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1999-02-25 第145回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月二十五日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員の異動  二月二十四日     辞任         補欠選任      世耕 弘成君     斉藤 滋宣君      加藤 修一君     益田 洋介君      渡辺 孝男君     福本 潤一君      大沢 辰美君     小泉 親司君  二月二十五日     辞任         補欠選任      江田 五月君     小宮山洋子君      櫻井  充君     広中和歌子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 狩野  安君                 金田 勝年君                 岸  宏一君                 斉藤 滋宣君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 松谷蒼一郎君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 若林 正俊君                 海野  徹君                 郡司  彰君                 小宮山洋子君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 円 より子君                 柳田  稔君                 浜田卓二郎君                 福本 潤一君                 益田 洋介君                 小池  晃君                 小泉 親司君                 須藤美也子君                日下部禧代子君                 照屋 寛徳君                 入澤  肇君                 月原 茂皓君                 奥村 展三君                 菅川 健二君                 佐藤 道夫君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     中村正三郎君        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣        労働大臣臨時代        理        与謝野 馨君        運輸大臣        国務大臣        (北海道開発庁        長官)      川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君        建設大臣        国務大臣        (国土庁長官)  関谷 勝嗣君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官)        (沖縄開発庁長        官)       野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣官房内閣安        全保障危機管        理室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障・        危機管理室長   伊藤 康成君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        内閣総理大臣官        房審議官     佐藤 正紀君        公正取引委員会        委員長      根來 泰周君        公正取引委員会        事務総局審査局        長        平林 英勝君        警察庁警備局長  金重 凱之君        金融監督庁長官  日野 正晴君        総務庁人事局長  中川 良一君        防衛庁長官官房        長        守屋 武昌君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  柳澤 協二君        防衛庁装備局長  及川 耕造君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        科学技術庁原子        力局長      青江  茂君        環境庁長官官房        長        太田 義武君        環境庁企画調整        局長       岡田 康彦君        環境庁大気保全        局長       廣瀬  省君        法務大臣官房長  但木 敬一君        法務省民事局長  細川  清君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        外務大臣官房長  浦部 和好君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     上田 秀明君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        外務省条約局長  東郷 和彦君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省体育局長  遠藤 昭雄君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省医薬安全        局長       中西 明典君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産技術会        議事務局長    三輪睿太郎君        林野庁長官    山本  徹君        水産庁長官    中須 勇雄君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君        海上保安庁長官  楠木 行雄君        郵政大臣官房長  高田 昭義君        郵政省郵務局長  濱田 弘二君        郵政省貯金局長  松井  浩君        郵政省簡易保険        局長       足立盛二郎君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設省河川局長  青山 俊樹君        建設省道路局長  井上 啓一君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君    参考人        日本銀行総裁  藤原 作弥君        日本開発銀行総        裁        小粥 正巳君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十一年度総予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁藤原作弥君及び日本開発銀行総裁小粥正巳君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、総括質疑を行います。円より子君。
  5. 円より子

    円より子君 おはようございます。民主党の円より子でございます。  本日は、最近の金融政策及び国債管理についてお伺いしたいと思っております。  まず、皆さんのお手元に今配らせていただいておりますこの図を見ていただきたいのでございますが、これは国債長期金利を九八年の十月一日からずっと今までのところをたどったものでございます。(図表掲示皆様のお手元にはこういうふうにオレンジ色のあれはかいていないんですけれども、この真ん中あたりにちょうど十二月十八日と記したところがあると思うんですが、そのときの金利が一・三一三なんですね。それで、そこから二つ目のぽつ、上に上がりますと、それが十二月二十四日で金利が一・八九三となっております。この間の上昇が〇・五八なんです。大変な上昇です。この金利急上昇景気回復の悪材料になるということはもうもちろん皆様御案内のとおりだと思います。  この時点で、この十二月二十二日、真ん中のぽつのところですが、ここで宮澤大蔵大臣は、資金運用部国債買い入れを停止するとの見方がありますがという記者からの問いに答えて、「そういうことじゃないですか。大したことじゃない。大変なニュースかといえば、そうではない」とお答えになっていらっしゃいます。それから同日、速水日銀総裁も、「国債発行が増え金利が上がるのはわかるが、発行するということはそれだけ財政支出があるということ。あまり心配はいらない」と、このようにおっしゃっているんですね。  さて、次にまたこちらなんですけれども、この二つ目急上昇部分がございます。右端の方なんですが、ここで、これが一月二十六日と書いてあるところなんですが、このぽつのところの金利が一・七二六です。そこから六つ目のぽつが二月三日で、金利は二・三三四、ここの上昇が〇・六一だったのです。ということは、最初皆様のお手元急上昇部分、一の部分、それから二の急上昇部分、こことの差というのがほとんどないわけです、〇・五八と〇・六一ですから。  それで、これは明白なんですが、ところがこの二番目の急上昇の後で大蔵大臣ツイストオペを示唆なさっています。これは途中のこの二月五日にツイストオペを示唆なさっているわけですね。その後で日銀短期金利を限りなくゼロに誘導する形で金融緩和を行っております。そして、大蔵省資金運用部は、最初金利上昇後は買いオペを中止いたしましたが、即座にここで再開をするという形になっているわけです。  今こういう図を皆様にお見せいたしましたのは、同じような上げ幅で急上昇しているこの期間、大変短期なんですが、この短期間の間になぜ政策変更が急にあったのか。余りに短期間政策変更理由といいますか、これをぜひ宮澤大蔵大臣にお伺いしたいと思うのですが、よろしくお願いします。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この表を拝見してまず概括申し上げられることは、一九九八年十月一日が左の端でございますから、それと十一月までの間は金利が一%より下にいるわけでございます。そして一番上の、今度は問題の一番高い方でございますね、それは二より上にいるということがこの表で示されておりまして、昨年の十月から今までの間を見ますと、私は、一%以下の金利というのはこれはいかにも異常であると思いますし、まあ大観して一%から二%の間ぐらいが恐らく平均しますとやや普通の、普通と申しますか、今の我が国としてここのところの金利である、二より上は少しいろんなことがあって高くなっているなということが大体見られると思います。  それで、今感じますことは、一・五%より金利が下というのもどうも最近は見えないことでございますし、また二より大変高いというのも最近は見えないことであって、一・五と二の間に今入っている。ただ、これは今入っているということであって、それでも国際的な金利水準からいえば決して高いとは申せません。ただ、このことは片方民間資金需要がないということを意味しておるかもしれないと思います。昨日ですか、日本銀行総裁が、今落ち着いているが、しかし神経質な動きであるということを言っておられまして、それは私はそのとおりであると思っております。  さて、そこでお尋ねそのものになりますが、本来、金利がやや異常に低かったところへ国債大量発行があるということがございまして、ここにも書いてございますが、昨年の十二月二十二日と書いてございますね、そのときに、十二月の仮に十八日の金利は一・二九五でございますが、三十日に二・〇一〇と、ここで大変飛び上がっていて、これが私がやや異常反応ではないかと申しましたところでございます。  これは、おっしゃいましたように、大変たくさんの国債が出るということが予算の決定とともにわかり、同時に、資金運用部が毎月二千億円ずつ市中から買っておりましたものを一月から買わないことにするということを申しましたので、それに市場反応したわけでございます。それはそのとおりでございます。その市場反応がやや私は過剰であったなということを申しましたんですが、そのきっかけになりましたのは、資金運用部が買わないことにしたということがおっしゃいますようにきっかけであります。  そういうことを申しました理由はいろいろございますんですが、資金運用部平成十一年の資金運営を展望いたしておりまして、片方国債需要が大きい、他方で、予算編成に関連いたしまして非常に財投にたくさん金を出しましたのと、地方に対しまして短期の金を交付税特別会計に貸したということから出が多くなりましたことと、もう一つ、平成十二年には平成二年ごろの郵貯の定額貯金が満期になって返ってまいります。その金額平成十二、十三で元は百兆でございますが、どれだけ戻ってくるか、どれだけとどまるかわかりませんが、いずれにしても資金運用部としては原資が少なくなるということを覚悟しておかなければなりません。両方の事情から、資金運用部はこの際毎月の市中からの買いを一遍やめたいということを考えまして、それを発表したわけでございます。  私が過剰と申しましたのは、その金額は毎月千億ずつ二回でございますから二千億円でございます。一、二、三と勘定しましても六千億円でございますから、国債市中消化額六十一兆でございますので、金額的には非常にわずかな部分であるということを私は思いましたし、あるいは市中はしかしそれはマージナルには大変じゃないかという受け取り方をしたかもしれません。そういうことがございまして、十二月三十日に二・一〇になりまして、一月八日には一・六七〇というふうに急にまたがたっと下がりまして、そのまま一月中はまず平穏に過ぎまして、二月五日にまた二・三六〇と上がりをして、そして今は、きのうは一・八八五でございましたでしょうか。  その間に私の方から、やはり国債を大量に発行する立場から申せば、発行の仕方についていろいろ工夫がなければならない、バラエティーをつけるとか、あるいはもうちょっと資金運用部の見通しなんかも精査しました結果、別に毎月買えないわけでもないということを私どもの中で再検討しまして、とりあえず二月、三月はまた買いますということを申しました。それと日本銀行が、十二日と思いますが、短期誘導をさらに低目にされるということを言われましたので、両方のことがありまして目下のところ二を割って一・八八五とか、これみんな指標銘柄の二百三回債について申し上げておりますけれども、というところに今おります。  これはしかし、せんだっても日銀総裁が言われましたように、ややまだ神経質な動きというふうに表現されたと思いますが、と申し上げるべきだろうと思います。ただ、これはレートを申し上げておりながらすぐ国債価格を申し上げることと同じことでございますので、この相場について余りあれこれ申すことはよくないと思いますけれども、トレンドとしてのお尋ねでございましたので、大体そういうふうに見ております。
  7. 円より子

    円より子君 ありがとうございました。  昨日も大蔵大臣は、この買い入れ停止のことによって市場が過剰反応して長期金利上昇したのでもっと慎重に発表すればよかったとおっしゃって、今のようなことをおっしゃっておりましたけれども、つまりそうすると、異常反応して上昇するというふうにそのときはお思いにならなかったということなんでしょうか。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 率直に申しまして、資金運用部の毎月の買い入れというのはその程度の小さいものでございますから、多少の反応はあると思いましたけれども、突然こんなに大きな反応をするというのは正直予測しておりませんでした。
  9. 円より子

    円より子君 資金運用部の内情がよくわからないというようなことがよく新聞などにも書かれておりますが、ただ、本当にプロのアナリストとか経済関係方たちは割と正確にわかっていて、資金が結構潤沢にあると思っていた人も多くて、逆にああいう発表で、正確にわかっていた人の方が今度はミスをしてしまったなんという話も聞いております。  まず、異常反応とかやや異常だったというおっしゃり方と同時に、このときに、榊原財務官が日経新聞との会見のときなんですけれども、「債券市場動きパニック的だった。そこまでは想定していなかったので(資金運用部国債買い入れ再開などの)手を打った」と。これは後の方の急上昇の後のことなんですが、やはり最初に上がったとき、またそのことについて債券市場パニックだったとおっしゃっているんですが、パニックというのはどういうような意味で使っていらっしゃるのか。    〔委員長退席理事竹山裕着席〕  私などが聞いたところでは、市場ではボラティリティー、つまり価格変動率が極めて大きく上昇した状態をパニックと言うと聞いておりますが、ちなみに、先ほどのように、大したことはないとか、日銀総裁余り心配は要らないというような御発言のときに、これは二月上旬の二番目の上昇とほとんど変わらないと思うんですけれども、それだったら市場パニックに対してこの時点で手を打つべきだったのではないか、打ってもよかったのではないかという気もするんですが、十二月に対応をとらなかったことについてはどうお考えなのか、もう一度お聞かせ願えますでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日本銀行総裁が言っておられますように、短期金利というものについては日本銀行が対応できる、しかし長期金利については、間接的な意味ならともかく、基本的には対応できないと言っておられるんです。私はそれは正しいと思うのです。したがって、長期金利政府資金需要民間資金需要両方によってできておるわけでございますが、現在は民間資金需要というのはほとんど残念ながらございませんで、したがって昨年のように一%以下の金利というようなことになって、今でもまだ一%台の金利ということでございます。  これは民間資金需要がないので、やむを得ないと申しますか、の結果でありますが、同時に、しかしそれを埋めるための政府資金需要というものも、相当大量な国債でありますから、やはり発行者としては注意をしながらしなければいけないということは御指摘のとおりだし、先ほども申し上げました。  そこで、何でその榊原云々ということになっているかと申しますと、これは円委員はよく御承知でございますが、今の日本経済運営について、しばしば外国新聞にあらわれます、例えばクルーグマン、彼が典型的なその一人でございますが、の考え方は、簡単に言えば日本経済をもう少しインフレにしろということでございます。そのためにはもう少し金を出して、そして金利が上がったっていいじゃないか、むしろデフレを脱却するためにはそれがいいんだというのがクルーグマンの一貫した主張でありますが、私どもはそうは思わない。金を出せば日本経済が救われるというような、そういう簡単な話ではないし、インフレにすればその病気が治るという考え方にも同意できないと。  そういう論争が御承知のようにずっと続いてありまして、暮れに長期金利がちょっと上がりましたときに、クルーグマンはそれ見ろということを言いたかったし、多分榊原君は従来の論争の続きで、そんなことはないんだ、見てろ、落ちつくよと、こういうやりとりをしていたのがあの論文の考え方だと思います。  この考え方は、日本経済のとるべき政策の方向について、今クルーグマンのような考え方外国日本経済を見ているジャーナリストの中にはかなりございますから、常に外側からそういう主張が出てくるわけですけれどもG7あたりでは、これはジャーナリストではございません、銀行家であったり大蔵大臣であったりいたしますから、そういうことはやっぱり解決にはならないなという意見の方が強いのが現状と思います。    〔理事竹山裕退席委員長着席
  11. 円より子

    円より子君 今、大蔵大臣の方からクルーグマン榊原さんの話が出ました。  ちょっとこれを見ていただくと、これはことしの一月二十七日、フィナンシャル・タイムズなんですが、そこに今おっしゃったクルーグマンさんがちょうど書いている、簡単に言えばインフレにしろと。  例えば、クルーグマン教授というのはマサチューセッツ工科大学の教授ですけれども、この前の段階の寄稿文で、やはり金利上昇、円高に対し日本政府は有効な手を打っていないという批判をなさった。今おっしゃったとおりなんですが、それに対して、ジャパン・ドント・パニックというのは榊原さんが反論をしているものです。これが、先ほどのこの表でいいますと、一月二十日にクルーグマンさんが日本政府経済政策を批判し、そして一月二十七日に榊原財務官が反論をしていらっしゃるというものなんですが、ちょうどこのクルーグマンの話が出ましたので、先にこのことについてちょっとお聞きしたいと思うんです。  この反論の中身はおおむね次のようなものだったと思います。現在の日本長期金利、円相場が異常、パニックなのではない、むしろ異常だったのは、大手金融機関の破綻が相次いだ九七年末以降九八年前半にかけての時期であり、足元の長期金利上昇、円高はこうした異常局面からの正常化と考えるべきだと。これは先ほど大蔵大臣が本当におっしゃったとおりのことだと思うんです。私も、榊原財務官、それから大蔵大臣日本政府がとられたこの反論というのはとても一つの論理として筋が通っている、正しいことだったのではないかという気がするんです。  とすれば、じゃ、なぜ二月に入ってあたふたと政策を変更したのか、逆にとても不思議な気がするんです。そのまま、これはちょうど金利も下がって円安になって株も少し上がって、結果がいいですから、全部この手当てなさったことがいいことだったとは思うんですが、でもこういうふうに思っていらしたのなら、何も手を打たなくてもちょうど今ぐらいには私なったんじゃないかなという気がしないでもないんです。そうしますと、あたふたと政策変更なさったように見える。そこに何かが働いたのかなという気が、やっぱり市場にも国民にも疑念が生じたんじゃないかという気がするんです。  それがちょうどこのあたりで、ここはスイスのダボスで一月二十九日にルービン財務長官とサマーズ副長官に自民党の加藤紘一さんがお会いになって、そしてほかの国ではやっていないような日銀国債直接引き受けを示唆されたというようなことがありました。これを受けて野中官房長官も、今の状況は決していいとは言えないというような形でいろいろ、別にこれは日銀の専管事項ですから口を出すつもりはないとおっしゃりながらも、大変だというふうなことをいろいろおっしゃって、大分政府内もいろんな意見が錯綜したように思うんです。こういう状況がありましてすぐその手当てを打たれたものですから、どうもアメリカからの介入でもあったのかなという、そういう状況はあったと思うんです。  その辺どのようにお考えになっているのか、お聞かせください。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 余り細かいことを申し上げますとお聞きになっていらっしゃる方が御退屈かと実は思って申し上げなかったんですが、要するに、クルーグマンの申しますことは、日本政府はこれだけの大きな赤字財政をやっている、これは当然やるべくしてやっているのであるから、それは日銀日銀券を増発することによって賄われるべきものである、彼の基本はそういう考え方であるわけであります。日銀券が増発されればそれだけ円が安くなる、そういう形でこの問題は処理せられるべきであって、日本国民や日本政府が自分の中でそういうふうにインフレにならずに抱いていくようなやり方ではなくていいんだと。なくていいんだといいますか、そういう形で処理されるべきであるというのがクルーグマン主張でございます。ですから、それは当然日銀の引き受けになる、それで通貨が出て為替が安くなればもうこれですっかり済むじゃないかと。それに対して私どもは、そんなものじゃないということを言っておるわけです。  それで、円委員お尋ねは、それなら何で資金運用部が千億ずつ買うのをやめたのかねというお話なんですが、これは私どもにしてみますと、今の金利は確かに、決して高いとは思っていませんけれども、そういうふうに乱高下することはよくありませんし、国債発行を多くするわけですから発行者としての節度、工夫というものはあってしかるべきだろうというのが、その部分に限ってのというか、その範囲での私どもの反省であって、そのとおりだ、日銀に買ってもらおうといったようなことは私どもはとらない。ですから、クルーグマンに同意しているのではなくて、ちょっと過剰に反応したと思われる市場金利状況について発行者としての心構えを示したということです。  それから、ダボスでルービンが加藤さんに日銀引き受けでやれと言ったという話は、加藤さん自身が聞いた覚えがないと言っておりましたが、そのうちにルービン自身の方でも言った覚えがないということになりまして、この話は言った人はいるけれども聞いた人がいないという不思議な話で終わったわけでありますが、せんだってもボンではそういうことは一切言っていませんでした。また、ああいう銀行家といいますか、ファイナンシャーといいますか、蔵相といいますかの立場から、こういう形で銀行券を増発したら問題が解決するというような考え方は恐らく本来しない人であろうと思っていますが、そういうことは言っておりませんでしたし、グリーンスパンもそういうことは言っておりませんでした。
  13. 円より子

    円より子君 これは、朝日新聞加藤紘一さんがインタビューを受けていらっしゃるものによりますと、サマーズさんが、これはルービンさんじゃないのかもしれませんね、サマーズさんが、日本はいろいろやっているが日銀による国債引き受けの議論はどうなっているのかと聞いてきたと。しなさいとはもちろん言っていませんよ。でも聞いてきたということや、それから、後で公開討議でも、もっとお金を刷るべきだ、国債引き受けが必要ではといった質問を二度も受けたとおっしゃって、何となく、しろとは言われなかったけれども、そういうふうなことをアメリカが考えているのかなと思われたことかもしれませんね、思われなくても。  それで、なぜアメリカがそういうような介入をしてきているのかということの背景に、以前にも、九七年二月、財政支出を拡大しろと言ってきたことがあって、ちょうどそのとき我が国は橋本政権の財政構造改革中でした。こんなことをしていたら、財政構造改革なんて一生懸命厳しくやっていたらますます不況がひどくなるぞと言われて、そしてまたそのとおりになったという苦い経験がありましたので、こういうことも考えなきゃいけないかなというのがあったのか。  それともまた、九八年の三月に政府は大手銀行に公的資金を一律投入なさいました。これはいわば護送船団方式の継続だと思いますが、その後の五月五日にワシントンで、やはり加藤さんなんですが、加藤紘一さんが講演で、金融自由化が進展すれば先を行く金融機関とおくれをとる機関が出て、拓銀、山一に次ぐ新たな脱落も予想されると。いわば護送船団方式からの決別ともとれるような発言を行っていまして、この発言内容に私は異論を唱えるつもりはないですけれども、ここでも、三月に一律注入したのになぜ五月の段階で急にこんな発言が出てくるのかというような疑念が市場関係者等に生まれたと思うんです。  こんなことがあったものですから、今回の件も、短期間政策変更があったのはどうも日本政府のきちんとした独自の政策判断だけじゃなかったのかしらというつまらない疑念を生んでしまったのかなという気がするんですね。そのあたりはいかがですか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今九七年の二月とおっしゃいまして、ちょうど、たしか私の記憶に違いがないと思うんですが、私は用でニューヨークにおりましたときにホテルにルービン長官が突然訪ねてこられまして、一つは、財政構造改革路線といいますか、そういうことについて、今の日本のとるべき方向としてはどんなものなんだろうかという話と、それから、日本では不良債権の処理というものを金融機関が引き当てをすることによって片づくと思っているけれども、それはバランスシートから落とさなければ外から見て片づいたことにならないという二つのことを言われた。それが当時のアメリカの考え方でございますね、今でも同じと思いますけれども。  ですから、その線上で、今この時点で申しますと、日本政府は金融関連のいろいろな信用回復の立法もしたし、公的資金の導入についても順調に進んでいるし、財政的には非常に大きなことをしたと。そのことは見ておるわけでございます。  それまでやってくれたんだが、さて、それが早い効果をあらわすためにはもうちょっと何かの方法はないのかということまではいろいろに思っておりますでしょう。しかしながら、さりとて、それは日本銀行国債を引き受けたら済むんだと、そんな簡単なふうに思っていないことも確かでございます。考え方動きとしてはそういう背景があったと思います。
  15. 円より子

    円より子君 それでは、せっかく日銀の副総裁にもおいでいただいておりますので、今までの経緯の中で、やはり日銀の方としても、最初金利上昇のあたりから今までの短期間で変わったあたりのその経緯と背景と理由みたいなものについてお聞かせ願えればと思います。
  16. 藤原作彌

    参考人藤原作弥君) お答えいたします。  今、先生が議論なさっていらっしゃいます長期金利の動向のその期間なんですが、昨年十一月、十二月の間、私どもは決して景気の動向を楽観視していたわけじゃありません。心配はしていたんですけれども、財政面からの下支えの効果も出ていましたし、そういうこともあって民間経済がうまく立ち直ってくれればいいがなということで見ていました。  ところが、本年に入りましてから、民間経済は依然低迷を続けていまして、そうしたもとで今御指摘の長期金利の高どまりや、それから円高ぎみの展開が続いたわけです。そうした市場動きは我が国経済の先行きに対してマイナスの影響をもたらして、これまでとってきた財政、金融両面からの政策の効果をもしかしたら一部打ち消しかねないかなという疑念がマーケットの動向を見ながら出てまいりました。  そうした情勢を踏まえまして、二月十二日の金融政策決定会合におきまして、これは専ら景気の悪化に歯どめをかけることをより確実なものにするという判断から一層の誘導金利の引き下げに踏み切ったわけです。そうすることによって経済活動を最大限サポートすることが適当と判断したわけであります。  もちろん長期金利のことも念頭に置いておりますが、その際、国債の引き受けといったような点は私どもは考えていないということも発表文につけ加えさせていただきました。
  17. 円より子

    円より子君 もう一度宮澤大蔵大臣にお聞きしたいんですけれども、例えば、今詳しくいろいろ御説明いただきましたけれども、どうしても今の不況というのは、日本政府がきちんと本当に正確な判断をして情勢を誤らずに景気の回復をし、国民に安心感を与えてくれるんだろうかというまだ不安な状況というのがあって、その不信感がより不況の回復をおくらせているというところがあると思うんです。  先ほどから私がこの図をお見せしてちょっと説明させていただいたのは、もうこういったことはよく御存じですけれども、図にすると割とわかりやすいものですから。そうすると、どうも政策に一貫性を欠くんじゃないかとか、そういうふうに思われてしまっている。そのあたりを今度、政策不信みたいなものをきちんと解決していく、それにはどうすればいいと思っていらっしゃるか、お聞かせ願えますか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどルービンのところで九七年と申し上げましたが、私の方は九八年でございましたので、おわびして訂正させていただきます。一年、間違っておりました。  小渕内閣発足以来、この不況というものから脱却することがまず我々が全力を集中してすべきことであって、財政再建も大事でございますし、いろいろございますが、やはり二兎を追うことが事実上できないという決心をいたして今日に及んでおります。その点は、財政あるいは税制でも、また国会におきまして金融関連の法案、法律をおつくりいただいた点でもそうでございます。  ですから、とりあえず財政改革路線というものは、必ず将来しなければならないことであっても、この際ひとつおいておいて、まずプラスの成長路線に返りませんと税収そのものも減り続けるということでございますから、そういう決心をして、ともかく政府も一生懸命いたします、したがって皆さんも御理解の上でということを国民にお呼びかけして、政府のなし得る、GDPにおける部分は小さいことでございますけれども、しかし政府が呼びかけるということは大きいことでございますから、そういうことで、今としましてはかなりはっきり国民の皆様政府が志向しております路線はわかっていただいておるのではないかと思いますし、効果が上がるまでこれを続けなければならないというふうに考えております。
  19. 円より子

    円より子君 先ほど、クルーグマンのことでは、もちろん榊原さんが反論なさり、そして大蔵省大蔵大臣クルーグマンの意見に別に賛成しているわけじゃないとおっしゃいましたし、私も別にどちらがということではないんです。  ただ、クルーグマンの論文の中に、限りなく金利がゼロになっても、日本の国民は多分、じゃ預金をせずに消費に向かうかというと、どうもそうではない、また企業も投資をしないのではないか、そういう流動性のわなの話をしておりますけれども、素人の私などから見ると、確かに今の状況はまだまだそういういろんな政府に対して不信感があり、高齢社会を自分たちで守らなければとても乗り切っていけないぞ、そのためにはもう必死でとにかく現金を持っていた方がいいみたいな、そういう状況になっているような気がするんですね。  このあたり、決してそんな流動性のわなに日本ははまっていませんよとおっしゃるなら大変安心できるんですが、いかがでしょうか。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 金利ゼロというのは、何か人類の歴史では紀元前にあったとかなかったとかということでございますから、それが何を意味するか、どうも私にはちょっとこの話は手に負いかねますので、あるいは日銀がお答えになれるかもしれません。
  21. 円より子

    円より子君 では、日銀の方にお願いいたします。
  22. 藤原作彌

    参考人藤原作弥君) お答えいたします。  このほど私どもがとりました政策は、従前の年〇・二五%の誘導金利をできるだけ引き下げるということでして、その一つのめどとして〇・一五%、さらに必要があればできるだけ下げていくという方針でした。  できるだけという行き着く先は、理論上ゼロになるわけですけれども、目下のところ、たしかきょうあたりは〇・一一ぐらいでとまっていると思います。それはマーケットがそういうふうに形成されているのでありまして、おのずからマーケットの需給がそこに反映されていると思います。  さらにこの後、じゃ、その極限であるゼロ%まで近づいていくのか、いかないのかは、それは市場の環境によることでありまして、そうなったらどうするということは、私どもは今マーケットの状況を見ながら次の対応策が必要かどうかということを検討するつもりでおります。  しかし、金利の引き下げということはおのずから量とコインの裏表の関係にある話ですので、それがいわゆる量的な緩和、量的な緩和というものが何か量を一つのターゲットとするものであるかどうか、学者の先生の中でも意見が分かれるところではありますけれども、今のところは、金利の低下が資金の供給にも量的な面で効果を及ぼすという判断のもとに金融政策、金融調節を運営しているところでございます。
  23. 円より子

    円より子君 先ほど宮澤さんが私の手に負いかねるとおっしゃったのは、流動性のわなの話はもうそれこそシーラカンスが見つかったみたいな状況の話で、神学論争みたいになってしまいますから、お答えにならないのは大変もう賢い方だからだと思っております。  ちょっと総理にお聞きしたいんですけれども、今私が言ったような、ごく普通の素人の私たち庶民から見れば、本当に今言ったクルーグマンの論文を別に読んでいなくても、こんな状況になっても個人消費をもっと刺激してということは、つまり私たちが使わないといけないんだということは、頭でわかってもなかなか使えないような状況というのがあると思うんですね。年金がどうなるのかとか、このままリストラになったりボーナスが減ったり、また失業率も大変高くなっておりますけれども、こういう状況。そして、銀行に預けてもだめなのかもしれない、生保もどうなるかと。いろんなことで皆さんは不安になっております。政府だけじゃなくて地方の方の財政も悪化しているというようなことになれば、とにかく必死で余り使わずにためておかなくちゃ、銀行にも預けずにとか、そういう状況下や、まだまだ貸し渋りがひどくて三月期決算を迎えて中小企業の人たちは本当に血の出るような思いをしていらっしゃる。  こういう中で、今後どういう形でその政策不信を払拭して、国民の人たちがとにかく一丸となって一緒にこの日本丸を何とかしていこうと思うためにどういうふうになさろうというおつもりか、ちょっと教えていただきたいんです。
  24. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 日本経済を立て直していくということ、そのためには政府としてなすべきことは予算の上でこれを反映していくということに尽きるかと思いますが、その点では税制の問題等につきましても思い切った対策を講じながら、企業並びに個人の税制におきましてもこれを大幅に引き下げることによりましてやはり国民のマインドを何とか上昇できるような形にいたしていかなきゃならぬ、こういうことを考えておる次第でございます。  金融の問題につきましては、今ほど先生と大蔵大臣日銀の副総裁とのいろいろなお話をお聞きいたしておりましたが、この点はなかなか難しい問題でございまして、またこのことについてのコメントは軽々になすべきことでないと思っております。  ただ一点、金利、特に預貯金の金利につきましては、私のところに、主婦の皆さんといいますか、ある意味でささやかな預貯金を持たれている方々が、現下のような低金利の中でなかなか消費のマインドが出てこない、今まではかりそめにも、かなりの預貯金の金利がありますと、そのいただいたものについてむしろそれを消費に向ける気持ちを起こさせたけれども、今の時点ではなかなかそういった気持ちになり得ないと。簡単に言えば、もっと高い金利のいただけるような状況にできないかというクレームがしばしば届いておることは承知をいたしております。  日本経済全体の中で、こうした金利情勢の中で経済を活性化していかなきゃならぬという意味でなかなか難しい問題を含んでおるという認識はいたしておりますが、申し上げましたように、政府といたしましては、大型と申し上げませんが、積極的な財政によりましてこの状況を乗り越えていくということに全力を挙げていくということだろうと思っております。
  25. 円より子

