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1999-11-24 第146回国会 衆議院 科学技術委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月二十四日(水曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 北側 一雄君    理事 稲葉 大和君 理事 小野 晋也君    理事 河本 三郎君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 平野 博文君    理事 西  博義君 理事 菅原喜重郎君       岩下 栄一君    江渡 聡徳君       岡部 英男君    木村 隆秀君       田中 和徳君    谷垣 禎一君      三ツ林弥太郎君    望月 義夫君       森  英介君    川内 博史君       近藤 昭一君    松沢 成文君       斉藤 鉄夫君    山中あき子君       江崎 鐵磨君    吉井 英勝君       辻元 清美君     …………………………………    内閣総理大臣       小渕 恵三君    国務大臣    (科学技術庁長官)    中曽根弘文君    科学技術政務次官     斉藤 鉄夫君    通商産業政務次官     茂木 敏充君    政府参考人    (科学技術庁原子力局長) 興  直孝君    政府参考人    (科学技術庁原子力安全局    長)           間宮  馨君    政府参考人    (資源エネルギー庁長官) 河野 博文君    政府参考人    (資源エネルギー庁長官官    房審議官)        藤冨 正晴君    政府参考人    (消防庁長官)      鈴木 正明君    参考人    (原子力安全委員会委員長    )            佐藤 一男君    科学技術委員会専門員   宮武 太郎君     ————————————— 委員の異動 十一月二十四日  辞任         補欠選任   木村 隆秀君     田中 和徳君   古屋 圭司君     森  英介君   吉田  治君     松沢 成文君   斉藤 鉄夫君     山中あき子君   中西 啓介君     江崎 鐵磨君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     木村 隆秀君   森  英介君     古屋 圭司君   松沢 成文君     吉田  治君   山中あき子君     斉藤 鉄夫君   江崎 鐵磨君     中西 啓介君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  原子力災害対策特別措置法案内閣提出第七〇号)  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七一号)     午後一時一分開議      ————◇—————
  2. 北側一雄

    北側委員長 これより会議を開きます。  内閣提出原子力災害対策特別措置法案及び内閣提出核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、政府参考人として科学技術庁原子力局長興直孝君、科学技術庁原子力安全局長間宮馨君、資源エネルギー庁長官河野博文君、資源エネルギー庁長官官房審議官藤冨正晴君及び消防庁長官鈴木正明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、お諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長佐藤一男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  5. 北側一雄

    北側委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平野博文君。
  6. 平野博文

    平野委員 民主党の平野博文でございます。  午前中は公述人皆さん方からいろいろな立場での公述をいただきまして、随分論点、課題が明らかになってきたように思うわけであります。  そういう中で、私、持ち時間の範囲で質問に入らせていただきたいわけでありますが、実は、その質問に入る前に、非常に気になることがございました。少し確認と、大臣の所見をお聞きしたいと思います。  まず、十一月の十九日に朝日新聞等々の夕刊報道で、京都大学研究用実験原子炉が同日の午前五時二分に、炉の出力を微調整する制御棒が炉心に入ったまま動かない、こういうトラブルが起こり、手動で原子炉を停止させた、事実かどうかはわかりませんが、こういう報道として出ました。ちょうどその日は科学技術委員会がありまして、終わって、私が事務所の方に戻って夕刊を見たときに出てきた記事でございまして、その中身を見ますと非常にショックな新聞報道でありました。委員会で一生懸命、東海村の反省を受けて、どうあるべきかという議論をしている最中に、新聞記事中身でありました。  まず、午前五時十五分に科学技術庁原子炉規制課ファクスを入れた、こういう話でもありました。しかし、当課は無人であった、こういうことで、科学技術庁はこのトラブルを四時間後の朝の九時十分に職員が登庁して初めて知った、こういう報道がなされておりました。  この報道に対して、事実であるかないかだけをまずお聞かせいただきたいと思います。
  7. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 平成十一年十一月十九日に発生いたしました京都大学研究用原子炉トラブルは、同日の午前五時二分に原子炉を手動停止したというものでございます。  このトラブルにつきまして、京都大学原子炉実験所からは、トラブル発生約十分後の午前五時十五分に当庁あてファクスが送信されてきております。しかしながら、連絡方法が、この時間帯に本来連絡があるべき当直室ではなく、当庁の原子炉規制課へのファクス送信のみによるものであったため、当庁としてこの事態を知りましたのは、約四時間後の職員が出勤してきた午前九時ごろであったと承知をいたしております。
  8. 平野博文

    平野委員 そこで、大臣はこの事実をいつ知りはったかをまず確認したいと思います。
  9. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 本件につきましては、まず、科学技術庁といたしましては、当日の午前十一時四十五分にプレス発表を行っております。  私が知りましたのは、当日、今委員もお話ありましたように科学技術委員会が開会されておりましたけれども、当日のこの委員会終了後の午後五時三十分ごろでございます。  なお、本件周辺環境に影響を及ぼすものではなく、国会審議中である、そういうことも含めて、私あてには至急の連絡がなかったのではないかと思っております。
  10. 平野博文

    平野委員 大臣が知ったのが私とほぼ同じ、そのころにはもう新聞に出ておった、こういうことですね。  いま一つは、ファクスを入れた、こういうことですが、まず確認しておきたいのは、これは放射能が漏れたとかそういうことでないということは承知をしておりますが、トラブルであることは事実だと思うのですね。こういうトラブルが起こったときにはどういう連絡網でするかというのもあらかじめ決められているはずですね。この点については決められているかどうかを教えてください。
  11. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 トラブル発生した場合の連絡方法については、決められております。
  12. 平野博文

    平野委員 そのときには電話ファクスという二重体制連絡をとることが、新聞には書いてあります。  このレベルはどうなのかということは別にして、連絡網の中でいきますと、私、またその夜地元に帰りました。そうすると、自治体とか関係機関連絡をしなきゃならない、こういうことになっているのですが、ある新聞には、警察には連絡するのを忘れていた、こういう報道が一部の新聞にあったわけでありますが、忘れておったのは警察だけですか。
  13. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 警察に知らせるのを忘れていたということではございません。  京都大学原子炉実験所におきまして、環境中への放射能放出を伴う原子力災害発生し、または発生するおそれがある場合、同実験所から地元警察連絡通報する旨、熊取町地域防災計画に記載がございます。この実験所では、本件環境への放射能放出を伴うような事象ではなく、この防災計画に基づく警察への通報は必要ないと判断したと聞いております。
  14. 平野博文

    平野委員 必要でないか必要なのかという判断は、このときはだれがしたのですか。
  15. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 これは、京都大学原子炉実験所がしたということでございます。
  16. 平野博文

    平野委員 通常ルールでいきますと、そういうことになっているということであるならば、トラブルレベルによってそれぞれ連絡体制が違う、こういうことに相なりますね。どうですか。
  17. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 まず第一報については、何かトラブルが起きているということでございますので、レベルについては即座に判断できません。したがって、電話及びファクスで第一報を入れるということでございます。
  18. 平野博文

    平野委員 では、非常に抽象論になるんですが、私は何を言いたいかというのは、第一報ファクス電話で入れました、これは認めましょう。受け取る側がいなかったら、入れたということになりますか。
  19. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回の通報体制でございますけれども、基本的に、科学技術庁から所管事業所に対して、トラブル発生した場合、通常の勤務時間内であれば担当課室へ、また、それ以外の時間帯、つまり土日祝日及び年始については、当庁に設置されている当直室電話及びファクスでの通報が行われるというふうに徹底をしてございまして、今回、本来当直室に入るべきところが、当直室にはちゃんと人がおりました、間違って担当課室へ行ったということだと認識をしております。
  20. 平野博文

    平野委員 なぜそんなことになるんですか、ここを私は言いたいんですよ。といいますのは、その当日、私も、この原子力防災安全性ということで委員会で本当に一生懸命議論しているわけですよ。大臣政務次官も一生懸命答えてはるわけですよ。確実に答えていただいたかどうかは別にして、委員会で一生懸命答弁しているわけですよ。一方、その足元でこんなことをやられて、あれは国会議員大臣政務次官がやっておる委員会だから、当該省庁の人は、当該担当の人は、おいらは余り関係ないんだよと。なぜ東海村の事故が起こったのかというこの重要性が、本当に科学技術庁関係者、また原子力に携わっておるそれぞれの方々緊張感がないという証拠じゃないですか。
  21. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回、本来当直室へあるべきところが担当課室へあった。これは、我々としても、科技庁としても趣旨徹底していたつもりでございましたけれども、その趣旨徹底に今後努めていきたい、このように思っております。
  22. 平野博文

    平野委員 いつも事故が起こった後やると、つもりだ、安全性に今後努める、こういう答えですべて終わってしまうんですね。一生懸命議論しておるそのやさきにこういう問題を起こされると、我々は一体どういう立場議論していいのか、これが非常に困るんです。  あのときに、私は頭へきましたよ、こういうことが起こってくるというのは。頭へきましたから、すぐ科学技術庁電話を入れました。そのときの初動体制は素早かった。私の事務所に五分後に来てくれましたよ。現実に、何ですかこれは。四時間かかってわかった、こんなことをやられたんでは、この委員会議論をしているこのことは一体何なんですか。あの日の夜は僕眠れなかったですよ。自民党の山口先生にも電話しました。今までいろいろ議論してきたことはみんなパアだ、なめておるんじゃないかということを私は言ったんですよ。  大臣、これは質問通告していませんが、今の答弁に対しての私は怒りですが、どう思いますか。
  23. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 委員指摘といいますか、委員のおっしゃいますように、私どもが原子力関係事故再発防止に全力を挙げているときにこのような迅速な連絡が行われなかったということは、大変残念であり、また遺憾でございます。こういうことを防止するために、ファクスのみでなくて電話等での二重三重の連絡をするように指示してあったところでございますが、こういうことが行われなかったということは、結果的に確認がおくれたということは、大変に残念でございます。こういうようなことのないよう、今政務次官からも答弁申し上げましたけれども、連絡通報についての徹底を図るように、改めてそういう指示をしたところでございます。
  24. 平野博文

    平野委員 ですから、相手任せの通報に期待をするということでは事実がおくれる、こういうことに相なるわけですね。現実にいろいろな議論をして、初動情報体制を確立しよう、こういう議論防災法でありますが、現実的には、電話ファクスを受け取った側が受け取ったかどうかも確認せずに、通報したらしっ放し。こういうことで本当にいいのか。こういう問題がまた同じように起こると私は思いますね。そうしたらこの防災法の中で何のところで担保できるのか。そうすると、事業者からの通報がなくても自動的にその問題点トラブルがわかる仕組みにしておかないと、人が介して通報されるということではなくて、自動的に通報される仕組みをつくっておかないといかぬのではないか、このように私は思います。  今回の事故は、事故と呼べるかどうかは別にいたしまして、少なくとも内規的にいえば、このレベル通報しなさいというルールがしかれているわけであります。にもかかわらず、間違ったところへファクスを入れている、あるいは、本来しなきゃならないところにやれていない、判断はそれぞれの現場に任せる。こんなことになりますと、事故共有化あるいはトラブルレベル共有化という点がまさにこの仕組みではできていない、こういうことだと私は思えてならないんであります。  ここで、余りこればかりを言うわけにいきませんから、大臣政務次官、さらには関係各位の、特に科学技術庁を含めて、その所管方々に猛反省をお願いしておきたいと思います。こういう委員会で、まさにこの問題点をやっているところで、大臣がもし午前中に知っておれば、少し審議をとめてでも、残念ながらこういうことが起こりましたと言ってくれる大臣だと信じていますが、五時半にしかわからない。大臣もばかにされているんですよ。  政務次官も知らなかったのですか。
  25. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 私も、この委員会審議が終わりまして科学技術庁へ帰り、自分の部屋に報告書が来ておりまして、それで知りました。
  26. 平野博文

    平野委員 それ以外のことだったらちょこちょこ大臣政務次官メモを渡したりしているのに、こんな大事なことはメモを渡されないのですか、この委員会の中で。戻らないと渡されない。厳重にこのことを指摘しておきたいと思います。余りこればかり時間をとりますと本論から外れていきますから、やめておきます。  そこででございます。先日実は委員会での質問をさせていただきましたときに、改めて確認でございますが、大臣政務次官原子力災害特殊性とは何か、そのためには何が必要でどのように対処していくべきかということをいろいろな観点から御議論させていただきました。初動体制の確立、特に現場対応重要性という視点ではほぼ基本的に同じ認識に立っていただいたものと私は解釈をしておるわけであります。そういう基本認識を踏まえた上で、まず、本案の第十条で事業者通報義務、こういうことであります。  先ほどの京都大学事故とも絡むわけでありますが、通報義務で、原子力防災管理者は、原子力事業所の区域の境界付近において政令で定める基準以上の放射線量が出た、こういうときに、「政令で定めるところにより」、こういう言葉がございます。また、みずから発見したときは、直ちに、主務省令及び原子力事業者防災計画の定めるところにより、その趣旨関係大臣都道府県知事関係市町村通報しなければならないというふうに定められているわけです。  この「政令で定める基準」というのは、言葉として入っておるんですが、具体的にいいますとどのような基準をもって政令で定めると考えられているのかお答えいただけますでしょうか。
  27. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 この政令につきましては、原子力災害に発展し得る事態発生をできるだけ早く関係機関に通知し、これらの機関防災の準備を開始できるようにするためのものでございまして、事業所境界付近における放射線量また施設内部発生した異常事象について、米国等外国における規定、内外の過去の事故等参考にしつつ、原子力安全委員会意見を聞きまして早急に検討を進めたいと考えております。
  28. 平野博文

    平野委員 そういう基準で決めていく、こういうことですね。  また、二条の第二号に原子力緊急事態定義として、原子力緊急事態とは、原子力事業者原子炉運転等により放射性物質放射線が異常な水準当該原子力事業所外放出された事態となっている。こういう異常な水準政令で言う放射線量水準とはどういうふうに決めているのか。私は今結論的に言いますと、「異常な水準」ということが二条の第二号にございます。十条では政令で定める値というのが、片一方は異常だ、片一方政令だ、こういうことで二つ言葉が出てくるのですが、この関係はどういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。
  29. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 この異常な水準でございますが、法案第十五条に基づきまして、主務大臣内閣総理大臣報告する緊急事態宣言に関する放射線量基準事象についてでございますが、今後政令によってその詳細を定めるということになっております。  この政令制定に当たりましても、今回の事故アメリカ等外国の事例を参考にしつつ、原子力安全委員会意見を聞いて決めるということでございます。
  30. 平野博文

    平野委員 そこで、緊急事態発生を考えるわけですが、異常な水準定義が非常に重要になるのですね。これを抽象的に書かれておるものですから気になるのですが、事故ではあるけれども異常な水準ではないという境目はあるのですか。
  31. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 事故ではあるけれども緊急事態宣言を発するには及ばないということもあり得ると思います。
  32. 平野博文

    平野委員 それは、放射線が漏れたとしてもというふうに理解してよろしいですか。
  33. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 具体的な数値につきましては、今後内外の過去の事故等も踏まえつつ、原子力安全委員会意見を聞いて決めていきたいと思っております。
  34. 平野博文

    平野委員 そこが大事なんですね。これはぜひ委員会議論をしないとだめだと思いますのは、異常な水準ということをベースに緊急事態宣言を発するのですよ。緊急事態宣言を発しなければこれは原子力災害とは認定しないのか、ここにもかかわってくるわけですよ。したがって、原子力の各事業者事故トラブルを起こした、微量であるが放射線地域へ出た、そのときには緊急事態宣言をしないのですか。しなかったらこの原子力防災というシステムが稼働しなくなるのですね。この点が非常に、言葉で言いますとなるほどなるほどと読めるのですが、実際事故に対処して照らし合わせたときにそこが非常にぼやけているのですね。その点はどうですか。
  35. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 具体的な数字についてどこを線引きするのかという御質問に対しては、今後それを決めていく、公開の場でいろいろ議論をしながらそれを決めていくとしか今この場ではお答えできないわけでございますが、実際に放射性物質敷地外に出ていくというふうな場合には原子力災害と認定されるというふうに考えられる場合が多いのではないでしょうか。
  36. 平野博文

    平野委員 そこが難しいのですね。そこをはっきりとしていただかないと話が進んでいかないのですが、特に、異常な水準でなければ内閣総理大臣報告しなくてもいいようになるのですね、今の理屈でいきますと。だから、異常な水準、こういうことの定義を明確にしておかないと、内閣総理大臣報告しなくていい、総理大臣報告されないから緊急事態宣言は発令をしない、しかし現場では事故が起こっているということはないのですか。
  37. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回のこの原子力防災法におきましては、法的な枠組みをきちっと決めるということでございます。その線引きの数値をどこにするか、これは決めるのになかなか専門的知見を要しますし、いろいろな方面からの御意見をお聞きし、公開の場で討論しながら、衆知を集めて決めていくという方が私は順当な決め方だと思いますので、それを安全委員会等で検討していただくということでございます。
  38. 平野博文

    平野委員 すぐ決められない。そうすると私は、ここをぼかしてしまいますと現場での対応が、本当に先ほどの話ですよ、これは技術レベルでは報告する必要はないよ、しかし行政の仕組みからいったらなぜ報告しないんだ、こういうあいまいな仕組みになってしまうような気がしてならないのですね。  この文章、本則から見ますと、異常な数字になったときには内閣総理大臣報告しなければならない。しかし、事故というのはいろいろなレベルで起こります。そうしたとき、異常でなければ内閣総理大臣報告が行かないわけだから、原子力緊急事態宣言というのは発令されない。発令されないということはどうなっていくのか、国は原子力災害でないと判断するのか、こういうまた疑問が出るのですね。論理的にいけば、そうならないですか。したがって、異常な水準というのは非常に大事なんですね。これを決めずしてこのスキームを通そうとするというのは無理がないでしょうか。
  39. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 委員おっしゃることは非常によくわかります。  二点だけお答えしますが、一点は、それだけ重要な基準であるからこそ、今回のこの法制定の場で急いで決めるのではなく、衆知を集めて、専門家意見も聞きながらきちんとした基準を、落ちのない基準をつくりたいということが一つでございます。  もう一つは、先ほど委員の御指摘の中に、この緊急事態宣言、つまり総理大臣への報告が行われる、行われないと原子力災害ではないのかということでございますけれども、総理大臣への報告以前の段階、つまり、政府原子力災害対策本部の設置など本法案による緊急事態応急対策を実施する必要がないと判断される場合にあっても、主務大臣防災業務計画に基づいてみずからの省庁内に事故対策本部を立ち上げたり、原子炉規制法に基づく対応といった初期対応がなされるわけでございまして、また、地方公共団体においても必要に応じて災害対策基本法による災害への対応を行うわけでございまして、原子力災害ではないと決めつけるわけではございません。
  40. 平野博文

    平野委員 今政務次官言われたけれども、総理大臣報告する以前に災害対策基本法が生きている、したがってそれぞれの機関で対処するんだ、こういうことになるんですか、今のお答えは。  最初の、冒頭言われたことは、重要なことであるがゆえに、もっと関係機関とじっくり議論して水準を決めたい、こういうことですね。この防災法だって重要なんです。それを早く通そうとしている。なぜならば、またいつ起こるかわからないから早く法整備をしなきゃならない、こういう論点に立っているんですね。だから、きょう何とか総理大臣も出てもらってやろうかという議論ですから、本来、その論理は矛盾するんですよ。水準というのは大事だから、もっとゆっくり、拙速にならずに決めなきゃいかぬ、一方、これは非常に重要だから早く決めなきゃいかぬ。その重要な中の、一番大事な判断というのは水準じゃないですか。異常事態という、異常という水準を決めないといかぬのじゃないですか。  両面ここにきちっと出てこないといけないと思うんですよね。ここだけは後でゆっくり考えます、法律スキームだけ早くつくってよ、これは矛盾していることになりませんか。
  41. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 非常に重要であるからこそ、まず法的枠組みをきちんとつくる、そして、ゆっくりということではなくて、衆知を集めながら、早急にこの基準についても決めたいということでございます。
  42. 平野博文

    平野委員 政務次官の御答弁を信じましょう。早くやってください。これがないと迷うんですよ。初動を出していいのかどうなのか、非常に迷うところですよ。言葉をずっと読んでいきますと、理解によってですが、論理の矛盾が出るんですね。論理の矛盾が理解によって出るということは、京都大学事故と同じ状態が再現される、次元は違いますが、同じパターニングで起こってくる、こう思うんです。通報しなくていいと現場では確認した、ところが中央は、何で来ないんだ、徹底をすると。おかしいじゃないですか。起こってからの事後対処ばかりやっておるわけですよ。起こる前にどうあるべきかという議論なんですから、その点をきちっと踏まえていただきたいな、このように思うところであります。  さて、そういう中にあって、災害対策基本法上でその部分を対処する、こういうことに相なるわけです。また、政府の非常災害対策本部というものを、非常に重要性をかんがみて設置をする。この場合には、設置権者は総理大臣なわけですね。そういうことですね。  それでは、そういう中で見たときに、今のレベルでいきますと、異常事態という以前の事故については、災害基本法が生きているわけですから、市町村、都道府県に災害対策本部を設置することは今の現行法律では可能ですよね。しかし、国は、災害対策基本法上、対策本部を設置することができますか。——今の論点、わかりにくいですか。もう一度言います。  異常までの状態で、しかし、事故トラブルが起こって、軽度な災害が起こったとしましょう。緊急事態宣言が発令されませんから、当然、市町村、都道府県本部が災対法、基本法に基づいて対策本部を設置することは可能ですよね。設置しなければやっていられないですね、事故が起こっているんですから。しかし、国は、災害対策基本法上、対策本部を設置することができますか。これもできるんですか。
  43. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 非常災害対策本部は、いわゆる災対法におきまして、非常災害発生した場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害にかかわる災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときに、内閣総理大臣が設置することができることとされているものであり、その本部長は国務大臣をもって充てられるということでございます。  したがって、できるというわけでございます。
  44. 平野博文

