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1999-02-24 第145回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月二十四日(水曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員の異動  二月二十三日     辞任         補欠選任      片山虎之助君     狩野  安君      斉藤 滋宣君     世耕 弘成君      寺崎 昭久君     柳田  稔君      浜田卓二郎君     木庭健太郎君      市田 忠義君     大沢 辰美君      泉  信也君     入澤  肇君  二月二十四日     辞任         補欠選任      鈴木 正孝君     吉村剛太郎君      広中和歌子君     櫻井  充君      木庭健太郎君     浜田卓二郎君      阿部 幸代君     小池  晃君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 狩野  安君                 金田 勝年君                 岸  宏一君                 世耕 弘成君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 松谷蒼一郎君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 若林 正俊君                 海野  徹君                 江田 五月君                 郡司  彰君                 櫻井  充君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 円 より子君                 柳田  稔君                 加藤 修一君                 木庭健太郎君                 浜田卓二郎君                 渡辺 孝男君                 大沢 辰美君                 小池  晃君                 須藤美也子君                日下部禧代子君                 照屋 寛徳君                 入澤  肇君                 月原 茂皓君                 奥村 展三君                 菅川 健二君                 佐藤 道夫君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     中村正三郎君        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        運輸大臣        国務大臣        (北海道開発庁        長官)      川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君        労働大臣     甘利  明君        建設大臣        国務大臣        (国土庁長官)  関谷 勝嗣君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官)        (沖縄開発庁長        官)       野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君         ─────        会計検査院長   疋田 周朗君         ─────    政府委員        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局次長      松田 隆利君        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣官房内閣安        全保障危機管        理室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障・        危機管理室長   伊藤 康成君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        金融監督庁長官  日野 正晴君        防衛庁長官官房        長        守屋 武昌君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  柳澤 協二君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁国民        生活局長     金子 孝文君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省矯正局長  坂井 一郎君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省条約局長  東郷 和彦君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省学術国際        局長       工藤 智規君        文化庁次長    近藤 信司君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産省食品        流通局長     福島啓史郎君        食糧庁長官    堤  英隆君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君        郵政省通信政策        局長       金澤  薫君        郵政省電気通信        局長       天野 定功君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省女性局長  藤井 龍子君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設省住宅局長  那珂  正君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成十一年度総予算三案の総括質疑に関する理事会決定事項について御報告いたします。  残余の総括質疑は五日間分とすること、質疑割り当て時間の合計は七百分とし、各会派への割り当て時間は、自由民主党百五十分、民主党・新緑風会二百十七分、公明党八十六分、日本共産党八十六分、社会民主党・護憲連合六十五分、自由党三十一分、参議院の会四十三分、二院クラブ・自由連合二十二分とすること、質疑順位につきましてはお手元に配付いたしておりますとおりでございます。     ─────────────
  3. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、総括質疑を行います。市川一朗君。
  4. 市川一朗

    市川一朗君 自由民主党市川一朗でございます。  きのうまでの二日間でこの予算委員会も一通り一巡いたしまして、きょうから第二ラウンドでございまして、重複する問題が多いかと思いますが、いろいろと内容を突っ込んでいきたいと思っておりますので、閣僚皆さん、よろしくお願いしたいと思います。  まず初めに総理に、大変申しわけございませんが、事前の通告はしておりませんでしたけれども、承りますと、本日朝、第一回のダイオキシン対策関係閣僚会議が開催されたと。多分今終わったばかりではないかと思う次第でございますが、やはりダイオキシン対策は私ども参議院におきましても、昨年の九月、参議院国土環境委員会におきまして集中審議をいたしまして、非常に関心を持っておったところでございます。最近の所沢問題等も含めて、国民関心も高いところでございますので、非常にホットなところで大変恐縮でございますが、きょうの模様等総理の方から御報告いただきたいと思います。
  5. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今朝、ダイオキシン対策関係閣僚会議を、ただいま第一回を開催いたしたところでございます。  ダイオキシン問題につきましては、私自身も今国会の施政方針演説におきまして、安全へのかけ橋ということで、このダイオキシン問題につきまして、環境を保全し国民の健康を守るという点で大変大切な、かつまた緊急に取り組まなきゃならない課題だという認識をいたしておりまして、今般この会議を開催いたしたところでございます。  特に昨今、所沢市周辺で見られたような問題につきまして国民皆さんも大変この問題に関心を深くいたしておりますし、かつまたその一刻も早い解決を大変待ち望んでおられることも痛感いたしておりまして、政府一体となりましてこの対策を強力に推進していかなければならない、この認識に立ちましてただいま会議を開催いたしたような次第でございます。  この会議では、ダイオキシンによる環境汚染などの実態を十分把握いたしますとともに、施策全般にわたりまして政治主導立場に立ってダイオキシン対策に関する総合的施策について検討を深めまして、実施のできるものにつきましては直ちに実施をしていきたい、このように考えておるところでございます。今日は、そうした立場に立ちまして、以下のような諸点につきまして措置をまずは講じていきたいということで決定をいたしました。  その第一は、ダイオキシン対策に対する基本指針を策定いたすべきということでございます。  第二は、耐容一日摂取量の見直しでございまして、ダイオキシン対策の基礎となる我が国耐容一日摂取量、いわゆるTDIを早急に見直していきたい。  第三には、ダイオキシンに関する検査体制整備でございまして、ダイオキシン単位そのもの大変極小のものでございますだけに分析もなかなか大変だというようなお話も聞いておりますので、適切な対策実施いたしますに不可欠な正確なダイオキシン分析を行える機関整備分析技術の向上を図っていきたいということでございます。  第四には、実態把握及び国民への的確な情報を提供いたさなければなりませんが、環境汚染や人の健康への影響の実態把握等の各調査研究等を進め、それらの結果を公表するとともに、ダイオキシンに関する正確な情報が伝達されるような適切な措置を講じまして国民の不安の解消に努めていきたい。特に所沢ダイオキシン問題につきましては来月中にも調査結果を公表できるように努力する。  それから五番目には、機動的な対応、すなわちダイオキシン問題について閣僚会議の機動的な運営を図りまして、迅速かつ的確に対応するということを決定いたしました。  本問題につきましては、各党間、あるいは公明党のように法律案につきまして既に検討を始めておられるところもございまして、喫緊の課題でございます。政府といたしましても一体となりまして、各省庁間で連絡、協調してこの問題に取り組んでいかなきゃならないということで第一回の会議を開催いたしたところでございますが、極めて重要な課題でございますので、引き続いて政府として万遺漏なきを期して対応いたしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  6. 市川一朗

    市川一朗君 突然のお尋ねでございましたが、大変丁寧に御答弁いただきましてありがとうございました。  先ほど申し上げましたように、私ども委員会審査でも取り上げておった問題でございますが、ただいたずらに国民の不安をかき立ててまいりますことは、非常に長い目で見ましてもまた短期的に見ましても大変ゆゆしい問題であるというふうに思っております。特に私、国土環境委員会で議論しましたときに痛切に感じましたのは、このままでいきますと、日本じゅうにごみ、特に産業廃棄物がたくさん出るわけですが、それを焼却する施設をもうつくることはできなくなってしまうのではないかといったようなおそれすら感じているわけでございまして、そういった実態の解明、そしてそれに対する早急にして機動的な対応ということが非常に強く叫ばれておったところでございますが、早速関係閣僚会議を開いていただき、そして関係機関でよく御討議いただいて、また我々政治世界でも党派を超えてこの問題に取り組んでいく必要があるというふうに思っておりますので、きょうは御報告をお聞きして、あとしっかりよろしくお願いしますということで、予定の質問の方に移らせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。  引き続き総理にお伺いしたいと思いますが、平成十年度は既に、私が申し上げるまでもなく、財政につきましては思い切ったギアチェンジを行いまして、第三次補正予算編成、それから平成十一年度の予算編成も含めましてかなり景気対策に焦点を置いて思い切った予算編成がされたわけでございまして、この点につきましては、もう既に衆議院予算委員会、そしてきのうまでの参議院予算委員会、当委員会におきましても議論がいろいろなされておりまして、関係閣僚の見解も発表されておるところでございますが、改めて総理に、こういった思い切った予算編成を組まれたお立場で、現在の日本経済景気動向についてどういう基本的な認識を持っておられるかをお聞きしたいと思います。
  7. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 我が国経済の最近の動向を見ますと、景気経済動向を示す一つ指標といたしまして個人消費があるわけでありますが、この点、全体として残念ながらまだ低調であります。ただ、住宅建設は低水準が続いておりますけれども販売や受注が一部で回復をしてきておるという背景でございまして、ややこの点については持ち直しの兆しが見られるのではないか。それから、設備投資は大幅にこれまた減少したままになっておりまして、依然としてこの点は留意をしなきゃならない点かと思います。公共投資は上半期への前倒しが過去最高ベースで行われたこともありまして、事業実施はある意味では進んでおると認識してよろしいのではないか。生産は依然として低い水準にあります。したがいまして、全般雇用情勢は依然として厳しい状況でございます。  以上のような観点から、景気低迷状態が長引いておりまして極めて厳しい状況にあるものの、一層の悪化を示す動きと幾分かの改善を示す動きとが入りまじりまして変化の胎動が感じられるという認識でございます。  ただ、一部いろいろな指標を見ますと、中小企業も含めました企業倒産件数という数字を見ますると、倒産いたしました件数並びに負債金額減少傾向でございます。依然として倒産が存在するということ自体大変厳しい環境でありますけれども数字的に見ますると、九八年の十月期、一千六百八十五件でありましたものが、昨年十二月には一千百二十三件になり、今年になりまして一月には九百七十六件、すなわち一九九三年一月以来満六年ぶりで三けたに減少してきたということであります。  申し上げましたように、倒産件数がこうした形でまだ存在することは残念でありますけれども件数そのもの減少傾向にあるということは、ある意味では、経済のこうした状況の中でも経営につきましてある種の前向きの姿勢が示されておるのではないか、こういう認識をいたしております。  この点につきましては、さらに経企庁長官から詳細な御説明をお聞きいただければありがたいと思います。
  8. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) ただいま総理大臣からかなり突っ込んだ御説明がございました。総理大臣のおっしゃったとおり、現在の景気はなお引き続き極めて厳しい状況にあります。  個人消費は、ボーナス等減少した所得減少と、それから個人のマインドが冷え切っているということで、依然として前年を下回る水準にあります。設備投資はやはり大幅な減少が続いておりまして、中小企業から大企業設備投資減少という傾向が広がっております。また、輸出でございますが、これもやはりアジア景気あるいはアジア為替変動等もございまして、いま一つ伸び悩んでいるということで全般的に低迷しております。  ただし、そういった反面で、全体に生産消費とも下げどまりという傾向はあらわれておりまして、十二月から一月にかけて下げどまり現象は見られると思います。前年あるいは前期に比べまして下がり幅が減ってきたということは全面的に見られるところであります。  また一方で、一層の悪化を示す数字もありますが、改善しているところもございます。先ほど総理もおっしゃいました公共事業でございますが、発注高は秋にどっと出まして下がってきておりますが、施工高は依然として高水準を保っております。それから、個人消費でも自動車販売等、一部に明るさがあらわれてきております。また、ことしに入ってから住宅販売ども好調でございまして、それを見越して十二月からは着工面積着工戸数もいささかふえてきております。  なお、最近、一部に長期金利値上がり等を懸念する向きもございましたし、円高等についても懸念がございましたが、こういった金融政策の面でも政府は迅速な対応をしていると私は思っております。したがいまして、その点でも国民の皆様にある程度の安心感を持ってもらえるのじゃないかというふうに考えております。
  9. 市川一朗

    市川一朗君 基本的認識をお伺いしたわけでございますが、ちょっと同じようなテーマでもう一度角度を変えて大蔵大臣にお尋ねしてみたいと思います。  昨年十二月四日の本会議大蔵大臣の御答弁の中で、緊急経済対策に基づく補正予算具体化に当たって三つの系列に配慮したということで、一つ金融システム再生信用収縮対策の問題、二つ目社会資本整備の問題、三つ目東南アジアを中心とした世界経済リスクの問題というふうなお話がございました。  今、総理及び経企庁長官の御答弁にもいろいろございまして、私どもも実感として思っていますのは、昨年の暮れごろまでの金融不安がやっと落ちついたなという感じを選挙区なんかを通じましても肌で感じておるような次第でございますし、またこの一両日の新聞等でも、東南アジア各国首脳から宮澤構想三百億プランに対する大変高い評価の報道もございまして、それぞれ順調に推移しているなという感じは持っているわけでございますが、改めまして、そういった点についての現時点における大蔵大臣としての効果測定をお伺いしたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) よく御承知のように、日本経済というのは非常に大きな経済でございますから、これが停滞しているのを前へ引っ張るだけでも相当な力が要ると思いますけれども、実際上は御承知のように停滞しているわけではありませんで、後退を続けているわけでございます。  一昨年の十—十二月期から昨年の一—三、昨年の四—六、昨年の七—九まで四期マイナスが続いておりますから、とまっているものを前へ出すのは大変ですが、後退しているものを前へ出すということは余計容易なことではないというのがマクロの見方でございます。  したがって、これがプラスの成長になりますためには、少なくとも後退をやめる時期というのがないとおかしい。ゼロでもよろしゅうございます。プラスならなおよろしい。ともかく後退をとめて前へ〇・五でもどうやって引っ張るかということだと思いますが、全般的に一言で申せば在庫が過剰な経済と思います。いわゆる企業在庫はもとよりそうでございますが、設備投資にしましても過剰でございますから、いわゆる在庫の過剰である。あるいは家庭の貯蓄にしましても、在庫というのはおかしゅうございますけれども、持つものは大体持っていてなかなか消費というものに出てこないという、どれだけ在庫の過剰の深さがあるかということが実は的確にはかれない、マクロモデルでもはかれませんので、それでどれだけやったら前に動き出すかという計量ができないというのが実態ではないかと思います。  したがいまして、先ほど総理の言われましたように、経済にあらわれております現象を子細に見て、動き出している部分がある、あるいはそうでない部分がある、それに対応するということになると思いますが、先ほどお話しのように、とにかく財政はあらゆることをしてここを脱却しなければ、財政自身も毎年税金が減りますのでやってまいれません。それはそれに努めておりますし、それから昨年の秋から顕著になりましたいわゆる貸し渋りが中小企業のもうぎりぎり底辺まで行きましたので、そこは信用保証ということでとにかく年末には一息ついてもらった。通産大臣のお話ですと一月に入って申し込みは減っておるということでございますから、一息つかれたのだと思いますが、しかし、次には今度年度末がございますからこれは油断をするわけにいきませんし、その問題と雇用の問題とが一—三で一番注意すべきところだと思っております。  東南アジアの方は、この間もG7がございましたときに、昨年の十月に比べるとかなり落ちついてきたなという認識が一般でございました。多少、そういう意味東南アジアがよくならないと日本もよくなりませんし、そういう相互の関係でございますから何ぼか手伝いをしていて、それはわかってもらえるように思っております。三百億ドル予定しておりまして、ここで五カ国百五十億ドル約束をいたしましたので、あと残り半分ございますので進めていこうと。  そういうことでございますので、ともかく後退している日本経済を少なくともとめて前進させなければいけないというのが今の時期だろうと思っております。
  11. 市川一朗

    市川一朗君 ありがとうございました。特に東南アジアの問題は、私が申し上げるまでもなく、東南アジア自身の問題だけじゃなくて日本経済にそのままはね返る問題でございますので、ぜひともさらなるお取り組みをお願いしたいと思うのでございます。  今までのお話をお聞きいたしまして、その中にもいろいろと御示唆がございましたが、企画庁長官公共事業に関しまして施工高は伸びているよというお話がございましたのですが、建設大臣、最近建設省が昨年十二月の公共工事の着工額を発表されましたですね。それが新聞報道でもされておりますが、何と前年同月比で一六・七%減と。しかも、これで二カ月連続で減少したということでございまして、分母が大きくなりましたから契約率とか発注率が落ち込んでいるというのはわかる、そういう話だったらわかるんですが、前年ですと平成九年でございましょう。平成九年度の予算と、第三次補正の予算は十二月ですからほとんど影響ないにしても、第一次補正まで入れますと相当分母は違うわけでございますが、その着工額で一六・七%減というのは非常に何といいますか心配でございまして、まさに新聞報道もされておりますが、民需回復までの景気下支え役のはずの公共事業がこれではちょっと問題ではないかというふうに思うわけでございますが、その点につきましていかがでございましょうか。
  12. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 先生御指摘のように、地方の機関で見ますと、市区町村で十年の十二月がマイナス一六・四という数値が出ておるのは事実でございます。しかし、先ほど総理が述べていらっしゃいましたように、平成十年度の建設省所管の事業につきましては上半期の契約目標を過去最低に設定したのは委員承知のとおりでございまして、今一番新しいところの数値で見てみますと、平成十年十二月末の当初予算の所管事業の契約状況というのは八六・六%、それから第三次補正予算も含めた全体の契約状況を見ますと七〇・四%となっておるわけでございまして、そういう意味におきましては順調に進んでいるところでございます。  しかし、そういう契約率は、その第三次が、これが昨年の末の十二月に急いで議会を開いていただいて入っていただいたわけでございますから、その三次補正だけを見ますとこの契約率がまだ三・四という小さな数字になっておるものですから、それが足を引っ張りましてマイナス一六・四というようなことにもなっておるわけでございます。  ただ、国の直轄の事業でまいりますと、昨年の平成十年十二月は、直轄だけ見ますとマイナス〇・一というところではあるのでございます。
  13. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) ちょっと補足させていただきます。  先生御指摘になったのは着工件数でございますが、施工の方の工事請負代金がどうなっているか、着工したものは今やっておるものがございます。それを見ますと、十—十二月で前年同期に比べて一〇・四%の増、十二月で四・三%の増、一月ぐらいでとんとんになろうかというところでございまして、契約、発注は前倒しで終わったんですが、工事は今どんどん進んでいるという状況でございます。
  14. 市川一朗

    市川一朗君 両大臣からのお話が大体そのとおりなのかなと思いながらお聞きしたんですが、実感として感じますのは、国の直轄事業が伸びているというのは実は肌でも感じております。  ただ、都道府県や市町村の財政事情からいいまして、やはり自治体の財政事情が悪いために、結局のところ、例えば国の補助事業がぼんと出てきても、やりたい事業があって、それをやってやると国が認めるような傾向を示していただいても、裏財源がないためにそれを引き受けられないという実態がいっぱいございまして、私自身も選挙区で本当に苦しい思いをしているわけでございます。  それから、地方単独事業はもうほとんどこれはとまってしまったような感じですね。もともと緊急経済対策でも地方単独事業をカウントに入れていませんね。やっぱりそういう実態はあるわけでございます。  きょうもある新聞に出ていましたが、やはり各ところで相当厳しい状況だそうでございまして、私の選挙区の宮城県もそれから広島県も、これは期せずして政令市を抱えた県なんですが、ことし宮城県は四十四年ぶり、広島県は十六年ぶりのマイナス予算であると。そういった中で頑張っているのは宮崎県、奈良県、新潟県、もっと頑張っているところがあると思いますが、新聞報道ではそういう表示がされておりまして、なかなか地方自治体の現在の財政事情からいたしますと、国が相当頑張ってもこのままじゃうまくいかないんじゃないかなという不安感を、頭の体操としてもわかりますし、肌で感じている部分もあるわけでございます。  この辺はやはり自治大臣にお聞きした方がいいと思いますが、その辺の実感と、それに対して何ら国として打つ手はないのかどうか、そういったようなことについて、それじゃいけないと思いますが、その辺の取り組みの方針等もお聞かせいただければと思います。
  15. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 御指摘のとおり、このところの経済の低迷を反映して地方税自身も落ち込んでおりますし、また国税収入の落ち込みを反映して交付税そのものも落ち込んでいく、そういう中で、相次ぐ景気対策に協力をするという形でどんどん借金もふえていくということで、地方財政が非常に険しい、厳しい状況に立ち至っておるわけです。  そういう背景の中ではあるんですが、昨年の四月の総合経済対策で、公共事業の追加とあわせて一兆五千億規模の地方単独事業の追加要請を行ったわけであります。この単独事業が円滑に行われるために、交付税総額を四千億円増額するということで財政措置を一応やったわけです。  その結果どういう状況になったかということで調べてみますと、九月の補正までに一兆五千五百億が計上されておるわけでありまして、厳しい状況の中ではあるけれども、それぞれ地方自治体に大変協力もしていただいたと思いますし、またそれはそれで、国に対する協力ということも大事だが、やはり地域経済の活性化であったりあるいは地域住民にとって必要な社会資本の整備という、そのニーズも両々相まっての話でありますけれども、精いっぱいの努力をしていただいているのではないか、こういうふうに判断はしておるんです。  しかし、いずれにせよ、もう限界のところまで来たということも事実でありまして、そういう意味では、昨年秋の緊急経済対策のときにはこの単独事業についての追加要請をしないという形の中で行われたわけでございます。  先ほど、大蔵大臣もデフレギャップについて言及がございました。しかし、そのデフレギャップを埋めるために公共事業だけで、言うなら需要追加と有効需要を、その分だけギャップを埋めるんだということだけではもはや限界があるのではないかということで、さまざまな角度からの施策を現に経済対策として講じていただいておる。  そういうことを考えますと、公共事業を追加することだけで景気を乗り越えることはとても難しい、いわんやその中で地方財政に今まで以上に負荷を加えるということも大変難しい状況になっている。しかし、そうはいいながらも、国、地方を通じてのそういう景気への配慮ということは共通項でもありますので、いろいろ税制面における取り扱い、あるいは公共投資世界においても今年度も昨年同額の交付税措置をやったわけでありまして、その中で景気対策分として、昨年同額の八千億を地方財政計画では計上したという実情にございます。  国、地方両々相まって、一刻も早くこの景気を回復するための努力を全力を挙げてしてまいりたいと思います。
  16. 市川一朗

    市川一朗君 今の最後の部分は私も同感でありまして、地方団体の財政構造が結局税収の落ち込みが最大の原因でございますから、要するに景気が回復しなけりゃいけないし、回復すれば何とかなるんじゃないかなという気持ちがあるわけでございます。  そういった中で、公共事業にもいろいろそういった問題もありますが、昨日の議論では消費の問題があるということが中心で議論されておりますが、私はもう一つ、やはり設備投資の問題をしっかり見ておかなきゃいけないんじゃないかと思うのでございます。こういったような状況の中で、民需の回復というのがどうなってくるのかというところがやはり非常に重要なテーマだと思いますが、通産大臣、どうなんでしょう、設備投資というのはどんな状況でございますか。
  17. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 景気認識小渕総理堺屋経済企画庁長官が言われたと同じような認識を持っておりますが、暗い話ばかりではなくて、実際はいろいろな面で改善の兆しもある分野がありますので、それをまず御紹介申し上げます。  例えば小売販売額を見ますと、スーパーでどういうことになっているかといいますと、九カ月間前年同期比プラスというのを示しておりますし、またコンビニは四月から調査を開始しておりますけれども、これも九カ月連続で四%超の伸びを示しております。大変好調であるわけでございます。  それから、平成十年十月—十二月期の例えばノート型パソコンというのを見ますと、国内出荷台数というのは二〇%増加しておりまして、これは大変な伸びであるわけでございます。  それから、十二月の携帯電話の生産は七十カ月連続で前年同月比プラスということでございますし、一月の軽乗用車販売は四カ月連続の大幅プラス、これは前年同月比でプラス五〇・九%という驚異的な伸びを示しております。  それから、住宅については、一月の首都圏マンション販売が前年同月比プラス六二・五%という大変大幅なプラスとなっておりまして、この分野では持ち直しの兆しが見られる。  こういう明るい材料もございますが、私どもとしては、公共投資については、今、建設大臣を初め皆様方から御説明があったように、ぜひ景気を引っ張っていく力を発揮していただきたいと思いますし、また住宅投資は、住宅減税等ができますし、いろいろな施策をやっておりますのでこの伸びは期待できると思います。ただ、長期金利上昇ということについては我々懸念を持っております。  そこで、設備投資でございますが、GDPの中に占める設備投資というのは政府の支出よりもはるかに大きいわけでございまして、個人消費が回復するということのほかに、やはり民間の設備投資が回復しなければなりませんが、まだ経営者は現在の状況を様子見をしておりまして、設備投資自体は全く回復の兆しを見せておりません。これは大変憂慮すべきことでございまして、私どもとしては、今後設備投資を誘引するようないろいろなことを考えていかなければならない、そのように思っております。
  18. 市川一朗

    市川一朗君 どうもありがとうございました。  言葉は悪いんですが、日本の場合は、製造業は強いが金融で失敗したといったようなこともあるくらいでございますので、私、ちょっと金融の問題で少し最近不安な部分が出てまいっておりますので、きょうは日銀の総裁にもお出ましいただいておりますが、今、通産大臣のお話でもございましたように、長期金利の問題ですね。昨年の暮れごろに上がりまして、ちょっと落ちつくかなと思ったら、またことしに入ってからぐっと上がってきて、かなりいろいろと大騒ぎになったわけでございますが、ここへ来て少し落ちついてきているというような状況でございます。  いろいろお聞きしたい点もございますが、まず総裁、この辺につきまして、日銀として現象をどう分析して、大体、こういうことをやったからこういうふうになったんだというようなことについての、経過的な意味も含めて御説明いただきたいと思います。
  19. 速水優

    参考人(速水優君) 長期金利につきましては、基本的に先行きの景気や物価に対する市場の見方というものを反映して決まってくるものだと思います。例えば、中央銀行が長期国債の購入をふやしたり、それが財政赤字のファイナンスにつながる、悪性インフレをもたらすといったような認識が出てきますと、長期金利はむしろ上がっていくわけでございます。  このように、長期金利というのは中央銀行が自由に上げたり下げたりすることはできないものでございます。中央銀行の役割としてできますことは、その時々の経済の必要性に応じまして、短期の調節手段を使いながら市場に流動性を供給していくことであるというふうに思います。また、長い目でインフレを起こさないという姿勢を堅持することも、先行きの金利上昇に関する市場の無用な不安感を取り除く上では重要なことだと思っております。  私どもは、先々週、二月十二日でございますが、一段の金融緩和措置実施いたしました。これは、昨年末からの長期金利の上昇や円高ぎみの傾向経済の先行きに対してマイナスの影響を及ぼす可能性が出てきはしないかということを配慮した措置でございます。  今回の措置のもとで、日本銀行はより潤沢な流動性を市場に供給することにいたしました。これがどのように長期金利に影響しているか、影響していくかということは必ずしもまだ明確に出てきておりません。長期金利は、そのような常にふんだんに資金を抱えた状態となる短期金融市場や経済のファンダメンタルズを踏まえまして市場で自然に形成されていくものだというふうに思います。  金融緩和措置実施に引き続きまして、大蔵省の方で国債の年限別発行額の振替措置どもなさいまして、長期金利全般に低下傾向をたどってきたように見られます。しかしながら、きのう、きょうの動きを見てみましても、依然極めて神経質な展開を続けているように思います。また、為替相場は円安方向に振れてきておりまして、株価も幾分持ち直してきているように思います。  こういった市場の動きを引き続き注意深くウオッチしてまいりたいという考えでございます。
  20. 市川一朗

    市川一朗君 若干書生論を展開するようで申しわけないんですが、景気対策として国債を発行すれば、やはりある程度資金的な面での吸い上げになる部分がありますので、クラウディングアウトという言葉もありますが、ぎりぎり議論していくと、国債発行による景気対策はむしろ本当の意味で有効ではないというような経済学者の議論もあるくらいでございますから、国債を発行した場合に市場の資金ショートをどういうふうにやるかというところで、中央銀行による買いオペとか、そういったようなところでうまくやっていくというのが経済政策の基本ではないかなというふうに私なんかは思っておったんです。もちろん、短期金利の操作によって長期金利の引き下げの効果を期待するという今回の金融緩和措置は十分評価できるわけでございますけれども。  したがって、それ以上の先の議論はする必要はないのかもしれませんが、基本的になぜ国債を発行するかというと、景気対策のために発行すると。そこで資金的な逼迫感が出て長期金利が上がるとなると、これはそれがストレートに景気の足を引っ張るわけでございますから、何かそこのところをうまくやるのがまさに政策ではないかというふうに思います。  日銀総裁、まことに恐縮でございますが、今の御答弁の中にも入っていますけれども、もう一つ改めて焦点を絞って、やはり長期金利動向ということも中央銀行の役割としては極めて重要であって、そのことについて私どもが発言したりすることが決して政治的圧力をかけたとかそういったことにならない、非常に真っ当な政策論じゃないかというふうに思うわけでございますが、その辺のもう一度御見解を承りたいと思います。
  21. 速水優

