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1999-11-10 第146回国会 衆議院 科学技術委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成十一年十月二十九日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。    委員長 北側 一雄君    理事 河本 三郎君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 吉田  治君    理事 西  博義君 理事 菅原喜重郎君       稲葉 大和君    岩下 栄一君       江渡 聡徳君    小野 晋也君       岡部 英男君    木村 隆秀君       谷垣 禎一君    古屋 圭司君      三ツ林弥太郎君    望月 義夫君       川内 博史君    近藤 昭一君       平野 博文君    斉藤 鉄夫君       中西 啓介君    吉井 英勝君       辻元 清美君    中村喜四郎君     ————————————— 平成十一年十一月十日(水曜日)     午前九時三十六分開議  出席委員    委員長 北側 一雄君    理事 稲葉 大和君 理事 小野 晋也君    理事 河本 三郎君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 平野 博文君    理事 吉田  治君 理事 西  博義君    理事 菅原喜重郎君       岩下 栄一君    江渡 聡徳君       岡部 英男君    木村 隆秀君       谷垣 禎一君    戸井田 徹君       古屋 圭司君   三ツ林弥太郎君       望月 義夫君    川内 博史君       近藤 昭一君    松沢 成文君       石井 啓一君    斉藤 鉄夫君       吉田 幸弘君    吉井 英勝君       辻元 清美君     …………………………………    国務大臣    (科学技術庁長官)    中曽根弘文君    防衛政務次官       依田 智治君    科学技術政務次官     斉藤 鉄夫君    通商産業政務次官     茂木 敏充君    労働政務次官       長勢 甚遠君    政府参考人    (科学技術庁長官官房審議    官)           木阪 崇司君    政府参考人    (科学技術庁原子力局長) 興  直孝君    政府参考人    (科学技術庁原子力安全局    長)           間宮  馨君    政府参考人    (法務省刑事局長)    松尾 邦弘君    政府参考人    (資源エネルギー庁長官) 河野 博文君    政府参考人    (労働省労働基準局長)  野寺 康幸君    参考人    (原子力安全委員会委員長    )            佐藤 一男君    参考人    (原子力安全委員会委員) 住田 健二君    科学技術委員会専門員   宮武 太郎君     ————————————— 委員異動 十一月十日  辞任         補欠選任   木村 隆秀君     戸井田 徹君   川内 博史君     松沢 成文君   斉藤 鉄夫君     石井 啓一君   中西 啓介君     吉田 幸弘君 同日  辞任         補欠選任   戸井田 徹君     木村 隆秀君   松沢 成文君     川内 博史君   石井 啓一君     斉藤 鉄夫君   吉田 幸弘君     中西 啓介君 同日  理事栗原博久君十月十九日委員辞任につき、その補欠として小野晋也君理事に当選した。 同日  理事中谷元君十月二十八日委員辞任につき、その補欠として稲葉大和君が理事に当選した。 同日  理事吉田治君同日理事辞任につき、その補欠として平野博文君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  原子力開発利用とその安全確保に関する件(茨城東海核燃料施設事故問題)     午前九時三十六分開議      ————◇—————
  2. 北側一雄

    北側委員長 これより会議を開きます。  まず、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事吉田治君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任による欠員のほか、委員異動に伴う欠員二名、計三名の理事欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  それでは、理事に       稲葉 大和君    小野 晋也君    及び 平野 博文君 を指名いたします。      ————◇—————
  5. 北側一雄

    北側委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興基本施策に関する事項  原子力開発利用とその安全確保に関する事項  宇宙開発に関する事項  海洋開発に関する事項  生命科学に関する事項  新エネルギー研究開発に関する事項 以上の各事項につきまして、本会期調査をいたしたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  7. 北側一雄

    北側委員長 原子力開発利用とその安全確保に関する件、特に茨城東海核燃料施設事故問題について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として科学技術庁原子力局長興直孝君、科学技術庁原子力安全局長間宮馨君、法務省刑事局長松尾邦弘君、資源エネルギー庁長官河野博文君及び労働省労働基準局長野寺康幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長佐藤一男君及び原子力安全委員会委員住田健二君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  10. 北側一雄

    北側委員長 政府から、茨城東海核燃料施設事故について、その調査報告等を聴取いたします。中曽根国務大臣
  11. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 九月三十日に発生いたしました株式会社ジェー・シー・オー東海事業所における臨界事故につきましては、原子力行政を預かる者として、地元住民皆様を初めとして、国民の皆様に多大な御心配と御迷惑をおかけいたしましたことを極めて厳しく受けとめ、今回の事故の収拾やその後の地元への対応等遺漏なきよう、全力を挙げて取り組んでまいりました。  既に事故発生から一カ月余りが経過いたしましたが、この間、重篤な被曝者の治療、住民皆様健康管理等最大限努力を行ってきたところであります。また、十月四日の政府対策本部の決定を受け、原子力安全委員会吉川日本学術会議会長委員長とするウラン加工工場臨界事故調査委員会が設置され、事故原因徹底究明再発防止策確立に向けた検討が行われてまいりました。  事故調査委員会はこれまでに五回の会合及び現地調査を行ってきており、当庁といたしましても、同委員会の活動に全力を挙げて協力をしてまいりました。同委員会は、十一月五日に、これまでの検討結果を中間的に取りまとめるとともに、必要な対策が適時的確に講じられていくことが重要であるとの観点から、現在までの事実関係把握から直接的に考えられる対応策について緊急の提言を取りまとめ、同日、総理に対して報告を行ったところであります。  以下、この報告書につきまして御説明をさせていただきます。  まず、事故による放射線影響につきまして、事故施設から放射した中性子等による線量と、放出された放射性物質からの線量がありますが、影響のほとんどは前者によるものと評価されております。前者につきましては理論的な基礎資料が暫定的に取りまとめられておりますが、これはホールボディーカウンターの測定と比べましても十分に高目の値となっております。この値については今後精度を高めることとしております。なお、この値によりますと、一般的には急性の健康影響があらわれるものではなく、また、直ちにがんの増加などが懸念されるレベルではないと考えられます。一方、農作物の安全性に問題がないことも確認されております。しかしながら、社会的、経済的には大きな影響があったとしております。  次に、事故への対応につきまして、加工施設での臨界事故を想定した防災準備がなかった点、事故状況の正確な把握がおくれ、的確な初期動作が困難であった点、さらに、国、県、村の情報伝達ルート等が有効に機能せず、迅速な対応が十分ではなかった面があったことが課題として指摘されております。  そして、事故原因について、国が許認可した設備及び方法による作業とは全く異なる作業がなされたことが直接的原因であり、その背景には、作業員臨界に関する認識不足企業における人員配置教育等のマネジメントの問題等があった可能性があったと指摘しております。株式会社ジェー・シー・オー安全管理は、国から許認可を受けた作業手順とは異なる手順書作成使用等、問題の多いものであったと判断されております。  関連して、国の規制については、事故調査委員会は、安全審査あり方チェック体制あり方の二点について、改善策検討する必要があると指摘しております。  このような認識に基づき、事故調査委員会は四つの事項について緊急提言を行っております。  第一は、事故現場安全確保について万全を期すべく、国は株式会社ジェー・シー・オーを指導し、また関係機関協力を要請する等の取り組みを行うべきことであります。  第二に、住民健康対策の点について、長期的な健康管理のため、住民の不安に対する心のケアを含めて、国、自治体、事業者が適切な役割分担連携のもと、遺漏なく取り組むべきことであります。  第三に、原子力関係事業者安全確保徹底について、安全確保の第一義的な責務が事業者にあることから、企業内部における有効な監査体制ISO規格の取得など社外の制度を通じた安全確保体制確立従業員への安全教育徹底、能力の認定制度資格制度創設、及び、核燃料取扱主任者等安全管理責任者安全確保に関する文書の作成管理を確実にチェックするシステム構築事業者に求めております。  さらに、原子力関係事業者全体として、国とも協力しつつ、相互に協力して安全管理の水準の向上に資するような体制構築するための措置を講じるべきとし、その観点から、安全確保のために必要なコストを適正に負担し、所要の防災関連の組織や資材を整備すること、発注者側にあっても、受注者側に対して安全性についても品質保証一環として要求すべきであること等の指摘もなされております。  第四に、国における安全規制の再構築等にかかわるものとしては、誤操作等とは言えないような原因による臨界事故が起こり得ることを念頭に置いて安全審査を見直すこと、国による検査機能強化するため、例えば、原子炉等規制法に基づく立入検査等についてより効果的に実施するよう運用すること、加工事業等に係る規制項目を追加し定期検査等を義務づけること、さらに、運転管理状況従業者教育状況について効果的な検査制度を導入することといった方策をとるべきことが求められております。  さらに、原子力災害に関して早急に対策を講じるべきものとして、的確な情報把握に基づく迅速な初期動作を行うこと、国、都道府県、市町村有機的連携確保すること、原子力災害特殊性に応じた国の緊急時対応体制強化すること、事故に際しての迅速な通報等原子力防災における事業者役割を明確化すること、モニタリングシステム情報通信等設備を整備すること、さらに、原子力安全システムを健全に機能せしめるために、必要な人員資材等を整備することが必要であること等の提言がございました。  以上が事故調査委員会緊急提言の概要でありますが、同委員会では、今後、事実関係調査を深めて事故原因徹底究明するとともに、国と事業者の適切な役割分担に基づく安全規制体制の整備、強化あり方安全文化の創造、原子力産業あり方等、背後にある構造的な問題にまで踏み込んで調査検討を行う予定であると聞いております。  科学技術庁といたしましては、関係省庁連携しつつ、これまで安全規制防災対策強化について検討を行ってまいりましたが、今般の中間報告緊急提言を踏まえ、まず地元住民の方々の健康の確保に万全を期すため、住民説明会や長期的な健康管理などの対応に最善の努力をするとともに、このような事故再発防止等に万全を期すべく、今国会原子力安全規制強化原子力防災対策のための法案を提出するなど、最大限努力を払ってまいる所存でございます。     —————————————
  12. 北側一雄

    北側委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡部英男君。
  13. 岡部英男

    岡部委員 自由民主党の岡部英男でございます。  このたび、科学技術委員としてはもちろんでございますが、実は私自身、事故現場から半径十キロ圏内に自宅がございまして、事故当時も地元におったわけでございますが、まさにこの事故現地で体験した一人として、本日、質問をさせていただきます。  また、中曽根科学技術庁長官におかれましては、組閣の翌日早々に小渕総理とともに現地視察をいただきまして、私も同席をさせていただいたわけでございますが、以来今日まで大変な御努力をいただいておりますことに、地元住民の一人として、まず冒頭に感謝申し上げます。  昭和三十八年十月二十六日、日本初原子力の火が東海村にともりました。以来三十六年間、東海村及び周辺市町村は、日本エネルギー政策根幹自分たちが担っているという自負と誇りさえ感じておりました。また、現在、日本の総発電量の実に三六・八%、地域によっては五〇%が原子力発電という現実もあります。また、CO2の削減等地球的観点からも、今日の日本における原子力政策重要性は言うまでもないと認識しております。  しかしながら、先ほど中曽根長官より事故について説明がありました。今回の事故は、それを踏まえても、このままでよいかという素朴な疑問を感じさせるほど、日本及び世界の原子力政策根幹を揺るがしかねない事故という犯罪でありました。まことに残念でなりません。  本件重大性を受け、当院でも、国会閉会中にもかかわらず、本科学技術委員会審議なさる等、事故原因についても既に幾度か審議がなされたところであり、また、政府においては、今臨時国会原子力防災に関する新法及び原子炉等規制法改正案を提出すべく鋭意作業中と聞いております。  さて、最近の原子力関係の大きな事故を思い起こしますと、高速炉もんじゅ」のナトリウム漏えい事故、動燃の東海処理工場アスファルト固化施設火災事故、そして今回のジェー・シー・オー事故というように、科学技術庁規制担当施設に集中しております。  今回の事故についても、ジェー・シー・オー犯罪的行為原因とはいえ、臨界に達し、かつ、これを停止させる装置も用意されていなかった。これは多重防護という原子力安全の基本に照らしても極めて不適当であり、科学技術庁のこれまでの安全規制基本的な考え方自体に大きな問題があるのではないか。また、こうした安全規制基本的問題点科学技術庁が所管する原子力施設に共通する問題ではないか、お尋ねする次第です。よろしくお願いします。
  14. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 科学技術庁は、原子炉等規制法に基づきまして、実用原子力発電炉を除きまして、核燃料サイクル関連施設等二百十施設を所管しているところでございます。これらの中で、「もんじゅ」それから東海処理施設ジェー・シー・オーと、比較的短い期間に事故が続いて発生していることはまことに残念でございます。しかし、それぞれの事故はそれぞれ固有の原因によって発生しているものと考えられます。  科学技術庁は、所管の原子力施設に対しましては、施設内に内蔵される放射能量核燃料物質の状態といった個別の施設の特徴を十分踏まえながら、指針、基準に照らして安全規制を行っているところでございます。ジェー・シー・オー核燃料加工施設につきましても、このような安全規制取り組みにより、種々の対策を講じることによって臨界事故に至らないと判断をしたものでございます。  しかしながら、今回の臨界事故が発生したことにかんがみまして、このようなことが二度と起こらないように、原子力安全委員会事故調査委員会緊急提言をできるだけ早期に実現するため、原子炉等規制法改正等全力で取り組んでまいりたいと考えております。
  15. 岡部英男

    岡部委員 長官、どうもありがとうございました。  長官の御発言もありましたとおり、私どもも、熱エネルギーという国家的な原子力政策の中で、今回の事故が、地域住民にとりましても、不信と理解、その度合いの中で、将来の展望というものが非常に国内的にも国際的にも難しいのではないか。この理解を得るということ、後段でまた申し上げますが、現実には、地域住民は自信を喪失してしまった、そういう現状すら現地で見られる風潮でございます。後刻また申し上げます。  安全規制については、大いに反省をしていただき、抜本的な見直しをいただきまして、二度とこのような災害を繰り返さない、起こさないということをお願いしておきます。  今回の事故原因の一つはジェー・シー・オーが違法な手順を行ったことであり、こうした状況を、安全規制を担当する科学技術庁が見抜けなかったことであります。私の承知している範囲内では、原子力発電については常駐の専門家がおり運転状況をきちっとチェックしておるところでありますが、ジェー・シー・オーに対する検査体制はどのようなものであったか、お答えをいただきたいと思います。
  16. 間宮馨

    間宮政府参考人 お答えいたします。  ジェー・シー・オー転換試験棟に対しましては、原子炉等規制法に基づきまして、昭和五十九年に建物を初め化学処理施設等各種施設平成七年に転換試験棟内に設けられました貯蔵施設対象として施設検査を実施いたしております。  また、これまでの安全規制におきましては、行政指導一環として、保安規定遵守状況について実施する任意調査平成十年四月に設置いたしました運転管理専門官による巡視等によりまして施設運転状況等把握に努めてきたところでございます。  しかしながら、その運転状況把握につきましては、十一月五日の事故調査委員会緊急提言中間報告におきまして、法令に基づくジェー・シー・オー施設対象とした立入検査はこれまで実施しておらず、また、行政指導による任意保安規定遵守状況調査についても平成四年十一月以降実施していない、また、転換試験棟運転機会が少なく、運転管理専門官が実施する巡視の際には施設が運転されていなかったといった問題点指摘されております。  結果といたしまして今回のような事故が発生いたしましたことから、原子力安全委員会に設置された事故調査委員会での審議等を踏まえまして、国による検査機能強化するため、法令に基づく立入検査等についてより効果的に実施することなど、安全対策に緊急に追加すべき事項について検討しているところでございます。
  17. 岡部英男

    岡部委員 私は、検査体制に不十分な点があったということは否めないと思います。政府全体といたしましてスリム化行政改革の流れにあることは十二分に承知しておりますが、安全規制等をきちっと行うためにも人員体制強化が必要であると思います。  今回の反省点を踏まえまして、検査管理のための人員を十二分に確保することが不可欠と考えるが、両省庁、特に科学技術庁は、具体的にどのような体制強化検討しているか。併任等による表面的な数合わせではなく、人員をきちっと確保し、検査管理体制を抜本的に強化することが必要であり、この点について科学技術庁としての所感をお伺いいたします。
  18. 間宮馨

    間宮政府参考人 お答え申し上げます。  原子力施設につきましては、原子炉等規制法に基づきまして、計画段階設計段階建設段階運転段階、さらには廃止措置の各段階に応じた安全規制を行うということが基本でございます。このような一連の規制の各段階検査、監督を実施しているところでございますが、例えば建設段階におきましては、施設の工事が認可を受けた設計及び方法に従って行われ、性能技術基準に適合していることを確認するための使用検査、あるいは原子炉等については、施設性能について毎年一回の定期検査を実施する等、行ってきたところでございます。  また、一部の施設につきましては、運転管理専門官施設管理専門官配置し、施設操作状況放射線管理状況放射性廃棄物管理状況等災害防止観点から支障がないものであるか否かについて巡視を行ってきております。  以上のような取り組みを行ってきたところでございますけれども、今回の事故が起こったことを踏まえまして、原子炉等規制法改正によりまして、加工事業者に対し施設定期検査の追加、保安規定遵守状況に係る検査制度創設原子力保安検査官主要施設への配置といった検査体制強化を図ることを検討しているところでございまして、これらを実施していくための体制確保に努め、原子力安全確保遺漏なきを尽くしてまいる所存でございます。
  19. 岡部英男

    岡部委員 科学技術庁は、二度と事故を起こさないようにするためにも、明確な人員体制強化を図ることが最も肝要であり、万全の策を求めるものでございます。  さて、科学技術庁は、関係省庁協力しつつ原子炉等規制法改正検討をしていることは承知しているが、どうも論議が加工施設のみに対する対策に矮小化されているのではないかという危惧をしておるものでございます。  今回事故を起こした加工施設と同様に、科学技術庁原子炉等規制法に基づいて安全規制を行っている使用施設についてお伺いいたします。  使用施設の中には、核燃料サイクル機構プルトニウム燃料加工施設等原子炉燃料加工施設と同じ、あるいはそれ以上の危険度を持つ施設が含まれているのではないか。こうした施設については、今回加工施設について行われているような規制強化がきちんととりなされることが必要ではないか、お尋ねいたします。
  20. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 岡部委員指摘のように、いわゆる核燃料物質使用施設という範疇がございます。この核燃料物質使用規制を受ける施設というのは、御指摘ございましたように、研究開発を主目的とする施設や小規模な核燃料物質使用を断続的に行っている施設等が含まれております。一般に規制がその他の原子炉等施設に比べて緩やかという認識がございますけれども、そういう範疇がございます。  御指摘核燃料サイクル開発機構プルトニウム燃料加工施設もこの使用施設範疇に含まれるものでございます。しかし、この使用施設範疇に含まれるものでございましても、一定量以上の核燃料物質を取り扱う施設につきましては、施設検査それから溶接の検査、これに合格しなければ施設使用することができないとか、保安規定を定めなければならないとか、こういった点でいわゆる加工事業規制と同様の安全規制が行われているところでございます。  しかしながら、十一月五日、原子力安全委員会に設置された事故調査委員会が取りまとめた緊急提言中間報告の中では、この使用施設安全規制も含めて、次のように提言がございました。安全審査について、臨界防止のための措置徹底及び臨界時の適切な対策の明確化を図る方向で見直しを行うべきこと、国による検査機能強化するため、法令に基づく立入検査等についてより効果的に実施すること、運転管理状況従業者教育状況について効果的な検査制度を導入すること、このような指摘がございます。  したがいまして、この使用施設、また岡部委員指摘のありました核燃料サイクル開発機構プルトニウム燃料加工施設につきましても、この指摘を踏まえまして適切な規制あり方を今検討しているところでございます。
  21. 岡部英男

    岡部委員 事安全に関する問題であり、二度と今回と同じような事故を繰り返さないということ、きちんとした措置をこの機に講じていただきたいと思います。  次に、通商産業省にお尋ねをいたします。  原子力発電所の安全確保については、ジェー・シー・オー事故のような問題点はないのか。事故後、各原子力発電所の安全規定の遵守状況調査させ、かつ、国の職員に直接の調査をさせたと聞いているが、その結果はどうであったか。  また、話は先になるが、二〇〇一年の省庁再編成によって、ジェー・シー・オーのような加工施設を含め、多くの原子力施設安全規制が経済産業省のもとに一元化されると聞いている。経済産業省の前身たる通産省は現在原子力発電所の安全規制のみを担当しているにすぎず、現在の体制のままでは、再処理施設などを含む核燃料サイクル関係施設までも規制できるかどうか大いに懸念されるところであります。二〇〇一年の省庁再編成後について、検査管理体制強化を含め、通産省は万全の体制を組めるか、お伺いいたします。
  22. 河野博文

    河野政府参考人 お答え申し上げます。  まず、原子力発電所の安全確保の問題でございます。  先ほど先生も御指摘になりましたように、原子力発電所につきましては、原子炉等規制法に基づきまして、いわゆる多重防護の考え方に従いまして厳正な安全規制を実施しているところでございます。  なお、原子力発電所には今般の事故で用いられたようなウラン溶液が存在するわけではございませんので、これらを取り扱う施設も存在せず、今般の事故と同様の事故原子力発電所で起こるというふうには考えていないのでございます。  また、通商産業省といたしましては、運転管理専門官、これも先ほど先生御指摘になりましたけれども、これを各発電所にいわば常駐をさせております。  したがいまして、保安規定遵守状況など運転管理の監督を行っているわけでございまして、こうした対応を通じまして原子力発電所については十分な安全確保が図られているというふうに考えるわけでございますけれども、原子力安全確保が大前提である、御指摘のとおりでございますので、常に緊張感を持って、慎重の上にも慎重を期して臨むということが不可欠だと思っておりますので、今回の事故そしてその原因のすべてから学ぶべきものを学び、反省するべきものを反省するということで、一層の安全確保徹底を図りたいというふうに考えております。  また、事故後、各原子力発電所の保安規定遵守状況などを調査させたことについて御指摘がございました。  そのとおりでございまして、今回の事故におきまして、違法な手順書作成され、使用されていたことが記者会見等で明らかになったわけでございまして、これを踏まえまして、念のため、原子力発電所についても、原子炉等規制法に基づく保安規定などに照らして不適切な手順書などが作成使用されていないかどうかを調査するように、それがわかりました十月四日に電気事業者に指示をしたところでございます。  各電気事業者からは、十月の十四日に手順書等において問題がないという調査結果の報告がなされたわけでございますけれども、同日、通産大臣から、各電気事業者各社の社長に対しまして直接安全確保の再徹底を要請し、また私ども事務方に対しまして、通産省としても手順書などについて現地で確認をするようにという指示がございましたので、これを受けまして、十月の十八日、十九日に私どもの職員を各発電所に派遣をいたしまして、それぞれ現場におきまして手順書などの運用状況について現地調査を行わせていただきました。  こうした現地調査の結果も含めまして、いずれの発電所におきましても手順書等が適切に作成使用されていることが確認されましたので、この結果を十月の二十二日に公表させていただきました。と同時に、十月の二十五日にその旨を原子力安全委員会にも御報告申し上げたところでございます。  また、二〇〇一年の省庁再編後についてお尋ねがございました。  御指摘のとおり、省庁改革基本法を踏まえまして、文部科学省と経済産業省の事務の整理を行いまして、エネルギー関係原子力行政は一元化するということが予定されております。これによりまして、現在科学技術庁が担っておられますエネルギーとしての利用に関する原子力安全規制も経済産業省に新たに設置されます原子力安全・保安院に移管されるということでございますけれども、この新しい体制を整備いたしまして、またこれまでも、原子力発電所について、全国で数万人の現場の従業員の方々の努力もあって、緊張感を持った、安全運転に努めているところでもありますので、今後とも関係者一体となって、安全対策遺漏なきように、検査管理体制強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
  23. 岡部英男

    岡部委員 エネルギー長官、どうもありがとうございます。いずれにせよ、円滑な移管に留意され、万全の体制構築させていただきたいと思います。  今回の事故地元関係者に多大な損害を与えたものであり、農業、漁業、中小企業、ホテルのキャンセルなど、いわゆる風評被害についても切実な訴えが私のところに数多く来ております。今回の事故の被害請求額はどのくらいになっているか、把握している状況をお答えいただきたい。  また、ジェー・シー・オーだけでは補償できない部分についてはどうするか、いわゆる風評被害等間接的な被害についてもきちっとした補償をされるよう科学技術庁は万全の措置を講ずべきではないか、お尋ねをいたします。     〔委員長退席、西委員長代理着席〕
  24. 興直孝

    ○興政府参考人 御説明申し上げます。  ただいまお話のございました件でございますけれども、ジェー・シー・オーへの損害賠償請求につきましては、現在、日本原子力保険プールが集計を行っているところでございますが、十月の末ごろまでの請求額の合計は約六十億円程度となってございます。ただし、その具体的な賠償責任額は、被害者とジェー・シー・オーとの間の話し合いによりまして今後確定されていくものでございます。  原賠法では賠償措置額が十億円でございますけれども、これを超えるような原子力損害が発生しました場合、原子力事業者の支払い能力などから見て必要があれば、国会の議決によりまして、政府に属させられた権限の範囲内で政府が必要な援助を行うことが規定されているところでございます。  また、原賠法におきます原子力損害につきましては、核燃料物質等の原子核分裂や放射線の作用等によりまして生ずる損害であり、風評被害につきましても、損害と放射線の作用等との間に相当因果関係がある限り原子力損害に該当するものと考えてございます。  賠償の手続につきましては、基本的に被害者とジェー・シー・オーとの話し合いを中心に進められるべきものでございますけれども、科学技術庁といたしましては、損害の認定あるいは損害賠償に知見を有します専門家を集めまして、原子力損害調査研究会を発足させまして、損害認定の円滑化、迅速化を図るための検討に着手しているところでございます。また、今後賠償に関しまして紛争が生じた場合に和解の仲介を行わせるための公的機関としての原子力損害賠償紛争審査会が既に設置されているところでございます。  この原子力損害賠償制度の適切な運用に当たりましては、政府一丸となって、迅速、円滑な被害者救済が図られるよう努力していく所存でございます。
  25. 岡部英男

    岡部委員 ジェー・シー・オーが掛けている原子力賠償保険は十億円でございます。我が国の原子力政策を着実に進め、地元住民理解を回復していくためには、いずれにせよ、不足分を含め今回の事故の被害に対し最大限の補償をされますよう御尽力をお願いするものでございます。  次に、健康被害、医療対策についてお願いいたします。  せんだって原子力安全委員会より事故状況と環境への影響について中間報告が出されましたが、東海村や周辺市町村では住民の健康に対する不安が依然として強いが、医療面で国はどのようにこたえていくかをお答えいただきたいと思います。
  26. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 委員が御指摘のように、現地住民の皆さんの御不安を一日も早く取り除き、そして健康面での対応をきちっとするということは私どもの今一番重要なことの一つである、そういうふうに認識をしております。  今回の事故に際しましては、茨城県、東海村、また周辺の市町村住民の方々の種々の不安を和らげるためにさまざまな対策をとってこられておりまして、国といたしましても、県や村からの御要望等も踏まえながら、住民の皆さんの心のケアを含む健康相談や被曝者等の健康管理に関する取り組みを行ってきているところでございます。  具体的には、厚生省では茨城県の行う周辺住民の方々に対する健康影響調査、健康相談等の支援を実施しているほか、当庁といたしましては、東海村役場内に相談窓口を設置するとともに、職員を東海村に派遣いたしまして、村との連携協力体制強化しております。  また、東海村からの御要請によりまして、住民の皆さんの健康不安におこたえするために、放射線医学総合研究所の医師等を派遣いたしまして、東海村の住民の方々に対して放射線健康影響等に関する説明を十月十八日に実施いたしました。約二百名の住民皆様に御参加をいただきました。さらに、十月十九日から週に二回、放医研の、放射線医学総合研究所でございますが、医師が東海村役場におきまして健康相談を実施し、専門的立場から個別に御相談に応じているところでございます。  なお、茨城県におきましても、専門のカウンセラーによる心のケア専用電話を開設して、住民の方々の相談に応じているところでございます。  さらに、原子力安全委員会におきましては、十一月四日に健康管理検討委員会を設置いたしまして、線量評価の結果を踏まえて、今後の健康管理あり方に関する検討を開始したところでございます。  今後とも、県や周辺市町村からの御要望等を踏まえまして、適切な健康管理が行われ、住民皆様の健康不安が解消されるように、私どもも誠意を持って最大限努力、支援をしていきたい、そういうふうに思っております。
  27. 岡部英男

    岡部委員 今大臣の答弁をいただいたわけですが、ここ数日間でございますか、いろいろマスコミが入ってまいりまして、マスコミの取り上げ方がいろいろ各社によって非常に格差がある。特に、退避した四時という時間、三百五十メーターか五百メーターかという健康管理上の指摘を受けまして、この辺は、お願いできるならば国の立場でやはり統一したものをきちっと県、町村に出していただきたい。ということは、ここに持ってまいりました新聞にも、「心の傷今も悩む住民」、そういうことが非常に、私地元にいまして、急速に不安感というものは異常なものが出てきたのではないか、そういう感じでいっぱいでございます。  いずれにいたしましても、住民の健康に、大臣先ほど答弁いただきましたように、十分なる御配慮をお願いしたいと思っております。  資源に恵まれず、多くの人口を抱え、また地球環境面からの制約も年々強くなる状況下で、原子力発電が我が国のエネルギーの供給に欠くべからざる電源であり、原子力が長期的に信頼されるエネルギー源となるような万全の対策をとっていただくことが大切だと思うのでございます。  実は私地元でございまして、私のところは日立製作所のある日立市で、それも南部の久慈川に寄っております。思いをはせますと、終戦の年、六月でございますか、記憶にない方が大半だと思うのですが、その当時、B29が、大日立製作所ということで一トン爆弾というものを徹底的に日立製作所の工場にあれした。艦砲射撃もありました。そのとき私は中学生でございまして、東京から帰りましてうちにおりましても、そのB29から投下する一トン爆弾は、飛行機から離した瞬間は下から見ていると見えるのですね。だから、爆弾というのは頭を通過していくことがきちっと掌握できるわけですね。それほど恐怖観念というのはなかった。  しかし、このたびのジェー・シー・オー問題点につきましては、私も自宅におりましたですが、十時前後、一時いろいろ電話が交錯いたしましたが、今までないようなやはり恐怖感に襲われた。ラジオが各地区の部落単位に、私のところは大久保というところなんですが、その部落の方は外出しないでうちの中にいてくださいという放送をしているわけですね。そういうことを聞きますと、非常に恐怖観念というか、終戦のあのような、ただ単なる爆弾かなという感じと全然違うものを抱いた、動揺したというか。周囲の電話は、かなり遠方に行きましょうという電話でございました、地元にいないで。  そういう恐怖観念というものは三十万という県民が受けたわけですから、先ほど長官がおっしゃいました健康面、心のケアという問題では、よほど対処をいただきませんと、今日的な原子力エネルギーという問題についても、国内的にはいろいろ設置場所があるようでございますが、やはり国民の理解というもの、信頼というものを取り戻すことは、この事故という、一つのジェー・シー・オー問題点でございますが、大変な問題を提起するのではないか。  また一般の方も、政府に対しまして、原子力行政というものに非常に不安感を持ってしまった、不信感を持ってしまった。これはもう事実でございまして、一昨年は動燃の事故、そして今回のジェー・シー・オー、二回の事故でございますが、一昨年の動燃の問題につきましても、阪神大震災についても、やはり出動が遅いんですね。やはり、経験の中で、危機管理という問題の中で、もっと早く体制を整えなければならない。  今日、先ほど長官、冒頭にお読みいただきましたとおり、予算面でも法の問題につきましても、この臨時国会で法案も通る、予算も可決されるであろうと思うのでございますが、問題は、そのような法とか予算とかという問題じゃなく、やはり取り扱うのは人間である。そういう視点からいきますと、いろいろ問題はありますが、とり行うその人の素質というものが重大な問題があると私は思うんです。これはやはり真剣に、命がけで原子力行政というものにきちっと取り組まないと大変なことになるのではないか。現に大変な問題を提起しておるわけでございますから。  かつて、二十年前に、東海研究所でございますか、ここのドクターが図らずもこういうものを書き残したというか、著書として出しているんですね。私これを見まして、なるほどそうであるかなという感じ、またその感慨でいっぱいでございます。  それはこのようなことを言っているんですね。今私が言った法の問題点について、また予算についても、これは財政上また法的な規制でございますから、あるべき姿であると思うのでございますが、いかなる施設といえども、これを操作し運営するのは、誤りを犯す確率が決して少ないとは言えぬ人間である。私は至言だと思うんですね。最後は人間がやるんだ、必ず過ちというのは人間は犯すのである、そういうことをくしくも二十年前に研究所にいた方が、これはドクターですが、地元でこういう本を残していきました。  先週これを拝見いたしまして、二十年前に既に警告していたことが現実の姿で今日このような被害、また事故を起こしてしまったということ、そういうことを申し上げまして、私の質問を終わります。長官、ありがとうございました。
  28. 西博義

