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1999-03-01 第145回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月一日(月曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員の異動  二月二十六日     辞任         補欠選任      三浦 一水君     岩井 國臣君      円 より子君     石田 美栄君      山本  保君     益田 洋介君      池田 幹幸君     須藤美也子君      小池  晃君     岩佐 恵美君      宮本 岳志君     橋本  敦君      山崎  力君     菅川 健二君  三月一日     辞任         補欠選任      奥村 展三君     山崎  力君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 狩野  安君                 金田 勝年君                 斉藤 滋宣君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 松谷蒼一郎君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 若林 正俊君                 石田 美栄君                 海野  徹君                 江田 五月君                 郡司  彰君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 柳田  稔君                 加藤 修一君                 浜田卓二郎君                 益田 洋介君                 岩佐 恵美君                 須藤美也子君                 橋本  敦君                日下部禧代子君                 照屋 寛徳君                 入澤  肇君                 月原 茂皓君                 菅川 健二君                 山崎  力君                 佐藤 道夫君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     中村正三郎君        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        運輸大臣        国務大臣        (北海道開発庁        長官)      川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君        労働大臣     甘利  明君        建設大臣        国務大臣        (国土庁長官)  関谷 勝嗣君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官)        (沖縄開発庁長        官)       野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   尾見 博武君        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局次長      松田 隆利君        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣官房内閣安        全保障危機管        理室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障・        危機管理室長   伊藤 康成君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        公正取引委員会        委員長      根來 泰周君        警察庁生活安全        局長       小林 奉文君        警察庁警備局長  金重 凱之君        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁検査        部長       五味 廣文君        総務庁行政管理        局長       瀧上 信光君        防衛庁長官官房        長        守屋 武昌君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  柳澤 協二君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        環境庁企画調整        局長       岡田 康彦君        環境庁自然保護        局長       丸山 晴男君        環境庁水質保全        局長       遠藤 保雄君        法務大臣官房長  但木 敬一君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     上田 秀明君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省経済局長  大島正太郎君        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        外務省条約局長  東郷 和彦君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省関税局長  渡辺 裕泰君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省体育局長  遠藤 昭雄君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省医薬安全        局長       中西 明典君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        水産庁長官    中須 勇雄君        通商産業省貿易        局長       佐野 忠克君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省環境        立地局長     太田信一郎君        通商産業省基礎        産業局長     河野 博文君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        通商産業省生活        産業局長     近藤 隆彦君        運輸省航空局長  岩村  敬君        郵政省通信政策        局長       金澤  薫君        郵政省電気通信        局長       天野 定功君        郵政省放送行政        局長       品川 萬里君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省労政局長  澤田陽太郎君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君        建設大臣官房総        務審議官     小川 忠男君        建設省建設経済        局長       木下 博夫君        建設省道路局長  井上 啓一君        建設省住宅局長  那珂  正君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君        自治省行政局選        挙部長      片木  淳君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  千葉 勝美君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、総括質疑を行います。広中和歌子君。
  3. 広中和歌子

    広中和歌子君 おはようございます。  先週からけさにかけてマスコミのニュースを独占したのは、脳死からの臓器移植でございました。心臓肝臓腎臓と、それぞれ各地で提供を待たれている方への手術が終わったということでございますが、厚生大臣、簡単にその経過をお話しいただけませんか。
  4. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 既に詳しく報道されておるとおりでございますが、簡単に申し上げますと、二月二十二日に患者が入院をいたしまして、臓器提供意思のあることが判明いたしました。それで、臓器移植法に基づきまして、患者本人意思表示家族の承諾によって脳死判定実施され、脳死判定されるわけでございますが、一回目のいわゆる診断におきまして、再度その臓器移植法による一次判定をやろうということでございましたが、その後のチェックポイント等の問題がございまして、一たん中止し、その後、再度正式な臓器移植法による判定をしたわけでございます。  二月二十八日には、臓器移植を受ける患者、それから移植臓器及び移植実施時期の確定、あるいは臓器摘出医の派遣、臓器摘出臓器運搬等、それからまた、移植手術実施を既に行っております。  心臓につきましては、御案内のとおり大阪大学、肝臓につきましては信州大学、それから腎臓につきましては国立長崎中央病院と東北大学の病院、それから眼球については現在未定でございますが、このような経過をたどりまして、今移植を受けられた方々は順調に行われておるというようにお聞きしております。  ここで申し上げさせていただきますが、本件は臓器移植法を成立するまでかなりの年月を要し、多くの議論が尽くされてまいりました。そして、一昨年の十月十六日から施行されまして一年四カ月の間、一症例も、一つも例はなかったということで、初めての臓器移植法に基づく移植でございました。それだけに、大変我が国臓器移植にとって一つの新しい時代を画するものと思いますが、この際、臓器提供されました御遺族方々本人はもちろん書面による提供意思を表明されておったわけでありますが、御遺族方々の御英断そして御決断に対して深い敬意を表したい、そしてまた亡くなられた方には本当に心から弔意を表したいと、このように思っております。
  5. 広中和歌子

    広中和歌子君 脳死からの臓器移植に関しましては、世論もいろいろ割れてきたわけでございますけれども、今回の移植について総理のコメントをお願いいたします。
  6. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、臓器を御提供いただいた方の御冥福を心からお祈りいたしたいと思います。また、臓器提供いただいた方及びその御家族臓器移植の実現に寄与された多くの方々に深く敬意を表したいと思います。今後、移植を受けられた患者方々が順調に回復されることを切に願っております。  臓器移植法につきましては、国会におきましても種々御議論あったところでございますが、私自身もみずからの責任においてこの法律に賛意を表したわけでございますが、改めて、こうしたとうといお気持ちによりまして新しい時代といいますか、そうしたものが我が国におきましても始められるということでありまして、ぜひこの御遺志が今後とも我が国において生き続けられることを心から念願しておるところでございます。
  7. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。  私ごとになりますが、私は一九八六年に政治世界に入らせていただき、十二年前初めてこの予算委員会総括質問に立たせていただきました。そして、十二年前と今との違いに改めて愕然としております。当時は中曽根内閣のときでございました。宮澤大蔵大臣も今と同じ席に座っていらっしゃいました。大蔵大臣でいらっしゃいました。  当時はバブル高騰期、大きな貿易黒字を背景に、双子の赤字を抱えるアメリカに対して自信に満ちていたわけです。その後、冷戦構造が崩れ、湾岸戦争が起こり、様相は一転いたします。日本ではバブルが崩壊し、金融問題に抜本的な手が打たれぬまま現在に至っております。その間、一%台だった失業率は四・三%、多くの人がリストラなどでおびえております。自殺者がふえ、特に最近はホームレスが目立ちます。千二百兆円に上る金融資産があると言われますけれども、庶民の預金はほとんど利子を生まず、老後の不安を抱えております。最近の国民生活選好度調査でも、七五%の人が不安だと言っております。  戦後、ほとんど切れ目なく政権の座におられた自由民主党、その総裁として、なぜこんな日本になったのか、どのように責任を感じておられるのか。日本をよい方向に導くため、そのビジョン、方向性、方策があればお聞かせいただきたいと思います。
  8. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 我が国の現在の状況というものをどう見るかということでございますが、私は、基本的には日本の力というものは大きなものを持っておると。でありますから、国際的にもまたその責務の大きさがございますので、日本経済の動向というものがすべからく世界経済、なかんずくアジア経済には大きな影響を及ぼしておるということだと思います。そういった意味で、対外資産もあるいは個人貯蓄も、高い技術力、これに支えられた製造力、勤勉な国民の資質などは極めて強固な基盤が存在をしておると思っております。  ただ、御指摘のように、今日こうしたものの富というものが、それぞれ国民の側にも今申し上げたような預貯金の形で多くのものがございますが、御指摘のように、現在においてはそこから生み出す利子その他が、こうした低金利時代を含めましてかつてのように大きな配当を生み出しておりませんので、そのことが従来からの日本国民の意識、たくさんの預貯金を何とか持つことによって将来に対する不安感を除去していこうということと同時に、現時点におきましては、そうした予定される利子収入によって消費を促していくという気持ちがなえ切っておるという状況はまことに残念なことだと思っております。でありまするがゆえに、政府といたしましては、何はともあれ、今日の経済の再興、不況を克服していこうという形で最善の努力を傾注いたしておるところでございます。  戦後の政治に確かに自由民主党は大きな責任を負ってきたことは事実であります。でありますがゆえに、全体的には、日本経済をこれだけ大きなものにしてまいりましたことは、国民の持つ創意工夫努力、そうした努力の上に立ってでありますが、政策的にも基本的な誤りがあったとは私は考えておりません。  でありますが、しかし今日を顧みますと、いろんな問題が噴き出た形で今日のこの二年続きのマイナス成長ということに相なっているわけでありますので、何としてもこれを脱却していく努力を尽くすことによって、再び将来にわたって明るい日本経済、あるいは日本自体の発展のためにその端緒をつくり上げていかなければならないのが今日の状況と認識しております。
  9. 広中和歌子

    広中和歌子君 経済大国になった、それがどんどん力をそがれていくというのは大変残念なことに思っているところでございます。  最近、吉川元忠氏の「マネー敗戦」という本を読みました。日本貿易で勝利をおさめている間、マネー分野においてはせっかく稼いだ外貨が為替差損で次々に目減りをしていくといったことが内容でございますけれども、前線で勝利して、しかし補給路を断たれているといった第二次世界大戦を思い出すわけでございます。  ノーベル経済学賞をもらったコロンビア大学の教授アマルティア・セン教授の言葉によりますと、アメリカは今マネタリー・インダストリアル・コンプレックスといったような形で国を挙げてマネー分野で頑張っているということでございますけれども、日本は国内のバブル崩壊を機に海外資産というのがどんどん目減りしている経験をしているわけです。  大蔵省アメリカの財務省やFRBに対して弱腰の協力をして国益を失ってきたのではないか、そのような思いがするわけでございますけれども、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一九八六年に国会に御当選になられましたが、その以前は長いことアメリカで御生活でございますから、両方のことを御存じでいらっしゃると思うんです。  それで、今のお話のまず最初の部分ですが、いわゆるプラザ合意というものをどう考えるか。  あのときに、御当選になります前の年、八五年九月がプラザ合意で、円が二百四十二円でございますが、御当選になってここへいらっしゃいましたときにはもう百五十円台になっておりますから、これは明らかに、ドルがもうあれだけ減価をしてしまったことについて、各国が協力をしたということにほかなりません。そのことは、ドル基軸通貨であるということを認める限り、どうもそうするしかなかったとみんなが考えていたしたわけでございますので、いわばドル減価をみんながしょったかとおっしゃれば、そうだというふうに申し上げることになると思います。  ですから、二百四十二円であった円は、きょう、ちょうどその半分ぐらい、百二十円、百十九円あたり。これは振り返ってみますと、もう一九八八年にその水準に達しております。それから、一九九五年には七十九円にまでなっておりますから、こうなりますと、三倍になったというそのこと自身は、私はあれしか方法がなかったのではないかというふうに思っておりますし、円の、もう自分の国の通貨がそれだけ価値が上がったということでございますので、今までバブルとかいろんな裏の面がたくさん出ておりますけれども、自分の国の通貨価値がそれだけ上がったということが長い目で見て日本に私は悪いはずはないだろう、ただ、そのメリットを生かし切れないでいるということであろうかというふうに思いますけれども、それはそういうふうに申し上げたいと思います。  ただ、先ほどおっしゃいました例の本ですが、何とか敗戦……
  11. 広中和歌子

  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それですね。それを見まして私はこう思うのでございます。  日本アメリカとの間に何かそういう共通の約束があって、それで日本事業家たちアメリカ債券をたくさん買って、そして為替差損を受けて大損をしている、そういうようなことが書いてあるわけですけれども、しかし、日本事業家がそれだけばかだとはどうも私には思えないのです。  まず第一、なぜアメリカ債券を買ったかといえば、それは、金利が、利子が全然違います、配当が全然違いますから。つまり、実業家としては、為替差損の危険と得られる配当の大小を比べて、そしてアメリカ債券を買うか買わないか、それぐらいのことができなければ、私どもでも考えますから、おかしいし、おまけに為替差損にはヘッジという方法がございますから、そういうことを国策に沿ってやってくれたとはとても私には思えませんし、また、そういう国策もございませんでした、もちろん、もとより日米間でそういう約束をして日本に何の得もございませんから。  日本としては、言ってみれば、それだけ通貨価値が上がって、そして産業はひどい目に遭いました。今でもひどい目にお互い遭っているといえば遭っているんですが、しかし、国際競争力がそれだけ日本経済についてきたというふうに見れば、それもそうだということに言えるんではないか。今としては裏目が出ておりますけれども、先ほど総理が言われましたように、それは必ず乗り切っていけるものというふうに考えております。
  13. 広中和歌子

    広中和歌子君 金利差というのを押しつけられているということはあるんじゃございませんか。  それから、ドルの独占に対しましてEUは対抗措置をとったわけですけれども、エージアン・マネタリー・システムといったような考え方、円圏といったようなもの、いまだに使い勝手が悪いからしようがないと言われればそれまでなんですけれども、その方向に向かって努力なさるということは、大蔵省としてはやっていらっしゃらなかったんでしょうか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、率直に申しまして最近までやってまいりませんでした。  まいりませんでしたと申し上げた意味は、そういう議論がもちろんなかったわけではありませんが、我々の経済が、円というものをある意味で国際通貨にしてしまって、それを背負っていけるかどうかということについて、絶えず殊に大蔵省内に議論がございまして、極端なことを言う人は、大英帝国がどうして没落したかという議論までするわけでございます。お笑いになるでしょうが、しかし通貨を国際通貨にするということはやっぱりそういうことを意味する。それを日本経済が背負っていけるのか。これは申しますと戦前のいろいろなこともあるわけでございますけれども、そういうこともあったりして、ごく最近まで円を人に使ってもらうということにやはり消極的であったと思います。  その証拠は、円の流通する市場というものをつくっていないということでございまして、日本の品物を日本は円で払いますと、それは円を持って、さあ、どうするのと言われたときに、東京の市場で円を運営することができない。長短期ともないわけでございますが、それは意識してと申しては言い過ぎかもしれませんが、つくっておりませんでした。  ごく最近になりまして、おっしゃいますようにFBとかいうようなものを買わせ、非居住者、外人にはもう償還差益は取らない、源泉所得も取らない、それから短期国債でも登録国債にしてくれれば何も取らないということにしましたので、初めて東京でそういう市場がここでできることになるわけでございますけれども、そうしましたら、円を持っていて、そうしてこの東京市場で運営ができるということになりますので、初めてそういう施策をいたしたところでございます。  それはある意味で、委員がおっしゃいますように、長いこと円というものを出すことに極めて消極的でございましたけれども、もはやそういう時代でもない。やっぱり無理をするつもりはございませんが、自然に使ってもらって、そして東京市場でも運営ができる、そういう体制に今、今と申しますのは本当にこの一、二年と申してもいいんじゃないかと思いますが、ようやく切りかえようとしているところでございます。
  15. 広中和歌子

    広中和歌子君 後手後手にという言葉がちょっと思い浮かぶわけですけれども、マハティールさんとかいろいろ応援団も出ております。それから、日本アジアにおける貢献というものも非常に大きなものがあります。  最近のアジアの金融危機に対する三百億ドルの支援に関しましても、日経のコラムに、なぜ三百億ドルという表示をするのか、円で表示したらよろしいのにと。そうしたら三兆円ということになるわけでございまして、もう少し日本の存在感というものを自信を持って示していただければよろしいんじゃないかと申し上げます。  それから、経済企画庁長官、この委員会で先日同僚委員の質問にお答えになって、日本の凋落は、改革に乗りおくれた、知価革命をしようとしなかったからだとおっしゃいましたけれども、なぜおくれたのか、その理由をおっしゃってください。
  16. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 経済構造の改革は、金融構造や社会保障改革等とあわせて橋本内閣の六大改革の一つに入っておりまして、日本といたしましてもそれ相応の努力はしてきたと思います。しかしながら、世界の潮流から見ると相当おくれてしまったことは事実でございます。  その最大の原因は、明治以来、日本が規格大量生産型のいわゆる殖産興業を目指してやってまいりまして、これが一九八〇年代に大変うまくいきました。私も、ちょうど委員国会にお入りになったころでございますけれども、アメリカ経済産業が衰退してだめなんだ、ジャパン・アズ・ナンバーワンという誇りを持ってこの規格大量生産型の構造を続けていたのであります。  そして、その中には、金融を中心とした縦の系列と、それから役所が行います、護送船団方式ばかりではありませんけれども横の産業協調主義、この縦横の重なりがあって、そこで規格大量生産構造を続けてきた、これが大きな問題でありました。  そして、そのときはよかったんですが、それが今日のようにお金が早く動く、知的所有権がどんどんと成熟する、そういった多様な知恵の時代になってまいりますと、相当不都合なものが出てまいりました。  それで、橋本内閣も構造改革というのを取り上げ、ここに参りましてかなり企業の方も動き出してまいりました。合併もございますし、運輸関係なんかでも規制緩和が行われるようになりました。特に去年の暮れからは、金融の再編成を核といたしまして産業構造の変革も進んできています。  そういう意味では、アメリカやイギリスに比べて十年おくれたかもしれませんが、今それが進んでおりまして、それに伴うまた痛みもあるということです。  また、予算の方では、小渕内閣は、未来性の予算といたしまして、二十一世紀先導型予算として、電子立国であるとか未来の都市交通、都市の国際競争力を高めるとか、あるいは少子高齢化時代に対応して安心、安全、ゆとりの暮らし、町づくりをするとか、あるいは雇用の流動性を高めるとか、そういった政策をいろいろととっております。  さらに、去る二月二十六日、総理大臣の諮問機関でございます経済戦略会議が最終報告をおまとめいただきました。この報告の中には二百三十四項目の多くの改革が出ておりまして、直ちにすべてが実行できるわけではございませんでしょうが、こういった改革の提案も積極的に受けとめて、各方面で進めていきたいと思っております。  さらに、経済審議会に対しましても一月十八日に総理大臣から諮問をいただきまして、今経済改革、経済構造改革についてはいろんな面から検討し、また金融を初めとしていろんな面から実行が進められているところでございます。  この現下の厳しい状況の中でそういったことを進めながら、二十一世紀の日本を開いていきたいと考えております。
  17. 広中和歌子

    広中和歌子君 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は私が訳したのでよく覚えておりますけれども、日本への序文に、日本が傲慢の罪に陥らなければいいと、そのようなことがしっかり書いてございました。  あの本が出たのは一九七九年のことでございましたけれども、ともかく、今おっしゃいました経済戦略会議でございますけれども、中身がどんなに立派でもそれをいかに実行するかということが問題なんだと思います。  それで、たしかテレビでおっしゃっておりましたけれども、省庁の横の連携をとりつつとおっしゃいましたけれども、この内閣の現状で、それが可能でございますか。
  18. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 各省の間に縦の壁のあることは事実でございますが、今は経済の危機とあわせて省庁再編成の問題も進めておりまして、総務庁を中心に総理大臣の指揮のもとに再編成が非常に熱心に、この四月にも法案が出されます。  その中では、今度の案の中では、総理大臣の指揮権、発議権というのが非常に大きくなっておりますので、かなりそういう面では、政府の機構も変わりますし、また各官庁の心理状態も変わってくるだろうと期待しております。
  19. 広中和歌子

    広中和歌子君 野田自治大臣にお伺いいたします。  新進党時代、たゆまざる改革、責任ある政治ということをうたわれました。今、自自連立内閣に入られたわけですけれども、その自自連立内閣が国民に納得してもらえるとしたら、野田大臣が、自民党のこの内閣の枠組みで、あるいはこの連立の枠組みの中で、その新進党で掲げられた改革というのを実行することだろうと思います。その御決意がおありになるんでしょうか。  そして、自自連立の合意というのはほんのわずかなこと、小さなことでございますけれども、その中で副大臣制というのが言われておりますけれども、副大臣制は具体的にどういう形で日本の改革につながっていくんでしょうか。縦割り行政が変わっていくためにどういうような役割を果たすのか、お伺いいたします。
  20. 野田毅

    国務大臣野田毅君) まず、この連立内閣のスタートに当たって、もうたびたび申し上げておりますが、小渕総理・自民党総裁そして小沢自由党党首との間で、この時局認識において、限られた、二十一世紀に向けて日本の構造改革ができる期間、そういう意味ではあらゆる分野にわたって構造改革をスピード感を持って断行していかなければならないというその時局認識において一致をされた。そして、当面する急ぐべき政策課題について九項目にわたる点についてのそれぞれ意見交換を真摯に行っていただいた結果、それぞれの分野についてまず合意が成立してスタートしたと。  したがって、今おっしゃいましたように、政策課題は当面する直ちに実行する政策ということに限られておるものではありませんで、もっと広範囲な構造改革のテーマがあるわけであります。そういう点で、連立政権がスタートした後も、地方分権の問題であったり規制緩和の問題であったり、あらゆる分野の中身についてより真摯な両党間の協議をこれから行い、そして成案を得て国会に御提案を申し上げ、御賛同いただき実行に移していく、そういう手順に持っていかなければならぬ、これはまず基本線であります。  そういう中で、政策の内容におきましては今副大臣制度のお話がありました。これは政府委員制度の廃止ということと不可分の問題でありまして、少なくとも、この問題は非常にわかりにくいように見えますけれども、これをトータルしていけばまず国会運営そのものが変わっていくだろうということは大体御理解をいただけることだと思います。いわゆる質問側と答弁側という、こういう形での議論ではなくて、与党、野党がお互い政策議論をフリーに闘わす、ディベートを行っていくという形に国会運営が変わっていくであろう、これがまず基本線だと思います。  それからいま一つ政府における政策の意思決定過程というもの、政治家といわゆる役所の人たちとの役割分担といいますか、ここをやっぱり明確にしていかなければなりませんし、政治自身意思決定責任、政策決定責任ということがより大きく問われることになるだろうし、そしてまたその姿を有権者が自分の目で判断していただいた上で政党なり政治家を選んでもらうという形に持っていかなければならない。  そういう意味で、ただ単に技術的な副大臣制度の導入ということだけでなくて、トータルとしての政治改革そのものに突っ込んでいく大きな第一歩である、そういう考え方のもとで、自由党あるいはその前の新進党においてもこの政府委員制度の廃止あるいは副大臣制度というものをいわば政治改革あるいは行政改革の一丁目一番地という位置づけをしてきたことは御案内のとおりだと思います。  そういう点で、特に副大臣に今特定してお話がございましたが、大臣一人だけが役所に乗り込んでということだけではなくて、言うなら今までの政務次官との違いは、スタッフとしてでなくて、ラインとして大臣と政治責任をともにしていくという形をつくることに意義がある、そういう形であるいは政策立案過程においてラインとしての責任を果たしていくという、ここのところに副大臣制度の大きな意義があると考えております。  そういう点で、行政改革ももちろん、この政府委員制度あるいは副大臣制度のみならず、規制緩和の問題であったり中央省庁の再編の問題であったり、特に国、地方の役割分担といいますか権限見直しといいますか、地方主権という言葉を自由党時代は使っておりましたけれども、そういったことをも含めて非常に幅広い分野のテーマについてこれから連立という枠組みの中で協議をして、できるだけスピードアップをしながらこれを進めていきたいと考えております。
  21. 広中和歌子

    広中和歌子君 国民が見ているということを申し上げたいと思います。  一九七〇年代のフランス、パリにいらした方は覚えていらっしゃると思いますけれども、あの美しい花のパリが非常にしぼんで汚くて落ち込んでいたわけですけれども、経済全体が落ち込んでいたんだと思います。しかし、その後、パリの再開発計画というのをいたしまして、ルーブルであるとかデファンスであるとか、オルセー美術館とか大蔵省とか、そのように町がきれいに活性化したわけです。  どういうふうにしてそれをやったのかと聞きましたら、各省庁から官僚が集まって同じ一つのプロジェクトで協力し合ったということを聞いたわけです。それで、日本ではそういうことは可能なんですかと私は案内をしてくださったある日本の官僚の方に聞いたんです。そしたら、日本は無理だとおっしゃるから、なぜ無理なのですかと言ったら、みんなで集まって決めることはやるけれども、それを持ち帰るとそこでつぶされちゃう。なぜつぶされるんですかと聞いたら、それは上役の天下り先と関係があるというようなことを言っていました。私はそれが単なるその人の個人的な考えであって、全体に当てはまらないことを心から希望するわけでございます。  フランスでもいろいろ問題がありました。例えば、フランスの官僚の力が強いというのは有名です。しかし、EUの統合に向けまして規制を大幅に緩和していったわけでございます。そして、今のフランスがEUのリーダーたる地位にふさわしいものになったわけでございます。  そこで、通産大臣にお伺いいたします。  かつては外国から悪名高きMITIと恐れられた通産省でございます。国際競争力のある産業を育て、日本の輸出競争力を高めた通産省でございます。そして、「MITI」という本を書いたチャルマーズ・ジョンソンをして日本株式会社と言わしめたその通産省でございますけれども、最近の通産省の顔が余り見えてこないんです。いわゆる新しい産業に向けてのリーダーシップというのが見えてこないんですけれども、どうしていらっしゃるんですか。
  22. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 通産省は静かに仕事をしておりますのでそう目立っておりませんが、日本の将来に対して果たすべき責任を果たそうとしております。  通産省の歴史というのは、経済の自由化、また対外関係のいろいろな自由化とともに、統制経済から脱して今は政策官庁になっておりますから、権限をもってして産業界全体を力ずくで指導するということはしないというのが現在の通産省のあり方でございます。  しかし、通産省は日本の将来の経済あるいは産業社会に対して重大な責任を持っているということは十分自覚をしております。中でも、やはり当面する産業再生計画、これは小渕総理のもとで昨年から準備をしてまいりましたが、一月にようやくまとまりました。今後は、私ども通産省を中心に各省協力をして日本産業再生に向けた努力をしなければならないと思っております。  私は、先ほど先生が言われましたいろいろなお話の中で、アメリカはやはり一九八〇年代にいろいろな金融問題でも実は日本と同じような経験もいたしました。また、生産拠点がどんどん海外に移動したということも経験しました。貿易の赤字、財政の赤字が同時に起きるという双子の赤字も経験をいたしました。しかし、アメリカ人は果敢にそういう問題に挑戦をしていったと思いますし、また特に一九八〇年代の半ばに出ましたヤング・レポートというもの、この中で今のアメリカ経済が示唆されているわけでございます。その中で供給サイドの改革を進めるという決意を進めた結果が現在のアメリカの繁栄に私はつながっていると思っておりまして、我々も、過去を振り返りながら、なおかつ将来に向かって前進をする、そのために必要な経済構造改革は断固行う、そういう強い決意で通産省はいるわけでございます。ぜひ御理解をしていただきたいと思います。
  23. 広中和歌子

    広中和歌子君 私の持っている印象は、新しい産業分野というのは、今までの物をつくるところから違った新たなサービス分野に広がっているのではないか、環境であるとか、福祉であるとか、今まで通産省がかかわってこられなかった分野に新たな産業の芽があるのではないか、そこに十分に参入していないのではないか、少なくとも協力していないのではないかということを感じるわけでございますが、それは後にいたします。  文部大臣いらっしゃいますか。  今、新しい時代に対応する人材というのが求められております。ベンチャーキャピタルなどといろいろな資金なども潤沢に用意されていると聞きますけれども、果たして人材はいるのかといったことでございます。  もともと不確実な時代であるにもかかわらず、あたかも戦後の教育は安定した、何というのでしょうか、右肩上がりの成長を前提とした、つまり一つのラインに乗ればそれでめでたし、めでたしといったような教育であった。それはほんの一時期のものにすぎなかったにもかかわらず教育が百年の計を立ててこなかったのではないか、不確実性の時代に対応する理念に基づいて教育を行ってこなかったのではないかという気がいたします。  今の時代文部省が掲げていらっしゃる教育理念とは何でしょうか。
  24. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私は、日本の教育は成功したと思っております。  なぜならば、世界じゅうで一番識字率が高い、あるいは小学校、中学校の数学とか理科の成績は明らかに世界で一、二位あるいは三位くらいのものですね。こういう点では成功した。しかしながら、もっと個性を出すというあたりで問題がある、特に戦後。戦前はかなり個人個人が大切にされておりました。戦後は日本経済を発展させるためにやはり全体でグループとして進んでいくという必要があった。  こういう点で、今私たちは、心の教育を一方でやりながら、二十一世紀には生きる力というものを子供たちに持たせるべきだ、そのためには、ゆとりを持たせて、自分で物を考え、独立して物を考えるという力をつけていかなければならない。同時に、倫理観をしっかり持ち、人に対して思いやりを持つ、美しいものは美しいと思う、そういう健全な心と体を持つ人材を育てるべきだと思っております。
  25. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は、四・三%という失業率というのは決して高くないと思うんです、世界のほかの国に比べて。けれども、ホームレスがやたらに多い。なぜだろう。安部公房の「箱男」の世界なのかなと哲学的に思ってしまうわけですけれども、やはり何か日本の中に欠けているのは、私は、適応力であったり選択力であったり学力──学力というのはどれだけ知っているかではなくて、絶えず学び続ける力、新しい物に挑戦していく力ではないかと思います。  今のように画一化の授業の中で、そして同じことを学びなさい、同じレベルに到達しなさいといったような教育でこれから生きられるんでしょうか。もっともっと自由化が必要ではないでしょうか。それから、リスクについてももっと教える必要があるのではないでしょうか。
  26. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 非常に重要な点を御指摘になられました。これからの教育はまさにそれをしていかなきゃならない。  すなわち、戦後の教育は成功したと一面で申しました。これは明らかに日本の国力を生み出していく上で成功しました。しかしながら、今までのように画一的な教育だけではだめである。ただ、基礎、基本は国民全体が持たなきゃいけない、その力は持たなきゃいけない。しかし、その上で独創性、個性というものを育てていかなければならない。そしてまた、義務感を持ち、しっかりとした責任感を持つ。そして自由な発想をしていく力を日本の子供たちに教えなければならないと思っています。これは社会全体の問題であり、皆さんも我々もそういう方向に進んでいかなければならないと思っております。
  27. 広中和歌子

    広中和歌子君 通産大臣、コンピューターチップやそれからコンピューターそのものはすぐれたものをつくれる日本が、なぜコンピューター産業あるいはコンピューターネットワーク化に日本アメリカからおくれたんでしょうか。その理由をお聞かせください。
  28. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) コンピューターにすぐれているというのは必ずしも正しくなくて、特にCPUの分野ではもうほとんどアメリカの企業が独占をしておりますし、例えばメモリーチップなんかは韓国が大変得意になってきております。  また、コンピューターを動かすOSの分野は、これは日本のものも努力いたしましたけれども、やはりマイクロソフトを初め、諸外国のOSが動いておりますし、若干のアプリケーションをつくっているという程度でございます。  それから、ネットワーク化も、やはりインターネットはアメリカを中心に最初は学術通信をやっておりましたものが全世界的に広がったわけでございますが、コンピューターに必要なハードウエアの開発も立ちおくれましたし、OSを初めとしましたソフトの分野も立ちおくれましたし、また高速通信あるいはネットワーク化ということについても一歩も二歩もおくれたと私は思っております。  そういうことを考えますと、あのバブル時代というのは本当に失われた何年間という感じでございまして、私どもとしては、日本が持っておりますこういう分野での潜在的な力というものを政府が中心となって引き出す、あるいは民間が中心となって引き出すという努力をしなければなりません。ましてや、政府の中で複数の役所にまたがるこういう情報通信産業ということもございますけれども、やはり役所同士が権限争いをして社会全体としておくれが起きるということは大変悲しいことでございますし、私は絶対避けなければならないことだと思っております。  ただ、日本には大変潜在的な技術力、力というものがありますから、これは将来に向かっては私は明るい展望は開けてくると思っております。
  29. 広中和歌子

