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1999-03-15 第145回国会 参議院 労働・社会政策委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十五日(月曜日)    午前十時十分開会     ─────────────    委員異動  三月十一日     辞任         補欠選任      山崎  力君     高橋紀世子君  三月十二日     辞任         補欠選任      高橋紀世子君     山崎  力君  三月十五日     辞任         補欠選任      山崎  力君     高橋紀世子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         吉岡 吉典君     理 事                 田浦  直君                 溝手 顕正君                 川橋 幸子君                 笹野 貞子君                 山崎  力君     委 員                 大島 慶久君                 斉藤 滋宣君                 中島 眞人君                 今泉  昭君                 小宮山洋子君                 谷林 正昭君                 但馬 久美君                 山本  保君                 市田 忠義君                 大脇 雅子君                 鶴保 庸介君    国務大臣        労働大臣     甘利  明君    政府委員        警察庁刑事局長  林  則清君        外務大臣官房長  浦部 和好君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     上田 秀明君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省労政局長  澤田陽太郎君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省女性局長  藤井 龍子君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        山岸 完治君    説明員        内閣総理大臣官        房男女共同参画        室長       名取はにわ君        文部大臣官房人        事課長      田中壮一郎君        厚生省社会・援        護局保護課長   田中 敏雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付)、平成十一年度特別会計予算内閣提出  、衆議院送付)、平成十一年度政府関係機関予  算(内閣提出衆議院送付)について  (労働省所管)     ─────────────
  2. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) ただいまから労働社会政策委員会を開会いたします。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事山崎力君を指名いたします。     ─────────────
  4. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 去る十日、予算委員会から、十二日から十六日正午までの間、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  予算説明につきましては既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 民主党・新緑風会を代表いたしまして、私の持ち時間は四十五分でございますが、私余り演説をいたしませんので、質問をたくさん用意しておりますので、ぜひ皆様にも簡潔明瞭にお答えをいただきたいと思います。最初にそれをお願いしておきます。  まず最初に、現在の雇用情勢の中で、いろいろリストラですとか中高年の方の問題というのは非常によく取り上げられていますけれども、その陰に新卒者就職内定状況が非常に深刻なんだと思います。超氷河期などと言われたとき以上にひどいのに、何かこれはメディアの方も余り取り上げていないようですけれども。  例えば、昨年の十二月一日現在が今一番新しい数字ですけれども大卒男子が八三・五%、前年比マイナス四・一%、大卒女子が七三・五%、マイナス五・三%、短大女子に至っては五六・六%、マイナス三・九%、二人に一人がまだ決まっていないという状況なのですが、この状況をどういうふうに受けとめられて、十一年度予算にはどのように反映をされているのか、まず労働大臣に伺いたいと思います。
  6. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 確かに御指摘のとおり、大卒短大そして高校も含めまして、昨年の同時期と比べますと四、五ポイント低いのであります。  そこで、昨年の三次補正におきまして、就職面接会をもっと頻繁に開こうということで前年よりかなり頻繁に開きました。もうあと年度も二週間で終わっちゃうのでありますが、新年度予算につきましては二十六億円を計上しております。これは当初予算ベースで言いますと前年度比五億円増なんですが、これも引き続いて例年以上に次年度も頻繁にそうした機会を持ちましょうということで計上しております。  それから、情報提供に関して学生に対する支援を行うということで各県に学生職業センター等というのを置いておりますが、この全国の中核的な、センター・オブ・センターというんでしょうか、学生総合支援センターをことしの秋のオープンに向けて今予算取りをさせていただいております。  ただ、私も事務方に申したのでありますが、学生の中でこういう学生職業センター等の存在をどのくらい知っているのかねということで、もうちょっと大学なり短大就職部と連絡をとって、学生の目のつきやすいところに、こういう支援体制がありますよということを、特に就職が佳境に入っている時期にはもっと目のつきやすいところにポスターを出したりしたらどうだと。就職部には出しているようなんですが、きょうの授業は休講なんというところはよく目につくんですが、そういうところに張り出してもうちょっと宣伝したらどうかねということを今言っているところでございます。
  7. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 全国六カ所に学生職業センターがあるわけですね。私も以前に何回か取材させていただいて、そこでは非常によくやっていらっしゃると思うんですが、やはり全国六カ所といいますとなかなかそこが遠い人にはアクセスしにくい。各県ごとにもいろいろつくっていらっしゃるようですけれども、そこはなかなか常勤の人がいるわけではなくて、非常勤などで対応している。  もちろん、総合センターをおつくりになるのもいいんですが、きめ細かく身近なところでアクセスできる、そこに十分対応できる人が常に配置されているということも必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  8. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 正確な御指摘全国六カ所、あとは出先ということでありまして、それを少しもうちょっと予算の範囲で充実していきたいというふうに思っております。
  9. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 そして、特に女子学生については、ことしに限らずかなりまだまだ女性であるためのバイアスがかかって、いろいろな踏み絵を踏まされる。私がいろいろ取材をしていた中でも、ジゲコというのは御存じでしょうか、自宅通勤、現役、コネ、これがないと女性はだめだと一般に言われております。  四月から改正均等法も施行されるわけですが、そこでまたこれまでとはもう少し違った取り組みも必要なのかと思いますが、特に女子学生について何か考えていらっしゃれば伺いたいと思います。
  10. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) 小宮山委員指摘のとおり、大学等方々からいろいろお話を伺いますと、女性については自宅通勤者に限る、浪人していないことといった男性と異なる条件をつけられているというようなこともあるようでございます。  私ども全国女性少年室大学就職担当者方々連携をとりながらその実態把握に努めておるところでございます。また、女性少年室女子学生方々からの御相談には丁寧にお答えをしているというところでございます。  こういった実態把握あるいは相談を通じまして、均等法違反と思われるような事案がありました場合は事業主に対して助言、指導勧告というものを行って是正を求めているところでございますが、この四月一日から募集、採用につきまして禁止規定になるということ、さらに労働大臣勧告に従わない違反企業につきましては企業名公表制度というのを新たに設けたところでございます。こういう制度を通じまして、事業主に対して今後とも法違反是正に適切に対応してまいりたいと存じます。
  11. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今どき女子学生だけ自宅通勤というのは一体どういう考えからくるのかと私などは不思議で、男子学生よりよっぽどしっかりしている女子学生が多いのではないかと思います。  これは学生への相談と同時に、今おっしゃったように事業主の方にもやはりそういう古い頭は切りかえていただかないと、そういう企業はこれから二十一世紀なかなか大変だと思いますので、その改正均等法も使ってといいましょうか、企業名公表制度としてはありますがなかなか実際には行われないというのがこれまでの現状ではないかと思いますので、ぜひそのあたり適切に対処をしていただいて、やはりこれから少子・高齢社会の中で女性能力を生かさなければいろいろな面でやっていけないと思いますので、ぜひ本腰を入れて取り組んでいただきたいとお願いをしておきたいと思います。  それからもう一点、やはり新しく職につく人への道筋として、インターンシップ導入促進支援に来年度は三億二千万円と拡充されていますけれども、このインターンシップについての考え方を伺いたいと思います。大臣いかがでしょうか。
  12. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 学生職業意識を持たせるといいますか、就職の際のミスマッチを防止していくということ等、早くから学生に職につくということの意識高揚を図ろうということで、インターンシップ制度を導入拡充する方向で取り組んできているわけでありますが、今の企業側の対応の集計によりますと、既に受け入れているというのは一七・三で、受け入れる方向で検討したいということと合わせますと五〇%以上の企業がこれに対応している。ちょっとにわかに信じがたい数字のようにも思えるのでありますが、日経連を対象とした調査でありますから上場企業ということになるんでしょう、ある一定の成果を上げつつあると思います。  そこで、御案内のとおり高校生にも広げて、ジュニア・インターンシップと呼んでおりますけれども、実施を試行的にしていこうというふうに思っておりまして、いろいろメリット、デメリットも御指摘をされているところでありますが、若年就業者の三年以内離職率が非常に高いものでありますから、そういう点からもこのインターンシップ制度というのは引き続き進めていくべきだというふうに考えております。
  13. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 私もこのインターンシップども検討した検討会にも参加させていただいていたこともあるんですけれども、確かに私もこれはいい形で使っていけば大変これから期待が持てる仕組みかとは思うんですが、インターンシップといいますと、何か今五〇%以上の企業がしたいと言われたように、みんな草木もなびくではありませんけれども、みんながインターンシップインターンシップと流れていってしまって、中には企業の方でも学生がたくさん来過ぎて困っているとか、受け入れの側もなかなかインターンシップということをきちんと理解して受け入れていないとか、行く側の学生もまるで就職予約みたいな形で受けとめているとか、やはりただインターンシップという言葉に流れていってしまって、きちんとした意識のもとに受け入れる側も行く学生の側もやらないと混乱をするということもあるのかなと思いますが、そのあたりはどのように労働省としては配慮をなさり、また手伝いをなさっているのかということはどうでしょうか。
  14. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) このインターンシップ制を実施するに当たりましては、企業の側にもプログラムをどう組んでいくのかとか、あるいは指導担当者といいますかそういう人の確保とか、いろいろと検討する課題が多いというふうに聞いておりますので、行政としてもその点、事例集等つくりまして、成功事例等をつくってこれからも指導していきたいというふうに思っています。  また、先生今ちょっとおっしゃいましたが、学生の方も予約のような感じで行くということになると趣旨の履き違えということになります。今だんだんと採用選考の時期が早まってきているというふうに言われているわけでありますが、このインターンシップ制度がいわゆる青田刈りのような場にならないように指導していきたいと思います。
  15. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 次に、職業生活家庭生活との両立支援の部分について幾つか伺いたいと思います。  育児休業介護休業取得しやすくする環境整備ということで介護休業給付百三十一億円が予定されているわけです。今までも制度を持っていた事業所で大体二割ぐらいかと思いますけれども実施されていますが、そこでの男女取得割合はどうなのか、それが育児休業と比較してどうなのか、そのあたりを教えていただけるでしょうか。
  16. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) 平成年度に私どもで行いました女子雇用管理基本調査の結果によりますれば、介護休業制度を導入している事業所が二三・二%でございます。  ここで介護休業取得された方の割合でございますが、女性につきましては、女性常用労働者に占める割合は〇・一%、すなわち一万人に十人の割合でございます。それから、男性常用労働者に占める男性介護休業取得割合が〇・〇一%で、一万人に一人という状況でございます。これを男女比で見ますと、女性が八一・三%、男性が一八・七%という割合でございます。  一方、育児休業につきましては、育児休業取得者男女比というので申し上げますと、女性が九九・二%、男性が〇・八%となっておりますので、育児休業制度はほとんど女性でございますが、これに比較し、介護休業制度については男性取得割合が相対的に高くなっているという状況でございます。
  17. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 その中で、育児休業の方から先にちょっと伺いたいんですけれども男性がまだ日本では今お話しのように〇・八%、これもたしか私の記憶によりますと、以前に調べた三年前よりも八倍に上がって〇・八%という数字だったかと思うんですね。そのあたりなかなか意識がやはり、子育ては女がして当たり前、自分の親は男も見ていいかもしれないけれども、女が子育てして当たり前だという意識がまだまだ強い。やはりこれは男女ともにとれる仕組みになっていかないとなかなか、まあ今度の国会には男女共同参画基本法ども提出されて大きな法案になるんだと思うんですけれども、そういう意識からしましても、育児休業男女ともにとれるようにする、そういうことが必要だと思うんです。  例えばスウェーデンなどでは、男女ともとりやすくするために、法律をつくりっぱなしにしないで、政府の方がいろいろな調査をしまして、父子関係父親子供関係がいい家庭はどういう家庭かを調査したところ、子が一歳になるまでの間に何らかの形で父親育児休業をとった家庭で生涯父親子供関係がいい、だから、子供のためにいい、母親の助けになるというだけじゃなくて、お父さん自身の人生のために育児休業をとろうというようなことをやったりしているんですね。  そういう意味では、まだまだ日本では労働省の方の努力も足りないのかなというふうに私は思っているんですが、それで、ここに一つポスターを持ってまいりました。(資料を示す)これは皆様最近話題になっているので、労働省の皆さんもごらんになっているかもしれませんけれども、これは厚生省つくりました「育児をしない男を、父とは呼ばない。」という例の安室さんのパートナー、SAMさんが赤ちゃんをだっこしているポスターです。厚生省ではこのようなことをやっておいでなんですが、労働省としてはお父さんもとりましょうというためにどういうことをしていらっしゃるのでしょうか。
  18. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) 男女とも育児休業介護休業をとりやすくするというのは大変重要なことだと思います。私どもでは、従来からさまざまな手段、説明会やセミナーを通じまして労使意識啓発というのをやってまいったところでございます。  ただ、男性がとりやすい環境づくりを含めまして、やはり事業主さんといいますか、労使が自発的に休業をとりやすい職場の雰囲気といいますか職場環境をつくっていただくのが必要かと思いますので、十一年度からは、そういった休業をとりやすい柔軟な雇用管理制度を導入されているあるいは育児介護休業制度も法定以上の制度を導入されているといったような企業を、仮称ではございますが、「家庭にやさしい企業」というふうに定義をいたしまして、この「家庭にやさしい企業」を目指して御努力をいただくという普及促進事業を実施することにしておるわけでございます。  具体的には、今ポスターをお示しいただきました厚生省の、これは児童家庭局でおつくりになったポスターでございますが、その児童家庭局連携いたしまして、「少子化時代家族企業のあり方を考えるシンポジウム」というものを開催する、あるいは労働大臣表彰を実施するなど幅広く事業を展開してまいりたいと思っております。こういった事業を通じまして、男女とも、特に男性育児休業介護休業をとりやすい職場環境づくりというのに努めてまいりたいと思います。
  19. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今、「家庭にやさしい企業」の表彰などのお話もありましたが、労働大臣、これもしないよりは私はましかなとは思いますけれども日本ではすぐ何か意識啓発というとシンポジウムをしていいところを表彰すればいいみたいな、私はちょっとそれ違うんじゃないかというふうに思うんですよ、やっていけないとは言いませんけれども。  それよりも、先ほどちょっと御紹介しました、例えばいろいろな調査をしてみて、父親がとらなければ自分が損だというかとらなければならないと思うような意識を醸成するような調査などをしてそういうものを提示するとか、もっともっと、一部の企業だけを表彰して済むということではなくて、広くみんな、とる本人も事業主も男の人もとらなければと思うような働きかけがもっと地道に、一回シンポジウムをすればいい、年に一回表彰すればいいということではなくて、三百六十五日そういう努力が必要だと思うんですが、いかがでしょうか。
  20. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 当然経済活動の中でどう定着させていくかという議論が片方にあるわけでありますね。経営者側経営に支障を来すような過度な負担を突然強いてやっていてもなかなか定着をしないわけでありますから、それはそういう制度を推進した方が企業として評価されるんだという社会環境をつくっていく。つまりそういう企業の方が優秀な人材が集まるんですよということでやっていかないとなかなか、瞬間的にはいい制度でも、継続的に根づいていかないという点があると思うんです。ですから、少し時間はかかると思いますけれども、北風と太陽太陽方式でできるだけ定着をさせていきたいというふうに思っております。
  21. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 特にこの四月からは、労働基準法改正の中で、母性保護以外は女性保護規定がなくなるわけですよね。  それで、当面は激変緩和措置ということで、女性について三年間、年間の時間外は百五十時間を守るということになっていますが、その先の道筋としては、これは男女とも家族への責任育児介護責任を持っている人がそういうふうにきちんと家族とも向き合いながら仕事ができる仕組みにしたいと私たちも思っているわけです。そういうことからしましても、働く方だけ女性男並みに働いて、家庭の方では依然として育児介護を今九割女が担っているわけですね、この国では。そちらをもっと移しかえていくことをしていかないと、なかなかこれは二十一世紀大変かなというふうに思うのです。  もう一つの観点から来年度予算を見てみますと、事業所内託児施設助成金というのがここの主な項目には少なくとも私が見る限り上がっていないのですが、例えば深夜勤などをする女性もこれからふえてくるわけですね、労基法の改正によって。そうしますと、もっと事業所内託児施設助成というのはこれから大切になるのではないかと思うのですが、来年度予算はないのか、あるとすれば主な項目の中にないのはどういうわけなのだろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  22. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) 事業所内託児施設助成金につきましては、平成十一年度予算案の概要の八ページ、大きな項目では「2 職業生活家庭生活との両立支援対策の充実」の中に位置づけてございまして、さらに中項目で申します「(2) 育児介護を行う労働者が働き続けやすい環境整備」というところで十一年度予定額五十億ほど計上してございますが、この中に盛り込まれておるものでございます。  新規とか拡充事業を重点に書いてございますものですから項目としてここに明記していないということでございまして、重要性といいますか私どもが力を入れておる程度は従来どおりあるいは従来以上と申し上げてよろしいかと思います。  この中の十一年度予算額としましては、事業所内託児施設につきましては十三億九千二百万円予定をしておりまして、十年度よりは若干増額になっております。
  23. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 若干増額になっているということですが、これは概要の中に新規中心にしたから落ちているということですけれども、やはり大事なものは入れておいていただかないと、これを見た人の認識からしても、私は事業所内託児施設については、ああ、その程度認識なのかなという印象をまず持ちました。  それで、私は保育の方のことをずっとやってきましたけれども、確かに厚生省の方の認可保育所などで、そういう働き方が多様になっているのですから、多様なニーズにこたえる保育をする必要が一方ではあると思います。だけれども厚生省の側の保育のところだけにみんなかぶせていいのかというと決してそうではなくて、もともとは働き方が、小さい子がいれば安心して休めるような仕組みになることが第一ですし、それでも夜中に働く選択をした親の場合、その子が子供自身にとって一番いい状態でいられるのはどういうところなのか子供中心に置いて、もちろん認可保育所で一義的にはカバーをするのでしょうけれども、やはり夜多く女性を使うところなどは分担をしてそこの事業所内できちんと手当てをするというようなことがないといけないのではないか。  先ほどの「家庭にやさしい企業」のことでも児童家庭局一緒にということがございましたが、これから行革の方向の中で先は一緒になるという見通しも見えているわけなので、ぜひそのあたり連携をとってやっていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  24. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) これまでも私ども厚生省児童家庭局、特に保育行政との連携というのは密接にとってまいっておるところでございますが、平成十一年度におきましては、委員指摘のとおり統合ということもございまして政策連携をもっと強化しようということで、例えば先ほど申し上げましたシンポジウムを共同で開催するということ、あるいは市町村で公的な保育サービスのすき間を埋めるような緊急の保育サービスに対応するファミリー・サポート・センター事業というのを実施してございますが、これにつきましても厚生省と密接に連携を図るというようなところで十一年度事業を展開する予定にしておるところでございます。
  25. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。介護の方は結構世の中を動かしていらっしゃるおじ様方も力が入るのでいろいろ手厚くされていると思うんですが、それに引きかえ子供の方がかなり手薄になっているのではないかという印象をずっと私は持っていまして、やはり高齢者と子供はバランスよく支援をしていかないといけないと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それともう一点、介護休業につきましては、介護が必要な人一人について三カ月一回限りということで、非常に私はこれはとりにくいかなと思うんですけれども、この施行後、そのあたりをやってみての見直しというのはどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
  26. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) 介護休業制度につきましては、緊急やむを得ない場合家族が対応するという措置として三カ月ということで定めておるものでございます。また、この介護休業制度というのは、労働者が権利として取得をできるという大変強い権利でございますので、事業主の負担等も考え、要介護者一人につき一回の休業というような形になっておるわけでございます。  これは法律上最低限与えなければいけない休業ということでございますので、これを上回る制度というのを各事業場で導入していただくという、これは大変望ましいことでございます。育児介護休業法の中にそういった努力義務規定もございます。それに基づきまして、施行後事業主さんに対する指導等に努めてまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、この四月一日から初めて施行されるということでございますので、その施行状況を十分見守ってまいりたいと考えておるところでございます。
  27. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 雇用の分野での男女の均等な機会、待遇の確保ということでは、先ほど新卒者のところで女子学生の問題に触れましたけれども、もう一点、職場でのセクシュアルハラスメントの防止のためのことも新しく盛り込まれているわけですけれども、具体的にはどのようなことを考えていらっしゃるのか。これもやはり経営者の側の意識の形成というのが、経営者だけじゃありませんね、男性の皆さんの意識の形成というのがなかなか大変かなと思うんですけれども、具体的にどういうことを考えていらっしゃるでしょうか。
  28. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) 企業におきますセクシュアルハラスメント防止対策につきましては、企業のトップ層あるいは管理職の方々意識啓発というのが大変重要なことであると認識しております。  そのために、そういう方々を対象にしたセクシュアルハラスメント防止セミナーあるいはトップセミナーなどを開催しまして、トップ層の方々意識啓発に努めているところでございます。また、従業員研修の中で管理職研修というのが多く行われておりまして、そういうところへ伺いまして意識啓発も行っているところでございます。  さらに、指導のためには意識啓発だけでは不十分な点もございます。具体的なノウハウの提供というのも必要でございますので、平成十一年度予算案におきましては、実践講習ということで就業規則や倫理規定等の整備の仕方あるいは従業員研修の仕方など具体的なノウハウを与える講習会を開催する、あるいはセクシュアルハラスメント防止アドバイザーを設置いたしまして個別企業の具体的な取り組みについてのアドバイスを行う体制を整備する、あるいは実際に一般労働者向けに研修をしていただく場合に使っていただけるような啓発ビデオを作成するといったような事業を展開する予定にしてございます。
  29. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 もう一点、女性局長の関連で伺いたいんですけれども、随分前から話題になっていました女性の歴史と未来館がいよいよ今年度開館予定です。  これは働く女性にとってどのように役立つのかということと、以前から労働省女性局と総理府の参画室の間に、これは怨念と言っちゃいけないんでしょうけれども、いろいろな覚書が陰で取り交わされたりとか、女性の側からするといろいろと心配な点、懸念される点があったんですけれども、その辺の一体化というんでしょうか、壁を乗り越えていい形で女性たちが使えるような施設になるのかどうかということも含めて、一部には、NGOに貸される部分があってそのあたり労働省が取り込むのではないかというような、そういう不穏当な発言があるような状況が背景にあったりしますので、その辺のことも含めてお答えいただければと思います。
  30. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) 各方面の関係者の方々の御尽力によりまして、女性の歴史と未来館、これも仮称でございますが、これがただいま田町駅の近くに建設中でございます。平成十一年度中、今年度中には開館をさせていただきたいと思っております。  ここでは、働く女性のニーズに対応した有効な事業というものを実施するということにしてございまして、さまざまな方々の御意見を伺いました上で、例えば働く女性のキャリアアップを図るセミナーとか、あるいは起業家、アントレプレナーでございますが、女性の起業家支援のセミナーなどを実施する。さらには、働く女性の歴史、明治以降の歴史でございますが、これを振り返る展示、さらには女性と仕事の未来というのがどうなるかといったようなことを見通すような展示。それから、働いている女性の方はさまざまな悩みを抱えていらっしゃいますので、そういった方々に対応した相談事業、さらには国際交流等も実施する予定にしているところでございます。  これらの事業の実施に当たりましては、当然総理府を含めました関係各省庁と積極的に連携を図って実施する予定にしてございます。もちろん、各省庁だけではなく、各方面の特に女性方々の御協力、御支援を賜れば大変ありがたいと思っておるところでございます。
  31. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 せっかくできるものですから、ぜひ今おっしゃったように連携を各省庁とっていただくということと、先ほどちょっと申し上げましたようにNGO、市民がいろいろな活動をするための場所を求めていますので、そんなことも考えていらっしゃると伺いましたので、ぜひ市民の側の声も聞きながら、いい形で使える施設にしていただきたいというふうに思います。  残りが少なくなってまいりましたが、あともう一点、国際協力の関係で外国人研修生、実習生の受け入れ体制について伺いたいと思います。  これは高度経済成長のころに、もちろん途上国への技術移転ということもありますけれども実態としては国内で働いてもらう、単純労働は原則として入れないことになっているわけですけれども、そういう形で勉強をしながら働いてもらうという含みもあってできた制度かと思っております。  当初はたしか働く人口の一%でしたか、六十万人ぐらいを目標にやりたいというふうに考えられた仕組みだと私は記憶しておりますが、今は大体五万人ぐらいですよね。この全体像をどういうふうにとらえていらっしゃるのか、労働大臣に伺いたいと思います。
  32. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 確かに、平成九年に我が国に入国した外国人研修生は約五万人でございます。  外国人労働者全般の話、その中でも研修生として受け入れている、いろいろ政策の温度差は多少なりともあると思いますが、基本的に研修生として受け入れているという人は、母国に帰って母国の復興を支える中核的な要員になるわけでありますから、それは日本労働力を賄うという発想とは基本的に違うと思うんです。日本で学んだ技術が途上国で役に立って将来の指導者として頑張ってもらいたいということで、我々が持っている技術、ノウハウをお渡しするわけであります。  外国人労働全般について申し上げますと、やっぱり政府の基本方針というのは、専門職とか技術職とか他をもってかえることができないという原則に従って日本の就業状況を補完してもらうという、これは鉄則は貫いた方がいいというふうに思っております。
  33. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 とはいうものの、やはり研修生ですと研修中だからというので非常に安い賃金で、実際は今座学を減らして実働をどんどん多くしているわけです。その中で、それは不合理だということで実習生という制度ができて、そこのところは賃金をもらって働く仕組みにしたと思うんです。  これができるときに、ちゃんとその期間が来たら戻るのか、戻った後それがきちんと母国で役立つのか。いろいろ機械など一つをとってみましても、日本は高度な機械を使っていて母国へ帰ったら古い機械で全然役に立たないというような話もあるわけですね。そのあたりで、新しくつくった実習生の仕組みがうまく機能しているんでしょうか。
  34. 日比徹