    平野委員 そうしますと、これは内閣総理大臣がその設置権者ですよね、国の場合に。そうなりますよね。そうすると、内閣総理大臣に少なくとも情報がこの場合は来るんでしょうか。  僕が言いたいことは、異常レベルというのが不確定ですから、基本法の動きとの関連が非常にあいまいになるんですね。これは特別措置法ですから、そこさえはっきりして緊急事態宣言されれば、特別措置法で原子力防災の対策本部等々が設置されるんですが、されない状態で国に対策本部ということが可能なのかどうか、こういうことを言いたいわけです。
  45. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 先ほどの私の御答弁はちょっと舌足らずでございました。  災対法で非常災害対策本部は内閣総理大臣によって設置することができるわけでございますが、一方、本法案におきましては、この法律におきましては、一定の異常な事態発生した場合には、直ちに内閣総理大臣により原子力緊急事態宣言が発せられ、内閣総理大臣を本部長とする原子力災害対策本部が設置されることとしております。  このようなことから、本法案におきましては、原子力緊急事態宣言があった場合に、原子力災害特殊性を踏まえた原子力災害対策本部が設置されるため、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部につきましては設置をしない、こういう旨が二十四条において規定されているところでございます。原子力災害の場合には、いわゆる非常災害対策本部は設置されないということでございます。
  46. 平野博文

    平野委員 わかりました。したがって、その判定基準になる異常水準異常事態、ここをはっきりしないことには、どちらでいくのか、これが物すごくばらばらになる、こういうことをまず指摘をしておきたいと思います。  そこででございます。次に移ります。  今回の法律案で、内閣総理大臣緊急事態宣言を発令した場合、閣議にかけて、臨時に原子力災害対策本部を設置することとしていますね。また、二十四条においては、災害対策基本法上の非常災害対策本部または緊急災害対策本部は適用除外ということで設置できない、これは今政務次官が御答弁いただいたとおりですね。  すなわち、この場合は、国として内閣総理大臣が本部長の原子力災害対策本部一つとなる。放射線が出ているものの異常なレベルになっていない場合、先ほど申し上げましたような指摘をして、非常にわかりにくいんだ、こういうことをぜひ指摘をしておきたいと思います。運用面できちっとした徹底を図っていただかなきゃならない、このように指摘をしておきたいと思います。  そこででございます。平成七年の災害対策基本法の改正におきましては、二十四条で、非常災害対策本部の設置に対して、従来は閣議にかけて決定することになっておったわけであります、しかし、ここはよく聞いておいてくださいよ、災害発生後の速やかな設置をするために、非常災害対策本部の設置に当たっては閣議を経ることを要しない改正が行われているんですね。緊急性をかんがみて閣議にかけなくてもいいよ、こういうことにここで改正しているんですが、この点はどうですか。イエスかノーかで答えてください。
  47. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 イエスでございます。
  48. 平野博文

    平野委員 ありがとうございました。  今回の原子力災害に対しては、内閣総理大臣原子力災害対策本部をつくるときに閣議にかける、こういうことになっていますね。とりわけ、きょうの公述人皆さん方が言っている、初動体制が非常に大事だ、こういうことを多くの方が言っておりますし、この審議の中でもやはり、初動体制は非常に大事なんだ、こういうふうに言っているにもかかわらず、これは閣議が必要なんだ。一方、防災法の非常災害対策本部のときには、緊急性を要するために閣議にかけなくてもよろしいという改正を平成七年にしている。整合性とれていますかね。
  49. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 先ほどの閣議を必要としないというのは、非常災害対策本部でございます。これは、いわゆる国務大臣を長とする災害対策本部でございます。  災害対策基本法でも、いわゆる緊急災害対策本部、これは総理を長として関係大臣をその下に置く災害対策本部でございますが、この総理大臣を長として各省庁をまたがるそういう対策本部におきましては、これまでどおり閣議は必要とされております。  すなわち、複数の関係省庁があって総理大臣がその長につくというふうな場合には、現在でも総理大臣の権限を保障するために閣議が必要ということになっておりまして、今回も、この国の災害対策本部は、ある意味では災害対策基本法の緊急災害対策本部に相当するわけでございまして、閣議が必要という論理立てでございます。
  50. 平野博文

    平野委員 非常にわかりにくいんですが、非常災害対策本部というのは、災害発生初動を何とか早くしなきゃならない、速やかに対策本部を設置しなきゃならないために閣議を経ずしてやりましょうと。今までは閣議が要ったんですよ。それは関係省庁いろいろあるから要ったんだが、そういう即動させるために、初期出動の重要性をかんがみ閣議を経ずにやれるようにしましょうよ、こういう改正ですね。  今回の原子力は、まさに特殊性という意味では初動が大変大事なんだ。にもかかわらず、まだ閣議にかけなきゃならない。閣議を外したらもっとスピーディーになるんじゃないですか。主要大臣関係大臣でやれる。そのことよりも現場での出動をより強化する。私は結論的に申し上げますと、非常災害対策、そのこと以上に初動のあれが大事なんだ、だから、閣議なんかかけている時間あるのか、もっと前に動かさなきゃならないんじゃないか。一般の災害対策法でも、閣議にかけずに緊急に処せるために改正をしているんですよ。その法の流れ、事故に対する対処の流れからいって、また同じように閣議にかけていくという発想は硬直した発想じゃないですか。
  51. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 初動体制の迅速化、これは非常に重要と認識しておりまして、今回の場合におきましても、内閣総理大臣による原子力緊急事態宣言の発出や、それと同時に行う関係自治体への指示については、閣議を要件とはしてございません。  ただし、国の災害対策本部、各省庁にまたがるような組織体をつくる場合には、これは災害対策基本法における緊急災害対策本部と同様に閣議による議を経なければ、その総理大臣に全権限を集中するという組織体は成り立たないわけでございまして、これはある意味で事後処理的なことになるかもしれませんけれども、閣議を必要としている、こういうことでございます。  繰り返しになりますけれども、緊急事態宣言の発出、また関係自治体への指示については、閣議を要件としておりません。
  52. 平野博文

    平野委員 それで、少し次に行きますが、今度は、国会への事後報告、あるいは国会の承認が必要、こういう観点で聞きたいんですが、こういう災害対策基本法上で考えますと、二十五条の七項、二十八条の三、九項の規定によって、国会への事後報告が必要ですね、現地対策本部を置いた場合には。そうですね。  緊急性とかそういうところで、いろいろそういう報告が事後でよろしいということにしたのは、本来は地方自治法百五十六条第六項、国の地方行政機関の設置については国会の承認が必要であるという規定を適用せずに、事後報告という格好にしているんですよ。  そうすると、本法律案が、現地対策本部を事故が起こって置いた、しかしながらそのような規定がない。こういうことは、地方自治法の百五十六条第六項の規定を適用しないのだから、地方自治という観点から、原子力災害対策本部が設置され、現地対策本部が置かれ、事後に国会報告をする必要性というのはあり得るのですか、ないのですか。
  53. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 平野委員おっしゃるとおり、災害対策基本法におきましては、第二十五条第六項及び第七項におきまして、非常災害対策本部及び緊急災害対策本部の現地対策本部の設置について、迅速性の観点より、地方自治法第百五十六条第六項の規定による国会承認を適用除外とし、また、現地対策本部を設置した場合には、事後的に国会に報告することとしております。  本法案におきましては、原子力災害対策本部とあわせて原子力災害現地対策本部を設置することとしておりまして、災害対策基本法と同様に、第十七条第八項において、迅速性の観点から、地方自治法第百五十六条第六項の規定を適用除外としているところでございます。  なお、国会への事後報告については、選択的に置かれている災害対策基本法の現地対策本部、これは災害対策基本法第二十五条を読みますと、「非常災害現地対策本部を置くことができる。」と、できる規定になっております。このように選択的に置かれる災害対策基本法の現地対策本部とは異なりまして、本法案におきましては、原子力災害対策本部が設置される場合には現地対策本部を必ず置くと、必置規定になっておりまして、事後的にその設置を報告するまでもないものであるため、特に規定していないものでございます。
  54. 平野博文

    平野委員 そこは非常に解釈含めてあれですね。適用除外にしている、こういう趣旨からすると、事後の国会報告というのは、私はやはり必要だと思うんですね、事故の背景云々をかんがみますと。したがって、今回あいまいになっているんですよ。  この前は、本来国会の承認が必要なんだけれども、そういう状態だから適用除外にして国会への事後報告ということに変えたんです。本来は、そういう行政の設置については承認が必要なんですね。承認が必要にかかわらず、事後でよろしい、こう言っているんですよ。  原子力のものについては、それは必ず置くとは限らないから必要ないという答えではないと思うんですね、本来の趣旨、立法の流れからいくと。やはり、これも同列に事後に国会報告をする必要性が私はあると思うんです。ぜひそういう視点でお考えをいただきたいと思うんですが、いかがなものでしょうか。
  55. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 災対法の場合、先ほど申し上げましたように、置くことができるということになっておりまして、その置くかどうかは、ある意味で状況による判断ということになります。したがいまして、この場合、置いた場合については、これこれしかじか、こういう判断でこの現地対策本部を置いたということを事後的に国会報告するということは意味のあることだと思います。  今回、法律で一義的に、国の対策本部を置いた場合にはもうこれはイコールで現地対策本部を置く、このように決めておりますので、そのこと自体を報告することに余り意味がない。余り意味がないといいましょうか、意味がないということで、このような差になっております。
  56. 平野博文

    平野委員 ぜひそこは、置いた場合ということで結構ですから、本来国の災害対策本部を置かなくていいというのが我が党の主張ですから、少なくとも置いた場合は国会に報告するというふうにぜひしてもらいたい、このように思います。  時間がありませんので、次に行きます。  ちょっと確認でございますが、「国の体制強化」というところで、この前も質問いたしましたが、少しあいまいだったものですから、私、再度確認のために申し上げます。  国の防災専門官を法的に位置づけ、サイトに常駐させる、こういうことがあるわけであります。政府の説明の中にもあります。このサイトというのは、どういう意味のサイトですか。
  57. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 サイトといいますと、一般的には原子力事業者が業務を営んでいるその敷地ということかと思いますけれども、今回の法律案議論の場で、サイトにこの原子力防災専門官が常駐しという意味は、その原子力事業所の所在する地域に常駐し、場合によってはオフサイトセンター等にも事務所を設け、日常的にサイトたる原子力事業所を巡回して、原子力事業者に対する原子力災害の予防措置に関する指導助言等の業務を行うこととしております。
  58. 平野博文

    平野委員 それでは前回の答えと違いますよ。この前は、地域に派遣をする、地域とは何ぞや、これは我が党で言っています防災センターか、こういうことを確認したのですが、ようよう見てみますと、ややこしいのは、事業者事業所に派遣をする、こういうふうにもとれるサイトということが出てきたものですから、ここにあるサイトと、下には、オフサイトセンターをあらかじめ指定をする、こうあるのですよ。  政府はオフサイトセンターに人を常駐させるということだったら、私はこの間の答弁と整合性がとれるのですが、今政務次官おっしゃったように、事業者の中に云々ということになってきますと、あるいは地域ということになってきますと、我が党が申し上げております防災センターというのが設置されます、そこに防災専門官が常駐をします、常駐するけれども、そこに朝から晩までいなさいということは言いません、いろいろな関係の情報収集とかしていただいたらいいのですが、人事発令するときに、地域に発令するのか。例えば、大阪府にあなた行きなさい、大阪のどこに行っていいのかわからぬじゃないか。  したがって、少なくとも、指定をされたオフサイトセンターならオフサイトセンター、それを防災センターと呼びましょう、防災センターに人事発令をする、こういう意味合いに今までの答弁で私はとっていますが、こういう文書が、サイトということだけにしておりますから、政務次官、ちょっとぼかしたような答弁になりましたけれども、いま一度、私申し上げたことでよろしいのかどうかだけ答えてください。
  59. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今平野委員が最初におっしゃったイメージと同等のイメージを私は持っております。最初におっしゃったイメージ、つまり、すべてのところで必ずオフサイトセンターがその防災専門官の常駐場所、事務所を置く場所となるとは限らないと思います。しかし、かなりの部分でそうなると思っておりますけれども、そのオフサイトセンターを中核拠点としながら、その地域にあるいろいろな原子力事業所について、そのサイトの中に入っていろいろ調べ、情報を交換し、防災についての助言、指導を行うということですので、平野委員が最初におっしゃったイメージと同等のイメージを私も持っております。
  60. 平野博文

    平野委員 ここは大事なところですから、再度確認しますよ。イメージで言わないでくださいね。  防災専門官は、政府の言うオフサイトセンター、我が党で言う防災センター、これは僕は同じだと思っています、そこに防災専門官を第一義には配置する、常駐させる。その防災専門官の役割とは、その事業者あるいは都道府県の関係、そういうところの日常防災に関する情報収集を含めて業務をしていくんだ、こういうことですね。
  61. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 それは、各いろいろな原子力事業所の性格にもよりますし、地域にもよると思いますけれども、例えば発電所のような場合には、このオフサイトセンターがその原子力防災専門官の拠点になるということは、そのように言ってもいいかと思います。
  62. 平野博文

    平野委員 そこがちょっと、何かうまく丸め込まれているような気がしてしようがないのですが、各都道府県、事業所がたくさんあるところ、少ないところ、これはいろいろあると思いますが、基本的には、そういう事業所の多いところについてはオフサイトセンター、防災センターを設置します、これはよろしいですね。  ただし、全都道府県に置きなさい、こういうことは言っていないのですから、設置をします、そこに防災専門官が発令されて、そこに主たる拠点を置いて、そこに常駐して、仕事の、ワークとしては事業所の事業内サイトに行くとか、こういうことはあってもいいのですが、事業内サイトに発令されるということはないでしょうねということを逆に聞きたいですね、逆説的に。
  63. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 その事業所サイトに発令されるということはないと思います。あくまでもこのオフサイトセンターを拠点として活動するということでございます。
  64. 平野博文

    平野委員 そういうことで私も理解をいたします。  そこで、いま一つ、時間が迫ってまいりましたが、原子炉規制法の改正に伴う原子力保安検査官の設置、こういうことについてちょっと聞きたいと思うのです。  今までは、運転管理専門官制度というのがございます。これは、過去の経過でいきますと、いろいろ発足の背景がございます。一九七九年、昭和五十四年からのこういうことで発足をしておるわけでありますが、これは通産省での運転管理専門官制度に基づくものですね。これは、法的に何も担保されていない状態で、運用でやってきたのですか。
  65. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 法律では定められておりません。通産省と科学技術庁、二省庁でございます。
  66. 平野博文

    平野委員 法律で定められていないのにこういうことをやるということはいかがなものかという気はいたしますが、それを反省して今回法律で担保をしよう、こういうことですか。
  67. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 そのように考えていただいていいと思います。
  68. 平野博文

    平野委員 では、勝手に今まで通産省も科学技術庁もやっておった。しかし、どういう位置づけかもわからないまま運転管理官がおって、本来の業務がやれていたかどうかも、だれが検証してきたんですか、これは。
  69. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 法律では定められてはおりませんけれども、原子炉規制法は、主務大臣事業者に対して保安のために必要な措置を命ずることができること、そして、職員をして立ち入り、帳簿等の検査をさせることができる旨を規定しておりまして、運転管理専門官は、これらの規定に基づいて、保安規定の遵守状況の調査、安全確保に関する措置の本庁への意見具申及びその措置命令の伝達、通常時あるいは異常時における施設の状況把握や本庁との連絡等を行うこととしております。したがいまして、法律に運転管理専門官ということは、名前そのものは出てきておりませんけれども、この運転管理専門官の業務的なバックは原子炉規制法においてきちんと定められているということでございます。
  70. 平野博文

    平野委員 定められてないから今度改正するのじゃないですか、保安検査官に。明確にされるということですから、私はいいことだと思いますから、ぜひ、定めた以上はきちっと仕事をしていただく。余り位置決めをきちっとされてないものだから、どういう仕事をしていいのかよくわからないというのが運転管理専門官じゃなかったかなという気は私、しますよ。今度定められるということですから、結構です。  最後になりますけれども、東海村のこれからの再生ということで、いろいろな部分があるのですが、今回の事故で、多分ジェー・シー・オーの許認可、事業許可が取り消されるのではないかというふうに思いますし、またそれほど重大な事故を起こしたわけであります。しかし一方、エネルギーを供給していくということから、転換処理してもらう事業者というのは、今日本では二社しかないわけであります。もしジェー・シー・オーが取り消される、こういうことに相なりますと、この事業者がやっておったところの部分というのは、うっかりしたら海外に依存をする、こういうことにもなるのでしょうか。逆に言いますと、日本国内では、今やっておる三菱原子燃料ですか、ここの一社しかなくなってしまう、こういうことにも相なるわけであります。  したがって存続させろということを私申し上げておるのではありません。転換をしていくという、そこの部分の企業が取り消される、こういうことに相なって当然だと私思いますが、今後のこれを担うところについて、大臣、どうしようとしておられるのでしょうか。海外に依存しろ、こういうことなのでしょうか。
  71. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 委員御発言のとおり、現在国内におきまして、六弗化ウランを二酸化ウランに転換する、いわゆる再転換加工を行っている会社はジェー・シー・オー及び三菱原子燃料の二社であると承知をしております。  ジェー・シー・オーの事業停止により、国内の原子力発電所への燃料供給がどういうふうな影響を受けてくるかということでありますが、直ちに影響を受けるものではないと基本的な認識を持っております。  電気事業者におきましては、ジェー・シー・オーの今回の事故の影響を踏まえつつ、ジェー・シー・オー分の再転換を国内の再転換加工業者である三菱原子燃料及び海外の加工工場等に振りかえる等の検討が今なされていると私は聞いております。
  72. 平野博文

    平野委員 時間が参りましたのでこれで終えたいと思いますが、再度申し上げます。  科学技術庁職員の皆さんの本当に緊張感ある仕事をしていただきたい。また、原子力事業者皆さん方緊張感ある仕事をするための制度としたい。ルールはつくっても、守らなければ何にもならない。そういう意味では、守ってもらうためにどのように厳しい環境をつくっていくか、こういうことも非常に必要だと思います。  最後にそのことだけを、魂を入れなければだめなんだよ、こういうことを申し上げまして、私の質問を終えたいと思います。  ありがとうございました。
  73. 北側一雄

    北側委員長 辻一彦君。
  74. 辻一彦

    ○辻(一)委員 審議もかなり大詰めに来たわけですが、若干残した問題、また前回の質問等で少し明らかにしたい点が幾つかありますから、それをお尋ねしたいと思います。  初めに、新しい今度の原子力災害対策特別措置法によって、原子力災害発生をしたときに事業者がまず通報する、そこから出発をするわけですが、通報から、原子力緊急事態宣言が行われて、総理大臣が市町村長、知事に住民の避難や屋内退避等を指示するまでをどういう展開でイメージされているのか、それをちょっとまず大臣から伺いたい。
  75. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 通常と異なる事象発生について原子力事業者から通報を受けた場合、主務大臣は、直ちに原子力事業者に指示をするなどのいわゆる初期動作を開始するとともに、事態の推移を見通して、緊急事態応急対策を実施すべき区域や、市町村長及び都道府県知事が住民に対して行うべき避難等の勧告や指示に関する案の作成に着手することとしております。あらかじめ定めた異常な水準放射線量が検出されるような事態に発展した場合には、直ちにその案を内閣総理大臣に提出することといたしております。  内閣総理大臣は、主務大臣からの提出に基づきまして、緊急事態応急対策を盛り込んだ原子力緊急事態宣言を発出するとともに、市町村長及び都道府県知事に対しまして、住民の避難のための立ち退きや屋内への退避の勧告等を指示することといたしております。  内閣総理大臣から指示を受けました市町村長または都道府県知事は、住民に対しまして避難のための立ち退きや屋内への退避を指示することになります。
  76. 辻一彦

    ○辻(一)委員 通報から指示がなされるまでの展開は、おぼろげながらというか、大体わかりました。  そこで、具体的な問題ですが、東海の臨界事故のときに対策本部が設置されるのにどれぐらい時間がかかったのか、また、専門家の助言組織から専門家を派遣するためにどれぐらい時間がかかったか、このことをちょっとお尋ねしたい。
  77. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回の場合でございますが、事故が午前十時三十五分に起きまして、午前十一時十九分に事業者から第一報ファクスにて科学技術庁が接受した後、原子力安全委員会、官邸、プレス等への説明と並行して、午後二時半に科学技術庁災害対策本部を設置いたしました。また、午後三時には、災害対策基本法に基づく科学技術庁長官を本部長とする関係省庁を含めた事故対策本部を設置いたしました。  なお、この過程におきまして、午後十二時過ぎには、災害対策基本法において指定公共機関として位置づけられております核燃料サイクル開発機構、日本原子力研究所に対して、モニタリング支援等の派遣を要請しておりまして、直ちに専門家の派遣がなされております。  また、原子力安全委員会の緊急技術助言組織の招集でございますが、午後三時半にこれを決定し、六時半に原子力安全委員ほかを現地に派遣しております。
  78. 辻一彦

