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1999-11-16 第146回国会 衆議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月十六日(火曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 中山 成彬君    理事 伊藤 達也君 理事 小林 興起君    理事 河本 三郎君 理事 山本 幸三君    理事 大畠 章宏君 理事 吉田  治君    理事 大口 善徳君 理事 塩田  晋君       小野 晋也君    岡部 英男君       奥田 幹生君    奥谷  通君       粕谷  茂君    小島 敏男君       古賀 正浩君    桜井 郁三君       新藤 義孝君    田中 和徳君       竹本 直一君    中山 太郎君       細田 博之君    村田敬次郎君       茂木 敏充君    森田  一君       山口 泰明君    奥田  建君       川端 達夫君    渋谷  修君       島   聡君    島津 尚純君       中桐 伸五君    中山 義活君       山本 譲司君    遠藤 乙彦君       中野  清君    福留 泰蔵君       青山  丘君    小池百合子君       藤井 裕久君    金子 満広君       吉井 英勝君    北沢 清功君     …………………………………    通商産業大臣       深谷 隆司君    国務大臣    (経済企画庁長官)    堺屋 太一君    金融再生政務次官     村井  仁君    経済企画政務次官     小池百合子君    大蔵政務次官       大野 功統君    通商産業政務次官     細田 博之君    通商産業政務次官     茂木 敏充君    労働政務次官       長勢 甚遠君    政府特別補佐人    (公正取引委員会委員長) 根來 泰周君    政府参考人    (外務省経済局長)    大島正太郎君    政府参考人    (通商産業大臣官房商務流    通審議官)        杉山 秀二君    政府参考人    (中小企業庁長官)    岩田 満泰君    商工委員会専門員     酒井 喜隆君     ————————————— 委員の異動 十一月十六日  辞任         補欠選任   川端 達夫君     中桐 伸五君   中山 義活君     奥田  建君 同日  辞任         補欠選任   奥田  建君     中山 義活君   中桐 伸五君     島   聡君 同日  辞任         補欠選任   島   聡君     川端 達夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  中小企業基本法等の一部を改正する法律案内閣提出第一号)     午前九時一分開議      ————◇—————
  2. 中山成彬

    中山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として、吉井英勝君の質疑の際に通商産業大臣官房商務流通審議官杉山秀二君、中小企業庁長官岩田満泰君及び外務省経済局長大島正太郎君、北沢清功君の質疑の際に中小企業庁長官岩田満泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中山成彬

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————
  4. 中山成彬

    中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林興起君。
  5. 小林興起

    小林(興)委員 おはようございます。  きょうは、国会改革の流れの中にありまして、商工委員会として初めてこうした形で質問をさせていただくことになりました。お許しいただきたいと思います。  それでは、いよいよきょうは長らく御議論いただきました中小企業基本法改正案につきましての最終質問になろうかと思いますが、よろしくお願い申し上げます。  最初に、きょうは両大臣お見えでございますが、経済企画庁長官堺屋太一長官に御質問をさせていただきたいと思います。  長官とは、私、もう通産省時代からいろいろと御指導をいただいた仲でございまして、今、日本経済再生のかじ取りをしている長官でございますが、中小企業基本法のことにつきましてもお聞きしたいと思いましたけれども、限られた時間で、むしろ先般発表されました経済対策におきまして、堺屋長官中小企業が元気になるというアイデアがたくさん盛り込まれたと伺っておりますので、特にこれはということにつきまして、この席で御説明いただけたら大変ありがたいと思います。
  6. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 小林委員指摘の今般の経済新生対策におきましては、二つの目的がございました。  一つは、昨年来の不況に対応いたしまして、この景気をさらによくする、官需から民需へのバトンタッチを確実にして本格的な回復軌道に乗せるという量的な下支えの部分がございました。もう一つは、日本経済構造改革、これを後戻りしないような状態に確固として確立することが第二の問題であります。  この第二の問題では、既に金融の面あるいは産業構造、これは主として大企業産業構造でございますが、これの合併、リストラ等も始まっております。そして雇用問題につきましても、従来の、現在の職場にできるだけ囲い込んで流動させないという方法から、新しい創業、新しい雇用創造によって流動化を進めるというように変わってまいります。  そして、今国会中小企業を初めといたしまして、幾つかの面で概念変更をいたしました。中でも重要なのは、中小企業国会と名づけられておりますように、この中小企業国会での概念変更。  これまでは、中小企業というものは大企業に対して規模が小さいから弱いものだ、この格差をどうやって詰めるか、そのためにどのように保護していくかというのがほとんど唯一の中小企業政策でございましたが、今度は中小企業の中から、規模は大きくなくても国際的に通用するようなハイテク企業先端企業、あるいは地場に長く根をおろして発展するような企業、そういったものを育てていく。そして、創業数を現在の年間十四万人から二十四万人ぐらいにふやしていこう。そういった中小企業におけるダイナミズムを発揮させまして、このことによって中小企業日本経済を引っ張っていくような、そういう形にしていきたいと考えております。  こういったことは他の分野での改革と相まって、やがて日本社会全体、個々分野から始まったものが日本社会全体の競合になり、いわゆるアクエリアンコンスピラシーができて、世の中全体をがらっと変えるだろう、そういう施策を考えております。そのために、中小企業創業しやすいように、金融の面、人材の面、情報の面でいろいろと優遇する措置をとって中小企業発展しやすいようにしていく、こういう基本に立ってこの法律ができ上がっているものと考えております。  個々政策につきましては、かなり数多くの政策がとられておりますので、またの機会にさせていただきたいと思いますが、この概念の転換によって、日本から多くの中小企業世界に雄飛できる、そしてそれが日本ダイナミズムの代表になる、そういうことがこれからの中小企業政策の重要なポイントだと考えております。
  7. 小林興起

    小林(興)委員 ありがとうございました。  それでは、時間が限られております、通産大臣から、これまでこの委員会におきまして、中小企業基本法改正についていろいろと御議論をいただいてまいりましたことを踏まえまして、所感をお述べいただき、また、これによって日本中小企業があすに向かって非常に大きく発展をするという御決意をいただきたいと思います。
  8. 深谷隆司

    深谷国務大臣 今回の経済対策に当たりまして、私は三つの点を主張してまいりました。つまり、公需の確保、途中で腰折れしないようにという意味であります。そして、民需の喚起、早く公需から民需へバトンタッチしてもらいたいということであります。第三番目は、構造改革を一層進めていくということでございます。こうした三点を踏まえて、十八兆円というこのたびの経済対策は、内容においてもさまざまな政策を総動員したものというふうな認識で受けとめております。  今度の経済新生対策の特色というのは、経済回復を図るということはもちろんでありますけれども、新たな発展基盤の構築に向けたという点で、中小企業育成、特にベンチャー企業の振興、ミレニアムプロジェクト等技術開発といったような、経済ダイナミズム回復に向けた諸施策が中心になっているというふうに思います。特に、中小企業ベンチャー育成ということに対しては、これは日本経済の活力の源泉でありますし、雇用にも大きな影響を与えるという点において大変大事なことであると思っております。  それから、信用保証協会による貸し渋り対策資金について、一年延長並びに十兆円上乗せということを決めていただきまして、この緊急の措置に関しては中小企業皆さんの御期待に沿うもの、そのように考えております。  いずれにしても、日本経済が、その回復が明確になっていくように、この経済対策を通じて一層努力してまいりたいと思っております。
  9. 小林興起

    小林(興)委員 ありがとうございました。何か、こちらが答弁席みたいでございますね。  大臣、今度の中小企業基本法につきまして、将来に向けての非常に重要な法案であるということは委員がひとしく認識しているかと思うところでございますが、ただ、いろいろと御議論ありましたとおり、現在の中小企業の置かれた現状を見ますと、やはり取り残される中小企業者が出るのではないか。そして特に、今大変な不況の中で、金融面で非常な圧迫を受けている、貸し渋りを受けているということの中に、特に今回、昨年に引き続き、中小企業金融安定化特別保証について期間を一年延長し、そして十兆円追加する、こういう大変ありがたいことを政府としても決定をしていただいたようでございます。  しかし問題は、それが本当に個々中小企業者が申請したときに実行に移されるのか、このことが気がかりでございまして、また、審査をして、基準はどうにでもなるわけでありまして、ああだこうだと言われて、結局は貸してもらえない、保証してもらえないということがありますと、何のためにこの制度をつくったかということになるわけでございますので、大臣のお口から一言、これはもう申請すれば保証するというすばらしい、引き続き昨年と同じものについて延長したんだということを、全国に向けてぜひ御発言いただきたいと思います。
  10. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中小企業皆さん民間金融機関からなかなかお金を借りられない、借りれば順調に回転して前進できるのにそれが拒まれているということは、日本経済活性化に非常にマイナスである。特にそれが顕著に見られた昨年、ことしにかけて、緊急避難的な役割でこのたびの保証制度を考え、活用されてきたわけでありますが、これを一年延長させて十兆円上乗せしたというのは、まだその緊急避難的な時期は終わっていないという認識に立っているからでございます。  しかし、全く回収不能なところにも出すというわけではありませんで、やはり、ネガティブリストというぎりぎりのものは用意しているわけであります。できる限り中小企業者皆さんの御期待にこたえるように貸し出してまいりますけれども、来年度に関しては建設的な計画も盛り込んでもらいたいということを加えております。したがいまして、貸し渋り対策と同時に、このことによってその中小企業者が間違いなく前進できるのだ、そういう体制をつくっていくことも大事だというふうに思っています。  小林委員の御指摘は、不当な貸し渋りになってはならないということでございましょうが、それには十分こたえていくように指示をしていきたいと思っております。
  11. 小林興起

    小林(興)委員 ありがとうございました。
  12. 中山成彬

  13. 大畠章宏

    大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。  きょうは総括質疑ということでございますが、この総括質問を始める前に、一言やはり申し上げなければならないと思います。  今回のこの中小企業基本法改正案、まさに、第百四十六回の通常国会冒頭総理は、今国会中小企業国会であると明言されました。さらに、通産大臣も、本会議場におきまして、中小企業国会というものを明らかにされたわけであります。中小企業方々が大変この中小企業国会というものに注目をしておりますし、また、国民皆さんも、企業数の九九%を占める中小企業に対してどういうてこ入れといいますか、元気の出る政策が提案されるんだろうかということで注目をしておりました。私自身も、理事としてこの中小企業国会の中の中小企業基本法改正案を審議するに当たり、しっかりやろうと思っておりました。  しかし、本会議場にも総理の姿はなく、そして、今回のこの商工委員会でも総理出席というものを求めましたが、結局、総理おいでになりませんでした。さらに、この中小企業基本法改正に当たり、働く人の問題、あるいは金融の問題、さまざまな課題がございますので、大蔵大臣あるいは労働大臣出席をいただきたいということも強く要求していましたが、これも、他の委員会には出席をしないということで、結局実現をしませんでした。  さきの通常国会のときには労働大臣おいでになって、ここで労働問題について議論したことを私は記憶しております。何となく、新しい方式というんですが、この新しい方式ももう一回この委員会、今回の臨時国会等を含めて見直してもらいたいと思うんですが、国民期待にこたえるため、やはり商工委員会としてはもっと積極的に、総理の御出席とか、あるいは関係大臣に御出席をいただきたかったなと思っています。  今回、私はそういう状況の中できょうこの総括質疑をやるわけです。重要法案については総理出席をするという文言があるんですが、そうすると、中小企業基本法というのは重要法案でないと与党側は判断をされたのか。そして特に、きょうはお二人の大臣がおられますが、小渕内閣におられる通産大臣そして経企庁長官として、お二人の閣僚の方に、この現状、こういう状況、きょうこの商工委員会総括質疑をこのような形で迎えなければならなかったということに対しての御見解を冒頭にお伺いしたいと思います。
  14. 深谷隆司

    深谷国務大臣 クエスチョンタイムの設置とか議会運営に関しては、与野党協議の末に体制を大幅に変えたというふうに私どもは承っております。そういう過程の中で、クエスチョンタイム出席委員会、本会議等総理を初めとする関係大臣出席についての話し合いもなされていると聞いております。ぜひ議会側としてこれについては詰めていただきたい。私どもから格別コメントを申し上げるのはいかがかと思っています。  ただ、中小企業国会と名づけてこれを重要視しているという点については、これはもう連日のように総理大臣から私ども指示が与えられておりますし、大蔵大臣にいたしましても、今日までの協議の中で、例えば予算上の問題についても、私たち要求についてはかなり理解と協力をしてくれているという認識に私は立っています。また、労働省にいたしましても、成長分野だとか地場産業企業など、地域の発展に先導的な役割を担う中小企業に対して、相当数労働者雇用されるという前提においてそれぞれの対応をいたしておりまして、そういう意味では、内閣挙げて中小企業問題に真剣に取り組んでいる、そのように理解をいたしております。
  15. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今回の中小企業国会は、特に、先ほど申しましたような中小企業概念変化を伴う大変重要な会議でございまして、政府といたしましても非常に高い順位をつけておりますが、きょうは外交日程がございまして、どうやら議院運営委員会の方でこういう割り当てになったようでございまして、その点は残念と申しますか、日本制度のスケジュールの忙しさということを感じる次第でございます。  私どもといたしましては、通産大臣通産政務次官、そして経済企画庁政務次官、この問題の責任者がそろいまして、先生方の御質問に十分対応できるよう用意しておるつもりでございます。今回から、外交案件その他につきまして、日本国会のために世界じゅうの国際会議が今まで土日しかできないとかいろいろなことがありまして、相当全世界的話題になっておりましたので、多少そういう点では御了解をいただくように、国会議事運営の方でも御検討いただいているのではないか。私は国会に籍を置いておりませんので、その辺につきまして詳しいことは存じませんが、推察するところそのようではないかと考えております。
  16. 大畠章宏

    大畠委員 堺屋長官からもお話ありましたけれども、確かにそういうものはあると思うんです。しかしそれ以前に、外交問題、今日本に外国の方がおいでになっていろいろ日程があると思うんですが、海外に行くというのであれば別なんですが、やはりその前に日本国内日程なんですね。したがって、午前中の日程は午後に直せばいいんですよ、きょうこの商工委員会は午前中しかないんですから。だから、もともと総理がこの商工委員会には出席しないということを前提日程を組み始めたんですね。  聞くところによると、経企庁長官堺屋大臣もぜひ総理一緒に同席してほしい、商工委員会は途中から中座しますという話を受けたんですが、それは私は拒否しました。中小企業国会といいながら、本会にも総理が出ない、この商工委員会にも出ない、なおかつ所管の経企庁長官総理一緒にこの会議に出ないで別なところへ行ってしまう、そんなことは許されないんじゃないか。それなら、即刻、中小企業国会という看板を外してほしいということを私は申し上げました。  長官のおっしゃることはわかるんです、外交は重要だ、それはわかるんです。しかしながら、日本中小企業の実態というものを今考えるのであれば、やはりこれは重要な国会なんですよ。中小企業国会与党が命名されました。それならば、それにふさわしい態勢を組んでもらいたかったと思うんです。例えば議運等でいろいろあったとしても、総理が、私自身中小企業国会冒頭に言いました、したがって、本会には出られませんでしたけれども商工委員会に私は出席したいということを意思表明すれば、それはできないことないんですよ。  そういう意味で、堺屋長官がおっしゃったように、外交日程、防衛問題とかさまざまな難しい問題があります。それは、国際会議にできるだけ私も大臣には行ってもらいたいと思いますが、国内会議商工委員会出席できないということは、全く理屈にはならないと私は思うんですね。その点だけをちょっと申し上げておきたいと思うんです。  それでは、総括質疑に入りたいと思います。今回の中小企業基本法改正について、これまで参考人の方やあるいは各党の委員の方からも非常に貴重な御意見や御提言等もいただきました。こういうことを踏まえて、幾つか確認をしておきたいことをまとめて御質問させていただきたいと思います。  最初に、先ほど小林委員からも御質問がちょっとございましたが、今回の基本法改正案は、いわゆる中小企業の範囲を拡大する、三十六年ぶりの改正でありますから、三十六年間のさまざまな変更というものを織り込んで、中小企業の枠を拡大しようということだと受けとめています。これはこれとして私自身理解するんですが、その一方では、拡大したことによって、中堅といいますかかなり大きなところ、大企業に近いところまで入ってしまって、そっちの方に重点が移って、零細企業についてはだんだん冷たくなるんじゃないか。極端な話、零細企業切り捨て法案じゃないかという声も一部に上がっていることは事実であります。それを先ほど小林委員大臣質問をされたと思うんです。  この零細企業切り捨て法案じゃないかという声に対して、通産大臣としてはどんな考えを持っておられるのか、御所見を伺いたいと思います。
  17. 深谷隆司

    深谷国務大臣 このたびの中小企業基本法改正幾つかの要点がございますけれども、その中の重要な部分は、経済の担い手、牽引車役割中小企業期待する、そのことが雇用の増進にもつながってくるということであります。その場合に、今までのように画一的に中小企業というとらえ方が一体いいだろうかということに私たちは特にウエートを置いたつもりでおります。そして、多面的な中小企業の形を取り上げて、それぞれにきめの細かい政策を出していこうではないか、そういう形で考えております。  確かに、枠を拡大することにいたしました。そのことで一万六千社ぐらいふえることになるでありましょう。しかし、ここはまさに中小企業の一番活気が出るような中堅でございまして、これは日本経済にプラスになっていくであろうというふうに思います。しかし、一方において、そのことで小規模企業方々が見捨てられることがあってはならない。  そこで、このたびの基本法では、その第八条において小規模企業への配慮ということを加え、さらに、細かい、例えば設備近代化資金等について、今まではすべての中小企業を対象としていたのでありますが、小規模だけに限定する、そして業種は問わない、さらにリースを考える、それらを通して一千億円ぐらいの規模に持っていくんだということを私は発表いたしたのであります。これは、私の気持ちからいえば、小規模企業を見放すどころか、これからも大事にするんですということのメッセージのつもりでおります。  小規模企業方々が御苦労なさっている今日の現状をしっかり自覚した上で、中小企業対策というのはこれからも委員指摘のような姿勢で進めていきたいと考えております。
  18. 大畠章宏

    大畠委員 大臣がおっしゃいますように、私も、この中小企業国会に臨むに当たりまして、町の中の中小企業方々を訪ねてきました。きのうも午前中、四、五件しか歩けませんでしたけれども話をしまして、いわゆる町工場で、従業員の方もちょっと暗いところでプレスをしていたり、あるいは成形をしていたり、本当に苦労をされてやっているんですね。  今大臣がおっしゃいましたけれども、いわゆる中小企業というすそ野を考えますと、富士山以上に、零細企業というところが本当に広くあります。私の感じでは、七割から八割ぐらいはひょっとしたら零細企業じゃないかと思うんです。あるいはこの中に商店街も入っているかもしれません。そういうところがあっての日本なんですね。私もいわゆる一般的に言う大企業従業員、社員になったことはありますが、大企業というところも結局中小企業のすばらしい技術に支えられているという事実を、私たちは忘れてはならないと思うんです。  ともすると、ベンチャー企業とかそういうところに着目して、大いに育てよう。これもやらなきゃならないんです。しかし、地道に苦労をしながらも日本産業経済を支えている零細企業を忘れるとしたら、この中小企業基本法改正あるいは今回の中小企業国会というものは失敗に終わるんじゃないかと私は思いますね。したがって、大臣がおっしゃったように、零細企業に対するウオッチングといいますか、十分に状況を把握しながら、適切な支援策が講じられるように今後とも努力していただきたいということを申し上げたいと思います。  そこで次に、常時使用する従業員の解釈について。実は、前の委員会のときに、私ども吉田委員質問の中で通産省労働省との関係においていろいろ意見が合わなかったところがあります。そこをはっきりしてもらいたい。いわゆる中小企業定義の中では人数というもので区切られるわけですから、これがはっきりしないと、どこまでが中小企業なのか。  特に、小売業関係は五十人ということで、百人にはしませんでした。私は、サービス業と同じように小売業も百人にすべきじゃないか、なぜ小売業だけを五十人に据え置いたのか、今でもちょっと理解に苦しむところであります。従来、小売業サービス業も、両方とも中小企業定義は五十人でした。そして、そのうちのサービス業だけ百人に持ち上げて、小売業は五十人に据え置いた。ここに私自身もよく理解できないところがありますし、それでは従業員とは何だろうか、その定義がはっきりしないと、これまた実際の法の運用のときにいろいろ混乱を生じると思うんです。  そこで、きょうはまず通産省にお伺いをし、その次に労働省に御見解をお伺いしますが、まず通産省の方に、中小企業政策における常時使用する従業員の解釈というものはどのように定義しておられるのか、お伺いします。
  19. 細田博之

