会をしてみよう、そして指導を受けて、アドバイスを受けて、その後正式に決定したい。必ずしも、県の教育委員会等のアドバイスとかそういったものに従わずに独自の判断を、そういう考えを持っていないようでありまして、私どもも、教育現場でありますから、いざとなりましたら、やはり教育現場が人権問題で訴訟の相手方になってしまう、教育行政が訴訟の相手方になってしまうなどということは避けた方がよろしいんじゃないか、こんな思いを私自身も個人的には持っております。教育委員会は、やはりそんなことで、教育行政人権という観点から訴訟の相手方になることは避けたいというふうには考えているようには私どもも教育委員会から聞いておりますので。そんなことで、通常の生活環境にまず子供を保護してあげたらよろしいんじゃないか、こんな思いが強いわけでございます。  以上でございます。
  89. 保坂展人

    ○保坂委員 本当に短く一点だけで終わりますので。  この法律案が、内閣提出法律案団体規制法の方が成立をしたら、住民票の受理の問題はどう対応されるおつもりでしょうか。
  90. 千保一夫

    千保参考人 お答え申し上げます。  先ほど一度お答えいたしましたが、私どもの方でまだ内部で正式に協議いたしておりませんのと、あと、法律が正式にどういう内容ででき上がるかまだ未定でございますので、断定的には申し上げることは避けさせていただきますが、一般論としては、もう住民監視も必要なくなる、住民の不安、動揺、あるいは自分たちが自衛としてやるべきことについては国家監視あるいは再発防止処分もきちんとやってくれるということになりますと、住民の平穏な生活も戻るだろう。そういう意味では、一般論としてはやはり転入届という措置は必要なくなってくるのではないか、こういう思いがあります。  あと、住民基本台帳法も、こういう特殊な例ではございますけれども、オウム真理教のようなああいう、集団でいろいろな危険なことを犯す集団がこの世にやはり存在する、存在してしまうということを踏まえて、住民基本台帳法上の手続等についても、市町村長に一切の裁量権を与えない、不受理の裁量権は一切ないという、条文上はそういうふうに形式的には読み取れますので、それらについての配慮はまた必要、あるいはやっていただきたい、そんな思いもございます。  以上でございます。
  91. 保坂展人

    ○保坂委員 終わります。
  92. 武部勤

    武部委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後四時四十六分開議
  93. 武部勤

    武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  本日の午後は、特に、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案審査のため、参考人として東京大学大学院法学政治学研究科教授高橋宏志君、弁護士・現オウム真理教破産管財人阿部三郎君、地下鉄サリン事件被害策弁護団団長宇都宮健児君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人の皆様方に委員会を代表して一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  高橋参考人、阿部参考人、宇都宮参考人の順に、各十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず高橋参考人にお願いいたします。
  94. 高橋宏志

    ○高橋参考人 高橋でございます。大学で民事訴訟法、つまり判決手続、民事執行法、倒産法の研究教育に従事している者でございます。その学者と申しますか研究者の立場から、今回の特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案要綱を拝読いたしまして感じたところを申し上げる次第であります。  民事訴訟法及び倒産法の角度からでございますので、要綱案の第三、第四、第五に専ら私の関心は向けられておりますので、その点に絞ってお話を申し上げます。  大きな第一は推定のところ、大きな第二が消滅時効のところ、そういうことになります。  まず、推定というところでありますが、特別関係者が有する財産特定破産法人から流出したものであることを推定する、ちょっと細部は簡略化いたしますが、そういう第三のところ。あるいは、第四の、特別関係者は、特定破産法人が破産債権者を害することを知ってしたものと推定する、あるいは前者に対する否認の原因があることを知っていたものと推定する、悪意の推定と私どもは講学上呼んでおりますが、こういうところの推定は民事訴訟法の研究者としては極めてスムーズに受け入れることができるところでございます。  こういう法律がなかった場合のことを考えましても、破産の保護に関する法律がなかった場合のことを考えましても、特別関係者あるいは特定破産法人というものが公安調査庁によって認定された場合、裁判所の実務の中でこういう推定をするか、しないかということをシミュレーションで考えてみたのですが、要件は多少異なりますし、事実認定の細かいところの認定が必要ではありますけれども、裁判所もこういう推定をすることに踏み切るとしても不思議ではない、学説の方もそれに別に反対することはないであろうというふうに思う次第であります。  では、裁判所が事実上の推定と講学上呼んでいるものによって処理できるものを立法上、法律上の推定にいわば格上げするわけでありますが、その格上げすることの意味がないかと申しますと、それはそうでもないわけで、立法する意味はそれなりに非常に高いものだと思います。  と申しますのは、こういう立法で法律上の推定にいたしますと、細かい事実の叙述が、債権者サイド、原告サイドから述べる必要がなくなる、そういうところにおいて、裁判実務上は、細かいところでございますが差異が出てまいります。そういう意味では、裁判所が解釈論として行うであろうところと、この法律ができた後に行われるであろうところは微妙に違ってくるわけでありますが、しかし、学者の方から申しますと、そのような個別具体的な細かい主張なしに推定をするというのは、我々の日本の民事訴訟法の母法でありますドイツ法が判例、学説によって認めているところでございます。表見証明という理論によって認めているところであります。  残念ながら、日本の最高裁判所はまだこの表見証明を正面から認めてはおりませんけれども、学者の側といたしましては、表見証明という理論はそれほどおかしなものではない。むしろ、積極的に日本でも妥当すべきものだと考える人が少なからずおるわけでございますので、この要綱案第三、第四の推定規定を設けることに対しましては、私ども研究者としては違和感はまずないということになります。立法していただければありがたい。私がありがたいと言うこともないのですが、立法するに値するものだろうというふうに考える次第であります。  次に、後半の消滅時効の問題、第五の方でございます。  ここもまた二段に分けてお話しすることになりますけれども、第五をそのまま読みますと、否認権を行使することができるのは規制法による観察処分の効力が生じた日から二年間だ、こういうことでございまして、現在の破産法八十五条の破産開始決定の日から二年間というのが、その開始の日が違った日に設定されている、こういうことになります。違った日に設定されていること自体は、これまた研究者の側から見ると、どうもそれほど違和感はないということになります。  と申しますのは、まず、そもそも消滅時効というものが、これは基本のところは民法が定めているところでございますけれども、民法百六十六条により、権利者が権利を行使することができるようになったときから何年間、年は物によって違うのですが、権利が行使できることになったときから何年間、こうなっております。そしてまた、この破産法上の否認権とほぼ同趣旨のものと考えられている民法の詐害行為取り消し権は、民法四百二十六条によりまして、取り消しの原因を覚知したときから二年間の時効にかかる、こう規定しております。  つまり、権利を行使することができるというのは取り消しの原因を覚知したときということになるわけでありまして、まさにこの法案が考えている状況に引き直しますと、特別関係者に対する観察処分、こういうものが効力を生じた日というのが民法四百二十六条に言う取り消しの原因を覚知したときというところにほぼ対応するわけでありまして、消滅時効あるいは否認権と同種の規定であるところの詐害行為取り消し権の消滅時効とむしろ平仄が合っているということになります。こういう観点から見ますと、むしろ破産法八十五条の否認権の開始の時点の方が特殊といえば特殊だということになります。  破産法はいろいろなところで民法を変えておりますけれども、この関係で申しますと、破産管財人という人が選任されて、そして、管財人は通常であれば破産開始決定と同時に破産者の帳簿類を押さえることができますし、また、破産法百九十条には、破産者あての郵便物を破産管財人の方に回してもらうことができ、かつ、破産者あての郵便物の封を開くことも管財人はできるというように強い権限が管財人に与えられているわけですので、権利を行使できるとき、あるいは取り消しの原因を覚知できるときというものを、破産開始決定の日、法律上で申しますと破産宣告の日にスライドさせるということは、通常の事態を考えれば破産法としては決しておかしくないのでありますが、そういう通常の破産とは違う破産に対応するためにこの要綱案ができているということを考えますと、消滅時効の本則に戻って、覚知できたときに対応する観察処分が効力を生じた日というふうにスライドさせることは、十分に合理性があるだろうというふうに思う次第であります。  ところが、消滅時効に関しますところの第二弾でございますが、これだけですと全く問題がないと言い切ってよろしいのですけれども、これが遡及するという点がこの法律一つの特色ということになります。  すべての事件でそうなるわけではございませんけれども、現在想定されているある宗教団体に関して考えるとすれば、既に破産宣告の日から二年過ぎて、破産法上は否認権に対する消滅時効が成立している。一たん消滅時効が成立した、それが、この法律ができることによってまた消える。一たん成立した消滅時効の利益が消えてしまうというのがこの法律の要綱案が示す方向でありまして、これに対しては別の考慮が必要だということになります。  私は、民事法の方の研究に三十年近く携わっておりますが、どうも一度成立した消滅時効が消えてしまってまた追及されることになるというのは余り例を知りません。特別法の特別な領域ではあるのかもしれませんが、一般の民事事件では聞いたことがありませんので、この点はいささか気になるところではありますけれども、気になると申しますか、この要綱案を読みましたときに少し驚いたのでございますけれども、振り返って考えてみますと、これもまた消滅時効制度から見ればそれほどとっぴなことでもない。積極的に推進すべきだとまでは申せませんが、特別の事由があれば、このぐらいまでは消滅時効というものは後退してよいものだろうというふうに考えるに至りました。  十分に練り上げて考えたわけではございませんが、四点ぐらい論拠を申し上げることができるかと思います。  第一に、消滅時効というものは、強行規定、当事者の意思にかかわらず強行的に妥当しなければいけない規定ではないということでございます。当事者が援用したことによって初めて消滅時効というものは裁判上判断対象になるわけでありますし、また、時効の完成後に、放棄と申しますか、債務の承認、言うなれば放棄することができる、こういうものであります。当事者間で処分することのできるものだということでありますから、強い、公の秩序に関するものではない、強行規定でもない、こういうことになろうかと思います。  第二に、我々研究者はすぐ母法のことが気になるわけでありますが、母法のドイツ法の規定を見ましても、これはたまたま二年間の消滅時効という点は同じでございますが、日本法が導入しなかった点がドイツ法にはございます。  と申しますのは、受け身の場合、抗弁という形で使う場合、つまり、相手方が攻めてきたとき受け身で破産管財人が使うときには、この二年間の消滅時効期間は適用されない、何年後であっても、受け身であれば否認権を行使することができるというのがドイツ法の条文にあります。日本でももちろん、解釈論としてはその種のことを言われる学説がないわけではありませんが、これも二年間というものが強いものではないということの例証になろうかと思います。  第三に、この要綱案が想定しているであろう事態を考えますと、帳簿類をそろえ、財産を全部破産管財人に提供すべきはずの人たちがそれをしていない。その人たちとほぼ同類と見られる人が特別関係者になるわけですが、そういう人たちが消滅時効の利益を使おうとする。これは、いろいろな事実を認定しなければいけませんけれども、極端な場合を考えますと、権利の濫用あるいは信義誠実の原則に反するとして解釈論でも封ずることが不可能ではない事態であろうと想定できるわけであります。  したがいまして、立法があるにこしたことはありませんが、究極の場合には、裁判所も別の法理で第五と似たことをしないとまでは言えない。なかなか難しい点はございますが、絶対的にないということではないというわけであります。  第四でございますが、裁判所がそういうことをやらないのではないということの例証といたしまして、予防接種を受けた後に重度の身体障害に陥った人が国家賠償を求めたという事件で、二十年間の時効期間あるいは除斥期間、要するに、二十年間の期間が過ぎてしまったように見える、こういう事件におきまして、最高裁判所は、細かいテクニックは省きますが、二十年間で消えたわけではないという判決平成十年に出しております。  これは、私ども研究者から見ても画期的な判例ではございますけれども、しかし、極めて異例な場合には、裁判所、現に日本の裁判所も、この種の二年とか二十年とかということに対しては柔軟な対応をとり得るということの例証になろうかというふうに思います。極端な場合には、正義、公平のために時効や除斥期間という期間の制限の規律は緩めてよいということになるわけであります。  結局、法律をつくる必要性との兼ね合いでございますので、この法律をつくる必要性の兼ね合いが強ければ、消滅時効の方は多少後退しても、消滅時効制度の方から見てもそれほど異例なことではない。異例ではあるのですが、それほど消滅時効制度の根幹が揺らいだということでもなさそうだというのが一研究者としての私の感想でございます。  以上でございます。(拍手)
  95. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  次に、阿部参考人にお願いいたします。
  96. 阿部三郎