    ○辻(一)委員 午前中に公聴会で東海の村上村長さんに来ていただいて、現場の当時の苦労やもどかしさをいろいろお話を聞きましたが、やはり本部が設置されるまでの時間がかなりかかり、それから、どうしていいかわからぬという時間が随分あったということですね。東京から専門家が来るのにも相当な時間がかかった。こういうことが、当初における初期対応がなかなか判断できなかった大きな要因であったように伺いました。  この時間は、例えば災害対策本部が設置されるのに四時間半、それから専門家の派遣は、時間はまだ明確にお答えがなかったのですが、夕方派遣というふうになると、相当な時間がかかっておるわけですが、今度の新法でこの時間はずっと短縮されるのか、されるとするならどれぐらい短縮される見込みなのか、お尋ねしたい。
  79. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回の法案におきましては、事業者に対して、施設の敷地境界における放射線レベルの上昇など一定の異常な事態発生した場合、直ちに主務大臣、所在都道府県知事、所在市町村長に通報することを義務づけるとともに、通報を受けた主務大臣から直ちに内閣総理大臣報告がなされ、内閣総理大臣原子力緊急事態宣言をするとともに、原子力災害対策本部を設置することとしております。  また、その緊急事態宣言に先立ち、事業者より施設の敷地境界における放射線レベルの上昇など一定の異常な事態発生した旨の通報を受けた都道府県知事または市町村長は、主務大臣に対して専門的知識を有する職員の派遣を要請することができ、主務大臣は適任と認める職員を派遣しなければならないこととしております。  本法案の施行後においては、このように迅速な通報連絡体制専門的知見を有する職員等の派遣体制を法的に整備し、また、初動体制判断基準等を客観的なものにした各種マニュアル類の整備を進めまして、さらに実践的な防災訓練を実施することとなります。これらの措置によりまして迅速な事故対応が図られるようにしていきたい、このように決意をしております。
  80. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もし新法が既に発効していたとして、いわゆる新法下において今回の事故があったとしたならば、時間は四時間半とか、あるいは専門家派遣には六、七時間とかかかっておると思うのですが、どれぐらい短縮されると思いますか。
  81. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 具体的に、今回の事例で何時間になります、何分になりますということは言えませんけれども、かなりの短縮になると考えております。
  82. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その直ちにというのは非常に結構なことなんですが、具体的にこの法律が適用されることによって、今まで随分、本部設置に時間がかかった、専門家を派遣するのに時間がかかった、そういうものが具体的にこういうことによって短くできる、初期対応ができるという何かその裏づけはないのですか。
  83. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回、いろいろな制度の中でこの迅速化を図っていること、及び現地対策本部を立てるために現地対策本部長が行くとか、また専門家が派遣されるとか、そういうところで、自衛隊の出動を要請できることにもなっておりますし、迅速な対応が可能になったと思っております。
  84. 辻一彦

    ○辻(一)委員 早くできるということですが、では、今回の場合にその新法を適用したとしたら具体的にどれぐらいの時間が短くなるのか、そういうことは数字でおよそ言えませんか。
  85. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 数字的に出すのはちょっと難しいかと思います。かなり迅速化が図られるということで、数字で出すのはちょっと難しいかと思います。
  86. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今度は、具体的な防災訓練をやってみる、午前中も意見がありましたが、それで本当に仮想事故を想定して、ここまで拡散するならどうするか、それに対するサイトごとの防災計画が確立されれば、具体的にそれを実証することによって点検できると思いますから、具体的な効果のある防災計画防災訓練等をぜひ積み上げて、その数字をひとつ裏づけるようにしてほしいと思います。  そこで、前回も私は質問をして、どうもはっきりしないままに終わった点があるのですが、原子力緊急事態宣言を総理がする前に、初期緊急対応が必要なときに、市町村長が屋内退避を勧告、指示するとすれば、いかなる法的根拠によるのか。これをちょっと伺いたい。
  87. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 災害対策基本法第六十条では、災害発生し、またはそのおそれがある場合には、市町村長が住民に対して避難のための立ち退きを勧告または指示できることとされております。この立ち退きは、災害により危険が切迫している地域から他所へ移る行為を意味しておりまして、屋内にとどまり事の過ぎるのを待つという意味での屋内退避とは別の概念でございます。ただし、立ち退き先を屋内に特定することによって、多くの場合は同等の効果を生み出すことは可能であります。  原子力災害におきまして屋内への退避という概念を導入いたしましたのは、原子力災害における屋内退避は、外気を遮断するなど特別な状態を維持して屋内にとどまり続けるという行為でありまして、単に立ち退き先を指定し他所へ移るという行為に焦点を当てたものではないことによるものでございます。  一方、今回の東海村における事故では、事故発生の九月三十日十二時三十分ごろ、東海村より、付近の方は外出しないようにとの屋内退避の要請を防災無線で放送し、十五時ごろには半径三百五十メーター圏内の住民に避難のための立ち退き要請が出され、また、同日二十二時三十分ごろに、茨城県知事から関係市町村に、十キロ圏内の住民に対する屋内退避の、これまた要請でございますが、要請がなされたものと承知をしております。  このうち、東海村村長の行いました屋内退避の呼びかけ及び茨城県知事が行いました十キロ圏内の屋内退避の要請は、災害対策基本法の規定に基づくものではなく、地方自治法第二条の規定に基づき、地域住民の生命、身体の安全を保持するという地方自治体固有の事務として行われたものでございます。  委員承知のとおり、地方自治法の第二条の中に、地方公共団体は、「その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理する。」そういう規定がございまして、その国の事務に属しない事務の事例といたしましては、「住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること。」ということが記されておるわけでございまして、これに基づいて、地方自治体固有の事務として行われたものでございます。
  88. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この前もちょっと論議をしましたが、総理の原子力緊急事態宣言が行われた後は、その新法によってみんな発動できるんですね。  ところが、問題は、その宣言がなされる以前の、それは一時間か二時間か三時間か、あるいは三十分かわかりませんが、そのときに対応しなくてはならない一つに避難があるんですね。それは災害対策基本法の第六十条によって規定されている。それを根拠にしている。ところが、今度の屋内退避は、それとは違って地方自治法によって行われたということです。  まさに屋内退避というのは、前には考えられなかった、いわゆる原子力災害特殊性からきた屋内退避ですね。屋内退避、これは初期ですよ、屋内に退避して放射線を遮るという。いや、これは危ないということになれば立ち退き避難ということになるんですが、一連の関連のある行動なんですが、それを、片方は災害対策基本法六十条、片方は自治法の何条かによって、違った裏づけでこの根拠を与えているというのは整合性を欠くと私は思うのですが、それはどう思いますか。
  89. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、また委員も御指摘のとおり、緊急事態宣言が発出されました後は、この法律によりまして屋内退避ができるわけでございますが、原子力災害対策特別措置法の施行後においても、原子力緊急事態宣言発出前に屋内退避の措置を講じる必要があると地方自治体の長が判断した場合には、現行の仕組みどおり地方自治法等によりまして必要な措置を講じることができるということでありまして、私は、整合性はある、そういうふうに思っております。
  90. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、私の言っているのは、避難は災対法の六十条、屋内退避は、これは一連の行為であるにもかかわらず、別の地方自治法に基づくという。だから、もし整合性を欠かないようにするためには、災害基本法のところを、今までは避難、しかし新しい原子力災害というものが加わるから屋内退避と加えるか、それでなければ、本当は特別措置法をつくって、原子力災害特殊性というものを組み入れるのが今度の特措法の特徴なんですから、特別措置法の中に屋内退避というものを、宣言以後はわかっているのだけれども、宣言以前のそれをどうするかということについての根拠を与えるべきでないかと思うのですが、それはいかがですか。
  91. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 繰り返しになりますが、地方自治法等で屋内退避ができるわけであります。そういうような規定があるわけでありますから、これを、この法律にのっとってそのような地方自治体の長が判断をすればいいことだと思っておりますし、また、この法律が施行後におきましては、地方自治体の長を初めとする関係者皆さん方によくこの点を御説明して、そして速やかにこの自治法にのっとって対応ができるように御理解をお願いすればよろしいのではないか、そういうふうに思っております。
  92. 辻一彦

    ○辻(一)委員 限られた時間で、ここに余り時間を本当はかけたくないのですが、せっかく特別措置法というものを原子力災害特殊性にかんがみてつくるのだから、新しい問題、原子力のこの屋内退避というのは、原子力災害であるがゆえに問題になってきたわけですから、少なくともその特別措置法の中に一項入れてうたい込むべきである。それが法の整合性というものじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  93. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 辻委員の御主張につきまして、前回の質疑でも御主張でございますけれども、この屋内退避というのは、原子力災害における特有な避難方法でございます。  避難に二つございまして、一つが立ち退き、そしてもう一つが屋内退避だと思います。災対法六十条で規定されておりますのは、この立ち退きについての勧告、指示。勧告、指示ということですので、かなり強い行為が書かれているわけでございますけれども、この屋内退避が有効であるのは、予測線量当量が余り大きくない場合や放射性物質の拡散時間が短い場合であるが、原子力緊急事態宣言が出される以前に暫定的な措置として屋内退避を行う場合には、指示、勧告という強い義務づけでなくても、これまでと同様に地方自治体固有の事務としての要請により行うことが適当である、このように考えているわけでございます。  一方、屋内退避が比較的長期にわたる場合や、立ち退きによる避難によらなくては相当な被曝を受けると想定される場合には、住民の意思に反してでも実施することが必要になるため、ある程度強い義務づけを課す指示、勧告を法的に位置づけることが必要である、このように考えます。このため、立ち退きや原子力緊急事態宣言発出後の長期にわたる屋内退避については、災害対策基本法及び本法案による災害対策基本法の読みかえ適用により、勧告または指示ができることとしているものでございます。  いずれにいたしましても、地方自治体が住民に対して立ち退きや屋内退避の措置を講ずる場合には、権限の強弱という観点ではなく、住民の安全のために具体的にどのような働きかけができるかという観点が重要であり、初動対応の迅速性を十分に踏まえながら適切な対応を図ってまいりたいと思っております。
  94. 辻一彦

    ○辻(一)委員 だから、私は、原子力災害特殊性を考えたのならば、まさにこの特措法というのは、災害基本法を踏まえて特殊性を盛り込むのが今度の特別措置法なんだから、その中に盛り込まれるべきでないかということ。  それから、宣言後は屋内退避の場合も指示できるとしているのでしょう。法案を見れば、緊急事態の宣言後は屋内退避についても指示し得るとしている。それで、さっき言われたのは、屋内退避とそして避難は強弱があるから、だからそれでいいのだという。新法のもとにおけるのと非常に論理が矛盾していると思いませんか。いかがですか。
  95. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 緊急事態宣言後は、かなり緊急な事態でございまして、指示、勧告という、ある意味で住民の権利を侵害するかもしれない措置でございますけれども、強い指示権限を事故対策本部長に与えたということでございます。ということで、論理的な矛盾はないと思います。
  96. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この程度でとめますが、緊急度という点からいえば、重要性からいえば、緊急事態の宣言以前に、初期の対応がより緊急かもわからぬですよ。だから、緊急度をもって分けるということは非常に問題があると私は思いますが、この問題は提起をして、ここで時間の点からとめたいと思います。  ちょっと具体的な問題を伺いますが、防災専門官の配置の数です。  茨城、これは東海ですね、それから青森、福井、福島、新潟等は、主要な原子力の研究施設、新しい施設、それから原子力発電所が集中しているところですが、ここは、単なる一カ所あるところとは違った原子力防災専門官の配置が必要と思いますが、これらについての配置の箇所、それから配置の数をどういうように考えているのか、お尋ねしたい。
  97. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 原子力防災専門官は、原子力事業所の所在する地域に駐在をいたしまして、平常時におきましては、原子力事業者に対して、防災業務計画の作成、防災組織の設置等の原子力災害予防対策に関する指導助言を行うほか、緊急時におきましては、原子力事業者からの通報がありました場合に、その状況の把握のための情報の収集その他、原子力災害発生または拡大の防止の円滑な実施に必要な業務に当たることとされております。地元におきまして、原子力防災対策上重要な役割を果たすこととなっております。  お尋ねの原子力防災専門官の配置場所と配置数につきましては、原子力事業所の種類や規模に応じて異なるものとなると考えておりますが、その役割の重要性にかんがみ、業務が的確かつ円滑に遂行されるよう、所要の人員の確保に努めてまいりたいと思います。  専門官の人数につきましては、十二年度予算編成の過程におきまして関係部局と検討をしているところでありまして、現時点で確たる人数を申し上げることはできませんが、御指摘の施設を初めとする原子力事業所の所在地域におきまして、緊急時に適切に対応できるように所要の人員を確保するよう努めてまいりたい、そういうふうに思っております。
  98. 辻一彦

    ○辻(一)委員 運転管理専門官は、四十六名だったか四十七名いますね。そのほかに防災専門官を所要のと言われるその所要の数というのは、それを別にしてどれぐらいを考えているのですか。
  99. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 運転管理専門官と別にどのくらいの人数を考えているか、こういう御質問でございますが、これは、辻委員の前の御質問でもございましたが、ある場合におきましては、原子力運転専門官と兼務をさせるというようなこともあることも考えられます。したがいまして、現時点におきまして、運転管理専門官よりほかに何人この専門官を置くかということは決めておりません。今検討しているところでございます。
  100. 辻一彦

    ○辻(一)委員 名前だけ防災専門官を置く、こうして、実際は、運転管理専門官が四十七名配置されている、それと兼用すれば実質的にはほとんど変わらないものになる。  だから、防災専門官を置くというのは、初期対応をきちっとやり、本来は運転専門官と兼務すべきでない性格のものであると思いますから、そういうものをきちっと配置してこそ防災専門官、この法案のかなめが生きると思うのです。それを運転専門官と適宜兼務して並べるというのでは、私は防災専門官をこの法案のかなめとした意味をなさないと思うけれども、そこはどうなのですか。
  101. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 兼務となる場合もあるかもしれないということでございまして、すべて兼務ということではございません。  もちろん、この今回の法律趣旨にのっとって、各地域に、防災専門官専門と言うとおかしいのですが、防災専門官専任者は必ずいるわけでございまして、辻委員の御指摘趣旨にのっとって、その任務を果たすような体制をとっていきたいと思っています。
  102. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その所要の数というのはほぼ幾らだと今明らかにできないのですか。
  103. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 現時点で大体何人になるということは言えないのですが、例えば青森の六ケ所村、これはいろいろな施設が建設中でございますが、その全施設が整った段階で、これも確実に、一名もたがわずその数字になるという意味ではございませんけれども、十人程度の防災専門官が配置される、このように考えております。
  104. 辻一彦

    ○辻(一)委員 例えば青森と言うのならば、茨城や原子力集中地帯である福井、福島、新潟等にどれぐらいを配置する考えなのか、そこは明らかにできないのですか。
  105. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今具体的にその数字を挙げることはできませんけれども、少なくともその事業規模からして、不公平がないようにといいましょうか、妥当性のある、合理性のある配置数になると思っております。そうしなければいけないと思っております。
  106. 辻一彦

    ○辻(一)委員 しっかりやってください、大事な問題ですから。  やはりこの法案が、新法が具体的に生きるかどうかは、防災専門官がきちっと配置されて、本当に初期の対応、市町村長の相談相手になってやれるか、こういうことにかかると思いますから、その点、ひとつしっかりと取り組んでいただきたいと思います。  そこで、原子力安全委員長、見えていますね。  時間が乏しくなって恐縮なのですが、午前中も東海の村長さんとかそれからそのほかの公述人からいろいろ意見を伺ったのですが、いずれの方も、原子力安全委員会はやはり強化すべきであるということですね。  それも、今言われるように、事故があったのでこれはやむを得ぬということで、例えば佐藤安全委員長は、以前に行管等のところで論議をした覚えがありますが、七十名ぐらいのメンバーは最初に事務局に確保したいということでした。今百名ぐらいだといういろいろな話が出ていますが、その程度で安全委員会が強化されるというように思っていらっしゃるのか。  私は、この前もお話ししましたが、とにかく二次系や周辺部にどんどん問題が出てきている、こんなのをしっかり目を配らぬと、事故は違った形であちこちから出てきて、とてもおさまっていかないように思うのです。今の安全委員会を少し強化して、内閣府に移して、人数をふやすということで目が配れるのかどうか、私はその程度ではとてもできないと思うのですが、まずそのことをお尋ねしたい。
  107. 佐藤一男

    佐藤参考人 まず、施設等の保安、これは当然事業者がしっかりやっていただく。それを現在の規制行政庁が、そういう事業者がちゃんと責任を果たしているかどうかを監視し、監督する。安全委員会というのは、その上に、上にと言うのはちょっと語弊がありますが、それらを見て、特に規制が適正に行われているかどうかを言うなれば監視し、必要あれば勧告もする、そういう立場と理解しております。  確かに、委員おっしゃいますように、これまでの事務局体制ではなかなか、最初の設置許可段階以降のところにまでもうほとんど物理的に目が届きかねるというところがあったことは事実でございます。そういうことも考えまして、私ども、七十名ぐらいは欲しいんだがというようなことを、これは非公式にでございますが、申したことはございます。  さらに、現在もっと増強すべきであるという御意見もいろいろなところであるというふうに承っております。これは、安全委員会に対して、まずしっかりせよということと、同時にまた御期待も大きいのであろうというふうに感じて、責任も感じているところでございます。  では、人数がどれだけいれば本当に満足かということになるわけであります。それは、欲を言えば切りがないというところもあるかもしれません。ただ、先ほど申しましたように、私どもの任務というのは、現在の規制行政庁の仕事がきちんとなされているかどうかということを監視、監督するのが一番だと思っておりますので、まずはそういう規制行政庁の方できちんとした仕事がなされるか、さらにそれを受けて事業者の方できちんと保安活動がなされるか、それを踏まえて評価すべきものと考えております。
  108. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この前の委員会でも、日本の原子力安全委員会の特徴というか、そういう点も論議をされたのは聞きました。  確かに、ダブルチェックをするというシステムは、ある面ではまた大事な点だと思うのですが、現状を見ると、科技庁、通産省もさして手が回るとも思えないし、それから安全委員会の方も手が回らない。そうすれば、二次系や周辺部における事故は、やはりこのままでいくと後を絶たない懸念がある。  そこで、もっと抜本的にやはり、アメリカの例はよく引かれますが、行政委員会的な組織に切りかえて本格的に取り組まないと、ここまで日本の原子力は、アメリカに次ぎ、フランスと並んでおるのですから、このままではいかないのではないか。  防災法も、大きな事故があって、多少慌てていよいよ具体化しましたが、原子力安全委員会の機構の問題も、もっと大きな事故が出ないと頭が回らないのかなという懸念が私はあるのですよ。だから、事故があってそういうことをやるのじゃなしに、事故を起こさないためにきちっとやるということが非常に大事だ。時間の点から、この点はまた別の機会に論議を本格的にしたいと思います。  そこで、もう一点安全委員長に聞きたいのですが、私も随分事故の問題には、福井もたくさん次から次と出るので直面してきましたし、東海と福井が典型的なやはり集中地ですから、問題が出るのはこれはやむを得ぬと思うのですね。  ところが、午前中も指摘をされておりましたが、科技庁や安全委員会がつくったところの調査委員会等は、原因の追求であるとか解明するというには極めてなかなか細かく、詳しくやっている点があるのですね。しかし、なぜそんなものが出てきたか、システムの欠陥がないか、行政庁の責任がないか、こんなことはほとんど触れていないですね。  例えば、私が論議をしてきた「もんじゅ」にしても、フランスにおけるナトリウム漏れの対策は、公聴会もやり、それから政府も何回もやって、分厚い報告書になって科学技術庁と動燃の倉庫に眠っている。それをちゃんと読んでやれば何分の一かにその被害というか事故は縮小できたかもわからぬ、こう当時の局長が言っているのですね。それをなぜ倉庫に眠らせておったか。その責任は、行政庁の責任、安全委員会や科技庁の責任はどうなのか、こういう問題は一つも触れていないのですね、この報告書を見ると。  だから、私は、そういう意味で、もっと第三者機関における調査委員会をつくれということも、そこに根拠が非常にあると思うのですが、行政の欠陥、メカニズムの欠陥をえぐる調査報告を出さないと、原因はこうで、こうこう、これだけではいけないと私は思いますが、これからの問題でもあると思うので、いかがですか。
  109. 佐藤一男

    佐藤参考人 確かに、今辻先生おっしゃるところ、私も同感するところが非常にございます。  ただ、この事故調査委員会は必ずしも技術的な原因究明だけをやっているわけではございません。今、中に小さなチームと申しますか、それを三つつくっておりまして、こういう事態を招いた背景にさかのぼる、つまり産業構造であるとか、そういうところまで踏み込んで議論が今なされているものと理解しております。  さらにまた、事故調査委員会委員長を初め皆様方には、安全委員会も含めてこれまで国の対応に足りない点等があったら御遠慮なく御指摘いただきたいということをお願いしているところでございます。
  110. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が来たから終わりますが、とにかく原子力安全委員会には国民の期待があるのですよ。だから、原子力安全委員会が言ったら心配ないなというぐらいになってもらわなければいけないと私は思う。そのためには、今言われている程度の改革では本物になかなかなり切れない、もう少し大きな根本的な取り組みが必要である。その問題はまた別の機会に論議したいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  111. 北側一雄