    細田政務次官 これまでの基本法の審議に当たりまして、民主党さんから、極めてこの点についての強い御意見、そして労働省における雇用関係の法令と中小企業関係法令の整合性について御意見がありました。  私どもとしては、中小企業政策としては、振興政策としては、できるだけ幅広く中小企業が恩典を受けられるようにする。他方、労働政策においては、労働法の基本となるところ、これは労働省の所管でございますけれども、それが従業員あるいはパートの人たちに圧迫要因とならないようにという意味で、それぞれの目的に即して一番いいように解釈すべきであるというふうには申しましたけれども、その精神に立脚しながらも、さらに詰めてまいりまして、我が中小企業政策における常時使用する従業員については、今後、原則として二カ月を超えて使用される者であり、かつ、週当たりの所定労働時間が当該企業の通常の従業員とおおむね同等である者とすることを考えております。  したがいまして、現に当該企業の通常の週当たりの所定労働時間が四十時間であります場合には、当該企業の通常の従業員とおおむね同等とは、おおむね四十時間を指すことになるわけでございます。
  20. 大畠章宏

    大畠委員 今の御答弁は、労働基準法では週の所定労働時間を四十時間としているということですが、今通産省定義、原則として二カ月を超えて使用される者、週当たりの所定労働時間が当該企業の通常の従業員とおおむね同等である者という定義でありますが、このおおむねについての御答弁があったものと受けとめます。おおむねとは、おおむね四十時間を示すという話ですね。  その次に、それでは、労働基準法において、常時十人未満の労働者を使用する商業、接客業等については労働時間の特例があり、週所定労働時間は現在四十六時間となっておりますが、こうした特例事業場において四十時間働く者は、おおむね同等という範囲に入るものかどうか、これについてお伺いしたい。
  21. 細田博之

    細田政務次官 週当たりの所定労働時間が四十六時間の場合、大畠委員が御指摘になりましたような業種において規模などによりましてそういう業種があるわけでございますが、その場合の常時使用する従業員の解釈は、現に当該企業の通常の従業員の週当たりの労働時間が四十六時間である場合は、当該企業の通常の従業員とおおむね同等とは、おおむね四十六時間を指すこととなり、週四十時間働く従業員の方は、おおむね同等の範囲には原則として入らないものと考えております。
  22. 大畠章宏

    大畠委員 いろいろ複雑な状況がございますので、あと二つ確認をさせていただきたいと思います。  それでは、パートタイム労働者については幾つもの定義がありますけれども、総務庁労働力調査では週三十五時間未満の労働者となっていますが、この週三十五時間未満の労働者はどのように取り扱うのかお伺いしたいと思います。
  23. 細田博之

    細田政務次官 解釈は先ほど申し上げたとおりでございまして、総務庁の労働力調査で申します週三十五時間というのはあくまでも統計調査の一基準でございまして、中小企業政策における常時使用する従業員の解釈とは直接の関係はないと考えます。
  24. 大畠章宏

    大畠委員 さらにもう一問質問させていただきますが、通常労働者よりも短いが社会保険には加入する労働者についてはどういう解釈をすべきか、また雇用保険加入者も含まれるのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  25. 細田博之

    細田政務次官 常時使用する者の解釈と社会保険、雇用保険への加入状況との関係につきましては、中小企業政策における常時使用する従業員の解釈について、週当たりの所定労働時間が当該企業の通常の従業員とおおむね同等であるか否かに着目して判断する、先ほど申し上げたとおりでございまして、社会保険や雇用保険の加入の有無とは直接の関係はないと考えております。
  26. 大畠章宏

    大畠委員 それでは、前回、吉田委員のときに通産大臣労働省の方で意見が違ったところがありますので、今度は労働省の方にお伺いをさせていただきたいと思います。  いわゆる労働省関係法律がたくさんあります。これは確かに通産省の適用する法律とはまた異なるものですが、対象者は同じところなんですね。そこで、通産省労働省の解釈が異なってもいいのかなと私は思ったんです。しかし、やはり現場の方ではいろいろ混乱をしているということでありますから、労働省の統一見解をちょっとお伺いしたいんですが、労働省関係法律における中小企業の範囲にかかわる常時雇用する従業員の解釈と、通産省関係法律における中小企業の範囲にかかわる常時使用する従業員の解釈というのは異なるのかどうかをお伺いしたいと思います。
  27. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 労働省関係でも、法律あるいは法律以外の制度中小企業を特定して特別の政策を講じている部分幾つもございます。従来、その範囲につきまして、政策上の違いがございますので通産省の解釈と労働省の解釈との若干のずれがあったことは事実でございまして、それは当然のことであったと今まで考えてまいりました。これは、企業としての中小企業定義において常時使用するという場合と、施策の対象として常時使用される者であるかどうかということを一致させなければならぬというふうに我々は考えてまいったことから生じたことであったと思います。  今般、通産省におかれまして中小企業政策を拡充しようということで、今細田政務次官からお話があったように定義も明確にされましたので、現場でこのような混乱があることは好ましくありませんので、中小企業そのものの定義につきましては通産省と同一にしたい、このように思っております。  しかし、中小企業に勤めておられる方々労働者方々で、助成の対象にするかあるいは支援の対象にするか、これは労働政策上の観点から考えますので、援助の対象者としての常時雇用の解釈は従来と同じにしてまいりたいと思っております。
  28. 大畠章宏

    大畠委員 そうすると、具体的には、従来、雇用期間の定めのない者に加え、雇用期間の定めがある者であっても一年以上の雇用継続が見込まれる者については、通常の労働者より所定労働時間が短い者であっても常時使用する従業員に含む、これまでそういう解釈で来ましたね。それを、今お話があったような形に労働省としての考え方を定めていくということでとらえてよろしいですか。
  29. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 従来、中退法とか中小労確法等ではそのような解釈をしてまいりましたので、その方針を維持していきたいと思っております。  また、雇用保険法等は、常時使用という考え方は保険財政との関係がありまして若干違いがありますが、これは、法の目的に沿って、通産省中小企業そのものの定義の解釈とは別に助成の対象にしていきたい、今までと同様にやっていきたい、このように思っております。
  30. 大畠章宏

    大畠委員 確かに、今政務次官おっしゃったように、定義というのをはっきりさせることは重要でありますが、ただはっきりさせればいいというものでもないことは確かなんですね。その対象とする働く人々にとってはどうかということを重点的に労働省は考えてこられたと思いますので、今政務次官がおっしゃったように労働者にとってどうかという視点から、今のような解釈で結構だと思いますが、それに加えて、労働者の立場に立った政策をぜひ進めていただきますようにお願いしたいと思います。  それから、もう一問御質問をしたいと思うんです。  これも労働省にお伺いしますが、通産省における中小企業の範囲にかかわる常時使用する従業員よりも労働時間が短い労働者であっても、社会保険、雇用保険に加入している者については、労働省では常時使用する従業員として取り扱っていくのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  31. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 通産省の先ほどの定義によれば、四十時間制のところであれば、四十時間より短い労働者方々は、雇用保険法が適用されても、中小企業であるかどうかのカウントのときには常時使用としてはカウントしないという定義であります。それはそのとおりにいたします。  しかし、その中小企業に勤めておいでになる四十時間未満の雇用保険の適用を受ける方々については、雇用保険法上の助成の対象にするということは先ほど申し上げたとおりであります。
  32. 大畠章宏

    大畠委員 そうすると、労働省関係施策の実施に当たって、雇用保険の被保険者である者等については、たとえ労働時間が通常の労働者より短い者であってもこれまで施策の対象としてきましたけれども、これらについては今後とも各種の支援措置等の対象にするということに解釈してよろしいのですか。
  33. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 そのとおりであります。
  34. 大畠章宏

    大畠委員 それでは、この常時雇用する従業員というものの解釈が大変重要でありまして、関係のところでは注目をしておりました。今、細田政務次官、長勢政務次官から明確なお話がございましたので、これを基準としてやっていただきますように、通産大臣、ちょっと今のやりとりを聞いておられて、通産大臣としての御見解をお伺いしたいと思うのです。
  35. 深谷隆司

    深谷国務大臣 私たちが考えているのは、中小企業政策における常時使用する従業員という視点でございました。労働省の方はまた別の視点があったわけであります。しかし、現場の混乱等を回避しなければいけないというので協議を続けまして、そこでただいまのような発言になったわけでありまして、これが今後の基準になることは申すまでもありません。
  36. 大畠章宏

    大畠委員 両省の御努力には敬意を表したいと思います。  それからもう一つ労働省にお伺いしたいのですが、これは本来は通産省がいろいろやらなければならない仕事の一環でありますが、さきのいわゆる産業再生法のときにも私は指摘をさせていただきましたけれども産業再生法の中で、だんだん企業形態が変わってきまして、分社化あるいは工場ごとの売買というものが非常に最近新聞に載るようになりました。そのときの労働者の権利というものはどうあるべきなのか。あるいは、アメリカ、ヨーロッパでもそういう企業の売買というのはあるのですが、そのときの労働者はどんなふうに保護されているのか。これは非常に重要な点が抜けているということを産業再生法のときも私は申し上げました。  これだけさまざまな形態になりますと、これは本来は通産省から労働省の方にこの話をしなければならないわけでありますが、労働省として、最近の企業形態の変更等々について、いわゆる労働者保護法的な立法措置が必要であると私どもは考えているわけであります。最近の経済状況の変動というものの中で、労働省はまさに働く人の立場に立った施策を進める省でありますが、前回の産業再生法のときには、労働省側からそういうサウンド、動きというのは全く感じられなかったのですよ。  私は、長勢政務次官、これはやはり労働省として、この臨時国会では難しいかもしれませんけれども、次の通常国会あたりに向けて、企業形態の変更に伴う労働者の保護というものをどう行うのか。これが抜け落ちて次々と企業形態の変更がありますと、非常に最近社会的な混乱が起きていると思うのです。  私もきのうあるところで、また山手線か何かがストップしました。これは人身事故だというのですね。非常に今自殺者が多いのですね。働く人が非常に雇用の問題とかさまざまな問題で揺れ動いています。なぜこんなにことしは自殺が多いのかなと思うほど本当にふえています。ここのところを、労働省というのであればやはり何らかの動きを開始しなければならないと思うのですが、せっかくおいででありますから、長勢政務次官にお伺いしたいと思います。
  37. 細田博之

    細田政務次官 産業活力再生特別法の運用の方からまず申します。これは私どものあれですから、こちらから言いまして、その後また労働省から。  産業活力再生特別措置法上、主務大臣が事業再構築計画を認定することになっていますね。そこで、大畠委員を初め御党の皆様方からも、これは従業員の地位を不当に害するようなものであってはならないということで強い御要望、御意見がありましたので、この認定の基準の一つといたしまして、私どもは、従業員の地位を不当に害するものでないことという項目を入れております。これは、実際には、例えば関係の労働組合その他の意見も聞くということでやっております。ただ、各論がこれから起こってまいりますので、労働省ともよく相談をしてまいりたいと思います。
  38. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 日本経済は大変な転換期にあるわけであります。そういう中で、合併、分社化その他の御苦労も、経済界、社会全体として今進められておるわけであります。しかし、そういう中で、社会的な混乱、特に働いている方々に大きな不安があるというようなことがあったり、不当なことが起こるということがあってはならないことだと思っておりますし、そういうことのないように我々は一生懸命やっていかなきゃならぬと思っております。  ただ、先生は労働問題の専門家でございますから御案内のとおり、企業合併等に伴う労働条件等については、労使合意というか、労使自治が基本であることは御案内のとおりであります。したがって、それを踏まえて、労使の話し合いというか合理的な解決が図られるような仕組みをどのようにつくっていくかという問題をまず一生懸命やらなければならぬと思います。しかし、直接的に権利義務関係に関する保護法といったようなものをつくることがどの程度可能か、あるいは合理的かということはさらに検討しなければならない点もあると思います。  いずれにいたしましても、先般の国会でも、この問題についてさらに政府において検討すべきという附帯決議もなされたと聞いておりますので、我々としても関係各省とよく連携をとりながら、先生の御心配のないように、これは大事な問題だと思っておりますので、さらに検討を進めてまいりたいと思います。
  39. 大畠章宏

    大畠委員 今、長勢政務次官から御答弁いただきました。労使の合意というお話がありましたが、これがなかなか、労使の合意があれば法律化するということじゃなくて、やはりアメリカの例を見ていてもヨーロッパの例を見ていても、政治家として、あるいは政府として、立法府として、最低限これだけは守りなさいよというのは、労使の合意じゃなくて、政治家、政治の意思として私は示すことが必要だと思うのです。  二人で話し合って決まったものを法律化するということではないのではないかと私は思うのですね。確かにそれは労使の合意があった方が法律はスムーズに通るかもしれません。しかし、今日のこれだけ非常に荒れ狂っている社会の中で、これだけは基準として守りなさいということを労使双方にきちっと示すのが、私は立法府の仕事だと思うのですよ。  したがって、きょうは中小企業基本法法律案に関する質疑でありますが、この件はぜひ再度ちょっとお考えを伺いたいのですが、労働省の仕事です、これは。労働省の仕事ですよ。これは労使の合意に沿った形の法律ではなくて、政務次官として、あるいは本当は労働大臣労働省挙げて、特に労働組合がないような中小企業もたくさんあります、そこの従業員の方が大変苦しんでいます、そして、そういうところでさまざまな社会的な問題が今起こっていると思うのですね。そこに着目して、これは労働省として私は検討していただきたいということで、もう一度答弁をお願いします。
  40. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 若干説明不足であったようですが、労使の合意がなければ法律はつくらないと言ったのではなくて、労使の合意が基本でありますが、その最低基準を法律で決める範囲はどの程度が必要か、あるいは合理的かということについて、今先生の御関心の向きを十分念頭に置いてさらに検討したいと申し上げましたので、先生の御趣旨と私の考えとは同じだと思います。
  41. 大畠章宏

    大畠委員 やはり政治家同士が話をするのは重要だなと思いますが、これが労働省の係官だったら、そんな話は多分出てこないですね。きょうは初めてこうやって対面方式で、きょう一日限りということでありますが、ぜひ工夫をして、これからも商工委員会はこういう率直な議員同士の話、あるいは大臣との話ができるように、委員長にもこれはよく今後検討していただきたいとお願いしておきます。  長勢政務次官のお話はわかりました。これを求めている方がたくさんいます。私はもちろん労働組合に属していたこともありますが、労働組合の方はまだいいのです、組合員の方は。労働組合に属していない、労働組合にもまだ入っていない方がたくさん、八割ぐらいおられますね。こういう方々の権利をだれがサポートするかというと、やはり労働省なんだと思うのです。労使といっても、雇い主と個別に話をしてもなかなかだめなんですね。法律ということで最低限のセーフティーネットというものを張ることが大事だと私は思うのです。  ぜひ、今長勢政務次官にお話しいただきましたけれども、それに沿って労働省としても今後とも御検討いただくことをお願いしておきたいと思います。長勢政務次官、どうもありがとうございました。  それでは次に、公正取引委員会、きょうはおいでになっていますでしょうか、来ておられますね。  次に、公正取引委員会にお伺いしますが、最近、町の中小企業商店街等々が郊外の大型店の安売り攻勢を受けたり、あるいは元請、下請という中小企業関係がありますが、代金を値切られたり、異常な単価の引き下げを求められる事例が多く見受けられます。  私のところにもこういうアンケート結果をいただいています。この間もちょっと申し上げましたけれども中小企業への単価の切り下げ、発注量の低減等が有無を言わせず行われている、これにより、依存度の高い中小企業は売り上げが減少し資金繰りがつかなくなるのが現状です、何とかこういうことを防止するような法律を考えていただけませんでしょうか、こういう話が私のところに参っています。  この背景にはさまざまな問題があると思うのですけれども、公正取引委員会委員長として、今日の中小企業を取り巻く環境、特に自由競争あるいは規制緩和あるいは金融ビッグバン、そういうもので、どうも中小企業商店街も含めた中小企業零細企業が大変経済活動上不利な立場に立たされているのではないかと思います。取引の適正化、あるいは優越的地位利用の乱用を防止するための独禁法の強化や、下請代金支払遅延等防止法の抜本改正、すなわち、実体規定の罰則、物品の製造、修理委託に限定した取引内容などの拡大、官公需の落札価格に対する適正取引を徹底すべきじゃないかなどという幾つかの話が私のところにも参っているのですが、もちろんこれは公正取引委員会委員長さんにも来ていると思うのです。  私は、先ほども申し上げましたけれども中小企業を取り巻く環境、経済環境は激変し始めています。そこで、強い者が勝つというような流れができ始めているのですが、市場経済の中で、いいじゃないかと言う人もいます。しかし、これで本当に日本の社会あるいは日本経済日本産業というものが秩序ある形で行くのだろうか、すべては自由競争で解決するんだというだけではないような感じを私は受けているのです。  この今日の経済環境の中に中小企業が置かれているのですが、公正取引委員会委員長として、現在のこの状況をどういうふうにごらんになっているか、お伺いしたいと思います。
  42. 根來泰周

    根來政府特別補佐人 申し上げるまでもなく、私どもの所管する独占禁止法は、独占とか不当な取引制限とか、あるいは不公正な取引方法を禁じているわけでございます。自由な競争を促進するということについては何ら異論がないわけでございますが、その自由な競争というのは、公正な競争ということが必要であるということは言うまでもないところでございます。  ただ、今御指摘のありました大事業者と中小企業者、あるいは親事業者と下請事業者というのは、それ自体優越的地位ということになっているわけでございます。そういうようなことで、独占禁止法の精神も弱肉強食を許さないという精神でございますから、私どもも、その観点からも厳正に対処していきたいというふうに考えております。
  43. 大畠章宏

    大畠委員 今、公正取引委員会から基本的な認識が示されましたが、どんなに自由競争の時代を迎えたとはいえ、人間社会では弱肉強食の時代を意味してはならないと私も思います。機会均等の原則に基づき、公正なルールを設けて、これを厳重に守らなければならないと思うのです。守らない企業または人については、厳罰に処するというものがなければならないと思うのです。  残念ながら、現在の日本ではどうも、ルールはあるんだけれども守らなくてもいい、万一見つかったときには罰金を払えばいいんだからというような安易な社会的な傾向があるように感じます。いわゆる最近の日本人の物の見方、考え方の定見がどうもなくなってきてしまったんじゃないか、あるいは企業倫理の欠如という現象が見られるように思います。  私は、これは通産省皆さんにも申し上げたいのですが、もちろん日本の教育制度や社会制度というものの変化が大きな影響を与えていると思うのですが、深谷大臣、やはり名誉とか社会正義とか真実というのは日本人は絶対に守るんだ、ルールがあればきちっと守る、こういうふうな日本の風土が確立されていないとおかしいのじゃないか。最近は、とにかく勝てばいい、ルールは別として勝てばいい。ちょっと選挙なんかもそうですけれども、とにかく勝てばいい、何をやってもいいという、もちろんこれは罰則の強化があって、最近ではそうやって当選しても当選無効という話にもなっていますけれども。  一般社会でも、ルールはもう無視で、とにかく勝てばいい、もうかればいい、こういう社会的な傾向が余りにも強過ぎるのじゃないかと私は思うのです。これが日本として正されない限り、日本という国はひょっとしたら孤立化してしまうのではないか、そんな感じを持ちます。アメリカにおいても非常に自由競争社会になっていますが、経済のルールあるいは社会的なルール、真実は絶対に隠さないとか、そういう一つのものがやはりあるのですね。  ところが、日本はどうもそこら辺があいまいになっていまして、先ほども言いましたように、元請と下請の関係なんかも、本来、企業間の倫理の問題なんですよ。一年間仕事をさせて、下請から見積もりをとります。そして年末に、これだけたまったけれども、これは半分ねとか、つかみ金的に、これであなたのところはやりなさい、そんなことが相変わらず行われているとしたら、私は、世界経済の中で日本社会というのはだんだん置いてきぼりを食うといいますか、そういうことになってしまうのじゃないかと懸念しているのです。  この今の日本のそういう経済状況に対して、通産大臣堺屋大臣、それから政務次官、きょう三人の政務次官がおいででありますが、それをどういうふうに御認識されているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  44. 深谷隆司

