○
国務大臣(
甘利明君)
谷林先生の
認識と私の
認識は割と近いと思うんです。ただ、今の質問の中で五つ六ついろんな話が出てきましたので、答弁漏れがありましたらちょっと
指摘をしていただきたいんです。
まず、
労働移動に関しては、現状は
企業の都合によって吐き出されてしまうのをどうするんだというのに追い回されているといいますか、それは事実だと思います。ただ、本来の形というのは、産業形態がいろいろ変わっていきます。つまり、時代的役割を果たし終えた部門から新しい時代を担っていく部門に職業
能力を持った
労働者がちゃんと移動できるようにしないと
日本全体が沈没をしてしまう。その移動については、
企業のもちろんニーズも当然でありますけれ
ども、
労働者の意欲的チャレンジをちゃんとフォローしてあげるような、
労働者の側の主体性を補完するようなことに配慮しなければならない。つまり、
企業が要らない人材を放り出すのを何とかしろという話ではなくて、それもちゃんとフォローする体制は大事ですが、
労働者側の意欲的なチャレンジに道をつけてあげるということをちゃんと
中心に据えて取り組んでいかなきゃならないというふうに思っております。
それから、今の
状況というのは単に景気がよくなったらすぐ解決するものではないのではないかと、それは御
指摘のとおりかもしれません。というのは、今のこの不況というのは循環型だけではなくて産業構造が転換を余儀なくされているという点にその根の深さというのがありますから、単に景気が回復したら
雇用情勢があっという間に解決するということではないのかもしれません。そこは新しい産業が
日本経済を担っていく、それに適切に
労働力供給が行われるように
労働省としてはいろんなチャンネルをしっかりとつけていくことでありますし、その間にいわゆる職業
能力のバージョンアップについて
労働者の側が幅広に選択ができるような措置をきちんと敷いておいてあげるということは大事なことだというふうに思っております。
日本経済の今の苦悩というのは、
一つには、プラザ合意以降、国際化に備えるべき部門がそれへの対処を怠ったという点が大きいんだと思うんです。貿易に関している
企業は急激な為替レートの影響をもろにかぶって、それに対処せざるを得ない構造改革というのに
自分の
企業分野内で取り組まなきゃならなかった。しかし、国際化の北風にさらされていない部門というのは、金融を
中心に相変わらず国内対応だけで済んでしまった。それをいきなり貿易部門と同じように、例えば金融とか流通とかサービス部門がいきなり外と内の壁を取っ払ってしまったものでありますから、これに対しての衝撃波を吸収し切れないでいる。本来は、プラザ合意以降、例えば製造業がなしてきた
努力をそれ以外の分野でも既にそのときに自主的に取り組まなければならなかったと思うんです。それを外的要因で取り組まざるを得ないその衝撃波が一遍に来ているものですから、大変な事態に陥っているんだというふうに思っております。
情報通信の分野でも規制緩和はもっと前倒しでやっていかなければならなかったのでありましょうし、この分野に関しては
予算措置よりも規制緩和でかなり
新規事業が望める分野でもあります。つまり、
政府にお金がかからないで新
事業展開ができるんじゃないかというふうにも思っておりますし、あらゆる分野で新
事業創造についての障壁を取っ払っていくということは大事なことでありますし、そこにスムーズに
労働力が供給できるように、供給というと物みたいでおしかりを受けるかもしれませんが、しっかりチャンネルを持っていく。職業
能力をつけるために
労働省ができること、それから民間に任せること、両々相まってバージョンアップを図っていくことが大事だと思います。
それから、最後の賃金水準の点であります。
もちろん、賃金を幾らにするかというのは
労使で自主的にお決めになることでありまして、この会社の賃金はこうでなければならないなんて
労働省が言うべき性質のものではありません。ただ、
日本の賃金が上がってきたということは、生産性のアップを反映して上がってきているわけであります。
企業が倒れてもいいから賃金を上げていきますなんという
企業はなかったと思いますから、生産性の向上を賃金に配分したということでありますから、そういう経過をたどって賃金が上がったということは、我々は外に向かって胸を張っていいことなんだというふうに思っております。これからも世界一の賃金水準ができるように
企業がぜひ生産性向上に努めていただきたいと思います。