運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-11-09 第146回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月九日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 武部  勤君    理事 太田 誠一君 理事 杉浦 正健君    理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君    理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 西村 眞悟君       奥野 誠亮君    加藤 紘一君       鯨岡 兵輔君    熊谷 市雄君       左藤  恵君    笹川  堯君       菅  義偉君    高市 早苗君       中野 正志君    藤井 孝男君       保岡 興治君    山本 有二君       枝野 幸男君    坂上 富男君       福岡 宗也君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    権藤 恒夫君       木島日出夫君    保坂 展人君       園田 博之君     …………………………………    議員           杉浦 正健君    法務大臣         臼井日出男君    法務政務次官       山本 有二君    大蔵政務次官       大野 功統君    自治政務次官       平林 鴻三君    政府参考人    (警察庁刑事局長)    林  則清君    政府参考人    (警察庁警備局長)    金重 凱之君    政府参考人    (法務大臣官房長)    但木 敬一君    政府参考人    (公安調査庁長官)    木藤 繁夫君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 十一月九日  辞任         補欠選任   熊谷 市雄君     中野 正志君 同日  辞任         補欠選任   中野 正志君     熊谷 市雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案内閣提出第二号)  特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案与謝野馨君外五名提出衆法第三号)     午前十時二分開議      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案及び与謝野馨君外五名提出特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案の両案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長林則清君、警察庁警備局長金重凱之君法務大臣官房長但木敬一君及び公安調査庁長官木藤繁夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 武部勤

    武部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福岡宗也君
  5. 福岡宗也

    福岡委員 民主党の福岡宗也でございます。  本日の審議は、政府委員廃止後におきますところの新しい制度に基づく最初の委員会審議ということでございますので、私も柄になくちょっと興奮ぎみでありますけれども、よろしくお願いをしたいというふうに思います。  それでは、引き続きまして、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案について御質問を申し上げたいと存じます。  この法案は、喫緊課題でありますオウム真理教対応するための法案でありまして、現在の情勢から見て迅速なる審議が要請されておりますと同時に、基本的人権にかかわる幾多の問題点が含まれておる法案でございます。したがって、また同時に十分な審議をなして、憲法違反のそしりを受けることのないような法案にしなければならないという責任があると考えております。  そこで、質問に入ります前に、この法案に対する私の基本的な考え方とその理由を申し述べさせていただきたいというふうに考えているわけであります。  今も言いましたように、この法案人権上重大な問題が多々ございまして、手直しをするべき点もあると思いますけれども、基本的には、本法案において定めておる観察処分再発防止処分により、オウム真理教に対して監視規制というものを十分になすことについては賛成をするものであり、その立場において御質問をいたしたいというふうに思うわけであります。  既に皆様方承知のように、宗教法人であるオウム真理教は、松本市と東京の地下鉄においてサリンを散布いたしまして無差別大量殺人事件を惹起し、さらに教団に敵意を持つ人を次から次へと殺害をするという事件を惹起し、全世界を震撼させました。その後、事件が解明をされまして、事件首謀者関与者刑事責任を追及され、また追及を現在されております。また、宗教法人オウム真理教としては、宗教法人法による解散命令を受け、また破産法により破産宣告も受けて、法人としての活動停止をし、その財産の管理・処分権はすべて管財人にゆだねられるという形になっております。すなわち、法人としての活動は一応停止もし、やれる処分は一応したということであります。  しかしながら、オウム真理教は、法人格のない団体として存続をいたしまして、全く同じ教義を信奉し、宗教活動を継続するとともに、宗教団体の役員や信者により経営されております営利事業というものによって莫大な利益を上げ、全国各地において宗教施設を購入し、宗教活動を継続しておるのであります。そのため、全国地域住民との紛争が多発をしております。  地域住民としては、オウム真理教によって犯された犯罪が、信仰に基づく確信犯であるということ、また猛毒のサリンを散布するということで全く防御のしようのないような犯罪であるということから見て、またこれが再発をするときは本当にどうしたらいいんだろうかということで、平穏な生活が不能となることのパニック状態になっているわけであります。  日本国といたしましては、国民の平穏な暮らしを守る義務があります。国家としてこれに対する適切な対応、いわゆる調査規制ということをなすというのは、これは責務であるというふうに考えるわけであります。これが、私がこの法律案に基本的に賛成する理由でございます。  しかしながら、この規制調査ということの中には、これは本質的に、基本的人権侵害し、制限する内容というものをどうしても含んでいるわけでございます。特に、信教、集会、結社の自由を直接侵害をし、表現の自由を制約し、また令状主義、適正な司法手続によらずして不利益を受けることのないという適正手続条項にもやはり違反をしておる内容を含んでいるわけであります。  しかも、このような人権制限というものは、従来論議されております人権に内在する公共福祉による制限という理論を超えるような制限であることは間違いがないわけであります。したがって、これらの規制調査というものを憲法正当化また適法化するためには、納得のできる法理論の構築が不可欠でございます。  私は、それについては、本法案団体規制日本国緊急避難的措置として考えることによって初めて適法性を有することになるのではないかと考えております。すなわち、刑法において、個人違法性阻却事由としての緊急避難というものが認められております。それによって、暴力を加え、反撃をするということが認められておるわけでありますけれども国家においても、急迫不正の法益侵害がなされた場合に、それを守る責任がある場合には、これに対して必要最小限度避難的措置としての調査並びに規制というものをなすことの権利があるんだ、かように考えるものであります。かように考えてくるときに、この調査規制というものは、やはり緊急避難と匹敵するほどの厳重な要件のもとになされる必要がある、かように考えるものでございます。  そこで、その要件を列記いたしますと、その第一は、何といいましても、基本的人権制限をするという手段をとっても守らなきゃならないほどの公共的な利益国民の平穏を守るべき利益があるのかどうか、かような点であります。この点については、先ほども申し上げましたように、私の認識では、特に地域住民施設に隣接する住民の方々は日常生活もできないほどのパニック状態に陥っている、そういうような状況から見ますと、やはりこれはぜひ守らなきゃならない重大な利益だというふうに考えるわけであります。  それから第二は、公共の安全とそれからさらに国民生活の平穏ということに対する侵害法益侵害が現在本当に切迫しておるような状況にあるのかということであります。これも、私の認識ではあるのではないだろうかというふうに思ってはおります。  それから第三は、行政機関による調査規制というものは、この法益を守るために必要な、不可欠な、最小限度のものでなければなりません。これは、緊急避難要件刑法上の問題でもそうであります。全くそれと同じように考える必要があるんじゃないかということでございます。  第四番目は、その調査規制をなすについては、なすその行政機関から全く独立をした機関、すなわち司法機関もしくはこれに準ずる機関というものによって適正さが担保されておるということが不可欠だろう、かように考えるわけであります。このことによりまして、憲法三十五条の要請する適正手続、適正な手続によらずして不利益をこうむらないということもクリアができるんではないだろうか、かように考えるわけであります。  以上が私の基本的な考え方でありますけれども、この法案をざっと見てまいりますと、目的の一条、さらに二条、三条規定というものを見ますと、当然さような点についての私と同じような考え方緊急避難的なものである、したがって厳格に考えなければならぬという精神でもって定められておるような気はするわけであります。  そこで、これはある程度私のような考え方でできておるのかどうかということ、それから、私の考え方について法務大臣としてどのようにお考えになるのかということについてまず御意見をお伺いしたいわけであります。
  6. 臼井日出男

    臼井国務大臣 福岡先生のお話を伺いまして、基本的に私ども立場と同じお考えをお示しをいただいたということは大変心強く感ずる次第でございます。  ただいま御指摘をいただきましたとおり、この団体規制法によりまして、国民皆さん方の不安、そういったものに対してしっかりとこたえていかなければならないという立場から憲法上ぎりぎりのところまで追求をしているという御指摘は理解できるところでございます。  私どもといたしましては、ただいま先生の御指摘をいただきましたようなもろもろの規制、そういったものに対する配慮というものをしっかりと心にとめながらやっていこうと考えておるわけでございまして、ただいま御指摘をいただきました二条、三条、そういったものは、そうしたこの法律の基本的なものに対する姿勢というものを私ども示させていただいているところでございます。  また、この法案自体はいわゆる行政法としての立場をとっておりまして、そういった意味でも、刑事事件等における判断と全く異なる立場からこの法を施行しようとしているものでございまして、今後とも、個人人権とそして公共利益、そういうものをしっかりと追求をしながら、国民皆様方が今大変困っておられる、こういうことに実質的にこたえ得る法案として成立させたい、こう考えておりますので、よろしく御支援のほどをお願いいたします。
  7. 福岡宗也

    福岡委員 どうもありがとうございました。  基本的に私のような考え方ですね。いわゆる本当の規制必要性の問題を基本的人権との調和の上で考えていただけるということでありますので、ぜひともそういう形でこの法案の御審議もいただきたいというふうに思うわけであります。  ただ、私自身もこれが行政庁としての行政規制だという形の法案であることは承知をいたしておりますけれども憲法に定めておる適正手続というのは、そういう場合であっても、なおかつやはりきちっとした第三者的機関によるチェックということ自体を求めているわけでございますので、やはりその点は、単なる行政的規制であるということだけで規制を緩和するということだけは慎んでいただきたいということだけ申し上げておきます。  そこで具体的な質問でありますけれども、前述をいたしましたように、私は、オウム真理教活動により公共の安全と国民生活の平穏が現に脅かされておるということが調査規制をなす要件だ、かように考えておるわけであります。先ほども申し上げましたように、私自身はそういう状況にあるんではないかというふうに思っておりますけれども、何しろ、新聞、テレビ等の報道を中心に私自身考えているということでございますので、実際にその活動について調査の実施に当たっておる機関として、現在、オウム真理教活動というものは現実にどういう行為が行われているかということですね。それからさらに、その評価として、非常に危険なものであるとか、住民の不安の程度というものについてはどういうような状況にあるのかという評価についても、あわせてこの場において明確にしておいていただきたいというふうに思うわけであります。  法務大臣から順次お願いをいたします。
  8. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま御指摘オウム真理教は、麻原彰晃こと松本智津夫の説く、殺人をも容認をする、肯定するその教義というものを堅持をいたしまして、現在、潤沢な活動資金をもって組織施設拡充を図っておりまして、各地で、施設所有者周辺住民との間で訴訟を含む紛争事案を引き起こしておるわけでございます。また、教団が引き起こしました一連事件逮捕あるいは送検された信徒のうちで非常に多くの者が教団に復帰をしているという事実もございます。  こうした事実にかんがみますと、教団にいまだ危険な要素が残されているということは明らかでございまして、私どもは、こうしたオウム真理教の現在の状況にかんがみまして、法的な規制というものが必要であるというふうに考えておるわけでございます。  詳細にわたりましては、もし御許可が得られるならば、政府委員の方からお答えをさせていただきたいと思います。
  9. 福岡宗也

    福岡委員 それでは、引き続きまして公安調査庁参考人の方から補足的な調査結果をお願いをしたいと思います。
  10. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 ただいま法務大臣がお答えしたとおりでございますが、事務当局として答弁させていただきます。  オウム真理教は、意思決定機関であります長老部など十五の中央部署を現在擁しておりますほかに、麻原彰晃こと松本智津夫の説く、殺人をも肯定する危険な教義を堅持しておりまして、パソコン関連事業収入等中心とする潤沢な資金を背景に組織施設拡充を図っておるわけでございます。そして現在、十六都道府県三十四カ所に中央部署などを配置した拠点施設を有しております。  これら施設のうち二十三カ所で、当該施設所有者周辺住民などとの間で訴訟を含む紛争事案を引き起こしておりまして、地域住民らは、施設に対する二十四時間監視抗議集会を開催するなど反対運動を繰り広げておりまして、教団の進出に反対する対策組織全国で約二百五十に及んでおります。こうした反対運動長期化によりまして、不眠とか食欲不振など健康に不安を訴える住民も見られておる現状でございます。  一方、信徒数につきましては、出家信徒五百人以上、在家信徒一千人以上と考えておりますが、平成七年三月の地下鉄サリン事件など一連事件逮捕、送検された四百人を超える信徒のうち、これまでに百七十人以上が教団に復帰したという事実が確認されております。  こうした教団の実態にかんがみますと、教団がいまだ危険な性格を保持していることは明らかでありまして、そして、その性格を保持したまま拠点施設などの獲得を試みているということから地域住民の不安を招いているわけでございます。こうした住民の不安を減少、軽減し、行政としてこれに何らかの緊急的法整備を図るという必要性があることは認められるわけでございまして、その教団活動規制し、地域住民の不安や危惧の念を払拭する上からも新法の制定が必要である、このように考えております。
  11. 福岡宗也

    福岡委員 どうもありがとうございました。ますますその危険性が増大しておる傾向にあるんだということを具体的に指摘をいただいたというふうに思います。  そこで次に、本法案の第一条の目的についてお尋ねをいたしたいと思います。  第一条によりますと、この法律は、団体活動として役職員または構成員が無差別大量殺人行為を行った団体についての活動状況を明らかにし、または当該行為再発を防止するために必要な規制措置を定め、もって公共の安全の確保に寄与することを目的とする、こういうふうに定められているわけでございます。  そこで、問題は、この法案オウム真理教に対する対策のためにつくられた法案であるということは提案理由の中でもるる述べられておるわけでありますし、全体としてそういうものであるということは理解できるわけでございますけれども、この目的自体を見たところでは、必ずしもそれに限定されておることなく、一般的に、大量殺人ということの概念自体が極めて問題でありますけれどもサリンとかそういうものを使わずに、銃器による数人の殺傷というようなものも含めましてやはり適用対象となり得るのではないだろうか、また、今後そういうものも発生したときに、極端なことを言えば、過去にもそういうような事件がありましたので、そういうものにまで関連するというようにも読めるということであります。  したがいまして、このような宗教的な、狂信的な、サリンという防御不能なような要件というものがあるような行為団体、そういったものに限定を、むしろ明確に指定するような方法をこの目的の中でとっておった方がいいのではないだろうかということが一点であります。  それからさらに、この目的の中には、公共の安全の確保に資するということが目的だと最後に締めくくっておるんですけれども先ほど公安調査庁の報告にもありましたように、また私が申し上げましたように、現在喫緊課題というのは何かというと、夜も眠れないほどパニック状態で不安であるという国民生活の平穏の侵害の解消ということだと思うのですね。公共ということよりもその方が重要だ、今、当面はですよ。だから、国民生活の平穏を守る義務、これが目的に欠落しておるんじゃないか、かように考えるわけです。  したがいまして、この目的表現としては、公共の安全の確保国民生活の平穏というものをここに追加した方がいいんじゃないだろうか、かように私は考えるわけでありますけれども、この点についての御所見を法務大臣お願いを申し上げます。
  12. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま御指摘をいただきましたように、この無差別大量殺人という行為そのものは、いろいろな形のテロ行為の中で最も多くの悲惨な結果を及ぼすものでございます。したがいまして、私どもといたしましては、こうした状態というものを考えて、引き続き、この法案では特に団体規制というものをしていくということにさせていただいているところでございます。  また、ただいま御指摘の第二点につきましては、私は前提が先生のお考えとちょっと違うのではないだろうかと。私どもといたしましては、いろいろな団体がいろいろなことをやるかもしれませんが、私どもはいわゆるオウムに限ってこの法案をつくらせていただいているという、いわば限られた目的を達成するための手段であるということでございますので、そうした項目を入れずとも、この目的はこの法案でもって果たせるというふうに考えているところでございます。
  13. 福岡宗也

    福岡委員 今の答弁では私もちょっと納得をしがたいのでありますけれども、要するに、法案目的というものは、解釈基準を示すと同時に、適用の限界までまた示しておる部分があるのですね、目的というのは一番基礎的なところですから。これがしっかり確立をされておれば、運用の濫用もないし、また解釈のときにも迷わずにいけるという形の重要なものなんですね、目的というのは。  したがいまして、目的についてはもう少し精査をして、特に私が先ほども言いましたように、いわゆる狂信的な、例えば政治目的の場合ですと政治的な対立点があって、資本主義共産主義か前ありましたけれども、そういうような対立によって敵対国に対してはテロ行為をするとかなんとかという形になるわけでありますけれども宗教上の問題というのは非常にわかりにくいところがある。しかもサリンというような毒ガス兵器テロ行為でも今まで余りないのですよ、そういうものについては。そういうようなものに対する対応ということですから特殊性がある。だから、それに限定をしていく。そして、今後大量殺人的なものはまた別のケースで起こるかもしれませんけれども、それは、適切な対応というのは、そのテロ行為に有する特有なものによって緊急避難的にまた対応していけばいいということでありますので、そこのところは明確に限定をすると同時に、適切な処置をしていくという考え方でないとやはりまずいと思うんですね。  したがいまして、そういう点では、やはり目的の点はもう一度吟味をしてくださることを要望したいというふうに思います。時間がありませんからそのまま進行しますけれども、それは御検討ください。  それからさらに、先ほども問題になりました第二条の規定解釈適用でありますけれども、この法律適用基本的人権に重大な関係があるということをここで指摘しておるわけですね。そして、公共の安全の確保のために必要最小限度においてのみ適用すべきものであって、解釈拡大解釈はしてはいけないというふうに考えておるので、結局、私の先ほど申し上げました基本的人権の問題もあるので緊急避難的な行為限定せよということを言っておるのではないだろうかというふうに理解できるわけであります。それと同時に、刑法上の罪刑法定主義拡大解釈禁止ということも言っているんだろうというふうに思います。  そこで、そのようないわゆる解釈拡大禁止ということの罪刑法定主義的な理念というものをここで規定をしておるかどうかということがまず第一点。  それからさらに、この規定は、もし罪刑法定主義的な考え方に基づいておりますと、単なる解釈理論ではなくて、規制をするための構成要件というものについても厳格に必要不可欠になるということの制約をすべきだという縛りがあるんではないだろうかなというふうに考えるので、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  14. 臼井日出男

    臼井国務大臣 本法案目的オウム対象とすると明記して、適用対象が拡大しないようにすべきじゃないかというふうな御質問だったと思うわけでございますが、いわゆる無差別大量殺人というのは、不特定かつ多数の人々の生命に極めて甚大な被害をもたらすものである、しかも、それが団体として行われる際には事前にそれを察知するということはなかなか難しい、しかも反復して行われる傾向があるというふうな特性を持っておりまして、それらの行為を行った団体が今も危険な属性というものを保持している場合、そういった場合に一定の規制を行う。こうした公共福祉の観点から、必要かつ合理的と考えられるものといたしているわけでございます。  この法案対象となる団体といたしましては、事実上、今まで御指摘をいただいておりますオウム真理教のみが想定されると考えているわけでございますが、このオウム真理教というものを対象としているということを文章上、条文上明記するということは、憲法第十四条一項の保障する法のもとの平等に反するおそれもある、また、法の一般的、抽象的規範に反することにもなりますので、今回のような条文のとり方にならざるを得ない、こういうことになっております。  また、この条文の第五条及び第八条、観察処分そして再発防止処分の中に典型的な例を示しておりまして、大体、この法が規制をする方向がどういう方向のものであるかということは御理解をいただけるようになっておりまして、このことによって、拡大解釈というものがされることが少ないように、二条の精神というものを生かせるようにつくっている次第でございます。
  15. 福岡宗也

    福岡委員 私の質問とちょっと答弁がずれておるんですけれども、結局私のお聞きしたいことは、私が先ほど述べました緊急避難的な行為、措置といいますか、そういったもので初めて調査規制というのが是認されるという考え方ですけれども、結局そのことを法文化したのが第二条であるのではないかということが一つ。  それから、ここに言ういわゆる解釈基準の拡張の禁止という形は、罪刑法定主義理論というものに基づいて、やはり構成要件の明確化というような問題まで含んでおるんじゃないかという質問ですから、それについてだけ一言だけ答えてください。
  16. 山本有二

    山本(有)政務次官 先生の御指摘のとおりだというように考えております。  特に、構成要件の厳格化は、個人犯罪対象とした刑法の鉄則であろうと思います。今回のこの法案団体規制でありまして、事柄は異なるかもしれませんが、精神においては先生の御指摘のとおりだというように思いますし、それを具現化したものが本条第二条だというように解釈いただければ幸いでございます。
  17. 福岡宗也

    福岡委員 どうもありがとうございました。実は、私もそのようなものだというふうに読んだわけでございます。よろしくお願いをしたいというふうに思います。  それから、第三条規定の中に、いわゆる具体的な憲法上の権利、基本的人権を列記して、これを不当に制限するようなものであってはならないということをまたさらに書いているわけであります。二条に加えて三条でさらに重ねてこういった規定を置いておるという基本的な理由なんでありますけれども、これもやはり、先ほど言いました緊急避難的なものに限定する必要最小限度規制ということを表現しておるというふうに理解ができるけれども、それでよろしいかどうかということ。  それからもう一つ、これが重要な問題をはらんでいると思うんですね。先ほど指摘にありましたように、観察処分の五条、それから再発防止処分の八条の規定、この要件がいろいろ列記されておりますけれども、これに客観的には一応該当しているというようなことがあっても、必要であるかどうかというような問題のところで、それによって制約される基本的人権、それからそこで守られなきゃならないような法益、権利というものとの比較考量をして、これは観察処分はいいけれども規制処分までは発動しない方がいいなというような場合には、該当していても必要最小限度にとどめて、やはり発動しない、いわゆる棄却ということですね、申し立てがあっても棄却するというような処分というものがこの三条規定によってできるかどうかということであります。これは裁判所になるか、それとも公安審査会の方になるか、私は裁判所がすべきだと言っていますけれども処分権者の方でそういう判断をすることができる根拠になり得るかどうかということを、ちょっと法務大臣の御見解をお伺いしたいわけであります。
  18. 臼井日出男

    臼井国務大臣 前半につきましては先生のお説のとおりだ、こういうふうに思っております。  いわゆる二条、三条と五条、八条の関連でございますけれども、いわば二条、三条は五条、八条を判断する際の一つの物差しといいますか、規制、こういったものに当たると考えるわけでございます。いわゆる二条、三条というものは国民基本的人権公共の安全の確保とを比較考量してある、そして、健全な社会通念に従って、必要やむを得ないと認められる限度でもってこの法案を実施するということを規定しているわけでございます。  お尋ねの五条の一項の規定による観察処分や八条の一項の規定による再発防止処分を行う際には、いわば準司法機関である公安審査委員会が、先ほど申し上げました二条等の規定の趣旨を踏まえましてその妥当性について慎重に判断をする、そしてこれらの要件を満たす場合には相応の処分を行う、こういうふうにいたしているのでございます。
  19. 福岡宗也

    福岡委員 ということは、結局、形式的な該当ということで処分するんではなくて、その実質面を二条の精神を十分具現してしたりしなかったりする、こういうことは可能である、こういう御見解ですね。ありがとうございました。  そこで、もう一つ気になるのは、三条の第二項の方に、「労働組合その他の団体の正当な活動制限し、」ということが、わざわざ労働組合だけ抜粋して掲示してあるんですね。これについては、特に労働組合に対しては、その活動目的とか精神とかというものから見て、より強く保障をしなきゃならぬというために特に例示したのかどうか、その辺のところの御見解をお伺いしたいと思います。
  20. 臼井日出男

    臼井国務大臣 いわゆる団体には、社団である団体あるいはそうでないもの、こういうふうにあるわけでございますが、私どもといたしましては、労働組合も含めたそれらの幅広いものに対しての配慮というものをしていこう、こういうことであえてこの場では労働組合という事例を出させていただいているということであります。
  21. 福岡宗也