    参考人(速水優君) 政策決定に当たりまして、圧力がかかったとかあるいは追い込まれたとか、海外からのプレッシャーがあったとかいうようなことは、日本銀行、今回の決定につきまして全くございません。日本銀行政策委員会が独自の判断で、今短期金融市場をもう一段潤沢に緩めていくことが必要であるというふうに政策委員会の全員の決定で決まったわけでございます。  国債の引き受けの問題につきましては、いろいろ御議論もございますのですが、日本銀行としては国債を新規に引き受けるという考えは全く持っておりません。御存じのように、財政法の五条、日銀法の三十四条には、日本銀行による国債の引き受けは禁止されております。これは、中央銀行が一国の国債を引き受けるとその国の財政節度が失われてしまう、また悪性のインフレを招く原因をつくってしまう、これには内外に非常に苦い経験がございますわけで、そういうことで、国や中央銀行に対する内外からの信認もそういうことによって失われていくということでございます。  長期金利は、むしろこういう場合には上昇していく可能性が多いのではないかと思います。主要国におきまして中央銀行による国債引き受けが禁止されておりますのも、そうした考え方に基づくものであると考えております。  したがいまして、日本銀行としては、国債の引き受けということを選択肢としては全く考えておりません。  また、私どもが日々の金融調節運営の中で行います長期国債の買い切りオペというのがございますが、幾らでもどんどんこれを買っていけば確かに当面金利は下がるかもしれない、価格が上がって金利が下がるということになるのかもしれませんけれども、これは国債の直接引き受けと結果としては同じことになってくるわけでございます。  そうしたことも勘案しまして、日本銀行は、長期国債の買い切りオペにつきましてはあくまでも長い目で見て、私どもが発行しております銀行券の増加に大体見合った金額を買い切りオペで資産として持っていく、銀行券に見合う資産として持っていく、そういうルールをつくりまして、それを一つのチェックの機能とし、長年これを守ってきておるわけでございまして、そういう意味では慎重に実施してきておるというふうに申し上げられると思います。  こういう基本的な方針を今ここで変えるつもりは全くございません。前回の政策委員会金融政策決定会合におきましてもこの方針が確認されております。そしてまた、週末のG7におきましても、私からこのことは各国の代表者によく御説明をいたしまして、何の御質問も御反論もございませんでした。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) したがいまして、ただいまのお尋ねの主たる部分は私がお答えをしなきゃならないということだと思いますが、昨年は非常に長期金利が閑散でございまして、たしか一番低いときには〇・六なんという金利があったと思います。それはいかにも異常でございましたが、現実そうでございました。  年末に、来年度予算政府がたくさんの国債を出すというようなことが明らかになったと同時に、資金運用部が資金の原資の関係から毎月の買い入れを今度は行わないという決定をいたしましたことがきっかけになりまして、幾らか過剰反応ではあったと思いますけれども、私どももう少しその発表を用心すればよかったと思いましたが、金利が二をちょっと超えましたので、これはやはり発行者としての心構えに私は帰するんだという感じがいたしました。  それで、その後に発行の長さの条件を変えていろいろバラエティーをつけることと、それから二月、三月はもう一遍資金運用部で利付十の買いに出るというふうに方針をその部分改めまして、いろいろありましたけれども、その後、二を割りまして一・七とか八とか、きのうは八であったと思いますが、その結果として三月分の十年物はクーポンレートは一・九で発行することができましたので、ここで一落ちつきしたと思っております。  しかし、総裁が言われましたように、昨年がそういう異常な低金利であったこともございますけれども、まだ神経質なマーケットであることは間違いないと思いますから、それは発行者としてやっぱりこれだけ大きな国債を発行するときにはそれなりの工夫がなければならないと考えております。それは、民間の資金需要が期待するほど多くございませんからクラウディングアウトということにはなっておりませんけれども、そうなればそれはまたそれでよろしいというところもございますけれども、それだけに発行者としては注意をしてまいるつもりでございます。
  23. 市川一朗

    市川一朗君 私も、景気回復の途上で資金需要が高まってクラウディングアウト的な効果が出て、それで長期金利が上がっていくというんでしたら大変喜ばしいことだなとは思うのでございますが、現状はとてもそういう状況でないという中で、やはり非常に心配だなと思った次第でございます。  特にこういう問題になりますと、財政政策と金融政策、いろいろ金融機関の監督行政も含めましてやはり私は緊密な連係プレーが必要だと思います。いろいろな経緯の中で財政と金融の行政の完全分離という方向で各党間の合意もできて進んでおる今の状況でございますから、私がとやかく言う筋合いではないわけでございますが、私もちょうどそのころは選挙をやっておった立場で、こういった微妙な変化というのを余りタッチもしておりませんでしたので、今になって思いますと、日本経済のかじ取りという点で考えますと、本当に真剣な意味財政政策、金融政策の連携といいますか、私の言葉で言えば一体感といったことが必要じゃないかなと思うんです。  大変答えにくいと思いますけれども、私どもの大先輩でもございますので、今後のことも含めまして、もし少しでもお答えいただけるなら、宮澤大蔵大臣に、私のようなこういう考え方はもう君、古いよということなのか、そういった点も含めまして御示唆いただければと思う次第でございます。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日も申し上げましたんですが、何しろ我が国経済を動かす一番の大きな部分消費でございますし、次に設備投資でございますから、やはりそういう方に経済を持っていくために今財政がこれだけのことをしているわけでございますので、財政だけではとてもこの大きな経済をどうもできるものじゃございません。  その点はよく心得まして、民間の企業設備活動、それは通産大臣のおっしゃるように余り有望な芽は出ておりません。やむを得ないんだと思いますが、しかし、やがては在庫が減ってそういうことになっていかなきゃなりませんし、家庭消費もそうでございますから、財政は本当に一生懸命なことはいたしますが、そういう動きを逆に妨げないような配慮は常にしてまいるつもりでおります。
  25. 市川一朗

    市川一朗君 最後に、一点お聞きしたいと思います。  総理、生活空間倍増戦略プランというのが今進んでおります。実は御記憶にあるかどうかわかりませんが、先々の百四十三臨時国会の当委員会で、私調べておりましたら、生活空間倍増の話が出ておりまして、これは大変重要だなと、当時、堺屋長官にお尋ねした記憶があるわけでございますが、今我が国でやらなきゃいけないのはやはりこういった問題なのではないかなというふうに思っております。  特に、都市地域の住宅政策はもう発想の転換が必要なんじゃないか。今までは低所得者向けの住宅中心にのみやっておりましたが、これから自分でつくれる人たちに対しても政策的にいろいろ誘導していって、できればかつての西ドイツみたいに、一世帯一住宅が実現した時点で住宅問題は解消した、ああいった政策を展開すべきだったなという反省も含めまして、これをぜひ進めてもらいたいと思っている次第でございますが、その辺についての総理としての御認識と、建設大臣も住宅問題に触れましたので一言御発言いただきまして、私の質問を終わりたいと思う次第でございます。
  26. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 生活空間倍増戦略プランにつきまして述べてまいりますと大変時間も必要かと思いますが、今、委員が御指摘の点、お考えも我々は十分受けとめてこの戦略プランをつくっておると認識いたしております。  いずれにいたしましても、ハイクオリティー・オブ・ソサエティーといいますか、日本の各空間は必ずしも諸外国に比べましても十分でない。そういう意味で、やはりゆとりのある生活、そして豊かな生活をいたしていくためには、あらゆる意味での空間というものをもう少し余裕のあるものにしていかなきゃならぬということでございまして、住宅につきましても同様の考え方をいたしておりますので、これから大いに推進いたしてまいりたいと思っております。
  27. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 先生御指摘のいわゆる既成市街地における住宅市街地整備の強力な推進ということ、そして職住近接を可能とする、そういう都市居住の推進ということがまた大きな課題になってくると思います。  したがいまして、先生の御指摘のように、国民のライフスタイルそれからライフステージというのが時代とともに大きく変わってきておるわけですから、それに応じた良質な住宅の供給を可能とする市場環境整備ということに力を入れていきたいと思っております。
  28. 市川一朗

    市川一朗君 終わります。
  29. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で市川一朗君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  30. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、内藤正光君の質疑を行います。内藤正光君。
  31. 内藤正光

    ○内藤正光君 おはようございます。私は、民主党の内藤正光でございます。  総理大臣を初め閣僚の皆様には連日お疲れさまでございますが、本日、私は来年度の予算案と日本経済について質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、質問に移ります前に、来年度の予算案、平成十一年度の予算案について私ながら感想を申し上げさせていただくならば、次の二点に集約されるのではないかと思っております。  一つは、構造改革を促すような二十一世紀への展望が全く感じられないような予算であること。そして二つ目は、量はとりあえず確保はしたものの、質への信頼性というものを全く得られていない予算。大変恐縮ではございますが、大蔵大臣のお言葉をおかりしてまとめて言うならば、確かに今回の予算案はハマの大魔神かもしれない、しかし中身が全くない張り子の大魔神ではないかということをまず冒頭申し上げさせていただきながら、来年度、政府経済成長率〇・五%というふうに言っておりますが、果たして本当に達成可能なんだろうかということで質問をさせていただきます。  今、日本は二年連続のマイナス経済成長に陥っているわけでございます。そして、来年度、平成十一年度はプラス成長にすることができるかどうかの瀬戸際、大変危ない、そんな瀬戸際に立たされているわけでございます。  今、私の手元に主要先進国、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、イタリア、そしてドイツの過去数十年間にわたる経済成長率一覧表がございます。  これを見てみますと、先進国の中で三年連続のマイナス成長に陥っている国は、経験した国はどこにもないんです。そしてまた、一九八二年以降に限って言うならば、二年連続のマイナス経済成長を経験している国もどこにもないんです、日本を除いて。もし仮に平成十一年度、来年度、日本がマイナス成長から脱却できなかったとしたならば、国内的にはGDPの六〇%を占める消費はさらに冷え込み、そしてまた需給ギャップはさらに拡大をするわけでございます。そしてまた、国外的には日本に対する信用はさらに失墜をし、日本経済を一層危うくしてしまう、そんな危機の上に日本経済は今立たされているわけでございます。  そこで、総理大臣にまずお尋ねをいたします。  当然といえば当然という質問で大変恐縮ではございますが、〇・五%プラス経済成長というのは小渕内閣の政権をかけた公約であるというふうに理解してよろしいですね。
  32. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 平成十一年度予算につきまして大変厳しい御指摘をいただきましたが、政府といたしましては、金融システムの安定化策等によりまして、不良債権の処理、金融機関の再編が進みまして、我が国実体経済の回復を阻害しておりました最大の要因と言うべき金融問題についての一つの問題を取り除くことができつつある、こう考えております。  また、昨年末に成立いたしました十年度の第三次補正予算のもとで切れ目なく景気回復策を実施いたしておりまして、十一年度予算におきましても、当面の景気回復に全力を尽くすという観点から編成いたしております。また税制面でも、従来なし得なかった思い切った個人所得課税や法人課税の恒久的な減税の実施を決断するとともに、住宅ローンの減税を初めとする政策減税を実施しようといたしておるところでございます。これらの減税が九兆円を超える規模のものとなります。  以上、私といたしましては、いわば背水の陣をしいて、思い切った決断のもとに予算編成をいたしておるところでございます。したがいまして、このような諸施策また民間の真剣な取り組み、ここもまた非常に大事なところだと思いますが、そういうものと相まちまして、十一年度には我が国経済の実質成長率が〇・五%程度まで回復するものと確信をいたしております。  私は、この平成十一年を経済再生元年と位置づけ、日本経済再生に全力で取り組んでまいっておるところでございまして、ぜひ政府といたしましては、この目標とするプラス〇・五、この達成のためにあらゆる施策を実行し、かつまた経済というものは政府だけでこれをすべてリードするわけにはいきかねるわけでありますので、申し上げたように民間の活力も非常にこの予算と相まってかなりやる気が出てきておる面もございますので、両々相まって、プラス成長に日本経済全体がその成果が得られるように努力をし、政府としての責任において努力をいたしていきたいと思っております。
  33. 内藤正光

    ○内藤正光君 努力だとか確信は大変結構なんですが、私がお伺いをしておりますのは、〇・五%プラス成長が公約であるかどうか、つまり政治は結果責任が問われるわけですから、公約を果たせなかった場合どうするのかというのをお伺いしているんですが、よろしくお願いいたします。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 覚悟のほどをお聞きになりましたから総理は努力をするとおっしゃっているのであって、御指摘のように、四期本当に続いて後ろへ滑り続けている経済ですから、それをとめて前へ出すというのは容易なことではございません。予算やなんかにちっとも次の世紀に向かってのアイデアがない、夢がない、私はおっしゃるとおりだと思うんです。それだけの余裕がないんですね、今、日本の経済に。とにかくこれ、滑るのをとめなきゃならない。ただ、それでも次の世紀に向かって邪魔になるようなことはしてはいかぬと。それだけは努めております。
  35. 内藤正光

    ○内藤正光君 それはまた後から聞かせていただきます。  今、日本経済を取り巻く環境は、可処分所得の減少ですとか消費の停滞、あるいはまた設備投資減少、そしてまた、きょうの朝日新聞にも書いてありましたが、七割の方が老後への不安を感じている等々、いろいろな要因、暗い雲が日本に立ち込めているわけでございます。  そこで、まず経企庁長官にお尋ねいたします。  日本経済の現状に対する御認識と〇・五%成長達成可能性について御所見、お考えをお伺いします。
  36. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 景気の現状認識につきましては、先ほども総理大臣、私から申し上げたとおりでございまして、現在大変厳しい状況でございますが、一部に明るい動き、新しい胎動も出てきているということでございます。  それで、〇・五%が達成できるかどうかということでございますが、これは見通しでございますから絶対ということは言えないといたしましても、政府といたしましては〇・五%プラス成長を達成するために万全の手を打ったつもりでございます。  その内容といたしましては、バブル崩壊以来続いておりました負の遺産、この金融問題を早々に片づけるということで六十兆円に及ぶ金融再生スキームをつくりまして、今稼働させている、動かしている最中でございます。  また、公共事業につきましては、公共事業予備費を含めまして一〇%以上の増加をいたしました。その内容が従来型で夢がないとおっしゃる点もございますが、これには即効性、波及性、そして未来性という三つの観点をとっております。この三つが全部そろっているものだけで景気が支えられるほどの規模があればそれにこしたことはございませんけれども、やはり即効性の必要な場面でございますから、そういうものも取り入れ、未来性のあるものも取り入れて組んでおります。  また、税制におきましては、所得税で四兆円、法人税で二兆三千億円、それに住宅取得や情報機器の取得に関する特別減税等を含めまして三兆一千億円ほどの減税を行いました。  こういったことが相まって、少なくともはっきりわかるだけで二・三%ぐらいGDPを押し上げるだろう、これは実質でございますが、それに法人税その他の効果もあらわれるものですから、かなりの押し上げ効果はあると思います。  大蔵大臣が御指摘のように、とにかく下り坂を下がっているところですから、それをとめて押し戻すというので、相当の腕力が要るところでございますけれども政府といたしましては、財政的に重々やっているのみならず、金融の面でもかなり早い対応をしているものと考えております。
  37. 内藤正光

    ○内藤正光君 通産大臣にお伺いをいたします。  たしか通産省は、経済見通しの作業段階では来年度の経済成長を一%というように主張されていたかと思います。そこで、お尋ねしたいのは、その根拠は何だったのか。特に、今の政府経済見通しと比較してどの項目が大きく異なっているのか、お尋ねいたします。
  38. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) まず、〇・五か一%かという議論は、実はほとんど誤差の範囲の話でございまして、将来の日本の経済を〇・何%のところまで予測するというのは大変難しいわけでございます。  ただ、いろいろなモデルがございまして、そのモデルに従っていろいろな計算をするときには、当然いろいろな人間の価値判断とか状況判断とかというものが入ってまいります。仮に、経済企画庁と通産省が同じモデルを使って経済成長を予測いたしましても、そこには人間の判断も入りますし、期待を込めた数字も当然入ってくるわけでございます。  〇・五か一%かというのは経済企画庁長官と議論をいたしましたが、実際は〇・五であっても一%であっても、私どもが目指しているのはプラス成長ということでございますから、その差の〇・五というのはまず議論をしても結論の出ない世界でございまして、小渕内閣はプラス成長を目指している、そういうことを御理解いただければと思っております。
  39. 内藤正光

    ○内藤正光君 私も、コンマ数%の違いというのは、今の経済学における誤差の範囲だろうと思います。  ところが、ここに二月八日の、これは通産の次官の記者会見が載っております。これをちょっと抜粋して読ませていただきますと、言われているような底入れ感になっているのかどうか、まだ判断するのは早い、あるいはまた、もうしばらく一月、二月の動向をしっかり見守らなければならないというように、非常に慎重な言い回しに随分変わってきているんですね。つまり、一か〇・五かというのは誤差の範囲かもしれません。しかし、強気という点でいえば、作業段階でいえばかなり強気だった。そして、二月八日の記者会見ではかなり慎重、あるいはまた弱気になっているんです。  こういったことを踏まえて、通産大臣にまたお伺いいたします。現状に対する認識と来年度の経済見通しについて、通産大臣のお考えをお願いいたします。
  40. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 経済というのは、黙っていると減速したり成長したりするものではありませんで、そこにはやはり人間の意思というものが働くわけでございますし、また政府の、国会でお認めいただいた政策の意思によっても数字は変わってくるんだろうと私は思っております。  そういう意味では、やはり必ずプラス成長にするという意思を持って政策を遂行するかどうかで結論は変わってくると思いますし、経済はもちろん心理的なメンタルな部分も占めておりますので、やはり意思を持って政策を遂行するという姿勢がありませんと、ただ黙っていますと自動的に成長したり成長が減速したりということではありませんで、そこにはあくまで人間としての、あるいは政府としての意思というものが働くわけでございます。そういう意味では、全体が萎縮している日本の経済を立て直すという力強い意思の力が私どもは必要である、そのように思っております。
  41. 内藤正光

    ○内藤正光君 次に、経企庁長官にお尋ねいたします。  聞かれたくないことかもしれませんが、過去数年、経済成長に関する当初見通しと実際、実績とがかなり食い違っているというのが現状かと思います。過去数年、平成六年度かそのあたりからで結構ですが、ちょっと教えていただけますでしょうか。
  42. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 政府見通し、企画庁が責任を持って出しておる見通しを見ますと、過去数年じゃなしに三十一年間をとりますと、民間企業、民間のシンクタンク、これは数十社あるわけですが、それの平均と比べますと十四勝十六敗一引き分けでございまして、余りいい成績ではございません。特に平成になってから二勝しかしていないんですね。これは正直なところでございます。  特にどこが問題かというと、やはりバブル崩壊以来の負の遺産の重みというのを軽く見ていたんじゃないか。特に九三年、九六年あたり、それから最近でございますが、金融機関を初め各企業にたまっている供給過剰あるいは不良債権、そういったものを軽く見ていた嫌いがあるんじゃないかということを思います。  昨年から金融対策を非常に大仕掛けにやっておりますのはそういう反省にのっとったことでございまして、ことしはかなりそういう点は慎重に見ていると思っております。
  43. 内藤正光

    ○内藤正光君 では、特に今年度、平成十年度は当初がプラス一・九、実績見込みがマイナス二・二と、実に四・一ポイントも下方修正をしなければならなかった。どの項目が大きく異なってしまったのか、またそれはいかなる環境変化によるものか、お答えいただけますでしょうか。
  44. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 昨年度、本年度、平成九年、十年といずれも一・九%のプラス成長を見込みました。昨年度は実績で、確定値でマイナス〇・四、ことしはまだ予測でございますがマイナス二・二と大きく外れてまいりました。その点はほとんどあらゆる項目が予想を下回っておるのでございますが、特にやっぱり設備投資、これが大幅に下がりました。それから、海外余剰もアジア諸国の低迷等で下がっております。消費も、ずっと増加してきたものですからプラスと見たのがマイナスになってきている。  そういう意味で、あらゆる項目が狂ったということでございますが、中でも、先ほど申し上げましたように、やはり企業にたまっていた負の遺産が貸し渋りにも出てまいりましたし、企業の経営決算にも出てまいりまして、設備投資が大きく落ちたのが比率といいますか差額でいうと一番大きかったと思います。
  45. 内藤正光

    ○内藤正光君 そこまで毎年毎年外れてきますと、経済見通しとは一体何なのかという問題に突き当たるわけなんです。先ほど経企庁長官は、十四勝十六敗だというふうにユーモアを込めておっしゃったわけなんですが、私は、経済見通しというのは、例えば七勝六敗、勝ち越したからいいだろうというようなゲームでもなければ、ましてや当たるも八卦当たらぬも八卦という占いでもない。何となれば、楽観的な見通しをしてしまったがために、本来だったらば今すぐ打たなければならない諸施策が後手後手に回ってしまう、そして傷口が広がってしまう。そしてその結果、本来だったらば出さなくてもよかったような何兆円もの、あるいはまた何十兆円もの追加負担を国民に対して求めていかなければならない。これは金融問題の処理が大幅におくれた例を見ても明らかだろうと思います。  そういった意味では、政府の出す経済見通しというのは、民間以上に厳しく、そしてより正確さが求められるわけでございます。その辺の御認識について経企庁長官、お答えください。
  46. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 仰せのとおりでございまして、これほど大きく狂ったことはかつてございませんでした。その意味で、企画庁として、企画庁長官として国民に陳謝しなければならないと私は思っております。  経済見通しというものにつきましては、単に予測だけではなしに、あるべき姿という点もございまして、当たればいいというものではないというところも、それはあることはあるんですが、私も申し上げておりますように、昨年は、やはり一昨年そしてその前と三・〇%、四・四%という成長が続いてきた、その次は〇・四のマイナスになるんですが、そういう点から、九七年の四月に前二回が三・〇、四・四と成長が続いてきたものですから楽観いたしまして、財政再建の方にのめり込んだ。これは私もやはり時期が悪かった、失政だったと申し上げておるのでございますが、それが楽観的な見通しのもとにつくられた失敗だったという気はしております。  過去のことはさておき、今回はそういう点を改めてよくよく考えまして、金融問題から公共事業、減税等非常に大胆な政策をとって、将来の財政に対してはまた考え直さなきゃいけないということはございますけれども、かなり慎重かつ積極的な方策をとらせていただいていると思っております。
  47. 内藤正光

    ○内藤正光君 繰り返しになって大変恐縮ですが、私は既に来年度の政府経済見通しは見直さなければいけない状況にあろうかと思いますが、そういったことはないというふうにおっしゃるわけですね。お願いします。
  48. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 来年度、平成十一年度はまだ始まっておりません。私は、現在の状況、十—十二月のQEは間もなく発表になりますが、その後一—三月、これは明確に踏まえてどうなるかということはまだわかっておりませんが、現在の状況からいきますと十—十二月は少し下がるかもしれません。それは、海外要因もちょっと悪いんですね。  そういう点がございますけれども、再三申し上げておりますように、回復の兆しもございますから〇・五%という値は十分達成できる、組みかえるとか改めるとかいうようなことは今の段階では全く必要がないと思っております。
  49. 内藤正光

    ○内藤正光君 大変力強い決意をお伺いしたわけでございますが、しかし私は、やはり来年度経済見通しは余りにも甘く見過ぎではないか、楽観的な見方をしているのではないかと思います。  そこで、個別項目についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず、住宅投資についてなんですが、住宅着工戸数の対前年同月比で言いますと、これは実に二十四カ月、二年も連続をして減少し続けている。そして、昨年の十一月はマイナス一六%、昨年の十二月はマイナス一〇・八%なわけですね。そしてまた、平成十年度ではなく平成十年、昨年一年間の着工件数を見てみますと、前年比で比べますとマイナス一三・六ポイント、これは十四年ぶりに百二十万戸を下回ったというふうになっております。  そこで、経企庁長官にお尋ねいたしますが、住宅投資においては、長官のおっしゃる変化の胎動というのは感じられるんでしょうか。
  50. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) おっしゃるとおり前年比では下がっておりますが、幸いといいますか、前期比で見ますと、十二月には久しぶりに五・六%前月比を上回るようになってまいりました。前年比ではまだ下がっておりますけれども……
  51. 内藤正光

    ○内藤正光君 着工ですか。
  52. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 着工です。  そういう点で変化の胎動が見られると思いますし、ことしになりましてから、まだ明確ではありませんが、マンションの売れ行きあるいは分譲住宅の見学者等がふえております。減税効果、低利効果というのが出ておりますので、民間の予測はこういった施策がとられる前にしておるところが多いのでマイナスという数字を予測したところも多いんですが、私どもは住宅は十一年度はプラスになると考えております。
  53. 内藤正光

    ○内藤正光君 私は、それは単なる駆け込み需要であろうかと思いますが、その前に建設大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  一月三十日の日経新聞によりますと、建設省は、着工は二月、三月ごろから増加傾向になるだろうというふうに言っております。考えてみれば、これは当然といえば当然なんですね。それは、昨年の長期金利が〇・八という大変低いときの契約であった、そしてまた住宅ローン減税への期待があったから、当然といえば当然なんです。しかし、問題はこれから、長期金利の上昇基調というこれからなんですが、今もってそのお考えは変わらないですか。
  54. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) この住宅着工数でございますが、先生御指摘のように、年換算で一番多いときは平成八年の百六十三万戸というのがございました。その後、昨年が大体百十万戸台に落ち込んできたということでございますが、先生の御質問の、建設省は百三十万戸ということを見込んでおりますけれども、私は正直申し上げまして、戦後五十四年たった今日において、私は百二十万戸台が正しい予測の数値ではないかな、そのように思っております。  そして、もう一つ先生が、その角度からふえたのではないかというようなこと、それは金利が御承知のように最低二%に下げて、その後二・二になりました。それからまた、ローン利子控除制度もつくりました。そういうようなことで上がってきたということも確かにありましょうが、私は今後もその流れは続いていくと思っております。  それで、財投がまた上がってまいりまして、今の二・二は三月十二日まででございますが、そういう意味におきまして、これはもう少し続けていきたいなと私は個人的には考えておるところでございます。
  55. 内藤正光

    ○内藤正光君 ここに日本総研の試算があります。これはどういう試算かといいますと、今回の住宅ローン減税がどれぐらいのプラスの効果を及ぼすかといった試算でございます。これによりますと、住宅ローン減税によってプラス五・四ポイントの増加効果がある。つまり、百万戸だったものが住宅ローン減税をやったがために百五万四千戸にふえるという試算でございます。  それと同時に、長期金利の上昇で今度はどれだけのマイナス効果があるのかといった試算も載せてあります。これによりますと、一・五ポイント長期金利が上昇したらマイナス四・五ポイント。もっとわかりやすく言いますと、長期金利が一ポイント上昇すればこの住宅ローン減税の効果はマイナス三%になる。  ちょっと計算をしてみますと、長期金利が昨年は〇・八%だった。そして今は一・八%。既に一ポイント上昇している。ということは、住宅ローン減税、当初は五・四ポイント押し上げ効果があったというわけですが、今現在は五・四マイナス三、つまり二・四ポイントの押し上げ効果しかない。そしてまた、これからも長期金利は上昇していくかもしれない。さらに一ポイント上昇したら、これはどういうことかといいますと、今回の住宅ローン減税の効果が全くなくなってしまうということをこの試算は言っているわけなんですが、経企庁長官、御所見をお伺いします。
  56. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) この長期金利は、市場金利であるか住宅金融公庫の金利であるか、いろんな金利が実効にまじってまいりますから、市場金利がそのまま住宅状況に移行するかどうかというのは一つ問題があります。  それから、なお申し上げますと、住宅着工をしようと決断する人たちが値上がり予想をするか値下がり予想をするかということは非常に大きいんです。だから、金利が下がりつつあるときというのはもうちょっと待とうという意識が非常に働きます。  そういうことを考えますと、日本総研の試算で価格効果だけを出すとまさにそのとおりでございますけれども、心理的な効果、それから見通し、それに人口構造上ちょうどまた団塊ジュニアが家を持つところに来ている、そういうようなことを含めますと、ことしは私は十万戸ぐらい、つまり六・七%ぐらい前年にふえるのじゃないか。戸数の問題とそれから広さの問題もございますが、そういうものを含めて需要として六・七%ぐらい増加するのではないかと期待しております。
  57. 内藤正光

    ○内藤正光君 ただ、住宅公庫以外に普通の銀行から変動金利で借りていらっしゃる方もかなり多いわけです。こういった方はやはり長期金利の先高観、かなり敏感に反応するかと思うんです。その辺はいかがでしょうか。
  58. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 確かにそうですけれども、いずれ持とうと思っている人は、先どんどん高くなると思ったら今のうちにというのがあるんですね。だから、その辺の心理がどう働くかということは一概に言えない問題だと思いますけれども長期金利が特に住宅金融公庫等について急騰するというようなことは、やはりマイナス効果が大きいと思います。その辺、金融政策上の観点からもいろいろと考えるべき問題は含まれていると思います。
  59. 内藤正光

    ○内藤正光君 そこで、大蔵大臣にお伺いをいたします。  長期金利は二・二ないし三ぐらいに急騰したわけなんですが、そこで、国債は買わない買わないと言っていた資金運用部による国債買い入れが行われて一・八ポイントに下がったわけですね。それはそれでよろしいですね。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その二・一とか二とかいうのはちょっと私は過剰反応だったと思っていますけれども、今そうでございます。指標銘柄で、二百三回でございますと、昨日が一・八であったと思います。
  61. 内藤正光

    ○内藤正光君 つまり、今の長期金利を抑えているのは資金運用部による国債買い入れの効果だと考えてよろしいんですね。
  62. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういうふうに思っておりません。  平成十一年に市中に出す国債は六十一兆でございますが、資金運用部が毎月買いますのは、今二月、三月と買うことにしたと申し上げましたのは二千億ずつでございますから、マージナルな意味は確かにあると思います。  しかし、全体として、流れからいいますと、それはそんなに大きなものではございませんので、やっぱり市況商品でございますから、そのときそのときのあれに影響を受けるということは、私、おっしゃっている部分はあると思いますけれども、それはマージナルなものであろうというふうに思います。
  63. 内藤正光

    ○内藤正光君 資金運用部で二月、三月は買い入れを行うと。合計四千億円ですね。ただ、四月以降何にも言っていないわけですね。ストップしてしまったら、これがまた長期金利の暴騰の引き金にはならないんでしょうか。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこまでお答え申し上げたつもりでございましたけれども、暮れからことしの大量発行ということを受けて、しかも資金運用部が、全体の金額からいえば小さいはずであるけれども、買うことをやめますと申しましたことから、そういう相場の市況の変動がございました。それで、国債の種類を少しふやしたり、今発行者としていろいろ注意をしなければならないこともあると考えまして、さしずめ二月、三月の買い入れを決定いたしました。  それで、市況は今落ちついておりますが、相場でございますから、これで落ちつくものなのか、それは絶えず注意をしていなければいけないことだと。それは怠らないつもりでございますので、事態の進展によりましてまたいろいろ考えなければならないことがあるかもしれないと思っております。
  65. 内藤正光

    ○内藤正光君 事態の進展を見きわめながらということは、もしかしたら四月も資金運用部による国債買い入れは、可能性としては否定しないという理解でよろしいですね。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) つまり、今、内藤委員に私が何とお答えするかということは市況に影響をいたしますから、市況に対しては絶えず注意していなきゃいけないと申し上げておきます。
  67. 内藤正光