    ○阿部参考人 弁護士の阿部三郎でございます。現在、オウム真理教破産管財人として管財業務を担当いたしております。  本日、衆議院法務委員会において、与謝野馨先生、杉浦正健先生外四人の先生方提出に係ります特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案、私は以下単に法案と申し上げさせていただきますが、この法案の御審議の参考人として意見を申し上げる場を賜りまして、心から感謝申し上げる次第でございます。この法案に関しましては、管財人としてこれまで三年八カ月破産管財業務を担当してきた経験に即しまして、私は全面的に賛成し、一日も早い成立と施行を望むものであります。  次に、その理由を申し上げます。  平成八年三月二十八日、私は東京地方裁判所より宗教法人オウム真理教破産管財人としての選任を受けました。同時に選任を受けました六名の常置代理人弁護士のほか、四名の補佐弁護士、合計十一名の体制で直ちに管財業務を開始したのであります。  その結果、選任を受けて以来、二年七カ月間の管財業務の遂行により、教団のほとんどの財産について換価処分の上、平成十年十月、配当額合計九億五千九百六十七万余の財団原資によりまして、実質は最終配当に近い中間配当を行ったところであります。  その間、山梨県の上九一色村のサティアン群、静岡県富士宮市の富士山総本部、あるいは群馬県長野原の物件など、その多くは犯罪の舞台となった建物施設でありますが、それらの解体に関しましては、平成八年十二月十九日付の閣議決定により、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二十二条二項に基づき、阪神・淡路大震災に対して行った国の財政措置に準じた財政措置をとることで四億九千四百万円の解体費及びその処理費についての補正予算が認められましたこと、さらに平成十年四月、議員立法によりますオウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例に関する法律案、これを平成十年四月九日衆議院で、四月十七日参議院でそれぞれ可決の上、この法律も施行されましたこともあり、その結果、破産債権者に対する本来の配当率は一六・二%でございましたが、このような国会及び政府の御配慮、御援助により、生命、身体上の被害者、債権者、すなわち特例債権者の方々には二二・五九%の配当となり、六・三九%も配当率を高めることができたのであります。  その間、十一名の管財人団は、隠匿財産に対する否認権行使の訴訟もしくは取り戻し権請求の訴訟など十三件の裁判を提起し、あるいは全国の施設等より信者の退去、明け渡し手続と二十九カ所の施設の換価処分を行うなど、全力を傾注してきたのでございますが、それは管財人団としても現行民法及び破産法内での限界をきわめた業務であると承知いたしております。  しかしながら、生命、身体上の被害者の方々に対する被害弁償ともなる配当としましては、ただいま申し上げました二二・五九%の率ではなお低率であると考えます。どうしても財団に組み入れるべき財産がもはやこれ以上存在しないというのであれば、それはやむを得ない面もあろうかと存じます。しかし、現実に財団の対象として見るべき財産が存在するにもかかわらず、現行の法体系における法の枠組みの中でこれ以上財団の増殖に向けての法律上の追及手続をとることができなかったことは、まことに遺憾でありました。そのため、管財人としては、憲法上も許容される新たなる措置法のもとで、より一層の被害者の救済援助のため、さらに財団の増殖に向けた追及手続に取り組むことができるように切望していたところでありました。  具体的に申し上げますならば、平成七年三月、強制捜査時、静岡県富士宮市の富士山総本部のサティアン内の金庫に約七億円の現金が存在したことも報道されております。さらに、平成七年六月、東京地方検察庁検事正と東京都知事により宗教法人の解散命令申請が出されて以来、全国の教団所有の不動産の中で可能な限り売れるものは売却せよとの幹部の指示により、かなり多くの不動産の売却処分が行われたことが事実として認められることであります。  また、このほかに、平成八年六月、脱退したと称する元信者が管財人である私に、教団よりの預かり保管中であるということで、現金五千万円を返還してきた事実もございます。そして、この信者の私に対する陳述として、自分に五千万を渡した教団幹部は、当時自由にできる金として二億円持っておった、その者は二名の者に金を渡しているという事実も明らかにしております。  特に、平成七年三月、強制捜査時の約七億円もの現金が存在したという報道に基づくその使途に関する管財人の追及に対しては、教団広報部の担当者は、この現金の存在した事実を否定することなく、管財人の求めに応じまして、その後、取引業者に対する支払い金である、あるいは信者生活費に充当したものであるということで、約三億五千万円の金額ではございますが、使途に関する資料も管財人に提出した事実があります。  このような状況下における現金もしくは不動産の処分代金を一体だれが、どのように保管し、そしてどのように使ってきたのかが問題となります。本来、信者は、出家した際自分の個人財産はすべて教団にお布施しているのであり、個人資産は持たない、またあるはずがないのであります。それがその後、ある日突然に信者名義で各地に大きな施設を買い求めたり、あるいは多額の保証金や前家賃を支払って借家権を設定するなどの行為を行うことは、彼らの教義上のあり方から見ますならば、そのような金を有することは絶対にあり得ないことであります。あるいはまた、次々と株式会社、有限会社を設立して、信者がみずから役員となってパソコン販売等の事業を行うなどしている。その資金はどこからどのようにして調達したのか。特に、世上言われますように、多額の売買実績と利益を上げているその実態から見るならば、投下されている資金も決して少なくはないはずであります。  以上のような具体的な事実から申し上げますならば、本来破産財団に属すべき財産の流出及びその隠匿行為が行われた蓋然性は極めて高いと言うことができます。  しかしながら、現行の民法や破産法のもとでは、管財人としてこのような姿を見ながらも、残念ながら、訴訟をもってその実態に迫ることが非常に困難であり、かつ、これを証明しようとしてもその立証は極めて困難であります。なぜならば、通常、法人でありますならばその大小を問わず必ず備えておかれるべき帳簿及びその他の関係資産台帳等については、オウム教団の場合には一切記帳していないし、備えていないという理由で、管財人は、教団からも、また法人の解散決定後に就任された清算人よりもこれら帳簿類及び関係資料などは一切引き継がれていないからであります。そのため、法人名義で登記されていた不動産以外には、法人の財産としてどこにどのようなものがあったのか、いずれにしても法人の所有財産の明細は確認できなかったのであります。  また、預金関係にしても同様でございます。通常は、この預金の出し入れによって資金の流出あるいは資産の取得、転得の状況も把握できるのでありますけれども、破産法人名義の預金もごくわずかしかなく、その実態を明らかにすることはできませんでした。このような状態の中で、徹底した管財業務を行うことができなかったことが極めて遺憾でありました。また、管財業務遂行中、差し支えのない限りで警察及び公安当局よりの資料に基づき、適宜、財団増殖のためにこれを活用させていただきましたが、しかし、それはあくまでも差し支えのない限りでの御当局の御理解と御協力でありました。  ところで、公安調査庁は平成九年八月二十六日、オウム真理教の組織実態の概要要旨を公表されております。これによりますと、教団は、破防法による解散指定処分請求棄却決定以来、中央機構の再生、強化とともに、閉鎖を余儀なくされた地方組織の再建に向けて活動を活発化させ、現在までに、仙台、水戸、松本、金沢、高崎の五支部を相次いで再建したほか、本年五月には、東京都内に百人以上の信徒が一堂に会することができる東京本部道場を新設した。この結果、地方組織は十五支部一道場と認められ、そのうち名古屋、福岡、大阪の三支部については、より規模の大きな施設に移設するなどして充実強化を図り、これらの施設において、説法会、セミナーを頻繁に開催するなど活発な活動を展開している。現在、これらの拠点施設は、上記十六支部道場の施設を含め、全国に二十六カ所と認められる。  さらに、教団は、福島・小名浜アジト、埼玉・越谷アジトなどの拠点施設確保に関しては、暴力団系ブローカーを介し、根抵当が設定された不良物件に多額の資金を投入している。このほか、本年五月下旬には、元暴力団組長・幹部信徒が所有していた長野・木曽福島の元旅館、これは敷地面積千三百七十平米、総床面積三百六十平米を一千万円で買い取ったが、その後、同組長が岐阜・古川町の元旅館、これは敷地は約千八百平米、総床面積八百平方メートルを相場の倍額に当たる三千万円で即金購入するなど施設確保をしている。また、信者居住施設として全国に百十カ所が把握されていると公表されております。  もし、これらの公表に至った具体的な根拠資料とその内容の詳細が管財人として正式に入手できて、裁判上の手続におきましても証明の資料として活用できたならば、管財業務も一段と深めることができたに違いないと思うのであります。しかしながら、現行法では、公務員の守秘義務との関係上、こうした資料は直ちに無条件で入手できるものではありません。  私が担当した管財業務の実情の中では、以上述べましたように、この破産法人と特別関係のある者が破産法人より流出した財産の転化物を保有していることの蓋然性が非常に高い実情にあるのであります。そのような転化物を保有する特別の関係者に限って、民事上特別の扱いができるものとして、その保有転化物取得の原資についての帰属について推定を及ぼすことができますならば、これまで管財人の置かれました困難な課題は容易に克服できるものと考えます。このような中で、このたび与謝野先生、杉浦先生外四名の先生方の格別の御配慮により、本法案提出されました。  私は、本法案の柱として、次の三点を受けとめさせていただいております。それは、本法案御提案の理由の御説明どおりでもあります。  第一として、特定破産法人と一定の密接な関係にある特別関係者が有する財産については、その価額分を不当利得として破産管財人に返還すべきものと推定すると規定していただいたことであります。  第二に、特定破産法人が最初の無差別大量殺人行為の後に行った特別関係者への財産移転を、特定破産法人が破産債権者を害することを知って行ったものであると推定することにより、破産管財人による否認権の行使を容易にしていただいたことであります。  第三に、特定破産法人破産管財人に、公安調査庁長官に対し必要な資料の提出請求することの権限をお与えいただいたことであります。  特に、第一の柱である推定の規定を設けていただきましたことは、第三の柱であります公安調査庁長官より必要な資料として情報を賜りましても、なお管財人において、その流出、転化の経過についてどうしても解明できないことがありました場合、管財人はこの推定規定により証明責任の困難性が解消されることとなり、業務遂行上大変にありがたいことであります。  なお、本法案による法律は、政府提案に係るいわゆる規制法の観察処分がなされたことを推定規定の適用の前提とされておりますこと、管財人が公安調査庁長官に対し提供を求める資料は、公安調査庁が規制法の規定により得られた資料となりますことから、規制法の成立が前提となってまいります。そのために、管財人としても、まず規制法の成立を心から願っておりますことはもとより申すまでもございません。  以上の次第で、本法案につきましては、管財人として私は全面的に賛成し、速やかなる御可決を賜りますようにお願いを申し上げ、私の陳述とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  97. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  次に、宇都宮参考人にお願いいたします。