    広中和歌子君 野田郵政大臣、過去のことをお聞きしても仕方がないことかもしれませんけれども、今、野田大臣のリーダーシップのもと、通産省を初め他省庁と一緒にこの情報通信産業というものを大きく立ち上げていく御意思はございませんか。
  30. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 情報通信に関して私がリーダーシップというよりも、もう既に小渕総理が、特に内閣発足以来、情報通信に関しては総理のリーダーシップのもとで私たち閣僚が相まっていろいろな議論、検討をさせていただいているところであります。  ほかの役所のことは余り触れるべきではないと思いますけれども、郵政省に関しては平成十一年度の予算のプライオリティーを決めるときには極力他省庁との連携施策に重点を置いて取り組んでいこうと。例えば、教育に関しては文部省、道路に関しては運輸、建設省、地域の発展に関しては自治省と、そういういろいろな施策を、もう既に取り組んでいたんですけれども、さらに強化して十一年度では優先的に予算をつけていこうということでやっております。  また、小渕内閣のもとでは高度情報通信社会推進本部というのがございまして、これは前からあったんですけれども、一層リニューアルしていこうということで、平成十年の十一月に新たに推進に向けた基本方針というのを改定しました。そこでは三つの原則、四つの目標というのを掲げて、三つの原則というのは、基本的に民間主導、そして政府も需要家として貢献する、さらに国際的な合意に向けては積極的に取り組むというのが三つの原則。四つの目標というのは、例えばこれから爆発的に普及すると予測される電子商取引については積極的に取り組む、さらには電子政府を樹立する、そして先ほど文部大臣のお話の中にありましたけれども、人材育成の面で情報リテラシーをしっかりやっていこう、さらにはそれの基盤であるインフラの整備をしっかりやっていくということで、これはスケジュールを決めて取り組んでいくということを決めたところでございます。  ですから、今までもいろいろな言われ方がされておりましたけれども、既に情報通信というのは省庁別でやっていけるものではなくなったので、より積極的に取り組んでまいりたいと思いますので御理解いただきたいと思います。
  31. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は、行政改革、省庁を変えるというのであれば、情報産業省みたいなものをぜひおつくりになる必要があるのではないか、そうすると非常にはっきりして、そこにいろいろな力が結集されるということがあるんじゃないかと思います。例えば運輸省、建設省がこの分野でいろいろな形で協力し合うことによって予算もはっきりつけられるんじゃないかと思います。  私だけではなくて多くの委員が、今までの予算編成において、それから数々行われた補正予算においてもめり張りがきいていない、今までの縦割りの壁を破れていないと。それぞれでは情報通信で予算もおつけになるのかもしれないけれども、結局それが生かされていないということが問題ではなかろうかと思うわけです。  そういう中にあって、情報産業省的なものをつくっていくということに対して、総理どう思われますか。突然の質問で、何かこうやって質問しているうちにどんどん私の質問が変わってきちゃって、通告してございませんけれども、どう思われますか。
  32. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 既にこれからあるべき国の行政機関の形は国会で通過させていただいておりますので、今改めてということを申し上げるとなかなか難しゅうございますが、年来、私も情報産業といいますか、こうしたものについては行政的に一つの姿が望ましいのではないかという持論を持ってきたことは事実でございまして、昭和四十年代の後半に私は情報産業振興議員連盟というのをつくりまして、今私がその会長をいたしております。  当初は、この議員連盟をつくりましたときには、ともかく参加していただいた議員の皆さんも若干、私自身もそう深い知識があったわけではありませんが、何かスパイ防止法をつくるのではないかというようなそういう感覚がありまして、その後、通産省が特にハード面で非常に熱心にこれに取り組まれまして、最初に取り組まれたのがたしか超LSIの組合によってこれを発展させるということでありました。  当時はそれこそ情報産業といいますとインダストリーとして考えておりまして、いわばコンピューターが立派なものができてきましても、日本の国内ではそれに対してのソフトというのはむしろおまけの類だ、こういう感じでございましたが、今完全にそれが逆転して、ソフトこそ命だと、こういうことになってきておるわけでございまして、その過程で、ある民間会社も、CアンドCというような言葉も、すなわちコンピューター・アンド・コミュニケーションでございまして、役所とすると、どちらかというと通産省と郵政省がこの二つの仕事に専念しておったような形でございまして、それぞれに熱心に取り組まれてはおりましたけれども、今、委員が御指摘のような問題がなかったと言えば私はうそであろうと思っております。そういう意味で、今後新しくできますいろいろの役所を十二分に活用すると同時に、私、先般バーチャルエージェンシーということをちょっと申し上げたんですが、今、四つの部門について若手の方々が各省庁から出ていただきまして取り組んでおります。  そういうことを考えますと、役所は一つでなければならぬということは、ある意味ではっきりその方針が明らかになるわけでございますけれども、さりながら、今の段階では新たにそうした役所をつくり上げるということはなかなか困難だろうと思います。したがって、現実には横の連絡を十分とり、総括して、先ほど郵政大臣申されましたが、今、内閣総理大臣がその本部長をいたしておりますので、そういった形で友好的にこうした問題に対して諸外国に負けないような方針を打ち出していって効果を明らかにしていくということだろうと思っております。
  33. 広中和歌子

    広中和歌子君 労働大臣、国際会議御出席、御苦労さまでございました。労働大臣会議で何が話し合われたのか、一番最初の質問日でございますので、御報告いただければと思います。
  34. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 委員長、そして各党理事を初め委員の先生方、そして各党国対、議運関係の皆様の大変な御配慮によりまして、総括質疑中にもかかわらずG8労働大臣会合に出席をさせていただきました。本当にありがとうございました。  会議は大まかに言いまして二つのテーマがございました。  第一点目は、各国の労働市場戦略でありまして、平たく言いますと各国の雇用戦略でございますが、各国の政府が労働戦略でどういったことに取り組んでいるかということの披瀝をし合うということでありました。その中で、私どもは百万人の雇用の創出・安定政策を初めとする雇用戦略を発表させていただきました。  各国が大変興味を持っておりましたのは、特に私どものアクティブエージングという、これから少子高齢社会の中で高齢者の力を社会の活力としてどう取り組んでいくかということに各国は大変興味を持ってくれました。特にイギリスは、自分の方でもやっているので一緒にいろいろ協力していこうと、会議の後で私のところに大臣が来られました。  それから二点目のテーマは、ILOとそれから他の国際機関との連携のあり方についてであります。  実は、アメリカはILOとWTOを連動させたいという思惑がありまして、つまり中核的な労働基準を達成させていくために、特に途上国に対して貿易制裁という手段を用いながらこれを達成したいと。私はアジアの代表でもありますから、そういう強制的な達成の仕方というよりもむしろ支援的、促進的な達成の仕方の方が抜本解決になると。力で抑え込むと、その当初は渋々そうなるかもしれないけれども、それは解決策にならぬと。これは大議論になりました。  そこで、いわゆるブレトンウッズ機関、IMFそれから世銀等が側面支援をするという形でのILOとの連携は進めるべきだということで、最終的に議長総括はそういう形で、私どもの主張が通る形でまとまりまして、成果が上がったというふうに考えております。  与野党の先生方の御理解のおかげさまであります。ありがとうございました。
  35. 広中和歌子

    広中和歌子君 失礼ですけれども、大臣、コメントを二つさせてください。  一つは、どうして労働省は英語ばかりお使いになるのかなと思うんですけれども、アクティブエージェンシー、それからハローワーク、何だか日本語だか英語だかわからないような横文字をお使いになるので、私、いつもちょっと違和感を持っております。  それから、ILOとWTOの関係ですけれども、つまりILOの規定より下の低賃金労働者とWTO、つまり貿易とを結びつけようというわけですね。その点について、労働大臣の御所見には賛意を表しますけれども、WTOであれば、むしろ環境と自由貿易とをぜひ結びつけていただきたいなと思う次第でございます。これは時間がございませんので環境庁長官にはお伺いいたしませんけれども、環境の視点で貿易というのを考え直すということは大切なテーマではなかろうかと思います。  ところで、世界から称賛されてきた日本的雇用慣行というのがございます。終身雇用、年功序列賃金、それから企業内労働組合ですか、それにもう一つ加えれば、企業内トレーニングということが言えるんじゃないかと思います。大学は出たときはどうでもいい、企業がトレーニングするんだからいいよということで、ちょっとそう言っては大学に失礼なんですけれども、大学の中での教育に対して、つまり大学に入るときは重要視するけれども、出るときにどれだけの教育がされたかということは余り注目が払われなかったぐらい企業内のトレーニングということを大切にしたんだと思います。  しかし、こうした四つの点、いまだに機能していると思われますか。
  36. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 労働省、横文字が多過ぎると確かに思いますけれども、それは労働省がいかにドメスチックであるかということの裏返しかなとも思っております。  御質問の四つの観点であります。  これはいろいろと今議論をされておりますけれども、日本的な雇用慣行はいい点もたくさんあったと思います。それは、一つは長期雇用に従って企業内の職業訓練を行う、これは企業の長期戦略につながりますし、長期安定雇用というのは雇われる方にとっても生活設計がしっかりできるということ。それから、製造業などは長期的な戦略に従って職業訓練を行い、物を開発してきたという利点があると思います。  しかし、今いろいろと岐路に立っておりますのは、それでがちんがちんに固めてしまうと、むしろ柔軟な対応ができづらいということでありまして、雇われる方にとっても自分の能力を新しい方に見出したいとか、あるいは新しい産業に対して有能な人材がスムーズに供給できる、そういう点が大事でありますから、今までの日本の雇用慣行といいますか、雇用文化といいますか、それはもちろん私は中心的に据えていくべきだと思いますが、それに加えて柔軟的に対応できる、企業の側からも働く側からもそのニーズに対応できるような新しいチャンネルというものをふやしていくべきだと思っております。  それから、労働組合とかそういう働き方の問題につきましては、基本的に私がこうしなさいという話ではありませんで、それぞれ労使が健全に話し合った中でつくっていただくのが一番いいかというふうに思っております。
  37. 広中和歌子

    広中和歌子君 終身雇用にしても年功序列賃金にしても、守れるものなら守っていきたいというお気持ち労働大臣自身にもございましょうし、企業にもあると思います。  しかし問題は、今後守れるかというところがあるわけで、先ほど御指摘になった百万人の雇用創出ということ、これは私、十分ではないんじゃないかと思います。  今四・三%の失業率、約三百万人になんなんとしているわけですけれども、これからどんどん企業がリストラしていかなくちゃならない、さもなきゃ競争力がついていかないというときに、早目に新規の雇用をつくっておく、その芽を育てていくということが必要で、私がもし大臣のお立場だったら、五百万人とか六百万人とか一千万人とかもうちょっと大きなことを言うんですけれども。  労働省だけではもちろん無理でしょうから、やはり総合的に経済企画庁あたりが中心になってやっていただかなきゃならないんじゃないかと思いますが、いかがでございますか、経済企画庁長官。
  38. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 昨年十一月の緊急経済対策、そして今度の御審議いただいております平成十一年度予算におきましては、雇用問題は非常な重点政策といたしまして大きな枠組みをつくりました。  ただ、それを直ちに実行するためにはいろんな組織、制度あるいは人材等の問題がございまして、すぐにそれほど、まだ予算審議中でもありますが、はかばかしいことは起こっていないかと思いますけれども、やはり流動化を前提とした教育をしなきゃいけない。  それから、先ほど委員御質問のございました情報産業でも、ハードウエアの方は非常に進んでおりますけれども、ソフトウエア、特に情報プロデューサーといいますか、プロバイダーのプロデュースをする人材、例えば今リナックスというソフトウエアがフィンランドの学生の提唱によりまして猛烈な勢いで、何百万人の世界じゅうのコンピューターが参加して、マイクロソフトを追いかけるほどの規模で進んでおります。こういうような組織をつくっていくプロデュース能力、いわゆるサイバー会議室、サイバーチェンバーズのプロデュースというような能力がありません。  また、経済の面でも、ソフトウエアの情報の方、経済情報などの人材も非常に日本は枯渇しております。そういうところを上げていきますと、かなりの雇用問題も出てくると思うんです。  特にこういうホワイトカラーの失業問題のときには、そういうことも含めて労働省の方で新たな教育訓練、能力開発の問題を検討していただいておりますし、戦略会議からもそういうような提案がございますので、私たちも含めて、政府は挙げてこの問題をこれから早急に検討したいと考えております。
  39. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は、新しい時代、新しいニーズには新しい形で対応しなきゃだめだろうと思うんですよね。労働省の百万人雇用計画、それは大変結構だと思います、それ自体。ただ、四百万、五百万の雇用を創出し、いつでもおりてきてくださいよ、いつでも渡ってきてくださいよといったようなセーフティーネットをつくっていくためには、人材をいかに流動化させるかというさまざまな仕組みが必要だと思います。  私は幸か不幸かアメリカに七〇年代住んでおりまして、あのときはアメリカ失業率は一〇%、一一%、そういうようなときでございましたけれども、あらゆる機関が人材のトレーニングに取り組んだわけです。労働省だけではない、学校も取り組んだわけでございます。  例えば、文部省は大学を社会人に開くというようなことでいろいろ今までやっていらっしゃいますけれども、何か夏休みに講義をするとか、有名な教授を呼んできて日曜日、土曜日にやるとかといったようなことを社会人教育とおっしゃっていますけれども、本当の社会人教育というのは、社会人が仕事を一年なら一年休んで、あるいは夜、そして普通の大学生が今学んでいる、あるいは大学院生が学んでいることを学ぶことなんです。  そのことなんですけれども、そういった大学の自由化というんでしょうか、そういう方向への取り組みについてはどういうふうに思っていらっしゃいますでしょうか、文部省もこの危機の日本に何かお役に立つような形で人材育成をしていただけないか、お伺いいたします。
  40. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まさにその方向に進んでおります。  例えば、具体的に申しますと、筑波大学は東京都の中に、文京区でありますが、そこに社会人教育のための大学院をつくっているというふうな努力が今だんだんと盛んになっております。文部省といたしましては、生涯学習という立場からも社会人教育を大いにやるべきだというふうに思っています。  それからまた、昔、職業高校と言っておりましたが、現在これを専門高校という名前にしております。専門高校においても、そこを卒業した人あるいは近所の市民の中でさらに新しい技術教育を勉強したいという人々のためには大いに開放しております。そして、これは単に土、日だけではなく、週日をもってやるようにいたしております。努力をしているところでございます。
  41. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は、普通の学生さんと一緒に勉強するということが社会人にとってどんなにすばらしいことか。例えば、外務省の方がハーバードとかいろいろなアメリカの大学なんかへいらっしゃいますけれども、その方がつくづく述懐していましたけれども、三十とか四十とか、その年になって大学に行けるということはどんなにリフレッシングか、そしてそれが将来の意欲にもつながるし、また実力にもつながるんだということをおっしゃっていたんですけれども、やはり今、日本はその時代に来ているんじゃないか。  雇用の数は限定しています。余暇はいっぱいあります。そういう中にあって、もっと大学が今までの企業内トレーニングではない形で、アウトソーシングという形になるかもしれません、そういう形で大学がいわゆる今の時代のニーズを先取りするというんでしょうか、遅まきながら先取りしていただくと。変な言い方になりますけれども、ぜひそういう方向にやっていただきたい。そしてそれは全部一律にやらなくていいんです。例えばどこかの地域でもいいから地域からスタートできるような、そしてそういう取り組みをもし大学がしたならばそれが自由に許されるような、予算もつくような、そういう方向が考えられないでしょうか。お伺いいたします。
  42. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まさに現在できるようになっておりまして、一たん卒業した人々が大学に帰って勉強、特に大学院で勉強しやすくしております。  問題はただ、きょうも実は午前中に経済同友会の方たちとお話をしてまいりましたけれども、経済界、産業界の方がまだまだそれほど余裕を持っていないという状況もございますけれども、産業界におきましても大学の教育ということを見直してくるという時代になってまいりました。こういう点で大きな動きが現在あると思います。  社会人となった人々がもう一度高等学校なり大学に帰ってきて勉強するということは非常にいいことだと私も思いますし、事実そういう方向に今進みつつあるということを御報告申し上げておきます。
  43. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございます。  それで、ついでに文部大臣にお伺いいたしますけれども、大学の独立行政法人化、これは国立大学ですけれども、メリットは何でございますか、そしてまたそれをするのかしないのか、お伺いいたします。
  44. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 一月二十六日の中央省庁等改革推進本部におきまして、中央省庁等改革に係る大綱というところに国立大学の問題が書かれております。「国立大学の独立行政法人化については、大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成十五年までに結論を得る。」とされているところでございます。  メリットというのは、というか利点と申し上げましょう、これはちゃんとした日本語がありますから。ついでに申しますと、私はニーズという言葉が嫌いでございまして、何とか需要とか要望にならぬかと思うんですけれども、余計なことを申しました。先日、国語審議会でなるべく片仮名を日本語にすべしということをお願いいたしました。まあ余計なことです。  今重要なことは、どこが利点であるかということが一つ。これは明らかにいろいろな面で、例えばお金の使い方が自由になるとか、それから人間の任用の、総定員法から外れるとか、いろいろな利点があると思います。  しかしながら、現在「平成十五年までに結論を得る。」というふうにいたしました理由というのは、現在国立大学の改革を進めているところでございます。大学審議会等々で大変な努力をいたしております。  まず第一に、責任ある運営体制ということを確立していかなければならない。それから、大学の情報公開ということをもっと推進していかなくちゃならない。それからまた、これは先ほど広中先生が御指摘になっておられたことでありますが、やはり日本の教育、特に国立大学というものが世界的になっていかなければならない。こういうふうな努力を今回しなければいけませんので、内外に開かれた国立大学を実現するための法案を今国会に提出予定でございます。  また、引き続いて、財務、会計の柔軟性の向上や適正な評価システム、アメリカなどは厳しいということはよく御承知のことと思いますが、評価システムの確立を図っていかなければならない。こういうふうなことを一方で考え、そしてその上で、独立行政法人を含む国立大学の設置形態については、今後これらの改革の帰趨を見つつ、教育、一番重要なことは何といっても教育研究の質的向上でございますので、その観点から独立行政法人の可能性ということも含んで、国立大学の設置形態について今後さらに検討を進めたいと思っております。
  45. 広中和歌子

    広中和歌子君 国立博物館はいかがでございますか。
  46. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) これはもう既に大綱で決められてございまして、独立行政法人化ということになっております。  ただ、私は率直に言って心配しておりますことは、どの程度自分の力で運営できるものであるか。例えば一〇%か二〇%の程度であるか。この辺について、残りはやはり国として十分それに対しての補助をしていただかなければならないであろうと考えております。  しかし、独立行政法人化することに関しましては、国立美術館、国立博物館は決まりましたので、その方向でさらに進んでいきたいと思っております。
  47. 広中和歌子

    広中和歌子君 エージェンシー化の先輩であるイギリスにおきましても、国立博物館はエージェンシー化いたしませんでした。つまり、文化であるとか基礎研究であるとか、そういったものは民営化になじまない、エージェンシー化になじまないのではないか、そのように思う次第でございます。  第五世代コンピューター、中曽根首相のときに鳴り物入りで宣伝されまして、世界じゅうからも期待されたんですけれどもうまくいかなかった。その失敗の原因は何かあえて伺いませんけれども、やはり一年ごとにリポートを出せと、それも大蔵省に予算の納得をしてもらうために出せといったような、非常に何というんでしょうか、締めつけられた中で自由な研究なんてできっこないんです。  ですから、もっともっと、しかも基礎研究とか文化とかは日本の予算の中ではほんのちっぽけなものでしょう。そんなことにけちけちしないでいただきたい。文化国家日本とおっしゃるんだったら、ぜひお願いしたいと思います。  大変に大臣方、丁寧に答えてくださるので時間が押して恐縮でございます。  今までいろいろ申し上げたのは、新しい日本産業の芽として新しい分野があるんではないか、これはわざわざ私が言うまでもございませんけれども。  この前の選挙のときに、参議院の選挙でございますけれども、千葉から立候補いたしまして、医職住の充実を通じて日本経済を再活性化しようということを訴えて当選させていただきました。  医というのは医療の医です。それから職は職業の職、住は住環境の住です。つまり、医というのは健康、安心、安全、職は職の安定、職の創造、そして生涯にわたる生きがいある仕事、住は緑、憩い、コミュニティーでございます。こうした視点から、新産業と雇用を創出していきたい、考えてみたいと思っているわけでございます。  その柱として、先ほどの繰り返しになりますが、医療・福祉関係、環境産業、高度情報化の分野、農業、漁業並びにレクリエーション産業があるのではないかと思っております。省庁横断的な参加が必要でございますが、これについて経済企画庁長官、コメントをお願いいたします。
  48. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 委員指摘のように、生活が高度化してまいりますと医職住というものの内容も変わってくると思います。私も、人間が最初に人生を送る教育、それから人生の中ごろに一番重要な住宅、そして人生の終わりまでかかわる医療、この三つに安心がなければならないと思っております。  その点につきまして、日本では、大量にだれにでも医職住が行き渡るというところでは成功したのでございますけれども、効率性の面、多様性の面、選択の面にまだまだ検討する余地があると思いますので、そういったことを今後構造改革とともに充実させていく必要がある、そしてそこにこそたくさんの職業、職が出てくるのではないか、こう考えております。
  49. 広中和歌子

    広中和歌子君 では、医療、福祉についてでございますけれども、厚生大臣、新ゴールドプランの最終年に当たりますけれども、特養それからホームヘルパーですか、どのくらい手当てがされましたでしょうか。
  50. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 明年度の四月の介護保険の実施を控えまして、特老等は予定よりも一万人、一万床くらい多くいたしましたし、またホームヘルパーその他の施設の充実も図っておるところでございます。  なお、これから介護保険の施行を前にして市町村は介護保険事業計画を立てますから、それに基づきましてさらに充実を図ってまいりたいと思っております。
  51. 広中和歌子

    広中和歌子君 もうちょっとこれを続けたいのですけれども、時間もございませんので、最後に環境産業について申し上げたいと思います。  通産省は今まで動脈をやっていらした、これから静脈産業をなさるおつもりはございませんか。
  52. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) これからの日本というのは、世界、地球の上で生きていくためには環境上の制約あるいは資源上の制約というものを乗り越えていかなければならないわけでございます。そういう意味では、資源の面からもあるいは環境に対する負荷という面からも、先生の言われる静脈という意味は、多分いろいろなものをリサイクルするという意味に私はとりましたけれども、そういうことは経済の問題としてもあるいは環境の問題としてもあるいは日本世界に対する間接的な貢献という意味でも大変大事なことでありまして、循環型社会というものを形成するためにこれからの日本はライフスタイルの変革を含めて相当変えていかなきゃいけないことがありますし、また産業としてもやはり循環型経済と申しますか、リサイクル産業というものにこれからは本当に力を入れてまいるつもりでございます。
  53. 広中和歌子

    広中和歌子君 RDFというのでしょうか、固形燃料、ごみを固形燃料化し、それを燃料にして発電するといったような新しい取り組みがもうどんどん海外でも行われておりますし、日本には技術もあります。あとは資金と人材をそこに投入するかどうか、意思の問題にかかっていると思います。ぜひリーダーシップを発揮していただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  54. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で広中和歌子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  55. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、吉村剛太郎君の質疑を行います。吉村剛太郎君。
  56. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 週をまたぎましての総括質疑、閣僚の皆様方大変お疲れさまでございます。時間も迫っておりますので、早速質問に入らせていただきます。  二十一世紀ももう指呼の間に迫ったわけでございます。振り返ってみますと、五十数年前、我が国我が国民は太平洋戦争、そして敗戦、そして戦後の混乱、大変過酷で不幸せな経験をしたわけでございます。  しかしながら、その過酷で不幸せな中にも幾つかの国としての運の強さ、運のよさというものもあったのかなと私自身は考えておるところでございます。  それは、一つは、やはり天皇制、国体といいますものを保持することができたということ、これが一つであろう、このように思っております。  そして、敗戦によります占領が、我が国国土ほぼ全体をアメリカという国に占領されたと、そうしたらそのアメリカという国が自由主義、民主主義の機能する国であったということでございます。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  そして、非常に的確な政策の判断、決断、選択といいますものもあった、このように思っております。それは、あのサンフランシスコ講和条約によりましていち早く我が国を自由主義陣営の中に位置づけた、その決断、選択。そして、国の安全保障のためにアメリカとの日米安保条約ということ。  そして、これは朝鮮半島の方々には大変申しわけないんですが、戦後の復興に際しましては、あの五〇年六月に勃発しました朝鮮戦争によります特需といいますものが我が国には非常にその後の経済復活に大きな幸運であった、このように思う次第でございます。  そういう運のよさ、そして政治的選択の上に立って、経済一辺倒で進んでいき、今日の我が国の社会があるということではなかろうかな、このように思っております。  そして、長く続きました東西冷戦構造が崩壊をいたしました。その真っただ中で結ばれました日米安保条約といいますもの、これもまたその意義を変えていくであろうか、このように思うわけでございます。  総理にまず冒頭、東西冷戦後の国際状況についての御認識、なかんずくアジアの情勢についての御認識、そして冷戦後の日米安保条約の意義というものについてのお考えを、国のリーダーとしての総理大臣としてのお考えをまずお聞きしたい、このように思います。
  57. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 冷戦の終結に伴いまして、圧倒的な軍事力を背景とする東西間の軍事的対峙の構造は消滅をいたしました。世界的な規模の武力紛争がそうした意味で起こる可能性というのは遠のいておるという認識であります。  しかし、一方、複雑で多様な地域紛争の発生、大量破壊兵器等の拡散といった危険がまだ存在するなど、冷戦終結後の国際情勢は依然としてさまざまな流動的な要素をはらんでおると考えます。特に、我が国が位置するアジア太平洋地域では、朝鮮半島における緊張の継続など、依然として不透明、不確実な要素が残されていると認識をいたしております。  このような考え方に基づきまして、政府といたしましては、日米安全保障体制を堅持しつつ、ASEAN地域フォーラム、ARF等の域内の相互信頼関係を高めるための安全保障対話や域内協力を進展させることにより我が国を取り巻く安定した安全保障環境の整備に取り組んでいるところでございます。  委員指摘のように、日米安全保障条約につきましては、こうした状況もさることながら、今日まで日本がこうして安全な状況の中で繁栄を持ち得たということの中で、日米協力、ただに安全保障のみならず経済的な面でもこの条約の持てる意味というものは存在するわけでございますので、こうした関係というものは、日米の同盟関係をさらに強固にしていくという建前からも、この安全保障条約につきましては今後ともこれを守っていかなければならない、このように考えております。
  58. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 我が国のトップリーダーとしての基本的なお考えを今お聞かせいただいたわけでございます。ありがとうございました。  先ほど申しましたように、幾つかの運のよさという中に、我が国が分断国家にならなかったということ。ただ、昭和二十年八月の時点でソ連が北海道をアメリカと分割して統治するというような考えもあったようでございますが、分断をされなかったといえ、現実にはあの我が国固有の領土でございます北方四島が今ソ連に支配をされておるということでございます。  北方領土問題につきましては、この五十数年間、本当に各界各層、特に政治の衝に当たるいろいろな方々努力もされてきたわけでございます。しかし、その経緯を見ますと、まさに一喜一憂という感じがいたします。  五六年の日ソ共同宣言、これはソ連が言います二島返還、我が国が主張します四島返還、この点の合意がなされなかったわけでございまして、この合意がなされておれば平和条約という形になったんであろう、このように思っておりますが、しかしここからスタートしてきた。  しかしながら、その後一九六〇年にソ連の対日覚書によってこれが否定をされた。そして、その後一九七三年、当時の田中総理とブレジネフの会談によりまして、日ソ間の諸問題の中に領土問題が含まれるかどうか、ブレジネフがダーと言ったというようなことが有名な話でございます。そして、一九九七年、橋本、エリツィン大統領との個人的な関係によってこの問題が前進し、また九七年十一月に、平和条約を締結するように努力するというようなことでございます。  まさに一喜一憂ということでございますが、新聞報道によりますと、一九九八年四月と一九九八年十一月にそれぞれソ連側、日本側が提案をしたということでございまして、日本側の提案は得撫と択捉との間に国境線を持つというような提案、それが画定したら、返還は暫時おいて、共同開発というようなことも可能であるというような、これは新聞報道でございますが、この点の事実関係はいかがでございましょうか。これは外務大臣
  59. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) まことに申しわけないんですが、外交交渉の内容にわたる事項でありますので、その点についてはコメントできないということを御理解いただきたいと思います。
  60. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 外交の衝に当たっておられます外務大臣、なかなかその点は言いづらい面もあろうか、このように思っております。  いずれにしましてもその後、今来日されましたロシアのイワノフ外相が、今までのずっと流れを全く否定してしまうような発言もあったように聞いております。しかしながら、長い日ロの四島返還についての御努力、本当にこれから積み重ねていっていただかなければならない、このように思っております。  つい最近、イワノフ外相とお会いになっておりますが、そこでのいろいろなお話し合いについての内容を、もし差し支えなければお聞かせいただきたい。
  61. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 二月二十一日、イワノフ外相との間で平和条約締結問題日ロ合同委員会の共同議長間会合を行いました。  協議では、クラスノヤルスク以来の日ロ間の一連の合意及び宣言に従って精力的な作業を継続していくことを確認するとともに、日ロ双方の案を踏まえて外務大臣レベルで極めて率直な話し合いを行いました。その結果、四月一日、二日には東京で国境画定委員会と共同経済活動委員会を活動すること、また私の訪ロの際に協議を継続していくことで一致をいたしました。
  62. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 いずれにしましても、この四島返還を達成するということは我々国民の願いでございまして、どうか外務大臣並びに総理を含めまして今後とも引き続き御努力をいただきたい、このように思っております。  次に、先ほど申しましたように、幾つかの運の強さの中に五〇年の朝鮮戦争、それによる特需が、これは朝鮮半島の皆様方には大変申しわけないことでございますが、日本経済のその後の復興に大変大きな起爆剤になった、このように思っております。  何しろ、五〇年六月が朝鮮戦争、その前年に御存じのようにドッジ・ラインという大変な超緊縮予算を組んで、それまでのインフレ政策を一挙にデフレ政策に持っていった、それから諸統制を撤廃していった、また一ドルを三百六十円に固定したというようなことをして、この特需といいますものが、一つ大きく六億ドル、七億ドルと、その当時のあれで外需が発生したということでございますから、本当に日本経済復興にとっては大きな意味を持っておった、このように思っております。  今このような打ち続く不況の中で、不謹慎な言い方でございますが、そういうことが起こらないだろうかなんということを言う人もおります。しかし、今日の経済大国日本がする役割というのはおのずからその当時とは当然違うわけでございますが、いずれにしましても政府も大変努力をされまして今経済対策を推進されております。  どうしてもこれだけの大国でございますから、輸出にドライブをかけるわけにはいかない。これだけの貿易収支の黒字を持っております。どうしても内需型でやっていかなければならないということはこれはもう共通の認識であろうと。そういう中から、積極予算を組んだ、国債を発行した、しかしそれがだぶついてきた、それが長期金利の上昇につながってきた、これをまた低目誘導しなければならない、いろいろあるわけでございますが、その中から禁じ手でございます国債の日銀引き受けなんということが論じられるようになったわけでございます。そういうものを聞きますと、どうもちょっと経済対策に手詰まり感が出てきておるのではないかな、こんな心配も私はするわけでございます。  しかし、先ほど申しましたように、戦後の我が国経済状況と今日ではファンダメンタルズが全く違う。私は、あの瓦れきの中からこれだけの経済大国に成長させた、これは我々の先輩の大変な努力だろうと思いますし、日本人の持てる英知だと、これは自信を持っておるところでございますが、こういう中で、一つの新しい経済政策について、総理、お持ちでしたらお聞かせをいただきたい、このように思います。
  63. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) いろいろな点について触れられましたが、なかなか委員指摘のように、戦後の日本経済復興の過程における運と言われましたけれども、いろいろの、言葉で言いますと特需というんですか、こういうものが朝鮮戦争時代あるいはベトナム戦争時代あったのではないかという御指摘でございました。  その評価はなかなか分析しこれを明らかにすることはできないかと思いますが、少なくともその当時における日本経済に対して大きなインパクトを与えたことは事実であると思います。  それから、戦争とその国の経済という問題はなかなかこういった国会の中では触れられないのでございますけれども、アメリカの恐慌からアメリカ経済が復興してきた過程の中で、これはガルブレイス博士の言をとれば、本格的なアメリカ経済が復興されたのは、やっぱり戦時体制というものがあって、それが大きなインパクトを与えたという御主張もそれなりに通説としてあるわけでございます。今次アメリカも結局あの双子の赤字から回復して今の経済の謳歌をしておるわけでございますが、一つアメリカにおける軍事費の削減、これが非常に大きなものがあったのではないかと思いますし、また同時に、今日の経済の中で、いろいろ大統領の教書などを聞いておりますと、かなりこの点につきましても、今後は新しい兵器を改革していくんだというようなことを言われております。  ほかの国の例を言って申しわけありませんでしたが、我が国としては、いわゆるそうした形での経済に対する貢献ということはなし得ないということでおるわけでございまして、特に武器の輸出については全く輸出三原則を堅持しておるわけでございますから、そういった意味での経済に対する役割というものは一切否定をしておるわけでございます。  たまたま、長くなって恐縮ですが、今日、三月一日は、対人地雷禁止条約がきょうをもって発効することに実はなるわけでございます。この地雷の問題についてもそうでありますが、我が国は極めて武器輸出三原則をきちんといたしておりまして、したがって地雷を除去するための器具を輸出することも武器輸出三原則にかかわるのではないか、従来はそういうことでございましたが、これはそうしたものは当然平和のために必要なことでありますから許されることになりましたけれども。申し上げたかったことは、我が国としてはそういうことで、ほかの国の例と異なりまして、我が国としての基本的姿勢の中で経済というものを考えていかなきゃならないということだろうと思います。  そこで、長くなりましたが、では一体何をするかということであります。具体的には、今十一年度予算につきまして懸命にこれが執行のために予算審議をお願いしておるわけでございますが、もっとある意味で中長期的にどうするかということでありまして、去る金曜日に私が諮問いたしました経済戦略会議におきましても一つの答申を出していただいております。これに対しましても、政府といたしましても、内閣に報告をさせていただき、各省庁とも検討させていただき、また国会での御議論の中でできるものを一つ一つぜひ実行していく。こういう形の中で日本経済を再生させていければと、こういうことで今努力をさせていただいておる、こういうことでございます。
  64. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 その中で、最近、ゼロ金利ということが言われております。ただ、金利というのは経済社会に参画する全員の私は共有物ではなかろうかな、このように思います。お金を借りれば金利を払う、預ければ金利をもらう、そういうものが織りなして一つ経済社会を構成しておる。もちろん金利を扱うことによってこれが経済政策のツールの一つであることは間違いない、このように思っておりますが、ゼロ金利というのは、どうも果たしてそこまで行っていいのだろうか。今でも超低金利でございますが、ここまで行っていいのだろうか。おのずからどこかに、公定歩合だったら二とか二・五とかその辺に境目があるんではないかなという感じもするんですが、金利についての、一般論で結構ですが、経企庁長官のエコノミストとしてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  65. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) エコノミストとしてと言われますと、金利の問題というのは古来いろいろ議論がありまして、東洋では金利肯定論が強かったんです。それは、中国を初めとして、お金を借りる人はそれで商売をするという前提だから、金利を否定する思想は東洋には孔子の時代から余りございません。それに比べてキリスト教、イスラム教では、消費に使うという概念が強かったものですから、消費に使う人から金利を取るのはぐあいが悪いというので非常に厳しく、商売に使う人に限るというような思想がございました。  そういうようなところから、金利がどのぐらいであるべきかというのは、物価と非常に影響があるというのが今の考え方なんです。今、ゼロ金利とか超低金利と言われている現実は、卸売物価はもちろんのこと、小売物価まで目下下落ぎみであります。こういうときに住宅なり設備投資なり進めるといたしますと、かなり低い金利に誘導していかなきゃいけない。  アメリカの見通しで見ますと、最近アメリカのCEAという経済諮問会議が出しましたのは、大体三カ月物の短期金利に比べて名目成長率が同じか少し高いぐらい、そして十年物に比べると一%以内の幅だと、こんな数字を出しておるんです。  現在、日本は物価が下落ぎみでございますから、金利は非常に低くせざるを得ない、そうでないと事業をおやりになる方に非常に支障を来す、こういう状態になっておるわけですが、さりとてマイナスにするわけにはまいりません。ゼロ金利というわけにもまいりません。したがって、今金利の選択幅が非常に限られていると言われているわけでございますが、イールドカーブという長期と短期を見ますと、日本はまだ短期が〇・一%ぐらいになっている割に長期は高いんじゃないかという説はございます。これは市場が決めることでございますので、政府が特に無理やりどうこうということは難しいのでございますけれども、だんだんそういう実態が浸透していきますと、しかるべきところにおさまって、日本経済の回復に妨げになるようなことは日本銀行も十分注意しておられますし、市場の方もほどよく反応していくのではないかと期待しております。
  66. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 もう時間もありませんので、次の質問に移りたいと思います。  北朝鮮のミサイルについてでございますが、これは二十六日の読売の夕刊、「ノドン配備 公式に確認 米国防総省」と。ノドン一号、これは射程約千キロと言われておりますが、ノドンの配備がされた、公式に確認ということでございますが、日本政府としてはどのような確認をされておるんでしょうか。
  67. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先般も申し上げたところでございますが、ミサイルの開発と配備状況につきましては、北朝鮮は一九八〇年代半ば以降、御案内のとおり、スカッドBやスカッドCを生産、配備するとともに、これらのミサイルを中東地域へ輸出してきたと見られております。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕 また、引き続きノドンやテポドン一、二号などの長射程のミサイルの開発を行っているところでございます。  ノドンについて申しますと、昨年八月末に発射されたミサイルの第一段目に使用されていたと見られております。また、発射台つきの車両等、ノドン本体に付随して使用されると考えられる車両が既に多数調達されているとの種々の情報を総合しますと、北朝鮮が既に開発を完了しており、その配備を行っている可能性が非常に高いということであります。この点につきましては、先般韓国へお伺いした際の千国防部長官やあるいはアメリカのコーエン国防長官も全く認識を共有しているところであります。ノドンはお話しのように千三百キロの射程距離を持っておりますから、我が国のほぼ全域がその射程内に入ると見られております。  また、テポドン一号について申し上げますと、昨年八月に発射されたミサイルでありますが、射程距離は千五百キロ以上。さらにテポドン二号になってきますと、三千キロから六千キロと言われる長射程のもので、これらが開発中であります。  そういう状況でございます。
  68. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 いずれにしましても、千三百キロということであれば、日本国土全部がその射程範囲にほぼ入るわけでございます。我が国は専守防衛ということを国是としておりますが、明らかに他国がミサイルを発射する、我が国の国土に向かって発射するという確度が高い情報を得た場合は、これはもう座して死を待つというわけにはまいりません。当然その発射基地をたたくということになろうと思っております。  しかし、我が国は今足が長い兵器は持っておりません。ICBMとか戦略爆撃機とか空母も持っていないわけでございまして、当然日米安保に基づくアメリカとの関係になってこよう、このように思っておりますが、そういう場合には日米安保は機能するんでしょうか、防衛庁長官
  69. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 新たなガイドラインにおきましては、日本に対する武力攻撃に際しての日米の共同対処行動というものを記載しておりまして、それによりますと、引き続き日米防衛協力の中核的な要素であることが明記されております。日米共同対処行動は「日米防衛協力の中核的要素である。」と明記されております。さらに、弾道ミサイル攻撃への対応に関しては、日本に対する武力攻撃がなされた場合の作戦構想において、「自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。」、こういうふうに明記されております。
  70. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 時間ですので、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  71. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で吉村剛太郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時二分開会
  72. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度総予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。石田美栄君。
  73. 石田美栄

