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1999-11-17 第146回国会 衆議院 厚生委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月十七日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 江口 一雄君    理事 安倍 晋三君 理事 衛藤 晟一君    理事 木村 義雄君 理事 田中眞紀子君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 福島  豊君 理事 岡島 正之君       伊吹 文明君    石崎  岳君       遠藤 利明君    大村 秀章君       鴨下 一郎君    鈴木 俊一君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       田村 憲久君    戸井田 徹君       根本  匠君    桧田  仁君       堀之内久男君    松本  純君       宮島 大典君    山下 徳夫君       家西  悟君    石毛えい子君       五島 正規君    土肥 隆一君       中桐 伸五君    古川 元久君       青山 二三君    大野由利子君       久保 哲司君    吉田 幸弘君       児玉 健次君    瀬古由起子君       中川 智子君    笹木 竜三君     …………………………………    厚生大臣         丹羽 雄哉君    厚生政務次官       大野由利子君    政府参考人    (厚生省年金局長)    矢野 朝水君    政府参考人    (社会保険庁運営部長)  小島比登志君    参考人    (全国市長会社会文教分科    会委員長)    (大阪守口市長)    喜多 洋三君    参考人    (全国町村会長)    (福岡添田町長)    山本 文男君    参考人    (介護社会化を進める1    万人市民委員会運営委員)    (龍谷大学社会学部助教授    )            池田 省三君    参考人    (全日本民主医療機関連合    会理事)    (医療生協さいたま生活協    同組合理事長)    (埼玉協同病院院長)   肥田  泰君    参考人    (福祉自治体ユニット代表    幹事)    (長崎佐世保市長)   光武  顕君    厚生委員会専門員     杉谷 正秀君     ————————————— 十一月十七日  あん摩マツサージ指圧師はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願不破哲三紹介)(第一一号)  同(古堅実吉紹介)(第五六号)  同(平賀高成紹介)(第七七号)  同(藤木洋子紹介)(第一一一号)  食品中のダイオキシン類汚染実態調査・公開に関する請願佐々木憲昭紹介)(第一二号)  同(平賀高成紹介)(第一三号)  同(伊藤忠治紹介)(第七八号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一一二号)  同(島聡紹介)(第一一三号)  同(瀬古由起子紹介)(第一一四号)  同(平賀高成紹介)(第一一五号)  同(前島秀行紹介)(第一五二号)  中小自営業者婦人の健康と母性保護、社会的・経済的地位向上に関する請願木島日出夫紹介)(第一四号)  同(畑英次郎紹介)(第一五号)  同(平賀高成紹介)(第一六号)  同(藤田スミ紹介)(第一七号)  同(山原健二郎紹介)(第一八号)  同(石垣一夫紹介)(第五七号)  同(坂上富男紹介)(第五八号)  同(畠山健治郎紹介)(第五九号)  同(北橋健治紹介)(第六八号)  同(菅原喜重郎紹介)(第七九号)  同(中林よし子紹介)(第八〇号)  同(松沢成文紹介)(第一〇一号)  同(池端清一紹介)(第一五三号)  介護保険緊急改善に関する請願木島日出夫紹介)(第三九号)  同(穀田恵二紹介)(第四〇号)  同(瀬古由起子紹介)(第四一号)  同(大森猛紹介)(第八一号)  同(金子満広紹介)(第八二号)  同(木島日出夫紹介)(第八三号)  同(児玉健次紹介)(第八四号)  同(穀田恵二紹介)(第八五号)  同(佐々木陸海紹介)(第八六号)  同(中林よし子紹介)(第八七号)  同(平賀高成紹介)(第八八号)  同(藤木洋子紹介)(第八九号)  同(松本善明紹介)(第九〇号)  同(山原健二郎紹介)(第九一号)  患者負担の再引き上げ中止、安心してかかりやすい医療に関する請願木島日出夫紹介)(第四二号)  同(中林よし子紹介)(第四三号)  同(吉井英勝紹介)(第四四号)  年金改悪反対、安心して暮らせる老後の保障に関する請願大森猛紹介)(第四五号)  同(木島日出夫紹介)(第四六号)  同(児玉健次紹介)(第四七号)  同(寺前巖紹介)(第四八号)  同(中島武敏紹介)(第四九号)  同(中林よし子紹介)(第五〇号)  同(春名直章紹介)(第五一号)  同(平賀高成紹介)(第五二号)  同(古堅実吉紹介)(第五三号)  同(松本善明紹介)(第五四号)  同(矢島恒夫紹介)(第五五号)  子供たち移植を受けられる臓器移植法見直しに関する請願中馬弘毅紹介)(第七六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十五回国会閣法第一一八号)  年金資金運用基金法案内閣提出、第百四十五回国会閣法第一一九号)  年金福祉事業団の解散及び業務承継等に関する法律案内閣提出、第百四十五回国会閣法第一二〇号)  厚生関係基本施策に関する件(介護保険問題等)     午前十時二分開議      ————◇—————
  2. 江口一雄

    江口委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件、特に介護保険問題等について調査を進めます。  本日は、参考人として全国市長会社会文教分科会委員長大阪守口市長喜多洋三君、全国町村会長福岡添田町長山本文男君、介護社会化を進める一万人市民委員会運営委員龍谷大学社会学部助教授池田省三君、全日本民主医療機関連合会理事医療生協さいたま生活協同組合理事長埼玉協同病院院長肥田泰君及び福祉自治体ユニット代表幹事長崎佐世保市長光武顕君、以上五名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  最初参考人皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず喜多参考人お願いを申し上げます。
  3. 喜多洋三

    喜多参考人 おはようございます。全国市長会社会文教分科会委員長をいたしております、大阪守口市長喜多でございます。  きょうは、介護保険制度見直しについて、率直な意見を申し上げさせていただきたいと存じます。  介護保険法成立をしてから約二年経過し、明年四月から施行することとなっておりますが、既に全国市町村で十月から認定事務を開始するなど、一部は事実上スタートをし、さらに保険料など具体的な事項を早急に確定しなければならないこの段階に至って、制度の重要な部分について大きな変更が行われようとしております。しかも、このことについて、保険者として重大な責任を負うこととされている市町村意見は事前には何ら聞かれることもありません。このような経過について、全国市長会では、先日、極めて遺憾であるとの決議を行っております。  そもそも、都市自治体としては、介護保険制度について、市町村保険者になることは適当でないなど、いろいろな意見がありました。しかし、法律として成立をいたしましたので、制度の円滑な施行のため、職員を督励して住民理解を得るよう何度も何度も会合を開くなどして説明し、また、コンピューターシステムの設計など広範な準備を進めております。このような時期での大きな変更は、住民への説明事務処理で大変大きな手戻りを生ずることとなります。この時期のこのような論議については、まずたえがたい思いであるということを率直に申し上げておきたいと思います。  次に、見直し内容についてでございますが、全国市長会は、これまで保険料負担軽減等を中心に数次にわたり要望をいたしております。調整交付金を二五%の国庫負担とは別枠にしていただきたいこと、財政安定化基金財源は国と都道府県負担とすること、低所得者対策としての保険料減免財源を確保すること、サービス利用時の負担を無理のないものとすることなどであります。  また、私としては、施設サービス費用在宅サービスを上回る部分に対し、保険とは別枠措置をすることも保険料地域格差是正負担軽減に有効ではないかと幾度も提案させていただいております。  私は、まず、これらの措置の実現を図っていただきたいと考えるのでありますが、基本的な問題として最も強く申し上げたい点は、一時的な施策ではなく、恒久的な対策をとるべきであるという点であります。  昨年来、市町村は、住民に対して制度への理解と協力を求めて説明を重ねております。負担が増加することや、制度が公平なものとなるかなど、不満や疑問も表明されますが、正面から高齢少子化介護需要増大等説明し、制度必要性を訴える中で、住民からは、施行後の一時的な負担軽減という観点はなく、むしろ無理のない負担、公平な制度運用サービス基盤の確保といった事柄が最も大きな関心事となっております。  厳しい財政状況の折、一兆円という規模の措置をされるとのことでありますが、住民に向かい合っている市町村立場からは、今後十年で二・五倍になると言われる介護費用について、これを賄うことになります保険料の恒久的な軽減策や、いまだ大きく不足するサービス基盤整備などの問題があり、一時的な効果を図るため、限られた財源から多額の支出をすることが今求められているのかといった疑問を持たざるを得ません。ぜひ基本的な視点に立ち返り、御検討いただきたいと考えます。  さて、今回、国から提示された特別対策案につきましては、個々の事項に対しての逐一のコメントは控えさせていただきますが、さらに幾つかの点で意見を申したいと存じます。  第一点目は、財政措置についてであります。  先般、全国市長会では、今回の特別対策が、国としての政策判断に基づく措置であり、これについては新たな地方負担を生じないよう要請していたところであること、市町村においては、今回の対策により、政策経費のみでなく、コンピューターシステムの組みかえなど事務的経費に至るまで追加の費用が生じてくることになるので、保険料を徴収しないことに伴う減収分全額国庫負担はもとより、すべてにわたり国の責任による万全の財政措置を講じられたいことを決議いたしております。ただいままでのところ、市町村負担の問題は明らかになっておりません。地方交付税措置では国の負担ではなく地方負担であること、また、これでは現実問題として不交付団体に対する有効な措置になり得ないことなどを踏まえて、国の責任による万全の措置を講じていただきたいと思います。  二点目は、これらの施策変更により混乱が生じないよう、国としての具体的な方針を早急に明示することであります。  できるだけ早く国の特別対策内容を確定され、さらにこれを国民に正確に伝えることが必要であります。そうしませんと、国民はいろいろに受けとめ、事実と異なる期待をし、そのため新たな混乱を生ずるおそれがあります。また、保険料軽減のような基本的な事項については、混乱を避ける上で、国としての統一的な方針を明示され、一切地方公共団体負担をかけないということをはっきりさせることが必要であります。  もちろん、準備事務への影響も莫大なものがあります。制度施行準備、また、来年度予算編成事務も既に進んでおります。どのような手だてを講じても、実務上は、現在市民代表などと策定を進めております介護保険事業計画や、コンピューターシステムのやり直しという事態は避けられません。それらへの影響を最小限にするよう、早急な内容確定などに御配慮をいただきたいと思います。また、今回の変更は、実務段階でなお問題が生ずることも想定されますので、実施に当たっては、市町村都道府県とも十分協議すべきであると考えます。  三点目は、国民健康保険事業への影響についてであります。  今回の対策では、老人保健施設訪問看護費用などが介護保険へ移行することにより医療費が減少するという見通しをもとに、二号保険料を徴収することになります医療保険への支援がかなり圧縮された印象を受けております。特に国民健康保険は、従来から、本来制度にない繰り出し金として一般会計から税を投入することによりましてやっと支えられているのが実情でありますが、加えて、昨今の経済の低迷によって失業者の流入が続いており、事業運営の困難が一層増しております。  このような状況のもとでの二号保険料の徴収ということにつきましては、実は、介護保険そのものより国民健康保険の方が大変ではないかというのが多くの市町村長の本音ではないかと考えます。医療保険制度抜本改革は早急に必要ではありますが、いましばらく時間を要するとすれば、国保についての十分な対策が必要であります。今回の特別対策の具体的な内容はいまだ明らかではありません。十分な措置であるかどうか、大きな不安が残っております。  以上、種々意見を申し述べましたが、私たち事業を預かる者が期待いたしますのは国民的合意であり、同時に、最も恐れるのは国民不信感であります。これから数十年間、世界でも類を見ない高齢化社会をいかに支えていくかという重い課題を目の前にして、入り口で混乱するのではなく、国民すべてで担う体制づくりを望みたい、これが偽らざる気持ちであります。  新しい制度づくりに当たりまして、私どもは労はいといません。しかし、介護保険は国が定めた制度であり、詳細な運営方法まで国が定めております。国におかれては、制度を創設した立場としての責任のもとに万全の措置を講じ、来年四月、国民の信頼のもとにスタートを切ることができるよう、よろしく御検討のほどお願いいたします。  以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  4. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、山本参考人お願いをいたします。
  5. 山本文男

    山本参考人 全国町村会会長を務めております福岡添田町長山本でございます。  なおまた、私は、福岡県の介護保険実施していくための広域連合連合長を務めさせていただいておりますので、最初連合長立場から一言意見を申し上げさせていただきたいと思います。  まず最初に、総括的でございますけれども介護保険制度の問題については基本的なことはもう議論が終えている、私どもはそういうふうに思っておりますし、法が制定されまして以来、それぞれの町村でその準備のために努力をしてまいりました。住民皆さんたちには、介護保険制度が始まるので、こういうふうになりますよという説明もそれぞれ数回行ってきておりまして、私自身の感覚からいきますと、大勢大勢では、大筋で介護保険制度実施については住民皆さんたちの認識をいただいている、こういうふうに理解をしているところでございます。  それが大幅に変わりますと、一体どれが本当なのかというような、逆に今度は不安と不信と疑問を抱くことになりますので、できるだけ基本にかかわることについては、法律で制定しておりますので変えないようにしていただくことが一番大事ではないだろうか、そういうことを思っておるところでございます。ぜひともその点についての格別な御理解お願い申し上げたいと思います。  そこで、私ども全国町村会では、今まで数回にわたりまして要望を行ってまいりました。もちろん、この制度実施していく上でいろいろな不便な点あるいは財政的な問題等々がございますので、要望をずっと続けてまいりましたけれども、最近では、お手元に差し上げておりますような要望二点と声明一点を私ども出しておりまして、お願いをしているところでございます。  声明につきましては、さっき申し上げたように、基本についてはもう変えないでください。なぜそういうことを申し上げるかといいますと、介護保険制度は、保険料認定、それからもう一つ給付サービスなのですが、この三点で構成されていることは御承知のとおりでございます。この三つの構成されている基本になるものが変わってきますと一体どうなるのだ、こういうことになっていくわけです。  ですから、保険料が動きますと、次に給付が動いていきます。給付が動いていきますと、認定とのつり合いが均衡を失ってしまうということになってまいりますから、この基本になることについては決められたとおりに実施をすることが一番大事ではないか、こういうことだということでございます。そういう点についてはかねがねお願いを申し上げております。  それでも実施をしていく上で一番大きな私ども要望点は、財政支援でございます。なかんずく、この一〇〇%のうちの五〇%は保険料で賄うことになっておりますが、国負担の二五%のうちの五%が財政調整交付金ということになっておりますけれども、この五%の調整交付金が果たしてそれだけの効果を発揮できるのかどうかという点について、我々なりに試算をしてまいりますとかなり疑問がある。したがって、これらについてさらなる検討をいただきまして、強固な財政支援をしてくださいということを主力に今までお願いをしてきているところでございます。その点についてはお手元三つ要望の中に書いてありますので、御参照をいただければと思います。  さて、順序を追ってお話をさせていただきます。  まず最初に、私は広域連合の話からさせていただきます。  私ども市町村というのは、誕生したときから格差がございます。市町村格差というのは、その市や町や村が生まれたときから、市町村の間で格差というのは当然あるのです。だから、市町村格差をなくそうということは難しいのです。これをやることはできません。例えば、ある市は人口が百万いる、ある村は五百人しかいない、こういうのがございますが、これは直すことはできません。ですから、市町村格差というのは、どうしたら一番いいかということが今最大の課題ではないかと思いますけれども、それよりもむしろ、そこに住んでいる住民皆さんたち行政上受ける利益や、あるいは行政上から起こる義務などについて格差があってはならないということです。  だから、何々市、百万の市に住んでいる人も、小さな村に住んでいる人も、行政上から受ける利益というのは同じでなければならない、こういうことだと私は思うのです。市町村間の格差はやむを得ない。しかし、住民格差というのはあってはならない、こういうふうに思います。  ですから、介護保険制度法律で制定されましたときに、保険料均一化給付認定については公平、公正でなければならない。したがって、できるだけ多くの皆さんたち一つの輪になってこれを実施していくことが一番望ましい、こういうふうに考えまして、福岡県では私たち七十二の市町村広域連合を設立しました。  ところが、この広域連合に対して、余り大き過ぎて市町村長はその責任が薄くなって転嫁してしまうのではないかとか、あるいは小さいところにはサービスが行き届かないのではないかとか、いろいろと言われました。あるいは、よく今でも言われておりますが、私はよく意味がわかりませんけれども横出しだとか上積みとかいうのがなくなってしまうのではないか、それはむしろサービスの低下である、こういうようなことを随分言われました。おかげさまで、それらについては私ども一つずつクリアをしていくことになりまして、ありがたい御指摘、御批判だったと今では感謝をしているところでございます。  そういう意味で、私たち広域連合をつくって競争をするのではなくて——複数団体がありますと、どうしてもそこには競争原理が働きます。競争原理が働くと、我々のような小さな町になりますと、競争をしていきますとだんだん財政を圧迫することになりますから、町そのもの財政破綻を来す。だから、町村というのは、介護保険制度だけを実施しておればいいものではありません、住民が生活していく上ですべてのものをやらなければなりません。これは国だって同じことです。介護保険にすべての精力を注いでいって、片一方がおろそかになるという行政やり方は決して適当ではない、こういうように思います。  競争というのはいい競争と悪い競争がある、こういうように思いました。ですから、競争という言葉を我々はできるだけ避けていこうということですが、競争が全くない無刺激な広域連合ではうまくないんじゃないか、こういう議論が起こりました。  そこで、競争ではなくて、それぞれ七十二の市町村が持っている特性を生かしていく、そういうことを集約していこうじゃないか、これが競争にかわるべきやり方である、そういうふうに私ども意思統一をして現在進めているところでございます。そういう点について、七十二の市町村広域連合を組んでうまくいくだろうか、こういう御心配をいただいている方々が多いわけでございますけれども、概要は今申し上げましたようなとおりでございます。  今私ども広域連合は七十二の市町村ですから、人口が百十二万ぐらいでございます。そのうち、要介護者と見られる方々は約三万四千人くらいだろうと言われております。現在、もう十月一日から認定業務が始まっておりますが、三分の一の申し入れを受けておりまして、約二千ぐらいの皆さんたち訪問調査が終わっております。  私どものところでは、分科会は、いわゆる認定委員会でございますが、これは全部で百三十三設けておりまして、我々の広域連合は十四の支部に分かれております。ですから、実際に活動するのは支部でございまして、平均いたしますと六までは行きませんが、それくらいの市町村の数が一つ支部の単位になっております。多いところが十カ市町村、一番少ないところで二つの町でございます。それぞれの圏域ごと市町村支部を構成しております。その支部にそれぞれ審査会を設けておりまして、土曜と日曜日の二時間ずつ審査会を開いておるところでございます。  さっき申し上げましたように、現在認定事務が終わっているのが二千ぐらいで、大体八割ぐらいが調査員調査が終了しているところでございます。現在時点まで、あなたは何度ですよというところまで行っておりませんからまだ不平などは出てきておりませんけれども、順調に認定事務が進められているという状況下でございます。そういうことで、広域連合準備も十分整え、しかも、与えられた事務も順調に進めているということでございます。  もう一つ広域連合のよさというのは、共通する事務を一括しますから、必要とする人員数が非常に僅少で済むことになります。したがって、三分の一ぐらいの人員で我々は事務を進めることができる。したがって、今のところ実績が出ておりませんから何とも言えませんけれども経費だけでも十億近い節約ができることになります。  これは、七十二の市町村がそれぞれ個別でやりますとそれだけの費用を必要とするんですが、広域連合で行いますと、今申し上げたように十億近い経費節約ができることになりますのと、何といっても従事する職員の数が、さっき申し上げたような数でできるということです。だから、各市町村では担当の人が一人おれば済む。一人も要らないところもございます、兼務でやればいい。各市町村の役場、市役所で事務をやる者は、担当の人が一人おらなくても済む、こういうことでございます。  そういうことで、広域連合は順調にやっているということをまず最初に申し上げておきたいと思います。  さてそこで、お願いを申し上げてきた事項についてさらにお願い申し上げたいと思いますのは、最初申し上げましたように、二五%の国負担分がございますが、そのうちの五%が調整交付金ですが、これでは不足をするだろうと危惧をしているのが全部の市町村皆さんたちの思いでございます。ですから、同じ調整交付金をつくっていただけるならば、この二五%の外枠でさらに五%ぐらいの調整交付金を設けて、本当の意味での財政支援をしてあげたらいかがかとお願いをしたい、こういうことでございます。  それから次に、この前からいろいろ議論されておりますけれども、例えば、保険料の四月一日から九月末までは〇%、徴収しない、以後一年間は二分の一にしたらどうかというお話がございます。それだけ膨大な額の負担、言うなら支援を国がしていただけるとするならば、一番大事なのは、さっき申し上げたように、二年有余かかって我々市町村準備を進めてまいりましたが、そのためには経費がかなり必要であるということでございます。  私どもも、初年度は、最初の年は、言うならば、やりましょうと言って進めてきた準備費が六億かかりました。ことしはさらにその倍ぐらいの費用が必要となります。これは、自分たちでこの準備を進めたり事務を処理しているところでございます。  ところが、この七千九百億円とか九千億円とか言われる保険料相当額を交付するとするならば、ぜひそこでお願い申し上げたいのは、我々は立ち上がらなければなりません、だから、立ち上がる資金として一千億ぐらいは交付をしていただいても決して私はむだではないというように思います。  言いかえますと、市町村が順調に準備を進めてきて、よし、四月一日からこの制度を円滑に導入し実施をしていくぞということになりますと、それなりの資金が必要になってまいります。ですから、これは一千億ぐらいは全国市町村に立ち上がり資金として交付しても決して多い額ではない、こういうように思っておりますので、ぜひそういうことをお考えをいただければと思います。  さらに、この制度の中で財政調整交付金と安定化基金を設けることになっておりますが、これは、国、県、そして市町村負担保険者負担ということになっておりますけれども、これはやめてほしい。これは、もう制度で決めてあるけれども、できるならば実施をしないでほしい。それより別に、立ち上がり資金のほかに、市町村保険料を十分確保するために安定化基金をつくって支援をしていただくことが必要ではないか、こういうふうに思いますので、別途の財政安定化基金制度を設けていただきたい、こういうふうに思います。  次に、事務費でございます。  事務費は、この認定事務に関しましては二分の一を交付するということになっておりますけれども、実際、認定事務だけではございません、いろいろな事務がございますので、二分の一の交付を受けますと、実質的に幾らになるかといいますと四分の一になってしまいます。四分の一しか事務費の補助はないということになりますから、ぜひ増額をしていただくよう、さらにまた対象事務経費を拡大をしていただきたいというふうにお願いを申し上げたいと思います。  それから次でございますけれども、先ほど申し上げましたように、認定事務が今始まっておりますけれども、今備えております一次の判定を行いますためのパソコンがとても足りません。私どものところでは今それ専用のものを二十八台設置をしておりますが、そのほかに別のコンピューターも用意をして、資料を打ち込みながら一緒に片一方の方に打ち込んでおるんですけれども、現在では、その親になるのが全部で二十八台備えておりますけれども、とても足りません。あと十八台ぐらい増設をしないと、四月一日の実施に入っていくのに間に合わないという心配がございます。そういうことで、それらをお願い申し上げたいということでございます。  それからその次は、ホームヘルパーを二十四時間体制でやらなければなりません。したがって、二十四時間体制にするためには、ヘルパーの数が、必要量が供給量の二倍ないし三倍になるということでございますから、その点についての養成を行わなければなりません。これらの支援お願い申し上げたいということでございます。  それからもう一つは、民間導入になってきますから、国はマニュアルをつくって、民間がこのマニュアルに従って介護サービスができるようにすべきだというふうに思いますので、ぜひお願いを申し上げておきたいと思います。  時間が何か短いようでございますので、大変申しわけありませんから、あとは項目だけ申し上げますので、ぜひひとつお願いをしておきたいと思います。  それから次でございますけれども、もう一つは、給付サービスをしていく上で、サービスをしましたということの確認ができるような機器が必要だと思いますので、それらについても十分配慮を願いたい。  それから、制度外の事業についても十分な支援をしていただくようお願いを申し上げたいと思います。  それからさらに、新新ゴールドプランでございますけれども、これは時間をゆっくりかけていただくよう御配慮願いたいと思います。余りせかしてつくりますと、また雑なものになって安定をしないということになります。  それから、家族介護制度のことでございますが、例の家族介護というものは制度外でやるよりも制度内でやることが本来は望ましいと思いますので、御配慮を願いたいと思います。  それから、低所得者に対しましての一部負担を三%にするということでございますが、七%分は完全なる十分の十で御負担をしていただきますようお願いを申し上げたいと思います。  少し時間が足らなくなりましたけれども、項目だけ申し上げさせていただきましたので、十分御配慮いただきますことをお願い申し上げまして、私の説明を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、池田参考人お願いをいたします。
  7. 池田省三

    池田参考人 一万人市民委員会の運営委員を務めております池田でございます。  先ほど来のお話にもございましたように、介護保険見直しは、市町村に大混乱を、住民に大きな不安をもたらしております。のみならず、介護保険の理念が空洞化して、ようやく緒についた介護社会化が決定的に立ちおくれてしまう、そういったおそれも極めて強いものがあります。したがって、介護保険見直し見直しが必要であります。  問題点を三点に絞って述べさせていただきたいと思います。  第一に、この見直しが総選挙を目前にして国民に新たな負担を求めるのは得策ではないという議員心理に基づいたものであって、動機が甚だ不純だということであります。  マスメディアを初め多くの世論調査では、国民負担してよいと答えた保険料額は三千円に集中し、これに五千円が続き、そして二千円が続くという形になっております。すなわち、介護保険負担はほぼ国民合意がとれている。市町村の担当者に聞いても、低所得者対策という問題を除きまして、負担を心配する声はほとんどございません。徴収を猶予、軽減する必要は全くないということが言えると思います。むしろ、徴収延期は住民合意の努力をしてきた市町村の努力を裏切る背信行為だと言わなければならないのではないでしょうか。  この特別対策のために一兆円が投じられます。そのうち七千八百五十億円は第一号保険料対策費で、財源は赤字国債ということになります。借金は最終的に国民が返済しなければなりません。つまり、若い世代の負担へとツケ回しがなされるわけです。年金や医療において世代間の負担のアンバランスが問題になっている今、その場しのぎの財政施策をとるのは余りにも無定見だと言わなければなりません。  現在の高齢介護の実情を見るにつけ、私たちは十二分に親不孝であったと反省させられます。この上、子供不幸を積み重ねるということは、未来に責任を持った政治ではありません。  しかし、一兆円を未来に役立てることもできます。一兆円あれば、一戸五千万円でグループホームが二万戸建設できます。十億円で五十人特養をつくれば、五万人が利用できるわけです。介護サービスの待機者はほぼ解消できるではありませんか。国民の求めている政策は何でしょうか。政策のプライオリティーから見れば、サービスの基盤整備であることは言うまでもないことであります。そのために、補正予算に一兆円が仮に組み込まれるとするならば、これをどのように使うのか、それは市町村の自主性に任せるべきだと考えます。  介護保険市町村の自治事務です。市町村がその財源を基盤整備に投じ、介護保険料は予定どおり徴収する。それは違法でも何でもありません。逆に、政府が市町村に徴収を禁止するならば、それは明らかに法律違反と言うことができます。もちろん、その場合、市町村の足並みがそろうとは思われません。しかし、それはそれでよいのです。判断するのはそこに住む住民なのです。地方分権、住民自治という観点から、国が画一的に押しつけようとする時代は終わりを告げなければならないということであります。  第二に、子が親に孝養を尽くす美徳という言葉の欺瞞性であります。  そもそも、今高齢者を介護している人たちは三三%が嫁であります。二八%が妻であります。子供は二割程度にすぎません。その子供もほとんどは娘であります。孝養の美徳とは、現実を見ない空論であり、過酷な介護を強いられている女性に何の配慮もない男性優位の儒教思想と言っても過言ではないでしょう。  そもそも高齢介護の問題は、家族観の相違で争うようなものではありません。かつてのように、倒れてから一週間、一カ月で亡くなっていった時代は、家族が献身的にその最期をみとることができました。大家族制の中で家族が支え合うことも可能でした。しかし、医学の進歩は介護を必要とするお年寄りの寿命を大きく延ばしました。今寝たきり高齢者の半分は、三年以上寝たきりです。二十四時間、一千日を超える介護が一人のなせるわざではないことは、だれにでも理解できるはずです。  高齢介護の問題は日本の歴史上初めての経験であり、だからこそ介護社会化必要性国民共通の認識になったということが言えると思います。家族観の違いで争うべきものではないということであります。  実は、家族の介護は望ましいのでありますが、家族だけの介護は必ずしも望ましいものとは言えないのです。介護疲れで親に憎しみを覚え、虐待が始まるということだけを申しているのではございません。愛情に満ちた献身的な家族介護にあっても、社会サービスの風を入れた方がいいのです。大事にする余り安静にする、つまりは寝かせきりにして、自立への契機を摘み取る。適切な介護方法を知らないまま、状態を悪化させてしまう。  あるいは、痴呆性高齢者の場合、家族であるがゆえに、親の痴呆を認めることを拒んで、問題行動が起きれば、これをたしなめ、抑止しようとします。痴呆高齢者も意識はあり、プライドもあります。他人にはわからなくても、問題行動とされるものには本人の中には必然性があるわけです。これをしかるのは本人にとって侮辱であります。力ずくで抑制するのは虐待と受け取られるわけです。その結果、痴呆性高齢者の問題行動は拡大再生産され、昼夜逆転、ついには収拾のつかない泥沼に陥っていく。それは、現在の家族介護の中で普通に見られることではないでしょうか。  そこに社会的な支えを提供する。プロの介護技術を導入する。そのことによって、高齢者の落ちつきと家族のほほ笑みが戻ってくるのです。今、社会的サービスを利用することをためらう人が少なくないのは現実です。しかし、一たん利用した人がサービス利用をやめたという話はほとんど聞いたことがございません。  家族慰労金という形で現金をばらまき、社会的サービスの利用を阻害するとするならば、それは逆に家族崩壊につながりかねない愚策であることを思い知るべきであります。この財源についても当然市町村の権限にゆだねてしかるべきであります。  最後に、第三でありますが、介護保険を租税負担とするべきという主張に隠されている最も危険なものについて語らなければなりません。それは、高齢介護を、家族介護という自助、自助努力と、弱者救済の公助、社会扶助のみに切り縮めようとする動きであります。  政府が三党合意に引きずられながらも法改正を行わず、介護保険の骨格を守ったことは、当たり前のこととは言いながら、唯一評価できることです。  これまでの公的介護サービスは、措置制度という行政による社会扶助、すなわち公助で運営されてまいりました。市町村がだれにどのようなサービスをどの程度提供するかを、行政の裁量によって決めてきたわけです。財源は租税であり、予算によって賄われてきました。したがって、予算がなくなれば、そこでサービスは打ち切られます。ニーズに対応したサービスが提供されるのではない、供給が需要を管理するわけです。これはまさにソ連型経済と言わなければならないのです。  したがって、サービスの対象者は限定されざるを得ません。優先順序は扶養関係と所得水準ということになります。つまり、ひとり暮らしのお年寄り、生活の苦しい低所得者が優先されます。これは当然であります。しかし、そこで予算はなくなり、国民の大多数である中間所得階層までサービスが回ってくることはなかった。  のみならず、社会的弱者対象という福祉に対して、普通の市民は、お上のお世話にはなりたくない、福祉のお世話にはなりたくない、そういったプライドを持っていますから、サービスの要求も顕在化しません。ぎりぎりまで家族介護し、お手上げになったら老人病院に社会的入院というお決まりのコースになってしまうわけです。この悪循環が介護地獄というものを生み出してきた。  政治的に争われている社会保険か租税負担かという論議は、ほとんど意味はありません。問題は、公助なのか、それとも共助なのかという軸で論じるべきです。  これまでは、家族介護という自助、措置制度という公助しかありませんでした。国が徴収する消費税で介護費用を賄おうとすれば、国がサービスの水準を決定することになります。予算で締め上げれば、介護サービスは幾らでも縮めることができます。増税を言わないで租税負担方式を語るということは、すなわち、社会的サービスはふやさない、自助努力、家族介護にゆだねるという結論に必然的に達します。これだけは絶対にとってはならない政策であると言い切れるでしょう。  介護保険は、このような自助と公助だけの世界に、お互いに助け合う共助、地域ごとに支え合うシステムをつくり上げようというものです。みんなが負担を分かち合い、いざとなったらみんなで支える。しかも、負担サービスの水準は市町村ごとに住民の判断で決定していこうというものです。住民自治による共助システムです。自立した市民として、自分たちの生活に責任を持ってともに支え合う。そして、家族を介護負担から解放して、家族の間にほほ笑みのある互助を取り戻し、介護保険だけではカバーし切れない部分は福祉で、すなわち、公助で補完するという仕組みであります。  古い政治の世界では、自助と公助しか頭にないようであります。しかし、すべてが自助だけで解決できるわけではありません。すべてを公助にゆだねれば自立が失われます。二十一世紀の超高齢社会を目前にして最も重要なことは、国民が共助の思想を身につけることだと思います。  介護保険見直しで決して許してはならないことは、この共助の思想の否定です。そのことを繰り返して主張し、私の意見陳述にかえたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、肥田参考人お願いいたします。     〔委員長退席、安倍(晋)委員長代理着席〕
  9. 肥田泰