    ○西委員長代理 松沢成文君。
  29. 松沢成文

    松沢委員 おはようございます。民主党の松沢成文でございます。大臣とは連日顔を合わせておりまして、きょうもよろしくお願いいたします。  事故の質問に入る前に、まずちょっと一点だけ、どうしてもただしておかなければいけないことがございます。これは斉藤政務次官にお伺いしたいんですが、極めて政治倫理の問題でありまして、私たちとしては政務次官の見解を伺いたい。  といいますのは、平成九年十月十四日提出の議員藤波孝生君の議員辞職勧告に関する決議案というのが出ているんですね。どういう決議案かといいますと、  議員藤波孝生君が三月二四日リクルート事件の東京高裁判決において、受託収賄罪として懲役三年、執行猶予四年の判決を受け、本日に至るも反省の意を表すことなく、いささかも恥じるところがないことは、本院がこれまで取り組んできた諸経過にかんがみ誠に遺憾である。   このことはまさに国民の厳粛なる負託を裏切るだけでなく、本院の名誉と権威を著しく傷つけ、国民の政治に対する不信を一層増大させたものといわざるをえない。議員藤波孝生君が真摯にこの点に思いを致すならば自ら潔く議員を辞職すべきであった。 こういう内容なんですね。  これは、当時の新進党、太陽党、そして民主党、この三党の共同提案でありました。私も新進党におりましたので、当然それに賛同していたわけですが、この提出者は、それぞれの党を代表して、中野寛成議員、岩田順介議員、吉田公一議員となっている。その賛同者に、当時の新進党を代表してだと思いますが、斉藤鉄夫政務次官のお名前がある。藤波孝生代議士が東京高裁において懲役三年、執行猶予四年の判決を受けて、これはもう許すことはできない、辞職すべきだと言っているんですね。  さて、今国会で、私たち民主党が十月二十二日に同じような内容の辞職勧告決議を出した。ただ、それは最高裁です。最高裁の上告審で藤波氏の上告を棄却したことによって有罪が確定したんです。この前の斉藤さんが賛成していたのは高等裁判所ですね。今度は最高裁で有罪が確定したんです。私たちは同じ内容の辞職勧告決議を出したんです。  斉藤政務次官、政治家として、政治倫理に対する考え方を変えたんでしょうか。この決議案を出したときに賛同者であったのであれば、これは党はどうということじゃなくて、一政治家としてやはり私は賛成すべきだと思いますし、あるいは、どう国民に弁明をされるのか。やはりこれは政治家としてぜひとも国民の皆さんに明らかにしていただきたいと思います。     〔西委員長代理退席、委員長着席〕
  30. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 お答え申し上げます。  私が所属しております公明党は、議院運営委員会におきまして、最高裁判決で藤波元官房長官に対する刑が確定した事実は非常に重いものであり、藤波氏は議員を辞職すべきであると述べております。この問題について、私の基本姿勢もこの党の基本姿勢と変わっておりません。  ただし、藤波氏は、最高裁判決後直ちに自民党を離党し、出処進退についても、議員一人では決められない、支援者の意見も集約したいと言っております。また、私も議員が自発的に辞職をされるというのが最もあるべき姿だろうと思っております。  その意味で、決議案を採択する時期なのかどうか、もう少し時間を与えてもよいのではないかとの立場から公明党は本会議上程の動議に賛成しなかった、このように聞いております。
  31. 松沢成文

    松沢委員 私は、藤波代議士がどういう事情でどういう考えなのかというのを聞いているのではなくて、斉藤政務次官が、以前の決議案には賛成をしておきながら、今回の決議案には賛成ができない、議員としてこういう態度になったのですね、党はいろいろあったとしても。  今、党の説明もありましたけれども、やはり党もさまざま事情があるのでしょう。それは事情があると思います。ただ、公明党としても、以前全員が新進党にいたわけです。全員が同じ態度をとっているわけですよ。それが、今回の議院運営委員会でさまざま理由を述べて、今回は最高裁で有罪が決まっているのですね、高等裁じゃないのですよ、それには賛成できない、こういうことなんですね。  私は、斉藤政務次官、政治家として、政治倫理、きちっとした信念を持ってやっているのであれば、この二つの行動の違いは国民に納得できる説明ができないと思います。それをしていただけるのであれば、今のような説明になるかもしれませんが、私は、もし政治倫理のことをきちっと自分の信念の中に持っているのであれば、党の中で徹底して、この勧告決議案には党は賛成すべきだと。ここまでおっしゃった形跡も余り私は聞いておりません。いかがですか。
  32. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 党の考え方そして私自身の考え方は、先ほど申し上げましたとおり、有罪が確定した事実は非常に重い、そういう意味で藤波氏は議員を辞職すべきである、この考えは全く変わっておりません。  しかし、現在、私は政務次官として政府の一員でございまして、立法府における勧告決議案の賛否について申し上げる立場にないというのが現在の立場でございます。
  33. 松沢成文

    松沢委員 私個人としては藤波議員が辞職するべきであるとは今明言されましたね。ただ、さまざま立場があるので、それを言うあれではないということだと思うのですけれども。  この問題はこれ以上やっても、きょうは科学技術委員会ですので。私はある意味で非常に残念であります。もしそういう信念を政治家としてお持ちであれば、きちっとそれを主張すべきだというふうに思います。私だったらそうします。  さて、科学技術委員会で、臨界事故に対する質問に入りたいと思います。  先日、原子力安全委員会事故調査委員会から緊急提言中間報告というのが出ました。私も読ませていただきました。今回の事故は、ジェー・シー・オーの、企業のずさんな運営体制が直接的な原因であるというふうに述べています。  ただ、それと同時に、例えば「事故への対応」のところで、加工施設での臨界事故を想定した防災準備がなかった、事故状況把握がおくれて的確な初期動作が困難だった、国、県、村の情報伝達ルート等が有効に機能せず迅速な対応が十分でなかった面があると。これはやはり、国としても事故への対応でまずいところがあった、こう認めているわけです。  そして、「4.事故原因とそれに関係する状況」という中で、国の規制あり方について、一、安全審査あり方、二、チェック体制あり方という二点において、結果として今回のような事故が発生しており、改善策検討が必要だと。結果として失敗しているんだから、反省して直さなきゃだめだということです。そうだと思います。そこでさまざまな提言を行っていて、「国における安全規制の再構築」というところでも、五つ、六つ提言を行っているのですね。  きょうは、事故調査委員会がある原子力安全委員会委員長であります佐藤先生に来ていただいていますので、見解を伺いたいのですが、この中間報告は、まず、直接的な原因ジェー・シー・オーのずさんな運営にあった、これは明記しております。ただ、行政の責任ということは明記はされていないのですが、今私が指摘した点を把握しますと、当然行政としても責任があった、私はこう解釈しますけれども、委員長はいかがでしょうか。
  34. 佐藤一男

    佐藤参考人 この事故調査委員会というのは、必ずしも責任を追及するのが役目というよりは、その背景にさかのぼって事実を明らかにするということでございます。私どもはそれを重く受けとめて、そして、もちろん責任の所在、今までどこが至らなかったのか、これは、まさに御指摘のように、結果として事故が起こっているわけですから、単に言いわけをするとかなんとかいうふうなことで終わってしまってはいけない。これを非常に重く受けとめて、そして万全の対策をこれから講じていかなければならない。  この中間報告にも、御指摘のとおり幾つかの御提言がございます。私どもこれを非常に重く受けとめておりまして、そのうちの幾つかは、まだ十分とは決して申し上げませんけれども、手を打ち始めたものも既にございます。ただ、全体としては、今先生御指摘のとおりに受けとめているということでございます。
  35. 松沢成文

    松沢委員 委員長としても、行政の責任も看過できない、あったという認識だと思います。  それでは、中曽根大臣、中曽根大臣はこの中間報告を読まれたと思います。そして、これまで国会の方でもさまざまな議論もしてまいりました。また、大臣もいろいろ情報収集をされて、今回の事故原因等々を考えていらっしゃると思います。  そこで、大臣に、今までの発言もありますけれども、端的にお伺いしますが、今回のジェー・シー・オー臨界事故、当然、事業所のずさんな運営体制、この責任は大でありますけれども、それと同時に行政の責任もある、こうお認めになられますか。
  36. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 今までの経緯とか現在の私どもがとっている状況についての説明は、重複いたしますので申し上げません。端的にお答えさせていただきます。  今、私ども何をすべきかということを考えますと、先ほども申し上げましたけれども、住民の皆さんの御不安を一日も早く取り除く、それから健康問題について御相談に乗って、とるべき対応をきちっとやるということ。それから、今も安全委員長の御答弁がありましたけれども、原因の解明をきちっとやって、安全審査あり方はどうだったかとかチェック体制はどうだったかとか、そういうことをきちっと事実関係を究明して明らかにして、さらに再発防止策をきちっと打ち立てるということが今最大の責務だと私は思っておりまして、これらに全力で投球すべきと思っております。  今申し上げましたようないろいろな調査とか、御審議いただいてもおりますので、そういう結果を踏まえて、今委員が御指摘の点などについても判断をしていきたい、そういうふうに思っております。
  37. 松沢成文

    松沢委員 大臣おっしゃるとおりだと思うのですね。事故原因究明、そして把握、今後二度と起きないような再発防止策、あるいは、万が一起きる可能性があるのですから防災対策、あるいは地域住民の不安解消のためのさまざまな施策、当然です。やらなければ絶対だめです。それをやるのが責任者である大臣ですね。  しかし、それと同時に、こういう事故が起きてしまった、そして行政の責任はあるんだということになったら、その責任をどうやって結果責任としてとるのかというのも大事だと思うのです。  そこで、少し質問を続けたいと思うのですが、前回の質問のときに、斉藤政務次官が質問者に対してこう答えているのですね。裏マニュアルを見抜けなかった科学技術庁に責任はある、そして、今までの検査のやり方では不十分だったことが証明された、科技庁の責任はあると明言されている。これは事実ですね、議事録も調べましたけれども。
  38. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 その発言は、私の記憶によれば、多分辻元委員に対しての答弁だったと思います。  そこで私が言いたかった文脈は、規制強化しなくてはならない、しかし、その規制強化するのを突き詰めていけば、例えば民間の方が作業をする、その後ろにお役人が一人ついてすべてチェックをするというところまで行き着いてしまう。それは現実的ではない、どこかでその線を引かなくてはならない。どこでその線引きをするか。確かに、今までの線引きでは、現実事故が起きたという事実からしていけないんだろう。どこにその線引きをするのがいいのかという議論をこの国会の場でしていきたい、そういう文脈の中での私の発言でございます。
  39. 松沢成文

    松沢委員 文脈の御説明がありましたけれども、私は、こういう発言があった、まずその事実を聞いているわけでありまして、いろいろ文脈から判断すると、何かこうじゃないということを言いたいんですか。
  40. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 いえ、そうじゃないということを言いたいのではありません。そういう文脈の中でそういう発言をしたことは確かでございます。
  41. 松沢成文

    松沢委員 それでは、斉藤政務次官も、科学技術庁の責任はあると明言されていますね。  次に、この質問の後に開かれた事故調査委員会、第三回目、二十二日に開かれている。このときに科学技術庁が、私は調査委員会にいませんからだれかがわかりません、これは原子力安全局長なのかだれかはわかりませんが、対応すべき緊急事態としてウラン加工工場での臨界事故を想定せず、中性子線が放出される事故対応できなかったことなど、今回の事故での反省点報告しているんですね。このときに橋本知事も出席されていて、危機管理ができていたか甚だ疑問だと厳しく政府を批判している。  そして、このとき科技庁は、原子力安全委員会の防災指針と同庁の緊急事態対応マニュアルがいずれも臨界事故を想定していなかったため、中性子線量の測定や影響予測ができず、臨界の継続に気づかなかった上、国と県、市町村連携も不十分だ、この報告書にも出ていますけれども、こうして科学技術庁自分たちの非を認めている。  そして、安全規制面でも、ここにも載っていますけれども、濃縮度五%以上のウラン溶液の加工施設の指針がなかった、二つ目に、技術的能力の審査が最初の申請時だけで、能力の維持を確認できなかった、三つ目、保安規定を守っているかどうかの調査任意だったため、最近七年間も立入検査をしていなかったなどの問題点を掲げ、今後抜き打ち検査検討すると改善策まで言っているんですね。  事故調査委員会科学技術庁がこうした報告をしているということは、科学技術庁として、やはり今回は大きな判断ミスがあったり、あるいは検査を十分にしていなかった、こういう反省点も踏まえて、行政責任があるということを明言していると思うんですが、大臣はいかがですか。
  42. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 当庁といたしましては、法律にのっとって、日ごろから原子力行政全般にわたって行っているところでございます。しかしながら、このような事故も発生いたしまして、今委員がおっしゃいましたようないろいろな点について不備等があったのではないかというような観点から、いろいろ今議論もいただき、私どももチェックをしているところでございます。  また、調査委員会におきましても、原因の解明を初めとして御審議いただいているところでございまして、私ども、万全の体制であったとは決して申しません。ここで謙虚にもう一度点検をして、不十分なところは今後直していかなくてはならない、そういう気持ちで今いろいろな対応をとっているところでございます。
  43. 松沢成文

    松沢委員 長官の前の長官、有馬長官、私はこの前も質問させていただきましたが、有馬長官が内閣改造の前、すなわち四日までですか、長官をなさっていて、内閣改造があって中曽根新長官にかわられた。事故発生時、初動態勢は前長官がやったわけですね、時間軸で見ると。それで、今度長官がかわられたから、あのときは前の長官の話だから私は知りませんとか私は責任ありません、こういうことじゃないでしょうねと私はただしました。そうしたら、中曽根大臣は、もうすべて今の科学技術庁長官である私が責任を持って対応しますということだったんですね。  さて、その前長官の有馬さんが、本当にすごい有識で立派な方だと思います、私はお会いしたことがまだないんですが、今月号の中央公論のインタビューで非常に正直に御自身の真情を吐露されているんですね。事故発生当日の自身の対応政府の初動態勢に不備があったことを認めている、反省の弁も述べていることが明らかになりました。  有馬氏は、野中当時官房長官に直接電話で報告したのは、事故発生から約七時間半も経過した九月三十日午後六時十分ごろだったと証言しています、この中央公論の論文の中で。そこで、クオートしますけれども、私が甘かった、もっと早く官邸に申し上げるべきだった、首相にも「いち早く事態の深刻さを認識してもらって、内閣全体が動かなければいけない問題だとお願いすべきだった」、こう言っているんです。  要するに、科学技術庁長官が、この重大な事故に気づくというか認識するのが遅かった、甘かった、それが総理に対する報告事故が起きてから七時間半後になってしまった、こういうふうに書いてあるんです。御自身が総理大臣に直接という意味ですよ。情報としては行っていても、これは大変な事故なんだ、臨界事故なんだ、すぐに対応をとらないと大変なことになるというようなきちっとした科学者としての認識が甘かったし、それが総理報告が、重大事故だという説得がおくれたんだと反省の弁を述べているんですね。私は、非常に正直な真情の吐露だと思います。  私は、今回の事故は、確かに政府科学技術庁の行政責任もある、それと同時に、小渕内閣の初動態勢のおくれ、危機認識の甘さ、つまり小渕内閣の政治責任も大変大きい、こういうふうに指摘をしてきました。まさにそれを、その本人である有馬科学技術庁長官がみずから認めているわけです。中曽根長官は、有馬長官のやったことは科学技術庁長官としてすべて私が受けますということであります。  有馬長官が、政府の初動態勢、特にこの事故が重大で大変なことなんだというのを最高責任者である小渕さんに伝えるのが、私、自分の認識が甘かったから七時間半もおくれてしまった、七時間半もたってしまった、これが大変な失敗だったと反省されています。  では、中曽根長官も同じ認識ですね。違ったら答えていただきたい。
  44. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 ちょっと経緯を御説明させていただきます。  科学技術庁では、事故の重大さを十分に認識をまずいたしました。その上で、官邸への連絡につきましては、当日の十二時半過ぎに官邸の総理秘書官に第一報を連絡いたしました。これを受けて、十二時四十分ごろ、総理秘書官より小渕総理報告がなされました。つまり、十二時四十分ごろには総理も御存じであったということ、私どもも秘書官を通じて通知をしているということであります。  それから、小渕総理からは、直ちに事態の掌握に努めること、それから情報を上げること、そういう御指示がありました。また、野中官房長官へは、原子力安全局長から十五時二十分に、事故状況と、有馬前大臣を本部長とする政府事故対策本部を設置したことを御報告いたしました。その後、委員も御承知のとおり、十九時四十五分に、再臨界可能性が高いこと、また第一回の政府事故対策本部会合を開催したことを報告したわけでございます。  言いわけを申し上げるつもりはありませんけれども、事実を申し上げますとこういうことで、科学技術庁といたしましては、事故重大性認識して、そして官邸との連絡には遺漏がないように対応したものと私は考えております。  有馬大臣が、御自身のおとりになりました対応につきまして、今委員がおっしゃいましたようなことが新聞に報道されているということでございまして、私もその記事は読みました。大臣の素直なお気持ちを表明されたものと思いますし、私は、この事故再発防止を中心とするいろいろな対応について、有馬大臣の後を引き継いで、今責任者として全力で取り組んでいるということでございます。
  45. 松沢成文

    松沢委員 大臣の経過の説明は、私も十分調べました。そのとおりだと思うのですね。  ただ、私が言いたいのは、有馬さんも、科学者として恥ずべきところがある、認識が甘かったと。というのは、東海村で、ジェー・シー・オーという施設事故が起きた、臨界可能性ありというファクスも来た、それで政府は動き始めたわけです。ただ、これは原子力安全委員会でも議論があったことですけれども、臨界が続いている、大変なことになっているんじゃないか、中性子線をはからなきゃいけないのじゃないか、臨界といったら、これは日本で初めての事故ですから、そこの認識に至るまでに時間がかかってしまって、総理にこの事態の重大性をしっかりと認識させるのがおくれてしまったということを言っているのですよ、これは。だから、何時に科学技術庁事故対策本部をつくりましたとか、何時に一応官邸には情報を送りました、こういう経過じゃない。私はそこを聞きたいのですね。  それで、次にこう言っています。「事故現場では当然、中性子は測定してあるだろうと思い込んでいた」「中性子も測れと言わなかったことは科学者として非常に残念」だと語っています。  要するに、事故を起こした核燃料加工会社のジェー・シー・オーに対する国の検査体制が不十分だったことも同時に認めているのですね。「もっと回数を多く検査を厳しく行っていたら、今回の事故は起こらなかったかもしれない」、こうも言っているのですね。  当時の科学技術庁の行政のトップが、中性子線をはかることがおくれてしまった。有馬さんがどういうふうに報告したのかわかりませんけれども、恐らく安全委員会でも御議論があったのでしょう。ただ、安全委員会でもその結論に至るのがおくれてしまった。有馬さんもそこに気づくのがおくれてしまった。科学技術庁のトップとしてはやはり反省しなければいけない。そして、検査体制も不十分だったろう、「もっと回数を多く検査を厳しくやっていたら、今回の事故は起こらなかったかもしれない」、ここまで今の反省の気持ちを吐露しているのですね。当時の科学技術庁長官有馬さんがここまで御自身の心情を吐露して認めているわけで、中曽根長官からははっきりした言葉で聞かれませんが、私は政府の行政責任は極めて大きいというふうに考えますけれども、長官、もう一度、いかがでしょうか。
  46. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 有馬大臣が、科学者としてのお立場から、御心情といいますか、お気持ちを述べたものでありまして、そういう意味で私もよく理解をしております。
  47. 松沢成文

    松沢委員 まだ、私は行政の責任を問うべきことが幾つかあると思うのです。  これは新聞の情報であります。日米の原子力協力の取り決めというのがあるんですね。これは長い正式名です。大気拡散及び線量評価モデルによる予測結果を共有するための通信網プロトタイプの開発に関する特定覚書取り決めということで、日本とアメリカの間、詳しく言うと、科学技術庁所管の特殊法人である日本原子力研究所と米国エネルギー省の間で締結されている協定なんですね。  この取り決めは、非軍事の原子力関連施設での事故などの緊急時に、現場から出る放射性物質の飛散や放射線量について分析するため、事故データを原研と同省のローレンス・リバモア国立研究所との間で共有し、協力し合うための通信網を整備するのが目的。今回のジェー・シー・オーで起きた臨界事故のような際に、事故状況のデータを同研究所に送ることが想定されていたんですね、協定が続いていたならば。ところが、今回、取り決めが失効していたので送れなかったわけですね。  これに対して、科学技術庁は、取り決めが事務的な手続のミスで切れていたのは事実だが、今回は局所的な事故であり、国内のシステムの方が適している、失効していたことで影響が出たわけではない、こうおっしゃっている。  確かに、この科学技術庁説明というのは、私はちょっと専門家じゃないのでよくわかりませんが、一理あるのかもしれません。ただ、行政として、こういう取り決めをずっとこれまで続けてきているわけです。それを行政の怠慢で忘れていたわけですよ。そうでしょう。だから失効していたんですから。事務的手続のミスで切れていたのは事実だと認めているんですよ。  今回、起きない、起きない、科学技術庁も絶対あり得ないと言っていた臨界事故が起きちゃったのですね。この臨界事故でさまざまな影響が出ているのです。中性子線も相当飛散したのです。そのときにはからないとわからないですよ、中性子線は。その観測も、始めるのがおくれたんです。それで、放射性物質、それだって少量ですけれども出ていたんですね。沃素の問題もありました。  これは局地的な事故で、今回は関係なかったんだから、切れていたって別に影響なかったからいいじゃないかと開き直っているんですね。大臣、行政として極めて好ましくないですよ。協定は失効しちゃっているのですから。きちっと結んでいっていれば、アメリカとの間で通信があって、何か情報の交換ができた可能性だってあるんです。行政として手落ちじゃなかったんですか。長官、いかがでしょうか。長官です。私は政治家の答弁を求めたい。
  48. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 ローレンス・リバモア研究所と原研の間の、放射性物質飛散のときの地域への影響地域住民へ与える被曝量の評価のための研究の取り決め、これが単純ミスで失効していたのは事実でございます。その点につきましては、開き直るつもりは毛頭ございません。  ただし、今回の放射性物質の飛散についての評価につきましては、日本にもSPEEDIなどという国際的にも評価されたモデル、また計算システムがございます。そういう意味で、実質的な損害といいましょうか、評価のおくれということはなかったということを表明したものでございます。  ただし、ミスでこの共同研究が継続されていなかったという点については、大変申しわけなく思っております。
  49. 松沢成文

    松沢委員 今斉藤政務次官が、正直に行政のミスだったと認めていただきました。  もう一点ございます。これは、私が前回の質問で委員長にお願いして、アメリカからの協力要請について、ぜひとも来ているのであればそれを公開をしてほしいというお願いをして、理事会に諮っていただいて、提出された資料でございます。  十月一日付、これは事故の翌日ですね、リチャードソン・アメリカのエネルギー省の長官が有馬大臣にあてた書簡であります。ここに、エネルギー省側は「放射線事故、緊急時、モニタリング及び評価、大気モデリング及び医療相談及び助言について広い経験と知識を持っています。我々は四つの分野について短期及び長期的対応の援助を提供できます。」四つの分野というのが、一つが放射線緊急時援助センター、訓練所、二つ目が事故復旧チーム、三つ目が大気放出、モニタリング及び評価、四つ目が事故調査及び評価、項目を挙げてこういうことを、大変な事故かもしれないから私たちはぜひとも協力したいと、アメリカからすぐに援助の申し出があった。十月一日です。それで、このエネルギー省ではネリス空軍基地にこのチームを待機させて、日本から来てくれという要請があればいつでも飛び立てる、こういう準備態勢に入っていたのですね。  さて、それを受けて中曽根長官は、私前回質問させていただきました、そのときにこんなお答えでございました。「これに対し当方からは、」日本からは、「事故発生直後の緊急事態はほぼ収束した状況にあり、今後は施設内の状況把握、除染、さらには事故原因の究明などの作業を行っていくことを伝達いたしまして、今後の状況については逐次情報を提供していく予定であり、その上で米国として実情把握をされたいとの考えには前向きに対応したい」というような回答をして、いろいろ理由はありますけれども、今回は大丈夫です、御遠慮願いますと断っているんですね。  長官、私は科学者じゃないんで、長官も科学者じゃないんで、細かいところの議論を私はするつもりはないんですが、何度も読みました、この支援を受けていたら状況が変わってくる部分もあったんじゃないかなと思うんです。  例えば、この前私は原子力安全局長に質問をしたんですね。事故から十一日まで、要するに十日間以上ずっと転換試験棟の排気口から沃素131という放射性物質が漏れていた、これはわからなかったんですよね。後で気づいたんですよ。そして安全局長はこう答えている。「先ほどの沃素の話も、」私が言った沃素の話も、「それは後になって排気口のところが二倍であったということはわかったわけですが、それまで近づけないということもございまして、あるいはモニターがなかったということも。」こういうことを言っているんですね。モニタリング、ぜひとも支援したいと事故の翌日言ってきているんですよ。もしこういう支援で日本ができないことをやっていただけた可能性は、大臣、私はあるんじゃないかと思うんですね。  それで、もう一点、私は本当に素人でありますから細かい議論は苦手なんですが、放射線量がどれくらいまで拡散していたかというのを早くはかりたかった。けれども、転換試験棟の中には入れない。ですから、相当後になって、その沈殿槽の中から溶液を取り出して、その分析によって放射線量を割り出したわけですね。そのデータがこの前出たわけですね、大臣。  これは素人の勘ぐりですけれども、例えば、アメリカはこういう危機対応チーム、ロボットなんかを持っている可能性もあると思うのですね。例えば、そのロボットが、人間が入れない転換棟の中に入ってこういう溶液をもう少し早く取り出していれば、そのデータの分析も早かったわけですね。  以上二点は、私は素人でありますから、専門家の先生から見たら反論がたくさんあると思いますが、中曽根大臣、ここからは政治家の議論です。  十月一日という、事故が起きて翌日、まだようやく沈殿槽の中の臨界をどうにかとめられたときです。住田代理が現地に乗り込んでいって、いろいろ指示をして、冷却水を抜いて、硼酸水を最後入れて、ようやくとまったかな、こういう日ですよね。それが、当方はほぼ収束したから今後は大丈夫だと、ここまで親切な支援があって、これは要らない、そういう判断ができるときだったんでしょうか。  大臣、政治家としていかがですか。
  50. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 アメリカからの申し出につきまして、日本側からそれを断ったということは、そういう事実はございません。ただし、このアメリカからの申し出をよく見てみますと、いわゆる施設から大量の放射性物質そのものが出る、その放射性物質によって地域が汚染される、そういうものに対応する緊急援助隊、そちらに主力のあるものではなかったかと思います。  ところが現実には、放射線影響、二種類あったわけですけれども、核分裂が続いて、沈殿槽から直接、直達してくる放射線による影響と、それから先ほど申し上げました放射性物質そのものが外へ出ていって、それによる被曝、この二種類あるわけですけれども、今回は、この放射性物質そのものが外へ出るということについては、かなり量的に少ないということが早い段階で、ある意味でわかった。そして、沈殿槽そのものの核分裂については、十月一日の未明これは終了した。こういうことを総合的にアメリカ側が勘案して、急遽派遣をするということは取りやめになったんだろうと思います。  日本側として、やんわり断ったとか、そういう事実はございません。
  51. 松沢成文

    松沢委員 これは私はやんわり断ったというふうに大臣には聞いていますよ。今の状況を伝達して、今後の状況については逐次情報を提供していくというようなことを話し合って、そしてやはり今回はいいというふうに断っているんじゃないですか。だって、断っていなければ、ずっと待機して、ずっと待ち続けるんですか、アメリカチームは。これはやはり日本が、今回はいろいろな状況があるから大丈夫だよ、申し出ありがとうございますと言って断っているんじゃないですか。そうじゃないと、アメリカはずっと待っているんですか。
  52. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 こちらが得た情報は逐次アメリカに報告をいたしました。そのことだけでございまして、待っててくださいとか、お断りしますということは一切言っていないそうでございます。
  53. 松沢成文

    松沢委員 お断りというのを定義しなきゃあれなんですが、ただ、今回は大丈夫です、情報は提供しますからと、ていのいいお断りなんですね。その判断をここでやってもしようがないですから。  さて、せっかく委員長に来ていただいているので、委員長、こういうアメリカからの申し出があった、これは原子力安全委員会に科技庁の方から諮られましたか。
  54. 佐藤一男

    佐藤参考人 後時といいますか、若干時間がたってから、アメリカあるいはIAEAその他からさまざまなお申し出があったということを伺いました。十月一日未明とか、十月一日現在ではそれはまだ詳細に伺った記憶はございません。
  55. 松沢成文

    松沢委員 さて、また問題点が発覚しましたが、こういう今後の対応、私は大変重要なことだと思います。  なぜ科学技術庁原子力安全委員会に諮らないのでしょうか。例えば、中性子線が出ているのかどうか。この前原子力安全局長は、自分では判断できなかったから、自分の判断では余りにも恐れ多いからとにかく相談するんだといって相談した。そして原子力安全委員会の合議制にまったわけですね。そこの合議制の中で住田委員長代理が、テレビでもおっしゃっているように、私は臨界の続いている可能性があると主張したけれども、周りの意見あるいは科技庁の情報から判断して、いやということになって、第一回目の二時からの会議では臨界が行われているからという最終結論にならなかったというのがNHKのテレビでの報道なんです。  そしてまた、その日の夕方、今度は茨城県から、十キロ以内の屋内退避ですか、これをどうしたらいいか国に判断してほしい、県ではわからないというのが来たのですね。それも科技庁だけでは判断できないから原子力安全委員会に諮っているはずなんですね。  都合のいいことだけ原子力安全委員会に諮ってそこに判断してもらう。こうやってアメリカから来ている、私はかなり専門家に見ていただかなければ判断できないような難しい内容だと思いますよ、そういうことは科技庁で、いやちょっと今回はいいよと自分たちで決断してしまって断っている。  これは、科学技術庁原子力安全委員会を、総理府の審議会としてありますけれども、ある意味で御用機関で、便利なとき使って、責任逃れでそこで議論してもらおう、ばれてはまずいことは諮らないで自分たちでさっさと断ってしまおう、こうしか見えないのですよ。大臣、いかがですか。
  56. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 科学技術庁のなすべきこと、所管、役割、それから安全委員会のなすべきこと等については、きちっと担当の局長からまず御説明いたさせます。
  57. 松沢成文