    石田美栄君 民主党・新緑風会の石田美栄でございます。主として、教育のことについて御質問いたします。  最近の教育を取り巻く状況、中学生による凶悪な犯罪とかいじめによる自殺、暴力、不登校、学級崩壊、さては援助交際などという流行語ができて、そのままこれが外国でも通用していて、外国人は何という言葉だろうといぶかっているということまでございます。  これは、岩波書店の、三百十六人による現状打破宣言、「教育をどうする」という本の前書きに書いてあることであります。  このように教育は病み、理念や目的も明確でなくなっている。学校が問題なのか、家庭の荒廃を憂えるべきなのか、子供自身が問われているのか、恐らく総体としての社会のゆがみの反映なのであろう。こうした現状認識は、親、教師にとどまらず、政治家、官僚に至るまでコンセンサスを得ている。橋本内閣は教育改革を最重点課題としていた。しかし、さまざまな模索にもかかわらず、いまだ答えは見出されていない。今、あるべき学校像だとか家庭像を語るだけでは済まなくなっている。そういう状況にあります。  さて、総理大臣も、所信の中で司馬遼太郎氏を引き合いに出して、「未来の担い手が頼もしい人格を持ち、自分に厳しく、相手には優しい自己を持つ人間に育つ環境をつくっていくこと」、これが我々の責務だとおっしゃっております。総理の二十一世紀の日本人像と、これからそのためにどのような教育を行っていかれるおつもりなのか、まずお伺いしたいと思います。
  74. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 古今東西、人間教育の難しさというものは論じられてきておるところでございますが、今、先生がおっしゃるように、昨今の社会現象を見ておりましても、子供たちがいろいろと犯罪におきましても年少化しておるというようなこともございまして、果たしてこのままで子供たちが二十一世紀を迎えて、そうした子供たちが大きくなってつくる日本の姿、形というものはどうなるのかという危惧、憂いをすることは大変恐らく識者のみならず国民もそうした感情を持っておるのではないかというふうに思っております。  そこで、私なりの教育論と申し上げるものを今十分持ち合わせておるわけではございませんが、一般的に、教育改革ということを前の内閣でも言われました。私は、大きな柱であり、六大改革というよりも、むしろ教育改革あってその他の改革も同時並行的に行われるべきものというふうに認識をいたしておりますが、ぜひ、司馬遼太郎氏の説かれておりましたように、今御披露がございましたが、やっぱり頼もしい人格を持ち、自分に厳しく相手に優しい自己を持つ、そういう人間が国の中で大きな働きをされる、そういう姿が望ましいと思っております。  このため、生きる力、助け合う心、そして自然に親しむ気持ちを教育の原点といたしまして、今後、教育のあり方として、幅広い視野を養い個性を大事にしていくこと、ボランティア活動への参画等を通じて地域や社会への貢献をすること、人には多様な生き方がありお互いにそれをたっとぶことなどを重視していきたいと考えております。過ぐる土曜日に、和敬塾という財団法人ですが、大学生たちが、共同生活をしながら大学はそれぞれ別々に通っておられるようですけれども、そのところに参りまして学生たちといろいろと対話をいたしてまいりました。  そういう意味で、個を大切にする。ある意味では、利己という言葉がちょっと日本では必ずしもいい意味に使われておらないかと思いますが、みずからを、おのれを律し、そしておのれを磨いていくということと同時に、利他といいますか相手、すなわち相手の人間もさることながら、この社会全体に対しましても利益を与えられるような人格を持ち、バランスのとれた形に行く社会が望ましいのではないか。  ある意味では、戦前はどちらかというと滅私奉公ということでありました。最近は逆に滅公奉私のような形になってまいりました。まさに双方バランスのとれた形が望ましいのではないかという考え方をしておりまして、そういう形で、文部省を中心にいたしまして、また総理大臣のところにも各種の諮問に答えての答申が出ておりますから、これをぜひ十分自分のものとしてこれから生かしていかなければならない、これが当面考えておる教育に対する対応でございます。
  75. 石田美栄

    石田美栄君 ありがとうございました。  引き続いて、文部大臣に教育改革に取り組む基本的な姿勢をお伺いしたいのでありますけれども、それに先立ちまして、広島県で県立高等学校の校長先生が自殺をしたということが昨日報道されました。  きょうは卒業式でございます。新聞で知るところによりますと、卒業式を控えて君が代の斉唱、そして国旗の掲揚といったことをめぐって校長先生としての立場で非常に苦しまれた結果の自殺のようでありますけれども、このことについては、文部省も広島県の教育については現地調査もされてきていたり、指導もされてきていることと思います。  今回のこの悲しい事件について、文部省の方はどういう報告を受けていらっしゃいますでしょうか。また、ここに至った経過、あるいは文部省が掌握されております事実関係。そして、きょうも卒業式、午後になりましたから午前中に済んでいるわけでありますけれども、昨二十八日のこの首つり自殺ということの後、きょうに向けて、もちろん県教委もそうでありますけれども、文部省はどういう対処をしてこられたのか。それからまた、これからも重大でございます。文部省はどうこれから対処していかれるのか、お伺いしたいと思います。
  76. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まず、広島県立世羅高校の校長先生が自殺されたことに対しまして、心より哀悼の意を表したいと思います。大変残念な痛ましいことと考えております。  現在、自殺の原因等は広島県教育委員会においても調査しており、詳細はまだ私の方には報告がございません。  それにいたしましても、広島県教育委員会においては、同校の生徒が動揺することのないよう十分配慮していくとともに、他校についても連携を密にして各校長を支援していっていただきたいと考えております。  また、きょうの詳しいこと等々は政府委員よりお返事申し上げます。
  77. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 広島県におきます国旗・国歌の卒業式、入学式等におきます指導の問題につきましては、昨年、とりわけ文部省も具体的な調査をさせていただきまして、五月二十日には文部省内の実態調査に基づいたさまざまな点につきまして是正の指導をしたところでございます。  昨年の十二月十七日になりまして広島県教育委員会は、卒業式におきます国旗・国歌の適正な実施と学校の管理運営の適正化について全県下に指導を発出したわけでございますが、今月に入りまして二月二十三日、本日三月一日の高等学校の卒業式を目前に控えまして県立学校長会を臨時に開催いたしまして、卒業式におきまして、式典に国旗掲揚並びに国歌斉唱をきちっと位置づけて校長として取り組むようにという具体的な職務命令も発したわけでございます。  その後、各学校におきましては、教職員団体の方から校長に対しましてこの問題をめぐってさまざまな話し合いをしてほしいということがありまして、各学校の状況に応じまして、学校内においてはこの問題について職員会議等で何度も話し合いが行われたと聞いておるところでございます。  昨日、県立世羅高校の校長の自殺報道がございました。私ども、詳しい実情はまだ報告を受けておりませんけれども、いずれにいたしましても、国旗・国歌の式典の実施をめぐって、教職員団体と連日職員会議におきましてこの問題を話し、また当日も十時から職員会議で最後の話し合いを持つという直前になってこういった痛ましい事態が起きたということで報告を受けているわけでございます。  広島県下、県立学校並びに市立学校百六校、本日ほぼ十時ぐらいから卒業式、既に終わっているかと存じますけれども、その具体の実施状況につきましてはまだ私ども県教委からも報告は受けていないところでございますけれども、昨日、日曜日の夜の段階で、百六校中七十八校につきましては、校長としては式典に国旗掲揚並びに国歌斉唱という式次第をきっちり位置づけて行うということで報告を受けているというところでございます。
  78. 石田美栄

    石田美栄君 これをめぐる問題は、多分また文教委員会等でも議論が進むことと思いますので、これくらいにいたしまして、もとに戻りまして、文部大臣、教育改革に取り組む基本的な姿勢、そして、その中でも特に何に重点を置いていかれるおつもりでしょうか。
  79. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 何といっても、二十一世紀の日本の力を確固としたものにいたしますためには、教育が基本であると思っております。  今、文部省では教育改革プログラムというものを推進しております。  まず第一に、子供たちが自分で考え、自分で課題を見つけ、自分で勉強し、自分で解決していくというふうな力、それから、他人を思いやる、倫理観をしっかり持った、そして美しいものは美しいと見る、そういう健全な心と体を持った子供たちをゆとりの中で育てていきたい。そして、それをはぐくみながら心の教育をしっかりやっていきたいというのが第一でございます。  第二番目には、今日までの教育というのは、先ほど午前中申し上げましたことでございますけれども、成功した部分がもちろんある、しかしながら、その成功と同時にいささか行き過ぎた平等主義という問題がございました。その行き過ぎた平等主義を是正していきたい。そして、子供たちがまず基礎、基本は十分身につけた上で、その個性に応じた多様な選択ができるように学校制度を実現していきたい。  三番目に、教育の地方分権を進めたい。そのために主体性のある学校づくりを行っていきたいということでございます。  四番目に、国際社会の中で競争力を十分持ち、活力のあふれる社会を実現するための大学の改革ということが必要であると思っております。そのためには教育研究環境を改善しなければいけない。そしてまた、研究振興の一層の推進を図っていかなければならないということを考えまして、こういうふうなことに重点を置いて教育改革に取り組んでまいりたいと思っております。
  80. 石田美栄

    石田美栄君 私も、冒頭に申し上げましたように、あるべき学校像とか家庭像を語るだけでは済まなくて、それを本当にどう実現していくのかということを具体的に制度の上でつくっていくのが私たちの役目だろうというふうに思います。  ただいま文部大臣も教育改革の中で幾つか挙げられ、その中で特に教育の地方分権、総理も所信の中で地方分権、規制緩和の一層の推進を言っておられますが、特に教育の地方分権についてもう少し具体的にというか、詳しく文部大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  81. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 今後、教育改革を実現していくためには、各地域や各学校において創意工夫を凝らし、地域の特色を生かし、学校の特色を生かした活動ができるようにしていかなければならないと思っております。  そういう意味で、昨年九月に中央教育審議会の答申が私のところに出されました。それは「今後の地方教育行政の在り方について」ということでございますが、各地方公共団体において地域に根差した特色ある施策を主体的に展開できるよう具体的な提言が盛り込まれております。私も、途中までは会長としてこの答申の作成に努力をさせていただいた次第であります。  文部省といたしましては、この答申を踏まえまして教育改革の推進を図るわけでございますが、まず教育における地方分権の一層の推進を図るため、必要な制度の改正、例えば教育委員会等々の問題等につきましての制度の改正や運用の改善に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  82. 石田美栄

    石田美栄君 そのまさに中教審の答申の地方教育行政のあり方についての提言への取り組みなんですが、具体的に、そしてどれくらいのスピードで取り組まれるのか。このたびの答申の中では、そういういろんなことが書かれていて、そのところに学校教育法を初め義務標準法とか地方教育行政法とか高校標準法の改正による具体的な要請がなされておりますけれども、これらのことはどうも、こういう提言に具体的にどう取り組むのかということが今国会にはまだ何も姿が見えておりません。こういったことをどのくらいの早さでお取り組みになるんでしょうか。
  83. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 中教審答申に基づきまして、ただいま文部大臣からお答えを申し上げましたように、地方教育委員会制度の改善ということは大変大きな課題でございまして、これにつきましては今国会に教育委員会制度の改善のための関係法案を提出したいということで、現在私ども鋭意そのための準備を政府部内で行っているところでございます。  また、指導行政の見直しということも、国と地方の新しい自主的な地方教育委員会の施策を国が助け、あるいは学校の自主的な管理運営のあり方を教育委員会が助けていくという形で、大変大きな指摘のポイントでございますが、これにつきましては、文部省におきましては既に昨年の十二月に関係の指導通知の廃止あるいは整理統合等、第一弾といたしまして通知の整理を行うなど、直ちに答申の実現に取り組めるものについては取り組んでいるところでございます。  また、教職員の配置や学級規模の問題等についても、今後の教育のあり方について大変大きな答申をいただいているわけでございますけれども、これにつきましては、昨年の十月に専門家や現場の関係者を集めまして調査研究協力者会議を発足させまして、おおむね一年程度を目途に今後の教職員配置のあり方あるいは学級規模や指導方法を含めた調査研究の結論を得た上で具体的な施策に取り組みたいと考えているところでございます。  さらに、もう一つ大きな柱といたしまして、学校運営の改善に関する学校の運営組織の問題についての大きな提言がございますけれども、これにつきましても、今国会の関係法案が成立いたしました後に、関係団体等の御意見を十分踏まえながら、新しい関係法律が成立いたしましたと時期を合わせて新しい組織の改善等ができるようにということで、今準備にさまざまな観点で鋭意取り組んでいるところでございます。
  84. 石田美栄

    石田美栄君 そうしますと、教育委員会制度に関する改正は今国会中に、そのほかのことについては、一部は一年程度の時間を経て、その他はまだそう明確ではないというふうなお答えだったかと思うんですけれども、実際には、こういう答申を受けて地方にはいろんな動きがございまして、そのあたりが明確でないために、現場でといいますか、地方自治体それぞれでいろんな混乱等があることを私も認識しておりますが、そういうことについてさらに御質問してまいりたいと思います。  それに当たって、義務標準法、高等学校は定数法ですが、こういう標準というのはどういうことなのか。標準に合わないと違法なんでしょうか。また、基準というのも都道府県によって基準自体に幅を持たせることを研究しているところもありますが、この標準とか基準ということについて御見解をお伺いしたいと思います。
  85. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) お尋ねがございました公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律、いわゆる義務標準法でございますけれども、この法律に基づきまして、各都道府県教育委員会が一クラスの学級編制の基準を定める標準を同一学年の場合は四十人ということで今決めているわけでございますけれども、各都道府県教育委員会はこの標準に基づいて学級編制基準を定め、そしてこの基準に従って学校を設置する市町村教育委員会が都道府県教育委員会の認可を受けて各学校の各学年の学級編制を行うということが法律上決められているわけでございます。  どういう性格かというお尋ねでございましたけれども、この義務標準法の趣旨は教育水準の維持向上ということでございまして、学級編制や教職員定数の全国的な標準を定めている一方で、義務教育費国庫負担法という別の法律で国が二分の一国庫負担をする、そのための基準という性格を有しているわけでございまして、財政措置と密接不可分の関係になってございます。  したがいまして、私ども今日まで、各都道府県が独自に特段の合理的な理由もなくこの標準を上回って学級編制を定めたり、あるいは下回って定めたりするということについては慎重にということで指導したわけでございまして、法律上は少なくともこれを超えてはならないという形で解釈、運用をしてきたところでございます。
  86. 石田美栄

    石田美栄君 今お伺いしていると、この標準を下回ってはならないというところは理解できるのですが、上回ることもしてはならないというふうに受け取れました。  さて、この答申で指摘されている地方財政措置のための基準という性格の明確化と弾力的運用の承認についてという、この明確化、弾力的運用ということが今回の答申では何回も繰り返されております。こういったことと今のお答えとの間に微妙なというか、かなり違いがある。そういうことをめぐって実際にはいろんな問題が起きているわけです。  この具体的運用、明確化と弾力的運用の承認、このあたりのことについてこれまで数回通達を出したというふうなことを聞いているのですが、先日、私も地方に行きまして、こういう現状を聞いてまいりました。この四十人という標準を守らなければ法律違反だという認識、再度この弾力的運用ということ、今度の答申にも本当に繰り返されて出ております。こういう指示をもっと徹底すべきではないかというふうに私は思っています。あるいは、そうでないのならば、学級編制の標準を定めた義務標準法をそうできるように改正した方がいいというふうに思うのですが、いかがでしょうか、文部大臣
  87. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 学級編制の弾力化につきましては、御指摘のようにかなり前から御議論がございまして、文部省といたしましても余りかちかちとしたしゃくし定規な運用をしないようにということで、平成五年の四月にも通知を出したところでございます。  また、そういった観点から、今回、中教審の答申におきましても今後の学級編制の弾力化につきましての御提言をいただいたわけでございますけれども、これにつきましては、先ほど申し上げました今後の教職員配置並びに学級規模のあり方におきます調査研究協力者会議の中で、現場のさまざまな御意見等を踏まえまして、より一層弾力化ができるという方向一つ方向性を出したいということで、現在検討いたしているところでございます。
  88. 石田美栄

    石田美栄君 ただいまも方向性を出したいということで、現に教育は日々動いていまして、やがて年度末、来年度の学級編制等々も出てくるわけでして、やっぱり早く明確にしてあげないとそれぞれの地方、現場で困っておられます。  こういうことについて、同じように非常勤講師配置のための報酬の国庫負担のための法律改正、これについてもはっきりしないといろいろと問題が出てきますので、この改正についてはいかがでしょうか。
  89. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 公立の小中学校の教員の給与につきましては、義務教育費国庫負担法によりまして、現在市町村立学校の小中学校の教員につきましてすべて各都道府県がこれを負担し、国がこの二分の一を負担するということで制度はつくられているわけでございます。  したがいまして、この関係で、常勤の教員につきましては、すべて都道府県教育委員会が小中学校につきましても任命権を行使するということで、各都道府県教育委員会が教員の人事を行使するということになってございますが、非常勤の講師につきましては、この義務教育費国庫負担法あるいは市町村立学校職員給与負担法におきます給与負担、都道府県が給与を負担する職員の範囲に入っていないわけでございます。したがいまして、これにつきましては、各市町村が独自の財政措置によりまして、いわば常勤の教員の補助的な形で配置するということにつきましては現行法律上もこれは何ら妨げがないということでございます。  また、文部省におきましても、そういった観点から、社会人活用のための特別非常勤講師などを中心といたしまして制度の隘路を埋めていくという観点から、現在、各都道府県に対して非常勤講師の補助制度ということをもちまして、学校現場でより弾力的な、機動的な教員の配置を行えるようにという政策もとっているところでございます。
  90. 石田美栄

    石田美栄君 先ほどからこの標準法等々のこと、それからこれからの教育の地方分権、運用の弾力化、それが明確に打ち出せていないところで、実際私たち、民主党なんですが、長野県の小海町というところに視察に行ってまいりました。  小さな町ですが、中学校は組合立というふうなので、一学年が百人ですから、それを三つのクラスですれば三十人に近い学級、運用できるわけですが、小学校について、もう十三年も前から最低人員が三十七人になれば二クラスに分けて、町で先生を採用してきておられるところがあったので、実際に行ってまいりました。  伺いますと、財政が豊かであるからやっているのではなくて、たとえ公共事業の一部を削っても教育は大事だからということでこういうことをされている町がありました。  実際行きましたその町の役場というのは、私が地元でいろんな町村を回って見る立派な役場とかということに比べれば非常に質素な古いものでありましたし、教育委員会と言われる建物にも行きましたが、お粗末なところでありました。  でも、教育については、よその町の予算に比べると倍もの率になる費用を使って、廊下一つでも、ワークスペースといって、教室を出るとまた教室に匹敵するくらいの廊下がついている、そういう環境でもありました。  大変な効果を上げてきていて、本当にいい教育が行われている。いわゆる不登校の子供なんかゼロに等しい、ごくまれに家庭の事情、親の事情などでというふうなことでありました。この学校の状況が一昨年十月に新聞に報道されたということで、全国から視察や問い合わせが多くなって困っておられるという状況もありました。  ところが、それまで黙認というか認めていた県の教育委員会が、国の基準を乱す、標準に違反すると言って認めないということになってしまって、実際この十年度からは分けちゃならないということで、一年生三十六人を一つの学級にして、いわゆるTTという制度、チームティーチングの制度を利用しなさいというわけで、二つのグループに分けてやっているんです。だから、学級は一つ。  そのやり方も実際にお聞きするとなかなかいいなと思ったんですけれども、国語とか算数は二つに分けて丁寧に教える。だけれども、図工なんかだったら単元によったら全体で一つでやって、作業になったら二つに分ける、道徳なんかはきちっと二つに分けてする、このようにいい教育をされていたんですが、今は形は小さく、でもTTという形でされている。  ところが、さらに来年度からは、県費採用と同待遇で、その先生たちも非常にいい先生が得られているようなんですが、県費採用の先生といろいろなことを同じようにやっているのに、町費採用の先生を来年からは非常勤にしろと強く言われているようでありました。そして、県教委はさらに教育の機会均等を損なうというふうにおっしゃっております。  実際、私たちも県教委の方とお会いいたしました。そこでお話を聞きましたが、やはり今申し上げたようなことでありました。違反だという、もっと強い言葉でおっしゃったんですけれども、制度、法に違反、抵触、標準法の精神に反するというふうにおっしゃいました。文部省にも報告しているというふうにおっしゃいました。  私は、そういう、半日くらいの視察ですけれども、心の教育を大きく掲げている教育改革の中で、実際建物とかは、国から補助をもらって建てる場合に、基準以上のいいものを建てても何も言われない。教室のサイズなんかは決まっているようでありますけれども、少し豪華なものを建てても、そういう物、建物については基準とか標準以上であっても何も言わない。以下はいけないんだと思います。ところが、人のことについては、標準以下はいけないけれども、以上になってもいけないという、こういう教育の現場に現実に触れて、やっぱり子供たちの立場というのを全然考えていないなという感想を持ったんですけれども、今少し長々とお話しいたしましたが、この一連のことについて、文部大臣、どのような御感想をお持ちでしょうか。
  91. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 現在のところ、市町村は独自に常勤の職員を雇うことは制度上できないことになっています。それは今お話しになられた機会均等等々いろんな理由があるのですが、ただ、御指摘の長野県小海町においてやっておられること、町内の二つの小学校の第一学年または第二学年において町費の非常勤講師を採用する、そして特定の教科において学習集団の規模を小さくする一種のチームティーチングを実施しているということは、私はこれ自体結構なことだと思っております。
  92. 石田美栄

    石田美栄君 今のところ、お触れにならなかった、触れたくない。その前十年くらいは、実際町で全く県費と同じ採用をして、同じように研修も受けてこられていたという部分がございます。  機会均等に触れるということなんですが、実際には自治体の中で、過疎の地域なんかだったら五人とか小さいクラスがあるのですから、現実には一学級当たりの児童生徒数というのは大きな格差があるわけです。小海町のような自治体独自の予算でこういう教員を雇うという試みに対して、こんな教育の機会均等を損なうという理屈が通るということは、私は日本の今の教育を考えると、納得がいかないというか、かなりおかしいなというふうに思います。でも、今やりとりしても恐らくそれ以上のお答えは出ないと思いますので。  それでは、学級編制を三十人にするというお考えはどうでしょうか。中教審においても、第一次答申の「二十一世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の中で、「今後、教員配置の改善を進めるに当たっては、当面、教員一人当たりの児童生徒数を欧米並み」、これは我が国がいろんなところで好きな言葉ですが、「欧米並みの水準に近づけることを目指して改善を行うこと」との提言がなされております。  また、先日文部大臣は、都内の小学校、中学校を御訪問になって、生徒さんと給食も一緒に召し上がっているのをたまたま私もテレビで見ました。どういうわけか、そのテレビの中で文部大臣が、皆さん何か御意見ありませんかというようなことを聞いたら、ある子供が、四十人多過ぎるよ、三十人くらいがいいなと言うのがちょうどテレビに出てまいりました。私たち民主党もいわゆる三十人学級推進法の概要をまとめておりまして今月中の本院に提出を考えているのですが、文部大臣、学級編制の定数を三十人にするというお考えはありませんか。
  93. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 中教審の答申の中での御指摘の場所は、私も頑強の一人でございますので、欧米諸国並みにせよという主張は今でも強く持っております。ただ、既に現在、全国平均で一クラス小学校は二十七・四人、それから中学校は三十二・七人となっておるという現実が一つございます。  しかし、御指摘のように、学級編制の規模につきましては、一般的にはその規模が小さい方が生徒一人一人の特性等に応じた指導を行うことがしやすくなると考えております。しかしながら、学級規模ということで、学習集団あるいは教育効果などの関連につきましては、必ずしもまだ十分に明確でないところが私にもあるわけです。例えば一九八〇年に四十五人から四十人になりました。ほぼ十年ちょっとかかってこれを実現いたしましたが、この際に、例えば教育自体はかなりいろいろな効果はあったと思うんですが、いじめ問題なんというのはむしろ多くなるような状況でありました。そういう点で、いきなり少なくすればすべてがいいんだというふうにはならないと思っております。  したがいまして、教育指導を効果的に行うには、学年や教科に応じてできるだけ少人数の学習集団を編成して授業を行ったり、チームティーチング等を取り入れ指導方法の改善を図るなど、きめ細かな工夫が必要であろうと思っています。むしろ大きいクラスの方がいい場合もあるし、それから御指摘のように算数であるとか特に分数、あるいは化学、理科というふうなものは小人数の方が効果が上がるのではないかと思います。  したがいまして、私といたしましては、この辺を少し詳しく検討してほしいということで、文部省として現在、今後の教職員配置のあり方、学級規模と学習集団のあり方等について、昨年九月の中教審答申を受けまして、学校週五日制時代における新しい教育課程の実施も視野に入れまして、先ほど局長からお返事申し上げましたように、専門家の協力を得て検討を行っているところでございます。  ただ、御指摘のように仮に三十人学級を全国的に実施するとなりますと、国、地方を通じて相当の財政負担がふえるということがございます。この非常に大きな財政負担を必要とするということについても十分な検討が、慎重な検討が必要であると考えております。
  94. 石田美栄

    石田美栄君 先ほど学級の平均をおっしゃいましたけれども、その平均というのは、過疎地に行けば一人二人のクラスがあったりします。学校というところは社会に出る訓練の場でありますから、ある程度の人数がいるということが社会訓練のもとになりますから、そういうことも改善が必要だろうというふうに私はいつも思っております。平均はそうですけれども、実際には大規模校がかなりあるわけで、そういうところが教育のいろんな混乱を起こしているのが現実ですので、平均でもって論じていくと現実の問題解決にはならないと思います。そういうもっと細かい議論をやっているととても時間が足りませんので、先に進めていきたいと思います。  実際に都道府県議会でもこの少人数学級、都道府県は特にそうです、大きいところでは今の平均のこととはほど遠い現実があって、少人数学級の実現について多くの質問がいろいろなところでされています。  各自治体とも国の対応を注視しているのが実態じゃないかと思います。いろいろな自治体でも、先ほどお金のことをおっしゃいましたが、少人数学級を実現した場合の試算を行っているところがたくさんあります。埼玉県なんかの場合は新聞に出ていましたし、先ほどの長野県も、県教委の人とお会いしましたら、三十人の場合、三十五人の場合の試算までしておられました。財政状況が地方も大変という中で、人件費の負担が最大のネックになっているということで、自治体も国がどうするのかということを注視しているんです。  今財政のこととか経済のこと、金融のことが多く論じられていて、そんな中で、何十兆というような金額の話がぽんぽん出ている中で、私ももちろんどれくらいかかるかということは、どういうふうにすればどれくらいということは認識しておりますけれども、その議論は今はしないとしましても、膨大なお金がというふうなことと考えるのかどうか。それは、本当に教育が国の将来に大事だと考えたら、それも全部実施した将来の話です、膨大というのは。  では、初年度どれくらいかというふうになると、今ここで議論されているような金額からいえば、それは感覚的かもしれません、私なんかは少額だと思います、非常に大事なことで。  これがいろいろな教育問題の解決の手がかりだとすれば、三十人というのはどこに論拠があるか、時間があれば文部大臣と再度議論したいんです。三十人という基準、こういうことを実現するお考えがあるのかどうか、もう一度お伺いしたいと思いますし、この費用ですね、もちろん三十人学級をやればお金がかかる、教員がふえる、こういうことについてもお金がかかる、あるいは行革に反するというふうなことを言われる方もありますけれども、これは行革に反するとお考えでしょうか。
  95. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 最後の行革に反するかという難しい御質問の前の部分でございますが、都道府県でも随分この問題について検討されているということはよく承知いたしております。  ただ、繰り返しになりますけれども、少人数学級を全国的に実施するとすれば、国だけではなく地方の財政にも相当な負担をかけるということを我々認識していかなければならないと思います。それからまた、私学の問題もあるわけでございます。したがいまして、先ほど主に財政的な問題について強く申し上げましたけれども、やはり全般的な検討を慎重にしていかなければいけないと思っています。  なお、私どもは、現在、第六次定員改善策をやっていてあともうすぐに終わるわけですが、こういうところでチームティーチングなどをより多く配置するという努力をしていきたいと思っています。  それからまた、今後どうしていくかということについては、先ほど申しました有識者の専門家の会の報告を待ちまして、その報告を吟味した上で、場合によっては段階的なやり方等々も視野に入れて今後の方針を立てていきたいと思っております。  さてそこで、行革との関係というのは私も大変頭が痛いところでございます。本当に国民が皆さん必要であるとおっしゃるのであれば、行革の中でいろいろな工夫があり得ると思っておりますけれども、これは今後行革がどういうふうに進んでいくかということも見ながら慎重に検討してまいりたいと思っております。
  96. 石田美栄