    福岡委員 そうしますと、典型的な事例として労働組合の団結権の問題が挙げられるという形で例示的に挙げた、かような御見解ですね。  それから次に、今回の団体規制、いわゆる調査規制でありますけれども、この対象機関はどういうものであるかという問題について御質問をいたしたいわけであります。  本法によりますと、この対象団体は、政治目的大量殺人をなした団体ということに限定をしているようであります。これは、破防法の第四条の規定を準用しておるからこういうような形になったと思うんであります。しかしながら、オウム真理教は、かつて破防法の申し立てを受けましたね。そのときの審議に際しまして、信仰上の目的はあるけれども政治的目的はないという主張をしたわけであります。この点についても審議がかなりかかったわけであります。  政治目的限定をするということになりますと、また本法によるところの審査申し立てのときも当然そういうものが出てくるわけでありますけれども、破防法をそのまま適用するとすれば、破防法にはそういうことが書いてありますから、当然政治目的を入れざるを得ませんけれども、今度はそうじゃなくて、新しい法律オウム対策法みたいなものをつくるということでありますから、何も政治目的というものを入れてそれ以外のものを除外するというようなことで無用な争いをする必要性はないようにも思うわけでありますけれども法務大臣はこの点どう考えられるのか、御所見を承りたいと思います。
  22. 臼井日出男

    臼井国務大臣 本法が破防法というものに基づいて、それを基本にしながら新しい法案をつくったということは御承知のとおりでございますが、既にこの破防法で審議の際にも、オウム真理教が明らかに政治的な目的を持ってこれらの無差別大量殺人を行ったということは、もう明らかにわかっているわけでございます。  この新法は、当面オウム真理教というものを対象にしてこの法案というものをつくってございますので、その中にいわゆる破防法で言った政治的目標というものが当然のことながら入ってきている、こういうことでございます。
  23. 福岡宗也

    福岡委員 結局、そういう審議経過からあえて政治目的という問題を削除しなかったようでありますけれども先ほども言いましたように、そういう認定は公安審査会で確かにされているわけです。  しかしながら、今回の目的は、直接的には宗教上の、教義上の目的というものに適合するものとしてやっているわけですね。そうだとすれば、またそこで争いするのを、余分なことで審議かけるよりも、端的に外しちゃっていいんで、またこれを外したら広がるかというと、そんなことはないと思うんですね、その点については。したがって、それはやはり再考の余地がある、かように考えますので、御審議をいただきたいというふうに思います。  それからさらに、その対象団体の問題としては、第五条、八条とも、第一項においてこう言っておるわけですね。団体の役職者または構成員が当該団体活動として無差別大量殺人行為を行った団体だ、こう言っているのです。  これはどういうのかというと、無差別大量殺人を行ったのは、直接的にはいわゆる宗教法人としてのオウム真理教なんですね。その団体はどうなっているかといいますと、解散命令それから破産宣告によって法人としての活動停止させられているんですよ。そして、今活動しておるのは何かといいますと、それと同一性を有する任意団体としてのオウム真理教は、同一の教義を重ね、構成員も同じというような形で残ってやっているわけであります。したがって、この法律で直接適用されるのは、この条文によりますと、これらの同一性を有する任意団体であるということになるわけであります。  しかしながら、全く同じということと同一性とはまた若干違うんですね。法人格のない団体とそれからそのままそれが実体は残っておるというのは違うんです。したがって、この同一性というのは、どこまで同一性があるかということは、明確に基準を定めておかないと適用の範囲があいまいになるということであります。したがって、まずその基準はどこにあるかということをお伺いいたしたいわけであります。  例えば、教義は同じであるけれども構成員はほとんど入れかわってしまった、名称も変えたというような場合まで同一性があるかどうか。それから、全く同一性のある、同じような教義で同じような団体でやった。その役員なり構成員が経営するとか、また別個に教団みたいなものをつくり、組織をつくって、これは全く別の代表者を持ってきたり、それから名前も変えたりして活動する別団体であるとか別法人、別会社。これは、例の議員立法で提出になっております財団財産確保に関する特別措置法、それについては規制対象になっているんですね。これらの別個の団体、いわゆる構成員が別につくって、別の名義で、それから他人名義でとかいろいろしたものについては、明確にその規定で特別関係者として規制対象になっているんですけれども、そういうところまでこれはなるかならないかということについて法務大臣はどのように考えておられるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  24. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま御指摘の、いわゆる宗教法人としてのオウム真理教、そしてそれらの規制によって外されてしまっている現在のオウム教との同一性という御指摘でございますけれども、私ども、今度の新法におきましては、当該団体目的とか組織形態、代表者、役員及び構成員あるいは現在における当該団体活動状況、それらのものを総合的に判断をして、同一性というものを確認しながら実質的に判断をする、こういうふうにいたしておりまして、私どもといたしましては、今回のオウム真理教問題についても御懸念のような問題は起きない、このように思っております。
  25. 福岡宗也

    福岡委員 基準はそれでわかりましたけれども先ほど言いましたように、今存続しておる同一性のある任意団体構成員であるとか、それから役職員が出資をする、また代表者になっている、それからまた別個に過半数以上の出資比率でもって出資をして有限会社とか何かをつくって活動をする、そうするとこういう団体には適用外ということですね。
  26. 臼井日出男

    臼井国務大臣 具体的な問題につきましては個々の事情による、こういうふうに思いますけれども、私が今申し上げました個々の形態であるとかあるいは現在の状態とか、そういうものに当てはめまして、一つ一つ、それらの企業なり団体オウム真理教に関係しているかどうかということは個々それぞれに判断をしていく必要があると思いますが、お説の、従来から首謀者あるいは中枢に関係しておった者が入っておったような団体というのは、当然のことながらその範囲に入ってくるものとお考えをいただいてよろしいと思います。
  27. 福岡宗也

    福岡委員 それはちょっと答えになっていないのですね。  私の申し上げているのは、議員提案の特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案の第二条三項の三号、四号、五号、これは明らかに同一性のあるものじゃないのですよ。いわゆる構成員役職員の過半数を占める、それからさらに資本の過半数に当たる、これは全然、別法人ですから、また別団体なんですね。それから、代表者である団体、これは同一性のあるはずがないので、この規制が抜け落ちておるのじゃないかという指摘をしておるので、これは次官の方からちょっとお答えいただけますか。これは明らかに抜け落ちているでしょう。
  28. 山本有二

    山本(有)政務次官 先生指摘のように、出資比率や代表者の有無、そういったものとともに、我々の判断基準でございます当該団体目的組織形態、代表者、役職員及び構成員その他当該団体自身活動状況等を判断するという基準は御理解いただいておって、先生のような、法人格が別組織ということにおけるその判断はいかに、こういうことになりますと、我々は、法人格を具備するか否かを問わずその団体の同一性をきわめたい、こういう考え方をしておりますので、先生のおっしゃるように、この議員立法の民事法の推定規定が事実上、実質的に働いているというように解釈いただければありがたいと思います。
  29. 福岡宗也

    福岡委員 ますます不明確になってきたと思うのですよ。  だから、やはりこれは私の言うように、判断をするときに同一性があるということで拡大するというのは限界があるのですよ、当然に。したがって、やはり現在活動しておる別法人の、パソコンやったりいろいろしたり、信者を獲得する運動なんかを別組織でやるということの場合も、やはりある程度の人数が向こうへ行っているとか資本金がやっているというような、この特措法の関係と同じような団体まで含まれるような条文を明確にここに入れておかないと、必ず、この法案ができれば、オウム真理教の今までの手口から見れば、そういう別な組織をどんどんつくって、そしてそちらの方に分散してやるという形になるのです。そうすれば、脱法的な行為でもって、これは取り締まりようがなくなるという危険性があるのです。  したがって、ぜひとも、その対象団体というものはこういう表現でいいのかどうか、これは真剣に規制をしてもらわないと、法案をつくったが人権侵害だけは残って、ざる法で全く適用できないなんということになったら、我々の重大な責任だというふうに考えるわけであります。この点はもうちょっとしっかりとした対応とか解釈考えていただかぬといかぬというふうに思います。ぜひとも再度練り直してください、これは。  それから、これはむしろ厳しく規制をせよという形になるわけでありますけれども、またそれとは反対の立場でありますけれども、第五条に観察処分要件を具体的に規定しております。  この要件規定を見ますと、やはり先ほど言ったような、拡大解釈であるとか構成要件の定型性を明確にせよということを言ったのですけれども、それから見るとかなりあいまいな概念が多過ぎるのですね。また、規定の仕方が、ごまかしと思われるような規定もあるわけですね。  それは、まず第一番に、影響力の行使というような表現がありますけれども、影響力の行使というのは何をいうのかわからないわけですね。それからさらには、二号に構成員の全部または一部という表現がありますね。一部というのは一人でもいいということだとすると、この表現も適切かどうかという問題があるわけです。  それから、さらには一号から四号まではどうなっているかといいますと、具体的な内容というものを規定して、これに該当すれば絶対的にこれはもう要件が備わったということになっているのですね。具体的に犯罪を犯す再度の危険性があるかないかということにかかわらず、そういうものがあれば、構成要件が、全部または一部がなっているとか、そういう客観的な事実があれば当然に適用できるという形の絶対的要件となっていて、最後のところの五号においてだけ初めて実質的な要件が書いてあるのですね。  したがって、結局のところは、私の申し上げたいことは、この第五号の規制する事実だけを実質的に本来の包括的な要件としてまず最初に持ってきて、その例示として具体的な事項を挙げるというような書き方にすることによって、拡大解釈が防止できるのじゃないかなというふうに考えます。  それから、さらに第八条の点についても同様に、一号ないし七号までが殺人とか略取、誘拐それから爆発物とか、具体的な犯罪を犯そうとしておるときというような形にその要件が具備できるとして、最後に包括的に、無差別殺人等を犯す危険性の増大を防止する必要があるときという形で、一号から七号までは、個別的にこれに該当すれば絶対的に規制処分をすることができる、いわゆる再発防止処分もできるんだという書き方になっているのですけれども、これもやはり第八号の方を最初に持ってきて、危険性の増大を防止する必要があるときに発動ができるんだということにして、その発動のできる具体的な場合として一から七を例示するという形にして、包括的な要件を全部にかぶせるという形にしなければ、実質的な判断基準というものが不明確になりますし、濫用の危険性もあるというふうに考えるわけであります。  しかも、この個々的な要件についても、若干そういうあいまいな表現もある。これも厳格に手直しをしておく必要があるのじゃないか、かように考えるわけでありますけれども、これについて、こういう手直しをする用意があるかどうか、また検討し直す気持ちがあるかどうか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  30. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま先生のお話をいただきました五条の観察並びに八条の再発防止の項目、先生のお話しいただきましたように、まず冒頭に総括的なものを持ってくるという手法は当然あるわけでございまして、その点はよく御理解させていただくところでございますが、私どもといたしましては、例えば五条につきましては、一から四号までで典型的なものを示して、五号でそれら類似のものといった多少その周辺のものも拾うというふうな形で、大体その方向性というものを定めて、拡大解釈をされないような形というものをとっている。  八条においても同じように、一号から七号までは典型的なものを示し、八号においては七号まで示したものについての類似のものを多少広目にとるということで、これもまた拡大解釈というものを避けられるというふうな形をとらせていただいておりまして、先生のお考えもよく御理解いたすところでございますが、私どもとしては、この形式でもって目的とするところを包含することができる、このように考えているところでございます。
  31. 福岡宗也

    福岡委員 今大臣の申されました見解も一つの見解で、歯どめにはなろうかというふうに思いますけれども、私の申し上げたいのは、こういう規制をする場合には、いわゆる統一的な概念として、危険を防止するため、または、さらに危険を増大させるためというような判断基準の基本的概念を明確に定めておいて、そして、その要件をすべて次に掲げる例示的なものについてかぶせていく方がいいと思うんですね。  ということになると、構成員として一部または関与したというような場合であっても、特に一名だというような少数の場合だと危険性は極めて少ない、これがまた数名だとか大量におれば危険性は高いということになりますので、その辺の判断も、形式的じゃなくて実質的に判断ができるという格好になりますので、やはりそこのところは、要件のかぶせ方としては、私の申し上げたようなかぶせ方の方がより適正な判断ができるんじゃないか。特に、三条のいわゆる適用の基準の精神がありますね。そういうものから見ればそうした方がいいというふうに考えるので、ぜひともこれは御検討をいただきたいというふうに思います。  それから、次の質問でありますけれども、第六条の公安審査会の観察処分の取り消しという問題でありますけれども、これについては、申し立て権者としては長官という形の規定になっていると思いますけれども、これの中に当該団体自体もしくはその代表者というようなのがないんですけれども、これを除外した理由はどこにあるのか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  32. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御趣旨がちょっとよくわかりかねますので、あるいはお答えが違っておりましたらまた御指摘をいただきたいと思うわけでございますが、この新法でもって規定をいたしております団体の中には、法人格を持っているもの、持っていないものもございます。したがいまして、この取り消しの請求につきましては、私どもは大変幅広く対象というものを広げさせていただいているということでございます。  したがいまして、この六条に認められる処分の要求者というのは、そうした法人格を持つ団体ばかりではなくて、一般の個人まで含めた幅広いものにさせていただいておりますので、私はこの条文で特に問題になる点はないように思います。
  33. 山本有二

    山本(有)政務次官 この六条の取り消し権者に団体あるいは代表者が入っていないのは、当初から公安審査委員会の職権でこの取り消しをしたいという願望が込められておりまして、団体からもし取り消しをしたいという申し入れがあり得るならば、これは職権発動、すなわち公安審査会の職権で取り消しを求めるような申し入れをしていただくという形になろうかと思います。
  34. 福岡宗也

    福岡委員 はい、わかりました。それで安心しました。事実上、申し立て権者として書いてはありませんけれども、現実にそういう形で申し入れができる、そういう場合に職権で事実上救済をするという形を想定している、こういうことでいいんですね。では、それは結構です。  それから、手続についてちょっと質問したいのでありますけれども観察処分それから再発防止処分ともに、公安調査庁長官が請求をして、公安委員会処分決定をする、その実施は公安調査庁でするという形ですね。警察庁長官は意見のみを述べるだけであって、第八条の処分に意見を述べるときに警察が立入検査をすることができる、こういうような規定になっているんです。  この規定は多分破防法の規定に従って手続が構築されているんじゃないかと思うんですが、しかしながら、破防法の規制請求というのが前にオウム真理教に対してなされましたね。平成七年の十二月になされました。そして、約二年かかって、九年の一月三十一日に棄却の決定がなされておりまして、将来、破壊活動を行う明らかなおそれがあると認められる十分な理由がないということで棄却になっているんですね。結局、同じような機関で棄却になっているんですよ。こういうことで本当に対応できるかという疑問があるわけであります。  特に、公安調査庁と公安審査会については、破防法は今日まで余り活用させていないところであって、実績もないし、そういうマニュアル的なルールみたいなものも余りないように聞いております。そうするとなお不安が残るわけです。つくったけれども全然適用されないという場合もあり得るんじゃないかなというふうに思うわけであります。したがって、この見直しをすべきじゃないかという点が一つ。  それから、さらにもう一つ。この際、破防法じゃなくて別法にしたんですよ、これは一応限定的に。だとすれば、そういうものにとらわれず、請求権者には警察、さらに言えば検察も含めて、捜査機関も入れて、請求権者はちょっと広げて、実際に決定、処分するのは司法機関限定をすると……
  35. 武部勤

    武部委員長 福岡君に。御発言中ですが、持ち時間を超えておりますので、おまとめいただきたいと思います。
  36. 福岡宗也

    福岡委員 ちょっとだけ、ここのところだけ、最後の詰めをやりますので。  そういう形でやはり検討していただく。そういうことによって実質的な運用が弾力化すると同時に、司法的チェックを入れることによって先ほど申し上げました憲法に定める適正手続という問題もクリアできる、いわゆる人権上も配慮があるし、実質的にも機能しやすい、使いやすい制度になる、かように考えるから、この点について再検討する余地があるのかどうか、最後にお伺いをしておきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  37. 臼井日出男

    臼井国務大臣 前回、公安審査委員会で大変長期間の審議を要したために、逮捕者がたくさん出たり、あるいは脱退者が出たり、ちょうどオウム真理教の勢力が弱まっている時期に公安審査委員会の審査というものが行われたというのが破防法適用にならなかった一つの理由だと思っておりまして、私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますとおり、公安審査委員会という準司法機関というものが公正中立な立場でもってしっかりと見ていく、しかも期限というものを設けて従来のような遅滞がないような形でもってしっかりやっていくというふうに心がけておりますので、この点につきましてはチェックができるものと思っております。  また、私どもとしては、先ほど来申し上げておりますとおり、請求は公安調査庁長官がする、一方で、その判断は準司法機関である公安審査委員会がやるということでございますので、国家公安委員会等を絡ませる必要はないと私どもは判断をいたしているところであります。
  38. 福岡宗也

    福岡委員 私は、国家公安委員会に必ずしも絡ませる必要があるとは言っていませんけれども、特に今、私が重点を置いているのは、司法的なチェック、判断というところでありますし、それから、司法的判断というのは、御承知のように、選挙違反等の迅速な場合には期限を切って厳格にやって、その実績も上がっているので、短期間審理というものも可能なわけですから、そういう点だけは一遍御検討をいただきたいということであります。  いずれにせよ、この法案については、与野党ともに、必要性は恐らく皆さん方認められておると思いますので、実効性のある形であると同時に、権利の充実、その侵害の部分を最小限度に食いとめるということについての整合性あるものにしたいということでございますので、与野党、審議中でありますけれども、本当に真剣に審議をして、ぜひとも早急にいい案に取りまとめるという作業をしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  39. 武部勤

    武部委員長 次に、日野市朗君。
  40. 日野市朗

    ○日野委員 この法案は、この国会の審議対象になっている法案の中でも非常に重要な法案の一つであろうと思います。それから、この質問の中でいろいろ問題点を提起してまいりたいと思いますけれども、やはり人権行政の接点ということが非常に重要な争点にもなってくる法案であろうと思います。その割には、きょうは委員席はりょうりょうたるものでありまして、皆さん本当にこの法案の重要性を認識しておられるのかどうか、いささか心もとない思いもいたすわけでありますが、戦前の行政人権侵害したというケースをいろいろ承知しておられるであろう方々も何人かおられるのは心強いところであります。  そこで、まずこの法案についてお伺いをいたしたいと思います。  大臣、この法案、仄聞するところオウム対策である、こう言われております。しかし、オウムのためにこのような法案をつくるんでございますとは、これは言えないわけですね。でありますから、こういう形をとるということは私も理解できないわけではありません。  そして、オウムがそばに来られてサリンのようなものを振りまかれるおそれがあるというようなことになれば、その地域の住民にとってはたまったものではないのでありまして、その住民たちがオウムが来るということに対しては非常に強い反発を示す、出ていけというような運動が組織される、これもわからないところではありません。また、自治体の首長さんでオウムの転入を受け付けないというようなことをやられた方もおいでになりまして、それも、法的な評価は別として、わからないではないのでございますね。  しかし、オウムが日本人である以上、日本に住むことができる、これもまた保障しなくちゃいかぬというところが法務省としてもつらいところでありましょう。これは、日本人である以上住むところを保障しなくちゃいかぬわけでありまして、そのためにこのような法案を用意して、非常に苦渋の選択であったろうと私は実は思います。  そこら辺についてはいかがなんでしょう。
  41. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員お説のとおり、たとえオウム真理教信徒であろうと、やはり日本人であれば日本人としての人権というものはしっかり守っていかなければならない、これは当然のことでございます。一方では、住民人権というものも厳として存在をしているということでございまして、今地方で起きている住民票受け付け拒否等の問題については、それぞれの自治体が大変苦渋の中でもって選択をしておられる、こういうふうに思うわけでございまして、私どもといたしましては、この新法を成立させ、実施することによって、それらのかなり多くのものが解決することができるようになるんではないか、このように考えているところでございます。
  42. 日野市朗

    ○日野委員 まず、当該地域の住民の皆さんが、そこまで国の方がやるんならまあまあ安心だろうという安心感を持たせるということがこの法律案の通過でできるのか。それとも、さらにそれに付随していく国の措置が必要なのか。そして、この法律案が通った場合、五条の観察処分とか、それから八条でしたか再発防止処分、こういう処分がございますが、再発防止処分は別として、まず観察処分なんかをすぐに発動していかれるのか、そこいらの考え方、いかがでございましょう。
  43. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御指摘のとおり、本新法が成立をいたしましたら、でき得る限り早く実施に移し、全国の非常に困惑をし、御苦労されておられる住民皆さん方、それらの解決に資する努力をいたしてまいりたい、このように考えているところでございます。
  44. 日野市朗

    ○日野委員 五条の措置をすぐ発動されるのかどうか。
  45. 臼井日出男

    臼井国務大臣 五条の措置につきましても、この法案が成立いたしますればできるだけ早く処分発動ができるように今手続を進めているところでございます。
  46. 日野市朗

    ○日野委員 もう一つ、この法案内容をきちんと国民に説明をして、そして、当該地域の住民の皆さんにも、こういうことでありますからひとつ安心してくださいということをきちんと説明をして、説得をしていくという作業も私は同時に必要になってくると思うのですね。これは、法務省でおやりになるのか、自治省でおやりになるのか、また、しかるべき他の機関でおやりになるのかわかりませんが、そういうこともぜひともこれは必要なんだということをぜひ認識をしていただきたいものだというふうに思うのですね。  やはり住民の皆さんというのは、心配であることはよくわかる。しかし一方、オウムのメンバーであろうとも日本人である以上日本に住む権利はあるのだ、それが人権なんだということをやはりみんなで理解し合うということが一点必要なことだと思います。いかがでしょうか。
  47. 臼井日出男

    臼井国務大臣 お説のとおり、住民皆さん方に安心していただくためには、この法案の趣旨というものをしっかりと御理解いただくということが極めて大切なことのように思います。  私ども法務省といたしましても、この法案が成立いたしました暁には、できる限り多くの皆さん方に正しく理解をしていただくように広報に相努めていきたい、このように考えている次第でございます。
  48. 日野市朗

    ○日野委員 それでは、この法案そのものについていろいろ議論をしたいというふうに思います。  この法案は、刑罰法令でないことは言うまでもないところでありまして、これは行政法でございますね。これと類似の法律というのは、戦前で言えば治安維持法がそうだったでしょう。戦後で言えば破防法がそうだったのですね、破防法の場合は、これは凍結状態みたいになっておりまして発動されたことはございませんが。戦前の治安維持法、まあ鯨岡先生なんかよく御存じだろうと思いますが、これは行政法規として出発をして、非常に猛威を振るったというふうに私は物の本で承知をしております、私も実際的な経験というものはございませんけれども。何でこのような行政的に仕組まれた法律というものは、そういう人権無視、人権をじゅうりんするというような一つの契機になっていくかというと、やはりこれは、行政の内部でこれが取り扱われていくという点に私は非常に大きな危惧を感じざるを得ないわけです。  先ほど福岡委員指摘をされましたが、裁判官の場合は、裁判官が物を判断するというときには裁判官独立の原則という裁判官が自由な判断をすることについての一つの担保があるわけですね。裁判官は釈明せずという言葉にも表現されていくわけであります。そのような、毅然として、他の機関に気兼ねすることなく判断をやれるということは、これは司法であればこそできるのだと私は思うのですね。  そういった観点からしますと、行政的に仕組むということについて、これはこの手の法律でありますから行政的な要因が非常に大きな要因を占めることは否定できないと私は思います。しかし、それが安易に流れて、時の流れに押し流されていくように、最初はオウムだけを対象にしようとしたものがオウム以外のところにもどんどん対象範囲を広げていく危険なしとしないのではないかという考えを私は非常に強い危惧として持たざるを得ないのです。それは、今まで治安維持法の経験があります。そして、破防法をめぐってあれだけ大きな議論が巻き起こったのも、治安維持法についての思い、それがやはりあったからなんでありましょう。現在、我々はそういったおそれというものを忘れがちであるが、これは私は忘れてはいけないのだと思うのですね。  この点についていかがお考えになっておられるか、ひとつこれは大臣、政務次官がお答えになるなら政務次官でもよろしいです、お考えを聞かせてください。
  49. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この新法に関しては、過去に無差別大量殺人という行為をした団体、しかもその反省をしないでもって現在まで勢力を振るっている団体、これに対してこの新法を適用するんだという大きな二つの歯どめがかけられております。  今回の場合は、この処分申請をするのは公安庁長官でありますけれども、一方でこれを受けて処分をいたすのは準司法機関である、独立してその権限を行うことができる公安審査委員会であるというふうに二つに峻別をいたして、今先生お話しのような心配がないように配慮いたしているところでございまして、今お話をいただきましたように、かつての治安維持法のように際限なく拡大するということは全くないと私ども考えております。
  50. 山本有二

