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1999-05-27 第145回国会 参議院 労働・社会政策委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十七日(木曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員の異動  五月二十七日     辞任         補欠選任      山崎  力君     高橋紀世子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         吉岡 吉典君     理 事                 田浦  直君                 溝手 顕正君                 川橋 幸子君                 笹野 貞子君                 山崎  力君     委 員                 大島 慶久君                 斉藤 滋宣君                 鈴木 政二君                 中島 眞人君                 今泉  昭君                 小宮山洋子君                 谷林 正昭君                 但馬 久美君                 山本  保君                 市田 忠義君                 大脇 雅子君                 鶴保 庸介君    委員以外の議員        発議者      吉川 春子君    国務大臣        労働大臣     甘利  明君    政府委員        特許庁長官    伊佐山建志君        運輸省自動車交        通局長      荒井 正吾君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        山岸 完治君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者就業条件整備等に関する法律等の一部  を改正する法律案(第百四十三回国会内閣提出  、第百四十五回国会衆議院送付) ○職業安定法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者就業条件整備等に関する法律等の一部  を改正する法律案吉川春子君外一名発議) ○職業安定法等の一部を改正する法律案吉川春  子君外一名発議)     ─────────────
  2. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) ただいまから労働社会政策委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(第百四十三回国会閣法第一〇号)、職業安定法等の一部を改正する法律案閣法第九〇号)(いずれも内閣提出衆議院送付)並びに労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(参第一八号)及び職業安定法等の一部を改正する法律案(参第一九号)(いずれも吉川春子君外一名発議)の審査のため、来る六月一日午後一時に参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(第百四十三回国会閣法第一〇号)外三案を一括して議題といたします。  四案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 今泉昭

    今泉昭君 おはようございます。民主党・新緑風会の今泉でございます。  まず最初に、労働大臣に、今回改正が提案されました労働者派遣法、この法案を作成するに当たりまして、労働省として基本的に中心的な柱として考えてきたものが何だったのか、なぜこのような形での派遣法改正を、どちらかといえば労働界やその他のところで大変反対の声が強いのが含まれているにもかかわらず踏み切らなければならなかったのか、それにつきましてまず考え方をお聞きしたいというふうに思います。
  7. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 基本的な考え方というのはいかがかという御質問であります。  日本産業形態経済社会、それを取り巻く環境というものがずっと昔から変わらずに来ていればまたそれも別かもしれませんけれども、日本国内社会が要請するニーズ、あるいは逆に働く側が要請するニーズ、これが少しずつ多様化をして変化しております。あわせて、国内競争あるいは国内の秩序だけで物が運んでいくという時代はそれでいいのかもしれませんけれども、ボーダーレス社会になってきまして、企業自体世界競争して勝ち残っていかなければならないという、今までにない新しい要素も加わってきているわけであります。  そうした中で、働く側にとってもあるいは企業の側にとっても、いろいろな選択肢を持つということはあってしかるべきだと思いますし、それをどう使うかは当事者の考え方によるところでありますが、いろいろな選択肢を用意することによって、日本世界競争の中で勝ち残って、なおかつ働いている方々が夢と希望を引き続き持って働ける、職の心配を極力しなくていいような社会をどう築いていくか、いろんな背景、要素があって、いろいろな働き方に対する選択肢もそろえておこうと。そして、その選択肢をそろえることによって出てくる弊害については極力防いでいくための措置を行おうという基本的な考え方で取り組んできたつもりであります。  産業も、企業三十年説というのがありますように、昔ながらの全く変わらないことをやっていて企業が存続するのは、どんな大企業といえども三十年間が耐用年数である。新しい分野に進出をしたりあるいは新しい経営手法を取り入れたり、常に工夫をしないと生き残っていけない。今までの繁栄がこれからも続いていくようにいろんな工夫をして、世の中ニーズにこたえられるだけの選択肢をそろえておくというのがその基本的な考え方でございます。
  8. 今泉昭

    今泉昭君 労働大臣が言われました新しい時代に対応した雇用形態あり方、そしてまた、市場経済化する世界経済の中で生き残っていくためにもこういうような派遣事業あり方の見直しが必要だという考え方、確かにその一面はあると思うわけであります。  私は、派遣労働者の問題というのは、我が国のこれからの雇用対策をどのように行っていくかということと大変密接な関係があるというふうに認識をしているわけであります。特に今我が国が抱えている緊急、重要な課題というものが、たくさんあるわけでありますが、例えば先ほど参議院を通過いたしました日米安保のガイドラインもそうだったでしょうし、さき国会対策を打ちました金融問題もそうだったでしょう。これと並ぶぐらいに非常に重要な問題というのは、直面する我が国の高失業化時代政府としてどのような雇用政策を打ち出していくか、これは大変重要なことであろうと思うわけでありまして、この問題と密接不可分な問題だろうと私は思っているわけであります。  どうもお聞きするところによりますと、毎月発表されている失業率、本来ならばあした、その月の最終金曜日に発表されるようでございましたが、来月の一日に延びたといううわさを私は聞いておりまして、その数字そのものが五%を上回ったということもうわさとして聞いております。発表されていないからうわさというわけでありまして、五・一%になるという話が実は伝わってきているわけであります。  いかに今我が国にとりましてこの雇用問題というのが重要かということを考えてみますと、派遣労働者というものをある意味じゃ自由化する、そういう中で、雇用流動化の中で一体どれだけ雇用が創出されるかというふうなことを考えてみますと、大変私は疑問に思わざるを得ないわけであります。  例えば、今日の我が国雇用労働者に占める派遣労働者割合というものはもう既に一・五%ぐらいになっているわけでございますが、先進諸国我が国よりもはるかに早くから派遣労働者制度をとってきた国々の雇用労働者に占めるところの割合を見てみますと、一番高いところでアメリカが一・八%程度でございます。  この派遣労働者自由化することによってどれだけ雇用対策一助になるか、これは大変疑問だと私は思うわけでありまして、もっと政府としてやらなきゃならないものが先にあったのではないかというふうに考えているわけでございますが、大臣としては派遣労働者自由化というものが少しでも雇用拡大につながるというふうにお考えでございますか。
  9. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 確かにおっしゃいますように、先進諸国を見ますと、全雇用者に占める派遣労働割合というのは大体一%台であります。日本が現在〇・六でしたでしょうか、アメリカが一・八、あと一・五前後の国が多いと思います。  派遣労働を認めることによって飛躍的に雇用が拡大するとは正直思っておりませんけれども、しかし、派遣労働から正規常用雇用に変わっていく人も、それぞれ先進国で見ますとかなりの率があるわけでありまして、たしか三割ぐらいあったと思います。スウェーデンが特異な例で六割ぐらいだと思いますが、これを除いても大体二、三割、四割ぐらいはあるんじゃないでしょうか。そして、実業インターンシップと言えるようなところを通じて正規雇用に、自分が一番やりたかったところに入っていけるという道が開けていると思います。それは、言ってみれば、働いてみなければわからないということでいきなり飛び込んだ正規雇用よりは自分の生涯設計に資するものであると思いますし、そういう点では働く者にとっても非常にプラスになる仕組みだと思います。  それと、各種調査を行っているのでありますけれども、やはり現在の時点でも、仕方がないからこれしか選べないという割合と進んでこういう働き方をしたいという理由では、トータルとしてはみずから進んでこういうのがやりたいんだという比率の方が相変わらず多いのでありますので、これはそれで働く方にとっても資する規制緩和法改正であると思いますし、もちろん、企業の側としては、即戦力として一定の時期だけどうしても必要と、常用雇用として雇うにはそれ以外必要でないときのコスト負担が大変だ、じゃそれをやらないで既存の人員でカバーできるかというと、やっぱりそれも大変ということで、その働き方があれば競争に勝てるのにという選択肢としても使えると思いますので、双方にとって、メリット、デメリットでいえばメリットの方がうんと多いというふうに思っております。
  10. 今泉昭

    今泉昭君 さき橋本内閣のときに規制緩和三カ年計画が打ち出されまして、特に前総理大臣派遣労働緩和規制緩和ということに対して大変熱心に発言をされていたことを私は覚えているわけでございますが、実は一方で、今政府大変神経を使って一生懸命取り組もうとしている、産業競争力会議というんでしょうか、我が国企業競争力回復して我が国経済を活性化していこうということをいろいろな形で論議されているようでございますが、企業という立場に立って考えてみますと、この派遣労働規制緩和というのは実は大変なメリットが私はあるというふうに考えているわけです。  特に、日経連の方で、今回の改正労働派遣法に対する見解を発表している文書の中でこういう項目がはっきりと打ち出されているわけでありまして、このネガティブリスト方式による労働者派遣労働力需給調整の重要な柱として積極的に位置づける、こういうことをはっきり打ち出しているわけであります。要するに、今盛んに言われているリストラの側面的な一つ援助要員として考えていこうではないかということをはっきりこれに打ち出されているわけであります。  確かに、今考えてみますと、我が国産業力回復ということを企業側立場に立って考えてみた場合、今企業コスト負担の最大のものは何かといいますと、労働力コストであることはこれは間違いのないことであります。企業にはいろんなコストというものがあるわけでございますが、租税、公租に関するコストは税制の税率の引き下げでどんどん減っていきますし、御存じのように卸売物価がどんどん下がっていますから、あるいはまた過当競争の中で投げ売りが始まっているということから材料費も下がっているという、いろんな費用が下がっている中で、企業側立場考えてみると、下がっていないのは実は労働コストである。賃金を大幅に下げるわけにはいかない。そうすると、競争力強化、生き残るという意味企業企業経営という点で考えるならば、労働力コストをどう削減するかということを考えてくるのが一つ流れの中では当然だろうというふうに私も思っているわけです、そういう中では。  そうすると、労働コスト削減というものの中での位置づけがこの派遣労働者需給調整の対象になるとするならば、正規労働者をどんどん外に吐き出しちゃって、そしていろんな意味コストの低い派遣労働者をどんどん企業の中に受け入れていく。いろんな意味での労働者保護というものを図りながら、この法案の中にはそれをしないような文言も含まれてはおりますが、実際はそういう流れ一つではないだろうかというふうな危惧が働く人たち立場からいうならば当然あるんじゃないかと思うのであります。  こういうことに対しまして、労働大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
  11. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 私は、派遣法改正をお願いするに当たって、先ほども一部触れましたけれども、先進国の状況はどうなっているんだろうかというのが非常に興味がありました。特に、アメリカのようなドライな雇用形態労使関係といいますか、そういう国では相当な比率に行っているのではないかという思いがありました。ところが、アメリカですら一・八%でありました。だから、先ほど申し上げましたように、それ自体雇用吸収力が物すごくあるとは思いませんということを申し上げたのであります。要は正規雇用に取ってかわられない仕組み、歯どめをしっかりしておくということさえしておけばいいのではないだろうかと。  それと、これから申し上げることは非常に重要だと思うのでありますが、産業三十年説に従って新しい事業分野に展開をしていく、あるいは新産業を興していく。その際に、企業経営側からして一番不安材料は、やっぱり固定費をどうはじいていくかということだと思います。そこで、巡航速度に乗るまでに人がどれくらい必要なのかということははっきり言ってわからないのであります。立ち上げの時期に派遣という労働にお願いして、そこで必要な労働力を投入して、そして巡航速度としてどれくらい見込めるかといったときに、そこから正規雇用になっていく。  そうしますと、これからはベンチャー企業が、新しい事業分野日本雇用吸収力になるのでありますけれども、その芽をしっかり育てるために、いきなり人件費がはじけないというときにも資するのではないか。それはもちろん企業側にとっていい理屈でありますけれども、しかし企業がちゃんと立ち上がって雇用吸収力になってくれるということは働く側にとっては絶対必要なことでありますから、立ち上げ段階からつぶしてしまったらどうしようもない。  ベンチャーというのは私もいろいろ見聞きをしておりますけれども、それこそ立ち上げの時期というのは、トキのひなをかえすように細心の注意で、払い過ぎて払い過ぎることはないというぐらいで、それからある程度のところまで行くとたくましくなってくるのでありますから、そういう段階をいかにうまくはぐくむかということについては非常にいい仕組みだというふうに思いますし、それが働く者にとってやがて受け皿になってくるという意味で、両方にとってすばらしい仕組みだというふうには思っております。
  12. 今泉昭

    今泉昭君 労働大臣は、起業家というんですか、新しく業を起こす起業家増大というものが我が国経済を活性化する、そういう立場に立って、そういう人たちにとってはこの派遣労働者自由化というものが大変刺激剤にもなるし有効な手だてじゃないかという一面、私も全面的に否定するわけではございません。  特に、そういうことを言われる際に、これもまた前総理大臣橋本さんがよく言っていたことなんですが、アメリカの例をよく出されるわけです。ところが、私ども、起業家増大によるところのアメリカの今日の経済の隆盛を分析してみますと、その裏には実は大変な犠牲があったということを無視してはならないわけでありまして、その犠牲というものを、覆いかぶさった上でこれを推進することは大変危険じゃないかと思うわけです。  もうこれは私が言うまでもないことでございますが、アメリカでは八〇年代の前半というのは大変な不況でありました。日本からの集中豪雨と言われるような輸出でもって製造業はめためたにやられてしまった。そういうことで、アメリカ産業回復するために相当な努力と大なたを振るったことは事実であります。  この十五年の間に、アメリカでもってレイオフになった労働者というのは約二千万人ぐらいいるわけであります。もっとも、それにかわって三千万の新しい労働市場が生まれて、差し引き一千万人近く雇用労働者がふえたということだからこれはよかったわけでございますが、その裏にはアメリカ独特の仕組みがあったわけであります。我が国においてはそれは全く参考にならないということを考えておかなければいけないわけであります。  どういうことかというと、アメリカ日本産業に対抗するために、日本でも一時あったんですが、大きいことはいいことだじゃなくして、どんどん企業をスリム化していった。要するに、レイオフをぼんぼん無慈悲と言われるくらいにやってきた。しかも、景気はよくてもどんどんレイオフするという状態であります。すなわち、分社化の推進ということであります。  例えばGMなどは、八〇年代の前半、三十万の大企業でございました。今は十三万人しかおりません。十七万人の人がレイオフになっているわけです、実は。そして、その人たちはどういう形で雇われているかというと、一回企業レイオフされて、企業が不採算部門あるいは余り収益が上がらない部門というのをどんどん分社化していきまして、そこで新しく雇用する。しかもその賃金は、もと働いていた賃金の三分の一近い賃金で雇っているわけであります。そういうところから、一時アメリカでは中流階級がいなくなっちゃったんじゃないかと。中流階級の不満が出て、いわゆるブッシュさんが大統領から落ち込んでクリントンさんが新しく出てきたと言われているくらいに中流階級と言われる人の破壊があったわけです。そういう犠牲をしてきているわけです。  具体的に言いますと、例えばアメリカの場合ですと、GMなんかでもそうですが、労働者の一時間あたりの賃金、これは組織労働者ですと一時間三十ドルぐらいです。ところが、アメリカ最低賃金というのは、御存じのように連邦最低賃金で五ドルであります。今度五ドル十五セントに上がったかどうか、最新の情報は知りませんが、一時上院で否決されたとかなんとか言っておりましたけれども、これにちょっと毛の生えた程度で、七ドルか八ドルぐらいで分社化した企業に雇うわけです。首を切られた人からするならば、それは仕事がないよりもいいからやむを得ず就業するというわけであります。  ですから、最初三十ドルだったのが七ドル、八ドルで雇えるならば、三人分雇える賃金だったのを一人で雇うということでありますから、そういう意味でどんどん新しい産業を興してきた、こういうことでありますが、これが日本に通ずるかどうかということであります。そしてまた、そういうものに利用しようという流れをこれはつくるのではないかというふうに私ども危惧しているわけでありますが、現に日本産業日本企業を見ても、そういう流れがないわけではございません。  かつて日本の大企業と言われた、個々の名前を出したら失礼に当たるから出しませんが、A企業は八万人からの従業員を持っておりました。今はもう三万人台です。この企業はどうしたか。不採算部門をみんな分社化しているわけです。日本の場合よかったのは、一時的には出向を一年か二年やるわけです。本社の賃金でもって一、二年は支えられていたわけでございますけれども、そう長くは続かない。結局は身分を切ることによって賃金もダウンさせられる。分社化したところの賃金になっていく。  そういう形でリストラを現に始めているわけです。そういう企業は何社もございます。そういうところで抱えるのはこういう派遣労働者が大変多いわけであります。今度の制度改正によりまして、二十六業種から三つの業種を除きまして大体自由化された、こういうことでございますから、そういう機会が非常にふえるわけであります。そういう形での産業力回復競争力回復というんでしょうか、そういうアメリカのやってきたようなことが日本で果たしていいことなんだろうか、定着するんだろうかという危惧を大変強く持つのでございますが、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  13. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 私は、アメリカ型の再生方式というのは日本はとらないと思います。私自身がああいう手法は好きではありませんし、アメリカ型にレイオフができるわけではありません。  では、今ほっておけば日本産業競争力を失ってしまう、どうしたらいいんですかという話になるんです。今までのとおりで、何もせずにそのまま営々として繁栄を続けるというなら何もしなくてもいいんだと思います。しかし、このまま行ってしまうと日本産業競争力が落ちて、もとから雇用が失われるという危機感に対して政治がどう判断をするかということになるんだと思います。  私は競争力会議でも申し上げているのでありますけれども、企業社会的責務というのは二つありますと申し上げました。一つはもうけることです。もうけることが何で責務かと。もうけることを通じて税金を払ってもらうことであって、それによって利益を世の中に還元していくことであります。もう一つ雇用の安定を図ること。これを通じて世の中を安定させる、安心を築く社会一助になるわけであります。日本経営者はこの二つをきちっと頭の中に入れて取り組んでもらいたい。単に収益上げることだけを考えていたのでは、もう片方の責任を果たせません。本当の経営者というのは、両方責任感を持ってどうやって両立させていくかということをアメリカ経営者の二倍の知恵を絞って、二倍の汗をかいて考えていただくことです。それをハンディキャップとおっしゃるならば、ハンディキャップをしょっても責任を果たしてもらいたいというお話をさせていただいております。  日本経営者の多くはそういう方だと思いますし、きょうも産業労働懇話会というのを開いてきました。そこでも経営を立て直すのに安易に雇用削減の選択をする手法が助長されているのを心配するという発言経営者側から出ておりまして、両方に対して責任を持つ経営者こそ有能な経営者ということをできるだけいろんな場で発信してもらいたいというお話をさせていただいております。  ただ、これは国内だけのスタンダードであってはならないのでありまして、国際的なスタンダードになるように政治家としても発言をしていきたいというふうに思っております。
  14. 今泉昭