    石田美栄君 なかなか一歩踏み出してという御答弁をいただけないのは残念であります。  本当にいい教育、先生たちがゆとりの中で創意工夫、子供たち一人一人と本当にコミュニケーションが交わせる、そういう中で本当に人間的なつながり、信頼関係の中で教育をやっていくことの重要性。私は、短大とか大学といったところで長年教鞭をとっておりましたから時間的に研究のゆとりのある教員生活ができました。そういう体験がある中で、ゆとりがあれば本当に創意工夫のある心の教育も含めてできるなということを実感していますから、そういう環境づくりを何とかしたい。四十人だと毎日心を通わすことはできないけれども、恐らく二十五人とか三十人ならばというふうな思いがいたします。  教育予算も含めて今後の教育改革のリーダーシップをぜひ文部大臣にはお願いしたいと思いますので、もう一度、一言決意のほどをお伺いしたいと思います。
  97. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私も大学に四十年以上勤めておりましたし、教育をずっとやっておりました。また、よく小学校、中学校の子供たちを集めて、毎夏になりますと理科教育を一週間ぐらいやるというふうな経験をずっと踏んでまいりました。こういう面から見て、教育の大切さは重々みずから知っているつもりです。  最善の努力を今までもさせていただきましたが、今後も初中教育、大学教育全体を通じて、やはり抜本的にさまざまな面で環境をよくしていかなければならないと思って努力をさせていただこうと思っております。
  98. 石田美栄

    石田美栄君 教育の環境をよくするということは、本当に私たちの責務だと思います。  最後に。総理大臣も所信の中で、二十一世紀に向けた国政運営を五つのかけ橋を基本に考えると言っておられます。第一は世界へのかけ橋、第二は繁栄へのかけ橋、第三は安心へのかけ橋、第四が安全へのかけ橋、そして第五に未来へのかけ橋であるとおっしゃっています。まさに、この教育は未来への先行投資であり、総理の言っておられる第五の未来へのかけ橋と相通じると思います。  今までの議論を踏まえて、教育関係予算を全体の中でどのように考えていくおつもりでしょうか。ぜひ教育改革に強力なリーダーシップを発揮していただいて、未来の国づくり、総理大臣の決意のほどを再度お伺いして、終わりたいと思います。
  99. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) お説のように、教育は国家百年の大計であり、我が国の将来の存立及び発展のために長期的な視点に立ってその充実を図っていくことが必要でございます。また、その意味で教育は未来への先行投資であると考えております。  このような観点から、平成十一年度予算案の編成に当たりまして、厳しい財政状況の中ではありますが、心の教育関係予算を初めとして文教予算の充実に十分配慮したところであり、今後とも我が国の教育水準の維持向上を図るため、また教育改革の推進に支障を来すことのないよう、できる限りの努力を払ってまいりたいと思っております。  先ほど文部大臣石田先生の間で質疑応答がございましたが、三十人学級の問題等もございます。また、法案その他について御検討と承っておりますが、予算的に考えますと、現在の小中学校教育の給与費二分の一の国庫補助で、これだけでも国分が約三兆円ということでございまして、そういった意味で必ずしも少ない金額ではありません。これを、学級編制を少なくしていくということは大変なことだろうと思います。思いますが、しかし今申し上げましたように、教育につきましては極めて重要だという観点に立ちまして、今後ともその充実については検討していかなければならない課題と理解いたしております。
  100. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で石田美栄君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  101. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、常田享詳君の質疑を行います。常田享詳君
  102. 常田享詳

    ○常田享詳君 自民党の常田享詳でございます。  質問に入ります前に、まず小渕総理にお礼を申し上げます。  私も和敬塾の出身でございまして、和敬塾を訪問していただき、また先ほどは大変高い評価をいただきましたことを塾友の一人として心から感謝申し上げます。ありがとうございました。  私は、この場で質問をさせていただくのは二回目であります。先回のときは、当時の小渕外務大臣に対しまして、ロシアのイルクーツクから日本に天然ガスパイプラインを引くという構想について、また北朝鮮問題とKEDOの問題について質問をさせていただきましたが、今回は時間がございません。一点、覚せい剤の問題について質問をさせていただきます。  私は、昨年の秋、小渕総理より一足早く委員派遣でマレーシアとベトナムを訪問してまいりました。ベトナムでは、ホーチミン市のチョ・レイ病院を視察し、日本人医師や看護婦の方々の献身的な活動を目の当たりにして大変感銘を受けてまいりました。そして、今もベトナム戦争の後遺症とも言うべき地雷の事故や、枯れ葉剤いわゆるダイオキシンによる奇形児等の犠牲者が後を絶たない現実に直面し、対人地雷全面禁止条約で示された小渕総理の強いリーダーシップに対し、改めてベトナムの地より敬意を表した次第であります。  ベトナムにおきまして、小渕総理は、アジアの明るい未来の創造に向けてと題する演説の中で、ヒューマンセキュリティー、人間の安全保障を重視することを力説されたと聞いておりますが、その内容とお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。また、本日発効いたしました対人地雷全面禁止条約につきまして、そういう観点からの思いがございましたら御披瀝いただきたいと思います。  あわせて、私はヒューマンセキュリティーを考えるとき、健康危機管理は大変重要な部分だと思っております。例えば、昨日来議論となっておりますダイオキシン等有害化学物質の対策、またエボラ出血熱等の新興感染症対策、すなわちレベル4研究施設やレベル4の実験室、BSL4の整備、そして覚せい剤対策等であります。  覚せい剤対策に対する総理の御所見もあわせてお伺いいたします。
  103. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、ヒューマンセキュリティーのことでございますが、人間安全保障は一九九四年の国連開発計画、UNDPの人間開発報告書等で言及された比較的新しい概念でありますが、私はこれを人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を包括的にとらえまして、これらに対する取り組みを強化するという考え方であると考えております。  特に、昨今のグローバル化を背景に貧困、薬物、感染症等の国境を越えた諸問題を包括的にとらえ対応を強化する必要があると考えておりまして、本日、たまたま対人地雷禁止条約の発効日でございますが、我が国といたしましては犠牲者ゼロの目標に向かってさらに努力を行ってまいりたく、これも人間の安全保障の一環と考えておるところでございます。  そうした中で包括的にとらえておりますが、今、委員が御指摘されましたようなダイオキシンやエボラ出血熱あるいは麻薬、覚せい剤の問題等につきまして、特に麻薬、覚せい剤の乱用の状況は大変危機的な状況になっておりまして、健康の危機管理とも言うべきこの覚せい剤の問題等につきましても真剣に取り組んでまいらなければならない、このように考えております。
  104. 常田享詳

    ○常田享詳君 次に、野田自治大臣国家公安委員長にお尋ねをいたします。  平成に入ってから一万五千人程度で推移してきておりました覚せい剤使用による検挙者数が平成七年から三年連続で増勢化し、平成九年にはほぼ二万人に達したと言われております。検挙者の数から、実数、実際に汚染されているだろうという人を推定する世界的基準にいわゆるダークナンバーというのがございます。検挙者数に五十倍するということであります。これからいきますと、既に百万人以上の日本人が覚せい剤に汚染されていることになるわけであります。日本は麻薬はほとんどありません、今。覚せい剤がほとんどであります。  警察庁は、第三次覚せい剤乱用期にあるとして、再三の警告そして対策を講じておられるところであります。そして最近では、百万人ではないんだ、二百万人だというようなデータまで出ておりますが、これらの実態に対してどのように掌握され、お考えになっておられるのか、お伺いいたします。
  105. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 御指摘のとおり、現在第三次覚せい剤乱用期と言ってもいいぐらい非常に深刻な薬物情勢下にございます。  この薬物問題は治安の根幹にかかわる最重要課題の一つであるという位置づけをして、警察では総合的な薬物対策を強力に現在推進中でございます。薬物の密輸、密売に暴力団が深く関与していること、さらに薬物事犯で検挙される来日外国人の多くが不法滞在者であること、さらにインターネット等のネットワークを利用した密売事案が見られることなどから、薬物事犯は組織犯罪、来日外国人犯罪、ハイテク犯罪としての一面も有しておりまして、警察組織の総合力を発揮して対処していかなければならないと認識をいたしております。  密輸入対策がそういう点で極めて重要でございます。そういう観点から、先般、二月三日でありますけれども、一九九九アジア薬物対策東京会議というのを開催したところでございます。今後、さらに関係諸国との国際協力を強めて、密造地域対策及び密輸・密売組織の摘発を推進してまいりたいと存じます。  また、深刻化しつつある少年の薬物乱用問題に対処するために、薬物乱用防止広報車という広報車を配備して薬物乱用防止教室を開催するなど、広報啓発活動を積極的に推進してまいりたいと存じます。
  106. 常田享詳

    ○常田享詳君 先ほど検挙者数を二万人、そして恐らく昨年は二万二、三千人になっているんだと思いますが、警察庁の方々等にお聞きしますと、限界だ、現在の日本の警察力をもって、この人員の数をもってすればもう限界なんだ、もう筒いっぱい検挙してそれくらい多いということをおっしゃっておられます。どうか今後、そういった人員の強化についてもぜひともお考えをいただきたいと思っております。  外務大臣、私は、アメリカのアキレス腱の一つはドラッグ、すなわち麻薬・覚せい剤汚染であるというふうに考えております。今や世界最大の産業と言われる石油等のエネルギー産業、また自動車産業をもしのぐアングラマネーがこの麻薬、覚せい剤で世界を駆けめぐっていると言われております。世界一の産業は麻薬、覚せい剤ではないかということまで言われているほど世界的に今汚染されてきております。日本にも、今、自治大臣のお話のとおり、大量の覚せい剤が流入しているわけでありますが、その額は兆円産業とまで言われております。  そして、そのルートは大きく分けまして、外務大臣御存じのとおり、四つだと思います。一つはミャンマー、タイ等の国境地帯のゴールデントライアングルと言われるルート、そして二つ目がフィリピンルート、三番目が中国ルート、そして最近新たに注目されているのが北朝鮮ルートであります。  私はそれぞれの国をすべて訪問してまいりました。そして、直接間接的に実情を聞いてまいりました。覚せい剤密造の地帯に共通している問題は貧困と民族抗争であります。そして、いとも簡単につくれる、そして物すごいもうけになるということであります。例えば一キログラム当たり──この袋は関係ありません、普通のお薬でありますが、私も薬剤師でありますので家にたくさんありますが、これが五百グラムであります。ここにいっぱい入れて五百グラム、これ二つで一キロであります。この一キロが中国の製造元で三十万円、水際で百五十万円、日本の一次卸で二百五十万円、そして日本の末端では六千万円から一億円になるんです。これ二つだけで一億円であります。一キログラム三十万円は貧困に苦しむ地帯にとっては大変なことであります。原料の麻黄さえあればキッチン、いわゆる家庭の台所程度の設備でつくれるわけであります。  そういうことで、私はこれらのことに対して今、高村外務大臣は国連の場で強くこの撲滅を主張され、そして取り組んでおられますが、私はやはりミャンマーと一部始めているような二国間で、それぞれの状況を聞きながらODA等を活用しながらそういった貧困なり民族紛争なりをきちんと日本協力して抑えていかない限り、今申し上げましたようなところのもとを絶つことはできないのではないか。そういうことで、国連での活躍は十分存じ上げておりますが、二国間で今後進めていくこと、ODAをそれらに対して十分活用していくことについての御答弁を賜りたいと思います。
  107. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 御指摘のように、薬物問題は国境を越え、我が国にも重要な影響を及ぼしている問題であります。国連を通じた取り組みだけでなく、御指摘のとおり二国間での取り組みも重要であります。  我が国は、薬物の生産、供給地域における対策が有効との観点から、ゴールデントライアングル及びその周辺地域等に対し、麻薬代替作物栽培や職業訓練等、住民が麻薬栽培に頼らないで生活できるための支援、犯罪防止や取り締まりのための技術協力、啓蒙活動への協力を行っております。我が国としては、薬物識別能力の向上等、覚せい剤対策を含め引き続きこうした協力を積極的に行っていく考えであります。  御指摘のように、覚せい剤の対策というのは、日本に大変重要な影響を及ぼしているにもかかわらず国際的にも少しおくれておりますし、日本の二国間の援助としてももっともっとやるべきだと思いますので、おっしゃるように一生懸命やってまいります。
  108. 常田享詳

    ○常田享詳君 大変力強い御答弁ありがとうございました。  大蔵大臣、お手元に配りました二枚の資料は、先般当委員会で視察いたしましたときに大阪で配付されたものであります。今まさに税関等で巧みに入ってくる、もう一枚はその中で五大港と地方港のシェアが変わってきているわけであります。そういう中で聞きましたのは、やはり税関の職員が非常に少ない、こういった手続を監視する職員が少ないということを聞いてまいりました。  これらのことに対して今後どのように対応していただけるのか。スクラップ・アンド・ビルドだと思うんです。減らすところは減らす。しかし、ふやさなきゃならないところはこういう国際間の問題等を考えて、私はふやさなきゃならないと思うんです。御答弁をいただきたいと思います。
  109. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもの一つの悩みにつきまして関心をお持ちいただきましてありがたく存じます。  以前と違いまして、税関のこのごろの一番難しい仕事はこの麻薬とあとはガンの取り締まりでございます。  殊に麻薬の方はこのごろだんだんいわゆる正規の税関でなくて地方のあっちこっちの港へ荷物を揚げたりするようなことが多くなりまして、配置人員のそういう少ない地方港ではなかなかうまく取り締まり切れない。そこで、警察あるいは海上保安庁なんかと密接に連絡をいたしましたり、できるだけ国際的な情報を交換しておきまして、どうもあっちの方ではないかというような、そういうことでやってもらっております。  が、何分にも荷物の方が極めてどんどん増加をいたしておりますので、いわゆる従来の税関業務をやっておりましたものはコンピューターや何かでできるだけ簡素化いたしまして、そっちの方へ回したりもいたしておりますが、大変実は苦労をいたしております。  お入り用がありましたら関税局長が参っておりますので、お尋ねに幾らでもお答え申し上げます。
  110. 渡辺裕泰

    政府委員(渡辺裕泰君) お答え申し上げます。  関税局、税関におきましても覚せい剤、麻薬等の不正薬物が国内に流入することを水際で阻止することを最重要課題の一つと位置づけまして、積極的な取り締まりに取り組んでいるところでございます。その結果、不正薬物の国内押収量に占めます水際におきます摘発量は六割から七割程度となっております。  このような中で、近年いわゆる主要港よりも地方港で船舶乗組員などによる不正薬物の密輸入事件がより増加しておりますことも先生御指摘のとおりでございます。これは地方港に入りますコンテナ船がふえているというような状況、あるいは密輸入者も取り締まり体制の整備されました主要港よりも取り締まりが比較的手薄になりがちな地方港をねらっていると思われることが原因かと考えております。  これに対しまして、厳しい定員事情のもとでございますが、地方港には少人数ずつしか配置できませんので、特に税関相互による応援体制の整備、あるいは警察及び海上保安庁等との合同取り締まりの実施、それから国際的な情報公開に基づきました取り締まりの重点化等によりまして、水際取り締まりの徹底に努めているところでございます。  また、税関職員の配置につきましても、定員事情が厳しい中でございますが、地方港の取り締まり人員をできるだけ増加させるなど、重点的な配置に努めているところでございます。  また、税関全体の定員につきましても、大臣から御答弁申し上げましたとおり、事務のコンピューター化あるいは重点化、さらには事務運営の効率化に努めます一方、必要な定員の確保に努めているところでございます。ただ、大変定員事情が厳しゅうございますので、平成十年度は四人のネット減、十一年度は十二人のネット減となっております。  今後とも、地方港の問題を含めまして税関の定員確保の必要性について関係各方面の御理解を求めつつ、覚せい剤、麻薬等の社会悪物品の水際取り締まりに全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  111. 常田享詳

    ○常田享詳君 水際でしっかりやっていただかないと大変な汚染国家になってしまうという危機感を私は持っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  宮下厚生大臣にお尋ねをいたします。  厚生省は、薬物乱用対策推進本部を設置して、積極的にこの問題に取り組んでいただいていると理解しております。それらの取り組みの状況と、あわせて、ちょっと外れますが、今月発売されますバイアグラであります。このバイアグラと麻薬、覚せい剤が併用されますと、これは大変危険な状況になります。その作用が心臓に与える影響は物すごいわけであります。ところが、バイアグラは正規のものでありますが、麻薬、覚せい剤は認められていないものでありますから、これを国民にどう周知させるかということは非常に難しいと思います。  このあたりをどのように、麻薬、覚せい剤とバイアグラが併用されると大変危険だということをどのように周知されるのか、お尋ねいたします。
  112. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 我が国の覚せい剤を中心とした薬物乱用問題につきましては、先ほど国家公安委員長等から実情の説明もございました。また、国際的な問題も指摘がございましたので省略させていただきますが、政府では薬物乱用対策推進本部を御指摘のように平成九年につくりまして、昨年五月には薬物乱用防止五カ年戦略というのを策定いたしました。厚生省としては、これに基づきまして関係省庁と鋭意この撲滅に努力しているということでございます。  なお、取り締まり面におきまして、インターネットで売買されている幻覚剤2CBについてちょっと触れたいと思いますが、これは委員が福祉委員会で強力に去年の春に御主張なさいまして、その結果等にかんがみまして、十年の六月に新たに麻薬に指定いたしました。また、最近の事例では、インターネットの逆探知によりまして麻薬取締官事務所で摘発する等の効果も上げております。  なお、予防、啓発につきましては、特に中高生の薬物乱用の拡大を防止するために、薬物乱用防止キャラバンカーを一台から四台に厚生省として増設をいたしまして全国に配置しております。また、中学生、高校生の保護者に対して啓発用の小冊子を新たに配付するということで、九百万部ぐらい予定しております。  なお、十一年度からは薬物乱用に関する地域の相談体制を強化するために、精神保健福祉センターというのが各県におおむね一つありますが、そこで薬物に関する相談事業を新たに実施するということで、今後とも取り締まりの強化と、それから予防、啓発の活動等を積極的に推進してまいりたいと思います。  なお、二つ目のバイアグラの点につきましては、確かに、バイアグラと麻薬、向精神剤の関係でございますが、これは医学的にも大変危険があると指摘されておりますので、これは私どもとしては麻薬を撲滅していくということはもう当然のことでありますが、同時にその危険性を指摘するということも抑制作用の一つになるのかなという感じを持っていることを申し上げておきます。
  113. 常田享詳

    ○常田享詳君 今まさに学校におきましても高校生、中学生、そして小学生の補導まで出ております。そして、家庭の主婦にも蔓延してきていると指摘されております。  文部大臣、これら教育の中での覚せい剤対策をお尋ねいたします。
  114. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私どもも大変重大な問題だと考えております。  昨年五月に薬物乱用対策推進本部で策定されました薬物乱用防止五カ年戦略を強力に推進して、薬物乱用防止教育の一層の充実を図ることといたしております。  具体的には、非常にたくさんのことをやっておりますが、従来、まず教員を対象とした研修会であるとか、教員用の指導参考資料であるとか、中高のパンフレットとかいろいろなことをやっておりますが、十一年度におきましてもさらにこの施策を充実するために、まず第一に、小学生用教育教材の作成、配付を考えております。また第二に、薬物乱用防止教室が効果的に開催できるように講習会の開催等による指導者の養成を図っております。第三に、競技場等の大型カラーディスプレー等を活用した広報啓発活動等々を実施することにいたしております。  さらに、今回の学習指導要領における改訂では、「保健」というところで、新たに小学校から薬物乱用防止に関する指導を行うよう明記するなど、今後より一層指導が徹底されるようにその充実を図ったところでございます。  文部省といたしましても、今後とも関係省庁と連携協力して薬物乱用防止教育の一層の充実に努めたいと思っております。
  115. 常田享詳

    ○常田享詳君 官房長官にお尋ねをいたします。  私は、内閣機能の強化は行革の目玉であると思っております。そして、既に危機管理監等も置かれたところでありますが、防衛、災害のみならず、コンピューターの二〇〇〇年問題や覚せい剤問題等、安全保障政策を専門的に扱う、より強力な危機管理機関を内閣官房に設置すべきだと考えるところであります。  あわせて、危機管理を徹底させるためには国民に対するディスクロージャーが不可欠であります。そのための内閣機能の強化、すなわち広報機関の強化についてもあわせてお尋ねをいたします。
  116. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 委員指摘のように、国家の安全と繁栄を維持いたしまして国民の生命、財産を守ることは政府の最も重要な責務であると認識をいたしております。  政府といたしましては、四年前の阪神・淡路大震災、オウム真理教事件等の反省と教訓の上に立ちまして、緊急事態に対応して内閣として必要な措置について第一義的に判断をし、初動措置について関係省庁と迅速に総合調整を行う等を任務といたします、先ほど御指摘の内閣危機管理監を設置いたしました。  また、御指摘のような重大テロ事件等発生時の政府の初動措置について閣議決定をいたし、危機管理体制の充実に努めてきたところでございます。  今御指摘のように、なお国民生活を脅かす、それぞれ薬物乱用の問題、O157の問題、ダイオキシンを中心とする環境問題等さまざまな社会的問題があるわけでございます。的確にこれに対応するための体制をきめ細かく立ててまいりたいと思うわけでございますし、広報につきましても、従来から国民の理解と協力を得ますために、その時々の社会情勢等を踏まえた総合的な機動的な政府広報を実施しておるところでございます。重大事件や災害等の緊急事態に際しまして、事態の概要や政府の対応などにつきまして、国民のニーズに応じた正確な情報を提供するように、一層適時適切な報道体制に努めてまいりたいと考えておるところでございます。  今後とも、御指摘を踏まえまして、政府危機管理、さらに政府広報の一層の充実を図ってまいることを申し上げたいと存じます。
  117. 常田享詳

    ○常田享詳君 官房長官の御活躍をお祈りしたいと思います。  最後に、要望を一点して質問を終わりにしたいと思います。  中村法務大臣に要望いたします。  覚せい剤の輸入は、現在の日本の法律では一年以上の有期懲役であります。覚せい剤原料の輸入は十年以下の懲役であります。私は軽過ぎると思います。やはり水際で断つことであります。したがいまして、覚せい剤を輸入するということは日本国民を汚染するということでありますから、これらの二つの輸入に対して厳しい法律に変えていくべきだと思います。  以上のことを要望いたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  118. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で常田享詳君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  119. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、江田五月君の質疑を行います。江田五月君。
  120. 江田五月

    ○江田五月君 平成十一年度の予算三案の国会での質疑も、総括質疑はいよいよ終わりに近づいてまいりましたが、私は民主党・新緑風会の最後の総括質疑をさせていただきます。  冒頭、オウム真理教の問題についてちょっと伺っておきます。  最近、地域住民の皆さんから非常に不安であるという訴えがいろいろ出てきておりますが、まず、今現状どうなっているかということについて御報告をお願いします。自治大臣
  121. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) オウム真理教の現状についての御質問でございます。  このオウム真理教、平成九年の一月に破防法に基づく解散指定請求が棄却されてから後でございますが、再び各般の分野で活動を活発化させております。例えば、脱会信者に対する復帰工作等を行いまして信徒拡大を行ったりというようなこと、あるいはセミナーを開催してお布施集めを行ったり、あるいは関連企業の業務拡大等によりまして財政的基盤の充実強化に努めるといったようなことで組織の再建を図っているという現状でございます。  最近は特に各地で新たな施設、オウム真理教の施設取得の動きも見られておりまして、現在のところ、主たる施設としましては三十二カ所を私ども把握いたしております。これに対しまして、オウム真理教の進出を懸念する地域住民の方々と対立しているというような例も承知いたしておるわけであります。  なお、教団の反社会的な本質は何ら変わっておりません。現在もほとんどの信者が麻原彰晃こと松本智津夫に対する絶対的帰依を表明しておるということでございますし、それからまたオウム真理教関係で特別手配被疑者等四名が逃走中であるというようなこともございますので、警察としましてはこの検挙にも鋭意努めておるところであります。  いずれにしましても、警察としまして、住民の平穏な生活を守っていかなければいけないという公共の安全を確保する観点から、教団の施設所在地につきましては、地元警察のみならず、県警本部あるいは近隣署を含めまして体制を強化して重点的な警戒を行ったりというようなことを行っておりますし、それから教団の違法行為につきましては厳正に対処する、こういう方針のもとで所要の措置を講じておりまして、地域住民の方々不安感の除去に努めておるところでございます。
  122. 江田五月

    ○江田五月君 教団の施設というお話ですが、教団は今もう宗教法人じゃないんで法人格ないですよ。どうやって教団が財産を取得するんですか。
  123. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 先生今御指摘のように、これは任意団体でございます。それで、任意の関連企業といったようなものを約四十社ほど私ども把握いたしておりまして、これを通じて財政的基盤の強化を図っている、こういうことでございます。
  124. 江田五月

    ○江田五月君 それと、教団の違法行為とおっしゃいましたね。これも、教団という法人がないんですが、どういう趣旨ですか。
  125. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 教団の信徒がいろいろな活動をする中で違法行為を行う場合があるということでございまして、そうしたものの取り締まりを今までも行ってきておりますし、今後も厳正に行うということでございます。
  126. 江田五月

    ○江田五月君 これは、教団のと言うけれども、教団というのがなくてオウム真理教を信じている人が集まって何かやっているという話ですから、非常に難しいんですね。  自治大臣、たしかあのオウム真理教問題が大変なときに、政府で各部局の全部関連の人を集めて連絡機関とかそんなものをつくっていろいろやったことがあるわけですが、今後どういうふうに政府として対応されるか、非常に難しいと思いますが、ちょっとお考え、覚悟をお述べください。
  127. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 確かに大変難しい事案でございます。  今、警察庁から答弁申し上げたように、オウム自体一連の組織的な違法事案に対していまだ何ら謝罪、反省ということを行っていないということでありますし、さらに依然として従来どおりの、言うなら反社会的教義を維持しているという状況であることも事実であります。しかし、今御指摘ございましたように、宗教法人という形はとっていない。  そこで、かつて政府において、平成七年六月から平成九年九月一日までオウム真理教問題関連対策関係省庁連絡会議というのが設置されておりました。しかし、そういう正式なものは、御指摘のとおり、今のところ置かれておりません。この点、今後さらに検討していきたいと思います。必要とあらば関係各省庁と連絡を密にしていかなければならぬ、そのように思いますが、率直に言って住民の皆さんも非常に不安に思っておられることですし、警察の方も率直に言って警戒態勢なりそういったことには非常に神経を使ってやってはおるんですが、警察だけでもやっぱり今いろいろ言いましたような制約があるということの中で、率直に言って、関係省庁と少し連絡体制がとれるような枠組みも考えてみなきゃならぬというふうに思っております。
  128. 江田五月

    ○江田五月君 この問題、余り時間をとりたくないんですが、甚だ心もとないんで、これでは地域住民の皆さんが不安で寝られないということになるんじゃないか。これは、警察もあるけれども、例えば消防の関係とか学校教育の関係とか、あるいは爆発物その他の関係とか、自治体の権限もフルに動員しながら誤りなきを期さなきゃいけないんで、そのあたりの覚悟を、官房長官、ひとつよろしく。
  129. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 今お話がございましたように、最近、かつてオウム真理教の信者であった人たちがそれぞれ全国各地において活動を再開し、さらに信者を獲得し、さらに多くの施設等を買収する等の行為をやり、パソコン等の販売をやっておるという事態でございます。特に長野県あるいは山梨県等におきましては、その町村の方々が二十四時間監視体制をしておられるという深刻な事態等でもございますので、内閣官房を中心といたしまして、今、野田自治大臣からお話がございましたように、関係者の連絡会議を持ちまして対応を協議しておるところでございます。
  130. 江田五月

    ○江田五月君 話は飛びます。  東ティモール問題の平和的解決、いろいろ経過について私が説明をしておる時間がないんですが、一九七四年にポルトガルの独裁政権が倒れて、七五年に植民地であった東ティモールというところが独立をした。しかし、インドネシアが軍事侵攻して併合宣言。その後ずっと今日まで紛争が続いていて、二十世紀、特に後半は民族独立ということがテーマであったとすれば、その最後の民族独立、民族自決権問題の一つだと。西サハラとか多少ありますけれども、西サハラなんかはもう大体解決のめどがついてきているわけです。  この問題で最近かなり動きが激しいんですが、今の状況をどう把握しておられるか、御説明ください。
  131. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) ハビビ大統領は、昨年六月に、東ティモールに対し広範な自治権を伴う特別の地位付与という包括的解決策を示し、現在まで国連の仲介により、具体的実施の内容につきインドネシアとポルトガル両国は詳細な議論を行ってきていると承知しております。さらに、国連の仲介による二国間外相会談により、本年一月より両国首都にある友好国大使館内に利益代表部が開設され、査証発給が容易になる等、東ティモール問題解決に向け話し合いの成果が実を結びつつある、こういうふうに承知をしております。  また、その後一月二十七日には、インドネシア政府は、東ティモール人が拡大自治案を拒否する場合、インドネシア共和国からの分離、独立を検討するよう次期国民協議会、総選挙後の本年八月末に招集予定になっておりますが、これに提案するという政策が打ち出されているというふうに承知をしております。
  132. 江田五月

    ○江田五月君 細かなことがいっぱいありまして、今の一月二十七日の東ティモール住民が拡大自治案を拒否する場合という政府の話、さて東ティモール人が自治案を拒否する、どうやって東ティモール人が拒否するとか受け入れるとかいうような意思を確認するのかとかいろんな問題があるんですが、それはちょっと置いておいて、そういう動きの中で、民間人を動員した準軍組織が増大して住民テロ事件なんかが起きている。準軍組織にはインドネシア政府軍から武器が貸与されているというような報道もあったり、あるいはそのリーダーたちがインドネシア軍の武器を使って住民を殺害していると公言しているといった報道もあったり、こういう事態について認識をお持ちですか。
  133. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) インドネシア国軍が統合派東ティモール住民に武器を貸与しているという現地報道があったということで、日本政府としてもこれに関心を持ちまして、インドネシア政府関係者に照会しましたところ、国軍よりかかる武器を貸与している事実はない旨回答を得ているわけであります。  民兵組織みたいなものがあるということで、インドネシアの各地方陸軍管区には常設のものではなく一般市民から組織される民間防衛隊が存在すると承知しておりますが、同様の組織が東ティモールにも存在している、こう思われます。  かかる民間防衛隊員は、必要なとき以外は武器の携帯は許されていないというふうに、日本政府としては一応そういうふうに承知をしております。
  134. 江田五月

    ○江田五月君 日本政府としては一応そういうふうに承知をしているという非常に微妙なお話ですが、インドネシア政府の言うこと以外にいろんな情報がありますので、ひとつ情報を注意深く探知していただきたいと思います。  一月二十八日、外務報道官談話、今般のインドネシア政府方向について、解決に向け努力をされていることを歓迎する、これはまあいいです。いいですけれども、問題の解決に向けてはいろんなまだまだ紆余曲折があります。  これに対して、我が国としては、東ティモール問題がインドネシア、ポルトガル、東ティモール住民の各当事者間の話し合いで平和的に解決することを希望しており、引き続き大きな関心を持って注視していきたい、こういう談話なんですが、外務大臣、注視というのはただ見ているだけですか。
  135. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 注視でありますから、場合によったら何かをするために一生懸命見ると、こういうことでございます。
  136. 江田五月

    ○江田五月君 先ほどもちょっと言いましたが、一番重要なのは、民族自決権ということで紛争がずっと長引いているわけですから、東ティモール住民の意思を確認する、これが一番重要なことです。  そうすると、当然住民投票だと思いますが、外務大臣、住民投票については、日本政府はどうお考えですか。
  137. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 東ティモールの拡大自治案に対する東ティモール住民の意思の確認については、どのような方法によって行うのかにつき、現在、国連のイニシアチブのもとでインドネシア、ポルトガルの間で協議が行われていると承知をしております。  住民投票がすんなりできるような状況であれば一番いいんだろう、こう思いますが、住民間の対立が非常に厳しくて、住民投票をやるというような状況のもとで武力衝突が起こるのではないかという懸念も一方にあるやに聞いておりますから、今いろいろインドネシア、ポルトガルが国連のイニシアチブのもとで協議をしておりますので、いましばらく注視をしていきたい、こういうふうに思っています。
  138. 江田五月