    円より子君 次に、国有資産の売却等についてちょっとお聞きしたいんですが、今も言っておりましたように、赤字国債がどんどんふえております。今回の予算案でも三十一兆五百億円というような形の国債発行されるわけですが、不良債権の処理や減税について、当面は赤字国債で財源を賄うということは仕方がないとしても、政府が、国の事務や事業の見直しによる歳出抑制とあわせて国の保有する資産の活用や売却を考えることによって政府への信頼を高めることが肝要ではないかと私は考えているんです。  それで、国有資産についてお伺いしたいと思っていたんですが、余り時間がございませんので、一つだけちょっと総理にお伺いしたいと思います。  昨年の九月ですか、総理の指示で国有財産の売却等に関する小委員会が設置されたと思うんですけれども、これはやはり赤字国債の大量の発行だけではこの国はもたないと、国民の人たちも、増税だけでは大変だぞ、なぜ私たちだけがというような思いもあって、もう少しきちんと歳出の抑制をしてほしいとか、また資産の管理を効率的にしてほしいという思いがあると思うんですが、売却というか、その検討委員会への指示をなさったのは、総理にもそういうお気持ちがあったからなんでしょうか。
  26. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) お説のとおりでございまして、実は国有財産につきまして、初閣議、昨年の七月三十一日におきまして資産の売却及び転用について検討の指示をまず最初にいたしました。従来より効率化の要請、財源確保の要請等を踏まえて不断の見直しを行い、公用、公共用の利用が見込まれない国有財産の積極的な売却を進めてきたところではありますけれども、今後とも積極的にこれを促進してまいらなければならない、こういうことで、初閣議におきましても強くこれを指示いたしました。  その結果といいますか、この指示を踏まえまして内閣に設置されました国有財産情報公開・売却等促進連絡会議におきまして、各省庁等が主管する行政財産等につきまして徹底した見直しが行われまして、昨年十二月十七日にこれを取りまとめたところでございまして、かなり積極的に担当の理財局初め熱心に取り組みまして、かなりスピーディーに対応しておると認識をいたしておりますが、さらに一層努力をいたしていきたいと思っております。
  27. 円より子

    円より子君 時価での評価も含め、またバランスシートなどの作成等さまざまな検討課題があると思いますので、ぜひ積極的にやっていただきたいと思いますし、この件についてはまた別の委員会で質問させていただきたいと思います。  では、次の課題に移りますが、この二月十八日に、カナダのバンクーバーの日本総領事が自分の妻を殴って負傷させ地元警察に逮捕された事件がございましたが、この総領事は妻を殴ったのは日本の文化の問題だと反論したと報道されているんです。  まず、事実関係について外務大臣にお伺いいたします。
  28. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 総領事からの報告では、文化の違いだと言ったことはないということがまず一点であります。  それから、一義的には家庭内の問題であるということは言ったと。ただ、これも不適切な発言であり、十分反省をしていると。そして、もちろん殴ったこと自体については非常に深く反省していると。こういう報告を受けております。
  29. 円より子

    円より子君 私は父親にも恋人や夫にも殴られた記憶などありませんので、二万件ぐらい女の方からいろんな家庭の相談を受けた経験から、随分日本の男性が殴っているケースもよく見て、鼻が折れたとか鼓膜が破れたとか、そういうケースを聞いて本当にびっくりしたことがこの二十年間あるんですが、とりあえず殴るということは自分のコントロールを失うことですから、これは大人としてやはりしてはならないことだと思うんですね。それは女性側が殴るのもいけませんし、男性側が殴るのもいけない。女性がするんだから、男性がいいとか、そういうことではないと思います。  それで、とにかくこれが日本の文化と言ったことはないというのは今確認できましたけれども、そういうような書き方をされてしまうことも一つの問題ですし、そのように自分のコントロールを失ってかっとなったとしても、人を殴るということは外交官として私はふさわしいとは思えない気がするんですが、世界に対して指導的立場にある日本が人権とか暴力というのをどうとらえているかをここできちんと外務省が対処なさらなければ大変恥ずかしいことになると思いますが、外務省としてはどういう対応をなさるおつもりでしょうか。
  30. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 委員がおっしゃるように大変遺憾なことであり、また恥ずかしいことでもある、こういうふうに思っております。  今カナダで司法手続が始まっていて、きょう大体の今後の日程みたいなものが明らかになる、こういうことを聞いていますが、カナダで行われる司法手続の推移も考慮しながら、日本に呼び戻して一応の、逃げたというふうな思われ方もまたされたくないということもありまして、その時点でしかるべき措置をとるということでございます。
  31. 円より子

    円より子君 今のことに関して総理はいかがお思いですか。
  32. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 今回の事件と申しますか、特に日本国を代表して世界でお仕事をされておる外交官がこのような形で警察ざたといいますか、こういう事件を引き起こしたということはまことに残念でございまして、そういった意味できちんとした対応をいたさなければならないと私も考えております。  いずれにいたしましても、こうした暴力を、夫婦間であれあるいはまた他人であれ、そうした行為によって自分の気持ちを表現するということは、これはあってはならないことだと思っております。
  33. 円より子

    円より子君 聞かずもがなのことだと思いますが、総理は人を殴ったりしたことはないでしょうね、特に妻、パートナーを。
  34. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 本人は大変平和主義者だというふうに認識しておりまして、私の記憶でも、実は子供のころから腕力を振るっての示威行為といいますか、簡単に言えばけんかというようなことをした覚えがございません。ましてやと言っては恐縮でございますけれども、夫婦間においてもさようなことはございません。
  35. 円より子

    円より子君 大変いいお言葉を聞きました。それでも、これは韓国日報や台湾の自由時報紙等でも書かれておりまして、文化の問題というようなことで容認されることではないとも書かれていたりしておりますので、ぜひとも高村外務大臣、適切な厳しい処理をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。  では、次の民法改正についてお伺いしたいと思います。  まず、民法改正の中でも夫婦別姓の問題ですけれども、これは、長年女性たちが選択的な夫婦別姓をしてほしいということで求めてまいりました。  それで、法制審で答申が出て閣議にも出されましたが、そこで否定されて上程されないという状況で、閣法にならずに三年間たなざらしの状況になっております。その間、私なども一生懸命議員立法を新進党の時代にまとめさせていただいて出したりとか、もちろん今、民主党の方で野党とともに出したものも出ております、継続審議にはなっておりますが。  法制審でせっかく別姓のものが出されたんですが、これが全く今たなざらしになったままということで、大変女性たち、また女性だけでなくて、これから結婚したいという若い男性たちからも要望が多いんですが、ついせんだって、この通常国会が始まる前に中村法務大臣が、なぜたなざらしになっているかというのは、自民党内に強い別姓導入に対する反対意見があるということなので、自民党内に対してもう少し前向きに検討してくれないかというようなことをおっしゃったということがあるんですが、この件と、その後どうなっているかを法務大臣にお聞きしたいと思います。
  36. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) お答えいたします。  一つ事実が違うのは、自民党の中に強いと言ったんじゃなくて、国民の中の意見が分かれているということを申し上げましたので、御理解いただきたいと思います。  それで、経緯からちょっとお話しさせていただきたいんですが、法制審議会もでございますけれども政府におきまして実は今、男女共同参画社会の実現を目指すという方針がございまして、小渕総理大臣も施政方針演説の中で男女共同参画社会基本法案を今国会に提出するということを言明しておられるわけです。そして、実は政府の中にこの男女共同参画社会の実現に向けての行動計画が定められておりまして、二〇〇〇年プランというんですが、平成十二年までにやるべきことが定められておりまして、その中に──この会は全閣僚が入った会なんです。そこで、夫婦別姓について、西暦二〇〇〇年までに国内行動計画で法務省が担当する具体的施策として定めた中に選択的夫婦別姓制度の導入について検討を進めるということが決められているわけであります。  ですから、これを決めたときは橋本内閣のときでありますけれども、内閣は継続するわけでありますから、これを進めるということは内閣の方針として決められていると認識しているわけでありまして、法務省としてはこうした政策を推進する立場にあるということでこの間御答弁したのをお聞きくださったんだと思います。  そこで、これは私も実は法務大臣になるまで余り勉強していなかったんですが、いろいろ調べてみますと、先進国では全部別姓を認めている。別姓プラス夫婦の、重ねてもいいという、私の家内は伊藤といいますけれども、中村・伊藤という姓が認められている。スイスとかオーストリーとかオランダだとか、そういうことまで認められている。認めていない国はないんです。  ですから、今いろいろありましたけれども日本の文化ということは、ひとつこれは大切にしなきゃいけないんだと思いますけれども日本考え方が世界の非常識でいいのかなという気もいたしますし、また世界で名誉ある地位を占めて平和国家として過ごしていくんだという憲法の規定からしても、ある程度世界の常識というものに耳を傾けなきゃいけない、そういう時代じゃないかと思うんです。  さはさりながら、世論調査の結果も御存じだと思いますけれども、ちょっと古いですが、政府がとりました世論調査でも反対の方が若干多い。しかも、年齢層で非常に違っているということであります。  だから、これからの進め方としては、どういうふうな案にすればこれが大方の納得がいただけるか、そういう努力をするべきであろうという中で、なかんずく我々の与党であります自由民主党の森山眞弓先生が小委員長を務めてくださっていますので、そこに御相談してくれないかということをお願いしたわけです。近々具体的に私の考えましたようなたたき台もお示しして御相談いただきたいと思っておりますが、これは本当に国会で幅広く御相談いただかないと、法案を提出してもこれは成立しなきゃしようがないわけですから、そういう党にお願いした努力の中で野党との御相談もあるんじゃないかと思いますので、どうか御協力を賜りたいと思っております。
  37. 円より子

    円より子君 国民の間でも意見が分かれているとおっしゃいました。二十代、三十代の男女は、通称使用ができるように法律を改めてもいいというのと、別姓にする方に法律を改めてもいいということで、両方を合わせますと八〇%近くが賛成していらっしゃるということで、これは何もすべての人たちに別姓を強要するわけじゃなくて、今までどおり同姓の人もいいし、夫婦同姓、それから別姓にしてもいい、そういう状況なんで、多様な選択肢を認めるというものなんですが、ここで、せっかくですから全閣僚の方々にこの別姓の選択導入についてどうお思いか、ぜひ御意見をお聞かせください。
  38. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 全閣僚というお話でございますが、大勢でございますから。  私は堺屋太一とここでも申しておりますが、本名は池口小太郎でございます。私の家内は絵かきでございまして、結婚いたしまして池口史子を名乗っておりまして、結果として、家内が私の本名を名乗った結果、別姓になっておるわけでございます。これで不便があるかどうかということでございますけれども、税金の方はちゃんと寄せていただいておりますし、家内の方にもかかってまいりますし、今のところ不便は感じておりません。  委員おっしゃるように、別姓の選択制というのは検討すべき事項だとございますが、子供のこと等から考えるとやはり慎重な検討が要るだろうと思うんです。現在通称でやっておりまして私自身不便を感じておりませんから、いろいろな考え方があろうかと思いますので、これはやはり慎重に検討していただいて、ちょっと時間をかけて検討した方がいいんじゃないか。通称でさして不便は感じておらないから、これも一つの選択肢じゃないかというように思っております。
  39. 円より子

    円より子君 全閣僚にやはり応援いただかないと、これはなかなか審議もできませんので、総理以下ぜひお願いいたします。
  40. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 総理の立場でと言われますと、これは今十分検討していくべき課題だろう、こう答弁をさせていただきますが、今のところ個人的にはそういったことを家内からもまだ求められてもおりません。
  41. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 円より子君、全閣僚の答弁を必要とされますか。
  42. 円より子

    円より子君 お願いいたします。
  43. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 官房長官は記者会見でお出かけなので、官房長官から代表してということにならないんですが、全閣僚お一人お一人ですか。
  44. 円より子

    円より子君 文部大臣外務大臣郵政大臣お願いします。
  45. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まず慎重に考えるべきだと思いますね。  ただ、私、外国人の友人が非常に多いんですが、有名なうち、例えばキュリーのうちなんかはジョリオ・キュリーと言い、ジョリオ家とキュリー家をくっつけた名字にしているんです。そういうことがある。それから、私のところで博士号を取った人もそういうふうに二つの名前をつけて使っております。こういうことは事実あるのですけれども、慎重にまず考えていくべきだと思います。
  46. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 国際的潮流と、そして日本の伝統文化と両方をにらみ合わせながら、国民意識がどうなっているかということに配慮しながら決めていく問題だ、こう思っています。
  47. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 大臣になる前、私も一国会議員として森山眞弓先生とこの問題について取り組んでまいりました。中村法務大臣のお話にあったとおり、その当時は、世論調査の結果、全世代を通してですけれども、まだ反対の意見が多いので、やはりいろいろな選択制であるということとか、いろいろ将来に及ぶ問題について議論する中で、ある程度賛成が上回る方がいいんではないかという御意見があったことも確かです。  個人的に、まだ未婚の女性として、また仕事を持つ一人の人間として申し上げるならば、私はこの日本にいろいろな選択があってもいいんじゃないかと。夫婦の形がこうあるべきということは国が押しつけることではなく、個人がそれぞれの形の中できずなを深め、そして愛情をはぐくみ、そしてもって社会貢献をしていただけるような人間をより多く国としてはつくり出していく努力をしていかなければならないと思っています。選択制というのもこれは一つの望んでいる人の生き方であり、それを頭ごなしに否定することもできないわけでございまして、今後内閣の中でしっかり検討していくべき課題だと思っています。  あえて申し上げるならば、私の妹は夫婦別姓で家庭を持っております。一人息子がおりますけれども、姉として見ていて、その家庭が不幸であるとかいびつであるとか、全くそういうことは感じない。むしろそれぞれのきずなを深め合って、名字にこだわっているのではなく、むしろそれぞれの個性の中で家族を築き上げているところを目の当たりに見ているところで、これも検討課題になっているところでございます。  以上です。
  48. 円より子

    円より子君 大勢の閣僚の中でぜひ野田さんに頑張っていただきたいと思うところでございますけれども、確かに少子化の中で、また婚姻とか家族とかの価値観、さまざまに変わっております。またライフサイクルも変わっております。そういう中で、文部省も多様な生き方や個性を尊重するとおっしゃるならば、こうしたことも慎重にではなくて皆さんがぜひとも前向きに検討していただきたいということを要望して、私の質問を終わらせていただきます。
  49. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で円より子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  50. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、益田洋介君の質疑を行います。益田洋介君。
  51. 益田洋介

    益田洋介君 まず最初に、日本銀行にお伺いしたいと思います。  きょうは政策決定会議が朝十時から一日かけて行われているということで、総裁がお忙しくて国会の論議よりも大切な会議のようでございますので出席をしていただけないということで、藤原総裁にきょうはおいでいただいております。  私は資料要求をまずさせていただきたいと思います。これは昨年の五月二十一日、参議院の行革・税制特別委員会におきまして私が最初に提起をさせていただいた日銀の保有資産の売却の要請でございまして、それから機会あるごとにお願いを続けてまいりました。そのせいか、ことしになりまして、一月二十九日、日本銀行はペーパーを出されまして、保有資産の見直しについてということでございました。全国六カ所の支店長宅の売却の検討、それからその他運動場、保養所、遊休不動産、ゴルフ会員権の売却の計画というのを文書で出していただきました。  ただ、私が一つ非常に懸念に思っていますのは、この六カ所の支店長宅を売却されてもおおむね三百億円程度の売却収益が見込まれるだけである、そのように引馬理事が前回の財政・金融委員会の席上で申されましたが、東京都の赤坂六丁目にあります氷川分館、これは三千七百坪、赤坂のど真ん中にあるわけでございますけれども、これは例えば最近売却が実行されましたホテル・ニュージャパンの跡地、これは一説には坪当たり千六百万から千七百万と言われておりますので、この氷川分館だけでも五百五十億円の売却益が見込まれるということですので、ちょうどこれは日債銀に日銀が注入しました公的資金の八百億、これを国民に一切負担をかけないで償還するとすれば、支店長宅が三百億、プラスこの氷川分館の五百五十億で八百五十億。国民の皆さんに一銭も負担をかけないで日債銀に投下した資本を回収できるということなので、私は氷川分館についての売却を常々お願いしてまいりましたが、なかなか総裁にうんと言っていただけない。  私はこの理由について、氷川分館及び大阪支店長宅もこれは売却されないで、公的機能への特化と敷地の一部売却というふうに言っていますが、なぜこれを全部売却しないのか。氷川分館が売却できない理由、大阪支店長宅の全部が売却できない理由、この理由を、もし合理的な理由があるのであれば、その説明を文書で当委員会に提出していただきたいのが一点。  それから、副総裁、お帰りになったら総裁にぜひお伝えいただきたいと思うのですが、昨今、この六支店長宅、福島、新潟、京都、下関、高松、北九州の売却の計画が進められているということですが、どういった売却計画をお持ちなのか。そして売却した後の用地は、例えば公的な目途のために使われるのか、あるいは商業用の取引で収益を上げるだけを考えていらっしゃるのか、その計画書。  この二点の書類を当委員会に提出していただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  52. 藤原作彌

    参考人藤原作弥君) お答えいたします。  先生、今御指摘の保有資産の問題については、御案内のとおり、少しずつではありますけれども売却等を実施に移しているところでございます。  全体としてどういう計画であるか、それから売れないものはなぜ売れないのかといったことを文書で提出せよとの御要望ですが、関係者と相談しまして前向きに検討してまいりたいと思います。
  53. 益田洋介

    益田洋介君 前向きに検討いただける。  前回私は、財政・金融委員会において、やはり保有資産の全資産の使用状況の総点検の書類を提出していただきたいと引馬理事にお願いをいたしましたところ、益田委員の意に添うように検討したいというお答えでございました。あわせてこれも提出していただきたい。  なぜこういうことをお願いするかといいますと、昨年五月二十一日の行革・税制特別委員会において、私は当時の松永大蔵大臣に対して、国の保有資産の総点検をしていただきたいと。これを受けて、同六月九日の同委員会で松永大蔵大臣は、通達を発しました、そして全国の財務局長に対して国有財産の総点検を指示していただいたと。だから、大蔵省でさえこういうふうにわずか二週間のうちにアクションを起こして指示をしているわけでございますから、ぜひ日銀にも保有資産の総点検を当委員会に提出していただきたい、そういうことでございます。  次に、ガイドラインについて、総理及び外務大臣、加えて防衛庁長官、法制局長官に御意見をお伺いしたいと思います。  二十四日、昨日、総理は、当予算委員会において、有事法制について答弁をされました。それは、有事にいかに対処すべきかはきちんとした法体系のもとで対処することが必要ではないかという考え方ができるとお述べになって、これまでの研究段階から一歩踏み入って、立法化を視野に入れた発言を昨日されました。  これを受けて防衛庁長官も、従来の自衛隊の活動に加えて米軍の活動に関する有事法制の研究に早急に着手する方針である、このように明言をされております。  日本の有事で想定される法整備といいますのは、大きく分けまして、物資収用や土地収用の手続を定めた自衛隊法の改正、さらには道路法、これは自衛隊の陣地構築を円滑にするための道路法、河川法、森林法などの改正が必要になってくるわけでございます。  防衛庁は七七年から有事研究に着手し、八一年それから八四年にはそれぞれ所管の法令、それから防衛庁以外の省庁所管の法令の問題点に関する研究結果を公表しておりましたが、この段階では、当時の社会党に配慮したためか、立法化を前提としない、問題点の整理だ、こういうふうにとどまったわけですが、きのうの総理と防衛庁長官の発言からは、これは一歩前進して、昨今はシミュレーションなどで日本有事などでの我が国の対応について問題が提起されており、それだけ世の中が変わったと総理はおっしゃった、そういう印象はしないでもないと。  私は、こうした発言から、今回のガイドライン法案がもし成立するのであれば、それを受けて日本の有事での法整備を本格化する、そういう姿勢が現内閣におありなのかどうか。そして、これが法的に今回のガイドラインの法案と照らし合わせてどのような位置づけになるのか、これは法制局長官にお答え願いたいんですが、この考え方について。さらに、今回は具体的に有事の法整備に前向きに取り組む方針である、そのように伺ったわけでございますが、総理、防衛庁長官、そして法制局長官の御意見をお伺いしたい。それと外務大臣にもお願いいたしたいと思います。
  54. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 有事法制整備についてのお尋ねでございますが、防衛出動が命ぜられるという事態における自衛隊の行動にかかわる有事法制の問題については、その研究は当然必要なことであり、政府としてこれまで研究を行ってきたところでございます。この研究は立法の準備ではないとの前提が置かれているものであり、また現実に法制化を図ることは高度の政治判断にかかわる問題であります。  政府としては、国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえて適切に対処していきたいと考えておりまして、現段階においてこれを法律化するということを申し上げたわけではございません。  ただこれが、今、益田委員御指摘のように相当前、すなわち昭和五十三年に、近い将来に国会に提出を予定した立法準備ではないという前提のもとで検討されてきたことは継続しておるわけでございますけれども、当時の状況から今日の状況を考えますと、こういった意味で、有事法制につきまして、今申し上げましたように、国会の御審議や御論議等を踏まえました形で今後どう考えていくべきかどうかについては、当時と今日の状況の中には時代的変化もありますし、国民の意識の変化もあるのではないかということを実は申し上げたわけでございまして、今直ちにこのことを立法化するということを昨日申し上げたわけではないことを御理解いただきたいと思います。
  55. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) ただいま総理大臣から御答弁したことで格別つけ加えることもございませんが、ただ、私の答弁もありましたからもう一度申し上げたいと思います。  一般論として、我が国に対する武力攻撃に対して必要な法制としては、自衛隊の行動にかかわる法制、それから米軍の行動にかかわる法制、それから自衛隊及び米軍の行動に直接にはかかわりはないが国民の生命、財産の保護等のための法制の三つが考えられるわけでございます。従来、私どもが行っている有事法制の研究は、このうち自衛隊の行動にかかわる法制についての研究であり、米軍の行動にかかわる法制は対象としておりませんでした。  御指摘のように、私の答弁は、米軍の行動にかかわる法制については、まだ研究に着手されていないが将来の課題であると認識しており、検討が開始された場合は、防衛庁としても外務省等関係省庁とともに必要な協力を行っていく考えであるとの趣旨を述べた次第でございます。
  56. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいま答弁がございましたように、直ちに法制化の作業を行うということではございませんので、私の方から具体的なそれに対処する考え方を申し述べるのは差し控えるべきであろうとは思いますが、ただ有事法制に関しましては、その事柄の性質上、常々法制上の諸問題について研究を重ねるということは必要なことであるというふうに考えております。  その場合におきましては、法制上の諸問題の中で、やはり事柄の性質上、国民の権利との調整というものが多々生ずるであろうということは予想にかたくないのでございまして、私どもとしましても、有事法制に関する法制の整備に関する研究に際しましては、私どもの立場としてその職責を果たしてまいりたいというふうに考えております。
  57. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 総理、防衛庁長官が答弁されたことと同様に考えております。
  58. 益田洋介

    益田洋介君 ただ、一昨年、九七年の九月に日米両国政府の間に合意に達しました新ガイドラインでは、周辺事態ばかりでなく日本有事の日米協力も盛り込まれているわけでございます。この考え方というのは、昨年の四月に当時の久間防衛庁長官が、有事の法整備に向けて検討を始めたい、このような発言をしたわけでございます。そして、政府危機管理プロジェクトチームは、今後の検討テーマとしてゲリラ部隊の原子力発電所攻撃を想定した自衛隊の行動や有事法制の成立の必要性を挙げている。  防衛庁の重要事態対応会議というのがございますが、ここでは弾道ミサイル、これはテポドンのことを当面は想定されていると思いますが、その弾道ミサイルが発射されたときの対応をどのようにするのか、この辺の具体的な法整備が必要ではないか、こういう段階に入っているというふうに伺っておりますが、総理及び防衛庁長官の見解をお伺いしたいと思います。
  59. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 弾道ミサイルが撃たれた場合にどうするかということでありますれば、我が国に対する武力攻撃に至らない不法行為等への対処ということになりますから、一義的には警察機関の任務であります。自衛隊は、警察機関では対処することができないと認められる事態が発生した場合に、治安出動や海上警備行動により対処することとなるわけであります。  政府としては、橋本内閣以来、我が国に対する危機が発生した場合やそのおそれがある場合においては、我が国としてとるべき種々の対応について、必要な対応策をあらかじめ十分検討、研究することを目的として緊急事態対応の検討を実施してきたところであります。  いずれにしましても、有事法制の研究は、昭和五十三年に公表した「防衛庁における有事法制の研究について」というもので明らかにしているとおり、有事の際の自衛隊の任務遂行に関連する法制上の諸問題について、あくまでも憲法の範囲内で検討することとしているものであります。  そのため、本研究においては、その文書でも明らかにされているとおり、旧憲法下の戒厳令や徴兵制のいろんな制度を考えることはあり得ないし、また言論統制などのような措置も検討の対象にしないということになって、そういう前提に立って私どもは今まで勉強してきたということでございます。
  60. 伊藤康成

    政府委員(伊藤康成君) 政府としての緊急事態対処ということで御説明を申し上げます。  先ほど御指摘がございましたが、今、防衛庁長官からもまた御答弁ございましたように、平成八年の五月以来、政府といたしましては緊急事態対応策ということで検討してきております。それらにつきましては、私どもの内閣安全保障危機管理室が事務局となりまして、例えば在外邦人等の保護ですとか大量避難民対策、あるいは委員先ほどお触れになりましたようなことも含めた沿岸重要施設の警備等、あるいはまた対米協力措置といったような課題について関係各省庁といろいろ検討を進めてきているところでございます。  ただ、これらは有事法制という問題ではございませんで、現行の法制の中でどういうふうにうまくこれらの事態に政府として対応していくかという検討をしているということでございます。
  61. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 今、防衛庁長官並びに室長から御答弁申し上げましたラインで政府としては対応いたしております。
  62. 益田洋介

    益田洋介君 二十二日、自由党の小沢党首は、陳健駐日中国大使と党本部で会談をいたしました。  そして、その席上、小沢党首はガイドライン法案に関連しまして次のように発言されている。今までの協力の範囲よりも、さらに拡大するわけだから、歯どめを明確に確立しておかないと、ずるずると自衛隊の米軍への協力、軍事行動の範囲が広がっていく。これは戦前の軍国主義の軍事的膨張政策と同じ発想であり、私はこれではいけないと考えますと。  しかし、一月には、小沢党首は周辺事態には中国と台湾も入ると明言されておられまして、これを証明するように二十二日、同日のCS放送朝日ニュースターのインタビューにおきまして小沢党首は、わざわざ北京まで行って、口先だけで中国は含まないとばかげたことを言っている限りは中国から絶対に信用されない、小沢党首らしい発言なわけですが、と言って、中国が明らかに周辺事態に入る、こういうふうに確認をされております。  この小沢党首の考え方、発言について、総理、法制局長官、それから自由党の最高幹部であられる野田自治大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  63. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 後段の方の発言についてでございますが、御指摘の小沢自由党党首の発言の詳細について、これをすべて承知いたしておるわけでは正直ございません。  ただ、同党首の周辺事態に関する発言に関して、先月、中国側から日本政府考え方について確認を求めてまいられました。これに対し、政府といたしまして、周辺事態に関する日本政府考え方につきましては、これまで説明してきたとおりであり、右立場に何らの変更はない、またこのことは一月十八日の記者会見におきまして野中官房長官からも明らかにしている旨説明いたしたところでございまして、これにつき中国側は、野中官房長官の発言が日本政府の正式な立場を代表していることを理解するといたしておるところでございます。
  64. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 今の益田委員の発言の中で、小沢党首の発言として若干異なるのではないかなという感じがいたしましたので申し上げたいと思うんです。  小沢党首は、いわゆる周辺地域、日本の周辺地域といえばどういうことなんだと問われたら、近隣の国、円をかいてみれば入るのは当たり前じゃないかと。しかし、周辺地域における事態、そして日本の平和と安全に重大な影響をもたらすような事態ということになれば、そういう事態がどういう内容なのかということを見ないと、そこで起きた事態すべてが、あらゆるケースが常に日本の平和と安全にかかわりがある事態ということと直結することではないのであって、それはまた当然のことであると。  だから、周辺という中からどこを外すとかというようなことをあらかじめ言ってしまうことの方が不自然なのではないかという趣旨のことを言っているので、報道されるときには極めて簡略に、党首もどちらかというと前略、中略のところがあるのですが、報道されるときにはなおさらその部分的なところだけが報道されるケースが多いということもありまして、お互いそこのところはしっかり見た上で判断しなければいけない、そのように思っています。  いずれにしても、今御指摘がありましたように、このことについて今週月曜日に陳健大使と小沢党首と一時間ほどじっくりと意見交換をしていただいて、十分理解をしていただいたのではないかというふうに私は印象を受けております。  それから、もう一つ気になるのは、広がっていくというようなお話がございました。確かに日米安保条約は第六条で、いわゆる極東条項において、極東の平和と安全の維持のために必要な場合には日本国の区域内の施設の利用を米軍に、陸海空軍に許される、こういうことになっておるわけでありますが、言うならオペレーションの上において後方地域支援ということを自衛隊が行うわけでありますから、そういう点で日本の平和と安全のために重要な影響を与える事態ということがもちろんあるわけです。  そういう形でやっていこうということであるから、なおさら一定の歯どめをかけておくということでなければ、事実行為が、既成事実がどんどん広がるというようなことがあるという警戒をそれこそ周りの国が持つということについてはしっかり頭に置いた上で、そういう意味での歯どめ的なことを考えておく必要があるんだ、こういう趣旨であって、どんどん広げていこうというようなことがあってはいけないんですということを申しておるわけであります。そこのところは誤解のないようにお願いをしたいと思います。  特に中国との間で小沢党首が話しておられるのは、日中共同宣言においてもはっきりしておりますが、台湾は中国の一部であると言い、そういう中国政府の考えを日本政府は理解し尊重するという共同宣言が現にあるわけでありますから、そういった意味でそこにおける事態が直ちに日本の今度の周辺事態法における事態ということと直結するものではないという趣旨のことをお二人で話をされたと私は考えております。  そういう点で、やはり事柄の事態が日本の平和と安全に重大なる影響を及ぼすという、ここのところが一番大事なポイントであって、まさにそういう点では地域ということがどこが入る入らぬということに意味があるのではなくて、どういう事態が発生するかということにより意味があるんだと。これは今日までずっと外務省がおっしゃってきた路線と私は変わるものではない、そのように考えております。
  65. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 私からは、いわゆるガイドライン法案に言う周辺事態、すなわち「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」とはいかなる意味であるかということについてのお尋ねという観点からお答えをいたしたいと思います。  これはもう今までにいろいろな立場から答弁がなされておりますとおり、この周辺事態、すなわち「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と申しますのは、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断すべきものであるという前提で書かれているわけでございまして、したがってその生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできないということが言えようかと思います。  他方、周辺事態と申しますのは、我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態でございますから、現実の問題としては、このような事態が生起する地域におのずと限界があるということは、これは当然のことだろうと思います。  したがいまして、もう既に関係大臣から答弁がございましたように、地球の裏側において生起することは想定されないとか、あるいは中東やインド洋で発生することは現実の問題としては基本的には想定されないということは、これは当然この法案の解釈として出てくることであろうと思います。しかし、それ以上に、地域をあらかじめ特定して、法案の意味はこうでありますということを申し述べることは事柄の性質上困難でありますということでございます。
  66. 益田洋介