    深谷国務大臣 経済は自由であると一般に言われますけれども、その場合には当然、ただいま委員指摘のような、公正なルールの上で自由な競争を行うということが大原則だろうと思っています。  大企業と下請、元請の関係にしばしば委員指摘のような問題がありますことは、まことに残念であります。そこで、私どもは、下請代金の不当な減額であるとか不公平な下請取引の強要については、下請代金支払遅延等防止法に基づいて厳正に対処するべく努力をいたしてまいっております。  今後も、中小企業者の苦情や紛争についての相談には積極的に応じて、その解決のために全力を挙げていきたいと思っております。
  45. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 競争原理と公正原理をどのように対応していくかというのは古来大変難しい問題で、その時々によって変わってまいりました。  今回の中小企業基本法改正の発想によりましては、自由経済、自由競争に主として依存する、これはあくまでも主としてでございますが、主として依存する、そのことによって、より広範な市場を選択することができるようになり、市場経済の利益が拡大するだろうということを期待しているわけでございます。  しかし、先生御指摘のように、過渡的な問題もございますれば局所的な問題もございます。一般に自由取引といっても、こういう製品はこういうところにしか納められないとか、こういう地域ではこういう対象しかないとか、いろいろそういうことがございまして、大企業の競争力あるいは情報力が優位になっているというような事態もございます。  ただ、重要なことは、日本経済全体が発展していくためには、やはり、中小企業零細企業方々も常に血の出るような開発をしていただいておりまして、これが競争、切磋琢磨して、より効率のいい日本をつくっていく、こういう効果のあることも事実でございます。そして、いろいろとグローバル化してまいりますと、ネット調達など世界じゅうから部品を調達するというような方式も出てまいりますから、日本企業もそういった変化におくれないように次々と新しいものをつくっていかなきゃいけない。このバランスをどう考えるか、これが重要なことでございます。  もし、この点で先生御指摘のような問題が明らかになりますれば、それは、公正取引委員会の問題であるとかそういったことで考えなきゃいけませんし、また、金融、人材等の面で中小企業を強化していく、そういった中でも生きていけるようにしていくことも重要だろうと考えております。
  46. 大畠章宏

    大畠委員 済みません、時間があと十分しかなくなりましたので、ちょっと公正取引委員会委員長さんにもう一度お伺いします。  今大臣からお話がありましたけれども、もしもそういう社会的な傾向があるとすれば、これは独禁法の改正等も改めてしていくべきじゃないかという御指摘も入っておりました。先ほどいろいろお話を伺いましたけれども、今日の状況を踏まえて、私はやはり、社会的な状況をにらんで、独禁法改正を次の通常国会あたりは考えるべきじゃないかということを非常に強く感じておるんですが、公正取引委員会委員長のお話をいただきたいと思います。
  47. 根來泰周

    根來政府特別補佐人 私ども、常々、いろいろの社会現象あるいは経済現象に対処しまして、独占禁止法なりその他特別法の改正ということをいつも念頭に置いて検討しているわけでございます。  ただ、申し上げたいことは、今の法律で我々は十分仕事をしているかという反省に一つ立っているわけでございます。ですから、国会の御示唆もあり、いろいろの民間の協力も得て、これからさらに十全を期してこの独占禁止法なり関係法律を適正にやっていくこと、それがまず先決ではないかという認識を持っているわけでございまして、その認識の上に立って、法律改正がさらに必要であるということなれば、また国会にお願いするということになろうかと思います。
  48. 大畠章宏

    大畠委員 今、委員長の方から、現在の法律の範疇でも十分仕事をしているかどうか、いろいろと考えながらやっていきたいというお話もございました。  今の法律に基づいてしっかりとやっていただきたいと思うし、人が足らなければ、また公正取引委員会はふやすことが必要だと思うんです。一部には、余り市場の番人をふやすと自由にできなくなるから反対だというような声もありますけれども、私はやはり、自由競争というのであれば、公正取引委員会法律に基づいて執行できるような体制を強化することは大変重要だと思うんです。私は、公正取引委員会委員長としての御発言をこれからもサポートしていきたいと考えているところであります。  さて、実はきょうは大蔵政務次官にも来ていただいております。いろいろ準備をしておったんですが、飛ばしながら、金融問題についてお伺いしたいと思うんです。  中小企業が今何を求めているのかというと、さきの参考人質疑のときにもありましたが、金融問題と税制だということを伺いました。私も、金融問題と税制抜きに中小企業国会というのはちょっと寂しいと思うので、この点ちょっとお伺いしたいと思うんですね。  一番に希望しているのは仕事が欲しいということ、二番目には貸し渋り対策など金融を充実させてほしいということ、三番目には相続問題、四番目には下請と元請との単価の関係というのが悩みだというふうに聞いているのですが、大蔵政務次官に、中小企業に対する金融問題をどういうふうに受けとめておられるのか。  市中の金融機関が中小企業になかなか貸さないものだから、日栄事件なんかが起こるわけですよね。だから、私どもの民主党の中でも主張していましたが、日栄を支援しているのは一般市中銀行、その市中銀行を支援しているのは大蔵省といいますか日銀。結局、税金を一般市中銀行に投入して、そこが日栄に貸して、そしてそれが中小企業に回ってさまざまな問題を起こしていると言っても過言じゃないじゃないかという話が過日ございました。  この問題について、大蔵政務次官といいますか大蔵省としては、どういうふうに中小企業金融政策に取り込もうとしているのかということ。もう一つは、事業承継税制について、非常に多くの人から要求がございます。これは前にも質問しましたが、大蔵省として、この問題についてはどういうふうに考えておられるのか。この二つをお伺いしたいと思います。
  49. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 まず、金融問題でございますけれども基本論から始めさせていただいてまことに恐縮に存じます。  先ほど公正取引委員会委員長とのやりとりを伺っていて、大畠先生が御所見を申しておられまして感銘を受けたのでありますが、やはり、自由の裏には規律があるんだ、こういう問題があろうかと思います。  基本的に言いますと、日本金融問題、日本は自由経済でありますから、やはり自己責任原則と市場規律にゆだねて政策運営していく、これは当然のことであります。したがいまして、一つ一つ案件について一つ一つの個別的な金融機関にああせいこうせいと言うわけにはいかないと思います。  しかしながら、やはり政府としては、国としては、まず、透明性を確保する、情報の公開がきちっとなっているかどうか。それから、公正なルールで競争が行われているか。そしてまた、保護すべきものは保護すべきである。これは政策目的だと思います。  そういう意味で、民間金融機関とは別に、政策目的、つまり、中小企業というのは日本経済を生き生きとしていくものである、さらに、ベンチャービジネスというのは日本の未来を背負っていくものだ、こういう観点から、私はやはり、政策目的として、政府金融機関が、金融について、中小企業資金を回していく、このことは十分考えていかなきゃいけない問題だと思います。  これにつきましては、平成九年の秋から十分にやっております。マル経の問題、あるいは金融環境変化の問題、あるいは特別信用保証枠拡大の問題、開銀法改正によりまして開銀から運転資金も貸せるというふうにした問題。さらに、早期健全化法においても、健全化計画をつくる場合には中小企業の貸し付けについては残高をふやしていかなきゃいけない、こういうことまで配慮しているわけでございます。  今の中小企業を取り巻く経済環境、あるいは先ほど申し上げましたような日本経済における中小企業役割、こういうものを考えますと、やはり今回の経済新生対策でも行われておりますように、特別信用枠、信用保証の問題、十兆円、一年間拡大しました。あるいは、金融環境の変化に対応する融資それから金利減免、こういうことを延長しております。そういう意味で、やはり中小企業金融問題についてはこれからも積極的に前向きに対応していきたい、このように思っておるところでございます。  それから、承継税制の問題でございます。  これは若干技術的、専門的なことをも考えていかなきゃいけない問題でございますけれども、まず第一には相続税の問題があると思います。  相続税というのは、昭和六十三年に大改正いたしまして、その後若干、二度ばかり改正をしておりまして、かなり負担感は減っている。現在も、土地価格が下落しておりますので、かなり負担感は減っているわけでございます。  でも、七〇%という最高税率はいかにも高いじゃないか、こういう議論があります。しかし、七〇%の最高税率が適用されるブラケットというのは、一人当たりの平均で見ますと、課税標準が二十億円でございます。五万人の該当者がおる中で、七〇%の税率が適用される人は一年間で十人程度というわけですから、最高税率の問題と中小企業の問題、これは少し観点を変えて、視点を変えて、相続税は相続税として、去年の政府税調答申でも、相続税の問題は見直しなさい、こう言っておりますので、中小企業とは別の観点から考えていくべき問題じゃないか、このように思っております。  ただ、承継税制の問題でございますが、いろいろな問題があるし、いろいろな議論があるということも十分承知しております。  一つ、個人事業者の場合は、大畠先生御存じのとおり、宅地であれば、住宅用宅地であれば二百平米まで、事業用の宅地であれば三百三十平米まで、これは八割を、タックスベース、課税標準から控除できますから、かなり負担感が減ってくる、こういう問題があるのでまあまあかなという感じはするんです。  問題は、中小企業で法人化している場合であります。株式になっていますから、今申し上げたような控除制度が適用されません。したがいまして、そういう場合には、株式を上場している類似企業と比較して課税標準を決めていくのか、課税価格を決めていくのか、それとも実際の資産を評価して決めていくのか、あるいはその二つのやり方をミックスして、混合して見ていくのかということで、非常に難しい問題でありますが、できる限り、承継税制の問題として負担感が減るような格好で評価の方法を考え直してみる、これはやらなきゃいけない問題だと思っています。  ただし、また原則論に戻りますけれども、そうした場合に、個人事業者とのバランスがどうなるのか、それから上場企業の場合とバランスがどうなるのか、こういう問題はきちっと詰めていかなきゃいけない。少し専門的な見地から、あるいは幅広い視野からこの問題を詰めてまいりたい、このように思っている次第でございます。
  50. 大畠章宏

    大畠委員 今御答弁をいただきましたが、やはりそういう要望はかなり強いものがございます。前回のときも申し上げましたけれども、しにせのお店がこの承継問題で結局お店を閉めざるを得なかったとか、さまざまな事象も出てきています。そういうことで、ぜひ次の通常国会には、承継税制について大蔵省としても真剣に取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  質問の時間が来ましたのでこれで終わりますが、いずれにしても、私ども民主党としては、いろいろ通産大臣からもお話を伺いましたが、やはりこれまでのような形のばらまき政策ではだめだ、既存の企業もこれから新しく起こそうとする企業もやる気が起こるような、そういう政策に転換をしなければならないということを強く考えているところであります。  さまざまな問題についてまた同僚の議員から質問させていただきますが、ぜひ、冒頭大臣からお話がありましたように、零細企業の切り捨てというような形には絶対にならないように、すそ野が広い中小企業の実態を十分見ていただいて、即した政策を実行していただきますよう強く要望して、質問を終わります。ありがとうございました。
  51. 中山成彬

    中山委員長 渋谷修君。
  52. 渋谷修

    ○渋谷委員 中小企業基本法等の総括の質疑の機会をいただきました。民主党の渋谷修でございます。感謝を申し上げながら、改めてきょう総括的な質疑をさせていただきたいと思います。  鳴り物入りで提案されてきた感のある中小企業基本法改正案でありますけれども、先日の参考人質疑の中で法政大学の総長の清成先生も指摘をされていたんですが、個人的なことでは、清成先生と二十年ぐらい前から中小企業問題をめぐってはいろいろ勉強会、研究会を繰り返してきた経過があります。実はその清成先生の影響も強いのでありますが、清成先生自身がもう二十年前から二重構造論などという議論の展開はしていなかったのであります。  ベンチャー企業という位置づけにつきましても、もう十年前から清成先生などが提起をしてきた、そういう企業の形態でありました。ベンチャーというとよくわかりにくい方もいらっしゃいますので、先日も清成先生も申されておりましたが、いわば知的革新を継続する、そういう企業ベンチャー企業というぐあいに言っているようであります。  そういう中小企業の位置づけについて、これも思い起こしてみましたら清成先生の受け売りでありまして、中小企業庁設置法の目的でありますけれども、先般も皆さんに御紹介を申し上げましたが、議論の原点でありますので改めて読み上げます。  中小企業庁は一体どういう任務、役割を果たすのかというその目的に、「健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中を防止し、且つ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、中小企業育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立することを目的とする。」これはもちろん昭和二十年代の中小企業庁設置法でありますけれども、今日的に見ましても、これが時代おくれであるとかいうような内容では決してない。今回皆さんが提案をしてきました政策を見ましても、実はそういう観点で出されてきているわけであります。  ですから、何度も申し上げますが、実は今度のような政策の提起は、何かしらこれまでの政策の大転換を図るような認識通産省のお役人からレクチャーを受ければ、深谷大臣も、あるいは今回からそれぞれ政治家同士のやりとりになりましたが、政治家の皆さんもそう思われるかもしれませんが、決して実はそうではない、もっと早い段階でこうした観点から中小企業政策というのは取り組まなければならなかった。中小企業の持つ積極的な意味、位置づけというものを実はきちんと図るべきであったというぐあいに私は考えているわけでありますけれども大臣の考え方をお伺いをしておきたいと思います。
  53. 深谷隆司

    深谷国務大臣 渋谷委員指摘のように、現行の中小企業庁設置法の目的の中には、第一条に、健全な独立の中小企業育成とか、あるいは企業を営もうとする者に対する公平な事業活動の機会の確保というような規定が置かれていて、まさにあなたが言われるような趣旨を持っていたと思います。そして、設置法では、今後自発的に起こると想定される中小企業創業、市場への新規参入が阻害されないようにという配慮が非常に強かったのではないか。  私は、今回の基本法で特にウエートを置いたのは、もう一歩踏み込んで、積極的に創業を考えていくというような意味合いでございます。今までの設置法は、どちらかというと消極的であったというふうな感がいたします。私は、基本法の中できちっと、積極的に創業に力を入れるんだ。現在の経済状況を眺めてみると、アメリカと比較した場合に活力がないのは、廃業率の方が多いからでございます。それは紛れもない事実でありますから、それを超えて創業率が高くなるということについて、経済活性化を図っていこう、その場合に、中小企業にその新しい転換をむしろ位置づけていったらいいのではないか。  ですから、設置法で、なるほど、似たような感じに見えるとお考えになることは正しいことかもしれませんが、もう一歩踏み込んで、もっと前向きに、もっと意欲的にやっていこうというのがこのたびの基本法の趣旨であると御理解いただきたいと思います。
  54. 渋谷修

    ○渋谷委員 私の方からは、今回のこういう政策の提起が若干遅過ぎたのではないかということで申し上げ、また、中小企業というものについての位置づけ、認識というものがやはりきちんとしていませんと、一体何をやっているかわからないということになりかねないわけですね。  中小企業は多様であるという物の言い方もよくしますが、別にこれはきのうきょう多様になったわけではありませんで、もともと中小企業というのは多様な存在なわけです。そういう中小企業が多様な中で、この間の、今大臣の答弁の中にもそういうニュアンスのことが若干あるのでありますが、一方でそれは、規模の小さいもの、あるいは中堅企業、さらには規模が大きくなる、さらにそれを超えて大企業になるという現実の我々の中小企業日本経済を支えている企業群があるわけですが、これは先ほどの大畠議員の方からも御指摘をいただきましたけれども、会社数でいえば、事業所ベースじゃありません、会社数でいえば、約五百万企業の中で小規模企業というのが八八%を占めるんですね。  実は、この小規模企業群の位置づけというのがとても重要であるということを再三再四申し上げておるわけです。ついついアメリカ的な物の考え方でいえば、経済の合理性、効率性からいいますと、こういう小規模企業群、従業員数でいえば製造業で二十人以下、あるいは小売、サービス業でいえば五人以下ということですが、確かに、経済の中での比重、つまり売り上げとか付加価値額でいえばこれは低いのでありますけれども、実際には、地域経済を支える、あるいは地域の社会を支える、あるいは地域の伝統や文化を支えるという意味では、この小規模企業群は非常に大きな役割を果たしている。  しかも、その小規模企業群を具体的に分類すれば、ある小規模企業は、例えば豆腐屋さんであったり、クリーニング屋さんであったり、葬儀屋さんであったり、地域の皆さんの、そこに住んで生活している人たちのニーズに対応した企業群なんですね。あるいはそのほかの企業は、私の板橋あたりでもそうでありますけれども、自分たちでつくったものを他の地域の取引先に売ってそれで経営をしている、これは一般的には地場産業と言われていますが、そういう中小企業群があります。それからもちろん、大きな企業の下請になったり、印刷業であれば水平分業というのもありますけれども、水平分業をして役割を担う中小企業というのもあります。  こういう形で、中小企業というのは、実態をより詳しくとらえていけばもっと複雑になりますけれども、そういう意味で実は多様な中小企業群があるわけです。  そういう小規模中小企業の中から、何度も申し上げていますように、ベンチャーが生まれ、創造的な企業が生まれる。つまり、知的革新をして上昇していく企業と、それから、地域の中で、地域のそういうニーズに対応していく豆腐屋さんだとかあるいはクリーニング屋さんだとか、この企業の価値というのは変わらないという認識を持ってもらわなければいけないと言っているんです。  それは昔もそうですが、政府の支援なしに、実はソニーであれ、あるいは本田であれ、みんな小規模企業から発したわけですね。小規模企業から発して、知的、革新的な経営者の方が、そういう価値観のある人たちが創意工夫してだんだん企業規模が大きくなり、今は世界に名立たる大企業に育っている。こうした企業が、それでは、政府の支援を受けてそういう大きな、世界に名立たる企業になったのでしょうか。私はそんなふうには余り聞いておりません。しかし、そういうものなんです、日本のこの企業群は。  したがって、小規模企業というのが、実は一番その意味ではいろいろな多様性を持つその企業群が、日本経済の可能性とかそういうものを秘めているわけであります。ですから私は、小規模企業の位置づけというものをぜひ今度の政策の中でも明確にしていただきたいというぐあいに考えたわけでありますけれども、先日来申し上げておりますように、中小企業庁から配付されましたこの関係資料、その提案理由の中に、そうした積極的な意味での位置づけが小規模企業に対してはないんです。それがないんです。  だから、そういう観点が、どうもやはり依然として、通産省中小企業庁の皆さんがアメリカナイズされた経済の合理性とか効率性とかそういう観点で中小企業群をとらえていて、規模の小さいものはおくれた存在、足手まといになって、これは保護政策の対応というような、ある意味ではステロタイプな、画一的な物の見方をして今度の政策を立ててきているのではないかというぐあいに考えるものですから、小規模企業政策について、そういう現状認識を踏まえた上で、大臣からの御答弁をもう一度お伺いしておきたいと思います。
  55. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中小企業が多面的で多彩であるというのは昔からあったとおりだというのは、おっしゃるとおりです。だけれども、今までの基本法の物のとらえ方は、それを画一的に見ようとしていた。それを多面的なものと真っ正面からとらえて、それぞれの形にふさわしい対策をきめ細かくやっていくことがこれからの中小企業活性化だというふうに私たちは判断しておるわけであります。  そういう中に、例えば、中堅企業として一層活力を増してもらうところもあれば、あるいはベンチャー企業として創業に努力してもらうところもあれば、あなたがおっしゃったような小規模、私は零細企業とは余り使いたくないんですが、そういうところで苦労している方たちにはむしろ今まで以上に力をつけていこう、そのために政治的な努力をしていこうという考え方等々、多面的にきめ細かく物を判断しようとしているわけでございますから、中堅企業ということを言うと、じゃ、小規模企業を見捨てるのか、そういう議論でなくて、全体的に中小企業の活力を高めるために苦心しているんだとおとりいただけるとありがたいと思うし、私自身が何回も繰り返しておりますけれども小規模企業皆さんの御努力に対して全力を挙げて応援するというのは、むしろ中小企業庁の当然の姿勢でなきゃいけないというふうに考えております。
  56. 渋谷修