    北側委員長 吉井英勝君。
  112. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  私は、最初に、今度の法律を通じて、地元の自治体の取り組みとか、それから、災害のとき一番大事なことは、現地性と申しますか、地元の、そこに住んでいる方が一番そこの専門家ですから、そういう人たちの声がどれぐらい生かされてくるかということが非常に大事だというふうに思っているのです。その点では、午前中の公述人の方からもそういうお話もありましたけれども、実は、せんだっての事故の後、東海村の、きょうも来ていただいた村上村長さんにお会いしたときに、防災無線を各戸に設置して、これは非常によかったわけですよ、しかし、学校や事業所にはまだできていなかったので、そういう点はこれから取り組むことが必要だと思っていますというお話もありました。  やはり地域に有線のラインだけじゃなしに、それぞれの地域の状況に応じて各戸に防災無線を設けて、緊急時に確実に情報が住民に届くようにする。この点では、学校であれ公民館であれ、その他公共公益施設であるとか、あるいは事業所とか、そういうところにも設置して、確実にまず情報が届くということが非常に大事なことだと思います。これは後ほど触れますが、どれぐらいの範囲を防災対策の範囲と見るかによってかなり変わってくるかとは思いますが、まず防災無線の状況について、最初に政府参考人の方から伺っておきたいと思います。
  113. 鈴木正明

    鈴木政府参考人 原子力発電所所在の市町村におきましては、防災行政無線がおおむね整備されておりますが、整備されていないところにつきましては、CATVあるいは有線放送という形で住民に対する情報伝達手段を有しております。  御指摘のように、災害時において情報を迅速に住民の方にお知らせする通信網というものは大変重要なものだと考えております。
  114. 吉井英勝

    ○吉井委員 これは地域にもよると思うのですけれども、CATVでやっているところとかいろいろなことがあると思うのですが、各家ごとに、各戸に防災無線はほぼ完了しているという状況ですか。
  115. 鈴木正明

    鈴木政府参考人 発電所所在の市町村において、現実に各戸すべてに防災無線というものが設置されているかどうかということについては、確認をいたしておりません。  地域防災無線の形といたしましては、地域に一斉に情報を伝達するいわゆる放送塔というのでしょうか、こういう整備の手法もございますので、そういうものも含めまして防災行政無線が整備されている、こういうことでございます。
  116. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は前回の委員会でも取り上げたことがありますけれども、例えば聾唖者の方の場合、テレビを通じてなかなか正確に情報がつかめなかったということで、これはその関係する団体の新聞なども紹介して取り上げさせていただいたことがあります。あるいは、高齢者で耳の遠い方とかさまざまな方々に、各戸に防災無線やその他の仕組みを通じて確実に情報が伝達される、これが防災を考えるときの出発点になると思うのですね。その情報をもらわないと、逃げなきゃいけないのか、じっとこもっていることがいいのかとか、それも、うんと施設に近いところですと一メートルでも遠くへ逃げるということが大事な場合があるでしょうし、それぞれのところに応じて確実に情報が伝達される、それが非常に大事なことだというふうに思うのです。  同時に、地方自治体が頑張ってもらうときに、具体的に、自治体にも専門技術者をふだんから配置して、自治体の専門職員の採用とか養成とか、私はこの点では福井県の県庁などは、辻議員もお詳しいところですが、なかなかの人物がそろっているというふうに思っているのですが、やはり自治体は自治体として専門の職員を採用したり養成したりしていく。そのときに、自治体の規模は大小さまざまですから、技術支援を含めた財政支援、これは、各戸の防災無線などで確実に情報を伝達することとともに、自治体がそれぞれの自治体の独自性に応じて、まず現地でかなり日常的にも状況をよくつかみ検査にも行けば、いざというときに対応できる、そういうことに対する国としての、技術支援をかなり大きな柱とする財政支援、財政面からの支援が大事だと思うのですが、この点については大臣に伺っておきたいと思います。
  117. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 まず、先ほど防災無線のお話がありましたけれども、緊急時に確実に情報が個人個人に伝達できるようにするということは本当に最も重要なことだと思いますし、障害をお持ちの方への配慮等も当然のことで、きめ細かい対策が必要と思っております。  今、専門家を養成して、また技術支援をするための財政支援をということでございますけれども、再発防止ということを考えますと、ありとあらゆることを想定して対応をとっていかなければならないわけで、専門家の養成も重要でございます。そのための財政支援等も、今後、地方自治体等におきましても十分にこの養成に努力をしていただくとともに、私どもも総合的にこのような支援等についても考えていかなければならないものと思っております。
  118. 吉井英勝

    ○吉井委員 次に、万一事故が起こったときに住民の安全が守られるという点では、本当に全国の自治体関係者の皆さんからも御要請の強いのが、原子力施設の危険から国民の安全を守るという緊急の総点検を進めていくことと、それから同時に安全上の対策をとるということ。もう一つが、原子炉の仮想事故、日本では仮想事故と言っておりますが、過酷事故ですね、そのときに、実際にどれぐらいの被害が及ぶからどれだけの保安距離をとっておくことが大事かということ、これが非常に大事な意味を持っていると思うのです。全身被曝線量積算値が数十ミリシーベルトになるようなところとか、さらには一ミリシーベルトになるところ。  そこで、一ミリシーベルト以上の放射線を浴びることになる人口がどれぐらいになるかということで、これは通産省の資源エネルギー庁の方からあらかじめ資料をいただいて、こちらの方ではじかせていただくと、これはエネ庁の方で確認をしておきたいのですが、例えば泊原発の一、二号機の場合、原発から五キロから七・五キロのところ、岩内町などで一・五ミリシーベルトですね。そこに住んでいる人たちは九千五百十人。  それから、敦賀二号機ですと、六キロから八キロのところの美浜町で一・四ミリシーベルトの範囲内に三百九十人の方がいらっしゃる。  美浜一号機ですと、五キロから十キロの美浜町で六・七ミリシーベルトのところに百四十九人が住んでいるということになる。これは美浜二号、三号も同様です。  それから、大飯一号から四号について見ますと、一キロから二キロのところに二十三・四ミリシーベルトとか七十・三ミリシーベルトの被曝線量の積算値というのがカウントされる、そういう大飯の町には百二十八人の人が住んでいる。同じ大飯一号から四号で少し離れたところを見てみますと、十キロから二十キロメートルに当たる美山町というところで二・四ミリシーベルト。そこに住んでいる人が三千七百七十人。大飯一号から四号のところから二十キロから三十キロ離れているところの美山町でも、一・四ミリシーベルトの全身被曝線量積算値になるところに千四百四十人住んでいるということになる。  余りたくさん例を挙げてもややこしくなりますが、高浜一号から四号の場合、一キロから二キロ圏の高浜町で十九・六ミリシーベルトの被曝線量になるところに五十一名の方が住んでいらっしゃり、原発から十キロないし二十キロの美山町には四ミリシーベルト、二百五十一人の人がそこに住んでいる。  いただいた資料から計算すると、そういうことになろうかと思うのです。もっと挙げていくともう時間があれですから、とりあえず泊、敦賀、美浜、大飯、高浜という例なのですが、敦賀、美浜、大飯などは京阪神の大都市圏に非常に接したところでもあるのですね。そういう状況かと思うのですが、これをまず確認しておきたいと思います。     〔委員長退席、西委員長代理着席〕
  119. 河野博文

    河野政府参考人 今御指摘ありました数字は、先生の御指示によりまして提出させていただいた資料から引用しておられると思いますが、そのとおりだと思います。
  120. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、私、一ミリシーベルトを超えるところは避難を考えるということが非常に大事だということは今回の東海村の事故でもあったと思うのですが、十キロから三十キロ圏内でも四ミリシーベルトの美山町などでは、やはりそうなってくると具体的な避難計画が必要なんだなというふうに思うわけですが、これからの防災対策、防災計画を考えていく上ではここについても検討するということでいいのですね。
  121. 河野博文

    河野政府参考人 まず、御指摘になりました数字でございますけれども、前回先生御質問いただきましたように、設置許可申請に際しまして計算されたものでございますので、さまざまな、むしろ厳し目な仮定を置いた前提での数字、かつ立地審査指針に適合しているかどうかを判断するための数字であるということを、御承知と思いますが、まず申し上げさせていただきたいと思います。  ところで、防災との関係でございますけれども、これも御承知のことと思いますが、原子力安全委員会では、「原子力発電所等周辺の防災対策について」という、いわゆる防災指針を出しているわけでございますけれども、この原子力防災対策を重点的に充実すべき範囲の目安として、御案内のように、原子力発電所等を中心として半径八ないし十キロメートルという地域を示しております。また、屋内退避あるいは避難等に関する指標につきましては、これは予測線量当量でございますが、十ミリシーベルトを超えるときに、線量の強さに応じた退避等、防護対策を行うということになっているのでございます。  防災対策を重点的に実施すべき八ないし十キロメートルの範囲につきましては、発生する可能性が極めて低いと考えられる多量の放射性物質放出を仮定し、あるいは、さらに拡散に影響するような気象も最も厳し目に用いて計算をするなど、最悪の場合を想定したというふうに心得ております。  この屋内退避とかあるいは避難に関します指標につきましては、これも御承知のICRPや放射線審議会などで、被曝にかかわる検討結果あるいは諸外国の指標を踏まえて策定されたということでございます。  ただ、今回の事故を踏まえまして、原子力安全委員会においても、防災指針についてさらなる議論がなされるものというふうに思っております。
  122. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、今おっしゃったこれまでの防災指針は八キロから十キロですね。しかし、今回の事故も踏まえて見ていったときに、現実事業者側が出してきているものでも一ミリシーベルトを超えるところ、十キロから三十キロ圏の例えば美山町などでも四ミリシーベルト、こういうふうになってきますと、やはりかつての過去にこだわることじゃなくて、現実に今、具体的な避難計画をそれぞれのところでどう考えていくのか、このことが必要だと思うのです。しかも、これにさらに、もちろんこのときも考えられてはいるのですが、放射能の雲ですね、プルーム、これの流れ方とか、風向、風速によって被曝地帯の広がり方とか被曝の仕方が随分変わるわけですね。  ですから、八キロから十キロだけ考えておいたらもういいんだということでは現実に合わないわけですし、まして、水道水源などからの必要な安全距離とか、やはりそれぞれの地域ごとに、こういう問題は地方自治体の方が一番詳しいと思うのですが、やはり地域によく着目して、避難計画なども含めて防災計画を個々に考えていく。大臣、その点で、やはり個々の地域ごとに地域に即した避難計画なり防災対策を考えるということ、私はそこが大事だと思うのですが、この点だけはちょっと大臣に聞いておきたいと思います。
  123. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 今委員おっしゃいましたとおり、地域にどういう原子力関係の施設があるか、また、近隣の周辺の状況がどうなっているか等々、状況は施設によって違うと思います。そういう意味におきましては、今委員のおっしゃいますとおり、地域地域の実情に合致した、最も適したと思われるような形の対策をとるということが当然だと思っております。
  124. 吉井英勝

    ○吉井委員 資源エネルギー庁はああいうふうに最初おっしゃいましたけれども、私、例えばアメリカのコネティカット州の原子力発電所が住民に配った非常事態対策ガイドとかそういうのは、避難ルートは二号線西へ、五D出口より三号線へとか、非常に避難ルートについてもきめ細かく指示をするんですね。ですから、八キロから十キロで今まで考えておったからそれでよしということじゃなくて、やはりそれぞれの原発サイトごとに、今言ったように、十キロから三十キロのところでも四ミリシーベルトというふうに事業者が計算して出しているわけですから、そこの汚染される地域からはどれだけ早くどれだけ遠くへどう避難するかとか、やはりそこを考えないと、現実には、防災ということを幾ら口で言ったって防災対策にならないということを言わなきゃいかぬと思うんです。  次に、政府参考人にお聞きしておきますが、防災のしおりなどを配っている国もありますね。  例えばスイスでは、四カ国語で、沃化カリウム六十五ミリグラム十粒と書いてあって、お知らせとして、どんなときにいつ使うか、どんな注意が必要か、どういうときには使わなくてよいか、服用する場合医師に相談すべき人はどんな人かとか、妊娠期間中や授乳中の母親も使ってよいのか、どのように使うかとか、副作用の可能性、その他留意すべき事項、追加して沃化カリウムを入手するときなど、詳しく記載しているんですね。  こうして、原発事故時に想定される汚染地域では放射能の雲が到着する前に服用できるように各戸に錠剤を配付しておりますが、こういう諸外国の実例等は調べておられますか。
  125. 間宮馨

    間宮政府参考人 各国の状況につきましては、我が方でも、原子力防災のパンフレットの作成の手引というのをつくっております関係上、当然調べております。
  126. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、日本の場合は、各戸配付は非常に少ないんですね。実際に事故になると、住民の方たちは皆家にじっとしているわけじゃないですから。家にじっとしておれば、どこか近くの保健所へ直ちに行ってくださいとか、あるいは保健所なり病院から持っていくことができますけれども、住民の生活実態に合わせて早く服用できる、これは放射性沃素を吸い込んでからじゃ遅いわけですから、その点では、この地域については各戸配付を行うとか、やはりもうちょっと具体的に各戸配付も考えれば、同時に沃素剤の地域公共施設への配備も考えておくとか、そういうやり方が必要じゃないかと思うんですが、これについてはどういう取り組み方にしていますか。
  127. 間宮馨

    間宮政府参考人 沃素剤の配備についてのお尋ねでございますが、原子力安全委員会防災指針等に基づきまして、地方公共団体が的確に周辺住民等への配付ができる体制を整備しているところでございます。  沃素剤につきましては、放射性沃素を体に取り込んだ後であっても三、四時間以内に服用すれば十分有効でございまして、かつ副作用が皆無ではないということから、その配付に当たりましては、専門家の指導助言が得られる状況下で服用されるよう考慮することが必要だと考えております。  また、より迅速に対応できる配付体制の整備など改善の余地がある点につきましては、現在原子力安全委員会防災専門部会におきまして、防災指針の改定作業の中で具体的検討が行われているところでございます。
  128. 吉井英勝

    ○吉井委員 検討をやっているということですが、日本でも、新潟県の小国町の二十キロのところでも各戸配付とか、福井県の丸岡町、朝日町など全国一市五町で、十キロ圏外でも沃素剤の各戸配付をやっているという自治体もありますから、やはり自治体の方が、住民の実態に合わせる、過疎のところとかいろいろな状況もあるわけですから、やはり実態に合わせた取り組みをしておかないと、東京のお役所の机の上ではうまくいくはずなんです、しかしそれじゃうまくいかないというのがこの間の臨界事故でも示されているわけですから、私は、ここはきちっと実態に合わせた取り組みに切りかえるということを強く求めておきたいと思います。  それから次に、原子力安全審査の中で、過酷事故を想定して、炉心溶融の場合の溶岩流が圧力容器を破壊する場合、その場合の格納容器の健全性が守れるか、あるいは万一格納容器を破壊されたときに災害はどういうふうに拡散するかとか、それに対してどのような防災対策をとるかということについては、国際原子力機関のINSAGが八八年に出した「原子力発電所の基本安全原則」ではどういうふうに示しておりますか。
  129. 間宮馨

    間宮政府参考人 一九八八年のINSAGの報告書におきましては、今の点につきまして、発生確率が極めて低い事故に対して、それが重大なものではないということを確かめること。シビアアクシデントの可能性は極めて小さいことを確認すること。起こる可能性は非常に低いとはいえ、設計段階で考慮されたものよりも深刻な事故、設計基準を超える事故でございますが、これについても注意を向けなければならないということ。このような事故は起こり得るため、その進展を管理し、またその影響を緩和するための手順措置が用意される。このようにして、大きな影響を伴うシビアアクシデントは、深層防御による効果的な発生防止及び影響緩和によって極めて発生しがたくなる。こういうようなことが書いてございます。
  130. 吉井英勝

    ○吉井委員 そうなんですね。ですから、シビアアクシデントのときに格納機能に悪影響を及ぼすことを防ぐことはもちろん大前提として、防ぎ得ない場合には、そういう事故の影響を防ぐ特別な対策が備えられていることが必要である。ですから、要するに、過酷事故を想定してそれで食いとめる対策とともに、それも破られたときにどうするのかということを、そこをきちっと考えていかなきゃならぬということにしているわけであります。  私はこの点で大臣に伺っておきたいんですが、政府として、国際原則となっている過酷事故を想定した審査基準を取り入れるということについて、これは少なくとも原子力安全委員会に諮問をする。これは、国際的には過酷事故想定というのはもう原則になっておりまして、各国、それぞれの国によって想定の仕方とかいろいろ違いはあるにしても、やはりやっているわけですね。炉心溶融で溶岩流になって圧力容器が破壊される、その場合格納容器が破壊される確率が五〇%だ、アメリカはそういう計算までやって議論したりとか。ですから、それを安全審査基準に取り入れるかどうかということについては、少なくとも原子力安全委員会に諮問をされて検討するということが、私は大臣として必要じゃないかと思うんですが、これは大臣の方に伺っておきたいと思います。
  131. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 委員御案内のように、シビアアクシデントとは設計で考えられた仮想事故を超える過酷な事故でありますために、安全審査の対象とはなっておりません。  我が国では、さまざまな安全対策によりまして、そのような事故が起こる可能性は非常に低いと評価はされております。しかし、念のため、現在の低いリスクをより一層低減すべく、原子力安全委員会は、平成四年、シビアアクシデント対策について強く推奨しているところであります。  これを受けまして、事業者におきましても、おおむね二〇〇〇年を目途に過酷事故に関する対策が進められているところでございまして、シビアアクシデントに関しても、安全確保について十分努力をしているところでございます。
  132. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、今大臣がお答えになったように、これまで審査対象とはしてこなかったのです。しかし、やはりこれは非常に大事だということで、強く推奨され、事業者において取り組むということになってきたわけですが、それだけに、審査対象として審査基準に取り入れるということについて、少なくとも原子力安全委員会の方に諮問をされる、そういうことが必要なんじゃないですか。
  133. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 原子力発電所の基本的安全原則は、IAEAの国際原子力安全諮問グループがIAEA事務局長へ勧告することを目的とした報告書でございまして、それ自体は、IAEAの国際基準ではないわけでございます。
  134. 吉井英勝

    ○吉井委員 国際的義務でないとおっしゃるのだけれども、しかし、その勧告を各国政府は受け入れているのです。日本は拒否するという立場で、しかし各国政府は皆それを受け入れて、実際に過酷事故を想定した審査をやっているわけですね。  だから、日本も、そういう安全審査にしていくように、審査基準にそれを取り入れるように、少なくとも原子力安全委員会には諮問される。諮問された結果、安全委員会はそれは要りませんと言うかどうか、それは安全委員会がその諮問に対して答申されるわけですが、大臣としては諮問するということは必要なんじゃないですか。これは大臣にもう一度伺います。
  135. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、原子力安全委員会平成四年にシビアアクシデント対策について強く推奨しておるところでございます。そういうことから、事業者におきましても過酷事故に対する対策が進められるもの、私はそういうふうに思っております。
  136. 吉井英勝

    ○吉井委員 推奨しているぐらいなんですから、だから、大臣が諮問されたときに、どういう形の審査基準にするかは別として、これは安全委員会も検討されると思うのですよ。こういう点では、国際的な流れもございますから、いわば国際基準になっていますから、少なくともこれをまず諮問されて、そしてきちっとした安全審査の基準に組み込んでいく。そういう立場に立たれるように、大臣からまず諮問をされる、そのことは必要だと思うのです。この点だけはもう一度伺っておきたいと思います。
  137. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 海外の状況をちょっと御説明させていただきたいと思うのですが、米国やスウェーデンにおきまして、シビアアクシデント対策の一部の項目については安全規制の要求事項となっております。そのほか、我が国を含めまして、フランス、ドイツ、スイスにつきましては、事業者の自主対応となっておりまして、先ほど申し上げましたように、事業者においても十分に過酷事故対策をとるもの、そういうふうに思っております。
  138. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が参りましたので終わりますけれども、私は、過酷事故対策というのはそんな軽いものじゃないというふうに思っております。  それで、事務方の方は、何かそういう都合のいいところを持ってきてやっているようですが、やはり進んだ経験を生かして、いかに防災を前進させるかということが一番のポイントですから、その立場に立っていただくことを強く申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わります。
  139. 西博義