    益田洋介君 次に、KEDOの問題に移りたいと思います。  九八年、昨年の夏から秋にかけまして米国議会で大変話題になりましたKEDOの問題ですが、大変に財政的に米国の負担が大きいわけでございまして、アメリカ議会の中には、米朝合意に果たして北朝鮮が従う意向があるのかどうか、そして九九年会計年度の予算におけるKEDO関連拠出への議会承認を条件としよう、そういう議論がなされているところで、偵察衛星で探知された北朝鮮の金倉里というところにおける新たな原子炉建設疑惑が発生したのに加えて、昨年八月、日本上空を三段ロケット、テポドンミサイル型ロケットが事前通告なしに発射された。  こういうことで、非常にアメリカ議会は後ろ向きの姿勢を示すようになっている。九九年会計年度予算ではKEDOへの拠出は承認を二段階で行うことに決めたことに加えて、議会は北朝鮮政策調整担当官を任命するように政府に求めて、昨年十一月にウィリアム・ペリー前国防長官が就任して、本年第一・四半期、ですから三月末までに再検討の報告を議会に提出するという運びになっているわけでございますが、こうした一連の経緯からいいまして、そしてテポドンの問題も、それから新原子炉建設疑惑も何ら解決されないで現在に至っている、したがってKEDOもそろそろ終えんするのではないか、そういう懸念さえ出てきている。  こういうふうな経過について、総理、防衛庁長官の御所見を伺いたいと思います。
  67. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) KEDOは北朝鮮の核開発を阻止する最も現実的で最も有効な手段である、今でもそうである、そういうふうに思っております。そうでありますから、我が国はKEDOを引き続き支援していく必要がある、このように考えております。  軽水炉プロジェクトについては九七年八月から初期建設工事が開始されておりますが、我が国としても関係国とも連携しつつ、プロジェクトを推進すべく努力していく考えであります。  KEDOの枠組みを維持する上で、今、委員も御指摘になったように、北朝鮮が秘密核施設疑惑やミサイル問題等の国際的な懸念を解消する行動をとることが米国の議会、世論に対しても、あるいは我が国の世論に対しても大変必要なことであります。我が国としては、米韓両国と緊密に連携しつつ、このような国際的な懸念に対処していく方針であります。
  68. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 益田委員、今米国の議会等におけるこの問題についていろいろと御意見の出ておることの御紹介がございました。  ただ、KEDOにつきましては、今、外務大臣が申し上げましたような趣旨で、ぜひ北朝鮮の核開発というものを阻止するためにこうした形で軽水炉の建設に協力をしようということでございまして、政府としては、御案内のとおり、私たまたま外務大臣のときでありますけれども、十億ドル相当の円を拠出するということにコミットメントいたしておるわけでございます。ただ、我が国だけでできることではありませんし、中核的には韓国が中心でございましょうけれども、そうした関係の諸国と十分協議をしながら、所期の目的が達成できるような、北朝鮮の対応も含めまして慎重に対処していきたい、このように考えております。
  69. 益田洋介

    益田洋介君 KEDOについてもう一件です。  当初の予定では、北朝鮮に対して二基の軽水炉の供給プロジェクトが二〇〇三年に完成するという計画で出発したわけでございますが、日韓両国とKEDOとの資金拠出協定交渉がおくれておりまして、これは二十日わかったことでございますが、最短でも四年おくれて二〇〇三年が二〇〇七年にずれ込んでしまうのじゃないか、こういう懸念が出てきた。なぜこの資金拠出協定の交渉がおくれているかという背景には、日本政府が要求しております拠出資金の返済保証をKEDO側が提出しない、拒否している。これが一つのデッドロックになっている。  これについてのお考え方を伺いたいわけでございますが、懸念されているのは、こうしたことでプロジェクトがおくれて着工もできていない。KEDOの体制自体の根幹が揺さぶられて、最悪の事態を考えれば北朝鮮に核開発再開の口実を与えかねない、そこまでの懸念がある。この問題を放置しておいてはならないわけでございまして、先ほど言いましたように新たな地下の核施設建設疑惑が浮上しておりますし、昨年八月のテポドンミサイル型ロケットの発射というようなこともございます。  したがって、私としては資金拠出問題だけを抜き出して検討するのではなく、これらの疑惑、それからテポドンがなぜ打ち込まれたのか、これらの問題を一括して解決する必要があるのではないかと思いますが、総理、外務大臣防衛庁長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  70. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) ただいま御指摘のように、KEDOと日本政府との間で資金供与協定の交渉を行っていることは事実でございまして、まだ完全に決着を見ておりませんが、この交渉は鋭意やっております。KEDOの当初の建設目標として、米朝の合意の中で二〇〇三年の完成を目指すということが書かれていることは先生も御指摘のとおりでございますが、初期工事が始まりました九七年八月から一年たった昨年の夏ぐらいに本体の建設にかかるということが予定されておりましたのが、いまだにそういう段階に至っていないという点ではおくれていることは事実でございますが、このおくれを日米韓で協力して取り戻していくということ、これもまた鋭意努力すべきことと考えております。  先生が最後におっしゃいましたような北朝鮮との問題、この核疑惑に対処するKEDOのプロジェクト、そのほかミサイルとかいろいろな問題がございますが、そういうものに一括して対応していく必要があるのではないかという御指摘は、基本的に韓国の金大中大統領の包容政策というようなこともそういう考えに立脚してできているものでございまして、我が国といたしましても、そういう考え方に基本的に理解を示し支持しているところでございます。
  71. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほどから御指名いただいておりますが、KEDOの問題につきましては外交問題として外務省が窓口になっておりますので私からのお答えは遠慮させていただきたいと思いますが、ただ一つ、先般、金大中大統領に会ったりコーエン・アメリカ国防長官と会った際にも、全く共通のことを申されておったことは、この問題について日米韓それぞれの立場がありそれぞれの意見があるけれども、この点について三国間で少しでも整合性を欠くようなことになれば北朝鮮を利することになるので、十分な連絡をとって慎重にひとつ意見の整合性を図ってやっていきたいという発言が両者からあったということを御紹介し、私どももそのことは大変今後大事なことだろう、こう思っております。
  72. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 基本的にアジア局長が答弁したとおりでありますが、現在、KEDOとの間で資金供与協定の交渉を行っており、交渉がまとまり次第国会にお諮りしたいと思っております。  そして、今KEDOの建設がおくれているという直接の原因が、この資金協定がおくれていること自体がそれほど関係あることではないというふうに理解をしております。
  73. 益田洋介

    益田洋介君 では、何が原因ですか。
  74. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) これは、経費の分担を決める段階の交渉、こういう期間に北朝鮮から韓国に対する浸透工作等いろいろございまして、そういうことが起こるたびに関係国の検討状態が滞ったということがございます。これが基本的にKEDO全体の資金配分、分担、それから協定のプロセスがおくれている原因になっている、そういうふうに認識をしております。
  75. 益田洋介

    益田洋介君 総理はどうお考えですか。
  76. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) KEDOの問題に関連いたしまして、核開発の問題あるいはミサイル開発とその発射の問題等、関連して考えるべきではないかという委員お尋ねでございまして、そういう御認識もあろうかとは思いますが、そもそもは核施設の開発、すなわち核疑惑から出発をいたしておるわけでございまして、それを抑止する形でこのKEDOが出発をいたしております。  ミサイルにつきましては、直接的の関連というよりも、むしろ想定されることは、核が開発をされ、核弾頭のような形でそれを運搬する手段としてのミサイルの開発あるいはその実験ということが行われているということについてはいろいろな意味で疑惑を大きくしていることは事実であろうと思いますが、やはりこの際は米朝あるいは四者会談、こうしたことを通じまして改めて核疑惑、核開発疑惑についてきちんとした対応がとれるということでありませんと、KEDOに対しての我が国の対応ということは行い得ないわけでございます。  そういった意味で、いろいろ交渉の過程でございますので種々問題があろうかと思いますが、その点については先ほどアジア局長も答弁いたしておりましたけれども、いずれにいたしましてもそういう過程を越えて日本としての責任はKEDOに対して果たしますが、果たす条件を確実なものにいたさない限りにおいては、日本といたしましてもこれだけの、十億ドル程度の円の協力をいたそうということでありますから、慎重の上にも、そしてまたそうした資金が提供のできる背景を国民にも説明のできる形でなければならない、このように考えております。
  77. 益田洋介

    益田洋介君 それでは次に、破綻金融機関についてお伺いいたします。  二十二日、これまで商法の特別背任容疑で刑事告発をされておりました北海道拓殖銀行の元頭取二人を含む関係者に対し、札幌地検などは同容疑で近く立件する方針を固めたということでございます。これは回収の見込みがないのに多額の融資を実行して拓銀に損害を与えたというものでございます。これに先立って、御存じのように、日債銀の破綻する前年の九七年、三十四の金融機関が出資をしたということで、興銀と大和銀行、日本生命の三社が適正な判断なしに出資に応じたということで損害賠償請求を起こされている。それからさらに、二十三日には、住管機構が新たに、これは今月の一日に約三十億円で和解が成立した住友銀行に対するのと同じように、紹介融資の責任をさくら銀行、三井信託銀行、関西銀行、三行に対して紹介責任を追及する方針を固めたということでございます。  こうした一連の不祥事がいまだに続いているわけでございますが、これは当時の大蔵大臣、また大蔵省の関係者に当然行政監督責任があったのではないか、この点もやはり追及すべきじゃないかと思いますが、大蔵大臣及び総理の御意見を拝聴したいと思います。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最初に、拓銀につきましては、大蔵省が過去の検査で融資審査体制に問題があるところを何度か指摘いたしておるのでございます。また、北洋銀行等を受け皿とする処理策につきましても大蔵省が関与いたしました。また、一種の紹介責任ということにつきまして、中坊社長が既に訴訟の上で和解をされたケース、あるいは今おっしゃいましたような複数の金融機関等と協議を行っていく旨を表明されております。  したがいまして、その都度都度の行政責任あるいは刑事責任の告発等々は行われておりますし、行政としてこれに関して故意または重大な過失があったとは思われませんけれども、ただ一般に言われておりますように、大蔵省の銀行行政というものがいわゆる護送船団方式であったということは事実でございますから、そうである限りにおいて、たとえそれが具体的にどのようなものであれ、護送船団を指揮した、あるいは監督をした行政というものは、私はそれについての責任がある、それは刑事責任とかあるいは株主代表訴訟といったようなものとは異質なものであろうと思います。故意または重大な過失があったとは思いませんが、結果としてこういう結果を招いたわけですから、行政はそういう責任をやはり持っておるというふうに私は考えております。
  79. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) ただいま大蔵大臣が御答弁申し上げたとおりと認識しております。
  80. 益田洋介

    益田洋介君 具体的には責任がおありだというふうに大蔵大臣はお認めになりましたけれども、どういう責任のとらせ方をさせるのが適切だとお考えですか。
  81. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 直接にこのことと関係のある場合ない場合がございますけれども、まず全体といたしまして、大蔵省のそのような金融行政というものは国会でも世論からも厳しい批判を受けました結果、既にかなりの部分それは改められるに至っております。かなりの部分が私、大蔵大臣の所管を離れておる。このことはやはりどう申しますか、そういう責任というものを世の中から追及され、またそれについて大蔵省としてもそういう世間の御批判を受けたということであろうと思います。  また、これに関連いたしまして、あるいは関連ない場合もございますが、幾つか何人かの役人について省内でそれ相当の処断が行われた、また刑事事件に発展したものもございまして、そういう意味で、広く世間から批判を受けたことに対して反省をしているというのが現状であると思います。
  82. 益田洋介

    益田洋介君 それでは次に、行政改革についてお伺いしたいと思います。  直近の例ですが、郵政官僚OBが天下り先でありました郵便番号区分機を扱う会社数社、日本自動機器保守その他でございますが、国税局の税務調査を受けたところ約一億二千五百万円の所得の申告漏れがあった。  二つ目は、日本道路公団の最大の関連財団法人であります道路施設協会、これは二つに分割されて公益法人として今運営されているわけでございますが、その企業への建設省及び道路公団からの天下りがいまだ根絶しておらない。十三人ずつ理事がおるわけですが、そのうちの半分は、十三名は建設省か道路公団出身のOBである。これは、行政改革というのは何か最近死語になってきたようでございますけれども、改めて小渕内閣の行政改革に対する取り組み方、私はそれを伺っておきたいし、総務庁長官の御意見、さらに監督官庁である郵政省及び建設省からもそれぞれ大臣の御意見を拝聴したい。
  83. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) お尋ねの郵便区分機を扱う会社ということでお答え申し上げたいと思います。  民間会社のことなので監督の立場はございませんが、報道がございましたので郵政省と契約関係がある三社に照会をいたしました。  郵便区分機の保守会社である日本自動機器保守、またNECポスタルテクノレクス、この二社については申告漏れと指摘された項目はいずれも郵便区分機とは関係ないものでありました。そして、経理方法についての税務当局との見解の相違によって生じたものであるということでございます。郵便区分機は扱っていませんが、報道にありました極光電機産業についても、同様に見解の相違によるものだということを聞きました。  今後、税務当局の見解に沿って適切な対応が行われるものと考えております。
  84. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 日本道路公団の関連の道路施設協会への建設省OBの天下り問題でございますが、まず結論から申し上げまして、先生御指摘の、これが全然進んでいないということはないわけでございまして、鋭意努力をしておるわけでございます。その道半ばとひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それで、その公正な執行に対します国民の疑惑を招かないようにするということがまた私は第一だと思いまして、それは今法律によりまして人事院の承認等がなければならないというきちっとした制度になっておるわけでございます。いわゆる随意契約などのそういう管理業務につきましては、発注の透明性、客観性を確保する観点から競争入札というものを導入いたしておるわけでございます。  そして、先生御指摘のように、その人数をチェックいたしますと、確かに理事の在籍数十四名、その中で建設省出身者が二名、そして建設省での勤務経験を有した国土庁で退官された者が二名と、四名であったわけでございますが、それが三名に減っておるわけでございまして、一人といえば確かに一人でございますが、理事の数が四で、その出身者は四名であって、その中の一人が減って三名になったということでございますから、その出身者が占める割合が、平成八年九月二十日の閣議決定の「公益法人の設立許可及び指導監督基準」におきます、理事の現在数が官庁の出身者は三分の一以下であるという、そのことはきちっと守られております。そしてまた、同一業界の関係者が占める割合は理事現在数の二分の一以下であるということも守られておるわけでございます。ただ、数値におきまして私は十分なものがまだないと思っておりますから、今後その方向に向かいまして最大の努力をしてまいります。
  85. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 国家公務員の特殊法人などへの天下りのことでございますが、これはずっと我々も念頭に置いて行政改革と並んで公務員制度調査会で議論を続けてきているところでございます。もうすぐ公務員制度調査会から答申が総理の方に出されるわけでございますが、その内容は、例えば国家公務員が長く、せっかくそこで公務員になられて、長くそこにとどまって最後まで公務員としての人生を全うされるという生き方もできるように、例えば定年を延長するということを一方で考え、あるいは、それと同様でございますけれども、並行して各省庁で天下りとして世話をするというようなことを制限する、一括して政府全体としてやるというふうなことが答申に盛り込まれる予定でございます。  この問題は、いずれ早晩天下り問題、そして定年の延長の問題というのは決着をつけなければいけないということはよくわかっておりまして、その方向でもって今大変努力を集中しているところでございます。  なお、行革について死語になったというお言葉でございますが、小渕内閣は火の玉となって今やっておりますので、どうぞ御認識をいただきたいと思います。
  86. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 今お話しのように、行革が死語になっておるのではないかという厳しい御指摘がございましたが、そうでありませんように全力を挙げて努力をいたしていきたいと思いますし、特に御指摘をいただいた点については天下り問題がございました。今、総務庁長官が申し上げましたように、この問題につきましても、ぜひ法律の形できちんと対応のできるように全力を挙げて努力をし、御指摘が当たりませんように全力を挙げていきたいと思っております。
  87. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時五分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  88. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度総予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。益田洋介君。
  89. 益田洋介

    益田洋介君 最初に、午前中に日銀に対して資料要求をいたしましたが、この問題はぜひ理事会預かりで協議をしていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  90. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまの益田君要求にかかわる件につきましては、その取り扱いを後刻理事会で協議いたしたいと存じます。
  91. 益田洋介

    益田洋介君 ありがとうございます。  開銀総裁、お忙しいところ恐縮でございます。  先日、開銀法の改正に当たりまして財政・金融委員会で審議をいたしまして、その際、私が開銀に対して、今回の法改正がなされればどれぐらいの貸し出しの増となり、貸し渋りが解消に向けて動き出すのかと。この質問に対して小粥参考人は、今回の時限立法が成立いたしましたらば、緊急経済対策の一環として開銀の融資額は約三兆円程度、そして債務保証についても二兆円程度、こういうふうな枠を政府からいただいているものでございますと。それから、もちろん償還確実性の原則を守りながら、できるだけぎりぎりの対応をしてまいりたい、そしてこの五兆円という総額に、大きな数字ではございますが、少しでも近づく努力を重ねたいと、このように決意を述べられましたが、このお考え、今でもお変わりありませんか。
  92. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) お答え申し上げます。  昨年十二月の臨時国会におきまして、時限立法ということで開銀法の改正が行われまして、開銀の業務が拡張をされました。これは、お尋ねのように緊急経済対策の一環でございます信用収縮対策のための対応ということで、私ども、実は貸し渋り対策につきましては一昨年の十二月以降取り組んでまいったわけでございますが、お尋ねの昨年十二月の開銀法の改正を受けまして、これまで開銀の業務としては対応し得なかった社債償還資金融資、あるいは設備投資と直接関係のない長期運転資金融資等の導入が行われましたので、改めて貸し渋り対策に抜本的に取り組んでいるところでございます。  そこで、ただいまの御質問でございますけれども、その当時お尋ねをいただきました、これでどのぐらいの実績が上がるのかと。見込みにつきまして、私は、これは新しい業務でございますので、現在の状況のもとでかなり多くの需要はあると存じますが、ただ私どもも初めての業務という部分が多いものですからなかなか数字としては申し上げにくい、ただし相当の需要があり、私どもといたしましても開銀法の原則を踏まえながらできるだけの対応をしたいと、こういうふうにお答えを申し上げまして、数字につきましては、大きな数字が与えられておりますけれども、私ども、いわば努力目標としてこれに一歩でも近づくように努力を重ねてまいりたい、こういうふうに申し上げました。それからまた、そのときの私のお答えといたしまして、償還確実性の原則をしっかり踏まえながら、一方では緊急経済対策に基づく対応ということでできるだけぎりぎりの対応をしたい、こういう表現で申し上げたと存じますが、その点は現在でも同様でございます。
  93. 益田洋介

    益田洋介君 貸し渋りの問題については、官房長官ははらわたが煮えくり返る思いだと発言をなさっております。  今、開銀総裁のお話がございましたが、現実にはまだ市中では貸し渋りが横行しておりまして、私も、開銀に借り入れを申し入れたというある中小企業の方から、やはり貸し渋りは現実的に何にも解消されていない、こういうふうな話でございます。具体例がございますので、今の総裁のお考えを体して実務者は果たして対応しているのかどうか。ちょっときょうは時間がございませんので、後ほどしかるべき方に私の事務所に来ていただいて御説明を申し上げたい。その上で、総裁の現在の御決意に基づいた対応をぜひしていただきたい。ちまたの声でございます。実際に貸し渋りはおさまっていない。  官房長官、いかがですか。
  94. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 本来、金融機関というのは回収可能なところに貸すというのが金融機関本来の業務だと私も思っております。  ただ、私どもが会見で問われまして言いましたのは、あのときには、昨年の十月、議会の御同意もいただいて早急な対策として保証協会の保証についての措置を行ったわけでございまして、その措置に対しまして、この機に一挙に旧債を処理しようとする動きがありまして、私どもにもその指摘が随分あったものでございますので、政府が中小企業の困難を何とかしようとし、国会もまた大変な日程の中で御協力を賜ったのに対して、金融機関がモラルを考えないでこの機会に旧債をいわゆる貸しはがしをしよう、そういう考え方はまことに遺憾であるという意思を表明したのでございまして、今もその気持ちには変わりはありません。
  95. 益田洋介

    益田洋介君 先ほど申し上げた実例はベンチャービジネスでございます。ですから、本来、貸し渋りというのは中小企業の救済のための対策だけじゃなしに、ベンチャー企業を育てれば、就職といいますか、失業率の減少は望めるわけでございます。新しい仕事を創出する、そういったベンチャービジネスにも注目をして開銀もぜひ御努力願いたいと思います。  先ほどの件、よろしゅうございますか。
  96. 小粥正巳

    参考人(小粥正巳君) お答え申し上げます。  時間もございませんので、昨年十二月の法改正以後の私どもの融資の実績を簡単に御報告させていただきます。  法改正が成立いたしましたのは昨年十二月の半ばでございますが、その十二月及びことしの一月、二カ月の合計で、件数では二百九十五件、金額では七千七百二十五億円。件数では前年度の同じ期間に比しまして二倍、金額では二・八倍、これだけの融資の実績がございます。もちろんこの中には通常の融資も含まれておりますけれども、いわゆる実質的に貸し渋りに対応したものは、金額を先ほど七千七百億円と申し上げましたが、その約七割は実質的な貸し渋り融資の実行、こういうことでございます。  そこで、私どもといたしましては、もちろんまだ不十分であるかもしれませんが、限られた人員を動員して必死に対応しているということは御報告申し上げたとおりでございます。  ただ、先生の先ほどの御指摘で、まだ貸し渋りは一向に解消されていない、こういう御指摘でございますが、今中小企業のお話がございましたが、もちろん、御案内のように他の政策金融機関も大変御努力をされていると伺っております。私どもは制度上、中小企業より規模の大きい中堅企業等がその対象でございますが、先ほど御指摘のありましたベンチャービジネスにつきましても、私どもは四年前からベンチャービジネスに対する融資の制度を設けて対応しておりますし、また貸し渋りの問題としても懸命に取り組んでいるところでございます。  ただ、貸し渋りが現在なくなっていないかと申しますと、私どももこれは貸し渋りというものをどう受けとめるかでございますが、私の考え方では、金融機関サイドから申し上げますと、内容的にその金融機関として融資すべき企業に対して融資をしていないということであれば貸し渋りのそしりを免れないかと思いますけれども、私どもといたしますと、先ほど申し上げましたように、担保の評価でありますとかあるいはその企業の収益の実態、そういうものをよくお話を伺い、その審査をしながらぎりぎりのところまで踏み込んだ対応を心がけているつもりでございます。  ただし、繰り返し申し上げますけれども、法律上償還確実性の原則、これはしっかりと踏まえなければいけません。したがいまして、私どもに対して融資の御希望のある企業の御相談に応じている中には、私どもがよくお話を伺った上で残念ながら償還確実性の確認ができない、したがいまして、大変申しわけないのですが、融資の御希望に私どもとして対応ができない、結果としてお断りせざるを得ない、そういうケースも確かにあるわけでございます。これは大変残念なことだと思っておりますけれども、しかし、国会の御審議を通じましても、あるいは附帯決議もいただいておりますが、政府関係金融機関として、繰り返し申し上げます償還確実性の原則は、やはりいかに緊急対応のぎりぎりの考え方の中でも、これを踏まえないということは許されないわけでございますから、その意味で私どもは懸命に対応しているということはぜひ御理解を賜りたいと思います。
  97. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。福本潤一君。
  98. 福本潤一

    福本潤一君 公明党の福本でございます。  私は、ダイオキシン問題を中心に質問させていただきます。  公明党は、昨年二月にダイオキシン対策本部をつくりまして、委員会、またあらゆる活動を推進してまいりまして、ことし一月、法案を提出させていただきました。  そこで、この問題を扱っているときに、文明の構造の問題にまで突き当たる問題がございます。そこで堺屋長官に、現在の大量生産、大量消費、大量廃棄という現代文明について、またその変革についてお話を聞かせていただければと思います。
  99. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 私は十年以上前から、大量生産、大量消費、大量廃棄という近代文明がそろそろ限界に達した、日本は明治以来この近代工業社会をつくるのに努力してまいりまして、八〇年代の後半に世界で最もすぐれた近代工業国家をつくったけれども、世界の文明は多様な知恵の時代に転換しつつある、そういう意味日本も転換すべきだ、八五年に書きました「知価革命」でそういうことを申し上げたのでございますが、残念ながら、その転換はそれほどスムーズにいきませんでした。それが今日の問題でございまして、委員御指摘のように、ダイオキシンを初めとする廃棄物の問題もそういうことと無関係ではないと思っております。  したがって、現在の経済政策の中で、短期政策の景気振興とともに、そういう構造改革も考えなければならない、こういうことも経済審議会等で検討していきたい課題だと考えております。
  100. 福本潤一

    福本潤一君 こういう有害化学物質の問題は二十一世紀に向けて人類の生命を脅かす問題でございますので、同じく農水大臣に、現在の農業は農薬、化学肥料を大量に使用しておりますけれども、この現在の農業についてどうお考えか、お伺いします。
  101. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 農薬、化学肥料は、農業生産の飛躍的な向上あるいは農作業の労働時間の軽減等に大きな役割を果たしてきたと考えております。今後も食糧の供給のために、質量ともに食糧供給を安定的に確保していく上で必要な資材と考えております。  しかし近年、土づくり、いわゆる地力の低下とか農地の生産力の低下によりまして、また化学肥料や農薬への過度の依存によります営農関係の悪化といった状況が見られるのも事実でございます。また、肥料や農薬を避けるという消費者ニーズもだんだん高まっているというふうに考えております。  このような状況に対応するために、また農地の生産力の維持増強のために土づくりを十分に行うとともに、農薬や肥料の使用の低減を促進することが緊急の課題だというふうに考えております。このため、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律案というものを今申し上げたような趣旨から今国会に御提案を申し上げ、御審議をお願いしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  102. 福本潤一

    福本潤一君 枯れ葉剤も、また日本のあるときまで使っていた2・4・5T、これの中にもダイオキシンが含まれていて、ベトナムでは百八十キログラム、現今の日本でももう既にそれに近いのではないかというふうに言われております。  したがって、環境庁、厚生省両省に、一九八三年日本で初めて検出されたダイオキシンについてどういう対応をしてきたか、お伺いします。
  103. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) ダイオキシンは、環境保全上また国民の健康上大変重要な問題と受けとめて、これらに対処してまいったところであります。  去る二十三日に、閣僚懇談会の席上で、この対策会議を開催しようということで、総理大臣のもとに閣僚対策連絡協議会を昨日開催いたしました。その席上でも、このダイオキシン問題は国家的な最大の問題であるというとらえ方をしまして、あらゆる手段を講じてこの対応に当たっていこうということで決意をいたしたところであります。  また、TDIの問題にいたしましても、摂取量の仕方が環境庁そしてまた厚生省等々で意見の不一致もありましたし、またWHOとの整合性も考えていかなきゃならないということで、世界的な権威をいただきながら、我が国としての適切な対策を講じていくつもりでございます。  先生もうダイオキシン問題については専門家でございまして、いろいろとこれまでも御高説をちょうだいいたしておるところでありますけれども、公明党等から出ております今国会に対するダイオキシン法案等の問題につきましても、我々も真剣に考えていってその対策を怠りなくやっていきたいものと思っておるところでございます。
  104. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 基本的な事柄につきましては環境庁長官の方から今包括的に申し上げたとおりでございますが、環境ホルモンと言われるものはダイオキシンもその中に入りますし、その他今科学的に解明できない幾つかのかなりの物質が含まれていることが想定されております。  私どもとしては、環境ホルモン全体に対する配慮を行いながら、その後者の面については研究開発を今進めておりますが、前者のダイオキシンにつきましては、これもかなりな種類がございますが、この対策は厚生省の本来の行政事務と密着しておりますので、この対応をしてまいりました。  すなわち、一九九〇年にWHOの十ピコグラム、一キログラム当たりですね、その基準が示されたのを受けまして、動物実験その他を重ねてまいりまして、平成八年に、今議論になっております十ピコグラムという基準を策定いたしました。その翌年、環境庁がさらに望ましい基準として五ピコグラムを策定されたのは御承知のとおりでございます。  私どもとしては、これは幾つかの問題がございまして、まずTDIの統一の問題がございます。これは今、環境庁長官の言われたとおりでございまして、十か五かと、望ましい基準かあるべき基準か、とにかく統一しなきゃいかぬという問題意識を持っております。  それから、私どもは食品衛生の立場から、人体に対する影響度からいいますとダイオキシンが非常にウエートが高いわけでございますので、食品衛生上の一日当たりの摂取量の中でどの程度の水準になっているかというようなことも調査を独自にいたしております。  それから、人体への調査でございますが、これは血液検査と母乳の検査を実施しておりますけれども、人間の脂肪の中にあるダイオキシン成分の値がどの程度であればどうであるかというようなことが科学的に必ずしも確定はしていないようでございますが、私どもとしては、やっぱり人体の中におけるダイオキシンの消去の問題等が重要な健康上の問題でございますから、検討しておる。  それから、厚生省としては、一番今問題になっておるのは、所沢でも議論になりましたが、廃棄物処理施設の管理、設置、運営についてであります。  これは、廃棄物処理法をつくりまして、そして一定の基準値を設けまして、その基準以上の大型の、主として大型の廃棄物処理施設につきましては補助金を出す、あるいは改良する場合も要件に合致していれば補助金を出すという形でやっております。しかし、廃棄物処理法というのは、一義的に府県等に、特に産廃は府県に任せておりますけれども、これらの点が今問題になっている問題でございまして、その管理あるいはコントロールのあり方とか行政のあり方がやっぱり少し問われているのではないかなというように思っておりますので、これは検討してまいりたいと思います。  したがって、こういう問題意識で私どもアプローチさせていただいておりますが、ただいま環境庁長官からお話しのように、昨日、二十四日でございますが、政府におけるダイオキシン対策の推進ということでこれらの事項を五項目にまとめて、今後、精力的に政府レベルで、閣僚レベルでも政治の主導権を発揮してやってほしいという総理大臣の御指示もございまして、これに基づいて、各省庁が協調しながら、国民の健康を守る重要な課題でございますから取り組んでいきたいというように思っております。  その中身については、もう昨日も総理から直接御説明いただきましたが、基本方針をつくるとか、あるいはTDIの見直しをするとか、あるいは検査体制を充実するとか、あるいは実態把握と国民にわかりやすくこれを説明する必要があるとか、あるいは機動的な対応が必要であるとかいうようなことどもを、昨日、総理主宰のもとに決めまして、これに基づいて鋭意努力していこう、早急にいろいろな諸問題に取り組もうということを申し合わせてやっておるところでございます。
  105. 福本潤一