  98. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 弁護士の宇都宮です。私は、地下鉄サリン事件被害対策弁護団の団長をしております。被害者救済の立場から本法案に対する意見を述べさせていただきます。  被害者救済を一歩前進させるものとして、この特別措置法案が早急に制定されて実施されることを希望するものです。しかしながら、この法案で救済されるのは、現在破産手続で破産債権の届け出をしている債権者に限られます。地下鉄サリン事件の被害者としては、十二名が死亡して五千五百人以上の方が重軽傷を負ったというふうに報道されております。その中で、現在破産債権の届け出をしているのは千百三十六名しかありません。この千百三十六名の被害者については、このような法案が制定されて破産管財業務が前進することによって、一定の被害救済が前進すると思われます。  ただ、破産債権の届け出をしていない被害者については、こういう恩恵は受けられないわけです。国会議員の先生方におかれましては、これを機会に、もう一度地下鉄サリン事件の被害者の実態、被害状況等について御理解をいただいて、あわせて、この法案だけではなくて、今後、被害者の救済が経済的な側面、精神的な側面あるいは治療体制、こういう面において一層前進されるような制度を確立していただくよう強く希望するものです。  地下鉄サリン事件につきましては、もう御承知のとおり、一九九五年三月二十日、地下鉄にサリンが散布されまして、我が国でも前代未聞の無差別テロでありまして、国際的にも非常に注目されている事件であります。  この中で、一家の大黒柱あるいは最愛の娘、最愛の息子を失って悲しみに打ちひしがれている家族がいます。さらにまた、今なお入院治療継続中の被害者もいますし、後遺症で苦しんでいる被害者も多数います。こういう被害の実態につきましては、きょう、参考資料として、聖路加国際病院における臨床経過報告、それから警察犯罪被害者対策室、科学警察研究所の実態調査の報告書、それから地下鉄サリン事件被害者の会の被害実態に関するアンケート調査等、それから地下鉄サリン事件の被害者の手記集である「それでも生きていく」、これはサンマーク出版から出版された手記集ですけれども、それをお配りしておりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。なお、被害関係では、村上春樹さんが「アンダーグラウンド」というルポルタージュを講談社文庫から出していますので、あわせて参考にしていただければと思います。  我々弁護団の活動としましては、これまで被害者の救済のためにどういうことをやってきたかといいますと、まず民事裁判を東京地方裁判所に提訴しております。原告になったのは、死亡者七名の遺族十六人と受傷者及びその親族の二十五名、合計四十一名が東京地方裁判所にオウム真理教と麻原彰晃こと松本智津夫以下実行犯十五名を被告にして損害賠償請求を提訴しております。この裁判につきましては、去る十月の二十八日に原告二名の本人尋問が行われまして、来る十一月の二十五日に最終弁論が行われる予定です、恐らく判決は年明けになると思いますけれども。  この間、既に被告七名については原告の全面勝訴の判決がおりております。しかしながら、これらの被告というのは御承知のとおり刑事被告人でして、今刑事裁判が進行中、あるいは一部の被告については既に判決が確定しておりますけれども、この被告からは被害救済は全く期待できない状況にあります。したがって、我々としては、オウム真理教の資産を破産申し立てをして被害救済に充てるということを考えまして、一九九五年の十二月十一日、これは地下鉄サリンの遺族だけではなくて、坂本弁護士一家の遺族、それから松本サリン事件の被害者の遺族、あるいは仮谷さんの遺族らと共同して破産申し立てをしました。あわせて国も共同申し立てをして、翌一九九六年の三月の二十八日に破産宣告がなされて、先ほど意見陳述を行いました阿部三郎弁護士が管財人に選任されて、これまで被害者救済のために奮闘されてきたわけです。  この破産手続におきましては、阿部先生の報告のとおり、昨年の十月、中間配当が行われております。地下鉄サリンの被害者にも二二・五九%の配当がなされました。これは、阿部先生を初めとする管財人団、あるいは東京地方裁判所破産部の御努力、さらには昨年の四月の十七日に議員立法として成立した特例法、この成立によりまして被害者に対してより厚い配当、救済がなされたかと思っておりますけれども、しかしながら、まだ八割近くの被害について損害が回復されておりません。しかも、その二割の配当というのは、千百三十六人の被害者に対してだけなされたにすぎません。多くの被害者は、こういう経済的損害以上に、いろいろな精神的な後遺症も抱えて、さらには現在も治療継続をしている状況であります。  先ほどお話ししましたとおり、十月の二十八日に民事裁判で原告本人尋問が行われました。この中で、サリン事件で三十六歳の妹さんが重傷を負われた三十九歳の男性が原告本人として証言しました。この男性には、三十八歳の妻と十歳の長男、六歳の長女がいます。さらに、七十一歳の父親、七十四歳の母親がいます。実は、父親と母親は、地下鉄サリン事件が起こるまでは被害に遭われた妹さんと同居していたわけですけれども、妹さんが事故に遭い、かつ、お父さんは事件直後喉頭がんにかかりまして、今発声ができない状況、それから七十四歳の母親は足が悪くて歩行困難な状況であります。そういう状況ですから、お兄さんがこの両親を引き取って今面倒を見ているような状況です。  三十六歳の妹さんは、事件直後からずっと病院暮らしです。一回も自宅に帰って寝泊まりしたことはありません。車いすを押してちょっと自宅に連れていくことはできるんですけれども、泊まることはできないわけです。事件直後は植物人間状態でして、全く意識がありませんでした。その中で、この年老いた両親あるいは仕事を持っているお兄さんが必死の介護を行いまして、ようやく今は意識が戻って、今見舞いに来ているのは家族であることの認識ができるようになっています。やっと発声できるようになっています。ただ、まだ左半身が全部不随なんですね。左手左足は動かすことができません。辛うじて右手と右足が動かすことができるまで回復したわけですけれども、自分の足で歩行することもできませんし、それから食事も自分でできません、そういうような状況です。それから、左目は全く見えておりません。右目が辛うじて見える状況なんです。  この妹さんのお兄さんは、どういうことがつらかったのか。もちろん、看病というのは妹さんのことを考えて一生懸命やったわけですけれども、二人のお子さんがいるわけです。一番子供と一緒にいなきゃいけない時期に、看病のために子供と一緒に過ごす時間が少なかったということが一番つらかったということを言われています。  それから、この妹さんについてはまだ退院の見込みが立っていないのですけれども、もし退院するとすればどういうような態勢が必要かといいますと、病院側からは、病室を一個つくるぐらいの態勢でいてくださいと。家を改造して病室をつくらなきゃいけない、そういう経済的負担をこのお兄さん家族は強いられているわけです。それから、当然身障者用の車、そういう準備が必要なんですけれども、そういう経済的な負担に耐えられるかどうか非常に心配しております。  それから、このことも証言されたのですけれども、実は、妹さんが被害に遭った後、お母さんがこのお兄さんに何と言ったのか。妹が死んでしまえばよかったということをお兄さんに告げたらしいです。そうすればおまえたちにも迷惑をかけなかったのにということを言われた。お兄さんとしては、母親の気持ちを考えると、大変つらくて悲しかったと述べています。  被害に遭ったのは、このように妹さんだけではなくて、その妹さんを抱える家族全体が被害に遭っているわけです。こういう状況がお兄さん家族だけではなくて、もちろん肉親を失った人は帰ってきませんし、いまだに通院治療している方がたくさんいます。そういう状況をぜひ国会議員の先生方も目を向けていただいて、当面この法律は早急に通す、だけれども、それだけで被害者救済が万全ではないということをぜひ考えていただきたいと思います。  きょうお配りした資料の中で、我々は、ことしの三月、地下鉄サリン四周年のときに、厚生省に実態調査をやってくれ、サリンというのは前代未聞の事件で、サリン中毒というのは、普通のお医者さんがこういう治療を担当したことはないと思われますけれども、国際的にも非常に注目されるこういう事件についてまず厚生省が実態調査をやって、完全な、完璧な治療体制を整えてもらいたいという申し入れをしました。それに対する回答もお配りしていると思いますけれども、非常に紋切り型、冷たい対応が来ています。  世界的な事件ですから、海外のマスコミからも、日本の国内の体制はどうなっているんだ、こういう調査をちゃんと政府はやっているのかということについて問い合わせがありますけれども、残念ながら、私が把握しているのはことしの一月の警察庁の実態調査だけです。だけれども、それがどれくらい被害者救済に反映されているのかというと、なかなか我々からすれば心もとない。そういう点も思いをいたして、この法案を検討していただきたいと思います。  以上で意見陳述を終わりたいと思います。(拍手)
  99. 武部勤