    政府委員(日比徹君) 技能実習生は、平成五年に制度を創設いたしまして、以来毎年着実に増加いたしております。平成九年におきましては、新たに技能実習生になった者六千三百三十九人ということでございまして、これはそれなりの役割を果たしているものと考えております。
  35. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 去年の十二月の新聞ですけれども、中国人の実習生十六人が銚子市の協同組合に未払いの賃金千九百万円の支払いを求めて訴えを起こしています。このほか、二百人以上から支援団体が委任を受けているということです。  こういうようなことだと余りうまく機能しているとは思えないのですが、労働基準監督署が把握しているということですが、いかがでしょうか。
  36. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今お話のございました事件でございますが、全国生鮮食品ロジスティクス協同組合等、二百人を超える技能実習生につきましての管理事務等の委託を受けていたところが相当重大悪質な中間搾取の疑いがあるということで、私ども昨年調査を進め、強制捜査等を実施の上、昨年十一月に同組合の代表者等につきまして二名を逮捕し、千葉地方検察庁に送致したものでございます。  現在、起訴され、千葉地方裁判所において刑事裁判が行われているところでございます。私ども固めました容疑事実は、二百十九名の技能実習生について一億円余の中間搾取の事実があるというものでございます。  こうした事実関係が明らかになったこと等を受けて、昨年十二月に支援する団体が十六人の方についてこうした代表者と関係者に対して賃金の支払いを求める民事訴訟を提起され、その後今年二月に六十人分についても同様の民事訴訟が提起されておるというふうに承知いたしております。私ども両裁判について、そうした今後の動向を関心を持って見守っていきたいと思っておるところでございます。
  37. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 このような訴えを起こされるようなのは本当にひどい例であって、これはまだ氷山の一角なのではないかというふうに思うわけですね。  私もこの外国人実習生のこともずっといろいろフォローしてまいりましたけれども、実際に労働力が入って──労働力というと労働省はそうおっしゃらないかもしれませんが、実態としては労働力が入ってくると思って受けとめている中小企業が結構ありまして、ところが来るのは人間なわけですよね。そのあたりの受け入れ体制も、例えば住む場所に行ってもごみ出しをいろいろするのにどうしたらいいかわからないとか、大体住める場所も外国人だと貸してもらえないとか、家族は残して来なきゃいけないわけですね。そんなことも含めて、これは必要な三Kというか日本人がやらない部分の労働を保障するというのではなくて、外国から来てくれる人の人間として受け入れる体制というのが社会全体にも整っていませんし、そのあたりいろいろ問題が多いのではないかなという感じを私は持っております。  ですから、そのあたりのフォローをもっとしっかりしていただきたいということと、先ほど労働大臣は非常に建前といいましょうかもともとあるべき姿をおっしゃいましたけれども実態として中小企業の四社に一社は外国人労働者がいなければやっていけないと答えている調査もあるわけです。そういう意味では、単純労働につきましても、今はリストラの時代ですからいろいろそのあたりも以前ほどきつくはないのかもしれませんけれども、これから二十一世紀、間違いなく労働力は不足してくるわけですので、そのあたりの外国人の方の位置づけというのももう一度見直しが必要なのではないかと私は思うんですが、労働大臣はどのようにお考えになっているでしょうか。
  38. 甘利明

    国務大臣甘利明君) いわゆる三K職場に関して日本人の労働力の確保が難しい。景気が回復をしてきて、失業情勢が改善をしてくるに従ってさらに深刻になるであろう。それはそうだと思います。思いますが、三Kだから日本人がやらないので外国人にやらせるというのは、これは人種差別じゃないのでしょうか。  私は、外国人労働力をどう日本労働市場に取り入れるかというのは、単に労働力の不足を補うという問題をはるかに超えて大きな問題だというふうに思っております。企業側が景気がよくなった悪くなったときのショックアブソーバーに使うおそれもありますし、そうしますと先進諸国で起きているような社会問題としてこれをどうとらえるかということにもなるわけであります。本当に外国人労働者に対して尊厳を持ってちゃんと対処するのであるならば、まさに準日本人として生涯そこに定着をさせるというぐらいの覚悟を持っていかないと、当面このときだけ使おうというような安易な政策ではこれは後々禍根を残すというふうに考えております。
  39. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今の外国人労働者のこと、先ほどから申し上げている女性のこと、それからきょうは伺いませんでしたが高齢者のこと、これも大体どちらかというと働き盛りの元気な男の人を基準にしてきた中で弱い立場になってくるわけですね。全体に規制緩和の中で安心して働けるためのセーフティーネットが一層そういう立場の人には必要になってくると思いますので、ぜひ予算編成の中でもそのあたりへの配慮をこれまで以上にお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  40. 谷林正昭

    谷林正昭君 民主党・新緑風会の谷林でございます。  小宮山委員に続きまして少し大臣に御質問なりお聞きしたいということで、よろしくお願いいたします。労働委員会に所属しまして初めての質問でございますので、よろしくお願いいたします。  まず最初に、大臣の所信表明の十ページにあります労働災害事故についての考え方でございますが、実は私の父は今生きておれば七十八歳です。私が高校二年のときに労働災害事故で亡くなりました。トラックの長距離運転手をしておりまして、トラックの荷台から転落をして、そして一言もしゃべらないで、事故から六時間ぐらいたって亡くなりました。  そういうことを実は思いながら大臣の所信表明を聞いておりましたし、労働災害ということに対してどういう基本的な考えをお持ちなのかなというふうに、せっかくのこういう立場になりましたのでぜひお聞かせいただきたいと思います。そして、労働災害というものを、現場では大変な状況になってきているというふうに思いますし、なくする、撲滅をするという観点でぜひ大臣の気持ちを聞かせていただきたいというふうに思います。
  41. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 労働災害というのは基本的に何らかの不注意があって発生するものでありますし、これは災害に遭遇した当事者はもちろんでありますけれども、その家族も大変な不幸に巻き込むということでありますから、撲滅をしていかなければならない、それは当たり前と言えば当たり前のことでありますし、労働省、省を挙げて労働災害の撲滅に取り組んでいるところであります。  その中で、死亡災害と重大事故をとにかく減らしていこうということでさらに重点を置いて取り組んでいるわけでありますが、死亡者数が平成十年初めて二千人を切りました。だから胸を張ってということではないんですが、二千人自体も多いですからさらに減らしていかなきゃいけないわけでありますが、とにかく重大事故をなくすということで省を挙げて今取り組んでいるところであります。  昨年の三月に第九次の労働災害防止計画というのを策定したわけでありますが、各事業所に基本的な注意事項を怠ることがないように等々、あわせまして今災害防止の基本的な取り組みについて徹底をさせているところであります。  労災というのはもちろんいろんな原因があるし、年齢別にいいますと、例えば中高年齢になってきますとどうしても注意が散漫になるといいますか、ごく基本的な注意を怠ったということで重大事故につながっていることもありますから、そういう職種別、それから年齢別の注意喚起の仕方等もめり張りをつけながら指導しているところでございます。
  42. 谷林正昭

    谷林正昭君 どうもありがとうございました。ぜひ現場の方に大臣みずからひとつ徹底をお願いいたします。  続きまして、ちょっと予算とはかけ離れますけれども、私も昨年までは労働現場におりまして、一生懸命一係長として働いておりました。そういうことを考えますと、先ほども言いましたように、私は小さいときから親の一生懸命働いている姿を見ながら頑張って、そして私も親がいないということもありまして、一生懸命頑張って自分子供を育てる、こういう立場で、いわゆる団塊の世代の当たり前のごく普通のサラリーマンとして幸せを求めて実は頑張ってきたわけでございます。  そういうことをよくよく考えてみましたら、そういう働き方の価値観、こういうものがそれなりに灯台の明かりのようにあったような気がいたします。そういう方々が戦後の日本を支えてきて、二十世紀の繁栄を支えてきた、そういうふうに自負をしてもいいのではないかと思ってこれまで頑張ってきました。  そういうことを考えておりますと、この不景気あるいは景気の状況を考えたときに、労働者の二十一世紀における灯台の明かりとは一体何なのか、幸せ観とは何なのか、そういうものが、雇用の安定だとか流動化だとかということに絡んで非常に心細くなってくるわけでございますが、大臣の方で、労働者としての幸せ観、二十一世紀の灯台の明かりのような目指すもの、そういうものをもしお持ちでしたらお聞かせいただきたいと思います。
  43. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 非常に難しい御質問でありまして、私が適切に答えることができるかどうかちょっと自信がないんですが、働くということに関して、働くということが労働者にとってどういう位置づけなのかというのは、戦後とそれ以前とは変わりつつあるんだと思うんです。かつては、働くということはやっぱり苦痛を伴うことでありますから、働くことによって給与を得るのは苦痛に対する対価なんだという多くの労働者にとっては位置づけだったのかなと。しかし、憲法にも規定されているとおり、勤労というのは、もちろん義務ではありますけれども、権利なんですね。  働くということは人生においてどういう位置づけかといえば、基本的には自分の思いが世の中に実を結んで形になってあらわれてくる、つまり創造なんですね。自分が世の中の創造性に関与していくということなんだと思います。だから、それは働くイコール苦痛ではなくて、やっぱり働くイコール充実、働くイコール喜びというふうに変わってきつつあると思うし、変わらなければならないんだと思うんです。かつてが苦痛の代償として給与を得た、今は創造の分配としての給与だと思うんです。ですから、勤労の喜びであり、これはもう突き詰めれば、人間は基本的な欲求というのがあります。食欲、睡眠の欲、あるいは種族維持の欲、それから働くための欲望を満たしていくということなんだと思います。  ですから私は、日本中心に、デンバー・サミットで橋本総理がアクティブエージング、活力ある高齢化ということを提唱されて、今や国際語になっているんだそうでありますが、何年で働くのはおしまいじゃなくて、自分の意欲ある限り働く場があるという社会がやっぱり一番いい社会なんだというふうに思っております。
  44. 谷林正昭

    谷林正昭君 ありがとうございました。私の考えとよく似ているのではないかなというふうに思いました。  そういう意味では、ちょっと横へそれますかわかりませんけれども、今マスコミあたりでは盛んにフリーターというそういう生き方、労働の仕方、こういうものをもてはやしているような風潮もあるんですが、私は決して悪いとは言いませんけれども、そういうもてはやすという風潮に対して、あるいはそういう働き方に対して、大臣はどういう御所見をお持ちでしょうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  45. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 個々人の生き方ですから、断じてこれはけしからぬと言うのもどうかと思いますけれども、いわゆるフリーター、フリーターというのは何語かよくわからないんですが、フリーアルバイターなのか、アルバイト仕事を転々とされる、それで自分の生き方に従って自由奔放に生きるというのでありましょうか。  このフリーアルバイターの方の意識調査、いろんな調査があるものだと思うんですけれども、フリーアルバイターをなぜしているかという調査をしますと、多く返ってくる回答が三つあります。一つは、アルバイトの方が働く時間が自由に決められるから、それからもう一つは、自分に合う仕事を見つけたいのでそれまではアルバイトをする、もう一つ大きなのが、仕事以外にしたいことがあるからという、この三つが大きな理由になっているんです。  先ほど来質問がありましたけれどもインターンシップ制度というのは、就職する前に自分に本当に合う仕事かどうかを事前にチェックするという意味がかなりあるんですね。もちろん働くということは大事なことですよということを学生の間から認識する、この当たり前のことを認識させなきゃならないということが一つの苦悩なんですが、そういう意味と、それからミスマッチをなくすために、思っている仕事の現場と実際の現場との温度差を感じてもらって、だからインターンシップというのは一つのことだけじゃなくて私は幾つか経験してもらった方がいいと思うんです、三つ四つ。夏休みが中心なんでしょうけれども、期間が余り短いと経験にならないんじゃないかというのもありますけれども、一週間とか二週間でも複数の職種の現場を経験してもらった方がいいと思うんです。そうやって自分の思っているイメージと仕事の現場との温度差をちゃんと感じてもらうということが大事なんですが、そういう意味では、自分に合う仕事を見つけたいのでそれまではということがありますから、これはまさに個人版インターンシップをやっているんだというふうに思うんです。  ただ、自分はもう何かしたいことがあるから、それが見つかるまでは食っていければいいんだという御本人の価値観もあるでしょうから、こういうフリーターというのが広がるというのは、社会が、ちゃんとした仕事が見つけられるタイムラグがかかってしまうということでありますから決していいことではないと思いますけれども、絶滅するという種類のことでもないのかなというふうには個人的には思います。
  46. 谷林正昭

    谷林正昭君 私も、大臣おっしゃるように、自分に合う仕事を見つけたい、こういうことは盛んにやっていただいていいというふうに思っておりますが、マスコミの方で余りもてはやすような風潮だけは何か慎むべきではないかなという自分の考えもあります。  続きまして、ちょっと抽象的な話になって恐縮でございますけれども、今、経営サイドの方ですか、産業の方ですか、盛んに雇用の流動化だとか労働移動だとかという言葉を使いながら、まさに二十一世紀の働き方を模索している最中だというふうに思いますが、いざ今度は働く人たちの立場に立った場合、今言われておるようなのは恐らく、こんな言い方をしたら大変失礼かもわかりませんけれども、非常に弱い立場の人たちが移動の対象になったり流動の対象になったり、こうなってしまう。あるいは、弱い立場から何とか強い立場にはい上がろうとする企業や産業、そういう人たちの犠牲という言葉は失礼かもわかりませんけれども、に立たされた人たちが流動化の対象になったり移動の対象になったりする。こういうことを考えますと、流動化という政策と今置かれている日本の雇用状況、こういうものとは一線を画しながら議論をする必要があるのではないかというふうに私は思います。  そういう意味では、十五カ月予算の中での三千億円と七千億円、そしてそこから百万人を雇用創出する、そういう百万人雇用創出というものもありましたし、七十七万人の具体的な雇用創出というのも今出てきております。それと、流動化に伴うそういう雇用創出なのか、あるいはそうではない日本の将来を見据えた労働移動、雇用創出、こういうような状況になっていくのかということが一つポイントになろうかと思います。  私の考えは、今の状況は、あした、一カ月後の話をするのではなくて、きょう話をしなければならない状況ではないか、きょうのことはきょう話す。今の雇用状況は、景気がよくなれば回復をするということではなくて、半年や三月で終わるのではなくてもっと続くのではないか。一年、二年、ひょっとしたら三年という、企業は立ち直っても雇用状況はよくならない、こういうような状況に今置かれているのではないかというふうに私は思います。そういうところで、政策がそこで違ってくる、どういう政策をとるべきかということが違ってくるというふうに思いますので、ぜひそこらあたりの現状認識を大臣の方からお聞かせいただきたいと思います。  もう一つは、日本労働者の賃金、外国から見たら高いとかあるいは非常に高いとか、それが産業の空洞化になって外国へ出ていったというようなこともありましたけれども、そうではなくて、労働者が一生懸命働いて労働条件を上げてきたものが裏を返せば日本の国の基盤をこれまでつくってきて、そして曲がりなりにも、これは合っているか違っているかわかりませんけれども、中流階級意識を持ちながら幸せを求めて頑張ってきた。そういうものと、今のこの雇用の流動化というものは非常に心配な状況に行っているというふうに思いますので、ちょっと抽象的な話で恐縮でございますが、大臣の御所見を少しお聞かせいただきたいと思います。
  47. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 谷林先生の認識と私の認識は割と近いと思うんです。ただ、今の質問の中で五つ六ついろんな話が出てきましたので、答弁漏れがありましたらちょっと指摘をしていただきたいんです。  まず、労働移動に関しては、現状は企業の都合によって吐き出されてしまうのをどうするんだというのに追い回されているといいますか、それは事実だと思います。ただ、本来の形というのは、産業形態がいろいろ変わっていきます。つまり、時代的役割を果たし終えた部門から新しい時代を担っていく部門に職業能力を持った労働者がちゃんと移動できるようにしないと日本全体が沈没をしてしまう。その移動については、企業のもちろんニーズも当然でありますけれども労働者の意欲的チャレンジをちゃんとフォローしてあげるような、労働者の側の主体性を補完するようなことに配慮しなければならない。つまり、企業が要らない人材を放り出すのを何とかしろという話ではなくて、それもちゃんとフォローする体制は大事ですが、労働者側の意欲的なチャレンジに道をつけてあげるということをちゃんと中心に据えて取り組んでいかなきゃならないというふうに思っております。  それから、今の状況というのは単に景気がよくなったらすぐ解決するものではないのではないかと、それは御指摘のとおりかもしれません。というのは、今のこの不況というのは循環型だけではなくて産業構造が転換を余儀なくされているという点にその根の深さというのがありますから、単に景気が回復したら雇用情勢があっという間に解決するということではないのかもしれません。そこは新しい産業が日本経済を担っていく、それに適切に労働力供給が行われるように労働省としてはいろんなチャンネルをしっかりとつけていくことでありますし、その間にいわゆる職業能力のバージョンアップについて労働者の側が幅広に選択ができるような措置をきちんと敷いておいてあげるということは大事なことだというふうに思っております。  日本経済の今の苦悩というのは、一つには、プラザ合意以降、国際化に備えるべき部門がそれへの対処を怠ったという点が大きいんだと思うんです。貿易に関している企業は急激な為替レートの影響をもろにかぶって、それに対処せざるを得ない構造改革というのに自分企業分野内で取り組まなきゃならなかった。しかし、国際化の北風にさらされていない部門というのは、金融を中心に相変わらず国内対応だけで済んでしまった。それをいきなり貿易部門と同じように、例えば金融とか流通とかサービス部門がいきなり外と内の壁を取っ払ってしまったものでありますから、これに対しての衝撃波を吸収し切れないでいる。本来は、プラザ合意以降、例えば製造業がなしてきた努力をそれ以外の分野でも既にそのときに自主的に取り組まなければならなかったと思うんです。それを外的要因で取り組まざるを得ないその衝撃波が一遍に来ているものですから、大変な事態に陥っているんだというふうに思っております。  情報通信の分野でも規制緩和はもっと前倒しでやっていかなければならなかったのでありましょうし、この分野に関しては予算措置よりも規制緩和でかなり新規事業が望める分野でもあります。つまり、政府にお金がかからないで新事業展開ができるんじゃないかというふうにも思っておりますし、あらゆる分野で新事業創造についての障壁を取っ払っていくということは大事なことでありますし、そこにスムーズに労働力が供給できるように、供給というと物みたいでおしかりを受けるかもしれませんが、しっかりチャンネルを持っていく。職業能力をつけるために労働省ができること、それから民間に任せること、両々相まってバージョンアップを図っていくことが大事だと思います。  それから、最後の賃金水準の点であります。  もちろん、賃金を幾らにするかというのは労使で自主的にお決めになることでありまして、この会社の賃金はこうでなければならないなんて労働省が言うべき性質のものではありません。ただ、日本の賃金が上がってきたということは、生産性のアップを反映して上がってきているわけであります。企業が倒れてもいいから賃金を上げていきますなんという企業はなかったと思いますから、生産性の向上を賃金に配分したということでありますから、そういう経過をたどって賃金が上がったということは、我々は外に向かって胸を張っていいことなんだというふうに思っております。これからも世界一の賃金水準ができるように企業がぜひ生産性向上に努めていただきたいと思います。
  48. 谷林正昭

    谷林正昭君 大変心強いお言葉でございます。私もそういうふうに思っておりました。賃金が高いことは悪いことではない、やっぱりその国の誇りであり、企業の誇りである、そういうふうに思っておりました。また、そういうふうに今後も進めて政策としていかなければならないんではないかなというふうに思っております。  それで、恐縮でございますが、次に具体的な質問に少し入らせていただきます。  まず基本的に、今度の予算につきまして、先ほども大臣の認識と私の認識を余り変わらないように思ったんですが、まずこれは失業対策を最重点に置いた予算なのか、あるいは雇用創出やいろんな労働行政全般に、もちろんそうだとは思いますよ、思いますが、私はもっともっと失業対策に重点を置いた緊急避難的な予算であるべきではないかなと思っているんですけれども、大臣のこの労働省関係予算全般についての認識をお願いしたいと思います。
  49. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 来年度予算は、十年度補正と合わせまして十五カ月予算ということを標榜しているわけであります。補正というのは当然臨時緊急の必要性があるから組むわけでありますけれども、そこでは現状の雇用失業情勢に積極果断にどう対処するかということが重点的に盛り込まれております。  もちろん新年度予算もそういう現状の打開ということに重点を置いておりますから、即効性ということには十分配慮をしておりますが、同時に抜本的に、先ほどの先生の御指摘のとおり、現状、産業構造が変わる中で雇用政策はどうあるべきかという問題を突きつけられているわけでありますから、そこの部分にも目配りをした予算でありますから、短期的な処理だけの予算でもないし中長期的処理の予算でもない、両々相まった対応と、玉虫色の答弁になりますが、そうだというふうに思っております。
  50. 谷林正昭

    谷林正昭君 私はもっともっと緊急的な避難の時期ではないかなと思いますので、失業対策ということに対して積極的にもう少しやるべきではないかなというふうに指摘をさせていただきます。  それでは次に、具体的な内容で恐縮でございますけれども、昨年の十月一日に労働基準法改正によって紛争解決の窓口の制度ができまして、ところがなかなかそれが労働者には見えない、あるいは広報不足ではないか、そういう現場の声もあります。例えば連合の何でも相談というダイヤルがありますが、そこへはたくさん電話がかかってくる。ところが、じゃ基準局の方、その窓口にどれだけかかったのかということになりますと、もう雲泥の差があるというようなことも聞いております。  そういうことで、まだ相談件数の取りまとめはされておいでにならないと思いますが、私の方は、一方的で恐縮でございますけれども、ぜひ労働者に見えるような広報をもっともっとして、相談しやすい環境づくりをお願いしたいなというふうに思います。  一方では、ことしの四月一日から久しぶりに労働基準法改正がなりまして施行されるということになっております。その周知徹底につきましてもぜひお願いしたいというふうに思いますが、一つの私の提案といたしましてお願いしたいのは、ぜひ全事業所に、ことしの四月一日からこうなるよ、あるいは四月一日過ぎてでも、あなたのところはどうしていますか、どういう徹底の仕方をしていますか、こういうことぐらいはやるべきではないか。働き方が変わってくる時代、ましてやそこに働いている人たちがその企業が将来どうなるかということを非常に不安に思っている、こういう時期でもありますし、事業者に対してそういうことをぜひ徹底をしていただきたいなというふうに思います。  労働基準調査会が発行しております基準法改正のこういう冊子も、現場ではこれに基づいて事業主を集めて説明をされたということも実は聞いております。しかしながら、一回きりの講習会だけでは私は徹底しないというふうに思いますので、そこに働いている人たちが安心して働けるような環境づくり労働省として下に徹底する、あるいは現場でもその徹底をするためにも努力をいただきたい、このように思っておりますが、御見解があれば、ちょっと時間がありませんので簡単にお願いいたします。
  51. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 二点御指摘ございました。  一つは、改正労働基準法によりまして創設させていただきました紛争解決援助の仕組みでございますが、これは法案の成立後一週間足らずで施行したこともございまして、御指摘のように広報等研修がその後になったこと等もございまして不十分であった点は御指摘のとおりかと存じます。  私ども、潜在ニーズは非常に高いものがございますので、こうした点の普及に努めて、ことしに入りましてからそうした申し出を希望する方も出てきて、十数件そういった取り扱いを始めている状況にございます。今後ともそうしたものの普及に努力をさせていただきたいと存じます。  それから、改正労働基準法の大部分が施行されます四月一日に向けての周知徹底でございますが、私ども、今回の四月一日施行の中には時間外労働の上限基準を初め大変重要な事項が含まれておりますので、相当な部数のパンフレット、リーフレットを作成いたしまして、業界団体とも、先生御指摘ありましたようにただ一回の集団指導で集めるのではなくて、業界ごとにさらにきめを細かくしてみたり、いろんな工夫で集団指導、周知活動を目下労働基準監督署を挙げて展開しているところでございますので、先生の御指摘の趣旨に沿えますように、残る期間も精いっぱいそうした活動に汗を流させていただきたいと存じます。
  52. 谷林正昭

