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1999-11-24 第146回国会 衆議院 厚生委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月二十四日(水曜日)     午前九時二分開議  出席委員    委員長 江口 一雄君    理事 安倍 晋三君 理事 衛藤 晟一君    理事 木村 義雄君 理事 田中眞紀子君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 福島  豊君 理事 岡島 正之君       伊吹 文明君    石崎  岳君       岩下 栄一君    遠藤 利明君       大村 秀章君    鴨下 一郎君       鈴木 俊一君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    田村 憲久君       戸井田 徹君    根本  匠君       桧田  仁君    堀之内久男君       松本  純君    宮島 大典君       山下 徳夫君    家西  悟君       石毛えい子君    五島 正規君       土肥 隆一君    中桐 伸五君       古川 元久君    青山 二三君       大野由利子君    久保 哲司君       吉田 幸弘君    鰐淵 俊之君       児玉 健次君    瀬古由起子君       中川 智子君    笹木 竜三君     …………………………………    厚生大臣         丹羽 雄哉君    厚生政務次官       大野由利子君    政府参考人    (厚生大臣官房総務審議官    )            宮島  彰君    政府参考人    (厚生大臣官房障害保健福    祉部長)         今田 寛睦君    政府参考人    (厚生省老人保健福祉局長    )            大塚 義治君    政府参考人    (厚生省保険局長)    近藤純五郎君    政府参考人    (厚生省年金局長)    矢野 朝水君    政府参考人    (社会保険庁運営部長)  小島比登志君    厚生委員会専門員     杉谷 正秀君     ————————————— 委員の異動 十一月二十四日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     岩下 栄一君   武山百合子君     鰐淵 俊之君 同日  辞任         補欠選任   岩下 栄一君     田中 和徳君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十五回国会閣法第一一八号)  年金資金運用基金法案内閣提出、第百四十五回国会閣法第一一九号)  年金福祉事業団解散及び業務承継等に関する法律案内閣提出、第百四十五回国会閣法第一二〇号)     午前九時二分開議      ————◇—————
  2. 江口一雄

    江口委員長 これより会議を開きます。  第百四十五回国会内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団解散及び業務承継等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、政府参考人として大蔵省理財局長中川雅治君、厚生大臣官房総務審議官宮島彰君、厚生大臣官房障害保健福祉部長今田寛睦君、厚生省保険局長近藤純五郎君、年金局長矢野朝水君、社会保険庁運営部長小島比登志君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 江口一雄

    江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 江口一雄

    江口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸井田徹君。
  5. 戸井田徹

    戸井田委員 おはようございます。  前回の質問が四十分と予定されていたんですけれども、いつの間にか二十分になってしまい、何か盛り上がってきたところで途中で火を消されて、またもう二十分しろということで、どこまで燃え上がることができるかわかりませんけれども、これから二十分質問させていただきたいと思います。  昭和三十六年に皆年金制度がスタートして、再来年の二〇〇一年でちょうど四十年になるわけであります。これからはまさにそういった制度が成熟していって、すべての人が四十年または先行き四十五年ということにはなるんでしょうけれども、そういう中で年金をもらうようになってくるわけであります。そうした中で、これから先の重要なことは何かというと、一番大きな問題は、少子化の問題だろうというふうに思うわけであります。  そういう中にあって、基礎年金でもって満期で今二人で十三万ということですね。それの上に二階建ての年金が上乗せされていく。そして、一説によると平均して月に二十三万七千円の厚生年金が支給される。そういう時代になってきた。  また、国民預貯金が一千二百兆とか一千三百兆ということが言われている。そして、そのうち、世代別に分けると大体六十五歳以上の人たちが六〇%の預貯金を持っている。そういうことを聞くわけでありますけれども、その辺のことでもし詳しい数字がありましたら、ちょっとお聞かせいただきたいんです。個人の六十五歳以上のお年寄りの平均的な預金額です。
  6. 矢野朝水

    矢野政府参考人 まず、貯蓄額でございます。  これは、総務庁で行っております平成六年全国消費実態調査でございますけれども、これによりますと、高齢者世帯、夫が六十五歳以上で妻が六十歳以上の有業者なしの夫婦のみの世帯ということでございますけれども、こういった高齢者世帯貯蓄現在額は二千九十八万となっております。  一方、現役世帯貯蓄残高でございますけれども、これは夫婦未婚子供子供は一・九人ということでございますけれども、こういった世帯貯蓄現在高は六百四十三万ということでございます。  そういうことで、貯蓄で見ますと高齢者世帯の方が現役世帯よりも圧倒的に多い、こういう調査結果がございます。
  7. 戸井田徹

    戸井田委員 働いてきて、そして定年になってということですから、貯蓄が多くて当たり前だと思うんですね。しかし、自分たちは幾つまで生きていくのか、だれもわからない。ある人は百歳までいくかもわからない、またある人はもっと長生きしたかったと思っても途中で逝かれることもあるだろう。そういうことを考えて、やはりみんな老後のために貯蓄をしている。さらに、よく笑い話のようにして言われるわけですけれども、きんさんぎんさんが、出演料をもらったらどうしますかと聞かれたら、老後のために貯蓄をしておく。百歳を超えた人でもそういうふうに思うわけであります。そうすると、いつまでたっても、お金があるのかというと、ない、限られた中でもってそれをどううまく使っていくかという意識は、当然年配の人の中には働いていくんだろうと思うわけですね。  しかし、そういったものを払拭するものがまさに年金であって、生きている限り間違いなしに自分たち生活していくだけの年金がもらえるということであれば、それほど安心なことはないんじゃないかなと。  そして、皆年金から丸々四十年を過ぎたこれからというのは、まさにその年金制度が充実していくんだ。そして一番心配なのは、それを支えるだけの制度になり得るかどうかということを考えると、少子化の問題が一番の大きな問題だ。その少子化も、どういうふうにしたら子供を産みやすい状態になっていくのか、そういうことをまさに国家を挙げて真剣に考えている時期なのかなと。  しかし、いろいろな話によりますと、子供を産みやすいシステムというのは何なんだろうか。  実際に子供を持つ親の立場として考えていったときに、子供が産まれたら、やはり今の時代大学までしっかり出してやりたいというのが親の気持ちだろうというふうに思うわけですね。しかし、その大学を出すのに、一説には二千六百万円、小学校時代から教育費にかかってくる。二人産むということになると五千二百万円という数字が上がってくる。普通の人であれば、その数字考えたときに、三人以上の子供自分に育てられるだろうか、三人以上大学まで出すことができるだろうか、そういうふうに思うと思うんですね。  現実に、大学進学、それも四年制の大学進学するのがどれくらいあるかというと、三三%というものを聞いております。そして短大以上で四八%だ。さらに専門学校を含めると、高校を卒業してまだ勉強しようという人が七割、八割ということを聞くわけですね。  そういうことを考えてみると、教育費というのはばかにならないのではないかな、将来子供を産んでも安心して育てられるというか、子供をある一定の年限まで育てたら、そこから先は子供自身社会制度を利用しながら自分自分人生を切り開いていける、そういう制度をつくっていくことがある意味でこの年金制度を支えていくために一番重要なポイントではないかな、私はそういうふうに思うわけであります。  そして、その中でもって、では子供を産みやすいシステムというのはどういうことなんだということは、要するに子供をいかに早く自立させるかということだろうと思うわけであります。  戦前は、子供自立ということはどういうことかというと、たくさん子供を産んで、そして全員がすぐ食べさせられるかといったらそうじゃない。小学校を出たらそのままどこかへでっち奉公に行かせたり、徒弟に入ったり、そういうことをさせていた。そこで別に給料を得るわけではない。飯を食わせてもらう、そして手に職をつけさせてもらう。そういうことが、言ってみれば戦前日本社会自立だったように思うわけであります。  ところが、戦後はどういうふうになっているかというと、高校進学率が九七、八%ということが言われている。そしてさらに、この間の東京都の調査によると、高校を卒業して働く人間というのはどれだけいるかといったら、一割いるかいないかだというようなデータも出ている。そういうことを考えていくと、まさに高齢化の中でもって子供自立させるということは大変なことなんだなと。  一方で、できるだけ子供には大学まで進学させたいという気持ちがあるわけですから、それぞれが一生懸命働いて、さっき言った一千二百兆だか一千三百兆だかの預貯金のうち六割が六十五歳以上であれば、それ以下の人たちの中でもって何を目的貯金しているのだということをアンケートをとっていくと、およそ半分近くの人たち子供教育費ということを挙げるわけですね。  そうすると、その教育費が親の手元から全部出ていくんだということを考えると、この親の手元から出ていく教育費子供長期ローンに置きかえてやることによって親の生活は一気に楽になってくるし、同時に老後のための準備もしやすくなってくる。  一番お金がかかるのはまさに大学時代だということを考えていくと、その大学進学にかかるお金というものを、もう十八歳を超えるわけですから、子供自身が国の制度からそういうお金を都合してきて、自分が働き始めてから将来長期ローンで返済していく。そういうシステムをつくり上げる、準備することによって、子供も親も自立できるのではないか。子供自立すれば親が自立できる、親が自立できればそのまた親も自立できる。そうすると、生涯自立システムというのが基本的にでき上がってくるような気がするわけですね。  そうすると、年金積立金を使えということを前回申し上げましたら、大臣はそれは難しいということを言われました。しかし、年金お金のうち、グリーンピアであるとか、ああいうものに今まで使ってきた経緯があるわけであります。そうした建物に使えるのであれば、そのお金も聞くところによりますと一千億を超えるような規模の金額だった、そういうものを毎年奨学金の方に回すことも可能なのではないかなというふうに思うのですね。  昨年、文部省の方にきぼう21という育英財団奨学金制度の中でもって財投のお金を回す制度があるわけですけれども、その枠が一千億ふえました。それでたしか十万人の奨学金受給者をふやすことができたと思うのですね。そうすると、一千億の規模お金というのはそういう意味で大変大きな力があるんじゃないかなと。そして、毎年毎年そういうものを上乗せしていけるようであれば、まさにその制度に近づいていくんじゃないかなと私は思うわけであります。  一人で長いことしゃべって、もう時間もなくなってきたわけですけれども、政務次官に、今私が申し上げた話というものに対して、御感想で結構であります、どう思うか、一言お聞かせいただきたい。
  8. 大野由利子

    大野(由)政務次官 戸井田委員が御指摘のように、国民一人一人が自主、独立の気概を持てるような社会システムをつくっていくべきだ、こういうお気持ちには全く同感でございます。また、十八歳を過ぎて大学進学する人たちが、親の貯金を当てにしないで、奨学資金を借りて進学できるようになるようなシステムというのも非常に大切な、必要なことではないか、このように思っております。  そういう意味では全く同じ思いでございますが、年金積立金を活用して奨学資金を設けることについては、一つ難しいのは、奨学資金というのは、やはりできれば無利子で貸してあげる、有利子の場合でもうんと低利で奨学資金を提供しないと、金利市場金利と同じような金利ですと奨学資金を借りるメリットがないわけでございますので、またこの年金積立金、多くの方々から、将来の給付に向けてしっかりと積み立てていかなければいけないというようなこともございますので、そういう意味では、現在の年金積立金を活用する面では、現状ではいろいろ難しい問題はあるのではないか。  しかし、戸井田先生の御指摘でもございますし、これは今後慎重に検討していく課題ではなかろうか、こういうふうに思っております。
  9. 戸井田徹

    戸井田委員 なかなか難しいのかもわかりませんけれども、これはやる気になったらできることじゃないかなというふうに思います。  それから、合計特殊出生率平成十年で一・三八ということを言われております。人口維持に必要なのが二・〇八人生まれないと維持できないということを言われているのですけれども、既婚者出生率というのは二・一六人ということを聞いていますけれども、それでよろしいのでしょうか。
  10. 矢野朝水

    矢野政府参考人 今回の年金の将来推計においてどういう前提に立っておるか、こういう御質問でしょうか。(戸井田委員「いやいや、既婚者出生率が二・一六人と聞いているけれども、それでいいのか」と呼ぶ)失礼いたしました。  日本は今出生率がどんどん低下しておりますけれども、結婚された方は二人ちょっとぐらいのお子さんを産んでいらっしゃるということで、出生率が下がっているという一番大きな理由は、やはり結婚年齢が上昇した、あるいは未婚率が高まっておるということで出生率が下がっておるわけでございます。結婚された方は、二人ぐらいのお子さんはちゃんと産んでいらっしゃるということでございます。
  11. 戸井田徹

    戸井田委員 結婚年齢が上がっているということが、言ってみれば出生率が下がっているということにつながっているのかなというふうにある程度予測はできるのだろうと思うのですけれども、先ほど私が申し上げてきた自立ということからかけ離れた状態がある。その結果、大学を卒業しても、または二十歳を過ぎても親元でもって生活をしている。  同居をしているということは決して悪いことじゃないけれども、私もよく地元でもってそういう話をするときに、子供大学を卒業した、そして自分で仕事をして幾らかの、月々初任給二十万ほどのものをもらってくる。手取りにして十五、六万ぐらいだ。しかし、初めのうちは親に対して感謝の気持ちを持ちながらプレゼントをしてくれたりしながらも、そのうちに車社会で車が欲しくなってくる。車を手に入れたら途端に、ガソリン代が足りないということで親にガソリン代をせびったり、そういう社会が今日本の中にあるんじゃないだろうか。  そして親元で、親に朝起こしてもらって、親につくってもらった御飯を食べて、親に洗濯をしてもらって、そして会社に出ていく。それで給料をもらって帰ってきても、結局、そういう生活自立した生活になるのだろうか。親に全部そういうことをしてもらうことによって、逆に、なれてしまうというか、そういうことを当たり前に思ってしまって、いつの間にか親の方も、三十歳になっても自分子供という意識が抜けなくて、子供がとうとう自立できないで終わってしまったというケースもちらほら聞くわけであります。  ですから、これから少子化の問題というものを考えていくときに、まさにどうやって自立をさせるか、社会的にどうやって自立年齢の線を引いていくか。法律的には二十という線があるんだけれども、そういうものがありながら、実質的には日本社会の中において自立年齢がはっきりしていない、そういうところにも問題があるように思えるわけであります。ぜひ、子供自立させる自立型社会システムというものを考えながら、これからの日本社会制度というものを吟味していく必要があるのじゃないか。年金制度がこういうふうに四十年かけて成熟してきた、そういうことを思えば、その制度をしっかり支えていくためには、まさにそういう少子化傾向に歯どめをかけるようなシステムづくりというものが一番重要な問題ではないかなと私は思うわけであります。  これから、どうかその点を考えながら、そして年金も、確かに効率的な運用というものはあるんだろうと思いますけれども、しかし、それと同時に、少子化に対してどういう影響を与えるのか、そして、それぞれの自立社会を支えていくような制度になり得るのかどうか、そういう観点からの考えというものも必要になってくるんじゃないかなというふうに思うのですね。  そうやって考えてみると、今回中止になりましたけれども、年金福祉事業団住宅に対する融資であるとかそうした制度というものは、少子化社会を支えていく制度一つだったのじゃないかというふうに思うわけですね。もし悪い点があるんだとしたらそういうことを直しながら、やはりこういった制度というのは維持していくべきじゃないかなというふうに私は思うわけですけれども、政務次官はどういうふうにお考えでしょうか。
  12. 大野由利子

    大野(由)政務次官 御指摘のように、この住宅融資につきましても、大変ニーズが高い、喜ばれている融資でございます。そういう意味では、高齢社会を築く上でのふさわしい融資一つであるわけですが、さきの経済新生対策の中で、本格的な高齢社会に対応した優良な住宅が取得できるようにということで、年金住宅融資融資条件の改善も行ったところでございます。  今回の法案では、年金住宅融資は、別途の法律で定める期限までの間事業を実施していく、こういうことになっております。
  13. 戸井田徹

    戸井田委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  14. 江口一雄

  15. 鴨下一郎

    鴨下委員 おはようございます。  大野政務次官、お疲れさまでございます。  きょうは、年金が、言ってみれば高齢方々にとって非常に頼りになるものなのだということから、最終的には、その信頼性をどう高めていくか、こういうような観点についてお話をさせていただきたいと思います。  今、高齢者世帯収入のうち、平均で大体六三・六%が年金で賄われている。さらに、年金だけが収入のすべてだ、こういうような世帯高齢者世帯の約六割である。こういうことなわけでありますけれども、今、基礎年金部分、いわゆる国民年金の一号被保険者の方について考えますと、非常にいろいろと問題点があります。  例えば、未加入の人が百五十八万人、これは平成七年です。それから、加入はしているけれども保険料を納めていない、いわゆる未納が百七十二万人、これは平成八年です。さらに、平成十年三月で保険料免除者が三百五十九万人。こういうようなことで、ある意味で、約二千万人近い一号被保険者の中で約三分の一ぐらいが保険料について、免除は含みますけれども、かかわっていない部分がある。  こういうようなことでいうと、納めている人にとってみれば、これは大体今一万三千三百円、夫婦で払うとかなりの負担感があるわけであります。一生懸命納めている人間にとってみると、納めていない人もいて、一体これはどうなっているんだ、こういうような意味でのある種の不信感、それから基礎年金に対しての将来的な不安感、こういうものが蔓延しているというふうに言ったら多少は言い過ぎかもわかりませんけれども、実際に我々、国民年金を毎月払っていて、一万三千三百円、高いなあ、こんなような感覚を直接感じているわけでありますけれども、国民年金をいかに信頼あるものに高めていくかということについての次官のお考え厚生省のお考えをお聞かせいただけたらというふうに思います。
  16. 大野由利子

    大野(由)政務次官 我が国の社会保障制度というのは、自己責任のもとで、いろいろ人生不測の事態もございますし、社会連帯で支え合うというようなことで、社会保険方式というものを基本にして今日の発展を見てきた、こういうふうに思うわけでございますが、大変な未曾有の少子高齢社会の中で、将来の年金に対して、安定的にずっと給付が受けられるのかどうかというような不安が今の若い人たちにあることも現実でございます。  そういう意味で、平成十六年までに、基礎年金については財政方式を含めてその財源のあり方を検討して、安定した財源を確保して、国庫負担を二分の一まで引き上げる、こういう附則が設けられたわけでございます。  本当に今の若い人たちに安心をしていただけるよう、今回の年金法改正も、将来にわたって安定して年金給付ができる、また支払う方にとっても将来的にも年収の二割程度の負担で済む、支払いと給付のそういう関係を確立していくということが今回の年金法改正目的でもございます。
  17. 鴨下一郎

    鴨下委員 老後生活というのは、ある意味で、ナショナルミニマム的な公助部分と、お互いに助け合うと今次官がおっしゃっていたような共助の部分と、そしてさらに自分貯金をして今までためていたものを使うとか、いろいろその後の生活設計をしていく上でのあらゆるいろいろな工夫の中での収入、こういうものを組み合わせて生活設計をしていくんだろうと思います。  私がきょう伺いたい一つは、一号被保険者、いわゆる国民年金に関して、みんなが参加して気持ちよく保険料を払って、なおかつ後で安心して年金がもらえるか、これをどうつくっていくかという未加入対策なんですけれども、入っていない人が百五十八万人いる、こういうようなことについて未加入対策をどういうふうに今厚生省はなさっているか、これを伺いたいと思います。
  18. 小島比登志

    小島政府参考人 公的年金制度の安定的な運営を行うためにも、未加入者対策は非常に重要な問題だと認識しているところでございまして、保険料を納めていただくには国民年金加入していただかなきゃいかぬということがございまして、社会保険庁といたしましては、まず未加入者の解消を先行させるということで努力をしております。  具体的に申し上げますと、平成七年度から、二十に到達した者は国民年金強制加入になるわけですが、この方たち加入届が未届けである場合にはまず勧奨状を送りまして、それでも未届けである場合には年金番号を付与して年金手帳を送付するということをしております。  それから、国民健康保険加入しながら国民年金に未加入となっている者に対する対策でございますが、平成七年度調査では、国民年金加入者の七〇%が国保に実は加入していたという調査がございまして、市町村と連携して、その方たちに対する勧奨等を強めているということでございます。  さらに、平成九年一月から基礎年金番号が導入されました。この番号の導入によりまして、厚生年金から国民年金に移った方、移るべき方は番号によって把握できるということになりまして、その方たちに対する勧奨も実施をしているというふうな状況でございます。
  19. 鴨下一郎

    鴨下委員 いろいろと御苦労はあるんでしょうけれども、その未加入対策をしっかりしていただきたいということ。  それからもう一つは、未納のことについてはいかがでしょうか。これは百七十二万人いるというふうなことを聞いていますけれども。
  20. 小島比登志

    小島政府参考人 未納者対策でございますが、なかなか難しい点があるわけでございますが、私どもといたしましては、被保険者の方の保険料納付に非常に便利だということで口座振替の推進など、納付しやすい環境づくりということにまず努めているところでございます。  それから、未納者は特に若者の多い都市部において多いわけでございますが、そこにおきましては専任徴収員を増員したりいたしまして、文書、電話、戸別訪問等によりまして納付督励の強化対策というものを実施しております。  先生御指摘のように、やはり国民年金に対する信頼が何よりも必要だということで、国民年金制度の意義ないし役割についての周知、広報、こういうことも重要だということで、年金週間を実施する等の周知、広報対策にも努めている、こういうことでございます。
  21. 鴨下一郎

    鴨下委員 未納の方々の中では、多分若い人たちで十分に理解できていないということもあるんでしょうけれども、例えば実際にそれを徴収するコストと実際に徴収して上がる保険料と、その辺のところの、言ってみれば徴収コストに対する考え方というのは、今どういうふうな形で考えていますか。
  22. 小島比登志

    小島政府参考人 国民年金の事務費につきましては、社会保険庁分、市町村分、合わせて十一年度予算で千七百億円ぐらいというふうにしています。これが多い少ない、いろいろな議論がされているところでございますが、私どもといたしましては、やはり二十のときから加入を促進してできるだけ多くの年金額に結びつける、あるいはまた、万一障害が発生した場合には障害年金の無年金者にならないようにということで、できるだけ経費の節減に努めながら最大限の努力をしているところで、直接に保険料対費用効果ということは計算をしておらないということでございます。
  23. 鴨下一郎

    鴨下委員 実際に、例えば徴収に行っても夜いなかったり、非常に難しいこともあるのだろうと思いますけれども、今後で結構ですから、いわゆる一人の人間を捕捉して徴収するコストとどういうふうに相見合うのか、この辺のところのデータがもし出るようでしたら、いずれかのときに教えていただきたいというふうに思います。  公的年金制度に対する大学生へのアンケート調査、これは厚生省年金局がやっているアンケート調査でありますけれども、その学生に対するアンケートの中で、あなたは公的年金制度のどのようなことについて関心がありますか、この問いに対して、いわゆる少子化高齢化が進んでいく中で将来の年金制度の全体の姿がどんなものになるのかよくわからないので不安だ、こういうようなことを言っている人たちが約七割いるわけであります。そういうことで考えますと、公的年金を例えば二十から払い始めて、そして最後に給付を受けるというようなことまで、全体像が若い人たちに十分に理解されていないこともあるのかなというふうに思うのですね。  それからもう一つは、老齢基礎年金受給者の平均年金月額が平成十年三月末で五万二千六百七十四円、こういうふうになっているわけでありますけれども、これが十分なのか十分でないのかというようなこともこれから議論しないといけませんけれども、公的年金だけが収入のすべてという世帯もたくさんあるというようなこと、これは厚生年金も含めての話ですけれども。基礎年金に関して、このくらいの平均月額というのが果たしてふさわしいのかどうなのかというようなことについて、大臣いらっしゃいましたけれども、大野次官からお答えをいただければと思います。
  24. 大野由利子

    大野(由)政務次官 済みません、ちょっと最後、基礎年金の御質問だったでしょうか。
  25. 鴨下一郎

    鴨下委員 基礎年金の平均月額が五万円ちょっとなんですけれども、これが生活していく上で果たして十分、まあ十分ではありませんけれども、基礎年金額としてこれが適正なのか、もう少し水準を上げていくようにするべきなのか、このことについてです。
  26. 大野由利子

    大野(由)政務次官 基礎年金につきましては、国民の基礎的な生活を保障するというようなことでございまして、必ずしもナショナルミニマムという考え方に立っていないという状況がございます。  基礎年金のあり方というものは、財源も含めて、この年金法改正後に、平成十六年までに抜本的な財源の確保とともに検討する課題である、このように思っております。
  27. 鴨下一郎

    鴨下委員 先ほどから申し上げているのですけれども、未加入が多い、未納が多い、それから、それをとらえて健全に保険料を月々納めていただく、これは非常に大変だということの中には、最終的にもらえる年金額が少ないというようなことも一つあるのだろうと思いますし、それから月々の保険料が高いということもあるのだろうと思いますし、それから、言ってみれば四十年間掛け続けても最終的に自分たちの世代は逆ざやになるのじゃないか、こういうようなことに対する不満、不安感もあるのだろうと思います。  こういうことを含めて、私はやはり、基礎年金というのは非常に重要なことでありますし、これから高齢化に向けてこの制度をいかに信頼できるものにしていくか、こういうような意味でも、これから先の改革というのは非常に重要なのだろうというふうに思います。  そういう意味で、大臣いらっしゃいましたので、今回の国民年金の改革を含めて、いかに国民に信頼できる年金制度にしていくかということで、例えば国庫負担を少しふやすのがいいのか、それとも全体の給付額を将来的にふやしていくのがいいのか、いろいろな工夫があるのだろうというふうに思いますけれども、国民基礎年金に対しての求心力を高めていくためにどんなことをしていったらいいのかということについて、大臣のお考えを伺えたらと思います。
  28. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、閣議等がございまして、おくれて参りましたことをおわび申し上げます。  基礎年金のあり方でございます。先ほど来、政務次官から御答弁を申し上げさせていただいておりますけれども、若年世代の間では、ただいま鴨下委員指摘のような、自分が年をとった場合に保険料を上回る給付水準を保障されるのかどうか。これは、正確に申しますと、事業主負担というのが半分ございますのでそういうことはあり得ないわけでございますが、要するに、全体的にそういうことが考えられるというような議論を一部で呼んでいることも事実であります。  こういうような問題であるとか、もう少し上げてほしいとか、いろいろな議論があるのですが、問題は、御案内のように、年金制度というのは、あくまでも世代間の連帯のもとにいわゆる賦課方式ということでありまして、現在年金をいただいていらっしゃる方々は若年世代の保険料によって賄われている。また、給付のうちの三分の一が国庫負担だ。しかしこれを、今言った、国民の皆さん方の不安を解消するために二分の一に引き上げたらどうか、こういうようなことで、今回、附則に設けさせていただいたような次第であります。  そうは申しましても、これは現在四・九兆円ぐらいの国庫負担が既に出ております。それから、二分の一にすれば二・二兆円増になる。この財源をどうするかということでございまして、私としては、できるだけ早く三分の一から二分の一に引き上げていくことが国民の不安を解消する観点から望ましい、こう考えておりますけれども、同時に、では今日のような経済状況下において、この財源をどうするかということも解決しなければならない問題だ、こう考えておるような次第であります。  いずれにいたしましても、基本的には、景気がよくなって、税収がふえて、そして将来のいわゆる現役世代に対する負担給付というものも十分に考慮しながら、できるだけ早く二分の一に引き上げていくということが何よりも国民の皆さん方の不安を解消することではないか、こう考えているような次第でございます。
  29. 鴨下一郎

