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1999-03-03 第145回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月三日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月二日     辞任         補欠選任      金田 勝年君     清水嘉与子君      郡司  彰君     小川 敏夫君      加藤 修一君     松 あきら君      益田 洋介君     魚住裕一郎君      八田ひろ子君     山下 芳生君      照屋 寛徳君     大脇 雅子君      福島 瑞穂君    日下部禧代子君      菅川 健二君     奥村 展三君      佐藤 道夫君     西川きよし君  三月三日     辞任         補欠選任      奥村 展三君     菅川 健二君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 狩野  安君                 岸  宏一君                 斉藤 滋宣君                 清水嘉与子君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 松谷蒼一郎君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 若林 正俊君                 海野  徹君                 江田 五月君                 小川 敏夫君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 円 より子君                 柳田  稔君                 魚住裕一郎君                 浜田卓二郎君                 松 あきら君                 小池  晃君                 須藤美也子君                 山下 芳生君                 大脇 雅子君                日下部禧代子君                 入澤  肇君                 月原 茂皓君                 奥村 展三君                 菅川 健二君                 山崎  力君                 西川きよし君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     中村正三郎君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣     有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        通商産業大臣   与謝野 馨君        郵政大臣     野田 聖子君        労働大臣     甘利  明君        自治大臣     野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官) 野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣総理大臣官        房審議官     佐藤 正紀君        公正取引委員会        委員長      根來 泰周君        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁長官  日野 正晴君        金融監督庁検査        部長       五味 廣文君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁国民        生活局長     金子 孝文君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        国土庁大都市圏        整備局長        兼国会等移転審        議会事務局次長  板倉 英則君        法務大臣官房長  但木 敬一君        法務省民事局長  細川  清君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省入国管理        局長       竹中 繁雄君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        社会保険庁次長  宮島  彰君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        資源エネルギー        庁石油部長    今井 康夫君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君        郵政省貯金局長  松井  浩君        郵政省簡易保険        局長       足立盛二郎君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省労政局長  澤田陽太郎君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省女性局長  藤井 龍子君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君        建設大臣官房総        務審議官     小川 忠男君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君        自治省行政局選        挙部長      片木  淳君        自治省財政局長  二橋 正弘君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君    参考人        預金保険機構理        事長       松田  昇君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十一年度総予算案審査のため、本日の委員会預金保険機構理事長松田昇君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、財政金融・景気・雇用に関する集中審議を行います。  質疑者はお手元の質疑通告表のとおりでございます。  それでは、これより質疑を行います。清水嘉与子君。
  5. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 おはようございます。自由民主党の清水嘉与子でございます。閣僚皆様方、連日御苦労さまでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  本日私は、初めに経済戦略会議最終報告について少しお話を伺いたいと思っております。  小渕総理総理内閣発足のときに経済再生内閣と銘打ってスタートされたわけでございまして、すぐさまその重要課題でございます経済再生の道筋を探るために経済戦略会議を設置されました。この経済戦略会議国家行政組織法第八条に規定する審議会として設置されたということから見ましても、総理の並々ならぬ強い御決意が示されているわけでございますけれども、経済戦略会議が二月二十六日にまとめた最終報告、これは中長期課題を含めまして二百三十四項目と、非常に幅も広いし、そしてまたかなり多くの提言がまとめられているわけでございます。  昨日の閣議総理報告されたというふうに伺っておりますけれども、まずこの報告書をどのようにお受けになり、そしてこれからこの提言実現に向かってどのようなスケジュールでいかれるのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  6. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) このたび、私が諮問申し上げました経済戦略会議におきまして、その答申をちょうだいいたしました。これは、二十一世紀を展望した豊かな経済社会を切り開くため、中長期的な経済運営基本方向や理念を示していただいたものでありまして、貴重な御提言としてしっかりとこれを受けとめて、今後の経済運営の取り組み、また我が国経済再生の第一歩としていかなければならないと考えております。  このため、本答申報告されました翌日の閣議におきまして、各閣僚に対しまして、それぞれ所管する行政分野にかかわる事項について真剣に検討するよう指示したところであり、政府全体として可能なものから実施に移せるよう努力してまいりたいと考えております。  総理大臣が諮問いたしまする審議会その他についての御答申についての受けとめ方はいろいろでございますけれども、私は、自由闊達にひとつ御議論いただいて、例えば平成二十年までの日本財政健全化日本経済の本格的な方針についておまとめをいただきました。それを閣議におきまして報告を申し上げ、各大臣に対しましても、それぞれの役所にかかわる諸問題がありますので、十分検討していただきたいということを申し上げました。その検討の結果を待ちながら、最終的には、政府といたしまして法律案としてこれを制定していくべきものについてはできるものからしていきたいと思っておるわけでございますが、答申が二百三十四項目にわたる膨大なものでございまして、その中には、率直に申し上げて今すぐこれを実行するということに困難な問題もあります。  しかし、最終的には平成二十年、日本経済が本当に正常な姿に立ち戻るためにはいたしていかなければならないということで、それこそ、昨年八月二十四日に第一回を開きましてから本年二月二十六日、十四回開催をされまして、私自身もすべて出席をいたしまして意見のやりとりにつきましても十分拝聴をいたしてまいりました。  最終報告をいただいてまいりましたけれども、その過程で、第六回目におきましては短期経済政策への緊急課題ということで御提言をいただいておりまして、これはちょうど金融システムの問題について国会でも御議論をいただいておる過程でございましたが、特に早期安定化のために数十兆の公的資金を投入すべきだという御提言もいただきました。当時の環境からいいますと、なかなか公的資金の投入についてはいろいろの厳しい御批判もありましたけれども、こうしたかなり思い切った提言をいただきまして、最終的には、六十兆円という公的資金の導入につきましても国会でもお認めいただくというようなことのきっかけをつくっていただいたものと認識をいたしております。  また、短期経済対策といたしまして大胆な財政出動をやれということでございまして、どこまでその考え方にのっとったかということについてはいろいろ考えはありますが、平成十一年度予算編成に当たりましても、こうした考え方に基づきましてその方針について予算編成もさせていただいたということだろうと思います。  また、第八回におきましては緊急経済対策に望むアピールを公表いただきましたが、こうしたことの中間的ないろいろの答申も得ながら最終的な答申をいただくことができました。  特に私はこの会議にもお願いをいたしましたが、従前は、答申をいただく、そうしますともう会議責任を果たされたということで解散をするんですが、せっかく本当に熱心にお取り組みいただいて、学者の先生方、また経済界で今現実に事業を展開しておられていろいろの生きた経済の中で経済活動をされておられる方々、貴重な御意見でございますので、将来この答申に対してどのように、内閣としてまずは第一義的に対応いたすべきことでありますが、広くこれはやはり世に問うてもいかなければならない問題でございますので、そうした問題を十分、監視という言葉はちょっと言葉がきついかもしれませんが、せっかく出していただいたものに対しましてもそれぞれに対して御意見も出していただくということで、実はこの会議そのものは、答申をいただきました、即解散という姿になっておりませんで、ぜひ今後とも貴重なアドバイスや御提言はいただいてまいりたい、このように考えております。
  7. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 総理から大変並々ならぬ御決意を伺ったわけでございますけれども、これから具体的には各省検討を待ってできるものからやるというお話でございます。  現実問題、この二百三十四項目を拝見いたしましても、なかなかこれ本当にできるんだろうかと。やる前から疑っちゃいけないんですけれども、そんなふうに思うものもたくさんございます。各省またそれぞれに抵抗も強いんじゃないかなというふうに思うわけでございますけれども、総理はこれまで政権担当以来、重要な局面でリーダーシップを発揮してこられた、そのことが今、小渕内閣支持率のアップにつながっているわけでございますので、ぜひこの件に関しましても、しっかりとしたリーダーシップ実現していただきたいというふうに思う次第でございます。  また、今この会議はまだ続けるんだというお話でございました。しかし、必ずしも監視機関ではないというお話でございますけれども、これが本当に着実に進んでいるかどうかということに関しましてやはりフォローする体制をつくった方がいいんじゃないかというふうにも考えますけれども、この辺はいかがでございましょうか。総理、よろしくお願いします。
  8. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 経済戦略会議につきましては、本来、その都度緊急の問題をいただくと同時に、拘束をかけないでできるだけ広い提言をいただく、この省がこういうことをやっているからこれから先はいけないとか、ここで既にこういうことがあるからとかいうようなことを除いて、日本の理想的な姿を描いていただくということが主眼でございました。  今、総理から答弁のございましたように、六回目、八回目に緊急提言を出していただいたものは、それなりに今回の十一年度予算あるいは緊急経済対策にも反映されております。  今出ておりますものの中で、これをどう扱っていくか。その中には、来年度、十二年度予算に反映できるようなものもございますし、立法に移さなければいけないものもございます。また、各省にそれぞれ専門審議会がございます。例えば、年金の問題も出ておりますが、そういうのは、厚生省年金審議会等もございますから、そういうところにかけるものもございます。  それで、そういうような具体的な項目につきましては、それぞれの条項に合わせて各省検討する、あるいは国会の中でも関係深い議員の先生方にも御検討いただいて、その結果を戦略会議のメンバーの方々にも報告し、これはさらに進めるべきだ、その省の意向で多少困難があっても進めるべきだというもの、あるいは時間をかけるもの、さらに根本的に検討すべきもの、こういうものをより分けていこうということで委員先生方とも同意させていただいております。  従来の審議会は、まず各省折衝をいたしますから、ここなら石を投げていいというところを決めて投げていたんですが、今回は、とにかく石を投げて、その波紋が広がる、その波紋各省庁がどう受けていくか、あるいは世論、国会先生方がどう受けていただくか、そういうようなことも含めて、未来型に、前広に考えていきたい、こういう姿勢で臨んでおります。
  9. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今、企画庁長官からお話をいただきましたけれども、すべてそうだと思いますけれども、なかなか実際に現場でやっておる者にとっては、新しいことにチャレンジするということは難しいことでございまして、どうしても足を引っ張ると言ってはなんですけれども、改革に向かっていけないような部分もございまして、そういう意味では、やはり第三者機関といいましょうか、そういった形できちんとフォローする方がいいんじゃないかと思いますけれども、もう一度総理、いかがでしょうか。
  10. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 従来の総理ないしその他の内閣としての諮問に答えて答申をいただいて、それを一つ一つ実行していくということでございます。  先ほども御答弁申し上げましたけれども、この答申をいただくことに当たった会議そのものも、今後ともこれをじっくりと見詰めていきたいということでございましたので、会議そのものは継続いたしていくわけですが、きちんとそういった意味でのフォローをこの機関もしていただきたいと私は申し上げておりまして、答申を出したからこれで責任はお果たしをいただきましたということでなくて、これからの推移が実は非常に問題で、もちろん責任答申をいただきました私自身がこれをいかに実行していくかということに尽きるわけですが、内容が申し上げたように非常に多岐にわたりますし、ある意味では日本の将来にかかわっての根本問題にかなり触れられておりますので、そういった意味では、一朝一日にこれをすべて法制化して現実のものにしていくということには大変な重さがあると思います。したがって、ぜひ、この会議答申に至ります間大変御苦労いただいた諸先生方にも今後とものフォローアップをお願いしたい、こう思っております。  ただ、機関として、実はアメリカでナショナル・パフォーマンス・レビューというものをつくりましてこういった答申をしたときに、経済戦略会議と同じような答申をいたしたわけですが、ゴア副大統領を中心にいたしましてそういうものをして、しっかりとした監視機関として機能を発揮すると。  アメリカの例を言いますと、この機関がこの答申に基づいて政府のむだを省いて約計三十八万人のリストラをしたというような実績があるようでございますけれども、日本日本としてのやり方があるかと思いますので、まずは、先ほど申し上げたように、各行政機関においてこの答申を真摯に受けとめていただきまして、プライオリティーもつけていただいて、ぜひこれを実行していくということでありますが、実行するためには、国民的賛成考え方がなきゃならぬし、もとより国民を代表される国会の諸先生方のお考えもお聞きしなければならぬかと思いますから、そうしたことを受けとめながら現実のものにしていきたいというふうに思っております。  せっかくの機会でありますので、私、この経済戦略会議につきましては既に新聞、マスメディア等で十分報道されておりますけれども、やっぱりその骨子とするところは、経済再生戦略として、先ほど申し上げましたように、財政再建を行い、経済構造改革を本格的に、再生をいたしまして、平成二十年までに日本経済をしっかりとした健全なものにしていきたいということでございます。  その精神は健全なる競争社会を構築するということでございまして、そうなりますと、かなり厳しいいろいろの、アメリカ的とは言いませんけれども、弱肉強食とはこれまた言いませんけれども、かなり厳しいような諸施策を講ずるということになった場合に、一方ではセーフティーネットをしっかり構築していくべきだというようなことでございまして、五つの大きな柱がございますけれども、ぜひそれを、二百三十四項目にわたって項目がまとめられておりますので、一つ一つ十分精査して、実現のできるものから一つでもやっていきたい、このように念願しております。
  11. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 大蔵大臣にもこの報告書につきまして少し御意見をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国は、これから二十一世紀に向かって大きな曲がり角を曲がらなきゃならないということはお互いが知っているわけですけれども、今度のあの答申は、曲がり角の先にありそうな問題をかなりよく拾って、それについて観察をしておられると思うんです。  各省庁と意見が必ずしも合わないということはよく言われますけれども、各省庁もそんなに先に曲がり角が見えているわけじゃないわけです。どういう問題があるかということすらそんなに、御存じのように役所というものはそんなに先をきちっと見て仕事をするところでございませんから、そういう意味で示唆するところが多いと思うんですね。  さっき堺屋さんが波紋とおっしゃいましたが、問題を投げかけて波紋をみんなが勉強するのには大変にいい仕事をしていただいたと思っております。
  13. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  少し時間がなくなりましたもので、厚生大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、特に厚生大臣には年金改革についてのコメントをちょうだいしたいと思うんです。  基礎年金部分を、やっと国庫負担を三分の一から二分の一にしようという御提案をなさったばかりでございましたけれども、そこに、この報告書の中では、全額国庫にしよう、税方式にしよう、そしてまた報酬比例部分を三十年後には完全民営化しようと、こういう大きな変革の提案でございますけれども、従来からの宮下厚生大臣の御主張、一応伺ってはいるわけですけれども、これとは反するものだと思いますが、しかし、今ここで戦略会議がこうした報告を出したということに対しまして、改めて御意見をちょうだいしたいと思います。
  14. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 戦略会議最終報告に関する私どもの取り組む態度は総理がおっしゃられたとおりでございますが、個別の問題になりますとなかなか検討を要するような事項がたくさんございます。  特に、今御指摘の国民生活に非常に密接な関係のある年金問題、そして安定した、安心できる制度が今求められておりますが、この点は非常に私は重要視してポイントを見詰めておりますが、三つくらいポイントがあります。  今、委員は二つ御指摘になりました。基礎年金の全額税方式、それと報酬比例部分を廃止して民間の自主的な保険システムに任せたらいかがかという重大な提案。それからもう一つは、確定拠出型。つまり、従来は給付が決まっておりまして、拠出の方はそれに応じて、給付がマイナスになれば追加的な拠出を求められるという制度でございますが、今回は最初に確定した拠出をきちっとして、その運用によって年金の給付水準を維持しようという三つの点が指摘されております。  きょうは、その三つそれぞれについては別に、委員の御指摘でございますから、基礎年金について申し上げます。  基礎年金につきましては、正確に申しますと、基礎年金の財源につきましては、二十一世紀のしかるべく早い時点で税による負担割合を高めるということが一つ書かれております。それから同時に、さらに将来的には税方式に移行することが望ましいというように使い分けて書いてございます。  私どもとしては、年金の改正案を法案として今度提出を予定いたしておりますが、それには財源を確保して、そして同時に、今の基礎年金部分の三分の一の国庫負担を二分の一にすることを法律に織り込みたいと思っておりますから、この点は戦略会議の方向に沿ったものだと存じます。  ただ、その基礎年金部分を全額税方式でやるということにつきましては、これは目下年金改正を出しておりますから明確に申し上げた方がよろしいかと思うので申し上げておりますが、一つは、やはり給付と負担の関係が明確である社会保険方式の長所が失われるのではないかというのが第一点。  それから第二は、一定以上の所得や資産のある者に対しましても全額税で負担するという年金支給を行うことについて本当に国民的な理解が得られるかどうか。資力調査とか所得制限等によって年金支給を制限せざるを得ないのではないか。私どもは実際上そうなるのではないかと考えております。  そしてまた、最大の問題は、全額税方式にいたしますと巨額の税負担を要するということでございます。今、私どもは、先ほど申しましたように三分の一の基礎年金部分国庫負担を二分の一に引き上げることを財源を確保してやるということを法律に明記すると申し上げましたが、これだけでも平成十一年度の計算で二兆二千億くらいかかります。年々これはふえていきます。そして、毎年これが継続するわけでございます。これを全額税方式にいたしますと、八兆八千億くらいかかります。  したがって、今基礎年金に国庫が投じておるお金は約五兆円弱、四兆九千億くらいでございますから、全額税方式で今の制度のまま振りかえたといたしますと十三兆七千億か八千億になる。基礎年金部分だけでそういうことになるわけです。これは、今厚生省全体の社会保障予算が十六兆円でございますから、それの八割以上を占めるようなことになりますし、国の一般会計から見ましても八十二兆八千億の中の十数%を占めるようになるのではないかと思うんです。  そして、その財源をどうするか。税でいくのかどうするのかという大変大きな課題がございますし、資源配分の問題としてそこだけでいいのかどうかという総合判断を加える必要がございますから、私どもとしては非常に重要な指摘ではあると存じますけれども、当面、なかなかそれを実施に移すのは困難かなという感じでございます。  なお、つけ加えて、報酬比例部分の廃止についても言われましたが、これも非常に重要な問題です。私どもは、基礎年金だけであとは自主的にやればいいというふうには考えておりません。つまり、中小企業者その他の方々の社会保障給付が本当に保障できるかどうかという懸念を持っております。そんな点で大変これから検討を要する課題である。私どもは、基礎年金報酬比例部分の構築に基づく年金制度は維持していかなければならぬと考えております。  それから、確定拠出年金の方は、これはアメリカでも非常に盛んで注目されているやり方でございまして、我が国でも取り入れることがいいのではないかと思って今関係省庁で鋭意検討を進めておりまして、できれば来年の通常国会くらいには法律案を出してこれをスタートさせたいというように考えておるところでございます。
  15. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  今、詳しく御説明いただきましたけれども、基礎年金部分を全額国庫負担にすることに関して割とデメリットだけお話しいただきましたけれども、今、国民年金といいながら、実際に加入していない人たちが、お金も払わない、あるいは免除されている人たちが約三分の一もいる。そしてまた、私は大変気にしているわけですが、例の千二百万にわたる三号被保険者の問題、こういった問題を考えますと、やはり全額税方式というのは魅力のある考え方でもある。  ただ、その裏には、じゃ、その財源をどうするのかと。当然のことながら、広くみんなで、今まで保険料を払っていなかった人からもいただくとなると消費税ということになるわけで、今おっしゃった額から考えるとかなりのものになるわけです。  しかし、まだ長い時間があるわけですから、選択肢の一つとして、厚生省年金の五つの選択肢からはとてもはみ出るものでございますけれども、六つ目、七つ目、八つ目、九つ目かもしれませんけれども、これからの少子高齢社会を支えるための年金のあり方として国民的な議論をしていただきたい、こんなふうに思っている次第でございますので、よろしくお願い申し上げます。  さて、今お話を伺ってまいりましたけれども、小渕内閣は景気刺激対策を優先いたしまして、財政構造改革法を一時凍結したということで積極的な財政に転じたわけでございますが、おかげで大変な国債残高を抱えてしまったということがございます。  財政構造改革法を凍結した分、またこれを解除するとき大変な苦労が、幾ら景気回復後、それを待ってということではありますけれども、実際にはそれは大変難しい問題であるんじゃないかというふうに思っているわけでございます。もちろん、今景気回復が先行しなきゃいけないということは重々わかりますけれども、私は、財政構造改革法を景気が回復軌道に乗るまで放置していいのかどうかということに関して大変疑問を持っているわけでございます。  もちろん、今後歳出を抑え、そして公債残高の増加を抑えるためにも、財政構造改革法の精神を守るということではございますし、また国と地方あるいは官と民の守備範囲の見直し、あるいは負担のあり方、こういった議論も進めなきゃいけませんし、また必要があれば、財政構造改革法そのものの見直しも含めて片方で着手する必要があるんじゃないかというふうに認識しているわけでございます。これに関しまして、総理また大蔵大臣、お答えをちょうだいしたいと思います。
  16. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 申すまでもなく、国、地方の長期債務が六百兆円を超えるというようなことでございまして、こうした国、地方の状況につきまして財政健全化しなければならないという思いは、それは清水委員ももとよりでございますが、我々政治家にとって最大のポイントだと思っております。  ただ、さきの国会でこれを凍結させていただきました段階で、もとよりその道筋というものは常に考慮していかなきゃなりませんが、改めてこの問題を今の段階で御提起申し上げるということになりますと、やはりかつて、財政構造改革もこれは実現しなけりゃならぬということで法律を制定いたしました。一方では、現在の経済の状況にかんがみまして、ある意味で積極的な財政運営を行わなきゃならない。こういうことでございまして、二律背反とは申し上げませんけれども、二兎を追って一兎をも得ずということであってはならぬということで、今回このような予算の編成もさせていただいたわけでございます。かねがね私自身財政均衡の重要性については申し上げておるところでございますが、ぜひそういった意味で、常にこのことは念頭に置きながら考慮していかなければならないというふうに考えておるところでございます。  そういった意味におきまして、この財政再建という問題につきましては、いつも申し上げておりますけれども、将来世代のことを考えますときに、大きな重い課題を背負っておるという認識は深く痛感をいたしておるところでありますが、今の段階ではこの不況をぜひ克服して我が国経済をまず回復軌道に乗せるというところでございまして、その段階におきまして改めて財政、税制の諸問題につきましても中期的な視点から幅広く検討を行ってまいりたいと思っております。  私は、この眼前の未曾有の状況を乗り切りまして新たなる構造改革に取り組むときが必ず参るという前提に立ちまして、常々財政構造改革のための方策というものについてその気持ちを失わず対処していくことは当然のことだろうと思います。また、そういった意味合いからも、先ほど来御議論いただいております経済戦略会議平成二十年までにおける財政も含めましての基本的な健全化のための方策について一応のシナリオを描いていただいておりますから、こうしたことも十分参考にさせていただきたいと思っておる次第でございます。
  17. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  それでは次に、雇用サミットの話で少し労働大臣お話を伺いたいと思います。  大臣、御苦労さまでございました。大変に短い日程でワシントンに飛んでくだすったわけでございますけれども、今回で五回目ということでございまして、当然各国は大変厳しい雇用失業状況にあるわけでございます。日本も大変厳しいといいながら、日本はまだいい方なんでしょうか、アメリカより悪くなったという報道もございますけれども、大変厳しい情勢の中でのお話し合いだったと思います。  そういう中で、当然日本のこれまでの大変な努力を御紹介もなすったことと思いますし、それがどのように会議報告され、そしてまた逆に各国から参考になるような政策もあったのかどうか、その辺についてお話を伺いたいと思います。
  18. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 国会のお許しをいただきまして、予算の総括中にもかかわらず国際会議出席をさせていただきましたことを改めて感謝申し上げます。  G8の労働大臣会議というのは、労働大臣が単独でひざを突き合わせると申しますか、活発に議論をするという初めての機会でありました。今までもいわゆる雇用サミットというのはありましたけれども、何人かの閣僚が集まってという形であったと思います。労働大臣だけが集まるというのは初めての機会でありましたけれども、そこではいろいろなことが話し合われました。  一番最初に、労働組合の方々も交えて、組合側からの御要望といいますか政治に対する要請みたいなものをヒアリングしまして、それに対して意見交換を行うという場もセッションに入る前にございまして、その後、本格的なセッションに入りました。  第一セッションでは、各国の雇用戦略といいますか、今の厳しい雇用失業情勢を踏まえてどういう戦略で取り組んでいくかという各国の施策の披瀝のし合いというのがありました。第二セッションは、国際機関の連携のあり方ということについて、これはかなり対立点があったんですが、大議論が行われました。  第一セッションで、私の方からは百万人の雇用創出・安定を含めた雇用活性化総合プランのお話をさせていただきました。あるいは、いわゆるアクティブエージング、活力ある高齢社会とでもいうんでしょうか、このことについて、今まで高齢者というと社会に支えられる側の立場だったけれども、福祉から雇用へというのが世界の合い言葉になっておりますが、これからは高年齢者も社会を支えていく一員である、そういう環境整備をしていく、そのための各種会議をやりますよ、あるいは各種施策をやっていますよということを御披瀝申し上げました。この点は、イギリスの労働大臣を初め大変関心を引いたところでございました。  先生の御質問の、各国の労働政策で何か参考になるようなものがあったかと申しますと、いろいろ活発に、我が国こそ雇用政策先進国なりというようなアピールがなされてはいたんですが、正直言いまして、ほとんど日本ではやっているということでありました。  イギリスに限らずヨーロッパでは若年者の失業というのが大変深刻な問題になっています。というのは、日本は学卒一括採用という仕組みがありますけれども、アメリカ、ヨーロッパはありません。ですから、大学は出たけれども職業能力がなければ全く相手にされないということで、けたが違う失業の数でありまして、大学を出た人に職業訓練をどうするかと。まず採用して企業内職業訓練を行って長期戦略にたえ得るものにするという考え方と、言ってみればもう全部中途採用のような国ですから、卒業時に一括して引き取るという仕組みがないですから、そこが彼らの深刻な点で、我々とはちょっと違う雇用慣行だなという点が感じられました。  それから、フランスからは、雇用を拡大するためには時短を進めればいいんだなどという主張がありました。週三十五時間とか、うんと短くすれば足りない分だけ人を雇うというお話があったんですが、正直、そうすると賃金はどうなっちゃうのかなと。シェアリングで賃金を下げて、その見合った分だけ雇うなら生産性というのはそんなに落ちないでしょうけれども、賃金はそのまま、時間を減らしてその分人を雇えということになると、企業の国際戦略というのはどうなるのかなというような疑問もありました。  各国一生懸命取り組んでいるよというお話はよくわかったんですが、大体日本は先取りをしてやっているなという自信を持って帰ってきたという次第でございます。
  19. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  今度の会議で、何か、国内産業の保護を目的として自由貿易の推進を抑制しようというような動きがあったというようなこともちょっと漏れ伺いました。開発途上国のように労働基準が守られていない状況のもとでつくられた製品に貿易制限措置を加えよ、こういったことがアメリカから出されたというようなことを漏れ伺ったんですけれども、それに対して労働大臣どんな御発言をなさって、そしてその会ではどんなふうに方向が定まったのか、教えていただきたいと思います。
  20. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 新聞によりますと、日本アメリカを封殺したとか、かなり過激なことが書いてありますけれども、私とアメリカやEUとの最大の論争になったところであります。中核的労働基準、コアレーバースタンダードとILOで呼んでおりますけれども、児童労働の禁止とかあるいは強制労働の禁止、当たり前に守っていかなくちゃならないことでありますけれども、この守り方をどうするかということであります。あるいは最低賃金の問題もあります。  アメリカとEUは、WTOと連携をして、守れない国は貿易制裁をかける、ホールドアップでやれという方式なんですね。貿易制限措置をかける。例えば、途上国の輸出品が自分の国の国内生産品よりも安い、そうするとその職場が駆逐されてしまうじゃないかと。それは、労働賃金を不当に下げることによって、言ってみればダンピング輸出だと。それが自分の国の失業を招く、だから失業の輸出だと。これは貿易制裁でやめさせるというような発想なのであります。  ただ日本は、労働基準をちゃんと守らせるというのは当たり前に大事なこと、これはILOがやるべき仕事である。つまり、道義としてモラルとしてやるべきだと。当然人間性の問題ですと。ただ、貿易制裁でやるというのは、一時的には解決になるかもしれないけれども、守ろうと思っても守れない経済状況にあるというのが途上国ですから、むしろ支援をすべきじゃないかと。守れるように金融経済上の支援と絡めていって、モラルとしてちゃんと守ってくれ、ただし守りたいけれども守れないんですという悲鳴には国際機関が支援をすると。これでないと抜本解決になりませんよ、力で強制をしたって根本原因が直っていないのだったら守れるはずがないじゃないですか、そんな簡単なものじゃないのじゃないですかと。だから、支援の仕方で、支援的、補助的にやるべき問題であって、強制的に力ずくでねじ伏せるということじゃないですよと。  私は日本労働大臣だけれども、アジアを代表して出ているつもりですと。先進国がかつてたどってきた経緯を振り返って考えてみてくれ、それぞれの国だってそういう時代はあったんじゃないですか、それをちゃんと抜本的に解決できるような措置を講じてやることこそ本当の意味の施策じゃないのだろうかという主張をいたしました。  これにはドイツとイギリスから日本の言うとおりだということを言っていただきまして、最終的にはそういう支援的な措置としての国際機関の連携ということが書き込まれたわけであります。そういう意味で、私どもの考えているところが盛り込まれたというふうに理解をしております。
  21. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 アジア太平洋地域の代表として、そういった御活躍が大変歓迎されるんじゃないかというふうに思います。  今労働基準のことをずっとお話しくださったんですけれども、この過程で私も少し勉強をさせていただきましたが、いわゆる中核的労働基準と言われるものの中に日本でもまだ批准していないものが結構あるんですね。例えば強制労働の禁止に関する条約でありますとか就業の最低年齢に関する条約、これは近々批准できそうだというお話でございますけれども、さらに雇用及び職業についての差別待遇に関する条約と。  いろいろ事務方からお話を伺っていましたら、中身に何か問題があるというよりも、ちょっと怠慢というのでしょうか、少し対応がおくれているのじゃないかというふうに思うんです。指導的立場にある日本がこんな条約も守れないようではちょっと問題があるのじゃないかと思いますので、これは前向きにぜひ御検討いただきたいということをお願いしておきます。  それから次に、雇用対策に入るんですけれども、文部大臣、資源に恵まれない我が国にとって人材、これは何といっても大変な財産でございます。  統計的には生産年齢というと十五歳からになるんですけれども、日本の場合には高等学校にほとんど入っているわけですし、大学にも入っている。そうすると、大体生産年齢というのは二十過ぎるんでしょうか、そのくらいまで親の庇護のもとに教育を受け、そしていよいよ社会を担うというところになると、なかなか就職もしないでというのがふえてきているという状況でございます。平成十年で八万人を超える。卒業生の一五・五%、これは非常に大きな数だと思います。また、高等学校の中で平成九年で十一万人以上の退学者が出ているというようなことで、これは一体どうなるんだろうかという気がいたすわけでございます。そしてまた、就職してもすぐやめてしまうと。要するに、勤労観というのでしょうか働くことの価値というのでしょうか、そういう価値観の欠如が非常に問題じゃないかというふうに思うんです。  一部大学等におきましてインターンシップ制度を取り入れているところも出てきているというふうに伺っておりますけれども、やっぱり中高生くらいからの学校教育の中での教育というものももう少し必要じゃないかと思いますけれども、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  22. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) この点に関しましても、私も長い間心配をしていることでございます。  御指摘のとおり、せっかく高等学校を卒業をしたのに就職しないとか、就職後すぐやめてしまうというふうな人がふえてきていることは事実のようであります。  この原因というのは実にさまざまございまして、一様にこうすればいいという解決策はないのですけれども、御指摘のように学校において職業観を養成するということが極めて大切だと思っております。中学校及び高等学校では、現在でも教科の指導や職場体験活動などを通しまして望ましい勤労観、職業観の育成に努めておりますけれども、さらに新しい教育課程においては、これらに加えましてガイダンス機能の充実を図りたいと考えております。  また既に、昔職業高校と言われました、今専門高校というふうに名前を変えましたけれども、そこでは先ほど御指摘のありましたようなインターンシップなどを導入いたしまして、教育において職業の重要性をさらに強く教えているところでございます。  文部省としましては、今後とも望ましい職業観の育成を図る教育の充実を図りたいと思っております。
  23. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 この分野、文部省だけでなくて、通産省におきましても起業家精神を有する人材を育成しようというようなことでいろいろやっていらっしゃるというふうに伺っているわけです。そういう発想がやはり教育行政にもリンクしていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思いますけれども、通産大臣いかがでしょうか。
  24. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 通産省では、より多くの青少年が起業家精神、すなわち業を起こすという精神を持ち、事業を起こしましたり、また中小企業あるいはベンチャー企業への就業を志すような環境を整備することが極めて重要であると考えております。パターンの決まった進路というよりは、やはりもう少しダイナミックな考え方を持っていただきたいと思っております。そのためには、やはり画一的あるいは知識詰め込み等の問題点が指摘されている学校教育を、創造性、またみずから学び考える力などが育成されるようなものに変革をしていく必要があると思っております。  通産省は文部省と連携をいたしておりまして、アントレプレナー教育研究会の検討の結果の成果を踏まえまして、まず第一には小中高校生を対象として起業家精神を涵養するための教材の開発普及、第二は産業界と学校との人的交流の促進、第三は大学等の先導的な起業家育成講座に関する実証研究、第四は中小ベンチャー企業へのインターンシップ、インターンシップというのは学生の就業体験制度ということでございますが、こういうものの促進。これらの今申し上げましたような四つの大きな柱の政策を持っておりまして、これを文部省とよく御相談しながら進めてまいりたいと思っております。  我々としては、そのほか、関係省庁とも連携しながら、新規産業創出の担い手となる人材をつくり出していく、また育成していく、その重要性については、先生の御指摘のとおり我々も持っているわけでございます。
  25. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 現在の雇用状況の認識についてお伺いしたいと思います。  昨日の労働省の発表で一月の完全失業率が四・四%、約三百万近い二百九十八万人に上る完全失業者が出ているという発表でございます。また、解雇によって失業した人がついに百万人を超えたということで、もうこれは大変なことだというふうに思います。しかも、今お話が出ました学卒者の働きたい人、働きたくない人は別ですが、働きたい人まで内定状況が非常に厳しいというような状況でございます。  この点についての状況認識、対策につきまして総理からお話をいただきたいと思います。
  26. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 清水委員御指摘のように、大変厳しい環境下に置かれております。  雇用情勢につきましては、一月の有効求人倍率が〇・四九と前月をやや上回ったもののなお低い水準にございまして、完全失業率も、わずかですが四・三%に落ちましたのが四・四%とまた従来の数字に戻ってきておりまして、過去最高水準を続けておるなど大変厳しい状況が続いておるものと認識いたしております。  こうした厳しい雇用失業情勢を改善するために、現在政府全体で協力をいたしまして、百万人規模の雇用創出・安定を目指しまして緊急経済対策を強力に推進いたしているところでございます。とりわけ雇用活性化総合プランに基づきまして、中小企業が労働者を雇い入れるときの助成措置など新規雇用創出のための支援、中高年労働者に重点を置いた再就職支援、ホワイトカラー離職者向け訓練の拡大、経済団体と連携した求人情報の提供による労働力需給のミスマッチの解消に全力で取り組んでいるところであります。これらによりまして、雇用の確保を図り、国民の雇用に対する不安を払拭し、再び希望と活力にあふれた経済社会をつくり出してまいりたいと思っております。  ささやかなことであったかもしれませんが、私も実は昨年十二月に公共職業安定所、ハローワーク飯田橋を突然訪問いたしました。いろいろと学ぶところはありましたが、実は求人とそれに応ずる方々とのミスマッチその他ありまして、例えば情報産業関係といいますか、コンピューター関係は、もうあそこはたくさん求人票がありますけれども、どうもそれに応ずる方々が大変少ないんじゃないかというようなこともございまして、そういった点にもいろいろ教育、配慮をいたしておりますが、現実の問題としてはなかなかミスマッチがそう解消できないというような状況もあります。  また、この厳しい状況を見まして、職を求める方々で、実は現在就職をしていながら転職といいますか、そういう方々もおられまして、そういう方々がこのハローワークにいつ来られるのかというと、自分が仕事をしていますからどうしても土、日以外にないんじゃないかということでございまして、甘利大臣に実は検討をしていただきまして、今般、東京、大阪の交通の利便が最もよい公共職業安定所を土曜、平日夜間に開庁する方針を決定いたしまして、大阪につきましては二月十五日から、東京におきましては二月二十七日からその取り扱いを開始しております。  そもそもハローワークというのは、ある意味のサービス産業と言うのはおかしいですが、サービスをいたすことですから、そういった意味で少しでも求職される方々の希望にこたえるような体制を整えるべきだ、こういうことでこれを実施させていただいているところでございます。  なお、さらに政府といたしましては、私を本部長とする産業構造転換・雇用対策本部を三月五日、明後日に開催することといたしまして、雇用の安定、雇用の場の創出のための雇用対策の積極的な展開と福祉・情報通信分野など雇用の期待される分野への各種施策の実施などについて真剣な審議をいたしてまいりたい、このように考えております。
  27. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今、積極的な対策を立てていらっしゃることのお話を伺いましたし、また国際的にも、さっき甘利労働大臣お話しくださいましたように、日本ではもうかなり幅広にいろんなことをやっている、もう外国に学ぶことはないくらいにやっているというお話でございました。確かにお金もこれだけたくさん出しているわけですが、果たしてこれがいつから実効が上がってくるのかという問題でございます。  そこで、経企庁長官にお伺いしたいんですけれども、本当にこれだけいろんな財政、金融両面から、あるいは労働政策、いろんなことをやりましても、何となく期待しているほどこの経済が上向いてこないというのを、いつも長官は胎動とおっしゃるわけですけれども、その辺のところにつきまして、これからの経済への見通しといいましょうか、最近の経済指標から今後の経済動向、雇用問題を含めてお話をいただきたいと思います。
  28. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 委員お説のように、日本経済は引き続き厳しい状況が続いております。一番端的にあらわれているのは、設備投資が非常に低い水準でございます。また、アジア諸国の経済状況等から輸出も伸び悩んでおります。  消費も依然として前年に比べると低い水準でございますけれども、このところかなり明るい芽もあらわれているんじゃないか。私が胎動と言いましてから既に三カ月たつわけでございますけれども、その間にややこれが膨らんでいるんではないかと言える現象が幾つかあらわれております。  例えば、勤労者世帯でございますけれども、これの最近の実質消費支出を見ますと、十一月はプラスでございまして、十二月下がったんですが、一月は前年比で二・六%、前月比で二・二%伸びてきているというような数字が出ております。また、個別の商品で見ましても、住宅販売は一月になってやや回復基調を芽出しております。これはかなり長く沈んでいたんですが、よくなってきている。それから電気販売店、これは大型店だけとった場合はやはり成長が見られておりますし、軽自動車の伸びもございます。公共事業は、発注高は一段落した形でありますが、工事高で見ますと引き続き高い水準を保っています。  したがいまして、宮澤大蔵大臣の例えで申しますと、一番バッターが塁に出たと。二番バッターの住宅が減税とそれから低金利が続きますれば何とか内野安打でも打ってくれるんじゃないかと。それで、三番バッターの消費でございますけれども、この消費も、まだバッターボックスに立たないで、ウエーティングサークルで振っているところを見ると少しよくなってきているんじゃないかというような期待が持てるような状態でございます。  これが腰砕けにならないかどうか、大変不安要因はあるのでございますけれども、今のところ幾分改善の兆しが見えてきたのではないか、兆しの兆しかもしれませんが、そういう状況になっております。これがさらに拡大いたしまして設備投資に結びついていくまでにはまだ長い時間がかかる。とても油断できるような、安心できるような状態でございませんけれども、いわば底に定着した、底ばいの状況が続いているということでございます。  なお、先ほどから議論がございました雇用の問題は、遅行指数でございますので、これからなお厳しい数字が出てくるだろうと思います。  年度末にかけての決算状況等、我々としても注目すべき点が非常にたくさんございますが、今のところ少しよくなってくる兆しがあるんじゃないかと期待している次第でございます。
  29. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 だれでもいいです。早くホームランを打ってほしいというふうに思う次第でございます。  いろいろ考えますと、何といっても新しい雇用の場が出てこなければいけないわけでございまして、通産省の経済構造改革行動計画で、情報通信、環境、医療等の十五の産業分野で二〇一〇年までに七百四十万人の雇用を創出するというようなことが計画されているわけでございまして、この行動計画、二回目のフォローが行われているというふうに伺っておりますけれども、この効果はどんなふうに評価されておりますか、お教えいただきたいと思います。