    肥田参考人 私は、全日本民主医療機関連合会の理事をしております、埼玉県川口市で埼玉協同病院の院長をしております肥田と申します。  現場で医療介護にかかわる立場から意見を言わせていただきます。  私ども民医連は、切実さを増す介護について社会的な支援が必要との立場から、公的介護保障の確立を求めてきました。介護保険法成立に当たっては、残念ながらこの制度には後で述べるような重大な欠陥があり、保険あって介護なしとなる危険性を指摘し、その抜本的な改善を求めてきました。  政府も遅まきながらこうした欠陥を認識されてか、当面の保険料徴収の先送りなどの特別対策を発表しました。しかし、提示されている対策は当面の矛盾を先送りするだけにすぎません。しかも、数々の報道に見られるように、実施内容をめぐっての政府・与党の迷走は国民と地方自治体に無用の不安を与えています。  何よりも特別対策には、保険料の徴収を延期する間に具体的に何をどう改善するのか、この具体策が一切示されていないことにあります。国民の不安は、保険料を払ってもサービスが希望どおりに受けられないのではないか、あるいは切実で深刻な介護問題が解決されないのではないか、ここにあります。  医療現場でも、介護保険についての相談がふえています。もう限界という声や、介護保険になれば新しいサービスは受けられるのか、こういうどれも切実な相談が寄せられています。  最初にまず基盤整備について触れさせていただきます。  私の病院のある川口市では、二〇〇〇年三月までに特別養護老人ホームの達成見込みは四六%、老人保健施設は二一%、ホームヘルパーは五一%であります。とても満足な介護が提供できるとは考えにくい状況にあります。  厚生省は、介護保険で支給するサービス基盤の整備率を、在宅では必要量の四〇%、施設は六十五歳以上人口の四・三%を目安としています。整備目標そのものが低いというふうに思いますが、この目標にさえ到達できない市町村が存在しているわけであります。現状の基盤整備の状況介護保険実施されれば、国民は新たな負担を強いられるのに、介護サービスが低下したり、あるいは受けられないというおそれが現実のものとなります。介護保険法成立に当たって強調された権利が実現されないばかりか、お金を払ってサービスがないなどということは詐欺行為にも等しいということになります。こうした事態をわずかばかりの慰労金で糊塗しようということも私どもは許せないというふうに考えています。  まず第一に、低い整備目標を抜本的に改めて、その目標達成のために国庫負担を思い切って増額する措置が必要である、このように考えます。  第二に、保険料そのものの負担のあり方の見直しが必要だというふうに考えます。現在自治体が公表している保険料額では、その負担に耐えられない方が多数存在するという問題であります。  ここに、私ども実施した「要介護老人実態調査(概要)」という報告があります。参考にしていただきたいと思います。  私ども民医連では、昨年秋に、実際に介護が必要な状態にある全国およそ約三万人の実態調査を行いました。この四ページのところにありますが、その中で、世帯収入を生活保護基準に照らしてみると、基準を下回る世帯が全体の三二・四%にも上ったわけであります。中でも深刻だと思われるのがひとり暮らし世帯で六八・七%、実に約七割の方が生活保護基準以下の所得であります。二人暮らし世帯では四割です。  厚生省が行った平成六年の国民生活基礎調査をもとに杉村宏氏が低所得・貧困世帯の実数を推計したのがお手元の表であります。一枚の表になっております。これによれば、生活保護基準以下の世帯が一五・五%、六百四十一万八千世帯、保護基準の一・四倍以下の低所得・貧困世帯は三八・七%、およそ千六百万世帯であります。  やはり高齢者世帯は一層深刻で、ひとり暮らしの方で三四・七%が基準以下、一・四倍以下の貧困世帯が過半数を超える状態であります。調査は五年前のものですので、その後五年間の不況の進行を考えれば、事態は一層深刻であろうと予想されます。ことしの国民生活基礎調査でも一世帯当たりの平均所得で三万五千円低下しており、この予想を裏づけるものとなっています。  五段階保険料で低所得者には配慮したというふうにされていますが、標準保険料の半額となる方はごく限られた人であります。低所得者のほとんどは基準の七五%の保険料になると考えられます。公表されている保険料約二千九百円ということから計算しても、月々二千円強、年額二万五千円になる保険料は、これらの人にとって過酷な負担と言わざるを得ません。  本来、介護を含む福祉サービスにおいては、住民税非課税者は費用徴収をしないという基準であります。今回、それが標準の保険料支払いの基準とされたところに重大な問題があると考えます。ましてや、こうした所得状況では、一割の利用料が払えない人が多数生まれることも明らかであります。  私の病院には、現在約二百三十件の往診患者さんがおります。お手元に二例の当てはめ例をお示ししましたが、介護保険によってそれぞれ月々約三万円、一万円の負担増となります。全体の約八割が負担増となります。この負担増に耐えられない人が多数出ることが考えられます。払えない人のことを考えない制度では、負担給付の公平など実現しないというふうに思います。  特別対策では、第一号被保険者に限って半年間の保険料徴収の延期、その後一年間の半額保険料とされていますが、これは矛盾の爆発を先延ばしすることにとどまり、保険料の根本的な問題は解決されないと考えます。  第三に、こうした新たな負担を押しつけながら、国自身はこれまで福祉制度に使っていた費用を大幅に減らしたことの問題であります。  一九九五年の制度設計の段階で、三千七百億円の国庫負担を削減したことは御承知のとおりであります。提案者がみずからの費用面での責任を大幅に後退させておいて、一方的に国民負担を押しつけることは問題であります。せめて国の負担割合を現行措置制度実施しているように二分の一に戻せば、恒常的な保険料の免除も含めた低減が可能であると考えます。  第四に、要介護認定の審査の問題であります。  この審査会委員として参加している職員もいるわけですが、第一次のコンピューター審査が実態に合わないものであるということを指摘しています。コンピューターの判定基準がとても科学的とは言えない、高齢者の人権を侵すものなどの批判が認定審査にかかわる人たちから寄せられています。それぞれ審査会による第二次審査での見直しに努力されているわけですが、それが過重な労働負担になっているということであります。第一次審査のあり方を含めた見直しが必要であることを強調させていただきたいというふうに思います。  時間の関係から、一つは基盤整備に国がもっと力を注ぐべきであること、二番目に保険料、利用料の減免あるいは減額、助成を行うこと、三番目に国の財政負担を少なくとも従来の二分の一に戻すこと、四番目に介護認定審査の見直し、以上の四点にわたって問題点を述べさせていただきました。  医療介護の保障は、予防も含めた最低限の保障を国の責任実施することが前提だというふうに考えています。そのことが重篤な患者や重度の要介護者の発生を防ぎ、財政的にも高齢社会に備える道につながると考えます。かつて、国保の実施に当たって国民保険制度を実現させたときには、各地に国保診療所が建設されてきました。  介護保険スタートを直前にして、政府が財政面でも政策面でも公的責任を明確にした諸施策実施し、国民の願いに沿った制度の抜本的見直しを進めていただくよう要望して、私の意見とさせていただきます。(拍手)     〔安倍(晋)委員長代理退席、委員長着席〕
  10. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、光武参考人お願いをいたします。
  11. 光武顕

    ○光武参考人 ただいま御紹介をいただきました福祉自治体ユニット代表幹事、そして佐世保市長を務めさせていただいております光武でございます。  陳述の前に、福祉自治体ユニットについて少しく説明を申し上げますならば、このユニットは、一昨年、今日百七十ございますが、当時九十幾つの市町村で出発をいたしました。そして、何を目的とするかといいますと、こうした介護保険実施されるに当たりまして、現場である、そして保険者であります地方自治体においてどういった問題が発生をするのかといったようなことを現場の立場として考え、そして、国に対しまして、改めるべきところはどういった点なのか、あるいはこうしたものをどう考えるかといったようなことで提言をするということを目的にして、今日まで二年間活動してまいったのであります。事実、私どもの方の現場でも幾つかの提言をさせていただいております。  そういう中で、私は、福祉自治体ユニットの代表幹事として本日は陳述を申し上げるわけでありまして、よろしくお願いしたいと存じます。  これまで、私ども佐世保市にありましても、他の市町村でも同じであると思いますけれども、この新しい介護保険制度というものを実施していくに当たって何が一番大切かということで、内部でいろいろ議論をいたしました。  そのうち、まず出てまいりましたのが、何と申しましても、これは介護保険者が市であるということ、したがって、どのような施策をするのかということにつきまして市民から絶対的な信頼を受けるようにしなければならない。そのための方策は一体何なのかといったような問題を考えつつ、市民に対して公平、公正さということを理解していただくとともに、その理念あるいは仕組みについて、四月一日の介護保険制度の前に皆さんの十分な理解を得ておくということが最も大切なことであるという認識を市全体で持ちました。  そして、市といたしましては、私もそうでありますけれども、大体二十カ所ぐらいにわたりまして、私自身も出てまいり、一時間のお話をしながら、なお一時間の質疑を受ける。さらに、私のみならず、担当の部下の者は、たとえ三人であれ五人であれ、そこに出かけていって、この理念、仕組みについてのお話をさせていただきました。これは相当なエネルギー、さらにはまたコストがかかるわけでありますけれども、何と申しましても、やはり市民にこれを理解していただかなきゃならない、そのことを達成したいということで努力をしてまいったつもりであります。  さらにまた、これが官製であるということではいけない、こういうことから広く市民から公募いたしまして、二十人の方々が応募していただいたんですが、この方々にも既に二十数回にわたって議論をしてもらいました。  我々としては、あとう限りの情報を提供し、市民の会の皆さんに御議論いただいたわけでありますけれども、こうした市民の会の皆さんは、独立性をみずから守るということから、一切の費用弁償をやらず、弁当も出さず、ただただお茶一杯で議論をしていただいた。それは、何と申しましても、自分たち市民代表者としてこうした制度理解し、そのことを市民とともに共有したいという皆さん方の熱意があったと思うのであります。  そういう中で、私は、今回の介護保険制度の仕組み、理念というものについては、ようやく市民の皆さん方に御理解をいただいてきたというふうに考えておりました。  ところが、今回、三党合意によります政府案を拝見いたしましたけれども、こういう形になるとするならば、これはまた市民の皆さんに何と話をすればいいのか。これは信頼感を根こそぎ揺るがすような問題でありまして、市長、おまえはこういうふうに言っていたではないか、それがいとも簡単に半年凍結をする。しかも、この三党合意の中に承りますと、それから先も財源問題についてはお互いが話し合いをして、将来どうするかということを決める。つまり、半年先のその先がまだ見えない。そうしますと、仮にというような形になりますと、これまで二年間、そうした理念、システムについて説明してきた佐世保市は、市民から一挙に信頼を失うことになる。これが私どもにとって一番つらいと今思っております。  いろいろ理念的なことも申し上げたいのでありますけれども……。  なお、この制度を今から変えていくということによってどんな問題が出てくるかということなんですが、まず、例えば既にコンピューターにソフトとして開発しているものを変更しなきゃならない。これはまた莫大な費用がかかりますとともに、実はそのために相当な労力を必要といたしまして、これが間に合うのかどうかということにつきましては、多くの市町村で不安を抱えております。  私どもも、国の仕様による標準パッケージに本市独自の変更、カスタマイズを加えておりまして、この財源となる一号保険料を徴収するかしないか、するとしてどのように徴収するかを早急に検討しなければならないといったような問題が出てくるのであります。  それから、予算を計上するということになります。後ほど申し上げたいと思っておりましたが、例えば今年度の介護認定事務費については、私どもは一億二千万が必要と申請をいたしておりました。しかしながら、実際に、その半分である六千万円はおろか、二千百万円ほどしかもらえないといったようなことが伝えられております。そうしますと、これから膨大なコストをかけてこうしたコンピューターのソフトを入れかえていくといったような問題、あるいはそのことが間に合わない場合には手作業でやらなければなりませんけれども、そうした手作業が一体どの程度の膨大な量になるのか、今見当もつきません。  それを直ちに今からやらなければなりませんが、ぜひ御理解をいただきたいと思いますのは、確かに介護保険スタートは四月一日になります。しかしながら、実際に今皆さんが新たにこの予算案を審議なさる、最終日は十二月十五日と聞いておりますけれども、それから一月、二月、少なくとも地方の自治体の議会は二月の中旬ないし下旬から始まるんですね、その前に予算の査定をしなきゃならぬ。予算というものはどういうものであるのかといった中で、これだけ膨大な事務量をこなしていくために何がどの程度必要かといったようなことについては、これをやり遂げるということは非常に難しい、私はそう考えております。  とにかく、実態的に申しますならば、事務量として各市町村が負わなければならないこれからの負担、さらにはエネルギーというものは大変なものでありまして、そういう意味から申しますならば、私は、本来からいけば四月一日からこの法律どおりに施行させていただきたいというのが現在の心境でございます。  なお、こうした新たな特別に予算化されようとしている七千八百五十億円でしょうか、あるいはその他の事務費を含めましてかなりの金額に上ると思いますけれども、そうした財源があるとするならば、私は、少なくともこうした介護保険に要しますもろもろの市町村負担、これを全部洗いざらいにいたしまして、それを補完していただきたいというふうに思っておるのであります。  そうでなければ、私どもが今まですらかけてきた費用負担というものは、先ほど申しましたように、決して十分ではなかった。まだ私どものところは人口約二十五万でありますから、それなりに耐えていけるというか、配分を考えながら進めていくということはできないわけではありませんでした。しかし、また変えていくことによってこれ以上さらなる負担を負わせるということは、これは市町村にとりまして大変な大きな責任であって、これが仮にできない、間に合わないということになりました場合には、これは市町村長責任ではなくて、この制度を変える、そこに私は責任があるというふうに考えております。  そういう意味におきまして、今回のこの補正予算に上げます介護保険にかかわるものにつきましては、どうぞ皆様方が十分御審議をいただいて、そして、何よりもやはりこの実施主体でございます市町村意見を十分にお聞き願いたい。  私ども、実は何人かの市町村長とお話しする機会があって、何が今一番不満かと言いましたら、この一年間、我々にこの介護保険制度というシステムを市民に周知徹底させるようにといった話の中で、今回、全く我々の意見が聞かれないままに三党で合意をするといったようなことは、これは市町村として耐えがたいというふうな気持ちを持った方が極めて多い、そのことをつけ加えまして陳述とさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  12. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 江口一雄

    江口委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安倍晋三君。
  14. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 御質問をさせていただきます前に、大変お忙しい時間を割いて当委員会にお越しをいただきました参考人の皆さんに心から感謝の意を表したいと思う次第でございます。  まず初めに、今回の与党三党の、円滑に介護保険制度スタートさせるための特別対策についてお伺いをしたいわけであります。  今、市長会、町村会、また光武市長からも、それぞれ市町村長としての御意見をいただいたわけであります。もう既に固まった内容に対しての変更ということについて、今まで一生懸命この制度スタートするために大変な御努力をしてきた中にあって、ある意味では混乱を起こし、また、今まで努力をしてきたことに対して私ども与党が十分に敬意を表していなかったということに対しての憤り、私どもも今お伺いをいたしまして、十分にそのお気持ちというのは理解させていただいたつもりでございます。  ただ、我が党——三党といたしましても、これは大事業でございますので、いかにこの制度が円滑に運用できるかどうか、スタートさせることができるかどうかということで真摯に議論を重ねた結果、ああいう形になったわけであります。  ちなみに、一昨日の朝のニュースで報道されたわけでありますが、先週NHKが行った世論調査によりますと、まず介護保険見直しについて、来年四月から半年間は保険料を徴収しないなどの見直しを行うことについてどう考えますかという設問に対して、今のうちに見直した方がよいというのが三六・八%であります。制度実施状況を見た上で必要なら見直すのがよいというのが四六・一%であって、制度を見直す必要はないというのが一一・二%であったということでございます。スタート前またスタート後に実施状況を見ながらということも含めてであれば、八〇%近い方々見直しを考えた方がいいということであります。  保険料負担軽減についてでありますが、今度の与党三党の負担軽減案について、必要と答えた方が五二%、必要ないと答えた方が三五・五%であったということであります。また、いわゆる在宅介護支援、家族介護に対する慰労金等々の施策でありますが、必要であると答えた方が五七・四%、必要ないと答えた方が二八%であったということであります。  これをもって我々はこの特別対策を正当化しようという気持ちではなくて、ただ単に世論調査の事実を述べたわけであります。  しかし、先ほど来、光武市長、喜多市長、また山本町長からもお話がございましたが、特に一号保険については、地方分権ということにおいて市町村がそのサービス負担を決めていくという精神があるわけでありますから、それは当然尊重すべきだという御意見がございました。  我が党におきましても、そういう議論を重ねてまいったわけであります。その中で、半年間徴収しない、そしてまた、その後の一年間は半減ということを決定しているわけであります。そして、その後は保険料を全額ということになっているわけでありますが、その総額でありますが、七千八百五十億円の使い道につきましては、一定の条件のもとで、市町村の実情に応じて、準備にかかる経費あるいは基盤整備等々に市町村の独自の判断によって使えるようにしていくべきであろうということを、私ども自民党の社会部会では決定をしたわけであります。まだ厚生省とは交渉している最中でありますが、党としても、大体そういう方針で行こうということを決めたわけであります。  先ほど御指摘がございましたように、あくまでも自治事務であって、市町村が条例をつくれば徴収することができるわけであります。徴収権はあくまでも市町村にあるわけであります。ただ、先ほど喜多市長さんからも御指摘があったように、そのことによっての混乱も考えてもらいたいという御意見もございます。ということでございますから、私どもも、市長会あるいは町村会の皆様といろいろな議論を重ねながら、また御意見をいただきながら、そうした方向も検討していきたい、このように考えているわけであります。  そのことについてお考えをそれぞれお伺いしたい、こういうふうに思うわけでありまして、喜多市長さん、山本町長さん、そしてまた光武市長さんに、我が党のこの方針について御意見をいただきたいと思います。
  15. 喜多洋三

    喜多参考人 安倍先生の御質問にお答えをいたしたいと思います。  先ほど意見発表をさせていただいた中でも申し上げておりますけれども、我々市町村が当初から申し上げておりますのは、保険料はできるだけ安い方がいい、これはだれもが考えることです。そのために、こういうことをしてください、こういうことをしてくださいといろいろお願いをしておりました。しかし、それは一顧だにされずに、いきなりお金を七千数百億円、しかもそれが暫定措置であるということになると、これは非常に大混乱を起こすわけです。したがって、先ほど本論で申し上げましたように、恒久的な制度としてしっかりとぜひとも決めていただきたい、このようにお願いをしておるわけでございます。  もう来年四月実施ということは決まっておるわけでありますから、今いろいろな議論をする時間は余りないと思います。とにかく早く国の制度を決めていただいて、そして国民が安心できるシステムとして前進できるように御配慮を賜りますようにお願いを申し上げたいと思います。  以上です。
  16. 山本文男

    山本参考人 特別対策については、私どもは賛成はしておりませんけれども、国の方で決められるならやむを得ない。ただし、それを交付する場合に、御承知のとおり、一号保険料については市町村の専管事項ですから、国が決めてこうだというのは間違いだと私は思います、法律で決まっている以上は。しかし、それを特別対策で行うわけですから、それについて私どもは賛成はできないけれども、やるならやむを得ない。その場合の交付については、できるだけフリーハンドにしてほしいというお願いをしてまいりました。  それで、フリーハンドでといっても、全額フリーハンドにしますと混乱が起こりますから、最初の半年間についての〇%を、ゼロを幾らかにしますとこれまた問題が起こりますから、できればこの四月から九月までのゼロについてはそのままにして、あとの一年間の二分の一についてはできるだけフリーハンドにしてほしい。フリーハンドの分については、保険料にどれぐらい充てる、基盤整備にどれぐらい充てる、さっき申し上げたような事務費の助成にどれぐらい充てるということについては、一定の条件をつけてフリーハンドにすることが望ましいのではないだろうか、そういうふうに思います。
  17. 光武顕

    ○光武参考人 お答えいたします。  私は、先ほど来申し上げましたように、この制度の根幹を変えるということについては、ただいまの心境としては反対であるというふうに申し上げました。  ただ、今先生からお話がありましたように、特別事業として予定されるものを、地方自治体がその裁量によって使うということでフリーハンドを与えるということであるとするならば、私は、やはり地方自治体で足らざるものは何かというのはそこの長が一番知っているわけですから、それは一つの考え方であろうかなというふうに思います。我々としてみましても、とにかく基盤整備についてはそれなりに整えてきたつもりではあっても、なお足らざるものが多い。そういうことにその金が使えるということであるとするならば、それはまた一つの考え方ではないかというふうに存じます。
  18. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 この臨時特例交付金の仕組みとしては、市町村に基金をつくって、そこにこの交付金を入れるという形になるわけであります。冒頭申し上げましたように、なるべく市町村の実情に応じた形で使っていただくということも模索をしていきたい、このように思っておる次第でございます。  また、このたびの特別措置につきましては、あくまでも法律は変えずに、また、保険制度であるという根幹は変えないわけであります。半年間徴収しない、また一年間は半減ではありますが、その後は当初の予定どおりやっていくわけでありますし、また、サービス面においては根幹は全く変わっていない。  また、家族介護につきましても、十万円の慰労金ということが殊さら取り上げられているわけでありますが、これはパッケージの中の一つでございまして、家族で一生懸命介護をしている人たちに対して、介護教室を開いたり、あるいは、なるべくヘルパーさんの資格を持ってもらえるようなサポートをしていく、家族で介護をしている人たちの悩みをお互いに相談し合う場を提供する、デイサービス等も利用していただく、リフレッシュ休暇等を使っていただくということもしながら、家族の介護がなるべくうまくいくように、そういう全体的な応援であります。しかも、それによって、みんなで支えていくという共助が損なわれてはいけないということにも十分注意を傾注してきたつもりでございます。  時間が参りましたので、以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  19. 江口一雄

    江口委員長 福島豊君。
  20. 福島豊

    ○福島委員 公明党・改革クラブの代表の福島豊でございます。  本日は、参考人の皆様には、大変お忙しい中、国会までおいでいただきまして貴重な御意見を御開陳いただきましたこと、心より御礼を申し上げる次第でございます。  先ほどから、喜多参考人、また山本参考人のお話を承っておりますと、この介護保険法そのものは、完全な法律ということではなくて、とりわけ財源構造のあり方については見直すべき点は多々ある、そのような法律ではないかというふうに私は改めて実感をいたしました。  しかし、今回の三党合意に基づく特別措置対策のプロセス、また、市長会、そしてまた町村長会の御意見をいかにお聞きしたかという観点からいいますと、先ほど喜多参考人からお話がございましたように、極めて遺憾である、また、耐えがたい思いでいるという御批判というものは、しっかりと受けとめていかなきゃいかぬというふうに思っております。  そしてまた、今回の経過措置介護保険というような大きな制度でございますので、何らかの経過措置は必要であると私はかねてから思っておりましたけれども、その経過措置の期間の間に、皆様の御意見を踏まえた適切な見直しを進めるということが必要ではないかというふうに思っております。  本日の参考人の皆様の持ち時間は十分ということで大変限られておりますので、私の質問では、その足らざる部分を発言いただきたいということで使わせていただこうと思っております。  喜多参考人にお尋ねをしたいわけでございますが、一貫して、この調整交付金のあり方は大変大きな問題であるということを私はお聞きをいたしております。考えれば考えるほど、この介護保険というのは第二の国保になるなと。十年ぐらいの間に第二の国保になってしまうのではないかという思いがいたします。それを避けるためにも、この調整交付金のあり方というのは今後の議論の中で見直しをしていく必要がある、私は個人的にそのように思っております。  この点につきまして参考人の御意見を、もう少し時間をかけて、しっかりと御主張いただければと思います。
  21. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思います。  調整交付金の件でございますが、法律では、国は介護保険に要する費用の四分の一、これは総額でございまして、そのうち二〇%は全市町村に渡る、あとの五%は調整交付金ということになっておるわけであります。  しかしながら、私どもの属する大阪府では、調整交付金五%をもらえるところがほとんどございません。まず二・五から二・八ぐらいしかございません。したがって、その分はどこに行くかといいますと、調整をしてお渡しをしなければならない、介護を要する方々が非常にたくさんおいでになるところに回ることになると思います。このことについては、別に否定もいたしませんし、異議も申し立てをするわけでもございません。  しかし、介護保険料の仕組みが、全体の四分の一は国が持つ、あとの四分の一は都道府県市町村が持つ、そしてあと二分の一は一号被保険者、二号被保険者で持つ、こういうルールの中で、国が果たすべき二五%の額を減額されていることによって、その減額をされた市町村保険料は、保険料にその分が積み重なるわけでございます。  ちなみに、私ども、お隣の門真市とその向こうの四條畷市と三市で連合を組んでおりますけれども、ここで試算をいたしますと、二・二%現実に減額をされるわけです。これを金額に直しますと、月額保険料として三百四十円の影響があるわけであります。つまり、他の市町村のために我が町の市民が三百四十円多く負担をしなければならない、こういう実態になるわけであります。  これで果たして市町村保険者として責任が果たせるのか。他の分までカバーをするならば、それなら都道府県保険者にし、もっと言うなら、国全体で、いつでも、どこでも、だれでも同じ保険料、同じサービスをすべきじゃないか。これは、私が制度創設のときから申し上げておる、私の持論でもあるわけであります。  具体的には、今申し上げましたように、現実に他のところの方々の分を自分のところの市民負担させるということは、これは耐えがたい思いが非常にいたしております。この部分は、調整交付金五%は一律いただくという制度にぜひとも改めていただきたい、こう思います。
  22. 福島豊

    ○福島委員 私も守口市の住民でございますので、自分の市で使う分を払いたいというふうに思っております。  次に、来年に向けましての準備が本当に大変だと思うんですね。今までにコンピューターのシステムを全部整えてまいりましたし、それを組みかえなきゃいけない。私どもは、来年四月一日からの実施に向けての市町村の体制の整備については、全力で応援をさせていただきたいというふうに思っております。  その応援というのは、結局のところはいかに財政支援をするかという話になると思います。そして、このことはまた、平成十二年度の予算の編成をどうしていくのか、その中身をどうするのかという議論にもつながるわけでございまして、市町村準備支援という観点から、喜多参考人に来年度の予算に向けての御要望をお聞かせいただきたいと思います。
  23. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思います。  準備に対しては、もう既に各市町村全部かかっております。先ほどのいろいろな参考人の方の御発言にもございました、コンピューターを初めとしてモバイル、いろいろな機器も導入をいたしております。  しかし、今回、こういうことで変更になりますと、コンピューターのプログラムを変えなければなりません。一説によりますと、政令市でそれを変えるには一億円近い金がかかるというふうに聞いておりますし、もちろんそのシステムを変えるコンピューター会社のエンジニアも不足しておるということも聞いております。  そういういろいろなことをやろうとしますと、財政というものが出てくるわけでございます。今回の案を見ましても、この部分について具体的に国の責任でどうしていただくかという明記がございません。一番心配なのはそういうことでございます。  現実に、現行の中でも、いろいろな国の助成策がございますが、なかなかそのとおりお金をいただけない。予定をいたしておりまして物を買いました、現実は補助の内示が参りますと半分ぐらいしか金が入ってこないということで、あとの残りの金をどうするか、頭を痛めておる事例もございます。  ぜひとも、各市町村が円滑に事業をするために、潤沢にとは申しませんが、最低限必要なものについては全面的に御支援いただけるようなことを考えていただきたい、このように思います。
  24. 福島豊

    ○福島委員 最後に、国保の問題につきましてお尋ねをしたいんです。  今回の特別対策の中で具体的に医療保険者の支援をどう行うのか、まだ細部が決まっておりません。ただ、国保が大変大きな影響を受けるということは事実だろうというふうに私は思っております。  この中身を詰めるに当たりまして、市町村立場から、国保の保険者としての立場から、どういう支援のあり方が本当は望ましいのかということにつきまして、喜多参考人にばかりで大変恐縮でございますが、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  25. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思います。  私は、一号保険料よりもむしろ二号保険料の徴収の方が、実際に徴収を開始いたしたら問題になるのではないか、このように思っております。  一般的に、新聞紙上で発表されておりますのは、千円を少し出る程度だという報道でございまして、これは介護保険の一号保険料が二千五百円と言われていたのと同じような内容であろうかと思います。  しかし、試算をしてみますと、控え目に見ましても、最高額は年額で五万円以上七万円ぐらいが年額の保険料になるのではないかな、このように言われております。七万円になりますと、月額で五千円以上の保険料を払うということになりまして、現在、国保の方は世帯ごとの限度額が国の指導では五十三万円になっています。我が守口市ではなかなか五十三万円が取れませんで、五十万円ということになっておりますが、その上に七万円の二号保険料を積んで、果たして幾らの方が納めていただけるのかどうか。この説得がこれまた大変だと思います。  もっと大変なのは、私どもの国保の全世帯の中で、生活保護二人世帯で大体年収二百万円ぐらいになるんですが、それ以下の世帯の方が約七〇%おいでになる。これは税法のいろいろな問題がございますからそういうことにもなるわけでありますが、七〇%の方々がいわゆる生活保護並みの低所得だと考えれば、その保険料を今の国保料に上積みをして取ることが大変だ、このように考えております。非常に頭の痛い問題でございます。
  26. 福島豊

    ○福島委員 以上で持ち時間が終わりましたので、質問を終わりにさせていただきますが、本日は、参考人の皆様、本当にありがとうございました。  また、喜多参考人に質問が集中しましたことをおわび申し上げますが、残る時間での皆様の御意見をしっかり踏まえながら、私ども今後努力をしてまいりたいと思います。ありがとうございました。
  27. 江口一雄