    山本(有)政務次官 まさにこの法案の一番大事なところが、先生指摘のそのような歴史的な学習によって、我々、この国を誤ることのないように、治安維持法のようなことが二度と起こらないようにというところにあろうか、そのとおりだと存じます。  先生は、裁判所の関与も一つの考えだという御意見かとも思いますが、現在、司法権、特に裁判所は当事者主義という先生承知のとおりの主義をとられて、かつ、公訴権、つまり起訴事実を判断して起訴してから発動する、そういうような厳格な手続が担保されておるわけでありますが、この場合、いわゆるオウムの事実というのは、治安に対する不安だとか日常生活に支障があるとかいう段階で国民が要請しているところがございます。そうしますと、裁判所のお出ましになる場合よりももう少し手前であるという認識からすれば、どうしても実態解明というものに主眼を置いたそういう行政的な手続が不可欠になってまいるわけでございまして、この点におきまして御理解をちょうだいし、しかも、その実態解明にしましても十分手続を厳格にさせていただいた所存でございますので、ひとつ御理解をちょうだいできればと思います。  以上です。
  51. 日野市朗

    ○日野委員 おっしゃりたいことはよくわかるんだわ、私も。そして、このような法律がないと、今全国的にずっと展開している問題、これに対する解決の道具がないだろう、ツールがないだろうということもよくわかって、なおかつ私はさらに、この法律がひとり歩きをして、そして大変な弊害を巻き起こすというような可能性、それについてきちんとつぶしておきたい、私はこう思って今御質問をしているわけです。  それで、この法律を私は概観しました。詳しいところまでの読み込みはまだ不足ですが、いろいろなことにこれは使える余地があるんだよね。例えば国際的なテロ、これなんかに対してもこれは使えるんだ、使おうと思えば。そういう問題に対してどのように皆さんは対処していこうとしておられるのか。法務省の意図と公安調査庁の意図、それから公安審査委員会の意図、これはそれぞれに皆、違い得るんです。  そこで、まず法務省について、そういうことに使う気持ちがあるのかないのか。それから、団体としてこの法律適用の可能性のある団体がほかにあるのかないのか。どうですか。
  52. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今、国際的なテロというお話がございました。もちろん、例えば外国で行われたテロであっても、そのテロの集団の支部が日本にあるような場合、これは私ども法律適用範囲になるだろう、こういうふうに考えますし、外国で行われるテロ、こうした場合に、そのテロそのものが直接私ども日本に影響を及ぼすというふうなことであるならば、当然のことながらこの法案対象になると私ども考えているところでございます。
  53. 日野市朗

    ○日野委員 今までは、この法案オウム対策でございます、こうずっと言ってこられたんですね。そしてまた、東アジア何とか戦線とかいうのがあって、しかしこれはもう壊滅しておりまして今は適用の余地はない、こういうお話がありました。しかし、きょうは大臣は、今、国際的なテロ行為、これについても入るんだとおっしゃった。これは、今までのこの問題をめぐる論議の中で初めて大臣が公言されたわけですね。  ただ、衣の下のよろいは見えていたんですよ。いや、これは使えるなと僕も、使えるなというのはあれですが、使うつもりになれば使えるなと思っていたが、この法律案提案理由説明の中で大臣はこう述べられた。「最近の国際情勢を見ても、多数の死傷者を出した平成十年八月のケニア、タンザニアにおける米国大使館同時爆破事件に代表されるように、公共の場所で爆弾を爆発させるなどして」云々、こう述べられた。ああ、やはりこれは、今までオウムオウムと言ってきたが、オウムだけではないな、私はこう思っているわけですね。これはそれにも使える法律だなと思った。しかし、大臣が提案理由説明の中でケニア、タンザニアのアメリカ大使館爆破事件を引かれたことによって、ああ、これは法務省の意図としては明瞭だな、こう思ったのです。  そうすると、この種のテロに対してもこの法律適用しよう、そういう意図はお持ちだ、よろしゅうございますな。
  54. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今私が申し上げた点は、いわゆる理論的な面でそういうことができるということでございますが、冒頭に私が申し上げましたとおり、この新法については、二つの大きな条件がかぶさっているということでございます。一つは、過去に無差別大量殺人をやった団体でなければこの規制法は適用しませんよ、しかも、現在もその危険性というものを有している団体に限りますということを申し述べているわけでございまして、したがいまして、そういう条件に当てはまる集団であるのかどうかということが一つの大きな要件としてくるのは当然のことでございます。
  55. 日野市朗

    ○日野委員 無差別大量殺人のテロなんというのは、国際的に見るならば、世界を見渡せば、これは枚挙にいとまがない。いろいろな動機がありましょう。政治的な動機もあるし、場合によっては宗教的な動機もある。これはいろいろありますが、それはもう枚挙にいとまがないわけでありまして、日本での備えはどうなっているかということも、これは我々としても非常に関心を持たざるを得ないわけです。そして、この法律案が成立することによって、これでテロ対策の有力な手段を法務省は得ることになるのかどうか、これは非常に強い関心を持たざるを得ないところであります。  それで、現在、その国際的なテロ対策、これは日本で今どのようなふうに行われているのか、これについての説明をいただきましょうか。
  56. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員お話しのテロ対策のうち、団体規制というものは、さきに申し上げました破防法によることになるわけでございます。このことについては、公安調査庁において所要の調査を現在行っているわけでございます。  また、テロを行った個人につきましては、一般の犯罪と同じく、刑法あるいは航空機の強取等の処罰に関する法律に基づいて警察が一次的に捜査に当たり、検察官において起訴、不起訴を決しているものと承知をいたしております。  また、テロ対策に対する国際的な取り組みにつきましては、先般私もモスクワに参りまして、G8の司法・内務級閣僚会議に出てまいりましたけれども、主要国のサミットの参加国の間でテロに対する専門家の会合を定期的に開いておりまして、国際条約を含む法案の整備や国際協力のあり方などについて協議をいたしております。  また、国連におきましても、核テロ防止条約及びテロリストへの資金供与防止条約の制定に向けて、現在熱心な協議が行われているところでございます。
  57. 日野市朗

    ○日野委員 テロ対策についての概観を今していただいたわけであります。概観していただいて大体のところはわかるわけですが、これについて最も重要なことは情報収集活動なんですな。情報収集活動ということになりますと、これはまさに破防法を主管しておられる公安調査庁長官の方から、その情報収集活動がどのように行われているのかについて、概観で結構でございますから、御説明いただきましょうか。
  58. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 お答え申し上げます。  先生指摘のいわゆる国際テロリズムといいますか、国際的なテロ活動というのは近年非常に活発化している状況にございます。したがいまして、そういう国際テロ活動が、仕掛ける側からいたしますと守るのが弱いところで起こすというふうな傾向がございまして、どこで発生するかということを事前に把握することが非常に困難なテロリズムの活動であると言っていいと思うわけでございます。  したがいまして、いろいろな活動がいろいろなところで起きるということで、我が国においてもそういった活動が起きる可能性があるというふうに我々は考えておるところでございまして、世界におけるいろいろなテロリズムの活動については、私どもとしても関心を持って情報収集をしておるところでございます。
  59. 日野市朗

    ○日野委員 非常に模範生の答案のような答弁をなさいましたが、実はそこのところを私は余り聞いてないんだね。聞いてないというのは、そういうところでちゃんと情報収集活動をやっているというのは余り聞いてないのです。だから恐らく行政改革でも、公安調査庁要らないみたいな議論が出たりなんかするんだろうな、こう思うのですが、これからの問題についてもちょっと聞いておきましょう。  今大臣は、そういうテロ防止のためのツールとしてこれは使えますな、こういう話です。そして、テロ防止についての今までのいろいろな努力、法制上の努力、国際的な協力関係の構築、こういう話をなさったのだが、この法律が通過することによって、そのテロ関係の情報収集活動を強化するお考えはおありかな。いかがです。
  60. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 この法律は、先ほど来説明がなされておりますように、オウム対策の緊急立法としての性格で立法するものでございますので、これによってテロ活動に対する情報収集を強めるということは考えておりません。
  61. 日野市朗

    ○日野委員 私は、大臣が提案理由説明の中で述べられた「最近の国際情勢を見ても、」という一つのパラグラフ、これは大変重い意味を持っていると思うし、私は、これは法務省の隠された意図がはしなくもここで出てきたのではないかという疑問をぬぐい切れないのです。  それにしても、国際的なテロに対する対策、少し日本のは生ぬるいことは生ぬるい。そこのところはきちんとこれからもやっていくべきだ。ただし、この法律でやるか、別途の法制をきちんと構えるかということはまた別の問題だと思う。国際テロに関する法制、法の整備、これを図るお考えはおありかどうか。
  62. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御承知のとおり、今特に国際テロ対策というものは先進各国でも大変関心の的になっております。先般、私ども日本におきましても、通信傍受三法というものを通していただきまして、これらの対策というものを一歩進めることができたということは大変結構なことだったと思います。  いずれにいたしましても、こうした国際的な組織犯罪に対して対抗していくためには、多くの国々がお互いにしっかりと連携をとりながらやっていくということが必要でございますので、これらの連携というものをさらに進めていく必要があろうかと思っております。  当然のことながら、これからも、例えば先般お決めをいただきましたマネーロンダリングあるいはハイテク犯罪等に対する対策をどうするか、そういった問題について、一つ一つ御意見を聴取いたしながら対策を立ててまいりたい、こんなように考えております。
  63. 日野市朗

    ○日野委員 では、今度は法案内容について伺うことにいたしましょう。これはかなりおどろおどろしい名称の法案でございます。無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案ということでございますね。  そこで、第一条にも目的が書いてありますが、「無差別大量殺人行為を行った団体」、こういう要件が記載をしてございます。無差別というのはどういうことですか。
  64. 臼井日出男

    臼井国務大臣 無差別ということはいわゆる不特定という意味でございまして、不特定であるということは対象限定されていないということであります。
  65. 日野市朗

    ○日野委員 では、大量というのはどういう意味になりますか。これについては、もちろん第四条の定義規定がありまして、これと関連させながら私が聞いているということは御理解の上お答えください。
  66. 臼井日出男

    臼井国務大臣 大量というのは多数ということと同じ意味ではないかと思っておりまして、一人ではない、二人以上ということを示しているというふうに考えております。  しかしながら、私ども、今回新法でもって考えております無差別大量殺人、こういうことになりますと、多少、結果として、それが亡くなった方が少ないということであっても、その意図が極めて多くの不特定多数の方々を殺傷するというものを秘めているのであれば、私どもは、それは無差別大量というふうに表現してよろしい、こういうふうに思っております。
  67. 日野市朗

    ○日野委員 第四条にはこう書いてあるわけですね。「不特定かつ多数の者を殺害し、」この「かつ」というのは、不特定であり、なおかつ多数の者という意味ですか。それとも、不特定多数というのは不特定または多数というふうに読む、これが刑法上の読み方なのです。どういう意味でしょうか、この「かつ」は。
  68. 臼井日出男

    臼井国務大臣 不特定なおかつ多数、こういうことであります。
  69. 日野市朗

    ○日野委員 不特定多数という概念は、みんな一般市民の人たちは、本当に不特定多数という言葉をそのまま受け取って、そして、もう非常に多くの人々が不特定に殺害された場合、こう思いがちなのです。  ところが、ちょっとさっき大臣も言われたように、多数というのは法律上は二人以上なのですよね。そして、不特定多数というのは、不特定であり、なおかつとあなたはおっしゃったけれども、普通は不特定または多数というような理解、こういうのが法律上もあるのですよね。そうすると、「不特定かつ多数の者を殺害し、」「かつ」をどのように読むかは別として、不特定な二人以上を殺害したらこの法律適用がある、こういうふうに読むべきなのですね。  これはかなり適用をする側にとっては緩い要件だ、私はそういうふうに思いますよ。ここいらはもっと考えなくてはいかぬのではないですか、オウムなんかに適用しようということを考えるというのであれば。いかがですか。
  70. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先生お話しのことはよく理解できるわけでございますが、一つの例として、大衆のいるところに爆弾を投げた。その可能性としては大変多くの人たちを殺傷する可能性も当然あったわけであります。結果として、幸いにも死傷する人がもう最小限にとどめられたというふうな場合であっても、この法律適用対象として含めることはできるのではないだろうか、こう私ども考えておりまして、そういった意味で、幅が広過ぎるとおっしゃれば、なるほどそうかもしれませんが、多少この辺は幅を持って私どもとしては対処させていただくということが法の実効性のためにもいいものだ、こういうふうに私ども考えております。
  71. 日野市朗

    ○日野委員 この種の法規、特にこれは行政法規でございますから、いかに法律をつくった人たちがこれはできるだけ厳格にと考えても、これはその時々の事情、またそれを運用する人たちの個性、それから国民の世論の動向、こういうものによって非常に広がる可能性があるんだということは、私、先ほどから一つのこの質問のテーマとしてお話ししてきたところなのです。ここいらは、従来の法的な概念、特に刑法の概念とはもっと異なった概念をきちんと定立するのでございますというふうにした方がいいのではないかというふうに私は思うのですね。  後で、団体の点についてもこれは問題としたいと思いますが、日本の刑法というのは、やはり治安の維持ということに非常に力点があって、人権の擁護ということについては戦前は余り関心を持たなかった。まあ持たなかったということはないのでしょうけれども、やはり治安を維持するという方が優先的に先に出てしまって、解釈学の上からもそういう解釈がまかり通っているのです。  例えば、ここに出てきている多数というのは二人以上、不特定多数というのは二人以上よと言われたら、普通の一般市民、特に戦後教育を受けた人なんかびっくりしてしまうでしょう。また、団体のところでも、これは日本の共犯に対する取り扱いというのは非常に厳しい。共謀共同正犯理論でありますから、これは非常に治安優先のために構築された法理論であるというふうにしか思えないもの、それがずっとまかり通って、今も共謀共同正犯理論というものが判例上厳然たる一つの解釈指針になっているわけですね。  私は、こういう点から見ると、やはり従来からの日本の法解釈学の立場、特に刑事法についての解釈学の立場から切り離したしっかりした概念をここで定立されるのがよろしい、こう建言したいと思うのですが、いかがお考えになります。
  72. 臼井日出男

    臼井国務大臣 刑法の用語、罪刑法定主義という見地から考えますと、意味は明確であって、この私ども条文によって解釈がしっかりとなされている、私はこのように理解をいたしております。
  73. 日野市朗

    ○日野委員 私は、ここは、もしこの法律がこのまま通ったとしても、ここの要件の文言の解釈というものは、厳格に人権を擁護していくという立場をきちんと据えた解釈をとらなければ非常に危険な法律になっていくであろう、我々はこう思わざるを得ないのですね。そこのところは、ひとつ私の方から問題として提起をさせていただきたいと思います。  これは、非常にオウム対策で緊急性のある法律だということは十分に承知をした上で、私は、そのことは、これからの解釈に当たる人たち、その人たちに国会での議論ではこうだったんですよということを十分に知ってもらいたい。そのことを、いかがですか法務大臣、私の言ったことをおわかりいただけたと思うが、一つの指針として取り上げていただけるかどうか。
  74. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先生お話しの趣旨はよく理解をいたしたつもりでございます。そうした意味で、私どもといたしましては、違った側面から、この新法というものが余り拡大的に使われないような歯どめというものもいたしているところでございます。  先生のお話は、よく伺わせていただきました。
  75. 日野市朗

    ○日野委員 次に、団体についてちょっと議論をしておきましょう。  「この法律において「団体」とは、特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体」、こう定義をしてありますね。そして、さらに「支部、分会その他の下部組織」、これもずっと列挙して例示されているわけであります。  これが法人だとか、こういう問題であれば問題は簡単でありましょう。また、人格なき社団というようなものであれば、一つの規律性を持ったものでありますから、これは団体として認定することもできるでありましょう。ただ、この法律適用を受ける団体ということになれば、綱領のようなもの、そんなものを持っていることが必要なのかどうか。いかがですか。
  76. 臼井日出男

    臼井国務大臣 明確に綱領と言われるものがなくても、それに類似をするようなものがあればいいわけでございまして、特にそういうものは必要要件としてはないと思います。
  77. 日野市朗

    ○日野委員 そうすると、綱領のようなもの、またはその目的等を記載した規約のようなもの、そんなものはなくたって構わない、この法律適用はできる、こういうことになるのでございましょうね、今の答弁からすれば。一応確かめておきますか。いかがですか。
  78. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私が申し上げたのは、綱領という明確なものはなくても、その首謀者の意思というものを他の信徒に伝えるそれに類似のようなものがあれば足りるということでございまして、したがいまして、明確な綱領等でなくてもいいのだ、こう申し上げた次第であります。
  79. 日野市朗

    ○日野委員 この第四条二項にも、「共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」、こうありますが、ここでの「多数」の意味いかんということですね。
  80. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ここでの「多数」ということは、要は一人ではない、二人以上、こういうことになると思います。
  81. 日野市朗

    ○日野委員 ここでも「多数」は二以上ということですね。こういうふうに読むんだと。そうすると、二人以上ということになりますと、この団体の範囲というものはかなり広がっていく、こういうふうに理解せざるを得ないわけですね。  それなら、ちょっと今度は一つのケース、事例を構えて質問をさせていただきます。  先ほども私お話ししましたが、日本における共犯理論の主流は共謀共同正犯であります。それで、ある団体がその団体以外の者と共謀共同正犯の関係に入って、そしてその実行者は団体以外の者であるというケースはいっぱい想定されるわけですね。また、場合によっては、事後従犯というような形なんかも想定できるわけですね。そういう場合、やはりそのような行為に当たった場合も、一方の団体、実行行為はしていないんですよ、実行犯ではないんですよ、その団体のメンバーやなんかは。そういう場合にも本法の適用を受けることになるのかどうか。
  82. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お話しの構成員と非構成員犯罪を犯したというケースでございますけれども団体構成員と非構成員とが共同正犯として無差別大量殺人を行った、そうした場合であっても、その構成員行為というものがその団体の意思に基づいて行われている、その場合は団体活動として行ったことに該当する、こういうことであります。
  83. 日野市朗

    ○日野委員 非常にこの団体の範囲も広くなる。これは、取り締まりをやる側、治安を維持しようという側にとっては非常に有利である。一方、取り締まられる側にとっては非常に恐ろしい法律になるわけですね。  私は、ここでも疑問を呈しておきたい。オウムに名をかりるような形で、このような法律でいいのか。ここらの要件はもっと緩和する、このことが必要じゃないですか、そんなふうに私は思いますよ。  それと、ここでは殺人が問題になっていますね。大量殺人だということで殺人が問題になっているんですが、この殺人というのは、具体的に刑法百九十九条の殺人罪の構成要件に該当するような行為だけを指すのかどうか、いかがでしょうか。
  84. 臼井日出男

    臼井国務大臣 いわゆる無差別大量殺人行為殺人がある、こういう場合は、破防法第四条一項第二号で掲げる暴力主義的破壊活動でなければならないところ、破防法第四条第一項第二号ヘは、刑法第百九十九条、いわゆる殺人規定する行為をいうということになりますので、無差別大量殺人行為にいう殺人とは刑法殺人の実行行為に該当する行為を意味する、このように理解をいたしております。
  85. 日野市朗

    ○日野委員 この法律で問題なのは、団体活動として役職員または構成員が無差別大量殺人を行った団体、これが規制対象になるわけですね。  さて、団体というのは、これは歴史的な永続性というものを持つものでございますね。そこで、この無差別大量殺人を行った時期というのは幾らでも、これは長い歴史を持った団体であればさかのぼることができるということですね。中には、もう何百年と続いている団体だってあるわけですよ。そういう団体を見る場合、過去に傷があった、無差別大量殺人行為があった、これはいつまでさかのぼってその無差別大量殺人事件を問題とするんですか。
  86. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この新法が対象とする団体では、無差別大量殺人行為を行った限りにおいては時間的な限界はございません。  規制対象となる団体の範囲につきまして、過去一定の期間内に限定するなど、時間的な限界を設けることも一つのお考えだと思われますけれども、過去に無差別大量殺人行為を行った団体が、その同一性を維持しつつ、なお危険な要素を持っている、しかも社会に不安を与えているという場合にもかかわらず、一定期間が経たことのみをもって何ら規制ができないことになるということは、公共の安全の確保という観点から相当でない、私どもはそのように考えております。
  87. 日野市朗

    ○日野委員 オウムの場合はいいんですよ。そんなに昔の話じゃありません。我々だってまだ、あの現場、テレビのブラウン管に映った現場の生々しさ、こういうことはまだ我々の網膜に焼きついている。脳裏まで引っ込んでいかない。そういう問題ですからね。それについては問題ない。私も全然問題を感じません。しかし、私が先ほどから言っているように、この法律が拡大的に適用されるおそれというものはなくならないと私は思います。  それに、大臣が先ほどから一つ提案理由の中で、これは間違って書いたんだか、わざとその思いをにじませるために書かれたのか、私そんたくの限りではありませんが、これはそういう例を引かれて言っているんですからね。これはあそこまで拡大されていくと、それが臼井大臣の真意である、本当の腹であると推測するのは、これは合理的な推測だ、私こう思っているわけですね。  そして問題は、国際的なテロを私も一応例示として、あなたがそう提案理由説明の中に書かれたから私もそれを例示としましたけれども、それと似たようなことがこの国内でも起きる可能性というのはいっぱいあるわけです。だから、私は聞くんですよ、そういう危険がありますよと。そういうことがあるものですから私が伺うのであって、時間の際限もなく過去にさかのぼらせるということは、それでも要件を充足するわけですから、そんなことをしちゃいかぬのだと私は思いますので、大体どのくらいぐらいの過去を想定すればいいのか。  これはオウム対策法と銘打ってあるわけじゃありません。無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案ですから、やはりそこのところはちゃんと、私は十年ぐらいかな、そんなふうにも思うんですね。五年かな、十年かな、そんなふうにも思うんですよ。この法律によって人権侵害するということが避けられるためには、そこらにきちんと線引きをした方がよろしいと思います。いかがでしょう。
  88. 臼井日出男

    臼井国務大臣 確かに、私は先ほど、この法案については時間的な限界はないというふうに申し上げました。  一方、先ほど来申し上げておりますとおり、この法律適用に関してはいろいろな面から制約いたしておりまして、過去に無差別大量殺人をやった団体で、しかもその危険性というものを現在も保持している団体に限るというふうにしておりますので、この新法で考え対象団体というのはオウム真理教しか現在ございません。
  89. 日野市朗

    ○日野委員 いや、あなたのその説明、そこがどうも私をして納得することのできないような状態にしているわけなんだ。  オウムしかないんだといいながら、何度も何度もしつこくあなたの提案理由のことを言って悪いけれども、そんなことも書いておられる。そして、これをずっと私が概観した範囲では、これはオウム以外にもどうも適用されるんですよ。そして、あなたは現在の危険性ということを一つのメルクマールのようにおっしゃるけれども、私はここは司法と行政とのはっきりと違うところだということを申し上げたいのですね。司法の場合は、灰色、どんなに暗い灰色でもそれは無罪です。行政はそうはいきません。行政はそうはいかない。これは白より灰色だったら危ないじゃないのという価値判断がそこで働くんですね。  でありますから、私はそこが司法と行政とのはっきりした違いであるというふうに思うので、あなたがそれは大丈夫なんだ、大丈夫なんだ、こう言ったって、これは保証の限りではないわけです。ですから、私は、ここのところでもやはり司法をきちんと介在させる、そのことの大切さというようなものを感ずるんです。  では、今度は質問を変えますよ。せっかく裏の方で出してくださったようだけれども。  それで、今言ったことともちょっと関係するんですが、その無差別大量殺人を行ったという事実、これの認定はだれがすることになるんでしょうね。これはもう判決があるということであれば明瞭です。しかし、事実が推認されるとか、場合によっては公知の事実である、新聞なんかに載ったとか、かなり公知性が高いということで認定をするというようなことにもなりかねないんです。これはだれが認定するんでしょう。
  90. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員指摘をいただきました観察処分または再発防止処分の審査における団体が無差別大量殺人を行った、その認定は、公安調査庁長官提出をいたしました証拠書類、当該団体が出した陳述書、それらのものを、結果に基づき公安審査委員会がこれを行うということになるわけでございます。
  91. 日野市朗