  30. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 平成九年五月に公表いたしました経済構造改革行動計画について、雇用、人材面に関する状況は今どうなっているのかということが先生の御質問だと思いますが、私どもとしては、我が国経済の活力を維持し、そしてまた向上を図っていくためには、人材移動の円滑化等を通じて人的資源を一層有効に活用していく必要があると考えております。そのためには、新規事業の創出を通じた良質な雇用機会の創出というものが何よりも重要であると考えております。  このため、今申し上げました経済構造改革行動計画に掲げられている雇用・人材関連施策を着実に実施していくとともに、これまで二回にわたるフォローアップを通じて、今申し上げました施策の充実を図ってきたところでございます。  具体的には、さきの臨時国会におきまして成立させていただいた新事業創出促進法に基づきまして、新たな事業に挑戦しようとする創業者等に対する総合的な支援策を実施し、新事業・雇用創出を図っていく所存でございます。  さらに、労働雇用制度についても、労働者派遣事業の対象業務の拡大等を行うため所要の法案を提出させていただいているところであり、また有料職業紹介事業の取り扱い対象職業の拡大等を行うための法案を今国会に提出する方向で準備が進められているものと承知をしております。  こうした雇用、人材面での施策を着実に実施いたしまして、強靱な経済基盤の強化に努めてまいりたいと考えております。
  31. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今挙げられました十五の分野の中で、これから雇用が創出されると期待されているのが医療・福祉関連分野ということになっております。経済効果も非常に大きいんじゃないかということでございます。  そこで、厚生大臣にお伺いしたいわけでございますけれども、とりわけ来年から始まります介護保険、この関連産業というのはかなり大きな産業になるということが確実じゃないかなというふうに期待されるわけでございますけれども、そうはいいましても、これから始まることに対しては非常に皆さん心配しているのがマンパワーのことでございます、これから地域で看護、介護のそういうマンパワーを広げていこうという御計画でございますけれども。  ちなみにOECDの統計によりますと、六十五歳以上の人、人口百人あたりホームヘルプサービスを利用しているのが、フィンランドで二十四人、スウェーデンで十三人、アメリカで四人、日本では二人ということで、本当にまだサービスが少ないわけでございます。また、看護婦にいたしましても、日本ではほとんどというか多くの看護婦が医療機関の中で仕事をしております。地域でほとんど働いていないという偏った仕組みなんです。例えば、医療機関で働いている割合が、スウェーデンでは七二%、デンマーク六二%、アメリカ六〇%、カナダ六三%、日本は九〇%以上ということで、それだけ地域で働いている人が少ないということでございまして、これを介護保険法等によって地域でも生き続けられるような仕組みにしようというところだと思います。  そこで、介護保険法の実施に限りましてでいいんですけれども、こういったマンパワー、どのくらい必要だというふうに見込んでいらっしゃるか、お教えいただきたいと思います。
  32. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御指摘のように、来年の四月から介護保険を実施したいと、目下準備中でございます。初めての制度でございますから、いろいろやっぱり不安感もあることも承知しておりますが、実施までには何とかこの不安感を解消する努力を最大限いたしまして基盤整備を図っていきたい、このように思っております。  特に今御指摘の、医療、福祉の分野における雇用問題でございますが、委員のおっしゃるとおり、私もこれからの社会の中で、医療、福祉の雇用に占める割合といいますか、雇用のウエートというのは非常に高まっていくというように思いますので、これを積極的に評価し取り入れていかなければならないというように基本的には思っております。  そこで、現在どの程度の人が従事しているかというお尋ねでございますが、平成九年度の実績によりますと、老人保健福祉事業の従事者が約四十五万人、これは実績ベースでございますが、四十五万人ほどおられます。そして、今新ゴールドプランによりましていろいろ基盤整備を図っておるわけでございますが、これから十年、十一年にかけて、介護保険の実施も控えながら、一年間で大体八万人前後ずつ増加していくものと私どもは予想しておりますので、十一年度末には今の四十五万人に対してさらに十六万ふえるということでございまして、約六十万ないし六十一万くらいになるのではないかと推定をいたしております。  ただし、介護の問題につきましては、今この実態を調査しております。それから、介護サービスの需要も市町村で今算定中でございます。それに基づいて介護の事業計画を提出することになっておりますので、それによって最終的な事業というものは確定すると思いますが、おおむねこんなことではないかなと思っています。  なお、福祉関係の人材の就業促進という問題は、これはまた極めて重要な問題でございますから、全都道府県に設けられました福祉人材センター、これは県の社会福祉協議会等を通じてこの福祉人材センターを運営していただいておりますが、そこで無料職業紹介でありますとか就職希望者に対する説明会をやるとか、あるいは広報活動等を積極的にやる、そういうようなことをいたしまして介護制度についての理解を深めると同時に、就業者の参加を積極的に呼びかけてまいりたいと思っております。  ただし、この介護の分野は、量、質ともに水準を高めていくことが必要だと存じますけれども、あくまでシステムと連動しておりますので、それらをよく勘案して、余り過剰な人員を投入することもできませんし、それによって質的な水準を落とすこともできません。そういうことも配慮しながら充実を図っていきたいと思っております。
  33. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 先日、ケアマネジャーの試験というのがあったんですけれども、四万人の募集というか、必要だと思っているところに二十数万人集まってきたというような、こういう関心の深さでございます。  また、実際にヘルパーの研修を受けている人がもう二十九万人もいる。そして看護婦でも、資格を持って家庭にいる人が四十六万人見込まれるというようなことでございます。こういう人たちをもっと掘り起こしてくる。あるいはリストラされた男性が介護福祉の学校に行ったり看護士の資格を取ったりしてこの分野に入ってくるというようなことでございます。この分野が相当広い受け手になるんじゃないかなと。あるいは障害者の方だってこういう分野に入ってくる道はたくさんあるんじゃないかというふうに思うわけです。  きょうはもう私の持ち時間がなくなりましたけれども、本来、高齢者の問題、女性の問題あるいは障害者の問題、こういうこともぜひ申し上げたかったわけなんですね。  最後に、総理にお願いをしたいんですけれども、雇用対策がしっかりすれば将来に対する不安というのがなくなりまして、GNPの六〇%を占めます個人消費が刺激されることはもう間違いないというふうに思います。私も今度の質問を通して皆さんに伺ったんですけれども、かなりきめ細かい政策をみんなやっているなという感じはするんですが、ちょっとみんなばらばらという感じもいたしますし、そしてまたいろんな政策のニュースが国民に本当に届いているのかなということを心配したわけでございます。  ぜひ雇用問題を、労働省だけの問題ではなくて、各省庁が横断的に協力し合って雇用の場をつくっていただきたいというふうに思いますし、ベンチャー企業の育成、新しい事業の創出あるいは規制緩和による他分野への積極的な進出というようなことで活力ある雇用環境をつくらなきゃいけませんけれども、同時に、先ほど申しましたように、少子高齢社会でございます。女性がもっと働きやすい環境をつくっていただく、あるいは豊かな経験を持った高齢者をもっと活用していただく、障害者の社会参加を進めていくというようなことで、高齢社会にマッチしたような政策をもっと進めるべきじゃないかというふうに思うわけでございます。  最後に総理のお答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 少子高齢化が進展する中で、高齢者、女性、障害者の方々の能力が十分に発揮されるようにすることが我が国経済社会を活気に満ちたものにする、そしてその活力を維持するためにも極めて重要だと考えております。  このため、高齢者に対しまして、六十五歳までの継続雇用の推進、シルバー人材センターの事業の活用など、施策によりまして多様な雇用就業機会を確保してまいりたいと考えております。  また、障害者につきまして、法定雇用率の達成に向けた指導を初めとして、障害の種類の程度に応じたきめ細かな施策を展開し、完全参加と平等の理念の実現に努めてまいりたいと考えております。  さらに、雇用の分野における男女の均等取り扱いを確保するための対策や、職業生活と家庭生活の両立支援対策を積極的に進めてまいりたいと思います。  清水委員御指摘のように、各省庁と十分連絡をとりながらこうした問題に対応していかなけりゃならないという御指摘、まことにそのとおりでございますので、政府といたしましても、そうした御指摘を十分受けとめながら全体としてこの問題に対して積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  35. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。
  36. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。矢野哲朗君。
  37. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 自由民主党の矢野哲朗でございます。関連質疑をさせていただきます。  本日の集中審議のテーマに加えまして、冒頭、質問をさせていただきたいと思います。  大変痛々しい事件が起きたわけであります。この事件をきょうこの場である程度方向づけをしながら、大変迷っている教育者の方々一つの道筋を与えてあげたいな、そういう気持ちで質問をさせていただきたいと思います。  そのことは、去る二月二十八日に広島県で起きた事件であります。広島県立世羅高校の石川敏浩校長が自殺に追いやられたということであります。この場をかりまして、亡くなられた校長先生に心から御冥福をお祈り申し上げ、そして哀悼の誠をささげさせていただこうと思います。  文部大臣にお尋ねをいたしますけれども、広島県でこのような事件が多発しているというふうなことを聞いております。どの程度この事件の内容並びに概要を把握しているのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  38. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 広島県立世羅高校の校長先生が自殺されたことは聞いており、大変痛ましいことであり、心から御冥福を祈っているところでございます。  自殺の原因等、新聞等々ではよく知っておりますけれども、現在、広島県教育委員会においても調査しており、詳細はまだ報告を受けておりません。しかし、世羅高校では三月一日に卒業式が予定どおり実施されたと聞いております。
  39. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 いや、私が聞いたのは、荒廃した広島の教育現場で過去多数の方が自殺に追いやられたというふうに私なりに聞いておるんです。ですから、その実態をひとつ御披露願いたいと思います。
  40. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 現在、文部省といたしましても、広島の教育委員会よりの調査を待っているところでございます。これは全般に、この件だけではなく、多くの件についても報告を受けたいと思っております。
  41. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 私から御披露申し上げます。  過去において、学校の校長先生が六名、なおかつ教諭六名、そして県庁の教育委員会の職員が二名、計十四名の方が自殺に追いやられた現状があるというふうに私なりに調べさせていただきました。この実態をどう考えておられるか、ひとつ文部大臣、お願いします。
  42. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) たびたび申し上げますように、大変痛ましいことが続いていると思っております。  これをどういうふうにしていくかということは今後大きな問題だと思いますけれども、文部省といたしましては、やはり国際社会において尊敬され信頼される日本人として成長をするためには、学校教育において国民としての基本的な礼儀作法として、日本の国旗・国歌だけではなく、諸外国の国歌・国旗に対しても正しい尊敬の認識とそれを大切にしていく態度を教育していかなければならないと思っております。
  43. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 どうも答弁がかみ合いません。  この件につきまして、昨年の常会での集中審議で、我々の同僚であります小山孝雄議員から、広島は大変教育現場が荒廃している、その一例として広島の教育現場の問題提起がありました。そのことが一つ波紋になって、順次県民にも広がって意識が高まって、ことしは改善の兆しがついたかなというふうな一つの状況下での事件であります。  そして、この経過を私なりに調べさせていただきました。二月二十八日、自殺される直前、二十五、二十六、二十七、この三日間、教職員組合や部落解放同盟の皆さんから計五回にわたって団体交渉を受けた、こういうことであります。そして本人は、もう大変しんどいんだ、だめだと、こういうふうな発言まで残されて自殺に追いやられたと、こういう実態があるようであります。  加えまして、昨日、葬儀がとり行われました。高校時代からこの校長先生と大変親友であった東風上清剛、やはり校長先生であります、弔辞の中で、あなたは口が裂けても言えないことがあると大変苦しんでいたというふうな、この弔辞の中に一文を述べられました。  ですから、今調べ中だというふうな話、私でもここまで確認ができたんですから、文部省でもって今調査中という話は非常に無責任だと思うのであります。ちょっとお願いします。
  44. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先ほど調査中と申し上げたのは今回の御不幸な事件でございますが、既に平成十年四月二十七日、二十八日に広島県での実地調査は行っております。また、昨年五月二十日に広島県教育委員会に対し、是正の指導を行ってまいりました。  これを受けて、広島県教育委員会において各種会議等の場を通じて、県立学校長、市町村教育長、小中学校長に対し、国歌・国旗の適切な取り扱いについて指導を行うとともに、十二月十七日には県教育長名義の指導通知を発出するなどの努力をしております。そしてこの二月のことに至ったわけであります。しかし、この指導で随分ことしは国旗が上げられ、国歌が斉唱されたと私は報告を受けております。  今回のこの事件に関してさらなる調査を今お願いしているところです。
  45. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 今回の事件でもって、新聞報道がされております。  広島県の高校教職員組合ですか、県の教育委員会が日の丸・君が代について職務命令を出した結果、学校現場が混乱をしているというようなコメントが新聞記事に載っております。このコメントに対して文部大臣、いかが考えられますか。
  46. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先ほども申し上げましたように、日本人として国歌・国旗に対する正しい認識を持つということは、教育において重要なことと思っております。これは、諸外国の国旗・国歌に対する尊敬の念を養成することと同じであります。こういう国民としての基本的な礼儀作法を身につけるべく今後も指導し、教育をしてまいりたいと思っております。
  47. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 ですから、このコメントである学校現場が混乱しているということは、これは今の文部大臣の発言からすると大変遺憾だ、整然と静粛に行われてしかるべしだと、こういう御意見でありますね。
  48. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 今までそういうふうにお返事を申し上げたと思っておりますけれども、もっとはっきり言えば教育現場が混乱を起こさないように今後も学習指導要領の方針に従ってやっていただきたいと思っております。
  49. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 この事件を大変痛々しい事件として二度と起こしたくないな、こんな気持ちからきのうの総理にかわる官房長官の発言があったと思います。まだ官房長官いらっしゃっていないものでありますから総理に直接お伺いしたいと存じます。  我が同僚であります狩野安議員から、先般の総括質疑でひとつ法制化してみたらどうなんだというふうな質問があったと思いますけれども、当時はまだそこまでは考えていませんというふうな一つの答弁があったわけであります。しかしながら、きのう官房長官の記者会見の席上、考えてみたい、積極的に考えるというふうな発言があったようでありますけれども、そこに至る経緯、ひとつ総理のお気持ちをお伺いしたいと思います
  50. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず今般、広島県下で長い間教職におられ、校長先生として職務に精励された石川校長先生がみずから命を絶つということになりまして、まことに残念なことであり、悲しむべきことでございます。改めて先生に深い哀悼の意を表し、謹んで御冥福をお祈りいたしたいと思います。  そこで、今、文部大臣からも報告ありましたが、私ども新聞紙上その他で知るところによりますと、いわゆる国旗・国歌の掲揚と斉唱に関しまして教育委員会と組合とのはざまで大変悩まれ、その結果がこうした悲劇になったということをお聞きをいたしました。  そこで、お尋ねの点でありますが、私は二月二十五日の当委員会におきまして、長年の慣行である日の丸・君が代が国旗・国歌であるとの認識が確立し、広く国民の間に定着しておりますことから、現時点において政府として国旗・国歌を法律によって制度化する考えはないと実は御答弁申し上げました。  しかし、改めてよくよく考えてみまして、二十一世紀を迎えるに当たりまして、国旗・国歌につきましても法律としてより明確に位置づけることについていろいろと意見を聞くなどして検討すべきでないかとの思いに至りました。今回、国旗・国歌についての法制化も含め検討を行うよう官房長官に指示したところでございます。  この前の御答弁の中でも、実は各国の例を挙げまして、法制化しておられることにつきましての御紹介も、御存じだとは思いましたがいたしました。これは、国家として成立過程におきましていろいろ国々事情が違いますので、そういった意味で改めて国旗というものを極めて象徴的にとらえて、これを国家統合の象徴として考えておる国においてははっきりと憲法にも明記しておるというような国まであるわけでございます。  ただ、我が国としては、従来、国民の中にも定着をいたしておりますので改めてこの法制化について現段階ではと、こう申し上げたわけでございますが、今申し上げたように改めてこの問題につきましても法制化も含めまして検討をいたしていくべきではないか、こういうことで官房長官に指示し、そして今検討を始めさせていただいております。  広島県での事件は、卒業式の国歌・国旗等の取り扱いをめぐりましてこうした痛ましい事件が発生したわけでありまして、こうした事件の背景として果たしてこうしたはざまに挟まれていろいろ御苦労されたことが、教育指導要領だけでこうしたことを校長先生に負荷することがよろしいのかどうか、こういうことを考えまして、諸外国の制度も参考にしつつ法制化について御意見もお聞きをして検討してみたらということで指示したところでございます。  前回の答弁でも申し上げましたが、各党の中にも、この問題についてきちんと結論をつけるべきだという御主張をされているところもありますし、与党自民党等におきましてもそうした議論が長らくされてきたことも承知をいたしております。  時あたかも次の世紀を迎える段階でございますので、この点について、内閣としても考え方を取りまとめて国民的世論を背景にいたしまして一つの結論に導くべきときが来たのではないか、こう判断をさせていただいたような次第でございます。
  51. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 総理の決断を私も評価させていただく一人であります。  しかしながら、けさほどのNHKの報道がまた違った報道がありまして、法制化はするけれども、いろいろな考え方がそれぞれ会派ごとにあるものだから、直接教育の現場に持ち込まないなんということを前提に法制化したいなんというNHKの報道がありました。  ですから、私は唖然としたのでありますけれども、現時点でも指導要領に基づいて、以前中島文部大臣のときだったですか、慣習法上国旗であり国歌である、日の丸が、君が代がというふうな予算委員会での答弁があったと思います。それから明確になりまして、当然学習指導要領で卒業式、入学式には国旗を上げて君が代を歌おう、こういうことが載っておるわけでありまして、今さら片や法制度でしっかり定めますよ、片や教育現場に持ち込みませんよということになりますれば、かえって現場に混乱を生じると私は感じたわけであります。  その辺を改めてお伺いしますけれども、今現在ですら教育の現場でやるべきだと指導要領でうたっているわけでありますから、当然のことながら君が代・日の丸が国旗・国歌である、しからばそれを励行する。当たり前の話だと思うのであります。その辺での確認をさせていただきます。
  52. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 国歌・国旗につきましては、長年の慣行により日の丸・君が代が国歌・国旗であるとの認識が既に確立しております。そしてまた、広く国民の間にも定着しております。したがいまして、学校においても、各教育委員会及び学校長の努力により定着が図られてきていると考えております。  今回、二十一世紀を迎えるに当たって、国歌・国旗についても成文法としてより明確に位置づけることについて検討する時期に達したのではないかと考えられることなどから、国歌・国旗の法制化を含め検討に着手することになったものと承知しております。  いずれにいたしましても、国歌・国旗についての法制化も含めた検討政府全体にわたる事柄であり、今後、政府部内の検討に参画するなど、適切に対応してまいりたいと思います。  なお、かつて国会において村山元総理、それから与謝野元文部大臣の答弁を整理したものがございますが、それをあえてここで読み上げさせていただきます。  一、学習指導要領は、学校教育法の規定に基づいて各学校における教育課程の基準として文部省告示で定められたものであり、各学校においてはこの記述に基づいて教育課程を編成しなければならないものである。  二、学習指導要領においては、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」とされており、したがって校長、教員はこれに基づいて児童生徒を指導するものである。  三、このことは児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようという趣旨のものではなく、あくまでも教育指導上の課題として指導を進めていくことが必要である。  そういうわけで、文部省ではこの方針に従って学習指導要領について今後も指導を続けるつもりであります。
  53. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 広島県では、卒業式が公立の中学校が三月三日と三月十日に集中しているそうであります、公立小学校は三月二十日と三月二十四日。同じような問題で悩んでいらっしゃる校長先生がたくさんいらっしゃると思うのであります。今の文部大臣の明確な解釈ですか、それに基づいてしっかりやっていただくような道筋ができたかなと私は考えていますけれども。  加えまして、あと一度、きょう私は、誤解を生むようなNHKの報道があったわけでありますから、このことについては強くひとつ文部省からも、ああいう報道はちょっと誤解を生むぞというふうなことでの一つのクレームを申し、なおかつ訂正をひとつしてもらいたいと思うのでありますけれども、いかがですか。
  54. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先ほどはっきり申し上げたとおりでございますが、これまで広島県においては、卒業式、入学式における国旗掲揚、国歌斉唱が学習指導要領に沿って十分実施されてはいなかったかということがございまして、文部省といたしましては適正な取り扱いについて既に指導を行ってきているところでございます。  学習指導要領に基づく国歌・国旗の適正な取り扱いがなされるよう文部省としては引き続き指導していく所存でございますし、またマスコミ等々に対してはこういうことをはっきりと言おうと思っております。
  55. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 最後にお願いをしておきます。このような痛々しい事件が二度と起こらないようにひとつ最大の努力をいただきたい。心から御期待を申し上げたいと思います。  本日のテーマに入らせていただこうと思います。  先般、経済戦略会議答申を出されました。このことにつきましては先ほど清水議員からも質問がありました。  そこで、私は角度をたがえてちょっとお聞きしたいのでありますけれども、以前、八条審議会でも、地方分権推進委員会の勧告が最大限尊重ということで閣議決定された経緯もあります。そして、分権推進計画に反映をされました。行政改革委員会意見が規制緩和推進計画にも盛り込まれました。  しかし、今回の経済戦略会議閣議報告ということで三月二日にされているようでありますけれども、我々、どういうふうに違うのかなと、この重みが少し軽いのかななんというような心配を一部持つわけでありますけれども、私は、この答申が、この十年間、暗雲が垂れ込もった日本の将来に対して何か一つ太陽の光が見えてきた、こんな感じがしてこの報告書を読ませていただきました。  ですから、私は、この答申に基づいて積極的に転換をされていただきたいな、こう思う一人でありますけれども、この報告に際しまして、評価、ひとつ経済企画庁長官、お願いを申し上げます。
  56. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 経済戦略会議は、小渕内閣が発足とほとんど同時に、現下の厳しい経済情勢に対応して緊急的な課題を提案していただくということから始まりました。  そして、第六回と第八回に中間報告をいただき、その一部は、かなりの部分が既に平成十一年度の予算並びに緊急経済対策に反映しております。  今度いただきました最終報告は、大きく分けまして三つの部分から成り立っておりまして、第一は現在の日本経済状況の分析とこれからの回復にかかわる部分でございます。ここでは、まず九九年―二〇〇〇年を底固めの年とし、二〇〇一年―二〇〇二年を回復軌道に乗せる年として、そして二〇〇三年から二〇〇八年にかけて日本の持続的な経済成長を遂げるような体質をつくることを提案している、そういう段階的なものがあります。  そして、その後の部分でございますが、これが今後の日本のあり方について書いた部分でございまして、まず第一が健全で創造的な競争社会提案するということが書かれております。その中には、小さな政府へのイニシアチブでございますとか、あるいは努力した人が報われる税制、それとあわせて安全ネットの問題、そういった日本社会のあり方が描かれております。  それから、もう一つ部分でございますが、これは不良債権の問題であるとか現在日本が抱えている硬直した問題の解決、それの仕組み、制度、あるいは社会的な通念、概念というようなものについての改革についてかなり具体的な内容が書かれております。  こういったものを受けまして、可能な限り来年度の予算実現できるものはしていきたいと考えておりますし、法制等では国会先生方の御支援もいただいて行いたいと思っています。また、大きな問題でそれぞれの審議会が既にできているものもございます。そういうものにつきましては、先ほど年金の問題につきましてかなり議論がございましたけれども、税制の問題につきましても、土地制度の問題につきましてもそういうところがございます。  私ども、一月十八日に小渕総理大臣から経済審議会に対して、十年程度の先を見た日本のあるべき姿とそれに至る政策という御諮問を経済審議会にいただいておりますので、その中でも、この戦略会議答申を踏まえて大いに議論をしてその実現を目指していきたいと考えております。これは、先ほど申しましたように、まず提言をいただいて議論の芽を出す、それに対してあらゆる方面の反響を聞きながら、次の日本のあるべき姿を見出していくという、そういう議論のきっかけとして非常に貴重なものとして重視していきたいと考えております。
  57. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 改革というのは、もとより現状否認からスタートすることだと思うのであります。ですから、新しいものや新しいものに対する希求心、これは当然旺盛であってしかるべきだと思うのでありますけれども、反面私が先ほど申し上げたように、あしたが見えないということでの不安感ともども、今の日本の混乱の原因の一つは、やはり日本国民は総じて自信をなくしているということもあろうと思うのであります。  そして、この報告の中で、諸外国と比べて高い教育水準に裏づけられた優秀かつ勤勉な労働力の存在等はいささかも崩れていないと指摘があって、要は、日本的システムのよい部分は残しつつも、機能低下に見舞われている旧来型システムはスピーディーに再構築することが求められているというふうに述べられていると思うのであります。  私も、地方の中小企業における終身雇用、それに基づく愛社精神、ロイヤリティー、そして労使一体感の構築、この辺が私は日本のすばらしい労働力を醸成している一つの大きな原因になっていると確信をしております。  総理が、新しい保守は、古くてもよいものは残し、改めるべきは改革する、これが新保守ではないかというようなことも述べられております。大賛成であります。特に、すぐれた伝統や技術を支える地場産業とか中小企業、このことへの配慮を私は十分していかなければいけない、こう考えているわけであります。これは何も経済産業に限ったことではなくて、社会、文化それぞれの面でも日本を支えてきたよいものは生かしていこう、こういう気持ちを私は醸成していくことが反面土台となって新しいものが生まれてくるんだというふうに考えています。  二十世紀も来年で幕を閉じます。日本人としての、日本の伝統を見直して日本の文化の再点検、私は、いいものを再評価するということがここのところずっとなくて、新しいものに対する希求ばかりが先行しているような感じがするんです。ですから、この世紀、二十世紀も終わるということで、日本がなぜここまで繁栄したんだ、いいものは何なんだ、そのことはひとつ二十一世紀も継続しようじゃないか、片や一つの大きなパワーが必要になってきたというふうに私はこの報告書をもって改めて感じたのであります。  ですから、何もかもがグローバル化、アメリカンスタンダード、これがすべてだということはちょっとブレーキをかけようじゃないか、こういう気持ちがあるのでありますけれども、この報告書をもってしてその辺での総理のお考えをお聞きしたいと存じます。
  58. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 矢野委員もよくこの報告を御通読いただいたようでございまして大変うれしく思いますが、改めて、二十一世紀我が国を希望と活力のあるものにしていく、そのためにまず経済を自律的な回復軌道に乗せることが重要だと考えております。同時に、あらゆる分野において将来を見据えたビジョンを明確にしていくとともに、これまでの制度や慣行について思い切って見直し、大胆な構造改革を進めていくことが不可欠だと考えております。  その際、これまで有効だったシステムや制度、慣行が足かせとなっている面があることは事実でありますが、だからといいまして単にこれらを壊せば足りるというわけでなく、日本の持つすばらしいものを残しながら新たなシステムをつくり上げていくことが肝要であるということは矢野委員御指摘のとおりであると思っております。  こうした考え方で、私は、何度か強調しておりますように、保守の本質は、英国の政治思想家エドモンド・バークが主張しておりますように、よき伝統や秩序を保持しつつ常に創造や進歩を求め現状を改革していくことに通ずると考えております。  なお、今般の経済戦略会議答申におきましても、健全な競争社会の構築とセーフティーネットの整備に関して、アングロアメリカンモデルでもヨーロピアンモデルでもない、日本独自の第三の道とも言うべき新しい日本社会の構築を目指すべき旨を提言しているところでありまして、委員が今御指摘されましたグローバル化、アメリカンスタンダード化ということでございますが、これはある意味ではそういった形にならざるを得ない世界の趨勢もあるんだろうと思います。  例えば、インターネットを取り上げてみましても、これは英語でやらざるを得ない。日本語でインターネットで会話するわけにいかない。したがって、そういう意味での英語の活用、さらにまたインターネットがこれだけ全世界に大きな影響力を持っておるという意味でのグローバル化というものは、これは認めるものは認めていかなけりゃならない。しかし、一方で、何もすべて諸外国のやっていることが正しいということではありませんで、その点は、改めて日本の過去を振り返りながら、温故知新、よきものは残しながら行くという姿勢が望ましい。  そういう意味で、戦略会議も、第三の道を探れと、こう言っておりまして、そういったことも含めまして非常に掬すべき提言であると認識をいたしておりまして、委員が御主張のように、やはり日本のよき点を生かしながら、そして同時に世界で通用するようなそれぞれのスタンダードというものは取り入れられるものは大いに取り入れて、少なくとも日本がそういった意味で世界に最もすばらしいシステムを構築していくことができれば、もって日本は大変すばらしい将来が約せられるんじゃないか、このように考えております。
  59. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 そこで、提案なのでありますけれども、二十一世紀を迎えるに当たりまして、諸外国に我が国の大使館がずっとあるわけであります。それで、諸外国の現状と比べて、諸外国から見た日本は一体どうなんだというふうなことで、日本のいいところ、悪いところ、その辺を諸外国に駐在するそれぞれの外交官の皆さんからしっかりとした報告書を取りまとめて、日本のよさの再点検をされたらいかがかな、こう思うのでありますけれども、どうですか。
  60. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 大変よい提言かと思いますが、人間というものは自分自身を見詰めるということにおいて、それは常に自省、反省をしなきゃなりませんが、ほかの方々から見られて御指摘をいただきながらよりよい人間に育つということは必要で、同じことは国においてもしかりだと思います。  そういった意味で、諸外国の方々、特に我が国に駐在される外交官の目から見ての日本のよき点あるいはあしき点、こういった点について率直な考えをいただくということは非常に大事だと思います。これは外務大臣にお答えがあればと思いますが、たしか既に外務省が中心になりましてそうしたことをやっていただいて、幾つかのレポートもいただいておるように記憶いたしておりますので、大いに参考にさせていただきたいと思っております。
  61. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 この報告書でプランまではできたわけですけれども、総理が陣頭指揮に立たれて、ドゥーをしていく、そしてシーということで、この機構も今後継続されるようでありますけれども、先ほども一部清水議員からも質疑があったようでありますけれども、継続するということに対しては、この機構が今後の成果を十分ウオッチしていくんだというふうな意味合いをもっての継続と理解してよろしいですか。
  62. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まさにあと十年間で日本の国を本当に健全な財政状況の中で衣がえをしようということですから、その間の政策というものはかなりドラスチックな政策も私は含んでいるような気がいたしております。  今も清水委員の御質問に対して厚生大臣から年金の問題点について御答弁がございました。全部税によって賄うべきかということについて、二分の一でも大変だという現状はそのとおりだと思うんです。したがって、拠出制年金の問題等につきましてもこのレポートでは触れられておりますけれども、現実に今政治を行っている立場からいいますと、きょう、あした、すぐこれができるかどうかという難しい問題を多々含んでおるんです。  ただ、私は、せっかくかなり中長期を見据えた日本の将来に対しての答申をいただいております。これが完全になし得れば日本はよくなるということでこの答申を出していただいておるんだろうと思いますから、先ほど申し上げましたように、これは各省庁もこのまま、はいわかりましたという話にはならぬと思うのでありますが、できるものからやるという点もありますし、将来方向にわたって検討していただく問題もございます。何よりもやはり国民世論の背景がなくしては、これだけのいわば革命に近いような諸問題を含んでおるこの答申を、完全にこれを実行するということにおいてはなかなか困難が伴います。  要は、内閣総理大臣みずから諮問し答申を受けたんだから、リーダーシップを発揮してこれをなし遂げろというのがこの戦略会議の議長、副議長を初め皆さんの御意見でありますから、その意に沿いますように努力をいたしますが、これにはぜひひとつ先生方の御理解、御協力もいただき、また国民的な論議をひとつ呼び起こす。そういう意味で、経企庁長官が申し上げましたように、大きな石を投げたということで、その波紋を見ながら、現実にこれをいかに法律のものとして実行し得るかどうかということにつきまして、全力を挙げて対応させていただきたい、こう思っております。
  63. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 もう一つ戦略会議答申について質問をさせていただきたいと思います。  私が一つだけ問題を感じた点でありますけれども、ずっと内容を読んできまして、国会移転に対する意見が全然載っていないんです。ですから、諮問に問題があったのかなという感じもするのでありますけれども、反面、平成二年から国会決議をもってして国会移転が必要だということからスタートしまして、今日、総理のもとに審議会でもって、ことしの秋に向けて候補地選びをやっているわけであります。  このことについて改めて申し上げますけれども、危機管理という意味合いからして、阪神・淡路大震災のとき、一層必要なんだなというふうな位置づけが明確になりました。反面、財政改革という一つの大きな事柄からして、これだけの多大な費用をかけるのは問題があるんじゃないかというふうな問題指摘もあったわけであります。  今改めて、経済再生内閣を主張する小渕内閣のもとでこの国家的なプロジェクトを遂行するんだ、そしてこのことは、ついては二十一世紀へのかけ橋になるんだ、そして行革の一つの大きなきっかけになるんですよと。いろんな意味合いを含んでいると思うんですね。ですから、私は、少なくともどこかに国会移転の意義というものを、必要なんだという事情が明確になっていると思ったら一切書いてない。ですから残念至極なんでありますけれども、その辺、改めて経企庁長官にお伺いしたいと思います。  国会移転の意義、必要かどうか。なおかつ、この審議会委員として実際やってこられた経済評論家としての御意見もあわせてちょうだいしたいと思います。
  64. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 経済戦略会議でもその議論は出ましたけれども、既に特別の首都機能移転審議会が進行しておりまして、目下三つの候補地を具体的に調査する段階まで行っております。そういうような進行を踏まえて、この問題については言及をしなかったわけでございます。  この問題を受けまして、総理から諮問をいただいております経済審議会の方には首都機能移転に関する部門がございまして、その経済効果を算出することになっております。これは来年度の中ごろまでに出したいと思っておりますので、その段階ではある程度経済的なものは明確にしたいと思っております。  もちろん、首都機能移転につきましては、経済問題だけではなくして、文化の問題、国のあり方、まさにこの国の形に非常に大きなかかわりがありますので、経済だけでは解決できないと思います。今までの調査でございますと、経済的には案外安い、安いと言うと語弊がありますが、国費で持ちます分はそれほど大きゅうございません。総額十兆強というようなことを言っておりますが、国費で持つものはそれほど大きくございません。  ちなみに、私の個人的な意見を伺われましたので、その点でひとつ答えさせていただきますと、日本という国は、歴史を語るときに、すべての時代が首都機能の所在地で呼ばれています。奈良時代、平安時代、鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代、江戸時代、そして今、東京時代でございます。  このことを考えますと、首都機能が移転したときには必ず時代が新しくなった。そして、首都機能が移転しなかったときには時代が新しくならないで続いた。江戸から東京へ変わるときにどういう変化があったかといいますと、この明治維新の大変化は、江戸から首都機能が京都へ移転いたしまして、将軍さんあるいは朝廷、有力大名がことごとく京都に集まった五年間にすべての変化が進んでおります。  そういうことを考えますと、時代の変化というものを国民が知り、制度を変える上では有力な手段だろうと思っております。これが唯一の手段であるか、最善の手段であるかは審議会等で十分検討していただく必要があると思いますが、私の知識、感覚からいうと以上のとおりでございます。
  65. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 決して那須時代の到来を期して質問しているわけではありません。  いずれにせよ、今の話からしまして、世紀が変わるんだ、その世紀が変わる一つのインパクトとして遷都も必要なんだというふうな御意見だったと思うのでありますね。ですから、二十一世紀に向けて遷都をして社会構造を変えよう、大きく飛躍しようという二十一世紀を迎えての国会移転に関する取り組み、積極的に総理にやっていただきたい、こう願うわけでありますけれども、総理の心構えをひとつ聞かせていただきたいと思います。
  66. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 首都機能移転は、東京の一極集中を是正し、国土の災害対応力を強化し、東京に潤いのある空間を回復することに寄与するもので、国政全般の改革と深くかかわりのあるものと認識をいたしております。  この問題につきましては、先ほど御答弁ありましたが、現在、国会等移転審議会におきまして調査、審議が精力的に進められているところでありまして、本年秋ごろを一応の目安として移転先候補地の選定作業を行うこととされております。首都機能移転は内閣として取り組むべき重要な課題でありまして、その具体化に向けて積極的な検討をいたしてまいる所存でございます。
  67. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 通産大臣にお伺いをいたします。  貸し渋り対策として信用保証協会に二十兆の枠を用意されて、先般、六十七万件ですか、融資認可をしたと。非常にこれは有効、的確に活用されていると思うのであります。私が調べたところによりますと、各県単位でもって制度資金、特に多いのは夏と冬の季節資金になろうと思うのでありますけれども、東京都や大阪府なんというのは、その制度資金を含めすべてが保証協会づきでもって活用されている。ついては、保証協会の体力も、利用するそれぞれが体力強化のために役に立っておこうと。いざ保証補完機能を発揮するときに、保証人は、この担保はということよりも、その体力を保証協会が持っているならば速やかに対応ができるというふうな一つの体制ができているところもあるんです。  ところが、それが全国ばらばらなんです。この保証協会づき嫌だ、〇・五%の金利を取られるのは嫌だということでもって、この季節資金も全然保証協会が取っていないところがあるんです。一般会計から繰り入れた今日、その辺のばらつきをある程度是正して、やっぱり利用者が一部負担しながら、日ごろ保証協会の体力強化のためにお互いが努めるんだというふうな指導をされたら、今回の一般会計からの繰り入れは今後も、この間あと七兆円ぐらいしか残っていない、必要とあらば見直しますよというふうな答弁があったわけでありますけれども、それと並行して、各県の保証協会のあり方、その利用のあり方を均一化させるべく私は指導した方がいいんではないかな、こう思うのでありますけれども、いかがですか。
  68. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) まず、二十兆のうちもう三分の二以上が使われてまいりました。中小企業の金繰りにお役に立ったんではないかと私どもは思っております。これはまだ七兆近くの保証枠が残っておりますからそれを使ってまいりますが、それを使い切ったときどうするかということは、総理大蔵大臣とも御相談しながら今後決めていくべきことであろうし、また国会皆様方とも御相談しなければならないことだと思っております。  それから、保証協会はほぼ各県に独立してございまして、これは県政の中での商工行政と非常に深くかかわっております。ですから、一律でない場合も存在するということは、地方分権とか地方自治とか言っております以上、やはり各県の事情というものを考慮して決められるということがあっても、それはやはり県の自主性あるいは県民の自主性ということがあるんだろうと思います。ただ、先生御指摘のように、保証協会の枠をつくった以上は、これを使いやすい、利用しやすいという制度を目指してさらにいろいろなことを改善していくということは姿勢として、心がけとして私は大変大事なことだろう、そのように思っております。
  69. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 加えまして、通産大臣にお伺いをいたします。  非常にグローバル化が叫ばれている昨今でありますけれども、当然中小企業もその波にさらされているところであります。しかしながら、中央の中小企業、いろんな規制の中で営みをはぐくんでいるという、例えば整備業界もそうでありますし、それに準じたいろんな業界があろうと思うんです。ですから、ただひたすらに規制緩和ということだけでさあいくぞというふうな話は、私は前から申し上げているように納得がいかないわけであります。  その一例でちょっと質問させていただきたいと思うのでありますけれども、今石油業界がもう大あらしの中に巻き込まれているわけであります。業界の八割以上、末端小売の八割以上が赤字だというふうな状況、これはさかのぼれば特定石油製品輸入暫定法が平成八年四月に廃止されたわけであります。それでもって全く自由化になったわけであります。それでもって自由化の意味は何なんだというときに、内外価格差の是正ということで約十円程度の内外価格差を是正しよう、これが目的だったように私記憶しております。それでもって自由化になった、結果的に大乱売が生じてしまった、そのことが、ひいては石油精製メーカーにも非常に悪影響を及ぼしてほとんどのメーカーが赤字になってしまったというふうな現状があろうと思うんです。  今回の国会で、農業基本法でもって自給率五〇%という一つの目標を掲げました。この食の安全保障、それと同時に、安定した一つ国民生活を保障するという意味合いからして、エネルギーをいかに安定して確保するか、これも国の大きな大事な一つ仕事だと思うんです。  そんな中で、片や全くフリーハンズでやってしまったがために、我が国独自の資本でもってどれだけの原油を安定的に供給できるんだ、体制が非常に危機に及んでいるというふうな感じがするわけであります。ですから、ただ単に規制緩和ということが、本当に大きな国家運営の基軸まで影響するような状況をつくり上げてしまったという私は一つの大きな例だと思うんです。  ですから、その辺でもって、業界をどうするんだということもこれはひとつ聞きたいところでありますけれども、それ以上に、そういう一つ一つの中小企業に対してきめ細かな、ただいたずらに今の風潮でもって規制緩和というふうな流れに乗らざるを得ないということよりも、いろんな処方せんがあろうと思うんです。そんな処方せんに一つ一つ対応しながら、しっかりとした地場の中小企業の育成というものを私は心がけていかなければいけないような感じがいたします。  その件で、ひとつ通産大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  70. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) たくさんの質問がございましたが、簡潔に申し上げたいと思います。  まず、規制緩和と中小企業の問題でございますが、通産省におきましては、経営環境の変化に対応し、中小企業のみずからの構造改革支援のため、新分野進出、技術開発等の措置を講ずるとともに、貸し渋り問題に対応するための措置等を講じているところでございます。今後とも、中小企業対策は強力に推進してまいりたいと思います。  それから、石油の安定供給と規制緩和についてのお尋ねでございますが、我が国エネルギーの供給の大宗を占めます石油については、従来よりその安定的かつ効率的な供給の確保に努めてきたところでございますが、今後とも、石油備蓄の実施や石油開発支援によって緊急時対応に万全を期しつつ、国内石油産業の構造改善を積極的に支援することにより、安定的かつ効率的な供給確保に努めてまいりたいと思っております。  それから、特石法の廃止についてのお尋ねがございましたが、特石法廃止等の規制緩和を契機とする競争の激化により、石油製品販売業は厳しい経営環境に直面しているということは私どもよく知っておりますし、大変憂えております。  規制緩和によります自由な競争の確保は重要でございますけれども、単に規制緩和をもって足れりとするのではなく、石油製品販売業界の構造改善の取り組みに対する支援、公正な競争環境の整備等に鋭意努めてまいる、そのように考えております。
  71. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 終わります。
  72. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で清水嘉与子君の質疑は終了いたしました。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時五分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  73. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度総予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。平田健二君。
  74. 平田健二