    福本潤一君 今の厚生大臣のお答えの中で、動物実験ではわかっている、人体に対する影響はまだこれからだということでございます。  私も、一九八三年以後も、愛媛大学農学部学者でおったときから、このダイオキシン問題は深刻な問題であるということで、霞が関の官公庁にもかなり言ってまいりました。やっと対応が進んできたかなと思うところはありますけれども、水俣病とかイタイイタイ病のときと、また薬害エイズの事件のときと同じような状況で進んでいる。  要するに、原因、結果、因果というのが人体で判明するために、どういう形の実験ができるのか。では、所沢では人体実験をやっているのかという話につながりかねないわけです。基本的に予防原則での法律というのをつくらない限り、あの水俣病のときの問題、薬害エイズのときの問題、つい最近体験しておるばかりの話じゃないですか。ですので、きちっとした予防原則にのっとって対応する必要があるということで法案を出させていただいたわけです。  一昨日、環境庁長官は、西欧に比して十年おくれているということで同僚議員にお答えになっておりますが、総理も同じ考えでしょうか。
  106. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 率直に申し上げて、私もこのダイオキシン問題の重要性ということについてはそれなりに深く理解しているつもりですが、どの程度おくれているかということにつきましては、私自身余り無責任なことを申し上げない方がよろしいかと思います。しかし、この問題についてかねて検討してまいりました環境庁、その環境庁を代表しての長官がそのような考え方を申し上げておるとすれば、この問題に対する対応につきまして、ヨーロッパその他の国々との比較においてそのような時間的なおくれをとっておるのではないかということでございます。  したがって、これを早急にスピードアップして、ほかの国に負けないような体制をつくり上げたい、こうした念願から、しばしば申し上げておりますダイオキシン対策関係閣僚会議をまず設置いたしまして、関係省庁の連絡を密にいたしますとともに、その対応について努力してまいりたい、この姿勢を持って会議を開催させたところでございます。
  107. 福本潤一

    福本潤一君 昨日やっとそういう会議ができ上がったと。ある意味では、所沢の問題でも、ホウレンソウをみんなの前で食べて安全だ、おいしいとかいう形でデモンストレーションをするような問題ではないと思うんです。むしろ総理大臣自身、この閣僚会議で何をして、またどういう形で取り組もうとされているのか、その心構え、決意を伺わせていただきたいと思います。
  108. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 本閣僚会議の目的とするところは、申し上げておりますように、第一に、ダイオキシン対策推進基本指針の早急な策定。第二に、耐容一日摂取量の見直し。この点につきましても、厚生省、環境庁等におきましての一つの基準というものが、政府部内におきましての対応が異なっておったというような点もございますので、こうした点を見直して、政府全体としての基本的な考え方を明らかにしていかなきゃならない。そして第三には、ダイオキシンに関する検査体制の整備。そして第四には、実態を把握し、国民への的確な情報提供などについて申し合わせをし、今後、政府一体となって全力で取り組んでまいりたい、その意思を申し上げたわけでございます。  所沢の問題につきましては、確かに私も所沢産のホウレンソウをみずから食させていただきましたが、その点については、無害であるか否かということよりも、やはり国民の皆さんにもこうした問題について国民的な問題意識というものも必要ではないかということで、私自身そうした態度をとらせていただきました。  こうしたことを通じて、政府といたしましても、先生の御指摘のようにダイオキシンというものは体内に蓄積されると聞いておりますので、そういった意味で、今申し上げたような諸点につきまして、より一層連携を密にしながら、それぞれの関係の省庁とも話し合って、将来に対する不安をなくしていく努力をしていかなきゃならぬ、こういうことで努力をさせていただいておるところでございます。
  109. 福本潤一

    福本潤一君 これは私ども委員会で、国土・環境委員会も含めて現地にもすぐ飛び、昨年一年間はある意味では一日も休みなく対応してまいってきたところでございます。本気でこの問題は、また水俣病とか薬害エイズと同じような状況にさせるわけにいかないという腹構えで取り組んでいただきたいと思います。  今回我々が出した法案の中に、一ピコという値を出させていただいています。これは、WHOが一から四ということで出てきた話でございますが、ある意味では、人間、体の中に毒素なり、マムシにかまれたというときは血清なりを打ってすぐ体外排出を図っていくわけでございます。そういった意味での対応も必要なぐらい日本にはダイオキシンが広く、ベトナム戦争と同程度という学者と三分の一程度という学者がおりますけれども、広がっているという認識を深めていただければと思います。  所沢と同じ件が愛媛県でも、初めて日本で検出された松山市西クリーンセンター、愛媛県の中でも魚で起こったということがあることを農水大臣、知っておられますか。
  110. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 承知しております。  平成二年十月に、愛媛県の紙パルプ製造工場が集中する地域において採取されたボラから高濃度のダイオキシン類が検出されたという報道で、地元で問題になったということだと承知をしております。  その後、環境庁、厚生省及び農林水産省が協力して、全国の紙パルプ製造工場に係るダイオキシン緊急調査を実施し、その結果を平成三年十一月に公表しております。調査の結果では、調査を行った全国の紙パルプ製造工場周辺漁場の魚介類のダイオキシン濃度は、一般環境の水域の魚介類の濃度と同レベルであったというふうに承知をしております。
  111. 福本潤一

    福本潤一君 その平成二年に起こった、魚で野菜よりもっとダイオキシンが蓄積されておるという具体的な事件のときに、会社ですら、塩素漂白だとダイオキシンが発生するということで酸素漂白にかえておるわけですね。今回の所沢でいえば、焼却炉問題に対してきちっとした対応をするということがましてや迫られている。所沢で焼かれている八割は東京からのごみです。また、農業でやった農薬の残留物が綾瀬川等にも逆に出ている。どこから出たダイオキシンかというのはわかるわけでございますので、所沢においても、補償のみならず焼却炉に関しても対応していただければと思います。  これは、所沢では身近な問題ですから、私も環境庁の人にぜひ行ってくれと言いましたけれども、身近な問題ですから、条例を国の規制よりももっと早く厳しく変えたわけですから、この点に対する決意を、焼却炉ですから厚生大臣、お伺いしたいと思います。
  112. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 所沢市の今回の問題の地域におきましては、かなりの数の産廃施設がございます。そういうことで、一つ一つは基準に該当しておりましても、その地域に集合してある場合は、私どもは注意しなければならないと思っております。  そういう意味で、これからの課題として、きちっと基準は守っていただくと同時に、配置その他についても検討を加えるべきではないかと。福本先生のまとめられた案におきましても、そういう総量についての問題意識が提起されておりますのは、大変参考にさせていただきたいと思っております。  なお、所沢市が条例によってもっと厳しい、今我々は例えば十四年までは八十ナノグラムでやっておりますが、そういう八十を四十にするという条例案を提案されたことも報道で承知しております。私どもとしては、TDIの変更等があれば、当然廃棄物の問題についてもあるいは必要であれば検討を加えていかなければならない、そのように考えております。
  113. 福本潤一

    福本潤一君 八十ナノグラム・パー・立方メートル、これだけのばい煙の中でのダイオキシン量ということで、これが決まった当初の話も、日本で現状に合った形でやったときに、西欧並みにやったら厳しい、八十ナノでとりあえずしておかないといかぬということで、二〇〇二年まで猶予したためにどういうことが起こっているかといいますと、産廃業者は二〇〇二年まで、所沢を初め、大いに燃やし尽くして、二〇〇二年になったら厳しくなるから職業がえしようと。産廃業者は八万ありますけれども、協会に所属しているのは一万五千まで。そういう状態で、商売がえしてでも、その前にもうけた上でかえようという現状が起こっておるわけです。  ですから、今回提案させていただいた一から四ピコの問題でも、具体的に現状で日本はこうこうこうだからという形でやるのではなくて、環境行政で、ドイツの環境教育まで行く必要はありませんけれども日本でも環境先進国としてむしろ西欧をリードするぐらいの対応をしていく必要があるというのが、公害に苦しんだ日本の今後の進むべき道じゃなかろうかということで提案させていただいておるわけでございます。  今回、ダイオキシンのみならず、環境ホルモン、PC容器もかなりのところで撤退していき、小型焼却炉全廃という対応をされていかれました。危機管理というときに官庁というのは、この前の母乳に出たときでも、安全ですよと言うときは即座に対応するんですね。現実にはそんな形で対応できるはずないのに、すぐ安全ですと、補償を恐れているのか何を恐れておるのか知りませんけれども。  文部大臣、物理学の権威者でありましたので、ぜひとも、健康を含めて危機管理と安全宣言のそういう出し方の文化構造について一言お述べいただければと思います。
  114. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) ダイオキシンについて、まず私の考えを申し上げます。  まだ必ずしもダイオキシン類の排出基準がはっきり制定されているわけではございませんけれども文部省としては、特にこれから長い年月活躍しなければならない児童生徒の健康に配慮しなければならない。こういうことで、少しでも心配があるというふうなことに関しては直ちに手を打ちたいということであります。  特に、ダイオキシンに関しましては、小型焼却炉の安全性が確認されない限りは原則として使用を取りやめ廃止するよう既に各都道府県教育委員会等に対して指導いたしました。その結果、十年度、今年度の終わるところでは九〇%の小型焼却炉が使用をしなくなると思います。こういう努力はしてまいりました。  また、さまざまな問題があります、先ほどおっしゃられました環境ホルモンにいたしましても、そういうことに関しては常に細心の注意をしているつもりでございます。
  115. 福本潤一

    福本潤一君 東大総長もされていた方だというので答弁に期待をしていましたけれども、問題が若干ずれておるようでございます。時間をかける意味がどの程度あるかわかりませんので、先に進ませていただきます。  ダイオキシン自体が実際に体内に入っている。ここにおられる方は全員はっきり言って侵されていると思います、私も含めて。そのときに、体外排出するときにどういう対応があるのかというので私もいろいろ探索しました、逆に。生物、化学、物理、それぞれの側面でいろいろ方法があったようでございます。  先に厚生大臣の方から、ダイオキシン対策として具体的にどういうものを考えられたか、お伺いしたいと思います。
  116. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ダイオキシンの中で、体外排出の点でございますね。  体外排出につきましては、厚生省として、従来厚生科学研究費というのがございまして、その中で平成十年度からこれを総合的に推進しております。つまり、人体に蓄積いたしましたダイオキシンの排出の促進に関する調査研究、あるいはダイオキシンの微生物処理技術の研究なども実施しておりまして、これはグルーピングで研究なさっておる先生方にそれぞれ課題を設定いたしまして、必要な研究費を支給し、研究していただいております。  今後、こうした国民の健康を確保し生活環境を保全するためのダイオキシンに関する調査研究でございますから、これをさらに積極的に進めていきたいと思いますし、有用な微生物群を利用した技術など、新たなダイオキシン対策技術の把握やその効果、有用性に関する調査研究を重点的に進めまして、実用可能な技術の開発普及に努力をいたしていきたいと思っております。  こうしたことを踏まえて、委員の御指摘のようなダイオキシンの問題の前進を図っていきたい、こう思っております。
  117. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 体内に取り込まれたダイオキシンをどういうふうに排出するかにつきましては厚生省の方でやっておられるわけで、直接的に農林水産省としてやってはございませんが、平成十一年度からダイオキシンを分解する技術について内分泌攪乱物質の動態解明と作用機構に関する総合研究を開始しまして、その中で微生物等を用いた分解技術の実用化に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
  118. 福本潤一

    福本潤一君 私が事前に質問を投げたときのEM、有用微生物群等の話だけお答えになったようでございますが、やはり国民の健康、そういうものを守るときは、例えば化学的には触媒による焼却炉の分解技術を進める、また物理的には超臨界水によるダイオキシンそのものの分解、また生物的には、という形で対応を考えないといけないと思うんですよ。  やはりそういった生命に与える影響、別に地震だけの問題ではなくて、防衛だけの問題ではなくて、保健、健康の面から見たときに日本人にこれだけの大きな影響を与えそうだと、本気で取り組んでいただきたいと思います。そうすることによって、経済企画庁長官、先ほどありましたけれども、逆にエコビジネスとか、そういったもので日本が先進国になれるという道が開かれると思います。ぜひとも本気で対応していただきたいと思います。  総理大臣、その点に対する決意をお伺いしたいと思います。
  119. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 御指摘の点、十分承りました。  極めて人間の生命、生存にかかわる重大な問題でございますので、改めて御指摘を受けながら、この問題に対して政府を挙げて全力で対応し、国民の不安を払拭できるようにあらゆる角度からの検討を進めてまいりたいと思っております。
  120. 福本潤一

    福本潤一君 今回、法案を出させていただきました。この法案を通すことによって、今、小渕総理大臣、某局で支持率が上がっているということでございますが、と同時に、今国会での最大の眼目が、情報公開法が二位で、一位がダイオキシン対策法でございます。その決意をお伺いしたいと思います。
  121. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) ぜひ、御党で既に参議院に提案されておると聞いておりますので、内容その他につきまして与党といたしましても十分検討させていただいて勉強させていただきますが、率直に申し上げて、内容のすべてにわたって私自身がそう理解をしておるとは言いがたい点もあろうかと思いますので、挙げて政府としてこの法案につきましても勉強させていただきたいと思います。
  122. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で益田洋介君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  123. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、小泉親司君の質疑を行います。小泉親司君。
  124. 小泉親司

    小泉親司君 日本共産党の小泉でございます。  日米ガイドラインについて質問をいたします。  まず初めに私質問したいのは、自衛隊の後方支援問題と憲法の問題であります。  政府は、自衛隊の後方支援問題について、武力行使と一体でないから憲法違反ではないとか、後方地域支援で後方地域を設定してやるから心配はないとか、さまざまなことを言っておられます。  そこで、まず初めにお聞きしたいのは、今回の周辺事態法では、日本が後方地域支援を行う別表の中に、物品役務の提供は、戦闘作戦行動に発進準備中のアメリカの航空機に対しては給油、整備を含まない、つまり戦闘作戦行動に発進準備中のアメリカの戦闘機などには給油や整備はしないということを明記してありますが、これは憲法上できないのか、憲法違反だからできないのか、そういう点でございましょうか。まず初めにお聞きします、総理。
  125. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 我が国から米軍の戦闘作戦行動の発進準備中の航空機に対する給油及び整備を行わないのは、周辺事態に際して我が国にそのような支援を受けたい旨の米軍の要望がなく、我が国としてもかかる支援を行うことが想定されなかったため、今、委員が指摘されたようなことになったわけであります。
  126. 小泉親司

    小泉親司君 ということは、憲法上問題はない、合憲であるという見解なんですか。
  127. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 行わないのでありますから、合憲だと思います。
  128. 小泉親司

    小泉親司君 それは大変ひどい答弁ですよ。法制局長官、どうですか。
  129. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) ただいまの防衛庁長官の答弁と申しますのは、要するに、現実に要請が想定されないからぎりぎりの憲法判断をいまだする必要もないし、していないという意味で、違憲とは断定しないという意味であろうというふうに理解するわけでございます。  これは、かつて私が衆議院で質問を受けまして若干の御答弁をいたしたところでございますが、要するに、現実にそういう要請があり得、また行うという場合には、憲法上慎重な検討を要する問題であるという問題認識は持っているということは申し上げたところでございます。
  130. 小泉親司

    小泉親司君 法制局長官は、一月二十八日、衆議院予算委員会で何とおっしゃっているか。よろしいですか。憲法の問題について、今回はこの戦闘作戦行動に日本から出撃する発進準備中のアメリカの戦闘機に対して給油や整備をしていいかということを鋭意政府で検討したんだ、ところが、アメリカに問い合わせた結果、アメリカが要らないと言ったんだと。しかし、法制局長官は、憲法上「絶対クロだというところまでの断定はしてないわけでございますが、私どもの立場では、今もやはり憲法上の適否について慎重な検討を要する問題であるという認識には変わりございません。」。  防衛庁長官と見解が違うじゃないですか。
  131. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 私は、現実的に行われないのであるから先ほどのような答弁をしたわけでございますが、法制局長官からお話しのように、この問題につきましては、憲法上の観点から見たらやはり慎重な検討を要するものだと思っております。
  132. 小泉親司

    小泉親司君 あなた、さっきの答弁と全然違いますよ。もう一回明確に、合憲、違ったということをあなたはっきり言いなさいよ、そんな。
  133. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を我が国が行うことは想定されていないということは申し上げました。かかる活動が法案に規定する後方地域支援に含まれていないことは、法案別表、備考に規定されているとおりであります。我が国の行う活動と憲法との関係につきましては、個別の事態に即して慎重に判断する必要があります。  私は、先ほどこのようなことが我が国として行うことが想定されず、法案上も明文で支援対象から除かれておるものについては憲法との関係を一般的に申し上げることは適当でないと考えまして申し上げましたが、最終的に法制局長官が慎重に申されたとおりであると思いますので、私の一番最初の答弁が言葉足らずであるとすれば、法制局長官と同じ考えであるということを改めて申し上げさせていただきます。
  134. 小泉親司

    小泉親司君 政府でこの件について憲法判断が違うというのは、私は重大な問題だというふうに思います。  戦闘作戦行動という言葉は、一九六〇年の日米安保条約の岸・ハーター交換公文に出てまいります。戦闘作戦行動というのはどういう行動を指すんですか。
  135. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) ただいま先生御指摘のとおり、昭和四十七年、この件に関しまして政府統一見解というのが出されております。  全文を読み上げるのは差し控えますが、主なところだけ申し上げますと、「事前協議の主題となる「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」にいう「戦闘作戦行動」とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであり、したがつて、米軍がわが国の施設・区域から発進する際の任務・態様がかかる行動のための施設・区域の使用に該当する場合には、米国はわが国と事前協議を行なう義務を有する。」。
  136. 小泉親司

    小泉親司君 あなた、もっと正確に読んでくださいよ。戦闘作戦行動というのはどういう行動を指すのですか。あなたは事前協議の話をしているんでしょう。でたらめ言っちゃだめですよ。
  137. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) ただいま私読み上げました中のその部分は、「「戦闘作戦行動」とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すもの」である、こういうことでございます。
  138. 小泉親司

    小泉親司君 岸・ハーター交換公文の実際に統一見解は、戦闘行動というのは航空機による他国への爆撃だと書いてあるじゃないですか。
  139. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 失礼いたしました。  先ほど私、全文は省略いたしますと申し上げましたけれども、その統一見解の中に「二、」といたしまして、先生が御指摘のような部分がございます。
  140. 小泉親司

    小泉親司君 ちゃんと読んでください。
  141. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 「わが国の施設・区域を発進基地として使用するような戦闘作戦行動の典型的なものとして考えられるのは、航空部隊による爆撃、空挺部隊の戦場への降下、地上部隊の上陸作戦等であるが、このような典型的なもの以外の行動については、個々の行動の任務・態様の具体的内容を考慮して判断するよりほかない。」。  以上でございます。
  142. 小泉親司

    小泉親司君 航空機から他国への爆撃、これに対して自衛隊が周辺事態の際に発進準備中の米戦闘機に対して給油や整備を行う、こういうことは憲法上あなたは認められると考えておられるんですか、どうですか。総理、これは重要な問題ですよ。
  143. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 今のお尋ねは、戦闘作戦準備中の戦闘機に対して給油、整備等を行うか、武器の搭載等を行うかということでございます。  これは、まさに今回の周辺事態安全確保法案ではそういったことを想定していない。先ほどから防衛庁長官も答弁していますように、一体に、軍事上の常識といたしまして、そういった行動はパイロットと一緒のクルーでもって対応するというのが基本でございます。
  144. 小泉親司

    小泉親司君 法制局長官は、衆議院予算委員会で、この点については慎重な検討を要する問題だ、絶対クロとは断定できない、つまり灰色である、こう言っておられるわけですよ。  ところが実際は、先ほど防衛庁長官が言いましたように、この問題は合憲だということになったら、米軍に対して補給、さまざまなことがこの中で全部できるということになっちゃうじゃないですか。総理どうですか。
  145. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 先ほど法制局長官は慎重に検討すべき点が残っておるという答弁をされました。そのことについて、防衛庁長官も後ほどの答弁でそれを是認しておるわけでございますので、政府としてはそうした考え方でございます。
  146. 小泉親司

    小泉親司君 私は、この問題は後でしっかりとやりますが、この問題はもう一つ重要な問題があると思います。  どういう問題かというと、戦闘作戦行動に発進準備中のアメリカの航空機に対しては給油や整備はしない、つまり発進準備中以外の航空機であれば整備や給油をしていい、こうなったら完全に武力行使と一体で軍事行動をすべてやれるということになっちゃうじゃないですか。総理、その点はどうですか。
  147. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) あくまでもこの周辺事態安全確保法案で考えております自衛隊が行動いたしますものは、それ自体武力の行使に当たらない、そういう性格のものでございます。  ただ、それ自体が武力の行使に当たらないものであってもそれが武力の行使と一体化している、こういうふうに評価されるものは避けるという意味で、そういったことを自衛隊がやる地域を後方地域に限定して武力行使との一体化も避けているということで、憲法上の問題は生じない、こういうふうに私どもは理解しております。
  148. 小泉親司

    小泉親司君 私が質問いたしましたように、今度の問題というのは、日本の後方支援の周辺事態法の別表二、先ほど言いましたように、戦闘作戦行動に発進準備中のアメリカの航空機への給油と整備は含まないということを差し入れたんですよ。  その点について、法制局長官は衆議院予算委員会で、これは憲法上いろいろ検討した、しかしまずはアメリカに聞いてみよう、アメリカに聞いたらアメリカは要らないと言ったと。だから、憲法上は絶対クロとは言わないけれども、憲法上の判断をしないままにこの部分を書き込んだということを言っているわけでしょう。  ですから、発進準備中以外の戦闘機、これについてはすべてオーケーだということを言っているのとこれは同じなんですよ。そうしたら、実際に戦闘攻撃、つまり他国を爆撃する、戦闘作戦行動に日本から飛び立つ、爆撃に行くアメリカの戦闘機への給油や整備は、発進準備中の段階まではすべて給油や整備をしてよろしいということになるじゃないですか。これがなぜ武力行使と一体じゃないのか、私は大変不可解だというふうに思います。これは全く憲法に違反する行為だと思いますが、総理、もう一度いかがですか。
  149. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 委員お尋ねは、武力の行使と一体となるというのはいかなる意味であるかということと密接に関係する事柄であろうかと思います。  この武力の行使との一体性の問題と申しますのは、要するに、みずからは武力の行使自体は行わない、しかしながら輸送とか補給とか医療とか、そのようにそれ自体は武力の行使に該当しないけれども、米軍の武力の行使とある一定の密接な関係がある行為をする場合には、我が国も武力の行使をしたと評価される場合があり得るという憲法上あるいは法的な評価に関する問題でございます。  そこで、武力の行使と一体化するかどうかというのはどのようにして判断するのかというのが非常に重要になるわけでございますが、それは従前からも申していますように、まず米軍の活動の状況、そして我が国の行動の内容、そして両者の地理的な位置関係とか密接性、そのような諸般の事情を総合判断して個々に判断すべき問題であるというふうに従前から申し上げてきているわけでございます。  ところが、今お尋ねの問題につきましては、要するに後方地域でそもそも行う行動である、そして対象となる米軍航空機は戦闘作戦行動への発進準備中というものではないということからいたしますと、仮に給油とかあるいは整備をいたしましても、先ほど申し上げましたような武力行使の一体性に関する判断基準に照らしますと、一般的には武力行使と一体化するとは判断されないのではないかということが私どもの判断でございます。
  150. 小泉親司

    小泉親司君 つまり、法制局長官がおっしゃっておられるのは、発進準備中以外の戦闘機はすべて合憲だとあなたはおっしゃったんです。よろしいですね。  ということになりますと、私、個々の問題についてあなたは判断を迫られるとおっしゃったのでお聞きしますが、では、例えば戦闘作戦行動に日本の基地から戦闘機が出撃した。それが帰投した。つまり日本の基地に帰ってきた。そのとき当然戦闘機は点検や整備や給油が必要だと、こういう戦闘機に補給をする。その戦闘機が例えば再出撃をする。こういうことに対しても、あなたは憲法上、憲法違反にならない、こうおっしゃるわけですか。
  151. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) お尋ねの場合が、いろいろな戦闘作戦行動との関係でいろいろな距離があり得ようかと思いますけれども、一般的に申し上げますと、先ほどの一体化の判断基準からいたしますと、一体化する、しないことが一般的には判断できるんではなかろうかということでございますが、いずれにしましても、諸般の事情を総合判断して個々的に評価すべき問題でありますから、ここで特定の場合を想定して、これについてはこうだ、あれについてはああだと一般的に私からお答えするのはいろいろ問題が残ろうかと思う次第でございます。
  152. 小泉親司

    小泉親司君 あなたが個々の問題について判断するとおっしゃったんで聞いたんですよ。もう一回言ってください。あなたがおっしゃったんです。
  153. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) でありますから、一般的、類型的には武力の行使と一体化しないと判断されることが多いんではなかろうかということを申し上げているわけでございますが、それ以上については現実に生じました具体的な場合についての諸般の事情いかんということがなければ、最終的、断定的なことは申し上げることが非常に難しいという事柄であろうと思います。
  154. 小泉親司

    小泉親司君 これは憲法判断でございますから、総理、同様の質問をお願いいたします。
  155. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 法制局長官の申し上げたとおりであります。
  156. 小泉親司

    小泉親司君 ということは、戦闘作戦行動に出撃した戦闘機、その再出撃に対して、補給や、つまり給油や、再出撃する戦闘機ですよ。あなたは、発進準備中以外は全部含むとおっしゃったじゃないですか。よろしいですか。ですから、そういう戦闘機に対して点検、整備、補給をする、これは憲法違反じゃない、つまり合憲だと総理はおっしゃるんですね。
  157. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) あるいは御質問の趣旨を十分把握していないのかもしれませんが、あくまでもこの備考で述べておりますのは、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油、整備ということでございまして、仮に今、先生が設例されているような帰投した戦闘機がまた行動をとるということであれば、それが戦闘作戦行動のために発進準備中、こういうふうに評価されるのであれば、ここで御説明しているようなことになるのではないか、こんなふうに思います。
  158. 小泉親司

    小泉親司君 そういうことを言っておるんじゃないんですよ。あなた方が文章の中に戦闘作戦行動に発進準備中のアメリカの航空機と書いてあるんだから。つまり、いろんな段階があるでしょう。あなた方は発進準備中ということで線を引いたんですよ。あなた方自身が引いたんでしょう。そこから先は憲法違反でちょっと憲法上疑義があるかもしれない、絶対クロとは言わないけれども、憲法上疑義があるかもしれない、それ以外はすべてやってもいいということになったんでしょう。違うんですか。だから、実際に言うように、そんな再出撃するというんじゃないんですよ、私が言っているのは。そこまではすべてやっていいということなんだから、そんな発進準備中のことだけがとりたててある段階があるんじゃないんです。連続しているんです、行為なんだから。その連続しているもののうちの発進準備中まではすべて自衛隊はやっていいんだ、これは合憲なんだと。こんな憲法違反、絶対許せませんよ。どうですか。
  159. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) まさに戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機、こういうものに対する給油、整備というのは、通常先ほど申しましたようにパイロットと一緒のクルーがやるものですから、米側からもそういったニーズはないということでございます。したがって、そういう場面がどういうことになるかわかりませんが、もし仮に設例のように、一たん行動をした航空機が戻ってきて再度行動をとるという設定だと思いますけれども、そういう段階で改めて戦闘作戦行動のために発進準備中、こういう評価を受けるような状態であれば、逆にそういうことであれば米側からはそれに対する給油だとか整備だとか、そういったニーズはないということになろうかと思います。
  160. 小泉親司

    小泉親司君 それでは、発進準備中というのはどういう状態を言うんですか。
  161. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) まさに具体的な指令を受けてこれから作戦のために飛び立つ、こういうふうな状況でございます。
  162. 小泉親司

    小泉親司君 ですから、発進準備中というのは極めて限られた、極めて特定されたことを言っているんですよ。そういう段階を言っておるんです。だから、それ以外はすべて合憲だ、つまり憲法上できるんだということに、今度の問題というのは、たった別表の一文に差し入れただけですべてそれが合憲だということを示したということじゃないですか。  あなた方はこれまで、例えば六〇年の安保国会のときには、御承知のとおりの林法制局長官の答弁があって、極東有事に出撃する米軍と一体をなすような補給業務をするのは憲法違反だということが言われてきた。しかし、旧ガイドラインの合意以来、あなた方は一体どこからどこまでなのかという線を引き始めたわけです。これまでその点について、八二年の角田法制局長官の答弁でも、ここでは何から何まで許されているとは申し上げないが、具体的にどこまでか今の段階で研究作業が始まったばかりなので確定的なことは申し上げられないと言ってきて、具体的には今回の別表の中でこれを差し入れたわけでしょう。そうじゃないんですか。  しかも、それを米軍に問い合わせたら、米軍が要らないと言ったのでここまではやらないけれども、あとは全部合憲なんだ、戦闘作戦行動に発進するさまざまな戦闘機に対する補給は、つまり給油や整備は全部憲法に認められている、合憲なんだというふうになったんじゃないですか。総理、どうですか。
  163. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 同じ御答弁になって恐縮なのでございますけれども、まさに戦闘作戦行動のために発進準備中でございますから、それから作戦行動に出て戻ってきたと。それで、仮にもしそれからもう一度戦闘作戦行動のために発進準備に入るということになれば、まさにその段階は今申し上げましたこの状況になるわけでございます。  したがいまして、そういうことにつきましては米側から要請を行うという、ニーズはないということでございますから、そういったことは行わないわけでございます。
  164. 小泉親司

    小泉親司君 私が聞いているのは、そういうことを聞いているんじゃないんですよ。発進準備中以外は全部認めたんでしょう。今までの政府見解は、戦闘作戦行動に出る、極東有事に出る戦闘機に対しては一体となった補給業務はできないんだと言っていたんです、あなた方は。それを、今度は政府見解を変えたんでしょう。明確にこれを合憲だということにしたんでしょう。発進準備中以外はすべてそういうふうにしたということなんでしょう。どうですか。
  165. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 先ほど来法制局長官も御答弁していますけれども、まさに我が国憲法との関係でどういうふうに考えていくかということでございます。  それで、我が方が行う行為は基本的に、補給であるとか整備であるとか、そういったそれ自体は武力の行使に該当しないものでございます。それ自体は武力の行使に該当いたしませんが、ただ、その状況によって武力の行使と一体化しているのではないか、していると、こういうふうに評価されるものは行わないという考え方から今回の周辺事態安全確保法案は整理をしているところでございます。  なお、この戦闘作戦行動に対する発進準備中の航空機に対する給油、整備につきましては、先ほど申しましたように、米側からもそういうニーズはないということでございますので、行わない旨記載をしているということでございます。  では、それの憲法上の評価ということにつきましては、まさに行わないということで我々は考えておりますので、一般的に議論するのは難しい、こういうふうに思いますけれども、その点につきましては先ほど法制局長官が御答弁されたところでございます。
  166. 小泉親司

    小泉親司君 戦闘作戦行動に発進準備中の航空機、それ以外のものでも戦闘作戦行動に参加する航空機なんですよ。その戦闘機に対して給油や整備をすることがなぜ憲法上認められるんですか。なぜ武力行使と一体とならないということになるんですか。これは明確に戦闘作戦行動と一体をなす行動以外の何物でもないじゃないですか。総理、どうですか、その点。
  167. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 先ほどの委員の御質問を伺っていますと、戦闘作戦行動への参加という言葉と、戦闘作戦行動への発進準備中という言葉、二つの言葉を使っておられますが、委員がこれは問題だと、こう言われる類型の戦闘作戦行動への参加というのは、この別表で書いております戦闘作戦行動への発進準備中という類型にほとんどが含まれる場合ではなかろうかと思うわけでございます。  したがいまして、そういう場合は別表で除外しておりますので、そもそも行うことを予定していないと。私が先ほど申し上げましたのは、そのような問題は仮定の問題であるけれども、まだ憲法上十分に検討すべき問題が残っているということを申し上げたにすぎないわけでございます。
  168. 小泉親司