    江口委員長 吉田幸弘君。
  28. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 自由党の吉田幸弘でございます。  きょうは、参考人の皆様、お忙しいところ貴重な意見をお聞かせいただき、ありがとうございます。  早速でありますが、まず喜多参考人に御意見をいただきたいと思います。  先ほど伺った御意見の中で、また今の直前の意見の中で、喜多参考人のお考えとしては、介護制度、もっと広い意味での社会保障制度というのは国が受け持たなければならない——地方分権という大きな課題がありますが、特に社会保障の考え、また介護制度の考えにおいては、地方分権の基本的な考えに乗っからず国が賄うべきである、国が行うべきである、国が国民に対してしっかりと保障をするべきである、このように私は感じ取ったわけであります。  実は、私も、社会保障に関してはやはり国がしっかりと国民に約束をすべき制度ではないかというふうに考えているわけであります。したがって、この点についてもう少し、財源の確保の方法も含めて、喜多参考人に御意見をいただきたいと思います。
  29. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思いますが、非常に難しい問題だと思います。  実は、私、五年前の老人保健福祉審議会の委員からこれにかかわらせていただいております。当初から私が申し上げておりましたのは、スケールメリットも考えれば介護保険保険者市町村にやらすのはおかしい、今でも私は個人的にそう思っております。しかし、一たん法律が決まったわけでありますから、市長会としては全面的にこれをやるという姿勢は変わりはございません。  しかしながら、それぞれの団体でやりますと、これは国民健康保険の実態を見ていただいたらわかるわけでございますが、お隣の町と同じような状態にもかかわらず、国民健康保険料は、同じような所得の方でも保険料が違うという実態が出ておるわけであります。しかし、医療機関は同じところにかかって、同じ費用を支払わなければならない。こうなりますと、市民の間で不平、不満が出てくるわけでありまして、しかも、その診療機関にかかられる住民の方の数によって、保険会計が非常に苦しくなったり、何とかいけているとか、いろいろな実態が出てくるわけであります。  社会保障ということを考えれば、それは国の方ですっきりとした一つのシステムにしていただく必要があるのではないか。市町村はそれの出先として、住民との接点として十分に役割は果たしますよ、私は当初からそう申し上げてきたわけであります。  しかし、そういうことは別にいたしまして、今現実に、来年から市町村保険者でやるということになりますと、先ほどからいろいろな意見が出ておりますが、住民にそういうことでいろいろな説得をしてまいったわけです。急に変えられても、急にはとまれないわけでございますし、方向転換はできないわけでございます。  先ほどどなたかがおっしゃっていましたが、住民の方から、市長、おまえ、言っていたことと違うじゃないかと私も方々で言われております。それほど住民方々に行き渡ってきておるなという実感もあるわけでございまして、そういう点では、恒久的な制度として今回の措置も少しお考え直しできるところはしていただきたいと先ほど申し上げた次第でございます。  どうか、本当にみんな苦労はしても信頼できるシステムになりますように、ぜひともお願いをいたす次第でございます。
  30. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 財源の確保の件が少し抜けていたように思うのですけれども
  31. 喜多洋三

    喜多参考人 財源の問題は、いろいろ出てくると思います。  結局、非常に耳ざわりはいいわけでございますが、自助、公助、共助と言いながら、自分のお金を出すのは嫌だ、税金を払うのは嫌だ、保険料は嫌だ、そんなことを言っておって社会保障として介護がうまくいくかといったら、これは私はいかないと思いますし、そのぐらいのことは国民の皆さんもよく御存じだと思います。  税にするのかどうかという問題であろうかと思います。私は、五年前は消費税でやればいいでしょうと申し上げましたけれども、きょうは市長会の代表として来ておりますので、この言葉は申し上げません。現行の制度の中でとにかくどうしてうまくスタートするかということを、皆さんぜひとも考えていただきたいと思います。
  32. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 力強い御声援、ありがとうございます。  次に、肥田参考人にお伺いをしたいと思います。  この介護制度スタートするに当たって、余り議論されてはいないと思うのですが、医療費との関係ですね。私も医療の現場で勤務をしていた経験から、この介護制度で対応する部分医療で対応する部分、これは医療費の総額に何らかの影響が出るのではないか、何らかのというのは医療費が減少していくんじゃないかなというふうに私は考えているのですが、そこの極めてグレーなゾーンについてどのようなお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。
  33. 肥田泰

    肥田参考人 確かに、介護保険によって、今現在やられている医療の中から介護保険に移行する部分が出てきます。その部分が一定医療費の削減につながるというふうに考えます。  ただ、今後、今考えられている高齢医療制度あるいは薬価制度が問題になってきますと、これ自身が全体として患者負担あるいは国民負担増につながっていくということを考えますと、全体として、この介護保険それから医療問題も含めて、今後国民負担がますますふえる方向になるのではないかということを私自身としては危惧しているわけであります。  ですから、介護保険に一定移行したからといって、その分一時期医療費が安くなる傾向があるかもしれませんけれども、今の高齢化社会状況を見れば、全体として医療費介護費は膨らむことは避けられないというふうに思います。  そのときに、それをどう負担するか。私どもとしては、今の国の財政の使い方そのものを変える必要があるというふうに考えています。公共事業一辺倒で、そこに大きくお金をつぎ込むことから、社会保障にお金をつぎ込むことに財政方向を変える以外に今の日本の財政状況変更する道はないのではないかというのが私自身の考え方であります。
  34. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 次に、池田参考人にお伺いをしたいと思います。  先ほど資料に沿ってお話をいただいたわけでありますが、この介護制度は、自助、互助、共助、公助、いろいろな方面からアプローチしていかなきゃいけないということはよくわかったわけであります。  それで、今回、初めて公的にというか、個人が行うわけではない介護制度スタートするわけであります。これは極めて画期的な制度であり、国がしっかりと国民皆様方にお約束をしなきゃいけない制度ではあるのですが、若い人たちの気持ちはどうであるのか。  私はまだ三十代でありまして、私の両親も健在であります。ただ、今後きっと私も介護をしなきゃならないときが来るだろう、受ける方じゃなくて、きっと両親とともに暮らして世話をしなきゃいけないときが来るだろう。このときに、国が、介護は個人ではできないとか、今の若い者はそういう考えが欠落しているんだ、こういうことは私たちの年代の者にとっては非常に寂しい思いをする部分でございます。  したがって、この制度の確立、また制度の充実というのは極めて重要であり、必ず行っていかなければならないことだということを前提として、若い世代の人たちに対する何らかの意見があればお示しをいただきたいと思います。
  35. 池田省三

    池田参考人 私も、学生に講義をしている関係で、この問題についてはいろいろと若い人たちの話を聞いております。  結論的に申しますと、今の若い人たち高齢者の介護の問題をかなり深刻に受けとめていて、これがいわば家族の中で解決できるかどうかというと、親が介護をしたりしていると、これはやはりともに支えなければならないというところでは大体意見が一致するようであります。そういった意味では、公的ではなくて社会的に、つまり、社会的にというのは近隣互助の助け合いから社会保険あるいはNPOというような助け合いもありますけれども、そういった幅広い支え、仕組み、こういったところに目が向いているという感じがします。  ただ、私が教えているのは福祉系の学生でございますから、そこは少し偏っているかもしれないと思います。  もう一つは、地方自治体の試みで大変おもしろいと思いましたのは、長野県の大町市を中心にした北アルプス広域組合というのがございますが、ここでは介護保険住民向けの啓蒙パンフレットをつくったわけですね。これをある中学校の一クラスに委託したのです。そうすると、その中学校のクラスの中で、療養型病床群だとか老人保健施設という言葉が乱れ飛ぶわけです。つまり、中学生が理解できるというところでつくったわけです。そのことが、また逆に、中学生の方たちに大変大きな介護意味というものを教えた。そういった意味では、多様なやり方があると思いますけれども、教育の中にそのような手法を取り入れていくことも必要ではないかと考えております。
  36. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 時間が参りました。これで終了いたします。  どうもありがとうございました。
  37. 江口一雄

    江口委員長 山本孝史君。
  38. 山本孝史

    山本(孝)委員 民主党の山本孝史でございます。  参考人の皆様には、きょうはお忙しい中、また遠方からお越しをいただきまして、ありがとうございました。  この見直しは耐えがたい思いがする、あるいは決められたとおりに実施をしてほしいというお声を聞きまして、困惑を越えて怒りに近いような現場のお気持ちがあるのではないかというふうに承っております。これほど現場の声と国会の中、あるいは厚生省がおつくりになった案とがすれ違っているというのも珍しいのではないかなというふうに思います。せっかくこうやって直接現場の声を聞かせていただける機会であるにもかかわらず、自民党の先生方は、二十一人この委員会におられるのですが、今委員長を入れて六人しかおられません。  私も、現場で介護の出前説明会というような、自分で説明をしながら、この保険制度の理念と制度が持つ意味合いを一生懸命説明して回っております。保険料負担を求めるというのは大変に難しいことですが、それを一生懸命現場の皆さん、市長を初めとして取り組んできておられる、その努力が全く水泡に帰してしまうような気がしてなりません。  きょう私がいただいている佐世保市長の光武さんの要望の中には、「制度見直し案については即時撤回し、」というような表現もあるわけですけれども喜多市長並びに山本町長さん、これは率直に申し上げれば、今回の見直し案は撤回をしてほしいという思いなんでしょうか。端的なお答えでお願いをいたします。
  39. 喜多洋三

    喜多参考人 先ほどの意見で触れることを私は避けたわけでございますけれども、イエスかノーかと言われましたら、どちらかといえば、保険料対策とすればイエスと言わざるを得ないと思います。  しかし、それよりももっと先にすることがあるでしょうということを先ほどから申し上げております。その辺のところをお酌み取りいただきたいと思います。
  40. 山本文男

    山本参考人 時間差があり過ぎるんですよ。だから、法律を決めたときに今のような議論をしていただければ問題はなかったんですが、準備を進めてしまって、準備が終わってからそういうのが出てきたから我々は賛成できないと言っているわけですね。  それからもう一つは、一年半後を考えたらいいんです。一年半後は、今度は当たり前になりますから、そういうときに我々にその責任がかぶってくる。その責任をかぶるのを嫌がるのではありませんけれども混乱を招くだけだろう、こういうことでそういうふうに言っているんです。
  41. 山本孝史

    山本(孝)委員 先ほど町長さんも読み切れないほど要望がおありになって、きょうの議論を聞いておりましても、ずっと法案審議をしていったときの問題点が結局積み残しになっていて、制度が発足してからのこの二年間余り何をやってきたのか、準備の仕方が間違っていたのではないかという思いは私もいたします。  ただ、新聞を読んでおりましたら、喜多市長なんかと一緒になって委員会委員でおられました野中町長さんが、ゼロではなく百円でも負担できるようにした方がよかったのにというような趣旨の御発言があります。私は、ゼロにしたのはやはり間違いじゃないかというふうに思うんですね。  今回の場合、国は確かに交付金を出しますけれども、もし市町村が独自に保険料を徴収しますと、その分交付金は減らすというふうに国の方は言っているわけです。確かに、これだけのお金を使うなら別の使い道があるという御指摘はそうなんですけれども、これはやはりゼロというところに非常に問題があるのではないかと思うのですが、喜多市長も何かそんな思いのようですけれども、いかがでしょうか。
  42. 喜多洋三

    喜多参考人 前回この法案が審議されるとき、平成九年の四月四日だったと思うんですが、やはりここへお招きをいただきました。山本議員からも御質問をいただいたわけであります。私はそのときに、修正のための柔軟な体制を組んでください、三年後、五年後で修正をするということじゃなしに、初めは大変なことになると思うから、一年ごとぐらいに見直しをしてください、このような提言も申し上げたわけであります。それから、財源確保の手だてを明確にしてください、こういうことも私は申し上げました。  しかし、それらがどうもこの二年間されておらない結果が、国民方々の中にも保険料が幾ら取られるかわからぬ、サービスがどうなるかわからぬという不安が、今回の三党合意の伏線であったのではなかろうかなと私は思います。  すべて私たち責任を持ってやりますと言っていますけれども市民方々もよく理解はしてもらっていますが、全体がそうなっているわけじゃありません。やはり保険料は幾らになるのという関心は物すごく高いわけでありまして、そういう意味からいけば、私が先ほど申し上げましたように、今回の措置、お金を何らかの形でするということはイエスと言わざるを得ない、こう申し上げておるわけであります。  ただ、その時期が非常に迫ってきて、今さら何だというのが我々の戸惑いになっておるわけでありまして、そこへかねがねから申し上げておりますことをこの際プラスアルファをしていただければ、我々ももっと元気を出して市民方々に接点を持って説得をしていく気持ちでございます。  以上でございます。
  43. 山本孝史

    山本(孝)委員 同じ質問を池田参考人に。  ゼロにしてしまったのは、これは大変問題を残すのではないか。ゼロで推移しまして、あと一年は半分で行って、その後全額にして、さらに三年たったところでまたこれを上げなきゃいけないという話になるわけですから、ゼロとは何だ、ゼロであるならば全部税でやればいいじゃないかという議論になる、これは払う側からすれば必ずそう思うわけですね。大変に説明のしづらい仕組みになっていくというふうに思います。そういった点、池田参考人はどのようにお受けとめでしょうか。
  44. 池田省三

    池田参考人 おっしゃるとおり、私は、四月一日から保険料を徴収することを開始する、これは極めて重要なことだと思っております。なぜならば、特に今までの日本の福祉というのは、自助努力、それから国が保障する福祉、措置、つまり公助、その二つしかなかったわけです。  もう少し明確に申しますと、自助できるのはだれかというと、お金持ちは当然自助努力でいけるわけですね。そして、実は、低所得者の方には措置制度という形で、その水準と量について問題はもちろんございますけれどもサービスは一応行っているわけであります。真ん中の中間所得階層、ここはいわば自助努力も困難である、かといって公助もない、そこに介護保険の最も大きな意味がある。  そして、介護保険というのは、自分たち費用負担し、その費用に見合ったサービスというものを考えるという意味で、自治的な一つの仕組みでございます。自治的な仕組みであるならば、当初からお金というものを負担するということを始めないと、制度自身の本質が壊れる、そういった意味では私は絶対に必要だと思います。  そして、もう一つ言えますのは、実は、コンピューターシステムの修正というのは実に大変でございます。SEがいないんですね。つまり、二〇〇〇年問題がございますから、そちらの方にとられてSEが動員できない。そうすると、四月から一体ソフトは動くのかという問題、これは現場では本当に深刻な問題になっています。  以降は半分冗談に聞いていただければ結構なんですけれども、私は、今回の特別措置というのは、これは朝三暮四だと思っております。だからどうでしょう、朝四暮三にしたらどうでしょうか。四月から保険料を取って、十二月に戻し税で返せばいいじゃないですか。そうすれば一年間の猶予がありますから、コンピューターのシステムは変えられます。  いずれにしても、山本委員のおっしゃるとおり、保険料負担する、そこから始めるというのは介護保険の原点だと私は思っております。
  45. 山本孝史

    山本(孝)委員 今回の見直しは、保険料軽減策にあわせて幾つかまた見直しの点が入っているわけですけれども、その中の一つに、低所得者の利用料負担軽減という形で、現にホームヘルプサービスを受けている方は、来年からその自己負担を一割ではなく三%にしてもいいという形になっています。この見直しが現場でどういう状況をもたらすのかということを光武参考人にお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  46. 光武顕

    ○光武参考人 お答えいたします。  今お尋ねがありましたのは給付理事務でありまして、今年度じゅうにホームヘルプサービスを受けている者で、低所得者との制限があるということでこの三%というのが出ておりますが、実際に対象者の把握というものは難しいということなんですね、特に国保連におきましては。この支払いというのは、九七%を保険で支払うべきだ。  さて、その対象者の管理や支払い業務が複雑になってまいりました。多分、これは年度内でコンピューターの開発は難しいんじゃないか。これまでも、この問題につきましてはなかなか困難であるというお話でやりとりがございました。したがって、この問題は恐らく間に合わないんじゃないかというふうに私は感じております。     〔委員長退席、木村(義)委員長代理着席〕  それから、間に合わない場合どうするかといいますと、当面九〇%について通常の支払い業務で支払う、そして残りの七%は別途手処理で事業者に払う方法といったようなことも考えられますし、あるいは償還払いといったようなことが考えられます。  さらに、これは新聞情報でありますけれども、社会福祉法人からのサービスは五%負担といったようなことが出ておりました。これはどうなるのか。我々は報道で知った限りですが、しかし、こうなりますと、また三%とか五%、一〇%、三種の負担割合が発生するのですね。そういった管理が極めて難しい。  いずれにいたしましても、受け付け、減額認定証の発行を行うといったような資格管理、審査払いの各業務が新たに発生するわけでありまして、そのためのシステムの開発ということも出てまいります。負担割合がそれぞれ違う個々人について、サービス業者へこの人は三%、この人は五%といったようなことを知らしめなければなりませんが、こういった通知を一体どうするのか。  これだけ考えましても、実は非常にこの事務量というものが膨大になってまいりまして、私どもといたしましては、さらにこれをまた市民に全体としてPRしていくということは気が遠くなるような仕事のように思います。
  47. 山本孝史

    山本(孝)委員 喜多参考人にお伺いをしたいのです、同じような質問になりますが。  市長のところは、先ほどのお話では七〇%が生保水準以下の低所得者が多いというお話でございました。そうしますと、大変そういう影響を受ける方が多いというふうに理解をしたわけですけれども、守口市では、こうした制度導入時に当たる低所得者の利用料負担軽減ということを、今光武参考人はコンピューターの問題もあって大変だとおっしゃいました、喜多市長には、利用者すなわち市民の皆さんがこれをどういうふうに受けとめておられるか、現にサービスを受けておられる方、あるいは受けておられない方もおられるわけですから、そういった点も含めるとどういう状況が起きるだろうか、お聞かせいただきたいと思います。
  48. 喜多洋三

    喜多参考人 状況は佐世保市と同じことになると思います。ただ、まだ制度がはっきりどう変わるかということは新聞紙上だけでございまして、私ども具体的には何もいただいておりませんのでコメントは差し控えたいと思いますが、混乱をすることは事実だろうと思います。  しかし、それよりも、減額した利用料の残りの部分を一体だれが払うのかということに今関心が行っております。
  49. 山本孝史

    山本(孝)委員 保険者として運営される側とすれば、やはり国保の状況もありますし、いかに財政的な赤字を出さずに、しかも市民の皆さんにしっかり理解していただける制度にするかというのは、大変に御苦労なところだと思います。  池田参考人にお聞かせをいただきたいと思いますが、今度、いわゆる亀井さんの発言から始まって、家族介護慰労金という形で年額十万円、低所得者、そして要介護度4、5相当の人というふうに、途中から表現が変わりましたけれども、に出すという話があります。これは、一万人市民委員会に集まっておられる介護の現場で働いておられる方たち、あるいは介護をしてこられた方たちはどういうふうな思いで受けとめておられるのか、池田参考人にお聞かせをいただきたいと思います。
  50. 池田省三

    池田参考人 年額十万円というから聞こえがいいのでございまして、月額にすると八千円強ということになります。要介護5であれば三十六万円以上の現物サービスが受けられる方が、月額現金八千円を選ぶだろうか。極めて非現実的な提案にすぎないのではないか。そういった意味で、ある意味で片方でほっとしているわけです。使いようがない、そういった制度でございます。  一方、実は人をばかにするなという声が非常にございます。八千円とは一体何なのか、それくらい我々というか女性たち介護というものをコストとして評価しているならば、これはとても許せない。そういう二つの反応というものが見られています。  いずれにしても、おそらくそれは機能しないでしょうし、機能するとむしろ家族崩壊へつながる一つの道筋ということで、このことはおおむね一万人市民委員会の中では共通した認識であろうと思っております。
  51. 山本孝史

    山本(孝)委員 今回の一兆円近いお金の使い方として、保険料を取らないことへの穴埋めというのがいいのか、どういうふうに使うのがいいのか。きょう安倍さんはフリーハンドで使えるようにするんだ、すなわち、保険料軽減策にはしないというような御発言をされたわけですが、きょう御出席の市長さん、町長さんで、今保険料として設定を、仮徴収であれ予定しておられる金額、七月単価であっても試算されておられる金額があると思います、五年間の事業計画ですから、三年たった後のその次の三年間の保険料として幾らぐらいになるだろうという見込みを首長さんとしては当然お持ちだというふうに思うわけですけれども、そういった金額をお聞かせをいただけたらと思います。  今回フリーハンドで使っていいと言われても、先ほど私申し上げましたように、半年ゼロ、その次一年間は半分、その後の一年半は全額取る、その次に三年たちますとさらに高い金額になるのではないかと思うのですが、こういった取り方で、本当にフリーハンドで使っていいと言われても、これはなかなか任される側も難しいのではないかなという気がするのですけれども、最後に、喜多市長、山本町長、光武市長から御意見をお聞かせをいただけたらというふうに思います。     〔木村(義)委員長代理退席、安倍(晋)委員長代理着席〕
  52. 喜多洋三

    喜多参考人 まず保険料でございますが、私ども今三市連合でやっております保険料は、当初割り戻しも入れまして三千三十五円というのが試算した金額でございます。三年後に幾らになるかというのは、実はやっておりません。十年後には二・五倍と言われておりますけれども、恐らくそれよりももっと上に上がるだろうという予測をいたしておりますので、実のところ怖くて計算ができないというのが本心でございます。  それから、フリーハンドで施策をということがございましたけれども、先ほど他の方に御答弁申し上げましたように、社会保障としてこの制度をやる限りは、余りそれぞれの市町村で好きなようにやりますと制度がつぶれると私は思っております。
  53. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員長代理 池田参考人は所用のため退室をされます。  本日は御多忙中のところ、まことにありがとうございました。  山本参考人
  54. 山本文男

    山本参考人 フリーハンドにしてくれと私は申し上げたのですが、それはなぜかといいますと、一号保険料市町村の、保険者の専管事項なんです。もう法律で決まっているわけですから。それをトップダウン式にこれはこうするんだと言われたら、保険者としての責任がどこにあるのかわからなくなるわけです。ですから、市町村、いわゆる保険者に交付をしますから、後保険料に充当させるかどうかについては十分判断をして一番適切な方法をとってくださいという方がそれぞれの分野を守ることになる、私はこういうふうに思いましたから、できれば一応の基準を決めてフリーハンドにしてくださいというお願いなんです。そういうふうに御理解をいただければと思います。  その次は、三年後の保険料なんです。一番心配なのは、一年後に一年半後の保険料の問題が起こると思うのです。国はそういうふうにして措置をしたじゃないか、では、もう一回国に言ってみよう、ひょっとすると、また二分の一になるんじゃないかというような期待感を被保険者皆さんたちに与えることになると思うのです。  それで、いや、それはできない、無理ですよということを言うと、おまえは怠慢じゃないかと言われるのではないかというふうに思いますので、そこらあたりを心配している。だから、そこらあたりをどういうふうにしてうまくつないでいくかということを考えると、フリーハンドの方がいいんじゃないかなと思います。そういう意味で申し上げたところです。
  55. 光武顕

    ○光武参考人 お答えいたします。  私どもの方は、まだこの介護保険保険料について議会にも明確にしておりませんので、正確と申しますか、きちっと答えられないのですが、おおむね三千円から三千五百円ぐらいの間というふうに考えております。  また、そのことについては介護を考える市民の会という市民団体の皆さんといろいろとお話をしながら、こうしたことであろうかなというところでの御理解をいただいておりますが、まだ確定をしているわけではありませんので、その点ひとつよろしくお願いしたいと思います。  三年後にどうなるかといったようなことですが、これは大きくアップをする。そのときにどうなるのか。私が一番恐れるのは、先ほども何遍も申し上げましたように、これまで市民の皆さんにいわば給付負担ということについて繰り返しお話をしてくる中で御理解をいただいた、それが、例えば今回のようなことがありますと、今御発言がございましたけれども、やればできるんじゃないか、こういったようなことでまた話がぶり返してきて、そして、それは結局は、おまえがこれまで言ってきたことはどうなんだということにつながる。  つまり、一年半にわたります、私ども市民に対する理解を得るといったこと、そして、ようやくそこまでやってきて、市民の皆さんも、これからの人口構成等々を考えたり、少子・高齢化ということについて考えれば、それはそういうことなんだなというふうな段階に参っておりましたものを、制度として入れかえていくということになりますと、その時点になってみなきゃわかりませんけれども、恐らくは市民の間から、値上げをする、アップをしていくということについては相当不満が出てきて、なぜなんだ、こういうような形で不信感を招くのではないかというふうに思います。  このフリーハンドの問題でありますけれども、これが何に使われるのかということは、またもう一つ制限が加わったりといったようなことになってきますと、これまた私どもとしては困惑をするわけでして、現在の段階ではどのような形でということがまだ示されていませんので、地方自治体の長として判断をしかねるといったようなところでございます。
  56. 山本孝史

    山本(孝)委員 参考人の皆様にはありがとうございました。時間になってしまいました。  これほど現場におられる皆さん方の声を受けても、厚生省あるいは与党三党が今の案をごり押しされるというのは、私は国会の権威にもかかわる話だというふうに思います。法律改正をしないでこういう形でやることの混乱の大きさというものを私たちはしっかり受けとめて、そして制度の円滑な実施に我々民主党としては取り組んでいきたいというふうに思います。  きょうは、本当に遠いところ、ありがとうございました。
  57. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員長代理 中川智子さん。
  58. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは本当にお忙しい中、それに、今回の事態に対して本当に怒りを込めた陳述をいただきましてありがとうございました。  まず最初に、先日この場での介護保険の集中審議の中で、大臣に私が質問した中で、これは自治体の方々の了解は得られているのだろうかと。その日、私が手にした報道によりますと、先ほども市町村会として遺憾の意を表明したということ、また、政令指定都市の十二の市長さんたちもこれに対して遺憾の意を表明したというふうなことがあったんですが、大臣の答弁は自治体からの了解は得られました、自治体の御納得はいただいたものと受けとめておりますという御答弁がありました。ですから、一方で自治体の納得が得られていると政府の方は言い、きょうのお話を伺いますと、そのようなことは伝わってきません。  そこで、喜多参考人山本参考人、光武参考人にお伺いいたしますが、亀井静香政調会長のあの発言以降揺れ動いた中で、自治体に国の方から意見をきっちり聞きたいという場が設けられたかどうか。そして、今回のこの抗議、遺憾の意を表明したということに対して、厚生省から、また政府の方からきっちりとした説明があったかどうか、それをお答え願いたいと思います。
  59. 喜多洋三

    喜多参考人 自治体の方に説明があったかということですが、正式に説明があったという理解はいたしておりません。  そして、抗議、緊急提言もいたしておりますし、それから決議もいたしておりますが、それに対して正式の御回答をいただいたという実績もございません。
  60. 山本文男

    山本参考人 自治体の方には、厚生省の方から私ども町村会の役員会や会合のときに来て、その都度説明は受けております。そのときに、それぞれ質問をしたりあるいは要望をしたりしておりますから、かなりの回数になったと思います。回数は覚えておりませんけれども、かなりの回数やったと思います。  それから、最初の件ですけれども、特別に、正式にこういう話し合いをしようじゃないかというようなことはありませんでしたけれども意見を一回かそこらかな、たまに求められたことはございますので全く皆無ではない。町村会の方は皆無ではないと私は思います。
  61. 光武顕

    ○光武参考人 お答えいたします。  少なくとも、先ほど私が申し上げました、この制度の改革といったようなことにつきまして、私ども福祉自治体ユニットとしては前もって説明を受けたという記憶はないのであります。  実際にこれが出てきてから、私ども自治体ユニットとしてはあたふたと、実はどういう状況になっているのかということについて、それなりに関係筋にお尋ねをしたりなんかしております。そういうことで、少なくとも、三党合意があってこうした政府の見解が示されるということについては、個々の自治体にもあるいは県の方にも、問い合わせと申しますか、そういうことは多分ないのではないかというふうに思います。  また、我々がそうした要望と申しますか、そのことについて正式に御返事をいただいたということは、私は記憶にありません。  以上です。
  62. 中川智子

    ○中川(智)委員 きょう、ごらんになっていただければわかると思いますが、ほとんど人が座っていません。本来座っていなければいけないところに、座っていらっしゃらないのです。ついこの間までは、あのグレーの背広を着ていらっしゃるところぐらいまでが与党で、こちらがずっと野党だったのですが、野党がブルーの瀬古先生の隣までになりまして、あと全部与党になりました。  そのような状況の中で、今回の介護保険を根っこから崩すような政策は、自自公の連立与党の中で選挙目当てのばらまきではないかという一つの大きな声が国民から沸き上がっております。私は、これは本当に喜ばれてこそ初めてそのお金が生きると思います。  四人の方に一言ずつ御意見をちょうだいしたいのですが、このように凍結して、そしてまた一年半額にするというようなことは、介護保険制度そのものに対する自治体の努力、そして市民の——私は実際に三人介護いたしまして、これをどれだけ待ち望んでいたか。基盤整備をちゃんとしていく中で、市民と自治体が一緒になってしっかりと保険制度を進めていくものだと期待しておりましたが、この事態になってこういうふうにひっくり返っていく。  実際に現場にいらして、今回の政府のこれが市民の人たちに、ああ、よかった、よかったと喜ばれている声が多いのか、それとも、これから一緒に介護を社会で担っていくというふうになっていたのに、わけがわからなくなったという声が多いかどうか、本当に代表的な感じでいいんですが、現場の声を少しお聞かせください。
  63. 喜多洋三

    喜多参考人 先ほどから何遍も申し上げたと思うんですが、実際戸惑いがいまだにあるというのが現実でございます。しかし、先生今おっしゃっておられるようなことについては、私ども地方自治体としてコメントをすることは控えさせていただきたいと思います。
  64. 山本文男

    山本参考人 現場の方の混乱とかいうことを私ども申し上げたことはありませんけれども、ただ、私ども保険者として、安易に変えられるのは非常に困ると言っているんです。ですから、決めたことを決めたとおりに実施をすることが一番望ましい、こういうふうに申し上げておるわけですから、先生から今御質問のような内容混乱はない、こういうふうに私は理解をしております。
  65. 肥田泰

    肥田参考人 私どもとしては、先ほど申しましたように、基盤整備がきちっとされていない状況のもとでこの介護保険制度が開始されること自体については問題ありというふうに考えていまして、今度、与党が出した保険料半年間凍結とか一年間半額ということに関して、それは国民の一定の意見の反映だろうというふうに思っていますが、ただ問題は、その間に何が改善されるのかということが一向に明示されていないところに非常に大きな問題がありまして、そこのところがきちっと明示されないままにこのまま施行されれば、やはり混乱を招くことは必定だというふうに考えています。  そういう意味では、半年間の間にどうする、一年間の間にどこまでどうするということがきちっと明示された上で、こういうふうにしますということが必要だというふうに考えています。
  66. 光武顕

    ○光武参考人 お答えいたします。  一般的に市民の声ということについて私どもいろいろお聞きはいたしておりますけれども、その中で、この介護保険を立ち上げるに当たりまして募集をいたしました介護保険市民の会というのがございまして、先ほど来お話ししたように、繰り返しこの問題について勉強会をやってまいっております。  そうした方々意見としては、要するに、制度開始直前になって一度決定した制度変更が生じるということは、制度の組み立てに欠陥があるということで行政に対する不信感が増すのではないかといったような話、それから、これまで行政とともに市民の会として一生懸命努力をしてきたが、そういったものが無視されるといったようなことにおいてまた行政との間の距離感が遠くなるのではないか、それから、社会全体で支えるということの意識が薄くなる、保険料を支払わない、社会全体で介護を支える意識の芽生えを消してしまうのではないか、こんなことの意見がございました。  いずれにしても、介護は避けられない問題であり、必要な制度だ、そういうことについてこれまでもやってきた、しかし、これが完全なものではなかろう、実際に今考えられる限りではこの程度でもって出発をせざるを得ないけれども、その中で一つ一つ改善していくべきだ、そんな考え方がこの市民の会の皆さんから寄せられております。
  67. 中川智子