    ○平田健二君 民主党・新緑風会の平田健二でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず初めに、総理、自民党の大幹部であります森幹事長が、参議院が対立しているなら参議院は要らないと名古屋の講演で発言したことを御存じですか。
  75. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 詳しく存じません。
  76. 平田健二

    ○平田健二君 詳しく知らない、それとも全然知らないということですか。
  77. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 大変申しわけありませんが、党の幹事長がそのような発言をされたということは、その内容にわたりまして承知をいたしておりません。
  78. 平田健二

    ○平田健二君 これはもう既に新聞各社報道されておりますが、本当に御存じないですか。
  79. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 大変申しわけありませんが、詳しい内容について私承知しておりません。
  80. 平田健二

    ○平田健二君 先日来、我が党の角田議員からもお話がありました。小沢党首と小渕総理の自自連立の内容で参議院議員を五十人削減するという部分も触れられましたけれども、まさに森幹事長の発言は参議院無視も甚だしいと言わざるを得ないんですが、いかがですか。
  81. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 委員が先ほど冒頭に申し上げられた趣旨のことを話しておるとすれば、適切でなかったと思っております。
  82. 平田健二

    ○平田健二君 こういうふうにおっしゃっているんです。憲法で定められており、憲法上の問題だ、憲法調査会で議論できる、二院制でいいのかという話も出ている、行革や経費面を考えると一院制の方がはるかに効率がいい。一院制の方がはるかに効率がいい。だから参議院は要らない、まさにこうとれる発言です。  総理、この問題は、参議院は少なくとも参議院制度改革ということで、議長のもとに長い時間かけて今議論をしております。定数削減の問題、参議院運営のあり方、そういったものを真摯に議論しておる中で、自民党の大幹部の森幹事長がそういう発言をするということは、まさに参議院軽視じゃないですか。このことについていかが総理はお考えですか。参議院軽視という問題について総理はどう考えていますか。
  83. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ですから、今の憲法に書かれておりますように、両院をもって国会が成り立っておることを考えれば、両院はそれぞれの性格において責務を果たしておると認識をいたしております。  ただ、今の御紹介のすべてを承知しておりませんが、お聞きをしますと、そういう考え方をしているところがあるという意味での紹介であるようにも聞き取れまして、でありますゆえに、森幹事長がその紹介をしたということなのか、あるいはそのことをもってそういう方針でいくべきだという政治家としての主張をされたのか、その辺が正直申し上げて定かでないものですから、大変申しわけありませんが、逐一私は承知をしておらないと。こういうことが申し上げた御趣旨でございます。
  84. 平田健二

    ○平田健二君 では総理総理が今おっしゃいました。逐一調べて、もしそういう発言があったとしたならばどういうふうに対処いたしますか。
  85. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 幹事長という役職は与党自民党の枢要な地位でございますので、その御発言は与える影響多々あることは当然のことだろうと思います。よく真意を私、確かめさせていただきたいと思います。
  86. 平田健二

    ○平田健二君 ぜひ真意をお確かめいただいて、しかるべき措置をお願いしたいと思います。  それでは、本題に入らせていただきます。  まず最初に、雇用問題についてお尋ねをいたします。  総理、今我が国は未曾有の経済不況といいますか、そのことによって中小企業を中心とした多くの企業が倒産をし、失業者がふえております。そのことは御承知のはずであります。そしてまた、失業者の中には、一家の大黒柱、御主人が失業されてもう既に一年を超えておる、生活どうしようかと困っている国民がたくさんおります。そしてさらに、希望に燃えて学業を終えて社会へ飛び出そうとする若者に職がない、新しく卒業していく若人に職がない、こういう日本の現状を総理はどう思いますか。
  87. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 不況というのは経済活動が停滞をしておるということであります。さすれば、民間の企業はみずからその経営を成り立たせるためにかなり厳しいリストラ、これを行うことを余儀なくされております。したがって、今、平田委員御指摘のように、失業者も増加しておるという現状は大変憂慮すべきことでございまして、それぞれ失業をされておられる方々に対する対応につきましても、労働省を中心にいたしまして、また産業の面からいえば通産省でございましょうけれども、政府一体になりましてその対策に全力を挙げて対処いたしておるところでございます。  政府としては、ぜひこの経済状況を、不況を乗り越えて、それぞれの企業も安んじて雇用の場を設けることのできるように今全力を挙げて努力させていただいておるということでございます。
  88. 平田健二

    ○平田健二君 労働大臣は、今の点についていかがお考えですか。
  89. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 総理からお話がありましたように、まず政府を挙げて景気をよくするということが至上命題だと思っております。  加えて、労働省が中心となって関係省庁が力を合わせて、景気が現状で推移するにしても、やるべき問題があるのではないか。それは、雇用のミスマッチを初めとする諸問題、今ある求人と求職をより効果的に結びつけるということを通じて失業率の低下を図る、あるいは各省が新しい雇用の場をつくり出すことに知恵を絞ることによって少しでも受け皿となる、そういう合わせわざの施策の出動が必要だというふうに思っております。
  90. 平田健二

    ○平田健二君 経済企画庁長官にお尋ねいたします。  政府は、緊急経済対策の中で百万人の雇用創出・安定プランを打ち出しました。百万人の雇用を創出するのかと私は思ったんですが、いや、そうじゃないんだ、雇用創出は三十七万だ、残りは雇用調整助成金等の雇用維持対策で六十四万人だ、合わせて百万人だと、こういうことです。  それはそれとして、では、三十七万人の雇用創出計画、政府の言う三十七万人の雇用創出、具体的にどういう分野からどれだけ創出するのか、教えていただきたいと思います。
  91. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) この雇用創出を私どもの方ではマクロモデルで計算しておりまして、緊急経済対策における実質的なGDPの増加が二・三%見込めると。その二・三%GDPが上がりましたときに、大体一%GDPが上がると雇用者数の増加が〇・三ないし〇・七というような弾性値がございます。これを実施いたしますと、計算すると三十七万人、こういうような数字が出てくるという計算をしておるわけでございますが、委員おっしゃるように、これはまことに中身のない計算でございます。  もう少し細かくどういう分野かということでございますが、これはどういう分野でこれから景気が回復してくるか考えにくいところでございまして、一つは、住宅等で低金利あるいは減税効果がございます。これは建設省の試算では六万人程度の効果があるだろうというようなことが言われております。ここへ参りまして、公共事業あるいは消費の一部に明るい芽が出ておりまして、そういう点では求人も出てきております。  要するに、どんな分野がこれから成長するかが今のところよくわかりませんので、このようなマクロの二・三%成長するから三十七万人だというような数字しか出せないというのが、まことに残念でございますが正直なところでございます。
  92. 平田健二

    ○平田健二君 それは経企庁長官、まさに説得力のない話でして、今の話を聞いたら国民の皆さんは怒りますよ。政府は何をやっているんだと、雇用対策を。いいですか。公共投資が八兆一千億円、それから減税が四兆七千億円、これを実施するから、今、企画庁長官がおっしゃいましたように、まさに机上の空論でGDPが二・三%上がると。そうですね。GDPが二・三%ふえれば、先ほど言いました雇用は三十七万人ふえるというモデル計算ですよね、今のは。世間ではこういうのを「捕らぬ狸の皮算用」と言うんですよ。御存じですよね、企画庁長官。  ですから、もう少しどの分野でどれだけということをきっちり国民に明らかにしていただかないと、これは安心できません。労働大臣、いかがですか。
  93. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) マクロモデル計算と「捕らぬ狸の皮算用」とは違うと思います。これは、どの分野であるか特定はしておりませんが、公共事業はやります、減税はこれだけやります、その結果二・三%上昇しますと。これは枠組みとしてははっきりしておるのでございまして、その中身がどの産業かと言われるとわからないということを申し上げているんで、これを「捕らぬ狸の皮算用」と言いますと、およそモデル計算をしている経済学というものが成り立たなくなりますから、これはちょっと違うということだけ申し上げておきたいと思います。
  94. 平田健二

    ○平田健二君 二・三%ふえるということなんですか、実際に。それが「捕らぬ狸の皮算用」なんですよ。
  95. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 近代経済学でよく言います、他の条件にして同じならば、二・三%ふえます。
  96. 平田健二

    ○平田健二君 労働大臣、いかがですか。
  97. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) これは私にも責任のかなりの部分がございます。これは政労使雇用対策会議の席上で、労使から百万人という目標数値を掲げてみんなで頑張ろうじゃないか、我々も応分の責任は果たすつもりだという大変前向きなお話がありました。  そこで、私が何としても百万人を目標値に掲げて、とにかく頑張ろうじゃないかという提案をさせていただきましたときに、正直言いまして、経企庁からは中身について先生が御指摘のような話がありました。政労使雇用対策会議では、とにかく具体的に作業することはタイムラグを置いてもいいから、目標で掲げよという強い要請でありました。  ただ、政府としては、一応掲げました、中身は後で検討しますなんということは言えません。そこで、あの経済対策を策定した時点で一体どうはじけるんだということを経企庁と協議いたしました。  経企庁が、いわゆるマクロモデルではじける分はこれだけですと。それから、私どもの方で、通産省とも連携をしておりますけれども、新しい事業創造分野での施策を組みました。その雇用創出効果が六万人弱ぐらいあるわけであります。それ以外に、雇用対策の主要な項目として、ほっておけば失われてしまうものをほっておかない、あるいは施策を厚くする、新政策を加えるということによって雇用を維持していく、支えていく効果がある。これは、雇調金の拡充であるとかあるいは労働移動に関して、つまり失業ということをさせないで、受け取る企業に対して受け取る仕組みをつくる等々を通じて、安定効果というのは雇用に安心感を与える施策であることは間違いないということで三十七万対六十四万という数字をはじかせていただきました。  ただ、これで終わりじゃないんです。政労使の対策会議が今非常に積極的にいろいろ提言をしていただいております。その事務局会議でもいろんな提案がありまして、それを今具体的に精査しつつあるところでありますから、プラスアルファ効果というのはこれからいろいろと期待ができると思っております。御質問が後ほどおありのときに、またその中身についてお話させていただきたいと思います。
  98. 平田健二

    ○平田健二君 今いみじくも言われました、労働大臣。一月二十一日に政労使の雇用対策会議、事務局レベルの会議が開かれました。そのときにそういう指示をされました。もう既に三月です。いいですか。各省庁に具体的な数字を示せと言って一月二十一日にやって、まだ出ていない、精査中だと。  先日、当院の当委員会の総括質疑のときに大臣アメリカへ行かれました。労働サミット、重要な会議、これはわかっています。そのときに労働省は、我々野党も与党も含めて、重要な予算審議の総括質疑のときに労働大臣アメリカへやってくれと。大変な労力を使いましたよ。そんな労力を使えばこんな精査なんてすぐできるじゃないですか。あのときの労働省のパワーというのは大したものですよ。  そういう勢いで、一月二十一日に行われた事務局レベルの会議で出されておるんですから、しっかり精査して早く出せと。労働大臣、もっと真剣にしっかりやってくださいよ。
  99. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 総括質疑のさなかにもかかわらず史上初めて……(「史上初めてだって」と呼ぶ者あり)史上初めてなはずですけれども、そうですよね、参議院では。初めて国際会議に出していただきました。これは労働省のパワーもさることながら、与野党の先生方の雇用情勢に対する憂慮と、そして今回の国際会議、その重要性の御認識、大変御理解をいただいたからだというふうに思っております。  そこで、政労使の事務局会議でも連合側から、あるいは労使側からでしたか、提案された、この分野で何万人この分野で何万人と。あれ自体も算定根拠というのは特に精緻なものはないようでありますけれども、期待値というのがかなりあるようでありますが、事務局会議各省庁にこれを具体的に精査してみてくれという指示は御承知のとおり出しました。  そこで、例えば福祉の分野では、午前中に厚生大臣がお答えになったように、十年、十一年にわたって毎年八万人くらいはプラス効果があるのではないだろうか。そうすると、二年間で十六万人、当初の予定が四十五万人ですか、ですからそれに十六万人を二カ年でオンするのではないかというような表明も午前中にありましたし、作業としては順次進んできているということを御報告申し上げます。
  100. 平田健二

    ○平田健二君 ぜひ急いで、スピードアップして作業を進めてください。  文部大臣にお尋ねいたします。  文部省関連で一万三千人の雇用が拡大するというふうに表明されていますけれども、内容は、心の教室相談員、特別非常勤講師などを配置する、予算として八十四億円、これを一万三千人で割りますと一人一年間六十五万円、毎月にいたしますと大体五万円ちょっとですよ、一人頭。それで一万三千人の雇用がふえると。これはちょっと裏づけがないと言わざるを得ないんですが、いかがでしょうか。
  101. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 今御指摘のとおりでございますが、今学校は非常に心の教育の人を欲しがっています。それから、カウンセラーなど非常に欲しがっておりますので、お金はまだまだ十分でないことはよくわかっておりますけれども、具体的に子供たちが心のゆとりを持てるような環境をつくるために、心の教室相談員を配置したり、幅広い経験を持ち、すぐれた知識、技術を持つ社会人を非常勤講師として活用するという施策をともかく講じていきたいと考える次第であります。
  102. 平田健二

    ○平田健二君 労働大臣、これで雇用の創出増大になるんでしょうか。
  103. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 創出人数で計上予算を割るとそういうことになって、フルタイムで果たしてこんな金額で働けるんですかと、そういう疑問は私も持ちました。  ただ、いろいろな働き方があって、文部省でもフルタイムあるいはそれ以外のもの、いろいろな合わせわざといいますか工夫をしていただいているようでありますから、いろいろな施策に期待をしたいというふうに思っております。
  104. 平田健二

    ○平田健二君 今、労働大臣がお答えになりましたけれども、国民の雇用不安を解消するために雇用創出、雇用拡大を図ろうと。ところが、具体的な中身を見ますと、この文部省の例がいい例ですよ、一人五万円の、頭割りするかどうかは別として、こういう施策なんですよ。これでは国民は安心できませんよ。いかがですか。
  105. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) すべてそうだとは私は思っておりません。福祉の要員についてもそうでありませんでしょうし、あるいは住宅政策が推進されていく、まず百十万戸ベースから百三十万戸、建設大臣は百二十万戸後半は確保したいというお話をされております。そうしますと、その周辺への経済波及効果から考えて相当数が見込まれる。  ただ、私も、いろいろな施策を雇用という切り口からやってくれということを閣僚懇で大分申し上げているんですが、いろいろ各省と連絡をとってみまして、これをこうすると雇用が何人という方程式がないんだと思うんです。今までも、これをこうしたら幾ら雇用が創出されますという数値計算を各省がしたことがないのではないかと思うんです。そこでいろいろと試行錯誤、戸惑いながら、このくらいは見込まれるのではないか、しかしそれが余りアバウトになってしまってもということでみんな苦労しているんだというふうに思っております。
  106. 平田健二

    ○平田健二君 労働組合の連合と日経連からの百万人雇用創出策の具体化と確実な実行というのは、労働大臣、お持ちですね。これにはこういう施策をやればこのくらいの雇用創出ができるというのがかなり具体的に書いてございます。今、労働大臣が言ったのとちょっと違うんです。ですから、やはり労使のこういった政策を国も素直に取り入れる。いかがですか。
  107. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 日経連と連合からの百万人の具体的な内容の提出はもちろんいただいております。これを事務局会議で日経連、連合はこの分野でこういうふうに言っているけれども、これは算定をしてみて見込まれるのか、実数はどのぐらい出るのかというのを各省に振ってあります。それらの数も全部ではありませんが出てきておりまして、そこで先ほどの福祉要員の八万人というのも、当初七万から十万という数字で出てきました。  それから、住宅に関しまして、これは本当にこんなに大丈夫なのかなとちょっとまだ思っているんですが、つまり百十万から百三十万、二十万戸ふえるとすると、周辺効果も含めて四十万人近い雇用創出効果があるのではないかと。これは、労使が出しております数字はバリアフリー化ということになっていますが、十一万人よりも多いということになっております。  ただ、予算ははじけるけれども、雇用という数字をどうはじくのかちょっと算定できないという部分もあります。都市防災とか近郊林、公園、河川敷の保全整備、これで連合、日経連は三十七万人というふうに出しておりますけれども、ここの部分予算が幾らふえるかということについては、もちろん簡単に算定はできるけれども、それで具体的な雇用創出効果が幾らあるということの算定がなかなかできないという報告が返ってきておりまして、これに対する精査はやらせております。
  108. 平田健二

    ○平田健二君 こういう提言がされているわけですから、早急に具体案をまとめて実施する、一刻も早く雇用不安を解消する、ぜひ努力をお願いしたいと思います。  次に、雇用保険の問題ですが、先ほど申し上げましたように大変異常な状態で、戦後最悪の失業率ということはもう労働大臣も御承知のことだというふうに思います。  そこで、雇用保険の給付は三百日が最大なんです。例外措置として、全国延長給付制度、こういったものがございますけれども、発動までのハードルが非常に高くて、非現実的だ。例えば沖縄の失業率は八・二%です。八・二%で全国延長給付制度を発動する。基本受給率が何%になっていますか。
  109. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 全国一律の共通数値といいますか、それはわかっておるんですが、御承知のとおり、受給者数と被保険者数を足したものを分母として、分子に受給者数を置いたものが四%を超える、いわゆる基本受給率が連続してこれを超えるということになっております。
  110. 平田健二

    ○平田健二君 沖縄県。
  111. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) それはちょっとまだ計算しておりません。
  112. 平田健二

    ○平田健二君 完全失業率が八・二%、沖縄県。それで、基本受給率は何%になるかわかっていませんか。
  113. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 現在の失業率で、これは雇用保険の受給者数ではじきますので必ずしも失業率イコールではございませんけれども、現在の失業率四・三%で雇用保険の受給者数を勘案しますと、現在約三%ぐらいに基本受給率がなっているかと思います。したがって、全国でもしこの失業率が倍になるとすれば、五%ないし六%ぐらいの基本受給率になるのではないかと推計をされます。
  114. 平田健二

    ○平田健二君 違う違う。沖縄県の完全失業率は今八・二%ですね、直近のかどうかわかりませんが、沖縄県で完全失業率が八・二%。沖縄県の基本受給率は何%ですか。
  115. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今ちょっと沖縄県の失業者数の実数を持っておりませんので正確には言えないと思いますが、八%を超えておりますと、基本受給率の四は超えていると思います。
  116. 平田健二

    ○平田健二君 私どもの試算では、完全失業率が八・二%になっても、沖縄県の場合は基本受給率は三・七%にしかならぬと出ておるんです。違いますか。
  117. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 大変恐縮ですが、現在、沖縄県の失業者の実数、それと被保険者数が手元にございませんのではっきりいたしませんが、恐らくそのくらいの数字になるだろうと思います。
  118. 平田健二

    ○平田健二君 完全失業率が八・二%になっても、基本受給率は三・数%、四%行かないんです。全国延長給付は、全国で基本受給率が四%にならないと発動されません、そうですね。今、完全失業率は昨日の発表ですと四・四%です。全国の受給率は何%になっていますか。
  119. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 現在で三・〇二%でございます。
  120. 平田健二