    鴨下委員 とにかく、年金をいかに信頼できるものにしていくかということで、あらゆる工夫をしないといけないと思うのですけれども、特に重要なのは、現役世代の負担が過重にならないように工夫をしませんと、せっかくの福祉社会が活力を失ってしまうということにもなります。さらに、年金世代と現役世代の対立が余り激しくならないようにするために政府の方もいろいろな工夫をしていかなければいけない、このことを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
  30. 江口一雄

    江口委員長 青山二三さん。
  31. 青山二三

    ○青山(二)委員 皆様、おはようございます。公明党・改革クラブの青山二三でございます。  前回、時間の都合で質問が少々残りましたので、引き続きまして、無年金障害者問題について質問をさせていただきたいと思います。  平成六年の年金制度改正の際に、衆参両院の厚生委員会におきまして、「無年金障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め速やかに検討する」との附帯決議がなされております。さらに、平成八年度から始まりました障害者プランにおきましても、「障害無年金の問題について、年金制度の在り方全体をにらみながら、年金制度の中で対応するか福祉的措置で対応するかを含め、幅広い観点から検討する。」こういうふうに示されております。  無年金障害者の問題の解決は、障害者施策の重要な課題として、もはや無視できない状況になっているわけでございます。しかしながら、その後、具体的な方策は何も示されておりません。今日、この問題に対しまして、年金と福祉の連携を密にして、いろいろと真剣な検討がなされているのかどうか、お伺いしたいところでございます。  さらに、年金審議会では、検討項目として、「無年金障害者の問題については、社会保険方式をとる現行の年金制度では、年金給付を行うことは困難である。今後、障害者プランを踏まえ、適切な検討が必要である。」と結論づけているだけでございまして、今後どのような取り組みをしようとしているのか、全く見通しがついていない様子でございまして、今回、期待いたしておりました改正案におきましても、この問題解決の方策は示されておりません。  今回結論を出し得なかった理由と今後の対応につきまして、お伺いをしたいと思います。
  32. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、無年金障害者の問題につきましては、この委員会におきましても各委員から何回となく御質問をお受けいたしておるところでございます。  まず最初に私が申し上げたいことは、要するに、どうやって無年金障害者が発生しないようにするのかという一つの手だてを示せということでございますので、例えば、昭和六十一年四月から、当初は任意加入とされておりましたサラリーマンの妻につきましてこういうスタートをいたした、そういうことでございますし、また平成三年から、学生につきましては強制加入とする、こういうようなことで適用対象の拡大を図って、そして無年金障害者が増大しないような方向で努力をしてきたようなところでございます。  これも何度か申し上げていることでございますけれども、年金制度におきましては、要するに、保険料を払っていらっしゃらないで、たまたまお気の毒なことに障害になったということをいわゆる保険方式の中でどう考えるのかということで、年金制度の根幹にかかわる問題だというようなことでございまして、これは実は年金審議会におきましても大変御議論をいただいておるわけでございますけれども、現在の時点におきましては、年金給付を行うということは難しい、こういうようなことで今のところは議論が集約されているところでございます。  今先生が御指摘がございましたような、では福祉的な措置でこういう方々に対してもうちょっと手を差し伸べたらどうか、こういうことでございますが、障害者の福祉政策は、障害の内容などに応じまして、当然のことながら公費によりまして、ホームヘルパーなどの派遣など各種の福祉サービスであるとか、それから重度の障害をお持ちの方の御負担を軽減するための特別障害者手当、こういうものを給付するなど、要するに別に、無年金障害者に着目したこういうような手だてで、お気の毒な方に対しまして施策をこれまで講じているわけであります。  先ほどから私も繰り返し繰り返し申し上げてきたところでございますけれども、基本的には年金制度のもとではいかんともしがたいものがありますけれども、何か救済の方法についてあるのか、こういうことも含めまして、さらに年金審議会などで幅広い検討を行っていただきたい、こう考えているような次第でございます。
  33. 青山二三

    ○青山(二)委員 過日も大臣から年金審議会の方でいろいろと検討していくというようなお話をいただきましたけれども、これは六年前に附帯決議がなされたわけでございまして、私もちょうど六年前この厚生委員会に所属をさせていただいておりまして、無年金障害者につきましては大変審議をし、皆様と議論をしたことを覚えております。  ですから、その附帯決議ということについて私はお聞きしたいと思うのですけれども、附帯決議の重み、附帯決議をつけましたら、その後どのような検討がなされていくのか、これは通告をしておりませんでしたけれども、おわかりになる方に御答弁いただきたいと思います。
  34. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 附帯決議というのは委員会の総意においてまとめていただくということでありまして、委員会としてこういう考え方を持っているということで、当然重いものである、こう考えておるような次第であります。  そこで、そういうこともございまして、年金審議会の方でこの問題について御議論をいただいておりますけれども、先ほど来申し上げておりますように、いわゆる年金制度の根幹にかかわる問題、つまり保険料を払わないで給付だけもらおう、こういうことでございますので、そこのところがいかんとも救済しがたいということです。大変お気の毒なというような側面は私自身も個人としては十分に感じ取っておるわけでございますけれども、それじゃ保険料を払っている人はどうなんだ、こういう問題もありますから、要するに根幹にかかわる問題だということで、いかんともしがたいということを繰り返し述べているところでございます。
  35. 青山二三

    ○青山(二)委員 これからもしっかり検討をしていただいて、何とか解決の方策を見出していただきたいと思うわけでございます。  先ほど大臣のお話の中にもございましたが、任意加入によって無年金の学生さん、無年金の障害者がふえるということで、平成三年度の年金改正のときに二十以上の学生が強制加入となったわけでございますが、働いていない学生から保険料を徴収するということには大変無理がございまして、保険料滞納による無年金障害者は依然として出ている、生まれているという状況が続いているわけでございます。  今回の改正で、学生の保険料の特例、すなわち働いてから払うというようなことが認められましたことによりまして学生の無年金障害者は生まれないことになりました。これは大きな前進であろうかと思っております。しかし、これまで、免除申請の実態を聞きますと、申請をして認められるまでの手続の期間というか審査期間と申しましょうか、これが長過ぎるという声もございます。長いところでは、極端な例では一年近くかかるという例もあるようでございます。  今回の学生免除特例制度につきましても、申請してから認められるまでの期間が長くなるのであれば、もし申請中に障害者となった場合には年金は受け取れるのかどうか、この辺が疑問になってくるわけでございまして、もし受け取ることができないのであれば、こうしたケースも無年金障害者になってしまうのかどうか、審査期間を短縮できるのかどうか、その辺のことについてもお伺いをしておきたいと思います。
  36. 小島比登志

    小島政府参考人 学生の免除期間の審査についてのお尋ねでございますが、現在の審査基準によりますと、まず学生の所得を審査する、それから、学生に所得がない場合でも親元の所得を審査する、そういうふうな審査状況になっておりまして、親の所得の審査ということにつきましては多少の時間がかかっていたということでございます。しかし、来年の十二年四月からは、今までの世帯単位の所得判定から学生本人だけの所得判定で済むということになりまして事務が相当に簡素化されましたので、審査期間もかなりの程度短縮できるものと考えております。  また、お尋ねの免除の審査期間中に障害が発生した場合どうかということでございますが、国民年金法第九十条第二項の規定によりまして、その処分の効果はその申請日にさかのぼるということにされておりますので、審査期間中の障害についても、これが免除ということであれば、障害基礎年金が支給されるということになると思います。
  37. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、ちょっとお聞きしておきたいのは、夜間学生の場合はどのようになりますでしょうか。
  38. 矢野朝水

    矢野政府参考人 これは現在でもそうでございますけれども、夜間の学生さんというのは昼間は働いていらっしゃるということで収入があるだろうという考え方に立ちまして、一般の免除基準で対応するということになっております。
  39. 青山二三

    ○青山(二)委員 学生の納付特例制度から考えますと、この改正を機会として、過去の、平成三年度以前でございますけれども、学生時代の傷病による無年金障害者に対しましても、障害基礎年金給付を認めるというようなことは考えられなかったのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  40. 矢野朝水

    矢野政府参考人 今の年金制度社会保険方式をとっているわけでございまして、任意加入時代加入されていなかった、こういう方を事後的に救済するということは、今の年金制度の枠内ではなかなか難しいわけでございます。
  41. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、制度上の不備が招きました無年金障害者についてお伺いをしたいと思います。  海外在住の日本人は、昭和六十一年四月以前は年金適用除外とされておりましたので、この間に海外で障害者となれば無年金となるわけでございます。  また、日本在住の外国人は、昭和五十七年一月に国籍条項が撤廃されるまで国民年金加入できずに、撤廃時点で二十以上だった障害者は、掛金を支払う期間以前の障害という理由で無年金となっております。したがって、国民年金加入したくてもできなかった人もいるわけでございまして、これは年金制度上の不備が招いた無年金障害者と言えるのではないかと思うのでございます。このような無年金障害者は、年金制度の谷間で生まれているケースが多くて、自分の意思ではどうしようもなかったわけでございまして、これは自己責任とは言えないものでございます。  厚生省は、先ほども御答弁をずっと繰り返されておりましたけれども、保険料を納めていなかった人に支給すると制度の根幹にかかわるというようなことやら、あるいは国民年金保険料を払わなかったからそういう人には支給はできない、こういう答弁が繰り返されております。これは原理原則であろうかと思いますけれども、制度の不備で無年金障害者になった、そういう対応についてはどのように考えているのかをお伺いしたいし、こういう制度の谷間で自己責任ではなくて無年金障害者となった人への対応はどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。
  42. 矢野朝水

    矢野政府参考人 ただいまの御指摘にございました外国人の方、あるいは在外邦人の方、こういった方々国民年金制度をつくるときからいろいろ議論があったわけでございまして、当初は強制適用にするのはなじまないのではないかということできたわけでございます。  例えば、外国人の方につきましては、こういった、福祉を提供するといいますか、これはその国の仕事であって、外国人の方にまで強制適用するのはいかがなものか、こういう意見も強かったわけでございます。しかし、難民条約への加入に伴って、内外無差別、こういう大原則が導入されましたので、昭和五十六年の難民条約の批准に伴って国籍要件は撤廃した、こういうことがございます。  在外邦人の方につきましても、外国にいらっしゃってきちんきちんと保険料を納めていただく、これはなかなか難しいことでございまして、こういった方も実は当初は強制適用にならなかった。それで、六十一年に基礎年金の導入に伴いまして任意加入の道を開いたということでございます。  あるいはまた、サラリーマンの妻につきましても、一般的に所得がない、所得がない方に強制適用して保険料をいただくというのはいかがなものか。随分議論がございましたけれども、これまた昭和六十一年から基礎年金の導入に伴って強制適用にした。その場合も、三号制度という特別な制度をつくったわけでございます。  こういうことで、今御指摘のあったいろいろな方につきましては、強制適用するということに非常に問題があったということで、制度の強制適用になるのに非常に時間がかかったわけでございます。その間、加入されていなかった方に事後的に年金制度給付をするということは、先ほどからしばしば申し上げていますように、年金制度の根幹にかかわる問題でございますので、これは極めて困難であるということでございます。
  43. 青山二三

    ○青山(二)委員 何か血も涙もない厚生省という感じが、ただいまの御答弁を伺いましてするわけでございますけれども、福祉的措置でという言葉がございますので、何らかの対応をしていただきたい、こんな思いがするわけでございます。  それでは、次に移らせていただきますけれども、国民年金加入する時点で、つまり二十前に既に障害がある人は保険料を納めていなくても障害年金がもらえます。一方、障害年金をもらえない障害者は、老齢年金のために保険料を納める必要があるわけでございます。これは大変な不公平感があると言わざるを得ないわけでございます。こうした不公平感を少しでも和らげるために、例えば年金国庫負担分、つまり税金から出ております三分の一分だけでも支給するとか、あるいは、未納の期間分を減額しながらでも支給をするとか、そういうことは考えられないのか。何らかの救済方法ということでそういうことができないのかどうか、お伺いしたいわけでございます。  一方、地方自治体では独自で無年金障害者対策に乗り出しておりますけれども、多くは在日外国人が対象の中心でございまして、給付額も少なく、国としての本格的な取り組みが望まれているわけでございます。今回先送りされました無年金者問題につきましても、本当に検討の場を早急に設けまして救済策を考えるべきである、このように思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  44. 矢野朝水

    矢野政府参考人 無年金障害者の方に国庫負担分の三分の一だけでも支給できないか、あるいは減額して支給できないかということでございますけれども、国庫負担が今三分の一行われておりますけれども、これは、保険料負担を軽減する、それから給付を少しでもよくする、こういうねらいで、制度加入して保険料を納めていらっしゃる方に国が支援をしているわけでございまして、制度加入されていない方まで国庫負担をする、あるいは減額された年金を支給するというのは、なかなかこれは難しいということをぜひ御理解いただきたいわけでございます。  ただ、無年金障害者の問題、これは非常に大きな問題だと認識しております。しばしば当委員会で附帯決議もいただいております。年金審議会でも議論をいただきましたけれども、今回の改正では、先ほどのような意見書になったわけでございまして、まだ問題の根本的な解決というのは図られておりませんけれども、これは非常に重要な課題だという認識はしておりますし、今後の大きな課題として検討していきたい、こう思っております。
  45. 青山二三

    ○青山(二)委員 一九八一年の国際障害者年以来、一九九三年に障害者基本法が公布されまして、障害者の自立とあらゆる分野への参加がその目的として明確化されました。さらに、その二年後には障害者プランが策定されるなど、障害者施策は改善されてきたわけでございます。  しかし、障害者の自立した生活を支えるための所得保障はまだ十分とは言えない現状でございます。障害者白書によりますと、十八歳以上の障害者五百五十五万人のうち雇用されている障害者は四十二万人。そして、障害年金受給者は、国民年金で百二十六万人、厚生年金で二十九万人にしかなりません。そして、障害基礎年金の平均月額は、今回の改定でも、一級で八万三千七百七十五円でございます。障害基礎年金受給世帯の三〇%が十万円未満の収入で暮らしていることがわかるわけでございます。高齢者のひとり暮らし世帯生活保護額がどれくらいかといいますと、一級地で十万八千円程度であることと比べますと、この障害基礎年金では不十分でございまして、十分に自立した生活を送ることなどは到底できないわけでございます。  また、障害年金国民年金加入していない二十前に障害者となった人にも支給されておりまして、年金とはいえ福祉的な要素も持ち合わせているわけでございます。その意味で、障害年金は障害者の最低生活を保障する制度に改めるべきであると考えておりますけれども、いかがでございますか。
  46. 矢野朝水

    矢野政府参考人 障害基礎年金の水準でございますけれども、これは生活の基礎的な部分を保障する、こういう観点から支給しておるわけでございまして、従来から老齢給付、老齢年金とのバランスに配慮いたしまして、二級の場合は満額の老齢基礎年金と同額、一級の場合はその一・二五倍、こういう給付水準になっておるわけでございます。これは、外国の場合でも障害年金給付水準の設定といいますのは老齢年金を基礎としておる、こういうことが通常でございまして、我が国もそういった考え方に倣っているわけでございます。  なお、寝たきりなどの非常に重度な方につきましては、御案内のとおり、特別障害者手当、これは二万六千八百六十円でございますけれども、こういった手当も別途支給されておるところでございまして、こういった年金制度と障害者の福祉施策、これが相まって必要な給付水準は確保されておるのではないか、こう思っております。
  47. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、時間もなくなりましたので最後の質問になりますけれども、平成七年の社会保険庁調査によりますと、国民年金の第一号未加入者が百五十八万人、そして専業主婦など第三号の未届け人が十一万人にも上っている状況でございます。今後この中から無年金障害者が出てくるということは十分に予測されますので、無年金障害者の救済とともに無年金者を生み出さないような対策が急がれております。  無年金障害者を出さないため、あるいは無年金者を出さないための年金制度の抜本改革も必要かと思いますけれども、大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  48. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 無年金障害者を今後出さないということが、いわゆる前向き対策として私どもが一番求められている問題ではないか、こう考えているような次第でございます。  先ほどお話し申し上げましたけれども、昭和六十一年の四月から、いわゆる妻の年金権というものを独立したものとして認めることができました。これまでは任意でございましたので無年金障害者になる可能性もなきにしもあらずでございました。それから、学生の問題につきましても御案内のように強制加入になりました。これもいろいろな議論がありまして、今回、追加的に負担をするということを認めるようになったわけでございます。  いずれにいたしましても、一番大切なことは、やはり国民の皆さん方に年金に対して周知徹底をして、年金に入ってくださいということが一番最大の、要するに、年金制度というものはこういうものです、保険料を払っていただいて、そして万が一の場合に備えてこういうような救済策がございますということを周知徹底することが私は最善の対策ではないかと思っております。  まだまだ国民の皆さん方に十分に御理解をいただいていない面がなきにしもあらずでございますので、私ども、今後ともこの問題について国民の皆様方に御理解をいただきますように周知徹底を図っていきたい、このように考えているような次第でございます。
  49. 青山二三

    ○青山(二)委員 無年金障害者、特に学生の無年金障害者の方が十万人もいる。中国のことわざに「民の憂い募りて国滅ぶ」。学生の無年金障害者の皆さんの両親が年老いて、この子を残しては死ねない、どうすればいいのだろう、こんな悲痛な叫びが福祉の光の当たらない谷間でこだましているわけでございます。どうか厚生省の皆様、この無年金障害者、特に学生の無年金障害者に対しましては何らかの救済措置をしてほしい、心から要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。
  50. 江口一雄

    江口委員長 福島豊君。
  51. 福島豊

    ○福島委員 大臣政務次官、大変御苦労さまでございます。  審議もかなり時間を重ねてきたわけでございまして、本日は、幾つか根本的な部分につきまして、大臣また次官の御認識をお聞きしたいと思います。  まず第一点目は大臣に対してでございますが、先般、十五日に、我が党の坂口政策審議会会長が二項目にわたります申し入れを行わせていただきました。その第一項目めは、年金制度が介護や医療などの社会保障制度と密接に関連をしていること、そしてまた、この年金制度改革が人口の少子化ということに深く関係していることも含めて、少子化対策も視野に入れた総合的な検討を厚生省として進めることが必要ではないか。  その検討の場としての有識者懇談会の設置を大臣が示唆されたように承っておりますけれども、今後どのような進め方をなされるのか、大臣の御認識をお聞きしたいと思います。
  52. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 この問題につきましては、御党の坂口政審会長から私のところにおいでをいただきまして御提案をいただきました。  実はきょう、閣議が終わりました後、小渕総理に直接お目にかかりまして、これまで、どちらかというと医療は医療、年金年金、介護は介護というような制度ごとに、いわゆる縦割り的に議論がなされてきたのではないかというような指摘が一部にあります、そこで、私としては、社会保障のあり方全体について、特に豊かな老後を過ごすために、そういった視点から幅広く横断的に議論するようなことが必要ではないかということで有識者懇談会を設けたい、こういうことを申し上げましたら、総理自身が大変御関心をお示しになりまして、これは政府として取り上げていく問題ではないか、こういうようなことがございました。  総理大臣自身のいわゆる私的諮問機関的なものとしては産業競争力会議というのがあるのですが、それといわば同格に、いわゆる社会保障全体について議論をするような場を設けたらどうか、こういうことがございまして、総理が陣頭指揮をとってこういう問題について取り組んで、そして有識者の皆さん方の御意見を聞くということは大変結構であります、私も厚生大臣として全面的に補佐をさせていただきます、こういうことになりました。  そこで、具体的に、真に豊かな老後のための国民会議、仮称でございますけれども、こういったようなものを設けて、そして、私の方から申し上げましたのは、できるだけ早く立ち上げる必要があるのではないかということで、ことしじゅうにも立ち上げて、そして遅くも来年の秋口ぐらいまでには結論を出す。こういうようなことで、人選とかいろいろな問題についてはまだまだ調整中でございますけれども、そういう中で、これからの少子高齢化社会におけるお年寄りのいわゆる全体像というものを御議論いただくとともに、給付負担の問題であるとかさまざまな問題について御議論をしていきたい、このように考えているような次第でございます。
  53. 福島豊

    ○福島委員 大変に力強い御答弁をいただきまして心より感謝を申し上げますと同時に、今後の成果を見守っていきたいと思います。  次に、申し入れましたことの第二点目は、少子化の進行ということが今回の年金制度改革の必要性をもたらす最大の原因となっている、したがって、年金制度改革の議論の中で同時に少子化対策ということも議論していかなきゃいけない、そしてまたこの少子化対策は、単に議論するということだけではなくて、実効性のある対応をなすべきである、このような申し入れをしたわけでございます。  我が党は、本年の初頭より、少子化対策ということで自民党さんまた自由党さんと政策協議の場を設けさせていただきまして、その一つの成果が少子化対策特例交付金という形に結実をいたしました。そしてまた、引き続き児童手当制度の改革、これは先進諸国の水準に少しでも近づける、それが必要であるということを主張しておるわけでございますが、政務次官にお尋ねをしたいと思います。  厚生省として、政府としてと言った方がいいと思いますが、少子化対策に取り組む姿勢というものをこの年金審議の場におきまして明らかにしていただきたいと思います。
  54. 大野由利子

    大野(由)政務次官 少子化対策につきましては、大変幅広い分野の施策が必要であることから、一つは総合的な対応が必要である、このように思っております。そしてまた、政府といたしまして、少子化対策関係閣僚会議において少子化対策のための基本方針を年末までに策定する、このようになっておりますし、与党におきましても、委員がよく御存じのように、三党の少子化対策検討会において児童手当の問題を含めて総合的な少子化対策の推進についていろいろ検討していただいている。  政府といたしましても、与党の検討を踏まえて、実効性のある少子化対策の策定に向けて具体的な取り組みを進めてまいる所存でございます。
  55. 福島豊

    ○福島委員 ぜひよろしくお願いいたします。  本日の朝の理事会におきまして、私どもは本法案の附則第二条に関しての修正案を提示をさせていただきました。最終的には与党三党で共同提出という形になろうかと思います。  その趣旨は、民主党の委員の先生方からも繰り返し指摘ございました、介護保険が来年からスタートする、その保険料負担、当初は激変緩和ということで免除をされるわけでございますけれども、しかし、将来的にはその負担というのはかなり大きなものになるのではないか。医療保険にしても同じでございます。将来において高齢者の負担というのは一体どうなるんだろうか。そういう中にあって、基礎年金、ナショナルミニマムとして高齢者全体に共通するところの基礎年金の水準というものは的確に見直していく必要があるのではないか、ほかの社会保障制度のあり方と関連してこれを見直していく必要があるのではないかと。  ただ、そうはいいましても、基礎年金の水準を引き上げるということは大変大きな財源が必要でございます。ですから、附則第二条に、国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げる、その出口が明確に示されたわけでございまして、そしてまた、その財源についての検討を進めるということも示されたわけでございますが、その議論の中で、関連させて給付水準というものについても積極的な検討を進めるべきであるということを盛り込んだ修正案でございます。  この点につきましての大臣の御認識をお聞きしたいと思います。
  56. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、基礎年金の水準でございますが、これは先ほど来政務次官からもお話があったと思いますが、これは、老後の基礎的な部分を賄うという考え方に基づいて、物価の上昇に応じて政策決定を行って増額を行う。ですから、物価がどういう影響をしてくるかということが一番のポイントではないか、現時点ではこういうような認識に立っておるわけでございます。  医療や福祉の各制度においては、被保険者負担能力に応じて適正な水準の自己負担保険料負担が求められておるわけでございますが、特に年金給付のみに着目した負担が求められているということではなくて、年金以外の収入や資産の状況、こういうことも総合的によく勘案しなければならない、こういう中で負担水準というものが議論されていると認識をしておるような次第でございます。  そこで、これは将来の問題でございますけれども、もし、先ほど申し上げました有識者懇というものが立ち上がった暁には、そういうことも含めて幅広く御議論をいただければ幸いだ、こう考えているような次第でございます。
  57. 福島豊

    ○福島委員 それから最後にもう一点、時間も限られておりますので。  この委員会の審議の中でやはり同様に繰り返し指摘されておりますのが、支給開始年齢の引き上げということが盛り込まれたわけでございますが、その中で繰り上げ年金ということが同時に導入されるわけでございます。ただ、繰り上げ年金におきます現在の減額率というのは、ある意味では、繰り上げてはならぬと言わんばかりに非常に高い減額率が課されておるわけでございまして、これは、委員会の審議の中でも、要するに、用いているところの生命表が非常に古いもので、現在の平均寿命の延長というようなことが十分に反映されていない、そういう結果であろうかというふうに思います。  この使用しておるところの生命表の変更というのは、事務的にも確かに一定の時間が必要であるというように考えますけれども、この支給開始年齢の引き上げというものにリンクさせた形で適切な変更をなす必要がある、そしてまた、いつの時点で年金の受給を開始をしたとしても生涯における年金の受給額に不公平が生じないようにすべきであるというようにも思いますし、そしてまた、ひいては、そのことによって年金制度が就労のあり方に影響を与えない中立的な制度にと改めていく必要があると私どもは考えております。  そこで、この点につきまして、厚生省の今後の取り組みの方針を含めまして御説明をいただければと思います。
  58. 矢野朝水

    矢野政府参考人 減額率の見直しの問題でございますけれども、事務方としては、今回の法律改正案によりまして二〇一三年から厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に引き上げられる、それに合わせて減額率を見直そうと考えておったわけですけれども、大臣から、二〇一三年から見直すというのは余りにも悠長だ、もっと早く結論を出せという指示がございまして、私どもとしましては、その指示に従いまして、できるだけ早く見直していきたい、そういう機会を設けていきたいと思っております。
  59. 福島豊

    ○福島委員 以上で質問時間が終わりましたので終わりにしますが、引き続きのさまざまな努力が必要な制度であるというように思います。政府総体としての取り組みを期待いたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  60. 江口一雄