    松沢委員 いや、いいです。それはいいです。私はいいです、それは。私はそうとしか思えないのですね。大臣、ぜひとも政治家としての御意見を聞きたかったのですが。  さて、私はきょう四十分ほどかけて科学技術庁のやはり行政責任は極めて重いということをさまざまな例を挙げて話してきました。政務次官も行政責任を認めていらっしゃる。そして科学技術庁事故調査委員会に、科学技術庁の責任はある、そういう説明をして諮っておられる。その結果この中間報告が出てきた。そして有馬前大臣も、科学者として、私は本当に反省している、初動態勢も悪かった、チェック体制も甘かった、科学技術庁の責任はある、こういうことですね。  そこで大臣、前回の質疑の中で、大臣も先ほどもおっしゃいましたけれども、こうした調査委員会報告が出たら政治家としてきちっと判断をさせていただきたい、行政の責任があるのであれば、どういう形でそれを国民の皆さんに納得していただけるか政治家として判断をしたい、こういう発言をなされているんですね。  いよいよ中間報告も出ました。今後、最終報告というのがあると思いますが、最終報告に向けてはさまざまな環境の問題、周りの問題も広く議論されて、年内には出したいというような方向を持っているようであります。だから中間報告の中で、こういう形で行政の責任もきちっと、ある意味で、先ほど委員長も行政の責任ありということを明言されました。大臣、政治家として行政責任、結果責任をどういう形でおとりになるのですか。それを明言していただきたいと思います。
  58. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、今何をなすべきか、それを私どもは一番最優先で考え、また行動しているわけでありまして、それが私どもの今の務めだと思っております。それだけでございます。
  59. 松沢成文

    松沢委員 私は、もうこれは最後の発言ですが、今回の事故というのはあってはならない事故日本で初めての臨界事故であります。何と六十九名の方が被曝をして、事故を起こしたところにいた三人の方とか、あるいは決死隊で入った方は含まれていません、現場にいた六十九名の方が被曝をされて、何と三十万人近い茨城県民が臨界の恐怖、核の恐怖におびえて過ごしたのです。海外からの日本原子力行政に対する信頼も失墜させた。国民の、私たちにとってなくてはならないエネルギーである原子力発電、あるいは原子力政策に対する信頼性も大きく失墜させているのですね。この行政責任は極めて大きい。あるいは、初動態勢をきちっととれなかった政治責任も極めて大きいと思うのです。  大臣は、結果が出たらきちっとした判断をするとおっしゃっている。今回は中間報告だからまだなのかもしれません。年内には最終報告が出る、そうしたら政治家として、科学技術庁のトップとして行政責任をきちっととっていただきたい。その御決断をいただきたい。そのことをお願いして私の質問を終わります。  以上です。
  60. 北側一雄

    北側委員長 吉田治君。
  61. 吉田治

    吉田(治)委員 民主党の吉田治でございます。  今の同僚議員の質問に関連してちょっとお聞かせいただきたいのですけれども、これは安全委員長とそれから大臣に対してなんですけれども、今回の事故についてはこうですね。事故原因に関して、たしか前委員会においては原子力安全局長は、科学技術庁に何らの責任なしとは言えない、何らかの処分をするというふうなことを言われた、新聞にも報道された。安全委員長として、事故じゃないですよ、事故が起こった原因だとか、それについての科学技術庁としての責任、それについてどうお考えなのか。  そして、大臣、それについて科学技術庁が、今まで過去の、例えば検査の不備だとかいろいろなことがあった場合に、これから過去にさかのぼって、例えば事務次官であるとかそのときの担当局長であるとか、そういう方々の処分というふうなものは、さかのぼって過去の人たちに対して考えられ得るのかどうか、ちょっとお答えください。
  62. 佐藤一男

    佐藤参考人 これは、ただいま事故調査委員会その他においてその事故原因を背景にさかのぼって御調査をいただいて、私どもとしても、どうぞ遠慮会釈なく問題点を御指摘いただきたいと申し上げているところでございます。その結果を見れば、どこにどういう責任があるのかということについても私はおのずと明らかになるものと考えております。  その責任をどのような形で、例えば行政的に処分とかなんとかそういうことをやるかということについては、これは私、必ずしも安全委員会の所掌とは思いませんが、その責任の所在というものは完全に明らかにしていかなければならないというふうに考えてございます。
  63. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 先ほども松沢委員の御質問にお答えいたしましたけれども、今は、処分とか責任とか、そういうことについて意見を述べるときではないと私は思っておりまして、事故原因究明、再発防止住民皆様方の御不安の解消、健康問題への対応、風評に対する対策等々に一〇〇%全力を注ぐべき、私はそういうふうに思っております。
  64. 吉田治

    吉田(治)委員 私申し上げたのは、今せいとかは言っていないのです。これから究明していったときに、いつかの時点で、それが起こった、実はこういうことだったよと。私はすぐにやってくれとは決して申しません、それよりも地元のことが大事ですから。後ほど私の質問にある、じゃ損害補償はどうするのかということも重要なことです。  そういうことを含めていったときに、翻ったときに、事故の以前の問題でこういうことがあったよ、それについて、行政の責任あるお立場として、もしもそのときに、そのときの科学技術庁の中において何らかの責任があった人、現にOBになっている方もいられるかもしれない、そういう人たちに対する処分というふうなものが行われる、また行われたときに、そのOBになった人たちに対してはどういう遡及的な関係が行われてくるのか、これは答えられますか。
  65. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 たびたび申し上げておりますけれども、責任とか処分とか、そういうことについて、先のことというふうなお話でありますが、今述べたり、それから意見を言うときではない、対策全力で取り組む、そういうことでございます。
  66. 吉田治

    吉田(治)委員 事務方に私はあるところで、部会か何かで言ったんですね、このことを言うよと。ちゃんと大臣に説明しておかなくちゃ。あなたたちの先輩が今どういうところになったの、今度の人事で、OBになった人が。そういう人たちを傷つけることになるんですよ、今のことをちゃんとしておかなくちゃ。だから私は部会で何度もあなたたちに言ったんじゃないの。そういうことを一切無視して大臣にこういう答弁をさせるということだったら、私は実名を挙げて、固有名詞を出してやっていかざるを得なくなるじゃないの。こういう事務方だからこんなことになるんでしょうに。大事な私の先輩でもあるし、あなたたちの先輩でもあるから、人が気を使ってやっているのに。聞いていないとは言わさへんよ、だれとは言わへんけれども。  では、当日の状況について私は質問に入らせていただきたいと思います。  私は、きょうは委員長代理にぜひともおいでいただきたかった。なぜか。住田さん、私は三点教えてほしいんですよ。しようもないことかもしれない、しかし、一般国民が知りたいのはやはり委員長代理から聞かせてもらいたい。  一点。先ほど同僚議員の質問の中にもありました。臨界は続いているということが、安全委員会の中で、実はそこは、いやどういうわけか、それは委員長代理、あなたはテレビのカメラに言いましたよね、言ったんだけれども、なぜそれが委員会の意見にならなかったんですか。残念ながら、委員長代理の任期、そろそろお切れになるから、それまで待ってくれというんだったらお待ちします、守秘義務があるから、仲間の関係があるから。しかしながら、こういう事故のところにおいては、それはなぜそうなったのか。そこに安全委員会の諮問委員会、八条委員会としての限界があるのであれば、これは変えなければいけない。  そして、二点目。委員長代理、現場には何の交通手段を使われて、どういうふうに行かれたのか。そして、その費用はだれが払ったのか。  そして、三点目。その後、住田委員長代理は、朝日新聞の十月二十五日付で、こういうふうなことを言われています。「原研と核燃機構が東海村になければ、正直言ってどうしようもなかった。結果的に考えうる最高のメンバーが現地対策本部にそろった。」「測定器や臨界を抑えるホウ酸水も彼らが自発的に用意してくれた。」これは言われていますね、住田代理。だから、反対を言ったら、対策をするにはある意味でベストといったらいいのか、非常に一番いい地域以外で災害が起こっていたら代理はどうなっていたと。あの地域に、それ以外のものがないところで、例えば大阪の熊取にも工場があると思います。そこは臨界が絶対起こらないところだと私は信じていますし、そういう地域だ。しかしながら、そこで、起こらないところで起こったという、もしもそういう地域だったら、委員長代理、それはなすがままに待っていた、それとも、日本じゅうからそういう専門家集団を呼び集めて、時間はかかったけれども結論は同じことになっていた。  この三点、委員長代理、いかがですか。
  67. 住田健二

    住田参考人 お答えいたします。  大阪弁で質問されますと、つい私もつられて大阪弁が出ますので、お許しいただきたいと思います。北と南は違うようですけれども、やはり大阪弁でありますから、ちょっとお許しいただきたいんですが。  まず、臨界が続いているかどうかということを安全委員会の席上でどういう発言をしたか。これは、あちこちで随分皆様から同じ御質問をいただきました。私自身も、実はあのNHKの報道については、NHKとしては随分いろいろちゃんとした報道をなさってくださっているんですけれども、あの点については非常に残念だと思うことがございますので、ちょっと正直に申し上げたいんです。  恐らく先生方、こういう国会等で御発言なさったり、あるいは答弁をされたりする場合に、テレビの番組というのは必ず、あるカットだけを使いまして、その後何を言ったということが出てこないんでございます。安全委員会の席上で、臨界であるということを非常に私は明言をいたしました。ほかの委員の方は若干の保留をつけられまして、臨界可能性が非常に強いという言い方をされました。私は、残念ながらこれは臨界であると断言いたしますというふうに申し上げた。その断言いたしますという表現が前の方についておったものですから、私ははっきり言ったんですけれども、臨界であるということを申し上げた、そして、再臨界についてもというところでぱっと画面が切れちゃっているんですね、実は。  あの後が実は問題でありまして、私はあのときにこういうことを言っております。再臨界ということについて考える必要はあると。ただ、今の段階では、今持っている情報では、それについては余り考えなくてもいいんじゃないんでしょうかということを実は申し上げたんでありまして、決して私は全面否定したつもりではありませんけれども、少なくとも今すぐ直ちに何か措置をしなさいという発言はしておりません。  その点については、残念ながら、そのNHKの報道というのは、何か私が完全にその場で全部予言をしたように、えらく英雄扱いしてくださったんで、それは大変光栄だとは思いますけれども、どれぐらいの程度それがあれかといいますと、私が何か原子力技術の第一人者でとかなんとかというお褒め言葉が前にひっついておりますけれども、あれはとんでもない間違いでございまして、ワン・オブ・ゼムかもしれませんが、とてもじゃありませんけれども、私のような端くれが第一人者なんてことはあり得ないと思います。たくさんの方がおられます。そういう意味で、その程度の形容詞として聞いていただきたいと思うんです。  確かにそのときに私自身の胸の中に、これはテレビ番組に出ていないところになるわけでありますけれども、前後の取材のところのメモはたまたま私は非常に細かくとっておりますけれども、いろいろなことを申し上げておりまして、あの事故を聞いたときに、私たちとしては、臨界事故日本ではまず、正直に申し上げますけれども、これは頭の中では考えておりましたけれども、現実の問題として、私の責任のある範囲内でそういうことが起こるということは、やはり、あり得ないという言い方はしませんけれども、あってはならないといいますか、絶対それは自分では起こさないでやれるだろうということを考えておりましたので、そういう意味では大変大きなショックを受けました。  そういう意味で、当日ある程度精神的に動揺していたと思うんでありますが、ですから、原子力安全委員会の席上で私が臨界であると断言したときに、私が余りこわばった表情をしてかなり感情的に動揺していたということを、私の同僚の松原委員が隣におりまして、余り私がそういう感情を示したものだからびっくりしたということをおっしゃったぐらいであります。そういう意味で、私の言葉が足りなかったということはあり得ると思いますので、もし先生方あるいは関係の方が、私が何かあの場で再臨界ということを予想して発言したんだというふうにおとりでしたら、これは、こういう機会でございますから、ぜひ直させていただきたいと思います。  ただし、あとは少し言いわけじみますけれども、実はそのときに再臨界のことが全く頭になかったかといえば、そんなことはないんでありまして、これは専門家でありますから、私だけじゃございません、きょう御一緒している佐藤委員長、実は私の若いころ佐藤さんなんかと一緒に原研のあのタイプの、水溶液のタイプの原子炉を扱っておりましたから、当然佐藤委員長はそのことが頭にあったはずです。それから、私の前に座っておりました金川委員、これも再処理の関係専門家でありますから、その三人の、いわば原子炉関係のことをよく知っている人間の頭の中には、すぐそのことが当然あったわけであります。したがいまして、委員会は、確かに二時の公式の席上では、再臨界のことはまあ考えなくていいでしょうという私の発言で、そこで話が切れているわけですね。ただし、そのときに私いろいろな細々とした、例えば、中へ多分入れないと思うからこうした方がいいとかなんとかという細かい技術的な注文は出しておりますけれども、これはここでは申し上げません。  ただし、その後、三時半に実は私ども緊急助言組織を招集いたしましたけれども、その前に既に、安全委員会が終わりました後すぐ委員長の部屋に皆が集まりまして分析を始めまして、ちょうど委員会の間我々が受け取ることができなかった情報がどんどん入ってまいりましたから、それを見ましたときに、実は三人ともこれは再臨界可能性が十分あり得るという認識をいたしておりました。したがって、それによって我々は三時半の緊急助言組織の招集ということを行ったということをここで申し上げておきたいと思います。  ですから、皆様方は二時過ぎぐらいに我々がそういうふうに考えていたのではないかと御期待くださっているようでございますけれども、それはそうではございません。ただし、一時間ほどおくれておりますということを申し上げておきたいと思います。それでお許しいただけますでしょうか。  それから次に、現場へどう行ったか。これはタクシーでございます。科学技術庁は貧乏でございますから、ハイヤーとかそういうものを真夜中に使うことはできませんので、タクシーを三台雇ってくれまして、それで出向きました。費用はどうなっておるか、私ちょっと、申しわけございません、存じません。事務方がよく存じておりますが、当然庁費から支払われているんだと思っております。個人では、運転手さんには御苦労さまとは申し上げまして、何か差し入れをした記憶はありますけれども、それだけでございます。  それから、朝日新聞で私が原研とサイクル機構について発言したということは、今でも私はそのとおりだと思っております。つまり、東海村というのは非常に日本の中では重要な原子力関係の、これは電力会社の発電所がたくさんあるという意味ではなくて、研究開発機構という役割を持った日本原子力研究所それから核燃料サイクル機構という二つの大きな組織、あの場所でも、現場だけでも両方で約千五百人ぐらいおられると思いますけれども、そういう大きな技術者集団あるいは研究者集団がおりまして、これは申し上げたいのですけれども、決して原子炉の安全性のことだけやっているわけではありません。いろいろなことをやっております。  しかし、それだけの非常に分厚い層がございますので、何か問題が発生いたしますとすぐ電話をかけて、私などは、昔からいた関係もありますから、もう東海村のどこでだれが何をやっているかというのは非常によく知っておりますから、いきなり電話をかけて後で科学技術庁からよくしかられることがあるわけですけれども、それほどいろいろな方がそこにおられますので、何かあれば、予想外のことが起こったとしても、大体のことは対応できる。  先ほど御質問がございましたアメリカの援助云々の話も、恐らく遠いアメリカに電話をかけて御相談するよりも東海村のどなたかに聞いた方がよっぽど早いというのが私どもの心情でありまして、これは、そうでもないことももちろんあるかもしれませんから、一概に海外からどうこうということではないのですけれども、そういうことがございます。  したがいまして、私、こちらを七時過ぎに出発いたしまして九時過ぎに東海村へ着いて、とりあえず現場の周りを車でぐるっと回って様子を見て対策本部へ到着いたしまして、そのときには既に稲葉先生が本部長としてそこにいらしてくださったのですが、その状態のときには、私、行きまして、本当に一番ほっといたしましたのは、稲葉本部長の前に、原研側、これは齋藤東海研究所長以下ずらっと並んでおられる、それからサイクル機構の方は、河田副所長以下ずらっと並んでおられる、ああ、これで大丈夫だというのは、率直なところ、私は思いました。これだけの方が応援してくださったらもう大丈夫だ、これは私の偽らない感じであります。  それじゃ、よそで起こったらどうだという御質問ですけれども、これは今おっしゃったように、例えば、これは私は大阪の人間ですから申し上げますけれども、では熊取でもし仮に何かあったとしたらどうだとおっしゃったら、熊取ならば、大阪大学もありますし京都大学もありますから、原研ほどではなくても、ある程度のことはやれると思うのですけれども、もっと遠いところで、そういう大きな研究組織がそばにないようなところ、あるいは会社がないようなところですと、確かに相当のおくれが出ただろうということは率直に申し上げなきゃいけないと思います。  これは今後のむしろ私どもがやらなきゃいけない非常に大きな仕事の一つでありまして、そういう現地にどうやって通信、連絡の方法をとるか。これはまた後でお話しするチャンスがあるかもしれませんが、東京と東海村というのはわずか百六十キロでございますけれども、本部長もよくお感じになられたと思うのですけれども、なかなか東京とうまいぐあいに連絡がとれませんで、私は携帯電話というのは持っていったらつながるものだと思っておりましたけれども、なかなかつながらなかったというのが実情でございます。  ですから、そういう意味では、今の先生の御質問のようなことについては、これは早急に我々は考えなきゃいけない。何も東海村だから大丈夫だということではなくて、東海村の中ですら非常に連絡が悪くて、現地とそれから対策本部の間、あるいは県との間の連絡が悪かったというのは非常に有名な事実でございますので、我々、安全対策についてはそういうところから見直さなきゃいけないというふうに考えております。  どうも長くなりまして恐縮でございます。
  68. 吉田治

    吉田(治)委員 もう聞いていて迫真で、何か声も出ないというのがまさに私の今の住田委員長代理のお話の感想でございます。  大臣が先ほどから何度も、すべてのことは今後こういうことが起こったときのためにこうするんだと言われていることは本当によくわかります。そういうことは十二分によくわからせていただきました。特に今言われた、例えばなぜタクシーでと。私らからすると、そういうときにはどこかからヘリコプターが来てすぐに飛んでいくとか、そういうことがあってという何かイメージ的なものがあったのが、現場の話では、いや、全然違ったんだな、今後そういうことをこの科学技術委員会の中において、また政府から出てくる法案でも対応していかなければならないなと強く思いました。  そういうときになってきますと、こういう危機管理というか、危機のときに一番頑張っていただかなければならない一つにやはり自衛隊というものがある。  きょうは防衛政務次官、おいででございますけれども、まさに今住田委員長代理が言われたように、連絡がつながらない。そのつながる設備は、僕は自衛隊は多分持っていると思うんです。それが基地においてやればできたのではないかな。政務次官は、その当日、立場でもなかったですし、多分自衛隊の方から聞いた話の辺になるかもしれませんけれども、当日の状況というのですか、知事からどういう連絡があって、何時にどうなったか。そして重要なことは、今住田さんも言われたように、その現場での連絡体制、これは国、県、市、村のそれぞれ現地対策本部があった、これは有名な話です。警察、消防もそれぞれいた。どこをどう連絡してどうなった。それで問題は、指揮命令系統は、特に自衛隊の場合においては、それは一々東京から部隊の隊長に来なければ動けなかったのか、その場で独自の判断である程度のことはできたのか、その辺、ちょっと含めてお聞かせください。
  69. 依田智治

    ○依田政務次官 お答えいたします。  防衛庁といたしましては、九月三十日、政府対策本部長というのは総理でございますから、総理から、開催された対策本部会議で、各省対応せよという指示を受けまして、直ちに内局初め関係部隊から現地等に連絡員を派遣する。また、茨城県知事からは、自衛隊法等に基づく災害派遣要請、これは最初に一日の午前一時十八分、三回ぐらい来ておりますが、そういうことでありましたので、大宮にあります一〇一化学防護隊とか、それから関東周辺の陸海空の部隊及び装備、こういうものを勝田基地とかそういう周辺に直ちに配置しまして対応したわけでございます。  それで、指揮命令系統、これは自衛隊の部隊というのが整々と的確に行動するためには、やはり自衛隊の各級指揮官の指揮に従うことは当然でございまして、当日も各級派遣部隊の指揮官が指揮をした。ただ、指揮を勝手にしていいというものではございませんから、内局その他各幕からも現地対策本部その他県の対策本部等に所要の要員を派遣して、刻々と情勢をつかみながら、その状況をまた警察、消防、その他各級機関と十分連絡をとりつつ、分担して自衛隊の指揮官がその現状を十分頭に入れながら行動をとった、こんな状況でございます。
  70. 吉田治

    吉田(治)委員 住田さんが、携帯電話もつながらず、電話もつながらなかったというのですけれども、では、自衛隊はそのときは連絡がつながったわけですね。何によってつながったわけですか。連絡員が、現地対策本部というのは三つですよね、三つそれぞれ派遣されたと言われましたけれども、それは何によって連絡をつなげ、情報を収集して、指揮官が指揮をとられたのですか。
  71. 依田智治

    ○依田政務次官 現場で個々の部隊が何を持っていて、何の通信機等で連絡したかというのは、私も実はそこまで承知しておりませんが、やはり幕でも本部で対応をとっていますし、またそれぞれの連絡先ではそれぞれ連絡員が連絡をとっている。それで、部隊間では、携帯電話はもちろんですが、自衛隊も各種の通信装備を持っていますから、そういうものを駆使して、十分刻々と連絡をとれる体制になっていた。どういう通信機をそのとき使ったかというのは、実はそこまでちょっと調べてございませんが、自衛隊の持てる通信機材というものは、十分こういう時点で盲点のないような体制をとっておりますので、それを駆使して連絡をとったというように承知しております。
  72. 吉田治

    吉田(治)委員 では、それはNTTだとかそういう一般のではなくて、自衛隊独自の通信網によって連絡をとり合ったのかということが一点。  二点目は、それは法規上も、今住田委員長代理が言われたように、例えばほかの方がそれを貸してください、どうしても連絡がつかないから使わせてくださいということに対しては、自衛隊としては対応ができるのか。それとも、いや、これは自衛隊専用で、やはり国家というものがあるのでできないというのか。  その辺二点、いかがなんですか。
  73. 依田智治

    ○依田政務次官 ちょっと今報告が入っていてあれだったんですが、最初の方の第一の質問、ちょっとお聞かせいただければと思います。
  74. 吉田治

    吉田(治)委員 第一は、通信はNTTだとかそういうふうな、俗に言う回線じゃなくて、自衛隊独自の通信網で通信が主になされたのかということ。
  75. 依田智治

    ○依田政務次官 これは、携帯電話はもちろん今あれしていますから、例えば警察との連携なんというのは携帯電話とかその他も大いに駆使していますし、また各部隊は固有の通信をもって通信しております。それから、本部と例えば現地本部等はもちろんNTT回線等を通じてやっておるというのが実態でございます。
  76. 吉田治

    吉田(治)委員 それだとちょっとおかしいのですね。住田委員長代理はつながらなかった、つながりづらかったものが、なぜ自衛隊だけがつながるわけですか。それは相手先にもよるだろうし、中身にもよるだろうし、自分のところだけが何か特別回線か何かで握ってということになるのか。私はその辺をちょっと事前に、きのう質問を聞きに来られた方にお話をしたのですけれども、その辺は後日ちゃんとお答えいただけるのですか。  もう一つ。二点目は、それは一般に使っていいよとなっているのか、絶対だめとなっているのか、どうなのですか。
  77. 依田智治

    ○依田政務次官 当日、例えばNTT回線がビジーになっていたかどうかというのは、そこまで実は調べていませんが、部隊行動に支障があったというのを私の方は特に聞いておりませんので、その点はしっかり調べて対応しようと思います。  あと、個々の装備品を貸与できるかどうかということでございますが、やはり自衛隊は自衛隊として独自な、いろいろ無線機を使っておりますし、また操作等にも、秘匿とかその他の面でも、ある程度技術を要しますので、通常、一般的には民間に貸与するというようなものではありません。
  78. 吉田治

    吉田(治)委員 初めの質問に戻るのですけれども、指揮を指揮官がちゃんとやった。シビリアンコントロールの中において、その指揮官の行動についてはどういうふうにそのコントロールというものがかかわってくるのですか。
  79. 依田智治

    ○依田政務次官 これは、派遣するについては、派遣してこういう行動をとれという指示をやります。そして、その場合に、やはり総理から、自衛隊よしっかりやってくれとなれば、直ちに防衛庁長官のもとで内部で会議し、各幕僚長等も招集して指示し、そして現地にそれぞれ指示し、その指示に基づいて各級派遣部隊は出ていくということでございまして、その点は、最高指揮官たる総理、それから防衛庁長官から一貫してそういう指揮命令系統のもとに指示をする。  ただ、現場で具体的な状況に応じてどう対応するかというのは、こうやろうと思いますがどういたしましょうかなんということを一々聞かれていたらどうにもなりませんから、そこは平素の教育その他によってしっかりと指示が徹底できるような実力というものをつけておくということが重要で、私どもも、その点はしっかり各級指揮官はわきまえて行動しておる、したがって一貫したシビリアンコントロールというものは十分、総理の指示に基づくものが徹底して行われておる、こういうように考えております。
  80. 吉田治

    吉田(治)委員 では、当日も統合幕僚会議が招集をされて、自衛隊の中では待機をして、現場からの指揮についての指示については準備をしていた、そう理解していいのですか。
  81. 依田智治

    ○依田政務次官 対策本部があり、総理から指示があったということで、防衛庁としましても、防衛庁長官のもとに対策会議を、もちろん各幕僚長も招集してすぐ開いて、その指示に基づいて各級に連絡して、それぞれ連絡員派遣から所要の部隊の派遣という形に、統制をとった行動をした、こういうことでございます。
  82. 吉田治

    吉田(治)委員 現場の指揮官の問題、教育とか言われましたけれども、その辺は別の機会にしっかりと明確にしていく必要が、やはり日本はシビリアンコントロールのもとの自衛隊でありますから、私は大いに期待すると同時に、そこら辺の部分はしっかりと押さえておかなければならないと考えておりますので、なし崩しはなしよということで御理解をしていただければと思います。  いろいろ質問をしたいことがございますけれども、時間の関係がありますので、ちょっと二、三点くくって御質問をさせていただきたいと思います。  まず一点目は、今回こういう事故が起こって、地元のさまざまな部分に損害が与えられた。原子力損害保険等、この間法改正をしたのですけれども、残念ながらそれには間に合わずに、十億円までの補償に終わってしまうのですけれども、果たしてこれから、前回の質問にも申し上げました、ジェー・シー・オーの支払い能力、また、親会社、一〇〇%だということでございますので、住友金属鉱山の支援があるというふうなのも聞いております、その辺はどういうふうな状況なのか。  また、きょうは通産政務次官おいでですけれども、通産省としてどういうふうに現場の中小企業等に対しての施策を特段取り計らっているのかということ、これは一つのくくりで。  それからもう一つ、それぞれ大臣なりそれぞれの政務次官に申し上げたいなと思っておりますのは、この核燃料物質というふうなもの、これは何か今の議論をずっとしますと、事故事故事故事故対策災害対策という発想。事故が起こらないようにというのが今までの安全のあり方だったと思うのですけれども、一つ忘れてはならないなと思うのは、この核燃料物質というのは絶えず、ある意味で、ウラン、プルトニウムというふうなものは国際テロというふうなものによってねらわれている。インド、パキスタン等々がああいう実験をする。私らからすると、えっ、あんな国でと言うと大変失礼な話ですけれども、あの国であっても、経済力がそれほどなくてもできるのというふうな驚きの中において、国際テロというふうなものに対しての核物質の防護策というふうなもの、この確立が、これは両省それぞれ、原子力の安全というものに携わられる科学技術庁、また通産省においてもそういう発想があれば、例えばウランを扱う作業は工程ごとに厳重に管理されていなければ、ひょっとしたらテロの一員が入ってきて抜いているかもしれないというふうな意味で、事故は防げたはずだという発想。  ですから、これからの原子力の安全というのは、事故対策と同時に、その中に、こういう核燃料物質というものは国際的なテロがねらっているのだ、やはり日本においてそこの部分は、防ぐのは警察庁、公安庁の話かもしれないが、その現場の人たちの、これから皆さん方、多分安全対策ということで教育徹底という一つの中に、柱にテロ対策というのですか、核物質の防護策、防護というふうな概念をやはり入れていく。自分たちの扱っているものは危ないものだと同時に、下手をするとこれは日本の国がぶっ飛ぶようなものをつくられるものなのだ、外からやられるのだという発想を持つ必要があるのではないかな。まさに国際テロというふうなものがさまざま、これからもいろいろな部分で出てくる中において、所管の両大臣また政務次官等々、その辺についてのしっかりしたお答えを賜りたいと思います。
  83. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 最初に、賠償関係の御質問がございました。  委員十分御承知のことではありますが、原子力損害の賠償に関する法律では、十億円を超えるような原子力損害が発生した場合は、原子力事業者の支払い能力等から見て必要があれば、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内で政府が必要な援助を行うこと、そういうふうに規定をしております。  国の援助は、原子力損害の賠償に関する法律の目的である被害者保護、これに万全を期すための最後の手段でありまして、科学技術庁といたしましては、ジェー・シー・オー側に最大限努力を求めつつ、被害者救済に遺漏なきよう、制度の適切な運用を図ってまいる所存でございます。  また、ジェー・シー・オーの親会社であります住友金属鉱山株式会社につきましては、ジェー・シー・オーの株式を一〇〇%保有しております。また、ジェー・シー・オーの役員全員が住友金属鉱山の出身者となっていることにかんがみれば、ジェー・シー・オーの経営を実質的に左右することのできる立場にある、同社の経営に社会的、道義的な責任がある、そういうふうに考えております。このため、十月十五日に、住友金属鉱山の社長に対し、親会社としてもジェー・シー・オーを全面的にバックアップする形で被害者救済に御協力いただけるよう、私からも直接強く要請をいたしまして、社長からは、最善の努力をする旨の回答をいただいているところでございます。  それから、国際テロとの関係、ちょっとよろしゅうございますか。  委員のお話のとおり、大変重要な問題でございます。ウランを初めとした核物質の保管、あるいは、原子力施設に対するいろいろな妨害、破壊行為等々の核物質の防護につきましては、我が国は、核物質防護条約、IAEAのガイドライン等を受けて、原子炉等規制法等に基づいて原子力施設等の核物質防護対策を講じているところでございます。  具体的には、防護区域の設定や出入り管理等の防護措置、核物質防護規定の認可、核物質管理者の選任等を義務づけるとともに、治安当局への連絡体制確保等を講じているところでございます。  今お話ありましたけれども、国際テロに限らず、いろいろな状況対応できるように、そういう視野を持って、より安全な核物質防護対策徹底を図っていきたい、そういうふうに思っております。
  84. 茂木敏充

    ○茂木政務次官 通産省の関係では二点お尋ねがございました。  まず、地元の中小企業対策、金融対策でございますが、応急的に必要な救助を行いますために、九月三十日付で東海村に対しまして災害救助法を適用いたしましたが、これを踏まえまして、十月一日付で、茨城県内の被災中小業者を対象に、政府系金融機関を通じて災害復旧貸し付けを適用しております。実績で申し上げますと、十月の二十九日現在で、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、商工組合中央金庫関係で二十件、一億九千五百万円の貸し付けを実施いたしております。  同時に、同金融機関及び茨城県信用保証協会に特別相談窓口を設置するなどの対応も行っておりまして、保証協会の関係でも既に二十一件、三億六千二百万円の保証を実施いたしているところでございます。  もう一点、続けてよろしいでしょうか。  テロ対策の問題でございますが、既に中曽根長官の方からもございましたが、原子力発電所の核物質防護対策については、原子炉等規制法に基づいて各事業者が核物質防護規定を定め、各種の対策を実施しております。  具体的に申し上げますと、不審者が原子力発電所に侵入を試みた場合に、施設を多重に取り囲んでいるフェンスに備えた侵入センサーそれから監視カメラ等によりましてまず早期に感知をする、そして、堅固な外壁や強固な扉等で……(吉田(治)委員「そんな中身はええのよ。そういうふうなことを安全教育とかいうのの一つの柱にするのかしないのかということなんです」と呼ぶ)はい。核物質防護に関する教育訓練をこれからも一つの柱として実施してまいります。
  85. 吉田治