    ○平田健二君 お聞きのように、実は完全失業率が八%近くになっても基本受給率が四%を超すというのはとても無理なんです。ですから、非現実的、ハードルが高過ぎると私は思いますし、国民の勤労者はほとんどそう思っています。  しかも、今日、三百万になろうという失業者がふえて、異常な事態だということは政府も認識しておるじゃないですか。こういうときにこそ、臨時的でもいいから、基本受給率を下げるということを考えたらいかがですか。どうですか。
  121. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 例えば、全国平均の失業率が何%になったときに基本受給率が四%を超えるかという計算でいえば、そんな高くはない、八%ということはないと思います。  そこで、これは全国一律延長給付ですから、職種とか年齢とか一切関係なく一遍にやっちゃうわけですね。それ以外にいろんな手当が、先生はもう先刻御承知のとおりしてあるわけでありまして、個別延長給付だとか、あるいは訓練延長給付とか、広域延長給付とかございます。それは何でそういうふうにしてあるかといいますと、失業はそれぞれ御案内のとおり事情がいろいろ違いますから、それに見合わせて適宜適切に対応できるようにということできめ細かな対応がしてあります。ですから、そういう個別の延長給付等を使いながら個別の事情に対応して適切にやっていくのがいいんではないかというふうに考えておる次第です。
  122. 平田健二

    ○平田健二君 いえいえ、雇用保険の給付の種類が幾つかあることはわかっています。では、この中で四つあるんですが、個別延長給付、これは確かに各年度、受給者数、支給額があります。訓練延長給付、これもあります。しかし、広域延長給付は昭和六十三年度以降は実績なし、全国延長給付は制度発足以来今日まで発動なし。間違いございませんね。
  123. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) もちろん、現在が史上で一番悪い失業率でありますから、今までの発動例はございません。
  124. 平田健二

    ○平田健二君 ですから、異常な事態ですから、戦後我々が経験したことのない異常な事態ですから、やはり異常な事態には異常な対応をするというのは当然じゃないですか。いかがですか。
  125. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 要するに、失業給付というのは、これは釈迦に説法でありますけれども、失業期間中の生活を支える、できるだけ早く現場にカムバックをしていただきたい、そのために職業訓練なりなんなりをしながら能力のバージョンアップを図って早く業についていただくということを目的としております。  今企業が生き残らんがためのリストラをかけております。受け皿だけ一律に拡大をしますと、これ幸いということになりかねない。ですから、もちろん、その保険の会計のことも当然ありますけれども、いろいろ総合的に勘案をして、要はただ滞留する場所だけをつくるということではなくて、どうやって一刻も早く職についていただくか、そのためにどういう施策を駆使するかということがやっぱり総合政策として大事だと思っておりますので、そっちの点からも施策を厚くしていきたいというふうに考えております。
  126. 平田健二

    ○平田健二君 全然違うじゃないですか、労働大臣。今はその職場がないんです。幾らバージョンアップしても行く職場がないんです。確かにコンピューター関連はあると総理も先ほどおっしゃっていましたけれども、ほとんどの人が一年以上失業が続いておるんです。職業訓練して、訓練ができたら次の職があるというときじゃないんです、今、日本の国は。  労働省にお尋ねします。  全国延長給付を弾力的に運用して発動した場合、予算は幾らになりますか、金額は。
  127. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 現在、失業給付の支給額で見込んでおります額は約二兆円でございますが、仮に現在の失業率で全国延長給付をいたしますと、これに約八千五百億、八千億円ぐらい増加になると思います。
  128. 平田健二

    ○平田健二君 八千億です。今度仮に、今決定しておりますが、民間の銀行十五行に資本注入をするのは七兆五千億です、七兆五千億。けたが違うんです。今こんな異常な状態で失業者がふえているにもかかわらず八千億じゃないですか。銀行に七兆五千億入れるんでしょう。銀行は救済しても困っておる勤労者、三百万にもならんとする失業者を救うことはできないんですか、労働省。いかがですか。
  129. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 御案内のとおり、雇用対策というのは、政府が掲げる重要施策のもちろん一つであります。そこで、従来の対策から比べれば、これは比較論でありますけれども、労働省の施策の歴史上はかなり思い切った予算投入が獲得できたというふうに思っております。  これで十分かと言われれば、もちろん多いにこしたことはありません。ただ、制約されている予算の中ではかなりの伸びを確保することができたというふうに考えております。今持っているツールを最大限使いまして、雇用不安の解消に努めていきたいというふうに考えております。
  130. 平田健二

    ○平田健二君 国民は納得しませんよ、そんなことでは。いいことをした銀行に資本注入するのなら別ですが、不良債権を処理するために、債権放棄した銀行に、もちろんそれは金融システムを守るという大義名分はありますけれども、七兆数千億入れるんですよ。毎日毎日の生活に困っておる国民が三百万人もおるのに、その八千億も出せないということは私は理解できない。こんな国なんてないですよ。一番困っておるところに一番手厚くするのが国の施策じゃないですか。いかがですか、労働大臣
  131. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 金融対策というのは、それを通じて産業の足腰を強くし、やがて職場としての業を、雇用の受け皿をしっかりつくってもらうわけでありますから、これはないがしろにできないと思います。その上で、雇用政策につきましても、何度も繰り返しになりますけれども、今までにない新しい施策を私なりにいろいろ考えさせていただきまして追加させていただきました。そして、労働省の施策からすれば従来の範囲ではない雇用をつくり出すという分野まで踏み出して通産大臣に御協力をいただきました。  まだまだ不十分ではないかという声は痛いほどわかります。しかし、組まれている予算の中で精いっぱいのことはしてきているつもりでありますし、これからも先生方の御意見を受けとめて頑張っていくつもりでございます。
  132. 平田健二

    ○平田健二君 もう少し具体的に労働大臣にお伺いをいたします。  私は、ずっと今まで述べてきましたように、大変深刻な雇用情勢を見たときに、現行では六割から八割しか支給されない訓練延長給付の水準を一律八割にするとともに、その給付日数の現行六カ月とあるものを十二カ月までに延長してほしい。雇用対策法の就職促進手当の給付日数を一律百五十日に延長すること、雇用保険の広域延長給付、全国延長給付の給付条件の改善を図ることが必要であり、そのために労働省は労働組合の連合を初め関係者と協議を実施していくことが私は必要だと思います。  今まで申し上げましたことをぜひお酌み取りいただいて協議をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  133. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) いろいろと平田先生から貴重な御意見をいただいております。政府といたしましては、経済再生を図るために緊急経済対策を御説明しましたとおり実施しまして、その一環として、我が省を中心に政府全体が取り組む雇用活性化総合プランというのを策定いたしまして雇用対策に万全を期して今取り組んでいるところであります。一日も早い執行を目指して、部分的にはもう既に始めているところもございますが、まずこれに全力を注ぐということが先決だというふうに考えております。  経済社会の変化に適切に対応していくために、雇用対策のあり方については引き続き必要な検討に努めることは重要なことと認識をしておりまして、政労使雇用対策会議でも失業の長期化に対応した対策の重要性などについて御指摘をいただいているところであります。  雇用保険制度について申し上げますと、仮にそのあり方を検討していくことになるとしますと、雇用保険制度のセーフティーネットとしての実効性であるとか、あるいは保険料など給付と負担のあり方等を総合的に考慮することが不可欠だというふうに考えております。  御提言の点も含めまして、各方面の関係者の御意見を十分お聞きしながら検討することが必要と考えております。
  134. 平田健二

    ○平田健二君 総理労働大臣から今お答えがありました。ぜひひとつ、今日の状況にかんがみて強力な施策を実施していただきたいと思いますけれども、総理の御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  135. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 現在の経済の低迷下の中にあって職を失い、また新しい職を求めてもこれが得られないという状況は極めて憂慮すべき状況であります。  労働大臣からも御答弁申し上げておりますように、政府としても新しい施策も講じつつあるわけでございますが、今、平田委員もいろいろと具体的な御提案もございました。政府としてさらに何かできるかということも含めまして、一生懸命に各省庁挙げて努力をいたしていきたいと思っております。
  136. 平田健二

    ○平田健二君 要求いたしました大臣の皆さん、政府委員の皆さん、もう時間が参りました。申しわけございません。  最後に一点だけお尋ねをいたしまして、質問を終わりたいと思います。(図表掲示)  七兆四千五百億の公的資金を注入する銀行が、ごらんのように、これを見てください、公的資金を注入しながら株の配当をするというんですよ。民間の企業では考えられないんです。先日も朝日新聞に載っておりました。どこかの流通関係の企業が、二期連続赤字になったら大手の銀行から圧力がかかって配当はやめろと言われた。そういうのがニュースで流れました。  大手銀行は、昨年の三月も、今度もまた大変巨額な公的資金を投入しながら株主には配当するというんですよ。めちゃくちゃじゃないですか。どういうことですか、これ。説明してください。
  137. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 今度の資本増強は、先生つとに御承知のとおり、与野党の議員の皆さんでおつくりいただいた金融機能早期健全化法に基づいて行われているものであります。  そこで、先生御指摘の配当の問題がどうなっておるかと申しますと、その規定は第七条にございまして、資本の充実の区分に応じてそれぞれ、この配当等の問題について規定が既になされているわけであります。健全行については利益の流出を抑制すること、それから過少資本行については配当及び役員に対する賞与の支給等を抑制すること、そして著しい過少資本の状況にある区分につきましては配当を停止すること、こういうように区分けが、書き分けがなされているわけであります。  そういうようなことで、我々が今投入しようとする銀行がどの区分に属しておるかというと、これは早期健全化法と同様の自己資本比率で自己資本の充実の区分を決めております関係で、一応健全な自己資本の状況にある銀行ということに区分けされるであろう、このように存じます。その場合には利益の流出を抑制することということになっておりますので、その意味するところは、配当及び役員に対する賞与の支給等について抑制をすることということになるだろうと思うわけでございます。  そこで、私ども現実の問題の処理としてどのようなことをやっておりますかと申しますと、御案内のとおり、るる御説明するように健全化計画というものを出させていただいておるわけでございますが、その健全化計画の項目に実はこの減配という問題をメリットシステムのポイントとして勘定をしておりまして、私どもとしては資本投入に当たって減配をするということを奨励しておる、そういうことでこの法律に忠実たらんとしているということを御理解賜りたいと思います。
  138. 平田健二

    ○平田健二君 理解できません。  この問題についてはまた次の機会に質問させていただきます。  関連質問をお願いいたします。
  139. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。小川敏夫君。
  140. 小川敏夫

    小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。私は、法務大臣の適格性の問題について質問させていただきます。  まず、きのうの予算委員会で出ましたシュワルツェネッガー氏の入国に関する問題でございますが、同氏が書いたてんまつ書、これを法務大臣が取り寄せたということでございますが、どのような取り寄せる理由があって取り寄せたのでございましょうか。
  141. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 取り寄せたのではございませんが、この詳細については内閣において事実関係を調査されておるところでございますので、その結果が明らかになっていない現段階では私からお答えを申し上げるべきではないと考えますということでございます。それ以外のことはこの間お答えしたとおりでございます。
  142. 小川敏夫

    小川敏夫君 内閣が独自に調査されることはそれはそれでよろしいとしても、私ども国会がその問題について質問することは、これは当然の権利でございますから、当の当事者についてやはりお答えいただきたいと思います。
  143. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) この間の委員会委員会の審議がとまりましたときに、与野党お話し合いの上と私は感じておりましたが、官房長官が調査をして返事をするからということで決着を見ているものと思います。その結果が出て、いろいろとお話をさせていただきたいと思います。
  144. 小川敏夫

    小川敏夫君 それは官房長官が調査すると約束しただけでございまして、そのことによって私たち国会の質問権が侵害される、制限される理由はないと思います。  委員長、答えるように指示してください。
  145. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 中村法務大臣
  146. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 取り寄せたのじゃなくて、このことがありましてから私のところに見せられたわけであります。それで見ました。
  147. 小川敏夫

    小川敏夫君 シュワルツェネッガー氏の入国に際し、法務大臣が特別に許可するかどうかということについて、法務大臣は許可されたということでその法務大臣としての職務はそこで終わっているわけでございます。その職務が終わった後に、法務大臣の説明ですと、大分日がたってからそのてんまつ書が来たということでございます。  どういう職務上の理由があってそのてんまつ書をあなたのところに取り寄せたのでございましょうか。
  148. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) この法務大臣の特別許可は、いろいろな入国の要件を満たしていない方で入国をさせてくれという、最初は要件を満たしていないと入国を拒否するわけですね。そして、拒否した場合に、入国をさせてくれということですね。そのときにシュワルツェネッガー氏はパスポートを持っていなかったわけでございます。それで、パスポートを持っていなかったので、パスポートを持っていない者を入国させるために大使館に問い合わせたりいろいろなことをやりましたけれども……(「時間のむだ遣いだよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)聞いてください。いや、関係があるからお答えしているわけで、そしてなぜパスポートをなくしたかという経緯はとっておくべきかということでてんまつ書を……
  149. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 答弁を簡潔に願います。
  150. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) はい、簡潔にいたします。  そのてんまつ書をとったわけでございます。そのてんまつ書が送られてまいりまして、それを拝見して処理は終わったわけでございます。それから二カ月ぐらいですか、たって私のところに原本が来ましたのでということで届けられました。届けられましたけれども、その理由はよくわかりませんが、来て、それはちゃんと……(「それはわかっているよ」と呼ぶ者あり)わかっておりません。処置をするべきだということでございますけれども、大臣ここでもってごらんになってくださいと言うので、それで置いてそのままになって忘れてしまったということでございます。
  151. 小川敏夫

    小川敏夫君 今、法務大臣、長々と説明されましたけれども質問には全然答えていない。私が聞いているのは、職務上、法務大臣の職務を行うについて、てんまつ書を取り寄せる理由があったのかどうか、あったのならその理由を答えてくださいと質問しているわけです。
  152. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私が取り寄せる理由はありません。
  153. 小川敏夫

    小川敏夫君 取り寄せる理由がないものがなぜ法務大臣のところへ取り寄せられたんでしょうか。
  154. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) それは、原本であるからということで、見せた方がいいと思って持ってきたんだと思います。
  155. 小川敏夫

    小川敏夫君 そのてんまつ書について、持ってこられたものについて聞きますが、てんまつ書だけが来たんでしょうか。それとも、特別入国許可に関する一件書類が来たんでしょうか。
  156. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 後から来たときはてんまつ書だけでございます。
  157. 小川敏夫

    小川敏夫君 普通、事件が終わった記録というのは、一件記録の中に入っておるわけでして、それがしかるべきところに保管されておると。それがなぜその一件記録の中からてんまつ書だけを取り出して、それがしかるべき場所から法務大臣のもとに届けられたのか。  法務大臣は自分から取り寄せたんでないと言うけれども、じゃ、なぜだれがどういう理由で法務大臣のところに届けたのか、その理由についてお伺いしたい。
  158. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) このてんまつ書は入国を特別許可するに当たって法定の資料ではございません。ですから、処理したときにそのファイルに必ずあらなければいけないということが法律で定められているようなものではございません。  私が特別許可をするに当たって、私の責任上どうして、例えばビザがなかったとか、前に犯罪歴があったけれども入りたいとか、それを許可するに当たってその方の言い分を聞いておいてくれということでつくる書類でございます。
  159. 小川敏夫

    小川敏夫君 そのてんまつ書が法律上作成するべきかどうかということは別にして、法務大臣が職務を行ったときに作成された文書としてもう既に終わっているわけです。終わっているものについてその書類の中からそのてんまつ書だけを法務大臣のところに届けられる。私どもは、これは法務大臣がその職務の地位を利用して法務大臣の個人的な趣味を満たしたんではないか、こういう疑問を持っておるわけです。  質問に端的に答えてくださいよ。
  160. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) そのようなことは全くございません。
  161. 小川敏夫

    小川敏夫君 入管局長がいらっしゃればお尋ねしたいんですが、どのような理由に基づいてそのてんまつ書が法務大臣のところに届けられたのか。
  162. 竹中繁雄

    政府委員(竹中繁雄君) 私が承知しております限りでは、この上陸特別許可の問題は、たしか真夜中に起こりまして、それを担当課長がその内容を聞いて、基本的には、ですから電話で事情を大臣に御説明申し上げて、それで許可をいただいて現地にその許可を伝えたということでございます。  こういうことは現場ではしょっちゅう起こることなんですけれども、最終的にこういう書類になってこういうものが来たということを後日、大臣にお見せしたということだと思います。(「だれが」と呼ぶ者あり)担当課長からでございます。
  163. 小川敏夫

    小川敏夫君 後日というのは、具体的にどのくらいの日時を置いてからのことでしょうか。
  164. 竹中繁雄

    政府委員(竹中繁雄君) ちょっと今正確な日にちはわからないんですけれども、最終的なオリジナルが届いたのはその日より数日時日がたってからだと聞いております。
  165. 小川敏夫

    小川敏夫君 法務大臣の説明ですと大分日がたってからというようなことでございますが、ただ、今のお話を聞いても、なぜそのてんまつ書が記録から離されて法務大臣のところに届けられたのか、全く職務上合理的な理由が見出せない。国民からの疑惑がそれによって解消されたとは到底思えないわけでございます。  それから、法務大臣はその書類をどのように保管しておいたんですか。
  166. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私の重要な書類を積み重ねておくところに置いておきました。
  167. 小川敏夫

    小川敏夫君 きのうの予算委員会の説明では、その部屋の中のだれでもがわかる場所に置いてあったと、こういうふうに答弁されました。その一方、そのてんまつ書は秘書に返すように指示してあったものが忘れられたまま放置してあったと、こういうふうに答弁されました。  そうすると、私が思うのは、だれでもがわかるような目につくところに置いてあるのだったら、秘書が返し忘れているということは、これはまた見ればすぐわかる状態であるわけですよ。なのに、なぜ返されなかったのか。そこら辺の答弁の信用性について私は大きな疑問があるわけですが、説明してください。
  168. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) だれでも見える私の座っている右側の机の上でありますけれども、そこに書類が積み重なっておりますから、上には出ていなかったと思います。そして、秘書にはこれは返さなきゃいけないなと言っていたんですが、秘書のみならず私も忘れて放置をされておったということでございます。
  169. 小川敏夫

    小川敏夫君 では、昨日、だれでも見ればすぐわかるような場所に置いてあると言ったのは、これは正確ではない答弁だったんですね。
  170. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) だれでも見ればわかると答弁したのではないと思います。私の部屋においでの方はおわかりのように、私は机の上に重要な書類を重ねてある、そこに置いたという御答弁をしたんです。
  171. 小川敏夫

    小川敏夫君 その問題について、大変な職務上の権限行使について疑問があるんですが、次の質問に参ります。  本年一月四日に法務大臣が法務省の幹部職員を集めて行った訓示について、憲法をないがしろにするような発言があったということがこれまでの委員会の中でたびたび質問され答弁されておりますが、法務大臣がそこで発言された内容は法務大臣が思っておられることをそのままありのままに述べたということなんでしょうか。それとも、思ってもいないことをつい述べてしまったということなんでしょうか。
  172. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 訓示とおっしゃいましたけれども、これは訓示ではございません。新年のお祝いの会に行って、まずごあいさつくださいと言われてお祝いのごあいさつをした、そのごあいさつの席上でありますから。  私の言いたかったのは、ことしは司法制度改革の年だ、だから司法制度改革を頑張ろうという趣旨で話しましたので、何か憲法のことを話そうということを念頭に置いて話したことではございません。そういうわけでありますから、私が何かの意図を持って話したことではありません。しかしながら、話した内容に適切を欠くものがあったわけでございますので、閣僚懇談会でおわびをし、撤回をさせていただいたわけでございます。  私は、憲法を改正する意図もなければ、そういう意図でしゃべったのでもないし、また憲法を遵守、擁護していく気持ちは閣僚の一人としてしっかり持っております。
  173. 小川敏夫

    小川敏夫君 一月四日の新年始まりの年頭に当たって、法務省の高級幹部を、高級かどうかは別にしても、幹部職員を集めて法務大臣お話をされる、これはやはり法務大臣の職務に基づく訓示だと思います。単なるお祝いの席のあいさつではないというふうに思います。  年頭のこの発言は、法務省の職員が職務を厳正に行う、あるいは職務に精励するように、そういうことを法務大臣の職務に基づいて指示する、そういう意味合いがある発言ではなかったんですか。
  174. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) そうしたものは年頭の所感として別に出しております。
  175. 小川敏夫

    小川敏夫君 先ほどの質問に答えていないのでまた聞きますが、憲法をないがしろにするかのような発言は、法務大臣が思っておられるけれども言ってはいけないことを言ってしまったのか、それとも全然思ってもいないことをただ言い間違えてしまって言ってしまったのか。  いずれにしろ、あなたは不適切だと言って取り消しているんだから、そのことをもう一度答えてください。あなたが思っていることをありのままに言ったのじゃないんですか。
  176. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 申し上げたかったのは司法制度改革のことであり、そういった席のごあいさつでありますから、何か憲法のことを話そうという意識はなかったわけでありまして、ですから一言一句私がそのように話したかどうかも私にはわかりません。わかりませんが、私の念頭にはその当時非常に問題になっていたPKF参加とかいろんな話がありまして、そういうことに参加するのだって憲法のある一定の制限があるんだよ、枠があるんだよということで申し上げたんじゃないかと思います。
  177. 小川敏夫

    小川敏夫君 どうも私の質問について真正面から答えていただけないんですが、ただそういう発言をされたということはやはり法務大臣の適格性に問題があるというふうに考えております。これは、ただ単に撤回しただけでは済まない問題であると思います。  さらに、沖縄県石垣島の日本生命が行うリゾート開発に関する国土法違反告発事件において、そのリゾート開発に伴い法務大臣が事実上オーナーであるホテルが営業上の影響を受けるという事案において、法務大臣が刑事局長にその現場の写真を示し、事の経過を説明したという事実経過がございます。  そこで、本来、検事の職務のあり方として、やはり検察は捜査権を持っている、あるいは訴追権限を独占しておるということがありますから、政治的に権限を利用したりあるいは個人的利益の実現のためにそのような権限を行使してはならないというのは当然の職務でありますが、さらにそのような強い権限を持っているということの性質上、そのような疑いを招いてもならないという検察としてのモラルがあると思います。  例えば、刑事局長がいらっしゃればお伺いしたいが、検事がそのような個人的に権限を行使していると疑われるような行為もしてはならないというモラルが検察に課せられていると思いますが、その点どうでしょうか。
  178. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 事実関係を御説明させていただきたいんですが、私がオーナーであるホテルと競合するような施設でないということ、そしてそうした指揮を行っていないということは、法務省として公式に通信した通信社に、明らかに事実に反するものとして法務大臣官房長名で通信社に訂正及び抗議を申し込んでいるわけであります。  そのような指揮をした事実はございません。
  179. 小川敏夫

    小川敏夫君 営業上競合しているかどうかということは、これは解釈の問題ですから。それから、私は指揮をしたとかそういうことは言っておりません。ただ、法務大臣が刑事局長に写真を示し経過を説明したという事実があるということは、これまでの予算委員会の席上明らかになっております。それで聞いておるわけです。  やはり検察のモラルとして、職務を行うに当たって自分の利益を図ってはいけないということはもちろんのこと、自分の利益を図っているかのような誤解を招くようなこともしてはならないというモラルがあるんではないですかと聞いておるわけです。刑事局長
  180. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 具体的な事件に関連しているような質問でもございまして、大変お答えしにくいところでございますけれども……
  181. 小川敏夫

    小川敏夫君 一般論で結構です。
  182. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 一般論として申し上げれば、検察官というものは事件処理の過程で個人的な利益をもちろん図ってはいけませんし、またそうした誤解を招くような行為をしてはいけないということは、先生御指摘のとおりだと思います。
  183. 小川敏夫

    小川敏夫君 では、総理大臣にお伺いしますが、そのような検察を指揮する最高責任者の法務大臣においても、やはり自己の利益を擁護するために権限を行使してはならない、そしてそのような疑いを招くような行為をすることもやはりモラルに反するのではないかというふうに思いますが、その点、総理はいかがお考えでしょうか。
  184. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 法務大臣がこの厳正なる参議院の予算委員会の場で御答弁申し上げておりますことをお聞きいたしておりますと、いわゆる指揮権を発動したという報道について、法務大臣自身その事実を明確に否定をいたしておると認識いたしております。  しかし、一般論として申し上げれば、そういうことの行為について誤解を招くようなことがあってはならぬとは思います。
  185. 小川敏夫

    小川敏夫君 私の質問はこれで終わります。
  186. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。江田五月君。
  187. 江田五月

    ○江田五月君 私からも幾つかお伺いをいたします。  一昨日も申しましたが、私どもは個人に対する追及というのは余り得意でもないし、また好きでもないんですが、しかし中村法務大臣は、司法あるいは法務・検察行政の根幹部分である公正さ、あるいはその公正さが外からちゃんと見える公正らしさ、そういうことにいろいろ疑問の起きるような言動をされていますので、かつて司法の場に身を置いた私がただしていかなきゃならぬ課題だと思いますので、ぜひお許しください。  きょうは金融問題などの集中審議ですが、金融ということになりますと、ついに北海道拓殖銀行について元役員の逮捕という事態に発展をいたしました。  法務大臣、これはまさかあなたが指揮されたものじゃありませんね。
  188. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 個々の事件については、一度も指揮をしておりません。
  189. 江田五月

    ○江田五月君 私も指揮をしていないと思います。  しかし、あなたは金融機関の乱脈融資等についてあなた自身の見解をいろいろなところでおっしゃっていますね。そういう記憶はありませんか。
  190. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) これは、政府でいろいろなところで、総理大臣もおっしゃっていますし、破綻した金融機関の刑事、民事における責任は厳正に追及されるべきであるというようなことは方々で言われていると思います。  私も同じようなことを検察長官会同だとか担当検事の会だとか、これは事務局で原稿をつくるわけですが、そういう場で発言をしております。
  191. 江田五月

    ○江田五月君 いろいろなところで言われています。  例えば、本院、昨年の十月八日の法務委員会で質問をされまして、捜査に言及をされて、金融監督庁あるいは住専の処理の機構、住専管理機構ですか、といったものに言及をされ、告発の数がどうとかというようなことも言われ、また「起訴に値するかどうかは私どもが判断いたしますので、どうぞ情報をどんどんお与えいただき、告発もどんどんしていただいて結構でございます」、こういうことも言われました。  これは一般論ですが、これは検察に対する指揮に当たると思われますか、思われませんか。
  192. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私は法律家でありませんのでよくわかりませんが、検察に対する指揮でなくて、一般論を述べているんだと思います。
  193. 江田五月

    ○江田五月君 あなたは法務大臣就任直後に検事総長をお呼びになった、そして自分が指揮者である、言葉はちょっと違いますが、国会が選んだ小渕総理が指名をした法務大臣の指揮のもとにいるんだから、そのことを厳密に心に置いて事に当たれ、こういうことを言われましたね。それは間違いないですね。
  194. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) それはこの間も先生の御質問にありましたので、お答えさせていただきましたけれども……
  195. 江田五月

    ○江田五月君 間違いあるかないか。
  196. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) そういうことは最後のところで申しましたけれども、私の申し上げたかった主題は、検察といえどもこれは国会に対して連帯して責任を持つ行政の一環であるから、国民の要請を体してやる検察でなきゃいけないし、国民の要望にこたえなきゃいけないと。その意図は、民主主義のルールで国民に選ばれた国会、そして議院内閣制の大臣、そういったものを通じてなされるであろうということで申し上げたわけでございます。
  197. 江田五月

    ○江田五月君 もう検事総長はそういうことはちゃんとわかっているはずなんですよ。あなたがわざわざ検事総長を呼んでそういうことを言われた。自分が指揮者ですよ、そのことを厳密に心に置いて仕事をしなさいと言われた。これは布石ですよ、検事総長に対して。そして、後にいろんなあなたの思いをさまざまな形で検事総長にメッセージとして伝わるようにする。  金融監督庁の五味検査部長、おられますね。あなたは、五味検査部長に金融機関の乱脈経理等のことについて何かおっしゃったことはないですか。
  198. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) きょうはテレビが入っているので、私の方の事実関係も聞いていただきたいと思います。  私が呼んでわざわざそれだけ言ったのでなくて、事務引き継ぎでいろいろなことをお話しした中の一環にそういうことがあったということでございます。  それと同時に、この間、委員と検察庁法十四条の御議論をいたしましたけれども、私が指揮すべきは検事総長だから、私が必要なところは検事総長を指揮しますよと。だけれども、そういうことはめったにやることじゃありませんということもちゃんとお断りしているわけであります。  五味さんの件は、私はよく五味さんを知っています。
  199. 江田五月

    ○江田五月君 いや、知っているかじゃなくて、今の金融機関の乱脈経理などの調査、捜査、その他のことについて、五味さんに何かおっしゃったことはないですか。
  200. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 極めて親しい人ですから、ここいらでもよく声をかけてしゃべりますけれども、そういったことは言っておりません。
  201. 江田五月

    ○江田五月君 五味検査部長、何も言っておらないという法務大臣の話ですが、事実関係、何か心当たりがありましたらちょっとお話しください。
  202. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) 今、大臣がおっしゃいましたように、廊下などでお会いしますとごあいさつを申し上げたり、二言三言言葉を交わすという間柄でやらせていただいておりますが、いわゆる金融機関の今回の話に関しての捜査というようなことでお話をいただいたということは、私の記憶にはないのでございますけれども。
  203. 江田五月

    ○江田五月君 捜査に関してではなくて、金融監督庁、いろいろ協力をしろよとか、資料があったらよこしなさいよとか、いろいろ教えてくださいねとか、あるいは頑張ってやってくださいねとか、そういうことを言われたことはないですか。
  204. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) 資料というようなお話は記憶にございませんが、君も今大変だねというようなことで、頑張ってくれというようなお話はいただいたことがあったような記憶がございます。  具体的にどうということでなくて、日ごろから、例えば私が日銀法の改正を担当しておりますときは政務次官をしておられましたけれども、そのときも同じように、大変だろうけれども頑張れというお話も同じようなことでいただいたような記憶はございます。
  205. 江田五月

    ○江田五月君 要するに、不用意なんですよ。金融監督庁の方で、資料を出せと言われたとか、いろんなことが伝わっておる。あなたの不用意な言動に端を発しているんじゃないかと思うんですが、それはおいて、指揮権発動についてちょっと伺います。  おとといの私どものやりとりで、法務大臣の答弁と刑事局長の答弁が食い違ったということがございます。検察庁法十四条の解釈ということなんですが、検察庁法十四条、「法務大臣は、」「検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」、この規定は非常に重要な規定だ。これはもちろんおわかり。検察というものは全部一体で仕事をしていて、個々の検察官はしかし独立して仕事をする、だけれども全体としてこれは一体である。検事総長を頂点とする上命下服の関係ができていまして、その検事総長に対してだけ個々の事件については指揮できる。  指揮する相手、指揮する主体はだれか。これは「法務大臣は、」と書いてありますから法務大臣なんですが、法務大臣はみずから直接、中村正三郎という個人が検事総長と相対して直接やる以外に指揮をする方法があるのかないのか、そういうことで議論をしたわけです。  法務大臣は、いや私は検事総長を直接自分が指揮するんだと、そういうお考えの話をされたと思います。刑事局長は、そうではないと。法務省という全体系があって、法務省というのは法務大臣のもとにある機関だから、法務大臣の手足ですから、ですから例えば検察というものを所管している刑事局長法務大臣から指揮を受ければ、指示を受ければ、職務命令。そうすると、刑事局長は検事総長に対して、これは法務大臣の命でございますと言って指揮をしなきゃいかぬ、そういう指揮の仕方があると。そこで食い違ったんですが、どうですか。
  206. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) あのときは一方通行の時間だったのでよく御説明する時間がなかったので、よく御説明させていただきます。  検察庁法十四条というのは、今、委員が御議論なさいました部分大臣の権能に規制を加えている、制限を加えている条項でございます。  その制限はどうかといえば、個別の事件の取り調べと処分については直接検察官を指揮しないで検事総長を指揮することができる。その理由は何かといえば、それは個別の捜査の検察官の独立性を担保するためということでございます。それですから、私は法の解釈上厳密に、非常に重要な規定だから、こういうことを発動するときは私は検事総長に直にお願いしますよということを就任以来申しております。これは実体論であります。  その反面、委員が御指摘のように、私が例えば事務次官なり刑事局長に話をして、じゃあなた、こういうふうに検事総長のところに行って指揮してきてくれということを頼む、これは代理論ですね、これはやることはできます、論理的には。そういう指揮は私はそういうことはやらない。ただ、私が例えば事務次官にこういう事件を捜査しろと命じたとしますと、事務次官は検事総長の分身でないからできませんし、私がそれをやることは違法行為だからやりませんと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  207. 江田五月

    ○江田五月君 あなたは、これまで検事総長に対する指揮は自分が直接やるんだ、刑事局長その他を通じてやるというようなことは、あなたが検事総長を指揮するやり方としてはそういうようなことはないんだと、そういうお答えじゃなかったんですか。
  208. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 今言われたのは指揮の実態に関する私の考え方であって、ですから、それは私はあのとき素直に十四条を読んで重く受けとめて行動いたしますということを言ったので、だれでもそれは、例えば私が私の秘書官を呼んで行ってこいと言ってもいいのかどうか、これは実体論が含まれてくると思いますが、うちの幹部に対して、頼む、検事総長のところへ行って私がこういう指揮をするから、これは仮定の問題でございますよ、行って検事総長に指揮をすることを私がだれかに委託する、依頼するということは論理上あり得ると思います。
  209. 江田五月

    ○江田五月君 見解を変えられたような気がします。  いずれにしても、今まで例えば刑事局長にこういうことを言ったんじゃないかと言ったら、あなたは、いやそれは指揮をするのは検事総長に対してだけで、自分が検察に指揮するような、そういう適格性を欠く者に対して指揮するようなことはあり得ない、言うんだったら検事総長に言うんだというふうにあなたは言っていましたね。
  210. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私は個別の事件に対して指揮はしたことはないし、していないと申し上げたわけです。
  211. 江田五月