    小泉親司君 この点も法制局長官と防衛局長の見解が違うんですよ。  スターズ・アンド・ストライプスは、これは例えば発進準備中と書いてあるんだけれども、実際にもう戦闘機に武装もされ、給油もされ、整備もされ、直ちに出撃する。さっき防衛局長はそうおっしゃったじゃないですか。あなたと全然違うじゃないですか。あなたはもっと幅広いんだなんて、そんないいかげんな答弁はないですよ。発進準備中といったら、実際に指令を受けてこれから飛び立とうという、そういう戦闘機じゃないですか。それは含まないんだということになったら、それ以外はすべて含むんだから。  よろしいですか。さっき私の参加という言葉を、私からすれば言葉じりをとらえられてお話しになりましたけれども、実際戦闘作戦行動にすべて参加することになるじゃないですか。その点でこの一文は、あなた方がこの一文を盛り込むことによって、発進準備中の段階に入るまで戦闘作戦行動に出撃する米軍すべてに給油や補給をしても憲法上問題ないという見解に立ったということで、非常に私は重大な問題だというふうに思います。  もう一つ、私がお聞きしたいのは、日本の基地から戦闘作戦行動に出撃する問題では、日米安保条約の根幹の問題としてこれまで実際に国会でも大論議になってまいりました。ところが、今回の法案では、戦闘作戦行動に出撃する米軍戦闘機に支援をすることを取り決めたわけですから、こうなればもうイエスもノーもあり得なくなったと。実際には、周辺事態では安保条約の事前協議制度も骨抜きになって、イエスもノーもあり得るというこれまでの政府見解を変えて、実際イエスしかないというこの法案は事実上の表明じゃないですか。私は、その点では、この事前協議制度という点でも大変重大だということを指摘しておきたいというふうに思います。  やはり私は、今回の問題は、日米安保条約の枠を超えるというばかりじゃなくて、憲法の枠を大幅に超えるものだと。  日米安保条約は、極東有事のために米軍が日本の基地を使用することは認めておりますが、実際にそれに対して自衛隊がさまざまな支援をすることは認めていないわけですから、こういう戦闘作戦行動という用語を初めて盛り込むことによって、事実上、発進準備中以外の戦闘機にはすべて補給をしてしまうというようなことで、それは合憲だということで進められるのは非常に重大な問題があるということを指摘して、次の問題について質問をしたいと思います。  次に、私は、日本政府が米軍のどのような武力行使に軍事支援を行うのかという点についてお聞きしたいと思います。  小渕総理は、今回の周辺事態法案は日米安保条約を超えることは絶対にあり得ない、安保条約の枠内だというふうに言われました。  そこで、総理にお聞きしますが、日米安保条約の枠内であれば当然国連憲章に基づいて、国連加盟国が外部から攻撃を受けた、つまり侵略に抵抗する以外の米軍の武力行使は認められないということになると思いますが、総理の見解をまず初めにお聞きします。
  169. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) ごく一般論としてお答えいたしますが、ある国が合法的に武力の行使を行う場合とは、国連憲章第七章のもとでの国連安保理の決定に基づき加盟国が武力を行使する場合を別にすれば、国際法及び国連憲章上の自衛権の行使として武力の行使を行う場合であります。このことは周辺事態が発生するか否かにはかかわりありませんが、仮に周辺事態に際して米軍がこのような自衛権を行使する場合、国際法上の自衛権行使の要件を満たすことが必要となるわけであります。
  170. 小泉親司

    小泉親司君 総理、今までの審議の中で、例えば周辺事態の認定に当たりまして、国家間の武力紛争以外でも周辺事態に認定することはあるとか、ある事態が国家間の紛争でない場合でも、内戦でも周辺事態に該当することがあるとか、こういうことが言われておりますが、総理も同様のお考えなんでしょうか。
  171. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) これも一般論でありますが、内戦とかクーデターとか、国内で発生した事態が純然たる国内問題にとどまり、国外に何ら影響を与えない場合であれば、それは我が国の平和と安全に重要な影響を与えることはないわけでありますから、周辺事態には該当しないわけであります。  しかしながら、ある国の国内で発生した事態であっても、それが純然たる国内問題にとどまらず、国際的に拡大して我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合には周辺事態に該当する、こういうことを従来申し上げているわけであります。
  172. 小泉親司

    小泉親司君 国家間の武力紛争以外でも周辺事態として認定することがあるということですか、総理。
  173. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 今申し上げたように、純然たる国内問題としてとどまる場合にはないけれども、もとが内戦やあるいはクーデターであっても、それが国際問題に発展してまさに日本の平和と安全に重要な影響を与える場合にはあり得ると、こういうことを何度も申し上げているわけであります。
  174. 小泉親司

    小泉親司君 私は、日米安保条約の審議の中で、アメリカの行動というのは制約をされておると思いますが、外務大臣、それは御存じですね。
  175. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) もう一度言ってください。
  176. 小泉親司

    小泉親司君 アメリカの行動は日米安保条約で制約をされておられると思いますが、どういう制約をされておられますか。
  177. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 例えば、国連憲章のもとで行うとか、そういったことが制約されています。
  178. 小泉親司

    小泉親司君 あなたがよく引き合いに出される極東有事の見解、この中にも米国の制約の問題が出ておりますね。どういうことを言っておりますか。
  179. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 正確に御質問を把握したかどうか自信がございませんが、六条との関係で申しますれば、米国の行動につきまして、三つの主題に関しまして事前協議が必要になるということが一種の制約であるということが言えると思います。
  180. 小泉親司

    小泉親司君 どうもとんちんかんな答弁なんですが、極東の範囲の問題での政府統一見解、岸答弁の中にどういうことが書いてあるかというと、まず極東の範囲について、まず第一の、外務大臣のお言葉ですから、パラグラフで極東の範囲が書いてある。続いて米軍の行動範囲が書いてある。  続いて何て書いてあるかというと、「しかしながら、米国の行動というものは、おのずから制約されているのであります。と申しますのは、米国の行動は、常に国際連合憲章の認める個別的または集団的自衛権の行使として、侵略に抵抗するためにのみとられるわけであるからであります。」。つまり、内戦とかそういうふうなものに米国の行動は適用するということは書いていないじゃないですか。制約があるんだと書いてあるんですよ。
  181. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 米軍の行動というのは、一遍に武力行使するだけではなくて、日本の平和と安全に重要な影響を与えるような場合にその拡大を抑止するとか、情報収集だとか、そういったこともあるわけでありまして、そういうことについて制約があるというふうには考えておりません。
  182. 小泉親司

    小泉親司君 私、その点は全く今までの政府統一見解と違うと思いますよ。  いいですか。岸総理は、この米国の行動というのは、常に国連、国際連合憲章の認める個別的または集団的自衛権の行使として侵略に抵抗するためにのみとられるんだと言っているんですよ。その点について岸総理は、再び当時のこの見解が出た安保委員会で何と言っているかというと、まず国連憲章という枠と憲法という枠があるんだと。このまず二つの問題があって、その上で、国連憲章に違反しての不当な侵略行為が現実に行われた、そういう事実がない限りにおいては日本の自衛隊の力もあるいはアメリカの防衛上の実力もこれはやらないというのが建前なんだと。  いつ外務大臣は見解を変えられたんですか。
  183. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 岸総理の昭和三十五年の統一見解には先生が御指摘になられたような記述がございます。  その意味するところは、まさに安保条約の第一条におきまして国連憲章との関係について規定があり、それからさらには第七条におきまして、安保条約というものは、「この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。」ということで、国連憲章の優位性というものを規定しているわけでございます。それを受けまして、米国の行動というものについて国連憲章の制約というものがあるということがこの統一見解で書かれている次第であると考えます。
  184. 小泉親司

    小泉親司君 そんなあなたの解釈を聞いておるんじゃないんです。ここに明確に言っているのは、あなたは国際法という言葉を強められたので私も強めますが、米国の行動は、国連憲章の行使として侵略に抵抗するのみですよ、外務大臣。侵略に抵抗することのみに米国の行動は制約があるんだというのが政府統一見解です。  いつ変えられたんですか、見解を。総理、見解をいつ変えられたんですか。内戦なんて書いてないんですよ。ひどいですよ、これは。
  185. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 侵略に抵抗するためというのは、既に侵略が起こったということだけではなくて、その平和と安全を維持する、そのためにいろいろな行動をとる、情報収集だとか、当然のことじゃないですか。それまで武力行使がない限り何にもしないということじゃなくて、情報収集をしたり、その前にいろいろするということは私は当然のことだと思いますよ。
  186. 小泉親司

    小泉親司君 総理はいかがでございますか。政府統一見解は、外務大臣と違って、明確に侵略に抵抗することのみ、のみですよ、米国の行動は制約されておるんだと言っているんですよ。しかも、先ほども私紹介しましたように、岸総理の政府見解は、武力行使が現実に行われたその事実がない限りにおいてはアメリカの防衛上の実力は使わない。明確じゃないですか。  政府統一見解を変えられたのですか、どうなんですか。はっきりと見解をお示し願いたいと思います。
  187. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) この米国の行動というのは、米国が武力を行使する行動、そういうことを言っているわけであります。
  188. 小泉親司

    小泉親司君 あなた、どんどん拡大解釈しちゃだめですよ。いいですか。ここの見解は何と言っているかというと、米国の武力行使なんて言ってないんですよ。米国の行動と言っているんです。米軍じゃないんですよ、あなた。米国の行動はおのずから制約されているのであります。  何でこれが出てきたか。あなたは御承知じゃないからちょっと御説明しますと、つまり極東の有事が、これによって米軍が極東の有事に出撃することによって日本に火の粉が飛んでくるかもしれない、危ないじゃないかということで出たのが、つまりあなたがいつも、この前の議論でおっしゃったように、アメリカの行動は正当なんだから、だから正当だというのは侵略の行動のみなんですよ、今は、あなたが言っているように。実際にこれは侵略の行動のみと政府見解は言っているんですから、総理。外務大臣、あなたはだんだん解釈しちゃだめですよ。政府統一見解のここの見解を変えられたのかどうか。総理、いかがですか。
  189. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) お答え申し上げます。  委員御指摘の昭和三十五年の極東の範囲に関する統一見解、これはまさに安保条約第六条にかかわる統一見解でございます。  安保条約の第六条は、繰り返して恐縮でございますが、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」という規定でございまして、この規定の背景にある米軍の行動というものは、まさにこの統一見解にございますような、そういう侵略等のような事態が起きたときに米軍が実力を行使する、そのために事前協議というものを踏まえて米軍の行動というものを六条に基づいて規制していくと。その関連で極東の統一見解、あるいは先ほど御質問の事前協議に関する日本側の統一見解というものができてきているわけでございます。  他方、今回御審議いただいております周辺事態法案、これは日本の平和と安全に重要な影響がある事態というのはどういうことかというその視点からいろいろな推理をしたわけでございまして、その視点のもとでとられる米軍の行動というのは武力行使に限られるわけではないということは、累次、外務大臣からこれまで申し上げているところでございます。  したがって、この極東の統一見解にかかわる政府がとってまいりました考え方と今回の周辺事態法案においてとっておる考え方の間には何らの矛盾がないのではないかというふうに考えております。
  190. 小泉親司

    小泉親司君 日本の官僚が政府統一見解を勝手に変えてきてしまうというのは、私は重大な問題だと思いますよ。  それで、今の国会答弁でも非常に間違いがあるんです。六条なんというものには国連憲章なんて一つも書いていない。総理の答弁で書いてあるのは、第一条と第七条で国連憲章が書いてありますとあなたは答弁しているでしょう。いいですか。第六条の問題なんだけれども、これは間違いないけれども、六条の政府統一見解は明確に米軍の行動は制約されているんだ、侵略の行動のみなんだ。この政府見解は明確に外務大臣が言ってきたこの間の見解と全く違うんですよ。  総理、政府の統一見解、どう考えるんですか。
  191. 東郷和彦

    政府委員(東郷和彦君) 安保条約の一条、七条及び六条の関係に関して御指摘がございましたので、その点について補足して申し上げたいと思います。  協定は、そもそも論で大変恐縮でございますが、全体として解釈すべきというふうに思います。今、先生がおっしゃられました一条、七条、国連憲章を日本と米国はともに守るというのは、これは協定全体にかかわる精神ないし両国の基本的な義務というように心得ます。  申し上げるまでもなく、安保条約の六条というのは五条とともにこの安保条約の基本的な目的、基本的な骨格を形どる条項でございまして、五条はいわゆる日本有事、六条はいわゆる極東有事ということでございまして、六条の中に特に明示的に国連憲章に従うということは書いていないということをもって、この協定全体の中で米国及び日本が国連憲章に従うという趣旨にならないということは、これは全くないというふうに考えます。
  192. 小泉親司

    小泉親司君 だから、何遍も言っているように、日本の官僚の方が政府統一見解は変えられません。総理。(発言する者あり)
  193. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 委員長が私を指名しているんです。
  194. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 高村外務大臣、答弁願います。
  195. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 今、条約局長が明確に説明したように、政府統一見解は全く変わっておりません。
  196. 小泉親司

    小泉親司君 総理。
  197. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 不明な点があれば、政府委員において答弁させます。
  198. 小泉親司

    小泉親司君 私は、政府統一見解についてこの場で今さら統一見解は変わっていないとおっしゃっても、あなたがこの間ずっと答弁してきたことについて私は言っているんですよ。米国の行動は侵略に抵抗することのみじゃないじゃないですか、あなたの答弁は。全然違うことを言っているんですよ。  あなたの答弁を紹介したら切りがないんだけれども、いいですか、マイナー自衛権がある、つまり武力行使がなくてもできるんだ、内戦も排除されていないんだ、実際あなたの見解が、あなただけじゃないけれども全く違う。だから、政府統一見解として変わっていないのかどうなのか。どこどこにどうということじゃなくて、総理が責任を持ってお答えになるべきなんじゃないですか、どうですか。
  199. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) この政府統一見解の文書をちょっと読ませていただきますと、「新条約の基本的な考え方は、右のとおりであるが、」、右のとおりというのは極東の範囲がどうだと、こういうことを言った後で、「この区域に対して武力攻撃が行われ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事情のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するため執ることのある行動の範囲は、」云々とこう書いてある。しかしながら米国の行動はというわけでありますから、こういう場合に米国がとることのある行動の範囲はこうだと、こういうことを言っているので、何も変わっていないわけです。
  200. 小泉親司

    小泉親司君 それは本当に曲解ですよ、あなた。先ほども、岸総理が言っているように、私はこちらだけを言っているんじゃないんです。政府統一見解だけについて言っているんじゃないんです。全部六〇年の岸さんの答弁やりましたよ。よろしいですか、あなたの先輩の愛知外務大臣の質問です、元外務大臣の。その質問の中で、自民党の愛知さんの質問に対して岸総理が答えられたのは、先ほども言ったように、国連の憲章に違反しての不当な侵略行為が現実に行われた、その事実がない限りにおいてはアメリカの防衛上の実力は使わないと言っているんだから、全然違うじゃないですか。  総理、どうですか。もう一回、ちゃんとしっかりと答えてください。これおかしいですよ。
  201. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 今ちょっと文言が聞き取れない部分がありましたが、米軍の何を使わないとおっしゃったんですか。多分、こういう場合でなければ米軍は武力行使をしない、こういうことを言ったんだろうと思いますが。
  202. 小泉親司

    小泉親司君 防衛上の実力を使わない、つまり侵略なんだから、そのことを言っているんです。あなた、どんどん統一見解を曲解しちゃだめですよ。防衛上の実力と、あなた方は自衛隊のことを防衛上の実力と言っているんでしょう。私たちはそういうことを認めていないけれども、防衛上の実力というのは米軍の武力行使の行動を言っているんですよ。何を言っているんですか。
  203. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) まさに防衛上の実力、米軍が武力行使をする場合はまさにそういう場合だと、こういうことを言っているわけです。
  204. 小泉親司

    小泉親司君 ですから、政府統一見解は、米国の行動はおのずと制約されている。いいですか、「米国の行動は常に国際連合憲章の認める個別的又は集団的自衛権の行使として、侵略に抵抗するためにのみ執られる」、こう言っているわけです。つまり、内戦でありますとか、例えば米国民の保護で米国が行動を起こすとか、そういうことは侵略に抵抗することじゃありませんので、こういうことはできないんだと政府統一見解は言っているんです。  ところが、あなたはずっとこれまでの委員会の答弁で、侵略の行動じゃなくても、内戦でも、つまり内戦というのは侵略の行動じゃないんですから、米国の行動はそういうものにさまざまな軍事行動をやっていいということをあなたは言ってきたじゃないですか。政府統一見解と明確に違うと言っているんです、私は。
  205. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 防衛上の実力の行動、それはまさに武力行使を言っているわけですが、周辺事態で行う米軍の行動というのは何も武力行使に限らないわけで、さっきから言っていますように、それが広がらないように情報を収集したり拡大を阻止したりいろいろあるわけでありますから、そういうようなこともあり得るわけで、そういうことまで、ここで米軍の行動は常に侵略に抵抗するためのみとられるということになっているから、そういう情報収集だとかそういうことをやってはいけないと、そういうふうに言っておられるんですか。とんでもないことですよ、それは。それこそとんでもないことで、さっきから言っていますように、これはあくまで「この区域に対して武力攻撃が行われ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事情のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するため執ることのある行動の範囲は、」と、そういう場合のことを言っているわけであります。
  206. 小泉親司

    小泉親司君 私はやはり政府がしっかりとこの問題について統一した見解を出されるべきだと思います。総理、どうですか。
  207. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 政府としては従前から変わらない態度をいたしておりますので、あえてそうすることの必要性はないと思いますが、さらに御質疑を通じて政府側の考え方につきましては御答弁させていただきます。
  208. 小泉親司

    小泉親司君 ということは、高村外務大臣は今まで内戦とかそう言ってきたことは全部撤回されるんですか。
  209. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 何度も申し上げていますように、純然たる内戦にとどまる場合は日本の平和と安全に重要な影響を及ぼさないでしょうと。それがさらに広がって、最初は内戦であってもそれが国際的に広がって日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような場合であれば周辺事態に該当する、こういうことを申し上げているんです。
  210. 小泉親司

    小泉親司君 侵略の行動と内戦とは全然違うんですよ、あなた。侵略というのは国から国への侵略なんです。内戦と違うんですよ。
  211. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 委員がちょっと前提を間違えておられるのは、周辺事態の米軍の行動は直ちに武力行使だ、こういうふうな前提で話しておられるから全体の話がおかしくなってくるんです。
  212. 小泉親司

    小泉親司君 私はそんなことは言っておりません。そんなことはよく承知しております。  政府統一見解が「米国の行動は」といって武力の行使だけを言っているんじゃないんですよ、これは明確に。統一見解、どうですか、総理。違うんだから、外務大臣の答弁では。
  213. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 安保条約第六条にかかわる武力の行使について、ここの米軍の行動ということについては言っているわけであります。
  214. 小泉親司

    小泉親司君 私はこの点は大変大事な問題だというふうに思います。実際に六〇年には政府統一見解で米国の行動は侵略のみであると言っておきながら、いつの間にか内戦だとか自国民の保護だとかさまざまにどんどん広がってしまう、これは私は重大な問題だというふうに思います。この点は明確に安保条約の枠を超えるものであって、私は今度の周辺事態法は日米安保条約の枠を拡大するものだということを強く指摘しておきたいと思います。  次に、防衛庁の背任事件についてお尋ねします。  初めに、総理に今回の事件について、総理は防衛庁において四社事案関連文書の実態に関する報告書をまとめ、関係者の厳正な処分を行ったと答弁されておりますが、それは文書管理や証拠隠滅事件の問題だけで、肝心の水増し問題がなぜ起きたのか、その実態とその責任は何ら明らかになっていないというふうに思います。  総理は、この四社事案というのは決着済みだという御認識なんですか。
  215. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 防衛庁では、昨年十一月に取りまとめました四社事案関連文書の管理実態に関する報告におきまして、事案の実態解明に向けての取り組みに不十分な点があったことについても指摘するとともに、同報告を踏まえて関係者の厳正な処分を行ったところであります。  背任事件の事実関係につきましては、今後公判等で明らかにされることと考えておりますが、背任事件に至った東洋通信機、ニコー電子事案の処理につきましては、二月五日に防衛庁が損害額を確定した上で返還請求を行ったところであります。ニコー電子からは即決和解の申し立てが行われておりますが、東洋通信機は少なくとも請求額の全額を支払う意思がないため、訴訟により履行を求めることといたしております。  また、現在、過大請求が判明しております日本電気、日本航空電子工業及び日本電気電波機器エンジニアリング事案につきましては、綿密な調査を行った上で、できる限り速やかに過払い額を算定し、返還請求を行うことといたしております。  さらに、このような事案の再発防止に関しましては、問題点をきっちりと解明して十分な体制を構築するようにとの私からの指示を受け、防衛庁におきまして、調達実施本部の解体など防衛調達改革の基本的方向を取りまとめ、現在これを実施に移すべく全力で取り組んでおるところでございます。
  216. 小泉親司

    小泉親司君 防衛庁は、四社事案の二社、東洋通信機とニコー電子の水増し確定額を発表いたしました。これによると、東洋通信機は三百七十三億円、契約総額の一八%が水増しであった、ニコー電子は百一億円、契約額の三四%が水増しであった、こういう驚くべき状況が報告されております。  東洋通信機とニコー電子の水増し額は九〇年から九五年までの水増し額であると思いますが、九五年度以降は水増しがなかったということは断定しておられるんですか。
  217. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 両社に関し事件化された対象期間以降の過大請求の有無につきましては、本年初めから制度調査及び関係者からのヒアリングを行ってきたところでございますが、東洋通信機は民需と防需の工数のつけかえを行った可能性があることにつき、私どもに言及しております。それが事実であるか否かについては、さらに調査を進めてみないとわからないので、目下その調査を進めておるところであります。ニコー電子は、工数が大幅に増大しているケースがあることは認めておりますが、それは同社によりますれば経理処理の変更や外作の内作化等によるものであると説明がありました。  このため、現時点におきましては、当方としては両社に過大請求が存在すると断定しているわけではございませんが、東洋通信機、ニコー電子について、その内容を確認するため、今後さらに調査を徹底することにしており、その旨二月三日に外部に対しても公表したところであります。
  218. 小泉親司

    小泉親司君 このことを見ましても、四社事案そのものが決着していないことは明らかだと思います。  もう一つ、やはり重要な問題は、日本電気、NECの二重帳簿問題であります。NECは、これまで防衛庁に対して五年以上にわたって二重帳簿をつくっていたことをみずから認めております。私は、このNEC本体及び関連会社の二重帳簿システムによる水増しというのは大変悪質な詐欺的な行為であって、あってはならないことだと思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  219. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) NECにつきましては、昨年十一月三十日より、事案の仕組みや規模等を把握するための特別調査を防衛庁が開始しております。現在、府中、横浜、相模原、玉川、我孫子、三田及び福島日本電気の各事業場等において調査を実施しているところでありますが、これまでの調査によりまして、府中及び横浜事業場において二重帳簿の存在を確認することができました。事業場間をまたいで過大請求の操作が行われていることも確認されております。また、全事業場においてほぼ正しい経理処理システムの存在について確認できたところであります。  今後は、この経理処理システムに従いまして、真の原価元帳の信憑性を確認し過払い額の算定を行うことになりますが、これらの作業につきましては、契約件数が直接調査だけでも約七千件以上に上るなどのことから、量的に膨大な作業量が見込まれるわけでございますが、同社の過大請求の操作が複雑な仕組みになっていることから、その解明作業には質的にも原価計算監査等に関して高度な知識、経験が必要であります。  これらの作業に対応可能な職員は量的にも質的にも限られており、またNEC側の対応職員にも制限があることから、過大請求の算定を行うにはなお期間がかかりますが、できるだけ速やかに調査を終えて公表したいと思っております。
  220. 小泉親司

    小泉親司君 私、非常に不思議なのは、このNECの二重帳簿システムによる水増しのからくりを防衛庁がなぜチェックできなかったのか、この責任は私は極めて重大であるというふうに思います。  その点、長官、いかがでございますか。
  221. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 今、委員にそう指摘されれば大変申しわけないと言わざるを得ません。  ただ、いささか釈明させていただきますと、日本の防衛庁のこの原価計算や工数の計算をする人の数は五十分の一にも満ちません。防衛関係費が約六倍ぐらいでございますが、これらの原価計算や工数の作業をやるのは五十数倍アメリカの方が多いということで、戦後防衛庁ができて以来、その脆弱な体質が今日まで続いて、こういう問題についての解明がおくれているということだと思います。  そこで、私どもは、さらに取引をしている業界の全体について解明しようということで調査を五年間で二百八十社やることになっておりますが、二百八十社を本当の意味で真剣にやろうとすれば今後五年間かかるということでございまして、今この四月から、外部から公認会計士等第三者の力をもかりてこの解明を急ごうということで予算措置をしたところでございます。
  222. 小泉親司

    小泉親司君 防衛庁は特別調査をやっていると言いますが、もう発覚してから五カ月もたつのに、五年以上前からやっていたと言うだけで、二重帳簿による水増しの規模もその手口も私はまだいまだに不明だというふうに思います。  しかも重要なことは、防衛庁はNECとその関連会社については特別調査中で当分の間取引停止処分をしたと言いながら、今も審議しております九九年度予算にNEC及びその関連会社との契約を前提とした予算を組み込んでおられます。企業がみずから二重帳簿を認めているのに、それがどういう規模でどういう手口でいつからやられたのか全くわからないまま水増し企業との契約を前提とした予算を認め執行していくことは私はできないと思います。  その点で、いつまでに二重帳簿システムの水増しの全容を明らかにするのか、この点をお聞きします。
  223. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) これまで全力を挙げて東洋通信機やニコー電子の解明、これは係争にもなりましたからそちらに全力を投球してきたわけでございますが、NECにつきましても、先ほど説明したように、あらゆる事業所を対象にして調査を進め、私はそんなに遠からず、できるだけ速やかな段階で公表できるところまで調査が進んでいると思っております。  平成十一年度の予算の取り扱いについては、同社の過大請求が明らかになったことから、過去の調達実績単価や同社から出されている経費見積もりを積算の基礎としている整備品については、改めて同社から修正された経費見積もりを取り直すなどして経費の積算を見直したところであり、契約ベースで合計五十億円を減額したところでございます。  ところが、新中央指揮システムのように、それも同様の方法により契約ベースを約四億円減額し、他の企業との契約対象も含め百五十八億円を計上したわけでございますけれども、今これを、NECを外すということになれば膨大な経費がかかり予定の工程に間に合わない、NECとは今完全に取引停止をしているところでありますが、そういうわけで、真にやむを得ない、もしやめれば他の社ではなかなかやることは困難であるし工期を著しくおくらせるということになりますので、そういうものについてはやむを得ず契約を進めなければいけないと思いますが、すべての契約に監査条項を付すということや、今後仮に過大請求分が判明した場合には確定時に過大請求分を減額する措置をとることとか、そういうことをきちっと担保した上でやりたい、こう思っている次第でございます。
  224. 小泉親司

    小泉親司君 私は、国政調査に基づき、NEC本体とその関連会社の二重帳簿システムによる水増し問題を解明することは当委員会の責任であると思います。その点で、これを明らかにするために、関本忠弘NEC元社長、金子尚志社長、副島俊雄東洋通信機社長を当委員会の証人として喚問することを要求し、理事会で御検討いただきたいことを強く要望して、質問を終わりたいと思います。
  225. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまの小泉君の要求につきましては、その取り扱いを後刻理事会で協議することといたします。  以上で小泉親司君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  226. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、狩野安君の質疑を行います。狩野安君。
  227. 狩野安

    ○狩野安君 よろしくお願いいたします。  十一年度の政府予算案の中で女性関連予算案というものは、男女共同参画二〇〇〇年プランの総仕上げということも言われておりますけれども、女性関連予算の中で、総理府、厚生省、そして労働省、文部省、農水省の総額を見てみますと九千八百億七千万、前年に比べると一〇%強の増加となっているわけです。政府の一般会計の予算案の伸び率は五・四%ということを考えてみますと、大変大幅に上回っているということで私は評価をし、そしてまた政府が女性問題にこれだけ取り組んでいるという意気込みも感じております。  そこで、小渕総理の施政方針演説の中でも、今国会に男女共同参画社会基本法案を提出すると表明されておりますので、私はここで、男性の方はお感じにならないかもしれませんけれども、大変女性の中で関心が高まって、これで男性と同じパートナーとして認められていく世の中が来たんだなということで関心を持ち始めております。  そういう意味でも、男女共同参画社会についてお尋ねをしたいと思います。    〔委員長退席理事竹山裕着席〕  男女共同参画社会というのは、人によっては大変難しいわかりにくい言葉だと言われておりまして、男女平等社会ならいいんじゃないかということも言われておりますけれども、なぜ男女共同参画社会という名前になったのかということを担当大臣である野中官房長官にお聞きしたいと思っております。
  228. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) この問題につきましては、昨年の十一月四日、男女共同参画審議会の答申におきまして、男女共同参画社会は、男女平等を当然の前提といたしました上で、さらに男女が各人の個性に基づきまして能力を十分に発揮できる機会を保障することを重要な基本理念としておることでございまして、男女が公的な分野、私的な分野を問わずにあらゆる分野におきまして意思決定過程への参加を行い、そして参画が極めて重要であるということ、さらにこの点を強く強調する必要がありますことから、「名称を男女共同参画社会基本法とすることが適当である。」と提言をされたわけでございます。  政府といたしましては、この答申に基づきまして、今国会に提出する基本法案の名称を男女共同参画社会基本法案とすることといたした次第でございます。
  229. 狩野安

    ○狩野安君 この男女共同参画社会というのは、男女平等社会というよりももっともっと幅広い意味にとられるということであると思います。私は、これは男女が支え合って豊かな社会をつくるということだと思いますけれども、特に家庭における男女共同参画というのが大事だと思います。  私も専業主婦を三十年やっておりましたけれども、決して自分の子育てが嫌だとか家事を嫌だとかということじゃありませんけれども、世の中の構造が女がやるのが当たり前だということがとても嫌な感じがしておりましたので、こういう参画基本法ができるということは大変私にとっても喜ばしいこととうれしく思っております。そういう意味でも、家族構成の中で男女が協力するということが大変大事なことだというふうに思っております。  それで、大変プライベートなことですけれども、小渕総理、大変個人的なことをお伺いいたしますけれども、小渕総理はお子様の母子手帳というのはごらんになったことがありますか。
  230. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 子供も大変大きくなりましたので、すなわちその子供が生まれた時期では母親が持っておる母子手帳というのを見た記憶はありますが、それ以降は拝見しておりません。
  231. 狩野安