    ○渋谷委員 先日、若干御紹介申し上げたときに、両大臣がこの委員会室から立ち去った後だと思いますけれども堺屋長官などは御存じだと思うんですが、シューマッハーの「スモール・イズ・ビューティフル」という非常に有名な、もう二十年以上も前の本になりましょうか、その中で、いわば適正規模論ですよね、そういう中小企業の積極的な位置づけというのはその中であるわけです。  私は、今申し上げているのは、中小企業庁あるいは通産省がそういうきちんとした認識を持ちませんと、いわゆる経済の合理性、効率性だけで企業群をとらえていきますと、これは、非常にアメリカナイズされた形にはなりますけれども、結果として弱肉強食の経済というものを容認していかざるを得ない。私どもはそれとは違う価値観に立ってしかるべきだし、先日もフランスのロワイエ法が改正されてラファラン法という新しい法律に、これは商業・手工業基本法、今我々が議論している日本中小企業基本法と非常にある意味ではよく似たものでありますけれども、その中での、つまりフランスの方のそういう中小企業、伝統的な企業の位置づけというのは、それが自分たちの社会、自分たちの伝統、自分たちの地域を守っていくものなんだということでの非常に積極的な位置づけが行われているわけでありますけれども、どうも我が通産省やあるいは中小企業庁にはそれが感じられないというのは、率直なところであります。  これは、実は価値観の問題なんですね。シューマッハーが言う言葉がそのまま誤解なしで伝わるかどうかということは、私はちょっと危惧はあるんですけれども、シューマッハーが評価する言い方は、仏教経済学という言い方をします。仏教経済学。経済学の中でも、つまり経済合理性、効率性で、優秀なものがどんどん勝っていって、衰えたものはどんどん敗れていくものだということではなくて、いわばすみ分け、共存共栄をしていくという考え方がこれからの経済の考え方の中では必要なのではないかという考え方があるのですね。そういう一つの価値観を一方で持ちませんと、私に言わせれば、通産省中小企業庁は一体どこの役所なのか、アメリカの出先機関なのじゃないかという感じも時々はしてくるわけです。  そこのところをぜひきちっと踏まえていただいて、私がもし通産大臣としてこの今の時代の日本中小企業政策を推し進めようとすれば、これは定義の拡大だとかそういう話ではなくて、いわば小規模企業対策をどう推し進めるかという位置づけと、それから中堅企業対策という位置づけをどう推し進めるかということ。その小規模企業対策の中に実はベンチャーとか創造的な企業支援策も含まれるわけですね。あと残る大企業対策をどうするかということはありますが。そうすれば初めて、つまり企業支援策ということについて非常にめり張りのきいた政策として一般に理解されるのではないかというぐあいに実は考えるのであります。  これはもちろん将来的な課題にもなりますけれども、それについての大臣の考え方をぜひお伺いしておきたいと思います。     〔委員長退席、小林(興)委員長代理着席〕
  57. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御説の中で、中小企業というものをその規模によって小規模企業中小企業中堅企業というような分類をする。長らく通産省では、小規模企業中小企業というものを、大企業に対して規模が小さいがゆえに劣位だ、こういう発想をずっと持ってまいりました。この根源になっているのは、規格大量生産をしていく近代工業社会においては、百台しかつくらない中小企業よりも、同じ規格で千台つくる方が必ず有利だという前提があったのですね。それがおっしゃったシューマッハー、あるいはその時代にかなり言われたことでございまして、ジョン・ロールズの正義論なんかもそういう理論に立っておりました。  ところが、情報化社会が進んでまいりまして、企業規模、さらには規格大量生産ということが疑問になってまいりまして、中小企業対大企業というのが、一万台しかつくれない中小企業と百万台つくる大企業の競争ではなしに、一種類つくっている中小企業と百種類つくっている大企業との格差、こういう形になってまいりました。  そういう中で、中小企業というものも大きさだけで分けられないという時代がやってまいりまして、小さい企業小規模企業でも優秀な製品を持ち、優秀な技術を持っているところが大きく発展してベンチャービジネスになる。一方、地域の人々に貢献するような地場産業といいますか、ずっと伝統のある企業もいる。さらには、その企業を経営している人たちの喜びとして、人生として行われているものもある。こういうものをそれぞれに考えていかなければいけない。そして、そういうものが全体として、どのような職業にもつける、本当の人間の選択ができるような世の中、こういうようなものを今目指している。そしてその中から、ベンチャービジネスになって世界的にチャンピオンになるものをつくっていこう、地場産業に貢献していけるものをつくっていこう。従来よりはずっときめ細かな発想になってきていると言えると思うのです。  その中で、御指摘のように現在の段階ではまだまだいろいろと、中小企業と大企業、あるいは元請企業と下請企業、そういったような不公正な条件がございますが、これはそういったものとして過渡的な措置、対処をしていかなければいけない。  しかし、長期的に見ますと、やはり中小企業創業率がふえる、創業率がふえることはまた閉業率がふえることでもございますから、そういうダイナミックな入れかわりのある社会が生まれてくることが必要だ。その中で、できるだけすぐれた技術を持ち、すぐれた経営方法を持ち、すぐれた経営者、闘志を持った者が生き残ることによって日本社会全体が高まっていく、その中で雇用もふえてくれば所得もふえてくるという、ダイナミズム回復というのが今度の中小企業法の中に込められた非常に底辺にある精神なのですね。  だから、委員も、長期的といいますか、基本的な発想の転換の上に立った議論として、いかに部分的な問題を解決するかということは重要でございますが、基本的な精神の変化ということを十分御理解いただきたいと思っております。
  58. 渋谷修

    ○渋谷委員 基本的な認識部分は、そういう意味では大分近づいてきたのかなというぐあいに思います。  私は、大企業中小企業を対立的な関係でとらえているわけでは決してないのです。それぞれの役割分担ですよと。それはもう、一部上場の大企業であれ何であれ、そこの社長と町場の豆腐屋さんの社長と、あるいは社長とは言わないですね、おやじさんと、価値が全然違うわけじゃありませんよ。そういう目線で中小企業庁が仕事をしなかったら中小企業庁という意味合いはなくなりますよということを、実は何度も申し上げているわけです。  そういった観点を前提にして具体的に、私が小規模企業にこだわるのは、今地域経済が非常に疲弊をして深刻な事態になっているということがもう一つあるからなのです。そういうことでは、今度の改正案の中で一つ重要な点というのは、この施策をだれが推進をしていくのかというその責任者、主体の問題なのですね。  私は、時代状況は、これまでのように中央政府がいろいろなメニューを用意して、中小企業政策というのはこれこれこうですよということで、あとは地方公共団体、私はあえて地域政府と呼びますが、地域政府がそのメニューの中から選んで何かやりなさいということではない。地域政府がまさに責任を持って、そして地域政府がいろいろなアイデアを出し、その地域の自然環境だとか、自然資源だとか、歴史的な経過だとかいろいろなことで、先ほど堺屋長官が言った地場産業という言い方と地域産業という言い方があるのですが、地域産業というのはその地域の方々のニーズに対応して商売をやっていくもの、地場産業というのは外に商品などを輸出したりあるいは送るということになりますけれども、そういう中小企業のバックアップをするのはその地域のことを一番よくわかっている地域政府だろうというぐあいに私は思うのです。  したがって、そういう観点が今度の改正案の中でもきちんと柱として位置づけられているかどうかというぐあいに思いまして、これも提案理由というところを見たのです。提案理由というのはその目指す政策のダイジェストの部分ですから、そういうことがめり張りよくわかるようにきちんと位置づけられなければいけないのですね。  ところが、地域政府の位置づけ、地方公共団体の位置づけというのは、提案理由の中には一行もない、一文字もないのです。もちろん要綱になればありますよ。それはかつて基本法の中にありましたから、それを引き継いで、この中で一部文言を変えてはあります。しかし、提案理由の中にはそういうことが位置づけられていない。  つまり、依然として中小企業庁の発想はこれまでの中央政府の発想で、メニューを下に投げてやって、食うか食わないかあとは皆さんが考えなさいみたいな発想で考えているのかどうか。やはりこれはきちんとこの中に位置づけがされなければいけなかった事項ではないかというぐあいに思いますので、あえて質問させていただきます。
  59. 茂木敏充

    茂木政務次官 渋谷委員、この新基本法をよくごらんになった上で今御提起をいただいたのだと思いますが、国と地方公共団体の役割分担につきましては、今までの現行の基本法では、第四条で、地方公共団体は、国の施策に準じて施策を講ずる、こういうことになっておりましたが、御指摘のように、近年の地方分権の流れ、さらには地域産業への注目等々を踏まえまして、これからは、地方公共団体と国を同様な重要な政策の主体として位置づける観点から、新基本法におきましては、第六条におきまして、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有することとし、地方の役割を今後より重要視して……(渋谷委員「読んでいるのです、それは。もういいです」と呼ぶ)明確視してまいります。
  60. 渋谷修

    ○渋谷委員 法案は読んでいるのですよ、当たり前の話。提案理由の中にこの自治体の位置づけがあるかと聞いているのですよ。ありますか。それを聞いただけです。  何度も申し上げていますけれども、提案理由というのはダイジェストで、こういう政策をやりますよという姿勢を示すものでしょう。だから、その中に、本来であれば、この施策はどこが中心になってやるのかということが明記されていなければいけないのですよ。それがないということが、あなたの責任じゃない、事務当局がそういう問題認識がなかったということです。法案の中にあるのは私も知っていますよ。かつての基本法の中にもそういう位置づけはあるのです。ただ、今度の基本法の中ではもちろん表現は変わっていますけれども。  その解釈をめぐってここで議論するような時間はないから、それはあえてしません。しかしながら、提案理由の中にそういう位置づけがないということは認めなければいけませんよ。そうでしょう。  したがって、そういう評価と位置づけというものをこれから考えていくということであるならばいいけれども法案についての解釈論をやるのだったら、とてもそんな時間はありませんよ。改めてそれはやりますけれども。いかがですか。
  61. 茂木敏充

    茂木政務次官 御指摘のとおり、提案理由の中にはございません。  ただ、先ほど答弁させていただきましたように、新しい基本法におきましては地方の役割をより重要視させていただいておりますので、その方向で今後進めてまいりたいと考えております。
  62. 渋谷修

    ○渋谷委員 これは大変重要な部分なので、ぜひこれは地域政府役割というものを明確にしながら、もう一つは地域政府自身が、地方公共団体という意味ですが、地域政府自身がまさにベンチャー的な意欲を持って、自分たちの地域のことについては自分たちが責任を持っていろいろな産業を起こすということについて頑張ってもらわなければいけません。  ところが、分権という議論でいえば、そこに財源がないのです、堺屋長官。財源がないものですから、したがって中央政府役割がありまして、いろいろな提案があったら、その提案の競争をさせながら、それに中央政府が財源をつけてやる。あれこれひもをつけてはいけないのです、これについては。  今、例えばSOHOだとか、少なくとも私のフィールドワーク、地域地域を回ってきた経験でいえば、例えばベンチャー企業を育てたいとか、あるいはスモールビジネスとか、あるいはホームオフィスとか、そういう小規模企業育成したいというぐあいに考えまして、今、中小企業庁が用意しているメニューを活用して例えば補助金等を得ようとしても、あれこれひもがついているために非常に活用しにくいのです。  だから、そういうことを踏まえて私は申し上げているわけで、したがって、地域政府のそういう役割というものを中小企業庁が余りひもをつけないでバックアップする。もちろん、その後の成果というのはフォローアップしなければなりませんけれどもね。そういう観点で、ぜひ地域政府の位置づけとそういう取り組みというものをやっていってもらいたいというぐあいに思います。  それで、先ほど大畠議員が質問しておりましたが、公取への質問ですね、基本は自由競争ということなのですが、いつも我々が議論として間違うのは、自由競争があたかも自然に我々の目の前に存在しているかのように錯覚を起こすのですね。これはもう学者の議論でいえば当たり前の話ですが、自由競争というのはビーカーかフラスコの中であるような、ある意味では理想でありモデルでありましょうけれども、現実にそういう自由競争の状態というのはないのですね。必ずそれはないのです。  何が起こるかというと、必ずそこではいろいろな形でゆがめられて、力のあるものに市場がゆがめられて、不自由な競争状態になっているということが前提なんです。その不自由な状態をいかに理想的な状態に近づけるかという意味で、公取があったり、その他のいろいろな法律が必要とされてくるわけですね。  問題は、だから、我々が中小企業についての議論をしようとすれば、そういう意味で、我々が目の前にしているこの自由競争という状況の中で、不公正な、公正でない状態というのはないのか。競争条件を公正にするという任務、これは政府の任務です。このことはやはり政府の任務なんです、その公正さを確保するという意味で。  したがって、その公正さを確保するという点で、具体的に申し上げますと、公正な競争条件の確保ということでいえば、それがねじ曲げられている、ゆがめられているというような現場を幾つ指摘をしていけば足りると思うのですが、何度かここでも取り上げられてまいりましたけれども、例えば下請企業の問題。  下請企業の問題でもとりわけ建設業の下請企業の問題を取り上げますけれども大臣、下請代金支払遅延等防止法の中には建設業は含まれていないのですね。建設業がなぜ排除されているかということの御認識をぜひいただきたいと思います。
  63. 茂木敏充

    茂木政務次官 御指摘の点につきましては、建設業法におきまして、不当に低い請負代金の強要や下請代金の支払い遅延の防止等々、これを規定させていただいております。
  64. 渋谷修

    ○渋谷委員 私が言ったのは、なぜ建設業法でやることになって、中小企業庁が所管する下請代金支払遅延等防止法の方で建設業が網羅されなかったのかということを申し上げているのですが、回答の方を先に言いましょう。  中小企業庁は通産省の外局ですし、それぞれ各省で自分たちの縄張りがありまして、例えば食料品だとかそういったものを扱うものについては農水省、中小企業政策は農水省でもやっているのです。建設省は建設業ですね、自分たちが所管している業種だから、その中の中小企業対策というのは中小企業庁にやらせないで自分たちで囲い込んでいるというのがその外れている原因なんですね。  したがって、下請企業について議論する場合に、大臣、本来であれば、中小企業を守る守護神という立場でいえば、これは本当は許しちゃならないんです。建設省に中小企業政策を任せるとか農水省に任せるということは、本当は許しちゃならない。クリーニング業であれば厚生省が所管しているんですね、そういうぐあいに任しちゃならないんですね。本当は、中小企業庁が一元的に全体を網羅して公正な競争条件の確保ということをしなければならないのですが、まあ哲学の部分はよしにしましょう。  どっちにしても、下請企業の建設業の現状というのは非常に深刻です、この時代状況の中で。例えば、仕事はほとんど電話だとか口頭で頼まれることが多い。書類は残されないですね。仕事を始めてから、実際に今度は代金決済の段階になると、皆さん、三割減なんというような話じゃないんですよ。見積書を出したら、五割カット、頭から七割カットですよ。  私が、絶対にこれは改めなければいけない、何とかこれは是正しなければならないというぐあいに思いますのは、一方で大手ゼネコンは一千億だ二千億だという借金を棒引きにしてもらって、それで自分たちの下請企業に対してはさらに、不良債権を抱えていますから、そのリスクを押しつけて、中小企業、下請企業をいじめて、それで自分たちは黒字決算をするなどというような状況があるわけですね。  例えばこの建設業の下請企業について、大臣、こういう現状を踏まえて、これをどうやって改善していきますか。
  65. 深谷隆司

    深谷国務大臣 建設工事の請負における下請取引の適正化対策というのは、御指摘のように大変大事なことであります。今政務次官から申し上げましたように、建設業法に基づいて、建設省と中小企業庁が共同で厳正に対処しようとしているわけです。  具体的に申し上げますと、元請及びその下請についての報告徴収というのを行って、問題があった場合には元請に対して改善指導を行う、あるいは立入検査を行う、そういう形で下請取引の適正化に努めているわけであります。特に下請からの報告徴収については、平成十年度以降約千二百件と、従来に比べてふえているという状態であります。  また、建設省においては、元請下請関係の適正化を進めるために、建設業者団体に対して通知を出して指導しているというふうに聞いておりますが、いずれにしても厳正な対応が必要であることは委員指摘のとおりです。
  66. 渋谷修

    ○渋谷委員 実態をめぐってもう少しやりとりしてもいいのですが、全体の時間の配分もありまして、結論部分で言います。提案です。  大臣、今までもやっていることは知っています。千件以上の書面調査をやっていますが、これは手紙での調査ですから実態把握はできません、結論から言いますと。それから、大手の建設会社に入りましても、法的に問題のあるような証拠書類というのはほとんど残しません。だから、今まで例えば大手のそういう元請の会社に調査に入って、それは全くゼロとは言いませんよ、何件かは指摘される、改善的な指導が行われているようなこともありますけれども、ほとんど多くは出てきません。もちろん証拠は残らないようにしているわけです。それは元請ですからね。  そこで、それでは実態の改善はとてもできないので、具体的に申し上げますと、今申し上げたように大手のゼネコンで徳政令で一千億だ二千億だという借金の棒引きをしてもらったような会社に、特定の会社に焦点を絞りまして、これは人数が少ないから、現状は知っています、人数が少ないので全部の調査なんというのはできないのです。全数調査はできないのです、せいぜいサンプリング調査ぐらいなものですから。それでも四苦八苦してやっておられるわけです、現場は。したがって、特定の建設業者に焦点を当てて、その下には当然何百という下請企業があるんですね、下請企業の方に個々面接をして調べなければなりません。  つまり、発注がどういうことで行われているか、その発注についての例えば書類的なお互いのやりとりがあるかどうか、あるいは代金の決済はどうなっているか、下請の方に全部それは残っていますから。元請に行っても、ないんですよ、これは。だから、下請企業に対する調査というものを、個々面接という形ですよ、書面調査じゃだめです。だって当然、自分のところの名前が出てきたら後でしっぺ返しを受ける可能性があるというぐあいに思いますからね。だから、そういうことがないようにしながら個々面接で調査をすることで、この問題の是正を図るべきだというぐあいに思います。  本来でいえば、もっと早くこのことはやっていなければいけないことだったのですが、大臣、ぜひお伺いさせてください。
  67. 深谷隆司

    深谷国務大臣 建設業法に基づく検査等の状況でいきますと、書面調査というのは千百、それから下請企業数でいくと千二百、改善指導は四百七十六、やはりこういうことを繰り返し繰り返しやっていくことの効果というのも、これは御理解いただきたいというふうに思います。  それから、ただいまの御指摘でございますが、一部、下請企業に対する不公平な取引が認められれば、その元請の取引全般に対しては改善を求めてきているわけでありますが、一方、面接調査に関して言いますと、匿名性の確保というのは非常に難しい、下請企業の側に抵抗感があるとか、そういうもろもろの問題があるようでございます。しかし、あなたの意見は御意見として承っておきたいと思います。
  68. 渋谷修

    ○渋谷委員 そういうやり方をとらないと現場の把握ができないのです。この間から、よくわけがわからないぐあいに聞いたかもしれませんが、山田方谷さんの話などもしましたけれども、要は、現場の実態把握をしない限りあらゆる政策というのは現実性を持たない、現状改革はできないという前提に立てば、今言ったような形、単なる書面調査だとかいうことでは実態把握はできませんので、直接担当者が現場に行って、それでも匿名性の確保はできますから、逆にその方ができるというぐあいに私は理解します。  そうして、その実態の状況を把握しながら、その問題点の具体的な指摘をして、それで改革を図っていくという以外に、この下請問題というのは、今大臣がおっしゃっているようなことでは永遠に解決されないで続くというぐあいに思います。これでは、先ほどから議論になっている公正な競争条件を確保してあげるということができないわけですね。そこでは政府の任務がないということになります。  それから、公正でないことをもう一つ申し上げれば、JRの事業展開の問題があります。  民営化されまして、もちろんいろいろな事業展開をしています。ところが、御承知のようにかつての旧国鉄、ここに対する、例えばいろいろな財産、土地を含めてでありますけれども、これは当然、国民の財産であったり、例えば土地収用法で収用された土地であったり、あるいはその負担者、国民の負担によってそういう財産がつくり上げられてきた。もちろん一方では巨額の負債もあったので、これを民営化しなければならないということで民営化されたわけであります。  ところが最近、JRが、自分たちの持っている土地を有効活用しなきゃならないという議論も一方ではありますから、そこに、例えば自分のところのダミー会社であるキヨスクなどを活用しまして、スーパーの展開をする。  もともとその土地というのは、運輸事業に供するために提供された国有地であったり財産であったりしているわけですね。確かに民営化になったことは事実ですけれども、依然として政府が株を持っている特殊会社であるという事情はあるわけですね。それが、いつの間にやら、例えば自分たちの持っている土地を自分たちのダミー会社であるキヨスクに提供して、その賃貸借契約などはわかりませんから、非常に有利な条件で提供して、そこでスーパーを経営する。それで、周りの中小小売業者はそのことによって影響を受ける。  これは公正な競争と言えますか。一方では条件が確保されていて、そんなところに立地して店舗を出すなんということは一般の小売商にはできないようなところに土地を確保していて、そこにスーパーを出して、そこで競合状態が起こるということは、これは公正な競争状態とは言えない。  こんなことを想定しているから、JR法の十条に中小企業者への配慮という規定が設けられたのですね。ところが今は、中小企業者への配慮の規定などというのは、JRの方は全く意にも介さず、どんどん事業展開をやろうという姿勢になっているのです。これは通産省中小企業庁からの要請があってJR法の十条の中に中小企業者への配慮という規定が入ったのですから、このことについて改めて大臣の考え方を聞いておきたいと思います。
  69. 深谷隆司