    ○日野委員 公安審査委員会第三者的機関と位置づけられるということに今大臣は全幅の信頼を置いているのですね。全幅の信頼を置いている。しかし、ちょっと表現をきつくすれば、そういう行政機関のやることは余り信用ができませんぞということがあるから、それは司法というのがあるんですよ。私は、第三者機関とはいえ、そういう行政機関がこういう場合において事実の認定をしていくということに非常な不安を感ずるんですよ。やはりここのところは裁判所を入れてきちんとした事実の認定をすること、それが必要な場面ではないでしょうか。私はそのことを強く大臣に提言をしたい。そのことによって国民も、それから処分を受ける側も納得をするんでしょうな。いかがですか。
  92. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今回、この新法でもって行おうとしているいわゆる団体規制というものは、公共の安全の確保という観点から行われる、先ほどから申し上げております行政処分でございまして、過去に行われた犯罪行為に対してその行為者に対する刑事責任を追及する刑事処分とは領域を異にする、そういう処分であると考えております。  したがいまして、認定に際して刑事裁判の確定は法的には私どもは必要ないと考えておりまして、現在の仕組みでもってしっかりやっていける、このように考えております。
  93. 日野市朗

    ○日野委員 最後に一点。無差別大量殺人の行われた場所、これはどこになりますか。世界じゅうどこでもいいんですか。
  94. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この新法では、先ほど申し上げましたとおり、日本の行政に影響を与えるということであれば特に限定しておらないわけでございますが、外国に本拠を置き、あるいはその支部が日本に置かれているような団体が行ったものについては、海外であってもその対象になる、逆に、日本にその支部は置かれていないような団体だった場合には、日本の管轄権が及ばないので対象にならない、こういうことでございます。
  95. 日野市朗

    ○日野委員 終わります。
  96. 武部勤

    武部委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  97. 武部勤

    武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木島日出夫君。
  98. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  いよいよきょうから、いわゆるオウム関連二法案審議に入るわけであります。私は、きょうは政府提出の無差別大量殺人を行った団体規制法案に関して、法務大臣質問をしたいと思います。  そして、それに先立ちまして、実は、今月二日に政府がこの法案を閣議決定をして国会に提出したと同じ日に、我が党も、オウム規制法案の大綱を発表いたしたわけでございます。まだ大綱の段階でありますが、ぜひ委員の皆さんには御理解をいただきたいと思いますし、きょうの私の質問も、政府案との違い等も含めまして質問の中に織り込んでいきたいと思いますので、まず委員長のお許しをいただいて、同僚委員の皆さんに、本年十一月二日付の日本共産党の「オウム規制法案の大綱発表にあたって」、そして「オウム規制法案大綱」、この両文書を配付を許可願いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  99. 武部勤

    武部委員長 それでは、申し出を許可いたしますので、配付してください。——どうぞ、お続けください。
  100. 木島日出夫

    ○木島委員 我が党も、オウムに対する規制は必要だと考えております。地下鉄サリン事件など凶悪な犯罪を実行したオウム集団は、今日に至るも謝罪も反省もない。そして、全国各地に進出を進めて、今これに対する地域住民の皆さんの不安は非常に高まっている。そして、地域からの要請と同時に、十月十四日には、全国知事会、市長会、町村長会が連名で、国に対しても、規制法案をつくってほしい、こう要望しておりますように、今、国に対してオウム規制立法を求める声が非常に大きくなってきているという状況であります。  日本共産党は、こうした国民の皆さんの要求にこたえて、地域住民の不安を解消することが大事だということから、さまざまな現行法の厳正な適用ということが基本だとは思いますが、この段階でオウム規制のための立法措置も必要である、こう考え、そのための大綱を作成をして、今立法化の作業を強めているところでございます。  前置きはこれぐらいにして、まず、政府の無差別大量殺人を行った団体規制法案について質問をしていきたいと思います。  最初に、法務大臣に伺いますが、この法案を作成し、その成立を急いでいる理由は何か、基本的な理由目的は何かということをお聞かせ願いたいと思います。
  101. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど委員から御指摘がございましたとおり、オウム真理教が無差別大量殺人を実行した、このことによって大変多くの方々が命を落とし、また、今まだ後遺症に苦しんでおられるそういう方がおられるわけでございます。そのオウム真理教は、その後も、その大事件を起こしたということについて何ら反省もせずに、引き続き大変な勢いでもって全国活動している、こういう状況でございます。  今先生お話しのとおり、大変多くの方々が不安や危惧の念を抱いているという環境でございまして、私どももこうしたオウム真理教状況を念頭に置きまして、まず、当面、緊急の措置として、無差別大量殺人行為の結果の重大性、事前に防止が困難であること、あるいは反復性、そうした特性にかんがみまして、過去に無差別大量殺人を行い、現在もその危険な要素というものを持っている団体に対して、その危険性の程度に応じて観察処分あるいは再発防止処分というものをできる仕組みというものをつくりまして、公共の安全の確保のために寄与しよう、そういう考えからこの法案をつくるということに至った次第でございます。
  102. 木島日出夫

    ○木島委員 今回政府がこの法案を出す基本的な目的、ねらいは、現在、日本の国内で活動を進めているオウムに対する何らかの規制が必要だ、それに効果あらしめるためだ、こう聞いてよろしいわけですね。  そうしますと、先ほど来同僚委員からも指摘がされておりましたが、この政府法案法律のつくり方を見ますと、これは対象団体が、いわゆる過去に無差別大量殺人行為を行って、なおかつ現在もそういう危険があると認められる団体、こういう縛り方をしておりますね。そうしますと、この法案が成立をいたしますと、必ずしも対象は現在のオウムだけに限定されない。過去に無差別大量殺人を行った団体というのは決してオウムだけではないからであります。  特に、法務大臣がこの法案提案理由説明をしたその中に、特別に、「最近の国際情勢を見ても、多数の死傷者を出した平成十年八月のケニア、タンザニアにおける米国大使館同時爆破事件に代表されるように、公共の場所で爆弾を爆発させるなどして多くの一般市民を犠牲にする無差別大量殺人事件が多発しております。」わざわざこういう背景説明をしているところを見ますと、この法律ができたときには、もちろんオウム規制対象にするというのが根本的なねらいだと御答弁でありますが、これに加えて、テロ規制、こういう目的もこの法案の中には入っているんだというふうに感ぜざるを得ないんですが、やはりそういう目的をも持って、緊急措置としてこの法案を出されてきたんでしょうか。その辺、大事なところなので確認をしておきたいと思います。
  103. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私どもの今度の新法におきましては、基本的には我が国の公共の安全の維持を目的としているということでございますから、その無差別大量殺人行為も国内で生じたものを対象とするというのは原則であるということは間違いございません。  ただ、極めて例外的に、海外において我が国の要人を大衆の中で、例えば爆弾をもって殺傷するといった例のごとく、我が国の政治体制等に対して攻撃が国外で行われた、こうした場合も全くあり得ないということではありません。このような場合は例外的に、我が国の公共の安全の維持にもかかわるものとして、これが適用対象になるということは否定できないところでございます。午前中申し上げました私のお答えも、こうしたものを念頭に置いてさせていただいたところでございます。
  104. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、この法案は基本的にはオウムを何とか規制したいんだというのがねらいで、目的で緊急措置として立法するんだが、この法律は、それだけじゃなくて、いわゆる国内国外における爆弾等による大量殺人を行った団体にも適用されるんだという答弁ですね。  そうすると、根本的な目的であるオウム規制したいんだというその目的と、いわゆる国内外におけるテロ集団を規制したいんだという目的とはどういう関係になるんですか。そこをはっきりさせておいてほしいんです。
  105. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま私が申し上げましたのはいわゆる原則の話でございまして、冒頭にも申し上げましたとおり、この私どもの新規の立法においては現在オウムというものを念頭に置いているということでございます。したがいまして、先ほど申し上げました海外における事例は極めて例外的なもの、こういうふうに御理解をいただいてよろしいと思います。
  106. 木島日出夫

    ○木島委員 私、これを質問するのはなぜかといいますと、政府法案は基本的には団体規制法ですね。ですから、そのつくり方によっては、憲法で保障されている基本的な人権、その中でも特に基本的に大事だと言われている思想、信条、表現、結社、信教等々の、こういう自由とぶつかってくることが避けられない性格法律だと思うんです。  ですから、万やむを得ず、今日本の国内情勢として、そういう憲法上の基本的人権には抵触して、場合によっては、それは公共の秩序を守る観点から一定程度抑えることが必要だ、そういう限定的な場合にのみ、辛うじてそういう団体規制法というのが許されるかなと思うのでありますが、そうじゃなくて、今日本国内にそういう団体規制法をつくる差し迫った必要性がないのに、例えば、オウム規制が必要だからといって、その法律のつくり方がオウム以外の団体にまで適用できるというようなことになりますと、やはり根本的に、憲法とのかかわりで、それはやめた方がいいんじゃないかということになると思うんです。  ですから、実は、私ども日本共産党が先ほどお示しした法案の大綱でもそこを一番検討、研究を強めたんです。決してこれが今必要以上に拡大適用されることのないように、今国民が求めているのは何といってもオウムに対する必要な規制なんですから、それに絞られて、効果がある、そういう法律のつくり方こそが今求められているんじゃないか。それを今国民の皆さん、地域住民の皆さんは求めているんじゃないかと思うからなんですね。今国民の皆さんが国政に求めているのはそういうことなんじゃないんでしょうか。オウムに対してはきちっとやってほしいということなんじゃないんでしょうか。答弁を求めたいと思います。
  107. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員お示しのとおり、まさに国民の多くの皆さん方オウムの進出によって非常に危惧を持っている、不安感も持っているということでございますので、おっしゃるとおり、オウム対策として何としても早くこの法案を成立させたい、こういうふうに考えていることは事実でございます。
  108. 木島日出夫

    ○木島委員 そうしますと、法律のつくり方としても、客観的にこの法律解釈すればオウム以外には基本的には拡大適用されない、そういう法律のつくり方こそが今求められているんじゃないんでしょうか。それが何か拡大解釈されて、ほかの団体にも比較的簡単に適用されるような法律というのは今はつくるべきじゃないんじゃないかと思うんです。  というのは、今オウム規制法をつくってくれという声は非常に全国から噴き上がっていると先ほど私はお話をしましたが、今の段階でそのような状況がほかの団体に対してはないんじゃないかと思うからなんですが、こういう見方に対しては大臣はどんな考えですか。
  109. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、今度の新法、これは事実上、オウムのいろいろな問題を解決するための団体規制法であるということは申し上げた次第でございます。  この団体規制適用するに当たっての二つの大きな条件、過去に無差別大量殺人を行ったという団体、私は、このことはそう簡単な条件ではない。言ってみれば、テロ行為の中で最も卑劣なものである。こういうことを考えますと、この条件というのは大変重いものがございまして、どう考えてもオウム以外には現在のところ適用する団体はないというふうに申し上げているのも、これにゆえんをするところであります。しかも、現実に現在もその危険性というものを持っているという、重ねてのこの二つの条件で、適用団体というものは大変大きく絞られてくるんじゃないだろうか。  この二つの条件というものをクリアして、これらの団体規制対象として挙がってくるというものは、私は全く出てもらいたくないと思っているわけでございますし、また当面なかなか出てこないだろう、こういう考え方のもとで、現在私どもの頭の中にはオウム真理教しかないというふうに申し上げた次第であります。
  110. 木島日出夫

    ○木島委員 法務大臣はそうおっしゃられますけれども、無差別大量殺人事件を起こした時期は別に最近十年間に絞らないという法律のつくり方ですね。そうすると、ちょっと前の日本のことを考えましても、いろいろ企業連続爆破事件とか、そういうたぐいの事件というのは結構あったわけですね。そういう団体が今でも命脈を保っていると考えますと、やはりこの法律適用になる可能性が非常に強いと思うんです。あの二つの条件をクリアするのは非常に大変で、どう考えてもオウム以外に適用することはできないと法務大臣はおっしゃるけれども、そういうふうにはならぬと思わざるを得ないんですよ。  しかも、先ほど同僚委員からも質問されておりましたが、無差別大量殺人といっても、多数を殺害したというのは、多数は二人以上でいいわけですね。これは日本の法解釈上大体そうです。しかも、これは未遂も含まれていますから、一人も殺害していなくても適用になるんですね。そういう危惧を私は持つのです。  それが法律をつくる目的だというなら、それはそれでまた違うわけですから、そう答えていただけばいいのですが、法務大臣の答えはそうじゃなくて、基本はオウムに的を絞っているんだ、こういう法律のつくり方をしたけれども、二つのハードルが高いから、オウム以外には適用できないから大丈夫だ——大丈夫だというのは語弊がありますが、そう広く適用はされないのだ、だから憲法上も大丈夫なんだという答弁なんだと思うんですが、そうじゃないと私は思うんですよ。どうですか、そういう事件というのは過去の日本にも結構あったのじゃないでしょうか。
  111. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員がお示しをいただきました過去にいろいろな大量殺人事件があったではないかというふうなことでございますが、私どもは、今回のこの法律については破防法を基本的に援用いたしまして、政治的な意図を持ってそういうものが行われた、こういう考え方も導入いたしております。したがいまして、繰り返しになりますけれども、私どもは現在の状況においてオウム真理教しか対象団体としては念頭にないというふうに申し上げる次第でございます。  なお、細かい点について、もし過去の団体と事実を列挙してということでありましたら、政府委員の方からお答えさせていただきたいと思います。
  112. 木島日出夫

    ○木島委員 実は我が党は、先ほど述べましたように、今本当にオウム対象を事実上絞られた法案を検討し、準備しているんです。その方法として、私どもは、規制対象団体を、サリン等を発散させ、そのことによって無差別大量殺人を行った団体、そしてなお今日その影響が継承されている団体、こういう団体対象団体として絞るべきではないかと考えているわけです。  それはなぜかといいますと、何といってもオウム犯罪の最大の特徴であり、かつ国民の皆さんを恐怖に陥れた最大の原因はサリンが使用されたということなんですね。地下鉄サリン事件後の九五年の四月に、サリン等による人身被害の防止に関する法律というのが短時日のうちに全会一致でこの国会で成立しているというのもそのためだと思うんです。  我が党案は、やはりここに着目して法案をつくることが最も対象限定的にとらえて拡大適用をほとんど完璧にシャットアウトできる、そしてしかも、そういう対象団体の定義づけをすれば直接オウムに対して向かっているわけですから、的を外さないで実効性ある対処もできると考えるわけであります。  要するに、二つの要請、国民の不安を取り除くためにオウムに対して実効性あるきちっとした対処をしてもらいたいという国民の願いと、しかし、ほかに対象を広げてしまったら憲法基本的人権擁護の観点からちょっと抵触するんじゃないかという、この二つの要請を両方満たすものとして、私どもは、サリン等による人身被害の防止に関する法律を基本にして、土台にして、規制法案をつくり出すことができるのではないかと考えたわけなんです。  大臣に率直に御所感をお聞きしたいのですが、どうでしょうか、我が党の考え方の方が政府の提案している法案よりもより国民の要求に直接こたえていると私ども自負しているんですが、御所感をお願いしたいと思います。
  113. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほどから委員がお話しのとおり、国民が非常に今困っている、それに対して何とかしっかりとこたえていかなければいかぬという点では私ども立場が共通をしているようにも思います。  先ほどお話しの新しくおつくりになる法律の題が「サリン等」、こう入っておりますので、「等」の中にはどういうものが含まれているかわかりませんが、そのほかについても一応この中に含めているという御趣旨であろうかと思っております。  私どもは、確かにオウム真理教サリンというものを兵器として使って大量殺人をやったわけでございますが、しかし、そういうことはあってはなりませんが、万一次に何か起こるとしたときに、サリンでないものが使われるという可能性は高いわけでございまして、そういう意味から、あえてそのサリンということをテーマに題として打ち出すということが果たしてどれくらい変化があるものかということについては疑問なしとしないわけでございます。  いずれにいたしましても、こうした行為を防ぐために実効性のある迅速かつ適切な措置をしっかりととっていかなければならない、こう思います。
  114. 木島日出夫

    ○木島委員 今大臣から、我が党の大綱の中に「サリン等」ということがあって、「等」の中にはいろいろ含まれているのじゃないかという御指摘ですが、実はそうじゃなくて、既につくられている法律サリン等による人身被害の防止に関する法律という法律であって、その第二条の定義を見ますと、「この法律において「サリン等」とは、サリン及び次の各号のいずれにも該当する物質で政令で定めるもの」と言って、一号、二号、三号と物質名を特定しているんです。こういう特定の仕方を九五年の国会でやったのは、現にオウムによって使われた物質、そして非常に殺人のためにしか使いようのない化学物質という、そういう特性を持った物質をえり抜いて、やはりサリン等人身被害の防止に関する法律はつくり出されているんですね。ですから、サリン等という概念は法律で確定しているんです。  ですから、この法律を全面的に一部改正するなどして、そういう物質を使って無差別大量殺人事件を行った団体にきちっとした法の規制をかけようじゃないかというのは非常に合理的であり、素直であり、難しい法律技術なり拡大解釈の余地が全くないという法技術じゃないかと思うんですね。  ですから、国民の要求、まさに大臣も答弁されましたように、今国民の皆さんはオウムを何とかしてほしい、ああいうサリンなどをばらまくような、ああいう危険な団体が今でも動いていたら心配だというところに国民の不安と法規制を求める声があるわけなんですから、それに真っすぐ目を向けて、直視をして、そらさないで法律をつくった方がより実効性もあるし、いいのではないかと思うんですね。  くどいようですが、もう一回答弁を。
  115. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員がお示しをいただきましたサリン等による人身被害の防止に関する法律、これはまさに、あの大変多くの方々が亡くなり、また現に障害を持って苦しんでいらっしゃる、そういう方々に対する対策法としての性格を持つものでございまして、これはこれで一定のはっきりとしたものが必要であろうと思います。  私が申し上げておりますのは、過去にどういう形でもって大量殺人をやったかということよりも、これから、将来またそうした事件を起こすかもしれないというふうに考えたときに、果たして同じようなサリンで行うのかどうかということはわからないわけでありまして、そういう意味で、やはり幅広いそうした犯罪行為に対して対処する姿勢というものを持つべきだ、こういうふうに考えておりまして、そうした点から、私は、今回の私どもの「無差別大量殺人行為を行った団体」というこの題には、これでそれなりの正しい理由がある、このように考えている次第であります。
  116. 木島日出夫

    ○木島委員 今論じているのは、これからつくろうとする法律によってどの団体規制対象にしようか、どうそれを縛ろうか、明確にしようかという論議だと思うのですね。そうすると、やはり国民の願いもそうだし、オウム団体、集団を規制することが今必要なんだ。それなら、それに絞って法律をつくればいいのだと思うのですよ。  現在のオウム集団が本当に危険かどうかは、これからつくられるであろう法律適用の問題になると思うし、そういう団体が、果たしてまたサリンを使ってやろうとしているのか、ほかの武器等、銃器等を使って何か犯罪考えているのか、またはそうでないのか、それはこれからの問題だと思うのですが、やはり規制対象にしたい団体をどう絞るかということが今最大の問題になっているわけですから、そうしますと、過去の犯罪の方法、態様、それで一番絞りがかけられるのは、サリン等を散布することによって無差別大量殺人事件をやった団体というふうな概念で絞りをかければもう間違いない。これは名指しではありませんから憲法違反のそしりも免れることができる、そういうことなんですよ。ぜひひとつ、私どもの案も速やかに法案化して今国会に提出したいと思っておりますので、どちらがいいかの問題ですから、検討対象にしていただきたいと思うわけであります。  そこで、次の問題について質問をします。今度は逆に、本当に今国民が願っているオウム規制に実効性があるかどうかの観点から、政府案について幾つかの質問をしたいと思うのです。  先ほど答弁にもありましたように、政府の法案は、対象団体として、破壊活動防止法四条一項二号のいわゆる暴力主義的破壊活動、こういう概念、定義を持ち込んできております。破防法上明らかですが、暴力主義的破壊活動というのは、政治上の主義、施策を推進、支持または反対する目的をもってする殺人等ですね。この法案では、殺人を不特定多数の者に対する殺人行為ということに置きかえているわけでありますが、最初に大臣に質問したいのですが、オウムの行った無差別大量殺人行為を特徴づけるのに、何でこのようないわゆる政治目的条項をつけなくちゃいけないのでしょうか。答弁してください。
  117. 臼井日出男

    臼井国務大臣 我が国においては、団体規制法というのは破防法しかないわけでございまして、私どもも今回のオウム対策を行うに際して、一部には破防法の改正ということもございましたが、私どもは、将来に対するおそれという将来性よりも、現に不安を持っている、そういう危険性を持っている、こういうところに着目して今回つくらせていただいた次第でございます。したがいまして、破防法を基礎としている、こういうことから政治に対する項目というものも入ってきている、こういうことであります。
  118. 木島日出夫

    ○木島委員 今、我が国の法体系の中に団体規制法は破防法しかない、だから破防法を基礎にして立案したという答弁ですが、それはおかしいと思うのですね。それなら、新しい法律を知恵を出してつくり出せばいいと思うのですよ。  なぜこういうことを言うかといいますと、我が党案もそういう立場から今物を考えているわけなんですが、政府案のように破防法を基礎にしてつくろうとすると、どうしても政治目的条項をつけざるを得ない。そうすると、逆に本当の目的、ねらいであるオウムに対して何とかしたいということからそれてしまう、あるいは言葉をかえれば規制が逆に困難になるということが、そういう問題が出てくるのではないのだろうかと思うからなんです。  九七年の一月三十一日の公安審査委員会の決定、いわゆる旧オウムに対する破防法による解散処分をかけようとしたあの公安審査委員会の決定では、松本サリン事件オウムの政治的目的をもってなされたものであることを立証するために、大変なそれは苦労をしているのです。私、決定全文それからまた申請書、オウムの弁解等々全部読んでみましたが、物すごいそれは苦労をしているのですよ。こんな余分な、オウム政治目的を持った団体であるかどうかとか、松本サリン事件や東京地下鉄サリン事件政治目的をもって行った無差別大量殺人事件なのかどうかなんという、そんなことを一々立証することは余計なことじゃないかと思うのですね。  もっと容易にオウム対象団体として指定できることは、例えば我が党の大綱なんかでは簡単にできるのですね。過去にサリン等を散布して無差別大量殺人事件を行った団体、それだけでいいわけで、その修飾語の政治目的なんということは必要ないわけですから、私は政府案は、オウム規制しようとするという答弁はしますけれども、かえって難しくしているのじゃないかと言わざるを得ないのですよ。  何でそんな目的条項が必要なんですか。やはり破防法を使おうとしているからなんじゃないですか。破防法を使うなんという考えをやめて、純粋にオウム規制しようじゃないかと考えれば、そんな政治目的条項なんか削除して法律をつくればいいじゃないですか。
  119. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お話しのように政治目的条項を入れるか入れないかということでございますが、私は、先ほどから私と委員考えというものは必ずしも方向としては違っているものではない、こう思うので、私どもも、本法の対象団体というのはオウムに絞り込むということでやっております。  したがいまして、この政治条項といいますか、政治目的というものを入れることによって、過去にいろいろあったかもしれないけれども、政府の転覆というところまで考えた政治的な意思を持った無差別大量殺人というのはオウムということになるわけでございまして、むしろ私は、そういう意味ではこの法律が拡散をする一つの歯どめにもなるのじゃないか、こういうふうに考えておりまして、その点をどうぞ御理解をいただきたい、このように思います。
  120. 木島日出夫