    ○狩野安君 私、一般の男性というのはみんなそうだと思いますね。  それで、文部大臣が、文部省発行した家庭教育手帳というものを厚生省と共同で赤ちゃんが生まれたときに母子手帳と一緒に渡すという、その手帳を見せていただきましたけれども、大変すばらしい本なんです。これも、せっかく家庭に渡ってもやっぱりお父さんが母子手帳と一緒によく読んでいただかなければならないわけですが、こういう意味でも、心の教育ということもかんがみて、男女共同参画の家庭というものは大変大事だというふうに考えるわけです。  そこで、現在の我が国の社会において、女性が今まで個性と能力を生かしてさまざまな分野で十分参画していたかどうかということの御認識、野中官房長官にそれをお聞きしたいんですけれども、そして官房長官の家庭のあり方というものをちょっと一言聞かせていただければ大変うれしく思います。
  232. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 男女がそれぞれ性別にかかわらず、その持つそれぞれの能力を十分生かして、そして社会のさまざまな分野に対等に参加をしていくということでございまして、それ自身が未来に向けて豊かな活力になるであろうということを私どもは念じておる次第でございます。  委員は今自由民主党の女性局長をしていらっしゃいますけれども、私どもが国政に参画をいたしましたときは、今の女性局は婦人局と申しまして男子禁制でございました。たまたま、予算委員長をしておられます倉田予算委員長と、さらに浜田卓二郎議員と私の三名が男子禁制のところに婦人局次長として入れていただいたのが女性問題とのかかわりでございますけれども、その当時を振り返りながら、私どもといたしましては、この法案はとかく何か女性が参加するためにつくられる法案のように解釈されがちでございますけれども、今例を引きましたように、私ども男性も共同に参画させていただくための基本法であるわけでございまして、その点の認識をぜひ私は本法案に当たりましてお願いいたしたいと思うわけでございます。  ただ、長い選挙を重ねておる私でございますので、家庭におきましては大変迷惑をかけることが多いわけでございまして、それについては私どもとしては十分男女共同参画社会をみずから築いておるとは言えないと思っております。
  233. 狩野安

    ○狩野安君 私も政治家の妻だった経験がございますし、男女共同参画社会というのは、やっぱり奥様もいろいろな面で協力をされて、そして御活躍をなさっておられるというふうに考えております。  日本で今、少子化問題が問題にされておりますけれども日本の中で女性が子供を育てながら働くというのは大変難しい時期に来ておりますけれども、ほかの国々を調べてみますと、なぜか女性が働きやすい国ほど出生率が高いわけです。  私の長男夫婦も共働きをしておりまして、保育園に預けて二人の子供を育てて、三人目が今おなかにあるわけですけれども、余りに忙し過ぎて母子ともに危ない状態だったときもあるというぐらいに働く女性にとっては大変不親切な日本の国だと思います。  これからは、何があってもやっぱり女性の労働力が必要な時代になってくるわけですから、男女共同参画社会という中で、女性が働きやすい、そして子供を育てやすい、産みやすい環境づくりをぜひ考えていただきたいということで、そのことに関しまして、官房長官、何かございましたら一言お話を聞かせていただきたいと思います。
  234. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 官房長官といたしまして男女共同参画問題を担当いたしておりますので、今、委員御指摘のように、男女共同参画社会を実現いたしますためには、家庭、さらには職場、地域社会、学校等、あらゆる分野で男女がお互いに責任を担い合い、あるいは協力をしていくことが必要でございます。  これまでの我が国の社会のあり方を考えますと、必ずしもそういう条件が十分生かされておらなかったということを思いますときに、今回、この男女共同参画社会への形成に向けました基本法が、もちろん個別にいろんなまだ不十分な点はあろうと思います。けれども、いずれにいたしましても、その基本となるべき法案が国会に出ることの運びになりましたことを意義深く感じておる次第でございます。
  235. 狩野安

    ○狩野安君 中川農林大臣にちょっとお尋ねしたいんですけれども、農山漁村女性が一番望んでいる、大変喜んでいることじゃないかと私は思いますけれども、農水の面でどういうふうに御活躍をなされるか、お聞かせいただきたいと思います。
  236. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 農山漁村は非常に女性の労働力の比率が高い地域でございます。あるデータによりますと、農村の労働力の六割は女性だというデータもあります。もちろん、家事、育児等をしながらのことでございますので、農山漁業に携わっている女性の方々は大変御苦労されておる。ですから、それはむしろ参画というよりも、そうせざるを得ないという現状にあるということでございます。  したがいまして、農林水産省といたしましても、そういう地域における女性の地位の向上というものに以前より取り組んできたところでございまして、婦人・生活課というような課もあるわけでございますけれども、今回、男女共同参画社会基本法の趣旨を踏まえまして、農政改革大綱及び農政改革プログラムにも即しつつ、例えば農協の役員への女性の就任等、農山漁村における社会参画の促進、あるいは家族経営協定の締結によって家族員の役割分担や休日の設定等の就業条件の明確化の推進といった男女共同参画社会の形成に向けた新たな施策を積極的に推進してまいりたいと考えております。
  237. 狩野安

    ○狩野安君 ぜひ農山漁村の女性のためにお力を注いでいただきたいと心からお願いを申し上げます。  もうずっといにしえの昔からそこで女性の労働力というものは発揮されているわけですけれども、精神的にはまだ男性の本当の意味でのパートナーとはされておりませんので、これが実現できるように私も心から願っております。  総理大臣にちょっと感想をお聞かせいただきたいんですけれども、マスコミなんかで、アメリカでドール女史が女性大統領の候補として挙がっているとかという話も聞いております。日本においては女性の政治への参加というのは大変難しいわけでございますけれども、御主人のドール氏の言葉を新聞を通じてただ見ただけですからわかりませんけれども、私はファーストジェントルマンになるということ、奥さんが大統領になることに対して大変積極的に精神的なバックアップをしているような発言が読まれております。  私は、これが本当の男女共同参画社会じゃないかなというふうに思っておりますので、女性が本当に、だれもが政治家になるとかだれもが社会に進出するべきだというふうには考えておりませんけれども、やっぱり能力のある女性を陰で男性が支えていくという世の中になれば大変すばらしいというふうに思うわけです。女性が政治に参加できやすい状況というか、またこのドール夫人に例えて何か御感想でもございましたら御見識をお聞かせいただきたいと思います。
  238. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) ドール夫人の御主人すなわちドール氏は大統領選挙にも臨まれたわけですが、今般御主人がファーストジェントルマンになるという発言をされたやに聞いております。その発言のすべてを承知しておるわけじゃありませんが、男女共同参画社会の実現に当たりまして、男女がともに社会のあらゆる分野で政策方針決定過程に参加する機会が確保され、ひとしく利益を享受するとともに、お互い相手の立場に立って責任を担うことは極めて重要であると考えております。  ドール氏の発言は、こうした男女の共同参画のあり方について重要な点を示唆する象徴的な発言との印象を受けておりますが、かつてイギリスにおきましてもミセス・サッチャー首相がおられたわけでありまして、御主人が政治的立場で大変活躍されるサッチャー首相を支えておる姿を拝見しておって、非常に印象深く記憶をいたしております。  ドール夫人、エリザベス・ドールさんでございますけれども、かつて私国会議員に就任して十周年を迎えた折に私の選挙区高崎市にお招きをいたしまして、まだドール氏と結婚しておりませんでしたけれども、それ以来親交をいただいております。その後、労働長官、運輸長官とたしか経験しまして政治家としてもまことにすばらしい活躍をされまして、今般、御主人の方がむしろこれを助けてという姿になっていくやに聞いておりますけれども、こうした形でともどもにみずからの力を発揮し相協力していく姿というのは大変すばらしいものと、こういうふうに考えております。
  239. 狩野安

    ○狩野安君 ありがとうございます。  日本の中でも早くそういう時代が来ることを望んでおりますけれども、私は、小渕総理もすばらしい奥様をお持ちですけれども、もし奥様がそういう立場になられたら、きっと立派なパートナーとして応援をなされるような方でないかというふうに拝察をしております。  ということで、私は、この男女共同参画基本法のことについては一日も早く政府の方で提出をしていただきたいということをお願いいたしまして、次に、有馬文部大臣にお聞きしたいと思います。  有馬大臣は、先般の内閣改造に伴って科学技術庁長官を兼務されることになりましたけれども、明るい未来の創造を目指す科学技術庁行政の中で、原子力行政というものは大変な、特に重要な分野であります。今までのいろんな事故、不祥事などを考えてみますと、国民の中でまだまだその不安感、不信感が高まってきているわけです。ということを考えると、現状ではまだ原子力に対する国民の信頼を得られることができません。  新しく長官となられて、原子力に対する国民の信頼回復を得るためにどのように取り組んでいかれるのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  240. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私も原子力に近い原子核物理学を長年やってきた人間といたしまして、やはりこの原子力をめぐるさまざまな過去の事件は大変残念であり、またさらにもう少し強く言えば大変遺憾であったと思っております。  そこで、どうしたらいいかということでありますが、まず現場では安全運転などの実績を積み上げていくこと、そしてそれに対して最善の努力をしていくこと、それから地域の人々との間では地元を重視した姿勢のもとで事業活動についても今やっていることを誠実に対応していくこと、情報をなるべく多く流していくということが必要であると思います。これが地元、現場においてのことでございます。  国といたしましては、まず原子力に関するさまざまな政策決定をしていくとき、その過程を透明にしていくということが必要であると思います。そして、国民各界各層から幅広く御意見を伺っていく、そのためには例えば原子力政策円卓会議を開催していく、それからシンポジウム、フォーラム、説明会等を開催していく、こういうことを通じて原子力政策に対して国民の信頼を回復するよう努力をしていかなければならないと思っております。  そして、原子力三原則というのを私の若いときに随分議論をしたことがございます。今現在、その三原則を中心にして動いているわけでありますので、まず国としてもこの原子力三原則をきちっと守っていくべきだと思っております。何としても安全確保をしていかなきゃいけない、万全を期して安全を確保していかなきゃいけない。  それからもう一つ、新エネルギーだけで日本が本当に今後やっていけるのかどうか、重要なことだと思います。新エネルギーは絶対やらなきゃいけないけれども、それだけで本当にエネルギーは足りるかどうか、原子力はどうしたって要るのではないか、こういうふうな意義について私自身も少し方々で講演をしていこうと思っております。もう既に何回かやっているわけですが、今後もその意義を国民の皆様に説いていきたいと思っています。  こういうことは、私だけではなく多くの科学者、原子力に携わっております多くの科学者、技術者がもっと率直にいろいろな方たちにお話をしていかなければならないと思っています。そして、先ほど申しましたように、まず第一に情報の公開、そしてわかりやすい情報を提供していく、それからまた国民各界各層と一層対話を進めていく、こういうふうなことで、今後とも原子力に関する国民の方々の御理解を賜るべく努力をさせていただきたいと思っております。
  241. 狩野安

    ○狩野安君 ぜひお願いをしたいと思います。  特に、わかりやすい情報と言いますけれども、原子力はとても難しいんですね。それに携わっている方は物すごい優秀な方ですから、本当にわかりやすく説明をなさってくれるわけですけれども、それはどうしても私たちには理解ができないということでございますので、特に茨城県を含め原子力施設を持っている県民の期待というか信頼を裏切らないように、もう本当に一生懸命県民も努力をして、信頼をして、そして裏切られてもなおかつ信頼をして一生懸命頑張っているわけですから、その気持ちをどうぞお忘れなく、ぜひ頑張って、そして国民の皆さん方から本当に一日も早く信頼を回復するように努力をしていただきたいというふうにお願いを申し上げます。  もう一つ文部大臣にお伺いしたいと思いますけれども、大学入試センターの試験についてお尋ねをいたします。  先般行われた大学入試センター試験の日本史の問題の内容等について、既に一部報道されておりますけれども、歴史の暗い側面を殊さら強調している、あるいは偏った歴史観に基づいているとの指摘や批判の声が上がっています。  私も試験問題なんて見たことはなかったんですけれども、そういう記事を読みましてちょっと見させていただきました。例えば、五問中の一問が抑圧とか抑圧からの解放の歴史というテーマのもとで、身分制、差別、労働運動や一揆、抑圧からの解放としてのマッカーサー指令などについての出題となっております。  このような大学入試センター試験の出題内容や傾向というものは、歴史の中の肯定的な側面だけでなく暗い側面を強調し過ぎている、私もそういうふうに言わざるを得ないと感じております。  我が国の歴史教育にあっては、とりわけバランスのとれた歴史認識をはぐくむことが基本的に求められているわけでありますので、大学入試センター試験は大学入試とは関係なく高等学校の教育に物すごく大きな影響を与えるわけです。ですから、このようなことは見過ごしてはいけないというふうに感じているわけです。  このことについて、文部大臣の所見及び今後どのように対応されるかということが、もしございましたらお答えをいただきたいと思います。
  242. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まず一般論といたしまして、大学入試センター試験は極めて一生懸命つくった問題でございまして、私が見るところ、過去の難問奇問から随分変わって、いい問題になっていると考えております。そういう意味で、大学入試センターの問題というのはかなり現場の大学教員及び高等学校の教員が努力をして、いい問題をつくってきていると思います。  しかし、今御指摘のような問題がやはりございまして、さらにまた大学入試センター試験そのものをどうしていくかというふうなこと、そしてさらに一般に大学入試全般についてどうしていくかというふうなことを現在中央教育審議会にお願いをしまして、検討していただいているところでございます。  そういう意味で、今後御指摘の点も踏まえつつ、大学入試センターにおける問題作成や点検が適切に行われるよう指導してまいりたいと思っております。
  243. 狩野安

    ○狩野安君 ぜひよろしくお願いいたします。  バランスのとれた歴史認識というものの中でやっていただきたいというふうに考えておるわけです。また、出題内容に関して、学習指導要領に基づいた内容になるような指導、助言ができる明文規定というものを設けるように希望したいというふうに思っております。  次に、国旗・国歌のことについて質問をさせていただきます。  文部大臣は、二、三日前の答弁の中でも、心の教育の中で、本当に国を愛する心ということを随分強く言っておられましたけれども、国を愛する心というのはやっぱり形からやっていかなければいけないというふうに思うわけです。その中で、国旗・国歌というものを子供たちにどういうふうにして理解をさせるかということが大事だと思いますけれども、スポーツの大会なんかでも、ほかの国の国歌は国歌斉唱と言って、日本の国の場合は君が代斉唱と言うこと自体も私は何かおかしいのじゃないかというふうに思うわけです。  これはいろいろと議論がなされておりますので、ちょっと総理大臣にお伺いしたいのですけれども、国旗・国歌についての法制化ということはお考えになっておられるんでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  244. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 家庭や地域において長年にわたり培われてきた道徳心や温かい人間関係、すぐれた文化や伝統などは大切な未来への財産として次の世代に引き継いでいくべきものであり、心の教育の一環として、日本の国に誇りを持つ子供を育てることは重要なことであると認識をいたしております。  そこで、国旗・国歌につきましては、諸外国の中に、例えばアメリカ、ドイツ、オーストラリア等でありますが、憲法や法律で規定をいたしまして、国旗については公的機関の主要建物や学校の校舎等に掲揚すべき旨定められている国があります。我が国の日の丸あるいは君が代が我が国の国旗・国歌であるとの認識は、実は既に確立をいたしており、既に広く国民の間に定着いたしておると考えております。  先ほど申し上げましたように、こうした法制化している国を考えますと、それぞれ後々独立し、各地区の結合というようなことについて国旗という形でその意思をまとめている。アメリカなどは典型でしょうけれども、ユナイテッドステーツという形でございます。  そういった意味で、それぞれの成り立ちがあるかと思いますが、日本の場合にはかなり定着しておるということでございますので、現時点では政府として法制化については考えておりませんが、昨今、法制化すべきだという政党も、いろいろの御発言もあるやに聞いております。これは最終的には国民の皆さんの動向も判断しなければならないとは思いますが、今の時点では法制化ということでなくとも、この国旗が、そしてまた国歌が我が国の国民のひとしくこれを願うものとしてかなり定着しておるということは言えるんじゃないか、このように考えております。
  245. 狩野安

    ○狩野安君 国旗・国歌については、これまでも学校行事で、社会科や音楽の授業なんかでいろいろと特別な活動を通じて指導も行われてきているということは承知しておりますけれども、本当に徹底させることによって国民に認知させていくことが一番大事なんじゃないかと思います。やっぱり国旗・国歌をあれしながら、自分の国に誇りを持つ、そして国を愛する心が育っていくんだというふうに考えておりますので、ぜひひとつ徹底するようにお願いをしたいと思います。  それから、最後になりますけれども、心の教育ということを文部省が大変取り上げて、先ほどの手帳なんかでも、いろんな問題で家庭の中で教育をしていくということを言われております。  私たちが子供のころには本当に近所に怖いおじさんやなんかおりまして、親にかわって、親がいないときでも私たちが何か悪いことをすると物すごくしかられたわけですね。それで、みんな子供たちは、あそこは怖いおじさんがいる、こっちは怖いおばさんがいるとかと言いながら、しかられるとうわっと逃げていったという記憶があるわけです。  今はそういう情景が一つも見られないということがあるわけですけれども、これから、平成十四年度から学校の五日制というものが実施されるわけです。そういうことで、社会全体が子供を育てるという意識をもう一度盛り返していかなければいけないというふうに考えておりますし、また季節によって、私たちが昔歌っていた童謡とかそういうもの、それから自然とか四季に感動する心というものを養うような環境というものが大変大事なんじゃないかと思います。  二十一世紀は本当に教育が一番大事だというふうに考えておりますので、これはもう政府の指導力を発揮して優先的に取り組んでいただきたいということをお願いいたして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  246. 竹山裕

    ○理事(竹山裕君) 以上で狩野安君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  247. 竹山裕

    ○理事(竹山裕君) 次に、柳田稔君の質疑を行います。柳田稔君。
  248. 柳田稔

    ○柳田稔君 まず冒頭に、法務大臣に質問させていただきたいと思います。  ことしの初めでしたか、法務大臣の憲法改正論議もマスコミで見ましたし、また関係する会社の何かごたごた騒ぎというのも先日質問がありましたけれども、さっき小泉議員と外務大臣の憲法論議が盛んに行われましたけれども、御感想はどうですか。    〔理事竹山裕退席委員長着席
  249. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私は憲法論議ということをよく聞かれるんですが、正月にお話ししました趣旨というのは、折しも国際貢献でPKFとかいろいろな話がありましたので、日本は憲法上の制約があり、国際的な貢献にも一定の制約があるんだと、その中で苦悩しているという意味を申し上げたくて申し上げたわけでありまして、決して改憲しようとか、そう意図して申し上げたわけではありません。  それは、制定の経緯についてはいろいろ言われますけれども、帝国議会できちっと成立して公布された憲法でありますから、それは立派な日本の憲法であり、我々が遵守し擁護していくものだと認識しております。
  250. 柳田稔

    ○柳田稔君 情報公開法とかいろんな法案が出ていますけれども、私は、憲法に知る権利とか環境権とか、もう入れるべきではないのかなという立場なんですけれどもね。  法務大臣、今大変まともな御答弁でしたけれども、マスコミの新聞を見る限りはなかなかだなと思ったりもしたんですよ。そこに座っていますと憲法論議できませんので、大臣、こちらの席に来てやり合った方がいいんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
  251. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 正月の発言に関しては、全く正月のお祝いの宴席だったものですから、司法制度改革をやろうよと言う前に内外の国際情勢とか言ったために発言したことで、そのことと全く関係ないわけでありまして、私は今、憲法を擁護し遵守する立場にございます。
  252. 柳田稔

    ○柳田稔君 では、本題に入りたいと思いますが、昨年八月、北朝鮮からミサイルが飛んでまいりました。衛星ではなかったのかというお話もあるようですけれども、私はミサイルだと思っていますので、まずこのミサイルについていろいろと質問させていただきたいと思います。  まず、総理にお伺いいたしますけれども、この八月、テポドンですか飛んできたとき、総理、どういう情報をどこから手に入れられたのか、そしてどういうふうに対処されたのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  253. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 大変驚きでありましたが、御指摘の事案におきましては、事実関係は、実は八月三十一日の十二時過ぎに北朝鮮の東部沿岸より弾道ミサイル一基が発射されたと。その情報を外務省、防衛庁からいただきましたが、発射された後、たまたまタイの副首相が見えておられまして、私、会談をいたしておりまして、その直後、発射事案及び着弾地点については日本海と思われる旨の報告を受けました。  私としては、報告を受けた段階で、着弾地点の詳細について情報収集を一層強化し、また北朝鮮に対して遺憾の意を表明するなどの必要な措置をとるように指示したわけでございます。  なお、本件につきまして、発射前の八月中旬ころから種々の報告を受けておりましたが、我が国として情報収集体制等を強化するとともに、事前に北朝鮮に対して弾道ミサイルの発射を見合わせるよう申し入れいたしておったところでございます。
  254. 柳田稔

    ○柳田稔君 幸いにして海に着弾したので遺憾の意を表明するだけで済んだのかもしれませんが、もしあの海域に日本船籍の漁船、そして日本人が乗っている漁船に被弾したと、漁船ですと乗組員が数名ですか、または商船ですと二けたの人、二十名前後の人が乗っているはずなんですが、これに被弾したと。そうなったときには、一体どういうふうに総理は対応されるおつもりなのかなと。
  255. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 幸いといいますか、事実はそうした不幸な事案にならなかったということですが、仮に我が国がそうした船舶や航空機が被弾したり日本国内に着弾した場合の対応について申し上げれば、あえてということでありますが、関係機関の緊密な連携のもと、早期警戒情報を含む関連情報の公表等に努め、落下状況及び被害の発生状況を迅速に確認するとともに、ミサイル発射後の個別具体的な状況に応じて被害者の救助活動や必要な情報収集活動を実施するなど、その時点には適時適切な対応をした、こう考えております。
  256. 柳田稔

    ○柳田稔君 航空機は聞かなかったんですけれども、総理は答えてくれたんですが、航空機、大きな飛行機ですと五百人以上乗っていますよね。これにもし命中したら一瞬にして全員亡くなります。そのとき、もし、それを仮定するわけですけれども日本の飛行機ですよ、これが北朝鮮のミサイルによって被弾してしまったと、そういう場合、総理、どうされますか。
  257. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 北朝鮮のミサイルが我が国に着弾するといった事態が現在予想されているわけではございませんが、このような事態が仮に発生した場合における我が国の対応につきましては、発射の態様とか被害の有無とか北朝鮮の意図に関する分析判断、それが大変大事であります。  それに加えまして、他の要素を総合的に判断して決めることとなるわけでありますが、仮に、事態が我が国に対する外部からの武力攻撃に該当すると判断される場合には、防衛出動命令を下令するとともに、日米共同対処を考慮することになるわけでございます。  新たなガイドラインにおいては、日本に対する武力攻撃に際しての共同対処行動等は引き続き日米防衛協力の中核的要素であるということを明記されており、さらに弾道ミサイル攻撃への対応に関しては、日本に対する武力攻撃がなされた場合の作戦構想において、自衛隊及び米軍は弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整をする、米軍は日本に対して必要な情報を提供するとともに、必要に応じ打撃力を有する部隊の使用を考慮するとされているところであります。  こういうふうに対応することになると思います。
  258. 柳田稔

    ○柳田稔君 今、船とか飛行機と言ったのは、間違って当たった可能性があるということもあるのでわざと先に聞いたんですが、今、長官言われましたよね、本土の話も。  では、今度は北朝鮮から発射されたミサイルというのはこれははっきりするわけですからね。今度は衛星も打ち上げようといって予算を組むわけですからはっきりするわけですから。早くしないといけないんですけれども。そうすると、これははっきりするわけですよ、北朝鮮のあるところから飛んできたミサイルが日本に着弾したと。  もし、これが山中で被害者がなかった場合、東京みたいに人口密集地で大量の死者が出た場合、長官はどうされますか。これははっきりしていますよ、北朝鮮から飛んできたミサイルということで。長官、どうされますか。
  259. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 仮定の話でありますからなんですが、意図的じゃなくて誤って落ちたというような場合には、これは治安出動とか防衛出動とかいう事態にはならないと思いますから、被害状況を調査したり対応策を考えながら北朝鮮に対しては厳重な申し入れをすべきだと思います。
  260. 柳田稔

    ○柳田稔君 ミサイルが日本の本土に落ちた、それも密集地に落ちて大量の死者が出た、それが誤っているかどうか確認をする、それが自民党政府の姿勢なんですか。そういう状況においても、確認をしてから、連絡をしてから、情報を集めてから、発表をしてから対応を決めると。災害じゃないんですよ、これは。
  261. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 防衛庁としては、常日ごろから艦艇や航空機によりまして我が国周辺の海域において常続的に情報収集活動を行っており、このような体制の中で情報収集をきょうも行っているところであります。  今後、北朝鮮の弾道ミサイル発射に関して、状況が緊迫してきた場合には、現在の体制に加えてさらに艦艇や航空機を投入すること等により情報収集活動を強化することが第一に大事なことであります。  なお、一般論として申し上げれば、我が国に向け弾道ミサイルが発射された場合には、防衛庁としては、早期警戒情報を含む関連情報の公表に努め、落下状況及び被害の発生状況を迅速に確認するとともに、弾道ミサイル発射の個別具体的な状況に応じて適切な対処をしてまいるわけでありますが、自衛隊法上、外部からの武力攻撃またはそのおそれのある場合に際して我が国を防衛するため必要があると認められる場合には、内閣総理大臣は国会の承認を得て自衛隊の防衛出動を命ずることができることとされており、このような事態が生起する場合には自衛隊が防衛出動することになると思います。
  262. 柳田稔

    ○柳田稔君 なぜこういう話を先にしたかといいますと、今回出ています新日米防衛協力のための指針、これは日本有事と裏腹だと私は思うんですよ。  さっきいろいろ議論を聞いていますと、国内向けの答弁は聞きますよ、私も。ただ、これは北朝鮮にとって関係ない話ですからね、言っておきますけれども。北朝鮮はあくまでも、仮定の話で、これで日本が作戦行動をとった場合、敵国の一部なんですよ、日本は。そう判断しますよね、いろんな支援をするわけですから。そうすると、これはまずい、やはり日本をたたく必要があるといってミサイルを飛ばす可能性はありますね。そして、ミサイルを撃った途端に、先ほど長官がおっしゃったように全部情報が入るわけですよね、長官のもとに、北朝鮮から何時何分何秒にミサイルが発射されたと。そして、八分後には落ちるんですからね。日本に着弾する。死者が大量に出る。そうする可能性が大いにあるからわざと聞いているんですけれども。とすると、その辺の姿勢というのを日本政府ははっきり持たないといけないのじゃないか。  ですから、繰り返しますけれども、このガイドラインというのは、単なるガイドラインだけには終わりませんよ、必ず日本有事に結びつく法案なんですよ。先ほど防衛出動とか長官は言われましたけれども、その覚悟と法律の整備は既に行われてあるんですか。
  263. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) まさに今、委員が挙げておられるような事態が起これば、これは我が国の平和と安全に重大な影響を与えることでありますから、私どもとしては、このお諮りしている法案はもとよりでありますが、まず現行法で防衛出動等をやる、あるいはガイドラインで決められた日米共同対処行動をとる、そういうことになりますが、私どもとしては、この法律を早くつくって今、委員が申されたようなことに対処しなければならないことと、もう一つは、この間来、国会でもいろいろ議論されておりますように、まだ国内的には有事法制というものの研究段階にとどまっているわけでありまして、これを立法するということは取り決めにより許されておりませんが、この有事法制問題につきましても公の場でひとつ議論していただくようなことが必要じゃないかな、こう考えておるところであります。
  264. 柳田稔

    ○柳田稔君 有事だとなったときに日本が対応できる法律はないですよね、ないと言った方がいいですよね、ありませんよね。  総理、これは仮定論議なんですけれども、有事の際の法律が日本にない、でもミサイルが飛んでくる可能性はあるんですね。ここで法律通しちゃって朝鮮半島で何か起きたと。日本はこの法律に従って米軍と一緒にいろんな協力をしていくと。そうすると、北朝鮮にとっては日本は敵国の一つですから、撃つ可能性は大いにある。ところが日本には有事の法制がない。しかし、死者もたくさん出たと。これ架空の話じゃないですよ、ミサイルが現実に飛んできたんですからね。東京に落ちる可能性も大いにあるわけですけれども。そのとき防衛庁長官というのは、総理に全部報告をされて、状況はこうです、法律はこれだけあります、自衛隊の装備はこれです、総理どうされますかと多分相談されると思うんですが、今の総理だったらばどんな決断ができるのかなと。  ちょっと繰り返しますと、要するに有事の法制がないです、日本に。だけれども決断をしないといけない。しかし、この決断のできる範囲というのは一体どこまでなのかなと思うんですけれども、現実問題として、もし総理が判断されるとしたらどんな範囲ができるのかな、ちょっと教えていただきたいと思います。
  265. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先生の御質問は極めて的確に具体的な問題の御指摘でありますから、かわって御答弁させていただきます。  我が国有事に関する法制につきましては、現行自衛隊法に全く骨格がないというわけじゃございません。防衛出動など自衛隊の任務遂行に必要な法制の骨格は整備されているのでございますが、先生も御指摘のとおり、なお不備な事項が残されていることは事実でございます。いわゆる有事法制の扱いが重要な課題であることは十分認識しておるところであります。  自衛隊としては、我が国の平和と独立を守り国民の生命と財産を守るという任務を遂行するために、憲法及び自衛隊法の定めるところに従い、最善の措置を講じてまいりたいと思っておる次第でございます。
  266. 柳田稔

    ○柳田稔君 言葉は悪いですけれども、言いわけは結構です。若干法整備ができていませんじゃなくて、ほとんどないと言ってください、現実としてないんですから。ない中で総理に決断をしろと言う方がまずおかしいんで、私はそう思うんですよ。だから、総理が答弁できないのは当たり前かなと思ったりもしているんです。こういうことが多分これからの質問でも多々出ると思うんですけれども。  ミサイルの話をしましたので、ミサイルについてちょっと聞こうと思うんです。  現在の北朝鮮のテポドン、ノドン、距離によって名前が違うようですけれども、このミサイルの開発状況はどうなのか。そして実戦配備の状況はどうなのか。さらに、核兵器の開発状況、化学兵器、生物兵器の保有、わかるだけで結構ですから教えていただきたいと思います。
  267. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) ミサイル開発とその配備状況についてまず申し上げたいと思いますが、北朝鮮は、一九八〇年代半ば以降、スカッドBやスカッドCを生産、配備を終わりました。これらのミサイルをさらに中東諸国等へ輸出してきたと見られており、また引き続きノドンやテポドン一号、二号などの長射程のミサイルの開発を行ってきたところであります。  北朝鮮の現在のミサイル開発の状況につきましては、ノドンについて言えば、去年八月末に発射されたミサイルの第一段目にノドンが使用されたと見られております。また、発射台つきの車両等、ノドン本体に付随して使用されると考えられている車両が既に多数調達されているとの情報、種々の情報を総合しますと、北朝鮮がその開発を既に完了していると考えられます。そして、その配備を行っている可能性が非常に高いと思います。このあたりは、先般韓国へ行きまして千容宅国防長官と話した場合も共通の認識でございました。  ノドンの射程は御案内のとおり千三百キロに達すると見られておりますし、その結果、我が国の全域が既にノドンの射程距離にほとんど入るという状況でございます。  テポドン一号について申し上げますと、昨年八月に発射されたミサイルの基礎となったものと見られ、その開発は急速に進展しているところであります。そのテポドン一号の射程距離は千五百キロ以上と推定されますから、我が国の全域をくまなく覆うということになります。  さらに、三千五百キロから六千キロと言われるテポドン二号の開発も相当進んでいると見ることが、これも韓国の千国防部長官と認識を共有したところであります。  次に、核兵器の開発、保有状況について申し上げますと、北朝鮮はかねて核兵器開発の疑惑を持たれているところであり、既に同国が核兵器一、二個を製造するに十分なプルトニウムを抽出、保有しているとの指摘もありますが、同国は極めて閉鎖的な体制をとっていることもあり、北朝鮮の開発、保有状況について明確に申し上げることはできません。  お尋ねにはなかったかと思いますが、さらに私どもが大変懸念しておりますことは、化学兵器や生物兵器の開発、保有状況でございまして、北朝鮮の化学兵器、生物兵器に関してもその詳細は不明でございますが、化学兵器については化学剤を生産し得る複数の設備を保有していると言われます。既に相当の化学薬剤等を保有していると見られております。また、生物兵器につきましても、一定の生産基盤を保有していると見られるところであります。  試みに、アメリカの国防総省の拡散・脅威と対応九七年によりますと、北朝鮮は九四年の枠組み合意以前に少なくとも一個の核兵器に十分な量のプルトニウムを製造したと信じられている。この点についてはペリー米国国防長官もNBCのテレビのインタビュー等で同じようなことを言っております。  また、その同じ拡散・脅威と対応によりますと、北朝鮮は現在相当量の核兵器を保有していると見られ、限定的な量の初歩的な生物兵器の製造をし得ると考えられるに足る基盤を有しているというふうに述べておりますし、韓国国防白書においても北朝鮮は現在化学剤を大量生産し得る八個の化学工場とびらん性、神経性、血液性、催眠性等の大量の有毒ガスを保有しており、生物兵器を培養、生産し得る施設を多数保有していると、こういうふうに申し述べているところから、私どもも甚だ不透明でございますが、こういう問題に対して大変な関心と注目をしているところであります。
  268. 柳田稔