    ○江田五月君 だから、指揮をしたことはないということの一つの根拠として、自分は指揮するんだったら検事総長に指揮する、だから刑事局長なんかに対してはそんなことを言うはずないんだという、そういう言い方だったんでしょう。
  212. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) はずはないのではなくて、私は十四条というのを重要に考える。なぜなら、これは私の権限に制約を加える、そのために一番偉い検事総長を指揮すると。検事総長を通じて指揮するという重い条文があるんだから、私が実態に動くときはそういうことをやるでしょうという仮定の問題を申し上げたわけであって、そういうことをやったとかやらないとかいうことではございません。
  213. 江田五月

    ○江田五月君 あなたはことしの二月一日、ついこの間、衆議院です、これは予算委員会で上田清司委員の質問に答えて、これは刑事局長に指揮をしたのではないかという質問ですが、それに対してあなたはどう答えているかというと、今の石垣島のことですよ、これ。「これは私が就任いたしましてすぐにお話ししたことですが、法律上、私が捜査について指揮をとれる相手というのは検事総長でございまして、指揮をとれない人にそんなことを言うわけもございません。」と、こう答えているじゃありませんか、あなたは。これは、このときには違うんですか、今おっしゃったことと違うのかあるいは見解を変えたのか。
  214. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) それは先ほど申し上げましたように、刑事局長は検事総長ではありませんから、おまえこの事件を捜査しろということは、言うのは違法であるし、言わないということであります。
  215. 江田五月

    ○江田五月君 あなたは法務大臣ですね。検事総長にこの事件についてはこう捜査しろとか処分しろとか言うのは違法ですか。
  216. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 十四条は、私が個々の事件に対して捜査できるのは、捜査というか指揮できるのは「検事総長のみ」と書いてございますから、検事総長を指揮しないのは法律に従わないことになりますね。  しかし、先ほど十四条には、下段の今、委員が議論しておられますところには、個々の事件については、「法務大臣は、」「検事総長のみを指揮する」と書いてありますから、それ以外の人を指揮しようとしたらそれは法律違反になりますということを申し上げました。  ただ、さっき委員の言われた、だれかをして委任するということは、それは分身論であって、私に委任された人は、その人は私の意思を持って検事総長のところへ行って、大臣がこう言っているから、あなたこうやってくれと言うことは論理上可能であるということも申し上げております。
  217. 江田五月

    ○江田五月君 論理上可能な話はきょう初めて出てきたんじゃありませんか。今までは、「法律上、私が捜査について指揮をとれる相手というのは検事総長でございまして、」、刑事局長に対しては、「指揮をとれない人にそんなことを言うわけもございません。」と、こう言っているんで、いいですか、あなたは今まで、指揮権はあるんですよ、あなたに。それは検事総長を通じて指揮するということは合法なんです。合法ですけれども、検事総長を通じて指揮をした場合には事は大ごとになるんです。政治的意図を持ってやったんじゃないかとか、自分の利益を図るためにやったんじゃないかとかいろいろ大ごとになるんです、そういうことがあれば。  そういう大変なことになって、そして検事総長の方だってそういうことがあれば抵抗できると。いや、抵抗できるという規定はありませんよ。ありませんけれども、抵抗すれば世論がそれを支持する。そうすると、最終的には次の選挙のときに国民の皆さんがそれを審判するという、そういう大きな規定なんです、この十四条というのは。  ところが、あなたは、指揮をする相手は検事総長だというのはわかっていらっしゃる。しかし、指揮をする主体の方、これはあなた、自分で出ていかなきゃできないというふうにこの間まで思っていらっしゃったんですよ。ところが、いろいろと刑事局の皆さんとお話をして、いろいろ皆さんからお教えをいただいて、これはやっぱり自分の手足なんだと、法務省の全機構が。だから、うっかり刑事局長にああいうふうにしろとか言って、刑事局長は職務命令ですから、何々の事件についてはこうしろというふうにあなたが刑事局長に言うと、刑事局長はこれは仕方がないから検事総長のところへ行かなきゃしようがない。  そこで、大臣、これは指揮権の発動になるけれども、そういう指揮権発動されるんですか、それともそこまではやれという意味じゃないんですかということを尋ねなきゃいけない。そういうことがあったんじゃありませんか、現実に。
  218. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 委員専門家でいらっしゃって、私はしがない法律を学んできた者でありますので、釈迦に説法というか余り申しわけないこと言えないわけですが、委員は法律の定めと実体論とを一緒にして御論議になっているような気がいたすんです。  私が指揮する相手は検察庁法十四条で制限が加えられている。個々の事件に関しては検事総長のみしか指揮できないという厳然たる事実があります。ですから、それ以外の者は指揮できないんです。できないんだけれども、それとは別に、実態として私の権限をだれかに委任した場合、だれかに頼んで、事務次官に頼んで、あなた僕のかわりにやってくれ、やってくれと言ってその人が検事総長に話すということは論理上可能だということです。そして、今言われてと申しますけれども、私はこういうことを就任以来幹部の方と何度も御議論しておりまして、私の理論と刑事局長の理論は一緒です。
  219. 江田五月

    ○江田五月君 やっとあなたの理論と刑事局長の理論が一緒になった。けさ、なったんじゃありませんか、それは。今まで全然理論が違っていたんじゃありませんか。私どもは、だから──まだまだ私は質問しているので、手を挙げないでください。  検事総長を最初にお呼びになってああいう訓示をされて、これが布石ですよ。そして、次にいろんなことを、自分の考えはこうだぞ、ああだぞといろんなところで言われる。そういうメッセージは、検事総長としてはこれは大変重圧を受けることになるんですよ。あなた、そこは自分の置かれている立場というものをもうちょっとしっかり認識してもらわないと。  私は、あなたの不適格な問題発言と行動ということでひとつこうやってみたんですが、八つ。(図表掲示)  一、新年賀詞交換会のあいさつ。やれアメリカがミサイル撃つとか憲法には自衛ができなくてもがいているとか弁護士。  弁護士というのは本当に国民にとって最後のとりでなんですよ。冤罪のこともあるし、どんなに極悪非道なことをした人でも弁護士によって弁護される。そういうことは民主主義のいわば根幹なんですよ。世間の人がみんなあの事件はけしからぬ、あんな者はもう裁判なんかやめてすぐ死刑にしろと言ったって、そう言ったって、弁護士はその世論を後ろに受けながらでも弁護しなきゃいけない。そのときあなたはどうするんですか。あなたは、弁護士に世間と同じようにそんな者は弁護をやめろと言うんですか。そういう関係の発言があって、これは全部取り消して、陳謝をされた。  二、今の検事総長への発言です、厳密に心に置いてと。当たり前なんです。そんなことをあえて言うから後々問題になる。  三、検事総長に対する指揮権発動についての無知。これは今議論したところです。  四、石垣シーサイドホテル近隣の違法開発事件。  四、五、六、七、このあたりのことについて一つだけちょっと前提の質問をしておきましょう。  これはもうおととい確認をされたことですが、石垣島に石垣シーサイドホテルというものがある。これはあなたの会社である。そして、その土地はあなたの御子息が所有をされておる。その御子息に対してあなたは、今十歳程度の御子息ですが、大変恐縮ですけれども、今から何年前ですか、私ども登記簿謄本を見ますと平成二年となっていますから、一歳か二歳かのお子さんですね、当時、平成二年となっていました、贈与をされたと。いずれにしても、そういうホテルをあなたが経営をされている。ちょっとそれだけ、それは間違いないですね。
  220. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私は経営をしておりません。ただ株を所有しているだけです。
  221. 江田五月

    ○江田五月君 それはそうでしょう。しかし、おとといのお話では、三十年ほど前に私がつくった会社だ、私の会社だと、そういうふうにおっしゃっていた。まあ細かなことはいいです。  それで、今の石垣シーサイドホテル付近の違法開発事件、これが例の刑事局長に指揮したとかしないとかという話です。  あなたは、新聞に書かれて、そしてこれは大変だというので、大変だかどうか知りませんが、法務大臣の定例の会見でしょうか、いろいろとマスコミの皆さんに、これはこういうことだ、自分は悪くないんだ、悪いのは日本生命なんだ、そういう趣旨で釈明をされた。その同じことをあなたは検察の幹部の皆さんにお話しされましたね。それはどうですか。
  222. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) この開発が始まりましたのはおととしのことでありまして、随分古いことであります。そして、建設省に聞きまして、都市計画法違反であるという事実があって、そして送検されたということも報道で見ました。それで、それまで、去年の正月ごろですか、随分いろんな通信社、テレビにも出ましたけれども、これはどうも違法行為をやったのではないかという報道が随分ありました。  それで、私が就任しまして一カ月ちょっとたったころですか、突然、印象からいうと私が何か悪いことをしたようにとれるような記事が出たものですから、それはそうじゃないよということを記者会見で申しました。そしてその後、記者会見の後で、うちの幹部がいるときに、私はそんな悪いことをしたんじゃないということを説明いたしました。これは私の名誉のために弁解したということであります。
  223. 江田五月

    ○江田五月君 新聞記事をいろいろ見ても、あなたのホテルの方が何か違法な開発をしているとか、そんなことは全然書いてないんです。そうじゃなくて、日本生命のホテル開発の方にこの都市計画法上から何か違法なところがあったんじゃないかと。それは前提になっているんですよ。だから、あなたは別に自分が悪いと書かれていると思う必要はないんですよ。  そうじゃないんです。そうじゃなくて、あなたがそういうことについていろいろと政治家として、あるいは大蔵政務次官としてもあったかな、あるいは法務大臣としてかかわられているんじゃないかと、ここが問題になっておるということなんですよね。刑事局長も含む幹部の皆さんのところでそういうことをるる説明されたら、先ほどの検事総長にはもう一般的に言ってある、刑事局長にそういうことを言う、どういうことになるんですか、これは。そういう問題です。  次、五番目というのが中村企業。中村企業というのは先ほどの石垣シーサイドホテルを所有しているあなたの会社です。この中村企業が税金の申告をした。四谷税務署長によってこれが更正された。それはちょっと違うんじゃないかというので、あなたは国税不服審判を申し立てられた。そこまではいいですね。  さて、その審判は結局棄却されて、これを審査請求。その後にあなたは、あなたの会社です、あなたの会社はその事件について取り消し訴訟を起こされた。それはお認めになりますかどうですか。
  224. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) これは私企業のことでありますし、取締役も、代表取締役も違うし、私がここで一々お答えするのはいかがかと思いますが、これは宥恕規定という、前にも御説明しましたけれども、一千万に……
  225. 江田五月

    ○江田五月君 中身はいいです。
  226. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) これを言わないと皆さんわかってくれないんですよ。
  227. 江田五月

    ○江田五月君 そんなことないですよ。
  228. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 一千万に資本を上げようといったときに税金がかかってしまうと、中小企業で。それは大変だから、資産のある会社は資産を株式に入れて株式配当していいと。その場合は二〇%課税しかその株主の方にはかかりませんということでやっていいと税務署から説明があったんですが、それが宥恕規定というのがあって、そういうようなことが入っておりますということを申告書に書いておかないと課税されてしまうんですね。  そこで、国税不服審判を出したんだそうです。それで、出して審判で否決されたときは、私は法務大臣でも何でもございません。そして、こういう審判なり訴訟は、憲法で保障されたこととして、だれしもができる憲法の規定だと思います。
  229. 江田五月

    ○江田五月君 わかっているんです。そこまではいいんです。それはあなたの会社、あなたがオーナーとなっている会社が税金についていろいろ主張があって国税不服審判所へ申し立てた。いいです、それは。問題は、その後取り消し訴訟を起こしているんですよ、あなたの会社は。  さて、そうするとどうなるかなんです。もちろん、それは代表取締役はあなたじゃないでしょう。だけれども、あなたの会社です。相手は四谷税務署長。国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律というのがあるのは御存じですね。この一条、「国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が、国を代表する。」、これはいいですね。しかし、この場合は被告は四谷税務署長ですから、あなたは国を代表していません。  しかし、その六条で、行政庁というのは今の四谷税務署長、法務大臣の行政庁に対する指揮という規定があって、そしてこれは、「前条第一項の訴訟については、行政庁は、」四谷税務署長は、「法務大臣の指揮を受けるものとする。」という規定があるんですよ。だから、その訴訟を出すならいいけれども、これはなかなか両立しないんです、その訴訟の立場と法務大臣の立場が。  あなたは、この問題について訟務局長に何か聞かれたんじゃありませんか。
  230. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) これは非常に重要なところでありますけれども、法人格を持った法人が憲法の定めに従って裁判をやる場合に、その株主構成に左右されるということは、僕は憲法上ないと思います。ですから、そういうことはあり得ると思います。  そして、これは裁判ですから、裁決を下すのは法務省じゃありません。裁判所が下すわけです。そういうことを御理解いただきたいと思います。  それから、最後の質問ですが、私は訟務局長にこのことに対して、この事件に関して、どうだこうだといったことは何も言っておりません。(「国がうんと言えば裁判する必要がなくなっちゃうんだよ」と呼ぶ者あり)
  231. 江田五月

    ○江田五月君 そうなんですよ。行政庁は法務大臣の指揮を受けるので、法務大臣の方は訴訟行為について指揮する権限があるんですよ。  あなたは、この訴訟について訟務局長に何も聞いたことはないとおっしゃるけれども、それじゃ、この訴訟じゃなくて宥恕規定のことについて、あなたは訟務局長に聞いたことはないですか。
  232. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) これも私、訟務局長とは実は行政改革を通じて古いつき合いであります。そして私は、この宥恕規定について問題意識を持ったのは今からもう十年以上前でありまして、私が宥恕規定の研究をしていることは大蔵省の主税局もみんな知っております。  私は、こうした中小企業の人というのは非常に能力がない、税理士もなかなか雇えない。そういう人がちょっと忘れただけで、当然得られるべき税務上の利益が得られないということはいかがなものか、この宥恕規定を見直せということをずっとやってきました。その延長線上で私は主税局ともやり合っておりますし、そして衆議院法制局長の坂本さんとも長年やってきましたし、うちの訟務局長ともやってきましたから、何か本はないかといって資料はもらったことがあります。
  233. 江田五月

    ○江田五月君 だから、非常に軽率なんですよ。あなたは行政庁に対して指揮をする立場にいるんですよ。そのときに、さっきと同じように、四谷税務署長に何か言うときにはあなたは自分で四谷税務署長に会いに行って言うんですか。訟務局長を通じてでしょう。そういう訟務局長に自分の事件とちょっとでも関係するようなことで何か物を言うとそれは誤解をされるんです。誤解をされるということは公正らしさが疑われているんですよ、もう既に。公正さじゃないんです、公正らしさが既に疑われているんです、あなたは。  七番目、全日空系列ホテルの航空券優先販売問題。  これはちょっと長い歴史があるんですが、全部すっ飛ばして言いますと、要するに航空会社系列のホテルがある。航空券とホテルの宿泊券とセットになっていろいろ売られているというようなことは独禁法上おかしいんじゃないかと、そのこと自体は一つの御見識です。私はその御見識を別に否定しようとも何とも思っていない。しかし、そのことを何とか独禁法上取り締まれないのか、取り締まれないんだったら独禁法を改正すべきじゃないのかなどというようなことでいろんな活動をされた、政治家として。これはありますよね、もちろん。
  234. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 全日空、全日空と出てくるんですが、何で全日空が出てくるかわかりません。私は全日空と別に悪い関係でもない、いい関係でもない、全日空ということは関係ありません。  そして、政治家ですからいろいろな支持団体があります。自由民主党にも支持団体があります。そういう支持団体からの要請を受けて活動は長年やってまいりました。その中に二つございます。一つは、官営ホテルをつくって中小企業を圧迫しては困るというのが一つ。もう一つは、こうした運輸会社がホテルをつくって系列的にやって中小企業を圧迫するので困るというのが一つ。この二つがありました。  それで、当時話題になったのは、ちょうど長野オリンピックで官営のホテルが長野の駅前にできた、JRのホテルが一つできたと。これが非常に困るというような陳情もあり、広範な陳情があって、自由民主党の観光産業議員連盟がそれを受けて陳情活動を行ったと。その陳情活動に私は参加をしておりませんけれども、観光産業議員連盟の一員であることは確かであり、これはおととしぐらいの話であります。
  235. 江田五月

    ○江田五月君 いや、だから、あなたがホテルのことなどについて関心を持たれていろんなことをやられているのがいけないと言っているんじゃない。ただ、一つ問題は、あなたの石垣シーサイドホテルの、いいですか、さっきの日本生命がリゾート開発をやっているところは二キロ離れているだけ、さらに二十キロ離れているところに全日空系列のホテルがこれは去年の七月に完成しているという、そういう事実はあるんですよ。  それはそれでいいとして、そしてあなたはその問題について、どうも独禁法改正でもなかなかうまくいかないということで、記者会見でお話しになりましたね。今度、司法制度改革審議会というものをつくる、司法制度がなかなかいろいろ問題がある、これについて広範なベースで議論をしてもらう、その中に今の独禁法、この問題についても審議してもらうんだ、こういうことを指示したと。そういうことをおっしゃったんじゃありませんか。
  236. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) きょうはテレビが入っているので正確に言わせていただきますが、全日空……(発言する者あり)じゃ、正確がいけなけりゃ十分言わせていただきたいと思いますが、全日空のホテルもありますけれども、日本航空のホテルもございます。地元の資本のホテルもございます。これらいっぱいのホテルが全部競合関係にあります。  それから、今の独禁法の問題でありますけれども、これは、私どもが司法制度改革をやりますに当たって、与党が一年かけてつくりました提言がございます。その中に、準司法的なものも考えに入れてこの規制緩和の時代に対応しようというようなくだりがございました。そこで、この仕事内閣仕事であります。ですから、司法制度改革で何を審議しようかということは、司法制度改革審議会はまだできておりませんが、できたとすればそこで御決定になることでありますから、我々は提案をするだけであります。そこで、こういうことも御審議されたらいかがだろうかということを提案してみたいという趣旨のことを話したわけでございます。
  237. 江田五月

    ○江田五月君 提案をしてみたいじゃなくて、あなたはそういうことを指示したということを言ったんですよ。ところが、現実にはそれが入っているかどうかはよくわかりません。この諮問の事項というのは非常に広範ですからわかりませんけれども、それはやはりあなた、自分の持っているホテルの関係のことでそういう司法制度審議会とかいうようなものまで利用しようというように疑われるんです、軽率なんです。  総理、よく今までのやりとりをお聞きくださったと思いますが、ここに八つある、八つ。さらにシュワルツェネッガーもあるんです。シュワルツェネッガーだって問題なんですよ、これ、よくよく見ると。いろんなケースの仮定を置いてですが。中村さん、あなた、調査はもう受けられたんですか。──まあいいや、ちょっと質問時間がないからもういいですが。  総理、最後に、これだけ公正らしさというものが現実に疑われている。善処されませんか。
  238. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 八つ挙げられましたが、上申書の件につきましては、昨日、官房長官から、この事実関係を含めまして、内閣としても責任を持って調査することを申し上げました。  今の質疑応答をお伺いしておりましたが、それぞれ時系列的にどうなっているかということについては、今のこの段階では、私は法務大臣の答弁を信頼する以外にないと思うんですね。ですから、法務大臣としての行為か、あるいはそれ以前、国会議員としてとりました行為についてなのか、その点について明確なる、今お聞きしている範囲では、衆議院議員中村正三郎として取り組んだこととそうでないと言われる案件と、私は必ずしも全部明確でないような気がいたします。  したがいまして、しかし法務大臣としての責任ある立場としてとりましたことについての御指摘が、どの程度までそれが真実にあるのかどうかということにつきましては、これは法務大臣からも改めてお聞きをいたしてみたいと思います。
  239. 江田五月

    ○江田五月君 改めて聞いてください。  終わります。
  240. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で平田健二君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  241. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、魚住裕一郎君の質疑を行います。魚住裕一郎君。
  242. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。  がらっと変わりまして、現下の経済情勢を中心に少々質問をさせていただきます。  先ほどから失業率を含めて失業者の話が出ておりますが、きのうの新聞によりますと、もう失業者三百万人に迫る、非自発的な失業者は百万人だということでございます。特に中高年の方が多く失業されているということでございます。  私も、ことし正月から町工場がたくさんあります東京都の大田区とかずっと回っておるんですけれども、町工場のおじさんに聞きますと本当に仕事がない、それから多摩川べりを歩いてもいわゆるホームレスと言われる方がいる、また失業者も本当にベンチの上で座ってぼうっとしているというような、そういう方が本当にふえてきたと、そういうようなお話を伺いました。  また、仕事はどうですかと聞くと本当にないと。それから、保証枠で少しはよくなったでしょうと聞いたら、いや、お金を借りてもまた返さぬといかぬし、仕事がふえる見込みのない段階では借りることもできないと。工場を閉鎖するんですかと言えば、閉鎖するにも旋盤を持っていってもらうにも七万円かかるんですと、こういうようなお話を伺いました。本当に今大変な状況だなと。そういう状況の中でのこの予算審議であります。  今般、平成十一年度の予算を見まして、税制の改革というものがありますが、やはり国民一人一人から本当によかったな、これで消費に回そうと、そういうふうに思えるには、今政府にも御協力いただいて地域振興券ということがありますけれども、また一人一人税制改革に伴って本当によかったなと私は思う必要があるんだろうと思うんですね。  この平成十年度の税制から見れば、年収七百九十三万円ですか、それ以下の方は実質増税になる。調べてみたんですけれども、一家四人、大人二人子供二人という世帯で年収四百万円の人は三万六千三百二十五円実質的に増税になる。また、五百万円の人は九万三千二百五十円増税になる。六百万円の方は平成十年度よりも六万八千九百円増税になってしまうと。大変な私は消費気分というものを冷やしてしまうんではないだろうか、そんなふうに考える次第でございます。  この激変緩和に私は二兆円程度の戻し金は絶対に必要であるというふうに考える次第でございますし、引き続き要求をしてまいりたいというふうに考えておるところでございまして、この点につきまして、もう何度か御答弁をいただいておりますけれども、総理大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  243. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま魚住委員から御指摘のありました昨年と今年との税制の仕組みから申し上げまして、そこに差異が生まれてきたということについて、補てんすべきだ、その一つ考え方として戻し税について御言及ございました。  昨年のような諸外国に比して突出した高い水準の課税最低限が継続し、納税者が構造的に大幅に減少することとなり、基幹税たる個人所得課税のあり方としては適当ではない、こう考えております。  なお、今回の見直しにおきまして、定率減税に頭打ちを設け、控除率をある程度大きくすることとなりまして、中堅所得者に配慮するとともに、一定の扶養控除額の加算を行うことによりまして、子育て、教育等の負担のかさむ世帯に配慮しているところでございます。  このような大規模な減税を一時的でなく、期限を定めず継続して実施することによりまして、消費者や企業のマインドを高め、景気に効果的に作用するものと考えております。  以上が今年度予算編成に当たりまして、政府としての基本的な考え方でございます。  御指摘のように、確かに今年度実施をいたしてまいりました四兆円の特別減税という効果は効果としてございましたが、そのままに引き続いて来年度同じような仕組みがなかなかできかねる。そういった形で、形を変えてという御提案であることはよくわかるわけでございますが、政府といたしましては、そのような理由から、今回これを取り入れることは甚だ困難であると申し上げざるを得ないわけでございます。
  244. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 現時点における御答弁はそういうものかなと私は思っておりますけれども、引き続き要求をしてまいりたいというふうに考えております。  さて、失業が多くなって、非自発的ということから、突然のお父ちゃんの失業で学校に行けなくなる、そういうようなことが先般新聞記事で出ておりました。文部省の統計でもあるようでございます。経済的理由による退学というのが高校で二千八百名ですか、そういうふうに出ているようでございまして、来年度予算の修正協議の中で新しい奨学金制度、本当に大きな前進であると私は考えております。  特に、貸与人員の大幅なアップあるいは成績要件を事実上撤廃するというようなこと、また貸与基準、世帯の所得制限、これも一割アップしたということもございます。そしてまた、緊急採用奨学金制度、今の失業みたいな状況の中で勉学を続けたいという場合に、一万人という規模ですか、そういうようなことは大きな前進かと思いますけれども、それはあくまでも現下の状況下における緊急対応策というふうに私ども考えておりまして、やはり少子社会、本当にみんなが勉強しやすい、そしてまた将来の日本を背負う人材というものを育成するためにも、本当に抜本的な私は奨学金の拡充というのが必要ではないか。  ですから、今、有利子になっておりますものを例えば無利子にする、あるいは入学金も奨学金の対象に含めるとか、高校生あるいは専修学校生、これも修学年限が一年以上であればいいのではないかとか、さらには留学が決まっているような方にも貸与してもいいのではないか、そんなふうに私ども考えており、昨年の参議院選挙のときにもお訴えをさせていただいた次第でございますけれども、もう少し抜本的な奨学金制度につきまして、文部大臣の御所見を賜りたいと思います。
  245. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) いつも御答弁の際に申し上げておりますように、私も大変苦学をいたしましたので、奨学金に対する認識は非常に深いものだと思っております。  そういう観点から、平成十一年度の予算案におきましてはかなり抜本的な増強を図った次第でございます。  まず第一に、無利子奨学金の貸与月額の増額や貸与人数の増を図るとともに、第二に資金を有効に活用いたしまして、極力多くの学生を支援するという視点に立ち、有利子ではございますが、有利子奨学金について貸与人数の抜本的拡充や貸与に係る学力基準及び家計基準の緩和等を図ることにいたしました。  そして二番目に、奨学金につきましての去る二月十八日の自由民主党と公明党・改革クラブとの政策合意につきましては十分承知しており、先ほど御指摘のように、文部省といたしましてはこの合意を重く受けとめ、誠実に実行していく所存でございます。  また、御指摘のような育英奨学制度において入学金貸与制度を創設したり所得制限を撤廃し、すべての奨学金を無利子で貸与するということにつきましては、これまでの国会審議等を通じまして私としても強い御要望があるということをよく認識いたしております。  しかしながら、現在の厳しい財政状況のもとで、どうしても限られた資金の中で事業を実施していかなければならないということを考えましたり、また育英奨学事業の目的ということから考えまして、先ほど御要望がございましたそのすべてを実現するということはなかなか難しいと言わざるを得ないかと思っておりまして、御理解賜れれば幸いでございます。しかし、最大限の努力はしていきたいと思っております。  いずれにしましても、何といっても奨学金は重要でございますので、今後とも、学生の要望を踏まえまして可能な限りその希望にこたえられるように努力をさせていただきたいと思っております。
  246. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 先般、経済戦略会議最終報告が出ました。その中で能力開発バウチャーというようなことも出ていたというふうに思っておりますが、これは大人で能力開発する場合にはバウチャーという形でお金を出しますよと、そういうようなやり方ですね。  ですから、将来ある若い層に対しても、本当にそういう意味で能力開発バウチャー、勉強するというのはそういうことなんじゃないかと。そういう発想に立てば、今、文部大臣がおっしゃったような官僚答弁のようなものじゃなくて、もっと前向きに御検討を私はしていただきたいというふうに思います。  次に、今、文部大臣から出ました修正協議における合意の中で、「新しい児童手当制度」というものが書かれております。言葉としては、「欧州各国で行われている児童手当制度を参考に、新しい児童手当制度の検討をはじめる。」、そういうような言葉になっております。  その欧州各国、どういうような児童手当制度があるのか。私たちは今高齢化社会あるいは少子社会と言われていますけれども、やはりそれに対応する制度の先輩として欧州各国の制度が見られるのではないか。  ちょっと挙げてみますと、例えばスウェーデン、急速な高齢化、高齢社会と言われたところでありますけれども、もう一九四八年からやっておりまして、対象が十六歳未満、学生の場合は二十歳未満、しかも支給月額も第一子、第二子、第三子、第四子、第五子とどんどんふえていくという形でございます。第一子の場合は一万一千八百八十八円、第五子以下が二万三千七百七十五円、しかも所得制限なし、全額国庫負担、こういう制度がスウェーデンではあります。  また、イギリスにおいても、一九四六年から十六歳未満を対象に、第一子、第二子以降ということで分けながらやっています。所得制限はありません。全額国庫負担という形になっております。  ドイツにおいても、一九五五年から、こちらの方は十八歳未満、学生の場合は二十七歳未満までやるようでございまして、これも第一子、第二子、第三子、第四子というふうにだんだん額がふえていく、そういう制度になっております。所得制限はないようでございます。財源も公費の方で負担するということでございます。  私どもは、第一子、第二子が一万円、第三子以降が二万円やったらどうだろうかと、所得制限もなしという形で御提案をしているわけでございまして、これは政務調査会長の池田行彦さんと公明党・改革クラブの政審会長坂口さんとの署名入りでございますので、今言ったような制度としてしっかり御検討いただけるということで理解していいんでしょうか、厚生大臣
  247. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ヨーロッパの児童手当制度の現状につきましては、先生が今詳しく御説明したとおりでございまして、私の方から重複は避けさせていただきます。  ただし、ヨーロッパと我が国の違いと申しますと、基本的にはまず賃金構造の違いがございます。欧米の賃金は、おおむね能力給体系をとっておりますので三十歳ぐらいから大体フラットになっていくという傾向がございますし、我が国の賃金は、おおむね生活給あるいは年功給体系でございますので五十歳前後まで賃金が上がるという構造になっております。そのことは児童手当と大きく影響し合っております。  また、扶養控除につきましても、今諸外国の例を言われましたが、スウェーデンとかイギリスなどでは扶養控除はございません、税制上の。それから、ドイツでは扶養控除と児童手当の選択制がございます。アメリカでは児童手当制度はありません、扶養控除のみでございます。そういうように諸外国でもいろいろ差がございますし、我が国では児童手当と扶養控除制度が併存していることは御承知のとおりでございます。  そこで、今、委員のお尋ねは、去る二月の半ばごろ、十八日でございましたか、自由民主党と公明党・改革クラブの間で合意をされました。そのことは私どもとしては重く受けとめさせていただきますが、今申しましたような点で多くの問題がございます。  なお、今の我が国の児童手当制度は、三歳未満であって、資力制限をかけておりまして、一子、二子は五千円、三子以降が一万円ということで、全体として千八百億くらい所要額がございますが、今の貴党の提案によりますと、これがかなり増嵩する。資力制限なしにやりますと二千万人を超える、二百六十万が二千万人くらいになるということでございまして、当然額も二兆九千億くらいかかります。よしんば所得控除をそっちへ振りかえたとしても、国、地方の住民税の控除制度はやめたと仮にいたしましても一兆四千億もかかるというような代物でございますが、私どもとしては、公党間のお約束でもございますから、検討を開始するということでございますから、これ自体は重く受けとめさせていただきまして、検討は十分させていただくつもりでございます。
  248. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今私の方からは述べませんでしたけれども、当然扶養控除等については廃止を含めて検討せざるを得ないだろうし、今、厚生大臣がおっしゃったように、賃金体系が違う。しかし、もう今は日本も賃金体系が変わりつつあるというのが経済の実態ではないか。そうすると、実態に合わせてこういう児童手当制度もやはり将来を目指して変えていく必要があるということを付言しておきたいと思います。ぜひ誠実に御検討を賜りたいというふうに思うわけであります。  もう一つ、こういう失業が多くなって今大変だという中で、住宅ローンが払えずに、家を競売とかそういう形で追い出されてしまうというような状況が多いわけでございます。  先般も、新聞記事でございますけれども、バブル期は貸すだけ貸して、銀行はつれなく競りに出したというような言い方でございますけれども、実際に一カ月間ホームレス生活をせざるを得なかったというような事例が紹介をされておりました。  また、我が党の主張によりまして、例えば昨年の緊急経済対策ですか、ゆとり返済制度の特例措置というものをやりました。また、返済期間の延長という形で制度をつくりまして、これが結構利用されているようでございますが、それでも昨年の個人破産というものは十万件を超すというような、そういうような状況になってまいりました。  今実際に、あした各銀行の公的資金注入の申請をやるというようなお話でございますけれども、一般庶民感覚からすれば、銀行に競売されて家を失って、それで冷たい空に身を置きながら、銀行には公的資金をがばっと入れる、これはおかしいんじゃないかと、これが一般の国民の感情ではないだろうかというふうに私は思います。  いわゆるローン破産であるとか、そういうことを少しでも私は防いでいかなければいけないと思うわけで、経済対策としての住宅取得税制とかありますけれども、既にバブル期を初めとしてローンを背負っている人たち、こういう人たちにも何とか温かい手を伸べる必要があるのではなかろうか。既存の住宅ローンの利子を所得あるいは税額から控除するような、そういう制度を創設してはどうかというふうに我が党は主張しているところでございますけれども、これにつきまして大蔵大臣から御所見をいただきたいと思います。
  249. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このたびの住宅ローンにつきまして、従来の制度を根本的に拡大いたしまして、平年度で一兆二千億円という税制上の特例を、租税特別措置法の特例を設けたわけでございますけれども、これは申し上げるまでもなく、国民が非常に住宅を必要としておられる、そのときに景気対策としてこれはまた有効であるということから、大変に大きな特例を設けたわけでございます。  そういう議論をしておりますときに、これから借りる人がそういう恩典を受けるのであれば、既に借りて困っている人にもその恩典を及ぼす方が公平ではないかという議論は当然にあったわけでございますけれども、そこのところは実は甚だ申しにくいのですが、一つは、なぜ住宅かといえば、やはり住宅をつくってもらうことがこの際景気対策に役立つという、そういう意味合い。ほかのローンもいろいろありますけれども、それは、ですから、申しわけないが住宅だけにいたしますということと同じ意味で、住宅をつくってもらいたいわけでございますから、既につくった住宅については、どうもそのローンはちょっと考えにくいなと。  こういう特例はかなり目的的な特例でございますから、公平論を言い出しますといろんなことがあるというのはおっしゃるとおりだと思うんですが、そこは耳をふさがせていただきまして、この際の景気対策としての意味合いということで御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  250. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ちょっと御理解はしかねるわけでございますけれども。今まで一生懸命働いてローンを組んで、そしてそれが失業で払えなくなって家がとられちゃうと。その部分はやはり腑には落ちないわけですね。そういうことを考えて、ぜひ真剣に御検討を私はいただきたいというふうに思います。  なお、金融機関関係では、バブル期に提案型融資というものがあって、銀行とそれから一般消費者、しかも金融知識に欠けるところがある、そういうような問題が今生じつつあります。イギリスではビッグバンとあわせて金融サービス法というようなものができているようでございますけれども、私もそういうことをつくっていきたいというふうに思います。これについては、また別途質問をしたいと思います。  一点だけちょっとお聞きしたいんですが、金融の関係で、大蔵大臣は日債銀の関係でいろんなお話をされていますけれども、行政としての結果責任というようなことをおっしゃられて、その中で突然といいますか、故意、重大な過失がないといたしましてもというようなことが、故意または重過失ということが何回か出てまいるんです。今までこの予算委員会等の場において政策論とかいろいろやっていますけれども、故意または重過失というのは法律用語でございまして、もちろん答弁の中で将来の訴訟を見込んだ上での御答弁というふうに思っておりますけれども、この故意または重大な過失、どういう趣旨で使われておられるんでしょうか。
  251. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのお尋ねは、むしろ私の方がちょっと間違ったことを申し上げておったかもしれませんので、改めて申し上げさせていただきますが、国家賠償法がございまして、それに規定がございます。それは公務員がその職務を行うに当たっての問題でございますけれども、第一条は、「故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」、これが第一条の第一項でございます。第二項は、「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」と。  したがいまして、お尋ねの場合は第一項であって、私が第二項を頭に置いてお答えしましたのは、申しわけございませんでしたが、間違いでございます。「故意又は重大な過失」でなくて、第一項の「故意又は過失によつて」と申し上げるべきであったと思いますので、御注意をいただきましてありがとうございました。私もうかつに「重大な」と申しましたが、それは「故意又は過失」という意味です。
  252. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 過失責任は認めておるのかなと思って質問をした次第でございます。  関連質問をお願いいたします。
  253. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。松あきら君。
  254. 松あきら