    江口委員長 吉田幸弘君。
  61. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 自由党の吉田幸弘でございます。  私は先回厚生委員会で質問をさせていただいたわけでありますが、その質疑を踏まえまして、社会保障という重要な問題についてさらに敷衍してお伺いしたいと思っております。社会保障全体について、これから二十一世紀に向けて国民が安心して暮らしていけるようなセーフティーネットをいかに構築していくかについて考えてみたいと思います。  御存じのとおり、近年、従来の予測をはるかに超えて急速に少子高齢化が進展しているわけでございますが、二十一世紀の日本の人口構造は今とは大きく変化をしていくわけであります。また、我が国の経済はバブル経済の後遺症からいまだに脱しないままで、構造不況の様相を呈しておるのも事実でございます。最近やや明るさが戻ってきている、このように聞き及んではおりますが、依然として大きな課題は残ったままであります。  このような中で、二十一世紀に向けて日本が活力を取り戻し、人々が安心して暮らしていけるためには何をするべきなのか。さきの経済戦略会議の中でも、私としては、民間の自由な経済活動に対する政府の介入をできる限り抑制をして、日本経済を競争的なものに変えていくことが重要である、このような考えに対して私自身も支持をさせていただいているわけであります。  その前提として、まず人々の暮らしの基礎となるセーフティーネットの整備が重要になるということは、万民すべてが承知をすることであるということも、今さら言及するまでもないことであります。  経済戦略会議の提言につきましては、いろいろな各論の分野においては異論があるようですが、その大きな方向性については、大体の了解、また世論の一致というのも認めざるを得ないのが状況かと思います。  そこで、最初の質問ですが、私が先ほど述べましたように、競争社会を構築する前提条件は、年金、医療、介護などの社会保障制度を効率的で安定したものとし、社会のセーフティーネットを整備することであると考えているわけであります。この点についての大臣の御見解をまずお伺いしたいと思います。
  62. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 吉田委員から先般来この問題について大変御熱心に御質問、御意見を賜っておるわけでございますが、私も全く同じ認識であるということをまず申し上げさせていただきます。  二十一世紀に向けて、少子高齢化社会が進展する中で、真の豊かさを実現するためにも、国民生活の安定を図って安心をもたらすセーフティーネットとしての社会保障の役割というのはますます重大になってくるんじゃないか、私はこのようにまず認識をいたしておるような次第でございます。  そのために、医療、年金、介護、こういった問題について、国民の皆さん方のニーズに的確に対応しながら、将来世代に過重な負担を残さないというような観点から、制度の安定的な運営は何よりも必要である、このように考えているような次第でございます。  先ほど福島委員の御質問にもちょっとお答えを申し上げたのでございますが、本日、総理ともお目にかかりまして、お年寄りの老後の不安を解消するためにも、真に豊かな老後生活を送るためにはどうあるべきか、先ほど来委員からも御指摘のあるようなセーフティーネットを含めまして、こういうようなことを少し横断的に議論をしようではないかということで有識者懇を設けようじゃないか、こういうことでございます。先生の御指摘のような問題についても幅広く御議論をしていただければ幸いだ、このように考えているような次第でございます。
  63. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 そうした社会保障制度を構築する上で、やはり肝心なのは経費の面でございます。つまり、いざセーフティーネットを整備するに際しては、どれくらいの給付費が見込まれるのか、これについて具体的に全貌を明らかにして検討する必要があると思われるわけであります。  今回、この場で審議の対象となっている年金給付費も大きいわけであります。また、将来の社会保障制度考える際には、年金だけではなく、医療、福祉を含めた全体像でとらえていく必要があるわけであります。社会保障給付費の増大についての実態はどのようになっているのでしょうか、また、今後どのように増大をしていくのか、この点について御見解をお伺いしたいと思います。
  64. 宮島彰

    宮島政府参考人 医療、年金、介護など社会保障に要する費用、いわゆる社会保障給付費でございますが、平成八年度実績ベースで年間約六十七兆五千億円に達しております。これは前年度よりも二兆八千億円の増加でございまして、九〇年代について見ますと、毎年平均約三兆円のペースで増加しております。  また、平成九年の厚生省の将来推計によりますと、社会保障給付費は、平成三十七年度、二〇二五年度で、名目国民所得の伸びに応じまして一定の幅がありますが、いわゆる中位推計で見てみますと、約二百三十兆円というふうに推計しているところでございます。
  65. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 いずれにしても、少子高齢化という実情は進展していくわけであります。給付の増大は避けられない。したがって、その給付負担する側について今度は考えを進めていきたいと思います。  この場合、特に若年者の世代、この人たちの理解を得ることが大切であるということは、先回の厚生委員会でもお話をさせていただいたわけであります。この社会保障にかかわる国民負担の増大というのが仮に避けられないとして、一体どの程度の負担が限界であるとお考えなのか、お示しをいただきたいと思います。
  66. 宮島彰

    宮島政府参考人 今後、社会保障の給付負担の増大が見込まれる中で、これまで社会保障負担につきましては、社会保障負担と租税負担を合わせました、いわゆる国民負担の対国民所得につきましては、高齢化のピーク時においても五〇%以下を目安としてきたところでございます。  しかしながら、国民負担につきましては、社会保障の充実に伴い、公的負担と私的負担といいますのは相関的な関係にあるので、公的給付の水準と私的負担とをあわせて総合的に議論すべきではないかという御意見など、さまざまな指摘もございます。  いずれにいたしましても、今後、社会保障制度の改革を進めていくに当たり、活力ある安定した社会を維持するために、経済と社会保障の調和を図りつつ、真に必要な給付を確保するための負担につきまして国民の皆さん方の御理解を求めてまいりたいというふうに考えております。
  67. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 国民負担について、どうも今までは、医療とか年金だとか、ばらばらに議論されている、これが現状であるかと思います。  先ほど大臣からお話がございました有識者の懇談会、真に豊かな老後考え国民会議、この準備を進められ、また、縦割りの考えというものをなくして総括して社会保障というものを考えるというようなお話がございました。  再度、この点についての大臣の御決意と、また、この真に豊かな老後考え国民会議の有識者にはぜひ歯科医師も取り入れていただきたい、この点についてお伺いをしたいと思っております。
  68. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほど来御答弁を申し上げておるわけでございますが、これまで、年金年金、医療は医療、介護は介護、こういうような制度ごとに縦割りに議論がなされてきたのではないかという指摘があることは事実でございます。  私といたしましては、社会保障のあり方につきまして、真に豊かな老後を確保する視点から幅広く議論をしていきたい、このように考えているような次第でございます。  いずれにいたしましても、大切なことは将来にわたって安定して運営できるような制度を構築することであり、また、社会保障に対する国民の皆さん方の理解を深めて、そして、いわゆる豊かさの中の不安と言われる中でお年寄りが老後に大変な不安を持っている、こういうものを解消するということが私たちの務めではないかな、このような考えでございます。  人選等については、全くまだ決めておりませんし、今後十分に総理とも調整をしながら進めていきたいと思っております。
  69. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 ありがとうございます。  社会保障の構造改革というお話をさせていただいているわけでありますが、特に年金制度の改革について考えてみますと、予想をはるかに上回る少子化の進展が今回の改正の大きな引き金となっているわけであります。この少子化の進行をいかに食いとめるか、この対策が極めて重要であるということは言うまでもなく、現実にはその方向で進んでいるかとは思いますが、この少子化に伴う経済成長の鈍化について警鐘を鳴らす向きもあるわけであります。また、少子化は我が国社会のあらゆる局面に大きな影響を与えているということも事実であるわけであります。少子化の対応こそが大きな課題である、このように私自身は考えるわけです。将来の年金制度を安定させるためにも少子化対策を進める必要がある。  大臣は、今後この少子化対策についてどのように進めていくお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。
  70. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず最初の認識でございますが、結婚であるとか出産であるとか、これはあくまでも個人的な選択にゆだねられる問題である。  ですから、現実問題として、先生がおっしゃることは十分に理解できますが、私個人としては、産業がこれによって衰退するから少子化対策を急ぐべきであるとか、あるいは年金がこれによって崩壊するから少子化対策をするんじゃないかというような観点ではなくて、要するに、働く女性が子供をなぜ産まなくなってしまったのか、そういうような観点からこの問題というものは考えていくべきだということで、結果的には、ある意味においてそういう結論を出すということについては同じでございますけれども、ちょっと認識が違うかな、こういう感じを持っておるような次第でございます。  御案内のように、かつては、戦後あるいは戦中の時代というのは、出生率というのが昭和二十二年で四・五四人です。ですから、私どもの兄弟というのは四人、五人、六人と少なくないんですが、私どもの子供や私どもの孫の代になりますと子供さんがだんだん少なくなってまいりまして、今一・三八で、一・三八ショックということが言われております。  それはどこに原因があるのかということは非常に難しい問題でありまして、この問題について、私どもに、そう有効的な手だてとか、そういうものがあるというわけではございませんけれども、いずれにいたしましても、さっき申し上げましたような観点から、政府といたしましては、いわゆる少子化対策の関係閣僚会議というものを設けまして、少子化対策につきまして基本的な方針を策定する。それから、十一年度で終了いたします緊急保育対策等五か年事業の後を受けまして、保育対策などについてさらに計画的な推進を図る。  それから、関係団体の代表から成る少子化への対応を推進する国民会議を始めて、各界各層に取り組みをお願いして、国民の皆さん方にこの問題について十分な御理解をいただきたい、こういうことでございます。  また、既に、働く女性のための駅前の保育所であるとか保育ママの問題など、いわゆる市町村の少子化対策事業を支援する少子化対策臨時特例交付金というのを二千億、御案内のように補正予算に計上いたしました。これはあくまでも、政府がこういうことをしなさいというような押しつけではなくて、市町村によっていろいろ事情があるんです。働く女性の皆さん方がこういう点が困っているんだ、こういう観点から、それぞれの市町村が創意工夫していわゆる少子化対策に取り組んでいただきたい、こういうことでこのような特例交付金というものを設けたわけでございます。  いずれにいたしましても、大変重大な問題だと考えておりますので、私どもといたしましても、政府といたしましても、引き続きこの問題に真剣に取り組んでいく決意でございます。
  71. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 それでは、本来の議題であるといいましょうか、今回の年金改正法案についてお伺いをしたいと思います。  これまで、二十一世紀における少子高齢化の進展や経済の活力の維持という観点から、社会保障全体についてお話を進めてまいりました。  年金制度に関しては、まず今回の年金制度改正の必要性について改めて大臣にお伺いをしたいと思います。
  72. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、国民老後を支える年金制度でございます。今、お年寄りの六割以上の方々現実問題として年金に頼っていらっしゃる、こういうことを踏まえまして、将来にわたって安心して信頼できるものにしていかなければならない、こういうことを考えています。  こうした観点から、今回の改正におきましては、高齢化のピーク時におきましても、保険料を年収の、これまでは月収でやっておりましたけれども、年収の二割程度として、無理のない負担に抑えていくということが第一でございます。それから、厚生年金給付水準の見直しを図っていく。  それから、基礎年金国庫負担の二分の一への引き上げを図っていくということ。これは先般来御議論が出ておるわけでございますが、一日も早くこれを実現して、国民の皆さん方に、長期的、安定的、そして揺るぎのない年金制度を構築していかなければならない、こう考えているような次第でございます。  それから、先ほど来御議論がございました、将来の少子高齢化の進展、経済の低成長などを踏まえながら、将来世代の過重な負担を防ぐということが大切ではないかと。  つまり、私どもの先輩の時代年金をいただいた、しかし私どもの子供や私どもの孫の代になってしまったら年金がもらえないのではないか、こういうような不安が一部にあるわけでございますので、いわゆる世代間の均衡ということが年金制度において避けて通れない問題でございます。将来とも現役世代の手取り年収の六割程度の給付水準を確保するということをねらいとしておるのが、今回の年金法改正の最大の柱でございます。
  73. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 政府参考人にお伺いをしたいんです。  そこで、年金制度における負担の問題。将来世代の年保険料負担はどの程度が限界と考えているのか、お伺いをします。
  74. 矢野朝水

    矢野政府参考人 今回の改正案で最もねらいといたしましたのは、少子高齢化が進む中で将来世代の負担を過重にしない、こういうことでございます。そして、将来負担の限界というものを年収の二割程度、本人負担はその半分の一割程度、これが限界じゃないか、こう考えたわけでございます。  この負担水準といいますのは、ヨーロッパ諸国はいち早く日本よりも高齢化が進んでおりまして、保険料を上げていったわけですけれども、年収の二割を超えますともうこれ以上上げられる状況じゃない、こういうヨーロッパの先例があるわけでございます。  それからまた、私どもは、今回改正に当たりましていろいろな調査をやりました。その中で有識者調査などもやったわけですけれども、そういう調査結果を見ましても、やはり負担の限界というのは年収の二割だ、こういう意見が一番多かったわけでございます。  そういうことで、年収の二割の負担に将来の保険料負担を抑えよう、そのために給付のこれからの伸びを抑えていこう、こういう考え方のもとに今回の改正案を取りまとめたわけでございます。
  75. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 では、民間活力をなるべく生かして小さな政府を実現する観点からは、年金についても効率的な制度を構築する必要があるわけであります。  老後の所得保障における公的年金の果たす役割についてどのようなお考えがあるのか。特に、民間の活力、こういう意味では、私的年金、企業年金なども極めて大切になってくると思いますが、個人、企業の自助努力を年金制度では一体どのように位置づけるのか、政府参考人にお伺いをしたいと思います。
  76. 矢野朝水

    矢野政府参考人 公私年金の役割分担のお話でございますけれども、公的年金は、何と申し上げましても老後の所得保障の柱でございます。これがしっかりするということが基本でございまして、終身にわたり物価スライドで購買力を維持する、こういうことで、老後の所得保障の柱として十分機能するように今回の改正案でも考えておるわけでございます。  一方、個人とか企業の自助努力、これも非常に大事でございまして、公的年金を補完する、そして、老後のニーズというのは非常に多様でございます、だから、公的年金に上乗せしてより手厚い年金を支給する、それでより豊かな老後生活が送れる、こういうことになるわけでございます。あるいは、支給開始年齢が引き上げられますと、公的年金を受給するまでのつなぎ機能、こういったものも私的年金の役割としてこれから非常に重要になるのじゃないかと思います。  そういうことで、公的年金を土台に企業年金や個人年金がしっかりその役割を果たせるように、今後とも必要な改革を進めてまいりたいと思っております。
  77. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 引き続いてですが、今回の改正における給付水準についての考え方、この点についてお伺いしたいと思います。
  78. 矢野朝水

    矢野政府参考人 今回の改正は、先ほどから申し上げていますように、将来世代の負担が過重なものとならないようにするということでございます。そういうことで年収の二割というような負担の水準を念頭に置きまして、これから給付の伸びを少し抑えていこう、こういう制度改正考えたわけでございます。  その場合に、給付水準はできるだけ守っていこう、支給開始年齢の引き上げとかほかの手法をより優先するといいますか、そういったことで対応して給付水準はできるだけ守っていこう、こういう考え方に立ったわけでございまして、厚生年金でいいますと、現役世代の手取り年収のおおむね六割を確保しようということでございます。それから、基礎年金につきましては、今回、物価上昇に応じて基礎的な部分を賄えるように、月額六万七千十七円に引き上げておるわけでございます。  こういうことで、厚生年金基礎年金両方とも、今申し上げました公的年金の役割が果たせるような給付水準にいたしておるわけでございます。
  79. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 これまで、将来世代の負担の問題、給付の伸びの問題とお尋ねしたわけでありますが、給付総額の伸びの抑制の問題に関連して、今回の改正案に盛り込まれている在職老齢年金制度の適用年齢の拡大、この点についてお尋ねしたいと思います。  現在、六十五歳現役社会とも言われております。高齢者の方々社会のさまざまな場において活躍する場面を目にすることも多いわけでありますが、二十一世紀においてもますますこの点は重要なことでありまして、こういった高齢者の方々の就労意欲を損なわないようにすることは必要であると考えております。  そこでお伺いをしたいのですが、今回導入される六十五歳以上の高齢者の在職老齢年金に対する趣旨、お考えはいかがなものか、政府参考人にお伺いをします。
  80. 矢野朝水

    矢野政府参考人 少子高齢化が進む中で年金制度を長期的に安定したものにしていかなければいけない、その場合に、やはり年金の支え手を少しでもふやす、こういう観点が非常に重要じゃないかと思っております。  今回の六十歳代後半の在職老齢年金制度というのも、そういった観点から改正案に盛り込んだわけでございますけれども、これは現在、六十五歳になりますと、働いて賃金がありましても保険料を納めなくてもいい、年金は丸々いただける、こういう仕組みでございますけれども、やはりこれから働き手をふやすためには、七十になるまでは、賃金があって収入がある方は保険料を納めていただいて、年金の支え手になっていただきたいということでございます。  それから、給付につきましても、基礎年金は満額支給しますけれども、厚生年金、二階部分につきましては、賃金と年金の額に合わせまして一部支給停止をする、こういうことを盛り込んでおります。ただ、今御指摘にございましたように高齢者の就業意欲を損なわない、これは非常に大事な視点でございますので、年金を一部支給停止する場合も、賃金と年金の金額が非常に高い人、五十万を超えるような方を対象にいたしておるわけでございます。
  81. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 次に、事業団年金担保融資についてお伺いをしたいと思います。  事業団の低利の年金担保融資は、お年寄りが安心して利用できる公的融資制度であるということは言うまでもありません。今後この制度はどのように引き継いでいくのか、また制度の改善、この点についてお伺いをしたいと思います。制度の改善と申しましても、例えば返済に全額充てる、あるいは申し込んでから実行までの期間が二カ月ぐらいかかる、このような点についての制度改善、この点についてお伺いをしたいと思います。
  82. 矢野朝水

    矢野政府参考人 年金担保融資事業でございますけれども、これは、年金受給者の方の生活の安定のためにやはり必要だ、こう考えております。そういうことで、今回年金福祉事業団解散してなくなるわけでございますけれども、この事業は社会福祉・医療事業団で引き続きこのままやっていただこう、こういうことで今回改正案に盛り込んでおるわけでございます。  そしてまた、この年金担保融資事業はいろいろ問題点指摘されております。今御指摘のように申し込んでから受給できるまで非常に時間がかかるということでございまして、これは一カ月ぐらいに短縮しようと思っております。それからまた、今の制度では、借りたお金を全額返すまで年金は丸々支払いに充てなければいけないということでございまして、これではやはり生活に困るわけでございますので、借りたお金を返すと同時に半分ぐらいは手元に残るように、こういうことも必要じゃないか、こう考えておりまして、検討中でございます。
  83. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  84. 江口一雄

    江口委員長 金田誠一君。
  85. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 委員長委員会の定足数が欠けているようでございますので、成立してから質問をさせていただきます。
  86. 江口一雄

    江口委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  87. 江口一雄

    江口委員長 速記を起こしてください。  金田誠一君。
  88. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 国民生活に大変重大な影響を及ぼす法案の審議でございますので、ぜひひとつ委員長の方からも、かかることのないように督励をしていただきたいと思うわけでございます。  年金関連三法案大臣、きょうは政府参考人を呼ばせていただきました。しかし、政府委員廃止の趣旨というものがございます。それを十分受けとめていただいて、大臣のお答えを中心に審議を進めさせていただきたい、こう要請をしておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  なお、先般、質問通告をいたしましたけれども、その中で、省略できるものは省略をいたしまして、あるいは多少追加して補足的に質問するものなどもございます。その辺、通告と同じ順序に並んでいない、多少異なる点等ございますから、ぜひ注意をしてお聞きをいただければありがたいなと思うわけでございます。  まず、総括的に大臣質問をさせていただきます。  三法案ともに未解決の問題を大変多く含んでおります。また、国民的合意も未成熟である、こういう状態だと思います。したがって、この三法案、今国会で強行すべきではございません。いわゆる官僚主導ということではなくて、国会内に例えば厚生委員会の小委員会のような正規の協議機関を設けていただいて、国民に開かれた場で、それも期限を切って成案を得るべきだ、こう思うわけでございます。  その間、提案されている法案は、廃案という方法もございますでしょうし、あるいは継続審議という方法もございますでしょうけれども、いずれにしても今国会で強行すべきではなくて、国会のルールに乗った正規の協議機関の中で国民注視のもとに成案を得る、それが賢明な今政治の果たすべき役割であり判断ではないか、私はこう考えますが、大臣、いかがでしょうか。
  89. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 国会の中に正規の協議機関を設けて、国民に開かれた場で年金制度の議論をすべきだ、こういうような御趣旨の御提案と承っておりますが、まさにこの厚生委員会が国民に開かれたその場でありまして、ここで十分に先般来御議論をいただいておる、このように考えておるような次第でございます。  それから、この法案をまとめるまでには、年金審議会というのがございまして、先生も御承知のことと思いますけれども、大変御熱心に、合宿までして、有識者の皆様方に長時間にわたって御議論をいただいておるわけでございます。さらに、社会保障制度審議会とか、こういうようなところで御議論をいただいておりますし、また、この場におきましても大変御熱心に御議論をいただいておることに対しまして、心から敬意を表する次第でございます。  今回の改正のねらいでございますけれども、これは、将来世代の過重な負担を防ぐとともに、確実な給付を約束するという考え方に立って、年金に対する国民の信頼を揺るぎないものにするということが必要である、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、将来の年金像がどうなるのかわからないということが実は国民の皆さん方の一番不満といいますか不安なところでございますので、この問題について国会の場において国民の皆さん方に速やかに明らかにすることが私どもの責務ではないか、このように考えているような次第でございます。
  90. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 その将来の年金像が政府提出のこの三法案では全くわからない、これが今の国民の大方の受けとめであるという認識のもとに申し上げているわけでございまして、そうした国民の声が大臣の認識にはないということは非常に残念でございます。  年金審議会を例に挙げられましたけれども、例えばその中で、厚生年金であれば労使折半ということで運営されている一方の当事者である連合側が、基礎的なる数字さえ共通理解に立ち得ない状況の中で退席せざるを得ない、そういう中で審議会自体が強行されるという非常に不正常な形で今日に至っているわけでして、その状況は審議を通じても一向に解明はされていないということ、大臣の認識は極めて現状の正当な認識を欠いているということを指摘させていただいて、次に入らせていただきます。  大きな二点目でございますけれども、国民年金という言葉がございます。このことと、その一方で無年金障害者と呼ばれる方がいらっしゃる、この関係について見解を伺いたいと思います。  国民年金、これは私なりに解釈しますと、根拠法令は国民年金法第七条なのかな、こう思うわけでございます。まず、この国民年金とはどういう意味なのか。まさに国民全員が年金権を保有するという意味に本来解釈される言葉だと思うのですけれども、この言葉の意味と根拠法令を端的にお聞かせください。
  91. 矢野朝水

    矢野政府参考人 法律国民年金という用語の定義はないわけでございますけれども、今御指摘のありましたように、国民年金法第七条によりまして、二十歳以上六十歳未満のすべての人が公的年金制度の対象になっておる、これが国民年金、こう言われておるわけでございます。
  92. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 対象になるという言葉は非常にあやふやな、あいまいな言葉で、それで皆年金と言えるのかということになろうかと思います。  次に関連して聞かせていただきたいのは、医療については国民皆保険という言葉がございます。こちらの根拠は国民健康保険法の第五条だと理解をしておりますけれども、医療の方の国民皆保険は、国保の場合、保険料納付と保険給付は必ずしもリンクしておらない、保険料をずっと滞納していた方が保険証交付を受けてそのまま医療給付を受けられる、こういう状態にあるわけでございます。これこそまさに皆保険なのかなと思うわけでございますが、一方の年金はこういう医療保険とは違って保険料納付というものが絶対的要件にされている、一方で医療の方は同じ保険であってもそうなっていない。皆年金、皆保険といっても意味が違うと思うわけですが、これは違うわけですね。  皆年金という場合と皆保険という場合とは意味が異なるというのが現状だということで、その辺の理屈を説明していただきたいと思います。
  93. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 医療保険制度におきましては、当然国民がすべてまず保険料を支払う義務がありまして、そして医療を受ける権利を持つ、こういうことであります。  御指摘の、保険料を滞納していても直ちに医療を受ける権利というものはこれを否定するものではありません。これはあくまでも、要するに生命であるとか健康であるとかいうようなことにかかわる、人道的な立場ということもあってこういうような措置がなされておる、こう認識しておるわけでございますが、社会連帯というような社会保険のあり方から考えれば、保険料を払わずに給付を受けるということは本来あってはならないし、ルール違反だということは先生十分に御理解いただけると思います。  それから一方、年金制度でございますが、社会保険方式のもとで払った保険料に応じて給付を受ける、こういうことが前提として制度がつくられているわけでございますので、保険料を納めない方に給付ができないということは言うまでもないことであります。
  94. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 医療保険の場合は、大臣は人道的な見地、生命にかかわるということをおっしゃいましたけれども、年金だって人道的な見地あるいは生命にかかわることがあるわけでございます。私は医療、年金甲乙つけがたいものがあると思いますし、医療の場合は短期保険でございますから、保険料を追納しようと思えば医療の方が追納は非常に容易である。追納が容易であるにもかかわらずその納付を要件としないで給付をしているという実態がある。保険であるから必ず給付負担がリンクしなければならないという今までの論拠はこの医療保険一つ見てももはや崩れているということを、まずはこの場では申し上げたいと思うわけでございます。  そのことを念頭に置いていただいて、以下の質問にお答えをいただければと思います。  数字のことになって恐縮でございます。無年金障害者が十万人だというお話を伺いました。今政府として無年金障害者を何人と推計しておられるか、その数字と、例えばその方々に一人百万円を給付したというふうにすると一千億だと思うのですけれども、この無年金障害者の方々年金権を保有させるということで必要な財源、単年度で結構でございますけれども、推計の人数と財源をお答えいただきたいと思います。
  95. 矢野朝水

    矢野政府参考人 無年金障害者の方の数でございますけれども、これは障害年金に該当する障害を有しているということを一人一人について調べなきゃいけない、こういうことになるわけですので、非常に実態把握が困難でございます。それで、既存のいろいろな調査結果から一定の前提を置いて推計いたしますと約十万人強ということでございます。  財源につきましては、これは今御指摘のあったような数字になろうかと思います。
  96. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 無年金障害者の解消ということはかねてから大変大きな問題だと思います。  先ほども青山二三先生が御熱心に質問されていたわけでございますけれども、当然政府としてもそれを受けとめて財源は幾らかかるのかというあたりは推計していると思うのですが、私はたまたま百万円掛ける十万人ということで一千億と言っただけなんですけれども、政府内部の検討結果として、年金権を保有させるとすればどの程度かという財源の検討結果をこの際公表してください。
  97. 矢野朝水