    ○柳田稔君 次に、北朝鮮の政治状況はいかがでしょうか、外務大臣
  269. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 北朝鮮情勢は不透明な部分が多く、確たることを申し上げるのは困難でありますが、昨年夏の最高人民会議代議員選挙の後、統治機構が再構築され、政府の陣容などが一新されたものの、金正日総書記が国政全般を掌握している状況は変わっていないと見ております。  また、同書記のもとで引き続き軍を非常に重視する政策がとられており、経済的な困難が続いていますが、近い将来に北朝鮮が崩壊するとの兆候はうかがえないと思っております。
  270. 柳田稔

    ○柳田稔君 核兵器はあるかもしれない、生物兵器はもう保有している、化学兵器も保有している、ミサイルは実戦配備されている、そして体制は何をするかわからない。ところが、日本はいざとなったとき法制が一切ない。簡単に言うと、たくさんの死者が出てもただ見ているだけというのが現状じゃないのかなと私は思う。  だから、今回ガイドラインが出ましたけれども、私はすごい本末転倒じゃないかと思っているんです。まず、日本有事の法制を決めて、国内をどうして守る、日本人の生命というのをどうして守るんだというのをまず決めて、それから外の沿岸周辺を決めて、そして前幹事長が多国籍軍とおっしゃっていたけれども、それはその次と、これが法律の順番じゃないのかなと。ところが、国内の有事は何も手をつけない。多国籍軍についても何も手をつけない。真ん中だけ手を突っ込むから何かいびつな法案になってしまったなと。これが実は僕の感想なんですが、でも大分前進しているから少しは評価しているんですけれども、何かしないといけないんじゃないかなと思ったりもしています。  ちょっと余談はおきまして、次飛ばします。  北朝鮮の特殊活動部隊、よくゲリラ部隊と言われていますけれども、こっちの方に質問を飛ばさせていただきますので、お願いいたします。  まず、北朝鮮に特殊部隊ですか、特別な訓練を受けた部隊の存在があるのかどうなのか、防衛庁長官、どうでしょうか。
  271. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 結論から言いますと、北朝鮮が委員御指摘のようなゲリラ戦等を行う特殊部隊を多数保有していることは防衛庁も承知しております。実際の運営形態などの詳細については、特殊部隊としての性格上極めて秘匿性が高いこともあり、確たることは申し上げられませんが、その勢力は約十万人余りに達するとの御指摘もあり、世界でも有数の規模と考えられております。  ちなみに、韓国の国防白書九八年版によりますと、約十万人余りに達する特殊戦部隊は、有事に前・後方地域に同時に多発的に浸透して、兵たん線遮断や飛行場等の主要施設を打撃することで韓国の経済、継戦能力を破壊し、南韓地域を同時に戦場化することを図っている、こういうふうに書かれております。
  272. 柳田稔

    ○柳田稔君 北朝鮮による日本人の拉致事件というのが多発していましたけれども、これは多分北朝鮮のそういった部隊の人が日本に来て連れていったんじゃないかな、そう思うのが普通常識だと思うんです。この認識についてはちょっと飛ばしますけれども、多分国内に相当入っているんじゃないかなと思うんです。日本人を拉致して連れていくぐらいですから、北朝鮮のそういう部隊の皆さんは。  この部隊、ゲリラ部隊というか、こういう人たちですけれども日本国内にいるということについて、何か国家公安委員長の方でつかまえていることとか、活動とかについて何か知っていることとか、もしあれば教えてもらいたいと思うんです。
  273. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 北朝鮮の工作員の関係の御質問でございますけれども、北朝鮮は過去に海外におきましてビルマのラングーン事件だとか大韓航空機事件などを敢行しておるというようなことから、警察としましては、こういう事案を防止するために、関係各機関とも連携して情報収集活動を強化しておるというところであります。  なお、我が国におきましては戦後約五十件の北朝鮮関係の諜報事件が検挙されておるわけであります、工作員関係の事件でありますけれども。  これらの事件、事例から判断されますことは、我が国におきましては、潜入した北朝鮮の工作員によりまして対韓国工作の拠点としての活動というものが行われたり、あるいは我が国に対するさまざまな情報収集活動、さらには在日米軍に関する情報の収集等を目的とする活動が行われているというふうに見ておるところでございます。
  274. 柳田稔

    ○柳田稔君 なぜ飛ばして特殊部隊、工作員へ行ったかといいますと、ミサイルが飛んでくる可能性はもう既にあると皆さんに認識してほしいわけですよ。この工作員も既にもう日本に潜伏していますよ、これはいつ何どきでも活動を始めますよ、この危機意識だけはみんなに持ってもらいたいなと思って質問させてもらったんです。  この工作員の潜入をさせないというか、日本に入らせないということは非常に重要な現段階の課題だと思うんです。としたときに、その対策は海と海岸と国内とあるかと思うんですが、おのおのどういうふうな今対策をされているか、教えていただきたいと思います。
  275. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 一番私ども心配するのは国内の重要施設の警備の問題でございますが、一義的にはこれは警察機関の任務でございまして、防衛庁としては平素重要施設の警備を行っているわけではございません。  他方、テロ事案発生時には、防衛庁として、自衛隊の保有する装備や訓練等を通じて得た技能や経験を生かし、法令の定めるところに従いまして、例えば警察機関の依頼を受け警察官等の輸送や各種資機材の提供等の必要な支援を行うことが考えられるところであります。  また、警察機関では対処することができないと認められる事態に至った場合には、治安出動により自衛隊が対処することも考えられるところであります。  自衛隊の具体的な対応は事態の具体的状況に応じて異なりますけれども、例えば自衛隊が警察機関と連携し重要施設の警備や事態の鎮圧等に当たることなどが考えられるところであります。  いずれにしましても、防衛庁としては、警察機関と緊密に連携しまして各種の事態に対処することが重要と考えており、橋本内閣以来、政府として進めている緊急事態対応策の検討などを通じて、今後とも一層緊密な連携体制の構築に努めてまいりたいと考えております。
  276. 柳田稔

    ○柳田稔君 そのことは後で質問する予定だったんですけれども、質問する前に答えていただきました。  私が質問したのは、工作員を日本に入れないように今でもしなくちゃならないんじゃないですかと、そうですよね。その入らせないために、海は海上保安庁になるんでしょう、海上保安庁はどういう対策をしていますか、海岸線は警察ですよね、どういう対策をされていますかと聞いたので、長官が言ったのは後の質問ですから。
  277. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) まず、不審船による不法入国をどうして監視しているのか、こういう御質問だろうと思います。  我が国における治安、公共の安全を侵害するとともに、付近海域を航行する船舶の安全な航行を脅かすものである。したがって、この種の事案に対する対応は、海上における治安、公共の秩序維持に当たることを任務としている警察機関たる海上保安庁がまず第一に対処することにしております。  海上保安庁では、これまで不審船の出現する可能性が高い海域に巡視船艇、航空機を配備し警戒を行ってきたところでありますが、今後も警戒に万全を期してまいりたいと思っております。  また、不審船を発見した場合の具体的な対応、これはまさに場合によって異なると思います。私どもで十分対応できるケース、また関係省庁としっかり連絡しなければならないケース、また、防衛庁長官から既にお答えがございましたけれども、海自の場合には対策本部というものが設けられて、最終的には内閣の判断をいただくというところまで行くだろうと思っております。
  278. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 警察関連で沿岸警備のことについての御質問でございますので、警察としましても、先ほど御答弁させていただきましたように、北朝鮮工作員による不法出入国事案等が発生しておりますことを治安上大変重大な問題だというふうに認識しておるわけであります。  この防止及び発見、検挙のために、ただいま御答弁もありましたように海上保安庁等関係機関との連携を図るということが必要でございますし、同時に漁業協同組合を初めとする沿岸住民の方々の御協力も得る必要がある。そうしたことをする中で、我々としまして、海上における警備艇による警戒だとかあるいは沿岸部におけるパトロールとか検問等々、各種の対策を実施しておるということでございます。  こうしたことによりまして、先ほど北朝鮮関係での諜報事件、戦後約五十件あるというふうに申し上げましたけれども、そのうちで、この沿岸部において潜入、脱出等を企てた工作員等の事件を十五件ほど検挙しておるという状況にございますので、私ども警察としましても、こうした沿岸警備の重要性にかんがみまして、今後とも各種警備諸対策を推進していきたいというふうに思っております。
  279. 柳田稔

    ○柳田稔君 この北朝鮮の工作員というのは、多分このガイドラインの法案審議とも相まっていろんな動きをしてくるのかなという予想も立たないわけではありませんよね。ですから、警察としても、また海上保安庁としても、従来以上に相当力を入れてこの工作員対策をすべきではないかと思っていますので、力を相当入れていただきたい。特に国内ですけれどもね。担当大臣、お答えをお願いします。一生懸命今以上やってほしい、すべきではないかと。  こういうガイドラインの法案も審議に入りますし、これができたらいろんな行動に入るわけですね、日本国内として。計画をし、いろんな打ち合わせをしながら行動に入るわけですから、そうすると北朝鮮にとっては大分脅威ですよね。とすると、今以上に危険な状況になるのじゃないかなと。そうしたときには、やはり国内の警察権というのはもっともっとそれに対して力を入れるべきではないかと思うのですが、大臣どうでしょうか。
  280. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 法案審議と直接連動するかどうかということは別として、先ほど来いろいろ御議論がありましたとおり、大変気になる状況であることはかねてから指摘をされておるとおりでありまして、そういう点で、沿岸警備のみならずいろんな重要施設等における警戒態勢等についても、必要な警戒措置あるいはパトロール、そういったことをしっかりと遺漏なきように万全を期しておるということは申し上げておきます。
  281. 柳田稔

    ○柳田稔君 次に、未確認と言いませんけれども、国籍不明機の飛来ということにちょっと移りたいと思うのですけれども、北朝鮮の空軍の能力といいますか戦闘能力といいますか、もう一つは、日本まで飛んできて爆弾を落とせる能力があるのか、そういうのも含めてちょっと今の北朝鮮の空軍の能力について御説明していただきたいと思います。
  282. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 北朝鮮空軍は、今約六百十機の作戦機を有しております。その大部分は中国や旧ソ連製の旧式機から成っておりますが、最近はミグ29やスホーイ25といったいわゆる最新鋭機も保有するようになってまいりました。また、旧式でありますけれども、特殊部隊の輸送に使用されると見られる小型のアントノフ2複葉機も多数保有していると言われます。  なお、相当数の作戦機が非武装地帯に比較的近い前方基地に配備されていること等から、短時間で韓国全域に対する奇襲攻撃が可能であるとされております。  その程度でよろしいですか。
  283. 柳田稔

    ○柳田稔君 日本へはどうですか、能力的に。
  284. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 北朝鮮空軍が我が国の領空を侵犯し得るかどうかという問題でございますが、航空機そのものの性能のほか、運用形態とか要員とか各種支援体制の状況など、さまざまな要素から判断すべきものであります。したがって、確たることは申し上げられないんですが、仮に航空機の航続距離の点からのみ申し上げれば、不可能とは言えないものと考えられます。
  285. 柳田稔

    ○柳田稔君 二十三年前の話なんですけれども、ミグ戦闘機が函館空港におりましたよね。あれからもう、さっき言いましたように二十三年もたっているわけですから、スクランブル体制、その後の処理というのは相当進んでいるとは思うんですけれども、二十三年前のミグ戦闘機が来た当時、防衛庁はどんな対応をされたんですか。
  286. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) 今、先生御指摘の、昭和五十一年の九月六日でございましたが、当時のソ連のミグ25戦闘機が函館に着陸した事件がございました。  当時防衛庁は、御承知のように全国二十八カ所のレーダーサイトで空域を常続的に監視しておりました。そのレーダーサイトがその当該飛行機を、北海道の西方を東に向けて、つまり我が国の方に向けて飛来している、当時はそのレーダーサイトといたしましては識別不明機でございましたが、これを探知いたしまして、その目標に向かって、これはいわゆるスクランブルと申しておりますが、千歳の基地からF4二機が緊急発進をしてその不明機の確認に行ったわけでございますけれども、途中でその当該、その当時のミグ25が急激に高度を下げて飛行するようなことがございまして、実はそのレーダーの覆域から結果的に外れてしまいまして、一時自衛隊としてはこれを見失ったわけでございます。その後、函館空港に着陸したという状況でございました。
  287. 柳田稔

    ○柳田稔君 当時のレーダーの性能とかいろんなことを考えるとしようがないのかなという面もあるんでしょうけれども、あれから二十三年たちましたし、今ではイージス艦も日本は持っていますから。もし現在、国籍不明機が日本領空を侵犯したといったときはどういう対応を今自衛隊ではとられますか。
  288. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほど運用局長から申し上げた事態を踏まえまして、E2Cという十三機の最新鋭機を導入しまして、今は山の裏の方にあるそういう低空飛行でも十分探知できる能力を持った飛行機を適地に配置している状況でございます。
  289. 柳田稔

    ○柳田稔君 そういう性能を自衛隊はお持ちになったと。そういう中で、国籍不明機が日本領空を侵犯したというのがわかった場合、レーダーに映りますものね。私も三沢基地へ行かせてもらいましたけれども、そのときに画面に出るんですよね、全部が。この飛行機はどこどこの飛行機、何便とか、これは国籍不明機とか、一遍にぱっと出るんですね。だからすぐわかると思うんですが、そうなったときに今だったらどうされるんですか。
  290. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 領空侵犯が発生した場合の対応について、一般論として申し上げさせていただきたいと思いますが、自衛隊の部隊が自衛隊法第八十四条に基づき確認、警告、誘導等の必要な措置をとることになります。  また、領空侵犯機が要撃機に向けて発砲したり実力をもって抵抗するような事態が生じた場合には、正当防衛や緊急避難の要件に該当する場合には武器を使用することが認められておりますので、そういう権限を行使していくことになると思います。
  291. 柳田稔

    ○柳田稔君 長官は先に先に答弁をしてくれるので戸惑いもあるんですけれども。  見つけたらスクランブルをかけるんですよね、当然として。今だったら一機ですか、二機ですか、スクランブルをかけるのは。不明機が一機飛んできたというのはわかりますよね。そのときにスクランブルは一機飛ぶんですか二機ですか、それとももっとですか。そういうのをちょっと教えてもらいたかったんです。
  292. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) スクランブルのための待機をしております基地では二機を常時待機させておりまして、ですから目標が一つであってもその二機が同時に飛んでいって確認、それから警告とか、そういった措置をとることにしております。
  293. 柳田稔

    ○柳田稔君 警告されますよね。警告を聞かずにまだ日本の上空に向かって飛び続けた場合どうされますか。
  294. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) 機体を確認し、それから日本の領空に近づいている相手に対しては、その飛行機はといいましょうか、その国の言葉で、あるいは英語でやるわけでありますが、我が国の領空に近づいているので直ちに方向を変えなさいという、そういう指示あるいは警告をすることに相なります。さらに、状況によりましては、これを誘導した上で適切な近傍の空港に着陸させるといったような措置をとるという手順になろうかと思います。
  295. 柳田稔

    ○柳田稔君 それは相手がいい人の場合かもしれませんけれども。  誘導も聞かない、警告も聞かないと。目的があって飛んでいるはずですから。そういう場合だったらどうされるんですか。
  296. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) 実際の例といたしましては、例えば旧ソ連機による沖縄の領空侵犯の事例がございまして、今、先生御指摘のようにかなり長い時間にわたりまして領空侵犯を行っておりました。これに対しては、当時、警告射撃を行ったわけでございます。  それ以上の事態になればどうかということでございますが、先ほど大臣からも御答弁がありましたが、いわゆる正当防衛、緊急避難に当たるようなケースでは、さらに強度のといいましょうか、武器の使用をして対応することになるだろうと思っております。
  297. 柳田稔

    ○柳田稔君 ちょっと細かいことを聞くんですけれども、今、正当防衛だったら反撃は許されるとおっしゃいましたよね。でも、今の戦闘機というのはジェット機で、武器はミサイルを持っていますね。とすると、向こうがボタンを押したらこっちは落ちるんですよ、ボタンを押す前に。だから、正当防衛じゃなくて、落とされた後に正当防衛はできませんものね。そう思いませんか、常識として。だから、向こうがもし攻撃をしかけるんだったら飛行機が旋回するはずですよね、攻撃用に。後ろか横に日本の飛行機がついているわけだから、それを警告しながら誘導しながら行くわけでしょう。それで、日本機に攻撃しようと思ったら旋回しないといけませんよね。旋回してこっちに向かってきて向こうがミサイルを撃った。撃ったといって正当防衛になったときにはもう終わりですよね、現実は。違いますか。とすると、それ相応のことを今考えなくちゃならないんじゃないかなと。つまり、コースを変えてこっちに向かってくる態勢に入った途端にはもうこっちは撃たないといけないんじゃないかと僕は思うんですよ、常識的には。どんなものでしょうかね。
  298. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) ちょっと技術的な細かい話で恐縮でございますが、通常、スクランブル、緊急発進をしまして領空侵犯機に対応しますときは、例えば二機で行きますれば両側からその飛行機を挟むような形で並行して飛びます。そこで、その相手にいろいろ呼びかけをしたり信号弾を撃ったり、あるいは翼を振って合図をしたりというようなことでこちらの意思を伝えていくわけでございます。  ですからその際に、仮にこちらに向かって攻撃態勢に入るというようなケースがありますれば、それは本当にもうかなり現場のプロフェッショナルな判断は求められるだろうと思いますが、ミサイルそのものが自分の方に向かってこなければ、まさに正当防衛あるいは緊急避難がどんなケースで成り立つかという具体的な事例でございますので、必ず向こうが先制的に武器を使用してこちらが落とされてしまうから必ずしも正当防衛、緊急避難が機能しないというようなことではなかろうというふうに考えております。
  299. 柳田稔

    ○柳田稔君 大変苦しい答弁だなと思って聞いたんですけれども、向こうがミサイル撃っちゃうともう一秒かそこらで当たっちゃうわけでしょう、こっちに、ドンって。そうすると、もう終わりですよね。外れることはまずめったにないしね、最近のミサイルは。だから、そうなると、正当防衛というのは言葉では使えそうだけれども実際は使えないのかな、ただやられっ放しかなと。さっきもそう言って、スクランブルをかけて飛んでいって、例えば向こうがこっちを攻撃して自衛隊機を落とした、それでも日本政府はその国に対してどうのこうのするというところまでまだいくような状況にないでしょう、政治状況としては。としたら、やられっ放しで損かな、損という言葉はよくないですけれども。何かちょっと理解に苦しむような感じもするんですけれども、どうでしょうか。
  300. 柳澤協二

    政府委員(柳澤協二君) 大変現場的な御説明で恐縮でございますが、先ほど申し上げましたように、並行して飛んでおりますので、相手がそういうケースで、僚機も二機こちらもございます。攻撃態勢に入るというのは実は、先生も御指摘になりましたように、相当大きな機体の運動を相手もするわけでございます。それから、例えばレーダーでロックオンされますと、今それを警報でパイロットに知らせる装置なんかを持っております。  そういういろんな要素を組み合わせますと、並行して飛んでおります我が方のスクランブルの飛行機がそう簡単に攻撃を受けるというケース、基本的にはいろんな回避も可能でありましょうし、それから、本当にいよいよというときにはミサイル、数秒と申しましても、一般に今私どもが訓練でやっております戦闘機同士の空中戦闘というのはまさに数秒あるいは数十秒オーダーの判断と運動で戦闘機同士の戦闘というのをやっておるわけでありますから、まさにそういう中で相当程度の対応はできる、またそれだけの訓練も積ませていただいているというふうに私どもは思っております。
  301. 柳田稔

    ○柳田稔君 飛行機の場合そうなのかなと思いつつも理解に苦しむんですけれども。  ちょっと飛ばしたものに、昨年の十二月に北朝鮮の潜水艇が対馬沖で撃沈されましたね。これは武装してきたんだろうなと思うんですけれども、韓国軍の艦艇によって撃沈されたと。これも幸いにして日本領海の外だったんですね、幸いにして。  これが日本の領海の中だったらどうするんだろうかなと。距離に直すと、大体五十キロぐらいだと言っていましたけれども、ということは一時間ぐらいでもうすぐ日本の領海に入っちゃうんですね。日本の領海で海上保安庁の船がこれを見つけた、帰れといって警告を発する、だけれどもそれを聞かない。逆に魚雷を発射されたら、逃げられませんよね、海上保安庁の船では、魚雷からは。それからまた、その近くに防衛庁の船があった、魚雷を発射してきたと、これは逃げられませんよね。  要するに、さっきのスクランブルと同じような話なんですけれども、そんな攻撃を受けたときに果たして日本はどういう態勢というか対応というか、姿勢がとれるのかなと。何か教えてもらいたいことなんですけれども、どうでしょうか。
  302. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 委員が大変詳細なことをいろいろ聞かれるものですから、こっちも頭が痛いんですけれども、海上における人命、財産の保護または治安の維持については、現行法上、先ほどから申し上げているとおり、第一義的には海上保安庁が担当すべき任務であるとされております。不審船舶の領海侵入に対する自衛隊の対応としては、事態に応じて異なるわけであります。したがって、一概に申し上げることは困難でありますけれども、一般論として申し上げれば、次のような行動がとられると思います。  まず一つは、自衛隊は平素から警戒監視や訓練等を実施するに際し、不審船舶を発見した場合の連絡など、海上保安庁と緊密に連携をしておりまして、その不審船舶の対処に協力しているところであります。また、自衛隊法に規定された七十六条の防衛出動や八十二条の海上警備行動等が下令された場合には、事態に応じ、法令により付与された立入検査等や、武力の行使の権限により適切に対処することとなります。  いずれにしましても、私どもとしては、自衛隊の出動等が必要とされる重要事態が発生する場合には、情報の収集、分析、伝達の円滑な実施を確保するとともに、所要の対応のあり方についてあらかじめ検討を行い、いざという場合には迅速に対応することができるよう、先般、防衛庁に重要事態対応会議を設置したところであり、今後とも防衛庁、自衛隊の対応に遺漏なきを期してまいりたいと思っております。
  303. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 十二月十八日のケースを考えながら、潜水艦とか軍艦が来たらどうするんだ、こういう質問だろうと思います。  基本的に申し上げれば、先ほどのスクランブルと多少違いますのは、これはすべての船舶については無害通航権、したがって外国の軍艦だろうが我が国の領海内を通過することができます。しかし、問題は、例えば潜水艦でしたら潜って入っちゃいけない。当然上に出て、そして旗を掲げて、我々の領海域を通って通過していきたい、こういったときには認められる。  そこで、海上保安庁の能力と自衛隊の能力の問題になるわけですけれども、潜水艦ですから、もしこちらに敵対行為があるとすれば、潜って入ってくるんですね。その場合は、基本的には海上保安庁には探知能力はございません。基本的には今お話しのように、自衛隊というものの探知能力というものが第一義的になってまいるだろう。そして、自衛隊が探知をしたという場合に私どもや外務省や諸官庁に連絡をとる。そして当然内閣に対策本部というものができ上がる。その中において、どういう対応をとっていくかというのを決定しながら動いていくということになるだろうと思います。入ってくるなり問答無用でミサイルを撃たれたらどうするんだ、これは話の想定はなかなか正直に言って難しゅうございます。  いずれにせよ、対策本部というものを基本にしながらやっていくということになるだろう、こう思っております。
  304. 柳田稔