    ○内藤正光君 ここで私はちょっと住宅投資については締めたいと思うんですが、私は、住宅ローン減税というのは住宅を購入した人のみが恩恵を受けられる、そういった意味で私はかなり一般の減税よりも効果は高いものなんだろうと思います。しかし、先ほども私が述べてきましたように、金利上昇の流れの中で、住宅ローン減税の効果がだんだんすり減ってきてしまっている。  そこで、私は、大蔵大臣にぜひ確認をしておきたいのは、こういった金利上昇という基調を踏まえて、住宅ローン減税、さらにもう一歩踏み込んだものに拡張するおつもりはあるのかどうなのか、お尋ねいたします。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 考え方は、しかし、一定の金利水準を想定して、その上で住宅ローンの減税がどれだけの効果を持つかということを言っているわけでございますから、いずれにしても住宅ローン減税がなければそれだけその住宅需要は減るということには変わりありません。金利が変わった分だけ税の方でそれをどうするかというお尋ねのように伺いますけれども、そうではございませんでしょう。やっぱり税は税としての税制があって、それが金利と相まって効果を上げる。その度合いは確かに金利によって違いますし、また逆に減税の度合いによっても違いますから、こっちで落ちたものをこっちで拾えと言われましても、そうばっかりはまいらない。
  69. 内藤正光

    ○内藤正光君 ただ、そもそも論を言いますと、なぜ住宅ローン減税を今回拡張したかといえば、この不景気の中、住宅投資を刺激しようとしたわけですね。だから、今までちょっとしかなかったものを今回はこの二年間に限って大きなものにしたと。つまり住宅刺激をねらってなわけですね。大蔵大臣はさっき、金利が上がったからこちらも変えようというふうな話にはならないとおっしゃいましたが、ただ、住宅刺激をしたいならば、やはり住宅ローン減税、今の状況を見ながら何かいま一歩踏み込んだものに変えていかないと、もともとの目的、住宅投資を刺激するというものが埋もれちゃうんじゃないでしょうか。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) おっしゃることは逆らいませんが、しかし何もしないよりいいでしょうという意味です。
  71. 内藤正光

    ○内藤正光君 まだ私のところに二月のデータは届いておりませんが、聞くところによりますと、一月はかなり住宅の駆け込み需要があったというふうに聞いております。しかし、二月になったらがくんと減っているというふうな話も聞いております。その辺はいかがでしょうか。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の統計も、十二月、プラス五・六でございます、住宅着工戸数。それから後ございませんのでちょっとはかりかねておりますが、あるいは建設大臣御存じか。ちょっと統計がないんじゃございませんか。
  73. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 二月はまだ終わっておりませんから統計もとれておりません。統計のとり方から見てそうなんですが、うわさで言いますと、まだ売り出した物件に対する見学者等多いそうですから、多分悪くないんじゃないかと思っております。
  74. 内藤正光

    ○内藤正光君 記事によりますと、確かに見学者は多いけれども、購入するかどうかというところで一歩踏みとどまってしまうという記事が多いんですね。だから、長官お話は余り支えることにはならないわけです。これはもう水かけ論になってしまいますので、次に移らせていただきます。  次は、民間の設備投資についてお伺いをいたしたいと思います。  債務残高、今の国債残高を考えますと、公共事業だとか減税などいつまでも大盤振る舞いは続けるわけにはいかないわけです。そういうことが許される環境にはないわけなんです。そういった意味で、今の日本の現下の最大の課題というのは、いかに民間主体の持続的な成長につなげられるかどうかだろうと思います。  そこで、昨日、自民党の方が設備投資は四番打者だというふうにおっしゃいました。私はまさにそのとおりだと思います。私は、設備投資というのは日本経済の心臓であり動脈である。よく一番大きいのは個人消費だ、GDPの六割を占める個人消費だと言っておりますが、しかし考えてみますと、この個人消費ですら自分の勤め先の会社の調子がいいかどうか、これに大きく左右されるわけなんです。つまり私は、これからの日本経済を考える上では、設備投資をいかに盛り返すか、これが一つの大きなポイントになってくるだろうと思います。  ところが、設備投資を取り巻く環境を見てみますと、一つには三十兆円ともあるいはまた五十兆円とも言われる巨大な需給ギャップがある、そしてまた、景気の先行きも不安、そしてさらには企業業績も悪化の一途をたどっていると。どれを見ても増産インセンティブ、設備投資インセンティブというものがないんです。  そこでお伺いしたいのは、来年度の政府見通しなんですが、平成十年度はマイナス一四・九ポイント、そして平成十一年度はマイナス六・九ポイントと言っております。確かに今年度より来年度はマイナスで下がるけれども、冷え込み度合いが幾分弱まるという見方を政府はされているわけです。  ところが、例えば二月十九日の日経の調査、これは全産業の設備投資に関する調査なんですが、平成十年度はどうなっているかというと対前年比でマイナス四・六ポイント、そして平成十一年度はマイナス八・〇ポイントと言っているわけです。一方、日本開発銀行の同じような調査では、平成十年度前年比マイナス一・八ポイント、そして平成十一年度はマイナス四・六ポイント。数字は違うんですが、ともに言っていることは設備投資の冷え込み度合いは今年度以上に来年度は深まる、つまり下方屈折すると言っているわけです。  それを裏づけるかのように、連日新聞の一面には設備投資減という記事が躍っているわけです。きのうの日経の一面にも東電千八百億円減あるいはまた関電一千億円減というような記事が躍っておるわけですが、この辺について、つまり設備投資について、通産大臣並びに経企庁長官、御所見をお伺いいたします。
  75. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 仰せのとおり、設備投資を復活というか回復するのは大変な作業でございますけれども、今、委員御指摘になりました銀行の調査というのは設備投資計画を出すのでございますが、これは常に悪いときにはより悪く、いいときにはよりよく出る傾向がございます。  したがいまして、この数字がそのまま実行されるというふうには思っておりません。これは過去の四半期ごとの数字を見ましても、かなり下に出てくる、計画が低く出てきて現実には上方修正されるということが多いものですから、その数字がそのまま正しいとは私たちは思っておりません。  ただ、御指摘の点で大変やはり重要なことは、企業設備投資が出てくるためには、これを投資して利益が上がると思わないと企業はやらないわけでございますから、そういうような利益が出てくるような新しい需要が必要です。  エコノミストで、よく三十兆円とか何十兆円の需給ギャップがあってその部分をまず埋めなければ設備投資が出てこないという説をとる人があるんですが、これは正しくございません。設備投資の中である分野のものはそのまま劣化して不良資産として廃棄されるものもございます。その反面で、新しい産業、新しい需要が出てきて、そこでは設備投資が行われるわけです。だから、産業界全部十把一からげにして、三十兆円あるからそれがなくなるまで、消費公共事業で埋め尽くすまで設備投資が出てこないよというわけではないと思うんです。  重要なことは、一つには企業の利益が上がりますようにリストラなんかやらなきゃいけない。その段階でやはり暗い面、事業の選別とか人員の整理とかいうようなのが出てくるところがあります。それは恐らくこれからかなり出てくるだろうと思います。  そしてもう一つは、やはり新しい産業の芽を伸ばしていかなきゃいけない。そういう意味では、最近幾つかそういう現象も見られておりますけれども、そういう産業、施設の交代がうまくいくかどうか、これが十一年度にとっては大変重要なところだと思っております。
  76. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 平成十一年度の予算の中、あるいは税制改正の中でやはり設備投資を促しているものも実はありまして、例えば法人税減税は法人の期待収益率を高めるわけでございますから、やはり一つ設備投資に対するインセンティブであろうと私は考えております。  ただ、ここで申し上げておかなければなりませんのは、バブルの時期というのは大変資金が容易に手に入りました。これは直接金融であれ間接金融であれ、企業側が資金を容易に手にすることができました。その結果、大変生産性の低い分野への投資が幾つも行われまして、実は設備投資を語ると同時に、そういう生産性の低い部分の過剰設備をどうやって始末していくのかということも、やはり政治としての大きな課題であろうと私は思っております。  そういう意味では、構造転換というものが必要だというのは、そういう意味から言われていると同時に、やたらと設備投資をしていくということではなくて、やはり利益が上がる、あるいは将来の日本の強い製造業、サービス業につながるという分野への投資ということでございまして、設備投資の方向も正しい方向で設備投資を促していく、あるいは新規産業を創出していく、新規産業の基礎となる新しい技術、新しい基礎的な科学、こういうことも発展を促していくということが必要でして、一概に設備投資が少なくなったからといってそう大きく悲観をすることではなくて、むしろ設備投資をやるんでしたら、日本の将来の経済の発展につながる分野はどこかという観点から設備投資というものを考える必要があるんではないか、そのように思っております。
  77. 内藤正光

    ○内藤正光君 ちょうど通産大臣並びに経企庁長官から新しい産業という話が出ましたので、その点についてちょっとお伺いをいたしたいと思います。  私は、大臣並びに長官がおっしゃるように、今こそ新しい産業を創出して、促して、そして人材の流動化を図っていかなければならない、そういったときではないかと思っております。つまり、今の枠組みを守りながら何兆円も何十兆円もお金をつぎ込んだって日本経済は回復しない。  ちょうどいい例が九〇年代のアメリカ経済を見てみればいいかと思います。確かにリストラだとかなんかいろいろあった。しかし、その雇用を新しいサービス産業だとかそういったものが吸収をしていって、これでアメリカの九〇年代の好景気を演出したわけでございます。そういった意味で、私は今こそ日本も本腰を入れて新規産業の創出をしていかなければならない、そういったときだと思っております。  ところが、通産省さんが中心となって産業再生計画をまとめられました。私も見ているわけなんですが、どうもスローガンだけで、いま一歩踏み込んだ具体性に欠けるんではないか。これを見ても、新しい産業が起こってくるんだなというわくわくした気持ちがどうしても感じられない。  私もいろいろな人と話をしながら、新しい産業を創出していくためには何が必要なんだと。いろいろあります。一つには、例えばアメリカで行われているようなSBIRのような政策的な支援、あるいはまた規制緩和。余談ではございますが、今政府は百万人雇用と言っておりますが、ある著名なベンチャー企業家に言わせるならば、今、日本が規制緩和を行ったならば百万人なんというものじゃない、一千万人の雇用創出も可能だということを言っているわけなんです。そして三つ目は、やはりリスクマネー市場の整備、そしてまた四つ目は、大学だとか研究機関のいろいろな研究成果、技術、そういったものをいかに民間移転するか、このあたりではないかと思っております。  そこで、まずリスクマネー市場についてお尋ねをいたしたいと思います。  今、新規産業へ資金供給する制度は数々あるんです。改めて申し上げるまでもないんですが、しかし問題も多い。その問題は、端的に言えば、一言で言えば、その制度の母体に審査能力が欠けているがために、融資先を見てみますと、どうも新規性のあるベンチャービジネスが少ないだとか、あるいはまた将来性に富んだベンチャービジネスが少ない、そういった問題が数々あるわけです。制度はあれど、つまり実効性がないというのが現状でございます。  そこで、通産大臣にお伺いをいたしたいのは、日本に新しい産業が育っていかないのは、先ほどの答弁でもおっしゃいましたが、やはり今の日本は間接金融に過度に依存しており、リスクマネー市場というものが成熟していないからだと私は考えるんですが、通産大臣のお考えをお聞かせください。
  78. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先生が触れられました産業再生計画というのは、昨年の九月、小渕総理が各閣僚に指示をいたしまして、私どもがつくったわけでございます。  今まで政府がやっております政策というのは、横一本につながる線というのは一体何かといいますと、やはり需要サイドの対策であったろうと私は思いますし、またそれを今お願いしているわけでございます。  一つは、法人税の減税はやはり法人の設備投資意欲を促す。あるいは所得税の減税は可処分所得をふやす、消費性向を上げていただきたいと。住宅減税も住宅投資を促す。また、いわば財政支出によって直接有効需要を創出する。  いわば、これらの政策というのは需要サイドの政策でございますけれども、先生御指摘のようにそれだけでいいんだろうかという問題がございます。先生よく御存じのように、一九八〇年代中ごろのアメリカは大変賢明でございまして、有名なヤング・レポートの中で産業の構造改革、特に需要サイドの改革ということをうたいまして、それがじわじわと今効果が出てきて大変アメリカ経済は発展、繁栄をしているわけでございます。  産業再生計画を読んでわくわくされないというのはよくわかりますが、これからあの中に述べられている項目について小渕総理を中心に実際の施策というものをやっていくわけでございますから、その過程を見ていただくと恐らくわくわくされるんではないかと私は期待をしております。  それから、新規産業を創出するためには技術とか人材とか経営手法とかいろんな要素がございますが、ベンチャーをやろうとされている方のいわば一般的な意見としては、いいアイデアもありいい技術もあるんだけれども、ビジネスをスタートする資金の調達がなかなか難しいと。  銀行に行ってもろくに相手にされないし、直接市場に行ってもなかなかそういうベンチャーが相手にされない。こういうことで、私どもとしては、直接金融であれ間接金融であれ、そういうベンチャーを志す方々が事業をスタートするための資金確保をどうやってやるかということは大変重要なところでございまして、それは恐らくNASDAQの例のように、アメリカではそういうベンチャーに対する直接金融というのは大変発展しているわけでございますが、我々もそのように新しい起業を目指す、新しい分野を目指すという方がそういうリスクマネーをある一定の条件のもとに入手できるような仕組み、制度というものが必要になってきた。今のエンゼル税制だけでは多分まだ十分とは言えないんではないかというふうに思っております。
  79. 内藤正光

    ○内藤正光君 大蔵大臣にお尋ねいたします。  アメリカにおいてはリスクマネー市場がかなり成熟しておりますが、その理由のうちの一つに四〇一Kなどが考えられるかと思います。そのほかどういった理由でアメリカにおいてはリスクマネー市場が成熟してきたとお考えでしょうか。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、通産大臣がお答えになっておられまして、税制の方では、御承知でもございますけれども、上場前に取得をして上場後にもうけたときには譲渡益は半分にするとか、それから金を貸してうまくいかなかったときには繰り越しで損失を認めるとか、私は通産大臣には何でもいい方法があったらやりましょうよと実は申し上げてあるぐらいここが大事なところだと思っております。  アメリカの場合、私も詳しく知っておるわけではございませんが、見ていますと、かなりの部分が大学のときに結びついておる。事実上そうでございますよね。スタンフォードにしましてもMITにしましても、あそこから出ていって自分でやっておるというあの部分が非常に貴重だと思います。  それから、そういうことを見て、個人がよしじゃ金を出そうかという中に、直接金融というんですが、どうも我が国の場合、個人が勤倹貯蓄のところまでは大変に世の中から褒められるんですが、何か株をやってもうけちゃったみたいな話がどうもまだもうひとつ素直に受け取られていない部分がありますから、だんだんそういうことも変わってきて、税制の方は私は何でも本当はしたいと実は思っております。
  81. 内藤正光

    ○内藤正光君 私がここで参考にできるのは、今や全米各州で採用しているLLCという有限責任組合制度、これは端的に言えば個人投資減税というものなんですが、ぜひ新しい産業を育成して、そして育成するためには直接金融市場をまず整備しなきゃいけない。そしてそのために、個人に対して投資インセンティブを与えるような個人投資減税のようなものを導入すべきだと私は考えるんですが、通産大臣並びに大蔵大臣、御所見をお伺いします。
  82. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 税制上、金融上のいろんなことを考えなければなりませんが、個人がそういうリスクマネーに投資した場合の扱いというのは、やはり大蔵大臣と御相談をしなければ結論の出ないことですし、他の税制との公平というようなことも考えなければなりませんので、検討をさせていただきたいと思っております。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 損をした場合の処置は考えているんですけれども、もうけたときにどうするか、投資減税ですね、個人の。それはかなり所得税の基本にかかわる問題ですから。しかし、やっぱりそういうことも一つ考えることが入り用なのかもしれないとも思ったり、これは少し一生懸命考え、税制調査会の動きも伺ったりしながら考えてみます。
  84. 内藤正光

    ○内藤正光君 参考までに申し上げておきますと、アメリカというとどうもベンチャーキャピタルというのがよく聞こえてくるわけなんですが、実はベンチャーキャピタル、投資会社からの投資以上に、個人のエンゼルというものから出ている投資額の方が圧倒的に多いんです、二倍、三倍と。その辺のことをまず御理解いただきたいと思います。  時間がないのでちょっと早口になって大変恐縮ですが、次に、いかに大学だとか研究機関の技術なり成果を民間移転するかということですが、私は特にハイテク系ベンチャーを育てるにはこのことが大変必要なんだろうと思います。もっと言えば、直接的な技術移転ということで言うならば、大学の先生が例えばベンチャーを起こしてもいいんじゃないか。これが一番直接的な技術移転としてはいいのかな、近道なのかなと思うんですが、国立大学の場合は国家公務員法等の足かせがある。しかし、私は、もしこれが可能になれば、技術の直接移転もさることながら、大学そのものの活性化にもつながるのではないかと思っております。  文部大臣、御所見をお願いします。
  85. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 二年ほど前になりますが、特許庁と一緒に私も日本の大学が幾つ特許を出しているか、それからアメリカの大学が幾つ特許を出しているかを詳細に調べました。残念ながら日本は一けた以上少ない。  これはいろいろな理由があるわけですね。一つは、特に国立大学の場合には、研究者が直接特許に応募しなさい、それはどうぞ自由に、しかし国としてはそれほど積極的にというか、大学としてはそれほど積極的に特許を守るということをしなかった。これは過去であります。三年ほど前まではそういう雰囲気があった。それからもう一つは、大学の教員の中に、国公私立全部を通じて特許に対する関心が薄い。まずここから考え直さなきゃいけない。  そこで、国といたしましては、少ないといえども今まで国立大学等で国に帰属している発明がありますので、これは科学技術庁所管の科学技術振興事業団と連携を図りながら実用化を今推進しているところでございます。  それからまた、個人帰属を含め、大学等における研究成果の民間への移転を進めることを目的といたしました大学等技術移転促進法が昨年八月に施行され、現在、次々に技術移転機関が設立されているところでございます。私は極めて有望である、この動きは必ずや大きく育つであろうと思っております。大学のみならず、研究機関も大変意欲的に特許並びにベンチャーに取り組むようになってまいりました。  この前も衆議院の方で申し上げたことですが、アメリカがこういう状況を生み出したのは割に近々のことです。一九八〇年代になったころからだということをよく御認識賜りたい。やっと日本もそういう状況になってきたのだというふうなことで、私は極めて、日本の国立大学だけではなく、私立も公立も含め、研究所も含めて、こういうふうなことで新しい技術を生み出す雰囲気が生まれてきたと思っております。
  86. 内藤正光

    ○内藤正光君 もっと議論したいんですが、ぜひ聞きたいものがありますので、次へ移ります。  次はSOHOでございます。スモールオフィス・ホームオフィス。  ベンチャーというとどうしてもハイテク系ベンチャーというイメージがわくんですが、私は、SOHOというのは雇用創出型ベンチャーとして大変重要な位置を占めてくる、特にこれからの高度情報化社会の中においては雇用創出という点では大変重要な位置を占めていくものだろうと思います。  スモールオフィス・ホームオフィスの定義を簡単に言えば、情報通信を活用した自営業的な在宅勤務形態でございます。しかし、今そのSOHOを取り巻く環境を見てみますと、相も変わらず行政面での取り組みがおくれているわけでございます。  そこで、厚生大臣にお伺いをいたします。  特に幼児を持つ女性SOHOワーカーがよく悩みを打ち明けるんですが、まず保育所入所の優先順位が低いということがあります。この辺の問題の認識についてお伺いします。
  87. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) SOHOは従来の雇用形態とは若干異にしておりますので、従来型の考え方でいきますと、自宅内に勤務されるという点に着目して、若干そういう傾向が率直に言ってないわけではないと思います。これは今、地方自治法上の団体事務として条例で規定しております。厚生省は準則を決めて基準を定めておりますが、そういう方々も決して劣後することのないように、それを保育の対象にするということを今考えております。現実には市町村によって差があると思いますけれども、決して自分の住宅以外の宅外勤務者だけを優先するというものではございません。  全体として、保育所の問題は非常に重要ですから、待機児童の解消とかいろいろの施策はやっておりますが、それをなるべく労働の実態、雇用の実態、あるいは保育の実態に応じて適切に対応するようにしたいと思っております。
  88. 内藤正光

    ○内藤正光君 ただ、実態といたしましては、都市部の場合ほぼもう絶望的だ、預かってもらえないというような不満を数多く聞いております。私は、高度情報化を構築していこうという時代にあってこれは本当に時代錯誤的な仕組みなり制度なんだろうと思います。ぜひ改善に向けて一刻も早く取り組んでいただきたいと思います。  以上で終わります。
  89. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で内藤正光君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  90. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度総予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。依田智治君。
  91. 依田智治

    ○依田智治君 自由民主党の依田智治でございます。  私は、我が国の安全保障というものをいかにして確保していくかという視点に立ちまして、ガイドライン並びにこれに基づく今回国会に提出されております周辺事態法案、いわゆるガイドライン関連法案、これも細部を議論していると重箱の隅をつつくようになってきますので、これは委員会審議に後日譲りまして、憲法問題も含め基本的な位置づけ、問題、こういう視点に立って総理並びに関係大臣に御質問させていただきたい。  正月来、自自連立協議、ここに野田大臣おられますが、私も参議院としてメンバーに出て、安全保障政策の決定政治のリーダーシップによる、こういうことが掲げられておりますので、きょうは法制局長官にも通告させていただいていますが、できるだけ総理並びに大臣の政治的判断をもって答弁をいただければありがたい、こう思うわけでございます。  ガイドラインの周辺事態法案に直接入る前に、基本的認識という点で、私は、我が国の安全保障を今後考える上でガイドライン法だけじゃないよ、またガイドライン法というものも大変大事な法律だということで、三つの点に絞ってお伺いしたいと思います。  まず、総理にお伺いしますが、今回提出しておるガイドライン関連法というのは、この景気対策予算をやったのに引き続き、極めて重要で緊急に成立を要する問題だということで政府も考えておられるわけでございますが、まずこの法案についての総理の基本的御認識をお伺いしたいと思います。
  92. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 周辺事態の確保法案は、周辺事態に対応するため必要な措置等を定め、我が国の平和と安全の確保に資することを目的といたしておることは申すまでもありません。  改めて、日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものであります。本法案に基づき実施することを想定いたしております活動それ自体は武力の行使に該当せず、米軍の武力行使と一体の問題が生ずることも想定されず、憲法の範囲内のものであるということは当然のことだと思います。  政府といたしまして、国会において本法案が審議され、早期に成立することを強く期待をいたしております。  何とぞ、十分御審議をいただきたいと思いますが、日本の安全を守るということは政治の基本であり、また政府国民に負っておる大きな責任の最大のものと言って過言でないと思います。そういう意味で、私どもは、この法律案も含めまして改めて国民と国家の安全、そして国民の財産を守るために全力を挙げていきたい、このように考えております。
  93. 依田智治

    ○依田智治君 旧ガイドラインでも、日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力のあり方を研究しましょうということになっていたけれども、全くほうっておかれた。今回少なくとも、後ほど触れますが、国際情勢の変化の中で憲法の範囲内で独立国家として何ができるかというぎりぎり詰めたこの法案ということでございますから、我々としても真剣に議論し早期成立を期す必要がある、こういう認識であります。この点をまず述べておきたい。  次に、このガイドライン、これで終わりじゃないんです。もっと重要な、我が国自体が攻撃を受けたような場合にどう対応するのか。これはガイドラインの中にも平素における協力、それから我が国が攻撃を受けた場合の協力というのがあるわけですね。これは今回は提出されておりません。  そこで、防衛庁長官にお伺いしますが、私は安保室長をやっておって有事法制等の研究に若干参加したんですが、その後政府の研究は進んでいるんですか。ちょっと御報告願いたいと思います。
  94. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 委員が一番御承知のことでございますが、防衛出動を命じられるという事態における自衛隊の行動にかかわる有事法制の研究につきましては昭和五十二年に開始されまして、これまでに防衛庁所管の法令、これは御存じのように第一分類と言っておりますが、についての問題点を昭和五十六年の四月に、それから他省庁所管の法令、第二分類につきましてはその問題点を昭和五十九年の十月にそれぞれ取りまとめて公表したところであります。また、所管が明確ではない事項に関する法令、これを第三分類と言っておりますが、これにつきましては政府全体として取り組むべき性格のものであり、個々の具体的検討事項の担当省庁をどこにするかなど、今後の取り扱いについて今、内閣安全保障危機管理室が中心になりまして種々の調整を行っている、こういう状況でございます。
  95. 依田智治

    ○依田智治君 結局、全然進んでいないという御報告でございます。  それから、防衛庁長官、もう一点。平時において突発的に何かが起こったというような場合に、警察、治安機関のみならず、自衛隊もいろんな意味対応していく必要があるというように考えておりますが、こういう点についての備えという面での研究というか、これはどの程度進んでおるのか、お伺いします。
  96. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 相手国から突発的に攻撃を受けた場合、例えば誘導弾等による攻撃のような場合を今、委員はお聞きになられているわけでしょうか。
  97. 依田智治

    ○依田智治君 そればかりではなくて、平素何か日本海等で……
  98. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 防衛庁長官、含意をしっかりお聞きになられて御答弁ください。
  99. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 今ちょっとそのあたりがはっきりしなかったものですから。  例えば、突発的に攻撃を受けた場合に、昭和三十一年の政府の統一見解もありますが、我が国に対する急迫不正の侵害があること、それからこれを排除するために他に適当な手段がないこと、これは必要最小限度の実力行使にとどまることに該当することが必要でありますが、そういう三つの原則を守った上で、我が国に対する急迫不正の侵害が認められない段階について、もちろん日本は相手国に先制攻撃をするようなことは憲法上認められていないわけでありますが、私ども防衛庁として、今、委員から御質問あったようなそういう突発的な重要事態にどういうふうに対応するかということで防衛庁の中に重要事態対応会議というものをつくって何度も検討を重ねているところでございまして、何とか近いうちにその取りまとめを完了してそういった突発的な事故に対する対応をきちっとしたいということで一生懸命検討を重ねているところでございます。
  100. 依田智治

    ○依田智治君 私は、後ほどミサイル等の問題に触れますが、私が質問したかったのは、平時でも防衛出動に至らない状態の中で、衆議院でも領域警備とかいろんな問題が提起されておりますが、現実に自衛隊の海上警備行動とかいろんな形で対応せざるを得ない状態がある。にもかかわらず、そういう問題に対する対処体制というのは極めて不備ではないかということで、そういう点も含めてこの問題には真剣に我々としても対応していかなきゃいかぬなと考えておるわけですが、この点についての、総理、どんな基本的御認識をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  101. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほどちょっと質問の趣旨がよくわからなかったものですから、必ずしも適切な答えになっていなかったように思います。  そこで、そういう突発的な異常事態に対する自衛隊の対応としては、平時における異常事態の対処については、今、委員も触れられたように、第一義的には警察機関、警察とか海上保安庁の任務であります。自衛隊は、警察機関では対応することができないと認められる事態が発生した場合には治安出動や海上警備により対処することとなるわけでありますが、政府としては、橋本内閣以来、我が国に対する危機が発生した場合やそのおそれがある場合において、我が国としてとるべき種々の対応につきまして、必要な対応策をあらかじめ十分検討、研究することを目的として緊急事態対応策の検討実施してきたところであります。  いずれにしましても、このような事態に際してのより適切な対応を期するために、自衛隊としての対応のあり方については、今後とも真摯に検討を行う必要があると考えております。
  102. 依田智治

    ○依田智治君 総理、有事法制というのは最初あれしていただきましたが、第三分類というのは安保室で預かったままストップしておる、ストップというか若干事務的に検討しておる。  しかし、総理が各省ひとつ研究しなさいということを命令すれば動き出す、こういう感じですので、政治の決断において少なくともまず研究を始めるということが重要じゃないかと思いますが、その点についての総理の御見解をお願いしたい。
  103. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今日、この問題について最も専門的な依田先生からお尋ねいただくということでありましたので、私なりに過去を振り返っていろいろ勉強させていただきました。  ここでの答弁は、政府としては国会における御審議、国民世論の動向等を踏まえて適切に対処していきたいと考えているというのが答弁ではございます。ただ、経過の中で、昭和五十三年の九月に公表されているように、この有事立法については近い将来に国会への提出を予定した立法準備ではない、こういうことで、当時の三原防衛庁長官のもとで検討を始められたと聞いております。  正直申し上げまして、あれから何人の防衛庁長官がおかわりになったか、内閣もそうでございますけれども、そうしたことを考えますと、せっかく御勉強されたことでありますし、また有事にいかに対処すべきかということは、きちんとした法体系のもとで対処することがこれはやはり法をもって国が治まる国としては必要なことではないかという考え方ができるわけでございます。  そういった意味で、御指摘もございまして、いま一度過去の御勉強の程度、それからまた今とどまっているところは何であるかということ等を十分勘案しながら対処すべきものであると思っておりますが、この問題についてはいろいろの経過の中で国民世論あるいはまた国会での御議論というものも非常に大切なことは言うまでもないことだと思っております。  ただ、昨今、日本を代表するような新聞が一種のシミュレーションとして、我が国における、平時におきましてもいろいろな対応につきまして問題提起をされておる。これだけ世の中がある意味では変わられたかなという印象もないでもありません。  したがいまして、こうした点につきましても今後どのようにいたしていくかということにつきまして、委員の御指摘等も踏まえながら考えさせていただきたいと思っております。
  104. 依田智治

    ○依田智治君 私がここで取り上げさせていただいたのは、日米で定めたガイドライン、平素の協力、我が国が攻撃を受けた場合の協力体制、これをしっかりやりましょう、それでしっかりやることが各政府の主体的責任において期待されているという中において、ガイドライン法はつくりました、国内法制はできていませんということでは、これは成り立たぬわけです。そういうことで、そういう問題意識を持って今後、これは各省にも関係することでございますので、閣僚皆さんも御認識いただければありがたい。  最後に、この問題で、自社さきがけ体制のときも代表として参加させていただき検討をやってきましたが、我が国の場合、国の安全保障、防衛、憲法に定める平和主義、国際主義というものの中でどこまでできるのかという問題について、戦後五十数年たっているけれども、今の憲法の条章をいろいろ解釈しても無理がある、いろいろ意見の違いがあるという点を考えると、今、国会内でも、私も議連に入っていますが、憲法調査会を設けて根本的議論をしようということになっております。  これはぜひ議論して、憲法の中で、安全保障、防衛だけではありません、いろんな、教育、国会改革だってそれに関連すると思いますので、そういう点も含めた基本姿勢をつくるべく努力していくのがまた政治の責任ではないかと思います。この点についての総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  105. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 言うまでもありませんが、憲法の基本理念である民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、憲法が制定されてから今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものであって、将来においてもこれを堅持いたしていくべきことは当然のことと考えております。  憲法に関する問題につきましては、これまで各方面からさまざまな意見が出ておりまして、国会における議論につきましてもこれを見守ってまいりたいと考えておりますが、現在、国民の中で憲法改正の具体的内容についての合意が形成されているとは考えておりません。したがいまして、現段階におきまして内閣として憲法を改正するという考え方は持っておりませんが、昨今、国会におきまして憲法調査会等を国会に設置するやのお話も聞いております。  これは国会のことでございますから私自身が申し上げることではございませんが、それだけに、この問題の御議論について、国民を代表される国会におきましてそうした調査会の設置等が御議論になっておるという事態につきましては注目をさせていただいておるところでございます。
  106. 依田智治