    矢野政府参考人 無年金障害者の方が幾らいらっしゃるかというその数字自体、それを把握するのが難しいということと、それから、もし年金を支給する、こう仮定いたしますと、今障害の二級の場合が年額約八十万でございます、それから一級の場合がその二五%増し、こういうことでございますので、財源は、機械的に試算しますと今先生がおっしゃられたような数字になろうかと思います。
  98. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 何か、財源がどの程度見込まれるか、それをどう手当てをすることが可能なのかという真剣な政府部内の検討結果というのが今の答弁からはどうも聞こえてこない。大変遺憾だということを申し上げて、次に入ります。  この無年金障害者の問題は、機械的に計算すると仮に一千億、介護保険の今回のどたばたの措置で一兆円でしたでしょうか、この財源があれば十年分賄えるわけでございます。言うなれば、この無年金障害者の問題は、金がないからとか財政上の問題というよりも、年金審議会の意見書にもございますけれども、社会保険制度の中で果たしてどうかという理由づけの問題だ、金の問題は二の次だ、こういう現状に今あると理解してよろしいでしょうか。
  99. 矢野朝水

    矢野政府参考人 おっしゃられるとおりだと思います。
  100. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 年金審議会の意見書では、社会保険方式では「年金給付を行うことは困難」ということで明確に否定をしているんだと思いますね。政府もこれと同じ見解なんでしょうか。それとも、これは審議会の意見であって政府としてはまた別な見解をお持ちなんでしょうか。
  101. 大野由利子

    大野(由)政務次官 政府といたしましても、いわゆる無年金障害者、現在の年金制度におきましては、負担に応じて給付を行うという年金制度の根幹にかかわる問題でございますので、現在の年金制度の枠組みの中では極めて困難な課題であろうと思っております。
  102. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 たまたま政務次官から御答弁いただきましたので、あわせてお尋ねをしますが、それは公明党としても同じ見解なんでしょうか。公明党の見解は保険制度の中でもできる、あるいはやるべきだということではなかったのでしょうか。政府の一員としては今の答弁でしょうが、公明党のお立場をあわせてお聞きいたします。
  103. 大野由利子

    大野(由)政務次官 私は、現在政府の一員でございますので党の意見を代表する立場ではございませんが、公明党としては、この無年金障害者について何らかの救済が必要であるという主張をしているというふうに認識をしております。
  104. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 先ほど公明党の修正案ということでお示しをいただいたわけでございますが、そういうお考えであれば、この無年金障害者を解消するための修正案をお出しになったらいかがでしょうか。
  105. 大野由利子

    大野(由)政務次官 この無年金障害者の方々の苦労を考えますと、解決に向けて関係者の意見も十分に伺いながら幅広い観点から検討を進めていく必要がある、このように思っております。将来世代に過重な負担をかけないための今回の年金改正が成立した後しっかり検討を進めていく課題であろう、このように思っております。
  106. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大変残念な御答弁だなと思います。公明党さんが与党に入られたその目的は、こうした無年金障害者の問題などを解消するという大義があってこそではなかったのか、それが、現時点でそういう御答弁だということは非常に残念だということを申し上げておきます。  ところで、大臣にお尋ねをいたしますけれども、先ほど来、保険給付、反対給付という観点からはできないという政府見解だということでございましたが、障害者の自立支援、これが今の行政の大きな目標の一つになっているわけでございます。障害者の自立支援、こういう観点から、障害という特別の事情に着目をして、その方々に例えば一般財源からその分を繰り入れする、一般の保険料によらず、そういう特別な事情に着目をして繰り入れをするということなどを行えば、これは保険方式の中でも十分理解を得られる方法ではないか。  頭から保険方式では無理なんだという見解に立つ必要は私は全くないと思うわけでございますが、その辺はいかがでしょうか。専門家の大臣ですから、明確にお答えをいただきたいと思います。
  107. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 精通していらっしゃる金田先生ですから申し上げますが、保険方式というのは、これはあくまでも保険料を払っていただいて何かリスクが起きた場合にいただくというのが保険方式であって、何か起きてから保険料を納めるというのでは保険方式ではないんだということは十分に御理解をいただけると。  そこで、大変お気の毒な方もいらっしゃいますけれども、どうしたらいいかということで頭を抱えておるということを何度も何度も繰り返しております。それと同時に、障害者の福祉政策というものは充実していかなければならないということは、これは言うまでもない、全く同じ認識に立つわけでございまして、福祉的な視点から、障害などの内容に応じまして、公費によってホームヘルパーの派遣など各種の福祉サービスを行ったり、あるいは重度の障害をお持ちの方に関しましては、その負担を軽減するための特別障害者手当というものを給付することにしております。  いずれにいたしましても、一般財源の中でこういうような福祉政策を充実していくということは、これは、要するにお気の毒な方に対しまして私どもが十分に心を砕いていかなければならない問題だ、こう考えています。  ただ、先ほどから申し上げておりますけれども、これを社会保険方式でやるということは次元の違う話だ、こういうことであります。
  108. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そういう言い切りをされるというのは非常に残念でございます。先ほど国保の例を出しましたけれども、そういう例もあるではないですか。あるいはまた老人保健制度というものを考えても、高齢であるということに着目をして特別の給付、一般と異なる給付を行っている、その分については一般財源を投入しているという方式もあるではないですか。保険と税との組み合わせ、何に着目して保険制度の中であっても税を投入していくかという観点で十分対応可能だと私は思います。言い切りをなさらずに、ひとつ十分検討していただきたい。  社会保険方式なら不可能だということが頭からあって検討が進んでいないんだと思うわけでございますけれども、そういう社会保険方式だからだめだという結論ありきではなくて、社会保険方式であっても保険の中に税を投入する形というのは医療保険でもあるわけですから、そういう組み合わせの中でぜひひとつ考えていただきたいということが一点です。これは強く要請をしておきたいと思います。  もう一点は、保険制度の枠では無理なんだとおっしゃるのであれば、それでは、別枠なら可能だ、保険の別枠でいわゆる福祉的措置であれば可能だということをおっしゃっていただきたいと思います。
  109. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 障害者の皆さん方に対して、私どもが福祉的な措置で、先ほどから申し上げましたような観点から充実を図っていくことは、当然私どもが追求していかなければならない問題だ、このように認識しております。
  110. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 私は、年金制度社会保険制度の枠内でも可能だという立場です、私の立場は。しかし、もう一度確認させていただきますけれども、政府の立場は、今の検討の方向は、社会保険制度の枠の外で、いわゆる福祉的な措置として一般財源の中でこれを検討して、そういう形で結論を出すということでよろしいんですか。
  111. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 社会保険方式に税を投入しているではないかと先ほどもおっしゃいました。これはあくまでも社会保険方式における給付負担、要するに給付の充実を図り負担の軽減を図る、こういう観点から一般財源を投入しているんだ、これは年金であれ、そのほかの医療保険の一部においてもそうだということをまず御理解いただいて、その問題と一般的な福祉的な財源でやるというのは次元が全く違うんだということをひとつ御理解いただきたいと思っております。  こういった問題について、救済策という言葉が適当なのかどうかわかりませんけれども、要するに手厚い保護をやっていくことは私たちが求めていくべき筋の話だ、こう考えているような次第であります。
  112. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 社会保険の枠内では無理だということで否定をしておきながら、一方で、それでは福祉的措置、税でやるなら可能かというと、それについても答弁をはぐらかされる、大変遺憾だと思います。改めてまた次の機会にこの問題は追及させていただくことにして、次の問題に移らせていただきます。  年福事業団の解散及び承継法案、この件についてでございます。  まず大臣にお尋ねをいたしますけれども、総括的にお答えをいただきたいと思います。この種特殊法人の破綻処理に当たっては、本来、その実態あるいは責任の所在、これらを明らかにすることが出発点となる、こう思います。ところが、今回は、新たにつくる運用基金というものを利用して、いわば責任なり損失なりをやみからやみという形で処理をしようとしているように見られるわけでございます。  そこで質問でございますが、今回の措置が年金福祉事業団のいわば破綻処理であるということを、まず冒頭に大臣の口から確認をしていただきたいと思います。
  113. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 それは、全くそういう立場からスタートしたわけではありません。御案内のように、これは、行政改革の中の財政投融資のあり方、そういう中で——要するに、これまでは財投に年金保険料等を集めましょう、それから年福事業団が一部を自主運用していたわけでありますが、そういう観点から行ったわけではありません。
  114. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 私は、今の年福事業団の中では始末がつかなくなった、グリーンピアについてもあるいは一兆数千億の赤字についても始末がつかなくなって、新たな法人を設けてそこにぶち込むという破綻処理をしようとしているというふうに思っています。  そのことをこれからぜひ立証していきたいなと思いますけれども、それはちょっとおいておきまして、ここでは、また数字のことで恐縮でございますが、こういう資料がいただけるかどうかということで質問をしますけれども、基金が承継することになる年福事業団の資産と負債、これを簿価と時価で、各勘定別に、資産の内容がわかるように示していただきたいということでございます。  特に、グリーンピア、総合保養施設について、バランスシートでは総合保養施設トータルして一千三百五十億というふうにありますけれども、時価はこれを大きく割り込んでいるのではないか。どの程度割り込んでいるのかわかりませんものですから、特にこの辺について明らかにする必要がある、そう思うわけでございます。破綻処理でないと大臣がおっしゃるなら、本当にそうなのかどうか明らかにする必要があると思います。このグリーンピアの時価もわかるような形で今申し上げた資料を提出いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  115. 矢野朝水

    矢野政府参考人 そういった資料が今手元にございますので、よろしければここで……
  116. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 いや、出せるかどうかでいいです。
  117. 矢野朝水

    矢野政府参考人 はい、出せます。ただし、時価につきましては、グリーンピアと融資事業を経理しているのが一般事業勘定でございますけれども、これは簿価のみで経理処理をいたしております。したがいまして、グリーンピアの時価は現時点では把握しておりません。  ただ、一般的に言えますことは、土地がどんどん下がっているのは御承知のとおりでございまして、特にグリーンピアは人里離れたへんぴなところが多いわけでございまして、簿価よりも相当下がっておるということは容易に想像できると思います。時価につきましては、現在、ぜひグリーンピアを受けていただきたいということで地元自治体と交渉をいたしております、そして、最終的に地元自治体で受けていただく場合には時価の半分ぐらいの割引措置ということも考えておりまして、交渉がまとまる段階で最終的に時価を評価したいと思っております。  それから、勘定が三つございまして、資金運用事業のうちの資金確保事業と年金財源事業勘定、この二つにつきましては時価と簿価両方で把握をいたしております。この資金運用事業、両方合わせますと、これは十年度末でございますけれども、時価ベースで約一兆二千億、簿価べースでいいますと約一兆八千億の累積欠損になっておるということでございます。
  118. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 特に求めたい資料がないのですか、グリーンピアの関係でございますが。あるけれども出せないのでしょうか。  しかし、どうなんでしょう、関係自治体と協議に入る——協議に入るに当たっても、時価が幾らかわからないで協議のしようがあるのですか。今いみじくもおっしゃった、時価の半額程度と。ということは、時価がわかっているということじゃないですか。わかっているのならお出しをいただきたいと言っているわけです。
  119. 矢野朝水

    矢野政府参考人 時価は現時点ではわかっておりません。交渉がまとまる段階ではきっちり時価を評価したいと思っております。
  120. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 一つの法人からもう一つの法人に業務を引き継ぐ、会社でいえば吸収合併ということになるのでしょうか、その際に、資産価値が時価で幾らかということを評価しないで引き継ぐ会社がありますか。引き継ぎをお願いする方も受ける方も、そんなものは当たり前のことじゃないですか。不動産鑑定だって当然やっているわけでしょう。その上で関係市町村なりと協議に入っている。これは当然推測できるわけです。ぜひ、お隠しにならずに御提出いただきたい。
  121. 矢野朝水

    矢野政府参考人 時価評価をきっちりやりまして、時価がわかりますと提出したいと思います。
  122. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 今時点では全くないのですか。あるものを提出してください。
  123. 矢野朝水

    矢野政府参考人 現時点では時価評価はございません。
  124. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そういう中で、資産の内容も明らかにせずに業務を引き継ぐということで、審議をしろという方が無理ではないですか。これは、委員長、早急に資料を取りまとめて、当委員会に提出をしていただきたい。資料要求を委員長にお願い申し上げます。
  125. 矢野朝水

    矢野政府参考人 特殊法人の会計処理は原則として簿価評価ということで行われておりまして、したがいまして、一般事業勘定につきましては、私どもはこれまで簿価で評価いたしておるわけでございます。  それから、実際、時価評価というのが一番必要になりますのは、地元自治体と最終的に金額の詰めをいたします場合に時価評価をいたして、時価評価の何割引きという形で価格を最終的に確定する、そういうときに時価評価が必要になってくるということでございます。
  126. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 時価評価が必要になるときは、そういうときももちろんでしょうけれども、一つの法人を一つの法人に引き継ぐというときは当然評価が必要ではないですか。資産の中身もわからないで引き継ぐなんということはあり得ない、あるいは引き継がせるなんということは考えられない。大臣、そういうことでよろしいですね。当然のことを私は申し上げているのですが、確認してください。
  127. 矢野朝水

    矢野政府参考人 今申し上げましたように、時価評価は、地元自治体に譲渡するときに最終的には必要となるものでございます。それまでにはきっちり時価評価をするということで、準備も進めておるわけでございます。したがって、今度、年金福祉事業団が廃止になり、新しい年金資金運用基金にいろいろな業務を承継するわけでございますので、その承継をいたす時点では、今おっしゃられたような評価を含めてきっちり処理をして、その上で引き継ぐということでございます。
  128. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大臣、それでいいのですか。
  129. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 そのとおりでございます。
  130. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 甚だ遺憾な答弁だと思います。今、年福事業団から基金の方に引き継ごうというときに、引き継ぐ資産の内容さえ明らかにしない。一千三百五十億が幾らに目減りしているものなのか、それは当然示す義務がある。これは、委員会の責任で資料を提出させていただきたい。改めて委員長に要請いたします。
  131. 江口一雄

    江口委員長 この問題につきましては、理事会で協議をいたします。
  132. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 次の質問に移らせていただきます。  承継資金運用勘定というのがあるようでございます。この廃止が平成二十一年か二十二年かということのようでございます。現在、時価にして一兆二千三百億の損失がございます。簿価はもっと高くなるようでございますけれども、承継資金運用勘定の廃止の際、平成二十一年なり二十二年の際には、この損金はどうなっているのでしょうか、見通しをお聞かせください。
  133. 矢野朝水

    矢野政府参考人 現在、年金福祉事業団が資金運用部から資金を借り受けまして市場運用をいたしております。その累積の欠損金が、ただいま御指摘のございましたような時価ベースで一兆二千億ということになっておるわけでございます。これがこういう状況になったといいますのは、資金運用部からの借り入れコストというのが固定金利で逆ざやになっておるわけでございますけれども……(金田(誠)委員「そんなことは聞いてないよ。最終見通し」と呼ぶ)これにつきましては、これから十年以上期間があるわけでございまして、その間、こういった累積欠損を解消するということで、最大限の努力をいたしていきたいと思っております。
  134. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 その努力は今までもしてきたと思うのですが、しかし、それが実るかどうかというのはわからない。これから先一兆二千三百億がもっとふえるかもしれない。しかし、この法律を見ますと、いずれにしても、負債は、幾らになるかわからないけれども、総合勘定に帰属させるというんですね。第十条。幾ら借金になるかわからないけれども総合勘定に帰属させるということは、年金積立金を充当して借金を帳消しにするということと同じではないですか。
  135. 矢野朝水

    矢野政府参考人 総合勘定に帰属させて借金を帳消しにするというお話でございますけれども、これは、そういったことを考えておるわけではございません。  現在、資金運用部から資金を借り受けておるわけでございまして、これは確実に償還をしていかなきゃいけない。元本が毎年三兆円ぐらいございます。それから、利子も一兆円程度ございます。こういったものをこれから確実に償還していかなきゃいけない。そういった場合に、今の年福事業団の事業を固定しまして、そういう中で元本なり利子を返していくということになりますと、これはマーケットにも大変悪い影響を与えるわけですし、円滑な返済ができない、こういうことになりかねないわけでございますので、今回のような措置を講じたということでございます。
  136. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 総合勘定というのは、新たにできる基金が、厚生年金国民年金からそれぞれ積立金を借り受けて運用する、その両勘定のほかにある総合勘定ということですよね。要は年金積立金運用のための勘定であります。そこに帰属させてしまうということは、これは、赤字だったらそこで年金積立金を充当して処理をしてしまうということと同じではないですか。  現在の年福事業団法では、こういう積立金の方に損金を持ってくるというスキームはないわけでしょう。累積欠損金として処理をするというだけの話ですよ、現在の年福事業団法では。それを新たな基金法では総合勘定の中に持っていく、直接的に年金積立金運用をやるその中に赤字をぶち込ますということですよ。これは新たなスキームではないですか。  今の資金運用部からの借り入れによる年福事業団の方式では、年金積立金とはセパレートされているんですよ、資金運用部というものの中に入っていて。したがって、いかに皆さんが損をしようが、年金資金は資金運用部に貸し付けて、そこから適正な利子でまた戻ってくる。積立金は損しない計算になっているわけでしょう。それを借り受けた年福事業団が損するだけだ。その赤字を積立金で補てんするというスキームはないでしょう。  積立金を充当できるというスキームはない、新たにつくるんです、そのことを確認してください。大臣、聞いておいてくださいよ。
  137. 矢野朝水

    矢野政府参考人 現在の年金福祉事業団のスキームには、おっしゃるとおり、こういった今回新たに設けようとしているような総合勘定といったスキームはございません。  それで、今回なぜこういった勘定を設けたかということでございますけれども、年金福祉事業団の資金運用事業といいますのは、年金加入者あるいは受給者の利益のために実施してきたわけでございます。したがいまして、その当該事業を承継した承継資金運用勘定の資産または負債は、最終的に年金財政に帰属させることにしたわけでございます。  それから、ただいまのお話の前提として、これは今赤字があるし、最終的にも絶対赤字が出るのじゃないか、こういうのが前提としてあるのじゃないかという気がいたしたわけでございますけれども、確かに時価ベースで十年度末一兆二千億ございますけれども、その後のマーケットの改善によりまして現在では半減しているわけでございます。  これから将来どうなるかというのは現時点では何とも申し上げられませんけれども、私どもとしては、現在の赤字、累積欠損というのはここ十年内に解消できると。といいますのも、借り入れコストがどんどん下がってきております。そういうことを考えますと、現在の赤字は必ずや解消できるものと考えております。
  138. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 もしそうであれば、損金を総合勘定に帰属させるなんということは書かなきゃいいんですよ、損金が出ないというのなら。出るかもしれないから書いているわけでしょう。そういう答弁はいけませんよ。  大臣、確認をさせていただきたいのですが、現在の年福事業団の、財投から借り入れる、資金運用部から借り入れるという方式であれば、最終的な欠損金を年金積立金をもって処理するというスキームはないですね。そのスキームはございません、新たにつくるものですというふうにお答えいただきたいと思います。
  139. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどから局長の方から答弁をさせておりますけれども、先生の御意見と私の見解は異にしております。
  140. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大臣、御理解いただけないでしょうか。  現在の年福事業団の資金運用部から借り入れて運用するというこの枠組みの中では、幾ら借金を積み重ねようとも、それを年金積立金で処理をするという法律にはなっていない、そういうスキームはございませんということだけ言ってくださいよ。それでいいでしょう。
  141. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 現在の年福事業団の中では、そのようなことについては何ら明記されていないと承知しています。
  142. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そういうスキームはないんですよ。累積欠損金として残っていくだけなんですよ。これをどう処理するかというのが今回の法律なんですよ。だから破綻処理だと言ったわけです。違いますか、大臣
  143. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 要するに、基金が年福事業団から承継した資金運用事業について、その事業が終了するまでの間にできるだけ速やかに解消する、先ほど先生一兆二千五百億とかおっしゃっておるのですけれども、こういうことで、その事業のための勘定が廃止される際に仮に負債が生じる場合には、それを総合勘定にするというのが今回のシステムであります。  このような仕組みにいたしましたのは、年福事業団の資金運用事業は、これは当然のことながら、年金加入者や受給者の利益のために実施してきておるわけでございますので、その事業を承継した承継資金運用勘定の資産または負債を最終的に年金財政に帰属させることによって保険料財源で処理するということは、これはごく当たり前のことではないか、こう考えています。
  144. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 今、大変な御答弁だと思いますよ。  今の年福事業団ではそういうスキームがないんですよ。にもかかわらず、新たな基金でそういう破綻処理の仕組みをつくる、赤字処理の仕組みをつくる。その仕組みをつくった途端にこれは年金保険者負担になるんですよ。積立金は初めてそこから減額されていくんですよ。今の年福事業団のスキームではそういうことはないんです。累積赤字はどこまでたまるかわかりませんけれども、それは年福事業団の中で処理をされて、積立金とはセパレートされているわけです。  大臣、よくわかって提案をされているんでしょうか。どうもその辺の御認識が十分ないのではないかというふうに聞こえてしようがない。今回の基金をつくった新しいスキームが動くことによって初めて年金積立金が損失を受ける、被保険者負担に初めてなる。そういう仕組みを今つくろうとしているんですよ。  では、こうしましょう。旧来の年福事業団のスキームではそうではなかったけれども、新たな仕組みによって年金積立金から充当して、結果として被保険者負担になるというスキームをつくるということです。このことを確認してください。
  145. 矢野朝水

    矢野政府参考人 今回、法律を提出いたしたわけでございまして、そういう中で今御指摘のような新しいスキームをつくることといたしたものでございます。
  146. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大臣、そのことを国民の前に本当に明らかにして理解を得ようという姿勢が一貫してないじゃないですか。大臣、今私の言ったことを確認をしてくださいと前段申し上げて、年金局長が答弁しましたけれども、大臣に改めて同じ確認を求めたいと思います。
  147. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほど申し上げましたように、新たな仕組みとしてこういうような、承継の資産あるいは負債を年金財政に帰属するような、保険料財源で処理するということが適当だ、こういうことを申し上げたわけであります。
  148. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 今までの年福事業団ではそういうスキームはないんですよ。年福事業団の責任でずっと累積で持っていくんですよ。とことんこれが回らなくなったら、そのときは恐らく、住専の問題とかさまざまな問題がありましたけれども、そういう新たな破綻処理のスキームを考えなければならない、そういう性格のものです。資金運用事業にしろ、あるいはグリーンピアにしろ、そういう形で責任が明確にされるスキームであった。  それを新たな基金の中にぶち込むことによって、幾ら損失になったものなのか、どう処理されたものかも全部含めて年金積立金の中で解消しようということでしょう。そういうスキームをなぜつくるんですか。そういうスキームをつくるということは今までより悪いということですよ。今までは、累積で債務がどんどんたまります。今度は、積立金の中でまぜこぜにしてしまうということなんですよ、新たな基金は。  今までのような、借金がどんどんたまって明らかになるような状態でさえも今日のような状態を生んでしまった。これをさらに、一たんここで清算をせずに引き継いで、さらにそこでも清算できずに、帳じりが赤字になったらそこでうやむやにしよう。大臣、なぜこういうスキームをお考えになるんですか。
  149. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどから繰り返しお話を申し上げておるわけでございますけれども、これはあくまでも資金運用事業を承継したものでありまして、一般財源で補てんするというような性格のものではない、こういうことで、保険料財源で賄うことがその制度の趣旨に合う、こういうことでございます。
  150. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 年福事業団が失敗すれば、今のスキームでは、借金としてたまるだけ。なぜそうしないんですか。今度は総合勘定に入れてしまうわけでしょう。総合勘定の中では分離経理されるわけじゃないわけでしょう。一緒くたにされてしまう。そういうスキームはとるべきではないということを言っているんです。大臣、どうなんですか。
  151. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどから何度も繰り返し申し上げておるわけでございますけれども、これはあくまでも年福事業団から承継した資金の運用事業、これに派生して起きている問題でございますので、その中で処理するのが適当と考えています。
  152. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 大臣、おわかりになっておらない。  今の年福事業団のスキームでは、資金運用部から借りてくるんですね。年福事業団が赤字になろうがなるまいが資金運用部と年福事業団の関係で処理される。そして、年金積立金は目減りしないわけですよ。資金運用部に年金積立金を預け入れた分は全部利子がついて戻ってくるんです、現在のスキームでは。年福事業団の赤字分を年金積立金はかぶることはないんですよ。わかりますか。  それが今度は、新たな基金では資金運用部というのを仲介しなくなりますから、直接積立金が目減りする、被保険者が損失をこうむるというのは、新たなスキームになって初めて起こるんですよ。そういうスキームをなぜつくろうとするんですか。
  153. 矢野朝水

    矢野政府参考人 まず、先ほどの御質問の中で、こういった累積債務をうやむやのままにするんじゃないか、責任問題がどこかに飛んでしまうんじゃないか、こういう御趣旨の御質問がございましたけれども、これは、それぞれ区分経理をするわけでございまして、承継した事業が最終的にどうなるかというのは数字としてしっかり出るわけでございます。  それからまた、必ず最終的に赤字になるんじゃないかということにつきましては、先ほど来申し上げているように、これは現時点では何とも言えませんけれども、私どもとしては最終的には赤字が解消できるような見通しもあるわけでございまして、現時点で、必ず赤字になり年金受給者に赤字が全部覆いかぶさってくる、こういうことではないと思います。  それからもう一つ、ぜひ御理解いただきたいのは、現在の年福事業団の資金運用事業というのは、これはあくまで年金加入者や受給者のためにこういった事業をやっておるわけでございますので、最終的にはやはり年金財政に、プラスであろうともマイナスであろうとも帰属させるのが適切ではないか、こう考えたわけでございます。
  154. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 今の年福事業団法では、赤字なんか帰属させることになっていませんよ。プラスになった分だけ帰属させるんですよ。そこを確認してください。今の年福事業団法では損失は帰属させるなんということにはなっていませんと。
  155. 矢野朝水