    武部委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  100. 武部勤

    武部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺喜美君。
  101. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 ただいま宇都宮健児先生のお話を聞いておりまして、私も個人的に存じ上げております被害者の方がいるものですから、大変身につまされた次第であります。  考えてみますと、昔々、人間には復讐する権利というのがありました。親を殺された子供は、親のかたき討ちをすることが認められておったわけであります。しかし、近代法治国家は、この復讐する人間権利をいわば国家が奪い取っているわけでありますから、国家がきちんと法を行わなければこれはもう法治国家ではなくなってしまうということなんだろうと思うのです。したがって、国家が何もしてくれないというときに、本来持っておる復讐権を行使すれば、その人は犯罪者になってしまうのですね。リンチが行われてしまうような、そういう国であってはいけないと思うのであります。  そこで、前通常国会におきまして、当時杉浦委員長の時代でございましたが、私、当委員会におきまして、被害者救済を取っかかりにした何らかの議員立法ができないものかということを申し上げたわけでございます。その後、与謝野委員また杉浦委員等の御尽力によりまして大変すばらしい議員提案ができたと、心から敬意を表しておる次第であります。  実際、私なんかが法律の素人として直感的に思ったのでありますが、きょう午前中、私どもの地元の大田原市の千保市長さんが当委員会でお話をされたと思います。お手元に、これ、配ってもらえますか。この登記簿の謄本、資料を配ってください。ことしの五月の二十五日に、突然所有権の移転登記がなされるのですね。それで、六月の十八日ですか、突然抵当権設定の登記がなされるのであります。私が取材したところ、現金の受け渡し、当該物件の引き渡しが五月二十五日に行われておるのですけれども、どうもこれが現ナマの授受で行われているのですね。五千五百万円の売買代金で、現ナマをゴムひもで結わえてえっちらおっちら持ってきたと。大体五キロ半ぐらいの重さですから、結構重いだろうと思うのですが、すべて古いお札なんだそうです。現ナマで五千五百万円で民宿を買い取った、こういうことであります。  我々が常識的に思ったのは、そんな金があるんなら何で被害者救済に回さないんだ、こういう話ですよ。阿部先生のお話にもあったように、二割の配当というのは、ありとあらゆる手だてを尽くしてもそれくらいの配当だ。残り八割があがなわれていないわけでありますから、こんな金は当然被害者救済に回すべきだという率直な思いがあったわけでございます。  そこで、私、素人で大変恐縮なんでございますが、日本の倒産法制ですと、倒産の前と後とで法人格が途切れてしまうんだ、こういうことのようでございまして、今我々この委員会でこの次にやるのはいわゆる再建型倒産手続というものなんですが、そういう手続と同時に、いわば制裁型倒産手続みたいなもの、懲罰的倒産手続ですね、制裁的倒産手続というものがあってもいいんじゃないのかなという気がしたのですね。ですから、我々の自由社会を根本的に破壊しよう、そういうことをたくらんで実際にそういう行動を起こした連中が、法人格が違うがゆえにその後のあがないを免れておるというのは非常にけしからぬ話でございまして、そのあたりはどうなんでしょうか。法人格の同一性、断絶性に関する何か一般的な倒産法制の理論というのはあるんでございましょうか。高橋先生、簡単に教えていただけますでしょうか。
  102. 高橋宏志

    ○高橋参考人 法人格が別でありますと、法律上は全く別の人間として処理されるわけでありますが、法人格が別であることが濫用であること、あるいは法人格が別であることが極めて形骸化しておりまして、別とは言えないというような場合、そういう極めて異例の場合には、それを救済する理論がアメリカで開発され、日本の判例も認めたことがないわけではないのですけれども、これは極めて異例の場合でございまして、一般の倒産法としてそこまで踏み込むことは無理であろうと思っております。
  103. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 私は、一般論としてというよりは、このオウムのように、自由社会を破壊しようとしてそれを実行に移した、こういう人たちには自由は制限されますよというのはいわば当たり前のことだと思うのですね。そういう当たり前のことを我々は考えていかなければいかぬと思いますし、今までの我々が依拠してきたパラダイムが、どうもそういう当たり前のことを阻害する何かがあったような気がしてならないものですから、あえて申し上げたわけでございます。  そこで、この特定破産法人財産回復特別措置法が成立しますと、具体的なイメージとして我々考えてみたいと思うのでございます。  お手元にお配りした登記簿の謄本を見ていただきたいのでございますが、これは、先ほど申し上げたように、五千五百万円で買い取っておるのです。その三週間ぐらい後に六名の抵当権がくっつけられておるのです。私の取材によりますと、この六名の抵当権者はいずれも出家信者である、こういうことだそうでありますけれども、大体これも新手の知恵なんでしょうね。  今、もとの所有者が所有権移転登記抹消登記手続等の請求ということを起こしておりまして、そもそもこれは民宿経営をやってもらおうと思って売ったのです、ですから、オウムがまさか買い取るとは思わなかったと。それから、売買の交渉の段階で欺罔行為があった、こういうことで、錯誤による無効、それから詐欺による取り消し、二つの手法でもって訴訟を起こしているわけでございます。  訴訟の方が早く終わってしまうと、例えば何がしかのお金がオウムに行くわけですね。しかし、法律がその前に通っておれば、オウムに行ったお金もこの新法でもってかかっていける、こういうことになるわけでありましょうし、また、訴訟が終わる前に新法でもって、この破産財団回復しなさい、こういう手続ができるようになるわけでありましょう。そういたしますと、この信者というか六人の抵当権者は、現ナマ一千万円とか五百万円をどうやって調達したのかということを裁判所で証明をする、こういうことになるわけでありましょう。  いずれにしても、そういう反証が打ち破られないようなことでぜひお願いしたいと思いますし、また、我々が非常に心配しておりますのは、時間が大変かかってしまうのじゃないかという心配をしておるのですね。ですから、ああでもない、こうでもないと言って反証にもう何年もかけられちゃったら、これはたまったものじゃありませんで、そのあたり、阿部先生の御決意のほどはいかがなものでございましょうか。
  104. 阿部三郎

    ○阿部参考人 今渡辺先生の方からこの資料をちょうだいいたしました。  この法律が成立いたしましたならば、当面、この所有者なるものについて、これはことしの五月二十五日、売買によって取得したようでございますけれども、この所有者に対して、不当利得の返還請求の訴訟を提起する。  どこでどのような不当利得になるかといいますと、御指摘のとおり、この五月二十日付の金銭消費貸借契約ということで、合計五千五百万出ておる。これは明らかに売買代金だろうと思います。しかも、六人の抵当権者のうち、女性二名が同じ住所で部屋が違うようです。あと、男性二名は全く住所が同じ、一名は名古屋、一名はまた違うところですが、全部これは信者であることは間違いございません。したがって、この信者方々がどこから一体お金を調達してきたのかということが、当然にこれは証明されなければならないというふうに思います。  そういうことで、私どもは、この団体構成員である、あるいは金額がはっきりしておるというところから、このケースについては直ちに訴訟の対象になるのかなというふうに思っております。  幸いにして、管財人としての立証の責任が非常に軽減されておりますので、可及的速やかに解決できますように取り組んでまいりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
  105. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 大変力強い御答弁をいただきまして、まことにありがとうございました。  もう時間がありませんのでやめますけれども、パソコン事業、これをオウムは、公式的にはオウムとは関係ないんだ、こう言っておるようでございますけれども、せっぱ詰まって、このパソコン事業でもうけたお金だなどと主張してくる場合もないわけじゃないと思いますので、向こうもいろいろな新手法を使ってくるでしょうから、ぜひ、阿部先生におかれましては、この法の立法される経緯を御理解の上、万全の態勢で臨んでいただきたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  106. 武部勤