    今泉昭君 労働大臣が言われましたアメリカ型であってはならないし、そうすべきではないというお考え方、大変私うれしく受けとめているわけでございますが、現実の実態を見てみますと、一方では生き残らなきゃならないという企業一つの至上命題がありまして、もう一方では生き残るためには一番負担になっている労働コストをいかにして少なくしなきゃならないかという、これはどちらかといえば過剰雇用を解消していかなきゃならない、こういう二律背反の悩みの中で苦しんでおられるのが実態ではないかと思うんです。  そういう社会の中で、今全体的な一つ流れというのは、人を中心とした企業経営ではなくなりつつあることは事実なんです。御存じのように、株主重視という形の、要するに、グローバルスタンダードという言葉は私は否定したいのでありますが、それが何もグローバルスタンダードじゃないと思うんですけれども、今まで日本企業が人を中心とした経営であったのが、世界の、特にアメリカ手法を押しつけられた結果、株主重視という形の企業経営に押し込められつつあるのが現実ではないだろうかと思うんです。株主に対していい顔をしていなきゃいけない、いい数字をしていなければいろんな意味世界の市場で競争するためにハンディキャップが出てくる、融資を受ける際にも、企業の格を判定される上においてもというところの大変な大きな悩みがあるわけです。  特に私が重視しているのは、我が国が抱えている過剰雇用というものの実態なのであります。これはもういろんなところからいろんな数字が発表されていますから、どの数字が一番確実なのかわかりません。これはもう前提条件、いわゆる与件をどうとるかによりまして数字が変わってくるのでしょうけれども、一番ひどい推計によりますと、今企業が抱えている過剰雇用というのは八百五十三万人という推計を出しているあるシンクタンクもあるわけであります。  例えば、第一生命の経済研究所では、これは昨年の七—九月期におけるところの実態でございますが、八百五十三万人の過剰雇用を今企業が抱えているという数字があります。それから、これはさくら銀行のシンクタンクですが、さくら総合研究所によりますと、この研究所では売上高人件費比率に基づいて推計を出しているわけでございますが、恐らく五百万人程度企業が過剰雇用を抱えている。さらにまた、住友銀行が出しているのを見てみますと、六百七万人という推計が出ている。いずれも数字こそ違いますけれども、実は大変多くの過剰雇用を抱えているという実態にあるわけであります。  いずれにせよこの過剰雇用、過剰雇用というのはいわゆる労務費負担の過剰さ、こういうことになるんでしょうけれども、これを何とかしなきゃならないという企業行動が出てくることは間違いないと思うわけでございます。  そういうことを考えてみますと、ある意味では、この派遣労働者自由化というのはその中の解決の手段として一番結びつきやすい条件をつくることにもなるわけでございまして、私は、そういうことを考えてみますと、この派遣労働法の改正というのは決してみんながみんな悪いとは言っておりません。大変多くの、衆議院でも修正もなされましたし、いろいろな意味での工夫もされていることは認めているわけでございます。しかしながら、雇用労働者に占める割合に限界のあるこの派遣労働者自由化よりももっとしなきゃならない雇用対策というのが先にあったんじゃないか、こういうふうな考え方を実は強く持っている者の一人であります。  特に今日の雇用対策というのは、昭和五十年代につくられた柱から一歩も出ていないんですよね。毎回私は申し上げている。いわゆる六〇年代はゴールデンシックスティーズと言われたぐらいに世界的に高度経済成長が続いていた時代でございましたから、我が国は一%、百万を切った七十万程度の失業者の数でございました。これが、昭和四十八年十月の第一次石油ショックからがらっと変わってきた。五十年代になりますとこれが二%に乗った。  そのときに私はたまたま労働界の現場にいましたから、それに対する政府の対応、労働省の対応というのは実は大変評価をしているわけでございまして、がらっと今までの雇用対策というのを変えてきているわけであります。失業保険制度というものを抜本的に改正して雇用保険制度にした。いわゆる労使折半の負担ではなくして、企業側にはさらにプラスアルファの負担を加えて、要するに企業の中から人を外に放り出さないように、そういう人たちのために雇用調整給付金を用意するとか職業訓練のための費用をその会計でもって賄うとかという抜本的な改正がなされたわけです。  この二%時代我が国経済実態というのは二十年間続いてきたわけです、五十年代から。ところが、平成六年になって我が国失業率が三%にぼんと乗った。そして、わずか三年で今度は四%になった。しかも四月の失業率が五%になろうというような状態において、もう派遣労働法の改正どころじゃないんじゃないかと思うのであります。もっと抜本的な雇用政策改正こそが喫緊の課題じゃないかというふうに思うわけです。  そういう意味では、今いろんな構想が大臣の口からも発表されていることを聞いていないわけではございません。そういう意味で、抜本的にこの五%時代失業率に対応して考えていらっしゃることがあったらちょっとお聞きしたいと思うわけであります。
  15. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 日本産業そして雇用政策というのは、ここへ来て確かに大きい曲がり角に入っていると思います。  それは何かといいますと、今までは企業が立ち上がって成長してどんどん大きくなっていった状態でありますから、少なくとも大がかりに雇用を減ずるという、業種によっては当然ありましたけれども、社会全体でそういう心配をする必要がない時代でありました。しかし、ここで経済構造、産業構造が変わっていって、新しく日本のリーディングインダストリーなるものを育てていかなくちゃならない。その環境整備をしなくちゃならない。適宜適切に経営資源、つまり資本と労働が衰退産業から発展産業に移動しなきゃならない。  今までは労働力人口もどんどんふえていきましたから、旧来の産業産業で抱えていて新しい産業に新しい労働力を供給するということは、労働力人口がどんどんふえていく中ではそう心配しないで供給が可能だったと思います。  これからは、二〇〇五年をピークに労働力人口が女性や高齢者の力を使ったとしても落ちていくわけであります。そうしますと、労働力人口というパイが小さくなっていく中で新しい産業にどう経営資源を供給していくかという新しい問題にぶつかる。それは従来持っていたものから譲り受けて、新しいところがそれを駆使して受け皿になっていかなきゃいけないわけでありますから、今度は移動政策というものをかなり中心に掲げていかなきゃならない、政策として。  今までは雇用の維持政策でありまして、とにかく新しい労働力の供給というのはどんどん労働力人口がふえているんだからそんなに心配しなくていいよ、それよりも終身雇用の制度の中で維持できなくなるのを何とか支えるから維持してくれ、あるいは回復するまで猶予を与えるから頑張れというような政策でありました。  今度は、そちらだけで支えていますと新しく担っていくところに対して経営資源なかんずく労働力の供給ができなくなりますから、新しい業が担っていける立ち上がりができなくなる。ですから、スムーズな移動、その際に社会不安を与えないシステムということを構築しなければならないと思います。そういう点で、労働政策、雇用政策も大きな転換点に立っているというふうには思っております。
  16. 今泉昭

    今泉昭君 今回の改正とこれまで行われていた派遣労働法との比較を私なりの考え方考えてきたんですが、例えば、我が国労働者のパターンというのは三種類に分かれていると思うんです。  縦軸に賃金をとらえ、横軸に年齢をとらえて考えてみた場合に、いわゆる一つのグループの労働者というのは、企業に入ってから勤続年数も年齢も変化するにもかかわらず賃金が一切変わらないという労働者のグループが一つあります。それがいわゆる日雇い労働者でありパートタイマーであり派遣労働者の実はグループだろうと私は思うのであります。  それからもう一つのグループというのはどういうことかというと、高度な技能を持ち、あるいは大学を出た、将来企業の中でエリート社員として育てていこうと企業が思っている人たちのグループでありまして、入って間もなくすぐ一つの昇進ルートに乗ってぐっと賃金が上がり、ぐっと上がっていくというグループ。管理職グループもこれでございましょうし、特殊技術者もこういうグループでございましょう。これが第二のグループだっただろうと思うんです。  それから、第三のグループというのは、いわゆるこれまで日本の基幹労働者と言われていた方々、企業に入ってから経験を積むごとに段階的に賃金が上がっていくという人たち。  特にこの人たちが年功序列の弊害の対象だというふうに最近はいじめられ始めているんですが、そういう三つの大きなグループに分かれていた中で、これまでの二十六業種に限定された派遣法の場合は、どちらかといえば、必ずしも正確じゃないんですが、上位の専門職のグループを対象として考えていこうという一つの政策意図があったと思うんです。ところが、今回のこの自由化されたことによりまして、一番下の底をはっていくような人たちをいかにふやしていくかと、こういう形になっているわけです。  我が国の場合、将来競争力を高めていこうというのにおいて、このグループがふえるから競争力がつくというのはごく一時期だけのことであって、企業を将来的に発展させ成長させていくことの大きな柱には私はなり得ないと思うわけであります。そういう意味で、仮にこの派遣労働法の自由化というものが我が国企業競争力を高めるというふうに認識をされていたら、私は大きな過ちじゃないかと思うんです。  そういう意味で私が危惧しているのは、六十一年に最初派遣法が施行されて、この弊害が出てくるためにいろんな監視員制度ができました。アドバイザーシステムというものがございました。ところが、いろんな問題は聞いてくるんですが、そういう人たち割合はごく少数です。例えば、東京と大阪にしか置かないとか、ごく限られた人。そういうことを考えてみますと、弊害というものがこれからますますふえていくと思うんです。  そういう中において、監視員とかアドバイザーとか相談員とかというような手当てというものを抜きにして労働者の方々が一番心配されていることの解決にはならないと思うんですが、そういう防護策はどのように考えていらっしゃるんでしょうか。
  17. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 従来から、民間の労使の方の力をかりまして、都道府県に労働者派遣に係りますいろいろな相談に応じる方としてアドバイザーあるいは労働者派遣事業適正運営協力員といったような方を配置してまいりまして、この適正運営協力員は全国で現在約九百数十名いらっしゃいます。職業をお持ちの方ですからなかなかフルタイムで活躍していただくというわけにいきませんが、それでも労使それぞれの立場における知識、経験を生かしまして、例えば平成十年度の実績を見てみますと、年間五千件くらいの相談を受け付けておられます。  この中には、必ずしも法律違反というふうな重大な事項でなくても、例えば雇用管理の改善に関することですとか、教育訓練をどうするとか、あるいは福祉の増進に関すること、こういったことについて相談を受け、アドバイスをされるというふうな活躍をしてこられまして、今回、この適正運営協力員につきましては、改正法の中にその位置づけを明記するというふうなことにいたしております。  また、今般、民間の方の力をかりるだけでなくて、安定所において派遣労働者の相談を受ける、あるいは、法違反ということになりますと労働大臣への申告制度ということも新たに設けることにしております。  確かに、制度発足以来、なかなか苦情とか相談とか絶えないところがあるわけでありますが、こういったことによって派遣労働者の就業の適正化というふうなことを図るために体制も一段と強化したいというふうに思っているところであります。
  18. 今泉昭

    今泉昭君 六十一年にできた適正運営協力員というのが全国のいろいろな民間の方の協力も得てなされているというふうに判断しますが、それ以外に、例えば平成八年には苦情処理アドバイザー、あるいはまた昭和六十二年には雇用管理アドバイザー、こういうシステムがあるわけですが、実はこの予算の使われ方を見てみますと、適正協力員の平成十一年度の予算はわずか五千三百万程度です。こんなもので果たして、ちょっと給料の高い人だったら十人も人を雇えないんじゃないかと思うんです。スズメの涙程度の謝礼金が出ているという程度であったならば、これは十分な相談、指導というものには全く当たらないんじゃないだろうかというふうに思うわけです。  例えば、雇用管理アドバイザーに関する予算なんかは十一年度で七百六十万、苦情処理アドバイザーは三千四百万程度のものでございます。こういう意味では、自由化をしたはいいけれども、それの防御策、補助策というものに不十分ではないかなという危惧がしてならないんですが、いかがなものでしょうか。
  19. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 適正運営協力員あるいはアドバイザーに関する予算は今おっしゃったような数字になっておりますが、これは必ずしも報酬、手当といった額ではありませんで、旅費等の実費に充てていただくものということで、いわばボランタリー的に知識、経験を生かして派遣労働者の方たちの相談に応じる、あるいは事業主へのアドバイスをする、こういったことで今まで位置づけてきたわけでありまして、なかなか人数も、確かに予算も不十分だというふうな認識は持っております。  こういったことで、今般、格段に派遣労働者の対象を拡大するわけですから、この辺の充実も期さなければいけないというふうに思っておりますし、また先ほど申しましたが、公的機関としても、安定所もフル動員をして派遣労働者の苦情の受け付け等対応に努めたいというふうに思っておるわけであります。  前段の方の民間の方の知識、経験も大いに活用させていただくという点からは、おっしゃったような点についても改善、充実を図っていく必要はあろうかと思っております。
  20. 今泉昭

    今泉昭君 職業紹介を含めて雇用問題に対する国の関与というのは、どのように自由化をしてもその中心はやはり行政、政府にあるというふうに考えておかなきゃいけないわけでありまして、すべてを民間に任せていくということであっては国民から信頼が得られないというふうに思うわけです。  そういう意味で、私、職安の活用状況を見てみましても、びっくりするほど職安の利用率の低さということに実は驚かざるを得ないわけであります。調査室の方から出ている資料などを見てみますと、人が就職する際の職安の活用度というものの低さに大変驚くわけであります。例えば、平成十年の実態を見てみますと、公共職安に頼んで仕事を紹介してもらってついていくという人たちは全体の中で何と九・一%なんですね。一番多いのは何かといいますと、求人広告、求人情報誌によるものが大変多いわけであります。  そういうものから見てみますと、職安行政に対する、先ほども予算が十分でないというふうにおっしゃったけれども、労働大臣、どうですか、今の労働省のそういう意味での予算の不十分さということは感じられませんか。
  21. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 私も、短い在任中でありますけれども、何カ国かの職業安定所を視察いたしました。そうしますと、込みぐあいが全く違うわけでありまして、失業率日本はもちろん深刻な高さでありますけれども、それでも比較論からすると、それ以上の深刻さであるにもかかわらず外国の職安に人が余りいない。それはいろんな事情もあるんでしょうけれども、実は箇所数と人員配置が日本よりはるかに恵まれているという点があります。日本の職安のまさに殺人的忙しさからすれば、就職に通ずる職安の利用度、貢献度というのが九%よりは当然上がると思いますけれども、今のスタッフそれから予算では確かにもう限界に達しております。  どの辺のパーセンテージまでを国の機関が持つべきかというのは、この数字がいいというのはなかなか言えないと思います。官民相まって職につけるというのが理想でありますし、とにかくいろんな意味で官と民が協力できるシステムをここでは築いていくということが大事だというふうに思っております。  まだまだ職安に対する企業側からの情報量が足りないのかもしれませんけれども、財政状況の厳しい中、できるだけ効率的に運用いたしましてその使命が果たせるようにしたいと思っておりますし、とにかく既存の機関、先ほど申し上げました官と民の連携をしっかり図りながら最終的に失業率を下げていく、ミスマッチを少なくしていくということが肝要であるというふうに思っております。
  22. 今泉昭

    今泉昭君 少し細かい個々の問題について入っていきたいと思うんですが、登録型の派遣労働者というものを中心として、特に今までの派遣労働者に関する紛争状況、件数が多かったんじゃないだろうかというふうに私どもは受けとめているわけですが、今度の改正によりこの登録型の人たちというのが物すごい勢いでふえていくというのは間違いないと思うわけであります、今までの例からしますと。現に、この派遣労働者の数を分析してみますと、登録型の人たちが八割を占めているような状態でございますから、今まで二十六業種に限定されていたものが全部の業種に一部の適用除外を除きまして一応フリーになっていくということでございますから、この登録型の人たちを含めまして紛争が大変増加をしていくだろうというふうに思っております。先ほど局長の方のお話によりますと、年間五千件ぐらいのいろんな紛争が出ていてそれを取り扱っているというような答弁がございましたけれども、それだけ業種が膨らむわけですから、当然これは大変大きな数字になるだろうと思うわけでございます。  そういう意味で、一つは、このための紛争処理のあり方というものにつきましてもう少し工夫ができないものかどうか。これで労使関係でもできているならば労働組合を中心とした紛争の処理のあり方があるのでございますけれども、派遣労働者の場合は労働組合がないわけでございますからどこに相談に行っていいかわからない。相談するとするならば、派遣元である自分雇用主のところに行って相談をしなきゃならない。ところが、派遣元というのはお客さんである派遣先から見てみますと、実は大変立場の弱い実態に置かれているわけでありまして、派遣労働者にかわって十分な紛争処理に乗り出してくれるかどうかということが大変疑問なわけでございます。  そういう意味で、紛争処理に当たって新しい何かシステムをつくる考えがないかどうか、それについてちょっとお尋ねしたいと思います。
  23. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣労働に関する紛争の処理につきましては、従来から制度的には、まず派遣元と派遣先で解決していただくということが基本であるということで、それぞれに、派遣元、派遣先に責任者を置いていただくことになっておりまして、そこで苦情の処理に当たるということになっておりますし、また、それぞれに管理台帳というものを置きまして苦情の相談等にどう当たるかというふうなことも記載をしておくというふうなことを制度的に法律で規定しておるわけであります。  先ほど申しましたように、従来からもちろん安定機関がその相談にあずかってまいりましたが、今般これを明確に位置づけまして、全国約五百の安定所において苦情の処理に当たるあるいは相談に応じるということにしておりますし、さらに深刻な法違反ということになりますと、労働大臣への申告制度、申告を理由とする差別的な扱いの禁止ということを法律に盛り込んでいるわけでありまして、こういったものが実効性が上がるようにさらにこれは運用の面でいろいろと工夫をしなければいけないと思っておりますが、公的機関、それから先ほどお話が出ておりました民間の方の知識、経験の活用、こういったことを組み合わせることによりまして、今後相当拡大すると見込まれる派遣労働における紛争処理、あるいは苦情に応じる、そういった体制をつくっていきたいというふうに考えておるところであります。
  24. 今泉昭

    今泉昭君 ぜひそうしていただきたいんですが、しかし、全国にある五百の職業安定所でやっていただくとしましても、職安にはこれまでの職安業務が大変煩雑にあるわけでありまして、特にこの失業時代には、失業のいろんな相談もあるでしょうし、失業保険の給付なんという大変煩雑な仕事もあるわけでございまして、言葉の上ではやってもらうのは大変ありがたいことなんですが、人員がふえるわけでもないし、そういう意味では、抜本的に紛争処理のあり方というものを検討すべきじゃないだろうかというふうに私は考えております。  あわせまして、新しく自由化することによりましていろんな弊害が出てくるだろうというふうに判断をしておりますので、派遣労働法の見直しというのを、一般的には三年後とか五年後とかいうふうに考えられるんでしょうけれども、毎年改めてこれはチェックをしていく必要があると思うのであります。恐らく政府側の答弁としては、いやそれは審議会で審議をしていきますということになるんでしょうけれども、審議会で審議するといっても、これはそう簡単に結論が大体出ないわけでありますから、そういう意味で、何かすぐに結論が出るような検討機関でもつくるつもりはございませんか。
  25. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 個別の紛争処理につきまして、労働基準関係では、さきの基準法の改正におきまして一定の制度が整備をされることになったわけでありますが、さらに広く雇用問題一般についての紛争処理について、あるいはこの派遣労働を含む紛争処理について、その機関、制度のあり方、これについては何か機関を新しく設置するかどうか、そういったことも含めまして、そういった個別紛争処理機関の整備について引き続いて検討を進めたいというふうに考えております。
  26. 今泉昭

    今泉昭君 それからもう一つ重要なことは、この派遣労働というのは、当事者が今まで直接雇用ということではございませんから、三角関係の中で物事がすべて行われている。例えば日雇い労働者あるいはパートタイム労働者というのは雇用者が直接的にございますから被雇用者雇用者と二者の関係なんでございますけれども、派遣労働の場合は、派遣元と派遣先があり、そして実際に働いている労働者があるということですから、いろんな意味での紛争処理に手間取る、解決が長引く、責任の回避が行われるということは今までの流れから見ても明らかではないかと思うのであります。  特にこの中で私どもが見過ごすことができないのは、一年を超える派遣継続禁止に違反した場合に、一応派遣元のみに罰則を科すことにされているわけでございまして、派遣先は、実際に違反を起こすのは派遣先であるのにもかかわらず、罰則が科せられないというような形になるのは、これは三角関係のシステムになっているからなんであります。  だから、私はこういう問題を解決するための紛争処理機関というものを、全然今までと違った形のものをつくっていかなきゃならないということを考えているわけでございまして、ぜひこの点につきましては検討をしていただきたいというふうに思っているところでございます。  次に、特に労働組合の方から疑問が出ている点でお聞きしたいと思うんですが、いわゆる業務の範囲の中で適用除外になっている業務が今度ございます。自由化になりましても、例えば港湾運送業務であるとか建設業務であるとか、警備業法に関するもの、こういうものは適用除外になっているわけでございますが、こういうものを区分けする場合に、こういう産業が果たしてこの中のどこに該当するかというのはなかなか判断のしにくい場合があるわけでございまして、例えば林業労働者などというものは、林業・土木というふうに考えてみますと、これは建設業に大変関係のある仕事、治山治水に関する仕事も建設・土木という関係関係の深い業務なんですが、これは建設業務という範疇に加えられたものなんでしょうか。その点の判断をちょっとお聞きしたいと思います。
  27. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 建設業務につきましては現行法にも規定があり、また今回の改正法におきましても、建設業務というのは派遣を行ってはならない業務として掲げているわけでありまして、これは四条におきまして建設業務で派遣のできないものは土木、建築、その他工作物の建設、改造等々、これらの作業の準備の作業に係る業務をいうというふうに規定しているわけでありまして、今おっしゃいましたような林業・土木、こういったものの中にここに法律に規定しているような業務が入るかどうか、そういった解釈の問題ではないかというふうに思います。  この派遣法は、産業とか職種とかそういったとらえ方ではなくて、すべて業務でこれを把握しているわけでありまして、後の方の条文にも同一の業務というふうなこと、あるいは現行認められている専門的な業務につきましても、秘書の業務とか翻訳の業務とか、こういうふうに産業、職種といったとらえ方ではなくて、それぞれの業務についてとらえていることでありますから、産業分類などでいいましても、その中にこの法律で言う建設業務が含まれる場合は一般的にはあろうかというふうに思います。  いずれにいたしましても、いろいろな産業あるいはいろんな仕事の中でこの法律の中に言っている業務、派遣の禁止される業務があるかどうか、それを具体的にもちろん解釈をしていくことが必要でありますから、具体的な産業についてどういうふうになるんだというふうなことは、この法律改正が成立しました後に公労使の三者構成の審議会の場でもいろいろと御議論いただきながら、いろんな角度から検討して、さらに具体的にこれを明らかにしていく必要があるというふうに考えているところであります。
  28. 今泉昭

    今泉昭君 審議会というのは職安審のことでございますか。
  29. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) はい。
  30. 今泉昭