    矢野政府参考人 最終的に年金財政で見るのか一般会計で見るのか、赤字が出た場合にも、最終処理は、今のスキームでは、今の年福の資金運用事業ではそこのところははっきりしておりません。
  156. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そういうスキームになっているものですから、年福事業団が何ぼ赤字を出しても被保険者には迷惑かけません、積立金には何も迷惑かけません、それは資金運用部に預け入れて利子がついて戻ってくるんです、これはこっちの別なスキームです、あなた方、今までずっとそういう答弁してきたでしょう。したがって、責任ありませんと。そういう答弁を今回の基金法は根底から覆すことになるんですよ。大臣、わかっているんですか、それが。
  157. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどからちょっと行き違いがあるのは、金田委員、こういうことじゃないんでしょうか。  要するに、現在の仕組みは、御案内のように、年福事業団が継続するという前提のもとに収益というものを特会に入れる、こういう仕組みになっていますね。よろしいですね。これが今度は解散する。解散するから、欠損が生じる場合どうするか、こういう問題でありまして、先ほどから私が申し上げておりますことは、今回の改正というものは、年金運用を自主運用して収益も損失も年金財政で賄うということが筋である、このことが整合性がとれた考え方だ、こういうことであります。
  158. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 だから損失処理の新たなスキームをつくりましたと。だから冒頭私は、大臣にそのことを確認をしてくださいということを申し上げたわけです。そうでないとおっしゃって、実質そうやっているじゃないですか。言っていることとやっていることが違うということなんです、これは。破綻処理スキームでしょう。今まではそんなスキームはなかったんだ。被保険者積立金には迷惑をかけないスキーム、それで突っ張ってきたんだもの。大臣、そうなんですよ。  今まで何度厚生省に来てもらって、これを説明しろと。資金運用部に預託をして戻ってくるんです、積立金は減りませんと言っていたでしょう。大臣、わかっているでしょう。資金運用部から借りて運用をしているんです、したがって、年金積立金とはセパレートになっていて被保険者積立金を取り崩すなんてことはありませんというのが旧来の答弁で、それを今回何ですか、それはこっちで処理するのが当たり前という話はないでしょう。  それはそれで、もしどうしてもそうせざるを得ないんだったら、それは本当に年金保険者が責めを負うべきものなんですか。そうなんでしょうかね。あなた方が失敗したことをなぜ被保険者積立金に責めを負わせるんですか。負わしませんと今まで言ってきたわけだ。その理由を聞かせてください。大臣ですよ、大臣
  159. 矢野朝水

    矢野政府参考人 これは、私どもは、しばしば申し上げましたように、最終的に赤字が発生するということは現時点では言えないわけでございまして、これから努力をしていくわけでございますけれども、仮に最終的に累積赤字が残った場合に、年金財源じゃなくて、一般財源で見るのかということになりますと、これまたいろいろ問題があるわけでございます。  つまり、これまで借りてきているお金でございますので、何よりもこれはしっかり元利は返さなきゃいかぬという必要があるわけでございます。それから、年金福祉事業団、それを引き継ぐ年金資金運用基金というのが、そういった累積赤字を賄える独自の資産を持っているかといいますと、そういうことはないわけでございます。それから、しばしば申し上げておるように、これまで年金福祉事業団の市場運用事業というのは年金加入者、受給者のためにやってきたわけでございまして、一般の国民にその責任を負わせるということは適切じゃない。  そういうことで、今申し上げましたいろいろな理由から、仮に最終的に赤字が残った場合でも、これは年金特別会計に帰属させて年金特別会計で処理せざるを得ないと判断したわけでございます。
  160. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどから御答弁申し上げていますように、これまでの年福事業団というものが廃止されるんだ、それで新たに基金をつくるんだ、その中において、先ほどから金田委員は何か損失のことばかりを強調していらっしゃいますが、収益も損失も含めてこの新たなスキームの中で処理するんだ、こういう考え方に立つ問題です。
  161. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 時間が来ましたのでひとまず終わらせていただいて、また改めて続きをやらせていただきたいと思いますけれども、結局は、皆さん方は、大臣を含めてリスクを負えないわけですよ。リスクをとれない。リスクをとれない方が巨額な資金を運用するとこうなるということを今実態として示しているじゃないですか。それを基金ということでまたやろうとしている。とても承服できないということを申し上げて、終わります。
  162. 江口一雄

    江口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時十一分開議
  163. 江口一雄

    江口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  この際、お諮りいたします。  政府参考人として厚生省老人保健福祉局長大塚義治君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 江口一雄

    江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————
  165. 江口一雄

    江口委員長 古川元久君。
  166. 古川元久

    ○古川委員 民主党の古川元久でございます。  私の方からは、自主運用関連法案につきまして御質問をさせていただきたいと思いますが、まず最初に、この年金制度改革三法案の中の自主運用関連の二法案、これをどうして今の時点で三法案一体として処理する必要があるのか、その合理的な理由について、大臣、御説明いただけますか。
  167. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 年金福祉事業団につきましては、委員御案内のように、行財政改革の視点から行われました平成九年六月の閣議決定において、「平成十一年に行われる年金の財政再計算に合わせ、年金資金の運用の新たな在り方につき結論を得て、廃止する。」こういうふうにされておるわけでございまして、これを踏まえまして、今回の財政再計算に合わせ、年金の自主運用の仕組みを明らかにすることにしたものであります。  年金積立金運用のあり方は、当然のことながら、給付負担のあり方と並んで、少子高齢化社会を目前に控えまして、年金制度の安定化にとって重要な要素の一つであります。
  168. 古川元久

    ○古川委員 積立金については、これは実際にこの法案の中にもあるわけでありますが、施行期日は財投改革に合わせてということになっていますよね。それであれば、この積立金運用法案については、財投改革はまだ本体の法案さえも出てきていない段階ですね、それとあわせて議論していくということで、この三法案すべて一緒に引っ張らなくても、例えば運用部分だけ別にしたっていいんじゃないですか。どうしてそれがいけないんですか。大臣、答えてください。大臣ですよ、大臣、さっきの話と続きなんだから。
  169. 矢野朝水

    矢野政府参考人 運用の問題というのは年金運営と密接不可分でございます。つまり、年金というのは、保険料を集め給付を支払う、それだけにとどまるものではございませんで、積立金をどう運用するか、これが年金運営一つの大きな要素でございます。  そして、これまでは積立金運用利回りというのは、予定利率として五・五を予定しておったわけですけれども、今回は四%ということを予定しているわけです。そういった運用をするためには、やはり運用の体制、仕組みをどうするのかということを年金制度と一体的に考えていかなきゃいけないということで、先ほど大臣が答弁された、それとあわせまして、やはり年金制度の一環としてこの問題をしっかり議論して、新しい仕組みをつくっていかなきゃいけない、こういう趣旨で今回提案させていただいたわけです。
  170. 古川元久

    ○古川委員 大臣、今の局長の答弁で、年金と一体不可分だというお話がありましたけれども、年金給付とか、そういうものと一体不可分であれば、当然これは財政投融資制度全体とも一体不可分ですよ、積立金部分というのは。  財政投融資制度の中で年金積立金部分というのは、三分の一ぐらい占めているわけですよ。年金と密接不可分であれば、ここの部分は当然財政投融資と密接不可分なわけであって、その財政投融資制度全体についてどういう方向性に行くのか、その点について具体的にこの国会の中に提案もされていないのに、どうしてこの年金積立金部分だけ先に進めて、しかも実際のスタートは財投改革と合わせるというふうに施行期日はなっているわけですね、だったら、そのときまで十分時間をかけて審議したらいいじゃないですか。どうしてこれも一緒にする必要があるんですか。大臣、答えてください。
  171. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどもお答えを申し上げましたけれども、要するに行財政改革の観点から新たな自主運用ということが決まった。こういう中におきまして、当然のことながら、自主運用のあり方というのは給付負担のあり方と不可分である、こういう観点でありますし、また、将来の年金像につきまして国民の皆様方にお示しする責務が我々にはある、こういうような観点から、年金本体法とあわせて自主運用法案を提出することになった、こういうことでございます。
  172. 古川元久

    ○古川委員 年金とは、そこはいいんですよ。年金との関係はわかりました。  では、財政投融資制度全体との関係はどうなんですか。私が聞いているのは、財政投融資制度全体との関係。当然年金のことも考えなきゃいけないですけれども、年金積立金というのは財政投融資の大きな原資になっているわけですから、これがどういうふうに変わるかということは財政投融資制度全体とも当然絡んでくる話ですから、そこの全体像がわからなくて年金のところだけ庭先で見ているというのは、それはまさに厚生省だけの議論で、国全体として考えたら、財政投融資がどうなるのか、そこの議論とかみ合ってこなきゃ、ここだけスタートすることはおかしいですよ。局長に聞いているんじゃないですからね。  どうですか、大臣大臣、これは政治家として、厚生大臣という立場だけじゃなくて、閣僚の一人、内閣の一員として、財政投融資全体の中での年金積立金運用の問題として考えなきゃいけない話ですよ。だからこそ施行期日は財投改革と合わせるということになっているわけじゃないですか。であれば、本体が出てきて、それと一緒に審議をする、そういう流れをつくる、そういう手続で審議していくのが極めて自然な姿だと思いますけれども、どうですか。それが自然じゃないですか。
  173. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 財政投融資につきましても、その方向性が示されていることは古川委員御承知のとおりだと思います。その中で、私どもは、年金の自主運用部分について、このような閣議決定に基づいて行っているものであります。
  174. 古川元久

    ○古川委員 全然質問に答えていただいていないと思うんですけれども、そもそも、年金積立金というのは百四十兆円余りあるわけですよ、この運用がどうあるべきか。  これは、先ほどから局長なんかも大臣も、年金給付との関係で密接不可分だという話がありましたけれども、この運用のあり方次第によっては、被保険者たる国民が、自分たちが支払った保険料が自主運用によってリスクにさらされて、そして運用が失敗した場合のツケはすべて被保険者、私たち国民に回ってくる、そういう可能性があるわけですね。  ですから、そういった意味からすれば、この自主運用の問題というのは、責任体制とかリスク管理とか、そうしたものをしっかりとこの国会の場で確認しておかないと。幾ら一生懸命年金制度本体の方で給付水準とか保険料水準の議論をしても、例えば、今までやってきた年金福祉事業団じゃないですけれども、わずか十数年で二兆円も穴があきました、二十六兆そこそこ運用していて二兆円の穴をあける。では、これが百四十兆になって穴があいたときにはどうするのか。給付水準とか保険料水準、細かい計算を厚生省もしておられますけれども、そうしたことをやっていたって、この自主運用部分で穴をあけちゃいましたと言ったら、全くその努力が水泡に帰してしまうじゃないですか。  ですから、そういった意味では、これはもっと財投全体の中で、逆に言えば財投本体が出てくるまでにまだ時間があるわけですから、これは切り離して、この法案についてはもっとじっくり審議すべきだと思いますけれども、いかがですか。これをどうしても一緒に持っていかなければいけない合理的理由はありますか。
  175. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、財投のあり方の問題につきましては一定の方向性が出されておるわけであります。そして、給付負担の水準というものがこの自主運用に絡んでくることは言うまでもないわけであります。そういう中で、私どもは国民の前に新しい姿というものを、あるいは年金像というものを示す役割を持っておる、このように考えているような次第でございます。
  176. 古川元久

    ○古川委員 全然答えていないのですよ。なぜこの三法案を一体として今の時点で一気にやらなければいけないのか、その合理的理由を答えてくださいと言っているのです。
  177. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 これは先ほどからの話の繰り返しになって恐縮でございますが、要するに、まず閣議決定においてこういうことが決まった、決まった以上は新しい基金のもとで自主運用をしなければならない、自主運用というのは国民の皆さん方から集めている保険料運用そのものであり、給付負担の水準に絡んでくるということでございますので、当然一体化するのがごく自然の姿だ、こういうふうに考えています。
  178. 古川元久

    ○古川委員 私はここに出てきたこと自体がだめだと言っているのではないのですよ。これを議論しても、先ほどの同僚の金田委員からの質問の中でも相当年福事業団の清算に関しての問題点とかあるわけです、そういったものをしっかりと審議した上で、まだ時間が施行期日からしてもあるわけですから——切り離してはだめなんですか、絶対に切り離してはできないんですか。  今の大臣のお話、提示して国会で議論すること、我々はそれを否定するわけではないです。早くほかの財投本体も出てくればいいと思いますけれども。この年金積立金の自主運用部分について、早い形でこうした自主運用のあり方というものが出てきたことは私は評価します。ただ、その部分について、財投改革とか本体が出てくるまで議論を続けていって一緒に通したっていい話だと思うのですよ、どう考えても。  なぜ、この三法案を一体として例えば採決するとか処理をする必要があるのか。分離することは可能だと思うのですけれども、それが可能でないとおっしゃるのだったら、どうして可能でないのか、その理由を御説明いただきたいというふうにお願いしているのです。
  179. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 可能であるとか可能でないとか、そういう次元の話ではなくて、要するに、将来の年金像のあり方と密接にこの自主運用の問題も絡んでくる。ですから、そういう観点から、今回の年金法改正法案で議論するということが国民の皆さん方に対する私どもの責務だ、このように考えているような次第であります。
  180. 古川元久

    ○古川委員 水かけ論になりますけれども、私は、議論すること自体を否定しているわけじゃないのです。議論することは大いに結構。これは年金給付と絡んでくることですから、議論はしていかなきゃいけない。  しかし同時に、私が最初から申し上げておりますように、これは財政投融資全体の問題とも密接不可分に絡んでくる話です。ですから、施行期日は、もし今法案が通っても実際にスタートするのは財投改革と合わせてスタートするわけでありますから、その合わせるときまで議論を続けるということはいけないのですか。いいはずでしょう。いけない理由というのは、私はどう考えても見当たらないわけです。  先ほどの金田議員のいろいろなお話の中でも大いに議論しなければいけない問題はたくさんあるわけです。まさに将来の年金給付水準はこの自主運用のあり方がどうなるかによって大きく絡んでくる話ですから。運用の中身についてもこの委員会でどれくらい審議されましたか。まだほとんど議論していないわけですよ。やはりそういったものをやっていく。かつ、議論するだけの時間が、今財政投融資改革の全体の枠組み自体はまだ法案が出てきていない段階ですから、それも待ちながら議論を続けていくということは、これはできるんじゃないかと思うのです。  ですから、そこの部分ができるのかできないのかということをお伺いしているのです。どうですか。
  181. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 財政投融資改革の中で、年金部分に関しましては、年福事業団を廃止して新たに基金をつくるということがもう既に決定しておるわけでございますので、この新しい姿というものを一日も早く示して、今後の年金像のあり方について国民の前にお示しすることが我々の当然の責務だ、このように考えているような次第であります。
  182. 古川元久

    ○古川委員 全然答弁になっていないと思うのです。  示すことはいいのです。示すことはいいのですけれども、今ここで慌ててこの三法案を一体として処理する合理的な理由というのは、私は今の話を聞いていてもどうしても見出せないと思うのですね。  私もかつて役所にいましたからわかるのですけれども、よくこういうときに、実は大きなものに見えないようにして大きな問題のあるものをこそこそと隠して運んじゃう。しかも、本来であればこの自主運用の話は厚生委員会だけでやるのがいいのかどうか、そういった問題も議論しなきゃいけない。それを、三つ束ねることによって一緒くたに送り込んでしまう、そういう腹がないにしても、そういうことを疑われるやり方をしているわけですよ。  ですから、もしそういうことがないんだ、堂々と議論してもらって、そして国会で審議してもらっていいという法案であれば、これなどは、本当はむしろ財投改革も含めて大蔵委員会なんかとの合同審査もやるべき法案じゃないか。そう思いませんか、大臣
  183. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 古川委員は大蔵省OBでいらっしゃいますか。大蔵省でそういうことがあるのかないのか、私はよくわかりませんけれども、私どもは、大きいものだとか小さいものだとか、隠そうとか、そんなことは全くありませんし、この厚生委員会で堂々と議論していただいて、要は、国民の皆様方の前に、年金制度というものはどうあるべきか、そして、もうこういうことで決定しておるわけでございますので、三位一体とは申しませんけれども、そういう中で将来の姿というものを示すことが我々の責務ではないか、このように考えております。
  184. 古川元久

    ○古川委員 これは水かけ論になりますから、最後に私から申し上げておきますけれども、これは三位一体なんという話じゃないですよ。全然別のものですよ。しかも、この自主運用部分については、年金と絡むよりも、むしろ財政投融資制度全体と絡む方が議論としてはもっと大きな問題として考えていかなきゃいけない話ですよ。  それを、そういう方とのリンクを一切断ち切った中でここの委員会だけで審議して、しかも十分な審議もしないで採決するというようなことだけは、これは私たちは決して認められるものではないというふうに考えていることを申し上げておきたいと思います。  次の問題に行きたいと思います。  先ほどの金田委員質問につながるかと思うのですが、これまでの年金福祉事業団での運用のあり方について、これは事実上、自主運用部分を先取りして今まで年金福祉事業団がやってきたというふうに考えてもいいと思うのですけれども、大臣は、これまで年金福祉事業団が昭和六十一年から十三年間行ってきた資金運用についてどのように総括されておられますか。これは成功だったと思いますか、あるいは失敗だったと思いますか。
  185. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 これは先生よく御存じだと思いますが、短期的に見て成功だとか失敗だとか、そういうことではありませんし、当然のことながら、累積赤字もことしの三月の時点から比べまして、株も上がっておりますので、その分だけ減っているのです。要するに、そのときそのときに応じて、場合によっては、それは評価でございますので、ある意味においては損失もあるかもしれない。しかし、その後回復すればそれが十分に賄えるかもしれない。そういうようなたぐいのものだ、このように考えています。
  186. 古川元久

    ○古川委員 そうすると、大臣考える長期というのは何年のことを言うのですか。十三年というと短期なんですか。何をもって長期と言うのですか。
  187. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 それは当然のことながら、どういうような構成でこの年金の資金を運用するか、こういう観点に立って考えるべきだ、こう考えています。
  188. 古川元久

    ○古川委員 普通の人は、やはり十年とかすれば長期と考えるのが普通じゃないかと思うのです。年金だって、積立金というのは、必要なときにはそれを崩して給付に充てなければいけないわけですよね。では、もし今この時点で積立金を崩して給付しなければいけないというときに、いや、今は穴があいていますけれども、あと二十年か三十年待ってもらえればお金が入って穴は埋められると思いますから、それまで待っていてくださいと言えますか。そんなことは言えないでしょう。だから、長期に考えればというような発想で言っていたら、とてもじゃないですけれども、そんなものは全く無責任としかならないと思うのですよ。  今までの年金福祉事業団運用の仕方を見ていれば、これは事実上債務超過に陥っていると言っても間違いないと思うのです。その原因について、ここの委員会のいろいろな答弁でも、年金局長あたりからは、要は、資金運用部から借りてきた、だからこうして赤字になったんだ、累積赤字が積み重なったんだというような御答弁がありましたけれども、そもそも、昭和六十二年の国会で、当時の年金局長が、「預託金利を下回るような、いわゆる利差が生じない、あるいは預託金利よりも割り込むような事態になるということはまずないものと考えております」というふうにはっきり国会で言っているのですね。それでこの結果ですよ。  さっき年金局長は、いや、今は赤が出ていますけれども、これから市況も回復すれば、そのうちには黒になると思います。年金局長、今あなたがそうやって答弁したら、では、六十二年のときの年金局長のこの責任は今どうなるのですか。あなたのさっきの金田委員に対する答弁の中でも、そうなると思う、将来は黒字になるだろう。そんないいかげんなことを言って、あなた、ちゃんと責任を持てるのですか。
  189. 矢野朝水

    矢野政府参考人 確かに、この事業が始まる昭和六十年当時、国会で当時の年金局長が、運用で穴があくことはない、こういった趣旨の答弁をいたしております。これは、この制度をつくるときにいろいろ議論があったわけですけれども、当時の金融事情というのは古川議員御承知のとおりだと思います。当時はずっと公的金利が非常に低かった、民間の金利の方が高かった。こういう中で借りてきて運用しても、必ずプラスになるだろう、もうかるだろう、こういう当時の一般的な常識といいますか、そういうものがあったと思います。  ところが、御案内のとおり、その後バブルの崩壊を経て、むしろ公的金利よりも民間の長期プライムレートの方が低い、こういう逆転現象が起きるとか、あるいは株価がとめどもなく下がる、こういう、それまでの金融の常識を覆すような実態がバブル崩壊後に出てきたわけです。  私どもは、先ほど来申し上げておりますように、この累積欠損を解消する、これは絶対不可能ではないということで引き続き努力いたしますけれども、やはり一番根っこを考えますと、今のように、年金積立金、一度預けたものをまた借りてきて利子を払いながら運用する、これではなかなか本来の年金積立金にふさわしい運用ができない、無理があるということで、やはり預託をやめて、年金みずからが、保険料拠出者の参加も得て、長期的観点から安全、確実、有利な運用をする、こういう仕組みにしなければいけないということで、今回財投改革の一環としてこういう新しいスキームを提案しておるわけでございます。
  190. 古川元久

    ○古川委員 予期しない市場環境だったというふうに言われるのであれば、では、こういう質問の仕方をさせていただきます。  今度設立予定の年金資金運用基金では、役職員に対して、年金資金の管理運用に当たっての注意義務及び忠実義務が課せられることになっていますよね。今の議論からすれば、では、今度新しく課せられる注意義務の観点からすれば、今まで年金福祉事業団がやってきたそれは注意義務には反していない、これは、市場がこんな状況だったからやむを得なかったのだ、だから運用した人には全く責任がない、そういうふうにお答えになるのですか。
  191. 矢野朝水

    矢野政府参考人 今回の自主運用のスキームでは、欧米でプルーデントマン・ルールと言われておりますけれども、忠実義務、注意義務を新しくできます年金資金運用基金の役職員に課すということにいたしております。ただ、これは、プルーデントマン・ルールの解釈について欧米で言われているように結果責任を問うものではないのですね。(古川委員「違う。私が聞いているのは、今までの運用がそれに合っているかどうかと聞いているのです」と呼ぶ)つまり、運用の過程できちんとした注意義務、忠実義務を果たしておったかということが問題になるわけで……(古川委員「だから、今までのは果たしていたかどうかを聞いているのですよ」と呼ぶ)  そこで、今の年金福祉事業団ですけれども、そういった面では私は、十分な忠実義務、注意義務をちゃんと果たしておりまして、注意義務違反ということにはならないと思います。
  192. 古川元久

    ○古川委員 大臣、今の局長の答弁を聞かれましたか。要は、今までの運用は、今度の新しい法案で課されている注意義務違反じゃないということなんですよ。  ということは、市場が状況によって変動すれば、それはまじめに一生懸命注意していました、それで、ある意味で結果責任は全く問われないということになるわけですよ。市場変動の結果であればこれはだれの責任でもないというのだったら、そんなことで民間企業は普通やれますか。民間だったらやれませんよ。民間だったらそれは結果責任で首ですよ。  それを、いや、これだったら損をしても仕方がない。では、これから運用する人が、いや、まじめにはやっていました、でも市場がこんな状況だったからこんなふうに穴があいてしまったのです、ごめんなさい、それで済まされて、後のツケは全部、年金給付を受ける人あるいは納税者、国民に回す、それで運用担当者は責任を逃れる、そういう仕組みになってしまうと思いますけれども、それでいいと思いますか、大臣
  193. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 ちょっと、もう一回言ってください。通告がなかったものですから。
  194. 古川元久

    ○古川委員 通告にあるとかないの問題じゃないのですよ。  今の問題の中で、これまでの年金福祉事業団運用の仕方が別に今度新しく入ってくるその注意義務には違反していないということであれば、要は、今度の新しい基金においても、幾ら穴が出てもその運用責任は、まじめに運用努力はしていました、それさえ得ればすべて免れると。  かつ、先ほどの大臣のお話で、いや、長期的に問題を考えればというお話がありましたけれども、五年でどうだと言われたら、いや、これはまだ短いですから、十年でどうだと、いや、十年でもまだ先がわかりませんと言ったら、そのときの担当者の責任なんというのは、まじめに見てましたというだけで全く問われないことになってしまうのではないのですか。そんなことで国民のこの大事な年金積立金が浪費をされる、あるいは大穴があく、そういう危険というのは物すごく高いのではないですか。  普通に考えたらこれはリスクが物すごく高過ぎて、私がもし自分が選択できるのであれば、そんな恐ろしいところには自分お金は預けたいと思いません。年金積立金の場合には、強制的に国民から徴収するのですよ。国民から強制的に徴収しておいて、それで、穴をあけました、でも穴の責任は一切運用者は問われません。それは五年や十年でも判断できるものではないです。  では、一体何年で、だれが責任をとるのですか。責任はすべて国民ということであれば、自主運用する運用者の責任というのは全く問われないに等しいと思いますけれども、そう思いませんか、大臣
  195. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 非常に難しい御質問なものですからちょっと今首をかしげていたところでありまして、あなたがおっしゃりたいのは、要するに結果責任をとれ、こういうことですか。
  196. 古川元久

    ○古川委員 一定の範囲では結果責任を問わなければだめでしょう。結果責任を問えないのだったら、やるべきではないでしょう。
  197. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 そういうことですね。  この問題について、そのときの社会経済情勢であるとかそういうものに予期せざることがあって、要するに個人的な責めなり結果責任としてそれを認めるべきだ、こうおっしゃるのがあなたの考え方ですね。ちょっとそれについて教えてください。
  198. 古川元久

    ○古川委員 これは強制的に徴収している保険料でありますから、その運用について穴をあけたら、何らかの一定の基準の中で結果についても責任をとるのが当たり前だと思うのですね。責任をとれないのだったら、逆に、リスクのある運用はすべきでないと思うのです。  今までは、リスクは資金運用部がとっていたということになっていますけれども、少なくとも年金について言えばリスクはとらない、すべて財投に拠出して、そこで確実に金利はもらうということで、リスクはとっていなかったわけです。これからリスクをみずからとるのであれば、当然そのリスクをとる人が責任もとってくれなければ、リスクはとりますけれども責任はとらないというのでは、これはおかしいと思います。  それであれば運用のあり方として……(発言する者あり)だから私が言いたいのは、年金局長にさっきから言っていますけれども、これまでの運用のあり方、大体今回の年福の資産構成を見てみるとどうなっているのか。債券が五三%、転換社債とか国内株式、外国株式、要は株式類似のものが四五%ぐらいあるのですね。こんなに市場リスクのあるものをこうした形で年金積立金運用に回している。  そもそも、これは年福の運用のあり方、やはりそこに問題があったからこんな赤が出たのじゃないですか。そこのところを、あなた、認めないとだめですよ。借りていたお金金利がかかったからというのではなくて、そもそも、ここの運用のあり方、こんなにリスクの高い割合での資産運用をしている、そこ自体に間違いがあったのではないですか。
  199. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 あなたも役人の経験があったと思うのですが、要するに行政責任のあり方、こういうものについてどう考えるかという問題に最後は帰するのではないかな。そこで、さっきから私は非常に自問自答していたということです。  例えば、今ようやく景気が上がってきました、しかし、橋本内閣当時いろいろな議論がありましたけれども、要するにアクセルを踏むときにブレーキを踏んでしまった、これで大変景気が悪くなってきた、あのときの判断が間違っていた、この責任はだれがとるのか、こういうような話にも帰する問題ではないか。  当然、私どもは、年金の自主運用については最善の注意をしてそのようなことが起きないように努力しなければならない、これは言うまでもないのですが、そのときに、結果的な社会環境であるとか経済環境であるとかというものに対する行政責任の問題について、あなたは高次元からおっしゃっているから、非常に難しい問題だな、こういうことであります。
  200. 古川元久