    ○木島委員 恐らく、大臣が政治目的条項という修飾語をつけた方がかえって歯どめになるとおっしゃるのは、政府案が我が党の考えのようにサリンを散布して大量無差別殺人をやった団体という、そこで絞りをかけちゃっていなくて、一般的な大量無差別殺人をやった団体という非常に広い概念を持ってきているから、それじゃ広過ぎるというので絞りをかけようという思いをも込めて、政治目的をもってという修飾語をかけたのだろうとは思うのです。それは、政府の根本が広過ぎるからだと思うのですよ。最初から絞り込むような法技術はできると思うのですね。  しかも、公安審査会の決定は、確かにオウムの集団は政治目的を持った団体であり、松本サリン事件政治目的をもって行った殺人行為であるという認定はしました。しかし、あれは基本的には棄却決定ですから、あの認定についてはまだ司法、裁判所による判断を受けていないのですね。  私は、これからつくられるであろう法律オウム適用した場合に、政府案のような法律ですと当然オウムはこう弁解してくると思うのです。我々は宗教団体であって決して政治的団体ではないとか、あるいは松本サリン事件というのは決して政治目的なんという大それた目的じゃなくて、オウムに対する妨害者、これは抹殺せよ、そういう考え方からあの事件を起こしたのだ、どうもそれが本質的なものだと、私も松本の周辺、近くに住んでいますが、見られるのですね。そういう弁解、まあ弁解なんでしょうが、そういう弁解が出てくる可能性も大いにある。  そして地下鉄サリン事件も、オウムの弁解として予想されることに、迫り来る警察の捜査を攪乱する目的で警察の目の前の地下鉄で実行したものであって、決して政治目的ではないなんという弁解が出る可能性は大いにあるのですよ。現に、そういうたぐいの弁解、非常に公安審の審査のときにもやっているわけですね。適用を免れようとしていろいろな理屈をつけて、それに合うような証拠も持ち出してくるわけですから。  そういうことを考えますと、私は、政府案が破防法を持ち出してきたために、政治的目的を持った大量無差別殺人、そういう余分な修飾語をつけた結果、かえってオウムにつまらない弁解を与える余地を残してしまうことになりはしないか、こう言っているんですよ。そんな余分なことを削ったらいいんじゃないですか。それの方が国民の期待に直接にこたえることができるんじゃないでしょうか。
  121. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御承知のとおり、もう既にオウム真理教宗教団体ではありません。そういう意味では、もう宗教団体との認定はのけられた状態にございますし、また現に麻原彰晃考え方というものが引き続き信徒の中に深く根づいているということも現実でございますし、その麻原彰晃のいろいろな発言の中で、まさに地上の天国を実現するためにあらゆる策謀を用いて政府転覆も試みる、こうした教義的な、説教的なものというのはたくさん現在存在をしているわけでございまして、そういう意味からも、私はそうした委員の御懸念というものは当たらないのじゃないかなというふうに考えている次第であります。
  122. 木島日出夫

    ○木島委員 確かに今大臣が答弁されたような主張をさきの公安審の手続の中で公安調査庁はやっています。それに沿う証拠も出して、それが公安審では認定はされていますよ。  しかし、それはあくまでも公安審での認定であって、私が言ったのは裁判の認定までまだ至っていないのですね、これは。恐らくそういう認定が正しいのでしょうけれども、私が言いたいのは、そんな余分なことを主張、立証する必要はないではないかと。オウムというのはああいうサリンなんという恐るべき物質をばらまいて無差別大量殺人をやった世界でもまれに見る凶悪な犯罪者集団、殺人集団なんですから、そのことだけを取り出してきちっと対象団体に指定するという方がよほどすっきりしていいじゃないか、迅速にオウムに対する措置ができるじゃないか、政治目的かどうかなんというようなことを無理に持ち出してくるから難しくしてしまうんじゃないか、そういう質問なんですよ。それはどうですか、大臣。
  123. 臼井日出男

    臼井国務大臣 お話の趣旨はよくわかるわけでありますけれども、御承知のとおり、この法案の中には政治目的云々という文字は出てまいりません。破防法との関係でそういう位置づけができる、こういうことになっているわけでございまして、そういう意味では私は、この本文をお読みをいただきますと、まさにオウムに絞って実質的に多くの国民に与えている被害というものを軽減する対策になり得る、このように考えている次第でございます。
  124. 木島日出夫

    ○木島委員 今の法務大臣の答弁は不正確なんですね。この法案で一番大事な四条の定義です。この法律において無差別大量殺人行為とは、破防法四条一項二号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動であって、不特定かつ多数の者を殺害し、またはその実行に着手してこれを遂げないものをいう。一番大事なこの定義について破防法四条一項二号を持ち出してきているということは、政治目的をもってする殺人という定義をここへ持ち込んできているのですから、今の大臣の答弁は正しくない。どうですか。
  125. 臼井日出男

    臼井国務大臣 言葉が足らなかったら訂正をさせていただきますが、そうした破防法との関係でもって出てきているということを私は申し上げたかったわけであります。
  126. 木島日出夫

    ○木島委員 そうだと思うのですよ。だから私は、オウム規制が本当のねらいであり目的であり、それ以外念頭にないというのなら、破防法なんという法律は持ち出さないで、もっとすっきり純粋にオウムに対する規制ができるような、そんな知恵を出して立法化した方がいいんじゃないかと。私どもの案は一つの知恵です。サリンという特性を持ち出してきて規制をつくろうというのは一つの知恵なんですが、こういう知恵は幾らでもできるんじゃないですかという質問なんです。どうですか。
  127. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、厳然として破防法という団体規制法というものは存在をしております。そして今回、新法においては、例えば団体の解散措置というものは設けておりません。これは将来もしそういう環境になったときには、それは私ども法律でもって示すことはなくても破防法でもって処置できるということになっているからでございまして、あくまでもそれらの現存する諸法律との関係の中でこの新法というものは成立をしていく、このように考えております。
  128. 木島日出夫

    ○木島委員 ですから、何でそんなに破防法にこだわるのかという質問なんですね。今私がずっと質問してきましたが、破防法にこだわるからオウム以外の団体にも適用されてしまうのではないかという憲法上の問題も出てきてしまうし、破防法にこだわるから政治目的なんというオウム規制のためには不必要な余分なことを立証しなきゃいかぬという、使い勝手が逆に悪くなるという二重の点でやはり国民の期待からそれてしまっているんじゃないかというのですよ。それは破防法にこだわるからなんですよ。だから、破防法にこだわることをやめたらどうなんですか、こういう二つの弱点を持つわけですから。何でそんなに破防法にこだわるんでしょうかね。そこがわからない。何でそんなに破防法にこだわるのですか。
  129. 臼井日出男

    臼井国務大臣 繰り返しになるわけでございますが、本法の第四条一項では、無差別大量殺人行為とは、破防法第四条一項の第二号に掲げるいわゆる暴力主義的破壊活動であって、不特定かつ多数の者を殺害し、その実行に着手してこれを遂げないものというふうに定義をさせていただいている次第でございまして、私どもは、先ほど来申し上げておりますとおり、現存する日本の法律体系、そういうものを有機的に使いながらこれらの暴力主義に対して対抗していこう、このように考えている次第であります。
  130. 木島日出夫

    ○木島委員 二つの問題点、弱点があるにもかかわらずこうまで法務大臣が破防法にこだわるのは、それはやはり公安調査庁を延命させようという意図があるからではないのでしょうか。公安調査庁というのは、これまでの行革論議の中で不必要な存在じゃないかと縮小ないしは廃止を求める声が非常に強かった。  そういう中で、オウム事件を一つのきっかけにしまして、これ幸いと、これを機会に破防法と公安調査庁を延命させよう、復権させよう、そういう意図があるから、二つの大問題を抱えながらも、そして、もっといい、国民の期待にこたえる法案をつくり出すことが可能であるにもかかわらず、あえて破防法を基礎にした法律をつくり出そうとしているのじゃないか、こう言わざるを得ないのですが、そんな意図があるのじゃないですか、法務省には。法務大臣、どうですか。
  131. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私どもとしては、そうした意図はございませんで、行政措置として、公安調査庁長官が申請をしたもの、それを公安審査委員会が認可をする、別々の団体によって行うことによって公平、公正なものを維持できる、このような考えからこの制度をとっている次第であります。
  132. 木島日出夫

    ○木島委員 私がこう言うのは、これまで公安調査庁は、率直に言いまして、オウムのあの凶悪事件に対して何一つ有効な手だてをとってこなかったし、とれなかったという厳然たる事実があるからなんです。  法務大臣にお伺いしますが、公安調査庁は、八九年十一月の坂本弁護士一家三人に対するあの殺害事件以来の本当にとんでもない一連オウムの凶悪な犯罪に対してどんな役割を現実に担ってきたとお考えですか。
  133. 臼井日出男

    臼井国務大臣 詳細について、ここに資料は持ち合わせておりませんのでお話しできませんが、委員お話しの、過去にオウム対策について非常に効率的ではなかった、そういった御指摘というものは私は甘んじて受けなければならぬというところもあろうかと思います。  こうした無差別大量殺人事件というのは初めての経験でもございますし、その認定等に非常に時間を要したために、たまたま公安審査委員会で審査をする段階では、かなり将来的には解散するような状態になってしまうのじゃないかというふうな見込みもあったということから当時認定されなかった、こういうふうに思いますが、今回この法案を作成するに当たりまして、観察処分が出るまでの期間というものも極めて限定的にいたしておりまして、皆様方の御期待にこたえられるように比較的速やかにこの法案を実行、実施できる、このように私どもは確信を持っております。
  134. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、あの八九年十一月の坂本弁護士一家殺害事件以来十年間、基本的に公安調査庁は何の役割も果たしてこなかったと指摘せざるを得ないのですね。こういう公安調査庁に、これからのオウムに対する一定の措置、規制に、その実効性をどうして期待することができるだろうかと思うのです。  私、公安調査庁が毎年一回出している「内外情勢の回顧と展望」、ずっと十年分全部読んでみました。しかし、九五年の東京地下鉄サリン事件後の麻原逮捕というあの時期までのこの公安調査庁が出した「回顧と展望」には、オウムのこと一言もないですよ。全然ないですよ。慌てて、あの事件が表に出て以来触れてきているのですね。そんな程度です。  公安調査庁が、オウムに対して破防法によって規制処分請求をしたときに証拠としていろいろなものを出してきましたが、ほとんど新聞切り抜きが主だったということで、マスコミ界からも法学界からも、公安調査庁の証拠収集は何だ、あんな新聞記事の切り抜きならだれだってできるじゃないか、あんなお粗末な証拠で規制を申請するとはとんでもないという大変な非難がごうごうと沸き上がったということを、法務大臣、御認識じゃないでしょうか。  だからやはり、もう何の役割も果たしてこれなかった組織に無理やり、今回国民の声があるからといって、そして今日本にある団体規制法は破防法だけだからという理由だけで、破防法を使って公安調査庁にまた役割を担わせようというのは、ちょっと国民納得しないのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  135. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今回のオウム対策について、常々いろいろな御意見があるということも拝聴いたしておりまして、存じております。  しかし、私どもといたしましては、現在私どもがこの法案お願いをいたしております、一つの行政庁で、官庁でやるのではない、公安調査庁、そして独立の機関としてその権限を実行することができる公安審査委員会が独自の立場でもってそれを裁定していく、そういうシステムというものは、私は今のこの状況では最適のものと信じている次第であります。
  136. 木島日出夫

    ○木島委員 この法案を読みますと、警察がこの手続に関与してくることになるわけです。二つの面で規定があるのですね。  一つは、公安調査庁長官処分請求に当たって、警察が公安調査庁長官に意見を具申することができる、そういう大変大きな権限を付与したということですね。もう一つは、観察処分としての立入検査、これを公安調査庁だけでなくて警察にもその立入検査の権限を付与した。こういう、これまでの日本の破防法体系に全くなかった新しい枠組みを入れ込んできたのですね。なぜこういうことをしたのでしょうか。
  137. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お説のとおり、今回警察に対してもいろいろ立ち入り等にお願いをするということになっております。  この法案におきましては、公安調査庁及び公安審査委員会における団体規制の仕組みを基本としておりますが、その規制の措置を実効あらしめるために、警察の有する情報能力や組織体の活用を図るための必要な措置というものを講じることができるという観点に立ちまして、警察も関与していただく。先ほどお話ございましたように、公安調査庁長官処分請求に対する警察庁長官の意見陳述のために行う、あるいは警察庁長官の意見陳述のための警察職員の立入検査の規定、そういったものを置いているわけであります。
  138. 木島日出夫

    ○木島委員 そうだと思うのですよ。公安調査庁だけでは実効性が欠けるのじゃないか。もっと端的に言えば、オウム規制等に対する実効性を持たせるためには、どうしても警察の力をかりなければならぬ、こういうことだと思うのですね。  私は、これは、先ほど指摘してきましたように、これまで公安調査庁オウム対策オウム犯罪、あの恐るべき犯罪防止のために何ら役に立たなかったということの告白だと思うのです。そうであるならば、この際、国民の願っている現在のオウムに対する何らかの措置をとるために、実効性をあらしめるために、もう破防法、公安調査庁を使うのはすっぱりやめて、実効性どころじゃない、犯罪の捜査、犯罪の予防、犯罪の鎮圧、これを主たる任務とする警察に任せてしまった方が国民の期待により直接的にこたえることができるんじゃないだろうかと思うんですよ。  警察にそういう権限を与えることに対しては、現在の日本の警察の状況オウム問題を見ましても、坂本事件に対してまともな捜査ができなかった、しなかったという問題、上九一色村でのあの毒物の残留物があったという住民の苦情に対しても全く見向きもしなくて、ずっと半年以上放置してきたという大問題があるんです。それは警察の任務放棄だと私は思うんですが、こういう問題もあり、また今の神奈川県警の不祥事等々、大変な問題もあります、確かに。しかし、やはり基本は警察の任務としての犯罪予防というのがあるわけですから、そして実効性もあるということを今法務大臣も答弁されたわけですから、ここはひとつ、絶対濫用させない、警察の横暴は許さないという法の歯どめをしっかりかけた上でこのオウム対策は警察がやるべきだ、そういう仕組みをつくり出した方がいいんじゃなかろうか。  法務大臣から見ますと、公安調査庁というのは自分の配下の組織ですし、これがなくなることに対しては一抹の感慨もあろうかと思うんですが、ここはひとつ、国民の不安をどう取り除くかという問題と憲法上の濫用の危険をきちっと抑えるというこの二つの要求を満たすということが根本目的ですから、そういう自分の組織のもとにある団体に権限を与えないということは忍びがたいかと思いますが、ひとつそういうことを一歩踏み込んで物を考えるべきじゃないかと思うんですが、所見を伺って質問を終わらせていただきます。
  139. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御意見伺わせていただきました。しかし、この新法はあくまでも団体に対する行政処分でございます。したがいまして、私どもは、あくまでも公安審査委員会による審査、公安調査庁の問題提起、こうした形というものをとるということが一番大切だと思っておりまして、今お説のとおり、警察の情報力あるいは組織力の利用というものはしっかりいたしまして、警察当局ともしっかり連絡をとって実効性あるものにいたしてまいりたい、このように考えております。
  140. 木島日出夫

    ○木島委員 終わりますが、確かに行政処分権限を与えるということですが、今の日本の法体系にも暴対法とか風営法とか、いろいろ警察にしかるべき行政処分をする権限を与える法律体系というのはたくさんあるわけですから、そういうことも視野に置きながらひとつ物を考えていきたい、また我が党もそういう立場に立ってこれから法案の提案もしていきたいと思いますので、それを述べまして、質問を終わらせていただきます。
  141. 武部勤

  142. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  私どもの社民党も、あの地下鉄サリン事件を初め凶悪なオウム真理教犯罪は絶対容認されるべきではない、また被害を受けた多くの方あるいは後遺症に悩んでおられる方に十分に配意した政策をともに進めていくという大きな立場では同一だということを前提に置いた上で、今回の法案についてどうしても確認をしていきたい点が多々ありますので、法務大臣にまずは御質問していきたいと思います。  先ほどの少し繰り返しになりますけれども、午前中同僚議員からもあったように、今回の法案は、「この法律解釈適用」のところで拡大解釈はだめだ、それから「規制の基準」のところで二点にわたって、いわばこれを奇貨として、いわゆる憲法上保障されたさまざまな団体活動を妨げるあるいは介入するようなことがあってはならないと、極めて謙抑的な条項を置いているわけです。それを前提に伺うんですが、「不特定かつ多数の者を殺害し、」という、先ほどの破防法の四条一項にもリンクしているこの「不特定」という意味は、ちょっと確認的な質問ですが、何を意味されるでしょうか。「不特定」の意味です。
  143. 臼井日出男

    臼井国務大臣 「不特定」という用語の意味でございますが、いわゆる対象限定をされていないということに解しております。
  144. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると、例えば多数、多数というのは二人以上だとしますと、三人、四人の例えば暴力団、あるいは集団的な、ある集団がある集団をねらうというような抗争、あるいはやる側が一人の場合もありますけれども、例えば三、四人の方がそれでねらわれて死んだという場合は、不特定ではなく特定多数の殺傷事件、こういうふうに考えていいですか。
  145. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今御指摘の点が本法と関係がないという前提であれば、これはそういうことも言えるかと思いますが、私ども、この法案では、この適用となる場合には、前提として二つの大きな前提を置いておりますので、そうしたものは対象にならないのでございます。
  146. 保坂展人

    ○保坂委員 まさにこの定義のところが一番大事なんで、何を定義して発動する法律なのかということの確認的質問ですから、もう一度伺いますが、例えば日本の政治家数人が海外で爆弾でねらわれた、それは未遂であった場合もあるし、既遂で爆発しちゃって何人か亡くなった、こういう場合は特定多数ではないんですか。
  147. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、その今おっしゃったことが本新法と関連してということであるならば、それは対象にならないということであります。
  148. 保坂展人

    ○保坂委員 先ほど、何か同僚議員、木島議員の質問の中で、一体この範囲はどこまでなんだと。時間的なものと場所的なものの制約ですね。その中で法務大臣は、我が国の要人が爆弾でねらわれた場合にはこういうものも相当する、こう答弁なさったんじゃないですか。
  149. 臼井日出男

    臼井国務大臣 それは例外として、団体として、集団としてそういうものが行われるということを前提として申し上げたわけであります。
  150. 保坂展人

    ○保坂委員 例外というものが次々と出てくる定義というのはあり得ないんですね。定義というのは定義なんです。ですから、そういう意味では、集団であろうが個人であろうが、要するに対象になった人たちが不特定なのか特定なのかということがこの定義で厳密に絞られなければならないわけです。  ですから、日本の政治家数人がねらわれた、既遂、未遂も含めて。これは本法とは関係ないんですか、関係あるんですか。
  151. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私ども立場といたしましては、基本的には、先ほど来お話しいたしておりますとおり、国内で行われたものを対象とするのを原則といたしております。ただ、極めて例外的に、海外において要人を大衆の中で爆弾をもって殺傷するといった例、我が国の政治体制に対する攻撃が国外で行われた、そういう場合もあり得ないわけではございませんで、そのような場合は、我が国の公共の安全の維持にもかかわるものとして、これは対象になるということは否定できない、こういうふうに申し上げたいと思います。
  152. 保坂展人

    ○保坂委員 ちょっと答弁を整理されたらどうですか。  「不特定かつ多数」という定義は、例えば大勢の群衆の中で、あそこに政治家がいる、あいつがいる、あるいは暴力団のだれかがいるといってねらってそこに爆弾を投げたら、これは特定を殺傷するべく行われたテロなんですよ。そうではなくて、ここで法務省なりに絞り込んだ要件をつくっているのは、これは不特定多数、要するにそういう特定というものは省いているんですよということじゃなかったのですか。
  153. 山本有二

    山本(有)政務次官 保坂議員のおっしゃる定義という文言上の問題からすれば、先ほどおっしゃられたとおり、不特定でなくて特定になるわけですから、この対象にならないかもしれませんが、ただ、犯罪の態様として爆弾というような手段を講じた場合には、経験上、不特定の者にも殺傷能力があるわけですから、その場合には犯罪者の意図と相反して、これは不特定殺人ということになろうかと思います。
  154. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると、大臣に伺いますが、では、今の答弁が動かせないとなると、これは「不特定かつ多数」ということは外れて、そこに「特定または不特定かつ」、こういうふうに入るのが正しいのではないでしょうか。
  155. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この法案の趣旨としては、あくまでも不特定かつ多数ということであります。
  156. 保坂展人

    ○保坂委員 これはもうオウム真理教を念頭に置いて限定するんだ、先ほどからの質問はずっとそういうふうに続いていますよね。そうであれば、いろいろな意味で問題はシンプルなんですね、そこに大きな問題もありますけれども。  しかし、これがどこまで広がるんだろうかということが先ほどから質問されているわけですけれども、ちょっと今の答弁は納得できないので、後ほどきちっともう一度、別の機会に返していただきたいということをお願いしておきたいと思います。最初の定義のところではっきりしないようでは、この法案審議は一番最初のところでつまずいたということになってしまいますので、それは大臣、ぜひお願いしたいと思います。  それで、時間も制限しないで、場の制限もないように思えるのですね、今の御答弁を聞いていると。例えば、大量殺人行為ということでいえば、二十世紀の記憶という中に、カンボジアにおけるポル・ポト派の大虐殺というのがありますよね。例えばポル・ポト派の残党が日本に入ってきてサークルをつくり、クメールルージュの歴史を勉強し云々、こういう活動。しかし、その大虐殺当時は司令官だったり、あるいは部隊を指揮していた、こういう人物が、もし日本にいてそういうことを始めた場合は該当しますか。
  157. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、現在のところ、この新法ではオウム真理教しか対象にいたしておりませんが、今お話しのように、外国の勢力が日本に入ってきて、日本で支部的なものを、拠点をつくって活動するということであれば、当然のことながらそれも入ってくる、こういうことであります。
  158. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは伺いますが、あれは去年でしたでしょうか、高校生が大パニックに陥って、たくさんの高校生が亡くなったアメリカの乱射事件がございましたよね。これはレイシズムというか、人種差別的な観点がどうもあったようだと。それは、子供たちなりに、十代なりに、ナチスにあこがれたり、あるいは人種差別的に純化しようという動きはあるわけです、各国でも。ヨーロッパでもネオナチもありますし。こういうグループが、いわゆる逮捕されずに、インターネット等を通して日本に支部をつくった、こういう場合も該当するというふうに考えていいですか。
  159. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お話しのケースの場合は、個人がということでございますか。
  160. 保坂展人

    ○保坂委員 いえいえ、個人じゃなくて、グループとして。
  161. 臼井日出男

    臼井国務大臣 政治目的というものがその中に入ってこなければ、これは該当しないということであります。
  162. 保坂展人

    ○保坂委員 いわゆる民族浄化、邪魔な民族は抹殺してしまえというのは政治目的に当たりませんか。大臣にお願いします。
  163. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お話しのように、その勢力が日本に対してどれくらい影響力を持っているんだ、国内について、そのことによるんだ、こういうふうに私は思います。
  164. 保坂展人