    今泉昭君 はい、わかりました。  六カ月後にこれが実施されるということでございますので、これは相当スピードを上げてそういうものの整理をしていただかなきゃならないというふうに思いますので、ぜひはっきりさせていただきたいというように考えております。  それから、先ほどから何回も申し上げてまいりました。新しく自由化になることによっていろんな弊害が出てくるわけでございまして、特にその中で一番問題になっている登録型の労働者の見直しということにつきまして、三年後の見直しということが衆議院でもいろいろ論議をされたようでございます。この登録型を全面的に廃止するということは、現在の派遣労働者の実態から見まして、八割を占めるということですから、派遣労働者を全面的に否定するということは派遣労働法を全面的に否定することに近いような考え方にもなりかねないわけでございますから、全面的に禁止しろとは申し上げません。いろいろな弊害が当然この登録型には考えられるものですから、三年後に見直し、検討を十分に行う必要があるというふうに考えているんですが、この点についての見解をお聞かせ願いたいと思います。
  31. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今般の改正法の附則の九条におきましても、改正後の労働者派遣法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは改正後の労働者派遣法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるもの、こういうふうに規定されているところでありまして、施行三年後に登録型派遣のいろいろな問題点についても検討の対象になるものと考えております。
  32. 今泉昭

    今泉昭君 時間が参りましたので、残りました時間は同僚の谷林委員にかわりたいと思います。
  33. 谷林正昭

    谷林正昭君 引き続きまして、残り時間二十分足らずでございますが、より具体的に少し質問をさせていただきたいと思います。私の方からは、ネガティブリスト方式の持つ危うさといいますか危険性といいますか、こういうことを少し御質問させていただきたいというふうに思っております。  最初大臣にお伺いいたしますけれども、派遣労働に当たりまして、各事業、各仕事に対して、これまでに多くの法律の上に安全だとかあるいは利用者の便宜だとか、こういうものが定められていたというふうに思いますし、派遣労働に当たって、今ある法律をしっかり守って、遵守することによって、その上に立っての派遣労働というふうに私は理解しておりますけれども、大臣の基本的な考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  34. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 今回の法改正もいわゆる規制緩和というふうに呼ばれていますけれども、規制緩和をするに当たっての大前提というのがございまして、それは効率を上げるということと、安全性に配慮する、安全の部分について規制緩和をするときには、それが国民生活に安全性の点で弊害がないかどうか、それに十分に配慮するという基本理念で全般の規制緩和というのが進んでいるわけであります。  今回の法改正に際しましても、先生御指摘のとおり、安全性にもちろん十分配慮して、その懸念がある部分についてはきちんと議論をしてもらう。中職審に諮って除外業務を決めるときにも、そういう点も十二分に配慮をして結論が出されるというふうに承知をしております。
  35. 谷林正昭

    谷林正昭君 若干具体的な話で恐縮でございますけれども、例えば今タクシー業界の方は、将来の規制緩和を目指しながらも、運転手にかかる負担割合といいますか、非常にかかってきております。具体的に言いますと、労働条件が劣悪になり、それによってその企業が支えられているというような状況に今なりつつあります。  そこで、労働省としまして、今のタクシー業界の賃金実態、こういうものをどれくらいまでに把握されているのか、若干わかっている範囲でお聞かせいただきたいと思います。
  36. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) タクシーの運転手の方の賃金でございますが、賃金体系についてお話を申し上げれば、私どもの調査によりますと、固定給と歩合給を併用している体系というのがほとんどでございまして、九一・一%の企業がそういう形になっております。歩合給のみの企業が七・七%、逆に固定給のみの企業というものが一・二%になっております。  私ども、賃金以外の労働条件等につきましても、中央労働基準審議会の中に自動車運転手の小委員会等を設けまして、労使の方に御参加いただいて種々そういう実情について話し合いをいたしております。  労働時間等につきましては改善すべき基準を労働大臣が告示して監督指導を行っておりますが、あわせまして、こうした賃金体系に対しましてもそういう際に、非常に走行意欲をあおるような累進歩合制、これについては廃止するようにということであわせて監督指導をいたしておるところでございます。
  37. 谷林正昭

    谷林正昭君 ありがとうございました。  きょうは大変お忙しい中に実は運輸省の方からもおいでいただきまして、ありがとうございます。というのは、昭和三十三年四月一日に、非常に交通事故が多発いたしまして、とりわけタクシーの事故が多発をいたしました。その中でタクシー事故防止対策要綱が制定されまして、通達が出されております。  この内容の背景について、運輸省の方からぜひお聞かせいただきたいと思います。
  38. 荒井正吾

    政府委員(荒井正吾君) 今、委員御指摘の昭和三十三年四月一日にタクシー事故防止対策要綱が制定されております。  その背景といたしまして、当時、国民生活が大変向上する一方、タクシーにつきまして輸送力が不足してきた、神風タクシーというような言葉がはやった時期でございまして、乗車拒否あるいは交通事故が頻繁に発生したという状況を踏まえまして交通対策本部というものが設置されまして、内閣官房長官をヘッドにいたしまして、局長級の部員で構成される本部がタクシー事故防止対策要綱を決定したという事情にございます。
  39. 谷林正昭

    谷林正昭君 ありがとうございました。  労働大臣に伺いますが、神風タクシーという言葉は御存じですか。
  40. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 存じております。昭和三十年代でしたか、四十年代よりは三十年代でしたか、とにかくタクシーの運転手さんが距離を稼ごう、料金を稼ごうということで、安全運転を無視して猛スピードで裏路地から何から突き抜けていった、それによって乗客の不安もさることながら重大事故が随分と頻発をしたという社会現象的なものがありまして、よく承知をいたしております。
  41. 谷林正昭

    谷林正昭君 ありがとうございました。  それが将来に私が心配する内容につながらないかと思いまして、蛇足でありましたけれどもお聞きいたしました。  続いて運輸省にもう一度お伺いしますけれども、このタクシー業界につきまして、そういうことを二度となくするということも含めまして、タクシー業務適正化臨時措置法というのが昭和四十五年に制定をされております。この意義について簡単に御説明いただきたいと思います。
  42. 荒井正吾

    政府委員(荒井正吾君) 四十五年に今御指摘の法律が制定されました。その背景、意義でございますが、やはり四十年代、タクシーが大衆化するという事情にございまして、一方、乗車拒否を初めとする違法行為が頻発したという事情にございますので、タクシーの運転手の登録制の実施、タクシー適正化事業を実施するという目的のために東京地域、大阪地域でそういう事業を実施するための臨時措置法が制定されたというものでございます。
  43. 谷林正昭

    谷林正昭君 ありがとうございました。  今まさにおっしゃいましたように、タクシー、いわゆるハンドル労働者というのは、この派遣ということに関しましては非常に危うい状況を将来予測される問題点を実は指摘したいわけでございます。  今、事業の規制緩和ということで貸し切りバスの自由化あるいはタクシーの自由化、こういうものが進められようとしておりますし、その方向性が出ております。四月九日にも運政審答申の中で、自動車交通部会の方からその答申が出されまして、いわゆる事業の規制緩和を求める一方で、その事業が国民のために本当によりよい方向で競争がされるか、その一番大きなポイントは何かといいましたら、それはバスやタクシーにおいては良質な運転手の確保がこの規制緩和の大きな原点である、ぜひそういう方向で運転手の確保に努めてもらいたい、それが規制緩和が進む条件だというふうに答申がされております。  そういうことからいきますと、このネガティブリスト化の中で私の心配する、先ほど言いましたように昭和三十年代の神風タクシーだとかあるいは四十年代の乗車拒否を中心とした無謀な運転手、こういうことを防ぐためにもこういう観点に立った議論がこれから必要になってくるのではないかというふうに危惧しております。  そういう意味で、大変運輸省には申しわけございませんが、今、貸し切りバスやタクシーを規制緩和しながら、よりお客さんに便利な方向性に行く、こういうことについて努力をされておりますし、これまでそういうふうな国民に密着した公共交通の確保ということについて努力をされてきておいでになると思いますが、ここで、大変失礼な問いになるかもわかりませんが、もしここに派遣労働者が入ってくる、運転手、その仕事に派遣労働者が入ってくるというようなことになったときはどういうふうにお考えなのか。これはお考えで結構ですから、賛成、反対ではなくてお考えで結構ですから、ぜひ聞かせていただきたいと思います。
  44. 荒井正吾

    政府委員(荒井正吾君) 今、運送事業、とりわけバス、タクシーの分野での規制緩和は参入を、経済規制を緩和してなるべく良質なサービスが導入されるようにと。一方、バス、タクシーは安全、安心、特にタクシーは安全、安心なサービスが望まれるということでございますので、安全の規制はしっかりしようというのが基本でございます。  タクシーにつきまして、やはり安全、安心の基本は、運転手、それと運行管理、事業者ということになります。その際、運転者の雇用関係と安全の考えでございますけれども、運転手がいいサービスを提供するためには指揮命令体系がしっかりしなきゃいけないということと考えております。  その指揮命令体系は、どういう雇用契約で確保されるかというのはまた別の問題があろうかと思いますが、運輸省の立場といたしまして安全、安心なサービスのためにそういう雇用の体系いかんにかかわらず安全が確保される体制を維持しなきゃいけない、その役目を道路運送法あるいは運輸省の業務が負っているというふうに考えておるところでございます。
  45. 谷林正昭

    谷林正昭君 ありがとうございました。  今ほどの答弁にありましたように、私もそういうふうに思っております。  とにかく、タクシー、バス、トラックも含めまして、いわゆるハンドル労働者、ハンドルを持って仕事をする人は、一たん事業場の外へ出ますとまさに単独労働になる、しかもその安全遂行責任はその本人に任せられているというのが現実でありますし、特にタクシー、バスということになりますと人の命を預かる、こういう仕事でございます。  そういう意味からも、私はそういう仕事にはこの派遣労働というのは全くなじまない、こういうふうに考えておりますので、その考えが正しい、間違いということではなくて、労働省の基本的な考えを、そういう安全、人の命を預かる、こういう基本的な考えを、ぜひ派遣労働という相関関係を、考え方をお聞きしたいというふうに思います。
  46. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 先ほど申し上げましたように、規制緩和ということが安全という問題を犠牲にしてはならないということは先ほど申し述べたとおりであります。  政令で除外をさせる業務というのを決めるわけでありますが、その際に、公労使三者構成の中央職業安定審議会に諮って検討をするわけでありますが、国会において適用除外業務に係る審議の状況につきましてこの審議会にも報告をしたいというふうに思っておりますし、もちろん御指摘の業務については運輸省ともよく相談をしたいというふうに思っております。
  47. 谷林正昭

    谷林正昭君 ありがとうございました。  まさに安全なくしてそういう業務はないというふうに私は思いますし、事業の規制緩和が進むということはやっぱりお客さんが便利になるし、利用しやすくなるということが大前提だというふうに思いますけれども、社会的規制をきっちり守ったとき初めて、法律で例えば自動車運送旅客事業法でも定められております、第二条にあります安全、迅速、確実、公平、親切な業務が遂行されるというふうに思います。  国民の足として信頼されるバス、タクシー、こういうものを守るためにも、今労使が一体となって規制緩和のあらしの中で頑張ろうという決意も示している最中でございます。ぜひ、企業収益化、あるいは派遣でそういうところで働きたい、そういう人たちの要望もございますでしょうけれども、何よりもやっぱり人の命を預かる、利用者の安全、利便を図るということを第一に考えて今後の審議に生かしていただきたいというふうに思います。  最後に、先ほども大臣の方からありましたように、この適用除外に当たりましては中央職業安定審議会で検討をされるというふうに思います。運輸省との連携をぜひとっていただきまして、その事業の実態、働く現場の実態を踏まえて御審議をするように少しアドバイスいただければ幸いというふうに思いますが、くどいようでありますけれども、最後に大臣の決意をよろしくお願いします。
  48. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 御指摘の御趣旨を踏まえて対処してまいります。
  49. 谷林正昭

    谷林正昭君 どうもありがとうございました。  終わります。
  50. 山崎力

    山崎力君 参議院の会の山崎でございます。  非常に私、この問題に正直言って疎いものですから、基礎的なといいますか基本的なことを一つ一つまずお伺いするということで、今までも言われたことの再確認になる部分多いと思いますが、できるだけわかりやすく御答弁願えればと思います。  まず、いろいろ言われているんですけれども、法律というのはいろいろな側面がありまして、細かく微に入り細にわたり切り分けていくところもあれば、大きな方針でどさっというふうにやるところもあろうかと思うんですが、今回これがどっちなのかなと。意外に影響が全体と見ればないのかもしれない、逆にそういった場合でもある部分に関しては物すごくしわ寄せ的に集中的に影響が出てくる部分もあるかもしれない、その辺が見えてこないなというのが最初の実感でございます。  そういった中で、まずお伺いしたいのは、いろいろ言われておりますけれども、いわゆる働く側にとって働き場所その他自分が働きたいということの選択肢、選び方が多くなるのではないかというふうに言われているんですが、本当に逆に労働者にそういった要望があるだろうかというところが見えてこない部分があるわけでございます。ですから、労働者立場に立って今回の派遣法改正がどういう要望のもとにあったんだろうか、それとも別の雇用者側とかそういったものからの要望なんだろうか、その基本的なところをまずお教え願いたいと思います。
  51. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣の適用対象業務の拡大ということにつきましては企業の方からも要望があるわけでありますが、今御質問の労働者側にとってどうであろうかということにつきまして、既に現行行われております二十六業務、この派遣に従事する労働者の方から平成九年に実態調査を行ったものがあります。  これは複数回答ですけれども、派遣労働というものを選んだ理由としてメリットとして挙げていただいた理由の高いものから申しますと、まず、働きたい曜日や時間を選べるから、こういった理由が一番多くなっております。それから次に、働きたい仕事の内容を選べるからというふうなものから、仕事の範囲、責任が明確である、働く期間を限って働ける、それから働く企業、職場を選べる、あるいは会社の人間関係に煩わされたくない、こういったものもあります。こういったように、これは複数回答でございますが、特にこれは登録型に強い希望かと思いますが、自分の技能、特技を生かして働きたいときに希望する職場で働ける、こういったことについてメリットを感じておる派遣労働者が多いというふうに見ております。
  52. 山崎力

    山崎力君 それはそういうことのあれだろうと思うんですが、私がその点についてお聞きしたいのは、今までの二十六業務に関するところはそういうことでしょうけれども、それを広げて、先ほどから言葉で言えばネガティブリスト化、そういったことにする、そういった要望が労働者側からどういうふうに出ていたんだろうかという意味なんですが。
  53. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今申しましたのは確かに現行派遣が認められておる二十六業務に従事する方ですが、ここで述べられました働きたい曜日時間を選べる等々の派遣を選ぶ理由というものは、これは現行二十六業務に限らず一般的に派遣という働き方があればそういったものに対するメリットとして挙げられる理由ではないかと思います。  現在二十六業務だけですから、これを拡大したときにどういうふうになるだろうかということはなかなか予測しがたい面が確かにあるんですけれども、現在いろんな多様な働き方が生じてきておるのは確かでありまして、例がいいかどうかでありますが、フリーアルバイター、フリーターというような方も大変現在多くなっています。  失業率四・八の中身を見ますと、百万人ぐらいは失業の理由というのがその他ということで、これは業を失うというよりはこれから仕事を探す、求職活動をしていて失業者に計上されている方ですが、このその他の約百万人という方は、通常家庭の主婦でこれから仕事に出ようという方だというふうに言われているんですが、実際には半分くらいは男性なんです。ということは、今まで仕事をしていなかったけれどもこれから働こうという、そういった約五十万人ぐらいの男性の中には相当のいわゆるフリーターというような働き方をしている人もいるというふうに見ております。  したがって、そういった仕事を現在しておる方から見ると、派遣の登録ができれば、一々その都度事業場を訪ねたり一々安定所に来ることなしに、登録をしておればそこで訓練も受けられ派遣も受けられる、そういった潜在的な需要というのは相当数あるのではないかというふうに考えております。
  54. 山崎力

    山崎力君 もう一点、今回の改正ですが、ILOの百八十一号条約ですか、そういったことの批准と絡んで国際的な動向に沿うものというふうな御説明のようであります。  そういったところで、国際条約ということで世界流れといえば流れなんでしょうが、先ほども同僚議員からも一部重なる質問が出ておりましたけれども、労働市場として見た場合、欧米の市場と我が国の従来の市場というものが相当違ったものであるというふうに、事実そうかどうかわかりませんけれども、意識として我々の中にそういうふうな意識がある、思いがある。我々の言う年功序列、生涯雇用という、そういったものが欧米ではそれほどなっていない。非常に労働力の流動性が高い。  そういった中で、日本の市場がそっちの方向に行く可能性があるので、それに沿ったものだろうというふうなこともあるとは思うんですけれども、それでは、具体的に今回の改正で、労働者にとって労働者のこういった派遣を非常に広げるということがどのようなメリットがあるか。先ほどの御答弁でいろんな雇用形態が選べるということはわかりましたけれども、そのほか何かメリットがあるんでしょうか。
  55. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣労働は、特に若い方を中心にして現在も就労者が多いわけでありますが、そういったことだけではなくて、例えば高齢者の方について、なかなか再就職が難しいし、安定所に来る求人も若い人に年齢を絞っているというような例が多いわけでありますが、例えば高齢者の方がこれから自分の知識、経験を生かして広い分野で働こうというときに、例えば派遣一つ働き方になるのではないかというふうに思っています。そういった派遣の形態を通じながら、派遣先の企業で高齢者の雇用が行われるというふうな点も例えば考えられるのではないかというふうに見ております。
  56. 山崎力

    山崎力君 今の二つの私の質問に対するお答えを通じてちょっと見えてこないのが、それだったらば本当に全部ネガティブリスト化すればいいじゃないか、何ゆえに二十六業務を残したんだと。それから、それだけではなくて、港湾運輸、建設、警備というものも外したんだと。用意ドンでやるなら全部きれいに外して全部ネガティブリスト化してやればいいんじゃないかというような考え方が出てこようかと思うんです。  あるいは、二十六業務というものが今までの流れの中で決まっていった。それとは別に、今回ネガティブリスト化するということなんですが、二十六とはちょっと違った形になってきているわけですね。両業種といいますか、ネガティブリスト化されたほかのところと二十六業種はまた違った扱いをされている。それだったら、今度広げるところの業種、何があるかは別として、そこを選んで、二十六業種の今までの従来の業種にプラスして三十とか五十とかにしてもいいのではないか、あるいは二十六を減らして十五とか十にしてもいいのではないか、当然そういうふうなことが考えられるわけですが、その辺の理由をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  57. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣労働について、これから検討してこれから新規立法するんだということになればこういった形には恐らくならなかっただろうというふうに私ども考えておりますが、この派遣労働は専門的な労働等につきましてまず出発をした。それについては、労働市場において、常用労働の代替等の問題はないのではないか、あるいは専門的な能力を即戦力としてすぐに活用したい、こういった企業ニーズもあるのではないか、こういったことで、いわゆるポジティブリストとして二十六、これも途中でつけ加わって二十六業務になったわけでありますが、専門的なもので認めていくものについてこれを列記するという形で始まって現在二十六業務。  先ほどからお話がありましたが、八十六万人くらいの方、複数登録もあるので実際には数十万の方が現在の派遣労働に従事をしておられると考えるわけでありますが、この二十六業務の扱いについては、既にそういった方がその労働市場で働いておられるというふうなこと、あるいは専門的能力の活用、臨時の活用という要望自体は現在もあるわけですから、これを廃止するという考えにはならなかったわけであります。それではそれを一つずつまた拡大していく方向ももちろんあるでしょう。ただ、ILOにおける国際的な議論も踏まえ、また我が国における短期労働市場での需給の調整の必要性、こういったことから、今回の立法過程におきましては常用代替の防止あるいは派遣労働者の保護充実、こういったことを行いながら、派遣労働については短期労働力として広く適用対象とするという考え方に大きく転換をしたわけでございます。  ただ、その中でも港湾、建設あるいは警備の業務、こういったものについては除外をし、さらに政令でも除外できるもの、余地を開いておりますが、これはそれぞれ、例えば港湾運送業務については別個の法律によりまして需給調整システムがあるとか、建設業務については残念ながらいわゆる手配師の横行がまだ見られる状況にある、こういったこと等それぞれ勘案されまして、原則自由にするけれども一部こういったものについてはなお禁止をする、こういったふうな改正案の内容となっているわけであります。
  58. 山崎力