    谷林正昭君 ぜひよろしくお願いをいたします。  次に、お聞かせいただきたい問題がございます。  大臣の肝いりで実はできたというふうに思っておりますが、昨年の十二月十日に、隣においでになります先輩の山本保議員と大臣がやりとりをされている内容、議事録を見させていただきました。それはどういうことかといいましたら、いわゆる中高年の労働移動の支援特別助成です。この制度を何とかつくりたい、今あるけれどももっと活用しやすいものにしたい、こういうような答弁をされながら、それを即実行に、今回出てきたなと、さすがだなというふうに思いました。  ところが、私は労働組合の役員も少ししておりましたのでついついうがった見方をする癖も出ているんですけれども、これを見ますとどうも、大企業の人たちが自分の子会社へ出向させられる、そういうときに、大企業が痛みを感じないような制度に終わるんではないか、あるいはそれを悪用されるんではないか、そういうふうな気がいたします。本来そうであっては大臣の気持ちが通じないというふうに思うのでありますが、そういうことを考えたときには、そこに移動する方が失業しないで移動するんですから一歩前進だと思いますし、いいことだと思います。しかし、そこで、出向先に労働条件を合わせるということも当然世の中のならわしだというふうに思います。そうしたときに大幅に労働条件がダウンをするという現象も出てくるんではないかなというふうに思います。  そういったときに、やはり何らかのセーフティーネットといいますか、生活設計が根底から崩れるような状況にならないようなものを、せっかくの制度でありますから、恨まれる制度ではなくて、あってよかったという制度にしていただきたいなというのが私の考えでございますので、ぜひ、これは大臣では大変申しわけございませんので、ひとつ考え方をお聞かせいただきたいなというふうに思います。
  53. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 先生が御心配の御指摘の件、実は私もこれ幸いとして使われないようにどうするかという点は心配をしました。  私がこの制度を提案した趣旨は、最後の最後に整理解雇としてほうり出されちゃう、そこのところにしかしもう一回考え直すという、押し返すような施策はないだろうかということで考えたわけであります。  世の中を見渡せば、これから伸び行く産業もゼロではないから、そこに対して話をつけてきた場合には相手に対して支援が行くような措置ということでつくりまして、それが発想の原点でありますから、系列関係にあるところに出向させたり転籍させたりとかするときにはこれは使うものではないということで、そういう資本系列下にあるときにはこれは対象にならないということにしておりまして、本当の意味で最後の最後の手段で整理解雇をせざるを得ないというときにもう一回考えてくれと。自分のグループ内で対応するのはそれはもう自分たちの努力でやることと。それから外に、もう外部労働市場に吐き出さざるを得ないときに、この手法で自分の系列下ではないどこかの会社で雇用の可能性があるものを探してきた人には相手に対してということでやっておりますので、基本的にリストラの支援として使われることは想定をしておりません。
  54. 谷林正昭

    谷林正昭君 安心しました。  それでは続きまして、産業雇用情報ネットワークの構築の関係が出てまいっております。ここで少し私、非常に開かれた、時宜に合ったやり方ではないかなというふうに思います。  そこで、事務的なことで恐縮でございますが、一つは、その場に職業紹介をする人たちを将来置く検討があるのかどうか、そこで職安へまた行くということなのか、あるいは近い将来その場に職業紹介をする人材配置ができてくるのか。要は第二の職安ができるという意味なんですね。そういうことになるのかどうかということをひとつお聞かせいただきたい。  ネットワークの組織以外から、例えば家庭からとか、そういうところからアクセスできないか。こんな言い方をしたら不謹慎かもわかりませんけれども、人がたくさん集まるところ、例えば競馬場とか競輪場とか、こういうところは職をどうしようかなと思った人だとか困ったなという人たちもたくさんおいでになると思うので、身につまされて利用するかもわかりませんが、そういうような考えはあるのかどうか、少しお聞きしたいと思います。
  55. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) このハローワーク情報プラザにつきましては、情報のミスマッチといいますか、それをできるだけ少なくするという観点から設置をしたいというふうに思っています。今、職業安定所でも全国でこれをネットワーク化いたしまして、一カ所の安定所で全国の求人情報もとれるというふうにしておりますが、これをさらに充実しまして、経済団体の持っている情報も見れる、安定所の情報も見れるというふうなことでこの情報プラザを設置いたしまして、労働者の方が自分でパソコンで検索できるというふうなことを四月からしたいということで計画しているものであります。そこの場所には相談員の方ももちろん置きまして、必要に応じては職業相談に応じるとか職業紹介もできるようにしたいと思いますが、これをさらに将来充実するかどうか、これはまた施行状況を見ながら検討したいと思います。  それから、このプラザは最低各県に一カ所以上設置したいというふうに考えていますが、当然利用しやすいように、交通の便利なところ等そういったところを選んで設置をしたいと思っております。
  56. 谷林正昭

    谷林正昭君 ぜひ利用しやすい環境づくりをお願いしたいなというふうに思います。  次に、教育訓練給付制度の推進について、時間がございませんので簡単にお尋ねいたします。  実は、どういうところに行ったらこの対象になるかということで、ちょっと官報を全部見てみました。大体、ホワイトカラーの方が困ったなといったときに、ではこういう学校へも行こうかなと、一定の知識があって、学歴ではなくて一定の学識があって、そういう方々が挑戦してみようかなというようなところがほとんど指定されているような気がいたします。  では、今の状況にあってそういう方々ばかりかなというふうに思ったときに、もっと本当に生活を変えよう、例えばトラックの運転手になりたい、しかしトレーラーの免許を持たないからだめだというふうに、そういう自動車免許などは全く対象にならないというふうに思っておりますし、板前になりたいというのも対象にならないと思いますし、安く衛生の関係の資格は取れるかもわかりませんけれども、そういうようなものは対象にならないのかどうか。あくまでもこれだけで、広げる考えはないのかどうか、そこらあたりを少しお聞きしたいというふうに思います。
  57. 日比徹

    政府委員(日比徹君) 教育訓練給付の指定講座、これにつきましては昨年十二月以来指定を始めておりまして、今後もさらに追加指定ということは予定いたしております。  ちなみに、ホワイトカラー系でないものとしまして、調理師免許の関係につきましては現在も三講座指定いたしております。それから、大型自動車の第二種免許等につきましては、私どもは実際の教習のあり方が期間その他の要件を満たしておれば指定するにやぶさかではございませんけれども、これは私どもが教育訓練機関に、おたくもぜひ指定してしまいたいということは、後の事務の処理のこともございまして、後の事務の処理といいますのは教育訓練給付の的確な給付のために一定の事務を負っていただかないといかぬという点もございますので、私どもから強制的には指定できません。それで、申し出があったところということでやっておりますので、運転免許の関係につきましては指定してほしいと申し出ている教育訓練機関が今時点ございません。  今後におきましては、適宜必要なものについて追加的に指定してまいりたいと考えております。
  58. 谷林正昭

    谷林正昭君 ちょっと冷たいような答弁だったかな、もっと現場は深刻じゃないかなというふうに私は思います。  時間の関係もありますので議論をしている余地はありませんが、最後に大臣にお願いしたいことがございます。  先ほども大臣の方からありましたように、雇用の安心というのはまさに働くという喜びを生み出すものだというようなことが、将来には国を繁栄させる、あるいは家族の幸せだとかそういうことにつながっていく、そういうことだというふうに私も今こういう議論をさせていただいてわかりました。企業が立ち直っても、雇用の改善がなされない、ますます失業がふえるというようなことになったら、私はまさに国の繁栄というのは絵にかいたもちになってしまうのではないかなというふうに思います。  労働者は一番正直な納税者であります。それから、労働者は確実な消費者であるというふうにも思っております。そういうことを考えますと、まさに今は非常事態であって、そういう方々の現実的な対応を緊急的に今求められている時期ではないかなというふうに思っております。ぜひ雇用の創出とそれからこの失業対策、これをめり張りのある政策というものをとっていくべきではないかなというふうに最後に申し上げまして、もし大臣の方で御所見があればお聞かせいただいて、私の質問を終わらせていただきます。
  59. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 雇用の安定というのはまさに社会の安定の重要な柱であります。かねてから労働省は、失業をどう防ぐか、あるいは再就職をどう迅速に可能にするかということを中心に取り組んでまいりましたが、今般、統計史上最悪の失業率にかんがみ、雇用の場をつくり出す政策まで踏み込んで政策提言をいたしております。このことは我が省の範囲内の処理できることだけではなくて、各省に呼びかけて、それぞれの役所で雇用をつくり出すことにどう資するかという切り口で政策を考えてもらいたいという問題提起をしてまいりました。  そうした経緯を踏まえて、先般の産業構造転換・雇用対策本部におきまして、一両年のうちに雇用創出が期待をされる四分野において七十七万人の雇用創出、これを目指して頑張るんだという決意表明もなされたところでございます。  今後とも、先生の問題意識をしっかり踏まえまして、迅速果断な政策の策定、実行に取り組んでいきたいというふうに思っております。
  60. 谷林正昭

    谷林正昭君 どうもありがとうございました。
  61. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午前十一時四十一分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  62. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) ただいまから労働社会政策委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  63. 山崎力

    山崎力君 参議院の会の山崎でございます。  それでは、大臣を中心に議論を進めてまいりたいと思いますが、まず最初に、いろいろ言われておりますけれども労働者の問題として、今はやりのことではないんですが、昔からの問題として出稼ぎ問題、あるいは季節労働者というような形の問題がございました。そういったものが今どういう現状にあるのか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  64. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 平成年度数字ですけれども、出稼ぎ労働者全国で約十万人でございます。出身地別に見てみますと、青森県が最も多くて二万八千百人、二八%ぐらいになるかと思いますが、以下、北海道、岩手県、秋田県、沖縄県となっておりまして、北海道、東北地方で全体の七五%を占めております。これは平成年度ですが、就労地域別に見ますと、東京を含む南関東が最も多くて約六〇%、産業別には建設業が六七%となっていまして最も多い状況、こういうふうな状況でございます。
  65. 山崎力

    山崎力君 私の選出県である青森が出稼ぎ日本一であるということはもう前々から言われておりまして、そういった面でも、県の方の資料から見ますと、昭和四十九年度八万人を超えていた出稼ぎ者が、今の御指摘にもありましたように二万八千人強という、かなり減ってはきているわけです。  いろんな事情がそこにはあるわけですけれども、そういったところで、一つ労働市場といいますか、そういった点から考えて、かつてのバブル期が大きな原因になったのかならないのか。今バブルの後遺症に労働市場が悩んでいるということから考えると、一つの示唆に富む点ではなかろうかと思うんですが、そのバブル前後、そういった点でどのように変わってきているかということを教えていただきたいと思います。
  66. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 全国の出稼ぎ労働者数は、いわゆるバブル経済期、この当時は約二十万人ぐらいおられましたが、現在では、先ほど申しましたように、十万人に減少しております。  なお、出稼ぎ労働者の数という点で見ますと、バブル期以前、昭和四十年代が大変多くございまして、そのピークは昭和四十七年度の約五十五万人ということになっておりまして、以後毎年減少を続けております。  バブル期とどういうふうに状況が変わったであろうかということですが、まず出稼ぎ労働者の高齢化現象が一つ見られます。六十歳以上の方が例えば昭和六十二年の一〇%から平成八年には一七・六%に増加をする、あるいは専業的な出稼ぎ労働者割合が増加をするというようなこと。あるいは出稼ぎ者自身の意識の変化というものがありまして、地元に就労機会があればやめたいと、こう考えておられる方が昭和六十二年には四三%ぐらいでしたが、平成八年には六割ぐらいの方ができれば地元で仕事をしたいと、こういうふうな意識でございます。  こういったところで、出稼ぎ労働者意識にも、それから構成といいますか、そういった点でもかなりの変化が見られているというふうに考えております。
  67. 山崎力

    山崎力君 高齢化ということなんですけれども、これは私の方から解説するのもなんですが、それではなぜ後追いの人が出稼ぎに来ないのかということを考えたときに、農業の構造改善的な問題がございます。  先ほどの答弁にもありましたように、北海道、東北が七五%である。これは、冬の間農業ができないから、その間遊んでいるよりはということからスタートをした。もちろんそれだけの収入が得られないという前提があるわけですけれども、それがいまだに続いているんです。そういったところとまた別の次元でのところを考えてみますと、老齢者になってきたときに地元に戻らなきゃいかぬのだという気持ち、帰巣本能というとおかしいですが、帰属意識の強い世代がだんだん老齢化してきて実態的に数が少なくなってきた。もう東京の方あるいは先ほどの南関東に就職して、そこでいいところはいいと。  逆に言えば、あの当時の、私の若いころのことを言いますと、子供たちが田舎の家にいておじいさん、おばあさんがそこを面倒見ている、だから中核の働き手の人たちが冬期間出稼ぎに出る、これが典型的な形態でありました。奥さん連れの方もいれば単独の方もいらっしゃるというのがあったわけです。そういった人たちがみずから老齢化して、子供さんたちがどういうふうな状況にあるか、その子供さんたちが余り出稼ぎしなくていいという状況になってきたというのが現状だろうと思います。  その出稼ぎしなくなってきた条件というのが、一つには、地元である程度農業と離れたところの雇用機会でやる。冬期間もそこで働ける。そこのところには公共事業というのが大きな割合を占めるわけですけれども、逆に言えばその若い方たちがもう農業を継がなくて離れてしまった。よってもってその地元からの出稼ぎの人数にカウントされなくなった、こういう状況があるわけでございます。  そういった中で、私が何を申し上げたいかというと、そういう季節労働者、いわゆる労働力の移動、そういったものがかつての日本経済、日本労働市場において大きな割合を占めていたのが、現状ではバブル期のところで多少の変化、影響はあったけれども、全体として低下傾向にあると。これは老齢化その他の、今説明のあったとおりですけれども、そういったことがこれから日本の将来の労働環境に対してどういう影響があるのかないのか。ただ単にどんどん薄まっていって数が少なくなればこれで済むと思っているのか。それとも、地方経済あるいは全体の労働市場に対してどのような影響があるのかということが問題になろうかと思うわけですけれども、その辺のお考えはいかがでしょうか。余り影響ないとお思いでしょうか。それとも何かボディーブローのような形の影響が出てくるとお思いでしょうか。
  68. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 先ほどからお話ありますように、出稼ぎ労働者の方自体の数は大変減ってきまして、現在全体でも十万人という規模でございまして、私どもできるだけ、一定期間にしろ家族から離れて生活をする、そこで生活の糧を得るということは本来望ましいことではないのではないか、できれば家族の方と一緒に地元での雇用が開発されるということが一番望ましいというふうに思っておりまして、労働行政といたしましても、通年雇用していただく事業主助成金を払って、できるだけ通年で雇用できるように努力をしていただくこととか、あるいは不況な地域につきましてはこれを指定いたしまして、そこの地域で立地をする企業に対して助成をするといったふうなことで、地域対策というふうなことにも力点を置いているわけであります。  したがって、少なくともこの問題について申し上げますと、出稼ぎ労働というのはできるだけ地元での就職を最優先していただいて、この問題は何とか地元就職ということで解決をしていきたいというふうに考えているところであります。
  69. 山崎力

    山崎力君 本来の例えば雇用条件の問題であるとかあるいは賃金、それもこの昨今の情勢からいくと不払い等が多い。そういった昔からあった問題はまだそのまま残っている部分がございますので、その辺は御努力をいただくとして、その関連でというと非常に差しさわりがあるかもしれませんが、いわゆる外国人労働者、これもある意味では外国からの出稼ぎ問題だと考えれば非常にわかりやすい。特に出稼ぎの問題を身近に感じていた人間にとっては非常に類似性がある問題だろうと思っておるわけでございます。  そういった外国人労働者の、先ほど同僚議員からもその辺に関連した質問が出ておりましたけれども、今のこの現状それから受け入れのあり方、そういった点について労働省としてどのように考えておるか、あるいはその予算措置等を含めてどのような方針で臨んでおられるのか、お伺いしたいと思います。
  70. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 平成九年現在でいいますと、我が国で就労する外国人労働者は、労働省の推計でありますが、専門的、技術的分野の労働者の方が約十万七千人、それから日系人等で就労する方、二世三世までですね、この方が二十三万四千人でありますから、合法的に就労されている方が約三十八万六千人であります。それから、それ以外に不法就労がもちろんあるのでありますが、この数は正確には把握はできないと思うんですが、推計二十七万七千というふうに言われていました。ちゃんと個別事業所ごとに把握しているのであるならば、労働省は不法就労は取り締まる立場ですからここにありましたといって見ているわけにはいかないものですから、これは推計になるんですが、ですから両方合わせますと合法不法で六十六万人と推計をされます。  先ほどの御質問にもありましたけれども、外国人労働者の受け入れに関しては、基本的に専門的分野、技術的な分野について受け入れる、日系人はまた別な取り扱いでありますけれども。そういうことにしておりまして、いわゆる単純労働者についてはこれは基本的に受け入れないということでありまして、雇用面だけじゃなくて経済社会全般にいろんなことを考えなくちゃいけないということでありますから、慎重に対応していくということでございます。  それから、予算措置のことでありますが、今申し上げたのは基本方針でありますが、外国人求職者への職業紹介機能の強化であるとか、外国人労働者の雇用管理の改善、それから不法就労対策を含む適正就労の推進、これらの実施に十一年度予算でいいますと十二億二千万円を計上して、ただいま御審議をいただいているというところでございます。
  71. 山崎力

    山崎力君 なかなかそこのところが、表面上の建前の部分とそうでない部分、具体的に言えば不法就労者、それがある意味においては三K職種に集中している。建前論からいけば外国人労働者がいわゆる三K職種に就労するということは非常に難しいはずなんですね。ところが、現実にはかなりの方がいらっしゃっている。もちろん就学という、学校へ入るということでアルバイトでやっているよということも、表面上はそうなっている方もいらっしゃるわけですし、現実にそうしている方もいる。それから、ドロップして学校の方へなかなか行かないでお金稼ぎの方へ行っている方もいらっしゃる。その辺のところの判断というのは非常に難しい問題がありますし、それから、これは管轄が違うわけですけれども、いわゆるオーバーステイの問題がございます。  そういった中で、これからの日本労働力人口が減っていく中で、外国人の労働力を当てにしないで本当に日本の経済が成り立つのかという基本的な問題がございます。これはいわゆる大企業ではなくて特に三K職種の中小企業でそういう話をよく聞くわけでございます。  そういったところで、もちろん労働省だけの問題ではないんですけれども、雇用状況を見るときに、今非常に厳しいという状況の中だけれども、本当にいわゆる在来の三K職場に人が集まっているのかどうか、そこら辺が非常に私は疑問なところもないとはしないわけです。地域によっても違うでしょうし、同じ三Kといっても業種によって違うかもしれないんですけれども。そういった意味で、この三K職種の中での日本労働者の雇用状況、そういったものはどうなっておるか、資料ございますでしょうか。
  72. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 三Kというのもなかなか公式の定義というものがあるわけではございませんで、この職種は三Kであるというよりは、どのような職種にしましても運用といいますか、実際の労働条件によって三Kにもなりならなかったりするということではないかというふうに思います。思いますが、仮に通常よく言われるような例として、技能工や建設作業員について見てみますと、平成六年と十年を比較すると、こういった分野では四十四万人の労働者の減少がありますし、単純な労務作業者について見ますと、この間二十二万人増加しているというふうな状況がございます。
  73. 山崎力

    山崎力君 その辺のところは逆に言えば中小のところが多くて、今の不況をもろに受けているところがあって、そういう意味でいえばぜい肉を落とさなければやっていけない、そのときに日本人ですら雇い切れないところでというところもある。しかし、かつて不法労働者だった人が陰に隠れてオーバーステイで予備軍になったり戻れなかったり、そういったことが都市部を中心に周辺部でいまだちょくちょくそういった話は聞かないわけではないんです。まだ世間的な、全国的な問題にはなっておりませんけれども、将来この不況が長く続く、あるいは好況になって労働力不足が生じる、そのどちらの時点でも問題化してくるのは私は必然だろうと思うわけです。  その辺についてしっかりした十全の対応策を労働省だけでなくて政府全体としてどうやるんだと。逆に言えば通産省の方は、ないところで仮に埋まって生産力が上がればいいやと思うかもしれませんし、そういうふうな点、ドイツの例が御存じのとおりあるわけです。それが今となってみればなかなか根の深い問題となっている。そこのところに今私たちの日本状況労働力という点からいくとあるんだろうと思うんです。  ですから、その辺のところを労働省として、どのように労働力市場というものをとらえ、将来その辺のところをやるかというのはそろそろ打ち出さないと、後手後手に回るんじゃないかなというような感じを持っているんですけれども、その辺について何かお考えございますでしょうか。
  74. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 外国人労働者、特に単純労働に関する要望というのはかなり前から経済界からは上がってきているんですね。これは私が聞いたところによると、もう石田労働大臣のころ経団連から話が出たということを聞いております。  先ほども少し申し上げましたけれども、どうしてもいわゆる三K職場には日本労働者は行かない傾向になる。これは日本に限らず先進諸国はみんなそうだと思いますし、そこの部分を外国人労働で埋めようとしてなかなか悩み多い状態になっている国が多いわけであります。  基本的に嫌な仕事はよその人にやらせるということについてはいろいろ問題があると思いますが、ここではそのことは一応置いておくといたしまして、仮にそういうところをどう埋めていくか。  今、オン・ザ・ジョブ・トレーニングというので、研修をしながら就労を一定期間だけするという制度があります。苦肉の策だと思うんですね。ローテクの技術移転を図りながら、しかし生産現場にも資するという、なかなか苦肉の策としてあると思うんですが、これは基本的には習得して一定実務期間を終わったらちゃんと帰ってもらうといいますか引き取ってもらうということがちゃんとできていないと、いろんな問題を解決しなきゃならぬことになると思うんです。  ですから、政府機関というか準政府機関、公的機関同士でちゃんとその辺のやりとりをしていないと、向こうから来る人も、いつも同じ人が行くんじゃ不公平だよとか、ローテーションを組めとかいうような、送り出す側にもいろいろ問題があるようでありますし、大前提は、単純作業の就労は認めないということは崩せないと思いますから、そういう政府機関、準政府機関、公的機関同士のしっかりとした、期間限定で、習得したらちゃんと帰るし、引き取るということをしっかりしないと、これはなし崩しになっちゃうのかなということを心配いたしております。  今、部分的に行われているようでありますけれども、成田、羽田に着いた途端にいなくなっちゃったとか、いろんな問題がありますから、送り出す方と受け取る機関はちゃんとしたところがやりとりをするべきなんだろうなというふうに思っております。
  75. 山崎力

    山崎力君 時間の関係で、この問題はこれで打ち切りたいと思いますけれども、それこそ研修でこっちの方は教えながら、少し給料も払いながらやろうと思って連れてきた人が、ある期間で来た途端にどこかへ消えちゃうという事例があるわけで、あるいはまた、直接はこれと関係ないんですけれども、密入国者がたくさんまだ見つかっているというのも、結局は仕事で来るという部分がございます。そういった面での配慮というものを、労働省だけではないわけですから、今のお言葉のように関係各機関は心配しているというふうに大臣から言われると、こっちも余計心配せざるを得ないわけで、心配ないですよというような答弁をこれからできるように御努力を願いたいと思います。  続きまして、雇用保険の問題を一点だけお尋ねしたいんですけれども、いろいろ収支状況が非常に悪くなって、単年度の収支で赤がずっと出ておる、保険料の見直し等をどうするんだという報道もありました。そういった中で、一言で言えば、おい大丈夫なのかい、どうなるんだという問題があるわけですけれども、その点についてお考えを伺いたいと思います。
  76. 甘利明

    国務大臣甘利明君) おい大丈夫かいと問われれば、御心配なくというところまでなかなか正直行かないのでありまして、先生も御承知のとおり、十年度が終わりますと積立残高というのは約三兆円になるわけでありまして、十一年度予算でも収支マイナスでありますからこれを取り崩す、九千八百億ぐらい、一兆円弱取り崩す、そうすると、そのペースでいうと三年しかないじゃないかと、それはどう言い逃れもできない現実であります。  ただ、突然こういう状況になってきたというのは、それは景気とダイレクトにリンクをして、雇用保険の受給者が急激にふえているからであることは間違いないわけでありまして、急激に改善してくれればこれはさわらず危機を乗り切れると思いますけれども、タイムリミットまでに改善してくれるかどうかということになるのでありまして、正直、今検討しているかと問われれば、今は検討しておりません、指示も出していませんし、担当の事務方もこの検討にもまだ入っておりません。  私としては、劇的な変更をしなくていいように、なるべく早くこういう情勢から立ち直ってもらいたいと思うのでありますけれども、もしこのままの状況がまだしばらく続くのであるならば、ある時点になったら各方面にいろいろ御相談をしなくちゃいけないとは思っておりますけれども、きょうの時点ではまだそういう意思はございません。
  77. 山崎力