    ○古川委員 私が言っているのは、橋本内閣の云々と比べるとちょっと話が違うと思うのですけれども。  自主運用をやるのであれば、今回これまでの年金福祉事業団のやり方をそのまま引き継ぐわけでしょう、今までの運用のあり方、この資産構成が本当によかったのかどうか。それは同時に財投全体とも絡んでくるわけですけれども、ではといってすべてを国債や財投債で運用するということになれば、ほとんど財投改革の意味がなくなってくる。そうであれば、そもそも、こうした年金積立金、このような形で民間から資金を吸い上げる、それで国が運用する、こんなに巨額に運用する必要があるのかどうか、これはそこまで踏み込んで考えていかなければいけない話だと思うのですね。  ですから、私は順番に聞いていきたいと思うのです。  まず、今までの年金福祉事業団運用のあり方。これはやはり運用のあり方に問題があったのではないかと思う。例えば他の国で積立金があるところだって、リスク資産に半分近く投資をしているようなところはありませんよ。今度の基金をやるときにはどうするのですか。こんなにリスク資金を使うのですか。
  201. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほどから委員が御指摘している問題というのは大変難しい問題でありまして、例えば、年金福祉事業団がほかの基金や金融機関と比べて著しい失敗をしているかというと、そうではないのです。  この資料によりますと、直近五年間の平均は、年金福祉事業団が五・二%、例えば信託銀行であるとか年金信託は五・一%、それから直近十年間の平均というのは四・四%、信託の方は三・八%。むしろ信託銀行より上回っているのです。でも、御案内のように、問題は、財投という高い金利を借りてきた中でこういうものが起きるわけです。そこをどういうふうに考えるか、こういうことではないかと思います。
  202. 古川元久

    ○古川委員 民間とお比べになられましたけれども、民間の場合は、例えば今銀行あたりは、今まで業況が悪かった、それがためにボーナスがなくなったりしているのですが、年金福祉事業団はボーナスを下げたり職員の給与を下げたり、そういうことをやっているのですか。やっていないでしょう。しかも、最終的には、民間の企業の場合には、うまくいかなければそこは破綻する、そういう形で責任をとらされるわけですよ。  今回の年金福祉事業団はどうですか。実際、だれも責任を問われない。そして、あけた穴、十三年が長いか短いかというのはあると思いましたけれども、これは先に延ばしてという。本来であれば、ここで清算するということであれば、清算する段階でその責任だとかそういったものをやはり確認して、その上で引き継ぐべきではないですか。確認もしないでそのまま引き継ぐ。では、結局どこで、最終的にもし穴があいた場合の責任をだれがとるのか、それは保険料を払っている人たちではないですか。国民が払わなければいけないわけではないですか。もしこれを税金で賄うとすれば、これは納税者ではないですか。  いずれにしても、納税者や保険料を払っている人たちは、この運用のあり方に今まで何も口を出せなかったわけですよ。それについて全くここで総括もなくて、反省もなくて、責任も明確にしないで、あいまいな形で引き継いでいく、それはどう考えたっておかしいと思いませんか、大臣。おかしいでしょう、素直に考えたら。
  203. 矢野朝水

    矢野政府参考人 幾つかの実務的な御質問がございましたので、それについてお答え申し上げたいと思います。  まず、リスクをとり過ぎたのではないかという問題、それから年金運用について、そんなに積立金は要らないではないか、リスクはとるべきではない、こういう御指摘がございました。  まず、今の年金福祉事業団運用でございますけれども、今お金を借りてきておりますので、借り入れコストプラス手数料を一%くらい上回るような、そういうポートフォリオ、これは基本ポートフォリオと称しておりますけれども、そういう資産構成で運用いたしております。それが今御指摘のあったようにリスク性資産が四割を超えるのではないか、こういうことでございますけれども、私どもは、今の資金性格からして、これは適切なものだと考えております。  それから、今回新たな運用スキームをつくります。年金積立金年金みずからが運用する、こういうことでございます。一番大事なのは、どういう方針で運用するのか、特に資産構成割合をどうするのか、このあたりが一番重要でございます。  したがいまして、この問題につきましては、保険料拠出者の代表ですとか金融、経済の専門家、こういった利害関係者も一緒に入っていただいて、そこで議論していただく。それに基づいて、公的年金の基本ポートフォリオ、資産構成をどうするのかというのを議論していただいて、それに基づいて運用するということでございまして、これは決してリスクを追い求めているわけじゃございませんで、保険料拠出者の意向、参加を踏まえて、適切なリスクは当然必要でございますけれども、リスクを大幅にとるということは考えておりません。これは安全確実が基本でございますので、そういう新しい資産構成をこれから定めていくということでございます。
  204. 古川元久

    ○古川委員 今度の新しい基金の運用のあり方の中で、そうした基本方針を、各種のそういう利益団体といいますか利害関係者を集めてやるという話をされますけれども、委員会方式みたいな形で、では、みんなで決めましたから、これはみんないいですねということは、これはまさに無責任体制になるんですよ。  前、佐々波委員会のときにどうなったか。破綻している銀行に公的資金を入れるということを決めて、一体だれが責任をとったのか。いや、委員会みんなで決めました、そういうことであれば、これは全くだれも実は責任をとらない。参加している人たちは、自分が決めたわけじゃない、それでみんなが無責任になっちゃう。だから、この委員会みたいな形のような運営のあり方自体も問い直していかなきゃいけない問題だと私は思うのですね。  今局長の言われたことは、事実上、みんなの責任を問われないような仕組みをつくって、結局穴があいたときには年金受給者に全部ツケを回そう、あるいは納税者にツケを回そう、そういうことになっちゃうんじゃないですか。
  205. 矢野朝水

    矢野政府参考人 私どもは、今回のスキームをつくるについては、諸外国の例なんかも随分調べました。それで、自主運用をやっているのはアメリカの州の年金が多いわけですけれども、いずれも、そういう利害関係者といいますか保険料拠出者の代表、こういった方々に入っていただいて、そこで十分議論をする。それに基づいて運用をどうするかを決める。それから、情報開示を徹底してやる、そういう中でプルーデントマン・ルールもきちんと位置づけまして責任体制をしっかりしていく。こういうことでやっているわけでございまして、今回私どもがとろうとしているスキームは、決して責任をあいまいにするということではなくて、逆に責任体制を明確化するためにやはりこういう仕組みが必要だ、こう考えたわけでございます。
  206. 古川元久

    ○古川委員 では、そこの責任が明確というのはどういうことで判断されるんですか。結局、幾ら運用に穴があいても、どういう形で責任をとっているのか。いや、議論をしました、話をしました、それですべて責任を逃れられることになっちゃうんですか。この積立金運用というのはそういうことでいいんですか。  積立金運用というのは、将来これはまさに確実に給付しなければいけないものでしょう。だから我々は保険料を払っているわけじゃないですか。保険料として強制的に取られて払っているその積立金運用について穴があいても、そこについての責任というのはどういうことか。最終的な責任というのは、結局ツケをどうするかという話でしょう。そのツケはここに関係する人はだれもとらないという話になっちゃいませんか、今の話だったら。
  207. 矢野朝水

    矢野政府参考人 これは、責任体制を明確にする。それで、欧米で一般化されていますプルーデントマン・ルールを今回法律の中に盛り込んでおります。こういう責任体制の明確化の裏にあるのが情報公開、情報開示だと思います。それから、説明責任を果たしていくということです。  それで、この情報公開、情報開示につきましては、今でも私どもは随分詳しい資料を出しておりますけれども、新しい体制になりますと、さらに、その運用の中身をできるだけ詳しく公開していく、そういうのを見ればどういう間違いがあったのかということもチェックできる、そういう仕組み、体制を今回考えておるわけでございまして、この責任体制の明確化と情報公開、説明責任、これを一体として進めていきたいと思っているわけでございます。
  208. 古川元久

    ○古川委員 これは大臣に聞きますから、ちょっと大臣に聞いていていただきたいんですが、今のようなお話をされるのであれば、そもそも年金福祉事業団を整理するに当たって、新しい今度の制度でやるのと同じように、どうしてこうなったのか、その原因究明と責任はどういう形でとるのか、やはりそこのところをはっきりさせておくべきだと思いませんか。それをあいまいのままで、このまま権利義務すべて、資産も債務も含めて基金に移す。それでは国民が信用しませんよ。  基金の中でやるのと同じように、こういう形でやります、穴があけばこういうことでちゃんとディスクロージャーをして、何でこういうことが起こったのか、そういったこともちゃんと検証していきます、そういったものが——これはある意味で今までテストケースで自主運用をやってきたようなものですから、そこの部分についての検証もしないで、それで先に進んでいって、この基金の百四十兆もの積立金運用する、そうしたことに対して、運用責任について本当に国民が信用できる、信頼できると思いますか。やはりこれはまず事業団についてしっかりとした総括をすべきじゃないですか。
  209. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 年福事業団のあり方についていろいろ議論をして、そういう反省の上に立って今度は自主運用を中心とする基金をつくる、さらにいわゆるグリーンピアのような大規模な保養基地を撤退するであるとか、それから、これまで議論になっておりましたいわゆる住宅ローンであるとか教育ローンについては抜本的によく議論をした上で見直していこうじゃないか、こういうような反省を踏まえて新しい体制をつくっている、こういうことでございます。
  210. 古川元久

    ○古川委員 今反省を踏まえてという言われ方をしましたけれども、今までは、資金運用部から借りていたがために、その返済の金利と実際の運用益との関係の中で、実際にこれはどれぐらいの運用実績があったのか、そういう判断ができていったわけです。メルクマールがあったわけです、ちゃんと基準がありましたから。  ところが、これからは、最初から、根っこから無利子の資金を百四十兆ぼんと使えることになる、それで運用していく。では、何らかメルクマールがなかったら、運用が一体うまくいっているのかうまくいっていないのかわからなくなると思います。むしろ、今まで以上に運用のあり方がうまくいっているのかどうかが非常にわからなくなる。そういった意味ではリスクは高くなっちゃうんじゃないですか。そこのところは、そうした明確な今までの財投金利なら財投金利に見合うような何らかちゃんとした基準は設定するんですか。
  211. 矢野朝水

    矢野政府参考人 これはまさしく技術的な問題ですので、私からお答え申し上げます。  今回の財政再計算に当たりましては、予定利率、つまり積立金運用利回りの将来予測を四%と置いております。それから、賃金上昇率を二・五%、物価上昇率を一・五%、こういう基礎率を用いまして将来の保険料を計算しているわけです。したがいまして、こういった四%というものがこれからの自主運用一つの目標といいますか、そういったことが言えるかと思います。  ただ、公的年金の場合は、賃金スライドとか物価スライドをやっておりますので、予定利率が四%を達成できなければ年金財政がおかしくなるということではございません。物価が落ちついておれば、運用利回りが四%を達成できなくても、収支見通しは基本的には関係ないわけでございますので、そういう実質的な運用利回りと賃金と物価上昇、これの相対的な関係が維持できれば年金財政に影響ございません。そういったことがこれからの運用一つの目標になろうかと思います。
  212. 古川元久

    ○古川委員 今局長がおっしゃられましたけれども、今回自主運用するのは、資金運用部に預託するよりも自主運用した方が利回りよくやれると思っていらっしゃるからやるわけでしょう。しかも、これは厚生省が出している話ですけれども、現在の厚生年金の積み立て不足、計算すれば九百兆を超えるような数値というのがありますよ。  そういった意味では、物価とかそういうものが落ちつけば運用利回りは予定利率四%より低くていいです、そんなものじゃないはずですよ。むしろ、今度の改正をする最大の目的一つは、将来の保険料をどうやってできるだけ抑制していくか、そういうことも考えているわけでしょう。であれば、一%でも二%でも高い利回りで回していけるようでなければ、別に回していかなくてもいいです、今そんな悠長なことを言っていられるような年金財政の状況にあるのですか。
  213. 矢野朝水

    矢野政府参考人 これは御案内のとおり、リスクとリターンは相反する関係にございます。リスクをとればとるほどリターンは高くなりますけれども、リスクは高まるわけでございまして、ここは非常に悩ましいところです。しかし、公的年金は安全確実というのが一番の基本でございますから、安全確実をベースにして、そういう中でより高いリターンを目指す、こういう運用になろうかと思います  そういう点は、これから関係者で運用の基本方針をつくっていただくわけですから、そういう中でじっくり議論して基本的な方針を固めていただきたい、こう思っておるわけです。
  214. 古川元久

    ○古川委員 では、安全確実ということであれば、さっきから私が何度も指摘している、こんなに、半分近くも株に運用するということは安全確実じゃないわけでしょう。そうでしょう。だから、今度の基金でも、株式運用は相当な程度でやっていくのですか。安全確実と今のことをおっしゃるのであれば、こうした株なんかには、これは例えばスウェーデンなんかは四%とか、非常に限定しているわけでしょう。  アメリカあたりは、今株はだめで、この前も、この前といってももうかなり前になりますけれども、年金資金の積立金について株に投資したらどうかというクリントンの提案に対して、グリーンスパンFRB議長が、政府が市場に介入するのは好ましくなく、株価が下落すれば年金財政は不安定になる、株式運用を導入しても、公的、私的年金を総合した運用パフォーマンスが向上することはない、そのように議会でも証言しているという報道もありましたよ。  そういう観点からしたら、今度の基金の運用というのは、基本的にこうした株なんかにはできないんじゃないですか。
  215. 矢野朝水

    矢野政府参考人 新しい運用の体制のもとで株式投資をどう位置づけるかというのは、これはこれから議論していただくわけです。  私どもが考えておりますのは、確かに株というのはリスクが非常に高い、収益のぶれが大きいわけでございますけれども、分散投資をすることによって、株とか債券とか、そういういろいろな組み合わせをすることによって、債券だけで運用するよりもリスクをより小さくして、リターンはより高いリターンが期待できる、こういうことが一般的に世界各国で言われておるわけでございまして、株式投資を一切禁止するのは問題があるんじゃないかと思っております。  それからまた、アメリカの年金積立金運用をめぐりまして、アメリカでいろいろな議論があるところは私どもも承知しております。グリーンスパン議長が、株式投資というのは政治的圧力の可能性がある、あるいは資本の効率的配分を妨げる、こういう懸念を示されておるわけでございますけれども、市場運用自体を否定されているわけではないと承知しております。  何しろ、今回私どもが考えておりますのは、国とか年金資金運用基金が直接株に投資するわけじゃないわけです。これはあくまで民間金融機関を通じて運用するわけでして、銘柄選択とかそういった問題はすべて民間運用機関の判断でやっていただくわけですので、政治的な圧力、こういうものが波及する可能性は私はないと思っております。
  216. 古川元久

    ○古川委員 今まさに局長が御自分で言われたわけですけれども、運用を任せるのは民間のところだというわけですね。さっきからの話で、まじめにちゃんと運用していれば穴が出てもそれはいいですよということになるとすれば、その民間の任された方も、リスクマネーで、自分の余っているお金でリスクをとってやるならいいですよ。ある意味ではリスクのとれない資金でもって、かつ、でもそのリスクは全部しょってあげるからというので民間に任せて運用して、それで本当にそこの人が一生懸命になりますかね。  本当から考えたら、ファンドマネジャーだってだれだって、ある意味で、運用に失敗すれば首が飛ぶ。そういう緊張感の中で市場で毎日闘っているわけでしょう。そうしたものにこういう資金で、かつ、一生懸命やってくれれば君が損を出しても責任は問わないからというような感じでやっていたら、それこそ年金積立金が食い物にされちゃうんじゃないですか。そう思いませんか。
  217. 矢野朝水

    矢野政府参考人 民間の資産運用業界の競争の激しさ、厳しさというのは、私がとやかく言うまでもなく、もう既に御承知のことだと思います。  私どもは、そういう数多くの内外の運用機関を、定性評価、定量評価といろいろ言っておりますけれども、いろいろな観点からチェックをして選択をする。しかもその後は、定期的な報告を求め、絶えず運用機関の行動をウオッチして、三年とか五年の範囲内で、さらに続けるのか、ふやすのか、減らすのか、やめさせるのか、こういったことを絶えずフォローしていくわけでございます。  そういう中で、民間金融機関も必死でございますから、おっしゃるように安易な運用が行われる、こういう可能性は万に一つもない、私はこう確信しております。
  218. 古川元久

    ○古川委員 それを期待したいわけであります。  ただ、現実に、今現在の年福から出ている自主運用部分運用についても、やはりいろいろな疑念はあるわけですよ。例えば、年金福祉事業団やあるいはその運用アドバイス機関の年金資金運用研究センターというところに金融機関から多くの人間が出向しているという話がありますね。また、信託協会には厚生省のOBが顧問としてこの運用が始まってから天下るようになっているという話がありますね。  株式等への資金配分をどうするかということを今度基金の中で考えていくわけですけれども、そういう運用方針の決定に、こうした資金運用を受託して手数料を得る金融機関の人間が関与できるんじゃないかと思われるような、そういう不透明な関係はなくすべきだと思いますが、大臣、どう思いますか。
  219. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 御質問の御通告がございまして、調べさせていただきました。  確かに、この年福事業団に民間の金融機関から何人かの方がおいでいただいているということは紛れもない事実でございますが、このような職員につきましても守秘義務などを規定した就業規則というものを適用するとともに、運用委託先機関などの選定に際しましては厳正、明確なルールを採用するなど、民間金融機関との関係において、資金運用事業の公平性、透明性をいささかも疑われることがあってはならない、こういうことでございます。  それから厚生省におきましても、一民間企業との癒着を疑われないように、業務の内容を調査研究などに限定をいたしまして、政策決定や許認可事務などに従事させないということを行っているような次第であります。  この問題はよく議論があります。これは要するに、民間から官の方に来る、あるいは官から民に行く、こういうことでございますが、このような人材の受け入れ、民間の専門性とか機動性とか弾力的な発想、大蔵省は知りませんが、どちらかというと役所というところは閉鎖的だ、こういうところに新しい風を入れていくということは、私は、国民の皆さん方の理解が得られれば望ましいことではないかな、個人的にそう思っております。
  220. 古川元久

    ○古川委員 大臣、疑いは持たれないようにというお話がありましたけれども、疑いがもう持たれていて、いろいろ新聞にも載ったりしているわけですね。例えば年金資金の受託に関しては、興銀から人が来ているから興銀が非常に有利になっているだとか、あるいは厚生省に人が出ている一勧が決済口座を持っているとか、そういう話が新聞に書かれたりしているわけですよ。現実に疑いが持たれているんだったら、李下に冠を正さずという言葉があるじゃないですか、新しい基金ができる際にそうした関係というものははっきりと遮断する、そうしたことをすべきじゃないですか。
  221. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 これは、新しい基金ができます、そして、そこに新しい専門家に入っていただく、当然のことながらその前の職はやめていただく、当たり前のことであります。問題は、先ほどから委員も御指摘をなされているような、何か大変な欠損を出すんじゃないか、そういうことがあってはならないように努力しなくちゃならない。  しかし、現実問題として、私がこういうことを申し上げるのは適当かどうかわかりませんが、お役所の方はそういうようなことにどちらかというと疎いんじゃないかというふうに見られておるわけでございますし、民間の持っているそういうものは十分に取り入れてやっていかなければならない、こういうことでありまして、そこにいささかの疑いがあってはならないということは言うまでもありません。
  222. 古川元久

    ○古川委員 だから、私が申し上げているのは、要はそこにどうしたって利益相反みたいなことが起こり得る可能性が出てくるわけですよ。そういった意味からすると、そもそもそうした百四十兆もの巨大な積立金をそういう利益相反のようなことが起こりかねない状況を招いてまで官が運用する必要があるのかどうか。この積立金規模とかそういうものを考えていかなきゃいけないんじゃないかと思うわけですね。  実際に、この積立金は民間部門から公的部門にシフトされていくわけですから、先ほどからいろいろな、リスクをできるだけ小さくするためには分散投資するという話がありましたよね。そうであれば、年金の基金でここに全部集めてくるということは、確かにたくさん運用すれば、大きく運用すれば、それだけリターンももうかるときには大きいかもしれない。しかしリスクも大きくなるわけだから、これは国全体として見れば、官と民とでどういう形でのリスク分散をするか、そういう発想もなきゃいけないはずだと思うんです。  そういった観点からすれば、この百四十兆という積立金規模、しかも、今回の本体部分改正でもまた積立金の積立年数をふやそうとしていく、本当にそういう積立金をふやすような方向が、トータルな意味考えて、国民にとって一番ベストな選択なんですか。むしろもう少し公的部門から民間部門へシフトするような形で、大臣や局長の持っているような不安、そして我々国民が持っているような不安、そしてリスクを小さくしていく、そうしたことの方が、かつまた、今は積立金ということであれば民間は使えないわけでありますから、それがむしろ民間の経済の中で回って、それで経済成長していった方が、考えようによっては将来の年金財政にとってもプラスかもしれないわけですよ。  ですから、そういった議論が抜け落ちたままでこの積立金を今回の改正でもいたずらにふやしていこうとする、そういう形での年金改正というものは大きな疑問があると私は思いますけれども、大臣、どう思われますか。
  223. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 ちょっともう一つ私なりによく理解できないのは、要するに半分ぐらいは民間に任せろということですか。そうすると、その場合の責任はどうなるのか、その辺のところはどういうふうにお考えですか。
  224. 古川元久

    ○古川委員 だから、そこは半分かどうかはわからないですけれども、では百四十兆もの規模が必要なのかどうかということですよ。わかりますか。先ほどからの議論を聞いていると、百四十兆の規模、これの場合はリスクはすべて結局運用する人じゃないですよね。最後にリスクをとるのは、国民がリスクをとらなきゃいけないわけです。しかも、官がやるということは、当然そこには民間金融機関との利益相反みたいな問題も起こり得る。  そしてまた、市場に対して、これは世界最大の機関投資家ですよ、そんなのができて百四十兆もの金を動かしていく。今までの平成不況と言われる中で、PKOと言われるような、公的資金が入ったからといってそれで株が支えられる、あるいは、きょうは公的資金の買いが入った、それで民間の人たちまで買いが入る、まさにこういう市場をゆがめるような形というものが、今度この百四十兆もの巨大な機関投資家が生まれれば、そうした市場を乱すという可能性も極めて高いわけですよね。  そういうことからすれば、この積立金規模というものをやはり考えること、百四十兆、そしてこれをもっとふやしていく、本当にそういう方向がいいのか。それで、それだけのリスクを本当に責任を持って国がとれるのかどうか。とれないのであれば、これは素直に、ではそのリスクをどういう形でとっていくか、官と民とをあわせて、そうした大きなマクロの議論というものが必要だと思います。そうした議論をしなければ、最初の話に戻りますけれども、この法案についてここで中途半端な議論のままで通すということはすべきではない、どう運用するのか、そうしたことも含めて、私は十分時間をかけて議論をしていくべきだというふうに思いますけれども、大臣、最後に御答弁をお願いします。
  225. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今、積立金は百四十兆ありますが、これは実はピークでありまして、今後、低成長あるいは少子高齢化社会で年々減少する傾向にあるわけでございます。  いずれにいたしましても、大切なことは、情報開示をきちんと行って、国民の皆さん方に透明性を明らかにして、そして安全な、効率的な運用を行っていく、そのためにどうあるべきかということは、さらに私どもも十分に検討していきたい、このように考えております。
  226. 古川元久

    ○古川委員 これは、済みません、穴があきました、ごめんなさいでは済まない話なんですから、ぜひこの法案についてはより慎重な審議を求めることを最後にお願い申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  227. 江口一雄

  228. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  まず冒頭に、有料老人ホームに関する認識を伺いたいと思います。  有料老人ホームは倒産等の事態が絶対にあってはならず、未然に防ぐことが基本だ、このように一九九一年度版の厚生白書に載っていますけれども、厚生省はこの認識に変わりはありませんか。     〔委員長退席、安倍(晋)委員長代理着席〕
  229. 大塚義治

    ○大塚政府参考人 申すまでもございませんけれども、有料老人ホームは、高齢者の方々が長期にわたりまして居住する、お住まいをいただく施設でございますから、施設の経営、運営が継続的でかつ安定的でなければなりません。そういう性格をほかの事業よりもより強く求められるものだと思っております。  したがいまして、倒産などがございますと、入居者が退居せざるを得なくなるという事態も生ずるわけでございますから、そうした事態を極力避ける、そうした事態を未然に防ぐことが基本だ、これは御指摘のようにかつての厚生白書にそういう記述がございますし、私どもも基本的には現在もそういう認識に立っております。
  230. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ついの住みかとして全財産を投じている入居者のことを考えますと、それこそ当然のことだと思うんです。しかも、年金積立金から融資を受けているということになりますと、これはその運営には二重にも三重にも慎重性というものが求められると思います。  厚生省は、日本老人福祉財団に対して、九五年に株式等の有価証券による資産運用を中止するように指導していますけれども、なぜでしょうか。
  231. 矢野朝水

    矢野政府参考人 この財団法人の資金運用につきましては各省庁の申し合わせ事項があるわけでございますけれども、そういう中で、平成五年六月に至りまして株式運用は不適当とされたわけでございます。それ以前は必ずしも株式運用が禁止されていたわけではございません。ただ、平成五年六月のそういった申し合わせで不適当とされたために、平成七年度以降株式運用はやめるように、こういう指導を行ったわけでございます。
  232. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 なぜ株等による資産運用を中止せよという指導をしたか。これは、事業に打撃を与えることのないように、安全の確保という点でやられたと思うのですね。  ところが、九八年の秋ですけれども、年金福祉事業団から日本老人福祉財団への貸付金百三十五億円を三年の元金返済猶予という前代未聞のことが行われたわけです。二〇〇一年の秋に返済できる見通しは、一体どこにあるのでしょうか。この九月の利息返済は二億六千万ということになっておりますけれども、一体それはどうなったのか。銀行の元本二百九十億円の返済猶予は二〇〇〇年の三月が期限になっています。利息の返済分まで含めて一億二千万円も返済不能になっています。一体この見通しはどうなっていくのでしょうか。
  233. 矢野朝水