    ○西委員長代理 山中あき子君。     〔西委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 山中あき子でございます。  再び質問の機会を与えていただきましたが、きょう採決がございまして、この法案が通過いたしますと、先ほどからの御答弁を伺っていますと、その後、いろいろなところでいろいろな意見を聞いて、そして実効あらしめるようにするということですが、できるだけ迅速にそういう形にしていただきたいという思いも込めまして、今回のこの法案を通す大きな目的は、国民に安心感を与えるということ、そして原子力政策への信頼を回復するということ、さらには、海外におきましても、私はちょうどサンフランシスコで核廃絶の会議に出ておりましたときにこれが起こりまして、NGOの方から、だからもう核兵器だけではなく原子力も反対だということで、アメリカ政府はちょっと困っていた、そういう状況もあります。  この間聞きましたら、英国では、この事故一報が入ってすぐ、同じような加工燃料工場を全部ストップしたそうです。それで、普通だったらもっと早くに連絡が入ってというか、公開されて、どういう状況かがわかれば再開をしようと思っていたけれども、日本から連絡が入ったのが丸一日、二日過ぎて、安全な状況かどうかもわからなかったということで、イギリスでは、いつ停止したものを解除するかということを大変真剣に考えていたということが入ってまいりました。そういうふうに、私どもの知らないところで、今回の事故の余波というのが国際的なところまで及んでいる。  そういうような認識の上で、改めて、きょうは最終の質問になりますので、全体の中で気になるところを質問させていただくという形にさせていただきます。これから政令とか省令とかを詰めるときに、いろいろな形でぜひ心にとめていただきたいと思います。  まず一番最初に、全体の体制についてでございます。  二〇〇一年の行政改革以降、今の通産省と科学技術庁に分かれております原子力に関する発電所、それから加工工場その他、すべてが経済産業省の方に移って、そして、実験、研究用のところが科学技術庁に残るというふうになっていると思います。この中で、経済産業省の中に、電力、ガス事業部門、それから新しく保安院というものをつくるということで、万全の体制をしくのだというふうになっております。  実は、この事故が起こりましたときにもそうでございましたけれども、原子力に関する条約の中で、どうも日本は、推進機構と規制機構とがばらばらになっていないのではないか、独立していないのではないかということがあったわけです。しかし、今回の改正によって、推進機構というのは一応商業ベースでいけば経済産業省、そして規制のところは原子力安全委員会などをもっと強化するというふうな認識で、今までもそれぞれの省庁の中で推進部門、規制部門があったという御説明を受けていますが、しかしこれにかかわっているボディーという表現、あるいはオーガニゼーションをどうとるかということです。  例えば、推進しているのは原子力発電所に関しては通産省です、それから規制も通産省ですというのでは非常にわかりにくい。だから、その意味で、原子力安全委員会をもっと強力にして、いわばスウェーデンで言う政府がつくるオンブズマン的な独立した機構をきちっと立ち上げるという意味で、ぜひそこのところは、改めて全体として両方がチェックできるような形に持っていっていただきたいと思いますが、これは間違いないところでございますか。これは通産省に。
  141. 茂木敏充

    ○茂木政務次官 国際情勢に大変お詳しい山中委員からの御質問でございますが、御案内のとおり、一九九六年に発効しました原子力安全条約におきましては、規制機関に当たる部局と原子力の開発及び利用に当たる部局の効果的な分離を確保すること、これが要求されているわけでありますが、これは決して、同条約におきまして、これらが同じ組織内に存在してはならない、こういうことを要求しているものではございません。  我が国におきましては、原子力発電所の規制及び利用の促進は通産省が担当しておりますが、政令によりまして、そこの中の規制機関に当たる部局と原子力の開発及び利用に当たる部局が明確に区分されておりまして、その任務が効果的に分離されているところであります。  こうした体制のもと、規制機関に当たる部局が、原子炉規制法に基づき、厳正に安全審査等に臨んできたところであります。  なお、この点に関しましては、本年四月に行われました同条約の締結国会議におきまして、我が国のこのような体制につきまして説明をさせていただき、各国の理解も得られたところであります。  その上で、今後の体制でありますが、通産省の中では、原子力安全・保安院、ここにエネルギーの開発利用の方は一元化をしていく。その一方で、省庁再編後には原子力安全委員会が内閣府に移行され、その独立性が一層高められ、ダブルチェックの効果、これも一層上げていきたい、このように考えております。
  142. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 微妙な解釈のところで誤解を招かない形という意味ではさらに前進すると思いますので、期待していますが、ぜひ原子力安全委員会の方をもっと強化して、OECDに、間違ったかどうかわかりませんが、四百五十名という登録を一たん出した、その数字一つの目安にいたしまして、そのぐらいの強化をしていただきたいというふうに思います。それは要望として申し上げておきます。  さて、そこのところで、私たちがなぜ不安に思うかということは、やはり今求められているのは透明性それから情報公開ということだろうと思います。  それで、アメリカの自然資源防衛協議会のコクラン氏が、十一月一日の発言で、事故や対策に関する情報の公開は日本とロシアで最も進んでいないというふうにした上で、日本はロシアよりはるかに劣るというふうに言われているわけです。いろいろお聞きしてみると、日本はきちっと情報公開しているというふうに通産省も科学技術庁もおっしゃるのですけれども、そういうふうに言われております。  私が思いますには、多分これは、余り詳しく知らせると住民が不安になるので、余り詳しく知らせない方がいいのではないかというような古い認識がいまだあるから、そういう意味で情報公開をどこまでするかということの思い切りができないのではないか。しかし、これからは、やはりこの事故を契機にいたしまして、今やインターネット、Eメール、ファクス電話の時代ですから、きちんとした情報を提供して、そしてともにどういうふうに対策を考えて実行するかという時代に入ってきている、そういう時代の認識が非常に大事だと私は思うのです。  その点について、長官の時代認識は多分違わないだろうというふうに私は期待しておりますけれども、やはりきちんと情報を公開して、そしてそれにあわせて、ともに地方それから国が協力して対策を練っていくという姿勢でこれから臨まれるというふうに期待したいと思いますが、いかがでしょうか。
  143. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 原子力の開発利用に当たりましては、国民の御理解と信頼を得ることが不可欠でございます。そのためには、核物質防護等に係る一部の情報は除きまして、原則としてすべての情報の公開と、公開される情報の迅速かつわかりやすい提供を通じまして透明性を高めていくことが大変重要と認識をしております。  かかる観点から、既に平成八年度より、原子力委員会及び原子力安全委員会におきましては、本委員会や専門部会等の会議の原則公開、それから専門部会等で報告書を取りまとめる際に国民の皆様の意見を反映させることなど、政策決定過程の透明性を高めるとともに、広く国民の方々に情報を提供するために、原子力公開資料センターの設置など、さまざまな取り組みを行ってきたところでございます。  原子力行政に対する国民の信頼を確立するためには、情報の公開がまず第一歩である、私はそういうふうに思っておりまして、これをさらに進めることが不可欠と考えており、今回の事故に関する情報につきましても積極的に公開をするほか、今後も国民の皆様に対し、よりわかりやすく正確な情報を提供するように努めていきたいと思っております。
  144. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 ふだんの活動がどういうふうに準備されているかという意味で、前回のときに、ヘリコプターで定期的にすべての核関連の物質を扱うところをきちんと測定し、そしてその情報を公開していく、また早期に発見したときには速やかに改善を図るというようなことで、ヘリコプターといっても、探知機のついた、アメリカで開発された形ですけれども、そういうものの導入ということについて前向きにお答えいただきましたけれども、その辺は長官もお考えは同じでいらっしゃいますでしょうか。
  145. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 ヘリコプターを用いた空中放射線サーベイシステムにつきましては、原子力発電所等の事故時におきまして、放射性物質の拡散状況を迅速に把握するための有効な手段として開発を行っているところでございます。  御指摘のとおり、このサーベイシステムにつきましては、住民の原子力防災体制への理解や安心感の醸成に大変有効なものとなり得ると考えておりまして、今後、防災訓練等にも積極的に活用することとしたいと思っております。
  146. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 防災訓練だけではなくて、これは発想の転換で、年に二回くらいにわたって各原子力を扱っているところを上から探知をしていってということを定期的に行うという意味でこの前提案申し上げたのですが、その辺も前向きに御検討いただけますでしょうか。大臣に、前向きに御検討いただけるかどうかだけ伺えれば結構です。
  147. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 今申し上げましたけれども、サーベイシステムとしてヘリコプターを活用する、したいと申し上げました。そして、そういういろいろな経験を蓄積した上で、将来のヘリコプターの一層の効果的な活用についても今後研究してまいりたい、そういうふうに思っております。
  148. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 できるだけ早くそういう体制に持っていっていただきたいと思います。  さて、先回ゾーニングについてお伺いしましたときに、中曽根長官が、「個別の災害想定や避難計画等の検討が必要とされた場合には、」とか、あるいは「自治体や関係団体等が、地域に応じた避難方法、避難場所等もまた策定されることと期待をしております。」というようなことをおっしゃった。私は、多分長官はおわかりだと思うのですけれども、これがどれほど大事だから、地方でするまで待っている、あるいは地方がすることを期待するということではなくて、実際に実施するのは地方であったとしても、国として、ゾーニングということについて、もう少し積極的にこれに取り組んでいただきたいというふうに思います。  それで、もう一度それについてお伺いしたいと思いますのは、アメリカの、米国原子力規制委員会それから連邦緊急事態管理庁の両方でつくった、いわゆるナショナルスタンダード、これはスリーマイル事故の後、最終的には一九八〇年にこれができているのですが、その中の一番最初の部分に、二つのゾーニング、つまり、同心円の何キロ圏というゾーニングは日本でもやられていますけれども、もう一つ、いわゆる防護の活動のための、救出の活動のためのゾーニングというコンセプトは、このゾーニングの何キロ圏の中で、さらに詳しく、例えば地勢であるとか人口密度、住居の地域、交通網がどうなっているか、気象状況がどうなっているかによってもっと細やかな分け方にしていく。そして、それによって、自分がどこのゾーンにいるかということを周知徹底させる。そういうことが不可欠である。  この緊急の救助に関しては、これを前もって策定しておくことが不可欠であるということで、これはライセンスを取る条件にもなっていますし、それから、州としてもそれから地域としても、市町村としても、全部必要な条項というチェックが入ってきて、これは国がそういうリコメンドをしている。そういう認識で、私は実際に見ましたが、これはカリフォルニアのPG&Eという電力会社ですが、十五のゾーンに分けていますし、それからシーメンスの燃料加工工場も、やはり同じような形で分けています。  このゾーニングをすることによって、そこに、先ほどの解毒剤の配付はどういう形でやるのかとか、あるいはどのゾーンにいる人は逃げる必要なく、どのゾーンにいる人は避難するとか、そういった細やかなこと、それと同時に、いろいろな測定器それからサイレンもゾーンごとにちゃんとつくる。  そういう意味で、この今回の不幸な事故をプラスに転化するとしたら、これは原子力だけではなくて、日本は全体的に救助の体制のためのゾーニングというのが本来的に必要だとは私は思っておりますが、特に原子力に関してこういうゾーニングを進めていくことについて、ぜひ国が、各関連の自治体もしくは地方に対して主導していく、イニシアチブをとっていくという姿勢を示していただいて、実際のときにはSPEEDIなどを使って、そして空気の流れもはかって、人口もどういうふうになっているか、人口動態を見るとすれば、国がバックアップしてゾーニングをしていくというようなことをぜひやっていただきたいと思います。  それで、先回のときの御答弁よりもう少し積極的な御答弁がいただけないかなと思いまして、再度質問をさせていただきます。——済みません。長官のお気持ちだけで結構です。事実とかそういうことを今御説明いただくお時間ありません。
  149. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 前回の繰り返しになるかもしれませんが、委員がただいま御指摘のように、海外の例も、御紹介いただきましたシーメンスあるいはPG&Eという会社でございますか、防災のいろいろな対応についての大変な準備が前もってされているわけですが、こういうことは非常に大事と思います。こういう防災対策を実施する際には、きめ細かいゾーニングを行って、避難場所とかあるいはその避難経路等をあらかじめ具体的に準備するということは大変重要な取り組みであると考えておりまして、前回も御答弁申し上げたとおりでございます。  そのためには、具体的な、実践的な地域防災計画や避難計画の事前の策定が大事であるわけでありますけれども、今回の東海村の施設の事故のようなものの再発防止のためには、今後、法律制定されましたら、できるだけ速やかに、各地方自治体と関係機関に集まっていただきまして、こういうような対策について具体的な検討をやっていただきたい、そういうふうに思っております。  国の方も、当然でございますが、地方自治体が中心になってやられる際には全面的な協力をしていくべきだ、御相談に乗っていくべきだ、そういうふうにも思っております。
  150. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 大変前向きに御答弁をいただきましたので、これで多分地域の住民は、自分がどういうゾーニングにいて、森があるからここは大丈夫なんだとか、いろいろなことがわかると思いますので、ぜひそれは今のお言葉どおり実行していただきたいと思います。  さて、そういった中で、実は今回の事故はヒューマンファクターだったということがあるわけです。教育ですとか訓練に関しまして、私が、今も述べましたシーメンスという燃料加工工場、これはワシントン州にありますが、そこに行ってみましたところ、当然のことながら、安全訓練を何日間とか受けているわけですが、一番驚きましたのは、そういう訓練を全部受けた責任のある有資格者のうちで、初心者から最上級者まで、私を迎えてくれた一番上の方は副社長でしたが、私もとおっしゃったんですが、毎年一回きちんと筆記試験を受けるというふうなことをやっている。それで、それに通らない場合は、初心者あるいは上級者、すべて自分の置かれている立場から外れざるを得ない。しかし、今のところ一〇〇%合格しているそうです。合格している理由は、それも全部きちんとマニュアルに書いてあります。一〇〇%の試験の合格率を保持しているのは、原子物理学や技術工学など職域分野の学位を得ている卒業生を採用しているというのが非常に大きな要因になっていると。  つまり、きちっとした基礎知識のある人にさらに訓練を施して、しかも、管理者の副社長、社長も受けるそうです。そういうところまで徹底をしている国と比べると、いかにも今までのは甘かったのではないかというふうに思います。  この年に一回のテストというのは、わずかなこんなブースの中でやっているわけですけれども、そのテストがいいかどうかは別として、そのぐらいの厳しさで教育訓練をするというふうになっているわけですが、具体的に、これからそういったところはかなり抜本的な改善をしていただけるわけですね。いかがでしょうか、長官。
  151. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 委員が取りまとめをされました新核エネルギー安全対策、拝見させていただきました。  この中でも、米国における危機管理に関する従業者教育や管理体制の例が示されているところでございますが、こういうような内容も、また、ただいま御説明いただきましたような海外での企業での教育、また試験の状況等を十分参考にさせていただきながら、今後の我が国の保安教育、また防災対応の具体的運用に生かしていきたいと思っております。
  152. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 教育と一緒に訓練というのも非常に大事になってくるわけですけれども、その避難訓練の場合には、それもすべて、基本的な姿勢としては、自分の仕事として計画を立ててその計画を実行せよ、一番大事なことは人々を無事に避難させることであるというようなことで、この訓練の中にも含まれておりますけれども、実際には、事故が起こったときには十五分以内に関係機関に知らせると同時に、その事故の起こった付近の住民にも知らせなければならないということがこのいわゆるナショナルスタンダードというもので決められております。  そういったことも含めまして、実際に何かが発生したときにどういった事故連絡をするか、例えば、今申し上げましたような十五分以内に知らせるのにはどうしたらいいかということを考えますと、先ほどのような、ファクスを送ったけれども別の部署に送ってしまったということではどうにもならないということも出てまいりますので、非常にきめ細かい訓練と、それからコミュニケーションということ、それからどういう体制をつくるかということが具体的に問われてくるわけでございます。  その中で、特に国とそれから地方の役割分担としましては、オフサイトセンターというものの機能を非常に強化するということが前回の答弁でございましたけれども、一義的にはやはりその地方、都道府県それから市町村というのがあるわけですが、国としても連絡体制というものをきちんと整備していくという意味で、そのネットワークづくりというのが非常に大事になってきます。その辺のところはぜひ、屋上屋を重ねずに、わかりやすく早く動けるという体制を築いていただきたいと思うんです。  特に、そういう管理、それから救助の訓練、そういったことになれている人材を確保していかなければいけないという意味で、雇用の確保というのは決して労働省だけの問題ではなくて、日本が安全な国になるために、そういった人材の育成というのがかなり大事になってくると思います。  科学技術庁長官は文部大臣でもあられますので、そういった意味で、科学技術の技術者だけではなくて、危機のマネジメントとか、アメリカなんかではそういったものは例えば一つのコースというような形で受講できるシステムになっておりますので、そういった教育も含めて、人材の育成と、そういう人材を生かした速やかな対応、それから、政令、省令を定めるときは、何分以内にどういうふうにするという時間も区切った、そういった発想でぜひやっていただきたいというふうに思いますが、そういった方向で御検討いただけますでしょうか。
  153. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 今、委員からいろいろ御指摘がありました。きめ細かい訓練が大切である、またコミュニケーションも大切であるということでございました。またさらに、国と地方自治体との連携等のお話もありました。  基本は、やはり人材といいますか人間だと思います。そういう意味で、専門的な知識を有する人材を集めることはもちろんでありますけれども、日ごろから、一般の従業員に至るまで教育訓練を徹底するということがまず第一歩だ、そういうふうに思っております。  また、ネットワークの必要性もお述べになられました。御案内かと思いますけれども、今回の事故を契機といたしまして、国内的にもニュークリアセイフティーネットワークというものの設立が検討されているところでございまして、政府といたしましても、このような民間事業者との連携協力を推進することも重要と考え、今後も民間事業者と積極的に協力を図っていきたい、そういうふうに思っているところでございます。
  154. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 今回の事故に関して、IAEAの報告書の中に、設計、管理及び作業上の事項を含む施設に関する検討、それから、許認可及び検査、規制に関する検討、さらに、緊急事態への準備及び対応に対する検討というのが日本の場合には必要であるというのが出ているわけですが、今申し上げてきたことはすべてその中に含まれているわけですので、これからやはり、国内の発電、国内のエネルギー事情であっても、九〇%以上を海外に依存している日本としては、国際社会の一員として、そういったところに指摘をされない形の万全な策を練っていただきたいということ。  そして、そのバックアップをする体制としては、今度十二月にもセーフティーネットのような形で発足するそういった民間との協力。これは国内的なものですが。  それともう一つ、先ほどのいろいろなデータもありますけれども、アメリカは核兵器に関するさまざまな対策を練っている国であります。日本はそういう対策を練るだけのお金と時間というのを、核兵器がないのですから費やす必要はないと私は思うのです。しかし、アメリカとの友好関係の中で、アメリカのそういうノウハウに対して協力を求めることは十分考えられると思います。非常に精密な機械で、データを入れれば五分ぐらいで、各国にどういうふうなこれからの予測がされるかというような機械も完備しています。今も科学技術庁とそれからエネルギー省とは連携をしていますが、どうやってデータを届けるかというところがまだ開発されていないというか、設定されていないというふうに聞いていますので、ぜひそういう海外とのネットワークもきちんとつくっていただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。
  155. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 原子力防災対策に当たりましては、委員も御指摘のように、国際的な協力関係も極めて重要と認識をいたしております。  公的な協力といたしましては、現在でも、日本原子力研究所と米国ローレンス・リバモア研究所との放射能拡散予測に係る研究協力を実施しているほか、原子力事故時の通報条約、それから援助条約等への参加等を行っているところでありまして、今後とも、これらの国際的な協力関係の充実に努めてまいりたいと思っております。
  156. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 その提携しているものが機能するためには、どうやって、どういう形で情報を提供するかというのができていないのであれば表面上しかできませんので、そこをきちっと埋めていただきたいと思います。  時間になりましたので、最後に、今後の風力、太陽、火力または磁力、それから宇宙太陽光などのエネルギーの開発というのをこの間質問させていただいたときに、二〇一〇年までに三%までに上げるということを斉藤政務次官からお答えいただきましたけれども、しかし、そこでは、その可能性を見捨てることなくということをおっしゃったので、私は、これは違うんじゃないかと。つまり、分散型のエネルギー源が開発または発見された場合には、今の電力会社のような大きな電力を供給するという形が変わってくる可能性があります。そういった意味で、もっとそちらの方の開発にも力を入れるというところをきちっと考えて、発想の転換を図っていただきたいと思います。  「もんじゅ」も含めて、今回のもそうですけれども、高速増殖炉というのはやはり効率がいいだけ危険性がある。ふだんは五%以下のウランであるのが一八%になる、そういった危険なところに開発費をかけるよりは、むしろ発想の転換をするということが必要じゃないかと思いますが、最後にそこのところは、今度経済産業省になりますので、通産政務次官からお答えいただきたいと思います。
  157. 茂木敏充

    ○茂木政務次官 委員の方から御指摘いただきました、政務次官からの答弁でというのは多分私じゃないので、その背景、わからない部分があるのですが、何にしても、新エネルギー、これは今後の地球環境問題であったりとかエネルギーのセキュリティー、こういった意味から大変重要でありまして、通産省としても積極的に今取り組んでまいりたいと思っております。もろもろございまして、例えば究極の水素エネルギーであったりとか、あらゆるところにできる限りの予算をかけてまいりたい、こんなふうに考えております。  ただその一方で、我が国はどうしてもエネルギー資源の大部分を輸入に依存せざるを得ない、非常にエネルギーの供給構造が脆弱である、こういう状態におきまして、エネルギーの安定供給の確保、環境保全、さらには経済成長の同時達成、こういった三つの目標を考えますと、現在の原子力発電の推進の重要性も変わらない、こんなふうに考えております。  それから、今の答弁とは別なのですが、先ほど答弁させていただいた中で、エネルギーの推進と規制の問題に関しまして、これから通産省にできてまいります原子力安全・保安院について、答弁の中で、利用と推進を集中すると答えたようであります。  委員指摘のとおり、これは、規制を集中する、これの間違いでありますので、訂正をさせていただきます。
  158. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 長官から大変前向きの御答弁をいただきましたので、速やかに実行していただくことを希望して、質問を終わらせていただきます。
  159. 北側一雄