    山崎力君 その事情はわかるんですが、法律をこういうふうにつくるということになれば、一つ一つ事情があるのは除いておいて、あとのところはこういうふうにやっていきましょう、こういうことであるということは私でもわかるわけですけれども、最初に特殊なものといいますか例外的なものがぼんぼんぼんと。港湾運輸から始まったそれぞれの大きな業種の抱えた問題点、それを解決するための個別法があって、その次にポジティブリストの二十六業種があると。それで、ほかのところで全体的にいろいろな問題があるかもしれないけれども、流れがこうなっているから今回ネガティブリストでどんと、ほぼ特殊なものを除いてはやっていきましょう、そういうふうな方向ですというふうに言われているわけです。今、それがいいか悪いかというのが非常に難しいところに今回のこの問題の難しさがあろうかと思うんですが。  先ほどもおっしゃったんですが、ILOの条約のことの論議の中でこういうふうな方向になったということなんですが、本条約、ILOの総会で採択になったわけでしょうけれども、ILOというのは、大体西欧先進国が中心になっていろいろ労働条件その他そういった問題を討議して方向づけをしているところであるとは思うんですが、もうちょっとその辺の、今回の背景になったILOの論議、その経過というものを教えていただけませんですか。
  59. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 従来のILOにおきます民間職業紹介事業等に対する考え方は、これは日本も批准をしております九十六号条約というところにあらわされているわけですが、民間の職業紹介、こういったものについてはいろいろと弊害が大きいというふうなことで、従来はILOにおいては、こういった民間職業紹介といったものは漸進的に廃止をしていくとか、あるいはこれを禁止するんだ、こういった方向でありました。  しかし、戦後長い期間たちまして、各国における状況ももちろん変わってきました。こういった状況を踏まえて国際的にも、むしろこれは民間の活力を活用するというふうな方向に大きく転換をし、採択をされたのが一昨年の百八十一号条約というふうになっているわけでありまして、そういった点では国際的にも、民間の例えば職業紹介機関、さらに今般は職業紹介だけではなくて労働者派遣も含めて、そういった条約の内容になったわけでありますが、こういったものを広く活用して失業対策、失業の防止に努めようではないか、こういった思想で大変大きな転換をしたんだというふうに思います。  あわせて百八十一号条約では、労働者の保護というふうなことに十分留意をすべきであるという規定を入れまして、民間の活力といったものの活用とそれに従事をする労働者の保護、こういったものを大きな二つの柱にして、世界でこういった基準が適用されるように、そういった趣旨で採択をされ、我が国の政労使もこの条約については賛成をした、こういった経緯がございます。
  60. 山崎力

    山崎力君 その辺のところはある程度の理解はしているところでございますけれども、ただ、これはひとり言といいますか、お答えはしなくて結構ですけれども、そういうふうなお答えをいただくと、そういえばILOの条約というのはたくさんあって、そのうち全部日本はまだ批准しているわけではないですよね、中身についてはあれですが。  それで、随分今回のことに関してはすんなりこう、それで法改正に持ってきたな、何かそこにあったんだろうかと。今のお話でも、世界流れというのはもう少し、民間に任せておいてはいかぬというのを、今までと違ってこれからは民間をもっと信用して、そういうふうなものも許すべきではないかという中身だ、大きな転換であったと。はやり言葉的に言えば、民活という言葉にも持ってこれそうに思うわけですけれども、民間活力をやるためにいわゆる労働者派遣業務についてもやってもいいんじゃないか、そうだそうだと。そういうような感じで来たんじゃなかろうかなというふうに受けとめてしまうわけです。  そこのところで問題になるのは、常用雇用の場を減少させる可能性がある、これは可能性ですからあるといえばあるわけですが、そういうおそれを抱いている方はかなりおられるわけです。別に常用雇用が少なくなるということ自体が悪いかどうかというのは、終身雇用制という我々の今までの慣行が薄れていく、それがある種のグローバル化にもつながるからむしろいいんだという考え方もあろうかと思うんです。  ただ、普通に言われている常用雇用の場を減少させるというのは、それが低賃金あるいは労働条件の悪化につながる、あるいは安心して働けない、いつ首切られるかわけわからぬというような形につながりかねないという不安が、これはどうしても可能性としては十分あるわけでございまして、それを消すといいますか打ち消すメリットというものがあるとすれば、こういう新しい民活的なことをやることによって、今まで雇用のないような人、先ほどもおっしゃっていらしたが若年とか高齢者、そういった方たちに雇用の場を創出する効果があるのかもしらぬ。こういうふうなことは考えられるわけですけれども、今回の改正でどの程度それが現実化していくものだというふうに労働省はお考えなんでしょうか、そのバランスについて。
  61. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 今まではどちらかといいますと専門的な分野、業務に限られていたものを基本的に解禁するということになります。それが雇用創出効果がどれくらいあるか、あるいは常用雇用正規雇用をむしろ減じてしまうようなマイナス効果はないか、その両方を足し算引き算してみるとどういうことになるのかという御指摘かと思いますが、私はこう考えているんですが、ある部分で一時的、臨時的に補強をしたい、だけれども、こういう厳しい環境下だし正規雇用で補強するにはとてもお金が払い切れない、だからあきらめるという部分の雇用創出効果というのはあると思います。ただし、それも諸外国の例を見て、べらぼうに派遣比率がふえていくということはあり得ないですから、今の失業率を改善するのに飛躍的に役に立つとは正直言って思っておりません。ただ、そのことによって企業が新たな展開ができる、競争を勝ち抜くことができるという効果はあるかと思いますし、それによってその後に正規雇用が拡大するという効果もあるかもしれません。  一方で、正規常用雇用が取ってかわられてしまう、それは実は衆議院での議論でもいろいろ御指摘をいただきましたし、参議院でも先ほど来、その点が非常に心配だという御指摘をいただいております。私ども、一人もありません、完璧にということまでは言えませんけれども、極力そういうことが起こらないような工夫をしていくと。衆議院での修正もいただきまして、そういう懸念が極力少なくなるような穴埋め策をしていくということで対処をしていくつもりでありまして、プラス・マイナスしてみれば雇用創出効果は当然プラスに働くというふうに思っております。
  62. 山崎力

    山崎力君 そうあっていただきたいわけですけれども、その辺のところ、費用対効果の問題というのをこういうことで持ってくるのはいかがかと思うんですけれども、いろんな工夫でそういうふうな常用雇用の減少に歯どめをかけたいとおっしゃる、それはもう立場になればそうするのは当然なんですが、その辺の工夫コストというのはかなり必要ではないだろうかという気もするわけです。そのコストを別の方向で使えば、逆に言えば、変な言い方をすれば、もっと職業安定所の方に振り向けた方がある意味では雇用をふやす効果があるのかもしれないということも言えるわけですね。  ですから、その辺のところの計算といいますか、今回のやったことというのは、いろんな流れの中で出てきたというのはよくわかるんですが、じゃ、これはこのためにやっていいことですね、みんなこの方向でこれから国じゅうがやっていきましょうというような形のものではない。いい面もあるかもしれないけれどもかなり不安定な面がある。その辺を手当てしなければいけないんだ、そこまではみんな共通だろうと思うんです。  ある意味では、その問題点の方が大きいからこれはやめろという意見も当然出ているわけですが、進めるべきだという人もその問題点があるということは重々認識してきめ細やかな対応策をとらにゃいかぬと。非常にそういう意味では厄介な今回のこの問題だろうと私は思っております。  今回のあれでいけば、まずこれをやったときに、私どもの何十年か前、最近もそう変わらないと思うんですが、企業が、今就職試験のシーズンでいろいろリクルートを大学生がやっている、あるいは高校のところもやっている、そういった中でどうやって採るんだろうというようなことも、昔とは大分違ってきているような部分はありますけれども、これもつぶやきとしてお聞き願いたいんですが、自分が本当に大量な人を雇わにゃいかぬ大きな企業の人事責任者だったらどうするかなと。  今回できたら、そうだ、うちの子会社で人材派遣会社をつくろう。そこへ我が社に入る予定の希望者を全部入れよう。そこから今までの新入社員のような形で我が社に入れて様子を見よう、一年間だと。一年間たって、使えそうな人は正規に採用する、そうじゃない人はお引き取り願う。あとは人材派遣会社で適当に、その方はほかの会社に行くなら行く、切りかえると。そうすると半年間の試用期間、それも特段の事情がない限り試用を取り消すことはできないという判決をクリアすることができるというようなことも頭に浮かぶわけなんです。  そういった点で、非常にこれ、いいこともあるのかもしれないけれども、この道具、ツールという言葉を使いますが、この法律は今みたいな使い方もできるんじゃないかなと。逆に言うと、そういうのがこれからの企業あり方一つ時代だ、それが世界の中で我が国企業を生き残らせるための一つの手段であるというふうにもとれるところが難しいなと思うところなんです。  そういった点で考えてみれば、企業が少なくても直接採用してその責任を持つ、採用した責任、人を見る責任企業が今まで相対の関係で持たなければいけなかったある種のパートタイムとか臨時雇用というものがこういった派遣労働に置きかえられてくることだけはこれは間違いないんじゃないか。労働省はそれでいいと考えているのか、いや、そこはちょっと別の問題だと考えているのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  63. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今御指摘のようなケースは、新たに人を採用するときに、例えばそういう手段として使う、あるいはそういったことだけではなくて、今までいた常用労働者を子会社の方に移してそこから専ら派遣を受けるというようなケースが実際にも想定されるわけであります。現行法におきましても、そういった専ら特定の企業にだけ派遣をすることを目的とする派遣会社の設立、これは禁止をされておりまして、労働大臣がそういうものがあった場合には改善の勧告をできるというふうになっているわけであります。  今般の改正でそういった点も懸念されるところから、許可の基準の中に、専ら特定の企業にだけ派遣をするという企業についてはこれは許可の基準から外す、許可をしないということに新たに規定をしておりますし、運用におきましても、許可をするときにそういった派遣をしないということを許可の条件にするということにしようというふうにしておりますので、そういった事例があった場合には条件違反ということで直ちに許可を取り消す、こういったことで臨みたいというふうに考えておるわけでありまして、派遣がそういったことの手段に使われるということについては厳にこれを抑制したいというふうに思います。
  64. 山崎力

    山崎力君 私の質問、ひとり言の方に答えていただいて、そうじゃないところの方には、質問の方には答えていただけなかったんですけれども、ひとり言に今せっかくお答えいただいたんですが、そんなわかるような形で、今の労働省がわかるような形でやりませんよ。  例えば、持ち株会社があって、企業といったって、会社、幾つ一つの会社であるんですか。三菱系統の会社、全部それをやって、採用して、その三菱系統の何十社、何百社あるところへそれをばらまいてそれでやろうとしたときに、特定の企業と言えますか。あなたの企業は三菱系でそこのところへやっているんだからと。三菱という言葉は、これはどこでもいいんですけれども。一社だけやればそれはだれだってわかるんだけれども、それが五社、十社、二十社、企業グループでそれをやったら、あなたの人材派遣会社はそこの特定の企業にやっているから違反だと言えますか。そういうことをわかりやすく非常に単純に言ったからそういうふうに言ったので、しかも私はそのことはそういうことを含めた上で、お答えいただかなくても、いただくような筋じゃないから私はひとり言ですと言ったんです。  私の質問は別のところにあったということは御記憶なかったですか。
  65. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 大変失礼をいたしました。  ただ、先ほどの点について少し追加いたしますと、複数の企業でありましても、その複数の企業が特定されているというふうな場合にはこれに該当するというふうに考えております。  それから、試用ということにつきましては、これは一般論になるかと思うんですけれども、派遣先で働いてみて双方がこれはなかなかいいというようなことで意思が合致をしてその会社に就職をするということはあり得ると思いますし、今般も一年を超えて働いたときには労働大臣がそういう雇用の勧告をするという仕組みをつくったわけであります。  ただ、一般的に申しますと、先ほどの議論に出ておりましたが、派遣、特に登録型の派遣労働者というのはその就労についてメリットをいろいろ感じて、みずから志向して登録型派遣の道を選んでいるという方も大変多いわけでありますから、一般的に言ってこれが試用期間代替というふうなことにはならないかと思います。  ただ、派遣労働者の中には、正社員になれないから派遣をやっているという方ももちろんおられるわけでありまして、そういった方について、これも一般論ですが、そういったことを通じながら正社員になっていくというふうな道はあろうかというふうに思います。
  66. 山崎力

    山崎力君 時間ですので終わりますが、私の質問は、直接雇用企業が今までの相対で労働者を雇うという、企業責任で雇うというのでなくて、そういったパートタイム労働でなくて、そういった人たちを、採用責任といいますか、そういった責任を回避するためにこういった派遣会社を使うようになるんではないかという、それについて、そういったことの方向に行ったとしても労働省はそれでいいと思っているんですか、悪いと思っているんですかというのが私の質問でありまして、今のお答えも私のひとり言に対する御回答だということで、質問を終わらせていただきます。
  67. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  68. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) ただいまから労働社会政策委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(第百四十三回国会閣法第一〇号)外三案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  69. 山本保

    ○山本保君 公明党の山本保です。どうぞよろしくお願いします。  私は、きょうは第一回目の質疑でもありますので、余り細かいところには立ち入らずにお聞きしたいと思っておりまして、先日本会議で特に最近の雇用状況についてお聞きしたことから始めたいと思っております。  きょう、同僚の今泉委員の方からも最初に非常に興味のある大臣とのやりとりがありまして、大変触発されたわけでありますけれども、そこで、ダブらないようにお聞きしたいんですが、現在の失業率でございます。大変高いということで、新聞を見ますと、職業安定局長の研究会で何か今後も大変高い失業率が到来するであろうというような、もちろんそんな無責任な数字ではないと思いますけれども、新聞報道ではしかし悪い方のことだけが書かれているようではありますけれども、これはどういう意図といいますか、どういう分析をされているのか。また、最近の雇用の状況についてどのようにお考えなのか。局長、お願いできますか。
  70. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働省におきましては、今後十年間の第九次の雇用対策基本計画の策定作業に入っているわけでありまして、その基礎作業としていろんな推計を行ったというものでございますが、これは、我が国において適切な経済運営あるいは経済活動というのが行われないとすると、十年後に五・一%ぐらいの失業率、かなり高い失業率になるのではないかと。こういった幾つかの前提を置きながらそういった数字を示しているものでありまして、これはあくまで雇用審議会における議論のたたき台として検討したという現段階のものでございます。
  71. 山本保

    ○山本保君 これはきょうちょっと新聞を見ましたので、局長には御連絡しておかなかったので申しわけございません。  その場合、これはもう労働省の行政マンとして当然のことでお聞きしたいんですが、我が国失業率というのは、この今の時代において大体どれぐらいを維持といいますか、どれぐらいの数字であればよろしいというふうに御認識されているのでありましょうか。
  72. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) これも先ほどの研究会の報告によるわけですけれども、三%の後半、三%台といいますか、その程度を目指したらどうだろうかということを規定しております。最近のといいますか、近年の失業情勢の特徴といたしまして、むしろミスマッチによる失業率の高まりというものがかなり傾向的に我が国においては高くなっているわけでありまして、そういった点からある程度失業率というものは避けられないのではないかというふうなことがございます。  いずれにしましても、需要喚起、それからミスマッチの解消と、両方の面からの手だてを講じまして三%台ぐらいの失業率の水準、こういったことではないかと。これも現段階における報告でございますが、そういった見通しを立てております。
  73. 山本保

    ○山本保君 きょう午前中にもアメリカ雇用状況というものが一つ具体的に例が挙がって、我が国とは相当違うものではないかというお答えも大臣の方からもあった。確かに状況が違っているわけですけれども、これからの日本の、数字からいけば数字はまさに三とか四とかどこでも同じですが、今局長が言われたような三%後半といったときのその中身、これはこれまでの日本のずっと二%台であったとか、低い失業率であったというときとはやはり違ってくるんだろう。  単純に考えても、いいか悪いかというのは別にしまして、大変流動化が進んで、またそれに応じた職業能力開発、それに合ったよい職業、よい仕事というものをいかに得ることができるのか、また労働者が主体的にそれを判断してよりよい仕事につけるような、このことが相まって、そしてそれでも当然タイムラグもあって三%とか二%というようなことになるんだろう、こういうふうに思うわけです。  大臣、先回お話に出ましたように、歴史に残る労働大臣になりたいというふうに言っておられるようでございまして、私もぜひ期待しておるわけでございますけれども、ここでこの失業に関して大臣の決意をもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  74. 甘利明

    国務大臣甘利明君) まさに戦後最悪の雇用失業情勢を迎えているわけでありますが、現在まで何次かの雇用対策を打ってまいりました。それがいろいろ各方面からそれほど劇的に効果を上げていないという御指摘もいただきますが、この対策を打たなかった場合よりはいろんな点で効果が上がっているんではないかと思うわけであります。  加えて、労働省の範囲内で打てる政策で失業を改善する手だてには当然限度がありますし、産業政策によって新しい受け皿の場をつくるということが並行して推進をしていかれないと抜本策にはならないわけであります。しかし、総理からも、雇用対策にとって労働大臣と通産大臣は協力して取り組むようにという指示は恐らく史上初めて出ているんだと思います。事務的な詰めで詰め切らない部分は政治家としての両大臣間で詰めようという話もさせていただいておりますし、とにかく先の見通しが一刻も早く雇用情勢に関しても出てくるように、全力で取り組みたいと思っております。  歴史に残る、いろんな意味がありますけれども、いい意味で残るように頑張りたいと思っております。
  75. 山本保

    ○山本保君 当然その意味で申し上げました。ぜひ頑張っていただきたいと思います。  それで、ちょっとこれについて、この前本会議でも質問をさせていただきましたけれども、現行法で雇用保険法では、二十七条ですか、労働大臣は、失業の状況が全国的に著しく悪化しているときには、給付の期間を延長することができるという条文があります。  また、もう一つ、六十六条には、国は雇用保険の給付の四分の一を負担しなければならないという規定がありますけれども、附則ではこれの五六%でいいと。これは最近ずっとしているわけですが、こういう雇用保険の中に失業という、もちろん雇用保険法が現在のような状況を想定しているとは思えませんので、私はこれを機械的に適用せよという意味を言っているわけではありません。しかし、こういう規定がある以上、無視するわけにもいきませんし、大臣はたしかこの前全般的な検討の中でというようなお返事をされたかとは思うんですけれども、国として今申し上げた二点についてどういう対応をおとりになるつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  76. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 前段の方について私の方から御答弁申し上げますが、雇用保険法の二十七条ですけれども、これに基づきまして全国延長給付について基準を定めております。これは雇用保険の受給者実人員を受給者実人員プラス被保険者数で割った数値が四%を超える、連続して四カ月これを超えるというときに、全国一律九十日間支給期間を延長するというものでございまして、本年の三月でこれを見てみますと三・一%ぐらいになっているわけであります。これを失業率の方から推計をしますと五・六%程度失業率になる、これが四カ月続くとこの基準の発動に至るのではないかというふうに考えておりまして、この基準の発動に至らないように最大の努力をしなければいけないと思っております。
  77. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 雇用保険は、言ってみれば社会のセーフティーネットでありますから、ネットというのはちゃんと張ってあることが安心感でありまして、破れてしまったらまさにセーフティーではなくなるわけでありますから、あらゆる観点から機能を果たしていくようにチェックをしていかなければなりません。  今雇用保険に係る特別会計は御案内のとおり非常に逼迫をした状態になっております。失業率が急激に改善してくるとは考えられませんので、何としてもこのネットが丈夫で破れないようにしなければなりません。  そこで、既に先般事務方にこの再検討を指示したところでありますし、近く中央職業安定審議会の部会レベルでも勉強を始めていただくことになっております。その際にはいろいろな要素を全部加味して検討してもらいたいという指示をしております。もちろん先生あるいは今まで委員会で各委員の方々が御指摘をされた国庫負担のあり方、それから保険料率、あるいは給付に対する濃淡のつけ方、いろいろ御意見をいただいております。私としては基本設計を見直すというつもりで検討してもらいたいということを申しておりますので、いろんな要素を加味しながら将来に耐え得るセーフティーネットとしていきたいというふうに思っております。
  78. 山本保

    ○山本保君 それでは次に、これも大臣がおっしゃられたことで、この前少しお聞きしたんですが答えがなかったように思いますので。  失業給付で、非自発的な離職者については自発的な離職者よりも何か給付等でいろいろ優遇をしようではないかというお考えだという報道を見ました。  それで、もちろんいろんなことがありますから、特に小さな会社で社長が突然どこかへあっという間に夜逃げしてしまったとか、大変な場合があるということを考えれば、何も準備がなく突然そうなってしまった場合に行おうというような、多分そういう意図かなという気はいたします。  しかし、大きな原則の話を考えますと、今まさに労働者の力を高めて自分なりの仕事をしっかり得ていこうではないかという、こういう片方で動きをいろいろされているわけですね、今回の法律改正にしましても。そういうときに、非自発的な方に何か優遇をするというのはどうも整合性がないような気がしているんです。  また、これとも関連しまして、これは今でも自発的に離職した人には失業給付もおくれて出るそうであります。私、何かこの中に、職業というのはかわるのがよくないことであって、しかも自分の都合でかわって、それでそれがうまくいかなければそんなのは公的な支援なんというのは後でいいんじゃないかというような、何かそういう意識があるような気がしてならないんです。つまり、もちろん離職して転職されてうまくいった場合には手当なんか要らないわけですから、どんな理由であれ職がなくなった、それによって生活が大変であるというときに出すのがこの手当の意味でありますから、そのときに自発的か非自発的かというところで区別をするというのはおかしいのではないかなと思うわけです。  特に、昨年の十月からですか、新規創業等についてのいろんな支援があったときに、あのとき会社、事業主は直前においてそういう非自発的な、言うならば首にしたようなことがあったときにはいろんな支援は受けられないというようなたしか規定もあったように思います。そうしますと、どうしても人間関係の中で、自発的に離職したんですよということにしてくださいというようなことにもなりかねないわけでして、この辺、大臣、どのようにお考えでございますか。
  79. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 産業競争力会議だったと思いますが、そこで非自発的、自発的、あるいは雇調金についてもいろんな種類がある、それぞれ役割はあるんだろうけれども濃淡をつけるべきではないかという御意見がありました。  私は、将来的な方向としてはどういう給付のあり方時代にそぐわしいかを抜本的に検討する必要はあると思いますというような話を答弁したと思っておりますが、非自発的失業と自発的失業の区別については境界線がかなりあいまいなことは事実でありまして、今も給付をおくらすことに関して、いや自分は実は自発的じゃないんだという主張、トラブルは現在でもあります。それを仕分けするのは正直私はなかなか大変だなということも別の閣議後記者会見で申し上げておりました。  扶養家族の有無についても、多い人ほど路頭に迷うんだから深刻だな、それは客観基準になり得ますねと。もちろん扶養家族が多いということは、計算する給与の分母にちゃんとそれが組み込まれているから、最初から扶養家族がない人よりある人の方がもらっていた給与が多いんだからそれで濃淡がついているんだという議論もありますけれども、失業給付の世界の中でも濃淡というのは、緊要度といいますか切迫度合いといいますか深刻度合いといいますか、それによって濃淡はつけてあげた方がまさにセーフティーネットとしての役割は果たすのではないだろうかと。  ただし、先生の御指摘は、労働移動をいかにスムーズにするかということが今後の課題になってくる、それに対して少なくとも中立でないような政策はどうなんだろうかという御指摘だと思います。  私といたしましては、雇用調整助成金で移動しなければならない者を無理やりにとどめておくということがあるとしたら、そこは移動する方にむしろ訓練等で何か考えられないだろうか、そういうことも考えております。ただ、失業給付というのはまさに生活保障でありますから、失業者本人が抱えている深刻さというのは、自分の意思に反して、しかも多くの家族を抱えての方が深刻さというのはやっぱり高いのだと思います。ですから、生活を支えるという意味で深刻さにどうこたえようかということ、それと移動にどう資するかというのは少し色合いを分けて考えたいというふうに思っているところでございます。
  80. 山本保