    ○中川(智)委員 時間になりましたので質問を終わりますが、現場のきょうの声をもっと広げていただいて、もっともっと過激に国の方に届けていただきたいと切に最後に要望いたしまして、終わります。  ありがとうございました。
  68. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員長代理 児玉健次君。
  69. 児玉健次

    児玉委員 きょうはありがとうございます。日本共産党の児玉健次です。  最初に、肥田先生にお伺いをいたします。  先ほどのお話の中で、先生の病院では往診されている患者さんが二百三十人。こういうお話もありました、収入が生活保護基準以下で高齢者のみという世帯。御指摘の中で、極めて厳しい条件を重層的に背負っている、そういう方たち介護サービスから経済的な理由で排除しないことが一つの重要なポイントだと考えます。  医療介護の最前線で努力されている先生として、今の問題ですが、低所得者、重層的に厳しい条件を持っている方々経済的な理由から排除しない、そのことでどのような恒久的、制度的な措置が必要だとお考えでしょうか。お願いいたします。     〔安倍(晋)委員長代理退席、委員長着席〕
  70. 肥田泰

    肥田参考人 現場でやはり一番問題になりますのは、現在サービスを受けている人の中から、実際に高齢、ひとり暮らし、あるいは老人二人暮らしという状況の中で介護を必要とする人たちの中から、実際には年金が三万、四万の状況の中から、この介護保険保険料とかあるいは利用料を払わなければならないという状態が出現したときに、そういう人たちは実際には介護保険サービスからは排除されざるを得ないという状況になります。要するに、保険料を払わなければもともと対象にならないというのがこの介護保険制度の中身になっています。  そうすると、介護保険料を払わない人は初めからこの制度からは除外されてしまう。それから、利用料を一割払えない人については、今一定の軽減措置というのが出てきましたが、実質的には、例えば要介護度5になって三十数万の介護サービスが支給される条件が与えられたとしても、実際に自分が払えるお金が現在五千円までしかそれに払えないとすれば、五万円のサービスしか提供されないというシステムになってしまう。  ここをどうするかということを提起しないで、負担給付の公平だということでもって保険だけで突っ走るということになれば、ここには明らかにそれによって排除されてしまう層が一定部分出てしまう。ここをきちっとしない限り、この制度はやはり制度として成立しないのではないか。  そういう人たちをどうするのか。今の低減措置の中では、この低所得者に対してどうするかということについては十分触れられていないわけです。例えば災害に遭ったとか、そういう状況のときには一定免除するけれどもという条件だけで、低所得者に対してどう配慮するかということについては一切触れられない。  先ほど述べたように、もともとの保険料の設定のところで、住民税非課税者がその基準になっているというところにこの制度自体の大きな欠陥があるのじゃないか。そこのところをやはり変えないと、これは介護保険制度として、社会保険として成立する基盤を持っているのかどうか、そのことを疑わざるを得ないのじゃないかというふうに私としては非常に疑念を持っているところであります。
  71. 児玉健次

    児玉委員 ありがとうございました。  次に、喜多市長にお伺いをしたいと思います。  保険料等を徴収しない間に何をやるのか、そこが今最も問われていると思うんです。そのことについて具体的な手だてを尽くすことなくある時間を推移するというのは、まさしく先送りですね。  先ほど喜多市長のお話の中で、恒久的な施策を求めたいというお言葉が冒頭出てまいりまして、全く同感です。その恒久的な施策を、皆さんが十月二十七日に出されている全国の市長会と町村会の緊急意見の最後のところに、低所得者対策等関連する財政負担についての措置が具体的に触れられています。  先日、この委員会の集中審議で議論したことでもありますが、国民健康保険は、非常に不十分です、本当に不十分で、滞納者その他で自治体に大きな御苦労をお願いしていると思います。その国民健康保険制度でさえ、軽減措置、国が二分の一負担ですが、九八年で六百七十億、九九年で千七十億、国が財政的に持っています。災害その他の特別調整交付金について言えば、九八年で千五百四十八億円です。これが、この介護保険制度について言えば、制度上設計されていないというのは大きな問題だと私は考えますが、その点について喜多市長さんのお考えを聞きたいと思います。
  72. 喜多洋三

    喜多参考人 恒久的な制度にしていただきたいと申し上げました。先ほど他の委員の方の御質問にございましたが、調整交付金を他の市町村住民の分まで支払わなければならない保険料の仕組み、計算の仕組み、こういうことについてはきっちりしていただきたい。そして、財政安定化基金財源も、実は今の法律では被保険者が三分の一を持つことになっております。つまり、これは保険料が上がる理由になるわけであります。当然、保険料は低い方がいいわけでありますから、それらも措置をしていただきたい。  そして、低所得者の対策でございます。先ほどから御議論もございました。保険料を減免するというだけではだめなわけでございまして、保険料を減免しますと、その財源はどこへ行くかといいますと、他の人の保険料に割り戻しをされるということになるわけで、決してこれは低所得者対策にはならないわけであります。したがって、低所得者対策としては、保険料の減免措置をすると同時に、その財源をどう確保するかということが大きな問題でございます。  そしてもう一つは、これに関連しますが、サービス利用時の負担を無理のないものにする、つまり所得に応じてどうするか。これをまた保険料で解決するということになりますと、これも問題でございます。したがって、低所得者の対策については、やはり介護保険法以外のところでする必要があるのではなかろうか、これは私の私見でございます。
  73. 児玉健次

    児玉委員 同様の問題について山本町長のお考えをお聞きしたいと思います。
  74. 山本文男

    山本参考人 お答えします。  低所得者の問題は大変重大だと思うんです。なぜかといいますと、この対策がうまくいかないと、結局介護保険制度の運営に支障を来すことになる、私はそう思います。  では、低所得者というのは一体どういう階層の人たちを言うのかというのが非常に難しいと思うんです。あなたは低所得者ですからこれでいいですよなんて言うと、かえって怒られる可能性もあります。だから、その線引きのやり方が非常に難しいのですけれども、どうしても社会的な弱者という人たちはいるわけですから、こういう人たちに対して十分な手当てをしてやることが必要だと思いますね。  もしそれをやらなければ、そういう人に限って介護を必要とする人が多いのです。ですから、低所得者の対策については十分考えていく必要があるということが言えると思います。
  75. 児玉健次

    児玉委員 光武市長にお伺いしたいのですが、先ほど喜多市長が、減免をしたとしても、それがその自治体の一号被保険者の方に降りかかるのではそれこそ問題が大きい、その部分を国が財政的に負担する必要があると、まさにそのとおりだと思うんです。そして、今度の厚生省自身が考えている減免の準則の中でも、自然災害だけでなく、世帯主の死亡、長期入院、失業、倒産等というのが入っていますね。その部分に対する減免というのは進めなければならないけれども、それを一号被保険者にゆだねるか、それとも国が責任を負うか。私たち日本共産党は、当然これは国と都道府県責任でと考えておりますが、その点について光武市長の御意見をいただきたいと思います。
  76. 光武顕

    ○光武参考人 ただいまの低所得者に対する対策というものは、この保険制度実施されるということで我々におりてきた段階で、その当時から問題がありました。確かに、国保の徴収率が都会ではかなり厳しくなってきているといったようなこともありまして、あわせてこれを徴収するということが非常に難しいだろう。我々といたしましては、しかし、そうは申しましても、こうした問題に対してはやはり市町村責任でとにかくやれるだけやらなきゃならない、こういったことで来ております。  私は市長として考えますのは、こうした低所得者というのは介護保険制度が生んだわけではなくて、以前からあったわけです。したがって、低所得者対策というのは、介護保険の導入いかんにかかわらず、人の生活を支える上でもともと必要だ。仮に軽減措置によりましても保険料が払えないという低所得者がいたとしますと、それは例えば生活保護や住宅、年金、雇用といったようなものを加味しながら、新たな政策というか、これまでの政策が不足をしていたということであります。  例えば私どもではシルバーハウジングというものを今建てておりますけれども、このシルバーハウジングも低所得者あるいは高齢者の低所得者のためにということで今建設中でございまして、そういう意味で、他の施策によってこれはカバーされるべきものであるというふうに考えております。
  77. 児玉健次

    児玉委員 ありがとうございました。
  78. 江口一雄

    江口委員長 笹木竜三君。
  79. 笹木竜三

    ○笹木委員 笹木竜三です。質問させていただきます。  最初に、先ほど意見陳述のときに、山本参考人のお話の中で、民間の事業者に対するマニュアルの整備をというお話がございました。そのことについてお聞きをしたいわけです。  サービスを利用者が選べる、公共サービスと民間サービス、両方含めて選択して選ぶ、これは非常にいい制度だと私も思うわけですけれども、しかし、よく言われるように、そのサービスの質が、民間を信じないわけじゃないですけれども、例えば粗悪なサービスが起こり得る可能性もあるんじゃないかとか、いろいろな心配も一方では言われております。先ほどの民間サービス事業者に対するマニュアルということで、具体的にはどういうことを特に意識されてお話しになったのか、まず質問したいと思います。
  80. 山本文男

    山本参考人 お答えします。  今回の介護費用の設定は、民間を視野に入れて設定されていると思います。したがって、民間のサービス事業体がだんだんできてきて参入してくるだろうと思いますが、その場合に、それではあなたの方にお任せしますよということになりますと、十分なサービスをしていただけるとは信頼はしますけれども、あんなところには行かないよとか、あそこはもうやめておこうとかいうようなことになる可能性も若干ないとは言えません。ですから、国の方でマニュアルをつくってきちんとやっていただくような方法をとることが一番大事なことだ、こういうように思います。  もう一つ、ちょっとつけ加えさせていただきますけれども、私どもは公共でやるようなことを考える必要があるということで、民間がやらないところをどうしても我々は保険者としてカバーしなきゃならぬということで、公共で支援事業体をつくろうじゃないか、やることにしようじゃないかということを今議論しておるところでございます。  そういうことなどを考えて、どうしてもやはりマニュアルをつくって実施をすることが必要である、こういうように判断をいたしているところです。
  81. 笹木竜三

    ○笹木委員 今のお答えの中のお話とも関係するわけですけれども、例えば遠隔地ですとか過疎地に民間の事業者が入ってくるのは限界があるんじゃないのか、在宅の高齢者向けの介護サービスでも、そういった場所では実際に供給できるのは必要量の三割以下だ、民間も入ってこない、いろいろなことが言われております。こういったことで、遠隔地、過疎地ではなかなか民間の事業者が入ってこられない、だから公共のサービスが主にならざるを得ないという御認識なのかどうか、山本参考人喜多参考人に御確認をさせていただきたいと思います。  余り時間がないので、もう一点ですけれども、家族介護への支援ということがこの見直しで慰労金も含めまして提案されました。慰労金の額も含めまして私は反対ですけれども、しかし、今言った民間のサービス事業者がなかなか遠隔地、過疎地には入ってこられない、あるいは市町村での公的な基盤整備、これももちろん必要ですけれども、それでも限界があるということで、家族がヘルパーの資格を取ろうということをさらにてこ入れするとか、そういったことに対して支援をしていく、このことについては基本的には賛成なのかどうか、そのこともあわせてお答えをいただけたらありがたいと思います。お願いします。
  82. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをしたいと思います。  まず、サービス事業に関してでございますが、私どもの町は過疎じゃなしに極めて過密でございますので、ちょっとその辺の判断ができかねます。  しかし、サービス基盤というものは、足りないから公共でやるということじゃなしに、これは、足りる、足りないにかかわらず地域を超えてサービスがなされるわけでありますから、広い地域で物事を考える必要がある。そのためには、国が全面的にバックアップをしていただくということがまず第一義ではなかろうかと思います。  それから、家族介護については、これは市長会でも意見が割れておりまして、五年前から議論があります。しかしながら、審議会の方ではそれがいろいろ議論をされた上で、三級ヘルパーの資格を持って、二分の一以内であればいいだろうというところまで、これは双方の妥協で今来ておるのではなかろうかなと思います。まだまだ議論は今後も続く、そのように思っております。
  83. 山本文男

    山本参考人 お答えしたいのですが、民間の場合、自分のエリアを決めるわけですよ。その場合に、町村区になりますと山間僻地がございます、あるいは離島もございます、そういうところは割かしペイしない場合がございますので、民間側としてはできるだけ遠慮している、自分のエリアの中に入れない、ゾーンから外してしまうということもあり得ると思います。  それからもう一つは、今、市町村は社会福祉協議会でヘルパーを雇用して実施をしておりますけれども、来年の四月一日からのヘルプ事業というのは二十四時間体制でなければできません。だけれども、今の社会福祉協議会が雇用しているヘルパーは、八時半から五時までで、通常の勤務の一直だけでございますから、到底対応することはできません。  したがって、社会福祉協議会で雇用しているヘルパーの皆さんたちが対応できないから、そういう人たちを解雇するわけにいきませんから、みんな集めて、我々が公共で三セクでつくって、今の民間と協調しながらやっていくことがヘルプ事業としては一番望ましいのじゃないか。そういう判断で、公共で一つつくる、それから民間は民間でどんどん入ってください、こういう意味で、言うならば、いい意味での競争をしながらサービスの向上に努めていこうじゃないか、こういう考えでございます。
  84. 笹木竜三

    ○笹木委員 どうもありがとうございました。
  85. 江口一雄

    江口委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。  午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     午後零時五十四分開議
  86. 江口一雄

    江口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  第百四十五回国会、内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団の解散及び業務承継等に関する法律案の各案を一括して議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。丹羽厚生大臣。     —————————————  国民年金法等の一部を改正する法律案  年金資金運用基金法案  年金福祉事業団の解散及び業務承継等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  87. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 ただいま議題となりました三法案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  まず、国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  国民の老後の生活設計の柱である公的年金制度について、将来にわたり揺るぎのない信頼されるものとするため、今回の財政再計算に当たって、二十一世紀を展望し、年金制度における給付負担の均衡を図り、将来世代の負担を過重なものとしないよう、制度全般にわたって見直しを行うこととした次第でございます。  以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一に、基礎年金の額については、来年度から、年額八十万四千二百円を物価の変動に応じて改定した額とすることとしております。また、厚生年金の報酬比例部分については、五%の適正化を図ることとしておりますが、従前の算定方式を物価スライドした額は保証することとしております。さらに、厚生年金及び基礎年金については、その支給を受ける者が六十五歳に到達した以後は、物価の変動のみに応じた年金額の改定を行うこととしております。  第二に、老齢厚生年金の支給開始年齢について、一般男子については平成二十五年度から三十七年度にかけて、女子については平成三十年度から四十二年度にかけて、段階的に六十五歳に引き上げることとしております。  第三に、厚生年金について、平成十四年度から、六十歳代後半の者を被保険者とし、年金額と賃金との合計額が一定以上の者について支給を制限することとしております。  第四に、学生である国民年金の被保険者について、来年度から、本人の所得が一定以上の場合を除いて保険料の納付を要しないこととする保険料の納付特例等の措置を導入することとしております。  第五に、基礎年金については、財政方式を含めてそのあり方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るものとすることとしております。  第六に、厚生年金基金などの資産運用や事業運営の規制を緩和するとともに、上場株式を一定の条件のもとに掛金として拠出することを認めることとし、公布の日から三カ月以内に実施することとしております。  第七に、厚生年金保険及び国民年金の積立金について、財政投融資制度の抜本的改革に合わせて、厚生大臣が安全かつ効率的に自主運用を行うこととしております。  以上のほか、育児休業期間中の厚生年金保険の被保険者保険料について事業主負担分を免除すること、厚生年金について月給と賞与を合わせた総報酬制を導入することなどの措置を講ずることとしております。  次に、年金資金運用基金法案について申し上げます。  この法律案は、年金積立金の自主運用に当たり、厚生大臣から寄託された資金の管理及び運用を行う専門機関として、年金資金運用基金を設立するものであります。  以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一に、年金資金運用基金は、厚生大臣が定める運用に関する基本方針に沿って資金の管理及び運用を行うことなどを目的とすることとしております。  第二に、年金資金運用基金は、資金の管理運用方針を策定し、民間運用機関への運用委託などにより資金の管理及び運用を行うこととしております。  第三に、年金資金運用基金の役員などに対し、注意義務及び忠実義務などを課すとともに、年金資金運用基金は、適切な情報の公開により透明性を確保し、毎事業年度、詳細な業務概況書等を公表することとしております。  このほか、財務会計など所要の規定を設けることとしております。  この法律施行期日は、財政投融資制度の抜本的な改革の実施に合わせて別に法律で定める日としております。  最後に、年金福祉事業団の解散及び業務承継等に関する法律案について御説明申し上げます。  年金福祉事業団は、これまで、厚生年金保険国民年金の被保険者などの福祉の増進に重要な役割を果たしてきたところでありますが、行政改革の一環として、平成九年六月六日の閣議決定において、これを廃止するとともに、大規模年金保養基地業務からは撤退し、被保険者向け融資業務については、適切な経過措置を講じた上、撤退することとしたものであります。  この法律案は、この閣議決定に基づき、年金福祉事業団を解散し、被保険者、地域経済、雇用等への影響を考慮しつつ、同事業団が行ってきた業務について、住宅資金の貸し付けを別に定める日までの間、年金資金運用基金が行うとともに、年金福祉事業団からの権利及び義務の承継を行うなどの所要の規定を設けることとし、関係法律の改正を行うものであります。  この法律施行期日は、年金資金運用基金法の施行の日と同じく、財政投融資制度の抜本的な改革の実施に合わせて別に法律で定める日としております。  以上が、この三法案の提案の理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  88. 江口一雄

    江口委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  89. 江口一雄

    江口委員長 この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、政府参考人として厚生省年金局長矢野朝水君及び社会保険庁運営部長小島比登志君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 江口一雄

    江口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  91. 江口一雄

    江口委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。
  92. 根本匠

    ○根本委員 根本匠です。  私も、この厚生年金改革法案につきましては、厚生政務次官として取り組んでまいりましたので、特に細かな質問をするつもりはありません。  実は、我々、きょう安倍晋三理事もおられますが、NAISグループという四人のグループで、「年金なんかこわくない 政治家なら、こう説得する」というペーパーもまとめて、この問題をやってまいりましたので、きょうは、今回の年金改革法案のねらいや考え方をより明確にわかっていただくという視点で質問をさせていただきたいと思います。  まず、これは答弁は結構でありますが、今、年金や医療介護、この社会保障の各分野で税か保険かという議論が非常に活発になされております。年金につきましても、例えば経済戦略会議では、基礎年金は消費税——税、二階建ての部分は民営化、こんな提言もなされております。今回の改革案は、保険原理をベースに基礎年金部分は税を組み合わせる方式でありますが、基礎的な哲学、理念を確認しておきたい、私はこう思っております。  保険と税、これは財源調達手段の差という現象的な差異があるわけでありますが、基本的には性格を非常に異にしております。  保険原理というのは、自助努力を前提としたお互いの助け合う仕組み、国民みずからがそれぞれ拠出し合ってリスク分散を図る、これが私は保険の原理だと思います。その意味では、自助努力を基本にお互いが助け合う、これが保険原理の理念で、年金の場合には世代間扶養、長寿支援の仕組みが考え方の基本にあると思います。  税の本質論は、これは強制徴収であり、所得再配分でありますから、おのずから保険と税は原理は異なっております。今回の年金改革の考え方の基本は、世代間扶養という保険原理をベースに、基礎年金部分については税を適切に組み合わせて保険料負担を緩和するということであります。  税か保険かというのは、実は、財源調達手段というよりは、むしろ基本的には社会のあり方をどう考えるかという議論だと思います。自助、共助、公助という言葉がありますが、税は公助でありますし、保険はお互いの助け合い、相互扶助ですから共助ということになるわけであります。  今回の年金改革法案の基本的考え方、これは子から親への仕送りを社会的に制度化した親孝行のシステムであって、長寿支援の仕組みが年金改革法案の今回の基本的理念だと私は思います。その意味では、現在の考え方は、私は、小さな政府の考え方に立って、自助、共助、公助をバランスよく組み合わせたのが、今回の年金改革法案の背景にある基本的な社会のあり方であり、考え方であると思います。  これにつきましては通告しておりませんので、答弁は結構であります。  私が年金の議論をやっていたときに非常に懸念しておりましたのは、世代間扶養の仕組みのもとで少子・高齢化が進みます、そうなると将来支える方が非常に少なくなるので、年金がもらえなくなるのではないか、あるいは年金が現在もらっている額よりも下がる、こんな誤解があります。年金がもらえなくなるというのは、実は国がつぶれる、国が破綻するということでありますから、私は、そういうことはあり得ませんと言ってまいりました。それから、年金が下がるという誤解もありますが、これはこれからの議論でありますが、実はもらう額は上がります。  誤解を招いた原因の一つは、例えば五つの選択肢というのがありましたが、要は五つの選択肢というのは、支出総額を適正化したケース、二割抑制あるいは四割抑制すれば保険料がこの程度に下がる、こういう提起をしました。支出総額で議論をいたしますと、実は、個々の国民の方にとっては一人一人の年金論とは違いますから、ここが非常に誤解を招く原因であると思います。  年金というのはトータルの負担給付のバランスの問題ですから、支給総額をどの程度抑制すれば保険料負担はどの程度下がる、あるいは保険料の総額はこの程度になる、こういう議論は、マクロ的な、制度を運営する側の視点であります。大事なのは、マクロ的な議論と、国民の関心事というのは自分の年金が具体的にどうなるのかということですから、これをきちんと峻別して説明理解を求めないと誤解を招くと私は思っております。  これから質問でありますが、今回の改革案、これはマクロ的に言えば、支給総額を二割程度抑制する。したがって、一方で国の負担割合の引き上げもありますから、保険料負担総額も減って、現在の想定される保険料負担は、改革をしなければ二〇二五年度で厚生年金の場合三四・五%に上がってしまうわけですが、これが二五・二%に下がりますよということでありますが、ここのところの全体のマクロ的な支給総額がどの程度になるのか、具体的な数字を確認させていただきたいと思います。政府参考人に。
  93. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今回の改正のねらいは、ただいまお話がございましたように、少子・高齢化の進行などによりまして、将来負担がこのままでは過大になってしまう。したがいまして、将来の保険料負担を過重なものとしないということが一番の基本的な考え方になっておるわけでございます。  そういう中で、今回の改正は、将来におきましても、厚生年金の場合ですと、年収の二割、本人負担は一割でございますけれども負担をその範囲内に抑えていこう、こういうことにしておるわけでございます。そういう中で、支出につきましては、これからの伸びを調整していくということでございまして、あくまで今もらっている方の年金額を減らす、こういったことは毛頭考えていないわけでございます。  そこで、今回の改正案によりまして、将来の給付負担が総額としてどの程度になるのかということでございますけれども、今回の改正をやることによりまして、これは基礎年金部分についての国庫負担割合を三分の一に維持した場合のケースですけれども、二〇五〇年度におきまして、支出総額で見ますと一七%の減ということでございます。それから、保険料収入で見ますと一八%の減ということでございまして、現在の仕組みに比べまして、それぞれ給付面、負担面、両方とも約二割の減少となる見通しでございます。  それから、基礎年金の国庫負担につきましては、平成十六年までの間に安定した財源を確保し、国庫負担割合の二分の一への引き上げを図る、こういう規定も設けられておりますけれども、この場合には当然保険料が減るわけでございまして、保険料収入で見ますと二五%の減になるという見通しでございます。
  94. 根本匠

    ○根本委員 マクロ的には、支給総額で見ますと、要は二〇五〇年の時点で全体的に一七%抑制されるということだと思います。これが支給総額の議論でありますが、この議論をすると国民の皆さんはどう考えるかというと、自分のもらう年金額が下がる、こう思って誤解される方が多い。  次にお聞きいたしますが、要は、制度の全体的な運営という視点から今のような考え方になるわけですが、個々の年金額はどうなるのか。  実は、決して、将来とも実際にもらえる額が下がるわけではない。厚生省の試算でも、厚生年金の場合、二〇二五年では、改革をしない前では四十二万八千円だったものが、この改革案では四十一万八千円になる。つまり、そこは一万円適正化されるわけでありますが、これは物価でデフレートしても実質は上がるはずで、現在二十三万ぐらいのものが、二〇二五年度の四十一万八千円というのは実質で二十九万ぐらいになるんだろうと私は思いますが、ここの数字も確認させていただきたいと思います。
  95. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今も申し上げましたとおり、年金額が減るわけではございません。これはおっしゃるとおりでございます。  それで、二〇二五年度のモデル年金額、これは夫婦二人分ということでございまして、奥さんの場合は専業主婦、こういうモデルでございますけれども、これが今お話にございましたように、今回の改正を行うことによりまして四十一万八千円ということになるわけでございます。  この間の物価上昇率でございますけれども、今回の改正というのは、物価上昇率を私どもは一・五%と見込んでおるわけでございまして、この物価上昇率を割り引いて、現在価格、これは九九年度価格でございますけれども、これで見ますと二十八・八万円ということになるわけでございます。これは、現行制度におきます年金額が二十四・二万円ということでございますので、実質ベースで見ましても、今後、年金額は伸びていくということでございます。
  96. 根本匠

    ○根本委員 私は、そういう給付のレベルで、一体公的年金は何を保障しようとしているのかということを明らかにしていきたいと思います。  公的年金というのは、本来、考え方としては生活の安心保障だと思います。今回の改革案では、保険料を将来の世代が払える範囲内に抑えて、給付は日常の、通常の生活が賄えるようにすべきだ、こう思っております。  これも確認ですが、今、年金の水準の話がありました。実際に夫婦二人で六十五歳以上の平均家計消費、これは二十四万程度だと私は思いますが、ここも数字を確認させていただきたいと思います。
  97. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今回の制度改正によりまして将来の給付の伸びを抑えていこうということでございますけれども、年金の水準につきましては、やはり現行程度の水準は維持したい。  これは、年金額、将来の給付の伸びを抑制するということからしますと、いろいろな手法が考えられるわけでございます。例えば支給開始年齢を上げるとか、いろいろありますけれども、年金水準につきましてはできるだけこれを維持していきたいということでございまして、手取り年収ベースで見ますと、現役世代の大体六割程度は今後とも維持していきたい、こういうことで今回の改正案が仕組まれているわけでございます。
  98. 根本匠

    ○根本委員 要は、大体年金の水準というのは、平均家計消費二十四万ぐらいですから、通常の生活は安心が保障できますね。ただ、今までは現役の代替率というのを使っていましたから、現役世代に対して例えば可処分所得の六二%を保障して、その代替率を変えずにずっといこうとするから将来保険料負担が非常に重くなるということで、今回、給付水準も適正化をするわけであります。その現役の代替率でも、今答弁があったように、現役世代のおおむね六割程度を保障したい、こういうことであります。  公的年金の役割というのは、先ほど申し上げましたように、私は生活の安心保障だと思っておりますから、これからも公的年金は実質ベースでも上がっていきますし、日常生活は公的年金で賄う、そして、より豊かな生活は私的年金、個人の自助努力で賄う、こういう公私の役割分担を明確にしながら考えていくべきだと思います。公私の役割分担をどう考えるかということについては、後ほどまた議論をさせていただきます。  これは大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の改革案で、既に年金をもらっている方、これは当分の間、物価スライドのみにしましょうと。当分の間物価スライドだけということになりますと、時間の経過で、年金の水準と現役世代の賃金水準の開きは、開いていくわけであります。この開きについてどう考えるかということであります。  昭和四十年代のように年金水準自体が低くて、しかも経済が一〇%と、どんどん高度成長をする、こういう時期には、年金受給者の実質所得の向上あるいは実質生活水準の向上の観点から、物価スライドというのは非常に大きな意味を持っていたと思います。ただ、これに対して、現在は年金水準自体が相当引き上げられ成熟してまいりましたし、これからの経済というのは実質経済成長率が一%から二%のような時代ですから、現役世代の負担が重過ぎないようにという負担のバランスから、当面、物価スライドだけでいくということは私もやむを得ない選択だと思います。  ただ一定の開きが生じた場合に、つまり、賃金スライドと物価スライドとの間で一定の開きが生じた場合に賃金スライドを復活することとしておりますが、将来のこの考え方を改めて確認させていただきたいと思います。
  99. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 根本委員御指摘のように、今回の改正案におきましては、受給を開始いたしました後は物価スライドで年金額を改定する、こういうことで受給者の生活水準を確保したい、こういうことでございまして、いわゆる後代に対する負担というものを十分配慮した措置でございます。  しかしながら、現役世代の賃金と年金との乖離が過大にならないように、将来においては必要に応じて賃金スライドなどの措置を行うことが必要なのではないかと私は思っております。その場合、今回の財政再計算においては、私といたしましては、現役世代とのバランスを考えなければならない、それからもう一つは、お年寄りが実際に生活をしていく上において生活実態というものを十分に考慮しなければならない、こう考えているような次第でございます。  こういう点から考えますと、私自身といたしましては、二割以上乖離した場合においては賃金スライドなどを行うべきではないか、このように考えているような次第でございます。
  100. 根本匠

    ○根本委員 ありがとうございました。  次に、私も時間を迫られておりますので少し速めたいと思いますが、公私の役割分担という観点からまたお伺いしたいと思います。  公的年金と私的年金の役割分担の観点から、現在、確定拠出型年金、これが日本版四〇一Kとして話題になっております。これは多少誤解がありますのは、二階建て部分も四〇一Kと誤解されている向きもあるやに聞いておりますが、日本版四〇一Kは高齢者のより豊かな生活に資するための三階建て部分として私は考え、これはそういう考え方だと思いますが、そこの考え方の確認であります。  それから、この議論の前に、まずは公的年金のあり方を今回の改正でしっかり固める、これが大事だと思います。次に、これと組み合わせて私的年金の姿を議論すべきだと考えますが、この点の大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  101. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、根本委員が御質問なさったことは、確定拠出型年金、つまりアメリカで大変はやっております四〇一Kの日本版の問題だと思います。これにつきましては、大変関心を呼んでおるわけでございます。国民が自己責任のもとに運用し、その運用収益をもとにして給付額が決定される仕組みでございます。  この仕組みでございますけれども、これまでの既存の確定給付型の企業年金が中小企業であるとか自営業者などに普及していないということであるとか、それから、労働力の流動化が大変進んでおる中において労働の移動への対応が必ずしも十分でない、こういうようなことが問題となって、このような柔軟に対応できるような新たな選択肢というものが導入する一つのきっかけになってきているのではないかと私は思っております。  ただ、私が申し上げたいことは、先ほど根本委員も申し上げましたけれども、一階の基礎年金の部分と二階の厚生年金の部分はしっかりと公的年金において確保するべきであって、いわゆる三階建ての部分と申しますか、企業年金基金などの中において一つの選択肢、チョイスとして位置づけられるものだ、このように考えているような次第でございます。  なお、この問題につきましては税制上の問題がまだ未解決でございまして、国民の皆さん方に日本版の四〇一Kというものを十分に御理解いただくためにも、ぜひとも私どもは年末にかけまして税制上の優遇措置というものも求めていきたい、このように考えているような次第でございます。
  102. 根本匠