    矢野政府参考人 ただいまの御指摘にございましたように、年金福祉事業団から百三十五億円、銀行から二百九十億円、合わせて四百二十五億円の借入金があるわけでございます。これにつきましては、ただいまお話ございましたように、元本の返済猶予、それから利子につきましても滞っておる、こういう状況でございます。  これの見通しでございますけれども、なぜこういった多額の借入金を抱えるに至ったか。これは、一つ一番大きいのは京都に新しい老人ホームをつくったわけでございます。ところが、バブル崩壊によりまして新しい入居者がいらっしゃらない、現在でも入居率は三割を下回っておるわけでございます。したがって、こういった借金が返せなくなったということでございます。だから一番大事なことは、京都の施設の入居率を上げる。それで入居金が入ってまいります。そういったものでこういった借金を返していくしかないわけです。  それからまた、アメリカ進出ということでアメリカの土地を買ったり、横浜に新しいものをつくるということで、横浜に土地も買いました。こういった借金が積もり積もって、今申し上げたような銀行なり年金福祉事業団からの借入金になっているわけでございます。  したがって、現時点で必ずいつまでに返済できるという見通しは立ちませんけれども、私どもが指導しておりますのは、何しろ京都の入居率を高めることが一番でございます。そのための取り組みをしていただいております。それからもう一つは、アメリカとか横浜とかこういったところに土地を購入しているわけですけれども、これはできるだけ早く処分をする、こういうことで財団全体の財務体質を改善しよう、こういうことで今取り組んでもらっているわけでございます。
  234. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この破たんの一番の出発は、危険な有価証券、株などに手を出して二十八億円もの損失を、赤字をつくり出した、そこが出発点になっているのですね。その後めちゃくちゃな建設計画などもありますけれども、もとはといえば危険なものに手を出した。これはまかりならぬといって、厚生省は株に使うことについては資金運用は中止しなさいという指導までなさっているわけです。その後、これから入居者をどんどん入れてという話がありましたけれども、実際には深刻な事態の中で入居者が減ってきているわけですね。  それで、これはエコノミストの十月五日付の「ニュースの焦点」というところに出ているのですけれども、厚生省年金局の担当官、第一勧業銀行を初めとする銀行六行の担当者、そして有料老人ホームゆうゆうの里を運営する日本老人福祉財団の理事らが集まって、どうすればいいかということで、銀行に対して協調融資を取りつけようと会まで開いているわけですね。この銀行に対する協調融資はうまくいったのでしょうか。
  235. 矢野朝水

    矢野政府参考人 その前にぜひこれは御理解いただきたいわけですけれども、株式で大失敗をした、損失を受けた、こういう指摘があちこちからあるわけでございますけれども、これは株式投資をして、ほとんどが株式投信でございますけれども、もうかったのもありますし損したのもあるということで、株だけをとりましても損失は現時点で約三億円でございます。配当金をいただいたり、それから売却益もございます。そういうことで、純然たる損失は三億円程度でございまして、京都とか横浜とかアメリカにつぎ込んだ金に比べると比重は非常に少ないわけでございます。  それからもう一つ、ただいまの御指摘でございますけれども、私ども、再建計画を早く取りまとめて銀行団の協調融資を受けたいということで、いろいろできる範囲内であちこちお願いをいたしております。ただ、先般の話し合いは実はまとまりませんで、さらに現実的な再建計画をつくるということで、今それに取り組んでもらっております。
  236. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この株の売買が大変この事業にとっては危険な状態だということであなたたちは指導なさったわけですよ。三億円といえども、これは国民年金積立金から出されているお金、たとえわずかな金額であったって、こういうところに使うということは問題だということになっていたわけですね。その結果、厚生省は事あるごとにこの運営についてはかかわってきているわけです。  五月十八日の委員会でも、この日本老人福祉財団の過剰投資などで深刻な経営状態になっているということは取り上げられたのですね。その後どうなっているか。固定資産税の未払いが五百万円ふえる、ないと言っていた社会保険料は三千万円の滞納ですね。そして入居者が減少して退去者がふえ、一層悪化している状態なんです。  この財団が再建計画を二度にわたって厚生省に提出しているのです。しかし、これを受理しながら現在まで、またもう一回見直せということになっている。ある意味では、この計画そのものも大変ずさんなんですね。これから入居者をふやすというけれども、実際にはその見通しが全然立っていないという状態だ。ある意味では、倒産を未然に防止する必要性を自覚していながら、厚生省は必要な指導や監督を怠ってきたのですね。放置してきたのです。こういう深刻な事態は、厚生省がずっとかかわってきているわけですね。  この日本老人福祉財団にも厚生省の元職員が天下りなんですね。こういう事態の中で、今度この年金福祉事業団が廃止になって、老人福祉財団への責任は一体どうなってしまうのですか。このままいけば倒産の可能性も出てくるわけですね。来年の三月が返さなければいかぬ期限でしょう。見通しは全然ないですよ。これはどう結末をつけるのですか。
  237. 矢野朝水

    矢野政府参考人 私どもは、入居されている方の不安を抑えるといいますか、それからまた、サービスの低下がないようにきちんとやっていただく、こういう観点から、いろいろ必要な指導を行ってきているわけでございます。  ただ、これは民間の有料老人ホームでございまして、要は財団法人という民間の主体性のあるところで京都なり横浜なりアメリカなりということで計画を立てられ、これまで進めてこられた。それが、いろいろバブル崩壊後の環境の激変によって非常に厳しくなっている。  そこで、先ほど申し上げたような観点から、銀行団も納得するようなきちっとした再建計画をつくってくださいと。それからまた、人についても、こういった前の計画を推し進めた方は責任をとっておやめになったわけですが、新しい体制のもとにしっかりした再建計画をつくっていただくようにということで必要な指導助言を行っているわけでございます。
  238. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 一般の有料老人ホームは、もちろん民間の老人ホームであっても、先ほど一番冒頭に私が聞きましたように、倒産の事態なんてあってはならないということは当然のことですけれども、これほど厚生省が深くかかわっている、そしてひどい状態運営されているにもかかわらず、ずっと見逃してきたわけですね。これは最後にどうなっていくのか。ちゃんと責任をとらなければ、今入居している二千人の人たちは路頭にほうり出されるわけですね。  この責任と今後の対応、一体どうやって路頭に迷わせないように保証されるんでしょうか、この点は大臣にお聞きしたいと思います。
  239. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、株式投資やアメリカへの進出問題ということが経営悪化の一つの要因とされておる、こういうことで前理事長、常務理事平成九年には責任をとってやめていただいた。そして、現在の役員体制のもとで、アメリカ進出計画に伴う資金回収であるとか運営の合理化あるいは効率化、こういうことに努めておるわけでございます。そして、本年の十月からは、会社再建の実績がある民間企業の出身者の方をお迎えして、実効性のある再建策を策定中であると聞いております。  とにかく一番大切なことは、入居者の皆さん方が不安を来すことがないように、財団の主体的な取り組みを前提としながらも必要な助言、指導を行って、財団の再建に向けて努力することが一番大切なことではないか、このように考えております。
  240. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 こうした老人ホーム本来のあり方を全く無視した異常な運営が放置されてきた、この責任はだれかやめれば終わりという問題じゃないですね。厚生省が、今言われたように、責任をとるということも含めてきちんとやっていかなければならないというふうに思います。  時間もございませんので、次に移ります。年金積立金の自主運用について質問いたします。  一九八六年から一九九八年の間に、年金福祉事業団の資金運用の累積赤字が、時価で一兆二千三百八十一億円、簿価で一兆八千四百八十六億円となっております。一兆八千億円といえば、厚生年金の老齢年金受給者の平均にしますと、大体何人分に相当するでしょうか。
  241. 矢野朝水

    矢野政府参考人 厚生年金の老齢年金の平均的な月額は十七万二千円でございます。したがいまして、累積欠損は簿価ベースで一兆八千億といいますのは、八十八万人分の年金に相当します。
  242. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 八十八万人分の年金に相当する額。半端じゃないですよね。  今、無年金障害者を初め、本当に年金がないためにどれだけ国民が苦しんでいるか。どれほど労働者が汗水を流してこの保険金を払い込んでいるか。その年金積立金が何でこんな累積赤字になってしまったのか。だれがこれは責任をとるんですか。
  243. 矢野朝水

    矢野政府参考人 年金福祉事業団運用実績そのものは、他の機関投資家あるいは年金基金といったものと比べて遜色のない成果を上げておるわけでございます。  ただ、現在の仕組みは、一度年金積立金を資金運用部に預けまして、その預けた金を借りてきて、その利子を払いながら運用する仕組みでございます。七年とか十年の固定金利でございまして、高い金利の資金がまだ残っております。そういうことで逆ざやが生じておるわけでございます。  この問題につきましては、私どもは、今の仕組みの中でも累積欠損をできるだけ早期に解消したい、解消しなきゃいけないということで必死に取り組んでおります。幸いに、最近マーケットもかなりよくなりまして、時価ベースで見ますと、一兆二千億の累積欠損は半減いたしております。ただ、これは、これからもマーケットを楽観視するわけにはいきませんので、今後とも努力していきたいと思います。  ただ、これは先ほど申し上げましたように、一度集めた保険料を預けて、またそれから借りる、ここにどうしても無理があるわけでございます。やはり、これは年金サイドで年金加入者のために年金積立金にふさわしい運用体制をつくる、これが一番根本的な解決方法じゃないかと思っておりまして、行革なり財投改革の中で年金積立金の自主運用の新しいスキームを今回法案の中で盛り込んだわけでございます。
  244. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 逆ざやがあった、そして実際には——その後、一定の半減するカバーがされているという話なんですけれども、先ほど出ましたように、国会年金局長は、こういう運用をやることによって預託金利よりも割り込むような事態になることはまずないと答弁までしている。ところが、こういう事態になった。  実際には、財投に預けたままで運用していたらどうなのか。事実上、その方が利息が入って、むしろ今よりはずっと安全、こういうこともはっきりしているわけですよね。この責任についても、結果としてはこうなりましたと。  国民は、実際にはそのときの年金局長が大丈夫です、安全ですと言うから、そうかなと思っていたら、いや、実際にはこんな損を出したので、新たな仕組みで保険料をこれから上げさせていただきますとか給付を下げさせていただきますと言ったって、だれも納得しませんよね。  やはり公的年金というのは、先ほど民間との比較という問題がありましたけれども、民間のものとは違って、将来だれもが老後を安心して暮らせるように、それを安定的にちゃんと確保してもらいたいというのが国民みんなの合意なわけですね。これが何らかの形で使われて、実際にはかなり大幅に減りますよなんて言われたら、今、国民で納得する人はだれもいないと思うんですね。そういう点では、本当に慎重に慎重を期してこの運用を図るべきだったし、あなたたちもその約束までしていた、ところが、実際にはその実態が大変な損失をつくり出したということなんですね。  この問題については、年金福祉事業団解散させればいいという問題じゃないと思うんです。先ほどから出ていますように、きちんとこの責任をどうとるのか、どういうふうに今後この教訓を生かすのかということが当然問われなければならないという問題だと思うのです。その点、大臣いかがでしょうか。
  245. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、委員から御指摘のございました累積欠損でございますが、平成十年度末は一兆二千三百八十一億円でございますが、その後株価の上昇によりまして、現在は四千六十九億円でございまして、今の時点においては八千億ほど累積赤字が解消したということを御報告させていただきます。  そして、委員から先ほどから御指摘がございました、とにかく老後年金運用の問題でございますので、長期的な観点から債券や株式など各種の資産を組み合わせて運用を行うべきであり、短期的には市場環境による収益の変動というものは避けられない面がございますが、基本的には長期運用というものが可能な年金資金の特性を踏まえながら、今後はこういうようなことが起きないように努力をしていきたい、こう考えているような次第であります。
  246. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今後は起きないようにという問題は後から言いますけれども、今までやってきて、マイナスを出した、半減したと言うけれども、ある意味では国民年金に使われる大事な貴重な資金ですから、マイナスを出してはならないわけですよ。こういう問題についても、あなたたちが約束していたにもかかわらず、実際にはこういう運用になってしまった。このことについて、もう二度とこうならないようにということがちゃんと責任の問題でもその保障の問題でも問われなければ、今後注意しますと言うだけでは済まされないと思うのですね。  先ほど出ていましたけれども、例えば注意義務という問題は、今回のこの運用の問題などでもきちんと注意義務は守られたけれども損失を出したということなんでしょうか。
  247. 矢野朝水

    矢野政府参考人 今回法案で盛り込んでおります運用関係者の注意義務、忠実義務、これはアメリカとかヨーロッパではプルーデントマン・ルールと言われておるものでございますけれども、これを我が国の年金運用についてもきちんと制度的に位置づけしたいということで今回法案に盛り込んでおるわけでございます。  これは結論からいいますと、結果責任を問われるものではございませんで、運用の過程において専門家としての最大限の注意義務を果たしたか、忠実義務を果たしたかということでございまして、現在の年金福祉事業団は、そういった点では、今回法案に盛り込んでいるような忠実義務、注意義務違反の事実はないと思っております。  それからまた、こういった注意義務、忠実義務というのは情報公開を徹底しなければ検証できないわけですので、今回の法案でも、そこのところは徹底した情報公開、説明責任を果たしていくということにいたしておるわけでございます。  それから、先ほどいろいろ御質問のございました、リスクをとり過ぎるのじゃないかという御指摘でございますけれども、今回の積立金の自主運用におきましては、運用の基本方針を厚生大臣が定める、その際には、保険料拠出者の代表、こういった方々の参加を得て、そこをきっちり決めるのだということにしているわけでございまして、その運用の基本方針の中で、そういった余計なリスクはとらない、安全確実を基本にするということは、当然そういう方向になると思います。  今回の新しい自主運用の仕組みというのは、従来の反省の上に立ちまして、問題が起きないようにいろいろな点で注意をした、そういう法案になっておるということが言えるかと思います。
  248. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 幾ら注意義務といっても、ある意味では、書き込もうが書き込むまいが、それなりの注意義務、責任というのは当然あるわけですよ。  しかし、先ほど私が一番冒頭に言いました有料老人ホームの問題でも、年金福祉事業団が深くかかわり、そして厚生省もかかわってきた。こういう問題についても注意義務違反が全然問われなくて、結果責任も問われない、こういう状態になるのですね。これで問われなかったら、何をやっても問われないということになると思うのです。  そこで、先ほど私が、有料老人ホームの問題については、厚生省は、株の取引というものが適当でないという運用指針、取扱指針を出して日本老人福祉財団を指導なさっているわけです。これは、有価証券というのが、ある意味では株取引というのがリスクを伴うもので福祉事業についてはふさわしくない、こういう指摘がされているわけですけれども、今回のこの積立金運用について、年金の一番基本的な本体のお金ですよ、これについてはなぜ運用が許されるということになるのでしょうか。
  249. 矢野朝水

    矢野政府参考人 まず、財団の運用で株が禁止されたということでございますけれども、これは、平成五年六月の各省庁の公益法人の関係者の連絡会議でそういう申し合わせが行われましたけれども、その後、平成八年に運用指針が改定になっておりまして、その中で株式運用が認められておるわけです。そういう点で、財団法人に対する国全体としての指導方針が二転、三転したわけですけれども、現在では株式運用は否定はされておらないということが一つございます。  それからもう一つ、別の問題で、今回の新しいスキームの中で株式運用をするのかどうかという問題でございますけれども、株は確かに一つ一つ見ますとリスクが高い、つまり収益のぶれが大きいわけですけれども、いろいろな株式を組み合わせることによってそういったリスクを低くできる、こういったことが学問的にも実証されております。要するに、分散投資をすることによってリスクを低めて、収益は高いものが期待できる、こういうことでございますので、株式投資を禁止するのはいかがなものかなと思います。  ただ、このあたりにつきましては、先ほど申し上げましたように、運用の基本方針の中で、株式投資をするのかしないのか、するとした場合、全体の資産の中で比率をどのくらいにするのか、こういった非常に運用の基本にかかわる問題でございますので、関係者の御意見を十分踏まえて厚生大臣運用の基本方針を策定する、こういうことになるわけでございます。
  250. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 分散した場合に収益が上がるなんということは、そういう研究なども今否定されているのですね。実際には、分散することによって余計危険になるということだって今関係者の中から言われているわけです。  そして、今局長が言われたように、どういうように使っていくのかという問題についても、日本老人福祉財団のときに、こういう株を買うことによって運営が大変になる、危険になるということで一たん禁止されたわけですね。その後それを解禁したということですけれども、実際にはその危険性というのは一層高まっているわけです。  こういう今の株の状況を見れば、これに厚生省はどんどん手を出していいですよということじゃないでしょう。それはリスクを伴うという問題について、とりわけ年金の場合は、失敗したら、その財源がないわけですから、国民に、被保険者負担させるしかないわけです。そういう点では、より慎重にならなければならないというふうに思うわけです。  特に、今回の年金積立金の自主運用の問題についていいますと、五・三・三・二という、いわゆる安全性の高い債券を全体の五割以上とした規制の撤廃ということが行われて、今までよりも一層リスクを高める運用が行われるわけです。百四十兆円もの積立金がこの年金運用によって一気に株式市場で運用されるということになる。これは年金福祉事業団よりも一層リスクが生まれるということにならないでしょうか、いかがですか。
  251. 矢野朝水

    矢野政府参考人 まず、お答え申し上げたいのは、百四十兆の積立金が一挙に市場に出ていくということではないわけでございます。今、年金積立金は、財投制度を通じまして、各財投機関の中で長期資金として活用されているわけでございまして、百四十兆が年金特別会計に返ってきていきなり運用できる、こういうことじゃございません。自主運用の仕組みはつくりますけれども、自主運用できる資金はこれから徐々にふやしていくということで、段階的に進めることになっておるわけでございます。これは、財投制度を安定的に運営するという点からも、そういう措置が必要だと思っております。  それからもう一つ、株式運用につきましては、今申し上げたようなことで、分散投資することによって、債券だけで運用するよりもより高い収益が期待できる。こういうことで現在もやっておるわけですけれども、最終的にこれをどうするかというのは、先ほど来申し上げている運用の基本方針の中でお決めいただくことでございますので、そういう中で安全確実を基本とした運用が当然行われることになる、そこは私は確信いたしております。
  252. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 どういう運用にしていくのかという、大臣が定める基本方針だって出ていないですよ。そうしたら、どういう運用方針になるのか、私たちは白紙委任で、どうぞおやりくださいというふうに言っているようなものになるでしょう、これを認めたら。それなら、こういうようにやりますという方針をきちっと出すべきですよ。出さないまま、それをどうやっていくか今後決めるのだなんというのは論としては成り立たないと思います。  時間がございませんので、年金福祉事業団のアドバイスをしてきた年金資金運用研究センターの問題、先ほどございましたけれども、ここには生命保険会社とか銀行、証券会社がたくさん出向なさっている。このアドバイスを受けているのですね。  さらに、今、自主運用をめぐって、年金資金運用研究センターだけじゃなくて、事業団にも厚生省にも、生命保険会社や金融機関、こういうところから天下りとか、天上がり、出向ですが、そういう職員が配置されている、それから天下りでどんどん行われている。これについては、実際には、厚生省が幾ら被保険者のための運用と言ったって、銀行によって左右されるということは当然出てくるわけです。PKOと言われている株価の操作もできる。こういうことが行われるわけですけれども、この癒着をきちっと断つということが重要ではないでしょうか。
  253. 矢野朝水

    矢野政府参考人 年金運用という問題は、非常に専門的な知識経験が必要とされるわけでございます。そういうことで、年金福祉事業団が資金運用をやる場合にいろいろな調査をやってもらったりアドバイスをしてもらうということで、年金資金運用研究センターというのも設置したわけです。  ただ、人につきましては、こういった分野の専門家というのは役所にはだれもいないわけでございまして、やはり民間から来ていただくしかないということで、民間からの出向者を受け入れてそういった調査研究をやっていただいておるということでございます。  それから、確かに今、年金福祉事業団にも民間のOBの方あるいは民間の現役の方が出向されておるわけでございますけれども、これは民間の知恵とかノウハウをかりる、いろいろな面で刺激になるし専門的な知識が活用できるということで出向者を受け入れております。ただ、こういった方は、金融機関にとって一番大きな問題であります、どこに幾らお任せするかといった仕事には一切タッチさせておりません。あくまで調査研究とかいった分野で、受託機関の選定とかということと関係ない分野で仕事をお願いしておるわけでございます。  それで、これからこれをどうするかということでございますけれども、自前で厚生省なり年金資金運用基金の能力をレベルアップする、調査研究体制を整備する、これがやはり基本でございます。しかし、民間の知恵もかりなきゃいけないというところで、そこは、いかにそういう癒着を廃して、透明性を確保して、民間との適切な関係をつくり上げていくか。これについては、このセンターのあり方というのも今検討しております。そういう中で、官民の役割分担なり、後ろ指を指されないようなしっかりした仕組みにつくりかえていきたい、こう思っておるわけでございます。
  254. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 莫大な赤字を出した年金福祉事業団にも出向しているわけですよ、銀行関係者が。この銀行の言うように動かされているのじゃないか、こういう指摘があって、私も一体どこの銀行が出ているんだと聞いたら、資料は出せませんと言うのですね。いかがですか。どこの銀行が出ているか、ちゃんと言えますか。
  255. 矢野朝水

    矢野政府参考人 もちろん、どこの銀行からいらっしゃっているかというのは公表できます。
  256. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 では、最後に、私が厚生省に問い合わせしたら、それは出せませんというお話だったので、直ちに出していただきたい。そして、やはりこういう癒着関係をきちっと断ち切るということが大事ですし、年金積立金の自主運用については、本当に大変大きな問題がこの短時間の論議の中でも噴出していますから、しっかりと審議をやれるような、そういう審議を求めます。  以上で終わります。ありがとうございました。
  257. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員長代理 中川智子さん。
  258. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  私は、阪神・淡路大震災からもう五年近くになりますが、その被災地で生活しておりましたが、あの大震災というのは、特に都市型の高齢者を襲った大災害でした。そのときに、私はボランティア活動をしておりました。テレビとか冷蔵庫とか洗濯機とか、そういう電化製品を被災者の方にお届けする活動をしていました。  それはリサイクルしたものをお渡しする活動だったのですが、そのときのいろいろな人たちの声をこの年金審議が始まりましてから思い出すのですけれども、老齢年金だけで生きている方々が本当に多かったです。特に女性が多かったです。月々四万円、五万円で生活をして、家も失い、家財道具もすべてなくして、そして一生懸命生きていかなければと。そのときの糧、柱は年金。だけれども、年金だけで新たに家を建てることもできないし、つぶれかけた家を補修することもできないしということで、本当に老齢年金で必死につめに火をともすように日々を暮らしていらっしゃるいわゆる低位年金の方がたくさんいらっしゃいます。  その年金自体が、八〇年度以降、改正、改定ということが行われていますが、そのたびに保険料は上がり、給付水準は下がっていく。不信、不安を生むことばかりが多くて、年金に対する基本的な信頼が揺らいでいる。その基本的な信頼を取り戻すために、国民にしっかり見えるように議論を尽くし、そして、うみがたまっているならば、そのうみをきっちり出す作業をこの厚生委員会としてやっていくことが、私たち立法府にいる人間の最低の責任だということを痛感しています。  年金に頼って生きている人たちが少しでも安心できるように、附帯決議で二分の一に上げるときっちりと決まっていた。国庫負担を三分の一から二分の一とする審議に関しても、先日の山本委員と丹羽大臣のやりとりを見ていますと、景気の動向を見てとか消費税という言葉が出てまいりました。でも、社会保障というのは、景気の動向に左右されているということ自体がおかしい。景気の動向に左右されないようなしっかりとした社会保障の枠組みをつくっていくのが一番大事だと思うのですね。  そして、そのような約束事をほごにして、一方では介護保険で一兆円以上のお金をばらまいていく。けさの報道でも、あれに対して国民の怒りはすごいものだということがわかりましたけれども、一方ではそのようにばらまきをやっていきながら、一方では国庫負担のこの約束をほごにしていく。このような姿勢そのものが、私は年金に対する不安がますます増長されていく大きな原因ではないかと思います。  まず最初に、大臣、本当にお疲れでしょうけれども、しつこいようですけれども、景気の動向に左右されないような枠組み、そして、消費税の問題をお話しになりましたけれども、やはりこれは二分の一に本当に早い時期に引き上げていく、それにはこうこうこういう方法があると自分では思うけれども、これについて可能かわからないけれども取り組んでいくという、もう一度みんなに見える形で、この二分の一の引き上げ問題に対して御答弁をお願いいたします。
  259. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 御案内のように、前回の改正時におきましては、附帯決議で、この委員会の総意として二分の一に引き上げていく、こういうようなことをお決めいただきました。そして、今回は一歩進めまして、法律の附則でございますが、法律の中において「基礎年金については、財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」こういうことが明記されることになったわけであります。  私は、このことは大変重いことであると受けとめておりますが、現実問題として、今三分の一の国庫負担で四兆九千億円でございます。そして、二分の一にする場合には二・二兆円が財源として必要になってくるわけでございますので、これをどうやって確保していくかということが最大の課題ではないかと思っております。  これはいろいろな考え方があるわけでございますけれども、率直に申し上げて、私がここで、こういうことであるから今直ちに上げるということは本当に申し上げるわけにはいかないのが現在の経済情勢であります。一つは、税収による伸び、要するに経済が好転するということであるとか、それからもう一つは消費税を上げるというようなことであるとか、さまざまな方法はあると思いますけれども、今直ちに安定した財源を確保するというめどは残念ながら立っておらないということが事実でございます。  しかし、私どもは、いずれにいたしましても、どちらかというと年金に対する不安が大変強まっていると指摘する中において、一日も早く二分の一の実現を期さなければならない、こういうような気持ちは持っているような次第であります。
  260. 中川智子