    ○山本保君 私も実は教育とか福祉の方をやってきましたので、こういう人間の行動の原因、結果というようなものは、例えばいろんな問題が起こったときでも、こういう原因があってと単純に考えるのが臨床心理学でも以前は多かったわけですが、最近は、そうではなくてさまざまな要因が絡んで連関しているという考え方、とらえ方が中心になっております。  ですから、こういう一つの原因なり状況のものを単純に決めていくというやり方は余りとらない方がいい。今、大臣おっしゃったように、もう少し中身に着目をした形でというのは私も賛成でございますので、自発か非自発かというような人の心の中をやるような方法は余り効果がないんじゃないかなという気がしております。  それで、確認でございます。私、次にお聞きしようと思っておりましたけれども、何か自民党の方で、規制緩和の中で今の雇用調整助成金を縮小して、労働移動助成金ですか、仮の名前、こういうようなものを考えるというプランが出ているというふうに聞いておりますけれども、大臣が今おっしゃったのはそういう考え方でございましょうか。
  81. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 実は、党の政策の中身については私はまだ説明を受けておりません。雇用調整助成金の基本的な哲学というのは雇用の維持政策であります。雇用の維持政策の期待するところは、当面維持をするお手伝いをすれば必ず元気になって帰ってくる、そのときには支えなくても自力で抱えていけますねと。だから、その間支えて、あるいはバージョンアップをして元気になるときに備えるというのが本旨だと思います。  ところが、御指摘を各方面から受けていますのは、もうどうしようもないところに無理やりに抱えさせて、それが新産業を生み出す経営資源の供給を妨げているのではないかという御指摘があります。そうであるならば、少しその部分もマイナーチェンジはした方がいいんじゃないだろうか。ただし、私は、行き先がないのに支える政策をやめちゃうというのはちょっと冒険が過ぎると思いますので、そのころ合いの見計らい方というんでしょうか、を大事にしたいと思っております。  維持政策はこれからも私は続けたいと思います。ただ、全く見込みがないものを無理やりに足どめをしているところについて、どういう方法があるんだろうかと。移動政策では、現在中高年の労働移動助成金というのがあります。これは移動政策に資するものだと思いますが、ここのところもまだ少し使い勝手がよくないんじゃないかという指摘がありますから、これを改善をして仕切り直しをして、また別なわかりやすい名前にして出したいということも考えております。
  82. 山本保

    ○山本保君 たしか以前の委員会でも私もそのことについてもお聞きをして、このときにも、何か非自発的なものにしかだめだなんという規定があるものもあったような、改善したいというような意向をお聞きしたと思っております。  それで、次にもう一つ、これは私、前の大臣のときに去年の三月に二度ほど質問しました。いわゆる当時考えておられた教育訓練給付、これについて、専門学校とかいろんな講座だけではなくて、本来あるべきいわゆる学校教育を活用すべきではないかということを申し上げたのですが、大臣また担当の方も消極的でありました。  何かお聞きしますと、最近、大学、大学院についてもこれを対象にしようという施策になったというふうに聞いておりますけれども、この辺はいかがでございますか。
  83. 日比徹

    政府委員(日比徹君) 教育訓練給付と大学等高等教育機関との関係でございますが、高等教育機関の実施しております講座なりコースの中には、職業能力の観点から見ましても有用なものがあると思っております。そこで現在、教育訓練給付の対象に加える方向で関係省と調整協議をしておるところでございます。
  84. 山本保

    ○山本保君 きょうは文部省を呼んでおりませんので、今度、別の委員会で文部省にはまたきつく言おうと思っておるんですが、文部省というところは、どうしても高等教育、大学教育というのはアカデミックなものであって、こういう社会のものとは余り関係をとりたくないという意向が非常に強いんです。ぜひ労働省は積極的にイニシアチブをとってそこを打開していただきたいなと思っております。  私は、きょうの午前中の議論を聞いておりまして、自分なりの一つの提案といいますか、私のいつも言っていることではありますが、もう一度言いますと、今の状況の中で二つの改善点というか、とらえ方があると思っているんです。一つはNPOでありまして、これはこの前本会議でも申し上げました。もう一つが、学歴に象徴されるような今の学校教育と職業との落差といいますか、そこを直していくことだと思っているんです。  それで、そういう観点からちょっと今度は法律の方に触れていきますけれども、さっき労働者派遣事業法の基本方針というようなものはお答えがあったと思いますので、職業安定法の改正というのは今度どういう効果をもたらすのか、どういうねらいを持っておられるのか、この辺について。
  85. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 職業紹介の業務は、第一義的には職業安定所を通じて国が全国一元的に責任を持つと。これは基本的な行為でありますが、それだけではなくて、民間の活力も利用しながら需給のミスマッチを極力なくしていく、官民両々相まって求人求職のニーズをうまく合わせる。そこにまた、もちろん自発的あるいは行政の率先による職業訓練等をかみ合わせて、できるだけミスマッチによる失業を減らしていく、そういう効果があるというふうに考えております。
  86. 山本保

    ○山本保君 数量的に示されていないので、これ以上これについてはお聞きしませんが、考え方としてそういうことがあるのであろうということは私もわかります。  そこで、ちょっと質問通告したのと順序を変えますけれども、こういう職業紹介というのはまさに非営利で公益の、ほかの方のためにやる仕事であって、これこそNPOという概念に一番適するのではないかなと私は以前から思っていました。また実際に労働委員会に行きいろいろ教えていただきますと、今の有料職業紹介については一般の仕事でありまして、特に専門性が要求されるわけでもないようです。それから手数料等についても、その内容についてはまた次回にしますけれども、公の規制というようなものもそれほど強くない。  であるのに、本来この法律は、昔の法律のいわゆる人入れ的なそういうことはだめだという原則がある。しかし、一般の会社などにこれをやらせる。私は、非営利のNPO、これはこの前も担当の方とお話ししましたら、いや無料の紹介がありますよと、こう言われたので、いや無料のことじゃないんだと。こういう誤解が非常に強くて、NPOというとすぐ無料とか、そういうことじゃないんです。まさに役所がやっていたような、公務員がやっていた仕事を、ですから、そのために何か利益をどんどん上げてボーナスを高く取って利益を自分たちで分配しましょうというそういうのではなくて、そのかわりに、今のNPO法でも公開をしなければならないことになっていますから、どれだけの給料を取っているかとか、どういうお金をいただいたかということも全部公開になりますから、社会の目が厳しくチェックする、そういう形で中身の安心を担保する、こういうのがNPOなんです。  こういうNPOで職業紹介をやるということについて、もっとそれを応援するような施策はとれないものかと思いますけれども、いかがでございますか。
  87. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) NPOにつきましても、今お話がありましたように、無料の職業紹介ということは当然許可の対象になりますし、それから営利の有料職業紹介でありましても、何が何でも営利を目的として高い手数料を取らなきゃいけないというようなことではもちろんありません。幾らにするかということは、採算等を考えてそれぞれの事業者が決定されることであろうと思いますし、今般の改正に伴いまして、料金設定といいますかそういうことも原則自由にするというふうなことにしております。  ただ、その結果、NPOがどうも専ら営利活動を行っているというふうに見られるときに性格上どうかという問題はあろうかと思いますが、それはいずれにしましても個々のケースの判断だと思いますので、NPOも職業安定法に規定する許可の基準等を満たせば、かつそれがNPOの目的に反しないということであれば当然許可の対象になるかと思いますし、また、今回の改正で官民それぞれ職業紹介についても協力していろいろ行うという規定を設けているわけでありますから、仮にそういう許可をとられたときには公共の機関によるいろいろな現行の助成もその対象にはなるというふうに考えます。
  88. 山本保

    ○山本保君 局長、そこで私が申し上げたいのは、当然それは株式会社ですらできるんですからNPOができないわけがないんですが、NPOになりますと、株式会社と違ってさっき言いましたように公開原則があるんです。会社のように、あとは自分たちで、株式会社であれば株主さんだけに責任を負うというものではなくて、それがさらに地域の住民と国民のためにいいかどうかということを公開しなくちゃいけないという厳しい規定があるんです。しかも、営利じゃないですから、当然そんな高いものはできません。ですから、こういう仕事は株式会社のようにはなかなか成り立たないんですよ。  だから、私が申し上げているのは、であるならば、この前本会議でも言いましたように、税制上の優遇をつけるかまたは補助金をつけるか、どちらかの形で応援しなければ動かないですよ、こういうことを何か考えることはできませんかと申し上げているんですが、大臣いかがでございますか。
  89. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 税制に関しては大蔵でこれから少し時間をかけて検討するということになっているようですが、補助のことについては、ちょっと私もそうNPOの話は明るくないので、少し勉強させてください。
  90. 山本保

    ○山本保君 突然で申しわけありません。少し検討していただければと思います。  私は、この職業紹介というような仕事、それからもう少し幅を広く言えば派遣業というような仕事も、どうもこれはそのことによって人の仕事、労働のことで何かもうけるというような印象を与えることが強いわけで、非常に嫌われていると思うんです。私は、これはNPO、非営利活動であるというふうに枠組みをした、別にそれ以外だめというんじゃないですよ、しかし、そういうものをきちんとつくった方が安心して使えるんじゃないかなという気がするんです。  今自民党なども政府も何かNPOをやっと雇用対策ということでだんだんとようやく考えられたようですから、そうなれば、NPOに対しては、普通の会社のようにはいかないんですから何らかの公的な応援が要りますよと。それは二つの方法があって、税金を補助金で上げてそれによって広く国民が支援してあげるという方法と、それをやることは実は役所の下請になりがちですから、そうではなくて、本来税金で出すべきところを税制の優遇という形で、税控除という形の税を寄附金でその団体が取れるような形で実質的に地域の人が助ける、こういう仕組みをつくる。これがNPOの税制なんです。  ですから、この辺を一度私は、この仕事というのは、仕事というよりも本当に労働者のために、またよりよい人材を早く欲しいという会社のために動く仕事なんですから、この上がりで何か自分たちがよくなろうなんということを考えているわけじゃないということ、これはまさに非営利の活動なんだと、このことについてぜひ考えていただきたいなと思います。  NPOについてはそれで終わります。  もう一つ、教育について、今度の職業安定法の中で、いわゆるインターンシップですか、こういうものを学生生徒に付与するという条文が入ったようでございますけれども、この辺のねらいと、それから、大学についてはインターンシップは結構よく言われますけれども、高等学校などはこれを行うのはなかなか教育的に難しいと思うんですが、文部省との関係、調整というふうなものについてはどんなふうに進められる予定なのか、お答えいただきます。
  91. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 前段の方のインターンシップの施行ですが、今般の職業安定法の改正の二十六条に安定所の職務として明確にこれを規定することにしておりまして、「公共職業安定所は、」「学校その他の関係者と協力して、職業を体験する機会の付与その他の職業の選択についての学生又は生徒の関心と理解を深めるために必要な措置を講ずるものとする。」と。この条文に書いておりますように、学生生徒の職業の選択についての関心と理解を深めるためにこういった事業を行うということにしておるわけであります。  従来から労働行政の中でこういったことを実質的にはもう取り組んできておりましたが、法律上明確にすることによって安定所の業務としてはっきりこれを位置づけて、学生生徒の職業意識の啓発に全面的にこれから取り組む、こういう姿勢を打ち出したものだというふうに理解をしております。
  92. 山本保

    ○山本保君 法律に書かれて、またほかにも求職開拓などを積極的に行おうということは、考えてみれば当たり前のことなんだと思うんですが、なぜ今までそういうことをしなかったのか、していたんでしょうが法律にはなかったんだということだと思いますけれども、きちんと書いて進めるということについては結構なことだとは思っております。  現在、中学を卒業して高等学校を中退した方だとか、または高校に行かずにいろいろ建設関係なんかで頑張っている若い人をよく見るわけでありまして、私は、さっきちょっと言いましたように、学校教育の責任というのがこういうところでは抜けておりますので、ぜひこういう方たちに対して職業訓練という形での新しい次の教育というものを労働省の方からも後押しするような施策をもっと進めていただきたいと思っておりますので、今後、これはまたお聞きしたいと思います。  それから、労働者派遣事業の方でちょっとだけ気になっていることで、先ほど山崎委員の方からも出ておりましたけれども、いわゆる専ら派遣というような形で実際には非常にタイトな形での派遣がふえるんじゃないかと。先ほどもうお答えが出まして、いや、それはそういうことは許さないんだと、しかも今度は新しく許可基準にも入れたのでそういうのは許可しないんだとおっしゃいました。  先ほど、取り消しができると言われましたけれども、十四条には取り消しの規定が書いてありますが、それにはそのことが書いていないというふうに思いますけれども、局長、先ほどもしそんなことがあれば取り消しするんだとおっしゃったけれども、これはできるのでしょうか。
  93. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) これはまず現行法の派遣法の九条の一項に、派遣の許可をするに当たりまして、労働大臣が、「条件を付し、及びこれを変更することができる。」ということで、許可には条件をつけることができるというのがございまして、今御指摘の十四条の一項の方ですが、次のいずれかに該当するときは労働大臣は許可を取り消すことができると規定してあるその三号に、「九条第一項の規定により付された許可の条件に違反したとき。」という規定がありますので、大臣が許可の条件を付することはでき、それに違反したときには十四条によって許可を取り消せるということでございます。今回、運用に当たって専ら派遣はやってはいけないという条件を付することにしたいと考えているわけであります。
  94. 山本保

    ○山本保君 そのときに、先ほど一社ではなくて数社の場合でもとお話がありました。委員の方からは、系列の大きな産業などが十も二十もやった場合にはとても無理じゃないかという指摘もあったと思うんですが、その辺はいかがでございますか。
  95. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 先ほど御答弁いたしましたが、複数であっても特定の複数ということであればこの専ら派遣に該当すると思いますし、特に資本系列、人的系列があるようなところでは、共同で下請のそういった企業を設立するというふうなこともあると思いますから、そこのところは十分実態を見て判断させていただきたいと思います。
  96. 山本保

    ○山本保君 つまり、注意をしたり勧告をしたりと、そういうことをしながらということですね。わかりました。  それから、あと一つだけお聞きします。これも一般論でお聞きしますけれども、きょう午前中にもお話があったんですが、個別に労働者と事業主が契約をするのと比べれば、間に入れば、そこだけとらえますと当然給料というのは下がるんじゃないか、こちらに入った分だけ賃金は下がるんじゃないか、こういうふうにとらえるのが普通じゃないかと思うんです。しかし、先ほどはそうじゃないんだというようなことも言われた。そこだけ切れば、第三者にお金が行けば労働者の給料は当然下がる、こう思うわけですけれども、そうでないというのはどういうふうに御説明されるんですか。
  97. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今般、派遣の対象業務が拡大をされるわけでありますけれども、この拡大されたいろんな仕事の中で、派遣になじむものというのはおのずからあるのではないかというふうに考えております。一年以内の派遣ということで、やはり短期即戦力ということでしょうから、すぐ派遣先で使い物になる、こういったものについて派遣市場が形成されていくのであろうというふうに思います。  そういった点では、派遣される労働者は一定の能力とか技能といったものを備えた方が即戦力として派遣されると思いますし、また派遣元は派遣労働者の訓練について配慮しなきゃいけないという規定もありますし、また、派遣の許可に当たっては、教育訓練の実施計画も提出させ、それを更新のときにはチェックをまたしているというふうなことですから、派遣労働者については十分な訓練を行い、そういった一定の能力を備えた方が初めて派遣の対象となって派遣先で活躍できると。  こういうふうに考えますと、今回の派遣の拡大によって、必ずしもそういった人の賃金が一般の労働者に比べて非常に低廉なものになるということは一般には想定できないのではないかと現在は見ております。
  98. 山本保

    ○山本保君 つまり、すぱんと切ったときだけ見ますと、当然お金が動くんだからないだろうと。そうではなくて、もう少し長く見れば、企業主の方はそれなりの優秀な労働者を、しかも、先ほど求人誌というのがありましたけれども、そういう不安定なところで集めるよりは、もっと安定して、能力についてもいいところについてとるわけだからもっとより高い給料設定をするだろう、それによって実際上は労働者の方にはそんなにマイナスにならないと、こういう御説明かなと思うわけです。  なかなか難しいし、それは理想かなと思うんですが、そういうことができるためには、派遣会社というのはやはりだれでもできるというのではなくて、例えば職業能力を高めるためのいろんな施設であるとかまたその専門家であるとかというのをきちんと置いて、そしてそれを労働者が受けなければならない、もしくは無料で受けられるとか、そういうさまざまな施策が必要だと思うんですが、その辺についてはこの法律ではどういうふうになっているでしょうか。
  99. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 現行法におきましても、派遣労働者派遣元が教育訓練の機会を確保するようにという規定がありますし、先ほど申しましたように、許可あるいは更新に当たりましてもそこのところをチェックしております。  また、実際問題としましても、これからいろいろ派遣事業が短期の労働市場において発展していくという際には、恐らく派遣業者間の競争というふうになるでしょうから、やはり質の高い派遣労働者を抱えているところが結果的には伸びていく、そういった点においてもおのずと一定の業者が育成されていく、派遣労働者が育成されていくのではないかというふうに見ております。  ただ、この教育訓練のあり方等につきましては、さらに運用においていろいろと規定をすることを考えたいと思います。
  100. 山本保

    ○山本保君 もう一つ、突然ですが、例えば専門学校などを持っている学校法人がこういう派遣業をやるということはできるんでしょうか。いかがですか、ちょっと急で申しわけありませんけれども。
  101. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 法律に定めます許可の基準に該当する、あるいは欠格事由に該当しないということであれば、当然派遣事業を行うことができます。
  102. 山本保

    ○山本保君 次回のときに私もそういう団体の会社の方に来ていただいてお聞きしようと思っておりますが、派遣業ということと紹介業ということとそれから能力開発ということ、この三つがばらばらではないような体制というんですか、そう考えますと、まだちょっと法律自体がうまく整合性がとれていないんじゃないかなという気もします。そういう体制をつくっていくというのが一つ大事かなという気がいたします。  時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  103. 市田忠義

    ○市田忠義君 日本共産党の市田です。  今度の職安法と派遣法改正、私たちの立場からいえば改悪と呼んだ方が正確ですが、この二つの法案の審議に当たって、まず派遣労働者の側から見て今度の法案がどういう問題点を含んでいるのか、そういう角度から幾つかの問題についてお聞きしたいと思います。  第一は、派遣労働者の置かれている実態と派遣労働仕組み自身が持っている問題点について若干のことをお聞きしたい、そう思います。  まず、派遣労働者賃金、これはどのように決まりますか。
  104. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣労働者賃金は、使用者であります派遣元事業主と派遣労働者との間で決定をされることになります。
  105. 市田忠義

    ○市田忠義君 今おっしゃるとおり、派遣労働者賃金というのは、派遣元と派遣労働者との協議によって決まるということですが、派遣労働者賃金というのは、派遣元が派遣先から受け取る派遣料金、これを上回ることはないと思うんです。要するに、派遣元と派遣先との間の契約に基づく派遣料金以下になる、これはある意味では当然だと思うんですが、そういうふうに理解していいですね。
  106. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣事業も営利事業として行われるものでありますから、一般的に言えば賃金派遣料金を上回るということはないと思います。
  107. 市田忠義