    北側委員長 辻元清美君。
  160. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  私は、引き続きまして原子力災害対策特別措置法案などにつきまして質疑をさせていただきます。  本日の公聴会でも指摘されました点なのですが、緊急時の初動体制が特に原子力にかかわる事故では大切であるということで、この点についてまず幾つか御質問したいと思います。  その際の自治体の長、特に市町村長の判断が、一番現場を熟知している方の判断ということで大事だと私は思いますので、市町村長の判断を速やかに下せるようにこの法律を運用していくことは非常に大きなポイントになるかと思います。  さてそこで、幾つか具体的なことを確認させていただきたいのです。  この初動体制について、まず、原子力緊急事態宣言というのは内閣総理大臣しか出せないのでしょうか。これはいかがでしょうか。
  161. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 そのとおりでございます。
  162. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、これはこの委員会でも多々議論してまいりましたけれども、確認させていただきたいのですが、原子力緊急事態宣言が出される前でも、市町村長が独自の判断で避難勧告などが出せるというように解してよろしいのですね。
  163. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 災害対策基本法の第六十条では、災害発生し、またはそのおそれがある場合には、市町村長が住民に対して避難のための立ち退きを勧告または指示できることとされております。
  164. 辻元清美

    辻元委員 さて、きょう東海村の村上村長から貴重な、体験を踏まえました御意見をいただいた中に、こういうことがございました。  オフサイトセンター、それと現地合同会議、現地対策本部などの現地権限と、運用を補てんできる検討が欲しいという御意見をいただきました。この現地権限というところなのですけれども、これは具体的に言いますと、緊急事態発生した際に、きょうの公聴会の後ですので、これはちょっと私、気になる点なのでお聞きしたいのですが、この現地権限というのは今長官がお答えいただいたような、避難についてのさまざまな決断をして実行していくということと解してよろしいわけですね。これは権限であると解してよろしいのでしょうか。
  165. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 緊急事態宣言後の話でございますか。(辻元委員「いいえ。出る前に」と呼ぶ)  そのとおりでございます。
  166. 辻元清美

    辻元委員 確認をさせていただきました。  といいますのも、きょう、東海村の村上村長が、報道陣はヘリコプターで来ているのに、政府は、住田委員もタクシーで行ったというようなこの委員会での御発言もございました。  例えば、初動体制において現地が速やかに動けるというのはなぜ大事かといいますと、ヘリコプターで行ったとしても、東海村に到着するまで、佐藤原子力安全委員長も現地に行かないととにかくわからなかったんだということを何回もおっしゃいました。そうしますと、やはりどうしても、東京にいる人たちが、東京中心になっておりますので、ヘリコプターで東海村に慌てて行ったとしても、すぐアクションをとっても一時間以上かかるのじゃないかと思うのです。これが例えば九州にある原子力発電所等で何らかの事故があった際に駆けつけるとかなりますと、ヘリコプターを用意して、それから現地まで専門家の方に速やかに行っていただいたとしても、飛行時間も含めまして、どう考えても三時間ぐらいかかるのじゃないかと私は思うのですね。  そういうことにかんがみて、今おっしゃいましたような市町村長の権限をはっきりと、緊急事態宣言が出る前にもあるのだ、独自に判断していただけるのだという点を周知徹底していただきたいと思うのです。  さて、そこで、それでも国と連携をとって行う場合に、今ヘリコプターの例を申し上げましたが、そういう具体的なことですね、日本の原子力関係の施設、それぞれ日本国じゅうにある中で、ここへの対処は、ヘリコプターで行った場合は何時間かかるとか、そういうことを日ごろからシミュレーションをしっかりしておいていただきたいというように思います。それぞれどこで事故が起こるかによって全然違う対応になってくると思いますので、その点の徹底をお願いしたいと思います。  さて、その中で、運転管理専門官、それから原子力防災専門官、そして原子力防災管理者、これは事業主が選ぶことになっているかと思いますが、特にこの原子力防災専門官、この方々は始終現地に常駐していると考えていいのか。そして、この人たちは、いざ事故発生した場合の権限、特に今の初動体制に限りまして、緊急事態宣言が出ていないときに独自に市町村長と一緒に決断する権限があるのかどうか、これはいかがでしょうか。
  167. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 まず、この原子力防災専門官はその事業所のある地域に常駐をしております。事故が起きた場合、この防災専門官は、ある意味でその地方自治体の首長さんのアドバイザーとなって、緊急対応等についてアドバイスをすることが任務でございます。
  168. 辻元清美

    辻元委員 きょうの公聴会の中で、村上村長に私が質問したのです。こういう専門官の方々がいらっしゃって、日ごろ日常活動としてどういう連携をおとりになりたいかというような質問をしましたら、残念ながらその答えが、期待していないという率直なお答えだったのです。  これはやはり、今までの経過でかなり村長は厳しく、今までの運転管理専門官も配置されていた中での率直な御意見だったと思うのです。ということで、今回、現場で一番対応された方から出たその言葉を非常に重く受けとめていただきたいと思います。ただ現地に原子力防災専門官を置いたらそれでいいというわけではないという点を強く指摘されました。  さて、アドバイザーとおっしゃったわけですが、きょうの発言の中で、現地に権限を持った人に来てほしい、一々ファクスやEメールや電話で聞かなくても、即断即決できる人を現地に速やかに到着させてほしいという話がありましたけれども、次に、対策本部について質問させていただきたいのです。  原子力災害対策本部の本部長は総理ということになっています。災害対策本部は都道府県、市町村が立ち上げる。そして、原子力災害合同協議会、これの中身、ここが一番最終的には現場判断する機関になるのではないかと思うのですが、この現地での責任者は一体だれになるのでしょうか。どの会議で決定して、だれが責任をとると最終的に現地で判断することになるのでしょうか。
  169. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 法案第二十条第八項によりまして、国の原子力災害現地対策本部長に対して、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣から、国の地方行政機関の長や地方公共団体の長、日本原子力研究所等の指定公共機関原子力事業者等に指示する権限の大部分が委任をされております。これにより、原子力災害発生した場合には、大きな権限を委任された原子力災害現地対策本部長が、現地における実質的な責任者として、関係機関の調整、指示に当たることとなります。  しかし、原子力災害合同対策協議会が存在するわけで、ここで、県や市町村の事故対策本部とも綿密な連携をとりながら、情報の共有を図りながら、現地対策本部長が調整、指示に当たる、こういうことでございます。
  170. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、ちょっと具体的なことをお伺いしたいのですが、現地対策本部長は想定しますにどういうポジションの方といいますか、これも決めておかないと、事故が起こった、だれが行くのか、政務次官大臣か、こうなりますので、あらかじめどのポジションの方が行くということを想定しておかなければならないと思うのですが、今のところはいかがでしょうか。
  171. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 現地対策本部長につきましては、本法案第十七条第十三項の規定により、内閣総理大臣が、原子力災害対策副本部長、原子力災害対策本部員その他の職員のうちから指名することとなっております。  この現地対策本部長は、先ほど申し上げましたように、災害対策本部長から権限の委任を受け、現地における緊急事態応急対策の実施等に大きな裁量権を持ち、陣頭指揮に立つことが求められることから、その際の災害の状況等を踏まえ、最適の者が指名されると考えられます。
  172. 辻元清美

    辻元委員 それで、最適の人はだれかということになるかと思うのですが、いつ起こるかわからないので、あらかじめ、事故が起こったときには自分が本部長として行く可能性があるという、準備と覚悟というか、二十四時間いつも日常的にやっていただかないと困るわけですね。そのとき任命されて、いきなり行かされているというわけではないので。  ですから、あらかじめ、そういう際にはだれが対応するのだということを幾つかのパターンに分けて決めていただいて公表しておくということは、自治体にとっても安心になるのではないかと思いますので、提案したいと思います。  さて、そこで、現地対策本部長は多分東京から行かれると思うのですが、先ほどのように二時間、三時間かかるという可能性があります。その際に、自治体の独自判断能力を常から高めておかないと、それまでの初動体制での判断を間違うと大変なことになります。  本法案ができた場合、自治体の独自判断能力や、事故があった場合の緊急対処能力を高めるためにどのような措置、今までなかったもので、目玉商品といったら変なんですけれども、自治体の能力をみずから高めるために国としてはどのような措置を考えていらっしゃるか、その点についてお答えいただけますか。
  173. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 自治体の対応能力を高めていただくために、まず、都道府県や市町村が地域防災計画を作成する際に、原子力安全委員会に対して、資料または情報の提供、意見の開陳等の協力を求めることができることとしております。  それから、原子力防災に関する知識や経験を有する国の原子力防災専門官が、原子力事業所の所在する地域に駐在し、平常時から原子力事業者防災対策に関して指導及び助言を行うほか、緊急時においては、特に初動期におきまして現場の状況の把握のため情報収集を行い、もって原子力事業者の行う対策と国、自治体の行う対策の相互の連携を図るような役割を果たすこととしております。  三つ目に、関係自治体は、原子力事業者に対して、報告の徴収、それから立入検査ができることとしております。  それから四つ目に、国の作成する計画に基づいて、地方自治体は、国、事業者と共同して防災訓練を実施することとしております。  この四点が、ある意味で目玉ではないかと思います。
  174. 辻元清美

    辻元委員 私は、きょう幾つか具体的な提案もさせていただきたいと思って来たのですけれども、自治体の日ごろからの独自判断能力を高めるということにおきまして、もちろん国の方で把握している専門家方々の力もかりるわけですが、それぞれの都道府県には国立大学があります。そこには原子力関係の専門の知識を持たれた先生方もいらっしゃると思うのです。ですから、自治体ごとに、その自治体の事情をよく御存じ、そして地理などもよく御存じの、それぞれの原子力関係施設がある都道府県の国立大学の専門家などにも協力を要請する、日ごろから、そういう自治体独自の助言機関というのでしょうか、そういうものを設置したらどうか。一々東京から選任された人ではなくて、そして、その人たちをいつも登録してあって、いざというときにはその方々にも即時に連絡が行くというような、そういう地域に根差した専門家方々による助言システムを考えていただきたいなというふうに、一つ目、私は御提案させていただきたいと思います。  さて、この間から私が問題にしておりました責任問題、最後にちょっときょうも触れさせていただきたいと思うのです。  これは提案も兼ねてなんですが、責任を果たすということはどういうことか。例えば、今まで巡回に回っていらっしゃった運転管理専門官の方に責任がなかったかというと、あると思うのですね。しかし、それをどう形にすればいいかというところで、私は二つ提案したいのです。  一つは、情報公開だと思います。責任を果たすということは、例えばこの運転管理専門官、そして原子力防災専門官の方々がこれから日々活動されると思うのです。その活動を、巡回記録などを即時にインターネットなどで、きょうはどこに行ってどういうことを専門官として行ったかということが住民の皆さんにもわかる。そうなりますと、安心感も与えるし、一体何してたんやという話になるわけですね。日々、きょうはどこそこの施設に行ってこういうことを点検したというような情報をオープンにするということは、その人におのずと責任がかかってきます。ということは、プレッシャーになる言うたら悪いですけれども、日々の活動を情報公開していくことが、一つは責任の所在を明らかにしていくことになるのではないかと思いますので、そういう点を御検討いただきたいと思うのです。原子力防災専門官が一体日々何をしているのかわからぬようでは、これは住民の皆さんへの責任を果たしたことにはならないと思いますので、即時に毎日の活動についてインターネットなどで知らせる。  それからもう一つは、これは小野委員指摘されたかと思いますが、生データの即時の公表。いつも、モニタリングポストであったり、加工せずにその生データをとにかく毎日毎日流し続けるというのは、これは非常に責任をとった対応ということになりますので、その点、二つを私はきょうは提案させていただきたいと思うのです。  さて、あと二分あるのですが、きょうの発言の中で、今回の事故は重大な犯罪であるという御発言が公述人の中からありました。ほぼ全員の方が言われたように私は思います。以前から私は、今回過失ということで済ませるのはおかしいという主張、きょうも公述人方々意見を聞きながら、そうだなと思いました。  さてそこで、この点について大分議論してきておりますので、最後に斉藤政務次官にお聞きしたいのですが、今回の政府の責任の問題です。  以前、斉藤政務次官が、動燃の事故の折に非常に毅然たる対応をされているのです。それは、当時の近岡大臣に対して不信任案を新進党で提出されているわけですね。その折、「今回の不信任案は、そういう意味で、行政もきちんと責任を、ある意味で責任の一端といいましょうか大きな部分を感じなくてはいけない、その筋を通すべきだ、こういう形で新進党は不信任案を出した次第でございます。」と斉藤政務次官が御説明なさっているわけですよ。私は、このときの政務次官がとられた対応は非常に毅然とした対応であると思いますが、今回もこれと同等の責任がある事故であるという理解でよろしいのでしょうか。
  175. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回の事故は大変重大な事故であると認識しております。中曽根大臣のもと、科学技術行政立て直しに全力を挙げていきたい、このように決意しております。
  176. 辻元清美

    辻元委員 これで質問を終わります。
  177. 北側一雄

    北側委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口俊一君。
  178. 山口俊一

    山口(俊)委員 総理、大変お忙しい中をお差し繰りをいただきまして、感謝を申し上げております。ただ、もうこれは採決前の締めくくりというふうなことでございますので、どうか自信を持って御答弁をいただきたいと思っております。  御案内のとおり、九月の三十日に、東海村のジェー・シー・オーの核燃料加工工場において、残念ながら我が国初の臨界事故発生をいたしてしまいました。この事故で多くの方々が被曝をなさるとともに、三百五十メートル以内の方々が避難、あるいは十キロ圏内の方々が屋内退避を余儀なくされるという、実は我が国始まって以来の事態というふうなことになりました。また、臨界状態が収束した後も、いわゆる風評被害というものがまだおさまっておらない、否、むしろ激しくなっておるわけでありますが、まさに事故の残したつめ跡は決して小さくないと言えるわけであります。  今回、政府は、こうした臨界事故の教訓を踏まえて、また、関係自治体を初めとする各界の意見を踏まえて、この二法案の国会提出になったというふうに私は理解をいたしておりますが、今回の事故について、果たしてどのような点が不十分であったと認識をして、それが今回の二つの法案でどういうふうに反映をされておるのか、修正がなされるのか、この点につきまして総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  179. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 まず、このたびの事故につきましては、まことに国民にも申しわけないことでございまして、この事故をもとにいたしまして、政府といたしましては、現在、この二法をお願いをし、この法律によりまして、二度と再びこうした事態が生じないようにということで、全力を挙げていかなければならぬと思っております。  法律を御審議の上、御通過いただければ、これをもととして、政府としては、原子力の安全規制の問題、また、この核燃料加工施設等における臨界阻止のための対応策の徹底、施設の運転状況に対する継続的なチェックの必要性等が顕在化したものと認識をいたしておるところでございまして、これを踏まえまして、原子力災害が二度と発生することのないよう、今般の原子炉規制法を改正することによりまして抜本的強化を図っておるところでございます。  法律の改正とは別に、核燃料施設に係る安全審査指針等の見直しを行うことといたしております。  また、原子力防災対策に関する課題といたしまして、初期動作における国と自治体の連携強化、原子力災害特殊性を踏まえた国の緊急時対応体制の強化、事業者の責務の明確化等の課題が顕在化したものと認識いたしております。  これらを踏まえまして、万々が一原子力災害発生したときのための原子力災害対策特別措置法を制定することによりまして、原子力緊急事態宣言の発出後、内閣総理大臣を本部長とする原子力災害対策本部を設置し、本部長が、関係行政機関地方公共団体原子力事業者等に対し必要な指示を行うとともに、自衛隊の派遣を要請することができることとするなど、国が前面に立って、地方公共団体とも連携をとりつつ、迅速な対応を行うための制度を整備することといたしたところであります。  これら諸点につきまして、今日まで御審議をいただいたことだろうと思いますけれども、改めて国としてのなすべき責任について十分認識をして、万々が一のときに極めて適切に対処のできるような体制をとってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  180. 山口俊一

    山口(俊)委員 ただいま総理から、国としての責務云々というふうなお話がございました。十分これから取り組んでいただきたいと思うわけでありますが、次に、安全規制についてお伺いをいたしたいと思います。  原子力発電所に比べて、今回事故発生した燃料加工施設につきましては、実は、臨界事故があり得ないというふうな油断というか、思い込みがあったような気がいたしております。今回の事故というか、私は事件ではないかと言っておりますが、これについては、いわゆる裏マニュアルの存在とか、それさえも無視した作業によって実は引き起こされたわけでありますが、結果として臨界事故が起こってしまったということに関しては、安全規制当局は厳粛に受けとめていただくという必要があろうかと思います。  今後、このような事故を二度と繰り返さないためにも、原子力発電所はもちろんのことでありますが、燃料加工施設とか、あるいは先般事故を起こした京大等の研究炉、これについても、これまで比較的軽く見ておったわけでありますが、規制を十分行うということが必要であろうと思います。特に重要と考えられるのは、技術屋さんというか、原子力事業者や従業員のモラルとか緊張感の低下ではないかと考えております。  そこで、今回の原子炉規制法の改正によって、国の安全規制はどのように改善をされるのか。特に原子力事業者や従業員のモラル、緊張感の低下といった点について、どういうふうに対処していかれようとしておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  181. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 山口委員指摘のように、今回の事故、現在徹底的調査をいたしておるわけでございますが、改めて原子炉規制法の改正におきまして、事故の起きたウラン加工工場における違法な作業等が組織的に行われるなど、従業員等のモラル、緊張感の低下、こうしたことが重大な事故につながったことの教訓を踏まえまして、従来の安全規制のあり方を抜本的に見直すことといたしておるところでございます。  具体的には、原子力事業者に対し、単に義務をかけるだけではなく、国が継続的な検査等を行うことによりまして、厳しい緊張感を維持させるとともに、保安教育等を通じ、原子力事業における安全文化を醸成し、事業者や従業者のモラル向上を図ることといたしております。これらの措置により、原子力事故を未然に防止する体制を早急に再構築しなければならないものと深く認識をいたしておるところであります。
  182. 山口俊一

    山口(俊)委員 時間がございませんので、最後の質問になろうかと思いますが、今回のジェー・シー・オーの事故にとどまらず、先般のHIIロケットの打ち上げ延期、そして失敗、あるいは新幹線のトンネル内壁の落下等、日本が世界に誇るべき科学技術分野で、どうもその根底を揺るがしかねない事態が最近続発しておるような気がいたします。そうした意味合いから、原子力分野に限らず、広く科学技術全般においてそうした傾向が見られるのではないか。繰り返しますが、資源の乏しい我が国としては、科学技術創造立国こそが、ある意味で世界に伍する日本を築く唯一の道ではないかと思っております。  そこで、最近のそうした一連の科学技術分野における事故等にかんがみて、どこに問題があって、その問題をいかに克服することによって我が国の科学技術を立て直そうとなさっておられるのか。それについて、最後にお伺いいたしたいと思います。
  183. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 御指摘のように、昨今、科学技術の分野におきまして、人為的ミス等を原因とするものも含めまして、事故トラブル等が続いていることを大変重く受けとめております。  一連の事故等につきましては、その技術的原因だけでなく、組織管理、検査点検体制など、事故等の背後にある構造的な問題にまで踏み込んで、徹底的に原因究明を図った上で、その中から得られる再発防止策を今後の科学技術の立て直しに生かしていくことが重要と考えております。  原子力につきましては、先般、原子力安全委員会事故調査委員会の緊急提言を受けまして、今般、原子炉規制法の改正案を御審議いただいているものでありますが、常に緊張感のある安全規制の構築を図ることにより、事故の再発を防止し、原子力の安全確保を図ってまいる所存でございます。  また、人為的なミスに起因する事故災害にかんがみまして、これらの背景に共通して存在する組織管理、検査点検、従事者の教育訓練等の問題を洗い出し、これらに対する今後の共通的対応方策を検討するため、内閣官房副長官を議長とする事故災害防止安全対策会議の第一回目の会合を十月六日に開催したところであり、今後早急に共通的な対応方策を取りまとめることにいたしております。  さらに、私として、従来の我が国の得意分野とされる物づくりを支える国全体の基盤にさかのぼって検討することが必要でないかという問題意識を持っておりまして、この点につきまして早急に取り組んでまいりたいと思いますし、物づくりというものについて非常に現在危機感を持っておられる方がたくさんおられますので、できれば近々そういう方々にお集まりいただきまして、物づくりということを軽視する風潮が世にないかどうか、こういうことも含めまして、懇談会でもつくって本格的な勉強をしたいというふうに思っております。  幸い、話は異なりますけれども、先般技能オリンピックというのがございまして、従来この分野で青少年の技術が世界的には非常に評価され、いつも金メダルをとるというような状況であったのですが、昨今非常に少なくなってまいりました。しかし、ことしはまた、たしか八個でしたか、数がふえてきまして、そういった底辺といいますか、一般の人たちの中で物をつくる大切さというものが非常に認識されてきたということでありまして、申し上げたように、現在のいろいろな事故その他起きていることに反省しながら、こうした問題についても、識者のお話も十分承って、重要視していかなければならない、よりそのように考えておるところでございます。
  184. 山口俊一

    山口(俊)委員 時間ではありますが、まさにエネルギー危機のみならず、科学技術全体の危機であろうと思っておりますので、総理も、科学技術の分野、特に御興味がおありのようで、今後ぜひとも頑張っていただきたいとお願いをして、質問を終わらせていただきます。
  185. 北側一雄