    ○根本委員 四〇一Kというのは三階建ての私的年金の部分でありますから、私も、公的年金と私的年金の役割分担をクリアにする意味でも、今回の改正でしっかりと公的年金の内容を固める、そして早期にこれを通すということが必要だと思います。  最後の質問になりますが、今回の年金制度改革の基本的考え方を改めて確認したいと思います。  従来の年金制度の改正では、過去数次にわたる給付水準の引き上げに代表されますように、議論給付からスタートしてまいりました。給付からそのあり方を考えていたわけでありますが、近年の少子・高齢化の人口構造の変化あるいは経済成長の鈍化等によりまして、今回は、将来世代の負担が重過ぎないようにと、負担の限界を念頭に置きながら負担給付のバランスで考えるように、私はここが今回のポイントであり流れが変わってきたところだろうと思います。  今改正の公的年金のあり方についは、負担は無理なく払える範囲内に抑え、給付は安心して暮らせる額の範囲内で伸びを抑制する、これを基本にしております。  この保険料負担を緩和するために四つの工夫をしているわけであります。給付水準の適正化、六十歳代後半の在職老齢年金、部分年金の支給開始年齢の引き上げ、基礎年金の国庫負担率の引き上げ、この四つの工夫をしたわけでありますが、私が前段で申し上げましたように、流れが、将来世代の負担が重過ぎないようにという、この辺が今回の基本的考え方の一つのポイントだと思いますが、大臣の考え方を改めて明らかにしていただきたいと思います。
  103. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今お年寄りの中で、老後に対する不安というものがあります。年金、医療介護、この三つの位置づけをどう考えるかということでございますが、私は、昨日の答弁の中でも申し上げましたことは、やはり年金というものをまずしっかりさせなければならない、年金を中軸に考えながらこれからこういう問題について考えていくべきである、こういうことを申し上げたわけでございます。  特にお年寄りの年金に対します依存というのは大変高まっておりまして、今や高齢世帯の六割を占めておる、こういう実態でございます。国民の老後を支えるこの年金制度を、将来にわたって安心して信頼できるようなものにしていかなければならない、このように考えているような次第でございます。  こうした観点から、今回の改正におきましては、高齢化のピーク時におきましても保険料を年収の二割程度、これまでは月額で考えておりましたが、年収の、総報酬の二割程度とし、無理のない負担に抑えるということがまず第一点でございます。  そのためには、厚生年金の給付水準の見直しと、附則の部分でございますけれども、安定した財源を確保しながら基礎年金の国庫負担の二分の一への引き上げを図るということを目指しておるような次第でございます。  いずれにいたしましても、ただいま根本委員から御指摘がございましたように、間近に迫っております二十一世紀においての少子・高齢化の進展あるいは経済の低成長、こういうことを十分に視野に入れながら、将来世代の過重な負担を防ぐとともに、将来とも現役世代の皆さん方が手取り年収の六割程度は確保するように極力努力していきたい、このように考えているような次第でございます。
  104. 根本匠

    ○根本委員 ありがとうございました。  大臣も連日大変御苦労さまでございます。ぜひこれからも頑張っていただきたいと思います。終わります。
  105. 江口一雄

    江口委員長 福島豊君。
  106. 福島豊

    ○福島委員 大臣、政務次官、大変に御苦労さまでございます。  質問通告の順番を若干変えまして、まず政府参考人からの御答弁をずっと求めますので、最後の方に大臣と政務次官にお答えをいただきたいと思っております。  今回の年金法の改正ですけれども、日本の人口構造が大きく変化をしていく中で避けられない改革であるというふうに私も感じております。現象面から見ますと、将来における給付水準の引き下げ、そしてまた支給開始年齢の引き上げということになるわけでございますけれども、これをもう少し別の角度から考えてみたらどうかというようなことを考えて、きょうは質問させていただきたいと思います。  今回の年金法の改正は、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口に基づいて財政再計算を行って、その上でどのような措置をしたらいいのかということで検討がなされたわけでございます。  この人口推計は中位推計に基づいている。この中位推計というのは、合計特殊出生率が一・六〇に回復するという、ある意味では楽観的なシナリオに基づいたものでございます。それ以外にも幾つかの研究所から将来の人口推計というものが出されておりまして、それはどちらかといいますと、低位推計の方をあり得るシナリオであるというふうに述べているわけでございます。  これは非常に大切な点でございまして、どの程度の幅で将来の保険料というものが見込まれるのかということに対して、具体的な数字を提示していただきたいというふうに思っております。低位推計に基づいて財政再計算を行った場合に将来の保険料負担というのは一体どのくらいまで上昇するのだろうか、この点につきましての厚生省の御認識をお聞きいたしたいと思います。
  107. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今回の財政再計算に当たりましては、中位推計をもとに将来の保険料を予測しているわけでございますけれども、これを低位推計に置きかえた場合はどうなるかということでございます。  この低位推計は、二〇五〇年時点でも合計特殊出生率が一・三八にとどまるということでございまして、非常に厳しい見方をされておるわけでございます。こうなりますと、ほかの年金を取り巻く、あるいは年金を支える要素も大きく変わってくるのではないかと思います。  それはさておきまして、仮に中位推計を低位推計に単純に置きかえて計算するとどうなるかと申し上げますと、国庫負担三分の一がずっと続くケースですと、今回私どもは厚生年金の最終保険料率を二七・六%と見込んでおりますけれども、これがさらに二・六%上昇いたしまして、三〇・二%になるものと見通しております。  それから、もし国庫負担を平成十六年までの間に二分の一に引き上げるということになりますと、二五・二%の見通しが二・四%上がりまして、二七・六%に最終保険料率が上昇してしまう、こういう見通しでございます。
  108. 福島豊

    ○福島委員 今の数字は本改正を行った場合の数字でございますね。行わなかった場合の数字もお示しください。
  109. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今回の改正をしなかったと仮定いたしますと、厚生年金ですと、二〇二五年時点でおおむね保険料が月収の三五%に上昇してしまうということでございます。
  110. 福島豊

    ○福島委員 いや、低位推計で、なおかつ改正を行わなければ一体どうなるのかと。低位推計で推移する可能性が高いわけですから、そう私は個人的には思っておりますので。  ですから、改正そのものは、いろいろな意見があります、やらなくても大丈夫じゃないかという意見もありますけれども、やはり避けては通れないということをぜひとも厚生省としても浮き彫りにするような情報提供というものをしっかりとしていただきたい、そのように私は思っております。  次にお尋ねしたいことは、世代間の公平、不公平の是正ということでございます。  日本の年金制度は修正賦課方式でございますので、現在のように少子・高齢化が進む中においては、将来世代の負担が現在の世代よりもはるかに大きくなるということはさまざまな人が指摘をしております。世代会計という考え方もありますが、世界の中でも日本の世代間の不公平というのは極めて著しい制度になっているという指摘があるわけでございます。  この点につきましても、今回の改正というのはある意味で世代間の不公平を多少なりとも是正するという効果があるわけでございまして、どの程度不公平を是正するような効果があるのかということにつきまして、具体的な数値をもってお示しをいただければというふうに思います。
  111. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 公的年金は助け合いの制度でございますから、いわゆる損得論議、公平、不公平論議というのは必ずしもなじまないのではないかとは思いますけれども、今回の改正によりまして、世代間でこの公平、不公平の問題がどう推移するのか、こういうお尋ねでございます。  これはいろいろなケースが考えられるわけですけれども一つのモデルといたしまして、今回、制度改正が完全に完結をする平成二十一年生まれ、二〇〇九年生まれの御主人を想定いたしまして、プラス専業主婦の奥さんがいらっしゃる、こういう世帯をモデルにとりました場合に、現行制度で見ますと、本人分の保険料負担に対する給付額という点で見ますと一・五倍。つまり、保険料負担が四千二百万、年金給付額が六千百万ということでございまして、払った保険料の一・五倍が給付される、これが現行制度でございます。  これを今回の改正案で当てはめてみますと、これは基礎年金の国庫負担三分の一のケースでございますけれども保険料負担が三千四百万、それに対しまして年金給付が四千九百万ということで、給付負担の比率で見ますと、やはり同じように一・五倍ということでございまして、拠出給付倍率というのは今回の改正でも変わっておりません。  ただ、先ほど申し上げましたように、このままほうっておきますと最終保険料が三五%ぐらいになってしまうわけでございまして、今回の改正では、これが国庫負担三分の一のケースですと二七・六%、さらに国庫負担を二分の一に引き上げると二五・二%に最終保険料が抑えられるということで、そういった点では世代間の不均衡はかなり解消できるのじゃないか、こう思っております。
  112. 福島豊

    ○福島委員 いま一つよくわからない御説明だったのですけれども、要するに、今の枠組みを維持する以上は、そういう世代間の不公平、公平というのは余り関係がないという説明なのかなと理解をします。  一方で、世代間の不公平ということを考えたときには、二階部分を積立方式へ転換すべきという考え方があるわけでございます。この点については、三百五十兆円積み立て不足があるということと、経過的な措置として二重の負担があるので、それはなかなか現実的ではないという話もありますが、先日、読売新聞が提案をいたしました中では、一部の保険料を積立方式に転換する、一部は現在のような修正賦課方式で行うというような考え方が示されました。  こうした新しい提案に対して、その実現可能性といいますか、その意義について厚生省としてはどのように認識しておられるのか、順番が若干前後しますけれども、お示しいただきたいと思います。
  113. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 御案内のとおり、現在の厚生年金の財政方式は賦課方式の要素が非常に強まっている。一部積立方式の要素も残しておりますけれども、賦課方式の要素が非常に強まっているわけでございます。  こうなりますと、賦課方式というのは、将来の人口構成がどうなるかによって非常に影響を受けるわけでございまして、先ほど御指摘のございました世代間の不公平といったものが現行の賦課方式のもとでは強まっていくのじゃないか、こういう御指摘があるわけでございます。そういうところから、積立方式の要素をもっと取り入れたらどうか、こういう御指摘があるわけでございまして、これは非常に重要な検討課題だ、こう思っております。  ただ、積立方式の要素を強めるということはどういうことかといいますと、今の保険料は賦課方式が基本でございまして、かなり低い保険料にとどまっているわけでございます。これを積立方式に改めるということになりますと、保険料をかなり大幅に上げなければいけないわけでございまして、そういったことが果たして可能かどうか。さらに、保険料の引き上げが景気の足を引っ張るのじゃないかとか、いろいろ問題がございます。それからまた、そういった巨額の積立金が運用できるのか、こういう指摘もございます。あるいは、大きなインフレが来た場合に、積立方式では積立金が減価をしてしまう、したがって、実質的な価値がある年金が払えないのじゃないか、こういう御意見もございます。  いずれにいたしましても、積立方式、賦課方式、それぞれのメリットもありデメリットもあるわけでございまして、私どもとしましては、両者の適切な組み合わせが最善ではないか、ただ、その組み合わせをどうするかということについては今後の重要な検討課題である、こう認識しております。
  114. 福島豊

    ○福島委員 重要な検討課題であるという御認識をいただきましたが、完全な転換というのはなかなか難しいにしましても、部分的な転換ということにつきましてはきちっと検討すべき選択肢ではないか、そのように思います。  先ほどの政府参考人の御答弁にもう一度戻らせていただきたいのですが、平成二十一年生まれの方、この人は四千二百万円の保険料に対して六千百万円の年金の給付ですという御答弁でした。この四千二百万円というのは、要するにみずから支払う分の保険料ですね。事業主負担の四千二百万、同額があるとすると、大体払った分の八割ぐらいが戻ってくるという認識でよろしいのですね。
  115. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 保険料負担は、事業主が半分、本人が半分ということでございますので、厳密な計算は別といたしまして、本人保険料の約倍といいますか、これに匹敵する事業主負担部分が別途あるということでございます。したがいまして、御指摘のようなことが当てはまるかと思います。
  116. 福島豊

    ○福島委員 私が若干誤解をしていた部分があるのですが。  ですから、今回の改正案を見ても、世代間の公平ということにはほとんど資するところがない。それは、端的なことを言いますと、直ちに給付水準を下げるとかそういう手段をとらないと、なかなかそういうことはできないというような話になるのかもしれませんが、ただ、先ほども部分的な積立方式という話をいたしましたけれども、ここのところはどうするのかということは、実は十分考える必要があると思うし、国民に示す必要があるのだろうというふうに私は思っています。  ですから、修正賦課方式ということで、世代間の助け合いというのは一つ基本的な考え方でありますけれども、これだけ大きな人口構造の変化をしているわけですから、そこの理論構成というものを厚生省としてもきちっと組み立てていく必要があるのじゃないですか、私はそんなような認識をいたしております。  時間も限られておりますので、次に、年金の水準の問題です。  厚生年金は、基本的に世界的にも極めて良好な水準にあると私は思います。ただ、基礎年金の水準が果たしてこの程度でいいのかどうか、そういう議論はあるのだろうというふうに思っておるのですが。  それに先立ちまして、今回調査室からいただきました資料でも、「高齢者世帯の消費月額と年金水準の比較」、これは厚生省がつくった表が掲げられているわけでございます。これは平均値ということですが、この表を見ますと、「食料・住居・被服等」と「保健・医療」を合わせると十三・四万円だ。年金は、夫、妻とも基礎年金をもらっていますと、足し算すると大体十三・四万円。ちょうどぴたりと合う数字になっているわけでございますが、これはあくまで平均値の世界だと思いますね。  高齢者の世帯というのは必ずしも平均値で物を語らない方がいい世界でございまして、年金の水準というのは、制度が戦後次々と変わったということもありまして、必ずしも満額の年金をもらっている人ばかりではありません。ですから、こういう図表を示すときには、それぞれ所得水準で階層分けして、そこで実際に家計の支出というのがどうなっていて、どれだけ余裕がないのかあるのかというようなことができるだけわかるような調査をぜひともしていただきたい。  これはなぜ必要かといいますと、例えば介護保険保険料をこれからどう考えるのか、そしてまた医療保険の自己負担をどう考えるのかということを考える場合に、それがすべての基礎的な資料になるわけでございまして、平均的な姿だけ示してこれで大丈夫ですという話では、どういう負担を求めたらいいのかということに対して適切な判断に欠けることになるのではないかというふうに思います。  この点について、厚生省の認識をお聞かせいただきたいと思います。
  117. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今回の年金制度見直しに当たりましても、高齢者世帯の消費実態というのが非常に大きな一つの要素でございまして、私どももこういった面での調査というのはいろいろ考えたわけでございます。  それで、高齢者の消費につきましては、全国消費実態調査報告というのがございまして、これは五年に一度行われておりまして、平成六年度が直近でございます。そういう中で、より具体的には、夫六十五歳以上、妻六十歳以上の夫婦のみのいわゆる高齢者夫婦世帯につきまして、年間収入階層別の消費構造を示したものですとか、年金、恩給受給額階級別の消費構造を示したデータがございます。こういったものも参考にしたわけでございますけれども、今御指摘がございましたように、高齢者の場合は、平均で見ますと、消費、貯蓄におきましても現役世代よりもややゆとりがある。ただ、高齢者の場合は非常に格差が大きい、こういうことが一つの特徴として言えるのじゃないかと思います。
  118. 福島豊

    ○福島委員 今お示しいただいた調査がどの程度の中身なのか、後ほどまた一つ一つ調べさせていただこうというふうに思います。  次に、今回、国際的に会計基準の見直しということがあるわけでございまして、それに伴う積立金の不足ということに対して有価証券による拠出ができるようにしよう、これは経済界からも強い要請があってそのような形になったのだというふうに思います。いただきました資料の中でも、実際に株式の拠出をさせる場合に、資産の健全性を保つために一定の規定を設けるということが書かれております。当然のことだと思うのですけれども。ただ、具体的にどうするのかということが余り細かく書かれていないわけでございまして、政令で定めるということでございますが、どのような考え方でこれを定めていくのか、基本方針をまずお示しいただきたいということが第一点。  それから二点目は、これは要するに会計基準の変更ということで、その穴埋めのために企業はやるわけですね。ですから、基金の独自性といいますか、基金が資産をどういうふうにして安全に運用するかという観点ではなくて、むしろ親の企業の都合で株式が充てられるという可能性もあり得るわけでして、現在の経済状況変化が非常に激しい中では、たとえ一部上場の企業であったとしても、その株式が紙くずになるという話がある。基金は本来はその加入者の資産ですから、それをどのように保持していくのかという観点を本当にしっかり説明できないと、この措置というのはなかなか認められるものではないというふうに思うわけでございまして、この点についての厚生省の御説明をいただきたいと思います。
  119. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 バブル崩壊以降の運用環境の悪化によりまして、企業年金が大幅な積み立て不足状況にある、これは御案内のとおりでございます。私どもとしましては、こういった積み立て不足をできるだけ早く解消したいということでございまして、その積み立て不足の解消に充てるために一定の基準のもとに有価証券を拠出できる、こういう措置を今回の改正法案にも盛り込んでおるわけでございます。  その際に、これは親元企業のためにやるということではないわけでございまして、あくまで基金の加入員、受給者のために行うわけでございますので、そういった観点から一定の基準を決めたい、こう思っておるわけでございます。  その際には、上場株式に限るとか、積み立て不足を解消するための掛金に限定する、あるいは、当然のことながら基金の同意を必要とする。それから、株式につきましても、これは上場株に限るわけでございますし、発行済み株式数に占める割合を一定割合以下に抑える必要があるのではないか。あるいは、基金の資産全体に占める一つの銘柄の株式の上限を一定割合に抑える必要があるのではないか、こういう基準を考えているわけでございます。それから、当然のことながら、これは基金に拠出するわけでございますから、売却制限をすることはできないわけでございます。  そして、これはできるだけ早く解消したいということでこういう措置を盛り込んだわけでございますけれども、御指摘のような懸念が確かにあるわけでございますので、この制度が始まった後の運営状況ということにつきましては、十分注意しながら見てまいりたい。もしこれが悪用されるとかおかしなことになりますと、これは当然見直しをしなければいけない、こう思っております。
  120. 福島豊

    ○福島委員 今何点かお答えになられましたが、最後の方にお答えになられました、特定の種類の株式のシェアというのをやはりある程度制限しなければいかぬ、ここのところが恐らく一番大事なのではないか。どの程度まで認めるのかという話だと思いますけれども、できれば審議の中でそういう点も明らかにしていただきたいと思いますが、スケジュールもあると思いますので、今後の厚生省の対応を注目させていただきたいと思います。  時間も残り二分となってしまいましたので、最後に大臣にお答えをいただきたいと思います。  今いろいろと申しましたが、いずれにしましても、年金法の改正案というものは何としても早期に実現すべきである。少なくともことしに入りましてから一体いつ成立するのかということが問われてきたわけでございまして、先送りばかりということでは政治のかなえの軽重が問われることになるというふうに私は思います。大臣の御決意をお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  121. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 お答えを申し上げます。  先ほどから申し上げておりますけれども、今回の年金法改正案の一つの目的でございますけれども、将来の現役世代への過重な負担をまず防がなければならない、それとともに、確実な給付国民の皆さん方に明らかにしなければならない、そして何よりも年金に対する国民の皆さん方の信頼を揺るぎのないものにしなければならない、このように考えているような次第でございます。  そして、今後の少子・高齢化社会というものが目前に迫っておりまして、特に国民の皆さん方が老後に対して大変な不安を持っていらっしゃる、自分の将来の年金はどういうふうな姿になるのかということではないかと思っておるわけでございます。  そういうことを考えますと、少子・高齢化社会における年金の将来像というものを国民の皆さん方に明らかにしなければならないと同時に、安定的な財源を確保した上でございますけれども、今回は附則の部分国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げることであるとか、それからいわゆる二階建ての厚生年金の部分でございますけれども、支給開始年齢のスケジュールというものを明らかにいたしております。  さらに、今政府参考人の矢野年金局長の方から話がございましたけれども、当面の問題として、国民年金基金の不足が一兆四千億に達しております、こういうようなさまざまな問題を解決しなければならない。そのためにも、一日も早くこの法案を成立させて、国民の皆さん方に将来の年金像、そして当面に控える問題について一つの解決策というものを示すことが我々の責任だ、このように考えているような次第でございます。
  122. 福島豊

    ○福島委員 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  123. 江口一雄

    江口委員長 午後二時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時五十五分開議
  124. 江口一雄

    江口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。吉田幸弘君。
  125. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 自由党の吉田幸弘でございます。  大臣、お疲れのところ、早速でありますが質問をさせていただきます。私も風邪を引きまして、少し聞き取りにくい部分があるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。  先般、十一月九日、当委員会で私が大臣に質問をさせていただきました際に、大臣は、我が国の社会保障制度について、基本的には個人の自立を原則として、個人がどうしても対応しかねるところは社会連帯によるセーフティーネットで対応をする、このようなことを述べられたと思います。  先日は、この個人の自立を基本とする社会保障のあり方について十分議論ができなかったのですが、大臣は、二十一世紀を展望した個人の自立を基礎とした社会保障の具体的なあり方、医療、年金、福祉、介護といった社会保障全体のあり方としてどのようなことをお考えなのか、詳しくお尋ねしたいと思います。  個人の自立を社会保障の基本に備えることは、保険料と自己負担、それで足りない部分を公費ということになるのでしょうか。また、個人の自立とは、自助、自己責任と同じことなのでしょうか。今後の社会保障の基本的なあり方について大臣の見解をお伺いいたします。
  126. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先日の吉田委員の御質問にも私の方から答弁させていただきましたけれども、我が国の社会保障制度というのは、まず一番大切なことは、自立した個人を原則にしながら、同時に社会的な連帯の精神を基礎にしているということでございます。  医療、年金、介護の問題でございますけれども、私は前回も申し上げましたけれども、社会保険方式を採用しながら——今委員からも御指摘がありましたように、この社会保険方式というのは、一つは、給付サービスを実際に受けた方が自己負担をしていただくということでありますし、また、連帯の、相互に助け合うということから保険料を出し合う。  それから、公費の投入の問題でございますけれども、年金につきましては、御案内のように今度の国会で、安定した財源を前提にしておりますけれども、附則の部分で三分の一から二分の一にしていこうじゃないかということであります。  それから、介護の問題につきましても、要するに、これは御案内のように二分の一にしておるということでございまして、高齢者の医療保険制度の問題、後期高齢者の問題につきましては、三党間の合意で、二〇〇五年までにそういう基本的な考え方の上に立って今後検討していこうではないか、こういうことが決められておるわけでございまして、私どもは、自立は基本としながら、必要なものに対してはきちんと公費でも投入する、こういうような認識に立っておるような次第でございます。  いずれにいたしましても、これからの二十一世紀の少子・高齢化社会が進展する中において、真の豊かさを実現するためにも、国民生活の安心をもたらすセーフティーネット的な役割として、私は社会保障の役割というのをますます重要に考えているような次第でございます。
  127. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 本年は財政再計算の年に当たります。きょうから年金改正法案の審議が始まっておるわけでありますが、改正法案の具体的内容に入る前に、基本的なところを大臣に二、三お伺いしたいと思います。  今セーフティーネットである公的年金と企業年金や個人年金といった私的年金との関係について、まず大臣にお伺いしたいと思います。そして、公的年金が基本で私的年金がそれを補完していくのか、私的年金を補うものとして公的年金があるのか、基礎年金と老齢厚生年金との関係を含めて公的年金制度のあるべき姿について詳しくお尋ねしたいと思います。
  128. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 委員のお尋ねは、公的年金のあり方と私的年金のあり方だと思います。  まず、公的年金でございますけれども、老後の所得保障の柱といたしまして高齢者の生活を終身にわたって支えるという、その役割が大変大きなものであると思っております。そのうち基礎年金によりまして老後の基礎的な生活部分をカバーするとともに、サラリーマンのOBについては現役時代の賃金に応じた上乗せ給付を行うことによりまして、今回の改正案におきましては、現役世代の手取り年収のおおむね六割の水準を確保したい、今後ともこの水準の維持のために全力で取り組んでいきたいと思っておるような次第でございます。  また、こうした公的年金の上に立って私的年金というのがあるのではないかと私は思っております。個人や企業の努力によります個人年金であるとか企業年金は、今委員から御指摘がございましたように公的な年金を補完いたしまして、老後のニーズというのが多様化しておるわけでございますので、それぞれの皆さん方が、あるいは企業であるとか、四〇一Kの導入が今検討されておるようでございますけれども、こういったものを含めて補完的に、より豊かな老後生活を確保するために私的な年金の役割も大変大きくなってくるのではないか、このように考えております。  いずれにいたしましても、公的年金と私的年金とを合わせた年金制度が、二十一世紀の本格的な少子・高齢化社会においても十分にその機能を果たしていくことができるように必要な改革を今後とも行っていく決意でございます。
  129. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 現在では、現役世代の四・三人で一人の高齢者を支えております。二十一世紀は少子化が進むために高齢化社会が到来することは周知の事実ではございますが、二〇二五年には二人で一人、そして二〇五〇年には一・五人で一人を支えることになると予想されております。  このような超高齢化社会における社会保障費の負担は、従来と同じではよくないのではないでしょうか。年金制度においても、単純に年金の給付費を現役世代に負担させるのではなく、なるべく若い世代、現役世代の負担を軽くするということが求められているわけであります。超高齢化社会を控えて、大臣に年金の給付負担のあり方についてお伺いをいたします。
  130. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今委員御指摘のように、四・三人で一人のお年寄りを支えている、こういう図式でございますが、将来のピーク時にはこれがさらに深刻になってまいりまして、二〇二五年でございますか、二人で一人を支えていく、こういうような少子・高齢化社会が本格化するわけでございますが、今回の改正案におきましては、今後の少子・高齢化や経済の低成長化を踏まえまして、将来の世代の皆さん方の負担が過重なものにならないように、保険料につきましては年収の二割程度の負担に抑制をしたい、このように考えているような次第でございます。  この負担水準でございますけれども、早くから高齢化が進み、制度の成熟化が進んでいると言われております西欧諸国の例であるとか、あるいは平成十年の五月に行われました有識者調査においても最も高い支持を得ている、こういうような点からこのような水準を決めたような次第でございますので、御理解を賜りますようお願い申し上げます。
  131. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 次に、先般も若い者たちに対しての啓蒙とかそういうことに少し触れさせていただいたのですが、超高齢化社会における若者の負担を軽くするといっても、それには限度があると思います。彼らは、今まで以上に負担を担わなければならない、このように今考え、また、そう考えざるを得ないというふうに思うわけであります。  しかし、年金制度を支える若い世代にその大変さが十分伝わっているのかというと、いささか疑問に感じるわけであります。先般は、介護の問題でも同じようなことを申しましたが、若い世代に将来の負担、将来の国のあり方というものが十分説明もされておらず、また一部の者だけがそのことに対して認識をしているというのが現状であると私自身は考えるわけであります。  そこで、若者が年金制度の意義とその負担について正しく理解をし、その上で年金制度を担っていくよう教育また啓蒙をしていかなければならない、このことに対して厚生省に実際のプランがあるのかどうなのか、またそのお考え全般についてお伺いしたいと思います。
  132. 小島比登志

    ○小島政府参考人 我が国の公的年金制度におきましては、保険料の御負担をいただく現役世代の方々に年金制度の意義と役割を十分御理解いただくことが極めて重要であることは、先生御指摘のとおりと考えております。  このため、厚生省におきましては、昨年度から年金白書を作成いたしまして制度の意義や制度改正の必要性等について広く周知を図るとともに、テレビや新聞、あるいはポスターなどを活用しまして年金制度の役割などについての広報を実施しており、特に最近は、若年層を中心とした広報に力を入れてきたところでございます。  また、中学生、高校生を対象に、年金制度の意義、役割を理解していただけるようにするために、学校教育の場等で利用できる年金制度に関する副読本というものを中学生用、高校生用とつくりまして、それを県を通じまして全国に配布等をいたしているところでございます。  今後とも、さまざまな機会をとらえまして年金制度の正しい理解と信頼回復のため、より効果的な広報の実施に努めてまいりたいと考えております。
  133. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 今の関連なんですが、実際にその普及度というか伝達度を示すような指標というか数字というのはありますでしょうか。同じく厚生省に。
  134. 小島比登志

    ○小島政府参考人 その教育副読本がどういうふうに活用されているかということでございますか。
  135. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 いや、認識度の指標というか理解度のデータです。
  136. 小島比登志

    ○小島政府参考人 理解度、そこまではちょっと把握してございません。
  137. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 とにかく若い世代の人たちにこの重要性を理解してもらうためにも、より積極的な啓蒙活動を進めていただきたいと思います。  次に、未納者や未加入者の問題、いわゆる国民年金の空洞化の解消策について質問をさせていただきます。  三人に一人が国民年金の保険料を納付していないという、いわゆる国民年金の空洞化が生じております。国民年金保険料の納付率は近年低下をし続け、八割を割り込んでおり、保険料の免除者も五人に一人となっております。未納者や未加入者の増大は、無年金者や低年金者の予備軍を大量に生み出すことになります。国民皆年金も、空洞化のおかげで絵にかいたもち状態と言っても言い過ぎではないというふうに思うわけであります。  今回の年金改正法案では、この空洞化対策として何が考えられているのか、政府参考人にお伺いをします。あわせて、この空洞化問題を完全に解決するためには、将来的には基礎年金の財源の求め方を税方式にするしかない、このように私自身は考えるわけですが、この点について大臣にお伺いをいたします。
  138. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 御質問が二つございましたけれども、前段の問題はやや実務的な問題ですので、私の方からお答え申し上げたいと思います。  今回の改正案で空洞化対策としてどういう対策を考えておるのか、こういう御指摘でございます。  空洞化の原因、つまり未納、未加入者がふえておる、この原因はいろいろあるわけでございまして、景気が非常に悪化している、こういうこともあろうかと思いますけれども、やはり年金に対する不信とか不安、こういったものも大きく影響しておると思います。それで、こういった年金不安とか不信を解消するということがいわゆる空洞化問題の解決に最も重要じゃないか、こう思っておるわけでございまして、そのためには、今の年金制度給付負担の両面から将来を見据えて見直す必要があるということでございます。  そこで、今回の改正におきましては、将来世代の負担を過重にしない、それから給付につきましては、これから将来に向けて伸びを調整していく、ただし確実な年金をお約束する、こういうことで制度改正を考えたわけでございまして、今回の改正案を成立させて実現していくということがこの空洞化にも一番有効じゃないか、こう思っておるわけでございます。  それから、やや細かいといいますか、そういう問題といたしましては、保険料を払うことが困難な方を対象といたしまして現在免除制度がございますけれども、今回の改正案の中では、半額免除制度というのを導入することにしております。それから、学生につきましては、これは親御さんが保険料を払っておるというふうなことで負担感も高まっておりますし、今の学生の保険料負担についてはいろいろ問題がございますので、これは学生が社会人になって自分で稼ぐようになって後で追納していただく、こういう特例制度も今回導入することにしております。  そういうことで、制度的な問題では今申し上げたようなことを今回の改正案に盛り込んでおりますけれども実務面におきましても、今後とも、加入の促進あるいは納付特例、こういった努力も引き続き推進していきたい、こう思っております。
  139. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 空洞化問題を解消するためには基礎年金のいわゆる財政方式を税方式にするべきではないかということでございまして、これは、三党間の将来の一つの合意事項になっていることは事実でございます。  ただ、私の基本的な考え方としましては、先般来申し上げておるわけでございますけれども、まず基本的に社会保険方式の中において——先生も歯科医でいらっしゃいますからわかると思いますけれども医療保険においては空洞化ということはないのです。それはどういうことかといいますと、医療保険に対する国民のニーズが非常に大きいということと、医療保険に対する信頼感があるということなんです。年金に対しましては、ややもすると将来の問題ということでありまして、率直に申し上げて、もう一つ不安であるとか、現在の年金制度に対する信頼というものが一部において欠如しているというような指摘があることも紛れもない事実であります。  ですから、私どもは、我が国の社会保障制度というものは、先般来申し上げておりますけれども、根幹はあくまでも給付負担の関係をはっきりさせなくちゃいけない。そういう前提に立ちまして、社会保険方式の中においてどういうことができるか、こういう観点から考えるべきではないか、こう考えております。  それで、今回の改正法案におきましては、三党間の合意もございまして、「基礎年金については、財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図る」、こういうような附則案も設けられました。私は、これによりまして、若年世代、現役世代の年金に対する不安というものを解消することができるのではないか、ひいては空洞化対策にも大いに役立つのではないか、こう考えております。  それから、今矢野局長の方からも答弁がございましたけれども、低所得者に対する年金保険料の半減の問題であるとか、それから、前回の年金法の改正で設けました学生の保険料の問題でございますけれども、これも現実問題として、まだ働いていない、所得のない学生さんが保険料を納めるということは、結局親御さんの負担になるのではないかということがあって、こういうことも実は一つの空洞化の原因になっておったわけでございますが、これに対して猶予を設ける。こういうような有効な手だてを整えることによって空洞化の解消をねらうべきだ。それとともに、やはり一番大切なことは、老後の安心、老後の保障、こういう意味において年金に対する国民の皆さん方の理解をもっともっと深めるために我々が周知徹底を行っていかなければならない、このように考えているような次第でございます。
  140. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 前回の財政再計算が行われた平成六年の年金改正では、「無年金である障害者の所得保障については、福祉的措置による対応を含め検討すること。」との附帯決議が全会一致でなされてまいりました。  その後、五年が経過をしておりますが、今回の改正案では何か手当てがなされているのか、政府参考人にお伺いをしたい。そして、いまだに十万人強の無年金障害者がいると言われておりますが、この無年金障害者を解消する抜本的対応策は、基礎年金は税方式にした方がいいのじゃないかという私の考えがございます、この点について大臣にお伺いをしたいと思います。
  141. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 前段の、今回の改正案で無年金障害者の問題について何か手当てがなされておるのか、この問題につきまして御説明申し上げたいと思います。  これは、結論から申し上げますと、今回の改正では対応できなかったわけでございます。これはなかなか難しい問題でございまして、非常にお気の毒ではありますけれども。  こういった無年金の方々といいますのは、強制適用になる前の学生さんですとか専業主婦の方、こういった方は任意適用でございまして、年金制度に入っていなかったということでございます。  我が国の年金制度というのは、御案内のとおり社会保険方式でございまして、制度に加入をして保険料を納めるということが受給の要件になっているわけでございます。制度に入っていない方、あるいは入っていても保険料を納めていない方、こういった方に年金を支給するということは制度の根幹に触れる問題でございまして、年金制度の中で何らかの対応をするというのはなかなか難しいということはぜひ御理解をいただきたいと思います。  この問題につきましては、非常に難しい問題が多々あるわけでございますけれども、今後とも、関係方面の御意見も十分に伺いながら、幅広い観点から検討を行ってまいりたいと思っております。
  142. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 また次回、引き続き質問をさせていただきますが、いずれにしても、極めて重要な年金問題、私がいつも同じようなことを主張するのは、若い世代の人たちに対する啓蒙、教育、このことを強く訴えさせていただき、私もその世代でありますので、このことを大臣、次官、そして厚生省にもお願いをして、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  143. 江口一雄