    ○依田智治君 ぜひこの問題は我々としても真剣に取り組んでいく必要があるんじゃないか、こう考えております。  そこで、ガイドラインの関連法案に移りますけれども外務大臣、二つに分けて質問しようとしましたが、時間が過ぎていますので二つを一つにします。  いかなる国際情勢認識のもとで新たなガイドラインというものをつくり、旧ガイドラインでほとんど眠っていた周辺事態に対する法案というようなものが今回できたわけですが、どういう国際情勢認識、どういう国際情勢の推移を踏まえながらどういう特徴的な面でのガイドラインをつくられたのか、その点についてわかりやすく説明していただきたい。
  107. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 旧ガイドラインというのは昭和五十三年にできたものでありますが、二十年近くたっている中で冷戦構造が崩壊いたしました。一方で、依然として不安定、不確定な要因が存在をしているわけであります。こういった情勢の中で、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態に対する対応を中心として、より効果的な日米防衛協力関係を構築することが一層重要になってきた、こういうふうに考えているわけであります。  旧指針では主に我が国に対する武力攻撃に際しての日米の対処行動に関する事項等に関する記述が中心でありました。  もちろん、我が国以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合に、我が国が米軍に対して行う便宜供与のあり方については日米両政府があらかじめ相互に研究を行うということも記されてはいましたが、先ほど申し上げたように、我が国に対する武力攻撃に際しての日米の対処行動ということが中心であったわけであります。  これに対して新指針においては、我が国に対する武力攻撃の際の日米の対処行動に加えて、新たに我が国の平和と安全に特に着目して、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態に際しての日米協力に関する事項等が盛り込まれているわけであります。
  108. 依田智治

    ○依田智治君 このほかに私がぜひ指摘していただきたかったのは、前ガイドラインは言うなれば研究するだけだという感じのニュアンスが非常に強かった。しかし、今回のガイドラインは、具体的に規定して、それを主体的に各政府の責任においてやろうではないかという思想が盛り込まれているところに違いがある、私はそう考えておるわけです。  そこで、ガイドライン見直しの前提となったのは、振り返って日米安保共同宣言、この基本的考え方というものがやはりもとになると思うんですが、外務大臣、これは時間も経過していますので、ちょっとポイントを説明していただくとありがたいと思います。
  109. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 日米安全保障共同宣言は、冷戦後も依然として不安定性、不確実性が存在しているという認識のもとで、それまでの安全保障分野における日米間の緊密な対話の成果を踏まえ、日米安保条約に基づく日米安保体制の重要な意義を改めて確認し、二十一世紀に向けた日米同盟関係のあり方について内外に対する意思を明らかにしたものであります。
  110. 依田智治

    ○依田智治君 そういうことで、その安保宣言の中で情勢の変化を踏まえてガイドラインも見直しましょうということで始まったのがこのガイドラインです。したがって、これは日米安保体制の今日的意義を再確認したという形でとらえておるわけです。  そういうことで、もとをただせばガイドライン関連法というのはまさに安全保障体制の実効性を確保するために、そのためにこういう周辺事態法というのをつくっておるということでございまして、衆議院の議論その他の中でも安保条約の問題をいろいろ入れることが話題になっているが、もともとそういう目的でつくられているということを認識していく必要があるんじゃないか。  そこで、この問題の最後に、総理に日米安保体制というものの信頼性なり、維持する中で、このガイドライン関連法案の重要性というものに対する御認識、この点をお伺いしたいと思います。
  111. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今般の周辺事態安全確保法案とは、申すまでもなく我が国の平和と安全の確保に資することを目的といたしておりまして、日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等をあらかじめ抑止することに資するものであります。  周辺事態安全確保法案につきましては、実は昨年の四月末に閣議決定をいたしまして、既に二国会を経過し今国会に至っておるところでございます。  政府といたしましては、これらが十分御審議をされ、早期に成立または承認されることを強く期待いたしておるところでございます。改めて、何とぞ今国会におきまして十分御審議いただき、成立をお願いいたす次第でございます。
  112. 依田智治

    ○依田智治君 そこで、このガイドラインの問題を憲法との関係でちょっと二つに分けてお伺いしたいと思います。  一つは、さっきも言いましたように、ガイドラインには平素の協力、我が国が攻撃を受けた場合の対応というのが出ているわけですが、例えば現下いろいろ問題になっていますように、我が国がミサイル攻撃を受けたというような場合に、我が国としてはどういう手段があるのか。相手の基地をたたくということは憲法上認められるのか。これは他院の審議でも出ておりますが、その点を防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  113. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 我が国に対しまして急迫不正の侵害が行われた、その手段として我が国土に対し誘導弾等により攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところではないと。そのような攻撃を防ぐために万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、例えば、誘導弾等による攻撃を防御するのに他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、委員承知のとおり、昭和三十一年の統一見解に示すように、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であると考えます。
  114. 依田智治

    ○依田智治君 これは昭和三十一年の考えと法理論的には変わらない。ただ、その後、三十四年ごろ防衛庁長官が答えているのは、このような事態は今日において現実問題としては起こり得ないのでありまして、そういう仮定の事態を想定して備えるというのはどうかというようなことを言っているんですが、今や飛んでくるということはもう現実になっているという時代です。  そこで、次の質問をさせていただきますが、我が自衛隊は相手の基地をたたくような装備を持っているのか、また憲法上持つことはできるのか、この点をちょっとお伺いしたいと思います。
  115. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) ただいま申し上げましたとおり、昭和三十一年の政府統一見解に設定したような事例を想定しますと、他に手段がない場合に敵基地を直接攻撃するための必要最小限度の能力を保持することも法理上は許されるものと考えます。  しかし、他方、我が国が現に保有する防衛力という観点からすれば、これはもう防衛問題に精通されておる先生がよく御承知のとおり、現在の自衛隊は敵基地攻撃を目的とした装備体系になっておりません。これに適した装備品を有していないことから、現時点において自衛隊が敵基地に対し軍事的に有効な攻撃を行うことは極めて難しいと考えております。
  116. 依田智治

    ○依田智治君 たたく手段がない場合に座して死を待つというわけにいかぬ、理論的には保有することは可能だが現実として持たないということで、そうすると防衛庁長官、必要最小限のものならば持てるという考えと理解してよろしいですか。
  117. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 法理的には可能だと思います。
  118. 依田智治

    ○依田智治君 この点は、本土に壊滅的に打撃を与えるようなものは持てないというのはこれまでの政府の見解ですから、そうでなくて、今やもう科学技術が発達してピンポイントで攻撃できる、そういう形のものならできるというような解釈をしています。  これはまた委員会等の議論に譲りますが、こういう問題については新ガイドラインではどのように規定されているんでしょうか。これはどちらか。
  119. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 新たな日米防衛協力のための指針におきましては、日本に対する武力攻撃に対し共同対処行動等は引き続き日米防衛協力の中核的要素であります。そういうことがこのガイドラインの2の「日本に対する武力攻撃がなされた場合」の「作戦構想」等に明記されているところであります。  さらに、弾道ミサイル攻撃への対応に関しましては、「日本に対する武力攻撃がなされた場合」の「作戦構想」において、「自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。」、こういうふうに明記されております。
  120. 依田智治

    ○依田智治君 新ガイドラインでは、弾道ミサイルには米軍の打撃力に頼る、したがってそれをやってもらって我が国はそれに対する支援を行うということになるのだと思いますが、防衛庁長官、米軍が行動する、そういう場合の法制というのは整備されているのですか。これは有事法制で、私の理解ではまだ国内の自衛隊が動くのもできていない、米軍のはましてやという認識を持っていますが、その後進んでいるというのなら御報告をお願いしたいのですが。
  121. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 指針にも明記されており、我が国に対する武力攻撃に際しての共同対処行動等は引き続き日米防衛協力の中核的な要素である、また、自衛隊及び米軍は日本に対する武力攻撃に際して整合のとれた行動を円滑かつ効果的に実施し得るよう、平素から共同作戦計画についての検討を行うこととされているところであり、早期に進捗を見ることができるよう、我々も一生懸命努めてまいりたいと思っております。  一般論として、我が国に対する武力攻撃に際して必要な法制としては、自衛隊の行動にかかわる法制、米軍の行動にかかわる法制、自衛隊及び米軍の行動に直接にはかかわらない国民の生命、財産の保護に関するための法制、三つのものが考えられますが、従来行っている有事法制の研究はこのうち自衛隊の行動にかかわる法制の研究でありまして、米軍の行動にかかわる法制は、委員が御指摘のとおりまだ対象にしておりません。  米軍の行動にかかわる法制についてはこれから研究に着手しなければいけないと思っておりますが、ぜひひとつ検討を早期に開始し、防衛庁としても外務省等関係省庁と必要な協力をとりながら対処してまいりたいと考えております。
  122. 依田智治

    ○依田智治君 我が国の安全保障という視点に立つと、国を守る、我が国が攻撃を受けた場合についても法制は全く不備であるという点を御認識いただいて、今後我々としても努力していく必要があると思います。  最後に、周辺事態法案、いろいろ詰めて、結局今日法案が出ておりますが、この周辺事態法案でやはり我々が一番注意したのは憲法に触れないということだと思うのですが、防衛庁長官、この周辺事態法案はどういう点で憲法を超えないように配慮しているのか、これを具体的にわかりやすく御説明いただくとありがたいと思います。
  123. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 御質問はこの法案の生命となるところでございますから、多少詳しく説明することをお許しいただきたいと思います。  法案では、自衛隊が行う新たな活動として、御承知のように後方地域支援、それから後方地域捜索救助活動、船舶検査活動を規定しているわけですが、まずこの後方地域支援と後方地域捜索救助活動について申し上げますと、後方地域支援というのは、御承知のとおり周辺事態に際しまして、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対する補給、輸送等の支援措置を行うものであります。また、後方地域捜索救助活動は、周辺事態に際しまして、戦闘行為によって遭難した戦闘参加者の捜索救助を行うこととしております。  これらの活動は、それ自体として武力の行使に該当せず、また後方地域において行うこととされていることから、この法案に基づいて実施することを想定しているこれらの活動が米軍の武力の行使との一体の問題を生じさせることはないと想定されております。また、本法案におきましては、事前に予定されなかった攻撃が活動実施中に発生したとしても、実施区域の指定の変更とか、あるいは活動の中断等の対応をとることによりまして、これらの活動が戦闘行為が行われている場所で実施されないことが担保されているところであります。  次に、船舶検査活動についてでありますが、船舶検査活動は、経済制裁措置の実効性を確保することを要請する国連安保理決議に基づき、船舶の航行状況の監視、呼びかけ、船籍、目的地等の照会、同意を得ての船舶検査、進路変更の要請を行い、これに応じない船舶に対しては説得を行うこととしている。この際には、説得に必要な限度において接近、追尾、伴走及び進路前方における待機といった措置をとることとしてありますが、上述のような態様で行うこの船舶検査活動は、制裁対象国との関係を含め、武力の行使または武力による威嚇に当たるものではなく、憲法上問題となることはないと確信しております。  さらに、船舶検査活動は、他国の検査活動と明確に区別された海域において、我が国自身の主体的な判断に基づき、必要な一連の検査活動を行うものでありまして、仮にいずれかの国により検査活動に伴って武力の行使が行われた場合であっても、かかる他国の武力の行使と一体化すると評価されるものではなく、憲法上問題が生ずることはないと思います。  さらに、法案の第十一条においては、後方地域捜索救助活動または船舶検査活動のうち、一定の職務を行うに際し、自己または自己とともに当該職務に従事する者の生命または身体を防護するための武器の使用を規定しているところでございますが、これはいわば自己保存のための自然的権利とも言うべきものでありますから、そのために必要な最小限度の武器の使用は憲法九条一項で禁止された武力の行使に当たるものではない。  こういうことで、この法案はあくまでも憲法の範囲を越えないという慎重な配慮をしたつもりでございます。
  124. 依田智治

    ○依田智治君 結局、憲法上、我が国は武力行使はしない、そしてまた、武力行使をしないだけでなくて、武力行使と一体化するような行動はしないといったところで線引きをしておる。しかし、これについては公海上の武器輸送は一体ではないかとか、いろんな議論があります。私は、周辺事態における多国籍軍の支援という問題も取り上げようと思ったが、時間の関係で省略します。結局、これは憲法上は同じだけれども、やるかどうかというのは政治的判断を要する、こういう感じだと思っております。  そこで、結局は集団的自衛権と武力行使の一体化という問題じゃないかと思うんですね。私は個人的には、国が存立する以上、個別的自衛権、集団的自衛権というのは当然あるし、使える、使うべきだと、しかし我が国の場合には集団的自衛権の行使については政策的に自制しておるというふうに自分では思っていますが、政府見解は違います。  そこで、外務大臣、これはよく戦争引き込まれ論というのがありますが、日米同盟関係というのはどういうものなのか、この点をちょっとお伺いしておきます。
  125. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 日米同盟関係とは、一般的には、日米安保体制を基盤として、日米両国がその基本的価値、利益をともにする同盟国として、安全保障面を初め、政治経済の各分野で緊密に協調、協力していく、そのような関係を総称するものであります。  日米安保条約はこのような同盟関係の中核であります。この条約に基づく日米安保体制のもと、我が国に対して武力攻撃が行われる場合に、米国は我が国とともに我が国を防衛する義務を負い、我が国は米国に対して我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与するために、我が国の施設・区域の使用を認めることを初め、広範かつ緊密な協力を行うという関係にあります。  日本の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態においては、米軍は事態の拡大を抑止しあるいは防止し、または事態の収拾を図るための活動を行い、もって我が国の平和と安全に寄与します。このような米軍に対して我が国がいかなる協力もしないというようなことは考えられず、我が国が後方地域支援を行うことは、我が国自身の安全のためであり、同盟国としても当然のことであります。
  126. 依田智治

    ○依田智治君 結局、同盟関係というのは本当は同じ目的のために同じ行動をとるということなんですが、日米安保体制では、自分の国は守ってもらうけれども、うちは守りませんよと。せめて我が国の安全にとって重要な事態に活動してくれているときに後方で支援しましょう、こういうことですからね、それぐらいやらなかったら同盟国としてどうなるのか、こういう認識をひとつぜひ持つ必要があるんじゃないか。  それで、最後に総理、今議論ずっとやってきましたが、周辺事態法自体にも、こんなことでいいのか、船舶検査も警告射撃もできないよということで目的が達するんだろうかという議論もあります。それから、国内のいろいろな攻撃を受けた場合の対応措置といっても、法案はほとんどできていない。これが実態ですから、政治のリーダーシップにおいて、我々としては今後憲法問題を含めて真剣に努力していく必要があるんじゃないかと思いますが、行政の最高責任者としての総理のこの点に関する御見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  127. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今般、こうして日米安保条約に基づく、これを堅持するとともに、新しいガイドラインの関連法案を提出させていただいております。この機会に、改めて日本の安全保障に対しまして、この法案の御審査等を通じまして、十分国民の御議論をお聞きしながら、政府としては、ぜひこの法律を通させていただいてその実効性あらしめる、こうありたいと願っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  128. 依田智治

    ○依田智治君 終わります。
  129. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で依田智治君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  130. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、郡司彰君の質疑を行います。郡司彰君。
  131. 郡司彰

    ○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司彰でございます。私、真の凡人でございまして、平易な質問をさせていただきますので、わかりやすくお答えいただければと思います。  まず、米の関税化につきまして総理の方にお尋ねをいたしますけれども、関税化の方針が昨年の十二月十八日、関係閣僚会議決定をしているというふうに聞いておりますが、この関係閣僚会議決定をされたこの内容は、その後、全閣僚が合意をするというふうなことに理解をしてよろしゅうございましょうか。
  132. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回の米の関税化につきましては、農業団体あるいはまた農林水産省内の議論等々を踏まえまして、与党ともよく相談をした上で決定をし、そして総理主宰のもと、全閣僚出席の関係閣僚会議決定をしたものでございます。
  133. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) お尋ねの点は、何か関係閣僚会議決定したので政府全体の考え方かというふうにちょっとお聞きしたのですが、今、中川農水大臣がお答えいたしましたように、関係閣僚会議に全閣僚も参加いたしておりますが、それは形式でございまして、結論的に言えば、政府としての決定を行って、その方針を決めて実行いたしてまいる、こういうことでございます。
  134. 郡司彰

    ○郡司彰君 農林水産大臣にお尋ねをいたしますけれども、その決定内容を概略の御説明を願えますでしょうか。
  135. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回の決定内容のポイントを申し上げます。  現行ミニマムアクセス米の輸入につきましては、従来どおり国家貿易を維持しながら、これを超えて行われる米の輸入につきましては、WTOの協定上のルールに基づきまして適切な二次税率を設定し、またミニマムアクセス数量の増加量も現在の年〇・八%ずつの増加から半分になる〇・四%になるわけであります。これも協定上の明記されたルールに従ったものであります。そしてまた、この切りかえ措置は本年四月一日から実施することとしております。  こうしたことによりまして、今申し上げましたように、毎年のミニマムアクセス数量の増加量が半分で済むこと、あるいはまた関税化への切りかえというのは農業協定上の原則に戻るわけでございますから、しかも協定に基づくきちっとした協定上のルールをそのまま適用した二次税率を設定しておることでございますから、関係国と協議を行う必要はないということ、あるいはまた現行のミニマムアクセス米を適用している国というのは日本を含めて極めて少ないということから、次期交渉に対する日本の対応も視野に入れながら決定をしたところであります。  これが我が国にとっての最善の選択であるというふうに考えております。
  136. 郡司彰

    ○郡司彰君 二次税率等についてもお話があったというふうなことでございますけれども堺屋長官にお伺いをいたしますが、新聞報道によりますと、パリの大学で講演をされてそのようなことに言及をされたというふうに聞いておりますけれども、事実でございましょうか。
  137. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) よくぞお尋ねいただきました。この件につきましていささか誤解がございますので、ぜひこういう場で釈明といいますか、説明させていただきたいと思っておりました。  私がソルボンヌ大学で講演をいたしましたのは、日本の工業品の市場がいかに開放されているかということを申し上げたくだりで、この農業の問題にも言及いたしました。これは原稿にない部分でございましたので、正確には記憶しておりません。これをある新聞が報道してくれたんですが、全体の内容としては大変好意的だったんですけれども、農業の関税化に関する部分について、いささか私の舌足らずもあり、誤解を呼ぶような記述が五行ほど載っておりました。  その中で、私がアドリブで申し上げたのは、一時新聞報道に米の関税が一〇〇〇%ぐらいになるというような報道があって、これは日本の工業品等に比べて非常に高い関税であるということを申し上げました。そのときに、ちょっと勢いがあったものですから、舌足らずもございまして、現在も日本が一〇〇〇%の関税を取って、方針をとっておるような誤解を招くような言い方をいたしまして、新聞の方もそのように伝えました。一〇〇〇%の関税はやはり一般論として高いと思っております。  ところが、現在日本は、先ほど中川農林水産大臣説明なさいましたように、一キロ当たり三百五十一円という従量税になっておりまして、これは、日本に輸入可能な今のカリフォルニア米などを参照した価格からいいますと、一〇〇〇%の半分よりも低い水準になります。決して一〇〇〇%ではございません。したがいまして、私のこの一〇〇〇%というのは、現在の日本の政策を指しているわけではございません。WTOの農業協定の規定に従って計算されたものと、この三百五十一円というのはそういう水準と農林水産省の方から伺っております。
  138. 郡司彰

    ○郡司彰君 今回の関税化というのは大変なルールの変更になるということで、農家の方々も非常に不安といいますか、心配をしているわけであります。  今、長官の方からもありましたように、関税化というのはWTOの農業協定に基づいて行われるわけでありまして、何%が高いか低いかというふうな議論もありますけれども、各国でも自由貿易というものは手工業的な農民的農業に対しては非常に速やかな破壊につながるというふうな考え方がございますし、持続可能な農業生産を維持するためには、それらの経営に対して一定の保護システムというのは各国がとるべきだ、国境措置というふうなこともそこの中には入ってくると思いますけれども、そのようになっているわけであります。  そこで、改めて長官の方にお聞きをいたしますが、日本の主食であります稲作あるいは農業に対してどのようなお考えをお持ちか、お聞かせいただければと思います。
  139. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 日本の伝統的な最大の産業である農業は、今大変な危機の状況にあると思います。この農業をどのようにしていくか、また農業を主として生きてきた農村をどういうぐあいにしていくか、これは大変重要な問題で、日本のお米を高級化していく、日本人の嗜好に合ったものにして高級化していくということも必要でございましょうし、また多様な農村生活というものを維持する方法、特に中山間地などについてはこれも必要だろうと思います。  規模の拡大だけでいけるかどうか、これは十分検討する必要がございます。私ども経済審議会でも、地域問題といたしましてこれは専門の方々あるいは消費者の方々の意見も聞きながら方向を出していきたいと考えている次第でございます。
  140. 郡司彰

    ○郡司彰君 農業の生産については工業と同一には論じられない、そういうふうな考え方をきちんと持った上で全体が当たっていただければと思っております。  先ほど農林水産大臣の方から、切りかえに当たりまして三者合意というふうな話がございましたけれども、三者というのは何と何と何でございましょうか。
  141. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 三者とは、全国の農業者を代表する農業団体、そしてまた与党、議院内閣制における与党、そしてこれは関税化措置並びにWTO協定への通知が必要でございますので、それについては政府ということで、今回の関税化に当たっては政府の中に、具体的に申し上げますならば農林水産省でございます。
  142. 郡司彰

    ○郡司彰君 日本農業新聞というのがありますけれども、二月十日付の論説に、政府や与党、農林水産団体でWTO三者会議をつくり、六月ごろまでに交渉方針を確定する方向だというふうな記事がありましたけれども、設置をされるおつもりでしょうか。  農業新聞によりますと、この三者会議というのをつくって六月ごろまでにWTOの方向を決めるんだという論説が出ておりましたけれども、これは本当に設置をされるというふうなことに考えてよろしいですか。
  143. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 三者会談とか三者合意と申し上げますのは、政府、与党、そしてまたそれに関連する全国の農業者を代表する生産者団体と日ごろから政策を遂行する上でよく連絡をとり合っておるところであります。  また一方では、国会の御審議、あるいはまた国会の先生方とも政府としてはいろいろな御指導をいただいておるところでございまして、何もこの件に関して新しく三者の会議を正式につくったとか、またそれが公に正式のものであるということではなくて、農政を遂行する上で常日ごろから与党あるいは団体と連絡をとっておるところであり、今回、より大事な決定に至ったわけでございますので、連絡をよくとりながらこの三者間で相談をし決定したところでございます。
  144. 郡司彰

    ○郡司彰君 そうしますと、この農業新聞に書いてあります三者会議を設置するということは誤報だということで認識をしてよろしゅうございますね。
  145. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今後も農政の重要な決定に当たっては三者間でよく連絡をしながら進めさせていただきたいと考えております。
  146. 郡司彰

    ○郡司彰君 私は、農業の問題、特に国内にもいろんな意見があるわけであります。国の政策を決めてほかの国と交渉をする、その前に国内の合意というものはこれは大変重要なことでありまして、何かあたかもその三者が合意をしたことが国民的な合意だととられかねないような手法というのは非常によろしくない。しかも、前回の十二月十八日の農水委員会の方にも三者合意というものが出されましたけれども、この形そのものが国会を軽視しているというふうな感じで私は受けとめざるを得ないんです。  もう一度お聞きいたしますが、設置をしないということでよろしいですか。
  147. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 三者会議というものが今までも常設の機関としてあったわけではございませんし、与党そして全国の生産者を代表する団体との間で連絡をよくとり合いながら、相談をしながら政策決定をしてきたところであります。今後もそういうことは必要だろうと思います。  一方、国会におきましても、また個々の参議院衆議院の先生方あるいはいろんなグループと申しましょうか、そういう立場の考えも我々としては議院内閣制において十分拝聴し、そして参考にしながら政策決定をするということでございまして、正式に設置をしたとかしないとかいうことではなくて、従来と同じように今後も両院議員あるいはまた国会の場、そして政府、与党、団体の御意見をよく拝聴しながら政策を決定していきたいと考えております。
  148. 郡司彰

    ○郡司彰君 与党でも野党でも、関係する業界団体と話をするのは結構なんですよ。そこに政府が入って、合意ができて、再び国会の方に審議をという形は私は好ましくないだろうと思っています。  次に移ります。  MA米を継続した場合のデメリットを考えますと、私自身は、消去法でもって関税化というふうな形をとらざるを得ないのだろう、その場合には早く踏み切るということになるのだろうというふうに思いますけれども、幾つかの点をクリアしていただかなければ困る。  一つは関税率でありますけれども、内外価格差をベースにして国境機能が果たせるようなものであること、二つ目として関税率引き下げのペースに関しては、経営安定対策などの国内措置、このペースを上回らないということ、こういうふうなことをきちんとやっていただきたい。これまで林材を初め関税化に伴って現状どのようになっているかというのは皆さん方が十分承知のはずでありますので、その辺の決意についてお伺いをしたいと思います。
  149. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、今回の二次税率というのは、先生も御承知かと思いますが、一九八六年から八八年までの日本に入ってくる米の輸入価格の全トータルであります。アメリカ米であろうがタイ米であろうが、全トータルのCIF価格を数量で割った値段をベースにいたしまして、当時の日本の主流をなしていたお米の値段の三年間の平均をそれぞれ比較した数字、これを計算いたしますと三百五十一円十七銭。これはことし四月一日からでございまして、来年からは三百四十一円になるわけでございますが、これは農業協定附属書五並びにその付録にきちっと明記されておるところでございます。  しかし、その結果として関税相当量三百五十一円というものを外国から入ってくるであろう現時点でのお米に仮に乗っけた場合には、日本の流通している米と比較して日本の生産に影響を与えることはないという判断を我々はしたところでございます。したがいまして、今回は協定上の本来の関税措置に戻ったというか選択をしたわけでございますが、その計算方法が結果として国内生産に影響を与えることがないという強い見通しを私自身は持って決定をしたところであります。  したがいまして、先生御心配のように、また我々もそうなったときには大変心配するわけでございますけれども、あえて今回の関税化によって国内生産、特に生産者の方々に対しての影響はないと判断をしておりますので、関税化に当たって特別の措置を現時点において考えておるわけではございません。  なお、先ほどの質問に関連して補足させていただきますが、あたかも当事者だけで関税化を決定したような印象をというお話がございましたが、もちろん国会での御議論を初めといたしまして、消費者団体あるいは経済界あるいはNGOを初めとして全国民的な御理解をいただくべく最大限の努力をし、現在もそれに努めておるところでございます。
  150. 郡司彰

    ○郡司彰君 この関係につきまして総理の方にお伺いをしたいと思いますけれども、中長期的には、やはりWTOの協議の場で新しい貿易ルールというものを国民的な合意の上につくっていくというふうな姿勢が大事だろうと思います。  つきましては、国内生産を基盤とする、そのような食糧自給権というふうな考え方というものも日本の中においては持ってしかるべきだ、そういうふうな考え方の上に新しいWTOの協議を行うべきだと思いますが、総理のお考えをお聞かせいただきたい。
  151. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 二〇〇〇年から交渉が始まります次期WTOの協定内容につきまして、国内において今からいろいろと御議論をいただき、交渉方針を決めていくわけでありますが、今、先生御指摘のように、世界でも本当に低い自給率、しかもそれがさらに下がっているという状況は、国民生活の面からいっても非常に問題としなければいけない。  したがって、自給率の向上、また農業農村の果たす多面的役割、あるいは国際的な食糧と人口とのアンバランスに日本がどういう貢献ができるのか等々、あるいは農村の持続的な機能の維持発展、さらには国民、特に小さな子供たちに対する教育的、文化的な側面等々、多面的ないろいろな立場、日本が主張すべき立場があろうかと思いますが、そういう面から次期交渉に臨んでいきたい。  そのためには、まず国民的なコンセンサス、先ほども申し上げましたように、関係者だけではなくて消費者の皆さん方、経済界の皆さん方、またNGO関係皆さん方、国内の共通認識をまずきちっと確固たるものにいたしまして、その上で日本と同じ立場、あるいは日本の主張を理解してくれるような各国の理解というものを得ながら、全国内的そして世界の交渉の場での共通認識を持てる国々との協力関係のもとで、次期交渉に日本の立場を強く主張してまいりたいと考えております。
  152. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、中川農水大臣が述べましたような基本的な姿勢を持ちまして、政府としては対応いたしてまいりたいと思っております。  なお、政府といいますか総理に対しまして、木村尚三郎先生より、食料・農業・農村等についての前内閣総理大臣からの諮問に対してのお答えもいただいております。日本として基本的に日本農業をいかになすべきかという基本的な体制を考え、そして新しい基本法をいかに考えていくかということの中で、国際的な関係も十分考慮しながら、今、農水大臣が申し上げたような方針で政府としては進んでまいりたいと思っております。
  153. 郡司彰

    ○郡司彰君 次に、雇用の問題につきまして幾つかの観点から質問させていただきます。  雇用活性化総合プランというものが出ておりますけれども、全体一兆円規模というふうなことで、さきの臨時国会のときに三千億、平成十一年度にかかわるものが七千億というふうになっておるわけであります。たびたび話が出ておりますけれども、この深刻な不況の状況の中、雇用情勢の中で十分と言えますでしょうか。総理、お願いします。
  154. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 春に対策を講じたものと比較をいたしますと、予算規模でいいますと二十倍になっております。  それから、新規性を有する政策がたくさん盛り込まれておりますし、今までは雇用を守るという発想に立っておりますけれども、雇用をつくるというふうに踏み込んでおります。さらに、この活性化プランの百万人雇用創出・安定の外枠といいますか、産業再生計画等でいろいろな対策を講じていただいておりますし、それらの施策の中に雇用の創出という観点を盛り込んで具体的な予算づけをしていただくということも努力をしていただいておりますので、かなりの数字は期待できるというふうに思っております。
  155. 郡司彰