    中川(智)委員 大臣のかたい決意が一日も早く実現するように、やはりいろいろな知恵を出し合っていくべきだと思います。  一方では、私の家の近所なんかでも、豊かな自然を破壊してダムをつくるとか、いろいろなことがあります。国民が納得できるような税の使い方というのは、やはり年金をしっかりして社会保障を皆さんにしていくことだろう、そのことが私たちの責任であると思いますので、本当に今の大臣の、この間いじめられ続けている二分の一問題に関しては一日も早く実現を、いじめているわけじゃないのですけれども、約束を守ってほしいということを言い続けているわけですから、それはしっかりやっていただきたい。  そして、そのことがみんなに見えるように、大臣、また何かの機会でしっかりとこの年金というのは継続して議論していかなければいけないと思います。私は、できればこの厚生委員会の中でそのような小委員会をつくって、年金の問題はしっかりと皆さんに見えるような形で議論していくべきだと思うのです。  強行採決がちらちらする中で、このような形でやっていかれたらばたまったものじゃないという思いが、この間怒りはちょっと発散してしまいましたが、また新たな怒りと、やはりこれはみんなで一緒に考えていくべきだ。与党だけではなくて全党がやっていくべきだ。ですから、小委員会などを立ち上げてやるべきだという提案を一つここで申し上げておきます。  年金局長にお伺いいたしますけれども、きょうの審議の中でどんどん出ております年福事業団の解散業務の承継の問題なんです。  グリーンピアで働いていらっしゃる方とか地域の方、また、職員の方などにもいろいろお話を伺ったのですが、こういうふうにおっしゃっていましたよ、百万坪、工夫が必要、赤字にならないように頑張らなきゃと。働いている人たちはそう思っていて、これじゃいけないんじゃないか、いけないんじゃないかというときに、部長さんとかいろいろ役員がいらっしゃる、そういうところに、これじゃだめなんじゃないですかと言っても、全然努力する姿が見えなかった。むしろ、うるさいな、いいんだよ、これは守られているんだから、民間じゃないんだから、遊びに来たい人は遊びに来たらいいし、来たくない人は来なくてもいいと。自分たちが本当に危機感を持って、赤字を出さないように経営努力をしている姿はみじんもなかったとおっしゃっています。  ですから、今回のことはその運営主体に問題があって、一つには、今不安が寄せられていたのは、一生懸命下で心配して、こうすればいいんじゃないか、やはりこのままじゃいけないんじゃないかと言われていた人は、今非常に雇用不安、リストラで、この解散によって首になってしまうんじゃないかという不安をたくさん抱えていらっしゃいます。ですから、今回のこの事業団の解散、承継によって雇用の問題をどんなふうにしていくのか、その不安に対してお答えいただきたい。  そしてもう一つは、その役員の責任というのはどのような形でとるおつもりなのか、伺いたいと思います。
  261. 矢野朝水

    矢野政府参考人 今回、年金福祉事業団解散になる、それで、業務については一定の適切な経過措置を講じた上で撤退をする、こういうことになったわけでございますけれども、職員の雇用問題は最重要課題の一つだ、そういう認識をいたしております。  今、特にグリーンピアの問題をめぐりまして、地元自治体に何とかこれを受けていただいて有効活用していただきたい、そういうことで地元自治体と御相談しているわけですけれども、その際も、職員問題はきちんとしてください、生首を切って路頭に迷わすようなことのないようにしてくださいということは強くお願いをしておるわけでございます。  これは、平成七年の閣議ですとか、平成九年の与党の特殊法人改革協議会といったところでも雇用不安を招来することのないようにという決定も行われております。私どもは、それにのっとって雇用不安を招くことのないように努力していきたいと思います。  それから、二つ目の役員の責任という問題でございますけれども、この経営努力云々の問題は私もいろいろな形で耳にしたことはございます。しかし、最近は、この経営努力を相当必死になってやっていただいておるという認識をしております。言ってみれば、ここに至った経営サイドの結果責任を問うという問題、これはなかなか難しい問題で、私も、この場でこうすべきだ、こう考えているということを率直に申し上げられないんですけれども、グリーンピアが今日こういう状況になったというのはやはりいろいろな要因があるわけで、その一つは確かに経営努力の問題もあったかもしれません。  しかし、競合する施設がたくさんできてきたとか、それから、これまで随分利用していただいた若い人、小中学生とか親子連れとかそういった方が少子化で減ってきた、あるいは、景気が悪いというのがやはり一番痛いわけでございまして、そういう複合的な要因がございまして、最終的には、行革の一環で民間ができるものは民間に任せようということで撤退が決定されたわけでございまして、先ほど来申し上げているような雇用問題、地域の実情に配慮しながら円滑な撤退ということを進めていきたいと思っておるわけでございます。
  262. 中川智子

    中川(智)委員 いや、経営努力をした痕跡はないですよ。全然変わらないんですもの、建物でも何でもかんでも。ディズニーランドの経営努力とグリーンピアの経営努力をちょっと一覧表にして見てみたらいいかと思います。まあ、それはいいですが。  雇用の問題ですが、お願いをしているという一貫した答弁でございましたけれども、生首は切らない、それに対しては責任を持つということですか。そういうふうにお願いしているだけじゃ困るんです。
  263. 矢野朝水

    矢野政府参考人 これは、地元自治体が受けていただく場合は時価から割引措置を講じよう、二分の一割引ということを考えておるわけでございますけれども、そのためには、やはり職員の雇用に万全の措置を講じていただくこと、それから跡地を有効に活用していただくこと、こういう幾つかの条件が満たされる場合にそういう措置を講ずるわけでございます。  それから、そういうことがない場合であっても、例えば、地元で受けないけれども、このままでは赤字がたまる一方なので閉鎖をしたい、そういったところは職員の雇用問題については絶対やらなきゃだめですよ、やってくださいよ、そういうことを強く申し上げておるわけでございまして、今までのところ、そういった点で地元自治体関係者も、いや、職員の問題は知りませんというところはどこもないわけでございまして、これは地元と一体となって職員の雇用確保にきちんと対応しながら御相談を進めておるということでございます。
  264. 中川智子

    中川(智)委員 十三カ所のうち買ってくれるのは三カ所ぐらいになるかもしれない、ほとんどの自治体はとんでもないという声があるわけですから、雇用の問題に関しては、これはある意味では犠牲者ですよ。犠牲者を生むことがないようにしていただきたい。  年金局長じゃあれですから、やはり大臣政務次官に。やはりこの雇用の問題は深刻ですので——大臣は気の毒ですから大野政務次官に、今のやりとりを聞いていて、生首は切らない、犠牲者を生まないということに対して、責任主体としてもう少し前向きな答弁をいただきたいと思います。     〔安倍(晋)委員長代理退席、委員長着席〕
  265. 大野由利子

    大野(由)政務次官 グリーンピア事業からの撤退に当たりましては、これまで地域に果たした役割などを踏まえ、従事職員の雇用や地域経済等への影響を考慮して、十分な期間をとって必要な措置を講じることとしております。  また、譲渡されるまでの間、利用者の安全確保の観点を初めとする必要な改修経費を確保するべきものと考えておりますし、今中川委員が御指摘になった件については、御心配がないように最善の努力をしてまいります。
  266. 中川智子

    中川(智)委員 どうぞよろしくお願いいたします。  年金本体の話に移りますが、いわゆる基礎年金の空洞化の問題で、どう見ても理不尽だなと思うようなこと、この間のマスコミ報道や人々の声を多数聞くわけですけれども、二つの例で、年金局か社会保険庁、どちらかその質問の内容に対してお答えを願いたいと思います。  やはり不信感を持つということが空洞化の大きな原因だと思いますが、無年金の障害を持つ方や、共働き夫婦、独身の働く女性、自営業の女性、パートで子育てをしている一号の女性や、サラリーマンの妻の中にもたくさんいらっしゃいます。そして、何よりもこの年金制度老後生活が安定するかどうか、冒頭私が申しましたようなことで不安が多いわけなんですが、その空洞化問題で、一つ、このような場合は何とも理不尽だなと思うんです。  ことしの四月六日の朝日新聞に紹介された問題です。七年ほど保険料を払い続けてきて突然やめた三十九歳の職人の方のお話なんですが、その方のお父さんは国民年金の徴収が始まった一九六一年から保険料をずうっと納め続けていたんですが、八八年、年金の支給が始まる六十五歳を迎えた直後に亡くなったわけですね。ずうっと払い続けていて、六十五歳、ああ、年金がもらえると。その直後に亡くなったわけです。二十七年間払い続けたにもかかわらず、この方は、厚生年金から支給されたのは死亡一時金。これは二十数万円です。死亡一時金しかもらえませんでした。生計を支えた世帯主が亡くなったときにもらう遺族年金はもらえませんでした。遺族が社会保険事務所に尋ねてみると、子供が全員成人しているからということでした。でも、サラリーマンが加入する厚生年金ならば、同じ条件でも遺族年金が出ます。  この当事者は、金額の問題じゃない、会社員だって職人だって遺族は遺族だ、本当にこれは不公平な制度だ、納得いかないということで、自分は七年間払い続けたけれども、もう保険料なんか払うのはやめたというのでやめちゃったわけです。そこで、社会保険事務所の職員がたびたび説得しに来て、未納を続けるんだったら差し押さえをするよということを告げられたそうなんですね。  国民年金加入者が死亡した場合は、遺族年金の対象者は十八歳未満の子供を持つ妻か子供本人です。一方、厚生年金子供がいてもいなくてもすべて妻には支給されるわけです。このような不公平な例を聞くと、国民年金制度に対する不信がますます大きくなり、空洞化するのも当たり前のような気がしますが、この例について、年金局になるんでしょうかね、お答えいただきたいと思います。
  267. 矢野朝水

    矢野政府参考人 年金につきましては、今、遺族年金のあり方ということで不公平ではないかという御指摘があったわけですけれども、限られた年金の原資を有効に活用する、それで重点的に必要性の高い方に支給をする、これが一つ考え方になっておりまして、遺族年金の場合には——遺族基礎年金でございますけれども、十八歳未満の子供を抱えていらっしゃる方が一番必要性が高いわけでございますので、そういった方に絞って重点的に遺族年金を支給しておるということでございます。
  268. 中川智子

    中川(智)委員 そういう理由じゃないんじゃないですか。自営業とかそういう方は農業をやっていたり店をやっているから、だんなが死んだって、後は田んぼとかそういうので働き続けなさいよと。こっちの妻の方は、子供がいなくたって遺族年金はもらえるわけですよ。だから、結局、考え方そのものが古いときに年金システムをつくっていて、これは社会保険庁の担当の課長さんがおっしゃっているわけなんですけれども、就労形態が引き続いているから、夫を失っても働き続けて商店で生計が立てられるという前提があって、この制度自体が過去の時代背景に縛られているのじゃないかという指摘があるわけですね。この点に関してはいかがですか。
  269. 矢野朝水

    矢野政府参考人 確かに、年金制度といいますのは、まず社会の実態があって、その実態に合わせて制度が仕組まれておるわけでございます。例えば厚生年金でいいますと、夫がいて、専業主婦がいるということで、世帯単位で必要な年金を支給しようということで仕組まれておるわけでございます。  ところが、今御指摘にありましたように、女性の生き方というのは近年急速に変わっておるわけでございまして、若い人の間では共働きが当たり前になりつつあるわけでございます。したがって、現在は大きな時代の変わり目ではないかと思います。従来からの社会実態を前提にした制度、特に女性の年金、遺族年金とか三号問題とかいろいろな問題点指摘されております。  したがって、こういった問題につきましては、社会の実態を踏まえて、どうあるべきかということを幅広い観点から見直さなきゃいけない、こう思っておりまして、この法案の成立後でございますけれども、専門家にお集まりいただいて御検討いただこう、こういうふうに考えております。
  270. 中川智子

    中川(智)委員 こういう矛盾が空洞化を生むということですから、年金審議会で議論するのを待っているというのじゃなくて、厚生省の方で、こういう矛盾が空洞化を生むのだということで前向きにきっちり検討していくべきだと強く言います。  これに似たような問題がもう一個あるのですけれども、弟さんの年金について、今度はお姉さんが投稿されているのです。  今から七年前に大学を卒業した弟は、前年の九一年に学生の国民年金加入が義務づけされて、二年前までさかのぼって払うことができるから、卒業後は働きながら未納分を一生懸命払っていたわけなんですね。就職して一年が過ぎた九三年の四月にこの弟さんが急死したわけです。一、二カ月して、亡くなった弟さんあてに督促状が届いて、後日、市役所を訪ねたら、未納者リストに名前が載っているので払っていただきますというふうに言われて、結局、約六カ月分の六万円を払ったという事実があります。これも社会保険庁に問い合わせたら、相続による国税の納付義務の承継と同じ扱いで、相続人に支払い義務が引き継がれているというわけなんですね。  今の年金制度というのは、自分のために保険料を積み立てているだけじゃなくて、現在の高齢者を支えるための資金だから、死んじゃったって、未納分があるんだから払ってもらわなきゃ困るよと一方で言っているんですが、このお姉さんは、理屈はあるかもわからないけれども、これは死者にむち打つ行為だということで、これも大きく国民年金に対する不信感を生んだわけです。学生が任意加入だった時代加入しなかったから、障害を負っても障害年金を受け取れない無年金障害者のことをそのお姉さんが知って、弟さんが払った年金を、本当にこういう無年金障害者の方に権利を分けてあげたいぐらいだというふうに投稿されたのを読んだわけなんです。  これは本人が死亡したことで、将来、年金を受け取ることはなくなったわけですね。でも、これも本当に、学生時代の分と卒業して二号として働いて払った分を合わせて、存命中に払った分はいわゆる掛け捨てになってしまうわけです。それで共生の精神にのっとった年金制度への貢献は済んでいるわけですが、死んじゃった後に未納分が相続者のところに来て、払えというふうに言っているわけですね。これも何か常識的に考えておかしいなと思う。  また、学生の国民年金強制加入ということは、結局、無年金障害者にならないためにと一生懸命言われるわけですね、無年金障害者になったら大変だと。だけれども、サラリーマンの妻が保険料負担していないのは不公平だというふうな不満の声に対しては、収入のない人からもらうわけにはいきませんというふうに一方では言っているわけです。  ですから、さっきの例のように、亡くなった方へは積み立てではなく今の高齢者を支えるためだと言って、亡くなってからも税金と同じように支払い義務はあると言っている。無年金障害者を救ってほしいという声に対しては、保険料を納めてきた人に年金を出す仕組みなので、納めなかった人に出すと払ってきた人と不公平になる、制度の根幹にかかわる、だから救済は難しいというふうに言っているわけです。  何だか厚生省の都合のいいように、あるところでは共生の精神と言い、保険制度ということを言い、相手によって使い分けているような気がするわけです。ですから、民間の個人年金の方がよほどわかりやすいなと思います。  こういう議論を聞いていると、年金制度の理念というのがわからないのですが、今のような例をお聞きになって、厚生年金の理念というのがどこにあるか、明確に答弁をお願いしたいと思います。
  271. 矢野朝水

    矢野政府参考人 御指摘の事例は、被保険者であった学生さんが保険料をきちっと納めていなかった、保険料の納付を怠っていたので、亡くなられた後で保険料を納めてください、こういう話になったわけですね。したがいまして、保険料をちゃんと生前お払いいただいておればこういう問題は起きなかったわけでございまして、そういう点では、これは保険料を納めていなかったがためにこういうことが起きてしまったということではないかと思います。むしろ、公平性という点から考えますと、相続された方から未払い分をお支払いいただくということがいいんじゃないか、こう考えておるわけでございます。  いずれにしましても、今こういったものをきっかけに、公的年金制度の理念というのがわからないじゃないかということでございますけれども、公的年金制度は民間と違いまして強制加入でございます。これはみんなで、現役の者が保険料を出し合って高齢者を支えよう、世代間で順送りに、社会全体で高齢者を支えましょう、こういう制度でございまして、そういった制度を今後とも安定的に運営するためにはどうしたらいいのかということで、少子高齢化が進む中で今回のような改正案を提出したわけでございまして、こういう中で、将来保険料負担が過重になるのを防ぐ、一方で年金給付についてはしっかりした給付をお約束する、それで長期的に安定してお年寄りが安心して老後が送れるような制度にしていこうということで今回改正考えたわけでございます。
  272. 中川智子

    中川(智)委員 いろいろと矛盾がすごく多くて、常識的に考えても何かおかしい。こちらでは共生、こちらでは負担の問題ということが、どうも説得力を持たないのですね。  これほど空洞化が進んでいる深刻な事態というのは、こういう一つ一つの事例に対してきっちりと説明して相手が納得できるような仕組みにしていかなければいけないと思います。今の御答弁ではとても説得できるような中身ではないと思いますし、このような矛盾を解決していく、今後も引き続き責任を持ってやっていかなければいけない、それもまたともにやっていきたいと思いますが、厚生省がこういう矛盾したものをそのまま置いておくことが空洞化に本当に拍車をかけているというふうに思います。  時間がありませんので、今ちょっと触れました無年金障害者の問題を再度伺いたいと思います。  年金審議会の中で、事務局の厚生省が、無年金に陥ったケースを分類した上で附帯決議を国会でちょうだいしたというふうに説明しています。でも、この年金審議会の中でぜひとも議論の機会をとっていただくようにお願いしたいとの発言があったにもかかわらず、ぱっと次の議題に移っていまして、この後無年金障害者の問題が年金審議会の中でもほとんどきっちりと取り上げられてなくて、昨年九月に審議会が最終的にまとめる意見書の原案が示されたときに、現行制度では困難であるといって片づけてしまわないで、障害年金の道をあけておく方がいいという意見が出ました。きっちりこの意見が出たのですが、結局意見書には盛り込まれずに、それが見送られました。  具体的にインタビューの中で、機会をとってと発言した委員に聞きますと、議論が尽くされていないことについて、明らかに無年金障害者の問題に対して厚生省が目を背けたということをおっしゃっています。これは特に参議院の方では「速やかに」という文言が新たに附帯決議に盛り込まれたわけなのですが、国会における附帯決議というのを形骸化するような中身を含んでいると思います。  厚生委員会できっちり議論して、附帯決議まで付して、それに対してこの五年間何をやってきたのか。やはり無年金障害者の方々の期待というのは物すごく大きなものがあります。局長、この無年金障害者の問題というのは、いつごろどのような形で決着をつけていくのか、それに対してどう努力をしていくのかということを示していただきたいと思います。
  273. 矢野朝水

    矢野政府参考人 この無年金障害者の問題というのは非常に大きな重要な課題だという認識は当然いたしておるわけでございます。  ただ、この問題を年金制度の枠の中で解決しようといたしますと、制度加入して保険料を納めていただく方が年金をいただける、こういう社会保険方式の大原則を否定することにつながる。つまり、先ほどからおっしゃられていますように、今でも未加入とか未納とかそういう方が少なくないわけでございます。制度に入らなくてもあるいは保険料を納めなくても、障害になったら障害年金がもらえるということになれば、これはまじめに制度に入って保険料を納めるというような人が本当にどれだけいるだろうか、さらに未納、未加入を促進するのじゃないか、こういう指摘もあるわけでございます。  いずれにしましても、これは年金制度の根幹にかかわる問題でございまして、なかなか難しいということはぜひ御理解いただきたいわけでございまして、これはもっと幅広い観点からこの問題を議論する必要があるのではないか。決して目を背けたりサボっているわけではございませんし、障害部局とも時々議論はしておりますけれども、なかなか難しい問題であるということはぜひ御理解いただきたいと思います。
  274. 中川智子

    中川(智)委員 きっちりと信頼されているならば、未納とかそういうのはもっと少なくなりますよ。払っただけきっちりと運営してくれて、それがきっちり自分生活に返ってくる、そういう信頼があれば、やはりちゃんと入ります、自分生活を支えていくものですから。それはそっちの方に大きな問題があるのであって、一律に払わない方がおかしいというふうに言うのは、厚生省のおごりではないかと思います。  最後に、四十分いただいていてもあっと言う間に過ぎてしまいましたけれども、大臣に女性の年金問題について伺いたいと思います。  私の東京の事務所は女性が三人で一生懸命働いているのですが、みんな三号の専業主婦だったのですね。今まで知らない間に、働いている女性なんかからも応援をいただいて、何となくお金を払っていないのに年金がもらえる非常にいいあれだったのですが、働くようになって、自分たちで今一生懸命払っているわけなんです。結局、働きたい女性というのはすごく多いのです。働きたい女性はすごく多い。でも、百三十万の壁があって、大臣もよく御存じでしょうけれども、それが働く意欲を阻む。  また、年金制度そのものが、夫婦で一体、世帯単位でセット。年金局長もこの間答弁の中で御主人という、女性をまだまだ従属している存在だという発想だから、いわゆる年金権——権というのはおかしいですね、女性の個人年金を、一人一人が、一人の人間としてしっかり保険料も払い、自分自身の老後も支えていくというふうに生きていきたいですよ。  でないと、家庭内離婚とか多いわけですけれども、老後の不安を考えると、別れたい、あんな男はもう暮らすのも嫌と思っても、年金がもらえなくなるかもわからないとか遺族年金ももらえないというので、別れられない人がいっぱいいるのですよ。その八つ当たりが子供なんかに行って、本当に児童虐待とかいろいろあるわけで、すべてに波及する。  やはり女性が自分年金も払って、働く場所もあって、そして個人の年金が確立されていて、自立して一個の人間として胸を張って堂々と生きていくような仕組みにしていかなければいけない。日本は非常にその発想がまだない。口先だけですよ。  女性の年金の問題についての検討を今後どのようにしていくおつもりなのか、それを大臣に最後に伺って、質問を終わります。
  275. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 女性の年金権の問題につきましては、先般来御答弁を申し上げておりますが、女性の社会進出の問題であるとか、あるいは家族、就労形態の多様化を踏まえまして、昭和六十一年から年金法改正で妻の年金権というものが確立されたわけであります。  しかし、保険料との関連で、今、実際は別れたいのだけれども別れられない、こういう話がございましたけれども、離婚の際に、二階建ての報酬比例部分が夫に従属してついている、こういうようなさまざまな問題がありまして、一つ一つ解決しなければならないわけでございます。しかし、また一方で女性の就労状態あるいは賃金水準、こういった女性が現に置かれている状況というものも踏まえなければならない。専業主婦というのは一千二百万人おるわけでございますし、その辺のところも現実問題として大変難しい問題だなと私自身も思っておるわけでございます。  基本的な方向としては、要するに女性に対して独立した女性の年金権を確立する、こういう観点で何ができるかということで一つ一つ解決の方向に向かって努力しなければならない。いずれにいたしましても、この問題は、できません、できませんということで百年河清を待つような姿勢であってはならない、このように考えているような次第でございます。
  276. 中川智子

    中川(智)委員 やはり守ることの弊害というのがあると思います。ですから、セットじゃない、一個の人間として生きていく。そのためには、労働条件、そしてまた税の問題、いろいろ基本的な年金というのがスタートになって、守ることの弊害がないように、いわゆる独立した個人年金の仕組みを早急に確立していただきたい、そのことを最後にお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
  277. 江口一雄

    江口委員長 笹木竜三君。
  278. 笹木竜三

    ○笹木委員 笹木竜三です。  質問を始めます。質問時間の制限の問題もありまして、先週お聞きした年金資金運用基金の問題について、その法案について、続きでお尋ねをするわけです。  先週、私の質問で、要は今、年金積立金とか限られたパイをどう分けるかということについてはいろいろ議論があるわけですけれども、このパイをどうするか、どうふやすかという、今までの例えば年福事業団の活動について非常に不安を持っている、国民がさらにこれから百四十兆円を運用することに対してもっと不安を持っている、この問題をどうするかというときに、大臣はお答えになりました、情報開示の問題が一番ポイントなのだろうと。この情報開示が今まで余り積極的に行われてこなかったことが一番の問題だともお答えになりました。  それで、今後、新しい基金でやっていく場合に、先週、財務諸表だけではなくて、あるいは決算報告書だけではなくて、その判断、その計算の根拠となる資料も計算式も公表すべきだということに対しても積極的にというお答えでしたけれども、例えば平成九年の大臣の諮問機関、運用検討会、ここで書いてあるようなレベルの情報公開は最低でも行われるのかどうかを確認したいわけです。  ここには、平成九年の九月ですか、例えば運用委託先の名称、運用額、運用実績、それぞれをできるだけ詳細に行うことが必要だ、あるいは年金積立金運用結果と年金財政との関係、財政再計算時に想定した運用の見通しと実績のずれ、あるいはそれが保険料率とか年金財政に及ぼした影響、こういったことも定期的にしっかりと公開をすべきだ、この大臣の諮問機関で、懇談会でそういった提案がされているわけです。文書はもちろん、インターネットでも定期的にやると。こういった水準は当然にされるということで確認をまずさせていただきたいわけです。
  279. 大野由利子

    大野(由)政務次官 笹木委員が御指摘のように、情報公開と責任体制の明確化が非常に重要だろうと思っております。  情報公開につきましては、現在の年福事業団も詳細な運用実績等に関する情報公開を実施しているわけですが、年金積立金の自主運用に当たりましては、さらに毎年度における詳細な情報公開や、毎年度における監査法人による外部監査を新たに導入することによって常に外部からのチェックをしていく。  そして、常に注意義務とか、また忠実義務というのが今回の法案に書き込められているわけですが、こういうものに違反するような場合があれば即座に責任を問うという体制になっておりまして、また、もし違反があった場合は、罰則といいますか、免職とか停職とか減給とか、また戒告処分等々の制裁処分を行う等々の責任の明確化が明らかになっている次第であります。
  280. 笹木竜三

    ○笹木委員 今のお答えで、自主運用検討会報告書、平成九年の九月、この水準は確実にやると解釈していいということだと思います。インターネットを通じても定期的にやるというお答えがあったということです。  大臣に、時間が余りないということで、最後に確認をしたいわけです。  先ほど結果責任というお話が、他の委員からも質問がありました。年福事業団の今までの運用について注意義務違反はないというお答えが政府参考人の方からもあったわけですけれども、このことについて、年金積立金、掛金を払っている一般の国民との間で認識に非常にギャップがあると私も思います。  ですから、最低限、例えば何%を達成するか、市中の長期金利にプラス何%か、あるいは国債の金利に比べてプラス何%か、あるいは場合によってはマイナスでもいいと思いますけれども、それを達成するということを約束するのか。あるいは、そういった目標金利を達成しなかった場合に、今までと違った責任体制をしっかりとるのかどうか。そのことについて提案がなされないと、なかなか安心して年金を預けていこうという気持ちにはなれない。年金の空洞化は一層進むと思うわけですけれども、その点について大臣にもう一度確認をさせていただきたいと思います。
  281. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、年金積立金の自主運用につきましては、委員指摘のように、運用について情報公開と責任体制の明確化が大変重要であると認識をいたしております。  新しい自主運用につきましては、さまざまな義務規定を設けて責任体制を明らかにいたしておるわけでございますし、先生御指摘の情報公開につきましては、厚生大臣が定める運用に関する基本方針や毎年度の年金積立金運用状況を詳細に公表することになっておりますけれども、何%以上達成しないとどうのこうのというような話は、果たしてこの年金の自主運用になじむかどうか、私はいささか疑問に思っております。
  282. 笹木竜三

    ○笹木委員 それを結局約束しない、そして、目標利息を達成しないときにも仕方がないということで終わるのであれば、国民にとっては選択の基準がない。それが明確に示されれば選択の基準がありますけれども、明確に示されない。しかも、達成しなくても仕方がないということであれば、恐らく年金の空洞化は一層進むと言わざるを得ないと思います。これはやはり欠陥法案だと断言せざるを得ないと思います。  質問を終わらせていただきます。
  283. 江口一雄

    江口委員長 次回は、明二十五日木曜日午前十時公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十七分散会