    深谷国務大臣 大企業中小企業の間に競争の面でもまだまだ格差があるということは、私も認識しております。  そこで、このたびの基本法基本理念の中に、中小企業活性化させるためのさまざまな手段を講じていこう、そういうことによって我が国の経済発展を図っていくし、雇用関係も充足させていこうということでございます。これらは、第十五条の経営基盤の強化ということで、一層努力をしてまいるつもりでおります。  JRに関して申し上げますと、第十条で中小企業者への配慮規定とか、附帯決議というのがあるわけでございます。本来、これをきちっと守って、そして中小企業者の事業を不当に圧迫しないということでなければならないのですが、委員指摘のような場面があるというふうに我々の耳にも入ってまいります。私は、運輸省の指導のもとで、この十条がきちっと生かされるように、適切な指導を期待していきたいと思っています。
  70. 渋谷修

    ○渋谷委員 これは一回きりのやりとりしかできないのですが、堺屋長官、片方はJRという形で民営化しまして、こっちは大きな資本力も持っているし、土地、財産、その他も持っているから、やろうと思えば、クリーニング屋もできればスーパーもできれば、何でもできるのですよ。ベーカリーもやれば、何でもやるのです。ところが、中小企業の側が束になったって、これから鉄道事業を起こすことはできますか。これが相互にできることで初めて自由競争という状況なんです。これは現実的じゃないでしょう。  その意味では、我々が目の前にしている競争状態というのは決して自由ではないということを前提にしながら、一方で大きな力を持っている者に対して我々が一定のルールをつくって、中小企業者もそこで対等に渡り合えるような環境をつくらなければいけないというところに中小企業庁の任務があり、あるいは通産省の任務があるということは、ぜひ改めて御認識をしておいていただきたいというぐあいに思います。分野調整法だとかその他の法律もそういう観点からできておりまして、何も中小企業を保護するという観点からできている法律ではないのです。ここのところは絶対に誤解しないでいただきたい。つまり、このことは、大企業側の不当な侵害によって中小企業者のいわば公正な競争条件が損なわれることを是正するための趣旨であるという認識をぜひお持ちいただきたいと思います。  時間がありませんので、先般、金融の公的保証枠の問題、特別保証枠の問題で質問いたしました。大臣と何回かやりとりいたしまして、貸し渋りということが前提の議論になっておりますので、それについては、これからネガティブリスト、いろいろな理由を挙げさせる中に銀行名を書かせるということについて研究しましょうというお話でした。このことは、もう目の前、これからすぐ実施されていく話でありますから、研究、検討を既に事務方に指示したのでしょうか。     〔小林(興)委員長代理退席、委員長着席〕
  71. 深谷隆司

    深谷国務大臣 通産省の事務の職員には、当然私の意思は伝えました。それから、保証協会などについても、これらの議論をきちっとするようにという指示を出しております。
  72. 渋谷修

    ○渋谷委員 それは一歩前進という感じですが、その後一晩よく寝て考えてみたのですが、一晩寝るとまたいろいろな考え方が浮かんでまいりまして、この間の議論を通じても、どうもやはり根っこのところ、根本のところが違っているというぐあいに思われて仕方がないのです。  何が間違っているかといえば、先ほど来の議論もありましたけれども、そもそもこれは、政府金融機関が特別保証枠ということでやらなくても、その前に中小企業に対するきちんとした信用システムあるいは金融ということでの対応をしていればこういう問題は起こらなかったのではないか。  さらに、昔々、かつてでいえば、政府金融機関もいわゆる担保主義にとらわれて、担保がなきゃ金を貸さない、保証人がいなきゃ金を貸さないという、商工ローンまで悪質じゃありませんけれども、そういう体質を持っていたのですね。一般市中銀行も実はそのとおりであります。  今度の一連の、バブル以降の話でありますけれども、十年前の土地基本法の議論にさかのぼりますけれども、土地そのものをいわば投機の対象としてはならないというのが土地基本法の中にあるわけです。そのときをきっかけにして、市中の民間銀行もそれから政府金融機関も、担保主義から脱却しなければならないチャンスだったのですね。それがされずに今現在も来ておりまして、つまり、土地がなければ金を貸さないとかいう話だったら、質屋さんを悪く言うわけじゃありませんけれども、いわば質ぐさがなければ金を貸さないのと意味合いは大して違わないのですよ。  つまり、企業の経営の内容、将来性だとかあるいは経営者の資質、これに着目して、それを審査してリスクを背負って金を貸すという本来の金融機関のあり方。今銀行が中小企業に金を貸さないのは、中小企業が例えばもう担保割れしている、担保力がない、あるいは保証人をつけたって危ないということがあるから金を貸さないということが背景にあるわけですよね。ここの根本のところを解決しないと、結局はまた、十兆の緊急保証枠をやりましても、中小企業に対する融資の根本的な問題というのは解決されない。  ですから、大臣にぜひお願いしたいのは、政府金融機関については担保主義からの脱却を図る、そのための指導をしていく、改善をしていくということが、実はこの議論の中で一番根本の問題なのではないかというぐあいに思うのですが、大臣いかがですか。
  73. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今御指摘になりましたことは、日本経済金融の大変根本的な問題でございます。日本金融機関ももとはそうではなかったんだろうと思うのですが、一九七〇年代に土地の値段が上がるようになりましてから、だんだんと担保評価が唯一の銀行の業務になって、中小企業の事業であるとか経営者の人物であるとかいうことを評価しなくなりました。その反面にあったのは、貸付金利にそう格差がない、担保をとって安全で貸しても、そうでなくて人物本位、事業本位で貸しても同じような金利に統制されている。統制といいますか、規制されている。それであるならば、担保を十分とればいいということになりました。  そこへ、七〇年代から土地神話が出てまいりまして、土地さえとっておいたら大丈夫だということになったものですから、日本の銀行全体が事業審査能力を失いまして、担保評価能力だけになったのです。これがどんどんと、担保の評価さえすれば安全だというのでバブルに貸し込んでいって、とうとう時価の評価はありますが将来評価はないという大変悲劇的なことになる。いわば日本の銀行の最も根幹的な能力が失われたところでございます。  それで、我々といたしましては今、金融再編成の中で、事業に対する評価能力、そしてそれによって金利にも差をつけるというような形にしなきゃいけない。護送船団方式でどこもかしこも同じような金利で同じように貸すとなると、どうしても担保主義に陥る。ベンチャー的な投資ができない、優良な中小企業に貸すことができない。そしてまた、銀行も、いろいろな種類の銀行をつくりまして、国際的に活躍する銀行もあれば、地場企業を大事にする銀行もあれば、個人を中心に対応するような銀行もある、そういうような形でこの金融問題全体を取り上げていく。  その過渡期間として、今二十兆、今度もう十兆ふやします保証等をつけまして、こういう激変緩和措置もあわせてやっているというのが現状の私たち金融政策でございます。
  74. 渋谷修

    ○渋谷委員 堺屋長官、私が言っているのは、そういう改善の方向というものを政府が主導して図るべきではないか、少なくとも政府金融機関についてはそうすべきであるという提案をしているわけです。それはそうだと言うなら、やはりそうだ、そういうことでやっていきましょうというぐあいに答えていただければいいので、前の現状認識は私ももちろん重々わかっている話なので、そのことだけ一言お願いします。
  75. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まさにそういう方向で、人材の育成から銀行の種類分けまで考えていきたいと思っております。
  76. 渋谷修

    ○渋谷委員 それで、これは深谷大臣。  つまり、去年二十兆、巨額のお金を用意しました、保証枠ですね。それでもう十七兆、十八兆というお金が出ています。これは貸し渋りということを理由にしているのですが、このままで十兆また積み増しでやっていきますと、銀行の貸し渋りというのは改善されないまま、それは結局ペナルティーも何もなしにこのまま温存されるということになるじゃありませんか。大臣は、何度も銀行協会等を通じてそれを改善するように厳しく指摘してきたと言いますけれども、改善されない状況を一体どう考えればいいのか。  二十兆を出して、私が何度も申し上げましたように、もう既にこれまででも、どの銀行が貸し渋っているのかというようなことを調査すれば、調査するのはしようと思えばできる、全数調査をせいと言っているんじゃないのです、それは大変なことですからサンプリング調査でもいいのです、これは出てきます。個々に調べればすぐ出てくる話です。  そうすれば、市中銀行の、都市銀行等の貸し渋りの実態、現場の状況を把握して、そして改善の具体的な指導を関係省庁にやれば、この改善が行われれば、何も十兆という話ではなく、これが五兆円なり三兆円なりということで圧縮できるじゃありませんか。  少なくとも私が聞いている限り、今度のこの保証枠の実施によって、事故率というのを一〇%ぐらいに見ているという話もありますが、そうすると、二十兆については二兆円ですか。さらに十兆拡大すれば、一部は状況が緩和されるかもしれないから、そんなにならないだろうという議論もありますが、大臣、これは実は大変な意味を含んでいるわけですよ。  商工ローンの根保証なんという話がありますけれども、いや事故率は二兆円です、そんなにはありませんということを言っておきながら、後でこれがさらに拡大をして五兆とか十兆などという話になりましたら、最終的には国民に負担が行く話ですから。すなわち、何を言っているかというと、国民に対して根保証を押しつけているということになりかねないのですよ、このことは。  ですから、行政の本来の責任として、大臣が、以前は大臣でなかったという議論はあるでしょうけれども、今就任されて、その責務でいえば、この二十兆をやってきた経過の中で、そこでちゃんとデータをとって、まずは根本の銀行の貸し渋りを改善させるという具体的な措置を講ずるべきじゃないですか。それをなしに安易に十兆に行っちゃうということは、今の貸し渋りの状態をそのまま認めるということになるのですよ。  議論としては難しい議論じゃありませんでしょう。当たり前の話ですが、大臣いかがですか。
  77. 深谷隆司

    深谷国務大臣 銀行が貸し渋りを行っているという点について、全く改善が見られないとは思っていないのです。改善させるべく全力を挙げてきたし、例えば、六十兆の健全化、再生化の法案を出して十五行が申請していますけれども、そのうち三兆円は中小企業対策で貸すんだということを前提条件として貸しているわけであります。  そういうように、一方では、金融機関の貸し渋りをなくすためにこれはそれぞれの所管の省を中心として対応している。一方においては、まだそうは言っても中小企業資金需要に見合わないから、この過渡的な、いわば緊急避難的な対策をもうしばらく続ける必要があるのではないか、そういう大方の声にこたえるためにそのような対応をしてきているわけでございます。だから、これだけをむだなことだといってやっているというふうに言われることは、私はちょっと心外でございます。  あらゆる面から金融機関の貸し渋りをなくしていくべく全力を挙げていかなきゃなりません。それは一方において今もやっている仕事でありますが、同時に今、当面の貸し渋りの対応、あるいは現在までの中小企業の借り方、昨年十月一日から以降ずっと眺めてまいりますと、もう一息お手伝いをする必要があるのではないか、そういう意味で一年間の延長と十兆円という額を設定したわけであります。
  78. 渋谷修

    ○渋谷委員 自信ありげな大臣の姿勢には、もちろんそれは理解します。  しかしながら、かつて私どもは苦い経験をしてきています。例えば、小渕さん、長銀についてはこれは何ら問題がないと言いながら、実は破綻をしてしまいまして、その後貴重な税金をつぎ込むことになった。政治家が議会で何を言おうが外で責任を問われることはないでしょうけれども、このことが国民に与えた不信感、失望感、怒りというのは、中小企業者も含めて、本当に底なしの状態ですよ、この状況は。  私どもは、このことについて、大臣が自信ありげに言うのですから、これはぜひ大臣に最後に答弁を求めたいのですが、私が逆の立場であれば、この事故率というのは徹底的に低く抑える、回収も徹底的に誠意を持ってやる、国民の負担はできる限り少なくする、我々の予想の範囲内でおさめる。これをもし上回るならば私自身はそのことについて政治責任を問われても仕方ない、そのぐらいの覚悟でやっているんだということを言わなければ、大臣の自信の裏づけになりませんよ。大臣、いかがですか。
  79. 深谷隆司

    深谷国務大臣 大変難しい議論だと思います。同じこの場所でも、中小企業に対しての貸し渋りが現状続いているからこの十兆円は効果がある、よくやったという声もあれば、あなたのように、ばらまきだ、回収どうなんだという御意見もあって、これは大変難しい問題であります。  ただ、二十兆を設定したときに、リスクを一〇%と考えると。つまり、信用保証協会を通じての貸し出しについても、同じような貸し渋りの現状があってはならない、窓口が自分の責任を回避するためになるたけ貸さないようにするんじゃ何にもならぬというので、異例の措置として一〇%のリスクを前提にしたわけですね。しかし、そうは言いながらも、最終的に国民に迷惑をかけてはいけないから、ネガティブリストというのをつくってその枠の中で進めている。今度の十兆円に関していえば、三月いっぱいは今までどおりの形でありますけれども、四月一日以降については建設的なプランも上げてくださいよということで対応するようになっているわけであります。  なお、この返済が一体どのぐらいになるのかということについては、これは景気の動向も含めて、簡単に判断することは容易ではないと思いますが、現状までの状態を振り返ってみますと、中小企業皆さんが全力を挙げてお返しをしておられるわけであります。私は、その中小企業の努力と誠実さを心から期待して、とにかくこの時代を乗り切ってほしいとひたすら願うのみであります。
  80. 渋谷修

    ○渋谷委員 誤解をされては困るのですが、昨年の二十兆の緊急の融資ということについて、特別保証枠の拡大ということについて、これを否定しているわけではないのです。  何のために根本的な議論をしたかといえば、銀行が、あるいは政府金融機関が、つまり担保主義から脱することができずに、それに引きずられて結局は貸し渋りに陥っている。こういう現状がある限り、中小企業は悲鳴を上げますから、そこに対する特別の対策としてはとらなければならなかった。それ以降、当然そのことの改善がされなければならなかったけれども、そのことが私から見ると非常に不徹底で、きちんと成果を上げていなかったために、また追加の措置をとらざるを得ないということになっているわけです。  したがって、根本的には、政府金融機関のあり方、都市銀行のあり方を変えていくということが根本なのであって、いわば、こういう形で特別保証枠をさらに十兆円延長するんだなんということになりますと、銀行の姿勢を改善することにはつながらない。なおかつ、一般的に誤解を受けるのは、結局は中小企業は弱者で政府が丸抱えで助けてやらなければならない存在だなどという評価をされますと、中小企業の、私も中小企業問題を専門にやっているわけですから、中小企業の将来にとってもプラスじゃないんですよ、このことは。そういう意味で申し上げているんです。  そもそも、健全な中小企業をめぐる信用システムというものが確保されないからこういう問題になっているわけですから、そこに対する認識をぜひ大臣に持っていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  81. 深谷隆司

    深谷国務大臣 別に最後のところで反論しようと思っているわけではありません。あなたのお考えもとても大事でございますし、お貸しをしたけれども返ってこないという現状が生まれてはなりません。しかしそれは、ただいま申し上げたような、主要銀行が貸し渋りをやめていくために監督官庁が指導していくということもあれば、あるいはリスクの多いところのリターンに関しては金利を上げるとか、新しい仕組みをつくっていかなきゃならない。いろいろな形であなたの期待に沿うような結論を出していくということが大事で、そのことに私は私なりの全力を尽くしたいということを申し上げたいわけです。
  82. 渋谷修

    ○渋谷委員 ありがとうございます。
  83. 中山成彬

    中山委員長 大口善徳君。
  84. 大口善徳

    ○大口委員 公明党・改革クラブを代表いたしまして、基本法総括質疑をさせていただきます。  今回、この中小企業国会の中で、やはり、商工ローンの問題というのが非常に大きな話題になったわけでございます。そして、その商工ローンというものがなぜこういう形で出てくるのか、三〇%払ってもいいということがなぜ出てくるのか、こう思いますときに、やはり中小企業にとって、ある程度金利は高くても短期の資金が欲しい、こういう需要がかなりあると私は思うわけです。そういう点で、今回の商工ローンの貸し付け実態、どういう需要に対して商工ローンが対応しているのか、この貸し付け実態というのをしっかりと見きわめまして、そして中小企業金融のあり方について政府がしっかりと対応しなきゃいけない、こう思うわけでございます。  そういう中で、都銀や地銀におきましても、中小企業向けの融資体制を強化する動きも出てまいりました。  アメリカにおきまして、実はかつて、担保をとって個別審査をやっていた、そういう形で中小企業の融資業務をやっていた。それが、中小企業融資を集中的にセンター化して、拠点化して、そして大網をかけて、IT技術、要するに情報技術、これを使って、大量に申し込みを受け付けて大量に審査する。デフォルト率といいますか、こういうデータベースをきちっと踏まえて、機械的にチェックしていく。そして、これはホワイトだ、これはブラックだ、ここはグレーゾーンだ、こういうぐあいに、特にブラックの場合ははねる、そしてホワイトとグレーゾーンについては機械化をして、そしてグレーゾーンの場合についてはデフォルト率に合わせて金利を高くしていく、そういうリスクプレミアム、これを設定していく。こういう流れがアメリカにあるということです。  そして、日本におきましても、都銀または地銀がそういう動きを見せていて、審査を二日以内でやりますとか、三日以内でやります、そして短期の資金の提供もします、そのかわり金利は七%、八%、九%にします、こういう動きがあるわけでございます。  そういう点で、私どもは、この商工ローンの問題を反省しまして、そして、大数の法則というような形で、高度に、数学的な技術を使って、もう一度この中小企業金融というものを再構築していかなきゃいけない、こう思うわけです。それとともに、特にグレーゾーンにつきましては、金融機関によっては機械によって審査する場合もあれば、人間、対面で審査する場合もある。都銀は機械化、地銀も機械化。そしてまた、信金でありますとかあるいは信組でありますとか、そういうところは人間によってやるかもしれません。そういう中でさらにこぼれていく方々もいらっしゃいます。そういうことでいきますと、やはり政府金融機関のまた新たな活躍の分野も、やらなきゃいけない分野もあるわけです。  こういう問題意識に立ちまして、私は通産大臣に、こういう新しい動向も踏まえまして、中小企業金融の融資のあり方について、政府として、あるいは民間の銀行、金融機関として、やるべきこと、あるべき姿というものについてお伺いしたいと思います。
  85. 深谷隆司

    深谷国務大臣 民間金融機関は、中小企業の信用リスク評価に関するデータが不足しているとか、あるいは回収のノウハウが欠けているとか、いろいろあるわけでございます。だから、中小企業が借りようとした場合に、例えば先ほどもちょっと触れましたが、リスクの多いところには、金利を高くしてというふうな考え方よりもまず貸し渋っちゃう、それが現状ではないだろうかと思います。それは委員指摘のとおりであります。  そこで、我が通産省といたしましては、そういうようなデータベースを構築するという仕事も新たに視野に入れていかなければならないと考えております。さまざまな資料を国で集めて、それを民間企業で時には活用してもらうということも、とても大事なことかなというふうに思います。ただ、政府金融機関というのはあくまでも民間金融機関の補完的な役割だという、その立場から逸脱することはどうかということも加わっておりますから、これから、対応に関して一体どうするのか、さらに不十分な点はないのか、委員の御指摘を踏まえてよく勉強していかなければならない事柄だと思っております。
  86. 大口善徳