    武部委員長 次に、坂上富男君。
  107. 坂上富男

    ○坂上委員 坂上でございます。  私はこの法案に賛成でございます。そんな立場におきまして、バックアップする意味において、ひとつ理論構築もしていただきたいとも思いながらの質問をさせていただきたい、こう思っておるわけでございます。  法人の普通の破産でありますと、負債と財産が償わなくなって、いわゆる赤字になって、事業をやっていけない、こういうようなことが破産の大きな原因になるわけでございますが、このオウムの破産については、本当に破産債権がほとんど全部不法行為による損害賠償ということであって、オウムが持っておった財産は全く理論的には減っておらない、とにかく押さえさえすればこれは全部あるいは取り戻せるのじゃなかろうか。そうだとするならば、不法行為のいわゆる損害賠償が少しでも多くなされれば大変よろしいというような観点から、私はこの破産問題を見詰めているわけでございます。  そこで、まず先生、一つは、今破産管財人として大変必死な御努力をなさっておりまして、本当に敬服をいたしておるわけでございまして、どうぞひとつお体にも気をつけて頑張っていただきたいとも思っておるわけでございます。  また、宇都宮先生は原告団の団長といたしまして、これまた昼夜分かたない大変な御努力が続いているのだろうと思っておるわけでございまして、まさに先生の本日のお話、先生の切実な叫びとしてお聞きをいたしておりました。  そんなような観点から、ぜひひとつ高橋先生から、理論的な裏づけをびっちりといたしまして、裁判所へ出たら、このことが違法行為だなどと言われないような理論構成も御指導いただければ、こんなふうにも思っておるわけでございます。  そこで、まず阿部先生、今起こしております管財人としての訴訟はすべて終わっているのでございましょうか。
  108. 阿部三郎

    ○阿部参考人 全部終了いたしております。ございません。
  109. 坂上富男

    ○坂上委員 それから宇都宮先生、先生からごらんになりまして、新聞紙上で、昨年のオウムの売り上げが七十億、そしてこのうち十億が純益であろう、こういうふうに言われておりますが、この点はどんなふうに見ておられますか。七十億の売り上げあるいは十億の利益が上がったんだと、こういうようなことから見て、大体仮装しておりますところの法人とかあるいはそういうものが幾つぐらいになっているのか、そしてまた大体どれぐらいの数の信者オウム財産を隠匿しているのか、その辺はどんなふうに先生は見ておられますか。
  110. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 残念ながら、私どもは正確な資料はほとんど持ち合わせておりません。  ただ、マスコミ報道等で知るところだけなんですけれども、パソコンショップで相当な売り上げを上げているということは間違いないようですし、それから、次から次へと拠点を買収していますので、相当な資産を持っている。あるいは、活動する信者が一説に千人とも二千人とも言われていますけれども、相当な信者を結集している、あるいは新たに信者として参加している人も出てきているというふうに聞いています。  実は、その辺の正確な資料というのは我々弁護団は持ち合わせていませんで、恐らくこれは公安調査庁とか警察庁あたりが正確な資料を把握しているんじゃないかと思います。できればそういう資料を我々にもいただければ、いろいろな救済活動に役に立つかなと思っております。
  111. 坂上富男

    ○坂上委員 いま一つ先生の重要な発言があるのでございますが、いわゆる債権届けをしているのは千名余りである、しかし、実際の、実害を受けておる皆さん方が五千名というようなお話があって、被害者救済制度をひとつ国会の中でも考えろ、こういうお話でございまして、非常に私もおっしゃるとおりだと思っておるわけであります。  確かに、私はこのオウム事件というのは、警察の捜査人員のたゆまない努力がやや怠られた結果がこういう事件の発生になった、こう思っておるわけであります。国においても相当の責任ありと私は思っておるわけであります。  ちょうど今先生のお話をお聞きしながら、私は、水俣病の患者救済のことに随分私もかかわったものでございますから、感じているわけでございます。これは一応チッソの会社があるものでございまするから、そこへできるだけ資金援助をして、そこから弁償を続けるというような形を国はとっておるわけでございますが、このオウムの問題は、ストレートに国家の責任問題、こういうふうなことにもかかわってくるものでございまするから、私はやはり、ストレートに国において被害者救済制度というものを、どういうふうにしたら救済ができるのかということは検討する必要が特にある、こう思っておるわけでございまして、先生、もう少し具体的に御意見があればお聞かせいただきたい、こう思っていますが、どうでしょうか。
  112. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 今先生のおっしゃるとおりだと思います。今の日本犯罪被害者を救済する制度というのは、非常にお粗末だろうと私は思っています。  基本的に、特に大量無差別テロ事件というのですか、本来こういう事件を未然に防いで国民生命、安全を守るのは国家の役割だろうと思っているんですね。それを十分やり切れなかったからこういう事件が発生した。そうすると、国家としてその被害者に対して何らかの賠償をする責務があるんじゃないか、基本的な考え方はそういうことで、諸外国では、そういうのを踏まえて、犯罪被害者を救済するいろいろな法案ができていると思います。我が国であるのは、一九八〇年だったと思いますけれども、犯罪被害者給付金支給法という法律がありまして、実はこの法律に基づいて、何人かの方は犯罪被害者の給付金の支給を受けています。  ただ、残念ながら、地下鉄サリン事件の場合は、ほとんど通勤途上で被害を受けている、あるいは、営団地下鉄の職員は勤務時間中に受けているので、労災を適用されている人が多いのですね。ところが、現在の法制度だと、労災が適用される人に対しては犯罪被害者の給付金の支給は適用対象外ということで、地下鉄サリンの被害者はほとんどそういう恩恵を受けていません。  もともと、この犯罪被害者給付金支給法というのは、死亡者の遺族とか重傷者に限られていまして、軽傷者には適用がありません。まず、こういう経済的な救済制度自体が一九八〇年にできた制度をそのまま維持されていまして、もう少し拡充する必要があるんじゃないか。  それから、そういう体制だけではなくて、経済的な問題だけではなくて、先ほどお配りした資料にもありますように、非常に精神的な苦痛、悩みを抱えている人が多いんですね。こういう精神的な苦痛を抱えている人に対するケア、カウンセリング体制、そういうものは今のところ全くありません。さらに、こういう長期の治療をする場合のケア、今介護保険とかそういうことが国会でも議論されていますけれども、家族も含めたそういう治療に対するバックアップ体制、そういう体制もありません。  全体として、犯罪で被害を受けた人、これは特に地下鉄サリンなんかの場合は、何の罪もないわけですね、責任もない。こういう人たち自分の責任のないところで犯罪の被害を受けた場合のもっと手厚い体制を、ぜひ国会でも議論していただきたいと思っております。
  113. 坂上富男

    ○坂上委員 私も頑張るつもりでございますが、特に神奈川県警にかかわって、一番最初の出発点は、坂本さんの問題点は、いわゆる緒方盗聴事件が起きましてから、そしてどうも坂本さんについても警察の捜査と、こういうようなことになったのですが、ややそういう点のかかわりがありましてそのままになって、坂本事件がようよう後から発見されるという事態になってきたり、あるいはまた、松本サリンもそうですし、それから地下鉄サリンの問題も、そんなようなことからずっと手おくれになって、しかもまた、ちょっと名前を忘れて失礼ですが、いま一人の方の殺害事件なども、まさに私は、捜査当局の大きな手おくれの責任というものはあるんだろうと思っております。国は、全く手落ちがないというようなことになりますとなかなか被害救済というものに力を入れませんが、少しでもありますれば、それを足がかりでやれるものでございますから、どうぞ先生方も、その辺もまた心していただきまして御協力いただければ、私らも一生懸命頑張りたいとも思っておるわけでございます。  それから、高橋先生でございますが、消滅したものを生き返らす、こういう大変な問題であって、これは特別事情によっては生かしてもいいのではなかろうかと、率直な話、俗な言葉で言いますとそのようでございます。  先生、どうでしょうか、これはいわゆる破産の特例でもあるわけでございます。したがいまして、推定規定は、あるいは平等の原則には反しないのかどうか、それから、私有財産制度、やはり憲法の私有財産の保障とのかかわりにおいて憲法問題が起きないんだろうか、この辺の理論的な構築はどんなでございましょうか。
  114. 高橋宏志

    ○高橋参考人 法のもとの平等の問題でございますが、一応これは特例法ではございますけれども、要件を満たした法人、一般法人であればどの法人にでも適用になることでございます。世の中のすべての法人のうちの一部分について適用される法律というのは、これは別に珍しいことではございませんので、そういう意味では、一個、二個、特別の法人ではなく、ある要件を満たした法人に適用されるということであれば、これは平等の問題はまずほとんど起こらないだろうというふうに思います。  消滅時効の点と憲法二十九条の財産権の保障との問題でございますが、これは先ほど申し上げたとおりでございまして、財産権の保障も法律の制限あるいは公共福祉の制限に服するわけで、民事法秩序全体の中でどれだけ合理性があるか、こういう問題に還元されるはずであります。  例えば、現在日本では、消滅時効が、一般的に債権は十年でございますけれども、これが国会で十五年になった、これは憲法違反かと言われれば、それはそうではない、これは国会の裁量の範囲内であろう、こういうことだと思います。今回の要綱案の中でこういう規定を設けた、これも、私の理解するところ、国会の、立法の裁量権の中の範囲の問題でございまして、違憲ということがこれに結びつくのは相当、そういうことを述べる学者も今後出てこないとも限りませんけれども、その先生は非常に大きな学問的な努力をしなければ、最終段階としては御自分の主張が通らないだろう、こういうふうに思っております。
  115. 坂上富男