    ○市田忠義君 じゃ、もう少し具体的にお聞きしたいと思うんですが、派遣料金と派遣賃金との関係についてどういうふうになっているか御説明いただけますか。
  108. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) その関係と申しますのを派遣料金と実際に払われた賃金とというふうに見てみますと、これは昨年東京都が実施した調査があるんですけれども、これで拾ってみますと、業務ごとの平均的な派遣料金と賃金の額でございますけれども、一時間当たりの平均料金及び平均賃金ですが、例えば事務用機器操作では料金が一千九百七十七円で賃金が一千四百九十四円、ファイリングでは料金が一千九百九十九円で賃金は一千四百九十二円、こういうふうなぐあいになっているようであります。
  109. 市田忠義

    ○市田忠義君 今お答えいただいたように、結局派遣賃金というのは派遣料金がどうなるかによって規定されざるを得ないというふうに思うんです。今御紹介あった以外で少し、これは東京都の労働経済局の調査ですが、今、渡邊さん、事務用機器操作の状況とファイリングの紹介がありましたが、例えばソフトウエアの開発、これでいきますと、一時間当たりの派遣契約料金が三千百十五円、実際の派遣労働者の時間給は二千百九十五円、それから秘書で見ますと、派遣契約料金が二千四百二十一円、派遣労働者の時間給が千六百五十八円、こういうぐあいに派遣労働者賃金というのは派遣料金の枠内に大体おさめられる、すなわち派遣料金によって派遣賃金というのは規定をされるということはもう明らかだというふうに思うんです。  それでお聞きしたいんですが、派遣料金というのはどういう形で決まっていきますか。
  110. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) これは派遣先と派遣元との交渉になるわけでありますが、その際にはやはりどの程度の経費が派遣元の方においてかかるのかというふうなことは当然考慮の要素になっていると思います。
  111. 市田忠義

    ○市田忠義君 派遣料金の決定というのは派遣元と派遣先との交渉による、すなわち料金決定が自由競争にゆだねられる、それに規定されて賃金も決まる、これまた派遣労働者賃金がそういう自由競争にゆだねられることに結局なる。いわばそういう派遣労働仕組み自身が構造的に派遣賃金の切り下げの危機に常に直面させられざるを得ない、仕組み自身がそうなっているというふうに思うんです。  そういう派遣労働者賃金競争にさらされる、果てしない賃金引き下げ、そういう交渉に労働者を引きずり込むことになる。本来、使用者に対して弱い立場にある労働者を保護するというのが近代立法の考え方であります。契約自由の原則を修正していく。そういう立場からいってもこれは私は許されないというふうに思うんですけれども、しかし労働者派遣という形式をとれば公然とそれが可能になる。私は、労働者派遣というそういう制度自身が本質的にそうしたものを含んでいるんじゃないかと。これについていかがですか。
  112. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今御議論ありますが、派遣労働者賃金派遣料金の枠の中で一般的には決められておるということはそのとおりだと思いますが、一方、派遣元事業主から見ますと、派遣労働者に対していろいろな福利厚生ですとか、あるいは先ほどからもお話のありました教育訓練、いろいろなことをしているわけでありますし、また派遣先の確保というふうなことは派遣元事業主がその努力において行っているわけでありますから、もろもろの経費もかかると同時に、派遣労働者から見ましても、その派遣元に登録をしておけば好きなときに自分の能力を発揮して働ける、そういったメリットがあるからこそ派遣労働者の方も派遣という就業形態を選んでいるんではないかというふうに思います。  また、仮にそういう形態は嫌だということであれば、これはいろんな働き方というものを、選択の余地はもちろんあるわけでありまして、我が国におきましては、パート労働市場と比べるのは適当かどうかですが、今回は特に一年以内の短期労働力ということで考えますと、我が国は既に一千万人に上るパート労働市場というものがあるわけでありまして、労働者の方から見ましても短期労働派遣しか働く道がないんだということではもちろんないわけでありますから、いろんな働き方はやはり選択肢として労働者側にもある、そういった中で派遣メリットを感じてこれに就労しているんではないかというふうに見れるのではないかと思います。
  113. 市田忠義

    ○市田忠義君 派遣労働者の実態が極めてすばらしいかのようなお話で、そこを自由に選択できる、選んだんだから問題はないと言わんばかりの答弁。しかも、派遣元が福利厚生のために大変頑張ると。しかし、雇用保険にも入っていない、社会保険にも入っていないというのがいっぱい現実にあることをあなた自身が御存じでしょう。にもかかわらず、いや、まだ聞いていないです。これから。  具体的に、じゃ次、特許庁に聞きます。  特許庁は、去年の十月三十日に、支出負担行為担当官、総務部会計課長の名前で一般競争入札の入札公告を出されたはずですが、どういう公告を出されましたですか。
  114. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 御指摘のとおり、私どもいろいろなたぐいの業務をこなしておりますが、そのうち特許関連資料発送業務という業務がございまして、具体的には発送先別の仕分けでありますとか郵袋あるいははがきの件数の確認といったようなことでございますが、こういうものにつきまして派遣労働者の活用ということを図らせていただいております。  その選定に当たりましては、公平性、透明性という観点から、一般競争入札という形でやらせていただいておりまして、最近ではインターネットによりまして情報を提供するということについて私ども一般化させておりますので、そういう手段によってこの入札をさせていただいたところでございます。
  115. 市田忠義

    ○市田忠義君 入札件名とか数量、どういうものだったか、もう少し具体的に言っていただけますか。件名と数量です。
  116. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 書類の発送先別仕分け等の業務に当たる人八人を応募させていただきました。
  117. 市田忠義

    ○市田忠義君 要するに、労働者派遣八名、うち主任派遣員二名、一般派遣員六名、案件の仕様等というところで、今御説明あったように、入札説明書及び仕様書によると。そういうインターネットに公告が出されたわけですが、具体的には入札方法、どういう内容ですか。
  118. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 入札方法といいますのは、入札の公告を出したときには、こういう業務のことをやる人は入札してくださいという形で私どもの庁内の通常の入札手続に掲示するとともに、インターネットに掲示したということでございます。
  119. 市田忠義

    ○市田忠義君 要するに、入札方法というのは、そういう労働者派遣八名、一人一時間当たり派遣料金幾らかということで公告を出されたわけですね。それで応札があって、その中で落札になったのは幾らかとか、そういう細かいことまでちょっとおっしゃっていただけますか。
  120. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 幾らというのは、これは競争入札でございますので、自由に御提示していただいて、その中で価格の安いところを選ばせていただいたということでございます。
  121. 市田忠義

    ○市田忠義君 一番高かったのは幾らでどこの会社で、落札したのはどこの会社で幾らか、どれぐらい差があったかということについても説明してください。
  122. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) 最高額のオファーがありましたのは時間当たり二千七百五十円、最低額が千三百九十円で、千三百九十円をオファーされましたセンチュリースタッフ、これが落札されたということでございます。
  123. 市田忠義

    ○市田忠義君 結局、特許庁がそういう公告をインターネットに出して派遣社員を募集する、一時間の賃金は幾らか、労働者派遣一人当たり、時間当たりの単価は幾らかということで入札した。  応札したのは、今説明なかったけれども、全部で五社です。株式会社キャリアスタッフの銀座支社、株式会社エアークレーレン、それからセンチュリースタッフ株式会社、アデコジャパン、それから発明協会。今説明があったように、最高額は二千七百五十円で、一番安かったのが千三百九十円、時間当たり。この千三百九十円が落札したと。これは間違いないですね。
  124. 伊佐山建志

    政府委員伊佐山建志君) そのとおりでございます。
  125. 市田忠義

    ○市田忠義君 大臣、今のお話をお聞きになったと思うんですけれども、私、これがすべてではないにしても、こういう形で派遣料金が決められていくと。いわば派遣労働者は物扱いですよね。インターネットで公告を出して、一番安いのに落札する。本当にひどい。いや、自分派遣労働を選んだんだからごちゃごちゃ言うな、むしろメリットもあるんだと、そんな話は私は通用しないと思うんです。こういう形で派遣料金が決められて、先ほど確認したように、この料金の範囲内で派遣労働者賃金が決められていく。事実上の賃金引き下げ競争と同じことを、これを同じ政府内でやられている。特許庁がそういう公告を出して、そういう労働者が入札する。  私は、労働者派遣制度を残したままでこういう賃金の引き下げ競争になるような事態を防止することが果たして可能なのか、これ大臣に聞きたいと思うんです。  それから、私、特許庁を今挙げたけれども、政府全体でも恐らくきっとこういうことをやられていると思うんです。政府同士でこういうことがやられているとなれば、私、重大だと思うんです。この問題について、こういう労働者派遣制度という仕組みそのものがこうした賃金の引き下げ競争、こういう事態を招かざるを得ない。防止できるというならどうやって防止するか、大臣の御所見を伺いたい。
  126. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 派遣元と派遣先の契約料金というのは、当然営利会社でありますから派遣労働者賃金を上回っていないと業としては成り立たないわけでありますから、払う賃金が受けた契約金額よりも低いのは、当たり前といえばおっしゃるとおり当たり前であります。  営利事業でありますから競争原理が働く、その競争原理が実は働く者の派遣労働者賃金にしわ寄せが来て、本来、常用雇用正規雇用であるならば、その能力であるならばもっともらえるはずなのにもらえないという事態になるではないかと、それはそういう事態も起こり得ると思います。  ただ同時に、派遣労働者にとっても、どこの派遣会社が一番自分たちにとっていいという競争原理も当然働くわけでありますから、先生がお考えのような理想的な形にはいかないところは私どもも認めざるを得ませんけれども、合法的とはいえ劣悪な環境下で所属をする派遣会社よりも、少しでも条件をよくして働いてもらう会社が競争原理の中で評価を受けるという点も当然あるんではないかと思っております。
  127. 市田忠義

    ○市田忠義君 私は、派遣元と派遣先のいわば自由競争にゆだねられた派遣契約によって派遣労働者賃金が事実上規定されるというその仕組みそのものが、労使自治にゆだねていては今の資本主義社会の中で労働者が弱い立場に立たされると。  そういう契約自由の原則は認めるけれども、その修正を図らなかったら労働者を保護できないというのが憲法の根本精神であるし、労働基準法を初めとする労働者保護法の根本原理。これは私、初めてこの委員会で質問したときに、冒頭に大臣にもそのことについて、かつて橋本総理大臣国会で答弁したけれども、その考え方にあなたも変わりはないかということを聞いたときに、そうだということをおっしゃった。  私は、結局、派遣元と派遣先の派遣契約によって事実上派遣労働者賃金が規定されていくというのは、労働法とは一切関係のないその枠外に置かれちゃう、派遣労働というそのものが。そういう仕組みを持っているということを指摘しておきたいと思うんです。  こうやって極めて低い賃金を強いられる、それだけじゃないと思うんです。もう衆議院の議論の中でもいろいろ出されましたし、いろんな団体の調査によっても、とりわけ登録型の派遣労働者が置かれている実態、賃金だけじゃなくて、ボーナス、通勤手当、退職金、定期昇給、これはもうほとんどない、有給休暇もほとんどとれない。私、社会保障の点でも極めて不利な立場に置かれている問題について幾つかお聞きしたいと思うんです。  五月十三日の労働安全衛生法の改正の質問のときにもお尋ねした問題なんですが、登録型の派遣労働者についても安衛法は適用されるのかと。特に、最も基本的な、初歩的というか、適用である健康診断について私お聞きした。そのときの答弁は、登録型であろうが何であろうが当然安衛法の適用は受ける、そういうことをおっしゃった。  しかし、よく聞いてみると、安衛法というのは常時使用する労働者を前提としている、いわば登録型の派遣労働者なんというのはもう想定にない、そういう働き方は全く考慮の対象にもされていないと。一般的には適用の除外にはならないと言うけれども、それは常時使用されている労働者に限って適用されているわけであって、派遣労働者の中でも常時かどうかということを個別によく研究して、検討して、それはケース・バイ・ケースだということが答弁だったと思うんです。  私、そのときの説明では、政府は短時間労働者についての一般的な規定をいろいろ説明された、しかし結論は、適用するかどうかは個々具体的に判断するしかないと、これが答弁の結論だったと思うんです。  そこで、私、この安衛法以外の法律、労働者保護にかかわるような一連の法律その他、一応全部当たってみました。すると、雇用保険法も、育児・介護休業法も、中小企業退職金共済法、健康保険法、厚生年金保険法、いわば揺りかごから墓場までというか、労働者の生涯において、出産から介護、みずからの健康、退職、老後の暮らし、いわば全ステージにかかわる法律がすべて安衛法と同じ常時使用労働者を前提としてつくられている。これは間違いありませんね。
  128. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今おっしゃったような法律が、それぞれ基本的には常用労働者を対象とし、そういったものを一般的には想定して規定されているというふうに考えております。
  129. 市田忠義

    ○市田忠義君 結局、短期の登録型派遣労働者というのは、適用の除外を受けないと言うけれども、実際には一番不安定な状況に置かれて、労働条件を切り下げられて大変な状況に置かれている。ところが、そういう法律の保護を受けない、受けられないような状態に置かれている。  私は、派遣労働者というのは、権利の主張がある意味では特別に困難な、雇用契約を結ぶ相手と実際の使用者が異なるわけですから、それにふさわしい保護をむしろ強めるべきなのに、一般の労働者よりも保護を弱めることしか規定されていない。  私聞きたいんですけれども、五月十三日に質問したときに、個々のケースに即して判断するということをおっしゃいましたが、先ほど挙げたような制度の加入の義務はどこが負うんですか。雇用保険とかその他の一連のものは、派遣労働者についてはその制度加入の義務はどこが負うんですか。
  130. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) すべて派遣元事業主であります。
  131. 市田忠義

    ○市田忠義君 じゃ、労働省は何をやるんですか。派遣元が責任を負うと。  前の答弁のときに、個々のケースに即して具体的に判断すると。その判断するのはだれかと。常用労働者とみなされるか、常時使用の労働者とみなすかどうか、それは個々のケースに応じて判断して、こういう答弁でしたよ。特別、派遣労働者だけ差別しているわけじゃない、派遣労働者であるか一般の労働者にかかわりなく、常時使用されている労働者かどうかというのが基準になるんだと。常時使用されているかどうかは、それはケース・バイ・ケースと。  ある大手派遣会社の登録型派遣労働者働き方で典型的なのはというか平均をとれば、一年間大体八カ月働いている。八カ月という働き方は、八カ月働いて残りの四カ月待機しているということじゃなくて、三カ月働いて二カ月待機していて、また三カ月働いて二カ月待機して云々というような、恐らくこういう働き方が通常だろうというふうに言ったときに、これはどうなるか。それは、それだけを紹介されても具体的に当たってみないとそれが適用対象となるかどうかわからないということでした。したがって、そのケースに即して具体的に判断するという場合に、当然判断するのは労働省ですね。
  132. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今、安全衛生法については所管局長がおりませんが、先ほどおっしゃった雇用保険あるいは育児・介護休業法等の適用については、これは一定の要件を満たす場合には強制適用でありますから、そういった要件を満たして適用しているかどうか、その辺の監督指導を行うのは労働省でございます。
  133. 市田忠義

    ○市田忠義君 具体的にそういう監督指導をやっていますか。どんな実態になっていますか。
  134. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) ちょっとすぐ手元にはありませんが、実際にこれらの保険にどの程度の方が入っているかというような調査はしておりますし、今般また改正規定におきまして、こういった社会労働保険の適用について処罰を受けたような場合には、これは欠格事由にするというふうな規定も置いているわけでありまして、こういったことに基づいてさらに指導するつもりでございます。
  135. 市田忠義

    ○市田忠義君 それは、労働者から申告があるという場合に労働省がいわば出動するのか、申告がなかったら知らぬよ、見て見ぬふりということになっているのか、それはどうなんですか。
  136. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣労働の監督指導は、全国の公共職業安定所において行っております。今般、改正規定の中に新たに派遣労働者の相談等に応じる責務を安定所に負わせておりますし、従来から安定所におきまして、定期の事業場に対する監督、あるいは労働者からの申し出による監督指導、こういったものを行っているところでありまして、そういった中で社会労働保険等の適用についてもこれについて指導しているという形を従来からとってきております。
  137. 市田忠義

    ○市田忠義君 実は、きのう私のところにこういう電話がかかってきました。愛知県に住んでおられる青年からの電話でしたが、自動車関連の製造メーカーに派遣されて二年という人なんです。これ自体違法ですけれども、週五日、一日七・五時間、ですから普通の労働者と全く同じように働いている。社会保険、雇用保険の適用はどうなっているかと聞きましたら、雇用保険は希望者は入れるというので入ったが、社会保険は時給が下がると言われて入っていないということだったと。いわば、常用と同じような状態で働いていて、こういうことなんですね。当然これはこういう保険に入ることが義務づけられているわけですけれども、そういうことを調べて是正させる責任労働省にあると思いますが、いかがですか。
  138. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) すべてのケースについて行政の側からこれを取り締まるということはなかなか難しいかと思いますが、今おっしゃいましたように、そういった事実が明らかになったというふうなときには当然指導させますし、先ほど申しました定期の監督等々を行っているわけでありますから、そういったときにそういうことが明らかになるというときには当然是正指導するわけでございます。
  139. 市田忠義

    ○市田忠義君 当然入る資格がある、常用労働者と同じだ、にもかかわらず入っていない。これはやっぱり調べてきちんと是正させるというのは労働省責任があると思うんです。  登録型の場合、これは公式の統計でも七十万人、なかなか事業主でも状況をつかむのは難しいと思うんですが、個別に実態をつかんで是正させるというのが前の安衛法のときの答弁でした。安衛法は所轄でないとおっしゃいましたが、労働省にかかわる問題については当然個別に是正させる責任労働省にある、そういうふうに確認をしていいですね。  なかなかたくさんあって大変だと。大変だということは、そういうひどい状況があっても申告がない限りはほっておかざるを得ないんだということなのか。一応いろいろありましたら手は打つとはおっしゃるけれども、七十万を超えるような登録型の派遣労働者がどんな状態に置かれているかということについては、相手から申し出があるまでは労働省はじっと手をこまねいて見ているのか、その辺はどうされるおつもりなのか。  こういう登録型派遣労働というのを認めた以上は、あなた方そういう責任があると思うんです。それができないんだったらこんな制度はやめるべきだと思うんです。その点いかがですか。
  140. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) まず、発見の端緒といいますか、労働者側からの申し出につきましては、法律上も安定所が相談、苦情を受けるという体制をしくことにいたしましたし、法律違反ということになれば労働大臣への申告制度ということも今度新設をしておるわけであります。  そういった労働側からの申し出のみならず、先ほどから申しておりますように、定期に安定所職員による監督というものを行っているわけでありまして、特にこれは制度の立ち上がりのときには大変必要なことであると思いますから、そういった定期の監督というものをさらに強化していく、そういったことは当然検討しなければならないというふうに考えております。
  141. 市田忠義

    ○市田忠義君 私は、一方では登録型を認めて、権利についてはいいかげんというのでは許されないと思うんです。やっぱり当然適用すべき人を発見する義務が労働省にある、そういう立場で、ただ待つんじゃなくて、積極的な実態の把握と是正のために。それでなかったら労働省の役割がないじゃないですか。  多くの法律家団体やその他からもいろんな提言が出されています。例えば、一つ企業での長期の継続雇用を前提にしている労働法、社会保障法の各種制度、先ほど私が挙げたようなさまざまな制度、社会保険だとか雇用保険だとか年次有給休暇とか産休とか育休制度、退職金制度、これらについては登録型についても適用するようにする、あるいは適用上不利にならないような制度改正をする必要があるのではないかということがいろんな法律家の団体、弁護士さんの団体からも出されています。  その一つの提言として、例えば労働弁護団が、「雇用保険法の短期雇用特例被保険者制度に準じた制度を設け、雇用期間の予定が四カ月以上一年未満である者の加入を義務付けて雇用保険制度の対象とし、雇用期間が六カ月経過した以降は保険給付を受けられることとし、雇用期間が一年を経過したときには自動的に一般被保険者に切り替える扱いをする」、こういう提案をしておられます。  これは事前に大臣にもこういう提言についてどういうふうにとらえられるかということについてきょう聞くということを言っておりましたが、大臣のこういう提言についての感想、意見で結構ですからぜひお聞かせいただきたい。
  142. 甘利明

    国務大臣甘利明君) たしかこの前の機会にも若干お答えしたかと思いますが、現行の枠組みでやれることをまずきちっとやっていくということが第一にやるべきことでありまして、それ以外の今の仕組みの中におさまらないところについてどうするかという議論を先般させていただいたわけであります。  衆議院におきましても、派遣労働者等に係る社会労働保険のあり方について今後検討することという附帯決議をいただいているわけであります。まだどういう方向性が出せるのか正直言っていろんな方面から検討しなければならないと思っておりますけれども、いろいろ関係各方面の御意見、アドバイスをいただいて、参考にしながら検討をしていくというのが今の状況でございます。
  143. 市田忠義