    江口委員長 五島正規君。
  144. 五島正規

    ○五島委員 民主党の五島でございます。  大臣、連日、大変お疲れでございます。心から同情申し上げます。  年金改正法案がきょう出されました。今、年金改革ということでございますが、我が国の年金制度は、基礎年金、報酬比例、そして三階建ての部分三つに分かれているわけでございます。  その三つそれぞれに問題があるわけでございますが、まず最初に、この三つに分かれた年金がそれぞれ持っている意味合い、これはどういうことなのか。基礎年金というのは何を賄うための年金なのか。報酬比例はどうなのか。そして、三階建ての部分は何を意味する年金なのか。大臣並びに政務次官、どういうふうにこの三つの年金についてお考えなのか、そこのところからお伺いしたいと思います。
  145. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 要するに、基礎年金と二階建ての厚生年金と三階の年金基金との兼ね合いでございます。  まず、基本的に、基礎年金というのは、お年寄りの皆さん方が生活をしていく上において最低限度を賄うようなものを基礎年金の部分で賄っていただこうというのが基礎年金の位置づけではないかと思っております。  それから、二階建ての厚生年金の部分は、それぞれの企業において、基礎年金だけでは十分に豊かな老後生活を送るわけにはいかないのではないか、なかなか難しいのではないか、こういうような考え方もあるわけでございますので、そういうような部分を公的な部分において保障しようというのが厚生年金と考えておるような次第でございます。  さらに、基金の問題でございますけれども、これにつきましては、それぞれの企業が、さらに従業員の方々のいわゆる福利政策を、そして老後も安心して暮らせるように、その企業において十分に働いていただきたい、こういうような配慮のもとに労使が合意のもとになされている、このように認識をいたしております。
  146. 五島正規

    ○五島委員 今大臣は、基礎年金はいわばナショナルミニマムに相当する部分であり、そして厚生年金は退職後の生活水準を落とさないためというふうにも受け取れるような御発言でございました。  また、事実、昨日厚生省から、基礎年金が現在夫婦十三万四千三十四円というモデルケースで、その中には、基礎的消費支出が十二万一千三百五十六円、プラス保健医療費、入院費等々を含んだ平均で十三万四千五十七円という数字を出されました。基礎年金は診察代、入院料までカバーする、こういうまさにナショナルミニマムは基礎年金でカバーするというふうな資料をお出しになりました。私は、基礎年金が本当にそういう性格のものであるのかどうかという議論、それによって基礎年金は保険制度であるべきか税制度であるべきかという議論にも関連してくる内容であろうというふうに思っています。  ただ、その話に入る前に、先ほど福島議員の質問の中にもございましてそのようにお答えになっておりましたが、現在、例えば基礎年金の平均額を八十万四千二百円というふうな、言いかえれば六万七千十七円という数字が出されて、これは平均値であるからというお話でございましたが、これは平均値ではないですね。これはモデル値であって、もしこの基礎年金がナショナルミニマムであるとするならば、これは大変問題になります。  現在、六十歳から六十九歳の国民年金の給付額の平均値は五万二千六百六十七円、七十歳から七十九歳の人々の国民年金の給付額は四万三百三十四円、八十歳以上の人は三万五千二百九十一円。モデル額からははるかに低いところが現実の給付の平均値なんです。もしナショナルミニマムだとおっしゃるのであれば、この水準をモデル年金にどのような形に近づけるのか。そうでない限りは、我が国はナショナルミニマムを満たしていないということを認めることになると思うわけでございますが、その点についていかがでしょうか、政務次官。
  147. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 モデル年金に比べまして実際に受給をしておられる年金額が低い、これは事実だと思うのですが、これは現在受給をしていらっしゃる世代が制度に加入をしていた期間が短いということで現状はそうなっているわけですが、四十年掛けてきてこれから年金を受給される方につきましては、モデルに近づいていく、こういうふうに考えられるわけでございますし、年金は長期にわたって加入し、生涯にわたって受給するということで、制度全体の給付負担の均衡についても人口構造によって大きく影響を受けるため、長期的視野に立って考えていくということが必要ではないかと思います。  年金水準を検討する際にも、実際支給されている額ではなくて、少子・高齢化が進展する二〇二五年に標準的になる、このように考えられるわけですが、制度にフル加入した人の年金水準を用いることが適当ではないか、このように思います。
  148. 五島正規

    ○五島委員 この年金制度、基礎年金について、積み立て方式によるところの純然たる保険方式をとっているということの中で、制度の違いにより云々という話ならある程度理解できます。しかし、これをナショナルミニマムとして位置づけ、そして少なくても半額は税でもって負担する、こういうふうになりました。これは賦課方式で、現実に基礎年金部分については積み立てがない。  そうだとすると、今政務次官が言われた話というのは、例えば厚生年金部分については一定理解ができたとしても、税で賄う部分について、これをそのまま放置して、二〇二五年になれば六万七千幾らになるでしょうというふうな話というのは、これはナショナルミニマムの保障にはならない。それはどのようにお考えになっているのか。  もう一つは、こうした問題は、仮定のモデル年金をもって議論するのではなくて、高齢者が生活している現実の給付水準を問題として議論しなければいけません。  厚生省のお出しになられた資料の中にも、保健医療の診察代や入院料なども含みますとお書きになって、モデル年金で満たしているとおっしゃる。そうだとするならば、お伺いしたいわけでございますが、今回、基礎年金について物価スライドだけというふうにお話しになっています。そうしますと、今大変もめておりますが、新たな介護保険料の導入、あるいは将来的には当然老人医療についても変更が必要になってくるでしょう、そうした部分は基礎年金に反映するのかどうか。  物価スライドと言う以上は、総理府の物価指数にスライドさせるということ。そうした部分は入っていない。そうすると、基礎年金についてそうした部分も物価指数とは別個にスライドさせていくのかどうか、それについてはどうなんですか。
  149. 大野由利子

    ○大野(由)政務次官 基礎年金につきましては、老後生活のすべてを賄うということではなくて、老後生活の衣食住など基礎的な部分を賄う、こういう考え方に基づいて設定されているわけでございまして、医療や福祉の保険料や自己負担の増加分を年金水準に上乗せをするということは、ひいては若い世代への負担がさらに増すということで、世代間の不公平というのが出てくるという別の要因もございますので、基礎年金に上乗せをするということは考えてはおりません。  しかし、今回の年金法の改正案の附則にもありますように、基礎年金のあり方とか財源については、平成十六年までの間に十分な幅広い検討を重ねてまいりまして、安定的な財源とともに、将来の社会保障のあり方については十分な検討が必要ではないか、このように思っております。
  150. 五島正規

    ○五島委員 この議論は、大臣が、基礎年金はまさにナショナルミニマムに相当する部分であるというふうな意味の御発言があり、そして、現実に厚生省自身が、基礎年金が賄っている部分というものは、高齢者夫婦世帯で医療費、入院費までもカバーした、そういう基礎的な部分はカバーできているというふうにおっしゃっている。だけれども、現実の給付はそうではないですよ。  また、この数字にしても、今大野政務次官はそうおっしゃるけれども、例えば介護保険制度あるいは医療費の改定があった場合、物価スライドには反映しないけれども、現役世代の可処分所得と高齢者の可処分所得とのネットネットの比較で言えば、当然、介護保険料にしても、一号被保険者の方が保険料は高いという状況の中では変わってくるわけですね。そこのところはカバーしないというのであれば、それはナショナルミニマムをカバーすることではないのではないですか。そうだとすると、この基礎年金というのは一体どういう性格のものなのかという、もとの質問に戻ってしまうわけです。  政務次官は、今、高齢者の生活の基礎的消費の部分を賄うものではなくて、その一部を賄うものであるとおっしゃったわけですが、それでは、基礎年金というのはナショナルミニマムを賄うということではないというふうに理解していいわけですか。
  151. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今、五島委員の御指摘は、要するに、社会保険方式ではなくて、基礎的なナショナルミニマムを保障するべきものであるから税方式にした方がいいんじゃないか、実際問題、フルペンションの問題と実際のあれは違うんじゃないか、こういうような御質問だと思います。  この問題につきましては、基礎年金につきましては、財政方式を含めてそのあり方を幅広く検討して、そして平成十六年までにこの結論を出す、こういうような附則がなされておるわけでございまして、今後の検討課題にさせていただきたいと思っています。  ただ、現実問題といたしまして、今基礎年金に対します国庫負担というのは四・九兆円に達しておるわけでございますし、これを全額税方式にいたしますと、三分の一で四・九兆、二分の一で七・一兆で、大体倍になるわけでございまして、この財源をどこに求めていくかということが大きな問題ではないかと思います。  今、五島委員から御指摘があった、厚生省としてさまざまな機会に明らかにしているような標準的なモデル給付と実際問題が違うんじゃないかということは、これは紛れもない事実でございまして、先ほど大野総括政務次官からお話がございましたように、これは私どもはあくまでも年金に国民の皆さん方に御加入をしていただきたいんだ、そうすれば、将来こうなるんだというような視点からこのようなことを明らかにさせていただいているんだということで御理解を賜りたいと思います。
  152. 五島正規

    ○五島委員 私は大臣が言われた意見とは違いまして、基礎年金でナショナルミニマムをすべて賄っていると言うのであれば、これはやはり保険制度のもとでそれに必要な給付がないとだめだろう。しかし、税というのは基本的には所得の再分配でございますから、税でもって賄うということであれば、これはナショナルミニマムを満足するのか、それともナショナルミニマムには至らないとしても、老後の生活の一部を所得の再分配で賄うのかという話になってくる。したがって、税制度でやるのか保険制度でやるのかという問題というのは、実は基礎年金というものの性格づけにかかわってくる内容だろうと思っております。  そこの議論が、実は午前中の議論を聞いていても非常にはっきりしないし、厚生省から出していただいた資料を見てみると、厚生省はどうも基礎年金でナショナルミニマムは守られていますよという無理した言い方をしておられる。  今大臣が言われたように、五〇%の公費をもって基礎年金を賄っていくという方向でございます。民主党は、これを全額税に置きかえろという主張でございますが、これも徴収の仕方であると同時に、基礎年金の性格を決めるものだろうと思っています。もし、それを全額税に置きかえるとするならば、当然それに見合った財源、仮に半額であったとしても二兆二、三千億の財源が必要でございます。しかし、その財源で決まってくる内容とナショナルミニマムとはおのずから違ってくるわけです。  ナショナルミニマムというのは、そうしたさまざまな制度の変化等々によって当然上がってこざるを得ない。ですから、介護保険が導入されることによって、生活保護者に対しては、介護保険料を上乗せして支給し、自己負担については免除するという措置をとるわけです。  ナショナルミニマムをもし守らないものであるとするならば、それは所得の再分配であろうから、全額税方式に置きかえて何ら問題ないというふうに考えるわけでございますが、もう時間がございませんが、この点についてもう一度御確認をしたいと思います。
  153. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 ナショナルミニマムを確保するために税方式なのかあるいは社会保険方式なのかというような議論ではないかな、こういうことでありまして、これは率直に申し上げて、現実的な政治判断といいますか、それでは五島委員にあえてお尋ねしますけれども、現実の財政事情において、要するに消費税によって賄う税方式ということが国民的な理解を得られるかどうかというような問題にも関連してくるのではないか。  それから、もう一点でございますが、いわゆるネットネットスライドの話ではないかと思いますけれども、あくまでも厚生年金の年金額というのは、基本的に裁定時において現役世代の手取り、つまり、まず賃金の伸びに応じて決定をいたして、その後、私どもは物価スライドでお願いをする、こういうことでございまして、この問題と介護保険料の問題はちょっと別な次元の話ではないかな、こう考えております。  それから、これは非常に難しい問題でございまして、私どもは、先般来申し上げておりますけれども、例えば、お年寄りの中には二万円、三万円しかもらっていないで生活している方もいらっしゃるし、大変所得の多い方もいらっしゃる。そういう方のために、低所得者の保険料につきましては二分の一にするとかあるいは四分の三にするとか、こういうような減免措置を設けておりますし、また、今回の特別措置において、利用者負担においても、例えばホームヘルプサービスについては当面三年間は三%からスタートしていこうではないか、あるいは社会福祉法人が行うようなさまざまな給付サービスについては五%からしていこうではないかということで、低所得者であるとかお年寄りの皆さん方、要するに働きたくても働けなくて、そして所得の少ない方に対しては十分な配慮をしているという問題でございまして、この問題と年金の給付の問題というのは別な次元で考えていくべきであって、ネットネットスライド方式というような考え方に、私は現時点において直ちに賛同しかねます。
  154. 五島正規

    ○五島委員 消費税を直ちに上げて、それを処理するというのが現状において可能かどうかという問題提起は極めて大事であり、私どももそう思っています。  ただ、同じことが今回の政府の案であったとしても、二分の一は公費投入ということになっています。二兆二千億の財源というものは、まさか赤字国債でずっとやっていくというわけにはいかないでしょう。赤字国債を毎年毎年ここに継ぎ足していくというわけにはならないでしょうから。そうすると、この二兆二千億の財源というのは、消費税をもう一%上げるなんというようなことではなしに処理をされるという意味でしょうから、一体どのようにお考えになっているのかというのが一つ。  それからもう一つは、ネットネットスライドという立場をとらないとおっしゃるわけです。ネットネットスライドの立場をとらないということであれば、それは当然ナショナルミニマムを賄うものではございません。ところが、現状の基礎年金額というものについての説明は、厚生省自身が、平成十一年度の夫婦二人の基礎年金の額として一月に十三万四千三十四円。基礎的消費の食料、住居、衣服が十二万一千三百五十六円、それに保健医療費、診察代、入院料を含めて平均して一人当たり十三万四千五十七円になります。こういうふうな資料でもって基礎的消費が賄えるという説明を厚生省自身がお出しになっているわけです。  この説明でいくとするならば、医療費が変動したりあるいは介護保険が導入されてくれば当然変わってくるわけですね。だから、無理して架空のモデル年金というものを、あえて現実の給付とは違った架空の数字を用いて、なおかつ、大臣おっしゃるようにネットネットの比較でもなく、基礎的な消費をそれで賄えるということではなしに基礎年金というものがありますと、それで基礎的な消費は賄えるということでわざわざ丸めてごまかして出している。  このような形が実は国民の中に、そうは言うけれどもそれだけの年金はもらっていない、あるいは公的介護保険制度が出てきた場合に現役世代の保険料負担と一号被保険者保険料負担には非常に格差がある、これは何によっても穴埋めされない、そういうようなものの不安の中から年金制度に対する不信感が広がってきているというふうに思われるわけです。  その点について大臣の御主張と厚生省自身がこれまで説明している内容とに非常に大きなずれがあると思いますが、そのように指摘をさせていただいておきます。  なお、基礎年金の半額を公費負担とするという時期と財源について、今消費税でというお話も出ました。大臣としては、これは直接税で賄うというふうにお考えになっているのかどうか、時期についてもどのような時期を大体想定しておられるのか、お伺いしたいと思います。
  155. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 実は、私が厚生大臣に就任する前から、年金については、国民の、特に若年世代の間で大変不安感を持っている。もしも自分たちが年をとったときに、事業主も含めてでございますけれども、自分たちの払った保険料が逆ざやになるのではないか、こういうような懸念が一部にあった。こういうような点から、私はかねてから、基礎年金の国庫負担につきましては、社会保険方式のぎりぎりであります二分の一まで引き上げるべきだという考え方、認識を持っておることは、五島委員も十分に御承知のことと思います。  この問題につきましては、いずれにいたしましても、平成十六年、つまり二〇〇四年までの間に決着をつけなければならないということが今回の附則に設けられておるわけでございます。  それでは、いつ、どういう財源かという問題でございますけれども、これはできるだけ早いにこしたことはないわけでございますが、現実問題として、例えば、先ほど五島委員からお話がございましたように、三分の一から二分の一にするには二兆二、三千億円のお金がかかるんじゃないか、こういった問題でございますので、安定した財源とは、現時点におきまして、とにかく景気がよくなって税収がふえなくちゃならぬということがまず第一でございます。  そのほか、これは私自身のあくまでも私見でございますけれども、先般来たびたびこの中で申し上げておりますけれども、これからの国家予算におきます予算の配分のあり方を国会議員自身が十分に議論する中において、そしてまた国民の皆さん方の合意を得ながらやっていかなければならないし、もし仮に二〇〇四年までの間に、いや、もっと早くやってもらいたいというような御意見があって、自由党さんなんかは消費税を上げるべきだという考え方でありますが、現時点においては消費税を上げるような経済状況下ではないんじゃないか、あるいは国民的な御理解をいただけないのではないか。  さまざまな議論がありますけれども、いずれにいたしましても、私は、この二〇〇四年までの間に決着をつけなければならない問題だなと思っております。
  156. 五島正規

    ○五島委員 二〇〇四年までに、大臣がおっしゃっているように景気が回復して、消費税を引き上げずにこれが賄えるようになるように財政運営をしてもらわないといけないわけですが、今のところ、財源についてあるいはその時期について明確にできない。しかし、理念として公費を半額入れるということを法律化したという内容だということだと思います。  そこで、基礎年金の問題ばかりやっていても、実はまだいっぱい聞きたいことがあるわけですが、時間がございませんので、もう一つ重要な問題についてお伺いしたいと思います。  これから年金問題について、厚生年金部分については多くの議員が質問されると思いますので、私はこの三階建ての部分について少しお伺いをしておきたいと思います。  厚生年金基金の積み立て不足は、今までの会計制度では一兆四千億に上るというふうに言われています。しかし、来年一月から実施されます、そして再来年度からは強制されます新企業会計則で計算しますと、積み立て不足は数十兆円というふうに言われています。この積み立て不足は何年以内に解消しなければいけないのか。これまでですと大体七年以内となっているわけですが、七年以内に厚生年金基金だけでも二十数兆円になると言われております積み立て不足、これをどれぐらいで解消させようとするお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  157. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 私どもとしましては、できるだけ早く積み立て不足を解消したい、解消してほしい、こういう気持ちを持っておるわけでございますけれども、これは専ら企業経営の問題、あるいは景気がどうか、こういった問題にかかわるわけでございまして、現時点で何年以内に完全に解消ということはなかなか難しいわけでございます。  ただ、できるだけ早く解消という意味では、従来のように現金による掛金拠出だけではなく、株式現物による拠出も積み立て不足解消のために充てることができるようにということで、今回の法律改正案にそういう条項を盛り込んでおります。  こういった新たな措置も講ずることによりまして、できるだけ早く積み立て不足の解消をしていきたい、こう思っておるわけでございます。
  158. 五島正規

    ○五島委員 今の局長の話は、これまでの会計則によるところの企業年金そのものの一兆四千億の積み立て不足のことを言っているのか、それとも新会計則によって生まれてくるところの積み立て不足二十数兆円のことを言っているのか、どっちなんですか。
  159. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 これはあくまで、今おっしゃられました一兆四千億の基金の積み立て不足の解消のための措置ということを申し上げているわけでございます。  ただ、基金の積み立て不足を解消することによりまして、結果的には新会計基準による積み立て不足の解消にもつながる、そういう認識をしております。
  160. 五島正規

    ○五島委員 一兆四千億の積み立て不足については七年以内に解消しなければいけないのは当たり前のことなんで、そのことについて聞いているわけではなくて、新たなグローバル基準という形で会計則が導入されようとしている。それによって起こってくる積み立て不足が非常に大きい。これを各企業がバランスシートの上で置いていくとするならば、多くの企業が軒並み赤字企業に転落してしまう、はっきりしているわけですね。そういうふうな状況の中で、この積み立てをどのようにさせていくのかということを聞いている。  そんなものにも例えば株式を使わすのかどうか。そうすれば本当にマーケットというものがぐちゃぐちゃになってしまうだろうと思うわけですが、そのことを聞けばまたぐちゃぐちゃ言うでしょうから、時間がむだですから聞きません。  ただ、そうした積み立て不足は、来年度から採用される会計則の中で生まれてくる。そうした問題の解決をどのような形で処理しようとしているのか。同時に、そのような巨額の積み立て不足を残したまま、例えば来年の通常国会には確定拠出型年金を法案として提出したいと厚生省は言っておられるし、そして内閣の方も、三階建てを、厚生年金基金を残したままで確定拠出をもう一つつくろうというふうにお話しになっている。  そうしますと、先ほどの大臣のお話では、企業の経営を含めて景気がよくなり、そして税収をふやして、そのことによって基礎年金の公費の五〇%の財源に充てたいとおっしゃっているわけですが、仮にこの二十数兆円のお金を七年間で返していくということになりますと、一年間に三兆数千億の金を日本の厚生年金に入っている企業は積み立てていかないといけない。これから先の分に加えて、過去の積み立て不足分として積み立てなければいけない。大変な状況になってくるだろうと思うわけですね。それについてどのようにお考えなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  161. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今、御案内のように大変な不況の中で、この問題は難しい問題でございますけれども、企業年金や退職金についての新しい企業会計基準の導入というのは、確かに今五島委員から御指摘があったように、企業経営に影響があるものではないかと私自身も考えております。しかし、これは経済のグローバル化の流れの中で既に決定をしていることでございまして、私は避けて通れない問題だと考えています。  そこで、厚生年金基金の積み立て不足の解消を図る対策として、今回の改正案におきましても、先ほどからお話が出ておりますような、企業が基金に対して株式を拠出するということを認めることにしておるわけでございますけれども、厚生年金の積み立て不足というものが解消されれば、結果として今御指摘のような企業会計上の積み立て不足の解消にも役立つのではないか、このように考えております。
  162. 五島正規

    ○五島委員 これだけ巨額の積み立て不足を補てんでき得る企業というのは、少なくとも今日の不況の状況の中においてそう数多くあると私には思えません。そうしますと、厚生年金基金からの脱退というものが続発するのではないかというふうに考えるところであります。  現在、国や地方自治体の行うところの工事やその他の事業に指名入札を希望する事業者は、その経営審査の一つとして厚生年金基金の加入の有無が問われています。そういうことで、指名入札に参加するために多くの企業体が厚生年金基金に入っているわけですが、その理由としては、経営審査ということが一つの条件として入っています。しかし、地方の中小企業においては、現実には、基金に加入していても、その給付を受けることなくほとんどが掛け捨て同然になっているという例も数多く見られるわけでございます。  その問題は別といたしましても、これまで指名入札で経営審査として加入の有無というものが問われていたわけですが、これほど巨額の積み増しをしなければいけないということが企業に求められるとするならば、むしろ厚生年金基金から脱退しているところの方が経営診断としてはまともだということにすらなりかねないのじゃないか。これから先、非常に厚生年金基金からの脱退が増加する可能性があるのではないか。しかも、新会計則でいうところの積み立て不足は残したまま脱退するとした場合に、どのように処置されるのか、お伺いしたいと思います。
  163. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 中小企業の基金の場合に掛け捨てになっているんじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、基金を設立する場合におきましては、従業員の平均勤続年数がおおむね四年以上であるということが認可の条件になっております。そういうことで、多くの加入者の方が給付を受けられるということになっておるわけでございます。それから、加入期間が三年以上の方、短期の方につきましても、これは脱退時に一時金という形で受給できるわけでございます。  それから、ただいまの御指摘にございました国際会計基準の導入というのが時期尚早といいますか、あるいはおかしいのじゃないか、こういう御指摘かと思いますけれども、国際化の流れの中でこういった会計基準の世界的な統一化というのはやむを得ないわけでございまして、企業がこういうのを受けて積み立て不足の解消の努力をするということが、ひいては加入員につきましても福祉の増進にもつながるのではないか、こう思っておるわけでございます。  先ほど来御指摘がございましたけれども、企業が掛金の追加拠出を求められるのは、あくまで厚生年金基金の積み立て不足、先ほどの話で言いますと一兆四千億の話でございまして、数十兆に及ぶ会計基準上の積み立て不足ではないという点については御理解いただきたいと思います。  それから、最近、厚生年金基金は運用環境が非常に悪化しまして、解散をする、あるいは企業経営自体が非常に厳しい。あるいは昭和四十年代にできた基金では、その後の産業構造の変化によりまして現役の加入員が非常に減る、それに対しまして受給者が非常にふえまして、なかなか年金制度としてやっていけないということで解散するところもふえているわけでございます。  私どもとしまして、例えば給付設計を弾力化するとか予定利率を弾力化するとか、そういったいろいろな措置を講じておりますし、それからまた、積み立て不足につきましても、今回、法改正でお願いしているような形で、積み立て不足が早期に解消できるような措置もあわせて講じたいということで、引き続き今後とも努力していきたいと思っております。
  164. 五島正規

    ○五島委員 私が勝手に新会計則を導入したことはけしからぬと言っているというような決めつけをされるとえらい迷惑です。これは法律でそういうふうになった、グローバル基準になった。  なった段階において三階建ての新たな年金制度を導入しようというのであれば、過去の年金制度、特に三階部分についてそれとの整合性をとるという形での検討が必要でしょう。その場合に、この一兆四千億の積み立て不足に加えて、新会計則でいえば、少なくとも各企業の資産台帳の上において二十数兆の負債が新たに出てくるわけですね。それは、厚生省は、まだ知りません、その金は厚生年金基金にそのままストレートに入ってくるわけがないから、私のところの財源じゃないから知りませんわという話ではないでしょう。新たな制度を導入するということであるならば、この巨額な積み立て不足を持つところの厚生年金基金をどうするのか。  今局長が言ったように、厚生年金基金に対しては、一兆四千億の積み立て不足さえ処理してくれれば、そこから先の新会計則によるところの積み立て不足については、それを問うているところではないということになれば、各企業とも厚生年金基金から次々と脱退していくという可能性は十分にあるのではないですか。大臣、その辺をどうお考えですか。
  165. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 厚生年金基金から脱退していく企業がふえるのではないか、こういうことでございますが、これは、私どもとしては、ぜひとも勤労者の老後の安定のためにもそのようなことがないようにお願いをすることでございますけれども、それぞれの企業が御努力を願って、例えば日立などはいち早く積立金不足のために巨額な財源を投入いたしました。  しかし、今度の年金法の改正によりまして、当初は持ち合い株の解消という観点から議論されたわけでございますが、大変すばらしい点に着眼してこのような案ができた、これによって厚生年金基金が次々に解消していくような事態は起きない、私はこのように信じたいと思っております。
  166. 五島正規

    ○五島委員 大臣の願望は願望として、そうなのかと受け取っておきますが、現実問題として、厚生年金基金は非常に問題を持っていることは事実です。  事実、これに対して、新会計則の中においても、一体、何年ぐらいの間にこの積み立て不足を解消させていくのかということも含め、やはりこれは財政全体とのかかわりの中での政治の決断の問題だと思うのですね。グローバル基準をそのまま取り入れるのはいいのですが、そのことによって日本の景気回復が大幅におくれる。あるいは、勤労者の老後に対して、これまで厚生年金基金からの収入というものを当てにしておられた、現役の人たちも先輩を見習って、退職金、公的年金のほかに厚生年金基金からの給付があるという前提のもとで生活をしている人たちに対して、それをどのように不安なくさせていくのか。  あるいは、丹羽大臣がそういうふうに考えているとは私は全然思いませんが、悪くとれば、不安がらせておいて確定拠出型の方に追いやった方が得だということでやっているのではないかというふうにねじ曲げてとれないこともない。そういう状況というものを解消するためにも、これは厚生省だけの問題ではなくて、会計則に伴うところの経済の問題ですから、小渕内閣としてこの問題についてこのまま放置しておいていいのかどうか、この辺についてはぜひ検討お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  167. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 五島委員が先ほどから御指摘なさっておりますように、新企業会計則によりまして企業に与える影響が大変大きいのではないかということは紛れもない事実でございます。そういうことも十分に配慮いたしまして、十五年という長期にわたってこの積み立て不足を解消していこう、こういうような方針を打ち出しておるような次第でございます。
  168. 五島正規