    ○郡司彰君 この雇用の問題につきましては、いろいろな数字も出ておりましたりしておりますけれども、現実的にはなかなか新しい雇用につながっていない。施策と結果については時間的なずれが当然出てくることもあるわけでありますけれども、何か思い切ったことをやってくれているというふうな感じ皆さんが抱いていないというふうな感じがするわけです。  例えば、緊急雇用創出特別基金というふうな創出がございますけれども、これは報道によりますと、自民党の労働部会の方でもかなり大きな規模で基金をつくるべきだという話があったというふうに聞いていますが、結果としては六百億ですか、一人当たりの額も三十万円というふうなことに限られてくるわけでありまして、かつてない失業率のこの事態に対して認識がちょっと甘いんではないかというふうな感じがいたします。こうした分野への思い切った予算の計上というものが必要だと思いますけれども、どうでしょうか。
  156. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) ただいま御指摘の雇用創出基金は、セーフティーネットの言ってみれば上塗り機能を持っておりまして、もう先生御承知だと思いますが、中高年齢者の雇用開発助成金というのがはるかに大規模にございまして、そのうちの非自発的失業者に関してさらに上塗りをかけていくということでありますから、相乗効果が期待されると思います。  金額について言いますと、それは多ければ多いほどいいにこしたことはありませんけれども、限られた予算の中で従来のスケールをはるかに上回る規模の策定ができたというふうに考えております。
  157. 郡司彰

    ○郡司彰君 この多くのプランが従来の延長線上にあるというふうなとらえ方をしている方が多いわけでありまして、一つ一つの積み重ね、もちろん大事なんでありますけれども、先ほど申し上げましたように、やはり新しい感覚、違ったものが出てきているぞというふうな感じをなかなか受けないわけであります。  連合が、日経連とともに百万人雇用創出というふうなものを打ち出しておりますけれども、こちらの方が現実的ではないか、このような報道も多々見られるわけでありますけれども、これまでいろんな意味でニーズがありながら雇用の創出というものに結びつかなかったような教育の分野でありますとか、あるいは介護や福祉、医療の分野、これらの雇用創出というのをもっと具体的に提起といいますか、検討すべきではないでしょうか。
  158. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 百万人の雇用創出・安定の計画をつくりましたときに、その時点で具体的な数式のもとにはじける数字をそう設定させていただきました。  それ以外にも、政労使雇用対策会議の席上で、労使双方から、こういう分野でもこのぐらいはじけるんではないですか、こういう分野でもこうではないですかという御提言をいただきました。それにつきましては、政労使雇用対策会議の事務局会議の席上で、その数字関係省庁からヒアリングをしまして精査しているところであります。  数字に少し違いはありますけれども、それぞれ御提言をいただいている、例えば住宅分野であるとか、介護福祉分野であるとか、あるいは教育分野であるとか、それぞれ今具体的な数字が上がりつつあるというところでございまして、これがさきの百万人の計画に、もちろん重複は一部しますけれども、オンをしてくるというふうに思っております。
  159. 郡司彰

    ○郡司彰君 新規雇用創出対策に向けられた予算、さきの補正で六百億円、今回の予算では四百五十六億円になっているわけであります。他方、雇用調整金の関係でありますけれども、一千八百億円近くに上っております。これは新しい雇用、その維持安定ということももちろん大事でありますから、この一千八百億円が多いということではなくて、余りにも雇用創出対策に向けられた四百五十六億円というのが少な過ぎるんじゃないか、そのように考えますが、いかがでしょうか。
  160. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 雇調金その他で雇用を維持して支えていく、これは労働省の言ってみれば本来業務であります。そして今回は、従来の本来業務からするとちょっとはみ出るかもしれませんが、新しく雇用の場をつくるというところまで踏み出しました。ここの本来業務は産業政策の分野でありまして、産業政策では別個に予算をとりましてベンチャーの育成等、先ほど来質問も出ておりますけれども、雇用の場をつくっていくということで積極的に取り組んでいただいておりますから、我が方の分野としてかなり精いっぱいやったつもりでございます。
  161. 郡司彰

    ○郡司彰君 維持安定というところに力点を置くということは、これは先ほどからもわかるわけであります。しかしながら、これまでの失業率と違うんだよと。これだけ高い失業率のときに、通産省の方でやっているプランももちろんあるわけでありますし、労働省の方でもやっている。しかしながら、本当にどういう分野でどういうふうな形でということが何ともやっぱり皆さんの間に見えてこない。  それに対する思いというものを、例えば数字の問題で申し上げましたけれども、そこのところを、通産省あるいは労働省というふうなことでなくて、もっと全体的に一つ政府としての大きな取り組みということにする必要があるんじゃないかと思いますけれども総理大臣、いかがでしょうか。
  162. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ひとり労働大臣、労働省だけの問題でなくして、これは政府全体、特に現下の厳しい経済状況の中で、雇用の問題につきましてはこれまた最大の関心事であるということで、政府全体で各省庁を挙げて横の連携をとりつつ対応しておりますので、御理解いただきたいと思います。
  163. 郡司彰

    ○郡司彰君 それでは、先ほどベンチャー支援ということも同僚の議員からもありましたけれども、関連して話をさせていただきます。  まず、NPOの関係でありますけれども、NPOを雇用という側面からだけとらえるというのは非常に異論があるというふうに思いますけれども、本日は雇用というふうな問題からNPOの関係についても言及をさせていただきたいと思います。  レスター・サラモンという方の書いた「台頭する非営利セクター」、そういうふうな本の中にいろんな資料がございます。日本の中でNPOが雇用に占める割合、この辺のところについてはどのような数字になっておりますでしょうか。これは経企庁。
  164. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) このNPO、非営利団体というものの定義がいろいろございまして、日本の場合は市民団体、市民活動団体等の狭い意味でのNPOが約八万六千団体ございます。このほかに民法の公益法人、社会福祉法人、医療法人、宗教法人、学校法人を加えた広い意味でのNPOが三十五万団体ほどございます。  アメリカの場合は、内国歳入庁に登録されております同種の団体が七十四万団体ほどございます。イギリスは、チャリティー委員会というところに登録されているのが約十六万団体ほどございます。人口の割合で見ますと、日本は特に少ないということではございません。  いろいろと法整備の面で民法法人以外がおくれておりまして、やっと去年の十二月から新たに私ども企画庁の方、各都道府県で受け付けておりまして、その登録はまだわずかでございますが、かなりの広がりを持った動きになっていることは委員御指摘のとおりだと思います。  今後、法的にもさらに整備し、また税制の面でも検討をしていく必要があろうかと。二年以内に見直すことになっておりますので、積極的に生かしていきたいと考えております。
  165. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、長官の方からございましたように、まだ未整備のところがございますし、比較検討するについても基礎材料がちょっとまだそろっていないということがございます。  先ほど言いました資料によりますと、日本全体でいうと、総雇用に占める割合は二・五、百四十四万ぐらい、アメリカの場合ですと六・九、七百十三万ぐらいというふうな数字がいろいろございまして、平均すると、この本の場合には四・五というふうな世界の平均になっておりまして、四%ぐらいはあるんではないか。四%にしましても、日本の場合が二・五でございますから、一・五%の差、これは人口換算をいたしますと九十八万人というふうなことになるわけでありまして、単純にその数字が新たな雇用に結びつくということには、先ほども言いましたいろいろな整備の面もございますから、なかなかいかないわけであります。  さらに、雇用の中でどのような分野に世界のNPOの人たちの雇用というものが集まっているのかということを見ますと、例えば文化、芸術、娯楽というふうな分け方のところは、日本が一・二%、イギリスが二〇・五%、フランスが一七・八%、ハンガリーはちょっとあれですけれども五六・二%というふうな、絶対数が少ないんだと思います、このような数字になっておりまして、全体でも一六・四%のNPOにおける雇用が文化、芸術、娯楽だと。  この辺が日本と相当違いがあるわけでありますけれども、これの原因その他について、長官、どのようにお考えでしょうか。
  166. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) まさに委員御指摘になりました文化、芸術、そういった面でのNPOは日本が非常におくれております。先ほども申し上げましたように、宗教あるいは医療、教育、そういうところは非常に多いんです。  今、国がどれぐらいやるべきか、あるいはNPOにどれぐらい任すべきか、そしてその中で有料で職業としてする人がどれぐらいいるべきか、いろんな問題がございまして、制度ができまして間がございませんので、私どもの方でも鋭意これを進めていく、それとあわせてやはり税制その他財政的な面でも大変重要だと考えております。そういうこともあわせて見直しを進めて、広くこういうものが雇用にもつながり、市民活動を活発にする方向に検討したいと思っております。
  167. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、長官答弁の中で税制に関する発言もございました。私もやっぱり同様にその辺の整備というものが大事なのかなというふうな感じがしておりますし、一方におきましては、土壌、風土的にこれまで、ボランティアという言葉も含めてなかなか日本人の中に根づいてこなかったというふうなところがあります。  こういうふうな啓発も含めてでありますけれども、税制の問題に関しましては御存じのことと思いますので省きますが、各国との比較の中で今どのような優遇税制を考えていらっしゃるか、お答えいただきたい。
  168. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) NPOと申しましても、先ほども申しましたように、宗教団体、教育団体、医療団体、それから文化、芸術、さらには阪神・淡路大震災のときにわっと出てまいりましたような本当のボランティア、それぞれ態様が違いますし、人格、法人格も違いますので一概には論じられないと思いますが、一つの問題は、やはりドネーション、寄附をする人々に対してどのような扱いをするか、それから相続の場合の遺贈、これをどのように考えるかという問題がございます。それからもう一つは、収益事業と本当のNPO事業との関係をどうしていくか、そういう問題もございます。  いろいろと態様がございますので慎重な検討が必要だと思いますが、できるだけ次の時代にいろんな人々がみずからの善意で世の中に貢献することがやりやすいような方法を進めたいと思っております。
  169. 郡司彰

    ○郡司彰君 きょうのところは、よく調査研究の上、新しい税制に早く取り組んでいただきたいということを申し述べておきたいと思います。  次に、通産大臣の方にベンチャー企業の支援についてお尋ねをいたしますけれども、先ほど内藤議員からもございましたので、その部分については省かせていただきます。  大臣、御存じだと思いますけれども、ベンチャー企業、資本や担保が少ないというふうなことで銀行との取引もなかなか思うようにいかない。そこで、どうしても大企業と提携をするというふうな形が多いかと思うんですけれども、しかしながら一定の収益性が出てきた、規模が大きくなってきた、増資増資ということになりますと、結局は大きな企業に飲み込まれてしまって、そこでベンチャー企業を起こした人の利益というものが少ないというふうな事例が日本の中では多くなっていると思いますけれども、どうでしょうか。
  170. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先ほども部分的にはお答え申し上げましたが、日本の経済活力を維持し良質な雇用機会を確保するためには、先生御指摘のようにベンチャー企業の育成ということが大変重要であると私ども思っております。通産省としては、資金、人材、技術の各面からの総合的なベンチャー支援策を今までも積極的に講じてきたところでございます。  具体的には、資金面では、年金基金や個人投資家等からのベンチャー企業への資金供給の円滑化、また人材面では、企業の人材確保、社員の士気高揚に資するストックオプション制度の導入、また大企業退職者等によるベンチャー企業に対するアドバイスの強化、技術面では、大学等の研究成果の民間への移転、こういうことに努めてまいりました。また、今般できました産業再生計画におきましても、さきの臨時国会で成立した新事業創出促進法に基づく施策を初め、個人等による開業及びベンチャービジネスの振興を支援するための総合的な施策を講ずることとしております。  加えまして、今後は、多分先生はこの部分だろうと思うんですが、店頭市場等の資本市場の整備によりベンチャー企業に対するリスクマネーの供給をより円滑化すること、またこれは社会の問題でございますけれども、失敗から学び再チャレンジすることを積極的に評価するような意識の醸成を図る、また一度倒産をいたしますと二度と立ち直れないということではなくて、やはり一度失敗しても二度目、三度目は挑戦できる、そういうような倒産法制のあり方、これを私どもとしては直したいと思っております。  いずれにいたしましても、政府全体として、総合的な施策として雇用機会を確保し、二十一世紀の日本の力強い産業を育成するためにベンチャー企業の育成ということは、もう各省挙げて努力をしなければならないと思っております。
  171. 郡司彰

    ○郡司彰君 今、大臣の方からリスクマネーあるいは倒産法制につきましては話がありましたので、もっと地元といいますか、実際に起こそうとする人たちの現場に近いような目線での話をさせていただきます。  東京といいますか、中央と地方、先ほどの大学のいろんな成果とか、あるいはいろいろな条件整備も含めて、どうも地方というところにそういうものがなかなか起こりづらい。しかも、地方にいる人たちは概してやはり資本力も少ない。あるいは発想としても、それほど大がかりなものじゃないけれども、これは多分ベンチャーなんだろうというふうな意欲を持っている方が結構いらっしゃいます。そういうふうな方々が実際にベンチャー企業を育てるというふうにいいましても、安価な家賃で入れるビルでありますとか、あるいはオフィスのようなものを、充実した担保保証というものがなかなかとれないわけであります。  例えば公共的な施設、その中で今実際には利用がされていない、そのような施設があれば、そこにビルそのものをそれぞれのところのベンチャー企業の事務所としてお使いくださいというふうなことやなんかを含めて、もっときめ細かい施策というものがそれぞれの地方になければ、なかなかそういうふうな機運になってこないのかなという感じがいたしますが、そのようなきめ細かなことについてのお考えはありますでしょうか。
  172. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) どうしても、資金も技術も人材もどこに集積をしているかといえば、大きな都市の周辺に集積してしまうということは仕方のないことだろうと思います。ただ、地方にもやはりそれぞれ技術をやっております大学あるいは大変な基礎研究をやっている大学、研究所等もございますので、そういうところとの連携の中で地方にもベンチャーが生まれるたくさんの機会は私はあると思います。  そういうものを成功させるために、先生は今建物のお話をされましたが、やはりスタートのときに力をどこかがかすということが大事でございまして、そういうことを含めまして今後きめの細かい対策政府全体としてとっていくべきだと思っております。今までやってまいりましたことのほかにさらにやらなければならないことは多分多くあるのだろうと私は思っております。
  173. 郡司彰

    ○郡司彰君 地方におりますと、どうしてやっていくものかというふうな思いの方が本当に多いわけでございまして、今、大臣の方からありましたような、現在の施設等の有効活用も含めて十分な配慮をお願いしたいというふうに思います。  次に、福祉の経済効果ということでお尋ねをしたいと思います。  茨城県がまとめました高齢者福祉の充実がもたらす経済的効果に関する調査研究というのが平成九年三月に出されておりまして、この中で、これまで一般的に言われたけれども、建設土木の公共事業よりも福祉に投資をした方が波及効果がいっぱいあるんですよと、このような研究結果が出ているわけでありますけれども、このような調査研究が国の方としてはなされているんでしょうか。
  174. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 福祉と一概に言われましても、経済分析の方ではどの部分なのか非常にわかりにくいわけでございます。公共事業のそれぞれの誘発効果、公共事業の種類によりまして分けた誘発効果などを出しておりますが、それによりますと、治水、下水道、道路あるいは環境衛生、公園、災害復旧、農林関係等々に分けて出したのもございます。  これで見ますと、誘発効果だけからいいますと、港湾、漁港とか災害復旧というのは比較的高いというような数値も出ておりますし、それもまた場所によっても区々でございまして、必ずしも明確な分析は出ておりません。やっておりません。
  175. 郡司彰

    ○郡司彰君 いずれにしても、そういう目的を持った調査研究というのは行われていないというふうなことだそうでありますけれども、これから介護保険の問題も出てくるわけでありまして、それぞれの自治体は自分のところにどのような効果を及ぼすものか、今真剣に考えている最中であります。そのときに、行おうとする国の方でこのような調査研究そのものがなされていない、これは非常に怠慢だと思いますが、どうでしょうか。
  176. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 従来の経済モデルがそういうような統計をとるようにできていないんです。だから、これは怠慢といいますか、経済学が考え及ばなかったところになっていると思います。  福祉というものを所得移転というような観点でとったものはわかります。福祉施設、それから道路施設、公園、通信施設、こういうふうに分けてどうかということになりますと、これは建設工事の分類に入ってまいりまして、建物というものが一緒になってくるわけです。もしそれをとろうといたしますと、福祉施設かどうかという認定が非常にまた難しい問題を呼んでくると思いまして、何かの方法があるかどうか検討してみますけれども、今の統計のやり方では非常に難しいお話だと思います。
  177. 郡司彰

    ○郡司彰君 これまでこのような統計のとり方がなかった、非常に難しい、だからこそ国でそのような調査研究をしていただいて、各自治体がそのような計算方式に基づけばこのぐらい福祉というものが波及効果があるんだと。よく言われておりますけれども、福祉というものに要する経費というのは何物をも生産しないというふうな今まで考え方といいますか、言い伝えがあったわけであります。  それに対して各自治体が、今、長官がおっしゃったように確たるものはない、しかしながら、これからそういう社会に向かうためには何とかそういう指標を出して、あるいはそれぞれの議会の方々にも理解をしてもらおう、県民にもこういう予算を使ったらこういうことになるんだということをよく理解してもらった上でやっていこう、そのためにやっているわけであります。  そういう意味では、国としてはやはり怠慢だと言わざるを得ません。もう一度早急にこのような調査研究を行うようにお願いしたいと思いますが、どうでしょうか。
  178. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) そういう趣旨でございますと、介護福祉というものがいろんな面で雇用を生み出す。それからまた、福祉と言えるかどうかわかりませんけれども、高齢者が住みやすいような町づくり、あるいは高齢者の方々が暮らしやすいような家事のアウトソーシング、自分の家で料理をしなくても買えるとか、そういうような仕掛け、こういったものは非常に効果がある。これは昨年の国民生活白書で初めて分析をいたしまして、定量的にきちんとは出ませんでしたけれども、私どもの方でも大変注目をしている段階でございます。  さらにこういう研究を深めていって、委員おっしゃるような、何らかの指針になるようなものが、数字として出るかどうかはちょっと自信ありませんけれども、鋭意努力したいと思います。
  179. 郡司彰

    ○郡司彰君 参考までに茨城県の老人保健福祉計画、十一年までの必要な投資額が一千二百二十八億円というふうなことで試算をされておりますけれども、この老人保健福祉計画に基づく投資でいいますと、生産誘発額が一千八百六十二億円、雇用の誘発数が一万二千二百七十人、福祉部門へ全額投資をしますと一千九百二億円の一万六千七百五十人の雇用がふえる。これを建設部門への全額投資ということで考えてみますと、その波及効果は、誘発額でもって一千八百二十七億円、雇用者総数で八千二百八十人ということです。  総論としまして、公共事業関連部門、建設土木分野との投資効果比率においては福祉部門への効果が非常に大きい、福祉部門への投資は特に雇用を大きく誘発する、逆に建設部門への投資は福祉部門への投資に比べて部門内に効果がとどまる傾向にあるというふうな結論を出しているわけであります。  これは、私どもも常々言ってきましたこれまでの公共事業の質を変えるべきだ、この福祉というものが非常に波及効果が大きいんだという話をしてきましたけれども、重ねて申し上げますが、ぜひとも国としてもこのような数値、きちんとしたものを出して各自治体のモデルになるようにお願いしたいと思います。  次に、産業構造を転換しなければならない。労働の移動というものもこれは当然起こるというふうなことになるわけでありまして、その際に、それぞれ生起してまいります一つ一つ課題について迅速に確実にこたえていくということがなければ、その渦中にある人たちにとっては政治に対する不信や不満というものが多くなってくるわけでありまして、この高い失業率の時代ですから、その問題はやはり切れ目なくきちんと行っていかなければならないだろうと思っております。  幾つかの質問をさせていただきますけれども、まず労働大臣、通産大臣、文部大臣にお聞きをいたしますが、新規学卒者、高卒者あるいは大卒者がまた四月には新しく誕生するわけでありますけれども、内定状況、どのような形につかんでいらっしゃいますでしょうか。
  180. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 現時点での大卒、高卒の内定状況でありますが、七十数%から八〇%ちょっと、これは例年に比べて四・五から六・九ポイント低い数字でございます。
  181. 郡司彰

    ○郡司彰君 秋口から見ると相当善処といいますか、よくなってきているというふうな数字なんだろうと思います。  文部大臣にお伺いいたしますけれども、無業者というふうな言葉がこのごろ使われるようになりました。大学を卒業して就職をしない、専門学校に行ったり大学院に行ったりというふうな方がいるわけでありますけれども、大卒の就職内定率というのはその方々を除いた数字だと思います。その方々を入れますと実は四分の一近くが職につかないというふうな数字にもなってくるわけでありますけれども、学校にいる間に勤労観といいますか、そういったものをちゃんと身につけさせる、そのようなことが大事になってくるだろうと思うんです。そのような観点からいいますと、文部大臣、今の現状と対策についてお聞かせをいただきたい。
  182. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 勤労観の問題あるいは職業意識の問題というのは、やはり教育の上で重要なことだと思います。したがいまして、初中教育においてもこの職業観を早く植えつけるという努力を我々はしているところでございます。したがいまして、高等学校関係でありますとインターンシップという、学校にいながら産業界あるいは地域の社会に行って勉強する、こういうのを今進めているところでありまして、高等学校でも随分こういうものが取り入れられるようになりました。  特に、大学においてもこのことが大変重要でございまして、今御指摘のように大学を卒業してもすぐに就職しないという人々もふえておりますし、さらに職業をかえてしまう、せっかく就職しても三年ぐらいでやめてしまう、こういう人が非常にふえてまいりました。そこで、大学教育において、社会が高度化し複雑化しているという中で、主体的に変化に対応し、みずから将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力、課題探求能力というものの育成が極めて重要でございます。そういう意味で、学生の勤労観や職業観を涵養していくということを重大な大学の使命と考えております。  そこで、具体的には、かなり大学で今進んでまいりましたけれども、インターンシップ制度というものを積極的に単位に取り入れる、こういうふうなことを使いまして、大学の改革の一環として教育内容、方法の改善をしているところでございます。また、具体的には、今回御審議いただいております平成十一年度予算案におきまして、このインターンシップを実施する大学等に対する財政的な支援やガイドブックの配付などの情報提供を積極的に行っているところでございます。またさらに、文部省といたしましては、各大学等に対して学生の勤労観をはぐくむ就職指導や就職指導体制の充実を求めているところでございます。  今後とも、学生が自分の能力、適性に応じて適切に職業を選択できるよう大学等に対して指導及び支援を行ってまいりたいと思っております。
  183. 郡司彰

    ○郡司彰君 今インターンシップというふうな話が出されました。考えやよしなのでありますけれども、これは通産省の事業として行っているわけですが、実際にどのぐらいの件数でどのぐらいの方がこの制度を使われていますか。
  184. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) インターンシップというのは、学生生徒が在学中にみずからの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うということになっておりますが、このインターンシップについては、新規産業の担い手となる人材の育成等の観点から、「経済構造の変革と創造のための行動計画」等に基づき、文部省、労働省と連携しながら総合的に推進しております。  文部省の調査によれば、平成九年度に授業科目としてインターンシップを実施した大学は全国の大学の約一八%に当たります百七校でございまして、さらに今後実施を予定している大学は百五十九校に上る等、実績も着実に拡大しております。  通産省としては、インターンシップに参加する企業及び大学向けのハンドブックの作成、頒布、またシンポジウムの開催などによりましてこの周知に努めております。また、昨年、中部地域において参加学生延べ五百人以上の大規模なモデルプロジェクトを実施したのを初め、全国各地域において産学連携によるインターンシップの普及に向けて取り組みを展開しております。  これらに加えまして、平成十一年度からはモデルとなる受け入れ事業者への支援措置を講ずること等により、より一層のインターンシップの普及促進に努めてまいります。
  185. 郡司彰

    ○郡司彰君 大臣、これ大事な事業だと思いますけれども、PRも含めてちょっと弱いんじゃないでしょうか。関東の中では、実際には千葉県が初めてだというふうなことでございますし、百七校というふうな数字を出されましたけれども、全体この事業にかかわる学生の数は非常に少ないですね、一つごとの取り組みについて。これはもっとPRをしながら、例えば関東地区というのは大学が相当な数集まっているところで、千葉がようやく初めて行う、このような心もとない中で、一方で無業者が相当ふえてきている、早期退職といいますか、相当ふえてきている。この辺についてはしっかりと取り組んでいただきたいなというふうに思っております。  次に、中高年の労働移動についても聞きたかったわけでありますが、ちょっと時間が参りまして難しくなっております。  労働大臣にお聞きをいたしますが、十八日の早朝ですか、ホームレスの視察を行ったというふうに報道がされておりますけれども、このホームレス、国としてはホームレスという定義はございますでしょうか。
  186. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 人数の把握は自治体でやっていただいておりまして、自治体がホームレスと認定をしておりまして、国としては特段、認定する定義というのはないと承知しております。
  187. 郡司彰

    ○郡司彰君 定義がないということは、大体役所の方の流れからいくと施策もないということに結びついてしまうわけであります。それぞれの自治体が、大変財政事情が悪化をしている中で、全国に一万五千から二万人ぐらいと言われているこの人たちのところについて財政の面倒も見ているわけであります。  このホームレスと呼ばれる人たちは、ただ単に仕事がないというふうに見るわけにはいかない人も多いわけでありまして、どのような視点からとらえるかということはありますけれども、ただ現実には相当程度栄養面も含めて劣悪な状況にあると。健康状態ももちろん心配をされているわけでありまして、この厳冬期にはそれぞれ全国で多くの方が毎年お亡くなりになるようなことも続いているわけであります。  このように、それぞれの自治体が取り組んでいるという話がありましたけれども、国としてきちんと行っていくということが必要なんじゃないかと思いますけれども、あわせまして自治省のこれまでの御苦労も含めてお話しいただきたい。
  188. 野田毅

    国務大臣野田毅君) いわゆるホームレス対策については、これまで福祉事務所での相談、援助や職業紹介などの取り組みがなされてきたところでありますが、福祉、就労、医療などさまざまな面から今後総合的な対応が必要との認識から、さまざまな面から関係省庁合同の会議であり方等について検討を行っております。  この会議においては、他よりぬきんでた施策を行うと呼び寄せ効果があることや、撤去すれば他に移っていくことなどから、個別自治体での対応には限界があるため、国と地方との責任、役割分担の明確化、国としての施策の確立の必要性が地方自治体から訴えられております。  自治省といたしましては、地方自治体における実態を伺いつつ、引き続き関係省庁との十分な連携のもとで、国と地方の役割分担や経費負担のあり方をきちんと整理した上で財政措置のあり方について検討してまいりたいと存じております。  なお、地方自治体が現在やむにやまれず対応しているために生じている財政負担については、実情をよくお伺いして、財政運営に支障が生じないよう適切に対処してまいりたいと存じます。
  189. 郡司彰

    ○郡司彰君 総理も大分この問題には関心を持っておられるようなことを伺っておりますけれども総理のこれらホームレスの方々に対する考えをお聞かせいただきたいと思います。
  190. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 以前、大阪に参りましたとき、大阪市長さんから、当地においてはこの問題が大変重要で、行政サイドからも問題視されているとお伺いをいたしました。先般、労働大臣も現地を視察しながら、その問題の重要性について再確認した次第でございます。  いずれにいたしましても、固定した家を持たず、いろんな原因でそうしたことになっておるんだろうと思いますけれども、少なくとも常識的に考えて正常な生活態度でないことは事実であります。その原因をそれぞれに親切にたどりながら、行政としてはどのような対策を講じていくべきかということにつきまして、政府関係省庁あわせて検討させていただきたいと思います。
  191. 郡司彰

    ○郡司彰君 最後の質問に入らせていただきます。  人権にかかわる雇用の問題でありますけれども、統一応募書類、これが使われて久しいわけでありますが、いまだに宗教とか信仰、家族構成を聞くような企業が多い。応募用紙が新しくなった、この意味を事実として認識していない、意味を理解していない企業があるんだと思いますけれども、どうでしょうか。
  192. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 労働省といたしましては、企業が人を採用、選考するに当たりましては、かねてから、その応募者の適性、能力に基づくことのみを対象として判断をしてもらいたい、予断と偏見の入らない公正な採用、選考システムを確立するように啓発、指導に取り組んできたところでございます。  差別行為に関しまして、法的規制を加えよというようなこととか、いろいろな御指摘はいただくのでありますけれども、単純に法的規制を行うだけだとしますと、逆に差別意識を潜在、固定化させるおそれもあるというふうな心配もございまして、慎重な対応を要するものと考えております。時間はかかるけれども、差別意識に焦点を当てた啓発を政府挙げて取り組んでいくということが大切ではないかというふうに思っております。  昭和六十一年の地域改善対策協議会の意見具申におきましても、このような差別を解消するためには、人権尊重の立場で粘り強く啓発活動を展開していくべきだという御提言もいただいているところでございます。
  193. 郡司彰

    ○郡司彰君 だんだん悪質化しているというか、潜行しているような感じがありまして、記入ということにはならないけれども、面接のときに聞くとか、そのようなところというのが一五・五%。東京都の調査でもかなりのところで出ているというふうなことでありますから、今、大臣が言われましたように違う方向に行くということも非常に危惧をするわけでありますけれども、しかしながらこういうものをきちんとつくっているという、この事実と意味だけは啓発をお願いしたいと思います。  次に、職安法の改正というものがこれもまた報道されておりますけれども、採用基準、選考にかかわるプライバシー保護の法的な基準というものが今現在ないわけでありますね。これの法制化についてはどのように考えていらっしゃいますか。
  194. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 結論から申し上げますと、それも含めて検討しているところでございます。
  195. 郡司彰