    ○江田五月君 注視というのは、先ほどニュアンスのあるお返事をいただいたので、私どもも日本政府の動きを注視しておきたいと思うんですが、国際人権問題では、どうも国際社会の中で日本は余り高い評価を受けていない。  東ティモールのノーベル平和賞受賞者、ラモス・ホルタという人が一九九七年に来日をしたんですが、そのときに、政府要人はだれも会おうともしなかった。ラモス・ホルタ氏は、日本政府は人権への関心が薄いと。大戦中、三年半、日本は東ティモール地域を占領した。しかし、それに謝罪する勇気もない、そこがドイツとは異なる、すべては金で買えると考えているという、これは新聞のインタビューでそういう報道ですが、それだけではなくて、似たようなことをずっと言われて日本を去っておられる。  最近も、例えばオーストラリアの外務大臣が、この関連の周辺各国、インドネシア、ポルトガル、アメリカ、カナダ、EU、日本そしてニュージーランド、こういうところに向けて、国際的な救援の努力をしようじゃないかという、こういう呼びかけをしているわけです。  これに対してアメリカなどもすぐ反応をしているわけですが、今言った国々でどうも日本だけがポシブルイクセプション、ひょっとしたら例外、例外の可能性あり、その他のすべての国がこのプランを原則的に支持すると、こんな表明をしているようですが、日本はどうも何もやっていないという感じですが、これではいけません。  総理、ひとつぜひこういう、二十世紀の問題ですから二十世紀中に解決をする、北方領土だけでなくて日本も積極的に、例えば今のオーストラリア外相の提案に支持を与えるとか、あるいは国際赤十字の支援とか、あるいは三月二十二日にはジュネーブで国連人権委員会が開かれるのでここで日本政府が積極的な態度を示すとか、日本も国際社会の中で人権とか平和について積極的な行動を起こす用意ありと、こういうメッセージをお出しになったらいかがかと思いますが、どうですか。
  139. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今問題になっております東ティモール問題につきましては、私も外務大臣時代、ポルトガルのダガマ外相あるいはインドネシア・アラタス外相ともお話を申し上げて、その解決については日本としても、あるいは目にはそう見えなかったかもしれませんけれども取り組んでまいってきておるところでございます。  先ほど来新たな進展も見えておるようでございますので、我が国としてもこの問題について積極的に対応いたしますと同時に、人権問題について今御指摘がいろいろありましたが、かなりケースがいろいろの点で違っておる点もございますけれども、日本として、世界からこの問題について腰を引いていると言われることのないように日本としては正しく対応していかなきゃならぬと思っております。
  140. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) オーストラリア外務大臣が提案したコンタクトグループの件ですが、これは日本政府としては極めて前向きに検討をしております。  それから、ノーベル賞受賞者のホルタさんが来られたときのお話で、当時外務大臣が大変お忙しい時間でお会いできなかったので、政務次官である私が会いたいと言ったら、政務次官とは会う気がないと言って断られたという事実は御報告しておきたいと思います。
  141. 江田五月

    ○江田五月君 そうですか。私は、あなたは当時例のペルーの事件で大変忙しくて、政務次官とも会いたいと言ったんだけれどもあなたの方が会わなかったというように聞きましたが、まあ、それはいいでしょう。  カンボジアで日本は大きな役割を果たしたわけですから、あのカンボジアで役割を果たした人は、東京都へ連れて帰るんじゃなくてやはり国際社会でやっていただいた方がいいんじゃないかと思いますが、それはさておき、次へ移ります。  中村法務大臣、民主党としてはしばらくあなたに質問を控えておりましたが、集中的に質問をさせていただきたいと思います。  どうも個人のことについてのいろんな追及は私は余り得意でもないし好きでもありませんが、しかしどうも法務大臣が司法やあるいは法務・検察行政の根幹部分にいろんな疑問の起きるような言動をされておる、やはりこれは私がただしていかなければならぬ問題だと思っております。(資料配付)  第一に、あなたの本年一月四日の法務省での賀詞交換会でのあいさつですが、これは翌日、発言の中に適切を欠いて誤解を招く発言があった、謹んで取り消し陳謝をする、さらに憲法を守ると、そういうことを閣僚懇談会で言われた、そこで不問に付すことにしたと、官房長官は角田委員の質問にそういうお答え、総理もそういうお答えですが、どの部分が適切を欠いていたんですか。
  142. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) いわゆる貿易上の問題を、三〇一条がミサイルのようなものだというようなことを思わせるような発言をしたこと。それから、私が言ったわけじゃありませんけれども、国民の間に弁護士に対する不信があるようなことを言ったこと、それから憲法を改正しようと言ったわけではありませんけれども、憲法に関して軽々しく言及したこと、その三点についておわびをして、訂正をさせていただきました。  なお、私、憲法を遵守し擁護してまいりますし、改めておわびを申し上げます。
  143. 江田五月

    ○江田五月君 角田委員の質問の後、朝日新聞の夕刊が「窓 論説委員室から」というコラムでちょっとした文章を載せております。これで見ますと、「この人はやはり、閣僚としての適格性に欠けるのではないか──。参院予算委員会のテレビ中継を見ていて、そんな思いがふつふつとわいてきた。」、そしてあと、検事総長を呼んだ話、刑事局長などにこの事件の関係について説明したとか、あるいは課税処分に訴訟を起こしたとか、そういうことがずっと書いてあります。  まず、今の正月の発言について、憲法は自衛できないというようなことを言われているんですが、自衛権があるかないかについて独特のお考えをお持ちなんですか。
  144. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 司法制度の改革について強調したかったというのが私の真意でありまして、そしていわゆる訓示を述べるとか、そういうような会ではなかったものですから、どこまで私が話したかということは定かではございませんが、独特な解釈を持っているわけではございません。政府の解釈に従ってまいります。
  145. 江田五月

    ○江田五月君 自衛できないというのは、もうどう考えても、なぜどこがどういうふうに自衛できないのかさっぱりわからないんですがね。現に自衛隊もあるんですけれども。  それから、貿易上のこと、これも一つ問題があります。  弁護士不信について、これは私が言ったんじゃないとおっしゃいますが、あなたがどう言っているかということを見ますと、私もそう思うという、ここですね。私が最近憂うことというのでずっと、国民の中には弁護士ってあんなひどいものだったんですかという感情が芽生えているのは事実であり、こう感じているのは私だけではないと思うと、こうあなたはおっしゃっているんですが、これはあなたが自分の考えじゃないことを言ったんですか。
  146. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) この席で、答弁するような席でなかったので、一言一句そうかわかりませんが、そのようなことであったらいけないということでおわびを申し上げ、撤回をさせていただきたいというおわびを申し上げたわけでございます。
  147. 江田五月

    ○江田五月君 ちょっとわかりません。  何、この席で言うべきでないが──ちょっとよくわかりません、今の質問の答え。
  148. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 司法制度改革を言おうということで私が発言に責任を持って一つずつ議事録をとるとか、そういう会議でなかったものですから、私が一言一句をそういうふうに言ったか私にもわかりません。しかし、そういうことが報道されていますことを重く受けとめて反省をし、撤回をしておわびを申し上げる次第でございます。
  149. 江田五月

    ○江田五月君 言ったことがわからぬのに反省して取り消すというのもよくわからぬ話ですが、刑事の弁護においては最近和歌山やオウム真理教の事件を通じて弁護士ってあんなひどいものかと、こうなるんですよ。いいですか。和歌山のあの毒物カレー事件、これについて弁護士がいろんな活動をしておる、あるいはオウム事件についても今法廷で弁護士がいろんな活動をしておる、それはひどいことなんですか、ひどくないんですか。
  150. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) それは国選弁護の方たちですから、いろいろな弁護活動をされると思って、正当な弁護活動だと思います。
  151. 江田五月

    ○江田五月君 オウムについては国選ですが、和歌山は国選でしたかね。国選じゃなかったような気がしますが。  いずれにしても、弁護制度というものは、これは冤罪ということもあるし、仮に冤罪でなくてもどんな極悪非道と言われるようなことがあるにしても、無罪の推定で刑事裁判を受けるというのはもう大原則なんですね。  もちろん、今例えばオウムの事件についても、あんな者を裁判にかけるようなお金を使う必要はない、すぐに死刑にしろなんという国民の声もあります。ありますけれども、そういう国民の声にそうだそうだと政治家が言っちゃだめなんで、まして法務大臣がそういうことを言うというのは適格性を欠くも欠くも大欠きじゃないかと思いますが、どう思われますか。
  152. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 申し上げましたことは非常に適切を欠くものだと思いまして、撤回させていただき、おわびを申し上げる次第でございます。
  153. 江田五月

    ○江田五月君 おわびと言われても、法務大臣がそういうことを言われたというのは弁護士にとっては後ろから弾を撃たれるのと同じですよ、おわかりですか。世間の非難を受けても弁護士はやらなきゃならぬことがあるんです。一生懸命やっているのに、法務大臣はそれを守らなきゃならぬ立場じゃないですか。  総理、どうお考えですか。これは撤回すればいいという、そういうことですか。
  154. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 発言の内容のすべてを承知しているわけでございませんで、今、法務大臣法務大臣としての考え方を申し述べており、それに対して撤回されたということでございましたので、私はそのことをお認めした、こういうことでございます。
  155. 江田五月

    ○江田五月君 発言の詳細はわかるんです。それはマスコミ注視の中での発言ですから。そして刑事の弁護において、最近は和歌山やオウム真理教の事件を通じて、国民の中には、弁護士ってあんなひどいものだったんですかという感情が芽生えているのは事実であり、こう感じているのは私だけではないと思う、こう言っているんです。  もし撤回がなかったら、あなたはどうされるつもりだったんですか。
  156. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 撤回ということですが、どういう場所でどういう発言をされ、どういう責任を負うかということでございまして、その逐一の文章をすべて私は承知をしておることでございませんが、私が任命をいたしました法務大臣がかくかくここでも何回も弁明をされておられますので、私としてはそのことを認めた、こういうことでございます。
  157. 江田五月

    ○江田五月君 総理がそういう法務大臣を任命したということをどうあなたはお考えですか。
  158. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) こうした公の場所で法務大臣が弁明をたびたび申し上げなければならないようなことがあったということは、大変残念なことだと思っております。しかし、その内容とすることにつきまして私自身すべて承知をしておるわけでございませんで、ここでの正式の弁明に対して私はそのことを了としておる、こういうことでございます。
  159. 江田五月

    ○江田五月君 総理は、弁護士というものがどういう社会的使命を持って行動する人たちであるかというのは御存じですか。
  160. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 人権を守り、法のもとでこれを擁護していく立場であろうかと思っておりまして、その職責はまことに崇高なものだと認識をいたしております。
  161. 江田五月

    ○江田五月君 いろいろあるんですが、次に、中村法務大臣は就任直後に検事総長をお呼びになって、検察庁は我々国会から選ばれた小渕総理が指名された大臣の指揮下にあることを厳密に心に置いて仕事をせよと。今の言葉は中村法務大臣、あなた自身国会で答弁をされた言葉の引用ですから覚えておられると思いますが、大臣、つまり法務大臣の指揮下にあることを厳密に心に置いて仕事をせよ、こうあなたは言われた、あなた自身がそうおっしゃったわけです。  この表現、小渕総理はどう思われますか。
  162. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) これは事実でございまして、私が指名いたした事実をそのまま申し述べておることだろうと思っております。
  163. 江田五月

    ○江田五月君 小渕総理が中村法務大臣を指名したということを私は問題にしているんじゃなくて、その後です。法務大臣の指揮下に検事総長というものは、検察庁はあるんだから、そのことを厳密に心に置いて仕事をせよと就任直後に検事総長を呼んで訓示したということをどう総理は思われますかということを総理に聞いているんです。総理に聞いているんです。
  164. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ちょっと法務大臣がその事実関係をお話ししたいというのでございますので、お話をお聞きいただきたいと思いますが、大臣としては法律上指揮する権限も検察庁法にもございますので、そういうことをお話ししたのかとは思いますが、しかし御本人がこれから御説明されるということでございますので、お聞きいただきたいと思います。
  165. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 御説明いたします。  私が就任しました後の事務引き継ぎの席で、検察庁の検事総長を初め幹部の方が私のところへ来て事務引き継ぎの話をいたしました。それをお伺いした後、心構えのようなことを話したんですが、検事の、検察の仕事というのは極めて重要な仕事である、こういう仕事は国民生活のためにある、国民生活のためにあって国民の要請にこたえた検察の仕事でなきゃいけない。そういうことで、検察庁というのは、これは糸切れた行政ではないんで、きちっと国会に対して連帯して責任を持つ行政の一つの機関である。そういうことにおいて、やはり国民の要請を受け、その国民の代表たる国会の、国権の最高機関の国政調査権の範囲内にある行政機関であると。  そういうことで、国民の要請にこたえて公平公正な検察業務をやってもらいたいと言いました後に、法律的にも国会から選ばれた総理大臣の指名を受けた私が議院内閣制の中で指揮監督する立場にあるということをお話ししたわけでございます。
  166. 江田五月

    ○江田五月君 法務大臣の指揮監督のもとにあると。しかし、一方で検察庁法十四条というのがありますね。これは法務大臣、どういうふうにお考えですか。
  167. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) まず、法務省設置法二条で行政たる検察の事務は大臣の下にあるわけですから、一般的に国家行政組織法の考え方からいって、私の指揮監督にある機関だと思います。  検察庁法は、実はこれは設置法の前にできた法律でありますけれども、木村篤太郎司法大臣の提案理由説明をお読みになるとよくわかると思うんですが、検察官は、従来と同様司法大臣の指揮監督に服するものでありますが、検察権行使の独立性を担保するため、個々の事件の取り調べまたは処分につきましては、司法大臣は検事総長のみを指揮することができるといたしたのでありますということで、検察庁法十四条にも法務大臣は検察を指揮することができると書いてあります。そして、個々の事件については検事総長を通じて指揮をせよという指揮の仕方が書いてあるということだと思います。
  168. 江田五月

    ○江田五月君 指揮の仕方が書いてあるというのは大変な理解だと思いますが、検察庁というのも、あるいは検察事務というのも行政権である、したがって国会を通じて国民にその責任を負うものでなきゃならぬ。それはそう。しかし、一方で、政治的な介入というものがあってはいけないので、そこでその指揮者である、指揮権限を持っておる法務大臣という行政官庁が直接に個々の事件について検察庁あるいは検察官を指揮してはいけない、検事総長を通じてのみできるという規定で、これは大変微妙なバランスの規定なんですね。  御承知と思いますけれども、かつて大事件がありました。昭和二十年代の終わりです。私、ジュリストの当時の座談会をとってきたんですが、もう今やマイクロフィルムになっているような本でして、田中二郎、兼子一、団藤重光という大先生方が一生懸命討論をしている。  その中に、こういうくだりもあるんですね。もう時間がないので余り読みたくはないんですが、法律で法務大臣に指揮権が認められている、それを受けた以上、検事総長は法律的にはその指揮に従う義務がある、しかし検事総長がしっかり腰を据えていますと法務大臣の方ではいいかげんな指揮をすることができない、不当な指揮があったら検事総長は実質的にかなりこれに抵抗することができる、検事総長も検察官としての身分の保障を持っている、法務大臣は容易に歯が立たない、場合によっては検事総長が職を賭してまでその指揮を食いとめることも可能だろうと思う、そういうこれは団藤重光先生の発言なんですよ。  法務大臣が指揮をしようといったって、検事総長の方は自分はやめる覚悟でそれに抵抗することもできる、最後は政治判断で、国民が総選挙のときに判断をするという、そういう非常に重要な規定なんですね。指揮の仕方を書いてあるとか、そういうことと違うんじゃないですか。もう一度。
  169. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) いろいろ法律家の御議論あることも大変浅学ですがお聞きをしておりますし、委員の御指摘もよくある、極めて微妙なところだと思うんですが、私は長いこと国会対策の仕事をさせていただきまして、野党の方から、なぜ検察を呼ばないんだということを、国会に呼ばないんだということをよく言われたことがあります。  刑事訴訟法四十七条と国会法の百四条のぶつかり合いで、国政調査権には服するべきだ、指揮されるべきだというようなお考えがあり、しかしそれは言えないんだというようなことがずっと言われてまいりました。ですから、私は、実は個人的にはこの国政調査権とそれから検察のあり方について、できれば、これは私、個人的意見ですよ。(「法務大臣の意見を聞いているんですよ」と呼ぶ者あり)じゃ、個人的な意見はやめます。大変微妙なことだということは認識しております。
  170. 江田五月

    ○江田五月君 あなたよりもよっぽど検事総長の方が事の重要性というのはわかっているんじゃないかと私は思いますよ、申しわけないけれども。  ですから、こういうことをあえて就任直後に言われる。検察というのは法務大臣の指揮下にあることを厳密に心に置いて仕事をせよということを言われたら、それはやはり布石になって、その後別の、あなたの心はこうだというそういうメッセージがあれば、それは合わせわざで指揮権の発動になるんじゃありませんか。  ちょっと話を変えまして、石垣シーサイドホテルというのがありますね。これは中村企業という会社がお持ちのようですが、あなたとの関係は。
  171. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 正確な日にちは覚えておりませんけれども、私が三十年ぐらい前に設立した会社です。
  172. 江田五月

    ○江田五月君 あなたが設立をされた会社だと。土地はだれのものですか。
  173. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私の子供のものでございます。
  174. 江田五月

    ○江田五月君 大変失礼ですが、今お幾つですか。
  175. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 今十ぐらいだと思います。
  176. 江田五月

    ○江田五月君 あなたは、この土地をあなたの御子息に贈与されたんですね。
  177. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 生前贈与の手続をいたしました。だから、生きている間に贈与する。
  178. 江田五月

    ○江田五月君 贈与ですね。
  179. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) そうです。
  180. 江田五月

    ○江田五月君 何年ぐらい前に贈与されましたか。
  181. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 五、六年前だったと思いますね。
  182. 江田五月

    ○江田五月君 五、六年前でも四、五歳。もうちょっと前じゃないかと思いますが、まあそれはいい。  この石垣シーサイドホテルの近くに日本生命がホテル開発をするとかいう、それで云々という事件がありますね、事件といいますか問題。これで、今年二月一日、衆議院予算委員会で我が党の上田清司委員が質問をした。あなたは、「私が就任いたしましたときは、この事件は既に送検をされております、そういう事実。」。送検をされておりますというのはどういう意味ですか。
  183. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私が就任してしばらくして新聞記事でこの事件は送検されたという記事を見たものですから、それを申し上げました。
  184. 江田五月

    ○江田五月君 これは、あなたが指揮権発動を実際にやったんじゃないかということを質問されたわけですが、あなたは答弁で送検をされておる事実、事件だと。送検されているというのはどういう意味があるんですか。
  185. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 送検されている事件だという事実を申し上げ、これ送検しておりますと、本来私は法務大臣ですから、今申し上げましたように法律的に検察を指揮する立場にいますから、これを聞かれても御答弁できないわけであります。御答弁できないわけだけれども、個人のことが言われているから、あえてお話し申し上げますということでお話ししました。
  186. 江田五月

    ○江田五月君 なるほど、送検されて今自分の指揮する検事総長のもとにあるから答弁できない、本来ならという意味ですか。  それで、さらに同じ答弁の中で、続いて「法律上、私が捜査について指揮をとれる相手というのは検事総長でございまして、指揮をとれない」、これは刑事局長をあなたは指揮したんじゃないかという質問なんですが、「指揮をとれない人にそんなことを言うわけもございません。」という、これはどういう意味ですか。
  187. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) それは、先ほど質問がございました検察庁法第十四条にも、個々の事件には検事総長を指揮するということが法律で決められております。
  188. 江田五月

    ○江田五月君 あなたは、検事総長に対する指揮はあなたが直接検事総長に言わなければできないとお思いですか。
  189. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 仮定のお話でどんどんいっちゃうものですから、私はそういうような指揮はしておりません。これは明確に何回も否定しましたけれども。  本来、こうした事件についてこういうところで先生と私が論議することもぐあいの悪いことだと存じますが、そういった報道がありましたので、実際にある事件でございますから、それは私に聞かれれば、ぐあいが悪いというか申し上げられないということになるんだと思いますが、私のことが報道されたのは事実でありますから、そのような指揮をしたことはないということを申し上げているわけでございます。
  190. 江田五月

    ○江田五月君 では、もうちょっと一般論として、指揮権発動というのは、あなたは直接自分が検事総長を指揮しなければ指揮権発動にならないとお考えですか。
  191. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私は法律の専門家ではありませんので、確たることは申し上げられません。最終的には、何かもし事件があれば、どういう指揮が行われたというのはそれは裁判で争われることかもしれませんが、私は検察庁法の十四条の検事総長を指揮するというのを素直に読んでおります。
  192. 江田五月

    ○江田五月君 刑事局長というのはあなたの何ですか。
  193. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 刑事局長というのは法務省の局長であります。私の指揮下にあります。
  194. 江田五月

    ○江田五月君 あなたは法務大臣という行政官庁なんですよ。法務大臣という行政官庁。これは全閣僚よく聞いておいてください、そのくらいのこと。法務大臣という行政官庁なんですよ。法務省の全職員はあなたの補助職員なんです。ですから、あなたが行政官庁の法務大臣として何かを行動するときには、全部あなたの部下の法務省の職員をどういうふうにでも使えるわけですね。その一人に刑事局長がいて、刑事局長が具体的には検察事務というのを所管しているけれども、あなたは直接検事総長に指揮するだけでなくて、刑事局長を通じて検事総長を指揮することも当然できる。検察の方の受け手は検事総長だけですよ、こういうことが検察庁法の十四条じゃないんですか。
  195. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 仮定の論議は余りするべきではないと思いますが、私が指揮するとしたら、私は検察庁法十四条を素直に読んで検事総長を指揮すると思います。だけれども、それは仮定の話でありますので。
  196. 江田五月

    ○江田五月君 検事総長を指揮する仕方自体が大間違いの法務大臣。  これは、法務大臣、あなたが自分で意識せずに指揮権発動をするということがあり得るという話ですよ。
  197. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) そのような重要なことをそう軽々しくやるわけはないと思います。
  198. 江田五月

    ○江田五月君 そうじゃないんだ。あなたがそういうことをしっかり知らずにうっかりやったことが指揮権発動になるという話なんですよ。
  199. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私は、検察庁法十四条の「検事総長のみを指揮することができる。」というのを素直に読んでおります。
  200. 江田五月

    ○江田五月君 刑事局長、お見えですよね。いかがですか。申しわけないんですけれども、法務大臣が指揮権発動をするときのやり方というのは、刑事局長、教えてあげたことはありますか。
  201. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 大臣御就任の際には、検察庁法十四条というのは極めて重要な規定でございますので、大臣を補佐する立場にある刑事局長としては、いろいろな説明の中でも十四条の問題というのはしっかり説明申し上げております。
  202. 江田五月

    ○江田五月君 当然、刑事局長を通じて検事総長を指揮するということはできるわけですね。いかがですか、刑事局長
  203. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 検察庁法十四条の解釈としては、江田先生御指摘のとおりでございます。
  204. 江田五月

    ○江田五月君 総理に聞きましょう。総理、それでまだあの人、法務大臣の資格があると思いますか。
  205. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 検察庁法十四条のことに関して、俗に言う指揮権の発動といいますか、こういうことの存在することについての御論議はお聞きをいたしておりましたが、ただ、法務大臣自身が御指摘のような税務訴訟の提起についてその関与を否定しておりますので、私としてはそのように理解をいたしておる、こういうことでございます。
  206. 江田五月

    ○江田五月君 税務訴訟の提起という話をされましたが、これはまた別の話なんで、こっちはまた違うんですよ、総理。  税務訴訟があるんです。その話もあるんです。これは訟務局長が担当するんですが、訟務局長の場合は検察庁法の十四条なんということもなしにずばりもう指揮できるんですよ。ちょっと今、口が滑りましたね。
  207. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 大変失礼をいたしました。  法務大臣の発言として、最初に御提起されましたこの一月五日の問題と、それから、今私が誤ちて御答弁をいたしました点とございます。そして、今お話しの点は指揮権の問題でございましたが、これにつきましては、これを発動したとされる報道について法務大臣自身がその事実を明確に否定しておりますので、私としてはそれを了としておる、こういうことでございます。
  208. 江田五月

    ○江田五月君 何をすれば指揮権発動になるかも知らない法務大臣。  今、税務訴訟の関係についてちょっと総理が言われましたから、やっぱり弁明の機会が必要でしょう。
  209. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) これは、角田先生の御質問に答えましたので、内容は避けます。  要するに、宥恕規定といって、申告書に、あることを書いておかないと税の減免が受けられないというのを書き忘れたというものですね。それを国税不服審判に私のオーナーの会社が、そこの社長がやったと。やって、その延長線上に──国税不服審判は準司法的な世界で、その延長線上に裁判がありますので、そこの手続まで行くべきかということでやったと。私も御質問があったので聞いてきましたが、やったということだそうです。ただ、裁判はしなかったということだそうですが、これは憲法に定められた、どういうものでも行政に対して不服があればそれを裁判の判断にゆだねるという規定が憲法にあるわけですから、それは許されるべきことじゃないかと私は思っております。
  210. 江田五月

    ○江田五月君 あなたは、そのことを知ったのは、週刊誌で初めてこういう問題があるというのがわかった、そこで聞いたんだと、そうお答えですよね。そうじゃないんですか。
  211. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) そうは答えておりませんと思います。
  212. 江田五月

    ○江田五月君 時間が来ましたが、そのほかにも、今の税務訴訟のことはもっともっと聞かなきゃならぬ点がいっぱいあるんですが、そのほかにも、例えば独禁法改正をあなたが所掌している司法制度改革審議会の議題の中に入れようというようなことを画策されるとか、いっぱい問題があって、総理、まだこれでも法務大臣、このまま不問に付したままでいきますか、それとも何かお考えですか。
  213. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 法務大臣の真意もさらにお聞きをいたしてみたいと思いますが、いずれにしても、公式の場所において法務大臣がそれぞれについて否定をされておられるということでございますので、私としては本務に専念をしていただきたい、こう考えております。
  214. 江田五月