    ○保坂委員 これは何でも入るみたいですね、列挙していくと。  インターネットというのは一瞬で世界をつなぎますので、国際的にCNNなんかのニュースでばあっと報道される。我々の感覚では、ひどい事件だ、どうしようもない虐殺だと思っても、残念ながら、現に日本の青少年の中にもそういうものにあこがれる青少年がいるかもしれない。そういう中で、日本に支部ができるなんということは大いに考えられることで、空想を私は語っているのではないので、オウム限定するというならば、もっともっと絞り込んで厳格にやるべきだということを指摘して、ちょっと次にいきたいと思います。  法務大臣は、公安調査庁が何人職員を持って、幾つの地方事務所を運営しているか。これは基本の基本ですが、御存じと思いますが、どうでしょう。
  165. 臼井日出男

    臼井国務大臣 現在、約千六百名の職員でございまして、出先機関全国で五十二カ所であります。
  166. 保坂展人

    ○保坂委員 私は、政治家同士の討論というのが大切だと思っていまして、不意打ちの意地悪質問というのは一切しないということでやっていきたいと思いますが、今回、国民の注視の中で、法務大臣が、公安調査庁の職員や、いわゆる関東局だとか事務所、その数ぐらいはやはり把握していていただきたいと思います。  では、政務次官に伺います。  公安調査庁が、今ではないですよ、かつての地下鉄サリンだ、あるいは坂本堤さんの事件だ、このオウム一連の凶悪犯罪がありましたけれども、公調として調査に着手する、つまり調査をやり出したのはいつでしょうか。
  167. 山本有二

    山本(有)政務次官 公安調査庁では、オウム真理教について、平成七年三月二十日に地下鉄サリン事件が発生する以前からその動向について関心を持って注視しておりましたが、教団地下鉄サリン事件及び松本サリン事件に関与している疑いが濃厚となったことから危険団体であると認識するに至り、同年五月中旬には教団調査対象団体に指定いたしまして、本格的な調査を開始したものと承知しております。
  168. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、参考人として公調長官にも来ていただいているので、ここに「お笑い公安調査庁」という本がございます、御存じと思いますけれども。「溶解する公安調査庁」というのもあるのですね。二冊あるのですが、きのう徹夜で読んでみていろいろ驚いたのですが、地下鉄サリン事件のテレビのテロップでこの事件を知った、これは近畿局の話が書いてありますけれども、そういう事実はありますか。そしてまた、これとオウムと連想して考える職員はこの時点では皆無だったと。これは、普通の国民はみんなそうですよね、オウムだというふうに思った人もいるかもしれないけれども、何ら証拠がなかったわけですから。事件当日の話ですが、いかがですか。
  169. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 お答え申し上げます。  ただいま政務次官からもお答え申しましたように、地下鉄サリン事件の発生以前からオウム真理教というものの動向には関心を持っていたのでございますけれどもオウム真理教が危険な団体であるというふうに認識したのは、その地下鉄サリン事件が発生して後のことなんでございます。  地下鉄サリン事件を契機にいたしまして、オウム真理教の関連施設からサリンの溶媒として使用された劇物が大量に発見された。それから、そのことを契機として教団事件への関与が濃厚となったというようなことから、庁内に特別調査本部を設けて、教団に対する破防法の適用を視野に入れた本格的な実態調査を開始した、こういう次第でございます。
  170. 保坂展人

    ○保坂委員 時既に遅かったということですね。いわば大量殺人事件は起きてしまったわけです。  公安調査庁が、いわゆる東西冷戦対立の中で、例えば左翼勢力、右翼勢力あるいはその他の暴力組織などを調査をしていた。しかし、オウム真理教など、そういうものは調査対象外だった。というのは、つまり、地下鉄サリン事件の前までは、これは危険性のある団体だという認識がなかったということなんですけれども、振り返ってみると、平成元年、八九年には坂本一家殺害事件がございましたね。現場にはプルシャが落ちていた。麻原彰晃たちはドイツに行って記者会見をするなど、マスコミ報道の中では、これはオウムとの関連が濃厚ではないかということも言われました。  さらに平成二年、九〇年には衆議院選挙に立候補していますね。衆議院選挙に立候補して、まさに政治過程に彼らなりに挑戦した。その中には、政策ビラだとかいろいろな主張があったでしょう、あの独特の歌と踊りだけが耳目を集めましたけれども。公調としてもこういうことに注目しなかったのかどうか。それから、例えば、そういう選挙資料を分析し調査をして、きちっと保管をしていたかどうか。  さらに、平成四年、一九九二年にはロシアに進出するんですね。これは、調査第二部第五部門という報告が上がってきたと書いてあります。ロシアに進出した、衆議院選挙に出た。その前に坂本一家事件との関連も云々された。これも、まあこのあたりで調査対象へと判断してもよかろうと思うんだけれども、そうはされなかった。  同じロシアで言えば、都内の私立大学で、ロシア軍の特殊部隊に参加していわば武装訓練を受ける、こういうツアーの募集がありますよということも九五年にはちゃんと公安調査庁の関東局には情報として上がってきている。しかし、これが動いた気配もないんですね。どうしてだったんですか。
  171. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 御指摘のように、平成二年の総選挙に二十五人が立候補して全員落選するというようなこともありましたし、熊本の波野村というような関係で、自治体、住民とのトラブルが発生していたということもあるわけでございまして、そういうことをしておる団体だということは認識していたわけでございますけれども、ただ、サリンを開発してこのような無差別大量事件を起こすというところまでは事前に察知できなかった。まことに残念には思いますけれども、それが実情でございます。
  172. 保坂展人

    ○保坂委員 公安調査庁の方が、もし仮にオウムの実態をきっちり証拠づけ、そういう選挙の資料も捨てないで保管をしていれば、公安審査会のいわば破防法の議論がまた別の方向に行ったかもしれないとも思います。  そこでお聞きしますが、その重大事件発生後、一九九五年、地下鉄サリン事件が発生しますね。それ以降、例えば、九六年、九七年、九八年、九九年の四年間、オウム真理教の出家信者、在家信者はそれぞれ何人か、教団の勢力を公安調査庁は把握しているでしょう。ちょっと教えてください。
  173. 木藤繁夫

    木藤政府参考人 教団の勢力としましては、棄却の決定書でも述べられているところでございますが、平成六年の松本サリン事件当時に、出家が一千名、それから在家が約一万名ということになっておりまして、請求が棄却される当時になりますと、出家が約五百名で在家が一千名程度であったと思っておりますが、現在は、私どもは、出家が五百名以上、それから在家が一千名以上、このように把握しておるところでございます。
  174. 保坂展人

    ○保坂委員 つまり、今の答弁だと、棄却されたときから今までの数は変わらないんですね。だから、本当にきちっと数ぐらい把握しているのかどうかということすら疑問なんですね、今の答弁だと。  時間が押し迫ってきましたので、二つの事件について警察の方に伺いたいと思うのです。  例えば、新聞の社説などを見ましても、この間二つの事件が起こりました。一つは、オウムの女性信者が監禁をされていた、そしてまた、その監禁をされていたということで幹部が二人逮捕された、こういう事件です。もう一つは、八月の末、これは私も印象的でした。松本サリン事件の被害者の妹さんがオウムと名乗る男によって拉致、監禁、拘束された、そして名古屋で釈放された。この事件は最後には作り事だったというふうに出るのですが、この二つの事件というのは一体どういう展開でこうなったのか、これを簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  175. 金重凱之

    金重政府参考人 お答えさせていただきます。  まず私の方からは、最初の長野県下での女性信者の監禁事件の関係でございますけれども、これは、九月の二十九日に警視庁と長野県警の合同捜査本部でオウム真理教女性信者に対する監禁容疑ということでオウム真理教出家信者ら二名を逮捕した事案であります。  この事件は、この被疑者二名が共謀いたしました上で、平成十年の三月の下旬ごろでありますけれども、長野県下所在のオウム真理教の修行施設の中におきまして、この被害女性信者から再三にわたりまして帰宅したいということを懇願されたにもかかわらずこれを無視しまして、この女性信者の両手両足をガムテープで縛り上げた上、浴槽の中に入れまして、この女性の頭を水没させて窒息、失神させる等の暴行を加え、それ以降この施設の中の一室に閉じ込めてというようなことをし、そのころから同じ年の四月の三日ごろまでの間に脱出不可能な状態に置いたという監禁事案でございます。  それで、警察としましては、この被害者が施設から逃げ出しまして保護を求めてきたということを端緒にいたしまして、監禁事件だということの疑いを持って捜査を推進しました結果、二人の被疑者が特定されて、今申し上げましたような事実関係が明らかになりましたので、強制捜査に着手したというものでございます。  しかし、十月の五日になりまして、合同捜査本部が被害信者と連絡がとれなくなったわけでありまして、行方を捜しておりましたところ、十月の十五日に発見、保護した、この間オウム真理教関連施設にいたものというふうに思われるわけであります。  その後、この被害女性が事件着手前に行っておった供述を翻しまして、修行として同意していた行為だというようなことを供述したために、十月の二十日になりまして事件処分保留ということになったわけでございます。  以上のところです。
  176. 林則清

    ○林政府参考人 お尋ねの事件は、本年八月二十四日に習志野市内に居住する女子大生から、自宅付近の路上において何者かに拉致され、車に監禁された上、名古屋市内の路上で解放されたという本人からの被害申告を受けまして、千葉県警におきましては、最初から大変重大な関心を持って慎重に捜査を進めてきたところでありますが、十月二十四日になりまして、再度の実況見分等を実施しましたところ、本人の方から、あれは作り話であったという結果が出たわけであります。処置としては、十一月四日に軽犯罪違反で千葉地裁へ送っております。
  177. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、最後に法務大臣にお聞きしたいと思います。  今回の団体規制法の骨格を持つこの政府提出法案については、やはり大変幅広ではないかという危惧を抱いております。  もう一つは、過去の大量殺人行為を行った団体規制対象になるわけですが、これからしようとしている団体あるいは現に企てている現在進行形のものがあるやもしれない。これは、オウム真理教以外にあるかもしれないという不安もあるわけです。現に、オウム真理教という集団がこれだけの重大犯罪を起こすとは十年前だれも予想しておりませんでした。  マインドコントロールをされて、いわばカルトと言われるような、一連のそういう危険な教義を持つ破壊的カルト、こういうものに対して、諸外国ではいろいろな、カルトを包括的に規制するだけではなくて、そこにとらわれてしまった、主に若い人たちでしょうけれども、マインドコントロールを解いて、そして社会に復帰すべく、支援策も含めた総合的な政策が推進されているのですが、こういう問題について法務大臣の所見をお聞きしたいと思います。
  178. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今までお話ししてまいりましたとおり、本法案は当面オウムということに絞ってというふうに考えておるわけでございますが、今委員指摘のとおり、カルト集団というものも当然考えられるわけであります。  しかしながら、いわゆるカルトという定義というものも今のところ明らかではございません。カルト集団に対して規制を加える、その問題についてはいろいろの問題が存在をしているということも事実でございます。単にカルト集団に該当するということのみをもって規制を加えるということは憲法上の疑義もあるというふうなこともございますし、団体活動として一定の犯罪行為を前提とするのであれば、破防法または本案による規制により対処するということになろうかと思っております。また、政治目的がないというような場合においては、中長期的なセーフティーネットの準備という観点からまたいろいろ御議論をいただくことになろうかと思っております。
  179. 保坂展人

    ○保坂委員 時間が来ましたので指摘だけして終わりますけれども、経済的カルトというのもあるのですね。カルトの多くが資金を強奪していく、そして財産をむしゃぶり尽くしていく。オウム真理教もそうですね、勝手に所有を移転していったり、いわば相続を丸ごと教団にしたりとか。こういうことについて、経済だけの利益追求していくカルト集団というものもあります。こういうことについてもやはり議論を深めなければいけないということも指摘をしまして、きょうは時間が参りましたので、私の質問を終わります。
  180. 武部勤

    武部委員長 漆原良夫君。
  181. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  まず、無差別大量殺人行為を行った団体に対する規制について、破防法ではなくて、新法を制定して行うというふうにした理由はなぜかということと、それから、オウム真理教の現在の活動に対して破防法では適用できないのか、あわせてお尋ねしたいと思います。
  182. 臼井日出男

    臼井国務大臣 破壊活動防止法におきましては、団体活動として暴力主義的破壊活動を行った団体につき、継続または反復して将来さらに団体としての活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認められたときに、それを除去するために活動制限処分あるいは解散指定処分を行うことができるということになっております。  これに対し、本法は、オウム真理教を念頭に置きまして、無差別大量殺人行為が暴力主義的破壊行為のうちでも最も治安の根幹を揺るがしかねない極めて危険な行為である、それらをあらかじめ防止するということは極めて困難だ、しかも、反復して続けられる可能性が強いという特性を持っているということにかんがみまして、これを団体活動として行った団体については、公共福祉の観点から実効ある規制を行うことが国民に強く要求をされている。そういうことから、緊急の措置として、破防法の規定とは異なる手法による観察処分及び再発防止処分という規制を迅速な手続によって行う、こういう新たな団体規制の仕組みを設けたものでございます。  このように、本法案は、オウム真理教を念頭に置いた当面の緊急の措置として新たな団体規制の仕組みを設けるものでございまして、そこで、破防法によらないで本法による、このようにいたした次第でございます。
  183. 漆原良夫

    ○漆原委員 オウム考え方の中に、人を殺傷することも許されるというふうな考え方がある、こういうふうに聞いておりますが、どんな教義に基づくと認識されているのか。  それから、実際に松本サリン事件地下鉄サリン事件でたくさんの死傷者が出たわけでございますが、オウムがこれらの無差別大量殺人事件を犯した理由は一体何なのか。  そして、こういう犯罪を犯したことと、人を殺傷することも許されるというオウム真理教教義との関係についてお尋ねしたいと思います。
  184. 臼井日出男

    臼井国務大臣 オウム真理教教義というのは、小乗仏教、これは自己の解脱を第一とする宗教でございます。あるいは大乗仏教、これは、自己だけではなくて、衆生の救済を主眼とする仏教でございます。そのほかに、タントラバジラヤーナという秘密金剛乗、これらを混交した独自の教えである、このように理解をいたしております。  特に、タントラバジラヤーナ等につきましては、人を殺傷することも許されるという考え方でございます。悪業を積む者はそれだけ長く地獄で過ごさなければならないので、それ以上の悪業を積まさせないために早く命を絶つことも許されるという教えでございます。  松本サリン事件等におきましては、麻原彰晃は、独裁者として統治する祭政一致の専制国家を樹立する、そういう政治目的を実現するために武力をもって我が国の現行国家体制を破壊することが必要であるというふうに考えまして、積極的に武装計画を推進いたしました。その過程で、武器としてサリンを使う、その効果を確かめるということをいたしたのでございます。  引き続き、現在もそうした教義あるいはタントラバジラヤーナの教義の実践としての姿というものを教団は現に有しておって、極めて危険なものであると私ども考えている次第でございます。
  185. 漆原良夫

    ○漆原委員 そうすると、法務省は、今回の二つのサリン事件は武器としてのサリンの実効性を確かめるために行ったものだというふうに御認識なんでしょうか。
  186. 臼井日出男

    臼井国務大臣 武装化の過程の中でサリンの効果というものを確かめた、そういう一面があることも事実でございます。また、先ほど来ございましたとおり、オウムが追い詰められる過程の中で、国側を混乱に陥れる、そういう目的をもってサリンをまいたということも一つの事実でございます。
  187. 漆原良夫

    ○漆原委員 そういうことと人を殺すということの教義については関連性があるんでしょうか。どんな関連性があるんでしょうか。
  188. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、幾つかの宗教を混交したものと申し上げましたが、タントラバジラヤーナの教義の中には、人を殺すということは当然の権利であるというようなそうした考え方も底流にありまして、それらの考え方麻原彰晃考え方の中にも引き継いでいるというふうに思います。
  189. 漆原良夫

    ○漆原委員 大臣は所信で、団体規制の必要について、現在も危険な要素を保持していると認められる団体としておりますけれどもオウム真理教がその団体に該当すると思われるかどうか、思われるとしたらその理由を説明していただきたいと思います。
  190. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御承知のとおり、現在、松本智津夫を首謀とするオウム真理教の構成が、無差別大量殺人行為である松本地下鉄サリン事件を行ったことは明らかでございまして、現在でもその松本教団の絶対的な存在であるということ、また、松本事件当時も現在も教団の代表者たる役員であること、また、同人以外の事件関与者の中には現在に至るまで松本への絶対帰依を続けている者がいることなど、オウム真理教は現在も引き続き危険な要素というものを保持していると認められ、規制対象として該当する団体だ、こういうふうに考えております。
  191. 漆原良夫

    ○漆原委員 通告外でちょっと恐縮なんですが、オウム施設の存在するところ、全国で今多くの紛争が地元の住民の皆さんとの間で起こっておるわけでございますけれども、地元の住民とのトラブルの原因は一体どういうことなのか、何が原因なのか。それで、もし本法が成立した場合には住民の不安というのが解消されるのかどうか、この辺についての見通しをお尋ねしたいと思います。
  192. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御承知のとおり、オウム全国各地、大変多くの箇所でいろいろな不動産を買収して拠点をつくろうとしているわけでございますが、ひそかにオウムとわからないような形でもって拠点を買収して、その後に実はオウムが買収したものであるということがわかったり、また、買い上げをいたしました施設についても、大きな高い塀を早速めぐらして中にいろいろな小屋等を建てる、そういうふうに外部から見て一体どういう用途に使うかということが極めてわからないような状況の中で秘密裏にいろいろなことを行っているということが、周辺の住民皆さん方に、単なる居住ではなくて何か特定目的があってそれを行うんじゃないかという疑心暗鬼を生んでいる、こういうことでございまして、こうした状況で、大変多くの全国各地住民皆さん方が非常に不安の念を抱いているというのが現在の状況だと思います。
  193. 漆原良夫

    ○漆原委員 この法律ができることによって、その住民の皆様の不安が解消されるかどうかのめどについてはいかがでしょうか。
  194. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この法律で二つの大きな手順を踏むということになるわけでございますが、この法律ができ上がるということによりまして、実際に現在ある施設も含めて、国の力でもって対処ができる、こういうふうに考えておりまして、この法律ができ上がることによってしっかりとした対処をすることができ、現在不安に思っている多くの方々に対して解決する道を示してさしあげることができると思います。
  195. 漆原良夫

    ○漆原委員 要するに、住民は、その建物の中でどんなことが行われて、どんな設備があって、何をしているかわからない、またサリンでもつくっているんじゃないかということがあってトラブルが起きていたわけですね。  この法律ができることによって、場合によっては立入検査もできる、施設の検査もできるということで、その情報をまた住民の皆様に提示するということによって不安を解消するんだというふうに理解してよろしいでしょうか。
  196. 臼井日出男

    臼井国務大臣 そのとおりでございます。
  197. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは各論についてお尋ねしたいと思うんですが、法第二条は、この法律解釈適用に関して、「この法律は、国民基本的人権に重大な関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべき」である、こう書いてあります。  さらに法三条では、規制の基準に関して、「この法律による規制及び規制のための調査は、第一条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであって、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあってはならない。」こういうふうに規定してあるわけでございますけれども、本法案全体として、この二条、三条に沿って国民基本的人権についてどのような配慮がなされているか、御説明を願いたいと思います。
  198. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員お話しのとおり、法案の二条及び三条国民の基本的な人権に関する規定というものを定めてございます。  私ども、今回の本法では、観察処分及び再発防止処分につきましては、対象団体危険性状況に見合った、必要最小限度で、しかも期間を限定して講じようといたしております。しかも、取り消しの制度も設けておるということでもございます。また、この処分を実施する際に、結社の自由に関係するということもございますので、処分の請求権を調査機関である公安調査庁に、処分権を独立して権限を行使することが保障された準司法機関であるところの公安審査委員会にそれぞれ別個にゆだねて、処分の中立、公平性を確保できるようにいたしてございます。  さらには、本法案では、各処分に当たって公安審査委員会が行う意見聴取手続というものを設けておりまして、団体の意見陳述及び証拠提出を公開の場でもって行うことを認める、また質問権も認める、こういうふうなこともいたしておりまして、一般法である行政手続法による手続と比較をして手厚い手続保障をいたしているところでございます。  なお、この法案第二条及び第三条はこの法律による濫用を厳しく戒めておりまして、今まで申し上げましたことのほかに、公安調査官及び警察職員が職権濫用した場合につきましては、三年以下の懲役または禁錮という刑法犯よりも重い職権濫用罪を設けて、その職務の執行の適正を確保いたしている次第でございます。
  199. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは少し細かい点についてお尋ねしますが、公安調査官及び警察の職員による立入検査についてお尋ねしたいと思います。  七条二項は、観察処分の実施のために公安調査官に立入検査権を認め、また十三条二項は、警察庁長官が再発防止処分について意見を述べるために警察職員による立入検査を認めております。  この七条二項、十三条二項に、「団体活動状況を明らかにするために特に必要があると認められるとき」、「調査を行うために特に必要があると認められるとき」というふうな要件がありまして、この「特に必要がある」という要件についてどのような解釈をすべきでしょうか。
  200. 臼井日出男

    臼井国務大臣 まず、お尋ねの公安調査官の立入検査について定める本法第七条二項には「特に必要がある」という言葉があるわけでございますが、観察処分に付された団体の個別具体的な状況を明らかにするために、公安調査官による任意調査団体からの報告のみでは必ずしも十分でない場合、あるいはそのような報告を待つことが適当とは言えない場合というものを指しているわけでございます。  次に、お尋ねの警察職員の立入検査について定める法第十三条二項の「特に必要がある」という意味は、警察職員による質問、観察等の通常の任意調査では十分でない場合を指しているのでございます。
  201. 漆原良夫

    ○漆原委員 抽象的にはそういうことだと思うんですが、もうちょっと具体的に何とかお答えいただけませんでしょうか。
  202. 臼井日出男

    臼井国務大臣 実際、立入検査というものは行われることになるわけでございますけれども、そうした際に、例えばロッカーをあけるように求めるということはできるわけでございます。また、帳簿類の提出等も求めたりすることができます。例えばコンピューター等についても、それをあけてくださいと指示をしてあけてもらうというふうなこともできるし、また、必要かつ合理的な範囲でもって施設や設備の写真を撮影するというふうなこと、あるいは事務所の見取り図をつくるということもできると思います。  これに対し、物件の押収等は検査の範囲に含まれていないのでございます。したがいまして、物件の押収と同視されるような方法としての立ち入りというものは許されない、このように考えております。
  203. 漆原良夫

    ○漆原委員 ちょっと私がお尋ねしていることと答えが違っておるんですが、七条をちょっと見ていただきたいと思うのです。観察処分の実施、七条第一項は、五条一項または同四項の処分を受けている団体活動状況を明らかにするために必要な調査をさせることができると。これは一般的な調査権なんでしょうね。第二項でさらに、「団体活動状況を明らかにするために特に必要があると認められるとき」というふうに、ここに新たに「特に」というのが入って、その場合には立入検査ができるんだ、こうなっているわけですね。  そこで、この第七条一項の一般的な調査のほかに、さらに特に必要がある場合に立入検査ができるという条文になっているものですから、この特に必要がある場合というのは一体どういうことなんだ、どういうことを想定しているのかということをお聞きしているわけです。
  204. 臼井日出男

    臼井国務大臣 具体例で申し上げるならば、例えば、ある施設が金属加工の用に供されている旨の報告がなされた。そうした場合に、公安調査官が任意調査団体からの報告のみによって当該施設や同施設に設置された設備の性能や用途について正確な把握ができない。そうした場合には公安調査官が同施設に立ち入って当該施設の実情を調査する必要があるんじゃないか、そういうふうに考えられるわけでございまして、そうした際という意味であります。
  205. 漆原良夫

    ○漆原委員 一般的調査ではわからないけれども、何か危険なもの、あるいは銃器を製造、加工した可能性があるとか、あるいは毒物を何かやっている可能性があるとか、そういう具体的な情報に基づいてその情報を確認するために、そういう前提なんでしょうね。そういう場合に「特に必要がある」というふうになるんでしょうね。そう理解していいでしょうか。
  206. 臼井日出男