    山崎力君 今の時点がいつまで続くかということなんでしょうけれども、常識的に考えてこれから劇的に日本経済が回復するというのはまあ無理という、政府見通しでも現実に来年度〇・五%プラスというようなことですから、少なくとも十一年度中にはよくなることはない。となればあと三年、現実にはあと二年ですから、それを検討して判断してこのくらいということになると、今の時点はという言葉が、それ以上はおっしゃれないのはわかるんですけれども、早急にこれは何らかの対策をとらにゃいかぬ時期に来ていますし、これは早過ぎるということもないと思うんです。ある程度今までの習性をどうするかという考え方の問題ですから、その辺のところは当然御努力願えるものと思っていますけれども、よくある懸案先延ばしという姿勢からいくととんでもなくおくれる可能性もございますので、その辺は御配慮といいますか、御注意お願いしたいと思います。  時間の関係で最後になると思いますが、訓練制度についてちょっとお伺いしたいんです。  要するに、企業が必要とする人材というのは当然あるわけで、歩どまりの問題だと思うんです。ほっておいても企業に必要のある人、必要というか、企業がいい人だなと思う人は何割からいらっしゃるわけで、幾ら訓練しても、申しわけない、ちょっとお引き取り願いたいという人もかなりいらっしゃる。その中間にかなりの部分が、適正な訓練を施せば企業としても喜んで雇える、その歩どまりをいかによくするかというのが訓練制度のあり方だろうと思うんです。  私が一番問題だと思うのは、在来型の企業訓練ではなかなか時代の需要に追いつかないと、皆さんわかっているんですが、では新しい企業が求めるこれからの労働力、労働者能力というのはどんなものなんだろうということが非常に幅広くなってなかなか見つけにくくなってきているのではないか。その辺で、どのように労働省としては教育といいますか、そういった訓練をするつもりなのか。さっきから、余り使いたくないんですけれどもミスマッチという言葉がありますけれども、せいぜい後追いで、本当に時代の最先端を行く、引っ張る企業に必要な人材を、そもそもそういった教育ができるのだろうかという根本的な疑問もあるんですけれども、その辺いかがお考えでしょうか。
  78. 甘利明

    国務大臣甘利明君) ミスマッチという先生がお嫌いな片仮名を使われるぐらいですから、相当な危機感で臨んでいかなければならないわけでありますが、私が労働大臣に就任をしまして、幾つか一週間以内に指示をしたことがありまして、そのうちの一つが今の職業訓練、これは訓練校とそれから訓練施設、ポリテクセンターのようなもの、それから県が行っているもの、これを一回総点検をしてもらいたいという指示を出しました。それは何かというと、全く時代的要請はないような古い講義講座が相変わらずないのか、それから、必要とされるところの定数がうんと少なくないかとか、見直しをしてもらいたいという指示を出しました。  そこで、先生の御指摘ですが、どういう分野に関する職業能力をつけていくのか、どう労働省は選択するのかということでありますが、やはりこの起点になるのは成長する十五分野、将来、雇用の受け皿となり得る十五分野というのが二、三年前の閣議の行動計画として決定されていますが、そこの伸びる分野にいかに適切に人材供給ができるかということでありますから、そこが中心になると思います。  ただ、私が悩ましいのは、民間と公共とがどう連携を、すみ分けをしていくかということがちょっと悩ましい問題でありまして、基本的には、民間が持ち得ないような大きな設備投資を必要とするもの、それは公的機関がやっていかなくちゃならないだろうと。ただし、そう大きな設備投資を必要としないで機動的に人材訓練ができるものについては民間が中心にですが、その先導的役割はやっぱり公的機関が果たさなきゃならない。そこで先導的役割をして民間が立ち上がってきたものは民間に渡していく。では、そこにどう公的と民間との関係があるかといえば、委託訓練というような制度を今回私の思いでかなり広げましたけれども、委託費を払って民間活力を使うというスタイルでやっていくべきかなというふうに漠然と仕分けを考えております。
  79. 山崎力

    山崎力君 時間ですので、ちょっと質問を残しましたが終わらせていただきますけれども、確かにいろいろな方向はあるんですけれども、例えば、特殊能力が欲しいねと、需要があるねといっても、例えば通訳がこれから必要だからといって語学研修を全部国の面倒見でやらせるのかとか、先ほどの例で言えば、特殊機材の運転資格をそれじゃ職業訓練で持たせた場合、いわゆるドライビングスクールとの関係はどうなるかとか、いろいろあるわけです。ひどいことで言えば、私は医者になりたいという需要があれば医学教育まで職業訓練でするのかということ、極論からすればそこまで行く話で、非常に難しい問題ですが、その辺御理解いただいた上で、問題はいかにそれを実効あるようなことを実行するかということとそれの点検作業だと思いますので、その点、御配慮をお願いして、私の質問を終わらせていただきます。
  80. 斉藤滋宣

    ○斉藤滋宣君 自由民主党の斉藤滋宣でございます。  昨今の大変雇用情勢の厳しい折、これに対する認識並びに対応策等につきまして大臣以下御質問したいと思います。  今、大変雇用情勢が厳しい中で、現在発生している失業は約七割が構造的、摩擦的失業と言われ、残りの三割がいわゆる需要不足からの失業と言われております。午前中も谷林委員の質問の中にありましたとおり、景気が回復してもなかなかこういう失業情勢が変わらない。これは、ある意味ではこの三割の需要不足の部分は景気対策によってカバーできるかもしれませんけれども、その七割の構造的、摩擦的失業の部分に対して景気回復だけではだめだということもあって、なかなか景気回復しても失業の構造的な解決策にはならないのだということになろうかと思うんです。  私は、山崎先生先ほどミスマッチというのは大変嫌いな言葉だというお話があって、使って申しわけないんですけれども、この構造的失業の発生原因、いわゆるミスマッチの発生原因はいろいろあると思うんです。例えば、労働市場が非効率である。また、急速な経済構造の変化に労働供給側の知識だとか技術だとかそういったものがついていかない。さらには、年齢別そしてまた性別のハンディが存在することからこういう構造的失業が発生しているのかなと考えるものであります。  今までも労働省におかれましては、男女雇用機会均等法等の整備、そしてまた今国会でも有料職業紹介事業労働者派遣事業の範囲の拡大といったことをこれから検討されていくようであり、種々の施策はとられているわけであります。しかし、実際にUV曲線等を見ますと、一九九二年からこのミスマッチはずっと言われ続け、そしてまたいろんな施策をとられてきておりますけれども、いまだにその解決策がなかなか見出せずに、さらにミスマッチが広がっているというのが現状だと思います。逆に言えば、そういう施策がとられなかったらもっとひどいことになっていたんだよということも言えるわけでありますけれども、やはり私はここの部分に対してもう少し強力な手だて、施策というものを今後打っていかなければなかなか雇用情勢の改善というのが進まないのではないのかな、そのように危惧するものであります。  労働大臣におかれましては、この構造的、摩擦的失業の解決のために今後さらなる施策を実施する、そういうお考えはないのか、またそういうお考えがあるとすれば具体的にお話しいただければありがたいと思います。
  81. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 斉藤先生御指摘のとおり、いろんな意味でのミスマッチによる失業の拡大というのがございまして、これを解決していくと失業率が現状でもかなり下がってくるだろうということは各方面から御指摘をされているとおりだと思います。  ミスマッチの一番大きい原因は、労働条件が合わないということが一番大きいのかなと。働く方としてはより高い労働条件を求め、求人する方としてはそんなに払えないし、労働環境もそんなに整備はできないよ大企業ほど、というような中小企業もあると思います。それ以外に、従来から申し上げている、労働者が持っている職業能力と要求されているものとがうまくマッチしない、あるいは情報のミスマッチと言いますけれども、求人求職が出会えばちゃんと成立をするんだけれども、そこの出会う場が情報がちゃんとネットワークされていないということ等々あります。  それぞれにある程度の手は打っているつもりでありますし、四月一日から予算化をされて動き出す制度ももちろんございます。ですから、まだ企画段階で実行されていない部分もありますから、これらが具体的に動き出すと多少なりとも改善に資するんではないかというふうに期待をしているところであります。
  82. 斉藤滋宣

    ○斉藤滋宣君 午前中にもちょっと議論になりましたけれども、大変産業構造の変化が激しい、そしてまた労働市場を取り巻く環境が急速に変化する中で雇用の流動化ということがよく言われます。  この場合、プラスの面もマイナスの面も両方あろうかと思いますけれども、ある意味では労使双方にとっても歓迎すべき点もあろうかと思います。例えば、労働者の立場からすれば、転職コストが下がって企業をやめる自由が確保されれば、それだけ労働者のバーゲニングポジションも高まりまして、企業からの束縛が弱くなるという面もあろうかと思います。そしてまた、経営者の立場からは、労働市場が流動化し転職コストが下がれば、雇用調整も迅速に行えるようになり、それだけ人件費が固定化することも避けられる、そういう意見もあります。さらには、労働市場の流動化は、企業労働者ばかりではなくて、マクロ経済の視点からも望ましいということも言われているところもあります。  そこで、大臣におかれましてはこの雇用流動化に対してどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  83. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 日本型雇用、つまり終身雇用、年功賃金という制度が今日の日本の発展に寄与してきた部分はかなりあるというふうに思います。ただ、今までのやり方どおりで労使双方にとってこれからもいいのかというと少し問題がある。  先ほど来御指摘されていますように、産業構造が変わっていって、従来ある企業がそのまま引き続き営々として業を続けられる状態ではない、構造改革を図っていかないと生き残れないということでありますし、そこには労働者の従来の職業能力ではないものが求められるということもあります。企業内で訓練をしてバージョンアップさせるのもあれば、外部労働市場から見合った人を採用してさらに強化するということもあるでしょうし、あるいは新しく起きる産業、例えばインターネット関連なんというのは今までには存在しない会社でありますし、その会社が新しい人材を要求するとそこに労働の移動というものは不可避でありますし、いろいろな形で時代の要請を受けて、日本型の雇用形態といいますか雇用文化というものが多少なりとも修正を迫られているのは事実であります。  ですから、私はこの種の御質問に対しましては、日本が持っている伝統的な雇用形態と新しいニーズにこたえられるものとをうまくミックスして取り組んでいくべきではないか、そのために年金のポータビリティー化を初めとする種々の改革が周辺環境整備として必要になってくるのではないかということを申し上げているわけでありまして、従来のやり方が全く悪いとも思いませんし、このやり方で全くいいとも思いませんものですから、時代の要請に従ってマイナーチェンジをしながらベストミックスを図っていくべきだというふうに思っております。
  84. 斉藤滋宣

    ○斉藤滋宣君 私も大臣の考え方に全く同感でありまして、いわゆる日本的雇用慣行そのものがすべて悪いとも私も思っておりません。やはり時代に合わせながら、今大臣がうまく組み合わせながらとおっしゃいましたけれども、時代に即応した形態というものを取り入れながらそれぞれの時代にマッチしたような形での雇用環境というものをつくっていく、そういうことが大変大事だと思います。  大臣のお話の中に年金制度の話も若干触れられましたけれども、私もそういう今お話のあったことをバックアップしていく体制というものをやはり制度の面からもきちっとしていかなければ、今までどちらかといいますと、過去の歴史をずっと見ていますと、今の日本にある制度というのは、日本的雇用形態にマッチした形での制度がつくられてきているのではないのかなと思うわけです。それをいみじくも今大臣は年金制度を取り上げておっしゃっていただいたわけでありますけれども。  そういうことを考えますと、これからある意味では日本的な雇用環境というものとそれから新たに時代にマッチした雇用環境というものをつくるために、やはり両方をミックスしたような形での中立的な制度を。例えば退職金の税制制度においては、どちらかというと長く勤めた方が大変有利である。そのためになかなか、転職したいんだけれどももうちょっと我慢すれば税制の面でも優遇されるし、もっと我慢してみようかというところもやはりあろうかと思うんです。ですから、そういうものをうまくどちらも両立させるというのはなかなか難しい手法だと思いますけれども日本的な雇用慣習というもののいい部分と、それから雇用の流動化等によって転職を早めるような、そういう両方をうまく両立できるような中立的な制度といいますか、そういったこともこれから考えていかなければいけないのではないのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  85. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) ただいま退職金の税制あるいは年金制度についてのこれからの方向についてお考えを聞かせていただきましたが、一つは退職金に係る現行税制ですが、御指摘のように、勤続年数に応じてその控除額が増加していく、特に二十年を境に控除額がさらに増加していく、こういった仕組みになっておりまして、長期勤続を優遇することによって労働移動を阻害する面があるのではないか、むしろそうした勤続年数に対して中立的な制度に改めてはどうか、こういう御指摘があることは私どもも十分承知をいたしております。  ただ一方、そうした見直しを行う際には、例えば一時金制度がほとんどである中小企業、また一時金制度と年金を選択制とする場合も一時金を選択する方が非常に多い。こうした一時金が老後の生活資金として果たしている役割等を考えますと、そうした一時金がどのようにそういう場合変わっていくのか。こうしたことを考えて、老後の生活の安定あるいは働く方々のいわばモラール、士気にどう影響するのか、こういう点も同時に考えるべきだと。まさに両立をどうするかという問題になるわけでございます。  そうしたことから、退職所得に係ります課税制度のあり方につきましては、今後こうした雇用の形態あるいは退職金の支給形態がどう変わっていくのか、その辺を十分見きわめながら労使の方とのコンセンサスを形成するのに努めて、老後所得全体に係る税制制度をどう考えるのか、こういう中でもう少し時間をかけて慎重に検討させていただきたいと思っておるところでございます。  ただ、年金制度につきましては、労働移動の増加に対応してポータブル化が容易になる仕組みとして確定拠出型の年金制度、これを導入に向けまして関係四省による準備会議も設置して検討を進めておりますので、平成十二年度中の実施に向けて鋭意準備を進めてまいりたいと思っております。
  86. 斉藤滋宣

    ○斉藤滋宣君 先ほど来お話ししましたように、やはり構造的、摩擦的失業の増大、さらには今話題になっておったように雇用の流動化が今後進む中で、雇用対策として雇用の維持・安定を図ることに加えて、経済社会において必要とされる人材を育成、供給していく、そういったことをこれから考えていかなければいけませんし、先ほど来労働大臣からの御答弁の中にもありましたように、その際はやはり官民一体となって職業能力を高めていくような、そういうことも考えていかなければならないというのは私も同感であります。  そこで、やはりこれからの労働者の職業能力を高めるためには、今までの職業訓練校という考え方をもう少し先に進めていきまして、官民一体となって、例えば企業からそういう学校に講師を派遣したり、カリキュラムの作成に本当に今企業が何を求めているのかということを意見を聞きながら決めていくような、そういうことも考えていかなきゃいけないでしょうし、企業にはまたそういう職業の再訓練をした人たちの受け入れ体制というものもきちっとつくっていっていただかなければいけないと私は思っております。  ですから、アメリカでもコミュニティーカレッジというようなことを今やっているようでありますけれども日本版のコミュニティーカレッジ的なものも検討して今後取り入れていく必要があるのではないのかなという気がするわけでありますけれども局長、いかがお考えでしょうか。
  87. 日比徹

    政府委員(日比徹君) ただいま御指摘いただきましたように、民間との協力の仕方につきましては、委員指摘のように、いろんな形を踏まえる必要があろうかと思います。また、日本版のコミュニティーカレッジのようなものという御指摘でございますが、現在、職業能力開発短期大学校を初めポリテクセンターと言われるものもそうでございますが、地元の関係経済団体等と運営につきましていろんな形で協議をするという形をとっておりまして、それをさらに充実させたり、あるいは地域の方々との連携の仕方、これにつきましてはさらに十分充実させてまいりたいと存じております。それを踏まえまして、民間の方々なりあるいは地域のいろんなニーズを生かした形での運営ができる方向についてはさらに検討もしてみたいと思っております。
  88. 斉藤滋宣

    ○斉藤滋宣君 昨年の十二月一日から、雇用保険法の改正によりまして、自己啓発のための教育訓練費用の一部負担ということを始められました。私は大変いいことだと評価しているわけであります。  しかし、考えてみますと雇用保険からの対象外の人たちもいるわけであります。例えば自営業の人や、それから午前中ちょっと新規卒業の皆さん方の就職難の話も出ておりましたけれども、学校を卒業して就職できなくて、それからしばらくたってから就職したいというときに、就職ができないわけですから雇用保険にも入れない。すぐ職業があればいいですけれども、やはりいろいろ考えてみて自分なりに少し勉強してから例えば企業に行きたいと思っても、そういう人たちにはこの教育訓練費用の一部負担は該当しないわけであります。  ですから、そういう雇用保険からの対象外の人たちを対象とした例えば奨学金制度だとか人的投資に対する減税を考えるだとか、そういった手当てというものもしておかなければ、そこからはみ出た皆さん方に対してはちょっと手薄なような気がするわけでありますけれども、そういうお考えはないでしょうか。
  89. 日比徹

    政府委員(日比徹君) ただいま御指摘ございましたように、教育訓練給付との対比でいつも考えておくべきこととしまして、日本育英会の奨学金制度があるということ、あるいは税制の上でも、現在は職務上必要な研修あるいは職務上必要な資格取得のための費用について、部分的ではございますけれども、特定支出控除制度というようなものが設けられております。  これらの税制等につきまして時として議論の生ずることでございまして、私どもも税制の問題も考えたことはございますが、今般、教育訓練給付という仕組みでいわば積極的に給付を行う。税制の方で支出したらそれについての減税措置を講ずるというよりは、積極的に給付をするという方向の政策を一たんとり出したところでございますので、税制の問題あるいは学生に対する奨学金制度の問題等につきましては、直ちにということについては教育訓練給付制度の運営状況等を見てではないかと思いますが、なお労働政策上、税制あるいはその他の措置についてどういうことが行っていけるのかについては研究してまいりたいと考えております。
  90. 斉藤滋宣

    ○斉藤滋宣君 先ほども議論になっておりました雇用保険料の引き上げの話でありますけれども、先ほども議論の中で大臣からは検討していないというお話でありましたけれども、そのような認識でよろしいでしょうか。
  91. 甘利明

    国務大臣甘利明君) きょう検討は指示していないということでありまして、私も、このままの状況が続くならばもうそれはほっておけないのは、雇用保険会計の状況を見れば当分大丈夫ですなんと言う人は確かにいないので、こういう状況が続いたときにいつ検討を指示するのか、具体的にどういう枠に従ってするのか、これは、もしこういう状況が続けばそれはそんなに遠くない将来に指示をしなきゃならないということはよく承知をしております。  ただ、私が発言した途端に当然一面に載る話でありますから、またそれによるいろんな不安の惹起もありますから、慎重に考えたいというふうに思っているところです。
  92. 斉藤滋宣

    ○斉藤滋宣君 私も全く大臣と同感でありまして、逆に心配するがゆえにきょうも通告書を出しまして質問したいと思っておったわけでありますけれども、確かに大臣が発言しますとすぐ一面に載る問題でありますし、特にこういう雇用環境の厳しい時期でありますから、問題を大きくするというのは大変心配しているところであります。  ところで、そういうことを理解しつつあえて聞けば、大変残念でありますけれども、もう一面に「雇用保険料上げ検討」というのが載っております。決して嫌みで言うわけじゃありませんけれども労働省は「雇用保険料の引き上げを検討する方針を固めた。」ということで新聞の一面を飾っておりまして、大臣が心配するとおりになってしまいました。  大臣の検討していないということと方針を固めたということとの違いをぜひともここできちっと説明しておいた方がいいのではないかと思いまして、あえて質問させていただきます。
  93. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 少なくとも役所からこの種のコメントは出ていないと思います。  ただ、これでもう何度目か書かれているんですけれども労働省担当の記者が考えればこのままでほっておいていいはずがないというのは普通考えるわけでありまして、ですから私のもとにも、いつするんですか、いつするんですかと夜回りの記者からばんたび聞かれます。  それは、現状が大変で憂慮していることは事実。こういう状況が続けば、そう遠くない将来にこの種のことを検討しなくちゃならない事態も確かにこのままの状態が続けば予想はされる。しかし、いつそういうことを指示するかというのは非常に難しい、政治判断でもありますから、正直な話、きょう御質問をいただいている時点で私は指示をしておりませんし、事務方も具体的にこのことを検討しておりません。恐らくいつかそういう指示が来るだろうということは予測しているかもしれません。しかし、ここに出ているように、方針を固めたということはまだございません。これは正直な話でございます。
  94. 斉藤滋宣

    ○斉藤滋宣君 私がやっぱりこの記事を読んで大変気になるのは、こういう大変厳しい状況ですから、いずれは手をつけなきゃいけないし、検討に入っていくということはいいと思うんです。決してそのことも否定しようと思いませんし、逆にもうそろそろ検討した方がいいのではないかということを言おうかと思っていたやさきの話でありましたけれども。  ただ、この中で気になるのは、方策として三つの方法があると。その中で、国庫負担の引き上げは厳しいからできない、給付水準の引き下げもしない、受益者負担の観点から保険料引き上げを検討する方向となったと。こう断定的に書かれると、今こういう雇用環境が悪い中で、非常に労働者の皆さん方に対する不安感をあおるということになると思います。私はこれは問題だと思いますので、あえて言わせていただけば、どなたが書いたとは言いませんけれども、官房長あたりからやはりそういう見込み記事みたいのはやめていただくようなそういう注意を促していただきたい、ひとつ要望しておきたいということ。  それともう一つは、これからの検討課題でありますけれども、十年の三月二十七日の当委員会で、この問題もやはり議論されております。当時の伊吹大臣がこう答えております。「国庫負担の問題についてはもとへ戻してくれと私は言ったわけです。大蔵大臣もうんとはおっしゃいませんでしたが、労働大臣の発言は重く受けとめて、そのような事態が生じたときには御相談させていただきます」と答弁しているわけでありますから、これからの検討課題でありますけれども、ぜひとも大蔵当局とは慎重な議論をした上で方針を決定していただきたい。この二つを要望しておきたいと思います。  それからもう一つ、時間がありませんので最後でありますけれども予算を見ますと、環ホルモン並びにダイオキシン対策について労働省の方の予算も計上されております。関係各省庁でいろんな対策をとられているのも事実であり、検討もしておるところであります。特にこの中で環境ホルモンにつきましては、まだ知見がされておらず確たる資料もなかなか集まらないという状況の中で、非常に対応策には各省庁とも苦慮しているのが現実だろうと思います。  しかし、私は、この環境ホルモンというものが本当に害があるかないかという議論も大事でありますし、そういう資料を整えておくということも大変大事なことだとは思っておりますけれども、やはり一番労働省の観点から考えて憂慮しなければならないのは、労働者というのは一番最初にそういう被害を第一次的にこうむる人たちであります。ですから、そういういろんな検討や研究も重ねた上で対応策をとるということも大変大事なことだと私も思っておりますけれども労働省の立場からすれば、やはり予防原則に立った対応策というものがとられなければ労働者保護という観点から非常に私は心配するところであります。  特に環境ホルモンの場合には、胎児に対する影響が大きいということも言われております。ですから、妊娠初期の女性に対する暴露防止ということも含めて、今後労働省としてこの環境ホルモン等に対する対応をどのように考えているのか、お聞きしたいと思います。
  95. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のように、働く方々は一般の生活環境中よりも高濃度の状態でそうした物質に接する可能性があることは御指摘のとおりでございます。  私どもは、そういったことからダイオキシン類につきましては、平成九年から専門家による検討委員会を設けて対処すべき方法、実態調査研究等を行ってまいりました。そういうものを受けまして、昨年七月にはごみ焼却施設におけるダイオキシン類の対策ということで通達を出しまして、作業環境中の管理すべきダイオキシン類の濃度またはその管理方法、さらにそういうものに暴露を受けないための呼吸用保護具その他の使用の仕方等々につきまして一連のしていただくべきことを通達で示しまして、現在こうした関係業者に対する指導説明会等の実施を進めておるところでございます。さらに、大阪の能勢町の美化センターに始まりまして、そうした部門で働いた方の健康の状況調査、来年度におきましても必要な予算を確保しましてこうした類似施設における作業環境なり働く方々状況調査等を進めていきたいと思っております。  環境ホルモンにつきましても、平成年度から専門家による委員会を設けて、まず職場でそうした環境ホルモンとの関連が指摘される物質等が実際どういうふうに取り扱われて、その現場では労働者の方がどういう作業実態にあるのか、この辺の把握に努めておるところでございます。  そうした中で、御指摘ございましたように、妊娠初期の女性の方への影響があるというような指摘があることも十分頭に置いて、そうした方面のさらなる知見とそうした実態との関係で私ども対応の仕方をさらに検討してまいりたいと思っております。
  96. 斉藤滋宣

    ○斉藤滋宣君 どうもありがとうございました。
  97. 但馬久美

    ○但馬久美君 公明党の但馬久美でございます。  私は、前半、社会政策についていろいろとお伺いしたいと思いますので、きょうは一府一庁四省の方々に来ていただいていると思います。どうぞよろしくお願いいたします。  九七年五月に改正されました雇用機会均等法がいよいよこの四月から施行されます。募集、採用、配置、そして昇進など、従来の努力義務規定を今度禁止規定にするなど注目すべき内容の変化が盛り込まれておりますけれども、従来より女性職場への進出が一段と進むものと思われます。  そうした中でも、特に今セクシュアルハラスメントの関心が強まっているわけでございますけれども、午前中も小宮山議員の方からこの点に少し触れられましたけれども、機会均等法の二十一条に事業主の配慮義務としてセクハラ規定が初めて法的に定められた。九八年に労働大臣のセクハラ指針が発表されまして、同年十一月には国家公務員法に基づきセクハラ防止等に関する人事院規則が出ました。さらに、日経連では「セクハラ防止ガイドブック」を出版するなど、さまざまの形でセクハラ防止に努めているようであります。  こうしたあらわれも、年々歳々セクハラ裁判が頻発しており、ちなみに有斐閣の「セクシャル・ハラスメント」によりますと、九四年には八件、そして九五年には十二件、九六年が十四件、九七年には二十件とどんどんふえてきていることも一因かと思われます。しかし、日本の場合、賠償金が低くて、そのためにセクハラ問題の認識がまだ浅いし、また女性の人権を守るという視点のみならず、近い将来、労働力という、そういう重大な問題を抱えているために決しておろそかにはできない課題であると思います。  そこで、改正法二十一条の事業主の配慮義務というセクハラ規定は余りにも甘い規定だと考えます。放置すれば、先ほど申し上げましたように、労働力の不足の観点から、企業の生き残りのために女性労働力が大変重要になってきておりますし、女性をいかにうまく使うかということで企業の存亡が左右される、そういう時代も間もなくやってきております。  したがって、事業主のセクハラ認識を向上させる意味でも法的規制を早く強化すべきではないかということを考えますけれども、この点、労働省はどういうふうにお考えでしょうか。
  98. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 改正均等法男女職場における差別あるいはセクハラに対してきちんと取り組むことが法定義務として位置づけられたわけであります。  職場ではちゃんとセクハラが起きないように指導するようにということで、事業主にはこれが義務づけられる、そして窓口を設定してそういうセクハラトラブルにちゃんと対処できるようにしなさいということを指導しているわけでありまして、これをちゃんとやらない企業労働省が直接指導しますよと。言うことを聞かないときにはセクハラが横行する会社ということで名前を発表しますよと。これは企業にとって最も不名誉なことでありますから、この法が具体的に施行をされて徹底をしてくれば相当な効果が上がるというふうに理解をいたしております。
  99. 但馬久美