  186. 松沢成文

    松沢委員 民主党の松沢成文でございます。  小渕総理、きょうは御苦労さまでございます。  私は、臨界事故あるいはロケットの打ち上げ失敗等の科学技術庁あるいは政府の行政責任、あるいは内閣の政治責任について、総理の見解をただしていきたいと思います。  まず、十一月十九日に、科学技術庁の岡崎事務次官が辞表を提出して、内閣はそれを承認したということであります。認めたということだと思うのですが、この辞任の理由は何だったのでしょうか。新聞報道等ではありますけれども、こういう事情で辞任をしたいと言うから内閣が認めたのだと思うのですが、総理、この辞任の理由をまずお聞かせいただきたいと思います。
  187. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今般の科学技術事務次官の辞任につきましては、一連の事故等を踏まえて、科学技術行政の抜本的な立て直しを図る上から、新しい事務体制のもとで行うことが適切である、こう考えましてこの辞表を受理した、こういうことであります。
  188. 松沢成文

    松沢委員 一連の事件という表現でしたか、事故ですか、という表現だと思うのですが、この一連の事故というのは、東海村で起きた臨界事故、そして先般のHIIロケットの打ち上げの失敗、こういう失敗の責任をとるということで事務次官がおやめになって、組織の抜本的な刷新を図るということだと思うのですね。  それでは総理、内閣として、この二つの事故というか、一つは事件かもしれませんが、事故に対して行政責任を認めたということですね。そうでなければ事務次官はやめる必要がないわけですから。そこをお聞かせいただきたいと思います。
  189. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 行政責任と、こういうふうに位置づけるかどうかということには問題があると思います。  この二つの大きな事故につきましても、やはり当時の責任者として、やはりみずからその責めを負って、責任を十分認識をし、そして新しい体制で事後の処理あるいはまた将来にわたっての抜本的な対策を講じた方がいいという、役人としてですが、やはり日本の国家における組織体の、行政組織の責任者としてみずからそういう思いがあって辞表を提出したもの、これを受理した、こういうことでございます。
  190. 松沢成文

    松沢委員 私の言い方が悪かったのか、もちろんこの二つの事故というのは科学技術庁なり政府の行政責任だけではありません。もちろん臨界事故はジェー・シー・オーの事業者としての責任もこれは大きかったわけですね。  ただ、私お伺いしたいのは、内閣として、政府が、この二つの事故に対してはその責任の一端はある、やはり監督官庁、科学技術庁として責任はあるのだということを認めたから、この責任をとってやめるという事務次官の辞職を認めたのですね。そういうふうに解釈してよろしいですね、責任の一端はあるというふうに認めたというふうに。
  191. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今回の事故に対しましては、その重要性にかんがみ、科学技術庁長官を本部長とする事故対策本部の設置や、原子力安全委員の現地への派遣に引き続き、内閣総理大臣である私を本部長として、関係閣僚から構成される政府対策本部を設置し、この事故に対して政府として可能な限りの判断対応を行ってまいったと考えております。  しかしながら、今回の事故により、周辺住民を初めとする国民の皆様に多大な御心配と御迷惑をかけたことを厳粛に受けとめております。政府といたしましては、原因究明と再発防止策に全力を挙げて取り組むとともに、今回の法整備を行うことにより、国民の負託にこたえていくことが最大の任務と考えておるわけでありまして、これが政府全体の基本的な姿勢でございます。
  192. 松沢成文

    松沢委員 地域住民初め多大な迷惑をかけたことを厳粛に受けとめているということですから、その責任の一端は行政にもあるというふうに私は判断せざるを得ないのです。科学技術庁の監督行政官庁としての責任、これを事故の後ある意味でとるという形で事務次官がやめたのですが、大変失礼ながら、やはりその行政庁の最高責任者が何らかの形で責任をとることをしない限り、事務次官のしっぽ切りに終わってしまって、本当に科学技術庁としてその行政責任を認識している、認めたということにはならないのではないかと私は思うのです。  私は、あえて言いますが、事務次官ではなく最高責任者、科学技術庁長官が何らかの形で態度をあらわすべきだと思いますが、総理はそう考えませんか。なぜ事務次官なのでしょうか。
  193. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 一省庁の事務次官というものは、高い責任を有し、すべてを統括しておる立場でございまして、その事務次官が、みずから退いて新しい体制で臨むことが望ましいと判断して今回の辞任に至ったものと考えております。  科学技術庁長官は、科学技術行政の最高責任者として、東海村での臨界事故、ロケット打ち上げ失敗に対処し、その原因究明と再発防止等に全力を挙げて取り組んでまいったところでございまして、科学技術庁長官が新たな事務執行体制を指揮監督し、先頭に立ってこれら課題に取り組み、国民の負託にこたえていくことが政府としては最大の任務である、このように考えておる次第でございます。
  194. 松沢成文

    松沢委員 小渕総理、一年前のことをちょっと思い出していただきたいのですが、防衛庁の調達本部での汚職事件というのがありました。防衛庁での調達にかかわるさまざまな汚職背任事件あるいは証拠隠滅、その事件と、今回の科学技術庁の絡みで起きた、監督の範囲内で起きた臨界事故あるいはロケットの失敗というのは全く異質の事件であって、これを比べるというのは本当に難しいのですけれども、もちろん防衛庁の事件というのも、国民に対して、すごく政治不信を強めました。ただ、今回の科学技術庁の監督官庁としての行政責任、この二つの事件、これは日本だけではなく、世界から、日本の科学技術庁原子力行政あるいはロケット開発に対する威信を大きく低下させたというか、不信を買ったと私は思うのですね。そういう意味では、その影響力の大きさからいうと、今回の二つの事故の方がよりもっともっと大きな問題だ、重大な問題だというふうに私はとらえているのです。  昨年の調達実施本部のときには、額賀防衛庁長官がこう言って辞任をしているのですね。国民の信頼を裏切った責任は極めて大きい。そのとおりです。ただ、今回の二つの事故、監督官庁である科学技術庁、やはりその監督不行き届きのために、こういう事故の責任の一端は絶対にあると私は思っています。そして、原子力の安全行政さらには宇宙開発という、ある意味では日本の科学技術行政の二大目標ですね、この目標が大きく裏切られて、国民の不信を買った。世界からも、日本の科学技術という威信を著しく低下させた。国民の信頼を裏切った責任は極めて大きい、まさしく科学技術庁にも言えることではないですか。  総理にお伺いしたいのですが、額賀長官は、政治家として、その行政体のトップとして責任をとった、今回は残念ながらそうなっていない。この二つの事件はどう違うのでしょうか。なぜ今回の事件は事務次官でよくて、この前の事件は当然大臣辞任すべきなのでしょうか。私はそこをまず総理の見解として伺いたいと思います。
  195. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 松沢委員もみずからお話ししていますように、二つの問題について、科学技術庁対応と、それから防衛庁の長官の対応については、その内容において異なるということもございました。片やまた事故の問題でもありますし、これを軽々に論ずることはできないということは、再三申し上げておる重要な案件だというふうに理解しております。  事件になりましたいわゆる防衛庁の調達問題等につきましては、これはこれなりにまた問題の性格が異なると思いますが、ただ、額賀長官におきましては、参議院におきまして問責決議案も通り、そうした意味で、みずから退くことによって問題の解決に当たりたいという意思がございましたけれども、結果的にはみずから辞職をしたという経緯でございます。  したがって、それぞれの事態においていかに対処するかということにつきましては、それぞれの判断において行われるべきものでありまして、一概に同一のものとして論ずることは難しいのではないか、このように考えます。
  196. 松沢成文

    松沢委員 次に、今回の東海村の臨界事故に対する初動態勢のおくれがさまざま指摘されています。  例えば、事故発生してから、政府の最高責任者である総理のもとにこの重大な事故認識がきちっとした形で届くまでに恐らく七、八時間かかっているでしょうか。あるいは、政府内での情報伝達のおくれ、あるいは判断のおくれで初動態勢が不十分であった。  例えば、臨界が続いているとしたら中性子線をはからなければいけない、そのことに気づくのも、有馬長官も御自身が反省されていますが、遅かった。そういうことによって例えば臨界が続いているというふうに早くわかったら、消防署の三人の救命隊員がほとんど無防備であそこに救出に行っちゃったわけですね、それで被曝をしているんです、やはりこれだって防げた可能性があるんですね。  対策本部ができるのも、それぞれ現地対策本部、科学技術庁の対策本部、村、県とできていますが、政府対策本部ができたのが何と十時間以上たってからでした。  そういうもろもろの指摘があるんですが、小渕総理も、今回の事故初動態勢のおくれが事故の影響を大きくしてしまった、すなわち、内閣の危機管理能力の欠如、初動態勢のおくれがこの事故を大きくしてしまったということはお認めになりますか。
  197. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今回の事故に対しましては、事故現場の状況等につきまして得られた情報をもとに、政府としては可能な限りの判断対応を行ってきたと考えております。  今回の政府対応につきまして、御指摘のように、初動において事故状況の正確な把握が実は十分ではなく、東海村が独自に住民の避難の判断をせざるを得なかったこと等は率直に反省すべきと認識をいたしております。  今回の事故の教訓を酌み取り、今国会に提出した原子力災害対策特別措置法案の御審議をお願いしているところのゆえんのものも、実はこうしたことの反省に立脚しているわけでありまして、そういう意味で、事故初期対応等につきましても、この法律をもとにいたしまして二度と繰り返すことのないようにということで考えております。  当日、私も、この報告を受けまして、事故、いろいろと経過があったことは既に本委員会におきましても御紹介があったかと思いますけれども、放射能あるいは結局中性子が出ておったわけでございますけれども、こういった点について一たんは減少したのではないかというような報告等も得られて、実は若干安堵した時間帯もございましたけれども、その後続々入ってくる情報によりまして、最終的には内閣としてもその責任において対処しなきゃならぬということで、私を本部長としての対策本部を設置した、こういうことでございます。
  198. 松沢成文

    松沢委員 総理は、十月六日の日に現地に出向いていますね。新しく任命された中曽根長官と一緒に出向いていますが、手前みそになりますけれども、我が党も事故対策本部をつくって、鳩山代表が実は翌日現場に飛んで、もちろん現場の中には放射線が出ていますから入れませんが、村役場を訪ねたり、さまざま状況把握を行っているんですね。  政府事故対策本部長として、なぜ入るのが一週間もかかってしまったのか、こんなにおくれてしまったのか。私たちは、この事故に対する認識が余りにも、対策本部長、総理、甘かったんではないかというふうに思わざるを得ないんですが、なぜおくれちゃったんですか。
  199. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 鳩山代表が直ちに現地に参られたことは大変敬意に値すると思いますが、政府といたしましても安藤危機管理監、また与党・自民党といたしましても桜井先生初め直ちに現地に参られました。  ただ、政府の最高責任を仰せつかっておる私といたしましては、しかるべき対策、しかるべき今後の方針等につきましても考え方を取りまとめなければならぬということもありまして、四日に政府としては基本的な方針を定めました。その後、これを持って現地に行き、現地のそれぞれ行政担当者を初めとして皆さんに政府の基本的考え方をお話を申し上げて、結論といえば、今日こうして御審議をいただく法律案制定災害対策に対する問題について、原子力について新しい法律もつくるということをしっかり基本方針を定めた上でございますので、この間の事情についてはぜひ御理解をいただきたいと思います。
  200. 松沢成文

    松沢委員 大変厳しいことを申し上げますが、私は、やはり総理が今回の臨界事故よりも内閣改造を優先したとしか思えないんですよね。それは、入ったのがおくれたというだけではないんです。今回の内閣改造で、総理は、有馬前長官をも含めて全員新しい内閣にかえたわけですよね。内閣改造というのはそういうものだと言われてしまえば終わりですけれども。  私は、中曽根長官にしても本当にある意味でかわいそうなところがあると思うんですね。というのは、事故の当日あるいは初動態勢のときには長官じゃなかったわけです。ですから、責任とれと言われたって、あれは有馬長官のときだから自分にそこまで言われても、常にそういう心が私はあると思いますよ。  もし総理が内閣改造よりもきちっとこの事故を優先して、大変な事故だ、この対応政府として最重要課題だというのであれば、科学技術庁長官、あるいは文部大臣も含まれていますが、有馬長官の人事に対しては、この事故がきちっと処理できるまで、あるいはこの事故の今後二度と起きないような防災対策が、この法律がきょう可決されます、こういうときまできちっと有馬さんに担当してもらおう、これができたはずだと私は思うんです。総理大臣としてそれを行っていません。したがって、そういう事故よりも、内閣改造をやるんだから、とにかくみんなかわるんだから、とにかくかわろう、これを優先してしまったんですね。  私は、絶対にこの問題は総理にお尋ねしなきゃならないんですけれども、その上、有馬さんは少なくとも、核物理学ですか、原子核物理学の専門家であって、失礼ですが、中曽根大臣は、教育の方はお詳しいですけれども、科学者、核物理学の専門ではありません。そういう意味では、有馬さんが事故のときもいて、その後の対応にも継続してやってもらった方がよかったという判断が成り立つと私は思うんですね。  総理、私は、今回の内閣改造の人事、特にあの大事なときに科学技術庁長官も一緒にかえてしまったというのは、総理の政治家としての判断ミスとしか言いようがないんです。このことについて、総理の見解をいただきたいと思います。
  201. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 まず、先ほどのお尋ねの中でお答えしておきますが、当時、政務次官としては直ちに現地に参りまして、それぞれの、政務次官としての職責を全うしておったということを申し上げたいと思います。  そこで、今のお尋ねでございますが、私は、内閣改造、これによりましてこうした問題を軽く扱ったなどということは全くありません。内閣改造は、日程的に見ますと、たしか一日を希望しておりましたが、今回の事件が発生したことによりまして、そうしたことにつきましては一切後に行うということにいたしたわけでございますので、何らその点についての関係はありません。  そこで、有馬前科技庁長官のことにお触れになられました。大変立派なその道の権威者であるということは私は承知いたしております。しかし、この内閣におきましても、政務次官におきましても、同様な、大変その方面における見識者であることは御案内のとおりであります。したがって、行政は一貫しておるわけでございまして、私は、有馬大臣から中曽根大臣に引き継ぎをいたしましても基本的な本問題に対する対応につきましてはいささかも変わるものでない、こういう認識をいたしましたので、有馬大臣から中曽根大臣大臣としての職責を移した、こういうことでございます。
  202. 松沢成文

    松沢委員 時間ですから終わります。
  203. 北側一雄

    北側委員長 西博義君。
  204. 西博義

    ○西委員 公明党の西博義でございます。  総理大臣に御質問を申し上げます。  私は、現在審議されている原子力災害対策特別措置法案は、これまでの国の災害対策としては一歩進んだものである、こう評価をしております。災害対策の基本的な枠組みを定めております災害対策基本法は、災害への対処は自治体が行う、こういう原則でつくられておりますが、今回の原子力災害対策特別措置法案では、国がより積極的にその役割を果たせるような枠組みとなっております。  一つは、原子力緊急事態宣言を発し、関係自治体の長に避難等の指示ができるということ。二つ目には、オフサイトセンターに現地対策本部を設置し、合同協議会を組織して、国、自治体、事業者が協力をしていく、こういう体制になっていることでございます。  阪神大震災、ナホトカ号重油流出事故という惨事を経て、国の災害対策も、事後対処型から即応型を目指して防災基本計画を改定するなど努力の跡が見られてきております。しかし、従来からの災害対策基本法は、依然として災害への対処は自治体が行うという古い枠組みが手つかずのままの状態でございます。災害対策基本法制定された当時と比べると飛躍的に情報化が進み、国が得られる情報の量や速さは比較にならないほどだと思います。こうした情報化時代に即した国の災害対策のあり方を再構築する必要があるのではないかと思います。  大規模な災害事故においては、原子力災害対策特別措置法案と同様に、国がより積極的に役割を果たせるよう、災害対策基本法を改正すべきだ、こう考えますが、総理大臣の御見解をいただきたいと思います。
  205. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 一般的に災害対策基本法を改めるべきだという先生の御意見ではありますが、ただ、災害に際して住民への避難の指示や応急対策等は第一義的にはやはり市町村長が行い、市町村が対処できないような規模の災害であれば都道府県知事が行うことに現行法はなっております。  これは、さまざまな態様の災害につきまして、危険箇所や避難場所等を具体的に把握し、避難の時期や場所等を直接住民に対して適切に指示できるのが地方公共団体の長であり、また、応急対策において第一義的に活動する消防組織も市町村に属すること等によるものでございます。これらにかんがみれば、災害対策基本法のこの枠組みは引き続き維持していくべきものではないかと考えます。  なお、このことは災害対策における国の役割を否定するものでは決してありませんで、地方公共団体が対処できないような大規模な非常災害発生した場合には、国は直ちに非常災害対策本部または緊急災害対策本部を設置し、地方公共団体間の応援のための措置を含め、当該災害への応急対策に全力を挙げることとなるわけでございます。  したがって、国の対応そしてまた地方公共団体対応、それぞれその任に当たって適時適切に対応することが望ましいのではないか、このように政府としては現在考えておるところでございます。
  206. 西博義

    ○西委員 時間がもうあと三分ということで焦っておりますが、少し順番を外しまして、最後に、将来の電気エネルギーのことに関連して質問をいたしたいと思います。  今、燃料電池が大変脚光を浴びております。この燃料電池の技術開発は大変時間がかかって、当初は実用化が二〇二〇年、またそれ以降というふうに見られておりましたけれども、ここへ来て、自動車メーカー等が二〇〇三年から四年に燃料電池の自動車を市場に投入する、こんな勢いでございます。  量産化のめどが立ったということは大幅なコストダウンが見込める、こういうことでございまして、家電メーカーだけではなく、今度は電力会社にかわって電気を家庭に供給しようとしてガス会社が研究に乗り出したり、具体的な動きが出ていることは御承知のとおりだと思います。これが今後エネルギー政策にも大きな影響をもたらす可能性がある、私はそう思っております。  燃料電池については工業技術院などで約三十億円の研究予算が投入されております。来年度予算では、通産省資源エネルギー庁が燃料電池普及基盤整備事業として、まだ少ないとは思うのですけれども、十八億円を要望しております。ほかにも、太陽電池それから風力発電等、新エネルギーに対する資金は、全エネルギー開発費の今は一〇%強というところでございます。新たなエネルギー供給源を開発するには、原子力並みの普及促進策を講ずるため、少なくとも研究開発費で現在の倍増は図るべきだ、こう提案を申し上げたいのですが、総理の御意見をお伺いしたいと思います。
  207. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 太陽光発電また燃料電池の開発などの研究開発予算を含めた新エネルギー関係予算につきましては、過去五年間で倍増しておりまして、平成十一年度においても、平成十年度に比べ約百二十六億円の増額となる約八百七十五億円を確保し、積極的な施策を講じておるところでございます。  こうした予算について倍増するような傾向になっておりましたのも、西先生初め、この問題について熱心にお取り組みいただいた諸先生方のバックアップもあったことだろうと思っております。  先般、自動車ショーに参りまして、この燃料電池の開発に非常に熱心に取り組んでおるという状況もありまして、今お話しのようにガス会社もこの問題について非常に熱心に取り組んでおります。そういう意味で、ぜひ、新エネルギーは環境問題にも極めて大事なことでございますので、政府としては引き続き予算の拡充を図り、新エネルギーの研究開発、導入に全力を挙げて取り組んでまいりたい、このように考えております。
  208. 西博義