    臼井国務大臣 そのとおりでございます。
  207. 漆原良夫

    ○漆原委員 そこで、先ほど大臣先にお答えいただいたのですが、「団体が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ、設備、帳簿書類その他必要な物件を検査させる」、これは具体的にどんなことを想定しているのかということを質問したいと思ったのですが、写真はいいと。写真を撮ることはいい。複写、コピーをすることはどうなんだ。あるいは、押収はできないとおっしゃいましたね。その設備の内部の写真をぱちぱち撮る、出てきた書類をコピーする、あるいはあたり構わず物色し回る、こういう行為はいかがなものでしょうか。
  208. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今おっしゃいましたようなことも、当然のことながら、合理的かつ必要な範囲で、こういうことになるわけでございまして、そうしたコピーをとる場合というのは、実際その状況はどうであるのか。強制的にコピーをとらせるということはできない、お願いをしてコピーをとっていただけるということであるならば、それは許されるというふうに考えておりまして、具体的な事案に即して考えるべきもの、こういうふうに思います。
  209. 漆原良夫

    ○漆原委員 そうすると、今おっしゃった、コピーをとる場合は強制的にはとれない、同意がなければとれないというふうにお考えと聞いていいですか。それから、写真は同意が要るのでしょうか、要らないのでしょうか。その二点。
  210. 臼井日出男

    臼井国務大臣 立ち入りをした際には強制的に調査というものができない仕組みになっておりまして、したがいまして、帳簿等を嫌がるものを無理にあけさせたり、あるいはコピーをとるのを拒否するのを無理にとらせたり、そういう行為はできないわけでございます。  写真につきましては、合理的な必要な範囲でもって撮ることは差し支えない、このように理解いたしております。
  211. 漆原良夫

    ○漆原委員 今、帳簿を無理に出させたりすることはできないとおっしゃいましたが、例えば、帳簿を見せてもらいたい、嫌だ、こうなったら帳簿は見れないのでしょうか。
  212. 臼井日出男

    臼井国務大臣 相手側で、もしどうしてもその帳簿を見せたくないということで拒否があった場合には、これは見れないということであります。
  213. 漆原良夫

    ○漆原委員 八条の第一項の七号になるのでしょうか、再発防止処分について、「構成員の総数又は土地、建物、設備その他資産を急激に増加させ又は増加させようとしているとき。」これは一つの再発防止処分要件になっているわけですね。こういう点を調べるために帳簿を見なきゃならぬ場合もあると思うのですね。帳簿を見れば有力な証拠になるわけですね。その際にも、そういう疑いがある場合でも、帳簿は任意でなければ見れないということになるのでしょうか。
  214. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この場合は、残念ながら、相手が拒否した場合には見ることはできない。そのかわり、その拒否に対して罰則を設けている次第であります。
  215. 漆原良夫

    ○漆原委員 帳簿閲覧の拒否についての罰則というのはあるでしょうか。
  216. 臼井日出男

    臼井国務大臣 当然、そのものに対して拒否した場合には罰則を受けるということはうたわれております。
  217. 漆原良夫

    ○漆原委員 これで言うと何条になるんでしょうか。
  218. 臼井日出男

    臼井国務大臣 三十八条、「立入り又は検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」こういうことになっております。
  219. 漆原良夫

    ○漆原委員 この「検査を拒み」になるんでしょうかね。この検査の中には、そうするとやはり帳簿閲覧受忍義務みたいなものがあって初めてこれは罰則の対象になるんじゃないんでしょうか。何も帳簿を見せる義務がないのに罰則があるというのもおかしいんであって、罰則があるということは、帳簿の提示あるいは名簿の提示を求められた場合に、それを見せなきゃならぬという義務があるからこそ罰則になっているんじゃないんでしょうか。どうでしょうか。
  220. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この立ち入りそのものは、行政的な処分を行うための調査ということでございます。したがいまして、特定犯罪を立証しようとする立ち入りとは異なりまして、そうした相手の拒否に対して強制的に私どもの方からあえてそれを行うということはできない仕組みになっているのでございます。
  221. 漆原良夫

    ○漆原委員 ここを争うつもりじゃなくて、今突然こんなふうになって僕もびっくりしているんですが、これは大事なことなんであって、帳簿だとか名簿だとか、そういうものを見せろと言った場合に、嫌だと言う、要するに見せろと言ったときに応ずる義務はないんだということでいいんですか。ないけれども、その場合には犯罪になるんだということなんでしょうか。
  222. 山本有二

    山本(有)政務次官 五条で観察処分というのがございまして、その一つ目には報告義務がございます。その報告義務の中には、人、物、金について詳しく三カ月に一回報告しなければなりません。したがいまして、その帳簿等も恐らく参照できることだろうとは想像しますが、他方で、立入検査という場面もございます。したがいまして、それは重畳的にその帳簿をある程度明らかにはできるでしょうけれども、強制力を使うわけにはまいりませんので、任意的提示、そういうものが原則になろうと思います。  したがって、先生指摘のように、もし見せない場合には、それは観察処分から再発防止処分への一つの検査を拒みという概念の中に入ろうかと思いますので、そういうような方向性で考えるべきではないかと存じます。
  223. 漆原良夫

    ○漆原委員 検査を拒みになるんでしょうかね。実際に立入検査をした、帳簿を見せろと言われて見せなかった、それで再発防止処分にいっちゃうんですか。
  224. 山本有二

    山本(有)政務次官 当然、検査結果を明らかにするために必要かつ合理的な範囲の中で、施設や設備の写真を撮影したり事務所の見取り図を作成したりすることができるわけでありまして、必要かつ合理的な範囲、これを超えるわけにはまいらないということでございます。
  225. 漆原良夫

    ○漆原委員 ここばかり聞いていると本当に聞きたいところが聞けなくなっちゃうんでこの辺でやめておきますが、その点、いずれはっきりしたことをまた機会があればお尋ねしますので——じゃ、大臣にひとつ。
  226. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員指摘のとおり、そういった意味ではちょっとかゆいところに手が届かないという感じもいたしますが、御承知のとおり、行政手続の場合は裁判所の令状等を要しないということになっておりまして、義務はあるけれども、その義務に服さない権利も相手様は持っている、したがってその場合は後で刑事罰というものを加える、こういうふうな仕組みになって対応できるということになっているわけであります。
  227. 漆原良夫

    ○漆原委員 時間がないので、納得できないけれども先に——ありますか。
  228. 山本有二

    山本(有)政務次官 八条一項後段に「前条第二項の規定による立入検査が拒まれ、妨げられ、若しくは忌避された場合であって、当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認められるときも、同様とする。」これに当たると解釈しております。
  229. 漆原良夫

    ○漆原委員 そこはそのようにお聞きしておきます。  この立入検査は公安調査庁の長官または警察庁長官の指示を受けた警察本部長の命によって行われることになっておるわけでございますけれども、本法による立入検査の場合には、今大臣がおっしゃったように、まず令状が要らない。それから、検査する設備、帳簿類等の特定も要らない。また、差し押さえ令状、これは刑事の差し押さえ令状ですと罪名が入っておりますので、何の罪によって、何の嫌疑によって差し押さえ、捜索されたかわかるわけですが、本法による場合は令状がないわけですから、どういうことで立入検査を受けているのかわからない、こういう事態になるわけでございますけれども憲法三十五条ではこう書いてあります。「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」こういう条文があるわけでございます。  今、令状も要らない、それから検査する帳簿、施設特定も要らない、理由を告げることも要らない、こういう立入検査の仕方というのは、この憲法三十五条の精神から見ていかがでございましょうか。
  230. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員指摘のとおり、本法による立ち入りというのは、令状も不要である、検査対象物の特定が不要、立入検査の理由の告知も不要である、こういうことでございますが、私どもの本法による立ち入りというものは、団体役職員または構成員団体活動として過去に無差別大量殺人行為を行い、かつ現在においてもなお危険な要素を保持している団体について、その活動状況を継続して明らかにする必要があるとして観察処分に付された場合でございます。団体活動を明らかにするために特に必要があると認められたときに限り観察処分の実施の一環として行われるものでございます。  御指摘のとおり、本法案の立入検査に対して裁判官の発する令状、検査対象物の特定あるいは立入検査の理由の告知は不要となっておりますけれども、この立入検査は、先ほど申し上げましたとおり、刑事上の処罰を目的とする手続ではございません。刑事事件の資料収集に直接結びつく作用を一般的に有しないこと、それから立入検査の拒否、妨害等については刑事罰が科されておりますが、その強制の様態、程度は間接的なものにとどまっている、直接強制力は有さない、また、このような観察処分に付された団体活動を明らかにするという必要性公共性及び緊急性は極めて高い、立入検査はこの目的実現の上で必要不可欠であること、それらのことを考慮した上で十分に合理性がある、また、憲法三十五条の法意に反するものということには私ども考えておらないのでございます。
  231. 漆原良夫

    ○漆原委員 捜査ではない、行政手続だということをおっしゃいましたが、これは国家の側から見た理屈でありまして、住居に侵入される側から見れば、それが捜査であろうと行政手続であろうと、全く家庭の平和、住居の平和、静ひつを害されることには何ら変わりはないわけでありまして、憲法三十五条は、国家国民の間の基本的人権を定めた、その住居に侵入する、家庭の静ひつを侵す最も典型例として捜査というのを挙げているわけであって、国民の静ひつを守るという観点から見れば捜査も行政手続も同じじゃないか、国民は国からむやみやたらに家庭に入ってもらっちゃ困るんだという、これが憲法三十五条の精神じゃないのかなというふうに私は思っておるんですが、そういう観点から見れば、今大臣のおっしゃったことは国から見た理屈であって、家庭に入られる立場から見た理屈じゃないんじゃないかなと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  232. 臼井日出男

    臼井国務大臣 本法に関して考えてみますれば、こうした立ち入りが行われるということに至ったその主たる原因ということは、まさに冒頭に申し上げました二つの大きな要件、過去に大量無差別殺人行為を実行した団体である、こういう団体が引き続き強い勢力を残して活動している、こういう相手に対してこの立入検査というのは行われるということを考えますと、私は許容できる範囲ではないだろうか、このように思っておる次第でございます。
  233. 漆原良夫

    ○漆原委員 この立入検査の対象として、七条二項は「設備、帳簿書類その他必要な物件」となっておりますが、その範囲は一体どこまでなのか。設備はどこまでの設備で、どこまでの帳簿書類なのか、その範囲はどこまでかということと、その範囲はだれが、いつ判断するのか、これについてはいかがでしょうか。
  234. 臼井日出男

    臼井国務大臣 どこまでが許容の範囲かというお尋ねでございますが、これは、団体活動状況を明らかにするために必要かつ合理的な範囲の一切の物件である、こういうことが申し上げられると思います。  また、立入検査における検査の場合は、必要な物件というものを五官の作用によって調べる、こういうことを意味しておりまして、検査の範囲の相当性につきましては、第一義的には、現場で調査に当たる公安調査官や警察職員がその現場の状況に応じて判断すべきものと考えておる次第であります。
  235. 漆原良夫

    ○漆原委員 そうなんですよね。第一義的には、今大臣おっしゃったように、その調査に当たる現場の公安調査官なり警察職員が判断するんだと。  そうすると、その判断は、現場の調査する立場の人にある意味では全く白紙委任されているんじゃないかなという感じを受けるんですが、いかがでしょうか。
  236. 臼井日出男

    臼井国務大臣 おっしゃるとおり、現場の調査官にその権限というものは任されている次第でございます。  しかし、これは単なる白紙委任ということではございませんで、本法の第三条におきましては、第一条の目的を達成するためには必要最小限度において行えるというふうに規定をいたしておりますし、調査に当たる調査官や警察職員は、その規定の趣旨を踏まえて、必要かつ相当と認められる範囲ということにいたしております。  また、先ほど来申し上げましたとおり、公安調査官等の職権濫用に対しては刑法よりも重い罰というものがかけられている、こういうことによって自制措置がとられていると私どもは理解をいたしております。
  237. 漆原良夫

    ○漆原委員 必要かつ合理的な範囲で検査をするんだ、こういうふうになると思うのですけれども、捜査もそうなんですが、やはり現場に行けば行くほど、もう少し、もう少しということでそれが広がっていく。刑事事件の場合には広がらせないために令状できちっと明示したわけですよね。ところが今回は令状で明示がないわけですから、ある意味では、事後的には今大臣がおっしゃったように罰則が設けられて逸脱ができないと言われているけれども、現実には逸脱をする可能性が十分あると私は思っております。  そこで、公安調査官または警察職員の立入検査に関して、公安調査庁の長官そして警察本部長の「特に必要がある」という、この判断の適法性ですね。この「特に必要がある」という判断は公安調査庁の長官とそれから警察本部長がやるわけなんですが、その判断の適法性と、現場で立入検査を実施している公安調査官または警察職員の検査の適法性というのは、一体どこで、どのように担保されているのか、お尋ねしたいと思います。
  238. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員お話しになりました公安調査庁長官または警察本部長の「特に必要がある」との判断の適法性の問題でございます。  一般的に申し上げれば、行政処分の一環として行政庁より行われる立入検査というものは、当該行政庁以外の機関による審査、承認の手続というものは必要ないとされているわけでございますが、立入検査の要件の存否は、当然のことながら当該行政庁責任においてすべきものでございます。  これに対し、本法の立入検査というものは観察処分を受けた団体に対して行われるものでございまして、公安審査委員会観察処分を行う場合には、その処分を決定する時点で、特に必要と認められる場合には、対象団体の所有しまたは管理する土地または建物に立入検査を行うことがあるということを認めておりまして、対象団体がその立入検査を受忍しなければならない旨の判断を行うことになっております。  このように、本法案の立入検査は、その執行に先立って準司法的機能を有する公安審査委員会の判断を経る仕組みになっているという意味で、行政処分一般に比較して特に慎重な手続がとられているというふうに考えられるわけでございます。  その上、本法第二条及び第三条法律による規制の濫用を厳しく戒めておりまして、立入検査の実施に当たる公安調査官及び警察職員がその職権を濫用した場合には、先ほど申し上げましたように重い刑罰を科すことによって、職務の執行の適正性を確保しているのでございます。  これら実施機関相互の承認、協議の手続の過程で、個別の立入検査につき要件の存否や必要性の有無、実施の方法等を慎重に検討いたしまして運用の適正に万全を期すことができる、このような仕組みになっているのでございます。
  239. 漆原良夫

    ○漆原委員 具体的な検査行為についての不服申し立てはできませんね。いかがでしょうか。
  240. 臼井日出男

    臼井国務大臣 行政組織法、行政処分という関係上、上級庁がありませんので、不服申し立てというものはできませんが、訴訟による担保というものはされているのでございます。
  241. 漆原良夫

    ○漆原委員 訴訟による担保というのは、これは国家賠償法とかそういうものでしょう。
  242. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今申し上げましたとおり、いわゆる行政不服審査法に基づく不服申し立て、あるいは行政事件訴訟法に基づく取り消し訴訟対象にならない、これは申し上げましたが……(漆原委員「いや、そこでいいです、そこで結構です」と呼ぶ)
  243. 漆原良夫

    ○漆原委員 大臣に嫌なことを最後に申し上げますが、今ずっと御質問をさせていただいて、この条文を読ませていただいて、私の頭の中にあるのは、ある日突然数人の公安調査官とか、または警察の職員が来て、令状も示さないで、理由も告げないで、ただ建物や施設の中を見せろといってばたばたと家の中へ入り込んでくる、それであちこち物色して、その住人は何事が起きたか全くわからないでおろおろしている、極端に言うとこんな状況が私の目に浮かぶわけなんですが、こういう状況が民主主義国家として果たしていいんだろうかという根本的な疑問を持っております。  そして、立入検査の実施に当たっては、憲法三十五条の精神を尊重して、何らかの司法的チェックを受けるというシステムをするべきじゃないのかな。少なくとも、準司法機関である公安審査委員会が、立ち入り先についても証拠に基づいて個別具体的に認定するという仕組みをすべきではないのかな、こんな感じを持っておるんですが、いかがでしょうか。最後の質問とします。
  244. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、本法案というものは、刑事罰を処する、そういったものに関する立入検査と違いまして、行政処分を科するということでございます。したがいまして、罰則による間接的な強制というものにすぎない、こういうことが言えると思います。  したがいまして、この立ち入りは、当初私が申し上げましたとおり、どこにでも自由に立ち入れるというものではなくて、まさに大量殺人というものを犯した団体、しかもその危険性を持っている団体に限るという大前提がございますので、その辺は担保できるもの、こういうふうに私は考えております。  また、先ほど、一つ一つの案件につきましても公安審査委員会の了解を得るというふうにしたらどうだということがあったわけでございますが、そもそも、この執行に先立ちまして、準司法機関である公安審査委員会というものが立ち入りをしてよろしいという許可を与えているということがあるわけでございまして、目的の迅速性というものを考えますと、一々の案件について公安審査委員会の了解を得るということは適当ではないのではないか、こう考えております。
  245. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  246. 武部勤

    武部委員長 横内正明君。
  247. 横内正明

    ○横内委員 自民党の横内正明でございます。  きょうは、政府委員制度が廃止されて審議方式が変わって最初の委員会でございまして、けさから四時間にわたって、臼井法務大臣には、時として政務次官の適切な補佐をいただきながら、ほとんど大臣一人で答弁しておられるわけであります。大変お疲れのようですけれども、私が最後ですから、しばらく御辛抱いただきたいと思います。  冒頭に一点確かめておきたいんですけれども、午前中の日野先生の御質問、それから先ほどの保坂委員の御質問で、国際テロ組織の話が出ました。その御質問の趣旨は、海外で無差別大量殺人をやった国際的なテロ組織というものはこの法律対象になるのか、そういう御質問の趣旨だったわけでありますが、それに対して大臣の御答弁は、そういう外国で無差別大量殺人をやった場合もこの法律適用になるよというような趣旨の答弁でございましたが、ちょっとそこが混乱をしておりましてわかりにくかったものですから、もう一度、確認の意味で正確に御答弁をいただきたいと思います。
  248. 臼井日出男

    臼井国務大臣 本法案は、基本的には我が国における公共の安全の維持を目的とするものでございますから、無差別大量殺人行為も国内で生ずべきものを対象とするのを原則とする、これは当然のことでございます。  ただ、極めて例外的に、海外において我が国の要人が大衆の中で爆弾をもって殺傷される、そうしたことのように、我が国の政治体制等に対しても攻撃が国外で行われるということもあり得るわけでございまして、このような場合には、我が国の公共の安全の維持にもかかわるものとしてこれが適用対象になるということは否定できないところでございます。  午前中の私の答弁には、このような例外的な場合も念頭に置いてお答えをいたした次第でございます。
  249. 横内正明

    ○横内委員 そういたしますと、この無差別大量殺人が海外で行われた場合には、それが日本に関係のない政治目的で行われた、そういう無差別大量殺人については本法の適用はない、つまり単なる国際テロというのは本法の対象とはならない、そのように考えてよろしいですか。
  250. 臼井日出男

    臼井国務大臣 そのとおりでございます。
  251. 横内正明

    ○横内委員 オウム教は全国で三十四カ所の拠点を持って、そのうち二十三カ所で地域住民反対運動が起こっているわけであります。その反対している地域住民の皆さんの希望というか目標を聞いてみますと、オウム施設を完全に撤去してもらいたい、完全に撤退をしてもらいたい、自分らの地域からきれいさっぱりなくなってもらいたい、それが目標で運動をしているわけでございます。  ところが一方で、この法律は、オウムの無害化といいますか、オウム危険性をなくする、そしてその住民の不安をなくする、そういう目的ではあるのですけれどもオウムを完全に撤去するという法律ではないわけですね。それは破防法の解散の問題でございます。  したがって、この法律の施行によって、先ほど漆原委員との御質問、答弁にありましたように、ある地域の、ある施設の中で何をやっているかわからなくて何か悪いことをしているかもしれない、そういう不安はこれによって解消される。そういう意味で、住民の不安というのは大変に解消されるわけでありますけれども住民が完全に施設を撤去してくれということまで希望するとすれば、それは満たされないわけですね。この法律では、やはりオウム信者が平穏に集団で居住している、そういうものである限りは、それを撤去するとかそういうことはできないわけで、それは住民の皆さんは甘受してくださいよというふうに言わざるを得ないわけでございます。  しかしながら、地域住民の素朴な国民感情としては、住民感情としては、何ぼ平穏に居住をしていても、やはりそこにオウムが存在するということ自体が不安だ、とりわけ例えば観光地なんかでは、オウムがあるというだけで風評、風説被害でもう観光客が来なくなるというようなことがあるわけですから、地域住民の希望としては、そうはいってもやはり完全に撤去してくれ、そういう希望を持ち続けて政府に要望し続ける、そういう可能性があると思うんですけれども、仮にそういうような陳情が出てきたとしたら、大臣としてはどういうふうにお答えになるのか、それをちょっと言っていただきたい。
  252. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お話をいただきましたように、その施設を完全撤去するということは、本法ではこれはなし得ないところでございます。  一方、私のところにもいろいろ陳情が参ってきておりますが、その陳情をお伺いいたしますと、オウム施設があり、その施設自体が不透明であって、中で何をやっているかわからぬ、そういう不安が非常に先に立っておられるというのが非常に多いように思います。  したがって、地方自治体もそれらの住民皆さん方のお気持ちをしんしゃくして大変苦しい立場に立っている、こういうふうに考えておりまして、私どもは、そうしたオウム真理教施設の実態というものを明らかにする、そういうことによってその周辺の皆さん方の不安というものを解消するということが極めて大切だと思っておりまして、私どもとしては、この法案を施行することによりまして、それらの現に困っている方々のこの種施設、そういったものに対してしっかりと内容を明らかにして的確な処分ができる、このような法律に仕上げてまいりたい、このように考えております。
  253. 横内正明

    ○横内委員 したがいまして、そういう努力によって地域住民の不安を除くということをされるわけでありますけれども、しかし、オウムの信者が平穏に居住をしている限りにおいてはそれは何もできないわけですから、そういう施設は残るわけですね、そういうオウム拠点は残るわけです。しかし、そういうのが残ると、地域住民としては、政府として、国として安全だ、安全を保障してくれているんだけれども、なおやはりそういうものは気味が悪いとか不安だ、そういうことがあるわけで、特に観光地なんかで、やはり非常に困るということもあるわけですね。  だから、そういうような、単にオウムの信者が居住しているだけの施設についても、警察なり公安調査庁というのはぜひひとつ常時監視をする、時々行って立入検査するというだけじゃなくて、常時警察なり公安がそこにいて見張っている、そういう状態をつくることによって地域住民の安心を確保してやるという必要があると思います。そういう常時監視というようなことをぜひやってもらいたいと思いますが、いかがですか。
  254. 臼井日出男

    臼井国務大臣 公安調査庁立場でお答えをするわけでございますが、これまでも大規模施設につきましては監視活動を鋭意続けてきておるところでございますけれども、この法案が成立をいたしまして観察処分が行われるという場合には、新法に基づく調査の一環として、警察庁と緊密な連絡をとりながら、一層充実した体制で必要な監視活動を引き続き行っていく所存でございます。
  255. 横内正明

    ○横内委員 今の点に関連しまして、きょうは自治政務次官大蔵政務次官に来ていただいておりまして、政府委員制度がなくなったものですから、大臣か政務次官に質問しなきゃいかぬということで大変申しわけなく思っております。  自治次官にお伺いしたいのですけれども、かねてから転入届の不受理の問題がありまして、八十を超える自治体が転入届の不受理ということをやっている。それは、自治体も非常に悩んで、それが違法であることは承知の上で、しかしやはり住民感情というものを無視できない、したがって、暫定的な緊急避難の措置として転入届の不受理をやっているんだろうと思います。  それに対して自治省も、この問題は非常につらい、悩ましい問題だったろう、そう思うわけでありますけれども、いつまでもこの問題をあいまいにしておくわけにもいかないわけであります。そこで、このオウム二法が成立をするということを踏まえて、この問題について自治省はこれからどういうふうに指導をするのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  256. 平林鴻三