    吉田(治)委員 最後だけいいお答えで、ありがたいことで、ぜひともそれはやはりそういう発想を、やはり安全はただじゃないという部分も含めて持っていただくということが、事故云々だけだと何かやり切れない、またという話になりますけれども、こういう発想というのは非常に私は重要だと思うと同時に、ちょっと一点だけ気になる記事が出ております。  十月九日付の英国の科学雑誌「ニュー・サイエンティスト」によりますと、「いまどき、JCOウラン再転換工場のように、湿式法を使う工場は日本とカザフスタンだけだ。時代遅れだ。だから臨界事故が起きた。英国は乾式だ」と指摘をしているわけでありまして、続けていろいろ調べていきますと、事故は硝酸ウラニル溶液という液体の製品をつくる過程で発生した、粉末の酸化ウランが製品なら臨界事故は起きなかったに違いない、固体の粉末に比べ水溶液ははるかに臨界に達しやすいからである。  では、なぜこの溶液を使ったのかというと、当初、動燃東海処理工場ではプルトニウムを単体で抽出し転換する予定であったが、そういうことに対して米国からの核不拡散上の懸念が示されて、動燃が開発に成功した混合転換法、これは世界に類がないと言われておりますけれども、それを採用するということによって、昭和六十一年、日米再処理交渉が妥結したと。ですから、米国政府と合意した方法でプルトニウム・ウラン混合燃料をつくるには、この混合のための硝酸ウラニル溶液が必要だったと言われておりますが、安全委員長、この辺については、湿式、乾式と、これは私ら正直言って素人でわからへんのですけれども、そんな時代おくれのとんでもないものを使っているのか。それの基本的なものには、MOX燃料という部分において日米間のこの再処理交渉の妥結というふうなものが影響して、だからあんな溶液をつくらざるを得なかったんだというふうな指摘もあるんですけれども、その辺は安全委員長としていかがお考えなのか。また、その後に科技庁の方からそういう記事について——安全委員長だけがお答えいただけたら結構ですわ。  それで、あと安全委員長の方から、今言われたように、このテロの問題。原子力の安全、安全というと、もう事故が起こらぬようにばかりですけれども、やはり安全委員長の方からも、今後、事故対策というよりもこういう事故災害対策、法律も出てくるようでございますから、委員長としてもいろいろ意見が述べられる中で、このテロというふうなものの概念というものを、今通産政務次官はしっかりとやると、先々これから確認していこうと思うんですけれども、その辺を含めてちょっとお答えいただきたいと思います。
  86. 佐藤一男

    佐藤参考人 こういうウランの化学的な処理は、申しわけございません、私個人は余り実はつまびらかにいたしません。  ただ、確かに乾式と湿式と二つの方法があるという程度はもちろん知っております。いずれの方法が時代おくれであるかどうかというのは、これは人によって判断が違うところもあろうかと思います。ただ、伺いますところでは、どうも乾式の方が経済性はいいようだというお話は承ったことがございまして、このジェー・シー・オーでも一生懸命乾式にしようかということを考えておられたというお話は承ったことがございます。  なお、不拡散条約その他につきましては、これは私どもの所掌でございませんので、別途適当にお答えいただければと思います。  ただ、先生御指摘のように、こういういわゆるテロ対策に始まる保障措置に伴うさまざまな対策が講じられれば、これは恐らく副産物として安全上の効果も期待できるのではないかというふうに、これはもちろん具体的にどういう手を講ずるかにもよりますけれども、そういう効果も期待できるのではないかというふうには考えます。
  87. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 先ほど御指摘ありましたように、昭和五十二年から五十六年にかけて日米再処理交渉が行われました。その前にカーター大統領が、これはアメリカ国内だけですけれども、プルトニウム単体で取り出す商業再処理については禁止する。こういう事態を受けてのこの日米再処理交渉だったわけですけれども、この結果、プルトニウムとウランを混合した溶液、混合酸化物に転換した上で処理をするということになった経緯がございます。
  88. 吉田治

    吉田(治)委員 もう時間で、終わります。残った質問はまた次回にさせていただきます。  ありがとうございます。
  89. 北側一雄

    北側委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  90. 北側一雄

    北側委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平野博文君。
  91. 平野博文

    平野委員 民主党の平野博文でございます。  今回から、初めて科学技術委員会に所属をし、委員としての役割を果たす任務につかせていただきまして、冒頭の質問でございます。そういう中で、けさの議論また閉会中の委員会の議論を含めて、非常に大事な議論をしなきゃならないし、またそういう議論をしなきゃならない事故が起こったということは、私自身も国民の一人として非常に痛切に感じておるわけであります。  そういう中で、今日、原子力という日本エネルギーを供給する立場からいっても、三十数%に及ぶ依存をしている現実の中で、起こるはずがない、こう考えておるところから、臨界という、国民の一人から見ますと何という言葉だろうと感ずるような事故が起こったということは、私は非常に残念であります。  そういう視点で、民主党としては、大臣、政務次官、いわゆる政治家の方々と御議論、御答弁をいただくということを前提にしておりますので、きょうは中曽根大臣には易しい質問、政務次官には厳しい御質問、政府委員の方については必要ございませんから出ていっていただいたらいいと私は思います。  安全委員会委員長委員長代理につきましては、大変お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。質問通告的なことはしておりませんが、専門家の立場で、御質問をさせていただくことがあると思いますので、お許しをいただきたいと思います。  一番冒頭に、まず原子力エネルギーを三十数%依存をしている、こういう日本の現状でございます。しかし、非常に安全性を最優先にして取り組まなきゃならないということで、原子炉についてはそれなりに安全性ということをモットーに考えられた設計をされていると私は思っています。しかし、そういう中でも、今日までに何回か、核心的な事故かどうかは別にいたしまして事故が起こっている、こういう現実の姿だと思っております。  そこで、私もずっとひもといてみたわけでありますが、この臨界という言葉が各新聞紙上で一面に出てくるようになりました。今まで臨界なんという言葉は出てきたことはないわけでございまして、つい先日でありますが、私の友人十名ぐらいに臨界という言葉に対する認識を聞いてみたのです。もうそれなりの、私と同じ世代ですから、四十から五十ぐらいの世代の人に聞いてみました、リンカイという字を一度書いてみろと。どういう字を書いた人がいたか。臨海コンビナートの臨海と書く人もいました。それが普通、リンカイと言ったらぱっと頭に浮かんでくる字じゃないでしょうか。その人が知識がないとか云々じゃなくて、一般的国民の認識で言うリンカイとは、臨海コンビナートという臨海だと僕は思ったんです。  そこで、大臣に聞きたいわけでありますが、中曽根大臣は、科学技術庁長官でございますから、当然そういうことについては、なって間もなしであるにもかかわらず、十分に情報、知識としてお持ちだと思っておりますが、大臣になる前に臨界という言葉は、長官、承知しておられたでしょうか。
  92. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 もちろん承知しておりました。
  93. 平野博文

    平野委員 それでは、これは非常に易しい質問でございますが、私は、先ほど言いましたように、国民の皆さんが、原子力の原理がどういう状態でされておってどういうエネルギー日本に供給しているか、あるいは一歩間違えればこういう問題が起こります、こういう意味での一番の原点は臨界ということだと思うのですね。臨界にもいろいろありまして、未臨界だとか臨界超過だとかいろいろな現象、事象で言葉がついております。  さて、私一番言いたいことは、科学技術庁長官ということではなくて、文部大臣として、今、日本エネルギー原子力に依存をしている、そういう意味では非常に重要なエネルギーの機関であります。その機関に対することをどれだけ学校教育という局面できちっと教えられているのか、あるいは国民の皆さんに対してきちっとそういう原子力安全性、逆に言いますと、課題を含めて伝えているのか。こういう視点で、まずは学校教育の中でどういうふうにその問題を教えておられるのかをお聞きしたいと思います。  少なくとも、私が学生時代には、臨界という言葉は学校の教科書の中にはなかったように思います。高校まではなかったように思います。それは、あえてそのことを国民の皆さんに教えることによって原子力行政政策上好ましくないという別のバイアスの判断が入っていたのかも私はわかりません。現実に今、文部省を含めて学校教育の中でどういうレベルで教育をしているのか、こういう視点で長官にお聞かせ願いたいと思います。
  94. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 委員がおっしゃいますように、社会生活を営む上で、エネルギーの問題、特にエネルギーの需給問題あるいは利用状況またそのほかの問題点等について、原子力を含めまして国民一人一人が正しい知識を持つということは極めて重要でございます。特に、児童生徒が生活していく上でなくてはならないエネルギーの問題に関心を持ってもらい、理解してもらうということは、また重要であることは言うまでもありません。  学校教育におきましては、児童生徒の発達段階に応じまして、原子力を含めエネルギー問題について正しい理解を深めるよう、今指導また教育をしているところでございます。  ちなみに、学習指導要領におきましては、これまでも、小学校では、社会科におきまして我が国の工業生産とその原料など、中学校では、社会科におきまして資源やエネルギー開発利用、理科におきまして水力、火力、原子力などのエネルギー重要性とその性質についての基礎的な事項など、それから高等学校では、地理、現代社会それから物理等を中心に、資源エネルギー問題や原子力放射線の特性や利用などを指導することとしております。  委員がお話しになりました臨界につきましては、高等学校の理科の物理IB及び物理IIの教科書におきまして、核分裂の連鎖反応について説明する中で臨界量や臨界状態について記述しているものがございます。しかし、すべての教科書ということではございません。私どもが調べましたところでは、二十二点中の四点でございまして、臨界についての記述状況はそういう状況でございます。
  95. 平野博文

    平野委員 したがって、教えている部分もあるということですが、教えていないところがまだ大半である、こういうことですね。そういうふうに受け取ってよろしいですか。
  96. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 臨界という言葉についてでございますと、そのとおりでございます。
  97. 平野博文

    平野委員 二十二点のうち四点ということですが、いつから臨界ということを学校教育の教科書の中に入れられたでしょうか。
  98. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 今四点と申し上げましたけれども、それぞれがいつからかということは今承知しておりませんが、平成元年の学習指導要領からでございます。
  99. 平野博文

    平野委員 平成元年ということは、ここ十年ぐらいですね。なおかつ、二十二点中四点ということですが、その四点という意味は、私細かくはわかりませんが、これは地域の学校教育によって臨界という言葉を教えているのか、その辺は、長官、わかりますか。細かいですからあれですが、地域によって格差があるのか。極端に言ったら、東京都は教えているけれども大阪は教えていない、こういうことになっているのか。その点は、わかればでいいです。
  100. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 教科書によって、そういう記述がある教科書とない教科書があるということでございます。多分、教科書は、教科書の出版社から、全国的に学校で利用されるために制作もされ、また販売もされておると思いますが、教育委員会等が教科書についてはどれを採用するかということをお決めになることでもございますので、特定の地域ということはないのではないかと思っております。
  101. 平野博文

    平野委員 そこで、私非常に気になるんですが、私は今文部大臣としての発言だと思いましたが、日本の国のエネルギー事情から見て、日本国民全体が原子力に三十数%エネルギーを依存しているんだ、こういう実態にあるということで、その一番原理原則からいくと、やはり臨界を起こして熱を発生して、タービンを回してエネルギーに、エレクトロに変えておるわけですよ。それは臨界という状態を起こしているんだ、化学反応を起こしている、そのことはやはり日本国民全体が知ってもらわないといけない必須項目ではないか、こういうふうに私は思うんですね。  ところが、教育委員会サイドのマターの問題で、それが選択肢としてとられるというふうになりますと、その教科書を使うところと使わないところということが日本全国で非常にばらつくだろうと思うし、逆に言いますと、例えば、これは間違ったら大変失礼な言い方になりますが、原子力が非常にたくさん立地されている地域の県の教育委員会が、これを余り知ってもらうと後々大変なことになるなということで、その教科書を削除しても今の現実だったらいいということになるわけですね。  僕は、今回の事故というのは別の意味で非常に相関をしていると思っています。今まで日本というのは、原子力というのは原爆だ、原理原則からいきますと共通項がありますから、このことがイコール原爆だ、こういう発想で、余りにも内々での処し方に今日まで原子力行政というのはあったんではないか、一つはこう思うんです。それがゆえに、本来、できるだけ内部の情報なりを市民、住民が十分知って、お互いに依存してもらっている、こうすれば安全なんだという情報がきちっと共通項として認識できる土壌になっていない日本国民の実態にあるのではないか。これが私一番最初に言いたいわけでございまして、長官が、私は前から知っている、こういうことでありますが、長官が知っておるということは日本国民が知っておるということに本来なっていただきたい。  ところが、ややもすると、先ほど申し上げましたような、日本の中でそういうまばらな実態になって、結局、国民全体に、臨界であるとか原子力安全性とか原子力の必要性という面をきちっと教授されていない実態にあるのではないかと私は思うのであります。その点について、文部大臣どうですか。
  102. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 大変重要なことをおっしゃいました。地域によってこのような教育のあるいは知識の差があってはいけない、私もできるだけそういうものはない方がいいと思っております。  教科書におきましては、例えば中学校の社会科あるいは高等学校の現代社会で、先ほどちょっと申し上げましたけれども、エネルギーについて記述しているわけでありますが、原子力が重要なエネルギー源となっていること、それから、原子力発電は比較的少量の資源から大量の電力が得られることや、火力発電などに比べて環境問題などへの影響が小さいなどの利点があること、それから、原子力発電安全性管理放射性廃棄物の安全な処理が重要な課題であること、それから、もし事故が起こるとその被害は極めて深刻であることなどが記述されているわけです。  また、中学校の理科や高等学校の物理におきまして、放射能及び原子力の利用とその安全性の問題や原子の構造などについて学ぶ中で、原子炉の中では核分裂によってできた原子核が放射線を放出すること、放射線は生物の細胞を破壊したり物質を変化させたりする危険性があること、このため、大事故が起こって放射線が外部に放出されると人体や農作物などに広く大きな影響が出る可能性があること、そして、原子力発電安全対策放射性廃棄物の処理には今後もさらに十分な対策を考えていく必要があることなどが記述されております。  臨界という言葉そのものの記述があるなしにかかわらず、このようなことは学校で教えている、そういうふうに私自身は認識をしております。
  103. 平野博文

    平野委員 ぜひ、その認識と実態、地域によって格差がないか一度調べてみてください。私は何らかの関係があるような気がいたします。憶測で申しわけありませんが、私は、安全性、あるいはこうすれば危険であるということをやはりきちっと教えておかないと、また知ってもらわないといけない、こういう感覚でおります。これは余り長々やるつもりはありません。  そこででございますが、朝、我が同僚議員の方から御指摘した点に少し私自身も気になるところがございます。これは、有馬前長官の新聞によるところであります。  情報の伝達経過については、中曽根長官から時間軸をもとに官邸に入ったということは教えていただきました。しかし、先ほど言いましたように、もし科学技術庁の職員の方が臨界ということが本当に大変なことだということを知っておれば、官僚が官邸に伝えたらそれでいいということではないと私は思うのであります。重要なことであると認識すればするほど、所管の大臣が責任を持って官邸に、内閣総理大臣あるいは関係大臣に伝えるというのが本旨だと私は思うのであります。きょうの先ほどの御説明でありましたら、大臣に報告したのか、大臣に報告されたけれども、重要だという認識に立っていないので、関係官僚が官邸に報告しておいてくれと有馬さんが言いはったのか。しかし、この新聞で見たら、私のところに、有馬さんのところへ報告ないじゃないか、こういう怒りの新聞のような気がしてならないのでありますが、長官、どうなんでしょうか。
  104. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 午前中の私の答弁、多少舌足らずなところがございました。事務方から官邸や関係部署に連絡すればそれでいいんだ、そういうつもりで申し上げたつもりではございません。状況に応じまして、事の重大性に応じまして、大臣みずからが総理や官房長官に直接連絡、報告すべきときは当然そのようにすべきもの、そういうふうに私は理解をしております。
  105. 平野博文

    平野委員 そういう中で、これはぜひ確認してほしいんですが、では科学技術庁長官にいつ報告されましたか。それはされたと聞いておりますか。これは通告しておりませんから、朝の質問の関連ですから申しわけなく思っていますが、当然そういうのは承知していると思いますよ。
  106. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 十二時ごろ大臣に報告をしたと聞いております。
  107. 平野博文

    平野委員 そうすると、有馬前長官長官自身の事故に対する認識が甘かったというふうに、新聞どおりの額面で受け取ってよろしゅうございますか、長官
  108. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 認識が甘かったかどうかは有馬長官の御判断であろう、私はそういうふうに思います。
  109. 平野博文

    平野委員 今大臣がかわっておられますから何とも言えませんが、私は、有馬さん自身が技術屋さんで大変立派な人ですから、無念さの余りにこういうことを吐露したんだろうと思います。したがって、科学技術庁の大臣としては、まして自分がそういう技術の専門家であるという立場からも、有馬さんですら、現場の、起こった事故が東京の科学技術庁では十分に掌握できないんだ、行政手続の問題ではなくて、現場でないと何が本当に起こっているのかということが十分に掌握されない、有馬さんのような立派な方ですら、専門家ですらわからなかったんだ、このことをぜひ今回の事故の流れの中で私は指摘をしておきたい、このように思うわけであります。  ここで、通告をしておりませんが、安全委員会委員長さんと委員長代理さんが来られています。  新聞等で見ますと、委員長は中央でおられた、住田大先生は現場に行かれた、委員長代理は行かれた。タクシーで行ったか、この辺は議論のあるところでありますが、私は、もし有馬長官が本当にこのことが大事だと思ったら、いろいろなところで超法規なことをしているわけですから、超法規でヘリコプターで現場に行けという指示を本当は私はしたと思うんです。そういう意味で、委員長は東京でおられた。委員長代理は現場へ行かれた。委員長、東京でおられて、どうですか、安全委員会という立場上処せない権限等々ありますが、悔しさはなかったですか。
  110. 佐藤一男

    佐藤参考人 大変、正直に申し上げまして、悔しさと申しますか、もどかしさと申しますか、最後のころは別といたしまして、特に事故が始まった比較的初期の段階では、情報の不足というものにはしみじみ悩まされたというのが実感でございます。
  111. 平野博文

    平野委員 委員長代理、現場に行かれた。ここから現場まで車だったらどのぐらいかかるんですか。二、三時間かかるんですかね。現場に行って、今までの御経験を含めて、これはえらいことだなと感じられたか、これは理屈でいったらあり得ることだと感じられたか。どちらかで結構でございます、委員長代理。
  112. 住田健二

    住田参考人 東京におりましたのでは様子がわかりませんでしたので、現場へ行きまして随分実態がよくわかったというふうに申し上げたいと思います。  ちょっと長くなって恐縮ですけれども、例えば建物が壊れているのかどうかということは、東京から随分私どもは知りたいと思ったんですが、それについての情報は全然来なかったということでございますね。ですから、行ってみてわかったことが多かったということを申し上げられると思います。  以上でございます。
  113. 平野博文

    平野委員 ありがとうございました。  質問通告しておりませんので、今、原子力安全委員会委員長さん、委員長代理さんからの素直な御意見だと私は思っています。  そういう中で、もっと原子力安全委員会に別の権限と役割があれば、もっと私だったらこういうことをしたいのになというのは心に思ってはるんかもわかりませんが、これはまた別のところにおいておきます。  そこででございます。私、今のお答えを含めて、やはり現場に、あらゆる機能、権限、こういうことを一番現地に持たせないとだめだと思います。そういう視点で私、次の質問に入りたいと思います。  一つには、事故調査中間報告についてであります。  理論的な放射線量と実際の被曝した放射線量についてでございますが、中間報告で出していただいておるわけであります。  その前に、一つ、中間報告から見た現場の問題点を私は指摘しておきたいと思うんですが、中間報告の中に、事故・軽微事象発生連絡票というのがずっと現場から出ているんですね。これは、中間報告では十九回目と二十二回目しかなかったんですが、私、一回目からとにかく下さいということでとってみました。  そうしますと、これは連絡票ですから、現場から上がってくる。それで、科学技術庁、水戸労働基準監督署、茨城原子力安全課、東海村企画課、SMMエネ・環境部事業室、ジェー・シー・オー東京事務所、こういうことで、それぞれ同時発信するのか配信するのかわかりませんが、そこへ現場から連絡するシステムになっているんですね。それを見ますと、発信者は株式会社ジェー・シー・オー東海事業所ということで、これは実名を出して大変恐縮でございますが、連絡責任者は森田さんという方からずっとレポーティングされて出されています。  ところが、書き方が非常によくわからぬわけでありまして、加えて発信者が、次は日本核燃料コンバージョン株式会社東海事業所、こういうものまで入ってくるわけですよ。これは、非常に大事な書類にしては、何でこれ二社か、これは多分二社ということで調べましたら、コンバージョンが前身の会社だということがわかりましたから、これは効率よく捨てずに前の紙を使っているのかな、こう思って一面は感心しましたけれども、これによって判断するんですね。これは極めてずさんな連絡網のあり方ですね。  最初は、第一報は、十時三十五分エリアモニターが鳴る、ここで二名が被曝して救急車にて水戸国立病院に運んだ。二名を先に運んでいるんですな。そういうことですか、これは。見ていませんか、安全委員会
  114. 佐藤一男

    佐藤参考人 御指摘のとおり、最初私どもが得ました情報はそれだけでございました。私の手元に今残っております資料では、二名というのが消して三と、こういうふうに直したものが私の手元にはございます。
  115. 平野博文

    平野委員 私のところにあるのは、第三報で三名がとなっておるのです。これを中間報告で全部出さずに、十九回と二十二回しか我々の中間報告のレポートにないんです。おかしいな、第一回から絶対あるはずだと思って取り寄せたら、よく見たら会社の名前は違うわ、時間軸は上で書いている時間と下の確認時間とは違うわ、いろいろまちまちであります。私は、これが一番の実態だというふうに極めて憤りを感じます。  そこで、中間報告の部分で御質問をしたいと思います。  一応、臨界事故から一カ月過ぎて中間報告は実は発表されました。理論的な周辺の放射線量を基礎理論値として公表いただいています。現場から八十メートル離れた地点にいる住民の方は臨界から二十五分以内に七十五ミリシーベルトの放射線を浴びたという理論値をお出しになっています。これは、一般の人の年間の許容でき得る部分からいくと七十五倍の理論値に対する倍率であります。一方、その地点に実際にいた人の測定に基づく線量評価については十五ミリだ、こういうことですね。中間報告で見ますと、実際の被曝線量は少なかったとして、喜びのような中間報告になっているように私は思うのですね。しかし、実際十五倍なんですね、実測した値でも。  ここで、なぜ理論値と実測値とにこれだけ大きな乖離が起こるのか。本来でしたらこれはゆゆしきことだと私は思います。理論値の考え方が正しいのか、実測した測定の仕方がまずいのか。この問題点というのは、これだけの乖離がある数字を見ますと問題提起せざるを得ません。  したがって、十五ミリシーベルトという数値を測定しておりますが、私の知る範囲で、これは専門家だというふうに聞いておりますから政務次官にお聞きしたいと思いますが、簡単で結構です、こういうことではかりましたということで結構ですから、何をもってこの十五ミリシーベルトという数字を出されたのか、このことをお聞かせいただきたいと思います。
  116. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 その場に現実にいらっしゃった方の被曝線量線量当量の実測値は、ホールボディーカウンターを使いまして、ナトリウム24から出てくるガンマ線をはかってこの被曝線量を推定いたしました。  ナトリウム24は、もともと人間の体にあるナトリウム23に中性子が当たってできるものでございます。したがいまして、この値は実際にその人が現実問題として被曝した量、こういうふうに認識しております。
  117. 平野博文

    平野委員 まことに当を得たことでございますが、私は、この被曝線量を測定するのはナトリウムだけではないと思います。  ナトリウムが23から24に一つふえて、その部分によって測定している、これは一つの方法だろうと思っていますが、後々いろいろなことでいきますと、例えば被曝した部分でいきますと、線量を出すためにはそうかもわかりませんが、逆に言いますと、染色体であるとかいろいろな部分の測定方法があると思うのですね。  被曝された方については、多分このホールカウンターということでしか現地住民の方についての調査はされていないのでしょう。イエスかノーかだけで結構です。
  118. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 この七名の方のほかに、周辺住民の方で御希望された方は計測しております。
  119. 平野博文

    平野委員 そうすると、ナトリウム24という数字が出なかった人は被曝していないと限定していいのですか。
  120. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 いえ、被曝していないとは言い切れないと思います。ナトリウム24の計測では計測できなかったということしか言えないと思います。
  121. 平野博文

    平野委員 そこで、僕は被曝した方のトータル人数はわかりませんが、ホールカウンターでしか現地ではやっておられないわけですよね。そうすると、そこで数値が低いということを言っておられますが、本当にどれだけ被曝したか、あるいは被曝しているかしていないかの判断は、ナトリウム24の測定だけではつかないということになりませんか。
  122. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回、周辺空間の線量を実測値とそれから計算値から出しました。先ほど八十メートル地点で最初の二十五分間で七十五ミリシーベルトと平野委員がおっしゃった、あの計算でございます。  あの計算結果から、あの値を使えば、今回ホールボディーカウンターで計測をされている方以外にも被曝をされた方がいらっしゃるというのは、十分推測できることでございます。
  123. 平野博文

    平野委員 そうしますと、十五ミリシーベルトという数値、六ミリシーベルトとか、いろいろ場所によって違いますが、それ以上に被曝しているということは言えないのですか。政務次官にお伺いします。  今の議論からいきますと、理論値では七十五ミリシーベルトだ、これは理論値ですからこれはもう置いておきましょう、実測したのは、ナトリウム24で測定したら十五ミリだ、あるいはポイントによっては六・何ぼだとか出ておるわけでありますが、それ以上に浴びているんじゃないでしょうか。加えてもう一つ、したがって、より理論値に近い被曝をしている可能性だってないでしょうか。こういうことを政務次官にお聞きします。
  124. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 ホールボディーカウンターで計測した値、これが真実に近い値だと思います。  いわゆる理論値、計算値は、かなり安全側と言いましょうか、計算のそれぞれの過程で安全側、つまり計算結果として被曝値が高くなる仮定を一つ一つ入れております。  例えば今回の、最初二十五分間バーストが続いて、十一時以降安定期があるという仮定をしまして、この安定期につきましては実測値を使ってその空間線量率を出しているわけでございますが、その実測値も、ある地点ある地点で、全く遮へい物がないようなかなり高い値、その高い値を使って線量率を出しております。また、最初のバースト部につきましても、これは詳しくお話しすると時間がかかりますので省略いたしますけれども、かなり安全側、つまり高い被曝線量になる仮定でこの値を計算しております。  したがいまして、あの数字は考えられ得る最大値、このように我々は考えておりますので、実際の被曝は実測したホールボディーカウンターの値に近いと考えております。
  125. 平野博文

    平野委員 多分、多分としか言いません、そうでしょうが、理論値では七十五ミリあるんだ、しかし、はかったら少ないんですよ。これは、私も技術屋の一人の端くれとしてなかなか理解しにくいんです。理論値に近いところに実測値が出てくるまでやるんですよ、本当は。当然それは何かに当たって減衰してどこかへ行っちゃったとか、こういうことになるんでしょうけれども、理論値では出てくるんだから、少なくともその理論値に等しい被曝がされるということを前提にしていかなきゃいけませんね。そういうことで、私は、これはもう少し厳密に説明をいただきたいなと、この点については要望をしておきます。  いま一つは、現場におられたスペシャルクルーという方なんですか、三名の方が大量被曝されて、今病院で大変つらい思いをされていると思っています。そのときに、グレイという数値単位で被曝量を出されております。これは何でグレイという数字を出されたのか。本来は、我々一般的に理解するのは、何ミリシーベルトですよということで理解をしておりますが、なぜグレイという単位を使いはったのか。  これは、非常にうがった見方をしますが、グレイという単位で出した方が数字的に小さな数字に見えるから出しはったのじゃないでしょうか。これは、私うがって見ていますが、ミリシーベルトで出したら、こんなに浴びているのかということになるから、グレイというデノミをしはったのじゃないか、こう私は思っていますが、このグレイの単位を三名の方については出されておりまして、ミリシーベルトには出されていないのです。  これは科学技術庁としては、最初の現場におられた人で被曝している方、お三名の被曝量を出していただきたいと思います。
  126. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 被曝量の数字は後でちょっとお示しいたしますけれども、グレイとシーベルトについてちょっと御説明させていただきます。  グレイというのは、いわゆる吸収線量でございまして、これはもう説明の必要はないかと思いますけれども、組織いかんにかかわらず単位体積当たりに吸収されたエネルギー。シーベルトは、線量当量という形で、各放射線の種類によってその影響が異なるということで、その線質係数を掛けたものが線量当量でございます。  そして、一般的に、いわゆる直接的な、確定的な放射線影響、今回の場合の皮膚のやけどでありますとか腸の粘膜の損傷でありますとか、浴びた放射線がある閾値を超えれば確定的に出てくる、そういう現象に対してはグレイを使うのが一般的でございます。また、いわゆる確率的な影響、浴びた線量に比例する、しかし一たん出てきたらそれは線量関係のない形で現象が出てくる、例えばがんの発生率、こういうものにつきましてはいわゆる線量当量、シーベルトであらわすのがならわしとなっております。  したがいまして、今回、あえて小さい値を出すためにグレイを使ったということでは全くございません。  それから、先ほどの御質問の、実測値と理論値の違い、これをもっと小さくするように努力すべきではないかということで、その努力を今一生懸命続けているところでございます。
  127. 平野博文

    平野委員 本旨ではありませんから、その三名の、ミリシーベルトに換算した数字を後で私に下さい。  そういうことで、私みたいなうがった人間がそういうふうに見るということは、やはり両方併記されたらいいのじゃないでしょうか、グレイとミリシーベルトを。片一方はグレイを使い、片一方はミリシーベルトなどという使い方じゃなくて、両方併記の数字を出していただいたらいいのではないか、このように思います。  きょうは労働政務次官にもお越しをいただいております。  時間が迫ってきましたのであれさせてもらいますが、ジェー・シー・オーの沈殿槽に、住田委員長代理が、やはり臨界をとめていく、あるいはそれを減少せしめるためには水抜き作業、こういうことをやるべきだと。これは住田先生も言われていますが、権限とか云々関係なく、やはり現場に即した判断として、技術者としての判断はそうだということでおやりになったと。これは私は、たまたま住田委員長代理がおられたからよかったものの、おられなかったらどうなっているのかなということを考えますと、非常につらい部分がありますが、そのときに水抜きに行った作業員の方の立場を思いますと、相当厳しいものがあるな、こうも思うわけであります。  特に、労働安全衛生法、こういう立場から見ましても、緊急時には百ミリシーベルトまではよろしい、こういう特例事項としてはあるんでしょうけれども、本来それは好ましくない、特例として認めている法令であります。したがって、一人の人については百二十ミリシーベルトを被曝した、こういう記述がございますが、私は、だれがその人に、任意であるとか希望を募ったとかいいますが、最終、行けと言った判断はだれがされたのか、これをすることについて労働法規上、安全法規上、本当に問題はないのか、この点について政務次官の方にお聞かせをいただきたいと思います。
  128. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 今回、水抜き作業に決死的な立場で従事された方に対しまして、大変感動的なことであって、敬意を表しております。  大変緊急の事態であったということで、現地対策本部に派遣をされておられました原子力安全委員等の専門家事業者の方々が十分検討されて、至急にこの臨界停止の作業を行うということで作業を実施されたと伺っております。安全衛生規則、緊急作業に従事する場合には百ミリシーベルト以内であるということが規定をされておるわけで、これを守ることが当然のことでございます。そして、この作業に当たっても、この作業時間の問題等々、これを超えないように最大限努力をする中で作業に従事していただいたと聞いております。  ただ、結果として今御指摘のような事態が起こったことは事実のようでございまして、最大限努力をしたにもかかわらずこういう事態が起きたことは、まことに残念というか、やむを得ないことであると同時に、こういう臨界事故が起こったこと自体が、通常では予想されないような事態であって、かつそれを早急にやらなきゃならぬという異常事態であった中で起きたことでございますので、労働安全衛生上、本来起こり得ない、想定できない事態でありましたので、法の体系としては非常にあってはならない事態であったなと思っておる次第でございます。
  129. 平野博文