    ○郡司彰君 昨年の十一月五日、国際人権規約委員会によりまして最終見解が出されております、日本に対して。その九では、日本では人権侵害を調査し、申立人のための是正措置をとることに役立つような制度的機能が存在しないことに関して懸念を表明すると書いてあります。これは五年前の九三年にも勧告をされた内容でありまして、だからこそこの最終見解というふうになっているわけであります。つまり、日本という国は改善をしないというふうに判断をされたというふうに思えるわけでありまして、もちろん人権擁護委員制度の形骸化というものもこれは覆うべくもないわけであります。  グローバルという話がされますけれども、働く条件とか、人権でありますとか、あるいは環境も含めて、そういう問題こそ本当にグローバル的にならなければ日本の国というものは大変な誤解を招く、そういうふうに考えるわけであります。ここのところについても、きちんと法務局も含めて、関連をする総務庁それから自治省も、あるいは文部省も含めて真剣に取り組んでいただきたいと思っております。  法務大臣、最後にお考えを今の関係についてもお聞きをしたいと思いますが、一昨日の我が党の幹事長が申しておりました決意のほどはおつきになりましたでしょうか。
  196. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 決意のほどというのは何でございましょうか。──私は、この間の質問に対する答弁をさせていただきまして、それで御理解を賜りたいと思っております。
  197. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で郡司彰君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  198. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、岩井國臣君の質疑を行います。岩井國臣君。
  199. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 目下、日銀の国債引き受けなどの問題がいろいろ取りざたされておりますけれども、本日はそういった核心部分の話ではなくて、少し外れますけれども、あえて周辺部分の問題に焦点を合わせて質問させていただきたいと思っております。  我が国経済ですけれども、グローバル化の影響のみならず、フロー経済からストック経済に変わるなど大きく変わっておるわけでございますが、それに伴いまして当然経済運営、財政運営につきましても従来の考え方を変えていかないといけない、こういうことだろうと思います。  本日は、午前中からリスクマネーだとか株の話などいろいろ出ておるわけでございますが、大蔵大臣にお聞きいたします。  ストック経済とか直接金融とかいった新しい経済システムについて、基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。経済がごろっと変わってきておると思うんですね、従前と。一つはグローバル化、それから一つはやっぱりフローの経済からストック経済に変わってきておるというようなこともあって、私は経済運営だとか財政運営が従前の延長線上ではもはやいかない部分というものが出てきておるのではないかということで、新しい時代に対応する経済運営、財政運営というようなことについてどのようにお考えになっているのか、お考えがあれば冒頭にちょっとお聞かせいただければと、こう思うわけであります。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  200. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 非常にいろんな問題を含んでいるお尋ねと思いますが、我が国の戦後五十年の歩みの中で、フローが非常に大事であったときは経済成長は激しゅうございましたし、しかしそのフローがだんだんストックになって定着をしたところで、言ってみれば経済成長のレートが下がってきたということであるかと思います。それは、ある意味でインフラストラクチャーが充足をしてきたということかと思います。  そういう状況の中における経済のあり方ということであると、傾向的にはやはり限界貯蓄性向が本来なら下がってきて消費性向の方がふえていくはずでございます。今、こういう不況でありますから、ちょっと不況の時期をそういう関係でどう見るかは別でございますけれども、やはり消費自身も従来のような貯蓄がストックに行くということでなくて、消費自身の方がふえていく。したがって、GDPの中で消費のウエートが大きくなる、そういう経済になるかと思います。  そのときに国民のマネーフローがどういうふうになるかといえば、恐らく消費とそれから一人一人の貯蓄、広い意味での貯蓄ですけれども、郵便貯金というような貯蓄じゃなくてインベストメントに本来なるはずであろうと思われますが、その傾向我が国に今十分見えておりません。それが直接金融と今おっしゃる部分の、個人からいえばその同じサイドの話だと思いますが、そういう直接金融への道は十分に開けていませんし、したがって個人もインベストメントというところはどうも非常に弱くて、大抵の貯金は郵便貯金あるいは銀行預金であるというようなそういうことになっておると思いますので、そこは恐らく変わってまいるはずだと思います。  今、不況が間へ大変大きく入っておりますから、そういう本来あるべき姿というのは十分見えておりませんけれども、そういうことになるのではないかと思います。
  201. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 いろんな問題がいっときに山積している大変難しい時代になってきておるかと思うのでございますが、その一つにヘッジファンドの話があろうかと思います。  一昨日、大蔵大臣はヘッジファンドの規制についてアメリカの考えを紹介しながら法的規制の難しさのお話をなさいました。私も同感でございます。なかなか難しいと思います。ヘッジファンド以外の投機筋もございますし、市場におけるある種の暴力的な投機というのはなかなか排除できないのではないか。市場の暴力というのはやっぱりあろうかと思います。私は、そういう意味で神の見えざる手に対して悪魔の見えざる手なんて言ったりしておるのでございますけれども、そのヘッジファンドなどの投機による市場の暴力が働くときに、政府が持つ伝家の宝刀、PKOだとかPLOだとか、要するに市場介入、必要に応じてやはり断固としてそういった伝家の宝刀を抜く覚悟というものが要るのではないか。  ちょっと個人名を挙げてあれですが、小渕内閣が発足いたしましたときに、大臣就任の記者会見か何かだと思いますけれども郵政大臣は着任のときに、私の在任中はもう絶対PKOはやらないと、こうおっしゃって、それは一つの考え方かと思うのでございますけれども、そのヘッジファンドによる市場の暴力というようなものを考えたときに、やはり伝家の宝刀というものはそうむやみやたらに抜くべきものじゃございません、伝家の宝刀というものは。だけれども、抜くべきときには断固抜くというそういう覚悟というのは国として持っておく必要があるんじゃないかな、こんなふうに実は思っておるわけです。  それはいろんな異論はあろうかと思いますけれども、私はそんなふうに思っておりまして、前の金融経済特別委員会で香港政府の話もちょっとさせていただきました。その延長線上の話でございますけれども総理にお尋ねしたいと思います。  総理が鬼手仏心というようなことを言っておられるわけでございますが、市場にヘッジファンドなどの投機筋による市場の暴力、私が悪魔の見えざる手なんと言っておるんですが、それが働くときには政府として断固として市場に介入する、そういうオペをやるというふうなことも必要ではなかろうかな、それがやっぱり鬼手仏心じゃないかなと。  一昨日、鴻池先生がギャンブル市場ということをおっしゃっていました。ギャンブル市場と対決するという姿勢を国はやはり持つべきではないか、そういうことが総理の言われる富国有徳の国づくりに私はつながってくるのかな、こんなことをちょっと思ったりしておるものですから、今申し上げましたことに関連して総理の御感想というのか、御所見というのか、ちょっとお聞かせいただければありがたいのでございます。
  202. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今お話のございましたヘッジファンド等の問題につきましては私自身も大変意識を共有しているところでございまして、一月当初、実はドイツに参りまして、シュレーダー首相とお話をした折にもその点に触れまして、こうした国際的に活動する機関投資家に関する問題の取り組みにつきまして、為替相場安定のための基礎的な経済環境の達成、暫定・開発委員会の強化等を含めた諸施策によるIMFのプログラム及び手続の改善等さまざまな分野において他のG7諸国と協力しながら一致して対処していく等のステートメントを発表させていただきました。  さきのG7におきましても議論が行われておりまして、短期資金の行き過ぎた動きを予防するにはどのような国際的仕組みが考えられるのか、今後とも各国に呼びかけて検討を行ってまいりたいと思っておりますが、我が国経済にとりまして為替の安定が何よりも重要であることを考え、為替市場の動向については十分注視し、適時適切に対応していく必要があると考えております。  そこで、鬼手仏心と言われましたが、このお話はプライス・キーピング・オペレーションのことをお話しされているんだろうと思います。この点は為替の動向に非常に重要な点でございますので、私自身がこの点に触れて申し上げるということはちょっと影響も及ぼすことでございますので、委員が御指摘された趣旨は了といたしまして、そして現実にどう取り組んでいくかということにつきましては、先般のG7の大蔵大臣、日銀総裁が出席した会等につきましても先刻来御報告をされておりますが、日本政府対応あるいは諸外国の日本の対応に対する考え方というものにつきましてはいろいろと検討されておることでございます。  いずれにいたしましても、為替が安定していくということは、これは経済発展の根本であろうかという認識は十分いたしておるということを申し上げて、答弁にかえさせていただきたいと思います。
  203. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 為替にしても株式相場にしても、市場介入というのはいつやるのかやらないのか、どういう形でやるのかやらないのか、それは非常に難しいわけですから、そういうものをやるということを言う必要はさらさらないわけでありますけれども、伝家の宝刀というのは抜かないということは言ってはいかぬと思うんです。必要なときには断固抜くんだというスタンスが私は必要ではなかろうかなというふうに思っておりまして、ちょっと申し上げたような次第でございます。  次に、専門の公共事業に話を変えさせていただきます。  公共事業につきまして、かつて公共事業悪玉論、ひどいのになりますと公共事業亡国論みたいなものまで飛び出したりいたしました。いたしましたというよりも、今もあるのかもしれません。今もあるのかもしれませんが、やはり我が国は先進欧米諸国に比べて依然として住宅にしても社会資本が遅れているんですね、圧倒的に遅れている。当然むだというものはなくさなければなりません。むだというものはなくしながら公共事業を推進していくということでありますけれども公共事業の重要性は言うまでもないことだろうと思うんです。  ところで、そういった公共事業の乗数効果、先ほどもちょっと経済効果が出ておりましたけれども、昨年井上孝先生が触れられました。沓掛先生もその問題触れられたことがあります。私も一昨年の決算委員会だったでしょうか、公共事業の乗数効果につきまして議論をさせていただきました。そして、そのときに、八〇年代、九〇年代、公共事業の乗数効果が顕著に下がったというそんな事実はないんだ、ほとんどもう八〇年代も九〇年代も変わりはないんだということを確認させていただきました。  しかし、平成八年の経済白書、これがちょっと問題だったんですね。公共事業の乗数効果というものはもうないんだというふうに書いてあるんです、経済白書に。しかし、これは間違いです、やっぱり。公共事業の波及効果、乗数効果というのはあったんだけれども、他のいろんな民間サイドの要因で、相当の公共投資をしてそれなりの効果があったんだけれども景気回復が思うようにいかなかった。ですから、バブル等の影響で要するに押し上げ効果というものが顕在しなかったんだと、こういうことだと思うんです。  以上の点につきまして、経済企画庁長官の御所見をちょっとお伺いしたいと思います。
  204. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 委員御指摘のように、公共事業経済効果というのは六〇年代に比べますと大分落ちておりますが、八〇年代と九〇年代とはそれほど差がございません。一・三二から一・三一に落ちたという程度でございます。ただ、それによりまして九三年、九四年、非常に景気が悪くなったときに公共事業を出したことで一%ぐらいGDPを下支えしたんじゃないかというような数字も出ております。  御指摘のこの平成八年版の経済白書ではそういう効果は認めておりまして、いろいろと四つの要因を検証して、マンデル・フレミング効果とかそういうのは余りなかったということを言っておるんですが、それが民間の設備投資へ波及しなかった。これはバブルのときに過剰投資をしておりましたから、少々公共事業をやってもそれで設備投資をしようという気にならなかったということを指摘しておるのでございまして、決して公共事業が効果がなかったとか、もう要らないとか言っているわけではございません。
  205. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 先ほど、郡司先生から福祉に比べて公共事業経済効果が劣るかのような話がありましたけれども、その話はいずれ取り上げるかもわかりませんが、ここではちょっと横へ置かせていただきまして、衆議院予算委員会での議論を取り上げたいと思います。  衆議院予算委員会で前田正先生がこう言われているんです。「政府はこの不況の原因をそのままにし、公共事業拡大を柱とする従来型の景気対策を繰り返し、結果、効果が出なかっただけではなく、財政の赤字の増大も招いた」、こういう見方というものが大変多いんですね、今の世の中。私は、こういった言い方だとやっぱりちょっと国民に大変な誤解を与えるんではないかなという気がいたします。  そこで、総理に御質問させていただきたいのでございますが、公共事業拡大を柱といたします従来型の景気対策は本当に効果がなかったのかどうか。押し上げ効果は当然あったと私は思っておるわけでありますが、そのおかげで世界恐慌に突入せずに済んでいるのではなかろうかな、そんなふうに私なんかは思っているわけでございます。これはまことに大事な話でございますので、ぜひ総理にお答えいただきたいと思います。
  206. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 九〇年代に入りましてから累次経済対策による公共投資の増加につきまして、バブル崩壊後の民間部門の設備投資の落ち込みを相殺する形で景気がスパイラル的に悪化していくことを防止し、その下支えに貢献してきたものと考えております。また、減税は可処分所得の増加を通じて個人消費プラスに働き、さらに民間部門のマインドの好転にも寄与したと考えられ、他の施策と相まって公共事業を初めとしたこうした投資そのものは景気に効果的に作用してきたと考えております。  また、今後の社会資本の整備は、二十一世紀先導プロジェクトの推進を核として、民間活力を最大限活用しながら、情報通信、都市、住宅、環境、教育、福祉など我が国経済の活性化に不可欠な分野について戦略的、重点的に行うこととしており、他の施策と相まって、将来の発展基盤の確立のみならず、当面の景気回復にもその効果が最大限に発揮されるものと考えております。  しかし、今国会もそうでございますが、衆議院におきましても、公共事業に対してその経済的効果につきましてはむしろ、否定的とは申し上げませんけれども、必ずしもその効果についてこれを前向きに評価するお話がちょっと少なかったようにお聞きをいたしております。きょう初めてとは申し上げませんが、岩井先生はそちらの御専門でもございますので、この公共事業、特に河川の問題も含めまして日本の国土全体においていかに公共事業というものが効果があるというお話を承らせていただければ大いに参考にさせていただきたいと思っておる次第でございます。
  207. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 景気対策公共事業というものをどのように考えればいいのか。  リチャード・クーさんの持論というのがございますね。いろんなところでお話しになったりお書きになったりしております。先般も、「ボイス」の三月号だったでしょうか、従来型の公共事業は役に立たないというマスコミの論調が大問題だ、そういう趣旨のことを言っておられるんですね。マスコミの論調はマクロ経済学的には何の根拠もない全くのでたらめだというふうにリチャード・クーさんはおっしゃっている。  昨日も夕刊フジあるいはテレビ朝日の話が出ておりましたけれども、本当に一部の、これは一部だろうと思いますが、一部のマスコミは本当にうそが多いですね。大変困ったことだと思います。  ちょっと話は変わりますけれども、かの有名な天文宇宙科学者のカール・セーガン、あのカール・セーガンの遺書とでも言うべき「サイエンス・アズ・ア・キャンドル・イン・ザ・ダーク」というサブタイトルのついた本があるんですね。そこでカール・セーガンはこうおっしゃっているんです、近ごろの若者は物を知らない、しかもマスコミをえせ科学がまかり通っていると。マスコミの話でございます。一般市民が何も知らないということはとてつもなく危険で無謀なことだ、国民に正しい知識がなければ国の政策というものをいい方向に変えていけるはずがない、そういう趣旨のことをおっしゃっておるわけでございます。現状を大変憂えておられるわけでございます。  私も一昨年の決算委員会でそういったことを取り上げました。いろいろ報道関係、インチキといいますか、ちょっと許せないようなことが多いんですね。私は本当に気になるんです。西部邁さんの「マスコミ亡国論」じゃないですけれども、やっぱり私はちょっと問題じゃないかなと。  先般、我が自由民主党は、ある問題で日本新聞協会に申し入れをしたばかりでございます。報道の倫理綱領の問題でございます。倫理綱領に照らし問題だと思われる記事が大変多い。リチャード・クーさんによりますと、せっかく政府がこれだけ必死になって景気対策をやっておるのに、政府が大規模な景気対策を打ち出しても、一般国民の受けとめ方というものは極めて懐疑的で冷たいものになっておる。その一つの理由はマスコミの間違った報道にあるのではないかと、これはリチャード・クーさんが言っておるんですね、私じゃない。  それで私は、政府としてこれを傍観しておっていいのかどうかという、そんなことでございまして、これはどなたにお聞きすればいいのかわかりませんが、しかるべき方にひとつ。
  208. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 私もマスコミに深くかかわっていたことがございますのでお答えさせていただきますけれども、マスコミに二つ問題があると思います。  一つは、今、委員がおっしゃったように、どんどんポジションが変わるので余り深い知識もなしに解説を書いちゃうというような場合、あるいはマスコミでもかなり知識の低いマスコミがあるという問題、これもございます。もう一つは、やはり短い時間で物を言おうといたしますからキャッチフレーズになっちゃう。それで、少し公共事業の民間に対する波及効果が下がったなら一遍にむだだと言ったり、それから従来型と新社会資本とどこがどう違うのかというと、これはマスコミは今全く定義しないで言っておるわけですね。そういうようないろんな問題がございます。  委員御指摘のように、現在の日本におきまして公共事業経済的に効果がないというのは全くそれは誤解でございまして、公共事業が今現在、今日の瞬間でも非常に下支えに役に立っていると思います。  それからもう一つは、地方にしないで都会にしたらいいとか地域別のことも言いますが、これも地方が全部悪くて東京が全部いいとか、あるいはその逆とかいうことはございません。どちらの効果を見ても、それぞれによってもちろんむだなものもあり、非常に効果のあるものはある。だから、むだなものを省いて効果のあるものをつくっていく。  今度の小渕内閣の平成十一年度の予算では、従来型の道路をつくるような即効性のあるものとそれから未来性のあるものをと、こういう二十一世紀先導プロジェクトというようなものを立てまして、新しいものにつないでいくというような対策もとっております。そういう点も重々考慮してマスコミにも御理解をいただき、よく報道していただくように努めたいと思います。
  209. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一つは、ゼネコンというものと公共事業を混同している説が大変多うございます。何で公共事業がいけないかという議論を読んでいると、それはゼネコンがいかぬという話なので、全然違うことと思います。  それからもう一つは、ケインズという人がどうも不評判になっているんですが、批判している人を見ていると、大抵ケインズを読んだことがないんです。
  210. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 地方交付税に関連する話をちょっとさせていただこうと思って内閣法制局長官にお願いしてあったんですが、ちょっと時間がなくなりましたので、これまた後日、機会をとらまえてさせていただきまして、今度は公共事業のむだの問題、効率性の問題でございます。  過去の会計検査の結果によりますと、公共事業にどのようなむだがあるのか、会計検査院にお答えいただきたいと思います。傾向としてどういったところにむだがあるのか、お答えください。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
  211. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) お答えいたします。  公共事業につきましては、委員承知のとおり予算が非常に多額に上っておりますし、また多数の省庁にまたがって事業実施されている、さらには直轄事業あり補助事業ありということでございますから、私ども会計検査院といたしましても、従来から重要な検査対象と位置づけまして重点的に検査に取り組んできているところでございます。  最近の検査の結果でございますけれども、個々の工事におきまして、工事の設計が不適切なために所要の安全度が確保されていないような事態、あるいは所要数の算出を誤ったことなどによりまして工事費の積算が過大になっているような事態、監督、検査が適切でなかったなどのために施工が設計と相違しているような事態などを検査報告に掲記しているところでございます。  それからまた、設計基準などが不明確なために不経済となっているような事態でありますとか、積算の基準が施工の実態に適合していないために積算が過大となっているような事態、こういったものにつきましても、適切なものに改善していただくように毎年検査報告に掲記しているところでございます。  それから、もっと大きな見方をいたしまして、事業が所期の目的、所期の効果を発現しているかというような有効性の観点から、事業の効果が発現していない事態につきまして、例えば多目的ダムの建設事業あるいは国営かんがい排水事業などについても掲記しているところでございます。  今後とも、むだが起こらないように可能な限り多角的な見方で公共事業の検査に当たってまいりたい、このように考えているところでございます。
  212. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 建設省におかれましても、そういうむだを排除するといいますか、事業の効率性をいろんな形で追求なさっていると思います。  そういう中で、施工ミスというものをなくすという観点から、発注者の責任、これは国、公団、県、市町村、いろいろ発注者というのはあるわけですが、その発注者責任ということがいろいろ今取りざたされておるかと思いますけれども、建設省では、その発注者責任ということについてどのようにお考え、どのように取り組もうとなさっておるのか、お聞かせいただけたらと思います。
  213. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 発注者責任のことでございますが、公共事業の発注者は言うまでもなく国、公団、都道府県、市町村等多岐にわたっておるわけでございますが、その体制やあるいは技術力に大きな差異がございます。  したがいまして、発注者責任の理念に基づいてすべての発注者が適切に対応するルールを確立するということが今課題でございまして、農林水産省、運輸省と共同をいたしまして発注者責任研究懇談会というものを設けまして、今御討議をいただいている途中でございます。この結果を踏まえまして、所要の改革に取り組んでまいりたいと思っております。  それから、先ほど公共事業云々ということがございましたが、先生から見れば生年月日は同じ昭和十三年ですが、私は素人でございますので、私に指名がございませんでして大蔵大臣が御答弁されましたが、私も全く、ゼネコンと公共事業を一緒くたに考えて、ゼネコンが悪いから公共事業が悪いというふうに私は世間で言われておるんではないかと常々思っておりました。  そういうようなことで、公共事業がなければ今の景気回復なんというのはとてもできるものではありませんから、私たちはそういうようなことで、効果であるとか透明度であるとか未来性とか、そういうようなものを、また緊急性というものを置いて重点的に配分をしていく。  ですから、事業箇所は一つ一つ厳選をしていくということで、そういう間違った世間の評価を払拭していきたいと思っております。
  214. 岩井國臣

    ○岩井國臣君 終わります。  ありがとうございました。
  215. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で岩井國臣君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  216. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、海野徹君の質疑を行います。海野徹君。
  217. 海野徹

    ○海野徹君 民主党・新緑風会の海野であります。  私は地方議会におりまして、総理初め閣僚の方々とテレビの向こうじゃなくて現実にこうやって対峙させていただいて質問させていただくことを大変光栄に思っているわけなんですが、現場にいまして大変いろんな意味で基本的な部分で疑問を持っていることがあります。今回こういうような機会を与えられましたから、その辺の問題を御質問させていただきたいなと思っております。  元来、日本人というのは部分的な改良については非常にスキームを持っているわけなんですが、枠組み論については私は苦手かなと、そんなことがあるものですから、参議院というのはその枠組みを論ずる場であろうと思いまして、できるだけそういう観点からお話をさせていただきたいなと思っています。  それではまず最初に、総理にお伺いしますが、これは確認させていただく意味で御質問させていただきます。  国連憲章の五十一条、ここには自衛権というものが載っております。また、サンフランシスコ平和条約の第三章第五条の(c)項、それから日米安全保障条約、こういう前文でも、読めばどれにでもはっきりそう書いてあるんですが、日本は集団的自衛権を持っていますよということが読み取れるわけなんです。しかも、今の憲法というのは不戦条約の思想の流れをくんでおりますから、どうも起草者の意図としても集団的自衛権、これは当然あるというようなお考えが大分ありますし、素直に読みますとどうしてもそう読まざるを得ないんじゃないかなと私も思うんですが、総理の御見解をお伺いします。
  218. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 国際法上、国家が集団的自衛権、すなわち自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利を有しているものとされておることは承知をいたしております。  ただ、我が国が国際法上このような集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然ではありますが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えておるという答弁が従来から政府の一貫した見解でございます。
  219. 海野徹

    ○海野徹君 今までの見解を総理は述べられたわけなんですが、持っているけれども使えない、あるいは最小限でしか使えないんだということなんですけれども、非常にこれは憲法第九十八条でも認められておりますし、刑法三十六条でもこれは自然権の一つではないかと言われております。しかも、多分これは冷戦下における遺物ではないかというような見解もありますが、重ねてその辺の御見解をお伺いします。
  220. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 集団的自衛権につきましては、それぞれいろいろ見解があることは承知をいたしております。昨今、特にこの問題を取り上げておられるいろんな意見も耳にいたしてはおりますが、現在、私、政府の責任ある立場といたしますと、先ほど申し述べた考え方に基づきまして、政府としてはすべての関係法律その他につきましてはその前提で処しておる、こういうことでございます。
  221. 海野徹

    ○海野徹君 それでは次の問題に入ります。  中小企業金融安定化特別保証制度について、まず通産大臣にお伺いさせていただきたいわけなんですが、我が民主党・新緑風会の会派の江田議員が年末に御質問をさせていただいております。  非常に信用保証制度を悪用する銀行の反モラル性、これは痛烈に銀行を批判されました。いろんな意味で、実名を公表するあるいは自治体の業務から排除する、そういうようなペナルティーを含めて金融監督庁と協力して業務改善命令を発動する等、そういうことも検討しながら調査しますというような答弁をされているかと思うんですが、その後継続調査をなさったかと私は存じておりますが、結果の内容、その結果どこに問題点があったのかお聞かせください。
  222. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 貸し渋り対応特別保証制度を初めとする貸し渋り対策は、中小企業に対する円滑な資金供給という観点から講じているものであり、これらが旧債振りかえという形で金融機関の救済、体質改善にいわば悪用されるということは断じて阻止すべき許しがたいことであるという考え方を持っております。これは、制度の趣旨は中小企業に役に立つということでございます。  先生御質問の旧債振りかえの実態調査につきましては、昨年十—十二月の旧債振りかえ実績について、全国信用保証協会連合会を通じて実態調査を行いました。二十七協会から回答がございまして、保証承諾実績のうち、二十七協会の保証実績二十九万六千百十四件、金額にいたしまして六兆二千六十三億円のうち回収に充てられたのは一万二千六百七十九件、千八百七十七億円となっております。  また、政府系金融機関中小企業団体等を通じた実態把握のためのサンプル調査実施したところ、旧債振りかえについては不満を表明するところもございました。  このような調査を踏まえまして、まず第一に、金融機関のみが旧債振りかえを含む保証案件を信用保証協会に持ち込む場合には、同協会が中小企業者に対して本人の意思を確認することを指示するとともに、その旨を周知徹底をさせたわけでございます。政府広報によりまして、これは全国の新聞、テレビ、またパンフレットを中小企業団体、政府系金融機関等を通じて中小企業者に配布をいたしましたし、金融監督庁が業務改善命令を出した四金融機関に対して地方通産局を通じまして制度の趣旨に沿った運用を徹底するように申しているところでございます。  今後とも金融監督庁とちゃんと協力をしなければならないと思っておりまして、一月に入りましてからその種の苦情は直接的にはかなり減ってきているし、ほとんど私の耳には入ってこない、そのような状況になっております。
  223. 海野徹

    ○海野徹君 金融監督庁と協力してということなんですが、その結果は金融監督庁は当然、要するに御存じでしょうか。
  224. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) これまでの調査は十一月まででございましたが、昨年十二月分の実態調査いたしましたところ、昨年十月から十二月までの三カ月間で四業態を合わせますと三千九百三十五億円の旧債振りかえの事例があったという報告を受けております。  この中には、信用保証協会の承諾なしに行われたものが五十二億円余り含まれておりますが、これらの実態を見ますと、債務者の要請に基づきまして旧債の返済に充てたものがその大宗を占めておりまして、残りについても債務者の資金繰りの都合によるものなどであったとの報告を受けております。  他方、一部金融機関におきましては、信用保証協会保証つき融資に関しまして不適切な表現を含む内部文書を支店に対して通知していたという報道が行われたことなども踏まえまして、各行の債権管理体制についても同時に報告を求めているところでございます。  先ほど通商産業大臣からも御答弁がございましたように、先般求めた報告におきまして、四銀行につきまして信用保証協会保証つき融資に関して不適切な表現を含む内部文書を支店に対して通知していた事実が確認されましたことから、一月中旬に銀行法第二十六条第一項に基づく業務改善命令を発出したところでございます。  そこで、金融監督庁といたしましては、引き続き一月分の旧債振りかえの実績や債権管理体制について現在実態調査を行っているところでございます。今後、新たな不適切な事例が把握された場合には適切な措置を講じていくこととしたいと考えております。
  225. 海野徹

    ○海野徹君 年末に監督庁長官は、旧債振りかえは信用金庫レベルでは多いじゃないかというような発言をされておりますが、今報告を受けた中ではこのような認識は変わっておりませんですか。
  226. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  比率から申し上げますと、主要行の場合には、信用保証協会保証つき融資のうち旧債振りかえに充てられた部分は十月から十二月までの間、約一・四%になります。一方、地方銀行の方は三・八%、第二地銀が二・〇一%、信用金庫が三・二%ということになりまして、合計いたしますと全国平均で二・八%になりますので、ただいま御指摘がございましたように、地方銀行それから信用金庫におきましては全国平均を上回る旧債振りかえの比率というふうになっております。
  227. 海野徹

    ○海野徹君 認識は変わらないということだと思うんですが、愛知中小企業家同友会、この会が保証制度に絞った調査結果、それを発表しております。しかしながら、そうじゃないんじゃないかなというような内容がありました。保証制度を利用したのは全体の四七%、検討中も九%だと。ほとんど社員が三十一人から五十人、その従業員数の七割近くと非常に高くて、しかも利用した企業の九四%は金融機関から勧められたと、そんなことを言っているんです。その辺に今、旧債振りかえのいろんな問題点が出ているんじゃないかなと思いますが、しかも、それで取引先金融機関から借りかえを求められたのが一七%に達していたということなんですよ。非常に多いんではないかなと思います。  大変ある意味では規模が小さいところ、圧力をかけやすいところにこういうような状況が出ている。そして、信用金庫、地銀というのはやはりその地域の企業を育てなくちゃならないという企業の理念といいますか、そういう経営姿勢が多いわけですから、私どもこの調査結果から見れば長官認識と若干違うんじゃないかな。そういった中で、金融機関の業態別では、都銀が一三%、地銀が八%、第二地銀が二八%、信金が一一%、その他信組などが五〇%と、要するに長官認識と若干違うところがありますが、いま一度御答弁お願いします。
  228. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 御答弁申し上げたいと思いますが、旧債振りかえ一般について原則は確かに認められておりませんけれども、これは金利等借り入れ条件のよいものへの切りかえが行われる場合でありますとか、あるいは実質的な返済期間の延長となる場合など、中小企業者にとって事業経営上有利になるような場合でありまして、かつあらかじめ信用保証協会の承諾を得た場合には例外的に認められているものというふうに理解しているわけでございます。  先ほども申し上げましたように、その旧債振りかえの事例につきまして、十—十二月、四業態合わせて全国で三千九百三十五億円の振りかえ事例があるというふうに御答弁申し上げましたが、業態別に関する振りかえの事例は、やはり先ほど申し上げましたように、相対的には地銀、信用金庫レベルで信用保証協会保証つき融資に占める比率としては全国的な平均よりも高くなっているということは現在実態として言えるのではないだろうかと思います。
  229. 海野徹