    ○坂上委員 先生、これはどうでしょうか。例の自作農創設措置法のたった一つ憲法の判例がございますが、これを適用すればこの問題はクリアできるというふうに理解はできないでしょうか、どうでしょうか。
  116. 高橋宏志

    ○高橋参考人 どういう理屈あるいはどういう判例を使えば最もクリアできるかという点に関しては、申しわけございませんが、私まだ十分に勉強しておりませんので、そういう、先生のお考えのような考え方も成り立つであろうというふうには思います。私自身、まだ日曜日から勉強を始めたばかりでございますので、ほかの理屈があれば、それはまたそれであり得ることだろうと思っております。目標が同じであれば、いろいろなルートからいろいろな根拠づけができるというのは普通のことであろうと思っております。
  117. 坂上富男

    ○坂上委員 さて、阿部先生、管財人という今公的な職務でありますので、質問するのは余り、外形的事実だけやれよ、こういうお話でございます。  先生、この法律が成立しますと、ずばり言ってどれぐらい回収可能か、目の子算でいいですが、どうでしょうか。
  118. 阿部三郎

    ○阿部参考人 直ちには見当つきません。ただ、対象として考えられるところがほぼ全国に十三不動産ぐらいあるかな。それから、借家権と称しまして、保証金を払い、前家賃を払っているというところのいわゆる不当利得、これがどれくらいあるかということもこれから詰めていかなければならないと思いますけれども、御質問の総額どの程度かということについては、残念ながらお答えできません。
  119. 坂上富男

    ○坂上委員 質問としては失礼になるのかもしれませんが、期待を込めての質問であることに御理解をいただければありがたいと思っておるわけでございます。  それからいま一つ、逮捕された信者がやはりオウムに復帰したのが四割だ、こう報道をされているわけでございますが、これは先生、裁判をされておりまして、信者がやはり持っているのでございましょうか、それとももう全く信者以外のところに隠匿してあるという、どういう感じでしたでございましょうか、もしおわかりになれば。
  120. 阿部三郎

    ○阿部参考人 その辺も全く実は見当がつけかねます。申しわけございません。
  121. 坂上富男

    ○坂上委員 時間もありませんが、高橋先生、いわゆる悪意の推定は、もうこれは問題なかろうと、大変心強い御意見であります。それから、さっき表見証明とおっしゃいましたが、これはいま少し、私は初めての、表見代理というのは知っているのでございますが、それに似ているのかななどとさっき同僚の弁護士とも話をしていたのでございますが、もう少しぴしっとお聞かせいただけましょうか。
  122. 高橋宏志

    ○高橋参考人 どうも失礼いたしました。説明不足でございました。  表見代理、表見法理とは相当違うものだろう。似ているといえば似ているのかもしれませんが、私の理解では違います。まあ、ある程度似ているんですが。  ある事柄が起きると普通こうなるであろうと強い推定が働くときには、どうしてそうなったかの細かい事実の主張、立証なく結論を出してよろしい、こういうものでございまして、日本の判例で申しますと一応の推定などと言われているものに近いのですけれども、一応の推定ですと、やはりこうなってこうなってこうなったと一応一通り説明、主張しなければいけない。その中間を省いてよろしい、こういう議論がドイツにあるということでございます。定型的事象経過などと呼んでおりますが、普通こうなればこうなるはずだ、そういうところの両端を押さえれば、中間の主張、立証を省いてよろしい、こういうものでございます。
  123. 坂上富男

    ○坂上委員 もう時間が終了したそうでございます。  どうぞ、高橋先生、さらにまた理論的な御指導も賜りたいと思いますし、阿部先生、本当に管財人として御苦労さんでございますが、ひとつ頑張ってください。それから宇都宮先生、本当に大変なお仕事をなさっておるようでございまして、どうぞひとつ被害者のために御敢闘を期待いたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  124. 武部勤

  125. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  参考人の皆様方がオウムの大変凶悪な無差別大量殺人行為による被害者救済のために今日まで奮闘されていることに対して、改めて心から敬意を表したいと思います。  私どもも、オウムの被害者の皆さんの救済のために破産法の特例法が必要だろう、一定の推定規定をつくること、難しい問題指摘されましたが、遡及もまあやむを得ないのではないかというふうには思っているところでございます。  しかし、その前提として、私どもは、特定破産法人の定義づけに対して別法の、規制法の方の枠組みを使ってきているわけですが、あれは破防法と公安調査庁を前提にした法体系を組み立てている、それには到底賛成できないということで、私ども日本共産党は、サリンを散布することによって無差別大量殺人を行った団体で、今その危険性が残っている団体規制をかけるというサリン防止法一部改正法案を国会に提起して、そして、そういう枠組みで法律をつくるべきではないか。そうやってつくられた法律で指定された団体についてこの破産特例法をかけるべきではないかと考えておりますので、その前提のところは違うということを、意見だけは述べておいた上で、幾つか質問をさせていただきたいと思うんです。  高橋先生にお聞きしたいんですが、先ほどの陳述ですと、推定規定はそれほど無理なく入る、しかし不遡及の問題がちょっと今までの法体系からいったらひっかかるんじゃないかというお話でありました。  その中で、特別の事情があればよいだろうということで、幾つか、四点にわたっての理由づけを述べられました。大変参考になるお話だったと私は思うんです。  私は、ただ、特別な事情の中に、やはり一つは、ああいうサリンという毒物をまき散らかして大量無差別殺人、世界でこんな犯罪はないわけです。そういう凶悪な犯罪集団による被害者であった。破産債権はほとんどそういう犯罪行為による損害賠償請求権であるということ。そしてもう一つは、阿部参考人からお話がありましたが、恐らく、宗教法人オウム真理教が、ああいうどさくさのときに大変な財産を隠したんじゃないかということが疑われている、そういう事情もあるということ。  私は、この三つの点が大変特殊な事情であって、そういう前提を置けば、先生おっしゃるように、正義、公平のために法律不遡及の大原則の例外をつくってもいいんじゃないかということで、補強材料になるのかなという感じがしているんです。そのためには、やはり、こういう特定破産法人というのは、破産財団オウム真理教ですか、これだけに絞り込んだ枠組みが必要じゃないかなと思わざるを得ないのですが、そんな考えはどうでしょうか。高橋参考人から改めてお聞きしたいと思います。
  126. 高橋宏志

    ○高橋参考人 先ほどの法のもとの平等に近い御質問かと了解いたしましたが、オウムにだけ限定して法律をつくるということは、国によってはそういう法律をつくることがあるようですが、我々の目から見ますと、そういうのは法律というよりも国会決議に近いものだろうと思います。  法律である以上は一般的に適用になり得るものだというのが法律学者の常識でございます。これは常識であって、その常識以外のものが絶対あり得ないのかと言われますと、それは余り私も最後のところはよくわからないところが出てまいりますが、普通は、法律というものはそういうことはしないものだというふうに思いますので、一般的に、オウムに特化したものでない法律の方が法律家としてはなじみやすい、使いやすい、安心して使える、こういうことだろうと思っております。  以上でございます。
  127. 木島日出夫

    ○木島委員 私もそうだと思うんです。ですから、オウムという名前を使った法律というのは、やはり避けるべきだろう。しかし、政府の出してきている規制法の方も、法務大臣の答弁によりますと、事実上、この日本においてオウム集団以外には適用はないであろうという答弁もされているわけですね。  私どもは、あの事件の最大の特徴は、やはり、サリンをばらまいた、散布したということだ。それでサリン防止法というような法律がある。そうすると、サリン等の毒物を散布して大量無差別殺人をやった団体で、かつ、その危険性が現在にも残っている団体、そういう定義づけを我が党の法案は出しているわけでありまして、事実上、オウムにしか使えない、しかし法体系そのものはオウムの名指しの法律ではない、そういう工夫もしているわけであります。そんなところで、特定破産法人の定義をやはり絞り込むということが、知恵ではできるんじゃないかと考えておるわけです。それは規制法の方の問題に基本的にはなりますから、ここでは詰めた質問はいたしません。  そこで、次の質問なんですが、被害者救済のためには、できるだけたくさんの財産破産管財人のもとに戻るということが期待される、実効性が本当に求められる。しかし、逆に言うと、実効性が高まるということは、憲法上の財産権の保障ですか、それの侵害になるおそれもあるというので、この二つのぶつかり合いで、どこに線を引くかということだと思うんです。  そこで質問なんですが、特別関係者の定義、この枠、これで十分なんだろうか。あるいは、これは行き過ぎなんではないだろうか。これが大問題だと思うんですが、法二条の三項の特別関係者の枠組み、これについての実効性の観点、あるいは逆に、財産をとられる方の立場からいうと、財産権の保障の観点から見て枠組みの広狭、広過ぎる、狭過ぎる等について、三人の参考人の率直な御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  128. 高橋宏志

    ○高橋参考人 結論として申しますと、私は、現時点では過不足なくカバーしているのだろうという考えを持っております。その結論だけでございます。
  129. 阿部三郎

    ○阿部参考人 当事者の範囲としては、私も相当だと思っております。  ただ、財産をとられるというようなお話もあったわけでございますが、これは、むしろ管財人の立証責任あるいは挙証責任が軽減されることにおいて、一方反対当事者の方は、自分で今度はそうじゃないという場合における反論権あるいは反対証拠の提出権はあるわけでございますので、直ちに財産をとられるというようなことでもないのかなというふうに私は理解いたしております。
  130. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 対象者の範囲としては、かなりをカバーできていると思っています。  それから、財産権の侵害の問題につきましては、こちらとしてはできるだけ被害救済を促進してもらいたいというような意図もありまして、弁護団の方は、どちらかといえば、この法律自体が、財産を流出した、その財産を取り戻すための規定なんですね。破産宣告時にオウムが持っていた財産を、それが利用されている、それを管財人が回収するための法律なんですけれども、弁護団としては、事実上同一の団体が法人格だけなくなって続いているのではないか、それをこういう推定規定は抜きにして捕捉できないかということを考えたぐらいです。  ただ、どうしても、今の憲法上の問題とか財産権の保障とかそういうこととの関係では、原則として破産宣告時に持っていた財産を管財人が財団に組み入れる、それが困難であるからそれを推定する、破産宣告時の財産が流出した、そういう推定規定を設けてやるのはこれがぎりぎりのラインだということのようですので、我々としては、そういう面では財産権の保障もなされているのかなというふうに考えております。
  131. 木島日出夫