    平野委員 あってはならない事態はわかっているんですよ。あってはならないことがあったからややこしいことになっているわけですから。こういう場合は法規上はどうなんですか。このことに対しては法規上だめですよという見解を出されるのかどうかだけ聞きたい。あってはならないことだけれども、あったんだからやむを得ないということなのか、だめですよ、ここを聞きたいわけであります。
  130. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 適切な表現かどうかは別にいたしまして、想定しがたいような、超法規的と言ったらちょっと変な表現かもしれませんが、そういう事態の中での判断があって、かつ、そういう中でこの法の範囲内で作業ができるように最大限努力をされたと聞いておりますので、そういう意味で、違法かどうかという御指摘であるとすれば、その判断を厳密にできるような事態ではなかった、そういう異常な事態であったのかなと私は思っております。
  131. 平野博文

    平野委員 いや、それは、政務次官、大変委員外のところで来ていただいて申しわけないですけれども、これは法令違反ですよ。こういう判断に私は政治家として立ちますが、政務次官としては法令違反に立ちませんか。そこを聞かせてください。
  132. 長勢甚遠

    ○長勢政務次官 形式的に百ミリシーベルトを超えてはいけないという規則になっておりますから、それはそういう意味では形式的にはそのとおりだろうと私も思いますが、しかし、こういう事態が起きたことは、もうその判断を超える、その判断がいいか悪いかということを論ずるような事態ではなかったのではなかろうか。したがって、その形式的な法律の時点で議論ができないような事態が起きたことは大変困ったことである、このように思いますし、あってはならないことだと思います。
  133. 平野博文

    平野委員 非常に答えにくい質問をして申しわけないと思いますが、私は、やはり労働者という、そこの現場におる人の人権も人格も守らなければならない、これは事実でありますから、やはり侵してはならない線を今回超えているのですよ。超えてはならないところを超えているのですよ。結果として超えたと言うけれども、それは結果責任はだれかがとらなければいかぬ、こういうことだと思うのですね。しかし、それ以上に何かが降りかかってきたんだ、こういうことになるのだろうと思いますが、では一番弱い者がそういうところにさらされるのか、こういうことがあってはいかぬと思うのですね。  極端に言って、会社責任、事業所責任であるのだったら、事業所の所長がみずから率先して行くんだ。もうまるで決死隊じゃないですか。そんな状況をつくるような施設になり、あるいは、原子力安全規制がそんな異常な状態、アブノーマルな状態になっておることが今日の状態になっているのだと私は思うわけであります。  最後に質問したかったわけでありますが、私、要望として言っておきます。今、特に初期動作、初期出動、いろいろな意味で、たまたま今回はバースト部が二十五分ということでありますが、これは量によってはそんな状態におさまるはずがありませんね。五十分になるかもわかりませんね、量によって。あるいは、核分裂の起こる状態によっては、二十五分という限定はないわけで、たまたま今回バースト部については二十五分なんだ、こういうことですが、いずれにしても、臨界状態が起こって数十分の間の判断というのが非常に大事な判断になるんだ。逆に言いますと、そのことを受けて、あらゆる機能をそこに集約していくということは、中央でコントロールをする、そういうことではだめで、より現場で迅速な判断と指揮権が起こる状態にしておかないと防げない、私はこう思うのであります。  したがいまして、そういう判断をしておりますので、最後に長官、私は、初期動作のことが一番大事な判断でありますから、そういう意味では、一番その判断ができ得る事故現場の近くにあらゆる機能をやはり防災という視点で持たせておくべきだ、こういうふうに思っていますので、同感であるとか、いや違うという、イエス、ノーで結構でございますから、お答えをいただきまして、私の質問にかえたいと思います。
  134. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 イエス、ノーでということでございますから申し上げますが、初期動作は大変重要でございます。そういう意味で、今回のいろいろな反省から、今後の法律作成に当たって十分その点を配慮しているところでございます。
  135. 平野博文

    平野委員 ありがとうございました。終わります。
  136. 北側一雄

    北側委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時五十分開議
  137. 北側一雄

    北側委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  政府参考人として科学技術庁長官官房審議木阪崇司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  139. 北側一雄

    北側委員長 質疑を続行いたします。辻一彦君。
  140. 辻一彦

    ○辻(一)委員 四十分ほどですが、大臣また政務次官、そして安全委員会委員長委員長代理に質問をしたいと思います。  今回の原子力臨界事故の経緯を見ると、臨界を収束させたというところ、端的に言えば水抜きが一つの大きな山場であったと思います。  ちょうど昭和五十年代の初めに、アメリカのスリーマイルでこの事故がありました。これは、アメリカのスリーマイル島の百万キロワットの、営業して数年という最新鋭の発電所でありましたが、機器の故障と人間のミスとが重なって事故に至った。  そのときにアメリカの大統領が、直命によって、じかに命令をしてNRCの委員現地に張りつけにして、事故の制御に取り組んだ。そのときは、原子炉内部の燃料が溶融して、燃料の三分の二が溶融した。あわや水素爆発の懸念があるというぎりぎりのところにNRCの委員が張りついて、ついに水素爆発を抑えて原子炉を制御したという大変なことがありました。  ちょっと性格とスケールは違うのでありますが、今回は、中央における原子力安全委員会がいろいろな論議の末、住田委員長代理を派遣したということ、そして現地で大変な御苦労をいただいたわけでありまして、敬意を表したいと思います。  今回の場合は、日本にとっては、原子力事故の点ではやはり歴史的に特記すべきものの一つであろうと思います。チェルノブイリは国際数値で7、それからスリーマイルは5、東海原子力事故は4というわけでありますから、いずれにしてもスリーマイルに次ぐ事故であったと思います。  そこで、住田委員長代理は原子力安全委員会からどういうような任務を受けて現地に行かれたのか、そのことをまず、少し詳しいことをお尋ねしたいと思います。
  141. 住田健二

    住田参考人 お答えいたします。  安全委員として派遣されたというふうに一般にはおとりいただいているようでございますが、私自身は、実は、私ども原子力安全委員全員が入っておりますけれども、安全委員会が持っております緊急助言組織というのがございまして、私ども安全委員五名のほかに学識経験者が約十五名程度の方、問題によりましてはもっと人数をふやすことができますが、そういう先生方を込みにした緊急助言組織というのがございます。  これは、先ほど申し上げましたように、三時半に招集したわけでございますが、招集するのは委員長の御判断でできるわけでありますけれども、そういう組織を呼びまして、正式に緊急助言組織の委員会を開いて、そこの決定として、専門家として派遣された。  ですから、私の場合は、確かに委員長代理という肩書はついておりましたかもしれませんが、委員会を代表するというよりは、むしろ日本におけるこの分野の、自分でそういうことを申し上げるのは口幅ったいのでございますけれども、臨界問題についての最も経験の深い一人であると。東海村には、当然、松浦理事長初め私のかつての同僚がたくさんおりますから、御専門の方もいらっしゃったわけでありますけれども、いろいろな他組織に通じておって、そういうことの適切な助言を与えるのに一番適当であろうということが、多分私が助言組織の中で、実は、これははっきり言いますと私から志願いたしまして、私が専門だからこれは参りたいと申し上げたわけであります。  それから、やはり同じく金川先生も、こういう液体燃料の系統については、原子力安全委員会並びにそこの緊急助言組織のメンバーの一人として、これも大変造詣の深い方でございますので、私も行きましょうとおっしゃってくださった。それから、このほかにさらに、例えば京都大学の東先生、今、吉川先生の調査委員会の方の委員長代理をなさってくださっていますけれども、やはり核工学の方の御専門でということで、じゃ私も行きましょうということに。それからもう一人、元原研の方。だから、四名の緊急助言組織のメンバーが実は現地に派遣されたわけでございます。  ただ、私が一番年かさでございますので、何となく出しゃばりまして皆のお世話をしたという形で、皆様には、私が何か非常に特別な任務を帯びて行ったかのように受け取っていただいておりまして、大変光栄だとは思いますが、実態としては、私は、そういう分野の日本の数少ない専門家の一人として助言に参ったつもりでおります。  したがいまして、当日、私が本来ならばもう少し、大変率直に申し上げますと、例えばこれが他の組織体で同種の事故が、仮に臨界事故が起こったといたしますれば、今回のような出過ぎた発言をするのではなくて、むしろ、本部長もいらっしゃって、本部長が何かこっちの方を見て、こういう案が出ておるけれども、住田さん、これで大丈夫ですねとおっしゃってくだされば、いやもうこれでいいでしょうと申し上げたら済むはずであったのでありますが、残念ながら、今回の事故につきましては、はっきり言いまして、ジェー・シー・オーが、この事故が発生したための大きなショックを受けられたということもあったと思いますけれども、当事者能力、事故収拾についての的確な判断を下して、いろいろなことをやれるだけの当事者能力がないというふうに判断せざるを得なかったという状況でありました。  そのために、現地で本部長以下の方が、私ども四名が到着いたしました時点において、原研及びサイクル機構に対しては科学技術庁からの協力要請が出ておりまして、それぞれの方がそれぞれの分担に応じて、ある程度、緊急助言というよりはもう少し積極的に、助言なんというものじゃなくて、どういう作業をしなければいけないかというような検討を既にやってくださっておりました。  私どもも、東京から参りますときに、ある程度、ささやかな情報ではありますが持っておった情報、それから、当然科学技術庁の中には過去の許認可関係の書類、図面等ございますので、そういうものはもちろん用意して勉強して参ったわけでございます。  それから、具体的に申し上げますと、先ほど、タクシーに乗って行ったのはどうしてだと、おとがめでもないんですが、いただいたんですが、実はタクシーを呼びますときに一つ注文をつけまして、テレビが見られるタクシーをという注文をいたしました。要するに、テレビで状況判断ができるということで、テレビのニュースを見ながら行きたいという希望を出しました。それは確かにぜいたくな要望でありましたけれども、テレビを見ながら参りましたので、ある程度は現地状況というのは、全く電話だけの連絡でなくて、テレビで時々刻々いろいろな情報が流れておりましたので、そういうものを参考にさせていただきました。したがって、私たちは、行く間で車同士で連絡をとり合いながら、やはりある程度、幾つかの臨界を外すための策を考えておったというのが実態でございます。  したがいまして、何か私たちだけが助言をしたり、何かリーダーシップをやるということではなくて、むしろ現地で準備をしてくださっていたものと一緒に合体して、そこでいろいろな検討をいたしました。それが現地状況でございます。  それから、現地へ参りまして、今度は本部長の主宰で、先ほど申し上げましたように、全部が原研と核燃料サイクルの方でなくてもっとほかの方もおられましたけれども、主力はその両方から主要なメンバーがおられまして、既に原研それから燃料サイクルが、自分たちの持っている能力で何ができるかという自主判断だと思いますが、例えば水抜きの作業をもしやるとすればどの程度のことができるだろうかとか、そういういわゆる理論解析的なことをある程度進めておられました。  そういう意味では、本当に私どもが後から参りまして、いわばそういうベースがあったから仕事ができたんだということをぜひここで申し上げておきたいと思います。ですから、これはさっきありましたように、よそでやったらこんなうまいぐあいにいくかと言われたときに、はっきり言いまして、例えば科学技術庁が大阪大学や京都大学に、おまえのところは計算機を持っているからそれを回して計算してくれと言ったときに、あんなにスピーディーにやれるとはちょっと思えないわけですね。三十分ぐらいでばっと大型の計算機を回して相当精度の高い計算ができた、そういう点では随分差があったということはやはり申し上げられると思います。  それで、申しわけありません、しゃべり過ぎて恐縮なんですけれども、今先生御質問のありました、どういう任務を帯びていたかということにつきまして。  私どもは、本当に当事者能力がある組織体が相手であれば、いわゆる助言者という一歩下がった立場で終始できたと思うのでございますけれども、この場合は特別な例外でございまして、これはやむを得ないということで、本部長の御判断がございまして、いろいろあるけれども、これは私ども総括して先生方の御判断にまたざるを得ないでしょうということをある意味では投げてこられましたので、我々としては、せっかく東京からそういう任務を帯びて参っておりますから、これはもう一歩前へ出ていろいろと具体的な行動についてまで注文をつけるようなことをせざるを得ないだろうと判断をいたしました。  したがいまして、私個人としてでもそうでございますし、立場上、その場合には確かに委員長代理という肩書は持っておりましたけれども、あくまでフォーマルに言うならば緊急助言組織の一員として、専門家としては自分の一番やれることを尽くすという立場で終始したつもりであります。  そんなところでございます。
  142. 辻一彦

    ○辻(一)委員 NRCの委員等はかなり権限を持っておったと思うのですが、住田さんが行かれた場合には、緊急助言者の集団組織として行かれて、そこの現地に行って、任務と一緒に権限とかそういう点で、こういう点がどうしても足りなくて困ったとか、何か現場で困ったことはないですか。ちょっと簡潔に聞かせてもらえますか。
  143. 北側一雄

    北側委員長 住田原子力安全委員、簡潔にお願いいたします。
  144. 住田健二

    住田参考人 幾つもございました。やはり権限はございませんので、その都度、私は法的な命令権は何もない、だからあなた方が言うことを聞かないということは自由だけれどもと、何かお巡りさんがよく尋問されるのと同じことですけれども、それを毎回繰り返しました。これは大変不便でございました。
  145. 辻一彦

    ○辻(一)委員 とすると、もう少し法的な権限を原子力安全委員会に与えられれば、そういう緊急の場合の処理はより速やかにできるというふうに感じられておるか、いかがですか。
  146. 住田健二

    住田参考人 全く私も先生と同じ意見を持っております。
  147. 辻一彦

    ○辻(一)委員 NRCと日本原子力安全委員会が持つ権限の最も違いというのはどれぐらいあるのか、時間が制約されておるので要点だけ聞かせてもらえますか。
  148. 佐藤一男

    佐藤参考人 NRCというのは規制の執行機関でございます。日本でいえば、これは規制を行っている行政庁に当たります。御案内のとおり、安全委員会審議会等ということになっておりまして、それに対して意見を述べる機関でございます。そこが一番大きな違いと認識しております。
  149. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そういう経験からだけで推して云々するのはなかなか難しい問題ですが、この原子力安全委員会を、国家行政組織法による八条委員会から三条委員会に移してこの権限を強化をすべきである、こういうような意見が随分出て、これは国会でも随分今まで論議をしてまいりましたが、また、最近与党内等にもそういう意見が出ているように聞いておりますが、この八条の諮問委員会から三条委員会の行政委員会に移して強化をする、こういうことについてどういうようにお感じになりますか。
  150. 佐藤一男

    佐藤参考人 これは私ども自身のことでございますので、私どもが意見を述べるのは若干ためらいのようなものも正直言ってございますが、いわゆる八条機関というものと三条機関というもの、これは全然機関の性格が違っておると認識しております。したがいまして、それをどうするかというのは、お決めになるのは政府並びに国会かと存じますが、仮に三条ということになりますと、現在の規制の枠組みをかなり根本的に変えるということになろうかと存じます。  それから、ちょっと補足をさせていただきますと、TMI事故の当時、NRCも施設のあるいは敷地の内側については法令に基づく指揮権が余りございませんで、あれも実は勧告に近かったのであります。当時、デントンあるいはビックといった連中が必死になって電話で制御室の連中を説得したというようなこともございました。
  151. 辻一彦

    ○辻(一)委員 住田委員にもうちょっと現地状況からいろいろ伺いたいのですが、時間が余りないので、私は後で今の八条委員会から三条委員会原子力安全委員会強化の問題を若干論議をしたいので、一点だけ、住田さん、簡潔に申し上げますし、答えていただきたいのです。  現地へ行かれる時間等相当な時間がかかり、現地が立ち上がるには随分時間がかかったのですが、初期対応は非常に大事なので、それを極力短くするためにどうしたらいいかということを実感されたか、ちょっと簡潔に聞きたい。
  152. 住田健二

    住田参考人 端的に申し上げますと、やはりその場における指揮命令権というのが一人の人間に集中して、その人間の判断ですべてのことが行える、したがって、その人間に対してある程度のあらかじめ幅のある権限授与がなされていることが重要でありまして、今回については、その点につきましては、現地本部長が私に対して任せてくださったということで、そこから後は非常に私なりには時間はスピーディーにいった、個人的にはそう思っております。ですけれども、そこまで行くまでに相当時間がかかったという感じがいたしております。  以上でございます。
  153. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一点お尋ねしたいのですが、さっきもお話が出ておりましたが、原子力施設等事故は、瞬発的に初めにぱっと放射能が飛散する事故、それから、だんだんと時間と一緒に放射能が拡散していく、そういう二つのタイプがあるのですね。今回の場合は非常に早かったわけですが、初めの二、三時間で勝負は決まったようなといいますか、当初の大事な時間、そういうようなときに、国が判断をして、そして連絡をつけてこういうようにするというには相当時間がかかるのですね。  対策本部とそれから現地対策本部が立ち上がるまでに何時間かの時間がある、その間に迅速に初期対応をやらなくちゃならない場合があるわけですが、そのときに、それはどこが、だれがやるべきだとお考えになりましたか。
  154. 住田健二

    住田参考人 通常でございますと、当然これは設置者の全責任であるというふうに私は考えております。要するに、政府が乗り出してきたり原子力安全委員会が出てくるのは後でございまして、先生が今御指摘の最初の何十分というような間は、これはもう一に設置者があらかじめそれに備えてすべてのことを行うべきでありまして、今回それができなかったというところに問題があると思っております。  以上でございます。
  155. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それは事業者がまずやることですね、それは当然事業者の責任において。  と同時に、もう一つは、市町村長さんが、避難をこのときにしなければいかぬとか退避させるべきだという判断は、中央の判断を待っておったんじゃ間に合わぬ場合があるわけですね。そういう初期の対応を、市町村長ですぐに対応できる、やるべきだというようにお考えですか。やるならどんな条件を用意しなければならぬと思いますか。今回の防災法なんかで一つのポイントだと思います。
  156. 住田健二

    住田参考人 私からお答えするのが適当かどうかちょっとわかりませんが、少なくとも、ある程度こういう原子力関係の組織がある場合には、そういう防災センター的なものが、常設とまでは言いませんけれども、自動的に働き始めるというようなものがあれば、今回でも村上村長が非常にお困りになったようなことに対して、必要な情報を集めてすぐ提供できたんじゃないかというふうに考えております。したがって、今先生の御指摘のような、何かそういう適当な組織というのはぜひ必要だというふうに考えております。
  157. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これはこの程度にしたいと思うのですが、我々は長年、防災専門官を現地に張りつけて、市町村長と一緒になって、少なくとも限られた時間の初期対応をやるようにと。政府原案の中にも盛り込まれておりますから、これはまたそのときの論議に移したいと思います。  そこで、もう一点お尋ねしたいのは、これは大臣に主として伺いたいんですが、私は、最近における原子力事故を、それまではほかの委員会におりまして、委員長なんかやって直接タッチができなかったんですが、「もんじゅ事故以降ずっと見ておるんですが、「もんじゅ」の事故、再処理工場の爆発火災事件、低レベル廃棄物のずさん管理、輸送キャスクあるいは核燃料のデータの改ざん、捏造問題、それから日本原電の敦賀の小配管からの冷却水漏れの問題、そして今度のいわゆる東海臨界事故。これらを見ると、第一次系の、非常に今まで重要視しておったところよりも二次系の方に、重視はしておったでしょうが、安全審査でもいろいろな面でも必ずしも力を入れていなかったところに問題が、事故が出てくる。それから、今度のように周辺部に出てくる。そして、日本の長年積み上げた原子力の安全行政、そういうものを根元から揺るがしていることがずっと、今言ったように六つ続いておるわけですよね。  大臣として、この第二次の方から、周辺の方から、そういうところにどんどんぼろぼろと出てくるということをどういうように認識していらっしゃるか、お尋ねします。
  158. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 委員おっしゃいますように、原子力施設設備には、中心的なものから周辺的なものまでさまざまなものがございますけれども、それら全体が適切に機能することによりまして施設安全性確保されることから、そのどのような設備も安全上軽視されるものではございません。  したがいまして、原子炉であれば、二次系を含めまして、詳細設計について、設計及び工事の方法の認可の段階で審査が行われております。また、事故、故障が発生すれば、十分にその原因把握いたしまして、これを教訓として万全の再発防止策を講じていくことが重要であるわけです。  このような考えに立ちまして、敦賀二号炉や、また「もんじゅ」の事故などにつきましては、所管行政庁においてはもとより、原子力安全委員会におきましても原因調査に十分意を用いまして、再発防止のための対策を講じてきたところであり、今後とも事故やトラブルの再発、発生の防止全力を尽くしていきたい、そういうふうに思っております。
  159. 佐藤一男

    佐藤参考人 安全委員会の方からというよりは、もうちょっと技術的に、若干の補足をさせていただきたいと思います。  確かに、先生御指摘のように、最近、いわゆる二次系と申しますか、周辺系と申しますか、そういうところの異常、事故等が目立つわけでございます。これがたまたまそうなっているのか、何か基本的な原因があるのかというのは、これは別といたしましても、確かにそういう現象が目立つ。  これは、例えば原子炉で申しますと、一番大事なのは炉心の健全性を維持するということでございますから、これは一次系と二次系という目で見れば、二次系の方が炉心に影響を及ぼすのは距離はある、これは事実でございます。  ただ、例えば原子力発電所でございますとか、こういう原子力施設のような複雑巨大なシステムになりますと、あるところで起こった現象が思いがけないところに影響を及ぼすというようなことがしばしば体験されるわけでございます。例えばTMIの事故も、発端は二次系の、さほどではなかった異常でございますし、チェルノブイリも発電機の試験がきっかけでございました。  したがって、こういう二次系ないしは周辺機器といえども軽視できないことは当然でございます。当然、日本における安全審査、設置許可からその他後続に至るまで審査はしているわけでございます。  ただ、こういうような事例にかんがみまして、その辺をさらに注意深く審査していくということは必要なことかなと。そういう意味で、安全委員会といたしましても、例えば設置許可以降の規制等についても、もっと目配りをしなければいかぬというふうに感じているところでございます。
  160. 辻一彦

    ○辻(一)委員 審査指針とか、安全委員会はその指針に基づいて、その中で審査をすれば、ダブルチェックだから、書類で上がってきたのはチェックするわけですが、それで済むという時代もあったのですね。  しかし、一連のこの六つを見ると、まず第一は審査ですね、もっと審査の範囲を広げるとか、そういう必要があるのではないか。そうでないと、施設はずっと高齢化というか、老化してだんだん高経年になっていますね。だから、より問題が出やすい。だから、そこらに相当な目配りを安全委員会ができないと、こういう事故は後を絶たないと思うのですが、その点、いかがですか。
  161. 佐藤一男

    佐藤参考人 全く御指摘のとおりと考えます。  これは、現在の制度、枠組みにおいても、安全委員会は設置許可のときだけ見ればいいというようなことには決してなっていないのでございます。後続の規制、運転が完全に終わるまで、あるいは解体が終わるまで、それは私どもの責任の範囲内であると理解はしております。  残念ながら、しかしこれも、我が方の陣容がそれに即応して整っていないと、なかなか実際問題として目配りが十分にできなくなってしまうということはございますので、その点につきましては、関係方面の御理解、御支援をぜひお願いしたいというふうに考えております。
  162. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今安全委員長も答弁のとおり、まず安全審査という範囲を広げる。私は、余りそういう面には詳しくないのですが、とにかく今までよりも目配りを厳しくするということが第一に必要だと思いますね。  その次に大事なことは、せっかくその審査をしても、決めたことをちゃんとやらなければ、これはまた今回のようなことがいっぱい起こるわけですね。だから、ハード面の検査や点検というものをいかに厳しくやるかということ。それからもう一つは、今回の場合も、手順書であるとか、そんなものはもう全然無視したようなことをやっているのですね、残念ながら。しかも、社員の教育というようなことはゼロみたいなものですね。そのソフト面というか、非常にそういう面に力を入れないと安全はなかなか守れないんじゃないかと思います。その点、いかがですか。
  163. 佐藤一男

    佐藤参考人 これも全く先生御指摘のとおりと思います。  我が国の規制は、設置許可から始まりまして、その中の規制は、主として施設対象とした規制になっている、それが非常に大きな部分を占めているわけであります。  しかしながら、これは午前中の当委員会の中でも御発言がございました、そういうものを動かすのは人間であるということでございます。特に、今回の事故で見ますと、こういう仕事をする人たちの最低限の倫理と申しますか、そういうものが問われている面も少なからずあるというふうに理解しております。  そういう点につきまして、そういうものは単に規制をしたから改まるという、少しはあるかもしれませんけれども、それだけで基本的な解決になるだろうかという疑問もございます。その点も考えまして、安全委員会も大分前から、チェルノブイリ事故の最大の教訓と言われるセーフティーカルチャー、安全文化をぜひ発展させてくださいということを事あるごとに申し上げてきたつもりでございますが、遺憾ながら今回の事故ではそれは無視されていたと言わざるを得ない、これは私どもとしても極めて残念なことだというふうに思っております。  ただ、そういう努力は今後とも一層続けてまいりたいと思っております。
  164. 辻一彦

    ○辻(一)委員 さっき安全委員長は、陣容というかスタッフが相当ないとなかなか手が回らぬということですね。それは非常に大事なことで、審査をやる範囲を広げていけばそれだけ手がかかるということ。それから、今度は厳しい検査をやる、あるいは点検をやる、それから手順書やそういうソフトな面でも全部点検する。どうしても人といいますか、それに当たる者がいなければできないわけですね。  そうすると、それは一体日本原子力安全行政の中で、安全委員会がそういう仕事を広げていってやるべきなのか、あるいは行政が安全規制ということをやっていくのか、どちらだと思いますか。
  165. 佐藤一男

    佐藤参考人 これは実際の行政にもわたる仕事でございますので、もし言葉が足らなければ大臣の方からもひとつ補っていただきたいと思いますが、私は両方必要だというふうに考えております。
  166. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そこで、限られた時間で最後になりますが、両方が必要だと言うけれども、日本原子力安全行政は、御承知のとおり、推進と規制というのが一つの建物の中に同居しておるわけですね。  私は、ずっと検討すると、政策を推進する方と規制をする方が一緒におっては余り緊張感がないんじゃないか。よく努力はしていると私は思いますが、しかし、厳密な検査や点検をやるとかそういうことをずっとやるには厳しさがないといけないのです。  そういう点で、もうここまで日本原子力行政が大きくなってきた、発電所を見ればアメリカは百幾ら、フランスは五十八、日本は五十二ですから、研究施設の点で言えばフランスに劣らないだけのある意味では原子力大国になっている。そうすると今までのような、政策を推進する方と規制をする方と一つの棟の中に、科技庁にしても通産省にしても運輸省にしてもそういうことをやっているんですね。私は、ここで分離をして変えないといけないのではないか、その時期に日本は来ているのではないかと思うのですが、これは非常に大事な問題ですから、大臣の方からひとつ伺いたいと思います。
  167. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 我が国におきましては、原子力規制と推進の機能を効果的に分離をしつつ、科学技術庁または通産省が法令に基づく安全審査を行いまして、またさらに、原子力安全委員会が行政庁から離れた独自の立場からダブルチェックを行っておるわけでございまして、先生御案内のとおりでございます。今後も、個々の規制部局の充実を図りまして、こうした仕組みにより安全性確保に万全を期してまいりたい、そういうふうに思っております。  なお、省庁再編後は、原子力安全委員会につきましては、各省庁よりは一段格上に位置する内閣府に置かれまして、独自の事務局を設け、一層の体制整備、活動の充実強化を図ることとしているところでございます。  以上でございます。
  168. 辻一彦

    ○辻(一)委員 政策推進と規制が同居することでどういうことが起こっているか。  東海の低レベル廃棄物のずさん管理なんかは、政策を推進する方は、ドラム缶に穴があいたから、だから予算をつけて建屋をつくって、その建屋をもう整備が終わったからといって壊すまで予算化をしている。だけれども、実際は水の中に二十年もつけてドラム缶に穴があくまでやっておったわけですね。そんなことが安全委員会の方に一部報告されたのは、ごく間近になってだということですね。  こんなずさんなことがなぜ起こるのかということを考えると、もうここらで、日本は推進と規制というものを厳しく分離して確立するということが大事ではないか。  そういう点で、時間が余りありませんがちょっと聞きたいのは、NRCは、もう御承知のように、私も昭和四十九年に行って、参議院時代に随分調べたことがあります、原子力委員会から分離するという方針を出した後ですね。そして、五十年の初期に原子力委員会からNRCが分離して、もう言うまでもなしに三千人からのスタッフを持って、まあちょっとNRCで余り規制がきつくて大変だというふうな意見もありますが、それぐらいの厳しさがあって、アメリカの国民もNRCが言うならば大丈夫だろう、こういう安心感というか信頼感があるのですね。それだけのものをNRCはずっと築いてきたと思うのです。  それから、フランスへ私も行って調べましたが、これは行政で分かれております。原子力庁という政策推進機関、片方では原子力施設安全局というのが安全規制をきちっとやっておるのですね。  こういうように、大きな流れは政策の推進と規制を分離する方向に入りつつあると私は思うのです。そういう意味で、日本もその時期に来ているんじゃないかと思うのですね。  今まで我々はこの問題を随分と論議をしてきたのですが、通産省、科学技術庁を通して、この問題はなかなか難しいという答弁でしたね。しかし、一昨日の夕刊を見ると、これはもうここまで来ると推進と規制を分離すべきだということが与党の行革推進本部において論議をされて、一定の方向、分離してやるべきだという方向が出つつあるというふうに新聞で見たのです。  これは行革の問題であると同時に、日本原子力安全行政から考えれば科技庁長官が考えなければならないところなんですが、一体長官はそういう動きの中でどういうように見ていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  169. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 日本原子力安全委員会は、みずから擁する約二百名に及ぶ専門家を動員いたしまして安全審査に厳正に取り組んでおります。原子力安全確保のために極めて重要な役割を果たしていただいている、私はそういうふうに思っております。  先ほどもお話がありましたけれども、安全委員会の三条化といいますか三条機関化につきましてはさまざまな議論が出ていると承知しておりまして、今委員おっしゃいましたように、自民党の中でもいろいろな御議論があると私は伺っております。  現在の審議会としての活動の柔軟性を生かして、そして行政庁の一次審査と原子力安全委員会のダブルチェックの組み合わせによる安全規制体制というのは、日本システムといたしましては非常に意味があるもの、私はそういうふうに思っております。  米国のNRCのお話がありました。確かにNRCは三千名ぐらいの人員を擁している、そういうふうに伺っておりますけれども、また、一概に比較すべきことでもないとは思いますが、国によりまして原子力施設の展開状況あるいはその他の状況も違いますので、私どもは、日本に適した形でこの安全委員会の位置づけをしていけばよろしいのではないか、そういうふうに思っております。  先ほども申し上げましたけれども、省庁再編後は内閣府に安全委員会を設置して、さらにこの体制強化していく、そういうふうに考えておりますので、御理解をいただければと思います。
  170. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その答弁は、橋本総理からも随分予算や決算の場で聞きました。二百名の人員を持っているから、これを専門別にやって、日本独自の方法をやって、これは安全委員長の見解でもあったんです。私は、確かにそれは、安全委員は五人だけれども、その周辺に二百人からの専門の皆さんがいらっしゃって、そしてそれぞれ取り組んでもらうということは大変結構なことだと思うんですね。  しかし、さっき言ったように、審査の範囲を広げ、もっと目を配り、さらに今度は厳しい検査をやり、点検をやり、さらに手順書まで、あるいは教育の方はどうなっているかというところまで目を配ろうとしたら、二百人の皆さんが、安全審査ではグループをつくってやれても、それはできないですね。そうすると、そういうことをやらないと、二次系や周辺系といって余り重視をしないところで、どんどんと言っては語弊がありますが、後を絶たずに出てくるこういう問題に対応できないのじゃないか。  だから、そういう意味においては、日本の独自性は大いに大事なことだと私は思いますが、この時期で、政策推進との分離は明確に考えるときに来ているのではないか。私たちの方も、本格的なこういう法制化を目指して少し勉強をやっていきたいというふうに思っておりますが、防災法も十年ほど言って、あの事故があって急いで、ようやく今日の目を見ようとしておるんですが、この問題も、取り返しのつかないような事故やあるいは幾つかのものがずっと重なって起きてくると、もう信頼がなくなっちゃうんですね。そうすると、信頼が国民にない中で原子力行政は展開できない。だから、そういうことの来ないように厳しい対応を必要とする時期に来ているのではないか。  そういう意味で私は、政策的にも、八条委員会を三条委員会に切りかえて、原子力安全委員会を公安委員会並みに強化をして、そのもとに原子力安全庁を置いて、そして体制を、審査それから規制、そういうものを全部一括してやることを考えなくてはならないのではないか、そういうことをちょっと主張して、時間が来たからこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。
  171. 北側一雄