    ○松あきら君 松あきらでございます。  短い時間でたくさん伺いたいことがございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  午前中の審議の中で経企庁長官は、景気の回復の兆しが見えてきたということで、兆し兆しと何回もおっしゃったように思いますけれども、私は今景気の回復の兆しが見えてきたとはどうしても思えないわけでございます。  今なぜ景気が回復しないのか、個人消費が伸びないのかと思いますと、第一に老後の不安があるのではないかと思います。そして、不透明な先行きの不安、やはりこれが大きいというふうに思います。年金、医療費そして介護など、社会保障への国民の不安がやはり消費をひどく落ち込ませている、あるいは冷え込ませていると思わざるを得ないわけでございます。調査によりますと、国民の約七割の方が老後の不安を感じておりまして、そして老後は公的な支え、つまり年金で支えてほしいと考えられているわけでございます。  そこで、私は本日、主婦でありまた母親であり働く者の立場から、年金問題を中心といたしまして、総理大臣並びに厚生大臣に質問をさせていただきたいと思います。  私は長い間宝塚歌劇団におりまして、実は宝塚歌劇団に労働組合があったということを申しますと皆さんびっくりするわけでございます。ほとんど御存じないわけでございます。  宝塚はことしで八十五周年ですけれども、実は今までは普通の会社と同じように雇用制度だったわけです。二十数年前になりますけれども、御存じでしょうか、「ベルサイユのばら」というのが大ヒットいたしまして、それまで何十年と宝塚は実は赤字続きの大変な経営状態でございまして、それが初めてとても大きく黒字になったわけでございます。そこで、何を考えたかと申しますと、つまり五百名近くいる生徒、いわゆる団員、のほとんど、初舞台から何年間かのほんの一部を除いて全員解雇をして、その黒字の分で退職金を払って自由契約制度にする、こういうことを考えたわけです。  私はその当時すみれ組合の委員でございまして、花組で二人だけ選ばれておりまして、当時は四組でございましたけれども、大変な騒ぎになって、五百名近くが全員集まりまして連日連夜いろいろな議論を闘わせました。  非常にびっくりいたしました。まず厚生年金がなくなる、そして健康保険がなくなる、大問題だったわけですね。とても華やかに見えますけれども、舞台をやっていますと、空気が悪いところで公演するのでよく肺の病気とかになるわけです。それと、ライトがおっこちてくるとか大道具が倒れてくるとかせりがおっこちて、けがは本当にしょっちゅうあるわけなんです。  ですから、健康保険が使えない、あるいは厚生年金ずっと掛けていたのにどうしようか。結果は、半年以上闘いましたけれども敗れまして契約制度になりました。二十年払わないと厚生年金いただけないので、私もあと何年か残りの年数を自前で全部毎月大変な思いをして払ったという私自身の経験からしまして、やはり公的な支えがないと非常に不安であるという、そういう体験をいたしました。  そこで、きょうは不況下における厚生年金の事業者による保険料の未払いについてまずお伺いをしたいと思います。  大手の企業も今企業年金が問題になっておりますけれども、不況で中小企業が倒産したりリストラが進みまして、保険料を支払うのも大変な企業がふえているわけでございます。例えば、せっかく買った機械設備を滞納の保険料を払うために売り払う、まだ足りなくて工場を一つ閉鎖する、あげくの結果は業績が落ちて倒産したという事実も聞いているわけでございます。経営の悪化で保険料の支払いができなくなってしまってその結果会社が倒産してしまっては、従業員にその後の期間に相当する厚生年金も当然のごとく支払えない、こういうことになるわけです。こんな事実を放置しておくわけにはいかないわけでございます。  年金のシステムを安定化させることは、国民生活にとりまして先ほど来出ております金融システムを安定させると同様、あるいはそれ以上に極めて重要であると私は思うわけでございます。  金融安定、そういうことで、先ほども同僚議員から出ましたけれども、多額の公的資金が金融機関に導入されまして、ひいては多額の借金を抱えるゼネコン等が救済されることになる。国民生活に直接関係する年金システムの安定化には、例えば今例に挙げたような事態に対応するためには十分な公的資金による措置がとられていないわけでございます。これが現状なわけでございます。  そこで私は、このような現状にかんがみまして次の提案をいたしたいというふうに思います。  経営の悪化により保険料の支払いができなくなった事業者について、例えば時限立法で景気回復するまでの二、三年間は公的資金による保険料の支払いを担保する保険制度を創設する。すなわち、未払いの保険料に相当する金額を事故発生のときから一定期間保険会社または公的機関が会社または事業者にかわって支払ってくれるわけです。その保険料相当金額は公的資金によって賄って中小企業の経営をバックアップするという、こういうシステムを構築したらどうかと。こうすることによりまして保険料の未納、不払いに起因した企業の倒産を防ぐことが可能になるわけでございます。これはひいては働く従業員のためにもなるというふうに思います。  また、保険料の支払い猶予については、行政の運用に任せるのではなくて、きちんと法律に裏づけられた保険料の支払い猶予制度、これを創設していただきたい。  この二点を提案させていただきたいと存じますけれども、厚生大臣並びに総理大臣の御意見を伺いたいと思います。
  255. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 予算委員会におきまして宝塚の花形トップスターだった松あきら議員とこうして質疑応答できますことを大変うれしく思っております。  こういうお話からしてはいけないのかもしれませんが、先般、ブラジルにおります私の大変親しい友人の息子さんと麻路さきさんが結婚されまして、私お祝い申し上げたんですが、そのときたくさんのファンが来ておりまして、改めて宝塚の人気の高さを大変うらやましく実は思ったような次第でございました。  ただいま議員から、宝塚時代の年金をめぐりまして大変御苦労されたお話をされ、みずからの体験を交えて御質問がございました。  このうち、保険料の具体的な問題につきましては後ほど厚生大臣から御答弁申し上げますが、私から総括的にちょっと申し上げたいと思います。  まず、公的年金につきまして、今後、少子高齢化が進展する中でありましても、将来にわたり安心して年金が受給できるようにすることが必要でございまして、厚生年金保険料は報酬に応じ被保険者と事業主が折半で負担するものでありまして、事業を継続する以上保険料は必ず納付していただくものであります。  しかし、現下の御指摘のような経済状況の中で保険料の納付が困難になる事業所が増加していることは承知いたしており、個別の事業所の事情に応じた計画的な納付などの指導を行っておるところでございます。  政府といたしましても実情は十分承知をいたしておりますが、先ほど幾つかの点について具体的な御提案もございました。本件につきましては厚生大臣から答弁をしていただきます。
  256. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 包括的には今、総理の方から御答弁されたとおりでございますが、まず二つございます。  一つは、保険料支払い猶予制度を設けたらどうかという点につきましてでございますが、今、総理お話しになりましたように、年金制度というのは被保険者と事業者が負担する保険料によって成り立っているのは申し上げるまでもございません。そして、年金制度を安定的に運営するためにも保険料を確実に納付していただくことが前提になっているわけでございます。厚生年金保険料というのは報酬が支払われるということを前提にいたしておりますので、企業が存続する限り報酬が支払われる、そうすると被保険者と事業者が折半をして負担するということになっておりまして、毎月の保険料は翌月末までに事業者が一括して納付するということになってございます。  ところで、今、総理も述べられましたが、それでは非常に経済がこういう困難な状況にあるとき一体どうなるのかという点でございますが、実際の徴収に当たりましては、個別の事業所の事情に応じまして計画的な納付を指導しております。  ちょっと具体的に申しますと、納付期限を過ぎても納付のない事業所に対しましては督促状を発行する。督促状の指定期限を過ぎましても納付のない事業所に対しましては、延滞金の賦課と、原則として滞納処分の実施をすることができます。しかし、実際的には滞納処分を行う前に今申しましたいろいろな指導を行っておりまして、事業主と社会保険事務所の職員とが面談をいたしまして、未納原因の確認をする、あるいは保険料の納付方法等について具体的に相談するということをして指導しております。また、事業所の経営状況を考慮しまして、滞納分の保険料の分納など、あるいは保険料納付計画の作成等をいたしまして、当該計画の履行を指導しているような状況でございます。  今、委員のせっかくの御指摘ではありますが、支払い猶予制度というのは、国民年金の場合は個人事業者でございまして、俸給の支払いということではないものですから、これは免除制度というのがございますが、サラリーマンの加入する厚生年金にはそういう制度を設けていないということでございます。  それからもう一つ委員の御指摘は、経験からして、払えない中小事業者の厚生年金保険料につきまして支払いの代行保証制度をつくったらどうかという御指摘でございますが、これも先ほど申しましたように、事業が継続して報酬が支払われる限り納めていただくという建前になっておりまして、現在のところ、支払い代行保証制度のようなものを設けるということは非常に困難じゃないかとは思っております。  それはなぜかといいますと、支払い不能になった事業主にかわって保険料納付を行うためには、その財源の補てんをだれかがしなくちゃいけない、それを公的給付でやれというお話ですが、これもなかなか問題がある。そしてもう一つは、保険料を納めなくても支払い保証制度がかわりに支払ってくれるというモラルハザードというのがございまして、これは制度の維持をなかなか困難にさせますから……(「時間が両道なものだから」と呼ぶ者あり)失礼しました。私は両道と考えてはおりませんでした。  そんなことがございまして、モラルハザード等もありますので、なかなか御期待に沿い得ないという感じを申し上げざるを得ません。
  257. 松あきら

    ○松あきら君 伺いたいのですけれども、とにかく時間がございませんので。  今の財源の問題でございますけれども、金融機関にそれだけのお金を出すのであれば、こういうところにきちんと公的資金を出すべきだと私はまず申し上げたいです。こういうシステムを構築することについては、いろいろ法的なまた制度的な問題もあろうかと思いますけれども、どうか総理、政治家として、一国のリーダーとしてぜひ実行に向けて決断をしていただきたいというふうに思います。これはもう時間がございませんので、次に参ります。  次に、今お話しありましたように、もちろん厚生年金は強制加入のはずでございますね。まず一言。
  258. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) そのとおりでございます。
  259. 松あきら

    ○松あきら君 ところが、最近特に、中小企業が売り上げの落ち込みで保険料を滞納すると、社会保険庁の職員が当該中小企業に脱退を勧めているという、こういう事態を聞き及んでおります。倒産させるのには忍びないという温情で、偽装休業させて脱退させるというような方法をとっている。これはいわゆる強制脱退でございますけれども、この実態を厚生大臣は把握しておられるでしょうか。
  260. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 福島県の例は、昨年の十月ごろ衆議院予算委員会でも問題になりまして、その後NHKの「クローズアップ現代」でも取り上げられております。そのことはよく承知しております。それから、青森の問題もございますが、これはもとへ戻してございます。もう簡潔に申し上げます。それから、神奈川で偽装工作等が行われたと。これは集団的に徴収率を上げるためにやったのではないかと言われておりますが、そういうことはございません。  私どもとしては、偽装休業とかあるいは全喪失というようなことで仮装でやられることは、この制度を維持するために非常に影響がございますので、これは厳正にやってまいりたいと思っています。
  261. 松あきら

    ○松あきら君 今私が申し上げていないのに、先に福島県のお話とかNHKの「クローズアップ現代」のお話をしていただきましてありがとうございました。私も申し上げようかなと思ったんですけれども、大した問題ではないのに国民放送のNHKが取り上げる、きょうもNHKが放送しているわけでございますけれども、ということはあり得ないと思います。福島でも、県の独自の調査で百二十三社ですか、ということは、もしそれぞれの県がきちんと調べたら、もうこんな全国で二百六十一社なんという状況じゃないんですね。  それで、徴収率が今現在、もう時間がないので伺えないんですけれども、九九・六%。この実態は、本来そういうことはあってはならないんですけれども、今申し上げましたような温情による休業ということにしたらどうかということだけではなくて、それぞれの事業所の成績、いわゆる徴収率競争が起こっている。自分の事業所の成績にかかわるということで脱退を勧めている。これにつきまして知っていらっしゃるでしょうか。
  262. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 宮下厚生大臣、簡潔に答弁願います。
  263. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 偽装休業等は、集団的に指導して徴収率を上げているというような報道があったようでございますが、これは私どもの社会保険庁の問題でございますからきちっと調査をさせましたが、そういう徴収率をアップするためにというようなことはございません。
  264. 松あきら

    ○松あきら君 本当にないというふうに私はどうしても思えないわけでございます。この偽装休業によって脱退して、例えばサラリーマン、手取り二十万の方だそうですけれども、厚生年金の場合ですと本人と奥様、専業主婦。二人で一万九千八百円払っていた、ところが脱退しましたので今度は国民年金になった、そうすると二人で二万六千六百円を払わなきゃならない。つまり、手取り二十万の二万六千六百円、家計費が非常に圧迫される、日々の家計費は圧迫される、そして最終的にいただける年金の受取額も激減する、二重の苦しみを受けるわけでございます。  このような違法行為をぜひ改めさせると同時に、さきに私が申し上げましたような支払い猶予制度あるいは保険制度等を創設することが、国民にとりましてやはり将来安定した、かつ信頼し得る年金システムを構築することに直接につながるというふうに思います。  もう時間が参りまして、このほかにも環境問題、教育問題いろいろございますけれども、また次の機会にさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  265. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。
  266. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で魚住裕一郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  267. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、山下芳生君の質疑を行います。山下芳生君。
  268. 山下芳生

    山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。  私は、今景気対策のあり方が問われていると思います。  国民の消費生活の実態がどうなっているか。先日、ショッキングな報告がありました。総務庁の家計調査によると、消費支出に占める食費の割合であるエンゲル係数が初めて二年連続で上昇した。一九六三年に調査を開始して以来ずっと低下傾向を続けていたこのエンゲル係数が二年連続上昇した。異常事態であります。  この係数を階層別に見ますと、高額所得層は横ばいないし低下になっているんですが、中低所得層の上昇率が大きい。これはなぜかといいますと、長引く不況で中低所得層の家計の実収入がどんどん下がっている。そのもとで、食費は安易に削れない、衣服や教育や旅行、これらの支出を大きく削らざるを得ない。エンゲル係数の上昇というのは、私はこういう各家庭の生活防衛行動の反映だと思います。  そこで、総理に伺いますが、消費に赤信号、赤点滅している中低所得層への手厚い支援こそ景気対策の中心柱とするべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  269. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私も、この間、そのエンゲル係数というものが久しぶりで、本当に久しぶりですが、三〇、その辺の数字でございましたね、ははあと思いました。しかし、そのぐらいの数字ですから危機的な数字ではありませんけれども、エンゲル係数というものがもう一遍報道にあらわれたということは、確かに今相当そういう方々が切り詰めた生活をしていらっしゃるということを表現していると思います。
  270. 山下芳生

    山下芳生君 私は、その層への手厚い支援こそ景気対策の中心柱となるべきだと思います。それはもうどなたも否定できないと思うんですね。ところが、政府が今やろうとしている税制改定を見ますと、国民の多くが九八年と比べて九九年が増税になる。  私は、増税になる人たちの負担増の総額は幾らになるのか、またどの層にその負担増がかぶさってくるのか、政府の統計をもとにサラリーマンを対象に試算をいたしました。このグラフであります。(図表掲示)上の赤い部分に示したそれぞれの階層の増税の総額を合計いたしますと、一兆円を超える。しかも、増税の大半は年収八百万円以下の中低所得層に負担がのしかかる。  私は、赤信号の点滅している中低所得層の生活を応援するのじゃなくて、逆に一兆円の増税をかぶせる、所得を奪う、これはやり方が逆じゃありませんか。これは総理、ぜひお答えいただきたい。
  271. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は従来からしばしば御議論になっているところでございます。  ただいまお挙げになりましたパネルにもございますように、それは九八年、九九年の間に線を引いておられまして、なかなかちょっと気がつかないようなところですが、九八年に比べると九九年はこうなっているということを言っていらっしゃるわけですね。  それで、九八年というのは、御承知のように一遍限りの大きな定額減税でございましたので、このときに非常に高い課税最低限になりました。四百九十一万円という、もう世界のどこにもない、イギリスは百万円ぐらいですから、アメリカが二百六十六万円とか。四百九十一万円ということによって、おっしゃるように大変に大きな減税をしてたくさんの納税者をなくしました。多分八百万ぐらいなくなりました。  本来の日本の課税最低限は三百六十一万円でございますから、そういう大きな減税を一遍九八年にした。ただし、それは一年限りでございます。ほうっておけば九九年には三百六十一万円に戻るわけでございます。  ですから、恒久的な減税を約束してそれをやめてしまったのなら御批判がありますけれども、一遍限りの減税を一遍済ませたんですから、九九年分の所得はどうするかということは新しく考えなければならなかった。それで、御承知のように二〇%の定率減税を累進に忠実にやったわけでございます。  しかし、答えはそこはまたおっしゃるとおりなんで、前の年に比べればとにかく八百万人ぐらいの納税者が帰ってきてくれたわけですから相当そういうことになっているはずであって、限界では前の年よりは税金が多くなっている。それは認めます。  しかし、何で景気回復を目指しているときにそういうことをしたかとおっしゃれば、私どもは景気回復するために何でもしなきゃならないと思っていますが、将来の日本に明らかに害になるようなことだけはしてはいけないだろう。すなわち、二度続けてその四百九十一万円という最低限の減税をいたしましたら、恐らくこれをもう取り戻すことはできません。そういたしますと、日本は非常に高い課税最低限と非常に低い税率、それを持って二十一世紀に向かわなきゃなりませんから、とてもそれでは私は財政はやれないという思いがいたしました。  おっしゃいますような批判は存じておりました。おりましたが、ここはしかしやっぱり一遍限りの減税はもとに返って、そしてどれだけの減税ができるかということを新たに九九年にやり直させていただいたと。それが御提案をして御審議をいただいておるところの今の税制でございます。  ですから、おっしゃいますことは、昨年との対比であれば決して間違ったことをおっしゃっていませんが、その点はそういう意味で将来の日本を展望した我が国の税制として御理解をいただきたいというふうに思います。
  272. 山下芳生

    山下芳生君 私は、今なぜこの時期に、中低所得層に合計すれば一兆円、去年とことしを比べると増税になるんです。問題は、去年とことしの納税額がふえるか減るか、これが消費に大きな影響を与える、これは間違いないんですね。エンゲル係数の話をいたしました。中低所得層の消費生活が大変深刻になっている。統計開始以来初めて上昇したわけですから、そういう赤信号が点滅した状態、しかもその点滅している状態の層になぜ一兆円の負担をかぶせるのか、こういう問題を問うているわけです。  私は、この増税が消費にどう影響するのかということも同時に試算をいたしました。下の青い部分に一兆円の増税が消費にどうあらわれるか、これを示しております。各階層ごとの消費性向を用いて試算いたしたわけですが、合計しますと八千五百億円、この層の増税による消費の減が起こります。八千五百億円というと決して小さくありません。例えば、政府の九九年経済見通しでは家計消費は〇・五%増、一兆六千億円増と見込んでおりますが、それと比べても半分に匹敵する額であります。冷え込んだ中低所得層の消費にこんなに大きな新たな負担、追い打ちをかけていいものか。私はこれは今やるべきじゃないと。  これは、総理にぜひ御見解をお願いしたいと思います。
  273. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 何しろ八百万人ぐらいの納税者がリタイアいたしますと、その差額は確かに一兆円ぐらいになると思います。その御計算も間違っていないし、マクロで計算したら一兆円の増税があったらそれが八千何百億円かの消費減になるかもしれない。そこもきっとそんなに私は異論のある部分じゃないと思うんです。  ですから、問題は、なぜ今こういうことをしたかということの御批判を受けているわけで、先ほど申しましたような考えでいたしました。しかし、そのかわりこの減税は昨年の減税と違いまして一遍限りではございません。その次の年もその次の年もこれでいきますから、こういうことは二度起こるわけではございません。  それからもう一つ、これは私どももこの批判には非常に答えにくい問題だと思っていましたところへ地域振興券というお話が出てまいりました。これは、必ずしもそういう目的とばかりは言えませんでしたが、この金額が七千億円ぐらいと推定されますけれども、まあ何ぼか八千億円というものと似通っている金額であって、これは決してそれが立派な言いわけになるというほど思っているのではないのですけれども、しかしそういう効用を果たしていることはこれまた間違いでもないということも一言言わせていただきます。
  274. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、大蔵大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、確かに今年度の特別減税の影響は生じていることは事実でございます。税は低いにこしたことはない、また低ければそれだけ消費が、可処分所得もふえるだろうということも否定し得ないことでございますが、今申し上げたような趣旨で、政府としてはこの体制をそのまま続けていくことはできないということで今回の税制改正に踏み切ったわけでございます。  恐らく、御党としても課税最低限を今のままどんどん特別減税でふやしていくということについての賛成はなかろうと思いますし、またある意味で、恒久的減税を行うことについての反対も、それは引き下げ率についての、定率についての議論はいろいろお聞きしておりますが、この点についての総論としての反対は私はなかろうかと思います。  したがいまして、そうした税制全体の改正、そして同じような特別減税を続けていくこともできないということでこのような税制に取り組ませていただいたということにつきまして、ぜひ御理解をいただきたいと思います。  なお、消費への影響ということは、当然税につきましてそのような、今年度と来年度の差異が生まれれば消費につきまして影響なしとはしないと思いますけれども、この数字そのものがどういう試算であったかということでございまして、そういった意味で影響は無視することはできないと思いますが、申し上げたように、大蔵大臣お話しした趣旨で、今年度としてはぜひ将来にわたる恒久的減税を行うということによって将来にわたる消費に対するマインドも生じさせていただきたい、こういう趣旨で今回の税制改正を行ったということでありますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  275. 山下芳生

    山下芳生君 私は、今景気対策の中心柱はどうあるべきか、これが問われているということを問題提起しているんですよ。この一兆円の増税が今一番消費生活が冷え込んでいる層にかぶされる、それでいいのか、苦しい国民の暮らしを守るのが政治の役割じゃないのかと。それをいとも簡単に、去年一年限りだった、ことし打ち切られるのは当然だと。打ち切られることによって一兆円増税が負担される。これはごく一部じゃないんです。サラリーマンの大多数、多くの部分がそういう負担増になるんですから、一番苦しんでいるところをさらに苦しめて何でそれで平気な顔ができるのか、私はそう思いました。  それから、地域振興券のことも言われました。言いわけになるかならないかということですが、ならないと思います。七千億円のうち高齢者分の三千億円は基本的には非課税世帯が対象です。九八年に一人一万円の給付を二回やっておりますから、これは同じだけですので、可処分所得の押し上げ効果はありません。残りの子育ての分についても四千億円ですから、これは一兆円奪われるということの穴埋めにはなりません。私は、本当に今一番苦しんでいる人たちにさらに一兆円という大増税を押しつけることについてもっと真剣に考えなければ、胸を痛めなければならない、そう思っております。  そこで、今私が思うのは、国民の求めている減税というのは政府がやろうとしている減税ではない、中低所得層に負担をかぶせ一層消費を冷やすような減税ではない、このことをはっきり言いたいんです。  日銀が二月四日に発表された生活意識に関するアンケート調査では、支出をふやす条件のトップとして消費税率の引き下げ、これが七七%。それから、全信連総研が全国の中小企業を対象にした特別調査、一月四日発表でも、必要と考える景気浮揚策のトップは消費税の減税で、六八・五%です。買う側も売る側も消費税の減税を求めている。政府が幾らずっと拒否しても、国民の間で消費税減税を求める声がずっと高い。総理、なぜこの声が高いとお思いですか。
  276. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、だれでも消費税は低い方がいいと思うからじゃないですか。
  277. 山下芳生

    山下芳生君 今の国民のこの声の中身をもっと真剣に受けとめてほしいですよ。  今、国民は、税金が安ければ安いほどいいなんて言っているんじゃないんです。九七年四月に三%の消費税が五%に上げられた。それで景気が冷え込んだ、消費が冷え込んだ、暮らしが大変になった。それを実感しているから、安ければ安いほどいいと言っているんじゃないんです。せめてもとの三%に戻してほしい、それが景気対策として一番効果がある、支出をふやすためにはそれが一番効果がある、これが国民の声として噴き出ているんですよ。税は安ければ安いほどいいなどという国民の感覚、そういう認識自身が私は大いにずれていると思うんです。  総理、なぜ消費税の減税の声が高いのか、総理の御認識を伺いたいと思います。
  278. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 二%引き上げさせていただきましたのは、日本財政考え、特に社会保障関係に要する費用を考えましたときに、どうしてもこれを財源として考慮しなきゃならぬということで万やむを得ず引き上げさせていただいたわけでございまして、その他の財源の考慮が可能だという御指摘があれば承らせていただきたいと思います。
  279. 山下芳生

    山下芳生君 国民の声をどう受けとめるのかということを聞いているんですよ。
  280. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) そうした声もあることは承知をいたしております。
  281. 山下芳生

    山下芳生君 その声を真剣に受けとめて、消費税の減税について私は今本当に検討すべきだと思います。国民がこういう強い要求をずっと上げ続けている背景は、私は消費税の減税の持つ効果、これがはっきりしているからだと思います。  第一に、消費税減税というのはすべての国民の実質所得を引き上げる。五%が三%になれば二%の実質賃上げ効果を持つ。第二に、毎日の売り買いの現場でこの消費税が重いおもしになっておりますから、これが軽くなる。消費者のマインドが確実に温まる。それに加えて、所得の低い層ほど減税の効果が大きくなってあらわれる。これが消費税の減税です。  ある消費者団体の家計簿調査では、消費税額の収入に占める割合、これは年収四百万円未満の層で二・九二%、一千五百万円台で一・五〇%、収入の低い層が高い層の二倍の負担率になっている。この税率を引き下げれば、これは所得の低い人にほど負担軽減効果が大きくなってあらわれる。先ほど中低所得層の消費が今一番冷え込んでいる、暮らしが冷え込んでいる、このことを申しましたけれども、そこに一番厚い減税になる、こういう特徴を持っていると思うんです。  私たち日本共産党は、他の会派の皆さんと共同して消費税の減税法案、三%に当分の間引き下げる法案を参議院に提出しておりますけれども、ぜひこれは真剣に議論をして国民の期待にこたえたい、そう思っております。  総理国民の多数の声にこたえる、それで政治の信頼を回復する、冷え込んだ家計消費を温める、そのためにも消費税の減税、これはぜひ真剣に検討すべきではないか。いかがですか。
  282. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど九九年分の所得税負担が層によって昨年より多いということを御指摘になって、それは私もそのとおりであるということを申し上げました。  それで、今また消費税をもう二パーセント、ポイントを減らしたら、これは恐らくそれだけ消費、それだけといいますか、かなりの消費増になるではないか、国民はそれを望んでいるということもおっしゃって、私はそれを間違いであると決して申し上げるつもりではないんです。  むしろ、国民はそういうことはよく御存じで、それだけの財源をじゃどこから持ってくるんだ、どういうそれなら財政をやるんだということを多くの国民はお考えになっておられる。今のお話は、それならそうだ、みんな共産党に投票しようということにならないのは、どうやってそれをやっていくんだと、その方がむしろ問題なんで、今おっしゃったことなんかある意味でみんなわかっていますよ。それをどうやって何の歳出を削って、あるいはどういう財源を持ってきてやるんだということを、それをこそ国民が問題にしておられるんだと思うんです。  私どもがやっていることが絶対全部合っているなんて申し上げているのではないので、問題はそんなところじゃない、もう一つ先のところで国民考えておられるんじゃないんでしょうか。
  283. 山下芳生

    山下芳生君 先のところで考える、そういう問題を私は提起しているんじゃないんです。今景気が大変深刻になっている、そして中低所得層の消費が冷え込んでいる、そして多くが消費税の減税を望んでいる。私たちは財源だってちゃんと提起していますよ。ゼネコン型の公共事業の浪費、これを計画的に削減していく、長期的に半減する、そういうことをやればこれは財源だって確保しながら消費税の減税は十分できる。これは根拠を示して提案させていただいておりますよ。  私は、これだけ国民が消費税の減税を求めているのに、もういろんな理由を言ってあくまで拒否し続ける。これはなぜか。これは政府の皆さん、総理自身が消費税の将来の増税、これを予定しているから、減税したら増税できない、そのときの障害になるから、こういうことだと思うんです。  実際、最近発表されました経済戦略会議最終報告には、消費税の増税は不可避、こう書いてあります。堺屋長官自身も先日のテレビで同趣旨の発言をされました。私は、国民の多数が望んでいる消費税の減税にあえて逆行するようなこんな発言をされる、長官自身が消費者のマインドを冷やすような発言だったと思います。  ここで、総理にお伺いしますけれども、総理も長官と同じ認識ですか。消費税の増税は不可避、こういう認識ですか。
  284. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今の時点では消費税を上げるべき環境にはない、こう理解をいたしております。
  285. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 私が申し上げたというのはNHKのテレビ番組だと思いますが、そのときに日本財政構造を将来どういう形で考えるかという例を挙げまして、アメリカとの対比で、アメリカの場合には約五〇%が支出の削減によって、三〇%が景気の上昇によって、そして二〇%が増税によって行われた。その二〇%に当たるものを日本で探れば消費税の一%余りの増税だろうというようなことを申し上げたので、増税をしろ、あるいは今不可避だというようなことを申し上げたのではございません。  その前に、今税制の面から大蔵大臣がいろいろとお答えになりましたが、景気対策ということから委員の御質問に対してお答えしたいと思います。  委員がおっしゃるその問題点は……
  286. 山下芳生

    山下芳生君 もういいです。
  287. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) ちょっと待ってください。  低所得者の、増税をするとこういうぐあいに消費が減るという数字は、平均消費性向では確かにそのとおりでございます。しかしながら、必ずしもそのとおり減税効果、つまり可処分所得の増加効果があらわれるとは限りません。また、もう一つの問題として、将来不安とか将来に対する夢とかいうようなものの構造的な問題もやはりこれは無視できない、景気に影響のある問題でございますから、そういう点も考慮して、税制のあるべき姿、これが日本国民経済に与える、国民の士気、経済行動に与える問題としていろいろと検討した結果、今回の税法をとったのでありまして、一年前とお比べになってここだけがという取り上げ方で景気対策云々とおっしゃるのはいかがなものかと思います。
  288. 山下芳生

    山下芳生君 先ほど長官がおっしゃいましたよ。  長官がおっしゃった、消費の支出がどういうふうに所得によって影響するか。長官はそうおっしゃいますけれども、私たちは消費性向で出した。しかし、ここの層が一番消費性向が高いというのはもうはっきりしている。ここの層の所得が減ったら大きく消費が減るというのは間違いのない事実ですよ。  低所得層のところにこれだけ大きな負担増をかけるということを、本当に真剣に考えずに長い目で見ろと言ったって、今一番大変な事態に陥っている人を放置しておいて長い目で見ろというそんな考え方は、私は国民から見たら通用しないと思います。皆さんがそう感じているのは、消費税の減税を本当に強く求めているのはそこに根拠があるというふうに思うわけです。  それから、経済戦略会議が主張されている今の景気回復と財政の再建、これを両立させる、本当にこの立場に立つのであれば、私は消費税の増税に頼っては絶対にいけないというふうに思うわけです。それは、日本の消費税の歴史がそれを物語っております。  自民党の四十一回の総選挙の広報を持ってまいりました。消費税率の改定について、子供や孫の世代のことを考えればこれ以上の財政赤字の拡大は許されません、このため消費税を三%から五%に上げるということを示唆されました。そして、消費税の税率が引き上げられた。引き上げられた九七年、日本の国と地方を合わせた財政の赤字というのは約四百六十兆円でした。それが今年度の末に百十兆円ふえている。孫子の代にツケ回しをこれ以上させてはならない、こう言っておきながら、たった二年間でツケがふえちゃった。  これは、私はしっかり教訓を導き出す必要があると思うんですね。第一に、消費税の増税が消費を冷え込ませた、そして景気を悪化させて税収を落ち込ませた。第二に、消費税の増税というのは、これは一%上げれば二兆七千億円税収が入ってくる。政府にとってはこれは打ち出の小づちですよ。これを握っていることで一振り二兆七千億円。そうすると、公共事業のむだ遣いなどを削減するという真剣さがやはりなくなってくる。私は、景気と財政の再建を両立させる、それだったら消費税の増税というのは前提にしてはならない、こう思っております。  総理経済戦略会議にそういう目標を掲げてあるんですが、先ほど総理は消費税の増税について今は考えていないとおっしゃった。将来はどうなんですか。
  289. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、経済戦略会議答申につきましては、私としては真剣に取り組んでまいりたいと思っておりますが、ここで消費税関係につきましては、消費税のインボイス方式の導入あるいは納税者番号制度の早期導入等について答申をいただいておりまして、この際、経済戦略会議におきましても、消費税を増税しろというようなことは具体的に申し上げておらないと考えております。  申し上げましたように、消費税につきましては現下の状況の中でこれを引き上げる状況にない、こういうことだろうと思います。
  290. 山下芳生