    ○市田忠義君 全面的には否定されなかったので、今の制度の枠組みで可能なことをきちんとやると。  しかし、派遣労働、とりわけ登録型派遣というのは今の枠組みではおさまらない、いわば法律をつくったときには念頭になかった、想定していない、そういう雇用労働の形態であるわけですから、そういうのを認める以上、そういう人々がそういうもともとの念頭になかったときにつくった法律の適用の外に置かれるのはある意味では当たり前なので、それを保護するための特別の措置をぜひ私は前向きに検討いただきたい。それもしないで原則自由化なんというやり方を通そうというのは論外だということを申し上げて、もう時間がないので、あと別の問題を少し聞きたいと思います。  次にお聞きしたいのは、派遣の期間制限の問題についてです。  政府案の派遣労働自由化によって、常用雇用との代替が一層進むのではないか、そういう不安の声が各党のいろんな質問からも出されていましたし、私たちもそういう意見をぶつけました。そういう不安に対して、政府や衆議院の修正では派遣期間を一年としたことによって対応すると。確かに修正で一定の措置はとられたけれども、派遣労働者から見た場合にこれがどうなるか。派遣労働者の側から見てこの措置で果たして十分か。  これも私どものところに現に派遣で働いている人から、今一年を超えて働いているけれども、この法律によって職を失うのではないかと不安の声が幾つも寄せられているんです。常用代替を防ぐんだということで一年ということを決められた。しかし、現にいわば法に違反してですけれども一年を超えて働いている。この法律によって職を失うのではないか、こういう不安に政府はどうこたえますか。これは私まともな不安だと思うのですが、いかがですか。
  144. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 現在は専門的業務等二十六業務について派遣が認められているわけでありますが、この二十六業務については一年という限定はございませんので、更新をいつまでに認めるかといった運用上の話はもちろんございますけれども、一年を超えて働いていて、その後今回の改正によって、そのことによって直ちに現在認められている派遣労働者雇用に直接的な影響があるとは見てないわけであります。
  145. 市田忠義

    ○市田忠義君 私は政府の新しい案について聞いているんです。業務拡大するわけですから。それで、私は派遣の禁止だけでは足りないと思うんです。政府案のように派遣先の雇用責任を常用労働者を新たに雇うときだけに限って、しかも努力義務にとどまっているわけですから、これでは派遣労働者雇用の安定にほとんど考慮が払われないのと同じだというふうに思うんです。  それで、一年以上の派遣については期間の定めのない雇用とみなす、そういう措置をとりなさい、私どもの対案でもそのことを明記したものを提起していますが、そういう措置をとらない限り派遣労働者雇用の安定は望めない。それとも、派遣労働者はそうした働き方をみずから望んだんだから、雇用の安定なんというのは初めからあきらめなさいということなのか、これについてはいかがですか。
  146. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 働く側にはいろいろな理由があって派遣という働き方を選択するのでありますが、その中で本当は正規常用雇用で働きたいんだという人たちにどう道を開くかということと、片や、雇う側にしてみると特定の労働者について雇えという義務づけが採用の自由であるとか営業の自由とバッティングをする。  そこで、どこまで踏み込めるかということが問題だと思うのでありますが、原案では確かに単なる努力義務で終わっておりますけれども、その後各方面からいろいろ御意見をいただきまして、私どもとしてはぎりぎりの踏み込んだ限界と思っておりますが、指導、助言、そしてこれに従わない場合には勧告、さらに企業名の公表、これは相当な企業にとっては一流企業であればあるほどイメージダウンになるわけでありますから、従来の単なる努力義務よりはかなり効力を発揮するのではないかと思っております。
  147. 市田忠義

    ○市田忠義君 大臣は参議院の本会議でも、これは民主党の今泉議員の質問への答弁だったと思うのですが、今と同じようにこうおっしゃっているのです。事業主の営業、採用の自由の観点から疑問がある、その期間を超えて採用した場合、雇い入れた場合、現段階では社会的コンセンサスが得られていない、そのような制度をとることについては適当でないと考えています。これ会議録に載っている答弁です。  そこで私は、共産党の提案者である吉川議員にお聞きしたいんですが、共産党案は一年以上の派遣については期間の定めのない雇用とみなすということになっていますが、政府の言うような問題は生じないのか、その問題についてはどうですか。
  148. 吉川春子

    委員以外の議員(吉川春子君) 私どもの案はそういう問題は生じません。  まず、私たちの案では、継続して一年を超えた場合には派遣先との間で期間の定めのない契約が締結されたものとみなすことにしております。これは、継続して一年を超えて派遣することを禁じていること、したがって一年を超す派遣は既に違法状態にあること、違法に対して制裁措置として民事的責任を負わせることが営業の自由を侵すことにはならないと考えられること、さらに派遣先は違法状態を回避することはできたのであるということ、以上の点から法律上何ら問題はないと考えています。  そして、現段階社会的コンセンサスが得られていないという政府のお考えですけれども、これは社会的というか企業とのコンセンサスは得られにくいであろうと思います。また、営業の自由の観点から疑問があるというふうにおっしゃいましたけれども、これが憲法二十九条等を念頭に置いているとすれば、逆に二十五条の生存権の規定があり、二十九条も公共の福祉による制限が当然ということになっているわけですから、問題ないと思うんです。むしろ積極的なコンセンサスをつくるために政治と行政がイニシアチブを発揮する問題であって、そのことを理由にするのは政治と行政の怠慢以外の何物でもない、このように考えております。
  149. 市田忠義

    ○市田忠義君 私は問題ははっきりしていると思うんです。やっぱりやる気があるかどうかにかかっていると思うんですね。今の吉川議員の答弁でも明らかなように、法律上の問題はクリアできると。コンセンサス、結局待っていれば永久にできるはずないわけですから、そこに政治の責任が私はあると思うんですね。  この問題と関連して最後に、私は本会議でも問題にした、丸ごと自分の系列派遣会社に転籍させて同じ労働者派遣労働者として派遣先で使う、こういう問題について聞きたいんですが、こういう場合にも派遣期間の制限は当然適用されることになりますね、今度の法律では。これはいかがですか。
  150. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) お尋ねのようなケースがいわゆる専ら派遣であれば、それはそもそも禁止されるわけでありますが、仮にそういったことじゃなくて派遣の活動というものを広くやるんだということであれば、当然法律の制限が適用になるわけであります。
  151. 市田忠義

    ○市田忠義君 当然法律上そういう場合でも派遣期間の制限というのは適用されると。ならなければおかしいと思うんですね。しかし、そうなりますと、事は逆にまた重大だと思うんです。  事実上、子会社の派遣会社に転籍させられたもとの会社で働かされている人というのは、一年たったら解雇されることになる。すなわち、派遣会社への転籍というのは一年後の解雇を言い渡すということと同じことになりませんか。どうですか。
  152. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 転籍ということが従来の企業から別の企業へ移る、もとの企業とは雇用関係を切るということでありますと、これは実質的には解雇でありますから、労働者が同意していない以上は解雇の制限に関する一般的な法理に従うわけであります。
  153. 市田忠義

    ○市田忠義君 私が聞いているのはそういうことじゃないんですよ。  ある企業自分の系列派遣会社に丸ごと転籍をさせて、それを派遣労働者として雇う、その場合でも派遣期間の制限というのは当然適用される、これは一般的に適用されるとおっしゃった。それは、一年たてばこれはもう首切りますよということと同じことじゃないか、こういうことが生じるじゃないか。これはいかがですか。
  154. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 一般には転籍と申しますのは従前の企業との雇用関係を切るということですから、これは実質解雇であります。したがって、そういうところに労働者が移るかどうかについては、労働者本人の同意がなければ移れないということにまずなります。  仮に、労働者が同意をして派遣労働者としてこれから生活するんだということであれば、それが常用労働であるか登録型になるのか、常用労働であればいわゆる今おっしゃった子会社との間で雇用関係が常用的に生じているわけでありますから、一年後に解雇されるということはないのではないかというふうに思いますが、それは専ら個々のケースによると思いますし、先ほど申しましたように、それが専ら派遣ということであれば当然そのこと自体が禁止をされるということになると思います。
  155. 市田忠義