    ○柳田稔君 事前通告したものを大分飛ばしてから質問したので申しわけありませんでした。  要するに、今、運輸大臣がおっしゃったように、全部踏んでそれでも聞かないし、どうしようもないといって向こうが攻撃したときにどうされるのかなというのをただ聞きたかっただけなんですが、ただもうちょっと、要するに北朝鮮の状況をよく皆さん認識してほしい。武器もたくさん持っているよ、それに比べて日本の国は一体何なんだ、何もできないじゃないか、力を持っていてもそれを使う法律もないじゃないかと。そんな状況でいいのかなということを言いたかったんですよ。  もう一つは、こういう法案を通すことによって日本はいろんな行動がとれる。これは私はいいことだと思う。でも、とるということはその危険も考えていかないといけない。だけどその危険に対応する方法は日本にない、さっきも言ったとおりです。そんな状況でいいのかなという思いが大変強いので、きょうはそれに時間を割かせていただきましたけれども、次に小宮山先生にバトンを移したいと思います。  よろしくお願いします。
  305. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。小宮山洋子君。
  306. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 先日私は、オランダのハーグで開かれましたカイロプラス5、カイロ会議から五年目の見直しの会議の準備会議に行ってまいりました。これは、一九九四年にカイロで開かれました人口問題の会議、これはリプロダクティブヘルス・ライツという舌をかみそうな、何人子供を持つか持たないか、それはカップル、特に産む立場の女性が自己決定すべきだ、そのことによって人口問題や持続可能な開発の問題が解決するというそういう合意がなされた会議、その五年目の見直しの会議の準備会議があったわけです。そのハーグでも、やはり避妊の選択肢が多くてそれにアクセスしやすい、それが重要であるということが再度確認されました。  このことに関連いたしまして、私は低用量ピルの認可について伺いたいと思っています。  日本は、国連加盟国でたった一つ低用量ピルが認可されていない国なんです。これは避妊の方法としては非常に確実性が高く、しかも日本で今使われています副作用の多い中高用量ピルよりも使う人のためには副作用が少ないということがわかっている。それで、各国で使われているのになぜ日本が認可されないのか、そういう現状を発言しましたところ、会場からは、アンビリーバブル、信じられない、日本が認可していないなんてと、そういう声が上がりました。  治験によって安全性が確認されて申請が出されてからもう既に九年たっています。なぜ認可されないのか、厚生大臣に伺いたいと思います。
  307. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 御指摘のように、低用量ピルにつきましては平成二年の七月から三年の九月までに至ります間で九社の十六品目の申請がなされております。中央薬事審議会というところで諮問に応じて調査をしていただいておるわけですが、今まで調査会とか特別部会を開くというようなこと、それから常任部会と審議が進んでおりまして、昨年は十二月に、ピルの有効性と安全性に関する審議状況を取りまとめまして、これを中間的な報告をさせていただいたわけであります。  北米諸国、EU加盟国、豪州を初め世界の八十八カ国で承認されているというように承知しておりますが、なぜまだ日本でこれを許可しないのかという点につきましては、一つ、ピルにつきましては健康な人が服用する医薬品でございまして、特に副作用の問題について慎重な審議が行われております。  また、ピルの使用がHIV等の性感染症の拡大に与える影響についての公衆衛生上の観点からの論議等もございまして審議に時間を要しておるものというように承知しておりますが、この間、審議会から承認申請者に対しまして作成を求められた資料の提出その他かなり時間もかかったということもございまして、ただいまのような状況になっておるところでございます。
  308. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 ことしの一月に厚生省の方ではたった六カ月でバイアグラを認可されました。これとの比較で国際的にも非常にニュースになっております。これはやはり女性の方の自己決定は何とか少なくしておきたいというダブルスタンダードではないかということで、会議で発行されましたジ・アース・タイムズという新聞もダブルスタンダードというタイトルで記事を書いておりますし、そのほかフィナンシャル・タイムズもダブルスタンダードと書いています。また、シカゴ・トリビューンは、これはピルの話が出てから三十年たっているわけなんですね、ですから、バイアグラはすぐなのにピルは三十年も待たされていると。  このように国際的にもニュースになっておりますが、認可の見通しを厚生大臣に伺いたいと思います。
  309. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) バイアグラにつきましては御承知のように六カ月で認可をいたしておりますが、これは一つの治療薬でございまして、勃起不全を治すという治療薬であるということ。それから、治療等のための薬が今まで存在していなかったということもございますし、データ等も外国の治験等に基づく資料等も十分活用可能であったというようなことでスピード処理をさせていただいたところでございます。  一方、先ほど申しましたように、低用量ピルにつきましては、これは病気の治療薬ではございませんで、健康な人が服用されるものでございます。したがって、健康にいろいろ影響が考えられれば、それに対応する科学的治験はきちっとやることが必要であるという認識のもとに今までこのようになってきておりまして、決してダブルスタンダードというような、結果において形の上でそう見られがちでありますが、私どもとしては別に区別をしているわけではございません。バイアグラはバイアグラとして認可をいたしましたが、ピルにつきましては先ほど申しましたような四つばかり問題点が今あります。  それは、ピルの使用とがんのリスク等、安全性についての評価が一つございます。これは乳がんとか子宮頸がんの発生率とそのリスクの評価がいまだ完全にクリアされておりません。  それから、ピルの使用によりますHIV性感染症の拡大、これは先ほど申しましたとおりでありますが、これは中央薬事審議会の方から公衆衛生審議会にもわざわざその可否について意見を求められておりまして、この回答によりますと、承認される場合には性感染症予防の観点からコンドームの使用や性感染症検査の勧奨等の対策を講ずべきである旨の答申を中央薬事審議会になされております。  それから、承認するとした場合の情報提供のあり方、あるいはピルに含まれる成分と言われます環境ホルモン関係の問題等もあるようでございまして、これらの問題を科学的な面で検討していかなければならないと思います。  しかし、今、委員の指摘のように、世界でもうほとんど使われているのになぜ日本だけやらないのかという点もごもっともな点がございます。  中央薬事審議会では三月三日に審議会を再びやることになっておりますので、私どもとしては昨年の十二月の時点でそれまでの審議経過の大綱については公開をいたしました。しかし、議事録は公開しておりません。今度の三月三日もそうした残された問題についての議論が進むと存じますので、三月三日に結論が得られるという見通しはないと存じますけれども、それはまた中間的な発表もいたしたいと思っています。  私としては、こうした万般の状況を判断してなるべく早く結論が得られることが望ましいと考えておりますが、これは中央薬事審議会に諮問をしてはおりますが、中央薬事審議会という権威ある機関の判定を待たざるを得ないので、私としてはなるべく早く結論が得られることを望むと言うにとどめさせていただいております。
  310. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今、大臣は、バイアグラについては外国のいろいろな安全性のデータを使ったとおっしゃいましたが、ピルも国連加盟国で日本以外はみんな使っているんですけれども、なぜピルについては外国でのそういうものをお使いにならないんでしょうか。日本でも治験を一九八七年から五千人にわたって七万周期やっているんです。それで安全性が確認され、がんについても大丈夫となりました。HIVエイズもコンドームとの併用でいいとなりました。そうしたら今度は、まだそのこと自体もわかっていない、いわゆる環境ホルモン、内分泌攪乱物質の話を持ってきて、これは認可しないために次々にいろいろなものが出てきているとしか思えないという感じがいたします。  先ほど健康な人とおっしゃいましたけれども、WHOの健康の定義は厚生大臣は当然御存じだと思いますが、病気でないということだけではなくて、身体的、社会的ウエルビーイングということになっております。そのためにぜひこの認可は必要だと思いますので、早急にお願いをしたいと思います。  続きまして、外務大臣に国際的な感覚からして伺いたいと思うんですけれども、今申し上げましたように外国でも話題になっていることに加えて、ハーグの会議で私が発言した後、IPPF、国際家族計画連盟など国際的な援助をしている組織から、日本は人口問題でかなりの額の援助をしているけれども日本で認可されていないために途上国などの女性たちも低用量ピルを使うことができない、これは日本の女性だけの問題ではなくて世界じゅうの女性の問題だという声がございましたが、この点についてはいかがでしょうか。
  311. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 今、認可自身については私の所管外でありますが、実は発展途上国からピルについての援助をしてくれと言われたこともあるわけでありますが、日本でまだ安全性が確認できないということで使わせていないのを発展途上国の人だから使わせるということはそれこそダブルスタンダードになることでありますから、日本で援助はできなかったわけであります。  厚生省の方でしかるべく国内の対応をとっていただければ外務省としてもそういった点も考慮していきたい、こう思っております。
  312. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 実際に、インドネシアからの要求にこたえられず援助ができなかったという例もあるわけです。ぜひ外務省の方からもそういう国際感覚で、縦割りでなく進むように働きかけをお願いしたいと思います。  そして、三月三日に開かれる中央薬事審議会の常任部会では、先ほど結論はと厚生大臣がおっしゃいましたが、道筋が示される予定と聞いております。やはり情報の公開が非常に必要だと思いますので、この審議の公開を多くのNGOが求めていますが、この点について厚生大臣と、それから総理にもこの情報公開という面と、今のようなことをお聞きになって国際感覚が豊かな総理としてはどのようにお考えになるか、伺いたいと思います。
  313. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この公開の問題につきましては、厚生省に幾つかの審議会がございますが、それぞれの扱いを異にしております。  中央薬事審議会におきましては、平成九年五月の総会で以後の総会や部会の議事録の公表に係る取り扱いが決定されておりますが、まずその公表の時期につきましては、各案件の審議終了後、つまり新薬の承認について言えば、一定の承認に係る審議が終了して承認手続を終えた後ということでございますが、議事録が作成され次第公表することとしております。ただし、このうちの発言者の氏名につきましては、原則として承認等の後、二年経過した時点で公表することに決めておられます。これは、委員の自由な発言を確保するために委員の任期は二年であるということをも考慮したものであるというように伺っております。  なお、議事録の公表に当たりましては、個人の秘密とか企業の知的財産等にかかわる部分、これは薬事審議会の場合は多うございますが、そういう部分につきましては、個人の名前は空欄にするとか、それからそういった知的財産権にかかわるようなところは黒でつぶす、黒抜きをするというようなことはやることを前提として公開するようにいたしております。  なお、審議会等の一般論として申し上げれば、厚生省の場合もほかの審議会等では全くオープンにしている審議会等もございまして、その審議会の特性によって扱いを異にしているものでございます。  中央薬事審議会の取り扱いは以上申し上げたとおりです。
  314. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 情報公開につきましては、今、厚生大臣から薬事審議会の模様についてお話がありました。  前段のピルの使用の問題について、私も日本を除くほとんどの国がそれの使用を認められているということをお聞きいたしますと、日本人の婦人だけが特別の身体の状況ではないような気がいたしますが、これは専門的でないので私断定できませんが、ぜひひとつ結論を早く出して、そして対応すべきではないかなと、こう考えます。
  315. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今の総理の結論を早くすべきというお答えは、なるべく早くいくことに総理がイニシアチブをとっていただけるものと期待をしたいと思います。  きょうは、午前中同僚の円議員の質問の中にも、カナダの総領事の女性に対する暴力の問題がございました。それからハーグの会議でも、日本ではやはり女性の人権とも言えるこの選択肢がないということが話題になっております。両方とも日本の女性の人権感覚が問われている問題だとも思いますので、ぜひ早急な結論を出していただきたいとお願いして、終わります。
  316. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で柳田稔君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  317. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、長谷川道郎君の質疑を行います。長谷川道郎君。
  318. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 大蔵大臣、長時間でお疲れのところ大変恐縮でございますが、ぜひ大蔵大臣にお伺いしたいことがございまして、きょう立たせていただいたわけでございます。  昨年の臨時国会の審議に際しまして、最近の経済問題を大臣が答弁される際にしばしばプラザ合意についてお触れになっていらっしゃいました。私は、日本にとって一つの大きなターニングポイントであったこのプラザ合意、昨年の臨時国会での大臣のいろいろお話は断片的なお話でございましたので、きょう、プラザ合意が何であったのか、日本と米国にとってどういう意味があったのか、そしてそれがバブルにどういうふうに移行したのか、それをぜひ系統的にお話をいただきまして、本日の議事録にとどめたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
  319. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) プラザ合意がございましたのは一九八五年の九月でございますが、余りに最近でございますからまだ歴史になり切っておらずに、そのことの意味合いが十分国民の皆さんにわかっていただけていないと思いますが、一九八五年の九月のお彼岸の日でございますが、その日の円は二百四十二円でございます。  それから今日まで間もなくちょうど十四年になりますか、円がちょうどその倍と申しますか、偶然に百二十一円とかちょうどそんなことになっておりますが、この百二十一円という水準は、実は一九八八年でございますか、三年ぐらい後に一遍そこへ届いておりまして、それからまた一九九五年の四月には、一九八八年に一遍この水準に届いておりますが、上がったり下がったりで九五年の四月には八十円になっておりますから、これは三倍になっておるということでございます。  これだけの国がそれだけ激しい通貨の変動と申しますか、上昇を受けながら影響を受けない理由はない。それは経済にとどまらないと思います。そのことは将来、悪い影響ばかりではないはずでございますが、必ず歴史に残った大きな出来事であったということを、余り最近なものですから感じませんが、そう思います。  しかも、それに対応するのに御承知のように非常に苦労をいたしまして、私自身もその間大蔵大臣どもいたしましたが、ともかく経済が動かなくなりましたから、政府は何度も補正予算を組みましたし、また連日ドルが下がり円が上がっていきますので、本当に一週間に何回というような介入をいたしております。それは、一日に多い日には二十億ドルぐらいの介入をしておりますが、二十億ドルは当時の金で三千億円でございますので、そういうふうに補正をやり介入を続けて過剰流動性が生まれないはずはありません。そうでありませんと、失業率がどんどん上がりますから、この状況で何とか日本経済がアジャストしていかざるを得なかった。  一九八七年にブラックマンデーがございます。このときは十月でございますが、アメリカは非常に苦しみまして、我が国はそのときにはかなり落ちつきを回復していて、むしろアメリカを助けるかというふうなところまで行っておりますから、今になって考えますと、ある時期に過剰流動性の回収をしなければならなかった。しかし、それをいたしませんで、土地が上がり株が上がりバブルになっていった。これは皆さんがごらんになっていて、まだ苦しんでいらっしゃるときに政府が締め始めましたら、相当な政治的な危険であったと思います。  しかし考えてみると、その危険と思われる早い時期に、早いほどに回収に転じていなかったことが、その後のバブルになりバーストになったということは理屈の上では多分明らかと思います。  他方で、アメリカはどうしたかと申しますと、プラザ合意後ドルは落ち続けましたけれども、しかし貿易赤字はごらんのようにきょうまで改善しておりません。非常に金利は高くなりまして、失業率も上がりました。しかしそのときに、これは今になって我々が思うことですけれども、SアンドLというような金融機関の破綻があったりしてアメリカ自身が大変なリストラに入る、大銀行が本店を売るというような、そのとき日本は大いに意気上がるわけでございますね。アメリカへ行っていろんなものを買ったりなんか、そのときはちょうど彼我のあれが反対になっている。そこから我々が落ち始める。向こうはリストラの効あって、おまけに情報産業といったようなものも先鞭を切りましたから、結局アメリカはこのときのリストラできょうの繁栄に入った。  我々は、まことに申しわけないことですけれども、こういう大きな通貨の変動に対応したが、した後の処理についてもっとうまくやることができなかったであろうかということを反省いたしますが、しかし、あの日本の通貨というのは今現にその当時の倍の値打ちを持っておるということは間違いないように思います。
  320. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 後世の歴史で恐らく平成の大不況と言われる、そういう状況であると思うのでありますが、ただいま蔵相の御答弁で、まだ歴史にはなり切っていないというお話でありますが、すべてがプラザホテルのある一室から始まったということであれば、大変貴重な検証ではないかというふうに考えるわけでございます。  続きまして、経企庁にお伺いいたします。  金利の問題でございますが、かつて日本が重厚長大が基幹産業であった時代、資金コストが安くなれば企業マインドを刺激したり、設備投資を刺激したりするということになったわけでありますが、今の企業では、最大の勘定科目は恐らく人的経費であります。したがって、今の経営者は、資金コストが下がったからそれじゃ借り入れを起こして給料をたくさん払おうかなんという経営者がいるわけはありません。そういった意味で、金利政策が非常に効きにくい体質になってきておると思うんです。  日銀の再三の御答弁では、低金利が今の経済を下支えしているという御答弁であります。どうも私はそれがいささか腑に落ちないといいますか、理解できないわけでありますが、その御見解について経企庁はどのようにお考えであるか、そもそも金利政策というのが今実効性があるのかどうか、この点をお伺いいたします。
  321. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 金利政策につきましては、日本銀行平成三年からどんどん下げてまいりまして、最近三年余り公定歩合が〇・五%、非常に低金利政策をとっております。  もともと、この金融政策というのは、引き締めには効きやすいけれども振興には効きにくいというひもの理論というのがございまして、ひもは引っ張ったら締まるけれども押しても開かないというような理論も言われておりますが、やはり現状におきましては、この低金利政策が企業の負担を軽くしているという面もございます。  また、設備投資、特に個人の住宅投資等につきましては低金利政策が一定の効果を上げているのではないか。ここで金利が高騰いたしますと、非常に高騰したというようなことを考えますと、企業経営にも個人の住宅投資にも悪影響を与える。そういう意味では一定の下支え効果を上げているのではないかと思います。  その反面、金利所得が減るというマイナス効果ももちろんございます。その間でどう勘案するかでございますが、現状におきましては、やはり低金利政策というのは経済にとってプラスであり継続すべき方向だと考えております。
  322. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 ただいまの御答弁でも高くなると悪い影響を及ぼすというような御答弁がございましたが、経企庁では、長期金利が例えば一%上昇するとGDPにどの程度の影響を及ぼすというふうに計算をしていらっしゃいますか。
  323. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 大変それは難しい計算でございまして、今一%上がるとGDPにどういう影響を与えるか、明確に答えるわけにはいきません。いろんな状況がございますので、簡単に経済モデルから出る数字ではございません。  部門別に分けて、住宅ならこのぐらいというような想定もありますけれども、これもそんなに確たるものでございませんが、やはりどちらかといえば、マイナス効果の方が一定以上になりますと上がるんじゃないかと思っております。  長期金利につきましては、御存じのように、一時、二月の初め、今月の初めでございますけれども、二・三六ぐらいになりました。それが下がりまして一・八、きょうはちょっと一・九に一時乗ったようでございますが、それぐらいに推移しておりまして、今はそれほど極端な動きになっていないので、大して深刻な問題ではないと考えております。
  324. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 この議論を国債日銀引き受け、そしてマネーサプライの議論につなげたいわけでありますが、けさの議論と相当重複いたしますので。  今、世界最大の債権国である日本経済危機に陥り、最大の債務国であるアメリカが好景気を謳歌している。BIS基準があるとはいえども、史上空前の金融緩和と史上空前の金融収縮が並行しているというのは、今までの常識からは考えられない事態だ。  そこで、さっき、米国議会筋やFRB筋からは、日本は通貨供給を重視した経済政策を展開すべきだという話がございました。これにつきましては蔵相にお伺いしようと思ったんですが、けさほどのお話で、少なくとも蔵相はマネータリストではないというふうに判断いたしました。時間調整もございますので、御答弁は結構でございます。歴史上、マネータリズムで一国の経済を動かした国はないわけでありますが、しかしドラスチックな経済政策という点では、私は傾聴に値する意見ではないかというふうに考えておるわけであります。  続きまして、ヘッジファンド規制の問題でございますが、アジア、南米諸国でヘッジファンドが一国の経済を揺るがす、また世界的な自由主義経済を揺るがすような、そういうオペレーションを展開しております。これは世界的な規模の焼き畑農業ではないかなんという言われ方をしておりますが、しかしデリバティブというのは、分解しますと、そもそも通常のヘッジであり通常のオプション取引であるわけであります。  そうしますと、デリバティブとしてヘッジファンドそのものを規制、このオプションはヘッジファンドだから受けませんよ、これはまじめなファンドだから受けましょうというようなことはできるわけはありません。したがって、ヘッジファンドの規制というのは非常に難しいと思いますし、もう一つ、ビッグバンということでもう金融機関には国境はなくなる。そういう時代に、ましてや四〇一というようなことが導入されますと、ますますそういうことになって、今やオフショアなんというのは死語になりつつある。  そういった中で、ヘッジファンドの規制もしくは金融機関の規制が効率的にできるのかどうか、これを蔵相にお伺いしたい。
  325. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) せんだってもG7でこの議論をいたしておりますし、昨年の十月にアメリカで大きなヘッジファンドのフェイリアがございましてから、みんなそれを議論し続けておるわけでございますけれども、今、長谷川委員がまさにおっしゃったようなところを議論はぐるぐる回っておるわけでございます。  それで、今までに少なくとも大体の人が合意し得ましたことは、このヘッジファンドに銀行が金を出しておる、あるいは銀行自身が場合によってやっておるということは、銀行は免許業種でございますし、公共的な施設でございますから、そういうことについて報告の義務を課することは少なくともできる。そして、銀行本来の堅実性を忘れたような投資にも恐らく制限を課することはできるであろうと。そこまでは多くの人が合意いたしますが、ヘッジファンドそのものは、数人なり十人なりの人が金を持ち寄ってクラブみたいにしてやるだけでございますから、人格はないわけでございます。  これについて何を取り締まるのか、脱税があれば別でございますけれども、取り締まろうとすればどこか遠くでやってしまうというときにはどうするのかと、そういうところでみんな詰まっておりまして、つまり、おっしゃいますようにレバレッジの度合いが大きい。これだけのもので二十倍の取引をしようといったような、そこのところがおっしゃるように投資が投機に入るところではあるんですけれども、しかしそれは自分の危険でやっておることであるということがございますから、結局、公正でなければならない、それからできるだけ透明でなければならないと。そういうところまでで、しかし、それをヘッジファンドに有効に課することができるかどうかは、みんなで努力をし、努力を監視しようではないかというところで今とまっておると申しますか、そういうところで一つの結論を得ようとしていると思います。
  326. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 大変ありがとうございました。  次に、郵政省にお伺いいたします。  二〇〇一年から郵貯の自主運用ということがスタートするわけでありますが、今お話がございましたようなヘッジファンドとは対決するかどうかわかりませんが、少なくとも世界じゅうのファンドマネーと対決をするというような場面もないわけではないと思うんです。  郵貯の自主運用についてどのような御方針か、またどのような準備をされているのか、お伺いをいたしたいと存じます。
  327. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 郵貯の全額自主運用に向けての準備とか、またその考え方についての御質問ですが、まず初めに、昨年の九月から郵政大臣の主宰ということで郵貯・簡保資金運用研究会というのを開いております。そこでは、有識者にお集まりいただきまして、全額自主運用後の郵貯資金の運用のあり方について広い範囲でいろいろと御検討いただいているところであります。  郵政省としては、この研究会の議論を踏まえて、また、私たちにとって大変大事だと思っていることは預金者の利益の確保であり、また健全経営の確保ということでありますので、そういうことを留意しつつ、全額自主運用の実施に向けて適切な準備を進めていきたいと思っています。  今のところ、まだ研究会として意見がまとまっているわけではありません。大体ことしの六月ぐらいには中間報告をいただきたいと思っているんですが、それとは別に郵政省としての基本的な考え方としては、今まで、これまでも郵貯、また簡保、それぞれ長きにわたって自主運用の実績と経験がございますので、それを踏まえて、まず引き続き社会資本整備等の公的分野への長期資金を供給するということ。また、いろいろお話が出ておりますが、日本版ビッグバンの進展によって恐らく拡大するであろう証券とか金融市場において、国債、社債等の長期債を中心に有利に運用していこうと、さらに、安全確実な資産を中心とした長期安定的な資金運用を行うことを基本として健全経営を維持していきたいと、そう思っております。
  328. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 私、余計な心配かもわかりませんが、郵貯の皆さんがこれから自主運用されるということで、免許取りたての人がいきなり高速道路に出るようなことになるんじゃないかなと思って余計な心配をいたしておりますが、いずれ導入されるという四〇一K、郵政でこの四〇一Kに参入される御予定がありますかどうか、これについてお伺いいたします。
  329. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 今、先生御指摘がありました四〇一Kというのは確定拠出型年金ということだと思いますが、これについては政府部内で制度の具体化に向けて検討が進められているところであります。  郵政省としては、確定拠出型年金というのが、国民の老後生活の安定のための制度、その観点から郵貯、簡保がどのような役割を果たしていけるかどうか、しっかり検討してまいりたいと思います。
  330. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 四〇一Kというのはいろんなメニューがありまして、最高年間利回り一四〇%というような、そういうメニューもあるわけです。それを郵貯がこれから運用するのは、さっき申し上げた余計な心配かもわかりませんが、ひとつ慎重に進行をしていただきたいというふうに考えております。  時間を急ぐように指令が出ておりますので、次に、建設省に水利権行政についてお伺いいたします。  私は新潟県の出身でございまして、信濃川の流域に住んでおりまして、私の町ではほとんどすべての学校の校歌の中に信濃川の流れをたたえた一節がある。日本人の心の中には河川に対するえも言われない愛着があると思うんです。その信濃川でございますが、延長三百六十一キロ、日本一の長い河川であったはずですが、最近どうもそうではなくなってきた。  といいますのは、この信濃川の流域には二十八カ所の発電所がございまして、その発電所でどんどん取水をいたします。そうしますと、水の流れない川、非常に河原が砂漠になっている。このような例は、大井川は減水区間が約三四%、天竜川でも三〇%という減水区間がある。これはしかし、環境や景観や住民生活という点では非常に大きな問題だと思うんです。  まず、水利権行政について建設省の基本的なお考えを承りたいと存じます。
  331. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 先生御指摘のように、最近は川に水がないのが川のような感じになっておるわけでございまして、そういう中にありまして、水利権はかんがいや水道、発電等の目的のために河川の流水を利用する権利でございまして、我が国のような河川の、先ほど先生のように、流れ、流況が不安定な中での水需要を充足させるということは大変難しい状態に今あるのが現実でございます。  ましてや、一方、河川における自然の生態系を維持するためにも、この流量を常時流していくということが極めて必要なわけでございます。ですから、最近は何かメダカも絶滅するのではないかなというようなことが報道されたりしておりますが、そういうような状態の中にありまして、この不足に対応するには、渇水の調整であるとかあるいはダム等で水をためることによって対応することがもう最低の基本的な考えだろうと思っております。そういうようなことで、それぞれの個別の事案につきましては、河川環境の保全を図りつつ弾力的に取り組みを行いまして、少しでも流量を確保するべく努力をしていきたいと思っております。  しかし、これはなかなか自然を相手にした状態でございますから、そうそろばんを置くようには予測ができないのが現状でございまして、建設省でも大変苦慮しているのが現状でございます。
  332. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 私の住んでおります信濃川の中流域、先ほど発電所がたくさんあると申し上げましたが、JRの発電所がございまして、これはJR東日本の電力の二三%を供給しております。ちょうど今この時間、東京の山手線を走っている電車は、二本に一本が新潟県の信濃川の水で起こした電気で走っている。その結果として河原が砂漠になるわけですので、私どもとしてはいささか複雑な思いがあるわけです。  建設省では、清流復活作戦を展開していらっしゃるようでございますが、このガイドラインについて御説明をいただきたいと思います。
  333. 青山俊樹

    政府委員(青山俊樹君) 水力発電につきましては、今、先生お話しございましたように、地球環境を考える上でも貴重なクリーンエネルギーでございまして、非常に大切なものであるという認識が一方でございます。また一方では、発電取水の下流の川におきましては全く流量がなくなるような場合もございまして、河川環境面においてはまたゆゆしき事態が出現しているというのもまた事実でございます。  この両面の調整を図るために、通商産業省及び建設省におきましては、発電取水からある程度の河川流量を流すことといたしまして、発電のガイドラインを決定したところでございます。  具体的に申し上げますと、一定の条件を満たし該当する既設の発電水利所につきまして、その水利権の期間更新時に集水面積百平方キロメートル当たりおおむね〇・一トンから〇・三トン、これは毎秒でございます、の河川維持流量を確保するというのが内容でございます。
  334. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今、最後にお話がありました、百平方キロメーター当たり〇・一から〇・三トン、これはしかし何か科学的な根拠がある数字でございますか。
  335. 青山俊樹

    政府委員(青山俊樹君) いろいろ経緯もあるわけでございまして、発電水利の許可をしたときからはほとんどそういった発電所の下流に流す流量を設定していなかったという例もあるわけでございますが、徐々に水利権更新時にふやしてきつつあり、現今の社会情勢等を踏まえておおむね〇・一から〇・三という数字をセットしたわけでございまして、今のところそういった両面のバランスを考えた数字であろうというふうに認識しております。
  336. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 いろいろな経緯でおおむねということでありますので、それで承知をさせていただきます。  続きまして、全国の一級河川のトップを切りまして信濃川河川環境管理基本計画というものが制定されたわけでありますが、これについてちょっと概略御説明いただけますか。
  337. 青山俊樹

    政府委員(青山俊樹君) 平成七年三月に信濃川水系河川環境管理基本計画を策定いたしまして、またその際に、岩沢地点におきまして、河川維持流量の将来的な目標水量を毎秒三十三トンと定めたところでございます。
  338. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 今、将来三十三トンというお話でございますが、将来というのはいつごろの将来でありますか。できたらできるだけひとつ早目に実現をいただきたいということでありますが、その将来についてお伺いいたします。
  339. 青山俊樹

    政府委員(青山俊樹君) 関係者が非常にたくさんいらっしゃるわけでございまして、早期に毎秒三十三トンを実現させることはかなり厳しい面もございますが、現在、河川管理者であります建設省、それから学識経験者、地元市町村との協議会を設置いたしまして、減水区間の河川維持流量の確保についての検討を行おうとしているわけでございますが、さらに発電取水者でございますJR東日本株式会社、また東京電力にも参加の呼びかけを行っているところでございまして、今後は関係者の議論を深めることにより、なるべく早期にそういった目標を達成していくように努力したいと考えております。
  340. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 もちろん議論を深めることは大切なことでありますが、しかし、いいことはすぐやるというのも一つの方法であります。この件につきましてはいずれ国土・環境委員会でまたお願いを申し上げたいと存じます。  続きまして、エネ庁にお伺いいたしますが、自治体と電力会社が協定書を交わしている、この協定書に非常に大きな問題があるケースが多いわけです。  長野県木曽郡上松町の協定書、これはある電力事業者と交わした協定でありますが、いろいろ補償料の問題がありまして、一番最後に、今後一切異議求償の申し立てをしない、ここまではいいでしょうけれども、第三者から異議求償があっても町で責任を持つ、そういう協定書が交わされている。  これは、契約は自由ですからいいのでしょうが、公序良俗すれすれの契約だと思うんです。こういう契約が電力会社と地方自治体で交わされているということについて、エネ庁はいかがお考えですか。
  341. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 御指摘のございました関西電力と上松町の間の協定につきましては、当時の情勢に基づいて両者の話し合いの中で締結されたものと考えてございますが、その後昭和六十三年に策定されました、先ほど来お話のございます発電ガイドラインに基づきまして、地元の要望も踏まえた所要の維持水量を確保するという形で現在に至っていると承知をいたしてございます。
  342. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 川の流れを九九%もとって一%しか流さないというようなことは、どう考えても不自然な話であります。今各地でこの運動が巻き起こっておるわけでありますが、エネ庁もいろいろ難しい、裁量的に行政指導というわけにいきませんけれども、ぜひひとつ真剣にお取り組み、お考えをいただきたいというふうに考えます。  いま一度建設省にお伺いいたしますが、先ほどJR信濃川発電所の例を申し上げましたが、ここでは一日千四百万トンの取水をいたしておる。真夏の東京都の水道の最高使用量が六百万トン。ですから、真夏に東京で使う水の二・四倍の水をJRは電気として東京に送っているわけです。愛知県藤岡町では、やむにやまれず無断で取水をした首長が被告席に立たされたというような例もあります。目の前にとうとうと大きな川が流れているはずであるのに、それがそういった事業で砂漠になっている。これはもうどなたがお考えになっても不自然な話ではないかと思うわけです。  この際、建設省として、水利権は強力な権利でありますので直ちにやめただとか中止というわけにいきませんが、例えば更新の繰り上げですとか弾力的な運用、そういうことにぜひお取り組みをいただけないかというふうに思うわけでございますが、いかがでございますか。
  343. 青山俊樹

    政府委員(青山俊樹君) 今お話がございました愛知県藤岡町なんかも工業用水の手当てとかに大変苦しんでおられまして、無断取水を行ったというふうな経緯があったわけでございます。根本的には、やはり河川を流れる水の量に比べて必要とされる水の量の方が余りにも多いために、環境の方にも回らないし、また飲み水、工業用水等、渇水になれば、農業用水もそうでございますが、大変困難な情勢になるということでございまして、この藤岡町の水道水源としましても、根本的にはダムで水をためて水源としようということで、小規模生活ダムとしての木瀬ダムを建設中でございまして、現在試験湛水中でございます。平成十一年度完成予定をしているわけでございます。そうした場合に初めてある意味では安全度を上げた取水が可能になる、かように考えております。
  344. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 この問題につきましては、またいずれお願いを申し上げたいと思うわけであります。  最後に、科技庁、昨年の動燃が組織改編になったことで三つの事業から動燃が撤退したわけです。そのうち、ウラン濃縮と海外ウラン探鉱、この二つから撤退した経緯と事情について御説明をお願い申し上げます。
  345. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 動燃につきましては、御承知のように、一連の不祥事がございまして、その裏側には業務が極めて肥大化しているということがありました。その反省に立ちまして、経営の効率化の観点から、民間において事業化しつつある分野等の業務を縮小合理化することといたしまして、昨年十月に核燃料サイクル開発機構に改組いたしました。  具体的には、まずウラン濃縮については、既に日本原燃が動燃によって原型プラントの建設、運転等を通じて開発しました遠心分離法濃縮技術を導入いたしまして六ケ所ウラン濃縮工場を建設、運営していることから、適切な過渡期間を置いて業務を廃止するということにいたしました。それとともに、ウラン濃縮事業の的確な展開を図る観点から、動燃に蓄積されておりました技術及び人材を適切かつ円滑に民間に移転していくことといたしました。  また、海外ウラン探鉱につきましては、電気事業者が長期購入契約により今後十年近くの必要量を確保していること、天然ウランの市場は今後十数年は安定な状態にあると推定されているということなどを踏まえまして、適切な過渡期間を置いて探鉱活動を廃止し、今後は他のエネルギー資源、鉱物資源同様、国による必要な助成のもと、民間活動に任せることにいたしたものでございます。  私といたしましては、動燃の改革を徹底いたしまして、核燃料サイクル開発機構が担うべき高速増殖炉の研究開発等、核燃料サイクルを技術的に確立するための業務が的確に遂行できるよう指導してまいりたいと思っております。
  346. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 私は、この海外ウラン探鉱からの撤退というのが大きな間違いを犯したのではないかというふうに危惧をいたします。  この点だけ、総理、御答弁は結構ですのでちょっと頭に置いていただきたいのでありますが、かつて日本がセブンシスターズと言われる石油資本に支配されていたというような時代があったわけです。そのとき、アラビア石油がカフジの石油油田を開発し、エネルギーの需給に風穴をあけた。今お話しのように、マーケットのレベルでは短期的にはウランの需給というのはバランスがとれているんですが、おっしゃいましたように、十年先は恐らくだめだと思うんです。  日本は世界のウランの一三%強を消費しておりまして、動燃が現在持っております世界のウランの権益、これはフランスのコジェマ社、カナダのカメコ社、これに続いて世界第三位の権益を持っているんです。このウランの開発というのは、そもそも調査してから掘り出すまで十五年から二十年かかるという大変リードタイムの長い産業なんです。今動燃が海外ウラン探鉱から撤退をしたら、二度とこのビジネスには返れないと思うんです。  もう一つ、さっき申し上げたカメコ社とコジェマ社は世界の五二%の権益を持っているんです。かつてオイルショックだった時代、中東のアラブの石油のシェアは三六%しかない。したがって、再三申し上げるように、今動燃がこの権益を海外に売却するようなことがあれば大変なことになると思うのでありますが、これを何とか国内で維持できないか、お伺いいたします。
  347. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 動燃の海外ウラン探鉱に係る技術、人材及び権益の取り扱いにつきましては、動燃改革の一環として、先ほど申しましたように、ウラン探鉱業務を廃止する方針を定めた昨年二月の原子力委員会決定に基づき、国、動燃及び民間の関係者間で検討を行い、その結果を昨年八月に原子力委員会に報告、了承されたところでございます。  本検討では、電気事業者からは、現在の調達先であるウラン生産事業者から安定な調達が可能であり、動燃の探鉱技術等を引き受けることが困難である等の意見が表明されました。  この点を踏まえまして、海外ウラン権益につきましては、ウラン探鉱のための追加的経費を拠出せずに維持できる範囲内において維持することを原則といたしております。  権益の確保のためにどうしても探査経費の拠出が必要なものにつきましては、速やかに国内企業に対する買い取り意思の確認を行い、国内企業において買い取り意思が確認されなかった場合には海外企業への売却を進めることといたしました。現在、この考え方に基づき、サイクル機構が国内企業の買い取り意思の最終確認を行っているところでございます。  科学技術庁といたしましては、天然ウラン資源の安定確保のため、民間における長期購入契約、鉱山開発への経営参加等の供給源の多様化を推進してまいりたいと考えております。
  348. 長谷川道郎

    長谷川道郎君 ありがとうございました。  終わります。
  349. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で長谷川道郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会