  172. 石井啓一

    石井(啓)委員 公明党・改革クラブの石井啓一でございます。  私は、公明党の茨城県本部の代表をしておりまして、茨城県民、特に東海村の住民の方は、これまで我が国における原子力の平和利用の先駆的な地域であるということに大変大きな誇りを持っていらっしゃいまして、また、その信頼性については大変大きな信頼を寄せていただけに、今回の事故影響ははかり知れないものがあるというふうに思います。この信頼を回復するためには、私は、並大抵の努力ではこれは難しい、事故原因徹底的な解明とその結果の公表、安全基準検査基準等監視体制強化原子力防災体制の抜本的な見直し、また、損害への十分な補償等について、政府が先頭に立って、あらん限りの努力を行わなければならないと思います。  このことを申し上げた上で、地元の方の具体的な要望を踏まえまして、政府対応、見解を伺いたいと存じます。  まず、住民の健康調査健康管理でございますが、先日、ジェー・シー・オー東海事業所の周辺環境の放射線線量評価が明らかにされました。これによりますと、直ちにがんの増加などの健康影響を懸念する必要はない、こういうふうにされておりますけれども、ただ、長期的な影響について懸念が払拭されたという状況にはございません。したがいまして、個々の住民ごとに被曝の想定量と健康への影響調査を綿密に行いまして、周辺住民の不安を解消するとともに、これは当然地元の自治体の協力も得なければいけないと思いますが、国として長期的な健康調査健康管理をしっかり行うべきだ、こういうふうに考えます。  まず見解を伺います。
  173. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 茨城県の県民の皆様方、また東海村を中心とする周辺地域住民皆様方には、原子力事業また原子力行政に対して本当に日ごろから御理解をいただき、また御協力をいただいておりまして、この場をおかりして重ねてまた感謝を申し上げるわけでございます。  今、委員から長期的な健康管理についてのお話がございました。長期的な健康管理につきましては、技術的かつ詳細な検討を行いますために、原子力安全委員会健康管理検討委員会が設置されまして、十一月八日に第一回の会合が開催されたところでございます。この委員会におきまして、今後の健康管理あり方について検討が行われ、基本的な方針が示されるものと思っております。  この健康管理一環といたしまして、科学技術庁といたしましては、茨城県、東海村、那珂町の御協力をいただきまして、三百五十メートル以内におられた方々を対象に行動調査を実施いたしまして、個人の被曝線量の推定に資することとしているところでございます。これらの結果を踏まえまして、必要に応じて、長期的な健康管理のためのきめ細かい対応を行っていきたいと思っております。  けさほどからたびたび申し上げておりますが、事故原因究明、再発防止等、やるべきことはたくさんありますが、まず住民皆様方の御不安を取り除く、それから、一日も早くもとの生活に戻れるよう、特に健康面については我々も全面的に全力で取り組んでいかなければならないと思っております。
  174. 石井啓一

    石井(啓)委員 心のケアの問題も含めまして、十分な対応をお願いいたしたいと存じます。  続きまして、原子力安全教育に関しまして、私なりの提言を交えて見解を伺いたいと思いますが、今回の事故の直接的な原因については、国に届けていた作業手順と全く違う、全く無視した作業が行われていたこと、あるいは臨界管理上、制限をはるかに上回る量のウランが投入されたこと、これが挙げられております。そして、その背景として、従業員臨界に関する十分な知識を持っていなかった、また会社の安全教育も全くおざなりであった、こういうことが指摘をされておりまして、今後、再発防止策として、従業員安全教育徹底というのは極めて重要な課題になるかと存じます。  他方、現在の原子力の安全に関する国家資格を考えてみますと、核燃料あるいは再処理につきましては核燃料取扱主任者、あるいは原子炉に関しましては原子炉主任技術者、こういう資格がございますが、これは現場の従業員が取得を目指すには極めて難しいレベルの試験でございまして、今回の施設も、核燃料加工施設には一人核燃料取扱主任者がいればいい、こういう状況でございますが、残念ながら、この主任者も今回の事故に当たって有効に働いたかというとそうでもない。  したがって、今後、従業員に対する安全教育徹底していくという上で、現場の従業員が取得を目指すことのできるような、そういうレベルでの新しい資格あるいは能力の認定制度、こういうものを設けまして、従業員が勉強しようとする意欲をわき立たせるようなことを考えてはどうか、こういうふうに私は提案いたしたいと存じます。御見解を伺いたいと思います。
  175. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 石井委員おっしゃるとおり、現在、原子炉主任技術者もしくは核燃料取扱主任者という国家資格がございます。また、関連した資格では、放射線取扱主任者一種、二種というようなものもございます。しかし、おっしゃるとおり大変難しい国家試験でございまして、いわゆる現場で苦労されている技能者の方が簡単に取れるというものではございません。  今回、石井委員からそういう御提言もいただきましたけれども、事故調査委員会が十一月五日にまとめた緊急提言におきましても同じようなことが指摘されております。すなわち「従業員への安全教育徹底し、能力の認定制度資格制度を設ける等の措置を講じること」、このような表現が緊急提言の中にされたところでございます。また、「従業者教育状況について、効果的な検査制度を導入すること」という点についても提言がされております。この提言を踏まえて、現場で働く技術者、技能者の倫理、また知識を向上させるような能力認定制度をぜひつくっていきたい、このように思っております。  これは、事業者がやるべきことと、それから公的機関がやるべきことを立て分けていかなくてはならないと思っておりますし、今科学技術庁では技術者の公的資格として技術士というようなものを持っておりますけれども、この技術士についても、もう一度全体的に見直して、世界に通用するもの、また幅広い技術者に通用するものということを考えて整合性を持ったものをつくっていきたいと思っております。
  176. 石井啓一

    石井(啓)委員 非常に前向きの御答弁をいただきましたので、ぜひよろしくお願いしたいと存じます。  続きまして、原子力損害に関しまして確認をしたいと思いますが、まず、現在ジェー・シー・オーに請求されている被害額がどうなっているのか確認したいと思います。
  177. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 ジェー・シー・オーへの損害賠償請求につきましては、現在、日本原子力保険プールが集計をいたしておりまして、十月二十八日までの請求額の合計が約六十億円となっていると聞いております。  ただし、具体的な賠償責任額は、被害者とジェー・シー・オーの間の話し合いによりまして今後確定していくものでございます。
  178. 石井啓一

    石井(啓)委員 大変大きな額が現時点でも請求されておりますけれども、風評被害というのは、実はこれからも長期にわたることが非常に心配をされます。特に、東海村、ひたちなか市の特産品でございます乾燥芋というのは、実は十月中旬以降が収穫期に当たるということで、これから市場でどういう評価を受けるのか大変心配をされます。  したがって、これからまた請求額が大きく膨らんでくるということが想定されるわけでございますけれども、特に、今回の事故の社会的な影響の大きさを考えますと、この風評被害の損害賠償については、私は、これは事故事業者のみならず国が責任を持って行うべきであるというふうに考えます。  そもそも原子力損害については、民事賠償であるということから、事業者が責任を負って賠償を行うか否かというのは当事者間でこれを決着する、こういうことは承知しておりますけれども、地元の方からすると、風評被害というのはもしかすると原子力損害に認定されないんじゃないのか、こういう心配も実はあるということで、まず、その風評被害というのは原子力損害にちゃんと認定され得るんだということをきちんと確認をいたしたいと存じます。  また、その上で、今大臣から答弁ございましたように、もう既に現在でも六十億円という大変大きな請求がされているわけでございますが、今の原子力損害賠償法の賠償措置額では、こういった核燃料加工施設については十億円が上限でございますから、それを超える分の政府の援助については、今回の事故では、これは当然のことながら被害者保護の観点から政府がこれを行うべきである、こういうふうに考えております。政府の御見解を伺います。
  179. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 委員御案内と思いますけれども、原子力賠償法における原子力損害は、核燃料物質等の原子核分裂や放射線の作用等により生じた損害でありまして、損害と放射線の作用等との間に相当因果関係がある限り、原子力損害に該当するものとまず考えられます。  そして、今回の事故による風評被害につきましても、放射線の作用等と相当因果関係があるものであれば原子力損害に該当するものと考えられます。  また、原子力損害の賠償に関する法律では、十億円を超えるような原子力損害が発生した場合、原子力事業者の支払い能力等から見て必要があれば、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内で政府が必要な援助を行うことを規定しております。  この国の援助は、原子力損害の賠償に関する法律の目的である被害者保護に万全を期すための最後の手段でありまして、科学技術庁といたしましては、ジェー・シー・オー側に最大限努力を求めつつ、被害者救済に遺漏なきよう、制度の適切な運用を図ってまいります。
  180. 石井啓一

    石井(啓)委員 相当因果関係があれば風評被害も原子力損害に該当するということでございましたので、若干安心をしたところでございますけれども、ぜひ、政府のしっかりした手当てをお願いいたしたいと存じます。  それから、今も申し上げましたように、今回の事故の損害賠償額はもう既に六十億ということで、原子力損害賠償法の上限の十億円をはるかに超える額が請求をされているわけでございますけれども、今後、この原子力損害賠償法の上限を見直すお考えがあるのか、ぜひ私は見直すべきであるというふうに考えますが、この点について確認をしたいと思います。
  181. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回のジェー・シー・オー事故につきましては、現行制度上、十億円の賠償措置額が課せられております。しかし、ことし五月の原賠法改正を受けまして、この賠償措置額の見直しを現在検討しているところでございます。  この検討に当たりましては、今回の事故状況や今後とられる再発防止策等も踏まえて十分に検討したいと思っております。
  182. 石井啓一

    石井(啓)委員 ぜひよろしくお願いいたします。  それから、風評被害を払拭することが非常に重要になるわけでございますが、これには安全性のPRが重要でございます。  いろいろな報告等で安全だという報告はされておりますけれども、事故直後あれだけ連日にわたって朝から晩まで報道がなされて、危ない、大変なことだということが報じられますと、市場に同じものが並んでいた場合、どうもやはり茨城県産は遠慮したくなるという気分になるということになってしまいまして、やはり、この安全性のPRを十分にするということが大切になってくるかと存じます。  小渕総理それから中曽根大臣も現地に来ていただきまして、お芋等を召し上がっていただいたようでございますけれども、この広報、キャンペーンは地元もしっかりやらなければいけないと思っておりますが、こういった広報、キャンペーンについて、国としてもぜひこれは支援をしていただきたいと思います。  この点について、いかがでございましょうか。
  183. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 風評被害を払拭するために、事故影響に関する正確な情報の伝達、それから安全性等の広報活動を行うことが非常に大切だと思っております。  科学技術庁といたしましても、環境モニタリングの結果等について積極的に情報公開し、また、事故に関するニュースレターの発行など努力をしてきているところでございます。また、農水省を初め各省庁においても、食品検査の結果等について広報活動に力を注いでいただいております。  さらに、茨城県等が行う観光PR等の風評対策に対して協力を行うべく準備を進めております。  ちなみに、茨城県が現在国に要望している風評被害対策にかかわる事業として、全国紙を活用した茨城のPR・イメージアップ一億八千万円、旅行雑誌、情報誌での茨城のPR・イメージアップ千八百万円、観光PRキャラバン隊の派遣三百万円等、まだこれは確定した額ではございませんけれども、このような事業を援助していきたい、側面支援していきたいと考えております。  また、十月上旬でございますが、中曽根大臣がポケットマネーで百個の茨城メロンを買われまして、科学技術庁でみんなでおいしくいただいたところでございます。
  184. 石井啓一

    石井(啓)委員 大臣、メロンだけではなくて、いろいろ特産物もございますので、よろしくお願いいたします。  続きまして、原子力防災体制強化につきまして伺いたいと思います。  十月十五日に、原子力災害対策の新しい法律に関しまして提案を党として行っております。すなわち、まず第一番目といたしまして、原子力災害に対して国が第一義的な責任を持つこと。実は、私ども党の事故調査委員会事故の翌日に現地に入りまして、東海村の村長さんにお話を伺ってまいりましたけれども、その際村長さんがおっしゃった言葉で大変印象的だったのは、原子力というのは国が国策として実施しておることであるから、こういった防災体制についてもやはり国が第一義的には責任を持ってやってほしい、こういう切実なお訴えを受けました。そういったことが第一点でございます。二点目に、国、自治体が共同して現地対応を一元化すること、三番目に、事故発生後の情報集約、判断など国の初動体制強化すること、四番目に、防災訓練を義務化すること、こういった点について提案を行っております。  政府におきましても、今新しい法律案を準備されているところでございますけれども、私どもの提案につきましてどういった検討をされているのか、確認をいたしたいと存じます。
  185. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 原子力防災に関する新法を、今お話しのとおり準備中でございますが、今委員が御指摘の、また党として御提案の事項についても十分に配慮をさせていただいております。  御指摘の点につきましては次のような内容を考えているところでございまして、すなわち、一つは、原子力災害につきましては事業者に大きな責任がありますけれども、地方自治体との関係におきましては国が前に出た対応を行うということ、それから、国と自治体の現地対策本部の連携を高めるための原子力災害合同協議会をあらかじめ指定された現地のオフサイトセンターに設置するということ、それから、初期動作の迅速化のため、一定の手順に従い、総理を長とする原子力災害対策本部を直ちに設置し、国は避難等必要な措置を自治体に指示すること、そして、国、自治体、事業者等による合同防災訓練を義務化することなどを措置する予定でございます。  いずれにいたしましても、今回の事故の教訓を踏まえ、実効性のある原子力防災体制構築に向け、早急に法案を本臨時国会に提出したいと考えております。
  186. 石井啓一

    石井(啓)委員 ぜひよろしくお願いをいたします。  それから、具体的な問題につきましてお伺いをいたしますが、今回の事故対応では、国と自治体、県、市町村との連携が必ずしも十分でなかった、また住民に対する情報伝達も迅速に行われなかった面もある、こういった反省がございます。したがいまして、今後の原子力災害時の情報伝達体制強化するという意味で、自治体と国あるいは関係機関間の情報伝達という意味では、テレビ会議システム、これを整備するとともに、自治体から住民に対する広報体制強化といたしまして、従来は、通常、防災無線ということをやっておりますけれども、例えば、夜ですとかあるいは雨天のときで窓を閉めて部屋の中にいるときはあれはなかなか聞こえにくいということもございますし、また今回のように一たん屋内に退避した後もやはり聞こえにくくなってしまう、こういうこともございます。また、車を出して一軒一軒連絡をするというのもまた時間がかかるところでございまして、住民に対する広報体制強化といたしまして、緊急のラジオあるいは緊急のテレビ放送システム、こういったものをやはりぜひ整備していただきたいと地元からも強く要望を受けております。この点についてはいかがでございましょう。
  187. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 今回の事故への対応につきましては、国、県、市町村事業者の連絡、連携に課題が残ったと認識しております。このような反省点も踏まえまして、原子力災害発生の際の迅速な防災対応に資するために、原子力防災のための新法、補正予算等によりまして、テレビ会議システム等の整備を進めていきたいと思っております。  また、緊急時における周辺住民に対する情報伝達、先ほど委員おっしゃいました緊急時の情報伝達につきましては、原子力安全委員会の防災指針においてもその重要性指摘されているところでございまして、特にテレビ、ラジオ等のニュースメディアに対して協力を求めることが重要とされております。したがいまして、周辺住民の方々への具体的な広報について、地域の実情を踏まえた、最もふさわしい方法検討されるべきと考えておりますが、科学技術庁といたしましても、自治体で行う広報について、緊急時安全対策交付金を活用して、必要な支援を行ってまいりたい、このように考えております。
  188. 石井啓一

    石井(啓)委員 自治体によっては、今言いました緊急ラジオなどは通常の防災広報にも使えるから、自治体も負担をしてもいいからぜひやってほしい、こういうふうにおっしゃる自治体もございますので、ぜひこれについて前向きにお取り組みをいただければと思います。  続いて、放射線のモニター、監視体制強化でございますけれども、当然のことながら、原子力関係施設が所在する市町村の監視体制、中性子線も含めてですね、監視を強化するということは当然でございますが、施設所在の周辺市町村、隣接市町村あるいはその隣々接の市町村、そういったところまでぜひ放射線のモニターを強化してほしい、充実してほしい、これは強い要望がやはりございます。それと同時に、モニターしたデータですね、監視のデータ、これを広く提供してほしい。例えば、最近はインターネットが非常にはやりでございますから、インターネットで公開するということも考えますし、あるいは、今公開している、そういう情報提供の場をふやすということも考えられるかもしれません。そういった住民に対する監視データの広い提供、こういうこともぜひお考えをいただきたいと存じます。この点について見解を伺いたいと思います。     〔委員長退席、西委員長代理着席〕
  189. 興直孝

    ○興政府参考人 御説明申し上げます。  ただいま先生の方から御指摘がございました、原子力発電所、再処理施設等の立地あるいは周辺の市町村におきます放射線監視についてでございますけれども、これまで、国の予算措置というふうな形で、道府県がおやりになられております。施設及び測定器を設置いたしまして、モニタリングを行ってきているところでございます。これにつきましては、当該市町村並びに隣接においても十分な対応をとるように努めているところでございまして、さらにまた、そのデータについて道府県の放射線監視センター等で公開がされるよう努めてきているところでございます。  当庁といたしましては、今般のこの事故を踏まえまして、核燃料加工施設等周辺につきましてもモニタリング施設を新たに設置するなど、放射線モニタリングを強化すべく補正予算要望をしているところでございます。  また、モニタリングデータのインターネット等での公開につきましては、既に一部の県で、例えば島根県でございますけれども、既に実施されているところでございます。今後他の立地道府県でもこのような取り組みが進みますよう、国としても支援してまいりたい、このように考えてございます。
  190. 石井啓一

    石井(啓)委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと存じます。  それから、先ほどの大臣の新しい法律の検討状況の御答弁の中でも総合的な防災訓練というお話がございましたが、特に地元の方からの要望で、防災訓練に当たってはぜひ住民参加の防災訓練をやっていただきたい。今回の事故は、まさに、施設外の住民が避難をするという意味では初めての原子力事故であったわけでございますけれども、やはり、住民参加の原子力防災訓練をぜひ国、自治体そして事業者が一体となって実施してほしい、こういう強い要望がございます。  それと同時に、防災マニュアルというんでしょうか、恐らく、それぞれこれからも原子力防災に関して新しい防災のいろいろな書類ができるんでしょうけれども、住民レベルでいいますと、役所のつくった書類というのはなかなかこれは難しくてわからないものですから、住民にわかりやすい防災マニュアルをぜひつくってほしい、こういう要望も受けておりまして、この点についても見解を伺いたいと存じます。
  191. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 原子力防災マニュアルにつきましては、実はこれまでも、国は、関係地方自治体に対しまして交付金を交付いたしまして、その作成、配布に財政的支援を行っているところでございます。平成七年三月には、原子力防災パンフレットの作成のための手引きを取りまとめて、地方自治体に配布してございます。  また、防災訓練につきましても、十四の原子力発電所の立地道府県においては、地域防災計画に基づいて、毎年または数年おきにこの防災訓練が実施されております。  しかし、地域住民地域また事業者、地方自治体、国一緒になっての防災訓練の必要性、今委員指摘になったとおりでございまして、この平成十一年四月に原子力安全委員会防災専門部会において報告が出されました。この中には具体的な訓練シナリオが書かれておりまして、地方自治体、国、事業者及び関係機関等が一体となった、より実践的な防災訓練の実施が提言されているところでございます。今回の事故反省も踏まえて、さらにこの充実を図っていきたいと考えております。
  192. 石井啓一

    石井(啓)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、冒頭申し上げましたように、今回の事故は本当に大変大きなショックといいますか、影響をやはり地元の方に与えております。この失地回復のためにはやはり相当の覚悟、努力政府が臨んでもらわなければならない、このことを重ねて申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  193. 西博義

    ○西委員長代理 菅原喜重郎君。
  194. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 九月三十日に茨城東海村のジェー・シー・オー核燃料加工工場で起こった事故については、十一月五日に、原子力安全委員会事故原因と今後の対策等について中間取りまとめを行ったところであり、また、きょうは、委員会の冒頭で中曽根長官からの調査報告もありましたので、今回は、再発防止を中心とし、今回の事故対応を踏まえた質疑を行いたいと思います。  ジェー・シー・オー事故では、同社の核燃料加工事業が国際競争の中で厳しい操業を強いられていたがために、コストダウンを行うために、裏マニュアルなどをつくってのリストラをしたことがこのような事態を招く発端になったものと認識もしています。  そこで、核燃料加工において、英国などは乾式を用いており、湿式を使うなど時代おくれだとの批判も出てくるんですが、核燃料サイクル機構は、「常陽」の核燃料加工のジェー・シー・オーへの委託を昭和四十年代より行っていると聞いていますから、どのような事情により委託をするようになったのか、まずお伺いいたします。
  195. 興直孝

    ○興政府参考人 御説明申し上げます。  原子燃料の供給につきましては、昭和三十一年、原子力開発利用長期計画が策定されましたときに、「燃料要素の加工は原子燃料公社及び民間において並行的に行うもの」としてその対応がとられてきたところでございました。その後、天然ウランを含めた国際的流通が必ずしも自由でなく、海外からの入手について相当の制約を受けるのみならず、数量的にも不安があった。こういう状況から、原子力開発利用の基盤である核燃料を主として国内の核燃料資源において、できるだけ自立体制のもとに開発を進める必要があると考えられたところでございまして、その後の海外におきます核燃料供給力の増大から、国内核燃料資源の開発と海外からの核燃料の輸入とをあわせ考えた政策をとることが必要となってきたところでございまして、昭和三十六年の原子力開発利用長期計画におきまして、「なるべく早い時期に民間企業により転換加工が実施されることを期待する。」とされてきたところでございます。このような事情から、早くから民間におきます技術が確立し、国内で民間工場が操業されてきたところでございます。  サイクル開発機構は、民間で既に確立されました技術以外の核燃料サイクル技術の確立を目的としてその研究開発を行っているところでございまして、確立されました技術である濃縮ウランの転換加工につきましては、民間に育ってきました技術の活用を図ってきたところでございます。  ジェー・シー・オーの前身でございます旧住友金属鉱山株式会社は、濃縮ウランの転換加工技術にすぐれ、臨界設計に関する技術者を多数有していたことから、旧動燃事業団は昭和四十七年から「常陽」用の燃料の転換加工作業を委託し、今回の「常陽」燃料用の約一九%濃縮硝酸ウラニルの転換加工についても、同様の理由で昭和六十一年よりジェー・シー・オーに委託してきたところでございます。  なお、今回の臨界事故が起こるまでの間、ジェー・シー・オーからは契約仕様どおりの適切な製品が納入されていることを聞いております。
  196. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 国内対策の振興として、これは安全保障の問題もありますから、国内で発注すること、そのことは何ら異議はないんですが、しかし私は、今国際化の時代に、前回もこの委員会で質問しましたが、コスト面から、やはり常に国際市場というものをにらんだ開発が必要じゃないか、こう思っているわけでございます。前回いただいた資料は、どうも国際的市場コストでは古いやつでございました。  また、今回の「常陽」の燃料加工は試験用であることもあり、コストがかかるのは当然ですが、やはり国際的市場の価格とは今私が言いましたような比較をしろといっても難しい点のあったことは重々承知しております。しかし、やはり将来の高速増殖炉の燃料ついては国際競争力を持ったものにすべきではないか。少なくとも何倍あたりまでが国民から同意を得られるかのコンセンサスづくりも必要と思われますので、この点につき質問をいたします。
  197. 興直孝

    ○興政府参考人 御説明申し上げます。  ただいま先生が御指摘になられました市場価格との関係でございますけれども、御指摘のとおり、これから高速増殖炉の実用化という問題を考えてまいりますと、経済性向上が不可欠でございまして、現在、核燃料サイクル開発機構におきましては、高速増殖炉サイクルについて、軽水炉発電と同等以下の発電コストを目標にその研究開発あり方を考え、進めているところでございます。  原型炉「もんじゅ」や実証炉以降の炉の燃料につきましては、現在、劣化ウランとプルトニウムの混合酸化物燃料を用いることとしておりますが、今後の研究開発によりまして、燃料製造にかかるコストにつきましてもできる限りの低減が図られるよう、このように考えている次第でございます。     〔西委員長代理退席、委員長着席〕
  198. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしても、前回の資料では、国際市場価格は、濃縮度五%以下でキログラムウランが平均二百ドルですから二万円です。しかし、今回の製品は一八%以上ですから四、五倍。五倍としましても十万ですが、キログラムウラン大体三十二万七千円ぐらいになっているというわけなんですから、ぜひ、これからのこういう国内開発も、国際市場価格というものと対比して、国民にコンセンサスを与える国内振興策を進めるように要望いたします。  次に、施設安全確保については、ジェー・シー・オーの操業状況、安全状況をどの程度把握していたのですか、このことも質問いたします。
  199. 興直孝

    ○興政府参考人 御説明申し上げます。  ただいま先生御指摘の、ジェー・シー・オーの操業状況把握の点でございますけれども、サイクル開発機構におきましては、各施設を有します事業者がその安全確保を図るという原則のもとに、核燃料加工の発注先の施設について検査等は特に行っておらず、今般の事故原因となるようなジェー・シー・オーの操業の状況、保安状況について承知していなかったものと考えてございます。  今回の硝酸ウラニル溶液の製造に当たりまして、ジェー・シー・オーからサイクル機構に提出されました転換加工要領書には、操業は管理限界内、溶解バッチ当たり約二・四キログラムウラン以下で行うこととされ、また、その管理についてジェー・シー・オー安全管理部門が行う旨明記されているとのことでございます。この点は、私どもも確認してございます。  また、品質保証計画書においても業務内容とその責任範囲が明記されてございまして、放射線安全管理あるいは臨界管理及び一般安全管理につきましてはジェー・シー・オー安全管理部門が行う旨明記されてございました。  サイクル機構といたしましては、これまでも同様の転換加工要領書あるいは品質保証計画書を取り交わしてきたところから、ジェー・シー・オーにおいて、品質管理はもとより、当然安全管理におきましてもしかるべき体制で厳格に実施されているものと認識していたと聞いてございます。  各原子力施設安全確保につきまして、施設を有する事業者が国の安全規制のもと責任を持って行うことが原則でございますところ、サイクル機構としては、今回の臨界事故の教訓から、原子力全体の安全確保重要性にかんがみまして、今後、原子力事業者間での安全強化を図るための協力活動等を展開していきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  200. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしても、原子力施設安全確保については、施設を有するものが国の安全規制のもとで責任を持って行うことが原則であります。発注者側も必要な安全対策がとられているのか確認をしていくようなことが大事ではあります。一方、今回のジェー・シー・オー事故については、組織ぐるみで違法行為が行われていたものと私たちは認識しております。  そこで、今回のこのジェー・シー・オーにおける安全管理上のどのような点が事故につながったと認識しているのか、その見解を問いますが、同時に、これから政府としてこういう事故を起こさないための対策が重要なわけなんですが、その点についての見解も問います。  しかし、私の質問の中心となっているのは、行政処分面を強く盛り込んだものでないといけないと思いますので、そういう点で政府認識と、これからの対応策を一応問いただしたいと思います。
  201. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 菅原先生の御質問は、まず、科学技術庁として立入検査を続けているけれども、このジェー・シー・オーにおける安全管理上どのような点が事故につながったと科学技術庁として認識しているか。まずその御質問にお答えいたします。  臨界事故発生以降、科学技術庁として、ジェー・シー・オーに対しまして、十月三日から原子炉等規制法第六十八条に基づく立入検査を実施しております。これまでの立入検査の結果、一つ、同社において、許可された機器ではないバケツ等を利用してウランの溶解を行う旨が手順書や指示書に記載されていること、二番目といたしまして、今回事故を起こした作業では、さらにその作業手順も無視し貯塔を使わずに沈殿槽で溶液混合を行ったこと、それから三番目に、臨界管理上規定されている制限量をはるかに上回る量のウランを投入したこと等を従業員からの聴取により確認しております。  さらに、このような事故に結びついた安全管理上の問題としてどのように認識しているかという御質問でございますが、一つといたしまして、作業員臨界に関する十分な知識及び経験がなかったこと、二つ、当該企業における人員配置教育等のマネジメントに問題があったこと、三、企業における設備改善の努力等が十分でなく無理な作業が行われていたこと、四、実際の作業を規定する手順書安全管理部門の審査を経ずに決められていたこと、五、従来から沈殿槽以外の設備でも大量のウラン溶液を取り扱う作業が日常化していたこと等が判明をしているところでございます。  この再発防止策につきましては、現在、原子力安全委員会事故調査委員会で御検討いただいておりまして、緊急提言が出されました、中間報告がなされました。また、最終報告が年内にもいただけるということでございますので、その結果を踏まえて、この再発防止策、きちんとしたものをつくっていきたいと思っております。  また、行政処分につきましては、現在進めております立入検査等の結果を踏まえて判断することになると思っております。
  202. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回の事業者は、違法な手続ということを認識しつつ裏マニュアルのようなものをつくっています。このようなことを防止するためには、まず、技術者一人一人が相応の教育訓練を受けること、みずから危険防止のために最善を尽くすという高い倫理観を持つことが必要です。  大体、今回の事故で、早急に原子力災害対策特別措置法案が国会に提出されようとしています。この対策のための予算が千二百九十六億円ですか、約千三百億円要求されようとしております。さらに、これからこの法律の対応策に投入される毎年の恒常的経費を考えると、何と国民や社会の安全を守る費用が膨大にかかるものかと思いやられます。さらに、これらのことだけで事故防止事故等への抑止力になるかと考えると、私としては、今回のような事故に当たっては、行政処分の事業許可の取り消しだけでなく、関係者にきちんとした刑法罰を与えることが必要と考えます。  そこで、公的資金からの事業を行うところのこういう事故に対する現刑法体系は十分に対応できるものかどうか、この点、どうなっているのか。さらに、今回の事故を引き起こしたことについて、どのような態度で法務省がこれに臨もうとしているのか、その決意のほどをお伺いしたいと思います。
  203. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 まず、本件事故についてでございますが、十月の六日に、警察によりましてジェー・シー・オー東海事業所等に対する捜索・差し押さえが行われております。  その被疑事実は、一つは業務上過失傷害罪ということでございます。業務上必要な注意を怠って人を死傷に至らしめたものという被疑事実でございます。それからもう一つの被疑事実は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律違反罪ということで、この二つの被疑事実で捜索が行われたということでございます。その後、検察庁におきましても、警察当局と協議をしながら捜査に当たっております。  ただ、本件事故特殊性から、現場そのものに立ち入りがなかなか難しいとかというさまざまな制約がございますので、そうした困難な状況の中で鋭意捜索をしているということでございます。  また、こうした危険な業務を、あるいは危険性を伴う事業についてのいろいろな刑事的な対応でございますが、今申し上げました業務上過失傷害罪というのが刑法一般としては想定されるわけでございますが、そのほかに、今申し上げましたいわゆる炉規法と言われておる法律その他、その危険性とか業務の特殊性に応じまして、さまざまな法律でその違法行為や違反行為についての刑事罰が科されているということでございまして、現在のそうした刑事法の分野における手当てとしては問題はなかろうというふうに我々は考えております。  以上でございます。
  204. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしても、この公的資金で事業を行っている人たちに対しましても、公務員は公金の不正に対しては厳しい処罰対象になっているんですから、やはり民間事業者に対しても、こういう意識を持ってもらわぬといかぬ、そのような立場で、私は、きちんとした手続による相当なる刑事罰が科せられるような、そういう防止策を、これは再発防止のためにも政府に強く要望しておきます。  次に、今回の事故反省点として見逃せないのが、今回の事故によって、原子力の面だけでなく、日本の技術力全般について対外的な信用を損ねたことであります。その一因となったのが、事故の初期に、ある意味では誤った報道や過剰な報道が外国に伝わったためであります。  このようなことを防ぐためには、外国への迅速かつ適切な情報提供が重要と考えておりますが、今回の事故に対する外国への情報提供の状況についてどうなっているのか。また、今回の事故によって日本の産業界の技術力や品質管理等に疑問が投げかけられることとなったと思いますが、この点についての対応がどうなっているのか、お伺いします。
  205. 興直孝