    ○大口委員 堺屋長官は退席されたわけでございますけれども、本当に、担保主義ということから、科学的な技術を使って、情報技術を使っての、無担保で早い審査で提供するということも非常に大事になってくると思います。そういう点で、通産省、データベースをしっかり持っておるわけですから、大いにこれを民間に提供していただきたい。それとともに、商工ローンの問題につきましてはきちっと分析をしていただいて、そして、現場の資金需要、これについてやはりいろいろな指針を出していただきたい、私はこう思うわけでございます。  次に、せんだっての参考人質疑でも紺谷典子さんの方からもお話がございましたが、やはり、中小企業に対して非常にきめ細かにやっている金融機関、地銀でありますとかあるいは信金でありますとか信組でありますとか、きめ細かく融資をやっておられる。この前も信金の理事長に会いましたら、私どもは決して貸し渋りはしておりません、しかしながら、信金の場合でありますと自己資本の調達手段が限られていて、自己資本比率を早期に回復するということがなかなか厳しい、これから二〇〇一年のペイオフの解禁もあるし、ぜひとも資金調達の手段について拡大を図っていただきたい、資本充実策というものの新たな導入をお願いしたい、こういう声もございました。  例えば、優先出資の発行を可能にしていただきたい、あるいは、社債、特に劣後債、ノンバンクも社債の発行ができるようになりましたが、そういう社債の発行を可能にしていただきたい、あるいは、今までは配当が金銭による配当になっていたわけでございますが、これも出資による配当も可能にしていただきたい、こういうような現場の声もございます。  そういう点で、地域の中小企業の融資に懸命に頑張っている現場の声でございますので、これにつきまして、大蔵政務次官に御答弁をお願いしたいと思います。
  87. 大野功統

    ○大野(功)政務次官 まさに、信用金庫というのは、肌の触れ合いを通じて地域の生活、地域の企業活動を支えているものとして大変貴重な存在だと思います。そこで、大口先生御指摘の問題というのは、一つは、自己資本比率を高めて、そして健全な経営をやってお金が潤沢に回っていくようにしろという話、それからもう一つは、信用金庫、つまり協同組織でございますから、協同組織の相互扶助という精神をどう考えるか。つまり、自己資本比率を高めるという話と相互扶助の精神、これをいかに調和させるかという問題だと思います。  まず、大口先生御指摘のとおり、現在、全信連、全国の中心になっている組織でありますが、全信連につきましては、優先出資それから劣後ローン等認められておりますけれども個々の信用金庫につきましては、これは例えば株式会社でございましたら商法上社債の発行ができますけれども、株式会社でないわけでございますから社債の発行はできない、こういう形になっておりまして、先生御指摘の優先出資も社債も発行できない、こういうことになっているわけでございます。  申し上げましたとおり、相互扶助組織でありますから、まず組合員、会員が力を合わせてやるということが第一義的に大切でございますけれども、先生御指摘の問題点、大変重要なことでございます。いかにそれを調和させるか、これをこれから慎重に検討していかなければならない、このように思っているところでございます。
  88. 大口善徳

    ○大口委員 十分しかないということで、最後の質問になります。  BIS規制、いわゆるバーゼル自己資本合意の改定に関する市中協議ペーパー、これがことしの六月に発表されました。その中で新たに提案されたリスクウエートの体系の中で、未格付につきましては一〇〇%ということでこれは変わりないわけでございますけれども、Bマイナス未満は一五〇%という形の提案になっているわけです。  アメリカなどは格付が相当進んでおりますので、この協議におきまして、未格付について一〇〇%からさらに一二〇%、一五〇%になりますと、これは非常に貸し渋りのおそれがあるということで、日本政府としてもしっかりとバーゼル自己資本合意の改定については意見を述べていただいて、何としても一〇〇%を堅持していただきたい、こう思っておりますが、政務次官にお伺いして、私の質問といたします。
  89. 村井仁

    ○村井政務次官 ただいま大口先生御指摘のとおり、バーゼル銀行監督委員会、ここで六月に新しい検討のたたき台というのを出しておりまして、これにつきまして、市中銀行などのコメントを求める、こういうことになっておるわけでございます。これがまとまりますと、最終的には実施が二〇〇二年ないし三年くらいになるのかと思われますけれども、現在出しておりますたたき台では、中小企業の大宗が含まれる未格付の貸出先、これにつきましてのリスクウエートは一〇〇%のまま、こういうふうに原案としてなっております。  したがいまして、私どもといたしましては、この案そのものは大変妥当なものだ、こう考えておりますので、引き続きバーゼル銀行監督委員会の議論の場でこれを支持し、維持してまいる、そういうことによりまして、先生御懸念のような事態の生ずることのないよう全力を尽くしてまいる決意でございます。  以上、申し上げました。
  90. 大口善徳

    ○大口委員 どうもありがとうございました。
  91. 中山成彬

    中山委員長 塩田晋君。
  92. 塩田晋

    ○塩田委員 中小企業基本法改正案につきまして、中小企業が、保護すべき弱者ではなく、多様な可能性と想像力を持った事業主体である、日本経済の活力の源泉であり、また主役であるとしております。そして、創業ベンチャー対策を積極化するということになっておりまして、これに賛成するものでございます。  それとともに、既存の中小企業また小規模企業対策、経営基盤強化策、そして取引適正化対策等は、なお重要であると考えます。一層のこの充実を図るべきだと考えますが、通産大臣の御意向をお伺いいたします。  これに関連いたしまして、商工会等の経営指導員等による支援事業の体制につきましては、今後とも財政措置を含めて支援を行うべきだと考えます。また、指導員という名称につきましても、本基本法改正の趣旨が指導行政から支援行政へと転換するということでございますので、指導事業の見直しとあわせまして検討する必要があると考えますが、いかがでございましょうか。
  93. 深谷隆司

    深谷国務大臣 前半の問題について、私からお答えすることにいたします。  ただいま塩田議員の御指摘のあった、従来からの中小企業施策はそのまま重要であるのは続けていけということでありますが、全くそのとおりでありまして、今まで私たち中小企業に成長していただくためにさまざま政策をとりました、その重要な部分はいささかも後退させてはならないと思っています。  特に小規模企業者に対する対策は極めて大事でございまして、今度の基本法の第八条にもきちんとそのことを明記しているつもりであります。具体的に申し上げれば、例えばマル経資金貸付制度、あるいは経営指導員による経営改善普及事業、小規模共済制度等の施策を講じておりますが、今後とも、意欲のある小規模企業に対しては、その自助努力に全面的にお手伝いをしていくつもりでございます。
  94. 細田博之

    細田政務次官 さらに、商工会の経営指導員などによる支援事業の体制その他の御質問がございましたので、お答え申し上げます。  町村においては商工会、市においては商工会議所というふうに基本的に分かれておるわけでございますが、それらに経営指導員がおりまして、金融や税務、経営等に対する助言を行うという経営改善普及事業につきましては、商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律に基づきまして、都道府県を通じましてその事業費の一部を国が補助しておるわけでございます。この事業は、小規模事業の経営の改善発達を図る上で重要でありまして、今後とも、小規模企業に配慮する観点から、必要な支援を行ってまいる所存でございます。  また、経営指導員の能力の向上を含む事業のあり方については、小規模事業者の今日における課題にこたえていく観点からも、今後も必要な見直しを行ってまいる所存でございます。  また、この見直しを行う際におきまして、指導という言葉が、非常に上からの押しつけのような、官が民に教えるような感じが若干ございまして、表現上これが適切かどうかという問題もございますので、長年にわたって使用してきた言葉ではございますが、八千六百人の経営指導員の、指導という言葉についても、何らかのいい言葉がないかどうか。実際は、最近はコンサルタントとしての役割が非常に大きいわけでございますけれども、経営コンサルタントという別の言葉も既に何となく確立してございますので、どういうふうに言葉を考えていったらいいかということはまた今後検討いたしたいと思います。  また、支援を行う仕組みについては、何度かこの委員会でも御答弁申し上げておりますけれども中小企業総合事業団によります国レベルのナショナル支援センター、そして都道府県ごとの支援センター、全国三百カ所の気軽に相談できる身近な地域ごとの支援拠点の整備ということで、今後、ネットワークをつくって、ワンストップサービス型の支援体制にしたいと思っております。  中小企業庁にも指導部というのがございますが、これは、名称も含めて、今後、行政改革で再編成をしてまいります。
  95. 塩田晋

    ○塩田委員 最後の一問を申し上げます。  輸入によって中小企業に重大な損害が生ずる場合に、関連する現行基本法におきましては第二十二条がありますが、これが新法案によりまして廃止されることになっております。今後、こういった損害が生じた場合に中小企業庁としてはどのように対処するか、お伺いいたします。  これに関連いたしまして、前回の当委員会で私が質問いたしました際に、靴下の通関統計の作成方法が変更されたということの事実確認がされたところでございますが、それによっていろいろな業界の混乱あるいは倒産または損害等が現実に生じているということにつきまして、政府はどのような善後措置をとられるか、あるいは国家賠償等も含めましてどのように対処するお考えか、お伺いいたします。
  96. 茂木敏充

    茂木政務次官 ガット第十九条及びWTOセーフガード協定に基づきまして、特定貨物の輸入の急増によりまして委員指摘のような国内産業に重大な損害等を与えた場合は、国民経済上緊急に必要があると認められるときには、いわゆるセーフガード措置として緊急関税の賦課または輸入制限措置を行うことが認められております。したがいまして、中小企業に生じた損害が国内産業への重大な損害と認められれば、一定の要件のもとでセーフガード措置を講じることが認められているわけでございます。  一方、委員先日も御指摘いただきました、靴下左右ペア、これの集計方法の変更が行われて以降、関係業界と密接に連絡をとりまして本件の影響に関する実態把握に努めておりますが、現在までのところ、これによる損害の発生等具体的な影響があったとの報告は受けておりません。しかし、引き続き実態把握を続けると同時に、関係業界に対しましては、通関統計の集計方法の変更についての周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
  97. 塩田晋

    ○塩田委員 実際の損害の状況は生まれていないということでございますが、私の地元におきましてはやはり倒産もありますし、また価格が半値近くになったということで大変な混乱を起こしております。これらにつきまして適切な対処をしていただきたいと要望いたしまして、終わります。  ありがとうございました。
  98. 中山成彬

  99. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  私は、中小企業政策、これがどういうふうになっていこうとしているのかということが今国民皆さんの間で非常に関心の高まっているときでありますから、最初堺屋長官のお考えというものをお聞きしておきたいと思います。  長官は、十月十日の朝日新聞でもそうだったんですが、十月十七日のNHK討論に出られたとき、私も見せていただきまして、ちょっと関係したところだけ一応起こしてみたんです。  中小企業は今まで弱者であった。中小企業と大企業の格差をいかに縮めるか、そのために中小企業零細企業は保護しなくてはいけない、こういう扱いだったんですね。それを今回は、中小企業の中からチャンピオンが出てきて、大企業を上回るような力で世界に打って出るような、そういう中小企業を育てるんだ。中小企業の強者を育てる。こういう発言をしておられました。  中小企業をどうするかということが今一番のテーマになっておるわけですけれども長官のこの発言、これがあなたのお考えだというふうに理解させていただいていいのか、伺っておきたいと思います。
  100. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 放送の場でございましたので、かなりはしょった言い方はしておりますが、そのような考え方が私の中小企業に対する見方の大きな一部をなしていることは事実でございます。
  101. 吉井英勝

    吉井委員 さらに、従来の中小企業というのはいわば滅び行くものの保護だった、こういう御発言もしておられました。  今、私自身全国各地で、中小企業といいましても大中小ございますから、さまざまな方がさまざまなところで頑張っていらっしゃってお声を聞きますが、しかし、どの皆さんも本当に、この九〇年代不況の中でも随分苦労をしてこられて、経営革新に取り組んだりさまざまな努力をして頑張ってきたわけですね。しかし、保護をしてもらったという感覚はないんですが、あなたの方は滅び行くものの保護だとおっしゃるわけだが、このお考えもこのとおりなんですか。
  102. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 この中小企業基本法が生まれました一九六三年ごろには、日本経済の成長もまだ低い段階でございまして、中小企業規模が小さいがゆえに概して弱いだろうという考え方がありました。一方、日本政府は、当時は近代工業社会を目指して、規格大量生産をやっていくんだ。例えば流通においても、流通近代化という名で、大規模店舗、問屋を通さないでできるだけ直営をする、パイプが太くて短いものがいいんだというような発想を持っておりました。そういう中で、中小企業というのは概して弱いものだと。もちろん、業種別、いろいろございまして、中小企業というのは常に十把一からげに語れない、大企業の入れないような分野のものもあれば、大企業にないよさを持ったものもありますけれども、概して中小企業は不利なところにあった。  これを保護するためにいろいろな手がそれぞれの分野で使われました。例えば大規模店舗規制法でありますとか、あるいはクリーニングとかそういうものについての価格の問題でありますとか、それぞれ個々のものにつきましてさまざまな政策がとられました。それらの政策が、すべてがすべて中小企業零細企業を保護するものではありませんで、そのほかにももちろん衛生の問題とかいろいろな問題があったのでございますけれども、やはり保護的に働いた政策が相当にあったということは事実だと私は思っております。
  103. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、これまでの中小企業基本法は滅び行くものの保護であったというお考えであって、これからの中小企業政策としては中小企業の強者を育てていくのだ、端的に言えば長官はそういうふうなお考えだと理解させてもらっていいですか。
  104. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 すべてがすべて滅び行くものだというわけでもございませんし、業種によって違いますが、非常に簡略に、ジャーナリスト的に消化して要約されると、私の認識の中にそういう部分があったことは事実でございます。
  105. 吉井英勝

    吉井委員 現在の中小企業基本法、この中にある格差の是正というは、当時の二重構造論を背景にした非近代的な中小企業構造を事業の共同化等の規模の拡大により克服する、いわば脱中小企業論ですね。こうした中小企業規模拡大で、どんどん大きくして大企業にしていくというとらえ方、こういう問題、ここについては、これは誤っている、問題だというふうに私は思っております。  しかし、多様な中小企業という言い方で一挙に飛躍して、そこから、中小企業と大企業との格差というのが、賃金格差その他は先日データも出しましたけれども、ずっと続いてきて、今も格差がある。その格差の存在や、中小企業のこの経済的社会的不利な状況を是正する、いわゆる不利の補正の問題、そういう政策目標全体を否定するということになれば、それはやはり間違っているんじゃないかと思うのですが、長官の方は、格差の存在とか不利の是正、補正、こういう政策目標そのものを否定なさるのかどうか、これをまた伺っておきたいと思います。
  106. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 再三申し上げておりますように、中小企業には多様な内容があり、また多様な地域がございます。したがいまして、あるものについては不利な条件も保護して、その地域に必要な、地域住民に必要なサービス、物流というものも存在するだろうとは思います。  基本を、大きな基本と例外的な保護ということを考えますと、大きな基本は、やはりこれからは強い中小企業が出、地場産業に根づいてやれる中小企業だろう。それでも、あるところ、ある場所、ある条件で考えますと、それが困難で、かつその地域の住民の方に必要だということになりますと、それはきめ細かな政策の必要な場面も出てくるのではないかと思います。
  107. 吉井英勝

    吉井委員 長官に締めくくり的にここで伺っておきたいのは、地域もそうですが、中小企業といっても大中小さまざまあるわけです。その大中小それぞれに見合った支援というものが私はやはり必要だというふうに思うのです。長官は保護という言葉を使っておられるが、本当に保護を受けてきたという感覚は、現場へ行けば個々の業者の皆さんの間にはありませんよ。  ですから、やはり個々の、大中小それぞれに見合った支援策というものを考えて、中小企業全体として日本経済の主役の位置にふさわしいものとして発展させていこうということを考えていくのか、それとも、小規模零細については切り捨てやむなしとばっさりいくのか。ここのところが非常に私はこれからの中小企業政策ということを考えたときには根本問題だと思うのですが、この点についての堺屋長官のお考えを伺っておきたいと思います。
  108. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 中小企業をばっさりやるというようなことはできることではないと思います。現に、小渕内閣になりまして、先ほどから議論のありました二十兆の保証などというのも、これは中小企業の経過措置として非常に有効な手段として喜ばれていることだろうと思います。  しかし逆に、ではどんな企業でも保護していくのかということになりますと、効率の悪い小売店、あるいは技術の劣る工場、あるいは適性を欠く医院や弁護士というようなものまで保護しますと、それらを消費の対象としている消費者の立場が非常に不利になります。そういうことを考えますと、全部を保護することもできないというのは事実でございます。また、そういうところにお勤めの方々あるいは経営者の方々を考えますと、転職してより向いた職業につかれることもあり得るでしょうし、そういうことも必要だと思います。  私は、繰り返し申し上げておりますが、やはり人権、人間の尊厳というのは何としても守らねばなりませんが、法人とか事業とかいうものを過剰に保護いたしますと、これは利権になります。人権は守るべきでございますが、過剰な利権は守るべきでない。これは一定の時間措置、方法、転職の道等々を考えて、より効率的な方向に変わっていくべきだ。中小企業だから特別ではございませんが、大企業であれ何であれ、そういった経済の転換、ダイナミズムというのは認めていかざるを得ないものだと思っております。
  109. 吉井英勝

    吉井委員 私は、保護とか救済ということを言っているのじゃないのです。  現実にある格差、そして非常に不利な状況に置かれている。圧倒的な力を背景とする優越的地位の乱用によって非常に不公正な取引が強制されるとか、さまざまな問題があるわけですから、大中小さまざまな中小企業皆さんに見合ったそれぞれの支援策というもの、これは、予算措置を伴うものもあれば、あるいは下請関係を適正化するものもあれば、独禁法の厳格な実施と、独禁法そのものをさらに改正、強化していく、そういう問題があると思うのですが、そういうものこそ今考えていかなきゃならないときであって、それを、滅び行くものの保護はもうしないとか、あるいは中小企業の強者を育てるというそれだけの発想では、中小企業皆さんが求めている政策には合わないというふうに私は思います。  次に、通産大臣に、法を提案していらっしゃるわけですから伺っておきます。  政府中小企業基本法は、大企業中小企業との格差、中小企業経済的社会的制約による不利の是正、こういう基本理念を全面的に否定して、中小企業に役立つ第三章の事業活動の不利の補正を削除ないし後退させている、そういうふうに読み取ることができるわけですが、その方向で行くのか。それとも、中小企業基本法の理念、政策目標、具体的政策を根本的に変えるということはしないと。本当は、しないならば前文削除とか政策目標削除というのはなくなるはずなのですが、中小企業基本法の理念や政策目標、具体的政策を根本的に変えるということはしないのだ、その立場をとっていかれるのか。この点は通産大臣に伺いたいと思います。
  110. 深谷隆司

    深谷国務大臣 現行の基本法の理念というのは、要するに、昭和三十年代にございました経済の二重構造論を背景にしていると私は思います。つまり、大企業中小企業、大企業は近代的なもの、中小企業は非近代的なもの、だから、中小企業をなるたけ横に広げて大企業に近づけていこう、こういう発想であったと思います。私は、そういう意味での格差の是正という考え方をとっておりません。  しかし、一方において、現実に格差があるではないか、それは吉井委員の御指摘のとおりでありまして、例えば指標という意味からいけば、労働賃金の問題とかその他もろもろ格差というものが現在もあるというふうに認識します。しかし、それを是正するということは、中小企業の経営基盤を強化するという点に力を入れ、そこに視点を置こう、こう考えているわけであります。ですから、旧来の基本法における格差の是正と、私どもが今経営基盤を強化することによって指標に見られる格差を直していこうというものとは、意味が違うというふうに考えております。
  111. 吉井英勝