    ○木島委員 私、財産をとられるというのは俗な言葉を使ったわけでありまして、もちろん、推定がされる、推定が打ち破られる、それは民事裁判で最終的には裁判官が結論をつけるということだと思うんです。  率直にお聞きしますけれども、この法律のこの枠組みと解釈によって、例えば、今大分指摘されているのはパソコンショップですね。あそこで年七十億ぐらい売り上げて、十億ぐらい利益を上げているんじゃないか、そういうことが報告書に書かれている。ああいう財産がこの法によって推定規定が働く対象財産になるとこの法律は解釈できるでしょうか。率直に、どなたでも結構ですから。
  132. 阿部三郎

    ○阿部参考人 先ほど申し上げましたように、不動産とか借家権とかというふうなものはよく見えるんですけれども、パソコンショップ関係については、非常にこれは難しい要因があるな。よほど徹底して調べ、そしてまた、公安調査庁あるいは警察当局の資料等もちょうだいした上で、よくよく分析をして当たっていかなければ、なかなか難しい面があることを重々承知いたしております。
  133. 木島日出夫

    ○木島委員 それだけに、この法体系がつくられたときに、国の機関が入手した資料は最大限管財人に提供するということが求められる、それが被害者救済のために非常に重要な勘どころになるということになるわけですね。はい、よくわかりました。  それで、私は、もう一つ大変な心配は、これで、せっかくここまで推定規定をつくったり、時効についての不遡及の原則を停止させて、大変な特例法をつくる。しかし、さらにそれに対する脱法行為をやられたときに、それは歯どめがきくのだろうかという心配、実効性の問題としてしているのです。  端的に申し上げましょう。この特別関係者が今時点で持っている財産、これは推定が働くわけですね。あなたが持っている財産特定破産法人から転得を受けた財産だろうと推定を働かせて戻しなさいということができる。しかし、現時点で特別関係者所有名義の財産が、この法律が動き出す前にそれ以外の第三者に名義が書きかえられてしまうという脱法行為といいますか、この法律の脱法、そういうことを封じる規定がこの法律にあるのかどうか、その辺の心配があるのですが、これは宇都宮参考人、そういう指摘に対してはこの法律をどんなふうに読んでおられるでしょうか。
  134. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 そういう危険性は十分あるだろうと思っています。いろいろな規制法ができる、この特例法ができる、そうすると、どんどん地下に潜っていきますよね。その辺になると捕捉できなくなる可能性があるかと思いますけれども、片方で、その辺のところまで国家機関の方が、公安調査庁とか警察の方がきちっと把握できるのかどうか、それにかかっている面もあるのではないかと思います。財産が転得した場合はそれを否認できる規定があるわけですから、いかにそこをきちっと地下に潜るところまで追いかけていけるかどうか、それにかかっているのじゃないかと私は思っています。
  135. 木島日出夫

    ○木島委員 これは立法者に質問した方がいいのかもしれませんが、不動産ですと名義がはっきり見えるわけですよね。現時点でこの法案の特別関係者名義になっている財産があるでしょう。それが法律成立前に名義が移転したという場合には、これは否認権行使できるのですか。ちょっと御意見をお聞かせ願いたいと思うのですが。
  136. 高橋宏志

    ○高橋参考人 転得者否認の要件があるかということでいえば、その可能性はないとは言えないのでしょうが、不当利得とかみ合わせますと、向こう様はというのでしょうか、法律論を巧みに構成してきたときにどう対応するかは、この場で私が対応策をしゃべりますとまた利用されますので、それは無理でございますが、決して簡単なものではないと思います。しかし、そこはまたいろいろと知恵を出さなければいけないところだろうと思っております。
  137. 木島日出夫

    ○木島委員 その辺は、今後のこの法の運用と適用、そして裁判所の判断に任される部分も大変たくさんあろうかと思いますが、阿部参考人には、前面に立ってこの法を運用するという立場に立たれるかと思うので、御苦労がふえるかと思いますが、ぜひ、被害者救済のために、オウムの不正を許さないという根本的な立場に立って奮闘していただきますことを改めて私からもこの場をおかりしてお願いをしておきたいというふうに思います。  最後に、時間も大分迫ってきておりますが、宇都宮参考人にさらに、この法律だけでは被害者救済は万全ではないぞということを知ってほしいとるるお話がありました。私はそのとおりだというふうに思うのです。  それで、一点だけ聞きたいのですが、重軽傷の被害者が五千五百人、死亡者が二けたに上ったこの事件で、破産届け出が千百三十六名のみだという御報告でしたが、これはどんな事情でこのような小さな数字になっているのでしょうか。差し支えなければお聞かせいただいて、そういう皆さんへの本当の意味での、表へ出てこられない被災者の救済のために、今国の政治に対して、あるいはこんな法律をつくってほしいということがありましたら、この場でお述べいただければ結構かと思いますので、よろしくお願いします。
  138. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 先ほどお話ししましたように、大体五千五百人ぐらいの方が重軽傷、十二名が亡くなられているわけですけれども、届け出したのは千百三十六人ですから、五人に一人ぐらいですかね。あとの四人が届け出していない。さまざまな事情が考えられます。  一つは、非常に軽微だったからということであえて届け出をしないということもあるでしょうし、実は、届け出をすることがいろいろな、オウムの方に名前がわかってしまう。先ほど三十九歳の男性の話をしました。妹さんが重傷を負われている。いまだに名前を明らかにしないのですね。それはなぜかというと、名前を明らかにすると、病院側にも迷惑がかかるというのもありますけれども、復讐を、報復を恐れているのです。被害者の会の人はみんなそういう気持ちを持っています。報復テロを恐れている。そういうことで、あえて届け出をしなかった。  あるいは、職場の問題なんかもあるかと思うのです。官公庁に行かれている人はかなりそういう被害に遭った。ちょうど霞が関に集中しているところですから、そういう被害に遭った方がいらっしゃると思いますけれども、いろいろな事情で届け出が差し支える、あるいは、一部届け出をされている人もいるのですけれども、そのことは知られたくないというような方がいますので、実際は被害を負っている、あるいは治療を継続している、何らかの後遺症が残っているとしても、なかなかいろいろな事情で届けられていない方がいるのじゃないか。  そういうことを踏まえれば、私は、ぜひ本当は東京都なり国がまず実態調査をすぐにやってもらいたかったです。先ほどお配りした警察庁の資料でも、五千三百人という数字が出ています。それだけの被害者の数字というのは警察庁もつかんでいたわけですから、これを厚生省なり適当な国の機関がまず実態調査をして、それに対してどういうような対応ができるのかということをまずやるべきだったのじゃないかと思いますけれども、先ほどお話ししましたとおり、いまだに実態調査が行われていない。  そういう点は東京都に、ここは国の機関ですから東京都に対してどうこう言うべきあれではないかもしれませんけれども、多くの被害者は東京都民なんですね。しかも、東京都というのは非常に大きな責任がありまして、オウム真理教宗教法人を認証した官庁でもあるわけです。都民の多くの人たちが被害に遭っているのに、都として何らそういう調査もしていない、対応もしていないというのは、我々としては非常に不満です。  ただ、これからでも遅くない。今までの実態調査にありますように、現在も後遺症等で苦しんでいる人がいる、あるいは治療を継続している人がいらっしゃるわけですから、ぜひ適当な機関が調査をして、こんなに大量な犯罪被害者が生まれたのは希有なことだと思いますので、こういう実態調査を踏まえて、国として犯罪被害者救済のためのしかるべき政策あるいは立法をぜひつくっていただきたいと思っております。
  139. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。終わります。
  140. 武部勤

  141. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  きょうは、参考人の皆さん、遅くまでありがとうございます。  今同僚議員から質問があった点、私も聞きたかったところなので、宇都宮参考人に続けてお聞きしたいのです。  そうすると、その手続をされていない方の中にかなりの重傷、大変な経済的な負担も強いられながら苦しんでおられる方がいる。そういう方たちは、残念ながらこの枠組みでは救済されない。まして、その実態すら明らかになっていないのだというお話だったと思います。そういう方々からどういう声が現在上がっているかということをもう少しお願いしたいと思うのですけれども。
  142. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 残念ながら、そういう声は直接弁護団の方には届いていないのです。  先ほど千百三十六名が破産債権の届け出をしていると言いましたけれども、実は、弁護団にいろいろ被害救済を相談してきて依頼をしているのは、そのうちの百六十人なんですね。それで、百六十人の状況については我々としてはかなり把握していますし、そして、その被害者の中の一部の方が中心になって被害者の会を結成しております。そして、大体今は二カ月に一回ぐらい定例会が開かれて、その中で被害者の抱えているいろいろな問題、悩みについて話し合っています。  それで、被害者の会が中心になって実態調査のアンケートをやったのはお配りしたとおりですし、その会が中心になって厚生省等にも申し入れをしているのですけれども、他の被害者がどこにいて、どういうような悩みを抱えているのか、実は弁護団すらまだ余りよくわからない状態なんですね。ただ、その名前とか住所というのは、少なくとも一番よく把握されているのは警察、捜査当局だと思います。これは、地下鉄サリン事件に関する実行犯の刑事の起訴状で、少なくとも三千七百名近くは被害者として名前が出ているはずなんですね。そういう情報がなかなか我々としては入手できない、あるいは接することができないのが現状なんです。
  143. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは高橋参考人に伺いたいと思いますけれども、この地下鉄サリン事件初め過去前例のない、比較のしようがない凶悪事件オウム真理教をめぐる一連の事件だったと私も思います。  宗教法人の形態をとってこの教団が引き起こした事件の特殊性といいますか、そして甚大な被害、そしてまたこの教団がいろいろ形を変えながら、一定額の、かなり相当額の財産を現状でも動かしている、こういう点でこの被害者救済の立法の骨格ができ上がっていると思うんですけれども、その不遡及という部分で、今まで、このオウム事件ではなくて、例えば先般ハイジャック事件がございましたね。  このハイジャック事件は、機長である方がお亡くなりになるという大変な犠牲があったわけですけれども、本当に墜落する寸前のところで犯人を取り押さえるということがあったと聞いております。また、レインボーブリッジをくぐりたいなどの動機というのですか、そういうことも語られていた。  もしこれが万が一まかり間違っていれば大変な大惨事、そしてまた航空機の、事故による墜落ということではなくて、やはり犯罪において墜落という惨事があったかもしれない。そしてまた予告ですね、こういうところが抜けているぞ、警備の穴がここだという文書関係機関に送っていたなどのことも語られましたけれども、例えばそういうことが今後起きた場合に、また今回の類型のような立法というのはあり得るのでしょうか。  つまり、今回のオウム真理教事件という特別な事件だから、いわゆる原則は柔軟に考えて立法しても構わないということなのか、それとも今後そういうこともあるいはあり得るということなのか。お願いしたいと思います。
  144. 高橋宏志