    ○平林政務次官 委員よく御承知のとおり、多くの市町村でオウムの関係者の転入届を受理しない、こういう現象が起こっておりまして、前国会でもそのようなことにつきましての質疑が行われておりました。前大臣の野田自治大臣でありますが、これは市町村長が苦渋の中でさような行為をした、不受理という行為をしたということで答弁を申し上げております。今日もなおそのような市町村長さんのお気持ちは続いておるだろうと思っておりまして、この法律が成立をいたすということ自体が非常に大事なことで、そして、市町村長さんに一々お尋ねはしておりませんけれども、恐らく法律の成立を待ち望んでおられるものと思います。  要するに、オウムが従来巻き起こしてきた地域社会に対する恐怖感、そのようなものが自分たちのところに起こってはならない、そういう市町村長さんのお気持ちで行われておると思いますので、この法律が成立することによって幾らかの安心は得られるけれども、そこの先についてはなおまた引き続いてそういう苦渋に満ちた行為をせざるを得ないということは考えられるなと私は思っております。  しかしながら、この法律が成立するとしないとでは、これはやはり社会に与える影響は大きく違ってくるものだと思いますので、法律の成立を期待いたしておるところでございます。
  257. 横内正明

    ○横内委員 自治次官にはもう退席いただいて結構です。ありがとうございました。  次に、オウムの信者の社会復帰ということがよく言われておりまして、一部の有識者とかあるいは一部のマスコミとか、例えばオウムウオッチャーと言われる江川紹子さんとかそういう人たちは、政府は、信者の社会復帰を促進する、そういう努力をすべきだということを盛んに言っているわけでございます。  信者がオウム真理教を離れて親元へ帰るとか、あるいはマインドコントロールが解かれるとか、そういうことを政府として促進をすることが大事だという意見があるわけでありますけれども、実はそういうことは四年前、オウム教に対する一斉強制捜査があった後、平成七年の秋ごろだったと思いますけれども、そういう議論が巻き起こりまして、政府も省庁横断的な関係省庁会議というようなものをつくって、社会復帰対策もやらなきゃいかぬというようなことで、各県に一つずつ信者が相談できる相談窓口をつくって、そこへ相談に来れば就労のあっせんはするとか、あるいは親元へ帰すについては一部、旅費がなきゃ旅費でもやるとかそんなようなこともやろうなどということを実際やったことがある。しかし、実際に相談に来たかというと、ほとんど信者は来なかった。結果的に、政府がいろいろ社会復帰対策をやろうとしましたけれども、ほとんどそれは効果がなかったと聞いております。  そういう経緯、経験もあるんですけれども、一方でしかし、政府としてぜひそういう信者の社会復帰、マインドコントロールを解く努力をしなきゃいかぬというようなことが盛んに言われるわけですが、その辺について法務大臣はどのようにお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  258. 臼井日出男

    臼井国務大臣 この法案でもってオウム真理教をしっかりと監視し、地域の問題を解決していくということも大切なことでございますが、一方、今委員お話しのとおり、規制対象となったオウム真理教の信者やこれを脱会した元信者の社会復帰に役立つ方策をしっかりと講じていくということも極めて大切なことでございます。この問題につきましては、政府全体として各省庁間の連絡を緊密にとって実施をしていくべきでございます。  委員お話しのとおり、平成七年の六月にオウム真理教問題関連対策省庁連絡会議というものができまして、これは九月に廃止になっているわけでございますが、今回、最近の信者等の社会復帰対策の動きにつきまして、平成十一年の十一月一日、オウム真理教対策関係省庁連絡会議というものが開かれまして、社会復帰対策の重要性を確認させていただきました。また、同月、十一月八日には、オウム真理教信者等社会復帰対策調整担当官会議というものを開いておりまして、各省庁間でこれらを検討していこう、こういうことになっておりまして、今後私どもといたしましても、省庁間でよく連絡をとりまして、実効性ある対策というものをしっかり立ててまいりたい、このように考えております。
  259. 横内正明

    ○横内委員 全国オウムの拠点のある地域の住民は、この法律が一日も早く施行をされて効力を発揮するのを期待しているわけでございます。とりわけ、例えば大田原とか群馬県の藤岡とかああいうところは、四六時中監視小屋みたいなものをつくって地域住民監視しているんだそうで、寒風の中大変に苦労をしているわけですけれども、これから正月が来れば正月の間も見張りをしなきゃいかぬなどということになっている、そういう地域もあるわけでございまして、年内にできるだけ早く施行をしていくことが必要だろうと思うんです。  この点は野党各党も御理解をいただいておりますから、年内に施行できるだろうというふうに思っておりますけれども、年内にこの法律が施行されたら、政府としてはすぐ、まず第一弾、アクションを起こすとしますと、公安調査庁長官観察処分の請求というのを公安審査委員会に出す、これからスタートするわけですが、それはもう年内にそれを出すということで予定をしているということでよろしいでしょうか。
  260. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員お話しのとおり、できるだけ速やかにこの法案を実行するということは大切でございまして、公安調査庁におきましても、本法施行後速やかに与えられた権限を的確に行使することができるよう、現段階でできる限りにおいて必要な準備をいたしているところでございまして、一日も早く成立をし、国民の期待にこたえるようにいたしたいと思っております。
  261. 横内正明

    ○横内委員 次に、少し条文解釈の話になるんですけれども、午前中の福岡委員質問にもちょっと出ておりましたが、規制対象となる団体の定義というのが第四条二項にございます。  これは、特定目的を持った複数の集団だ、結合体だ、こう書いてありますけれども、任意団体オウム真理教対象団体となるわけです。オウム教の関連会社というのが約四十社ありまして、そのうち動いている会社が約二十社あると言われております。パソコンショップの会社とかラーメン屋の会社とかあります。こういう関連会社というのが「団体」ということに入るのかどうかというところですね。福岡委員質問に対する答弁ではもう一つそこのところがはっきりしないところがありました。  例えば、パソコンショップを経営している会社なんというのは役員も社員も一切オウムの信者ですからね。全部信者だ。出家、在家を含めて、信者以外の人間が入っているということは考えられないわけです。そういう組織というかオウムの関連会社というのは広い意味のオウム真理教という団体を構成する一部であって、当然この法律規制対象になるというふうに理解しているんですけれども、そういうことでよろしいかどうか。  そうやって関連会社も規制対象にしないと、肝心の資金のパイプの方がノーズロになるわけですから、これは福岡委員もそうおっしゃっていました。やはりこの資金のパイプをきちっと閉めることが大事でして、そこのところはぜひ野放しにならぬように、そういうパソコンショップを初めとする関連会社もきちっとこの法律規制対象にするということで努力をしていただきたいと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  262. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員お話しの点につきましては、私どもの新法と、それから被害者救済法とあわせて、両々相まってしっかりやっていく必要があるわけでございますが、一般論的に申し上げますと、規制対象団体とは別法人の形態をとっている関連企業があったとしても、規制対象団体と同一性を有する場合は規制対象団体に内包される、こういうふうに考えられるわけでございまして、本法第四条二項の団体に含まれるものと考えております。  したがいまして、任意団体オウム真理教規制対象団体とした場合においては、オウム真理教とは別法人であったとしても関連企業が規制対象になるか否か、それはまさに、当該関連企業がオウム真理教と同一性を有するか否かというものにかかわってくるというふうに考えるわけでございまして、さらにオウム真理教に内包されるか否かを、今後、個別具体的に判断していく必要がある、このように考えております。
  263. 横内正明

    ○横内委員 次に、この法律再発防止処分というのがありますが、施設の使用禁止とか布教の禁止とか、場合によってはお布施を禁止するとか、そういうようなことをやるわけですけれども、これは破防法の活動制限と同じ程度の強さを持った処分だろうというふうに思うわけであります。  そこで、一部の新聞等にも言われておりますけれども規制手続が破防法に比べて簡素ではないか。例えば、破防法では公安調査庁が請求する前に相手方の聴聞、弁明の機会を与えなければいかぬとかそういうことが書いてありますけれども、破防法に比べてこの手続が簡素ではないかということを問題にする向きがあります。その点が法体系のバランスとしてどうだろうか、そういう意見があるわけですけれども、これについていかがでしょうか。
  264. 臼井日出男

    臼井国務大臣 お説のとおり、破防法におきましては活動制限及び解散指定処分等について規定をいたしているわけでございますが、これはいずれも、将来さらに暴力主義的な破壊活動を行う明らかなおそれがあるかどうか、こうした将来の展望を基準といたしておりまして、これを行うための最終処分である。大変厳しい処分でございます。  一方、私どものこの新法というのは、暴力主義的破壊活動のうちでも最も無差別大量殺人行為というものが重大な被害をもたらすもの、その遂行が容易である、そして事前防止が困難である、そういったものであるということにかんがみまして、破防法とは異なった団体規制の仕組みを設けたわけであります。  これらの問題について本法の定める規制措置というものは、対象団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の増大等を防止することを目的としている、一時的に団体活動の一部を停止させるにとどまる、いわば破防法に比べて中間的な措置処分であるということでございます。  これについては、むしろ迅速な対応が求められる、その処分も、内容が危険の程度に応じた範囲に限られるということになっておりまして、破防法による規制措置に比べて、対象団体に与える不利益の程度に差がある、こういうふうに考えております。  そこで、公安調査庁長官による処分請求の後に公安審査委員会行政手続上弁明の機会の付与の手続を与える、そうした意見聴取の手続を行うことができるというふうにして、配慮をいたしているところでございます。
  265. 横内正明

    ○横内委員 次に、三十一条で、公安調査庁がいろいろ立入調査をしたり、そうした調査結果を地元の自治体に提供し公表をするという規定があります。この規定の中で、個人の秘密または公共の安全を害する場合を除き提供する、こう書いてあるわけですけれども、この個人の秘密または公共の安全を害する場合というのはどういう場合なのか。  言わんとする趣旨は、できるだけ地域住民にオープンにしてやる。下手に隠すようなことをすると、かえって疑心暗鬼になって、やはり何か隠れているのではないかという不安を増幅しますから、なるべく調査内容は、もちろん信者の個人の名前とかそういうことまでは出さなくてもいいですけれども公安調査庁施設の実態を調査した、その調査の結果はできるだけ地域住民にオープンにしてやるということが大事だと思います。そういうことで運用していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  266. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員お話しのとおり、こうした問題についてはできる限りオープンにするというのが望ましい、こういうふうに考えております。  一方、この条文でもって申し上げております三十一条の「個人の秘密」というのは、例えば個人の前科の問題とか犯罪履歴、いわゆるプライバシーに関する事項というものを言っておりまして、「公共の安全を害するおそれ」という意味は、公安調査庁が業務を遂行する上で支障が生じることを含めて、情報が公になることによって公共の安全の確保が期しがたい、こういうおそれということを意味しているわけでございます。  ただいま委員から情報は幅広くオープンにとの御指摘をちょうだいいたしましたが、私どもといたしましては、関係地方公共団体に対し観察処分の結果を提供いたしまして、住民の不安を少しでも解消するように、これからも可能な限り情報提供をしっかりいたしてまいりたいと考えております。
  267. 横内正明

    ○横内委員 ありがとうございました。  次に、もう一つの、いわゆる財産回復に関する特別措置法の関係でございます。  この法律が必要となった理由というのは、オウム真理教がかなりの隠し財産をしていて、本来破産財団に入るべき財産が流出をしている、非常にそういう疑いがあるということと、そして、その隠匿財産を破産管財人が取り戻すわけですけれども、通常の方法ですと、破産管財人が流出財産であることを立証して不当利得返還請求権で取り戻すわけですけれども、このオウム真理教の場合にはそういう通常の方法での取り戻しというのが非常に困難である、極めて困難である、そういう事実があるということで、この挙証責任の転換をする法律をつくる必要があるということでありますけれども、今の二つの点につきまして、オウム教が相当な隠匿財産があるんじゃないかということ、それからもう一つは、通常の方法ではなかなか返還請求が困難だということ、その辺を少し具体的に説明をしていただきたいと思います。
  268. 杉浦正健

    杉浦議員 提案者としてお答えをさせていただきます。  おっしゃいましたとおりの目的でこの法律を提案するに至ったわけですけれども、一般論なんですが、法人破産宣告を受けますと、裁判所が破産管財人を選任する、その破産管財人がその法人の全財産を掌握するわけであります。そして、換価いたしまして、債権者に優先順位に従って配当する、配当といいますか配分する、こういうふうになるわけなんです。  したがいまして、通常ですと、破産宣告は、団体として活動する財産がなくなるわけですから、基盤を失ってしまうわけでありまして、その法人は消滅するのが普通の運命であります。  本法の最初の適用を受けるということが予定されているオウム真理教に関して申しますと、破産宣告を受けた宗教法人オウム真理教は、破産管財人の管理下に置かれております。現在阿部先生という立派な弁護士の先生が破産管財人をなさっているわけですが、破産宣告活動が活発化している。存続しているのみでなくて活動が活発化している。新規に資産を取得したということもあちこちあるわけでございまして、無差別大量殺人行為を敢行したこのような危険な団体が、破産宣告にもかかわらず、宣告の前後同一の危険な団体として存続しているというわけであります。そのこと自体が極めて異常なことでございますし、そのこと自体、破産管財人による財産の管理を免れたものがかなりある、隠匿されている財産があるに違いないということを推測させておるところだと思います。  私が、阿部先生、破産管財人に伺ったところによりますと、地下鉄サリン事件あるいは松本サリン事件を敢行した後、オウム真理教が相当数の資産を信者の名義あるいは元信者の名義にする等で隠匿した、多数行われていたようであります。そのかなりな部分については管財人の掌握するところとなっておりまして、取り戻されております。  管財人のお話によりますと、去年の暮れですか、中間配当をなさったそうですが、約十億円の資産を回収されまして、二二%の回収をされたというふうに承っておりますが、その中のかなりな部分、彼らが隠した財産を取り戻したものがあるというふうにおっしゃっております。取り戻した十億円のうちの五千万円については、オウムの幹部が持ってきた、これは教団から預かったものだと言って持ってきた現金もあるということであります。また、その人の話によりますと、証拠は十分じゃありませんが、ほかにも同様に大量の資金を多くの信者が預かっているというふうにその方は言っていたということでございます。  そういったことからいたしますと、相当財産が流出し、隠匿行為が行われたのじゃないかと思われるところであります。これはまた管財人にとっては伝聞でありますけれども、その事件の直後にサティアンの中には七億円もの現金があった、そういうような話も伝わっておるということでございます。  そしてもう一つは、オウム真理教の場合には、帳簿類を一切つけていなかった、こう言っておるそうであります。つけていたかもしれないわけですが、つけていないと言って、管財人のもとには一切帳簿は引き渡されていない。したがいまして、相当あったに違いないけれども、証拠といいますか痕跡が全くない。それから銀行口座も、オウム真理教名義の銀行口座にはほとんど預金がなかった。信者とか元信者とか、関係の名前で相当預金があったに違いないけれどもオウム真理教名義の預金はほとんどなかったということでございます。したがって、実情は全くわからない。あれはオウム財産に違いないというものを相当認知はされておりますけれども、確たる証拠がないということで、破産管財人が追及できないという実情と承っておるところでございます。  このように、この無差別大量殺人を敢行した団体が、破産宣告にもかかわらず、存続し、かつ拡大している、事業拠点もふやしておるということが一方にあり、片や負担している負債は莫大であります。地下鉄サリン事件松本サリン事件等、死者、負傷者合わせて三千名ぐらい、届け出債権が五十億円という、その損害賠償請求債権だけとってみても巨額になるわけですが、そのうち一部しか弁済されない。また、彼らとしては、任意に弁済の責めを負おうとする反省の情もさらさらないという集団でございますので、破産管財人による流出財産の請求がしやすくなるという措置、これは破産法の特例という法律になるかと存じますが、そういう措置を講ずることが絶対に必要だということで、立案に及んだ次第でございます。
  269. 横内正明

    ○横内委員 この法律は議員立法でやるわけでありますけれども、一方で、この双子の団体規制法は政府提案ということであります。向こうは政府提案で、これは議員提案という、そういうふうに仕分けた理由というものを御説明いただきたいと思います。
  270. 杉浦正健

    杉浦議員 一時期は、両方とも議員立法でやろうかと私ども考えた時期もございました。  委員の方は覚えておられると思いますが、私が委員長をしておりましたときの法務委員会におきましても、何人かの委員の方々がオウムの実情を指摘され、法的措置をとらなければならないということをこの委員会の席で申し述べられたわけであります。また、地方自治体から法務省にも陳情が相次いだようですが、そのうち私のところにも、法務委員長ということで、十を超える地方自治体から陳情団がお見えになりまして、直接実情も承ったわけであります。委員長という立場から、もちろん党の方にもその旨は伝えましたし、また官邸の方にも連絡をとって、法務省にはもちろんでありますが、対応必要性は訴えておったわけでございます。  一時期法務省は、八月の中ごろぐらいまでですか、破防法そのものを改正してオウム対策をするということを考えておられたのも御案内のとおりでございます。私は、破防法の改正なんか無理だ、団体全部にかかるわけですから、観察処分にしても規制処分にしても、事実上オウムしかかからない、これは一般的にかかるような規定になっていますが、事実上オウムしか現状では適用団体はないわけですが、そういうものでない限り、とても緊急の立法は無理だ、対策は緊急を要するから、場合によればオウム真理教禁止法でもいいではないかと個人的に申し上げておったわけなんですが、法務省としては閣法で、しかも破防法を改正するというお考えだったわけであります。  それで、法務省の考えが、夏、お盆過ぎに変わったわけですけれども、それまでは、官邸、それから、他党でオウム対策委員会をおつくりになっておられる党もあるわけですが、そういうところと御相談をして、これは議員立法でやろうかということを考えておったわけでございます。  議員立法といっても、私も幾つか主任者になってやりましたが、議員が直接つくるのではなくて、関連する役所を呼び集めて、方針を示して、骨子をつくって、衆議院法制局に頼んで条文をつくらせる。役所とか関連するところとは十分に意見をすり合わせて立法をやっていくわけでございまして、でき上がった法律法律でございますので、別に議員立法であろうと閣法であろうと変わりはないと思うのですが、本件についても、法務省が破防法の改正にこだわるとすれば、全部議員立法でもいいと思っておった次第であります。  中身については、提案しております破産法の特例法のようなものは、こういう考え方で当然やらなきゃいけないのじゃないかということは法務省とも話しておりましたし、観察処分規制処分等も、やはりオウムという前提で厳しくやる必要があるのじゃないかという話もしておったわけであります。  したがいまして、法務省の方で仕分けをされて、この部分は議員でお願いしたい、これは閣法でというふうに仕分けされたわけですが、我々もいいだろうと言ったのですけれども、閣法でやってもよかったとも思います。別に、この法律が問題があるからとか、多少乱暴だからこれは議員立法でとか、そういう趣旨では毛頭ございません。きちっとした破産法の特例として、これは破産管財人先生にも御相談しておりますし、きちっとした内容のものだということは間違いないわけでございますので、我々努力した議員の顔を法務省は立ててくれたのかなとも思ったりするわけなんですが、絶対にこれは閣法でなきゃいかぬとか、議員立法でなきゃいけないとかいうことではないと私は理解いたしております。
  271. 横内正明

    ○横内委員 最後ですけれども、大蔵次官には一般政務次官でもいいと言っておいたのですけれども、総括政務次官にお出ましいただいて、大変に恐縮に思っているのですけれども、去年からことしの前半にかけまして、オウム真理教が非常に拡大をして、全国に拠点を広げていった。その原因というのは、パソコンショップで年間七十億円というような、そういう巨額な収入があって、その潤沢な資金を背景にして拡大をしていったと言われているわけでございます。  そこで、去年からことしにかけて、地方公共団体とかそういうところから、やはり資金のパイプを断たなきゃだめだ、オウムの拡大をとめるには、やはり資金源を断たないといけないのだ、そういう声が随分ありました。そのために、いろいろな地方公共団体とか、また我々も、オウム真理教対策の国会議員の会みたいなものがありましたが、そういうところが大蔵省、国税庁にも大分何度も陳情して、資金のパイプを断つには、やはりそれは国税庁だ、国税庁が税務調査でしっかりやって、多分相当な脱税があるに違いないわけだから、やはり国税庁がしっかり税務調査をやって、脱税しているものがあれば、きちっとそれは処分をするということが大事だということを、相当いろいろなところから陳情が国税庁に行ったのだろうというふうに思います。  私も、ことしの二月に予算委員会の分科会でこの話をあれして、国税庁の担当者にも来てもらってそういう質問をしたのです。なかなか国税庁というのは一般論としての答えしかしなくて隔靴掻痒なんですけれども、しかし、そういう中で、担当の課長は、国会の論議も踏まえて、必要な調査を行って、課税の適正に努めますということはかなり明言をしまして、その後相当なことをやってくれているんだろう、そういうふうに期待を持っているわけでございます。  そこで、一点は、国税庁として、そういう指摘を踏まえて、例えば七月に何か新聞にちょっと出ておりましたけれどもオウムのパソコンショップに強制調査、税務調査をしたというようなことも出ておりましたが、そういう調査をやり、その結果として脱税の摘発もやったのだろうと思いますけれども、そういう今までのオウム教関連団体に対する税務調査状況、それをお聞かせをいただきたいというのが一点でございます。  それからもう一点は、今度のこの法案が施行されますと、立入検査もやったり、あるいは報告の徴収をしたりというようなことで、公安調査庁なりあるいは破産管財人には相当なオウム教の資金に関する情報が入る可能性があるわけでございますけれども、そういうものはぜひひとつ国税庁の方に通報をしてもらって、国税庁の方が引き続き税務の面の厳しいチェックをしていただきたい。というのは、やはりオウム教の資金のパイプ、年間七十億円ものパソコンの売り上げがあるというのは、やはりどこかに脱税とかそういうことがあるに違いないと常識的には思うものですから、それはやはりきちっと対応することがオウム教の資金のパイプを断つ非常に大きな、それで将来的にはそれを弱体化をしていく非常に大きな手段だと思いますので、引き続きぜひ国税庁にはそういう努力をお願いをしたいというふうに思います。  その二点について次官に御答弁いただきたいと思います。
  272. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 ただいま横内先生から、オウム関連会社の課税はしっかりやっているか、それから、今後法律が成立した後、公安調査庁を初め情報が集まってまいりますから、その情報を十分利用して、活用して、課税をしっかりやって、資金源を断つべきである、こういう御質問でございます。国民の声を代表する御質問として厳粛に受けとめさせていただきたいと思います。  ただし、税務行政という立場からいいますと、先生自身もおっしゃっておられましたけれども、個別論については国税庁は言わないのじゃないか、一般論でいつも答えているじゃないか、私も、きょう個別論では物を申せない、こういう立場でございます。なぜならば、守秘義務というのがございます。国家公務員法並びに各法に基づく守秘義務でございます。私も政務次官として守秘義務がかかっております。  そこで、一つ申し上げたいのは、税務行政、申告納税制度というのは、やはり納税者の税務当局に対する、国税庁に対する信頼によって成り立っているわけでございます。したがいまして、具体的なケースで申し上げますとその信頼を崩すことになる、そういうことで御勘弁をいただきたい。  ただし、一般論として申し上げたいと思います。一般論としては、どうぞ国税当局を信頼してください。国税当局は法に基づき適正に課税を行っております。法に基づき公平に税務行政を行っております。さらに、申し上げるまでもないことでございますけれども、関係者と協力して情報をいただき、その情報を参考にしながら、あるいは申告書をよく見せていただいて、必要に応じて実地調査をさせていただく、これによって公平なる課税を実行している、こういう立場でございます。  したがいまして、一般論として、どうぞ国税当局を御信頼くださいますようにお願い申し上げまして、答弁とさせていただきます。
  273. 横内正明

    ○横内委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
  274. 武部勤

    武部委員長 次回は、明十日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時八分散会