    ○但馬久美君 また、報道にありましたけれども、外国のコンサルタントの言葉を引用しますけれども経営者に女性を対等なパートナーと見る考えがない、中間管理職もそれに見習って研修の効果も得にくく、社内でセクハラが起きがちである、優先すべきはトップの意識の改革であると指摘しております。まず、総理や大臣の閣議で、そしてまた経営者の集まる経団連で、またさらに全国知事会でセクハラ防止セミナーを行うべきと提案しておりますけれども、これは本当に当然のことだと思います。それをぜひ実行していただきたいと思いますけれども、この点に関しまして労働大臣はどういう御意見を持っていらっしゃいますでしょうか。
  100. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 法律が改正をされて、男性だから女性だからということでのいろいろな対応をするのではなくて、個人の能力と適性に応じて職場での対応がなければならないということになるわけでありまして、これはトップの意識改革も含めて、使う側にそういう従来あった固定観念を打破してもらって、法律の趣旨にのっとった思想で対応してもらわなければならない、そういうふうに指導していくわけであります。  セクハラがなぜ起きるかというと、男性女性がいるから当然起きるのでありまして、お互いが性の違いではなく相手を見るということがきちんとできるようになればセクハラは起きないんだと思いますが、但馬先生とかうちの藤井局長のように女性として非常に魅力のある人を女性意識するなということを徹底できるかというと、なかなかこれは難しいのでございまして、魅力ある女性はやっぱり魅力あるのでございますから、完璧に性の差を意識しないで仕事ができるかというと、なかなかこれは自分自身に照らして難しいなと。しかし、意識しながらもちゃんと相手の能力それから人間性というものを評価して、男女という違いは仕事の面に持ち込まないという自己啓発を常にする必要がそれぞれにあるんじゃないかなというふうに思う次第でございます。
  101. 但馬久美

    ○但馬久美君 なかなか成熟した社会ができにくい中で、やはりこういう部分におきましてはしっかりとまだまだこういう規制でくくらなくてはならないときが来ているのではないかなと、そういうふうにも思います。  それに加えまして、まず、教育界のリーダー、例えば大学の学長の皆さんや学校の管理者の皆さんにもぜひセクハラ防止セミナーを実施していただきたい。これはまた原点に戻るわけですけれども、そういうのは、セクハラ裁判あるいは裁判に達しないまでも、事件の報道になったものの中に、大学関係やその他の学校関係のセクハラ事件がたくさん起きております。  文部省にきょう来ていただいておりますので、この点文部省の方から御意見を伺いたいと思います。
  102. 田中壮一郎

    説明員田中壮一郎君) 文部省でございます。  教育現場におきますセクハラの問題についてでございますけれども、御指摘いただきましたように、近年、国立大学等におきましてもセクハラをめぐる問題が発生しておりまして、文部省といたしましては国立大学等の職員を対象といたします各種研修会や会議等におきましてセクハラに対する職員の意識啓発に取り組んでいるところでございます。  また、昨年十一月十三日にセクハラの防止等に関する人事院規則が制定されましたことを受けまして、現在、国立大学等を含め文部省職員を対象といたしましたセクハラ防止等に関する訓令の制定に向けて準備を進めておるところでございます。本訓令におきましては、セクシュアルハラスメントを防止するために、職員一人一人の自覚を促しますとともに、各国立大学等におきましてその周知徹底を図るための各種啓発活動や研修の計画的な実施、また相談員の設置等苦情相談体制の整備を図ることといたしておるところでございます。  今後、文部省といたしましては、人事院規則及び本訓令の趣旨を踏まえまして、国立大学の学長会議等も活用いたしまして、各国立大学におきまして啓発活動や研修会の実施あるいは相談体制の整備等必要な措置が講じられますよう指導を行ってまいりたいと考えております。  以上でございます。
  103. 但馬久美

    ○但馬久美君 どうもありがとうございました。ぜひしっかりやっていただきたいと思います。  こうやって最近いろいろな問題がある中で、妻を殴って現地警察に逮捕されました外務省の総領事の事件でございます。国会内でも取り上げられておりますけれども、その真意をただす意味からもお伺いしたいと思います。  女性議員の有志が先日二月二十六日に外務省に厳正処分と再発防止について申し入れを行ってまいりました。私もそれに同行いたした一人でございますけれども、その後の経過を少しお聞かせいただけませんでしょうか。外務省の方にお願いします。
  104. 浦部和好

    政府委員(浦部和好君) 二月二十六日、女性議員有志の方がおいでいただきまして本件について申し入れを受けました。外務省としても、この申し入れを真剣に受けとめて、二度とこういう恥ずかしいことが起こらないように周知徹底を内部で図っているところでございます。  また、その後の状況ということでございますが、恐らくお尋ねの趣旨が総領事についてのその後の状況ということかと思います。総領事につきましては、現地における法的手続上可能になり次第速やかに帰国させるという方針をとっておりましたが、三月三日に現地の裁判のほぼ終結の見通しがありましたので、三月四日付で帰朝を命じた次第でございます。本人が帰国次第さらに報告を受けた上でしかるべく措置をとるつもりでございます。
  105. 但馬久美

    ○但馬久美君 そのときの反論といたしまして、妻を殴ったのは日本の文化の問題だ云々と、日本男性優位社会を印象づけるようなそういう発言がありましたけれども、私も女性の一人といたしましては非常にこのことに対しては許すことができません。その発言の有無、真意についても確認されましたのかどうか、お聞かせください。
  106. 浦部和好

    政府委員(浦部和好君) 報道されましたこの発言の真意につきまして、同総領事からは、妻に暴力を振るったことに関して文化の問題だとの発言は行っていない、ただ本件が一義的には夫婦間の問題であるという趣旨のことを述べた、ただそれ自体不適切な発言であったと深く反省をしている、もとより妻に暴力を振るったことについても非常に深く反省をしているとの報告を受けております。
  107. 但馬久美

    ○但馬久美君 ありがとうございました。  私は、外務省に問われているのは、やっぱり一番大事なことは、女性の人権に対してどういうふうな認識そしてまた方針をお持ちなのかということだと思うんです。女性の人権に対する外務省のお考えとしては。
  108. 浦部和好

    政府委員(浦部和好君) 先生御指摘のとおりでございまして、国際社会に対して日本の顔として出ておる外務省職員の行動あるいは意識というものは、まさにそういう面については十二分なものを持っていなくてはいかぬという気がいたします。かつそのために努力をやっておるところでございますが、このようなことが現実に起こったわけでございますから、今後ともさらにそういう意味での周知徹底を図ってまいりたい、このように考えております。
  109. 但馬久美

    ○但馬久美君 世界の動きを一番知っていらっしゃるのが外務省でありますし、また外の顔というのが外務省であります。私は、女性のそういう権利をしっかりと守っていただきたい、そういうふうにも思います。よろしくお願いいたします。  それでは次に移りますけれども、三月八日の国際女性の日を記念しまして、国連におきましてUNIFEMが主催しました女性に対する暴力のない世界をと題して世界ビデオ会議が開催されました。これは女性と健康ネットワーク99でも紹介されておりますけれども、この会議は、一つには持参金に関する暴力と人身売買、二つ目には女性器切除、三つ目には女性に対する戦争犯罪、四つ目にはDV、ドメスティック・バイオレンスとレイプ、五つ目には人身売買とレイプという五つのテーマであったと言われております。  これは外務省からどなたか参加されたと思いますけれども、この会議の模様がどうであったのか、お知らせください。
  110. 上田秀明

    政府委員(上田秀明君) 御指摘のとおりに、三月八日、国際女性デーを記念いたしまして、国連婦人開発基金UNIFEMの主催でニューヨークの国連本部本会議場と世界のニューデリー、ナイロビ、メキシコをテレビで中継いたしまして開催されまして、今お挙げになりましたような世界各地の女性に対する暴力の問題に対する方策に関して意見交換が行われたものでございます。会議では、アナン国連事務総長が出席されましたほか、国連の多くの専門機関の長からビデオメッセージが寄せられております。非常に活気のある会合であったというふうに報告をされております。  日本からは、国連婦人の地位委員会がニューヨークで開催中でございましたが、その政府代表であります目黒依子女史と国連代表部の山崎大使が出席をいたしております。  いろんな分野について話し合われたわけでございますけれども、会議の締めくくりにUNIFEMの事務局長でありますハイザー事務局長から、女性に対する暴力を撲滅するべくさらなるキャンペーンを進めるということ等の行動指針、そういった呼びかけがなされたところでございます。
  111. 但馬久美

    ○但馬久美君 どうも御報告ありがとうございました。  そういう意味におきまして、一九九三年にウィーンにおける世界人権会議においても女性の人権がうたわれまして、同年の国連総会で女性に対する暴力撤廃宣言、これが全会一致で採択されました。また、一九九五年の第四回北京世界女性会議で採択された行動綱領では女性に対する暴力は重大な問題の一つとして位置づけられ、また我が国においても男女共同参画二〇〇〇年プランにおいて女性に対するあらゆる暴力の根絶が挙げられております。  しかしながら、こうした宣言、行動綱領そしてプランが果たしてどれだけ政府関係に実質的に取り組んでおられるのかということがすごく問題視されるのです。プランを作成する関係省庁、さらに関係部署だけの問題意識としてしか考えられていないのではないかというふうに思われるんですけれども、総理府、どうぞよろしくお願いいたします。
  112. 名取はにわ

    説明員名取はにわ君) 女性に対する暴力とは、公的生活で起きるか私的生活で起きるかを問わず、性別に基づく暴力行為であって、女性に対して肉体的、性的、心理的な障害や苦しみをもたらす行為やそのような行為を行うという脅迫等をいい、性犯罪、売買春、家庭内暴力、セクシュアルハラスメントを含む極めて広範な概念でございます。  女性に対する暴力は、女性の基本的人権の享受を妨げ、自由を制約するものであり、男女共同参画社会の実現を根底から揺るがしかねない重要な問題であると認識しております。  御指摘のように、北京会議におきまして採択されました行動綱領を踏まえまして、平成八年十二月に全閣僚を構成員とする男女共同参画推進本部において決定いたしました政府の国内行動計画である男女共同参画二〇〇〇年プランでは、この問題の重要性にかんがみ、女性に対するあらゆる暴力の根絶を十一の重点目標の一つに掲げております。  女性に対する暴力は非常に広範な概念でありまして、その問題の解決のためには関連制度を総合的にさまざまな観点から検討する必要がある難しい課題でございますが、関係省庁におきまして施策の着実な実施に努めているところでございます。  なお、男女共同参画審議会に対しまして、総理大臣から女性に対する暴力に関する基本的方策について諮問がなされまして、現在、同審議会に設けられた女性に対する暴力部会において調査、審議をしていただいているところでございます。
  113. 但馬久美

    ○但馬久美君 そこで、ドメスティックバイオレンスについて少しお伺いしたいと思うんですけれども女性が夫やパートナーから暴力を受けて死傷するケースなど、その実態についてどの程度調査あるいは把握されているのか。また、その実態を調べる調査機関が政府内でつくられているのかどうか。ちなみに、東京都では平成十年三月に女性に対する暴力の調査報告を発表しております。これは政府内ではどうなのでしょうか。
  114. 名取はにわ

    説明員名取はにわ君) 女性に対する暴力の実態に対する調査につきましては、今おっしゃられましたように東京都など一部の自治体で行われているようでございますが、全国的な調査につきましては承知しておりません。  昨年十月に公表されました男女共同参画審議会女性に対する暴力部会の中間取りまとめにおきましては、女性に対する暴力は潜在化する傾向があり、その実態を明らかにするための調査の必要性が指摘されております。そこで来年度、総理府におきましては女性に対する暴力に関する実態調査を行う予定としておりまして、今後の施策を進める上での資料とするとともに、社会の意識啓発を図る契機としたいと考えているところでございます。  そして、政府内の機関というふうなことですが、女性に対する暴力の実態を明らかにしていくことの重要性にかんがみまして、審議会等におきまして女性に対する暴力について審議されているところでございます。その結果や各種調査等も参考に、有用な調査となるように調査の具体的な内容、方法等については検討してまいりたいと思っております。
  115. 但馬久美

    ○但馬久美君 ぜひその点、よろしくお願いしたいと思います。  女性に対する夫あるいはパートナーからの暴力事件絡みで、女たちの避難所、いわゆる緊急一次保護施設またシェルターなど、国内ではどれだけあるのか、またどのように利用されているのか、その実態について御説明をお願いします。
  116. 名取はにわ

    説明員名取はにわ君) 暴力を振るわれた被害女性が緊急的に利用する一次避難所として民間の方々により設立されている施設につきまして、総理府で承知しています範囲でお答えさせていただきたいと思います。  当方が承知しております数は、全国で約二十カ所でございます。施設の規模、利用のされ方、運営実態は施設によりさまざまでありまして、必ずしも明らかでないという状況でございます。
  117. 但馬久美

    ○但馬久美君 日本ではまだまだというところなんですが、諸外国の例ですけれども、特にノルウェー、スウェーデン、オランダは女性に対する暴力と闘うシステムを既に二十年前から練り上げていると言われております。避難所の運営は民間女性団体という点では日本と同じでありますけれども、必要経費が政府や自治体から補助金で賄われている点は日本と違います。  ノルウェーの一例を申し上げますと、全国五十カ所の避難所の情報交換や調整に当たる避難所総合センターが設置され、どこの警察の対応が素早いかという情報まで提供しております。人口二万五千人のハマール市の施設では、職員十三人の全員が常勤で、国立病院の看護婦と同じぐらいの賃金が支払われて、年間経費の三千万円は全額国と地方で折半しています。このように国などの行政機関が本腰を入れて取り組んでおり、本当に手厚い保護がなされているように思われます。  また、これは報道とは違うんですけれども、一九九五年に財団法人横浜市女性協会が調査したもので、アメリカの民間女性シェルターの調査報告書の第二弾が発表されております。これによりましても、特に東洋系の女性を保護するシェルターの例を挙げますと、自治体の補助は手厚く、一時避難所の運営財源三十二万ドルのうち七割に当たる二十万ドルをカリフォルニア州やサンフランシスコ市などの補助金で賄っているという実態があります。  日本もこうした欧米に見習って行政サイドの本腰を期待したいところですけれども厚生省の方はいかがでしょうか。よろしくお願いします。
  118. 田中敏雄

    説明員田中敏雄君) いわゆる民間のシェルターは、先ほどお話が出ましたように、暴力により被害を受けた女性を一時的に保護し自立支援をするというものでありますが、その実態、機能等はさまざまであるというふうに聞いております。  厚生省としましては、これまで婦人相談所での一時保護あるいは婦人保護施設での収容保護を行うとともに、母親が児童を連れて避難しているというような場合には母子生活支援施設におきまして入所等の保護を行っているところでございます。  女性に対します暴力に関する基本的な方策は、先ほど申しましたような男女共同参画審議会におきまして対応する公的な機関のあり方も含めて審議されておりますので、その検討を踏まえて対応してまいりたい、かように考えております。
  119. 但馬久美

    ○但馬久美君 女性の人権保護というためにもぜひ必要なのは具体的な実践ではないかと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。  次に、警察庁にお伺いいたします。  外科医で東京都の監察医を務めるある医師が一九九二年から一九九六年の全国の司法解剖の資料を調べまして、配偶者の暴力によって年間平均四十例の虐待死があると結論が出ております。  この虐待死に対しましては当然殺人罪で告訴され処罰もされるということなんですけれども、問題は傷害で済んだ場合についてであります。警察は民事不介入、いわゆる公共の安全と秩序の維持に直接関係のない私生活に関与すべきではないとしておりますので、つまり夫の家庭内暴力として済まされており、処罰の対象から外されていると思います。  先ほど申し上げましたように、夫による虐待死の実例もありますし、またそれを防止する意味からも、民事不介入という法的慣習制度とは切り離して対処すべきケースもあるということを認識すべきではないかというふうに思います。すなわち、加害者の過去の暴力行為の経緯などを考慮して、処罰すべきは処罰するという厳格な法を適用して行うべきではないか、そういうふうに思うんですけれども、警察庁はどのようなお考えでしょうか。
  120. 林則清

    政府委員(林則清君) 民事不介入と申しますのは警察がみだりに私事に介入しないということでありまして、警察としましては、夫婦間の問題でありましても、それが今御指摘ありましたような殺人はもとよりでありますが、傷害、暴行、脅迫、そういった犯罪を構成するということでありましたならば、被害者の心情というものにも十分配意しつつ事件化を含め厳正に対処しておるところであります。  ただ、現実の問題として、そのようにおっしゃるのは、夫婦間の事案につきましては一時警察問題にしよう、事件にしようという場合にはどうしても被害者の協力が要るわけですが、その被害を受けられた女性、妻なりパートナーに当たる方が警察への協力をしていただけない、あるいは、しておったんだけれども途中で人間関係上の問題なのか取り下げといいますか協力をされなくなるというようなケースが現実には非常に多いわけであります。そういうことでありまして、やはり夫婦間の暴力の場合に、原則として普通と同じように対処するわけでありますけれども、今申し上げましたような状況がありますので、一般の場合よりも異なる難しい面がないというのはうそでありまして、やはりそこには事件として立件する上で普通の場合よりも難しい問題が若干あるわけであります。  警察におきましては、夫婦間における暴力という特性といいますか、今申し上げましたような事情をも考慮して、その対応に当たりましては、被害者の意向あるいはプライバシー、広い意味でのプライバシーをも十分尊重しつつ、警察だけで対応できなければ他の機関へ御紹介するなど、そういうことにも配慮しながらケース・バイ・ケースで最善の措置をとってまいりたい、そのように考えておるわけでございます。  それから、ちょっと参考でございますけれども、先ほど、警察の方は傷害等は事件にしないのではないかとおっしゃいましたけれども、ちょうど私の手元にありますものは、夫から妻に対する犯罪の現状として、平成十年中を見ますと、殺人、傷害あるいは暴行なんかを含めまして五百十三件警察で検挙しておりますし、近年の傾向は、年によって若干高低がありますものの、平成七年以前は四百件台でありましたが、平成八年以降は五百件台で刑事事件として処置されておるという現状でございますので、参考のためつけ加えます。
  121. 但馬久美

    ○但馬久美君 ありがとうございました。  こういう調査もあるわけなんです。東京都の女性に対する暴力の調査報告によりますと、夫が妻に対してけがを負わせるほどの暴力を振るったときの対応の仕方について、二つの意見があります。あなたはどれにしますかという問いに対して、回答は、一つは、当事者や家族の間で解決するよう努力すべきであるというのが、女性の答えが五九・九%、そして男性の答えは七三%。これは男性の方が多いわけなんですね。そして二点目は、警察や相談機関にかかわってもらうべきだというのが、女性の答えが三六・八%で、男性は何と二〇・九%。確かに、当事者や家族でという回答が六割、警察や相談機関にという回答は四割弱でありますが、これを見ても夫の家庭内暴力の潜在化が指摘されます。警察や相談機関という回答も四割近くあり、決して無視はできないと思うんですけれども、こうした数値、警察としてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  122. 林則清

    政府委員(林則清君) 全く委員から今御披露があった調査結果のとおりでありまして、約六割が家庭内の問題は外へ出さないで家庭で解決するように努力すべきだという一方で、やはり四割は警察が関与する形できちっと法的に解決するということを望んでおると。これ一つを見ましても、夫婦間のそういった暴力の解決方法については、日本人の意識の中には、まだまだ大変意見が分かれ、逆に言えば我々としての対応の難しさというものを示しておるものというふうに思うわけであります。  したがいまして、警察としては、こういった現状ではありますけれども、やはり基本になるのは被害者の人権ということでありますので、被害者の意向というものを十分踏まえ、そしてさっき言いましたような、例えばその修復可能であった家庭を警察が無理やりに事件にすることによって壊してしまったというような副次的な被害が出ることもこれまたマイナスでありますので、その辺の状況を十分踏まえながら、ケース・バイ・ケースで事案に即してきっちり対応してまいりたい、そのように考えています。
  123. 但馬久美

    ○但馬久美君 大変ありがとうございました。  これからこういう問題がまだまだ起きてくると思いますので、しっかり調査をしながらこういう問題への取り組みというものを考えていただきたいと思います。  次は法務省にお伺いいたします。  不況によるストレスから夫の暴力がふえているとも言われておりますけれども、この加害者対策には、前問でも指摘しましたように、法的網で処罰する方法というだけではなくて、カウンセリングなどの方法で暴力行為を未然に防ぐというやり方もあるのではないかと思います。欧米ではその方向性が見られるんですけれども日本でもぜひこういう対応をしていただきたいと思いますけれども、法務省の方はどういうふうにお考えでしょうか。
  124. 名取はにわ

    説明員名取はにわ君) 総理府の方でお答えさせていただきます。  男女共同参画審議会女性に対する暴力部会の中間取りまとめにおきまして、暴力を振るう男性に対する再教育など、女性に対する暴力の再発を防止する措置が十分とられていないということが指摘されております。この審議会では、政府全体への提言に向けまして引き続き調査審議が進められているところでございまして、その状況を見守りたいと思っております。(「外務省に聞け、外務省に」と呼ぶ者あり)
  125. 但馬久美

    ○但馬久美君 という意見がありますので、外務省の方にもこの点、聞かせていただきたいと思います。  もう一遍問題を言います。  不況によってすごいストレスがある中から夫の暴力がふえておりますということは先ほどから申し上げておりますけれども、こういう加害者対策には、先ほど指摘いたしましたけれども、法的網で処罰する方法だけではなくて、カウンセリングという方法、暴力行為を未然に防ぐというやり方もあるのではないかと私は指摘しているんです。欧米ではその方向性が見られますけれども日本もぜひこういうふうな対応の仕方を考えていただきたいと思うんですけれども、外務省といたしましてはどういうふうにお考えでしょうか。
  126. 浦部和好

    政府委員(浦部和好君) 一般的にこの委員会で問題になっております性差に基づくいろいろな社会問題、先ほどセクハラのお話もございました。今、家庭内の暴力の問題、こういうことでございます。  やはり性差に基づく社会問題に関する意識をいろいろな形で、少なくとも外務省としては職員のそういう意識を高めていく必要が本当にあるというふうに思っております。確かにカウンセリングも一つの形でございましょう。あるいは若い人たちのグループの中でのいろいろな研修のやり方、いろいろやり方はあるんだろうと思います。  したがって、いろいろやり方を工夫しながら、二月二十六日に先生方からいろいろと申し入れを受けましたそういう趣旨を徹底してまいりたい、かように考えております。
  127. 但馬久美

    ○但馬久美君 突然でいろいろとありがとうございました。  各省庁来ていただきまして、いろいろとどうもありがとうございました。  このように、きょうはセクハラ、そしてまた女性に対する暴力に対していろいろと質疑させていただいたんですけれども、まだまだ日本の社会がこういう閉鎖的な状況で、一人一人の人間がもっともっと物事の判断、感じ方、感覚、感性、そういうものを成熟させていかなくてはいけないな、そういうふうにも私は感じながらきょうこうやっていろいろと質問させていただきました。  それでは、労働省の方に入らせていただきます。  先ほどからも厳しい雇用関係、そしてまた失業情勢について何点かお話がありました。私もいろいろ用意させていただいたんですけれども、ダブりますので飛びまして、海外と日本との失業率を見まして少し語らせていただきたいと思います。  失業率を見ますと、ドイツが徐々に今ふえていて、九八年は一一・二%に達しているのに比較しまして、アメリカは九四年に六・一%だった失業率が九八年には四・五%、そしてまたことしに入って四・三%と、だんだん落ちついてきております。イギリスも同様に、九四年には九・三%もあった失業率が九八年には四・七%と半減しているんですけれども、こうした低失業率はどうして達成できたのか。そこに参考になるような施策があるならば見習っていくことも大事だと思うんですけれども労働省はこの点どういうふうに取り上げていらっしゃいますでしょうか。
  128. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 今、委員指摘の欧米の失業率について、欧米の中でもいろいろと状況が違っているかというふうに思います。  御指摘のように、アメリカやイギリスでは近年失業率が低下傾向にありますし、ドイツは、これは東西両独の統一の問題もあるかと思いますが、失業率は上昇しているというふうに、いろいろであろうかというふうに思っています。  先月、ワシントンにおいて行われましたG8の労働大臣会合におきましても、各国の労働対策、雇用対策というものがそれぞれ披瀝をされまして、いろいろと意見交換をされましたが、やはり国によって、一律の背景で雇用問題が現在あるというのではなくて、それぞれ抱えている問題があろうかと思います。  例えば若年について大変他の国では厳しい認識で、実態はまさにそうであったと思いますが、この点について我が国の若年者対策とはやはり背景が違うという感じがいたしましたし、それから高齢者の問題について、日本の取り組みについてはこれは大変注目を受けるというふうなことでございまして、基本的には経済の状況というものがあると思いますが、その中でも各国によっていろんな背景があるというふうな印象を受けております。
  129. 但馬久美