    山下芳生君 私たちは景気と財政のこの二重の危機を打開する積極的、建設的提案を持っております。先ほど申しました。消費税の減税で家計への直接支援をする、そして社会保障の手厚い対策を打つ、公共事業のむだ遣いを削る、この方向でこそ二つの危機を打開できるのだ、こういうことを訴えております。私は、これまで消費税の減税についてたくさんの方が主張しているにもかかわらず、なかなかそれにこたえようとしない、そういうことが政治不信を広げている、こういうことも思っております。私たちは法案を出しておりますので、ぜひ審議をしていきたいというふうに思います。  次に、私はもう一点聞きたいんですが、昨年来銀行のあり方が大きな問題となってまいりました。私たちは、銀行への巨額の税金投入は銀行のモラルハザードを招くとして反対してまいりました。この問題をめぐって今新たな事態が生まれております。  この間、大手ゼネコンによる銀行への債権放棄要請が相次いでおります。実態がどうなっているのか、債権放棄要請はどのようにやられているのか、私は調べてみました。例えば青木建設、経営再建計画を出しております。そこに、取引金融機関に対する債務免除の要請を余儀なくされるに至りました。債務免除要請の総額約二千億円に対して、主力銀行二行でおおむね八割、その他の取引金融機関でおおむね二割、主力銀行二行については大筋として御理解をいただいております、こうあります。主力二行とは興銀とあさひ、いずれも公的資金を申請すると表明している十五行に含まれている銀行であります。  その他明らかになっているだけでも債権放棄要請を行ったゼネコンは、フジタ二千五百億円、長谷工コーポレーション三千五百億円、佐藤工業一千二百億円、藤和不動産二千五百億円、合計一兆円を超えます。いずれも軒並み資本注入を申請する銀行ばかりに要請をしているわけであります。  そこで伺いますが、金融再生委員会公的資金投入の策定にこうした債権放棄を考慮されるんですか。
  291. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 先生御案内のとおり、今回の資本注入の大きな目的は、一つは不良債権の処理、もう一つは貸し渋りと言われる現象の防止、このようなものであることは御案内のとおりかと思います。  この不良債権の処理という場合に最も望ましいのは、不良債権の最終処理と申しまして、それぞれの金融機関のバランスシート上からこの資産を、もう腐り切った資産でございますけれども、完全に消去してしまうということが最も望ましいとされていること、これもまた御案内かと思います。今、先生御指摘の債権放棄と申しますものは、いわば一番望ましい不良債権処理とされるバランスシートからの最終的な消去の一つの形態であるということをまず御理解賜りたいと思うのでございます。  しからば、我々の今回の資本注入、先生、今もまた税金とおっしゃいましたけれども、これは借入金を原資とする投融資でございまして、決して税金の直入ではまずございません。いずれにしても、この資本の注入というものと金融機関による債権放棄とをどのような関係のもとで認めるかということを金融再生委員会は論議をいたしました。その結果、私どもといたしましては、債権放棄に当たりまして、まず一つは、債務者と申しますか借入人と申しますか、先生が今言われた例で言えばゼネコンと言われるようなところではっきりした経営責任をとってもらう。これが第一。  それから第二番目は、そのゼネコンなりなんなりが、その地域社会なり、一般に連鎖倒産を起こすとか、そのような意味で社会的、経済的な影響が、もし単純な倒産をしたならば、単純な破産処理をしたならば非常に大きいというようなケース。  それから第三番目に、これは、破産をしたときよりも回収増がその金融機関にとって見込まれる、こういうような場合に限って債権放棄をした金融機関に対しても資本注入することを認めるということで、こういう条件づきで可能性を認めるということを基本方針でうたったところでございます。
  292. 山下芳生

    山下芳生君 これは認めるということであります。公的資金がゼネコンなどの債権放棄にも使われるということであります。  これは問題なんです。これらゼネコンというのは、銀行と一緒になってこれまでバブル経済を引き起こしてきた。土地の値段をつり上げた。都会では地上げをやって住民を追い出した。多くの国民を泣かせて、裁判になっている例も少なくありません。  銀行への公的資金注入申請が七兆四千五百億円と言われておりますが、私は、銀行への資本注入、これもけしからぬと思います。しかし加えて、うち一兆円が銀行をトンネルにしてゼネコンに流れていく。これは、バブルの犠牲者である国民の税金がバブルを引き起こした張本人を救うために使われる。こんな矛盾はないじゃありませんか。総理、そう思いませんか。
  293. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 当該債権放棄をした金融機関に投入される資本金というのは行きっ放しではありません。こちらが回収するんです。そこのところをよく理解されないから、そういう物言いになってしまうんだろうと思って聞いておるわけでありますが、これは投融資であります。もしローンであれば、期限どおり返してもらうものであります。  投資であれば、その投資の、我々の有価証券、優先株であれば優先株を市場で消化するなり、あるいは直接に優先株の消却を求めて当該金融機関から返していただく、そういうたぐいのお金なんです。これが投融資ということの意味であります。  したがって、その投入されたものが資金繰り的には、なるほどそういうふうな、今、先生がおっしゃったように債権放棄先に流れるという形にもなるでしょうけれども、しかしそれはあくまで当該金融機関責任においてちゃんと政府に返していただくお金であることをよく御理解お願い申し上げたいと思います。
  294. 山下芳生

    山下芳生君 それは返ってくる場合もあるでしょう。しかし、返ってこなかったじゃないですか。日債銀、返ってこなかったじゃないですか。注入したら紙くずになったじゃありませんか。それをあたかも返ってくるようにまだ言っている。それは本当に説明を私は理解できません。  債権放棄と言うのでしたら、私は、銀行のゼネコンに対する債権放棄、こんなものをやる前に、例えば阪神・淡路大震災で被災された方は住宅が自然災害で壊れました。そして、今二重ローンを、ずっと壊れた家のを払い続けています。こういうことをやらないで、ゼネコンへの債権放棄だけやる。これは本当に逆立ちした政治だと言わなければなりません。  私たちは、こういうゼネコンの債権放棄、これに対する公的資金の注入、これは大いに国民の皆さんと一緒に批判し、これをストップさせるために頑張りたい、そう思っております。
  295. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 委員長
  296. 山下芳生

    山下芳生君 いいです。答弁は結構です。  質問をさせていただきます。  債権放棄を本当に今どういう形でやろうとしているのかということを私は議論したわけです。国民に対してそういう説明のつかないことをやろうとしている。じゃ、どうぞ。
  297. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 二点申し上げたいと思います。  一つは、つぶれました、これは非常に不幸な例です。それはどうしてかというと、早期是正措置というものが十分発動する状況になかったんです。今度の早期是正措置というのは債務超過になる前に、そうして債務超過になりますと、これは最終的には再生法の世界でも、こちらの方は税金で面倒見なきゃしようがない、そういう仕組みになっております。そこがもう健全化法と全く違う世界であります。  そして、今度の早期健全化法というのはどういう意味で早期かといえば、債務超過になって税金で国民の皆さんに迷惑をかける、こういうようなことを起こさない前に早期に措置をしようと、そういう制度がもう発動されておりますから、そういうことをモニタリングして起こさないようにしていこうということですから、今度は長銀であるとか日債銀であるとかというような例は我々としてもう絶対起こさないようにしよう、こういうような仕組みのもとで私どもの行政が行われているということをまず御理解いただきたい、これが一つです。  それからもう一つ山下先生に御理解いただきたいことは、債権放棄というのは金融機関責任において行うということなんです。ですから、私どもの資本増強、資金の投入とはとりあえず関係ないんです。というのは、彼らがやろうとやるまいが、我々が投入したお金は満額返してもらわなきゃならないという立場に政府は立っているわけであります。そういう債権放棄でもって、我々は全くしんしゃくしないのであります。  したがって、金融機関の判断でもって行っているんだということを御理解賜りたいと思います。
  298. 山下芳生

    山下芳生君 金融機関の判断でやって、それがつぶれてしまったというのが日債銀なんですよ。それは返ってこなかったんです。債務超過じゃないと繰り返し言っておいて、それが紙くずになった。今度は違うと言ったってそれは通用しませんよ。  そして、ゼネコンの債権放棄というのは、これは銀行が銀行としてやる、そういうことはあるでしょう。しかし、それに対して公的資金を投入すると今言ったじゃありませんか。何で国民の税金を原資にしてゼネコンの債権放棄をやらなければならないのか、そのことを問うているわけですよ。私たちは……(発言する者あり)
  299. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 質疑者質疑中です。お静かに。
  300. 山下芳生

    山下芳生君 そういうやり方に対して、これまでやれなかったことをやるようにしたわけですから、国民の前にきちっとした説明を、理解をまだ得られていない、得られる問題じゃない、そういうふうに思っております。  私は、いろいろ議論をさせていただきましたけれども、庶民には一兆円の増税を、一番冷え込んでいる庶民の家計にかける、消費税の減税は拒否する。その一方で、ゼネコンには、そして大銀行には何兆円という単位の公的資金の援助をやる。やっぱりあるべき政治の方向は間違っている。これを切りかえることが国民の願いだ、そのことを強く訴えて質問を終わります。
  301. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で山下芳生君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  302. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、大脇雅子君の質疑を行います。大脇雅子君。
  303. 大脇雅子

    大脇雅子君 これまでのさまざまな日本経済がどうなっていくのかという議論を聞いておりますと、少し楽観的過ぎるのではないかと政府の見解について考えます。  アメリカのグリーンスパンFRB議長は、二月二十三、二十四日、上下両院の銀行委員会の証言で日本の景気に言及されまして、日本経済は依然として脆弱なままで底を打ったとは思わない。あるいは、先日日本に来られましたサマーズ財務副長官も同様のことを言っておられます。日本経済学者の中でも、公共投資、緊急経済対策あるいは減税を打ち続けた下支え効果が出たものの、下り階段の踊り場であるという批評もあります。  三月決算を控えて五月、六月危機説というのもひそかにささやかれているわけでございますけれども、総理は、そうした経済判断についてどのような御見解をお持ちでしょうか。
  304. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに、グリーンスパンが言っていることもサマーズの言っていることも、ある意味では同じことを言っておりますわけで、御承知のように昨年の十月には非常な危機があって、日本はどうするかということであった。今回は、日本財政ではこういう予算をつくったし、金融では国会の御協力があってこういう仕組みができた。だから、仕組みだけはまずできたなと、それは一つの進歩である。しかし、それから何が生まれるかは実はこれからのことなので、仕組みができたからうまくいくとは決まらないんだよ、だからまだこれからなんだと、そういう気持ちで物を言っておるわけでございます。悪いとも言っていない、しかし結果があらわれたとも言っていない、文字どおりそういうことだと思うのでございます。  ですから、今おっしゃいますように、私どもも、先ほど企画庁長官も言われましたが、消費と設備投資というものがふだんのようにすぐ続いて起こってくるということはなかなか保証がないものですから、したがってとにかくこの一―三月は雇用を気をつけよう。それが過ぎたら安心できるかというと、必ずしもそういうわけではなくて、やっぱりだんだんに少しずつ消費が起こってくる、設備投資は無理かもしれません。だから、わずかなわずかな回復の道を着実にたどっていくしかない、こういうふうに見ておりますものですから、それが〇・五ですが、五、六月だって気を緩めていいというふうには私どもは決して思っておりません。
  305. 大脇雅子

    大脇雅子君 そこの中で、ただいまさまざまな委員の方から減税の効果というものはかえって消費を冷やしてしまうという話がありました。  そこで、少し確認をさせていただきたいのですが、いわゆる納税者の中で七百九十三万でこれから増税になる人たちというのは全納税者の中の何割か。そして、とりわけ給与所得者の場合、賃金センサスの表などを見てみますと、七百万以上のいわゆる給与所得者の割合というのは、男性で平均二・五、女性労働者で〇・二という数字が出ております。ほとんど給与所得者は増税のゾーンに入ってくるということになると思うんですが、この点はどのようにお考えか、お尋ねをいたします。
  306. 尾原榮夫

    政府委員(尾原榮夫君) 今、先生のお尋ねは、一回限りの定額方式の減税ではございましたが、いわば十年度と十一年度を比べればどうかということで、七百九十三万円ということを申されました。  実は、この七百九十三万円と申しますのは、いわゆる夫婦子二人の世帯のケースでございます。そういう意味で、民間給与の実態というところから大胆に推計してみますと、もう少し御説明させていただきますと、配偶者控除があって扶養者の方が三人というケースで眺めてみますと、大体八百万円で出ておりますが、納税者の方が約三百六十万人、それからそのうちの八百万円以下の方は大体二百四十万人と、こういうふうになっているわけでございます。  それで、今世帯類型の話をさせていただきましたが、それ以外に単身の方、夫婦の方あるいは子供さんがたくさんおられる方、たくさんございます。平成十年の定額減税は扶養人員でその辺の減税が変わってきますものですから、全体給与所得者で眺めてまいりますと、おおむね税負担がふえるということだけで着目いたしますと、六割から七割程度の方がそういう意味では税金を少し多く納めていただく、こういうことになろうかと思っております。
  307. 大脇雅子

    大脇雅子君 しかし、高額所得者というのは消費性向は低いと言われておりまして、その減税された分というのは貯蓄に回っていく。現在、日本では非常に低金利でありますから、これがアメリカの金融市場へ自然に流れていくということを予測する向きがありますが、この点については非常に国民的な問題でもあり重要だと思うのですが、その点、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  308. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それが自由化ということだと私はもう割り切っております。金利差がございますからアメリカに流れやすい。それはきょうに始まったことではございませんが、現在もそうでございます。また、そのことは許されているわけでございますから、やはり自由化ということは、そういうお互いにそうなり合うことによって基本的にメリットがあるというふうに、ちょっと悪いことを申しますが、東南アジアのある国ですとそんなことがありますとつぶれてしまいますから、戸を閉めたりいたします。また、現にいたしております。しかし、我々はそういうことはしてはならないし、またすることもないと思っております。
  309. 大脇雅子

    大脇雅子君 自由化の一つの傾向だということですが、アメリカなどは高額納税者を優遇するということによって二極社会に分類されて、いわゆる貧富の格差が激しくなったというようなことが言われております。  経済企画庁長官は、「アメリカの没落」という御本などを翻訳もされておりますけれども、その点について、日本に照射した場合にどのようにそれをお考えでしょうか。
  310. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) アメリカで一九七〇年代末から自由化が進むに従いまして貧富の格差、所得の格差が広がったというのは事実でございまして、これが一時、特に八〇年代の末から九〇年代の初め、アメリカの景気が悪かったときには非常に批判されたわけであります。ところが、現在では、これを乗り切りまして、それがむしろアメリカ国民の新しい起業、業を起こすエネルギーになっているという見方もございます。これは議論の分かれるところでございまして、新しい要素を入れたニューパラダイム派という学派がそういうことを言っておりまして、まだ安定した学説にはなっておりません。  日本の場合でございます。日本の場合でございますが、先ほどもエンゲル係数のこともございましたけれども、全体に消費性向があらゆる階層で落ちています。これは別に所得の高い人が下がっているよりも、むしろ所得の低い人、一九八〇年には所得の第一階層といいまして、五分類いたしまして一番所得の低い方の方々ですね、これが一〇〇%ぐらいの消費性向があったのが今は八〇%ぐらいになっている。平均消費性向を見れば、先ほどの委員の方もおっしゃっておりましたように、確かに低い方がやや高いのでございますけれども、可処分所得が上がったとき、一万円減税があったときのその一万円をどう使うかということになりますと、第四階位という四番目ぐらい、これを大体年齢層でいいますと四十代の子育て時期の方が一番限界消費性向が高いというような傾向が出ております。  これが将来どのように日本社会に影響するかはまだまだわかりませんけれども、現在の税制の関係から見ると、去年に比べて今回のものが非常に景気を引き下げるような形になっているとは必ずしも言えないと思います。
  311. 大脇雅子

    大脇雅子君 その点については私は異論があります。  消費性向というのは、高額所得者において一般に低いということもあり、アメリカでは一九八九年、上位高額所得者四%の人の得る所得が五一%の低所得者層の人たちの所得総額と一緒だということも言われているわけですから、日本の社会をそのような形にしないための施策ということが非常に重要であって、税制改革もその方向をしっかりと見定めて志のある国づくりをしていきたい、私はこういうふうに思うわけであります。  金融監督庁長官にお尋ねいたしますが、今現場では中小零細企業の人たちが銀行の無謀なというか無残な取り立てに遭って大変苦労をしております。不適切なあるいは無理な回収というもののために倒産を余儀なくされたりしているわけですが、監督庁としてはそういう調査をなさったと聞いておりますが、その調査の報告書の内容はどんなものであったでしょうか。
  312. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  ただいま大脇先生から御指摘がありました金融機関の融資回収などの債権管理体制についてでございますが、昨年十二月に銀行法第二十四条などに基づきまして、主要行、地銀、第二地銀及び信用金庫に対しまして、実態を調査させて報告を求めたところでございます。その結果、鳥取銀行それから東京産業信用金庫のこの二金融機関につきましては、債権の管理回収に関しまして不適切な表現を含む文書を支店に通知していたという事実が確認されましたので、銀行法第二十六条第一項などに基づいて業務改善命令を発出したところでございます。  具体的に申し上げますと、これら二つの金融機関につきましては、債権の管理回収について、金融機関の公共性の観点から不適切な内容が含まれる文書が支店に通知されるなど不適切な業務運営が認められたこと、それからその文書が法令等遵守に関するチェックが機能しないまま発出されるなど法令等遵守体制の不備が認められたことから、内部管理体制の強化策といたしまして、一つには再発防止策の策定、実施、それから二つ目には法令等遵守体制の充実強化、三つは内部管理体制強化策の実施状況に関するフォローアップの実施と評価といったことと、それからそれらに関する業務改善計画の提出を命じたところでございます。  金融監督庁といたしましては、その十二月の調査に引き続きまして、現在も引き続きこの債権管理体制等について実態調査を行っております。今後、もし新たに不適切な事例が把握された場合には、それに対しまして適切な措置を講ずることとしたいと思っております。
  313. 大脇雅子

    大脇雅子君 この融資の回収に不適切、無理な回収があって改善命令まで出たということは非常に大きな問題であります。金融サービス法などの制定の問題もありますけれども、やはり貸し手側の責任ということもしっかりと政府としては監督をしていただきたいというふうに思います。  さて、銀行の貸し渋りの中でお金を借りられなかった人たちというのはノンバンクとか町金融を通じて商工ローン等を借りているわけですが、その利息は三〇とか三七の高利でありまして、安い融資を銀行から受けてそうしたノンバンクの人たちが一般の市民金融として市民や中小企業者に貸している。規制は出資法しかないわけで、四〇%強の規制があるわけですけれども、もう多重債務者の大量発生ということがありまして、日本の社会は勤労の意欲のもとに汗を流しつつ社会をつくっていくという気風が根底から壊れつつあるのではないかというふうに私は思うわけです。  この点について、そうした発生を予防し中小零細企業の経営を守るという視点から、私は利息を制限し、無人の貸出機等の取り締まりをすべきだというふうに考えますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。大蔵省の管轄でしょうか。
  314. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  今、先生が言われましたのは、金利の話と無人貸付機の話だと思います。  一つ、金利につきましては、先生が言われましたように出資法の上限金利というのがございまして、これは昭和五十八年の貸金業規制法の制定以後、当時の一〇九・五%から段階的に引き下げられておりまして、平成三年以降は現行の四〇・〇〇四%となっているわけでございます。  こういうぐあいに段階的に引き下げられておりますが、これをさらに引き下げてはどうかということにつきましては、かえってまたいろんな別の金融が横行したりしないかというような指摘がある一方、借り手の生活への負担、それから返済能力等を踏まえますと、やはり取り締まりを強化しつつ引き下げていくことも検討すべきだという指摘もございます。この点につきましては、法律を主管しておられます法務省ともよく相談しながら検討する必要があると考えております。  いま一つの、先生が言われました貸付機の話でございますが、貸金業者に対しましては、貸金業規制法に基づきまして過剰貸し付けの禁止、これは十三条でございますが、それと誇大広告の禁止等の規制が課せられているわけでございます。  今、自動契約受付機が過剰貸し付けを増長しているんじゃないかという指摘があることは承知しておりまして、この貸し付けにつきましても今申し上げました貸金業規制法による規制の対象となっております。店頭貸し付けと同様に顧客の返済能力等の審査が行われているわけでございますが、今後もこの規制のあり方につきましては、貸金業者とか借り手の実態をよく踏まえまして今後とも検討していく必要があると考えております。
  315. 大脇雅子

    大脇雅子君 総理、今取り締まりを強化しながら利息を引き下げていく、そして無人貸出機というように借り手の方の心理的な抑制のないような形でお金を貸し付けていくという高利の町の金融は非常に我が国としては、ドイツなどではそうした消費者金融の金利はもっと低いわけですから、やっぱり高利をしっかり取り締まっていただく法律をつくるべきだと思いますが、御決意、御感想、どのようにお考えでしょうか。
  316. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 現行法がございますし、またこの問題については国会でも種々議論をいただいてきておるところでございます。  金融というものはなかなか難しゅうございまして、もう本当にいざここが生死の分かれだというようなときにかなり高利の金融に頼るというケースもございまして、それがいいということではございませんが、委員御指摘のように余りにも高利息でそうした困った立場の人に対して、ある意味で弱みにつけ込んでということであってはいけないと思います。したがって、その利率がいかなることかということは、冒頭申し上げましたように、これは種々御議論いただいた結果、先ほど御答弁されたような結果になっておるんだろうと思います。  したがいまして、正常な金利で正常に経営のできる、またそのために政府関係の金融機関を初めとして適正な融資ができるような体制をさらに強化していくということも一面必要なことじゃないか、こう考えます。
  317. 大脇雅子

    大脇雅子君 四〇・〇〇四になったのは昭和五十四年ですよね。そして、四〇・〇〇四の利息、出資法の制限が、みんなこれを高過ぎるというふうに思うんだと思うんですが、ぜひこの点はしっかりと国民の生活に密着した政治として再検討をしていきたい、そしてまた、政府もそれに取り組んでいただきたいというふうに思います。  続いて、雇用対策でございます。  失業率の見通しは、現在四・四ということでありますが、潜在的な失業率を含めますと七%あるいは一〇%ということが言われています。これまでの失業と違いまして、さまざまな形で構造的な失業、そして非自発的な失業がふえて深刻な問題を提起しています。  この失業率は今後どのように変動するのか。一〇%を超えるという意見もありますが、経企庁長官、どのようにお考えでしょうか。
  318. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 失業率の動向は、日本は従来終身雇用をやっておりましたので、非常に諸外国に比べて低い水準にありました。それが今流動化してまいりまして、かなり高まっている、不況とリストラが重なっているということでございます。これから各企業のリストラは進むと思います。  そういう意味で申しますと、これからなおしばらく失業率の点では悪い数字が出てくる可能性は高いと私は考えております。そして、それによって各企業が立ち直り、また新しい事業が起こってくるまでこの失業を支えていかなきゃいけない、そういう雇用対策が十分なされる必要があると思っております。
  319. 大脇雅子

    大脇雅子君 その高まりつつある失業率の中で、労働省はどのような形で失業率の増大に対応していくのか。雇用の安定維持というために、今までは雇用調整金が打ち出されてかなりの高額が予算化されてまいりました。  しかし、高度経済成長の右肩上がりではないところの失業率の増大の中で、今、非自発的雇用の流動化が進んでおります。これに対して、非自発的でありますから、求人求職のミスマッチという枠を超えて労働条件が切り下がりつつある。そして、正規雇用はなくて不安定雇用が増大しつつある。その中で、どのような手を労働省はお打ちになろうとしているのか、労働大臣にお尋ねいたします。
  320. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 幾つかの質問が含まれていましたが、雇用活性化プランでまず従来と一番違うところは、雇用を安定させるということに加えて、つくり出すという方向に踏み出したというところであります。  それから、企業のリストラというのが、生きんがためのリストラが今進んでいるわけでありますが、その前に、リストラで何人と発表されますとすぐ生首が切られるような印象を持たれますが、あれはいろいろ採用を手控えるとかあるいは関連会社への出向をお願いするとか、生首を極力切らない方向での数字であります。  しかし、最後の最後の手段で整理解雇ということになった場合でも、失業という形じゃなくて受け皿を見つけてきた企業には、その受け皿になる企業には支援をするという労働移動の助成金も新設をいたしました。それから、職業能力をつけるための施策についてはかなり手広くさせていただきましたし、新規の策も盛り込ませていただきました。  それから、雇用の流動化というお話がありました。これは、ある面、時代の要請で避けられない部分があると思います。それは、新しい時代を担う業ができてきたときに、優秀な人材をスムーズに供給するという体制を持っていないとその企業が育っていかないということもありますし、働く側も、新しい分野を求めて働きたいという人、あるいは働き方も、自分はこの時間帯だけ、こういう業種だけ働きたいというニーズも出てきますから、流動化については、時代の要請、それから働く者、企業の要請、いろんなニーズにこたえて受け皿にならなければならないと思います。  ただし、そのときに常用雇用といいますか、正規雇用が臨時雇用に切りかわるということは避けなくちゃいけないわけでありますから、今国会に派遣法の改正も提出させていただいておりますけれども、その中でも、正規雇用にかえて派遣でつないでいこうなどという場合には、ちゃんと正規雇用になるような措置を加える、あるいは働く側の保護の措置をしっかりと加味して対応していかなければならないというふうに考えております。
  321. 大脇雅子

    大脇雅子君 先ほど、G8の労働大臣会議で、賃金を下げずにワークシェアリングをするということに対して、何か生産性のところで問題があるのではないかと思ったという御意見がありましたけれども、賃金を下げずにワークシェアリングをするというのは、時間短縮の場合、生活水準の低下を来さずに時間短縮をするというのがもう国際的な原則でありますから、それが日本で生産性のために、パートだとか派遣だとか、そういった雇用形態の不安定なところの人たちの労働条件を切り下げて使うということは、日本で特に差別として問題にしなければならないところだと思うわけです。  ですから、不安定雇用が増大をするという中で、さらに未組織や臨時労働者の正規雇用化ということもひとつやはり戦術の中に入れながら、私たちとしては雇用の確保ということをしていかなければならないと思います。  さて、失業が増大をして、今失業保険を受給しながら求職活動をするという人たちが、失業保険が切れても、失業手当が切れても求職がさらに決まらないということがありまして、もう大体平均十二カ月ぐらいの待機で仕事を探しあぐねているという状況があります。そのためには、やはり緊急失業対策が不可欠だと思います。  いわゆる全国延長給付というのが雇用保険にありまして、それはまだ発動されておりませんが、その要件を緩和すること、それから就職促進手当というものを拡充すること、これが喫緊の課題であると思いますが、それについて、検討の有無、そしてまた将来の見通しについて、労働大臣にお尋ねいたします。
  322. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 私の手元の数字によりますと、平成十年の男子の失業継続期間は平均で五・四二カ月となっております。もちろん、これは増加傾向にございます。それから、一年以上の失業者が大体二〇%ぐらい。これは、アメリカが一〇%でアメリカだけいいんですが、ヨーロッパは四、五〇%になっています。  そこで、失業給付の延長措置に関して、これはもうずっと、私が労働大臣に就任以来、いろんな先生方から御指摘をいただいております。そのたびに、失業にはそれぞれの要因があるから一律にこうするということよりも、きめ細かに対応した方がいいんではないだろうか、私はできれば訓練延長給付というのをぜひ使っていただきたいと。  これは、訓練の期間が再就職まで超長期ということよりも、大体三カ月とか六カ月ぐらいですか、そのぐらいで再就職の技能アップにつながるコースが多いものでありますからそういうふうに指導はしておりますけれども、これをいろいろホワイトカラーについてもっと長期の訓練が必要ではないかということ等で幅広くしましたので、そっちの方での能力アップの延長給付というのをぜひ使っていただきたいと思う次第です。
  323. 大脇雅子