    ○海野徹君 アンケートの結果とちょっと違いますから、その辺は調査方法が違ってくるんでしょうが。  さらに問題になるのが金利の問題なんです。これ要するにリスクはゼロのあれですからね。それが二・五%以下というのは四分の三以下です。一番高いところでは四・五%を超えるものがあったというアンケート結果が出ているわけなんです。  こういう結果が出ていますと、やっぱりある意味では裁量行政に全くならない新たな規制というのが必要じゃないかなと思うんですが、金融監督庁のお考えをいただきます。
  230. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 今御質問の趣旨は、保証協会保証つき融資のリスクはゼロではないか、一部には四・五%といった非常に高い金利のものがある、それを是正させるべきではないかという御質問ではなかったかと存じます。  信用保証協会の保証つき融資に関しましては、御指摘のとおり、債務者が金融機関に対しまして約定どおりに債務の返済を行うことができなかった場合に、その元金、利息等の全額を信用保証協会が債務者にかわってこの金融機関に対して代位弁済するという、そういう仕組みになっているわけでございます。  ただ、問題なのは、民間金融機関の行います融資というのは、あくまでも民間当事者の間の個別の商取引でございまして、民間金融機関の貸出金利につきましては、都道府県等の実施しております政策的な融資を除いては、一般的には金融機関と債務者との間の約定によって決められているところでございます。  具体的には、債務者の財務状況はもちろんでございますが、信用保証協会の保証あるいは担保の有無、その他融資の有無、短期、長期の別、あるいは固定金利か変動金利かの別、それから借入時の金利水準など、そのほか金融機関自身の調達の金利なども背景となりまして、そういったものが総合的に勘案されて当事者の約定によって決められているところでございますので、信用保証協会の保証の有無だけで判断することはできないのではないかなというふうに考えているところでございます。  リスクはゼロではないかという御質問とも承りましたが、今も申し上げましたように、民間金融機関の行う融資というのは、民間当事者間の個別の商取引でございますので、金融機関と債務者との約定によって定められているものでありますことから、その内容につきまして金融当局がそれに対して指導したりあるいは介入したりするということは適当ではないのではないかというふうに考えているところでございます。
  231. 海野徹

    ○海野徹君 アンケートの結果から見ますと、非常に弱い立場のところに大変な圧力がかかっている、しかも金利が高い。  そういうようなことを考えますと、やはり新たな規制というんですか、裁量行政でない規制。これは金融監督庁の任務に関する条項十七条一項に、監督対象金融機関が営業認可を受けた個々の地域の正当な融資ニーズに継続的かつ積極的に応ずるよう監督指導しなければならない、こういうようなことを明記して、地域の金融機関がやはり金融機関として地域にも愛される、あるいは公的資金を投入されるわけですから公的使命を持っている。  そういう観点からも、こういう部分を法律に明文化する必要があるかと思うんですが、重ねて御見解をお伺いしたいと思います。
  232. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 御答弁申し上げます。  ただいまの御質問は、地銀あるいは第二地銀など、地域銀行の融資の対象地域について何か法律上規定すべきではないかといった御趣旨と承りましたが、もともと金融機関一体どういった地域を営業の重点区域とするかということは、それぞれの金融機関がみずからの経営判断によって決定されるべきものではないかというふうに考えているところでございます。  しかしながら、地域銀行につきましては従来から地域における金融サービスに対するニーズに、先ほど御指摘がございましたように、きめ細かく対応するという役割が期待されているところでございまして、またバブル経済の崩壊以降も、現在ビッグバンが進行する中で、地域銀行はその特色を生かしたローカルな経営を行うというために、どちらかといいますと県外の店舗を縮小するなどの、地元に帰る、そういった傾向を強めております。  現に、統計的な数字を若干申し上げますと、平成五年の三月期から平成十年の三月期までの地銀の大都市圏における融資動向を貸出金別に調査いたしましたところ、地銀は大都市圏におきまして平成五年三月期は四四・九%の比率を占めておりましたが、昨年の三月期になりますと四〇・七%というふうに減ってきております。また、第二地銀につきましても、平成五年三月期には五六・一%という比率を占めておりましたが、平成十年、昨年の三月期には五二・四%というふうに減少しているところでございます。  したがいまして、このようにこれからは地元に帰る、地域に密着したローカルな金融機関としての色彩を一層強めていくのではないかというふうに考えられております。  また、その他、信用金庫や信用組合などのような協同組織の金融機関につきましては、法律上これは一定の地域内における事業活動が義務づけられているところでございまして、原則としてそれぞれの地域で吸い上げた預金というものは当該の地域に還流されているというところが実態であるというふうに私ども認識しております。
  233. 海野徹

    ○海野徹君 私は先ほど、十七条一項に積極的に応じるよう監督指導しなければならないというものを明文化すべきだということを申し上げたんですが、アメリカに地域再投資法という法律があります、長官御存じだと思うんですが。預金取扱金融機関が地域の融資ニーズに本当にきめ細かく対応できているかどうか、そういうものを判断する、あるいは判断させる、要するにそういう任務が必要だな、あるいは項目が必要だな。それと同時に、やっぱりそれについては適時適切にチェックしていく、そういうことも必要じゃないかな。そして、その結果を公表する。公表することによって本当に愛される地域の金融機関になっていくのではないかなと思います。  こうした体制が整えば、公的資金が投入されて、我々の税金が投入されたものが本当に我々の日常生活にどのようにかかわってくるんだというのが国民がわかるんじゃないかな、そんなことを思うものですから、いま一度、十七条一項にそういう明文化を求めることに対しての御見解をお聞かせください。
  234. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 現在、金融ビッグバンが進行中でございまして、将来の金融機関の再編がどういう形で行われるかということはなかなか難しい問題で、予測も大変困難でございますが、基盤となりますローカルなバンク、地銀、第二地銀、信用金庫、信用組合を中心としますローカルバンク、それから、ややそれよりも幾つかの地域を合併、合わせましたスーパーリージョナルバンクと申しますか、そのほかメガバンクでありますとかあるいはブティックバンクとかいろいろ申しておられますが、地域に密着した銀行のあるべき姿というのは金融機関の基本ではなかろうかというふうに考えております。  今、御指摘の法制化の問題につきましては、私どもは現在金融監督庁として、少なくとも何か法律をつくろうとするときには大蔵省金融企画局にお願いするという立場でございますので、いろいろ難しい問題もございますが、私どもといたしましては、御趣旨を踏まえた上でいろいろ検討させていただきたいというふうに今考えております。
  235. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 先生から、地域の金融機関がその地域に対する金融の疎通に遺憾のないようにするに当たって、法制的な整備をすべきではないかという御提言をいただいたわけですが、その際挙げられましたアメリカにおける地域再投資法、これは実はビックバンが非常に進行しまして、極論すると、アメリカのある地域においては預金をする金融機関もなくなってしまう、まして貸し出しをしてくれる金融機関もなくなってしまう。つまり、すさまじい競争の中で非効率なあるいは十分な収益を上げられない金融機関の店舗を閉鎖してしまうという中で、これに対応する措置として法制化されたものと私ども承知をいたしております。現在の我が国状況がそのような段階にあるかと言われれば、まだそのような段階には至っていないと考えるのがお互い共通の認識ではなかろうか、このように思います。  それからもう一つ、ちょっと蛇足で恐縮ですが、先生の御発言の中で、税金を入れるというようなお話が若干言葉の中にあったかと思いますけれども、今回の二法、再生法と早期健全化法におきましては、破綻した金融機関に継続的に事業をやらせながら、そこに預金をしているもの、あるいはそこの貸出先になっているものについて、安定的な取り引きをお願いするという趣旨でつくられた再生法におきましては、これは欠損金等の補てんを税金で行うということで、いわば税金の世界になっている法体系にございます。  しかし、私どもが年度末に大手行、それからまた若干の銀行についてはその後において地方銀行、第二地銀等で行うかもしれませんけれども、いわゆる公的資金の資本増強というものは融資金、投融資活動でありまして、そもそも原資的に言っても税金に連なっておりませんので、そこのところを明確に区分して御理解をいただき、御議論をお願いいたしたい、このように存じます。
  236. 海野徹

    ○海野徹君 理解の仕方が違うと思いますが、時間がありません。再投資法、十分その辺はわかっておりますから、手法を常に、手法というか、要するに精神を入れていただきたいということを要望してこの質問を終了させていただいて、次に移ります。  新しいエネルギー政策について、通産大臣にお伺いします。非常に今環境問題が大きな問題となっています。いろんな意味環境というのは二十一世紀のキーワードだと私は思っておりますし、地球温暖化を避けるためにエネルギーの供給の大転換を図っていかなくちゃいけないんじゃないかな、そんな思いでおります。  そういった意味で、今天然ガスというのが大変大きく、さらに大きく評価されようとしておりますが、その辺の活用、開発について、通産省はどういうような状況にありますか、お聞かせください。
  237. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先生御指摘のように、天然ガスは他の化石燃料に比べまして環境に対する負荷は低いわけでございます。ただ、天然ガスを利用する場合には、天然ガスのガス田を開発いたしますと、丸ごとそれを使わなきゃいけないという、生産量を全部使わなきゃいけないという問題もございまして、なかなか投資額も多くて大変なのでございますが、天然ガスについてはいろいろな国から使ってみないかという話もございますし、石油と並んで天然ガスは大変有力なエネルギー源に既になっておりますし、今後ともますますその重要性は増してくるんだろうと私は思っております。
  238. 海野徹

    ○海野徹君 それで、天然ガスは大変優良な資源だということなんですが、これは将来的にこのシステムを全国的に展開すれば大変な公共事業がまた起きてくると思います。  その中で、特にメタンハイドレートあるいはコールベッドメタン、こういうものも調査研究されていると思いますが、その辺の要するに進捗状況、可能性について。大臣では細か過ぎますか。
  239. 稲川泰弘

    政府委員(稲川泰弘君) 御指摘のありましたメタンハイドレートにつきましては、メタンが低温高圧の条件のもとでシャーベット状に氷の中に溶け込んでいるものでございまして、陸地では極の地帯、海域では水深のかなり深い海域の海底下に世界的に賦存をいたしてございます。  ただ、このメタンハイドレートとして存在しているメタンは、自噴といいますか、自分で噴き出してくるというような性格を持っておりませんので、従来の天然ガスのような井戸を掘っただけでは商業生産ができないという面がございます。その実用化のためには従来と全く異なる採取技術が必要とされますが、まだその開発がなされておらず、現時点では実用化していないという状況でございます。  我が国におきましては、平成六年から始めております八次五カ年計画で国内の石油天然ガス基礎調査というのを行いまして、平成八年に静岡県沖で物理探査を行いまして、地質構造を調査したところでこのメタンハイドレートの賦存の可能性が判明したところでございます。  我が国周辺海域では、東海沖から四国沖にかけての海域などで、おおむね水深は五百メーターより深い海底で、さらにその海底地下二百メートルから五百メーター付近の地中に賦存をしているということが推定されております。  静岡県沖につきましては、平成十一年度、この計画に基づきまして掘削調査、試錐を行うことを計画してございます。
  240. 海野徹

    ○海野徹君 それで、天然ガスから関連して、今大変注目されているもので、エネルギー源として燃料電池というのがございます。これは、ダイムラー・ベンツが合併したのもそういうことじゃないかというような話もありますし、あるいは、ダイムラー・ベンツが出資しているカナダのバラード社、これが二〇〇四年からもう量産化に入る。要するに、これは大変な市場を形成するだろうし、新たなエネルギー源としては大変有効だろうということが言われております。  今、燃料電池について通産省はどの程度の取り組みをなさっているか、御見解をお聞かせください。
  241. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) まず、燃料電池ですけれども、水に電気を通しますと水素と酸素に分かれますが、その逆を行えば電気が出てくるという、そういう仕組みでございます。  これはやはり水素が必要でございまして、まず水素をどこから手に入れるかという問題がございますが、利点としては、分散型のエネルギーである、それから、結局そういう反応をさせても出てまいりますのが水でございますので、大変環境に対して負荷が小さいということもございます。  これは大変研究を進めております。どこが中心の研究かといいますと、水素と酸素を化学反応させるところの電解質をどういうものにするかという技術的な問題がありますが、これについては通産省もどんどん研究費等を出して、今は四種類ぐらいの形の電解質でその反応を試みております。反応の温度もそれぞれ違いますし、それぞれの利点、欠点もございますから、研究はどんどん進めてまいります。  ただ、燃料電池といいますと何か水素というものが自然に手に入るというふうな錯覚に陥りがちですが、やはり水素を手に入れるのは天然ガスから手に入れるか石炭を分解して手に入れるかということで、いずれもよって来るところは化石燃料でございまして、長い間地球がためてまいりました太陽エネルギーを逆に使っているという意味はございます。しかし、普通の使い方に比べましてはるかに熱転換効率とかエネルギー転換効率が高いという利点がございますので、この分野の研究というのはお金を投入するに値する分野だと思って一生懸命やっているところでございます。
  242. 海野徹

    ○海野徹君 大変前向きな答弁をいただいているわけなんですが、これはただ単に燃料電池というだけじゃなくて、自動車産業あるいは電機産業、電力産業を含めた新しい総合的な新規産業の育成というのにつながりますから、今以上にスピードを上げて、ボリュームをアップしてやっていただきたいと思います。その辺を要望しておきます。  それでは、次の問題に入らせていただきます。  これは法務大臣にお聞かせいただきたいと思いますが、精神保健福祉法改正に関連して、まずその前に法務大臣にお伺いします。  犯行後、服役中刑務所に収容されている精神障害者は非常に多いです。これは犯行当時そういうのがわからなかったということもありますし、あるいは大変重大だったから服役しているんだというのもあるわけなんです。しかし、精神保健福祉法の精神と全く別なところで生活させられているというか、刑務所に入っているわけですね。しかも、刑期が終了しますと、当然要するに病状には関係なく社会へ出ていくわけなんですが、そういった意味で非常に再犯率が高いわけですし、医療の中断があっていろんな問題が起きてきておることは御存じだと思うんです。  そういったいろんな意味で、法的な整備が今必要になってきているのではないかなと思いますが、法務大臣の見解をお聞かせください。
  243. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) お答えいたします。  法的整備の前に実態をちょっと御報告させていただきたいと思うんですが、今、先生御指摘のように、収容されている受刑者のうちで約九・一%が精神障害と診断されております。  このうち、知的障害という精神薄弱の比較的軽い方、これを除きました精神障害者が約二千二百名でございます。そのうちの半数が薬物中毒者でありまして、残りのおおむね一千名程度、二・四%が精神分裂病等の精神障害ということでございます。  今、対応としては、それぞれの刑務所に医師が一名以上いるということ、そしてそこでどうしても対応できない者を医療重点施設に移す、そこには六名の精神科の専門医がいる、そしてさらにそれでだめな場合には医療専門施設として四つの施設が指定されておりまして、そこに十三名の医師がいて対応するということになっております。  法的整備のことでありますけれども、これは委員も御存じのとおりだと思いますけれども、昭和四十九年の例の改正刑法草案というのがございまして、これが反対が強くて法案にもならなかったということがございます。その後、六十三年から今御指摘の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律となったわけでありますけれども、やはり重大犯罪を行った精神障害者に対する刑事手続における対応のあり方については、こういうふうにいろんな御意見があって過去の経緯もございますので、ただいまあります精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の運用状況を見守りながら、厚生省と御相談をして検討を進めていくべき問題と思っております。
  244. 海野徹

    ○海野徹君 わかりました。  犯罪白書によりますと、我が国においては毎年八百人前後、これが精神障害者が心神喪失あるいは心神耗弱、そういうのを認められて不起訴や無罪、非常に軽い刑、判決になっています。  一方では、これらのいわゆる触法精神障害者が一たん不起訴になりますと、それは全部実質上は医師がどうするかというようなことを決定してくるわけなんです。そういった意味で、何回も何回も犯罪を繰り返すようなことができたり一般の方々に大変な御迷惑をかける。あるいは病院内でも問題を起こしてくるということになってくるんじゃないかな。そういう地域社会へ当然出てきては困りますから一般の病院へ入れて、その中でまた事件を起こしている。引き受けたところは大変問題が起きているというようなことがあるんですが、そういう不幸な現実について大臣はどういうような御見解を持っていらっしゃいますか。
  245. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) これは大変人権の問題と絡んだ難しい問題でありまして、一言でお答えを私ができるような問題ではないと思いますけれども、過去にありました刑法の改正の動き等の経緯も、繰り返しになってまことに申しわけありませんが、ございますので、それこそ各界の御意見をいただきながら、また国会の御意見もいただきながら、厚生省とともに検討していかなきゃならない問題だと思っております。
  246. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、この問題は最後になりますが、大変重大な犯罪を犯した精神障害者については、一般の入院制度とは別にしてやはり何か対策検討する必要があると思うんですが、今後どのような対応を進めていかれるのか。これは厚生大臣にお伺いします。
  247. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 矯正施設内における問題はただいま法務大臣が述べられたとおりでございますが、その精神障害者が矯正施設から退所等をした場合の問題がいわば厚生省の問題と言っていいかもしれません。  今御指摘の精神保健福祉法におきましては、矯正施設の長が精神障害者またはその疑いのある収容者を釈放しようとする場合には、本人の帰住地の都道府県知事に通報しなければならないこととされております。この精神保健福祉法におきましては、それに従って都道府県知事がその通報を受けた場合には、指定医がございますが、指定医に当該精神障害者を診察させなければならないとされておりまして、その結果に基づきまして入院や通院などの必要な精神科医療が提供されるものと、そういう建前になっております。  このように、矯正施設から退所等をした精神障害者に対して適切な精神科医療を確保する仕組みは一応とられてはおります。しかし、今御指摘のような点が確かに懸念される点もございますので、こうした法務矯正と精神科医療の円滑な継続の確保というのが極めて重大なことだと存じております。  なお、精神保健福祉法におきましては、自分を傷つけたり他人に害を及ぼすいわゆる自傷他害のおそれのある精神障害者を強制的に入院させる制度として、現在、措置入院という制度がございます。この措置入院による患者の受け入れは、国立病院と、今申しました都道府県知事が指定した民間の指定病院が対応しているところでございますが、なかなか状況を見ますと公的病院の収容率が比較的少ない。これは病床も少ないということもございますが、民間の指定病院の率が高いようでございます。  ただいま公衆衛生審議会でいろいろ御議論をいただいて福祉法の改正問題を中心に議論いただいておりますが、国公立病院で積極的にその措置入院者の受け入れを行うべきことも指摘されておるところでございます。したがって、今後、国公立病院において措置入院者の積極的な受け入れが進むようにいたしたいと思っております。  なお、ちょっと長くなって恐縮でございましたが、こうした重大な犯罪を犯した精神障害者、これはたびたびまたそのおそれがあります。なお、刑事責任を問えないという状況もございます。したがって、この処遇をどうするかというのは、委員御指摘のように精神保健福祉法体系のみで対応できるものではございませんので、専門家を初めとして関係者の意見を広く聴取して連絡をとっていきたいと思います。  今、中村法務大臣からお話のございましたように、保安処分という形でこうしたことをやったらどうかという提案が、たしか三十六年、四十九年でございますか、出されましたが、これは各界の反対もございまして、人権上の問題もあって実現を見なかったという経緯はございますが、いずれにいたしましても、非常に本人も気の毒でございますし、そしてまた社会に大きな害を与えるおそれがございますから、十分これは関係省庁検討していかなければならぬ、そのように思っております。
  248. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、次の質問に入らせていただきます。  現在、食料・農業・農村基本法が検討されています。消費者には食生活の向上に積極的な役割を求めているということで、生産者の問題じゃなくて食糧、農業、農村は消費者の問題である、そういった視点から私は大いに評価させていただいております。  といいますのは、私自身が農業者でありまして、お茶をつくっております。ことしはできるかどうかわかりませんが、昨年までは新茶のときはお茶を摘んでおりました。それだけに、農業に対する思い込みは非常に激しいものですから、そういう視点からお話をさせていただきたいと思います。  農林水産大臣にお伺いしますが、農業基本法の選択的拡大、これは一体何だったのか、その辺の総括をしていただきたいと思います。
  249. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現行農業基本法における大きな柱の一つでありました選択的拡大というものは、やはり当時、食糧が不足をし、そして米ですら自給ができたのは昭和四十年前後だと記憶しておりますが、そういう中で、規模の拡大あるいは生産性の向上というものによって食糧をできるだけ国内で確保していこう、そのために農業経営をできるだけ合理化していこうという観点から、生産性の向上、その一環としての規模の拡大ということができる条件の農家とそうでない条件の農家とがおのずから出ざるを得ないということがあって、そういう生産性を向上していくために選択的拡大というものを位置づけたものというふうに理解をしております。
  250. 海野徹

    ○海野徹君 選択的拡大、私が理解しているのは、国内生産、これを放棄することだったと、それを意味していたんではないかなと、それも農地を荒廃させるということをやりながら。その反省が私は今回の食料・農業・農村基本法に生かされるべきだろうとは思っております。  選択的拡大のその結果、もちろん中川大臣は当然御案内かと思うんですが、小麦にしても大豆にしても大変な輸入をすることになりました。今、我々が飲食費支出で払っている総額が七十二・五兆円あるといいます。しかしながら、農林水産業に払っているのが二三%しかない。しかも、食品関連業は千二百万人もいる。主たる農業従事者は、それに比べて二百七十八万人しかいない。こんな数字を生むことになってしまった。  私は、大いに反省すると同時に、私もある意味では惰農であっただけに、こういうような立場に立たせていただいているということもありまして反省しきりのことであります。そういう反省のもとにこれから国民の理解を得ていく、あくまでも九割の消費者の、都市住民の方々の大きな問題であるという観点から私は今度の基本法が国民的な議論を呼んでいただきたいなという思いをしております。  その次にお伺いしますが、それでは大臣、フードマイルズという言葉を御存じかと思うんです、フードマイルズ。この思想を基本法に生かすべきだと思うんですが、御見解をお伺いします。
  251. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 存じ上げておりません。
  252. 海野徹

    ○海野徹君 フードマイルズ、フードというのは食物ですね、マイルズというのは要するに距離ですよ。だから、要するに生産から消費までの距離、これがゼロであるほど私はいいと思っているわけです。そのとれたところで消費できれば一番いいわけです。自給自足。  今は農業が要するに見えていないんですよ。食糧生産というのが要するに国民に見えていない。それが一番の問題ではないかなと私は思っていますから、そういった意味で今度の基本法に今の、もう一度言いますが、フードマイルズの思想を生かすべきだと思いますが、見解をお伺いします。
  253. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) フードという単語とマイルという単語は知っておりましたが、フードマイルズという新しい言葉を教えていただきありがとうございます。  多分、先生の御主張は、できたものをできるだけ近い距離で、また近い条件で、つまり新鮮さとかコストの面もいろいろ考えてそういう方法でやっていったらどうかというお考えだろうと思います。  それも一つの考え方であろうと思います。しかし、先ほど基本法のところで選択的拡大というお話をやりとりさせていただきましたが、やはり適地適産というか、国内でいかに消費者ニーズにこたえるためにいいというか、消費者ニーズにこたえられるような農産物をどういうふうにつくっていくかということも今回の新しい基本法の一つの柱でございまして、そういう観点。それから、さっきの話に戻って恐縮ですが、もっと根本を言えば、あくまでも自作農主義あるいは家族農業というものを基本にした形での基本法であり、またその根本思想そのものは今回の基本法においても否定をしたものではございません。  そういう中で、より消費者ニーズにこたえられるような農作物をどういうふうにつくっていったらいいかということを、まさにこれから法案を提出させていただき、国会の場でいろいろ御議論をいただき、また法案の審議に役立たせて生かしていただきたいと考えております。
  254. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、それぞれ各自治体で全農産物の自給率、これを調査されたらどうですか。
  255. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、生産する方は、主要な品目につきましては県単位、場合によっては最近は顔の見える農産物なんという言葉がありますから、町村単位でも把握することは可能であるという部分もございますが、消費量につきましては、県間の移出移入のデータを把握し切ることは現実問題極めて難しいと言わざるを得ません。  先生御指摘のとおり、今後、自給率向上に向けての取り組み、それから消費者ニーズをきちっと把握した生産消費者あっての生産活動であり、また国内農業生産あっての国民の安全と健康だという観点から、先生の御指摘もわかりますけれども、今後主要な農作物を品目ごとに自給率をきちっと設定していきたいと考えております。  技術的な問題も含めて、県別あるいは地域別に消費量を把握するということがなかなか技術的に難しいのではないかなという考えを率直に持っております。
  256. 海野徹

    ○海野徹君 調べられているところがあるわけですから、自治体で。そう難しい問題でもないと思うんですよ。一番要するに身近な問題でありますから。多分、倉田百三の本に「愛と認識の出発」というのがありましたけれども、やっぱり知ることは愛することなんです。それが国民的な議論を呼びますから、ぜひそれをお願いしたいなと思います。  それから、条件不利地域という言葉がよく出てきます。私も要するに条件不利地域というところに住んでおりまして、いつも苦々しい思いをしております。というのは、二十一世紀私が住んでいるところは多分条件有利地域だろうなと。緑が深くて空気がきれいで星がきれいで人情味が豊かで、非常にいいところなんです。何でそれを条件不利地域というふうに生産条件だけで決めつけるのか。大変百姓として農業人としてのプライドが傷つけられる。担い手がこれじゃ育ちっこないと私は思うんですが、見解をお願いします。
  257. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生御指摘の気持ちは私も理解できるところでございます。生産条件が厳しいことによって耕作放棄が発生する、それによって農業農村地域の多面的機能が損なわれるということは、いわゆる中山間地域等の条件不利地域が荒れることだけではなくて、その川下に広がる大消費地あるいは都会にも大きな影響を与えるということであると考えております。  しかし、いわゆる中山間地域というのは農地の四割を占める地域というふうに理解をしておりますが、国土の保全、自然環境の保全等の公益的機能の発揮、伝統文化の保全等に重要な役割を果たしておりますし、また農業生産の面から見ると、先生御指摘のように平地地域と違いまして、冷涼な気候やきれいな水を活用した高収益型農業の転向が見込まれる地域でございますから、全体として中山間地域という言葉は都会の人たちにとっても国民皆さんにとってもいいイメージの地域であるというふうに認識を私自身もしていきたいと考えております。
  258. 海野徹

    ○海野徹君 中山間地域、私も県議会において中山間地域振興議員連盟をつくりましてやってきましたから、条件不利地域というのはどうも納得できない。  私は、百姓の名刺持てよ、百のことができるんだから、百の姓と書くんだから要するに条件有利地域だ、すてきな生活空間なんだ、おまえら頑張れと、そう言っていますから、ぜひそういう発言をしてほしいなと思います。  それから市街化調整区域、これは調整区域と言いながらどんどん農地がつぶれている。三万ヘクタールも四万ヘクタールもつぶれている。生産手段を失っていくんです。自給率の向上にマイナスじゃないですか。市街化抑制区域だったらわかるんですけれども、調整区域としたところに私はどうも問題があると思うんですが、大臣の御見解をお伺いします。
  259. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 市街化調整区域というのはたしか都市計画法上の概念だと思いますが、農地法あるいは農振法上きちっとした農地として守っていくという考え方で今後も続けていきたいと考えております。  そして、今回農振法の改正によりまして優良農地の確保に関して国の基本方針を新たに示し、そしてその設定基準を法定化することによって優良農地あるいは保全すべき農地についてきちっと確保していきたいというふうに考えております。
  260. 海野徹

    ○海野徹君 たくさんまだ議論したいんですが、議論し足りない部分はまた後日に改めてさせていただいて、これで終わります。
  261. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で海野徹君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  262. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、世耕弘成君の質疑を行います。世耕弘成君
  263. 世耕弘成

    世耕弘成君 自由民主党世耕弘成でございます。本日が私にとりましてこの国会での初めての発言の機会となります。大変緊張しております。  先ほどからお話を伺っておりますと、ハマの大魔神などいろいろ政治世界というのは野球を例えに使われることが多いようですけれども、私にとりましてはこれがまさにプロ入り初打席でございますので、バットを短く持ちまして、二十一世紀へ向けて日本の産業をどう育成していくのかについて的を絞って質問させていただきたい、そう思っております。  最近、私、地元の和歌山県の中小企業主の方ですとか、あるいはもと勤めておりました会社の同僚ですとか、そういうビジネスマンといろいろ話をする機会が多々ございます。こういう現実の経済活動に携わっている人々ですから、当然今の景気の厳しさというものも非常に痛感されているわけであります。しかし、一方で景気の厳しさ以上に、今の日本の産業がこれから二十一世紀へ向けてどういう形で発展していくのかということについてビジョンが見えないという悩みを皆さん持っておられます。  小渕総理は、施政方針演説で楽観主義に立とうとおっしゃいました。私は全く賛成であります。しかし、楽観主義に立つためには、よって立つ未来へ向けた希望が必要だと思います。先ほど大蔵大臣は、平成十一年度予算には夢がないとあえておっしゃいました。厳しい中の予算であることは理解しますけれども、そこまで謙遜されることはないんではないか。総理は、施政方針演説の中で未来へのかけ橋をうたっておられます。ですから、平成十一年度予算の中に経済から見た未来へのかけ橋、すなわち日本の産業の未来像が織り込まれているはずだと思うのであります。  国民が未来へ向けて希望を持てるような日本の産業の将来像と、それがどういう形でこの予算に織り込まれているかについて、総合的にまず総理からお話を伺いたいと思います。
  264. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 中長期的な観点から日本の経済産業を活性化させることが必要であるということでございますし、また日本の未来を展望したときに、新しい産業を大いに興して、そしてそれを基盤に世界に冠たる経済的な国家を建設していかなきゃならぬ、こう考えております。  今の時点では、いわばその豊かさの中の不況とも思われる現在の状況を脱しまして自律的に発展していくために、経済構造改革の一層の推進を図り、経済の供給サイドの体質強化、とりわけ、先ほど来いろいろと御議論になっておりますが、ベンチャー企業の育成を含め新事業を創出することによりまして、良質な雇用の確保や生産性向上を図ることが重要であると認識いたしております。  このため、昨年十一月十六日に緊急経済対策の中で産業再生計画の策定を明らかにいたしまして、また、去る一月二十九日に閣議決定をいたしたところでありますが、あわせて計画の一環として、私自身も参画し、官民が産業競争力強化のための意見交換を行う場を設けることといたしております。これらを通じまして経済構造改革に向けて取り組みを行うことといたしております。  また、社会資本の整備に関しまして、二十一世紀先導プロジェクトの推進を核といたしまして、民間活力を最大限に活用しながら、特に情報通信、都市、住宅、環境、教育、福祉など、我が国経済の活性化に不可欠な分野について戦略的、重点的に行うことといたしておりまして、他の施策と相まって、当面の景気回復のみならず、将来の発展基盤の確立にもその効果が最大限に発揮されるものと考えております。これらを通じまして、中長期的視点に立ちまして日本の経済産業を活性化させるよう政府として全力を尽くしてまいることは当然のことだろうと考えております。  そういった意味で、十一年度予算につきましても、もちろん現下の経済状況を脱するためにあらゆる手法を講じておりますけれども、そういう意味でしばしば経企庁長官も言われていますが、即効性、今経済を即効的によくしていかなきゃいけない。しかし、それから波及性、同時に未来性ということを言っているわけですね。  特に、情報通信その他につきましては、やはり日本人の特性といいますか、知価、これは経企庁長官がよく知価革命と言われますが、要するに、日本人のすばらしい本質的な勤勉性はもとよりでございますけれども、問題はブレーンというか頭ですね。これを最大限生かし得るのは、我が国民のこの特性を生かして、日本の未来にかけてのいろいろな産業、特に情報通信産業その他に大きな日本の未来が開けていると私は感じておりまして、委員もその面で今まで実務に励んでこられたわけでございますが、ぜひ御経験を生かして、国会の中でいろいろよき提案をしていただければありがたい、こう思っております。
  265. 世耕弘成