    ○但馬久美君 アメリカなんかは低賃金で、そしてまた労働力の移動が自由であるというような傾向がありますし、そしてそういうものに対してはやっぱり不平等であるとかそういう意見もあります。ヨーロッパの方は今度は賃金は高くて労働組合が強いということで、失業保険なんかが手厚くされていると。そういう中で日本は、先ほどからいろいろとバランスの問題もありましたけれども、やはりこういう部分において日本のそういう雇用失業率をしっかりと見ていかなくてはいけないのではないかな、これは全体的な意見でありますけれども、そういうふうに私は思います。  話は変わりますけれども、ことしの一月の就業者数は六千三百八十万人ですけれども、昨年一月に比べて七十五万人減っております。既に連続して十二カ月も減少し続けておりますけれども、これは二〇〇五年まで構造的に減少し続けるのかどうか、またその原因は何なのか、また二〇〇五年には労働力の不足現象があらわれてくると言われておりますけれども、もしそうなれば完全失業率にプラスに働くと予想されますけれども、実際のところはどうなのかお聞かせください。
  130. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 現在、就業者数あるいは雇用労働者数が減じていますのはこれは景気の影響をもろに直接に受けているからであるというふうに思います。  労働力の供給の面から見まして、今おっしゃいました二〇〇五年ごろには労働力人口がピークに達しまして、それ以後は絶対的な減少が始まるというふうに推計をしております。なお、人口で見ましても今後十年間で十五から二十九歳人口は六百万人減少する、年間六十万人ぐらい減少しまして、この同じ十年間に六十五歳以上人口がちょうど六百万人増加をするというふうな人口の推計でございます。  二〇〇五年ごろをピークにして労働力人口が減少に転じたときに失業率が改善されるかどうかという問題ですが、供給サイドはかなりはっきりとその数が見通せるわけですが、需要サイドの方がもちろんはっきりいたしませんので、このときから失業率が低下するかどうかは一概には言えないだろうというふうに思います。  この点につきましては、経済審議会でもこれからの経済社会のあり方について議論が始まったところですし、労働省におきましても第九次の雇用対策基本計画の策定に向けて現在検討を開始したところでございます。
  131. 但馬久美

    ○但馬久美君 ありがとうございました。  話はまたすぐ飛びますけれども、この長期不況が原因しているホームレスの方々が人道面から放置できないところに来ていると思います。  今年二月にようやく五省庁と五都市の間でホームレス問題の連絡会議が設置されました。具体的に仕事面での対策担当の労働省、そしてまた厚生省は医療、福祉、生活保護関係、また簡易宿泊所の関係は建設省、また地方自治体関係の自治省、また治安関係の警察庁と、それぞれ対策や方針を出してきましたけれども、時間がありませんので、労働省にホームレスの方の仕事対策についてどのように取り組まれているのか、お尋ねいたします。
  132. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) いわゆるホームレスの方につきまして、そのホームレスになられた原因というのはいろいろな事情があるようでございますけれども、就業の場が不足しているためにやむを得ずホームレスの生活をしているという方もおられるわけでありまして、労働省といたしましては雇用活性化総合プランの中におきまして日雇い労働者を一定の数雇い入れた事業主に対しては助成をするという制度をこの一月から始めているところでありまして、当面はそういうことでございますけれども、就労の面からの援助をしていきたいというふうに思っているわけでございます。  ただ、このホームレス対策は部分的な対策では不十分かと思いますが、先ほどおっしゃいました関係省庁間の協議会ができましたので、ここにおきまして総合的にできるだけ早く対策を打ち出そうということにしているところであります。
  133. 但馬久美

    ○但馬久美君 ではもう一点、今度は障害者の雇用についてでありますけれども、厳しいこの雇用失業情勢の中で、職業安定所に届けられた解雇された障害者の数が平成九年末では千六百九人、平成十年末では三千九十三人、一年で倍加しているわけですけれども、現下の雇用失業情勢のもとでは新たな就職先を見つけることが非常に困難になっていると思います。  この障害者雇用について、昨年七月から法定雇用率が一・六%から一・八%に引き上げられました。企業は、この方針に従って障害者雇用、特に知的障害者雇用も含めて雇用率を高めるよう義務づけられております。  労働省としては具体的にどのように障害者雇用を進めているのか、また雇用活性化総合プランに障害者雇用を推進するための支援策が決められていると思います。もう少しこれ具体的にお聞かせください。
  134. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) ただいま御指摘ありましたように、現下の雇用情勢を反映いたしまして障害者雇用も大変厳しい状況に置かれていると思います。事業主が障害者を解雇しようとするときにあらかじめ安定所長に届けるということになっておりますが、お話のように、昨年と比べてみますと約二倍の増加というふうなことでございます。  障害者の雇用対策、これは相当力を入れてやらないと成果が上がらないと思いますが、従来からの雇用率達成の指導等々に加えまして、障害者につきまして求人の開拓員を積極的に安定所に配置する、全国で百四十名の求人開拓員を配置しまして企業からの求人要請を行っている、あるいは就職面接会を昨年の四月から現在までに百八十二回開催をしまして求人の開拓に努めるというようなことを行っております。  それから、今回の雇用安定プロジェクト等々におきましても、この一月から一千八百人ぐらいの障害者の方を対象にいたしまして職場実習とか試みの雇用をしていただく、こういった事業を始めているというところでございますし、あるいは障害者の方にパソコンを貸与しましてその習熟を行っていただくというふうなことも始めております。  御指摘のように、昨年七月からは障害者雇用率も一・六から一・八%に引き上げられたところでありますから、障害者対策には今申しましたような手法を通じて全力を挙げていくこととしているところであります。
  135. 但馬久美

    ○但馬久美君 時間が来ましたので、いろいろとどうもありがとうございました。ぜひ、こうやってホームレスの方々また障害者の方々に対しての手厚い支援もよろしくお願いしたいと思います。  以上でございます。
  136. 市田忠義

    ○市田忠義君 日本共産党の市田です。  きょうは改定労働基準法の施行についてお聞きしたいと思います。  間もなく改正労働基準法、私たちの立場からいえば改悪労働基準法ですが、これが施行されようとしております。したがって、この問題についてきょうは幾つかの問題をお聞きしたいと思います。  まず初めに、時間外労働の上限基準についてどのように決められているか御説明ください。
  137. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 改正基準法によって労働大臣が定めることとなりました時間外労働の上限に関する基準につきましては、労働大臣の告示で定めることにいたしております。これを審議会等で諮問し答申を得ました内容を申し上げますと、まず年間の上限時間を三百六十時間といたしまして、それよりも短いそれぞれの期間で定めていくことも可能でございますが、三カ月それから一年、その両方について定めていただくことをあわせて定めました。  それから、これは通常の場合の一般的なケースとしての時間外の上限基準でございまして、そのほか改正労働基準法改正させていただきました内容の中で、女性の方、それから介護育児等を行う方で申し出があった方についてのいわゆる経過措置としての急激な生活上の変化を緩和するための措置につきましても、この時間外労働の上限基準の中で、そういった女性で申し出があった場合には、年間の水準でいえば百五十時間で抑えなければならないこと。また、現行の労働基準法がそれよりも短い期間で、工業的業種、非工業的業種についてそれぞれ短い期間での上限も定めておりますので、それらも含めましてこの上限基準の中で措置すべきことをあわせて定めておるわけでございます。
  138. 市田忠義

    ○市田忠義君 文字どおりこれは上限基準であって、こういう上限が決められたからといってこれまでの残業協定よりも上の、この上限いっぱいの協定を結ばなければならない、そういう必要はないというのはもう言うまでもないことだと思うんです。  労働省が出しておられる「時間外労働の限度に関する基準」、こういうリーフレットがございます。これの一ページ目にはこう書かれてあります。三十六条について、「同条は、時間外労働・休日労働を無制限に認める趣旨ではなく、時間外労働・休日労働は本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものであり、労使がこのことを十分意識した上で三六協定を締結する必要があります。」と、こういうふうに書かれてあります。そういうものとして指導をされていますか。
  139. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のとおり、時間外労働は、そういった通常の所定労働時間でおさまらない場合に労使が十分話し合って、その上限を定めた上でのいわゆる三六協定というものを結んでいただくわけでございますので、労使がそういった姿勢から十分慎重に話し合って決めていただくべきことをこういうパンフレットに織り込んだものと理解しております。
  140. 市田忠義

    ○市田忠義君 この三十六条の規定というのは、無制限に労働時間を延長してもいいという趣旨じゃなくて、本来臨時的、必要最小限度にとどめるべきだというのがこの法の趣旨だし、当然そういう立場で指導されるべきだと思うんです。  この基準は、私思い出すのですが、去年の労基法改正問題の委員会でもたびたび議論になりました。罰則規定がないのに果たして効果があるのかないのかということを含めた議論がありました。  それで、昨年四月の衆議院労働委員会での伊藤労働基準局長の答弁によりますと、このように述べておられます。「法律上、明確な遵守義務を三六協定を結ぶ当事者の方に課しておるわけでございますので、もしこれに違反するケースがあれば、労働基準監督署としては是正を求める指導を繰り返しでもしていかなければならない。」、また、「いわば努力義務を超えて、罰則はございませんけれども、改善が厳しく求められる義務である」と。単なる努力義務ではなくて、遵守義務だということもおっしゃいました。  今一斉に三六協定の改定が行われておりますけれども、この労働大臣が定めた、先ほど説明のあった上限基準、一年三百六十時間以内、これを遵守させるための指導は具体的にどのように現実にはやられているのか、御説明ください。
  141. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 時間外労働の上限基準を遵守していただくために私どもの臨む基本的な姿勢は、先ほど私の答弁を引用されました、その考えのとおりでございます。  したがいまして、労働基準監督署の窓口におきましても、そういったことで、もしこの上限基準を超えるようなケースについての三六協定の届け出があれば、その理由をただし、その範囲内に是正していくための指導を粘り強く展開していくべきこと、これは今回の改正労働基準法の施行に際しまして、各労働基準監督署へ都道府県労働基準局を通じて指示をいたしているところでございます。
  142. 市田忠義

    ○市田忠義君 同じように伊藤局長は労基法審議の中で、この上限基準の有効性の問題について各党の議員からの質問に何度も同じ答弁をされておるんですけれども、厳しい指導をしていくという旨繰り返し答弁されました。  例えば、上限基準を超えるような労使協定についてはこうおっしゃっています。「上限基準を十分熟知した労使当事者が、いろいろ十分話し合って、真にやむを得ない合理的な理由があるというもとで時間外の上限基準を超える内容を締結してきたということであれば、私ども、今回は、法律に基づく指導を行う、こういうふうに法律上の規定がございますので、その指導を行う責務があるわけでございますので、そういった合理性について十分吟味し、それがないと認められる場合にはやはり改善について厳しく指導をしていく。」、これは五月六日の衆議院労働委員会での答弁です。  同じ日の答弁で、「法律に基づく指導ということで行いますので、何としても上限基準内におさめていくという懸命の指導を行うことに相なります。」と。これは参議院でも私、もし従わなかったらどうするのかと。いや、それはもう従ってもらうまで何度でも繰り返し懸命の指導を行うということに相なりますと、こう述べておられます。  この考えは当然今も変わらないと思いますが、改めて確認していいですね。
  143. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) そういった法律の御審議を願う際の私どもの基本的な考えというのはもちろん変わりございません。  都道府県の労働基準局を通じて指示いたしておる内容も、そういった考え方に即して厳しく改善指導を促していく、そういった仕組みといたしております。
  144. 市田忠義

    ○市田忠義君 ところが、さきに私が示しましたこの「時間外労働の限度に関する基準」というリーフレットの三ページを見ますと、「特別条項付き協定」、こう書いて、「特別条項付き協定を結べば、限度時間を超える時間を延長時間とすることができます。」、こう書いてあるんですね。  さんざん国会で議論して、別に日本共産党を代表した私の質問に対する答弁だけじゃなくて、各党各会派からのこの問題についての心配の声が出て、懸命の指導をしていく、何度もそう答えられていた舌の根も乾かぬうちに、もしその上限時間におさまらなかったら特別協定を結べばいいですよと、事実上いわば青天井の勧めとも言うべきこういう特別条項つき協定もあるんだということをわざわざここに書いていらっしゃる。  私は、これはある意味では国会審議を冒涜する、まさに国会をペテンにかける、そう言われても仕方がないような説明書きだと思うんです。大臣、いかがですか。
  145. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 監督行政のもとでは、この三六協定、上限基準がきちっと履行されるように指導をしていくわけでありますが、その中で、ごくごく特殊な事情で労使ともにこうしないとという事情があるかもしれません。そのときにも極力おさまって何とか乗り切れるのであるならば、その指導はしていくというつもりであります。  ただし、会社の危急存亡にかかわる、そうしないと現在ある雇用がすべて失われる危険性すらあるという中で、労使がお互い認め合ってこれで乗り切るんだという場合、そしてそれ以外に乗り切る方向が見出せないという場合のごくごく限定的な例外措置について触れた記述だというふうに思っております。
  146. 市田忠義

    ○市田忠義君 このリーフにはそんなの書いていないですね、そういうふうには。危急存亡の危機、その会社が立ち行かなくなる、そういう場合はなんて全く書いていないですよ。これだけ読めば、三百六十時間と決められていてもそれを超えて、特別の事情なんていうのは何ぼでも拡大解釈できるわけです。本来、三百六十時間だって臨時的で特殊な、本来やらせてはならない、しかし例外的に、だから割り増しの賃金を出すわけだから。にもかかわらず、わざわざここにこういうことを書いている。  一月二十九日、労働基準局長名で都道府県労働基準局長あてに出された通達、基発第四五号、ここに持ってまいりました。  特別延長時間について、「このような弾力措置を設けた理由は、」「臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わざるを得ない特別の事情が生ずることが予想される」ことを理由にしている。しかも、これを見ますと、「限度となる時間は示されておらず、」と。大臣が決められた三百六十時間を超えて残業させる場合に特別条項つき協定を結ぶと。しかしこの場合、これを見たら、「「特別延長時間」については、限度となる時間は示されておらず、労使当事者の自主的協議にゆだねられている」ということを労働基準局長名で都道府県労働基準局長あてに出しておられます。  私は、これは先ほども確認しましたけれども、もともと時間外労働そのものは臨時的な場合にしか許されない。その臨時的な場合としての上限を上回る延長時間を認めて、しかもそれには上限はない、青天井だと。いわば青天井の脱法行為を指南しているようなものと言わざるを得ない。  先ほど労働大臣も言われましたが、伊藤局長もこの「特別の事情」ということについて、衆議院でも参議院でも委員会の議論の中で、会社倒産とか企業が存亡の危機にあるときとか、そういういわば極めて限られた場合にしか認められないと言っているのに、配られているリーフレットには事実上それを超えた協定を結んでもよろしいと。官僚主導が今さんざん問題にされてきていますけれども、こんな国会審議を無視した、ばかにしたリーフの説明の仕方はないと思うんです。私は、大臣の責任においてこんな内容を書いているようなリーフは撤回すべきだと思うんです。労働大臣、いかがですか。
  147. 甘利明

    国務大臣甘利明君) あくまでも国会の審議をもとに法律というのはでき上がっているわけでありますから、その趣旨がきちっと担当の現場に伝わるように何らかの対処をしていきます。
  148. 市田忠義

    ○市田忠義君 積極的な前向きの答弁をいただきましたので、国会でここで審議した精神、内容が正確に伝わるようなリーフレットにぜひ改善していただきたいということを再度強調しておきたいと思います。  大体労働基準法というのは、時間外労働をできるだけ短くする、しかもこれは労働条件の最低基準を決めたものであって、さらに引き上げていくことに努めなければならないということが決められているわけですから、ぜひそういう立場で御検討をいただきたいと思います。  それで、今実際の現場でどういうことが起こっているかということについてちょっと紹介しておきたいと思うんです。  東京三菱銀行が労働組合に三六協定の改定を申し入れた。「改正労働基準法に基づく就業規則・三六協定の改定について」、これは労働組合が組合員に報告している、公にされている組合速報に明記されていることなんですが、どういうことが当局から提起されたか。  それによりますと、時間外労働の限度について、一日四時間十五分、三カ月百二十時間、一年三百六十時間としている。ところが、特別な場合として、まさにこのリーフを生かして、一日六時間十五分、一年については何と四百八十時間にまで延長する、こういう提起が当局側から行われている。しかも、その特別な場合として具体的に挙げられているのはどんな内容か。これは従来なかったような、「官公庁、日本銀行による検査・調査のため必要あるとき」。これは加えて九項目に及んで、私はこの九番目を読んで驚きました。何とでも解釈できる、何でもありなんです。「その他上記各号に準ずる銀行業務遂行のため、又はこれに付随する事項処理のため真にやむを得ない事情のあるとき」。何とでも判断できる。こういう形で四百八十時間にまで延長すると。  労働基準法というのは本来そういう残業時間をできるだけ短くしようというのが精神なのに、改悪労基法のもとでこういう協定を提起して結ぶ。本当に私はひどいと思うんです。  これが前の国会で伊藤局長が言われた、何としても上限基準内におさめていくという懸命の指導の結果なのか。いかがですか。
  149. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 特別条項つきの協定、こういうものについてのお尋ねでございますが、今お取り上げになりました具体的ケースはまた別といたしまして、この特別条項、従来の目安の時代からあったわけでございますが、私ども、新しい上限基準に変わっていくに際しましては、本当に特別の緊急の事態の場合にこういった延長時間を別に定めなくてはならないケース、それはあり得ることと。  ただ、そういう場合を明確にしていかなければいけないということから、この特別条項つきの協定は、先生お持ちのパンフレットにありますように、原則としての延長時間をまず定めるべきこと。そして、限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情があれば、これをできるだけ具体的に書いて届けてきてほしいと。そして、その中で我々がどういうふうに指導できるかということも見きわめてまいるわけでございます。さらに、一定期間の途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合には、労使が改めて手続をとらなくちゃいかぬわけですから、労使がとるべき手続、協議とか通告、その辺の手続を具体的に定めてやっていくこと。それから、幾らそういう場合であっても、限度時間、上限基準を超える一定の時間というものをあらかじめ定めておくこと。こういったことを求めて、明らかにして、パンフレットを作成いたしておるわけです。  もし誤解を招くような点があれば、大臣が答弁を申し上げたとおり、私ども善処したいと存じますが、先生お取り上げになりました個別ケースから見ますと、具体的な事情は個別ケースでよく存じませんけれども、あらかじめその事情等を決めずにこうした年間の所定労働時間について抽象的な定めをするとすれば、先生お持ちのパンフレットの私ども指導と照らし合わせていただければその辺の問題というのはわかるかと存じますが、なお個別事案でございますので一概にそこは私ども申し上げることはできないと思います。具体的なケースであれば、私どもの第一線の窓口において種々相談に乗る体制をとってまいりたいと思います。
  150. 市田忠義

    ○市田忠義君 先ほどのは東京三菱銀行の例なんですが、さくら銀行はもっとひどいですよ。「一年五百四十時間以内において必要な限度で延長することができる。」、こういう協定を現実に提起しているんです。  それからもう一つ紹介しますと、これはスズキ自動車の労働組合です。私も特別な事情のある場合というのは認めます、全くそういう事態がないとは言いません。しかし、先ほどもおっしゃったように、まさに会社がつぶれるかどうかとか、新しいプロジェクトの山場に来ている、前にそういう場合を答弁されました。しかし、スズキ自動車の新しい協定の案を見たらこう書いてあるんです。  「今回の改正ポイントは、年間での時間外労働の制限を設けることである。法上は「法定労働時間を超える時間外労働は三百六十時間以内とするが、特別な事情がある場合には、弾力措置として、これをさらに延長しても良い。延長時間については、労使協定にて決めること」となっている。」。その後なんです。「当社においても、原則は、三百六十時間とするものの、実態を考慮して、弾力措置の延長時間を導入したい。」、「実態を考慮して、」と書いてあるだけですよ。どういう実態で、まさに会社が立ち行かなくなるような事態なんて全然書いていないんですよね。  だから、これは一つの例だけじゃなくて、今三つ例を挙げましたが、こういうことがいろんなところで行われようとしている、私は労働省として実態を調べてそれこそ懸命な指導をやるべきだと思うんです。いかがですか、大臣のちょっと決意を。
  151. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 改正基準法では、その特別な事情をできるだけ具体的に明記せよ、そしてそれが本当に特別な事情であるかどうかは監督行政の中でしっかりと管理していくというつもりでございますので、その国会において論議された点を具体的に踏まえて各監督署を指導していきたいと思っております。
  152. 市田忠義

    ○市田忠義君 次に、時間外労働についてもう一つ。  この四月から女性保護規定の撤廃が実施される予定でありますが、その女性保護規定の撤廃に伴う労働省の対応が大変大きな問題に今なっています。  もともと、女性保護規定を撤廃して男並み女性が働かされる、過労死の平等の押しつけなんというのは間違いだというのが我々の立場です。男と同じような過労死の危険にさらされるとか、大変な男性の長時間労働女性も右へ倣えということになれば多くの女性は働けなくなる、したがって女性保護規定の撤廃というのは、男性が過労死を強いられるような状況がなくなる男女共通規制が実現するまで施行は延期すべきだというのが日本共産党の基本的な立場です。  この立場を明確にした上で、幾つかの問題についてお聞きしたいと思うんですが、まず第一は、これまで女性の時間外労働の上限時間は百五十時間でした。今回、さきにも述べたように上限時間が年間三百六十時間に定められたわけですけれども女性保護撤廃の趣旨というのは、女性についての上限時間を三百六十時間まで引き延ばしなさい、そういう趣旨ですか。そうではないと思いますが、いかがですか。
  153. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 雇用機会均等法の改正とあわせて行われました女子保護規定の撤廃、その中で残業時間の制限の解消というものは、働いて能力を発揮して活躍していくことを望む女性がそういった機会をいわば得ることが拒まれてしまう、そういった制度にならないようにという趣旨でございます。  したがいまして、その事業場の通常のあり得る姿として百五十時間を超える残業等もこなさなければならないケースがあって、そういう場合にも能力を発揮していく場合に、そういうことを望む女性能力発揮の場、いわば能力発揮の芽が摘まれてしまわないような措置をいたした、こういう趣旨かと存じます。
  154. 市田忠義

    ○市田忠義君 だから、上限時間を三百六十時間まで女性も延ばしなさいということが均等法の趣旨ではないというのは明確だと私は思うんです。  そこで聞きますが、例えばこれまで時間外労働の上限について、男性三百六十時間、女性百五十時間と決められていた職場があったとすると、四月一日以降もこうした定めをすることは労働基準法違反になるのかならないのか。いかがですか。
  155. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今まで百五十時間に女性の方の残業時間を抑えていたところが、そのまま女性の方について百五十時間に据え置く三六協定なり就業規則とする場合の問題かと存じますが、それは、女性の方を一律に百五十時間とし、男性の場合についてもし別の上限時間を、例えば二百時間あるいは三百六十時間というものを定めることになっているんだろうと思いますが、そういうことから見ますと、もし能力を発揮していこうということを望む女性がそういった能力発揮の機会が摘まれてしまう、そういった形になる可能性がありますので、機会均等法の趣旨に照らせば問題があるというふうに言えるかと存じます。
  156. 市田忠義

    ○市田忠義君 均等法のことは後で聞きます。労基法違反になるのかと聞いているんです。
  157. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) もし一律に女性の方についてそういった希望しても残業ができないということになれば、機会均等法上問題があるというふうに申し上げたわけですが、労働基準法上それを明確に違反だとする条文はございません。  ただ、労働基準法、機会均等法、それぞれの法律が別個に機能するんではなくて相互にその趣旨が相まって一つ労働体系の秩序というものをつくっていくわけですので、もしそういう三六協定の届け出があった場合には労働基準監督署の窓口においては改善等を促すこともありますし、女性少年室と連絡をとることもあり得るということは申し上げられると存じます。
  158. 市田忠義