    ○興政府参考人 御説明申し上げます。  今般の事故につきましては、極めて重大な事故として国際的な関心も高いため、また、我が国の原子力開発利用の透明性を高め、また、我が国の原子力開発利用についての理解を得るという観点から、諸外国に対しまして、事故の経緯などについて積極的に正確な情報を提供することが重要と認識してきたところでございます。  このため、さまざまな場を通じまして、事故に関連する情報を諸外国、国際機関に提供することに努めてきたところでございまして、具体的には、各国、国際機関に対します情報提供や、インターネットによる情報の提供、海外のプレスに対しますブリーフィング、また、在日大使館を対象といたしました説明などを行ってきたところでございます。  さらに、十月の十二日、十四日及び十八日には、OECD及びIAEAに対しまして、我が国の専門家を派遣し、事故の経緯などについて説明を行ったところでございます。  また、申し出のありましたIAEA及び米国からはそれぞれ専門家三名を受け入れまして、科学技術庁及び原子力関係専門家などから事故の事実関係について御説明を申し上げたところでございます。  さらに、先月の二十八日、二十九日には、放射線医学総合研究所が、米国、ロシア、フランス、ドイツの被曝医療及び線量に関します専門家を受け入れ、ジェー・シー・オー事故の被曝患者の医療に関しまして、治療についての情報提供、意見交換、医療現場の訪問などを実施してきたところでございます。  こうした情報提供の取り組みとともに、事故原因徹底究明再発防止策確立全力を挙げることによりまして、我が国に対します国際的な信頼の確保に努めていきたいと思ってございます。  特に、今回の教訓といたしましては、事故直後の情報の提供のありようの問題について考えさせられるところでございましたが、翌日の一日には、在京の大使館関係者に対しまして、外務省並びに科学技術庁でそのブリーフィングを行ったところでございますが、何分十分な情報を持ち得ないというふうな観点からか、また、外国報道関係者に対します御説明が十分でなかった観点からか、外国におきます報道が私どもの想定する以上の報道になったものと考えてございまして、これを踏まえまして、今後の対応に生かしていきたいと考えてございます。
  206. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来ましたので、大臣に強調しておきますが、今回の事故は、核燃料加工工場の問題だけでなく、原子力産業、さらに産業界全般にわたって、日本の産業の品質管理や技術者の職業倫理にほころびが来ていることを示すものであると思います。  今回の事故対応はもとより、他の分野について同様のトラブル、事故が起きないよう、幅広い分野にわたって徹底的な見直しをすべきことを提言して、質疑を終わります。  ありがとうございました。
  207. 北側一雄

  208. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  せんだって、この委員会での資料要求が他の委員の皆さんから行われまして、けさほどの理事会で確認して科学技術庁の方から提出していただいたわけですが、実は、これは私の分だけ欠落しているのかと思ったら、全部欠けているんですね。それはどこが欠けているかというと、核燃料物質加工事業変更許可申請書の一番大事なページが抜けているんですね。「臨界による事故の程度、影響」で、「臨界事故については当施設では、「変更後における加工施設の安全設計に関する説明書」に示した様にいかなる場合でも安全であるよう十分な設計がなされているので臨界事故は起り得ない。」この変更許可申請書で臨界事故は起こり得ないと書いていて、実は起こったわけですね。だから、資料として出していただく上で一番大事なページが実はこれだったのです。  私は、科学技術庁がどういう意図でわざわざこれを外されたのかわかりませんが、これは、いってみればビデオ隠しとかデータ改ざんに類する問題だと思うんですよ。  私も、朝の理事会で袋をいただいただけですから、全部チェックできなかったので後でチェックしたんですけれども、それを理事会で確認したという点では、オブザーバーとはいえ、おまえも確認したんだからということになってまいりますから、みずからの不明を感じなきゃいけないかもしれませんが、科学技術庁の方でこういう一番大事な部分について、こんなものを欠いたようなこういう資料を出すということについては、私は、本当にこれだけ事故をやって、これだけ問題になって、まだおわかりじゃないのかという感じがしますね。私は念のためにいただいた袋三つについて確認しましたから。全部漏れているようです。  私は、これは大臣、やはり科学技術庁のこの問題に対する自覚と申しますか、基本のところでの問題としてぜひ反省もすれば、こういう今の事故の後でも本当に緩んでいるというか、こういう問題については大臣の方から一言ちゃんと言っておいていただきたいと思います。
  209. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 私自身、資料要求がありましたことについては存じ上げておりませんでした。ただ、今吉井委員からの御指摘を拝聴いたしまして、十分に今後気をつけて御要望におこたえしていかなければならないと思いますし、また、事務方にもその旨よく話をしておきたいと思います。  ただ、今回の不足分については単純なミスではないかと思っておりまして、担当の方からもちょっと答弁をさせます。
  210. 吉井英勝

    吉井委員 これは単純なミスということで済ますのかどうか。大したことないページだったらそれでいいんですよ、私も別にこだわるわけじゃないし。しかし、これは委員の方によっては本当に激怒されるような問題ですよ、私は穏やかに終わっておきますが。しかし、この臨界事故の程度、影響という一番大事な部分を欠いてしまったような資料だったら何の資料かと、私はそのことを重ねて申し上げておきたいと思います。  さて、十一月四日に「ジェー・シー・オー東海事業所の事故状況と周辺環境への影響について」というペーパーをもらいました。その中で、臨界反応による核分裂数は二・五掛ける十の十八乗個と推定されたということですが、まず基本的なところで、これは参考人の方からの答弁で結構ですが、要するに、ウランは何ミリグラム燃えたのかということと、これまでの世界の臨界事故の中でどの位置に値するぐらいの規模の事故であったのか、これを最初に伺っておきたいと思います。
  211. 間宮馨

    間宮政府参考人 御説明申し上げます。  まず冒頭に、先ほどの件は、まことに我々の不手際でございまして、おわびいたします。すぐに新しい資料をお出しいたします。  まず、御質問の最初でございますが、ウランが何グラム燃えたかということでございまして、科学技術庁に設置しました事故対策本部が、日本原子力研究所等の協力を得まして、二・五掛ける十の十八乗と推定したわけでございますが、この総核分裂数から核分裂を起こしたウラン235の質量を計算いたしますと、約一ミリグラム程度となるということでございます。  それと、今回の臨界事故が国際的に見てどの程度の規模と言えるかということでございますが、核燃料施設における臨界事故といたしましては、これまでに、米国で七件、英国で一件、ロシアで十二件発生していると承知しておりまして、このうちの一件を除きましてすべて水溶液系で発生しております。総核分裂数は多くが十の十八乗以下でございまして、これを超えているのは米国の三件でございまして、今回の事故はそれと同等の規模というふうに理解しております。  また、持続時間につきましては、多くが数秒から数時間でございまして、十時間以上持続した事故は三件と承知しておりまして、今回の事故はそれに相当するものと考えております。
  212. 吉井英勝

    吉井委員 いずれにしても、これは放出された沃素の量などからしても、沃素の量で計算すると、美浜原発のときの大体五千二百倍ぐらいになろうかと思いますが、これは政府参考人の方からでも、あるいは原子力安全委員長の方からでも結構ですが、この点は大体それぐらい沃素の量では出たんじゃありませんか。
  213. 間宮馨

    間宮政府参考人 ちょっと今手元にデータがございません。
  214. 吉井英勝

    吉井委員 これは安全委員会の方へ報告されたデータでしたかね。そういうことですから、大体沃素の量で約五十二キュリー、美浜のときは〇・〇一ですから、五千二百倍ぐらい。ですから、そういう点では中性子線が非常に大量であったとともに、これは世界的に見ても非常に大きな規模のものであったということがはっきりしていると思います。  事故現場から四百二十メートルのところで二十時間の被曝線量が一ミリシーベルトということが発表されておりますから、そうすると、この初動のおくれが被曝者をふやしてしまったということの責任というものは、私は極めて重大だというふうに思います。  そこで、伺っておきたいんですが、九月三十日の午前十一時五十八分にジェー・シー・オー運転管理専門官が到着しておられるということが記録の方で既に明らかにされております。そのときには既に、ジェー・シー・オーからは、臨界事故可能性ありというファクスが届いていて、もちろんそれをごらんになっているわけですね。そうすると、まずジェー・シー・オーに着いたら臨界事故可能性ありということについての判断の根拠を聞くとか、それは判断の根拠を聞いて臨界事故だとその時点で評価したのかどうか、判断したのかどうか。ここのところは、私はせっかく科学技術庁を代表して行かれたわけですから、一番大事なところだと思うんですが、これはどういうふうになっているんですか。
  215. 間宮馨

    間宮政府参考人 まず最初に、先ほどの沃素の件でございますが、一応安全側に見積もって五十四キュリーという数字が出ております。  後半の御質問ですが、運転管理専門官の業務は、通常時でございますと、保安規定遵守状況等の調査をするということでございますが、異常時にはその状況等を的確に把握し内容を本庁に連絡するということとされておりまして、先ほどの発生当日、第一報が本庁に入ったことを受けまして、本庁から東海村に常駐する運転管理専門官に直ちに現地に向かうように指示をしたところでございます。十一時五十八分にジェー・シー・オー東海事業所に到着をしております。  その後、運転管理専門官は、ジェー・シー・オーから、施設内に設置されたエリアモニターが高い指示値を示しているとの説明を受けまして、直ちにその旨を本庁に連絡いたしております。また、ジェー・シー・オーに対しまして、住民の避難の検討と近隣の専門家の応援の依頼を助言するとともに、那珂町に当該事故状況を伝えるように助言いたしております。その後は、本庁から派遣された職員が到着したことを受けて、派遣された職員とともに現地対策本部の立ち上げのための準備を行ってございます。  今、いわゆるエリアモニターの値から臨界反応が継続しているというふうにどう判断したかということでございますが、いわゆる臨界が起こった可能性が高いということの証左としてはそのように理解をしておりましたが、臨界の継続と結びつくというところまではまだ考えついてはいなかったということでございます。
  216. 吉井英勝

    吉井委員 私は、運専官の方の個人的責任なんというようなことを聞いているのじゃないのです。これは、科学技術庁を代表して行っているわけですよ、現場へ。一番この事故で問題だったのは、現場の責任者のジェー・シー・オーの越島所長の方から、この間所長がここへ来られて、十分後には、データをきちっと見て、もともとこのウランを普通使っている工場ではそういうエリアモニターの値があんな高い値は出ない、だから直ちにこれは臨界事故だと判断したと言っているわけですね。だからファクスが来たわけだから。  だから、科学技術庁を代表して送った人なのだから、臨界事故だと判断した、可能性ありという根拠をまず聞くことと、それに基づいて、エリアモニターといったってガンマ線だけなのですから、直ちに中性子線の、会社になければ近くからでも、総動員してでも中性子線を測定するように、こういうことを本庁の方から運専官に指示して、やるようにさせるか何かしなきゃいけなかったと思うのですね。そういうことは、結局本庁からは指示していないのですか。
  217. 間宮馨

    間宮政府参考人 先ほど申し上げましたように、ガンマ線が高い状況というのが臨界が起きたであろうということの証左として理解をいたしておりまして、その時点では、臨界がまだ継続しているということまでは思い至らなかったということでございまして、それ以上の指示とかはしておりません。
  218. 吉井英勝

    吉井委員 ガンマ線のデータが、一時的に高いだけではなくて、ずっと高かったのですよ。だから、ジェー・シー・オーの所長は、これは臨界反応だ、それが継続しているという判断をしているわけですよ。それに対して、いずれにしても、ではその臨界が終わっているか継続しているかということをまず確認しなきゃいけないわけで、中性子モニターを、測定するポータブル式のものを直ちに動員しなさいと、なぜそれを言わなかったのか。私は、被曝者の数をふやしてしまった非常に大きな責任があると思っているのですよ。  そういう点で、有馬前大臣はやはり非常に率直に言っておられますよ。当然中性子線測定はやっていると思っていた、中性子線をはかっているかと聞かなかったのは失敗だった、もっと早くはかっておれば臨界が起こっていることはわかったはずだと、この間も御紹介しましたが、直後のマスコミの会見で答えて、不明を恥じておられます。最近、今度出るのですか、中央公論で有馬さんは、私が甘かった、中性子もはかれと言わなかったことは科学者として非常に残念だと。そこまで前の大臣は厳しくみずからの不明を恥じていらっしゃるのですよ。  そういうときに、私は非常に不思議なのは、科学技術庁の中には、原子力工学を専攻された原子力畑出身の局長さんや事務次官さんなども含めて、そういう方がたくさんいらっしゃるのに、だれ一人として、この場合は中性子モニターを直ちに動員してでもはかって、確認して、確認しながらも避難のことを考えなきゃいけないと思うのですけれども、なぜそれをやることができなかったのか。一体科学技術庁には、そういうときに、危機管理という言葉は発しているのだけれども、判断できる人が一人もいないような体制なのか。これは非常に不思議なのですね。だから大臣に伺っておきたいのです。一体ここはどうなっているのですか。
  219. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 ちょっと私の方から答えさせていただきますけれども、少なくとも、例えば私がその場にいたとしたら、一技術者としていたとしたら、次のように判断したのではないかと思います。  それは、こういう溶液での臨界が起きたという場合に、いわゆる即発臨界で、瞬時に臨界反応が起こる、それによって溶液が飛散をしたり、もしくはその容器が密封されていたら爆発をしてその溶液が散り散りばらばらになる、そういうことで臨界反応が終わる、こういう即発臨界だけで終わっている。したがって、越島所長さんも、いわゆるバースト部の臨界が起きたのであろうという判断だったのだろうと思います。その臨界が続いているかどうかということにつきましては、最高峰の知識を持っていらっしゃる安全委員会の中でも、続いているか続いていないか議論があったぐらいでございまして、即座に、この臨界が、定常状態の臨界が続いている、こう判断はなかなかできる状況ではなかったのではないか、このように考えております。  私程度のレベルの低い技術者の間では、そういう判断をしてもおかしくなかったのではないかなという感じがしております。
  220. 吉井英勝

    吉井委員 即発臨界がすぐ終わったか、外国の例のように三十七時間の例もあるのですから、続いたかどうかということを、それは確かにいろいろな評価はあるでしょう。しかし、だからこそまず中性子モニターを、ポータブル式のものは動燃にも原研にもあるわけですから、直ちに動員してはかりなさい、なぜそれぐらいのことを言わなかったのか。  非常に不思議なことは、ジェー・シー・オーへ行った専門官の方は、今おっしゃったように、住民の避難の検討と近隣の専門家の応援の要請を助言したというのですね。住民の避難の検討というならば、避難の検討が必要だと判断した根拠があるわけですね。それは、臨界事故が継続しているのか、あるいはその結果として中性子線被曝を避けるために早く逃げなきゃいけないのか、あるいは放射性沃素その他の大量の放出があって、沃素剤をまず飲みながら逃げなきゃいけないという判断をされたのか、何か根拠があるわけでしょう。せっかく、仮に運専官の方が独自に判断されたとしたら、そういうふうになっていないのは、これは本庁の方が抑えたのですか。
  221. 間宮馨

    間宮政府参考人 運転管理専門官現地に行ったわけでございまして、現地で見た状況といいますのは、その施設の人がいわば発生源から遠くに避難をしていたという状況でございまして、そういう状況から、それとガンマ線が高いということから今のような検討を示唆したということだというふうに思っておりまして、そこら辺の情報が必ずしもしっかりと我が方に伝わっておりません。ここら辺につきましては、もちろん情報伝達が十分でなかったという面があろうかと思いますが、そういう中で起きたことであるということでございます。
  222. 吉井英勝

    吉井委員 私は、改めて十月の二十七日に、何回目か、ジェー・シー・オーへ行きまして、所長から伺ったのですね。要するに、何回も繰り返し確認してまいりましたが、運専官の方から臨界事故についての質問やコメントはなかったというのですよ。それから、住民避難についてもコメントはなかったというのですね。ジェー・シー・オーの判断で避難を急がねばならぬと考えた、避難の御指示はなかったと。こういう点では、結局臨界事故可能性についても判断しないし、判断しなきゃいけないと思ったら、直ちにポータブル式の中性子モニターを持ってきなさいという指示をしなきゃいけないのですが、それもなかった。住民避難についても、何の質問もしないで一切のコメントもなかった。  私はジェー・シー・オーの方から聞いているのですが、あの方も技術屋さんで、うそをつくような方と思いませんが、やはり当初の科学技術庁のとった態度というのは、これは混乱に次ぐ混乱であったのかどうか知りませんが、本当に必要なときに必要なことを最初の段階でまずやっていなかったということが、あるいは問いただしていなかったということが本当のところなのではないですか。
  223. 間宮馨

    間宮政府参考人 運転管理専門官の件でございますが、本人から私が直接聞いたわけでございまして、もちろん、どちら側の言い分がどうであるということはわかりませんが、本人の名誉のために、本人がうそをついていたということは我々としては信じたくはございません。  それと、確かに、当時どういう状況にあったかと申し上げますと、我々が科学技術庁の本部を立ち上げたのが午後二時半でございますし、政府の本部を立ち上げたのが三時でございまして、それまでの間は、いわば通常の業務の中で情報が流れてきたわけでございまして、ある箇所に、一カ所に集中していたという状況ではございませんで、そういう中で情報のやりとりがうまくいかなかったというところがあろうかと思っております。
  224. 吉井英勝

    吉井委員 私は決して、運専官の方の個人的な責任だ何だとか、そんなことを言っているんじゃないのです。本庁が、こういうことは確認しなさいとか、こういう指示は出しなさいとか、何も言わずに送っていたことが問題じゃないか、そこを言っているのですよ。何のために運専官の方を現地へ派遣したのですか。  次に、原子力安全委員会の方にも、委員長に聞いておきたいのです。  ことしから、五人全員常勤体制になりました。ですから、専門家集団なんですから、常勤の方なんですから、臨界可能性ありというファクスが入って、それは十一時十五分ごろのことですね、まず科学技術庁に伝わったのが。直ちにあなたのところへ伝わらなければこれはもともとおかしいのだけれども、その時点で、この日はたしか、ちょうど委員会も予定しておられたということですから、緊急に、臨時的にでも直ちに専門家集団として集まって、そして臨界事故についての検討を行い、少なくとも、その時点でわからなければ、私は有馬前大臣は非常に率直な方だと思っているのですよ、まず中性子モニターを、直ちにポータブル式のものを持ち寄ってでもはかれという指示を真っ先に出して、それを科学技術庁の方にいわば進言をされる。それでも科学技術庁が言うことを聞かなきゃ、これは科学技術庁の責任ですよ。  しかし、何のために常勤の体制になっていたのかということが非常に不思議なのですね。なぜおくれたのか。その後の、二時からの方の会議録は読ませていただいておりますが、なぜそこを早く決断してやられなかったのか、伺っておきたいと思います。
  225. 佐藤一男

    佐藤参考人 これは、今先生御指摘のように、今にして思えば集まることは可能だったと思います。ただし、集まったからといって、我々のところに届いていた情報が的確なといいますか、十分なものになっていたかどうかは甚だ疑問であります。  その二時の会議、これは予定されていたわけでありますが、冒頭に、緊急報告という形で科学技術庁から報告がございました。そのときには第一報が来ておって、この段階では、臨界事故の疑いといいますか可能性はあるけれども、まだそういうものは確認される段階とは思わない、確認できないという趣旨の報告だったわけであります。したがいまして、これをもう少し早目に開いていたからといって、我々が手に入れることができた情報がそれほどのものとは到底思えません。  ただし、これは速記録等を御参照いただければおわかりかと思いますが、そもそも、こういう核燃料施設で従事者の重大な被曝があるといったようなこととしては、これは臨界事故以外にとても考えられないということで、その席上でもう、臨界事故である、あろうというふうに判断はしているわけでございます。
  226. 吉井英勝

    吉井委員 私はこの会議録を読ませていただいて思ったのですけれども、科学技術庁の方は、臨界事故が起こったのじゃないかといろいろ言われておるが、全く今確認できる状況ではございませんと、何とも頼りない話なのですね。しかし、読ませていただくと、例えば住田委員は、諸般の情勢を全部総合するとこれは臨界事故だと言わざるを得ないと、情報は少なくてもきちっと判断していらっしゃるのですよ。  臨界事故であれば、しかもこれが継続しているかどうかの確認のためにも、まず、もっと早く集まられて、情報がなければないで、直ちに情報を集めろと。一番必要な情報は中性子モニターなのだ、これは有馬さんも言っておられるとおりですよ。それを指示するのが、科学技術庁の本庁では何にも判断できないのだったら、やはりそれをやるのが原子力安全委員会のなすべきことじゃなかったか。だから、情報がなかったからわからないというふうなことを今ごろ聞かせていただいても、私はそれは、原子力安全委員会は本当に国民の信頼を失うことになるだけだということを申し上げておきたいと思います。  次に伺いますが、二〇%濃縮ウランの硝酸ウラニル溶液の臨界質量とその容積換算値、及び問題のあった沈殿槽の容積が幾らなのか。これはあらかじめちゃんと御通告してありますので、政府参考人の方からお答えいただきたいと思います。
  227. 間宮馨

    間宮政府参考人 御説明いたします。  濃縮度二〇%の硝酸ウラニルの臨界量につきましては、容器の形状、中性子の反射体の有無等に依存はいたしますが、球状の硝酸ウラニル水溶液の周りを三十センチ厚の水反射体が取り囲んだモデルを仮定いたしまして、核反応断面積データライブラリー及び臨界計算コードを用いて解析を行いますと、約五・九キログラムとなります。  また、臨界に至る最小の体積につきましても、同様の解析によりまして、一リットル当たり六百グラムウランの場合に約十六・五リットルとなります。  なお、今般事故のございました転換試験棟に設置されております沈殿槽の容積は約百リットルでございます。
  228. 吉井英勝

    吉井委員 臨界体積が十六・五リットルなのです。十六・五リットルといいますと、わかりやすい感覚からいいますと、一升瓶でいうたら八本ぐらいですか、それぐらいの量なんですね、臨界体積が。  沈殿槽は百リットルなのです。だから、これははなから、この沈殿槽は単一のユニットとして臨界安全を考えていなかったんですよ。  私は、そこで伺っておきたいのですが、この沈殿槽の容積が臨界質量を超える、臨界体積を超えるということになると、核燃料施設審査基本指針の十、それからウラン加工施設審査指針の十、ここに示す、単一ユニットでも臨界質量にならないという基準に違反するものじゃないですか。どうなんですか。
  229. 間宮馨

    間宮政府参考人 今般臨界事故が発生いたしました転換試験棟につきましては、濃縮度五%以上のウランを取り扱うということから、核燃料施設安全審査基本指針に基づきまして安全審査を実施いたしております。  その際、臨界管理につきましては、核的に安全な形状寸法にすること、いわゆる形状寸法管理、取扱量を核的制限値以下に制限すること、いわゆる質量管理等の種々の適切な臨界管理が行われること、実際の運転管理の際に誤操作等を考慮しても臨界に至らないことなどを確認いたしておりまして、このようなことから臨界事故が発生するおそれはないと認めたものでございます。  しかしながら、今般の事故におきまして、作業手順を無視して、形状管理されている貯塔を使わずに、沈殿槽に直接入れて混合を行ったという作業手順の無視と、臨界管理上規定されている制限量をはるかに上回る量のウランを投入したという臨界制限量無視、そういう二つの要因が重なって事故が起きたということでございます。
  230. 吉井英勝

    吉井委員 私は、そういうことを言っておったら本当にとんでもない話だと思うんですよ。  まず、これは指針の十違反なんですよ。大体単一ユニットで臨界安全を守らなきゃいけないのです。十六・五リットルで臨界体積だと、百リッターだったら、はるかに、これは臨界になっちゃうわけですよ。しかし、おっしゃったように、初めの貯塔などいろいろおっしゃった、それはそのとおりなんですよ。  しかし、指針十二では、万一の誤操作があってもなんですよ。だから、それからすると、今度の問題というのは指針の十に照らしてもこれは認めちゃならないものだったのです。単一ユニットでも臨界安全を超えるのだからだめなんですよ。その上に、いかなるマニュアル違反があろうと誤操作があろうと、マニュアルそのものが裏マニュアルであったとしても、指針の十によって臨界事故を起こさないということをやらなきゃいけなかった。そこが一番の問題なんですよ。まだおわかりになっていらっしゃらないようですね。  原子力安全委員会の事務局を務めているところは原子力安全調査室ですね。当時、安全委員会に書類を提出する前に、あらかじめこれでいいのかどうかというのをチェックして、そして安全委員会に上げた人はだれかといったら、当時の責任者となると、実は、今事務次官になっていらっしゃるけれども、原子力安全室長さんなんです。だから、きょう、私は本当は、まだあの方が局長さんであればここで質問できるのですが、どうもやりにくいということらしいので、仕方がないから原子力安全調査室を担当する審議官の方に来てもらうということにしております。  だから、審議官に私は参考人として伺っておきたいのですが、あなたが今指針十に反する書類を預かった場合、これは単一で臨界体積を超えてしまう、臨界質量を超えてしまう、そういう書類として出てきた場合に、自分は、これはまずいということで、その事業所に対して書類をちゃんとつくり直して出しなさいと指示するのか、たとえ臨界質量を超えておってもあなたはそのまま原子力安全委員会に書類を送られるのか、どっちの立場をとられるのか、それを伺っておきたいと思うのです。
  231. 木阪崇司

    木阪政府参考人 御説明申し上げます。  この指針十に基づきます審査でございますが、臨界安全に対しまして、核燃料施設内におきます単一ユニットは、技術的に見て想定されるいかなる場合でも臨界防止する対策が講じられていることというのがこの指針でございますが、これの臨界防止するという観点からいたしますと、形状管理それから質量管理、この両者いずれかでもってそれを確認するということで臨界防止するという対策として評価をしているわけでございます。  当時は、この質量管理ということで、今までも再三御議論になっております安全係数二・三ということで、それが守られている範囲においては臨界には達しないという判断をしたということでございまして、現在におきましても、この形状管理と質量管理という両方を組み合わせながら、どちらかでそれを確保していくという考え方でございますので、もちろんいろいろな御議論はいただかないといかぬと思いますが、臨界防止するという措置として形状管理、質量管理、そのどちらかできちっと確認ができるということを御審議いただくということになるのではないかというふうに理解をいたしております。
  232. 吉井英勝

    吉井委員 再度確認しますが、そうすると、今あなたはその責任者なんですね。  原子力安全委員会に書類を出すときに、指針の十に照らしてみて、形状管理だ質量管理だ、いろいろおっしゃったけれども、一番のポイントは、この単一ユニットについては、技術的に見て想定されるいかなる場合でも臨界防止する対策は講じられていることなんでしょう。だから、その点で、あなたは今のような理屈で、質量管理をおっしゃったが、質量を体積に換算すると、臨界体積は十六・五リットルでなければいけないのに、百リットルの沈殿槽が書類として出てきた。  あなたは、指針十に照らせば、あなたが本当に良心的にやろうとすれば、これはだめだ、こんなことでは私は責任を持って原子力安全委員会に上げることができませんということを言わなきゃいかぬと思うのだが、あなたは、今のお話だったら、もうそのまま書類を上へ上げられるのですね。
  233. 木阪崇司

    木阪政府参考人 御説明申し上げます。  この臨界防止する対策と申し上げますのは、今申し上げました形状管理と質量管理ということを組み合わせながら達成していくということでございますし、同時に、全体のシステムとしてそれを守っていくという考え方になろうかと思います。したがいまして、そこに至るまでの、加水分解から一連の貯塔に至るまでのこの過程の中、このワンバッチで、全体をワンバッチで処理をする、こういう流れの中で、その次にございます沈殿槽でございますか、そこに行くという工程でございます。  以前より御説明申し上げておりますように、いわゆる誤操作等々にはよらない、そういう範囲内におきましては十分にそれが確保される。ただ、今回の場合には、その誤操作の範囲を外れて、違法な行為によりましてこういうことがなされたということでございますので、これは、いろいろ御議論もあろうかと思いますが、これからまたいろいろ調査の経過を踏まえまして十分御審議をいただくことだというふうに考えております。
  234. 吉井英勝

    吉井委員 私は、今のお話を伺いまして、これは同じことを繰り返すと思いましたね。これは本当に、そういうふうな原子力安全調査室であれば、私は繰り返すと思いますよ、この事故を。  当時、そういうふうな判断でもって恐らく岡崎さんも書類を上げられたのでしょう。本当だったら、きちっと見ておれば、単一ユニットで臨界体積十六・五リットルで抑えなければいけないものを。大体、事故なんというのはいろいろな条件が重なるから起こるのですよ。その方の話は指針十二のことなんです。指針十というのは、単一ユニットで見ても臨界安全が保たれるということなんですよ。それを見逃して原子力安全委員会に送ったという責任は、私は、当時の安全室長の責任は極めて重いと思っていますよ。  しかし、当時の岡崎さんも責任は重いけれども、その岡崎さんと同じように、今同じ立場にいらっしゃりながら、そのあなたがそういうことでは、これは本当に再発防止にも何にもなりませんね。  次に、私は、原子力安全委員長に伺っておきたいのですが、いずれにしても、単一ユニットでこれは臨界安全が保たれない、こういう書類が出てきたときに、当時の人たちはもう皆おやめになっているから聞かれても困るかもしれないが、今のあなた方原子力安全委員会だったらどういう判断をされますか。
  235. 佐藤一男

    佐藤参考人 まず、私どものところにこういうものの審査内容の報告が来る、通常でございますと、これは核燃料安全専門審査会の審査を経たものが報告書として上がってくるわけでございます。そういうものでございますから、これはなかなかもって、例えば安全調査室の一存でその書類をどうするこうするというのは難しいところもございます。  また、私どもといたしましても、そういう専門審査会等の専門家の意見はできるだけ尊重するという方向で来ておりますので、ただいまの先生御指摘の単一ユニットの臨界防止という、いろいろな解釈の問題はあろうかと思いますが、基本的には、その審査会の答申と申しますか、それを尊重するということでございます。
  236. 吉井英勝

    吉井委員 これは、大臣、お聞きいただいて、えらいことなんですよ。みんな責任を振り合って、だれも責任をとらないのです。こんなことでいいのだろうか。  核燃料加工施設安全審査の審査会がある、専門部会、それがあって、そこがクリアしたということでもって、安全調査室は何も考えない、原子力安全委員会もそこに遠慮してしまって物を言えない。  結果としてどうなったかというのは、結局、私は判断の狂いは安全神話が根底にあると思います。原子力施設や原発は、日本の場合、安全だ、臨界事故は起こり得ないという思い込みがあった。しかし、結果として、その安全神話にお墨つきを与えてきたのが、指針の十に反する上に、基本指針十二を無視して、中性子モニターもないし、臨界事故を未然に防止する対策もないし、事故が発生したときにはボロン注入などの制御・抑制装置もない、ないない尽くしで許可したということ、これは非常に重大ですよ。  同時に、その安全審査の誤りに加えて、事故発生時の臨界事故という判断に五時間半もかかってしまった。直ちに避難をさせなさいという指示もできなかった。  私は、こういう点では、何かジェー・シー・オーの事業の許可を取り消すとかなんとかいう話も出ていますが、今問われているのは、科学技術庁原子力安全行政そのものが言ってみれば許可取り消しの一番の対象じゃないか。そこまで国民の皆さんから本当に不信を受けて、厳しい目で見られているときに、今のような仕組みの話を繰り返してもらったんじゃ、これはまたやりますよ。  そこで、私は、ここはもう大臣に伺っておきたいんですが、やはりこういう現状について、国民に対する謝罪と厳しい反省の弁があってしかるべきだと思いますよ。これは大臣に伺っておきたいと思います。
  237. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 緊急時の庁内の体制につきましては、今回の事故での対応等反省を十分にいたしまして、また今後検討していきたいと思っております。  また、国民の皆様に対する謝罪ということでございますが、事故発生直後から申し上げておりますように、本当に多大な御迷惑をおかけした、そういうふうに心から思い、また、本当に厳しく受けとめておるところでございます。  再発防止、それから地元住民皆様の健康問題等全力で取り組んでいきたいと思っております。
  238. 吉井英勝