    吉井委員 少し具体的に入っていきたいと思うのですが、私も、大臣おっしゃったように、脱中小企業論ですね、この立場は先ほどもお話ししましたように反対です。  ただ、やはり現実に中小企業が置かれている状況から出発したときに、例えば今度の基本法案の第五条で、基本方針の第一番目に、中小企業者の経営の革新及び創業の促進並びに創造的な事業活動の促進というのを掲げておりますが、この新しい法案の経営革新については、経営の相当程度の向上、それから、創造的な事業活動といえば、著しい新規性を有する技術または著しく創造的な経営管理方法を活用したものということになっているわけですね。  ことし七月施行の中小企業経営革新法の経営革新計画の承認実績は、現在のところ全国でまだ三十六件という非常に少ないものでありますが、だからこそ、先日も時間が終わりごろでなくなりましたが、集積活性化法で指定を受けて、自治体、組合挙げて懸命な経営努力をやっているところは全国各地にたくさんあります。大臣もよく御存じだと思います。それは例えば茨城県真壁の石材組合とかです。  例えば石くずが出てきますね。これを使って新分野に進出と考えたときに、なかなかいい知恵が出ないときには、やはり自治体の公設試験研究機関の活躍とかさまざまなことで、例えば新製品開発の支援もすれば、それでそれが化粧タイルになるのかどうなるか私はわかりませんが、やはりそういうところに新しい工夫というのがあると思うのですね。そうすると、新分野進出計画を認めていくという道が開かれようかと思うのです。  つまり、支援ということは、そういうことを含めて大事だと私は思うのです。しかし、現実には、地元の方が行かれても、新規性なしということで認めない、ばっさりなんですね。  そういう点で、この集積活性化関係で、先日、枠を広げるために地元の負担を三分の一求めるんだとおっしゃったが、しかし一方では、その分野の補助金全体で一億五千万削っているのですね。つまり、採択枠を広げる、大いに結構ですよ。それならば、それに見合った中小企業の予算をふやすんだ、思い切ってふやすんだということがなかったら、この基本法の理念も生きてこないし、不利の補正だ、あるいはさまざまな後退が生まれる現象を食いとめるということもできないと思うのですね。  そういう点で、一九六七年には中小企業予算というのは、一般会計に占める比率が、政策経費について見てですが、〇・八八%だったのが、ことし〇・四一%と、率としてはうんと落ちているわけですね。  これは政府参考人の方からでも別に結構なんですが、一般歳出に占める中小企業対策費、来年度は幾らで、率は幾らになるのか、先に伺っておきたいと思います。
  112. 岩田満泰

    岩田政府参考人 来年度の予算の要求全額に対する数値の集計が終わっておりませんが、十一年度について申し上げれば、一般会計歳出予算に対します中小企業対策費の比率は〇・四一%でございます。
  113. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、中小企業国会だと言っているのですが、ことしの〇・四一が来年もふえないのですよ。  その中で、創業ベンチャーということで言っているわけですが、中小企業対策費を含む全創業ベンチャー関連予算ということで伺いましたところでは、九九年度で四百四十億、二〇〇〇年度で七百九十八億円、プラス三百五十八億円で八一%伸びるのですね。これは他の費目を含めていますが、中小企業予算の中だけで見ればもちろんもっと少ないのですが、それにしても約二倍ぐらいふえるわけなんです。  つまり、全体を伸ばさずに優良企業に特化するんだということで、そこへ重点配分をしていけば、ただでさえ少ない中小企業予算が減っちゃって、中小企業対策は後退する。切り捨てじゃないという話もありましたが、実態としては切り捨てに向かわざるを得ないというのが、これが現実の姿だと思うのです。  だから大臣、やはり中小企業国会とおっしゃるからには、墨田区の一般会計に占める予算の割合二%というのをせんだってうちの不破委員長が紹介しましたけれども、やはり二%にふやすぐらい、それぐらい思い切った対策というものを、何しろ九九%という大きな割合を占めているところなんですから。私は、大臣として、これをやってくれぬと中小企業国会と言いながらおれは大臣やってられぬ、それぐらいの頑張りというものが当然必要だと思うのですけれども大臣、これはどうなんですか。
  114. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中小企業予算の枠を考える場合に、通産省だけの予算でなしに、いろいろな関連の、建設業その他もろもろございますから、全体像で見ていただく必要があるのではないかというふうに私はまず思います。  そして、今度の経営基盤強化で中小企業対策をさまざま挙げておりますけれども、それにつけての予算化というのはきちっと確保しておるわけであります。これから必要なことは、予算を適切にどう使うか、生かすかということと、来年度分の予算に関しては全力を挙げて確保するということが私の役目ではないかと思っております。
  115. 吉井英勝

    吉井委員 そうすると、中政審答申で受益者負担の原則を掲げて、現実に、例えば地域集積活性化に基づく承認、産地の補助金を削るということで来ているわけですが、これは予算が足りないからということで、一億五千万、全国の産地中小企業を削るわけですね。  これについては、全中の方からも、そういう受益者負担ということで負担をふやすことはやめてもらいたいと。それから全中の大会の決議では、中小企業者の範囲を拡大する際は、これまでの中小企業者に対する施策の内容が希薄化することのないように、予算の拡充など特段の配慮が必要だと決議をいたしておりますが、私はまさにここが大事だと思うのですね。  一例だけ御紹介しましたが、この一億五千万、こんなことまでやるようなことは、これは大臣の力で食いとめられますね。
  116. 細田博之

    細田政務次官 平成十二年度概算要求におきまして、受益者負担を導入することとしている補助金を挙げてみますと、七件ございまして、これらの予算が、十一年度の四十五億円程度から、十二年度要求では八十五億円程度にふえておるわけでございます。  受益者負担は、中小企業政策議会の答申でも提言されておりますように、第一に、企業の自助努力を支援するとの原則に合致すること、第二に、従来、支援の対象は組合中心でありましたけれども、今後は組合のみではなく個々の、個別の企業や任意の連携組織をも広く対象として、その形態は個々中小企業にゆだねられるということから、その間の公平にも配慮する必要があることなどから、導入を図ることとしております。  組合の方々には御負担がふえるということもございますけれども個々企業と同様の扱いという趣旨を御理解いただきたいと思います。
  117. 吉井英勝

    吉井委員 要するに、一億五千万削ることはもう改める気がないというのが今の政務次官のお話なんですが、地域産業集積活性化計画支援事業としては、これはもちろん後退でありますし、組合等の予算ももちろん一億五千万マイナスで、負担がふえる。  それから今、次の問題に入っていく前に一つだけ取り上げておきますと、今度、新十八条で商業集積の活性化という問題を挙げているわけですが、中心市街地と中小小売商業対策の方では、二十九億円ことしよりも減るのですね。これだけ全国の商店街が大変だと言っているときに、大店法を廃止しただけじゃなしに、この分野でも予算を大幅に削減というところへ行っている。私は、こういうことでは中小企業対策だととても言えないということを申し上げておきたいと思うのです。  さてそこで、私は今度、商業集積の問題ということを考えるからには、やはり八〇年代から九〇年代にかけての規制緩和の中で、中小商店と従業員がどういうふうに変化をしてきたのか、これは一人から四人までの文字どおりの零細商店がどうなったのか、そこでの従業員規模がどうなったのか。一方、大型店の届け出状況が、例えば九〇年度と昨年の法改正以前の段階、どんどんふえていった段階でどんなふうになっているか。  これは八〇年代と九〇年代を比較してもらってもいいのですけれども、一体どういうふうになっているのかということ。本当に商業集積というものがこれまでの法律によってもちゃんと守られてきたかといったら、全然、文字どおり守られるどころか、どんどん衰退するばかりだったんですが、ここは商務流通審議官ですか、政府参考人の方からお答えをいただいておきたいと思います。
  118. 杉山秀二

    杉山政府参考人 大規模小売店舗の届け出の数の推移でございますが、例えば一九九〇年をとってみますと千六百六十七件、一九九五年度で二千二百六件、直近の一九九八年度で千六百八十一件というふうになっております。
  119. 吉井英勝

    吉井委員 従業者数、商店数等が、これは私の方からもう言っておきますね、確認だけ何だったらしてもらってもいいですが。八八年の一人から四人の小売業の商店と、それから九七年の一人から四人の零細商店の店舗数でいくと、二十三万店減っていますね。そこに働く皆さん方の数は五十三万人減少していますね。  一方、今おっしゃった九〇年と九五年の比較もそうなんですが、八〇年代の十年間と九〇年代の十年間の大規模小売店舗の届け出件数で比較しますと、八〇年代の五千五百九十五件が、九〇年代は一万七千三百三十六件へと三倍のテンポで、本当に規制緩和ということで異常にふえて、それが、全国各地で中小商店が廃業していきシャッター通りに変わっていく、商店街が衰退していく、こういう現状になったと思うんですが、数字の面だけは先に確認しておきたいと思います。
  120. 岩田満泰

    岩田政府参考人 ただいま起点を、昭和六十三年ということだと思いますので、一—四人規模の商店数でございますが、当時百二十九万六千四百四十四店でありましたものが、平成九年時点で百五万九千三百五店ということで、御指摘のような数字の減少になっております。  一方、一—四人の従業者数につきましても、二百八十六万一千六百九十人から二百三十三万二千五百六十六人でございますので、御指摘のように、おおむね五十万程度の減少ということになっております。
  121. 吉井英勝

    吉井委員 それで、外務省に、新しいデータがわかっておればということでお願いしておいたんですが、なければ以前いただいたものの確認だけで結構です。  例えば日本とドイツを比べた場合、比較するデータをそろえるために、零細商店、この場合は一人から九人というちょっと枠を広げての商店にしておきますが、日本では一九八五年から九四年の十年の間に商店が十八万店減少したのに対して、ドイツでは逆に一万九千店ふえている。百人以上では両方とも九百二店とか百八十三店という伸び方なんですが、これは、最も新しい数字でわかっているようでしたら、外務省の方から先に伺っておきたいと思います。
  122. 大島正太郎

    ○大島政府参考人 お答え申し上げます。  先生の御依頼をもちまして調査している最中でございまして、まだ結果が各国の在外公館から入っておりません。申しわけございません。
  123. 吉井英勝

    吉井委員 それは引き続いてお願いしておきたいと思います。  以前お聞かせいただいただけでも、規制緩和をやって、日本は本当に大型店がどんどん進出して、中小商店がつぶれちゃったんです。ドイツにしてもイギリスにしても、これはアメリカにしてもそうですが、大型店の規制緩和というやり方は間違いだということで、経済的規制と社会的規制を組み合わせることによって、中小商店、買い物のできる町をつくっていくということで、どんどんやってきたわけですね。私は、その点では日本と本当に方向が逆だということを言っておきたいと思うんです。  今度の新十八条を受けて、では商業集積をどうするのかというときに、私は、一例を挙げて伺っておきたいんです。  最近、東京都内で問題になっているのがドン・キホーテです。一九八〇年九月に創業した会社なんですが、深夜営業の新業態を売り物にして、二十四時間営業、例えば午前五時に閉店時間を定めておいて午前五時一分に開店時間という、事実上の二十四時間ですね。年中無休のディスカウント店で急成長したわけです。これはドン・キホーテの社長自身、日経流通などで、みずからのことを深夜営業の業態創造をしたオンリーワンの存在だと自慢をしておられます。しかし、TBS、日本テレビ、NHKなどに最近相次いで紹介されました。  何が問題かといえば、本当に大店審で結審した内容であっても、一度開いてしまったら全然守らないとか、かつて五百平米以下で大店法にかからないというときは四百九十九平米で出してくる、今度、規制緩和で一千平米以上というのがあって、一千平米以下は大丈夫だったら、九百九十八とか九百九十九で出店する。とにかく、営業してしまえば何でもあり、こういうふうな事態が今地域にさまざまな問題を生み出しております。  通産大臣はちょうど東京の方だから、大臣、この現状をよく御存じなのかどうか、伺っておきたいと思います。
  124. 深谷隆司

    深谷国務大臣 大臣としてもこの問題に対応しておりますが、その前に、政治家としてきょうまでいろいろやってきたことなど振り返りながら申し上げたいと思います。  そもそも、大店法というのをつくって中小商店街等を守ろうとしたその運動の中に参加していた政治家の私は一人であります。ところが、年々外国からのさまざまな圧力もあり、後退に後退を重ねて大店法は形骸化されてきたというふうに認めざるを得ない。そこで、どうやったら中小商店街を守れるのか、これらの大企業の進出に対して対応できるのかということをさまざま考えた結果において、町づくり三法の成立ということにつながっていったわけでございます。  すなわち、例えば大型小売店立地法、それから都市計画法の改正、中心市街地活性化法、この三つを組み合わせて、その地域の町づくりをどう考えるかということに視点を置いて、法律をつくって実施しよう。大店法は来年六月まで続いておりますから、それ以降になりますけれども。  その適否の問題については、これは今御指摘がありましたけれども、むしろ欧米の方で主流となっている改正都市計画法あるいはゾーニング的手法というものに似ていると私は思うのであります。これらの形を、例えば周辺地域の交通の問題だとか騒音の問題だとか生活環境に関する規制であるとかいうようなことから、結果においてはその地域で中小商店街を守れるような行き方をつくり出していこうということを今進めようとしているわけでございます。  中心市街地活性化法はその中の一つ法律でありますけれども関係十三省庁があるわけでありますが、これが連携して、市街地の整備改善及び商業等の活性化のための各種支援を行っていくべきだ、こう考えております。  そして、このたびの法の改正で行われる町づくり三法は、主として地方自治体が中心になってまいりますので、地域の現状を十分に踏まえた対応ができるものと期待をしております。
  125. 吉井英勝

    吉井委員 まず、規制緩和の方、どんどん大店法が後退したというのは自然現象じゃなくて、自民党に規制緩和を見直す会、武藤さんが会長になられて頑張っておられますが、これはかつて本会議でも答弁がありましたけれども、アメリカが圧力をかけたのは日本だけなんですね、ヨーロッパにはないんですよ。  今おっしゃったけれども、そのアメリカ自身がバークレーでやっているのは、ただ都市計画という手法だけじゃありません。ここでは、過剰店舗や過剰な売り場面積とならないように総量規制をかける。これはまさに経済的規制をやっているわけです。その仕組みを組み立て、あわせてやらなきゃいけないんだが、しかし、経済規制はだめだということを日本だけ今言っているわけですね。  私は、武藤さんが言われるように、根本的に見直しがやはり必要だと思います。今度ドン・キホーテの社長が日経流通で、大規模小売店舗立地法施行となると千平方メートル以下の店は例外になるので出店しやすくなると。ここは、九百九十九で出店しておいても、倉庫を店舗に使う、道路を店舗に使うということで、すさまじいやり方ですが、本当に私は、こういうドン・キホーテのようなやり方について、通産大臣としても、これまでの大店法を廃止して立地法ということで言っているんだけれども、しかし、営業時間、例えば明け方の三時、四時、五時というものを常識的な九時とか十時にさせるにしても、それをこれまで質疑をやりますと、通産省の方は、これは立地法十三条違反だ、営業時間の規制は経済規制だからできないというのが通産省のお考えでした。  私は、そういうことじゃなしに、こういうドン・キホーテのような、本当に法律の抜け道ばかりくぐっていくんだということを豪語しているところなんですから、しかも周辺の住民は物すごく困っているわけですから、住民も商店街もみんな被害を受けているようなこういうものについて、やはり通産大臣として、これはきちんと規制をして、町も守れば中小商店も商店街も守っていくんだ、そういう立場で臨んでいただく必要があると思うんですが、大臣、どうですか。
  126. 深谷隆司

    深谷国務大臣 地方公共団体は、本来、法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができるのであります。そこで、大店立地法においても、その規制対象外の店舗について、地方公共団体が生活環境の保持という観点に立って何らかの制度を設けるとするならば、それは否定されるものではないと思っております。
  127. 吉井英勝

    吉井委員 ところが、例えば営業時間とか休業日数とか、つまりこれは開店日、開店日数ということになりますが、そういうものを条例で規制しようとしたら、立地法十三条違反でできないんだというのがこれまでの一貫した通産省のお考えなんですよ。  大臣も東京の商店街の実情をよく御存じだと思うし、私も大阪の商店街、全国の地域の、地方の商店街をよく知っていますけれども大臣、やはりこれを解決しようと思ったら、本当に新法の十八条を生かすというのならば、こういう今の大型店政策については根本的な見直し、政府の方の政策の見直しが必要だと思うんです。  そのことを最後に伺って、時間が参りましたので質問を終わりにしたいと思います。
  128. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中小商店街をお守りするとか、あるいは中小企業の商店をお守りするという意味において、大店舗の進出ということについては非常に大きな問題を社会的に投げかけていることは事実であります。そこで、ただいま申し上げたような町づくり三法という法律をつくって、これから、今までの大店舗法が終わる六月以降に向けて、積極的な体制で、ただいま申し上げたようなさまざまの問題についての、商店街を守るための積極的な仕事をしていかなければならないと思っています。  私どもは、そういう観点に立って、これから大いに勉強して、今の苦しい状態を何とか守れるような体制をぜひつくっていきたいと思っています。
  129. 吉井英勝

    吉井委員 時間が参りましたので、ドン・キホーテのようなやり方を改めるように努力されることを求めて、質問を終わります。
  130. 中山成彬

  131. 北沢清功

    北沢委員 社会民主党の北沢でございます。  今まで質問をお聞きいたしまして、いわゆる中小企業の数は六百何万というあれがあるわけなんですが、今回のベンチャー企業の支援ということは、十四万から二十四万ということでございます。そういう意味で、やはり今までの基本法の持っている中身と、新しい中身、しかも施策を通じて積極的にベンチャー企業の大きな流れというものをつくり出していかなきゃいけないと私思うんですが、しかし、現実に大多数の中小企業があり、毎日非常に努力をされ苦しんでおるわけでありますから、そういう面で、個人事業者としての位置づけというものを明確にする必要があるんじゃないか、そういうことを私は特に申し上げたいと思います。  特に、対象企業定義は、零細、小規模、中小、中堅などに細分化をしているわけでありますが、十分な財源を持って各規模別にきめ細かな施策を講ずべきだと実は私ども提案してまいりました。しかし、この委員会の審議では、大臣は、施策の内容が逆に煩雑になり利用者の不便が増すと、細分化の必要性を否定しております。  きょうまで提案された中小企業の範囲拡大とベンチャー支援への転換は、小規模だとか零細企業の不安をやはりかき立てておりまして、小規模企業については、大臣が、基本法で範囲を別途定義をして引き続き施策を展開すると答弁されても、ベンチャー企業中堅企業への施策に重きを置くのだとすれば切り捨てられるのではないかというのが、実は私がずっと回ったのでは根強くございます。  零細企業や個人事業者についてはきちっと位置づけ、そして不安を解消する必要があろうかと思われますが、見解はいかがでしょうか。
  132. 茂木敏充

    茂木政務次官 委員指摘のように、小規模企業の問題、極めて重要でございまして、新中小企業基本法におきましても、現行の基本法と同様に小規模企業の範囲を定めると同時に、小規模企業中小企業の中でも経営資源の確保が特に困難であるという事情を踏まえまして、必要な考慮を払うべき旨を規定いたしております。  そんな中で、特に小規模企業に対する対策として、今後は、例えば中小企業設備近代化資金制度小規模企業者に対する支援措置基本的に集中をいたしまして、また、これまでの業種とか設備の縛りを撤廃して使いやすいものとしております。同時に、小規模事業者の創業や経営革新を支援するための身近な支援拠点、全国三百カ所を目指しておりますが、こういった小規模企業に対するきめ細かな支援体制も今後はとってまいりたいと考えております。
  133. 深谷隆司

    深谷国務大臣 北沢委員の御心配の向きに関しましては、今までも何度か答弁をいたしました。中小企業全体を多面的にとらえて、それぞれにきめ細かな対応をするということを今回の基本法は考えております。そういう中で、新しいベンチャーを生み出すこと等々ございますけれども、そのことが決して小規模企業を見捨てるということでは全くなく、むしろ旧来以上に心を使って対応していく覚悟でございます。
  134. 北沢清功