    ○市田忠義君 それを超えて働きたい人まで妨げるというのはよくないけれども労使女性は百五十時間、男性は三百六十時間という協定を結んでも、そのことによって労働基準法違反にはならないというふうに確認していいですね。労基法違反になるんですか。
  159. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 先ほど申し上げているように、労働基準法上そういう就業規則なり三六協定をつくってはいけないということはございませんが、ただ、機会均等法上そういう好ましくないというふうに申し上げたのは、場合によってはその程度が過ぎれば公序良俗等に反するケースも出てくるわけでございまして、労働基準監督署の窓口は労働基準法の成文化された条文だけを見て仕事をするわけではございませんので、そういったケースの届け出があれば、それは機会均等法の趣旨に照らして問題ではないかという指摘もし、場合によっては女性少年室等と連携をとって対応することもあり得るということを申し上げたわけでございます。
  160. 市田忠義

    ○市田忠義君 均等法上好ましくないけれども労基法上違反ではないということですね。もう一度。
  161. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 労基法上の成文に違反するものではございません。ただ、労働法全体の体系の中でそうしたものが本当に一つの公序良俗として認められていくかどうかというのはまた別問題でございます。
  162. 市田忠義

    ○市田忠義君 大体労基法の精神自身が、三六協定だってむやみやたらと時間外に働かせてはならないと、できるだけ労働時間を短くしようという精神、これは労基法の精神でしょう。どうなんですか。
  163. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 労働基準法の精神といたしましては、できるだけ残業は、先ほども指摘ございましたように、所定労働時間がある以上、残業というものはいわゆる臨時的なケースに限られていくべきだという制定当時の発想は持っております。  ただ、それだけではなくて、その中で女性の方の能力発揮の場が摘まれていくような体系のものがあれば、これは労働基準法だけの問題じゃなくて労働法体系全体の問題としてそういったものはやっぱり相入れないものとして取り扱わざるを得ないケースが出てくるということを申し上げているわけでございます。
  164. 市田忠義

    ○市田忠義君 極めて納得できない答弁ですが、少なくとも労基法違反ではないということは今おっしゃいました。確認しておきたいと思います。  そこで聞きますが、時間外労働労使協定、三六協定というのは届け出によって発効する、これも私も伊藤局長とやりとりしたのを思い出しますが、届け出によって発効すると。これは男女別の協定であっても、三百六十時間以内でダブルスタンダード、男性女性が違う場合であっても、労基法には違反しないんだから当然受理しなければならないと思いますが、窓口ではこれは受理されますね。
  165. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 基本的に届け出すべきこととされ、それが効力発生要件となっている場合に、形式的要件を満たせばその届け出要件をいわば全うするというのが一般的な解釈かと存じます。  ただ、労働基準法におきましては、そうした届け出義務を課していると同時に、労働基準監督官が違反がないように是正すべき義務もあわせて負っている役所でございます。したがいまして、形式的なものと実態としてそれを直させることとは全く別の問題として、同時に私ども違反があれば直させるということで対応するわけでございます。
  166. 市田忠義

    ○市田忠義君 三百六十時間以内の協定を結んでいたら直させる必要はないわけですから、書類上の手続が整っていたらそれは自動的に受理する、受理しなければならない。内容が不備だ、労基法違反だということが明確にわかればそれは拒否することはあるでしょう。しかし、それが三百六十時間と決められている範囲内での協定が結ばれている場合には、届けられたら受理するのがこれは当然だと。受理しないような指導を行っているんですか、今。  例えば、さっき言ったように男性は三百六十時間、女性は百五十時間、従来からそういう協定だった、今もそういう協定を結んで届け出た。これはまずいということで受理しないというような指導を窓口で、第一線の監督署でそういう指導をやられているんですか。私が聞いた範囲では、そういう労使の協定を届けたところで受理しない事例も生まれているということも耳にしました。そういう受理しないような指導労働省としてやっておるのか。
  167. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 失礼しました。まだ女性の方を一定時間以上働かせないという三六協定の話の連続として受けとめておらなかったものですから、違反内容を含む三六協定の届け出があった場合として受けとめてお答えをさせていただきました。  もし、先ほどのような女性の方について一定時間以上は残業させない、こういう一律的な三六協定があれば、それはいわゆる労働基準法の成文には違反しませんけれども労働行政を預かる労働基準監督署また女性少年室等々にとりまして、その成文に違反しなくとも別の法律の趣旨に明らかに反する、こういうことがあれば、この受理に当たっていろいろと指導をしたり改善をするように促したり、そういうことは当然行うべきものと考えております。
  168. 市田忠義

    ○市田忠義君 あなた方が出しておられる「女性の時間外・休日労働、深夜業の規制の解消に向けての留意点」というパンフレットがあります。これを読みますと、このように書かれています。「時間外労働について「男性三百時間、女性百五十時間」というように、女性であるが故に労働協約や就業規則、三六協定によって男女異なる取扱いをすることは、男女の均等取扱いの確保という均等法の趣旨に照らせば、好ましくないものです。」と。均等法違反とは書いてないですね。均等法に照らせば好ましくないと。これは均等法違反ではない、好ましくないと。  好ましくないと違反だというのは大分違いますが、あなたたちが出しておられる文書で、先ほど確認したように労基法違反ではない、しかし均等法に照らせば好ましくないと。好ましくないという文書を出しておられます。これは確認していいですね。これはおたくが出しておられる文書です。それはいいですか。
  169. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) したがって、機会均等法の趣旨に照らして問題があるということをそのパンフレットでは好ましくないというふうに表現されているんだろうと思います。  ただ、私、御指摘を受けながら、女性の方について一律に一定時間以上残業させないという三六協定を結ぶくらいなら、本当に申し出を受けて、いろんな事情、特別の事情を抱えておられる女性については、今回の激変緩和措置がそうしているように介護とか育児をする女性については短く抑え、能力発揮をしたい、またそういう程度の残業であれば、自分能力発揮のために、男性がそういう場で働いているときに自分は帰らざるを得ないというのはある意味では能力発揮という意味では不公平だというような気持ちを持たれる女性についてはむしろ、適正な残業時間であれば働けるような仕組みとする三六協定をなぜ結ばないのか。その辺は、もしそういう届け出があれば窓口においてそういったことをよく話し合うことに相なろうかと。それが機会均等法上好ましくないという表現をとっていることの延長線上にそういうことがあり得るということでございます。
  170. 市田忠義

    ○市田忠義君 好ましくないというのと違反だというのは明白に違いますよ。あなたたちが書いている文書で、好ましくないと。しかし、これは均等法違反だという言い方はされていないんです。  別の問題を聞きます。  別々の定めを理由として募集、採用、配置、昇進等については男女異なる取り扱いをする、これは均等法違反。昇進や採用や配置、募集、これについて男女異なる取り扱いをする、これは均等法違反だ、これは間違いないですね。
  171. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 募集、採用等については、前回の改正法でも内容を強化しましたように、明文をもって機会均等法の趣旨に違反するわけでございます。  先生御指摘のように、趣旨に照らして好ましくないあるいは望ましくない問題がある、こういう範疇の事項と、それから明文でそういうことをしてはならないと書いてある事項と、その両方あるわけでございますが、もし先生のお気持ちの中に、役所の方は好ましくない、望ましくないという範疇のことについては一切窓口は指導しないのか、こういう意味でないことは御理解をいただいておきたいと思っております。
  172. 市田忠義

    ○市田忠義君 好ましくない程度のものを窓口でこれはだめだというふうな指導をされるわけですか。そんな権限があるんですか。労基法違反でない届け出があった場合に受理するのが当然じゃないですか。均等法の精神から照らして好ましくないとわざわざあなた方が出しているパンフレットで書いているのに、窓口でいろいろ指導する、それは当然だと。  先ほど私が言ったように、もともと残業というのは臨時的、やらせないのが原則だ、どうしてもやらせる場合も限度が必要だと。今度女子保護規定が四月から撤廃されて、均等法ができた精神というのは、男性の長時間労働にこれまでもっと短い労働時間だった女性も合わせようというのが精神か、そういうことではないはずでしょう。能力を持っている人がもっと働きたいし、昇進や募集なんかで差別をするべきではない。にもかかわらず、窓口でそういう指導をするというのはどういう法律的根拠なんですか。好ましくないというあなたたちが書いておられる文書からいっても、なぜそういうことをやる、労基法違反でないと先ほどおっしゃったじゃないですか。
  173. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 例えば労働基準法の中でも、今回設けさせていただきました、個別の紛争事案について判例法理等に照らしてある程度制度的に都道府県の労働基準局長が助言や指導を行うというシステムもつくらせていただきました。  こういうふうに、明文の規定で禁止規定を設けることだけじゃなくて、社会全体の秩序、特に労働法体系の中での一つの秩序の中で好ましくない、望ましくないということがあれば、それは必要があれば私ども指導することは当然あり得るわけでございまして、先生御指摘のように、この世の行動規範をすべて法律で書かなくてはいけない、こういうことではなかろうかと存じております。
  174. 市田忠義

    ○市田忠義君 では端的に聞きますが、女性の時間外労働時間を延長しなさいというのが均等法の趣旨なんですか。いかがですか。
  175. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 女性の方が男性と同様に、ある程度妥当な範囲での残業時間であればそういうことも含めて能力を有効に発揮し、活躍して評価されていく、そういう機会の芽を摘まないようにする、こういうのが機会均等法の今回の保護規定解消の趣旨かと存じます。
  176. 市田忠義

    ○市田忠義君 くどいようですが、もっと端的に答えてください。  女性の時間外労働時間を延長しなさい、これが均等法の趣旨なんですか。そうではないとは今おっしゃいませんでしたけれども、いかがなんですか。
  177. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) それは延長しろということが趣旨かということであれば、そうでないかと思います。  ただ、先ほど私も申し上げましたように、その職場の中で男性と同様、能力発揮をする機会が与えられ、評価されていく、そういう機会を摘まないようにするには、今その職場の実情からして百五十時間よりも延びることはあり得る、これは機会均等法の趣旨かと存じます。
  178. 市田忠義

    ○市田忠義君 先ほど、労基法だけで云々してもらったら困る、いろんな法律が絡み合っているということをおっしゃったわけですが、私は均等法の趣旨を云々する場合も、やっぱりその大もとにある労働基準法の精神、時間外労働をできるだけ短くしていく、この労働基準法の精神に均等法の趣旨を云々する場合も外れてはならない、労働基準法の上に立った均等法の趣旨なんだと。  ですから、私、質問の中で明らかにしてきましたが、時間外労働について男女別々の三六協定を結ぶ、これは労働基準法には違反しない。違反するとはあなたはおっしゃらなかった。違反しない。したがってこれは受理する。受理されなければならない。均等法に照らしても、あなた方の表現で言えば、好ましくはないけれども均等法違反ではない。ただ、そのことを理由に募集、採用、配置、昇進について異なる取り扱いをしたら、これは均等法違反になる。  ところが、あなた方が出しておられるリーフレットはひどいんですよ。先ほど紹介したこのリーフレットの一番最後、命令形ですよ。好ましくないどころの書き方じゃないんです。「「男性三百時間、女性百時間」のような、男女別の延長時間を設定しないでください。」、「設定しないでください。」、これ命令なんですよ。例えば、深夜労働なんかはできるだけ好ましくないからやめるべきだなどとは全然書いてない。これを読んだ事業主は、これは従来男性が三百時間で女性が百五十時間だ、もうこんなことはこれからだめなんだな、違反なんだなという誤解を招くような書き方ですよ。労基法の精神からいっても、均等法の精神からいっても、こんな書き方私は撤回すべきだと思うんです。大臣、いかがですか。これ誤解招きますよ。
  179. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 労働省の監督行政というのは、それにかかわる法律をすべて網羅して対処しなければならないわけであります。ですから、均等法で男女均等の取り扱いということが明確になったわけでありますから、そこをちゃんと配慮しながら対応しなければならないというのは当然の話であります。  それから、基準法上三六協定の上限基準というのは、男なら守れるけれども女性には体力として守れない、そういうことで設定しているわけじゃないと思いますから、これは性別を問わずここを妥当な上限基準として設定をされているというわけでありますから、これが女性にとって非常に過酷であって、男性にとっては何とか大丈夫だという基準ではないはずであります。  そこで、仮にどうしても企業が百五十時間を設定したいというのであるならば、私、個人的な意見としては、じゃ男女ともそうできるように頑張ったらいいじゃないですかという方を言いたいというふうに思っております。
  180. 市田忠義

    ○市田忠義君 時間が来ましたからやめますが、私は、実態を知らない暴論だと思うんです、今の言い方は。本当に過労死という言葉がそのまま世界に通用するような過酷な労働時間を強いられている男性の長時間労働に、男女平等の名のもとに女性もその時間と同様の働き方をさせる、別々の残業協定を結んだら労基法違反でもないのにあれこれ難癖つけるというのは、私はこの間の労基法問題の委員会での審議を踏まえたやり方ではないと。  時間が来ましたので、引き続きこの問題は追及することを明らかにして、終わります。
  181. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 まず、雇用失業情勢対策として予算で一番大きな数字を占めております雇用調整助成金制度の適用と効果についてお尋ねをいたします。  我が国の深刻な雇用情勢への対処は一刻の猶予も許されない状況であります。これまでも、円高不況やバブル崩壊後、阪神大震災後などの雇用対策として雇用調整助成金制度の活用ということによる対策が講じられてきました。今般の予算においても、雇用調整助成金制度の活用や職業能力開発、技能向上対策など個別の施策についても全体的な適用状況をお聞きいたしたいと思うのですが、現在の失業状況が非常に構造的な失業の様相を呈している今、雇用調整助成金制度そのもののいわば適用とその効果というものを厳密に検証する必要があるというふうに考えます。  現在、雇用調整助成金制度がどういう分野にどのような効果を及ぼしつつあるのかという点について、概括的にお聞きしたいと思います。
  182. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 雇用調整助成金制度の運用状況ですけれども平成年度の実績が出ていますので、これによって見てみたいと思いますが、平成年度は支給実績が百五十二億円でございました。これを業種別、規模別で見ますと、上位三業種で鉄鋼業が約百十四億円、繊維工業五億円、輸送用機器製造業四億円というふうになっております。規模別で見ますと、大企業で百二十九億円、中小企業で二十二億円。これは、特に鉄鋼業が前年から引き続いて適用対象となっていた関係でこのような数字になっているかと思います。地域別で見ますと、例えば北海道では一億円。上位三地域の順では、関東・甲信越で五十一億円、近畿で四十九億円、中国地方で十七億円というふうになっております。  雇用対策上の効果ということですけれども、ただいま申し上げましたのは九年度数字ですが、平成年度におきまして、雇用調整助成金につきましては助成率をアップする等の対策を強化しまして、これは、雇用調整助成金の対象者数は年間ではなかなか追いかけられませんで、毎月毎月の計画数というもので効果を把握しておりますけれども、昨年五月には対象者数が約四万人でございましたが、本年一月には約二十五万人と約六倍への増加をしております。  この二十五万人の内訳を見ますと、上位三業種で鉄鋼業の約十万、一般機械器具製造業の三・四万、輸送用機械器具製造業の二・六万人。規模別では、大企業が十四万人、中小企業が十一万人というふうな状況に現在なっております。
  183. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、四万人から二十五万人という形で大幅に雇用調整助成金を受けた労働者の人たちはふえているわけですが、この人たちのいわゆる雇用維持ということにそれはどのように役立ってきているのでしょうか。また、企業で、鉄鋼等非常に重点的な産業があるわけですが、そういった業種、産業分野において雇用調整助成金助成を受けながら本当に雇用維持ができたのか、倒産をしたりしていないかどうかという、そういう効果について何か調査をされたことがあるでしょうか。
  184. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 雇用調整助成金はあくまで一時的な景気の後退に対応するための施策ということでございまして、休業とか教育訓練あるいは出向等によって一時的な雇用努力をしていただく、その後景気の回復に伴ってまたもとの軌道に戻るというふうなための制度でございますが、今委員指摘のように、雇用調整助成金助成を受けながらその後結果的に倒産したものがあるかどうか、そこまでは私ども調査が行き届いておりません。  先ほど申しましたように、本年一月の一カ月間の計画対象となった者が約二十五万人実数であるということは把握をしております。この方たちは、出向を除きますと、教育訓練にしろ休業にしろ長期間引き続いてということではありませんが、短期の助成をすることによって、基本的にはこの方たちの雇用は維持されているものと見ております。
  185. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今御説明があったように、雇用調整助成金制度というのは、今までの高度経済成長、右肩上がりの成長を前提として、景気のいわば一時的後退に対応するものだとおっしゃったのは確かにそれであり、そして、それでまた高度経済成長が保たれていたときに私は確かに効果があっただろうと思うわけです。  しかし、今なお予算上この雇用調整助成金というものが多くの数字を占めている中で、本当にその効果があって倒産を予防し雇用を維持できたかということについては、私は今後非常に問題が出てくるのではないかというふうに思うわけです。何らかの形でこれのシミュレーションなりあるいはそのフォローアップなりということは考えておられるでしょうか。
  186. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 雇用の維持・安定という上でこの雇用調整助成金制度は大変大きな役割を果たしております。そういった意味で、これが実際の効果をどういうふうに上げているのかということは大変大事なことだと思いますので、これのフォローについては研究をしていきたいと思います。
  187. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ぜひ労働政策のかなめとしてのこの政策の行方というものに対しては、やはりでき得る限りさまざまな手法を駆使してフォローアップをしていただきたいと思います。  例えば、雇用調整助成金制度の適用業種に新たにトラック関係が指定されておりますが、その実情と効果についてはいかがでしょうか。
  188. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 自動車の車体、付随車の製造業につきまして、平成十年の三月一日から一年間の指定を行ったところであります。
  189. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かにそういう形でさまざまな業種に拡大をしているということも含めてまた御質問させていただきますので、フォローアップをお願いしたいと思います。  さて、このところ雇用流動化市場の形成ということで、教育訓練給付等、軸足が雇用の維持・安定から少しずつ変わってきているということはこれまでの質問のお答えで出たわけでございますが、実際上、離職や転職というものがどのように行われているのか、あるいは雇用保険の給付からそういった傾向をどのように見ておられるかということについてお尋ねをします。
  190. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 離職者について、再就職するまでの期間を見てみますと、これは労働省調査把握できるわけでありますが、平成十年の上期の調査結果によりますと、離職期間が十五日未満の方が二九・三%、十五日以上一カ月未満の方が一三・三%、一カ月以上三カ月未満の方が二三・六%、三カ月以上六カ月未満の方が一三・六、六カ月以上一年未満の方が一八・九、一年以上を超えた方についてはさらにそれを細かく分析しておりませんので、以上でございますが、なお、総務庁の統計によります推計によりますと、平成十年には、これは離職者以外の失業者の方も含むわけですが、離職期間が四・二カ月、男性は五・四二、女性で三・〇九カ月というふうな状況になっています。    〔委員長退席、理事笹野貞子君着席〕
  191. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、年齢別あるいは地域別の転職状況把握されているでしょうか。
  192. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 年齢別、地域別までは把握をしておりません。
  193. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 雇用の流動化市場の形成と、それから先回私が指摘しましたように、そうした市場の形成がリストラ支援策にならないためにはどうしても地域別、年齢別あるいは産業別のさまざまな転職、離職の状況把握が必要だと思われますので、ぜひその点について今後とも検証をしていただけるかどうかお尋ねいたします。
  194. 渡邊信

    政府委員渡邊信君) 現在いわゆるミスマッチと言われるものが大変多くなっておりまして、いろんな要因があるというふうに思いますが、労働行政としましては、できるだけきめ細かに原因を分析して対策をするということが少しでも現在の失業の解消に重要なことだと思っておりまして、私どもまだまだその点の解明で不十分なところがあるというふうに常々思っておりますので、今おっしゃった点を含めて、ミスマッチのきめ細かな原因とその対策ということを今後とも考えていきたいと思います。
  195. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  今回の所信表明のところで、パートタイム労働者について、パートタイム労働を魅力ある良好な就業形態としていくための取り組みを行っていきたいというふうに言っておられます。三月期決算を控えまして、ますます倒産が生じたり、あるいはリストラが強行されて、パートタイム労働者とか派遣や臨時労働者などの不安定雇用が増大していくということが推定されているわけですけれども、このような状況の中で、所信の演説でパートタイム労働を魅力ある良好な就業形態にしていくための取り組みと言われている具体的な内容についてお尋ねをしたいと思います。
  196. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 二十一世紀に向けていろいろな働き方が、もちろん現在もありますけれども、出てくるわけでありまして、正規雇用だけが雇用環境整備されるというのでは問題がありまして、いろいろな働き方の雇用管理改善がそれぞれ行われるということが大事なところだと思っております。  そこで、パートタイムの労働対策につきましては、これまでもパートタイム労働法に基づきまして制定をされました指針に基づいて、パートタイム労働者の適正な労働条件の確保と雇用管理の改善に向けて事業主に対する指導を行うということがなされてきたわけでありますけれども、もちろんこの中には助成金制度等によりましてパートタイム労働者の雇用管理の改善に向けての取り組みを支援するということも当然あったわけであります。    〔理事笹野貞子君退席、委員長着席〕  そして、本年の二月にこの指針を改正いたしました。今まで限定的にされていた措置をさらに明確にしていく。労働条件の明示であるとか健康診断等、事業主が講ずべき措置の一層の明確化を図る。同時に、新たに短時間雇用管理者が行うべき業務を明らかにしたところでありまして、改正指針は本年の四月から適用することにいたしておりまして、今後その十分な周知を図り、これに基づく指導をきちっとしていくという所存でございます。  それから、公労使三者構成の研究会を開催いたしまして、パートタイム労働者と通常の労働者との均衡に関しまして、労使が取り組みやすくするためにその指標等に係る調査研究を進めているところであります。  これらの施策を通じて、パートタイム労働者の雇用管理改善をしっかりとしていきたいというふうに思っております。
  197. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 先ほど言われましたパートタイム労働に係る雇用管理研究会というのが、さまざまな事業者とか個別のパートタイム労働者に対して質問事項を送付して、その集計中だと言われています。私はまた別途、その質問事項が極めて誘導的な少しバイアスのかかった質問事項が並んでいるということについて、また集計に際して申し上げたいことがあるんですけれども、それは次回に譲りまして、パートタイム労働に係る雇用管理研究会における作業のスケジュール、見通しなどについてお尋ねをしたいと思います。
  198. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) ただいまお尋ねの公労使三者構成のパートタイム労働に係る雇用管理研究会でございますが、これは昨年の十二月に第一回を開催しておるところでございます。ただいま事業主それからパートタイム労働者に対するアンケート調査を実施してございます。それから、関係者からのヒアリング等を実施するということにしてございまして、これらの結果を踏まえまして平成十一年度中に結論の取りまとめを行う予定になっているところでございます。
  199. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ぜひ、これが均等処遇の原則をどのように我が国において打ち立てるかという重要な研究会であろうかと思いますので、十分にヒアリングなど関係者からもされまして、お進めいただきたいというふうに思います。  先ほど技能実習における賃金不払い問題への対応について小宮山議員から御質問がありましたけれども、その技能実習生には賃金の直接全額払いの支払いとそれから労基法の適用ということがあり、身につけた技能を生かせるような手だてが必要だということは前にも申し上げたと思います。これに対して何か進展をしたことがあるでしょうか。あるいは今まだお答えどおりの調査中ということでしょうか。
  200. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 技能実習制度そのもののあり方については能力開発局の方であれですが、御指摘ございました賃金の全額払い等を含めたいわば雇用管理の改善の面でございますが、こうした大変残念な事件がございまして、逮捕、刑事裁判にかかる、こういうことに持っていかざるを得ないケースがあったことを重く受けとめまして、私ども、こうした技能実習生の受け入れ団体を中心全国労働基準局が総点検をして、その辺の改善点を見つけ出し、指導するように指示を出しております。また、これは国際研修機構の方もそうした作業にもちろん一緒に協力していただきますので、そういうことを通じて先生御指摘のような問題のいわば洗い出し、なくなるように努力をしたいと思っております。
  201. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 労働時間の短縮の実効ある推進策についてお尋ねしたいと思います。  いわゆるきめ細かな指導というところで、一週四十時間制の労働制度がいよいよ来る四月一日から適用されるということで、特定猶予措置の事業所を除いて四十時間法制というものがさらに徹底していくわけだと思います。こうした実効ある時短を実現されるためにどのような施策を今後おとりになるつもりか、お尋ねをしたいと思います。
  202. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 週四十時間制につきましては、平成九年四月から全面実施に入りまして、その際、懇切丁寧な指導、援助を行う、こういうことで二年間の指導期間を設定したところでございます。この指導期間中、私ども時短を進めるにはどうした業務改善をしたらいいかというような相談指導や省力化等指導に対する助成制度の活用、こういうことに努めまして、いわば計画的に事業主の方にこの四十時間というものを進めてまいりました。その結果、この平成九年四月前の、いわば実施前であった平成年度の春の段階では達成率が四〇・三%でございましたものを、平成九年の春にはこれが一気に七七・八%まで普及率が上がりまして、平成年度の春には八三・三%と、その普及率の大幅ないわば上昇を見たところでございます。  この指導期間もことしのこの三月いっぱいで終わるわけでございまして、あと、いわゆる労働基準法の履行確保対策全体の中でこれを進めることになりますので、今までの指導、援助の成果を踏まえて、そこから出てきている残りの二割弱の事業所、大変難しい生産性の上げにくい課題を抱えておりますので、そういうところに対してどう指導するか、今までの成果を十分分析して臨んでいきたいと思っております。
  203. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かに短縮のいわば効果というのは倍増をしたわけですけれども、この二割弱の人たちの言ってみれば阻害要因、四十時間法制が実施できない阻害要因というものはどういうところにあるんでしょうか。今生産性とおっしゃいましたが、もう少し詳しく御説明いただけたらと思います。
  204. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) やはり大半は、一つは規模による格差の問題でございます。先ほどもお話ございましたように、商業等の十人未満事業所については別の特例制度という形になっておりますが、製造業などについては十人未満でもこの四十時間制を守っていただくということにいたしております。こうした部分が現在非常に経済状況が厳しい、また設備の改善等を進めにくい、こういう環境の中でこの四十時間をこなしていくためには、四時間分のいわば生産性を上げてコストを吸収していくというような努力が当然必要になるわけでございますが、そうした点について非常に困難な問題を抱えているというケースが一つでございます。  それから、一定のサービス、対事業所サービス分野等でこうした労働時間を守りにくい状況等もございますが、こうした点についても、近年では規模の大きいところ、ある程度の規模のあるところについてはこの四十時間制を実施してきていただいている状況にございます。
  205. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 改正均等法改正労基法の施行を前に、就業規則の改定作業が進んでいる。その問題点について市田議員が先ほど質問されましたが、やはり国会での論議を十分踏まえられた指導、パンフレットの作成というのは私も非常に重要だと思います。その点に関してどのような指導をしておられるのか、二点ほどお聞きをしたいと思います。  まず一つは、百五十時間、家族責任を持つ女性労働者激変緩和措置がありまして、この女性労働者の範囲というものが育・介休法よりもさらに一点進んでいるというところは評価されるわけですが、それをどのように就業規則の中に改定をし、そして周知徹底していくのかということは、実際上そうした家族責任を持つ女性労働者が現行法の状況を悪化させないで保護されるかどうかということが大きいわけでありますから、この点をどのような指導をしておられるかということであります。  それからもう一つは、深夜業の規制でありまして、これは過度の深夜業の規制ということが要請されておりまして、この辺については、今度の労働安全衛生法の改正と、あるいは労使の自主的なガイドラインというものでは私は不十分であろうと思います。附帯決議を見ましても別建てになって深夜労働の抑制策ということが当然言われているわけですから、この点については何らかの行政指導の対応をなさっているかどうかという点についてお尋ねをして、私の質問を終わります。
  206. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 改正労働基準法の施行につきましては、昨年の十二月末までに関係の省令、告示等を制定、公布いたしまして、その後、新年に入りましてから、全国労働基準監督署を挙げて計画的な周知活動に努めておるところでございます。相当な部数のリーフレット、また業界等、団体等を活用した集団指導をきめ細かく組織的に進めてきております。そうした作業が一段落いたしまして、これから改定された三六協定、就業規則等の届け出がふえてくるものと考えておるところでございます。  そうした中で、御指摘ございました改正労働基準法の中で織り込みました育児介護等を行う女性についてのいわば急激な変化を緩和する措置でございますが、この点につきましても、三六協定受理の際に、そうしたことが織り込まれているかどうか、それから例えば現段階ではそうしたことに該当する女性はいないんだということがあっても将来に備えてあらかじめ織り込むようにとか、いろんな留意事項をつけまして、都道府県の労働基準局長あて通達を発して、これから増加するであろう三六協定の届け出に備える体制をとっておるところでございます。  深夜業につきましては、これも附帯決議等で今後の対策の方向を私ども御示唆いただきましたので、それを受けまして、一つは現在国会に提出させていただきました労働安全衛生法の改正の中に、健康管理、健康診断体制、それからそれに基づきます事後措置の中に深夜業の回数の減少等を含めることなどの所要の改正案を織り込みまして国会に提出させていただいております。よろしく御審議をお願いしたいと思っております。  また、将来にわたる規制の問題についてお尋ねございましたが、深夜業につきましては、各業種それから業態等々によってまちまちの態様の深夜業が存在しているわけでございまして、しかもそれが経済活動、国民生活上欠かせない面もあるわけでございまして、なかなか一律的な規制が難しいことは御案内かと存じますが、一つとしては、私ども自主的なガイドラインを業種別に労使の間でつくっていただくということで、今回予算案の中にもそれを進めていく事業を織り込みましたので、成立させていただければ、間もなくそうしたことに向けて私ども関係労使にそうした事業の活用を呼びかけていきたいと思います。  そうした中で、自主的なガイドラインの中でこの深夜業というものに対して労使がどういうふうに抑制ということを議論し合うのか、そういった中身を見ながら今後、例えば附帯決議にございますILOの夜業条約等から出てまいります考え方に即して、何が可能であるのか、こうした点も今後の検討課題として受けとめていきたいと思っております。
  207. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ともかく、企業とそれから労働組合ないしは労働者との関係の中で自主的なガイドラインをつくり上げていくという作業は非常に重要だと思い、私どももそれがしっかり進むということを願っているわけですが、それと並行して、むしろその自主的ガイドラインの中でのコンセンサスという前に、国としては、労働省としては、深夜労働の自主的なガイドラインと別に、回数制限とかあるいは深夜労働の時間とか、それからとりわけ割り増し率の問題についても早急に御検討していただきたいということを申し上げて、また次回の質問に譲らせていただきます。  どうもありがとうございました。
  208. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 自由党の鶴保でございます。  本日最後の質問です。私も幾つか皆さんの段々のお話を聞いておりまして、大変に思うところいろいろありまして、今日の雇用情勢は大変に厳しいわけでありますが、まず冒頭、今国会は情報公開法についての法案が衆議院で通りました。そのさまざま、先ほどの市田先生のお話ではありませんが、運用面とのすり合わせ等々そごがあると。  労働省としては、情報公開に向けてのまず取り組み状況といいますか、これまで、そしてまたこれからの決意も含めて、まず冒頭、どのような取り組みをされておるか。また二年後に見直される特殊法人に関する情報公開への取り組みなども含めてお話をいただければと思います。
  209. 野寺康幸