    ○高橋参考人 倒産法学の立場から考えますと、この法律をつくる原因は、本来破産財団にあるべき財産が消えており、しかもその消え方がよくわからない。法人でございますから帳簿その他がそろっていなければいけない、それがどうも故意か、故意らしいと私も聞いておりますが、故意につくっていなかったとか、そういうところが問題ということになると把握いたします。  したがいまして、そういう事態が想定できるかどうかよくわかりませんが、あるいは解釈論の武器にこの法律を使うということの事態が出てくるかもしれませんが、それは、本来破産財団にあるべき財産が何らかの作為によって消えている、ここに目をつけるわけでございまして、私、倒産法学の立場から見ますと、この破産債権の大部分が不法行為債権であるとか、そういう点は少し後景に退く、こういうことになります。  以上でございます。
  145. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、次に阿部参考人に伺いたいと思うのです。  実際、大変な管財人としてのお仕事の中で、ある意味で、現在の任意団体とされるオウム真理教の手口というか、あるいは発想というか手法というか、そういうことに随分いろいろな形で予測が可能なのではないかと思うのですね。それで、今回の法案がこうやって審議されているわけですけれども、例えば何らかの偽装をして、今の形を変えるとか、いろいろないわゆる抜け道を探すということが心配されると思うのですが、具体的に、こういうところは押さえてほしいというような心配な点などあったら教えていただきたいと思います。
  146. 阿部三郎

    ○阿部参考人 御指摘のように、この法律が成立をして、いろいろな手口がこれから行われようというふうに思います。  したがって、常識的には、いろいろとこれから管財業務を行うについて、例えば目に見えている財産等についてはこれ以上動かせないような保全処分を講じながら、法律上の手続を講じながら訴えを提起するとかというようなことにはなるかと思います。  しかし、それ以外に、例えばパソコンショップ等の関係等については、なかなかこの手口等については、いろいろ考えた末、いろいろな手口を尽くして、いわば隠匿行為に始まると思いますが、それと私どもの方の管財業務がいわばどこまで迫ることができるかということだろうと思っております。
  147. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、また宇都宮参考人に伺いたいのですが、私ども、被害者の方、特に今手続に付しておられる方たちに速やかにいわば配当がされるということについては、一日も早くそうなればいいなという願いは一緒なんですけれども、ただ、被害者救済の法の骨格が団体規制を前提にしている点でかなり問題を感じているという点がございます。  この団体規制と被害者救済がセットになっているという点を考えると、今宇都宮参考人がおっしゃったさまざまな形で、この法の恩恵に授かれない方たちも含めて、いろいろ問題があろうかと思うんですが、その点、御意見はいかがでしょう。
  148. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 まず、オウム真理教団体規制についてですけれども、一応私は被害対策弁護団の団長としての立場として意見を述べさせていただきますけれども、きょうお配りした資料の中でも、まず被害者自身、破産申し立てをした目的としては、一つオウムの資産を被害者救済に充てるということと、やはりこれを機会にオウムを解体に追い込むという目的があったんですね。  それで、阿部管財人を初めとする管財人らの努力によって二二・五九%の配当がありましたけれども、この間、オウム真理教は解体されるばかりか、逆に今度拠点を拡大して活動を活発化してきている。この点については、被害者自身、報復テロを非常に恐れている心情もありまして、非常ないら立ちと何とかならないかという気持ちを強く持っています。  だから、もちろん経済的な救済という問題もありますけれども、やはり被害者、サリンを浴びた被害者、それで親族を亡くした遺族の方は、何とかオウムの活動を封じ込んで実質的に解体に追い込んでもらいたいという気持ちが強くありますから、私は何らかの形での規制法は必要だと思っています。  ただ、それがほかの団体あるいはほかの人たちの基本的人権を侵害されないような歯どめは、私も法律家ですから、絶対に必要だと思っております。その点で、規制法の中で二条と三条に法律の解釈適用、規制の基準というのがありまして、いやしくも拡張解釈がされないように、あるいは思想、信教、集会、結社、表現、学問の自由とか勤労者の団結権、そういうことを定めた日本憲法に違反しないような適用、運用、そういうことを定めています。この点は非常に重要であると思いますし、本当に、縛りをかけて、オウム真理教以外の団体に適用されないような配慮、工夫をぜひ国会においても議論していただきたいと思います。
  149. 保坂展人

    ○保坂委員 そこで、そういった前提がこの団体規制法案の中にもあるのですけれども、そこはかなり細かく議論してきたところなんですが、つい先日も、成田のホテルで、ベッドでミイラ化した遺体を前に何人かの方がずっと宿泊していたという、ライフスペースという団体ですか、ほとんど初めて知るわけなんですけれども、そういう報道がなされています。  宇都宮参考人にまたお聞きしますけれども、オウム真理教という集団、これが数々の凶悪犯罪を引き起こしながら被害を拡大してきたというケース、これはかなり特別なケースなんだろうなと。例えばカルト、あるいは海外ではセクトと呼ばれることもあるようですが、そういう団体が、殺人、あるいはこの団体規制法だと破防法の政治目的を前提とした殺人、それを掲げながら遂行するということはしないけれども、事実上、財産を根こそぎ奪い尽くす、あるいは家族関係をめちゃくちゃにする、あるいはさまざまな形で正常な社会生活ができないように破滅的に被害を与えていくという集団が、世界各国、日本にも多数存在すると思うんですね。  そういう意味では、団体規制という枠を、破防法の政治目的に根拠を置いていわゆる公安調査庁の従来の仕組みで走らせるのではなくて、むしろ総合的なカルト対策というものを立ち上げて、さまざまな、教義だとかあるいは活動などを専門的に調査あるいは把握するような陣容をつくることが本来求められている視点なのかなと私ども思うんですが、その点については御所見いかがでしょう。
  150. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 まず、今回議論されている規制法あるいは特別措置法案というのはオウム真理教対象になっているわけですけれども、単にオウム真理教がカルト集団ということではなくて、それが、サリンを散布するなど無差別大量殺人行為を行った、そういう要件をくくって対象としている法律だと思いますから、一般的にカルトを規制する法律とはまず違うと思います。  それから、カルトそのものはいろいろな問題を起こしていますので、何らかの対応というのも迫られていると思います。  ただ、私の知るところ、ヨーロッパでもこの問題はいろいろな議論、むしろヨーロッパが一番進んだ議論をやられていると思いますけれども、カルト規制法的な法律は制定されていなくて、国とか行政に一定の対策を義務づけるようなものはあると思いますけれども、カルト団体そのものを網をかぶせて規制する法律はできていないと聞いています。それは、恐らく信教の自由、そういうこととの絡みとか、一般的にカルト団体大量殺人、テロ行為をやるということに直結しない問題があるのじゃないかと思っているからです。
  151. 保坂展人

    ○保坂委員 そのとおりで、私も調べたのですけれども、カルト対策法というものはないけれども、行政として、総合的な政策として推進をして、調査をしたりあるいは信者社会復帰の援助をしているということだと思います。  最後にもう一点、宇都宮先生に、犯罪被害者の総合的ないわば救済といいますか、そういう体系が急がれるべきだというふうにおっしゃったのですが、その点で一点だけ、一番主張のポイントのところをお願いしたいと思います。
  152. 宇都宮健児

    ○宇都宮参考人 犯罪被害者の問題は、一番差し迫ったものは経済的な損害の救済ですけれども、それだけではなくて、いろいろ報道されているとおり、心のケア、そういう問題、あるいは必ず犯罪被害者の場合は、刑事裁判で被害者として捜査段階で取り調べを受ける、あるいは刑事裁判で証人として出廷する、そういう中における犯罪被害者の地位とか、あるいは今回みたいなけが、受傷した場合は長期的な治療体制とか、そういうことについての全体的な体制、犯罪被害者基本法みたいなものが求められているのじゃないか。私の所属する日弁連でも、犯罪被害者基本法ですか、そういうものが今検討されていますけれども、国会においても、今非常にそういう犯罪被害者の権利というものがいろいろ世論としても盛り上がってきていますので、それを具体化する制度あるいは立法というのをぜひ検討していただきたいと思います。
  153. 保坂展人

    ○保坂委員 ありがとうございました。これにて終わります。
  154. 武部勤

    武部委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  各参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明十七日水曜日午前十一時三十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十七分散会