    北沢委員 大臣の御決意、特に末端でそういう機運が流れていますから、そういう面については十分にひとつ配慮をして進めていっていただきたいというふうに思っております。  次に、下請取引の適正化について、大臣は厳正に対処すると答弁をなさってまいりました。まず、基本法で対象となる具体的な事態やその基準についてお伺いをいたしたいのであります。  改正案の第二十条で取引の適正化を考えておりますが、問題となっている類型について、具体的にどういった取引を想定しているのか、また現行法ではどういった事態を対処してきたのか、これは有効に対処、改善できたのか、改正法でも引き続き対処できるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  135. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中小企業が公平でかつ自由な競争をする、取引をするということは大変大事なことでございまして、この環境を整備していくということは私たちの重要な課題でございます。従来からも、問題がありましたときは、公正取引委員会とも連携をとりながら適切な対応を行ってまいりました。  具体的に申し上げれば、下請中小企業に対する下請代金の不当な減額等の不公平な下請取引の強要については、従来から、下請代金法という法律に基づいて検査を行い、違反の事実があった場合には改善のための指導を行うなど、厳正な対応をしてまいったところでございます。  今後とも下請代金法の適切な運用を図るとともに、今度は、都道府県に整備される予定のいわゆる支援拠点、ここで苦情の処理等は一手にお受けする、あるいは商工会議所等を活用した情報収集体制の充実、独禁法等諸ルールの遵守徹底など、取引の適正化の施策を具体化していきたいと思っております。
  136. 北沢清功

    北沢委員 下請は親企業に対して非常に、仕事をお世話になるという面で、実は控え目な面もございます。特に建設業における丸投げ下請といいますか、そういうことも現実に既にあるわけでありますから、これらについてはやはり厳正に対処すべきであるというふうに私は思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  次に、日産のリストラ計画では、下請業者に対して二〇%のコストダウンを要求し、達成できなければ取引停止、千百六十五社ある下請を六百社程度にするというように世間では理解されておりますが、実際にこうした趣旨か、また、これは下請いじめのモデルとは言えないか。通産省を初めとして、どのように対処をするのか。現行基本法ではおかしいという立場で、改正案ではどのようにお考えをいただいておるのか、お尋ねをしたい。  特に日産の場合は、あの発表のときに、二万一千の首切りをする、下請を今言ったように具体的にするというふうに言われておりますが、黒字に転換するのは二年だというふうに言われておりまして、一方で、企業のあり方を、身を削るというかそういう形にしながら、下請そして働く皆さんに多大な心配と多大な不安。そのことは、今日のこの消費不況と言われる中では、安心して生活できる条件という意味で、私は非常に大事だろうと思いますから、この日産問題についてどのようにお考えになっておられるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  137. 岩田満泰

    岩田政府参考人 私どもとしましては、日産の再建計画につきまして、購買コストを三年間で二〇%削減し、部品資材サプライヤーを二〇〇二年度までに六百社以下とする予定と聞いておりまして、今先生のおっしゃいましたような意味合いとは少し異なる内容でございます。  具体的な実施方策というものはむしろこれからというふうに承知をいたしておりまして、私ども、個別に経営判断に介入する立場にはございませんけれども、一般的な意味合いにおいても、同社に対しまして、再建計画の具体化に関しましては、関連下請企業等への影響について十分な対処をしていただくように要請をしたところでございます。  ただいま御指摘のように、現行の基本法でも、十八条の下請取引の適正化でございますとか、二十四条の資金の融通の適正円滑化というような形で対応措置をとっておりますが、新基本法におきましても、十五条の経営資源の確保、あるいは二十三条の資金の供給の円滑化、十二条の経営の革新の促進というようなことで位置づけております。  さらに、企業がリストラを進める上での下請関係における、例えば代金法に基づく種々の問題に関しましては、新基本法第二十条に取引の適正化という条項を設けて、下請代金の問題を含め、中小企業の取引に幅広く対応するという意思を明確にしているところでございます。
  138. 北沢清功

    北沢委員 それでは次に、住友金属や日産などの産業再生法を利用した大リストラが展開されるわけでありますが、再生法では、正社員の雇用について従業員の地位を不当に害さない、第三条。雇用の安定、第十八条。労使協議を行う、大臣告示など一定の配慮がなされておりますが、ところで、下請企業の経営や労働者の問題については明確になっておりません。再生法では、中小企業への配慮、第十九条。関連中小企業については、その新たな経済的環境への適応の円滑化、第十八条の五項。抽象的な表現に実はとどまっております。  中小企業基本法を根拠にしながら、下請企業の経営や雇用について通産省はどのように対処をされていくのか、お答えをいただきたいと思います。
  139. 岩田満泰

    岩田政府参考人 お答えを申し上げます。  産業再生法第十八条第五項の規定は、事業再構築が行われる場合に、中小企業等への影響について配慮して、それらの新たな経済的環境への適応の円滑化を図るための各般の措置を講ずることとしたものでございます。具体的には、産業再生法自体の中に、第三章に規定いたします中小企業支援施策を活用すると同時に、そのほか、下請取引のあっせん事業でございますとか、それによる中小企業の新たな受注開拓の支援でございますとか、政府系の金融機関によるもろもろの貸し付けの措置ということを講じることにいたしておるわけでございます。  また、これらの対策につきましては、今回の経済対策に盛り込まれております労働省におきます新しい奨励金を初めといたしまして、労働省雇用対策とも緊密な連携をとりながら対応を進めてまいるということでございます。
  140. 北沢清功

    北沢委員 実際に失業者数も三百万を超しているわけですし、最近大企業が次々と、きのうもNTTが一万何千とかいろいろ発表されておりまして、これももう四十万を超すのではないか。実際に勤めて、家庭の中では主になっている皆さん。それからもう一つ大事なことは、来年の高校、大学、また女子短期大学等を含めて、大変な未採用だということですね。  私もずっとヨーロッパへこの三年ばかり十数回参りまして、いわゆるヨーロッパの雇用とか失業というものについては、非常に政府も配慮をしておるし、また企業も配慮をしておるし、また一般の関心が高い。したがって、このことに不徹底であれば、これは英国もそうですし、フランスもそうですし、ドイツもそうですが、保守政党から社民政党にそのことによってかわる。この雇用問題というのは極めてその国にとって大変な問題になっていると私は思います。  私はここでちょっと御意見を申し上げたいと思うのですが、日本ベンチャー企業もそうですが、日本の二十一世紀の私どもの周辺を取り巻く産業の伸びる阻害要素というのはいろいろあると思うのです。例えば環境問題もありましょうし、少子高齢化もあろうし、また、これから迫ってくるのは、やはりアジア地域における企業皆さん日本に物を買ってくれとか、企業のリストラも含めていろいろ大変な状況になるわけですが、二十一世紀に、今までの電気器具とか自動車にかわるべき通信先端技術というものの新たな展開がなされておらない。ですから、二十一世紀の産業の未来というものははっきりしておらないというところに今日の不安がさらに重なっておるというふうに思います。  そういうことを含めて、今の問題について若干御答弁をいただきたいと思います。
  141. 茂木敏充

    茂木政務次官 既存の今あります産業の振興と同時に、二十一世紀に向けて新たな日本としての柱の産業をつくっていく、委員指摘のとおりであると思っています。  御案内のとおり、現在進めておりますミレニアムプロジェクトにおきましても、情報、高齢化対応の産業、そして環境問題、これを三つの重要な柱と位置づけまして、その中長期的な振興を図っているところであります。
  142. 北沢清功

    北沢委員 それでは、続いて若干御質問いたしますが、官公需の予算の拡充ということであります。  中小企業の受注機会の公正を確保するいわゆる官公需法については、今日の仕事不足という中で、運用を充実して、予算を大幅に増加することが必要であります。官公需法に基づいて国や地方自治体が行う中小企業向けの契約目標を毎年設定して、その額は微々でありますが年々ふえております。今回、基本法において中小企業の範囲を広げ、中堅企業を中心に官公需を受注する中小企業が増加することになるわけであります。したがって、これまで中堅企業と言われてきた企業が多く受注し、いわゆる小規模零細企業は排除されるというか、非常に不利益になるじゃないかという心配も実はあるわけであります。  総額としての中小企業向けの受注額がふえるという事態になりかねないわけでありますから、既存企業者の受注機会を確保するためにも、官公需予算を、中小企業向け目標額を抜本的に拡充すべきであるというふうに思いますが、御見解をお伺いいたしたいと思います。
  143. 茂木敏充

    茂木政務次官 委員指摘の、中小企業の範囲の拡大に伴いまして既存の中小企業の官公需の受注が狭められるのではないか、こういう問題でございます。  現在、国等の入札に参加しようとする企業は、会計法令に基づきまして、各省庁等の競争入札参加資格審査、これは例えば年間の平均の販売高であったり営業年数等々さまざまな基準によりましてAランク、Bランク、Cランク等々等級づけされておりまして、原則として同一資格等級の者による競争となっていますために、中小企業者であるか否かによって等級が変更されるということはございません。したがいまして、今回の資本金定義改定によっては新たに中小企業となる者の資格等級の変更は起こりませんので、既存の中小企業者の受注機会への影響は出ないものと考えております。  しかし、委員指摘のように、今後さらに中小企業者の受注機会の増大を図る、これは大変重要なことでございまして、極力同じ資格等級者による競争を確保する、つまり、Cランクの中にAランクが入ってきてAがとってしまう、こういうことが起こらないように、同じ資格の者による競争を重視する。さらに、発注情報の中小企業者への提供等にも努めることによりまして、今後とも中小企業者の受注機会の確保に努めてまいりたいと考えております。
  144. 北沢清功

    北沢委員 ぜひ今言ったような心配のないように、この予算づけについて目標額を拡充すべくさらに御努力をいただきたいというふうに思っております。  最後に、私はずっと二十年間の中小企業予算というものを実は見てまいりまして、十年前のときもそうでしたし、それから以後もそうですが、余り額が変わっておらぬのですね。予算の総体額はふえているけれども、額があれしない。よく、大企業との二重構造だという形で、いかにも中小企業が利益を受けているような感じを持たされておるのですが、これはやはり、規制緩和だとか、またはいろいろな法令では、不徹底ですけれども若干は中小企業分野というのは守られてまいりました。しかし、小規模企業の予算については、政府皆さんもそうですし自民党の皆さんもそうですが、おれたち中小企業の味方だというふうによく言われておるけれども、実際の予算の中身を見ると威張れない。だから、今回の中小企業法の差というものを二重構造だと言うのは、よくやったその上では決してないわけであって、今次基本法で見直すということを盛んに、先ほど申し上げたけれども、かえってやらない中で見直して、さらにその方が薄くなるのではないかという心配を実は私はしているのです。  これはベンチャー企業も含めてそうなのですが、やはり中小企業皆さんの生きる権利というもの、それから、これからの経営に安心が持てる、その中からやる気が出るわけでありますから、そういう面で、ベンチャー企業にも大いに力を寄せていただきたいけれども、既存の中小企業分野も、放漫経営でつぶれるとか、または時代的な流れ、消費構造の変化というのがあるわけですから、そういうものをよく指導しながら、中小企業の中で生きるべきものはきちっとやはり生かすべく頑張っていかなければならないというふうに思います。  二千億円にも満たない中小企業予算では、創業ベンチャーというリスクを伴う分野への進出を政府が奨励するというには余りにも少ない予算であると言わざるを得ない。小規模企業への施策を従前どおり展開すると繰り返し答弁なさるにもかかわらず、その裏づけとなる財源、予算について言及、明言がありません。  小規模零細業者について、従前の予算を確保するだけでなく、ベンチャー企業の支援に振り向ける以上の額を予算として拡充すべきだというふうに考えますが、大臣の御決意、明確な御答弁をいただきたいと思います。
  145. 深谷隆司

    深谷国務大臣 北沢先生の御指摘はよくわかるのでありますが、先ほども申し上げましたが、通産省の予算の額だけをもって中小企業に力が入っていないというわけではございませんで、各省にまたがる中小企業対策はたくさんございますし、例えば中小企業の貸し渋り対策でも合計三十兆という大きな額を計上しているわけであります。  ただ、いろいろな仕組みがございますが、その中には使い勝手が悪くて活用されていないというところもあるのですね。今度の小規模企業に限定をした設備近代化資金というのはまさにその一つでございまして、使い勝手をよくしていくということで十分に活用できるような分野を広げていくなど、相当な工夫が要ると思います。  いずれにしましても、これを機会に中小企業全体が経済活性化牽引車になるように、全力を挙げて対応していきたいと思っております。
  146. 北沢清功

    北沢委員 最後に一言だけ申し上げたいと思いますが、ここ十年の不況対策、バブル対策というものは、一言で言うと、建設省の皆さんも、雇用を確保できただけにとどまったんじゃないかというふうに私は思っています。非常に辛らつな表現ですが。  それから、バブルのときにおける、土地を銀行から買わされたり、ノンバンクから金を無理やり使わせられたのは中小企業でして、あの当時は大企業はもうかっていて銀行の金なんて使わなくてよかった。だから、今日の不況その他は、やはり中小企業皆さんの犠牲というか、いわゆる銀行に気兼ねをして、いつも顔色を見ながらお金を、資金繰りをしたという一つの問題がバブルを起こしたのだ、私はそういうふうに考えております。  以上申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  147. 中山成彬

    中山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  148. 中山成彬

    中山委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。塩田晋君。
  149. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、自由党を代表して、議題の中小企業基本法等の一部を改正する法律案に賛成の討論を行います。  我が国経済に占める中小企業の地位は、極めて大きいものがあります。企業総数の九九・七%、雇用総数の七一%を占める中小企業日本経済の主役となることなしに、新たな発展への展望は開かれません。  昭和三十八年に制定された中小企業基本法は、大企業と比べ生産性、技術資金など多くの面で構造的に劣る中小企業を行政が助成、指導するために重要な役割を果たしてまいりました。しかし、法制定から三十六年が経過し、内外の経済環境や産業構造の変化などにより、中小企業は保護すべき弱者ではなく、多様な可能性と創造力を持った事業主体であるとの発想の転換が必要となったのであります。  今回の法改正により、ベンチャー創業を活発化し、中小企業が自由な活動と自己責任原則のもとで多様性を持って世界に展開できるような基礎がつくられるものであります。行政はこれを支援すべきものと考えるものであります。  自由党はこれまで、貸し渋り対策としての信用保証制度の充実や、前国会産業活力再生法に中小企業者への配慮の一条を新たに設けるなど、中小企業施策の充実に努めてまいりました。さらに、中小企業の経営基盤の強化や小規模企業への配慮等、今後とも継続すべき理念や重要政策は新基本法のもとでも強化推進が図られることを確認し、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  150. 中山成彬

  151. 吉井英勝

    吉井委員 私は、日本共産党を代表して、中小企業基本法等の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。  小渕首相は、今国会中小企業国会と銘打って臨みましたが、野党のたび重なる要求にもかかわらず、本会議のみならず、ついに当委員会にもただの一度も出席されませんでした。  委員会の審議自体も実質わずか二日半という超スピードであり、そもそも法案の提出からまだわずか二週間であります。これでは、全国の中小企業団体、中小企業者の疑問、不満、批判に到底答えられるものとはなっていません。  我が国経済の再生とそこで働く圧倒的多数の人々にとって肝心かなめの中小企業の現在と未来がこんなに軽んぜられたことは、いまだかつてなかったことと言わなければなりません。  政府中小企業基本法案に反対する第一の理由は、現行基本法では曲がりなりにも掲げてきた大企業中小企業との格差の是正、中小企業経済的社会的制約による不利の是正や、中小企業全体の底上げという建前さえ投げ捨て、多様かつ活力との美名のもと、新たにベンチャー企業や一部の優良企業の支援に重点化して、中小企業の中から強者を育てるものであり、大多数の既存中小企業、零細業者を切り捨てるものとなるものだからであります。  第二に、国と地方の役割分担との方針で、十分な財政的手当てや体制のないまま小規模企業対策の仕事を地方自治体に押しつけ、自助努力と受益者負担の名で、懸命の経営努力を続ける産地や地域の中小企業に対する予算と支援策を縮小するなど、国の責任を放棄するものだからであります。  第三に、独立の中小企業育成といいながら、中小企業者定義から大企業の子会社を排除せず、予算の手当てもないまま中小企業者の範囲を広げることは、既存施策の一層の希薄化に通じるものだからであります。  我が党は、大リストラや大型店の無秩序な進出、撤退など大企業の横暴から中小企業商店街を守るルールの確立、東京都墨田区など地方自治体の中小企業振興対策に見られるような技術開発、販路拡大など、中小企業や零細業者の営業の悩みにこたえ、心の通じる経営基盤に立ち入った支援策の拡充、そして日本経済の主役にふさわしい本格対策が行える中小企業予算の抜本的拡大を要求して引き続き奮闘する決意を表明し、政府中小企業基本法案に対する反対討論を終わります。(拍手)
  152. 中山成彬

    中山委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  153. 中山成彬

    中山委員長 これより採決に入ります。  内閣提出中小企業基本法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  154. 中山成彬

    中山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  155. 中山成彬

    中山委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、伊藤達也君外四名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。吉田治君。
  156. 吉田治

    吉田(治)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     中小企業基本法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、長期低迷する我が国経済を早急に回復させるため、引き続き適切な景気対策を講じつつ、中小企業が我が国経済活力の源泉であるとの認識の下、中小企業の多様で活力ある成長発展を図るために一層の努力を傾注するとともに、本法施行に当たり、特に次の諸点につき、適切な措置を講ずべきである。  一 中小企業者の範囲の拡大に伴い、既存の中小企業者に対する施策が手薄とならないよう、特に小規模企業や個人事業者に対し十分な配慮を払い、これら企業を支援するきめ細かく、メリハリの効いた施策の一層の充実に努めるとともに、本法に基づく各般の施策の実効を確保するため、必要な制度整備、予算等の確保に努めること。また、大企業系の企業中小企業に該当することとならないよう留意すること。  二 本法に係る中小企業者の範囲に係る常時使用する従業員についての解釈は、雇用実態等を勘案しつつ、原則として、二カ月を超えて使用される者であり、かつ、週当たりの所定労働時間が、当該企業の通常の従業員と概ね同等である者とすること。なお、パートタイム労働者に依存せざるを得ない中小企業者が多くなっている実態等を踏まえ、経済情勢の変化等を迅速・適確に反映させるため、今後とも中小企業者の範囲に係る基準を含め、十年程度を目途に本法の見直しについて柔軟に対応すること。  三 中小企業者が行う失業者・高齢者の受け入れ等、雇用の確保・創出および従業員の労働条件の向上のための努力並びに技能・技術の継承および人材育成等、ものづくりのための基盤技術の振興努力に対し、特段の支援措置を講ずること。  四 中小企業者に対し積極的に各種施策の周知に努め、各種支援措置中小企業者にとって分かりやすく、使いやすいものとするため、中小企業施策情報に対するアクセスを容易化しつつ、中小企業関係法制・制度等の整理統合・合理化を図るとともに、各種申請手続等を更に簡素化・迅速化すること。  五 中小企業の経営の革新および創業の促進を図るため、創業の意義および必要性に対する国民の関心および理解の増進に努め、企業家精神の涵養のための教育分野における取組みを強化するとともに、ベンチャー企業と投資家を適切に結びつける資本市場制度等の整備、資金の円滑な供給、十分な情報の提供など必要な施策を適確に実施し、中小企業者創業者等の自立意欲を一段と喚起するよう努めること。  六 経済の多様化に伴い中小企業ベンチャー企業政策としての税制の役割は益々増大していることに照らし、事業承継税制や各種ベンチャー税制等について、早急にその見直し・改善を図ること。  七 中小企業者に不当な不利益を与えるなどの不公正な取引を排除するため、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法および建設業法を、元請下請関係の実態などに十分に留意しつつ、厳正・迅速に運用すること。  八 中小企業者以外の者の事業活動による中小企業者の利益の不当な侵害を防止するため、分野調整法等の調整制度を遵守し、中小企業の事業活動の機会の適正な確保に努めること。  九 地域経済における中小企業の重要性にかんがみ、地方公共団体が地域の特性に応じた柔軟な中小企業関連施策の実施が可能となるよう、使いやすい施策メニューを提示する等格段の工夫を図るほか、民間能力の活用も含め地方公共団体の対応能力の向上を促すように十分配慮すること。  十 新たな中小企業施策の実効を期するため、商工会議所、商工会等各種中小企業団体の組織および人材の再活性化を図るよう、必要な措置を講ずること。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
  157. 中山成彬

    中山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  158. 中山成彬

    中山委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、深谷通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。深谷通商産業大臣
  159. 深谷隆司

    深谷国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。     —————————————
  160. 中山成彬

    中山委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 中山成彬

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  162. 中山成彬

    中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十四分散会