    ○五島委員 時間がございませんので、あと一問です。  今回の年金制度の改定というのは、この四月に実施された分の後追いの処理ということなのだろうと思います。しかしながら、この法改正によって国民に求められている犠牲というのは非常に大きい。さまざまな形で、世代間の云々という形でもって年金の給付の抑制が入ってくる、ということが一方でありながら、例えば基礎年金に対する公費の投入五〇%ということも余り理念の裏づけがないままに——五〇%の枠というのは、厚生大臣の従来の持論からいうならば、保険制度でやっていくということを前提としているというふうに受け取りますが、そういうふうな枠の中で公費を五〇%にする。しかし、その財源実施については今の経済状況の中ではまだ明らかにできないということで、負担先取り、そして給付については後延ばしという内容でございます。  加えまして、私は後の同僚議員に質問を譲りますが、厚生年金についても同じような問題が随所にあります。その最大のものが、どうも、年金を一階、二階、三階と分けて、特に三階建て部分まで含めた厚生官僚の非常に膨大な資金の管理権というふうなものが生まれてしまって、それぞれの理念の位置づけというのが非常に不明確になってしまっているんじゃないか。ここのところを正して、基礎年金、厚生年金、そして三階建ての部分、それをどういうふうに老後の役割として位置づけていくのか。これは生活だけの問題ではなくて、どの部分保険で賄わなければいけないものなのか、どの部分は所得の再分配なのかということも含めた根本的な議論がどうも欠けているように思うわけですが、その辺についてはどうお考えでしょうか。
  169. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 この問題につきましては、五島委員の冒頭の質問の中で私なりの考え方を申し上げさせていただきました。  ただ、率直に申し上げて、まだまだ十分に整理し切れない部分がありますので、今後、この委員会を通じまして五島委員の御意見も承りたいと思っておりますし、また大変重要な問題ではないかと考えておりますので、大いに議論をさせていただきたいと考えております。
  170. 五島正規

    ○五島委員 終わります。
  171. 江口一雄

    江口委員長 土肥隆一君。
  172. 土肥隆一

    ○土肥委員 民主党の土肥隆一でございます。  私は、今回新しく提案されました年金資金運用基金法案と、それに引き継がれる年金福祉事業団の解散及び業務承継等に関する法律案に絞って質問をしたいと思う次第でございます。  この年金資金運用基金法案は大変シンプルなわかりやすい法案で、しかし同時に、何か厚生省は、これから財投改革もあって、ためにためてきた年金基金を今度は自分で運用するんだ、しっかりやりますよ、情報も公開しますよ、大いにもうけますから期待してくださいというふうに聞こえるわけでございます。  しかし、年金福祉事業団ができまして今日来、そのたどってきた道は、またある意味で惨たんたる結果に終わっているわけでございまして、そういう観点から見ますと、そう簡単に年金福祉事業団をつぶして、新たに生まれ変わって年金資金運用基金に移りますとは言えない、そんなことではいけない、やはりこれまでの年金福祉事業団の歩みを十分吟味しなきゃならない、このように思っておるわけでございます。そういう視点で質問を申し上げたいと思っております。  まず先にお聞きいたしますけれども、今、年金の積立総額は百四十六兆円余りというふうに資料として出されておりますけれども、これはいつまでためるのですか。それとも、目標額が決まっていて、ここまではためていきますというのか。まず、積立金の性格について教えてください。
  173. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 年金の積立金でございますけれども、ただいま御指摘のあったような金額でございますけれども、これは積立金を積み立てようということでやっているわけではございません。結果としてこういった積立金を保有するに至っておるということでございます。  日本の年金というのは、厚生年金でいいますと、五年分ぐらいの積立金がございます。ヨーロッパは一カ月とか二、三カ月ぐらいで、日本はなぜそんなに積立金が多いんだ、こういう御指摘、御批判を受けるわけですけれども、これは、ヨーロッパと日本では年金を取り巻く状況が違っておるわけでございます。  つまり、ヨーロッパは既に高齢化が日本よりもいち早く来た、そういう中で保険料をどんどん上げていきまして、大体年収の二〇%ぐらいにまでなっておるわけです。日本はこれまでは、高齢化はヨーロッパほど高くはなかった。したがって、今、日本の保険料も、年収ベースでは一三・五%程度でございます。しかし、日本は、これから急速に大変なスピードで超高齢化社会がやってくるということでございます。  先ほども御指摘がございましたけれども、世代間の不公平が非常に大きいじゃないかということでございます。日本の場合は、今申し上げたような状況ですから、世代間の公平ということを第一義的に考えますれば、保険料の引き上げスピードを少し高めていく、そして積立金の運用収入でもって将来世代の保険料軽減する、これが世代間の公平につながる道でございまして、そういった観点から、世代間の不公平を少しでも是正しよう、将来世代の負担を少しでも軽減しよう、こういうことで積立金を活用しているわけです。  段階的に保険料を上げていく、そして積立金を使って将来世代の負担を軽くする、こういう観点から財政運用を行っておりまして、その結果として五年分を少し超えるような積立金を保有するに至っておるということでございます。
  174. 土肥隆一

    ○土肥委員 お聞きしますと、大変結構な話でございます。これまでは意図せずお金がどんどんたまった、そして今度はその金利をうまく利用して世代間の不公平を直していこう、百四十六兆円を厚生省が運用なさる、大変結構に思えるのであります。  ところが、若干条件は違うとはいえ、年金福祉事業団がやりました資金運用の実績を見ますと、これまた惨たんたる結果でございまして、これは財投から金を借りてきてそれを運用するから、当然、金利差の問題やあるいは逆転もあるわけでございまして、無理もないとは思うのですけれども、しかし、これはそれでもうかる、年金福祉事業団に金を入れてそれを運用したら、その運用益を用いてさまざまな融資やら還元事業ができるというもくろみでなさったわけであります。しかし、果たしてそうであったのかということになりますと、これは、年金を扱う厚生省といたしましては大変じくじたるところがあるのじゃないかと思うのであります。  結局、年金の運用で完全にもうかった年というのはほぼございませんで、年金福祉事業団がやった実績を見ますと、年度末評価損益でプラスが出たのは、最近は七、八、九、十ともうかっています。でも、百七十二億とか十二億五千百万円だとか、その程度です。ところが、元年、二年、三年、四年、五年、六年と惨たんたるものでございまして、結局、収支残高を見ますと、マイナスの一兆八千四百八十六億円。これは簿価ですね。時価でいきますと一兆二千三百八十一億円の赤字なんです。これはもくろみと非常に乖離しちゃったんですけれども、これはどういうふうに認識していらっしゃるんですか。
  175. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今御指摘のあったような累積の欠損を抱えておるわけでございまして、これは、私どもとしても非常に責任を感じておるわけでございます。  なぜこういうことになったのかといいますと、やはり制度自体に無理があった、もちろん私どもの努力が足りないという点もあるわけですけれども制度自体にやはり無理といいますか限界があるという認識を持っております。  つまり、年金のお金というのは一度資金運用部に預けるわけですけれども、そこから年金福祉事業団が借りてきて運用する、そして毎年利払いをしていく。これは七年とか十年の固定金利でございます。したがって、平成十年度の実績で見ましても、過去に高い金利で借りてきたお金がたくさん残っておりまして、平均の金利というのが四・四%でございます。ところが、バブル崩壊以降、運用環境が非常に悪化したという中で運用実績が低迷しているということで、逆ざやになったわけでございます。こういったことに至ったということについては、見通しが甘かったといえばそのとおりでございます。  ただ、私どもとしましては、今の制度、仕組みの中でも、この累積欠損を解消すべく努力をいたしております。それとあわせまして、今回の制度改正で、自主運用の新たな仕組みということを盛り込んだ法案をお願いしているわけでございまして、これは制度的な面でもぜひ改善を図っていく必要がある、こう思っておりまして、今回法案を提出した次第でございます。
  176. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうすると、今度は任せておきなさい、ばっちり資産運用して利益を上げます、そう言い切っていいですか。そう私どもが考えていいでしょうか。自信を持って答えてください。
  177. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今回の仕組みは新たな仕組み、年金の自主運用でございますけれども、運用に当たりましては、保険料拠出者の代表等から成る委員会意見を聞いて、厚生大臣が運用の基本方針を決める。それに基づいて、実際の運用に当たるのは民間の金融機関でございますけれども、積立金の運用全体を管理する年金資金運用基金を設ける、こういう仕組みをとることにしておるわけでございます。  そして、一番重要なのは、やはり責任体制を明確にする、それから情報開示を徹底させる、説明責任を果たしていく、こういうことできっちりした制度的な仕組みをつくりたい。専門性とか説明責任、情報開示、こういったものをしっかりやっていきたいと思っております。  ただ、これは民間の市場での運用でございます。したがいまして、マーケットがどうなるかというのは、これは何とも言えないわけでございまして、私ども保険料拠出者の納得を得ながら説明責任を果たしていく、こういうことで努力をしていきたいと思っておるわけでございます。
  178. 土肥隆一

    ○土肥委員 局長、その一方で、マーケットだからいたし方ありません、そんなことを言ったら、民間企業やマーケットでやっている人たちは、運用を間違えました、ごめんなさいでは済まないわけであります。運用益を上げるというならば、やはり結果責任というのはきっちりとお示しにならないと。結局、国民の年金をただマーケットにゆだねて運用した、その結果マイナスが出ました、ごめんなさいでは済まないのではないか。  したがって、私どもが危惧するのは、一体、お役所がマーケットの知恵をかりるとはいえ、厚生大臣が運用主体になれるのかどうかというところまで問わざるを得ないのでありますけれども、丹羽大臣、どうですか、運用については自信おありなのですか。大臣がいわば主管者で資金運用をなさるわけです。
  179. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 確かに、資金の確保事業であるとか年金の財源強化事業というのは、そもそもこれを借り入れて資金を確保して、住宅融資の還元に充てるとか、あるいは年金の財政基盤の強化を目的として資金運用部から運用資金を借り入れて、昭和六十一年から始めたものでありますけれども、当時の経済環境から、運用部に対する利払いを十分上回る運用収益を上げて目的を達成したい、こういうことで始めたわけでございますが、近年の低金利であるとか株価の低迷によりまして、運用収益というものが資金運用部への利払いを下回ったために、現在累積の欠損というものが生じておるわけでございます。  この問題でございますけれども、これまでの借り入れは、資金運用部からの金利というのは平均で大体四・四くらいであったわけでございますが、直近は二%くらいまで下がってきておるわけでございますし、こういうことから累積欠損の解消に最大限努めていきたい、私はこのように考えています。
  180. 土肥隆一

    ○土肥委員 年金局長に聞きますが、要するに、年金福祉事業団が出しました赤字一兆二千三百八十一億円、これは新しい基金の方に受け継がれるわけですけれども、これはどういうふうに処理なさるのですか。
  181. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 これは、年金福祉事業団が解散いたします、それで新しくできます年金資金運用基金が引き継いで、引き続き運用するということでございます。これは資金運用部から金を借りて運用しているわけでございまして、元利を返済しなければいけないということでございますので、元利の返済期間が十年でございますけれども、十年間は、現在年金福祉事業団が運用しております二十六兆円、こういった金を新たにできます年金資金運用基金が引き継いで元利を償還しながら運用していくということでございます。  その際、当然のことながら、赤字解消に努めるというのは最大の目標でございます。これは先ほど申し上げましたように、借り入れコストと運用との差が逆ざやという形で累積赤字になっているわけでございますけれども、この借り入れコストが現在かなり低下してきております。先ほど申し上げましたように、平成十年では四・四%でございますけれども、新規の借り入れコストというのは今二%くらいでございます。今度安いコストの資金に入れかわっていくわけでございまして、そういう中で、これからさらに努力を重ねてこの赤字の解消に努めていきたいと思っております。
  182. 土肥隆一

    ○土肥委員 ちょっと念を押しておきたいのですが、この年金福祉事業団の仕事の中で、昭和六十一年に資金確保事業、昭和六十二年には年金財源強化事業——確保事業は収益を積み立てる、それから年金財源強化事業は、厚生保険国民年金特別会計へ納付する。これは結果的には幾らになっているのですか、積み立てた分、納付した分。
  183. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 まず、資金確保事業でございますけれども、これは十年度末現在の時価ベースで約三千四百億円の累積利差損が生じております。したがいまして、収益は積み立てられておらないわけでございます。  それから、年金財源強化事業でございますけれども、平成十年度末現在の時価で約九千億円の累積の利差損を生じております。途中段階の平成四年度に百三十三億円を年金特別会計に納付いたしております。
  184. 土肥隆一

    ○土肥委員 百三十三億円。だから、言ってみれば、鳴り物入りだけれどもたった百三十三億円が積み立てられました、そう言わざるを得ないのでありまして、これ以上文句を言ってもしようがないのでやめますが、要するに、いろいろなプログラムをおつくりになるのですね。だけれども、さっぱりそれが実現されないというのが、今までの皆さんの、厚生省当局の資金運用であったわけでありますから、今度は自主運用ですから任せてくださいと言われても、今度もやはり警戒せざるを得ないのが私なんかの心配性の人間の考え方でございます。  さて、今回の法改正、年金福祉事業団の解散、そして基金の設立というのは、平成九年六月六日の閣議決定「特殊法人等の整理合理化について」という中の年金福祉事業団の項目が最大限生きているというふうに思うわけであります。その中で、年金福祉事業団はもうやめますよと。「年金資金の運用の新たな在り方につき結論を得て、」ということは、これはもうからないから年金福祉事業団はやめましょうということだろうと思います。それから、資金運用業務は、これからやるわけでありますけれども、「別途検討する。」。別途検討なさって基金制度ができたということでしょうか。そして、「大規模保養基地業務からは撤退し、また、被保険者向け融資業務については、適切な経過措置を講じた上、撤退する。」と書いてあるわけですね。  したがいまして、次の質問に移りますけれども、まず、融資業務から撤退すると閣議で決められているのでありますが、その後の年金審の例えば平成十年十月九日の意見書ではここは両論併記。そして、平成十一年三月十二日の年金審への諮問では、今ここに新たに基金法ができる、その法律のいわば裏支えをしていると私は読むわけであります。そこには撤退という言葉は一切出てまいりません。融資業務について撤退というのは出てこない。そして、三月十二日から三日たって、慌ててもう一回年金審が答申を出しまして、これまた融資事業については両論併記になっているわけですね。  この閣議決定と年金審の答申、そして今回の法案成立、この間について当局はどういう御説明をなさるのですか。
  185. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今御指摘のありましたような平成九年の閣議決定を受けて、年金福祉事業団を解散した後の融資事業あるいは施設事業をどうするのかということで、関係方面と御相談を重ねてきたわけでございます。  そういう中で、まず住宅融資事業と教育資金あっせん事業でございますけれども、これについては、閣議決定では、適切な経過措置を講じた上で撤退をする、こう書いてございますけれども、これを直ちに廃止をするということについては大いに問題があるのじゃないか、こういう意見が多かったわけでございます。非常に需要があるわけでございまして、被保険者の生活設計にも組み込まれておる、それから、厳しい景気の状況の中で住宅融資を直ちにやめるということは、この景気の足をさらに引っ張ることにもなるわけでございまして、そういった景気の動向、あるいは関係の業務に従事されている方の雇用にも配慮する必要がある、こういう意見が強かったわけでございまして、この二つにつきましては、別途法律で定めるまでの間は新規の融資及びあっせん事業を行うということにされたわけでございます。  それから、施設事業、グリーンピア事業につきましては、これは別途政令で定める——撤退するという大方針はいささかも変わりはありませんけれども、これまた地元の実情あるいは雇用に配慮しなければいけないということで、政令で定める間は、新たにできる年金資金運用基金の附帯業務として引き続き管理なり運営なりをやっていこう。ただ、これは個々の施設が全部違いますので、できるだけ早く撤退をするということには変わりないわけでございます。  そういうことで、ほかのいろいろな事業もございますけれども、要は、この閣議決定を踏まえ、その後の議論を経て、今回法案でお示ししたような形で関係者の意見がまとまったということでございまして、これをまた今回法案という形で閣議決定をして今の国会に御審議をお願いしておるということでございます。
  186. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうすると、平成九年六月六日の閣議決定の「融資業務については、適切な経過措置を講じた上、撤退する。」というのは消えたんですか。
  187. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 今申し上げました住宅融資事業それから教育あっせん事業、これは法律上は次々回以降の財政再計算においてそれまでの運用の実態等を考えて最終的にどうするかを決定するということでございまして、今回の法律におきましても、これを未来永劫にずっと続けるということを規定しているわけではございません。つまり、次々回以降の財政再計算時に最終的にどうするかを決めようということでございます。
  188. 土肥隆一

    ○土肥委員 よくわかりませんね。何であれ、最終的には撤退する、こういうふうにおっしゃったらいかがでしょうかね。その辺は、私、非常に不明瞭だというふうに思うのです。  もう一つ、先に進みますと、要するに、年金福祉事業団というのは、資金を財投から借りて運用をして、その稼ぎを融資事業や施設事業に回しましょう。ですから、年金福祉事業団というのは、まずは金融業をやっていらっしゃるわけですね、お金を回して稼ごうと。そして、この稼いだものでいろいろな融資をしよう。それで、たくさん融資事業をしていらっしゃいます。今度は、施設、建物も建てましょうと。そういう目的のためにつくられた年金福祉事業団でありますけれども、そのやっている仕事が実に多種多様、バラエティーに富んでいるといえばバラエティーに富んでいるのですけれども、改めて、これだけ資金運用がせっぱ詰まっているのに、ようこんなにたくさんお抱えになりましたねと、ちょっと皮肉も言いたくなるくらいでございます。  そして、それぞれ三十五年型、二十五年型とか金利が決めてあったり、二段階固定なんというのもありまして、福祉施設を大企業がつくるときにもお金を貸しましょう、中小企業にも貸しましょう、法人や国立病院などにも貸しましょう、生協にも貸しましょう、有料老人ホームにも貸しましょう、老人保健施設にも貸しましょうと。  それから、住宅関係では、一般住宅は大型A、大型B、住宅改良。年金在宅ケア関係では一般在宅ケア、大型在宅ケア。親子助け合い住宅、これはどういう住宅かちょっとわかりませんが。セカンドライフ住宅、別荘も建ててあげましょうということでしょうか。二世帯継承償還制度。最も不思議なのは、年金担保小口資金貸し付けというものですね。それから、私は神戸の出身なものですから、年金災害復興住宅では、自己居住用、被災地の親の居住用と、大変安い金利で貸していただいているようでございます。まあ、バラエティーに富んでいること。  ですから、厚生省の外郭団体とはいえ、お金は高い金利で財投から借りてきても回しますよ、余り利益は上がっていないんだけれどもとにかくお金は貸しますよ。  最後は、後で最後に質問いたしますけれども、大型の保養所であるグリーンピアはばっさり切りましょうというような話でございます。  今の局長の話だと、こういうようにずっと続いているからこれからもやらざるを得ない。だけれども、年金担保小口資金貸し付けなんというのは、これは社会福祉・医療事業団に押しつけましょうというふうに私には聞こえるのです、社会福祉事業団側から言わせれば。  私、今後も、年金資金運用基金ができて、百四十六兆円もの大金を持っていらっしゃるわけですから、こんなものはいつでも解決できるというふうな、太っ腹になるんじゃないかなとも心配しているわけであります。大変心配性であります。  それで、融資事業というのは、今、年福事業団が残している仕事だからやるけれども、今後もこういうことを積極的におやりになるんですか。その辺を確認しておきたいと思います。
  189. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 大きな方針は決まっておるわけでございます。年金福祉事業団は廃止をして、融資事業等につきましては適切な経過措置を設けた上で撤退をする。ただ、直ちにやめるというのは諸般の事情から困難でございますので、当分は新規融資事業も継続をする、こういうことでございます。  それから、ただいま半ばわけがわからないというお話がございました年金担保融資事業でございますけれども、これは、年金受給者、お年寄りを食い物にする高利貸しみたいなのがいまして、それで年金受給者が高い金利を取られて、そのカタに年金証書をとられるということがございまして、これは非常に社会問題になったわけですね。それで、年金福祉事業団で非常に安い金利でもって年金受給者の方に小口の融資をする、こういう制度を始めたわけでございます。  この貸付制度は現実問題としてやめるわけにはいかないわけでございまして、これは一種の福祉施策の一環でございますので、社会福祉・医療事業団において恒久的措置としてやっていただこうということで、今回の法案にも盛り込んでいるわけでございます。  そういうことで、年金担保融資につきましては恒久的事業として別の機関で引き続きやっていただきますけれども、それ以外の融資事業については、先ほど申し上げたような方針のもとに今回法案を提出させていただいたということでございます。
  190. 土肥隆一

    ○土肥委員 なぜ社会福祉・医療事業団に押しつけたんですか。理由は何ですか。
  191. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 年金受給者の方々に安い金利でもってお金を融通するということは、やはり福祉事業の一環だと私どもは考えております。そして、こういった貸付事業をやっておりますのは、政府関係機関の中では年金福祉事業団だけでございますので、年金福祉事業団でやっていただこうと考えたわけでございます。
  192. 土肥隆一

    ○土肥委員 私は、別に年金資金運用基金がやってもおかしくないと思うのであります。社会福祉・医療事業団といえば、社会福祉施設をつくるときに政府にかわって金を貸してくれる特殊法人、あるいは低利の借入金をするときには社会福祉・医療事業団を避けては通れないわけであります。  そうすると、今後、年金受給者は、ちょっとお金が要ってサラ金にも手を出さなきゃいかぬというときには、そこへ駆け込めば、年金手帳さえ出せば貸してくれるんですね。個人的に貸してくれるんですね。
  193. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 ただいまの答弁の中で、年金担保融資は年金福祉事業団と申し上げましたけれども、これは社会福祉・医療事業団におきまして恒久的な仕事としてやっていただこう、こういうことで法案に盛り込んでおります。  それから、ただいまの御質問でございますけれども、社会福祉・医療事業団は金融機関も窓口にしておりますので、金融機関に申し込んでいただければ、年金証書を担保に安い金利でお金が借りられるということでございます。
  194. 土肥隆一

    ○土肥委員 お年寄りはなるべく健全な生活をしていただいて、サラ金に手を出さないようにしていただきながらも、危ないなと思ったら、社会福祉・医療事業団に地元の銀行を通じて申し込めば年金証書をカタにお金を貸してくれるということでございますから、おもしろい政策だな、このように思っております。  統計的に言いますと、百二十九万人以上の人が利用しているわけでございまして、これはやはり余り無視できない数だろうというふうに思いますけれども、今後さらに借りやすくなったらといいますか、お金が必要なときには、宣伝してお使いになったらいかがかと思います。  さて、最後に大型保養所、いわゆるグリーンピアの撤退、解散についてお聞きいたします。  私、グリーンピア事業というのは、厚生省による壮大なデベロッピング、デベロッパーの仕事、あるいは大型レジャー投資事業と言わざるを得ないわけでございまして、それが今度おやめになるということでございますが、なぜおやめになるんですか。
  195. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 グリーンピアにつきましては、いろいろな御批判を受けたわけでございます。一つは、年金制度、年金財政が非常に厳しくなっていく中でグリーンピア事業に引き続き資金を使うということは、これは非常にむだ遣いじゃないかという御指摘が一つございます。それから、ほかの御批判といたしましては、これは民間のホテルとか旅館とかレジャー産業、こういった方々を圧迫しているんじゃないか。民間の代替施設もあちこちにたくさん最近できてきたわけでございますけれども、こういう公的施設が圧迫しているんじゃないか、こういう御批判もございました。  そういういろいろな御批判も受けて、民間でやっていけるものは民間にお任せしよう、こういうことで撤退という方針を決めたわけでございます。
  196. 土肥隆一

    ○土肥委員 民間レジャー施設を圧迫するんじゃないかなんという御心配は全く要らないのでありまして、さっぱりもうかっていないんですから。圧迫どころか、グリーンピア自身が息も絶え絶えに生きていかなきゃならないということでございます。  これも、なぜこういう事業に手をつけたんだろうか。そして、これは昭和四十七年でございますけれども、大臣が談話まで発表しまして、大規模な保養基地の整備を唱えてきた。大臣が一生懸命唱えてきたようでございます。その基地の数は全国をブロック別に十カ所程度、一つの施設の投下資金二百億円、土地三百三十ヘクタール、百万坪、これが上限なんですね。これで何をしようとしたんですか、御説明ください。
  197. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 グリーンピア設置の目的でございますけれども、これは、昭和四十年代、日本経済が高度成長を続けていったわけでございますけれども、そういった中でゆとりとかレジャーとかこういったことも非常に大きな課題になったわけでございまして、グリーンピア事業といいますのは、年金の加入員あるいは受給者の方に比較的安い料金でもって自然豊かなところで余暇を過ごしていただこう、年金加入員、受給者の方のための福祉施設、こういう趣旨で設立されたものでございます。
  198. 土肥隆一

    ○土肥委員 なぜ百万坪なんでしょうかね。これは全部百万坪なんですね。こんな開発事業というのはほとんど考えられない話ですね。設備投資をする資金力に応じてしか開発はできないはずでございます。  そして、総額二千億円を使って、あっという間に十三施設を建てていくわけであります。その後、これが運営されるわけでありますが、これが破綻するということは、明らかにその運営をするときのいわば方針、態度、体制にあるわけであります。  例えば建設所要資金は、全額、年金積立金の長期借入金とする。厚生省が自分で、ああ、いいでしょう、つくってくださいと言ったら、ぽんと二千億出るわけです。借入条件は、年利率六・二%、償還期限二十五年、据え置き五年半というようなことが出ております。  今度はお金を返さなきゃいけませんから、償還財源はどうするかというと、元金については厚生年金保険、船員保険及び国民年金の特別会計の出資金で返します、利息については厚生保険特別会計の福祉施設費、これは政府交付金で充てますと。金を借りて、返すときも年金財源を使って、元金はそれを出資金と称して返している。そして、利息についても、この特別会計の中の福祉施設費から、つまり交付金からお金を出します、どんどんやってください。こうなれば、何の心配もないわけですよ。私だってこんな事業ならできると思いますね、そういう条件でやりますから。  しかも、事務費はどうするかというと、厚生保険特別会計の福祉施設費、これも政府交付金ですが、これでもって充てますから、事務費も見てくれる。では、経営主体は何に責任を持てばいいのかというと、施設運営費です。これは利用料等による収益をもって充てる。要するに、自分のところだけが食べられれば、この施設は全部国が見てくれる、年金財源が見てくれる、こういう構造になっているんですが、間違いないでしょうか。
  199. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 これは御指摘のとおりでございます。  先ほど申し上げましたように、グリーンピアというのは、年金の加入員、受給者の方のための余暇施設、福祉施設という趣旨、目的で設立されたわけですから、その設置費、それから借入金の元本なり利子の返済、こういったものにつきましては年金特別会計の方から支出をしているわけでございます。
  200. 土肥隆一

    ○土肥委員 そういう殿様商法みたいな、武家の商法みたいなことをさせておいて、今日に至って経営が思わしくないからこの事業から撤退しますというのは、ちょっといただけない話ですね。  したがって、こういう甘い甘えの構造から出発しておりますから、当然、運営責任とか経営主体の責任がはっきりしない。年金福祉事業団がグリーンピアにおろして、それをまた兵庫年金保養サービスが受ける、あるいは都道府県に任せたものは、また財団法人をつくって、いろいろ財団法人ができて、またその下に株式会社がくっついて経営をするわけですから、要するに事務費も毎年二億円程度、それから固定資産税も七億円程度、全部国庫で入っているわけです。そういうことになりますと、言ってみれば、経営努力とか経営改善とか宣伝あるいは営業、そういうものはほとんど意味がないということになります。  そういう仕方に置いておいて、そして、だんだん厳しくなってきて、もうけが出なくなったからこれはやめようと。他の民間のレジャーサービス施設と大した競合するようなところにありません、このグリーンピアというのは。とても離れたところにありまして、そういう立地条件がやはり一つ不利な状況になっております。  そういう状況の中で、実はそれぞれの、つまり、何もかも運営費以外は全部見てもらって商売して、最近、平成十年度のグリーンピアの収支状況を見ますと、もちろん三角が多うございます。ひどいところは九億五千九百万円なんていう赤字を出しておりますが、赤字のトータルは、マイナスは二億六千七百万円なんですね。だから、そんな大きな額じゃないんです。これでもうあすも食っていけないなんていう額じゃなくて、百四十六兆円の年金財政の中で二億六千七百万円なんというのはそんなに悪いものじゃない。  それから、ベッドの稼働率を見ますと、例えば日観連、日本観光旅館連盟なんかのベッド稼働率から見ると、はるかにいいんです。日観連は四一・二%しかベッドが埋まらないんです。それから、日本ホテル協会だって五一・九%。ざっと見ますと、日本ホテル協会よりも劣っているところは四つしかない。あとは、稼働率は普通のホテルよりもいいんですよ。  そういうことから言いますと、私は、国策的な意味でつくられたグリーンピアが今日撤退するとすれば、そういう運営をさせてきた年金福祉事業団あるいは厚生省のいわばホテル事業の失敗例と言ってもいいと思うんですが、いかがですか。失敗でしょう。
  201. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 先ほど、このグリーンピアの運営につきましては、年金福祉事業団が土地、建物の整備から税金まで払って、おんぶにだっこじゃないかという趣旨のお話がございましたけれども、確かに、そういう土地、建物とか税金については年金福祉事業団で支払っておりますけれども、運営自体は独立採算でやっていただいておるわけです。その結果、トータルで今御指摘のありましたような二億六千万というような赤字になっておる。ただ、これはもうかっているところもございますし、非常に損をしているところもある、それを全部ならしますと、今申し上げたような数字になっておるわけでございます。そういうことで、施設によって非常に事情が違うということでございます。  それから、これは失敗ではなかったかという御指摘でございますけれども、確かに、廃止のやむなきに至った、撤退するということになった結果から見ますと、これは御指摘のとおりだと思いますし、甘んじてその責めは受けなきゃいけないと思っております。  ただ、これまで二千五百万人でしょうか、非常にたくさんの方の御利用をいただいたということで、非常に自然が豊かなユニークなところでございますので、多くの方に利用していただいたという実績はあろうかと思います。  設立当初の高度成長時代と比べますと非常に景気が悪くなった、あるいは、一つ少子化影響も多分にあるんじゃないかと思います。つまり、小中学生、高校生、こういった若い方に比較的家族連れで利用していただいたわけですけれども、子供が減ってくると利用も落ちるということになるわけでございまして、それから、類似施設もあちこちにたくさんできてまいりました。そういう中で、今申し上げたような理由から撤退という方針を今回決めたわけでございます。
  202. 土肥隆一

    ○土肥委員 今、大臣抜きでお話しさせてもらいましたが、要するに、営業努力もしないでグリーンピアが今日を迎えている、経営責任はほとんどどこにも問われない、そして、おんぶにだっこ、こういう施設を営々とやってきて、これでもうだめですというような判断すら、だめだという断言すらできないようなデータしかないのじゃないでしょうか。  ですから、これを今度基金の方が引き受けられるわけでありますけれども、場所によってはきっちりと力を入れたら十分もうかる施設が随分ある。私は二本松に行きましたけれども、すばらしい風景の中で過ごすことは大変快適です。ただし、見回したら、ソファーがすり切れていたり、ああ、お金をかけていないな、大型の修繕なんか全然やっていないなとか、壁も大分傷んでいるなというようなことがあるんですけれども。  今後、この撤退に向けて基金がいろいろなことをなさるんですけれども、商売をやっていかなきゃいけないわけですね。そうすると、きれいにメンテナンスもやらなきゃいけない。そうしながら、一体この十三の施設をどうするかということで、ホテル業などの経営コンサルタントも入れてもう一遍徹底した吟味をして、こういう理由でこういうふうな撤退の方向を、あるいは残す残さないも含めて出していただかないと。こんな経営をやっていて、しかも国がかりでやっていて、だめになりましたから切りますでは、それはいただけない、そのように私は思うのであります。  もう時間がありませんから、大臣の御感想をどうぞお聞かせください。
  203. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先生も二本松のグリーンピアにお泊まりになったか御利用になったか、私も実は行って泊まったことがございます。もう今から六、七年前になりますけれども、大変すばらしい施設で、大勢方々が御利用していて、民間と比べても遜色のないサービスを受けて、大変すばらしいところだな、自然環境に恵まれた中でこのようなものがあってすばらしいなと思っておりました。  しかし、御案内のように、今経済が極めて低成長下に陥って、そして、今極めて状況が厳しい中において、先ほど来年金局長から御答弁を申し上げておりますように、今回の閣議決定において自主運用を中心にして今後基金で運営させていただくというような撤退の方向が既に決定をいたしております。  しかし、私どもは、願わくば今後とも皆さん方に御利用していただくように地方自治体等に譲渡をしていただいて、その中において健全な、これまでの先生のお言葉をお借りしますれば、一部のグリーンピアの中には確かにコスト意識というものが欠けているような運営があったかと思いますけれども、そういうことを十分に配慮しながら、いずれにいたしましても、これまで御利用なさっていた方々、そして地元の方々の雇用にもかかわる問題でございますので、そういった形で円滑に譲渡されることを望んでいるような次第でございます。
  204. 土肥隆一