    ○西委員 時間が参りました。終わります。  ありがとうございました。
  209. 北側一雄

  210. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 総理、日夜厳しい国務への御奔走、心から慰労と激励とを申し上げる次第でございます。  私はいつも、国策に従って行う事業は国や政府が前面に立ってこれに対処する、あるいはできる法整備をしないとだめだと主張している一人なんです。ですから、これまでの審議においても、殊に原子力災害のような、対応に専門的な知識や高度な判断を要することになるところでは、自衛隊、消防、警察、医療チームなど総力を結集した対応が求められることになりますから、国が前面に立って責任を持ってこのような原子力災害への対応を行うべきことは当然と主張してきました。  一方、野党側からの主張の中には、地方分権の流れなどを論拠として、原子力災害への対応についても地元の自治体が一義的に行うべきであり、国は後方から支援すべきものとして発言してもいます。  しかし、近年の雲仙・普賢の噴火時の自衛隊の活躍、一方、阪神・淡路大震災の際の広域的な災害対応を図れなかったということへの反省などを踏まえると、大規模災害に際しては、地方自治の観点から自治体のみに災害対応を求めることは限界があることは明らかであり、国民の安全を守るのは最後は国なんだという自覚のもとで、国が前面に立って責任を持った対応を行わなければならないものと考えます。  こういう点で、今回の法案が成立すると、原子力災害発生した場合は総理が原子力災害対策本部長として判断を行い、関係者を指揮することとなるのですから、私はこのことを前向きに受けとめていますので、この際、原子力災害に際しての指揮者となる総理の決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  211. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 委員指摘のように、本法案によりまして、内閣総理大臣が、原子力緊急事態宣言を行うとともに、原子力災害対策本部長として、関係行政機関の長への指示、防衛庁長官に対する自衛隊の派遣要請等を行うことになったことは、今回の事故の教訓を踏まえた重要な事項であると認識いたしております。  本法案に規定されているような仕組みが、万々が一原子力災害発生した場合には迅速かつ的確に発動されるよう、今後、防災計画やその実施マニュアルの策定及び訓練の実施を通じて、緊急時対応能力を高めてまいりたいと考えております。  また、そもそもそのような原子力災害が二度と起こらないように、今回の原子炉規制法改正や原子力安全委員会の機能の強化等によりまして、安全対策に万全を期していくことが重要と認識をいたしております。  重ねてでありますが、本法律によりまして、内閣総理大臣としての責務が極めて大きいこと、また、その対応についても十分意を用いていかなければならないことを私自身も深く認識をいたしておる次第でございます。
  212. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 このたびの事故はまことに残念ではありますが、これに対応して、国の責任が明確となったこのような法律が短期間の間に提出されたことには敬意を表したいと思います。  しかしながら、今回の事故は、裏マニュアルさえも無視して作業が行われたことを原因とするなど、職場の風土や文化の問題がその根本原因であると指摘されてもおります。単に法律に規定するだけではなく、実際に法律の運用を行う人の今後の実際の行動をどうするのか、危機に際して迅速に責任を持って対応する風土や文化を政府内にどのようにつくり上げていくのかという方が重要であるとも言われています。  先日、十九日に科学技術庁の岡崎俊雄事務次官が辞任されましたが、国家としての使命、目的の実現を追求するための組織というものは、その与えられた使命、目的を達成できなかったときは、責任者がその責任をとるという厳しさの中で仕事をすることが必要であると考えています。HIIロケットの打ち上げ失敗後の宇宙開発事業団の理事長の会見を聞いていると、二回も失敗していながら、そのような責任を私には感じられませんでした。ですから、今でも、このような風土あるいはこの組織では、中国は宇宙船の打ち上げに成功し、日本は二回もロケットの打ち上げに失敗するという結果の差となってあらわれてくるのではないかとも思っています。  このような組織、風土は原子力産業の中においても恐らく同様であり、今回の事故も、発注元たる核燃料サイクル開発機構も含めた原子力産業界全体が、国家プロジェクトを担っているんだという責任感が欠如した中で日常業務が行われたからではないんでしょうか。  私は、本来、公の組織、機関にとって、目的達成ということが本分であり、また至上命令でありますから、その機関、その組織が使命を、この目的達成をできなかったときは、その責任をとる、とらせる、これは理屈なしの結果責任なんだということを質問してきました。このたびの岡崎俊雄事務次官の辞任を重大に受けとめ、これを無にすることなく、この際、科学技術政策、プロジェクト全体、これに関係する機関の人事と組織を徹底的に洗い直すべきであると考えますが、総理の所感はいかがですか。
  213. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 ただいま菅原委員から御指摘の点につきましては、法律を運用させていただく立場になりましたら十分心して対処してまいりたい、このように考えております。
  214. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 戦後半世紀を超える月日の間に日本人がどこかに忘れてしまった自己の職務に対する責任感……
  215. 北側一雄

    北側委員長 時間でございますので、終了をよろしくお願いします。
  216. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 そういうことが今回よみがえって、総理のおっしゃる富国有徳の国家社会が実現になることを願って、質問を終わります。  ありがとうございました。
  217. 北側一雄

    北側委員長 吉井英勝君。
  218. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  今回の東海村の臨界事故などを通じて、日本の安全審査体制に対しても国民の間から非常に大きな不信が生まれました。やはり、期待にこたえられるような安全審査体制というものをどうつくるかというのが、防災ということを考えたときにも大事な課題だと思います。  実は、せんだって、十一月十六日に開かれた第二回の全国原子力発電所立地議会のサミット、ここで、原子力安全委員会の抜本的な見直しを行うこと、そして中立的チェック機関として独立させ、質量ともに充実した強い執行権限を持つ組織へ早急に改組するということが全国の自治体議会の一致点として挙げられております。  それからまた、全国原発立地自治体の方の協議会、全原協からは、安全規制委員会の創設、アメリカのNRCのような機関の創設を求めています。これは、けさ、公聴会の公述人であった村上東海村村長からも、規制行政独立の原則に立ち、推進組織から分離し、規制機関の一元化を図り、執行権限を全面的に付与すべきだ、国家行政組織法第三条に基づく委員会のほかにないだろうという御発言もありました。  今、全国の自治体の首長の方からも議会の方からも、また住民からも、やはり独立した規制機関をつくることと十分なスタッフをもって臨むということについて非常に大きな期待や要望が出ているときですが、率直に、この点について、小渕総理はこの期待にこたえていくという決意をお持ちかどうか、ここを総理に伺いたいと思います。
  219. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 我が国では、原子力規制と推進の機能を効果的に分離しつつ、科学技術庁及び通商産業省が法令に基づく安全審査を行い、さらに原子力安全委員会が独自の立場からダブルチェックを行う仕組みとなっており、安全審査等に厳正に臨んできております。  省庁再編後は、御案内のとおり、内閣府に原子力安全委員会を、経済産業省に原子力安全・保安院を設置するなど、一層の体制整備、規制部局の充実強化を図ってまいらなきゃならぬと考えております。  吉井委員も、既に、またいろいろなところで御討議いただいておることだと思いますので、この点について別の組織をというお話もございますが、政府といたしましては、今御答弁申し上げたような趣旨にのっとりまして安全を確保していくということで臨んできておるところでございます。
  220. 吉井英勝

    ○吉井委員 効果的に分離しているというお考えかもしれませんが、現実に非常に不信が生まれていて、だからもっとちゃんとした安全審査体制をつくってほしいというのが国民の声なんです。だから、全国原発立地議会サミットでも全原協でも、多くの住民の皆さんからもそういう声が出ているのです。  中立的チェック機関として独立させるということ、質量ともにですから、質的にもそうですが、もっと量的にもきちっとしたスタッフをそろえた安全審査体制をという、この声にこたえようというお考えはございませんか。
  221. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今回の事故はまことに申しわけないことであり、こうしたことは繰り返してならぬことでございますが、その組織を改編したからすべてこれが達成できるかということにつきましては、いろいろと疑問もあることではないかというふうに考えておりまして、現行法のもとにおいて、先ほど御答弁申し上げたようなダブルチェックシステム、それと同時に、今後新しい内閣府におきましてはそのような形としていくということでありまして、委員恐らくお考えになっておるのは三条機関としてのものではなかろうかと思っておりますが、科学技術庁あるいは通産省それぞれもいわば三条の機関でございまして、その中で十分な対応がとり得るのではないか、このように考えておるところでございます。
  222. 吉井英勝

    ○吉井委員 今から二十四年前になりますが、大山委員会が、原子炉安全専門審査会の委員は非常勤と定められているので大学研究所のパートタイマーという形態だ、それから、原則として書面審査のみでやっているから、技術的に後に反映させることができないという問題など、パートタイマーじゃだめだということを指摘したのが二十四年前のことです。  その翌年、二十三年前になりますが、三木総理のときに、原子力行政懇談会の有沢座長の方からやはり意見が出ておりますが、その中では、開発と規制の分離の問題、それから、事務局は一般行政から分離して、各省庁に対し中立、平等の立場を保持すべきだ、また、原子力安全委員会の事務局については独立の事務局を設けることが望ましい、そのときに、当面の間ということで、科学技術庁原子力安全局において委員を補佐する。これは当面の間だったんです。当面の間が二十三年間続いてきたわけであります。またここでは、それぞれの行政庁が開発促進という責務を有していることから安全性確保についての不信感が生ずるおそれがあると実は二十三年前に指摘してきたんです。  ですから、やはり独立した機関をきちっとつくる、パートタイマーじゃなしにちゃんとしたスタッフを置くということをこの際総理としてきちっと決断をして取り組まれるということは大事だと思うのですが、もう一度伺いたいと思います。
  223. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 我が国におきましては、一次行政庁、科学技術庁及び通商産業省でありますが、約三百人の安全規制担当する職員がおります。独自の立場からダブルチェックを行う原子力安全委員会には二百人を超える専門家を擁するなど、我が国に適した有効な安全規制体制となっており、今後一層これを充実していくことが肝要、このように考えております。
  224. 吉井英勝

    ○吉井委員 それが、やったやったと言って事故を繰り返してきたわけです。だから、その審査体制が機能していないということが明らかになっているわけです。  IAEA安全シリーズで、原子力発電所の安全基準政府組織という中には、三百二項で、規制機関原子力の推進に対して責任を負ってはならない、また加盟国内の責任を有する組織から独立していなければならない、これはIAEAの方できちっと決まっているわけです。安全条約上のことにつきましては、もう既に不破委員長の方からクエスチョンタイムの中で指摘がありましたので私はきょうは繰り返しませんけれども、しかし、明らかに高速炉開発など推進官庁が科学技術庁でもあるわけですから、ここからきちっと分離した機関にするということと十分なスタッフというこの二点について再度伺って、質問を終わりにしたいと思います。
  225. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、現在それぞれの機関におきまして十分ダブルチェック機能を発揮しこれを行うということに相なっております。また、新しい三条機関をつくるということになりますれば、これは大変な人員と新しい機構というものが必要でありまして、それだけのスタッフそのものにつきましては、ただいま御答弁申し上げましたように、現在それぞれの省庁におきましてきちんと対応させていただいているということであります。  しかし、今回起こった事故につきまして、さらに十分このチェック機能を再検討して、そしてこうした事故が起こらないようにいたしていくことは、これはまた当然なさなきゃならぬことだと思っております。
  226. 吉井英勝

    ○吉井委員 反省や教訓が生かされていないということを指摘して、終わります。
  227. 北側一雄

    北側委員長 辻元清美君。
  228. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。きょう最後の、トリの質問をさせていただきますので、肉声でぜひお答えいただきたいと思いますが、まず最初に、総理の今回の事故に対する御認識から伺いたいと思うのです。  きょう実は公聴会で、東海村の村長より非常に真剣ないろいろな御発言がございました。そこからちょっと幾つか総理にも御感想を聞きたいのですけれども、まず、今回の事故の特徴と発生原因、事故対応、監督官庁の姿勢、法律の不備などの問題点は、すべて想定外の事故という言葉に集約されるだろうという御発言からきょうは村長さんが公述されたのです。政府の方のこの間の御答弁でも、想定外の事故というような発言もありましたが、率直に総理、臨界事故というのは総理にとっても想定外の事故だったでしょうか。
  229. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 想定外といいますか、今度のような事故が起こるということは予想もしておりませんでした。しかし、こうした事故は起こらないということを考えないで常に対処していかなきゃならぬというよき反省をした次第でございます。
  230. 辻元清美

    辻元委員 今の御答弁は、想定外であったということだと思います。  さてもう一点、この村長さんがこういうことをおっしゃいました。今回の事故は不心得なジェー・シー・オーに限った事故なのか、それとも事故の影響が全国に波及し日本の原子力政策の根幹を揺るがしたものなのか、果ては世界の信認まで累を及ぼした大事故なのか。私は、これは国際的にも日本の信頼の失墜につながるような大事故であるというような意見を持っていますが、総理の御認識はいかがでしょうか。
  231. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 事故発生しましたときに、実は、アメリカのクリントン大統領からも、協力できないかというお話がありました。いろいろお話ししてみますと、やはりかつてスリーマイルの事故があった米国として、原子力発電所が引き起こした事故ではないかという、ちょっとそういう印象を持っておったわけです。しかし、日本の原子力発電所五十一基に関する限りは極めて多重な防護がされておられるわけで、そうしたものでない。しかし、周辺であれ何であれこうした原子力をめぐる事故について、もしこの事故についてこれをなおざりにするようなことはあってはならぬという対応において現在全力を挙げておるのでというお話を申し上げたわけでございまして、今回起こった事故、想定外でありますけれども、しかしこうした事故が多くの方々に御迷惑をかけ、また中性子、臨界事故というようなことに相なっておることにかんがみましては、こうしたことの再び起こらないための対応ということで、今次この法律案を出させていただいておるということで御理解いただきたいと思います。
  232. 辻元清美

    辻元委員 さらに、こういう発言もございました。法の整備もせずにそれを黙視してきた監督官庁の責任も重大である、事業者政府を信じてきた東海村の村民はどう対応してよいのか、ふんまんやる方ない思いである、お人よしだったのかと村長さんがおっしゃったわけです。そしてさらに、建屋が吹っ飛ぶような事故であったらどのようになったか震えがとまらなかったともおっしゃいました。そしてさらに、県は科学技術庁の情報が入ってこないといらいらしていたとのことであった、さらに、十キロメートル圏内の屋内退避や交通機関のストップの決定は村にとっては寝耳に水のことであったとか、損害賠償問題も、損害の基準、損害の範囲、事業者と国の責任がはっきりせず、農業者や商工業者に怒りを買っている、さらに、国策として原子力を推進してきた政府には責任があり、早急に対応策を示すことを要望したいが、今のところ政府は積極的に取り組んでいないというような強い指摘がありました。  さてそこで、先ほどから総理もどうも、責任があるという、責任という言葉を避けていらっしゃるのではないかと思えてしようがないわけです。私は、この間の審議でも、政務次官もこういうお答え、科学技術庁は何ら我々は関知しないという態度ではありませんとか、長官は、私たちは一人一人反省していますとおっしゃいました。そして、新しい事務体制のもとで行うことが適切であるということで事務次官がおやめになったという話もございました。  しかし、責任という言葉の周りをぐるぐるぐるぐる回っているだけで、私はなぜそれを避けるのかがわかりません。総理、いかがでしょうか。総理は、日本の責任者として私にも責任があった、そしてこうしたいということを、はっきりときょう、これはもう大詰め、私の質問は大トリなんです、ここで国民に向かって言っていただかないと、今回の法案、納得いかないと思います。東海村の人たちはお人よしだったのかとまでおっしゃっているわけです。いかがでしょうか。
  233. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 大きな意味で国民の生命と安全を確保しなければならないという内閣の立場内閣総理大臣立場からいえば、すべての起こった事柄に対しての責任というものは痛感しなきゃならぬと思っております。さすればこそ、今回のこうした法律を通じて、再びこうした事案が起こらないようにというための諸措置について対応させていただくということがその責任のまたとり方だ、こういうふうに私は考えておる次第でございます。  私も、現地の、村長さんあるいはまた橋本知事等、いろいろ御意見を聞き、また住民の皆さんの御心情を考えますと、ますますもって、今回の事故その他についていかに対処すべきかという、念頭を去らずにこうして対処しておることが私は政府としての責任のとるべき立場だ、こんなふうに理解しております。
  234. 辻元清美

    辻元委員 今、御答弁の中で初めて責任という言葉が出てまいりました。大きな意味で、それはそうですね。国民の生命、財産を守る責任があると思います。私は、大きな意味も小さな意味も今回の事故にはないということで、この大きな意味の中には今回の事故の責任もしっかり入っているというように理解してよろしいですね。
  235. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 答えを求めませんが、責任ということについてどういうふうに議員は考えておられますか。これは反論権を行使するつもりはございませんけれども、やはり大きな意味といいますか、私の立場からすれば、国政におけるすべてのことに、起こった事象についてはすべからく責任を看過すべきものではないということは、これは至極当然のことだというふうに考えております。
  236. 辻元清美

    辻元委員 私は、今クエスチョンタイムじゃありませんが、私に責任という意味をお聞きになったように一瞬思いましたけれども、この事故について総理みずからが責任がおありになるのかないのか、私にその責任の意味を反問される、問わなければならないという御認識であるならば、私は認識が甘いと思います。どういう意味で、私に、責任という意味、あなたの御理解はどういうことでしょうかとお聞きにならなければ今回の事故に御自分が責任があったということを御答弁できないのでしょうか、最後にその点だけお伺いしたいと思います。
  237. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 国民に選ばれた国会議員としてお尋ねいただいておりますので、時々責任ということにつきまして解釈が変わったり、いろいろなことをお話されますから、お話ししている責任とは何ぞやということをお聞きをした上で、私の自分の考え方を申し述べることが正確だ、こう申し上げたわけです。
  238. 辻元清美

    辻元委員 時間が参りましたからこれで終わりたいと思いますけれども、きょうの総理の御答弁の中の、大きな意味での責任という中に総理の心情を察しまして、この質疑を終わらせていただきたいと思います。  以上です。
  239. 北側一雄

    北側委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  240. 北側一雄

    北側委員長 ただいま議題となっております両案中、まず、内閣提出原子力災害対策特別措置法案について議事を進めます。  この際、本案に対し、山口俊一君外五名から修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。平野博文君。     —————————————  原子力災害対策特別措置法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  241. 平野博文

    平野委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  本修正案の趣旨につきましては、既に当委員会の質疑の過程で明らかになっておりますが、原子力防災管理者から事象発生について通報があった場合の原子力防災専門官の業務について明確化を図ることにより、地方公共団体が主体となって実施する応急措置に遺漏なきを期そうとするものであり、案文の朗読をもってその説明にかえさせていただきます。  それでは、案文を朗読いたします。     原子力災害対策特別措置法案に対する修正案   原子力災害対策特別措置法案の一部を次のように修正する。   第三十条第二項中「収集」の下に「、地方公共団体が行う情報の収集及び応急措置に関する助言」を加える。 以上であります。  何とぞ本修正案に御賛同賜りますようよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  242. 北側一雄

    北側委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  243. 北側一雄

    北側委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出原子力災害対策特別措置法案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、山口俊一君外五名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  244. 北側一雄

    北側委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  245. 北側一雄

    北側委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  246. 北側一雄

    北側委員長 次に、内閣提出核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。  この際、本案に対し、吉井英勝君外一名から修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。吉井英勝君。     —————————————  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  247. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部改正案に対する両党共同提出の修正案について、その提案理由及び要旨を御説明いたします。  内閣提案の原子炉規制法改正案は、九月三十日に起こった東海村核燃料加工施設での臨界事故を受けて、原子力施設に対する安全規制の強化策として提出されたものです。  東海村臨界事故は、日本国民はもちろん、世界にも衝撃を与えました。事故の被害、影響の大きさだけでなく、政府が依然として安全神話から脱却していないこと、原子力利用推進機関が安全規制の権限を持っているなど、国際的な水準から大きく立ちおくれた日本の原子力行政の根本的欠陥が浮き彫りになったからであります。  安全規制のあり方で、今日問われているのは、科学的な基準に基づく安全審査の実施、それを実現できる安全規制体制確立です。アメリカの原子力規制委員会のように、原子力推進機関とは完全に独立した規制機関をつくり、そこに許認可等の権限を持たせることが必要です。この点は、本会議で野党各党が一致して求めたところであります。  原子力の開発と安全規制の機能と組織を分離すること、規制組織に独立の事務局を置くことは、二十三年前の原子力行政懇談会の原子力行政体制の改革強化に関する意見でも指摘されてきたところであります。  また、国際原子力機関、IAEAが定めた原子力発電所の安全基準が、規制機関原子力の推進に対して責任を負ってはならないとしているほか、日本も四年前に批准し、三年前に発効した原子力の安全に関する条約は、許認可等の権限を持つ原子力規制機関原子力利用促進機関との分離を求めています。  国内的に重要な課題であるとともに、条約上の義務でもある原子力の安全規制を推進機関から独立させることを目指して、内閣提出原子炉規制法改正案に関し、最小限の修正としてこの修正案を提出するものです。  修正案は、附則に一条を追加し、政府に対して、原子力安全の規制を実効あるものとするため、本改正案施行後一年以内に、規制と推進の分離のために、原子力安全委員会等の組織のあり方について検討し、必要な措置を講ずることを義務づけるものであります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますことをお願いし、提案理由の説明といたします。
  248. 北側一雄

    北側委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  249. 北側一雄

    北側委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、吉井英勝君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  250. 北側一雄

    北側委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  251. 北側一雄

    北側委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  252. 北側一雄

    北側委員長 この際、ただいま議決いたしました両法律案に対し、稲葉大和君、平野博文君、西博義君、菅原喜重郎君及び辻元清美君から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。稲葉大和君。
  253. 稲葉大和

    ○稲葉委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     原子力災害対策特別措置法案並びに核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、原子力の安全対策に万全を期すとともに、万が一の際の防災体制を確立するため、本二法の実施に当たっては、特に次の諸点についての適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。  一、地方分権の時代背景をも踏まえ、都道府県及び市町村の防災会議が、原子力災害に関する地域防災計画の策定や関係機関との連携強化のための活動を定期的に行う場合においては、それらの活動が円滑かつ的確に実施されるよう、必要な支援に努めること。  二、原子力災害時の初期対応重要性とその際に応急措置の実施等を行う市町村長の役割の重要性に鑑み、常駐する原子力防災専門官による助言を含め、国、都道府県等の関係機関は、その支援に万全を期すこと。  三、地域防災計画緊急事態応急対策拠点施設、放射線等の監視、情報伝達などについて住民の安心と納得が十分に得られるよう整備の充実、情報開示に努めること。  四、主務大臣に対する申告に関する制度について、申告者の利益の保護のために万全の配慮をするとともに、虚偽の申告が意図的になされていた事実が明らかになった場合においては適切な運用を行うこと。  五、原子力安全規制徹底を図るため、規制官庁による法の厳格な実施及び原子力安全委員会による規制行政監視機能の十分な発揮が図られるよう、独自性の強化、事務局体制の充実等適切な措置を速やかに講ずること。 以上であります。  各事項の内容、趣旨につきましては、委員会の審査を通じ、十分御理解いただけることと存じますので、詳細の説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。  以上です。(拍手)
  254. 北側一雄

    北側委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  255. 北側一雄

    北側委員長 起立総員。よって、両法律案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根国務大臣
  256. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 原子力災害対策特別措置法案及び核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、慎重御審議の上、御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。  また、ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重し、政府といたしまして努力をしてまいる所存でございます。     —————————————
  257. 北側一雄

    北側委員長 お諮りいたします。  両法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  259. 北側一雄

    北側委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十五分散会