    ○江田五月君 私どもとしては、これで終わりにするつもりはありません。  終わります。
  215. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で江田五月君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  216. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、浜田卓二郎君の質疑を行います。浜田卓二郎君。
  217. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 公明党会派を代表いたしまして、財政の問題、そして行政改革の問題について質問をさせていただきます。  平成十年度、今年度は大幅な歳入の落ち込みがありました。現在までに出ている数字で、税収は当初見通しから七兆円以上落ち込んでおりますし、減税の分を入れますと、当初の予算の歳入見通しよりも十兆円以上の落ち込みだということであります。平成十年度がこれだけ落ち込めば、当然のことながら十一年度以降の税収は落ち込んだところから伸びれば伸びるわけですけれども、これだけ落ち込んだものを将来にわたって取り戻していくということは極めて大変なことだと私は思っております。  大蔵省が中期財政試算というのを出しておられます。単純な計算でありますけれども、大変示唆に富んだ計算でありまして、ここに示される財政の姿というのは極めて深刻であり、我々が、定性的にといいますか、大変だと思っている以上に、定量的に見ていくと深刻な事態になっているというふうに私は思うわけであります。  質問は、まず今後のいわゆる収支差額、これを当面は国債発行で賄っていくという前提でしょうけれども、国債発行額、今後平成十五年度まで展望されておりますけれども、それはどういうふうなことになっているのか、お答えください。
  218. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平成十年度の当初の租税及び印紙収入、五十八兆五千二百億円でございますが、今回は四十七兆一千億円でございますね。これは、先ほど浜田委員の言われましたのは、今年度の歳入見積もりをするときに、前年度、十年度の発射台が相当落ちておるんだから、四十七兆そのものも本当は下が崩れているんじゃないかとおっしゃったと思いますが、この四十七兆の見積もりをいたしましたときには、既に十年度の歳入欠陥は見ておりましたし、減税も盛り込んでおりますから、そういう意味では四十七兆一千億というのは、そのこと自体の上に立っているわけで、その後新しい事態が発生したわけではない。したがって、そういう観点からは四十七兆一千億の歳入見積もりにはきずがあるだろうとおっしゃったのではないと思いますが、そういうふうには思っておりません、これからどういう事態に発展するかはまさにわかりませんけれども。  見積表のことは主計局長からお答えをいたします。
  219. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答えいたします。  中期財政試算、これはあくまでも一定の仮定のもとでの機械的な試算ということでございますが、この試算によりますと、平成十五年度の歳入歳出のギャップは、名目成長率が一・七五%の場合で二十九・二兆円から三十三・四兆円、それから名目成長率が三・五%の場合で二十九・八兆円から三十四・一兆円となっております。それで、このギャップはこの試算におきましては国債発行により賄うということを仮定しておりましたので、この金額が国債発行額になるわけでございます。  その結果、国債残高は、平成十五年度末には、名目成長率が一・七五%の場合で四百二十九兆から四百三十九兆円、それから名目成長率が三・五%の場合は四百三十一兆円から四百四十一兆円となっておるところでございます。
  220. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 つまり、いろいろなケースが試算されていますけれども、どのケースも余り大差がないわけでありまして、今後毎年度──先ほどは失礼しました、十年度の話をして、十一年度からが試算になっておりますが、十一年度、今年度以降少なくともこの五年間しか展望しておりませんが、毎年度三十兆円以上の国債をこれからも発行し続けると、そういう数字ですね。  平成十五年度末の国債残高のGDP比というのは計算できると思うんですけれども、どのくらいになるんでしょうか。
  221. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 平成十五年度末の公債残高の対GDP比でございますが、これは十一年度末現在、これは六五・九%の見込みでございます。  これが、名目成長率が一・七五%の場合で八〇・六から八二・五%、それから名目成長率が三・五%の場合には七五・六から七七・四%となっているところでございます。
  222. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 諸外国でも国債の累積に悩んでいる国は多いわけですが、私の記憶ではイタリアが一番深刻だというふうに思っておりましたが、それに比べて、国際比較をしてみてどういう状況にあるか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  223. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答えいたします。  現在、国際比較された資料といたしましては、これはOECDが出しておりますエコノミック・アウトルック、この資料によりますと、これは暦年、一九九九年ベースでございますが、イタリアが一一七・五、日本は一〇八・五%となっております。ただし、これを年度にいたしますと、日本の場合は約一二〇%ということになっております。
  224. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 GDPの一二〇%ですか。
  225. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) GDP比でございます。
  226. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 この八〇・六から八二・五というのは、これはGDP比でしょう。
  227. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 失礼いたしました。  先ほど申し上げました八〇・六とか八二・五というのは、国の公債残高の対GDP比でございます。それから、イタリア等諸外国におきましては、国と地方を合わせたところの債務のGDP比の資料が出ておりますので、これは比較上OECDの資料を申し上げたところでございます。
  228. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 日本の場合にはそのほかに地方の公債残高があるわけで、これは今年度末、それからこの予測の十五年度末、それぞれどのくらいだと思っていらっしゃいますか。
  229. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答えいたします。  国につきましては、この一定の仮定のもとで計算しております中期財政試算におきましてこれからの公債の発行見込み額が出てくるわけでございますが、地方財政につきましては、地方債の残高の中期的な見通しの作成が難しいと聞いておりまして、このような形で国と地方を合わせた公債残高の対GDP比を出すことはなかなか難しいわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、国の公債残高が十一年度末、三百二十七兆円に比べまして、この試算によりますと約百兆円以上増加するわけでございます。あわせて地方財政も大変厳しい状態がこのまま推移するわけでございますので、その程度は相当なものになると考えております。
  230. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 多分、今年度末で地方、国合わせて六百兆ぐらいでしょうかね。それが国だけでもこれから五年間毎年三十兆ずつ出していく。地方もさらに深刻な状況にある。国債残高のGDP比だけで議論してもこれは八割を超えるわけです。  昔、議論したことがございます。公債残高がGDP比の四〇%ぐらいが危機ラインじゃないか、それほど根拠のあったことではなかったのかもしれませんけれども、まじめにそういう議論をしていた時期がございました。  これが八〇%になる。この間からのこの委員会のやりとりを聞いていますと、大した心配ないというようなお話が主流だというふうに思うんです。私は、例えばこの間の国債の運用部引き受けをちょっとやめるという発言ぐらいで金利があれだけ大きく動く、それはそれで当面は対処の仕方があったわけですけれども、そろそろマーケットで許容できる国債の限界まで来つつあるんじゃないか、そういう気がしてならないんですけれども、大蔵大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
  231. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこのところは確かに私どもも慎重に考えなければならない問題であるわけでございますけれども、昨年の十月、九月ごろまでは長期金利が〇・六とかいうまことに世界に例のない金利でございました。それが十一月と十二月ぐらいのところでほとんど一ポイント余り上がりましたので、したがって一遍二を超しました。そのときがちょうど今、浜田委員が言われました平成十一年度の公債が相当大きいということと、それから資金運用部がいろいろな都合で月中の買い入れをやめることにしたということ、それで二を超したわけでございます。これは私どもも多少不注意であったと思いますのは、全体の七十兆とかいう話でございますから、数千億の話がと、ふと思いましたが、おっしゃるような背景があったかもしれません。  しかし、過剰反応であったろうということは後で大体わかってまいりまして、今また一・八とか一・九とかいうところにいるわけでございますが、この間しかし日銀総裁が言われましたように、そこで落ちついているように見えますが、まだ神経質な動きだとおっしゃるのは、そう考えておいた方がいいと思うのでございます。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  今後、国債を発行する者としてはいろいろ注意すべきことがあるだろうと思いますが、そこまでは心配すべき状況だと考えておらなければなりませんが、ただ一・幾つとかという利子水準そのものは国際的にはほとんどある意味では問題にならない低い利子水準でございますから、これに民間資金需要があったらとてもこんなことではないはずだろうと思いますが、幸か不幸かそれはございません。不幸かもしれないのですが、これが出てくるようなら政府もこんなこともしなくてもいいわけなので。それがございますから、私は注意しなきゃならない事態だとは思っておりますものの、また注意をいたしますが、だから国債というものが売れなくなる、危機的な状況になるとまでは、そこから考えますとどうも思わなくていいのだろう。油断をするつもりではございません、御指摘の意味はよくわかっております。
  232. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私も金利の絶対水準は今は異常だと思うんです。だから、むしろ何らかのきっかけで早く正常な金利水準に上げていくべきだと思うんです。  ですから、絶対水準で言っているのではなくて、かつて資金運用部引き受けをやめるからというような話で金利が変動するような状況があったかどうか。しかし、既にそういう状況が始まっている。しかも、私に言わせればこのままでいったらこれから毎年毎年三十兆円ずつ国債を発行していかざるを得ない。既にGDP比で国債残高だけでも八割を超えている。この異常性に対する認識をもっと持つ必要があるということを言いたい。  堺屋長官は、この間委員会で大したことありませんとおっしゃいました。私と認識をいささか異にするんですけれども、ちょっとお答えを。どうぞ、大蔵大臣
  233. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 財政の中期展望を中心にして議論をお始めになりまして、これは浜田委員がよく御存じの資料でございます。昭和五十年ごろに国債がふえそうな傾向があって国会に御提出をいたしまして、もうそれから二十何年。今もお話がありましたように、成長率が一・七五の場合と三・五の場合となんて、どこにそんな成長率があるのかなというような、今日的な立場からは少し何か工夫をしなきゃならぬ資料でございますから。  しかし、それは御存じでおっしゃっていますので、だからどうと申しませんが、そこから見ると、これから国債というものは毎年三十兆はどうしてもやめられないのだ、こうおっしゃいますから、そいつはちょっと私も困るので、いや困るのでというのはおっしゃっているのが悪いというのではなくて、そんな財政をこれからいつまでもやっているわけにいきませんので、やはりこのピンチを脱出しましたら何とかそこはいろんなことを考えなくてはなりませんで、今後ずっと三十兆も毎年国債がふえていくというようなことは考えてはならぬ、あってはならぬことではないかと思っております。
  234. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 私は別段大したことないと言ったわけじゃございませんけれども、これで日本の財政が将来にわたって絶望的だ、あるいは孫子の代まで増税をしなきゃいかぬ、そうお考えになる必要はないということを申し上げたのでございます。  この中期財政試算でございますけれども、これは今、大蔵大臣が申しましたように、一定の三・五%、一・七五%、これは平成七年につくりました経済計画に基づく成長率を二つとっておるわけでございますが、それをもとにいたしまして、今のは実績でございますが、名目成長率と金利との関係を一定の間隔にとっております。したがって、名目成長率が上がると国債費がふえる、こういう仕掛けになっております。  それからもう一つは、名目成長率に対する租税弾性値、名目成長率が一%上がると幾ら税収がふえるかというその率を一・一と固定しております。さらに地方交付税は一・二と固定しております。  これすべて、現実にそのとおりになるとは限らない数字でございまして、例えば、日本の過去の例を見ましても、七〇年代からの例を見ますと、バブルのときは特別だとか、石油ショックのときは特別だとかいろいろありますけれども、非常にそれは動いております。  ちなみに申し上げますと、アメリカでございますが、アメリカは今景気がよくて、財政が八百億ドル近い黒字になる、こう言っておりますが、十年前の一九八八年には三千億ドル近い赤字でございました。  それがどのように改善してきたかという例を見てみますと、一番大きいのは実は歳出の削減でございます。これが全体の中で五割近くを占めております。それから、その次が景気の回復による税収の増加、これが約三割を占めております。そして、レーガン大統領のときにどんと減税をいたしました。これはもうレーガノミックスで大赤字になったわけでございますけれども、それを幾分戻しております。最高税率を幾分戻して二段階にしておりますが、それで約二割の税収増加を見た。  ついこの間、総理大臣の諮問機関である経済戦略会議が十年間にわたって財政再建ということを出しましたが、それも同じような発想でございまして、景気が本当に回復してまいりますと、まず景気対策のために使っている支出は大胆に削減できるんじゃないか。  次に、税収が景気の回復によってふえてくる。それも一・一という数字じゃなしに、それ以上ふえるんじゃないか。また、今は非常に物価が、卸売物価を初め消費者物価まで下がっておりますから、これは金利が低いと言いましても事業をなさる方から見ると実質的に高い金利になっておりますが、こんな石油も輸入品もどんどん下がる事態ばかりが続くわけではないでしょう。そうなりますと、名目成長率の方が金利を上回るような事態も想像できるわけでございます。  経済は生き物でございますから、余りこれを絶望的に孫子の代まで尾を引くようなことを申し上げるのはいかがか、こういう趣旨で答弁させていただいたわけでございます。
  235. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 大蔵大臣の御説明と企画庁長官の御説明をそのまま聞けばいいんだろうなというふうに思うのかもしれませんけれども、私は全然そう思わないんですよ。  これは不思議に当たるんですね。昭和四十九年度で三兆八千億の歳入落ち込みがありました。五十年度を初年度として、財政収支試算と当時言いました、あれを直接担当してつくったのは私なんです。もちろん主計官もおられ、私は主査でした。こんなものは単純計算だと言っておりましたけれども、不思議にそのまま当たりますね。  つまり、長官それから大臣もお聞きいただきたいんですけれども、成長率というのは伸びるかもしれないけれども減るかもしれないんです。つまり、年度をならして考えればこれは大蔵省も試算するときにめちゃくちゃな成長率の想定なんてしませんよ、過去の平均とかトレンドをとって大体当たるんです。  それから、租税弾性値のお話をなさいましたけれども、昭和五十年度のときは一・二を使いました。一・二を使って、しかも間に高度経済成長が入ったわけでしょう。あれ以上にしかし事態は深刻だったんですね。実際のこういう累積債務残高の推移はもっと急激に進んだわけです。  私は、だからこれはそういうふうにとらえて物を発想したら間違いだと。だからといって、私は今の宮澤積極財政に反対するわけじゃありません。むしろ必要だと思うし、それを前提にしながら経企庁長官が努めて明るい展望を言おうとしている。これは私も賛成です。むしろ、長官にもっと言いなさいと申し上げたことがあるぐらいですから、それは賛成なんです。でも、幻想で財政を運営してもらっちゃ困りますということを申し上げたいのです。  アメリカのことをおっしゃいましたけれども、あのとき冷戦が終わった、大幅な軍事費の削減があった。日本にはこれから削減の材料がありますか。むしろふえていきますよ。それから、公共事業費だって景気がよくなったら落としますか。自民党政治は落としっこないです。大体変わらないです。今や公共事業費はもう麻薬のようになっています。  大蔵大臣、公共事業費をこれから税金でやるという展望がお持ちになれますか。
  236. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 公共事業の中身も変わってこなければなりませんし、いわゆる財政再建を考えますときにその点も考えなければならないだろうと思っています。
  237. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私も公共事業費を一挙になくせなどとは言っていません。ただ、お題目みたいに公共事業費の質的な変更とか配分の変更とか言われますけれども、これは実際やらなかったらこのまま行きますよ。赤字国債と建設国債とどこが違うのですか、大蔵大臣。  大蔵大臣は、かつて昭和六十五年度赤字国債脱却という目標を立てられて、積極財政政策でそれを実現された。私もそのときに大したものだと思った記憶がございます。しかし、今そういう合い言葉がなくなりましたね。ですから私は、積極財政で景気を回復させる、これは必要だと思う。だけれども、将来何とかなるよという思いで今の財政運営を放置することは、これは許されないということを申し上げたいのです。御所感を。
  238. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどの租税弾性値が、あのときはたしか三ぐらいまで行きましたからとうとう赤字公債を脱出することができましたが、これから日本経済が仮に二%という軌道に乗ったとして、一回かそこらはわかりませんが、租税弾性値というのは一・一というのをそう上っ離れることはやっぱりないのじゃないでしょうか。したがいまして、そこはもうかなりの歳出の削減を考えざるを得ないと思うのです。
  239. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 太田長官に伺いたいのですが、あなたはこの前ここで、相変わらず火だるまになって行革をやっていますとおっしゃいました。何をやっていらっしゃるか、ちょっと質問したいと思います。
  240. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 先日、私は火の玉になってやっておると。火だるまではございません。  今の行政改革は、昨年六月の行政改革基本法にのっとって、橋本政権で絵をかいていただいたので我々はそれを実行する、建物でいえば設計図をかいていただいて今施工をしておるという段階でございます。そして、その設計段階でまことに声高らかに語られたことは、この国の形を変えるということでございます。  どういうふうにこの国の形を変えるかといえば、それはまず国民とそして政府の関係、国と国民の関係を見直すということを言っております。そして、その一つの柱といたしまして内閣総理大臣の主導権、リーダーシップを強化する、政治主導で事が進んでいくようにする。それはとりもなおさず、選挙で選ばれる、選挙で直接国民の負託を受けた者が政策決定のリーダーシップをとるということをこれから志向していこうということでございます。そのために内閣官房、内閣府についての設計をやったわけでございます。  同時に、前から言われております小さな政府、スリム化ということをやらなければいけないので、そのスリム化については、いわゆる橋本行革の段階では、郵政省の中に郵政庁をまず設立し、さらにそれを郵政公社にするという一つの大きなスリム化の、スリム化と言うとあれでございますが、一つの透明性を求める改革がなされましたが、それに加えて小渕内閣では同様の、同様のと言うと語弊がございますけれども、八十四機関について独立行政法人化をするということをやっております。それから同時に、中央省庁等の改革ということに加えて、それに並行して地方分権を推進するということでこの間勧告が出たところでございますし、また情報公開法についてももうすぐこの参議院で御審議に入っていただくところでございます。  この独立行政法人化などのことをどうしてやっているのかといえば、それは透明性を高める、国民から見えるように、国の行政全体を細かく切り分けて国民に見えるようにする、そして自己責任でもってやっていただくということでございます。そういう姿にすることによって、国民の目を意識して、それぞれの行政機関がみずから、自分のところはスリムにしなくちゃいかぬ、あるいは目標管理をしっかりしなくちゃいかぬというふうにみずから変わってくれるだろうということで、国民と行政の関係が変わってくることを期待いたしておるわけでございます。
  241. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 太田さんだから能書きは幾らでも言えると思うんですね。私もその心意気というか、いわゆる橋本行革ということでいろいろ議論されて間口を広げましたよね。だから、国民から見れば大したことが行われていると思っているんですよ。私に言わせればそうじゃない。  太田さん、問題を単純にして、ではあなたが今一生懸命取り組んでいるもので幾ら経費節減ができるか、もっと言えば中央、地方を通じて幾らコスト削減になるのか、ちょっと数字が言えたら言ってみてください。
  242. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) これは我々、行政改革というのは、さっき言いましたように国家と国民の間の関係を見直していこうということをやっているのでありまして、直接それでもって財政支出の削減目標を立ててやっているわけでもありません。試算はだれもした人はいないと思います。つまり、機構を、組織を変えることによって、既存の行政機関がみずから節約をしたりみずから効率的に目標を達成してくれるように持っていこうということでございますので、直接的な経費の削減というのは今試算ができないわけでございます。(発言する者あり)
  243. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 いや、その答弁でいいんですよ、やっていることはそういうことなんですからね。  ただ、問題は、私は今緊急事態だと思うんです。私はずっと落選していたから国会で演説できないので駅前でずっとやってきたんですけれども、この日本の緊急事態は六、七年続いているんですよ。その間にのんびりと役に立たぬことをやってきているんです。不良債権処理も延ばしてきたわ、それから行政への切り込みも延ばしてきたわ、議論だけしているんです。だけれども、国債が累積しているんです。ほっておいたら三十兆ずつ累積するんですよ。大蔵省の試算は、私は予言しておきますけれども、何にもしなかったら極めて的確な試算ですよ。期間がないんです。  太田さん、あなたは行政改革を全体で所管する大臣でしょう。そういう行政改革を今やるべきだと思いませんか。そして、本当にこれならば財政支出に切り込める、あなたがそう思う行革は何ですか、お考えをお聞かせいただきたい。
  244. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 財政再建の話と連動してくるとちょっと私も言い過ぎることがあるかもしれないのでお許しをいただきたいと思いますが、昨年の夏のまさに浜田委員が御当選されました選挙は何であったかというと、橋本政権が財政改革をやろう、しかもそれを法律でやろうということにして、そしてそれが野党やメディアの方からはデフレ政策であるという批判を浴びて、そのことが私は大敗を喫した大きな原因であったろうと思います。  そういたしますと、それに続く小渕内閣はそれにこたえ、自民党政権はそこで勝負をして負けたんですから、負けたらばその国民の審判というのは一応受けとめなくちゃいかぬというのが今この一年間の状態だと思うわけでございます。  浜田委員がおっしゃることは本当に我々も深刻に思っております。仲間内で話をするときには、本当にこれでどうなんだろうかというふうに日夜悩んでおります。そして、それはいずれ我々がみんなでツケを払わなくちゃいけない時代がもうすぐ来るわけでございますし、ぜひそれは浜田委員も、あるいは国会、参議院、衆議院の御協力もいただいて、本当に国を挙げて取り組まざるを得ないテーマになろうかと思っております。  なお、今の公共事業のことに関連して申し上げますと、そこで我々が、では今までなぜ公共事業の、公共事業だけを目のかたきにしちゃいけないけれども、歳出の抑制ができなかったかというと、そこは半分以上はあるいは政治家の責任かもしれませんけれども、半分近くは既存の行政機構というものに我々が歯が立たなかったというところもあるわけでございます。歯が立たないものを変えるというのが、これが今回の一つの中央省庁改革の目標でございます。
  245. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 あなたのおっしゃることに私もかなり賛成するんですよ。ただ、私が言おうとしているのは、今の経済対策、財政政策がおかしいというんじゃないんです。私も選挙のときに、何でデフレ政策でこんなにだめにしちゃうんだということを言っていました。私の落選した小選挙区の最初の選挙は、まさに争点は、デフレ政策か、それを転換して景気の立て直しに向かうか、その分かれ目だった。我々は負けたからそうはならなかった、だから我々が予測したとおり悪くなった、私は今でもそう思っていますよ。その点を言っているんじゃないんです。こういう経済政策、財政政策を進めて経済を立て直す、しかしその先に展望がなきゃ、これは景気対策にならないんです。  今ちまたで何て言っていますか。国の底が抜けているような感じを一般庶民にまで持たせちゃっているんです。だから、これだけの改革はあわせてやります、だから大丈夫ですという話をしてもらわなきゃならぬ、それがあなたの責任だと私は言いたい。  質問をもとへ戻しますけれども、大蔵大臣、自然増収でどれくらいカバーできるんですか。先ほど堺屋長官アメリカの例を引かれて、三分の一ぐらいは自然増収、景気の回復だったとおっしゃいました。その点はどう展望をお持ちでしょうか。
  246. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どの時点で言うかによりますが、今私もたまたま同じことを国会に申し上げておりましたけれども、戦略会議の皆さんが何となく頭に描いていらっしゃることは、〇・五をとにかく達成しなきゃいかぬ、平成十一年度はそうだと。そうすると、それがもとになって十二年度は二%行ければいいな。そして、その二%というのがサイクルになったら、そうしたら財政改革をやっても大丈夫だろう。それはしかし、終わるまでにそこから七年とかなんとかかかるとお考えになっていらっしゃるんでしょうが、大体私は国会でも別にきちんと計算をしたわけではないんですが、そのぐらいのタイミングだろうと思っておるんです。  そこで、ですから今のお答えは、まず平成十一年度の〇・五のところで、ここで歳入欠陥が出ては困るわけです、これがまずミニマムですね。そして、今度平成十三年度に二%としますと、今のデフレーターからしますと、ひょっとしたら二%かもしれないが、仮に三%名目でもらえるとしたら、どうも私はやっぱり弾性値は一・一と見ておいた方が安心とすれば、三・三でございますよね。そうしますと、大きなものじゃございませんね、今の租税収入が四十七兆でございますから。そうすると、三・三のもとになるのが、ことし歳入欠陥がないとして、ちょっと五十兆はきついかもしれませんですね。その三・三ということになるわけじゃございませんか、計算だけしますと。そんなオーダーのものと思いますね、最初の年は。  ですから、一九八六、七年のように弾性値がどんどん上がっていってなんということは、急にはなかなか難しいんだろう。傷が治ってきたら、健康を回復してきたら、そのぐらいの飲み食いはあるいはできるのかもしれませんけれども、ちょっとそれは、やっぱり二%というサイクルが固まってくる。  いつぞやも申し上げましたとおり、この四十七兆という税収は昭和六十二年ごろと一緒でございますから、十年ぐらい戻っちゃっているので、そこへたどり着くのにという、そういう感じでございますから、毎年の自然増が本当に二兆とか、ひょっとするとどこかもう少しか、もう足りないか、そのぐらい積んでいけばまあまあ経済がこれでだんだん本気になってくるということじゃないかと私は思います。違うかな、えらい。違う意見があるかもしれませんが。
  247. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 大蔵大臣は徳がおありですから、大蔵大臣がおっしゃると大体本当のように思うんですね。本当なんですよ。  これは試算が出ていますね。三・五%でもう一つ試算が出ているわけでしょう。ですから、まさにこれは名目です、長官が言われるように実質じゃなくて名目です。だから、もっと伸びるときがあるのかもしれない、だけど落ちるときもあるのかもしれない。だから、何年間平均といった場合には大体当たるんですね、不思議なことに。三・五で計算してあるんです、これは。つまり、自然増なんというのはたかが知れているんです。しかも今、我々は間接税に移そうとしています。これは私も賛成なんです。そうすると、だんだん弾性値は落ちるんです。だから、一・一ぐらいに見ているのが私も妥当だというふうに思います。歳出は極めて控え目に見ているんです。社会保障費は一%で見ていますね。つまり、五、六千億ずつふえるという前提です。だけれども、厚生大臣、もっとふえますよ。だって二分の一にするんでしょう、国庫負担を。これを計算に入れていないでしょう、入れてあるんですか。まあそれはいいです。だから、例えば年金サイドからくる歳出圧力というのはもっと高まりますね。私はそう思います。  要は、これだけの収支差額というのをどうやって将来消していくかというか、全部消さなくていいです、借金しながらやっていってもいいんです。でも、マーケットが許容する限度を超えるときはいつか来ますよ。国債が発行できなくなったらどうするんですか。つまり、日本はかつて先進国が経験したことのないほどの国債を既に累積させたんです。しかも、このテンポはさらに私に言わせれば高まる。この事態を正確に認識して景気対策もやる、しかし景気対策を効果あらしめるには先の展望も開く、私はそういうことを、ない物ねだりかもしれないけれども、やっぱり今政権をとっているのは皆さんなんだから責任がありますよ。  太田さん、私は本当に金になる行革というのは、妙な言い方ですが、やっぱりこれからの行革は、私の提案だけれども、税金ではかれ、この行革で幾ら節約できるか、そういう税金ではかれと。それで、税金が節約できる、コスト削減がうんとできる行革ほどランキングを高くしてやるべきなんです。そういう意味でいえば橋本行革はゼロですよ、私に言わせれば。そう言っちゃいけないですね、ゼロじゃなくても非常に効果が低い。  太田さん、地方自治体の歳出に切り込まなきゃ、あるいは構造に切り込まなきゃ、これは本当の金目の節減につながらないと私は思うんですが、あなたの意見はどうですか。
  248. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 中央政府というのは巨大な悪者であって、地方政府というのはかわいそうな善人であるというふうな誤った見方がありますが、私は、もし悪いとすれば同じぐらい悪いし、強力だといえば同じように強力だし、弱いといえば両方とも同じぐらい弱いと思っております。  そういう中で、中央省庁で幾らやっても、結局のところ行政の支出というのは、特に公共事業の場合は八割を超えた執行は地方自治体で行われているわけでありますから、ここをともにやっていただかなければ、今おっしゃる節減はできっこないわけでございます。ただ、残念ながら、従来の考え方で地方自治体に中央政府の方から指示、命令をしてはいけないということになっております。対等な関係だから要望はできるけれども、命令をしてはならないというような考え方になっておりますので、なかなかそこにジレンマがあるわけでございます。ただ、既に行革につきましては、今の行革の考え方は自治省の方から地方の方に伝えていただいておると思っております。何かもう一つの工夫が我々は必要だと思います。
  249. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 太田長官に重ねてお伺いをしますが、そうすると今あなたが所管している行政改革の中には地方自治体の行政改革というのは入らないんですか。
  250. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 私の所管しておるのはあくまでも中央省庁の話でございまして、地方自治体の分は入っておりません。
  251. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 自治大臣に後でお伺いしますが、私はやっぱり金目になるというと言い方が品がありませんけれども、本当に安上がりの政府、つまり安上がりのパブリックセクターといいますかそういうものにしていこうと思ったら、大半の問題は地方自治体にある、そう思っています。  そうすると、太田長官政府において政府の行革の所管をしておって地方自治体は関係ありませんとおっしゃるのならば、中央、地方を通じた行革のヘッドクオーターズというかそれはないんですか。
  252. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) あるいは不勉強で、どこかにあるのかもしれませんが、私自身はそういうものはないと思っております。そういう両方対等な立場で集まって協議をして何かのガイドラインをつくるというふうなスキームはないと考えております。
  253. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 総理に申し上げたいのですが、橋本内閣を継続された、橋本内閣も一生懸命いいことをやろうとされた、しかし事行革に関しては私は高い評価はしていないんです。この忙しいときに中央省庁のあり方をひねくり回して、お役人さんは中央省庁のあり方をいじくられちゃうとそれに狂奔しちゃうんですよ。だから、不良債権の処理も後回しになる。本当の景気認識も後回しになる。だから、事態をここまで悪化させたと私は思っています。別に中央省庁をいじるなとは言いませんけれども、暇なときにいじれと、逆に言えば。つまり、橋本行革の本質は私はそこにあると思っているんです。構えは大きいんです。中身がないんです。  今、太田長官のお答えもありました。私は、今や小渕内閣は小渕行革を始めるべきだと思うんです。あなたが積極政策に転換させて、多分私は景気はよくなると思うんです。これは堺屋長官と私は同じ見方をしているんです。でも、それは一時的なことであって、だからこれから国家の将来がどうかという話は、そこから真剣に考えなきゃいけない。今のこの財政の状況一つとってみても、私は本当に実のある小渕行革を始めるときだと、小渕内閣が続けばですけれども。ぜひ、そういうふうに御決意をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  254. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 自民党におられるころからよく話し合ってまいりまして、随分御一緒に勉強もさせていただきましたが、今立場は異なっておりますけれども、今の御主張もそれなりの激励と実は受けとめさせていただきます。  橋本内閣が途中で退陣することになりまして、六大改革、私は六大改革そのものは正しかったと思っております。ただ、財政構造改革につきましては、これをこのまま遂行すればこれは積極的な財政運営はできないわけでございますから、それは一時凍結をさせていただきました。  それから、この行政改革につきましては、私その後を受けまして自民党の総裁選挙に臨むに当たりまして、御案内のように行政コスト三〇%、それから二〇%の人員削減を訴えて党内的な総裁選に臨みました。そして、その暁において総理に就任をいたしましたので、その問題についてはこれを実行していかなきゃならぬというお約束をいたしたわけでございます。その後、また自由党との話し合いで二五%の削減ということも約束をいたしておるわけでありまして、これは国民的な感情からいいましても、この際行政のスリム化といいますか小さな政府をやらなければならないとおっしゃっておる国民的な要望にもこたえなければならぬということでございます。  ただ、既に橋本内閣時代に大きな方針が定められておるわけでございまして、まずは私としては、行政改革につきましては、太田長官に言わせれば橋本内閣でまずグランドデザインが描かれたということでございますので、それの実行を私の内閣としてしていかなければならない、その責務を負って今いたしておるということでございます。  そこで、新たなるということはすべてある意味では御破算に願ってという御意識のようにお聞きをしましたけれども、それは今の段階では非常に難しいことでございますし、それをやりますとまたここ何年間かはそれこそ行革がおくれていく。ということになりますと、国民的な政府に対する大きな期待感もなくなっていくということで、この点はせっかくの御提案でございますけれどもなかなか難しいのではないか、こう考えております。
  255. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 別にやめろと申し上げているんじゃなくて、非常に単純に考えまして、要は今の国の状況、それから将来まさにもっと成熟化していきますよ、高齢化も含めて、もっとほっておけば金がかかるようになるんですね。それがもう端的に単純な計算ですけれども今の数字にも出ている。将来のことじゃない、今のことです。だから、私は、せっかく今までおやりになっていた行革を続けられるのは結構、だけれどもそれだけじゃ足らないということを申し上げた。  最初は盛んに鈍牛とかいろいろありました。今や猛牛になりつつあると私もひそかに喜んでいるわけですけれども、そうであれば、小渕行革のように新しい、私は幾ら税金が節約できるかで単純にはかれるような意味のある行革をやってほしい、それを始めるべき時期だ、そういうふうに申し上げたいわけです。
  256. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 行革と財政再建の問題に触れていろいろお尋ねがありました。  今般、御案内のように自由党との連立内閣をつくりました。これは野田さんからお話しいただいた方が的確だと思いますが、自由党は要するに行革による財政再建といいますか、こういうことを非常に訴えております。私はすべてまだ内容を掌握しておりませんけれども、またこういったことにつきましても自由党ともいろいろ話し合ってまいりたいと思っております。
  257. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 浜田委員のおっしゃっていることは私は大分違うと思うんです。行政改革は何のためにやっているのかというと、このような硬直化した財政、硬直化した経済というものの病理を治さなければいけないと。対症療法はもちろんやらなければいけません。まさに出血中ですからとめなくちゃいけませんからそれは必要ですけれども、病理を治さなくちゃいかぬということが必要だということはきっと御理解いただけると思うわけでございます。  その病理を治すことについて、よく宮澤大蔵大臣がおっしゃいますけれども、プラザ合意以後の十数年間に我が国の財政あるいは歳出について起こってきたことというのは、私はまことに理解しがたいことが起きてきたと思っております。そこの病理を我々は治さなくちゃいかぬ、そうでなければ何をやってもむだだと思うんです。特に政治家がリーダーシップを持って、責任を持って国民につらいことも言えるような状態にできるかどうかというのはまことに大事なことだと思っております。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
  258. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 それを否定してはいないんです。だけれども、ゆっくりゆっくり病理を治すだけに今時間を使っている暇はない。病理も治しつつ思い切ってやれ、そういうことを申し上げたい。  自治大臣、二点まず聞きます。  太田長官から、地方は地方の勝手だと。それで自治大臣は、地方の行革を本当に進められる立場におありなのかどうか。それからもう一つは、今ちょっと総理もお触れになったけれども、新進党それから自由党は一貫して地方自治体の合併促進を言っています。自治体を三百ぐらいにしたら十数兆のコスト節減ができると。私もかなり共感するところがあるんです。そのお考えは今でも変わっていないか。この二点を御答弁ください。
  259. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 二つのポイントで御質問がありました。  ただ、その前に、先ほど来いろいろ御議論、やりとりを聞いておりまして、基本的に浜田さんの問題意識にほとんど同感のところであります。  行政改革というのは、決して機構いじりだけで終わってはならぬ。そういう意味で、わかりやすく言うと、私どもが新進党におったころからわかりやすく表現していたのは、言うなら仕事減らしであり人減らしであり金減らしであるというか、そういう意味で単に財政再建ということだけが必要なのではなくて、結果として極力簡素で効率的な政府に持っていこう。これは国、地方を通じて持っていこうということになれば、要らぬ権限を拡大して民間がやるべき事柄への介入は極力抑制すべきであるという、この考え方を貫いていくということが仕事減らしという表現になり、一方で、そのことによって仕事がより減ってくれば、人もそういう意味で極力少なくすることもできるであろうし、そのことが結果として行政全体をスリム化して行政経費を節減することになるだろう、そんなことを言ったんです。  先ほど総理からもお話がありましたが、若干私どもが感じましたのは、総理がおっしゃいました中で行政コストを三割削減したいというお話、ということは、必ずしもその前から行われてきたいわゆる橋本行革と言われる事柄の範囲の中でとどまっているのではなくて、さらにより分野を拡大して、中央省庁の再編の問題だけじゃなくて、いわば職員の数に切り込み、あるいは行政コストの削減に向けて切り込んでいくという私はより積極的な意味合いと、そのように受けとめております。  そういう点で、少なくとも両党間の合意の中で、あらゆる分野において構造改革をやっていくんだという中の大きな大きな柱の一つがこういった分野であるということをまず冒頭に申し上げておきたいと思うんです。  それから、長くなって恐縮ですが、本論の二つの部分、地方の行革はそういう意味では当然のことでありまして、国、地方を通ずる行政改革というのは徹底してやっていくべきテーマの一つであります。そういう点で、地方自治があるからといって知らぬ顔というわけにいきません。  既に平成九年、前内閣のときであったろうと思いますが、役所で調べてみますと、自治省の方から地方自治体にガイドラインなり通達を出しておりまして、それがかなり今効いておりまして、それぞれの自治体がみずから行革の指針なりそういったものをただつくるだけでなくて、内輪で持っているだけでなくて、住民にもわかるように情報公開をしていくという、そのことによって住民監視の中でさらに地方行革を進めていくんだということに現に既に着手しておるということはまず申し上げておかなければならぬと思っています。  それから、それだけでなくて、地方自治体自身の独自のそういう行革努力というのは必要なんですが、あわせて国、地方を通ずる行革、それが言うなら地方分権であり、いわゆる権限の見直し、再配分ということもあって、先ほど太田長官から、遠慮されたと思うんですが、太田長官のお仕事の中に地方分権一括法という、これは地方分権推進委員会の勧告をもとにして今度国会に御提案させていただいて、ぜひこれを推進していきたい。その中に、あわせて市町村合併についても、これは精力的に進めていかなきゃならぬ。  だから独自の、現在ある自治体自身がみずからの行革なり行政コスト削減に向けて一生懸命やってもらうことはもとよりでありますが、やはりそれだけでは済まない。そういう意味で市町村合併ということも、もちろん何も行政コストだけの側面ではありませんで、いろんな高度の住民サービスというものが必要になってきている時代ですから、それなりの中身を、レベルを充実していかなきゃならぬというためには、小さな自治体だけではとても能力を超えるということになりますから、そういう意味での地方行政のレベルをしっかりと維持していく、充実していくという角度からも必要だし、あわせて、何より今の市町村合併ということが共通コストを削減していくということで極めて有効な手段でもあるということも事実でございます。  そういう点で、両面、地方行革あるいは市町村合併について、これは私が今抱えておる仕事の中で最重点の一つであるというふうに思って、努力をしていきたいと思っております。
  260. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 一生懸命やっていらっしゃるというのはよくわかりましたが、どうも間接的なんですね。つまり、基準をつくるとか、それでどうぞやってくださいとガイドするというか、私はもうちょっと踏み込めないかなと思うんですよ。だから、多分、太田長官がさっき言われたことも、強制力がないというか、要するに、話し合いで自治大臣としてはこう考える、総務庁長官としてはこう考える、だからやってくださいよと。だけれども、申しわけないけれども、やる能力が全国三千二百の市町村全部に備わっていて、それだけ強力なリーダーシップを自治体の長が発揮していけるのかどうか。  例えば合併ですけれども、十年たっても十五年たっても合併話というのはなかなかうまくいかないんです。我が埼玉県でも、政令市が一つもない、つくろうといってさんざん議論しています。自主性はいいんですよ。だけれども、自主性に待っていたら百年たったって地方自治体の合理化なんて進まないです。  介護保険をやるのに、たった何千人の町やそんなところでやれるわけない。本当言うとやれるわけないと思いますよ。埼玉県の町だってまだ全く特養もないところがあるんですから、だからこのまま保険料もらったら詐欺になっちゃうよというふうに市議会がもう物すごく心配しています。それが実は個々に見ていく地方自治体の実態です。  だから、私の持論を申し上げれば、大分時間があるようですから演説しますけれども、合併法をつくれと言っているんです、私は。合併法をつくれと。そして、その地方自治体に例えば十年の期限を切って、このぐらいのスケールで合併しなさいと。そして、全国知事会とか市町村会とかも同意を、もちろん説得しなければいけませんけれども、基本はやっぱり国が私はリーダーシップをとっていい、それは憲法にも違反しない、正しい地方自治を実現するための手段だと。  だから、身近なところでどうですか、太田長官と御相談なさって、全国知事会とタイアップしながら国が地方の行革をリードできる、そういう仕組みをつくったらどうですか。これが一点。  それから、合併法についてどう考えますか。私は強制力を持たせてもいい、それぐらい緊急の事態だと思っています。
  261. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 確かに、何もしないでいると百年河清を待つような多少いら立たしさを感じているという……
  262. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 多少じゃない。
  263. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 大変感じておられるというお話でありますが、私は多少感じておりますが、ここは率直に言って、できるならば今我々が目指そうとするのは、やっぱり地方でやることは地方、住民により身近なことは地方自身責任を持ってやっていく体制にしましょう、国は極力国がやらなければならぬような仕事に限定をしましょうという役割分担をある程度はっきり仕分けをしましょうと。そのかわり地方は、自立と自律という言い方を私はしているんですが、みずから立つという自立と自己規律といいますか、その自己責任という中で本当に自分のことを主体的に自己責任で考えよう、そうしないと本当の意味での地方自治は育たない、大体ここまではみんな共通した物言いで来ているわけです。  問題は、そこから先にやっていこうとするときに財源問題というのがついて回るわけでありまして、そういう点で、幸か不幸か今の状況、国も大変借金で、先ほど来の御議論のとおり先行き非常な不安感を抱えておりますが、地方も負けず劣らず大変な、言うなら惨状にあります。そういう中で、さっき言いましたように、かなり自治体自身が主体的にみずからの行政改革ということに現に取り組んできているということは、ここはここで余り先入観を持たないで見てあげなきゃならぬところだと、このことは一つあります。  その中で、合併問題について埼玉の例は、ちょっと個別のことは申し上げませんが、できることならば住民自身がやっぱり合併した方が自分たちにとっても、有利不利という言葉がいいか悪いかわかりませんが、自分たちのためにもプラスになるんだということをぜひみんなに理解しておいてもらわなきゃいけないということがまず基本だと思います。  そういう意味で、今度の、さっき言いました地方分権推進のための一括法の中に市町村合併の推進のための法改正を一つの柱として入れる予定なんです。それは、今現在、合併特例法という法律が既にあります。市町村の合併の特例法ですね。これは、合併しても不利にならないようにという法律が現にあるわけです。  それをさらに改正して、合併した場合の合併特例債を新たに過疎債並みの財政手当てをするというような誘導措置とか、そのほか、地域の中では取り残されちゃうんじゃないか、田舎の方へ行きますと、そういうようなみんな非常に不安感を持つわけですね。自分たちが取り残されるんじゃないか。そういう意味で、地域審議会というそういう事態になっても、自治体としては合併してもその地域が切り捨て御免の対象になるのではないんだという、やっぱりそこはきちっとした保障もしなきゃいけない。そういった手当ても今度の法改正の中に入れる予定でもあるわけで、そういう点で今まで以上にいわば合併促進のための、あめ、むちという表現があるから語弊があるんですが、いわば財政上あるいは行政組織上いろんな形でバックアップ体制を今までになくアクセルを踏んでいきたい、そのための法整備をぜひ今回は措置をしたいというふうに実は考えておるんです。  期限的に十年というお話がありましたが、この合併特例法の期限が実は平成十七年三月三十一日までの時限法になっておるんです。ことしは十一年でありますから、あと六年で期限ということになっています。これを十年までに延ばすことにするのか六年で切るのかというところがありますが、余り延ばすよりもせっかく六年ということですから、この六年の間に精力的に合併が推進できるように全力を挙げていきたいと考えております。
  264. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 先ほど浜田委員の御提案の我々中央省庁の責任のある者、自治大臣を先頭にそしてまた都道府県知事、あるいは政令指定都市の市長あたりも含まれておるのかもしれませんけれども、そういう対等な立場でもって一つのテーブルに着いて危機感を共有し、同じ覚悟でもって物事に取り組んでいくような場というのは大変すばらしい御提案でございます。もし自治大臣がイニシアチブをとっていただけるなら、私もぜひついてまいりたいと思っております。
  265. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 自治大臣、一言申し上げたいんですけれども、私は、自自は大変心外なんですよ。  つまり、自由党は、例えば今の合併問題も含めて、大変いい主張をしてこられた、新進党時代からのいい主張を続けておられる。私はそれは評価しているんです。特に、自由党に結集している人たちというのは、自民党では改革はできない、だから出てきた人たちが多いわけでしょう。一緒になるのならば、そういうハードルをくぐれるかどうかで一緒になるべきじゃなかったですか。  例えば、副大臣、これは技術論ですよ、言ってみれば。むしろ本質論は、例えば自治体の合併なんて簡単に言うけれども、これはもうみんな長いしがらみの中で生きていますから、そう簡単には進まない。財政投融資も、何か経済戦略会議が言っていますね、年金改革。年金改革は、これは厚生省も一生懸命やっていらっしゃいます。  しかし、先ほどから金目のある改革とか言っていますけれども、要するに既存の仕組みというものを抜本的に見直す、既得権構造に切り込む、それがやっぱり私は自由党の主張だったと思うし、新進党、私も新進党に入っちゃったんですから、ちゃんとしてもらわなきゃ困るんだという気持ちは物すごくあるんですよ。そういう気持ちは変わっていないんですか。  例えば、今の合併問題も本気で自民党政権にやらせる気がありますか。
  266. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 両面ありますが、閣僚の立場として、自治大臣としては、まさに願ってもない仕事を仰せつかったと思っております。そういう点で、地方が本当に国つくりの姿として主体的にやっていけるように、やっていこうというのはまさに自治省として一番大事な仕事でありますから、この仕事を貫いていくということが新進党時代以来の思いを貫いていくことにつながっていくというふうに思います。  同時に、これは先ほど来総理からもお話がありましたが、あらゆる分野において構造改革を断行していくというこのことにおいて両党首が一致をされて、そして具体的に先ほどるる申し上げました、時間の関係上それ以上申し上げませんが、その総理の意気込みを非常に受けとめて、大変ありがたいことだ、ぜひこれなら一緒にやっていける、私はそう思います。それは今までのやり方の反省もあった上で、小渕総理が、そういう形の経済政策にせよ構造改革問題にせよ、今日の日本の置かれている環境の中での時局認識としてとらえられたことだと、私はそう理解しております。  それからいま一つは、両党間の協議の対象の中でむしろこの問題をこそ中心的に据えるべきではなかったかというお話。私は、できればこの問題もあわせて一つの柱としてあってもいいとは実は思います、それは。  しかし、何度も申し上げておりますが、昨年十一月に、今すぐやろうという仕事の中にどれを入れるかということは、かなり広範囲なテーマがある中から特に急ぐことということで党首が取捨選択をされたわけで、別に入っていないことをやらないというのじゃなくて、まさにこれから先を展望するときに、今までまとまった政策は協議に従って、合意に従って着実に実行に移されているということが決まったわけであります。  したがって、この後、こういった市町村の合併問題等々について、両党間で今既に責任者同士で話がスタートいたしておりますので、私はこの面についても見るべき方向性が明確になっていくということを確信もいたしております。
  267. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 初心を忘れないでやっていただきたいと思います。  柳沢長官に伺いますが、公的資金、いよいよ注入が始まるようです。七兆円ぐらいということで聞いておりますが、これで不良債権の処理は進むんですか。
  268. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) ただいま先生御指摘をいただきましたとおり、私ども、今度の三月期の決算、特に主要行というか、そういう大きな銀行の三月期の決算時に不良債権の問題の解決を完了いたしたい、こういう考え方、それからまた有価証券の含み益についても同時に手当てをいたしたい、こういう考え方のもとに目下、申請のありました十五行を対象にいろいろと手続を進めているところでございます。  今、先生具体的な金額に御言及になられましたけれども、これは私の立場からは、まだ正式の申請をいただいたわけでもございませんし、ここでそれを前提にした物の言い方をすることは差し控えなきゃならぬ、このように存じておりますが、これまで私どもは、不良債権の問題に限って申しましても、不良債権の資産査定、これを厳格に行うということ、それからまたそれに対する償却なり引き当てというものについても、今までは公認会計士の実務指針というようなものに基づいて、しかも各行のいわば自主的な公認会計士さんとの御相談のもとでこれを行ってきたというようなことでございましたのを改めまして、あえて定量的な基準を設定させていただいた、こういうようなことで、これを前提に資本の注入をさせていただく、こういうことでございますので、私どものそういう準備作業、それからまた現実にこれから行うことをもって十分不良債権問題の解決が今回の三月期をもって完了できる、このように考えておる次第でございます。  ただ、もちろん、よく不良債権の問題を議論するときに、完了するということは、これからはもう不良債権というものはなくなってきれいさっぱりして、銀行というのはもう何にもその償却を今後行わないで済むようになるのかというようなことを、あるいはちょっと想像する向きがあるのかと思えるような論議もありますけれども、それはそうではないわけでありまして、金融というようなものにはリスクはつきものでございまして、このリスクが顕在化することは、常にこれは対処していかなきゃならぬことだと。そのレベルがただバブル期のように異常に発生したものをいつまでも抱えているという事態を今回解決するということでありまして、通常のリスクの顕在化、これに対する対処というものはこれからもそのレベルでずっと続けていかなきゃならぬ、これは当然のことである、このように御理解を賜りたいと思います。
  269. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 私は、不良債権の処理は大丈夫ですかと伺ったのは、要するに貸し渋りあるいは債権回収競争、これは金融機関が金融機関の機能を果たしていないということですね。ですから、それが根っこにある限りいつまでも経済が元気にならない、私はそう思ってきたんですよ。 そういう意味において、不良債権の処理は大丈夫ですかと聞いているんです。  ちまたにある話は、固有名詞は言いませんけれども、ある銀行は公的資金を入れると面倒なことになるからできるだけ入れないでやろう。入れないでやろうという心意気はいいのかもしれませんが、その結果何が起きているかといったらリストラですよ、その貸出先も含めた。だから、みんな悲鳴を上げているという実態は実は少しも改善されていない。私はそういう意味で大丈夫ですかと申し上げたんですが、もう一回お答えください。
  270. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 自分のバランスシートの中に不良債権がある、したがってそれを計算してみると、名目の自己資本はこのぐらいのレベルだけれども、実質はこのくらいそれが侵食というか毀損されて、自分の資本というものはそんなに多くない、こういうような気持ちがありますと、つい、このリスクを負担する力がそれだけ少ないものですから、貸し出しということに対して消極的になる、こういうようなことで、随分金融機関は批判をされたわけでございます。  あるいは貸し渋りと言い、あるいは貸し出しの信用の収縮と言い、表現はいろいろでございましたけれども、そういうようなことを通じて金融機関の行動が本来実現されるべき日本経済の成長の足を引っ張ったんじゃないか、こういうようなことも言われて、そういうようなことをも直さなきゃいけないという考え方のもとで金融国会で金融二法ができ上がった、このように受けとめておるわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、今回の資本注入というのは、不良債権の問題の解決、それからそのことを通じて貸し出しに対しても通常の金融の仲介機能というものを円滑に果たしてもらわなきゃいけないということを基準として設定をいたしまして、その資本注入の基準に基づきまして経営健全化計画という、いわば目論見書でございますけれども、その目論見書の提出をいただいて、それを審査させていただいて資本注入をする、こういう段取りにさせていただいておるわけであります。  ただいまのところはこれを内々に提出を仰いで審査をさせていただいておりますけれども、各行ともに貸し出しに対してはこれを伸ばしていく、特に中小企業の皆さんに対する貸し出しについては伸ばしていく、こういう計画の御提出をいただいておるところでございます。  ただ、今、浜田先生御言及になられた点で、リストラを貸し出しに当たって言われておるということをちょっとおっしゃられたんですが、これは私ども、金融機関が貸し出しをするときに金融機関自身にもリストラを今回求めておりますけれども、しかし貸出先についてもこのような経済状況のもとでございますので、ある程度の構造改革というかリストラというものは求めて、そして回収の安全性を図っていくということもまたある面では御理解をいただかなきゃならぬ点だと、このようにぜひ御理解を賜りたいと思います。
  271. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 いや、別に相手先にリストラを言っちゃいけないという意味じゃなくて、入れないために、入れないで済ませるために要するに債権債務の圧縮をより図ろうとしているということを言いたかったんです。  長官、サマーズ副長官に、何か四月以降もこの注入は再編のためならあり得ると言われたというのは事実ですか。どういうことかちょっと。
  272. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 金曜日の日に、国会が終わった後、ちょっと遅くなったんですけれども、サマーズさんが訪ねてくださいました。私、お会いをしてお話を若干させていただいたんですが、その中でサマーズさんも、今伝えられているような金額だとちょっと金額的に大丈夫だろうか、そういうことを考えると、この四月以降についても追加的な投入というようなことを考えるべきではないかというようなお話がありました。  私が申し上げたのは、サマーズさん、あなたはアナリスト等の意見にちょっと影響され過ぎている面があるんじゃないかと。つまり、我が金融機関の不良債権の金額について、アナリストは確かに我々が実際に精査したものよりも多額のことを言っておるわけですね。そうなりますと、この問題を解決するための要資本注入量というのは多くなるわけでして、そういう前提で物をおっしゃっているのかもしれない、それだとしたらそれは改めていただかなきゃならない。ただ、私も次の段階で資本注入が全く必要にならないとは思っていない。それは、我々の金融システムというのは、なお金融健全化法が言うように再編というものをかなりやっていかないと、なかなかこのビッグバンの中で強い競争力を持った金融機関を持つというわけにはいかないだろう。そういうことは宿題として残っているので、もし再編というようなことがあれば、それを我々はこの健全化法のスキームのもとでの資本注入でもって支援していきたい、このように考えております、こういうことを申し上げたということでございます。
  273. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 最後ですが、大蔵大臣。  金融特別委員会のときに、私は、二十五兆というような大きな資金枠を準備する、これはお互い相当腹をくくった話ですね、それぐらい今は異常な事態なんですねと。これを一気に乗り越えていかなきゃいけない。つまり、今や護送船団はやめて新しいいわばルールづくりとあと監視というような、そういう新しい行政のステージに移行しようとするところで、一つ一つ銀行の経営の内容にちょっかい、口を出して公的資金を入れていくというのもある意味では異常なことなんですね。ですけれども、私は、異常な事態だからこれだけの資金枠も準備した、野党も腹をくくってそれに乗ったというより、我々が提案した面もありました、だから思い切ってやってくれ、そういう気持ちがあります。  ですから、強制注入はもう法律がこうなりましたからできませんけれども、私は思い切って貸し渋りや、要するに金融機能が本当に回復するという見通しになるところまでやるべきだ、そういうことを申し上げたいんですが、大臣のお考えを最後にお伺いしたい。
  274. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あのときに浜田委員がそうおっしゃいましたことはよく記憶をいたしております。  それで、柳沢大臣が就任されまして、その前後から金融監督庁も再生委員会もかなり銀行の中へ立ち入って検査をされたし、そして分類についても引き当てについてもかなり明確に指導しておられます。これは、ある意味でこういうことが何度もあっていいことじゃありません。しかし、ここのところだけはそうして新しく本当にきれいにしてスタートさせようと言っていらっしゃるんだと思っていまして、そういう意味ではそれが浜田委員がいつぞやおっしゃったことであったのだし、それが立法者の御意思であったのだろうと思って、私は大変感銘したりまた成果を大変に期待して拝見をしておるところでございます。
  275. 浜田卓二郎