    吉井委員 私は、今のいわばつらっとしたようなお話を聞いているだけじゃ、これは本当に正していくということはとてもできないなと、深い憂慮の念を感じます。  これは、やはり基本的に日本科学技術庁が原発推進官庁なんですよ。原子力についての考え方、思いは、いろいろな方がいらっしゃっていいわけですよ。しかし、少なくとも規制するという分野が全く独立したものでないと、推進官庁の上に乗っかかって、そこを事務局としてやっていて、お互いにあちこちに気を使うだけの話で、本当のところ、指針十や十一や十二に照らしてやっていこうということがない限りこれは正されないということを指摘して、次の問題に進みたいと思います。  実は、あれだけ事故をやりながら、まだ原発安全神話がはびこっているということについて。  これは、北海道電力の泊原発三号機建設計画に当たって北海道庁が行った意見募集などに、北海道電力は社員に命令を出して、五千人の社員に意見を出させるという取り組みをやりました。  具体的には下表のとおりと、社員の知人、友人、何人割り当てるとか、どういう時期にやるとか、北電グループや協力会社、道民会議、取引先など割り当てをやって、そして原子力は安全ですという意見をどんどん出しなさい。それから、意見陳述人については、三十名程度開催地ごとに賛成意見の陳述人を組織して応募するように。傍聴人についても、各会場とも、開催地の専門部会が中心となって定員の半数を動員するようにしなさい。さらに、その中には意見の募集のひな形までありまして、設定条件とか住所、例えば札幌市、氏名、女性の名で年齢四十二歳として、例えば職業はパートにしておきなさい。これは、中はなかなか丁寧なひな形がありまして、主婦の立場から原子力は必要だとこのごろ考えていますというふうな書き出しで、原子力発電所の安全の徹底ぶりには驚きました、昔は心配したが、原子力は大丈夫だし必要なものだと思います、こういうふうに示して書かせる。こういう内容なんですね。  だから、大臣に伺う前にエネ庁長官にも伺っておきたいんですが、エネ庁の方は、巻原発の住民投票運動のときには、直接現地に乗り込んでいかれて、原発は安全だという講演会などを組織的に行ってこられましたが、今回こういう意見書作戦をやらせるということについては、よもやかかわっていないでしょうね。
  239. 河野博文

    河野政府参考人 今回の北海道電力の件について、当庁は関与しているということはございません。
  240. 吉井英勝

    吉井委員 こういうことはエネ庁としても改めさせますね。
  241. 河野博文

    河野政府参考人 本件につきましては、御承知のとおり、北海道電力の泉社長も記者会見におきまして、要約をいたしますと、行き過ぎがあった、不適切な点があったということを認めているわけでございまして、今後こういうことはないというふうに思っております。
  242. 吉井英勝

    吉井委員 次に、電気事業連合会の方なんですが、事故直後に、十月にパンフレットを出しまして、その中で、ジェー・シー・オーはこういう理由でだめなんだ、事故をやったんだ、しかし、原発は安全対策をやっておるから大丈夫なんだ、その一つは、機器の故障、操作ミスを防ぐマニュアルなどがある、もし異常が起きてもすぐ原子炉をとめる仕組みがある、三つ目に、万一事故が起こっても原子炉を冷やして放射性物質を閉じ込める仕組みを設けている、だから大丈夫なんだというパンフレットなんです。  これは、先に政府参考人に聞いておきたいんですが、日本原電東海二号機の定期点検中に、制御棒ガイドローラーの複数個の破損が見つかりました。これは、運転中であれば、異常が起きたときに制御棒が働かないという問題だったんじゃないでしょうか。もう一つは、同じ日本原電で、ECCSに水を送るゲートバルブが壊れていたというのが見つかりました。万一、美浜二号で発生したような事故が起こったときに、ECCSが働かないで原子炉を冷やすことができないという問題につながった故障だったんじゃないでしょうか。その点だけ簡潔にお答えください。
  243. 河野博文

    河野政府参考人 御指摘のように、東海二号におきまして、定検中にガイドローラーを固定するピンの穴の内部で腐食が認められたということでございまして、これに関連をいたしまして、応力腐食割れと見られるケースが御指摘のようにございました。ただ、これが制御棒の機能を運転中に損なうかというと、そういうふうには私どもは認識をしておりません。  それからまた、同時にもう一点、ECCSの方に関しまして、やはりふぐあいを実は定検中に生じたわけでございますけれども、定検中の弁開放操作の際に不手際がございまして、定検中の作業によりまして弁棒を損傷したということでございまして、通常時の運転のECCSの機能に影響を与えるものではないのでございます。もちろん、こういった定検中の作業に誤りがあることがいいことだとは当然思っておりませんけれども、事実はそういうことでございます。
  244. 吉井英勝

    吉井委員 私は、本当にエネ庁も安全神話は深いなと今思いました。大体、制御棒ガイドローラーが故障するということは動かなくなるんです。全部が動かない場合はもちろんですけれども、確かに一本や二本ぐらい動かなくても停止することはできるでしょう。だけれども、この問題がどれだけ深刻なものであったのかという認識は全然ない。  それから、ECCSの問題、定期点検中の問題を挙げられたんだけれども、実は、たしかスリーマイルもそうだったと思うんですね。点検中に三つ全部自動操作で閉めておいて、それをあけ忘れて、いざというときにECCSが働かないという問題を起こしたりとか、そういう問題というのは外国でも起こしてきたわけなんです。このECCSというのは、いざというときに働いてこそ意味があるので、そのときに働かないというのは問題なんですよ。たまたま定期点検中に見つかったからよかったものなんです。  そういう点で、私は大臣に、時間が参りましたから、最後に一言伺って終わりたいと思うんですが、やはり科学技術庁もそうですが、エネ庁にしても電気事業者にしても、これだけの事故があっても、原発は別なんだとか、こっちはよく見ているから、あるいはこっちは故障確率が低いから大丈夫なんだと、相変わらず安全神話に深くとらわれておるんじゃないですか。ここを、原子力というのは基本的にはやはり危ないものなんだ、だから安全に操作しなきゃいけない、幾重にも注意して扱わなきゃいけない、安全神話なんか脱却しなきゃいけないんだという立場に立ち切るかどうか、ここが一番今問われているところだと思うんです。この点は大臣に伺っておきたいと思います。
  245. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 たびたび申し上げておりますように、今回の事故によりまして、原子力行政あるいは原子力の諸事業に対する国民の皆様の信頼は著しく失墜、低下をいたしました。いろいろ委員からも御意見をちょうだいいたしましたけれども、今回の法律整備等を含めまして、私ども反省すべき点は反省をし、また、いろいろ改善もしなければならない点も多々あろうかと思いますので、謙虚に今後の再発防止対策全力で取り組んでいきたい、そういうふうに思っております。  それから、ただいま安全神話のお話がありましたけれども、国民の皆様への理解をしていただく方法等についても検討してみなければとも私自身思っております。
  246. 吉井英勝

    吉井委員 安全神話は脱却すべきだということだけ申し上げて、終わります。
  247. 北側一雄

  248. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。  さて、私はまず最初に、緊急提言中間報告について何点かお伺いしたいと思います。  この中で、読ませていただきますと、「最終的な結論に到達するまでには、更に慎重かつより深い検討が必要である」とされているのですけれども、この、さらに慎重かつ深い検討というのは、これは具体的にどういうことを指しているんでしょうか。政務次官はいかがですか。どうでしょうか。きのう通告してあるんですけれどもね。
  249. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 中間報告は、事実から直接導き出される結果、こういうふうに聞いております。したがいまして、社会的な背景、日本の技術を取り巻くいろいろな要素、こういうものにも突っ込んだ、考慮に入れた最終報告が出される、このように認識しております。
  250. 辻元清美

    辻元委員 今の御答弁の中に、社会的背景というお言葉が出てまいりましたが、それは、さらにちょっとかみ砕いて御説明いただくと、どういうことでしょうか。
  251. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 社会的背景、一つは、現在いろいろな技術的な分野でミスが出ております。例えば、こんな例をこの場で挙げるのがいいかどうかちょっとわかりませんけれども、トンネルにおけるコンクリートの崩落でありますとか、いろいろ、例えば宇宙開発分野において単純ミスで打ち上げがおくれているとか、そういう、いわゆる緊張感が技術の社会でなくなっているんではないかと思われるような現象もございます。そういうことについての社会的な背景。技術に限らず、もっと深いこともあるかと思います。  なお、この事故調査委員会につきましては、原子力安全委員会の中の事故調査委員会でございますので、きょう安全委員長来られておりますので、もしよければ補足をさせていただきます。
  252. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、補足していただきます前に、今の御答弁の中でさらにちょっとお聞きしたいんですが、緊張感が欠けているというように政務次官おっしゃいました。私もそのとおりだというように思います。かつて政務次官が委員として随分いろいろ突っ込んだ御質問をなされていた中にも、私もずっと御一緒させていただきましたけれども、このような指摘を多々なさってきたかと思うんです。  さて、その中で、私は科学技術庁の緊張感が一番足りなかったのと違うかなというように思うんですが、率直に、いかがですか。
  253. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 その点につきましても、現在、事故調査委員会でそこにメスが入っております。我々はまないたのコイで、今その結果を待っているところでございますが、決して我々、万全であったと言うつもりはございません。
  254. 辻元清美

    辻元委員 私、緊張感が足りない点はあったのではないかと率直に認めるところからでないと前に進まないと思うのですよ。そのために、今回、斉藤政務次官東海の現場でもお目にかかりましたけれども、今までの委員としての事故追及の御経験から、私は、そこは、やはり立場はそういうことをおっしゃるのが、今回の政務次官として着任された、重大な、勇気を持った、政策遂行能力の初歩の初歩だと思うのですが、いかがでしょうか。
  255. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 現実問題として事故が起こったということに対して、我々は重大に受けとめております。そこから出発をしたい、このように考えております。
  256. 辻元清美

    辻元委員 今の顔色を見ながら、重大に受けとめていると言うところに緊張感が足りなかったという反省が込められているように思いましたので、それでは佐藤委員長にお伺いしますが、科技庁の緊張感も足りなかったですよね、この間。
  257. 佐藤一男

    佐藤参考人 科技庁内部の緊張感というのは、安全委員会として論評すべきことであるかどうかはちょっとさておきまして、一つ我々としても感じているのは、例えば科学技術庁、これは推進機関でもあるし、同時に規制機関でもありますが、安全委員会は、その規制機関の規制活動が適切であるかどうかというのを見守るというのも非常に大切な仕事であって、ある意味での緊張感というものは、この両者の間になければならないだろうというふうには思っております。  何しろ同じ建物の中におるというようなこともございまして、その緊張感が十分かということは、我々自身もいつも振り返っているところでございます。また、いろいろなところで御指摘もいただいているところでございます。
  258. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、引き続きまして、この中間報告について、今委員長からも御答弁いただいたわけなんですが、その中に、今後、事故の直接的、間接的原因をさらに探求するとあるわけなんですね。ところが、この事故の責任の所在ということについて、どういう議論がなされたのか。まずそれを御答弁いただきたいと思います。
  259. 佐藤一男

    佐藤参考人 これは、たしか午前の御質問にも同じ趣旨のものがあったかと思います。  この調査委員会は、責任を追及する委員会ではございません。ただし、こういうことで、今まさに御引用なさいましたように、直接間接の原因、背景といったようなものを追及していくことによって、その責任の所在というものはおのずと明らかになるであろうというふうに私どもは考えております。また、それを判断するのは安全委員会の役目でございます。
  260. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、今の御答弁の中に、責任はここにあるんだという判断をするのも安全委員会役割であると。もう一度確認させていただきたいんです。
  261. 佐藤一男

    佐藤参考人 そのとおりに考えます。その責任の所在は、安全委員会も含めてでございます。
  262. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、「最終的な結論に到達するまでには、」最初一問目のときに引用させていただいたところなんですが、最終的な結論に速やかにということになるかと思うんですけれども、この責任の所在をはっきり定めるということも含めて、どういう進捗ぐあいで到達しそうでしょうか。
  263. 佐藤一男

    佐藤参考人 これも、多数の委員の方々がお集まりでございますから、これからどういうふうに進捗するかというのを私どもの方から申し上げるわけにはまいりません。  ただ、吉川委員長を初め、皆さん、この問題については非常に精力的な調査審議を行って、できるだけ早く、今のところ年内をめどにという目標はございますが、できるだけ早く結論を出さなければならないということについては、委員の方々皆様一致しておられると考えております。
  264. 辻元清美

    辻元委員 といいますのは、責任の所在を決めるのはだれかというところが非常に大きなポイントだと思うんです。みんな、科学技術庁に責任があるんですかと言ったら、いや、重大に受けとめております。だれかが、これとこれが責任があるだろう、こことここが問題なんだ、だからこうしろということをはっきり決断して言うということはすごく大事だと思うんですね。ところが、今までたらい回し的に、ではだれが責任がここにあるんだということを決めるんだというときに、旧動燃の事故のときも何だか議論の中でうやむやになっていったような印象を受けますので、速やかに責任の所在をはっきりと示していただきたいと私は思います。  さて、ちょっとその続きで、海外の反応などを見ましても、いろいろな新聞などが取り上げておりますね。もう世界じゅうが取り上げましたね。その中で、これはもうごらんになっていると思いますけれども、ネーチャーの記事などでも非常に手厳しく出ております。その中に、東海原子力事故は近年で最悪であり、これは世界じゅうで近年で最悪という意味だと思います、責任はまさに政府、特に科学技術庁にある、この科学技術庁はみずから原子力の安全を適切に規制できないことを証明したというように海外でも言われているわけですね。その中で、日本政府は十分なスタッフと専門家のいる有効な規制機関をつくることができないように見えるというような論評も、私はたくさん集めましたけれども、言われております。  こういうような状況の中で、先ほどから機構の改革も出ておりますけれども、責任の所在をはっきりさせるということを速やかにやっていただきたい。これは、今の御答弁で安全委員長が、自分たちが責任の所在をはっきりさせるんだとおっしゃいましたので、この後、引き続き最終報告が出ましたらまた委員会が開かれると思いますから、きっちりお示しをいただきたいと思います。  さて、その中で、被曝状況被曝者状況について質問を移らせていただきたいと思うんです。  報告書の中の「事故状況とその影響」「事故状況等」というところに、「現場付近にいた六十九名について、被ばく量の大小はあるが、中性子線被ばくが測定等により確認されている。また、この一連の臨界状態停止のための作業に従事した株式会社ジェー・シー・オーの社員二十四名が計画被ばくした。」こうなっております。  ここで、計画被曝というのは普通の被曝とどう違うのか、まず説明いただけますでしょうか。
  265. 佐藤一男

    佐藤参考人 この計画被曝と申しますのは、通常の意味の線量限度といったようなものとはちょっと性質の違うものでございます。  例えば、こういう緊急時等に当たって、その処置をするために作業計画というのをきっちりつくらなきゃいけません。その作業計画をつくるときに、例えば、この計画被曝、今百ミリシーベルトでございますが、これを超えないように計画をつくらなきゃいけない、そういうものでございます。その計画に従ってその計画被曝限度以内の被曝をした場合、これを計画被曝と呼んでおります。
  266. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、要するに、今言われております計画被曝も、それから被曝した六十九名も、両方とも被曝者であることはこれは変わりがないわけですね。
  267. 佐藤一男

    佐藤参考人 これはそのとおりでございまして、どれだけの線量を浴びたかというのは、これは線量が同じであれば全く同じことでございます。
  268. 辻元清美

    辻元委員 そうすると、これを切り分けて報告をされているのは、あえて作業に従事した者は別枠でという御意図でこういうふうにされているのですか。
  269. 佐藤一男

    佐藤参考人 必ずしもそうではございません。  ただし、六十九名云々、これは被曝量が確認されている人の数ということでございますが、この人たちは全く意図せざる被曝なのでございます。  それに対して、その異常な事態を収束するためにそこへ行ってというのは、この計画被曝限度の範囲内で、これは言うなれば覚悟の上で、知っていて被曝するということでございます。ですから、そこがちょっと違うということでございます。
  270. 辻元清美

    辻元委員 それでは、その臨界の処理のために計画被曝された方々が水抜き作業等に従事されるに至るプロセスについて引き続きお伺いしたいのです。  いろいろな報道がなされておりますけれども、そのときの状況転換試験棟のすぐ外に一分いただけで一人は中性子線を百十二ミリシーベルト被曝した、通常の生活で浴びる放射線量の約百年分だった、これでは被曝しに行くだけで作業ができないと戻ってきた一組目の作業員が言いはった、計画被曝線量の限度を上げるしかない、三分は作業できるように二組目からは五十ミリシーベルトに計画変更したというように報道されております。  最初の二十ミリを五十ミリに上げた、これでよろしいのですか、その事実関係は。そういうふうに、最初は、一組目では二十ミリシーベルトまでということだったらしいですが、行ってすぐアラームが鳴ったということで、次からは五十ミリシーベルトにしたというような報道がありますが、これは最初から五十ミリシーベルトだったのでしょうか。
  271. 住田健二

    住田参考人 ちょっと最初から経緯を申し上げたいと思いますけれども、先ほどから計画被曝の話が出ておりますけれども、まず、全体の計画を立てるときに、どの程度の作業で、どの程度の人数で作業をするかということを考えたときに、確かに私どもの頭の中には、大体一人五十ミリシーベルト以下にしたい。これは、したいであります、計画でありますから。  そうすると、五十ミリシーベルトで、なおかつ五ステップぐらいの作業だろうと最初は予定しておりましたので約十五名という人数が出てまいりまして、会社側が用意してくださったのはその倍近い人数が用意されておったわけでありますけれども、実際は九ステップになりました。  それから、五十ミリシーベルトだからどうするかということで、これは具体的に、特に一番最初のグループについて言いますと、本当にどれだけの被曝が起こるかということは非常に予測しにくい状態にございました。大体百数十メーター近くまで行きますと、持っていったサーベイメーターが振り切れてしまうという状態でありまして、そうしますと、それから逆算いたしまして、チラーといいますか、冷却塔のあるところまで近寄ったとすれば、多分これぐらいでいけるだろうということで出てきた数字が、さっきの五十ミリシーベルトぐらいにセットしておけば大丈夫であろうという考え方ですね。  それは、五十ミリまで浴びていいということではありませんで、作業時間をむしろ一分半ぐらいという制限をすることと、それから、その五十ミリシーベルトというのを同時に、両方の条件で、どちらかになったら必ず帰ってくること、一分半たったらこっちから呼ぶよ、それから、五十ミリでアラームが鳴ったら帰っていらっしゃい、もう仕事中でも何でも構わないから、とにかく帰ってきなさいと。  実際には、残念ながら、五十ミリで鳴ったんだと思いますけれども、人間ですから、そこから歩いて帰ってくるまでに相当時間がかかるわけですね。結果的に、先ほど御指摘のように、九十何ミリシーベルトというメーターの振れが出たわけであります。  これは念のために申しておきますが、その後、それらの人たちがホールボディーで実際に計測したところによりますと、かなり小さい値になっております。人体の、中性子で放射化したナトリウムの量で言いますと、そこに出た表示、サーベイメーターはキャリブレーションできておりませんでしたから、後でもうちょっと実際は小さい数字だということはわかっておりますけれども、とにかくその場はそういう数字を見たわけですね。私どもとしては、直ちに作業計画を変更いたしました。  つまり、どういうことかといいますと、アラームをもし五十ミリにセットしておいたとすれば、実際は相当大きな数値を浴びてしまうじゃないか、だから二十ミリに変えた方がいいのじゃないかというふうに考えたわけですね。その後、私それをちょっとまた勘違いしていたのですけれども、実際には三十ぐらいにセットしたようですけれども、それは、そのときかなりフレキシブルにやっていましたから、私、正確にはどうだったかというのはちょっと今記憶しておりません。  それから、作業時間も、作業状況を見ながら対応していったということで、必ずしも固定した考え方でやったわけではありません。  ただ、その後、数字を見ていただいたらわかりますように、あとの方は大体六十とか七十以下で抑えることができた。これは現実的な対応でございまして、私個人としては、最初は五十ミリぐらいでお願いしたいなと思ったのが、それを超えたというので非常に残念でありますし、申しわけないと思っておりますけれども、結果論としてはそういうことだったのです。  以上でございます。
  272. 辻元清美

    辻元委員 今、住田委員から詳しく御説明いただきました。  そのときも、これは毎日新聞で委員がインタビューにお答えになっていて、「苦渋の決断」という言葉が出ております。現場で実際の作業にかかるまでに二時間ぐらいかかったと。その間には、非常事態ですから、会議室みたいなところで立ったままどなり合ったりして、やってくださいと言ったら、我々がやらなきゃいけませんかといった話。それは現場では予測できますが、その中で、  苦渋の決断というのが、実はありました。被ばく量が少ない人もいましたが、六十とか七十ミリシーベルトという人もいて、それでも作業を続けるというのは相当な決断ですよ。 最後まで予定通り、ゴーサインを出し続けたわけですから、それは今でも僕が、一番引っ掛かっているところです。 と、率直なお気持ちを述べていらっしゃいます。  第一陣は、誰が行ってくれますか、とグループリーダー格の社員が言ったときに、みんなが顔を見合わせて、一瞬、ためらったのは事実ですそのとき、一人が「じゃあ、私がやりましょう」と言ってくれた。救われた思いがした。 と、その当時を振り返っていらっしゃいます。その後に、  JCOの社員が被ばく覚悟で作業を行うことは、ご自身の判断だけだったんでしょうか。 という質問に対して、  最終的に経営者に対して作業命令に近いことを言うと同時に、実は東京に連絡を取って、携帯電話で佐藤さんを呼び出して、状況説明したうえで、かなりの被ばくを覚悟しないと臨界解除はできないと言いました。これは科学技術庁に対して勧告や助言をする組織である安全委員会が、実質的な作業をすることになるんです。それでもよろしいかと。 ということで、最終的な御決断の折には佐藤さんと相談されて決められた、この経過でよろしいのでしょうか。
  273. 佐藤一男

    佐藤参考人 私、非常に詳細な文言まで記憶しているわけではございませんが、おおむね趣旨はそのとおりでございます。  実は、東京ではあそこの水を抜いてという手段がなかなか見つからないでいたわけでありますが、現地の方から、そこの水を抜けば何とかなるのじゃないか、しからば、その水はどうやって抜けるんだ、どうも建屋の外にバルブがあるらしいといったようなことが電話でやりとりがありました。それで、その場で計画被曝線量の限度をどのぐらいにすべきであろうかという御相談もございました。私の方からは、百ミリシーベルト以内にとどめてほしいということを申し上げたわけであります。さらに、これをやるに当たっては、やる人の同意をちゃんと得てほしいということも申し上げたわけであります。  今御指摘のように、この辺になりますと、本来であれば、単なる助言をするのが我々の役目でございますけれども、あえて言えば、極めて強い助言をしたということになったのではないかと思っております。
  274. 辻元清美

    辻元委員 そのとき、佐藤さんは政府対策本部の会議にオブザーバーとして御出席されていて、発言権はないのにあえてこういう御発言をなさったと聞いているのです。「臨界を止める必要があり、そのためには法定値を超えた被ばくを覚悟しての作業もあり得る」と発言したと。総理以下、居並ぶ閣僚がみんなうなずいたということです。  結局、だれかが決断して強い助言なりしなければいけないのですけれども、被曝ということにかかわりますので、総理以下閣僚の前でそのような御発言をされて、うなずいて、そしてゴーしていったというように受け取れるのですが、いかがでしょうか。
  275. 佐藤一男

    佐藤参考人 それは、九月三十日二十一時から首相官邸で開かれました政府対策本部の会合のことと理解いたします。  確かに、その席上で私は、法定の値を超えてというような表現をした記憶はございませんが、何としても臨界を終わらせなければならぬ、そのためには相当な被曝も覚悟しなければいかぬでしょうということを申し上げた記憶がございます。
  276. 辻元清美

    辻元委員 それで、ちょっと住田委員にお伺いしたいのですけれども、その後に、「緊急退避であると、了解を求めたわけですが、」これは要するに、総理以下閣僚に対しても了解を求めて決断されたことだと思います。  さて、その次に、「合法性については確かに問題があると思います。」と、住田委員が率直な御意見をおっしゃっているのですが、この点は、合法性についての問題があるとお感じになっている点はどういう点でしょうか。
  277. 住田健二

    住田参考人 そこで申し上げた合法性は、被曝量のことを言ったつもりではなかったのです。  原子力安全委員であると同時に、私、先ほど申し上げましたように、いわゆる助言組織のメンバーということで行ってまいりまして、それから、現地の本部長から委任を受けたという立場にはありますけれども、やはり原子力安全委員というのはあくまで現在の法律上は諮問機関の一員でございまして、諮問機関の一員が行政権を行使するということについては後々必ず問題になるであろうというふうに私はそのとき感じたわけです。ですから、その点について、もし責任を問われるなら私が責任をとりますというのは明らかに申し上げたわけです。ただし、現在の状況は、そのことに決着が出るのを待って、だれかがリーダーシップをとらないで、延々とここから何時間か待つという話ではない、だから、私が責任をとりたい、そのかわりこういう作業をお願いしたいと。  それからもう一つ、名誉のために申し上げたいのですが、どなり合いをしたというような話がありますけれども、私は、大変失礼ですけれども、ジェー・シー・オーの幹部職員の方にはどなりましたけれども、作業をされた方には、一人一人頭を下げて、お願いしますということを申し上げまして、決して……。  それから、作業をされるときもどなり合うというような雰囲気ではございませんで、皆しんと黙って、非常に重苦しい空気。その中で一人の方が手を挙げてくださって、じゃあ私がやりましょうとおっしゃってくださって、私は、本当に救われたと思いました。しかし、その間、確かに何秒かの時間が流れたことは事実でございます。  以上でございます。
  278. 辻元清美

    辻元委員 といいますのは、今、自分が責任をとってというようなことをおっしゃいましたけれども、これは、事業者に第一義的に責任があるのはそのとおりですから、事業者の中でまず対応するというのは当たり前の話だと思います。  これは、よく決死隊と言われていますけれども、名乗りを上げたような形になっていて、とにかく行く人がいたからよかったのですけれども、今後、大きな事故になってだれも行かない、そういうことだって想定できると私は思います。その際に、現場に行かれた住田委員が、もう最後は自分が責任を、行政権限があるのかどうかわからない中で判断されて行っているというように私は受け取りました。  こういうような体制でいいのでしょうか。私は、今後の事故対応でここは非常に大きなポイントになってくると思いますので、この点についても引き続き追及していきたいと思うのです。  さて、計画被曝の方々に対する補償の問題です。  これは聞いてみますと、原子力損害賠償法によっては、明らかに因果関係が出て証明された場合、その被曝したと思われる人が名乗りを上げて手続をとる、それが今の法的な手続になっておりますので、この方々も、今現場復帰されているので、そういう手続をとらない限り対象にはならないというのが今の現状であると、これは質問したかったのですが、ちょっと時間がないので自分で申し上げているのですが、きのう説明を受けました。  ところが、今回の事故のような場合、想定しておりませんでしたが、この計画被曝の人も、そして、六十九名以外にも被曝者の方がいらっしゃるかもしれないと、午前中の段階で政務次官もおっしゃいましたよね。これは、因果関係などといっても、このジェー・シー・オーの建屋の近くに住んでいた人だけではなく、たまたまそのとき用事か何かで、どこか遠くの、北海道に住んでいる人が行っていたかもしれないし、さっぱりわからないわけで、その人が一年、二年たってがんになって、因果関係が証明できるのかといったら、なかなかできない。できにくいですよね。あのとき近くにいましたと言っても、そのときいた証明はどうなるんだ、こうなってくるわけです。  となってくると、私は、原子力事故というのは、今回の教訓といいますけれども、一たび起こったら、その人たちの継続的な健康管理をするとか調査するといっても、し切れない部分が必ず出てくると思うんです。そこを、これから原子力とつき合っていくときに、今回の教訓をどう受けとめるか、それでもやっていくのかというところに最終的に帰着せざるを得ないようなことが、この被曝者をこれからどう取り扱っていくかということ一つにおいても思います。  さて、そういう中で、有馬前長官が率直に、朝から取り上げられておりますけれども、今回の事故のことを振り返っておられますよね。  私は今、この被曝者の問題は次の委員会でもまた取り上げていきたいと思っているんですが、今後ケアをしていくと言ってもし切れる問題ではないという受けとめ方をせざるを得ない。そこが、ほかの事故原子力を取り扱っていく場合の事故と違うと思います。ほかの事故の場合は、火災とかいろいろ考えられますが、その場で被害者であったり認定できる事故が多いですよね。ところが、この後、長期にわたって認定していくとなれば、その方が今回のことと因果関係があるという証明が非常に難しくなってくる。  ですから、そういう中で、原子力そのものの取り扱いについて、私はこの前の委員会でも申し上げておりますが、この被曝という状況、そして今回、計画被曝と言われていますけれども、作業に従事された方、やりますと、上層部の人たちとどなり合いがあったという話もありましたが、それは積極的に行ったかどうかわかりません。幾ら何でもやはりためらって、一番目に行くのはだれや、二番目に行くのはだれやと。もうちょっと大きな事故になったら、もうだれも行けない状況が想定されるかもしれないということが明らかになったと思わざるを得ないと思うんです。  そういう中で、私は、原子力政策そのものを、政府はまだ二〇一〇年までに二十基原発を建てるとかいろいろな政策を言っていますけれども、ここは勇気を持って、私たち委員も含めて、もう一度根本から考え直すべきだと思います。  さて、最後に長官にお伺いしたいんですが、前長官も現場に立たれてこういうことをおっしゃっていました。原子力長期計画策定会議には新エネルギーの利用について考えてくださいとお願いしてきました、改めて、今まで原子力と新エネルギーをやっている人は別々でしたが、これは一緒に考えていくべきだと主張し、今、策定会議検討してもらっています、今回の事故を経験してますますこの気持ちが強くなってきていますというような、原子力そのものに頼っていく、それだけではなく、新エネルギーであったり、そちらにシフトさせていくという一端がうかがえるような発言をされています。  その中で、予算についても、次の予算、原子力にはたしか三千二百億、それで新エネルギーなどについては八・九億円だったように私は記憶しているんですね。ちょっと数字が違うかもしれませんが、非常に少ないわけですね。ですから、そういうようなあり方自体もこの際含めて、新エネルギーにシフトしていくなり、かじ取りを少し変えていくというところまで長官が決断されたとしましたら、きょうすぐ決断は無理かもしれませんけれども、次の委員会ぐらいまでに検討しておいていただいて、それはすごく、後世、あの長官は本当に決断されたというようになるのではないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。  これが最後です。
  279. 中曽根弘文

    中曽根国務大臣 いろいろ解決しなければならない課題といいますか、問題点がたくさんございます。一つ一つ地道に、また全力でこれらの解決に取り組んでいかなければならないと思っております。  新エネルギーのお話がありました。資源に乏しい日本が経済的な発展もこれから図っていかなければならない。そういうことを考えますと、私は、原子力の発電を中心とする原子力事業は今後もやはり継続をしていくべきである、また、いかなくてはならない、そういうふうに思っております。  同時に、新エネルギーの開発にも積極的に取り組み、また少しでも新エネルギーの比率が高まるように、これも同じように並行して進めていかなければならないと思っております。そして、これらが代替できるような状態が一日も早く来るように、国民の皆さんにも御理解をいただき、政府としても全力で取り組んでいく、それが現在の私どもの姿勢ではないか、そういうふうに思っております。
  280. 辻元清美

    辻元委員 それでは質問を終わります。
  281. 北側一雄

    北側委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十五分散会