    ○土肥委員 私が語ってまいりました運用事業にしても融資事業にしても施設事業にしても、私から見れば、惨たんたる閉鎖だな、年金福祉事業団の終わりだなというふうに思うんです。県の話を大臣おっしゃいましたけれども、県は、そういうイージーゴーイングな経営体制を受け継いで何もかもやってくれるから名乗り出てもらっているわけで、それを県に引き受けろと言ったら、それは相当なバーゲンをつけないと県は引き取りませんよ。  そういうことから考えますと、グリーンピアというものをもう一遍大事に考え直して、せっかくそれぞれ百万坪なんという土地を、いいのか悪いのか知りませんけれども、とにかく保有しているわけですし、建物も立派なものがあるわけですから、もう一度厚生省は検討すべきだ、特に基金の方で検討して、その結果を聞かない限り私は撤退は認められない、このように思っております。  以上で終わります。ありがとうございました。
  205. 江口一雄

  206. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  今回の法案につきましては、大変重要な点について多岐にわたっておりますので、十分な慎重な審議が求められていると思います。きょうは、その第一弾として、私は具体的な点を一つ一つ詰めていきたいと思っています。  その一つは、無年金障害者の問題でございます。今回、学生である第一号被保険者の特例制度が提案されております。昨年の五月の決算行政監視委員会でも無年金障害者について問題にさせていただきましたけれども、一九五九年、昭和三十四年、第三十一国会では、旧国民年金法第七条三項の規定が盛り込まれました。その内容はどういう内容でしょうか、お聞きいたします。
  207. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 旧国民年金法第七条第三項の規定でございますけれども、これは、サラリーマンの妻あるいは学生など、当時の国民年金法の適用除外の方につきましては、将来の年金制度上の取り扱いをどうするか別途検討をして、法的処理をするように定めた訓示規定でございます。
  208. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 任意加入としたけれども、実際には基本的な年金権が確立しない取り残された人たちの救済を何らかの法的な措置法律をもって処理する、こういうふうに決められているわけです。そこで、こういう取り残された人たちの救済を速やかに法律をもって解決する、こういうことが重要な懸案事項になっていたと思うのですね。  サラリーマンの妻及び学生の強制加入が行われたのはいつでしょうか。
  209. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 いわゆるサラリーマンの妻、これは第三号被保険者でございますけれども、こういった方につきまして強制適用になりましたのは、昭和六十一年四月一日以降でございます。  それから、学生でございますけれども、二十歳以上六十歳未満の学生につきまして強制適用になりましたのは、平成三年四月一日からでございます。
  210. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 八九年の任意加入の学生は一%です。制度として国民に認められていない、こういう状態なんです。強制加入にしたけれども、実際には学生の過半数、五四%が負担できなかったわけです。当然なんです。所得のない人に負担させるということはできない。こういう点で今回の法改正になったわけですけれども、一九五九年に速やかに検討して法改正せよというところまできちっとうたわれているにもかかわらず、もうあれから四十年もたっているのですよ。  厚生省の答弁によりますと、現在学生の無年金障害者は十万人程度いると言われていますけれども、学生の無年金障害者及びサラリーマンの妻の無年金障害者のほとんどは、早くから政府が対応していれば無年金にならずに済んだのじゃないかと思われるのですけれども、大臣、その点いかがでしょうか。
  211. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 瀬古委員御指摘のとおり、基礎年金制度が導入されましたのが昭和六十一年の四月でございます。これによりまして、サラリーマンの妻の年金権というものが確立されました。それから、学生の強制適用は平成三年でございます。この無年金障害者はもっと少なくなっていただろうということは、私も一面で御指摘のとおりではないか、こう思っております。  しかしながら、この社会保険方式によります年金制度のもとで、収入がない方の年金権を保障するかどうかということは大変大きな議論になります。女性の皆さん方の、サラリーマンの妻の年金権の問題についてはいろいろな意見がございまして、昨日の本会議でも御答弁を申し上げましたが、大変難しい問題だということも先生十分に御理解いただけると思います。  それから、学生の強制適用につきましても、要するに所得のない学生から保険料を取るということは、結局、親御さんの負担になるからということで、今回猶予を認めた、こういうようなこともございまして、この問題についてさまざまな議論があるわけでございます。  そういう中で、サラリーマンの妻や学生については、当時、強制適用を行わず任意加入の道を開くという選択をさせていただいたような次第でございます。
  212. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 私も、それはいろいろ問題があるということは存じております。しかし、四十年間もきちっと法的に整備しなきゃならぬと言われているものが、これだけたってもまだ解決できないのかという点は、それぞれが知恵を出し合えばもっと早く解決できていた。今大臣が認められましたように、もっと早くできていれば、逆に、無年金障害者がこんなにも生まれずに済んだということも今お認めになったわけですから、それは明らかに政府としての責任というのが私は問われると思うんですね。これは、時間がたてばたつほどそういう問題はあるわけで、そして、無年金障害者の皆さんの生活実態が深刻な事態になっていくわけでしょう。  そういう点では、無年金障害者の皆さんや関係者の皆さんは少なくとも今回の年金改定では何らかの対応をしてもらえるんじゃないかという期待を持ってみえたと思うんですよ、はっきり言って。ところが、今回、無年金障害者の救済策ということについては、この改定では全然触れられていない。もう見通しがないのか、一体どうして結論がこんなにたってもできなかったのか、その点の具体的な内容、経過、その点はどういうふうに考えてみえるんでしょうか。
  213. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 まず、無年金障害者の問題でございますが、無年金障害者につきましては、年金制度において何らかの給付を行うということは、保険料負担に応じて給付を行うという年金制度の根幹に触れるものでありまして、現在の年金制度の仕組みの中では現実問題として極めて困難である、こういうような認識に立っています。  特に女性の年金の問題について、先ほど来お話がございました。これも率直に申し上げて大変難しい問題でございまして、国民の御意見というものは真っ二つに分かれていらっしゃるのではないかな、こういうような感じを持っております。  例えば、第三号被保険者の問題のほかにも、夫が死亡した場合の妻への遺族年金の問題であるとか、あるいは離婚後の妻に対する年金の取り扱いであるとか、あるいはパートタイムの労働者の厚生年金の取り扱いなど、こういうような問題も含めて女性の年金問題というのは非常に難しい問題でございまして、単に年金制度の分野だけではなくて、民事法制におきます離婚時の財産分与のあり方であるとか、あるいは税制における配偶者の取り扱いの問題、そしてまた社会保障全般、こういう中で幅広く考えていかなければならないと思います。  私自身、この問題をいつまでもほうっておいていいという考え方は持っておりませんけれども、正直申し上げて、なかなかいい知恵が浮かんでおらないというのが現状ではないかと思っております。  いずれにいたしましても、専門家の方々に参加をしていただきまして、一刻も早く一定の方向性を示していただければ大変幸いだ、このように考えているような次第でございます。
  214. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この問題については、さきの本会議の答弁の中でも、同僚の児玉議員の質問に答えて、小渕首相が、各方面と十分相談して検討したい、こういうふうに答えてみえるわけです。  実は、それは昨年、我が党の上田耕一郎議員に、参議院でも橋本首相が同じように答えている。総理大臣が連続して同じ答弁しかできないという状態なんですね。  それで、総理大臣だけじゃなくて、実は前回の改定時に、九四年ですけれども、「福祉的措置による対応を含め速やかに検討すること。」という厚生委員会での附帯決議がございますね。年金にするのか福祉的な対応にするのか、いろいろな検討は当然あるかと思うんですけれども、こういう附帯決議ですね。年金だけじゃなくて幅広く、福祉的な措置の対応を含めと書いてあるわけですから、厚生大臣は年金の対応でも福祉的な対応でも決断ができるといえばできるわけですね。その点では、この決議についてどういうように受けとめてみえたんでしょうか。  八五年の審議以来、本当にこの問題は十五年間も繰り返して答弁をされている、こういう内容もございますので、どこかでやはり決断をしていただくということが大事だったんだと思うんですね。そうすれば、今回の年金の改定時に、年金でやるのか福祉的な措置でやるのか、何らかの対応を出さなければ、またこれから検討しますよというのでは、無年金障害者の方々は希望をなくしてしまうというか救われないと思うのです。  その点で、福祉的な措置も含めて検討する、速やかにとわざわざついているものですから、こういう附帯決議はどういうように受けとめてみえるんでしょうか。
  215. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 障害者施策の中で福祉的な措置をとることにつきましては、障害者福祉施策は障害者の内容などに応じて必要なサービスや手当を受けるということではございますが、いわゆる無年金障害者ということに着目して、具体的な福祉施策をとるということが果たしてこの年金制度そのものになじむものかどうかということが極めて難しい問題ではないかと思っております。  ただ、附帯決議の中でそのようなことが明記されましたことについては重く受けとめなければならないわけでございますけれども、率直に申し上げて、先ほどから申し上げておるわけでございますけれども、現在の年金制度の仕組みの中でどのような措置をとることが適当なのか、現時点で委員に対して私の方からきちんとした答えが出せないのが現状でございます。
  216. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 障害者の問題でいえば、それは障害者施策をうんと進めていただく、そういう中で当然無年金障害者も入るということはわかります。しかし、私は、言いましたように、この無年金障害者が生まれた経過というのがあって、それは制度的な問題で、ある意味では政府がもっと早く対応していればこういう障害者が出なかった問題である。それは一般の障害者とまた違った意味があるから何度も国会でも取り上げてまいりましたし、そして附帯決議にもわざわざそういうことが書かれて提起されたわけですね。  ですから、これはどちらにするかという一般的なものではなくて、憲法二十五条の国民の生存権、単なる障害者施策だけでなく、本当に生活権、生存権も含めた問題として無年金障害者の問題はきちっと対応するということが今求められている。これは先送りしてはならないと思うんですよ。  そういう点では、今までどんなに翻弄されてきたかといいますと、例えばこの附帯決議が行われた九四年以降も、年金審議会はどう言っていたか。年金では困難です、福祉でというふうに年金審議会は言うんですね。それでは福祉の関係の審議会はどう言っているかというと、年金制度での対応を勘案しつつ幅広い観点でと。福祉の審議会は、年金制度でというふうに言うわけですね。そして、障害者施策推進本部はどう言っているかというと、年金か福祉か幅広い観点でと言っていて、みんながお互いに責任をなすりつけ合うといいますか責任逃れをして、本当に放置されてきたというか、私は、人道上許されない人権問題だと思うんですね。  今、無年金障害者の会がいろいろな困難な中で実態調査をやっておられるんですね。その実態調査を見ましても、五割以上が本人の収入が全くないという状態で、そして自分の生計費を負担できるという人は二割しかいない。大半は家族、それも年老いた親や配偶者に支えられて、本当に肩身の狭い思いをしながら、希望といいますか、何らかの対応を政府がしてくれるんじゃないかということで待ちに待っていたわけですね。その願いが本当に断ち切られる。今度また介護保険法実施されたら、介護保険料まで上乗せされたらどうなるのかという不安もあるわけです。今大臣はいつまでもほっておいていいわけじゃないと言われたんですが、それなら早急に、少なくともここまでには結論を出すということを無年金障害者の方々には明言していただきたいと思うんですよね。また次の年金改定で、年金ではできないと言って、福祉の施策ではいろいろ問題があってと言って、このままずるずる延ばすということはできないので、一定のめどぐらいは立てられるのか、私は直ちにやっていただきたいと思うわけですけれども、その点いかがでしょうか。
  217. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 繰り返し同じことを申し上げて恐縮でございますが、現時点におきまして、福祉サービスとしてはきちんとしてやっていかなければならない、こういう認識は持っておりますけれども負担給付という関係の中に成り立つ年金制度の中で、いわゆる無年金障害者の問題をどうやって救済するかという問題は極めて困難であるということでありまして、なかなかいい知恵がないという段階の中においていつまでに結論を出せということは、率直に申し上げて、今申し上げることはできないことでございます。
  218. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 いつまでもぐずぐずといいますか、こういう状態で放置するという事態がないように、やはり何らかの対応をぜひ検討していただきたいと思います。  時間がないので次へ移りたいと思います。  一つは、女性の年金未加入者の問題について伺います。  現在、千二百三十一万人が三号被保険者になっています。問題は、八六年四月以降、九七年三月末までに届け出ることで納付済み期間としてみなす特例がございました。これは実は、周知が不十分だったり役所の手続の手違いなどで届け出ができていないケースがまだたくさん残っていると言われております。未届け者が一体どれくらいあると厚生省は推定なさっているんでしょうか。
  219. 小島比登志

    ○小島政府参考人 御指摘の三号届け出特例につきましては、平成七年四月から平成九年三月まで実施されました。その周知につきましては、社会保険庁といたしましては、雑誌、テレビ等各媒体を通じて広報を行いまして、また、社会保険庁で把握できた三号未届けの可能性のある者に対して個別に勧奨状を送付するなど、できる限りの周知を図ったところでございます。  お尋ねの三号の未届け者数でございますが、三年に一回、公的年金等加入状況調査実施しておりまして、現在一番新しい時点でまとまっておりますのは平成七年十月の調査でございますが、それによりますと約十一万人程度ということになっております。
  220. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 十一万人程度の方がまだ未届けという形で残っていると思われると。  そうしますと、特に女性の場合、結婚だとか離婚、再婚、配偶者の転職、事故、死亡、いろいろな女性をめぐる状況がございまして、いろいろ周知したけれども十分行き届かないというケースもたくさんございます。  実は、ことし開かれました、全国の百六十四市が参加しています全国都市国民年金協議会がございますけれども、ここではもう一度何としてでもこの特例の実施をしてもらいたいという要望が出されているわけですね。  特に、女性の年金という点でいえば、本来認定がされればそれなりに保障される人たちなんですけれども、未加入のためそういう手続ができない、そういうことで年金が支給されないということで、人権保障上も好ましくないというふうに考えるんですけれども、もう少し弾力的に、申請しない人はだめだよというんじゃなくて、まだ残っているならこれからも大いに救おうじゃないか、こういう立場で弾力的な対応をし、この国民年金協議会の要望にはこたえるべきじゃないかと思うんですけれども、大臣、その点いかがでしょうか。
  221. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 平成六年の年金法の改正におきまして、ただいま委員の御指摘の第三号被保険者の届け出の特例というものを講じたわけであります。これは、先ほど申し上げた昭和六十一年の四月の基礎年金の導入に伴いまして女性の年金権が確立されたということでございまして、その時点におきまして届け出制度もまだ十分に承知されていなかったという事情を考慮いたしまして、あくまでも特例的な措置で取り扱いを行ったものでございまして、その点を十分に御理解をいただきたいと思っております。  なお、平成十四年から配偶者の事業主を経由いたしまして届け出ることが可能になりますから、届け出漏れの解消につながるのではないか、私はこのように考えております。
  222. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 特例的な措置という場合、高齢者の年金の場合にもいろいろな特例的な措置をとっているわけです。何とか無年金者をなくすような努力がなされているのです。それで、今市町村からぜひそういう特例を検討してもらいたいという要望があるものですから、少なくともその点御検討していただけるんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  223. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 瀬古委員の御意見として承りたいと思います。
  224. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今回届け出そのものが大変改善をされたというものの、いろいろな煩雑な経過がございまして、今、基礎年金番号が導入されて本人の確認も大変容易になっているわけですね。そういう点では、届け出そのものももう少し改善する。事業主を通じた一定の改善もございますが、例えばコンビニだとか郵便局だとか市町村の窓口に往復用のはがきを置くとか、手続の面でももう少し配慮される、そういう措置も必要ではないかというように思うんですけれども、その点での改善は今後いかがでしょうか。
  225. 小島比登志

    ○小島政府参考人 御指摘のように、第三号被保険者に該当いたしますと、その方が、事業主の確認を受け、または健康保険証を添えて市町村の窓口に行かなければならない、しかも加入する保険が変わるたびに行かなければならないということで、被保険者の方に大変な手続上の手間があったというふうに私ども認識しておりまして、この届け出の方式につきましては、その被保険者の方の負担軽減及び未届け者の解消を図る観点から、改善方法について種々検討してまいりました。  その結果、一番合理的と思われるのは、二号被保険者が勤めております事業主を経由してその届けがなされるというのが一番合理的じゃないかということで、さきの通常国会で地方分権一括法におきまして国民年金法の一部が改正されまして、平成十四年四月にそういう扱いになるということでございまして、私どもとしては、そのために鋭意準備を進めているという状況でございます。
  226. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ぜひ新たな改善も検討していただきたいというように思うんです。  今、年金の空洞化ということが言われています。その中でも、年金を支える支え手、そういう働き手をどうふやすかということも、私はこの年金問題を論議する場合に大変大事だというように思うんです。  特に、労働省の報告書を見てみますと、家庭にあって就労を希望する女性は今六百二十万人いると言われています。三号被保険者の問題を考える上で、この女性たちが就労可能となる条件整備をどのように進めるのか、このことが大変大事だと思います。社会保障の基盤を厚くする上でも、そして年金財政を支える上でも大変重要だと思っています。  これは後で追加で通告させていただいたんですけれども、もし六百二十万人の女性が二号被保険者になった場合、女性の標準報酬で計算した場合、影響額がどれぐらいになるのか、このようなことを計算されたことがありますでしょうか。
  227. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 御指摘のようなケースにつきましては、それが現実的に本当に可能かどうか、それからまた、家庭の主婦がそれだけ労働市場に出ますと、言ってみますと、玉突きみたいになって、労働市場にほかのいろいろな影響を及ぼすと思うんですね。そういった全体の構造がどうなるのか、これはなかなか予見することが難しゅうございまして、したがいまして、今御指摘のようなケースにつきましては試算をしておりません。
  228. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 これだけ女性がみんな働き出したらどうなるか、玉突き状態で大変だというお話ですけれども、そんなことないですよ。六百二十万人の女性たちが、もし条件が整えば働きたいと言っているわけですから、こういう方々に大いに働いていただく、そのための条件整備をするというのが私は当然のことだと思うし、ことし男女共同参画社会基本法ができた、その趣旨も、そういう女性がどんどんいろいろな条件整備の中で働けるようになる、男性と一緒に働けるようになる、そういう整備を大いにやろうじゃないかということでこの法律というのはできたと思うんですね。  そのために、私がきのう取り上げました保育所の整備の問題だとか、本当に働きやすい労働条件、これは女性だけじゃなくて男性も含めて、家庭も仕事も両立できるような状況をつくっていく、これをどうするかということでみんなが知恵を出している段階だと思うんです。  そういう中で、今後、女性がこれだけ働きたいと言っているわけですから、どういう条件を整備していくのか。そして、その女性の人たちが本当に生涯安心して働き続けられるような年金制度の整備の問題だとか、こういう観点で今の厚生省の行政も、そして年金行政ども一度見直してみる。そして、女性の皆さんが本当に生き生きと働き続けられる、暮らしていけるような対応というのが今求められているんじゃないかと思うんですけれども、大臣の御決意を伺いたいと思います。
  229. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 全く瀬古委員と同じ認識でございます。  ことしの六月に男女共同参画社会基本法が成立をいたしました。少子・高齢化社会の進展などを考えまして、今後、男女がお互いにその人権、立場、こういうものを十分に尊重し合いながら、その個性と能力というものを発揮できるような社会をつくっていくことが大変重要なことではないか、このように考えているような次第でございます。  特に、女性の社会進出が大変進んでいる中において、今委員御指摘のございました保育所の問題であるとかあるいは育児の支援の問題であるとか、それから今問題となっております介護支援の問題も、どちらかというと女性の犠牲のもとに今までなされてきた。こういったような問題につきまして、女性の皆さん方が——これまでどちらかというと男性が、古い方々の中にはそういうような方がいないでもなかったわけでございますけれども、新しい時代でございますし、このような法律成立したことを契機にいたしまして、私どもといたしましては、一層男女共同参画型社会実現に向けまして全力で取り組んでいく決意でございます。
  230. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 女性が本当に働き続けられる、そして生き生きと暮らしていけるという点でも、やはりこの年金という問題は重要な問題でして、本当に生涯が保障されるような、生存権が保障されるような年金という問題もぜひお考えいただきたい。そして、年金の支え手をふやすという点でも、女性にとっても、この施策の前進ということが求められていると思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  231. 江口一雄

    江口委員長 中川智子さん。
  232. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは、きのう代表質問で基本的な部分を御質問させていただいたわけですが、特に入り口の部分のところで確認しておきたいことを何点か柱として質問したいと思います。  大臣、まず最初に、質問通告はしていないんですけれども、このごろ、どうせ年金は当てにならないという人が結構多いわけですよ。私たちの世代、私は一九四七年生まれで、私たちがベビーブームで、どどおっと年をとって、ちょうど年金をもらう時期から給付水準を下げたりとかという問題が出てくるわけですね。  ですから、たんす貯金とか、今利子が少ないですから。私の友人に、たんすの一箱が一万円札でいっぱいなんていう人がいて、余りカンパしてくれないんですけれども。そういう人もいるんです。やはり心配だからというか年金も当てにならない、この日本の国に住んでいて、将来が、老後が何か不安だという方が、財布のひもがいつまでたってもかたくてなかなか開かない。年金とか介護とか社会保障全体が安心すれば、そのようなことがなくなると思うんですが。  最初に、きょう根本委員の質問の中でも、給付水準は下げない、年金というのはきっちり制度として確立していく、だから皆さんもこれは心配しなくてもいいんですよというのが飛び交ったんですが、でも、一般国民は心配で心配でたまらないし、不安を持っている。こういう現実とのギャップというか、年金に対する国民の不安ということに対しては、大臣自身はどのように受けとめていらっしゃいますか。
  233. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 私は大臣に就任をさせていただきましたときのあいさつの中で、豊かさの中の不安という言葉を使わせていただきました。確かに経済は豊かになってまいりましたけれども、老後に対する大変大きな不安というものが国民の中にあるんじゃないか。  その中で特に大きな問題は、年金が果たして少子・高齢化社会の中で——中川委員は何年生まれでいらっしゃいますか。(中川(智)委員「昭和二十二年です、五十二歳です」と呼ぶ)そうですか。まだお若いわけですけれども。要するに、五十二歳の場合は恐らくまだ十分にあれでございますが、特に若い二十代の方々の間で、率直に申し上げて、事業主負担も含めてでございますが、自分の納めた保険料と将来受ける年金の給付というものが逆ざやになるんじゃないか、こういうような危惧が一部にあるわけでございます。  そういうことから、かねて私は、国庫負担について二分の一にすべきだということを、私見でございますけれども、申し上げてまいりました。いろいろな経緯がございましたけれども、今回は、安定した財源が前提でございますけれども、附則の中で三分の一から二分の一にしたということは大変画期的なものではないか、このように評価をいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、年金に対する国民の皆さん方の不安を解消するために、今回もさまざまな措置を講じておるわけでございますけれども、この委員会審議を通じまして、さらに国民の皆さん方に、先ほども申し上げましたけれども、老後において六割の方々が年金に頼っておるのが現実でございますので、当然のことながら、現役世代の過重な負担軽減ということも十分に考慮しながら、また、さらにこれを長期的、安定的な年金にしていかなければならない、このような決意を新たにしているような次第でございます。
  234. 中川智子

    ○中川(智)委員 今のお答えの中に、重複するのかもしれませんが、連立のときに、今から五年前の見直しのときに、国会の決議として三分の一から二分の一と。でも、今回それが見送られたわけですね。丹羽大臣はそれに対してはじくじたる思いがきっとおありになると思いますが、財源確保と言いながら、一方では介護保険であのような、財源は全部赤字国債なわけなんですけれども、それを手当てし、年金に対して三分の一から二分の一にしっかりと約束を果たさなかった、これに対して本音のところで御答弁いただきたいと思います。
  235. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今回の法案の中で、先ほども申し上げましたけれども、平成十六年までに安定した財源を確保したという前提のもとで国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げるということが附則に明記されておるわけでございます。  いずれにいたしましても、私といたしましては、やはり年金に対する不安を解消するためにも、今日の経済情勢がさらにもっと好転をいたしまして、一日も早く国庫負担を三分の一から二分の一にしていくというようなことが必要ではないか、こういうような認識を持っております。
  236. 中川智子

    ○中川(智)委員 それが先送りにされたということに対して、それも大きな不安というか不信を生んでいる原因だということをしっかり政府としては考えていかなければいけない大事な問題だと思います。  それと同時に、賃金スライド、賃スラですが、何か日常語みたいに飛び交っているのですけれども、これも凍結になりました。制度見直しのたびに給付水準が引き下げられるのでは、それも制度そのものに対する不信を招いている、不安を生む材料になっていると思いますが、これに対して御答弁をお願いいたします。
  237. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 年金の給付水準と今の問題に絡む問題でございますけれども、受給の開始時には現役世代の年収の六割前後を確保する、こういう前提に立ちまして、物価スライドで今後はお願いをしたいということは、これは、私たちの時代はいいのです、あくまでもこれから先の若い方、現役世代に対する配慮というものを十分に考えながらやっていって、先ほど申し上げましたように、物価スライドで実際問題やっていって、給付水準というものは六割を確保していきたい。しかし、現役の賃金との開きが余りにもあるときには、午前中も申し上げましたけれども、政策的な判断として賃金スライドといいますか、その点も十分に配慮しなければならない、こう考えているような次第でございます。
  238. 中川智子

    ○中川(智)委員 今回のこの年金改正の問題で、やはり非常に大きな不安を呼んでいるのは、六十歳から六十五歳までの雇用、今六十歳前に会社をやめざるを得ない方がどんどんふえているという雇用の不安がありながら、それが六十五歳定年延長と雇用の確保がはっきりしていない、ますます先行きが暗い状況の中で、この六十歳から六十五歳の問題——六十歳現役社会というのはとても現実感がないわけです。この部分に対して大きな不安の声が届いております。そのような不安に対する大臣の基本的なお答えをいただきたいと思います。
  239. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 今回の改正法案の中で、基礎年金につきましては、御案内のように、二〇〇一年から段階的に六十五歳まで引き上げていく、それから、厚生年金の部分でございますが、二〇一三年から十二年間かけて二五年までに六十五歳にしていこう、こういうことでございまして、将来の保険料負担の増大を抑えるという観点から、これはやむを得ない措置ではないかと思っております。  それと、私があえて申し上げたいことは、これは先般来申し上げておるわけでございますけれども国民皆年金というものが導入されましたのは昭和三十六年だったと思いますが、その当時の平均寿命と現在の平均寿命、今世界の中で最も平均寿命が高くなっている、こういうことも考慮しながら今回年金法でこのような措置をとらせていただいたわけでございます。  問題は、今委員が御指摘のように高齢者の雇用の問題でございます。この点につきましては、労働省とも十分に連携を図りながら、高齢者の雇用の問題について全力で取り組んでいく決意でございます。
  240. 中川智子

    ○中川(智)委員 年金の問題で、先ほどの瀬古委員の質問と重複するのですが、私も、丹羽大臣、大野政務次官に、無年金障害者の方たちがどれほど苦労の多い生活を強いられているか、その制度のはざまにある人たちが実際毎日をどんな思いで生きていらっしゃるか、ぜひともそういう生活を、直接その声を聞いていただきたいというのを最初要望したいと思います。  私の部屋にも障害を持った無年金の方たちが何度も何度も訪れてくださって、そしていろいろなお話を伺っていますと、胸がつぶれる思いがいたします。  と申しますのは、私も今子供が大学生で二人おりまして、強制加入になってさえ、本当に生活が大変な中でこのお金を払っていく。当時は任意ということで払っても払わなくても、あした自分に事故が起きるというのはなかなか考えにくい。あすは我が身ということも、言葉では知っていてもそうは思わない。特に若い世代はそうです。でも、若い世代は交通事故がとても多い。  そんな中で、交通事故で障害を持った人たちが、任意加入で余り知らされない。本当に親切に教えてくれないですね。聞きに行っても、事実として、いや、もうじき勤めるんだからいいんじゃないですかとか、そういうふうなアドバイスを受けた人たちもいるわけですね、行政の窓口で。そういう人たちが、学生時代に払っていなかったということで無年金になっている。  また一つには、二十前に障害を持った方たちは、二十過ぎたら障害年金がもらえるわけですね、一円も払ってなくても。そういうふうになっている。  そういう意味では、この制度は非常に不公平感があり、そういう人たちを救わない。救ったからといって文句が出るような日本人じゃないと思うんですね。やはり困っている人たちは互いに助け合おう、支え合おう。共生というならば、この制度のはざまにある人たちを救ってこそ初めて、この年金の魂というのが本当に生きてくるのではないかと私は思います。  それで、附帯決議が付されました五年前から、矢野局長の年金局と障害保健福祉部との間でこの五年間で無年金の問題を何度ぐらい議論し、そしてその中にそのようなプロジェクトなりなんなりがあるのかどうかをお聞かせください。
  241. 矢野朝水

    ○矢野政府参考人 この問題につきましては、私どもの年金局と障害保健福祉部が時々話をしております。私もこの前、部長と話したことがございます。ただ、この問題については非常に難しい問題があるということで、これは先ほど大臣から答弁申し上げたとおりでございます。  なお、プロジェクトチームをつくっているかどうかということでございますけれども、そういうプロジェクトチームをつくったということはございません。
  242. 中川智子

    ○中川(智)委員 大臣、この問題はずっと話されていて、現実に親御さんは、自分たちが死んだらこの子たちはどうなるんだという思いで必死で生きていらっしゃいます。そして、わらにもすがるような思いでいろいろな方たちのところに訴えにいらっしゃるわけですね。  今矢野局長がおっしゃいましたが、そのようなきっちりとしたプロジェクトなり検討委員会をつくってください。そして、大臣も先ほど、難しい、でもほうっていいとは思わないとおっしゃいました。ぜひとも検討委員会をつくって、これに対してどのような救済措置があるのかということが目に見えるようにしていただきたい。大臣、これを最後に答弁いただいて、私の質問を終わります。
  243. 丹羽雄哉

    ○丹羽国務大臣 先ほど来、障害無年金の問題について御答弁を申し上げておるわけでございますが、年金制度の根幹にかかわる大変難しい問題だなと。  要するに、年金制度の問題と障害者福祉の問題をどういうふうにとらえ、位置づけるかという問題でございますけれども、年金審議会におきましてこれまでも議論をしていただいておるところでございますけれども、今後とも、私どもといたしましては、関係者の御意見を十分に聞きながら、率直に申し上げてなかなか難しい問題でございますけれども、鋭意努力をしていく決意でございます。
  244. 中川智子

    ○中川(智)委員 大臣のことですから、きっと何かしていただけると信じております。これは衆参両院の意思として附帯決議に付されましたので、ぜひとも当事者を入れて検討していっていただきたい。お願いします。  ありがとうございました。
  245. 江口一雄

    江口委員長 次回は、来る十九日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十五分散会