    世耕弘成君 答弁ありがとうございました。  今の総理答弁の中で、やはり二つキーになるものがあるんじゃないかと私は思っています。一つはベンチャーの育成、そして今最後におっしゃった情報通信産業の育成、この二つがキーになってくると思います。  まず一点目のこのベンチャー企業の育成、きょうのここの議論でも随分先ほどから話題になっておりますけれども、私は決して政府がベンチャー企業の育成をおざなりにしてきたわけではないと思っております。逆にここ数年の状況を見ておりますと、どちらかというとベンチャー支援ブームのようなものが起こっているんじゃないかと思っております。中小企業創造活動促進法ですとかあるいは新事業創出促進法といったものを準備されています。また、ストックオプションも入れられております。この間報道されていたところによりますと、現在、日本では政府レベルで百二十五件、地方自治体レベルで三百四十三件のベンチャー育成の制度があるそうであります。  しかし、依然としてこのベンチャー支援ブームが本当の意味でのベンチャー起業ブームになっていない。この辺の原因は一体何なのだろうか。まだアメリカに比べて開業率もまた廃業率も非常に低い水準にあります。ぜひ通産大臣にお伺いしたいと思いますけれども、この原因は一体どこにあると考えられるのか、また通産省としてどういう対策を打っていかれるのか、具体的に伺いたいと思います。
  266. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) まず第一には、精神の問題が私はあるのだろうと思います。やはりパイオニア精神と申しますか、新しい業を起こす、そういう気持ちがまだみなぎっていないと申しますか、そういう土壌ができていないということで、これはやはり若い方々、あるいはある程度社会で経験を積んだ方がいわば冒険心を持って新しい分野に挑戦をするという、やはりそれだけの気概のある気持ちと申しますか精神、業を起こすというまずその気持ちの問題があると思うわけでございます。  それから第二に、それでは業を起こそうと思ったときに、それだけの土壌が日本の社会にあるのかといいますと、なかなかその社会的な土壌と申しますか、制度的な土壌というものが十分とは言えない部分もございます。  一つは、どちらかといえば、ある会社に所属したまま一生を過ごしていくという、これは安全な方法でございますし、また正しいことでもありますけれども、飛び出して冒険をするというだけの社会的土壌がない。  それからもう一つは、何か新しいものを始めようとしたときに社会が受忍をするという、やはりこれも社会的な土壌でございますが、そういうものも必要でございます。  それから、物事を始めようとした人にだれかが例えば資金の面で援助をしなければならないわけです。これは公的な援助もございますけれども、金融機関がそれじゃあなたの話に乗ってやってみようという場合もあるし、また直接金融市場からお金を取り入れる、これも日本はまだまだなれていないと申しますか、十分そういうことは行き渡っておりません。  それから、仮にお金が調達できたといたしましても、ある仕事をするためには仲間が必要だというときに、なかなか人材を集めるという手だてがないという側面もあります。  それから、仮に失敗いたしますと、どうもアメリカの例を幾つか聞いておりますと、議員はよく御存じだと思いますが、もう一度再挑戦のチャンスというのがやはり社会の雰囲気としてあるわけですが、どうも日本の場合ですと失敗するとぽんと烙印を押されるという側面があります。そういう面での、倒産法制というとちょっと大げさかもしれませんが、仮に失敗した場合の再チャレンジをどういう仕組みでやるかということもあります。  それと、私は最も大事なことの一つとしては、これはただやろうといってもだめなんで、やっぱり新しいアイデアとか新しい技術、これがなければならないわけでして、その技術といっても長年の基礎研究、応用研究の積み重ねでございますから、その基礎研究、応用研究の部分は、やはり大学や国の研究機関あるいは民間の研究機関でそういうものを営々とやっていかなければなりませんし、国がかかわるものに対しては今後積極的に研究費を使って日本の二十一世紀を支える技術の基盤を整備する、強くする、そういう努力をしていかなければならないと思っています。  いずれにしましても、既存の産業だけでは現在の日本のすべての雇用を多分吸収できなくなるというふうに思っておりますので、やはり労働力がスムーズに移転するというために、あるいはこれから新しく大学を出て就職しよう、学校を出て新しく就職しようという人たちのために、そういう新規産業を創出することによって雇用の場を提供するというのは、政治にとりましては大変大事な責任であるというふうに思っております。
  267. 世耕弘成

    世耕弘成君 今、通産大臣は、まず第一に気持ちの問題である、精神の問題であるということをおっしゃいました。そうなると、今度はやはり教育の問題が大きくなってくるのではないかと考えております。  二月十三日号の週刊ダイヤモンドで、国民金融公庫総合研究所長、浦田さんが論文を書かれておりますが、その中で紹介されておりますのは米国の例でございます。  非営利団体のジュニア・アチーブメントという団体が、幼稚園児から高校生まで起業家精神を育成するための自主的な経済教育プログラムをやっている。もう既に三百万人が受講をしているということであります。  例えば小学校三年生に対しては、商人と銀行と弁護士がそれぞれ経済コミュニティーの中でどういう役割を果たしているかということを実際に教える。高校生向けには、実際に模擬会社をつくらせて運営をさせて、商売をさせて、最後は会社の清算、畳み方まで教えている。  日本でもこのような極めて現実的な経済教育というものを実施して、創業家精神というものを幼い時期からたたき込んでいくべきじゃないか、ベンチャー企業の社長予備軍をたくさんつくっていくべきじゃないかと思いますけれども、このあたりについて文部大臣の御見解を伺いたいと思います。  ちょうど、新学習指導要領案に総合的な学習という時間がつくられておりますので、それを活用してはどうかというような提案もあるようですけれども、いかがでしょうか。
  268. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まず最初に、先ほど与謝野先生がお答えになられたベンチャーについてちょっと申し上げたいと思います。  アメリカがかくのごとくベンチャー企業が伸びたのは、たびたび申し上げるように、一九八〇年ごろから、それから十年間仕込んだことがある。それは一つの新しい法律ができました。特に大学に関する法律ができて、それはベイドール法というんですね。  そのベイドール法はどういうのかというと、大学と非営利組織及び中小企業は、連邦政府資金による研究開発成果の権利を保有するかどうかを選択できる。第二に、大学は当該研究成果を特許申請し、民間企業との共同化を促進する。三番目に、ロイヤルティーの分配。大学は発明者への分配金と管理費用を除いた残金を研究教育支援に利用する。これが一九八〇年。  このことによって、カリフォルニア大学と特にスタンフォード、MIT、こういうところが大活躍をして、しかし二十年かかりました。やっと一九九〇年になってからお金がもうかるようになった。  したがいまして、まず今、日本でさまざまなベンチャーに対する政策が国でとられております。例を申しますと、科学技術庁としては、新規事業志向型研究開発成果展開事業あるいは委託開発事業。委託開発事業は、まさに今のアメリカの法律に似ておりまして、基礎的かつ独創的な方向にシフトしていく大学及び国立試験研究機関等の研究成果を、科学技術振興事業団が開発リスクを負担することで効果的に開発する。財団法人でありますが国が肩がわりをする、こういうことを今努力しているわけです。あと十年お待ちください。必ず伸びます。  それからまた、大学で、随分文部省も努力をいたしまして、技術移転の機関をつくっております。これによって大学も大いに活躍をすると私は信じています、国立研究所のみならず。  そしてまた、もう一つは、研究者が特許に興味を持たないということを直していかなければいけない。ですから、一つのいい特許は論文十に対応するのであるという、そういう精神を研究者に持ってほしいと、私はこの十年言い続けてまいりました。こういうことが必ずやこれからの日本の大学、国立研究所の精神を変えていくと私は信じているわけです。  さて、御質問の子供のことでありますが、確かに子供から、早い時期からそういう進取の気性は教えていかなければならないと思う。しかし、私は、やはり基礎、基本はきちっと、小学校は特に基礎、基本はきちっと、読み書きそろばんはきちっと教えてほしいと思うんです。それから、中学校に行ってもやっぱりまだ読み書きそろばんであるけれども、少し応用ができるようにしていかなければならない。  そこで、先ほど御指摘のありました総合的学習の時間というものを導入いたしまして、小学校では三時間、中学校でも二時間か三時間、これを使って外国の文化を勉強してもいい、環境を勉強してもいい、そしてまた情報を勉強してもいい、こういうことを今やることになっておりますので、その中には先生のおっしゃられるようなベンチャーマインドを具体的に教えるということもできるかと思っております。
  269. 世耕弘成

    世耕弘成君 もう一つ、二十一世紀の日本の産業のキーとなりますのが情報通信産業の育成でございます。その中で最も重要なのは、これからインターネットになってくると思うんですけれども、残念ながら現バージョンのインターネットについては米国の後塵を拝している、これはもう明らかであります。  次のポイントは、次世代インターネットの研究開発、これでいかに日本が海外をリードして世界標準の主導権を握るかということがポイントになってくると思います。  郵政大臣にお伺いしたいと思います。次世代インターネットの現在の開発状況について、どういう把握をなされていますでしょうか。
  270. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 世耕委員御専門の情報通信でございますので、私から言うのもあれですけれども、現状の認識ということで。  今現在、委員御指摘のとおり、アメリカに比べてインターネットは、例えば数で言うならば、ホストコンピューターというのがありまして、これはインターネットに接続しているコンピューターなわけですけれども、これで十一年現在、アメリカの方は三千万台を超えています。日本では現在百六十九万台で、二十倍の差があるわけでございます。  でも、この格差がどうして起きているかというと、そもそもインターネット自体がアメリカ生まれである、そういう歴史的な経緯があるのではないかと思っています。最近、この五年を見てみると、今申し上げたホストコンピューターの数の伸びというのが、世界全体で今約十九倍と言われています。ところが、日本ではおかげさまで三十九倍という大変大きな伸びになっているところでございます。  ということで、将来的には、努力をすればこの日米間のインターネットの格差は縮めることが可能であると信じているところであります。  そこで、今御指摘の次世代インターネットなんですけれども、これからインターネットをよりよく普及させていくためには、そのかぎとなる電子商取引、いわゆるEコマースをやはり伸ばしていくことではないか。これ自体が産業構造も大きく変えるだろうと言われています。  そこで、その電子商取引を本格的に普及させるに当たって、やはりこれから重要なのが次世代インターネットだろうと。次世代インターネットに望まれることは、まず安全性であり、さらには大容量であり、または高速、そういう今は欠けているものを補って初めて次世代インターネットということになるわけであります。その次世代インターネットの研究開発については、アメリカの方では平成十年から毎年約一億ドルということで研究開発が進められているそうです。  では日本はどうかというと、日本の方が、これは大変ありがたいことなんですけれども、もう既に平成八年からこの次世代インターネットにはアメリカに先駆けて研究開発を五カ年計画で進めさせていただいているところで、今申し上げたセキュリティー、超高速、大容量、これにかなうようなシステムに取り組んでいるところであります。  あわせて、やはりインターネットに重要なのは利用者であると思います。ただ単にネットワークだけ立派なものができても、利用する側が電子商を把握していない、またはそれ以前の問題でインターネットに導入できないということであってはいけないわけで、まず郵政省としては電子商取引の実証実験をすることによって普及の拡大に努めると同時に、先ほど有馬文部大臣も十年待ってくれというような話がありましたけれども、私たちも来るインターネットの時代に備えて人材の育成が急務だと思っています。そういうことで、学校インターネット接続という研究開発によって小学校、中学校のころからインターネットになれ親しんで、そして有効活用できるような人材育成に今取り組んでいるところです。  いずれにしましても、郵政省としては、民間の自由な活動を生かしながら先導的とか基礎的な研究開発をして、また国際的にも協調しながら取り組んでいきたいと思っています。  以上です。
  271. 世耕弘成

    世耕弘成君 今、大臣の方から技術的にはもう日本は平成八年からやっていて先行しているということでございましたけれども、私はこの技術の先行だけで安心してはいけないと思うんです。日本は過去、先にいいものをつくっていながら、結局国際標準化に失敗をして世界から孤立してしまったり、あるいは日本のシステムをもう一度世界標準に合わすためにつくり直さなきゃいけない、そういう技術の経験も数多くあります。身近なところではキャッシュカードの磁気テープの問題なんかがそうなんですけれども、この次世代インターネットがそういうことにならないようにきっちりと、特に海外との連携といいますか主導権争いに負けないようにぜひ郵政省として頑張っていただきたいと思います。  もう一つ、実は平成十年度の補正予算でギガビットネットワークというものに約五百七十三億円の予算が一次と三次でついております。私は、これがまた次世代の情報通信のために非常に重要なテストベッドになってくると思うんですけれども、現在どういう状況になっているのか、郵政大臣からお伺いしたいと思います。
  272. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) お尋ねのギガビットネットワークの現状について申し上げたいと思います。  この研究開発用のギガビットネットワークというのは、大学、研究機関、地方自治体、企業等の研究開発に開放するために平成十年度第一次補正予算で五百十億円、これによりまして通信放送機構がATM交換機、これは全国で十カ所を超高速光ファイバー回線で結んだギガビットネットワーク及び共同利用型研究開発施設、これは全国で三カ所ですが、を整備するものであります。  通放機構では、現在、四月からの運用開始に向けて必要な設備の調達を実施しているとともに、この運営体制について次世代超高速ネットワーク推進会議の設立に向けて準備を進めています。  三次補正では、トータルな光通信テスト環境として、先ほどの共同利用型研究開発施設の全国二カ所への追加整備ということで六十三億が認められたところでございまして、できるだけ早期に完成するよう執行の手続を進めているところです。  これによって、超高速ネットワークの運用管理技術とか、そしてそれに伴う高度アプリケーションの研究開発が促進されて、先ほど申し上げた次世代ネットワークを初めとする情報通信分野の研究開発が飛躍的に進展するものと期待しているところでございます。
  273. 世耕弘成

    世耕弘成君 もう一つ郵政大臣にお伺いしたいんですけれども、今のギガビットネットワークの御説明は、ほとんどATM交換機の設置ですとかハードの話ばかりでございました。こういう実験は、インフラとアプリケーションのバランスのとれた発展が非常に重要になってくると思います。今も新聞報道を全部検索してみますと、まだまだハードの話しか出てこなくて、このギガビットネットワークを使ったアプリケーションの話というのはほとんど出てきておりません。この辺の状況は今どうなっているんでしょうか。
  274. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 今、確かに私どもの方の通放機構では、ネットワークの整備ということで取り組んでいるわけですが、先ほど申し上げた推進会議のメンバーの皆様方にもこれからのアプリケーションについての持っていき方等々も進めていただくわけですけれども、私たちとすると、この研究開発が将来そういう皆様方、産学官の共同研究開発によっていろいろなアプリケーションを、むしろ私どもがというよりも、そういう開放するネットワークを利用していただくことによってさまざまなアプリケーションをつくっていただきたいということを希望しております。  私たちとすると、そういう利用によってどういうものが想定されるかというと、例えば地場産業とベンチャー、先ほどのお話でベンチャー企業というのがありましたけれども、例えば共同で電子カタログなんかを開発してもらえるんじゃないか、ほかにはさまざまな言語の文章をネットワーク上で自動翻訳するシステムなんかの研究開発も期待できるのではないかということを考えております。
  275. 世耕弘成

    世耕弘成君 こういう情報通信分野のアプリケーションの開発には、最初からこれでいけるなんていうものはほとんどないというのが現状だと思うんです。ある程度捨て金になるようなことも覚悟で臨まないといけない部分もあること、これも否定できないと思います。  私は、今回つくったギガビットネットワークのような場を公共事業として国が構築して、それを学生や中小ベンチャーや地域コミュニティーといった小さい単位の民間セクターが自由に利用する。それは決して共同研究とかいった大規模なものではなくて、自由度の大きい、大胆に言えばゲーム感覚のようなものでいろんなトライをしてみる。その中には成功もあれば失敗、失敗の方が恐らく多いでしょう。参加も退出もそのネットワークからは自由。そういう実験をやってこないと、真のいいアプリケーションというのは出てこないんじゃないか。  情報通信の世界のヒット商品、例えばインターネット上にホームページをつくってみようというアイデア、あるいはウィンドウズというOS、あるいはアイマックという今売れている商品、こういったものは非常に自由な場での試行錯誤の中から出てきたものじゃないかと思うんです。  しかし、こういう政府がやる実験プロジェクトというのは、現状では財政法第四条の縛りもあるということで、ほとんどが特殊法人への出資を通じて行われているという状況です。特殊法人と民間が共同研究という形をとられている。当然政府の出資ということになるわけですから一定の成果が上がることが前提となるわけで、これが大きなハードルになっているのではないかと思うんです。共同研究の相手も、今、郵政大臣から出たように、大企業、研究所が主流となってしまっている。これではせっかくの政府の支援策が末端で、ニュービジネスの創造という形で有効に機能していないのではないかと思います。  この際、特殊法人を通じるなどということはやめて、もう大胆に政府が自前で実験用のネットワークを公共事業の範囲として建設国債でつくられてはいかがかと思うんですけれども大蔵大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  276. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 夢がないなんて申し上げて、どうも本当に申しわけありませんでした。御多幸を祈ります。  それは、お金なら幾らでもつくる方法があります、建設公債であろうとなかろうと。それは余り問題ではないので、問題は政府の金が入ったときにいろんな意味での縛りがかからないように、そういうことを考えていただいたらいいし、先ほど文部大臣が言われましたように、大学なんかがやっぱりそういうふうに出てくるとなりますと、これは自然そういうことになってまいりましょうし、財政の方は何とでも工夫が私はできると思います。
  277. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先生言われたように、日本も相当いいものを過去に例えばOSなんかではつくったんですが、残念ながらどうも国際標準の中で取り残されてきたという例が幾つもございます。  そういう中で、私どもとしては、まだ具体的に着手しておりませんけれども一つはOSの世界でもう一段飛躍した世界をつくらなきゃいけないと思いますし、またその他のアプリケーションでもやはり相当気合いを入れてお金を投じてやらないといいものがつくれない。これはどうも普通の仕事と違いまして、やっぱり独創性の高い人を余り給与体系に関係なくたくさん集めて自由に仕事をさせて、その中で新しいアプリケーションが生まれてくるわけでして、仕事をする人もしない人も同じ給料ということではだめなので、そういうところは、先生今捨て金という言葉を使いましたが、まさに新しいものをつくるときにはそういう捨て金の部分がないと本当に世界に負けないようなものをつくれないということを心配しておりますので、私どもとしては、関係各省と相談をしながら、そういうアプリケーションの世界を充実して世界がリードできないかなと思っております。ぜひそういうことにもチャレンジをしたいと思っております。
  278. 世耕弘成

    世耕弘成君 新しいいろんな技術、アプリケーションをつくっていく一つ政府の仕掛けとしまして、郵政省の外郭団体として通信・放送機構、TAOと言われていますけれども、特殊法人があります。もう既に一般会計等から大体二千億円を超すお金が出資という形で投入をされております。  私はここにパンフレットを持っているんですけれども、見ておりますと非常にすばらしいメニューがそろっています。これが完全に機能したらきっちりと日本もいいアプリケーションをつくれるのになと思えるような非常にすばらしいプログラムがございます。  ちょっと絞って、二つ伺いたいと思います。  一つは先進的な技術の研究開発を行うベンチャー企業等への支援という項目、もう一つは地方拠点都市地域における電気通信高度化促進事業への支援、この二つに対してどれだけ国から出資あるいは補助がなされていて、今度は逆に、通信・放送機構の方から実際にベンチャー企業や地域の事業に助成とか出資という形でお金が使われているのか。これは事務方からでも結構ですので、教えていただけますでしょうか。
  279. 金澤薫

    政府委員(金澤薫君) ちょっと具体的数字を今手元に持ち合わせておりません。
  280. 世耕弘成

    世耕弘成君 では、それはまた後で別途教えていただくとしまして、私が聞いておりますところでは、何か施策によりましては、お金は積んであるけれども、なかなか事業の見きわめとかが難しくてお金が使えていないものがたくさんあるというふうに聞いております。  また、もう一つ、これはちょっと余りいい例になるかどうかわかりませんが、新聞記事ではこれしか出てこなかったものですから、二月十八日の日経新聞の東北の地方版ですけれども、ベンチャー育成のための中小企業創造活動促進法で、東北六県で平成十年度約二十一億円の予算が計上されたと、しかしそれが実際にベンチャーに投資されたのは二億円程度ということになっています。  これが直接いい例になるかどうかわかりませんけれども、大蔵省では、この特殊法人への出資という形、このフィルターを通すことによって国の出したお金がきちっと有効に使われているかがわかりにくい状況になっているんじゃないかと思うんです。  大蔵省では、特殊法人等への出資や補助金がどのように使われているかをきちっとある程度タイムリーに捕捉されているのか、あるいは余剰が発生した場合にはそれを吸い上げて別の施策に回すようなことというのをお考えになっているのか、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  281. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私はきちんと存じませんけれども、むしろ余計なことをしない方がいいんだがなという気持ちの方が私は強いので、具体的にそういうことがございましたらよく私どもでも反省して改めます。むしろ、特殊法人なんということを考えた基本は、真っすぐですといろんな制限がかかりますのでという配慮であるはずなのですが、それがもし逆に働いておりましたらそれは本来願うところではございませんので、よく注意いたさせます。
  282. 世耕弘成

    世耕弘成君 もう一つ、ちょっと話が横にそれますけれども情報化の話に関連しまして、二次産業、第三次産業に従事している人というのはコンピューターに会社、職場で触れる機会も多いわけでありますけれども、一方で、農林水産業に従事する人というのは仕事上でコンピューター、情報通信というものを使う機会が非常に少ない現状になっているわけであります。  農林水産省では、この間勉強させていただきましたが、農家向けにはEI—NETというものを構築されているようでありますけれども、これは、私は実際に和歌山の情報化に関心のある農家の人に聞きますと、非常に使い勝手が悪いということでございました。現に、全国で加入数は千ということでございます。和歌山の若い農家の担い手の人たちは勉強会をつくったりして積極的に情報化に取り組もうとしているんですけれども、いかんせん高齢化している、周囲の理解が得られないとか、あるいは自治体の協力がいま一つであるとかという形の悩みを持っておられるようであります。  今後、農林水産業の担い手を確保するという視点からも、農林水産業に携わる人々の個人レベルでの情報化というのが非常に重要になってくるのではないかと思うんですけれども、農林水産省としてどういう対策を考えておられますでしょうか。大臣、お伺いできますでしょうか。
  283. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生御指摘のように、緊急整備事業としてEI—NETをやっておりますが、加入者数が千戸足らず。これからふえていくと思いますけれども、日本の八割を占めるとも言われております農林水産地帯、そして人口が大都市に比べて密度が低い、そして自然、生き物を相手にする仕事であるだけに、物すごくローカル性とそれからグローバル性と両方を要求されるだけに、情報のネットワーク化というのは、私はそういう地域にまた別の意味で格段に必要があるというふうに考えております。  一方、そういうことに極めて関心のある人あるいは地域と全くよくわからないというところと、両極端だろうと思います。したがいまして、先生御指摘のように普及事業、インターネットにアクセスするとかあるいはどこかのデータベースにアクセスするとかいうその普及と、それからソフトの内容そのものと、それからインフラの整備、光ファイバーとか大容量の通信回線とかそういうものの整備と、三者一体となって早急にやっていく必要があると私は確信をしておりますので、御指導よろしくお願いいたします。
  284. 世耕弘成

    世耕弘成君 もう一つ、先ほどちょっと郵政大臣からもお話がありましたが、情報化の推進につきましては教育の面からのアプローチというのがやはり非常に重要だと考えております。  今、学校インターネット等のプロジェクトが現実に推進されているわけですけれども、私いろいろ話を聞きますと、教育現場に幾らいい機械を入れて、幾らいい回線を入れても、実際に現場の先生がそれをいじれない、あるいは情報通信というものに関してある程度造詣を持って子供に関心を持たせるようなうまい教育ができないという問題があるというふうに聞いております。  この際、一つ情報通信教育をできるような教員をどうつくり上げていくかという、これも非常に重要なテーマになると思いますけれども、これは時間がどうしてもかかると思います。そうしますと、今度は逆に発想を逆転させて、情報通信の専門家である例えばパソコンメーカーですとかソフト会社の社員を臨時に講師として学校に呼べるような、そういう学校外部の知恵をかりて情報通信教育を充実するような策、これはお考えにはなっていないんでしょうか。
  285. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 大変適切な御質問を受けました。このことができるように、非常勤の人たちを小学校、中学校、高等学校で雇えるようにいたしました。そして、地方自治体にお願いして、それぞれの学校で大いにその人たちを使っていただくということを考えております。そして、一般のボランティアの方々に、情報通信のことももちろんでありますが、それ以外の心の教育などでも大いに御活躍いただくようお願いをしているところです。
  286. 世耕弘成

    世耕弘成君 ぜひ教育現場の活性化という意味で、外部の人の知恵、ノウハウを取り入れる取り組みをやっていただきたいと思います。  郵政省に現在、テレコム三局と言われます電気通信局、通信政策局、放送行政局という三局がございます。現実にこれから通信と放送の融合という大きなテーマが産業的に出てくるわけですけれども、それが進むに当たって、局が分かれているというのが非常に行政上大きな障害となっている、あるいは今後なってくる可能性があるんじゃないかと思っています。  きのうの読売新聞で報道されていましたけれども、今度の省庁再編にあわせてこの三局を新たに総合通信基盤局と情報通信政策局に分けるということがありました。これは私、非常にいいことだと思います。一つは、通信、放送の融合に向けて動きが出ているということ。そして、これからは通信、放送という区分けではなくて、インフラを持っている会社とその上に流れるアプリケーション、サービスを提供する会社に分かれてくるわけですから、そういう産業の変化に非常に合った構成になるんではないかと思いますけれども郵政大臣、これはおやりになるんでしょうか。
  287. 野田聖子

    国務大臣野田聖子君) 御質問は、昨年六月に決定しました中央省庁等改革基本法において、電気通信行政及び放送行政を担当する三局を二局に再編する、そういうふうな中での作業のことだと思います。  御指摘のとおり、放送と通信というのは、もう事実上、デジタル技術によりまして垣根が大変低くなっています。通信と放送のいわゆる中間領域的サービス、例えばCATVで電話サービスを受けられたりとか、CS、通信衛星で画像が見られたりとか、もう既にそういうサービスが現実に始まっているわけでございまして、こういうことを踏まえて郵政省としては今後の情報通信の発展に柔軟かつ適切に対応していきたい。  今のところ、現在の通信政策局と放送行政局の機能を基本とする局と、そして現在の電気通信局の機能を基本とする局の二局で構成していこうというふうに考えているところでございます。
  288. 世耕弘成

    世耕弘成君 最後の質問になると思いますけれども情報通信ばかり聞きましたので、一つちょっと違った話をお伺いしたいと思います。  バブル経済というのは今非常に悪かった悪かったというイメージがあるわけですけれども、よかったこともあると思うんですね。幾つかあると思うんですけれども、そのうちの一つが、美術品とかそういう芸術的な資産というものはかなりバブル期に日本に集まったと思うんです。ところが、今それが、例えば企業のリストラですとか、あるいは倒産する、あるいは相続税の問題で、買ったときとは比べ物にならない安い値段で海外のサザビーズですとかクリスティーズといった競りにかけられて再び海外へ流出していこうとしている。  私は、これは一つ経済が失敗したんだからいいじゃないかという考え方もありますけれども、せっかく日本にとどまっているそういう文化財産をぜひ国の予算で、今安く買えるわけですからそれを買い取って、そしてそれを国民みんなが見られるようにする、それがまた情報通信の中で充実したコンテンツを生み出していく素地にもなっていくんじゃないかと思うんですけれども文部大臣、お考えはいかがでございましょうか。
  289. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まさに文化庁と言った方がよろしいですね、文部省より。文化庁でもそのことを考えております。  日本の美術館の強化につきましては、文部省ではこれまでも国立博物館、美術館の美術品の買い上げに係る予算の充実に努めており、まだまだ足りないと思いますけれども充実に努めております。昨年十二月に施行されました美術品の美術館における公開の促進に関する法律の周知を図るなど、美術館等の収蔵品の充実に努めているところでございます。  また、文部省といたしましては、国立博物館、美術館の収蔵品を巡回展示いたしております。これは九州でやっているんだと思いますが、地方の公私立の博物館、美術館に対して積極的に貸与を行っているところであります。  今後ともこれらの施策により美術館等の収蔵品の充実に努めてまいりたいと思っております。
  290. 世耕弘成

    世耕弘成君 以上で終わります。
  291. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で世耕弘成君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時八分散会