    ○市田忠義君 時間が来ましたので、また引き続きこれは追及しますが、やはりこういう矛盾の解決というのは、我が党の提案にもあるように、もとの会社に労働契約がある、そういうみなし措置を講じる以外にこの問題の解決方法はないということを申し上げて、これは引き続き追及するということで、時間が来ましたので終わります。
  156. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 現行の労働者派遣法のもとで、労働者派遣契約の内容に違反する派遣労働の実態というものについてどのように把握しておられるのでしょうか。また、これまで違反があった場合の取り扱いや、さらにこれに対する指導監督というものをどのように行ってこられたでしょうか。これまでの派遣法の実施状況について、まずお尋ねしたいと思います。
  157. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣先と派遣元とで派遣契約を締結しますときには、その内容として、派遣労働者が就労する場所ですとか勤務の時間あるいは指揮命令権者等についても定めることになっております。  派遣契約の内容に違反するというふうなことでどのようなものが問題になっているか。これは平成九年に労働省の行いました調査によりますと、例えば業務を定めるわけでありますが、その業務内容に関するものとしては、契約と実際の業務が違っていたというふうなケース、あるいは契約業務のほかに例えばコピーであるとかお茶くみであるとか電話番等の仕事をさせられたというふうな苦情、あるいは労働時間について実際の契約と違っていた、こういったものが比較的多く見られております。  行政としましては、こういった苦情につきましては今般特に安定所でこれを受けるという明文の規定を置きますが、この規定がない従来におきましても、定期監督とかあるいは労働者のそういった苦情を受け付けることによる指導の実施というふうなことで対応してきております。  件数ですけれども、例えば定期指導といたしましては、平成九年度には、派遣元で一千八百件、派遣先に三百三十件ということで、二千百件くらいの定期の指導を行っております。それから、申し出に基づいて行った指導につきましても、平成九年度は合計で八百件くらい指導を行っております。
  158. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 労働者派遣契約の内容に違反する派遣労働というものの発生防止及び是正のための方策というものについてはどのようにとられてきたのか、労働大臣にお尋ねします。
  159. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 派遣契約違反につきましては、かねてより法第三十九条及び指針に基づきまして派遣先に派遣契約違反が生じないよう必要な指導に努めているところでありますが、改正法成立後にはより多様な分野での労働者派遣が行われるわけでありますから、三十九条の内容を指針において一層具体化する、明確化すること等によりまして派遣先による契約違反の防止にさらに努めていきたいと考えております。
  160. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今回の改正によりましてまず民営の職業紹介事業というものが行われるわけですが、民営職業紹介事業というふうになりましても、やはり本来その仕事の内容から公共性というものはいずれどこかで担保されなければ労働者の権利の侵害ということが起こるというふうに思われます。今回の民営職業紹介の自由化によって、例えば誇大広告だとかあるいはおとり広告、そういった不適切な求人情報が提供されるおそれがあるということが言われています。  職安法四十二条の規定では、文書の表示等で的確な表現を行うというような努力義務が課されておりますけれども、これについてこれだけでは不十分ではないか。最近は、電話だとかインターネットによる求人情報の利用が普及してきている実態もあります。したがって、求人情報の適切さや正確さが非常に重要であると思います。求人者が求人情報誌等に不適切な内容の広告を掲載する場合、それに対して実効性ある規制というものが必要だと考えますが、どのようにお考えでしょうか、お尋ねをいたします。
  161. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) まず、民間の職業紹介事業者についてですが、これにつきましては従来から求職者に労働条件を明示する義務が課せられております。今般の改正法案におきましては、基本的な労働条件につきましては命令で定める方法によってこれを行わなければならないこととしておりまして、この命令においては文書によってこれを明示するということを定める予定でございます。さらに、これにつきましては配慮すべき事項は指針において具体的に定めていきたいと考えております。  また、募集を行う者につきましても、それがいわゆる誇大広告等々にわたらないように、雑誌等に広告を出して募集を行う者等につきましては労働条件を明示する、こういった義務が課せられております。今後、こういった的確な表示のための具体的な留意点については、これもまた指針において具体的に定めることを考えております。
  162. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 次は、派遣の方についてお尋ねしたいんです。  派遣労働者の人権保護として最も大切なのは、適正な労働条件をいかに確保するかということであろうかと思います。派遣労働者の場合は、派遣元の責任雇用関係雇用責任ということにあり、派遣先の場合は指揮命令における使用責任ということで、それぞれの次元について責任があると思います。その責任をめぐって、やはり派遣先の労働者との間で平等処遇といいますか均等処遇の原則というものが貫かれないと、同じ仕事をする労働者間でさまざまな所得格差やあるいは身分差別というものが行われるのではないか。  したがって、まずお尋ねをいたしたいのですが、賃金については派遣労働者の就業の実態とか派遣先において派遣労働者と同種の業務に従事する通常の労働者との均衡を考慮して定められるべきだと考えます。  先ほど御紹介がありました東京都労働経済局の平成十一年三月発表の調査を見ましても、派遣先で派遣労働者と同種の仕事をする者が正社員でいるという答えが八二・〇%というものでありますし、ほとんど正社員と並んで働いている派遣スタッフが多いということを考えますときに、この原則というものは貫かれるべきであり、何らかの法律に明記されるべきだと考えますが、この点はいかがでしょうか。
  163. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣労働者賃金の問題でございますけれども、派遣労働者賃金派遣元事業主とその派遣労働者との交渉、折衝等によって決定されるわけでありまして、あくまで当該派遣企業における賃金水準、そういったものが問題になろうかと思います。  派遣先についてはいろんな派遣先があろうかと思います。大企業、中小企業、いろんなところによって、それぞれの企業においてもまた賃金格差が存在しているというふうに思いますが、これを、派遣された先の労働者派遣労働者賃金を同一にするということは、そもそも決定機構が違っていますのでなかなか難しい問題であると思いますし、我が国賃金は一般に、特に常用労働については勤続年数とか年齢とか学歴とかそういったものが大きなウエートを占めておりまして、こういう賃金決定自体今いろいろと問題があるというふうに言われておりますが、我が国労働市場が、完全な職種別賃金が貫徹される、そういったふうにでも将来大きく変更いたしませんと、今おっしゃった問題はなかなかこれは大きい問題であろうかというふうに考えております。
  164. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 しかし、派遣労働というものはまさに職務とか業務というものを単位としてその企業内で養成できないような仕事を派遣労働という形で採用していくということですから、今までの終身雇用などの論理や慣行が並んでいるようなそうした社会を変革していく一つの契機を含むものだと思いますから、そういう中で派遣労働者派遣先の労働者との均衡な処遇ということもやはり将来必要なことであるというふうに申し上げたいと思います。  さらに、派遣先の問題は、業務命令という形で実際現場における指揮命令をするわけですけれども、それに対してやはり派遣先の労働者との適正な配置、同じようなあるいは同等の仕事をする派遣先の労働者との適正な配置、業務の指示、それから就労場所の施設等の利用といったようなこと、さらには派遣元ができない教育訓練の問題等適切な均衡処遇というものが不可欠であると思われますが、いかがでしょうか。
  165. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 賃金についてはなかなか均衡待遇ということは難しいと思うんですが、今御指摘の派遣先における配置でありますとかあるいはいろいろな福祉施設、これは現実に派遣労働者が一日なら一日丸々そこで働いているわけでありますから、こういったものについて適正な就労環境を維持するということは大変重要な課題であるというふうに思います。  今回の改正法案におきましても、派遣先におきます就業環境の維持あるいは派遣先の労働者が通常利用している診療所や給食施設等の利用の便宜を図るべきである、こういったことを明記しているわけであります。したがいまして、派遣先における就業環境の適正な維持ということにつきまして実効性が上がりますように指針等においてその内容を具体的にいたしまして、派遣労働者派遣先において派遣先の労働者と同じような福利厚生といいますか、そういった面での同じような待遇ができるだけ受けられるように配慮していく必要があるというふうに考えております。
  166. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 先ほど言われました食堂その他診療所等、就労環境の維持の点において、派遣先の通常労働者派遣労働者との均衡処遇ということをお決めいただくということについては一歩前進だと思いますが、私はさらに確認させていただきたいのは、適正な配置とかあるいは業務の指示の面についてはいかがでしょうか。
  167. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 業務の指示につきましては、派遣契約におきまして指揮権者についても明記をするというふうにされておりますし、したがってそれは派遣契約で定められたとおりに、例えば複数の指揮系統があるというふうなことではないように守っていただく必要があると思います。  また、適正な配置ということにつきましても、こういった業務について派遣労働を受け入れるということでございまして、就労の場所とか従事する職務、こういったものも派遣契約で定められるわけでありますから、その内容がきちんと守られるということが必要であろうと思います。
  168. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、適正な配置とか適正な業務の指示の均衡な取り扱いというものについては、指針あるいは通達その他について書いていかれることはありますか。御検討されておるでしょうか。
  169. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 運用において配慮するように検討したいと思います。
  170. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 検討するということはどういうことでしょうか。前向きでしょうかどうかというのもさらに確認させていただきたいと思います。
  171. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 運用の通達において明記をしたいと思います。
  172. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ぜひ、通達において明記をしていただきまして、派遣先におけるそうした均衡な処遇、均等な処遇というものに新しい法規制というものを打ち込んでいただきたいと心から願うものであります。  さらに、現行二十六業務に従事する派遣労働者は、その専門性が生かされるところから重要でありました。この観点から、教育訓練というもの、研修というものは派遣元が行うわけですけれども、派遣先における派遣元のできない教育訓練というようなものについてはどのような取り扱いが今までなされていたのでしょうか。
  173. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 派遣先における教育訓練については、特に従来規定もありません。これは実際には、派遣先において派遣先の労働者と一緒に職務を通じながら訓練をする、あるいは特別に訓練をするかどうか、それは派遣先が恐らく任意にやっていることだと思います。現行においてはそうなっているかと思います。
  174. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、今回改正法案の四十条の三に規定する派遣先における派遣労働者雇用についてお尋ねします。  この条文にある「同一の業務」ということについては、解釈の乱用を防止してこの規定が設けられる趣旨を逸脱することのないように解釈されなければならないと思います。  まず、同一業務かどうかを判断することについて、同一業務の場合、一部が同一であれば同一の業務と解されるべきではないか。例えば、Aという業務とBという業務があり、Aという業務とCという業務が組み合わさったとしても、Aという業務があった場合にはこれは同一業務だというふうに解釈すべきだと考えますが、基本的な考え方についてお尋ねします。
  175. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) この同一の業務は、今回の派遣法改正のかなり中核的な概念になっているところでありまして、常用代替の防止という趣旨に十分留意しながらこの規定の解釈を行う必要があるというふうに思っております。  この同一の業務につきましては、そういった法制定の趣旨等にかんがみまして、企業における最小単位において行われる業務、仕事、こういったものを同一の業務というふうに解釈をするというふうに考えております。そういった基準に照らしまして、今おっしゃったような問題点についても判断をすることになろうかというふうに思います。
  176. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、二つの業務がありまして、その業務の中核部分あるいはその業務の内容の五〇%以上が同一であれば二つの業務は同一だというふうに判断することが合理的だと思うんですが、いかがでございましょうか。
  177. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) これは、今申しましたように、企業の、その組織の最小の単位、係とか班とか、これは実態はいろいろあるかと思いますが、企業の活動の最小単位において行われる業務が同一の業務ということであります。そういった点で、その中での業務であれば、例えば隣の席に移動しても同じ業務をやっているというふうに判断するということにしております。
  178. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、最小単位の業務あるいは仕事ということになりますと、例えば一般の会社では部とか課とか係とか班とかと、こういうふうにあるわけですが、大体どのあたりで最小単位の仕事を把握するわけでしょうか。
  179. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 企業の形態には実際にはいろんなものがあると思いますから、先ほど係とか班とか申しましたのも一つの例示でございまして、一般に係や班で行われるようなものを基準にしながら企業の最小単位というものを判断しようと考えておりますが、実際には、指揮命令はどうなっているとか就労の場所がどうであるとか、そういったことをいろいろと企業の実態に即してその企業の最小活動単位というものを判断していくことになろうかと思います。
  180. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、一つの係に属する人数が多いという理由で管理の都合上二つに分けるというような場合がありますし、またあるいは派遣労働者を受け入れる直前に便宜的に係を二つに分けたという場合にはどのように判断されるのでしょうか。
  181. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) これは実態によるわけでありますけれども、今おっしゃったようなストレートなケースでありますと、通常は同一の業務というふうに判断されるのではないかと思います。
  182. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、派遣労働者を受け入れた後に派遣労働者の属する組織を変更して係を二つに分けてしまったというような場合はどうでしょうか。
  183. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 一つの係が二つに分かれましてその係が実質的に違った業務を行っているんだ、そういう再編成をしたんだということであれば同一の業務と言えない場合もあるでしょうし、形式的に分けたんだということであれば同一の業務を相変わらず行っているというふうに判断されるのではないかと思われます。
  184. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 事業所の規模が零細で、例えば三人から五人程度の事業所で、一人一係を構成しているような場合はどのように判断されるでしょうか。
  185. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 実際問題として、スタッフでないようなときに一人で一係を構成するというケースがあるかどうかですが、あるといたしまして、それが実質的に企業の活動の最小単位だということであれば、そこにおける仕事がここで言う同一の業務になるのではないかと思います。
  186. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、例えば五人から七人程度で構成されるプロジェクトチーム方式をとっている場合は、その業務はどのように判断されるのでしょうか。
  187. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 改正案の中で派遣期間一年の制限の例外といたしまして、「事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であつて一定の期間内に完了することが予定されているもの」、これは一年の制限の例外として規定されているわけでありますが、今おっしゃったようなケースがこの規定に該当するようなプロジェクトチームであればこの制限の例外になりますし、単に名前がプロジェクトチームであっても、実際には先ほど申しましたような恒常的な係や班だということになれば、それはこの同一の業務の規定の適用を受けることになると思います。
  188. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 例えば、業務を明示する場合にさまざまなものがあるわけですけれども、例えば事務機器の操作プラスその他いろいろというようなふうに書かれたような場合は許されるのでしょうか、どうでしょうか。
  189. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 従来の二十六業務も今般存続するということにしているわけでありますから、従来の二十六業務にあわせて周辺業務を行うということはこれからの派遣形態としてあり得ると思いますし、実際に出されたケースでも、例えば添乗員の仕事のほかに契約をとってくるような仕事もしたいけれどもできないというふうな従来の使い勝手の悪さも指摘をされていたわけでありますから、今回はそういった不満はなくなるかと思いますけれども、いずれにしましても、そういった場合には一年の方に引っ張られて制約を受けるというふうに運用するということにしております。
  190. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 しかし、主たる業務が専門二十六業務になって付随する形で様々な業務が付加された場合に、それが一年ということになると、派遣労働者に不利益を課すことにはなりませんでしょうか。
  191. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) そういった御意見もあるかと思いますが、主たる業務かどうかというふうなことは、これは恐らく大変な判断になるのではないかと思います。そういったことで、大変形式的かもしれませんが、現場における混乱を防ぐあるいは脱法を防ぐという意味からは、従たる場合であっても一年の方に合わせるということで運用したいと思います。
  192. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そういたしますと、もう一度お聞きしたいんですが、そうした基本的な事務機器操作プラス付随業務という書き方をした場合に、一年ということになるんでしょうか。それと、添乗員プラスその他いろいろと書いて、そういう明示を許すとこれは大変な混乱を生ずると思うんですが、そこは厳格に業務を特定していかないといけないんですが、その点どうでしょうか。
  193. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 現在、二十六業務は政令において具体的に書いているわけでありますが、この二十六業務とほかの業務を行うというふうな場合につきましては、派遣契約の中で二十六業務については政令の号番号まで引っ張ってこれを明確に契約の中で規定するというふうに指導していきたいと思います。
  194. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 私がお聞きしたのは、その二十六業務を厳格に書いていただくということはいいんですが、付随業務の書き方についてお尋ねをしているんですが、いかがでしょうか。
  195. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 契約の中では就労の場所、業務等々を具体的に書くことになっていますので、二十六業務は先ほど申しましたようなことで特定をしていただいて、そのほかの今般拡大される業務につきましても、就労の場所や従事する業務ということでこれを具体的に特定をするように書いていただくよう指導いたしたいと思います。
  196. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、業務に関してその他いろいろとか付随業務というような形の業務の書き方というのは許されないと考えてよろしいのでしょうか。
  197. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 明確に書くように指導したいと思います。
  198. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 専門二十六業務についても現行では更新を三年間まで許されているわけですが、専門二十六業務については三年の枠組みを現状を維持するといって、一年の、専門二十六業務以外の業務との間で何か非常に整合性がないように私は理解するわけです。  と申しますのは、ネガティブリスト化して、専門二十六業務以外の場合は一年ということで、指導助言をして、それを聞かない場合は雇い入れ勧告をして、さらに企業名の公表をなさるわけですが、この専門二十六業務は今三年というふうに認められておりまして、私は三年後もまた雇い入れ勧告をして企業名の公表をするというような形でやはりそこのところをきっちりとやらないといけないと思うんですが、これに対してはどのような方針で臨んでおられるのでしょうか。
  199. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 御指摘のとおり、従来の二十六業務は一年の三回更新の三年ということで、今回対象を広げる業務とは少し違った形になっております。これは、専門性といいますか、特別な雇用管理も含めて、それに配慮したといいますか、そういう点、それから現にこういう形態で雇用されている方がいらっしゃいますのでそこに配慮をしたということなのでありますし、何といいますか、専門性を要求する一つのプロジェクトが最長三年くらいということ等も加味されて設定されていると思うのであります。  いずれにしても、この整合性がとれていない、片方は一年で、雇い入れについての要請ができる、片方はそうでないと。この辺は法施行後三年以内に見直す、この部分だけを見直すのではなくて、どういう不都合があるのかないのかを含めて、全体を見直す中でどうあるべきかをそのときにもう一度考えたいというふうに思っております。
  200. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、専門二十六業務について三年後の雇い入れ勧告の制度の導入の可能性というものについては、見直しにおいて見直すということですが、その可能性というか方向性については労働大臣はどのようにお考えでしょうか。
  201. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 三年間、この専門性とそうでないところのスタイルが違う、この方法で行ってみて、その結果どういう指摘があるのか、それを見きわめたい。今から確実にこうであるという方向づけはちょっとできないかというふうに思っておりますが、その三年の間にどういう事態があるのかあるいはないのか、不都合があるのかないのか、その辺を見きわめて方向性を出したいと思っております。
  202. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 時間ですので終わります。
  203. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 自由党の鶴保庸介でございます。  大臣、本当に長い時間御苦労さまです。  当委員会で前回参考人を呼びまして、雇用情勢そのものについて幾つか質問をさせていただきました。その中で、私はどうしても納得できないというか、そうなのかなと思うことがありまして、そのこととの関連で、少々話が迂回するかもしれませんが、ぜひ冒頭そのことをお伺いしたいんです。  実は、この間の参考人の話の中で主張されたことは、いわゆる失業の負のスパイラルといったようなことが起こりつつあるという認識を参考人の方がおっしゃいました。確かにその危険性はあるのでありましょう。ただ、我々与党そしてまた政府が取り組んでおりますのは、いわゆるデフレギャップ、古典的な経済にのっとって景気の経済の下支えをしながら慎重に雇用そのものを上げていくという手法をやっておるわけであります。  そこで、大臣にちょっとお伺いをしたいんです。雇用流動化により一時的に失業率が上昇していく、そしてまたいわゆる失業の負のスパイラル、雇用調整が加速して所得が押し下げられて、そこからまた押し下げ効果が雇用不安を生んで、雇用不安が消費マインドの低下を生んで、それからまた生産活動がまたまた下がってしまうというような悪循環、こういう状況に今あるというふうなお考えをお持ちでしょうか。お持ちであれば、今回のこの労働者派遣法のそもそも常用雇用を脅かすおそれがあるかもしれないことを今この不景気の中でやることに対して私は非常に危惧を覚えるわけですが、いかがでしょうか。
  204. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 結論から申すれば、将来展望の打ち出し方、信頼性の確保だと思います。雇用失業情勢が悪化すると、それによって消費マインドがさらに落ち込んで生産活動が停滞し、さらに今度は失業率上げていく、そういう何といいますか連鎖というのは世の中にはあると思います。ただ、今起きるのかといいますと、それは起こしてはならないですし、起こさないようになりつつあるんだと思っています。  これは、私がいつも記者会見で非常に慎重な言い回しになりますのは、失業率が悪くなるときに、何の展望もない悪くなり方かよくなることに向かって悪くなっていくのか、そこをきちっと見きわめてもらう必要があるわけですね。経済、景気が立ち上がる、経済のシステムがリフォームされて正常に稼働を始める、その立ち上がっていく、つまりよくなっていくときには雇用情勢は一時的に悪くなってくる、よくなるときには悪くなりますよということをよく申し上げるんですが、そうであるかどうかの早く見通しを、確信を持つということだと思うんです。先の見通しが全然立たないままに雇用情勢が悪くなってくると、これはスパイラルを引き起こす可能性があります。  今は物すごく大事なところだと思うのは、景気がようやく下げどまりになってきた。ここでどういう発言をするかというのは担当大臣として非常に難しいのでありまして、大丈夫ですよ心配しないでくださいということをできるだけ言いたいのでありますが、展望もなしにそういうことを言うと、認識が甘いとか、のうてんきとかいろいろ言われるわけでありますし、それじゃ厳しくさえ言っていればいいかといったら、担当大臣があんな厳しく言うんじゃ本当に大変だなということで悪くなっちゃうということでありますから、将来展望が見えるようにきちっといろいろ提案をし、策を構築し、そしてその上で、今は厳しいけれどもこれは将来に向けて今ちょうど試練を乗り越えているところですよということが伝わるようにすることが大事だというふうに思っております。
  205. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 おっしゃるとおりだと思います。その意味でも新しい雇用の形態というかそういうものも必要なのではないか、私は個人的には今回の派遣法が臨もうとしている基本的な趣旨は評価できるものがあるというふうに考えておるんです。  ただ、先ほど来委員各位の御質問にもあったとおり、幾つかのやはり危惧される問題点というようなものも確かにあろうかと思うんです。それはつまるところ、派遣労働者とそれから雇用される労働者常用雇用者そのものの席が奪われるといいますか、そういうものの人権ということになろうかと思うんです。  午前中大臣がおっしゃいました起業させるようなメリットあるいは労働者が自由な雇用の選択をできるというメリット、このことと先ほど言いました常用雇用に対してのデメリット常用雇用に対するおそれということのデメリット、そのバランスの問題であろうかというふうに思うんです。  そうしますと、まず私が言いたいのは、ここで前提としてお伺いをしておきたいのは、労働者派遣事業と職業紹介事業の兼業については、求職者を職業紹介する手段として労働者派遣をするものではないことという要件が設けられております。この制度趣旨というかその目的といったものを担当者の方からお伺いをしておきたいと思います。
  206. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今御指摘のように、いわゆるジョブサーチ型と申しますか、職業紹介の手段として派遣を行う、こういった兼業については運用において現在許可をしておりません。  これは派遣労働という制度が十数年前に初めて我が国においてできまして、派遣労働というのは派遣先、派遣元、労働者、こういった三者の関係であるところから、特別に使用者責任というものをきちんと確立をするということがとりわけ大事であるというふうに制度発足当初強く意識をされました。そういったことを背景としまして、派遣と紹介とを一緒にやるんだということになると派遣元事業主としての使用者責任は不明確になるのではないか、そういった懸念がありましたために現行のような運用になっているというふうに理解をしております。
  207. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 なぜそんなことをお聞きしたかといいますと、これまで認められてきた労働者派遣法というのは、職安法が禁止してきた労働者供給事業の例外として認められてきたわけですよね。その問題の解決のために職業紹介と派遣というものを今まで明確に分けてきたわけです。ところが、大臣も意図されておられると思いますが、このたびの制度については、正社員になるための道として新しく派遣というかそういったものも、いわゆる紹介と派遣との垣根みたいなものもだんだん取っ払っていくというような面、それを積極的に評価しようじゃないかというような面もあるのかもしれないなというふうに思ったんです。  つまり、外国などでは、先ほどどなたかが御紹介されておられましたが、派遣労働者の三〇%以上が派遣先の直用労働者あるいは正社員として雇用されているという状況などもあるというやに聞いております。  その辺、労働者派遣正規雇用の前段階としてとらえる、本当に積極的にそれを前向きにとらえるという考え方があってもいいのかなというふうに思うんですが、その辺のところを大臣はいかにお考えでしょうか。
  208. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 今の鶴保先生の御指摘に関しましては、各方面からもそういうお話もありますし、あるいはもちろん懸念のお話も、いろんなのがあるのでありますが、結論から言いますと、中央職業安定審議会の方で検討してもらって方向性を出したいというふうに考えております。
  209. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 なかなかお答えにくいんだろうと思います。ですが、私はそういうことがあってもいいと思うんです。そのかわり、いわゆる派遣労働者に対してはきっちりと守っていく、ルールをきっちりしますということを政府としてはっきり打ち出すべきだというふうな気が私はしておるんです。  あやふやに、いわゆる玉虫色の解決というのがとかく今まで日本の政策の中で多かったわけですが、そういうことを懸念して幾つかの細かい問題点を指摘させていただきたい、お聞きさせていただきたいと思うんです。つまり、派遣労働者の保護ということに的を絞ってお話をさせていただきたい。  例えば、大臣がおっしゃいました派遣労働者労働の幅を広める、労働を選択する幅を広めることができると言うんですが、ただそうしますと、派遣労働者にしてみたら複数の派遣会社に登録するということが可能なはずなんですが、契約によっては派遣元がほかの派遣会社に契約してはだめだよというような特約事項をまず入れたとすれば契約は一応有効になってしまうわけで、こういうときは労働者の選択の幅が狭まってしまうんじゃないか。  先ほどの市田議員の話でもありませんが、本当に派遣労働者立場というのはむしろ非常に弱いものがあるんじゃないかというようなところなんですが、その辺の防止策というかそんなものがもしあればお話をいただけたらと思います。
  210. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今御指摘のケースにつきましては、これは登録する際の条件ですから、なかなか規制するというのは難しいのではないかと思いますし、実態としましても、登録の場合には二重三重の登録をしている方がかなりおられるようですから、むしろそれについては派遣労働者の方に選択権があるのではないかと思われますし、一般にはそういう特約を結んで派遣労働者がそのために非常に不利になるということはないのではないかというふうに考えております。
  211. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 そういう答えをわかっておったんですが、恐らく規制する手段はないんだろうなと。  ただ、そうなってきますと、派遣登録をして、そして派遣されるときに、あなたにはこれこれこういうことの権利がありますよ、もしくはこういうことをされたときにはこういう文句を言うことができますよというようなことを事前に周知する必要があるのではないかというような気がするんです。  私は実は、学生のときにいわゆる登録をいたしまして、その経験があるんです。私は派遣労働者だったわけです、学生ですが。派遣先へ行きますと、自分が時給幾ら幾らでしているということは私は当然わかっているわけです。ただ、派遣元が派遣先から幾ら契約でお金をもらっているかということはわからないわけです。そうすると、派遣先にしてみれば、例えば時給八百円だったら、時給千五百円も払っているのに千五百円分の仕事をしてくれよというようなことで、派遣労働者にしてみればかなりきつい仕事、自分たちの主観とは違うきつい仕事をさせられるということもあり得るわけです。  いろんなことを思いますものですから、派遣元から労働者に対して、あるいは派遣先からの、派遣先からはちょっと難しいのかもしれませんが、派遣元から特に労働者に対していろいろ情報を開示する必要があるのではないかというふうに思うんです。  そこで、派遣先においてトラブルが起こった場合、これは衆議院の委員会の中でもかなり詳しくお話をされておられた様子でありますが、苦情の申し立て先としては公共職業安定所というふうになっております。具体的には安定所でどのような対応がなされるのか。また、こうした苦情処理の仕組み。つまり派遣労働者にしてみればどこへトラブルを持っていっていいのか知らない人がほとんどであろうと思うんです。その仕組み等について派遣労働者に対してあらかじめ派遣の際に告知したりとか周知徹底したりとかというようなことを派遣元が行うような、そういうことを指導するべきではないかというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。
  212. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今般、労働者の保護措置、特にプライバシーの保護等々あるいは労働大臣への申告権といいますか、そういったことについて労働者の保護措置を拡充しているわけであります。  そういった点について、派遣労働者がみずからの権利をよく知っておる、そして権利を適正に行使できるということは極めて重要なことであると思いますので、派遣元が派遣労働者に自己の権利等々についてこれを認識できるような周知をする、そういった手だてについて十分検討していきたいというふうに考えております。
  213. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 しつこく聞くようですが、それは事実上の指導ということになっていくわけですか。
  214. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) これは例えば、行政においてモデル的なものを作成するとか、あるいは協会がございますので協会を通じて派遣元事業主の方に伝わるようにするとか、決してこれが空振りにならないように具体的に考えていきたいというふうに思います。
  215. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。  またちょっとこれも細かい話になってしまって恐縮なんですが、派遣先は派遣労働者の事前面接を行わないように努めなければならないこととされておられる。しかし例えば、派遣の最長期間は一年だというふうなことが書いてありますが、最低期間は定められておりません。したがって、派遣期間を極端に短くすれば事実上事前面接、先ほどどなたかおっしゃいましたが、一年間試用期間を持っておいて、それから使いものになるんだったら正社員にしてやろうというようなことですけれども、一年でなくたって三日でもいいわけです。  そういう場合、事前面接と同様の効果を得てしまうことにはならないか。そのような行為が今後生じるおそれがあるかどうか、そしてまたそれが生じた場合に労働省としてはどのような指導を行っていく用意があるのか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
  216. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 従来から行政指導によりまして派遣労働者派遣先が特定するような行為を行うことは禁止しておりましたけれども、今般衆議院における修正によりまして、労働者派遣を受けようとする事業主は、派遣契約の締結に際し、事前面接等当該労働者派遣契約に係る派遣労働者を特定することを目的とするような行為はしないように努めなければならないという修正も行われたわけであります。  今おっしゃいましたような余りに短期の派遣契約ということになりますと、実質的に事前面接にこれが当たるというふうなことが多いと思いますので、これはこの条文の脱法行為として指導する必要があるというふうに思います。
  217. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 ぜひまたそれも前向きに本当に目を光らせていただきたいというふうに思うんです。  ただ、いわゆる事前面接の禁止だというようなことの派遣制度そのものの内容についてでも、わからないにしても派遣労働者に対してある程度の概略を教えるといいますか、そういうものは必要なんじゃないかなという気が実はしておるんです。  といいますのは、先ほどの私の例で本当に恐縮なんですが、学生のころ、これはどういうことだったのか今になってわかるんですが、登録をいたしました。そうしたら、何年も前の話ですから、登録をした先からネガティブリストのまだ禁止されておる業種のところへ行ったわけです。それは今になって思うといわゆる請負をさせられておったのかなというような感じなんですね。つまり登録はしたけれども、その登録した派遣元から請負の形で行かされておる。ただ、私たちは知りませんから、それが請負なのか派遣なのかというのはわかりませんし、これをしちゃいけないと法律で禁止されておるなんということは派遣労働者はわからないわけですね。こういうことが現実に起こっておる。  これは私の個人的な経験で本当に申しわけないんですが、こういう場合、労働者に対して制度そのものの内容について周知徹底をどの程度できるか、現実の問題もあるでしょうけれども、その辺も含めて労働省はどういうふうにお考えになっておられるか。答えにくいでしょうが、お願いをいたしたいと思います。
  218. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) この法の規制については、まず派遣元事業主がこれをきちんと守るということが最優先に重要なことであると同時に、派遣先事業主もこれまたこれをきちんと守っていただくということが重要ですから、これら事業主に対して指導を徹底することが重要なことはもちろんでありますが、先ほどからも御議論にありますように、やはり実際に働きます派遣労働者自分の権利、そういったものをしっかりと認識をして働くということもとりわけ大事なことであると思います。  特に、この法律が適正に執行されるためには、派遣先、派遣元、派遣労働者それぞれがこの法律の規定をよく知った上でその権利行使等を行うということがとりわけ重要であると思いますので、これは先ほど申し上げたことですが、具体的にこれが徹底されるように運用において十分考えたいというふうに考えております。
  219. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 以上で本当に私の聞きたかったこと、派遣労働者の本当に細かい自分なりの経験を含めての聞きたかったことはもうほとんど終わりました。  したがって、私がきょう本当に言いたいのは、まだまだ問題があり、その問題を派遣労働者の人権というか権利ということに的を絞っただけでも、きょうだけですが、その中でやはり周知をしていくということ、それから労働省の本当にこれからの不断の努力が絶対必要だというふうな気が私はしておるんです。  また、そもそもの議論でありますが、もしもこの制度そのものに常用雇用に対する脅かし、常用雇用からの、企業雇用調整を進めてしまうというようなおそれがあるならば、それは先ほど言いました失業のデフレスパイラル、失業の負のスパイラルの状態にもしあるとするならば、それは今この時期にすることは非常に危険なのではないかというような気もしておるわけです。  そこで最後に、大臣労働省として、今言ったようなことは決意とそれからもう思いであろうと思うんです。私は力強い大臣のお言葉を聞いてきょうは質問をおきたいと思いますので、ぜひ最後に労働省として本当に努力をしていくということの対応のお気持ちをお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  220. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 今回、二法案改正をお願いしているわけでありますが、この改正日本の今後の活力に資するように、そして働く者にとってもいろいろな働く選択肢を提供する、それによって出てくるマイナス面は最大限カバーをして、そのマイナス面が出ずにプラス面がより多く出ていくような、そういう法改正としたいと思っておりますし、そうなると信じております。  現下の雇用失業情勢、経済情勢、非常に厳しいですし、景気もまだまだ予断を許しませんけれども、雇用産業競争力の両立に向かって政府を挙げて取り組んでいく決意であります。
  221. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 終わります。
  222. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 四案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時二十四分散会