    大脇雅子君 全国延長給付とか就職促進手当はぜひ実現をお願いしたいと思います。  時間がなくなりまして、実は総理にお尋ねをしたかったのですが、経済戦略会議日本経済再生への戦略というものについてはグローバリゼーションに対するアジアにおける日本戦略が描かれていないということが言えると思います。  それから、効率と公正ということは前面に出ておりますが、我が国の中で維持すべき平等と公正というものの視点が欠けているのではないか、その点について非常に私は危惧をしているということを申し上げまして、時間ですので私の質問を終わります。
  324. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で大脇雅子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  325. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、月原茂皓君の質疑を行います。月原茂皓君。
  326. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 私、自由党の月原ですが、まず冒頭に野田自治大臣にお尋ねいたします。  自治大臣としての仕事ではなくて、総理も言われておりますが、連立を組んで相乗効果を発揮する、そして経済再生を最大の任務とする内閣に代表して入られた。きょうは景気とかそういう問題を扱う集中審議でございます。そういう観点から、相乗効果というものがどのような点において出てきておるか、どういう方向に行くのかということを野田大臣にお尋ねしたいと思います。
  327. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 経済の問題は、対策を立て、それを実施に移して成果が上がるまでに若干のタイムラグがあることはもとよりでありますから、そういう点でまだ完全に成果ができ上がっているというところには行っていないと思います。しかし、少なくともその着手といいますかスタートは確実に行われていることだと思っています。  これは、本年に入って一月十四日に内閣が改造されて、私が小渕内閣の一員として任命を受けて仕事をスタートしたわけですが、事柄としては、既に昨年の秋の段階で両党首の間での合意が成立をして、政策的なすり合わせということも現にスタートしてまいりました。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕 そして、この税制改正あるいは予算編成に当たって、両党間における政策協議の積み重ねをしたことも御案内のとおりでございます。  そういった点で、今回御審議をいただいておる歳入歳出予算の中でどういう点が自由党の考え方が反映されておるかということについて若干申し上げてみたいと思うんです。  それはまず、何といいましても減税問題であると思います。あるいは経済の今日までの低迷のいろんな分析がございますが、その中で減税政策に入るに先立って、少なくとも財政再建を最優先してきたという形から路線転換が行われた。それは、財革法についていわゆる凍結という形ではっきりと、これは経済戦略会議の中でも反映されていると思いますが、まずは経済回復ということを最優先する、それから若干の時間を置いて安定的な形になるということを見定めた上で次に本格的な財政再建路線に入るんですというある種のスリーステップというものがはっきりさせられているという、それを背景として十兆円近い大幅減税というものが小渕内閣において断行されたということは、両党首の十一月における合意というものが背景でもあったと私はそう信じております。  その税制関係協議の中で、いろいろ自由党の主張もございましたけれども、そういう意味で一〇〇%受け入れられたわけではありませんが、大幅減税の問題であったり、あるいは景気対策ということに特に重点を置いた土地住宅税制の問題であり、あるいは設備投資減税という手法、しかも時限的な手法ということがございましたし、あるいは有取税、取引所税、こういった投資環境整備ということについての税制という部分も入った。  それから、いま一つ、中小企業に対する信用保証の強化、これは中小企業のみならず中堅企業も含めて、現下の金融問題について、いわゆる金融デフレを最小に抑え込むための最大限の努力を今度の予算の中でもしていただいておる。  そして、公共事業の取り扱いについて、少なくとも公共投資というものが景気の足を引っ張る形に働いてはいけない、もちろん力そのもののウエートは少ないかもしれないが、この公共投資というものが少なくとも何がしかのプラスに働くということは大事な景気を支えていく原動力の一つだと。  こういうことで、私はかなり、両党連立政権というもの、小渕内閣が今目指している方向というものはそういう意味で相乗効果があると思っております。国会運営に関して、私が今申し上げるのは控えたいと思いますが、現に御審議中でございますので、できることならば、この参議院における審議もいろいろ御努力をいただいておりますので、でき上がりの時点において、今までにないスピード感を持って景気への対応も図れるのではないかということも相乗効果の一つに数えることができるかもしれません。
  328. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 そのほかに、将来の福祉目的税化の問題ですね、総則に入った。それは、大蔵大臣もこの前おっしゃっておりましたが、ただことしの総則に載っただけではないよ、影響力はずっと続いていくだろうというお話がある。  とにかく、こういう連立において、責任ある政治を実現するために、ぜひ与えられた使命を全うしていっていただきたいと思います。  さて、最近、三月になるとPKO、PKOという話がある。私がPKOの質問をする、こう言ったら、自衛隊のPKOかと思って、来る人が違って、違うんだというふうな話をしたわけであります。  そこで、お尋ねしますが、もう既に新聞にも、「三月株価対策に苦慮 自民「PKO」論議再燃も」、こういうふうなことを書いておるわけですね。  そこで、きょうは一般の方にわかるように、私もその一般の一人ですが、毎年三月になるといわゆるPKOというものが話題になる。どういうものであるのか、世間で言うPKOというのはどんなものであるかということをひとつ大蔵大臣に教えていただきたいと思います。PKOを認める認めぬの話じゃなくて、世間ではこんなことを言うておるだとか。
  329. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どうも私は実態をよく存じませんので、政府委員からお答えをさせます。
  330. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。  今、先生が言われましたいわゆるPKO、プライス・キーピング・オペレーションということで、何を意味するか必ずしも明確ではございませんが、仮に郵貯、簡保等の公的資金による株式への運用を株価水準全体の下支えを目的として行うことを意味するといたしますと、現在行われております郵貯とか簡保等の公的資金による指定単を通じた株式への運用は、これは所管省庁におきましてそれぞれの公的機関の資金運用手段の多様化と長期的、安定的な資金運用の促進という観点から行われているものというぐあいに理解しております。  当然のことながら、国が株式市場の操作に当たるような行為を行うことは好ましくないと考えております。
  331. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 今、政府委員から御説明ありましたが、具体的にそれを担当しておるところの責任者である郵政、厚生大臣の方から、公的資金としての株式運用は行っているがそれはどういう形で行っているのか、それからどの程度の規模のもの、これは株で言えなくて資産運用という形で出てくるかもしれません、その金額を、およそでいいんですが、教えていただきたいと思います。
  332. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 年金の積立金につきましては、一たん資金運用部へ全額預託をいたします。そのうちの一部を年金福祉事業団が借り入れて市場運用を行っているというのが制度の仕組みでございます。  それで、年金福祉事業団では一体それじゃどういう視点に立つかと。長期的視点で資産全体の運用方針を決めます。それに基づきまして信託銀行、生命保険会社等の民間金融機関に委託して債券、株式等の運用を行っております。そして、基本的には基本的ポートフォリオを定めまして、株はどのくらい、債券はどのくらい、国内債はどう、国外債はどうというように大体のめどをつけて運用をしております。  ちなみに、十年の三月末時点における年金福祉事業団の運用資産額につきましては、時価ベースで約二十四兆八百億円というようになっておりまして、そのうち国内の株式の運用資産額につきましては約五兆九千五百億円、二四%強でございます。  そういう実態にございますが、私どもとしては安全でかつ有利ということを原則として資金の運用に当たっておる、こういうことでございます。
  333. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 郵政省の方は、郵便貯金の金融自由化対策資金、また簡易保険の方の簡保積立金の一部を簡保事業団を通じまして信託銀行の指定単というものにより運用しています。  この指定単というのは金銭信託の一種です。そして、これは投資家が信託銀行に対しまして運用資産の種類とかその割合の上限を指定します。そして、信託銀行がその預かったお金をほかの投資家の方の資金と区別をして、単独で運用を行っていただく金融商品です。信託銀行では、みずからの市場見通しに基づきその資金を株式等に運用する仕組みとなっています。  規模でございますが、平成九年度末の簡保事業団に対する寄託金等の残高は、郵貯の運用事業が七兆六千四百一億円、簡保の方が十二兆二千十一億円でございます。
  334. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 そこで今、厚生大臣、もちろん郵政大臣も同じ考えでしょうが、安全で有利なものに運用する、こういうふうにおっしゃっておりますが、俗に世間で言われている場合に、過度に一時的に公的資金の株式運用をするというふうに言われているわけですね、世間で言っているのは。お二人ともそれは否定されるわけですが、しかし仮にこういう議論があるとすると、要するに過度にそういう運用を行ったとしたら市場にどのような影響があるか。  私は、きょうあえてこのPKOの議論をさせていただいたのは、三月になったら政治家がいろいろなことを言う、世間の人はこれ政治家がまた何かやりよるなと。だから、ここでそんなPKOというものは、最初の九二年のときには効果があった、非常に緊急事態。しかし、その後ではほとんど効果がないし、そんなばかげたことをするものでないよということを示してもらいたいというので、あえてこのテーマを取り上げたわけであります。  そこで、こういう運用がもし意図的になされた場合にはどういう問題点があるのか、その問題点を明らかにすることによって、やっぱり政府なんというのはそんなばかげたことをしないぞと皆さんが思うと、こう思うのであえてお聞きしたいと思います。
  335. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 月原委員もよく役所といいますか、そういう組織の動きを御存じでございますから、今、両大臣が言われましたように、安全有利にやるんだと、大いに何かほかの目的でやるんだなんというのは、とてもそれは言ってもやってくれませんで、自分に安全有利におやりになっているに違いありませんから、本来的に、それが国による株価の操作に役立つはずはないし、またそういうことをやっていらっしゃるとは思いません。
  336. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 そうすると、では私の方から申し上げますけれども、仮にPKOということをしたとしたら、そういうことはないということは今、大蔵大臣もおっしゃっておるし、そうなんですが、それはまず株価対策としての効果が乏しいということなんです、最近の趨勢を見ても。そして、この前のときなんかは外人にもうけられておるだけだと、こう言っておる。それから、本来安値で買うべき公的資金の運用をゆがめることになる。当たり前です。そうしたら、皆さんの預けておる金が減るということです。そして、主なもので、株式市場の価格形成機能をゆがめるということであり、本来企業価値に基づいて取引される水準を逸脱するために企業の業績も改善されない、非常に大きなマイナスを与える。だから、そういう意味政府がそういうことをするはずはない、こういうことで私は質問させていただいた。  ただし、大蔵大臣、九二年、平成四年の総合経済対策というのが、御承知ですね、これの中にはやはりその種のもの、非常に限られた場合ですけれども、行われておるというのが通説になっておりますね。  それはどういうことかといったら、三月期決算が苦しくなる、金融機関による株式の売却抑制だけでは相場の安定が難しいと判断した大蔵省は、十一月ごろから積極的に公的資金で株式を購入し、相場の下支えに乗り出した、これが第一次の総合経済対策の世間で言われておることです。  わざわざ証券市場の活性化という項目をつくり、経済対策閣僚会議で決まったわけですが、株式運用規制の見直しということで、もちろん特定のという意味じゃなくて、全体に活性化するために本当に特異な場合に行われたことは事実です。  しかし、私が今申し上げたように、その後の例を見ると、もうそれは効果が非常に少ない、ほとんどない、むしろ今申し上げた問題点の方が残ってくる、こういうふうに私は理解しておるのであえて申し上げるわけであります。  そこで、厚生大臣、何かあれば簡潔にお願いします。
  337. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今、委員の御指摘のとおりでございまして、私どもは、プライス・キーピング・オペレーション、PKOを特に意図してやるようなことはございません。  それから、平成四年の総合経済対策の点でございますが、確かに記述がございます。しかし、私どもでは二千億を補正で追加していただきましたが、実際に使用したのはほんのわずかでございます。四、五百億だったと存じますから、株価形成にそんなに影響のあるはずはございません。  そういうことは確かにあったわけですが、私としては、やはり株価は市場にある程度任せるということが賢明な策ではないかと基本的には思っておりますので、年金資金の健全性を維持していきたい、そういう立場から臨んでまいりたいと思います。
  338. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 郵政大臣にも、厚生大臣と同じだと思いますが、少し。
  339. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 厚生大臣と同じトーンになりますけれども、やはり郵政省としても、郵貯、簡保が行っている指定単というのは、事業の健全化とあわせて加入者や貯金をしてくださる方の利益のためにやっていることであり、株価操作の目的でやっているわけではございません。これまでも株価対策のために指定単をやったこともないですし、今後も一切行いません。
  340. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 担当の両親分のお話ですから、いろいろな人が間際になって一万八千円にするんだとか何だかんだと言うようなことはもうないと私は信じております。  そこで、株価のそんな一時的なこそくな手段で経済がよくなるはずはないんです。それはもちろんわかっておるんです。三月の決算だけをよくしたらいいと思っているが、問題を先送りしておるわけです。  そういう点から、経済企画庁長官、そしてその後、総理大臣にお尋ねしたいんですが、アメリカはどういう形で回復してきたんだということを教えていただきたいと思います。
  341. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 大変広範な問題でございますので、簡潔に申しますと、アメリカは、まず十年余り大変苦しみました。その中で、パン・アメリカンが倒れたりコンチネンタル・イリノイが倒れたり、いろんなことがありまして、その結果随分リストラが進みました。そして、株主総資本に対する利益率、ROEが物すごく上がって、今やもう十数%になっています。それに比べて日本は二%台とか非常に格差が出ております。  だから、そういう一つの段階を踏んで新しい事業をどんどん起こしたということが大きな利点になっていると思います。その意味で、日本も大胆な規制緩和、自由化、リストラ、そして新しい起業を、業を起こす方を進めていくことがぜひ必要だと思います。
  342. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) アメリカがどうして経済再生したかということにつきましては、堺屋長官がもっと説明すればおわかりになられると思います。  いずれにいたしましても、アメリカといたしましても、あの厳しい双子の赤字を抱えてかなりリストラその他に臨まれたわけでございまして、そういった意味日本としても、実は経済再生計画というのを政府として立てまして、官民が産業競争力強化のための意見交換を行う場を近々につくって、当時のアメリカのこともそれは大いに参考になることだろうと思いますので、我が国もおくればせでありますが対応してみたいと思っております。
  343. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 今、経済企画庁長官及び総理大臣お話しになったとおり、物すごいリストラを行って生産性を高めて、そして株の本当の意味の値打ちを出して、そしてそこに金が集まってくる、そして四〇一Kにまで続いていって上がってきておる。こういうことですから、もうこそくな手段を講じなくて、堂々と今おっしゃった経済会議で出てきたものを進めていただきたい、このように思います。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  時間が来ましたのでこれで終わらせていただきますが、実は私もう一つ質問をしようと思っておったのは、生命保険。銀行に対しての手はもう既に打たれておりますが、生命保険の分野においてはまだ十分でない、そしていろいろうわさが新聞、ニュース等で言われる。だから、これに対してどういう施策を講じようとしているのか。この問題はまた別の機会にさせていただきたいと思います。  本日はありがとうございました。
  344. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で月原茂皓君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  345. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、山崎力君の質疑を行います。山崎力君。
  346. 山崎力

    ○山崎力君 私は、日債銀の問題を中心にお尋ねしていきたいと思っておりますが、まず確認を先にさせていただきます。  要するに、最初の出資の問題となった平成九年、一九九七年五月時点で、五月十九日に日債銀側から七千億という、その分の不良債権、不良資産があるというふうな形でお金を出してほしいと、こういう話がありまして、さきに出ました確認書によりますと、大蔵省がその間をとって、日本生命に対して、日本生命がお金を出さないと日債銀は破綻に陥る見込みであるというような内容の確認書を五月三十日付で出しております。そして、七月の下旬に約二千九百億ですか出資され、九月の上旬くらいに恐らく結果がまとまったんでしょう、一兆一千二百億余の大蔵の検査結果が出まして日債銀に出ている。  こういう流れだと私承知しておりますが、それで大体よろしいでしょうか。
  347. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  今、大体の流れをお話しになりましたが、そのとおりでございます。
  348. 山崎力

    ○山崎力君 そのときに私がまず感じますことは、四月段階から検査へ入って結果が九月に出た、その時点で一兆一千億以上の不良資産があると。  不良債権、そういった焦げつきがあるということをどの時点で大蔵省がつかんでいたかという問題はこの際問いませんが、少なくとも七千億で破綻するよ、お金を出してくださいと言った大蔵省が、九月時点で七千億だったのが四千億以上も不良なものがあると判断した時点で、この日債銀がこれから立ち行く、やっていけるという判断をどうしてできたのかということをまずお伺いしたいと思います。
  349. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 検査の結果は、確かに今御指摘がございましたように、九月十一日に日債銀に通知しております。この検査の当時は、現在と異なりまして、まだ早期是正措置というものが導入されておりませんでした。  したがいまして、資産の分類としては、第Ⅲ分類はただいま御指摘がありましたように一兆一千二百十二億円という数字でございましたけれども、償却引き当ては、日債銀の公認会計士あるいは監査法人と日債銀が協議いたしまして、その結果幾ら引き当て償却をするかということを決める、そういう仕組みになっておりましたので、その九月の中間決算の時点も監査法人と協議した結果中間決算を発表いたしましたけれども、その時点でもやはり債務超過という状態にはなっていないということを前提にした中間決算であったというふうに私どもは承知しております。
  350. 山崎力

    ○山崎力君 ちょっと私のお聞きしたいのと答えが違うようですが、ちょっと外れまして、この確認書に絡んで、出資した方からいろいろ非難といいますか、大蔵省にだまされたというようなニュアンスの声も出ているんです。  ちょっと法務省にお聞きしたいんですが、こういう出資契約の場合、出資する側がそれなりの過失がない普通の状態で相手方も調べ、出資した。ところが、相手側の状態が、これがどういうことになるのか、故意か過失なのか、あるいはそういったもののないものなのかは別としまして、状態が違っていた。そこのところで錯誤がやはり出資する側にあったということになろうかと思うんですけれども、一般論としてそういった場合何らかの法的な救済措置といいますか、裁判に訴えてそれを取り戻すということは可能でございましょうか。
  351. 細川清

    政府委員(細川清君) 一般論としてお答え申し上げます。  一般に、法律行為の要素に錯誤があれば意思表示は無効でございまして、御指摘のような消費貸借契約を締結する場合、借り主が有する負債の額を貸し主が誤って少なく認識した場合において、これは通常、動機の錯誤という問題でございまして、その動機が契約の相手方にも表示されており、かつ負債の額が重要な要素となっているというときには、契約が無効になるわけでございまして、無効になった場合は、消費貸借の場合にはその貸した金を返せということが、法律上請求することができるわけでございます。
  352. 山崎力

    ○山崎力君 そういう点で、これが七千億だったのか、本当にその時点で一兆一千億以上だったということなのかということになると、これは金額の問題、それから出資する額と、その差額四千億の問題を考えますと、出資した総額を見ただけで、差を見ればすぐわかるわけでございます。二千九百億余でございますから。  出した出資額よりも借金の方が現実にはあの当時多かったんだということが、これは後でですけれども、大蔵省の検査でわかった。逆にそれを知りつつ出資を要請したという故意が認定されれば、一般論で結構でございますけれども、その場合は詐欺という刑事法上の要件を満たすようなことにならないでしょうか。法務省いかがでございましょうか。
  353. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 一定の状況を想定しての御質問についてはなかなかお答えしにくいところでございますが、いずれにしましても具体的な事実の認定は捜査を通じまして収集した証拠によって判断されるべきものと考えます。
  354. 山崎力

    ○山崎力君 その辺のいわゆる刑事上の問題はともかくとしまして、民事上国家賠償だという以前に、この出資契約自体が錯誤に基づくもので無効だ、よって返せと言うことが出資側に可能だというふうな事実が判明いたしました。そこのところで、その錯誤の問題はまさに七千億だったのか一兆一千億だったのか、私はそういうふうに帰着すると思うわけでございます。  そういった中身で現実に当時の大蔵省がこれをほかのところに知らせない、悪くとればそんなに日債銀にそういう不良なものがあるということがわかれば、話が違うぞということで出資した側が出資金の回収に入る可能性もある、こういうふうなおそれがあったんではないか。だから、表面上は皆さん方には七千億、だけれども本当は一兆一千億余という二つの数字がずっと流れてきたんではないかというふうに私は疑わざるを得ないと思うんですが、その辺御見解はいかがでしょうか。
  355. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  この際、大蔵省といたしましては、日債銀に対しまして最大限の支援を行っていくという、こういう四月一日の大蔵大臣の談話でも表明されました。その方針のもとで、もし再建策が実施されれば再建は可能であるという認識を日銀あるいは民間の出資要請先に説明しておりましたもので、御指摘の不良債権額の認識につきましては、確かに検査結果では第Ⅲ分類は一兆一千億円余りでございまして、これを示達しましたのが平成九年九月でございまして、平成九年五月当時は日債銀は増資要請先に七千億円という数字を説明していたわけでございます。  検査結果をどうして言わなかったかという御質問だというふうに存じますが、これは国家公務員の守秘義務という観点から、当局としては検査の対象となった金融機関にだけ通知するという、こういうことになっておりますので、たとえ出資の金融機関といえどもそれに対して内容を伝えることはできなかったということは御理解いただきたいというふうに存じます。  したがいまして、ただいま国賠あるいは刑法上の責任の有無、あるいは民法や商法上無効かどうかということについて御議論はございましたが、私ども金融監督庁としては当然のことながらこれは最終的に判断する立場にはございません。ございませんけれども、当時の行政としてはこれは故意や過失はなかったものというふうに考えているところでございまして、それが刑法上の欺罔行為に当たるとか、あるいは民法上の錯誤に当たるとか、あるいは何か国賠法上の要件に当たるとかいった御批判は当たらないのではないかというふうに考えております。
  356. 山崎力

    ○山崎力君 日銀にも知らせなかったというふうに報じられております。そういったときに、日銀も一応そういった中身を調べる立場にありますし、佐々波委員会もそういったことをデータをもとにいろいろ検討される、こういうことでございます。  ただ、そういったものを知らせなかった、もちろんそれはいろいろおっしゃっていますけれども、そこのところの問題を離れても、その結果どういうことが起きたかというと、翌年の三月ですか、公的資金六百億を導入するということになったわけですね。そのときにもう明らかに大蔵省は一兆一千億という額を、七千億じゃないんだということは知っていたし、それを日債銀は表面化していなかったというのも知っていたわけです。そのときに、その二つの数字のうちの大きい方が出たらこうはうまくいかないよということをわかっていたからむしろ出さなかったんではないかというふうに思われても仕方ないんじゃないかと思うんですが、その辺いかがでしょうか。
  357. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) いわゆる佐々波委員会、金融危機管理審査委員会でございますが、これは当時、昨年の三月でございますが、審査が行われた時点では、申請してきた銀行が審査基準に適合しているかどうかということを審査して、その上で資本注入の適否を判断することを目的としていた委員会であったわけでございます。  したがいまして、過去の検査結果あるいは自己査定の結果そのものを議論することを目的とする委員会ではなかったということは御理解いただきたいと思います。したがいまして、昨年三月の資本注入のための審査委員会による審査の際には過去の検査結果そのものは提出されておりません。  しかし、大蔵大臣が審査委員会のメンバーでありましたので、佐々波委員長の御依頼を受けまして、大蔵省といたしましても審査に十分に協力するという観点で、申請行から提出されました健全化計画とかあるいは自己査定の結果を行政として把握した資料、この中にはラインシートなども含まれますけれども、これや、あるいは過去の検査結果などに照らして検討いたしまして、その正確性や適切性等についての所見を大蔵大臣が審査委員会において御発言されたものというふうに承知しております。  日債銀につきましては、同行から提出されました自己査定結果を過去の検査結果等に照らして検討いたしました結果は、査定が甘いと考えられる関連会社につきまして頭取からこれをどういうふうに考えているかということを十分に確認する必要があるということをこの審査委員会の場で大蔵大臣が御発言されたというふうに承知しております。  そしてその上で、審査委員会におきましては、こうした大蔵大臣の発言それから各委員意見などを踏まえた上で、頭取から直接ヒアリングを行いまして、さらにその上でいろいろ議論が重ねられて最終的に議決が行われたものというふうに承知しております。
  358. 山崎力

    ○山崎力君 数字が七千億ということを日債銀はずっと主張し続けてきているわけです。ところが、大蔵省はそれよりも四千億以上そういう第Ⅲ分類の金額は多いんだよと言っている。それが今のようなやりとりの中でどこでうやむやになったのかという不満というものは国民として当然持とうと思うんです。  いろいろな立場の人がいろいろなことをやって、保身とかそういった自分の役割ということではあるんですけれども、一連の流れを見て説明のつくこと、説明と言うとおかしいのですけれども、これならばわかるというのは、要するに、セーフティーネットが整っていない、だからそれまで何が何でもお金を集めてつぶさないようにして日債銀を生き延びさせる、それでネットが整ったところで破綻させる、こういうふうな大きな意思のもとにいろいろな機関が動いたんではないかとしか思えない。そうでなければつじつまが合わないというのが私の個人的な感想でありますし、ある程度の関係者、部外の人たちの見方もそうじゃないかと思うわけです。  それはそれで一つのやり方かもしれません、日債銀がただ破綻したということの影響を考えれば。もしそうであるならば、そこのところは正直に国民に説明するべきではないか、その方がむしろ国民の納得を得られるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  359. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  平成九年四月の経営再建策、それから昨年三月の公的資金注入につきましては、その時点で把握できました財務状況を前提にして、当時のセーフティーネットの整備状況、それから金融システムの安定性確保のための必要性等を勘案いたしまして最善と考えられる手法がとられたものというふうに理解しております。  ただいま先生は将来破綻させることを前提にということをお話しになりましたが、当時は、その夏から秋にかけての百四十三回国会で成立いたしました金融再生法やあるいは早期健全化法もまだこの世の中には存在しておりませんでしたし、昨年四月から導入されました早期是正措置もいまだ実施に至っておりませんでしたし、さらにはまた、十七兆円という財政的な裏打ちも昨年の二月に初めて行われるようになりまして、そこで初めて金融債が保護されるといったことが財政的にも担保されたといったような状況であったわけでございます。  しかし、そういった変遷を経まして、昨年私どもが検査させていただきました結果は、これは昨年の十一月に通知いたしましたが、昨年の三月末時点で債務超過であったということが判明いたしました。そこで、所要の手続を経まして、金融再生法の第三十六条に基づいて特別公的管理の開始が決定されたわけでございます。  政府といたしましては、今後とも今般の日債銀の問題をも含めまして現下の金融問題に対しては適切に対応して、預金者等の保護と信用秩序の維持、内外の金融市場の安定性確保に万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  360. 山崎力

    ○山崎力君 今の御説明を聞いても、私の邪推かもしれませんけれども、そういった考え方を補強することにはなっても何ら否定することにならないという御答弁のように受けとめたいわけでございます。事実として、その資本注入を決めた九八年三月三十一日、六百億円、公的資金。後から振り返ってみたら、その同じ時期に日債銀は破綻していたねという判断が、どう見ても、判断する流れを見てきた人たちから見ても恥としか言いようのない偶然の一致だろうと思うわけでございます。  そういった中で、将来を考えましたときに、ビッグバンという時代を迎える。もう国民の自己責任でやりなさい、今までみたいに銀行はつぶさないというわけじゃないよ、国民一人一人が自分の責任で銀行を選んでやる時代ですよというふうに今なっているわけです。そのときに、銀行の自己査定と金融監督庁の検査結果がずれているということは往々にしてありがちだと私は思うわけです。そのときに、金融監督庁その他のあれが守秘義務だとかあるいは時間がずれてくるとか、そういったことになったらどういうことを信用していいのかということが私は問題になってくると思います。  そういった意味で、銀行の管理というのは普通の一般の会社と違う。だから、これだけ銀行に対して破綻させてはいけないということで金も使い人も使ってきたわけですから、そういった点でのこれからの政府方針というものは、国民に対する説明義務として十分なされなければいけないと私は思うわけです。  その点につきまして、金融監督庁長官並びに一連の金融行政のベテランである大蔵大臣、最後に小渕総理決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  361. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  ただいまの御指摘は、金融機関の情報開示を一層充実すべきではないかという御指摘であったように思います。これは大変大事なことでありまして、金融機関の経営の透明性を高める、そして市場規律により経営の自己規制を促すということ、さらには預金者の自己責任原則の確立のための基盤となることでございまして、大変大事なことであると存じます。  こうした考え方に基づきまして、金融機関に対しましては本年の三月期から、金融システム改革法に基づきまして、これからは連結ベースで、しかも罰則つきでディスクロージャーが義務づけられることになります。さらには、昨年成立いたしました金融再生法に基づきまして、主要行については今度は再生法上の資産査定結果の公表も行われることになっております。再生法に基づく資産査定の結果の公表は、主要行はことしの三月期から、地銀、第二地銀はことしの九月期から、協同組織の金融機関は来年の三月期から行われることになっております。  こういうことで、非常に情報開示がさまざまな観点、角度から充実することになりますが、今御指摘がございましたのは、検査結果との間の乖離をどうするかということだったと思います。  検査結果そのものを公表いたしますと、これはいつも御説明申し上げていることでございますが、取引先等に不測の損害を与えるおそれがあること、あるいは個別の私企業の経営内容を当事者の意に反して開示することになるといったような問題がございます。今回のような日債銀とかあるいは長銀のように破綻した場合は格別でございますけれども、それ以外の場合には当局から公表することは差し控えさせていただいているところでございます。
  362. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一言で申しまして、この一年余りで銀行に対する検査、監査等々の体制が、法律をつくっていただきましたこともありまして一変いたしたと思います。  今お話しになっておられましたようなケースも、実はどれだけ不良債権があるのかという分類も必ずしも明確ではありませんし、今度は分類をしたら、それをどれだけ積み立てておくかということに至っては最近まで何もなかったわけでございます。それは銀行と監査法人がやればいいのだ、こういうことであったわけでございますから、言葉は悪うございますが、本当にオーナーシステムで相手を信用してやっていたと言うに尽きるかと思います。  しかし、金融監督庁は非常に厳しい検査を六月から始められましたし、その上に今度は分類も、仕分けもきちっと一つの物差しをつくられました。やがてマニュアルのようなものもある程度出されるのじゃないかと思います。そうすると、銀行にとっては本当に初めて厳しい検査もあるし、行政指導もある、改善命令もあるということになります。恐らく、検査結果を個々の銀行について発表されることはないと思いますけれども、しかし関係が全く一種の緊張関係になっておりますから、銀行にしてみると怖いという言葉になるのだろうと思いますが、そういう状況が生まれてまいりました。また、銀行によって今度はそれを超えてもっと立派なことをやる、そういう自由競争も始まるかもしれないと思っておりますから、ここでおかげさまでいろんなことが一変してまいったと思っております。
  363. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 既に質疑者質疑時間、答弁時間は経過をしておりますが、答弁を求めますか、山崎君。
  364. 山崎力

    ○山崎力君 できれば総理も一言。
  365. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ビッグバンの時代を迎え、しかもペイオフが行われるということでございますから、金融機関が本当に世界に信認を得られるような形のためのディスクロージャーその他を徹底的に行っていかなきゃならぬと思っております。
  366. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で山崎力君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  367. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、西川きよし君の質疑を行います。西川きよし君。
  368. 西川きよし

    西川きよし君 私が最後になりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。  まず、本日のテーマであります雇用に関連して総理にお伺いをしたいと思います。  もう報道等々で御存じだとは思いますけれども、大阪府高槻市の市長さんですけれども、奥様の介護に専念をしたいということで市長を辞職されました。同じ政治家の一人として今回の御決断を総理大臣はどのように感じておられるのか、ぜひ感想をお伺いしたいなと思います。
  369. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 介護問題は老後生活における大きな不安要因の一つでありまして、高齢者介護を社会全体で支える仕組みとして介護保険制度を創設いたしたところであります。  高齢者の介護を社会全体で支えるものとして、実際に家庭において家族の方が高齢者の介護をどのように支えていくべきかという点につきましてはさまざまな考え方があります。その中で、高槻市長は一つの大変重い決断を示したものと認識をいたしておりますが、実はこのことが新聞に出ましたときに私の妻から、大変すばらしいことだ、こうしたことは結構なことだと言われましたが、私には実は若干思うことがございました。  ということは、選挙によって選ばれた市長さんが、奥様のことといえどもみずから任期の途中でおやめになるのはいかがかという気が率直にいたしました。ただ、実は江村高槻市長さんを私も存じないわけではございませんでしたので、お電話を差し上げました。そうしましたら、四期目で本人は七十四歳にもなっておられ、奥様が骨粗鬆症でありましたが、今はもう寝たきりになっておられるということで、長い間迷惑もかけたということもあって、この際身を辞してまいりたい、こういうことでございました。  したがって、公務と介護という問題は、なかなかそのはざまの問題は難しゅうございます。私、電話を差し上げて市長さんのお気持ちを承りまして、今の段階ではこうして市民の皆さんの御理解を得られれば公務を抜いて奥様のために介護のお仕事に尽くされるということについて、私はそのお話を聞いて納得したといいますか、ぜひひとつ介護に尽くしていただきたいというのが私の今の率直な気持ちでございます。
  370. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。  実はこの質問を自分がつくるときに、これだけ御丁寧に御答弁をいただけるとは想像しておりませんでした。ありがとうございます。私自身も、そしてまたきょうは全国の皆さん方もいろいろ考えさせられるところ大だと思います。短い時間ですけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。  市長さんといえども生活者の一人でありますし、このように家族の介護、看護を理由に仕事をやめられる方が年間何と十万人以上だということで、ほとんどが女性、妻であり嫁であり娘であったりするわけです。昨年発表されました国民生活白書によりますと、無償の介護、看護、家族ですから無償は当然のことですけれども、この評価額は何と年間二兆八千億円にもなるそうです。福祉から経済効果、こういうふうにお考えいただきたいとも思います。  十分な社会的支援が可能となるような体制の整備は急務であると思います。介護を理由とする離職者、経済全体に与える影響、現状と今後について経企庁長官はどのようにお考えでしょうか。時間が短いのでよろしくお願いします。
  371. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘の文章は、私の方で出しております国民生活白書の中にも引用しております。年間十万人、比較的高齢の方が退職されるケースが多いものですから、それだけずっと累積していくわけではございませんけれども、かなり大きな影響がございます。その反面、これがアウトソーシングされるような産業になりますと、特に高齢者に職場を与えるというまた効果もあります。  そういう意味で、できるだけこの介護というものを社会化して、アウトソーシングしてやっていけるように、保険の問題もございますし、規制緩和、自由化、そして新しい業としてこれを起こしていくということが大事かと考えております。
  372. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。  この十万人の中には、介護のために仕事をやめる、いわゆるやむを得ずという方が本当にたくさんいらっしゃると思います。こうした方々仕事と介護が両立できる環境をいかに整備していくかということがこれからの大きな課題だと思うわけです。そのためには、行政、職場、そして地域、家族が一体となった社会的な支援体制が必要だと思います。  来年から始まります介護保険制度はもとよりですけれども、いろんな分野において努力がなお一層必要であると思うわけです。そうした中で、いよいよ来月から介護休業制度が事業主に義務化されます。介護休業給付制度もスタートすることになるわけですけれども、事業主、労働者への周知徹底など万全が期されているかどうか、労働大臣にお答えをいただきたいと思います。
  373. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 先生が本制度の周知に大変な御尽力をいただいていることは承知しておりまして、ありがとうございます。  この制度は、御案内のとおり、家族に要介護者が出た場合、仕事を休んで最大三カ月、事業主に申し出れば休めるし、その間、保険で二五%の給与の給付が得られるという制度であります。これを徹底させるためにいろいろと努力をしているところであります。  事業主に対しまして奨励金というのを支給しまして、ことしの四月にスタート、スタートというのは義務化をされて二五%が支給されるということ、両面そろってスタートするという意味でありますけれども、それに向けてのPRで導入の奨励金制度を出したりしておりまして、それから集団説明会とか個別指導をいたしております。  それから、毎年十月の仕事と家庭を考える月間におきましては、シンポジウムの開催を初め、広報啓発に努めますとともに、新聞とか雑誌の広告あるいは電車の中づりの広告もいたしております。  これからエコーはがき、要するにエコはがきでなくてエコーはがきで、声がこだまするという意味、またよくわからない片仮名が労働省は好きなんですけれども、はがきの下刷りに宣伝を書いて四十五円で百万枚発売をするということ等を通じて周知徹底を図ることをいたしております。
  374. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございます。  続いて労働大臣にお伺いしたいんですけれども、当面はこの制度の定着と三カ月問題、今申し上げました二五%等々問題がたくさんありますが、検討課題が本当にあると思うわけですけれども、もう一言御答弁いただけませんでしょうか。
  375. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 最長三カ月間家族一人について休めるということ、その間二五%の給与支給が保険からあると、これをもうちょっと手厚くしたらどうだという議論はあります。  国会の審議を経て一応これでスタートしましょうということで、これからですから、スタート以降の状況を見させていただきたいと、もちろん附帯決議に今後その状況を見て、さらに検討をするということが書いてありますから、スタートした状況を見て、その後にいろいろまた御意見をいただきたいというふうに思っております。
  376. 西川きよし

    西川きよし君 ぜひ三カ月問題等々、またその後で結構ですので、御答弁のとおりよろしくお願い申し上げたいと思います。  そこで今度は、宮下厚生大臣に御答弁をいただきたいと思います。  この介護休業期間中の年金の保険料の免除、この問題ですけれども、育児休業期間中には本人負担分が既に免除となっております。これは皆さん御存じだと思うわけですけれども、また厚生年金の保険料の事業主負担の免除についても年金制度改正の大綱案に盛り込まれております。しかし、今回の介護休業期間中については厚生省では今のところ考えてはおりませんということでございますけれども、介護について、先ほど総理大臣の方からも御答弁がありましたけれども、社会全体でみんなで本当に支え合っていこうという機運が高まりつつある中で、少しでも安心をして、我が家もそうですけれども、本当に介護休業というものを安心してとれる、この場合についても免除制度が本当に必要である、こう思うわけですけれども、厚生大臣にお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  377. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) サラリーマン等の加入いたします厚生年金における保険料の免除につきましては、今、委員の御指摘のとおり、育児休業の資格者、つまり一年以内でございますが、育児休業手当をもらえるような方々、これは平成七年度から本人負担分は免除をしてきております。今度の改正によりまして、さらに事業主負担も免除するということに相なっておるのは御指摘のとおりでございます。  一方、介護につきましては、今、委員も御指摘になりましたが、本年四月から、来月から介護休業手当が支給されるようになります。したがって、当然育児休業と同じように介護休業の期間も同じ扱いにすべきではないかという委員の御指摘かと存じます。御指摘は確かにバランスその他を考えての御指摘であろうかと存じますが、これは育児休業の方はなぜしているかというと、やっぱり将来の年金制度を担っていただける後世代の人たちとなる子供たちの育成というような点がありますので、そういうことをやっていると思います。なお、この御指摘の点は問題点であることもまた事実でございますが、なかなか全体の問題でございますから慎重な検討を要すると存じますが、検討させていただくつもりでございます。
  378. 西川きよし

    西川きよし君 どうもありがとうございました。  これで終わります。
  379. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で西川きよし君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて財政金融・景気・雇用に関する集中審議は終了いたしました。  明日は午前十時から公聴会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十分散会