    浜田卓二郎君 終わります。
  276. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で浜田卓二郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  277. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、岩佐恵美君の質疑を行います。岩佐恵美君。
  278. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 私は、ダイオキシンの問題について伺いたいと思います。  まず、今ダイオキシンの問題が大きな社会、政治問題となっています。九五年の容器リサイクル法の質疑で、政府はごみ焼却炉のダイオキシン発生について、特段の支障は生じない、塩ビを燃やしても環境基準は十分満足されると私に答弁していました。このような認識の甘さ、対応のおくれが今日の事態を招いています。日本のダイオキシン対策は欧米より十年おくれていると言われ、早急な対策強化が求められています。  まず、総理の基本認識を伺いたいと思います。
  279. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ダイオキシン対策は、国民一人一人の安全を確保し、私の旨としております安全へのかけ橋を築いていく上で重要と認識いたしております。  このようなことから、政府は既に、廃棄物焼却施設などに係る排出削減対策の実施、環境汚染及び人の健康への影響の実態把握、安全に関する基準の検討など、各般の施策を進めておるところでございます。各国における廃棄物処理焼却施設の規制の状況に比較して、その点では我が国のダイオキシン対策はそう遜色のないものと考えております。  また、このたびダイオキシン対策関係閣僚会議を設置いたしまして、去る二十四日には第一回を開催いたしたところでございます。この場を通じまして、関係省庁の連絡を一層強化して、政府一体となって総合的な対策をさらに強力に推進することによりまして、国民の皆さんの不安の解消に努めてまいりたいと思います。詳しくは環境庁長官から御答弁いたさせます。
  280. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 世界保健機構、WHOは昨年十二月に耐容一日摂取量、TDIの数値を一から四ピコグラムとする見直しを提起しました。なぜ厳しくしたのでしょうか。
  281. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先生も御承知のように、ダイオキシンのTDIの問題につきましては、年次ごとに厳しさを増しておるところであります。それは、人間に与える、また生物生態に与える影響の大きさがそのようにさせたものと思っておるところであります。  そこで、WHOにいたしましても、一から四という数値を発表したのはことしの一月末であったわけであります。昨年五月に発表されましたけれども、科学的知見とか動物実験を十分伴っていないということで、それらの実験を重ねたところであります。  なぜこんな数値の違いがあるのだろうかということをよくよく調査いたしましたところ、やはり動物実験の中においても、ラットであるとか、またアカゲザルであるとか、いろいろ動物が違った上での実験であったわけでありまして、数値にもその違いが出てきたものと思っておるわけであります。  一から四という数値が示されたわけでありまして、それを遵守しながらやっていかなければならないわけでありますけれども、我が国としましても、その基準数値というのがいまだ確定いたしておりません。ですから、できるだけ早く専門的な知見もいただきながら数値を決めていきたい、こう思っておるところであります。
  282. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 母乳中のダイオキシン類、コプラナーPCBの濃度は、母乳百二十グラムに換算して国、東京、埼玉の調査はそれぞれどうなっているでしょうか。
  283. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 平成九年度に厚生科学研究事業で母乳中のダイオキシン類に関する調査研究を行っておりますが、これによりますと、出産後おおむね三十日目の二十五歳から三十四歳の七十二名の方の母乳中のダイオキシン類の濃度をもとに、百二十グラム中に含まれるダイオキシン類とコプラナーPCBを合わせた量を計算いたしますと、平均値で百十・〇ピコグラム、最大値は二百五十七・〇ピコグラム、ちなみに最小値は二十一・七ピコグラムでございました。  また、平成十年度に東京都が行った同様の調査によりますと、百二十名を対象にいたしておりますけれども、母乳百二十グラム中に含まれるダイオキシン類とコプラナーPCBを合わせた量でございまして、平均値は百二十八・四ピコグラムでございますが、最大値は数値自体としては示されておりません。  さらに、平成九年度に埼玉県が実施いたしました同様の調査によりますと、百名を対象にした調査でございますが、母乳百二十グラム中に含まれるダイオキシン類とコプラナーPCBを合わせた量の平均値は百十ピコグラムでございまして、最大値は示されておりません。
  284. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 いろいろ数字が並びましたので、私はわかりやすくするためにグラフにしてまいりました。(図表掲示)  赤ちゃんが体重一キロ当たり母乳を百二十グラム飲むとすると、東京都の平均で体重一キロ当たり百二十八ピコグラムのダイオキシンを取り込むことになります。WHOの水準は四ピコグラムですからその三十二倍に当たります。そして最高値では、今最高値は出ていないというふうに言われましたけれども、最高値がなくて平均値が出るわけはないので、そういう点では最高値はちゃんとあるわけですが、八十四倍にもなります。そして、埼玉はもうちょっと高いという状況になるわけです。  WHOはTDIの新基準値の根拠をどう説明しているのでしょうか。
  285. 岡田康彦

    政府委員(岡田康彦君) お答え申し上げます。  先ほど、もう既に大臣から御答弁申し上げたとおりでありますが、昨年五月に開催されましたWHOの専門家会合では、一九九〇年以降に報告された新たな知見も含めまして、発がんのみにかかわらず、生殖毒性などの幅広い毒性に関する知見をもとに策定されたというふうに承知しております。  具体的に申し上げれば、やや細かくなりますが、動物実験などにおきまして有害な影響を認めた最小の投与量、LOAELと申しておりますが、最小毒性量をもとにしまして、そのときに動物の体内に蓄積されていると考えられる体内負荷量を算出いたしまして、その体内負荷量に到達するような一日の推定摂取量を算出するといった、体内負荷量による計算方法を採用しているようでございます。  実際に、この計算方法によりまして動物実験で有害な影響が認められたときに、対応する人での一日当たりの推定摂取量を体重一キログラム・十四ないし三十七ピコグラムと計算できるということを引っ張ってまいりまして、これを不確実係数一〇で割り一・四ないし三・七、ここから一ないし四というふうに出しておるように聞いております。  ただ、いずれにしましても、現在、厚生省と合同の審議会においてその根拠、計算方法について専門的な詳細な検討をいただいているところでございまして、できる限り速やかな結論を得たいと考えております。
  286. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 つまり、十四から三十七ピコグラムで健康障害が出たということです。平均でも赤ちゃんの摂取量が百二十八ピコグラムというのは、いつ健康障害が出ても不思議ではない、そういうレベルなんです。だから、一刻も放置できない事態なんです。  九七年五月にマイアミで開かれた八カ国環境大臣会議に日本も参加していますけれども、子供に対する配慮をすべきだという宣言が出されました。紹介していただきたいと思います。
  287. 岡田康彦

    政府委員(岡田康彦君) お答え申し上げます。  平成九年五月にマイアミで開催されました八カ国環境大臣会合におきまして、子供の環境、保健に関する八カ国の環境リーダーの宣言書が出されました。  この中で、環境ホルモンの問題につきまして、子供の健康に差し迫った脅威としてとらえ、一つには、国際的な研究目録の取りまとめなどの研究の推進を図ること。二つに、国際機関を通じて調査研究の協力、協調を図ること。三つに、環境汚染のメカニズムが明らかになったものについてのリスク管理や汚染防止を図る。四つに、調査結果についての国民への情報提供等の活動を進めることが合意されておるところでございます。
  288. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 厚生大臣環境庁長官に伺いたいのですが、環境ホルモン物質としてのダイオキシンによる胎児、乳児への影響については特に配慮することが大事だというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  289. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 母乳につきましては、通常一年間程度の短期間の摂取でございます、人によって違いますが。したがって、生涯にわたって摂取する場合の指標でございますTDIをそのまま用いて安全性を検討するというか判断することは、必ずしも適当ではないということが第一にございます。  また、母乳が乳児の発育や感染防止及び栄養補給に与える効果が大きいことなどから、今後とも母乳栄養を推進していくべきということでございまして、これは、現にWHOの専門家会合におきましても、母乳中のダイオキシン濃度を下げるための努力が必要であるということは主張しつつも、母乳推進の立場は変更しないという議論が行われておるところでもございます。  なお、平成九年度に行われました大阪府における保存母乳の調査等もございますけれども、母乳中のダイオキシン類の濃度は、昭和四十八年から平成八年にかけてずっと保存母乳の調査を継続しておりますが、約半分近くに減少しているという事例も示されております。  今後とも、母乳中のダイオキシン濃度を下げていくことは極めて大切なことであると思いますが、そういった意味で総合的にダイオキシン対策の中でひとつ検討をしてまいりたい、こう思っております。
  290. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) ダイオキシンが環境ホルモンの一つであるということは、動物実験や胎児や乳幼児に影響をもたらす可能性があるとする報告から理解されておるところでありますけれども、いまだその環境ホルモンにつきましても確かな定義がございません。  御案内のように、昨年十二月に京都におきまして環境ホルモンの世界会議が開催されたわけであります。そこでも甲論乙駁でございまして、議論の分かれるところとなりました。そこで急遽、来年度予算で、総理にもお願いいたしまして、第二回の世界大会を日本で開いていただきたいということで予算を計上させていただいておるところでありまして、ことしも十二月ごろに神戸市において開催する予定にいたしております。  そんなことで、環境ホルモンとダイオキシンの関係につきましてはこれからも検討課題だと思うわけでありますけれども、世界の知見を日本に集積して、環境ホルモンならば日本に行けばわかる、理解できるというような形で研究を進めてまいりたいものと思っておるところであります。
  291. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 先ほどこの図表を示したのは、世界の、WHOの基準値に比べて、日本の母乳汚染が既に平均値でももう東京では三十二倍になっていますよ。全国だってかなりの高い数値を示しているわけです。そういう立場に立って、この問題を考えていかなければいけないということを申し上げているわけです。  そこで総理、昨年京都で開かれました内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウム、今、環境庁長官から御案内がありましたけれども、そこでもダイオキシン類の胎児、乳児への深刻な影響が一方では報告をされているわけですね。ですから、母乳のダイオキシン汚染、今こんなひどくなっているわけですから、それをなくすためにもTDIの早急な見直し、母乳汚染の実態と原因調査、発生源対策が急がれます。早急に取り組むべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  292. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 厚生大臣環境庁長官から答弁申し上げましたように、本問題はなかなか難しい問題をはらんでおるというふうに認識をいたしております。  ただ、一般的に耐容一日摂取量が、人への環境影響の観点から一生涯にわたって摂取して許容される量であるということは先ほど御答弁もありました。昨年五月のWHO専門家会合における見直しにおきまして、胎児、乳児に対する影響も評価し、一日体重一キログラム当たり一から四ピコグラムという値に合意したものと理解しております。このWHOによる見直しを受けまして、我が国におきましてもダイオキシン対策の基礎となる耐容一日摂取量について、さきに開催いたしましたダイオキシン対策関係閣僚会議において早急に見直すとの申し合わせを行ったところでございます。  ダイオキシンの乳幼児への影響につきましては、これは重要な問題と認識いたしておりまして、現在、鋭意調査研究を進めておるところでございます。
  293. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 ダイオキシンによる母乳汚染は、主に何からきているのでしょうか。
  294. 横田吉男

    政府委員(横田吉男君) 原因についてはつまびらかには解明されておりませんけれども、主として食品等によるものというふうに考えられております。
  295. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 日本人の、食品からのダイオキシン類一日摂取量の食品別実態はどうなっているでしょうか。
  296. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 厚生省におきましては、平成八年度より、通常の食事から取り込みますダイオキシン類の量を把握いたしますために一日摂取量調査というものを実施しているところでございます。  平成九年度の調査結果によりますと、ダイオキシン類の一日当たりの摂取量は、それぞれ体重一キログラム当たり、魚介類で一・五〇六ピコグラム、ダイオキシンのみで申しますと〇・四七二ピコグラム、肉あるいは卵類では〇・四一七ピコグラム、ダイオキシンのみで申しますと〇・二二六ピコグラム、乳・乳製品で〇・一八八ピコグラム、ダイオキシンのみですと〇・一二二ピコグラム、さらに有色野菜で〇・〇九九ピコグラム、ダイオキシンのみでは〇・〇八一ピコグラムでございます。これら以外の食品からの摂取量を含めますと、コプラナーPCBを含めまして二・四一ピコグラム、ダイオキシンのみですと〇・九六ピコグラムというふうになっているところでございます。
  297. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 これも数字が並びましたので、ちょっとグラフでわかりやすくしてみました。(図表掲示)今のは数字でしたけれども、パーセンテージで示しています。  ダイオキシン類一日摂取量の食品別比率ですが、厚生省の調査がブルーで示してあります。魚介類が四九・一、東京都は五一・三%です。その次に多いのが東京都の調査では有色野菜です、三四・一%になっています。全国では八・五%ということでございます。全国平均では肉、卵がかなり高いんですけれども、次に高いわけですが、東京都は野菜類が高いという状況になっています。  そして、ホウレンソウやコマツナのダイオキシンの濃度、これは厚生省調査によっても産地によってかなり違います。(図表掲示)これもちょっとグラフにしてみましたけれども、コマツナがブルーでホウレンソウがグリーンですが、これは産地別の数字ですが、かなり違いがあるわけです。どうしてこう違うのでしょうか。
  298. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 平成九年度の個別食品のダイオキシン汚染実態調査結果によりますと、コマツナのダイオキシン濃度は一グラム当たり〇・〇五八から〇・三四九ピコグラム、ホウレンソウでは〇・〇四四から〇・四三ピコグラムの範囲にございます。  御指摘のようにばらつきがあるわけでございますが、この原因といたしましては、試料の採取場所あるいは採取時期、あるいは栽培の方法等が異なることが考えられるわけでございますけれども、現時点ではサンプル数が少ないために的確な判断をすることは困難であると考えております。
  299. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 いずれにしても、魚介類や緑黄野菜について産地対策をとらないと、母乳のダイオキシン濃度を減らすことができません。  厚生省は、九二年から九五年度の四年間は、魚介類の調査に関し東京湾、大阪湾等の産地を公表しておりました。ところがその後やめてしまいました。食品の汚染実態調査を正確に行って産地別のデータを公表すべきだと思いますが、どうですか。
  300. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 御指摘のように、厚生省におきましては、食品中のダイオキシンの汚染実態調査を平成四年から実施しております。そして、平成九年度におきまして、個別食品の調査につきましては百十九検体の食品中のダイオキシンの濃度を調査してその結果を公表しております。一方、トータルダイエットにつきましては、先ほど申し上げたとおり、十四群について調査を行ってその結果を発表しております。  こうした厚生省が実施しております個別食品のダイオキシンの汚染調査は、地域の汚染状況の把握を目的としたものではなくて、食品ごとのダイオキシンの汚染実態を全国的に把握することを目的としたものでありますことから、産地面については公表はいたしておりません。  なお、産地別の個別食品の調査は一地域における汚染状況を把握するものであることから、一義的には都道府県で実施されるものと考えておりますが、厚生省としては必要に応じて技術的な支援等を行うなどの対応を図ることといたしております。今後とも、こうした役割の分担に応じまして必要に応じ適切な対応をしてまいりたい。  なお、地方で行われている例としては、北海道が道内産の牛乳のダイオキシン検査を平成十年にしておりますし、大阪府では野菜等のダイオキシン検査を実施しております。また、所沢市のダイオキシン問題につきましては、社会的な問題が大きかったこともございまして、これは埼玉県が独自に行う調査と連携を図りつつ国もサポートして調査をしている、こういう状況でございます。
  301. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 今度の所沢の事態も、行政がきちんと調査をして公表してこなかった、そういうことに問題があったわけです。ですから、きちんと都道府県レベルでの汚染データ等の情報開示が必要だと思います。しっかりやってもらいたいと思います。  所沢では、JAがデータを公表できなかったのは安全基準がないからだと言っていました。PCB、水銀、DDT、BHC、ドリン剤、カドミなどについては、食品への規制値を設け、対策をとってきました。  ダイオキシンの個別食品への残留基準を早急に決めるべきだと思いますが、いかがですか。
  302. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) いわゆるカネミ油症なんかのPCBでありますとか水俣病の水銀汚染等につきましては、個別の原因と食品の因果関係が極めて明確で、極めて強度なものでございまして、人体に対する影響が非常に大きなものがございました。したがって、それぞれにつきまして、その基準値といいますか許容量を設けたわけでございます。  一般的に食品につきましては、先ほど来御議論のありますように、我々の通常の食生活で人が取り込むダイオキシンの総量と一日当たりの許容摂取量とを比較することが現在ダイオキシンについては一般的でございますから、個別の食品ごとに基準を設定し対策を実施しなければならない状況であるかどうか、また非常に食品の数が多うございますし、私どもとしては、摂取量のバスケットの中で、先ほど局長が言いましたように、二・四一ピコグラムというようなことで全体の中の摂取量で判断をしている、こういう状況にございます。  以上でございます。
  303. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 私は、やっぱり認識が甘いというふうに思わざるを得ません。オランダ、ドイツ、フランス、イギリスでは、乳製品、牛乳のダイオキシン基準値の設定をしています。食品への基準づくり、汚染の実態調査と情報公開、汚染源の調査、汚染源除去、これによって生産者も消費者も安心できる、そういう手だてをとっていく、これが不可欠だと思います。  総理の決断を求めます。
  304. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) せっかく閣僚の会議をつくりましたので、いろいろの意見を十分検討させていただきたいと思っております。
  305. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 テレビ報道をきっかけに起こった埼玉・所沢産の野菜価格の暴落、これは政府のダイオキシン対策のおくれにあることは明らかです。私も何回か現地に行きましたが、日中堂々と野焼きをする、煙突から黒い煙がもくもく出ている、鼻をつく鋭いにおいがあたりに立ち込めるなど、違法が大手を振ってまかり通っていました。放置してきた行政の責任は重大です。  三重県津地裁上野支部は、建設系廃棄物には塩素系化合物が含まれることがあり、それを八百五十度以下で燃やせばダイオキシンの発生が避けられない、当該焼却炉は構造上八百五十度以上で連続燃焼することができないためダイオキシンが出ることが避けられず、健康に被害を及ぼす可能性があるとして、操業中の焼却炉に停止命令を出しました。  間違いありませんか。
  306. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 政府委員の方から、詳細なことについては答弁させます。
  307. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 御指摘の三重県上野市の焼却施設操業の差しとめ仮処分についてでございますが、業者の測定によりますダイオキシン濃度は二・六ナノグラム・パー・立方メートルでございまして、国の暫定基準であります八十ナノを下回っていたにもかかわらず焼却差しとめが認められたものでございます。  当地裁の決定によりますと、遵守すべき構造基準及び維持管理基準を満たしていることを疎明する証拠が提出されていないというふうに示されておりまして、今申し上げましたように、本件の差しとめが認められたのは、業者の対応が不十分だったことが原因であって、基準の不十分性ということではないというふうに考えております。
  308. 千葉勝美