    政府委員(野寺康幸君) 国民に開かれた信頼される行政を実現するという観点から、情報の公開というのは極めて重要なことであるというふうに思っております。政府は、常にその活動を国民に説明する責務があるというふうなことでございまして、労働省は、現在ホームページによります情報提供、審議会の議事録の公開、あるいは文書の閲覧窓口を通じました文書の公開等を行っております。今後ともこういった観点から、開かれた信頼される行政の推進に努めていきたいというふうに考えております。  特殊法人でありますが、基本的には国と同じでございます。財務諸表、業務報告書、決算報告書等の公開を行っております。国と同じくその業務運営を国民に明らかにするという観点から、引き続き必要な検討を行ってまいりたいというふうに考えております。
  210. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 ありがとうございます。  その情報公開、積極的にやっていただくというお答えでしたので、私の今から申し上げる質問に積極的に情報を公開していただいてお答えをいただけたらなと思います。  その論点といいますのは、農業従事者に対しての労災保険の適用状況であります。先ほどから雇用の流動化ということが問題になり、また人口の産業別間の移動といいますか、そういったことをこれから視野に入れていかなければいけない。そんな中で今農業を振り返ってみますと、大変に御存じのとおり逼塞し、また将来の展望を失っております。  その状況を少しでも救うため、農業従事者に対して労働災害、いわゆる農業を営んでいらっしゃる方々が安心して農業に従事できるようなそういうガイドラインを策定しておく必要があるのかなと。農業従事者のこうした農家の方々への労働災害保険の適用についての現況をまず簡単にお話しいただきたいと思います。
  211. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 労災保険は、基本的にこの労災保険が適用される事業場に雇用される労働者がその保険事故等があった場合の対象となる関係になっております。したがいまして農業の場合も、そうした事業形態によって経営されている農業でそこに雇用関係のある労働者は、五人未満の個人事業場については任意適用事業の形に従来からされておりますが、それ以外は原則として強制適用事業ということで労災保険の加入になっております。  ただ、御指摘の点では、恐らくこういう点が含まれているのかもしれませんが、自営で農業を営む方、あるいは労働者を雇用して農業を経営しているけれどもその事業主みずからも作業をするときがあるので、そうした事業主に対する労災保険の適用がどうなるか、こういうことの御指摘かと存じます。この点につきましては、労災保険は原則としてそうした労働者の方だけが対象になる制度でございますが、農業につきましては、危険を伴う作業に従事している可能性もあるということで、特別加入という制度を別に設けまして、この特別加入の道でそうした方について労災保険に加入できる道を開いております。全体で、この特別加入で加入されている方が平成年度末で十四万六千人ほどおられます。  タイプとしては、中小事業主としてみずからも作業することがあるということで労働者を雇用している事業主の方が特別加入に入る。それから、指定した農業機械がございまして、トラクター等危険率の高い、災害発生率の危険が高い農業をあらかじめ指定しまして、それを使用する自営の農業従事者について加入を認めている。それから、機械は使わないけれども高所で作業するとか、そういう危険性の高い特定の作業を行う場合の自営農業者の方、この三タイプが特別加入の制度で入っているところでございます。
  212. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 きょうは農水省の方にはちょっと質問通告をしておらなかったのであれなんですが、林業もしくは漁業についてはいかがでしょうか。
  213. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 林業、漁業におきましてはやはり特別加入の道があるわけでございますが、これはいわば船に乗る、あるいは山に入るということで、自分の生活とその作業とが分離できる形でなっている場合には一定の団体のところで取りまとめてそれぞれの方が、いわば私ども一人親方の特別加入と呼んでいる道を開いております。
  214. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 事ほどさように、林業、漁業は一人親方も認められ、農業の方はややその対象は狭まっておるというお答えだろうと思います。その理由、なぜこの対象をまず狭めておるのか。  また、幾つか危険があるところだけに限定をして保険の対象とされておられるということですけれども、その辺についての合理的理由をちょっと御説明をいただけませんでしょうか。
  215. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) まず、農業従事者の場合につきましては、危険度の高い作業を行う方については、そうした状況にかんがみ労災保険の特別加入を認めていこうということで、危険性が高い農業機械を使用する人を対象といたしまして、この指定する農業機械も順次拡大をしてきたわけでございます。さらに、平成三年には、機械を用いて作業を行う場合に限らず、自営業者が危険度の高い作業を行う場合でも特別加入の対象とするというようなことで順次拡大をいたしてきておるところでございます。ただ、漁業や林業と異なりますのは、一人親方という形での特別加入の道は開いていないということでございます。  これはなぜかと申しますと、業務に起因する災害を労災保険の給付対象にするという労災の基本的な性格は常に一貫しているわけでございますので、農業の場合、自分のいわば生活部分と作業部分との区分が非常に難しいケースが非常に多いわけでございますので、事故があった場合等についても給付の面で大変困難をきわめるケース、複雑をきわめるケースがあるということで、先ほどのように危険度に応じて、機械あるいは作業の内容に応じて特別加入をしていただくという道をとってきておるわけでございます。  そうしたことから、実際の作業が日常生活と完全に分離する漁業や林業の自営業者とは違った形での農業従事者特有の特別加入の道を開いてきているというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  216. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 それはちょっとおかしいのではないかと思うんです。実生活との区別が明確でないとおっしゃるんであれば、林業などでも同じことであろうかと。  つまり、林業の、自宅から山の中へ入っていくまでの道の中でこれがどの程度適用されるのか私も詳しくは存じませんが、法律上は適用されるということになっておられる。また、いわゆる一般のサラリーマンの生活においても、通勤途上、これは明確に労働であると言えるかどうか、これは本当に疑問であろうと思います。同じように、農業従事者についても自宅から圃場についての通勤災害といったものは適用が認められてしかるべきだろうと思いますが、いかがでしょうか。
  217. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 労災保険は、各事業場に雇用される労働者を対象としてそこの労災事故を給付対象にするということで発足いたしまして、ただ自営業者の方等について、危険度の高い場合については順次特別加入という別の枠組みでその加入を認めていこうと、こういう形で始まったものでございます。したがいまして、それぞれの作業の実態、危険度の実態に応じてそうした特別加入の道がつくられておるわけでございます。  漁業、林業の場合については、かなり作業が自分の居所と分離されたり日常している生活とは別のところで作業するという形なものですから、それ自体ある程度の危険を包含するということもございまして、一人親方という形での特別加入。それから農業の場合には、使う農業機械を指定しあるいは作業の内容の危険度を見て特別加入をする。それから、労働者を現に使っている中小企業の形で農業を経営する場合には、その事業主の方も一緒に作業をする限り対象にするというような形で発展してきたわけでございます。  農作業の死亡事故、これは農林水産省の調査でございますが、全体の農作業中の死亡事故のうち約七割が農業機械に係るものでございまして、そのうち大部分はトラクター等私どもが既に指定している機械によるものでございます。  そうした状況から、現在の制度で私どもかなり自営の農業者の補償というものに役立っているんではないかと思いますし、今後そうした機械の指定について種々御意見があれば私どもそういうものを承って、危険度の高い作業については十分検討をしてまいりたいと思っております。
  218. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 七割は機械にかかわるものであるとおっしゃいました。  農業者について、その保険適用の対象となることの一つに危険度の高い労務ということが今言われたわけでありますが、ちょっと調べてみますと、もうこれ答弁をしていただこうかと思いましたが、サイロに落ちたということとか二メートル以上の高さから落ちたといったようなところを例示として挙げておられる由であります。  しかしながら、考えてみますと、ある一定以上の高さから落ちるということは、この山がちな日本の国土の中で、例えばミカン農家の方、本当に急な傾斜のところで高いところのミカンをはしごをかけてとるわけです。御高齢の農業者が多くなっておられます。正直なところ、これはこの方々が安心して、本当にもうセーフティーネットを大きく広げて、ここはひとつもう無条件に農業者、農業従事者の圃場内での事故といったものにはある程度救いの手を差し伸べなければいけない、補償をしなければいけないんじゃないかと私は思うんですが、局長、この辺はいかがでしょうか。
  219. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 先ほど機械のことが中心になるような答弁で大変恐縮でございましたが、その後、機械だけじゃなくて、平成三年に特定農作業従事者という形で特別加入を認めていくというふうに拡大いたしまして、今御指摘ございましたサイロ等、室等の中で作業をする方、これも特別加入の道を開きました。あわせまして、高さが二メートル以上の例えば実をとるというような作業なり、それから農薬の散布とか牛あるいは馬等々に接触する作業、こういったものを特定農作業従事者として特別加入の道を範囲を広げておりますので、作業の内容によってはこうしたものをぜひ活用していただければ特別加入という形で補償がしていけるんではないかと思っております。
  220. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 いえ、ですからこういった個別の事故を個別に対象とするのではなくて、圃場内で起こるすべての事故に対して補償があってもいいのではないかということなんです。  つまり、ほかの業種、通勤災害と言われるようなものの業種、この間も私もちょっと質問の中で伺わせていただきましたが、二〇〇〇年問題のところでしたか、災害があればほとんどの場合は、阪神大震災のときでも通勤途上だけでもほとんど、無条件とは言いませんが、広くその補償の対象がとられておるわけであります。農業がこれほど今、後継者不足、そしてまた高齢化が進んでおる中で、安心して農業に従事するという意味においても、圃場内での事故すべてに対して補償をするということ、これを前向きに本当に検討いただきたいというふうに思うんですが、重ねてそのことについてはいかがでしょうか。
  221. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) そうした一人で自営業を営む方が農作業を営む限りどんな事故でも補償対象にしてはどうか、こういう御指摘かと存じますが、これは御質問の趣旨は十分理解するわけでございますが、労災保険制度事業主の保険料で、そこで働く労働者の労災事故について補償するという形でつくられ、その骨格は厳として残したまま、補う形で、危険度の高い作業に従事する方々状況状況を拡大しつつ特別加入という道でいわば広げてきている状況にあるわけでございます。  したがって、農作業に従事する方を雇用関係がなくともすべて労災保険の対象にしていくとなりますと、制度としてそれはいわば労働保険という形の構成から完全に外れてしまうわけでございまして、私ども、そうした形で組み立てることは目下大変不可能でございますので、それよりも、危険度の高い作業等についていろいろ関係者のお話を聞きながら、特別加入の道について時代に合わせて広げていくのであれば、こういう作業なら広げられるというようなことについてはいろいろお話を伺ってまいりたいと思っておるところでございます。
  222. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 その対象の拡大について消極的になるお気持ちはよくわかります。  ただ、先ほど申されましたとおり、林業であるとか漁業であるとかについては、一人親方としてもその特例として認めていらっしゃるということであります。なぜ林業、漁業とまた農業とでこれほど差がつくのかといったところについては、先ほども危険度の違いあるいは働く場所の違いといったようなこと、明確に生活と分かれているといったことだと思います。しかしながら、同じ第一次産業で、しかもいわゆる明確に生活範囲と区別ができないというのであれば、それは農水省の中で農業者という認定が明確に定義があるわけですし、そしてまた圃場の中でも、どれが圃場でどれが圃場でないかといったことについては農水省との相談もできると思うんです。その辺は農水省と折衝しながら、明確に定義をしながら運用することも可能であろうと思うんですが、これ本当にどうでしょうか。
  223. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 労災保険の場合、事故が起きた場合に、あくまでそれが業務に起因するということでの判断をしていかなければならない性格の保険制度でございまして、したがいまして、一人で農作業を営んでおられる方について、自分の生活にいわば密接した形で農作業を行っている場合、生活部分、こちらの部分というものの本当に区分けは実際は難しい。そして、もし事故が起きた場合に、どちらで起きたかという後の事実認定も難しい。大変困難がつきまとう形になろうかと思います。  農水省とも十分話し合ってまいりますが、ある意味では農業者の共済なりいろんな中でのありよう等も含めて、農水省といろいろ議論をしなくてはいけない問題も含んでいるのかもしれません。そうなりますと、そうした困難な問題を抱えながら、労災保険のいわば本当に特別加入ということでいろいろ拡大してきている部分で農業従事者全部を引き受けていくということはなかなか実態から見て難しいわけでございまして、そこは農林水産省とも話し合うべきことは十分話し合い、意見交換をしてまいりますが、現状では大変難しいということについては御理解賜りたいと思います。
  224. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 しつこく申し上げて本当に申しわけないんですが、まず、局長は農業共済のことをおっしゃいました。農業共済は入院給付が認められているにすぎないんですね。必ずしも所得補償といったようなことについては手だてがないわけであります。  また、今農水省の方の取り組みの中で、いわゆる中核農家となるべき農業者の認定といったものはもっと明確にやっていこうじゃないかというようなことの取り組みも今ようやく動き始めたところであります。  新しく農業基本法改正されて、今新しい農業をつくり出そうとするこの時期でありますから、なおのこと労働省としても新しく農家の皆さんに希望を与えられるようなニュースというか、そういう取り組みをぜひともお願いいたしたいと思うわけであります。  最後にもう一度お願いをいたします。
  225. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) これからの農業のあり方等も含めまして、先生のそういう農作業を営む方々についてのいわば福祉を思う気持ちは私ども本当によく理解をさせていただきたいと思っております。  ただ、労災保険が本当にそういう方たちのいろんな補償面、けが、病気の場合のいわばすべての補償の受け皿となるべき制度なのかどうか、これは労災保険制度の生い立ち、また現在運営されている実情から見まして、そこは私ども本当に慎重でなければならないという気持ちでございますので、例えば農業共済でどこまで何ができて、そこでそういった一人で農作業を営む方々についてどういういわば福祉面での手当てができて、それとの兼ね合いで、これは労災としてカバーした方がいいというのはどういうふうに見られるのか、そういったことを総合的に勘案しなければならないかと存じます。  そうした気持ちでの農林水産省との話し合いはしてまいりますが、当面、既に設けられている特別加入制度を的確にニーズのあるところには適用が広がっていくように私ども努力させていただければと思っております。
  226. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 ぜひともお願いをいたしたいと思います。  調べてみますと、特別加入制度を利用されておられる方は約十五万人前後だという話であります。農業者が全体でいいますと三百数十万、四百万人弱、約三%にしかすぎないわけです。また、先ほど局長が答弁されました、七割近くが機械にかかわる事故で労災保険が認定されておられると。つまり特別加入制度そのものの中に、例えばミカンをとるためにはしごに乗って、はしごから落っこちたといったようなこと、あるいは切り株でけつまずいたといったようなこと、こんなことはほとんどまだ補償はされておらない、ケースとしてはそんなにたくさんあるケースではないわけです。  そういったことを考えますと、そういうことがもし万が一起こったとしても大丈夫だよということは、今この財政難のときであっても本当に検討に値する政策だと私は思います。ぜひ農水省との折衝、以前の議事録を見ておりますと、何度もそういう御答弁をされておられるようなので、今度こそお願いをいたしたいというふうに思います。  それで、話を変えますと、もう時間がありませんものですから、あと本当に最後に一つだけ。  今、雇用の流動化といった面から農業従事者の話をさせていただきました。ただ、この不景気を何とかしなければいけないということを本当に常々考えるんです。その中で一つ、世界恐慌のある時期、フランスなんかでは景気対策の一環として強制的に休暇を二週間ほどとらせた、バカンスを二週間ほどとらせたことがあったそうであります。アメリカの景気対策、主に日本もそれに追随しておるわけですが、財政出動が主であります。フランスでは、こうして個人消費をふやしたというようなことによって、景気対策を兼ねたバカンス法みたいなものをつくったというようにも聞いております。  大臣、このような長期有給休暇、こういったこと、バカンス法と言うのかどうかわかりませんが、日本ではまだまだ議論が進んでおりません。ただ、大臣はその法制化についてどのような所感をお持ちでしょうか。
  227. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 先生御指摘のフランスの件、あるいは一九三六年六月十七日の有給休暇法を指すんだと思いますが、これが現在の長期バカンスのスタートになっているということも聞いております。  翻って我が国の対応でありますが、平成七年七月に策定をされましたゆとり休暇推進要綱というのがありますけれども、これに基づきまして年次有給休暇の取得促進を図っていこうと。年次有給休暇が加算されやすいような対処というのは既に行ったところでありますが、まだその取得率が五〇%ちょっとでありますから、これは労使に権利はできるだけとっていくようにということの指導もしているところであります。  それから、三連休法と言いましたか、ハッピーマンデー法、これも施行されるところでありますし、徐々に長期休暇をとっていこうという環境整備ができつつあるんだと思います。そして、これはいろんな経済効果も指摘をされておりますんですが、私も確固たる自信はないのでありますけれども、ゆとりと豊かさのそのゆとり部分から経済効果も出てくるんではないかなと思っておりますので、私どもの持ち得る手法を駆使して極力しっかりと休みがとれるようにしていきたいと思います。
  228. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 大臣、前向きに検討をいただくということなんだろうと思いますが、今二週間休みをとったら日本人の多くは海外旅行に行ってしまって何にも景気対策の効果がないといったようなことも、笑えないような話もあります。そういう意味では日本というのはまだ豊かなのかなとか、こう勘違いをしてしまうんですが、いずれにせよ、個人消費をふやすということについての前向きな取り組みも私は必要だろうと思います。  ただ、ちょっと時間がありますからお話をさせてもらいますと、こういった法制度の面から支援をする労働省の取り組みの中で、私一つだけちょっと視点として、前回の委員会のときにもお話がありましたけれども、国際的な面というか国際面での取り組みといったものについてのちょっと視点が欠けているのかなといったようなことを常々思うわけなんです。  例えば、いわゆる先ほどもどなたか申されておられました海外からの研修の受け入れ制度でありますとか、青年協力隊に対してODAを使ったらどうかといったような議論、こういった議論は労働省の方の取り組みからはなかなか聞こえてこない。にもかかわらず、中央アジアなどの人たちは本当に親日的で、日本人に来てほしい、日本経済や日本語、日本文化を学びたいというような願望が大変強いわけであります。しかしながら、日本からほとんど人は行かないで、また欧米人が現地で英語やドイツ語を教えたりといったようなことをしているにもかかわらず、日本人はほとんど人が出ていくことはないというような状況を踏まえて、労働省として、本当にこれは最後の質問になると思いますが、何らかの形で国際的な交流を深めるようなそういう手だてはないものか。どういった思いを持っていらっしゃるか。大臣、いかがでしょうか。
  229. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 確かに、御指摘のように、日本は金を出すんですけれども、それを使っていろいろな事業が行われる際に外国の方の方々の顔が見えて金を出している日本の顔が見えない。金だけ出させられてか出してか、いいところ取りをされちゃっているという指摘もあります。しかし、これはいいところ取りというよりも、それだけ実際に人が出向いて外国の方々は汗をかいているわけでありますから、そういう努力を我々も促進していかなきゃならないんだと反省させられるわけであります。  近年、特に若い人たちが海外でいろいろボランティア活動に従事するという意識が高揚してきました。これを私どもはしっかりとフォローしていかなきゃならないと思っております。基本的には外務省、JICAを通じて窓口にして各省が実施をしているわけでありますが、その中に各省ごとに担当エリアというのがありますから、労働省で言いますと職業能力開発分野であるとか労働安全衛生分野を担当するわけでありますけれども、これからもJICAを通じて御指摘のような顔が見える支援ということに心を砕いていきたいというふうに思っております。
  230. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 ありがとうございました。またぜひ前向きにいろんなことを検討していただきたいと思います。
  231. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 以上をもちまして、平成十一年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  232. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会