    最高裁判所長官代理者(千葉勝美君) 委員指摘の仮処分決定でございますが、津地裁の上野支部におきまして、二月二十四日、三重県上野市大野木で操業中の産業廃棄物焼却炉につきまして、その操業停止を命ずる仮処分決定が出された、このことは間違いございません。
  309. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 この決定で非常に重要なのは、今説明がありましたけれども、ダイオキシンの排出について厚生省が決めた炉の構造、維持管理の問題を指摘して焼却停止命令を出したことなんです。  今全国的に、報告義務がある炉でも、測定するときだけごみの内容を変えたり、活性炭を使ったりしてごまかしている例が問題になっています。業者の自己申告任せにするのではなくて、汚染がひどい炉について機敏に調査をし、問題のある炉については操業停止措置を直ちにとるようすべきではありませんか。大臣、いかがですか。
  310. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 今の法制上の建前からいたしますと、年一回調査をすることになっておりますから、この報告をまとめて年度内には報告できるかと存じますが、今までの例で申しますと、府県で実施した調査で三百数十調査をしました。しかし、我々の定めた基準をオーバーしているのが一%、三くらいしかないという報告も受けておりますが、いずれにいたしましても、個別の焼却炉が基準に合致しているかどうかというのは極めて重要なことでございますから、これはもうしょっちゅう検査をして、そしてそれが超過している場合には是正命令を出す。そしてまた、それに従わない場合は罰則もございますから、そういった厳正な処置をとっていかなければならないと思っております。
  311. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 先回りして答弁されたんですが、報告義務のある五千の産廃施設の実態さえ厚生省はつかんでおりません。九万カ所とも言われる報告義務のない小型炉の実態はもちろんつかんでいない実態です。厚生省は、ダイオキシン総排出量の一割を産廃焼却炉が占めている、わずか一割だと言っているけれども、その実態はつかんでいないということですから、これではダイオキシン排出削減の指導、実行などできるはずがありません。  特に問題になっている建設廃材について伺います。建設廃材のどのぐらいが焼却に回っているのでしょうか。
  312. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 平成七年度に実施したデータでございますが、建築系の建設廃棄物の発生量は三千七百六十万トンでございまして、そのうちの四二%が再利用あるいは減量化されておりまして、残りの五八%が先生御指摘の最終処分、それは焼却したりあるいは地中に埋めたりというようなことをしておるわけでございます。  そういうようなことでございまして、建設廃棄物の焼却は減量化及び最終処分の方法として行われていますが、その細かな数値は今把握をいたしておりません。
  313. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 大問題になっている建廃の焼却量がわからない、これは私は大問題だと思うんです。建築廃材が野焼き、不法投棄の主な原因となっていますけれども、どうですか、厚生省。
  314. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 厚生省といたしましては、ダイオキシン類の規制を強化いたしますために、廃棄物処理法に基づきます政省令を改正いたしまして、廃棄物焼却施設の構造あるいは維持管理基準の強化を図りますとともに、設置許可が必要となります焼却施設の規模の要件を引き下げまして、規制対象範囲の拡大を図ったところでございます。また、従来から設置許可を要しない小規模な焼却炉にも廃棄物の処理の基準を適用いたしまして、野焼きや野焼き同然の行為を規制してきたところでございますけれども、簡易で劣悪な焼却施設を用いました野焼き同然の焼却が見られたわけでございまして、その廃棄物の処理の基準を強化あるいは明確化いたしまして、野焼きあるいは野焼き同然の簡易で劣悪な焼却設備を用いて処理することのないよう規制を強化したところでございます。  野焼きの実態につきましてはこれまで調査を行ったことがございませんで、件数等も把握できておりませんので、現在都道府県を通じまして調査を行っているところでございますが、集中的な監視、指導によりまして野焼きが激減した地域もあるというふうに承知をいたしております。
  315. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 不法投棄はどうですか。建廃がどのぐらい占めているんですか。
  316. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) ちょっと今手元に正確な資料を持っておりませんが、不法投棄の約六割から七割程度ではなかったかと思います。
  317. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 九割じゃありませんか。住民、自治体がこういう不法投棄、違法焼却でどんなに苦しめられているかわからないんです。  建設省は建築物の分別解体を推進する法案を準備していましたけれども、法制化に向けての基本的な考え方を説明していただきたいと思います。
  318. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 昨年の参議院の本会議でもそのような御意見がございまして、それに鋭意努力するという答弁をさせていただいたところでございますが、今学識経験者等から成ります解体・リサイクル制度研究会というものを設置いたしておりまして、その報告を昨年の十月にいただいたところでございまして、今その法制度も含めまして鋭意努力をいたしておるわけでございます。  御指摘のように、発注者によります必要経費の分担ということも大きなことでございますし、あるいは施工者によります分別解体の徹底というものも法律的にきちんとしたいと思いますし、そういうようなことで建設工事の発注者また施工者について現在のところは強力に指導をいたしておるわけでございます。ですから、できるだけ早くその法制度の方向に向かって努力をしていきたいと思っております。  それから、建設資材の廃棄物でございますが、いわゆる公共団体が発注をいたしておりますものは非常に率はいいんでございます。ですから、土木系の建築業廃棄物にいたしましても、公共事業主が発注いたしておりますのは六八%現在行っておりますが、個人の家などを解体いたしますそういう個人的なものの廃棄物は四二%にとどまっております。
  319. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 所沢での対応が厳しくなればごみは他の地域に流れていくだけだと業者は言っています。最新鋭の焼却炉をつくり、動かしている産廃処理業者が、建設廃材は何が出てくるかわからないので受け入れを断っている、そう言っています。埋立地もないこのままの状態ではどうにもならないと思います。建設資材を製造しているメーカーや大手建設業界の責任を明確にして、再資源化を義務づける根本的な対策が必要だと思いますが、建設省、通産省、いかがですか。
  320. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 私もそのように思うわけでございまして、流れといたしますれば、建設の廃棄物のリサイクルを推進するためには、第一にその発生抑制に取り組むということがまず考えとして一番重要でございまして、次に、発生したものについては極力再利用や減量を図るべきである。そこで、法制化ということが出てくると思うわけでございますが、このことはその方向に向かって最大の努力をしたいと思っております。  ですから、今後は、発注者それから元請業者、下請業者、それから資材の納入業者、それぞれの方がそういうことに対します、本当にもう今はそういうようなことは常識的な考えだろうと思いますが、そういうような考えを持っていただかなければならない。自然発生的にそうなればいいんですけれども、そういうところがまだそこまで行っていないわけですから、御指摘のように法律でそれをきちっと縛るべきであると私も思います。
  321. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 建築の廃材に関しましては、やはり廃材をリサイクルするという循環型の物の考え方が必要でございます。そのために相当研究開発もやっておりますが、さらにそういう研究開発を進めるとともに、リサイクルというものが社会の常識になる、そういう社会をつくらなければならない、そのように思っております。
  322. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 ドイツでは、メーカー、販売業者へのごみ回収、再利用、再商品化を厳しく義務づけています。その結果、家庭ごみは九〇年から九三年の三年間で七百万トンも減りました。日本では家庭系ごみ総量はふえる一方です。家庭ごみの焼却率も毎年上がって七七%に達しています。ドイツでは二〇%台です。  日本では、ごみをもとで減らさなくても、ごみになるものをつくって燃やせばいい、そういう考え方なんでしょうか。ぜひ通産大臣、厚生大臣に伺いたいと思います。
  323. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先ほど申し上げましたように、循環型経済社会をつくっていくためには、まず第一に廃棄物の発生抑制、次は使用済み製品の再利用、また回収されたもののリサイクル、適正処理といったそれぞれの取り組みが重要だと認識をしております。  まず、廃棄物の発生抑制に関しましては、製造過程から生ずる廃棄物を少なくする、製品の使用後に廃棄物となる部分を極力少なくするなどを目的とした製品アセスメントの実施などの事業者による取り組みが進められているところでございます。  また、リサイクルに関しましては、先生御存じだと思いますが、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法に基づき事業者がリサイクル義務を負っているほか、自動車などの分野についても事業者による自主的なリサイクルの取り組みが積極的に行われているところでございます。  今後とも、より一層廃棄物の発生抑制またリサイクルの推進に努めることにより、循環型経済社会の実現に努めてまいります。
  324. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) これからの産業社会でリサイクル社会をつくるというのは極めて重要でございまして、環境基本計画の中においても第一順位にこの循環型社会の構築が言われております。私どもも、排出を抑制していく、そしてリサイクルしていくという産業構造にしていかなければならないと思います。  なお、委員の御指摘のように、焼却が非常に多いという点でございますが、我が国の場合は国土も狭く、それからそれを埋設いたしますといろいろな臭気その他等の問題がありまして、なかなかそうはいかないというので七四、五%焼いております。  アメリカ等では逆にこれが二十数%というようなことで、全く構造が違っておりますけれども、これはいろいろな制約条件がございますから仕方ない点もあろうかと存じますが、なるべくリサイクル社会の本旨に沿ってやっていくべきものだと思っています。
  325. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 厚生大臣、最新の焼却率は七七%に達しています。  厚生省に伺いたいんですが、厚生省は百トン以上の大型焼却炉を全国的に建設してごみをどんどんさらに燃やそうとしています。厚生省の指導によって大型焼却炉を建設した自治体や事務組合の中には、ごみが足りなくて困っている、そういう笑えない話もあります。  これでは、ごみの減量、リサイクルに反すると思います。自治体のごみ減量、リサイクル努力に水をかける百トン以上の大型炉の押しつけ、これは改めるべきじゃありませんか。
  326. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) 一日処理量が百トン以上に補助金を出しておりますが、この趣旨は、大量に大型で処理しますとダイオキシンの発生量は少なくすることができる、つまり非常に構造上、高温でこれを除去することが可能であるということのほかに、そのエネルギーを使って発電等もできます。そういうことで、公益化あるいは大型化について私どもは府県に要請をいたしております。  一方、小型のものでも、今言われましたように、過疎地あるいは山村等ではなかなか大型というわけにはまいりませんから、そういった面の技術改良等もいたします。そして同時に、今補助金は百トン以上でございますが、地方財政計画によって処理しているという実態がございます。  なお、私どもは大型化、小型化の問題を含めて、全体としてどうあるべきかということを検討してまいりたいと思いますが、ただ、アメリカあるいはドイツ等におきますと、極めて大型のものでございまして、先ほど二十数%の焼却率と申し上げましたが、日本の数は圧倒的に多いんです、焼却炉の数が。アメリカとかドイツは日本の十分の一以下というような状況であることもお伺いしておりますので、この点はこれからのごみの流通化、例えばRDFを改良するとか、いろいろそういうことによって公益化をさらに進めることが可能ではないかなというように思っております。
  327. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 大型焼却炉でなくても、百トン以下の焼却炉でも十分ダイオキシン対策をやっている、そういうところはたくさんあります。私は現に見てまいりました。  それから、国土が狭いから焼却をすると言われましたけれども、焼却すれば焼却灰が生じるんです。今これの処理も大変なんです。灰の捨て場だってなくなってきているという状況にあります。やっぱり焼却優先ではなくて、生産段階からごみとなるものを減らしていく、先ほど皆さん言われているそのことをまず実行すべきだと思うんです。  先ほどの容器包装リサイクル法施行後、ペットボトルのごみ量、自治体での回収焼却量がかえって急増しています。ペットボトルの生産量、再商品化量の推移を示していただきたいと思います。
  328. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) ペットボトルは、平成九年四月に容器包装リサイクル法の再商品化の対象となっております。通産省としては、廃棄されたボトルの回収、再資源化を促進しております。平成九年度の回収量は二万一千三百六十一トン、回収率は一〇%でありますが、十年度の回収量は四万四千六百トン、回収率は約一八%程度まで向上する見込みでございます。  また、ペットボトル再資源化の実証等の技術開発も推進しており、今後とも法律の実効ある運用や技術開発等により、ペットボトルの回収、再資源化を推進してまいる所存でございます。
  329. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 私の手元には九七年度の生産量しか来ていないのですが、統計をとり始めた九〇年度の二・二倍に及んでいます。そして、九六年度に比べて四万六千トン、二七%も生産量がふえています。再商品化量というのは二万一千トン、これは実際に再商品化された量です。ですから、はるかに生産量の増加の方が多いんです。これはリサイクルするということで業界がミニペットボトルの自主規制をやめて大量生産を開始したからなんです。今後、自動販売機にミニペットボトルを入れるということですから、もっとペットごみがふえるだろうと予想されます。これでは何のためのリサイクル法なのかわかりません。  ペット容器を初め、容器包装メーカーへの指導はどうなっているのでしょうか、通産省に伺います。
  330. 河野博文

    政府委員(河野博文君) 容器包装メーカーに対しましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、回収そして再資源化に最大限協力するようにということで指導しているところでございます。  ちなみに、ミニボトル等につきましては、平成八年に小型ボトルの自主規制が解除され、また平成九年には自動販売機での販売の自粛が解除されているという経緯がございます。
  331. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 ドイツではペット容器も含めて飲料容器の七二%が繰り返し使用するリターナブル容器になっています。そして、企業に対してごみになりにくい製品をつくるあるいは利用を義務づけるいわゆるごみ発生回避の資源循環型の法律を整備した結果、プラスチック包装材の消費量が九二年から九七年の六年間で百五十万トンから八十万トンへと激減しました。日本では飲料容器の一〇%程度しか回収されない。九〇%以上が使い捨てでごみになっています。まさに日本は使い捨て天国です。  二〇〇〇年からペット以外のプラスチック、紙容器がリサイクル法の対象になりますが、ペット容器の二の舞にしないためにも、デポジット制度導入など、製造・販売事業者の責任をきちんと果たさせるようにすべきだと思いますが、通産大臣、厚生大臣、いかがですか。
  332. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 日ごろ生活をしておりますと、やはり包装とか容器とかというのが余りにも奢侈にわたっていて大変むだだという感じがあります。これは過剰包装あるいは過剰な容器性能というのは不必要なことでございまして、私どもとしてはそういう面からまず押さえていかなければならないと思いますし、また回収については、自主的に開発する、先生の言われたデポジットというのも一つ方法でしょう。いろいろな方法で使われた資源、こういうものが環境に負荷を与えることなく、また資源的な制約を克服するためにも、やはり回収、リサイクルされ再利用されるという社会構造をつくっていく必要性は、私は全く先生と同じ考えでございます。
  333. 宮下創平

    国務大臣宮下創平君) ドイツにおける取り組みにつきましては、大変私ども注目をしております。これは少し勉強をして、本当に取り組むべきものは取り組んでいかなければならないと思います。  なお、デポジットの問題は確かに魅力的なことでございまして、これからやっぱりメーカーも消費者もコスト意識を持って環境に臨むということがかなり重要なことだと思っておりますから、これはこれから検討をしていかなければならない課題だと思います。
  334. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 現在の容器リサイクル法では、生産量をふやし、ごみをふやしても、その回収負担は自治体にかぶさるだけという構造になっています。ですから、自治体の分別回収が進まなければ、ペット容器メーカーやペット利用業者は経済的痛みを感じない仕組みになっているわけです。これではごみの減量化は進まないというふうに思います。  このペットボトルに関して、一体どういうふうに具体的にされていくんですか。容器包装リサイクル法ができて、そしてごみが減るかと思ったら減らない、かえってふえてしまっているという実態ですから、将来的にデポジットについて検討するとかいろいろ言われますけれども、今現にある法律でもこういう問題が起こっているわけですから、一体どういうふうにされるおつもりなのか伺いたいと思います。
  335. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 先ほど通産大臣の方から数字が述べられましたが、現在のペット容器のリサイクルでございますけれども、いわゆるリサイクルをしてどういう製品をつくるかという製品開発の面があることを御理解を賜りたいと思います。例えば、最近では、私が着ているのは違いますけれども、こういうスーツ類でございますとか多様な製品がつくれるようになりましたが、今度は受け入れる側の工場サイドのキャパシティーもございます。私どもといたしましては、関係省庁ともよく連絡をとりながら、そういう受け入れキャパシティーの増加ということで、回収されたペットボトルがよりうまくリサイクルされる道を探していきたいと考えているところでございます。
  336. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 受け入れるキャパシティーもない、受け入れる能力もない、そして自治体が一番コストがかかる運搬費、これを負担しなければならないわけですから、こんなものでリサイクルが進むわけがないんです。私は、やっぱり通産省、物をつくる、そういうところの責任って重いというふうに思うんです。  具体的に、こういうペットボトルあるいは二〇〇〇年からのプラスチック容器の問題もあるわけですから、もっと踏み込んだ大臣の考えを伺いたいというふうに思うんです。
  337. 太田信一郎

    政府委員太田信一郎君) お答えを申し上げます。  容器包装リサイクル法は、家庭が分別する、市町村がそれを収集する、事業者の責任でリサイクルを果たしていくと、それぞれの役割分担のもとで成り立っている法律でございます。需要がなかなか伸びないペットボトルを再生したペレットの需要については、私どもも技術開発あるいは需要開拓等を通じて努力していきたいと考えております。  ちなみに、平成九年から十年、市町村の回収量は倍になっております。それに対して私どもの予定の方も倍近いリサイクルを進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  338. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 幾ら議論しても、これはもとで減らさない限りどうにもならないということなんです。リサイクルが進んだって生産量がふえれば、ごみはふえるだけなんですから。  最後に総理に伺いたいんですが、焼却炉でどんどん燃やすやり方、これはダイオキシンなどの有害ガスを出すおそれがある上、炭酸ガスを大量に排出し地球温暖化を促進します。ヨーロッパではOECD、経済協力開発機構の汚染者原則に関する勧告に基づいた対策が進んでいます。例えば、ドイツでは容器、包装だけでなく、自動車もメーカー責任による処理が昨年法制化され、情報機器についても自主規制に加えて法的整備の合意がされたということです。ごみ、ダイオキシン問題を解決するためにも、そして資源を大切にするためにも、日本も使い捨てからヨーロッパのように資源循環型に本気になって切りかえる必要があると思います。  総理のごみ問題の根本的解決に向けての決意を伺いたいと思います。
  339. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先ほど来の通産大臣それから厚生大臣の答弁にございましたように、日本といたしましても今後このままの姿でよろしいということはあり得ないと思っております。特に、ドイツの問題をお取り上げになっておられましたが、廃棄物を資源として利用する法制が、委員も御指摘ありましたが、ドイツにおいては循環経済の促進及び廃棄物の環境に適合した処理に係る法律というのがかなり前に制定をされまして、国民的な取り組みが進んでおると聞いております。  したがいまして、我が国でも、先般の施政方針演説でも私は申し述べましたが、大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済社会からの転換を図り、循環を基調とする経済社会システムや国民的な取り組みを実現することが必要であると考えております。  たまたまダイオキシン対策関係閣僚会議ではございますが、やはりもとをただせば、焼却というような形でこれを処理しておる日本型の問題と、先ほど来の、ドイツがそうした形でないことをいたしておること等がございまして、いつか私も、NHKのテレビだったかと思いますが、ドイツの実態を拝見いたしておりまして、駅頭などの飲み物を見ましても、コップを自分で持っていきますとたしか料金が安いというような、そこまで徹底してやっておるような姿を見ておりますので、こうしたことも参考になるのではないかとこう考えております。
  340. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 次に、三番瀬の問題について伺いたいと思います。  環境庁長官は三番瀬の視察をされましたが、なぜ三番瀬に行かれたのか、どういう印象だったのか、伺いたいと思います。
  341. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) かねてより三番瀬の干潟の大切さということが唱えられておったわけであります。平成四年に環境庁としても港湾審議会の方に意見を申し出たところでございまして、その後の経過を踏まえながら船橋市側からと市川市側から三番瀬を視察させていただきました。大変生物や人間に優しい環境を露呈しておりまして、東京湾にもこんなにすばらしいところがあるのかということで再認識をさせられたところであります。  環境行政の中では、この景観やそしてまたすばらしい干潟を守っていくということは大切なことであるわけでありまして、その面については十分環境行政の意を唱えてまいりたいと思っておるところであります。やはり長年いろんな関係で今日を迎えておるわけでありますから、千葉県にかかわる行政面ともよくよく相談をしながら、十分な意思疎通を図りながら、この環境行政の中の景観保持やまた生活環境を維持していくことに努めたいと思っておるところであります。
  342. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 東京湾に残された希少な自然である三番瀬は、自然環境上どんな価値があるのでしょうか。
  343. 岡田康彦

    政府委員(岡田康彦君) お答えします。  東京湾にはかつてたくさんの浅瀬、干潟が存在しましたが、大部分が埋め立てられまして、三番瀬は東京湾の奥部に残された数少ない浅瀬、干潟となっております。  三番瀬の自然環境上の価値といたしましては、一つにはカモ類やシギ、チドリ類の渡来地として我が国を代表する場所であること、二つにはイシガレイやマハゼなどの多様な魚類の産卵、生育の場であること、三つには生態系の働きによる大きな水質浄化能力を有することなどが挙げられると思います。また、潮干狩りやバードウオッチングなどレクリエーションの場としても価値の大きいものと考えています。
  344. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 三番瀬は国際的に重要な湿地としてのラムサール条約の基準に該当するのでしょうか。
  345. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 三番瀬への鳥類の飛来数から見ますと国際級の湿地でございますけれども、我が国におきましてラムサール条約の登録湿地となりますためには自然環境の保全がきちんとされている仕組みが必要でございまして、例えば国設鳥獣保護区等の設定が前提でございます。したがいまして、現時点ではラムサール条約の登録湿地としての条件を満たしておらないと考えております。
  346. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 局長、答弁違いますよ。ラムサール条約の基準に該当するかというのは、いわゆる国際的に重要な湿地としてどうかということを伺っただけで、何もそれが国設鳥類何とかに指定されていないからとかというところまで聞いているわけではありませんので、そういう余分なことは言わないでください。  環境庁長官に最後に伺いたいと思うんですが、環境影響評価法のキーパーソンとして三番瀬の保全に積極的な役割を果たすことが期待をされていると思います。しっかり頑張ってほしいと思いますが、再度御決意を伺いたいと思います。
  347. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先ほども答弁で申し上げましたように、三番瀬というのは東京湾に残されたかけがえのない生物や人間の生息また住環境であるわけでありまして、これをぜひ大切にしていきたいと思っておるところであります。港湾審議会の答申、環境庁の答申をも踏まえながら、千葉県との連絡も密にして、そして立派な干潟をできれば保存させていただきたい、こう思っておるわけでありまして、各先生方の御協力もより一段といただきたいと思っておる次第であります。
  348. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 終わります。
  349. 橋本敦

    橋本敦君 関連。
  350. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。橋本敦君。
  351. 橋本敦

    橋本敦君 私は、中村法務大臣の発言とその責任の追及問題で質問いたしますが、その前提として総理に伺いたいことがあります。  私の手元に自主憲法期成議員同盟の名簿がありますが、この議員同盟の会員に小渕総理、あなたも入っていらっしゃる、中村法務大臣も入っていらっしゃる、これは間違いありませんか。
  352. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 自由民主党は、結党のときにこの自主憲法制定ということをたしかうたっておったと思います。  その議員連盟というのは、かなり前だと思いますが、できておりまして、あるいは名をとどめておるということがあろうかと思います。最近はほとんどその議員連盟が会合を開いたということを聞いておりませんが、したがって私自身も出席をいたしておりません。
  353. 橋本敦

    橋本敦君 入っていらっしゃることはお認めになりました。岸元首相が初代会長を務めたこの議員同盟は、いわゆる自主憲法制定あるいは憲法九条の改正などをスローガンに掲げて、自主憲法制定国民会議とともに憲法改正運動を進めてきた団体であることは公知の事実であります。  ここに、同盟の規約とそれから趣意書がありますが、どう書いてあるかといいますと、この憲法の基本原則は堅持されねばならないと一応はした上で、こう言っています。しかし日本国憲法は、占領政治のもとにおいて、連合国総司令官の指令に基づいてつくられたものであって、日本国民の自由意志によるものとは言われない、我々はこの際、真剣に自主憲法の実現に挺身しなければならぬ、このための努力こそ政治に携わる者の最大の責務であると信ずる。趣意書にこう言っている。明らかにそうだというように自民党は憲法改正を志向していることは明白です。  そして、この自主憲法期成議員同盟の規約には、第三条、目的として、「本同盟は、わが国内外の情勢に即応して日本国憲法を再検討し、自主憲法を推進することを目的とする。」、はっきりこう書いているわけです。まさに改憲を志向する団体であることは言うまでもない。  総理に伺いますが、総理は中村議員がこの会員としてこういった趣旨、綱領を認め、その意味ではまさに憲法改正を志向する自民党の議員としての政治的見解をお持ちであるということをもちろん承知の上で法務大臣に任命されたわけですね。
  354. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 中村法務大臣がそこに所属しておるということについては、そのことをただした上でということではありません。
  355. 橋本敦

    橋本敦君 ただしたことではないが、会員であることは知らなかったという御趣旨ですか。名簿にはっきり名前が出ていますよ。知らなかったということですか。
  356. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先生、それはいつの名簿か存じませんけれども、先ほど私が冒頭申し上げましたような経緯で、私自身も名をとどめておると思っておりますが、中村法務大臣について逐一そのことについてただした上で入閣をお願いしたわけではありません。
  357. 橋本敦

    橋本敦君 任命自体から、本当に憲法を守る、そういう立場で重大な職責を負う法務大臣を任命なさったということでないということがはっきりしました。ある意味では無責任とさえ私は言いたくなりますよ。  中村法務大臣の法務省幹部に対する新年賀詞の会での発言は、言うまでもなくこれは大臣としての公的発言です。ここに法務省から提出してもらった新年賀詞の会での法務大臣の発言があります。そこでどう言っているか。法務大臣は、「その中で日本人は連合軍からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法を作られて、それが改正できないという中でもがいておるという、大変な時代に我々は生きていると思う。」、こう言っています。一体これはどういう意味でしょうか。  まず第一に、日本国憲法が連合軍からいただいたものだ、こういう認識は総理も同じですか。
  358. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 国会の議を経て憲法は制定されておるものと理解しております。
  359. 橋本敦

    橋本敦君 まさにそのとおりです。そして、多くの日本国民はこの新しい憲法をまさに守るという立場を貫いて今日までやってきた。国会の議を経て制定されたことも歴史的事実であります。歴史的認識も誤っているし、憲法を擁護するというそういう観点からこんな発言ができるわけはないわけでありますから、まず第一にこの点において重大な問題であります。  さらに、それに続いて中村法務大臣は、日本人はこうして連合国からいただいた、国の交戦権は認めない、軍隊も持てない、こういう憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいているという大変な時代に生きているというんです。どういう認識でしょうか。改正できないといってもがいている。  総理、一体もがいているのはだれですか。この発言からどう読み取りますか。
  360. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 私自身がすべて他の方の御発言をそれぞれ私なりに解釈するということは避けるべきだろうというふうに思っております。  委員がまず御指摘されておる憲法の問題につきましては、確かに憲法九十九条で、国務大臣その他の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う旨を定めておりますが、日本国憲法が最高法規であることにかんがみ、国務大臣その他の公務員は憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施努力しなければならないという趣旨を定めたものであります。一方、憲法は第九十六条においてその改正手続について定めているところであり、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することは憲法の尊重擁護義務に違反するものではない、このように考えております。
  361. 橋本敦

    橋本敦君 私はそういうことを言っているのではありませんよ。まさに法務大臣がこの発言で示唆した問題は、憲法九条、戦争放棄という我が憲法の平和原則、恒久平和主義という根本的な原則に対してこれを否定する趣旨の発言だということですよ。だから、憲法改正が今後国民意思でどうなるかという問題じゃなくて、現にある憲法を尊重し擁護するというこの責任が閣僚にある、これが憲法九十九条の大問題じゃないですか。そういう大問題に照らして、こんな発言がこのまま許されてよいのかということですよ。  多くの改憲論者は、いいですか、自主憲法期成議員同盟、国民会議も含めて、まさにこの憲法九条を敵視して、戦争放棄条項の憲法九条を変えよう、こういうことをスローガンにやってきたじゃありませんか。そういうことの中で、その憲法改正ができなくてもがいているという法務大臣の言い方は、まさに憲法を守るんじゃなくて、そういう改正論がスムーズに進まない、もがかなきゃならない、そういう時代に我々は生きていると。こういう意味において、まさに憲法を守るどころか、こういう改正論を志向する発言と見られても仕方がない、そういうものだというように総理は認識されませんか。  あなたは、法務大臣にこの発言があって、呼ばれてただされたんでしょう。問題があると思われたんでしょう。問題があるから呼ばれたんでしょう。問題があることの一つに、まさに憲法九条を真剣に擁護し尊重し守るという、そのことに大臣としての職責から見て問題がある、こう考えたから呼ばれたんでしょう。違いますか。
  362. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) たしか五日にそういう御発言があったということでありますが、その後、報道を通じまして、そうした発言の有無等についていろいろとお聞きをいたしましたので、そうした意味で私が法務大臣の真意を伺ったと、こういうことでございます。
  363. 橋本敦

    橋本敦君 法務大臣の発言に何も問題がないなら呼ばなくていいじゃないですか。新聞がありいろいろ検討されて、これはたださなければならぬと、こう思われたから呼ばれたはずです。何をどうただされようとしたのですか。
  364. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 憲法にかかわることについて発言をされたというようなことをお聞きいたしましたので、この問題についてはこの内閣として憲法改正する意思はないということを申し上げておるのでございますので、問題を引き起こしてはいけないということで、私からこの点についてその間の事情について聴取したと、こういうことでございます。
  365. 橋本敦

    橋本敦君 おっしゃったことから、事実上この中村法務大臣発言が憲法改正しないというあなたの内閣の方針に反するおそれがあるかもしれないという、そういう危惧を持たれたということはわかりましたよ。そのとおりなんです。そういう立場であなたは呼ばれたわけですから、もう明白です。  今日、総理、多くの国民は我が憲法の恒久平和主義、戦争放棄、この問題について多数の国民はこれを支持している、そういう状況であるという御認識はありますか。
  366. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) あらゆる世論調査その他の結果を見てもそのような国民の判断があると思っております。
  367. 橋本敦

    橋本敦君 そのとおりですね。例えば、ここに九七年四月二十六日、朝日新聞の世論調査があります。そこではっきりとこう出ています。憲法で戦争放棄を決めたことを八二%の人が評価している、八二%ですよ。九条の理念がアジア太平洋地域の平和に役立ってきた、これは七二%の回答者が支持している。これからの世界の平和に役立つ、こう見る人が七三%と、ともに高い比率を示した。こうした評価が、九条変更を認めない、こういう見方に結びついていると見られ、憲法九条を変える方がよいはわずか二〇%と、こういう結果が出ています。  まさに、圧倒的多数の国民がこの恒久平和、憲法九条を支持する、こういう状態であるときに中村法務大臣のこの発言は、国民のこのことが頭にあるんでしょうか。全く頭から抜けてしまっているじゃありませんか。改憲論者の意見しかない。これが果たして憲法を守るそういう立場の大臣の発言していいことでしょうか。  法制局長官にも一言伺いたいんです。  この「註解日本国憲法」、ございますが、この憲法九十九条の国務大臣の憲法尊重擁護義務、これについてどう書いてあるかということであります。それにははっきりとこう書いてあります。憲法を尊重するとは、憲法を遵守して、これに違反せず、さらにその目的を実現することに力を尽くすことをいう、当然ですね、憲法尊重。そしてその次に、擁護するとは、憲法を侵す行為を防圧するという受動的意味である、憲法を侵す行為を防ぐという意味である。憲法の運用の任に直接携わる者は、みずから憲法に照らして誤たない行動をするのみでなく、憲法を守る、当然のことですが、それだけでなくて、憲法を尊重しない行動、これと闘争する義務を負わしめられているのである。憲法九十九条、憲法尊重擁護義務というのはそういう厳しいものだと、この「註解日本国憲法」ははっきりと書いていますが、法制局長官、この解釈は間違いありませんね。  結論だけで結構です。間違いがあるかないか。
  368. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) いや、結論だけ申し上げますと誤解を催すと思いますので、若干付加して申し上げたいと思いますが、「註解日本国憲法」にそのような解説があったように思います。ただ、手元にその資料がございませんので、一字一句同じであるかどうかについては確言を申し上げかねます。  そして、この憲法九十九条に関しまして従来から政府の立場で申し上げております意味、内容につきましては、先ほど総理からも答弁がありましたように、この条項と申しますのは、日本国憲法が最高法規であることにかんがみ、公務員は憲法の規定を遵守するとともにその完全な実施努力しなければならないという趣旨を定めたものであると、繰り返しそのように答弁してきているところでございます。
  369. 橋本敦

    橋本敦君 これは憲法尊重義務について今答弁しただけじゃないですか。擁護するという義務について、この「註解日本国憲法」に、私が言ったように、憲法を変えようという動きに対してもこれを許さないためにしっかりやらなくちゃならぬということが憲法上の義務だと書いているんですよ。このことをあなたは抜かして答弁しているのはけしからぬじゃないですか。  そういう意味で、中村法務大臣の発言は改憲問題について、それがいけないどころか、改憲したくてしようがない、もがいている、そんなことを言って激励しているんですから、まさに戦争放棄、戦力不保持を明記した憲法九条を敵視する、そういった発言として許されないことは明白ですよ。  総理大臣、聞いてください。中村法務大臣の発言には真剣に憲法を守る決意など一かけらもないと私は言わなきゃならぬと思う。  ここに憲法制定当時の、昭和二十一年八月二十七日の貴族院本会議の議事録を私は抜抄してまいりました。聞いてください。  制定当時の貴族院本会議の議事録によると、南原繁議員はこう言っています。そもそも日本が将来国際社会に恥ずるなき独立国家となるためには、何よりも正義と自由が人類の至宝であることを改めて認識し、外は世界に向かってもはや戦端を開かず、人類の間に実現せらるべき高貴なる理想を自覚した平和的国家の建設であります、こう言って質問をして、それに対して幣原喜重郎国務大臣は、今日の時勢に国際関係を律する一つの原則として、ある範囲内の武力制裁を合理化、合法化せんとするかごときは過去における幾多の失敗を繰り返すゆえんでありまして、もはや我が国の学ぶところではありません、文明と戦争とは両立しない、文明が速やかに戦争を全滅しなければ戦争がまず文明を全滅することになるでしょうと。吉田茂外務大臣は、御質問の趣旨はまことにもっともであります、世界に向かって平和に寄与せんと欲する、そういう抱負に基づいてこの憲法を制定したと、こう言っているんですよ。  まさに中村法務大臣の発言と天と地の違い。まさに重大だ。罷免に値することは明白ですよ。最後に総理、答えてください。  これで質問を終わります。
  370. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) そのようには考えておりません。
  371. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で岩佐恵美君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三分散会